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裏設定・SS・画像投稿スレ

1名も無き異能都市住民:2009/06/30(火) 00:21:12 ID:Na4ra5qU0
キャラ設定スレには投下できない!
キャラには知って貰いたくない!
でも中の人には知ってもらいたい!
そんな設定をコッソリ投下するスレ

裏設定を投下する場合は【○○(キャラ名前)の裏設定】と文頭に書いておくといいでしょう


画像や小説の投下もおk!
どうでもいい小ネタも投下して遊ぼうぜwwww
みんなの邪気を晒していこう^p^

336SS:「Vaterlantslieve」:2012/05/29(火) 22:36:25 ID:IrsgDsYs0
>>335
 [補給が途絶え、総崩れとなった要衝でただ一人奮闘し、敵兵数万を屠り、数十万を退却せしめた…]
 「思い出話はいい、少将が来た理由は見当がついておる………'自衛戦争'、なのじゃろう。」
 [話が早い。今すぐ軍の下に帰ってこい。今なら]
 「断る。間違った戦争に祖国を巻き込むわけにはいかん。」
 [何故だ、祖国の国益のためなら…]
 「怨恨とともに歴史に名を刻むのが国益か!」

 瞳が紅に染まり、怒りが宿る。

 「祖国を間違った戦争に巻き込むわけにはいかん。たとえ貴殿と刺し違えるとも、この戦争は阻止する。」
 [問答無用!!]

 拒絶の言葉が、この場に沈黙をもたらす。

 [四日後の2100時を以て最後通牒とする。それまでにわが軍の下に帰るならよし。然らずんば敵と見なし海の藻屑となってもらう。]

 ぶつり。

 <通信、途絶しました。>

 何とも形容し難い沈黙が辺りを覆う。


 教官を殺すのなら、この艦の対艦ミサイルで乗艦ごと葬ることができる。
 しかし、恩師を葬ることなどできはしない。

 「白兵戦では返り討ち…どうにかして止める方法はないかのう。」

 LEDの照明の下、鷹野は悩み続

337光速:2012/05/30(水) 21:41:12 ID:NntjvIzM0
http://dl7.getuploader.com/g/elusion/4/syf.jpg

沢桐(若)、キックではない、後ろ向きに吹っ飛んでいるんだ
荒い部分は手ブレで誤魔化せ!

もっと皆ろだ使えば良いと思う

338名も無き異能都市住民:2012/05/31(木) 23:51:05 ID:HnkBBDEo0
 ならとぉす
【 奈羅透素 】


 第三十七次衡哲世界二百六十番線乙型七号物質で刀身、鍔、柄、鞘の全てを構築された刀。
 誰がどうやってこの物質を手に入れ、どのような方法で刀剣型に鋳造したかは全くの不明。
 どうやら刀が意思を持っているらしい。

 この刀を握ったが最後、そこからアストラル霊状糸が接触部位から入り込み脳に侵入、持ち主の自我を吸収する。
 あくまで非物質の神経糸なので肉体に損傷は無いが、代わりに切断も不可能。
 持ち主の体を乗っ取った後は、刀身から質量と魂を取り込み「進化」を繰り返す。
 意思を持った刀のため会話できないことは無いが、そもそも言語がこの次元のものと違うため、聞き取ることすら難

解である。
 聞き取れたとしても意味が分かることは無いだろう。

339ショップ "NOW BEST":2012/06/01(金) 20:26:03 ID:IrsgDsYs0
 グリンデルワルドが経営する、スポーツ用品店。
 ガラス張りで地上二階、地下一階。

 スポーツ用品は一通り揃っているが、現在は特に以下の物に力が入れられている。

●インラインスケート
●スケートボード
●自転車
●単車
●スポーツカー
●小型飛行機
●小型船

 また季節によりラインナップも変化する。

 小さなカフェがあり、飲み物とお菓子は基本無料(アルコールなど例外あり)。

 地下にはジムカーナ場と射撃練習場。地下でのみ販売している物も。

●銃砲兵器類
●軍用ナイフ
等。

 しばしば店が無人状態になっているが、営業は24H年中無休。
 一通りのセキュリティは施してある。
 レジは無人式。何でも機械がやってくれます。

340:2012/06/02(土) 00:34:22 ID:1BBSxSE20
イベントで使用した使い捨てキャラ達の情報。

「異世界からの招待客その1――赤髪の少女」

【名前】セレネア・赫月・スカーレッティア(せれねあ・あかつき・すかーれってぃあ)
【性別】女
【年齢】享年17
【種族】死人

【容姿】
癖がついて外にぴょんぴょん跳ねてる赤いセミロングヘア、ぼろぼろの軍服を着用。
黒く澱み濁っていた瞳の本来の色は、鮮やかな赤色だったようだ。

【能力】
「魔弾の射手」
自身の腕を銃身に変え、そこから魔力塊――通称「魔弾」を発射する。
発射された後の魔弾は、意のままに融合・分解・変形させることができる。

【概要】
戦争孤児であったところを軍に拾われ、少年兵として働かされる毎日。
身体が使い物にならなくなった後は、魔道兵器の動力源として組み込まれ、心まで使い果たされた。
そんな生活を強いられ、多大な怨恨を世に残したまま死に、起き上がった少女の成れの果て。
生前に膨れ上がっていた軍や戦禍への恨みは、やがて生と死への恨みへすり替わっていた。

最後の戦闘であるイベント時、鷹野と交戦。彼のような、護るために戦う軍人もいるのだということを知る。
そして彼女――セレネアは、初めて何かを護ろうとして、自身の召喚主であるノアへ攻撃をする。
召喚された者は召喚主へ反逆してはならない。そのルールを破った少女は、存在の抹消という重い罰を受ける。
それでも、彼女が最後に浮かべていたのは――満足げな、笑顔だった。

341(1/4)警察組織事件捜査情報@放火魔イベ/狗:2012/06/03(日) 23:44:51 ID:1sJsd2CgO
▼警察関係組織の事件捜査情報
《連続放火魔》
・概要
 去年の十二月から現在まで、同一犯と思われる局所的放火が八件。
 炎の腕等の目撃情報や延焼しない炎の性質異常、酸化せず炭化する物理法則無視の痕跡。
 それらを総じて、能力者による発火現象と見ている。
 現場の状況を記した記録、八件全てに植物性香料のような残り香が印象的だという記述がある。
 一件目から三件目までは株式会社丸搬の社員自宅、五件目は赤羽製薬の女性研究員自宅。
 まずは鮫嶋商会が共通項として挙げられたが、四件目と六件目に高額の火災保険、七件目に関してはアーケードの一角。
 こと八件目に至るまでに動機の統一性が無くなり調査範囲が増加。
 絞り込みが厳しくなっているため、連続性に疑問の声もある。

・詳細 ※再編成に伴い、精査中
一件目
E荘202号室 全焼
時期:去年の十二月第三週 深夜
二件目
Dパレス103号室 全焼
時期:去年の十二月第四週 深夜
三件目
Bハイツ301号室 全焼
時期:今年の一月第一週 深夜

現場検証
 三件とも同様に、三階建てアパートの一室が突然出火し、僅か数十分程度で全焼した。
 この火災による死傷者はゼロ。
 物理法則を無視した状況の不整合から、異能力による発火現象と断定している。
 現場検証の際、香木を焚いたような匂いがした、という報告が三件共にある。
目撃証言
 三件ともに火災が起きる寸前、腕のような形をした炎の目撃情報がある。
 三件目のみ、出火直前に黄色いモヤが見えたという情報もある。
 怪しい人の姿を見たという証言は少ない。
周辺調査
 全焼した部屋の住人は三件ともに丸搬運送勤務のドライバー。
 この三名は十二月第一週頃、共に仕事と偽り運送用トラックで、どこかへと消えた。
 映像記録を追跡し三台のトラックを発見、GPS装置は破壊されていた。
 この三名の行方は不明。
※今年の五月末、クニナシ特区沿いのスラムにて三体の死体となり発見される。
 同スラムにて物盗りに遭い抵抗、だが物盗りの異能力により一方的に殺害された。

四件目
無人一軒家 全焼
時期:今年の一月第二週 深夜
六件目
A青果店 全焼
時期:今年の一月第四週 深夜
現場検証
 この二件も同様に異能力による発火現象を示す状況の不整合が見られる。
 延焼無し、死傷者ゼロ。
 現場検証の際、柑橘系の精油のような匂いがしたという報告。
目撃情報
 腕の形をした炎の目撃、この頃から、魔神の腕の通称で呼ばれる事が多くなる。
 黄色いモヤの目撃、炎と見間違えたと思ったら発火したという証言。
周辺調査
 無人だった一軒家の所有者が高額の火災保険金を受け取っていた事実を確認。
 保険金詐欺の疑いで調査すると『デリバー』と名乗る男性に放火を依頼していた事を自白。
 A青果店の店主も自分と同じように依頼したと証言し、A店主もその事実を認めた。
 冗談半分だったが当日になって連絡があり、その通りに放火が起きた、と話している。
 能力者による犯罪組織の関与も視野に入れると同時に、
 この二件が全く別の事件である可能性も考える事になった。

五件目
民家一棟 全焼
時期:今年の一月第三週 深夜
現象検証
 発火からわずか数分で骨組みを残し全焼。
 状況から異能力による発火現象であると見て間違いない。
 現場検証の際、ハーブ類の精油のような匂いがしたという報告。
目撃情報
 魔神の腕、及び発火直前黄色いモヤの目撃。
 現場から一目散に逃げ出す明石燐太郎の姿を見た、という情報がある。
 現場の住人、空逸由利香と同じく赤羽製薬会社に勤務していた人物だが、三年前から行方不明だった。
 証言では実年齢より老けた顔をしていたとあるが、データベースに残る明石燐太郎は実年齢より若く見える風貌である。
周辺調査
 空逸由利香は赤羽製薬会社に勤務する研究員、医療薬品の開発研究担当。
 去年の七月頃から長期の休暇をとっていたが、誰もその行方を把握していない。
 不破厳令と婚姻関係にあったが事件後の二月に届出があり離婚が成立した。
 写真に映る明石燐太郎は実年齢の倍近く老けた容貌をしており、まるで別人である。
 だが本人だ、証人が言うなら間違いない。
 明石燐太郎を目撃したと証言した不破ジュンの周辺を調査したところ、丸搬の三名(一〜三件目)との友好関係があげられた。
 不破ジュンに対する追跡調査は今もなぜかうまくいかない。

342(2/4)警察組織事件捜査情報@放火魔イベ/狗:2012/06/03(日) 23:46:34 ID:1sJsd2CgO
>>341

七件目
日戸アーケード街北通路側 半焼
時期:今年の二月第一週 深夜
現場検証
 精肉店を中心にした、北通路側が中途半端に燃えた印象。
 異常な炭化現象から異能力による発火現象と断定。
 火災現場から回収した変形したプラスチックケースに入っていた液体封入のカプセルを科捜研へ回す。
 燃焼跡から植物性香料の匂いがしたとの報告。
 現場検証で、アーケード街の地下に違法建造物を発見、屠殺場のような施設設備と人間の血液反応が出た。
目撃情報
 魔神の腕、発火直前の黄色いモヤに加えて、複数立ち上る炎の柱の目撃。
 火災から数日後、現場保全の警備をしていた湯河原忠志の焼死体と焔魔堂宗也の目撃情報。
 目撃、通報したレア・アシェットによると何かを探していたようであったらしい。
周辺調査
 放火魔のものであるかは不明だが、カプセルの中身は赤羽製薬と関係が深いと判断。
 捜査に乗り出そうとしたところを、赤羽浅井史の殺害という凶事に狂わされた。
 殺人犯、湯河原毅の捜索と赤羽製薬の内部捜査を同時に行う事になった。
 放火魔の足取りは依然として不明。
 犯歴のある弐舞伝治と弐舞晃、目撃情報のあった明石燐太郎と焔魔堂宗也を指名手配した。
 少しでも確たる情報が欲しい、捜査班全体が正に暗中模索の図だ。
解析結果
 カプセルの中身は、全く新しい薬品である事が分かった。
 能力抑制剤開発中の試作モデル群と酷似した成分で構成されている。
 その構造は反転し変質しているため、能力抑制とは似ても似つかない作用を持つものと考えられる。
 詳細の解析には投薬による実験が必要であるが、危険であると判断され却下された。

八件目
ジェームズ・フランキス邸宅
時期:今年の五月第一週 夜間
現場検証
 一連の放火魔と同一。
目撃情報
 一連の放火魔と同一。
周辺調査
 放火魔と交戦した人物が三名、うち一名は防人鶫。
 ジェームズ・フランキス氏が火災により死亡、娘のコレットは八代真人他三名により救出された。
 交戦した三名のうち二名と、救出行動を行った三名が特定出来なかった。

