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臨時作品
1
:
源罪な名無しさん
:2010/08/30(月) 09:22:21 ID:???
ここは本スレが作品を投下できない状況になった時に、
臨時で作品を投下するスレです。
179
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 19:59:43 ID:???
F−5エリア、18時過ぎ――
ようやく緊張から解放されたとき、アルマは声を上げて笑っていた。
ヴォルマルフを相手に、ディエルゴを相手に、見事に交渉をやってのけた。
このゲームのルールを変更させただけでなく、優勝の際の約束まで取り付けた。
相手はいつでもこの首輪を爆破することが出来るというのに、
こちらを生かすも殺すも相手次第だというのに、それでも自分の要求を呑ませた。
この笑い声を、ヴォルマルフが聞いていることは知っている。
聞かれたって構わないと思った。むしろ、聞かせてやりたかった。
ヴォルマルフは怒っているだろう。屈辱に歯を食いしばっているかも知れない。
それでも彼には首輪の爆破ボタンは押せない、押せるわけがないとアルマは思う。
何故なら、それは、彼が自身の敗北を認めることを意味しているからだ。
自身を挑発した小娘の笑い声にすら耐えられないような卑小な存在であると、
認めることを意味しているからだ。
ヴォルマルフは、そのプライドの高さゆえに、首輪を爆破することが出来ない。
そして、そのプライドの高さゆえに、怒りと屈辱に耐えねばならない。
ヴォルマルフの顔を想像すると、おかしくて楽しくて仕方がない。
屈託のない笑い声が、まるで泉のようにとめどなく湧き出てくる、止まらない。
――今の私、すごく明るい顔してる!
そう自覚した途端、思わずステップを踏みたくなった。
これだけ明るく笑えれば、他の参加者を騙し通せるだろう。
これだけ希望に満ちた顔をしていれば、他の参加者にも信用されるだろう。
これだけヴォルマルフを蔑んでいれば、主催と敵対する立場だと偽っても
誰も怪しんだりしないだろう。この輝きは、演技ではない。
すべて、心の奥底から湧き上がる真実の姿なのだから。
180
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:00:26 ID:???
胸が弾む。最高の気分だった。
薄闇に覆われた宵の森を、アルマは踊るようにひとり歩く。
――私、ラムザ兄さんの役に立てたの!
これから、もっともっと役に立てるの!
女になんか生まれなければ良かった、と思っていた。
男に生まれていれば、修道院などに入れられることもなく、
ラムザ兄さんのそばで共に戦えたのに。
そんな思いが、いつも心に引っかかっていた。
けれども、今の自分は違う。そんなことを思い煩う必要はなくなった。
ここに来てからずっと、そしてこれからもずっと、自分はラムザの役に立っている。
自分の存在が、最愛の兄ラムザの帰還に繋がると心の底から信じていられる。
その揺るぎない確信が、アルマの心身を弾ませていた。
□ ■ □
181
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:01:12 ID:???
まるで昨日の出来事のように、鮮やかに脳裏に蘇る。
生涯の忠誠を捧げた少女、タリスの王女シーダと出会ったときのことが。
……オグマはその日、死ぬはずだった。
剣闘士奴隷だった彼は、反乱を企て、決起するも、
仲間の奴隷剣士たちを逃がすべく囮となり、囚われたのだった。
アカネイア聖王国のとある町の広場で、オグマは死ぬまで鞭打たれる。
皮膚が破れ、肉が裂け、骨が砕けても、彼の強靭な体力は尽きることはない。
意識を失いそうになるたびに、冷や水を浴びせかけられる。
その水は海水を含んでおり、燃え上がるような激痛を全身にもたらす。
「やめて!」
遠くで少女の声が聞こえた。初めて聞く声、幼い声だ。
鞭でも冷や水でもない何かが、自分の身体に覆い被さる。
次の瞬間、鞭が宙を裂く音がして、くぐもった悲鳴が間近で聞こえた。
それが幼い少女のものだと気付いたのは、刑吏の声が聞こえてから。
「なんだ、このガキは!?」
顔を上げることも出来ないオグマの耳に、幼くも毅然とした声が届く。
「私はシーダ……、タリスの王女よ!」
182
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:01:47 ID:???
ああ、なんだ、そういうことか。オグマは薄く笑っていた。
恵まれた立場にいる者の、傲慢な人助けゴッコか。
笑顔で手を差し伸べながら、その実、相手を見下している。
“立派な自分”に酔うために、他人の傷を笑顔で探す。
まあ、仕方あるまい、とオグマは心の中で呟いた。
彼女は幼いのだから。奴隷の立場にいる者のことなど、知らないのだから。
この娘は、大人たちに諭されてじきに去っていくだろう。そして、俺は殺される。
……オグマが反乱を企てたのは、疑問を抱いたからだった。
金持ちの道楽のために弱者が殺し合わなければならない、という現実に対して。
オグマは奴隷として売られ、アカネイアの貴族に剣奴として買われた。
奴隷であるオグマが闘技場で戦い、勝てば所有者である貴族に大金が入る。
大陸最強の剣奴として知られたオグマには、人を惹きつける資質があったのか、
剣闘士奴隷たちから一目置かれていた。
しかし、今日言葉を交わした者と、明日は殺し合わねばならない。
自分に敬意を向けてくれた者を、いつかは殺さなければならない。
金持ちの享楽のために、贅沢のために、楽しみのために。
そんな現状に、オグマは耐えられなかった。
「なんだ、自分のことを王女だと思ってる頭のおかしなガキか……」
「ははっ、タリスなんて田舎の島国のことなんざ、知るかよ」
群集から野次が飛ぶ。遠巻きに見物しているだけだった分際で、
やめさせようとするわけでもなければ助けようとするわけでもなく、かといって、
他人の無残な死を望む自分の醜さを直視しているわけでもなく、
楽な方に流されることしか出来ない分際で、こんなときばかり威勢がいい。
ゲスが。オグマは内心で吐き捨てた。頭上で刑吏の声が飛ぶ。
183
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:02:35 ID:???
「おい、ガキ。そこをどけ!」
「いや! どかない! この人にひどいことをしないで!」
「また痛い目に遭いたいのか、あぁ?」
「どうしてもやめないって言うなら、私を先に殺して!」
少女の小さな手が震えているのが分かる。
それでも少女の小さな身体は自分を抱きしめたまま、離れようとはしない。
震えてはいるが、頼りないその力は強くなる一方だった。
威勢の良かった刑吏の声に、戸惑いが現れ始める。
「おい……」
「出来ないんでしょ!」
「あのなぁ……、お嬢ちゃん。この男は奴隷で――」
「私に出来ないようなことなら、この人にもしないで!」
オグマは己を恥じた。幼い王女の誠意を疑ったことを悔いた。
すべてを諦めねばならない極限の状況だったとはいえ、彼女の誠意を疑うことは
自分に殺し合いを行なわせた傲慢な貴族連中の価値観に屈することだと知った。
彼らがそうだったからといって、彼女までそうだとは限らない。
現に、彼女は身を挺して自分を庇ってくれたではないか。
184
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:03:17 ID:???
「シーダ様!」「シーダ王女!」
どこか遠くで声が上がり、二つの足音がこちらに走り寄ってくる。
群集の野次が力を失う。この少女が本物の王女だと気付き始めたのだろう。
「ニーナ様に比べればお召し物が……」「田舎貴族の令嬢よりもみすぼらしい」
などとぶつぶつ言っている者もいるが、所詮は責任転嫁と言い訳に過ぎず、
先ほどの覇気はもはやどこにも感じられない。
シーダの付き人の言い争う声が、オグマの意識に割り込んでくる。
ひとりは、宗主国アカネイアとの関係悪化を恐れ、黙ってこの場を去ることを主張。
ひとりは、わが国の王女シーダを鞭で打ち据えた罪は万死に値する、
なんとしてでも責任を取らせてやると激しく憤るばかり。
刑吏はといえば、すっかり弱腰になっており、まごまごと何事かを呟くのみ。
諍いを続ける大人たちを、幼い王女が一喝する。
「喧嘩なんかしないで! この人、怪我してるの! 見えないの!?
私のことはどうだっていいから、この人を先に助けてあげて!」
185
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:03:48 ID:???
……こうして、オグマの身柄はタリスの王女シーダに委ねられた。
宗主国との関係維持のため、ことを荒立たせるべきではないと考える者、
自国の尊厳と統治者の意向を何よりも尊重すべきと考える者、
自己の保身を優先したい者、この3人の利害が一致したためでもあった。
『この男の身柄ひとつで済むのなら、安いものだ』――
それが彼らの本音であろうことは、オグマには察しがついていた。
この男の身柄ひとつで、宗主国との関係が悪化せずに済むのなら。
この男の身柄ひとつで、自分の生命や生活が脅かされずに済むのなら。
自国の尊厳を重んじる男は、傷が癒えたら我が王に仕えよ、と居丈高に命じた。
奴隷の身分から解放されても自分はやはり奴隷なのだと、オグマは苦々しく思う。
そんなオグマの存在を、彼が一命を取り留めたことを、
彼を伴って帰国出来ることを、シーダはただ純粋に、そして心から喜んだ。
オグマが彼女に、父王に、タリスという国に、生涯にわたって仕えることを
自らの意思で選択するまで、さほど時間はかからなかった。
□ ■ □
186
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:04:33 ID:???
