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渡来船2

124カサブタ:2012/03/17(土) 21:19:55
“拝啓 大原七海 様

私は今、アメリカのオレゴン州にある修道院で生活しています。
もともと成績が良くなかったから英語で話さなければならない環境に最初は戸惑いました。
でも、だんだんと慣れてきて今では神父さんやシスターさんと少しだけ話せるようにもなってきました。

周りには、まだあの夜のことを吹っ切ることが出来ず、今でも夢に見てしまう子も多いようです。
私も、自分の手で傷付けてしまった彼のことを思い出して、眠れない夜を過ごす事がまだあります。

でも心配しないでください。私は大丈夫です。
修道院の人達はとっても優しく、おかげで私たちも少しずつ元気を取り戻しています。 
親友である貴女に会えないのは辛いけれど、こうやって手紙を書いている時は楽しかったあの頃の気分に戻ることができます。

いつか、アメリカにくる機会があったらぜひここに立ち寄ってみてください。
その時までにはきっと立派なシスターになって貴女を迎えてあげます。 

また、お手紙を送りますね。          

音無さやか   ”

七海の元に届いたエアメールには手紙と一緒に、修道服に身を包んださやかの写真が同梱されていた。 
同じく修道院に保護された友達と一緒に以前と変わらない元気そうな笑顔を浮かべる彼女の姿に七海も心なしか微笑んでしまう。

「七海ちゃ〜ん、 お料理運ぶの手伝ってくれない?」

休憩室の扉から美樹がひょっこり顔を出して七海を呼ぶ。

「は〜い、ただいま!!」

七海は手紙を封筒にしまうと、特注した小振りの水兵服をはためかせて出来立ての料理をお客の元へ運んでいた。

「いやはや・・・、巡り合わせとは不思議なもんですな・・・。」

渡来船のカウンター席では、仕事上がりの大原警部が部下を連れて酒を飲みに来ていた。
元気良く働く娘の姿を見る彼に、美樹は新しいビールを運んでくる。

「七海ちゃんは本当に働き者ですよぉ!! あんなに若いのに一生懸命で私たちも見習いたいくらいです!!」

「アメリカに留学したいからバイトをしてお金を貯めるなんて、耳を疑いましたよ。
先日18歳の誕生日だったんですが、そこで突然言われましたからね。
しかも、そのバイト先がよりによってこの店とは・・・。 あの時、藍さんが娘と並んで一緒に頭を下げに来なかったら認めてないところですね。 
それにしてもどこで藍さんと知り合ったのだか・・・。」 

「まぁまぁ、 女の子っていうのはいつの間にか大人になっちゃうものですよぉ!!
私も先日結婚しましたけど、親には最後まで反対されたんですよね。でも、きっと大丈夫です。
大体どうにかなっちゃうし、特に七海ちゃんはしっかりした子ですからねぇ。
よく言うでしょう? 親の心子知らずって。」

「それ・・・、ひょっとして慰めてるつもりですか?」

あの夜から既に2ヶ月が過ぎました。みゆきは渡来船のカウンターの後ろにある椅子に腰掛け、なにやら物思いに耽っている。
日本に帰ってきてからずっとこんな感じだった。経験豊富なみゆきも流石に今回は、どっと疲れたようだ。

「あの・・・、船長?」

「ん?」

自分を呼ぶ声に顔を上げると、そこにはみゆきの代わりに店番をする美樹が心配そうな顔で立っていた。


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