 公安の人間が捜査に関わっているなら広域捜査課に引き継いだほうがいい、という声がある。
 同様に、一連の放火魔事件に対する連続性を疑問視する声も多い。
 そのため、わずかに連続性が見てとれる個々の事件ごとに捜査班を編成し直す事を決定した。
 現在は捜査資料の分類と精査を中心に行っている。

343(3/4)警察組織事件捜査情報@放火魔イベ/狗:2012/06/03(日) 23:47:35 ID:1sJsd2CgO
>>342

《赤羽製薬内部捜査資料》

・概要
放火現場で回収したカプセルに封入されていた薬品。
この全く新しい薬品と赤羽製薬の研究開発事業との関係性を疑う視点でもっての、開発した痕跡の捜査。
放火魔との関連性を調査するものでもある。
赤羽製薬の代表取締役である赤羽浅井史が殺害されているため、名目上その捜査も兼ねている。

・詳細
アカハネ会の代表企業。
元鮫嶋商会の医療品部門、ということもあり、ある程度の資料は事前に揃っている。
まずは、製薬企業として行っている新薬開発の研究を捜査。
四年程前から、アカハネ会所属のバイオテクノロジー関係組織が研究開発費の援助を強く行っている。
その影響か、バイオテクノロジー研究を推進する医療薬品を中心に開発、相互に研究員の派遣などもあったようだ。
新種の薬品の件もあり、かなり深くまで捜査出来た、企業同士の関係自体はクリーンなものであると見て間違いはない。
少々狂的なまでの熱意が垣間見えるが、これが研究員のサガなのだろう。

研究開発に対する投資額。
鮫嶋商会所属の頃と相変わらずの莫大な投資額が、途切れる事なく注ぎ込まれていた。
代表取締役である赤羽浅井史が死亡してから、その金額は半分以上目減りした。
投資額が減る前も後も、研究する対象の方向性に変わりなく、開発の進捗状況も一時の滞りなく続行している。
赤羽浅井史がバイオテクノロジー関係組織から過剰な資金を絞り取り横流ししていたのはほぼ事実だろう。
その相手について、四年程前から頻繁に、赤羽浅井史が個人的に会っていた男、というのが怪しい。
目撃情報をかき集めてみると、どうやらその男は飛鷹阿佐見氏であるらしい。
しかし客観的な証拠が何一つ見つけられない、目撃証言や状況証拠ばかりが積み重なっている。

開発した医療薬品の購入先。
赤羽製薬の開発事業に投資したバイオテクノロジー関係組織はもちろん。
医療現場の病院や軍、その他の小規模な研究所なども進んで購入している。
更に赤羽製薬が取り扱う医療関係商品は一般の民間企業も広く購入している。
一見して赤羽製薬の開発した商品を買い取る側に不審な点は見当たらない。
疑い始めると、民間の購入者を一人一人調査して何に使ったのか偏執的に調査しなければならなくなる。
購入先としてリストされている民間企業に対する実態の保証は無いと言っていい。

新種の薬品について。
能力抑制剤開発研究の資料を精査し、当時の研究員から話を聞いた。
すると、研究記録に残っていない『K-B1.04.75』という薬品の存在が明らかになった。
研究員の覚えている限りでは、このミラータイプが一部の異能力を一時的に強化する作用を持っていたという。
製造法やサンプルは秘密裏に廃棄され、残っていないため確認は出来ないが、新種の薬品は近い構造を持っていたという。
約三年前、廃棄を担当したのが明石燐太郎である事も判明した。
失踪したのも同時期である事から、持ち去った可能性が高いと思われる。
そうして、外部に流出し製造された薬品が放火現場に落ちていた、というわけだ。

344(4/4)警察組織事件捜査情報@放火魔イベ/狗:2012/06/03(日) 23:49:12 ID:1sJsd2CgO
>>343

《日戸グループ違法地下施設》
・概要
日戸アーケード街放火の捜査に伴い発覚した、違法建造の地下施設。
屠殺場のような設備と、缶詰め工場の生産ラインが合わさっている。
人間の血液反応が見られることから、人肉を缶詰めに加工しているものとして捜査している。
私有地直下に広がっているため、日戸グループとの直接の関係がある事は明白だが証拠が見つかっていない。

・詳細
日戸グループは小企業のまとまりで、日戸アーケード商店街の運営のみを行っている。
四年前、近隣にデパートが建設される事を知り、対抗して商店街の増設を計画。
三年前、増設が予定通り始まるが工程を半分も終わらない段階で予算不足のため計画を一時中止。
二年前、鮫嶋商会名義で資金提供があり増設計画が再開。
この頃から丸搬運送のトラックが専属的に増設の資材を搬入している。
一年前、大葉崎遼平が経営陣の集団失踪を理由に組織の解体を宣言する。
たった一年の間に責任者不在、出資者も消えてしまうという非常識な状態になっていた。
今年二月、放火の捜査で違法な地下施設が発見される。
施設内で検出された人間の血液や体毛、皮脂片などを解析したところ、およそ八割の確率で経営陣の全員がここで殺されたという結果が出た。

現在、残っている管理職は人事部長の大葉崎遼平のみ。
他の従業員はもはや居らず、中身の無いアーケード商店街を処分するための業務をただ一人で行っている。
三年前に人事部長になってから人が変わったように高圧的になり、増設計画にこうしたほうが、ああしたほうがと口を出し始めた。
会議で経営陣に怒鳴り散らした記録も残っている。
状況から見て、殺人と死体損壊の容疑がかかっている。
だが、加工されたであろう遺体が見つかっておらず、施設内に大葉崎が入った証拠すら見つかっていない。
要観察対象。

一年前の六月、自主退職した不破厳令にも事実関係の隠蔽及び偽装の容疑がかかっている。
建材追加受注の記録が残っている、発注者は不破厳令であるが日戸グループ側に追加発注記録は無い。
丸搬が増設計画に加わる前から、不破厳令自身が資材運搬を依頼していた記録が丸搬側にだけある。
鮫嶋商会名義の資金提供記録が日戸グループ側に残っているが、鮫嶋商会側には無い。
そういった資料や記録の過不足があり、当時不破厳令は増設計画の資料管理を担当していた。
違法地下施設建造の容疑者、逮捕状も出ており身柄を捜索しているがなかなか確保出来ない。
地下施設が発見された後、不破厳令は妻の空逸由利香と離婚している。
空逸由利香が去年の七月から行方不明である事から、退職した時からこのような事態を予期していたと見ている。
唯一の血縁関係にある甥の不破ジュンの下に潜伏しているかと思われたが、彼もまた所在が分かっていない。
現在は不破厳令、不破ジュン、両名の自宅を監視しつつ捜索を続行している。

345追記:警察組織事件捜査情報@放火魔イベ/狗:2012/06/06(水) 16:18:38 ID:1sJsd2CgO
八件目の連続放火事件当事者から聴取した証言
放火現場へ救出に立ち入ったうち三名、放火魔と交戦したうち三名など
未だに証言をとれていない人物がいる。


《コレット・フランキスの証言》
火災当日は一日中家に居た
人形で昼頃外に出たが夕方前に家に戻った
夕食後、自室でくつろいでいると家が一度大きく揺れた
もう一度揺れた時、大きなものが倒れて壊れるような音を聞いた
(石像がいくつも倒れるような、と表現している)
廊下に出ると、書斎(ジェームズ氏私室)の中が騒がしく、様子を見ようとしたところ
何かの吠えるような叫び声と、父親の唸るような叫び声が遠退いていくのを聞いた
何か黒い塊が廊下に現れたのを見たと思うと気を失った
気がつくと自室に閉じ込められていた
窓から客間(作品展示棟)が燃えているのが見えた、こちら(住居棟)は燃えていないようだった
また気を失った
二回とも何の前触れもなくフッと意識が消えたのだそうだ
次に気がついた時は病院だった

入院中、悪夢を見ると訴えていた
身体じゅうに黒い塊が絡み付いてくる
激しい生理的嫌悪を感じる匂いがする
湿っぽく生温い淀んだ空気をリアルに感じる
夢の中で冷たく硬い感覚が頭にこびり付くように存在している
頭が内側から押されるような圧迫感に満たされている
いつも強烈な痛みを感じて目が覚める
起きれば痛みはなくなる
医者はストレスによるものだと見ている

▼現場の状況・聞き込み情報との摺り合わせ
・火災の状況
作品展示棟から燃え始め、徐々に住居棟側に火が回った事は多くの証言から確認済み
作品展示棟側が燃えている時に住居棟の窓に人影を見た、という証言がある

・製作室.鉄扉の施錠状況
製作室の施錠は忘れがちで、思い出した時に錠前を掛ける程度
当日の施錠の有無は「覚えていない、いつもと変わらなかったと思う」と話している
現場に焼け残った鉄扉の施錠は鎖を巻いた上から錠前を掛けていた
溶融して指紋証拠などが検出されず、分離出来ないため回収出来なかった
誰が施錠を行ったのかは不明
何者かが放火される前か直後、かつジェームズ・フランキス氏が製作室に居る時に施錠を行ったと見て間違いない。
その何者かにはコレット・フランキスも含まれるということに留意。


《八代真人の証言》
火災が起きているのを発見、消防に通報した
後に人影を見たという声が聞こえ、救出に向かった
思いのほか内部は燃えていなかった
作品展示棟側の扉は瓦礫で塞がれていた
製作室への鉄扉はこの時既に施錠されていた
厨房を捜索中、少女の能力者、同様に少女の魔術師が救出に加わった
後に、アルビノの女性が救出に加わった
火災が激しくなり崩壊の兆しを見せ始めた時、二階の一室にコレット・フランキスを発見、これを救出
一階ホールから玄関を抜けて外に脱出した

現場に遭遇したのは偶然であると言う
異能力や魔術が無ければ自分は死んでいただろう、とも話した

▼現場の状況・聞き込み情報との摺り合わせ
・火災現場に立ち入った人物
周辺に居合わせた不特定多数の人物が八代真人と他二人(能力者と魔術師)が進入するのを見ている
そのうち数人が、上空から建物内に入っていく白い姿を目撃している
コレット・フランキスを救出し、建物から出てきたのも上記の四名のみ
その間の建物からの出入りは見られていない

346光速:2012/06/06(水) 21:12:55 ID:NntjvIzM0
http://dl3.getuploader.com/g/elusion/6/gtr.jpg

ガルテラはこんなイメージ
スタンド使いみたいになったけど、影は頭だけの悪魔形態だよ
顔も撮影も劣化してるのは諸事情で急いでたからだよ(言い訳)

347民間警備会社などからの情報@放火魔イベ/狗:2012/06/13(水) 21:04:38 ID:1sJsd2CgO
《自警団や民間警備による近況報告》
・最近は人外排斥派の動きが目に付くが、紛れるようにして無差別な殺人が頻発している。
・世論の傾きに影響されやすい青少年層が度々、警邏巡回中の我々へと攻撃を仕掛けてくることも。
・厄介な事に、襲撃してくるのは能力者が多くこちらにも多くの死傷者が出ている。
・セルグリア、という薬物が新たに出回り始めた情報を得た頃を境に、能力者が異常に凶暴化している。
 この新手の薬物が凶暴化に関係している可能性が強いと見ているが、調査は遅々として進まない。
・明石燐太郎や焔魔堂宗也の目撃情報が散発的に報告されていたが確保には至っていない。
 指名手配が下げられてはいるが、目撃の傾向から緋トカゲの館やクニナシ特区付近が怪しいと見て警戒している。


《緋トカゲの館》
・民間向けで知名度は低いが、信頼性はある装備の卸問屋。
・銃器より、防具や機械部品の取り扱いがメイン。
・取り扱う機械制御電子部品は実に高性能で、パターン認識に依る自律思考制御が可能。
・車載機銃やミサイルなども拠点防衛用として仕入れているらしい。
・二年前、緋トカゲの館(異能都市西部スラム街付近の洋館)にて若い明石燐太郎の姿を見たことがある、という証言が一つ。
・三年前から緋トカゲの館に出入りしていた若い運び屋が一人、ここのところ姿を見せないという常連客の発言が一つ。
・先代当主のサンドレアス・ヴァーミリオンには黒い噂が絶えなかった。
 禁書指定の魔導書、出所不明のマジックアイテム、稀少価値の高い幻想生物などの売買。
 金持ちの道楽家や好事家、狂信者達がこぞって競り合う闇競売があったとまで言われていた。
 五年前、不慮の事故でサンドレアスが焼け死んでから、今の二代目当主サンドラ・ヴァーミリオンが仕切っている。
 二代目は先代の闇競売を引き継いだ、処理人として放火魔を匿っている、闇祓騎士団へマジックアイテムの提供を行っているetc...
 今でも、そういった根も葉もない話が跳梁跋扈している。

