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中学生バトルロワイアル part6

630 ◆7VvSZc3DiQ:2016/11/03(木) 23:04:27 ID:ju7RNNqk0
「世界のため。人類のため。みんなのため。そんなことを言われながらあたしは戦ったけど、それは全部、自分のための戦いだった」

強く在るということが、アスカの存在理由だった。強く、優秀でなければアスカを求める人間はいなくなってしまう。強くなければ生きる理由がなくなってしまう。
強迫観念に似た歪な価値観に支配され、アスカは己の価値を磨き上げ、周囲に誇示することに執着するようになっていった。

「バカシンジでもエコヒイキでもダメなの。あたしが使徒を倒さなくちゃ、誰もあたしのことを認めてくれないの。
 ……自分が死ぬことになろうとも人類を守れって言ってくる大人たちの顔、アンタは見たことある?」

そう言って、アスカは力無く笑った。そしてアスカの言葉を聞いた初春の中では――なにかが、ぱちんとはまった。
御手洗とアスカは、「自分が死ぬことになろうとも人類を殺すと決めた少年」と「自分が死ぬことになろうとも人類を守れと命令された少女」だった。
或いは、「自分の弱さを認められず世界を壊そうとした少年」と「世界に認められるために自分の弱さを殺した少女」だった。
まるで正反対のようで――その実、根本は同じだ。発露の方向が違っていただけで、始まりは同じだ。
震えるアスカの手を、初春はそっと握った。初春の手が触れる瞬間、予期せぬ接触に驚いたアスカの手がびくんと跳ねた。

「いっ……いきなり何すんのよ!?」
「すみません、つい……! でも、」

でも、という逆接の後ろに続く言葉を初春は探した。今自分が言うべき言葉は、いったいなんだろう。いくらか頭の中で考えて、しかしどれもしっくり来なくて。
「式波さんの手……冷たいですね」
水使いと対峙し、ずぶ濡れになったアスカの手に触れた感想を、そのまま言うことになった。
「……ヘンタイ」
返ってきたのは、ジト目だった。

「ち、違うんですよ!? いや、違わないというか……確かに急に触っちゃったのは私が悪いとは思うんですけど……」
「……別に、イヤって言ってるわけじゃないわよ」

初春の手が振り払われることはなかった。許容してくれたんだと解釈して、初春は少し嬉しく思う。
初春が握る手に力を込めると、アスカもまた握り返してくれた。初春の手のひらの熱が、少しずつアスカの手に移っていく。

「式波さん。こんな話を知ってますか? ……手が冷たい人はですね、心が暖かいそうですよ」
「知ってるわ。でも、非科学的にもほどがあることわざじゃない」
「ええ、科学的根拠なんてまったくありません。でも、素敵だなって思いませんか? それとですね、私が好きなのは、その逆の言葉はないところなんです」
「手が暖かかったら、心が冷たいって話は……確かに聞かないわね」
「ね? 初めてそれに気付いたとき、あぁ、なんだかいいなぁって思ったんです」

勝手に人のことを心が暖かいと認定するのも乱暴な話だけれど、心が冷たいだなんて決めつけることもないのは、とてもいいことだと思う。うん、いいことだ。

「式波さんも、優しい人ですよね。私、知ってます」
「はぁ? なによ、ちょっと一緒にいたくらいであたしのこと分かったつもりになるなんて――」
「優しくないところも知ってますよ。両方合わせたら、もしかしたら優しくないところのほうが多いかもしれませんね」
「……ちょっとアンタ、あたしのことバカにしてんの?」
「いいえ、違います。尊敬してるんです」


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