G−5エリア、上空、19時過ぎ――
釘を刺しておいたほうがいいだろう、とネサラは冷ややかに思った。
オグマという男は、この殺し合いにおいて、既に3人の仲間を失ったという。
しかも、どのような手を使ってでも死者復活のすべを手に入れる心づもりのようだ。
その彼が、先ほどの臨時放送を聞いて、一体何を思ったか。
キュラーと名乗る主催側の男は、死体の冒涜を教唆したも同然だった。
殺意が芽生えたのではないか。復讐心が芽生えたのではないか。
オグマは自身の目的のため、ふたりの仲間に隠れて自分と手を組むことを選んだ、
ならばその目的が変質すれば、約束を反故にしかねないだろう。
オグマは既に、イスラとアズリアを欺いた。
ならば自分を、このネサラを欺いたとしても、何ら不思議ではない。
再び接触する口実ならば、ある。
落ち合う時間を変更したい、とでも言えばいい。
現に、ニンゲンの足では、あの移動距離はいささか厳しいようにも思える。
オグマの前では羽を隠し、ニンゲンのような姿に身をやつしていたが、
やれやれ、どうやら頭の中までニンゲンになりきらねばならないらしい。
ネサラは皮肉げに口元を歪め、安いものだ、と内心で呟く。
ニンゲンの真似事をしたからといって、自分の何が損なわれるというのか。
彼の矜持は、その程度のことで傷つくような安っぽいものではなかった。
むしろ、それで生還出来るなら、妻子や民を守れるなら、安いものだと心から思う。
眼下に街道がくっきりと見える。
こちらから見えるということは、あちらからも見えるということだ。
そろそろ地上に降り、ニンゲンに身をやつすとするか。
そう思い、降下し始めたとき、街道の北側に小さく光るものが見えた。
187
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:05:19 ID:???
夕闇の中にあっても浮かび上がるように輝く金の髪、それは少女の頭だった。
少女はひとりで街道を南下している。しかし、どうにも様子がおかしい。
彼女の足取りは、弾んでいた。この殺し合いの場で、仲間などいないにも拘らず。
悪趣味きわまる臨時放送の直後だというのに、一体何がそんなに楽しいのか。
――恐怖で気が触れたか、あるいは既に人を殺しているか。
その両方ってのも有り得るだろうな。
ネサラは屋根の上に降り、そこから少女を観察する。
彼女は、“戦士”ではないだろう。
動きに切れがなく、身のこなしに隙がありすぎる。
踊るようなその足取りは、常軌を逸していると言わざるを得ないが、
どこか慎ましやかでもあり、育ちはそれなりに良いのだろうと思える。
年の頃は、ニンゲンならば十代半ばといったところか。
彼女は笑っていた。楽しそうに、嬉しそうに、胸を張って笑っていた。
その笑顔は、理不尽や不条理に屈した者の現実逃避には到底見えない。
恐怖で気が触れたというわけではなさそうだ。
188
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:05:51 ID:???
――ま、それでも、狂っていることには違いないんだがね。
殺し合いに乗らざるを得ない事情がある、ってことか。
生への執着のみで殺し合いに乗っているのならば、あのような顔では笑えない。
そして、その『事情』こそが、彼女の最大の弱点といえるだろう。
守るべき者たちのためには手段など選んではいられないネサラだからこそ、
正体不明のこの少女にも付け入る隙があることが分かる。
しかし、接触するのはまだだ。
ネサラは目だけを動かして少女の姿を慎重に追う。
このまま街道を南下すれば、彼女はあの3人に遭遇するだろう。
戦士ではない彼女は、戦士である彼らに対し、どのように立ち回るか。
接触は、それを確認してからだ。その方が、自分も有利に動けるだろうから。
そう思ったとき、まったく別の方向で聞き覚えのある声がした。
それはイスラとアズリアの声、何事かを言い争うような声色だった。
□ ■ □
189
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:06:45 ID:???
怒りで臓腑が冷えていくのが分かる。
冷酷に冷徹に、脳が冴え渡っていくのが分かる。
もはや、悲しみは感じなかった。激情も衝動も、消え失せていた。
あるのはただ、純然たる殺意。無感情で狡猾な、復讐心。
『連中を完膚なきまでに叩き潰し、望むものを勝ち取れ』――ただそれだけ。
キュラーによる臨時放送はオグマを激怒させ、覚醒させた。
それは、自分自身すらも俯瞰させるほどの、冷徹な怒りだった。
自分自身すらも駒と見なし、徹底的に使い潰そうとする、冷酷な怒りだった。
――成る程な……、それが、貴様らのやり方か。
この俺を、随分と見くびってくれたものだ。
オグマは迷いのない足取りでレヴィノス姉弟の待つ屋敷へと戻る。
心は既に決まっていた。だが、それをなすためには、
アイクの捜索は放棄せざるを得ない、ネサラとの約束は反故だ。
ただし、彼の存在をレヴィノス姉弟に伝えることもしない。
姉弟を欺き、ネサラを欺き、そして自分自身すらも欺く。
それが出来ないようでは、主催連中になど到底敵わないだろう。
街道の向こうから、見覚えのある人影がふたつ、こちらに近付いてくるのが見える。
オグマは軽く疑問を覚える。ふたりは屋敷で待っているものとばかり思っていた。
自分がいない間に、何かあったのだろうか。それともイスラが――
「オグマ殿!」
アズリアが声を上げ、こちらに駆け寄ってくる。
イスラも無言で姉に従う。こちらを避けているわけではないようだ。
それどころか、合流のあと最初に口を開いたのはイスラだった。
190
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:07:29 ID:???
「オグマさん、さっきの人、随分と派手な鳥を連れていたね」
自分がイスラにカマをかけられていることは、すぐに分かった。
さっきの人、とはネサラのことだろうか。
イスラはネサラとの密会の事実を把握しているのだろうか。
しかし、鳥とはどういうことか。何故、そんな言葉が出てくるのか。
「いや、俺は誰にも会っていない。無論、鳥すら見かけなかった」
「おかしいな、こっちに行ったと思ったんだけど……」
「オグマ殿、すまない。実は……」
アズリアが、ふたりの間に割って入る。
穏やかな猜疑の目をオグマに向けるイスラの言葉を遮るように。
姉さんが言うのなら仕方ない、そう言いたげに軽く肩をすくめながら、
イスラはオグマに大振りの羽根を取り出して見せた。
どこまでも黒い羽根だった。その色は、ネサラの髪を思わせる。
しかも、この大きさ。人の背丈をしのぐような怪鳥から抜け落ちたのではないかと
思えてならない。そしてまた、ネサラの姿を思い出す。人が鳥に? 馬鹿な。
そこまで考えたとき、不意に脳裏でチキが笑った。マムクート・プリンセス。
彼女は竜に変化した。ならば、無数に存在するという異世界の中には、
鳥に姿を変えることの出来る人間だって存在するのかも知れない。
オグマは自問する。この推測は、飛躍しすぎだろうか。そうかも知れぬ。
しかしあの男、ネサラは情報収集には絶対の自信があるように見受けられた。
『見返りは俺が収集した情報を定期的にあんたに知らせる』
複数のルートから情報を収集し、なおかつ待ち合わせ場所に移動出来る。
人の中に入り込むことと、身軽であること。人としての顔と、獣としての能力。
そのふたつを持ち合わせていなければ出来ないのではないかと、ふと思う。
191
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:08:08 ID:???
「オグマ殿……?」
アズリアの声で、自分の表情が強張っていたことに気付く。
考え事に没頭しすぎたか。ネサラに関して言えば、今は確認のしようなどない。
逆に、自分の憶測が正しければ、落ち合うべきではない場所で
再会することもあるだろう。或いは、鳥に姿を変え、追跡してくるか。
なんにせよ、既に賽は投げられた。あとは、行動あるのみだ。
「この付近に何者かが潜伏しているということか。
……イスラ、俺からもひとつ、訊きたいことがある」
「なんだい、オグマさん」
「殺し合いに乗った者を見たと言っていたが、嘘ではないな?」
「ホントだよ。殺し合いに乗った女の子が同じ年頃の女の子を殺すところを見た」
「ならばイスラよ、俺をその娘の亡骸のもとへ案内しろ。
貴様とて、それは望むところだろう」
「オグマ殿!?」
アズリアの悲痛な声に、イスラの笑い声が覆い被さる。
「あはは、なんだ、そういうことか。オグマさんって意外と話が分かるんだね。
姉さんと一緒にいるから、もっと甘い人だと思っていたけど。
いいよ、僕が案内する。無残に殺された女の子のところに、ね」
「イスラ! やめないか!」
アズリアがイスラを諌めようとする。しかしオグマはただ一言。
「……許せ、アズリア」
□ ■ □
192
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:08:58 ID:???
一軒目の民家では、目ぼしいものは見つからなかった。次に行こう。
そう思い、外に出たアルマの耳に、誰かの話し声が飛び込んできた。
人がいる。しかも大勢。アルマの心は踊った。ラムザ兄さんの役に立てる!
武器の補充は出来なかったけれど、別に構わない、だって私には首輪があるから。
アメルの首輪。あんなコの、泣くしか能のないようなコの装備していたものなんて
まったく期待できないけれど、でもいいの、これからもっともっと首輪は増えるから。
それを城まで持って行けば、装備なんていくらでも補充出来るんだから。
だから、仲間のフリをして潜り込むの。大丈夫、この笑顔なら信用されるわ。
そう思い、一行の姿を確認した瞬間、アルマの表情は凍りついた。
――あの顔! そんな、どうして……。
家屋の向こうに見えたのは、3人の男女だった。
ひとりは金髪の男。年は三十台前後に見えるが、頬の傷のため、よく分からない。
ひとりは黒髪の女。二十歳前後だろうか。顔立ちは中性的で男のようにも見える。
問題は、最後のひとりだった。黒髪の女によく似た顔立ちの、髪の長い少年。
アルマの知っている顔だった。アルマの凶行を目撃した人物だった。
――消さなきゃ。仲間のフリなんて出来ない。みんな消さなきゃ。
アルマはガストラフェテスに矢をセットし、忌まわしい目撃者に狙いを定める。
けれども撃てない。黒髪の少年には隙がない。まるで頭の横や後ろにも
目がついているかのようだ。或いは、心眼で警戒網を張り巡らせているかのよう。
193
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:09:29 ID:???