348じお:2012/06/16(土) 19:54:11 ID:IrsgDsYs0
 A.Grindelwaldが所持しているものが具体的に決まりました。
 尚、このラインナップは総て【Now Best】で買えるので実質フリーシェア。

●HMDBAS(Head Mounted Display Built-in Aegis System)
 眼鏡やサングラス、ゴーグルやヘルメットなどの形をとった超小型・軽量の火器管制レーダーシステム。
 後述の火器とリンクしている。
 脅威目標の大きさ・座標・速度などをディスプレイに表示し、ミサイルの誘導も行う。

●ペンシルミサイル「グングニル」
 鉛筆サイズの超小型ミサイル。対人。
 使用爆薬はオクタニトロキュバン。常人なら一撃で消し飛ぶ。
 二つのタイプに分かれている。
・スクラムジェットタイプ
 到達速度、追尾性に優れたミサイル。最高速度マッハ7。
 発射時に投擲して、エンジンに風を送り込む必要がある。
・個体燃料ロケットタイプ
 価格、使い勝手の良さと弾薬搭載量でスクラムジェットタイプに勝る。最高速度マッハ2。
 水中での使用も可能。

//続きます

349じお:2012/06/16(土) 20:11:58 ID:IrsgDsYs0
>>348の続き

●20mm口径電磁ライフル(レールガン)「ロンギヌス」
 フレミング左手の法則を利用したライフル。
 折り畳み式のバレルの長さは3mに達し、放たれるのは長さ20cmの「槍」。
 マッハ10を優に越える運動エネルギーと衝撃波で以て攻撃する。

●高機動インラインスケート「スレイプニル」
 特殊なフライホイールとダクテッドファンを内蔵しており、短時間の飛行能力を持つ。
 カーボンとチタンが部品の多くを占めているため、炎には非常に弱い。

350名も無き異能都市住民:2012/06/20(水) 23:46:08 ID:sGP6umW60
「久しぶり、前に会ったのは何時だったかな」



「何となくだよ。本当はこれだけを送るつもりだったんだけどね」



「白い薔薇。なんてキミが好みそうな物じゃないけど……」



「やっぱりね。そんな感じかな。ってのは思ってたんだけどさ、僕にはわからなくて」



「……相変わらずだね、キミは」



「何も悪い意味じゃないさ。変わらない事もいいことだと思うけどね」



「いや、本当に気分的な物なんだ。僕がここに来たのは」



「昨日、不思議な人に会ってね。キミに尋ねる様に言われたのさ」



「親しい人に会ってみると良いって。それがキミさ」



「あぁ、そうだ。キミのお手製のチョコレートケーキが食べたいな。勿論、作ってくれているんだろう?」



「フフ、嬉しいね。この為に態々前もって連絡を入れておいたんだよ」



「それと、飲み物は暖かいものが良いな。昨日、ちょっと体を冷やし過ぎたのか風を引いてしまってね」



「取りに行く前に、一つ質問してもいいかい?」



「キミは、僕の前から居なくならないよね? キミは、これからもずっと傍に居てくれるんだろう?」

「まぁ、ね」

「安心したよ。それじゃ、僕はキミお手製のケーキを待っていようかな……」

351じお:2012/06/30(土) 00:12:30 ID:IrsgDsYs0
>>349に追加

【Project_Einherjer:E計画】
スタンドアローン・アンドロイドを製作、運用する計画。
現在EI-01,EI-02までが完成。

【EI-01 Talisman】
外見はアドルフと寸分違わず、体重は3割増。
スピード、パワー、強度など総ての戦闘能力に於いてアドルフを凌駕する。
両手がナノマシンで構成され、状況により変化させることができる。
普段はNow Bestの店員かアドルフの助手をしている。

【EI-02 Asklepios】
EI-01と同型機。
但しそのポテンシャルは主に医療方面に振り向けられており、怪我の治療、救命を得意とする。
死者の蘇生も可能とアドルフは豪語するが、なにぶん作られて日が浅いため良くも悪くも実力は未知数。

【EI-00】
存在が公表されていない、何から何まで謎のもの。
もしかしたらイベントなんかで出るかもしれない。

352月夜:2012/07/03(火) 20:05:24 ID:dL8H4NjE0
《死神の存在について》
・姿形は人間と変わらす、老若男女様々
・死者の魂を導き、転生させる為の存在。
・また、『死期』が訪れてもなお生きている人間の魂を刈り取るということもする。(死期については後述)
・基本的に「種族は人間だが死神の仕事をやっている者」と「種族としての純粋な死神」の2種類が存在する。
・種族の死神は生や死に関しての考え方が人間と全くと言っていいほど違う。
 死期が訪れていない人間は守ろうとするが、訪れている人間は面識があろうが関係なしに殺そうとする。(個人差あり)
・死神の共通点として、魂を刈り取る鎌と、自身の力を底上げする何らかのアイテムを所持している。
 鎌とそのアイテムは普段別の物になっている(鏡華はネックレスと腕輪、?(桃色の髪の少女)はジョーカーのカードなど)

『死期』について
人間に限らず、全ての生物には死ななければならない時、『死期』が訪れる。
死期が訪れた者には病死、事故死など、どんな形であれ死が訪れる。
(稀に死んだ後生き返ることができる能力者がいたりするが、そういった場合はその限りではない)
しかしそれは確実ではなく、退けることができたり、そもそも訪れることすらなかったりする。
前述の通り、死神はそういった人間の魂を刈り取り、無理やりにでも転生させる。

「人間の死神」について
人間なのに死神の力を授かり、死神の仕事をやっていることには訳がある。
彼らは皆一度『死んでいる』のだ。
まだ死期が訪れていないのに死んでしまった場合、その場面を種族の死神に見られいて、
なおかつ死神が契約を発動すれば、契約を結んで死神になれる。
契約しようとするかはその死神の気まぐれなので、例え見られていたとしても契約が発動しない場合もある。
契約して死神と化した人間は、基本契約主である死神と行動や仕事を共にする。
その際、すこしだけその魂を分けてもらい、生き返るだけに必要な分を集める。
また、人間として生き返ったあとも死神の力は受け継がれる。

「種族の死神」について
純粋な死神となるためには、二つの方法がある。
一つは普通に死神として誕生すること。これについては特記することはないだろう。
そしてもう一つは人間が、種族の死神と契約して転生すること。
契約の内容は、「体と能力を受け継ぎ死神として転生する代わり、生死に関する願いを一つ叶える」といったものだ。
大切な人の死期を寿命まで延ばし、生きながらえさせることもできたりする。
受け継がれるのは体と能力だけなので、人間だったころの記憶は全て消え失せる。

353アドルフ:2012/07/08(日) 22:43:17 ID:IrsgDsYs0
 VSS(多目的宇宙ステーション)

 元はアドルフが建造していた、実験開発及び無重力合金製造プラントだったもの。
 しかしそれが一段落した後、増設して一般開放した。
 高度400kmにありながら都市の歪みの影響下にあり、自由に入ることができる。

●実験・製造モジュール
 ・ありとあらゆる設備がある、(いろんな意味で)最高の研究所。

●居住モジュール
 ・一般的なマナーさえ守ってもらえれば、だれでも利用可。
 ・収容人数は1000人を越える、もはやスペースコロニー。

●運動モジュール
 ・無重力での体への悪影響を押さえるためのトレーニング設備や体育館。
 ・体育館には隕石の衝突に耐えうる装甲が内部にも施してあり、戦闘を行うならココ。

●バイタルモジュール
 ・空調、水、電力など、生命維持に欠かせないものがある区域。
 ・ここばかりは立ち入り禁止。


 このほかにもあったらいいな、と思うものは勝手にあることにしても結構です。
 普段と違うシチュエーションでロールしたいとき、気軽にお使いください。

354SS:前日談「PROTO」:2012/07/24(火) 22:14:08 ID:IrsgDsYs0
………ああ、ガイストか。済まないね、研究の邪魔をしてしまって。
ここに呼んだのはーーー他でもない、"後"のことだ。
君のシリアルナンバー"EI-00"のことも、ついでに話しておこう。
そもそも君は、アンドロイドじゃあない。
歴とした、生命体だ。
気付いているだろう?タリスマンとアスクレピオスとは根っこの方から違うということに。
喜怒哀楽を持ち、代謝もある。
生殖能力はさすがに無いが、余程大きく破壊されない限り自己再生もして、不老不死だ。
"EI-00"というナンバーに、ミハイロフスキーの諜報機関の目を欺く以上の意味は無いんだよ。

………驚かないか。話を続けるよ。
知っての通り、僕はどうやら本格的に命を狙われているようだ。
人間相手ならどれだけいようが片手であしらってやるけれど、異能者相手だと一ヶ月生き残る自信もないよ。
情けないことにね。
僕自身は、死ぬことに恐れは無い。
遅いか早いかの違いだよ。
師匠には、機会があれば君が代わりに謝ってくれないか。
問題はーーー君のこと、それと僕の研究施設、そしてその内容だ。
研究を引き継いでもいいし、破棄しても構わない。

>>355に続く

355SS:前日談「PROTO」:2012/07/24(火) 22:53:06 ID:IrsgDsYs0
>>354の続き
ただ、一般人には知られないようにしてくれ。
悪用されると只では済まないからね。

本題に入ろう。
君に渡しておかなければならない物がある。
僕の研究の集大成「プロト」。
賢者の石。
第一種永久機関。
………さすがに驚いたかい。
無理もない。君にはまだ知らせていないし、そもそも理論的に不可能だといわれている。
制作者たる僕を除けば、君にしか扱えないだろう。
不老不死であり、誰とどんな関係を築こうと、時間が無慈悲にそれを破壊する。
原罪を持たないが故に苛烈な罰を受ける、君にしか渡すことができない。
宗教関係は理解できないか。
君には必要ないのかもしれないな。

閑話休題。
"後"には、僕の資産や研究は君の好きにして構わない。
そして、「プロト」を頼んだ。君以外には頼めないんだ。

話は終わりだ、邪魔をして済まなかったね。




は、はははは。
死を覚悟すると、こんな感情になるのか。
涼しい。そして静かだ。

困難に遭って倒れるようでは、汝の力はまだ弱い。
もろもろの血肉ことごとく滅び、人もまた塵にかえるべし。

光あれ、我が希望。
栄光あれ、君が道。
その光消えるとも、君が道よ永遠に。

3561/4:2012/07/27(金) 22:04:31 ID:KbES/2ag0
プロローグ01:とある研究手帳より

【司朗が地下暗黒街の魔道具店で発見した書物の、重要と思われる一部より抜粋】



―序
私の先祖は竜道師であり、竜道に関しての様々な書物を残している。
しかし、今現在伝えられている竜道術の極意と、書物に記された事柄は大きな齟齬があることを発見した。

この研究手帳は、セルス・ドレイクの子孫、ヴァン・ドレイクがその謎を解き明かす過程を記すための手帳である。


―33ページ
私の先祖は、竜道師の中でも、数年に一度選ばれる戦士の一人だったとされている。
しかし、彼が戦士に選ばれた日を境に、竜道のすべての歴史が変わった。
いや、改竄されていた。
それは、クーガンと呼ばれる竜道師の仕業であるらしい。

―56ページ
クーガンは、どうやら優秀な男であったようだ。
それ故に傲慢で、彼は竜道をもたらしたドラゴン、ティルヴァに、戦士に選ばれなかった。
激しい怒りに燃えた彼は、他の竜道師を唆し、反乱を起こしてティルヴァの首を切り落とした。

しかし、セルス・ドレイクは切り落とされた首を盗み出し、竜道板に封印した。

―最後のページ
封印された首の在処は誰にもわからないが、クーガンは今も生きているらしい。

3572/4:2012/07/27(金) 22:06:08 ID:KbES/2ag0
プロローグ01:閉じた記憶と開いた気流

「お、お前が喋ったのか?」

司朗は、自宅の机の前で、呟いた。
目の前には、一枚の板。

「そうだ」

板の、ドラゴンの形の紋章が動き、喋った。
カチカチと音を立てて鋭い牙があしらわれたアゴが動く。

「アクセサリとしてはえらく安かったけど、
 お前呪いの魔道具とかじゃないだろうな」

司朗はそろそろと指を板に近づけ、触ろうとする。

「――解らない――何も覚えていない」
「は?」
「解らない――!私は誰だ!?」

部屋の中の空気が乱れる。
まるで、大きく振動しているかのように唸りを立て始める。

「や、やめろ!うっ……!」

司朗は耳を押さえてうずくまった。

「――やめろ?それはお前の――」

部屋の中の気流が渦巻くと同時に、司朗の体中に、
その動きが脳にねじ込まれるように入り込んでいる。
今、司朗は気流を感じ取っていた。

「力じゃないか」

3583/4:2012/07/27(金) 22:06:59 ID:KbES/2ag0
エピローグ01:早すぎた再開

「なあ、マジで帰るの?」

街の外れ、司朗は腹に包帯を巻き、青い竜、ティルヴァと共に居た。

「ああ。もう誰も住んではいないだろうが、あの谷は俺の故郷だ。
 どこへ行っても必ず帰ってしまう場所なのだ」

ティルヴァは、遠くを見つめて行った。
ティルヴァは先の戦いで、体と記憶が戻った。
その記憶に従い、ティルヴァは自分の故郷である、
都市から遠く離れた谷に向かおうとしているのだ。

「心配するな、今生の別れにはならん。
 ……お前には感謝している。
 何かあったら谷に来るといい」
「お、おう」

上ずった声で、司朗は言った。

「さらばだ、また会おう、近いうちにな。私の友達、高向谷司朗よ」
「……ああ、じゃあな。また」

ティルヴァは、大きく翼をはためかせ、飛び去った。
空の彼方に、空色の竜は消えていく。

「ティルヴァ、か」

司朗は、友の名を呟いた。

「ああ、言い忘れていた。
 地下暗黒街で見つけたあの書物はお前が持っていてくれ。
 私は洞窟に住むからな、置く場所など無い」

司朗が腰にぶら下げている、空っぽのはずのエンブレムが動き出し、ティルヴァの声が響いた。
あの戦いの後、回収したものだった。

「っておい!どういうことだ!」
「ああ、どうやら竜道板はまだ私の体の一部らしくてな。
 遠隔操作出来ることがわかった。
 持っていれば何かと役に立つだろう」
「ってことは今までと立ち位置的に変わり無しかよ!っていうか言えよ!」

3594/4:2012/07/27(金) 22:07:36 ID:KbES/2ag0
エピローグ02:???

