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【日常α】眠らない魔都・異能都市【その19】

710アイリス:2019/12/08(日) 01:40:53 ID:ORmT3UkU0
>>709
黒猫のざらりとした舌の感触はアリスの鼻先を撫でる。
“相変わらず”甘い香りがする。黒猫は短く、なぁ、と鳴いた。
味覚も長くも無い胴体が。手足がだらりと投げ出されているが、アリスが目敏ければ分かるはずだ。黒猫の尾には隠れた毒針が潜んでいることを。
だが、放り出された時点でそれが叶うのは難しいのかも知れない。
とうの投げ出された黒猫は、ひょいっと空中で姿勢を整えると、アイリスの足元で座り込んで丸くなった。そんな黒猫にアイリスは特に反応を示さない。
外側だけが黒猫であるキルリスが、アリスに放り投げられた程度では何も起きないのだと確信している。
只の猫ですら、木の枝から簡単に飛び降りてみせるのだ。他の猫より頑丈でしなやかな中身を持つキルリスについては心配などしていない。
キルリスの態度は、猫の様だった。
――聞きたければ聞きに来い。話してやらんでもない、にゃ。
どこか尊大で。高慢を多分も含んでいる態度だ。――訂正、猫とは思えないないほどにデカい態度だ。何様だコイツ。

「――キルリス。機嫌は悪くない様だね。君の機嫌にとやかく言うつもりは無いが、上に立つ者として含むところはある。」
<――うるさいにゃ。少しは静かにしておくのにゃ>

黒猫は簡単にアリスの前で人語を話して見せた。
実は黒猫、龍種や鳥獣の言葉を理解できる技能を持つ。それが使い魔としての特典で人語での他者との意思疎通を可能とする“中身”を示す一端となるだろう。

アイリスに三つ編みにしてもらい、先ほどよりほんの少しだけご機嫌なルゥは、アリスの顔をじーっと見つめて、ふにゃりとした笑みをもってアリスを迎えた。
ユルさを感じさせる笑みはどこかアーリルと似通っているのだが、童子の隠すこと無い感情は間違いなく喜びの感情を含ませており。

『アリスちゃーん?』

アイリスはルゥの肩に手を置き、頷いて見せてからルゥの耳元で何かを囁く。
それからルゥははーい、と声を挙げてからへにゃりと笑った。

『ルゥのわんわんねー、お顔がみっつなの!えーっとね、オレンジの色でー、良い子良い子するかきいてみてー?』

ルゥのいう“わんわん”とは、空想の生物で言うところのケルベロスに酷似している。
三つの首に巨大な躯。獰猛な性格と合わせて冥府の番犬と言われるモノで。
空想のケルベロスと違う点が幾つかあるがその中で簡単に分かる相違点というのが、外気に触れる外皮が炎で構成された巨躯だ。
幼くありながら大型犬よりも遥かに大きい躯はルゥを背に乗せて駆けることも出来るし、護衛と言わず、ルゥを攻撃から護ることも出来る。
獰猛な性格はそのままで、三つの首から垂れる涎から生まれるのはトリカブト。トリカブトが生えてもすぐさま炎で焼き尽くされる。
これはルゥが望んでいることで、トリカブトを生んでしまうのは仕方が無いことだ。
もしアリスがこの“わんわん”を見つけて触るというのなら、ルゥが撫でている間に触るのが得策だろう。
ルゥが撫でている間は、オルフェウスの竪琴を聞き眠りに落ちた、彼の伝説同様に大人しくなる。炎の温度は控えめで、触れれば暖かな躯はルゥにとってのコタツでもあるのだ。
さらにアリスが甘い匂いを発していることからも案外、大人しく撫でられるだろう。


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