それだけではない。少年を一撃で仕留めたとしても、
矢の残りは1本しかなく、殺すべき相手はあとふたり、残っている。
金髪の男と黒髪の女は、少年以上に身体能力が高そうだった。
大型弓のほかには小型の斧を所持しているが、これは接近戦でしか使えない。
非戦闘員の少女や瀕死の怪我人ならともかく、筋骨逞しい大の男相手に、
職業軍人を思わせる隙のない女相手に、どうやって振り下ろせばいいのだろう。
もし、かわされたら。もし、凶器を持つ手を掴まれたら。もし、反撃されたら。
心臓が早鐘を打ち始める。圧倒的に、不利だった。
ガストラフェテスは大型で扱いが難しく、連射には不向きだった。
ひとり目を一撃で仕留めたとしても、狙撃場所を特定されれば終わりだ。
2本目の矢を放つ前に、捕縛されかねない。
――ラムザ兄さん……、私、どうすればいいの……?
いや、答えなど返ってこないことは分かっている。
すべて、自分自身で考えなければいけないのだということも。
アルマはガストラフェテスを、それを支える両腕を、そっと下ろした。
早鐘を打ち続ける心音が、やけに大きく感じられる。
この音、首輪を伝ってヴォルマルフにも聞こえているのだろうか。嫌だ。
あんなろくでもないおじさんに聞かれるなんて。怯えていることを知られるなんて。
そんなの嫌、絶対に嫌! アルマは一目散に駆け出した。
街道を歩く3人の目に留まらぬよう、立ち並ぶ家屋の裏手に回り込みながら。
息が切れる。この息遣いも、足音も、すべて聞かれているのだろうか。嫌だ。
そう思うのに、足が止まらない。ひどい息遣いだ。確実に聞こえてしまう。
ヴォルマルフに気付かれたりしたら、笑われるに決まっているのに。
194
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:10:06 ID:???
――ダメ、笑うなんて許さない。私は聖アジョラの生まれ変わりなのよ。
おまえは黙って私に従っていればいいんだわ、ヴォルマルフ!
冷たい首輪がかすかに震えた。
自分の動きが、足取りが、首輪を振動させただけだろうか。
首輪の向こうで、ヴォルマルフが嘲笑しているような気がしてならない。
次の瞬間には、ヴォルマルフの嘲笑が聞こえてくるような気がしてならない。
ヴォルマルフの蔑むような視線が、自分に向いているような気がしてならない。
嫌! あんなおじさんなんかに、そんな目を向けられるなんて。
やめなきゃ。走るのを。気付かれたくない。そう思うのに、足を止められない。
魔法によって強化された身体が、遠くに行きたいというアルマの願いを
ただ機械的に叶えようとする。肉体は苦痛を訴えるが、運動をやめるには至らない。
息が上がる。筋肉が痛む。関節が今にも外れそうだ。それでも身体が勝手に動く。
走れるだけの体力を、魔法が補充し続ける。また、首輪が震えたのが分かった。
――嫌よ、こんなの。ラムザ兄さん、どこにいるの!?
涙が溢れそうになる。ラムザ兄さんに会いたい、と思った。
そうすれば、安心出来るのに。また、いくらでも頑張れるのに。
再び首輪が小さく震える。汗ばんだ素肌に感じるその振動が、
アルマにはヴォルマルフの嘲笑のように感じられてならなかった。
□ ■ □
195
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:10:48 ID:???
「これだから、ニンゲンってのは嫌なんだ」
街道を北上するオグマ一行の後ろ姿を眺めながら、ネサラは冷ややかに吐き捨てた。
オグマはアイク捜索を放棄した、しかしそれが気に入らないのではない。
それ自体は、臨時放送を聞いた時点で推測していたことだった。
彼が姉弟の元に戻る前に再度接触出来なかった、それはこちらの落ち度といえる。
ネサラが気に入らないのは、オグマの、ニンゲン特有の視点だった。
ニンゲンは、自分たちの基準でしか物事を考えようとしない。
自分たちこそが世界の支配者なのだと、無意識のうちに思い上がっているのだ。
だから、自分たちとはまったく異なる視点で世界を見ている生き物が
同じ次元に存在していることを想像出来ない、理解出来ない、容認出来ない。
こうして俯瞰されているなど夢にも思わず、平然と契約を反故にする。
そんなオグマの姿は、ネサラにとって、ニンゲンの思い上がりの象徴のように思えた。
――もっとも、その方が、俺としても好都合だがね。
ネサラは人型を保ったまま、天高く舞い上がる。
日は既に落ちていた。夜目の利かない鳥の姿では、移動すらもままならない。
かといって、飛行能力を有する人型生物は、この場においてはごく少数派。
ラグズの存在自体を知らない異邦人ばかりだからこそ、この姿を見られただけでも
途方もない厄介ごとになりかねない。だが、空が死角になっている限り――
196
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:11:25 ID:???
――ニンゲンの思い上がりが、図らずも俺を助けてるってワケだ。
さぁて、どうするかね? オグマを追ってみるか、それとも……。
ネサラはF−5〜6エリアの境界付近を滑空しながら思案する。
先ほどの金髪の少女の名は、既に把握していた。アルマ・ベオルブ。
肖像画つきの参加者名簿を確認すれば、それで事足りた。だが――
住宅の屋上に潜伏していたネサラは、アルマがイスラを狙撃しようとする現場を見た。
しかし、アルマは襲撃を断念し、一目散に逃走した。戦術としては正しい、と思う。
イスラたち3人は正規の軍隊で訓練を受けていることが明白で、
あのような少女にどうにか出来る相手ではない。たとえ3人が丸腰でも勝ち目はないだろう。
しかし、戦略としては論外だ。何故、弱さを利用して近付こうとしない?
何故、彼らの中に潜り込み、彼らを盾として利用しようとしない?
そこまで頭が回らないのか? それとも、顔を出せない事情でもあるのか?
――既に本性を知られている、ってのも大いに有り得る話か。
接触は、保留にするかな。腑に落ちない点が多すぎるんでね。
アルマという少女はどうも、精神の均衡を欠いているように思えてならない。
わけのわからない理由で笑い続けていたかと思えば、常軌を逸したこの逃げ足。
このような筋力が、持久力が、あの身体の一体どこに隠れていたというのだろう。
いわくつきの魔導具に精神を蝕まれ、同時に加護を得ているのではないか。
そう考えたほうがしっくりくるほど、彼女は違和感に満ちていた。
197
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:12:05 ID:???
それを裏付けるかのように、参加者名簿の肖像画のアルマは
明るい瞳でネサラを見ていた。先ほどの表情とはまるで違う、純粋な輝き。
とはいえ、たとえ魔法によって引き出され、増幅された狂気であっても、
その土台となった心自体はアルマ・ベオルブの中に元からあったのではないか、
とネサラは思う。参加者の中には、彼女と同じ姓の少年がいた。
ラムザ・ベオルブ。彼は、アルマの凶行の動機になり得るのだろうか――
不意に、視界の下方で何かが光った。
オグマ一行やアルマと入れ替わるように、誰かが住宅街を訪れたのだ。
その人物もまた、月明かりに映える金髪。しかし、ネサラはオグマを追った。
D−6エリアに差し掛かったオグマ一行が街道を外れ、西に進路を変更したからだった。
彼らの進行方向には、人型の何かが転がっていた。
それが参加者の死体であろうことは、ネサラにも容易に察しがついた。
□ ■ □
198
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:13:32 ID:???
熱いナイフがバターを切り分けるように、光の刃が死人の首を切断する。
オグマの手に迷いはなかった。ただひたすら事務的に、死体から首輪を回収する。
街道を北上し、D−6エリアに足を踏み入れてから、二度、死体を発見した。
一体目は、街道から西に外れた草原で。二体目は、街道が途切れたその先で。
それが一体誰なのか、オグマは一目で理解した。ナバールと、マルス。
ひとりは、互いに実力を認め合った戦友にしてライバルであり、
ひとりは、彼が生涯の忠誠を捧げた最愛の少女の婚約者だった。
オグマはシーダを愛していた。彼女がマルスに出会う前から、ずっと。
彼女がマルスに惹かれていることを知って、何も思わなかったと言えば嘘になる。
しかし、命の恩人に対する忠誠心が、マルスの存在によって揺らぐことはなかった。
まして、恋敵であるマルスに対し、何らかの悪感情を抱くこともなかった。
マルスは、自分を救ってくれた少女が心から愛した相手。
彼女が大切に思っているものを否定的な目で見るなど、出来るはずがなかった。
それに、純粋で心優しいマルスの人柄を、オグマは好ましく感じてもいた。
199
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:14:06 ID:???
そのマルスの亡骸を、オグマは自らの手で冒涜した。
迷いはなかった。たとえこの骸がシーダだったとしても、同じように扱っただろう。
『殺し合いに乗った女の子が同じ年頃の女の子を殺すところを見た』
イスラが見たという、無残に殺された少女。
それがシーダである可能性を受け入れた上で、案内しろと言ったのだ。
自らの手で、首輪を回収するために。主催を殺すに足るだけの武具を得るために。
そう、武具。頼るべきは、信じるべきは、己自身の剣の腕、そして精神力だけだ。
自分に対する確信がなければ、出所の不確かな情報など何の役にも立たない。
だから、ネサラの提案を蹴った。だから、キュラーの甘言に乗った。
剣一筋に生きてきたオグマにとって、手にすべきものはやはり剣だった。
強力な武具を放出する。それは、主催陣の自信の裏返しといえた。
自らの安全を確信しているからこそ、そのような真似が出来るのだ。
殺されない自信があるからこそ、強力な武具を与えることが出来るのだ。
――だが、それはただの慢心に過ぎぬ。今に思い知らせてやる。
マルスの首輪を手にしたオグマは、亡骸に背を向け、姉弟の元へと戻る。
骸に語るべきことはない。そこにいるのはマルスではない。意思も心もすべて消えた。
マルス王子には、もはやいかなる言葉も届かない。彼は、もう、死んだのだから。
それでもオグマは心の中で呟かずにはいられなかった。
――マルス王子、しばしのご辛抱です。
□ ■ □
200
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:14:42 ID:???