【司朗が地下暗黒街の魔道具店で発見した書物の、重要と思われる一部より抜粋?】

―序
私の先祖は竜道師であり、竜道に関しての様々な書物を残している。
しかし、今現在伝えられている竜道術の極意と、書物に記された事柄は大きな齟齬があることを発見した。
この研究手帳は、セルス・ドレイクの子孫、ヴァン・ドレイクがその謎を解き明かす過程を記すための手帳である。


―33ページ
私の先祖は、竜道師の中でも、数年に一度選ばれる戦士の一人だったとされている。
しかし、彼が戦士に選ばれた日を境に、竜道のすべての歴史が変わった。
いや、改竄されていた。
それは、クーガンと呼ばれる竜道師の仕業であるらしい。

―56ページ
クーガンは、どうやら優秀な男であったようだ。
それ故に傲慢で、彼は竜道をもたらしたドラゴン、ティルヴァに、戦士に選ばれなかった。
激しい怒りに燃えた彼は、他の竜道師を唆し、反乱を起こしてティルヴァの首を切り落とした。
しかし、セルス・ドレイクは切り落とされた首を盗み出し、竜道板に封印した。


―?

封印された首の在処は誰にもわからないが、首には友達がいるらしい。

360ダンジョン:廃研究所:2012/08/07(火) 23:13:43 ID:SEakzVeM0
 アドルフが経営していたショップの地下に広がっていた、迷路のような巨大研究所。
 一国との全面戦争の結果地上部分は完全に破壊され、研究所も上部が少々破壊された。
 しかしある程度進むと全くダメージを受けていないことがみてとれる。

【構造】
 上部は瓦礫や不発弾、内部は対人兵装が行く手を阻む、人工の迷路。
 明かりは常についており、電源が生きていることを窺わせる。

 数多くの部屋には様々なものがそれぞれ放置されている。
例:近未来的な武器やその設計図、無重力合金、金のインゴット、古い図書、様々な国の古い機密書類など。

 対人兵装はあるにはあるが、あくまで対人。異能者への攻撃は想定されていない。
 ただしそこここにある地図は総てデタラメ、地図ごとに相異なる情報が書かれている。
 故に安易に入り込むと脱出もままならなくなりかねない。

361じお:2012/08/18(土) 07:38:46 ID:SEakzVeM0
司朗とのロールに出てきたアレ。

【C/B-05 Space Cruiser】

 宇宙空間もしくはどこかの星から未知或いは希少な物質を採取するために建造された、巨大な全翼機。

 垂直離着陸が不可能なため、低速低空で採取対象を爆撃、砕けて小さくなり爆風で巻き上げられたものを採取するという形をとる。

 無重力合金で構成されることと500mをこえる翼幅、300mに満たない全長といったほとんど外見でわかることを除き一切が非公開。

 ステルス性が非常に高く、エンジン音どころか風切り音すらせず、レーダーにも羽虫ほどにしか写らない。

 その巨体から離着陸できる滑走路はほぼ皆無だが、離着水も可能。

 ワープ航法が可能。しかし地球の大気圏を飛行する場合、最高速度はせいぜいマッハ3。


 現在アドルフが保有しているのは3機。
 2機が宇宙に出払っており、手元には1機のみ。
 機体の製造費や維持費が莫大なため、これ以上増やす気は無いらしい。

362峰岡 海賀:2012/08/18(土) 09:33:31 ID:ADX5ss0s0
トナルプの追加設定 これからも増える予定

『トナルプ』
海賀の脳の中に住むキノコ型寄生植物
海賀の命に危険がせまると共にその寄生植物が海賀の体の中を
ツルで縛りあげ、体を変化させていく
そして最後に命を失った瞬間、トナルプの防衛本能が働き
無理矢理脳や心臓を働かせ、蘇らせる
痛覚を遮断し、体を緑色に変色させ、腕や足などを数メートル延ばす事が出来る
その間、見た目は背中にラフレシアの様な物が生えておりそのから空気を吸いこんで火球を放つ
しかし、やはり植物でも生き物なので寒さに弱い
だが、ゲームなどでは草タイプは火に弱いが、トナルプに寄生された生物だけは別で火がむしろ好物に入る為逆効果
さらにラフレシアの様なものからは常に毒の胞子が出ており、効果が出るのはかなり遅いが効果がで始まると体に毒がまわり出しどんどん麻痺していく
体温はその間100度は超えており、ラフレシアの様な部分から常に熱気が噴き出している、これは冷熱効果もあるらしい
しかもそのラフレシアの様な物からは無数の植物のツルが出る、強度は持ち上げて人一人分を支える程度

なお、トナルプが防衛本能が働いている間、大量のタンパク質と血が無くなっている為
それを補うために指先から生物の脳を吸い取る『器官』を作っている
特にまだ生まれてそこまでたっていない生物ならばそっちの方を優先して吸い取ってくる

363文月七瀬&河平セセリ:2012/08/19(日) 22:25:56 ID:haugAEa.0
数時間後。
二つの人影が通りかかる。
片方は白衣。もう片方はスーツ。何れも男。
「こんな所に何の用があるッスか、一体?」
「アレだ」
スーツの男の疑問を短く返す白衣の男。

二人の視界に広がる惨状としか言い表せない現状を眺め、スーツの男は目を逸らす。
もう一人は相方の様子を「弱々しい」と吐き捨てると徐々に視界を広げていく。
抉れた地面。大きく穴の開いた箇所や走る傷。
その中央には死体が折り重なるように二つ。何れも千夜学園高等学部の制服を身に着けていた。
白衣の男はそれに真っ直ぐ歩み寄って行き、地盤の穴は飛び越していく。
まずは、と少女の遺体を起こし、全身の状態を眺める。
「……まだ新しい、傷も全く問題ないレベルだ」
「まだ子どもですよ? 被検体はもう少し頑丈な方が……」
白衣の男が傷と呼んだのは心臓を貫いた刃によってできた巨大な穴。
一撃だろう。それほどの壮絶なダメージを負わせた刃を問題無いで済ましてしまった。

「子どもだろうが関係ない。死体であれば」
「相変わらずキツイッスねー……ん?」
疑問の声を上げるスーツの男の視線は七瀬の方へ向いていた。
普段帽子に隠れた七瀬の顔を覗いた男は興味ありげな視線を向けていた。
「ま、何でもいいッスか」
しかし、その瞳の色は直ぐに失せる。
それはこれから二つの遺体に起こる事を理解しているからか。
「さっそく使うんッスね、ナノマシン」
「彼女らに思い入れなど、無いからな。ただの被検体だ」
白衣の男は手にした鞄から直径5cm程のガラス管の様なカプセルを取り出し、握りつぶすようにして砕きジェル状の物質を少女の遺体の傷口を覆うようにかけていく。
それを終えると帽子の人物の遺体の方へも寄って行き、もう一つカプセルを取り出すと同じように掛けていった。

「さて、私たちはこの都市からおさらばだ」
「ま、そうッスよね。産んでおいてアレですけど、化け物と同じ環境には住みたくないッス」
「そう言う事だ」
男たちはすぐさま踵を返し、この場から、この都市からも去っていく。
後に残ったのは地面の傷と真紅に染め上げられた景色のみ。中央の遺体すらも消え去っていた。

364羊の人:2012/08/21(火) 00:05:43 ID:ry7wfIlo0
某所にて

「いやー、本当にハフバル君は生粋のエンターティナーだよね、
羊もどきにしておくのがもったいない!」
赤いマントを羽織った長身の男が椅子に座りテレビを見ながら上機嫌そうに
言った。
テレビには羊似た生物とそしてグロテスクな生物兵器、それをとらえよ
うとする戦闘員のリーダー格、そして一人の少女ー女子高生くらい
だろうか、が映っていた。
しかし、彼が注目をしているのはグロテスクな生物兵器や可憐に
戦う少女でもない、羊に似た生き物と、そして生物兵器におび
えているリーダー格の戦闘員だった。
とらえようとする生物に殺されそうになるリーダーの男を見て、
彼は笑った。
「しかしまぁ、ハフバルも随分ずる賢くなったねぇ、まさか
『インドラの雷』使っても倒せなかったら、生物兵器に
ナパームぶつけて暴走させて敵を追い詰めるなんて」
だけど最後の消火作業はマイナスだな、と彼は呟いた。
彼が羊もどきを見る目は親が子供を見守るように暖かく、
そして暇を持て余した性悪な金持ちが貧乏人を見て嘲り笑うように
歪んでいた。
彼は、滑稽な物を何よりもこのんだ。そして、彼の滑稽の意味は
誰よりも歪んでいた。たとえ他人が死にそうであったとしても
彼の目には、その他人は必死に水溜まりでもがく「蟻」とそう
大差ないもの、ばかばかしく、おもしろいと思った。
一通りテレビを見て、彼は思った
─でも、そろそろ潮時かな。
彼はそういうと、椅子を立った。
「まっててよ、必ず君を連れ戻してあげるから」
彼は、口元を歪ませた

365風を読む日々:2012/09/26(水) 22:31:38 ID:Dnkg9kSs0
「竜震……れえええぇぇぇつっ!」

ドラゴンが守護する谷の、集落の外れで、男が右手に握ったプレートを突き出した。
目の前の切り株の上から、拳サイズの石ころが吹っ飛んでいった。

「精が出るな、ドレイクの子」

男に、背後から声を掛ける者がいた。
青空を写したかのような美しい鱗と、銀に輝く角。
この集落で、人々に魔術を教える土着の神、ティルヴァである。

「あ!見ていらしたんですか?
 お見苦しいものをお見せして……」
「謙遜するな。
 今は未熟でも、お前の努力はいずれ開花する。
 魔力は拙いが、上手く風を読む才能がある」

ティルヴァは尻尾を揺らしながら、石を切り株の上に投げた。

「あ、も、もったいない言葉です!」

男は拳を握り締め、今にも飛び跳ねそうな体制で喜んでいた。

(……思えば奴もこいつの修得には手間取っていた)
「ドラゴニック、ブラストオオオォォォ!」

現代、とある空き地で、司朗は叫んだ。
司朗が塀の上に乗せた空き缶が吹っ飛んだ。

(魔力はまだしも、風読みはこいつの方が上なんだがな……。
 所詮才能ではなく能力であるという事か……)

ティルヴァはため息をついた。

「ティルヴァー!成功成功!」

司朗は空き缶を拾って、ティルヴァに手を振った。

(無邪気さは、こいつに軍配があがるか)

