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決闘バトルロイヤル part2

1 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/21(火) 00:26:13 6nhUOSFQ0
――決闘開始の宣言をしろ、磯野!

――決闘開始ィィィ!

※前スレ
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1653207375/


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2 : ◆wJPkWOa93Q :2022/06/21(火) 00:45:07 etM7dxW20
投下します


3 : みらいいろ ◆wJPkWOa93Q :2022/06/21(火) 00:45:39 etM7dxW20
「シンクロ召喚、そしてエクシーズ召喚か……」

「私も初めて聞いた。シンクロ召喚ではない、新たな召喚方法とはな」

「シンクロ? アストラルは知ってるのか?」
『いや、見たこともない』

ハ・デスの殺し合いの宣言から、その会場へと転送された直後、九十九遊馬は別次元のデュエリスト達と遭遇した。
アポリアと名乗る巨漢の男、その肩幅及び腕と手の太さは丸太のようであり、本人もロボットと名乗っていた。
何より彼は、シンクロ召喚が存在する世界からやってきたと言っていた。

『ハ・デスの言っていたことは、本当かもしれないな。我々は無数の世界から呼び集められてしまった……』
「アストラルも、なんか俺以外に見えてるし、ここもバリアン世界みたいなもんなのかな」

遊馬に取りつく正体不明の生物、アストラルはその姿を基本は遊馬にしか視認されない。
だが、この世界ではその姿は実体化され、誰でも確認することが可能となっている。
ハ・デスの行った何かしらの干渉か、それともこの世界がそういった存在なのか。

「異世界なら僕も行ったことがあるよ。そこではデュエルモンスターズの精霊も実体化していたし、キミの相棒も同じなのかもしれないな」

そして、眼鏡を掛けた聡明そうな青年アモン・ガラム。
シンクロ召喚もエクシーズ召喚も存在しない世界の住人らしい。
ただし、アポリアとは共通の知識として初代決闘王武藤遊戯を知っていたことから、同一世界の別の時間軸から呼ばれたのではないかと推察された。
お互いに海馬コーポレーションや、万丈目財閥などの大手企業を知っていたこともそれを裏付けた。

そして彼らアストラルを含む四人の最大の共通点は、デュエルモンスターズが存在しているという点だった。

「……良かった。貴方達の世界はまだ……」

「どうしたのだ、美遊?」

アポリアが怪訝そうに、様子を伺おうとする。その声の主はまだ小学生程の小さな幼女だった。
美遊・エーデルフェルトと名乗る少女は、唯一この中でデュエルモンスターズが存在しない世界の住人だった。

「美遊、少し話を聞きたいんだが」
「アモンさん……?」

光に反射した眼鏡を指で上げながら、アモンも美遊に視線を向けた。

「…………何の真似だ」

「それはこちらのセリフだ。アモンよ」

美遊の眼前でアモンの翳された掌はアポリアに掴まれて止められていた。
当の美遊は目を見開き、遊馬は驚嘆している。

「おい、何なんだよ。どうしたんだよ二人とも!?」
「遊馬、アモンは美遊を殺害しようとした」
「ええ? なんで、そんな……」

「誤解だ。と、言っても信じてはくれそうにないかな」

僅かに苦笑しながら、アモンは余裕を崩さない。

「何ッ!?」
「アポリアのおっさん!?」

次の瞬間、アモンから強烈な圧のようなものを感じ、アポリアの優に2メートルはあろう巨体を吹き飛ばされた。


4 : みらいいろ ◆wJPkWOa93Q :2022/06/21(火) 00:46:14 etM7dxW20

「僕が従える精霊が教えてくれるんだよ。美遊、キミはただの人間ではない。
 人の姿をした膨大なエネルギーの塊……世界を滅ぼすなんて、造作もないほどに」

「なん、で……」

「聞いたことがある。日本には神稚児と呼ばれる伝承が存在すると。曰く神に近い子供で、何処ぞの救世主のように神性を発揮するのだとか。
 確か……七つまでは神のうちというのかな? 七歳を過ぎれば人としてその力を徐々に失うらしいが、キミの場合はかなりの力を残存している」

『馬鹿な、彼女の中にそんなものがあるなど……!?』

アストラルも世界を滅ぼす程の力に心当たりはある。実際にハ・デスに拉致されるまでは、ドン・サウザンドと世界の命運を掛けた戦いに臨んでいたのだ。
だが、目の前のこの小さな少女にそんな力があるとは到底思えなかった。

「キミは僕達の情報交換を聞き終えた後、僕達の世界に触れ、良かったと安堵していた……。
 キミの力が発端となって、キミのその世界は破綻したと考えるのは僕の邪推だろうか?」

「……厳密には、違うけれど……似たようなもの」

美遊の住む世界は滅亡に危機に瀕していた。それを救うには、願望機を宿す美遊を犠牲にする他ない。
世界を救うべく、ある正義の味方はその方法を実行しようとし、正義の敵に……美遊だけの最低悪(みかた)からの妨害を受けた。

―――美遊がもう苦しまなくていい世界になりますように。
やさしい人たちに出会って、笑いあえる友達を作って、あたたかでささやかな。

幸せをつかめますように。

ただ、妹を想う兄の。
そんなありふれた。それでいてささやかな願いを、願望機は聖杯は叶えてくれた。
新たな別世界に飛ばされ、掛け替えのない友達と仲間を作って、彼女は再び自らの世界へと帰還する。

けれども、その世界もそして美遊も救おうと、親友であるイリヤスフィール・フォン・アインツベルンの奮闘も空しく、同じく仲間のクロエ・フォン・アインツベルンは脱落し、世界は……。
美遊本人も巨人に飲み込まれ、あの世界に残されたのはイリヤ一人だけだろう。

「その力の性質は願望を叶えることだな。ハ・デスが対策をしないとは考え辛いが、もしも邪悪な存在の手に渡れば危険すぎる。
 悪いが、万全を期してここで排除させてもらう」

「……」

もしも、美遊が最初から犠牲になっていれば……少なくとも別世界の住人であるイリヤ達は巻き込まずに済んだかもしれない。
彼女たちはこちらの世界とは無関係なのだから。

「それは、無理」

「キミは聡明だと、思っていたんだが」

「もう私だけの、命じゃない。お兄ちゃんが……クロが……みんなが、イリヤが繋いでくれた命を、貴方にはあげられない」

「滅んでいるんじゃないのか、キミの世界は」

「諦めない……私はイリヤを信じてる……イリヤも私を信じてる。だから、ここで諦める訳にはいかない!」

淡い希望だ。ただの、都合のいい願望かもしれない。でも、それでもイリヤはきっと諦めていない。
あの世界を救うために、自分の為に、皆を助け出すために、どんな絶望でも抗い、今でも戦っていると確信していた。

「ああ、そうだぜ。かっとビングだ。美遊!」

事態の変化に戸惑っていた遊馬が決意を固めたように声を張り上げる。


5 : みらいいろ ◆wJPkWOa93Q :2022/06/21(火) 00:46:42 etM7dxW20

「事情は良く知らねえけど、そのイリヤって娘はどっかできっと頑張ってるんだ。なら、絶対に諦めちゃ駄目だ!」

多くの仲間が倒れた。
かけがえのない好敵手が、最悪の敵に回った。

最高の好敵手が、死んだ。

体が枯れる程の涙を流してきた。けど、それでも遊馬は諦めなかった。

だからこそ、同じようにかっ飛ぼうとしてる女の子を見捨てるなんて、出来ない。
自分のように、友達を失わせる辛さを、もう誰にも味合わせたくない。

「……ああ、その通りだな。遊馬よ……」

アポリアも立ち上がり、強い敵意を込めた瞳でアモンを睨みつけた。

「やれやれ、三対一とはね。……腕力には自信があるが、少しキツいかな?」

口ではそう言いながら、アモンからは焦りというものは感じられない。相手二人が子供であるにしても、ただの子供ではないのは明白だ。
つまり、侮っているのではなく、冷静に戦力を分析し勝てると踏んでいる。

「アモン、私とデュエルだ」
「なに?」
「デュエル? だったら、俺も……」
「いや、私がいく。遊馬と美遊はそこで見ていろ」

アポリアが子供たちを庇うように腕を広げ、デュエルディスクを展開していく。

「……良いだろう。僕が勝てば、美遊を抹殺する」
「私が勝ったら、その考え改めて貰うぞ」




「「デュエル!!!」」




『アポリア:LP4000』 VS 『アモン:LP4000』




「私の先行、ドロー!」

アポリアはその巨大すぎる手の先で器用にカードを挟みながら、デッキからカードを引き抜く。

「《グランド・コア》(未OCG)を召喚」

《グランド・コア 攻撃力0》

「手札から魔法カード《カオス・ブラスト》(未OCG)を発動、デッキからレベル1機械族モンスター3体を墓地へ送り、レベル4以下のモンスターを破壊する。
 デッキからワイゼルモンスターを3体墓地に送る。その後《グランド・コア》を選択、破壊する!」

(アポリアが墓地に送ったカード いずれも未OCG)
《ワイゼルT》《ワイゼルG》《ワイゼルC》

《グランド・コア》(破壊)


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6 : みらいいろ ◆wJPkWOa93Q :2022/06/21(火) 00:47:26 etM7dxW20

『自分モンスターの自壊だと……墓地肥やしを狙っているのか?』

アストラルの見立てでは、この行為は決してアドバンテージを得られるものではない。
相手に一切の損害なく、カードを消耗しているだけだ。
強いて言えば、空っぽの墓地にカードを送り込むことで再利用を狙うと考えるのが自然だろう。

「グランド・コアが破壊されたことで、その効果を発動する。
 《機皇帝グランエル∞》(アニメ効果)《グランエルT》《グランエルA》《グランエルG》《グランエルC》(それぞれ未OCG)をそれぞれ1体ずつ特殊召喚、そして合体せよ!!」

次の瞬間、機皇帝グランエル∞を軸としてそれぞれのモンスター達が手足を形作り、1つのロボットとして完成した。

《機皇帝グランエル∞ 攻撃表示0》
《グランエルT 守備表示500》《グランエルA 守備表示0》《グランエルG 守備表示1000》《グランエルC 守備表示700》

「《機皇帝グランエル∞》の攻撃力は私のライフポイントと同じになる」

《機皇帝グランエル∞ 攻撃表示4000》

「なるほど、それぞれのパーツから成り立つ、5体で1つのモンスターというわけか」

「その通り、ゆえにグランエル∞以外のモンスターでは攻撃できない。
 ……どちらにせよ、先行に攻撃は許されてはいないがな。カードを1枚伏せてターンを終了」

「僕のターン、ドロー」

5枚で1つのモンスター、奇遇だなとアモンは内心で苦笑した。

「《手札抹殺》を発動、お互いに手札を墓地に捨て、その枚数だけカードをドローする」

「私の手札は3枚、これらを捨て3枚ドロー」

「僕は5枚を捨てて、5枚ドロー。
 ……そして、先ほどの手札抹殺で送られた墓地の魔法カード《究極封印解放儀式術》(未OCG)を発動する!」

「墓地から!?」

「手札または墓地に封印されしカードが5枚存在する時、発動できる。僕の墓地には4枚、そして手札には1枚の封印されしカードが存在する。
 よって、墓地の封印されしカードを全てデッキに戻し、手札から封印されしカードを1枚墓地へ送る。
 デッキから《究極封印神エクゾディオス》(アニメ効果)を特殊召喚!!」

《究極封印神エクゾディオス 攻撃表示1000》

『エクゾディアだと……!?』

「そうか、アモンが従える精霊とは、エクゾディアか!
 しかも、初手からエクゾディアの手足が4枚……なんという引きだ……」

デュエリストと名乗る者ならば、その最強のカードを知らぬ者はいない。
手札に5枚のカードを揃えた瞬間、いかなる状況にあっても勝利が確定する最強の特殊勝利カードの1つ。

『だが、妙だ。エクゾディアは手札に5枚揃わなければ意味がない』

アストラルが疑念を口にする。
手札抹殺でカード交換とデッキを圧縮するのは、エクゾディア完成の可能性を高める為だと理解できる。
だが、エクゾディアは手札になければ何の意味もないカード群だ。
あのエクゾディオスというモンスターは、非常にエクゾディアに酷似している上に封印されしカードに関する効果を持っている反面、手札にあるカードを強制的に墓地に落としている。
ここだけ見れば、エクゾディアと噛み合った効果ではない。


7 : みらいいろ ◆wJPkWOa93Q :2022/06/21(火) 00:48:28 etM7dxW20

「エクゾディオスの攻撃力は、墓地の封印されしカード1枚につき1000ポイントアップする。今、僕の墓地に眠る封印されしカードは1枚、よって攻撃力は1000。
 更にエクゾディオスの攻撃宣言時、手札またはデッキから封印されしカードを1枚墓地へ送る。そして、墓地に封印されしカードが5枚揃った時、僕の勝利は確定する」

「手札ではなく、墓地でエクゾディアを揃えるカードだというのか!?」

「手札から魔法カード、《拡散する波動》を発動。ライフを1000払い、僕の場の魔法使い族モンスター、エクゾディオスを対象にする。
 このターン、他のモンスターの攻撃を放棄する代わりに、そのモンスターは相手の全モンスターに攻撃しなければならず、この戦闘で破壊されたモンスターは効果を発動できない」

『アモンLP:4000→3000』

「全部のモンスターに攻撃……不味い、アポリアおじさんのフィールドには5体のモンスター、計5回の攻撃……4回目でエクゾディアが揃ってしまう!」

美遊は驚嘆する。
エクゾディオスは攻撃時にエクゾディアを墓地へ送るカード、その攻撃数が増えということは1ターンの間にエクゾディアを完成させる事が可能になる。
この攻撃が通れば、アモンの勝利が決定してしまう。

「エクゾディオスでグランエルAを攻撃、天上の雷火――エクゾード・ブラスト!!
 そして、デッキから《封印されし者の右足》を墓地へ、攻撃力は1000ポイント上昇」

《究極封印神エクゾディオス 攻撃表示2000》→《グランエルG 守備表示1000》(破壊)

膨張したエクゾディオスから、放たれた赤い雷がグランエルAを粉砕する。

「ぐあああああああああ!!!」

モンスターを破壊した余波がアポリアを襲い、その巨体を吹き飛ばす。
だが、まだ終わらない。
その両腕に新たな雷を宿し、召喚者の次の攻撃宣言を待ち望んでいる。

「続いて2撃目、3撃目、エクゾード・ブラスト!
 封印されしカード2枚を墓地へ、攻撃力上昇」

《究極封印神エクゾディオス 攻撃表示3000》→《グランエルC 守備表示700》(破壊)
《究極封印神エクゾディオス 攻撃表示4000》→《グランエルA 守備表示0》(破壊)

「やべえ、これでエクゾディアのカードは4枚墓地に行っちまった……」
『次の攻撃で、墓地に5枚のカードが揃い、アモンの勝利が決定してしまう』

(アモンの墓地にある、封印されしと名の付くカード)
《封印されしエクゾディア、封印されし者の左足、封印されし者の左腕、封印されし者の右足》

「アストラルの言う通りさ。続いて4撃目……これで僕の勝ちだ!」

「く、リバースカードオープン!」

「無駄だ。エクゾディオスは相手の効果を受けない」

「いや、私が発動するのはエクゾディオスにではない。墓地の封印されしエクゾディアだ!
 速攻魔法《墓穴の指名者》は相手の墓地のモンスター1体を除外する。異次元へと消えて貰うぞ、エクゾディア!!」

《封印されしエクゾディア》(除外)

墓地から1枚エクゾディアが消えたことで、エクゾディアは未完成に終わった。


8 : みらいいろ ◆wJPkWOa93Q :2022/06/21(火) 00:49:47 etM7dxW20

「……封印されし者の右腕を墓地へ。
 残ったグランエルも全て一掃する」

だが、エクゾディオスの攻撃が止んだわけではない。攻撃力4000の怪物の拳はこのターン中、あと2度振り下ろされるのだ。

「馬鹿な、機皇帝グランエル∞の攻撃力は4000、エクゾディオスと同じ……相打ちを狙うのか?」

「いや」

《究極封印神エクゾディオス 攻撃表示4000》→《グランエル全パーツ&機皇帝グランエル∞ 攻撃表示4000》(破壊)

「エクゾディオスは破壊されない」

「効果に取れないだけではなく、破壊耐性まで……」

「カードを2枚伏せて、ターンエンド」


『アポリア:LP4000』
『手札:3 墓地:14』
『モンスター』
《なし》
『魔法・罠』
《なし》


『アモン:LP3000』
『手札:1 墓地:7 除外:1』
『モンスター』
《エクゾディオス 攻撃表示4000》
『魔法・罠』
《伏せカード2枚》


「私のターン、ドロー」

「アポリア、悪いことは言わない。サレンダーした方が良い」
「なんだと?」
「キミの時代にある筈のシンクロ召喚とやらを一切見せないどころか、機皇モンスターを大量に展開し、デッキを回してはいるがその効果を十全に発揮しているとは言えない。
 そのデッキは恐らく、シンクロ召喚にメタを張るカードなんじゃないか?」
「……そこまで、見抜いていたのか」

ライフはまだアポリアのが高い。
手札も多いが、反面場には1枚もカードがない。
アモンは手札もライフも劣るが、エクゾディオスという最強の耐性を持った攻撃力4000のモンスターが存在する。
理論上、破壊は出来なくともそれを上回る高打点で貫通ダメージを与えれば、勝ち筋はある。だが、やはり4000の攻撃力を超えるのは容易いことではない。
相手がシンクロモンスターならば、話は変わるが、アモンの推測通り機皇モンスターはシンクロキラー、その真価は対シンクロモンスターでなければ発揮できない。

「除外されたエクゾディアも、いつ回収されるか分からない。しかもエクゾディアなんて特殊勝利カードを主軸に組み込むなら、なおさら」

『美遊の言う通りだ。あのアモンという男、除外ケアを想定しないとは考え辛い。
 何かの方法でエクゾディアをサルベージされる前に長期戦は避けるべきだが、その前に実質無敵のエクゾディオスを除去しなければならない……』

「くっそ、アポリアのおっさん……」

美遊とアストラルの分析通り、不利なのはアポリアと言えるだろう。


9 : みらいいろ ◆wJPkWOa93Q :2022/06/21(火) 00:50:21 etM7dxW20

「私の世界は、いやアモン……お前の世界とも言うべきか、シンクロ召喚によって滅びたのだ」
「世界が、滅びた……?」

「なんで、カードゲームの召喚方法で世界が滅びちゃうんだよ!?」

「私の世界にはモーメントと呼ばれるエネルギー機関が存在する。
 それは人の意思に反応する。ある時期までは、モーメントとそれを加速させるシンクロ召喚により、世界は進化し栄えていた。だが、それは人の悪意に触れ破滅の道を辿ることとなる」

「それって……?」

人の想いによって、形を変えるエネルギー。
それはまるで、美遊にとって因縁深い聖杯のようであった。
美遊が天然物の聖杯であるならば、モーメントはいわば科学の力で生まれた聖杯なのかもしれない。

「ターミネーターという映画を知っているか? 私の居た未来はまさにそれだ。
 人の欲望が暴走し、その人を排除せんと機械兵器が人々を蹂躙し最後は人も機械も全てが滅び去った」

「さながら、キミはジョン・コナーといったところか」

「いや、アーノルド・シュワルツェネッガーだ。
 ……私は、その破滅を変える為に未来からやってきた」

「なおさら、分からないな。人の欲望が招いた破滅を知りながら、何故美遊を庇うんだ?
 彼女の中にある力はその欲望を膨らませ、破滅を引き起こすかもしれない。キミの言うモーメントとやらのように」

「私は見たからだ。破滅を齎すであろう筈の、シンクロ召喚が正しき者の手により進化する姿を。
 絶望ではなく、希望を掴み取るその強さを。
 私が与えた絶望を悉く跳ね除けた絆の力に、私は希望を思い出した。だからこそ同じく希望を持ち、強き絆を信じる美遊を死なせるわけにはいかない」

力とは、それそのものが悪なのではなく。使う者によって、姿を変える。
愛してくれる者を失った絶望、愛すべき者がいなくなった絶望、愛さえ要らなくなった絶望。
その3つの絶望を齎したシンクロ召喚、だが同時にそのシンクロ召喚で愛する者を守り通し、進化を果たした龍亞という少年もいた。
その時にアポリアは取り戻した。人間を止めてもなお、捨てきれなかった希望を。

「行くぞ。強欲で貪欲な壺を発動、私のデッキの上から10枚を裏側表示で除外し、2枚ドロー。
 このカード名のカードは1ターンに1枚のみ発動できる。
 更に《機皇神龍トリスケリア》を特殊召喚、このカードは墓地の機皇モンスター3体を除外することで、特殊召喚できる。私は墓地のワイゼルパーツを3体除外する」

アポリアの背後に閃光を伴って現れた新たな機皇モンスター。
複数の首を持ち、冷たく光る機械のボディはグランエルと同じく、機械の冷酷さと冷徹さを伺わせた。
だが、グランエルと違うのは、そこには強く熱いアポリアの信念を載せていたことだ。

《機皇神龍トリスケリア 攻撃表示3000》

「攻撃力3000、生贄なしでそれは驚異的だが……エクゾディオスには届かない」

「届かせる。魔法カード、《簡素融合(レトルトフュージョン)》を発動。
 私のライフを1000支払い、EXデッキからレベル6以下の融合モンスターを特殊召喚する。そのモンスターは攻撃できず、エンドフェイズに破壊される。
 現れよ、《無の畢竟 オールヴェイン》」

『アポリア:LP4000→3000』
《無の畢竟 オールヴェイン 攻撃表示0 チューナー》


10 : みらいいろ ◆wJPkWOa93Q :2022/06/21(火) 00:51:22 etM7dxW20

「……借りるぞ、不動遊星。
 オールヴェインは効果こそ持たぬが、チューナーモンスター。
 チューナーが存在する時、墓地から《ボルト・ヘッジホッグ》は自己再生する」
「なに……?」

《ボルト・ヘッジホッグ 守備表示800》

「そんなカード、いつ墓地に……あっ」

遊馬の中で思い返されるのは、アモンのターンに発動された手札抹殺。

―――私の手札は3枚、これらを捨て3枚ドロー。

「おっさんは、あの時に……」

「私はレベル2、ボルト・ヘッジホッグにレベル2のオールヴェインをチューニング、シンクロ召喚を行う。
 自己再生したボルト・ヘッジホッグは場を離れた時、除外される」

「愚かだぞ。破滅の未来を生きたキミが、自ら破滅の力を使うというのか」

「アモンよ。力とは、その人の意思により姿を変える。
 美遊よ、見ていろ。私に絶望を与え、忌み憎しんだ。このシンクロ召喚を希望に変える瞬間を!
 キミのその力が忌むべきようなものではないと、私自身が絶望を乗り越え、証明してみせよう!!」
「アポリアのおじさん……」

アポリアは一瞬だけ、後ろの美遊に一瞥をくれる。

「現れよ、《アームズ・エイド》!!!」

《アームズ・エイド 攻撃表示1800》

「更に、アームズ・エイドの効果を発動する。私のモンスターと一つになることで、1000ポイント攻撃力を上昇させる。
 トリスケリアと合体せよ!」

《機皇神龍トリスケリア 攻撃表示4000》(アームズ・エイド装備)

「エクゾディオスと並んだか、だがエクゾディオスは破壊されない」
「承知の上。
 バトルだ! トリスケリアでエクゾディオスに攻撃!!」
「なんだと……」

《機皇神龍トリスケリア 攻撃表示4000》→《究極封印神エクゾディオス 攻撃表示4000》

「トリスケリアとエクゾディオスの攻撃力は同じ、トリスケリアは破壊される」
「いや、この瞬間トリスケリアの効果が発動、相手のEXデッキのモンスターを1体装備し、その攻撃力分アップする」
「EXデッキ……僕の融合モンスターのことか……」

アモンのEXデッキが光り、カードが弾かれるとトリスケリアへと吸い寄せられる。

《クリッチー 攻撃力2100》
《機皇神龍トリスケリア 攻撃表示6100》(アームズ・エイド&クリッチー装備)

「やはりあったか、クリッチー。
 そのモンスターの融合素材は《クリッター》と《黒き森のウィッチ》の2体。
 どれも非常に優秀な下級モンスターサーチ、エクゾディアデッキならば投入している可能性は高いと踏んだ」

『トリスケリアがエクゾディオスを上回った!!』

「シンクロメタだと思っていたが……僕が測り違えたか」

「いや、これは新たな機皇モンスター、未来への新たな機皇の進化だ!
 更に、シンクロと合体したトリスケリアは3回の連続攻撃が可能となる」

トリスケリアの攻撃力6100、エクゾディオスの攻撃力は4000。
デュエルに於いて、例えそのモンスターが破壊されなくとも戦闘が発生すればダメージも発生し、この場合6100から4000を差し引いた2100ダメージがアモンから引かれる


11 : みらいいろ ◆wJPkWOa93Q :2022/06/21(火) 00:52:18 etM7dxW20

「アモンのライフは3000、アポリアのおじさんがトリスケリアで3回攻撃すればエクゾディオスは倒せなくても、合計で6300ダメージ……」

『アポリアの勝ちだ』

美遊の計算通り、不死身のエクゾディオスをサンドバックにすることで、その貫通ダメージでプレイヤーそのものを倒すことが可能となる。

「……リバースカードオープン、《イタチの大爆発》。
 キミの表側表示モンスターの攻撃力の合計が、僕のライフより多い場合に発動。
 僕のライフ以下の合計になるように、相手は攻撃力0以外のモンスターをデッキに戻す」

「私の場には、6300のトリスケリア1体……」

『アモンLP3000』
《機皇神龍トリスケリア 攻撃力6100》

「そう、僕のライフを上回るトリスケリアにはデッキへと戻る。キミの進化の力もここまでだ」
「くっ……」

《機皇神龍トリスケリア》(デッキへ。装備されていたアームズ・エイド&クリッチーは墓地)

「……まだだ。まだ私のターンは終了していない」

依然として、場にモンスターを残せずバトルフェイズを行ったことで、仮に後続のモンスターを呼べたとしても攻撃手段は存在しない。
このターンにアポリアに出来ることは、モンスターを召喚し防御を固めてアモンにターンを返す事だけだが、その目には明確な闘志が宿っていた。

「舐めるなよ。私とてデュエリストの端くれ、シンクロ使い以外が相手の勝ち筋も用意している。
 カードを2枚伏せる」

『アポリア 手札:3→1』

「そして《オーロラ・ドロー》(未OCG)発動。
 このカード以外、私の手札がない場合、カードを2枚引く」

『アポリア 手札:0→2』

「……来た。これが私の希望、魔法カード発動《アフター・グロー》」

「アフター・グロー?」

「このカードはデュエル中、1度しか発動できない。
 私の手札、デッキ、墓地。全てからこのカードを含む《アフター・グロー》を除外する。
 そして除外された《アフター・グロー》の中から1枚、私のデッキに加える。次のドローでこのカードを引き当てれば、相手に4000ダメージを与える」

「厳しい……アポリアのおじさんのデッキが40枚だとして、強欲で貪欲な壺で除外された10枚を引いても残り枚数は10枚前後、そこから次のドローでカードを引き当てるなんて」
『それだけではない。まずアポリアは、次のアモンのターンを生き延びる必要もある……。どうする気なんだ?』

一見すれば4000のダメージで一気に決着を付けるパワーカードだがその前提が困難を極める。
残された十数枚のデッキの中から、サーチカードも用いずに欲したカードを引き当てることは事実上不可能に近い。
それを行えたのは、かの伝説の決闘王のみ。
更にアフター・グローを引けたとしても、それ以前にアモンのターンを挟まなければならず、そのターン中に決着が着くかもしれない。
アモンの場には依然変わらず、4000のエクゾディオスが存在している。ダイレクトでもまかり通れば一瞬でライフは削り切られてしまう。


12 : みらいいろ ◆wJPkWOa93Q :2022/06/21(火) 00:53:09 etM7dxW20

「《トップ・シェア》を発動、お互いにデッキからカードを1枚選び確認し、デッキの1番上に置く。
 私は、《アフター・グロー》を選ぶ」

『上手い! これで次のターンのドローでアポリアが《アフター・グロー》を引けば、アモンのライフポイント3000を一瞬で削り切れる』

「……僕は、《暗黒界の取引》を選択」

『アポリア デッキトップ《アフター・グロー》』
『アモン デッキトップ《暗黒界の取引》』

『暗黒界の取引、確かあれはお互いにドローさせ、手札を1枚選び捨てさせる、手札交換の魔法カード……』
「ってことは、アポリアのおっさんは自分のドロー前に、アフター・グローを引いちまうじゃねえか」
「アフター・グローはドローフェイズに引かなければ、4000ダメージは発生しない」

美遊の懸念通り、アフター・グローはあくまでも発動後の自分のドローフェイズで引き当てねば、ダメージは起きない。
次のアモンのターンで引けたとしても効果は不発、ただ墓地へと送られるだけだ。

『ここにきて、デッキタイプの相性の悪さが響いてきてしまったか』

結果論ではあるが、これはお互いのデッキの相性の悪さもあるだろう。
アモンのデッキがエクゾディアデッキである以上、そのエクゾディアを揃える為の手札交換カードは複数積まれている。
そのデッキ構築者本人も、アフター・グロー等想定はしていなかっただろうが。

『万事休すだ……!』

「…………私は、これでターンエンド」


『アポリア:LP3000』
『手札:0 墓地:15 除外:14』
『モンスター』
《なし》
『魔法・罠』
《伏せカード2枚》

『アモン:LP3000』
『手札:1 墓地:9 除外:1』
『モンスター』
《エクゾディオス 攻撃表示4000》
『魔法・罠』
《伏せカード1枚》


13 : みらいいろ ◆wJPkWOa93Q :2022/06/21(火) 00:54:08 etM7dxW20


「僕のターン、ドロー」

「この瞬間、トラップ発動! 《強烈なはたき落とし》、デッキから手札に加えたカードを相手は捨てる。
 《トップ・シェア》で仕込んだ《暗黒界の取引》を捨てて貰う」

「……」

「すげえ、おっさんは《トップ・シェア》のフォローまで考えてたんだ!」

(やはり、《トップ・シェア》の対策は講じていたか……。奴の場はがら空き、エクゾディオスの直接攻撃が通れば僕の勝利だが、あの伏せカード……)

思案を巡らせながら、アモンは表情も変えず、引いたカードをそのまま墓地のスロットへとセットする。

「魔法カード、《貪欲な壺》を発動。
 墓地のモンスター5体をデッキに戻し、2枚ドローする」

「アモンの墓地には、エクゾディアのカード4枚しかないんじゃ……」
『いや、先ほどアポリアのトリスケリアが装備したクリッチ―がある。デッキへとバウンスされた際に、装備されたモンスターも持ち主の墓地へ送られる』
「そっか……クリッチ―と合わせて、墓地のモンスターは合計5枚……でも、それじゃあエクゾディオスの攻撃力は下がっちまう……」
『あの伏せカードを警戒し、除去カードを引き当てる気だろう。彼もこのターン内で、ケリをつけなければならない。
 とはいえ、引いたカード2枚でアポリアのライフ3000を削り切るのは難しいが……』

『アモン 手札:0→2 墓地:9→4』
《究極封印神エクゾディオス 攻撃表示4000→0》

「アポリア、その最後の伏せカード、僕の攻撃に反応するトラップかな?」

「それは自らの目で確認するといいだろう」

「悪いが、目に見える地雷を踏むほど馬鹿ではなくてね。
 速攻魔法《サイクロン》、相手の魔法・罠を1枚破壊する!!」

『あのカードが破壊されれば、アポリアを守るカードは消える……』

「その発動にチェーンし、《威嚇する咆哮》を発動! このターン、相手は攻撃宣言できない」

「なに……!?」

初めてアモンの顔が驚嘆で歪む。
デュエルに於いて、もっともポピュラーな勝利方法は、モンスターの戦闘を介し相手のライフを0にするビートダウン戦法。
無論、アモンはエクゾディアデッキではある為にそれに拘る穂必要はないが、現時点で最後のエクゾディアパーツは除外され、未回収。
次のアポリアのアフター・グローが決まるより先に勝敗を着けるには、ライフを削るのが最も最速であった。
だが、攻撃宣言を禁じられた以上、モンスターは戦闘を行うことが出来ない。

「アモンの攻撃は封じられた……。封印されしエクゾディアも除外されてる。……これって」
「おっさん、アンタめっちゃすげえよ!! 」

このターン、アモンのビートダウンは完全に封じられた。
そして、次のターンでアポリアがアフター・グローを引き当てれば4000ダメージで勝敗が決する。
美遊と遊馬の顔に笑みが浮かび、2人はアポリアの勝ちを確信していた。

「アモンよ。サレンダーしろ。
 お前は悪人ではない。出来れば、殺めたくはない」

「…………僕は、《アドバンスドロー》発動。
 レベル8以上のモンスターを生贄に2枚ドローする。エクゾディオスはレベル10、よってこのカードを生贄に2枚ドロー」

「なんで、エクゾディオスは効果を受けないんじゃ……」

「残念だが美遊、嫌な奴の言葉を借りるなら、自分の効果は別なのさ。《拡散する波動》を忘れたのか?
 それに、どちらにせよエクゾディオスに生贄耐性はない」

《究極封印神エクゾディオス》(墓地へ)

『アモン 手札:0→2』


14 : みらいいろ ◆wJPkWOa93Q :2022/06/21(火) 00:55:32 etM7dxW20

「……カードを1枚セットし、魔法カード《命削りの宝札》(アニメ効果)を発動。
 カードを5枚になるようドローする。僕の手札は0、よって5枚ドロー……そして5ターン後にすべて捨てると言いたいところだが、このデュエルに5ターン後は訪れないだろう」

「このタイミングで……5枚もの手札補強とは……」

ロボットである為に、本来ならあり得ないがアポリアの額には油汗が滲むような、そんな錯覚に見舞われた。
デュエル開始から初手で手札抹殺と究極封印解放儀式術を除けば、エクゾディアパーツを4枚揃えていた男だ。
もしも、あのデッキにエクゾディアが5枚健在であったのなら、エクゾディアとその手足の計5枚を揃え、このドローで勝敗が決していたかもしれない。

『アモン 手札:0→5』

「《大盤振舞侍》を召喚」

《大盤振舞侍 攻撃表示1000》

「更に伏せていた魔法カード《シエンの間者》を発動する。《大盤振舞侍》のコントールを変更し、アポリアのフィールドへ」

《大盤振舞侍》(アポリアの場へ転移)

「これは一体……」

「永続魔法《召喚雲(サモンクラウド)》を発動する。
 自分の場にモンスターがいない場合、「雲魔物(クラウディアン)」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。
 この効果は1ターンに1度だけ、自分のメインフェイズに発動できる。
 僕の場にモンスターは居ない。手札から、《雲魔物-羊雲(シープクラウド)》を特殊召喚」

《雲魔物-羊雲 攻撃表示0》

「装備魔法《団結の力》を羊雲に装備、このカードは自分の場のモンスター1体につき、装備モンスターの攻撃力を800アップさせる」

《雲魔物-羊雲 攻撃表示800》(団結の力装備)

「何がしたいんだ? 攻撃力を上げても戦闘も出来ねえし、しかもアポリアのおっさんの場に居るモンスターにも全然届かねえし」

「そして、バトルフェイズへと移行する」

「バトルフェイズ!? 攻撃できねえんだから無理だろ!!」
『いや、禁じられたのは攻撃宣言であって、バトルフェイズそのものには入ることは可能だ。だが、攻撃宣言出来ない為、戦闘は出来ない』

「そうでもないさ。この瞬間、リバーストラップ発動! 《イクイップ・シュート》。
 バトルフェイズ中に発動、自分の装備カードと相手のモンスターを対象にし、その装備カードをそのモンスターに装備させる。
 そして、選択した装備カードを装備していた自分モンスターと、装備カードを装備させられたモンスターで戦闘を行う」

《雲魔物-羊雲 攻撃表示800→0》→戦闘←《大盤振舞侍 攻撃表示1000→1800》(団結の力装備)

「《威嚇する咆哮》は攻撃宣言を封じるトラップ。
 攻撃宣言を介さない戦闘ならば、モンスター同士のバトルは成立する」

《雲魔物-羊雲 攻撃表示800》(破壊)

「この戦闘で、僕は《大盤振舞侍》の攻撃力、1800ダメージを受ける。更に、羊雲は破壊された時、トークンを2体残す」

『アモン LP:3000→1200』
《雲魔物トークン×2 守備表示0》


15 : みらいいろ ◆wJPkWOa93Q :2022/06/21(火) 00:56:49 etM7dxW20

「そして《大盤振舞侍》が僕に戦闘ダメージを与えた時、相手はカードを7枚になるまでドロー出来る。
 この場合、アポリアがコントロールしているので、その相手である僕に効果が適用される」

「アモンの手札は1枚、6枚のドロー……やはりエクゾディアの完成を狙っているのか?
 だが、いくらカードをドローしてもエクゾディアは揃わぬ! あれは各パーツ1枚しか、デッキに投入できん。その最後のピースである封印されしエクゾディアは除外してある」

「だとしても……必ず、完成させる。
 1度ならず、2度までも外すわけにはいかない……!」

「この、男……この目……」

アモンの眼鏡の奥に光る瞳、その奥深くに宿る物をアポリアは知っていた。
愛する者を失った絶望、かつてのアポリアが味わったその悲しみを、この男は知っている。
アモンは失っているのだ。愛した者を。

「……何故だ。アモンよ、何故その痛みを知りながら……美遊を殺害しようとする?
 彼女にも愛する者たちがいるのだぞ? 絶望に抗う者達が居ると知りながら……」

「危険だからだ。……僕はこの殺し合いに乗る気はない。だが、それ以外の悪しき者に優勝され、その願いを叶える力を悪用されるつもりも毛頭ない。
 当然、ハ・デスの思惑通りにもさせない。
 だが……美遊の力は放置するには、あまりにもリスクが高すぎる。ここで無理を押してでも、排除するのがベストだと判断した」
 
「貴様……!」

「…………もう、2度としくじるわけにはいかないんだよ……。
 それが、エコーへの……」

「エコー……? まさか――――」

引っかかってはいたのだ。
エクゾディアのカードをああも初手で引き当て、エクゾディオスなどというモンスターとエクゾディアの精霊を従えるデュエリスト。
ただのデュエリスである筈はない。
ならば、考えられる可能性は一つしかない。

「捧げたのか、エクゾディアに……愛する者を……ならば、その引きの強さも納得できるが……信じられん」
「そんな……」

きっとこれは、ありえた筈の美遊の一つの可能性なのだなと思えた。
もしも、美遊も同じことを衛宮士郎に言われていたのかもしれない。その時、美遊は悲しいけれども、それでも……。
アモンが言った、そのエコーという人もきっと……。

「なんだよ……それ……アモン……好きな人を、どうして……そんなんで強くなったって……意味なんかねえだろ!」

「……」

「あんた、こんなにも強いじゃねえか! アポリアのロックだって簡単に抜け穴を見付けたし、誰かを犠牲にしてまで手に入れるような力なんて本当に必要なのかよ!!
 そんな……悲しそうな顔を出来る奴が、なんで……!?」

「……余計なことを口走り過ぎたな。デュエルを続行する。
 僕はカードを6枚ドロー」

『アモン 手札:1→7』


16 : みらいいろ ◆wJPkWOa93Q :2022/06/21(火) 00:57:35 etM7dxW20

(恐らく、ドロー前にカードを伏せなかった事から、あの手札の内1枚は確定でエクゾディアパーツ……。
 そして、その本体のエクゾディアは除外してある。ここで3枚引き当てたと仮定した場合、元からあった1枚と合わせて4枚のエクゾディア……実質使用可能な手札は3枚か)

最早、アポリアに出来ることはない。
だが勝算はある。デュエルに於いて、カード効果の複雑さ及び多様性が広がるにつれ、現在では墓地に落ちたカードを再利用するのは当たり前の事になってしまった。
最初期のデュエルでは、それこそ死者蘇生程度しか墓地からカードを回収する手段はなく、あってもアンデッド族のようないわば死霊系のモンスター達の十八番であった。

だが、それが今や一切アンデッドも何も関係ないカードですら、墓地を再利用しゾンビの如くはい出てくる。

反面、アクセス手段は以前より増えたが、除外からカードを回収させる手段はまだ多くはない。

エクゾディアデッキの最大の弱点は、いわば除外だ。

通常のデッキ構築で考えるのなら、除外ケアを積むよりもドローソースや墓地回収をメインにした方が揃えやすい。
仮にあったとしても、枚数は少なく引き当てる可能性は高くはない。

「南無三……ッ!」

機械の自分が念仏を唱える羽目になろうとは、アポリアにはそう皮肉に感じた。

「……………手札から《異次元からの埋葬》を発動、除外された《封印されしエクゾディア》を墓地へ。
 更に《鳳凰神の羽根》を発動、手札を1枚捨て、墓地から選択したカードをデッキの1番上に戻す」

『アモン デッキトップ《封印されしエクゾディア》』

「デッキの、上……?」
「えっ……」

遊馬の口がだらしなく広がった。美遊もただ茫然とする。
エクゾディアは手札には揃っていない。
アモンは7枚のドローを以てしても、このターンエクゾディアを揃えきれなかった。

『デッキに戻しただけでは、エクゾディアは……完成しない……何故、こんな無意味なことを……』

「僕はこのまま……エンドフェイズ」

『エンドフェイズ……!? なにを……?』



『アモン 手札:3→5』

『モンスター』
《雲魔物トークン×2 守備表示0》
『魔法・罠』
《宝札雲》



「な、に……?」


17 : みらいいろ ◆wJPkWOa93Q :2022/06/21(火) 00:58:10 etM7dxW20


「僕はメインフェイズ中に《宝札雲(ラッキークラウド)》を発動していた。
 発動ターン中に、「雲魔物」と名のついた同名モンスターを2体以上、召喚・特殊召喚した場合、エンドフェイズにカードを2枚ドローする」

「ありえない……アモン、貴方が召喚した「雲魔物」は羊雲だけ、こんなのは反則……」
「美遊……トークンだ。……羊雲が破壊された時に、召喚されたトークンは2体だった」
『同名の「雲魔物」モンスター、条件は……満たしている……』

―――この戦闘で、僕は《大盤振舞侍》の攻撃力、1800ダメージを受ける。更に、羊雲は破壊された時、トークンを2体残す。

「そ、そんな……」


「僕が引いたカードは《封印されし者の左腕》と先ほどデッキの一番上に戻した《封印されしエクゾディア》」

(アモンの手札)
《封印されしエクゾディア、封印されし者の右腕、封印されし者の左腕、封印されし者の右足、、封印されし者の左足》

 「この瞬間、手札にエクゾディアが完成した。よって、このデュエルは僕の勝利が確定する」


「……」


『アポリアLP:3000→0』


空間が歪み、次元が罅割れる。
次の瞬間、灼熱を帯びた四肢で鎖を引き千切り、アモンの背後に業火の巨人が降臨した。

「これが、エクゾディアか……」

「怒りの業火――――エクゾード・フレイム!!」

機械の体を以ても耐え切れそうにない豪熱、恐らくここで死ぬだろうとなとアポリアは悟る。
されど、その眼は敗北が確定したこの瞬間ですらもまだ死んではいなかった。希望を失ってはいなかった。

「アモンよ。……私は敗北した、しかし……まだ負けてはいない」
「なに?」
「光の護封剣を発動!!」
「無駄な足掻きを、デュエルは終了した。そんなカードなど……」
「いや、私が発動するのはデュエルにではない。お前自身だ、アモン!!」

この殺し合いに於いて、デュエルモンスターズのカードは強力な力を秘めた支給品として参加者に配られる。

「これ、は……!?」

それはデュエルに活用するだけではなく、時として殺し合いに中でゲーム効果を再現し適用することも可能。
光の護封剣、それは相手の身動きを一定時間封じるカード、それが適用されたアモンは美遊達を攻撃することは出来ない。


18 : みらいいろ ◆wJPkWOa93Q :2022/06/21(火) 00:58:40 etM7dxW20

「今の内に行け! 遊馬、アストラル、美遊!!」
「おっさん!」
『アポリア……』

「美遊よ、必ず殺し合いから抜け出し、友の元へ行ってやれ……」

死ぬことに悔いはない。やれるだけのことは全てやりつくしたのだ。
元の世界で、龍亞という少年の進化から希望を取り戻し、不動遊星達チーム5D'sに希望を託した。
後悔はなく、人間の時代から考えれば3度目の死だ。慣れたというのもあるだろう。
だが何より、この命尽きるとしても、若く幼い将来に溢れた子供という未来への希望に繋げることが出来たのなら、この命の使い道としては上出来だろう。

破滅の未来では、それすらも紡ぐことすら出来なかったのだから。

「……美遊」

だが一つだけ、心残りはあった。

「私は、友を独りにさせてしまった。……イリヤという娘には、同じ思いをさせるな」

「アポリアの……おじさん……」

最後に残した親友に想いを馳せ、アポリアは安らかに3度目の生を終えた。




【アポリア@遊戯王5D's 死亡 ※死因デュエル】


19 : みらいいろ ◆wJPkWOa93Q :2022/06/21(火) 00:59:10 etM7dxW20



「……アポリア、キミは強かったよ」

光の護封剣の効力が消え、アモンが周囲を伺った際には既に美遊と遊馬は遠くへ逃げ去っていた。

2人の探索も早々に打ち切り、エクゾディアが焼き尽くした大地を眺めながら、アモンは破滅の未来からの使者に心からの勝算を送った。
そのデュエルの実力も信念も見事であった。

「約束しよう。もし、僕が王となったのなら……キミの言う破滅の未来とやらを、必ず回避してみせると」

王。

それはアモンがただ目指すべき唯一の目標にして、最大の理想の実現に他ならない。
私欲を肥やす為ではなく、苦しみも痛みも、貧しさも人を羨むことも妬むこともない。軋轢も争いもない、誰もが思うように暮らせる世界を実現する為の手段。
故に手に入れたのだ。エクゾディアの力を、愛する者を捧げ、その絶望を秘めながらも。

「……深追いすべきではないな」

一先ず、美遊は保留だ。
遊馬もそれなりのデュエリストである筈だ。それに相方のアストラルは思慮深い、当面の危険は低いとも言えないが高くはない。
しばらくは彼らに任せておいても良いだろう。

彼女に固執して、殺し合いの脱出方法とハ・デスの打倒方法を見付けられなければ意味がない。
もし何事もなく、殺し合いとハ・デスを打破できるのなら、アモンとて美遊を殺す理由はないのだから。
あくまで確実なリスク軽減として、彼女を狙ったに過ぎない。
それに、状況によってはその身に秘めた願望機の力も活用方法もあるかもしれない。

『そんな……悲しそうな顔を出来る奴が、なんで……!?』

不意に遊馬の言葉を思い出しながら、アモンはアポリアの首輪を回収した。

「エコー……」

あの見せしめに殺された、本田という青年の髪型はエコーに何処となく似ていた。
角刈りのリーゼントヘアーはやけにそっくりだ。

「今度こそ、僕は必ずや王となって……エコー、キミと2人で理想の世界を創り上げる」

例え、彼女を犠牲にしてもアモンのエコーへの愛は変わらない。

「ゆえに、失敗はもう許されない」

ユベルとのデュエルに敗北し、なお巡ってきた2度目の好機。
強固な意志と覚悟、悲しみを背にして、アモンは殺し合いに臨もうとしていた。


20 : みらいいろ ◆wJPkWOa93Q :2022/06/21(火) 00:59:55 etM7dxW20


【九十九遊馬@遊☆戯☆王ZEXAL】
[状態]:健康
[装備]:皇の鍵、遊馬のデュエルディスクとデッキ@遊☆戯☆王ZEXAL
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:アポリアのおっさん……。
2:今はアモンから逃げる。

【アストラル@遊☆戯☆王ZEXAL】
[思考・状況]
1:殺し合いから脱出する。
2:アモンのエクゾディア対策を講じる。

[備考]
※参戦時期はカイト死亡以降です。
※アストラルは他参加者に視認可能です。支給品扱いです。
※プリズマイリヤ世界と、GXから5D'sまでの遊戯王世界も把握しました


【美遊・エーデルフェルト@Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品3
[思考・状況]基本方針:一刻も早くイリヤの元に帰る
1:アポリアのおじさん……ごめんなさい。
2:イリヤが来ていないか探す。
[備考]
※参戦時期は名前の無い少女終了以降です。
※GX、5D's、ZEXALの遊戯王世界を把握しました。
※持ち前の頭脳で、デュエルのルールを把握しました。



【アモン・ガラム@遊戯王デュエルモンスターズGX】
[状態]:健康 疲労(小)
[装備]:アモンのデッキ&デュエルディスク@遊戯王デュエルモンスターズGX
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、アポリアの首輪、光の護封剣(12時間使用不可)@遊戯王
[思考・状況]基本方針:王となり、理想の世界を創り上げる。
1:首輪の解析と脱出方法、ハ・デスの打倒方法を探す。殺し合いの完遂は未然に防ぎ、邪悪な参加者に優勝はさせない。
2:美遊は後回し、しかし聖杯の力は警戒する。
3:ユベルが居たのなら……。
4:武藤遊戯も探してみるか。
[備考]
※ユベルにデュエルで殺害されて以降からの参戦です。
※プリズマイリヤ世界と5D's、ZEXALの遊戯王世界も把握しました

【光の護封剣@遊戯王】
相手を3ターンの間、攻撃不可にする魔法カード。闇を照らしたりも出来る。
アポリアはデュエルではなく、リアルファイトで直接発動することでアモンの行動を制限した。
1度の使用で12時間使用不可になる。


21 : みらいいろ ◆wJPkWOa93Q :2022/06/21(火) 01:00:38 etM7dxW20
投下終了です。
それと、遅くなりましたがスレ立て乙です。


22 : シェイクハンド ◆s5tC4j7VZY :2022/06/21(火) 06:25:36 dD/q6pA60
投下します。


23 : シェイクハンド ◆s5tC4j7VZY :2022/06/21(火) 06:25:52 dD/q6pA60
学芸員ーーーーー日本の博物館法に定められた博物館における専門的職員および、その職に就くための国家資格のことである。
Wikipediaより引用。

『ギェッ!?』『ガパァァァ!?』『ギャピィィィ!?』

―――ザシュッ!ザシュ!!ザシュ!!!

―――鋭い爪がゴブリン達を切り裂く。

ゴブリン達はなんとか反撃が出来ないかと企んでいるが、スピード・パワー共に相手に敵わない。

『バ……バカなァァァ!?ゴブリンの中でも一を誇る選抜隊のオレ達がァァァ!?』
驚愕の表情を抑えきれないのはゴブリンの種族の中でも、勇猛果敢さで有名な”ゴブリン切り込み部隊”

彼らの瞬発力には並の冒険者やモンスターでは敵わない。
だが。
相手が悪かった

―――ザシュッ!ザシュ!!ザシュ!!!

彼らは瞬く間に切裂かれて死を迎えた
そして、静寂が訪れ……

「お〜〜……綺麗にズバッと斬られている。凄いね!綺羅々ちゃん」
ゴブリンの死体を興味津々そうに眺める女性。

女性の名は清棲あかり。

かなでの森博物館の鳥類・ほ乳類担当にして、若くして次々とユニークな論文を発表する新進気鋭の研究者。

「だぁ――――!あのなぁ……先生。だから、私を下の名前で呼ぶなって何度もいってんだろ!」

あかりの言葉に辟易した表情で訂正するのは―――
ドンキにでもいそーなコッテコテなヤンキー女。(七原の偏見です。筆者は関係ありません)
女の名は立花綺羅々。

噴火した富士山の火山灰を浴びてヴァンパイアの力を得た。

「それにしても、こんな生き物に興味を抱くなんて、先生もスキモノだな」
(このゴブリン?とかいう気持ち悪い生物。全然モフリたいとも思えねぇ……)

目をキラキラと輝かせてゴブリンの死体を見聞しているあかりに綺羅々は引いている。

「うん、研究者として”知りたい”は大事なことだからね」
呆れる綺羅々にあかりはニッと笑みを返す。

「はぁ……たく、こんな状況なのに呑気な先生だ……」
(参加者でもないのに……これも驚異の部屋に繋がるってわけか)

あかりの返答に綺羅々はぽりぽりと頭を掻く。

「……」
(だけど、そんな先生にアタシは救われた……)

そう呟くと、綺羅々は想起する……

☆彡 ☆彡 ☆彡

―――て……
―――全て……消えてく……私の前から……
―――どうして誰も守れねぇ……
―――弱いからかよ……
―――私も……消えちまいてぇ……!

「〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!」

―――ん?
―――誰かの……声?一体……誰の……

「貴方は私が消させない!絶対に助けるわ!!!」

―――意識が戻ると、見知らぬ女性が目の前にいた。

「ッ!?あんた一体何を……」
(クソッ!私としたことが気を失うなんてッ!)

意識を取り戻した綺羅々は、見知らぬ女性が自身の身体に触れていたため、威嚇しようとするが―――

「目が覚めたのね!悪いけど、ちょっと静かにしていてッ!動くと治る者も治らないわッ!」

「あ、ああ……わかったよ」
(何だぁ……この私が飲まれるだと!?)
空手の総体にも出た実力であるにも関わらず、綺羅々は見知らぬ女性の迫力に押された。

☆彡 ☆彡 ☆彡


24 : シェイクハンド ◆s5tC4j7VZY :2022/06/21(火) 06:26:13 dD/q6pA60

「……よし!これで一通りの怪我は大丈夫かな?」
綺羅々への応急処置を終えるとあかりは安堵した表情で見つめる。

「あ、ああ……あんたは医者か何かなのか……?」
余りの怪我の処置の手際の良さに立花の脳裏に浮かぶのは”医者”という職業と”先生”と呼ばれているヴァンパイア。

「医者?……ううん。私は博物館で働いている研究者だよ!」
―――そして

「私の名前は清棲あかり。よろしくね!」
女性はニッと笑顔で自己紹介をした。

☆彡 ☆彡 ☆彡

「え!?それじゃあ、やっぱり綺羅々ちゃんは知らないの?」
「下の名前はよしてくれ……ああ、気を失っていたから」
そう、綺羅々がハ・デスの手によって呼び出されたのは、丁度七原の最終奥義である最終加速(ファイナルウルフ)を直に直撃して変身を解いた瞬間で話を碌に聞いてはいなかったのだ。

「うん……実はね」
あかりは、これから話す内容が内容だけに落ち込む顔色で綺羅々に説明する。

―――かくかくしかじか

「はぁ、何なんだ!そのふざけた男は!!!」
綺羅々は部屋に集められていたときの状況を聞くと、みるみると険しい顔になる。

「つか、”冥界の魔王”だぁ!?魔王だか何だか知らねぇが人の命を何だとおもってやがるんだ!?ざっけやがって!!!」
特に一般男子学生が見るも無残な死を迎えたのには、怒りを通り越して、ヴァンパイアの姿へと変身するほどだ。

「綺羅々ちゃん!?その姿……」
あかりはヴァンパイアへと変身した綺羅々を見ると口に手を当て―――

「ああ、この姿は……」
(しまった!?怒りに任せて変身しちまった!?どう説明すりゃいいんだ……)

綺羅々はあかりを怖がらせないようにどう説明するか思案しようとしたら―――

「ねぇ!その姿!ちょっと調べさせて!」
あかりはキラーンと瞳を輝かせて迫ってきた。

「ちょッ!?お、おい……おちつ……!!!???」
綺羅々はあかりにまたしても、気迫を押されてしまい―――

☆彡 ☆彡 ☆彡

「へぇ〜……私の知るヴァンパイアとはイメージが違うけど……」
「まぁ、一般的な吸血鬼とは違うみたいだな……」
あかりは綺羅々の姿を紙に写生しながら会話を続ける。

「でも、なんで先生は生きた証なんて集めようとするんだ?」
(そんなこと、する意味あるのか?)
綺羅々は会話であかりがここでとる行動(生きた証を集める)に懐疑的だった。

「綺羅々ちゃんは驚異の部屋(ウ゛ンダーカンマー)って知ってる?」
「いや、知らねぇ……つか下の名は恥ずかしいからよしてくれ!」
あかりの言葉に綺羅々は抗議しつつ首を傾げる。

「驚異の部屋はね、昔ヨーロッパで珍しい物を集めて作った部屋のこと!それが後に博物館になっていくの!」
あかりは綺羅々に驚異の部屋について説明する。

「へー、初めて知ったよ。……んで、それがこのバトルロイアルでの行動に何の関係があるんだ?」
その”驚異の部屋”の説明だけでは綺羅々は納得できない。

「おそらく、私も含めてだけど、全員が生きて帰れるのは不可能だと思う」
綺羅々の質問にあかりは真剣な顔で応える。

「おそらく、ここで死んだら元の世界では死んだことすら知らないままになるのかも知れない。私はそれは許せない。このバトルロワイアルに参加させられた参加者は全員たしかに”いたんだ”なのだから」

男の所業はあかりが目指す”いたんだ”を冒涜している。
故に、あかりは行動する。

「だから、私は他の参加者達の生きる証を集めたい。この悪趣味なバトルロワイアルがあったということを100年後にも伝えたいから」
「……先生」
あかりのケツイに綺羅々は息を呑んだ。

真祖との力の差を思い知らされ、七原との闘いにも負け、抜け殻になっていた綺羅々の身体に熱が灯る。

それから、ほどなくしてゴブリン斬り込み部隊が襲ってきて冒頭へ至る。

☆彡 ☆彡 ☆彡


25 : シェイクハンド ◆s5tC4j7VZY :2022/06/21(火) 06:26:30 dD/q6pA60

「……」
あかりはゴブリン達の検分を終えると両手で黙とうする。
たとえ自分達を襲う存在だとしても命への敬意を払う。
だが、それとは別に不安と恐怖を抱いている自分もいる。

「……」
(私は正直、綺羅々ちゃんのように悪意を持つ者と戦える力はない。一人だったらこのゴブリンという生物に殺されてもおかしくなかった……)

―――ブル

明るい性格のあかりだが、生き残る困難を理解している。
故に。
身体を震わせる。

―――すると
―――ポン

「心配そうな顔をすんなよ」
「……綺羅々ちゃん」
あかりの表情から心情を察した立花は肩に優しく手を置く。

「……綺羅々ちゃん?」

―――七原を止められなくて抜け殻になっていた私はあんたに救われた
―――救ってもらったこの恩義……絶対、命に代えても私が守る

「下の名前は呼ぶなって……安心しな。あんたは私が守ってやるから……だから、驚異の部屋ってやつを完成させようぜ。……キヨス先生」
「……うん。お願いするね!立花ちゃん!!」

力なき人間と力持つヴァンパイアは手と手を取り合う。
それぞれの信念を貫くために。

【立花綺羅々@血と灰の女王】
[状態]:健康 ヴァンパイア状態
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:キヨス先生を守りつつあの男(ヒエール・ジョコマン)に落とし前をつけさせる
1:自分を救ってくれたキヨス先生への恩義に報いる
2:七原……
[備考]
※参戦時期は138話七原の受けて変身が解けた瞬間より
※ヴァンパイアの力並びにキヨスの治療により、七原との戦闘の傷は治療されました。

【清棲あかり@へんなものみっけ!】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:参加者たちの生きた証を記しこの殺し合いの出来事を風化させない
1:立花と行動を共にする
2:参加者の生きた証を集める
[備考]
※参戦時期は7巻62話後
※現在集めた証は”立花綺羅々”とNPCの”ゴブリン切り込み部隊”

『NPC紹介』
ゴブリン切込み部隊@遊戯王OCG
地属性 レベル4 獣戦士族 ATK/1900 DEF/0
ゴブリン部隊の一員。
切り込み隊長のコスをしているが、効果まではマネできなかったようだ。


26 : シェイクハンド ◆s5tC4j7VZY :2022/06/21(火) 06:26:40 dD/q6pA60
投下終了します。


27 : ◆dltjJrbYYM :2022/06/21(火) 12:22:07 FpDgb1YU0
スレ立てお疲れ様です。投下します。


28 : 王子様にあこがれて ◆dltjJrbYYM :2022/06/21(火) 12:23:06 FpDgb1YU0
「デュエルってなんだよ! アイツも姫宮を狙うデュエリストなのか!?」

 天上ウテナはデュエリストである。しかしそれはハ・デスの言うカードゲームのそれとは違う。薔薇の花嫁とエンゲージする権利を賭けた剣による決闘をする者たち。それがウテナの知るデュエリストだ。

「とにかくボクは殺し合いなんか認めないぞ!」

 決闘の時に纏う騎士服を着ていたのが幸いだった。別に服そのものに身体能力を上げる効果はないが、動きやすさが違うし何より気持ちの問題もある。

 かつて両親が『いなくなった』時に王子様に慰められたウテナは少女ながら王子様を目指している。だから今の騎士服を着ていれば、殺し合いなどという異常事態に巻き込まれても「王子様」として振る舞える。

「ほう、王子様系美少女ですか……これはこれでいいものですね、是非ともメス堕ちさせたいです」

「っ! 誰だ!!」

 突然響いた声にウテナが振り返ると、その先には露出の多い黒衣を身を包んだ少女がいた。背中からは一見アクセサリーにも見える羽が生えているが、時折ピクリと揺れることで、それが装飾品などではないことが分かる。

「失礼、私は柊……いえ、マジアベーゼと名乗っておきましょう」


 年の頃はウテナと同じくらいに見えるが、余裕たっぷりの態度はとても同世代には思えない。なんかウテナの周りのデュエリストはそんなのばっかな気もするが。

「マジアベーゼ?」

「ええ、私はベーゼ[悪]を自称していますが、 凛々しく戦う美少女を殺すのは私の本懐と違えます」

 ニッコリと笑うマジアベーゼ。

「どうでしょう? 巻き込まれた者同士、手を組みませんか? 私の能力は制限されていて、前で戦ってくれる方が欲しかったのですよ」

 嘘を言っているようには見えない……が、言葉の節々から迸る怪しさを隠しきれていない。

「悪いけど……ボクは君を信用できない」

 ウテナがマジアベーゼを警戒するのも当たり前だろう。
 ウテナはかなりのお人好しの部類だが、この殺し合いという状況下で、明らかに普通の存在ではない少女を手放しに信用するほどではない。
 だがそんなウテナの反応すら予想していたのか、マジアベーゼは特に表情を変えることなく言葉を続ける。

「ええ、それはごもっとも。いきなり後ろから刺されでもしたらたまりませんものね。こちらから誘う以上、ある程度の誠意は見せます。それから判断してくれませんか?」

「誠意?」

 意味深な言葉に眉をひそめるウテナ。

「私の能力をお見せしましょう、こちらの情報を一方的に晒す誠意も、私が前衛を欲しがる理由も分かってくださると思います」

 マジアベーゼは支給品……本人支給された自らの鞭フルスタ・ドミネイトを、近くの木に向けて振るう。

「これは……!?」

「無機物に命を与え眷属とする私の鞭……中々便利なのですよ」

 鞭打たれた木がウゾウゾと動きだし、幹を手足のようにしてマジアベーゼに傅くような体勢になった。

「すごいな……ボクの手助けなんか必要ないんじゃないか?」

「普段私自身を守って欲しいのですよ、制限のせいか、ずっと眷属にしていると疲れるので」

 一応、話に筋は通っている。一方的に能力を明かし、弱点も話した。確かに誠意も理由も見せてくれた。

 隠していること、言っていないことくらいはあるかもしれないが嘘を言っているようにも思えない。

 ウテナが少し警戒を緩めた瞬間……マジアベーゼの眷属となった木が密かに地中に伸ばしていた枝が、ウテナの足元から生えてきた。

「なっ!? だ、騙したのか!?」

 突然下から伸びていた枝に対応できず、体を拘束されてしまうウテナ。


「まさか。これも誠意の一つです。いつでも殺せる状況において殺さないというのと……私の目的をお教えするための、ね」

 ベロォ、と舌舐めずりをしながらウテナに近づくマジアベーゼ。

「な、なにをする、つもりだ?」



 震えそうになる声を必死に抑えながら問いかけるウテナに、マジアベーゼはクスリと笑う。

「怖がっているのですか? 王子様の格好をしていても、所詮は女の子ですね……」

 マジアベーゼは茨で拘束したウテナの体に指を這わせる。

「くっ、あ……やめ、ろぉ……!」

「かわいい声を出しますね、王子様?」

 マジアベーゼはウテナの体の上で指を滑らせて端正な顔をねっとりとした手付きで触った後、その細い顎をクイっと持ち上げる。

「私の目的は、貴女のような可愛く凛々しい女の子を玩具にすることです」

「ぐぅう……この、下衆がぁ!!」

 ウテナは体をよじりながらマジアベーゼに罵倒を浴びせる。


29 : 王子様にあこがれて ◆dltjJrbYYM :2022/06/21(火) 12:25:10 FpDgb1YU0

 しかし、その悔しそうな表情はマジアベーゼの興奮を高めるだけだった。

「いいですねぇ、その顔! そそりますよ!」
「ふざけるなぁ!! 離せぇえ!!」

 ウテナは必死に抵抗するが、茨によって手足の自由を奪われているうえに、相手の方が力は上だ。

「無駄ですよ。あなたはこれから私のおもちゃになるんですから」

 そう言ってマジアベーゼはウテナの騎士服に手をかけると一気に引き裂いた。

「きゃああ!?」

 ビリリリッという音と共に布切れとなった服が床へと落ちる。
 ウテナは咄嵯に両腕で胸を隠そうとするが、拘束のせいでそれも叶わない。マジアベーゼはニヤニヤしながらウテナの全身を見回す。

「ほほう? これはまた素晴らしい体つきをしていらっしゃいますねぇ」

「くっ……見るな!」

 ウテナは顔を真っ赤にして叫ぶ。
 マジアベーゼはその反応を楽しむように彼女の肌に触れていく。

「んあっ! やめろ! 触るなぁ!」

「フフッ、そんなこと言って体は正直みたいですね? 王子様の格好なんて止めればいいんじゃないですか?」

 マジアベーゼの手の動きに合わせてウテナはビクンっと跳ね上がる。

「うるさい! ボクはこんなことをされても屈しないぞ!」

「クス、まだそんな口をきける余裕があるんですか」

 マジアベーゼは再び手を動かし始める。今度は脇腹の方からだ。

「ひゃあんっ! そこはダメだってばぁ!!」

 ウテナは身を捩らせる。だが、それは逆効果だったようでマジアベーゼはさらに調子に乗っていく。

「ふむ、やはりここは弱いようですね。では、こちらはどうでしょうか?」

 今度はお尻を撫で始める。その瞬間、今までで一番大きな刺激がウテナを襲った。

「あぁんっ!」

 ウテナは思わず甘い声を上げてしまう。マジアベーゼはそれを聞き逃さなかった。

「おやおや? 今のはなんでしょうねぇ? もう一度聞かせてもらえませんか?」

「くっ……」

 ウテナは黙って睨みつけることしかできない。

「フフッ、強情なお方ですねぇ……。まあいいでしょう」

 するとマジアベーゼは手を下に伸ばしていき、太股の内側に触れた。

「ひっ……!」

 ウテナは反射的に脚を閉じるが、マジアベーゼはそれをこじ開けようとする。


「いいですねぇ!!! 悪堕ちは解釈違いですが、メス堕ちなら大歓迎です!!」





 ──かしらかしら、ご存知かしら? 


 ──この世には無数の並行世界が存在するんだって。

 ──へー! たとえばたとえば!? 

 ──首の骨を折られて死亡した者が亡霊として呪詛を垂れ流す世界。平和な日常を過ごしていた少女が在り方をねじ曲げられた可能性世界。永遠の切り札となった男がかつての友人と再会し、異形から人間に戻ることが出来た世界。復讐を誓った少年が少女達と知り合い、真の黒幕が妹だと気付き討伐を成し遂げた世界。元不良の男が自堕落なフリーターになる世界と、彼がリベンジを誓ったことで変化した世界。

 ──それ、全部オープニングに書いてあることじゃん。




『ウテナ 』

「生徒会長? アンタも来てたのか?」

『どうしたウテナ、そんな他人行儀な呼び方して』

「冬芽こそ、なんで急に馴れ馴れしく名前で……あれ?」

『思い出したかウテナ』

「冬芽……違う、ボクは……生徒会長とは……ボクにとっての王子様は……」





 遥か彼方、空に浮かぶ城。そこから『王子様』が、力を貸してくれる。


30 : 王子様にあこがれて ◆dltjJrbYYM :2022/06/21(火) 12:25:37 FpDgb1YU0

「……なにっ!?」

 マジアベーゼは驚きの声をあげる。

 ウテナは自らに支給された剣……「エンジンブレード」で何時のまにか蔓を切り払っていた。
 しかもいつの間にか、破り捨てたはずの白い騎士服が黒基調の新しいものに変わっている。

 マジアベーゼはそんな彼女を興味深そうに見ている。


「パワーアップフォーム……というよりはフォームチェンジですか。もう少し派手な方が私好みですが」

 対峙するウテナとマジアベーゼ……しかしウテナは剣をいきなりあらぬ方向へ投げる。

「ヤケになりました、かっ……!?」

 直後、ウテナの姿は掻き消えていた。否、厳密に言えば剣を投げた方向にいつの間にか移動していた。

 エンジンブレード、それはある仮面ライダーの武器……ではない。ウテナが憧れているのとは別の、ある『王子様』の使う武器だ。

 本来なら『王子様』以外には剣を投げた先に瞬間移動するシフトの力は使えないが、元の世界でもその力を他人に分けることはできた。それを応用して、ハ・デスはこの武器を支給された者もシフトを使えるようにしたのである。

 そのままウテナはエンジンブレードをマジアベーゼと反対方向へ投げ続け、あっという間に逃げきってしまった。

「逃げられました、か……残念ですね、仲間を集めたかったのは本当だったのですが」



 変身を解いたマジアベーゼ。先ほどまでの露出の多い衣装と超常的な雰囲気から一転。ありきたりな学校の制服と純朴そうな見た目の普通の女子中学生になる。

「うゎあああ!!! 私の馬鹿!! 今は性癖優先させてる状況じゃないのにぃ!」

 柊うてなは悪の組織の女幹部であるが、その実ただの変身ヒロイン好きの変態である。

 変身していると性欲の抑えが効かなくなってしまうが、この危機的状況では変身したままの方が安全と判断。

 その結果いい感じの王子様系美少女を前にして我慢できなくなってしまい、普通に仲間として誘うはずが気づいたら(性的な意味で)襲っていた。

 それで危険人物と見なされて逃げられてしまったのだから世話はない。

「と、とにかく私好みの魔法少女や変身ヒロインが殺されるかもしれない今の状況はなんとかしないと!」

 人命とかじゃなくて魔法少女のことしか考えてない辺り、変身してなくても大概なうてなであった。






「あれ、ボク、どうして……」

 ウテナは気がつけば、マジアベーゼから完全に逃げ切っていた。いつの間にか記憶が飛んでいることに困惑するウテナ。今までディオスの力を使っても記憶がなくなるようなことはなかった。強いて言えば転校先で有栖川樹璃と決闘した時……

「あれ? 違う、ボクは転校なんてしてないはず……クソっ、なんかさっきから頭がこんがらがる!」

 平行世界。その概念をハ・デスより聞いてから、ウテナにはパラレルワールド……ある思春期の黙示録のウテナの記憶がよぎるようになっていた。

「ああもう! とにかく、ボクは王子様だ! だから殺し合いを止める、今はそれだけだ!」


 ──王子様に憧れるあまり、自分も王子様になる決意をしてしまったお姫様。

 ──でも、本当にいいの、それで? 






【天上ウテナ@少女革命ウテナ】
 [状態]:健康、混乱(中)、疲労(小)
 [装備]:エンジンブレード@ファイナルファンタジーXV
 [道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2】
 [思考・状況]基本方針:『王子様』として殺し合いを止める
 1:なんか、変な感じがする……
 2:あの女の子(うてな)は危険だ
 [備考]
 テレビ版からの参戦ですが、平行世界の話を聞いてから劇場版の記憶も少しあります。


【柊うてな@魔法少女にあこがれて】
 [状態]:健康、非変身
 [装備]:フルスタ・ドミネイト@魔法少女にあこがれて
 [道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2】
 [思考・状況]基本方針:殺し合いは止める。それはそれとして美少女ヒロインがいたら弄ぶ。
 1:変身ヒロインや魔法少女を守らないといけません! 
 2:あのカッコいい人(ウテナ)、メス堕ちさせたいな……



『支給品紹介』
【フルスタ・ドミネイト@魔法少女にあこがれて】
 柊うてな(マジアベーゼ)に本人支給。
 鞭で打った人形や花を自らの奴隷にする。原作ではこれだけで消耗する描写は特にない が、本ロワでは奴隷を操り続けていると消耗するように制限されている。 ちなみにweb掲載版だとフルスタ・ドミナツィオーネとなっている。

【エンジンブレード@ファイナルファンタジーXV】
 天上ウテナに支給。FF15の主人公、ノクトの初期装備。
 本来これ自体は機械仕掛けの鍔以外は普通の剣だが、本ロワではノクトの能力、シフトが付与されている。剣を投げた先にテレポートが可能。仮面ライダーアクセルとは無関係。


31 : 王子様にあこがれて ◆dltjJrbYYM :2022/06/21(火) 12:26:20 FpDgb1YU0
投下終了です。


32 : CCC ◆EPyDv9DKJs :2022/06/21(火) 14:34:39 K6z0v7gg0
投下します


33 : CCC ◆EPyDv9DKJs :2022/06/21(火) 14:36:19 K6z0v7gg0
 歓喜の声を上げながら、
 目にした白い猫耳付きのパーカーを着た少女に駆け寄る一人の男性。
 勢いのある迫り方に思わず少女は委縮してしまうが、
 どちらかと言えば恰好の方で委縮してるに近かった。

「すんげぇ可愛いんですけどおおおお!
 不純物のない天使を愛でれないかもしれなかったなんて、クソ魔王ひでぇことしやがるぜ!!」

 相手は巨漢のピエロと一度見たら中々忘れられない外見をしており、
 それ故に勢いのある近づき方にはある種の恐怖すら感じられるものだ。
 早口で冥界の魔王に憤ってはいるので、悪い人ではないのだろうかと少女は思う。

「さ、こんな場所に天使はいちゃいけないんだ。おじさんと二人きりの国へ行こうじゃないか。」

 優しい笑みを浮かべるピエロではあるが、はっきり言って怖い。
 少女の視点から、と言うのを抜きにしても怖い部類に入るだろう。
 笑みは浮かべてるが、その笑みはそういう知識があれば下卑たものだと察せられる。
 荒い息遣いも相まってそっち系の人間と疑われてもしょうがないような。

 事実この男はそういう男だ。
 寧ろ、それだけであればまだましとすら言える。
 愛でるだけでは済むことはない。この男、チャンプにおいては。
 裕福な家庭に生まれたものの親からの虐待により性格がねじれ曲がってしまい、
 子供に癒しを求めたものの、段々とその考えは肥大化していったことにより、
 『子供は天使のままでいてほしい。だから子供が汚い大人になる前に殺す』と言う、
 身勝手極まりない理由で子供を殺すシリアルキラーに変貌してしまった存在だ。
 なので、目の前で怯える少女をどうするかなど、最早語るに及ばず。
 決闘? デュエル? 殺し合い? そんなのは彼にとって関係なかった。
 大人はカスだ。自分を誘ったシュラのような奴であれば別だったかもしれないが、
 殺し合いを強要してくるカスみたいな奴の言うことを聞く義理もないのだから。
 無垢な天使ばかり集めているのであれば、認識が変わるかもしれないが。
 舌なめずりするチャンプに、小さな悲鳴を上げながら少女は逃げる。

「ああ、天使だ。けど汚い大人にしない為にも───」

 少女を追いかけていくとチャンプの笑みが初めて崩れた。
 少女が逃げた先にあった湖は、彼女から逃げ場をなくしている。
 それは別にいい。問題なのは、その湖から大蛇のように水が舞い上がったから。
 勢いよく空へと球体となって飛んで行き、水が空で盛大にはじける。
 自他ともに周囲を豪雨の如く濡らしていく。

「な、なん……」

 言葉を紡ぐ寸前に寒気が走った。
 比喩とかではない。本当に寒いからだ。
 場所は確かに雪原のエリアにそう遠くはないものの、
 それにしたって水を浴びたにしては寒すぎる。冷たいではなく寒い謎。

「なんじゃこれぇ!?」

 動かぬ足を見てみれば、本来言おうとした言葉とは別の言葉が飛び出す。
 足元は膝まで氷で覆われており、周囲の足元すら凍っていて明らかに異常なことだ。
 チャンプはこういう特殊なことができるものに心当たりはあるものの、
 相手は無垢な天使であって、そんなことするわけがない。

「似たような奴はいたけどよ、こんな気持ち悪い執念をカナメが受けてたと思うとすげーよ。」

 そう思っていた。この時まで。
 先程まで明らかに怯えていた気弱そうな少女の顔つきは、
 今や少女とは縁遠そうな、寧ろ少年のような顔つきになっている。
 水のような物腰柔らかな瞳だったはずが、今や氷のような冷たい目つき。
 今の水と氷が織りなした光景そのものだった。

 外見通りと言えば外見通りの年齢ではあるが、
 彼女(彼)は残念ながら彼の思うような無垢な子供ではない。
 名をスイ、またはソータ。一つの肉体二つの魂が宿った少年少女で、
 人が容易に死ぬゲーム、ダーウィンズゲームで生き抜いてきた一人だ。

「と言うかさっさと血流操作すりゃよかっただろうが。」

『あ、相手は怖い人だけど殺し合いをするつもりはなかったし流石にそれで殺すのは……』

「いや、殺すよりもやばいこと考えてたぞ絶対。正直俺は引いたぞ。」

 スイはDゲームに参加してるものの、
 殺しについては余りするつもりはない、穏健派な人物だ。
 此処でも殺し合いを強要される立場ではあるものの、なるべくは避けたい。
 あの狂気的な接近の仕方は流石に野放しの方が危険かもしれないが、
 同じ仲間のシュカやレインであれば遠慮はしなかっただろう。
 彼女はまだ小学生、そう言う目に深く理解があるわけではない。
 だから彼女にとっては怖いけど何も殺すべき相手でもないといった認識だ。

「じゃあどうすんだ? Dゲームと関係ないにしても───」


34 : CCC ◆EPyDv9DKJs :2022/06/21(火) 14:37:22 K6z0v7gg0
「……騙しやがってェェェェェl!!!!」

 耳を劈きそうなほどの絶叫。
 とても会話できるものではなくなっていた。
 チャンプが好きなのはあくまで天使のような子供だ。
 天使の皮を被った子供では絶対に許せない。もはや冒涜でしかない。
 天国に送る為ではない。天使を騙ったクソ野郎をぶち殺す為に行動する。
 まだ上半身は動かせたため、支給品にあった球体を近くへ二つ放り投げると、
 一気に周囲へと業火が周囲へ広がることでその熱であっという間に氷が溶けていく。
 溶けた水で相殺しつつも、周囲に炎が残る程の燃焼が氷を溶かしていく。

(流石にエイスの連中みたいな間抜けじゃないとは思ってたが、
 なんだこの炎! 威力が火炎瓶とかの比じゃないし異能(シギル)か!?)