「オグマさんは、僕の思っていたような人じゃなかった」
首輪を回収するオグマの姿を遠目で見やりながら、イスラは姉に謝った。
最初の死体を発見したとき、イスラは首輪の回収役を申し出た。
しかし、オグマが退けた。「俺の知人だ。手出しは無用」とだけ言って。
押し殺した声からにじみ出る凄絶な覚悟に、さしものイスラも返す言葉がなかった。
「姉さん。僕は、オグマさんを信用する」
「イスラ……」
アズリアは安堵したように微笑んだが、その顔はどこか悲しげだった。
胸の奥が軽く疼く。イスラはそれを黙殺し、いつものように笑ってみせた。
「でもさ、姉さんが思っているような人とも、ちょっと違うみたいだけどね。
オグマさんは、嘘をついている。あの羽根の出所に心当たりがあるんだ」
「何故、おまえはそう判断した? 根拠を訊きたい」
イスラは姉に半歩近寄り、声のトーンを落として答えた。
「姉さんは、おかしいとは思わなかったのかい?
オグマさんは、振り返って上空を確認しようとはしなかった。一度もね。
あれだけ大きな羽根を持つ鳥が近くにいることを知れば、
上空にも警戒の目を向けるのが当たり前なのにさ。
でも、オグマさんはしなかった。抜かりのなさそうな人なのに。
それどころか、僕らの注意が前方に向くような話題ばかり選んでいた」
201
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:15:35 ID:???
天を仰ごうとするアズリアの腕を、イスラは慌てて引き寄せた。
「上を見ないで。姉さんはオグマさんの誠意を踏みにじりたいのかい?」
「す、すまない……」
「オグマさんは、その鳥が僕らを襲わないことを知っていたんだ」
「警戒を怠ったのではなく、警戒する必要がないと知っていた、ということか」
「うん。少なくとも、僕らがその鳥の姿を目にしない限りは、ね」
「オグマ殿は一体何を……」
「さあね、それは僕にも――」
話はそこで中断せざるを得なかった。
二つ目の首輪を回収したオグマが、こちらに戻ってきたからだった。
「イスラよ、少女の亡骸はあの城のさらに先だったな」
「そうだよ、オグマさん」
「ならば先に城に立ち寄り、この首輪ふたつを武器に換える」
「分かった。ただ、ひとつだけ、頼みがあるんだけどさ」
「なんだ? 言ってみろ」
「新しい武器が手に入ったら、オグマさんの支給品の剣を僕に譲ってほしいんだ。
あれ、軽くて使い易いからさ。僕には、重い武器は合わないんだ」
嘘だった。だが、イスラは腕を振り、「僕には腕力がないからね」と微笑んだ。
彼の願いは別にあった。回収した首輪はいずれもオグマの知人のものだという。
ならば、入手した武器はオグマに使ってほしい。それがイスラの想いだった。
元の所有者のことを知り、そして大切に思っているオグマにこそ、使ってほしい。
「承知した」。オグマはただ、そう答えた。
ふたりのやり取りを黙って聞いていたアズリアが、静かに口を開く。
202
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:16:18 ID:???
「いや、オグマ殿……、その首輪、ひとつは手元に置いておかれよ」
「何故だ?」
「キュラーなる男は、所持品の入手について、『首輪との交換』と言っていた」
交換。アズリアは、その単語に力を込めた。
イスラが、そしてオグマが息を呑む。その音が、夜のしじまを打った。
イスラの脳裏に、キュラーの言葉が蘇る。
『……武器庫から所持品をお持ちできる条件を、一つお付けいたしました。
それは、その所持品の持ち主の首輪との交換というものです。よろしいですかな?』
首輪との交換。そう、『交換』。
新たな所持品が欲しいなら、首輪を寄越せと言っている。
それは、武器を手にした時点で、首輪を手放さざるを得ないことを意味していた。
アズリアは、解析用の首輪が手元に残らないことを危惧しているのだろう。
イスラは臨時放送をさらに脳裏で反芻する。キュラーはこうも言っていた。
『首輪そのものが箱の“鍵”の代わりになるとでも、お考え頂ければ宜しいかと』
巧妙な印象操作だ。『鍵』と言われれば、何度でも使えるものと思ってしまう。
しかし、それは勝手な思い込みに過ぎない。期待の見せる幻に過ぎない。
首輪交換所。そのシステムの狙いは、殺し合いの加速だとばかり思っていた。
しかし、それだけではないことに気付く。主催者は、死亡者の首輪を回収したいのだろう。
その構造を解析させないために。そう、主催陣は、首輪を解除されては困るのだ。
それは、首輪の解析が可能であることを意味していた。
それは、参加者の手で首輪を解除することが可能であることを意味していた。
だからこそ、彼らは首輪を回収したがっているのだ。
「……成る程、そういうことか。アズリア、感謝する」
「いや、その言葉は主催陣を撃破するまでは受け取れない。
ヴォルマルフの言葉が事実なら、ディエルゴはこの島のどこかにいるだろう。
ディエルゴがいるのならば、復活を遂げたばかりだ。力が弱く、ゆえに、
己の糧となる負の思念を早急に、しかも効率的に吸収せねばならない。
だから、オグマ殿、イスラ……、先を急ごう」
……初日、夜中。一行は、C−6エリアの城に足を踏み入れた。
203
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:16:58 ID:???
【C-6/城内/初日・夜中】
【オグマ@紋章の謎】
[状態]:健康
[装備]:ライトセイバー@魔界戦記ディスガイア
[道具]:万能薬@FFT、ナバールの首輪、マルスの首輪、基本支給品一式
[思考]
0:主催陣の殲滅と、死者蘇生法の入手。手段・犠牲の一切を問わない。
1:信じるべきは己の剣の腕のみ。
2:アズリアやイスラと共に、主催の潜伏場所・首輪解除の方法を探す。
3:ナバールの首輪を宝物庫に持って行き、武器を入手。
その後、イスラの案内のもと、少女(ティーエ)の首輪を回収。
4:ゲームに乗る者や自分を阻害する者は躊躇せず殺す。
5:ネサラはしばらく泳がせておく。
6:マルスの首輪は解析用に所持、武器には換えない。
[備考]
※ネサラについては、マムクートのような存在ではないかと推測しています。
鳥のような姿に変身することが出来るのではないかと考えています。
【アズリア@サモンナイト3】
[状態]:健康
[装備]:ハマーンの杖@紋章の謎
[道具]:傷薬@紋章の謎、基本支給品一式
[思考]
0:主催を倒し、イスラと共に生還する。
1:オグマ、イスラと協力し合う。
2:サモナイト石を探し、ここがリインバウムであるかを確かめる。
3:自分やオグマの仲間達と合流したい。(放送の内容によって、接触には用心する)
4:自衛のための殺人は容認。
【イスラ@サモンナイト3】
[状態]:健康
[装備]:チェンソウ@サモンナイト2、メイメイの手紙@サモンナイト3
[道具]:支給品一式、筆記用具(日記帳とペン)、
ゾディアックストーン・ジェミニ、ネサラの羽根
[思考]
1:アズリアを守る。
2:ディエルゴが主催側にいるなら、その確証を得たい。
3:サモナイト石を探し、ここがリインバウムであるかを確かめる。
4:ティーエの首輪を回収する。
5:対主催者or参加拒否者と協力する。(接触には知り合いであっても細心の注意を払う)
6:自分や仲間を害する者、ゲームに乗る者は躊躇せず殺す。
[備考]
※拾った羽根がネサラのものであることは知りません。
聖石と羽根の持ち主には関係があるのではないかと疑っています。
※羽根の出所については、オグマが知っているのではないかと考えています。
※オグマが自分たち姉弟に隠し事をしていることに気付いていますが、不信感はありません。
□ ■ □
204
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:17:39 ID:???
正門をくぐったオグマ一行と入れ替わるように、城のわきから白い人影が転がり出た。
上空から目にしたその姿は、ドレス、もしくは豪奢なローブをまとっているように見えた。
月明かりを避けながら、ネサラはバルコニーに降り立った。
眼下に逃亡者の後ろ姿が見える。それは、半裸の女だった。
身体に巻きつけた大きな布が落ちないよう、自身の動きを妨げぬよう、
両手で押さえながら走っている。武器を所持しているようには見えない。
それどころか、デイパックすら見当たらない。身ひとつで飛び出してきたようだ。
白い布の合い間から覗く長い足に、無駄な贅肉はついていない。
身のこなしにも迷いがなく、身体能力の高さをうかがわせる。
それでも、どこか走りにくそうに見えるのは、靴を履いていないためだろうか。
――どうやら、城内は物騒なことになっているようじゃないか。
さーて、どうするかね。厄介ごとに巻き込まれる前に撤退するか……。
ネサラは大きく息を吸い、再び夜空に舞い上がる。
「あばよ、オグマ。悪いが俺は、人助けには向かないタチなんでね」
だが、と胸の中で付け加える。
――生きていれば、また会おうじゃないか。
205
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:19:10 ID:???