366どうでもいい話:2012/10/14(日) 20:28:16 ID:Dnkg9kSs0
【千夜グループのとある窓際部署】

「イメージキャラクターの新案、完成しました」
「……なんだこれは」

署員の男は、部長席に座る男に新企画の書類を手渡した。

「千夜グループのイメージキャラクター案、せんちゃんとやっくんです。
 所謂ゆるキャラって奴ですよ」
「何で厳つい仁王像が犬耳してるんだ、しかも二人も」

書類には、今部長が読み上げたような不気味なイラストが描かれていた。
しかも、なぜか筆風のタッチとやたらと勇ましい。

「二人でワンセットのキャラクターということで、阿吽像と狛犬をイメージしました」
「却下だ!こんなキャラクターで社のイメージアップが図れるか!」
「カツオ人間しかりメロン熊しかりせんとくんしかりまりもっこりしかり、
 ひこにゃんから始まったゆるキャラブームにも変革が来てるんですよ!
 これからは初見のインパクトが全てなんです!」
「やかましい!却下だ却下!出て行け!」
「ちえっ」

署員の男はまくし立てるが、その甲斐なく部屋を追い出されてしまう。

「……まったく、こんな企画しか出せないからキャラクター宣伝開発部なんてわけのわからん部署にまわされるんだ。
 自分が左遷されたとも知らずにのんきなものだ。
 こんな部署の部長をやらされてる私も私だが……」

そう言って、書類を机の上に投げて、
椅子を回し、ブラインドを指で広げて窓の外を見た。

「大体、まりもっこりなんて既に数年前の話じゃないか」
「この三角耳を見て犬耳と猫耳の区別が付く部長もどうかと思いますよ」
「出て行けー!!!」

そんな、今後の伏線でもなんでもないどうでもいいやり取りが交わされていたのだそうだ。

367羊の人:2012/11/05(月) 21:37:43 ID:GFududEw0
例の黒い石の設定とか

【増悪石】
ある魔術師が作り上げた不気味な黒い石。
透き通っているが、その中身は深淵に満たされている。
自身の心の闇や負の感情を増幅し、膨大な様々なエネルギーに
変換する。

使い方は握りつぶすだけ。また、負の感情や心に強い闇
トラウマなどをかかえたものが石をのぞいた場合、
その負の感情の原因や、強い闇、トラウマなどを映し出し、
この石を使うように石自体が誘導する。

石を握りつぶして使えば個人の心の闇の深さにもよるが、
大体はレベルの高い異能者を圧倒できるほどの強さを
得られる。(ただし戦闘経験にもよる)
また、使った際に高揚感や、全能感、快感を得られるため、使いすぎれば依存
するようになるなど、麻薬的な側面もある。

しかし、麻薬的であるが故に、短時間で使いすぎればいずれは
増幅された闇と負に自我を飲み込まれる。
また、しばらく日にちを置いて使っても、依存性によって
連続的な使用をしてしまうため、やはり自身を破滅
させてしまう。また、自我が飲み込まれるごとに皮膚が
紫色に変異する。

ただし元々心が闇に染まっているか、または
闇の心も律す強靭な意思や精神力があれば依存性や、飲み込ま
れる事に抵抗する事ができる。ただし、普通よりは長く
使えるというだけで、やはり待っているのは自身の破滅である。

368フリーな設定?:2012/12/30(日) 22:43:06 ID:N22/iHaM0
・ピュラリスの火花
 炎属性の攻撃魔術。
 呪文は司朗のオリジナルだが、魔導書にも普通に印されている魔術である。
 火花と高温を一点集中して生み出す魔術だが、司朗は炎属性の適正が低く、
 近くの焚き火を借りてようやく手に纏える程度の炎を得た。
 ちなみに本来は鍛冶屋が鉄を溶かしたりする為に使っていた術とも言われ、
 学会では本当に戦闘向きの魔術だったかどうかは現在も論争が耐えない。
 鍛冶屋関係で、地属性に適正があれば炎属性に適正が低くても容易に使える場合がある。
  →参考書籍『サラマンダー概論』ウェッゼル・トナー/鈴木原拓男 訳(千夜出版)

・カンヘルの鉄槌
 雷属性の攻撃魔術。
 やっぱり呪文は司朗のオリジナルだが、魔導書にも普通に印されている。
 天使の力を借りた落雷を落とし、雷としての威力以外に怪異や魔術に対しても高い威力を発揮する。
 司朗は雷属性に少し適正があるらしく、一応それなりに使いこなしているらしい。
 もしかすると司朗は闇祓騎士団の防御魔術破壊の為に修得してたんじゃないかなあ。
 でも闇祓騎士団の詠唱を見る限り、あんまり神聖的な属性による干渉はきかなさそうな気がする。
  →参考書籍『異形の天使百選』高宮和彦(滝朋書林)

369名も無き異能都市住民:2013/01/22(火) 18:25:00 ID:HrlHSLJw0
【ある日の箱庭…】
「ふう…随分と強いやつだったぜ…」
【一人の異能者らしき男が汗を拭いながら答えた。
 その男はつい先程、戦闘に勝利したばかりなのである。】
「ひとまず今日は帰りたいぜ…」
【男は外に出ようとしていた…しかし】

ザザッ
【少し遠くからノイズのような音が聞こえたのである】
「?」
【不思議に思った男はそのノイズのした方に顔を向ける】
「……」
【そこには青白く揺らめく…少女の姿が見えたのである】

「幽霊…か?」
【冗談めかして男はつぶやき、近づいていくと】
「……ど…こ…」
【ところどころノイズが入る少女の声。俯いていてよく顔が見えない】

「迷子か?ここはあんまりいい場所じゃねーぞ?
 速くかえ」
ズバァン
【言い終わる前に男は身体をだらけさせる】
【全身を突如伸びてきた無数の鎖に貫かれたのである】

「……てき…なの……」
【ノイズの混じった声を交えながら、少女は小さくつぶやいた…】






【…しばらくしても男は端末から出てこないのだという】

370こっそり光速:2013/02/24(日) 22:56:36 ID:hbFQZ4nY0
http://dl1.getuploader.com/g/elusion/23/siro.JPG

近頃の大学生の間ではダッフルコートが流行らしい感じの司朗の冬服

371光速:2013/03/25(月) 17:45:37 ID:hbFQZ4nY0
とあるキャバクラを、一人の女が訪れていた。
店員の制止も無視し、急ぎ足で向かう先。
そこに座っていたのは、この店のとある常連だった。

「この街にいるのは解っていたが……。
 見つけるのに手間取ったぞ、ヤク・バトス」
「……ぶっ!おめー……ティルヴァじゃあねーか!」

常連の名はヤク・バトス。
そして、女性の名はティルヴァ。
彼らは共に、神話の時代を生きたものであった。

「だーれ?この人……」
「何百年も前の友人だよ……」

キャバ嬢は嫌悪感を露わにするが、
二人はあくまで友人の関係でありそういう関係ではない。

「積もる話もあるだろう……だが今は置いといてくれ。
 お前に頼みがある」
「なんだよ突然に。らしくねーぞ、空を分けた友よ」
「その話は止めろ。お前の眷属の力を借りたい」
「別にそれは構わねーが……。何のために?」

ティルヴァは一本の角を取り出し、ヤク・バトスに見せつけた。

「我が友人の魂がこの街に散ってしまった。
 そいつが残した、四十本のこの力を探して貰いたい」
「……生き返んの?そいつ」

――

同時刻、同キャバクラの外の繁華街。

「おい、あれ……」
「うわっ、気持ち悪っ!」

通行人が指さすのは、同キャバクラの看板。
そこにはいつの間に集まったのか、無数の蝙蝠が張り付いていた。

372光速キャラメモリー/怪人邪気眼編:2013/04/04(木) 22:30:46 ID:j32Vpg5I0
・爆裂眼(ばくれつがん)
 体を爆発させる能力。爆発させた部位はすぐに再生する。
 すでに負傷した部位を爆破し、再生することで治癒することはできない。
 怪人スケイルニトロの素体になった人間が能力者。
・霧幻眼(むげんがん)
 霧を作り出す。
 怪人スケイルミストの素体になった人間が能力者。
 おそらく霧の刃などの能力は怪人化したことで付与されたもの。
・抗殻眼(こうかくがん)
 体表を特殊な甲殻で覆う。
 甲殻は打撃だけでなく酸や炎にも強いが、間接隙間だらけで重く鈍重。
 怪人スケイルシェルの素体になった人間が能力者。
 強力な鋏や、甲殻を飛ばす能力はたぶん怪人化の影響。
・発火能力
 スケイルレストの能力。
 レストは怪人幹部の中でも唯一人間素体の怪人である裏設定。
 特に邪気眼って設定は無かったけど…めんどくさいから邪気眼にしちゃえ。

373光速キャラメモリー/その他邪気眼編:2013/04/04(木) 22:33:00 ID:j32Vpg5I0
・気流眼(きりゅうがん)
 いわずと知れた…というまででもない司朗の能力。
 角の能力はこれが進化したものだが実質ぜんぜん違う能力だし、
 司朗が復活しだい別の名前をつける予定。
・磁針眼(じしんがん)
 方位磁針を高速回転させることで、その周囲に特殊な磁界を発生させ、
 鉄を磁石化することができる。
 一度に磁石化できるのはひとつのみ。ただし強力。
 なんか設定が変わってる気がするけど、たぶんまた変わる。
・霊体眼(れいたいがん)
 自分や触れている生物を霊体にし、物体を透過することが可能。
 また、完全に人の目に映らなくする事もできるが、これは披露していない。
 属性攻撃は利かないが、信念を纏っていれば拳でも利く。
 この能力以外の能力を使っている時はこの能力は使用できない。
 実はこの能力者、リャザンっていう沢桐の知り合いっていう裏設定があるけど、
 まあリャザンなんて誰も覚えてないよね。
 これ読んでこれも邪気眼?って思う人は多いか。
・リーナの兄の能力
 今後再登場予定。磁針眼とは関係がありそうで特に無いかもしれない。
 少なくとも今は関係は考えていないが、こじつけ可能な能力の予定。

                        ―以下続…刊?

374名も無き異能都市住民:2013/04/14(日) 21:00:40 ID:j32Vpg5I0
「っつーわけで、おまいが何も責任感じることは一切ねーわけだ。
 わかったか?リーナ」
「おう!悪いのは全部研究所って事だろ!」

あの戦い以来、リーナは沈んでいた心を持ち直し、
元の明るいリーナに戻っていた。

「その通りだ。
 じゃあ行くぞ、ティルヴァ」
「……何処にだ?」

司朗はリーナを混乱させた謝罪のため、彼女の自宅を訪れていた。
一通り説明が終わると、司朗は生首のまま言った。

「決まってるだろ!俺の体を取戻しにだ!
 この数日、街を歩き回って大体の場所は掴めた!」
「先輩!行くなら俺も……」
「駄目だぞ。お前は防人との戦いが後を引いてるからな、安静にしろ」

司朗は叫び、続いてリーナも声を上げる。
しかし司朗はそれを制した。

「……お前にも無理だ」
「……ノリで押し切れると思ったんだけどな」

さすがに生首で研究所に飛び込む勇気は無いのか、
珍しく素直に引くのだった。

375名も無き異能都市住民:2013/04/20(土) 23:48:49 ID:j32Vpg5I0
E1-1:Dream / by 沢桐
別に私は光の速さを目指すのを止めた訳じゃない。
私は今でも夢を追っているよ。
ただ、夢を追うことそのものに楽しみを見つけただけだ。
結果と過程の優先順位が変わっただけだな。
若いころには余裕が無かったが、寿命に余裕が無くなって、初めて人生に余裕を見つけた。

E1-2:Friend / by ヤク・バトス
本当はティルヴァの谷にいた原生の神族はもっとたくさんいたんだ。
ガランド、ラグジャ・ヤ、セルフィ、そして……デオル。
まだまだ居たような気がするが、 俺とティルヴァ以外は殆ど精霊程度の力しか持ってなかったな。
まあ、皆して大騒ぎして、それなりに楽しくやってたと思うが、
俺は何でもかんでも楽しいと思ってるから、辛いことはよくわかんねえ。
いつだって、今が人生で一番楽しいときだ。
まあ、あいつらにもう一度会えても、そりゃもっと楽しいだろうけどよ。

E1-3:Stress / by リーナ
イライラしたときは、とりあえず暴れて、
目の前の物全部叩き壊してみればいいって、兄さんも言ってたんだぜ。

E1-4:Need / by ガルテラ
私の探し物は、私の探し物ではない。
つまり、それを探しているのは私だが、必要としているのは私ではない。
その探し物を必要としている人は、もう居ない。
そして私も、実はそれを見つけたくないと思っている。
なぜか?見つけてしまえばこの旅が終わってしまうから。

376名も無き異能都市住民:2013/04/20(土) 23:49:45 ID:j32Vpg5I0
E2-1:Freedom / by 司朗
俺は自分を世界一自由人だと思ってる。
こないだティルヴァにそんな話をしたら笑われた。
「お前は最強の男だとかを目指しているんだったか?
 それはお前が最強という言葉に縛られているだけではないか?」
俺はこう言い返した。
「いいだろ、縛られてそれに苦悩することだって俺はかっこつけの一環だと思ってやってるんだから、
 やっぱり俺の自由だ」
ティルヴァはその後いろいろ言ってきて、結局俺はティルヴァには勝てなかった。
まあ、それだけの話な。