 単なる炎であれば流石に消火程度で済まされただろうが、
 石の壁だろうと燃焼させ破壊できる竜炎のアンプルは、
 帝具を使うチャンプの精神力を以てすれば相応の威力を誇る。

『おいスイ! 血流操作で止めろ!』

「やってみてるけど、できない!」

 魂が二つあるが故に、二人は人格ごとに別々の異能を所有する。
 凍らせる能力の『開かずの氷室(カストルライト)』はソータが使用できる。
 スイは水を操れる『枯れずの水瓶(ポルクスライト)』は通常の水だけではなく、
 人体の七割を有する水分も操作可能……のはずだが、何度やってもできなかった。
 その気になれば血流操作で殺せる程の極悪な異能のはずだし距離も五メートル程度。
 相手に眩暈を起こして倒れさせるぐらいなら容易にできるはずだが、それができない。

『さっきの水の操作する量もだが、普段よりもなんか弱体化してるってことかよ!』

 スイの血流操作は通用する相手であれば、
 近づくだけで相手を確実に死に至らせる凶悪すぎる能力だ。
 だから当然ではあるが、その能力にも制限はかけられている。
 確実に殺すにはより至近距離の必要はあるが、その制限を察する余裕は今はない。

 特に今、チャンプルが投げたアイテムにより周囲は炎で溢れている。
 ソータの異能は液体をある程度自由に凍らせられるが、凍ってもすぐ溶けるこの状況下。
 これではソータの開かずの氷室は役に立たず、もう一度スイにシギルを行使する必要がある。
 彼女の異能ならば消火と同時にソータの攻撃につなげられるものの、

「させるかよぉ!!」

 生憎とチャンプはシリアルキラーと同時に、シュラがワイルドハントに採用するに値する人物。
 二度も同じ手段を取らせる暇など与えないし、巨漢とは思えないほどの高速で接近してくる。

『スイ変われ!!』

 スイの異能はスピードについてはそこまで早くない。
 元々遠隔攻撃の異能だ。接近戦はかなりの不得手だし接近の血流操作についても、
 常人ならともかくとして、チャンプの人間離れした速度に対応は間に合わないと判断。
 鳩尾へ叩き込まれる寸前にソータが服を凍らせることで、申し訳程度に威力を和らげる。
 とは言え見た目通りの巨漢によるストレートでは、それは薄氷とさほど変わらない。
 骨折と言った重傷は免れても、肺の空気を吐き出すほどの威力でソータは殴り飛ばされた。

「あ。」
          ・・・・・・・・・・・
 そう、飛ばされた。湖を背にしていた状態で。
 湖を背にしていた以上、そのまま月が照らす水面へとダイブしてしまった。
 暗がりの湖は、視力に優れてるわけではないチャンプでは姿見つけられない。
 怒りのあまりアンプルを追加で投げようかとも思うも、その手を止める。

(水を使う帝具みてえなのがあるはずだ。
 互いに手の内がバレちまった上に、こっちと相性も悪いし逃げるしかねえ。)

 腐っても何人も殺して逃げられるだけの考えはある。
 チャンプは今一度武器の確認の為、素直に逃げを選ぶ。
 あの天使の皮を被った不純物は絶対にぶち殺すつもりではあるが、
 一度不意打ちから重症を受けた上にさらにこの不意打ちだ。いい加減彼も警戒ぐらいはする。
 目先の欲望や目的に囚われていては天使達が汚い大人として生きてしまう。
 耐えられない。そんなことあってはならない。まるで神の使命を信じる狂信者のように、
 殺人ピエロは天使を求めて彷徨っていく。


35 : CCC ◆EPyDv9DKJs :2022/06/21(火) 14:37:42 K6z0v7gg0
【チャンプ@アカメが斬る!】
[状態]:怒り(特大)、軽い凍傷
[装備]:竜炎のアンプル×3@片道勇者+
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本方針:天使達を天国に連れて行く。邪魔する奴はぶっ殺す。
1:あの不純物(スイ)絶対に許さねえ。
2:殺し合い? 知るか! 天使を愛でるんだよ!!
3:ただちょっとは冷静に行動する。

[備考]
※参戦時期は死亡後。
※死亡後の都合、媚びる相手には警戒心がある程度あります。
 ただし、子供がいた場合逆に薄れるかもしれません。










「プハッ!」

 戦いのあった場所の対岸側にてスイは浮上する。
 水を操作できる異能である以上服の重みで浮かないは発生せず、
 短時間で長距離泳ぐについても水流を弄れば体力の消耗も少ない。
 とは言え殴られたダメージは無視できない。腹部を抑えながら近くの地面へと這い上がる。
 ずぶ濡れになった服や髪は早々に異能で脱水して、周囲に水の塊が浮かぶ。

「ソータ、これからどうするか決めてる?」

 戦う覚悟は圏外村では決めてはいる。
 皆の場所へ帰りたいが、それはそれとして。
 ハ・デスによる殺し合いは、あのDゲームよりも更に厄介だった。
 冷静になった今、力が制限されてる原因についても察しがついている。
 首輪を外す必要もあるし、こういう時頼りになるカナメもリュージもいない。
 妙案を出してくれたりブレイン担当とも言えるレインもこの場にはいない。
 全てを決めるのは、現時点では自分とソータだけだ。

『今回のはDゲームじゃない。アプリもなかったよな。』

「スマホは没収されてるし、タブレットにもそれらしいのはなかったよ。」

 命懸けのゲームはDゲームに見えるが、今までと趣向や金銭もなく、生存も優勝以外にない。
 宝探しゲームのような視点を変えてみても、一人だけしか生存できないようにしか見えなかった。
 今後出会えば他の人にも念の為聞いてみるつもりだが、望みは薄いだろう。

『だったらどうするか、分かってるよな?』

「うん。クランを作るしかないよね。ゲームを終わらせるための。」

 以前の、エイスの惨状に嘔吐してたあの頃とは違う。
 自分の場所を守るだけではなく、自分の守る場所に帰る為に戦う。
 だから閉じこもっているつもりはない。サンセットレーベンズの仲間がいなくても。
 サンセットレーベンズのような、ゲームをクリア……この場合は主催の打倒を目論む。

『言うようになったじゃねえか。』

 元々ソータは臆病なスイと違って、生きるための殺しに躊躇はない。
 スイがしたがらないし、それを望まないので控えているだけであって。
 なので普段は臆病な彼女がどうしたいかをはっきりさせてくれて笑みを浮かべる。

「でも私やソータじゃ、レインさんやカナメさんみたいにはできない。
 だから最初に必要なのは、交渉ができる人とか近づかれないように前線で戦え……!」

 突如としてスイが喋るのをやめて立ち上がる。
 どうしたのかと疑問に思ったが、すぐに気づく。

「そこの人、出てきてください。」

 枯れずの水瓶は攻撃だけに使える異能に非ず。
 動かないでいれば人の持つ水分を探知することで、
 相手が身を潜めてたり倒れてたり、血塗れでいることもわかる。
 だから彼女が少し集中するだけで、周囲に人間がいることも察知できた。

「……」

 出てきたのは金髪の外人だ。
 軍服はどことなく仲間のリュージを思い出させるが、
 彼と違って白服であって随分と違う格好とも思えた。
 白い軍服は海兵と言った違いはあったりするが、その辺の知識は疎いし彼は海兵ではない。
 手には銃剣があり、これもまたリュージが使ってるものを彷彿させるが何処かが違う。
 なんせスコープの部分が虫眼鏡を取ってつけたかのようにあるのは、手作り感が強い。

「今から質問します。私は嘘が見抜けますから正直に……」

 手を相手へと翳しながらスイは問いかける。
 枯れずの水瓶の血流を見ることで異能の行使を見抜けるが、
 残念ながら嘘をつく際の微量な汗の流れ等は判断しかねることだ。
 あくまでハッタリでしかない。こうすることで相手の行動を伺う。

「え?」


36 : CCC ◆EPyDv9DKJs :2022/06/21(火) 14:38:18 K6z0v7gg0
 ただし、そんなものは成立しなかった。
 彼女がピンチに陥るような展開ではない。
 言葉と同時に、相手はデイバックと持ってた銃剣も投げ捨てた。
 丁度スイとの中間……まるで視線を逸らさせないように。
 視線を逸らすことで隙を見せるという行為すら放棄しているかのようだ。

「持って行け。俺が此処で戦うことは死を意味する。
 死ぬのは自分が、と言う意味でだ……だから持っていけ。」

「おい、生き残る気がないのか?」

 戸惑って思考がまとまらない。
 誰かを殺すぐらいなら死んでもいい、とかなら以前の自分と同じでわかる。
 カナメのように悪だけを全力で殺すでも、王(ワン)のようにしたいから殺すでもない。
 死のうと思ってるとかでもなく、戦うと勝ち負け関係なしに死ぬしかないという発言。
 とても病人には見えないのもあって、彼が何をしているのかの理解が追いつかなかった。
 それ故にスイよりもソータの方が今は適任であり、すぐに入れ替わって対応する。

「急に人格が変わるが、それが素か。」

「質問してるのはこっちだぜ? 兄ちゃん。」

「質問ではない、これはただの納得だ。
 俺の服は端的に答えると、力を増幅させるものになる。
 だが適合者ではない俺が使えば、対価として寿命を大幅に削ることになる。」

 寿命を削る。負ければ死ぬ。
 しかし勝ったところで結局寿命が尽きる。
 どっちに転んでも結果が変わらないのでは、行動にも納得ができた。
 自棄と改善に、完全な詰みに入ってしまってるのだから。

「使わない選択肢はないのか?」

「使わないとしたら俺は寿命も僅かなただの教団の人間でしかない。
 俺はただの人間が生き残れるような環境では生きてはいなかった。
 そういう奴と戦ってきた俺を招くいた……つまりそういうことだろう。」

 Dゲームの異能を使える自分達に加え、
 先ほどの巨漢の外見以上の動きができる人間もいる。
 当然、他にもそういう類の相手がいることは間違いないし、
 ただの人間がたかだか銃剣一本で立ち向かえる程甘くもないだろう。
 異能を駆使すれば、現代兵器にだって十分に勝てるのがDゲームだったのだから。

「此処に来る以前の話だが、ただでさえ俺はこれを何度も使った。
 酷使すれば今日が命日になる。当然、殺し合いを勝ち抜くなど土台無理な話だ。」

 彼は野心はあるにはあったが、別に大それたことは考えてなかった。
 ただ、同じように寿命の短い複製体と共に寿命が延びる場所を目指しただけだ。
 多大な犠牲を、嘗ての同胞すら断腸の思いで手にかけて最後にはヴァルキュリアも倒して。
 古代文明の遺産へと手を伸ばそうと必死に足掻いた。ただ生きたい、それだけの為に。
 何処までも希望なき生。そこに手が届きそうだった所に、次の戦いに巻き込まれた。
 これが反旗を翻した咎と、彼は受け入れるしかなかった。
 抗う手段すら行使することを許されなかったのだから。

「なあアンタ。その命捨てるってことならよ、
 だったら、俺達がどう扱ってもいいんだな?」

「ああ。」

「言質取ったぜ。だったら俺達はクランを作る。
 報酬は後払い予定だがゲームの脱出。だからそれを手伝いな。」

 自分を殺さないのは憐れみか、
 元からそのつもりであったからか。
 どちらであっても元より長生きはできないし、
 一度言った言葉を反故にするようなこともしない。
 ただそれはそれとして、別の問題。自分にできることはたかが知れている。

「俺は役に立つと言う保証はできない。
 肝心な場面で戦うこともできないだろう。
 そちらにとって、足手纏いになるはずだが?」

 異能を余り見てないものの、
 この状況でこうして落ち着いて会話ができている。
 恐らく相応の修羅場をくぐっているのだとは察せられたが、
 それだけに自分の有益性などたかが知れているものだ。

「俺達は見ての通りの子供だ。
 今回はそっちが自棄だからなんとかなったが、
 本来は交渉したってなめられるし、絵空事だって言う奴もいる。
 そういう時お堅そうな軍人がいれば、ちょっとは説得力が増すだろ?
 別に戦うなら俺達でもできる。そっちが無理する必要はない……でいいよな、スイ。」

「うん……私達が戦うので、無理はしなくても大丈夫です。」


37 : CCC ◆EPyDv9DKJs :2022/06/21(火) 14:40:01 K6z0v7gg0
 彼は恐らくDゲームの参加者ではない。
 ならば似たように戦えない人物もいるだろう。
 今後そういった人物を纏めたりできるのは子供の自分ではなく、
 力を使えない彼の方が精神的な面で見ても、適任であることはよくわかる。

「だから、お願いします! 私達は守りたい仲間が元の世界にいるんです!」

 宝探しゲームが始まった後、突如として渋谷に現れたグリードなる怪物。
 渋谷を牛耳るサンセットレーベンズはこれに対処していたところスイは巻き込まれた。
 自分がいなくなったら必然的にペアで行動してたリュージが一人で戦うことになっている。
 ただでさえカナメやシュカ達が不在の間に起きて、人材も乏しい中での出来事。
 加えてグリード相手ではリュージの異能は全く役に立たないので一般人と変わらない。
 サンセットレーベンズは彼女にとっての帰る居場所だ。だから守らないといけない。
 その為の覚悟は済ませてある。ただし、自分達らしいやり方を忘れずに。

「……途方もない、無計画さのある叛逆だ。俺達がした叛逆の方がまだ現実味がある。」

 彼は事前に叛逆する人数だけはいたので反旗を翻すことも難しくはなかった。
 今度の叛逆はまず人材集めから始まるという、圧倒的なまでに無茶なところだ。
 メンバーは小学生ぐらいの子供と、一般人とそう変わらない自分の僅か二名。
 人材を確保して、その上でようやく始まる薄氷の上で戦い続ける所業。
 ため息交じりの言葉で、交渉決裂に肩を落とすスイ。

「だが、行動を共にさせてもらう。」

「え?」

 思わぬ一言に顔を上げる。
 さっきまでボロクソに評価してなかったか。
 この短い間で彼が納得できるだけの論理もなかった。
 なのにどうして急に方針が変わったのか。

「え、あの、どうしてですか?」

「……大した理由ではない。ただ、同類だと思っただけだ。」

 彼女も仲間の為に戦おうとしている。
 同胞を救わんと、己の寿命を削ってまで抗った自分と重なって見えた。
 いや、厳密には違う。それは自分であるので重なって見えるとは少し違う。
 どちらかと言えば、自分を後ろで見ていた同胞の感覚とでも言うべきだろうか。
 彼女の途方もない茨の道。とてもその茨を斬り払うことのできない弱弱しさ。
 説得力もなければカリスマもない。これで集団を作ろうというひびの入った氷が如し。
 ただ、同胞が自分を見ていたときは。きっとこのような光景だったのではないのかと。
 それでもついてきてくれた。それでも共に叛逆をしてくれた彼らはこれで戦って、
 そして勝ち取った。であれば、彼女もまたそのような人物に足りえるのではないだろうかと。

「あ、ありがとうございます! 私がスイで『俺がソータだ。アンタは?』」

「俺には名前がない。あるとするなら、エレクトロゾルダートと言う総称ぐらいだ。」

「あんまし人の名前じゃねえよな……スイ、なんかいいのあるか?」

 ドイツ語で電気の兵士を意味する名前だ。
 長いうえに名前と感じにくいので別の名前がほしいと思ってスイに促す。

「え? え、えーっと……コ、コラードさんとかは?
 確か、ドイツ語だと『戦友』って意味だったような。」

「ひょっとしてKamerad(カメラード)か?
 英語であればComrade(コムラード)ではあるが。」

「あ、それです。カメラード───」

「いや、コラード……その名前で行こう。」

 愛国心がないわけではないが、
 アガルタを目指して仲間以外は全て捨ててきた。
 所謂心機一転と言った意味合いで、ドイツ語ではなく英語の戦友の名を貰うことにする。
 電気の兵隊などと言う使い捨ての存在ではない。自分だけの名前を彼は得た。

「それで、協力するからにはまず聞きたい。何故湖にいた? そして先程水を操っていたが……」

 情報の共有の為、スイは先の顛末を語り始める。
 自由をその手にしようと足掻いた男が作った銃と共に急造のクランが誕生する。


38 : CCC ◆EPyDv9DKJs :2022/06/21(火) 14:40:39 K6z0v7gg0
【スイ@ダーウィンズゲーム】
[状態]:スイの人格、打撲、恐怖(中・スイのみ)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]基本方針:生きてリュージ達の場所に帰る。
1:コラードさん(エレクトロゾルダート)と共にクランを作る。
2:ピエロ(チャンプ)に恐怖と警戒。(スイ)
3:ピエロ(チャンプ)ぜってえやべえだろあれ、(ソータ)

[備考]
※参戦時期はグリード出現後〜五年経過する前です。
※スイの枯れずの水瓶による制限は以下の通り。
 ・操作できる水は少なくともある程度の認識、視認できる範囲の水。
 ・水分による探知能力は最大でも1エリア分。範囲を広げるほど消耗。
 ・血流操作等の体内の水分への干渉は3メートル以内の接近が必要で、
  殺害できる程の行為には更に距離が近くなければできない。
※チャンプの影響でピエロに対する恐怖があります。(スイの人格のみ)



【エレクトロゾルダート@エヌアイン完全世界】
[状態]:健康
[装備]:電光被服+電光機関@エヌアイン完全世界、ジーニアス・ジーニアス@グランブルーファンタジー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜1
[思考・状況]基本方針:生きたい。だが戦うわけにはいかない。
1:スイと共にクランを作る。交渉事が俺に務まるのか。
2:コラード……戦友か。いい響きだ。
3:電光機関を使うタイミングと回数は気を付けなければならない。

[備考]
※ヴァルキュリアを倒したエレクトロゾルダートの個体です。
※名簿にはエレクトロゾルダートと表記されます。
※電光機関の寿命ついては後続の書き手にお任せしますが、
 電光機関を余りに酷使するようであれば、一日と持ちません。
※スイからコラードの名前を貰いました。必要でなければ此方で名乗ります。
※電光機関で支給品1枠分です。
※ジーニアス・ジーニアスのスキルが発動してるかは、
 採用次第後続にお任せしますが、多分この個体は光属性かと。

【竜炎のアンプル×5@片道勇者+】
チャンプに支給。ゲーム上における消耗品の投擲物。
ぶつけると理力(他ゲームで言う魔力)にあわせて威力が上昇し、
一定時間大炎上状態にして燃焼ダメージを通す。
炎属性の攻撃を受けるなどすると引火する恐れあり。

【ジーニアス・ジーニアス@グランブルーファンタジー】
エレクトロゾルダートに支給。ゲーム上では闇属性スカルの解放武器の一応銃剣。
スカルがコーディネートしたダブルバレルのショットガン。スカル曰く、
『1本でも最高なのに、2本口があるなんて天才の2乗だろ!』らしく、この名がついた。
スコープの代わりにつけた虫眼鏡は照準を合わせる上で何の役にも立たないが、
拡大された自由を求める漢の強い瞳は敵を驚かせ、動きを止める効果を持つ。
闇属性の連撃率強化をする憎悪の二手のスキルがあるが、
恐らく彼の属性は光属性なので多分効果はない。

【電光被服+電光機関@エヌアイン完全世界】
エレクトロゾルダートの支給品と言うよりもデフォルト装備。
(支給品の枠をこれらに割いてるため支給品として扱う)
ナチスの研究機関「アーネンエルベ」(後のゲゼルシャフト)によって、
チベットで発掘された古代文明アガルタの超科学技術を元に開発された代物、
電光被服(軍服)に電光機関(歯車)を埋め込み対象の身体能力を大幅に強化。
電力を操る力、と言った超人的な能力を得られるが、使用者に多大な消耗を強いる。
生物であれば誰もが持つATPを消耗するが、アガルタの末裔以外は適性がない。
当然エレクトロゾルダートにはなく、過剰に使い続ければ命を落とす。
ムラクモのように透明化や分身による攪乱等をゲーム中で行ってないことから、
アカツキの試作型電光機関(機能が少ない分出力が高い)の可能性は高いが詳細は不明。


39 : CCC ◆EPyDv9DKJs :2022/06/21(火) 14:41:03 K6z0v7gg0
透過終了です


40 : CQCQ ◆FiqP7BWrKA :2022/06/22(水) 00:01:49 KEvTAQTs0
chapter0 銃声にすれ違う



対照的な二つの死体がそこにあった。
一つは胸の前で手を組まされ、長椅子に寝かされた上で、顔にはブレザーをかけられている。
もう一つは地面に仰向けに倒れており、
その顔は信じられない物を見る様な表情で固まっている。
二人に共通していることは、同じ世界の出身で、女性で、銃撃により死んでいることだろう。
この惨状はなぜ起こったのか。
時間を戻しながら一つづつ紐解いていこう。


41 : CQCQ ◆FiqP7BWrKA :2022/06/22(水) 00:02:32 KEvTAQTs0
申し訳ありません。投下順を間違えました。
改めまして、投下します。


42 : CQCQ ◆FiqP7BWrKA :2022/06/22(水) 00:03:14 KEvTAQTs0
chapter1 迷子-ストレイシープ—



「とりあえず、人に会えればいいのかな?」

制服の上にグレーのカーディガンを羽織ったモデルでもやってそうな美しい女性が、なんてことも無いようにつぶやいた。
その声音に恐怖はない。
目には光が、そして立ち振る舞いには緊張が無かった。
感覚が麻痺しているというより、
“消失”していると言った方がしっくりくる『無』があった。

彼女の名前は朝比奈まふゆ。
ほんの少しでも彼女を識る者なら、この説明だけで十分だろう。

彼女は配られたデイバックから変身ベルト、ツーサイドライバーを取り出し、
主武装であるライブガンを引き抜いた。
本当にビームなんて出るのか?
と、思いながらも、まさかおもちゃを渡して殺し合えなんて言わないか。
とも思い、ライブガンを手に適当に歩き始めた。
人を殺すのも、そうしてもやらなきゃいけないなら仕方ないかな。
ぐらいの心持である。
自分さえ見失った自分は、きっと誰かを手にかけた所で何も感じない。
そう思うから彼女には躊躇とか、葛藤とかは無かった。
そしてぶらぶら歩く事数十分。
ちょっと遠くからパララララ、と映画でしか聞いたことの無い様な音が鳴る。

「あっちか」

今から行った所で、音の主に会えるとは思えないが、
行けば何か手掛かりぐらいあるだろう。
そう考えてまふゆはもう数十分かけて音の鳴った方に歩いた
そして銀行のような建物にたどり着いた。

「血……いや、脳漿かな?」

死体は無かった。
だが、それを運んだあとが銀行に向かって点々と伸びている。
まふゆは何のためらいもなく、
自動ドアをくぐってその中に入った。
見ると、奥の、カウンターの一番前の長椅子に誰かが寝ている。

「え?」

それは血のにじむ穴が開いているが、見覚えのあるジャージを着ている。
胸から顔にかけて、ブレザーがかけられており、顔は見えない。
けどその細すぎる足をしている人間を、まふゆは一人しか知らなかった。
ゆっくりと、ブレザーを取る。
脳漿と血がべっとりと付いた奇麗な長い髪。
恐怖と絶望が張り付いた眉間に銃創のあるデスマスク。
目は閉ざされていて、口元には何か拭ったような跡があったが間違いなく、

「奏?」

自分を救うと約束してくれた少女が、最も救いのない最期を迎えていた。


43 : CQCQ ◆FiqP7BWrKA :2022/06/22(水) 00:03:41 KEvTAQTs0
死体が勝手に動くわけないから自殺な訳ない。もし銃で自殺したなら眉間じゃなくてコメカミに穴が開くはずだ。拳銃がないのもおかしい。何なら他の荷物もだ。間違いなく他殺。本当に?誰かに撃ってもらっただけかもしれない。どちらにせよ誰が殺した?このブレザーの持ち主?だとしても態々時間をかけて弔うか?優勝狙いでも罪悪感がある?だったらさっさと一撃で終わらせようとしないか?もしかして何かトラブルがあって、その結果こうなった?奏が?なんで?もしかして撃ったのと弔ったには別人?だとしたら犯人何て見つけようがない。検死解剖したところで銃弾の種類なんて分かりようが……

「朝比奈先輩?」

背後から声がした。聞き覚えのある声だった。
自分と同じ制服を着た、ピンク髪の後輩。

「鳳さん?」

「うそ、ですよね?ま、まさか、その銃でその人を?」

いつも自分を見るのよりも、3倍は強い恐怖の色と涙を湛えた目。
こちらが少しでも動くたびに後ずさる彼女に、まふゆはライブガンを向けて引き金を引いた。

「〜〜〜〜〜ッ!あっ……ああぁ……」

腹部を押さえてうずくまった彼女に、まふゆは二発目のビームを撃つ。
今度は肩だ。大きく体を弾かれ、がら空きになった心臓に三発目。
念のために胸部にもう一発撃ちこんでおく。

「……え?」

全てが終わってからまふゆは気付いた。
自分はなんで彼女を撃った?そんな必要あったのか?

「なんで?なんで私は……どうして?」

体に黒いコールタールのようなモノが溜まっていく感じがする。
それを外に出そうとするように、噴き出る汗は止まらない。
ライブガンを持つ腕は握ったまま全く動かない。

「気持ち悪い……」

自分がどこに居るか分からない。
自分が何をしたいのかわからない。
自分が何をしようとしたのか分からない。

ぐるぐると滅茶苦茶に絡まった思考に背を押され、まふゆはその場を後にした。


44 : CQCQ ◆FiqP7BWrKA :2022/06/22(水) 00:04:07 KEvTAQTs0
CQCQ、こちら朝比奈まふゆです。
朝比奈まふゆ、あなたは一体どこに居ますか?



【朝比奈まふゆ@プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク】
[状態]:健康
[装備]:ライブガン@仮面ライダーリバイス
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
     ツーサイドライバー@仮面ライダーリバイス
     バットバイスタンプ@仮面ライダーリバイス
[思考・状況]基本方針:?????
1:私は……
2:奏……
[備考]
※少なくともサークルメンバーとある程度の仲になってからの参戦です。
※鳳えむの支給品一式が彼女と宵崎奏の死体のそばに放置されています。



【鳳えむ@プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク 死亡】



支給品解説
【ツーサイドライバー@仮面ライダーリバイス】
仮面ライダーエビル、ライブ、ホーリーライブに変身するためのベルトで、
設計、開発はFENIXの遺伝子工学研究所所属の科学者で、
ベイルドライバー、及びデモンズドライバーの開発者、狩崎真澄の息子、ジョージ・狩崎。
搭載したツーサイドエンジンという内蔵プログラムにより、
マイナスエネルギーを極端に増幅させる変身と、
その反作用を利用してプラスエネルギーを倍増する特殊な変身の2通りを可能としている正に二面性の強いベルト。
オーインジェクターの付いたベルト部分と、スタンプを装填するツーサイドウェポンの二つで構成されており、
前述の変身の場合、近接ブレードであるエビルブレードが展開され、
後述の変身の場合、遠距離武装のライブガンとして使用される。
これらは変身後に切り替え可能。
また、リバイスドライバー同様にゲノムチェンジが可能。
バットバイスタンプとセットで支給。


45 : CQCQ ◆FiqP7BWrKA :2022/06/22(水) 00:04:59 KEvTAQTs0
chapter2 神聖な仕事


少し時間を巻き戻して、同じ銀行にて。
まふゆと同じように銃声を聞き、2人の男性がそこにやって来ていた。
一人はブレザータイプの学生服を着た青髪の少年。
もう一人は戦闘服に似た服を着た若い男だ。

「ヒナタ、あそこに誰かが倒れてる」

「あ、本当だ。一応、罠かもしれないんで慎重に行きましょう」

頷き合い、それぞれ銀色のカラーバレルが目を引く拳銃と、白いビーム銃を携え、
クリアリングを繰り返しながら、野ざらしの遺体にゆっくりと近付く彼らは、日向とレイ。
最初はたがいに銃口を向け合ってしまった二人だが、
互いに決闘に消極的であると知ると、ハ・デスたちに一矢報いるために協力することを決めたのだ。

「これは……」

「誰かに殺されたようだな」

真正面から眉間に一発。
それ以外にも体に複数撃ち込まれている。
持ち去られたのか荷物はない。

「逃げも隠れも出来ずに、真正面から、か」

死体を検めながら日向が独り言ちた。
きっと、あそこに行った自分のような後悔の中で死んだことが、
そのデスマスクからは察せられた。

「どうするヒナタ。
もしかしたらこいつを倒した誰かが隠れているかもしれない」

地球のレイオニクス、、怪獣使いであるレイは、
もし何かあればいつでも手持ちの三体の中で唯一飛行能力を持つ原始怪鳥リトラを呼び出せるように周囲を経過する。

「……せめて、そこの中に連れて行ってやろうぜ」

レイに足の方を持ってもらい、奏を運びながら日向は確信した。
自分は生き帰っている。
それもどうゆう訳か、あの死後の世界での姿で。
ハ・デスや磯野はこの戦いを決闘と言った。
勝負と言った。ルールのあるゲームだと言った。
最後の一人を決めるものだと言った。

(そりゃあ、死なないと話にならないよな)

少なくとも、あの世界での様にはいかない。
致命傷を受ければ間違いなくアウトだろう。
長椅子に寝かせた少女の目を閉ざし、胸元に手を当てさせ、
上着をかけてやりながら、日向は一人思案した。

「終わったか?」

「ああ。レイさんも手合わせて」

「こうか?」

「そう。で、目を閉じて冥福を祈る」

たっぷり三秒。
神聖な仕事を終えた二人は再び銃を手に銀行を出た。

「これからどこに向かう?俺たちの武器は多くはないし、
どのくらい戦いたがってる奴らがいるかもわからない。」

「そうすっねぇ。まずは街を目指しましょう。
食料にせよ武器にせよ、手に入れようと思ったら物のある方を目指すと思うんで」

「なるほど、同じ考えで戦いたがる連中も、
ただ身を守りたいだけの連中も集まるというわけか」

「そうゆうこと!じゃあ、まだ見ぬ仲間を迎えに行きますか」

くるり、と手の中で拳銃を一回転させた日向を戦闘に、二人は市街地を目指した。


46 : CQCQ ◆FiqP7BWrKA :2022/06/22(水) 00:12:57 KEvTAQTs0
CQCQ、こちら日向秀樹とレイモンです。
まだ見ぬ仲間たち、あなたたちは一体どこに居ますか?



【日向@Angel Beats!】
[状態]:健康
[装備]:サムライエッジスタンダード@バイオハザードシリーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:この決闘に抗う。
1:レイさんと行動。まずは仲間を集める。
2:……ま、そうだよな。死ななきゃ殺し合いにならねえもんな。
3:市街地に向かう。
4:ゆりっぺや親友たちも来てんのか?
[備考]
※少なくともユイが消滅してからの参戦です。
※諸々の制限に関しては後の書き手様にお任せします。

【レイ@ウルトラギャラクシー大怪獣バトル】
[状態]:健康、レイブラッドの本能(中)
[装備]:バトルナイザー@ウルトラギャラクシー大怪獣バトル
     GUTSスパークレンス(非可変型)@ウルトラマントリガー NEW GENEREATION TIGA
     GUTSハイパーキー(ゴモラ)@ウルトラマントリガー NEW GENEREATION TIGA
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:ハ・デスを倒す。
1:ヒナタと行動。とりあえず仲間を集める。
2:もう戦いに乗った奴がいるのか……。
3:市街地に向かう。
4:ボスや他の皆も来ているのか?
5:ハ・デスは宇宙人……という訳ではなさそうだな。
[備考]
※エレキングが死亡するより前からの参戦です。



支給品紹介
【サムライエッジスタンダード@バイオハザードシリーズ】
日本刀の刃を連想させるブリガディアスライドが特徴の改造拳銃。
ベレッタM92Fをベースにしており、
製作者はサンフランシスコ郊外でカスタムガンショップ「KENDO」を営んでいる日系人ジョウ・ケンド。
ラクーン市警察の長期にわたる厳しいトライアルテストをクリアして、
特殊部隊『S.T.A.R.S.』に正式に採用されるにいたったという経緯がある。
グリップ中央には”S.T.A.R.S.ゴールドメダリオン”が入っている。



【GUTSスパークレンス(非可変型)@ウルトラマントリガー NEW GENEREATION TIGA】
白いビーム拳銃。GUTS-SELECTのヒジリ・アキト隊員の発明品で、
スロットにGUTSハイパーキーを装填することで様々な攻撃ができる。
また、隠された機能として、光を解放するスパークレンスモードがあり、
ウルトラマンが人から本来の姿に戻ったり、
人間と一体化したウルトラマンが外星人としての体を召喚するのに用いられる。
これらの機能は、ウルトラ戦士が強引にその機能を引き出さなければ使えない。
レイにはゴモラのGUTSハイパーキーとセットで支給されている。


47 : CQCQ ◆FiqP7BWrKA :2022/06/22(水) 00:13:52 KEvTAQTs0
chapter3 不運なあの子



あの惨状の種を明かしてしまえばなんてことは無い。

「はぁーーっ!はぁーーっ!」

ただ運悪く悪い宇宙人に見つかっただけの女の子が

「死ね」

撃たれて死んだ。ただそれだけの話だ。

(嫌だ……まだ、まだ死ぬわけにはいかない!
まだ、まだ救えてない!救わないと……救わないと……)

それは後悔だったのか、それとも自罰的なものか、
はたまた、彼女なりの非救済願望だったのかもしれない。
今となっては、確かめる術などないのだが。

「ふん、やはり人間が戦争の為に造った武器なのだから、
人間を殺せるのは当たり前か」

手にしたM4カービンの具合を確かめながら呟いたのは、
白い肌に、鳥のようなデカい頭を持ったガッツ星人のレイオニクス。
ゴメスやケルビムを操るレイオニクスバトラーの一人だ。

首に巻かれた首輪は気にくわないが、
レイブラッド星人の後継者に勝らぬとも劣らぬ称号が得られるなら問題ない。
そう考え、この凶行に及んだのだった。

「この銃なら人間相手は特に問題ないな。
怪獣共は、同じレイオニクスやよほど厄介な相手でもない限り温存して大丈夫だろう」

例えばここに呼び出される直前、自分を追い込んでくれた地球のレイオニクスとかがそうだろう。

「もしここに居るのなら、必ず、必ずこの屈辱を晴らさせてもらうぞ!
地球のレイオニクス!」

奏の荷物を掴むと、ガッツ星のレイオニクスは



CQCQ、こちらガッツ星のレイオニクスです。
地球のレイオニクス、あなたもここに来ていますか?






【ガッツ星人(RB)@ウルトラギャラクシー大怪獣バトル】
[状態]:健康
[装備]:バトルナイザー@ウルトラギャラクシー大怪獣バトル
     M4SOPMOD BLACKⅠ@現実
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:この決闘を制してレイブラッドの後継者になる。
1:人間相手には、人間の武器で応戦する。
2:怪獣は出来るだけ温存しておく。
3:もし地球のレイオニクスも来ているなら、リベンジする。
[備考]
※レイに敗北した直後からの参戦です。





【宵崎奏@プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク 死亡】


48 : CQCQ ◆FiqP7BWrKA :2022/06/22(水) 00:19:00 KEvTAQTs0
支給品紹介
【バトルナイザー@ウルトラギャラクシー大怪獣バトル】
レイオニクスと呼ばれるレイブラッド星人の遺伝子を持つモノたちが使うデバイス。
怪獣、超獣、スペースビーストを封印、使役する事が可能。
制限により、使役される怪獣は約15m級にスケールダウンして召喚される。
使い手成長すればするほど進化していき、怪獣のさらなる力を引き出せたり、
戦闘特化の姿に変質させることも可能。
レイの物にはゴモラ、リトラ、エレキングが、
ガッツ星人(RB)の物にはゴメス、ケルビムが封印されている。

【M4SOPMOD Black1@現実】
米国の特殊部隊統合軍SOCOMが、XM177の後継としてコルト社に開発依頼したM16A2のカービンモデルであるM4A1にアクセサリーキットを装着した物。
長らく軍に正式採用されていた銃とあって、対人性能は折り紙付き。


49 : CQCQ ◆FiqP7BWrKA :2022/06/22(水) 00:19:12 KEvTAQTs0
投下終了です


50 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/22(水) 01:45:33 vFHQ3/0A0
投下します


51 : あるはずもないあの時の希望が見えた気がした ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/22(水) 01:46:22 vFHQ3/0A0
ここは会場内にある高層ビルの上層階にあるレストラン、そこでは物陰に隠れた少女を、両腕にガトリングを装備した巨大なロボットが探し回っている光景があった。

「フフ……逃げても無駄だ、このワシから逃げ切れるものか」

このロボットの名はパーフェクト機械王、またの名を"大田宗一郎"。
海馬コーポレーションの重役グループこと『BIG5』の一人であり、かつて軍需工場の工場長を務めていた男であった。

(アレは何ですか……!あの、アニメからそのまま飛び出してきたようなロボットは…!)

そしてそんな彼に追い詰められている少女の名は安部菜々、自分のことを『ウサミン星人』、通称ウサミンと名乗るアイドルである。
彼女はこの殺し合いでこの高層ビルの中に飛ばされ、そのあと直ぐにパーフェクト機械王と遭遇してしまい、
必死に逃げ回った結果このレストランという袋小路へと追い込まれてしまったのだ。

そうして彼に見つからないようにテーブルの下などに隠れていた菜々だったが、そんな彼女に話しかけてきたものがいた。

「……命を、狙われてるみたいですね」

一人はまるで爆弾おにぎりのような形をした濃い青色をした物体に焦点の合わない二つの目、そしてカメレオンのように長い舌を持つ謎の生命体。
もう一人は黒い髪をした左右非対称のツインテール。黒衣のパーカーを羽織り、そのスレンダーな肢体を直接覆うものは黒いビキニとホットパンツ、手袋にロングブーツ。そんな黒ばかりの格好をした少女だった。

「ここは私たちに任せて」

そう言うとその生物と少女は菜々を励ますかのようにその肩をたたいた後、物音を立てずに静かに移動をした。

そして彼女たちが菜々から離れた位置に移動すると少女は、近くにあったグラスや食器などを投げることで物音を立てさせた。

「物音……そこか!」

そうパーフェクト機械王が叫ぶと共に物音のした場所にガトリングを放ったが、その先には当然ながら誰もいなかった。
その代わりに彼の背後に赤き竜の頭が現れ、彼の背中に炎を放ってきたのだ。

「ぐぅぅっ!……そこかぁ!」

それを受けてパーフェクト機械王は自身の背後へガトリングを放ってきたが、その結果も先ほどと同じように生き物らしきものは何もなかった。
そして再び彼の背後から竜の頭が物音を立てながら飛び出してきて、彼がそちらに向けて攻撃をする……そういった光景が何度も繰り返され、次第に周囲にあるテーブルや窓ガラスなどが粉砕され、レストランがめちゃくちゃになっていった。


52 : あるはずもないあの時の希望が見えた気がした ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/22(水) 01:46:49 vFHQ3/0A0
しかし、やはりというべきかそういった行為を何度も繰り返しているうちにパーフェクト機械王は、物陰に隠れている者達の思惑に気が付き始めていった。

「なるほど、攪乱して弾薬を使い切らせようという算段か……ならば!あぶり出すまでだ!!」

そう言うとパーフェクト機械王は両肩のミサイルポッドを展開し、両腕に装着されているガトリングとともに乱射し続けることで周囲にある障害物を吹き飛ばそうとした。しかし……

「この時を…アナタがミサイルを発射する瞬間を待っていた」

その言葉と共に黒髪の少女が物陰から姿を現し、そのまま彼の開かれたミサイルポッドの中にマグナムの弾を放ったのだ。

「な……信管を打ち抜……!」

その瞬間パーフェクト機械王の右肩にあったミサイルポッドが誘爆し、彼の右肩から先は吹き飛んでしまった。

「ぐあぁぁぁあああああっ!ワシのっ!ワシの腕があぁぁぁぁぁっ!!」

それを受けて彼は爆発により頭部やボディの内部フレームをむき出しにさせた状態で、失った箇所を見つめながら絶叫をした。
またそれと共に、先ほどの衝撃の影響なのかふらつき始めて、ついにはかつて窓ガラスがあったであろう場所まで後ずさりをしてしまった。

「では、いつかどこかで、また会いましょう」

そして謎の生命体がそう言うとまだ原形をとどめていたテーブルを舌で絡めとったあと投げつけ、それが直撃したことで太田はゴシャァッ、という音と共に外へと投げ出されてそのまま地上へと落下していった。

「怪我は……なかった?」

こうして彼が地上に落下して動かなくなったことを確認するとその少女たちは、物陰に隠れていた菜々の身を案じるような言葉を投げかけた。

「あの……貴方たちは、いったい……?」

菜々はそれを受けて、彼女たちが何者なのかを尋ねながら立ち上がり始めた。

「ああ……申し遅れましたね、ボクはグーイと申します」
「私は……ステラ」

そして彼らもまた、自分たちの名前を名乗りながら菜々に挨拶をし、

「あ……私は安部菜々って言います」

菜々もそれに返していったのだった。

-----------------
こうして彼女たちが挨拶と自己紹介を交わしてから数分後……

「……並行世界、ですか?」
「ええ、信じられないかもしれないけど…菜々が生きている時代は私が知っている歴史とはかなり異なっている……だったら、情報が間違っているか並行世界のどちらかしかないと考えられる」
「それに……ハ・デスと名乗っていたあの男は『様々な世界から決闘者を呼び寄せてある』と言っていた……その言葉が事実であったと考えられる」
「……確かに、ボクの知り合いに"アドレーヌ"だったか"アド"だったか……ともかく、地球から来た人がいるのですが、貴方達とは少し違った姿をしています……そう意味では十分ありえそうですね」

彼女たちは互いが持つ情報と、その前提となる知識が違いすぎること(特にグーイは姿かたちから間違いなく別種の生き物)を察したことから『全員とも違う世界の住人』だと結論付けたのだ。

「……であれば、この後はどうしましょうか?ボクとしてはここで籠城するのも一つの手だとは思いますが、最善策としてはどこか別の場所へと移動するべきだと思います」

そして一通りの情報交換を終えたあたりでグーイが菜々とステラの二人に今後どう動くべきかの提案を出してきた。

「すでに戦闘で荒れている上にあれだけ派手に動いてしまえば、ここに人が集まるのは時間の問題……ならばここから出て別の場所を探すのが最善だと私も思う」

それに対しステラも彼の意見に賛同し、この建物から脱出する準備を始めた。

「……すいません、足手まといになると分かっていますが、私もついて行っていいでしょうか?」

そうやって彼女たちがここを脱出する準備を始めている最中に菜々もまた、付いていきたいという旨を申し訳なさそうに伝えてきた。

「……一度助けたのなら、それ以降何度助けたって、結局は同じ事」
「一度助けて、その後は知らんぷりなんてしたらなんで助けたのかって話ですよ」

ステラたちは彼女のその申し訳なさそうな様子を見ながら『気にすることなどない』と返してきたのだった。

「……ありがとうございます!」

こうして彼女たち三人の、この殺し合いを止めてハ・デスを打ち倒すための仲間を集める度が始まるのだった……。


53 : あるはずもないあの時の希望が見えた気がした ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/22(水) 01:47:17 vFHQ3/0A0
【ステラ@ブラック★ロックシューター the game】
[状態]:健康、自身が置かれている状況に対する困惑(小)
[装備]:M1851ウルフスベイン@バイオハザードヴィレッジ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本行動方針:人類を護り、この殺し合いを止める。
1:人間が……いっぱいいる……!
2:人類を護る為に、ハ・デスを倒す。
3:まずはこの少女(安部菜々)を保護する。
[備考]
参戦時期はノーマルED後、たった一人で地球上の絶滅した生物たちを復活させている最中。


【グーイ@星のカービィシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:接がれた飛竜@ELDEN RING
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本行動方針:主催者であるハ・デスをぶっとばし、家に帰ってお昼寝する。
1:ハ・デスを倒す。
2:カービィさんやリックさん、クーさん、カインさんたちも呼ばれているのでしょうか……?
3:まずはこの人たちと一緒に行動する。
[備考]
参戦時期は少なくとも既にカービィと面識がある時期。
制限によりコピー能力はスターアライズで使えるものだけとなっています。


【安部菜々@アイドルマスター シンデレラガールズ】
[状態]:健康、殺し合いに関する精神的ショック(大)
[装備]:―
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜3
[思考・状況]基本行動方針:死にたくないが、殺し合いに乗るつもりはない。
1:自分以外に呼ばれているアイドルがいないか心配。
2:この黒い物体(グーイ)、まさか本物の宇宙人……!
3:冷静に見るとすごい恰好してますねこの人(ステラ)……。
[備考]


【パーフェクト機械王(大田宗一郎)@遊戯王(アニメ)】
[状態]:右肩から先を喪失、頭部およびボディの装甲にダメージ(大)、高所からの落下による気絶
[装備]:ダブルガトリングガン(現在は左腕のみ)@新機動戦記ガンダムW EndlessWaltz
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本行動方針:優勝して人間の身体を手に入れる、もしこの会場に海馬瀬人がいれば復讐する。
1:(気絶中)
[備考]
アニメ、乃亜編終了後からの参戦。
ステラおよびグーイとの戦闘で右肩から先を喪失し、それにより右腕に装着していたダブルガトリングガンを失いました。


『支給品紹介』
【M1851ウルフスベイン@バイオハザードヴィレッジ】
ステラに支給。マグナム弾を使用する改造リボルバー銃。
桁外れの威力と貫通性能を誇り、その弾丸は伝説の人狼ですら葬ると言われる。

【接がれた飛竜@ELDEN RING】
グーイに支給。同ゲームに登場するボスキャラ『接ぎ木のゴドリック』が左腕に接いだ飛竜の首で、その力の名残が具現化したもの
装備者の腕を小さな竜に変じさせ、その拳に鋭い竜牙をもたらす。
なおグーイにはそもそも腕がなく、腕の代わりとなっている舌の先端に取り付けて使用している。


【ダブルガトリングガン@新機動戦記ガンダムW EndlessWaltz】
パーフェクト機械王こと大田宗一郎に支給。ガンダムヘビーアームズ改(EW版)の両腕に搭載されている2連装ビームガトリング。
本来は全高16.7 mある機体に装着されている武装の為それなりの大きさを誇るのだが、主催者たちの調整により使用者のボディにフィットするよう自動的に大きさが切り替わるようになっている。


54 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/22(水) 01:47:57 vFHQ3/0A0
投下終了です。

以上、ありがとうございました。


55 : ◆s5tC4j7VZY :2022/06/22(水) 06:40:16 FTUKhMcA0
投下します。


56 : 少女と異邦人 ◆s5tC4j7VZY :2022/06/22(水) 06:40:47 FTUKhMcA0
渋いーーーーー「落ち着きがある」「趣がある」といった意味とし使用され、「渋くて格好良い」など、男性に対しての褒め言葉
mayonezビジネス言葉の意味より引用。

「一体、何がどうなっとーと!?」

冥界の魔王ハ・デスの配下を始めとしたNPCが跋扈する大陸。
そこへ参加者として選ばれた一人の女子高生は困惑している。

女子高生の名は仲村ナズナ。
五島列島のとある中学校に通う中学3年生。

「明日は卒業式だっていうとに……」
ナズナは頭を抱えている。

そう。

明日は大事な卒業式。
そして、家を出ていった”父親”と会う約束をしていたのだ。

「あん、男子……本当なんよね」
ナズナは一昔の不良のような男子学生の最後の姿を想起すると体を震わせる。

震わせるが。

「殺し合いなんて、絶対にやるわけがなか!!!」
ナズナは殺し合いを否定する。

「勿論、あん、男子みたいに首がとんで死ぬとは嫌や。だばってん、あん男ん言う通りにするとは癪に障るばい」
(ばってん、あん冥界ん魔王って……小学生でも信じんばい)

また、ナズナは冥界の魔王の存在に非常に懐疑的だ。
故に。

ナズナは磯野の言う通りにはならない。

だが。

「だ、誰!?」
(な、何!?こん目玉ん化け物!?)

ナズナは周囲を取り囲んできたモンスター達に怯える。

仲村ナズナは所謂普通の女子高生。”戦う力”を持たない合唱部の女子部員。
いくら、殺し合いを否定し、磯野に反感を持っていたとしても、NPCを追い払うことができないということは……

命を落としても致し方ないということなのだ。

「い、いっとくばってん、うちばはらかかせたらえすかとやけんね!」

必死に虚勢をはりながらもファイティングポーズをとるナズナ。

『……』
しかし、脅威を感じないのかナズナの言葉に怯みもせず、デスフットにバビロンはじりじりと近づいてくる。

「ほ、ほんなこてはらかくばい」
(い、いけん。いっちょん怯んどらんわ……こんままじゃ、うち……死ぬと?)

ナズナの眼尻に涙が……そのとき。

「そこの低俗な下等種族ども。娘からさっさと離れんかぁぁぁぁ!!!!!」

『!!!???』
突如、放たれたエネルギー弾によりデスフットは一瞬で蒸発した。

(だ、誰!?)
ナズナは涙を腕拭うと、自分を助けてくれた人影を見る。

ナズナを助けた白いマントを羽織る筋肉隆々の男。

名はパラガス。

誇り高き戦闘民族サイヤ人の一人

☆彡 ☆彡 ☆彡


57 : 少女と異邦人 ◆s5tC4j7VZY :2022/06/22(水) 06:41:15 FTUKhMcA0

「あっはっは!正義のヒーローとは……いやぁ、恐縮ですな」
パラガスはナズナの正義のヒーロー発言に照れるように頬をポリポリとかく。

あれから、パラガスの猛撃により、ナズナを取り囲んでいたデスフットにバビロン達は碌な抵抗もできぬまま散っていった。

「そがんことなか!パラガスさんには感謝しかなかとです!」

ナズナはスカートの土汚れをパッパッと手で払うと、パラガスにお礼を申し伝えた。
謙遜するパラガスにナズナは力説する。

そう。
もし、助けが一歩遅かったら、ナズナの命は無残に散っていたのだから。

「やけん……パラガスさんはうちにとって正義んヒーローばい」
ナズナははにかんだ笑顔を見せた。

「……ッ!?」

パラガスはそのナズナの笑顔に。

一瞬、間ができた。

そして、コホンと咳払いすると。

「ふふふ、それではワタシが前に出る。ナズナは安心してついてくるといい」
「は、はい!」
戦闘を歩くパラガスの背中

「……」
(はぁ———そいにしてもパラガスさんって渋み満開の大人だな〜……)
小5のときに起きた家庭問題から男ギライだった。
だが。

Nコン(NHK合唱コンクール)での出来事を経て変わった。

—————”失恋”から男ギライを治った。

(ばってん、失恋したけんといって、ケイスケからパラガスさんはいかな年が離れすぎやし、飛躍しすぎばいね……)
流石にナイナイと思いつつも、性欲満開のNPC達から救ってもらったこともあり、その紳士然とした立ち振る舞いにナズナは顔を赤らめる。

☆彡 ☆彡 ☆彡


58 : 少女と異邦人 ◆s5tC4j7VZY :2022/06/22(水) 06:41:31 FTUKhMcA0

—————ザッ!ザッ!!……

ナズナの尊敬の眼差しを背中で受けつつもパラガスの心中は変わらない。

(……ふんッ!地球人の小娘風情が!!”正義のヒーローみたいでかっこよかった”だと?このオレ……戦闘民族サイヤ人の何がわかるというのだッ!!!)

そう。
別に正義のヒーローとしてナズナを助けたわけではない。
”利用価値”があると感じたためだ。

(あの愚かなる地球人に冥界の魔王を名乗る異星人め……優勝して願いを叶えさせた後は木っ端みじんにしてくれる)

パラガスは怒る。
下等種族である地球人に誇り高き戦闘民族であるサイヤ人の自分の首に猿が如く首輪をつけたことに。

(とりあえずは、この無力な地球人の小娘を引き連れていれば、怪しまれることはあるまい……)

参加者の数に主催の情報が足りない中、積極的に殺し合いに乗ることは愚の骨頂。
故にパラガスは対主催の仮面を被った。

そして、戦う力を持たない女子高生を助けた。

(オレとブロリーの帝国を築き上げてくれるわッ!)
パラガスはほくそ笑む。
自らの野望成就を達成した未来を描きながら。

しかし。

————やけん……パラガスさんはうちにとって正義んヒーローばい

「……」
ナズナのはにかんだ笑顔にパラガスは一瞬、心を奪われかけた。

(………ふん!くだらん!!!)
地球人の小娘の予想外の行動に虚をつかれただけ。

パラガスはそう己にいいきかせると歩く。歩く。歩く。

【パラガス@ドラゴンボールZ 燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:優勝して自分とブロリーの帝国を築く
1:とりあえずは対主催の振る舞いをする
2:あの笑顔……ふん!地球人の小娘よ。せいぜい私の駒として動くがいい
[備考]
※参戦時期は映画劇中宇宙船にて地球に降り、ベジータたちの前に姿を現す直前より

【仲村ナズナ@くちびるに歌を(漫画版)】
[状態]:健康 精神的疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:生きて帰りたい(磯野は許せない)
1:パラガスさんと行動を共にする
2:はぁ〜、パラガスさん渋か……
[備考]
※参戦時期は3巻最終話Nコン終了〜卒業式の間より
※ハ・デスの存在には懐疑的でしたが、NPCとの遭遇から本当にいるのではと思い始めています。

『NPC紹介』
デスフット@遊戯王OCG
闇属性 レベル3 悪魔族 ATK/700 DEF/800
目玉に足の生えた化け物。高くジャンプしてかぎづめで攻撃する。

バビロン@遊戯王OCG
地属性 レベル2 獣族 ATK/700 DEF/600
一つ目の巨大な怪物。目玉からビームを発射して攻撃する。
なお、獣というより悪魔なのでは……は禁則事項です♪


59 : 少女と異邦人 ◆s5tC4j7VZY :2022/06/22(水) 06:41:42 FTUKhMcA0
投下終了します。


60 : ◆4u4la75aI. :2022/06/22(水) 09:37:30 zZNdPa9Y0
失礼します、拙作の『魔法少女とのエンカウント・IF』をwikiにて、以下の通りに修正しました。

『数多の世界線で、彼女に初めに関わる魔法少女は巴マミだ。
そして彼女はキュゥべえとの契約による魔法少女システムを知り、
契約をしたとしてもしていないにしても、未だに生き残ったことはない。暁美ほむらのループがそれを示す。』

『数多の世界線で、彼女に初めに関わる魔法少女は巴マミだ。
マミと接触した彼女は、キュゥべえとの契約による魔法少女システムを知り――
契約をしたとしてもしていないにしても、やがて彼女は命を落とす。暁美ほむらのループがそれを示している。』

修正は以上です。⠀
また、一つ投下させていただきます。


61 : 新編・宮園一叶物語 ◆4u4la75aI. :2022/06/22(水) 09:40:42 zZNdPa9Y0
『ねぇ聞いた?瀬崎さんと花邑さんのこと……』

『2人とも、失踪しちゃったらしいよ』



正直、羨ましかった。
愛吏、花邑さん。2人の間だけの、あまりにも強くて、あまりにも狂った関係。
ある日、その関係が知れ渡って、周囲からは隔てを置かれて、私がちょっと、接触して――
やがて2人はどこかに行ってしまったらしい。
失踪のトリガーは、タイミング的に私かな?
だったら私も、2人の物語の一部になれたんだ。

……それでも、
愛吏と花邑さんの進むストーリーの中で、私はひとつのトリガーになっただけのモブでしかなかった。
私は、メインキャラクターになんてなれなかった。

「良いなぁ」

少し覗き見した2人の関係性は、
幸せそう、狂ってる、楽しそう、普通じゃない――――

――――本当に、面白い。

2人が織りなしたストーリーは私が覗いた範囲だけでも、面白くてたまらない。
でももう2人は消えてしまった。私の観測できない場所へ行ってしまった。
2人の物語に私が関われるのは、ここまで。
また、面白いものを探さなきゃ。
私が、メインキャラクターになれる、面白いストーリーを――――


◆◆◆◆



『これより決闘のルールを説明する』



◆◆◆◆


62 : 新編・宮園一叶物語 ◆4u4la75aI. :2022/06/22(水) 09:41:45 zZNdPa9Y0
「〜♪」

世界史の授業や映画で見た――闘技場の様な場所。
私はその真ん中で、鼻歌交じりに夜空を見上げる。
きらきら、いくつもの星が輝いている。明かりが無いから?
田舎にはあまり行ったことがないから、こんな景色を見るのははじめて。
とっても、綺麗。

「〜〜♪」

ああ、でも輝くのは星空だけじゃないんだ。
私も、輝ける場所に来れたんだ!
今までで味わったことのない様な、“非日常”に来れたんだ!

「〜♪」

片手には、“非日常”の象徴。画面を通してしか見たことなかった、クリスタルの剣。
ステップを踏みながら、それを時折振ってみたり。

「それっ!」

そこにあった、的を斬ってみたり。
木製のカカシ型の的。スパっと斬れると、木の断面が見える。
そしてバサバサと切れた布が地面に落ちて行く様子を見て、私は鼻歌をやっと止めた。

ワクワクが、止まらない。口角が上がる。
ここから何が起こるんだろう?
一番最初に殺人鬼に襲われる?いきなり死ぬのは嫌だから、この剣でいなしちゃおう!
殺し合いに反旗を示す人々と出会う?その道がつまらないのだったら――少し、狂わせちゃおう!

面白い道を歩こう、私だけの、面白いストーリーを。
誰かの悪評を流す?誰かを幸せに助けてあげる?
勢いに任せ殺しちゃう?それとも悲劇のヒロインとして殺されちゃう?

自由!何も悩まなくたって良いんだ。ここじゃ、私もメインキャラクターなんだから!

「……」

でも、とにかく誰かと出会わないと面白いことは起きない。
じゃあ少し休憩したら、ここを出て行こう。

――何が起こるのかな。
ああ、楽しみ!



【宮園一叶@きたない君がいちばんかわいい】
[状態]:健康、高揚
[装備]:スターソード@きららファンタジア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:“非日常”を思いっ切り楽しむ
1:とにかく、面白そうな道へ
[備考]
※参戦時期はact.23開始直前。


『支給品紹介』
【スターソード@きららファンタジア】
宮園一叶に支給。
鮮やかな赤色のクリスタルに、金の装飾が施されたせんし用のぶき。
自らに『属性』を宿す者が扱うことで、その属性に対応した斬撃を飛ばすことが出来る。
普通の剣としても扱うことも可能。見かけによらず切れ味は上等。


『施設紹介』
【トレーニング場@きららファンタジア】
エトワリアの里に存在する施設。
トレーニング場という名前だが、見た目はまるで闘技場の様で観客席までも設置されている。実際何度か闘技場としての役割も果たしている。
一応トレーニングに使えるカカシの的がいくつか置いてある。
地下に対ヒナ祭り地下特別訓練施設があるという設定が存在するがここにあるトレーニング場には地下は存在しないものとする。


63 : ◆4u4la75aI. :2022/06/22(水) 09:43:07 zZNdPa9Y0
投下終了します。


64 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/22(水) 19:50:27 AGBXIAhA0
投下します


65 : 迷走の果てに…… ◆QUsdteUiKY :2022/06/22(水) 19:51:49 AGBXIAhA0
 王を失い、迷走を続けた男が居た。
 黒川イザナ――それは彼にとって唯一の王だったはずだ。
 王は稀咲鉄太の凶弾からその身を呈して下僕であるカクチョーを庇い、命を散らせた。

『イザナ……なんでオレなんか庇った!?オマエは王だ。オレをゴミのように捨ててでも、オマエの時代を創らなきゃいけないんだ!!
 ――それが王だろ!?イザナぁ』

 カクチョーにとってイザナとは、過去に死のうと思っていた生きる理由をくれた大切な王だ。
 身寄りのない奴らに居場所を与える――そんな最強の国を創ろうとした国王だ。
 だからカクチョーはイザナが時代を創らなきゃいけないと――そう思っていた。

『……”オレら”の時代……だよ』

 だがイザナは――死を間際にして過去のやり取りを思い出していたのかもしれない。
 イザナとカクチョーがカマクラを作った時、イザナはオレらの国の城といった。一人で時代を創ろうとしていたわけじゃなかった。

 イザナが三蔵法師だったらカクチョーは孫悟空だ。だからイザナは王国を”天竺”という名前にした。イザナとカクチョー達が時代を創るための王国の名を。

『ゴメンな鶴蝶。……でもオレにはオマエしかいないから』

 カクチョーは孤独がイザナの強さ。他人に興味のない人間だと言っていたが――そうじゃない。
 イザナは天竺にあるのは恐怖と利害のみで、信頼や友情なんて実のない幻想だと言っていたが――そうじゃない。

 天竺という王国は元々、身寄りのない人々の居場所になるはずだった。それがいつの間にか歪んでしまっただけなのだ。
 それにイザナは孤独じゃなかった。何故なら彼には、カクチョーという下僕が居るのだから。

 だからイザナは死ぬ間際――カクチョーに『オマエしかいない』と言った時、不思議と彼は笑顔だった。
 大切だからこそ体が勝手に動き、いつの間にかカクチョーを庇うという行動を取っていた。

 イザナは血の繋がりにこそ恵まれなかったが――そんなものよりも大切な繋がりを、手に入れていたのだ。

『イザナ……。寂しい思いはさせねぇよ……。オレも……今……そっち逝くから……』

 だからカクチョーはイザナを孤独になんてさせやしない。何発もの凶弾をイザナが庇ってくれたが、それでも初撃は受けたのだ。
 あの世へ先に旅立ったイザナの後を追うつもりで、下僕は今は亡き王の隣へ横たわる。

 ――だがカクチョーはこの一連の騒動では死ぬことなく、生き延びてしまった。


66 : 迷走の果てに…… ◆QUsdteUiKY :2022/06/22(水) 19:52:14 AGBXIAhA0
 イザナという王の犠牲がカクチョーという下僕の命を生きながらえさせたのだろう。

 その後カクチョーは無双のサウスに遭遇し、交渉という名の一方的な暴力で配下にされた。たとえ喧嘩屋の名を持つカクチョーでも、暴力に愛された男――寺野サウスには手も足も出ない。それほどまでにサウスという存在は圧倒的な強さを持っていたのだ。
 自らが王と認めていた男が死に、今度は暴力によって強引に配下に加えられる。
 ――これを迷走と言わずして、なんと呼ぶというのだろうか。

『なんでテメェがサウスの下につく?”王”が死んだら鞍替えか?』

 明石武臣がカクチョーに対して放ったその言葉が、迷走していた時期のカクチョーをよく表している。
 無双のサウスは無敵のマイキーによって敗れた。かつてイザナを救おうとした男は六破羅単代の総長を殺害することで、組織を吸収。皮肉にも今度はマイキーに従うことになった。
 一度はイザナを救おうとした男が黒い衝動によって殺人者となってしまい、更には彼の暴走を止めようとも出来ず付き従うのみ。
 その頃のカクチョーはあまりにも滑稽な道化だ。

『……こんな廃人生かすためにアイツは死んだのか?』

 花垣武道にぶっ飛ばされ、呆然としていたカクチョーを眺めてマイキーは語り掛ける。
 廃人。イザナを失ってからのカクチョーには相応しい言葉だろう。
 そもそもカクチョーに生きる理由を与えてくれたのがイザナという王だ。彼を失い、サウスに襲撃され、サウスを殺したマイキーの部下になり――ひたすら周りに流されてきた。

 だがしかし――ガキの頃に憧れていたヒーローの帰還により状況は一転する。

『オレはもう誰も死なせたくないんだ』

 涙を浮かべ、それでも必死に前を向いて進もうとする泣き虫のヒーローの姿に――カクチョーの心は揺れ動いた。
 だからカクチョーはタケミチを信じ、彼と共に進み――その先で仲間諸共マイキー以外を皆殺しにしようとする三途をぶっ飛ばすことに決める。

 敵も味方も関係なく、マイキー以外はノイズだと三途は言い切った。ムーチョすらもノイズとして殺害した狂人。マイキーという王だけに尽くし、それ以外をノイズ扱いする狂信者。
 カクチョーも三途も特定の誰かを王として認めている。そういう意味では似た者同士と言えるかもしれないが、しかしその在り方はあまりにも違っている。
 だからお互いがお互いを気に入らない。

 それに状況が状況だ。
 必然的に戦闘が始まり、カクチョーと三途がぶつかり合う。
 喧嘩をしているというのに。相手は刀を持った危険人物だというのに、タケミチの為に戦えたことにカクチョーは満足しているようでもあった。
 しかしそんな時間も長くは続かず、三途の刀が真正面からカクチョーを切り裂いた。真っ二つにされた――なんてことはないが、明らかに致命傷だ。この時、カクチョーは既に自分の死を悟っていた。


67 : 迷走の果てに…… ◆QUsdteUiKY :2022/06/22(水) 19:52:35 AGBXIAhA0
 だがタケミチを心配させないために浅い傷だと嘘をつき、僅かに残された命の灯火を燃やして三途を電車の外へ追いやることに成功。同時にカクチョーの肉体への負担もまた限界が迫っていた。

 そして走り出した電車は未だ止まらない。

 このままでは脱線するように仕組まれており、自分達も含めて全滅してしまう。

『絶ッ対ェみんなを助けるんだ!!諦めねぇぞ!!』

 自分のことは二の次に考えてみんなを助けようとするヒーローを見て――カクチョーは最後の力を振り絞り、立ち上がる。
 そしてタケミチだけでも死なないように電車から降ろすと、自分一人で止めようと奮闘する。

『絶ッ対ェ止めてやる!!!』

 カクチョーは気合いを入れてブレーキを掛けるが、なかなか止まらない。
 あまりにも絶望的な状況に『駄目か!?』と涙を流した時――


 ――カ ラ ン

 何度も聞いた覚えのある、懐かしい音が聞こえた。

『相変わらず無茶ばっかりする』

 そして王の声が――イザナの声が聞こえた気がする。
 それはもしかしたら、ただの幻聴なのかもしれない。だがそれでもカクチョーの心は燃え上がり、そして何より――。

『まあそれがオマエらしさか』

 カクチョーの手の上にイザナの手が重なり、死にかけだというのに不思議と力が漲る。

『手伝うぜ、カクチョー』

 怒りや憎しみの感情が抜け落ちた、澄んだ声で――イザナはカクチョーの名を呼んだ。
 それはまるで色々とおかしくなる前のイザナのようで。もしかしたらただの都合の良い幻聴幻覚を見ているだけなのかもしれないが――それでもカクチョーはイザナから力を貰った。


 ――そして一人の王とその下僕により、大多数の命が救われた。
 三蔵法師と孫悟空の王国――”天竺”が人々の命を助けたのだ。
 全てをやり切ったカクチョーは安らかに眠り、その魂は王・イザナの元へ――。

 ――辿り着く前に冥界の魔王に捕らえられた。


68 : 迷走の果てに…… ◆QUsdteUiKY :2022/06/22(水) 19:53:23 AGBXIAhA0
ならばまだ理解は出来ただろう。
 だが一番引っ掛かることは自分がこうして生き返っていることだ。……カクチョーの場合は過去に死亡するつもりが生き延びていたという事例もあるが、それにしても傷一つないというのはおかしい。
 刀で斬られた痛みは今でも鮮明に思い出せる。それなのに自分の体には傷一つない。そんな状況に違和感を覚える。

「どういうことだ?なんでオレの体から傷まで消えてんだ……?」

 考えれば考える程にわけがわからず、カクチョーは困惑する。
 あの”冥界の魔王”はマジで超常的な存在だとでもいうのか?
 一枚のカードより生まれた存在とか、世界は無数に存在するとか――そんなことを急に言われてもカクチョーには理解出来ない。
 カクチョーの世界にはマイキーやイザナなど人外染みた強さを持つ不良こそいるが、超能力なんて存在しないのだ。

 ――ある例外的な存在を除いて。

「もしかしたら……タケミチなら何か知ってるかもしれねぇな」

 花垣武道。
 未来の世界から過去を変えるためにやってきたタイムリーパー。

 カクチョーは彼の秘密を知らない。タケミチがタイムリーパーだと知る存在は、この世に数人しかいない。
 だがタイムリーパーである彼が得た能力――未来視。これについてはその目で確かに見ている。
 厳密には未来視ではなく未来予知だと思っているが――タケミチは味方のカクチョーですら知らなかった三途の計画を何故か知っていた。
 あの時は状況が状況だから三途と戦い、電車を止めることに必死でそこまで考えていなかったが……アレは未来予知という他ない。
 そんな能力がタケミチに秘められていると本気で考えるのは、バカバカしいことかもしれない。だが偶然とは思えないし、三途はカクチョーやタケミチがやってきたことに驚いていた。よってタケミチに計画を教えていたわけでもないだろう。

「本当にタケミチが未来予知でもできんなら、何か知ってるはずだ。それにタケミチ……オマエはこんな喧嘩、絶ッ対ェに止めようとするよな」

 カクチョーの知る花垣武道は自分の事は二の次にして、仲間を――みんなを助けようとするヒーローだ。もしもタケミチがこの決闘を止めるために奔走しているなら、力を貸すつもりである。

「それとオレが生き返ったってことは――」

 下僕は王の姿を思い浮かべる。
 黒川イザナ。カクチョーに生きる理由を与えてくれた存在。
 もしも彼が自分のように生き返ったのなら――イザナには生き延びてほしい。
 憑き物が落ちた今のイザナなら、きっとタケミチとも上手くやれるだろう。……今のマイキーを見て、複雑な気持ちになるかもしれないが。

 もちろんイザナが蘇る――という展開はあくまで理想に過ぎない。それでも下僕は王の生還を願う。ハ・デスに頼ってまで復活させる気はないが、もしもイザナがこの決闘で生き返っているならハ・デスをぶっ倒して今度こそ”天竺”が他の奴らを助けてやろう。

『身寄りのない奴らをみんな国民にして、居場所を作ってやるんだ』

 それが幼い頃にイザナが口にしていた夢。
 他の奴らを助ける――とはまた違うが、それでもあの時のイザナなら。そして憑き物が落ちた今のイザナなら、きっと自分と同じ結論に至るだろう。
 だからカクチョーは幼なじみのヒーローと自分に生きる理由を与えてくれた王と協力して、ハ・デスを倒そうと決意した。

「ハ・デスの野望はオレらが絶ッ対ェ止めてやる!!」

 自分一人ではなく”オレら”で――。


【鶴蝶@東京卍リベンジャーズ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:ハ・デスをぶっ倒す
1:タケミチが参加してたら探す
2:イザナも生き返ってるのか……?
[備考]
※参戦時期は死亡後です


69 : 迷走の果てに…… ◆QUsdteUiKY :2022/06/22(水) 19:55:18 AGBXIAhA0
>>68のコピペをミスしていたので>>67の続きから再投下します


70 : 迷走の果てに…… ◆QUsdteUiKY :2022/06/22(水) 19:56:50 AGBXIAhA0
>>67


 〇

「オレは……生き返ったのか……?」

 自分の身に起こった出来事が理解出来ず、カクチョーは呆然とする。
 彼は不良の世界で”喧嘩屋”という異名を持つ程の実力を誇る男だ。これまでも何度か抗争を経験してきた。人が死ぬ瞬間を見たことだってある。
 だがそれらは所詮、普通の現実世界で起こった出来事だ。カクチョーの世界には悪魔のような異形なんて存在しないし、死者を蘇生するような技術もない。

 悪魔のような妙な格好をした男が自分達を拉致して爆破装置が埋め込まれた首輪をつけ、決闘を強制させる。――それだけならばまだ理解は出来ただろう。
 だが一番引っ掛かることは自分がこうして生き返っていることだ。……カクチョーの場合は過去に死亡するつもりが生き延びていたという事例もあるが、それにしても傷一つないというのはおかしい。
 刀で斬られた痛みは今でも鮮明に思い出せる。それなのに自分の体には傷一つない。そんな状況に違和感を覚える。

「どういうことだ?なんでオレの体から傷まで消えてんだ……?」

 考えれば考える程にわけがわからず、カクチョーは困惑する。
 あの”冥界の魔王”はマジで超常的な存在だとでもいうのか?
 一枚のカードより生まれた存在とか、世界は無数に存在するとか――そんなことを急に言われてもカクチョーには理解出来ない。
 カクチョーの世界にはマイキーやイザナなど人外染みた強さを持つ不良こそいるが、超能力なんて存在しないのだ。

 ――ある例外的な存在を除いて。

「もしかしたら……タケミチなら何か知ってるかもしれねぇな」

 花垣武道。
 未来の世界から過去を変えるためにやってきたタイムリーパー。
 カクチョーは彼の秘密を知らない。タケミチがタイムリーパーだと知る存在は、この世に数人しかいない。
 だがタイムリーパーである彼が得た能力――未来視。これについてはその目で確かに見ている。
 厳密には未来視ではなく未来予知だと思っているが――タケミチは味方のカクチョーですら知らなかった三途の計画を何故か知っていた。
 あの時は状況が状況だから三途と戦い、電車を止めることに必死でそこまで考えていなかったが……アレは未来予知という他ない。
 そんな能力がタケミチに秘められていると本気で考えるのは、バカバカしいことかもしれない。だが偶然とは思えないし、三途はカクチョーやタケミチがやってきたことに驚いていた。よってタケミチに計画を教えていたわけでもないだろう。

「本当にタケミチが未来予知でもできんなら、何か知ってるはずだ。それにタケミチ……オマエはこんな喧嘩、絶ッ対ェに止めようとするよな」

 カクチョーの知る花垣武道は自分の事は二の次にして、仲間を――みんなを助けようとするヒーローだ。もしもタケミチがこの決闘を止めるために奔走しているなら、力を貸すつもりである。

「それとオレが生き返ったってことは――」

 下僕は王の姿を思い浮かべる。
 黒川イザナ。カクチョーに生きる理由を与えてくれた存在。
 もしも彼が自分のように生き返ったのなら――イザナには生き延びてほしい。
 憑き物が落ちた今のイザナなら、きっとタケミチとも上手くやれるだろう。……今のマイキーを見て、複雑な気持ちになるかもしれないが。

 もちろんイザナが蘇る――という展開はあくまで理想に過ぎない。それでも下僕は王の生還を願う。ハ・デスに頼ってまで復活させる気はないが、もしもイザナがこの決闘で生き返っているならハ・デスをぶっ倒して今度こそ”天竺”が他の奴らを助けてやろう。

『身寄りのない奴らをみんな国民にして、居場所を作ってやるんだ』

 それが幼い頃にイザナが口にしていた夢。
 他の奴らを助ける――とはまた違うが、それでもあの時のイザナなら。そして憑き物が落ちた今のイザナなら、きっと自分と同じ結論に至るだろう。
 だからカクチョーは幼なじみのヒーローと自分に生きる理由を与えてくれた王と協力して、ハ・デスを倒そうと決意した。

「ハ・デスの野望はオレらが絶ッ対ェ止めてやる!!」

 自分一人ではなく”オレら”で――。


【鶴蝶@東京卍リベンジャーズ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:ハ・デスをぶっ倒す
1:タケミチが参加してたら探す
2:イザナも生き返ってるのか……?
[備考]
※参戦時期は死亡後です


71 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/22(水) 19:57:26 AGBXIAhA0
投下終了です


72 : 深淵に潜む者 ◆EPyDv9DKJs :2022/06/22(水) 21:24:16 y453VgMw0
投下します


73 : 深淵に潜む者 ◆EPyDv9DKJs :2022/06/22(水) 21:24:47 y453VgMw0
 息も白くなるような寒い夜の世界。
 星を見にいくとか、夜の逢引だとか。
 そんなロマンチックとは無縁の場所だ。
 ではあたりに一面に広がる雪原はどうか。
 地上を覆うような銀世界は人の心を奪うのには十分だが、
 辺りはそんな銀世界を容赦なく汚されていった痕跡がそこら中にある。
 人が踏み抜いた足跡がある。一つや二つではない。何十、何百人もの足跡だ。
 数々の塹壕、そして体の一部が消し飛んでる無数の亡骸が転がっていた。
 此処は戦場。対話の解決が望めず権益のために起こされた戦争の前線だ。
 人気のない、と言うより生きた人間がいない場所を二人の軍服の兄弟が歩く。

 先を歩いていた男が立ち止まった。
 目的地にたどり着いたことで後ろの弟もその先にあったものを見る。
 猿轡をされて腕を縛られて、足すらも縛られ最早逃げることも不可能な敵軍の兵士。
 言うまでもない。彼は捕虜だ。何のために見せたのか。
 それは兄弟にこの男を■■■■為───





 ハ・デスによって始まった殺し合いの舞台にて、二人の男が相対する。
 一人は紺色の軍服を着た男だ。軍服によく似合う青色の多い狙撃銃を構えていた。
 猫のような左目は何処か不気味さ、或いは空虚さを感じさせており、
 眼帯も相まって一目で近づいてはいけないと警鐘を鳴らすこと間違いない。
 此処は雪原。北西に位置する場所で、嘗ての戦場を思い出させるが寒さはまだましだ。
 旅路で死ぬような寒さに晒されたという経験からくるものではあるが、
 それを抜きにしても、あの時彼が経験した寒さと比べれば十分な気温だ。

「……お前、乗るつもりがないのか。」

 そんな彼を前にしているのは子供だった。
 軍服の男よりも幼い、中学生ぐらいの子供だ。
 前髪が数匹のエビののように逆立った奇抜な髪型をしており、
 これはこれで近づいてはいけないような相手にも見える。

「当たり前だ! 俺は絶対乗らねえ!」

 銃を構えられてるのにも関わらず、
 少年は拳を作りながら軍服の男の言葉を否定する。
 子供らしい何のプランもない。しかし殺し合いをするつもりもない。
 髪型はともかく、年相応の戦いとは無縁な一般人なのだろうかと察する。
 綺麗事を言えるだけ、弱い人間ではないとも思うのだが。

「此処で今、俺が引き金を引けばお前は死ぬぞ。」

 銃口は完全に少年へと向けられている。
 引き金にかけられた指はほんのちょっと動かせば、
 眉間に風穴を空けることになるのは確実だ。
 照準は合わせてないが、この距離ならまず外さない。

「俺は軍にいたこともある。必要以上の殺しもしてきた。
 向かってきた敵も、生きるために必要な動物でも『なんでも』だ。
 子供だからと引き金が引けない、そんな甘い理由を俺に期待する気か?」

 本気だ。
 彼は必要なら遠慮なく撃てる目をしていた。
 それは少年にも十分伝わる程に、瞳は冷徹なものだとわかる。
 少年も構えてる者が何かは分かってるので冷や汗は流れており、
 自分が窮地に立たされているということはちゃんと認識していた。

「───だったら、おっさんに見せてやるよ!
 殺し合いをしなくてもハ・デスをぶっ飛ばす、俺のかっとビングを!」

「……かっとびんぐ? なんだそれは。」

「あらゆる困難にチャレンジすること、それがかっとビングだ!」

 少年、九十九遊馬はそれを常に掲げ続けてきた。
 どれだけ莫迦にされようと、どれだけ侮られようと、
 そしてどれだけ裏切られようとも、彼の生き方は全てがかっとビングだ。
 常に困難に立ち向かい続けて、そして乗り越えてきた。

「だから皆で協力した方が早いってことを俺が証明してやる!」


74 : 深淵に潜む者 ◆EPyDv9DKJs :2022/06/22(水) 21:25:51 y453VgMw0
「それは無理だな。」

 冷めた一言と表情と共に即座に否定される。
 熱弁していた遊馬が思わずこけそうになってしまう。

「なんだよ、やってみなきゃわかんねえだろ!」

「汚れのない人間がいるはずがない。
 必要になったら手を汚す……それが人間だ。」

 軍人として生きていた以上よく知っている。
 どういう人物なのか知りもしないで引き金は引けるし、
 相手に帰るべき人間がいたところで関係なく相手は殺せた。
 殺さなかった奴がいるとするなら……それは『偶像』だろうか。
 なんにせよ関係ない。他の参加者がどのような人物かは知らないが、
 死ぬ危険が迫っても尚相手を殺さないでいる、清い人間など存在しない。

 その言葉に遊馬は否定しきれなかった。
 家族の為なら父を突き落としたDr.フェイカー、
 そのDr.フェイカーに復讐に燃えたトロン一家、
 そして何より、遊馬達もバリアンも裏切ったベクター。
 必要であれば人はどんなことだってできてしまう。
 たとえそれを成し遂げるための手段が殺しだとしても。
 彼はそういう人たちを何人も見てきて、戦って心を通じてきた。

「だから必ず殺しに乗る奴はいる。
 奴がいたとしてお前はどうするつもりだ。そいつすらも───」

「信じ続ける!」

 男の声を遮るように、高らかに叫ぶ。

「確かに、どうしようもない奴はいるかもしれない……俺にだってそれはわかってるさ。」

 人の心がないとナッシュに言われたベクターだろうと彼は手を伸ばす。
 そんな彼でもバリアンの神ドン・サウザンドばかりは許すことはなかった。
 戦うべき相手だったバリアン七皇もドン・サウザンドのせいで記憶を歪められており、
 全ての元凶とも言うべき存在だ。自分の世界もアストラル世界を滅ぼす以上和解はあり得ない。
 だから相手の言いたいことはわかる。絶対に乗る参加者はいるだろうし、相容れない相手もいる。

「けど、心が無いなら心ができるまで俺は信じる! それが俺のかっとビングだ!」

 困難であるのは間違いない。絵空事だと誰もが笑うだろう。
 それでも、諦めることは決してない。それが九十九遊馬と言う少年である。
 嬉々として殺しを楽しむ相手なら流石に難しいかもしれないものの、
 無理矢理殺し合いを強要された相手なら彼はその相手を信じ続ける。

「……」

 銃を構えたまま、相手は動こうとしない。
 呆れてるのか感心してるのか。表情は無表情に等しく、
 何を考えているのかがさっぱり分からない。

「ど、どうしたんだよ? 変なもの食っちまったとかか?」

 何も答えずただ銃を構えてる光景だが、
 妙に能天気な発言で様子を伺う。

「……殺すよりも脱出する方が早いなら、
 確かにそれに越したことはないか。その話、乗ってやる。」

 彼の目的はとっとと帰ることだ。
 元々死線をくぐっていたところは変わらないし、
 別にどっちでもいいが早いならそちらを選ぶ、それだけである。

「お! いいのか!?」

「だがお前に付き合うとしても、殺されるつもりはない。
 必要だったら俺は容赦なくそいつの頭を撃ち抜くつもりだ。」

 一から十までのつもりはない。
 あくまで生き残るのが楽だと思っただから選んだだけで、
 相手が殺しに来るような相手であれば、遠慮はしない。

「今は中断してくれただけでも嬉しいぜ!
 俺は九十九遊馬! おっさんの名前なんて言うんだ?」

 差し出された右手を眺めながら、ふと彼は思い出す。
 自分とは違って、親に愛されていた弟の存在だ。

『人を殺して罪悪感を微塵も感じない人間が、この世にいて良いはずがないのです』

 夜の寒空の中に弟に言われたことを思い出す。
 人は誰だって汚れている。この少年もきっとそうであると。
 殺し合いの打破とかどうでもいい。死なないならそれに越したことはない。
 まだあのアイヌの少女に執着する理由はあるので死ぬつもりはないが、
 似たような清廉潔白さを感じさせる存在の遊馬に対して興味がある。
 だから彼は望む。彼が一人も殺さずにいようなんて不屈の心を捨てさせ、
 人を殺すに足りうる理由を与えてやろうと男は髪をかき上げながら、

「───尾形百之助だ;」

 山猫はそう名乗り握手を交わした。


75 : 深淵に潜む者 ◆EPyDv9DKJs :2022/06/22(水) 21:27:17 y453VgMw0
【九十九遊馬@遊戯王ZEXAL】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜3
[思考]:絶対に乗らない。それがかっとビングだ!
1:尾形と一緒にかっとビングだ! 俺!
2:あれ、アストラルいなくねえか!?
[備考]
※参戦時期は少なくともドン・サウザンドを倒して以降です。
※アストラルはいません

【尾形百之助@ゴールデンカムイ】
[状態]:遊馬に対する関心
[装備]:ヴリスラグナ@グランブルーファンタジー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考]:生き残れるならばそれに越したことはないが、それはそれとして……
1:九十九遊馬に手を汚させる。或いは殺しの理由を与えさせる。
2:お前のような奴がいていいはずがない。

[備考]
※参戦時期は少なくとも片目になって以降です。
※ヴリスラグナの効果を受けてるかは採用次第後続にお任せします

【ヴリスラグナ@グランブルーファンタジー】
尾形百之助に支給。ゲーム上では水属性シルヴァの解放武器。
粛として放たれる一滴の雫は螺旋の奔流にあらゆる敗因を飲み込み、彼方へと弾き飛ばす。
押し寄せる数千の敵意に風穴を開け、絶対的な勝利を齎す。
水属性の攻撃力を強化する『霧氷の攻刃』光属性の攻撃力を強化する『天光の攻刃』のスキルがある。
第3スキル『狙撃の極意』はロワ上での再現が難しいので割愛。


76 : 深淵に潜む者 ◆EPyDv9DKJs :2022/06/22(水) 21:28:00 y453VgMw0
投下終了です


77 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/22(水) 22:08:10 AGBXIAhA0
投下します


78 : 後、ピアノが上手い。 ◆QUsdteUiKY :2022/06/22(水) 22:09:32 AGBXIAhA0
 世の中にはダメ主人公スレという謎の界隈が存在する。

 古今東西、純愛、鬼畜にヤルだけゲー。 エロゲにいろいろ数あれど、必ず居ますはヘタレにDQN。 そんなダメな主人公をネタにして語る謎の界隈だ。
 この界隈で特にダメ主人公と認められた者は皇帝、貴族、役人など様々な地位を与えられる。……そんな称号を与えられても不名誉以外のなんでもないのだが。
 ちなみに異次元からの侵略者という異名を持つ伊藤誠など、たまに謎の称号を与えられる者も存在する。

 そしてどんな界隈にもアイドル的な者は存在する。
 玖藤奏介――最初は「糞すぎて涙出てきた」「イライラを通り越して笑える」などと酷評されていたが、ピアノが上手いという謎の擁護で一躍人気アイドルになった男だ。

 チンピラには圧勝できるが現役警察官の友人にフルボッコにされる程度の非常に微妙な戦闘力。ほとんど他人任せの推理力。
 後、ピアノが上手い。

 さて。そんな彼もまた何故かハ・デスによって決闘に招かれていた。強烈な違和感しか感じない人選だ。何だこれは?
 どう考えても失敗だし、こんな微妙な男を選出するなんて間違ってる。
 こんないい加減な仕事をして、申し訳ないと思わないのだろうか?主催者としての自覚たハ・デスにはないのだろうか!?
 しかしそんなこと奏介さんにとってはどうでもいいことだ。というか自分がダメ主人公扱いされてるなんて知らないだろうし、普通に拉致られて決闘に巻き込まれた可哀想な人だ。

「――ハッ、くだらねぇ」

 だが彼は無駄にスタイリッシュな見た目や言動を崩すことなく、この決闘を下らないと吐き捨てた。そして彼は初期位置のコンサートホールに設置されていたピアノ――その前の椅子に座ると、おもむろにピアノを弾き始める。
 この意味不明な行動はPP -ピアニッシモ- 操リ人形ノ輪舞の主人公、玖藤奏介としては流石におかしいだろう。しかし今ここに招かれた彼はダメ主人公スレの奏介さん。つまり存在を汚染されたピアノマンだ。
 だから初期位置にピアノがあればピアノを弾く。戦闘力がなんとも言えないくらい微妙で、推理力もないが彼はピアノが上手いのだ。

 なんでこの人ピアノなんてやってるの?やる気あるの?としか言いようがない。
 だが(決闘に)誘ったのは――ハ・デスからだ。奏介さんは何も悪くない。
 彼がピアノを弾いてる間も決闘は進んでいるのだろうが、知ったことじゃない。もしかしたらいつの間にか他の人が勝手に事件解決してるかもしれない、奏介さんだし。

 それにしてもこのコンサートホール――本当に音がよく響く。奏介さんの無駄に上手いピアノがホール中に聞こえ、必然的にここにいる人々の目を引くだろう。だって決闘開始して早々にピアノを奏でる人なんて意味不明だし。

「うるさいですね……」

 FXで有り金全てを溶かして自分の喫茶店が倒産の危機に陥っている少女――チノにもその音は届いた。
 ちなみに「うるさいですね……」は彼女の口癖のようなもので、別に今はそれほど悪感情を持っているわけじゃない。奏介さんのピアノは精神的に余裕がない彼女すらも魅力したのだ。
 チノは当初、優勝を狙おうか迷っていた。叶えたい願いは大量にあるから、まずは幾つも願いを叶えられるようにしてもらう。その後、摘出された子宮を取り戻したり全国の某お洒落な喫茶店を消し去ったりするつもりだった。

 だが参加者がどれだけいるかもわからない状況で最後の一人まで勝ち残るというのは、困難を極めるだろう。身内がこの決闘に巻き込まれて、それを殺すというのも本末転倒だ。
 それにあの憎き喫茶店は自らの手で殲滅したい――という思いが強い。子宮はまあ、どうしようもないが。そして経営困難な喫茶店を立て直すために必要な金――これは賞金なんかより、もっと良い方法を閃いた。

 チノはピアノの音が聞こえる場所へ向かうと、隠れながら奏介さんを観察して――。

「――来いよ」

 ピアノを一度引き終えた奏介さんに声を掛けられた。


79 : 後、ピアノが上手い。 ◆QUsdteUiKY :2022/06/22(水) 22:09:52 AGBXIAhA0
 無駄にスタイリッシュでカッコいい言動だ。謎に強そうな風格すらある。

「その音色、気に入りました!ラビットハウスでバイトとして働いてください!」

 チノは圧倒的なスタイリッシュさを誇る奏介さんに物怖じけすることもなく、彼を勧誘した。ちなみにバイトとして――というのは給料を安くするためだ。経営困難だからね、仕方ないね。
 いきなり初対面の少女にバイトの勧誘を受けた奏介さんは――

「だが誘ったのは――あいつからだ」

 意味不明な回答を寄越した。
 なにがなんだかわからないが、奏介さんはピアノの席から立ち上がると支給品のサガークとジャコーダーを取り出し、仮面ライダーサガに変身。――壇上まで上がってきた音楽家の帝王というNPCをスネーキングデスブレイクでスタイリッシュに葬り去る。

「――来いよ」

 サガの変身を解除すると、奏介さんはチノに呼び掛ける。この決闘の事情はよくわかっていないが、こんな決闘に踊らされるつもりはない。
 チノはたった3つのセリフしか喋らない謎の男を「ガイジなんですかね」と思いながら、とりあえず彼に着いていくことにした。
 奏介さんは仮面ライダーサガに変身出来るようになって更にスタイリッシュさに磨きが掛かり、戦力としても強化された。ちなみにサガークとジャコーダーは誰でも使えるように主催者が調整している。初期位置にピアノがあったり、ハ・デスはもしかしたら奏介さんのファンなのかもしれない

 そして戦力的に使えそうで、しかも経営困難なラビットハウスを立て直せそうな素晴らしい音色すら奏でられる奇跡の男――奏介さん。そんな彼の不思議な魅力にチノもまた、魅了されたのかもしれない。


【玖藤奏介@ダメ主人公総合スレ】
[状態]:健康
[装備]:サガーク&ジャコーダー@仮面ライダーキバ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:ハッ、(こんな決闘)くだらねぇ
1:だが誘ったのは――チノからだ
2:(俺について)――来いよ
[備考]
※ ・ハッ、くだらねぇ
・だが誘ったのは――彼女からだ
・――来いよ
上記3つの言葉しかまともに喋れません。
後、ピアノが上手い。

【チノ@ごちうさ二次創作】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:決闘から帰ってこの謎のピアノの人で一儲けしますかね
1:毎日していたオチンチンしこしこの練習はどうしましょうか
[備考]


80 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/22(水) 22:10:16 AGBXIAhA0
投下終了です


81 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/23(木) 03:13:01 2CAAM6T20
投下します。


82 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/23(木) 03:15:55 2CAAM6T20
「少々困った事態になりましたね。ここが何処なのか…異界なのかすら現状では不明ですが…早急に帰還しておきたいというのに」

会場の一角にて、特徴的な髪型をし人外めいた所があり、片手には杖を使い慣れた様子で持っている男はひとり呟く。
彼の名はシーモア=グアド。グアド族と人間の間に生まれたハーフでありながら若くしてグアド族の族長にして、機械を禁じている宗教であるエボン教の老師の座へと上り詰めた男だ。
シーモアはこの決闘へと招かれる前、元の世界にて生きる災厄である『シン』を討伐隊が撃破する為の作戦、「ミヘン・セッション」の成否を見物しに来ていた所であった。討伐隊が攻撃を『シン』へと開始する…所で、彼はこの殺し合いに巻き込まれた形となる。

「しかしこの首輪やタブレットという物…禁じられている機械に当て嵌まる物、でしょうか」

よりによって寺院が許可を出した機械以外を禁じている宗教の老師である自分に勝手にこれらを配り装着するとは…と思うものの、あくまでシーモアは動じない。
老師でありながら彼は禁じられた機械の使用を黙認し、エボンの教えに反しているといえど「ミヘン・セッション」へ臨む討伐隊達の願いや志は純粋とし、シーモア=グアド個人としてそれに声援を送り見届けるつもりであった。シーモアは柔軟な男なのである……最もそれはあくまで、自身の目的が果たされてしまえば全て無に帰すからという点が大きいのだが。

(あの敬虔なエボン教徒のガードがもし巻き込まれていたのなら、この現状に喚き散らしている所だろうか。
…それはともかく。この状況、見方次第では好機とも取れる)

考えつつシーモアは支給されていた1枚のカードを見る。超融合と書かれたそのカードに付属していた説明書には、「異世界にて人々を犠牲にする事により生み出されたカード」という記述や、「特定状況下では12の次元をひとつに束ね滅ぼす事も、ふたつの魂を融合させてひとつにしてしまう事も可能」という記述がされてあった。

(この超融合のカードとやらの説明部分の記述、それにあの冥界の魔王…ハ・デスと名乗った魔物らしき存在が言った「私は一枚のカードより生まれた存在だ。」という言葉。真実ならばおそらく、超融合のカードとあのハ・デスが属しているのは…私が属しているスピラとは別の世界…と考えれるだろう)

ひとまず考えを纏めたシーモアだが、彼が重要視した部分はそこ以上に…超融合の効果である。

(スピラに帰還を果たした際にこの超融合を持ち帰る事ができたなら…『シン』に使用し、ひとつになる事が可能かも知れん。)

彼が…シーモア=グアドがここに来るまで抱いていた目的は、自らが召喚士の究極召喚となり『シン』になる事で、スピラを…世界を滅ぼし死の螺旋を断ち切り、それを救済であり安息として与える事であった。
その為に彼は元の世界にて召喚士であるユウナに接近していた…のだが、この超融合のカードを持ち帰ってしまえば、究極召喚に成らずとも『シン』とひとつになってしまえるのでは?という考えに至ったのである。

(最も問題はあるだろう。この首輪を外さないまま帰還を果たそうとすれば…先程の青年のように首が飛ぶ。
また過信も出来ない。記述にある「特定状況下では」からして…それを満たせない限りは、このカード単体では真価を発揮出来ない可能性がある。どのような状況なのかの記述は確認出来なかったが。
他に記述が無い点では、強力な効果故に使用回数が定められている可能性も考慮すべき…か。

…スピラでは先程の青年…「本田くん」と呼ばれていたな。彼のように死を迎えた者には召喚士が異界送りを速やかに行わねば、魔物となるか…死者の抱いた想いの強さ次第では死人と化す。
自称冥界の魔王「ハ・デス」に配下と思われる男「磯野」。彼らが属している主催側に異界送りが可能な人物…召喚士か元召喚士が存在しているのか、もしくは…この決闘で死亡した者は異界に送られる事なく、魔物か死人になるのを待つのみか…。
……後者であるならば、参加者を下手に殺し殺させるのは下策になるだろう。前者だとすれば……私にとっての最悪は、異界送りの役割を果たすために、ユウナ殿が主催側に囚われ利用されている可能性となる……。
……この件については、今はこれ以上は考えなかった事に。)

そう結論付けたシーモアは、考えを切り替える為なのか杖とカード以外の最後の支給品…黄金色の腕輪を見た。
説明には「錬金術や魔術に用いる為の腕輪、闇の力を増幅させ、邪悪な波動を発生させる効果がある他、人間や動物、魔物の類を過程を無視して強制的に成長させる進化の秘法の鍵となるアイテム」という記述がされている。

(進化の秘法…興味深い。しかし…これも先程の「特定状況下」同様、具体的な方法の記述は無しか。探った方が良さそうだ。)


83 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/23(木) 03:16:23 2CAAM6T20
だが、シーモアがそれ以上に注視したのは…「闇の力を増幅させる」という効果部分である。

(「異世界にて人々を犠牲にする事により生み出されたカード」の一文からするに…これが正しいのであれば、超融合の効果をこの腕輪で増幅させ…或いは。
……とはいえ、これらの情報が信用に足りるかどうかはまだ別問題だろう。
…とりあえずは帰還を最優先とし、主催へ抗う者たちに遭遇した時は普段通り老師として振る舞う。首輪の解除方法や超融合、進化の秘法の条件の捜索や…他の参加者で効果を試す事もしておきたいところだが。)

こうして、老師は行動指針を定めた。
腹の中に死を与える事による救済という野望と───迫害や母の死にスピラを取り巻く死の螺旋への憎しみと怒りと悲しみ、それに深い絶望を隠したまま…男は行く。


【シーモア=グアド@ファイナルファンタジーⅩ】
[状態]:健康体
[装備]:シーモアの杖@ファイナルファンタジーⅩ
[道具]:基本支給品、超融合@遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX、おうごんのうでわ@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち
[思考・状況]基本方針:支給品を持ち帰った上で生還し、『シン』とひとつになった上で全てに死による安息を与える。
0:死による救済と安寧、それが私の望み
1:最優先は帰還
2:主催者へと抗う参加者達の前では普段通り老師として振る舞う
3:進化の秘法…実に興味深い
4:超融合と腕輪を持ち帰れれば、或いは『シン』と…
5:首輪の解除や超融合の真価の発揮、進化の秘法の方法を探りたい所だ
6:他の参加者で支給品の効果を試したい、その場合は決闘に乗っている者が望ましいが…
7:支給品は強力ではある、が…あまり過信するのも不味いだろう
8:ここで死んだ命はそのまま魔物か死人と化すのか、或いはそれを回避する為既に召喚士を主催者達が確保して───……今はよそう
9:ユウナ殿やそのガード達がいるのであれば、今は老師の立場から協力を頼む
10:スピラとは別の世界…か
11:果たして彼ら(主催者)が、どこまで真実の情報を開示しているのやら…
[備考]参戦時期はミヘン・セッションが始まる直前からです。
超融合の記述とハ・デスの台詞から、これらが存在する世界はスピラとは別の世界なのだと推測しています。
おうごんのうでわで超融合の効果を増幅可能だと推測しています。
アニマは召喚可能ですが制限がかけられています。具体的な制限は後続にお任せします。
またオーバードライブ技であるレクイエムが使用可能かどうかと使用可能な場合の発動条件についても、後続にお任せします。

『支給品紹介』
【シーモアの杖@ファイナルファンタジーⅩ】
シーモアがミヘン・セッションの際に持っていた杖。これを用いて魔法を行使する他打撃にも使用可能。

【超融合@遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX】
異世界にて人々を犠牲にする事により生み出されたカード。使用者は遊城十代(及び覇王十代)やユベル。
カテゴリとしては速攻魔法扱いとなる。用いれば手札を一枚捨て、自身や相手のモンスターカード(アニメ版な為片方は自分のモンスターでないといけない)で融合召喚を可能とする他、発動時や効果によりモンスターを融合召喚に成功したタイミング(こちらはアニメ版のみ)には相手はモンスター・魔法・罠カードの効果を発動出来なくなっている。
特定状況下では12の次元をひとつに束ね滅ぼす事も、ふたつの魂を融合させてひとつにしてしまう事も可能…だが作中ではどちらも罠カードであるチェーン・マテリアルの影響下での効果かつ、前者の場合はレベルが1〜12までのモンスターカードを一枚ずつ超融合で融合召喚の生贄にして超融合神なるモンスターを場に出さねばならず、後者の場合は罠カードであるスピリチュアル・フュージョンを使用しなければいけなかった。
このロワでは一度使用すると暫くの間使用不可能になる。具体的な時間は後続にお任せします。またリアルファイト用に効果が調節されている可能性もありますがこちらも後続にお任せします。

【おうごんのうでわ@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち】
錬金術や魔術に用いる為の腕輪。闇の力を増幅させ、邪悪な波動を発生させる効果がある他、人間や動物、魔物の類を過程を無視して強制的に成長させる進化の秘法の鍵となるアイテムである。
この腕輪を巡った争いが人間間で絶えなかった為にフレノール南の洞窟に封印されていた曰く付きの品物。
ちなみにゲーム中では装備不能。


84 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/23(木) 03:17:31 2CAAM6T20
投下を終了します。タイトルは「死は救済なり」です。


85 : 決闘ファンタジア ◆s5tC4j7VZY :2022/06/23(木) 06:48:21 xKr43teI0
投下します。


86 : 決闘ファンタジア ◆s5tC4j7VZY :2022/06/23(木) 06:48:44 xKr43teI0
人との出逢いは、ベストタイミングで訪れる
中村文昭

「どうして、こんなことに……!」

セーラー服風の衣類を身に纏う赤毛の少女はこの現状に嘆く。
なぜなら、少女にはやらなければばらないことがあるからだ。
少女の名はランプ。

女神ソラが治める幸せな世界『エトワリア』
女神を中心に”クリア”が満たされていくことで平和な時間が流れていた。

―――しかし、その平和は突如として崩れ去ることとなる。

女神ソラは封印されるという異常事態が起きてしまったのだ。

ランプはそれを憂い、伝説の召喚士を求めて保護者的存在であるマッチと共に旅へ出たのだが、ハ・デスの手により一時的に頓挫することとなる。

「私には果たさなければならない使命があるのに」

無意識に手をギュッと握りしめ、身体を震わせる。
これでは、何のために旅へ出たのかと自分を責めたてる。

「早く……早く召喚士を見つけないと……」
(それと……マッチも巻き込まれているのかしら)

共に旅に出た相棒を心配しつつも身体を動かす。
もしかしたら、決闘者の中に自分が探している伝説の召喚士がいるかもしれない。
ランプは一筋の希望にかける。
そんなランプの前に……

……モンスターが姿を現した。

☆彡 ☆彡 ☆彡

「あ……あ」

ぺたりと地面に尻もちをつくランプ。
無理もない。
異形な虫が目の前に現れたのだから。
そう冥界の魔王が用意せしモンスターの一体。

カマキラー。

(いけない!急いで立ち上がって逃げなきゃ!)