……オグマ一行の通り過ぎたD−6エリアで、ネサラは二体の屍を見た。
いずれも首を切り落とされ、何者かに首輪を持ち去られたあとだった。
死体を見れば、死後数時間が経ってから、同一の刃物で首を落とされたのだと分かる。
その切断面の様子から、魔法的な力を宿した武器によるものだと推察出来る。
それを見たネサラはふと、オグマの振るっていた剣を思い出した。
刃自体が光で出来た、異国の魔法剣。
一行の足取りから見ても、オグマの所業であることは明白だった。
しかし、問題はそこではない。肖像画のついた参加者名簿を持つネサラには、
ふたりの死者の名が分かった。ナバールとマルス。いずれもオグマの仲間だった。
大した男だ、と感心した。
守るべき民のためならば、唾棄すべきニンゲンと手を組むことも厭わなかった
鴉王ネサラだからこそ、オグマの覚悟のほどを察することが出来た。
次に会ったときには、別の形で手を組みたいものだ、と思う。
アイク捜索などに利用するのは勿体無い。
オグマは、汚れ仕事を平然とこなせる男なのだから。
そして、オグマのそんな姿を目の当たりにしてもなお、
レヴィノス姉弟は彼と行動を共にしている。
不満が表面化している様子は見受けられない。
姉は堅物、弟は気難しそうな印象を受けるにも拘わらず。
それもまた、オグマという男のカリスマ性のなせるわざなのか。
それとも、あの姉弟もまた、職業軍人らしいドライな一面を持ち合わせているということか。
住宅街の屋根の上で聞いた声、オグマ不在時の姉弟の口論、わずかに聞き取れた
言葉から察するに、ふたりには微妙な意識のずれがあるようだったが――
――ま、姉弟喧嘩に介入するシュミはないんでね。そんなことより……。
ネサラは半裸の女を捕獲すべく、降下を開始した。
206
:
奴隷剣士の反乱
◆LKgHrWJock
:2010/12/25(土) 20:19:42 ID:???
【C-5/上空/初日・夜中】
【ネサラ@暁の女神】
[状態]:打撲(顔面に殴打痕)。
[装備]:あやしい触手@魔界戦記ディスガイア、ヒスイの腕輪@FFT
[道具]:支給品一式×2 清酒・龍殺し@サモンナイト2、筆記用具一式、
真新しい鶴嘴(ツルハシ)、大振りの円匙(シャベル)
[思考]
0:己の生存を最優先。ゲームを脱出する為なら、一切の手段は選ばない。
1:城から出てきた女(パッフェル)を捕獲、尋問。
2:オグマは手を組む価値あり。だがしばらく泳がせておく。
3:ラムザとアルマの動向に興味。接触は保留。
4:アイク・ソノラの情報は次の機会にでも。
5:脱出が不可能だと判断した場合は、躊躇なく優勝を目指す。
[備考]
※アルマがゲームに乗っていることを知りました。
危険性の高いアイテムの影響下にあるのではないかと考えています。
また、ゲームに乗った理由はラムザに関係があるのではないかと推測しています。
※臨時放送後にG-5の住宅街を訪れた金髪の人物(ソノラ)が
石像の少女と同一人物であることに、まだ気付いていません(未確認)
※この舞台そのものが、ある種の『作りもの』ではないかと考えています。
そして、このゲームの主催者が女神アスタルテに匹敵する超越的存在であるが、
同時にその奇跡にも等しい力にも限界があるのではないかと踏んでいます。
※このゲームに、ラグズの存在さえ知らない異邦人が数多くいることを確信しました。
※ネサラの参加者名簿には顔写真(肖像画と認識)がついています。
名前の左隣にチェックを入れており、内容は以下のようになっています。
アティが◎
マルス、シーダ、チキ、ベルフラウ、ソノラ、ミカヤ、サナキ、
イスラとオグマとアズリア(名を聞けなかったが、イスラと同じ姓で判断した)が○
アイク、漆黒の騎士、シノン、ナバールが△
ハーディン、ビジュが×
アルマが★、ラムザが☆
207
:
◆imaTwclStk
:2010/12/30(木) 14:22:22 ID:???
さて、食事はデイバックの中に入っていた
よく分からん食べ物で不満は残るが何とか済ませた。
というより貴族である俺様が何故自分で自分の食べる物を
用意しなければいけないのだ、全く……
チキの着替えも済んでいるし、本来ならさっさと
そうさっさとこの物騒極まりない村から逃げ去りたいのだが。
「い、一体何なんだこの村は……さっきからおかしいだろうが、
収まったかと思ってたら、何でさっきより喧しくなっているんだ!」
そうさっきから外が何か凄い事になっている音が聞こえるのだ。
金属かなんかをぶつけあってるみたいな激しい音が今も響き渡る。
「レンツェンうるさ〜い」
机の下に潜り込んで身を震わせながらうろたえる俺に
一緒に机の下に隠れているチキがふくれっ面で文句を垂れる。
「シッ!! シーッ!! 静かにしろ!!
外のやつらに気づかれでもしたら如何する!?」
口に指を当ててチキに注意する俺に対し、
チキはじと目でこっちを見ている。
「だからレンツェンの方がうるさいって〜……
ワ、ワ、ワッ!! レンツェンあれ何?
お外が凄いピカーッてなってる!」
閉めた窓の隙間から確かに何か光が漏れ出している。
俺はコソコソと窓に近寄り慎重に窓を開けて外を覗いてみる。
ハイ、何か凄い火の玉が浮かんでいます、本当にありがとうございました。
普段だったら泡を噴いて卒倒している所だが、
チキがいる手前それはぐっと堪えてがたがた震える足でチキの所まで戻る。
「逃げるぞ、チキ。
こんな所には俺はもう一刻も居られるかッ!
俺は安全な場所まで逃げるぞ!」
「アッ!? 消えちゃったよレンツェン?」
そんな俺を無視して残念そうな表情でチキが窓を眺めている。
おぉう! 確かに外の光が消えている!
これこそ千載一遇の好機!
208
:
◆imaTwclStk
:2010/12/30(木) 14:22:55 ID:???
「良し、今だッ! さっさと準備しろガキ。
今すぐこんな所とはオサラバだッ!」
愚図るチキを急かして急いで準備を整える。
といっても、わたわたと慌てたもんだから、
かなり時間は経ってしまった。
大体半刻くらい? 俺様が知るかそんな事!
だが、おかげで外はシンと静まり返っている。
さぁ、こんな地獄とはこれでお別れだ。
きっと朝になれば輝かしい栄光が俺を待っている。
これはそれへの第一歩なのだ。
隠れていた家からこそこそと抜け出して、
数分も経たずに足が止まる。
いや、普通にまだ居るんですけど、本当にありがとうございました。
物陰からこっそりと何やらしている黒い全身鎧の騎士の様子を盗み見る。
その傍には二人の横たわる誰かの姿が見えるが
暗さも相俟って判別する事はできない。
判別しようとジッと目を凝らしていると黒い全身鎧の騎士が
こちらを振り返ったような気がして、慌てて身を隠す。
(いやいやいや、まさかこの距離でこっちに気づく訳ないでしょ?
気のせい、多分、気のせい。 そうに決まっている)
もう一度、こっそりと先程の騎士の方を見てみる。
(……あれ? こっちガン見してね?)
再び身を隠し、息を整える。
「……いやいやいや! 無いから! 見える訳無いから!
そんでもってさっきからガシャンガシャンて……
ガシャンガシャン?」
物凄い嫌な予感がするが、念のために振り返ってみるか?
①振り返る
ピッ! ニア②言われなくても、スタコラサッサだぜ!
うん、②だな。
そうしよう、それに限る。
「貴公、其処で何をしている?」
ハイ、正解は、
③残念、現実は非常である
でした、やったねッ!!
「良くないわぁぁぁッ!!」
「何が良くないのかは分からぬが、
命が惜しいのなら出て来て貰おうか?」
やっぱりこちらに気づいていた騎士が傍まで来ていた。
何か馬鹿でかい斧とか持ってるんですけど?
209
:
◆imaTwclStk
:2010/12/30(木) 14:23:31 ID:???
「ちょ、ちょっと待て!! 話し合おう話せば分かるッ!」
いきなり攻撃とかされたんなら堪らないので、
騎士の忠告通りに姿を見せる事にする。
あくまでこっちは戦う姿勢は無いという事を示すために手ぶらで。
「……又、話し合いか」
どこかうんざりとした様子で騎士は構えていた斧を地面に付ける。
それだけで豪い響くんですけど、どんだけ重いんですかそれ?
「そうだ、ここは紳士的にいこうj」
「貴公に戦う意思が無いのであれば早々に此処から立ち去られよ。
此処は闘争の場。 貴公のような者に居座られるのは無粋でしかない」
聞けよ、話。
だ、だが、この申し出はありがたく受け取っておくとするか。
「わ、分かった。俺達はさっさと此処から離れる。
オイ、行くぞチキ! ……チキ?」
いない!
あの馬鹿ガキ、いつの間に!?
「チキ? それはあそこにいる娘の事か?」
騎士が視線を向けた先でチキが何やら屈み込んで何かを拾い上げていた。
何やってんだ、あいつは?
俺には興味が無さそうな騎士はすんなりと道を開けてくれた。
これはこれでかなり屈辱的だが命の方が断然惜しいので
そこは好意(?)に甘えておく。
騎士の脇を通り抜け、チキの傍まで駆け寄る。
「オ、オイ! さっさと行くぞ!
……ッて、ウォッ! 気持ち悪っ!!」
チキが屈み込んでいた場所、その周辺には肉片が散らばり、
最早誰とも判別しようが無くなった、人だった塊が落ちている。
その中でチキは大事そうに何かを抱えている。
それは何やら嫌な気配を放つ黒水晶。
「……お前、何を持っている」
俺に気づいたのかゆっくりとチキは顔を上げた。
口元にはうっすらと笑みを浮かべ、
少女とは思えぬ程に嫌な気配を漂わせながら。
210
:
◆imaTwclStk
:2010/12/30(木) 14:24:03 ID:???
「闇のオーブだよ? レンツェン」
チキが口を開くのと同時に嫌な気配は収まる。
気のせい……だったのか?
だが、全身から湧き立つ鳥肌と冷や汗だけは先程までの感触を覚えている。
「お、おぉ、それが闇のオーブか。
良かったではないか、
早速目的の一つは達したという事だな」
自分の中で湧き立つ嫌な考えを払拭する為にチキに手を差し伸べる。
闇のオーブは抱えたまま、チキは俺の手を取り、立ち上がる。
そこには先程までと変わらぬ姿のチキがいる。
気のせいだ、気のせいに違いない。
離れた所で騎士がこちらをジッと見ている。
いや、こちらというよりチキをか?