E2-2:Fool / by ティルヴァ
「お前は正義に生きる男なのか?」
「馬鹿言え、俺が悪をかっこいいと思ったら平気でやるよ。
 まあ、一度信じたことを貫くことも、かっこいいと思ってるけどな」
深いことを言ったつもりになって得意げな男は馬鹿者だ。
あいつはそれに加え、そういった馬鹿者と知って演じることがかっこいいと思っている大馬鹿者だ。
まったくくだらない。

E2-3:Enjoy / by 司朗
優れた職人は、道具を見ただけで他の職人のレベルがわかるんだとか。
俺の能力は他の能力者にとってどう見えてるんだろうな。
ただのパワー馬鹿な能力?それともひらひら攻撃かわしてうっとおしい奴かな。
あるいは弱小で何も感じないって奴だって居るかもしれないな。
少なくとも、俺が自分の能力を楽しんでることは伝わって欲しいと思うなあ。

E2-4:Journey / by ティルヴァ
私は確かに物知りであるとは自負している。
しかし、それがただ、年月と又聞きだけで出来たものだとも知っている。
自分の目と耳で感じずに、知識だけで知っていることの方が多い。
私は以外と世間知らずだから、この街のすべての体験が新鮮だ。
そうは見えなくとも、毎日が興奮の連続だ。
私はいつか、自分の知識がどれだけ本物かを確かめるために、私は見聞の旅に出たいと思っている、道連れを一人連れてな。

377名も無き異能都市住民:2013/04/20(土) 23:50:43 ID:j32Vpg5I0
EP:心を震わせる物を探して
ある朝、高向谷司朗は、草原の木陰で目覚めた。
傍らには、青いドラゴン、ティルヴァ。
青空の屋根、地球がベッド、ついでにアスファルトの道が一本。

「街を飛び出したのは良いけど、
 やっぱ向こうじゃ大騒ぎだろうなあ」

ずた袋から、薄く切った干した食べ物を取り出し、
一枚くわえて朝食にする。
ティルヴァにも一枚差し出すが、首を振ったのでそれもくわえる。

「今更な悩みだな」

ティルヴァが答えた。

「仏の顔も三度という言葉がある。
 お前は一度重傷で昏睡し、一度死んでいたのを忘れたのか?」
「そーいうもんか。
 まあ次の街に着いたら手紙の一つでも出すかな」

さっきまで地平線に転がっていたいた太陽が、いつの間にか浮きあがっていた。
とはいえ、まだ旅を再開するにはやや早い時間。

「しかし……まさか旅に出ようなどと言い出すとはな。
 家族も大学も友人も捨てて」
「言い出したのお前じゃん、俺は乗っかっただけ。
 まあ言うなれば、他人が驚く事をやってこその人生、って奴だよ」

司朗は立ち上がり、道の先を眺めた。
微かに見えるのは、彼の生まれ育った街ではなく、旅の第一歩。

「それでだ、一度行ってみたいところがあると言ったな。
 どこにあるんだ」
「決まってるだろ」

笑みを浮かべる司朗の髪が揺れた。
司朗は帽子を押さえ、髪が向いた方を見る。

「風の行き先だよ」

「……なるほど、悪くない」

SEE YOU, PHANTOM OF DRAGON ROAD...
SOMEDAY SOMEWHERE!

378風邪:2013/05/05(日) 16:06:45 ID:xm/dFKGs0
ここまで幾度なく話だけで実態のない。
彼の友人――『烏丸健一』のことを今日は話そう。

有り体に言えば彼は『天才に負けた秀才』と言える人物だ。
足立幹也と葛乃屋滋野、そして足立晶に取っては友人であり、
彼からは『必ず超えるべき壁』という見方をしていた。
天才には絶対に勝てない――だが彼はそれを本心から否定できる人物だ。
足立の身の回りにおいて彼と、そして滋野だけが足立の欠点をよく知っていた。
――『感覚』である。天才兄妹と言える両名はその発想が離れすぎ、
所謂『机上の空論』で物事を進めてしまうきらいがあった。
それを押しとどめ、慎重に実験と検証を繰り返す彼の存在がなければ、間違い無くあの兄弟は大きなミスをする。
そう確信していた彼は友として、超えるべき壁としての兄妹に力を貸し続けていた。

研究中の事故さえなければ。
彼は空間変動を引き起こす原因と思われる元素の研究中に、
丁度偶然に元素からダイレクトに世界管理コンピュータ――『メシア』に乗っ取られてしまう。
直後に彼が引き起こした平行線の大変動によって足立がいた世界は無限とも言える平行世界が複雑に絡み、
さながら毛糸玉のような状態へと変貌し、干渉が不可能になってしまう。
変動の衝撃により外側に飛ばされた足立は、その原因がメシアにあると知り、これをオイジェスとともに破壊する。
これにより彼は開放され、絡んだ平行世界も修復される…はずであった。

だが現実問題として足立の世界は元に戻っていない。
何故なら、彼―――健一は途中から自らの意思を持って世界を閉じたからだ。
足立が倒したメシアとデウスはいわば抜け殻であり、力の大半を奪われていたのである。
それにより鍵一が手に入れた力―――、
それはいわば『空間支配』とも呼べる強大な能力である。
有り体に言えば空間全体を自分の支配下に置くことで全てを操る力だ。
あらゆる能力も、あらゆる存在も彼の能力下ではなんの意味も持たないのだ。
同質の能力を持った能力者―――足立から解れた『エドワード』以外には。

彼の能力は何れ、遠くない内にこの都市に及ぶだろう。
その時までに、足立は彼を打倒する方法を、見つけ出さねばならない。

379名も無き異能都市住民:2013/06/08(土) 16:03:19 ID:CNzpbvmk0
―――――???

灰色の雲が所々に点在する、延々と続く赤黒い空。
光が足りず絶えず薄暗いこの地平の中に、赤と白。
「アリス」
「あら、シノン。どうしたの?
 あなたには塔の支配者を引き摺り出す役がある筈だけど」
赤の少女が真紅の目で見つめているのは空まで及び、さらには天を突き抜けた塔。
―――――知憶の螺旋塔・パンドライク。
「ごめん、少し疲れちゃって。
 あぁ、大丈夫。ゼオラに変わってもらってるよ」
少年の小さな頭に対しては少し大きな、白いシルクハットを取って。
灰色の草はらに身を投げ出して大きく溜め息を付いた。
「何よ。相手は今にも死にかけな老いぼれでしょ?」
「それはそうだけど……アリス。彼の知識を相手にするのは大変だよ」
「私も何度かお世話になってるもの。それくらい知ってるわ。
 死者となった者が先ず訪れる、【上と此処を繋ぐ階段】。
 降りてくる過程の中で、記憶と知識の殆どを書き残してしまう。
 その全部が入った図書館。その管理者にしてデータベース。そして……いや、いいわ」
この場に居らぬ少女の事を思い返し、口を噤む。
塔の中の少女がその事実を最も理解している筈だから。
ただ、理解できていても、特になにも厭わなそうでもある。とアリスは微笑んで。
「まぁ、いいわ。
 ゼオラなら大丈夫ね。終わり次第、私の城に来るように伝えておいて」
「えっと、アリスは、何処に?」
「お茶の時間よ。『後はお願いね』?」
手に持った本を、身体を起こした少年に投げ渡し。
慌ててそれをうけとった少年が振りかえった頃には既に姿は無く。
「仕方ないな……」

380名も無き異能都市住民:2020/05/09(土) 00:37:29 ID:ORmT3UkU0
―◆◆1/沈みゆく意識◆◆―

一夜城、アイリスの自室。
リンネの手により目覚めて、城に戻ってまず最初にしたことは自身の髪の手入れからだった。
冥府より戻ってきてからというものの、手入れされていないモップのごとき髪へと変貌していた。一度全裸になり、バスタオルを体に巻く。
赤い瞳、縦に割れた漆黒の瞳孔から覗く自らの肢体を確認する。
胸部を盛り上げる豊満なバストは母譲りであった。
長く伸びた明るい金髪、艶やかで枝毛ひとつない髪は半ばより毛先へ向けて緩やかに巻かれており、このまま簡単に服装と髪を整えれば服装を整えるだけでパーティーに参加できるほどと言える。
瑞々しく麗しい唇に陽光を知らぬ白い玉肌。ぱっちりとした大きな二重でありがなら涼やかな目元に泣き黒子を添えて。妖艶な肢体でありながらも幼さを残す顔つきは大人と子供の境目特有の未完成の色香を放っていた。
長い手足は細めでありながらもしなやかで。肉体全体の脂肪は健康的と言える必要最低限で在りながらも胸と尻に限れば大きく、アンダーバストは控えめで。更にウエストは細い。しかし尻は大きく。
自然、男性の肉欲が絡む視線を集めるのは必至だろう。そのようにデザインされた肢体であるため当然と言えば当然だった。さらにまだまだ大きくなる余地を十二分に秘めた肢体。
他者から見れば羨ましい限りの肢体であるが、アイリスにはこの体と瞳に大きな不満があった。
真紅の瞳と肢体だ。以前は空の蒼だった瞳の色は非常に気に入っていたのだ。在り来たりな色だと言えるだろうが、在り来たりの色がアイリスは好きであった。母譲りの美しい瞳だと胸を張って言える自慢の瞳の色であった。
アイリスにとって真紅の瞳とは魔眼の色である。
魔眼の一段階目に染まる色であり、自身の力の象徴の色でもあるのだが、魔眼を開けば多くの線が目に浮かぶ。触れれば壊れてしまう世界に変貌させる瞳。
魔眼が制御下から外れた経験が幾度かあるが、それは決して良いとは言えないない経験であった。自身の魔眼の手綱が外れると、何にも触れられなくなる。視界にあるもの全てに線が浮かぶ様は異様であった。アイリスが他者に魔眼の説明をするのなら、全面に罅がが入った硝子を想像すると良いと一言だけ伝えるだろう。
そして、男性の情欲を誘うこの肢体だ。肢体は言うまでも無い。不躾な男性からの視線はあまりにも不快だ。顔、胸、腹、腰回り、尻、足。まるで全身を舐め回される錯覚に陥ることもある。その上で更にナンパなどされれば目も当てられない。
そんな自身の肢体を眺め、確かめる作業を止める音があった。ノックの音が都合四度。髪を整えるよう伝えたメイドの準備が出来たらしい。
入って。
失礼したします。
短かな応答ののちノックの音と共に多くのハサミを携えたメイドが現れた。
早速始めてくれ。
畏まりました。
目を瞑りハサミと髪が奏でる音をBGMに聴きながら、アイリスは目覚めるまでのことを思い出していた。

ふわり、ふわり。
前後左右が不覚であり、いつ始まり、果たして終わりがあるのかすらもわからない闇の中にアイリスは沈んでいた。
否、沈んでいるのかすらも定かではない。浮かんでいるのかも知れない。
前後左右どこをみても闇、闇、闇。
温くもなく熱くもなく、程よい温度だった。まるで母親の胎の中にいるような、夢心地だった。
落ちていく。堕ちていく。墜ちていく。
意識はゆっくりと沈み、微睡に身を任せていく。
手足の感覚がない。仮に動いたところで此処から抜け出せるのか、酸素を求める人のように、浮上するとこの闇から抜け出せるのかという確証もあるはずもなく。闇夜を見通すと云われる真祖の目を持ってしても果てが見えない闇の世界なのだ、そもそも本当に沈んでいるのか?実は左右に流されているのではないか?

――ああ、此処は心地良い。これでも走ってきたつもりなんだ、少し休んでも良いだろう?

