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少女漫画キャラバトルロワイアル 第二巻
71
:
魂の迷い子
◆F9bPzQUFL.
:2016/06/11(土) 15:46:54 ID:D2U2vMHA0
予想通り、といえば予想通りだった。
怪我をしている少女というのは、先ほど由希を見て一目散に逃げ出していった、あの少女のことだった。
聞けば、モゲ太は蛍が作ったパワードスーツ(なんて言葉を使うとは思っていなかったが)らしく、それの動作確認をしていた時に、少女と鉢合わせてしまったらしい。
自分の顔を見るや否や逃げ出すほど追い詰められていた少女が、傍から見れば怪物にも見えるそれを見て、気を保っていられるわけもなく。
気を失ってしまった少女を見て、どうするべきかと悩んでいた時に、由希が現れたのだという。
それから、モゲ太を作ったのは蛍であること、アリスと呼ばれる超能力の話を含め、由希は蛍の話を聞いていた。
超能力なんて信じてはいなかったが、目の前で見せられては流石に信じざるを得なかった。
「由希さんは、これからどうするんですか」
デパートの一角の薬局から拝借してきた薬を掛けあわせ、一通り治療が終わった所で、蛍は由希へと語りかける。
答えは分かりきっている、今更という気持ちもあるが、それでも蛍はちゃんと聞いておきたかった。
少しの沈黙を経て、由希はゆっくりと蛍へ語る。
「決めたんだ。僕はこの殺し合いに抗う、誰も殺したくないし、死にたくもない。みんなで生き残りたいんだ」
今は眠る、少女の姿を見て決めたこと。
天秤をひっくり返す、日常を取り戻す。
誰かを傷つけること、ましてや人を殺すことなんて、出来るわけもなかった。
「本当に、そんなことが出来ると思いますか」
その答えを聞いた蛍が返したのは、そんな言葉だった。
「……こんな小さな子が追いつめられて、気を失ってしまうくらいだというのに。
それでも由希さんは、"その気"の人間まで殺さずにいられますか」
小学生とは到底思えない落ち着きで、蛍は口を開き続ける。
その言葉に、由希もはっとする。
そう、ここは殺し合いの場。
人が人を殺し続けないと生き残れない、そう告げられている場所。
その言葉に乗せられて、既にその気になっている人間も少なくはないだろう。
そんな人間に襲われても、自分は"不殺"を貫けるだろうか。
他人の幸せを奪おうとしている人間の幸せさえも、守ることが出来るだろうか。
「戦わなくちゃいけない時だって、あるんです」
そんな心を見透かされているかのように、蛍の言葉が続く。
言葉を詰まらせる由希をじっと見つめながら、蛍はその姿を"彼女"と重ねる。
無鉄砲で、ハチャメチャで、でも人を思いやる優しい心をもつ少女は、この場所のどこかで人殺しを止めようとしているのだろう。
そしてきっと彼女も、彼と同じように悩んでいるのだろう。
その時自分は、彼女の言葉を聞けるだろうか。
彼女の命を脅かす存在さえも、守ろうとする彼女の言葉を。
それとも、彼女を守るための動くことを優先するだろうか。
現実は、重い。
気づいてしまった、気づかせてしまった、故に二人は足を止める。
掲げた理想と目標を達成するためには、何かを捨てなくてはいけないのだろうか。
もし、そうだとすれば。
その時、自分は"何"を選ぶのだろうか。
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