「貴公。 その娘、ただの娘か?」
心臓が跳ね上がる思いがした。
もしや、こいつはチキが普通の娘じゃないって気づいたのか?
まずい、こいつは俺が守らなくてはいけないのだ。
「そ、そそそそんな事、あ、当たり前ではないか!
お、お前にはこいつがいたいけな少女以外の何に見える!?」
言葉は震える。
精一杯の度胸を振り絞ってこれだ。
「……そうか、こちらの気のせいだったのやも知れぬ。
為らば、すぐに立ち去られよ」
騎士は何かに感ずいている様子だったが、
意外にもあっさりと応じてくれた。
何を考えているのかさっぱり分からん!
だが、これでもう気にすることは一つもない。
さっさとここから逃げてしまおう。
チキの手を引っ張りながら俺は騎士の元を後にする。
騎士は終始無言ながら、その視線だけはずっとチキを捉えていた。
……ロリコンか?
211
:
◆imaTwclStk
:2010/12/30(木) 14:24:36 ID:???
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
……ほんの少し前。
レンツェンハイマーが漆黒の騎士に見つかるまでの間。
(もぅ、レンツェン何やってんの?
そっちに誰かいるならこっちから周ってけば良いのに)
そう思いながらチキは民家を周り込んでレンツェンハイマー達の
裏側から通りへと一人で出て行っていた。
丁度、その時に漆黒の騎士がレンツェンハイマーの元へと向かった為、
彼の騎士に見つかる事もせずに。
実に都合が良かった。
『おいで』
「だれ? だれが呼んでるの?」
『こっちだ』
チキは自分に呼びかける声に怯えつつもそれに逆らう事が出来ない。
ふらふらと誘われるままに声の元へと歩いていく。
『拾え』
人だった物が散らばる中で異様な光を放つオーブ。
「……いや」
『拾え!!』
(……助けて、レンツェン)
声は出せず、抵抗もままならずに震える手で闇のオーブを拾い上げる。
『フハハハハハ!! いいぞ、神竜王の娘よ!
我はガーネフ、このオーブに宿りし怨念なり!』
光のオーブも、ましてや封印の盾すら無い中で、
チキはその声の主に逆らう事は出来なかった。
暗黒司祭ガーネフ。
メディウスの側近にして、人間の破滅を望む者。
死して、尚、幾たびの復活を繰り返すその魔力は
再びチキを自分の支配化に置く為に蠢く。
『神竜王の娘よ、これよりはお前が地竜王メディウスの代わりとなるのだ』
212
:
◆imaTwclStk
:2010/12/30(木) 14:25:13 ID:???
【C-3/村の外れ/深夜】
【レンツェンハイマー@ティアリングサーガ】
[状態]:疲労、空腹、やすらぐかほり、顔面に赤い腫れ
[装備]:ゴールドスタッフ@ディスガイア(破損、長さが3分の2程度)、エルメスの靴@FFT
[道具]:支給品一式
[思考]0:チキを連れてラゼリアに帰還する。手段は問わない
1:マルスの首輪、封印の盾の入手
2:封印の盾完成まで、マルスの死は可能な限りチキには伏せる
3:武器がほしい
4:オグマなど、(都合のいい)仲間を集める
5:あの少年(ヴァイス)は極刑
6:ハーディンの首輪はいらんな……チキの様子がおかしい?
[備考]:ヴェガっぽいやつには絶対近寄らない(ヴェガっぽいのが既に死んでる事に気づいてません)。
【チキ@ファイアーエムブレム紋章の謎】
[状態]:失血による軽い貧血(シャンタージュの力により回復は早い)、空腹
[装備]:地竜石@紋章の謎、シャンタージュ@FFT(一瓶すべて使用済み。瓶は破損)
[道具]:支給品一式、肉切り用のナイフ(1本)、闇のオーブ@紋章の謎
[思考]1:……。
[備考]:闇のオーブに宿るガーネフの意思に支配されています。
【漆黒の騎士@暁の女神】
[状態]:健康、若干の魔法防御力向上(ウルヴァンの効果)、精神的喪失感(小)、
鳩尾に打撃痕、肉体的疲労(中)※いずれも所持スキル「治癒」により回復中。
装甲ほぼ全壊、全身が血塗れ
[装備]:グラディウス@紋章の謎、ウルヴァン@暁の女神、シャルトス(碧の賢帝)@SN3
手斧@暁の女神、エルランのメダリオン@暁の女神
[道具]:支給品一式×3、クレシェンテ@TO、アッサルト&弾薬10発分@TO、
エクスカリバー@紋章の謎、エトナの不明支給品(確認済)、ハーディンの首輪
[思考] 1:催されたこの戦い自体を存分に楽しむ。勝敗には意味がない。
2:アティに対して抱いている自分の感情に戸惑い。ミカヤには出会いたくない。
3:オグマに出会ったら、ハーディンの事を必ず伝える。
4:優勝してしまった場合、自分を蘇らせた意趣返しとして進行役と主催者を殺害する。
5:碧の賢帝(シャルトス)をアティに渡し、戦いになれば全力を尽くさせる。
6:この場で少し休憩を取り、来るであろうアティを待つ。
7:娘(チキ)から異様な気配を感じるが……
[備考]:アティからディエルゴ、サモンナイト世界とディスガイア世界の情報を得ています。
鳩尾の打撃痕と肉体的疲労に「治癒」スキルが働いています。
漆黒の騎士は碧の賢帝の“適格者”が複数存在し、魔剣を濫用させて
己の復活を果たすのが主催者の目的ではないかと推測を立てています。
213
:
擦れる羽根
◆j893VYBPfU
:2011/01/26(水) 23:48:26 ID:???
――さーて、こちらもあの金髪のお嬢ちゃんを追おうとするかね?
俺は進路を西に向け、C−3の村へと向かおうとした矢先の事。
こちらに近づいてくる、ニンゲンの気配を足下に感じ。
ふと、視線を降ろしてみると。
この月夜では目立つ事この上無い、一つの白い人影が見えた。
それが、ほぼ一直線に俺のいる所へと…。
正確にはナバールの死体があった場所へと、迷いなく向かっている。
――まるで、そこに何があるかを最初から知っているかのように。
俺はどうしてもそいつの様子が気になり、高度を落として近付いてみた。
勿論、こちらが見られないように、背後に回り込みながらだ。
白い人影は、粗末なローブかドレスを身に纏っているように見えた。
その細くしなやかな人影からして、どうやら若い女らしい。
さらに近づいてよく見ると、身に纏っている白いものは衣装ではなくシーツであり。
それがずり落ちないように、両手で自分の身体を抱くようにして押さえている。
長い距離を走り続けながら、その姿勢に一切の乱れがなく呼吸も整っている事から、
それなりに鍛えられてはいるのだろう。だが、どこかしら走り辛そうにしている。
シーツ以外に目立つ装備はなく、またデイバックすら持ち合わせてはいない。
どうやら、身一つでどこかから逃げ出してきたようだ。
そこから察するに、靴さえも履いてはいないのだろう。
214
:
擦れる羽根
◆j893VYBPfU
:2011/01/26(水) 23:50:04 ID:???
――なるほどな。ニンゲンの男にに襲われて、命からがら逃げ出したって所か?
念の為、上空から周囲に探りを入れてみる。
女の追撃者や同盟者の類を警戒したが、それらしい人影も一切確認は出来ない。
そもそも、誰かと組んで自ら丸裸の囮となるなど、余りにもリスクが大き過ぎる。
誰かと同盟を組んでいるにした所で、いつ裏切るか知れたものではない。
罠は一切ないと、そう判断してもよいだろう。
そこで、俺はこの女の利用価値を考えてみる。
素寒貧も良いところだ。襲った所で、かっぱげるものは何一つない。
――無論、首輪とその生命を除いて、と言った所だが。
だが、そこまで窮状にある女を保護して恩を高値で売り付ければ、
彼女の知り合いの心象も良く出来るだろう。
そして、何よりも。そのニンゲンを襲った危険人物についての情報も得られる。
このゲームに乗るにせよ、反るにせよただ殺すよりははるかに有益だ。
接触してこちらが危険になる要素は何一つない。
いざとなれば、始末などすぐにでも出来るのだ。
だが、オレはその女の様子がどうしても気になり。
話しかける前に、少し泳がせてみる事にした――。
◇ ◇ ◇
215
:
擦れる羽根
◆j893VYBPfU
:2011/01/26(水) 23:51:21 ID:???
ひたひたと、素足のまま夜道を駆け抜ける。
城内で出会った二人が、こちらを追って来る気配は感じられない。
恐らく、未だ痴話喧嘩の真っ最中なんだろう。
ま、追って来られても困るんですけどね…。
「お前なんかが、私のデニムを奪うな!」
あの時の事でかろうじて覚えているのは、シルターンの般若まがいな形相で
“浮気性の彼(デニム)”の名前を呼んだ女性が「姉さん」と呼ばれた事くらい。
もしかすると、二人は姉弟だったのかもしれない。
再び名簿が手に入れば、“デニム君”の姓からその同行者も特定は出来るだろう。
もし養子縁組や結婚等で“姉さん”の姓が変わっていれば、どうしようもないが。
雰囲気的に、後者は二人ともまずなさそうではあるが。
――ま、あれだけ殺意ビンビンに刺しにきたら、嫌でも目が覚めちゃうってもんですよ。
暴れん坊で躾のなってない弟と、それを盲目的に溺愛する姉、なんでしょうかね?