ランプは何とか立ち上がると踵を返すと走り出す。
……が。

「へぶっ」

顔から地面へキスするかのように倒れてしまった。
その一連の動作からたいしたことないと判断したのか金切り音を鳴らしながらジリジリと一歩ずつ近づく。
ランプの眼に映る両腕の鎌はまさしく自身の命を刈り取るものにしか見えない。

(ここで、私……死んじゃうんだ)

ソラ様を救えない。
神殿の方針に疑問を抱いたからこそ、立ち上がったのにこれでもう終わり……
そう思うと目じりに涙が浮かぶ。

そのとき。

「離れろ!女の敵!」

言葉と同時にカマキリ―の頭に黒いボールらしきものが直撃する。
そしてそれはトスンと地面にゆっくりと落ちる。
それは……
爆弾だった。
爆弾は光り輝くとカマキラーを包み込み、燃やし尽くした。

「えっと、大丈夫?」
「は、はい」
(この人……もしかして)

助けてくれた少女を前に閉じかけた扉が止まった気がした。

☆彡 ☆彡 ☆彡


87 : 決闘ファンタジア ◆s5tC4j7VZY :2022/06/23(木) 06:50:07 xKr43teI0

時は少し遡る……

冥王による決闘の舞台。
ゴゴゴゴゴ!体からオーラが出している少女がいた。
「ああっ!?」

その少女は怒りに燃えていた。
激しく雄雄しく。
少女の名前は恩田希。

埼玉県蕨市の蕨青南高校の女子サッカー部に所属している。
ポジションはミッドフィルダー。背番号は8。

「殺し合いって何!?私、次の試合を控えているんだけど!?」

選手権埼玉予選、予選リーグ第2戦を新生ワラビーズ初勝利で終え帰宅していたはずが、気が付けば殺し合いへ誘われていた。
恩田はこの悪趣味な催しを開いた主催の男に怒りを抑えきれない。
そんな矢先にカマキリみたいな生き物に襲われかけている赤毛の少女を見かけた。
恩田の行動は一つしかない。

「離れろ!女の敵!」

支給品の爆弾の一つを地面に置くと、勢いよくそれに目掛けてシュートした。

「ふふん。流石は私」

助けることができた恩田は赤毛の少女へ手を差し伸べる。
すると……少女の口からまさかの展開に発展した。

☆彡 ☆彡 ☆彡

「ノゾミさんッ!!私と世界を救ってくれませんか?」
「……へ?」

サッカーをこの上なく愛する少女は、まさかのスカウトに目が点とあるのであった。

……まる。

【恩田希@さよなら私のクラマー 】
[状態]:健康
[装備]:エレメンタルセット@爆ボンバーマン2
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本方針:早く帰って、皆とフットボールしたい
1:世界を救う?私が?
2:決闘よりサッカーがしたい
[備考]
※参戦時期は51話後

『支給品紹介』
【エレメンタルセット@爆ボンバーマン2】
エレメンタルの力が宿った爆弾を使用することができる。。
それぞれ、5個ある。現在炎×4水×5風×5雷×5土×5光×5闇×5である。

【ランプ@きららファンタジア 】
[状態]:健康 一筋の希望
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本方針:元の世界へ戻り、アルシーヴの悪しき野望を止めて、ソラ様を救いたい
1:ノゾミと行動を共にする
2:聖典がない……どこかにあればいいのだけれど
3:マッチ……無事でいるかしら
4:ノゾミさん……ももも、もしかしてクリエメイトでは!?
[備考]
※参戦時期は序章はるかなる旅立ちからきららと出会う前
※希をクリエエイトの一人ではないかと推測しています。

『NPC紹介』
カマキラー@遊戯王OCG
地属性 レベル4 恐竜族 ATK/1150 DEF/1400
二本のカマで相手に襲いかかる、人型のカマキリモンスター。


88 : 決闘ファンタジア ◆s5tC4j7VZY :2022/06/23(木) 06:50:20 xKr43teI0
投下終了します。


89 : 名無しさん :2022/06/23(木) 16:44:59 7QZY.kTg0
投下します。


90 : まだ死ねないなら ◆ytUSxp038U :2022/06/23(木) 16:46:42 7QZY.kTg0
氷室幻徳という男の人生は罪で汚れている。

生まれた時から悪だった訳ではない。
政界に身を置く父の背中を追い続け、自分も立派な政治家になろうと夢見た若き日。
必要な知識とスキルを我が物とし、コネに頼りはしたが父と同じ世界へ飛び込んだ。
順調に行けば若手ながら見事な手腕を発揮して、より良い日本の未来を実現する男になる筈だった。

スカイウォールの惨劇と名付けられた、ある一つの事件さえなければ。

火星探査機の帰還セレモニーが一瞬で大惨事へと変わったあの日。
幻徳のみならず、日本という一つの国の運命が大きく狂い出した。

一体誰が予測できたというのか。
火星から持ち帰った未知の立方体の正体が、惑星侵略の兵器だったなど。
事件を引き起こした宇宙飛行士に、星を滅ぼす地球外生命体が乗り移っているなど。
全ては後の祭りだ。
不完全ながらパンドラボックスは力を解放、後にスカイウォールと呼ばれる巨大な壁により日本は三つに分断された。
更にはセレモニーに出席していた人々までもがパンドラボックスのエネルギーを浴び、野心を剥き出しにした好戦的な気質へと変貌してしまったのだ。

幻徳もまた、変貌した人間の一人である。

国の頂点に立つという危険な思想に支配された幻徳に、嘗ての面影は消え失せた。
邪魔となる人物はあらゆる手段を用いて排除。
実験という名目で多くの受刑者や、時には罪のない民間人すら使い捨てる。
挙句の果てには尊敬していた父すらも陥れ、東都首相の椅子を手に入れて尚も止まらない。
そうしてパンドラボックスを我が物とする為に、二つの都へ戦争を仕掛けた。


91 : まだ死ねないなら ◆ytUSxp038U :2022/06/23(木) 16:48:13 7QZY.kTg0
だがそうやって得た地位が長続きするはずもない。

桐生戦兎達の働きかけにより失脚、東都を追放されナイトローグの力すら失い、縋り付いたのは嘗ての部下。
切り捨てた男に頭を下げるという屈辱にプライドは砕かれ、同房の被験者崩れ達からの執拗なリンチで心身共に衰弱し、それでも幻徳は生き延びた。
新たに手に入れたのは悪党(ローグ)の仮面。
地獄を味わった幻徳に与えられたのは、難波重工の使い捨ての駒という座。
野心を捨て、大義の為に戦う事を掲げるも実態は難波に都合よく使われているに過ぎない。

今にして思えば実に滑稽だ。
難波重工も、北都も、西都も、そして幻徳自身も。
日本を牛耳ろうと躍起になっていた誰も彼もが、エボルトという怪物の掌で踊らされていただけなのだから。

実の息子に陥れられたのに父は幻徳を庇い、力を取り戻したエボルトの手で殺された。
戦う気力が抜け落ち、自分が一体何の為に今まで大勢を殺してきたのか分からなくなった。
そんな幻徳に再び戦う意思を取り戻させたのが、あろうことか彼の被害者である男達だったのは何という皮肉だろう。
殺人の冤罪を着せられた挙句、恋人をファウストの実験台にされた万丈龍我。
他ならぬ幻徳の手で友の一人を殺された猿渡一海。
憎まれて、殺されて当然の事をしでかした幻徳に彼らは再起の切っ掛けを与えてくれた。

ファウストの幹部でも、西の悪党でもない。
ただの氷室幻徳として戦兎達の仲間となり、全ての元凶であるエボルトとの最終決戦にて彼は命を散らした。
多くの間違いを犯した男は最後の瞬間、紛れも無いヒーローとして仲間達に後を託し、その生涯を終えたのだ。
その筈だったが、

「…何の冗談だ?これは」

傷一つない体で見知らぬ街に立っている。
試しに自分の頬を触ってみれば、生きた人間の肌の感触。
意味が分からない。どうして消滅した筈の自分が生き返っているのだろうか。
或いは自分はやはり死んでいて、死後の世界で魂を弄ばれているのか。
答えがどちらだろうと、ロクでもないのは共通している。


92 : まだ死ねないなら ◆ytUSxp038U :2022/06/23(木) 16:49:55 7QZY.kTg0
「デュエル、だったか?」

冥界の魔王だかいう、ふざけた肩書の男。
そいつが人を駒呼ばわしたうえにゲームを始めたなどと言っていたのを思い出す。
持っていた覚えのないリュックサックからルールブックを取り出し、確認し終えると露骨に顔を顰めた。
三都の代表戦に地球の存亡をかけた決戦ときて、今度は殺し合い。
とことん平穏とは程遠い人生だと、そんなどうでもいい事を思う。

「……」

至極真っ当な問題として、自分はこの決闘(デュエル)とやらでどう動くべきか決めねばならない。
まず優勝を目指す気は無い。
デュエルキングの称号も大金も必要無し、願いを叶えるという戯言も誰が信じるというのか。
もし自分以外の全員を殺さなければ帰れないのなら、それで構わない。
エボルトとの戦いは既に、戦兎と万丈に後を託している。
今更みっともなく生にしがみつく気が無い以上、やるべきは一つだけ。

そこまで考えた時、悲鳴らしき声が聞こえた。
らしき、というのは人間のものとは思えない異様な金切り声だから。
早くも誰かが殺し合っているのかと近付いてみると、思っていたのとは違う光景が広がっていた。

女が戦っている。
巨大な円状の刃を振り回し、取り囲んだ異形を斬り殺している真っ最中だ。
次から次へと女へ襲い掛かるのは、スマッシュとは違った怪物たち。
巨大な鎌を振り被る死神。
腐敗した肉体の鎧武者。
醜く肥え太り牙を剥き出しにしたピエロ。
たった一人の女を殺さんが為に、化物が群がっている。
見たところ苦戦している様子は無いが、倒しても倒しても現れる為キリがない。

であれば、幻徳の行動は決まった。
赤いバックルを腹部に当てると、あっという間にベルトが巻き付く。
葛城巧が開発したライダーシステムではない。自分がこれまで使っていたベルトやフルボトルは無く、代わりに支給された物。
だがこれもまた仮面ライダーへ変身する為の道具。
無機質な色のUSBメモリを取り出し、バックルへ装填する。


93 : まだ死ねないなら ◆ytUSxp038U :2022/06/23(木) 16:51:44 7QZY.kTg0
『SKULL!』

「変身…」

『SKULL!』

骸骨を模した頭部に、黒を基調としたアーマーを纏う。
これから戦闘に臨む心とは裏腹に体は異様に冷たい。
それを不審には思わない、何となくだがこのライダーに変身した影響だろうと分かった。

仮面ライダースカル。
とある探偵が街を泣かせる悪党と人知れず戦った、孤高の戦士。
肉が剥がれ血は渇き、髑髏だけが残った姿。
本来死人である自分にはお似合いだと仮面の下で自嘲しながら、右手を死神へ向ける。
変身と同時に出現した銃のトリガーを引くと、女の背後から斬り掛かろうとした死神の頭部に風穴が開いた。
突然の援護射撃に驚き振り返る女。
警戒の混じった視線を意に介す事無く、モンスターを撃ち殺し、時には素手で叩きのめす。
数が多いと言っても所詮はNPC。5分も経たない内に全滅する末路を迎えた。





自分への当てつけだろうか。
カウンター席から見えるボトルを視界に入れながら、梓みふゆは僅かに顔を顰めた。
洒落た雰囲気のバーはみふゆが会場に転移された場所であり、今は先程の戦闘に加勢した男との情報交換に選んだ場所。
モンスターを片付け互いに敵意が無い事を確認、外で立ったまま話すのも何だからと中に入って腰を下ろした。
男からしたらただの酒を嗜む店としか見ていないだろうが、みふゆにとっては良くない記憶を思い起こさせる。
自暴自棄になり酒に逃げていた、正直忘れてしまいたい醜態。
それを知って自分をこの場所からスタートさせたのなら、冥界の魔王様は実に嫌味な事でと内心で吐き捨てる。

「魔法少女……」

みふゆが何を思っているか知る由も無い幻徳は、得られた情報に考え込む姿勢を取る。

「信じられませんか?」
「…さっきのアレを見ていなかったら、そうだったかもしれん」
「ワタシからすれば、氷室さんの言う仮面ライダーの方が驚きましたけど」

愛と平和の為に戦うヒーロー。
幼い子どもが好みそうなフレーズだが、そうキラキラした存在ではないのだろう。
幻徳曰く、仮面ライダーの存在は日本中に知られているとの事だがみふゆは初耳だ。

仮面ライダーの事を説明する時、幻徳はどこか言い淀んでいた。
幻徳は嘗て仮面ライダーを軍事兵器として利用していた過去を持つ。
そのような行いをしていた自分がラブアンドピースを口にするのには複雑な思いがあった。

(それはワタシも同じようなものですけど…)

希望を与える魔法少女、なんて女児が憧れるものとは程遠い。
宇宙の延命という目的の為の部品と化した自分達には、希望どころか絶望しかないのだから。


94 : まだ死ねないなら ◆ytUSxp038U :2022/06/23(木) 16:53:08 7QZY.kTg0
少しばかりナイーブな思考になりかけた時、目の前の男が尋ねてきた。

「それでお前はこれからどうするんだ?」
「…さぁ、どうしましょうか」

答えになっていない答え。
相手によっては激怒されかねない返答だが、他に答えようがない。
率直に言うと、みふゆ自身一体何をすれば良いのか分からないのだ。
本当なら、自分の命は終わってしまったはず。
だからいざ生き返らせられても、嬉しいとか以上に困惑が強い。
やちよ達の所へ帰りたい想いが皆無ではないのだが、その為に見ず知らずの人々を殺そうとするほど腐り切ったつもりも無い。
ハ・デスが言ったどんな願いでも叶えるというのには、ほんの少しだけ思う所はあった。
誰も犠牲にしない方法で魔法少女の魔女化を防ぐだとか、逝ってしまったチームメイトを生き返らせるだとか、叶えたい願いが無いと言えば嘘になる。
だが願いを叶えるには結局殺し合いに乗るしかなく、そもそも本当に叶えてくれる保障はゼロ。
インキュベーターの例を知っているだけに、ハ・デスの言葉は全く信じられない。

「氷室さんはどうするつもりなんです?」

答えは出せないから、質問を返して逃げた。
自分でもズルいなと思いつつ、相手は特に機嫌を損ねた様子も無く淡々と答える。

「あのハ・デスだか言う奴を倒す。その道中一人でも多く助ける。それだけだ」
「……」

運営者に逆らい、殺し合いを止める。
内容を聞けば正にヒーローらしい答え。
なのにそう言った幻徳の表情にも声色にも、正義の味方の使命感だとかそういう暑苦しい想いは宿っていない。
代わりに宿っているものの正体を、みふゆは知っている。

「それは……贖罪の為、ですか?」

聞いてしまった後で、軽率な質問を口にした事を後悔する。
出会って一時間も経っていない相手の内面に踏み込むような、無神経な行為だ。
少しだけ驚いた顔になる幻徳へ謝罪と、今の質問は忘れてくれと口を開く。
が、幻徳は怒りもせず、一言だけ告げた。


95 : まだ死ねないなら ◆ytUSxp038U :2022/06/23(木) 16:54:44 7QZY.kTg0
「…そうかもな」

短い、なのにどうしようもなく重い一言にみふゆは感じた。

生前、エボルトに言われた事を思い出す。
お前の罪は決して消えない、どんな攻撃よりも深く突き刺さった言葉。
よりにもよってすべての元凶である男が言い放ったのは、全くの正論だった。
幻徳自身分かっていた事だ。
どれだけ過去の行いを悔いた所で、時間は戻らない。
例え犠牲にした以上の人数を助けたとしても、罪が帳消しになるなど有り得ない。
一海のように大切な者を殺されたにも関わらず、幻徳を許し共に戦う仲間として受け入れる人間は極僅か。
大多数の犠牲者たちは皆口を揃えて言うだろう。
罪悪感を感じているなら、お前も死んで地獄に落ちろと。
その通りだと思う。彼らの怒りは正しく、自分の末路は地獄以外に有り得ない。

だけど自分はまだ生きている。いや、生き返ってしまっている。
なら、本当に命が尽きるまで戦おう。
きっとこの地でも、助けを求める者は大勢いるはず。
自分は戦兎のような本当のヒーローでは無いけれど、それでもあの時。
仮面ライダーの勝利を願う声をパンドラタワーで聞き入れた瞬間は、兵器でも悪党でもなくヒーローとして戦えた。
だからもう少しだけ、罪に濡れた手でも救える人々へ手を伸ばそう。

「…さっきの質問の答えですけど」
「……?」
「ワタシも付いて行ってよろしいでしょうか」
「なに…?」

思ってもみなかった言葉につい聞き返す。
幻徳から見たみふゆの印象は、死にたがっているのではないだろうが、さりとて積極的に生へしがみついているようにも見えない。
何故急にそんな事を言い出したのか、幻徳が抱いただろう疑問に淡く微笑む。


96 : まだ死ねないなら ◆ytUSxp038U :2022/06/23(木) 16:56:47 7QZY.kTg0
「そんなに大きな理由がある訳ではないんです。ただ…」

梓みふゆの人生は決して幸福と呼べるものではない。
キュゥべえとの契約で魔法少女となった瞬間、真っ当な人間としての幸せは失われた。
魔女退治は思った以上に危険で、こんな戦いをしなければならない事を強く後悔した時もあった。
だけど隣には何時もやちよがいてくれて、その内かなえという仲間も出来たから折れずにいられたのだ。
魔女との戦いは命懸けだけど、親友や仲間が一緒なら恐くない。

それが壊れ出したのは、かなえが死んだ時だろう。

やちよと二人で悲しみに暮れ、だけどまだどちらも折れはせず、かなえの分まで生きようとした。
新たにももこ、鶴乃、そしてメルという仲間が加わり賑やかになったみかづき荘。思えばあの瞬間が最も幸福だったのかもしれない。

それから間もなくしてメルが死んだ。
魔法少女の行きつく果ては魔女という、最悪の事実を残して。

今まで自分達が倒(殺)してきたのは、元は同じ魔法少女。
ソウルジェムが濁り切れば自分達も同じ末路を迎える。
魔女化を防ぐには魔女を倒しグリーフシードを手に入れ続けねばならないのに、追い打ちを掛けるように新たな問題が立ち塞がった。
魔力の減退。年齢を重ねた魔法少女は徐々に弱くなっていく。
珍しくもない。やちよのように何時までも強いままでいられる魔法少女は一握りで、みふゆはその他大勢と同じだっただけのこと。
これで悲観するなと言う方が難しいだろう。
そんな時に出会った灯花と、マギウスが作り出したドッペルシステムは希望だった。
魔法少女の救済を掲げる灯花に縋り、みふゆはやちよの元を去った。

あの時、やちよに何も言わず姿を消したのが間違いの始まりだったように思う。
一般人にウワサによる被害が多数出ても、魔法少女解放の為には仕方ないと目を背けた。
ドッペルシステムを完成させる為とはいえ、守るべきはずの人達を危険に晒すなど魔女と同じではないか。
だがもう後戻りはできない所まで来てしまっていた。
記憶ミュージアムの崩壊でいろはが行方知れずとなり、やちよから憎悪を向けられた。
マギウスの翼に引き込んだと思っていた鶴乃は、みふゆの知らぬ所でウワサと一体化させられていた。
救いを求める余り、間違いに目を背け続けたツケが回って来たのだろう。
さなとフェリシアの言葉が無ければ、自棄を起こしたままでいたかもしれない。


97 : まだ死ねないなら ◆ytUSxp038U :2022/06/23(木) 16:58:13 7QZY.kTg0
だから間違いを正す為に戦った。
灯花に逆らい、鶴乃からウワサを引き剥がす方法をやちよ達に教え、
最後はドッペルが暴走した魔法少女達を元に戻す為に、ももこと共に命を懸けて。
やちよとの約束を破ってしまったのは申し訳ないが、自分の選択に後悔は無い。
しかし自分はこうして生き返っている。
思いがけぬ二度目の生に、さっきまで答えは出なかったけれど、

「もう少しだけ、頑張ってみようかなと。そう思ったんです」

そうか、と。
やや間を開けて、返って来たのはそれだけ。
けれどそれだけで十分だ。短いながらも言葉から拒絶は感じられなかった。
幻徳もまた、みふゆは自分と似たものを抱えていると察したのかもしれない。

これが二人の再出発地点。
間違いを犯し、最後には希望を繋いだ男と女のリスタート。


「それじゃあ改めて、よろしくお願いしますね。氷室さん」
「もっと気軽に、幻さんや幻徳くんと呼んでも構わんが」
「い、いえ。流石にそこまで気安く呼ぶ仲ではないので…」
「…………そうか」
「露骨に落ち込まないで下さい。反応に困りますから」


【氷室幻徳@仮面ライダービルド】
[状態]:健康
[装備]:ロストドライバー+スカルメモリ@仮面ライダーW
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:ハ・デスを倒して殺し合いを止める。
1:梓と行動する。
[備考]
※参戦時期はTV版で死亡後。

【梓みふゆ@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
[状態]:健康、魔力消費(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを止める。
1:氷室さんと行動する。
[備考]
※参戦時期は死亡後。

【ロストドライバー@仮面ライダーW】
ダブルドライバーのプロトタイプで外見も同様だが、メモリスロットが右側にしか無い。
ダブルドライバーと同様に普段はバックルの状態で携帯され、腹部に当てることで自動的にベルトが伸長して装着される。

【スカルメモリ@仮面ライダーW】
「骸骨」の記憶が内包されたガイアメモリ。ロストドライバーに装填する事で、仮面ライダースカルに変身する。
使用者の骨格を中心に肉体を強化する能力を持ち、それらに支えられた身体能力も向上させる。
加えて血肉なき"骸骨"であるが如く、変身中使用者の肉体は"死者も同然の状態"となる模様。
血管や神経まで変化または消失するのか痛覚を感じず、身体が冷たくなる。
変身後は専用武器であるスカルマグナムも使用可能。

『NPC紹介』
【死神のドクロイゾ@遊戯王OCG】
通常モンスター
星3/闇属性/アンデット族/攻 900/守1200
地獄の一撃で魂を奪おうとする死神。

【鎧武者ゾンビ@遊戯王OCG】
通常モンスター
星3/闇属性/アンデット族/攻1500/守 0
怨念により蘇った武者。
闇雲にふりまわすカタナに注意。

【マーダーサーカス・ゾンビ@遊戯王OCG】
通常モンスター
星2/闇属性/アンデット族/攻1350/守 0
闇の力で生き返ったピエロ。
フラフラとした踊りで死へといざなう。


98 : ◆ytUSxp038U :2022/06/23(木) 16:59:12 7QZY.kTg0
投下終了です。


99 : ◆bLcnJe0wGs :2022/06/23(木) 17:18:56 S7C3u73s0
拙作『ターニングポイント』の一部文章を修正させていただきました。


100 : ◆bLcnJe0wGs :2022/06/23(木) 18:50:23 S7C3u73s0
投下します。


101 : 親は来ない/『おかーさん』が居るよ ◆bLcnJe0wGs :2022/06/23(木) 18:51:15 S7C3u73s0
(死にたくないよ、お父さんでもお母さんでもいいから、誰か助けて……)

 会場内のとある場所。 そこでは、支給品の麺棒を片手に持ちながら、力なく歩く少女がいた。

 彼女の名前は橘 吉絵(たちばな よしえ)。
 とある田舎の、廃校を迎えつつある中学校に通っていた少女だ。
 だが、そんな学校に野咲 春花(のざき はるか)と相葉  晄(あいば みつる)という二人の転校生がやって来たが、そこから彼女たちを巻き込んだ悲劇が始まってしまった。
 2人の転入からしばらく経った頃、クラスメートの一人である小黒 妙子(おぐろ たえこ)と仲の良かった春花が晄とよく会話をする様になったことで妙子が彼女を妬む様になり、果てまでは春花へのいじめ、及び彼女の家族が逢うことになった放火殺人へと発展していった。

 吉絵自身も春花へのいじめや家への放火に加担し、放火事件後も春花に親の焼死を喜んだことを自慢したことや、自殺を強要したことで春花の怒りを買い、釘で眼を負傷させられた挙げ句、鉄パイプで滅多打ちにされ、自分を虐待し続けいた為に嫌悪していた両親に助けを求めながら死亡するといった最期を迎えた。

 そんな彼女もこの主催の手によって傷を完全に治癒された状態で生き返らされたが、同時にこの殺し合いに巻き込まれることになった。

 現在では、元居た世界で殺害された時にも来ることさえなかった両親にも心の奥から助けを求めていた。


「怖い…助けて…誰でもいいから…」

 精神を摩耗しながら未だに助けを求め呟く。



「あーらあら、あなたも巻き込まれちゃったのね?
 おかーさんが責任もって、守ってあげるよ♪」

 ──すると、そんな吉絵を守ってあげようとして来たのか、長いピンク色の髪をした、吉絵のものとは異なる学校制服をきた少女が現れた。

「え…!?」

 そんな彼女は、この会場で初めて出会った別の参加者に驚いた。

「大丈夫。おかあさん、あなたは殺さないわよ。
 だから、おいで♪」

 自分のことを『お母さん』と名乗り、両腕を広げる彼女に吉絵は警戒心を解けず麺棒をつい構えてしまう。


102 : 親は来ない/『おかーさん』が居るよ ◆bLcnJe0wGs :2022/06/23(木) 18:51:32 S7C3u73s0
【橘吉絵@ミスミソウ】
[状態]:死への恐怖(極大)、精神的ダメージ(特大)、目の前の人物(雲母麻美)への警戒心(中程度)
[装備]:麺棒@現実
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]:死にたくない。親でもいいから誰か助けてほしい。
1:目の前の人物(雲母麻美)が怪しい。 どうしよう?
[備考]
※参戦時期は死亡後。
※ロワ召喚前にあった負傷は主催の手によって完治しています。

【雲母麻美@ぷにるはかわいいスライム】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]:他に巻き込まれた参加者の保護と救助。
1:目の前の少女(橘吉絵)を保護する。
[備考]
※参戦時期は原作5話以降。


103 : ◆bLcnJe0wGs :2022/06/23(木) 18:51:48 S7C3u73s0
投下終了です。


104 : ◆diFIzIPAxQ :2022/06/23(木) 18:58:20 r/AhGFE20
皆様、投下お疲れ様です。
私も投下させていただきます


105 : ファーストコンタクト ◆diFIzIPAxQ :2022/06/23(木) 18:59:20 r/AhGFE20
 物事ってのは唐突に起きるものだ。

 唐突に親が死ぬこともある。唐突に兄弟がぶん殴ってくることもある。唐突にトラックが突っ込んでくることもある。唐突に異世界に転生することもある。
 唐突に別の大陸にいきなり飛ばされることもあれば、唐突に数年ぶりに再開した父親と喧嘩する事もある。

 そして、唐突に殺し合いに巻き込まれることも……あるのだろう。

 「だからってこんな展開はいつの時代のネット小説の話だよ……」

 そう呟きながら、草原で俺は頭を抱えて一人愚痴る。
 軽く俺の自己紹介をしておこう。俺の名前はルーデウス・グレイラット。外見年齢は11〜2歳ほどのまあまあな少年だが、実際は精神年齢は3倍以上あるオッサンだ。俺は無職童貞引きこもりのダメダメ尽くしのニートだったが、兄弟に家を追い出されたその日にたまたま目に止まった言い争いしてるカップルに向かってくるトラックを何とかしようとしてそのまま死亡。
 そしたら気づいたら日本とはかけ離れた異世界で「ルーデウス・グレイラット」の名前を持って生を受けた訳だ。その後の山あり谷ありの異世界ライフは今は割愛させていただこう。

 今重要なのは俺の人生を振り返る事ではない。あのグラサン男と自称・冥界の魔王ってヤツの話した事だ。
 決闘、デュエル。そうぼかしているが、実質的にはデスゲームの類だろう。まったく、バトルロワイヤルなんて何十年前のネタを引っ張り出してくるのだろうか。俺からしたら時代遅れとしか言いようがない。
 まあ俺はそう脅されてハイワカリマシタと機械的に殺しまわるつもりなど全くない。あの原作でも半分以上は殺し合い否定派だった筈だしな。
 取り敢えず、今考える重要な事は4つだ。①首輪をどうにかする ②脱出方法を探す ③エリスやルイジェルドの行方 ④魔王が話した無数の世界について、だ。
 しかし実際の所どれもすぐに取り掛かれる事ではない。首輪はいきなり俺の魔術でどうこうするには危なすぎるだろうし、脱出方法も具体的方法はナシ。エリス達も所在は不明だしそもそも参加しているのかも分からない。無数の世界については俺自身の体験で分かっている事だから別に驚くべきことではない。
 つまり、今の俺はただのしかない参加者、哀れな犠牲者だ。まあこういうのは積み重ねが大切だ。開始数時間で首輪も脱出方法も見つけられるようなボンクラ運営を期待するだけ無駄だろう。

 「取り敢えず、死なない様に頑張っていき「キャアアアア!!」ま、しょう……」

 唐突に叫び声が聞こえて、そちらの方に意識が向かう。

 見ると、俺と同い年くらいに見える麦わら帽子を被った金髪の子が、見るからにモンスターって感じの空飛ぶカマキリに襲われてるではないか。
 金髪っ子が素早いのかモンスターがいたぶろうとしているのか分からないが、つかず離れずの距離を保って追いかけっこをおこなっている様に見える。
 エロ同人の展開にはピッタリのシチュエーションかもしれないが、あいにく俺は人が虫にめちゃくちゃにされる事に対する性癖など持ってない。それにここは殺し合いの場だ。

 子供は見捨てるな。それがチーム『デッドエンド』の掟だ。ルイジェルドがいるかも分からない場所でも変わる事はない。
 
 「すみません!横に避けて!!」
 「えっ?アッハイ!」

 俺は支給されていた魔術を感じる杖を力強く握る。金髪っ子が頭を抱えながら横に回転避けを行い、モンスターの姿ががら空きになる。
 モンスターの全長は2mあるかどうかの虫型モンスター。飛んでいるが、予見眼があるから相手の動きはわかる。杖をモンスターに向けて魔力を流す。虫相手ならこの程度の魔術で問題ないだろう。

 「火球弾(ファイアボール)!」

 俺の声に合わせて発射された炎の弾丸は、そのままモンスターに直撃し、瞬く間に全身火ダルマになった虫は、呻き声のような声をあげつつ倒れて、そのまま動かなくなった。
 この杖、魔力が通るのはわかっていたから使えない事はないだろうと考えていたが、実践はぶっつけ本番だったので少し心配だったが、まあ杞憂ですんでよかった。
 名はドルイドの杖、だっけ?まあ杖の名前なんて今はどうでもいい。追いかけられてた金髪っ子の事が先だ。


106 : ファーストコンタクト ◆diFIzIPAxQ :2022/06/23(木) 19:01:09 r/AhGFE20
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 ケガの確認がてらに、お互いに自己紹介をしていく。
 金髪っ子の名前はイエロー。歳はやはり俺(の肉体年齢)と近い11歳の様で、ポケモンという魔物?が存在する世界の住民らしい。

 モンスターボールというボール状の道具を使う形で捕獲・収容する事が可能な、ポケットに入れられる事が出来るモンスター。縮めてポケモン。 

 ……何だろう、どこかで聞いたことがある気がする。少なくとも異世界転生してからではない。おそらく元の世界の方だ。しかし俺の知識はすぐに「コレだ!」という情報にたどり着けない。脳の記憶領域が異世界ライフで圧迫してきたのか?
 まあ思い出せないという事はすぐに忘れてしまう様なアニメやゲームなんだろう。ともかく彼には彼で住んでた世界で色々あったそうで、その事件がひと段落ついた所で今回のバトロワに巻き込まれたそうだ。

 「ボクはポケモントレーナーだからポケモンがあってこそなんだけど、モンスターボールも支給されてなかったし、これからどうしようって悩んでたらあんなモンスターに襲われちゃって……」

 イエロー君はしゅんとした表情でここに連れられてからの経緯を話す。俺の世界では見たことないが、立ち位置にはテイマー的なものだろうからポケモンってのがいなければただの一般人と大差ない存在なのだろう。
 俺がいなかったら危なかった所だな。

 「ちなみに、襲われてたモンスターはポケモンではないのですか?」
 「ううん、ポケモンは確認されてない種類がたくさんいるらしいけど、アレは違うと思う。ボクが知ってるポケモンの気の気配とかは全然違ったし」

 "気"とかいう単語が出てきたが、あえてスルーしよう。イエロー君の事情だけ俺が一方的に知っていくのは良くない筈だ。
 ここでふと俺は、杖の他に支給されていた赤白のボールを思い出す。

 「もしかして、モンスターボールってこういうモノですか?」
 「え?ああ、そうです!」

 テイバッグからボールを取り出すと、イエロー君はサッと自分の手に持ち、慣れたような手つきでボールを確認するとボールの中からモンスターが出てくる。手のひらで持てるサイズのボールに入ってたとは思えない、前歯が特徴のモンスターだ。
 なるほど。これがポケモンか。

 「ラッちゃんだ!よかったぁ!あの、本当にありがとうございます!」

 イエロー君はラッちゃん(おそらくニックネームで種族名じゃないだろう)と抱擁して再会を喜び、俺に感謝を伝えてくる。
 ラッちゃんと呼ばれたポケモンもどことなく喜んでいる様に見える。人間とポケモンとの良好そうな関係にほほえましくなってくる。エリスがいたら腕を組んでドヤ顔で見ていただろうし、ルイジェルドも彼なりに微笑んでたと思う。

 「それで、これからどうします?僕は人がいそうな場所に向かおうと思っていますが、イエローさんも一緒にどうですか?」
 「そうですね……、レッドさんやグリーンさんがいるなら探したいですし、助けてくれてるばかりで申し訳ないですけど、よろしくお願いしていいですか?」

 俺自身の提案に、イエロー君は乗ってくれる。知り合いの捜索か。エリスとルイジェルドの事は何もわからないが、特別気にする必要はないだろう。
 それよりも俺は首輪の方をどうにかしたい。この首輪がどういう仕掛けで出来ているかは分からないが、魔術的なアプローチがあるなら、俺の異世界で学んだ知識が微力でも役に立つ筈だ。

 「僕は問題ないですよ。じゃあこれからよろしくお願いしますね」
 「はい!ありがとうございます!」

 そういうと、イエロー君は笑顔で右手を差し出して握手を求めてきた。
 剣や杖を持って戦う事とは無縁そうなその手は、まるで少女みたいだ。
 そしてなぜか一瞬、今だ行方知れずのシルフィの事を思い出した。

 いやいやシルフィ、俺は君のことを忘れた訳じゃないよ?


107 : ファーストコンタクト ◆diFIzIPAxQ :2022/06/23(木) 19:02:44 r/AhGFE20
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 こうして、俺の異世界ライフから一転してバトロワライフが始まった。
 これから先どうなるのかは全くわからない。知り合いが参加されているのか、どんな敵が待ち受けているのか。
 しかし、俺はこんな所で死ぬわけにはいかない。でなければ何の為に魔大陸から旅を続けてきて、ようやく中央大陸に戻ってきたんだ。

 俺は本気で生きていくのだ。
 もう、後悔のない人生を送るために。
 全力で、だ。



【ルーデウス・グレイラット@無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜】
[状態]:健康
[装備]:ドルイドの杖@Fate/Grand Order
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:本気で生きていく。生き抜いていく。
1:殺し合い反対。首輪をどうにかしたい
2:イエローと行動する
3:エリスやルイジェルドの事が気になるが、あまり気にする必要はないだろう
[備考]
※参戦時期はミリス神聖国を出発して以降シーローン王国到着前(アニメ18話〜19話の間)
※前世の知識は制限対象です。具体的な基準は設けませんが、参加者に関する情報は容易に思いつく事はないです
※イエローの性別を男だと勘違いしてます。


【イエロー・デ・トキワグローブ@ポケットモンスターSPECIAL】
[状態]:健康
[装備]:モンスターボール(ラッちゃん)@ポケットモンスターSPECIAL
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3(ポケモンに関わる物は無し)
[思考・状況]
基本方針:元の世界に帰る
1:ルーデウスさんと行動する
2:知り合いがいるのなら合流したい
[備考]
※参戦時期は、第ニ章終了後



【ドルイドの杖@Fate/Grand Order】
ルーデウス・グレイラットに支給された。
キャスターのクー・フーリンが魔術を行使するのに使っている杖。支給されたのは本人が使っているそのものではなく、バレンタインデーのお返しで渡された一品。
本人曰く「魔術礼装ではなく、あくまで森を歩くためのステッキ」らしいが、サーヴァントお手製の為、魔術を行使できる人が使えば問題ないと思われる(今ロワでは使えるものとする)

【モンスターボール(ラッちゃん)@ポケットモンスターSPECIAL】
ルーデウス・グレイラットに支給された。ラッタが入っている。ラッちゃんはイエローがつけたニックネーム。
イエローが初めて捕まえて自分のポケモン(友達)。コラッタの頃に捕まえ、ラッタに進化した時は進化の事を知らなかった為イエローは大泣きした。
するどい前歯は鋼鉄をたやすく砕くことが出来る。


『NPC紹介』
【フライングマンティス@遊☆戯☆王】
風属性/昆虫族 攻撃力1500/守備力800
飛行能力を持ったカマキリ。昆虫が大好物。


108 : ◆diFIzIPAxQ :2022/06/23(木) 19:03:17 r/AhGFE20
投下終了です。


109 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/23(木) 20:18:39 Vox9fuK60
投下します


110 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/23(木) 20:22:59 Vox9fuK60
恐らくは今、そこに座っている青とグレーのジャケット姿の彼が最初の使用者であろうおしゃれなカフェのカウンター席にて。
彼の名は熊野正彦。
宇宙開拓団ZAP SPACYに所属する一人で、どんな機械でも直せるその腕前からメカの魔法使いの異名を持つメカニックだ。
彼は心底不思議そうな顔をしながらペタペタと体や顔を何度も触って確かめている。
それもそのはず。
彼はついさっき、尊敬するボスこと日向浩の手の中で、消滅したはずだったのだから。

(また新たな並行世界に転移……させられたのか?
あのハ・デスとかいう宇宙人に?てことは、あの時消滅しきらなったのか?
それともまさか、本当にハ・デスは冥界の王で。俺は生き還っているのか?)

色々考えを巡らせてみるが、今は判断材料が少なく、別に今すぐ答えを出す必要もないか。
と、判断し、足元にある鞄を調べることにした。
おしゃれなカフェに不似合いなそれは、もしかしたらさっき見たハ・デスに付き従う男、
磯野の言っていたルール説明のための道具が入ったものかもしれない。

「やっぱりな」

一通りのルールを確認し、更にランダムのアイテムも調べ終えた熊野の立てた指針は、
やはりこの決闘への反逆だった。

自分は宇宙輸送船スペースペンドラゴンのクルー。
戦争屋でも兵士でもないが、目の前に立ちはだかる障害に立ち向かわないほど臆病ではない。

(ボス、俺はあなたに初めて嘘をつきました。
俺の魔法、まだまだ出番がありそうです)

戦う土俵は戦闘ではなく、この首輪を始めとした敵側の技術の解析という形になるだろう。
それがこのメカの魔法使いたる熊野が最も活躍できる形だ。
総裁認識し、とりあえず他の参加者と合流しようと立ち上がろうとした時だった。
ずん、ずん、と一定のリズムで地面が揺れ動くような振動が伝わって来る。

「まさか……」

慌てて外に出ると、大通りを丁度熊野から見て右側から、頭から一本長い角の生えた正に怪獣という姿をした約15mの巨影が居た。

「あれは確かアーストロン!」

かつて地球において、帰ってきたウルトラマンと戦った怪獣の内一体で、鉄を主食として喰らうゆえに強靭な皮膚を持ち、凶暴怪獣の名でも呼ばれる怪獣である。

「まずいな。手持ちの武器じゃどうしようもないぞ……」

彼もメカニックかつ、元々戦闘を想定されていない職務についているとは言え、どんな危険があるか分からない宇宙へ繰り出すZAP SPACYの隊員である。
相応の訓練を受けてはいるが、なんの武器もなしに怪獣に対抗できるわけではない。

(仕方ない。ここは撤退……)

「おっしゃ!バッチ来いオラ―!」

頭上からやたら気合の入った掛け声が聞こえた。
見ると、反対の通りの建物の屋上に金属バットを持った桃色の髪の少女がいた。

「なんだって!?」

思わず叫ぶように言った熊野はアーストロンの方を注意しながらもその建物に入り、一気に屋上まで駆け上がる。
何をしてるのかと見てみれば、少女はなんとか手にしたバットで、反対の手で放り投げた野球ボールを打ってアーストロンに当てようとしていた。

「ふん!ふん!ふん!ふん!」

しかしボールはほとんどバットにかすりもしない。
当然だろう。反対にボールを投げてくれる誰かが居ても、当たらない時は当たらないのだ。
それに100万度の高熱にも耐えれるアーストロンの表皮に当たったところでどうにもならない。

「おい君!一体何やってるんだ!?」

「何!って!見て分かりませんか!?」

それでもボールを飛ばし続ける少女、ユイはやめなかった。

「君は、それであの怪獣と戦ってるつもりなのか?」

「はい!絶対!当てるんです!ホームラン!」

「……もう、ボールもあいつの爪も届く距離だが?」

「逆に聞きますけど、これやってなかったとして、逃げれますか?走ってるだけで」

「……」

いくら15mサイズであっても、相手は怪獣。歩幅も運動能力も違い過ぎる。
人間が走ったところでどうしようもない相手だろう。

「でも普通逃げないか?」

「ただ踏みつぶされるより、いいって思わない?」

カキーン!と、一際いい音が鳴った。
奇麗な弧を描いて、野球ボールがアーストロンの4歩手前に落下する。
奴はもう目と鼻の先だった。

「……いいや。思わないな」

「そう?」

「ああ。君が戦うのは、そこじゃない」

そう言って熊野は鞄からパソコンのマウスぐらいのサイズの何かを取り出し、地面に置くとスイッチを押す。
アーストロンの爪が振り下ろされる直前、地面に光る方陣が描かれたと同時に、二人の姿がそこから消えた。


111 : ※チケット代はこの後ちゃんと払いました。 ◆FiqP7BWrKA :2022/06/23(木) 20:23:44 Vox9fuK60
「馬鹿な!一体どうやってこのゼラン星のレイオニクスが操るアーストロンから逃げた!?」

その光景に一番驚いたのは、アーストロンを操っていたゼラン星人だった。
風の衣装を身に纏った彼は、レイオニクスバトラーの一人である。
ガルベロスを操るナックル星人にいい様にやられたと思ったら、
いつの間にかこの決闘会場に放り出された彼は、
自分も無事ならアーストロンも無事なのでは?
と考え、召喚したアーストロンが少女を見つけたので、
とりあえず倒してしまおうと向かわせたという経緯があった。

「あの青い服の男はペダン星人だったのか?」

もしかしたら、武器を持っていないだけでレイオニクスハンターなのかもしれない。
ハ・デスは決闘と言っていたし、レイオニクスに対抗できる存在が参加者に居てもおかしくない。

「だが誰が相手だろうと、復活した以上、必ずや優勝して見せる!戻れアーストロン!」

手にしたバトルナイザーにアーストロンを戻すと、ゼラン星人は次の獲物を探しに向かった。


【ゼラン星人(RB)@ウルトラギャラクシー大怪獣バトル】
[状態]:健康
[装備]:バトルナイザー@ウルトラギャラクシー大怪獣バトル
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:この決闘を制してレイブラッドの後継者になる。
1:まずは次の獲物を探す。
2:同じレイオニクスやレオニクスハンターなどの、レイオニクスに対抗できる参加者を警戒。
[備考]
※ナックル星人にいいようにやられた後からの参戦です。


112 : ※チケット代はこの後ちゃんと払いました。 ◆FiqP7BWrKA :2022/06/23(木) 20:24:36 Vox9fuK60
転移の際に発生した光のせいで、若干目がちかちかするが、
何とか危機を脱した熊野と桃色の髪の少女、ユイはどこか暗い場所にいた。

「え……えええぇ〜〜!?何が!?一体何がどうなったんですか!?」

「瞬間移動できるって言うのは本当だったな」

手にしたアイテム、次元方陣シャンバラを鞄に戻しながら熊野は独り言ちた。
連続では使えない上に、会場のどこに飛ばされるかはランダムだが、
即時撤退が出来る非常に強力な支給品だ。

「瞬間移動!?そんな映画みたいなことが……」

ビ―――ッ!と、ユイの台詞を遮り、室内にブザーが鳴り響く。
そして急に部屋の一面だけが明るくなった。
そこにあったスクリーンいっぱいにタイトルが映し出されたからだ。
そのタイトルは……

(『大決戦!超ウルトラ8兄弟』だって!?)

なんでそんな映画が今、この会場で?
困惑していた熊野だったが、ユイに袖を引っ張られ、我に返る!

「早く座って座って!映画館では座ってみるのがマナーなんでしょう!?」

まるで初めて映画館に来たかのようなはしゃぎっぷりの彼女に促され、
着席する熊野。
8人のウルトラマンとは誰の事なんだろう?
なんて、事を想いながら、幾年かぶりの映画館で見る映画に、
ちょっと郷愁を覚える熊野だった。


113 : ※チケット代はこの後ちゃんと払いました。 ◆FiqP7BWrKA :2022/06/23(木) 20:27:57 Vox9fuK60
【ユイ@Angel Beats!】
[状態]:健康
[装備]:金属バット@現実
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:やりたいことをやる。
1:映画館に始めて来ました!想像以上の大迫力です!
2:怪獣もいるし、ここも死後の世界なんでしょうか?
[備考]
※アーストロンに襲われた場所に、バッドと一緒に支給された大量の野球ボールを放置しました。
※参戦時期は後の書いて様に任せます。


【熊野正彦@ウルトラギャラクシー大怪獣バトル】
[状態]:健康
[装備]:次元方陣シャンバラ@アカメが斬る!
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:自分のメカニックとしての腕を活かす形で、この決闘に反抗する。
1:まずはこの子と映画を見る。
2:ウルトラ8兄弟だって?
3:ここはどこか並行宇宙なのか?
4:もしかして、俺は一度死んで生き返ったのか?
[備考]
※ゼロVSダークロプスゼロで消滅した並行世界の熊野です。



支給品解説
【バトルナイザー@ウルトラギャラクシー大怪獣バトル】
レイオニクスと呼ばれるレイブラッド星人の遺伝子を持つモノたちが使うデバイス。
怪獣、超獣、スペースビーストを封印、使役する事が可能。
制限により、使役される怪獣は約15m級にスケールダウンして召喚される。
使い手成長すればするほど進化していき、怪獣のさらなる力を引き出せたり、
戦闘特化の姿に変質させることも可能。
ゼラン星人(RB)の物にはアーストロンが封印されている。

【次元方陣シャンバラ@アカメが斬る!】
1000年前の皇帝が国を永遠の物とするために世界中の優れた技術を集めて造った超兵器帝具の一つ。
マーキングした場所を対象とした所謂「瞬間移動」を可能とする。
パソコンのマウスのような形をしている。
数人までしか運べない、連続しては使えないなど、破格の性能に見合った制限がある。
このロワでは、あらかじめ何か所か、すでに会場内にマーキングされている場所があるようだ。


114 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/23(木) 20:28:15 Vox9fuK60
投下終了です


115 : ◆dltjJrbYYM :2022/06/23(木) 22:04:32 pQrF8j620
投下します


116 : おかあさん ◆dltjJrbYYM :2022/06/23(木) 22:05:17 pQrF8j620
「ママ!! ママァ!!」

 半狂乱になって叫ぶ少年の名はラース。
 人体錬成の失敗作である人造人間……ホムンクルスだ。

 彼が求める母とは自分を作ってすぐに捨てた憎きイズミ・カーティスではなく、ホムンクルスの仲間のスロウスのこと。

 ここに連れてこられる直前、自分が足を引っ張ったせいでスロウスが宿敵エドワード・エルリックに殺された。

 ホムンクルスのリーダーであるダンテは、貴重な賢者の石を使ってまでやられた駒を蘇らせたりはしない。

 それでも何とか頼み込もうと本拠地に向かっていたというのに、気づいたらあの殺し合いの説明の場にいた。

「ママァアアアアア!!!!」

 深い悲しみに暮れて絶叫するラース。けれど、冥界の王の……ハ・デスの言ったことを思い出して、暗い笑みを浮かべる。

「そうだ、願いだ……賢者の石でも神様でもなんだっていい、ママが生き返るなら、僕は……!」

 あれほど憎んでいたエドワードやイズミと同じ……否、それより遥かに下劣な思考に行き着いていることにも気づかずに、ラースは殺し合いに乗る決心をした。

 と、その時。

「さっき、ママ、ママって泣いてのは君?」

 近くの茂みを掻き分けて、金髪の少女が現れる。


「そうだよ、けどもう泣かない……みんな殺せば、ママは生き返るから!」


 金髪の少女……フェイト・テスタロッサが近くにいたのは単なる偶然だが、実際に遭遇したのは偶然ではない。ラースの泣き叫ぶ声を聞いて、自分と歳の変わらぬ子供が怖がっているのかと様子を見に来ていたのだ。
 余談だがその泣き叫ぶ声が、どこか自分の声と似ている気がしたのも、様子を見に来た一因ではある。

 ラースの殺気の籠もった瞳に、フェイトは悲しげな瞳で首を横に振る。

「駄目だよ。人は……死んだ人は、絶対に生き返らない」

 アリシアがそうだったから、とまでは言わないフェイト。

「人は生き返らない? クッ、あっはっはっは!!」

 教訓、というにはあまりにも直球過ぎる言葉を聞いて、ラースは狂ったような笑い声をあげる。

「そんなこと、僕らが一番よく知ってる」

 笑顔から一転、ドスの効いた低い声でフェイトを睨むラース。

「僕らはホムンクルス、人造人間だ。どこかの馬鹿が面白半分で誰かを蘇らせようと、人体錬成を試して生まれた化物だよ」

「化け物……偽物……人造、人間……」

「息子の代わりに産まれさせられた僕と、母親の代わりに産まれさせられたママ……」

 誰かを蘇らせようとして作られた偽物。それは、それはまるで……フェイト自身のことのようだった。

「だからママは生き返る。人じゃないからこそ、生き返るんだ!!!」

 ラースは自らの支給品であるキング・ブラッドレイの刀……別の世界[原作]においてラースの名を持つ者の武器と一体化する。

「お前たちは、死ねぇえええ!!」

 鬼気迫る表情で向かってくるラースに、フェイトもまた支給品である雷の斧で防御する。

「くっ!」

 激しい火花を散らす刀と斧。そのまま激しく動き回りながら打ち合う二人。

「くっ、あああ!」

 しかし、デバイス抜きのパワー……というより腕力では流石に不利であり、徐々に押されていくフェイト。

「少しはやるみたいだけど、僕より弱いね! この程度か!?」

 嘲笑いながら攻撃を続けるラース。

 キング・ブラッドレイの刀は二振りだ。左腕だけでなく、右足も刀と同化させると、曲芸師のように飛び跳ねて蹴りを放つ。

「ぐぅあ!」

 その一撃を受けて吹き飛ばされるフェイトだったが、なんとか空中で体勢を整えて着地する。

(バルディッシュがあれば……!)


 相棒とも言えるデバイスがないことに歯噛みするフェイトだが、ないものねだりをしてもしょうがない。それに、この雷の斧も説明書を読んだ限りでは決して悪い武器ではないのだ。


 図らずも距離を取ったことで仕切り直しとなり、両者睨み合う。


117 : おかあさん ◆dltjJrbYYM :2022/06/23(木) 22:06:21 pQrF8j620
「へぇ、今ので死んでないんだ。そのバカデカい斧が合わないだけで、思ったよりは強いのかな?」

 ただの少女ではないとは思っていたが、ホムンクルスである自分の動きについてこれるほどとは思っていなかったラース。一方フェイトは斧の刃先を地面に向けるようにして構えながら、どこか悲しげな瞳でラースを見据えていた。

「君は……私に似てる」

「似てる? 声の話か? 確かにな」

「それもだけど、そうじゃなくて」

 ゆっくりと武器を下ろすフェイト。すかさず襲いかかろうとするラースだが、次のフェイトの言葉を聞いて体を止める。

「私も……君と同じだった」

「同じ、だと?」

「母さんは……最期まで私を見てくれなかった。どうしてかというと、私も君と同じ……代わりに作られた偽物だったからだった」

「……お前もホムンクルスなのか?」

「ううん、私はクローンの方」

 クローンという概念をラースは知らないが、ホムンクルスと同じようなものであるということは理解できた。

「母さんは私を見てくれなかったけど、私にはそばにいてくれる人も、手を差し伸べてくれる人もいた。君にとってはママがそうなんでしょ? だから……」

「ふん、お前の自分語りなんて興味ないね」

 そっぽを向いて言うラース。だが口ではそう言いながらも、彼の殺気が僅かながら和らいでいるのを感じた。

「お前じゃなくて、私は……」

 フェイトには分かった。目の前の少年は心を閉ざしている。かつて、ジュエルシードを集めていた頃の自分と同じか、それ以上に。

 彼には『ママ』しかいない。自分にとってのアルフやなのはのような人がいなかったか、いたとしても気づけなかったのだろう。

 そんな人と分かり合うにはどうすればいいか……フェイトの『友達』が、教えてくれた。



「私は……フェイト。フェイト・テスタロッサ。あなたは?」

 キョトン、とした顔になるラース。まさか自己紹介をされるとは思っていなかったのだろう。けれど、斧を地面に向けて片手を差し出してくるフェイトに、同じように『母親』に捨てられたフェイトに思うところがあったのか、ぶっきらぼうに答える。

「憤怒のホムンクルス……ラースだ」

 ラース。それは、きっと通称みたいなもので、本当の名前じゃなくて。でも彼にはその名前しかないのだろう。


「ラース。私は、君を止める」

「やってみればいい! 僕はお前を殺すぞ!」

 ラースは刀と同化していない方の手で地面に触れる。ラースの右腕と左足……エドワード・エルリックの右腕と左足が輪を作ることで、錬金術が発動。

 大きく隆起した地面がフェイトに襲いかかる。

「こんなもの!」

 試し打ちもしていないが、出し惜しみをしていては負けるのは先ほどの打ち合いで分かった。

 フェイトは雷の斧……スラッシュアックス、断雷斧キリンを剣モードに変化させ、迫りくる地面に突き刺した。


「属性解放突き!!!」

 激しい爆発と共に、フェイトに迫っていた地面がバラバラに吹き飛ぶ。

「隙だらけだよぉ!!」

 元々使っていたデバイスと似通う部分もあって、扱いの難しいスラッシュアックスでラースと互角に戦っていたフェイト。しかし流石にこの短期間では使いこなすとまではいかず、属性解放突きの後の大きな隙を晒してしまう。


 ラースが軽快に飛び跳ねながら接近してくる。フェイトが慌てて体勢を立て直そうとした時……


118 : おかあさん ◆dltjJrbYYM :2022/06/23(木) 22:10:32 pQrF8j620
「オギャーー!! アギャーー!!!」

 突然、赤ん坊の泣き声が響く。

「そんな、赤ちゃんまでこんな殺し合いに!?」

 二人の激しい闘いの音がうるさかったのか、単に草むらに放置されているのが不快だったのかは分からない。
 しかし、赤ん坊……野原ひまわりが目を覚まして泣いている、ということは確かだ。

「はっ、ぁ、あぁ、はっ……! はっ……!」

 ひまわりの泣き声を聞いた瞬間、目を見開いて固まるラース。

「ラース?」

「うるさい……」

 ラースは赤ん坊の泣き声が苦手だ。トラウマと言ってもいい。
 流産した赤ん坊の死体を元に錬成され、産まれた直後に真理の扉に捨てられた頃の記憶を、自分の泣き声を思い出すから。

「うるさい!! おい、ソイツを黙らせろ!!」

「だ、黙らせろって……」

「オギャーー!! オギャーー!!」

『オギャーー!! オギャーー!!』


「うるさい、うるさいうるさい!! 黙れぇえええええ!!!」

「ラース!! ダメ!」

 ひまわりに向けて突進するラース。

「僕に、あのことを思い出させるなぁああああ!!!」

 本来ならフェイトのスピードはラースと見劣りするものではない。だがフェイトの持つスラッシュアックス、それも剣モードは狩人の扱う武器の中でも最上級の重さだ。

 だから、ひまわりに走り寄るラースに、追いつけない。

「静かに、しろぉおおお!!!!」

 種族によって自立の早い遅いはあれど、どんな生物でも赤ん坊の頃は母に、周りに守られなければ生きていけない。

 苛立ったラースに蹴り飛ばされる。たったそれだけで、文字通り赤子の手をひねるほど簡単に……野原ひまわりは息絶えた。


【野原ひまわり@クレヨンしんちゃん 死亡】


「あ、あぁ、ああぁあ……!」

 無力な赤ん坊。何もできない無力な存在。かつて捨てられた時の自分のような弱い弱い存在を……ラースは殺してしまった。

「僕は、僕は、なんてこと……! 違う、僕は、僕は……!」

「ラース……」

 赤ん坊を殺したラースに、本当なら憤怒の感情を浮かべなければならないはずなのに……フェイトはなぜか、彼のことが哀れでたまらなかった。


119 : おかあさん ◆dltjJrbYYM :2022/06/23(木) 22:11:02 pQrF8j620

「くっ、来るなぁ!!」

 ラースは再び地面に手をついて錬成する。今度は土煙をあげての目くらましだ。
 土煙が晴れた時には、ラースの姿は掻き消えていた。

 逃げた。それも、命の危機を感じたわけでもない。ただ、自分の行ったことが……赤ん坊を殺したことが、それで責められるのが怖くて。

「ラース、君は……許されないことをした」

 ギュッ、と断雷斧キリンを握りしめるフェイト。

「私が止める」

 元々こんな殺し合いなどに乗るつもりはない。しかしこの出来事で、より一層抗う決意が固まった。

 しかしフェイトはラースを追わず、先ほどラースが蹴り飛ばした赤ん坊に歩み寄る。ただ腹立ち紛れに蹴られただけで息絶えた、余りにも儚い命……ひまわりの遺体を見て、俯いてしまうフェイト。

「ごめんね……」

 消え入りそうな声で、そう呟いた。



「僕は、僕には、関係ない……! 赤ん坊がいたからって、僕と似た女の子がいたからって関係ない! ママを生き返らせる! みんな殺す!!」

 咄嗟にフェイトから逃げた後、激しく首を横に振って自分に言い聞かせるラース。

「ダンテもイズミも関係ない! 僕はママがいれば、それだけでいいんだ!」



【ラース@鋼の錬金術師(2003年版)】
 [状態]:健康、疲労(小)
 [装備]:キング・ブラッドレイの刀@鋼の錬金術師
 [道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2】
 [思考・状況]基本方針:みんな殺して、ママを生き返らせる
 1:みんな殺す! 誰だろうと関係ない! 
 2:フェイトにはできれば会いたくない

 [備考]
 47話終了後からの参戦です。




【フェイト・テスタロッサ@魔法少女リリカルなのは】
 [状態]:健康、疲労(小)
 [装備]:断雷斧キリン@モンスターハンターシリーズ
 [道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2】
 [思考・状況]基本方針:殺し合いに抗う
 1:まず、この子(ひまわり)を埋めてあげないと……
 2:ラースを止める。
 [備考]
 一期終了後からの参戦です。




『支給品紹介』
【断雷斧キリン@モンスターハンターシリーズ】
フェイト・テスタロッサに支給。
剣と斧の変形機能を持つスラッシュアックス。青と白を基調とした美しい武器。攻撃力は低いが雷属性値は高く、作品によって強さに幅がある。
ちなみに剣モードの攻撃時に使用される強襲ビンも一緒に支給されている。


120 : おかあさん ◆dltjJrbYYM :2022/06/23(木) 22:11:52 pQrF8j620
投下終了です。
正直いい感じの赤ん坊キャラが他に思いつかんかった。


121 : ◆AJVAB97T02 :2022/06/23(木) 22:59:46 FjoYJ.1s0
投下します。


122 : 半人半獣、半蟲半呪 ◆AJVAB97T02 :2022/06/23(木) 23:03:11 FjoYJ.1s0
会場の一角、暗い森の中に一人佇む半獣の男がいた。

名はギュメイ。かつてガナン帝国の将軍として世界征服への一端を担い、また誰よりも帝国に対する忠義を重んじた男。
だが、彼の中に帝国を蘇らせようとする気持ちは微塵もなかった。

それもその筈。ギュメイは帝国の野望のために生き、野望に命を散らした男。生前に遺した唯一の気がかりも、ある人間の協力によって晴れた。
もはや思い残すこともないと成仏した直後にこのような場所に呼び、悪趣味な処刑を見せられ、殺し合いをしろ等と戯言を抜かす。
こんな戯けた者どもが開いた催しなどで帝国を蘇らせるという行為自体が、主君ガナサダイに対する冒涜の極みだと彼は考えていたのだ。

(ハ・デスよ…貴様が何を考えているのかは知らんが…この行いは許されるものではない!決して貴様の思い通りにはさせん!)

彼は心の中で啖呵を切り、同じ志を持つ参加者を探すために森の中を散策し始めた。

途中、ふとデイパックの中を確認し始めた彼は、水と食料に埋もれた一つの刀を発見する。
それは一見何の変哲もない刀。見る者によっては「ハズレ」とも断じられるであろう程の、淡白な作り。
だが、歴戦の武人であるギュメイはその本質を見抜いていた。

__銘は浅打。或る世界の「死神」と呼ばれる存在に与えられ、時間をかけて魂を写し取ることで己だけの「斬魄刀」を作り上げる刀。
「刀神」二枚屋王悦が作り上げたその刀は、まごうことなき業物。ガナン帝国でも此処までの物は無かったと思いながら、

「…良い刀だ。」

思わず漏れてしまった心の声に自分でも驚きながらも、再び散策を始めようとしたその瞬間だった。

__背筋から走る、感じた事もない悪寒。
瞬間、体中の毛が逆立ち、目は一瞬にして武人の目となる。
臨戦態勢に入ったギュメイは、素早く後ろを振り向く。

そこに立っていたのは、人間ともモンスターとも言い難いモノ。
ギュメイが直感で「それ」に感じたのは……「呪い」。
誰からも必要とされず、忌み嫌われるだけの存在…
今目の前にいる「それ」は、そういう存在が溜め込んできた負の感情がそのまま形になったようだと彼は心の中で形容しながらも、

ゆっくりと、刀を抜いた…

「……来いッ!」


123 : 半人半獣、半蟲半呪 ◆AJVAB97T02 :2022/06/23(木) 23:03:37 FjoYJ.1s0
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


(ガツガツガツガツ…)
「不味イ、不味イ、不味イ…」

森の奥。デイパックから食料品を貪るように喰らい、不満をこぼす呪霊がいた。
黒沐死。蟲型の呪霊で、等級は特級。呪霊達の中でもひときわ強大な呪力を持って生まれた存在である。

そんな彼を、木の上からじっと見つめるゴブリン達がいた。
ゴブリン偵察部隊。彼らはその名の通りゴブリンの中でも特に偵察、諜報に秀でた部隊である。
今日この日も、彼らは獲物の情報を集めるために安全な場所からじっくりと観察し、癖や動きを分析していた。
__ただこの日は一つ、致命的なミスをしてしまった。

カサッ
「うわ!」
足に纏わりついてきた虫を反射的に払いのける一人のゴブリン。
だが、その過程で木の葉に体をぶつけてしまい、ガサリと小さな音を立ててしまう。
呪霊の中でも一際食い意地の強い彼は、その微かな物音さえも聞き逃さなかった。

ギョ ロ リ

「!!!!!」
「隊長!どうかしましたか?」
「『奴』と目が合った…」

隊長が必要以上に恐れをなしたのも無理はない。黒沐死の眼は、目の前の存在を食料としか見ていないと語っていた。
恐らく、対話することすらも出来ないだろう。そう悟り偵察を放棄する事にしたゴブリン達はその場からの撤退を図る。
___が、彼らの命運もあっさりと決まってしまう。

「なんだこれは…壁?」

ゴブリン達の逃走経路に立ち塞がったのは、横に大きく広がった黒い壁。
それは本来、この会場の森に置くには余りにも相応しくない、イレギュラーすぎる物体だった。
こんなもんが何だってんだ!と啖呵を切りながら、壁を飛び越えて突き進もうと内心恐れをなした隊長ゴブリンが高く飛び上がる。
その瞬間、壁の一部が蠢き出し、彼の体を覆い隠し始める。

「いっ…嫌だぁあああああ!!ああぁぁぁぁ……」

この世のものとは思えない悲鳴と共に体のあらゆる部分を食いちぎられ、貪られる隊長の姿を見てゴブリン達はその生物の正体を嫌でも理解する。
一見壁に思われたそれは、古くから人間に忌み嫌われ畏怖の存在となっていた、「あの」生物…

「……『ゴキブリ』だぁぁぁぁ!!!!ウグアッ…」

「グアァッ!」

「ウゴォッ!」

「ウギャァァッ!!」

__だが、気づいたところで助かるなんて甘い話は、この殺し合いでは通用しない。
ある者は腹を、またある者は頭を食い尽くされ、緑に輝く鮮血と共に命を散らしていく。
木から落ちるカブトムシのようにぼとぼとと墜落するゴブリン達の死骸を、黒沐死は次々と貪り喰らう。
ベキ、ゴキと鈍い音を立てながら喰らいつくした後、再び彼は獲物探しに動き出す。

30分ほど歩いた頃だろうか。彼は再び、「食糧」を見つける。
ゆっくりと、なおかつ大胆に接近しその姿をしっかりと視認できるほどになったあたり、人影もこちらへ気づく。
目の前の醜悪極まりない存在に全く臆することなく、堂々とした振る舞いで立ち塞がる半人半獣の男。
彼のその力強いオーラは、彼にとってはただの食欲増進剤でしかなかった。

男もまた、黒沐死という存在の本質を見抜いたかの如く、一瞬で刀を抜き戦闘態勢に入る。
その堂々とした構えに一片の興味も示さず、冒涜的な笑みを浮かべた黒沐死は…

ただ本能のままに目の前の存在を貪り喰うことを、決めた。

「キシャァァァァァッ!!!」


124 : 半人半獣、半蟲半呪 ◆AJVAB97T02 :2022/06/23(木) 23:06:05 FjoYJ.1s0
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「……来いッ!」
「キシャァァァァァッ!!!」

暗い森の中、2人の獣と蟲がぶつかり合う。
すれ違う斬撃と呪力。

「グウッ…」
「チチチチ……」

ギュメイは左足に深い切り傷を負い、黒沐死は右腕を一本叩き切られる。

(今の立ち合いで理解した…この者、一筋縄ではいかぬ!)

右腕の一本を軽々しく切り落とされたことに驚愕し、一瞬立ち竦んだ黒沐死。
その隙を、ギュメイは見逃さなかった。

『火炎斬り!!』

『マヒャド斬り!!』

炎と氷が織りなす、美しくも無慈悲な連撃。鍛錬を積み続け、2回行動を可能にしたギュメイだからこそ出来る技であった。
対応する暇もなく顔を焼き焦がされ、羽を凍らされる黒沐死。
その痛みに怒り狂い、ギュメイに向けて無数のゴキブリを飛ばす。
だがそれすらも、彼の卓越した剣技によって打ち落とされた。

「コレデハ、マズイ…」

状況不利と見た黒沐死は、自らのデイパックを漁り、支給品を取り出す。
そこに入っていたのは…

「       ガ
       シ
      ャ
     コ
    ン
   ソ
  ー
 ド       」

それは、鞘に付いているボタンを押すことで炎と氷のモードを切り替え、自由自在に操る事が出来る魔剣。
奇しくも、ギュメイの扱う技と同じ性質を持つ物であった。


125 : 半人半獣、半蟲半呪 ◆AJVAB97T02 :2022/06/23(木) 23:06:35 FjoYJ.1s0
___斬り合いは続く。
だが、先程よりもギュメイは明らかに押されていた。
それもその筈。黒沐死はギュメイの動きに少しずつだが確実に対応しつつあったからだ。
火炎斬りには炎剣モード、マヒャド斬りには氷剣モードで対応しそれぞれの技を打ち消され、まじん斬りやさみだれ斬りは隙が大きすぎて使えない。
さらにダメ押しと言わんばかりに、術式を発動させる。

「瞎(くらい)、瞎(くらい)、瞎(くらい)」

『土 虫 蠕 定』

そのおどろおどろしい呪文と共に醜悪な式神が2体現れ、ギュメイの肉を喰らいつくさんとばかりに襲い掛かる。
即座に斬り払おうとするギュメイだったが、判断が間に合わず左肩の肉を抉られる。
呪力によって増幅された激痛に思わず悶えそうになるが、三将軍としての矜持で持ちこたえ、すかさず次の技を繰り出す。

「ウオォッ!!まじん斬り!!」

会心の一撃を食らわせ、式神を斬り滅ぼす。
だが、黒沐死の攻勢はこれで終わりではなかった。
式神が今際の際に飛び散らせた体液がギュメイの視界を遮り、無防備な状態にさせたのを見逃さない。
まるで上等な餌にむしゃぶりつくかのように飛び掛かる黒沐死。

「私ハ!!鉄ノ味ガ 好キダ!!!」

自らの欲望を丸出しにした鳴き声と共に、ガシャコンソードがギュメイの首元に肉薄する。


ああ、自分の命はまたも終わるのか。
陛下のために身を犠牲にして戦い続け、忠義を果たした結果がこの有様か。
…だが、もはや我に未練はない。
ガナン帝国の終焉、ガンベクセン王の成仏も見届けた…
何よりこれは3度目の人生。もはや生き過ぎたとも言える程だ。
ここで終わるのも、運命というものなのかもしれないな…
ギュメイの脳内に、諦めの感情が芽生える。

だが、それを覆いつくす程に溢れてくる「まだ闘いたい」という感情。
それは、帝国の意思によるものではなく紛れもない自分自身の思い。
更なる強者と決闘し、己を高め続けたいという気持ち。
何よりこの戯けた催しを終わらせるためにも、ここで負けるわけにはいかない。

___まだ終われるか。まだ負けられるか。

『そうだ。我は帝国三将軍、ギュメイだ!!!』

彼ががそう強く誓った瞬間、辺りが一瞬で光に包まれた。

ゴキブリは光を嫌う。その眩い光に目を閉じ、光から遠ざかろうとした瞬間をギュメイは見逃さない。
今なら使えるであろう、「あの技」の構えに入る。
それは、かつて自らの人生に一度終止符を打った技。
全身全霊を持って解き放つ究極の剣。

「人間よ…お前の技、使わせてもらうぞ!!」

『ギガスラッシュ!!!』


「キ゚キ゚キ゚キ゚…!」

瞬間、閃光が黒沐死の体を包んでいく。
その止まぬ飢えにより無差別な殺戮をばらまく呪霊は、醜悪な鳴き声と共に祓われた。

【黒沐死@呪術廻戦 死亡】


126 : 半人半獣、半蟲半呪 ◆AJVAB97T02 :2022/06/23(木) 23:07:19 FjoYJ.1s0
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

戦いを終えたギュメイは、ギガスラッシュにより破壊されたガシャコンソードを地面に突き立て、黒沐死の墓標を作る。
それは、彼なりの黒沐死に対する弔いであった。
生前、呪いを無差別にばら撒いた呪霊とはいえ一度剣を交えた相手。一定の敬意を示しながら、ギュメイは墓標に向かって静かに手を合わせた。

「グッ…。流石に堪えたな…」

葬儀を終えたのち、無理が祟ったのかその場に崩れ落ちるように座り込むギュメイ。
致命的でないとはいえ少なくないダメージを負った彼は、デイパックの一部を切り取ってその抉られた肩に応急処置をし始めた。
その途中、ふと彼は刀に目を向ける。
一瞬、この刀が自らに語り掛けてきた気がしたのだ。
それも、脳内に直接語り掛けてくるような不思議な感覚。

『…良い死合いであった。だが、私を扱うにはまだまだ未熟…』
『これからの戦いで己が魂と向き合い、本質を見出してみせろ。』

突然の出来事に驚くギュメイだったが、その堂々とした振る舞いと言葉を聞き、
この刀に宿る意思もまた、確固たる信念を持った「武人」なのだと理解した彼はゆっくりと言葉を返す。

「…よかろう。」
「この闘いが終わるまでは、お前にも付き合ってもらうぞ。…フッ、案外長い付き合いになるかもしれんな」

そう言って処置を終え、ギュメイは森の出口へと歩きだす。
未だ見ぬ強者との戦いを望みながら。




【ギュメイ将軍@ドラゴンクエストIX 星空の守り人】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(小)
[装備]浅打@BLEACH
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:この戯けた催しを開いた者、ハ・デス達を打倒する。
1:良き、決闘であった…
2:更なる強者との戦いを望む。
[備考]
※参戦時期はクエスト「名をうばわれし王」終了後からです。

【浅打@BLEACH】
死神の養成機関である「真央霊術院」を出たときに与えられる、日本刀の形をした斬魄刀。
最初は特殊能力を持たないが、寝食を共にすることで自身の魂を写し取っていき、己の斬魄刀を創り上げていく。


『NPC紹介』
【ゴブリン偵察部隊@遊☆戯☆王】
攻撃力 1700/守備力 0
LIGHT OF DESTRUCTIONで登場した風属性・戦士族の下級モンスター。
ゴブリン初の風属性である。


『施設紹介』
【森@遊戯王OCG】
全ての昆虫・獣・植物・獣戦士族モンスターの攻撃力と守備力は、200ポイントアップする。
このロワイヤルでは、森に滞在している上記の性質を持った参加者の身体能力を強化する効果がある。


127 : ◆AJVAB97T02 :2022/06/23(木) 23:07:30 FjoYJ.1s0
投下終了します。


128 : ◆A1Sj87dFpOM :2022/06/23(木) 23:32:06 ???0
投下します。


129 : ◆A1Sj87dFpOM :2022/06/23(木) 23:36:00 ???0
赤色のラナンキュラス、花言葉は『あなたは魅力に満ちている』



「動かないで」
決闘会場のどこかの夜の森の中、一人の少女がもう一人の少女の首筋に刃物を突き付けていた。
首筋に刃物を突き付けられた少女の名はブレイク・ベラドンナ、この殺し合いの参加者の一人である。

彼女はこの殺し合いに呼ばれる直前、避難中継地にてアトラスとマントルの市民の避難誘導を行っていたところ、
突如として強襲してきたシンダー・フォール及びニオポリタンと交戦し、シンダーの攻撃によって奈落の底に落ちようとしていたチームリーダー、
ルビー・ローズの救出を試みたものの、シンダーの妨害によって救出に使おうとしていた愛武器、ガムボール・シュラウドのリボンを切断され、
ルビーと共に奈落の底に落ちて行ったはずなのだ。

彼女の記憶はそこで途切れていた。気が付けばハ・デスと名乗る謎の存在によって殺し合いを強制され、
理解が追いつかぬまま会場に転送されることとなった。

会場に転送された直後、ブレイクがまず行ったのは支給品の確認であった。
自分がこの殺し合いに呼ばれたということは自分と一緒に落ちたリーダーのルビー・ローズと自分より前に落ちたチームメイトでありパートナーであるヤン・シャオロンもこの殺し合いに参加しているかもしれない。

愛用武器のガムボール・シュラウドはこの殺し合いに呼ばれる直前、シンダーの攻撃によって破壊されている。
だからまずするべきは武器の早急な確保であり、その後は彼女たちに危害が及ぶ前に一刻も早くルビー・ローズ及びヤン・シャオロンと合流しなければ、とブレイクは考えていた。

支給品を漁ってまず発見したのは刀身が血で染まった刀であった。
説明書には『屍山血河』と書かれており、恐らくそれがこの武器の名前であろうことを理解した。

愛用武器のガムボール・シュラウドと異なり、鎖鎌形態や銃形態への変形機能はなく、刀として振るうしか出来ないと思われたものの、
今は愛用武器と同じ感覚で振るえる武器の入手に感謝しつつ、試しに振るおうとした所で首筋に刃物を突き付けられ、今に至る。

ブレイクは首筋に刃物を突き付けられながらも今の状況を冷静に分析していた。

(いつの間に私の背後に!?支給品を確認する前に周囲を確認した際に人の気配はなかったはず……ファウナスである私の目を搔い潜って夜の闇の中を忍び寄れるはずは……)

そう、この少女、ブレイク・ベラドンナはファウナスであった。ファウナスとはブレイクの故郷であるレムナントにおける獣人である。

ファウナスは暗闇においても物を見ることが出来る暗視能力を備えており、
過去にレムナントにおいて行われたファウナス権利革命においてファウナスの軍勢と戦ったラグーン将軍という人物はファウナスの暗視能力を知らずに夜襲を仕掛け、
逆に返り討ちにあって捕えられてしまったという歴史があった。

だから通常の人間がファウナスであるブレイクの目を誤魔化して夜の闇の中を忍び寄ることは不可能に近いはずなのだ。

(でも現に背後を取られてしまった。後ろの奴は絶対に只者じゃない。正体は一体……)

そうこう考えている内にブレイクの背後の少女が次の言葉を発する。

「ゆっくりと武器を置いて。そしてそのまま両手をあげてゆっくりとこっちを向いて。」

兎に角今は後ろの言葉に従うしかない、と考えたブレイクは指示通りに地面に武器を置くと両手をあげ、ゆっくりと後ろを向き……

「えいっ、ぶすっ」
「っ!?」

その瞬間、首筋に突き立てられていた刃物が急に突き出され、ブレイクは死を覚悟し目を瞑る。

……がいくら待っても痛みがやってこないため、ブレイクが恐る恐る目を開けると……


130 : ◆A1Sj87dFpOM :2022/06/23(木) 23:39:37 ???0
「はい、お姉さんは一回死にました。次からはこうならないよう頑張りましょう。」

ブレイクの目の前にいたのは一人の少女であった。外見年齢はブレイクよりも幾分か下くらいであろうか。
薄い黄色いリボンを付けた鴉羽色の帽子を被り、黄色味がかった鮮やかな緑髪で上の服は黄色、下はラナンキュラスが描かれた緑色のスカートを履いており、
右手にはスティレットのような形状の短剣が握られていた。恐らく右手の短剣が自分の首筋に突き立てられた刃物の正体なのであろう。

少女は屈託のない笑顔を浮かべていた。その表情は相手を弄んでいるというよりもただ相手をからかって遊んでいるともとれるような表情であった。
その相手の少女の態度に少し苛立ったブレイクは少女に質問を投げかける。

「……一体どういうつもり?」
「えっ?どういうつもりってお姉さんの背後ががら空きだったからつい『無意識で』後ろをとっちゃった、みたいな感じ?」
「……ふざけないで。」

ブレイクは少女が自分のことを舐めているのではないかと感じた。さっき背後を取ったときだって殺そうと思えばいつでも殺せた。
なのにそれをしなかったということは「お前なんて殺そうと思えばいつでも殺せるぞ」と言っているようにも感じられたのだ。
だが少女はそんなブレイクの胸中を知ってか知らずか、ブレイクに次の質問を投げかける。

「そういえば気になっていたんだけど」
「話をはぐらかさないでくれる?」
「えー?そうは言っても気になるよぅ」
「……仕方がないわね。何?」

少女のマイペースな態度にブレイクは苛立ちを募らせるがその気持ちを一旦抑え、少女に質問を促すことにする。

「お姉さん、妖怪?」
「……は?」

だが少女の思いもかけない質問にブレイクは一瞬、思考が停止したのを感じた。
最初は何かの冗談かと思ったのだが目の前の少女の表情を見て冗談で言っているのではないと察したブレイクは少女に質問の意図を聞き返すことにする。

「……何でそう思うの?」
「私のお家はね、地霊殿っていう所なんだけどお姉ちゃんが家主をしていていっぱいペットがいるんだけど、
そのペットの中にお燐って子がいてその子は猫の妖怪なんだけど、お姉さんが頭の上にお燐と同じ猫耳を生やしているからひょっとしたらお姉さんもお燐と同じ猫の妖怪なのかなあ〜、なんて思って。」

ブレイクは彼女の家だという地霊殿なる建物も気になったがそれよりも少女が気になることを言っていたのでブレイクはさらに聞き返すことにする。

「猫の妖怪?その子はファウナスじゃないの?」
「え〜?違うよ?お燐は元々普通の猫だったんだけど怨霊とか色々食べて今のお姉さんのような人の姿になれるようになったんだって。お姉さんは違うの?」

意味が分からなかった。
猫が怨霊を食べるとか人の姿になれるとか姉がそれをペットとして飼っているとかブレイクには彼女の言っていることが本の中の世界の話にしか感じられなかったのだ。

それにブレイクにはもう一つ気になることがあった。少女の容姿は一見すると普通の人間の少女のそれなのだが『ある一点』だけが普通の人間とは決定的に異なっていたのだ。

彼女の左胸には紫色の球体が浮かんでおりその球体には閉じた瞳のような器官が付いており、その球体から伸びた管が彼女の体に直に繋がっていたのである。

普通の人間は勿論、ファウナスであっても有り得ないその特異な容姿と先ほどの話の内容から少女が自らと全く異なる存在なのではないか、とブレイクは考える。

「……あなた、何者?」
「え〜?『人に名前を聞くときはまず自分から名乗りなさい。』って教わらなかった?それにお姉さんが誰なのか気になるよぅ。」


131 : ◆A1Sj87dFpOM :2022/06/23(木) 23:41:44 ???0
彼女の言うことも一理ある、と考えたブレイクはまず自分から名乗ることにする。

「私の名はブレイク・ベラドンナ、ファウナスよ。」
「?ファウナスってなあに?妖怪と違うの?」
(……ファウナスを知らない?どういうこと?)