ゆらり、ゆらり。
力を抜き、手足を投げ出せば自然と手足は下がった。
暗い海に目は不要と言いたげにアイリスは瞳を閉じる。まるで、ゆっくりと眠りに堕ちていくように。
微睡みに沈む意識の中、ここは何処だろう、という声は挙がらなかった。
人が眠気に任せる様に、自然と目を閉じた。アイリスの躯は沈んでゆく。
ゆっくりとだが、確実に。沈みゆく躯は手足の末端から暗い海に溶けていく。
沈んでいく躯に合わせ、手足は上がっていく。それだけが沈んでいく証だった。

ゆっくりと沈みゆく躯に対し、アイリスの脳は過去の記憶と伝え聞いた自身の出生時の記録の旅路へと歩みを進めた。見たいわけでもないのに見せられる光景は、祖国の自らの血族が住まう城だった。
ロマネスク建築とゴシック建築の間の様な城だった。
レンガで組み上げられた重厚な土台、城内庭園は回廊から厚い壁や半円アーチ越しに覗くことが出来る。外観・内観と質実剛健といえるものだ。
しかし、少し高い階層であるならば、ここは芸術の世界だった。
円形状の天井と、尖塔アーチ、外壁を支える飛梁にアーチ状の筋を付けたもの。これにより、城の内部は、重厚感と華やかさが共存する神秘的な空間となった。
アイリスが住う世界の中で最も古い居城であり、世界最古の遺産だった。
そんな城の一室での出来事だ。
白い壁紙に床を覆う毛足が短い真紅のカーペット。そして高い天井から垂れる豪奢なシャンデリア。傍らには本がびっしりと詰まった本棚。唯一の異物はベビーベッドに収まる自身の体だ。
まだ髪すらも生え揃っておらず目も開いていない、布に包まれていた自身の肉体であった。
アイリスは自身の肉体に手を伸ばしたが、手は幼き自身の躯に触れること無く透過するだけであった。
次に訪れたのはアイリスが知る母より少し若い母だった。
美しい海の蒼の瞳、光には艶で返す金髪。オフショルダーのドレスは膝下までを覆い隠していた。腰近くまで伸びた髪はゆっくりと揺れ、幼いアイリスの顔を見て笑みを零していた。
そして頬に手を添えて、親指が唇を撫でる。若い母の指から流れ出たのは赤い至宝。

――起きて、小さなアイリ。

生まれた時、一年ほど生死の境目を何度も行き来して。一日に何度も生きて死んで息を吹き返して。こんな風に生死の海で浮かんで沈んでを繰り返して行く。沈む度に死に触れていく。
一日に何度も母の血を頂いても幼いアイリスの瞳は開くことはなかった。

――……これが、幼い頃の僕、か。

日に日に悲壮感が増していく母の顔を見ていれば、胸が痛んだ。
産後の不調を押し、良く自身に会いに来てくれていた母は次第に顔に悲しみを浮かべていく。
海の蒼い瞳は日々を追う事に暗さが増していくのが分かる。
それもそうだろう。腹を痛めて産んだ子が産声を上げずにずっと眠りこけているのだ。何をしても目覚める様子が無く一年が経過しようとしているのなら、産後死亡と判断され密葬されても不思議では無い。未だ民草にはアイリスの出生が知らされていないのだから、親族だけで密葬を済ませてしまえば誰にも知られることは無い。それでも母は諦めていなかった。必ず起きる。必ず目覚める、と。
血を与えられつつも産声はもちろん身じろぎ一つしないその様子から親族の大半は既にアイリスを諦めているというのに。
“後の出来損ない”を処分しなかったことを幸運と叫ぶべきか悲運と嘆くべきか。アイリスには分らない。
自身を出来損ないと詐称するアイリスには、幼い自身は只の肉塊にしか見えなかった。
でも、今までの道は間違いでは無かったと胸に手を当て、呟いた。

過去は変えられない。後悔しても遅いというのに。

381名も無き異能都市住民:2020/05/09(土) 00:38:06 ID:ORmT3UkU0
>>380
―◆◆2/目覚め◆◆―

場面は急激に切り替わる。
生死の海を泳ぎ切り、無事に日常生活を送れるまでに成長した自身の姿があった。おおよそ未就学児程度にまで成長した自分の姿。
母に似た顔のせいで、男児でありながらも女児の様に扱われていたこともあった。面白半分で着せられた女児用のドレスで駆け回る自身の姿だ。思いのほかに似合ってしまい、時折着せられる様になってしまったドレスだったはずだ。そしてこの歳の頃程から髪を伸ばすように言われたはずだ。当時は理由も分らないまま、はいっ!と元気な声で肯定していたような気がする。
自身の住まいの城の庭園を駆け回る自身をゆっくりと追いかけてくるのは赤毛の少年だった。

――幼い頃のヴィルか。懐かしいね。アイツはこんなにも小さな時から一緒だったのか。

アイツ――ヴィルヘルム・フォン・スタールダッハ
アイリスが末席を汚すルズィフィール本家に最も近い血統であるスタールバッハ家の男の子。
始祖がルズィフィールの兄弟であり、ドラゴンキラーでもあった。
歳は、確かアイツの方が少し上で、4つくらいお兄さんだったかな。
それだけの年齢差があったからか、初対面で呼び捨てにしてから僕はヴィルに酷く怒られたんだ。拳骨付きでね。

――本家の御子になんてことをっ!!アイリス様!!

名も知らない貴族が吠えた。
「いいよ」と応える幼い頃の自身の声は甲高かった。体は小さく、華奢で。だから、幼いヴィルにも簡単に持ち上げられた。ヴィルの体は、年齢に対しがっしりとしており、この頃から、少し粗暴な面も見え隠れしていた。
それからだ。子供は子供に任せよう、という大人独特の面倒くささを含んだ言葉が切り出された。
政の話や子育ての話、その他積もる話ももあるのだろう。大人達は城の中へと消えていく。
幾らかの警備の者が庭園へと配置された後、自身はヴィルとずっと遊んでいた。
僕がヴィルを追いかけ回しても追いつけないけれど、ヴィルが僕を追いかけたら簡単に捕まった。
それからヴィルは僕に手加減をするようになって、時々転ぶ僕の手や肩、時々首の根元を掴んで転ばない様にしてくれた。
幼いヴィルは可愛らしいな、と自身は光景を眺めるだけにあった。
今では二メートル近い身長に自身の倍近い体重を持つ大男になってしまったが、全身が筋肉で引き締まった体は、職人に彫らせた石像の様であった。

――この頃は幸せだった。

この頃はコンプレックスを感じることも無く、少しおバカだけど、ヴィルがたくさん遊んでくれるからヴィルが滞在している時は本当に楽しかった。毎日毎日、食事中に眠りこけそうになるほど遊んで、いろんな遊びをして。こっそりと市井に脱走して数時間にも及ぶお説教をされたり。今しか出来ない楽しい日々だったのだ。
楽しい時間はすぐに終わり、苦しい時間は長く感じる。そんな風に思う、数年前の話だ。

これから先、幼い自身により、自身のコンプレックスが晒され、自身に叩き付けられるのだと思えば、アイリスの気は重い。もうすぐ。もうすぐだ。自身の記録が自身に告げる。
アイリスのコンプレックスは幾つもある。
アイリスは戦闘が苦手であった。
剣を振るう才は無いとすぐに分かった。
嗜み程度であるが、剣術は使える。だが自身の家名である流派を継げるほどの才は無かった。
剣を振るえば腕がブレる。もう一度剣を振るえば今度は足がブレる。
数年続けて剣を満足に振るえないのだ。剣が悪いわけでは無い。自身の体に合わせてソードスミスに作らせているのだ。体の変化に合わせて作られていく剣は五本にのぼった。
数年、素振りをさせてみても進歩の様子を見せない自身の訓練を見ていた騎士団長が目を瞑り、首を左右に振った。
アイリスの選択肢は剣だけでは無い。他の武器という選択もあった。結論からいえば、他の武器も軒並み剣と同等のレベルであった。
残るのは魔法という選択肢のみだった。
アイリスの母は魔法が非常に強力無比であることが知られている。また父も研究者として優秀である。自身の城の固定化を始めとして、魔法使いの杖無しで天候操作や隕石を降らせる魔法まで使いこなすのだ。土塊から対城ゴーレムを作り出すことも出来る。補助から攻撃、回復まで何でもござれの大魔法使い。詠唱無しで地形を変動させる規模の大規模魔法を使うことが出来る母だ。魔法使いとしては一流といっても良いだろう。
そんな母の血を半分持つ自身であるからか、魔法使いとして従軍できる程度には魔法を使えるだろうと高をくくっていたところは無いとは言い切れない。
でも、母はおろか、従軍魔法使いの足元にも及ばなかった。
自身は焦っているのが良く分かる。理由は簡単だ。
魔法を使用するためのリソースである魔力、肉体を駆け巡る魔力、マナの大部分は魔眼に持って行かれているからだ。
ならば大気中にある魔力、オドを利用すれば良いのでは無いかと思われたが、そのオドをマナに変換しても大半は魔眼に持って行かれているというのが現状だった。
魔眼が魔力を喰らい尽くす。出来た瞬間に魔眼に吸い上げられる。
この状況を変えなければ生きていけないということは、あの人の血肉を喰らい尽くして知ったことだ。
何かしらの才が無ければ、この家では生きていけない。あの人は姉達に無い何かの才を持っていなかったから僕の血肉になっても誰も、何も言わない。
死んだことすらも忘れ去れて、生まれたのに生まれなかったという、存在すら許されない人だ。
血統図にも残らないということは、全てを否定されるということ。これが意味することは、後世の世代の餌にされる、あるいは国土を守る結界を維持するリソースを稼ぐために生かさず殺さず力を限界まで搾り取られるということ。
民草の為に永遠に苦しみ藻掻くか、後世のために殺されるの違いしか無い。ならば自身は生きることを選ぶ。今は生きることを許されているのだから。
アイリスの魔眼は過去に記録が無い異能であった。
調査官が本人から施された視界共有の魔法で知った魔眼は■■の魔眼のように問答無用で殺すわけでは無く、切断に特化した魔眼であった。
視界共有の結果、5秒で調査官は死んだ。
二番目の調査官は3秒で廃人になった。
三番目の調査官は3秒で視界共有を切ってもらうよう頼み込んだ。そもそも人形(ヒトガタ)が見て良い光景では無かったのだろう。
調査官には脳の容量が足りなかったのだろうと、簡単な書類数枚で死亡の処理が進められた。
三番目の調査官の調査の結果、額の第三の目、或いは左目に宿った『見たものを殺す眼』である魔眼の亜種では無いかということだった。
魔眼を使えば、視界は線に埋め尽くされる。埋め尽くされた線をなぞれば、切り傷が入った。それがどのような堅いものでもだ。堅い金属でも、巨大な木でも。強大な龍の鱗でも同様だった。
■■の魔眼のように点を突くことで不死すらも殺すような性能では無いが、いずれは『あらゆるものを”切断できる”眼になる』可能性を示唆され、ルズィフィール上層部へと報告された。ルズィフィール上層部より極める価値があると判断された異能であるため、アイリスは生きることが許されていた。上層部は剣の才があれば、と嘆いた。
そもそも何故ルズィフィール本家の御子に才能が求められるかと言えば簡単だ。
貴族であるから必ず軍、あるいは騎士団の要職に就く義務があるし、貴族として戦場の最前線へ赴くことは当然であるためであり、最も簡単な暗殺対策でもあった。
戦場では背後より部下に討たれる上官がいるが、暗殺であろうとも真祖の吸血鬼であるルズィフィールを殺せるという可能性は途轍もなく少ない。少ないが、そのような事故が起こる可能性すらも許されない。
そして、万の兵士を個ですり潰せる力があれば、万が一玉座の間まで踏み込まれようとも対処できるからだ。

――僕は眼に生かされている。

382名も無き異能都市住民:2020/05/09(土) 00:38:48 ID:ORmT3UkU0
>>381
―◆◆3/幼なじみ◆◆―

スタールバッハ家の者が住まう城にアイリスが泊まりに来ていた。
一緒に遊んでいた時から数年経ち、アイリスは美しく成長した。
母親似の顔であるということ、言いつけ通り髪を伸ばしているからか女性にも見られることも増えていく。世話をするメイドが二名いるが、何故か女性扱い。男性用の服を着ようとすると、とんでもない!と止められる。
女性と間違われていく様を見てほくそ笑む母の姿に思わず拳を握りしめたことは一度だけでは無い。どこに行こうにも女性扱い。そんな状況に呆れを通り越してもう何も感じなくなっていた。
スタールバッハ家にはもう何度も来ており、自分の家同様にリラックスして過ごせる様になっていた。
毎年泊まる時の部屋は同一だった。綺麗に星が見える部屋。その部屋はアイリスの部屋として使用されていくこととなる。
採寸をされた記憶が無いのに自身にぴったりな衣服を用意された上、可愛らしい下着まで用意されていたことは流石のアイリスもドン引きした。女性名にして母似の容姿、加えて髪を伸ばしていれば女性と思われても仕方が無い、と自身を慰める様は滑稽であり無様だった。
いつもの様にヴィルと話し込んで、少し眠たくなったころ、ベッドで二人で寝転がり話を続ける。
これからのこと、異能のこと。そろそろ結婚しないといけない空気ってキツいよね。会話の種は尽きることなく、気付けば二人揃って眠りに落ちて、あらあらうふふといった視線にも慣れて。
潔白を証明しようにも恥ずかしがらなくても良いとからかわれる始末。自身は男だと何度も主張すれども、慈愛の目で見られる。流石に素肌を晒してしまえばこの疑惑を簡単に晴らすことができるのだが、流石に脱ぐわけにはいかない。証拠を出せないことには完全に否定できずに女の子扱いはズルズルと続いていく。
それから少しして。アイリスはスタールバッハ家に身を寄せる機会が多くなった。ルズィフィールにおけるクーデターの可能性が分かったからだ。打倒王家を旗印にしたクーデターの芽を完全に摘み取るまでスタールバッハ家に避難しておきなさいと伝えられた。
スタールバッハ家の者と食事を摂る際、アイリスはスタールバッハ家の者と毎日毎食共にしていた。
毎食言われるのが、もっとたくさん食べなさいということだ。アイリスは小食で、体も細く華奢だった。
ヴィルが言うには、細枝と変わらないということだ。だからいつまでも幼子の様に小脇に抱えられたりするのかという感想が出た。
たくさん話した。たくさん遊んだ。たくさん喧嘩もした。喧嘩の数だけ仲直りもした。時々殴り合ったけれど、眼の力は使わなかった。
そして、あの言葉が出た。