そこでふと、なんとなく知り合いの仲が良過ぎる姉妹を連想する。
イスラも姉さん以外の女性(例えば先生とか)を好きになって家族に紹介する時、
色々と大変な自体になっちゃうかもしれませんねー。
ま、流石にさっきの二人と比較するのも失礼な気もしちゃいますが。
…馬鹿げた妄想を中断する。
身体にぴったりと張り付く濡れたシーツの寒さと、
素足に食い込む砂利の痛みに顔をしかめながらも。
私は当初の“目的地”へと駆け続ける。
216
:
擦れる羽根
◆j893VYBPfU
:2011/01/26(水) 23:51:54 ID:???
それは、着替えと暖の取れそうなC−3の村ではなく。
昼過ぎに見かけた、笑顔で死んでいたお兄さんの死体があった場所。
――まずはそこから。
理由は幾つかある。
一つは未だ森林火災が鎮火し切っていない可能性が充分にあり。
もし火がなくとも、焦土となり果てたばかりの灼熱の地面の上を
素足のままでは到底歩き続けられないだろうという事。
二つ目は、城から村までの長い道のりが、余りにも見晴らしが良すぎるという事。
これでは他の参加者に発見される危険性が高く、しかも逃げ場や隠れ場所がない。
「この私を好きにして!」と言わんばかりな今の状態。
たとえこの殺し合いに乗っていない人物であっても。
時間稼ぎとアイテムゲットの為、慰み者にされた挙句殺られる可能性は充分にある。
目撃者と証拠さえなければ、殺人は罪に問われる事はなく。
常軌を逸した環境であれば、人は簡単に凶行に走れるのだ。
それは、私自身が遠い昔に散々見知ってきた事だから、痛いほど理解している。
今あるこの状況、「とうとう自分の番が回ってきた」と考えられなくもない。
だが、その運命はまだ受け入れられない。
大恩のある先生に恩返しをする為、ここに連れて来られた仲間達を救う為。
そして、大雑把なようでいて、案外繊細なあの子を元気付けさせる為にも。
今、この生命を無駄に失う訳にはいかないのだから。
私の生命は、決して私の為だけにあるのではない。
217
:
擦れる羽根
◆j893VYBPfU
:2011/01/26(水) 23:55:09 ID:???
だからこそ、今無意味に生命を危険に晒すような真似だけは出来ない。
私にはまだ、死ぬ前にやるべき事がたくさんあるのだから。
故にこそ、まだ身を隠す場所が多少はあり。
なおかつ、今の私にとって移動がマシになるものを回収に。
足に負担が掛からぬようC−5の海岸沿いを伝って南下し、
少し遠回り気味にD−6へと向かう事にした。
そして、目的のものは確かにあった。
だが、奇妙な事に。いや、ある意味当然と言えるのかもしれないが。
目的のものはその首が鋭利な何かで焼き切られ、
そこにある筈の首輪が失われていた。
凶器は兎も角、その理由は考えるまでもない。
私が来る前に、誰かが此処を通りがかり、首輪を回収したという事だろう。
私は警戒の姿勢を取るが、それらしい人影は何処にも見えない。
こちらを伺うような、気配のようなものは感じられるのだが…。
――ま、気のせいですよね?
周囲の草むらを念入りに捜索してみるも、生きている人間は一切発見出来なかった。
おそらく、先程の一件で神経が過敏になり過ぎたからなのだろう。
気を取り直して、先程新しく発見した“もう一つの死体”のある場所へと向かい直す。
私の身の丈からすれば、こちらのほうが丁度いいだろう。
そして、両足の靴を脱がしベルトに手を掛けて緩めると。
下の履き物を、一気に引き下ろした――。
そして、脱がせたものの状態を確かめる。
218
:
擦れる羽根
◆j893VYBPfU
:2011/01/26(水) 23:56:09 ID:???
――多少血が付いちゃってますけど、状態を考えればまあ幸運な方でしょうかね?
うん、長さも幅も丁度いい。
ごめんなさいね、少年の方…。
私は手を合わせて死者にお詫びと黙礼をし、履き物を手に取る。
でも、全裸にシーツ一枚で野外を練り歩き、いたいけな少年の履き物を脱がしてる
今の私の状況って、傍から見ればどうしようもない痴女にしか見えませんよね?
誰に見られても、言い訳が出来そうにありません…。
私はそんな意味のない妄想に耽り、溜息を付くも。
「おいおい、そりゃねえだろニンゲン…。」
ほーらね、やっぱりそういう突っ込みが…。
って、え?
声の出所に悩んだのは、ほんの一瞬だった。
今は、そちらに振り向く刹那さえも惜しい。
私は少年の履き物類を手に持ったまま。
考えるよりも先に声が聞こえた方向に背を向け、疾走を始める。
だが、それよりもなお迅く。音速にも似た速さで。
鞭のような湿った何かが幾重にも身体に絡みつき。
気が付けば、私はなすすべもなく宙吊りにされていた。
そして少しずつ、高度が上がっていく。
上へ、上へ、上へ、上へ、上へ―――。
やがて、少年とお兄さんの姿が上空から見下ろせる程高くなった頃――。
吊り上げた主は、振り向いた私へ気軽に話しかけてきた。
219
:
擦れる羽根
◆j893VYBPfU
:2011/01/26(水) 23:57:59 ID:???
◇ ◇ ◇
「よっ、ニンゲン。良い趣味してんなあんた。
もしかしなくても痴女か。で、ここで何している?」
逃げ出そうとするそいつを手に持つ鞭状のもので手繰り寄せ、もう片方の手で抱えながら。
ニンゲンが墜落死するには充分な高度を得てから、俺は全裸の美女に声を掛けた。
へえ。中々良い感じじゃないか、ニンゲンの道具も。
解説文からして、元々が尋問の類を目的とした道具のせいないのか。
柄側での僅かな指先の操作で、綺麗に撒き付いてくれやがる。
「操作はマジックハンドのようなもの」とあったが、
意味は分からないが優しく便利なものと理解はした。
裸にシーツ一枚の女が、出し抜けにマルス王子のズボンを脱がし。
それをガメて黙祷した際には露出狂の上に屍姦趣味でもあるのかと
己の目を疑い、ついつい突っ込みを入れてしまったが。
その小声を耳聡いニンゲンに聞かれてしまい。
逃げられそうになったもんで、咄嗟に“あやしい触手”で捕まえてはみたが。
――どうしたもんだかな、全く。
俺はこの女のその後の処理に、少々困ってはいた。
接触を図るなら、翼を隠してからにするつもりだったのだが。
これでは、己の正体がベオクではないとばらしたも同然である。
220
:
擦れる羽根
◆j893VYBPfU
:2011/01/26(水) 23:58:39 ID:???
昼間のスクリミルもどきの一件もある。
ニンゲンは己以外の種族には、極めて傲慢かつ不寛容である。
それは異邦人だとなおさらに発揮されるのは既に体験済みだ。
だったら、今更この女を助けて恩を売ったところでメリットはない。
この場では感謝されるものの、後ほど「空を飛ぶ危険な化け物」の噂を
他の参加者に吹聴されるだけだ。そうすれば、俺の今の優位性は激減する。
だったら、この女が持っている情報を引き出すだけ引き出して、
その後に人知れぬ場所で墜落死してもらうという手もある。
そう、あれこれと考えていると――。
「乙女にそんな酷い事言わないでくださいよー。
近くで強盗達に身ぐるみ剥がされて、貞操まで奪われそうになって。
ここで着替えを探そうとしたら、また捕まって。もう散々なんですよぉー。」
「こんな私を哀れだって思ってくださるなら、まずは降ろしていただけませんか?
後で色々と良い事、あるかもしれませんよ?」
色々と、聞き捨てならない事を言う。
そして、その辺のニンゲンの男が見れば、つい言う事を聞いちまいそうな程の。
軽い口調とは裏腹に、甘い吐息を吐き蠱惑的な仕草で横顔をこちらに向けるが。
その身体は緊張に強張っている。警戒心に満ちているのは明らかだ。
今、下手に暴れれば振り落されるから抵抗をしないだけなのだろう。
とはいえ、妙な違和感を感じもした。
危険は察してはいるものの、化け物を見るような生理的嫌悪はまるでないのだ。
まるで、そうした「翼持つ存在」に、心当たりでもあるかのように。
それで気が付かなかったのは、こいつが間抜けか、もしくはそれが相当珍しいのか。
無論、俺の情報はアイクやミカヤ等を通じて既に流出する可能性は充分にある。
危険視されなければ、正体がばれた所でそれほどの損益にはならないかもしれない。
221
:
擦れる羽根
◆j893VYBPfU
:2011/01/26(水) 23:59:27 ID:???
「生憎、俺は妻帯者だ。これでもリアーネに操は立てているんでね。
あんたの言う“良い事”には乗れないなぁ?」
ま、第一ニンゲンの女なんぞ犯して孕ませようものなら、出来たガキに力奪われて
こっちが化身できなくなっちまうんだがな。…願い下げだね。
「いや、そういう意味での良い事じゃなかったんですけど…。
もう。いやですねえ、乙女を捕まえてこのむっつりスケベさんは?
ほら、お決まりの情報交換とかあるじゃないですかぁー。
足が浮きっぱなしじゃ、ちょおっとばかり落ち付かないんですけどね。」
あー、そっち系の誘いじゃなかったのか。
全裸で男に抱き寄せられても全く物怖じしない上に、
やたら場慣れしている感じだから経験豊富なのかと思っちまったが。
…気のせいかね?俺の勘も鈍ったか?
とはいえ、彼女の懇願は綺麗に流す。
「良い男の腕にかき抱かれながら、ニンゲンじゃ絶対に眺める事が叶わない…。
夜空の絶景を見渡しながら楽しくデートってのも、
なかなかに域な計らいっだって思わないもんかね?」
「あれ?さっきと言っている事が矛盾してませんか?
それに、私にも彼氏がちゃんといますから。
そういう浮気のお誘いは、ちょっと困りますね…。」
「そりゃ残念だ。じゃあこのまま本題に移るとするか。
一つ。なぜ、ここにこいつらの死体がある事を知ってた?」
「乙女のヤマ勘です!」
222
:
擦れる羽根
◆j893VYBPfU
:2011/01/27(木) 00:00:03 ID:???