ブレイクは彼女がファウナスを知らないという事実がにわかには信じられなかった。

ファウナスはブレイクの住む世界であるレムナントにおいては人類と並んで一般的に存在している種族である。
レムナントにおいてはファウナスの存在は誰でも知っている一般常識の範疇であり、それを知らないというのはレムナントの住民であるなら普通なら有り得ないことであった。

ブレイクは決闘会場に転送される前のハ・デスの言葉を思い出す。

「様々な世界から参加者を呼び寄せている」ハ・デスは確かにそう言った。

であるなら目の前の少女は自分とは全く異なる世界から呼び寄せられ、この殺し合いに参加させられているのではないか。
そう確信したブレイクはそれを確認するため、彼女の名を訪ねることにする。

「約束通り名乗ったわよ。次はあなたの番よ。」
「うん、そうだね。じゃあ自己紹介するね。私の名前は古明地こいし、種族はさとり妖怪だよ。」
「さとり妖怪……」

妖怪さとり、本を読むのが趣味で色々な本を読んできたブレイクはその名前を見たことがあった。

その妖怪は人の心を読み、隙を見せれば襲いかかるという言い伝えがあった。だがさとり妖怪はレムナントにおいては空想上の存在であり実在したという話は聞いたことが無かった。

ブレイクは確信する。やはり彼女はハ・デスの言う通りレムナントとは違う世界から連れてこられた参加者だということを。

それならば彼女がブレイクのことを妖怪だと勘違いしたことも地霊殿などブレイクの知らない地名を出してきたことも全て説明がつく。

そう思っていた所こいしはブレイクに唐突に謎かけを出してきた。

「さてお姉さんに問題です。私は何でお姉さんを殺さなかったのでしょうか?」
「……それ問題のつもり?というよりさとり妖怪ならわざわざ聞かなくても私の心を読めばいいでしょう?」

だがブレイクの挑発にこいしは困った顔をしながらこう返答してきた。

「私、心読めないんだよね。」
「……は?」

一瞬、ブレイクはこの少女は何を言っているんだと思った。さとり妖怪なのに心を読めない?種族としての特性を持たないとかそう言われても信じられるわけがないだろうとブレイクは思った。

「嘘言わないで。そう言われて馬鹿正直に信じるわけないでしょう。」
「う〜ん、『読めない』という言い方には語弊があったかな。実際は読めないんじゃなくて『読む能力を封印した』というのが正しいんだよね。」
「封印?どういうこと?」

わざわざ種族としてのアイディンティティを封印?少女の言葉の意図が分からなかったブレイクは更に踏み込んで質問することにする。

「私のお姉ちゃんはね、私と同じさとり妖怪で心を読む能力はちゃんと持っているんだけど
そのせいで他の妖怪や怨霊たちから嫌われちゃってて私はそれを傍でずっと見てきたからお姉ちゃんみたいに皆に嫌われるのが嫌で能力を封印して使えなくしちゃったんだよね。」
「……」

ブレイクは彼女の言うことも一理ある、と思った。そりゃあ、心を読まれれば誰だって気持ちよくはないし嫌な気持ちになるだろう。それは人間も妖怪も怨霊も変わらないはずだ。

それに彼女の左胸の球体の目も閉じられていて開く様子はない。恐らくこれがさとり妖怪の相手の心を読む器官なのだろうがそれが閉じられているということはブレイクは彼女の言うことが本当のことなのではと思った。


132 : ◆A1Sj87dFpOM :2022/06/23(木) 23:43:46 ???0
ブレイクは彼女の踏み込んではいけない領域に踏み込んだ気がして少し自分が恥ずかしくなってしまっていた。

「……ごめんなさい、聞かれたくないことを聞いたかしら。」
「いいの。能力を封印したことは後悔はしていないから。それでどうして私がお姉さんを殺さなかったと思う?」

今の話を聞いてブレイクは彼女の性格が何となく分かったような気がした。

この子は人懐っこいのだ。他者なんてどうでもいいと思うような性格なら『嫌われたくないから』という理由で能力を封印したりなんてしない。

それに彼女の笑顔も打算とかそういったもののない純粋無垢な笑みであるようにも感じられた。

それらを踏まえた上でブレイクは一つの答えを出す。

「私と遊びたかったから?」
「うーん、近いけどちょっと違うかな。」

そしてこいしは一呼吸置いた後、

「私ね、命蓮寺の在家信者なの。」
「……命蓮寺?」

ブレイクは宗教には興味はなかったが恐らく彼女の言う『命蓮寺』とは彼女の世界の宗教団体なのだろうと考える。

「聖が私によく言ってたんだよ。あっ、聖っていうのは命蓮寺の住職さんなんだけどね、
殺してはいけません、盗んではいけません、不倫をしてはいけません、嘘をついちゃいけません、酒は飲んじゃいけませんって、まあこれは命蓮寺の六波羅蜜の戒律からの引用なんだけどね。」

酒や不倫とか子供になんてことを教えているんだ、と思いつつも残り三つに関してはブレイクも共感出来るところがあった。

「殺してはいけない」「盗んではいけない」「嘘をついてはいけない」これは皆誰もがいけないことだと分かっていることではあるが実際にそれらをしないようにすることは難しいことだということはブレイクは痛いほど痛感していた。

アトラスに出発する前、自らに執着し、アーガスにまで追跡してきて戦いを挑んできたアダム・トーラスを彼女はパートナーのヤン・シャオロンと共に自らの手で止めを刺す形で殺した。
そもそもアトラスに行く方法だってアーガスのアトラス軍基地から輸送機を盗んで密航するというやり方だったのだ。
そしてアトラスに着いた後、アイアンウッド将軍にレリックのことを聞かれた際、ルビーは「知恵のレリックの質問は全部使い切った。」と噓をついた。

後お酒に関してもルビーの叔父のクロウ・ブランウェンはよく酒浸りになっているからその点に関しても自分たちは守れてないな、とブレイクは思った。

いけないことだとは分かっていた。でもそうするしかなかった。それ以外に他に方法が思いつかなかったのだ。

実際それらをしなければブレイクは逆にアダムに殺されていたかもしれないし、アーガスで立ち往生したままだったかもしれない。
嘘をついたのだってアイアンウッド将軍を全面的に信用できなかった以上、レリックを使わせるのは危険だとルビーが判断したからなのだ。

今回の殺し合いだってそうだ。参加者の中にだって他の参加者を容赦なく殺しにかかる危険な存在だっているかもしれないし、時には他の参加者の支給品を手に入れないと殺し合いを乗り切ることは出来ないかもしれない。

そう思ったブレイクはこいしにかつて自分がルビーに出会ったばかりのころに掛けた言葉を送る。

「……残念だけど、現実は決しておとぎ話のようにはいかない。」
「?どゆこと?」

こいしが不思議そうに聞いてくるのでブレイクは更に言葉を続ける。


133 : ◆A1Sj87dFpOM :2022/06/23(木) 23:46:25 ???0
「私だって危機を乗り切るために人は殺したし、盗みだってしてきた。嘘をついたこともあった。
でもそうしなければ危機を乗り切ることは出来なかった。今回の殺し合いだってそう、殺したくないといくら主張した所で、相手にとってはそんなこと知ったことじゃあない。
時には他の参加者の支給品を手に入れないといけない時もあるかもしれない。分かる?殺し合いは綺麗事を並べて生き残れるようなそんな甘いものじゃないの。それでもあなたは教えを破りたくないなんてそんな甘いことを言い続けるの?」
「うん、だって……」

そしてこいしは一呼吸置いた後、

「大好きな聖のこと、裏切れないもん。」
「……」

そう言ったこいしの表情は笑顔でありながらもどこか寂しげで、ブレイクはそれ以上何も言えなくなってしまった。

「あっ、大好きと言っても勿論お姉ちゃんが一番だよ。でも聖ってすごいんだよ。
聖はよく「不当に差別されている妖怪を救いたい」「人も妖怪も神も仏もみんな同じ」って口癖のように言ってて、言葉だけじゃなくて実際に不当に差別されたり迫害されたりしている妖怪を救うために活動していて、
そんなあの人の人柄に惹かれて入門を希望する妖怪も多いんだって。私は聖に誘われて入門したんだけど私自身もそんな聖の人柄に惹かれて入門を決意した口かな〜、なんて。」
「……」

ブレイクはこいしの言葉を聞きながらかつて自身が所属していた組織のことを思い出していた。

ホワイト・ファング―――元々は差別されていたファウナスに人類と同じ公平な権利を求めるために活動していた平和的な団体であったのだが、
父、ギラ・ベラドンナが指導者の地位を退き、新たにシエナ・カーンという女性が指導者の地位についてからはファウナスを拒絶した店舗への放火やファウナスを働かせている組織への窃盗や破壊工作といった過激なテロ行為を行うようになっていき、
更にアダムがクーデターを起こして新たな指導者の地位についてからは、ファウナスと人間の地位を逆転させ、人間をファウナスの奴隷にする野望のために行動し、そのためにローマンやシンダーといったセイラム陣営の者たちと手を組むようなテロ組織へと成り下がってしまった。

ブレイクは幼少期からホワイト・ファングの団員であったのだが過激なやり方を取るようになったホワイト・ファングの変わりように耐えられなくなり、組織を抜けた過去があった。

現在では指導者に復帰したギラの手によってホワイト・ファングは再建され、アダムも自らの手で引導を渡したのであるが、彼女はこいしから聖の話を聞くうち、思わず次の言葉が漏れ出てしまっていた。

「そう、すごいのね。その『聖白蓮』って人は。」
「えへへ、そうでしょ〜。」

そしてブレイクは物悲しげな表情になると

「もし……『聖白蓮』さんのような人がホワイト・ファングの指導者になっていたらホワイト・ファングもああはならなかったかもしれない。
過激なテロ行為に手を染めることも、シエナやアダムといった過激派を台頭させることも、ローマンやシンダーと手を組むこともせず、
ただ純粋に人類とファウナスの共存……『人間もファウナスも平等に生きられる世界』を作るために平和的に力を尽くせるような『穢れなき純潔の牙』の名を体現した組織になっていたかもしれない。」
「?ホワイト・ファングって何?お姉さんと何か関係があるの?」

ブレイクはこいしに自らの過去とレムナントにおけるファウナスの実状を話した。


134 : ◆A1Sj87dFpOM :2022/06/23(木) 23:49:05 ???0
レムナントにおいてファウナスが人類から差別され続けてきたこと。その現状を変えようとファウナスたちの手でホワイト・ファングという組織が作られ、自身も幼少期から組織に参加し活動し続けたこと。
それでも差別はなくならず、父が指導者の地位を退いてシエナという女性が指導者になってから過激なテロ行為を行う組織になっていったこと。組織の変貌に耐えられず組織を抜けたこと。
アダムがクーデターを起こして組織を乗っ取り、ファウナスが人類を支配下に置く目標を掲げ、そのためにローマンやシンダーといったセイラムの息がかかった者たちと手を組んだことも。

ブレイクはこいしにそれらのことを包み隠さず全て話した。

「そっか……お姉さんも大変だったんだね……」
「ごめんなさい、私の身の上話に付き合ってくれて。」

こいしは悲しげな表情をしていたがやがて元の無垢な笑顔に戻ると、

「うん、いいよ。今の話でお姉さんのこと、何となく分かった気がしたから。」
「こいしちゃん……」

ブレイクはこいしが自身の身の上話をまるで自分のことのように悲しむ姿を見て思ったことがあった。

この子は優しいんだ、と。相手が心を覗かれることを嫌だと分かっているから自ら能力を封印し、
殺しや盗みをしないというお寺の教えを守り、相手の境遇をまるで自分のことのように悲しむ、そんな相手の気持ちになって考えられるような子なんだな、と。

彼女を放っておけない、と感じたブレイクはこいしにある一つの提案をする。

「こいしちゃん、一つ提案なんだけど……」
「?なあに?」

そしてブレイクは意を決したような面持ちになると、

「私はあなたについていくことにするわ。」
「え!?いいの!?」

こいしにとってはブレイクの提案は意外だったようでビックリしたような表情を浮かべていた。

「この殺し合いにどんな参加者がいるかは分からない。中には他の参加者を襲って殺すような危険な参加者が何人も参加しているかもしれない。
そんな参加者と戦うためにも一人よりも二人のほうが身を守れる確率は高くなる。そうでしょ?」
「でも、会ったばかりの私のためにそこまでしてくれるなんて……」

ブレイクはルビーと出会ったばかりの頃、彼女が自身に言った言葉を思い出していた。

『子供の頃、本のヒーローみたいになりたいって思っていた。正義のために戦う、たくさんの守るべき人達を助けたいの』

ブレイクも彼女の言葉を実践してみたいと思ったのだ。ブレイクも最初の頃はルビーのことを「年下の変な子」としか思っていなかった。

だけどどんな困難を前にしても立ち止まらずに前に進み続ける彼女を見て、いつしか彼女に対して尊敬の気持ちを抱くようになったのだ。

もし仮に自分のために目の前の少女を見捨てるようなことをしたら、尊敬するリーダーに顔向けできないな、とそう思うようになってしまったのだ。

「まずは殺し合いに乗っていない参加者を見つけて合流しましょう。
私のチームメンバーにルビー・ローズとヤン・シャオロンって子がいるんだけど彼女たちも多分この殺し合いに参加させられていると思うし私と同じように殺し合いに乗っていない参加者を探しているはず。
まず彼女たちと合流して他の参加者と結束して主催のハ・デスを倒して元の世界に帰りましょう。」
「えっ……私たちでハ・デスを倒して殺し合いを止めるなんてそんなこと出来るの……?」

不安そうなこいしに対し、ただ一言、ブレイクはかつてルビーに言われた言葉をかけた。

「……だから私たちがいる。世界をよくするため。」


135 : ◆A1Sj87dFpOM :2022/06/23(木) 23:51:24 ???0
【ブレイク・ベラドンナ@RWBY】
[状態]:健康
[装備]:屍山血河@ELDEN RING
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:ルビー、ヤンを探す。
2:他にも殺し合いに乗っていない参加者がいたら合流する。
3:殺し合いに乗っているかもしれない参加者を警戒する。
[備考]
※Volume8終盤、次元の狭間に落下して以降からの参戦です。


【古明地こいし@東方Project 】
[状態]:健康 
[装備]:慈悲の短剣@ELDEN RING
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺しはしたくない。
1:ブレイク・ベラドンナについていく。
2:殺し合いにはのらない。
3:ルビー・ローズとヤン・シャオロンを見つけるのを手伝いたい。
[備考]
※求聞口授以降、命蓮寺の在家信者になって以降からの参戦です。

『支給品紹介』
【屍山血河@ELDEN RING】
ブレイク・ベラドンナに支給。後半に行くことが出来るマップのとある場所に出現する敵対NPCを倒すと入手できる武器。
筋力値、技量値、神秘値が必要な数値に達していなければ真価を発揮することは出来ないが、このロワではその制約は取り払われている。

【慈悲の短剣@ELDEN RING】
古明地こいしに支給。序盤で入手可能な武器だが同ゲームで入手可能な武器の中では最も高い致命補正を誇る致命の一撃に秀でた短剣。
筋力値、技量値が必要な数値に達していなければ真価を発揮することは出来ないが、このロワではその制約は取り払われている。


136 : ◆A1Sj87dFpOM :2022/06/23(木) 23:57:03 ???0
投下終了です。
作者名は書き込めたのですがキャップのせいで相変わらずタイトルを書き込めないので
ここにタイトルを書きますが、タイトルは『Black and Green Trailer』です。


137 : ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/24(金) 00:00:39 P9pQRyFM0
投下させていただきます。


138 : ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/24(金) 00:02:15 P9pQRyFM0
「あ〜あ……なんか変な事に巻き込まれちゃったなぁ……」

薄暗い森の中をとぼとぼと歩きながら、
セーラー服を着用し、長い黒髪をポニーテールでまとめた褐色の肌の少女……『カプセル怪獣 ミクラス』の魂を宿した怪獣娘・牛丸ミクは、ポツリと呟いた。

「ドッキリとかだったらすぐに出てきて欲しいなぁ……」

ある種の希望を込めてミクは周囲を見渡すが、薄暗い森のどこにも『ドッキリ成功』の看板を持ったテレビスタッフやカメラマンの気配は無い。
そしてミクの脳内で、先ほど目の前で起こった自分と同い年程の少年の首から上が吹き飛ぶ光景がフラッシュバックする。
人間の頭が爆弾で吹き飛ぶ様子など初めて見たミクだったが、あれは決してトリック等ではない。
何より、自身の首に巻かれた金属製の首輪の感触は、間違いなく本物だった。

「はぁ〜………」

ミクは健康優良児な彼女らしかぬ深いため息を漏らした。
その時………

クゥ〜

「………あ」

……空気を読まない彼女の腹の虫の音が薄暗い森にこだました。

「無理に頭使ったから、お腹空いちゃったや」

言い訳染みた独り言を漏らしつつ、ミクは適当な草原に腰を下ろして、自身のデイパックから食料を取り出した。
何の変哲も無い掌大のロールパンだ。

(………せめて、これが牛丼かクレープだったらなぁ)

心の中で少し文句を言いつつ、ミクはロールパンをモソモソと咀嚼したのだった。

「……水、飲むか?」
「………えっ?」

森の中で静かに腹ごしらえをしていたミクに、何者かが声をかけてきた。
ミクよりも年上の男性の声だった。
ミクが声のした方に顔を向けると……

……森の中の一際大きな木に、一人の人物が草原に腰を下ろしてロールパンをモソモソと食べているミクを見下ろすような形で立っていたのだ。

「えっ?ええ?い、いつの間に?」

突然自分以外の参加者と遭遇し、ミクの頭に大量の?が浮かんだ。
呆然とするミクを尻目に、謎の人影は木から飛び降りてミクの目の前に着地する。

歳はだいたい20代くらい。
迷彩柄のベストと腰巻きを着用し、腰にはまるでコンドルの顔を模したベルトを、左上腕には同じくコンドルの顔を象った腕輪をそれぞれ装着した、ウェーブがかった髪のアジア系と思われるミクよりも少し年上の青年だ。

「腹の虫鳴かしてたの、お前か?」
「い、いや、あのその……」

しどろもどろなミクの様子を気にする事なく、青年はミクへと近づいていく。

「……どうした?お前、元気無い!」
「!?」

青年はミクの細い体を掴むと、まるで幼い子供に『高い高い』をするように軽々と持ち上げた。

「外出る!子供、太陽の下でたくさん遊ぶ!」

困惑しているミクを尻目に、青年は屈託の無い笑みを浮かべていた。

「オレ、アマゾン!よろしく!」
「アマ・・・ゾン・・・?」

『アマゾン』と名乗る目の前の青年に、ミクは困惑の表情を浮かべた………
だが、ミクは自分が年上の男性に小さな幼女のように『高い高い』をされている事に気付き、顔を赤くした。

「ちょ!下ろして!下ろしてってば!!」
「?どうかしたのか?」
「い、良いから早く!」

アマゾンの高い高いから解放されたミクは、顔を真っ赤に染めながら荒い息を漏らしたのだった。

「?」

アマゾンはミクの行動の意味が理解できないらしく、首をかしげるばかりであった。

「あぁもう………何なのさ一体?」
「オレ、アマゾン」
「名前はもう聞いたよ」
「お前は?」

いささかテンパり気味なミクに対して、アマゾンはマイペースな態度を一切崩さず、ミクの名前を聞いてきた。

「お前、名前は?」
「……ミク、牛丸ミク。友達からは『ミクラス』って呼ばれてる」
「ミクラス……うん。いい名前」
「あ、ありがとう……じゃ、なくって!」

ミクは普段、どちらかと言えば周りを振り回すタイプなのだが、自分以上にマイペースなアマゾンには逆に振り回されるばかりのようだ。

♪︎〜♪︎〜

その時、どこからともなく笛の音色が聞こえてきた。


139 : 戦場で生まれる絆/燃える憎しみ ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/24(金) 00:02:52 P9pQRyFM0
「………えっ?何この音?」

突然森の中に響き渡る笛にミクは首を傾げる。

「!」

一方、アマゾンは顔を険しくさせながらミクを庇うように森のある一点を睨み付けた。

「うぅ〜!」
「えっ?あの……ど、どうしたのさ?」

先ほどまでの無邪気な雰囲気から一転し、歯茎を剥き出しながら唸り声を上げるアマゾンの姿にミクは更に混乱する。

しばらくすると、突然森の木々が地響きと共に薙ぎ倒され………

「グオオオオオオ!!」

……黒と緑で彩られた『怪獣』が現れたのだ!

「かかかかか怪獣っ!?」
「ワーッ!」

突然出現した『怪獣』に、ミクは仮にも『怪獣娘』だというのに唖然となり、アマゾンは前屈みの姿勢で威嚇を行った。

♪︎〜♪︎〜
「グオオオオオオ!!」

『怪獣』は軽快な笛の音色に合わせるように森の木々を薙ぎ倒していき、
そのドリルのような尻尾をミクとアマゾンに振り落とした。

「ワァァァ!!」
「う、うわぁっ!?」

『怪獣』のドリルのような尻尾が振り落とされる直前、アマゾンはミクの体を抱えて『怪獣』の尻尾から逃れた。

「ウゥゥ〜!!」

アマゾンは呆然とするミクを近くの木陰に下ろすと、自身の何倍も巨大な『怪獣』に向けて威嚇の唸り声を上げる。

「ち、ちょっと危ないよ!早く逃げ………」
「ワァァァ!!」

ミクの叫びが届くよりも早く、目の前の『怪獣』の鳴き声に勝るとも劣らないアマゾンの雄叫びが森の中に木霊する。
そして……アマゾンは両腕を『胸の前で開いて閉じる』という動作を繰り返しながら叫んだ。

「アァ゙〜〜〜ッマァ゙〜〜〜ッゾォオオオオオンッ!!!」
アーマーゾーン!
アーマーゾーン!!
アーマーゾーン………

アマゾンの叫びが森の中に響き渡ると同時に、アマゾンの体は目映い白い光に包み込まれたのだ。

「うわぁっ!?」
「グオオオオオオ!?」

アマゾンの体を包み込む白い光に、ミクと『怪獣』は思わず目を覆う。
そして、光が晴れると………

「ケケェー!!」

………そこには、緑地に赤いマダラ模様の体、首には白いマフラーを巻き、左上腕にコンドルの顔を模した腕輪を着けた『人型のトカゲ』のような姿をした怪人が、ミクを守るように『怪獣』と向かい合っていた。
これこそ、アマゾンこと山本大介のもう一つの姿……人類の『自由』と『平和』を守る仮面ライダーの第6号『仮面ライダーアマゾン』である!!

「えっ?ええ!?あ、アマゾン!?どうして?どういうこと!?」
「グゥ〜!?」

突然のアマゾンの変身に、ミクは混乱し、『怪獣』もまた理解が追い付かない様子でアマゾンを見下ろしていた。

♪︎〜♪︎〜
「!グオオオオオオ!!」

再び笛の音色が響き渡り、『怪獣』はその太い脚を上げてアマゾンを踏み潰さんとする。

「ケケェー!!」

だがアマゾンは『怪獣』よりも一瞬速く動きだし、『怪獣』の15m近い巨体をジャガーが木を昇るように走り回る。

「ジャガーショック!!」

『怪獣』の頭部に登ったアマゾンは、技の名前を叫びながら『怪獣』に噛み付いた。

「グオオオオオオ!?グオオオオオオ!?」
「ケケェー!!」

アマゾンに頭部を噛まれ、『怪獣』はアマゾンを振り落とそうと暴れまわるが、
アマゾンはピラニアかスッポンのように『怪獣』の頭に噛み付いたまま離れない。
それどころか、『怪獣』の頭に噛み付いたまま『爪による引っ掻き攻撃』まで行っていった。


140 : 戦場で生まれる絆/燃える憎しみ ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/24(金) 00:03:19 P9pQRyFM0
「…………」

アマゾンによって木陰に避難していたミクは、変身したアマゾンが自身よりも巨大な怪獣と戦っている姿を呆然と眺めていたが……

「……って!ぼーっと見てる場合じゃないよ!!」

……自分もアマゾンの援護をしようと、自身のデイパックを漁って使える支給品がないか探し始める。

「………あっ!」

すると、デイパックの中からミクにとって……いや、『怪獣娘にとって』、とても馴染み深いアイテムが出てきたのだ。

「!」

ミクはすかさずそのアイテム……ソウルライザーを操作した。

「ソウルライド!ミクラス!!」

次の瞬間、ミクラスの体は目映い光に包まれ、その体が少しずつ変化していく……そして光が晴れると………

「イェイ!」

褐色の肌に露出の多いネイティブアメリカンのような姿をした怪獣娘『ミクラス』へと変身したのだ!

「……うおりやあああああっ!!」

変身完了したミクラスは、そのまま『怪獣』の金属質な脚に拳を叩き込んだ。

「グオオオオオオ!!??」

ミクラスに脚を殴られ、『怪獣』はその体勢を大きく崩してしまった。

「……ケケェー!!アマゾンキーック!!」
「グオオオオオオ!!??」

『怪獣』が体勢を崩すと同時に、アマゾンはコンドルのように飛び上がってキックを放つ。
すると『怪獣』は地響きをたてながら森に倒れこんだのだ。

「ケケェー!ケケェー!!」

アマゾンは怪獣娘姿のミクラスと並び立ち、両腕を振るいながら威嚇の叫びを上げた。

「や、やった……のかな?」

ミクラスは地面に倒れこんだ『怪獣』を不安げに眺める……すると

「………グオオオオオオ!」

……『怪獣』はすぐに起き上がってアマゾンとミクラスに向けて自身の両腕を向けた。

「くっ!しぶといなぁもう!」
「ケケェー!!」

ミクラスとアマゾンは未だにやる気満々な『怪獣』に向かい合う。
まさに一触即発………だが。

♪︎〜♪︎〜
「………グオオオオオオ!」

再び笛の音色が森に響き渡ると、『怪獣』はミクラスとアマゾンに背を向ける。

「………あれ?」
「………ケケェ?」

突然の事に呆然となるミクラスとアマゾンを尻目に、『怪獣』はその場から去っていったのだった。

『………』

『怪獣』の姿が見えなくなると、ミクラスとアマゾンは変身を解除したのだった。

「なんかよく分かんないけど……助かったぁ〜」

変身を解除したミクラス……ミクは深いため息を漏らしながらその場に座り込んだ。

「ミクラス」
「……ん?何?」

アマゾンに話しかけられ、ミクはアマゾンの方に顔を向ける。
アマゾンは座り込んだままのミクと視線を合わせるように立ち膝の姿勢となり……
両手を組んで不思議な形を作った。
まるで、手話か何かのサインのようだった。

「えっ……何それ?」

アマゾンの作ったサインの意味が分からず、ミクは首を傾げるが、アマゾンはすぐにそのサインの意味を答えた。

「これ、『トモダチ』という意味。ミクラス、さっき俺の事、助けてくれた。ミクラス、俺の大事な『トモダチ』」
「………」

アマゾンからいきなり『大事なトモダチ』と言われ、ミクは面食らってしまった。

「えぇっと……」

だが、ミクはすぐに気を取り直してアマゾンのトモダチサインを真似してみた。

「……これで良い?」
「うん、ミクラスとアマゾン、トモダチ!」
「……うん、トモダチ!」


141 : 戦場で生まれる絆/燃える憎しみ ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/24(金) 00:03:43 P9pQRyFM0
ミクとアマゾンはどちらともなく微笑みを浮かべた。

クゥ〜
グゥ〜
『あ』

その時、ミクの腹の虫とアマゾンの腹の虫が同時に鳴き声をあげた。

『………ハハハハハハ!!』

二人同時に腹の虫を響かせ、ミクとアマゾンは大笑いした。
その姿はまるで、十数年以上の付き合いがある『親友』のようだった。



【山本大介(仮面ライダーアマゾン)@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:健康、空腹
[装備]:ギギの腕輪@仮面ライダーSPIRITS、コンドラー@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本:トモダチを守る
1:ミクラス、オレのトモダチ!
2:他のライダーがいるなら合流する
[備考]
沖縄での再生ガランダー帝国戦終了後からの参戦。
牛丸ミクを『トモダチ』と認定しました。
ギギの腕輪は体と融合しているので、支給品ではありません。

【牛丸ミク(ミクラス)@怪獣娘〜ウルトラ怪獣擬人化計画〜】
[状態]:健康、空腹
[装備]:ソウルライザー@怪獣娘〜ウルトラ怪獣擬人化計画〜
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本:人殺しはしたくない
1:友達できた!
2:アマゾンって、怪獣娘の仲間?
3:知り合いがいるなら合流する
[備考]
アニメ第二期でシャドウガッツに襲われる前から参戦。
山本大介(アマゾン)とを『怪獣娘の亜種』ではないか?と考えています。



☆☆☆

さて、そこから少し離れた場所で………

「……まさか、ジュウレンジャーともドーラモンスターとも違う戦士がいるとはな」
「グオオ〜」

先ほどミクとアマゾンを襲った『怪獣』………『守護獣ドラゴンシーザー』の前に、緑色の民族衣裳のような服を着た20代後半くらいの男性が立っていた。

彼こそは、先ほどから笛の音色でドラゴンシーザーを操っていた人物……『ドラゴンレンジャー・ブライ』である。

「グオオオオオオッ!!」
「焦るな。どうせこの場所にいる奴は全員殺すんだ。1人や二人、後回しにしても何の問題もない」
「グルルル……」

ブライに諌められ、ドラゴンシーザーはまだ少し不満があるかのように唸り声をあげる。
そんなドラゴンシーザーを横目に、ブライは手に持つ笛と短剣が一体化したような武器……『獣奏剣』を握りしめる。

「待っていろよゲキ………俺は絶対に勝ち残り、新たな力を得てお前を叩き潰してやるからな!」

ブライの目には、憎しみの炎が宿っていた。
自分の実の弟にして、地球滅亡を企む『魔女バンドーラ一味』と戦っている『恐竜戦隊ジュウレンジャー』のリーダーであるヤマト族プリンス『ティラノレンジャー・ゲキ』への激しい憎しみの炎が。

『本来の歴史』において、ブライは戦いの末にゲキ達ジュウレンジャーと和解し、同時に自分の余命が残り僅かである事を知る筈だった。

だが……この場にいるブライは『ゲキと和解する前の時間軸』より連れてこられた。
当然ゲキへの憎しみは消えておらず、自分の余命が残り僅かである事も知らない。

ブライは『ゲキへの復讐』と『世界の王となる』為に『決闘』に乗る事を決めたのだ。

♪︎〜♪︎〜

ブライは獣奏剣を吹き鳴らし、ドラゴンシーザーへと指示を送った。

「グオオオオオオッ!!」
「そうだ行け!暴れろ!他の参加者達を嬲り殺しにしてやるんだ!!」


142 : 戦場で生まれる絆/燃える憎しみ ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/24(金) 00:04:12 P9pQRyFM0
そのブライの姿は、瀕死の少年を救う為に自身を犠牲にした『気高い戦士』と同一人物とは思えない………憎しみに囚われた悪魔のようだった。



【ドラゴンレンジャー・ブライ@恐竜戦隊ジュウレンジャー】
[状態]:健康、高揚、余命30時間
[装備]:獣奏剣@恐竜戦隊ジュウレンジャー、守護獣ドラゴンシーザー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本:優勝し、新たな力を得てゲキに復讐する
1:ドラゴンシーザーを使って参加者達を嬲り殺しにする
[余談]
ジュウレンジャー第22話でのティラノレンジャー・ゲキとの和解前からの参戦。
自分の余命が残り僅かである事を知りません。
制限により、ドラゴンシーザーの大きさは15mに縮められています、

【支給品紹介】
【ギギの腕輪@仮面ライダーSPIRITS】
アマゾンこと山本大介の左上腕に装着されている腕輪。
厳密には支給品ではないが、ここで紹介する。
古代インカに伝わる秘宝で、仮面ライダーアマゾンのエネルギー源。
対となる『ガガの腕輪』と一つになる事で超エネルギーを生み出す。
アマゾンの体と融合しており、これが外れるとアマゾンは死ぬ事になる。

【コンドラー@仮面ライダーSPIRITS】
アマゾンこと山本大介の腰に装着されているベルト。
他の仮面ライダーのベルトと違い、変身アイテムではない。
必要に応じて万能ロープやノコギリに変形できるほかに薬草を調合する際の薬研としても使用されるなど、サバイバルのための小道具的装備品。

【ソウルライザー@怪獣娘〜ウルトラ怪獣擬人化計画〜】
牛丸ミクに支給。
国際怪獣救助指導組織『GIRLS』に所属する怪獣娘が所持するスマホ型変身アイテム。怪獣だった時の本能「カイジューソウル」を実感することで変身できる。変身の掛け声は「ソウルライド」。なお、紛失した際の再発行には24,800円の手数料がかかる。
(以上、ウィキペディアより抜粋)

【獣奏剣(じゅうそうけん)@恐竜戦隊ジュウレンジャー】
ドラゴンレンジャー・ブライに本人支給。
ドラゴンレンジャーの個人武器である短剣。
左腰のホルダーにさして携行する。
刃の部分からは、レンジャーガンと同等の威力を持つ破壊ビームを発射する。
横笛の機能も持ち、ドラゴンアーマーのバリア機能を発動させ、守護獣ドラゴンシーザーの召喚・指示にも用いられる。
(以上、Wikipediaより抜粋)

【守護獣ドラゴンシーザー@恐竜戦隊ジュウレンジャー】
ドラゴンレンジャー・ブライの守護獣。
正確には支給品ではないが、ここで紹介する。
『守護獣』とは恐竜戦隊ジュウレンジャーにおける巨大メカ・巨大ロボット的な存在であり、恐竜時代に繁栄した古代人類の守り神の事なのだが、ドラゴンシーザーの外見は『恐竜』というよりは『ゴジラ』等の怪獣に近いのが特徴。
獣奏剣の奏でる笛の音色によって召喚・使役される。
主な武器は指先から放つ超高熱光弾『ドラゴンハーレー』、ドリル型尻尾『スピニングシーザー』等。
なお、本来のドラゴンシーザーは全長62m・全高38m・重量170tなのだが、今ロワにおいては制限により、全長15mサイズに縮められている。


143 : 戦場で生まれる絆/燃える憎しみ ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/24(金) 00:04:45 P9pQRyFM0
投下終了します


144 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/24(金) 00:51:56 bxnof5Do0
投下します


145 : 不器用なKindness ◆QUsdteUiKY :2022/06/24(金) 00:52:54 bxnof5Do0
 今の世の中にはLGBTという言葉がある。
 レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー――これら性的少数者(セクシャルマイノリティ)の頭文字をとって組み合わせることで生まれた言葉だ。
 その文字通り大まかにこれら4つの分類の人々を指す言葉なのだが、実はそれ以外にも性的少数者は様々なタイプが存在する。

 男女問わずあらゆる人々に恋をするパンセクシャル。
 男女どちらの性別にも属さないXジェンダー。
 他人に性的欲求を全く抱くことがないアセクシャル。
 この世には様々な属性か存在する。

 例えばトランスジェンダーにしてもMTFとFTMがあったり。肉体的に男性で精神的に女性でも、恋愛対象は女性という存在も居たり。

 様々な性の多様性が認められているのが、この現代社会だ。
 以前からLGBTという言葉は存在していたが、これほど浸透したのは最近のことだろう。結果的にLGBT団体が幅を利かせすぎて色々と面倒なことになっているというのはなんとも本末転倒な気もするが……。

 しかしそういう世間の動きもあって、自分の性自認を受け入れられた者も中には多い。これは男の娘という属性がオタク界隈のみならず、一般人まで浸透したことも大きいのだろうが……結果的に男の娘という単語自体が男という性別の押しつけのようなものでありXジェンダーはそれで苦労することもあるので難儀なものだ。

 そしてこのLGBTという言葉、今ではここまでメジャーになったが医療に携わる者ならば随分と前から認知している。それこそ常識レベルだろう。
 LGBTは病気――というにはあまりにもデリケートな問題だ。性的嗜好を病気と言い切ることは難しい。
 だがホルモン投与やメンタルのケア。そして精神状態を観察した上でのLGBT認定などを担うのは医者の仕事となっている。もっともこれらの処置を行うのは基本的にその分野に特化した専門医なのだが、それでもこのデリケートな問題は医者の間で有名だろう。

 だから医者の花家大我は目の前の少女に扮した彼が、そういう存在だということはすぐに理解出来た。
 百雲龍之助。もぐもと書けば可愛らしい響きだが、その名前はあまりにも男らしく、力強さが感じられる。
 しかしその顔は少女そのもの。だが肉体的には男性で、見る者が見ればすぐにわかるかもしれない。裸を見たら素人でも男だとわかるだろう。そして声は女性にしては低めだ。見た目とのギャップがあるようにも感じる。
 一人称は「ぼく」という中性的なもの。この点からトランスジェンダーというよりもXジェンダーである可能性が浮上してくる。

 そして情報交換で様々なことを聞いた結果、彼はトランスジェンダーではなくXジェンダーだと大我は判断した。
 服が破けて胸がないこと。特にホルモン投与をしている形跡が何も無い体つきということを事前に知っていたのも大きいだろう。


 ――彼らの出会いはゴブリン突撃部隊というゴブリンの群れにもぐもが襲われたことがきっかけだ。


146 : 不器用なKindness ◆QUsdteUiKY :2022/06/24(金) 00:53:34 bxnof5Do0

 〇

 ――時は少し遡る。

「どうやらNPCにも性欲ってもんがあるみたいだな。――第弐戦術」

 少女が何匹ものゴブリンに服を破かれ、性的に襲われそうになっている。だから医者である大我は仮面ライダースナイプに変身し、当然のように助けた。ゴブリンの群れは瞬く間に壊滅し、難なくミッションクリアした大我は変身を解除する。

「あ、ありがとうございます……」

 もぐもは自分の体を手で隠しながら、命を助けてくれたヒーローに礼を言う。
 彼が体を隠した理由――それは何も羞恥心が理由ではない。自分を助けてくれた初対面の相手に変な目で見られるのが嫌だった。
 ゲームが得意だということ以外、何の力もないもぐもにとって大我の存在は大きい。当然だが一人で行動するのは怖いし、次にモンスターに襲われたらどうなるかわからない。

 だから保身のために反射的に体の一部を隠したわけだが――相手は白衣のドクター。もぐもの肉体的な特徴や少女にしては低い声という個性で、なんとなく彼の性別を見抜いていた。

「……お前、色々と性別に事情があるタイプの人種か。俺は特に偏見があるわけでもないが、同行者がそんな服装じゃ妙な誤解されそうで迷惑だ」
「え?同行者ですか……?」

 大我の言葉にもぐもがキョトンと首を傾げる。
 ぶっきらぼうな態度のせいでわかりづらいが――やり方が不器用なだけで花家大我は優しい人間だ。他のライダーのガシャットを奪おうとした時期もあるが、それは彼らを危険な戦いに巻き込みたくないがために自分一人で背負い込もうとした結果だ。
 だから本当に彼はもぐもを差別する気がないし、このまま放っておいたら命が心配だとも思った。

「レベル2で殲滅出来るようなNPC如きに負けるようなやつじゃ一人でこの決闘を生き抜けねぇだろ。とりあえずこれでも着とけ」

 大我は自分が着ていた白衣を脱ぎ、もぐもに渡してやる。もぐもの容姿や属性的に服がボロボロの状態ではどうかと思うし、それに白衣を脱いだところで大我には服がある。ぶっきらぼうで取っ付きづらそうな言動こそしているが、その行動の節々かや光が漏れ出ているのをもぐもは感じて白衣を受け取る。

「えとっ……。ありがとうございます。ぼくはもぐもです」

 お礼と共にぺこりと頭を下げると、もぐもは白衣を羽織った。もぐもにはサイズが大きく、ぶかぶかな白衣だ。
 だが服が破けた状態で何も羽織らないよりは全然良いし、態度こそぶっきらぼうで素直じゃないが何の偏見もなく優しく接してくれる大我のことを嬉しく思う。

「花家大我。仮面ライダースナイプだ」
「よろしくお願いします、大我さん。あのっ、それと仮面ライダースナイプ……ってなんですか?」
「ああ。お前、ゲーム病って知ってるか?」
「いや、ぼくは知らないです……。あっ、でもゲームならやり込んでますっ!」

 もぐもはゲーマーだが、ゲーム病なんて言葉は聞いたことがない。彼の返答を聞いた大我は一つの結論を導き出す。

「なるほどな。どうやら冥界の魔王が言う『無数の世界』ってのも嘘じゃない可能性が出てきたわけだ」

 大我の世界だとゲーム病はそれなりに知られている病だ。もちろん、もぐもの知識不足という可能性も否めないが……ハ・デスのあの態度は嘘をついているように見えなかった。


147 : 不器用なKindness ◆QUsdteUiKY :2022/06/24(金) 00:54:19 bxnof5Do0
 それにゴブリンというファンタジー世界のゲームにでも出てきそうなNPC達。彼らがバグスターである可能性もあるが、もしバグスター以外のモンスターだとしたら……?

(それにしてもこの決闘……。冥界の魔王のやつはゲームとか言ってたが、まさかな……)

 花家大我はこういうゲームを作れそうな男に心当たりがある。神を自称するあの男なら――倫理観の欠片もないこんなゲームを生み出しても不思議じゃない。彼にはそれだけの技術と才能がある。
 だがあの男は死んだはずだ。再び蘇るなど有り得るはずがない……と断言出来ないのがまた厄介。神を自称するあいつならばまた生き返ってゲームを作っても不思議じゃないのだ。
 それにこの命懸けのサバイバルゲームとも言えるルールは、なんともあの男が作りそうなものでもある。

「何か考え込んでるみたいですけど、大丈夫ですか……?」
「ちょっとした考え事だ、気にするな。お前はお前の身の安全だけでも考えてろ」

 とりあえずあの男についてはまだもぐもに黙っておく。もしも何らかの形で関与しているのなら、どうせいつか自分から姿を現して神を自称することだろう。あいつはそういう男だ。
 それにもぐもにはなるべく自分自身の安全を優先してほしいという気持ちもある。これはもぐもに限らずこのゲームに巻き込まれたプレイヤー全般に言えることだが、なるべく被害者は出したくない。

「あっ。そういえばあのハ・デスっていう人、ぼくのやってるデュエルファンタジーっていうスマホのカードゲームに出てくるモンスターにデザイン似てるかも……」
「なるほど、カードゲームか」

 もぐもが独り言のようにポロッと零した言葉を聞いて、大我は自分に支給されていたものを思い出す。
 カードゲームで戦う気はないし、そんなものよりもライダーに変身して戦う方が慣れてるからハズレ支給品だと思っていたが――ここにきてこのカードの束に価値を見出せた。

「このデッキと道具はお前にやる。どうやらカードゲームみたいに戦えるらしいが、俺はこんなもんを使う機会がないからな。せいぜい自分の身は自分で守るこった」

 相変わらずぶっきらぼうな態度でもぐもにデッキとデュエルディスク。そして説明書を渡す。
 ――まあ実際はもぐものことが心配だから、いざという時に多少は自力でも戦えるように渡すのだが。

「うんっ!ありがとうございます、大我さん!」

 もぐもは大我からデュエルディスクとデッキを受け取ると、説明書を確認。使い方を把握した彼はその腕にデュエルディスクを装着した。
 ターン制でモンスターを召喚して攻撃する。元々デュエルファンタジーガチ勢のもぐもにとって遊戯王OCGのルールを把握するのはそう難しくない。

(それにしてもプレイヤーに戦うためのアイテムを渡すこのやり方――やっぱ仮面ライダークロニクルと似てるな)

 デュエルディスクを装着して喜ぶもぐもを眺めながら、大我は自称神のゲームクリエイターの存在を感じられずにはいられないのだった。


【百雲龍之介@不可解なぼくのすべてを】
[状態]:健康、花家大我の白衣を着用
[装備]: デュエルディスクとデッキ(ウィッチクラフト)@遊戯王OCG
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:大我さんと一緒に生きて帰る
1:めい、鈴、てんちゃん、琴ちゃん、さっちゃん、哲くんが心配。
2:大我さんの優しさを信じるっ!
3:上手くデッキを回せるかな?
[備考]
※遊戯王OCGのルールとウィッチクラフトの回し方をだいたい把握しました

【花家大我@仮面ライダーエグゼイド】
[状態]:健康
[装備]: ゲーマードライバー&バンバンシューティングガシャット@仮面ライダーエグゼイド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:このゲームは俺がクリアする
1:もぐもは俺の患者だ。レベル2で殲滅出来るようなNPC如きに負けるようなやつじゃ一人でこの決闘を生き抜けねぇだろ(翻訳:もぐもは俺が守る)
2:このゲーム、まさかゲンムが裏で糸を操ってるのか……?
3:無数に存在する世界ってのはどうやら嘘じゃなさそうだな
[備考]
※参戦時期は仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング終了後
※遊戯王OCGのルールを多少把握しました

『支給品紹介』
【デュエルディスクとデッキ(ウィッチクラフト)@遊戯王OCG】
花家大我に支給。ウィッチクラフトを中心としたデッキ。

【ゲーマードライバー&バンバンシューティングガシャット@仮面ライダーエグゼイド】
花家大我に支給。仮面ライダースナイプに変身するためのツール。変身前から直接的に支給されているわけじゃないが変身後はガシャコンマグナムも装備される


148 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/24(金) 00:54:39 bxnof5Do0
投下終了です


149 : 名無しさん :2022/06/24(金) 01:36:57 Ifyr.nRY0
決闘ロワにしんのすけが当選したらひまわり死亡話とかも通りそうな気がする


150 : 名無しさん :2022/06/24(金) 01:38:03 Ifyr.nRY0
すみません誤爆しました


151 : ◆4u4la75aI. :2022/06/24(金) 14:20:20 dNUjdt.20
投下します


152 : 僕らの明日はいつだってプロローグ ◆4u4la75aI. :2022/06/24(金) 14:23:32 dNUjdt.20
決闘の場、1人の男が怪物に迫られていた。

「やっ、やめてくだサイ!離れてっ!」

カタコト、イタリア育ち、秋葉原在住、カフェのオーナー、ブロンドヘア、高身長、美形、オタク、ヘタレ、一途、M疑惑。
どれだけ属性を並べたとて、彼――ディーノは一般人でしかなかった。

彼の目前に迫らんとする怪物の名は、屑ヤミー。
屑の名が示す通りというべきか動きは鈍く、攻撃力も大したものではない、褒められることは耐久性が高い程度の弱い存在。
しかしそのゾンビ的な挙動、ミイラの如き外見――まず、現実じゃ存在しない化け物。
先刻1人の少年が殺された状況も相まってディーノは半ばパニックに陥り、ただ腰を抜かしたまま後ずさっていた。

だが彼に、抵抗する手段もないとは言えない。
事前に彼は確認していたが、彼の支給品は誰でも簡単に使い方がわかるものだった。
しかし彼は戦闘の経験なんてない一般人。
バットは、ボールを打つ物だ。敵を殴る物ではない。
ナイフは、食べ物を切るものだ。敵に刺したり、投げたりする物ではない。
鍋は、料理。投げつけようだなんて考えには到底及ばない。

このまま、非現実な存在に襲われ、無様に死んでしまうのだ。
ディーノの脳裏にはそんなことさえ浮かんでしまい、

(ああ、皆さん、苺香さん……!申し訳……ございマセン……)

自分は、もう終わりだ。絶望に打ちひしがれながら、彼はその目を瞑る――



――襲いかかってくる非現実があれば、救ってくれる非現実も存在した。

「『パラライズ』!」

少女の声。同時に文字では形容しづらい、なんともマジカルな音、そしてまるで陽の様に暖かい光。

「……えっ?」

そっと目を開けた時、彼の前に居る屑ヤミー達は完全にその動きを止め、襲いかかってくる様子はなくなっている。
状況が把握出来ていない彼に、再び少女の声が聞こえた。

「ディーノ様!こちらへ!」

「えっ、わ、私デスか!?」

声の主は、赤髪の少女。
今のは何?というかなぜ自分の名前を?疑問は次々浮かぶが、とにかく自らを助けてくれていることには変わりない。少し時間をかけなんとか立ち上がると、彼は少女の元へと駆けた。

ディーノの命は、赤髪の少女――ランプによって救われた。


153 : 僕らの明日はいつだってプロローグ ◆4u4la75aI. :2022/06/24(金) 14:25:25 dNUjdt.20

◆◆◆◆


「ここまで来れば……。ディーノ様、ご無事で良かったですっ!」

「こ、こちらこそデスっ。助けてくださって……本っ当にありがとうございマス……!」

「いえいえ!女神候補生として当たり前のことをしたまでです!」

大きく礼をするディーノ、ランプは謙遜。
『パラライズ』。彼女の支給品として配られていた専用ぶきの力を使った、敵全体に少しのダメージと中確率でかなしばりの状態異常を与える固有スキル。
このスキルで屑ヤミー達をかなしばり状態にし、彼等が動けなくなった隙に逃げたのだ。

ディーノから見た彼女、ランプ。
綺麗な赤髪や、そのセーラー服じみた衣装。コスプレイヤーでもなければ、この歳の少女が普段着にはしないであろう変わった姿。
だが見た目と年齢が大きく離れているという事例は星川麻冬という存在で普段から目にしている。
ディーノは彼女は若々しいコスプレイヤー、とでも考えその容姿に触れることはなかった。

だがそれより、もっと気になることがある。

「あの……いきなりスミマセンが、何故、私の名前を?」

「あぁ、すみません。コールされた形跡もなさそうですし、やっぱりエトワリアのことは知りませんよね」

知らない少女から名前を呼ばれる経験。しかも様付けで。
スティーレのホールスタッフならともあれ、自分の名前がそんなに有名になることはない。
そこで問うてみた所、コールやらエトワリアやらよくわからないワード。

「では、説明しますね!私の住む世界、エトワリアの事を!」

そして、ランプは語り出す。
エトワリアと言う世界のこと、その世界の主なエネルギー源となる『聖典』のこと、
その『聖典』の一つに、ディーノ達が活躍する世界についても、綴られていることを。



しばらくして、ランプは話し終える。

「え、えっと……つまり、私達の世界が、書物になって読まれているという……ことデスか?」

「その通りですっ、苺香様のドSっぷりも、ひでり様の可愛さと秘密のギャップも、ディーノ様と苺香様の恋模様についても、私ランプ、把握しています!……あっ、私の名前はランプです、よろしくお願いしますっ」

「は、はぁ……ランプさん、こちらこそよろしく、デスが……」

どうも簡単には信じられない話。
だが、スティーレのコンセプトも、桜ノ宮苺香の性格や属性についても、神崎ひでりの秘密も、自らが抱く恋心も、全て知っているとなれば信じざるを得ない。

(……恋心?)

そして、ディーノはひどく赤面した。

「ななななっ、何で私と苺香さんの関係までっ!?」

「もちろん存じてます!むしろ聖典のメインです!」

「メインなんデスか!?」

「はいっ、苺香様のドSっぷりとディーノ様のヘタレっぷりの組み合わせがたまらなく……」

「そんな直球にヘタレって言わないでクダサイよーっ!!」

自らの恋心が全て開示されているなど、ディーノとしてはたまったものじゃない。
好意的に見られている所については安心したが、色々と複雑であった。


154 : 僕らの明日はいつだってプロローグ ◆4u4la75aI. :2022/06/24(金) 14:26:53 dNUjdt.20
「ま、まぁ……もし苺香さんと出会っても言いふらさないでくださいよ?」

「もちろんですっ、私見る専ですしっ……あ、そして苺香様達のことなのですが……」

先程までとにかく明るく振る舞っていたランプの声のトーンがひとつ下がる。

「ディーノ様がここに呼ばれている以上、苺香様や夏帆様達、それに他の聖典のクリエメイトの方々もここに呼ばれているかもしれません……なのでっ」

「どうか、お願いしますっ。私と一緒に、クリエメイトの皆さんを……この殺し合いを止められる様な仲間を探す事を手伝っていただけませんか?」

クリエメイト――『聖典』世界の人物達。
ランプの知るクリエメイトは、殆どが善良で正義の心を持つ、殺し合いに反旗を示す者であろう人たちだ。
だからそんな綺麗な心を持つクリエメイト達はエトワリアの民としてしっかり保護し、元の世界へと返さないといけない。
だが、NPCと呼ばれる化け物たちに、殺し合いに乗っている人物達。
それらと遭遇した時、ランプ1人で解決できるかといえば、怪しくなる。
だから仲間を集めたい。仲間を集め、協力してこの殺し合いを打破する。
それこそが、ランプの目的。

対するディーノ。
状況の把握は未だにおおまかとしか出来ていず、ただ家に帰りたいという思考しかなかった。
だが、いくら力があるとて目の前の少女がこんなにも強い意志を持っているのだ。
ここを断れば、苺香さんにも顔向けできない。
そんな感情で、彼女の手を取る。

「わかりマシタ。私も苺香さんが居るなら探したいデスし、皆さんで安全に帰りたいデス」

「……っ!本当ですか!?」

「勿論デスよ。ランプさん、協力して帰りマショウ!」

「ええ、それではどうかよろしくお願いします!、ディーノ様っ!」

硬く握手を交わし、2人はこの決闘からの打破を望んだ。



次に2人は互いの支給品の確認を行ったのだが、ディーノの支給品が揃いも揃って聖典世界からのアイテムだった為ランプが興奮しまくったのは別の話。



【ランプ@きららファンタジア】
[状態]:健康
[装備]:ランプ専用羽ペン@きららファンタジア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いの打破
1:ディーノ様と共に、仲間集め
2:他のクリエメイトの皆さんも巻き込まれているかもしれません……
3:男性のクリエメイトと出会えるのは貴重です……!
[備考]
※参戦時期はメインシナリオ第2部開始前。イベントシナリオ等は時系列がすべて第2部開始以前となっている為全て経験しているものとします。
※エトワリアの民、その上聖典にかなり精通している為、聖典――まんがタイムきらら作品の登場人物、世界観については概ね把握しています。
※同じスキルは連続して使えません。

【ディーノ@ブレンド・S】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、トオルのバット@Aチャンネル、ソーニャの投げナイフ×10@キルミーベイベー、カオス鍋@GA 芸術家アートデザインクラス
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止めマス!
1:ランプさんと行動
2:苺香さん達が居たら探さないと……!
[備考]
※参戦時期は店を畳む決意をする以前のどこかです。


『支給品紹介』
【トオルのバット@Aチャンネル】
ディーノに支給。
一井透が携帯していたバット。普通に金属製で振り回すと危ない。

【ソーニャのナイフ@キルミーベイベー】
ディーノに支給。10本セットで支給。
ソーニャが携帯している投げナイフ。切れ味は良い。

【カオス鍋@GA 芸術家アートデザインクラス】
ディーノに支給。
ノダミキ達の悪ノリで生み出してしまった闇鍋を越えた何か。
蓋止めの金具がついた状態で支給されている。

【ランプ専用羽ペン@きららファンタジア】
ランプに本人支給。
装備することで身体能力、魔力の増強、固有能力の使用が可能、対象が敵単体のスキルの範囲増加、と様々な恩恵を受けることができる。
ランプは元々エトワリアの住人である為、『変身』の機能はない。


『NPC紹介』
【屑ヤミー@仮面ライダーオーズ】
半分に割ったセルメダルの破片から生み出される下級ヤミー。
戦闘力は極めて低く、動きも鈍い。
しかし物理的な攻撃に対する耐久力はかなり高い。


155 : ◆4u4la75aI. :2022/06/24(金) 14:28:37 dNUjdt.20
投下終了します。


156 : ◆drDspUGTV6 :2022/06/24(金) 17:38:48 SrH0qJ6w0
投下します。


157 : ◆drDspUGTV6 :2022/06/24(金) 17:39:25 SrH0qJ6w0
私は祈ります。
それが行き先などない空虚なものだとしても。
私は祈ります。
それが救いなど齎さない無常なものだとしても。
きっとこの祈りは誰かのためにあるものだから。
――――どうか、救われぬ人々に神の■■がありますように。



『可哀想な子』

―――僕が……可哀想……?。

『貴方は愛されるということを知らない、可哀想な子』

―――そんなことはない……。僕には、大切な人がいるんだ。僕だけを愛してくれる……。

『貴方は忘れているの。思い出させてあげるわ』

ぐらり。
視界が暗黒に包まれ、奈落の底へと意識が落ちていく。
どこまでもどこまでも落ちていき、綺麗な花や果物に囲まれた幸せに満ち溢れた場所に辿り着いた。
その中心には、やんちゃそうな黒髪の男の子に、お転婆そうな金髪の女の子がくすくすと笑いあっていた。
恋人のように笑いあう二人にソルスの光が降り注ぐ光景.それはまるで一枚の絵画のように美しくて。
その場所には僕の入り込める余地がないように思えて。それがとてもとても寂しくて、惨めで。
パキリと何かがひび割れる音が聞こえた瞬間、再び意識が落ちていき―――

『これより決闘(デュエル)のルールを説明する』

―――――殺し合いが始まった。




158 : 朽ち逝く青薔薇に口づけを ◆drDspUGTV6 :2022/06/24(金) 17:41:06 SrH0qJ6w0
身体が、重い。
ふらふらと幽鬼のように頼りない足取りで歩を進める亜麻色の髪の少年――ユージオは思う。
その腰に携えている緑がかった白の剣は、彼の支給品の一つである業物『ダークリパルサー』
付属していた説明書によると、この剣は親友であるキリトがかつて使用していた剣であるらしい。

(この剣でキリトはたくさんの人を救って……アドミニストレータみたいな悪い人と戦って……それで……)

胸の奥が軋み出す。痛みを感じるほどに喉が渇く。
そして不快な感覚と共に胸中に渦巻く暗く冷たい感情。
こんな感情、自分を何度も導き、助けてくれた彼には決して持ってはいけないのに。

「……ッと」

石に躓き、暗く深い所に沈んでいた意識が呼び戻される。
その拍子で顔を上げると、目の前には教会があった。
ユージオは「お邪魔します」と一声かけてから扉を開け、教会へと入っていく。

深夜の教会。静寂に包まれた中で響くのはユージオの足音のみ。
ふと、歩みを止めて目を凝らすと最奥に小さな人影が見えた。
近づくにつれて輪郭が露になっていき、人影は小柄な少女であることを確認できた。
敵意がないことを伝えるためにすぐそばまで近づき、彼女の小さな背中に声をかけた。

「あの、すみませ――」

伸ばしかけていた手が静止した。
視線の先には十字架を前に跪いて祈りを捧げる少女。
天窓から覗く宵月に照らされたその姿は神秘的でまるで一枚の宗教画。
眼前に広がる荘厳な光景を前にユージオは言葉を失い、立ち尽くていた。

「……あら、お客さん?」

交互に組んだ五指を解いて立ち上がり、呆けているユージオの方へと少女は向き直る。

「私の名前はアム・イスエル。貴方も祈りを捧げに来たのかしら?優しそうな剣士さん」

漆黒のドレスに包まれた小柄で華奢な身体。
黒い草冠を乗せた銀髪と病的なほど透き通るような白い肌に精巧な人形のように整った顔立ち。
薄闇の中で仄かな光を纏う少女は戸惑う剣士の少年にくすり、と妖艶に微笑んだ。


159 : 朽ち逝く青薔薇に口づけを ◆drDspUGTV6 :2022/06/24(金) 17:41:40 SrH0qJ6w0


「まさか、こんなことが本当に……」
「あるなんて驚いたわね」

燭台に灯った朧火が教会を弱々しく照らす中、その一角にあるベンチに隣り合って座るアムとユージオ。
彼らは同時に驚嘆の声を漏らし、大きく息を吐いた。

彼らは自己紹介の中で『ルーリッド村』や『神魔法Lv2』など聞いたことのない単語に違和感を覚えた。
認識の祖語を改めるために詳しい情報交換を行ったところ、二人とも別の世界の住人であることが分かった。
ふと、アムに袖を引かれ、ユージオはそちらに顔を向ける。

「……ユージオ君、私の目を見てもらえるかしら?」
「いいですけど、どうしたんです?」
「…………なんでもないわ。ありがとう。…………………意識下への介入はできない。制限かしら……?」
「?」

アムの行動の意図が読めず、ただ首を傾げるユージオ。ボソリと呟かれた一言は、彼の耳には届かなかった。

「それよりもユージオ君、出会った時からずっと顔色が悪いけれど大丈夫?」
「……大丈夫ですよ、アムさん。ただ、こんなことに巻き込まれたから不安になっていただけです……」
「あまり大丈夫じゃなさそうね。……そうだ、あれがあったわね」

アムは何かを思いついたようにポンと手をたたくと、傍らにある彼女のデイパックからゴツゴツとした黒い腕輪を取り出した。

「アムさん、それはなんですか?」
「これは≪魂の枷≫といって装着すると心を楽にしてくれる腕輪よ。もしユージオ君が良ければ着けてみない?」
「……それ、アムさんの貴重な支給品じゃないですか。僕なんかよりもアムさんが持っていた方が……」
「いいのよ、魂の枷はまだ4つもあるから遠慮しないで」

「でも……」と尚も口ごもるユージオにアムは魂の枷を押し付けるように渡した。
こちらの顔を見上げる彼女に圧を感じたのか、しぶしぶといった感じでユージオは魂の枷なる腕輪を装着した。
すると、先程まで感じていた心にのしかかっていた重圧が突如消え、解放されたかのように楽になった。

「どう?効果があったかしら?」
「……はい、さっきより楽になりました。ありが「でも、まだ辛そうな顔をしてるわね」……ぅ……」

己を見透かしたような彼女の言動にユージオは言葉を詰まらせた。
アムの言葉は真実だ。確かに精神的には楽になった。だが心を未だ蝕み続けている嫌な感情は消えてはくれなかった。
そんな様子の彼に、アムは慈しむように目を細めて優しく語りかける。

「ここは迷える人々が救いを求めてやってくる教会。ユージオ君、せっかくだから辛い気持ちを懺悔として私に吐き出してみない?」
「アムさんに……ですか?」
「ええ。こう見えても私は聖職者としてたくさんの人達のお話を聞いてあげたことがあるのよ。貴方のプライバシーは守るから……ね?」




160 : 朽ち逝く青薔薇に口づけを ◆drDspUGTV6 :2022/06/24(金) 17:42:24 SrH0qJ6w0
燭台の火がゆらゆらと不安定に揺れる。それはまるで今のユージオの心中を表しているかのようだった。
彼は目の前の元聖職者の少女――アムに殺し合いに巻き込まれるまでの経緯を思い出すようにゆっくりと話していた。
禁忌目録を犯したことで幼馴染のアリスが整合騎士に連れ去らわれたユージオの原点。故郷でのルーリッド村でゴブリンと対峙したこと。
親友キリトと共に村を出て、彼に剣術を指南してもらった二年間の衛兵時代。ノーランガルス帝立修剣学院で二人で色々な学んだ日々。
生まれて初めて禁忌目録に背き、人を斬るという剣士としてあるまじき最大の罪を犯した自身の運命の転機。
そして……整合騎士となってしまったアリスとの再会。彼女にセントラル・カセドラルへキリトと連行され、投獄されたこと。
キリトの機転で脱出し、待ち受ける整合騎士達との熾烈極まる戦い。その中で敵として現れた整合騎士アリスとの対決。
彼女との戦闘後、全ての元凶である最高司祭≪アドミニストレータ≫との邂逅。
思い出を一つ一つ語るごとになぜか自分を<守るように/邪魔するように>立ち塞がるキリトの大きく頼もしい背中が脳裏を駆け巡る。
その背中を感じるとユージオの心がなぜか抉られ、話が進んでいく度に頭を掻き毟りたくなるような衝動が強くなっていく。
向かい合って座るアムは時折相槌を打ちつつも、神妙な面持ちで彼の話を真剣に聞いてくれているようだった。
話の途中でアリスという名前が出る度にえもいえぬ表情を浮かべたことは謎だが。

「……話はこれで終わりです、アムさん」
「……そう。ご苦労様、ユージオ君」

疲れ切った様子でアムに告げるユージオ。
懺悔を始める前に感じていた解放感は嘘のように掻き消え、代わりに心中を満たすのはどうしようもない無力感。
それでも彼女の前で己の醜態を晒さずに済んだことに安堵した。

「……だいぶ楽になりました。話を聞いてくれてありがとうございます、アムさん」
「本当に大丈夫?」
「…………ええ、大丈夫です」
「……貴方は少し、自分を客観視した方が良さそうね」

そう言うと、アムは立ち上がってユージオの裾を引っ張り、彼女と同じく立ち上がるように促す。
腕を引く力は弱かったが、なぜか彼女に逆らう気力が全く沸かず、よろよろと立ち上がる。
そのままアムは夜の景色を映し出しているガラス窓へとユージオを引っ張っていく。

「あの……なにを……」
「……よく見て頂戴。これが今の貴方の顔よ」
「――――――――ッ!!」

絶句。
重篤患者のようにげっそりと痩せこけた頬。落ち窪んだ眼窩。双眸から頬にかけて伸びている雫の跡。
ガラス越しに映し出された亡霊じみた形相が今の自分だと信じられず、ユージオは後退りした。
その背後から落胆したようなアムの声が彼の耳に届いた。


161 : 朽ち逝く青薔薇に口づけを ◆drDspUGTV6 :2022/06/24(金) 17:43:37 SrH0qJ6w0
「……貴方が心に秘めていたことを余すところなく私に打ち明けてくれたことは素直に嬉しかった。
でもね、そこに『辛かった』とか『悲しかった』とかユージオ君個人の感情は伝わってこなかったわ。
それに自覚してなかったと思うけれど、話している最中ユージオ君はずっと怖い顔をしていたわ。
問題解決のためにはユージオ君自身が協力してくれなきゃいけないのよ。だから―――」
「……だから……だから何だっていうんですかッ!!」

叫ぶような声と共に勢いよく振り返る。身体ごと振り向いたせいで腕が振り抜かれ、ユージオの手がアムを強かに打った。
パァンと鳴る彼女の白い頬。ユージオの思考が空白に染まる。だが、爆発してしまった感情は勢いそのままアムににぶつけられた。

「さっきから黙って聞いていればッ!ずけずけと僕を馬鹿にするような話し方をしてッ!何様のつもりなんですかッ!!」

違う。そんなことはない。アムさんは真剣に僕の話を聞いてくれていた。
理性ではわかっている筈なのに、口から吐き出されるものは矛先を失った怒りのみ。

「今さっき出会ったばかりの貴女にッ!僕の何が分かるっていうんですかッ!アリスのこともキリトのことも何にも知らない癖にッ!!」

自分の口が勝手に動く。つい数分前まではっきり見えていたアムの顔がぼやける。
叩いてしまったことを謝らなきゃと思っているのに、身体が誰かに操られているかのように言うことを聞かない。

「ああそうか、何にも関係ないからか!立場も世界も違う第三者だから面白半分で聞いてくるんだ!」

当てつけのような理不尽な言い分を唾と共にアムへと吐き出す。ユージオの意識はその様子をどこか他人事のように見ていた。

「貴女は―――」

続く言葉も罵声。切り離されていくユージオの自我。
荒れ狂う彼の感情とは裏腹に心中は他人事のようにどこか穏やか。その様子は質の悪い台風のようだった。
暫くして剥離していた意識と感情は合わさり、教会に静寂が戻る。残されたのは小さく蹲る少年としゃがんで彼を見つめる少女のみ。

「……ごめんなさいね、ユージオ君。貴方を責めるつもりはなかったのよ」
「…………」
「怒ってないから、顔を上げて……ね?」


162 : 朽ち逝く青薔薇に口づけを ◆drDspUGTV6 :2022/06/24(金) 17:44:22 SrH0qJ6w0
恐る恐るユージオは顔を上げる。目に映ったものは優しく微笑む彼女と、少し腫れた頬。

「……あ……ぁ……ごめんなさい……ごめんなさい……ッ」
「大丈夫よ、すぐ治るわ」

アムは晴れた頬に手を当て「痛いの痛いのとんでけー」と子供をあやすような呪文を唱える。
すると手に淡い光が灯り、みるみるうちに頬の腫れが引いていく。

「神……聖術……?」
「あら、貴方の世界ではそういうのね。これは私の世界では『ヒーリング』という怪我を治す魔法の一つなの。
ほら、もう大丈夫。だから安心して……ね?」
「でも……僕は……ぼくは……」
「それじゃあ、こうしましょう。さっきの頬の腫れは私が眠気を覚ますために自分で強く叩きすぎたからできてしまったの。
それもほら、この通り。何も起こっていなかったのだから貴方は何も悪くない」
「……でも……」
「……もし、それでもユージオ君が罪悪感を感じているのなら、ため込んでいた感情を私に吐き出して。
貴方がさっき本心を話してくれた時、実はちょっと嬉しかったのよ。ユージオ君の本心が少しだけ理解できてね」

冷え切ったユージオの手を白く小さな両手が優しく包み込む。

「ほら、もう大丈夫。辛かったこと、苦しかったこと、寂しかったことを全部話して」

柔らかな微笑みが淡い光となり、昏く沈んだ心を包み込んでいく。
自分だけに向けられるアムの笑顔がとてもとても眩しくて、尊くて。ユージオの瞳から大粒の涙がボロボロと流れ出す。

「僕は……ずっとひとりぼっちだったんです……。兄さん達も、父さんも、母さんですらも、僕を疎んでいました。
僕が樵の天職を得た時、兄さんと父さんは冷たく突き放して……母さんは僕から目を逸らして……。
喜んでくれると思ったんです。自慢の息子だって……でも違った。僕はただの余りものだったんです……」
「……うんうん」
「そんな僕にも友達がいたんです。アリスっていうとても優しい幼馴染が……。それに衛士のジンクっていう男の子も……。
でも、アリスが連れ去らわれてから……周りには誰もいなくなった……友達は誰もいなくなっちゃったんだ……」
「……うん」
「でも……キリトがベクタの迷い子として、村に来てくれてから全てが変わった。キリトが僕に勇気をくれた……と思っていた。
キリトがいたから僕は憧れの剣士になれた……。アリスを助けられるように強くなれるって……そう思っていたんだ……」
「……二人とも、大切な友達だったのね……」
「でも違った……違ったんだよ……。僕はちっとも強くなっていなかった……弱いままだったんだよ……。
僕はただ……彼の背中に隠れて……いただけの……ぅ……臆病者だったんだ……ッ!」
「…………」
「もし……一欠片でも……君の強さが僕にあったら……変わっていたのかなぁ……
アリスが連れ去らわれるときに……一緒に……禁忌を犯していたら……ずっと一緒に入れたのかなぁ……」
「…………」
「ずるいよ……キリト……ずるいよぉ……どれだけ頑張っても……君に追いつけないよ……僕も……アリスと一緒に……落ちたかったよ……」

止めどなく溢れる親友への羨望と劣等感。ずっと変わらなかった幼馴染への恋慕と独占欲。そして最後に口にするのは罪悪感と自己嫌悪。

「最低だ……僕は最低なんだ……ライオスやウンベールと何も変わらない……卑怯者……。
こんな僕は……人に愛される資格なんて……どこにもない……僕なんて……僕なんか……し―――」
「――――はいストップ。そこから先は駄目よ」
「……ぇ……?」


163 : 朽ち逝く青薔薇に口づけを ◆drDspUGTV6 :2022/06/24(金) 17:45:03 SrH0qJ6w0
ひんやりとした小さな掌がユージオの両頬を優しく包み込む。涙に濡れた双眸に映し出されるのは慈愛を感じさせるアムの微笑み。

「今までたくさん苦しいことを抱えてきたのね。誰にも話せなかった貴方の心を打ち明けてくれてありがとう。
でも、その先の言葉だけは口にしちゃ駄目。貴方を愛する人を裏切ることになってしまうわ」
「……僕を愛してくれる人なんかいません。アドミニストレータの言っていた通り……僕に与えられる愛は……全部余りものだったんだ……。
強い人の影に隠れるだけしかしてこなかった……僕を愛してくれる人なんか―――」
「いいえ、私がユージオ君を愛します」
「―――ぇ……?」

呆けた表情を浮かべるユージオの唇に押し付けられるアムの小さな唇。
すぐに唇を離し、目の前で固まっている少年に向けて愛おしげに目を細める。
未だ何が起こったのか理解できずに硬直している少年に、再び少女は彼の口先数ミリ前まで唇を近づけて―――。

「―――貴方を愛してる」

か細い囁きと共に再び少年に口づけする。我に返ったユージオは彼女から逃れようとする。
しかし、獲物を逃すまいとアムの小さな手が彼の頭の後ろに添えられ、捕食者として眼前の少年の唇を貪り続ける。
ぴちゃぴちゃと官能的な音楽を奏でながら少年を艶めかしく啄む少女の舌。交じり合った唾液が滴り落ち、少年の上着に染みを作る。
支える腕に力が入らず、後ろに倒れそうになる彼の身体をアムの細腕が抱きしめた。
そのまま冷たい床へと優しく押し倒し、何度も何度も唾液を吸い続ける。その有様は甘い蜜を啜る蝶のよう。
絡みつく下から感じる少女の味。ドレス越しに感じる体温。ミルクに似た甘い香り。「ん……」と時折聞こえる淫靡な息遣い。
薄明りに照らされる幼さを残すアムの美貌。五感全てから与えられる情報が全てアムに変わり、蝕み、塗り尽くしていく。
暫くして名残惜しそうに少女の唇が離され、少年の唇との間に唾液のアーチが描かれる。

「……どう?これが私の気持ちよ」

ぺろりとアムは悪戯っぽく自らの唇を舐め、微笑する。
ユージオのいる人界での口づけ。それは≪創世神ステイシア≫に婚姻を誓うために愛する人と行う儀式であり、誰彼構わず行う行為では決してない。
「なんで」「どうして」という疑問が何度も頭の中で反芻されるユージオの顔に突如柔らかい感触が伝わり、視界が黒く染まる。
布越しに感じる心臓の鼓動。後頭部に伝わる小さな掌の感覚。ここで漸くアムの胸に抱かれていることに気が付いた。

「―――もう、大丈夫よ」

出会った時から変わらない、無条件に愛されていると感じる優しい声。

「ユージオ君は誰よりも純粋だったから、誰よりも優しかったから、今までずっと我慢してきたのね」

――そうだ。ずっと我慢してきたんだ。誰かのために……ずっと……いつか報われると信じて……。

「でも、誰も報いてはくれなかった。それは誰のせいでもない。貴方の綺麗な心は眩しすぎて、他の人達は直視できなかったのよ。
近づいたら自分の醜さが浮き彫りにされるようで怖がっていたのよ。だがら、貴方にたくさんの愛を与えられなかった」

―――そうだったんだ。じゃあどうすればどうすれば良かったんだろう。どうすれば愛されるのかな?

「私がユージオ君を愛します」
「見返りのない想いを抱き続けるのは疲れたでしょう。理想を追い求め続けるのに疲れたでしょう」
「満たされなかった分、たくさん抱きしめてあげる。ありのままの貴方を抱きしめてあげる」
「望むのならばお母さんのように子守唄を歌ってあげる。恋人のように慰めてあげる。友達のようにそばにいてあげる」
「ここには貴方と私だけしかいない。だから、今はたくさん私の胸で泣いて。どんなことがあっても貴方を想い続けるわ」

蕩けさせるような甘く優しい声。抱きしめられた顔に乳房の柔らかさと体温が伝わる。
いつの間にか鼻孔を擽っていたアムの香りが金木犀の香り―――大好きだったアリス・ツーベルクの香りに変わっていた。
その香りは一緒に遊んでいた過去を思い出させられて、純粋に幸せを感じていた時の記憶を思い出させて―――。

「……ぅ……あぁ……ぁぁ……うあぁあ――――――――――ッ!!」


天窓から差し込む月明かり。幼子にように咽び泣く少年を愛おしげに抱きしめる少女。そこにあるのは閉ざされた二人だけの薄闇。
この情景を事情を知らぬ者が見たら―――否、事情を知る者が見ても、こう思うだろう。
まるで絵画のようだ、と。




164 : 朽ち逝く青薔薇に口づけを ◆drDspUGTV6 :2022/06/24(金) 17:45:27 SrH0qJ6w0
「遊戯君を探そうと思っているの」

開口一番、アムの口から発せられた言葉にきょとんとした表情を浮かべるユージオ。
ここは応接間。ユージオの心が小康状態へと落ち着いたところでソファーに腰を下ろし、向かい合って話し合うことになった。

「ユージオ君、殺し合いが始まる前のこと、覚えているかしら?」
「……覚えています。忘れられるわけが、ありません」

目を閉じると否が応でも思い出させられる凄惨な光景。
爆発音と共に転がる笑顔を張り付けた少年の首。彼の死に慟哭する奇抜な髪形の少年。彼の名前がユウギだった筈だ・

「……ユウギさんはイソノやハ・デスとの面識があるみたいでした。だから、彼に会ってみようってことですか?」
「ええ。悪縁だとしても彼らとの繋がりがある以上、彼の存在は無視できないわ。
それに、私の支給アイテムには遊戯君の所有物かあるの。それは―――」

言葉が終わる前に言葉を区切り、アムは傍らにある彼女のデイパックから腕輪に板が付いた物体を取り出し、前腕に装着する。

「これがデュエルディスク。そして―――」

再びデイパックに手を入れ、取り出されるカードの束。

「―――これが遊戯君(表)のデッキよ。それを……セット!」

勇ましい声と共に流れるような動きでデュエルディスクに装着されるデッキ。
立ち上がり、その勢いのままデッキの一番上に彼女の手が置かれ―――。

「ドロー!手札より光属性モンスター≪マシュマロン≫を召喚!」

カードがデュエルディスクなる物体の青い部分に置かれると同時に、奇妙な音が発せられる。
その直後に二人の間に光が収束し、二人の間に顕現する雪だるまのような謎生物≪マシュマロン≫

「ユージオ君と会う前にこれでちょっとだけ遊んでみたのよ。どうかしら?」
「どうって言われても……えぇ……」

懺悔の時とは違った意味で言葉が出なかった。
躍動感のあるキレッキレの動きやら芝居がかったセリフ、デュエルディスクやデッキなどの謎用語。
色々とツッコミどころ満載であったが、始めにユージオの口から発せられた言葉は―――。

「(表)ってなんです?」
「何かしらね」

アムは首を傾げた。




165 : 朽ち逝く青薔薇に口づけを ◆drDspUGTV6 :2022/06/24(金) 17:46:26 SrH0qJ6w0
「デュエルディスクにはこの柄のカード……デュエルモンスターズを用いて様々な事象を起こす機能があるみたいよ」

再びソファーに腰を沈め、先程のことが何もなかったかのような口調でアムは話し始めた。
彼女の膝には召喚されたマシュマロンが頭らしき場所を撫でられ、気持ち良さそうに目を細めている。
ユージオは何とも言えない面持ちで頷き、彼女の言葉を待った。

「この技術は彼らの世界における私達の魔法や神聖術みたいなもの。それを悪用して異なる世界の住人を呼び寄せて殺し合いを開催したと思っているの」
「……そう考えると途方もない力を持ってますね」
「恐らくこの首輪にも彼らの技術が用いられていると考えているわ。参加者の能力を制限する首輪をね。本当は私、もっと凄いことができるのよ」

とんとんとユージオに見せつけるようアムは自らの首輪を指で突く。

「首輪を解除するために、ユウギさんとその関係者を探すってことですよね」
「ええ。でもそれだけじゃないわ」

その言葉と共にアムの目が細められる。

「遊戯君、あそこで大切なお友達を殺されてしまったわ。だから―――」

―――慰めてあげないとね。

不可侵な神聖ささえ感じられるアムの慈愛の微笑み。己に向けられたものと同じものが、自分以外にも向けられている。
背中に嫌な汗が流れ出す。喉がカラカラと渇きだす。そんなユージオを尻目にアムは言葉を続ける。

「このデュエルディスクは元々彼のものだから勿論返すつもりよ。私よりきっと彼の方が上手に扱えると思うわ」
「……ユウギさんにデュエルディスクを返したらどうするんですか?」
「それは―――」

きっと彼女は協力して首輪を解除し、ハ・デスらに立ち向かおうと言うのだろう。
至極当然のことなのにささくれ立つ心。名前しか知らない彼に感じる昏く、淀んだ感情。

「―――彼に守ってもらいましょう」
「―――え?」

余りの衝撃に言葉を失う。マモッテモラウ?どんな意味なんだろう?


