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新西尾維新バトルロワイアルpart6

745非通知の独解 ◆wUZst.K6uE:2017/11/04(土) 22:49:34 ID:hznMXV2k0
 



   ◇     ◇



 
『死体がない』というのは、この場合、喜ぶべきことなのだろうか?
正確を期すなら、図書館の中に伊織さんが屠ったショートヘアの女の子の死体が転がってはいるが、そんなことを描写したところで何か意味があるわけではない。
死体はないが、首輪はふたつ。デイパックもふたつ。
首輪探知機の表示が示すとおり、人識と伊織さんの首輪で間違いはないだろう。デイパックもおそらくは同様だ。中身を見るまで断定はできないけれど。

なぜ首輪だけが?
疑問符をはさんではみたものの、その回答を得るのに大した思考は必要なかった。
頭の中でアラートが鳴り始める。最悪の想像であり、同時にこの状況から考え得る最も妥当な判断。
僕が今、単独で行動している最大の理由。玖渚さんたちにとっての最重要の懸念事項。


「水倉、りすか……」


とっさにスマートフォンを取り出し、玖渚さんの携帯へコールする。数秒のラグののち返ってきたのは、電話が通じない旨を知らせる電子音声だった。
電源が切られている? 玖渚さん自身がなんらかの理由で切っているのか、それとも。
伊織さんは――しまった、伊織さんの連絡先を聞いておくのを忘れていた。人識と玖渚さんの番号さえ分かっていればいいという慢心があったせいか。やむなく人識の携帯にかける。こっちは玖渚さんからのメールに番号が載っていたはずだ。


――prrrrrrrrrrrrrrrrr。


突然近くから鳴り響いた音に一瞬ぎょっとする。しかし、音の出どころはすぐにわかった。地面に落ちたデイパックの片方からくぐもった電子音が鳴り続けている。
電話を鳴らしたまま、デイパックを手に取り中を探る。あった。出てきた携帯電話の画面には、僕の持つスマートフォンの番号がはっきりと表示されていた。
このデイパックは人識のものに間違いない。そして持ち主である人識はどこにもいない。携帯電話すら放置したまま。

誰ひとりとして繋がらない。

誰ひとりとして、電話に出ない。

電話に出ることが、できない?

二度と?


「嘘だろ……」


こうなると、『死体がない』というのはもはや絶望を後押しする材料にしかならない。僕は話でしか聞き及んでいないことだが、水倉りすかの使う『魔法』という概念は『そういうこと』を可能とするものらしい。

要するに、人間を『跡形もなく』消し去ることのできる能力。

初めから、この世界の『時間』に存在していなかったのごとく。

『魔法使い』、『赤き時の魔女』。

水倉りすか。

なんてことだ。人識と玖渚さんの話から、いつかこういう事態に直面する可能性については留意していたが、まさかこんなに早くその時が訪れるとは。
玖渚さんの先見の明にはまったく恐れ入らざるを得ない。「リスク分散のために別行動をとる」というあの判断は、恐ろしいほど的確だったということになる。
僕はまた、誰かに助けられたというわけだ。
また無様に一人だけ、幸運にも生き残って――いや、待て、違う。

馬鹿か。まだ玖渚さんたちが死んだと決まったわけじゃないだろうが。そもそも水倉りすかが本当に現れたかどうかも定かではないし、仮にそうだとしても、電話に出られない理由は他にあるかもしれない。
悪い方向に想像を巡らせるだけ時間の無駄だ。今は僕が何をすべきか考えるのが先じゃないのか。

呼吸を整え、意識を落ち着かせる。
僕は『いつも通りの自分』でいればいい。ただそれだけだ。

首輪探知機をもう一度見て、周囲に他の人間がいないことを再確認する。大丈夫だ、とりあえず危険な様子はない。今のところは。
スマートフォンをしまい、地面に捨て置かれたデイパックを拾う。人識たちの安否が不明である以上、これは回収しておかなくてはならない。少し考えたが、首輪も回収してそれぞれのデイパックにしまう。
できればここら一帯を他になにかの痕跡が残されていないか調べたいところだったが、時間がない。ここは次の禁止エリアの真っ只中だ。三時までにこのエリア内から脱出しなければ僕のほうが無事では済まない。

ただ、その前に。

どうしても手に入れておきたいものを探すため、僕は図書館内に足を踏み入れた。


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