――なあ、アイリス。お互い行き遅れていたら俺様達、結婚しようか。
――出来ないよ。ヴィル。仮に出来ても難しい。誰も幸せになれないんだ。
――俺様が相手が嫌なのか?他に好きな奴がいるのかよ。
――いいや、そうでは無いんだ。
――俺様達が近親だからか?
――ううん、そうじゃない。
――だったら何なんだよ。
――僕、男の子だよ。
――ちっ、またそれかよ……オメーが真剣に考えてねえことは分かった。じゃあな、おやすみ。
――……今の政治的な理由で女の子になったら、どうしようかな。ヴィルなら良いかな。

自身の”心臓”が跳ねた気がした。僕は男の子だぞ。男同士の結婚だなんてどうするんだ。出来るはずが無いだろう。誰も祝福してくれないし認められないだろう。
そもそも僕には“そっちの気”は無い。
僕たちの祖先が近親婚を繰り返して吸血鬼としての純度を高めていたのは知っているけれど、流石に男同士での結婚はあり得ない。
そもそもこの頃の自身は男であった。齢二桁に差し掛かって数年。胸の膨らみすらも無い時点で何か気付かないのか。
外見から見ても分からない位胸が小さいだけならまだしも、真っ平らなのだ。
それでも自身を男だと気付かないヴィルは阿呆なのかと頭を抱えることもあったが、それもヴィルの個性だと思えば良いだろう。理屈で物事を語るのでは無く、心に働きかける言葉を一方的に投げつけてくるヴィルなら。
しかし、結婚となれば話は変わる。
まず、自身達は貴族である。貴族の責務のうちの一つは子、即ち次代を残すことである。
男女の組み合わせならば当然、出来るだろう。だが男同士の組み合わせではどのように足掻いても、逆立ちしても次代を残せはしない。
しかもルズィフィール本家とスタールバッハ家の子となれば、次代の子は絶対に残さなければならない。子は多ければ多いほど良いし、良質の子の次代の子は更に次代の子を残していく。それを繰り返すことでルズィフィールは発展してきたのだから。

383名も無き異能都市住民:2020/05/09(土) 00:39:24 ID:ORmT3UkU0
>>382
―◆◆4/ルズィフィール◆◆―

ルズィフィールの歴史は、神々が地上にいた頃まで遡ることが出来る。
本家に残る石版によれば、ルズィフィールの始祖はさる天空神の子だと述べられている記録がある。
或いはさる半神半人に連なる血筋だとも言われている。本家に残る血統図を辿れば、半神半人の王の子であったとされている。血統図以外に明確な記録が無いために、どれが正解でどれが不正解かが分からない。
全て不正解もかしれない。しかしどの記録にも名前は残っているのだ。その名が出てくるのは、神と人が混在した時代。
半神半人の王は若い頃は無敵の傍若無人であった。後の親友と出会い、後に旅に出て彼は変わった。
ルズィフィールの始祖は、かの王との長く苦しい旅路に同行し、旅路の中ではぐれてしまったのだ。
それでも、神はルズィフィールの始祖を見守っていたのだろう。
彼女はとある王と出会う。
それが月の王だ。
月の王は美しい。そんな彼と会い、話をしたいと思ったルズィフィールの始祖は、月の王を追いかけた。
太陽が沈み、月が顔を覗かせる頃、月の王は問うた。
月は好きか、と。
ルズィフィールの始祖は応えた。
ええ、とても美しいですわ。罪を暴く光ですもの。美しくないはずがございませんわ。
月の王はそうか、と呟いた。
それから月の王は常闇の道を進む。そして、ルズィフィールの始祖に振り返り、ついてくるのならついてこい、と告げた。
それからルズィフィールの始祖は月の王の旅路に同行する。
月の王の特徴は石版にて伝えられてきた。
美しい髪に万華鏡の瞳。そして全てを引き裂く赤い爪。
虹色の瞳で見られた時、ルズィフィールの始祖は心を射貫かれた。心を鷲づかみにされたような、心臓がドクン、と跳ねた様な、そんな奇妙な感覚。
始祖もこの頃は人の枠にギリギリ収まっていた。だが、月の王に魅入られた。
月の王と行動を共にするには人の生は短すぎた。遠い月に手を伸ばす様に、いつかは身は枯れ、痩せさらばえる。
月の王と生の道を、月の道を歩きたいのに歩けないと分かった時、始祖は月の王に頼み事をした。

――貴方様の全てを下さい。さすれば我が子孫は貴方様を追いかけるでしょう。

あれからだ。
あれから数年経っただろうか。
月の王から下賜された■は始祖の肉体を人外のものへと塗り替えようとしていた。
陽光を浴びれば躯は灰へと変わった。
月の王の精は始祖の胎内へと残った。
後に始祖は、自身の体を作り替える術を得て、自分以下の世代の為に、人間の男女の営みと同じく、過程を経れば子供が出来る機能を人間時代の躯から引き続き残した。
それがルズィフィールの者の古い基本設計となる。
そして成長する躯を設計し、ある程度の肉体年齢をコントロールする術を残した。最後に然るべき時に然るべき世代交代を促す呪いと力を求める呪いを残した。
これがルズィフィール本家に残る、始祖が残した最も旧い記録だ。
そして、月の王と別れた地を領土として後のルズィフィール王朝が産声を上げた。

384名も無き異能都市住民:2020/05/09(土) 00:40:12 ID:ORmT3UkU0
>>383
―◆◆5/結婚◆◆―

これはもしかしたらあり得るかも知れない未来の話。

腰近くまで伸びた緩いウェーブの髪。今は綺麗に纏め上げられており、美しさに拍車をかける。瑞々しい唇。全体的にほっそりとした体格であれど、大きめの胸、細い腰、スラリと長い手足。
陽光を知らない白い肌は玉肌と呼ばれるもので、若さが溢れ出していた。
化粧を施され、鏡に向き合うアイリスはウエディングドレスを身に纏っていて。
ここは急遽用意された待合室。結婚式場は王城。
海と山を一望できるこの王城の最上階こそが婚姻の儀の会場である。
新郎、ヴィルヘルム・フォン・スタールバッハ
新婦、アイリス・フォン・ルズィフィール
お互いに王族であり、新婦であるアイリスはスタールバッハ王家に嫁ぐこととなる。
本日から一週間は各国の来賓を招き、両国の臣民と共に婚姻を祝う。
呑めや歌えやの享楽の一週間が始まる。これらの資金は全て国の貴族が肩代わりすることになっている。
王族の婚姻は一大イベントである。日頃から娯楽に飢えている臣民は仕事の手を止め、各々の好きなように集まり、呑んで歌って、陽気に騒ぐのがこの国のしきたり。
商売人が商売に精を出し、臣民達は肩を組んで騒ぐ。
この間、騎士団が国内を警備することになるが、結婚式当日から三日間、総帥は式に出るため欠席。
国に所属する者や薬師や水魔法の使い手は治癒に二日酔いの対処に追われる。喧嘩は度々起こり周囲の人々は観客として彼等を円上に取り囲んで煽り、時には押してステージに押し上げる。日頃の鬱憤の解消の意味合いも大きくなり、拳と拳でわかり合う“強敵(とも)”が出来る。
そんな喧噪に駆り出される騎士団や薬師また水魔術師。彼等は彼等だけで後日、祝うのだが。
男衆の大半は地面に寝転がり眠り、起きては酒を呷り、祝う。それが彼等流のお祝いだ。

「ヴィル、君が僕の旦那様になるのか。昔からは想像できなかったね。」
「むっかしから言ってたんだがなぁ。何処かの誰かさんは気付かなかったみたいだぜ。」
「……誰だろうね。」
「ふんっまあいい。綺麗だぜ、アイリ。」
「遅い。そういうのは部屋に入ってから真っ先にいうことだ。全く君は……。
 ああ、そうだ。スタールバッハの城の僕の部屋は変わりない?あそこが僕の部屋になるのだろう?」
「昔から変わってねーよ。今頃侍従達が張り切って掃除していると思うぜ。
 手狭になる可能性も考えて広くしておいた。俺様に感謝しろよ。」
「はいはい、ありがとう。」
「……なぁ、長かったな。」
「……そうかな。僕は長いとは思わなかったよ。引き継ぎもあるし挨拶回りもしてきたし。
 国土の殆どを回ってきたんだよ。それまでに色々あったんだよ、色々ね。」
「そりゃお疲れさん。今日からアイリは俺の妻か。」
「そういうこと。最高の“落とし所”だよ。ヴィル、僕のことは好き?」
「――愛してるよ、ばーか。」
「あっ、せっかく綺麗に整えたのにやり直しじゃ無いか!……ヴィル………き……」
「あん?なんだって?」
「ヴィル、好き、愛してる。こんな僕を受け入れてくれるのは君だけだ。」
「ばーか。ったりめーじゃねーか。」
「……ありがとう」
「安心しやがれ。俺様はお前を絶対に離さねぇ。俺様がお前を護ってやるよ。」
「はいはい、ありがとうございます愛しの旦那様?」
「はんっ、いいから準備しろよ、待ってるからな。」
「ああ。待っていて。今までで一番美しい姿で君に逢いに行くからさ。」

新婦、入場。
その声の後、父のエスコートにより、ヴァージンロードを進む。
純白のドレスに50m程のヴェールを持つのは小さな子供達。その中にルゥも含まれている。
ヴェールの長さは立場の高さを示す物。長ければ長いほど高貴な人物であるといえる。
アイリスは国の王子を経てお姫様となり、王女となる。
ならば、国の貴族の子息子女がベールボーイ、ベールガールを務めるのは当然だった。
婚姻の言葉、指輪の交換と式は恙なく進んでいく。
誓いのキスは、在り来たりで。
城外へパレードする時になれば、ヴィルヘルムはアイリスをお姫様抱っこのまま王都の中心街を進む。
恥ずかしいよ、というアイリスだが、それでもヴィルヘルムを信頼しているのか、暴れない。
見せつけてやれ、と笑うヴィルヘルム。
初々しい恋人同士に見えても、これから夫婦になる二人に、祝福の花の雨は止むことを知らない。

「――今度はスタールバッハの王城でもう一回だよね。」
「ああ、そうだ。」
「恥ずかしい……けど、僕は幸せだ。ヴィル、これから末永くよろしくね。」
「ああ、幸せになろう。アイリ。」

そんな夫婦になったばかりの二人は、臣民が集まる広場で、公衆の面前で、アイリスにキスをした。
今度は、アイリスがヴィルヘルムの首に手を回してアイリスもキスを返す。
ヒューッとなる口笛、きゃーと沸き立つご婦人達、嫉妬に打ち震える者達。反応は様々だが、彼等は皆、アイリスとヴィルヘルムの婚姻を祝っていた。

スタールバッハの王都でもう一度式を済ませた二人は、陛下に対面していた。
両家の間で決まったことは、両国の山側と海側に両家保有の別荘を新築することや政治関連、国防の観点など多くの事柄が話し合われた結果だ。
そして、アイリス・フォン・ルズィフィールは夫婦揃って名を改めることとなる。
アイリス・ウェダ・フォン・スタールバッハと。
ヴィルヘルム・アイダ・フォン・スタールバッハと。
アイダ・ウェドという龍は天を支える虹龍のことだ。
虹の赤はアイダ・ウェドの男性部分を。虹の青はアイダ・ウェドの女性部分を。
そして、アイリスは赤い髪飾りを。ヴィルヘルムは金色のアクセサリーを肌身離さず持ち続ける。
そして数年後。
恋人夫婦と呼ばれた夫婦は、次代を孕む。赤ん坊の鳴き声はスタールバッハの王城を駆け巡ることになる。

385かおるんるん:2020/05/09(土) 00:54:28 ID:ORmT3UkU0
アイリス・ウェド・フォン・スタールバッハだ


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