166 : 朽ち逝く青薔薇に口づけを ◆drDspUGTV6 :2022/06/24(金) 17:47:23 SrH0qJ6w0
「彼のカードにはマシュマロンの他にも、磁石で出来た高い能力の戦士や沈黙の名を冠する女魔術師、竜を殺せる強さを持つ剣士などがいた。
モンスター以外にも攻撃を封じる光の剣を出現させる魔法や相手の攻撃力弱体化させる罠みたいな強力な搦め手も存在したわ」

すらすらとユウギの手札に対して賛美の言葉を並べるアム。彼女は目の前にいる自分を見ていない気がした。
彼女の笑顔に耐え切れず視線を下げ、彼女から貰った魂の枷を見た。一瞬、意志を持ったように黒い光を放った錯覚を覚えた。

「……もし、ユウギさんが友人を取り戻すために殺し合いに乗っていたらどうします?」
「その時はそうね……このデュエルディスクは私がそのまま使わせてもらうとして、戦える人が必要になるわね」

顎を触って首を傾げ、悩んでいるアムを見つめる。戦える人間は目の前にいるのだと気付いて欲しくてただ見つめる。
「ユージオ君、お願いね」そんな一言が欲しい。僕に価値を見出して欲しいとアムに祈る。
悩む仕草をやめ、アムは口を開く。

「キリト君に守ってもらいましょう」
「――――――――――」

先程とは比べ物にならない衝撃。意識が飛ぶ、という感覚を肌で感じたのは生まれて初めてかもしれない。
なんで、彼の名前が出る。なんで、僕を見てくれない。数多くの「なんで」が頭を埋め尽くす。

「貴方の話が本当だとすると、キリト君はとっても強くて優しい、まるで御伽話の英雄みたいな男の子なのね。
ユージオ君が一緒にいてくれれば、きっと事情を察して協力してくれるわ。それに彼は頭もいいみたいだし、首輪も解除できてしまうかもね」

嬉しそうにキリトのことを称賛するアム。彼女の思いは、全く赤の他人のユウギから自分の良く知る剣の師匠――己にとっての英雄に向けられていた。
足元が崩れ、奈落の底に落ちていく感覚を覚えた。今までとは比較にならぬほどの焦燥が襲う。
カラカラになった喉で、ユージオは言葉を紡ぐ。

「……ぼ……ぼくは……ッ僕は……どうすれば……ッ!?」
「私とキリト君が貴方を守ってあげる。何もしなくても、私はもちろんキリト君だって貴方を想って戦ってれるはずよ。アリスさんと同じようにね」

安心させるようなアムの微笑み。今までと同じものなのに、途轍もなく恐ろしい。
ふと、アムの横でキリトがこちらを見て笑いかけているような錯覚を覚えた。その笑顔は自分を励ますものか、それとも―――嘲りか。
彼のそばにはアリス、ロニエ、セルカ……彼と関わってきた多くの人間が佇み、彼と同じように笑っていた。
全身に悪寒が走る。そして脳裏に過るアドミニストレータの言葉。

『貴方は愛されるということを知らない、可哀想な子』

「それじゃ、話がまとまったところで……ユージオ君、どうしたの?そんな怖い顔をして―――きゃっ」

衝動的に身体が動く。アムの細い両肩を掴み、ソファーに押し付ける。彼女の膝から落ちたマシュマロンが牙を剥いて威嚇する。
ユージオの視界に映るのは驚いて目を見開いたアムのみ。外野のことなど文字通り眼中にない。


167 : 朽ち逝く青薔薇に口づけを ◆drDspUGTV6 :2022/06/24(金) 17:48:13 SrH0qJ6w0
「僕だって……僕だって戦えます!」
「どうして?今まで辛い目にあってきたのだから、もう守られるだけでもいいんじゃないかしら?」

誰も責めないわよ、と憐れむような声でアムは問いかける。どんなことがあっても彼女はユージオという人間を愛してくれるだろう。そう確信している。
だが、その愛は不変のものなのか?彼女の愛がユウギやキリトへと向かい、いつかのように自分への愛が余りものになってしまうのではないか?

「もう強い人の後ろにいるだけなのは嫌なんです……!今まで通りだったら、今度こそ僕は自分を許せなくなる……!
僕には最強の整合騎士を倒した剣術がある……貴女と同じように傷を癒す神聖術だって使える……貴方を守れる力があるんだ……!
だから……だから、アムさんを守らせてください!アムさんの敵がいたならそのときは――」
「―――誰のものかもわからないその剣で守ってくれるのね」

不意打ちのようなアムの言葉にユージオは硬直する。腰に差した得物はキリトの過去の剣≪ダークリパルサー≫。
彼の剣で―――彼の力に依存することになるのか?結局僕は彼の代わりでしかないのか?
そんな様子を知ってか知らずか、アムは微笑みを浮かべてデイパックから一振りの短剣を取り出す。

「これは私の最後の支給アイテム≪宝剣グラム≫。かつて私と志を共にした剣士≪漆黒の王子-フォアリュッケン・クレッペ-≫が愛用していた魔剣よ」
「ふぉあ……りゅ……?」
「≪漆黒の王子-フォアリュッケン・クレッペ-≫。彼の持つこの剣は担い手の思いの強さで姿と剣自身の強さが変わるの。これを貴方に授けるわ」

ユージオの手に渡される捩じくれた炎のような短剣。手に取ると見た目以上に重く、強い力を感じる剣だった。

「ユージオ君、私はこの決闘(デュエル)で多くの人を導き、救済します。その果てで魔王ハ・デスを打倒する。
その中で手を血で穢すこともあるでしょう。多くの犠牲を出すこともあるでしょう。それでも―――着いてきてくれる?」

アムの強い意志が言葉となってユージオに突き刺さる。彼女が僕を必要としてくれている。それだけで答えは決まっていた。

「―――はい!アムさん、どこまでも!」

ガラス窓に映る己の顔。こちらを見つめる淀んだ昏い瞳。落ち窪んだ眼窩。げっそりとやつれた頬。
アムに本心を晒す前よりも酷い顔だったが、もう恐れることはない。

―――魂の枷が鈍い光沢を放つ。


【ユージオ@ソードアート・オンライン】
[状態]精神疲労(大)、アムへの依存(極大)、魂の汚染率72%、決意、武藤遊戯への敵意(小)、キリトとアリスへの複雑な感情
[装備]宝剣グラム@Ranceシリーズ、魂の枷@Ranceシリーズ
[道具]基本支給品、不明支給品1~2
[思考・状況]基本方針:アムさんを守る
1:アムさんのために戦う。
2:アムさんのために首輪を解除する手段を探す。
3:アムさんのために巻き込まれた人達を助ける。
4:アムさんのためにユウギさんを探す。本心では探したくないけれど。
5:知り合いには会いたくない。特にキリトとは。

[備考]
※参戦時期は原作13巻のアドミニストレータからキリトとアリスとの思い出を見せられた直後。
※アムによりルドラサウム大陸についての基礎的な知識を得ました。
※魂の枷による魂の汚染は現在72%です。80%を超えた時点でユージオは汚染人間になります。


168 : 朽ち逝く青薔薇に口づけを ◆drDspUGTV6 :2022/06/24(金) 17:48:58 SrH0qJ6w0


私は祈ります。
それが行き先などない空虚なものだとしても、私自身がその行き先になるから。
私は祈ります。
それが救いなど齎さない無常なものだとしても、私自身が救いになるから。
神のいない世界でも、地獄でしかない世界でも、私がきっと天国になるから。
――――どうか、救われぬ人々に神の忘却がありますように。



祈りを終え、組み合わせた五指を解く。
ここは教会の正面玄関の手前。閉ざされた扉の向こうには己の仲間となった剣士が待ってくれている。

「……くすくす」

薄く細められる双眸。半月を形作る唇。それはユージオには見せたことのない、悪意に満ちた笑み。

(随分と制限をかけてくれたみたいね)

彼女の持ち得る力は、ヒーラーとして最上級の神魔法Lv2という才能だけではない。
自身の精神世界へ引きずり込み、己の走狗へと変貌させる―――神にすら届き得るバランスブレイカーの才能、話術Lv3.
己の魂を極限まで穢し尽くして神に見放され、老いることも死ぬことが許されなくなった―――完全汚染人間としての肉体。
神魔法Lv2以外の力に制限がかけられている。話術Lv3に関しては特に顕著だった。
であれば、完全汚染人間としての不死性も相当制限がかけられているに違いない。

(逆に言えば、貴方達は私の力を恐れているってことでいいわよね。ハ・デスさんにイソノさん。それに―――バックにいる方々も)

無数の世界と彼らは言っていた。ならばこれだけの大規模な力を行使できるのは武藤遊戯の世界の住人だけではない筈だ。
そして、自身の力は彼らに通じるからこそ相当制限されたに違いない。

(首を洗って待ってなさい。私は私のやり方で人々を救済し、貴方達の元へ辿り着いて……その力を奪うわ)

アムの心は女神ALICEと決別した時から変わらない。神が人々に救いを齎さぬのならば、己が救いになる。神が人々を愛さぬのならば、己が愛する。
殺し合いに巻き込まれた人々も、ハ・デス達も、友を失った武藤遊戯も、先程語り合ったユージオも、等しく愛している。
だが、それ以上にアムにとって大切なものは万象を救うという大義。

(バベルの塔では法王一派……いえ、ランス君一派と敵対したけれど、今度は否が応でも協力してもらうわよ)

思い出される法王クルックー・モフスや英雄ランスらとの対峙。
クルックーが巻き込まれていたならば彼女とは争わずに互いの妥協点を見出して利用しあう。自身の救済にはいい顔はしないだろうけれど。
ランスが巻き込まれていたとしても同じ。人類の最終兵器たる彼の敵対は絶対にしない。彼のお眼鏡に叶うような女性への救済はほどほどにしておこう。
協力を求める際に対価に身体を求められることは想定済み。その時はたっぷりサービスしてあげよう。

(キリト君とユージオ君。二人は強い絆で結ばれていたみたいだけれど、どうなるのかしらね?)

アムの仲間となった剣士を思い浮かべる。彼の実力は一目見た時から相当なものだと判断できた。
彼女の見立てではおそらく剣戦闘Lv2に相当する才能を持っているだろう。故に唆して自身の力になるように誘導した。
その影響か親友への絶対の信頼が揺らぎ、不信感が募りつつある。もちろんこれも織り込み済み。

(ユージオ君が完全汚染人間になるのか。それともキリト君の友情を取り戻すのか。どちらに転ぶのかしらね)

おもむろにデュエルディスクにセットされているデッキに手を乗せ、ドローする。

「二人の行く末は―――ふふ、彼らの友情に幸あれ」

アムの手には漆黒の龍が描かれたカード。そのカードが意味するものは―――。


169 : 朽ち逝く青薔薇に口づけを ◆drDspUGTV6 :2022/06/24(金) 17:49:31 SrH0qJ6w0
【アム・イスエル@Ranceシリーズ】
[状態]健康、完全汚染人間
[装備]デュエルディスクとデッキ(武藤遊戯(表))@遊☆戯☆王シリーズ
[道具]基本支給品、魂の枷×4@Ranceシリーズ
[思考・状況]基本方針:多くの人々を救済し、魔王へと辿り着く
1:首輪を解除する手段を探す。
2:武藤遊戯を探して協力を仰ぐ。その際デュエルディスクは彼に返却する。
3:クルックー・モフスとは利用し合う。
4:ランスとの敵対は絶対に避ける。
5:汚染人間へと導く者は男性かランス好みではない女性に限定する。
6:ユージオの行く末を見守る。

[備考]
※参戦時期は不明。少なくともランス・クエスト マグナム以降。
※ユージオによりアンダーワールド@ソードアート・オンラインの知識を得ました。それに伴い、彼を取り巻く人間関係についても把握しました。
※制限により話術Lv3による精神世界への没入及び会話による洗脳が難しくなっています。
※制限により完全汚染人間としての不死性は失われています。どのくらい制限されているかは後述の書き手様にお任せします。





主を失い、静寂が戻った教会。
その薄闇の最奥の祭壇には一振りの長剣が捧げられていた。
銘はダークリパルサー。闇の払うものという名に相応しい清廉さが宿っている。
剣はただ孤独に、己の担い手を待ち続けている。


『支給品紹介』
【デュエルディスクとデッキ(武藤遊戯(表))@遊☆戯☆王シリーズ】
アム・イスエルに支給。武藤遊戯の表人格が闇バクラや藍神との決闘及び戦いの儀で使用したデッキを再現したもの。
下級モンスターが多く組み込まれている反面、上級モンスターは比較的少なめ。

【宝剣グラム@Ranceシリーズ】
アム・イスエルに支給。≪漆黒の王子-フォアリュッケン・クレッペ-≫もといランスの息子であるダークランスが三魔子レガシオから贈られた剣。
持ち手の怒りや悲しみといった負の感情によってサイズや攻撃力が変動する。初期状態は短剣サイズ。

【魂の枷×5@Ranceシリーズ】
アム・イスエルに支給。彼女がリーダーとなっていた組織≪導く者 -シュメルツ・カイゼリン-≫によって開発された黒い腕輪。
装着者の魂の汚染率を上げる効果がある。使用者曰く「つけると始めは楽になる。でも段々と暗い気持ちに支配される。麻薬のようなもの」らしい。
本ロワにおいては装備すると負の感情に支配されやすくなり、着け続けると元の人格が歪みやすくなる。

[備考]
※魂の枷を装備すると魂の汚染率というステータスが追加されます。
※魂の汚染率が80%を超えると汚染人間になります。
※魂の汚染率が80〜99%の状態で魂の枷を外すと、元装着者は強烈な自殺衝動に襲われ、あらゆる手段をもって自決を試みるようになります。
※魂の汚染率が100%を超えると完全汚染人間になります。元の人間に戻す手段は基本的にありません。
※完全汚染人間の不死性はアム・イスエルと同じ制限がかかっています。

【ダークリパルサー@ソードアート・オンライン】
ユージオに支給。アインクラッドにてキリトがエリュシデータと共に愛用していた緑がかった白い刀身を持つ長剣。
製作者はキリトの仲間のリズベットという女性プレイヤー。彼女と協力して手に入れたクリスタライト・インゴットによって作成された。

『施設紹介』
【教会@現実】
一般的な教会。聖堂の最奥には祭壇がある。
他にも応接室や客間があり、祈りや休憩にはもってこいの場所。

[備考]
最奥の祭壇にはダークリパルサー@ソードアート・オンラインが捧げられています。


170 : 朽ち逝く青薔薇に口づけを ◆drDspUGTV6 :2022/06/24(金) 17:50:05 SrH0qJ6w0
投下終了です。


171 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/24(金) 18:53:46 xfjzQtbY0
投下します


172 : テリブルファング ◆FiqP7BWrKA :2022/06/24(金) 18:54:20 xfjzQtbY0
阿鼻叫喚。血しぶき舞い散る惨劇の舞台。
その中心に少女が立っていた。
オレンジ色の体に密着したスーツにアーマーが着いたような装備、
シンフォギアを纏う彼女は、生きた歌を力に不浄を討つ歌姫。

そのはずだ。
だが真赤に光った眼に映る全てを壊さんとする姿は、
周囲の家などを一切気にせずNPCのモンスターたちを千切っては投げ、
ちぎっては投げ飛ばすその姿は、最早、人間であるはずなのに怪獣よりよっぽど怪獣らしい。

彼女、立花響は自身の肉体に融合したシンフォギア、ガングニールを制御できず、暴走状態にあった。
曰く、人の皮を被った破壊衝動。
もう既に敵が息絶えているとか、そもそも敵かどうかさえ、今の彼女にはわからない。
そんな彼女を

『レッキングリッパー!』

止めようとする者が一人いた。
赤黒い斬撃状のエネルギーを放ったそいつは、
銀色の肌に、微かに笑っているような口元。
青く光る吊り上がった目と、胸部の長方形のクリスタル。
赤と銀の体に黒いラインが走る彼の名は、ウルトラマンジード。
己が遺伝子に刻まれた運命をひっくり返す若きウルトラ戦士だ。

『行くぞ!』

咆哮を挙げて飛び掛かって来る響に挨拶代わりの二―キックを浴びせるが、
彼女は全く怯んだ様子もなく、組み付いてマウントを取ると、
ジードの手足を引き千切ろうと、両腕に力を籠める。

『レッキングロアー!』

しかしジードは即座に口から破壊音波を発して響を吹き飛ばそうとする。
踏ん張って耐えられはしたが、両腕の力が緩んだ隙に、
手にレッキングリッパ―を纏って響を払いのける。

「うぅううううううあぁああああああああああああ!」

それでもなお、何度でも組み付いてジードを破壊しようとする響に、
ジードも野生と格闘を織り交ぜたスタイルで対応する。
爪を立て合い、顔面を掴みあい、腕を捻じり合い、脚でけり合い、仕舞いには噛みつき合う。
そこら中に散らかされたNPCたちの残骸の上で、返り血まみれでもみ合い続けた。
いつまでも続くと思われた獣の喰らい合いだが、
流石に連戦の響の方が先に動きが鈍り始めた。

(今だ!)

響を思いきり蹴り飛ばし、距離を作ったジード。
彼は自身の内側の空間、インナースペースにある人間としての姿、朝倉リクを意識する。

「ライブ!ユナイト!アップ!」

リクは手にしたウルトラゼットライザーを操作し、
セットした3枚のメダルを読み込ませる。

<Ginga! X! Orb>

「集うぜ!綺羅星!」

掛け声とともにトリガーを押し、胸の前で両腕を交差させ、開く!

「ジィィィィィィィド!」

<Ultraman Geed Galaxy Rising!>

『シュワッ!』

三人のウルトラマンのパワーを強化アーマーとして纏う強化形態。
ギャラクシーライジングにタイプチェンジ。

「!!? がぁああああああ!」

一瞬驚いた響だったが、すぐに関係ないと言わんばかりに突っ込んでくる。
それを見たジードは、彼女にも負けない大きな咆哮を上げ、
胸の前で円を作る。
エネルギーが集まり出し、足を引くと同時に背後に不死鳥の翼のように展開され、

『レッキングフェニックス!』

右肘に左の拳を当てる様にしてL字に組んだ腕に収束。
必殺の光波熱線として発射した。


173 : テリブルファング ◆FiqP7BWrKA :2022/06/24(金) 18:54:45 xfjzQtbY0
「ー--っ!う、ううわぁああああ!」

なんとか耐えようとした響だったが、
流石に4人のニュージェネレーションヒーローズの力を乗せた必殺ビームには耐えきれず、
3ブロック吹っ飛ばされ、その先の電柱に激突して漸く止まる。
地面に崩れ落ちると同時に変身も暴走状態も解除され、気を失った。
本来の数十メートルサイズになれば、大抵のロボット怪獣を破壊できる大技だったが、
人間サイズにスケールダウンしている事、響がそれなりの装備を着ていたこと、
そして主催者側がゲームバランスをとる為か、ジードの力の何割かを封じたおかげで、
響は擦り傷や服がボロボロになる程度ですんでいた。
それを確認するとジードは、リクの姿に戻り、響の脈や呼吸を確かめる。
鼓動も呼吸音も非常に弱弱しい。

(体の傷はともかく、体力が持たないかもしれない)

そう判断したジードは、背負った自身のカバンの中から、
やや躊躇しつつも、青いクリスタルの付いたシルバーのブレスレットを取り出した。
後輩のZ曰く、リクとZの師匠(リクや本人は全くそのつもりはない)ウルトラマンゼロの武器、
ウルティメイトブレスレットである。

「ごめんゼロ。ちょっと借りるよ」

リクは響の手首にブレスレットを取り付けた。
ウルトラ族の活動限界時間を大きく伸ばせるブレスレットの神秘のパワーを受けた響は、
目を覚ますにはもう少し時間がかかりそうだったが、
しずかだが、確かに寝息が聞こえるようになり、脈も正常に動き始めた。
まずは一安心。だが、響ほどでないとは言え、
消耗したのはリクも同じ。
一刻も早く休むべく、響を背負ったリクは、星明りを頼りに無事な民家を探して歩いた。


174 : テリブルファング ◆FiqP7BWrKA :2022/06/24(金) 18:55:28 xfjzQtbY0
【朝倉リク@ウルトラマンZ】
[状態]:健康、人間態
[装備]:ウルトラゼットライザー@ウルトラマンZ
     ウルトラアクセスカード@ウルトラマンZ
     ウルトラメダル(ギンガ、エックス、オーブオリジン)@ウルトラマンZ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:ハ・デスの野望を食い止める。
1:まずはこの子の回復を待つ。
2:この子の力は一体?
3:この感じ、まさかベリアル?
[備考]
※Z本編、グリーザと戦う前からの参戦です。
※ウルトラアクセスカードは、一番最初に支給された参加者の物のみ支給されています。
※ウルトラゼットライザーは変身の際に、インナースペース(安全圏)にいる時間が短くなる様に調整されています。
※ウルトラマンとしての能力以外には何の制限もかかっていません。
※ウルトラマンとしての能力にかけられた制限については、後の書き手様にお任せします。


【立花響@戦姫絶唱シンフォギア】
[状態]:健康、気絶、服はボロボロ、あちこちに擦り傷
[装備]:ウルティメイトブレス@ウルトラマンZ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:この決闘を止める。
1:まずは動けるようになるまで休む。
2:リク君と行動する。
3:服がボロボロって、何があったんだろう?
[備考]
※無印12話からの参戦です。その為、決闘の詳細を知りました。
※暴走していた間の記憶は残りません。



支給品解説
【ウルトラゼットライザー@ウルトラマンZ】
ウルトラマンヒカリが、ウルトラマンZをデザインに盛り込んで作ったパワーアップアイテム。
正規のユーザーがウルトラアクセスカードを使って起動し、ウルトラマンや怪獣に強化変身することができる。
リクに支給された物にはウルトラアクセスカード、ギンガ、エックス、オーブオリジンのウルトラメダルが付属。

【ウルティメイトブレス@ウルトラマンZ】
ウルトラマンゼロが左腕に装着しているブレスレットで、
ウルティメイトイージスが変形した物。
多彩な機能を持っており、かつてゼロがダイナ、コスモスと融合した際に残留した力を元に、
ゼロをストロングコロナゼロやルナミラクルゼロへ変身させる能力、
次元移動を可能にするほどの膨大なエネルギーを蓄えれることを利用したウルトラマンの活動制限時間を大きく伸ばす能力、
更にはウルトラゼロアイやウルトラゼロマントを収納する能力など、
失ったウルトラゼロブレスレットと同じ能力をも備えており、
まさにウルトラマンノアを経由し、
人々の心の光が結集したことで生まれた神秘のアイテムに相応しい破格の能力を持つ。


175 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/24(金) 18:56:00 xfjzQtbY0
投下終了です。
続けて投下します。


176 : 君にだけ聞こえる声 ◆FiqP7BWrKA :2022/06/24(金) 18:59:09 xfjzQtbY0
黒尽くめの衣装に身を包んだ妖麗な女性がいた。
その顔は憎悪に満ち、手にした光のムチで当たりの岩にやたらめったら振り下ろし続けていた。

「どいつも!こいつも!どいつもこいつもどいつもこいつも邪魔をして!」

彼女は闇の一族と呼ばれる存在。
その中でも最後の生き残りとなった者である。
光に転じた最愛のトリガー、罠にはめたうえで裏切ったヒュドラム、
やることなすことに反対しかしないダーゴン。
トリガー以外の二人を排除し、ようやく念願の究極の力、
エタニティコアを手に入れようと手を伸ばした。
まさにその瞬間に彼女、カルミラはこの決闘に呼び出された。

「ハ・デスも!マナカ・ケンゴも!忌々しい人間どもも!
滅ぼして滅ぼして滅ぼして滅ぼし尽くしてやるぅうう!」

一際大きな岩をエネルギーのムチ、カルミラウィップで叩き壊し、
荒げた息を整えると、カルミラは背後のまだ壊していない岩を睨んだ

「居るのは分ってるよ。下等な人間。
さっさと出てきな。捻り潰してあげるよ!」

その言葉に従い出て来たのは、金髪の大人しそうな少女だ。
背は低く、体格も小柄で、制服を着ていなければ、
小学生に間違われることもありそうな感じの小動物チックな感じがする。
が、その目は目の前のカルミラを強く睨み、
一歩も動じない意志を感じる。

「気にくわない……気にくわないね!
その生意気な目、ユザレにそっくりだ!」

闇のオーラを纏い、本来の姿に戻ったカルミラは、
再び出現させたカルミラウィップで少女を攻撃した。

「!」

少女はそれを見切って転がり避けると、
立ち上がりながら手にしたウルトラゼットライザー起動。
それとほぼ同時にウルトラアクセスカードをセットする。

<Itsuki! Access Granted!>

イツキ、、犬吠埼樹は、メダルのセットされていないスロットを動かし、
待機音が鳴り出したゼットライザーのトリガーを押し、顔の前にかざす。
赤、青、白の三色の光が樹を覆い、その姿をカルミラの姿に似て非なる戦士の姿に変えた。

<Ultraman Zero!>

彼の名前はウルトラマンゼロ。
栄光のウルトラ六兄弟が一人、ウルトラセブンの息子にして、
ウルティメイトフォースゼロのリーダー。
先輩たちには一目置かれ、ジードやゼットなどの後輩戦士たちからは、
尊敬と信頼を集める若くして超一流のスーパールーキーだ。


177 : 君にだけ聞こえる声 ◆FiqP7BWrKA :2022/06/24(金) 18:59:30 xfjzQtbY0
⦅しゃっ!どうだイツキ!
これがウルトラマンゼロの変身……ってあれ?!⦆

(ど、どうしたんですかゼロさん?何か問題が?)

⦅ああ。イツキ、お前の喉、本当にその内治るのか?
肉体を共有してる俺まで全く喋れなくなったぞ!?⦆

(ええ!?)

「私を無視してなにしてるんだい!?」

(ゼロさん!)

⦅やべ!ゼロスラッガー!⦆

傍から見たら無言の一人漫才にしか見えないゼロに鞭を振るうカルミラ。
即座に切り替えたゼロは、頭に装着した二つの宇宙ブーメラン、
ゼロスラッガーを念力で操り、対抗する。

⦅イツキ、お前結構筋いいな!もしかして勇者も念力が使えるのか?⦆

(私、元々位置を武器に戦ってて)

⦅なるほど!なら俺も負けてられないな!⦆

戻って来たスラッガーを左右の手に持ち、
繰り出される鞭に対抗するゼロ。
カルミラは

「気に入らない!見れば見るほど気に入らないね、イツキ!
その無口なところも!その醜い色も姿も!」

その全ては愛憎入り混じったどうしようもない感情を抱くトリガーを、
そしてそのトリガーをどうしようもなく変えたマナカ・ケンゴを連想させた。

(好きで喋れなくなったわけじゃないのに……)

⦅くそう!テレパシーまで使えない!
なんかいつもより動きも悪いし、ハ・デスの野郎、
ゼットライザーに何かしやがったな!?⦆

が、不幸中の幸いか、それはカルミラも同じなようだった。
鞭とスラッガーの撃ち合いを終え、肉弾戦に移った二人だったが、
ゼロとほぼ同じようなペースでカルミラも動きが悪くなっていった。
その上、拳や蹴りからは、樹が気に入らない以上の苛立ちを感じる。

「面倒だね!これで情熱的な最期をくれてやるよ!」

そう言ってカルミラはカルミラウィップをカルミラバトンに変形させ、
クルクルと片手で回転させながらエネルギーを溜め始める。

⦅ちっ!仕方ねえ!イツキ!気合い入れろよ!⦆

(はい!)

「死ねぇええええええ!」

⦅ワイドゼロショット!⦆

カルミラバトンと、L字に組んだゼロの腕から放たれた光波熱線が両者の中間でぶつかり合う。
しばらくの拮抗の後、高まりに高まった熱のせいか、
バチン!と、激しい音を立てて弾けた。
変身が解除された樹と、人間態に戻ったカルミラが煙を挟んで睨み合う。

「ちっ!本当にどこまでもイラつかせてくれるねイツキ!
アンタには必ず情熱的に終わらせてやるよ!首を洗って待ってな!」

そう吐き捨てるとカルミラは体から闇を発して、
それを目くらましにその場から撤退した。


178 : 君にだけ聞こえる声 ◆FiqP7BWrKA :2022/06/24(金) 18:59:50 xfjzQtbY0
【カルミラ@ウルトラマントリガー NEW GENEREATION TIGA】
[状態]:健康、人間態、マナカ・ケンゴや人間に対する憎悪
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:邪魔者もハ・デスどもも倒して元の世界に帰る。
1:イツキは次に会ったら必ず殺す。
2:もし、マナカ・ケンゴも来ているなら見つけ出して惨殺する。
[備考]
※ダーゴン死亡後、エタニティコアへ接触する前からの参戦です。
※闇の一族としての能力以外には何の制限もかかっていません。
※闇の一族としての能力にかけられた制限については、後の書き手様にお任せします。


179 : 君にだけ聞こえる声 ◆FiqP7BWrKA :2022/06/24(金) 19:00:34 xfjzQtbY0
ようやく煙が晴れた戦場跡にて。
休憩を終えた樹はゼットライザーを片手に地図で確認した人の集まりそうな市街地に向かっていた。

⦅イツキ、まだ動けるか?⦆

(はい。ちょっと疲れましたけど、全く動けない程じゃないです)

⦅そうか。これこら辛い戦いが続くと思うが……⦆

(平気……ではないけど、大丈夫です。
ゼロさんもいますし、『なせば大抵なんとかなる』ですから)

⦅勇者の誓いか?⦆

(みたいなものです)

⦅そうか。余計な心配だったみたいだな。
それじゃあ行こうぜ!ハ・デスの野望を止めに!⦆

(はい!)

【犬吠埼樹@結城友奈は勇者である】
[状態]:健康、声帯が散華、ウルトラマンゼロが憑依
[装備]:ウルトラゼットライザー@ウルトラマンZ
     ウルトラアクセスカード@ウルトラマンZ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済み、スケッチブックは無し)
[思考・状況]基本方針:勇者としてこの戦いを止める。
1:あの闇の巨人(カルミラ)は特別警戒する。
2:もし勇者部の皆や他のウルトラマンたちが来ているなら合流を急ぐ。
3:喋れないけど、助けを求めている人が居れば、迷わない。
4:しばらくはタブレットのメモアプリを使う。でも出来ればスケッチブックが欲しい。
5:ゼロさんまで喋れなくなるなんて……。
[備考]
※ゼロと肉体を共有したため、変身前後を問わず喋れません。
※ウルトラマンとしての能力以外には何の制限もかかっていません。
※ウルトラマンとしての能力にかけられた制限については、後の書き手様にお任せします。

【ウルトラマンゼロ@ウルトラマンZ】
[状態]:正常、犬吠埼樹に憑依
[思考・状況]基本方針:ハ・デスを倒してこの戦いを止める。
1:ウルトラマンゼロともあろうものが不覚をとったぜ。
2:イツキに力を貸す。もし出来るなら、光の国で喉を治してやりたい。
3:他にも闇の存在が居るのか?
[備考]
※樹と肉体を共有したため、変身前後を問わず喋れません。
※ウルティメイトブレスは戦力バランスを考慮してか、奪われてしまっています。
※樹と一体化しているため、名簿には名前が載りません。多重人格と同じ扱いです。
※樹がゼットライザーを手にしていない限り、外の様子を確認することが出来ないようです。
※ウルトラマンとしての能力以外には何の制限もかかっていません。
※ウルトラマンとしての能力にかけられた制限については、後の書き手様にお任せします。

※テレパシーなど、ウルトラマンとしての能力に制限がかかっています。
 詳細は後の書き手様にお任せします。


180 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/24(金) 19:00:48 xfjzQtbY0
投下終了です。


181 : ◆wJPkWOa93Q :2022/06/24(金) 21:03:21 iorA2UUs0
投下します


182 : こんなになっちゃった…… ◆wJPkWOa93Q :2022/06/24(金) 21:04:12 iorA2UUs0











「あきらめたくないッッ!!」








ハチワレは叫んだ。
心の底から、腹の底から、体の芯から全霊で叫ぶ。

「ハーフ―」

その咆哮は、命の雄叫びは天を目掛け、大気を揺らし木霊となってハチワレに降り注ぐ。
だが、その想いが届くのは叫んだ己自身であり、この絶望的な窮地を脱す術が生まれる訳でもなく、当然誰かの助力など来るはずもない。
既に殺し合いは始まったのだ。望む望まないに関わらず、相手を殺めねばならぬ異常下のなかハチワレは鬼舞辻無惨と遭遇した。

「無駄な時間を……手間取らせるな」

無惨の鞭のように撓り、伸縮性を持たせた刃形状の腕を討伐用のさすまたで防ぎ、
続く二撃目を小柄な体躯を活かして屈んで回避、攻めへと転じようと突進したところを真正面から薙ぎ払われ、背中から地べたに叩きつけられる。
辛うじて防御に間に合ったさすまたも限界を超え砕け散り、ただ吹き飛ばされただけとはいえ、鬼の膂力で振るわれたそれを真っ向から受けたハチワレは立ち上がるのも困難なほどに陥った。

「ハ・デスと言ったか、冥府の閻魔を気取る気らしいが……この下等で弱小な塵芥が獄卒のつもりか?」

凄まじい怒気を放ち、無惨は顔に血管を浮かべ、ハ・デスに対する憎しみを口にしていた。
人も鬼も、身勝手に殺し食らい、悪びれもせず平然と1000年以上を生き続ける悪鬼たる無惨だが、特別殺しが好きという訳でもない。
遊びでしたこともあるかもしれないが、強要されて素直に首を縦に振るような性格でもなく、むしろ無駄な殺生を己に強要させるというハ・デスの傲慢さに苛立ちを覚えるほど、彼は傲慢だった。

「ハチワレちゃん!?」

同じく、ハチワレに同行していたクソでかいリボンをした女子高生、中野四葉はただ叫ぶしか出来なかった。
身体能力には自信がある彼女だが、殺し合いを行って即立ち回れるほど肝は据わってはいない。
ハチワレと無惨の交戦を見守ることしかできなかった。

「なになに!?」
「その脆弱な命も、多少の糧にはなるだろう。首輪の解析に数はあって困ることもない」

生かす理由もない。ハチワレを殺し首輪を回収してから、あのクソでかリボンの女を喰らう。そして首輪も回収する。
殺し合いに積極的に乗るつもりはないが、有用性も見いだせず人の目もないのなら、鬼としての欲求に従うだけのこと。

「な、なんとかっ……」

「命乞いか? 何故、私がそんなものを聞く必要がある」

「――――なんとかなれ――ッ!!!」

暗闇が支配する夜の時間が唐突に終わりを告げた。

「な、バカな……何故、どうして――――?」

その理不尽さに無惨は怒り長け狂う。
1000年の間、若さを維持し、人並外れた生物としての頂点に立ち続ける程、優れた生命体である無惨にも弱点がある。
それは太陽、日の光に対しては彼は一切無力で、浴びた瞬間体が崩壊を始め死亡する。

しかし分からない。時刻は丑の刻すらまだ超えていない深夜、何故そんな時間に太陽など現れるのか。

「神、か……!? 神すらも、私を滅ぼそうと……?」

「なにー? どうなっちゃったのー」

「ハチワレちゃん、何か合体してるよー!!?」

「エッ、エッ?」

四葉の目に飛び込んだ光景は金色の太陽のように光り輝く巨大な翼竜の額辺りに、ハチワレが雑草のように生えてきている不格好な姿だった。
ハチワレも急に視点が高くなり、無惨と四葉を見下ろしていることからすぐに状況が飲み込めた。


183 : こんなになっちゃった…… ◆wJPkWOa93Q :2022/06/24(金) 21:04:38 iorA2UUs0

「これって、同質化した……ってコト!?」

試しに翼を動けと念じると動いた。

「わっわっ……ブレインになっちゃった!」

「ッッ……!」

ハチワレが戸惑っている間、灰化する体に鞭打ち、無惨は全速力で逃亡する。
相手が太陽の光を伴った巨大な翼竜であるのなら、縁壱以上に勝ち目がない。
恥も外聞も何もかも捨て、ただひたすら恐怖と生存本能に従い無惨は疾走する。

「ヘックシ……!」

「や、やめ」

【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃 死亡】

「アッ、やっつけちゃった……」

だが、ハチワレがくしゃみと一緒に吐いたゴッド・ブレイズ・キャノンにより、燃え尽きて無惨は死んだ。






「――――……そうなっちゃったのは、ハチワレちゃんの支給品のせいみたいですね」

その後、何があったのか四葉がハチワレの支給品を漁ってみると、ラーの翼神龍というカードが出てきて、それとイラストが一致していたのでそれが原因だと断定した。
カードテキストを読んでみたが、彼女の頭脳ではあまり深く理解できなかったが、とにかく合体するということだけは目の前の現状から、推測できた。

「うーむ……戻れそうですか?」

「う〜ん……わかんないっ!」

「私も書いてあることを何度も読んでるんですけど……えー神は三体の生贄が、どうたらこうたら……何処にも合体なんて書いてませんね……。
 ラーのよくかみりゅうって言うらしいんですけど、うーん……」

「生贄って、人柱ってコト……!?」

「お腹、空いてますか?」

「あんまり〜」

「じゃ、多分大丈夫かなあ」

今のところ意識ははっきりハチワレのままな為、急ぐ必要はなさそうだが書いてる内容が物騒すぎる。

「とにかく、ハチワレちゃんが元に戻れる方法を探しましょう。それまで私も一緒に着いていきますから」

「……」



『や、やめ』

ぞくっ…。

『アッ、やっつけちゃった……』


強 く な り た い……。



「ハチワレちゃん?」

「……だいじょうぶっ、いつも……なんとかなってるもん」


184 : こんなになっちゃった…… ◆wJPkWOa93Q :2022/06/24(金) 21:05:19 iorA2UUs0


一瞬だけ、四葉は奇妙な既知感を覚えていた。元に戻ろうと話したその時、ハチワレの表情が何処かで見覚えがある気がした。
それは、四葉が上杉風太郎と同じ高校に転校する前に、姉妹達に抱いていた優越感、それに浸っていた時の四葉にそっくりだ。
無責任な部活動を掛け持ちし、優れた結果を残したものの勉学を疎かにして、学校を退学させられた挙句、他の姉妹全員を巻き込んだ。
あの時の自分を見ているようだった。
ハチワレがどんな生き方をしてきたのか知らないが、急に手に入った強大な力で四葉と同じような失敗をすることだってありえる、

(もしハチワレちゃんが間違えそうに……そうなったら、止めなくっちゃ、私が)

状況が状況だ。
姉妹纏めて退学もそうとうなやらかしだが、この殺し合いというシビアな場面では誰かを傷付け、殺してしまうこともありうる。
そうなれば、ハチワレもその被害者になってしまった人も、誰も救われない。
現に正当防衛とはいえ、実際に一人殺害してしまっている。

(上杉さんが私を選んでくれたのは、嬉しかったけど……きっとこれでよかったんだ。
 殺し合いなんて嫌だけど、私は選ばれちゃ駄目だから……)

5人の中から、自分を選んでくれた愛しい人に想いを馳せる。

文化祭終了後、上杉風太郎が誰を選ぶか、その答えは他の誰でもない四葉だった。

その選択は嬉しいけれども、けれど自分のせいで他の姉妹達を巻き込み、転校までさせた自分では釣り合いがない。
だから、殺し合いはともかく上杉から引き離してくれたことだけは、ハ・デスに少しだけ感謝もしていた。

(……とにかく、今はハチワレちゃんのことをちゃんと気を付けて見ておかないと)






この場にデュエリストが居るのならおかしいと思うだろう。
神のカードは所有者を選ぶ。そして、それに見合わぬ所有者なら時として鉄槌を下す。

ハチワレが本当にラーに選ばれたのか、否そうではない。

ラーの他に支給されたもう1枚のカード、神縛りの塚は如何なるデュエリストでも神のカードを強制的に従わせるという恐るべきカードがあるのだ。

これを創り上げたフランツという男は千年アイテムの関係者でもなければ、破滅の光とも一切関係なく、シグナ―でもバリアンでも、別次元の存在でもない、何の異能もない全くのただの一般人であるのだが。
何故か、神のカードを従えるという意味不明のパワーカードを作り出し、かつては数多のデュエリストを蹂躙してきていた。

悪意を持った者が手にすれば、一切のデメリットなしでその力を振るう事が出来る。最強最悪の殺人平気と化するといっても過言ではない。

さらに神を使役するカードである反面、それは神の意思に逆らうということでもある。
つまり、もし神縛りの塚から神が解き放たれた時、神罰は下される。


その時、誰がその矛先を向けられるかは、まさしく神のみぞ知る。


185 : こんなになっちゃった…… ◆wJPkWOa93Q :2022/06/24(金) 21:05:41 iorA2UUs0


【ハチワレ@なんか小さくてかわいいやつ】
[状態]:健康 疲労(小)、ラーと一体化、力への渇望(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ラーの翼神竜(コピー)@遊戯王デュエルモンスターズGX、神縛りの塚@遊戯王デュエルモンスターズGX(本人未確認)
     ハチワレのさすまた(破損)@なんか小さくてかわいいやつ
[思考・状況]基本方針:始まっちゃったんだっ……殺し合い!
1:知り合いを探す。
2:元に戻る方法も探したいけど……。
3:強くなりたい。
[備考]
※ちいかわのやりたいことリストを真似して以降の参戦です。



【中野四葉@五等分の花嫁】
[状態]:健康 
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしたくない。
1:ハチワレちゃんが元に戻る方法を探す。
[備考]
※格付けチェック(花嫁確定)直後からの参戦です。








【支給品紹介】

【ラーの翼神竜(コピー)@遊戯王デュエルモンスターズGX】

デュエルでの効果は割愛する。
OCG版の効果ではない。

名もなき王が冥界へと還る際、千年アイテムと共に消失した三幻神の一柱、それを復元したもの。
神に選ばれた所有者でなければ、本来はゲームにプレイするだけで神罰を下す程の危険なカードであったが、フランツは神縛りの塚を発動することでそのリスクを解消していた。
その効果は原典のラーとほぼ同じ、かつ古代神官文字(ヒエラティック)を唱える必要がなく、誰でも読むことが出来る。
リアルファイトに用いれば、非常に危険な代物となるだろう。



【神縛りの塚@遊戯王デュエルモンスターズGX】

デュエルの細かい効果は割愛するが、簡単に言えば神を従わせることの出来るカード。
酷似カードとして「オレイカルコスの結界」が存在し、千年アイテム抜きで「オベリスクの巨神兵」を操った前例もあるが、あちらと違いこの「神縛りの塚」は敗者の魂を奪うというリスクがない。
故に、一斉のデメリットなしで神のカードを使役可能という代物である。


186 : ◆wJPkWOa93Q :2022/06/24(金) 21:06:16 iorA2UUs0
投下終了します


187 : ◆LzgQeBsyQk :2022/06/24(金) 22:29:40 YmnYAXbU0
投下します。


188 : ◆LzgQeBsyQk :2022/06/24(金) 22:30:12 YmnYAXbU0


『Who’s that tapping at the window?
Who’s that knocking at the door?』

貴方ならどうする?

「殺し合いを止める」
「殺し合いに乗る」
「傍観する」

化物は、楽しむことを選んだ。

「殺し合いを止める」
「殺し合いに乗る」←
「傍観する」


【赤い化け物@Who’s That Tapping at the Window】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本:殺し合いを楽しみ、優勝する。


189 : ◆LzgQeBsyQk :2022/06/24(金) 22:30:24 YmnYAXbU0
投下終了します。


190 : 名無しさん :2022/06/24(金) 23:21:44 YdR3NvIY0
タイトル無いとwiki収録の際は無題になるけど大丈夫ですか?


191 : ◆LzgQeBsyQk :2022/06/24(金) 23:55:15 YmnYAXbU0
申し訳ありません。忘れていました。
タイトルは『窓を叩いているのは誰?』です


192 : ◆NIKUcB1AGw :2022/06/25(土) 00:32:31 xY8XkXrQ0
投下します


193 : フェニックス対フェニックス ◆NIKUcB1AGw :2022/06/25(土) 00:33:35 xY8XkXrQ0
「俺は……地球に戻ってきたのか……?」

灯のない街の中で、チンピラ風の男が呟く。
彼のその姿は、本来の姿ではなく擬態である。
その正体は、魔力を持つ人間が絶望することで生まれる怪物「ファントム」。
個体名を、「フェニックス」という。

不死鳥の名を冠する彼は、その名の通り不死の能力を持つ。
死んでも力を増し、また蘇る。
その力により、フェニックスは仮面ライダーウィザードをも圧倒した。
だが、敗北の時は訪れる。
ウィザードは彼を、太陽へ放り込んだのだ。

「おまえに、フィナーレはない」

ウィザードのその言葉どおり、フェニックスは永遠に太陽の表面で死と復活を繰り返すことになるはずだった。
だが彼はハ・デスによって無間地獄からすくい上げられ、決闘の参加者としてこの地に立つことになった。

「どうやったのかわからねえし、あいつが何者かもわからねえ……。
 だが、そんなことはどうでもいい!
 殺し合い? 上等じゃねえか! ただ死に続けるしかねえ時間を繰り返すのに比べれば、よっぽど天国だぜ!
 全員ぶっ殺した後は、誰の指図も受けず好きにやらせてもらおうか!」

デイパックに入っていた剣を手に取り、フェニックスは高らかに叫んだ。


◆ ◆ ◆


「一難去ってまた一難……。
 赤石長官なら、そう言うところか」

その頃、近くの区画にも一人の参加者がいた。
彼の名は、門田ヒロミ。
防衛組織「フェニックス」の司令官だった男だ。
この地に招かれる前、ヒロミは変身ベルト・デモンズドライバーを盗んで逃走した敵対組織の元幹部・オルテカに挑んでいた。
だが生身の状態では太刀打ちできるはずもなく、敗北。
同志である五十嵐三兄妹に後を託し、彼は崖から転落した。
そして次に意識を取り戻した時、彼は磯野とハ・デスの演説を聴いていた。
死を覚悟していたのに生き延びることができたのは、普通であれば喜ぶべきことだ。
だが生き延びた結果命がけのゲームに参加させられたのでは、話が別である。

「前途ある青年を、あんなむごいやり方で殺す所業……。絶対に許せん!
 この体でどこまでできるかわからないが、命に代えてでもハ・デスを……」

外見年齢こそ実年齢相応のヒロミだが、デモンズドライバーを繰り返し使用したことによりその肉体年齢は80歳以上にまで老化してしまっていた。
その事実は、彼も知っている。だからこそ、一度は戦いから退く決意を固めたのだ。
だが今は、多数の罪もない命が危険にさらされた緊急事態。
自分の命惜しさに、戦いを避けている場合ではない。
たとえ自分が生きて戻れなかったとしても、世界を守る使命はきっと五十嵐三兄妹が……。

「いや、待てよ……」

そこまで考えたところで、ヒロミはある可能性に気づく。
こうして自分が拉致されているということは、五十嵐三兄妹まで拉致されている可能性もあるのではないか、と。

「仮にそうだとしたら、非常にまずい……」

下手をすれば、世界の守り手が全てハ・デスの手に落ちてしまったことになる。
現状最大の敵であるオルテカも巻き込まれている可能性もあるが、そうだとしてもデッドマンズの残党は彼だけではない。
残されたフェニックスの一般隊員だけで、はたして世界を守りきれるだろうか。

「軽々しく死ぬわけにはいかないということか……」

もしも五十嵐三兄妹が巻き込まれていて、全滅でもしてしまえば世界の危機。
それを防ぐためには、少しでも彼らの力にならなければならない。
残り少ない命だったとしても、適当には扱えない。

「まずは情報を集めなければ……。
 いや、その前に……。何をするにしても、武器は必要だな」

とりあえず思考に一段落をつけ、ヒロミは自分に支給された荷物を確認する。
最初に出てきたのは、オレンジの装飾に彩られた一振りの剣だった。


194 : フェニックス対フェニックス ◆NIKUcB1AGw :2022/06/25(土) 00:34:40 xY8XkXrQ0

「これはひょっとして……ソードオブロゴスの聖剣か?」

ヒロミは、その剣に近しい物を知っていた。
以前強大な悪魔・ディアブロが復活した際に共闘した組織、「ソードオブロゴス」。
そこに所属する仮面ライダーたちが使っていた聖剣に、目の前の剣はよく似ていたのだ。
付属していた説明書きを読み、ヒロミは自分の考えが間違っていなかったことを知る。

「無銘剣虚無……。無の力を司り、使い手によっては世界を滅ぼしうるもっとも危険な聖剣……。
 なぜ俺のところには、ろくでもない力ばかり回ってくるのか……」

思わずため息を漏らすヒロミ。だが、この剣を使わないという選択肢はない。
力がなければ、何も守れないのだから。

「聖剣はおのれが認めた物にしか力を与えないというが……。
 どうか、俺を認めてくれ!」

ヒロミは共に支給されていた変身ベルト・ブレードライバーを装着し、そこへ虚無を納刀。
そして祈るような思いで、ワンダーライドブックをセットした。

「変身!」
『エターナルフェニックス!』


◆ ◆ ◆


そして数十分後、二人は遭遇する。

「おまえは……」

オレンジと黒の鎧を纏った戦士……仮面ライダーファルシオンとなったヒロミの姿を確認したフェニックスは、眉間にしわを寄せる。

「見たことねえ姿だが、おまえも魔法使いか!」

フェニックスはファルシオンをウィザードの同類と認識し、声を荒げる。

「魔法使い? 俺はそんな特別な存在じゃない。
 俺はただ……ヒーローになりたかっただけの男だ」

落ち着いた声で、ヒロミは返す。
だがその態度が、フェニックスをさらに苛立たせる。

「どっちにしろ、俺にとっちゃ敵だなあ!」

人間の擬態を解き、ファントム本来の姿に戻るフェニックス。
間髪入れずに携えた剣……スザク双天斬でヒロミに斬りかかる。
だがその一撃は、ヒロミの剣で弾かれる。

「その姿……デッドマンではないようだが、おまえも人類の脅威になる存在のようだな!」
「誰が死人(デッドマン)だ! 俺は不死身なんだよ!」

互いの剣が、幾度となくぶつかり合う。
お互い決め手を欠いたまま、時間だけが過ぎていく。
純粋な剣術の腕であれば、剣を持たぬデモンズで戦ってきたヒロミよりもフェニックスの方が上だ。
しかしファルシオンの高いスペックは、技術の差を埋めるには充分だった。

「めんどくせえ……。これならどうだ!」

しびれを切らしたフェニックスは、攻撃に変化をつける。
スザク双天斬を分離させ、二刀での攻撃に切り替えたのだ。

「何ッ!?」

この攻撃に、ヒロミは完全に不意を突かれた格好になる。
片方の刀がファルシオンの胸を捉え、衝撃で吹き飛ばす。
宙を舞ったヒロミの体は、偶然にも近くにあった川に転落した。

「ちっ、川かよ……。死んだかどうか確認できねえじゃねえか。
 まあいい。生きてたとしても、それなりにダメージは与えたんだ。
 放っておいても野垂れ死ぬだろ。次だ、次」

吐き捨てるようにそう言うと、フェニックスは人間の姿に戻って夜の街に消えていった。


【フェニックス@仮面ライダーウィザード】
[状態]疲労(小)
[装備]スザク双天斬@妖怪ウォッチシリーズ
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:優勝し、自由に生きる
[備考]
※参戦時期は、太陽に放り込まれた後
※蘇生能力は制限により封じられています。本人がそれに気づいているかは、現状不明です


195 : フェニックス対フェニックス ◆NIKUcB1AGw :2022/06/25(土) 00:35:43 xY8XkXrQ0


数分後、川の下流からヒロミが顔を出した。
フェニックスの想定とは裏腹に、さほど深刻なダメージは受けていない。
これも、ファルシオンの性能の高さのおかげである。

「くそっ、不覚をとった……」

悔しげに呟きながら、ヒロミは岸に上がる。

「やはり、俺一人では限界がある……。
 仲間を集めなければ……」

その言葉は、風にかき消されそうなほど小さかった。
しかしそこには、たしかな熱があった。

「我が命の、最後の灯火……。少しでも役に立ててみせる……」


【門田ヒロミ@仮面ライダーリバイス】
[状態]疲労(中)
[装備]無銘剣虚無&覇剣ブレードライバー&エターナルフェニックス@仮面ライダーセイバー
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:罪のない人々を守る
1:仲間を集める
2:五十嵐三兄妹や、ソードオブロゴスの剣士たちが巻き込まれていないか確認する
3:赤い剣士(フェニックス)と再び遭遇したら、今度こそ倒す
[備考]
参戦時期は、21話でオルテカの攻撃により崖から転落した直後


【スザク双天斬@妖怪ウォッチシリーズ】
「妖聖剣」と呼ばれる伝説の剣の一振り。
剣武魔神・朱雀が所持する。
普段は1本の大剣だが、縦に分割して2本の刀として使用することも可能。
また、風を操る力を持つ。


【無銘剣虚無&覇剣ブレードライバー&エターナルフェニックス@仮面ライダーセイバー】
使い手と共に封印されていた無の聖剣と、仮面ライダーファルシオンの変身アイテム一式。
かつて世界を滅ぼそうとした剣士・バハトが元々の使い手であったが、彼の死後デザストの手に渡り、さらに緋道蓮が受け継ぐ。
ファイナルライブではタッセルが使用し、「深罪の三重奏」では新たに3人もの使い手が登場。
時に敵として、時に味方として、やたらと使い回される聖剣である。


196 : ◆NIKUcB1AGw :2022/06/25(土) 00:36:48 xY8XkXrQ0
投下終了です


197 : ◆0EF5jS/gKA :2022/06/25(土) 01:17:08 c2sQAcH60
投下します。


198 : ◆0EF5jS/gKA :2022/06/25(土) 01:17:32 c2sQAcH60
このSSには性的表現が含まれています。
過激な性的描写が苦手な方には不快となる内容なのでご注意ください。


199 : 乱れる母と母 ◆0EF5jS/gKA :2022/06/25(土) 01:18:03 c2sQAcH60
殺し合いの場となった会場のどこかで
悪魔のように劣悪な母性を持って数えきれぬほどのこどもを犠牲にし、
小柄で長髪を玉状に結び朱色の花を髪にさした鬼女がいた。


ゴクッ ゴクッ ゴクッ 


それとは別にろくろっ首の如く伸びた首に鋭く長いかぎづめ
そして男性であれば見とれ、女性であればうらやむだろう巨乳を8つもつ
鬼女がこがらの鬼女を特定の行動以外はできないほど無力にさせていた。

無力になった鬼女の名は姑獲鳥、下弦の壱という肩書きを持ち自己満足のため
子供さらっては虐待しつつ看病も行い、その子どもが衰弱で死に至れば
胎内へ戻すという狂気かつ身勝手な目的で喰らい
毒親であることを極めたような悪鬼である。

無力にさせた巨体の鬼女の名は牛乳女、大糞赤子という邪鬼の母親にして
こちらも母性を振りまいた末に命を奪う、
数ある邪鬼の中でも最悪とよばれる邪鬼である。


無力となった姑獲鳥はなぜ無力とかしたか。


答えは母乳への中毒だ。

母乳の味、匂い、見た目など全ての要素に姑獲鳥は魅了されて虜となり
母乳のことしか考えられなくなっている。
牛乳女の母乳は想像を絶する中毒性がある上に
栄養素が極めて薄く母乳の犠牲となった者は栄養失調で衰弱死する。
だが姑獲鳥は陽の輝きだけを死の要因とする鬼だ。
栄養失調で死に至るかまではわからない。

(飲みたい…のみたいのみたい)

「ワタシのカワ…イイボウヤ…マダマダ…ノンデ…オチチ…」

(のみたのみたのみみ…の…みたお…お…)

「ヴォエえ!!」

「のみたい…のみたい…幸せがほしいだけなのに…なぜ飲めないの…?」

うっとりと光悦の表情で乳を飲みに飲もうしているはずが
子供が苦手な野菜を拒むように
口内や食道を一度は流れた乳をまるでゲロのように吐き出して
牛乳女の艶があり、なまめかしくも美しい巨乳は穢れた。

心は母乳を狂おしいほど求めても
鬼としての体は母乳を狂おしいほど拒否する。

姑獲鳥が乳を飲み干せなかったのにはわけがある。

それは鬼だからだ、鬼という種は基本的には人肉だけしか口にすることができず
それ以外の飲食物を飲み込むことはできず吐き出してしまう。

ゆえに驚異的な中毒性のある母乳を口に入れておいしいと感じても飲み込むことは極めて難しい。

そもそも飲むのが不可能というのになぜ姑獲鳥は中毒症状に襲われたのか。
その要因は殺し合いに召喚されるまえと同じく
身勝手な幸福のため、親の愛を受けられなかった子供を見つけ
最悪な自己満足で敷かない悪辣な看護を行うとしたらこの牛乳女に遭遇した。

はじめはこの牛乳女を単なる同じ鬼程度にしかおもわず無視しようとしたが
邪鬼であり、化け物と人間の区別すら付かず
生きている者すべてを乳を飲ませなくてはならない愛しい子として見ている牛乳女は
すぐさま接近し、姑獲鳥に母乳を飲ませようとした。

牛乳女は長い間くらい空間に閉じ込められて視力が激しく低下しているため
当初は姑獲鳥から逃げられてばかりだったが
まき散らした母乳という魅惑のシャワーが偶然口や鼻に入り、
すぐに吐き出したが、その母乳は目に耳にもはいった。
口ならともかく鼻と耳から入った液体を自力で排出する方法を姑獲鳥はもたない。


200 : 乱れる母と母 ◆0EF5jS/gKA :2022/06/25(土) 01:18:36 c2sQAcH60
その母乳が体内に入れば中毒で一巻の終わり、あまりの母乳ほしさに深刻な
禁断症状を引き起こすほどひたすらに飲み干したい甘美な液を
姑獲鳥は飲めない。欲しくても欲しくてもものにはできぬ地獄に陥ったのだ。

思考回路は母乳の白一色で染まり、己だけの幸せとなる身勝手な看病や
人肉への食欲、そして鬼の始祖鬼舞辻無惨への忠誠は
まるではじめから存在しなかったようにきれいさっぱり消え失せた。
今や母乳を心から求めるだけの快楽人形同然と化した。

(飲ませろ乳を!!お前のを飲ませろォォ!!飲ませろォォォォォ!!)

大量の青筋を立て、飲めない怒りと悔しさ、
鬼神ごときのおぞましい表情のまま乳をひたすらに吸った。

「アッンンアアアッアッアッアア!!」

今までに無いくらい強烈に乳を吸われた牛乳女は震えて揺れ動くほどの快感を爆発させた

吸う吸う吸い尽くしたい。全身全霊の力を込めて母乳を吸おうとする。
今度は食道もしっかり通り、腸内になんと母乳が届いた。
鬼は人間の飲食物を見ると嫌悪するが今だけは例外中の例外だろう。

母乳への執念が奇妙な奇跡を引き起こし
姑獲鳥の腹は母乳だけででっぷりと膨れ上がった。
それでも現実はあまりにも非情だった。

「えぐおおおおえっえっう゛ぇぼぼぼぼぼぼ!!」

お腹にたまった母乳を一気に吐き出した、
その光景はまるで崩壊したダムのようであった。
結果は同じだった、どうあがいても吐かずにはにいられない。


「ハァ ハァ 飲みたい…飲めない…飲ましてよ…飲ませてェ……お…ね…がい…」

飲みたくても飲めぬ絶望的なもどかしさによだれも涙すらも流した。

そして大量の母乳がでる巨乳は姑獲鳥の吸い跡で真っ赤に染まった。

「アッアッアアア…ンアアアアア」

乳首を極めて強い力で吸い付けられ牛乳女は感じずにはいられなかった。
ここまで強く吸い付けられ今まで体感したことのない快楽に牛乳女はもだえた。

牛乳女はむしろたらふくになって、たとえ腹が破裂しても
愛しきぼうやにはこの世で一番おいしい乳を飲まさせてあげたい。
母親として安心感と快楽をあたえ慈しみたいだけだ。
殺意や自己中心的な目的で苦痛を与えたいという悪意は存在しないのだ。

(飲ませて飲ませて飲ませろォォ!!今すぐにお前の飲ますぇええっ…えっ…えっ)

「ごぼおえ!!」

だめだ、やはり飲めない。


201 : 乱れる母と母 ◆0EF5jS/gKA :2022/06/25(土) 01:19:05 c2sQAcH60
口に入れて至福の味を楽しむことはできるが、どうしてもだめだ飲みきれない。

流したいのに流して胃や腸を、
いや姑獲鳥という生き物を構成する
一つ一つの細胞を
最上の乳による幸福で満たしたいだけなのに。

ゆがみ醜悪でしかない母性をまき散らした悪鬼は
また別の害そのものな母性に悲痛な苦しみだけを結果的に味わされている。

もし今お乳を飲んでいるのが人や吸血鬼であれば
快楽と欲求のままに飲み干し喜びのどん底に陥り
至福のまま栄養失調で死に至るだろう。

死は死でも至福は至福。死に行く者はみなおいしいという喜びを胸に抱き
牛乳女のどんなことよりも優しい母性に包まれて死ぬのだ。
恐怖と絶望に突き落とされたまま死ぬよりはるかに幸せかも知れない。

だが姑獲鳥にとって悲劇だったのは鬼であることだけだ。
もし姑獲鳥が人間の時にこの母乳を、弥栄であった頃に魔性の母乳を口にしていれば
吐き出すようなことは事態にはならなかった。

「飲みたいの!!お乳が欲しい飲みたいよ欲しい飲みたいのォォォ!」

「ソウ…ノンデ…カワイイボウヤ…ハナサナイカラ…」

飲めない地獄の中に歪んだ母性を振りまき続けた鬼女は突き落とされた。

そのとてつもない地獄は今まで姑獲鳥自身が行った最悪の看病が
さらに残酷な形になって帰ってきたようであった。

【姑獲鳥@鬼滅の刃】
[状態]:牛乳女の母乳に対する中毒(超特大)、母乳を飲めない怒りと絶望と悲しみ(超特大)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]基本方針:母乳をただ飲みまくりたい。
1:母乳を飲ませろォォォ!!!!
2:でも飲めない…何でなの……?
3:どうしても飲みたい…飲みたいのよ……
[備考]
支給された道具は母乳を飲むのに邪魔だから手放したようです。
姑獲鳥の近くに手放した支給品は放置されています。

【牛乳女@彼岸島】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]基本方針:ぼうやたちに母乳を飲ませてあげたい。
1:ボニュウを…ドンドンノンデ…カワイイボウヤ…
2:他のボウヤも見つけ次第母乳を与える。
[備考]
支給された道具は母乳を飲まさせるのに邪魔だから手放したようです。
牛乳女の近くに手放した支給品は放置されています。


202 : ◆0EF5jS/gKA :2022/06/25(土) 01:19:25 c2sQAcH60
投下は以上となります。


203 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/25(土) 14:07:22 x9CtjPvg0
投下します


204 : 6人目の海賊と変なワカメ ◆FiqP7BWrKA :2022/06/25(土) 14:11:34 x9CtjPvg0
「待てよぉ!僕の攻撃をさぁ!どうして避けるんだよォォォォォ!!」

「ひぃいいいいい!」

口元を覆う骸骨のマスクの怪人から、
体にぴっちりとフィット(しかもあまりに露出が多い)コスチューム、テイルギアを纏ったツインテールの少女が全速力で逃げていた。
彼女の名前は津辺愛香こと、テイルブルー。
ある世界において、ツインテール属性を守る戦士、ツインテイルズの中でも最も容赦がなく、最も残忍と恐れられる戦士である。
そんな生身で野生の熊に勝てる彼女だが、唯一にして最大の弱点がある。

「いぃいいやぁあああ!こっち来るな触手ぅううううう!」

触手である。
骸骨マスク、アサシンの英霊の力を宿した男の右腕は、無数の触手となっている。
この一点を持ってして、テイルブルーは戦闘不能になっていた。
その昔、海水浴に行った先で、大事にしていた髪に蛸に絡みつかれて以来、流石に今はもう料理されている物は平気だが、生きている蛸を見るだけでパニックになるくらいなのだ。

「だからさァ!さっさと当たれってんだよォォォォォ!」

アサシンの男が彼女の背中めがけて投擲剣を投げる。
的確に人体の急所を狙って放たれたそれは、吸い込まれるようにテイルブルーの心臓に

「ゴーカイスピア!ガンモード!」

吸い込まれることなく、一本残らず細く短いビームで撃ち落とされた。

「え?」

「だ、誰だ!?」

「とう!」

電柱の上に立っていたその男は宙返りを打って着地する。
月光と星明りをキラキラと反射する船乗りの衣装のシルバーの強化服に、金色のゴーグルアイと、黒いバンダナのデザインのメットの男だ。

「お前は一体……」

「真赤な太陽背にうけて!青き心に正義は宿る!
黄色い歓声浴びまくり!ぷにぷにほっぺをピンクに染める!
緑の風吹くスーパーヒーロー!金銀輝く!
その名も、ゴ〜〜〜カイ、シルバー!!」

如何にも特撮番組のヒーローな長ったらしい名乗りとポーズを終えた彼の名前はゴーカイシルバー。
地球の平和と人々の夢を守り続けて来た34のスーパー戦隊の力を受け継ぐ戦隊、海賊戦隊ゴーカイジャー6人目にして、唯一の地球出身の戦士である。


205 : 6人目の海賊と変なワカメ ◆FiqP7BWrKA :2022/06/25(土) 14:12:08 x9CtjPvg0
「触手怪人!お前の相手は俺だ!」

「八ッ!調子乗りやがって!
一体誰に向かって口をきいてるか分かってるのか?
この僕こそ間桐家の正式な後継者である間桐…マトウ――――…………………………………………なんだっけ?」

がくっ、と歯車がつっかえた人形の様に動かなくなるアサシンの男。
テイルブルーは、さっき前とは別種の恐怖をアサシンの男に感じていた。

「まァいいさ。お前ら殺してから思い出すとするよ!」

ゴーカイスピアをトライデントモードに変形しながら走り出すシルバー。
繰り出される投擲剣を弾き肉薄するが、まだ投擲剣に付いていたリングに触手が絡んでいた、
否、絡まされており、スピアを絡め取られてしまう。

「まずはお前だ!」

アサシンの男の左足が変形し、細く長い暗器が飛び出る。

「く、くそう!……なんてな!」

「!?」

さっさとスピアを手放したシルバーはアサシンの男の頭上を飛び越え背後を取り、
いつの間にか手にしていた携帯電話型ツールに、黒い人形の様なアイテムをセットする。

「ゴーカイチェンジ!」

<ラーーッイブマン!>

セットされた人形、歴代スーパー戦隊の変身能力の結晶であるレンジャーキーと同じ姿、
黒いバイソンを思わせる仮面に、白と黒の強化スーツ、
超獣戦隊ライブマンのブラックバイソンにチェンジしたシルバーは、
振り向いたアサシンの男の顔面に閃光のような左ストレートを叩きこんだ!

「ゲギャァ…ッ!?」

(姿が変わった!?
あの人形がゴーカイシルバーにとっての属性玉ってこと?)

「どうだ!ブラックバイソンさんのボクシング!」

「ウグッ…きヒッ…!なんだよそれ!
ずるだずるだずるダズルだずるだぁああああああああ!」

スピアを乱暴にかなぐり捨てたアサシンの男は、触手を体に纏い、
暗殺者というにはあまりに大袈裟な巨体を作り、
ブラックバイソンを叩き潰さんと猛進して来た。

「ッ! ゴーカイチェンジ!」

今度は青いレンジャーキーを取り出し、高速戦隊ターボレンジャーのブルーターボに変身。
急所を狙って繰り出される触手を加速の力で躱しながら、スピアを回収。
キーの力を受け、ブルーターボの専用武器、Jガンに変わったのを確認。
そして、固有技、Jガン乱れ射ちを発動。
アサシンの男の周囲を回り、全身という全身に光線を射ち込む。

「ンダソリャ…カユインダヨォォォ!!」

「なら!これだ!ゴーカイチェンジ!」

<ファーーイブマン!>

桃色に金色のVの字の模様のスーツに、
三本横線の入ったハート型のゴーグルの仮面の戦士、ファイブピンクにチェンジする。

「キューティーサークル!」

レイピア型の武器で弱点を的確につこうとするが、
なぜかファイブピンク一瞬、動くのを躊躇した。

「モラッタァアアアア!!!」

無数の触手を束ねた剛腕がファイブピンクを脳天から叩き潰した。


206 : 6人目の海賊と変なワカメ ◆FiqP7BWrKA :2022/06/25(土) 14:12:31 x9CtjPvg0
「ああ!そんな!」

「ハハ……ハハハハッ!クチホドニモナイ!
ヤッパリ…コノボクコソ最強ナンダ…!!
ジュリアン様カラ授カッタコノカードデ……」

ゴキッ、と音を立ててテイルブルーの方を向くアサシンの男。
うねうねとうごめき続ける触手を前に、やはりトラウマでパニックになってしまう彼女は動けない。

「や、やぁ!助けて、そーじぃ……」

「オ前モ殺「隠流忍法!折り鶴の舞!」イーーッデデデデ!ナンダッテ!?」


振り向くと、白装束のシノビの戦士にチェンジしたシルバーの姿があった。
さっきのでやられてなかったのか?
そう思って、クレーターの様になった拳跡を見ると、そこには潰れた藁人形があった。

「身代わり!?」

「驚いたか!これが忍者戦隊カクレンジャーの奥の手だ!」

「フザケヤガッテェエエ!!!」

テイルブルーを無視して再びニンジャホワイトにチェンジしたシルバーに襲い掛かるアサシンの男。

「何回だって来い!ゴーカイチェンジ!」

<ギーーッンガマン!>

「ギンガレッド!炎のたてがみ!」

アサシンの巨体をも巨大な灯に変える程の炎がギンガレッドの両腕から発せられる。
流石に大きく怯んだアサシンの男に走りながら新たにチェンジするシルバー。

<オーーッレンジャー!>

「電光・超力クラッシャー!」

両手に持った特殊サーメット製の刃の一対の斧、スクエアクラッシャーも用いて、
両足首を破壊し、動きを止めたシルバーは、その場で鳥人戦隊ジェットマンのイエローオールにチェンジ。
飛翔して距離を取り、光線銃のバードブラスターと、剣型武器のブリンガーソードを取り出し、
合体させて、ジェットハンドカノンを作る。


207 : 6人目の海賊と変なワカメ ◆FiqP7BWrKA :2022/06/25(土) 14:13:40 x9CtjPvg0
「これでトドメだ!」

触手の巨人に狙いを定め、引き金を

「そこだ!」

「ぐがッ!」

引かずに武器を分離させ、“背後にいた触手の無いアサシンの男”を斬りつけた。
そのままなんの受け身も取れずに地面と熱烈なハグをするはめになった。

「ゴ…………ギッ…!!
ナ……ナン……ッナンデ…!?
ドウシて…気付いた…!?」

「ファイブピンクさんのファイブピンクアイの透視能力で気付いた。
あの時点で、あっちの分裂した方は俺を疲れさせるための囮だったんだろう?」

もうシルバーには敵わないと悟ったのか、這いずってでも逃げようとするが、

「もう触手は品切れみたいね?」

その行く手を、今まで散々ビビらせてくれた分はリボンを付けて返すと言わんばかりに闘気を漲らせたテイルブルーがふさぐ。

「あんなに殺そうとしてくれたからには、
殺される覚悟も勿論出来てるんでしょうね?」

バキバキと拳を鳴らすブルーに、心底おびえた表情を見せるアサシンの男。
形成は完全に逆転していた。

「ヒッ!い、嫌だ!死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!」

「……お前が今まで殺してきた人たちだって同じだったはずだ!
お前だけが虫のいいことを言うな!」

そう叫ぶシルバーに、アサシンの男はおびえながらも、怒りの表情を向け、

「馬鹿にするなァ!!そんなことは知ってるんだよ!!
忘れるもんか!!世界中の誰もが死に居たくないって思ってる…!!
だからジュリアン様は……………!!」

そこまで言った所で、アサシンの男は、急にはっとした表情を見せた。
そして残った腕でワカメみたいな変な髪形の髪を掻きながら乾いた笑いを上げ始める。

「なんだよ、僕は五年前にとっくに終わってたんじゃないか。
こんなになって漸く思い出すなんて……」

「どうゆう意味だ?」

「そのままの意味だよ。もういい。殺してくれ」

「急に潔いじゃない?どうゆう風の吹き回し?」

「もう疲れたんだよ。これ以上殺すのも殺されるのも御免だ」

そう、とだけ短くつぶやくと、テイルブルーはフォースリボンから取り出した専用武器のウェーブランスでその首をはねた。
短い光の後、そこには等身大の球体関節人形と、暗殺者の絵柄の書かれたカードだけが残る。

「な、なにこれ!?人形?」

(ゴーマ族に似てるけど、なにか違う。
ハ・デスや磯野の言っていた色んな世界って言うのは本当みたいだな……)

アサシンのカードを回収し、変身を解除して間桐某だった人形に手を合わせるゴーカイシルバーこと伊狩鎧。
テイルブルーも続いて手を合わせた。

「……あ、そうだ!君、けがはない?」

「はい。助けてくれてありがとうございます。
私、テイルブルーっていいます。えーっと、ゴーカイシルバーさん、でいいんですよね?」

「はい!ゴーーッカイシルバー!伊狩鎧です!
よろしくお願いします!テイルブルーさん!
こんな時に言うのもなんですけど、並行世界のスーパーヒロインと共闘できるなんて光栄です!」

そう言って鎧はブルーの手を取り、握手を交わした。

「並行世界のこと、知ってるんですか?」

「はい!俺の先輩の爆竜戦隊アバレンジャーさんって方々が、
並行世界から来た敵と戦っていて、それで並行世界の存在自体は知られています!」

「なら話は早いですね。
じゃあどこか落ち着けるところでもうちょっとちゃんとした話を……。
あと、別に敬語じゃなくていいですよ?
私の方が歳下ですし」

「いえ!本物のスーパーヒーロー、スーパーヒロインは俺の憧れなんで、こればっかりは」

「はぁ……」

なんだかちょっと暑苦しい人だな、けど悪い人ではなさそう。
と、思いながらテイルブルーは久々に会った気がする感性がまともそうな人にちょっと新鮮な物を覚えていた。


208 : 6人目の海賊と変なワカメ ◆FiqP7BWrKA :2022/06/25(土) 14:14:14 x9CtjPvg0
【津辺愛香@俺、ツインテールになります。】
[状態]:健康、テイルブルーに変身中。
[装備]:テイルブレス(ブルー)@俺、ツインテールになります。
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:ハ・デスや磯野をぶっ飛ばして元の世界に帰る。
1:あの触手お化け、人形だったの!?
2:とりあえず伊狩さんと行動する。
[備考]
※参戦時期は少なくともリヴァイアクラーケギルディ撃破後です。
※変身後の出力低下以外の細かい制限などに関しては後の書き手様にお任せします。

【伊狩鎧@海賊戦隊ゴーカイジャー】
[状態]:健康、疲労(小)
[装備]:ゴーカイセルラー@海賊戦隊ゴーカイジャー
     レンジャーキー(ゴーカイシルバー)@海賊戦隊ゴーカイジャー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
     レンジャーキーセット(ライブマン〜ギンガマン)@海賊戦隊ゴーカイジャー
     サーヴァントカード アサシン@Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ3rei!!
[思考・状況]基本方針:ハ・デスたちをぶっ潰して決闘をぶっ壊す!
1:やっぱり違う世界の怪人だったのか、ゴーマ族に似てるな……。
2:とりあえず異世界のスーパーヒロインらしきテイルブルーさんと行動する。
[備考]
※参戦時期はテン・ゴーカイジャー終了後からです。
 その為後輩たちもキラメイジャーまで間違いなく知っています。
※ゴーカイスピアは、ゴーカイシルバーへの変身と同時に自動で出現します。
 生身でもセルラーとゴーカイシルバーのキーが手元にある限り、任意で呼び出せます。
※細かい制限などに関しては後の書き手様にお任せします。



【桜の兄@Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ3rei!! 消失】



支給品解説
【テイルブレス(ブルー)@俺、ツインテールになります。】
使用者の属性力と共鳴してテイルギアを起動するためのブレスレット型デバイス。
スーパー戦隊で言う所のクロスチェンジャーやオーラチェンジャーと同じタイプの変身ブレス。
通常は対象を周囲から認識されにくくなり、存在そのものを虚ろにする攪乱装置、
イマジンチャフにより他人に視認不可能だが、当ロワではその機能は取り除かれている。
基本的にツインテール属性の属性玉がコアとなっており、変身後は出力制御機構となる。

【ゴーカイセルラー@海賊戦隊ゴーカイジャー】
ゴーカイシルバーの携帯電話型変身アイテムで、
セットしたレンジャーキーに対応した戦士への変身が可能。
ゴーカイシルバーのレンジャーキーとセットで支給される。
変身以外の機能として、豪獣ドリルor豪獣レックスの召喚、
留守番電話、カメラ撮影などがある。
当ロワでは豪獣ドリルor豪獣レックスの召喚は制限により使えない。

【レンジャーキーセット(ライブマン〜ギンガマン)@海賊戦隊ゴーカイジャー】
歴代スーパー戦隊の変身能力が形になった人形、鍵型アイテム、レンジャーキーのセット。
モバイレーツかゴーカイセルラーに使う事で変身アイテムとして、
ラッパラッターで使う事で召喚アイテムとして機能する。
このセットではライブマンの五人、ターボレンジャーの五人、
ファイブマンの五人、ジェットマンの五人、ジュウレンジャーの初期五人、
ダイレンジャーの初期五人、カクレンジャーの初期五人、
オーレンジャーの初期五人、カーレンジャーの初期五人、
メガレンジャーの初期五人、ギンガマンの初期五人の55本で一つの支給品扱いである。

【サーヴァントカード アサシン@Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ3rei!!】
ある世界の聖杯戦争において使われる魔術礼装。
高度な置換魔術とピトスの泥を用いて成立している。
英霊の座と繋がっており、礼装に通して繋がっている英霊の宝具や武具に変化させる限定展開(インクルード)、
英霊をその身に宿し、使用者自身を一時的に英霊化させる夢幻召喚(インストール)の二種類の機能が有る。
夢幻召喚する場合は、使用者によって武器や服の意匠が変化する。
このカードは歴代のハサン・サッバーハの座と繋がっている。


209 : 6人目の海賊と変なワカメ ◆FiqP7BWrKA :2022/06/25(土) 14:14:33 x9CtjPvg0
投下終了です。
続けて投下します。


210 : 噴上裕也は暴かない。 ◆FiqP7BWrKA :2022/06/25(土) 14:19:25 x9CtjPvg0
川の流れの音が静かに響く森の中にて。
長身痩躯に、改造制服を着た男が、汗をだらだら流しながら、考え込んでいた。

突然移動させられた自分、いつの間にかつけられた爆弾首輪。
磯野とか言う男に、カードから生まれたとぬかすハ・デスとか言うスタンドのような何か。

何もかもが、世界の裏側、
その中でも一際奇妙な一面に片足を突っ込んでいるkれの目から見ても、
今回の出来事は異常だ。

それでも叫び出したり、派手に動いたりしていないのは、
彼の『訳も分からずみっともなく喚くのはカッコ悪い』という考えからだ。

彼は、噴上裕也はナルシストだ。

自分の容姿をダビデ像と形容し、三人も女を侍らせているような男だが、
カッコよさを追求するとは、時にカッコ悪さを許さない黄金の誇りでもある。
故に

(俺はこの決闘には反対だ。むしろ率先して阻止させてもらう!)