――嘘こけ。
「二つ。強盗達ってどの辺りにいる?どんな人相と組み合わせだ?」
「貴方みたいにいきなり後ろから襲って来ましたから、あんまり顔とか覚えてません。
それに、夢中で逃げて来ましたからね。あ、もう少し落ち付けそうな場所でなら、
色々と思い出せるかもしれませんよ?」
――おいおい、いけいしゃあしゃあと何抜かしやがる。
「三つ目。とりあえず、呼び辛いから名前でも聞いておくか。偽名でも構わないぜ?」
「えー、私はしがないアルバイターです。別に名乗るほどのものでもないですよー。」
――なるほど、冗談は口にしても、一切の手掛かりは与えないという事か。
正直に本名を口にするか、偽名を口にするかで人間性を値踏みたかったが、これも駄目か。
やはりというか、まずは地面に降ろさない事にはまともに会話するつもりはないらしい。
自分が持っている情報という財産がなくなれば、いよいよ消される可能性がある。
だったら、身の安全が保証されない限り、一切の情報を渡すのは厳禁だという
状況判断は出来るようだ。のらりくらりと質問をかわす辺り、中々に喰えない。
だが逆に、開口一番にさりげなくこちらが喰い付きそうな情報を断片的に渡す辺り、
それなりに駆け引きの妙味も心得ているようだ。
只の痴女でも馬鹿でもない。これなら、この女自体にも充分な利用価値はあるだろう。
助けてやって恩を売り、オグマのように一時的に組んでもそう悪くはない。
だが逆に言えば、油断すれば寝首を掻かれる事も警戒しなければならないが。
「へえ、何一つ真剣に話しをする気はないって訳だ。そりゃ残念。」
手が、少しだるくなってきた。
女の体重はリアーネとあの糞爺を足して少しだけ引いた感じだ。
まだまだ充分抱え続ける事も出来るが、このままじゃ少々疲れる。
このまま星空の中ランデブーを続けても、あまりメリットはない。
223
:
擦れる羽根
◆j893VYBPfU
:2011/01/27(木) 00:00:36 ID:???
――だったら、どうしたもんだかね?
さっさと突き落として処分するか?
降ろしだけはするが、そのまま縛った触手でゆっくりと尋問でもしてみるか?
あるいは、このまま拘束を解いて女に恩の一つでも売り付け泳がせてみるか?
俺の回答は――。
◇ ◇ ◇
しくしくしく…。
この有様じゃ、私も現役引退した方がよいのでしょうか…。
立て続けに起こした失態と、色々な意味で周囲に誤解を与えかねない光景を
見られてしまった羞恥により、私は、すっかり鬱な気分になってました。
やっぱり、痴女扱いされちゃってますし…。
背後から抱き寄せられたまま、私はその襲撃者を首を曲げて横目で見る。
後ろへと綺麗に撫でつけられた黒髪。
軽薄なようでいて鋭い印象を与える、端正な顔立ち。
年齢は青年のようにも、中年のようにも感じられる。
小洒落た感じの、黒一色に覆われた軽装。
そして、フレイズさんを思わせる大きな鳥の翼。
――ただし、その色は烏のような艶やかな漆黒。
それは、天使というより堕天使と表現した方が相応しい。
まるで、掴みどころがない。
224
:
擦れる羽根
◆j893VYBPfU
:2011/01/27(木) 00:01:18 ID:???
フレイズさんがやさぐれて黒く染まったら、こうなるんでしょうかね〜?
そんな馬鹿馬鹿しい人を喰った事を考えて、込み上げる焦燥と緊張を紛らわせる。
フレイズのような存在はあまりにも珍しく、また彼とはほとんど接点がなかった為、
参加者に上空から俯瞰出来る存在を想像できなかった。
仕方ないとは言え、私の見落としであるのは違いない。
状況は、先程より更に危機的ではある。
今回は、如何なる抵抗も逃避すらも出来るものではないのだから。
だからこそ、彼もこうして会話に上空を選んだのだろう。
だが、一方で幸いな事に、彼には悪意は一切感じられない。
このゲームに乗っている様子は、特には感じられない。
会話から察するに、それ程交戦を好む人種という訳ではないのだろう。
――今の所は、だが。
だが、そのどこか鋭く冷たく光る瞳は、いざとなれば躊躇いなく人を殺せる人種であるとも、
流石に察してはいた。その最悪の展開だけは回避する必要がある。
――一体、どうすべきか?
最も簡単な事を言えば、「私を殺すには惜しい」と思わせなければならない。
かつてオルドレイクにもした時のように。
具体的方法としては、相手の欲望を満たし続けてやったり、利用価値があると思わせたり。
前者は駄目だ。相手に一切乗り気がない。何より、私ももう二度とあんな事はしたくない。
それ以前に、彼にはどこかしら人間という種族を侮蔑している気配がある。
それは妙な訛りで「ニンゲン」と皮肉っぽく呼ぶ事からも明らかだ。
変に媚を売るのは、却って自殺行為にもなりかねないだろう。
225
:
擦れる羽根
◆j893VYBPfU
:2011/01/27(木) 00:01:53 ID:???
残るは後者、「利用価値があると思わせる」事だが。
このゲームに関する情報面においては、それなりに自信がある。
おそらく、私はこの会場内でも最も事情に通じている参加者の中の一人だろう。
だが、それを惜しみなく全て吐きだせば即座に始末されかねない。
だからといって、一切開示しなければ、それはないも同然と思われる。
開示する場合は、匙加減が重要となる。
あるいは他の参加者についての情報を小出しにし、
彼らとの繋がりをちらつかせるのも一つの手だが。
もし私を抱えている者が、このゲームの反逆を装って実は乗っている類の人種なら?
後々、深刻な厄災を呼びこむ事態になる可能性がある。
抱えている黒い翼の優男が嫌な気まぐれを起こす前に――。
私は今の事態を打開しなければならない。
私は、その為に――。
脳内にある情報を整理し、次に紡ぎ出す言葉を探し始めた。
【D-6/マルスの死体付近・上空/初日・深夜】
【パッフェル@サモンナイト2】
[状態]:健康。身体的疲労(中度) 、精神的疲労(中度)、触手により拘束状態、
後悔と羞恥(中度)、首筋にかすり傷、シーツが所々透けている
[装備]:濡れたシーツ一枚、(多少血の付着した)マルスのズボン、靴
[思考]1:ネスティの探索及び手がかりの調査を行う。
2:これまでの考察をメモに纏めたい。
3:アティ・マグナを探す(その他の仲間含め、接触は慎重に行う)
4:見知らぬ人間と遭遇時、基本的には馴れ合うことは無い
5:このやさぐれたフレイズさんみたいな人(ネサラ)と交渉を試みる。
6:???
[備考]:デニムにより、「愛した者を殺す」呪詛をかけられています。
本人が自力で気づく事は不可能です。
:マルス王子から脱がせたズボンと靴は、まだ手に持っているだけで履いていません。
226
:
擦れる羽根
◆j893VYBPfU
:2011/01/27(木) 00:02:29 ID:???
【ネサラ@暁の女神】
[状態]:打撲(顔面に殴打痕)、パッフェルを拘束中。
[装備]:あやしい触手@魔界戦記ディスガイア、ヒスイの腕輪@FFT
[道具]:支給品一式×2 清酒・龍殺し@サモンナイト2、筆記用具一式、
真新しい鶴嘴(ツルハシ)、大振りの円匙(シャベル)
[思考]
0:己の生存を最優先。ゲームを脱出する為なら、一切の手段は選ばない。
1:とりあえず、捕まえた女(パッフェル)をどうすべきか?
2:オグマは手を組む価値あり。だがしばらく泳がせておく。
3:キュラーの言う“貢献者”(アルマ?)はどうやって主催と会話をしたのか?
4:ラムザとアルマの動向に興味。接触はアルマの精神状態を見てから。
5:アイク・ソノラの情報は次の機会にでも。
6:脱出が不可能だと判断した場合は、躊躇なく優勝を目指す。
[備考]
※臨時放送の内容から、主催と連絡を取る方法があることに気付きました。
※主催にルール変更を持ちかけたのは、アルマの可能性が高いと考えています。
※アルマがゲームに乗っていることを知りました。
危険性の高いアイテムの影響下にあるのではないかと考えています。
※この舞台そのものが、ある種の『作りもの』ではないかと考えています。
そして、このゲームの主催者が女神アスタルテに匹敵する超越的存在であるが、
同時にその奇跡にも等しい力にも限界があるのではないかと踏んでいます。
※このゲームに、ラグズの存在さえ知らない異邦人が数多くいることを確信しました。
※捕まえた女がパッフェルである事は、顔写真の下にある名前から気付いてはいます。
※ネサラの参加者名簿には顔写真(肖像画と認識)がついています。
名前の左隣にチェックを入れており、内容は以下のようになっています。
227
:
擦れる羽根
◆j893VYBPfU
:2011/01/27(木) 00:02:59 ID:???
アティが◎
マルス、シーダ、チキ、ベルフラウ、ソノラ、ミカヤ、サナキ、
イスラとオグマとアズリア(名を聞けなかったが、イスラと同じ姓で判断した)が○
アイク、漆黒の騎士、シノン、ナバールが△
ハーディン、ビジュが×
アルマが★、ラムザが☆
[共通備考]:マルス王子の死体から、靴とズボンが両方脱がされています。
マルス王子の傍には、支給品一式のみが入った彼のデイバッグが
そのままに放置されています。
228
:
◆j893VYBPfU
:2011/01/27(木) 02:16:50 ID:???
仮投下終了。
内容的なものに問題がなければ、後日微修正(マルス王子の基本支給品の描写を追加?)
をしたうえで投下いたします。
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