こんな爆弾付きの首輪で脅すという事は、
間違いなくこうでもしないと進んで殺し合うとは思えない人間も呼んでいるという事と同義だ。
そんな奴らに従う理由は裕也にはなかった。
そしてこの決闘に乗った連中にも、屈してやるつもりはない。
だからまず、身に降りかかるかもしれない危険を排除するところから始めることにした。

「おいそこ!そこの風上に居るお前!出てこい!
風に乗って匂うぜ!女物の化粧品の匂いがよお!
変装のつもりか知らねーが、バレバレなんだよ!出てこい!」

裕也は特別鼻の利くの男であった。
ある時目覚めた能力の副次的な物で、警察犬もさながらの嗅覚を誇る。
故に、木の影から現れたロリータファッションに身を包み、
長い桃色の髪でサイドテールを作った者には大いに驚かされた。

(な、なに!?いや、俺の鼻がおかしくなったわけがねえ!
て、事は、こいつは……)

裕也だけが自慢の鼻で文字通り嗅ぎ当てた一つの答え。
それをここで指摘して、こいつに恥をかかせるのは一番カッコ悪い。
そう判断した裕也は大きく咳ばらいをすると、

「あー、悪いな。ビビらせすぎちまったみてえだな。
まあこんな状況だしよ。俺もちょびっとばかし神経質になってたみたいだ」

「ううん。仕方ないよ」

出て来たサイドテールの者は、裕也を警戒しながらも、近付いて来た。
それは害意に怯えるというより、裕也そのものに怯える怯え方だった。

「俺は噴上裕也。この決闘にはのってない。
お前の名前も聞かせてもらっていいか?」

「暁山瑞希。よろしくね」

二人は物凄くぎこちない握手を交わした。


211 : 噴上裕也は暴かない。 ◆FiqP7BWrKA :2022/06/25(土) 14:19:47 x9CtjPvg0
【噴上裕也@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:この決闘に乗るなんてカッコ悪いことはしない。
1:もし仗助たちも呼ばれているなら合流したい。
2:あの女どもは呼ばれていませんように……。
3:暁山の秘密は絶対に口外しない。
[備考]
※参戦時期は仗助たちと和解、エニグマの少年撃破後です。
※細かい制限に関しては後の書き手様にお任せします。

【暁山瑞希@プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク】
[状態]:健康、不安(中)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:生きて帰る。
1:臭いで分かるってまさか……
2:噴上さん、悪い人じゃないみたいだけど……。
[備考]
※参戦時期などは後の書き手様にお任せします。


212 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/25(土) 14:20:02 x9CtjPvg0
投下終了です。


213 : ◆7PJBZrstcc :2022/06/25(土) 14:52:14 kvAd5GEU0
投下します


214 : カオス・ソルジャー ◆7PJBZrstcc :2022/06/25(土) 14:52:49 kvAd5GEU0
「冥界の魔王ね……閻魔とは違うのかしら?」

 会場のどこかで、一人の少女が物思いにふける。
 ピンクなのか紫色なのか判断しがたい髪色と、胸元に浮かぶ目玉が特徴的な彼女の名前は古明地さとり。
 旧地獄の地霊殿の主である。

 彼女が考えるのはハ・デスのこと。
 外見に驚くことはないが、いきなり招かれたデュエルには流石に驚く。
 ハ・デスが何を思ってこんなことをしたのか、なぜ自分も参加者に選ばれたのか、疑問は尽きない。
 しかし現状では情報が無さ過ぎて、何を考えるのも難しい。

「おまけに私の能力も効かないし」

 さらにいうなら、さとりの持つ能力もハ・デスとその前に出てきた磯野には通用しなかった。
 彼女には『心を読む程度の能力』があるが、主催者は自分達の目論見が漏れないように対策を立てていたのだ。
 対策を立てることは理解できるが、それはそれとして自身の能力を誇りに思う彼女としては、ハ・デスの存在は許しがたいものだった。
 故に彼女の行動方針は、いかなる手を以てしてもハ・デスを倒すこととなる。

 その為にはやはり他の参加者、特に最初の場で遊戯と呼ばれていた少年と接触するのが必須だろう。
 正直、地底の嫌われ者と仲良しこよしできる人間が居るのか、という疑問はさとりの中にもあるが、接触しないという選択肢もないので、ある程度は出たとこ勝負で行くことにした。

「ブブブブヒィィィィィーーーーーー!!」

 するといきなり、どこからともなく叫び声が聞こえる。
 さとりが声のする方を見ると、少し離れた所に一人の男がこちらを見ながら吠えていた。
 どこか蟹を思い起こされる特徴的な男は一通り吠えると、何事もなかったかのように自己紹介を始める。

「俺の名前は不動遊星」
「……っ!?」

 遊星と名乗った男の心を読もうとするさとり。しかしそこで彼女は二つの衝撃に襲われ、思わず顔をしかめる。
 まず、単純に心が読み辛くなっている。心を読もうとするだけで、体に少し負担がかかるのだ。
 これは直接的な戦闘だけでなく、騙しあいや蹴落としあいを見たい主催者が、それを台無しにしかねない彼女の能力に枷を掛けたのだと理解できる。
 しかし、もう一つはそうはいかない。
 さとりには理解できないが、なぜか制限とは別に遊星の心が読み辛いのだ。
 まるで、本来の在り方から歪められ心の在り方が変わり、あるべき光景が映らないかのように。

「大丈夫か!?」
「……ええ、問題ないわ」

 そんなさとりの葛藤など露知らず、遊星はいきなり顔をしかめた目の前の少女を心配する。
 それに適当な返答をしながら、さとりもまた自己紹介をする。

「古明地さとりよ。地霊殿の主にして――」
「そうか。ならさとり!」

 しかしその自己紹介は遊星に遮られる。
 さとりがそれを不愉快に思うよりも先には、彼は力強く彼女にあることを求めた。

「俺と[[ピー]]しろぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!」
「……はい?」

 いきなり叫んだことと、内容に思わず思考が止まるさとり。
 ちなみに諸事情で伏字になっているものの、遊星が求めているのはいわゆる性的な行為である。

 さとりとしては驚愕しかない。
 この状況でそんなことをやりたがる精神と、相手がさとり妖怪とも知らず性欲を抱く彼の滑稽さに。
 故に、彼女からすれば目の前の相手はいっそ新鮮とすら思えた。
 だがいくら新鮮でも、こういえばさっきの言葉を取り消すだろうと判断して彼女は遊星に言葉を返す。

「言っておきますが、私は人間ではありません。さとり妖怪ですよ?」
「そんなことはどうでもいい!!」
「  」

 遊星の力強すぎる断言に、言葉を失うさとり。
 もしかして自分が知らないだけで、人間の男とはこんなのばっかりなのだろうか、とすら思ってしまう。
 あるいは、さとり妖怪がどういう物か知られていないのだろうか。


215 : カオス・ソルジャー ◆7PJBZrstcc :2022/06/25(土) 14:53:28 kvAd5GEU0

「はぁ……はぁ……」

 さとりの思考など関係なく、息を荒げ始める遊星。
 ここで彼女は、目の前の相手を殺すことを視野に入れ始めた。
 正直鬱陶しいと同時に、もしかしたらいるかもしれない妹やペットに危害を加えそうな存在を、見過ごす道理もないのだ。

 さて、ここまで読んだ方の中には「不動遊星はこんなキャラじゃないだろ! いい加減にしろ!!」と思う方もいるだろう。
 まず、不動遊星とは『遊戯王5'Ds』の主人公であり、仲間との絆を胸に戦う決闘者である。変人な部分はあるものの、断じて変態ではない。
 しかし彼は本編の遊星ではなく、遊戯王MADシリーズの一つ『やりたい放題シリーズ』の遊星である。
 このシリーズでは大抵、彼は女キャラにブヒる変態キャラと化しているので、このロワでもそうなっているのだ。

 さて、遊星の殺害を視野に入れ始めるさとりだが、彼の身勝手な欲望に否定的なのは彼女だけではない。
 ここに、新たなる乱入者が現れる。

「何やってんだぁぁぁああああ!!」

 遊星の身勝手な言動を非難する叫びが、彼とは違う場所から響き渡る。
 さとりと遊星の二人が叫び声のする方を見ると、そこには銀髪で特徴的な前髪をした、褐色で二メートル程の大男が、強い怒りを携えた目をして遊星を睨んでいた。
 しかし遊星は一歩も怯まない。

「貴様は何者だ!?」
「俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……!!」
「!?」

 さっきまで元気に叫んでいたのに、急に息も絶え絶えで死にかけになるオルガに驚くさとり。
 だがオルガはまた元気になったかと思うと、話を進める。

「なあ、お前状況分かってんのか?」

 遊星に凄むオルガ。
 彼は少女にいきなり性的な行為を求める遊星に怒っていた。
 元々、非道な大人にゴミのように扱われる子供たち、ヒューマンデブリを少しでもなんとかしたかったオルガは、目の前の光景は決して許せないものにしか映らない。
 それでもなお、遊星は自らを改めない。

「いいや、俺は正しいはずだ! お前は間違っている!!」
「そうかよ……なら、やっちまえ! ミカァ!!」

 オルガ勢いよく叫ぶも何も起こらない、と思ったのもつかの間。
 即座に上空数十メートルの地点に、推定二十メートルほどの巨大な人型兵器、ガンダムバルバトスが現れる。

『慣性制御システム、スタスター全開』

 バルバトスは腕にロケット砲を構え、遊星に向けて数発弾を発射してきた。

「おら逃げろお嬢さん!」
「滅茶苦茶するわねあなた……」

 だが巨大な弾が人一人を正確に狙えるわけがない。
 オルガは即座にさとりを逃がそうとする。

 ここで、このオルガ・イツカについて解説しよう。
 オルガ・イツカとは『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の主人公のうち一人である。ガンダムのキャラである以上、召喚なんてファンタジーなことはできない。
 だがこのオルガは、他作品とのクロスと死ネタで一時期ブームを掻っ攫ったMADシリーズ『異世界オルガシリーズ』のオルガだ。
 このシリーズでは、オルガが召喚で相棒の三日月・オーガスを呼び寄せる能力持ちなこともあるので、このロワでもそうなっているのだ。
 ところで、異世界オルガシリーズのオルガにはもう一つ特徴がある。それは――

「うぉぉぉおおおお!!」

 とにかく攻撃を吸引しやすいということ。
 時に敵の、あるいは味方の攻撃を引き付けて、彼は死亡シーンを見せ続ける。
 今回はバルバトスが放った砲弾の内一発が、オルガに命中したのだ。

「だからよ、止まるんじゃねえぞ……」

 そしてオルガは、一部の人なら親の顔より見たシーンと共にこの世を去っていった。


【オルガ・イツカ@異世界オルガシリーズ 死亡】


「じ、自分の召喚獣に殺された……!?」

 目の前で起きた光景に戸惑いを隠せないさとり。
 しかし、次の瞬間更に理解を超える出来事が起こる。

「……えっ!?」

 なんと、さとりの目の前でオルガの遺体が首輪とデイパックを残して消失したのだ。
 これはこのロワ特有の制限である。

 そもそも異世界オルガのオルガ・イツカは、極度の紙耐久の対価として蘇生能力を得ていることがほとんどだ。
 しかしデスゲームにおいて、何度死んでも蘇る存在などペテン以外の何物でもない。
 そこでハ・デスは、このオルガを死亡と共に異世界に転生させるよう仕向けていたのだ。


216 : カオス・ソルジャー ◆7PJBZrstcc :2022/06/25(土) 14:53:58 kvAd5GEU0

 そんな事実を知る術のないさとりのキャパシティは正直限界だが、だからと言って止まるわけにはいかないわけがある。
 それは――

 ズガァァアアン

 轟音を響かせて、空中から落ちてきたバルバトスが着地し、巨大なメイスを遊星相手に振るい続けているからだ。正直、距離を取らないと巻き込まれかねない。
 一方、直接狙われている遊星は、決闘者特有の超耐久と身体能力で必死に致命傷を回避し続けるが、いくらか続けていると限界が訪れた。

『お前、消えろよ』
「うわあああああああああああああああああ!!」

 バルバトスのメイスがついに遊星を捕らえ、彼はなすすべもなく飛んでいき、さとり達から離れた所へ飛んでいく。
 これだと生死が分からないので、きちんとこう表記しておこう。


【不動遊星@遊戯王MAD(やりたい放題シリーズ) 死亡】


 こうして遊星を倒したバルバトスは、役目を終えたとばかりに消失する。
 色々と頭が追いつかないさとりだが、とりあえず彼女はこう決断した。

「逃げましょう」

 さっきまでの戦闘はあまりにも轟音が響きすぎた。なので危険な参加者が集まりかねない。
 そう考えたさとりは、何かに使えるかもしれないと考え、オルガのデイパックと首輪を携え、この場を逃げ出した。


【古明地さとり@東方project】
[状態]:健康、困惑
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3、オルガ・イツカのデイパック(基本支給品、ランダム支給品0〜1)、オルガ・イツカの首輪
[思考・状況]基本方針:ハ・デスを倒す。一応このデュエルには乗らないつもり
1:とりあえずこの場から離れる
2:さっきまでのあれは何だったの……?
[備考]
※制限として、心が読める程度の能力を使用すると体に負担がかかるようになっています。
※制限とは別にミーム汚染、二次創作出展キャラの心が読み辛くなっています。
 原作とキャラ乖離が大きいほど読めなくなります。


※不動遊星の遺体と彼のデイパック(基本支給品、ランダム支給品1〜3)が会場のどこかに放置されています。
※会場のどこかで戦闘音が響き渡りました。周囲のエリアにいれば聞こえると思われます。


【三日月・オーガス@異世界オルガシリーズ】
オルガ・イツカの支給品扱いされているが、厳密には支給品ではない。
本ロワではオルガの魔力を消費することで召喚できる召喚獣扱いとなっている。
また、消費魔力量を増やすことでガンダムバルバトスに乗った状態で召喚できる。
さらに増やすことでバルバトスをルプス、ルプスレクス状態にすることも可能。
また、三日月だけで支給品二枠とっている。


217 : ◆7PJBZrstcc :2022/06/25(土) 14:54:23 kvAd5GEU0
投下終了です


218 : ◆OmtW54r7Tc :2022/06/25(土) 17:14:41 NzgAX7r60
投下します


219 : 遊戯の王なんだろ、遊べよ ◆OmtW54r7Tc :2022/06/25(土) 17:16:41 NzgAX7r60
「許さない…許さないぞ…」

少年は激怒した。
必ず、かの 邪智暴虐の王、ハ・デスを除かなければならぬと決意した。

「殺し合いなんて…そんなの間違ってる…!」

彼にはハ・デスや磯野の思惑は分からぬ。
彼は、ただの中学生である。
毎日、小学生と遊んで暮らしていた。
けれども遊びに対しては、人一倍敏感であった。

「カードゲームを殺し合いの道具にするなんて…絶対に間違ってる!」

彼の名は南波遊助。
無類の、遊び人(コロコロキッズ)だ。

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

ハ・デスは、この殺し合いを決闘(デュエル)と称した。
その上で遊助に支給された遊戯王カード…デュエルのカード。

「あのハ・デスって奴…カードゲームを殺し合いの道具にしようとしてるんだ!」

遊☆戯☆王オフィシャルカードゲーム。
コロコロホビーよりちょっと大人の、ジャンプホビーのカードゲームであるが、当然生粋の遊び人である遊助は知っているし、大好きである。
そんな大好きなカードゲームを、ハ・デスや磯野は殺し合いの道具に利用している。
それが、彼には許せなかった。

「カードゲームは殺し合いの道具じゃない…楽しく遊ぶためのものだ!」

彼は、遊戯王カード以外に支給されたそれを取り出す。
その支給品…拡声器のスイッチを入れると、叫んだ。

『みんなー、殺し合いなんてやめて、おれとカードであ〜そ〜ぼ〜!!』

一見軽い、しかし遊びへの情熱があふれた叫びが、周囲に響き渡った。

『殺し合いなんかより、カードゲーム大会の方が絶対楽しいって!みんなで集まって、思いっきり遊んで、この決闘(デュエル)の会場を、楽しい遊戯場に改装しようぜ!』

彼だって、最初の会場で人が死んだのを見ているからここが殺し合いの舞台だって分かっている。
この行動が無謀だということは分かっている。
しかし、彼はどうしようもなく遊び人(コロコロキッズ)で。
遊びが、殺し合いなんていう物騒なものに利用されるのが許さなくて。
たとえ遊び人(コロコロキッズ)だと馬鹿にされようが、そんな悪夢のような現実に、抗いたかったのだ。

『第1回 遊☆戯☆王オフィシャルカードゲーム大会、参加者募集中だ〜☆』

【南波遊助@ぷにるはかわいいスライム】
[状態]:健康
[装備]:遊戯王デッキ(詳細不明)
[道具]:基本支給品、拡声器、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]:この決闘(デュエル)を、殺し合い会場じゃなく遊戯場に変えてやる
1:カードで遊ぶ参加者を集める。
[備考]
※参戦時期は原作4話以降。


220 : ◆OmtW54r7Tc :2022/06/25(土) 17:17:16 NzgAX7r60
投下終了です


221 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/25(土) 17:37:00 .LdKi1qs0
投下します


222 : "真実"は交差する ◆2dNHP51a3Y :2022/06/25(土) 17:37:23 .LdKi1qs0
模索路晶にとって、世界とは価値のないモノクロ模様にしか過ぎない代物でしかなかった。
誰かを救うという事に意味はなく、薄汚く自己にしか興味のない雑多な民衆に埋め尽くされた世界。
地球人口、約79億人。すべてを救うなど不可能のひと言だ。
取り零れそうな命を拾い上げ、救うのが医師と呼ばれる者たちの役目だとして、掬い上げた命以外誰も救われないとして。その行為に何の意味があるのだろう。

模索路晶には、人を救うという行為への無意味さだを何時か何処かで実感した。
誰かのために医師として名を馳せた父親。そんな憧れの対象は誰そ彼とも知らぬ他人の謀略に巻き込まれて命を落とした。「無償で誰かを救う」という行いの無意味さを、少女の脳裏に焼き付けて。
模索路晶は天才であった。それは医療の勉学のため海外へ旅行する程度には。
だが、才能というのは祝福である反面呪いでもある。世界に蔓延る、薄っぺらい善意という名の汚さと、澱みどす黒く広がる悪意を、否応なく理解できてしまったのだから。
理解してしまった以上はそれっきりだ。才能を持つのは決して幸福なのではない。
妬み、羨望、憎しみ、嫌悪。才能ある者へ才能なき者が向ける目が善いものばかりではない。例え善意があろうと、そんなものは砂漠に転がる一欠片の宝石以上に極微な矮小さだ。
だからこそ、そんな小さすぎる価値に目を留まらせる程の意味もないと諦観するしかなかった。

だが、彼女はある日、運命と出会った。
母親に呼ばれた父親の法事の為に帰国せざる得なかった道中に出会った少年。
困っている人を見かければ形振り構わず助けの手を差し伸べる。
世界全ての誰かは無理だとしても、目の前にいる困っている誰かを、それが本能と言わんばかりに手を差し伸べる。それが少年にとっての、全くもって当たり前の行為。
純真無垢な雛鳥のような、それでいてどれだけ雨に打たれようと飛び続ける白鳩のような。そんな優しさを忘れずに抱き続ける、ごくごくありふれた善良な少年だったのだ。
模索路晶は、父の死というフィルターによって、世界も人間もまともに直視できていなかった。目を背けていた。恐ろしくて、斜に構えていた。
それを溶かしたのは、純粋な少年の行動だ。同業の天才しか仲間と言える者たちが居なかった彼女にとって出来た、彼女に久しぶりの、心からの『笑顔』を取り戻させてくれた『人間』。新しい理解者にして、彼女にとっての騎士だった。
彼が居たからこそ、彼の善良さを目の当たりにしたからこそ、彼女は世界を、人間を捨てたもんじゃないと再定義出来た。
だからこそ、彼女は再び世界を、できる限りの誰かを救う事を、再び夢見ることが出来たのだ。

数年の時が経ち、模索路晶は少年の前に姿を表す。
少女たちを、ソルの塔へと導いて欲しいというささやかなお願いを告げ、彼を電脳世界アストルムへと招待したのだ。
その行動が、一体少年に何を齎したのかを、当時の彼女がまだ知らないまま。


223 : "真実"は交差する ◆2dNHP51a3Y :2022/06/25(土) 17:37:38 .LdKi1qs0
模索路晶が少年に施した行為に関して、後悔はしていない。
何故なら彼女は少年のことを信じていたからだ。
それが後付け良心による一種の理解不足だったのか定かではないが。後に起きた出来事を総評すれば、少年が記憶を失うことになったきっかけを作ったのは間違いなく模索路晶であるのは逃れられない現実。
それだけが、申し訳なかった。その少年は、少女たちを守ろうとした代償として、その魂に大きな傷を負い、記憶を失った。
模索路晶含め、アストルムの誕生に関わる人工知能ミネルヴァの作成に関わった七冠と呼ばれる集団。所謂一般人の視点からして狂人と称される天才の集まり。
少年がこうなった負い目があれど、彼の記憶喪失に関わる、プリンセスナイトという役割を背負わせたことについては後悔が無い限り、彼女もまた常人とはかけ離れた性質である。

最も、それを少年が咎めることはしないし。模索路晶もまた、自分たちが引き起こした事による大惨事のツケを支払う事になるのは確定事項だ。
ミネルヴァの懲役と称される、少年含めたアストルムログイン者全員を昏睡状態に陥らせた世紀の大事件。それが解決したその時、裁きの壇上で審判を迎えるになるのは間違いなく彼女たち七冠。
七冠の一人として、模索路晶として、少年を身内の争いに巻き込んでしまったを責任を取るために。
かつて交わした約束が、呪いとなって少年の欠落を生んだ。
だからこそ、なのだろう。

自分が困った時は少年に助けてもらう。少年が大変な時は自分が彼を助けにゆく。
たとえそれが一般感性からズレた思考であろうとも、天才・模索路晶が触れてたかけがえの無い普遍的で、尊い感情である。――それだけは、決して裏切れないのだ。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


224 : "真実"は交差する ◆2dNHP51a3Y :2022/06/25(土) 17:38:12 .LdKi1qs0
「一体どういう理論なのよ、それ。」
「端的に言えば開発者権限みたいなの。と言いたいところではあるけれど、ここがアストルムじゃないと仮定して、そう『適応』されてるってことになるのかな。」

バトル・ロワイアルという名の決闘の舞台となっているとある離れ小島。
研究施設らしき建造物の内、その一室の机上に佇む一匹の翠瞳のカエル一匹
これを作ったのが、正しく赤という色がとことん似合う迷宮女王ことラビリスタ。リアルネーム、模索路晶本人である。
その結果に対し、表面上冷静に疑問を投げかけながらも、実際内心は驚いているのが白髪の少女。
神殺し、終焉吼竜(ニーズヘッグ)の伴侶たる月葬天女(ツクヨミ)、ミサキ・クジョウである。

ミサキの反応の理由はラビリスタが眼前の兵器を作成した経緯にある。
前提として二人の出会いは決して穏便なものでは無く、凡そ様子見という形でのミサキ側からの警戒から始まった。
ミサキとしても最初に自分が呼ばれたのが神祖の手によるものだと過ったがその考えは直ぐに否定した。何故なら聖教国の実質的支配者ともいうべき彼らが、この様な低俗な催しを開く理由はありはしないのだ。
いくら完全な不老不死とは言え、一度汚名を被ればその影響がどのようなものになるかは神祖当人たちがご存知のはずだ。過去の独裁者のような凶行を起こすまずありえない。
そして伴侶であるラグナの身の危険が次に、正確には真っ先に思い浮かぶ。グレンファルトが自分の何を知っているかまでは分からないが、その聴取でラグナ達が捕縛させられるのが先になるとして、どちらにしろ彼らの命が危ういのは事実となる。
だからこそ早急に殺し合いから元の世界への帰還を最優先として行動方針を纏めるつもりではった。
そこで出会ったのは、如何にも胡散臭そうな赤ずくめの女性。

勿論女性――ラビリスタは殺し合いに乗っていないという意思表明をした。
ラビリスタもとい模索路晶は研究畑の人間だ。観察対象と為りうる他者に対する自身による影響を排他する性質であり、出会った当初こそしがないクレープ屋だと誤魔化した、が、如何せん相手が悪かった。
ミサキ・クジョウは神殺しであると同時に、リベラ―ティに雇用されている傭兵。要するに職業柄怪しいのは大体ひと目で分かる。それを吟味しても、どっちにしろ胡散臭そうだったのでバレる事に関しては明白だったのであるが。
詰まる所、ラビリスタが情報交換を兼ねた話し合い提案と言う名の白旗を上げたので、敵対意思が無いことを確認し、一旦はこちらも情報の整理も兼ねて話し合うとう形に収まったのだ。

ラビリスタの『七冠』としての固有能力。アストルム内におけるオブジェクトの変更という、単純明快ながら有効範囲の広さによる強力無比な代物。
だが、ここはアストルムではなく決闘と言う名の殺し合いの舞台。そんな万能を許すほどハ・デスは甘くはない。オブジェクトの変更・変化に関しては強力な制約が掛かっており、最大でも自分の身体程の大きさの物体に関してのみ可能という体たらく
だが、逆を言えば制約下であるならばある程度の融通が利く。例えば、適当な石ころや機械片を別のものに変えたり、とか。


225 : "真実"は交差する ◆2dNHP51a3Y :2022/06/25(土) 17:38:39 .LdKi1qs0
この辺鄙な小島における小さな研究所を仮陣地として、制限の具合を確かめるため、都合よく入っていた緑色の鉱石に対し『迷宮女王』の権能を使用。
オブジェクトとは物体の意。制限範囲の確認も兼ねて試した結果、出来上がったのがこの机の上のこれである。
そして肝心のミサキの反応の理由、まずラビリスタが素材として使ったのが翠星晶鋼(アキシオン)と呼ばれる鉱石。高次元エネルギーを超強引的に結晶化させた、新西暦の文明を正負含めてひっくり返しかねない代物。本来ならば神祖かラグナでしかこの星の結晶を作り出せず、最長でも一分も持たず自壊する、本来であれば無用の長物。
だがラビリスタの固有能力からすれば、この場所においては翠星晶鋼も『支給アイテム』というオブジェクトの一つにしか数えられないのか、それを使用してカエルを生み出し、そして現在に至るのだ。

「管理者権限って、ゲームの運営気取り?」
「実際ゲームなんだけどね。そして今の私の身体はゲーム内のアバターの方。……こちらの方が殺し合いを盛り上げる事しては有能だってことで選ばれたのかな。」

当然の如く、ラビリスタがこの身体で、制限されてながらも権能を使える事こそ、殺し合いを盛り上げるという点におけるスパイス感覚で設定される。
ハ・デスの催し、決闘と言う名の殺し合い。まるでゲームだ。あの魔王はさしずめゲームのプレイ動画を観戦している見物客というわけか。

「……制約なしかつ本気の私達を相手取っても、十分に鎮圧できる程の手種は持ち合わせているって自身かな? これは手厳しい。」
「手厳しいだけなら、まだ良かったわよ。」

あっけからんと憶測を告げるラビリスタに対し、ミサキは伴侶と離れ離れにされた事が少々不機嫌と言った様相。

「やらなきゃいけない事もある、待っている家族もいる。だからこんな所で屯っている暇なんて無いというのに。……こんなくだらない事に呼び出してくれて。」
「そいつは同感。まあ、高みの見物気取っている魔王にお灸を据えてやるのは愉快だと思うさ。……私の場合は待たせているのは家族ではなくて少年なんだけれど。」
「……少年って、その年で初物食いの類はどうかと思うわよ。というか誰なわけ? まさか彼氏的な?」

最も、魔王の企みを打ち砕くという一点においては正しく二人の思考は合致している。
ただ、ラビリスタの少年発言に少しばかり噛みつくたくなったミサキが思わず言葉を投げかける。

「いや、彼氏とかそういうわけじゃないんだ。少年は……」
「じゃあ息子とか?」
「意外に食いつきが深い……。……少年はね、私にとってのプリンセスナイトで、希望(ひかり)なんだ。」

少々、恥ずかしながらもラビリスタは告げる。

「私に希望を照らしてくれた。人間不信で燻ってて、色んなことから目を逸らしてた私に、人間は捨てたもんじゃないと教えてくれた。」


226 : "真実"は交差する ◆2dNHP51a3Y :2022/06/25(土) 17:39:57 .LdKi1qs0
「……希望、ね。」

「まあ、大袈裟な言い方かもしれないけれどね。けれど私が変われたのは間違いなくあの少年のお陰だった。父のような医者を目指して、そんな父が謀略に巻き込まれて命を落とした。少年と出会うまで、私は誰かを救う事に意味なんて無いと思っていたんだ。」

そう語るラビリスタを、さっきの食いつきとは打って変わってミサキは黙って聞いている。

「それが少年と出会えて、もう一度だけ、世界中の誰かを助けるというのをやってみたくなった。その為に色々やって、あの少年を誘って―――。」

ラビリスタの口が止まる。ほんの少しだけ、その顔に翳り、そして直ぐに向き直して。

「……私の願いが、少年を巻き込んでしまった。彼の魂は、覇瞳皇帝との戦いの中で傷付いて、何もかも、忘れてしまった。……私のせいでね。」

それは、迷宮女王の口から漏れた、心残りというべきものだったのだろうか。


「後悔しているの?」

「……いや、少年をアストルムに招待したことは特に。」

「そういう尾びれもなく言えるの、人間として比較的破綻してるわよ。と言うか精神性がこっちの仇敵と似通ってるんだけれど。」

「せめて上辺だけでも良いからそこは慰めの言葉欲しかったかなぁ。」

「いや、あなたが誘ったのが原因でしょ。………まさかだとは思うけれど無理やり?」

「……うん、まあ。その。」

「……火を見るより明らかな碌でなしじゃない。」

前言撤回。その別種の前向きさは神祖にある意味通ずる感じと思い、ミサキは思わず溜息。
明らかに善意で誰かの人生結果的に破壊しているんじゃないとも言い出しても良かったが、流石に当人にとっても予想外らしい雰囲気だったのでその点は奥に仕舞い込んでおく。

「否定しないさ。――私が巻き込まなければ、少年は平和に暮らせていたんだ。」

そして、ラビリスタは己の碌でなしさをある程度自覚している。
碌でなし、そう少年を関わらないはずの身内争いと一種の危機に巻き込んだ。
少年の前世を信じているこそ、後悔はしていない。でも罪拭いぐらいはしたかった。
なにせ、身内が引き起こしたことを発端とした一連の騒ぎ。

「正直、他人から恨まれても仕方がない事をしでかしたんだ。それでも少年は恨むことはしなかったさ。……もしかしたら、私はあの子の優しさに甘えているのかもしれないね。」

やや自嘲気味に語りながらも、ラビリスタの唇が緩む。

「だから、だよ。失わせてしまったから、奪ってしまったから。せめて私は私が出来ることで、少年を助けたかった。こんな私に、「あなたのおかげで、みんなと会えた」なんてお礼を言ってくれる。そんな優しい彼のために。」

そう、ラビリスタが、模索路晶の行動意義はただ一人、優しい彼(プリンセスナイト)に集約する。
後悔はない、それでも憂いや心残りはある。その残り物こそ、彼女にとっての重要なもので、誰かのために戦うという簡単な理由。
そう、誰かを助けるという、彼女が一度捨てて、取り戻した願いの第一歩で。


227 : "真実"は交差する ◆2dNHP51a3Y :2022/06/25(土) 17:40:24 .LdKi1qs0
「あの子は――ユウキは、私にそんな当たり前の事を、教えてくれた。ただ一人の人間だから。だから、あんなこと言われた手前、引き下がれるわけないよ。」

自分のような碌でなしに希望を教えてくれた。光を照らしてくれた。
もしあの時あの少年と出会っていたら、冷酷無比な科学者に、それこそ人の心など介さない化け物として生きていただろう。
だからこそ、模索路晶にとってのユウキは、彼女を人間にしてくれた、唯一無二のプリンセスナイトなのだから。
だから、プリンセスナイトという力を背負わせてしまった大人としての責任と、かつての約束を守るために。

「――ああ、なるほど。」

それだけ聞いて、多少気になることはあれど、ミサキは納得する。

「あなたも、希望(ヒカリ)に救われたのね。」

それだけは、納得出来た。理解できた。
神殺しが生まれた、絶望の日。自分の住んでいた村が、隣人が、全てが死に絶えた緑晶の樹木林の中心で。
絶望と嘆きのみが木霊させた少女の叫びに応えて、邪竜という彼女にとっての希望は彼女に降り注いだ。
彼女にとっての始まり。希望を、光を、笑顔をくれたただ一人の人間、ラグナ・ニーズヘッグ。
自分にとってのラグナ・ニーズヘッグが、ラビリスタにとってのプリンセスナイトなのだろう。
普遍的な善性、という意味ではそのプリンセスナイトはリチャード・ザンブレイブよりの好青年だろうか。
一歩間違えれば神祖ルートに向かいそうな迷宮女王が、人間の心を捨て去らなかったのは彼の影響が大きいのだから。
『信頼』はまだ出来ないが、『信用』は一応は出来ると言ったところか。

「……どちらにせよ、ハ・デスを倒して、お互い元の世界に戻りましょうっていうのは変わらないから。変な真似しない以上は付き合うわよ。」
「それは有り難いね。……あ、首輪をどうこうってのは無理そう。実のところキミと出会う前に試したから。」
「元から首輪云々は期待していないわ、私の星までこうやって抑えてるんだから、」

主催への逆襲にに関し、一番の弊害と為りうるこの首輪。ラビリスタに科せられたを基準とすれば、殺し合いを直接的に破綻してしまう力は厳しく制約される、ということだろうか。

「……で、このアキシオン生まれのカエル、どうするのよ。」
「まあノリと実験ついでで作ったみたいな所もあるし、斥候として利用できるんじゃないかな。」
「あんたねぇ……。」

もうこういう事に関してミサキは特に突っ込まないことにした。
実際アキシオンをカエルへと変化させたのはラビリスタだ。文明を一変させかねない物体をこうも容易く変化させた、いやこの会場だからこそもあるが、それを込みしても神祖に匹敵するほどの埒外の力と言っても良い。

「じゃあ私から一つだけ。あの少年絡みの事に嘘は無いって、言える?」
「―――それは約束する。信じてもらえなくてもいいけど、それにだけは嘘は付きたくない。」

ラビリスタの、その真っ直ぐな程に真剣な眼差しこそ、ラビリスタにとってのユウキが、本当に希望(ヒカリ)であったということの、嘘偽りない言霊そのものだった。









◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


228 : ”真実”は交差する ◆2dNHP51a3Y :2022/06/25(土) 17:40:53 .LdKi1qs0

何れ、運命(けつまつ)の果て、彼の優しい笑顔が再び見れますように。



【ラビリスタ@プリンセスコネクトRe:Dive】
[状態]:健康、決意
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2、翠星晶鋼(残り残量???)
[思考]
基本:ハ・デスを倒し、早急にこの殺し合いから脱出する
1:やれやれ、信頼されないのは仕方がないか。
2:少年や彼女たちが巻き込まれていないか懸念
3:首輪解除手段の画策
[備考]
※参戦時期は最低でも第2部第7章以降
※翠星晶鋼を『迷宮女王』の権能でカエルへ変化させました。現在このカエルは創造主であるラビリスタに懐いています。
※『迷宮女王』の権能に制限が掛けられています。

【ミサキ・クジョウ@シルヴァリオ ラグナログ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考]
基本:ハ・デスを倒し、元の世界に戻る
1:彼女(ラビリスタは)は信頼ならない、ただ彼女にとっての希望に対しての思いは信用できる。
2:もしいるのなら早急にラグナたちとの合流
3:首輪解除手段の画策
4:もしかしてあいつら(神祖)も呼ばれているとか、いやまさか……?
[備考]
※参戦時期は最低でもChapter3『大神素戔王/Veratyr』以降
※ミサキの星辰光に関しての制約は後続の書き手におまかせします。

『支給品紹介』
【翠星晶鋼@シルヴァリオ ラグナログ】
ラビリスタに支給。高位次元から降り注ぐエネルギーを強引に物質化したような代物であり、現状では神祖及び神殺したるラグナ・ニーズホッグとミサキ・クジョウしかウ見出せない。
超常の理屈で素粒子を結合させているのか、最長で一分も持たず自壊することから技術転用は基本的に不可能。
ただし極晃星に匹敵する星辰光の高出力発動、金属以外を用いた電子回路の創造など、その用途は余りに幅広い。他にも行為次元への接触様触媒として優秀。


229 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/25(土) 17:41:07 .LdKi1qs0
投下終了しました


230 : ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/25(土) 17:48:18 S2jJN5CM0
以前、コンペロワや辺獄ロワ等に投下した作品に、細かな微修正を行った物を2作続けて投下します。


231 : 雷神の戦斧!マイティ初穂誕生! ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/25(土) 17:49:08 S2jJN5CM0
「くっそ!気に食わねぇな〜!」

朱色の髪をサイドポニーテールでまとめた巫女装束姿の少女……新生帝国華激団・花組隊員の東雲初穂は、
左掌に右拳を叩きつけながら今自分の置かれた状況に苛立ちを見せていた。

帝都に住む人々の平和を守る事を使命とする自分を拉致し、『決闘』という名の殺し合いを強要する……
更には、自分と同じく無理やり集められたらしい『決闘』の参加者達への見せしめに、年端も行かない少年をその友人の目の前で殺害する……
本来の華激団の敵である『降魔』達の行う悪行に勝るとも劣らぬ………下手をすれば降魔の悪行以上の残虐な行為だ。
更には……会場として用意された孤島には、あちこちに降魔の同類と思わしき怪物達が放たれているときた。
かような場所に放り出されれば、恐怖のあまりに逃げ回るか、自分の命惜しさに殺し合いに乗るのだろうが……

「……へっ、この初穂ちゃんを舐めるなよ?」

……初穂はそのどちらでもない道、すなわち『決闘の主催者である冥界の魔王と磯野への反抗』を決意していた。
例え腐っても、初穂は帝国華激団の一員。
人々の平和を守る事が使命なのだ。
確かに武器を取り上げられ、隊長である神山を初めとする花組の仲間達からも引き離されてはいるが……そのくらいで諦めるような初穂ではなかった。

「見てろよハ・デスっての!絶対に吠え面かかせてやるからな!」

初穂はどこかで見ているであろう冥界の魔王に向けて堂々と反抗を宣言すると、
自身に支給されたデイパックを開いて支給品の確認を始めた。
いかに帝国華激団の隊員とは言え、丸腰では戦えない。
反抗を決意した相手から渡された物を使うのは癪にさわるが、
贅沢は言ってられないのだ。


232 : 雷神の戦斧!マイティ初穂誕生! ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/25(土) 17:49:39 S2jJN5CM0
「こいつは………斧か?」

デイパックから最初に出てきたのは、大型の斧だった。
木製の柄だけでも初穂の肩までの長さがあり、初穂の肩幅程もある大きな刃のある戦斧だ。

「『斧』かよぉ〜?せめて、木槌か金槌渡してくれよぉ〜」

多少の文句を口にしつつ、初穂はその斧を手にし……
斧の柄頭を地面に勢いよく叩き付けた。
すると………

とたんに、初穂の全身が稲光りのような光に包まれた。

「な、なんだ!?」

突然の事に初穂は思わず目を閉じる。
そして光が晴れて、初穂が目を開けると……

「な!?ななななんじゃこりゃあ!!?」

なんと、初穂の衣装は紅白の巫女装束から、北欧神話の神々が纏うような甲冑へと変化し、背中には真紅のマントまで付けられていたのだ!

「ど、どうなってんだ、こりゃあ!?」

突然の事態に初穂の頭は混乱していた。

その手に捕まれた戦斧から……絶えず小さな稲光が発せられている事に気がつかない程に……。


【東雲初穂@新サクラ大戦】
[状態]:健康、甲冑姿、混乱
[装備]:ストームブレイカー@マーベル・シネマティック・ユニバース、マイティソーの甲冑とマント@マーベル・シネマティック・ユニバース
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本:ハ・デスを打倒し、巻き込まれた参加者達を救う
1:なんじゃこりゃあ!?どうなってんだ!?
2:花組の仲間がいるなら、合流する
[備考]
アニメ版からの参戦。

【ストームブレイカー@マーベル・シネマティック・ユニバース】
東雲初穂に支給。
『マイティ・ソー バトルロイヤル』で破壊されたムジョルニアに代わるマイティ・ソーの新たなる武器として、『アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー』から登場した戦斧。
ドワーフの職人・エイトリが作成し、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のグルートが自分の腕を柄にして完成した。
『王の武器』・『アスガルドの歴史上最強の武器』と称され、
ムジョルニアと同等の機能(飛行能力、投げても戻ってくる、ソーの持つ雷や天候操作の能力の補助、等々・・・)の他、ビフレスト(アスガルドの宇宙体系に属する惑星に移動する為のワームホール。別名『虹の橋』)を発生させる能力を持つ。
『斧』としても、マーベル・シネマティック・ユニバースにおけるラスボスであるサノスの強靭な肉体を
一撃で切断できるだけの破壊力を持つ。
ただしムジョルニアと違い、『相応しい者だけが持ち上げられる』機能はなく、その気になれば誰でも使用可能。

【マイティソーの甲冑とマント@マーベル・シネマティック・ユニバース】
ストームブレイカーの効果により。東雲初穂が装着している。
正確には支給品ではないが、ここで紹介する。
スーパーヒーローチーム『アベンジャーズ』の一員にして神の国『アスガルド』最強の戦士でもあるマイティ・ソーこと雷神ソー・オーディンソンが戦闘時に装着しているコスチューム。
アスガルドの銅と鋼・革で作られた胸当てと屈曲性ある鎖帷子、王家を象徴する一対のディスクで留められた赤い皇太子用のマント、両前腕の籠手、膝当て、ブーツで構成される。
ソーが愛用武器であるムジョルニアやストームブレイカーを掴むと、稲光とともに自動的に装着される。
今ロワでは、参加者に支給されているストームブレイカーまたはムジョルニアの柄頭を地面等に叩き付ける事によって、その時にストームブレイカーorムジョルニアを手にしていた参加者に装着されるようになっている。


233 : 鬼畜戦士は微熱の魔法使いと朝チュンを迎える ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/25(土) 17:50:37 S2jJN5CM0
「もぅ!何なのよこれは!?」

赤毛と褐色の肌、モデルのようなグラマラスボディが印象的なエキゾチックな美少女……トリステイン魔法学院の生徒である『微熱のキュルケ』ことキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーは憤慨していた。

この『決闘』と題された殺し合いを開いた冥界の魔王を名乗る男に対して、怒りを抱いたのだ。

彼女は貴族の例に漏れず、プライドが高い少女である。
爆弾入りの首輪を付けられて『殺し合え』などと言われて、
『はい、そうですか』と大人しく従うような性格はしていない。

むしろ、このような蛮行を行う冥界の魔王に対して、
マグマのように熱い怒りを燃やしていたのだ。

確かに、魔法を使う為の媒介である杖を取り上げられた今の自分は無力かもしれない。

だが、だからといって理由も無く他人を殺し、自分だけ生き残ろうなどと考える程、キュルケは短絡的な女ではなかった。

ひとまずは信頼できる仲間を探し、ここから脱出しよう。
行動方針を決めると、キュルケは自分の支給品の確認を始めた。

☆☆☆

同じ頃………

「くそー!!アイツめー!!何が、『冥界の魔王』だぁっ!?」

鎧を纏ったRPGに登場する冒険者を思わせる青年……とある大陸において『鬼畜戦士』として(悪)名高いランスも、自身を無理やり連れて来た冥界の魔王への怒りを燃やしていた。
と言っても、彼の場合は少々毛色が違っていた。

「何でわざわざ俺様のお楽しみを邪魔するんだー!?」

彼はここに来る直前、欲求不満が貯まってきたので自身の奴隷である少女・シィルで発散しようとしていた。
そしてシィルをベッドへ押し倒そうとした瞬間……この殺し合いに参加させられた、という訳である。

「くそぉ〜……どうせ呼ぶなら、俺様がスッキリしてからにしろというのだ!」

目の前で少年の首が吹き飛ぶ様子を見たというのに、
ランスは殺し合いに対して全く忌避感を抱いていない。
何故ならば……ランスという男は基本的に美女に目がなく、自分以外の男は不要と思うような鬼畜戦士だからだ。
今、彼の頭の中にあるのはただ一つ。
『おあずけ』を食らって暴発寸前な胯間の『ハイパー兵器』をどうやって静めるか、という事であった。


234 : 鬼畜戦士は微熱の魔法使いと朝チュンを迎える ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/25(土) 17:51:02 S2jJN5CM0
「どこかに美女はいないかぁ〜?この際、多少貧乳でも良いぞ〜?」

最低な事を考えながら、最低な事を口走るランス。
魑魅魍魎の跋扈する『決闘』会場を宛もなくさ迷っていると……

「……うん?」
「……あら?」

支給品の確認を行っていたキュルケと鉢合わせした。

「ウオオオオオ!美女、発見!!」
「えっ?ち、ちょっと?何?」
「もう辛抱たまらん!!ウオオオオオ!!」
「キャアアアッ!!」

そのままランスはキュルケを押し倒してしまった。

☆☆☆

東の空から太陽が上り始めた頃-

ランスとキュルケの二人は一糸纏わぬ姿で原っぱに寝そべっていた。

「zzz〜」

欲求不満が解消されたランスは憑き物が落ちたような穏やかな表情を浮かべながら大いびきで眠っており、

「………///」

一方のキュルケは強姦まがい……というか、『強姦された』というのに、
顔を赤らめて、満更でもなさそうな表情を浮かべながら、
愛おしげにランスに抱きついていたのだった。


【ランス@Ranceシリーズ】
[状態]:健康、全裸、超スッキリ、睡眠中
[装備]:無し(全裸)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:美女は助ける、男はほっとく
1:zzz〜……
[備考]
『戦国ランス』期付近からの参戦。
周りに二人の衣服と支給品の入りデイパックと体液が散らばっています。

【キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー@ゼロの使い魔】
[状態]:健康、全裸、脱力感
[装備]:無し(全裸)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:会場からの脱出
1:……///
[備考]
アニメ版第一期からの参戦。
周りに二人の衣服と支給品入りデイパックと体液が散らばっています。


235 : ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/25(土) 17:52:13 S2jJN5CM0
以上、連続投下終了します。
お目汚し失礼いたしました\(_ _)


236 : ◆bLcnJe0wGs :2022/06/25(土) 20:44:45 SvcatcWI0
投下します。
また、この作品は以前辺獄ロワに投下したものを流用しております。


237 : 守るべきもの ◆bLcnJe0wGs :2022/06/25(土) 20:45:11 SvcatcWI0
会場のとある場所。

参加者の一人である女性、ブルーベリー・レイクサイドは、この殺し合いに大きく心を痛めていた。

◆◆◆

レイクサイド家は、王室付きの魔法使いを次々と輩出してきた家柄。

そんなブルーベリーも、『世界を変える様な大魔法使いになる』と予言されて生まれた人間である。

しかし彼女は、生まれつき体が弱かった。

レイクサイド家の人間は、文武両道でなければ王室に仕えることができないというしきたりがあり、王室努めは諦めるしかなかった。

魔法学校に入った際も、体質故に体を動かす授業を欠席しなければならない等、コンプレックスを抱いて過ごしてきた。

─だがそんなある日、一部のクラスメート達と共に臨海学校に行く事になった。

臨海学校の日の夜、突如キャンプ場を襲撃してきたエニグマ達によって、光のプレーンへと転移させられてしまった。




238 : 守るべきもの ◆bLcnJe0wGs :2022/06/25(土) 20:46:04 SvcatcWI0
ブルーベリーは、光のプレーンで、同じく転移させられてきたクラスメートのペシュ、レモンと一度は合流したのだが、そこでエニグマ達が襲来し、レモンがその一体を引きつける為の囮になると言って離脱してしまった。

その際、ブルーベリー達はとある宮殿の地下で待ち合わせをしていたのだが、レモンが戻って来ず、ブルーベリー自身も体調を崩してしまった為に、ペシュが残りのクラスメート達を探す事になった。



そうしてペシュが合流出来たクラスメート達を連れて来た時に、エニグマ達がやって来てしまった。

そんな中、ペシュが連れて来たクラスメート達と知り合ったという、愛の大使達も加勢して、一度は彼らを倒したと思っていた。

─この時点ではまだ彼らを倒しきれていなかった事は知る由もなかった。



宮殿を出た後も、合流した仲間達についていきたいと言ったのだが、そこで再び体調を崩してしまう。

それでも他のクラスメート達ついて行けなくなるから、と強情を張ってしまった。

それを皆に注意され、無茶はしない様にと言われた上で同行を許可してもらったのである。



─その後、クラスメートのカフェオレを助ける為に訪れた、ドワーフ達の働く塔で倒した筈のエニグマと再会してしまった。

今度こそは彼を倒す事が出来たのだが、そこで魔法学校の卒業生の5人内の1が、エニグマと融合しているということを聞かされた。



それからも彼女達は、世界を救う為に進む事を決めた。



やがてエニグマの王が倒され、ブルーベリー達も魔法学校に戻って来た。



学校を卒業した後、ブルーベリーは水の魔法を研究する為に水のプレーンへと渡り、ウォーターピープル達と親交を深めていった。

◆◆◆

そんな彼女も、この催しに巻き込まれてしまった。

もとより体の弱いブルーベリーにとって、この状況は過酷そのもの。

それでも他に多くの生命が巻き込まれているのだから、彼ら彼女らも死なせたくない。

(けれど、ここには助けてくれる相手もいない… だから何とか助けないと!)


239 : 守るべきもの ◆bLcnJe0wGs :2022/06/25(土) 20:47:54 SvcatcWI0
─そう思っていた時だった。

「プイー!プイプイ!」

どこからか、動物の鳴き声が聞こえた。

「プイプイプイプイ…」

すると、大きなモルモットの様な生物がこちらにやって来た。

モルモットの様な生物は、ブルーベリーの前まで来ると、そこで立ち(?)止まる。

「プイ!」

……どうやら、彼はブルーベリーについてくれる様だ。

そうして彼女も、この会場で最初に出会った不思議な生き物と一緒に行動することにしたのであった…。


240 : 守るべきもの ◆bLcnJe0wGs :2022/06/25(土) 20:48:32 SvcatcWI0
【ブルーベリー・レイクサイド@マジカルバケーション】
[状態]:病弱体質
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:殺し合いはしなくないけれど、だからといって何も出来ずにいるのは絶対にイヤだ。
1:今はこの子(ポテト)と一緒に居る。
2:他の参加者達を助けたい。けれど無理なんかしたら…。
3:家族や知り合い(特にレモン・エアサプライ)が巻き込まれていないか心配。
[備考]
※本編終了後からの参戦となります。
※水の魔法は全体的に、効果範囲が狭まっております。
※光のプレーンから一度魔法学校ウィル・オ・ウィスプに戻って来て、そのまま闇のプレーンに同行したかどうかは後続の書き手にお任せします。

【ポテト@PUI PUI モルカー】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:殺し合いには乗らない。
1:人間の女性(ブルーベリー)は絶対に守る。
2:他の参加者を見つけたら助ける。
3:飼い主や知り合いが巻き込まれていないか心配。
[備考]
※少なくとも、アニメ第1話終了後からの参戦となります。


241 : ◆bLcnJe0wGs :2022/06/25(土) 20:48:47 SvcatcWI0
投下終了です。


242 : ◆ytUSxp038U :2022/06/25(土) 21:31:23 Wo4jzXX60
投下します。


243 : Blaze up Fight as one ◆ytUSxp038U :2022/06/25(土) 21:32:35 Wo4jzXX60
「あの野郎……!!」

錆び付いた機械が放置された場所。
使われなくなって数年は経つだろう廃工場内部にて、怒声を放つ参加者が一人。
感情のままに壁を殴り、埃が舞い散る。
拳に伝わる痛みなど、今の万丈龍我には気にする素振りも無かった。

「何がデュエルだ…!ふざけんじゃねぇぞ!!」

怒りの矛先は決闘(デュエル)の首謀者であるハ・デスと、奴に付き従う磯野。
自分を含めた大勢に殺し合いを強要し、反抗した少年を殺した。
連中が決して許す事の出来ない邪悪なのは間違いない。
だが同じく自分自身へも怒りが湧く。
本田と呼ばれた少年が殺された瞬間、万丈はただ黙って見ているしか出来なかった。
本当なら、仮面ライダーである自分が真っ先に磯野達を阻止せねばならなかったのに。
不甲斐ない自分を責め立てるが、それで本田が生き返りはしない。

「…だったらせめて、あの遊戯って奴は守らねえとな」

本田の死に悲痛な叫びを上げていた少年。
友の死を今も会場のどこかで嘆いているのなら、捨て置く事はできない。
気合を入れ直すように拳を握り、いざ出発しようと歩き出す。


244 : Blaze up Fight as one ◆ytUSxp038U :2022/06/25(土) 21:33:39 Wo4jzXX60
◆◆◆


「おいおいおいおい、何だってんだ?この面白過ぎる状況はよぉ」

決闘に怒りを覚える者がいれば、反対に喜びを覚える者も存在する。
この男など、それに当て嵌まる良い例だろう。
恋人の抱擁を待ちわびるように両腕を大きく広げ、残酷なゲームの到来を歓迎していた。
派手な衣装を着こなし、巨大なアフロヘアーもどこか様になっている男。
殺し合いよりディスコフロアの方が似合っていそうな、奇抜な恰好だった。

「最後まで生き残れりゃ、素敵なご褒美が貰えるってか。良いねぇ、俺好みのイベントだ」

男…パラダイスキングにとってハ・デス主催の決闘は実に心が躍るものだ。
デュエルキングというのはよく分からないが、王の地位と聞いては無視できない。
それだけでなく莫大な金と、どんな願いでも叶えられる権利。
しかもそれらを手に入れる為のゲームも、シンプルで実に良い。
決闘などと堅苦しい言葉で誤魔化しているが、中身はルール無用の殺し合いだろう。
己の暴力で島一つを支配していたパラダイスキングからしたら、何もかもが魅力的にしか映らない。
唯一首輪を勝手に付けられたのは不満だが、まぁこれくらいは妥協してやる。

「そんじゃ、ウォーミングアップがてら適当な参加者でも探すかね」

軽くストレッチをした後、恐れを感じさせない足取りで獲物を探しに歩く。
丁度と屋内位置にあった廃工場らしき建物へ向けて。

「あ?」
「おっ?」

そこで彼らは出会った。


245 : Blaze up Fight as one ◆ytUSxp038U :2022/06/25(土) 21:34:20 Wo4jzXX60



(な、何だこのオッサン……)

廃工場を出た瞬間に視界へ入った人物の姿に、万丈は困惑を隠せない。
一言で表すなら、派手としか言いようが無い見た目の男だ。
前にスマッシュにされたツナ義ーズのアフロ男よりもデカいアフロ。
もしかするとこいつもインディーズバンドなのか。
バンドマンはアフロにしなきゃいけない決まりでもあるのか。
ついついどうでもいい事を考える万丈へ、相手の男が苦笑い交じりに話しかける。
どうやら黙りこくった万丈へ痺れを切らしたらしい。

「おーい兄ちゃん。口が聞けないのか?」
「…へっ、あっ、す、すみません…」
「何だ、ちゃんと話せるんじゃねぇか。俺のイカした格好に見惚れてたのか?」
「いやイカれたの間違いじゃ…って、恰好はどうでも良いんだよ」

派手な見た目と飄々とした態度に流されそうになるも、どうにか真剣な空気に戻る。
最初に出会ったのがこんな怪しさ抜群の男なのは予想外だ。
けれど見た目だけでは判断せず、直球で質問する。

「なぁアンタ、殺し合いに乗ってるとかじゃねぇよな?」

ハ・デスが殺し合いを参加者に求める以上、当然賛同するだろう危険人物がいるのは間違いない。
もしこのアフロ男が該当するなら、ぶん殴ってでも止めねばなるまい。
反対に自分と同じくハ・デスを倒す気でいるなら、それは問題無し。
どんな答えを出されてもすぐ動けるよう警戒しつつ、返答を待つ。

「兄ちゃんよ、そんな分かり切った質問するもんじゃあねえぜ」

肩を竦め、あからさまにやれやれといった態度を取られる。
馬鹿にするような仕草に少々カチンと来たが、もしかしたら「殺し合いなんざ馬鹿げてる」という事なのかもしれない。
ほんの僅かに万丈の警戒が緩んだ瞬間、


246 : Blaze up Fight as one ◆ytUSxp038U :2022/06/25(土) 21:36:04 Wo4jzXX60
「乗るに決まってんだろ間抜けっ!!」
「うぉっ!?」

長い脚を鞭のようにしならせ、蹴りが放たれる。
後方へと身を捩り、爪先が万丈の胸スレスレを通過。
完全に警戒を解いていたら直撃は免れなかっただろう。

「テメェ…!あのハ・デスとかって奴の言い成りになるのかよ!」
「勝ち残ればそれに見合った優勝賞品が手に入るんだぜ?ま、命令されんのはちょいと気に入らねえがな」
「こんの馬鹿野郎が…!!」

人が死ぬのをゲーム感覚としか見ていないような言動。
エボルトやキルバスと言った、因縁深い星狩りの一族を思い起こす邪悪さだ。
分かりやすい外道なら、叩きのめすのに躊躇はいらない。
拳を強く握り締め、ファイティングポーズを取る。

「パラダイスキング様の最初の獲物だ!有難く思えよ!」
「上等だ!爆発頭野郎!」

繰り出されるストレート、だが手応えは無し。
万丈の怒りを軽く受け流すように、長身の体をしなやかに動かす。
まるでダンスを踊っているかのような、激しさと軽やかさが合わさった攻撃だ。
長い手足から繰り出される打撃を、万丈は両腕でガードするばかり。
見た目の奇妙さに反して強さは本物らしい。

「どうしたどうした!威勢の良い割にはやられっ放しかぁ!?」

挑発しながらも攻撃は止まない。
パラダイスキングはとある島のシロテナガザルを、己の力一つで支配下に置いた男だ。
常人であればあっという間に全身を引き裂かれていた野生の暴力に晒されて尚も、狂気染みた執念で生き延びた。
生半可な度胸や正義感だけで勝てるような人間ではない。


247 : Blaze up Fight as one ◆ytUSxp038U :2022/06/25(土) 21:37:18 Wo4jzXX60
「舐めんじゃねぇ!」
「っ…!」

万丈の頭部を狙って振り下ろした踵が押し返される。
よろける体勢、そこへ放たれるは拳の連打。
これまでとは反対にパラダイスキングが防御へ回るが、全ては防いでいない。
数発が腹部にヒット、呻き声が唾と共に口から吐き出された。
防戦一方もやられたままも、パラダイスキングには受け入れられない。
顔面に迫る右拳を回避、少しばかり頬を掠めヒリヒリするが無視。
こちらの拳を顎目掛けて打ち上げる、だが止められた。左肘でガッチリとガード。

「シャッ!」
「オラァッ!」

蹴りと蹴りがぶつかり、互いの脚に痺れが走る。
次に取ったのは偶然にも同じ行動。
それぞれ背後へと跳び距離を取っての仕切り直し。
手首をスナップさせ、再度構え直す万丈。
首の骨をゴキリと鳴らしながら、ダラリとした体勢のパラダイスキング。
片や怒りに満ちた、片や歪んだ快感を孕んだ瞳で睨み合う。

(チッ、馬鹿っぽい奴だが中々の拳(モン)持ってんじゃねえかよ)

殴られた箇所を擦ると鈍い痛みに顔を顰めた。
どうやらただのチンピラ崩れではないらしいと、万丈への警戒を一段階引き上げる。
ボクサー時代に鍛えた拳を、パンドラボックスを巡る戦いで更に磨き上げたのが今の万丈だ。
甘く見ていたら手痛い反撃を食らうに違いない。

「だったら、こいつで遊んでやるよ!」

パラダイスキングの武器は何も己の徒手空拳のみにあらず。
全参加者に配られた支給品、物によっては外れに分類されるガラクタが入っている。
尤もパラダイスキングに与えられたのは、間違いなく当たりの武器だ。
説明書を読んだ時は正直半信半疑だったが、内容が本当なら使わない手は無い。
取り出したのは黒いバックルらしき物と、果実が描かれた錠前だった。


248 : Blaze up Fight as one ◆ytUSxp038U :2022/06/25(土) 21:38:38 Wo4jzXX60
『バナナ!』

「変身!」

『ロックオン!ソイヤッ!』

『バナナアームズ!ナイト・オブ・スピアー!』

バックル…戦極ドライバーに錠前を装填すると、軽快なファンファーレが鳴り響く。
同時に、パラダイスキングの頭上にはジッパーを開いたような穴が出現する。
自身の「変身」を歓迎するかのような音楽に気分を上げ、カッティングブレードを操作。
錠前…ロックシードの断面図が露わとなった時、頭上の穴から巨大なバナナが落下し頭部に被さった。
当然まだ終わりではない。巨大バナナは上部を覆う装甲へと展開、果実を纏った騎士への変身はこれにて完了。
アーマードライダーバロン。沢芽市のダンスチーム、チームバロンのリーダーが変身した姿。
だが本来のバロンである駆紋戒斗が変身したものとは違い、装甲が黒く染まっている。
ブラックバロン、とでも言うべき姿だ。

「ほっほー、こりゃ凄ぇな」

感心し自分の身体を見回すブラックバロンを前に、万丈は目を見開く。
変身した姿こそ初めて見るが、腰の機械は見覚えがあった。

「何でお前がそれを持ってんだよ!?」
「あん?俺が知るかよ。文句はハ・デスにでも言っとけ」

最上の野望を阻止する為に共闘した異世界の戦士、仮面ライダー鎧武のバックルと同じ。
深く知り合った訳では無いが、当時の自分よりも遥かに立派なヒーローをやっていた男のベルトだ。
それと同じ物がよりにもよってこんな悪党の手に渡っている。
ハ・デスもパラダイスキングも仮面ライダーを単なる道具としか見ていない事実が、何より万丈には許せなかった。

「テメェの好きにはさせねぇぞ!」

奴が仮面ライダーの力で誰かを傷付ける前に、自分がここで倒す。
戦意を滾らせ懐からケースのような物を取り出した。


249 : Blaze up Fight as one ◆ytUSxp038U :2022/06/25(土) 21:39:40 Wo4jzXX60
(誰のかは知らねぇけど、今は力を貸してくれ!)

万丈の支給品に元々使っていたビルドドライバーやフルボトルが無いのは確認済み。
だが戦う為の力は、仮面ライダーへ変身する為のアイテムならあった
龍のエンブレムが刻まれたケース、カードデッキを近くに放置された廃車の窓ガラスに翳す。
罅の入った窓が写し出すのは、銀のベルトを巻いた万丈。
気合を込めて、あの言葉を叫ぶ。

「変身!」

カードデッキの装填と同時に、万丈は一瞬で姿を変えた。
炎のような色のボディスーツに銀色の装甲。
龍を象った頭部を持つ戦士の名は、仮面ライダー龍騎。
万丈や戦兎と同じ、欲と願いが交差する世界に有りながらも争いを止め、人を助ける為に戦ったライダー。

「あぁ!?お前も似たような物持ってたのかよ!」

驚きつつも内心ではそりゃそうかと納得する。
パラダイスキングのみに戦極ドライバーとロックシードのような物を支給するのは、幾ら何でも贔屓が過ぎるだろう。
全参加者に優勝の芽が出るよう、有用な支給品が配られていると言う事か。
それにこれはこれで都合が良いかもしれない。

「お前を殺して、ソレも俺が使ってやれば良いだけだからなぁ!」
「んな事させる訳ねぇだろうが!」

またしても火に油を注ぐかのような言動に、万丈の怒りが一層燃え上がる。
接近し拳を放つ。威力も速度も生身の時を凌駕していた。

「ッ!クソッ!」
「簡単に近付かせるかよ馬鹿が!」

殴りつける前に拳を引っ込め回避に移る。
ヒュンと空気を切り裂き、龍騎を貫くべく突き出された槍の初撃は当たらず終いだ。


250 : Blaze up Fight as one ◆ytUSxp038U :2022/06/25(土) 21:41:03 Wo4jzXX60
「そらそらぁ!愉快に踊れよクソガキ!」

躱した先に迫るのは同じく槍の穂先。
そちらの回避に成功しても、またその先で穂先が襲い来る。
装甲と同じくバナナをモチーフにした槍、バナスピアーによる絶え間ない突きが龍騎を追い詰めんと放たれていた。

「変身したってのにその程度かよ!?あぁ!?」
「好き勝手言いやがって…!」

万丈とて反撃に移りたいのは山々だが、当の相手がそれを許すはずが無い。
拳と槍ではリーチに差があり過ぎる。
なら龍騎も武器を使えば良いのだが、それにはデッキからカードを引き抜き召喚機に読み込ませると言う工程が必要不可欠。
そんな隙を晒しては槍の餌食になるのは目に見えている。
この点は変身と同時に専用武器が出現するブラックバロンに分があった。

「ぐあっ!?」

遂に回避が間に合わず、バナスピアーで胸部を突かれる。
ミラーモンスターや他のデッキ所有者の攻撃にも耐えうる装甲だ。
そう簡単には破壊されなくとも、痛みまでは消し切れない。
呻き次の行動が遅れる。ブラックバロンはそれを見逃す程手緩くは無かった。

「グ、やべ…」
「これで終わり何ざ思ってねえだろうな!」
「がぁっ!ぐぁあああああ!!」

無防備な胴体への突きをモロに食らい吹き飛ぶ龍騎。
地面を転がる相手を見下ろしながら、しかしこのまま寝かせてはやらない。

『バナナスカッシュ!』

カッティングブレードを一回振り下ろす。
ロックシードに込められたエネルギーが腕を伝ってバナスピアーへ到達。
紫色の光を纏わせ、破壊力を高めた一撃は下級インベスなら掠っただけでも死は免れない。
直撃なら、別世界の仮面ライダーでも危険だ。
突き刺すべく駆け出すブラックバロン。
龍騎もまたこのままではマズいと痛みをどうにか堪え、カードを引き抜き左腕のガントレットに叩き込む。


251 : Blaze up Fight as one ◆ytUSxp038U :2022/06/25(土) 21:41:55 Wo4jzXX60
『GUARD VENT』

天空から降って来た盾を構えるのと、槍が突き出されたのはほぼ同時。
紫色の巨大なバナナ状エネルギーがドラグシールドと激突。
間一髪防御は間に合ったものの、一撃の威力はさっきよりも上だ。
盾を構えた態勢のまま、またもや龍騎は吹き飛ばされた。

「こんの…野郎が!」
「うおっ、と!?」

しかし今度は龍騎も黙って吹き飛ばされてなどやらない。
宙に浮くという不安定な状態っでありながら、ドラグシールドを投擲。
重量のあるシールドが回転して迫って来るのを、横へ跳んで躱す。
無様に叩きつけられる気も無い龍騎は多少よろけながらも、日本の脚で着地した。

『SWORD VENT』

図らずも距離が開いた為に、落ち着いてカードを読み込ませられる。
ドラグシールド同様に天から降って来た武器をキャッチ。
青龍刀に似た龍騎の剣、ドラグセイバーを手に真正面から突っ込んで行く。
対するブラックバロンに怯む様子は皆無。
来るなら来いと真っ向から叩き潰す気概でバナスピアーを構え直した。

しかし続く龍騎の行動は予想とは全く違った。
ドラグセイバーを正面のブラックバロン目掛けて投げつけたのだ。
使い手を失いクルクルと回転しながら飛来する剣を、心底呆れた目で眺める。
こんな見え見えの攻撃、破れかぶれになったとしか思えない。

「邪魔だ!」

顔面へ直撃する前にバナスピアーを振るい弾く。
上空へ打ち上げられたドラグセイバーへ、ほんの一瞬だけ目をやった。

「オオオオオオオオオオッ!!」

すかさず急接近する龍騎に、ブラックバロンが焦りを覚える事は無い。
剣を囮に近付いて殴る、何とも分かりやすいお粗末な戦法だ。
この程度で自分を倒せると思い上がった馬鹿へ、嘲笑と共に槍が突き出される。


252 : Blaze up Fight as one ◆ytUSxp038U :2022/06/25(土) 21:42:56 Wo4jzXX60
「よっとぉ!」
「何だと!?」

だから今度こそ本当に驚いた。
龍騎は己を貫かんとする槍をギリギリまで引き付け、跳躍。
ただ躱しただけではない、何とバナスピアーの刀身フレームに飛び乗ったのだ。
片手に圧し掛かるライダー一人分の体重にぐらつき、ブラックバロンは武器を取り落としそうになる。
しかしすぐに重さは消えた。バナスピアーの上から更に跳躍した龍騎は、ブラックバロンの頭上で己の剣を掴む。

「うおらぁああああっ!!!」

真下のブッラクバロンへドラグセイバーが叩き込まれる。
舌打ちしながらバナスピアーで防ぐも、想像以上の威力に取り落としそうになった。
ドラグセイバーを用いた際に最も高威力の一撃を出せる技、龍舞斬だ。
バナスピアーを破壊こそされなかったものの、致命的な隙を晒すのは避けようがない。
防御が崩れた今こそチャンス、ドラグセイバーの大振りな一撃が放たれた。
型も何もないデタラメな、されど威力の程は疑いようの無い斬撃にブラックバロンは火花を散らして地面を転がる。

「がはぁっ……!この、クソガキがぁ…!!」
「クソガキじゃねえ!俺は――」

変身前に受けた打撃とは比べ物にならないダメージ。
怒気を露わに立ち上がろうとするブラックバロンだが、龍騎はこのまま一気に決着を付けるつもりだ。
再度引き抜いたのは、デッキと同じ龍のエンブレムが描かれたカード。

『FAINAL VENT』

「プロテインの貴公子!仮面ライダークロー…じゃなくて今は龍騎!!」

無機質な電子音声に応えるように、赤い体のドラゴンが現れる。
龍型契約モンスター、ドラグレッダーが龍騎の周囲を旋回。
主が跳躍すれば従僕たるモンスターも同じく浮遊。
必殺の一撃を敵対者へ叩き込むべく、火炎ブレスを吐き出した。


253 : Blaze up Fight as one ◆ytUSxp038U :2022/06/25(土) 21:43:40 Wo4jzXX60
「万丈龍我だ!!覚えとけ爆発頭野郎!!!」

炎により加速した龍騎は地上の標的目掛けて蹴りを放つ。
ドラゴンライダーキック。龍騎が所有するカードの中で最大の威力がある、正に必殺技と言うべきものだ。
拳や剣を食らったが、この蹴りを受けるのが一番マズい。
迫り来る熱に危険信号が喧しく鳴らされ、ブラックバロンも迎撃に移る。

『バナナオーレ!』

「殺してみやがれクソガキがぁああああああっ!!!」

カッティングブレードを二回連続で操作。
掲げたバナスピアーに先程以上のエネルギーが充填され、巨大な紫のバナナ状へと変化。
咆哮を上げながら振り下ろしたバナスピアーと、燃え盛る龍騎の右足が激突。
互いの技の威力を削ぎ落し、されど共に相応のダメージを受け吹き飛ばされた。

「ッ…!痛ってぇ……」

全身に広がる痛みを強引に耐え立ち上がる龍騎。
ドラゴンライダーキックにより、ある程度は敵の技を相殺出来ていたのだろう。
ダメージ皆無とはいかずとも、まだ戦えるだけの体力と気力は十分ある。

しかし龍騎は未だ戦う気満々であっても、ブラックバロンは違う。
新たに取り出したロックシードを起動、ホバーバイクへ変形させ飛び乗った。

「んなっ!?逃げんのかよ!?」
「こんな序盤でグロッキーになるのは馬鹿のする事だろ。そんぐらい考えろよ馬鹿」
「馬鹿馬鹿言うんじゃねぇよ!せめて筋肉付けろ!ってか逃げんじゃねぇ!!」

逃亡を阻止すべく飛び掛かろうとしたが、前面部に取り付けられた機銃が掃射される。
慌てて銃弾の嵐を避けている隙に、ブラックバロンはあっという間に飛び去った。
龍騎が気付いた時には既に影も形も無く、何処かへ逃げた敵へやれる事は一つも残っていない。

「クソッタレが……!!」

無意味と分かっていても苛立ち交じりに叫ぶ。
倒す事もベルトを奪う事も出来ず、みすみす逃亡を許す始末。
ハ・デス主催の決闘(デュエル)における万丈龍我の初戦は、何とも苦い結果で幕を閉じた。


254 : Blaze up Fight as one ◆ytUSxp038U :2022/06/25(土) 21:44:53 Wo4jzXX60
【万丈龍我@仮面ライダービルド】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、龍騎に変身中
[装備]:龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:ハ・デスと磯野をぶっ倒して殺し合いを潰す。
1:遊戯って奴が心配。
2:爆発頭野郎(パラダイスキング)は次に会ったら絶対に倒す。
3:そういや俺のベルトとフルボトルどこいったんだ?
[備考]
※参戦時期は『ビルド NEW WORLD 仮面ライダークローズ』以降。


◆◆◆


「ったくあの野郎、嫌な事思い出させやがって……」

運転中のパラダイスキングが悪態を漏らすのは、一戦交えたばかりの青年。
蹴りを放ちながら啖呵をきってみせた姿に、つい因縁のある人間の姿が脳裏に浮かび上がったのだ。

――『万丈龍我だ!!覚えとけ爆発頭野郎!!!』

――『オラ、野原しんのすけだゾ!よく覚えとけぃ!!』

「……チッ」

自分を敗北に追い込み、王国崩壊の原因を作った少年。
忌々しい記憶を頭から追い払い、これからどうするかに思考を回す。
戦闘の継続ではなく逃走を選んだのは万丈に言った通りだ。
ゲームはまだ序盤も序盤。こうも早く体力を使い切るのは本物の馬鹿のやる事だろう。

(ゲームを有利に進めるに必要なのは、他にも強力な武器。それと使い物になる部下だな)

武器に関しては他の参加者を殺して奪う。
部下に関しても簡単である。
従順な手駒を作る方法は実にシンプル、逆らったらどうなるかを体に教えて込んでやれば良いだけ。
力で屈服させるという、島の猿どもを支配下に置いていた時と同じだ。

「そうさ、俺はあんなクソガキに負けて終わるような男じゃねぇ。今度こそ俺の、俺だけの王国を手に入れてやる…!!」

一度は全てを失った王が、新たな楽園を手に入れる命懸けのゲームに挑む。


【パラダイスキング@クレヨンしんちゃん】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、ブラックバロンに変身中、運転中
[装備]:量産型戦極ドライバー+バナナロックシード(ナンバー無し)@仮面ライダー鎧武、タンポポロックシード@仮面ライダー鎧武
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜1
[思考・状況]
基本方針:優勝する。
1:もっと強い武器を手に入れる。
2:手頃な部下も欲しい。
3:万丈の奴は次に会時があったら殺す。
[備考]
※参戦時期は『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル』終了後。


255 : Blaze up Fight as one ◆ytUSxp038U :2022/06/25(土) 21:45:44 Wo4jzXX60
【龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎】
神崎士郎が開発したカードデッキの一つ。
鏡面に翳す事で出現するバックルへデッキを装填し変身が完了する。
赤龍型モンスター、ドラグレッダーと契約しておりバランスの取れたカードが揃っている。
サバイブのカードは入っていない。他の参加者に支給されているのかどうかは不明。

【量産型戦極ドライバー@仮面ライダー鎧武】
戦極凌馬が開発したアーマードライダーに変身する為のベルト。
量産型とあるようにイニシャライズ機能が付いておらず、誰でも使える。

【バナナロックシード(ナンバー無し)@仮面ライダー鎧武】
狗道供界からネオバロンのリーダー、シュラの手に渡ったロックシード。
駆紋戒斗が所有するバナナロックシードと違い、ナンバーが刻印されていない。
戦極ドライバーに装填し、アーマードライダーブラックバロンに変身する。

【タンポポロックシード@仮面ライダー鎧武】
ユグドラシル・コーポレーションが開発したロックビークルの一つ。
ロックシード形態から、空中戦用ホバーバイクのダンデライナーに変形する。
機体前面のガンバレルユニットを装備。


256 : ◆ytUSxp038U :2022/06/25(土) 21:46:20 Wo4jzXX60
投下終了です。


257 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/25(土) 22:30:53 FxRuraqY0
投下します
遊戯王OCGのカードについて独自の解釈を含んでおります


258 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/25(土) 22:32:24 FxRuraqY0
ここはショッピングモールの屋上、そこには筋肉モリモリの角刈りマッチョマンが地面を殴りながら怒りに震えていた。

「……ふざけやがってぇ!」

彼の名はコマンダー、ロケットランチャーとバズーカ砲を装備した実戦部隊……なのだが現在はそれらの武装を没収され身一つの状態となっている男である。

そんな彼が何故この場で怒りに震えているかというと、それは先ほど主催者たちが少年を見せしめとして無惨に殺したことに起因していた。

「子供を巻き込むなど、下種野郎どもめぇ!」

『子供の命を遊び半分で奪う』……それは人としてやってはならないことであると、実戦部隊の一員としてその誇りだけは捨てずに戦ってきたからこそ彼は怒りを覚えていたのだ。

(……しかし、今の状態では奴を倒すなど夢のまた夢だ…。仲間を探さなければ、対抗はできないだろう……!)

しかし同時に彼は気づいていた、普段の装備に身を包んだ状態であってもハ・デスには勝つことができないこと、ましてや装備を奪われた状態ではなおさらであるという事に。

そして彼が怒りに震えながらもその場から立ち上がり、周囲を探索し始めたところ近くに人影があることに気が付いた。

「すみません……あの〜、そこの角刈りマッチョマンさん。何か色々とあらぶってましたけど大丈夫っすか?」

それは短い銀髪に青い目をした一人の少女だった。

「キミは……?」
「ああ、名乗り遅れたっすね……私は芹沢あさひという者っす」

彼女の名前は芹沢あさひ。元の世界で『Straylight (ストレイライト)』というアイドルグループに所属しているアイドルで、常に面白いことを探している探求心の強い女の子である。

「そうか、私はコマンダー。とある実戦部隊に所属している者だ」

朝日が自己紹介をするとともに、コマンダーもまた自己紹介を返していった。

「コマンダーさんっすね、よろしくお願いっす。じゃあ……いきなりですまないんすけど、一つ頼みたいことがあるんすけどいいっすか?」
「本当にいきなりだな……頼みたい事とは何だ?」

そうして互いに自己紹介を終わらせると突如としてあさひがコマンダーに対して頼みごとをしてきた。それは……

「すみませんが、この殺し合いを止めるために、私と一緒に戦ってほしいっす!」
「この殺し合いが間違っていると、そしてそれを止めたいと私は思っているっす」
「でも、私は戦うための力なんて持っていないっす……だから、大変申し訳ないことですけれども、貴方について行ってもらいたいんすよ」

この殺し合いを止めるために自分と一緒に来てほしいという事だった。

「……ああ、それはもちろんのことだ。私もこの殺し合いを止めるための仲間を探しに行こうとしていたところだったからな」

それに対し彼はためらうことなく了承の言葉を返していった。

しかし彼のその言葉を聞こうとした瞬間、あさひは四枚の翼を持ったトンボのような怪物によって連れ去られてしまったのだ。

「えっちょっ……何すかこの怪物!?」

あさひは身体を激しく動かしながらその怪物から逃げようとするも、怪物の力は強くそのまま空高くへと連れ去られていった。

「あさひ!今助けるぞ!」

それを見たコマンダーは彼女を助けるべく自身のデイバッグからライフル銃と何か巨大なバックパックを背負った後、その怪物に照準を合わせてその翼を撃ち抜いて墜落させた。

「うわああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

しかし怪物を撃ち落としたはいいもののその怪物にとらえられたあさひもまた自由落下を始めることとなった。

このままでは彼女は地面とキスをし、そしてただのシミへと成り果ててしまうだろう。

「ターボ・オン!」

だがコマンダーがそう叫び、手元にあるレバーのスイッチを押したことで背中のバックパックから大量の煙が噴き出し、次第に彼の身体が空へと飛びあがっていったのだ。

「さあ、早くつかまれ!」

そして空へと飛び立った彼は落下しつつある彼女の近くでその足を伸ばし、そこに掴まるように言った。

「はいっす!」

それを受けてあさひがそう答えると、なんと彼女はコマンダーの足ではなく、とんでもないところを掴んできたのだ。それは……

「ああおぉぉぅッ!」

コマンダーの股間だった。

「おおっ、鍛えられているだけあってココも丈夫なんすね!」

落下しないように彼のタマタマを鷲掴みにしているあさひは興奮したようにそう叫んだ。

「……と、当然だッッ!」

そしてそれに対し大量の脂汗をかきながら、コマンダーはそう答えるのだった……。


259 : 筋肉モリモリ、マッチョマンのロボ野郎だ ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/25(土) 22:33:36 FxRuraqY0
-----------------
コマンダーがタマタマの痛みに悶絶しながらもあさひを屋上に下ろしてから数分後……

「さて、あさひ君。私はこれからこのショッピングモールの中を探索し使えそうなものを探しに行こうと思う……それでもいいか?」

彼は今後の方針として、まずは自分たちがいるショッピングモールの中を探索することを話した。

「『全品100%OFF、もってけドロボー!』ってヤツっすね、別に構わないっすよ。まずは生き残ることが最優先になるのは当然のことですし」

それに対し彼女もその提案に了解し、共に必要になりそうなものを探しに行くのだった。


若干内股になった状態で歩いているコマンダーの様子に。特に何も触れないまま……。


【コマンダー@遊戯王OCG】
[状態]:健康、タマタマにダメージ(大)
[装備]:M1ガーランド@現実、ジェットパック@クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜1
[思考・状況]基本行動方針:主催者に対抗するための仲間を集める。
1:主催者に引導を渡す。
2:あさひの知り合いたちを一緒に探す。
3:まずはショッピングモールの中から使えそうなものを探す。
4:(タマタマが)逝ったかと思った……。
[備考]
デフォルトの装備であるロケットランチャーおよびバズーカ等の銃火器は没収されています。


【芹沢あさひ@アイドルマスターシャイニーカラーズ】
[状態]:健康
[装備]:―
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]基本行動方針:生きて帰る。自分の知り合いがいれば当然助ける。
1:冬優子ちゃんや愛依ちゃんを探しに行く。
2:角刈りマッチョマン(コマンダー)と一緒に行動する。
3:ショッピングモールの中から使えそうなものを探す。
4:……やっぱり、変な感触がしたっすね。
[備考]
参戦時期は少なくとも『Straylight.run()』終了後。


『NPC紹介』
【レイドラグーン@仮面ライダー龍騎】
ヤゴ型のミラーモンスターである『シアゴースト』が繭を作り、その中で変態を遂げたトンボの特性を持つミラーモンスター。

頭部から4枚の薄羽を出現させ、それを使って空中を自在に飛び回り、上空からホバリング状態で地上の獲物を探し急接近して上空へと連れ去ってしまう。
両手足に鎌のような鋭い鉤爪を持ち、人体を容易く貫く威力を持つ上、槍のような武器を持つ個体も登場している。


『支給品紹介』
【M1ガーランド@現実】
アメリカ合衆国が開発した半自動小銃であり、歩兵用の主力小銃として全面的に採用された初めての半自動小銃。

【ジェットパック@クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル】
コマンダーに支給。アクション仮面がイベントで使用していた、ジェットの噴射によって推進する飛行器具。


260 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/25(土) 22:34:22 FxRuraqY0
投下終了です

以上、ありがとうございました。


261 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/25(土) 23:33:12 9XCb6Xtw0
投下します


262 : お探しは家族ですか? ◆QUsdteUiKY :2022/06/25(土) 23:34:30 9XCb6Xtw0
 ぼくの名前は月見由紀雄。
 元々はただの男で、今は女の子。

 放課後に見た女の子の姿に恋をして。その人がぼくに女装を提案してきたから、そういう趣味の人なのかな……?って困惑しながらすることにした。

 その日――ぼくの運命は変わった。狂わせた――とも言えるけど、ぼくは今もあの人が好きだから後悔はしてない。
 初めて来た服は、セーラ服で。最初は女物の下着には抵抗があったけど、履くように言われたから緊張しながら仕方なく履いた。

 トランクスとは全然違うフィット感。今ではもう慣れてるけど、その時はそのフィット感が気持ちいいと思って――ぼくのアレが収まらないくらい、大きくなってた。
 わざとじゃない。でも女物の下着を意識するだけで、興奮しちゃって。

 大きくなったぼくのアレをあの人は――椎名さんはスカートの上から手でシュッシュッと扱いて――そのままぼくは絶頂に達した。

 次の日、ぼくは友達の誘いを断って昨日と同じ場所に――椎名さんが居そうな場所へ向かった。
 そしたらやっぱり椎名さんと会えて……そして彼に手を引っ張られて、学校の女子トイレに連れ込まれた。

『これな〜んだ?』

 椎名さんが楽しそうにブラジャーを取り出す。パッドまで用意してて、ぼくは生まれて初めてブラジャーを着けることになった。

 そのまま生まれて初めての女装外出へ。
 知り合いとすれ違った時はすごく不安だったけど、向こうはぼくが月見由紀雄だと気付くことはなかった。

『バレないよ、そう簡単には。今の君は女の子だから』

 その時はまだ、椎名さんの言葉の意味がよくわからなかった。
 だってその時のはぼくはまだ――普通に男のつもりだったから。

 その後、ぼくが連れて行かれた場所は――夜の街。援交の待ち合わせ場所。
 ぼくは椎名さんの言われるがままに男の人のアレを――チンポを咥えた。

 チンポの独特な味とむせかえるような匂いが頭を支配する。本当は男の人とエッチなんてしたくないはずなのに――勃起が止まらない。
 その時は自分でもよくわからなくて、困惑した。喉に絡みつくに不味い精子を飲まされて、気持ち悪い。そう思ってるはずなのに、スカートの中では勃起して。

『興奮しちゃったんだ。女の子みたいに』

 椎名さんはぼくの心を的確に言い当ててくる。
 その時はまだ女の子になっていなかったけど……もしかしたらもう、なりかけてたのかもしれない。

 その後、美容サプリと称して薬を渡された。
 それから何ヶ月か彼と過ごした。カラオケで女声の練習をしたりもした。
 途中でもらった薬がただの美容サプリじゃないことにも気付いたけど、ぼくはそれを飲み続けた。――女性ホルモンという二度と取り返しがつかない薬を。

 そうしているうちに地毛も女の子みたいに伸びてきた。髪質も男のものから、女の子のものへ。
 それに胸も膨らんできた。――この時点で男としての月見由紀雄はとっくに終わってた。

 ぼくはどうなりたいんだろう――そんな不安が生まれてくる。
 それでも好きな人と居られることが嬉しくて、ぼくはそんな生活を続けた。

 そうしていたら女装や薬のことが家族にバレて、ぼくは椎名さんの元へ逃げる。
 椎名さんはぼくを匿ってくれたけど、寝てる間にいつの間にかエッチな格好にされて――女の子だと思っていた椎名さんが男だと初めて知った。
 しかもぼくのより大きなチンポで――。
 おっぱいや乳首を弄られて、舐められて。
 お尻に大好きな椎名さんのが挿入ってきて――ぼくは初めてメスイキした。女の子になった。


263 : お探しは家族ですか? ◆QUsdteUiKY :2022/06/25(土) 23:34:49 9XCb6Xtw0


 〇


 ぼくには大切な弟がいる。
 月見名残。ぼくは「なーくん」と呼んでる。
 街を歩いていたら偶然、久しぶりになーくんと出会った。最初は人違いで済ませるつもりだったけど、なーくんがぼくの正体に確信を持ってたから。ちょっとだけ話すことにした。

 本当は普通に話すだけのつもりだったけど……椎名さんが来て、なーくんに色々と打ち明けた。なーくんの前でキスされて、おっぱいを揉まれて、乳首を弄られて……。

 そして椎名さんはなーくんが家に来るように誘導した。そこでぼくは目隠しされて、痴態を晒されて。
 色々とあったけど、椎名さんの提案でなーくんと銭湯の女湯に行くことになった。もちろんなーくんを女装させた状態で。

 それから脱衣所で裸になって――なーくんの様子が気になったから、体を洗った。ぼくも元々は普通の男だったから……なーくんの気持ちはわかる。
 それになーくんの勃起したおちんちんを見てたら嬉しくて、少し調子に乗っちゃって……。
 すごい量の射精をしたなーくんに、精液がべっとり着いた手を見せたら「ばか!」って言われた……。

 だけど本当はただの照れ隠しみたいなものだったみたいで、なーくんはぼくとセックスしたいって言い始めた。

 だからぼくはなーくんを女装させて、なーくんが女の子役という条件でセックスした。
 おちんちんを弟のなーくんに舐められて、おちんぽみるくを口の中に出す。
「よくできたね〜」って褒めてあげると「兄ちゃんのちんちんだから……」って言われて。その姿がまたすごく可愛かった。

 それから少し膝枕してあげた後、なーくんのお尻にぼくのおちんちんを挿入する。
 手でおちんちんをシコシコしてほしそうだったから、意地悪して乳首を弄る。女の子みたいな喘ぎ声まで出しちゃって、すごく可愛かったのをよく覚えてる。
 そのままなーくんのお尻の中に出して――なーくんに生まれて初めてのメスイキを。メスの快感を味わわせてあげた。

 その後は「じゃあね」って別れた。
 椎名さんのことが好きだから……家に帰るつもりはなかった。

 久しぶりに再会したなーくんはすごく可愛くて。別れ際は辛かったけど……それでも椎名さんが「弟くん、かわいいね」って言ってくれてなんだか嬉しかった。


264 : お探しは家族ですか? ◆QUsdteUiKY :2022/06/25(土) 23:35:56 9XCb6Xtw0

 〇


「ゲームって言葉を使ってるけど、これって殺し合いだよね……?」

 説明書でルール確認を済ませたけど……これはどう見ても殺し合いだった。どうしてそんな危険なものにぼくが巻き込まれたのかわからないけど……これは間違いなく殺し合い。決闘なんかじゃない。

 ――ど、どうしよう……
 ぼくは普通の人より特殊な人生を送ってるだろうけど、武術や格闘技はやってない。そもそもホルモンの影響で筋肉は落ちてるし、力だってもうそこら辺の女の子と変わらないと思う。

『大丈夫だ、遊戯。今すぐオレがこいつをなんとかするから任せと――』
『本田くん――――!』

 首と胴体が別れたリーゼントの人や、その人の友達の絶叫が今でも忘れられない。
 ぼくはどうしたらいいのかな……。
 最後の一人まで生き残る?そんなことぼくには出来ない。なるべく誰も殺したくないし、そんな力もない。
 だからなんとかしてここから脱出したいけど、それにはハ・デスをなんとかしなければいけない。
 椎名さんが居たら何かいい案を教えてくれたかもしれないけど……。

「……なーくんは大丈夫かな?」

 椎名さんはきっとなんとか生き延びそうな気がする。あの人にはそう思わせる、不思議な雰囲気がある。
 でもなーくんは……。もしなーくんが巻き込まれていたら、なんとかして助けてあげたい。
 なーくんに会うことはもうきっと無いと思ってたけど……それでもなーくんには死んでほしくない。

「何か悩み事?」

 ぼくが一人で延々と考え事をしていたら――優しそうな女の人に声を掛けられた。猫耳が生えた女の子もいる。……猫耳カチューシャかな?
 彼女の名前は保登モカ。女の子はリュシアと名乗って――ぼくは二人と色々話した。

「そっか、ゆきちゃんは弟思いなんだね。実は私も仲良しの妹が居て、探してるの」

 なでなで。モカさんがぼくの頭を撫でながら、優しく話し掛けてくれる。
 保登心愛。それがモカさんの妹の名前だった。

「私もモカさんと一緒にご主人様を……家族を探しています!」

 リュシアちゃんもぼくやモカさんと同じで、この決闘に巻き込まれてるかもしれない家族を探してた。首輪を着けてるし、そういうプレイにも見えるけど事情を聞く限り違うみたい。


265 : お探しは家族ですか? ◆QUsdteUiKY :2022/06/25(土) 23:36:12 9XCb6Xtw0
 ちなみにぼくの性別的な事情については――。

「かわいいからいいんじゃないかな?」

 特に引いたりもせずに自然と受け入れてもらえた。
 こんな状況だから誤解を招かないために言ったけど、正解だった……?

「それに――」

 がしっ!

「うん。女の子と変わらないくらいもふもふでいいと思うよ!」

 モカさんはぼくの体を抱きしめてそう言うと、またなでなで頭を撫でてくれた。すごい姉オーラを感じる……。

「あ……ありがとうございます」

 モカさんにお礼を言う。
 ぼくもお兄ちゃん?お姉ちゃん?――なーくんにとっては、前者なのかな。
 お兄ちゃんだけど、モカさんほどしっかりしてるとは思えない。結局またなーくんと離れてるわけだし……。

「ビックリしましたけど、性別くらい気にしません。一応、私も獣人ですから……」

 リュシアちゃんもぼくのことをすぐに受け入れて、自分が獣人だと明かしてくれた。
 獣人って言われてもよくわからないけど……ハ・デスが言ってた無数の世界っていうのは嘘じゃないのかな?
 こんな現実離れした状況だから、獣人という種族が他の世界にはいるのかも……?って考えられる。

「リュシアちゃんも、ありがとね」

 リュシアちゃんは、なんかピュアな感じがした。こんな小さい女の子でもハ・デスは巻き込むんだ……。

「ゆきちゃんはなーくんに。リュシアちゃんはご主人様のマサツグさんに会いたいんだよね?」

「はい。ご主人様と合流して、この決闘でもお役に立ちたいです!」
「そうですね。ぼくもなーくんを助けたいです。それに椎名さんならこの決闘をなんとか出来るかも……?」

 リュシアちゃんに続いて、ぼくも返事をする。椎名さんについて、二人にはだいたい話してある。

「じゃあ三人でみんなの家族や大切な人を探そっか。見つかるまで時間はかかるかもしれないけど、絶対に見つけるから――お姉ちゃんに任せなさい!」

 眩しいほどの姉オーラを発しながら、モカさんはウインクした。


【月見由紀雄@女装男子のつくりかたシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:とりあえず決闘には反対かな
1:モカさんやリュシアさんと一緒にそれぞれの家族や大切な人を探す
[備考]
※参戦時期は女装男子のおとうとでなーくんと別れた後、女装したなーくんと再会する前

【保登モカ@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:健康
[装備]:保登モカの槍@きららファンタジア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:みんなで脱出する方法を探そっかな
1:ゆきちゃんやリュシアさんと一緒にそれぞれの家族や大切な人を探す
[備考]

【リュシア@異世界で孤児院を開いたけど、なぜか誰一人巣立とうとしない件】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:決闘には反対です!
1:モカさんやゆきさんと一緒にそれぞれの家族や大切な人を探します
[備考]
※参戦時期は少なくとも孤児院を出ていく前です

『支給品紹介』
【保登モカの槍@きららファンタジア】
保登モカに支給。モカが並行世界――きららファンタジアで手にした力を引き出すための槍。本人の意思で並行世界の力を解放した姿に『変身』が可能で変身中は身体能力が向上する。変身中はきららファンタジアの衣装に服装が変わる


266 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/25(土) 23:36:29 9XCb6Xtw0
投下終了です


267 : ◆2zEnKfaCDc :2022/06/26(日) 03:10:25 9hn.mXuQ0
投下します。


268 : いつか、この雨が止んだ時 ◆2zEnKfaCDc :2022/06/26(日) 03:11:20 9hn.mXuQ0
 ――たすけて。

 発した声は、響く雨音がかき消した。

 雨が、私を濡らしていく。

 雨水の染み込んだ心は、土のように、固まっていく。

 ああ。

 いっそのこと、濁流に消えてしまえたならば。

 悲鳴は、届かない。固まったまま、私は漂い続ける。


269 : いつか、この雨が止んだ時 ◆2zEnKfaCDc :2022/06/26(日) 03:12:00 9hn.mXuQ0


「決闘……って、どういうこと?」

 ざあざあと、うるさいくらいの大雨が降っていた。ともすれば、水害を引き起こしかねないほどの大雨だ。こんな天候下では決闘どころではないだろうに。何を思ってこんな時に――そう思い、何気なくふと遠くを見通した時、気付く。

 ――ああ、この雨。引き起こしているのは私なのか、と。

 降り注ぐ豪雨は、自分を中心に半径数百メートルの範囲内のみ。それより外には雨雲など無く、月明かりだけが地に降り注いでいた。

 それが意味するところは――私、陽夏木ミカンにかけられた『関わった人間にささやかな困難が降りかかる呪い』が発動するだけの感情の揺らぎがあったのだということ。普段よりも降雨量が著しく激しいのは、桜さんが作ってくれた『キツめの呪いを笑える感じにする結界』の効果がこの舞台に及んでいないからか。それとも――それだけ今、私の心に動揺が走っているからか。

 新学期、新たに始まった日常。私の呪いの体質も不自然なほどすんなりと受け入れられて、浮かれ心地になっていたのだろうか。

 日常の中の些細な事故で気絶した私が撒き散らした呪いは、魔族とか魔法少女とか、そういったファンタジー要素とは全く無関係のクラスメイトに牙を剥いた。私さえいなければ、理不尽な攻撃にも遭う道理なく、平穏な日常を保っていられたであろう人たち。あの場に桃が偶然いなかったとしたら――その先は、考えるだけで恐ろしい。
 
 そもそも、外的な怪我をしなかったというだけで、常識の外にあった現象が自身に迫ってくる恐怖を、少なからず彼女たちに植え付けてしまったはずだ。だというのに誰も私を責めることはなく、皆が自分の責任を声高に主張する。尻拭いをさせてしまったシャミ子や桃は、私を慰めようと話しかけてくれた。

 私の周りにいるのは、そんな優しい人たちで。だからこそ、あの町は温かい。再び引っ越してきたばかりだが、それでも守りたい場所だと、そう胸を張って言えるだけの居場所になった。
 
 だけど私の呪いは、私にとって近いものほど傷付けてしまう。他ならぬ私が、居場所を壊してしまう。その危機感はずっと、持っていたはずだったのに。

 突如として発生した、決闘などというある種の『困難』。私の呪いは、天候や野生動物のような、自然界への干渉だけではない。たとえば桃が唐突に、老いた富豪から鳥の世話を託された時のように、運命的な事象すらも操作して、他者に困難を与える。

 果たして、一人の少年の犠牲者を出したこの催しに、呪いによる運命操作が関与してないと言えようか。

 これまでの呪いとはあまりにも規模が違いすぎるものの、過ぎってしまった想像と、それに伴う罪悪感は、呪いの威力をいっそう強め、荒ぶる心を映し出すが如き豪雨を撒き散らしていた。


270 : いつか、この雨が止んだ時 ◆2zEnKfaCDc :2022/06/26(日) 03:12:40 9hn.mXuQ0
 だが、呪いで雨が降っているということは、近くにその呪いを受けている『誰か』がいるということだ。私の呪いはあくまで他人を、対象とするものなのだから。

 これだけ気分が沈んでいる今は呪いが制御できない。急いで近くにいる誰かから離れないと――でも、どの方向に? それすらも定まらぬままに走り出した私の目の前に、唐突にひとつの影が現れる。

「きゃっ……!」

 思わず悲鳴を零した私を前に、その影は形を明らかにした。それは道化師のような衣装をした、綺麗な緑色の髪の少女だった。私を見ると少し、驚いたような表情を見せ――そして、笑みを零した。

 僅かな所作であるが、見たところ、殺し合いに乗っているというわけではないようだ。だったら……いや、仮にそうでなかったとしても、だが……私の呪いで、この子を傷つけるわけにはいかない。

「ご、ごめんなさい……すぐ、離れるから!」

 呪いを知らないであろう少女はその言葉に不思議そうに首を傾げ、一方の私はくるりと向きを回転して立ち去ろうとする。すると間もなく、服の裾を引っ張られるような感覚に陥った。

 魔法少女の力をもってすれば振り払うことも容易かもしれないが、強引に振り払って行くと、振り払われた少女が怪我をするかもしれない。呪いですらない腕力で怪我をさせるわけにはいかず、大人しく立ち止まる。振り返ると、少女は何かを主張するように口をぱくぱくとさせている。

「……もしかして、喋れないのかしら?」

 その様子に察しをつけた私の言葉に、少女はこくこくと小さく頷いた。


271 : いつか、この雨が止んだ時 ◆2zEnKfaCDc :2022/06/26(日) 03:13:19 9hn.mXuQ0
(この子は殺し合う気なんてないみたいだけど……これじゃコミュニケーションにも困るわよね。)

 私は魔法少女で、元々戦いのノウハウがあるから、殺し合いを強制されていることそれ自体への恐怖は比較的薄い。だけど、そういった事情のない普通の子が、手持ちに武器を持っていた場合。対話ができず、殺し合いの意思がないことを伝えられないこの子を前にいかなる対処を取るのか、想像には難くない。

「仕方、ないわね……。」

 気が付けば、雨は次第に弱まっていった。目先に新たな課題が生まれたことで、心労から僅かにでも、解き放たれた心持ちになったのだろうか。或いは自分よりも行き先が不安な者を前にして、少し冷静になったとも言えるかもしれない。

「えっと……大丈夫?」

 自分が去ろうとする意思がないのを確認すると、少女はデイパックの中から1枚の紙を取り出して、慣れた手つきでさらさらと何かを描写し始める。

『おなまえㅤなんていうㅤするの?』

 示された紙には、ピンク色のクレヨンでそう描かれていた。なるほど、筆談。こういう手もあるのかと感心しつつ、しかし同時に、ある程度密着していないとできない伝達手段でもある。やはり敵意を持っている相手、もとい恐怖から殺し合わざるを得ない相手には、難しいだろう。

「……陽夏木ミカン、17歳よ。」

『ミカン!
 おなまえにㅤおひさまㅤはいってるの
 まぶしいㅤなってㅤいいね!』

『わたしㅤクレヨン!
 こえㅤなくてㅤクレヨンでㅤおはなし
 するからㅤクレヨン!ㅤよろしく!』

 使う道具の名前を名乗っているクレヨンに疑問が生まれる。この子はいつから、喋ることができなかったのか。クレヨンを扱える年齢になるまで、名前すらも付けられなかったというのか。けれど、細かい疑問を考えるのは、やめておく。

「えっと……でも、私には近付かない方がいいと思うの。」

 あまり深入りしすぎると、突き放せなくなってしまうから。


272 : いつか、この雨が止んだ時 ◆2zEnKfaCDc :2022/06/26(日) 03:14:16 9hn.mXuQ0
「私、昔から制御できない呪いがあって……緊張すると、周りの人間に被害が及んじゃうの。だから、私の傍にいると危ないわ。」

『ミカンㅤクレヨンにㅤひがいㅤおよぶㅤしたいの?』

「そうじゃないわ。でも、呪いは勝手に発動しちゃうのよ。ほら、私たちの周りにだけ降ってるこの雨だって、呪いのせい。」

 その言葉を聞くと、クレヨンはにっこりと、大きく口角を上げて微笑んだ。

『だったらㅤへいき!
 わるいことㅤしたくないのにㅤわるいㅤなるの かわいそう。
 だからㅤいたくない!』

「でも……。ううん、違うわね。……うん、ありがと、クレヨン。」

 拙い字と、怪しい文法。だけど、どことなく温かい。呪いが暴走し、お母さんに怪我をさせてしまって、独り倉庫の中に閉じこもっていたあの時。私に投げかけられたのも、桃色の言葉だった。

 結局私はこの言葉に、逆らえないと、知っているから。

「まったく、仕方ないわね……。じゃあなるべく、呪いが出ないように頑張るから……それでいい?」

『うい!ㅤわかった!!
 クレヨンもㅤ気をつけるㅤするね!!』

 虚しい繋がりだと、我ながら思う。

 いつかは傷付けてしまうと分かっていながら、差し伸べられた手を振り切れずにいる自分。あの日、私の呪いごと受け入れてくれた桃の手のひらは、どうしようもないほどに私の居場所になってくれた。

 まだ私は、この手を振り払えない。

 決闘と銘打った殺し合いの世界。呪いによる影響が、いかなる結果を生み出し得るかなんて、分かっているのに――


273 : いつか、この雨が止んだ時 ◆2zEnKfaCDc :2022/06/26(日) 03:14:42 9hn.mXuQ0


 この雨の先には陽だまりがあるのだ、と。太陽に焦がれた道化は空を目指した。そこに垣間見えた陽の光。されど辿り着くことはなく、その翼は、焼け落ちた。

 灼熱に喉も頭も焼かれながら、道化は全てを諦めた。涙に濡れた瞳の上に、笑顔を貼り付けて。奪われた声帯と欠けた知性で、雨の中に陽だまりを見たピエロは、誰よりも哀しく、滑稽で。

 この殺し合いの世界で彼女が最初に見た空は、強く降り注ぐ、凄まじいまでの雨だった。彼女の記憶を強く揺さぶる、絶望に満ちた気候。

(あめㅤふってる。)

 しかし搭載された複雑な電子回路は、今やその一部を欠損し、簡易的な演算しか打ち出さない。世界に広く普及したAI搭載型アンドロイド、HANOI。その中の『曲芸用』と呼ばれる型として製造されたクレヨンは、自然現象にしてはどこか不自然に降る雨の中、この殺し合いの地に降り立った。

ㅤ雨は、好きではない。くらくて、さむくて――

(――まるでㅤなみだみたい。ㅤかなしいㅤかなしいがㅤつたわってくるよ……。)

 小さな命であれば簡単にかき消してしまえそうなほどの、荒ぶる雨の中。それでもクレヨンは、そう感じた。涙を流さなくなったのは、いつ以来だろうか。

 ……いや、最初から、だ。そうでなくてはならない。

 なぜならピエロは、笑っていなくてはいけないのだから。


274 : いつか、この雨が止んだ時 ◆2zEnKfaCDc :2022/06/26(日) 03:15:11 9hn.mXuQ0
 クレヨンの雇い主であり、飼い主でもあるサーカス団『ソル・デ・ジューニョ』の団長エンリケは、彼女に人権を与えなかった。往々にしてHANOIとはかくたるものであるが、その中でもエンリケは顕著だった。0と1で構成された作り物の心は、地獄のような環境の中であっても、幸福を求めずにはいられなかった。

 だから、クレヨンに同情的だった人の手も借りて、脱走を試みた。しかし、逃げ切ることはかなわず、その身柄は捕まった。そして、太陽のように熱い、焼きごてを食わされた。もう二度と、逃げようなどと考えないように。

 焼き切れた回路によって失われた声帯と、知性。牢屋と言う籠の中で抱いた想いを、諦念ではなく幸せだと思い込むには、都合が良かった。

 だからこそ、ピエロは笑う。痛くても。熱くても。冷たくても。怖くても。辛くても。悲しくても。傷付いても。血に塗れても。泣きたくても。

 クレヨンは、辛い時に流す涙を知らない。喜びに湧き出る涙も知らない。ピエロはそれらを、知ってはならない。クレヨンにとって笑顔とは――呪いのように、逃れられない宿業のようで。

 ――だとしても。

(ニコニコㅤえがおでㅤわらってㅤほしいな……。)

 嫉妬の炎に狂ってもおかしくないだけの境遇に生きていながらも、それでもクレヨンは、他人の幸福を、願っている。それすらも、曲芸用HANOIの"役目"にインプットされた感情機構だろうか。降りしきる雨の中で、目を伏せて沈む少女の姿を見たとき――その焼き切れた電子回路はひとつの衝動を導き出したのだ。


275 : いつか、この雨が止んだ時 ◆2zEnKfaCDc :2022/06/26(日) 03:15:52 9hn.mXuQ0



 ずっとずっと、押し殺してきた心。次第に土のように、かちかちに、固まって。触れたらひび割れ、壊れてしまいそうだから、また押し殺して。

 ざあざあと降り注ぐ雨が、固められた心をさらに、固めて。枯れた喉から発した声は、雨音の中に溶けていく。

 それでも――いつか、この雨が止んだ時。

 この声が、あなたに届く時。

 私たちはまだ、笑えていますか?

【陽夏木ミカン@まちカドまぞく】
[状態]:健康ㅤ精神的動揺
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:誰も殺さず、元の世界に帰る
1:ひとまず落ち着くのよ、私。
2:もしかしてこの決闘企画も、私の呪いのせいで始まったのかしら。
[備考]
※参戦時期は、原作49話・アニメ2丁目11話で呪いが発動してしまいシャミ子・桃と別れた後、かつ再会する前からです。

【クレヨン@TOWER of HANOI】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品(紙とピンク色のクレヨン含む)、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:ミカンをㅤニコニコㅤえがおにㅤしたい!
1:けっとうㅤイヤ!
[備考]
※参戦時期は後続書き手さんにお任せしますが、コーラルとの親密度はB以下です。


276 : ◆2zEnKfaCDc :2022/06/26(日) 03:18:37 9hn.mXuQ0
投下終了です。

基本支給品の「文房具一式」の中に、クレヨンという普段使いしないものと、含まれるどうかの解釈が人によって分かれそうな紙を含んでいますが、何か問題がありそうでしたらご提言ください。


277 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/26(日) 09:58:31 va.6xqFo0
投下します


278 : ゆきを探して三千里 ◆QUsdteUiKY :2022/06/26(日) 09:59:34 va.6xqFo0
 ゆきさん。僕の運命を変えてくれた可愛い女装男子。
 もしもゆきさんに出会っていなければ、僕はずっと親の言いなりのガリ勉野郎だった。
 僕が女装をするキッカケを与えてくれて。初めておちんちんを舐めた人。顔に似合わず大きなおちんちんで、フェラチオしただけで僕まで痛いくらいに勃起していた。

 それから女装の先生の椎名さんに女の子として開発されて、女装してない時でも女性用の下着を身に付けるようになって。

 家族が出払っている時にメスの世界に浸っていたら――全てがバレた。
 結果的に家族会議で父さんが僕を救ってくれて――久しぶりにゆきさんに会いに行った。
 自分なりに嬉しい報告をしたのに、ゆきさんの姿は少し寂しそうで――。

 その後、ゆきさんのマンションは空になっていた。ゆきさんは僕に何も言わないまま、引っ越していた。
 それでも僕はゆきさんにまた会いたいから、今でも女装して町に出掛けている。――この心が恋なのか、それとも人生を救ってくれたゆきさんに対する恩義からまだ離れたくないだけなのかはわからない。
 それでも僕は、ゆきさんが――――。


279 : ゆきを探して三千里 ◆QUsdteUiKY :2022/06/26(日) 10:00:22 va.6xqFo0


 〇


「それってただのストーカーではないだろうか……」

 ゆきさんの話を聞いた女の子が少し引き気味に感想を言った。彼女の名前はモニカちゃん。
 偶然スタート地点で同じで、お互いに決闘をする気がないから平和に話し合いをしている。

 モニカちゃんはヴァイスフリューゲルっていう組織の一員――っていう設定らしい。ヴァイスフリューゲル ランドソル支部っていうギルドも結成してるらしいけど、僕にはよくわからない。
 ネットゲームだとギルドを作ってメンバーで集まって……みたいな話なら聞いたことあるけど、ガリ勉野郎だった僕には無縁の話だ。

 それにしてもモニカちゃんの口からはランドソルとか、ギルドとかよくわからない言葉ばかり出てくるな……。軍人みたいなコスプレをしてるし、ゲームが好きなのか?

「ゆきさんが急に行方不明になったから心配なだけで、僕はストーカーじゃないよ」

 ――やましい気持ちが微塵もない、とは言い切れないけど。
 それでもゆきさんが心配という気持ちに偽りはない。それに何の連絡も無しに別れるなんて悲しすぎる。せめてゆきさんと一言だけでも会話出来れば――――。

 引き止めることが出来たかもしれないのに。
 一緒に居ることが出来たかもしれないのに。

「ふむ。行方不明者の探索というわけか……!」

 僕の真剣な気持ちが伝わったみたいで、引き気味だったモニカちゃんの表情が変わる。
 軍人を自称するだけあって、小柄な見た目に似合わず正義感は強そうだな……。

「もしかしたらこの決闘にゆきさんも呼ばれてるかもしれない。参加者の選定には一定の法則がある気がする」
「どういうことだ?」

「例えば知り合いを何人か集めると、仲良い人を守るために他の参加者を排除する人が出てくるかもしれない。それにこんな悪趣味なことをするなら、参加者の選定も悪趣味だろうなって……」

 もちろん僕は相手が襲ってこない限りは誰も殺さないつもり。そんなことはダメだから。
 でもゆきさんに何かあったら――どうなるかわからない。

 ゆきさんは男性なのに可愛くて、顔に似合わずおちんちんが大きくて。僕がフェラチオすると女の子みたいな喘ぎ声を出して。それにまだフェラチオもしてもらってない。
 なにより僕の運命を変えてくれた人だから――ゆきさんにまた会いたい。

「わかった。とりあえずその『ゆき』を探すぞ、マナブ。それにしてもユキか……。私のギルドにも同じ名前の者がいるな……」

 クウカ、ユキ、ニノン、アユミ――それがモニカちゃんのギルドメンバーの名前らしい。
 もしも僕の予想が合ってるなら、この中から何人かは巻き込まれてる可能性がある。

 ガリ勉野郎の僕にはよくわからないけど、モニカちゃんの話を聞く限りこのギルドメンバー達はすごく仲が良いらしい。――きっと僕やゆきさん、椎名さんみたいな関係なのかもしれない。
 いや……椎名さんはちょっと違うだろうか……?

「モニカちゃんのギルドメンバーも探そうか。二人で大切な人たちを探した方が、効率もいいから」
「そうだな。色々と個性的なメンバーだから、私も少し心配だ」

 こうして僕とモニカちゃんはそれぞれの大切な人達を探すことになった。
 僕は自分に子宮された剣を見つめる。
 緋々色金(シャルラッハロート)という剣らしい。

『情熱を絶やすことなく燃やし続けたい』――そう渇望するほど強くなって能力を発揮する不思議な剣。
 情熱――かつての僕には無縁だった言葉だ。
 親や勉強に抑圧されて、テストで満点を取り続けるだけの人生――そんな僕を救ってくれたのがゆきさんだった。

 だから僕にとって情熱とは――ゆきさんに対する想いかもしれない。
 この剣を使いこなせるのかはまだわからないけど、それでも僕はゆきさんに会いたい。ゆきさんのためなら戦える。


【土部學@女装男子のつくりかたシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:緋々色金@Dies irae
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:ゆきさんに会いたい
1:モニカちゃんと一緒にそれぞれの大切な人を探す
[備考]
※参戦時期は女装男子のまなびかた終了後

【モニカ@プリンセスコネクトRe:Dive】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:決闘を終わらせる
1:マナブと一緒にゆきやギルドのメンバーを探す
[備考]

『支給品紹介』
【緋々色金@Dies irae】
土部學に支給。聖槍十三騎士団黒円卓第五位、櫻井螢が所持する聖遺物。
誰でも扱えるように細工されているが、創造に至るにはやはり相応の渇望が必要とされる。創造に至る渇望は櫻井螢の渇望であり「情熱を絶やすことなく燃やし続けたい」というものに固定されている。
バランスブレイカーにならないように様々な調整が施されている


280 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/26(日) 10:00:44 va.6xqFo0
投下終了です


281 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/26(日) 10:46:54 ZOKznZi60
拙作『お探しは家族ですか?』のリュシアの出典が漫画版のつもりが書き忘れていたので修正しました


282 : ◆SMJYHIGA5. :2022/06/26(日) 15:32:57 F2rNiW1M0
投下します


283 : ◆SMJYHIGA5. :2022/06/26(日) 15:33:33 F2rNiW1M0
フザケやがって、というのがこのデュエルに対するバクラの感想だった。
普段であればずいぶんと面白そうなゲームじゃねえか、などと思っていただろうが、
究極の闇のゲームの最中、それも大邪神ゾーク・ネクロファデスが復活し、
対する名もなきファラオも千年パズルを取り戻しいよいよクライマックスといった所で呼び出された上に、
本田ヒロトを開始前に爆殺したのだからそれも当然であった。
普段であれば本田が爆殺された所でどうでも良かったのだが、魂の一部を植え付けておくことで、遊戯達の動向を把握し、
名もなきファラオの名前を知り、最終的に遊戯達を始末するスパイにする予定だったのが台無しにされたからであった。
――もっとも、爆殺された本田はいわば漫画出典であり、アニメ出典のバクラには関係の無い話なのだが。
加えて、バクラがデッキに投入している冥界の魔王ハ・デスが主催者というのもまるで反逆されているようで気に食わない。

とはいえ、ハ・デスのあの存在感は侮れるようなものでは無かった。
単純にカードの強さそのままに実体化したのだとしても、ハ・デスの攻撃力は2450。上級ラインを僅かではあるが超えている数字だ。
相手の行動を制限し、特殊勝利を狙うバクラのデッキにこれを超えるモンスターはそう多くは無い。
ではデュエルに乗って優勝狙いを目指すかと言われれば、それも難しい。
少なくとも遊戯が参加しており、本田も居たところを見るに城之内や杏子、海馬等バクラの存在を知っている者が複数いると考えるべきだろう。
となれば、宿主様の演技をした所で千年リングを所持していることがバレた時点でアウトだし、騙されたことを知られた時点で信用を失うのは不可避と言っていい。
それに優勝者への富や名誉など興味は無いし、願いについても究極の闇のゲームに勝てばバクラの願いである大邪神復活が叶えられるのだから、気を引かれるようなものではなかった。

「さあて、どうすっかねえ……」


284 : 闇の訪れ ◆SMJYHIGA5. :2022/06/26(日) 15:34:12 F2rNiW1M0
支給品やルールを確認し、どう行動したものかと考えていると、刃物と刃物がぶつかり合うような音が聞こえてきた。

「さっそくおっぱじめたヤツらがいるようだな。まずはその面を拝ませてもらおうじゃねえの」

バクラが戦闘が起きている場所へ向かうと、そこでは少女と兎らしき生物が戦っているようであった。
兎のような生物は鋭いかぎづめで少女を何度も攻撃し、少女は巨大なビーム手裏剣でそれを防いでいた。

(何だあの兎みてえなモンスターは? 周囲に他の気配は……無さそうだな。首輪が無いあたりNPCってやつか? 
 てっきりモブ村人みたいな存在かと思ったが、参加者に積極的に襲いかかるNPCとはな)

なんとなくだが、あくまで参加者同士の戦いがメインであるならば、
兎のようなモンスターはデュエルモンスターズでは雑魚扱いされるような強さしか無いのではないかと考えた。
もしそうなら、戦っている少女の戦闘能力は大したことが無いということになるが……

(ふん。それならそれでまあいい)

千年リングの能力で闇のゲームを展開し、夜の暗闇とは異なる闇を立ち籠めさせ、そこら辺に落ちていた石を投げつけ兎を挑発する。

「さあ、ゲームの始まりだぜ!」
「!? そこの人! 危ないから下がってください!」


285 : 闇の訪れ ◆SMJYHIGA5. :2022/06/26(日) 15:34:34 F2rNiW1M0

異変に気付いた少女が呼びかけるが、兎のようなモンスターはバクラを血祭りに上げようと襲いかかる。
だがバクラは慌てることなくデュエルディスクからカードを引く。

「オレ様のターン、ドローカード! 首なし騎士を召喚!」

デュエルディスクにカードを叩きつけ、首なし騎士を召喚。
兎のようなモンスターは目の前に出現した首なし騎士に攻撃するが、鎧に傷一つ付けることすらできず、
首なし騎士の振り下ろした剣によって一撃で倒されてしまった。

【ウィルミー@遊戯王OCG 死亡】

「チ、もう終わりかよ。だらしねえ」

闇のゲームが終了し、千年リングによって現れた闇が晴れると、少女が駆け寄ってきた。

「あの、助けてくれたんですよね? ありがとうございます!」

深々とお辞儀をする少女。どうやら礼儀正しい性格のようだ。


286 : 闇の訪れ ◆SMJYHIGA5. :2022/06/26(日) 15:35:01 F2rNiW1M0
「私、S-Force所属の乱破小夜丸って言います」
「S-Force? 聞いたことねえな」
「えっとですね、最新のテクノロジーを駆使して様々な時間や次元を超えてあらゆる犯罪を未然に防ぐ秘密組織の事です」
「防ぐどころか巻き込まれてんじゃねえか」
「うっ……で、でも他の方達は変……個性的ですが、優秀なんですよ!
 それに私だって忍びなので、隠密行動は得意なんです! いざとなれば戦闘だってこなせちゃいます!」
「あの体たらくで良くそんな事が言えるな、バカかテメエは」
「うう……確かに私はまだ執行対象のI:Pマスカレーナさんを捕まえた事は無いですし、
 その事でよくプラ=ティナ先輩から怒られていますが……
 でも、世のため人のため、悪を成敗するために、お願いです、力を貸してください!
 私だけじゃ、この事件、解決できそうではありませんので……!」
「ハーハッハッハッ! 悪人であるオレ様に悪を成敗するために力を貸せとはな!」
「ええ!? 貴方悪い人なんですか!? じゃあ何で私を助けたんですか!」

どうせ遊戯がいる以上、バクラがどういった存在かはそのうち知られるだろうからスタンスくらいは明かしておくかとバクラは考えた。

「ヤツはオレと遊戯の因縁に決着を付けようって時に拉致しやがったからな。
 どうやったのかは知らねえが、あの状況でゲームを放置したままだとどうなるかわからねえ。
 優勝しようにも遊戯やその仲間達がオレ様の評判を落とそうとするからやりづらくなるだろうしな。
 それにここで遊戯が死ねば最悪ゲームを続ける事が出来なくかもしれねえ。そうなりゃオレにとっても不都合なんでな。
 だからここは一時休戦して共にハ・デスをぶっ倒そうって訳だ。
 だがオレ一人じゃアイツらは信用してくれねえだろうから、
 こうしてお前を助けることで実績を作って敵意が無い事を証明しておこうってこった」
「遊戯さんって、あの時の……? 大丈夫なんでしょうか……」
「アイツには何度も煮え湯を飲まされてきたんだ。そう簡単にくたばるかよ。このデュエルとやらを潰すそうと動くだろうぜ。
 で? お前はどうする? オレ様と行動するか? それとも別行動を取るか?」
「決まってるでしょう。悪人である貴方を監視します! 悪いことをすれば許しませんからね!」
「ほう、そりゃ頼もしいことで」
「当然でしょう、私忍びですので」

こいつには皮肉も通じないのか、とバクラは呆れた。


287 : 闇の訪れ ◆SMJYHIGA5. :2022/06/26(日) 15:35:43 F2rNiW1M0
【獏良了@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ】
[状態]:健康
[装備]:千年リング@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ、デュエルディスク&デッキ(獏良了)@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:ハ・デスを倒す
1:遊戯を死なせないように行動する。
2:遊戯達の信用を得るために、先ずは助けられそうなヤツは助ける。
[備考]
※参戦時期は217話、三幻神が召喚された時です

【S-Force 乱破小夜丸@遊戯王OCG】
[状態]:健康
[装備]:ビーム手裏剣@遊戯王OCG
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:ハ・デスを捕まえる
1:バクラを監視する。
2:遊戯が心配。
[備考]


『支給品紹介』
【千年リング@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ】
獏良了が普段身につけている千年アイテム。バクラという邪悪な意思が宿っている。
バラサイトマインドという、自身の魂の一部を物体に宿すことができる能力を持つ。
闇のゲームを展開することができるが、本ロワではゲームの途中であっても逃げることが可能となっている。
逃げられたり逃げたりした場合、その時点で闇のゲームは強制終了する。

【デュエルディスク&デッキ(獏良了)@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ】
普段バクラが使っているデュエルディスクとデッキ。
相手の行動を制限しその間に特殊勝利やデッキ破壊を狙うのが特徴。

【ビーム手裏剣@遊戯王OCG】
乱破小夜丸が普段使っている武器。乱破小夜丸と同じくらいの大きさをしている。
いつもは折りたたんでクナイ型にし、背中につけている。

『NPC紹介』
ウィルミー@遊戯王OCG
星4/地属性/獣族/攻1000/守1200
かなり凶暴なウサギ。
鋭いかぎづめで、相手を血祭りにあげる。


288 : 闇の訪れ ◆SMJYHIGA5. :2022/06/26(日) 15:36:06 F2rNiW1M0
投下終了です


289 : ◆4u4la75aI. :2022/06/26(日) 17:48:06 MZ4RViQA0
投下します


290 : あいたい ◆4u4la75aI. :2022/06/26(日) 17:49:48 MZ4RViQA0
「――変身」

会場、とある木々に囲まれた地帯の中。少女は盾を天に掲げ、その一言を呟いた。
それに呼応する様、少女の身は一瞬光に包まれ――

「……っ!変身、本当、なんだ」

やがて彼女の姿は、鎧に覆われたナイト、即ち並行世界――きららファンタジアの世界の姿へと変わった。手持ち無沙汰だった右手には、剣も現れる。そして身体を少し動かしてみるだけでも、身体能力が格段に上がっていることがわかった。
彼女――直樹美紀は、決闘の舞台にて力を手に入れた。


直樹美紀の居た世界は、壮絶の一言に尽きる。
ある日を境に人ならざる者と化した『かれら』が街を埋め尽くし、その中で生き残った彼女は数少ない仲間達と日常を過ごしていた。
学園生活部。仲間たちはこのサバイバル生活はあくまでも部活動の一環だという発想の中にて、彼女もそのロールプレイを行っていた。

やがてかけがえのない仲間となった学園生活部は、巡ヶ丘学園を『卒業』し、聖イシドロス大学へ『進学』し、ランダル・コーポレーションへと『就職』し――
やっと、この世界を救う方法の糸口を見つけられた。

そんな時に、彼女はこの決闘の舞台に呼ばれてしまった。



このデュエルでは様々な世界から決闘者を呼び寄せている、とハ・デスは語ったが、並行世界という概念など普段ならば簡単に信じられない。だがあの冥界の魔王たるあまりにも非現実的な相貌を見せられては、信じざるを得ない。
それならば、彼らにとってはパンデミックの中足掻く世界もただ一つの並行世界でしかないのであろう。
その上で磯野の発言はあまりにも魅力的であった。

『最後の一人まで生き残った者をデュエルキングとし、富と名誉を与える。更に一つだけどんな願いでも叶えることが可能となる』

富も名誉も決闘王なんて称号も必要ない。ただ、どんな願いでも叶えられる権利。

その権利で、世界が救える。
数多の世界を観測した上でこのバトルロイヤルを開催した彼らにならば、ひとつの世界を救うなんて願いは容易く叶えてくれるであろう。


だが、その願いを叶えるために、人々を殺めるのか?
確かにここに居る者全てが死ぬか世界の人間全てが元に戻るかを比べれば、圧倒的に救われる人間は後者の方が多いであろう。

それでも、最初に見せられたあの人間の姿を、
友人の為に異議を叫び、死んでいった少年の姿を思い浮かべれば、そんな発想は消える。

あんな善良な人間を、自分は殺せない。

恐らく彼、本田ヒロトの様な人間がこの舞台に多く巻き込まれているであろう。
ユウギという少年も彼の死を嘆き殺し合いに反旗を示すであろう。
ならば、自らもそうするべきだ。
この場に居る人を救う側につくべきだ。
そして自らの世界へ帰り、仲間と共に路を行くべきだ。美紀はそう強く思う。

その思いに応える様に、美紀の支給品は彼女に力を与えたのである。
――いや、与えたのは力だけではない。


291 : あいたい ◆4u4la75aI. :2022/06/26(日) 17:51:14 MZ4RViQA0
「なんや、誰かおるおもたら巫女はんやったか」

突然の声。美紀は振り向き、その言葉への疑問を発する。

「……巫女?」

「あ、今は魔法少女いうらしかったか」

「……違います。巫女でも、魔法少女でもないです」

「あらそうなん?」

やがてその姿が見える――
声の主は、普通の人間ではなかった。
頭からは狐の様にとがった耳がついていて、何より目立つ『尻尾』というしかないモフモフ部分。
ハ・デスの存在や手元の剣と盾を見ても、この場所で常識に捉えられてはいけないことを美紀は重々承知していたが、やはり初見では驚かざるを得ない。

それよりも、巫女や魔法少女というワード。
狐耳のことも相まって、彼女は様々な世界のうちの自分とは違う世界から来たということはなんとなく理解した。
ならば、情報を聞かなければいけない。別世界の人物なら、この殺し合いを止められる方法を思い浮かぶかもしれない。

「……私は、直樹美紀です。殺し合いに乗るつもりはありません」

「美紀はんかぁ。うち、リコ。まぞくや」

「……リコさん、その『まぞく』とか『巫女』とか、『魔法少女』について教えて欲しいです」

「ん〜?ええでええで」

住んでいる世界やおそらく種別まで違うであろうが、とにかくは友好的な人物と出会えてよかった、と美紀は思う。


◆◆◆◆


リコから聞く、異世界の情報。
それは案外、興味深く面白いものだった。
光の一族と闇の一族について、巫女――魔法少女について、自らが現在働く喫茶店について、そして自らの彼氏でありその喫茶店の店長というバクのまぞくについて。リコの知る限りの、大まかな情報が美紀へと流れ込む。

美紀は普段からSFやファンタジーの小説を嗜む。リコの話す現実離れした世界観も、受け入れ噛み締めるほどの余裕は残されていた。
途中、リコにも美紀は自分達が別世界から呼ばれていることを伝えた。
リコと美紀の世界の最も大きな差異――『かれら』が存在するか否かを問うと、リコも納得した。

やがて互いに世界や身の丈について話し終えた所で、美紀は立ち上がる。

「私はおそらく、私やリコさんの世界ともまた別の世界の力を手に入れました。なのでこの力を、ハ・デス達を討つために使います……。リコさんも、まぞくですので力を持つと聞きました」

美紀が行うのは、『これから』についての提案。
リコが殺し合いに乗っている可能性は現時点でほぼゼロのようなものだが、それと自らに手を貸してくれるかは別。
美紀は、手を差し出す。

「どうか、お願いします。私と一緒に、殺し合いを止めませんか?」

返答を待つ。やがて、リコは口を開く。


292 : あいたい ◆4u4la75aI. :2022/06/26(日) 17:52:00 MZ4RViQA0
「美紀はん、人とは戦ったことないんやろ?」

「え?あ、まぁ……」

「それやのに自分がメインで戦うみたいに言うて、笑えるわぁ」

「ちょ……っ」

こちらを嘲笑う様に、リコは口に手を当てくすくすと笑う。

「……でも、気に入ったわ。カッコええやん〜」

だがすぐにその笑みは、穏やかなものへと変わり――

「手ぇ貸したる。変なやつ出てきたらうちが肥溜め落としたるわ。うちもはよ帰りたいし」

美紀のその手を握った。友好の、証。

「……!リコさんっありがとうございます!」

「ええよええよ〜」

美紀自身、明確な目標は決まっていない。
いくらハ・デス達を討つとて居場所もわからなければ、力もおそらく及ばないであろう。
だが、今隣に立ってくれている存在。
そんな存在をこれから増やしていけば、解決の糸口は見えるかもしれない。

即ち、仲間集めだ。
絶望に塗れた世界の中でも、仲間が居たから自分は今も生き残っている。
この場でも、同じであろう。

(……先輩達、すぐに帰ります。待っててください)

自分は、帰らなければいけない。
だからこの場所でも、誰かと手を取り合う。
美紀は前へと進み続けることを、決めた。



【直樹美紀@がっこうぐらし!】
[状態]:健康
[装備]:直樹美紀専用シールド@きららファンタジア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止めて、元の世界へに
1:リコさんと共に、賛同してくれる仲間を探す
[備考]
※参戦時期は青襲椎子からのビデオを見る(原作71話)〜巡ヶ丘学園に戻ってくるまで(原作72話)の間です。

【リコ@まちカドまぞく】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:はよ帰る
1:美紀はんカッコええやん。気に入ったわ〜
2:マスターとか知り合いおるなら探す
[備考]
※参戦時期は動物園遠足(原作42話・アニメ2丁目8話)〜ウガルル生誕(原作52話・アニメ2丁目12話)までの間です。


293 : あいたい ◆4u4la75aI. :2022/06/26(日) 17:52:34 MZ4RViQA0
同刻、美紀達とは遠く離れた、とある市街地の一角。
彼女は椅子に座りながら、手元のCDプレイヤーを眺めている。
その瞳には、何が映っているのかわからない。
ただ、瞳から映る景色が晴れていないことだけはわかる。

そんな彼女の元へコーヒーカップが差し出された。
差出主は、なんともダンディという言葉が似合う男。

「お待たせしました、圭くん。カプチーノです」
「……!ありがとうございます、いただきますっ」

殺し合いという舞台には似合わない落ち着いた雰囲気のカフェ――ラビットハウス。
二人、祠堂圭と香風タカヒロはその場所で日常と変わりない風景を再現していた。



時は、少し遡る。
タカヒロは決闘の舞台、ラビットハウスのすぐ側へと配置された。
本来この場所にあるはずないもの。タカヒロは怪しむも、中へ入ることを決意。

店内の景色は、何も変わっていなかった。
珈琲豆、食材、食器、調理器具、日用品、私物。
チノの部屋も失礼を承知で確認したが、何も変化は見られない。

だが、変わっているものもある。
チノが、リゼくんが、ココアくんが、親父が。
誰一人居ない。窓から外を見渡しても、兎も見当たらないし、鳩も見当たらない。
そもそも、窓から見えるのは全く別の景色。
疑問は重なって行くばかりだが、その時、扉が開く音が聞こえる。
急いでニ階から降り、その音の主を確かめる。
決闘の舞台、ラビットハウス最初の入店客は――制服を着た、チノ達同じ歳くらいの少女だった。

少女の名は、祠堂圭。
殺し合いの舞台、市街地を彷徨いていた彼女だったが喫茶店と書かれている建物ならば入っても良いだろうと、ラビットハウスの扉を開いた。
タカヒロは彼女に、この建物は元々自らの喫茶店であり家であることを伝えると、とにかくリラックスをしてもらう為、そして自らも一旦落ち着くために、普段通りにコーヒーを淹れる事にした。

淹れたのは、カプチーノ。少女の好みに合わせた訳でもなく、自然と手がカプチーノを生み出していた。それは娘への心配故の行動かはわからない。

そして、今へと至る。
圭という少女は、表情が妙に暗かった。
だがタカヒロもそれは当然だと考える。いきなり彼女とも同年代であろう男子が殺され、挙句自らも殺し合えと命令されたのだ。
カプチーノを差し出すと、笑みを浮かべ飲み始めてくれた事には安心する。

ならば、この少女は自らが守ってあげないといけない。
軍人としての経験もある自分が、この少女を守ってあげれば良い、と。
タカヒロはそう決めた。

だが、そもそも住んでいた世界が違うタカヒロに分かるはずがなかった。
圭の表情が暗い理由が、殺し合いに巻き込まれたことに関してだけではないことを。
圭はもう既に、この世にいるはずのない存在であることを。


294 : あいたい ◆4u4la75aI. :2022/06/26(日) 17:52:58 MZ4RViQA0
◆◆◆◆


祠堂圭が、決闘の舞台にてまず抱いたもの。
それは、恐怖。
そう言えば殺し合いに巻き込まれたことへの恐怖と考えられるであろうが、それだけではない。

なぜ、自分が生きているのか、という恐怖。
脚は、怪我をしていたはずだ。痛みもないし傷跡すら残っていない。
髪は自らでさえ不快に感じるほど乱れていたはずだ。ずっと前、シャワーを浴びた時と同じくらいに整っている。
身体は、終わったはずだ。『かれら』に噛まれ、ウイルスに蝕まれた身体は朽ちていったはずだ。

今、五体満足で、何事もなかった様に自分は地面に立っている。

理解が追いつかなかった、最初の人間や冥界の魔王だと名乗る者達も相まって、混乱が続く。
とにかく背負っていたデイパックを確認することにした。
いくつか支給品らしきものが見当たり……一つ取り出す。

「――これって……!?」

それは、CDプレイヤー。
そこらで売っている様なモデル。しかし間違いなく、自分があの時あの子に託したもの。
ふと一枚の紙が付属していることに気付く、それは説明書であった。
その説明書を読むと、認識が少し変わる。
『並行世界で手にした力を引き出す。本人の意思で並行世界の力を解放した姿に『変身』が可能』なんて綴られている。圭のプレイヤーは、知らないうちになんともマジカルなアイテムへと変わっていた。

「変身……」

確かに、殺し合えというならば自分の様な何の力も持たない様な人間には武器が必要だ。
並行世界なんてワードは、現実では考えにくい。
だが、現実で考えられない事ならば、元の世界から既に何回も起きている。
ならばこの変身とやらも、本当なのかもしれない。そう思い圭はCDプレイヤーを掲げ――

「……やめとこ」

手を、下ろした。
変身する時は、今ではない気がする。もっと、強い敵が現れた時のために温存。
書かれていないだけでデメリットがある可能性すらある。圭は慎重に行動することを選んだ。

元々圭は、なんでも率先して行う様な性格であった。
だが、そう動いてどうなったか。

『生きていれば、それで良いの?』

未だに、圭は後悔している。その行動が、自分の死を招いたことについてではない。
あの時、結果的にあの子を――美紀を突き放してしまったことを。

美紀を孤独に追いやって、自分は助けを呼ぶどころか結局、『かれら』になってしまった。……そうなってしまったのに、今生きていることは一旦置いておく。
二度と、あんな過ちを繰り返さない様に。慎重に動くことが、吉であろう。

そんな事を考えながら、彼女は市街地を歩いているうちに一つの建物が目に入った。
『喫茶店 ラビットハウス』。人が居る気配もなんとなく感じた為、扉を開く。

そこで彼女は、タカヒロと出会った。


◆◆◆◆


――カップが空になる。

「……ありがとうございます、美味しかったですっ」

「それなら良かったよ」

カップをタカヒロは回収する。同時、圭は口を開く。

「あの、タカヒロさんは、これからどうしますか?」

「……これから、か」

質問に対し、タカヒロはすぐに答えた。

「二つ、やらないといけない事があるんだ。一つは、この場所からの脱出方法を考えること。そしてもう一つは……ここで一緒に住んでいたはずの娘達を探す、ことだな」

はっきりとした目標だ。圭は、それを聞きそう思う。
なら未だに状況を把握できていない自分は、取り敢えずは彼について行くべきだろう、となんとなく感じた。

「……私も、手伝います。娘さん達も、居るかも知れないんですよね」

「……!良いのかい?君も、何かしたい事が無いのかい?」

「今は、タカヒロさんを手伝いたいです」

そう言って圭は立ち上がる。

「コーヒーのお礼をしたいです。娘さん達を探します。脱出方法も、一緒に考えましょう」

脱出したところで、自分はどうなる。そんな事を考えるも、他の誰かが助かるならば、それで良いと判断。

「……ありがとう。なら、娘達の事を教えるよ」

そして二人は、手を組んだ。
タカヒロは圭を、居るかもしれない娘や友人を守るために。
圭はこれ以上、後悔を残さないために。


295 : あいたい ◆4u4la75aI. :2022/06/26(日) 17:54:42 MZ4RViQA0
【祠堂圭@がっこうぐらし!】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、圭のCDプレイヤー@きららファンタジア、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:この場所で、出来ることを
1:タカヒロさんと行動。娘さん達を探す
2:よくわからないけど、まだ生きてるなら、後悔をこれ以上残さない様に動きたい
3:変身……は然るべき時に
[備考]
※参戦時期は死亡後。『かれら』と化した後の記憶はないものとします。

【香風タカヒロ@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いから脱出できる方法を探す
1:圭くんを守る
2:チノやその友人達が巻き込まれていないか心配
[備考]
※参戦時期は後の書き手様にお任せします。


※直樹美紀達と祠堂圭達の位置は、ある程度離れています。



『支給品紹介』
【直樹美紀専用シールド@きららファンタジア】
直樹美紀に支給。
美紀が並行世界――きららファンタジアで手にした力を引き出すための盾。
本人の意思で並行世界の力を解放した姿に『変身』が可能であり、変身中は身体能力が向上する他、固有能力が使用可能。
さらに専用の剣が現れる。変身中はきららファンタジアの『ナイト』の美紀の衣装へと服装が変わる。


【圭のCDプレイヤー@きららファンタジア】
祠堂圭に支給。
圭のお気に入りのプレイヤーが、並行世界――きららファンタジアの世界にて圭と同時に召喚されたことで変異したもの。
見た目自体は普通のCDプレイヤーだがプレイヤーとしての機能は失われている。
圭の意思によって、『変身』が可能で変身中は身体能力が向上する他、固有能力が扱える。
変身中はきららファンタジアの『まほうつかい』の圭の衣装に服装が変わる。



『施設紹介』
【ラビットハウス@ご注文はうさぎですか?】
チノやココア達が働く喫茶店。二階建てであり、二階部分は彼女達の部屋が用意されている。
このバトルロイヤルの舞台には特に何も変わらずそのまま設置されており、珈琲豆や食材、調理器具に日用品、ココア達の私物にあたるまでそのままの状態。


296 : ◆4u4la75aI. :2022/06/26(日) 17:55:03 MZ4RViQA0
投下終了します


297 : ◆bLcnJe0wGs :2022/06/26(日) 18:10:59 VvfNUZHs0
投下します。
以前、辺獄ロワに投下させていただいたものの流用となります。


298 : 疑う相手、疑われる相手 ◆bLcnJe0wGs :2022/06/26(日) 18:11:32 VvfNUZHs0
(ヒドイ、ホントにヒドイヌ〜…)

会場内のとある場所。
そこでは参加者の一人、カベルネ・チープトリックがこの状況を嘆いていた。

彼も、重く辛い過去を持っているのだが、それでも殺し合いに乗り、生き残って願いを叶えようとは全く思わなかった。

◆◆◆

ある日、父親が一匹のカエルを連れて来た。

父親は、『このカエルは魔法のカエルだと言い、師匠にすればスゴイ魔法使いになれる』と言って、自分にカエルを渡したのであった。
(しかし、当の父親は「(その時は)酔っ払らっていたから覚えていない」等と言っていた模様。)

そして魔法使いになるべく、魔法学校ウィル・オ・ウィスプに入学した。




299 : 疑う相手、疑われる相手 ◆bLcnJe0wGs :2022/06/26(日) 18:12:24 VvfNUZHs0


しかし、カエルを貰ってから2年後、同じ学校に通っていた闇の魔法使い・ヴァニラが、ヴァレンシア海岸でのキャンプから帰って来て間もない頃に、学校をやめて、行方を眩ませてしまった。

その後も彼女は何度か学校に訪れて来たが、キャンプ前からは様子がおかしくなっていた。

その時は自分と兄のシャルドネも教室におり、兄も「みんな心配していた」という事を話していた。

しかしヴァニラは、自分が闇の魔法使いであることから、忌み嫌われていたと話していた。

シャルドネも彼女を説得しようとしたが、ヴァニラは「心配は無用よ。私は私のやり方を見つけたの」と振り切り、自分とシャルドネに別れを告げて去って行ってしまった。



その後、自分の住んでいた国・コヴォマカ大国で、大戦争が勃発した。

剣聖や魔道士と呼ばれた多くの者が命を落とした。

その戦争には、兵士をやっていたシャルドネも参加しており、彼も戦死した。

─シャルドネは最期に、自分をシブスト城の見える場所に埋めて欲しいと言って息を引き取った。

戦争にはヴァニラが関わっており、彼女はその罪でシブスト城に幽閉された事を知った。

しかし、この戦争に関する情報の多くは隠匿されてしまい、世間には殆ど知られていない様な状態であった。



それから時が経ち、自分や一部のクラスメート達も、臨海学校という名目でヴァレンシア海岸に行く事になった。

─しかしその夜、別世界からやって来た『エニグマ』と呼ばれる種族の者達によって他のクラスメート達や担任の教師共々、その別世界に攫われてしまう。

だがそこで、学校側の意図、そして世界の真意を知り、エニグマと戦って、クラスメート達や担任教師と共に生還した。




300 : 疑う相手、疑われる相手 ◆bLcnJe0wGs :2022/06/26(日) 18:12:59 VvfNUZHs0
その後は、ヴァニラの弟であり、臨海学校の参加者の一人でもあったガナッシュが、エニグマと融合していた魔法使い達をまとめ上げていった。

その話はヴァニラを幽閉していた看守達にも伝わり、ガナッシュが面会にやって来た事によってヴァニラも救済、釈放された。



カベルネはというと、カエルの師匠の国を尋ね、様々な珍しい魔法を教わり、やがてはカエルの国の守護者となったのである。

◆◆◆

そしてこの催しに招かれ、会場に飛ばされた現在、彼は殺し合いを打破しようと動こうとしていた時だった…のだが。

「ハァ、ハァ、ハァ…」

どこからか、荒い呼吸の音が聞こえた。

カベルネが、音のする辺りを見回すと、黒髪の少年が視線に入った。

「…ッ!!」

しかし、少年はカベルネに驚いて直ぐさま逃げて行ってしまった。

「ちょっと待つヌ〜!オレは殺し合いには乗っていないヌ〜!」

そうしてカベルネは、逃げて行った少年を追いかけるのであった…。

【カベルネ・チープトリック@マジカルバケーション】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:殺し合いには乗らない。
1:黒髪の少年(ランナウェイ・キッド)を追いかける。
2:出来るなら彼を説得する。
3:知り合いが巻き込まれていないか心配。
[備考]
※本編終了後からの参戦となります。
※魔法の制限については後続の書き手にお任せします。

◆◆◆


301 : 疑う相手、疑われる相手 ◆bLcnJe0wGs :2022/06/26(日) 18:13:58 VvfNUZHs0
あの人形はまだ追いかけて来る。

声を掛けてはくれたが、まだ信用出来ない。

─なぜ彼がカベルネを信用出来ずにいるのか。

それはこの殺し合いに呼ばれる直前の事にある。

◆◆◆

嘗て、自分が囚われていた『モウ』という施設から脱出しようと探索している最中に偶然、モウの女主人〖レディ〗の暮らしているスペースに行き着いた。

彼女の生活しているその場所で、少年は鏡を見ていたレディの姿を見てしまった。

それに気づかれて、少年は小人の姿に変えられてしまった。

その後、少年はモウにやって来る客人達をもてなす為の場所にさまよい込んだ。

しばらくさまよっている内に、一つの部屋で一本のソーセージを見つけた。

─それから間もない頃に、お腹を空かせた様子の子供が部屋にやって来た。

子供は黄色いレインコートを纏っていた。

その子供にソーセージを差し出そうとした時───、

なんとレインコートの子供は、ソーセージではなく、自分に喰らいついた。

少年はそのまま死んでしまった。

◆◆◆

それから少年には、他者への警戒心がより高くなってしまった。

もしかしたらあの人形も、そういった嘘を吐き、自分を利用、或いは隙を見て殺そうとしているのではないかと疑ってしまう位に。

だから逃げ出した。

【ランナウェイ・キッド@リトルナイトメア】
[状態]:健康 カベルネへの警戒心(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:この会場から脱出する方法を探す。
1:動いて喋る人形(カベルネ)からは一先ず逃げる。
2:隠れられる場所を見つけられたら隠れ、しばらく彼の様子を見る。
3:首輪の解除方法も探したいところ。
[備考]
※死亡後からの参戦となります。
※ノーム化は解除されております。


302 : ◆bLcnJe0wGs :2022/06/26(日) 18:14:27 VvfNUZHs0
投下終了です。


303 : ◆DJ6C0hLJds :2022/06/26(日) 18:56:03 rz19E7FQ0
投下します。


304 : ご注文はデビルリバースですか? ◆DJ6C0hLJds :2022/06/26(日) 18:56:54 rz19E7FQ0

「ふむ……流石の百由様でもこんなことはせんぞ……」

 薄紫色のバカ長いツインテールの少女が椅子の上で胡坐をかく。
 非常に不機嫌な表情を浮かべながらも今のこんな状況を確認する。 
 自身のシュッツエンゲルで真島百由でもこんな悪趣味な真似はしない。
 薬で眠らせて、メカヒュージだらけの無人島に放置されたことはあるが、こんなことはしない。
 
「この首輪に使われている技術は明らかなオーバーテクノロジー……。
 あの冥王ハ・デスとやらが言っていたこと――『無数の世界』、所謂『並行世界』というじゃな。
 まったく、そんなのはアニメとか漫画とかだけの話かと思ったが実際にあるんじゃな」

 少々古風な喋り方をする少女。
 自身の首周りを触りながらも首輪について考える。 
 
「サンプルの一つでもあればのう……と、それはそれでまずいがのう」

 後頭部を掻き、反省する。
 首輪解除する上で首輪のサンプルは必要なものではある。
 だが、それは誰かの死を意味する。

(この首輪、全くの他人同士を殺し合わせるという点では非常に理に適っとるのう……)  

 一技術者としては感心できる。
 だが、人としては大きく間違ってる。

(冥王というのはあながち間違っていないのかもしれんのう。
 ……人間は感情の生き物じゃからのう、あの冥王ハ・デスとやら人間をようわかっとる。
 実のところ、ハ・デスとやら人間が好きなんじゃないか……わからんけども)

 ミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウスは『戦うアーセナル』である。
 アーセナルとは主にCHARMと呼ばれる決戦兵器の整備・修理を担う者のことである。
 元々機械いじりが趣味の彼女であったので、当初はアーセナルとして道を志していた。
 しかし、中等部時代にレアスキル『フェイズトランセンデス』に覚醒した。
 ので、彼女は戦場に立つことを決意した。
 
 だが、ここは本来彼女が立つべき戦場ではない。
 ヒュージと呼ばれる人類の敵が相手。
 人間相手なぞ毛頭する気はなかった。
 
 そもそも、技術者としては珍しくミリアムは人間が好きである。
 
「ともかく、こんなところで留まっていても仕方ないのう」

 一先ずは近くに誰かいないか索敵する。
 こんなときに二水がいれば鷹の目を使って一瞬で周囲の索敵は完了できる。
 が、いないので自らの足で稼ぐしかない。

「ま、地道にコツコツ情報集めるしかないかのう」

 情報収集は大事である。
 出来ればあのハ・デスの情報を持っていればいい。
 
 まあ、人間同士ならコミュニケーションを取るくらいは出来るであろう。


305 : ご注文はデビルリバースですか? ◆DJ6C0hLJds :2022/06/26(日) 18:57:23 rz19E7FQ0


 ◆  ◆  ◆



「のう、ハ・デスよ……これは人間同士の決闘(デュエル)ではなかったのか?」

 ミリアムは『ソレ』を見上げる。
 横にあるビルと比べてもそう大差ない巨体。
 首輪をしているからきっと参加者のはず。
 そう、思うしかなかったミリアム。

「いや…………」

 ミリアムの身長は153㎝と同年代女子に比べても小柄である。
 だが、ミリアムが対峙した『ソレ』の推定身長は20m以上!!!
 下手すればラージ級のヒュージよりも大きい。


 その男、過去700人もの人間を殺し、死刑宣告されること13回!!
 だが、そのことごとくを生き延びた!!! 
 最終判決懲役200年!!!



 その巨体の持ち主の名は『悪魔の化身(デビルリバース)』!!!!

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォ!!!!!!!!
 俺と、デュエルしろオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォ!!!!!!!」



 とにかくデカい!!
 バカみたいにでかい!
 デカァァァァい(小並感)。

「いや、デカ過ぎるじゃろ……」

 流石に逃げることをミリアムは選ぶ。だってデカいもん。 
 デビルリバースの左腕に付けられたデュエルディスクがやけに小さく見える。
 
 ミリアムは頑張って走ってみる。
 幸いデビルリバースはミリアムには気付いていないようなので逃げるには問題ない。
 そして、ズシンと重量感を立て、ビルをなぎ倒しながら進むデビルリバース。
 デカさは力であることは大抵の世界で常識である。


306 : ご注文はデビルリバースですか? ◆DJ6C0hLJds :2022/06/26(日) 18:57:47 rz19E7FQ0

「あんなのわしらが勝てるわけないじゃろ!!!
 アホか!!! ハ・デスはアホか!!!!!!」

 今のミリアムにはCHARMを持っていない。
 ので、満足には戦えないであろう。
 そして、この決闘(デュエル)という名の殺し合いを開いたハ・デスに怒りを燃やすのであった。
 

【ミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウス@アサルトリリィ】
[状態]:精神的疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3(確認済み)
[思考]
基本方針:殺し合いから脱出。
1:あのデカい奴から逃げる。
2:首輪の解除法を探す。
[備考]
※参戦時期はアニメ最終回以降


【デビルリバース@北斗の拳】
[状態]:健康
[装備]:本田ヒロトが使用していたデュエルディスク&カードデッキ@遊☆戯☆王
[道具]:基本支給品一式
[思考]
基本方針:優勝を狙う。
1:参加者に決闘(デュエル)を挑む。
[備考]
※死亡後からの参戦。
※身体の大きさに制限はかかっていません。

『支給品紹介』
本田ヒロトが使用していたデュエルディスク&カードデッキ@遊☆戯☆王
本田ヒロトが使用していたデュエルディスク&カードデッキである。


307 : ◆DJ6C0hLJds :2022/06/26(日) 18:58:07 rz19E7FQ0
投下終了です。


308 : 秩序、混沌、■■ ◆EPyDv9DKJs :2022/06/26(日) 19:13:48 YyA2t3M20
投下します


309 : 秩序、混沌、■■ ◆EPyDv9DKJs :2022/06/26(日) 19:16:08 YyA2t3M20
 小島がいくつかが見える海沿いの砂浜。
 リゾート気分を味わえるこの場所も残念ながら殺し合いの場だ。
 元々あったのか、それともハ・デスが決闘の為にこの場を用意したのか。
 どちらであっても当事者にさして問題はない。死ぬか生きるか……その程度だ。

「そらそらッ! 避けねえとダルマにされちまうぞ!」

「クッ!」

 この砂浜に手戦ってるのは二人の男女。
 片方の男性は下は普通だが、上は果たしてそれは服と呼んでいいのか、
 正直返答に悩ませる胸元や腹筋を晒している、アウトローな恰好の男だ。
 月のような輝きを放つ青い刀身の剣を持つが、お世辞にも似合ってるとは言い難い。
 彼の恰好はどちらかと言えば海賊や盗賊と言った、悪党に寄っている姿なのだから。

 相対する少女はどことなく警備服を思わせる格好だ。
 青と白の清廉さを伺わせて、規律を重んじた恰好とも言えるものの、
 露出した腹部や太腿は男性の目を惹いても致し方ない姿ではある。
 格好には少々似合わぬ日本刀をぶつけ合い、刀身の一部が彼方へと飛んで行く。

 男の名はエンシン。
 少女の名はコンシュルジュリー。
 二人の男女は森で出会ってから、早々に戦いに身を投じていた。
 もっとも、コンシュルジュリーは別に殺し合いに乗るつもりはなく、
 あくまでエンシンの方から手を出してきたので迎撃しているだけに過ぎない。
 エンシンは貧しい生まれの人間故に、やりたいことをやって生きなければ損だと悟り、
 海賊となって法にも縛られることなく秩序を乱し暴れ回っていたと言う経歴を持つ。
 欲しいものは何でも奪う形で得る。例えば目の前にいる美少女もその対象だ。
 御高く止まりガードの堅そうな相手の服を剥ぎ取って楽しむことを想像する。
 それを想像したことで下卑た目つきを前に嫌悪感のある視線を返すことになるが、
 当然そんなものは意に介さない。寧ろ屈服させた時によりそそられるものだ。
 そうこうしている間に、こうして砂浜にまで舞台を移動していた。

(こんな、賊一人相手に苦戦を強いられるとは!)

 本来であれば、コンシェルジュリーの方が圧倒できると言える。
 いくらエンシンが帝具使いと戦うことができるだけの実力があるとしても彼女に分がある。
 第一の理由としては、まず彼女は人間ではない。人によっては彼女の名前には覚えがあるだろう。
 コンシュルジュリー……フランス最古の王宮、またはフランス革命時代の革命裁判所、
 或いは───あの有名なマリー・アントワネットが投獄された場所、と言う方が分かるだろうか。
 彼女はその城の記憶を持ち、人々を侵略者『兜』より守りたい願いにより人の形となった『城娘』と言う存在。
 単にそれだけでは? と思われるが城娘には巨大化と言う、読んで字の如く物理的に巨大化する力を有している。
 それこそ建造物を優に超える文字通りの城娘となれば、大概の相手は一刀で物理的に叩き潰せるだろう。

(城娘としての力が制限されるだけで、これほどまでとは!)

 まあ、それができない上に本来城娘の状態になれば来るはずの装備も服だけという、
 何一つ予想できない展開のせいで本領どころか、普段通りの立ち回りさえも望めないのだが。
 事前に知っていればある程度考えられただろうが、支給品を確認して間もなくエンシンと出会った結果、
 慣れると言ったことすらも満足にできないまま、戦う羽目になってしまったのもあるだろうか。

「さっきてめえなんて言ったか覚えてっかぁ?
 『公正なる裁断を下します』とかつってたよなぁ!
 下るのは裁断なんかじゃねえ! てめえの方なんだよ!」

 砂浜と言う足場がお世辞にもいいとは言えない場所で、
 踏み込んでからの加速の速さに反応が僅かに遅れて、
 彼女の袖を軽く裂いて赤い筋が刻まれる。

「女の手は刀を握るためにあるんじゃねえよ。俺に奉仕する為だ。」

 追い打ちをかけるように武装の差も相当で、彼女が持っているのは鬼を殺すには向いてるだけの刀。
 一方相手は魔王を倒す為の武器の一つであり、しかも夜になれば出鱈目な強さを発揮する聖剣。
 木々でも岩でも、バターのようにスライスできる程の武器だ。いくら相応の業物と言えども、
 所詮は消耗品。既に刀身の二割は壊されておr、ところどころ刃が零れつつった。
 これを作った職人がみたらぶちぎれること待ったなしだが彼女は知る由もない。
 おかげで防御に回ることが、精一杯の状況へと追い込まれていた。

「テメエの服を剥ぎ取るみてえにその刀も圧し折ってやるよ!」

 閃光のような横一閃がコンシュルジュリーを襲う。
 言葉通りに合計で三割近く刀が折られてしまい、いよいよ劣勢に追い込まれる。
 刀のリーチが短くなれば、それだけ相手に届く刃や間合いも短くなってしまう。


310 : 秩序、混沌、■■ ◆EPyDv9DKJs :2022/06/26(日) 19:17:08 YyA2t3M20
(城娘の力が制限されてる中、使えるかどうかは賭けに等しいですが……これ以上は、勝機も見逃しかねない!)

 賭け事など彼女とは程遠い行動に出るべく、一度距離を取った後駆けて一気に肉薄する。
 巨大化が封じられてると言えども城娘。弾丸にも負けず劣らずの加速は聖剣を使えども、
 防御に回らなければならない程のものでありカウンターをするという選択肢はなかった。
 一方でそれは彼にとって最善の行動だ。あれだけの加速、ブレーキをかける際の隙は想像がつく。
 隙を見逃すことなくその青い刀身を彼女へと刻み込まんと振り返ろうとする。

(───? 何だ? 身体が、動け……)

 全身の動きが止まる。力が抜けていくとかではない。
 明らかにあり得ない状態で、絵画のようにエンシンは動きを止めた。

「さぁ、処刑の時間です。」

 コンシュルジュリーとして彼女が持つことができた力『シテの時計台』。
 規律を重んじて罪人を裁いた彼女が得た力は相手を短時間だが動きを固定できる。
 ある種の時間停止。短時間は歴戦の猛者同士の戦いにおいては余りにも長い。

「正義の名のもとに、執行!!」

 ブレーキの勢いを使って回転し、
 そのまま背後からの斬撃を叩き込む。
 当然動けぬ以上無防備な背へと一閃。
 背中にバッサリと赤い筋が刻まれ血を流す。

「ガァ、グッツ……テ、メエ!!」

 残念ながらエンシンを仕留めきれなかった。
 生身の人間だ。巨大化できずとも、十分な威力はあるはずだ。
 要因はいくつもある。砂浜と言ういくら踏み込もうと不安定故に力が入らない場所の問題。
 刀身が折れたことでの間合いの見誤ったこと、何よりの理由として彼が装備しているものだ。
 目には見えない。しかし確実に効果を発揮している。ある理想郷ではこれを感覚増幅と呼ばれていた。
 突出した強さはなくとも全体の能力を底上げするそれのお陰で、致命傷に足りえない。
 すぐさま反撃に出た、回転により威力を増した横薙ぎの一撃は刀身を根元から砕いた。

「しま……」

 コンシュルジュリーの敗因は実力差でも何でもない。
 元より死者に思うこともなく、奪うスタイルであるエンシンはすぐに飲み込み支給品も把握した。
 一方で彼女は死者を悼み、その上で行動方針を決めてからと言う育ちの良さで遅れている。
 城娘に育ちの良さも何もない気はするが、城娘とは概ね城としての在り方、所謂業を背負う。
 彼女は処刑場としての役割が強い。故に彼女は責務を全うする、生真面目な城娘となった。
 だから彼女は人の死を悼む。マリーに関わるヴェルサイユ宮殿ともそれでギクシャクしたこともある。
 あれこれ言ったが、要するにエンシンの方がこの場の適応が早く装備も優秀だった。それだけのことだ。
 どれだけ元の世界で強かろうと、此処では平等に敗北する。

「クッ───アグッ!」

 刀が砕け散ったその一瞬でエンシンが鳩尾を蹴り飛ばす。
 蹴り飛ばされたものの地面は砂浜。ダメージは軽微で数度砂をなめる程度にとどまる。
 だがそこからだ。起き上がろうとするところにエンシンに踏みつけられ逃げることは許されない。

「ほら、秘密警察ワイルドハントだ。
 今からじっくり取り調べをしてやるから覚悟しろよな?」

 舌なめずりと共に足を軽く斬りつける。
 軽い傷ではあるし城娘ならば常人よりも高い治癒があるので、
 最悪数時間もすれば完治するだろうが、少なくとも今は走れなくさせられた。

「ふざけないで、ください! 貴方のような賊が、そのようなはずが……」

「事実さ。帝都の立派な警察だ。シュラが集めた立派な警察だよ。国の為に動く公務員さ!」

「であるなら、なぜこのような狼藉をするのですか!?
 警察機構であるのならば、秩序を重んじて安寧の為に───」

「あ? おかしなこと言ってんじゃねえよ。
 狼藉? 俺達が正しい。間違ってるのはテメエだ。
 俺達に逆らうってことは大臣の息子であるシュラに逆らうことだからな。」


311 : 秩序、混沌、■■ ◆EPyDv9DKJs :2022/06/26(日) 19:18:11 YyA2t3M20
 残念ながらエンシンの言ってることは事実だ。
 悪行三昧と言うのには一応の理由はあるものの、
 帝都で悪逆の限りを尽くすのは、よりもよって帝都の警察機構だ。
 強姦、略奪、殺人。彼らにとって民とは嗜好品と何ら変わりはなく、
 己の欲望のために使い潰す。それはワイルドハントに属する全員が同じことだ。
 人を斬りたい、子供を愛でたい、男を抱きたい……そんな連中ばかりになる。
 ろくでなしではあるがリーダーのシュラは大臣の息子であり、逆らうことは許されない。
 理不尽極まりないことだが、帝都ではそれがまかり通ってしまう。
 だからこそナイトレイドに最も暗殺依頼が殺到する程であり、
 最終的にエスデス達イェーガーズからも敵視されることになった。
 まあ、前者は勿論後者すら知る前に彼は既に死亡しているが。

「てめえはこれから全裸で這いつくばることになる。
 その辺、たっぷり教え込んでやるから覚悟しておけよ?」

 帝都にだってそうはいない美少女だ。
 さぞ楽しみ甲斐のある相手に興奮冷めやらぬものになる。

「正義の名を汚すなんて……!!」

 屈辱でしかない。
 同じく法の番人に近しい立場でありながら、
 真逆を往く悪徳を積み重ねるような連中と同じなのだと。
 良いようにされる自分の不甲斐なさを呪うしかなかった。





「何やら騒がしいと思ってみれば、随分と品のない場面に出くわしたものだ。」

 その寸前。新たな声に二人は其方へと注意を向ける。
 二人の前に現れたのは、白と黒を基調とした身なりの良さそうな恰好の男性だ。
 何処かの領主、とでも紹介されればすぐに信じることができるような姿であり、
 この場を前にしても冷静でいられる姿から、単なる弱者でないことは察せられた。

「おい。ダルマにはしてやらねえからとっとと失せな。」

 どの道いつかテメエも殺すけどな、と内心でゴチる。
 今は玩具が手に入ったので気分がいい。邪魔をするようなら、
 全身の皮を剝いで、人目につく場所に逆さ吊りでさらしてやるつもりだ。

「申し訳ないがそれは承諾しかねる。
 私の目的が、此処で見過ごすというのは余りできないものでね。」

 紳士的な佇まいと共に携えていた剣を抜く。
 整った格好から抜かれた、水色の宝石が鞘にはめられた正統派な西洋剣はとても似合う。

「だったらとっとと死ね!」

 足を斬りつけた以上遠くまでは逃げられない。
 すぐに標的を変更し、素早い身のこなしで相手を斬りつける。
 ガードの間もなく、あっさりと上半身と下半身が分離してしまう。
 余りにもあっさり攻撃が決まってしまって一瞬唖然としてしまった二人だが、
 分断された身体が氷の像になって砕け散り、それが残像の類だと気付く。

「ふむ。虚像ぐらいはできるがアレが違っては残像は残像でも氷か。」

「!」

 エンシンの後方。そこにいつの間にか先程の男性が立つ。
 傷など当然とも言うべきではあるが、どこにもない。

「どちらにせよ問題はあるまい。君の相手ならばどうとでもなる。
 全力には程遠いがお相手しよう。さあ、心置きなく死ぬがよい。」

「いちいち俺の神経を逆なでしてんじゃねえよ!!」

 癇に障る野郎だと思いながら再び肉薄。
 元々海で生きてきた人間だ。砂浜での戦いも少なからずあったので、
 砂地とは縁遠そうな相手を屠るのには十分有利なフィールドだ。
 証明するかのようにエンシンの攻撃に対し相手は防御を選ぶ。
 向こうも相当な業物のお陰か武器こそ砕けなかったが威力の重さには、
 さしもの相手も表情を歪ませながらひたすら攻撃を防御するだけに留まる。

「ハッ! 口だけの割に大したことねえな!」

(違う。あの人は防戦一方じゃない。あの人は様子を見ているだけ……)

 例えるならば盾とも言うべきだろうか。
 攻撃を冷静に防いでいなしてから一撃を叩き込む。
 海外の城娘には多くの盾を使う城娘が存在しており、
 何処かそれらと似たような雰囲気を感じさせる戦い方だ。

「なるほど、ダナの武具でも目にできない逸品だ。
 しかしそのような粗雑な使い方では剣も泣いているぞ。」

「そうやって攻撃の手を緩めると思ってるのかよ、てめえは!」

 背後へ回り脳天を両断せんとする兜割り。
 それも容易く防がれてしまい少しばかり焦りが見られる。
 とは言え優勢だ。反撃の一撃も全く届かず一方的に攻められた。
 ……途中までは。


312 : 秩序、混沌、■■ ◆EPyDv9DKJs :2022/06/26(日) 19:19:10 YyA2t3M20
「ナァッ!?」

 何度目か忘れた剣戟の嵐の最中。
 派手な音と共に、聖剣は砕けてしまった。
 当然、一番驚いているのは使用者のエンシン本人だ。
 エンシンの持つ武器、聖なる月の剣は彼が生前持ってた帝具、
 シャムシールと似ており、夜の間はとてつもない威力を発揮して攻撃できる。
 代価として致命的な問題があり、それは耐久力がかなり脆いということだ。
 その世界において流通している、一般的な剣や斧よりも耐久性に難があり、
 コンシュルジュリーとの戦いで道中木々や岩、更に日輪刀と何度も斬り続けて戦った。
 荒々しい使い方をしては元より短い耐久が更に短いものになるのは必然のこと。
 彼は敵勢力の戦利品を城に飾っており、一流とまでは行かないが審美眼は優れる方だ。

「少しばかり刃毀れしていて気にはなったが、まさかこれほど脆いとは。
 だから言ったはずだ。『そのような粗雑な使い方では剣も泣いている』と!」

 身を守るのは物理的に身を守ってくれない感覚増幅だけだ。
 身を退く寸前に両足を彼女同様に斬りつけられ、機動力を奪われる。

「得物は折れ、足にも少なからずダメージだ。
 少なくとも戦い慣れしたこの場所でも有利はとれまい?」

 優雅に一歩、また一歩と痛みですぐに立ち上がれないエンシンへと近づく。
 優雅な徒歩に見えるが、彼にとっては処刑台の階段を上らされてるかのような感覚だ。
 死が近づく。ナイトレイドのアカメに斬られたあの時のように。
 二度目の死に恐怖し、後ずさりするが距離は縮まる一方だ。
 そして剣が間合いに届く瞬間、

「死んでたまるかぁ!!」

 砂掛けによる、古典的な目潰し。
 此処でそんなものが通用するのかと思われるそれは、
 意外にも決まって相手の目を一時的に封じることに成功。
 反撃に出る前に相手を殴り飛ばし、手放した剣を奪取する。

「ハッ! あっさりかかりやがったな間抜けが!
 砂とは無縁の世界にでも生きていたようだな!
 こんな古典的な方法で武器をまで奪われちまうなんてよ。」

 倒れる彼へコンシュルジュリーが駆け寄る。
 たかが打撲一発で致命傷には至ることはなく。
 エンシンの言う通り、彼が統治してた場所は雪国。
 砂とは縁遠いものであり経験不足が仇となっていた。
 此処については場所に慣れたエンシンが僅かに上を行った。

「困ったな。私にはあれしか接近戦で戦える武器はない。
 となればご令嬢。君の方にはそういうのはあるかね?」

「いえ、ありません。刀が折れてしまったのと、刀身は海に落ちてしまったので難しいかと。」

「だったらてめえらは俺を逃がすしかねえよなぁ?」

 走ることはすぐにはできないが、逃げさえすえば最後の支給品で治療できる。
 そうすればすぐにでも戻ってこいつらの尊厳を存分に踏み躙ってやる腹積もりだ。
 今だけ命を奪わないだけありがたく思いやがれ……なんて思っていたが。

「───氷霧に彷徨え、凍牙に果てよ。」

 男は静かに呟き始める。
 詩的で独特な言葉ではあるが、
 彼の周囲が青く輝き始めてエンシンも何かを察する。

「お、おいまさか……」

 相手は『困ったな。私にはあれしか接近戦で戦える武器はない。』と言った。
 『接近戦で戦える武器はない。』、つまり彼にはある。近づかず殺せる手段が。
 詠唱を止めるべく剣を投げてもいいが、相手は詠唱をやめて回避して剣を回収するだけだ。
 つまるところ、詰みである。

「冷気に抱かれて刹那に沈め。」

「ふ、ふざけるな! 俺は───」

 活路を開くには今すぐ治療できる奴を使うしかない。
 急いで支給品を取り出して行動に出ようとするが、

「氷結は終焉、せめて刹那にて砕けよ。インブレイスエンド。」

 間に合うことはない。
 エンシンの周囲を囲む巨大な氷。
 逃げ出すことの許されぬ絶対零度へと誘われ、
 嘗ての海賊は辞世の句すら誰の耳にも届かぬまま氷結の中息絶えた。



【エンシン@アカメが斬る! 死亡】



「矮小な者め、無へ還れ。」

 氷が砕け、エンシンの遺体は砕け散った。
 残っていたデイバックと剣と支給品を回収。
 ついでに何か浮いていたものがあったが触れると消えた。
 何事かと思うがエンシンの支給品の説明を見て察すると、
 支給品を調べ終えればコンシュルジュリーの方へと歩み寄る。


313 : 秩序、混沌、■■ ◆EPyDv9DKJs :2022/06/26(日) 19:20:33 YyA2t3M20
「……助力いただいたこと、感謝いたします。」

 僅かながら警戒しつつも、
 頭を下げたのちに、エンシンの遺体へと見やる。
 その視線は、何処か哀愁や憐れみを感じさせるものだ。

「敵にも情けをかけるのかね?」

 彼に対する印象に、いいも悪いもない。
 なるべくしてなった悪。此処で死んでも文句の言えないような奴だ。
 彼の慰み者になっていた可能性が高かった相手に情けがあるわけではない。

「いえ。この方には正式な法の下で裁くべき相手でした。
 このような法も秩序もない場で言うことではないでしょうし、
 別に殺めた貴方を責め立てるとか、そのようなことはしないのでご安心ください。」

 どちらかと言えば城娘としての矜持。
 裁判所でありながら秩序からは程遠い殺人の幇助。
 城娘としての業が、どうにも後ろ髪を引いていく。

「法廷の場か。確かにこの状況では難しいだろうな。
 それで君はどうする? 秩序を守れぬ私を捨ておくか裁くか、
 あるいは監視か共闘を理由に共にする。いずれを選ぼうと私は構わないが。」

「私は……この無意味な争いを終わらせたいと思います。
 ハ・デスの行為を野放しにしては、今後も民の安寧が脅かされます。
 城娘である以上人々を守るために産まれた身であれば、人を守るのは本懐です。
 ですが、力の抑えられた私では限度があります。なので今後も貴方に協力いただければ幸いです。」

 流石に不慣れだったという都合による今回程の失態は今後はしないだろうが、
 だからと言って本来の実力に戻ったわけではない。十全とは言い難い状態だ。
 守るべき相手ではあるが、ともに戦えることを望むつもりだ。

「私は先程も言ったように、打算目的で君を助けたことになる。
 その目的はハ・デスの打倒。志が同じであるならば、共闘することは吝かではない。」

「ありがとうございます。私はコンシュルジュリー。またの名を『死の牢獄』と呼ばれる城娘です。」

「城娘?」

 ハ・デスによれば別の世界の存在もある。
 詳しいことを聞いてから、二人は行動を開始することにした。



【コンシュルジュリー@御城プロジェクト:Re】
[状態]:足に負傷(二時間もすれば完治)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2(近接武器はなし)
[思考・状況]基本方針:少なくとも殺し合いを進んですることは選びません。
1:彼(ガナベルト)と共に仲間を募る。それが一番いいかと。
2:ヴェル様(ヴェルサイユ宮殿)はいない、ですよね。
3:王様(殿)が参加してるのであれば、速やかに合流を。

[備考]
※参戦時期は少なくともイベント『選ばれし城娘と秘伝武具 陸の陣』以降
※巨大化はできません。また、城娘の基本的な武装も服装を除き顕現しません
 ただし御嬢の姿には問題なくなれます。
※大きなダメージを受けても御嬢になれば肉体的には無傷です。
 ただし御嬢の状態では城娘の時ほどの戦闘は不可能です。
※計略『シテの時計台』は一時間に一回使用回数が増えます。
 動きを封じる時間は採用次第書き手にお任せしますが、最長4秒です。









(ダナでもレナでもない城娘か。これならば幸先は良さそうだ。)


314 : 秩序、混沌、■■ ◆EPyDv9DKJs :2022/06/26(日) 19:21:18 YyA2t3M20
 ガナベルトはコンシュルジュリーと共にハ・デスの打倒を考えてるが、それだけに留まらなかった。
 最悪の場合だが、優勝やハ・デスの下へ辿り着き、願いを叶える力が手に入るならそれを優先するつもりでいる。
 理由は単純だ。彼は同胞であるレナ人全体の未来を考えながら領戦王争(スルドブリガ)を勝ち抜こうとした。
 であれば、ハ・デスの持つ願いの力。これを看過することなど当然できるはずもないことだ。
 今後あの力で自分のようにまたレナ人が犠牲にならないよう、その力を厳重に管理するつもりでいた。
 奪ったあとは、面倒ごとがないようコンシュルジュリーを含む他の参加者をその力で元の世界へ返せば、
 憂うことなくレナに安寧を齎すことができる。あくまで、その力が存在するのであればだが。
 元よりダナの人間を奴隷のように扱った。今更数十人死のうとさして変わる話でもない。
 元の世界へ返すのは、他の世界の技術で恨みを買った相手に狙われないための保身になる。
 だからその一歩として、エンシンを倒して自分が殺し合いに懐疑的な人物とアピールをした。
 まずは人数と信用を勝ち取り、消耗をなるべく避けて万全な状態でハ・デスに挑まんとする。
 そして願いを叶える力がなかった場合は速やかに始末し、あると確信が持てた場合も考えておく。

 狡猾に知略を巡らせる。彼にとってそれはありふれたことだった。
 元々彼が領将(スルド)として統治していたシスロディアにおいては、
 隷属となったダナ人同士を団結させないよう、密告と言ったシステムを組み込んだ。
 ただしその時は団結させないように疑心暗鬼を生ませていたが、今度は逆になる。
 より団結させ強固なものにしつつも、ちょっとしたことで瓦解する脆い集団を。

(まず最初に出会えたのが彼女でよかった。)

 人を守ることを優先とし、規律を重んじている模範的な城娘。
 彼女の言うことであれば説得力は十分にあるし、集団の形成は容易だ。
 かといって盲目ではない。しっかりと此方を警戒した上で応じている。
 相手がより狡猾でなければ、十分に獅子身中の虫を取り除いてくれることだろう。
 もっとも、彼女にとっての獅子身中の虫とは、ガナベルト当人かもしれないが。

(だがそれはそれとしてハ・デス……主霊石(マスターコア)を支給するとは。)

 領将の証であり、領戦王争において必須の主霊石。
 彼が持つのは水。これはヴォルラーンのものであり、光ではなかった。
 願いが叶えられれば領戦王争など不要の存在ではあるものの、
 もしそれがなかった場合、戻って領戦王争を再開するしかない。
 しかし、主霊石がなければ当然領将ではないのでレナの王になる資格がないことになる。
 なんとしてでも主霊石を取り戻さなければならなかった。
 レナ人が唯一使えない、自分が手にした光の主霊石を。

(しかし、此処にあるということは炎の剣は主霊石を手に入れてないとも受け取れる。)

 一方でそれは吉報でもあると言える。
 もしこの舞台に光の主霊石があれば、
 彼が敗北を喫した炎の剣、アルフェン達は主霊石を手にしてない。
 まだ負けられない。レナ人の為に彼は負けることは許されない。

 結局のところ、それは視点の違いでしかない。
 エンシンにとっては自分の都合のいい場所であること。
 コンシュルジュリーにとっては人々の安寧であること。
 ガナベルトにとっては、レナ人のみの安寧であること。

 それぞれの信じる正義。見るべき方向は互いに違っている。
 レナにとっての秩序であり、ダナにとっての混沌。
 それが領将が一人。ガナベルト・ファルキリスだ。

【ガナベルト・ファルキリス@テイルズオブアライズ】
[状態]:疲労(小)
[装備]:水の主霊石@テイルズオブアライズ、ライズ・オブ・ジャスティス@グランブルーファンタジー、アニマアニムス@Caligula2
[道具]:基本支給品×2(自分、エンシン)、ランダム支給品×1〜2(近接武器はなし、1つは治療系)
[思考・状況]基本方針:ハ・デスの願いの力を奪いレナ人の為にその力を管理する。
1:優勝か、殺し合いの打破か。どちらに転んでもいいように立ち回る。
2:決断が決まるまでにいくらか傀儡となりうる人物を探しておく。何方であっても有益だ。
3:彼女(コンシュルジュリー)を利用する。
4:炎の剣たちがいた場合始末する。
5:主霊石を集める。最優先は光だ。
[備考]
※参戦時期は死亡後
※光の主霊石がないため光属性の攻撃はできず、
 同時にヴォルラーンほど水の力を扱うことはできません。
 ただ主霊石を使った経験がある為それなりに使いこなせます。





※浜辺周辺に砕けた聖なる月の剣@片道勇者、村田の日輪刀@鬼滅の刃があります


315 : 秩序、混沌、■■ ◆EPyDv9DKJs :2022/06/26(日) 19:22:13 YyA2t3M20
【聖なる月の剣@片道勇者】
エンシンに支給。ゲーム上では神殿に保管されてる聖なる武器。
刀身が青く輝く異世界の聖剣。夜の間だけ真の力を発揮し、確実に必殺攻撃を放つことができる。
本ロワでは夜の間のみ相手の防御や装甲を無視した一撃を放てる者として扱う。
なお、滅茶苦茶脆い。拾える武器で一番強い剣が120に対してこの武器はなんと60。

【村田の日輪刀@鬼滅の刃】
コンシュルジュリーに支給。村田が所持している日輪刀。
鬼の首を断てば再生できず鬼は消滅する、対鬼用の武器。
一応日輪刀の仕様で村田が手にしたときに変色してるのだが、色が薄すぎてわからない。
そんでもって折れた。鋼塚さんがキレる。

【ライズ・オブ・ジャスティス@グランブルーファンタジー】
ガナベルトに支給。其は善意の『正義』より齎されし剣。
曇りなき刀身は平等を与え、争う者に厳正を強いる。
水属性の攻撃力強化の『女帝と正義の善意』、攻撃力と体力増加の『水の神威』のスキルを持つ
第二スキル『セフィラマキシ・ウォーター』はロワ上での再現が困難なので割愛
装備時の効果もロワ上で再現が困難であるため割愛(ただこちらは第二スキルよりは再現可能)

【水の主霊石@テイルズオブアライズ】
ガナベルトに支給。主霊石と書いてマスターコアと読む。
領将の証となる霊石で、元々はヴォルラーンが持っていたもの。
ダナ人の奴隷の霊石を通じて集霊器に集められた星霊力が貯蓄されており、
戦闘の際には主霊石から星霊力を引き出し、同じ属性術を行使することもできる。
本来は領将にしか使えないが、本ロワでは誰が使っても力を行使することは可能。

【アニマアニムス@Caligula2】
エンシンに支給。作中の「マッスルエンジョイ!」のクエスト報酬。
装備品とは言うが見た目に変化はなく、魂の残滓(宝箱)を開けた(このロワの場合触れた)人物に装備される。
装備されると残滓が消滅し、一度装備されると基本的に外せない。この事故防止のため簡素なケースに収納されてる。
(と言うよりどう外すか分からない為。参加者にメビウス、リドゥにいた人物ならわかるかもしれない)
感覚増幅に分類するスティグマで、攻撃、防御、命中、回避と全体的に補正が入る。
装備した人物が死亡した場合、再び魂の残滓となって再利用が可能。
その際魂の残滓は装備した人物の遺体のそばになる。


316 : 秩序、混沌、■■ ◆EPyDv9DKJs :2022/06/26(日) 19:23:02 YyA2t3M20
投下終了です


317 : ◆bLcnJe0wGs :2022/06/26(日) 19:56:53 VvfNUZHs0
投下します。
この作品は以前、エトラロワに投下したものを流用したものとなっております。


318 : 動く、切り拓く為に ◆bLcnJe0wGs :2022/06/26(日) 19:57:41 VvfNUZHs0
 会場内のとある場所。

(う…う……怖いけど、状況を打開するには進まないと…)

 そこでは、小柄な白い猿の獣人が会場の地図を眺めながら、移動していた。
 彼の名前はニコ。
とある世界に存在する、様々な環境や地形を持った諸島のある地域で生まれ育った経緯を持つどうぶつである。

 そういった生活環境から、諸島の地理には詳しく、その能力がリゾート地の開発にも大きく貢献していった。


 過去には、彼の故郷の辺りでも一度は土地開発が計画されたものの中止なってしまい、落胆していたのだが、その後に新たな土地開発の話が舞い込んで来た。

 それからニコはその土地開発を進めているという会社に入社し、己の技術や知識を存分に発揮し、会社の活動範囲を広げていった。

 そんな彼もこの殺し合いの一参加者として召喚されてしまったのである。
 この殺し合いという状況、
 何かしらの行動をとらなければまず破綻させることは出来ないと、
 今まで殺伐とした環境とは無縁の生活を送ってきた彼からしても感づいている。

【ニコ@あつまれ どうぶつの森】
[状態]:健康、恐怖(大)、不安(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3(確認済み?)
[思考・状況]
基本方針:殺し合いはしたくない。
1:とにかく動かないと
2:自身に訪れるであろう危険は回避しなければいけない…?
3:出来れば、殺し合いに反対的な参加者と合流したい。 居るならしっかり協力する。
4:首輪の解除方法も見つけたいところ。
5:知り合いが巻き込まれていないか心配。
[備考]
※少なくとも、タクミライフに就職してからの参戦となります。


319 : ◆bLcnJe0wGs :2022/06/26(日) 19:58:06 VvfNUZHs0
投下終了です。


320 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/26(日) 20:02:32 7V5GpCTo0
投下します。


321 : ブルースクランブル! ◆FiqP7BWrKA :2022/06/26(日) 20:06:50 7V5GpCTo0
甲高い音を響かせ超高周波振動ソード、GS-03デストロイヤーが振り下ろされる。
それを避ければ、レイピア状の召喚器、翼召剣ダークバイザーの刺突が襲う。
そこまでは躱せたが、最後にダメ押しとばかりにクワガタの角を模した一対のカッター、ガタックダブルカリバーの連撃が炸裂した。

「――――っ!」

「随分頑張るね。
もっとボロボロにならないうちに早くそのお宝を僕に渡したまえ」

三人の青い仮面の戦士、G3、ナイト、ガタックを従える男が膝をつく少女、風鳴翼は、憎々しげに意思無きそいつらを使役する帽子の男を睨んだ。
暗いのと帽子のツバのせいで表情は読めないが、その声色から、こちらを何とも思っていない……しいて言えば頑固だなぐらいにしか思っていないのが簡単にわかる。
その余裕の源は、男の手に握られている奇妙な銃だろう。
読み込んだカードに応じた戦士を召喚するその銃は、翼が元居た世界に存在したソロモンの杖を連想する代物だ。

(あれも完全聖遺物の一種なのか?
いや、あんな一個人の手に余る物がそうほいほいと配られるはずがない。
何かしら弱点があるはずだ)

4対1、そして翼の体力は底が見え始めているのに、男の方はいかにも余裕だ。
だが、翼はこの決闘の仕掛け人から渡された唯一の武器にして、自らの使命の証であるシンフォギアを渡す気になれるはずも無かった。

「戯言を!防人を舐めてもらっては困るぞ」

「そうかい?じゃあ腕づくでいただくとするよ」

そう言って男は銃に新たなカードを読み込ませる。

<ATTACK RIDE……CROSSATTACK!>

G3の刃が一際甲高い音を上げ、ガタックのゼクターホーンから供給されるエネルギーがダブルカリバーの刃に宿る。
唯一翼の背後に居たナイトは、どこからか飛来した蝙蝠型のモンスター、ダークウイングと合体し、飛び上がりながら剣先を自分に向けている。
後一秒足らずで自分に必殺の攻撃が殺到してくる。
そう判断した翼の頭はフル回転していた。

(蒼の一閃ではダメだ!後ろの蝙蝠を斬ったところをやられる!
では逆羅刹なら?駄目だ。前2人には対処できても、体制を整える前に後ろから貫かれる!)

万事休すか?翼がそう思ったのと、取り囲む三人の敵とは違う方から、冷気と風を感じたのは同時だった。


322 : ブルースクランブル! ◆FiqP7BWrKA :2022/06/26(日) 20:18:19 7V5GpCTo0

「ブルースクリュー!」

「アイオライト・ブルー!」

二連の氷の斬撃がG3を、二連の強風が、飛翔していたナイトを絡めとる。

「蒼の一閃!」

翼は眼前に迫っていたガタックを正中線で真っ二つにぶった切ると、今しがた自分を助けてくれた二人に目をやった。
一人は西洋ファンタジー風の衣装をまとい、氷のような刃の剣を持った自分と同い年ぐらいの少女で、もう一人は、今自分を囲っていた戦士たちに似た青い仮面に、青と白の強化スーツを纏い、トンファーを持ったの男だ。

「これで三対一だがどうする?」

三人の敵が光になって消えたのを確認した強化スーツの男がそう言うと、帽子の男は流石に危機感を覚えたのか、手にした銃を回転させながら持ち直し、

「今回は戦略的撤退も仕方ないか。
けど忘れないでくれたまえ、君たちの宝(ちから)は必ず奪う(もらう)!」

そう言って男は銃にあらたなカードを読み込ませる。

<ATTACK RIDE INVISIBLE!>

引き金を引くと同時に男は景色に溶けるように消えてしまった。

「消えた!」

「待て!ううぅ!」

すかさず追いかけようとする翼だったが、変身が勝手に解除されて膝をつく。
流石に4対1で粘り続けたとあって、疲労とダメージの蓄積が大きい様子だ。

「大丈夫?」

「無理するな。そんな状態では斬れるものも斬れないぞ」

変身を解除し、普通の制服姿に戻った少女と、長い黒髪を後ろで束ねた偉丈夫が翼に駆け寄る。

「……ああ。その通りだな。
さっきは助かった。私は風鳴翼。君たちは?」

「渋谷凛。で、こっちが」

「ジョー・ギブケンだ」

なんでも二人はこの決闘会場に放りだされて早々に合流し、お互い殺し合いに積極的でなかったので、支給された武器になれるために組み手をしていた所、戦闘音を聞きつけて来てくれたとの事だった。

「そうだったのか」

「そういう訳だからまずは休め。
後々まで引きずってしまえばハ・デスたちの元まで持たないだろうからな」

そう言ってジョーは海賊刀型の武器、ゴーカイサーベルを取り出すと戦闘を歩き始めた。

「翼、立てる?」

「ああ。重ね重ね助かる。ところで渋谷」

「凛でいいよ。何?」

「さっきの姿は、お前もシンフォギア装者なのか?」

「……シンフォ、なんて?」

「まあ、知らないか。詳しくはジョーさんも交えて話そう」

そう言って翼は凛の手を借りて立ち上がると、ジョーの後を追った。


323 : ブルースクランブル! ◆FiqP7BWrKA :2022/06/26(日) 20:18:32 7V5GpCTo0
【渋谷凛@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:健康、疲労(小)、ダメージ(小)
[装備]:ステージオブクール@プリンセスコネクト!Re:DIVE
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:この決闘から脱出する。
1:翼を休めれそうな場所に運ぶ。
2:もし来ているなら、卯月たちを探す。
3:シンフォなんとかって何?
[備考]
※細かい参戦時期やコラボイベントの記憶の有無については、後の書き手様にお任せします。

【ジョー・ギブケン@海賊戦隊ゴーカイジャー】
[状態]:健康、疲労(小)、ダメージ(小)
[装備]:モバイレーツ@海賊戦隊ゴーカイジャー、レンジャーキー(ゴーカイブルー)@海賊戦隊ゴーカイジャー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1、レンジャーキーセット(ゴレンジャー〜マスクマン)@海賊戦隊ゴーカイジャー
[思考・状況]基本方針:ハ・デスたちを倒し、この決闘を打破する。
1:翼を休ませ、その後に情報交換を済ませる。
2:他の仲間やレンジャーキー、レジェンド戦士が居るなら合流を急ぐ。
[備考]
※少なくとも本編終了前からの参戦です。
※ゴーカイガンとゴーカイサーベルは、ゴーカイジャーへの変身と同時に自動で出現します。
 生身でもモバイレーツとゴーカイジャーのキーが手元にある限り、任意で呼び出せます。
※細かい制限などに関しては後の書き手様にお任せします。

【風鳴翼@戦姫絶唱シンフォギア】
[状態]:健康、疲労(中)、ダメージ(中)
[装備]:ギアペンダント(天羽々斬)@戦姫絶唱シンフォギア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:この殺し合いを止める
1:まずは体力を回復させる。
2:その後にこの二人と情報を交換する。
3:あの男はいずれ倒す。
[備考]
※少なくとも無印のどこかからの参戦です。
※細かい制限などに関しては後の書き手様にお任せします。


支給品紹介
【ステージオブクール@プリンセスコネクト!Re:DIVE】
渋谷凛の専用装備で、彼女がレジェンド・オブ・アストルムで手にした力を引き出せる剣。
これを用いて『変身』することで各種技やユニオンバーストが使えるようになる。
また変身すると、衣装がアストルムでの物に変わる。

【モバイレーツ@海賊戦隊ゴーカイジャー】
海賊戦隊ゴーカイジャーの携帯電話型変身アイテムで、セットしたレンジャーキーに対応した戦士への変身が可能。
ジョー・ギブケンにはゴーカイブルーのレンジャーキーとセットで支給された。

【レンジャーキーセット(ゴレンジャー〜マスクマン)@海賊戦隊ゴーカイジャー】
歴代スーパー戦隊の変身能力が形になった人形、鍵型アイテム、レンジャーキーのセット。
モバイレーツかゴーカイセルラーに使う事で変身アイテムとして、ラッパラッターで使う事で召喚アイテムとして機能する。
このセットではゴレンジャー、ジャッカー電撃隊、バトルフィーバーJ、デンジマン、サンバルカン、ゴーグルファイブ、ダイナマン、バイオマン、チェンジマン、フラッシュマン、マスクマンの初期メンバー5人の53本で一つの支給品扱いである。

【ギアペンダント(天羽々斬)@戦姫絶唱シンフォギア】
聖遺物、天羽々斬の欠片から作られたパワードスーツの待機形態。
認定特異災害ノイズに対抗しうる唯一の装備で、一機で一個軍隊を上回るほどの圧倒的な破壊力を持つ。
装着者の戦意にシンクロし、旋律を奏でるシステムが内蔵されており、それに合わせて装者が歌唱することによって、シンフォギアを稼働させるためのフォニックゲインを増幅し、出力および戦闘力を増大させていく仕様をしている。


324 : ブルースクランブル! ◆FiqP7BWrKA :2022/06/26(日) 20:25:48 7V5GpCTo0
「ふう!ここまでくれば平気か」

透明化を解除した男は大きく伸びをすると、そこにあったベンチに腰掛けた。
男の名は海東大樹。
仮面ライダーの変身能力や、スーパー戦隊の巨大戦力などの力や、
貴重な物品を『お宝』と呼び、狙い済まして掻っ攫うトレジャースナイパーである。

「光戦隊マスクマンのブルーマスクに、
僕も知らないお宝……この首輪は気に入らないけど、
ここはとんでもない宝島だ!」

この島に転移させられてから自分含めてまだ4人しか出会っていないが、
最初のホールで見た限り、全参加者の人数は間違いなく100人はいただろう。

「もしかしたら士もいるかもしれないし、
あのハ・デスもこの舞台を整えるために相応のお宝を使ってるはずだ。
だったらそれを、奪わない手はない!」

どこからか自分たちがこの島で足掻くのを見物しているであろうハ・デスたちに指で作った拳銃を向ける海東。
BANG!と、一発だけ幻の銃弾を放ち、帽子を直した海東は次の獲物を探し始めた。


【海東大樹@仮面ライダーディケイド】
[状態]:健康、疲労(小)
[装備]:ディエンドライバー@仮面ライダーディエンド
     ライダーカードセット(G3〜イクサ)@仮面ライダーディエンド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:この決闘の舞台に集ったお宝はハ・デスたちのも含めて残さず頂く。
1:彼らのお宝は必ずいただく。
2:戦隊に僕も知らないお宝……ここは宝島だ!
[備考]
※参戦時期は本編のファイズの世界編終了後〜ディエンドの世界編開始前のどこかです。
※細かい制限などに関しては後の書き手様にお任せします。



支給品解説
【ディエンドライバー@仮面ライダーディエンド】
大ショッカーが開発したディケイドライバーと対になるライダーシステム。
拳銃型の武器と変身機構が一体化しており、
各種ライダーカードを読み込むことで、仮面ライダーディエンドへの変身、
仮面ライダーの再現体の召喚、各種特殊能力の発動が行える。
ディケイドライバーとは違い、変身に特別な資格などは不必要なようである。
当ロワでは仮面ライダーディエンドのカメンライド、各種アタックライド、ファイナルアタックライドのカードとセットで支給。


【ライダーカードセット(G3〜イクサ)@仮面ライダーディエンド】
ディエンドライバーで使用することで、
カードに応じた仮面ライダーの再現体を召喚できるカード、ライダーカードのセット。
G3、ナイト、カイザ、ギャレン、威吹鬼、ガタック、ゼロノス、イクサの8枚で一つの支給品扱いである。


325 : ブルースクランブル! ◆FiqP7BWrKA :2022/06/26(日) 20:33:04 7V5GpCTo0
四人が戦いの跡だけを残して去ったその場所で、フラフラと歩く少女がいた。
アストルムにおいて魔族と呼ばれる種族の少女だ。
長く伸ばした青い髪に、凛々しい美人と言った顔立ち。
特に目立った傷はない。
が、それだけだ。
顔色は青いを通り越して蒼白。
視線は滅茶苦茶に泳ぎ、その細い体を止めどない汗が流れている。

「ようやく、ようやく行ってくれた……」

その場に座り込み、安どのため息を吐く。
しかし、次の瞬間、僅かでも気の緩む瞬間を狙いすましていた不意打ちでも受けたかのように、激しく苦しみ始める。

(愛愛愛愛愛愛愛愛追い掛けましょうよ愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛そして愛愛愛愛しましょう愛愛愛愛愛愛愛愛愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる)

「やめて、くれ……」

さっきから彼女の頭の中に、自分のではない声がガンガンと鳴り響いていた。
何故なら魔族の少女、レイの手には、最悪な災悪としか言いようのない日本刀が握られている。

その銘は『罪歌』。

人を斬ることこそを愛と宣う狂った妖刀である。

(愛愛愛愛愛愛愛愛しましょう愛愛愛愛この決闘に集められた皆を愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛皆まとめて愛愛愛愛しましょう?)

「だ、、めだ。そんな、そんなこと絶対に……」

こんな物を持って居てはいけない。
そう思っているはずなのに、罪歌を掴む指は、手は、腕は全くいう事を聞いてくれない。

「返して、くれ……私の腕を、返して……」

(愛愛愛愛愛愛愛愛それは違うわ愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛することをあなたの腕は愛愛愛愛受け入れただけ)

レイにとって不幸だったのは、彼女が自分で思うよりも強い精神力を有していたこと。
そして罪歌の力がハ・デスたちの手によって弱められていたこと。
そして無いより

(愛愛愛愛愛愛愛愛しましょう愛愛愛愛騎士クンも愛愛愛愛愛愛愛愛ヒヨリちゃんもユイちゃんも愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛皆まとめて愛愛愛愛しましょうよ)

親友、家と呼べる場所、そして想い人。
ただの一人だって欠けることなど考えたくもない愛する人が居る事だろう。



【レイ@プリンセスコネクト!Re:DIVE】
[状態]:健康、罪歌による浸食
[装備]:罪歌@デュラララ!!
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:私は愛愛愛この決闘で愛愛愛愛愛愛愛する人たちを……
1:愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛しましょう?
2:頼むから愛愛愛愛や愛愛愛愛愛愛愛愛愛めて
3:もし愛愛愛愛愛愛愛愛いるなら愛愛愛愛彼らを愛愛愛愛愛愛愛愛絶対に愛(き)りたくない
[備考]
※参戦時期や細かい制限などに関しては後の書き手様にお任せします。



支給品解説
【罪歌@デュラララ!!】
全ての人間を愛する女性の人格を持った刀。
その愛の表現とは、人を斬ることであり、この刀の持ち主、否、宿主は、延々と人を斬ることを求め続けられ、
精神崩壊させてしまう危険極まる妖刀。
当ロワでは、斬りつけた相手を支配下に置く能力は封印されており、
宿主の精神を蝕む力と、歴代の罪歌の宿主の戦闘経験を宿主に与える能力のみ、有効である。


326 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/26(日) 20:33:17 7V5GpCTo0
投下終了です


327 : ◆bLcnJe0wGs :2022/06/26(日) 21:07:22 VvfNUZHs0
投下します。
今作は過去に投下した作品を2作品流用したものになります。


328 : 芸術家と意思ある絵画 ◆bLcnJe0wGs :2022/06/26(日) 21:08:23 VvfNUZHs0
 会場のとある場所。

 そこには、一枚のカンバスを片手に持つ一人の参加者がいた。

 名前はシードル・レインボウ。

 物質プレーン、或いは物質界と呼ばれる世界にある、コヴォマカ大国の魔法学校ウィル・オ・ウィスプの卒業生である“美”の魔法使いであり、芸術家でもある。

 彼はゲームには乗らず、他に巻き込まれた参加者達や磯野を助ける為に、スタート地点に転送されるや否や、移動し初めていた。

 嘗て、雪山で遭難していた所を助けてくれた救助隊の人々や、臨海学校中の事件に巻き込まれていた所を助けてくれたクラスの皆の様に。

 ◆◆◆

 シードルは2歳の頃、母親に見習って絵を描く様になり、10歳の頃に初めての個展を開いた時には神童とも呼ばれる様になっていた。
従妹のスフレにも、絵を教えていた。

 しかし、シードルには過去のトラウマもあった。

 それは両親と共に、芸術祭の準備ををする為に、パナシェ山に行った時の出来事だった。

 母親が氷の彫刻作りに熱中している時、外は吹雪になった。
吹雪は4日間も続き、食糧も底を尽きた。
 母親は助けを呼びに行くと言って外へ出たのだが、戻って来なかった。
その次の日に彼と父親は救助隊の人々に助け出されたのだが、母親は二度と戻って来る事は無かった。

 臨海学校中の事件の時も、遭難事件の事を思い返して氷山に向かう事を一度は拒否したものの、戻って来なかった、助けられなかった母親が居た、自分の境遇と重ね合わせて、氷山へ単身向かう事を決めた。

 氷山の奥地で、ピンチに陥っていたクラスメイト達を自身の魔法で救い、彼等と合流。

 その後も、事件に巻き込まれていた残りのクラスメイト達を次々と助け出し、最終的には事件の元凶たる存在を討ち取るまでに至った。

◆◆◆

 そして時が経ち、シードル達は魔法学校を卒業した。

 卒業後も、シードルは芸術家としての活動を続け、臨海学校での出来事を何枚も絵に描き、世に送り出した。
 そして、また臨海学校での出来事を絵に描いている途中にこのゲームに巻き込まれた。

 嘗ては他者に助けられていたのだが、今度は自分が助けに行く番。

 この場所に一人で投げ出された彼は、この悪趣味な催しを食い止める為に、進み出すのであった。

「ねぇ」
「なんだい?」

 そんな中、シードルに持ち運ばれているカンバスが彼に語りかける。

 そう。このカンバスも参加者なのである。
 それは意思を持った絵画。
 題名は『青い花飾りの少女』。
 実は、ゲーム開始から間もなくして、身動きもとれずにいたところをシードルに拾われたのだ。

「全く…レディにあんなもの(見せしめ)を見せるなんて無礼もいいところだわ。
 直ぐにでも殺してあげたいところだけど、私の首に描き足されていた首輪が何より厄介なのよね。
 どうにかして『外せない』のかしら?」


329 : 芸術家と意思ある絵画 ◆bLcnJe0wGs :2022/06/26(日) 21:08:55 VvfNUZHs0
「それは今の所全く分からないね。
 でも、この『決闘(ゲーム)』のルールから察するに簡単に外せる様なものじゃないとボクは思っているよ。」
「…それは困ったわね。
 けど、『私』の絵画に適当な道具を描き足して、それで失敗して爆発させたら、私も死んでしまうのかしら?
 そうだとしたら困るわね。」

 『首輪をどうするか』を相談しようにもハッキリした答えは出ない。
 だが、シードルは諦めずに進んでいく。

 ◆◆◆

 『青い花飾りの少女』は、嘗て幼少期にとある事故で姉を失った屋敷の主人が雇っていた画家に頼んで、彼女の代わりとして引き取った少女を描いてもらったものだった。

 後にモデルとなった少女も姉と同じ様に事故で屋敷の窓から転落してしまった。

 ─やがてその絵画は意志を持ち、繊細な性格となり、自分の気にそぐわないものを描き加えようものなら直ぐに描いた相手を殺害する代物となった。

 それからも何人かの人間の手に渡り、彼女の機嫌を損ねた者達が殺されていった。

 そんな『彼女』がシードルやその他の参加者達と上手くやっていけるのだろうか。
 それはまだ、わからない。

【シードル・レインボウ@マジカルバケーション】
[状態]:健康、他者を救うという決心
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3(確認済み)
[思考・状況]
基本方針:殺し合いには乗らない、他に巻き込まれている参加者達や、磯野を助ける。
1:他の参加者を探す。
2:殺し合いに反対の参加者を避難させる事が出来る様な場所の確保もしたい。
3:首輪に関する情報が欲しい。
[備考]
※本編終了後からの参戦となります。
※魔法の制限については後続の書き手にお任せします。

【青い花飾りの少女@まつろぱれっと】
[状態]:???
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:気に食わない相手(少なくとも主催陣営)は殺す。
1:今はシードルと一緒に居る。
2:首輪を解除したい。
※参戦時期や特殊能力の類の制限については後続の書き手にお任せします。
(少なくとも主催陣営への干渉は不可能になっている。)
※現時点では、自力でカンバスごと移動することはできません。


330 : ◆bLcnJe0wGs :2022/06/26(日) 21:09:08 VvfNUZHs0
投下終了です。


331 : ◆wJPkWOa93Q :2022/06/26(日) 22:15:27 2nuv2hBM0
投下します


332 : 危険なゲーム ◆wJPkWOa93Q :2022/06/26(日) 22:16:24 2nuv2hBM0


『遊星:LP1500』
『手札:4 墓地:15』
『モンスター』
《フォーミュラ・シンクロン守備力1500》 《スターダスト・ドラゴン攻撃力2500》
『魔法・罠』
《伏せカード3枚》


『ヘルカイザー亮:LP1000』
『手札:3 墓地:10 除外:3』
『モンスター』
《サイバー・エンド・ドラゴン 攻撃力4000》《鎧獄竜-サイバー・ダークネス・ドラゴン 攻撃力3600》(サイバー・ダーク・クロー装備)
《サイバー・ドラゴン 攻撃力2100 2体》
『魔法・罠』
《伏せ1枚》

「《サイバー・エンド・ドラゴン》召喚!!」

「《フォーミュラ・シンクロン》の効果発動! 相手ターンにシンクロ召喚することが出来る!」

「相手ターンに!?」

「レベル8《スターダスト・ドラゴン》にレベル2《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング!
 集いし夢の結晶が新たな進化の扉を開く。光さす道となれ! 
 ―――――――アクセルシンクロ――――――ッッ!!」 

「消えた!?」

フォーミュラ・シンクロンに先導されるかのように、スターダスト・ドラゴンが加速する。豪風を巻き起こし、二者は風に包まれたその刹那、フィールド上から姿を消した。
瞬間、不動遊星が天高く掲げた1枚の白紙の白いカードに輝きが灯され、新たなイラストが記されたのをヘルカイザー、丸藤亮は見逃さなかった。


「生来せよ、《シューティング・スター・ドラゴン》!!」

再度、疾風と共に遊星の背後から姿を現し天上へと降臨する新たな竜。
スターダスト・ドラゴンが使い手のクリアマインド、そして神域を超えた高速の風の中で得た進化した姿シューティング・スター・ドラゴンを見て、ヘルカイザーは笑みを浮かべる。

凄い。

ただ、感嘆と驚嘆に溢れ、そして狂喜の底から笑いが込み上げた。
スターダストが消失したのも、あの一瞬で光をの速さを凌駕し、この次元を超越し殺し合いの会場内を超えたからだ。
こんなデュエル、考えたことすらもなかった。

あの男、不動遊星のデュエルは心躍る。十代のデュエルのように熱く、エドとのデュエルのように技巧的で、ヨハンとのデュエルのように苛烈だ。
こんなデュエリストと手合わせ願えるとは、己はどうしようもないほど幸運な男なのだと、その運命に感謝したくなる。

「だが、気が早いぞ。サイバー・ダークネス・ドラゴンはオレの場の装備カードを墓地へ送り、効果の発動を無効にする」

「読んでいた、手札から《エフェクト・ヴェーラー》を捨てて、効果を発動! 
 相手のモンスター効果を無効にする。サイバー・ダークネス・ドラゴンの効果は無効化される!」

「装備されていた、サイバー・ダーク・クローが墓地へ送られたことで、サイバー・ダークネス・ドラゴンの攻撃力は2000まで減少する。
 そして、ダーク・クローの効果で墓地から1枚カードを回収する。
 行くぞ、バトル。サイバー・エンド・ドラゴンの攻撃。
 エターナル・エヴォリューション・バーストォォォッッ!!!」」

「《くず鉄のかかし》を発動、その攻撃を無効にする!! 更に発動後、このカードを再セットする!」

「クク……リバースカードオープン!《ワンダー・エクシーズ》更にもう1枚同名カードを発動!!
 自分フィールドのモンスターを使い、エクシーズ召喚できる」

「エクシーズ……!?」

ヘルカイザーより未来の世界を生きる遊星ですら、聞いたことのない召喚方法だ。
ハ・デスが言うには複数の世界を巻き込んだ殺し合いのようだが、ヘルカイザーは遊星より過去の人物、その召喚方法は存在しない筈だ。
弟と共に設立したプロリーグは遊星の時代にも轟いているし、サイバー・エンド・ドラゴンに十代が反応したことから、彼の時代はシンクロ以前の同一の世界線であることに違いない。


333 : 危険なゲーム ◆wJPkWOa93Q :2022/06/26(日) 22:18:19 2nuv2hBM0

「ヘルカイザー、そのカードは……」

「知らん。デッキに入っていた……このデッキは進化を求め続けているからだろう」

「それは、ハ・デスが勝手に入れたんじゃないのか?」

「だとしても、それをこのデッキが受け入れているのなら、オレはそれに答え続けるのみ……最期まで付き合ってやるさ」

「このデュエルを通じて、オレにはそのデッキのプレッシャーが伝わってくる。
 これ以上、デュエルを続ければ死んでしまうぞ! アンタは殺し合いには乗っていない、ならデュエルをする必要はない!!」

「だが、このデッキには借りがある……。
 不動遊星、未来のデュエリストよ。悪いがお前には付き合って貰う、
 サイバー・ドラゴン2体でオーバーレイ、現れよ《サイバー・ドラゴン・ノヴァ》!
 更にオーバレイ、《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》ッ!!!」

「デッキに殺されるぞ!?」

空間が張り裂けん程の威圧感、サイバー・ドラゴン達から構成された異次元のホールから舞い降りた更なる無限の機械竜の姿に遊星は戦慄する。

「こ、これが……エクシーズ……?」

「フフ、オレも初めてだ、これが、サイバーの……新たな進化、か……」

ここから先は完全に未知のデュエル、想像に想像を超えた全く予想の出来ぬ究極の域のデュエル。
最早従来のセオリーなど通じぬ。

(ヤバい、オレの直感がそう告げる。……かつての、Z-ONEとのデュエルの時のように。
 だというのに、オレは今……熱くなっている……オレは燃えてきている……!!)

遊星は笑っていた。
それを見て、ヘルカイザーもまた笑みで返す。

「ユベルとのデュエルを超えることなどないと思っていたが……オレは恵まれすぎている……。
 デッキよ、お前たちもこれで少しは満足―――ぐ、ぐあああああああああ!!!?」

「ヘルカイザー!?」

だが、次の瞬間すべてのモンスターが消失し、ヘルカイザーは胸を抑え倒れた。

「しっかりしろ!」

遊星も即座にデュエルを中断し、ヘルカイザーに駆け寄る。

「あ゛ぁ゛ッ!! う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛♡ あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!
 ぐ、っ、が、ぐ、があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッ!!!!
 ぁ゛、ァ……ァ゛あ゛っ♡ ……う、お゛お゛っ゛、お゛お゛お゛!? あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッッッッ!!!!」

脈を確認し、無事を確かめようと触れた時、遊星の体に凄まじい激痛が走った。

「はぁ、はぁ……。こんなデッキで、ヘルカイザーはデュエルを……!?
 こ、このデッキは……非常に危険な状態にある!
 恐らく、殺し合いの殺意に充てられ、更に様々な異次元の影響を受けたことで、恐ろしいほどのエネルギーを発している……そして、無限の進化と、さらなるデュエルを……!」

ヘルカイザーのデッキから外そうと試みたが、拒絶される。

「このままでは、殺されてしまうぞ。……だが、どうする……?」

恐らくだが、ヘルカイザーは生きようとしていない。ただデュエルに全てを捧げ、デッキに奉仕し、その身が亡びる最後まで付き合うつもりだ。
いわば、デッキと心中する気なのだ。

「息はしている。何処か休めるところを探そう」

気絶したヘルカイザーを背負い、遊星はゆっくりとだが歩みだした。

「遊戯さん……こんな形での再会になるとは思わなかったが、少しでも力になりたい」

殺し合いの開幕で、友を殺された武藤遊戯の事を思い浮かべる。
本田という青年のことは詳しく知らないが、それが遊戯にとっての深い絆で結ばれた仲間であることは分かった。

「貴方と十代さんのお陰で、オレはパラドックスから世界を救えたんだ。今度はオレが貴方の助けになる番だ」

少しだけ、待っていてくれと。心の中で付け加え、遊星は足を早めた。


334 : 危険なゲーム ◆wJPkWOa93Q :2022/06/26(日) 22:21:10 2nuv2hBM0

【不動遊星@遊戯王5D's】
[状態]:健康
[装備]:遊星のデュエルディスクとデッキ@遊戯王5D's
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:遊戯さんや居れば仲間達と合流する。
2:ヘルカイザーを休ませられる場所を探す。
3:ヘルカイザーのデッキを警戒する。
[備考]
※参戦時期は本編終了以降です。


【丸藤亮@遊戯王デュエルモンスターズGX】
[状態]:気絶、心臓がボロボロ(原因はカード)
[装備]:表裏混合サイバー流デッキ&デュエルディスク(危険な状態)@遊戯王デュエルモンスターズGX
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしないが、このデッキに最期まで付き合う。
1:状況によるが許されるのなら、武藤遊戯を見つけ出し、デュエルを申し込みたい(友を喪った直後故、無理強いは出来ないが)。
[備考]
※参戦時期はユベルに敗北以降、異世界からの帰還前です。
※殺し合いと様々な異世界の影響により、表裏混合サイバー流デッキは使用時に本編以上の凄まじい反動があります。


335 : ◆wJPkWOa93Q :2022/06/26(日) 22:22:30 2nuv2hBM0
投下終了です


336 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/26(日) 22:33:06 zenPY2R20
投下します

前もって申し上げますと、今回の話に登場するキャラクターの一人は『実在する人物を基にしたもの』ですので、
そう言った点で問題等ございましたら破棄をお願いいたします。


337 : イカロスは、空の果てに何を見たのか? ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/26(日) 22:33:41 zenPY2R20
ここはとある遊園地の中、そこでは可愛らしい顔を涙や鼻水でぐちゃぐちゃにしている少女がいた。

そして彼女の目の前には、園内に鳴り響く楽しげな音楽に合わせてパントマイムなどの曲芸を披露する道化師がいた。

(何でしゅかコレは……?ここは、どこなんでしゅかぁ……!?この人は一体、誰なんですかぁ……?)

その光景に対し、くるみは足りない頭をフル回転させて状況を理解しようとしていた。

実を言うとくるみはこの会場に飛ばされてからずっと、先ほどのスプラッターな光景に対するショックや自分が殺されるかもしれないという恐怖から泣き続けていたのだ。

そんな中その道化師が現れ、彼女が今までいた運動場がいきなり遊園地に変わったかと思うと、道化師が彼女の目の前で曲芸を始めたのだ。

その結果彼女は状況を理解できなくなり、ずっと混乱したままその光景を涙目になりながら見ていたのである。

「……少し、元気は出たかい?」

そうしてその道化師は一通りパントマイムを終えると、泣き続けている彼女に対してそう問いかけた。

「……え?えっともしかして……くるみを元気づけようとしてくれたんでしゅか……?」

それを受けて彼女は、目の前にいる道化師が自分を元気づけようとしていたことを知った。

「実を言うと、そうなんだ。キミが泣いているのを見かけて、君を笑顔にしたいと思って、こうしていたんだ」

彼女のその言葉に対し道化師は『君を笑顔にしたかったから』と、そう力強く答えたのだった。

「あの……ピエロさんはどうしてくるみをたしゅけてくれようと……笑わせようとしてくれたんでしゅか……?」

彼がそう言葉を返したことについて、くるみは疑問を抱いた。なぜ見ず知らずの自分を笑わせようとしてくれたのかが分からなかったからだ。
彼女自身『道化師』がどういう職業かは知っているし、どういう事をやっている人たちなのかも知っている。それでも彼女はこのような血なまぐさい場所で誰かを笑わせようとしているのかが理解できなかったのだ。

「……僕はね、みんなに笑顔でいてほしいんだ」
「だから、キミにも笑ってほしかった……理由はそれだけだよ」

彼女のその疑問について道化師は変わらぬ様子で再び答えた。『みんなに笑顔でいてほしいから』と、そう答えたのだ。

「あ……あああ……!ありがとうございましゅぅ〜!」
「あっ……気がゆるんだら…いろんなとこがゆるんじゃって…な、涙がとまりません〜!」

それと共に彼女は再び泣き出してしまった。しかしそれは恐怖の涙ではなく、喜びの涙、そばに誰かが付き添ってくれるという暖かい波だった。

それを見届けた道化師はデュエルディスクの側面から一枚のカードを取り出し、それによりさっきまで彼らの周りにあった遊園地は影も形もなくなり、後には静かな運動場が広がっていったのだった。

「じゃあ……この後、君は何をしたいのかな?僕はキミについていくよ」

そして道化師は彼女に対してこの後の予定を聞き、またそれについていくつもりであることを明かした。

「くるみ、泣き虫だけど、誰かを助けたいと思ってりゅのぉ……。こわいけど……ずびっ……うまくいかないかもしれないけどぉ……誰かを助けたいとおもうのぉ……!」
「それでも……いいでしゅか?」

それを受けて彼女は道化師に対し自分がしたいことは何かを、どもりながらも、途切れ途切れになりながらも答えていった。

「勿論だよ。僕はキミについていく、そう決めたのだからね」

彼女のその決意表明に対して道化師は笑うことなく、肯定をするのであった……。

しかし彼女は知らなかった。彼が抱えている秘密を。なぜここまで誰かを笑顔にしたいのかを。

(僕はあの時、地面にたたきつけられたことが原因で死んだはず……?なのになぜ、このような場所にいるんだろうか……?)

彼が一度死んだ存在であることを。そして……

(しかしどのような理由であれ、僕のやることは変わらない……!何があっても『道化師(ピエロ)』として、みんなを笑わせ続けるだけさ……!)

彼がどれだけの覚悟を持って『道化師(ピエロ)』でい続けているのかを……!


338 : イカロスは、空の果てに何を見たのか? ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/26(日) 22:34:08 zenPY2R20
【道化師(ピエロ)@道化師のソネット】
[状態]:健康、現在の状況に対する困惑(小)
[装備]:デュエルディスクとデッキ(アメイズメント)@遊戯王OCG
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いには乗らず、悲しんでいる人を笑顔にする。
1:みんなに笑っていてほしい。
2:僕はあの時、高綱渡りに失敗して死んだはずでは……?
3:ともかく、もう一度生を受けたのなら『道化師』として誰かを笑わせ続けたい。
[備考]
参戦時期は高綱渡りのクライマックスでバランスを崩して転落し、この世を去った後。


【大沼くるみ@アイドルマスター シンデレラガールズ】
[状態]:健康
[装備]:―
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:生きて帰りたい。
1:ひ…一人ぼっちでこわかったよぉ〜!ピエロしゃん、一緒にいてくれて、ありがとうございましゅぅ〜!
2:自分以外にも、呼ばれているアイドルがいないか心配。
[備考]


『支給品紹介』
【デュエルディスクとデッキ(アメイズメント)@遊戯王OCG】
道化師(ピエロ)に支給。『アメイズメント』カテゴリーのカードを中心にしたデッキ。
少なくともフィールド魔法《アメイズメント・プレシャスパーク》が入っていることは確定している。
(詳細なデッキ構成については後続の書き手に任せます)


339 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/26(日) 22:34:30 zenPY2R20
投下終了です

以上、ありがとうございました。


340 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/27(月) 08:21:39 BveRwbW20
投下します


341 : 命の灯火 ◆2dNHP51a3Y :2022/06/27(月) 08:21:58 BveRwbW20
たとえ此処が最果てでも

輝くほど消えゆくさだめでも

絶望さえも灰になるまで燃やし尽くせばいい


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ダメ……早く、逃げて……!」

「だからって、イリヤを置いて逃げられるわけ無いよ!」

幼き少女が、ボロ雑巾のごとく雪原の大地に伏している。
流れる血液が白の大地を、処刑終了後の断頭台が如く赤く染めようとしている。
少女の魔法少女じみたカラフルな衣装はその所々が破け血に染まっている酷い様相。

そんな襤褸襤褸の少女、イリヤと呼ばれた少女が逃がそうとしているまた別の少女。
白鳥司、恋バナが話せないことと、好きな子が女の子なこと意外、至って普通の少女。

この小さな少女、魔法少女イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは白鳥司を守るために戦い、未知なる相手の未知の力によって、こうして地に伏してしまっている。

「――無駄だ。」

二人に剣を向けるのは、まるで少女漫画から現れた様な美貌を持つ女騎士だった。
歴史の授業でよく聞いた救国の聖女を思わせる麗しき金髪と、その揺るがぬ信仰を表したかのような透き通った翠眼。
騎士、と言うよりは現状を察すれば処刑人のようで、冷徹な目を少女二人に向けている。

「逃げぬだけ、穢れた血でもまともということか。いや、ただの蛮勇か?」

つまらない、くだらない。と言わんばかりに司に向ける眼差し。
まるで汚れたものを見るかのような視線。茶番だと言わんばかりの呟き。
その瞳の奥底には、只管に積み重なった血の憎悪が詰まっている。
そう、日本という『魔』に対しての、只ならぬ憎悪の念。

「―――何なんだよあんた、人のことを穢れた血だとか化け物だとか!」

白鳥司は納得できなかった。自分が日本人と知るやいきなり襲いかかり殺そうとしてくる眼の前の女騎士が。逃げるだけなら、今直ぐにでも出来た。
だが、見ず知らずの自分の為に戦ってくれて、こんなボロボロになるまで頑張って、今でも自分に逃げるように言ってくれている小さな魔法少女を見捨てて逃げるなんで出来なかった。

「―――黙れ。貴様らが我らに何をしたか忘れたか。」

女騎士は白鳥司の話を聞こうとなどしない。

「私は覚えている、貴様ら日本人が我らに何をしたか。」

数十年に及び濃縮された血塗られし怨恨、迫害と差別の歴史。

「我らを化け物の仲間だと断じ、罪なき者から奪い去り、燃やし尽くし、殺し尽くした貴様らが。」

それが、関係のない当人ですらどうしたと、向ける憎悪の眼。

「貴様らのような悪魔が地上に蔓延る事などあってはならない。あの孔が開いてから、日本という国は穢れ変わり果てた。」

自分たちが受けた苦しみを、これ以上続かせないためにと。
魔界孔によって穢れた日本という大地を浄化するために。

「これは聖戦だ。貴様ら日本人という悪魔を浄化する、神に選ばれし我らに授けられた救済への試練だ。」

それを、当然の如く、女騎士は言い放つ。
信仰と狂信は紙一重。それが被差別の歴史から得たというのであれば尚更。

実のところ、この女騎士は、ホーリーフレイム総長ジャンヌはイリヤスフィールに手を掛けるつもりは当初はなかった。
その理由が単純、彼女が日本人を庇ったからだ。
穢れた日本人に情を持ったなどと、それは同じく魔に墜ちた証。
だから殺す、穢れたならば浄化せねばならない。


342 : 命の灯火 ◆2dNHP51a3Y :2022/06/27(月) 08:22:16 BveRwbW20
イリヤは勿論のこと抵抗した。実際の所ジャンヌとイリヤの戦いは実力的な部分では互角よりであったが、ジャンヌの所持していた支給品が勝敗を分けた。
ジャンヌの現状の武装にして支給品の一つ、騎士王アルトリア・ペンドラゴンが所持した聖剣エクスカリバー。そして、かつて白き魔法使いが娘を甦らせるために使用した賢者の石。
本来ならばこの賢者の石は使い方次第では死者をも甦らせることが出来る叡智の結晶。だが、この殺し合いの舞台において安易な死者蘇生など許されない、なので単純な魔力面による出力増加装置に収まっている。
が、それのみに特化出来るのであれば、『抵触しない程度に引き出せば良い』として、エクスカリバーの稼働に魔力リソース供給を専念。何より、ジャンヌは『聖剣』の扱いは慣れているのだから。

「……救済だとか、聖戦だとか、あんたに何があったのかなんて、私には分からないけれど。」

だからこそ、許せなかったり、気に入らなかった。
白鳥司から見たジャンヌの瞳は憎悪、軽蔑、忌避、怨嗟の感情が撹拌されかき混ぜられたようなもの。
他人の痛みを知らないで、他人に痛みを押し付ける。自分の痛みを他人に知らしめようとしているだけ、そうしか見えなかった。

「だからって、それで誰かを傷付けていいのかよ!?」

だから振り絞って言い放った。
白鳥司は知っている。些細な言葉が、誰かを傷付けてしまうことを。
勿論、あの女騎士の眼差しは、今の司にとって恐怖の眼光そのものだ。
足は震えるし、冷や汗は止まらない。それでも、言わずにはいられなかった。

「―――で?」

冷えた声色が雪原に響き渡る。
だからどうした、と呆れと、底しれぬ憎しみが籠もった、さも当然な如き声色で。
既に司の目の前から女騎士の姿は消失し、自分に向けて切りかかって。
それをふらつきながらも辛うじて立ち上がったイリヤが障壁で防ぐ。

『イリヤさん無茶です! さっきので魔力根こそぎ持ってかれたんですよ!』
「わかってる、でも……!」

イリヤの持つステッキ――マジカルルビーの声。
「さっきの」とは、司を庇い、エクスカリバーの光流を受けた時。
セイバーのクラスカードを夢幻召喚(インストール)、同じくエクスカリバーによって相殺しようとした。
が、贋作が真作に勝てる通りなど、本来ならばありえない。ここに例外は存在しない。
故に、賢者の石の魔力も籠もったジャンヌのエクスカリバーに飲み込まれ、この有様だ。
そんな、死に体の魔法少女に、救国の聖女と同じ名前を持った女騎士は告げる。

「戯言はそれで終わりか? 潔く死ね。穢れた日本人も、それに手を貸す裏切り者も。」

死ね。穢れた者たちよ。一切を聖焔で殲滅するまで止まらぬ青白き憎悪を纏って告げる。
対し、イリヤスフィールもまた叫ぶ。

「死なない! あの子を殺させない! だって、私には、まだ―――。」

やるべきことがあるから。
全てが新たな霊長種によって呑みこまれ、友も家族も元いた世界すら喪失した。
だが、それでもたった1つの希望があるから未だ立ち直れる。
それで全てが解決するならば、自分はどうなっても良い。
だが、だからこそ死ねない。今は未だ、死ぬわけに行かない。

「……貴様らの矜持も信念も知ったことではない。」

だが、障壁はあっという間に破られた。
憎悪に染まった裁きの剣が魔法少女に振り翳されようとしている。
魔法少女が殺され次第、じきに白鳥司も神の元へ逝くだろう。
これはありふれた結末、二人の少女の、不運な最後だろう。











最も、誰であろうと、世の中思い通りには行かないわけであるが。


「ガーディアン・エアトス!」


343 : 命の灯火 ◆2dNHP51a3Y :2022/06/27(月) 08:22:36 BveRwbW20

「えぇっ!?」
「なにっ!?」

ジャンヌの聖剣を、何者かが防いでいる。
鳥の被り物をした金髪の女が、聖剣を受け止めている。

「……天使?」

司は、突如現れたそれに、思わずそう呟いた。
金髪の女の背中にある翼、自分たちを助けに来たそれは、天使のようにも思えた。

『なんだかよくわからりませんが、チャンスです!』
「う、うん……フォイア!」
「……ッ!?」

すかさずイリヤがなけなしの魔力全てをつぎ込んで魔力弾を発射。
唐突の『天使』の姿をした第三者による介入に一瞬呆気にとられたジャンヌは反応が遅れ、すかさず剣で防ぐも、衝撃までは殺しきれずに雪積もる崖の上から落下。そのままイリヤ達からは姿が見えなくなった。

「……な、なんとか、なった……あうっ。」
『イリヤさん! ……仕方ないとはいえ無茶させてしまいました。』

イリヤはその直後に気絶。あのダメージにかつ魔力の消費を鑑みれば致し方ないことだろう。

「……ええと、私達、助かったんだよ、ね……?」
「……どうやら危ないところだったようだぜ。」

いつの間にか例の金髪の女性の姿はいなくなり、変わりに現れたのは個性的な髪型をした一人の青年。

『お尋ねしますが、先の女性は貴方のお仲間ですとか?』
「まあな。……これは、元々俺の持ち物じゃないんだがな。」

そう言って青年が見せたのは、「ガーディアン・エアトス」と書かれた一枚のカード。

『……つまりさっきのは、英霊召喚のようなものと?』
「英霊、と言うのはよくわからないが……彼女のこともある、積もる話は休める所ですることしよう。」
『わかりました。すみませんが司さん、イリヤさん背負ってくれると助かります。』
「あ、はい!」

一行は青年の言葉に従い、一先ず落ち着ける場所に向かうのであった。



【白鳥司@ななしのアステリズム】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品一式1〜3
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
1:イリヤさん、大丈夫かな……?
2:一旦はこの人(遊戯についていく)
[備考]
※参戦時期は第五巻から


【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/Kaleid Liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:気絶、重症、魔力枯渇(大)
[装備]:マジカルルビー@Fate/Kaleid Liner プリズマ☆イリヤ、クラスカード『セイバー』@Fate/Kaleid Liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。元の世界に帰ってやることがある
1:(気絶中)
[備考]
※参戦時期はドライ!!66話、6千年前に向かった直後



【武藤遊戯@遊戯王デュエルモンスターズ(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2、ガーディアン・エアトス@遊戯王OCG
[思考]
基本:ハ・デスを倒し、殺し合いを止める
1:彼女(イリヤ)の事もあるので、まずは落ち着ける場所に移動。
[備考]
※参戦時期は最低でもドーマ編終了後


344 : 命の灯火 ◆2dNHP51a3Y :2022/06/27(月) 08:22:50 BveRwbW20
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「――抜かったか。」

エクスカリバーの性能に驕ったか、その結果が今の自分だと、自嘲気味にジャンヌは呟く。
今の自分は雪原とは全く違う緑の大地にて仰向けに倒れている状態。

「……致し方あるまい。油断したこちらの責か。」

反省点は2つ、あの少女、イリヤとかいう魔法少女の、俗に言う火事場の馬鹿力のようなものを見誤っていたこと。そして謎の乱入者。
漁夫の利を狙う第三者ではなく、明確にあの二人を助けに来たであろう存在。
ジャンニ自身に殺し合いに対し積極的に乗るつもりはない。
が、汚れた日本人を殺すという前提になるならば話は全く別となる。

「次会ったなら、さっきのような油断をするつもりはない。」

学生連合の一つ、ホーリーフレイム総長ことジャンヌ。
魔界孔の発生以来、その元凶という冤罪を貼られ今迄虐げられ続けた外国人たちの集まり。
数十年にわたり積み重なった憎悪は消えることはない。
憎むもの全てを浄化し殺し尽くさなければ、その焔が消えることはないだろう。

【ジャンヌ@大番長 -Big Bang Age-】
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:エクスカリバー@Fate/Grand Order
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1、賢者の石@仮面ライダーウィザード
[思考]
基本:ハ・デスを名乗る悪魔を打ち取る
1:穢れた日本人は浄化する
2:同胞(自分たちと同じ外国人)は率先して保護の方針
3:先の金髪の女、何者だ……?
[備考]
※参戦時期は久那妓ルート、スカルサーペント壊滅後


345 : 命の灯火 ◆2dNHP51a3Y :2022/06/27(月) 08:23:17 BveRwbW20
『支給品紹介』
【カレイドステッキ(マジカルルビー)@Fate/Kaleid Liner プリズマ☆イリヤ】
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンに支給。
ゼルリッチによって創造された、2本1対となる愉快型魔術礼装「カレイドステッキ」の内の一本、の愉快な方。制限によりマスター登録及びゲスト登録した相手と10m以上離れられない。


【クラスカード「セイバー」@Fate/Kaleid Liner プリズマ☆イリヤ】
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンに支給。
キャスターのサーヴァントの姿が描かれたカード。限定展開をすることでセイバー"アルトリア"の宝具であるエクスカリバーを使用可能。一度使用すると、二時間経過するまで使用不可。


【ガーディアン・エアトス@遊戯王OCG】
効果モンスター
星8/風属性/天使族/攻2500/守2000
(1):自分の墓地にモンスターが存在しない場合、
このカードは手札から特殊召喚できる。
(2):このカードに装備された自分フィールドの装備魔法カード1枚を墓地へ送り、
相手の墓地のモンスターを3体まで対象として発動できる。
そのモンスターを除外する。
このカードの攻撃力はターン終了時まで、
この効果で除外したモンスターの数×500アップする。

武藤遊戯に支給。元はドーマ三幻士の一人ラフェールのエースモンスター。


【エクスカリバー@Fate/Grand Order】
ジャンヌに支給。騎士王アルトリア・ペンドラゴンが保有していた星の聖剣
「風王結界」及び「真名開放・約束された勝利の剣」は使用可能だが、その場合保有者の魔力を急激に使用する。


【賢者の石@仮面ライダーウィザード】
ジャンヌに支給。「世界の全てを飲み込む」といわれる程の膨大な魔力を秘めた特殊な魔宝石。
このロワにおいて生死を逆転させる力など、ロワを根本から覆す事象の発動に関しては不可能。
本来ならば膨大な魔力が必要なため維持自体も定期的に魔力を供給する必要があるが、無茶な引き出し方を行わない限りは自動で供給されるように主催側により施されている。


346 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/27(月) 08:23:28 BveRwbW20
投下終了します


347 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/27(月) 13:57:24 QVj0JJF60
投下します


348 : たとえ魔法がなくたって ◆QUsdteUiKY :2022/06/27(月) 13:59:04 QVj0JJF60
「……決闘とは銘打っているが、これではただの殺し合いだな」

 司波達也はルールブックに一通り目を通すと、この決闘について粗方把握してそう呟いた。
 決闘と言えば聞こえは良いが、その実態は殺し合いと何ら変わりない。それにルールなんて、あってないようなものだ。

 それらに加えて一枚のカードから生まれたと自称する魔王や彼が話していた無数の世界。更には決闘者という単語。
 色々と気になる点はあるが――。

「最優先事項は首輪の解除だな」

 自分の首に嵌められた金属をコツコツと小突く。
 この程度の衝撃で誤作動を起こさないことは予測済みだ。そうじゃなければ決闘の最中に爆発してしまう。
 材質はおそらく金属――だが断定するにはまだ早い。金属に見せ掛けた他の何かかもしれない。
 とりあえずこの首輪をなんとかしなければハ・デスに命を握られているも同然だ。
 被害者を極力出さずにここから脱出するにはハ・デスの打倒が前提条件となるだろうが、彼に挑むにはまずこの首輪をなんとかする必要がある。
 黒幕に挑みに行ったけど全員首輪爆破で死にました――では笑い話にもならない。

「そして俺に課せられたのは魔法の制限、か……。殺し合いを円滑に進めるためのバランス調整までするとは、悪趣味な割に凝ってるな」

 司波達也はバランスブレイカーにならないように彼本来の魔法が何も発動出来ない。
 CADのシルバー・ホーンも没収されており、必然的に肉弾戦が強いられるだろう。
 だがそんな彼には魔法使いに相応しいウィザードライバーという変身ベルトが支給されていた。

 つまり司波達也本来の魔法が封じられた代わりに、仮面ライダーウィザードとして戦うことが可能になったのだ。
 達也は肉弾戦にも優れており、仮面ライダーとしての素質は元から高い。更に魔法まで扱えるウィザードとは相性が抜群だ。

 しかし再成魔法まで失っているので、肉体の損傷には気を付ける必要がある。封じられてる以上、自己修復術式を前提とした動きはまず無理だろう。
 そしてなによりこの場で自分が真っ先に行うことは首輪の解除だと達也は考えている。
 もちろん殺人を率先して行う者を見逃す気はないが、無事に脱出するためには首輪の解除が必要。だがそんなことを成し遂げられる技術を有する者は僅かだろう。達也はその僅かのうちの一人であり、必然的に首輪の解析及び解除が最優先となる。

(問題はどうやってサンプル用の首輪を手に入れるかだが――それは後々、考えよう)

 首輪を解析したり安全に解除するには当然、サンプル用の首輪が必要となる。
 しかし首輪は参加者の首に嵌められたものだ。入手手段は限られている。
 サンプル入手のために誰かを犠牲にする気はないし、死体や殺人を行っている者を倒した際に回収することになるだろう。

 とりあえず今の達也に最も必要なものは情報だ。
 首輪を解除するためにも、ハ・デスやこの決闘の謎を探るためにも情報を集めておきたい。
 無数の世界――つまり並行世界が本当に存在するのなら、この決闘場には様々な能力や技術を持つ者がいるだろう。そういう情報もなるべく集めるべきだ。もしかしたら首輪解除に役立つ参加者がいるかもしれない。
 そして武藤遊戯という特徴的な髪型の少年――彼は間違いなくこの殺し合いの鍵を握っていると達也は確信している


【司波達也@魔法科高校の劣等生(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:ウィザードライバー&ドライバーオンウィザードリング&ウォーターウィザードリング&キックストライクウィザードリング@仮面ライダーウィザード、ディフェンドウィザードリング@仮面ライダーウィザード
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:まずは首輪を解除して、その後ハ・デスに挑む
1:今は出来る限り情報を集めたいな
2:武藤遊戯や様々な世界の参加者と接触するべきか……?
3:何らかの手段でサンプルの首輪を手に入れたい
[備考]
※ 元々使えた全ての魔法や技術が制限で封じられています。ただし仮面ライダーウィザードなどこの決闘で得た魔法や技術は使用可能です。体術は一切衰えていません


349 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/27(月) 13:59:18 QVj0JJF60
投下終了です


350 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/27(月) 18:41:47 BveRwbW20
投下します


351 : 荒療治 ◆2dNHP51a3Y :2022/06/27(月) 18:42:07 BveRwbW20
わたしは、何も出来なかった。


「おい貴様、こんな所で何をしている?」


あの子が一人で立ち向かったというのに、私は何も出来なかった。


「殺し合いに乗っている……訳ではなさそうだな。」


あの子を、結梨を、私は、守れなかった。


「が、いつまでも暗い表情のままでは此方も切り出しづらい。」


何してるんだろう、私。


「それに貴様の事情など俺は知らん。」


殺し合いだとか、優勝だとか、よくわからないけれど。


「……この際だ、我が眷属にさせてもらおう。」


こんな所で、立ち止まってちゃ、お姉さまに叱られちゃうの、わかってるのに。


何も、考えられない。


352 : 荒療治 ◆2dNHP51a3Y :2022/06/27(月) 18:42:21 BveRwbW20
○ ○ ○

「……なるほどな、大体の状況は理解できた。」

夜空に煌めく一人の男の姿。
薄紫の肌に黒のマイクロビキニというトンチキ変態な格好をしている彼の名は恐るべき吸血鬼マイクロビキニ。本名ミカエラ。
彼は今、憤りの感情を抑え冷静に目の前の、ついさっき眷属にした少女から情報を手に入れていた。

「俺と同じく巻き込まれた。そしてお前はここに来る前に妹と死に別れた。ということか。」

この下賤な殺し合いに関しての情報はあまり得られず、しかし自分と同じく巻き込まれた、ということは確か。
まず吸血鬼マイクロビキニことミカエラはこの殺し合いに対しては気に食わないのである。
何故ならそんな餌で魚を釣るような単純な言葉に騙されるはずもない上で、まず己の野望たる全人類マイクロビキニは自分の力で叶えてこそ意味がある。
故に、彼がこんなくだらない殺し合いに乗る事などまずあり得ないのだ。

「そういう事ですね。でも、結夢お姉さまやみんなまで巻き込まれていないか心配です……。」

で、さっき眷属にされたことで、黒いマイクロビキニ姿でミカエラと会話しているのがこの少女、一柳梨璃。
『ヒュージ』から人類を守る『リリィ』と呼ばれる少女の一人。らしいが、正直な話ミカエラがいる世界はトンチキなのが兎に角多い。なのでそんなアニメでよく見るような戦う女の子に対して特段珍しいとも思わなかった。と言うか対吸とか退治人とか普通に女性いるわけだし。
後、ミカエラが個人的に彼女の話に惹かれる事になった要因はもう一つ。梨璃から聞いた『一柳結梨』という少女のことだ。
それは、ミカエラが梨璃を眷属化させる前、初めて出会った時のあの暗い表情にも関連している。
恐らく彼女にとってその結梨は、娘やら妹やらとそういう存在だったのだろう。
人造リリィやらとかいう単語はミカエラは特に気にしなかったが、これでも三人兄弟の次男でもあるミカエラからすれば思うところもあっただろう。何であろうと、家族同然だった者を失ってしまったのなら尚更。

「まあそこは構わん。此方も知り合いがいるかどうか分からんからな。お前の言う結夢たちとやらがいるかどうかも不明だ。」
「でも、お姉さまたちなら、こんなの、乗らないはずですから。だから、立ち止まってなんていられないんです。」
「……。」

そんな梨璃の偽り無い言葉とは裏腹に、ミカエラの顔立ちは神妙である。
と言うよりも、精神的な不安定さを無理やり眷属化(というかマイクロビキニ化)で立ち直らせたようなものである。
吸血鬼マイクロビキニの眷属化は、当人に装着されているマイクロビキニの取り外す事で解除される。そもそもこの首輪の影響で眷属化を最大何人まで出来るかどうかもわからないわけだが。
実際、結梨の話をしていた時は目に見えて泣き出しそうだったし、そのフォローには苦労させられた。
今こそ眷属化の結果、自らへの従属という形で無理やり精神を安定させているが、もし仮にそれが解除されればどうなってしまうのか。



「だったら尚更立ち止まるよりは動くか、だな。」
「はいっ! お姉さまやみんなを探しましょう、ミカエラ様!」

一旦は安心か、と梨璃の笑顔を見てミカエラは安堵した。
どっちにしろ、傍から見たら女の子にマイクロビキニ着用を強制しているただの変態にしか見えないのだがこのポンチ吸血鬼。


【吸血鬼マイクロビキニ@吸血鬼すぐ死ぬ】
[状態]:健康、主催に対する怒り
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:殺し合いには乗らん! そんなものに頼らずともマイクロ波は世界中に浸透するであろう!
1:この娘(一柳梨璃)の知り合いを探す。あと愚兄や賢弟も。
2:せっかくなので眷属も作る。
[備考]
※マイクロビキニ催眠が可能な上限人数は最大2名までとなっております。

【一柳梨璃@アサルトリリィ】
[状態]:催眠状態(マイクロビキニの眷属)
[装備]:黒いマイクロビキニ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3、本来の衣服(百合ヶ丘女学院制服)
[思考]
基本:殺し合いを止める
1:今はミカエラ『様』と共に
2:結夢お姉さまたち一柳隊のみんなを探す
3:マイクロビキニは良いものです!
[備考]
※参戦時期はアニメ10話前半、髪飾りを失ったことに気づいた後。
※マイクロビキニの催眠により精神が強制的に安定させられています。


353 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/27(月) 18:42:32 BveRwbW20
投下終了しました


354 : ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/27(月) 21:13:05 .l9Ga6Zg0
投下します


355 : 弱者の願いなど踏み砕けばいい ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/27(月) 21:13:46 .l9Ga6Zg0
サラが死んだ……?


……嘘だ。


嘘だ、嘘だ、嘘だ。


嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だッ!!


サラが死んだなんて、そんなのは嘘だ!!


サラは死なないッ!!
絶対に死なせないッ!!
俺がサラを救うんだッッ!!


たとえ……どれだけの命を犠牲にしようとも……。


愛する女が死んだ。
いや、俺が殺してしまった。
俺の不注意で交通事故を起こし、サラに怪我を負わせた。

入院の末、怪我を治し退院したサラと俺は恋人同士になった。
だが、怪我は完治していなかった。
後遺症で倒れ、昏睡状態になったサラはそのまま息を引き取った。

(全ては俺のせいだ……。俺がサラを車で轢いてしまったばかりに……)

後悔しても遅いことは分かっている。
それでも自分を責めずにはいられなかった。

愛する彼女を失った彼の名は加納達也。
彼は大切な人を生き返らせるためにアナザー龍騎となり、多くの命を集めていた。
だが、サラはもうこの世にいなかった。
俺のやってきた事は全て無駄だった。

そんな失意の中で再び巡ってきたチャンス。
どんな願いも叶えるごとが出来るならサラを生き返らせる事が出来る!
そのためなら俺は何だってやってやる!
悪魔に魂を売ろうが、その身を地獄の業火で焼かれようが
サラを救えるなら俺は構わない。

「俺は、全ての参加者を殺して……サラを生き返らせるッ!!!!」


『龍騎』


達也はその手に握られたアナザー龍騎ウォッチを押すと
赤と銀色を基調とした。ドラゴンモチーフの異形の化け物の姿になった。
アナザー龍騎、それが彼が変身したアナザーライダーの名である。

アナザー龍騎となった達也は再び動き出す。
彼の目的はただ一つ、全ての参加者を殺害し、自分の愛する女性を蘇らせるために。


356 : 弱者の願いなど踏み砕けばいい ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/27(月) 21:14:13 .l9Ga6Zg0



行く当てもなく彷徨っていたアナザー龍騎は、幸運にも他の参加者とすぐさま遭遇した。
派手な洋装にシルバーのアクセサリー、丸いサングラスを付けた男だった。
直ちに殺害するべく、ドラグセイバーを模した青龍刀を構えて近づくアナザー龍騎。

「お?なんだ。俺とやる気かぁ?はぁぁ!!」

アナザー龍騎に気づいた男は余裕の態度を見せたまま口から青い衝撃波を撃ち放った。
一般市民だと思い込んでいたアナザー龍騎は予想せぬ攻撃を受け、怯む。

「貴様……人間じゃないのか!?」
「ははぁ!大当たりぃ〜♪フォォオオウ!!」

男はどこぞのハードゲイのような奇声を上げながら姿を変化させた。
彼はカプリコーンアンデッド。
スート・スペードのカテゴリーQに属するヤギの始祖たる上級アンデッドである。

「怪物だろうとなんだろうと関係無い!お前を殺す!」
「出来るかなぁ?俺はそこらのアンデッドとは違うぜ〜」
「うおおおおおおおおっ!!」

怒涛の雄叫びと共にアナザー龍騎が特攻し
カプリコーンアンデッドへ向けて青龍刀を振り回す。

「おっとぉ!あぶねぇ!」

軽快なステップで左右に移動しながらトリッキーな動きで斬撃を躱し。

「ほらほらほらぁ!!」

相手を痛めつける快感を楽しむ様に嗤いながら
アナザー龍騎の顔面を殴り続ける。

「うわあああ!!」

顔面への打撃に耐えながらカウンター気味に放った左手で
カプリコーンアンデッドの脇腹を殴り付け、そのまま密着状態で
左腕に装着された篭手から火球を撃ち放ちカプリコーンアンデッドを吹き飛ばす。

「ちっ、やってくれるじゃないの……さ!」
「がっ……」

火球を食らい、吹き飛びながらもカプリコーンアンデッドはブーメランを飛ばし。
アナザー龍騎の腹部へと突き刺さっていた。
刺さった箇所からは血が滴り落ち、苦痛でアナザー龍騎は片膝を付く。

「結構辛くなってきたんじゃな〜い?」
「まだだ!俺はこんな所で立ち止まる訳にはいかないんだ!」
「そろそろ終わりにしてやるよ。フォォォォォォォォォオオウ!!!!」

アナザー龍騎へトドメを刺すべく、カプリコーンアンデッドは駆け出した。
勝利を確信し、奇声を発しながら、目の前の敵を排除せんと迫る。


357 : 弱者の願いなど踏み砕けばいい ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/27(月) 21:14:43 .l9Ga6Zg0
『ADVENT』


どこからともなく、くぐもったような低い電子音声が響き渡った。

「ふぉ!?」

いつのまにか黒く巨大な龍が出現しており。
カプリコーンアンデッドの体を噛み付いた。

「は、離せぇぇぇぇぇ!!ぎゃぁぁぁぁぁ!!」

黒き龍はカプリコーンアンデッドを噛み付いたまま周囲にある建築物へと突っ込むと。
次々と壁や柱にカプリコーンアンデッドをぶつけながら破壊していき。
いくつかの建物を通り終わった後でようやく吐き出され、解放された。

「いっでぇええええ!!!!」
「フッフッフッ……」

カプリコーンアンデッドとアナザー龍騎の元へ一人のライダーが近づいてくる。
全身真っ黒なボディに赤い目をした龍をモチーフとしたライダーであった。
名前は仮面ライダーリュウガ、黒き龍ドラグブラッカーを呼び出しカプリコーンアンデッドへけし掛けた張本人である。

リュウガはアナザー龍騎の方を向くと、鋭い殺気を放つ。
それに気づいたアナザー龍騎も素早く臨戦態勢を取った。

「紛い物の龍騎か……消えるがいい」

先にカプリコーンアンデッドを狙ったのは助けたからではない。
己が手でアナザー龍騎を始末するのに邪魔だから排除したに過ぎない。

「消えるのは……お前だ!」

サラを救うには例外なく全ての参加者を殺害するのみ。
左腕の篭手に炎が灯り、赤い火球をリュウガに向けて撃ち放った。

『GUARD VENT』

火球が命中する直前に装備した漆黒の盾ドラグシールドによって攻撃は防がれた。

「どうした?貴様の力はその程度か?」
「うう……うわぁぁぁあぁああああっっ!!」

火球を次々と連発してリュウガに当て続けるも全てドラグシールドによって防がれていく。

「まだだ……まだぁ!!」

右腕に装備された青龍刀を使い、リュウガへ切り込む。

一振り目、右に躱される。
二振り目、左に躱される。
三振り目……に入る前に右腕を掴まれた。

「ぐっ……ぐぅ……!」
「所詮、紛い物……その程度か」

リュウガの力は万力のように強く、いくら引き離そうとしても動かない。
悲願を背負い、必死に戦うアナザー龍騎とは対照的に。
氷のような冷徹さで戦うリュウガは右足を持ち上げると。
掴んでいた腕を離して、アナザー龍騎への腹部を蹴り上げた。

「ぎぃっ!?がぁぁあああああああっっ!!!!」

そこはカプリコーンアンデッドのブーメランが突き刺さっていた箇所。
リュウガはその場所を蹴り、アナザー龍騎の内臓深くブーメランを押し込んだ。


358 : 弱者の願いなど踏み砕けばいい ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/27(月) 21:15:20 .l9Ga6Zg0
「てめぇ!!俺を無視してがふっ!?」

背後から奇襲を仕掛けたカプリコーンアンデッドに対応し、裏拳を顔面に叩き込むリュウガ。
顔を抑えながら倒れるカプリコーンアンデッドを見下ろしながらカードを挿入する。

『SWORD VENT』

「貴様に用は無い。邪魔だ」

ドラグセイバーを召喚し装備したリュウガはカプリコーンアンデッドの体に向かって振り下ろした。

「ふぉぉっ!?」

躱そうと左右へ動くも、リュウガに行動を先読みされ、次々と斬撃を受け続ける。
ライダーや怪人との戦闘経験を殆ど得ないまま殺し合いの場に呼ばれたアナザー龍騎とは違い。
熟練の慣れた動きで淡々と斬りかかるリュウガの行動には一切の無駄が無い。

「て、てめぇぇっ……ぐぁっ!」
「………………」

無言で斬り続けたリュウガのドラグセイバーは緑の血が付着する。
致命傷を躱しつつも全身に生傷が増え続け、ふらついた所を容赦無く大振りの斬撃で吹き飛ばし

『STRIKE VENT』

黒いドラグクロ―を装着し、放たれた青い火球がカプリコーンアンデッドの体を包む。

「うっぎゃあああああ!!!!」

青い炎に包まれ、燃やされながらもカプリコーンアンデッドは生き延びる為に
石化していく右腕を抑えながら、必死に逃走していった。

「ごぽっ、ごぽっ……サラァ……」

ブーメランが内臓を傷つけ、血を吐きながらも起き上がるアナザー龍騎。
愛する者を救う為なら、苦痛を意に介する暇なんてない。
サラを救うのは俺しかいない。
俺が戦わなければサラは生き返る事が出来ないんだ。

『FINAL VENT』

彼の愛する人への想いを蹂躙するべく、電子音声が無情に響き渡った。
ドラグブラッカーが出現し、リュウガの周囲を旋回。
リュウガの体がふわりと浮かび上がり、空中で静止する。

「ぐぅぅ!?」

ドラグブラッカーから放たれた炎がアナザー龍騎の体を包む。
炎が石化し、下半身が地面に完全に固定される。

「終わりだ」

炎を背に受け、加速したリュウガがアナザー龍騎目がけて蹴りを放つ。
リュウガのファイナルベント、ドラゴンライダーキックが
下半身が石化して身動き一つ取れないアナザー龍騎の肉体を突き破った。


359 : 弱者の願いなど踏み砕けばいい ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/27(月) 21:15:53 .l9Ga6Zg0
「ああああ……がぁ、ああぅ……」

固定化した下半身を残して、吹き飛んだ上半身が何度も転がり続けてようやく停止する。
ダメージの許容量を超えたアナザー龍騎は変身が解除され。
達也の手元からこぼれたアナザー龍騎ウォッチが転がり落ちる。

「もう一度……もう一度変身を……」

下半身が千切れ、上半身のみになった達也は匍匐前進で体を引きずりながら
アナザー龍騎ウォッチの元へと向かい、手を伸ばす。

グシャリ

達也の手が届く寸前で、リュウガの足がアナザー龍騎ウォッチを踏み砕いた。

「これで紛い物の存在は消えた」
「うぅ……サラ、サラぁぁ……」

達也の戦う唯一の手段であったアナザー龍騎ウォッチは破壊された。
目の前で望みが経たれ、達也の瞳は絶望の色に染まる。

「俺がサラに会わせてやる。あの世でサラと愛し合うがいい」
「うぐっ!?」

今度は達也の背中を踏みつけるリュウガ。
感触を楽しむかのようにゆっくりと力を加え、メキメキと音を建てる。

(嫌だ……俺はサラを救うんだ……ここで死ぬ訳にはいかないんだ……。
 俺が救わなきゃ……サラは俺のせいで死んだから、俺が助けない、と……)

「サラ……サラ!……サラァァァァアア!!!!」

ぶちゅっと肉が潰れる音を立てて達也は動かなくなった。
ミラーワールドなら死体が粒子となって消える。
がここでは粒子にならない。
建物に書かれてある文字も反転していない。
ここが現実世界であるという証拠である。

「フフフ……俺は鏡の中の幻じゃない!!俺は存在する。『城戸真司』として、最強のライダーとして!!」

城戸真司と同化したリュウガは意識を完全に乗っ取る事に成功した。
もはやこの肉体はリュウガの物となった。
城戸真司の意識は深層奥深くに眠りに付き、二度と目覚める事は無いだろう。

「この戦いに勝利して、生き残るのは……俺だ!!」

【加納達也@RIDER TIME 龍騎 死亡】

【リュウガ@RIDER TIME 龍騎】
[状態]:健康
[装備]:仮面ライダーリュウガのデッキ@RIDER TIME 龍騎
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜4
[思考・状況]基本方針:殺し合いで勝ち残る。
1:全ての参加者を殺害する。
2:城戸真司はもういない、この肉体は俺の物だ。
[備考]
※参戦時期はRIDER TIME 龍騎2話終了後からです。
※城戸真司の意識はリュウガの中で眠っています。


『支給品紹介』

【アナザー龍騎ウォッチ@RIDER TIME 龍騎】
アナザーライダーの一種、アナザーブレイドに変身するための懐中時計型アイテム。
起動して体内に埋め込むことで変身する。
強いダメージを受ければ体外に排出されることもある。

【リュウガのデッキ@RIDER TIME 龍騎】
神崎士郎が開発したカードデッキの一つ。
鏡面に翳す事で出現するバックルへデッキを装填し変身が完了する。
基本カラーは黒。龍騎とほぼ同じ姿をしているが、スーツの色は全体的に真っ黒く。
目の形は吊り上がり、ドラグクラウン(頭頂のライダークレスト)も
龍騎のものより禍々しい形状になっている。


360 : 弱者の願いなど踏み砕けばいい ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/27(月) 21:16:16 .l9Ga6Zg0


その頃、カプリコーンアンデッドは負傷した体を引きずりながら、愚痴をこぼし続けていた。

「何でなんだよあの黒い奴はよぉ……こっちの戦いにいきなり割り込んできてよぉ……ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ッッッッ!!!!!!」
「荒れているようだな」

奇声を発しながら周囲に落ちているゴミに八つ当たりを繰り返すカプリコーンアンデッドの元に一人の男が現れた。
黒いロングコートを纏った、厳つい風貌のサングラスの男だった。

「お前は……」
「これではバトルファイト所では無いだろう。俺と手を組まないか?」

彼もまたアンデッドであった。
名前はピーコックアンデッド。
スート・ダイヤのカテゴリーJに属する、クジャクの始祖にあたる上級アンデッドである。

「お前と手を組むだとぉ?」
「何も『仲間になれ』というのではない。邪魔者を片付けるまで一時休戦とするだけだ」
「ああ、いいぜぇ。乗ってやろうじゃねえかよ」

リュウガに手酷くやられたカプリコーンアンデッドとしても
リベンジを果たすために協力者が増えるのは都合が良く、断る理由が無い。

「見てろよぉ、次あったら絶対ぶっ殺してやるからよぉ〜」


【矢沢@仮面ライダー剣】
[状態]:ダメージ(大)、右肩から右手にかけて石化(一定時間後に効果解除)
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]基本方針:この戦いで優勝する。
1:ピーコックアンデッドと協力して優勝を目指す。
2:あの黒いライダー(リュウガ)は俺が必ず殺す。
[備考]
※参戦時期は本編登場前からです。

ピーコックアンデッド、井坂はバトルファイトにて多数の人間を洗脳し
最強のライダーを作り出し、戦いを己が思うままに進める算段であった。
だが、遥かに格下と侮っていたギャレンを相手にまさかの敗北。
封印され、バトルファイトから脱落することになった。

(この戦いでは前の様な不覚は取らない。俺はこの戦いで必ず勝利者になってみせる)

【井坂@仮面ライダー剣】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]基本方針:この戦いで優勝する
1:カプリコーンアンデッドという駒を有効に使い優勝を目指す。
2:今度はライダー達に不覚は取らない。
[備考]
※ギャレンによって封印された時期からの参戦です。


※アナザー龍騎ウォッチ@RIDER TIME 龍騎は破壊されました。


361 : ◆IOg1FjsOH2 :2022/06/27(月) 21:16:35 .l9Ga6Zg0
投下終了です


362 : ◆ytUSxp038U :2022/06/27(月) 21:30:55 nLMfyzjA0
投下します。


363 : Pleasure of Darkness ◆ytUSxp038U :2022/06/27(月) 21:32:25 nLMfyzjA0





信じれば残酷になり、否定すれば凶暴になるもの、なーんだ?








照らす月は煌びやかで、受ける風は澄んでいる。
街は沈黙を貫き、死者ですら寄り付かない程の静寂に包まれていた。
フェンスの外側に立ち、ブルース・ウェインはじっと見下ろしている。
己の故郷とは違う場所を。

ここはゴッサム・シティとは違う。
浮浪者をサンドバッグにして、ストレス解消の捌けにする悪ガキはいない。
帰る家を失った子ども達に麻薬を与え、売り上げをピンハネする売人もいない。
我が子へのプレゼントを買いにホビーショップへ走る父親の背に、ナイフを刺し金を奪うチンピラもいない。
街を牛耳らんとする悪党と、それに手を貸す腐り切った法の番人たちもいない。

神ですら見捨てるであろう腐敗と悪徳の街の気配は、微塵も存在しない。

とはいえ永遠にこのままでもない。
ここは清廉潔白を絵に描いたようなユートピアでは無いのだから。
今この瞬間にも、至る所で悪意が芽吹いている。
下手をすれば一日と経たずに、ゴッサムに負けず劣らずの地獄と化す可能性とて大袈裟ではないのだ。


364 : Pleasure of Darkness ◆ytUSxp038U :2022/06/27(月) 21:33:32 nLMfyzjA0
「ハ・デス……」

最大限の警戒と怒りを籠め、その名を呟く。
決闘(デュエル)という名目で人々を殺し合わせる悪の名を。
死者の国を支配する神と同じ名の男は、何が目的でこのような大それた真似をしでかしたのか。
いやそもそも、ハ・デスとは何者なのだろうか。
ニュース番組の常連となっている犯罪分析家なら、得意げに言うだろう。
誇大妄想に憑りつかれた異常者。頭のおかしいコスプレ野郎。
アーカムアサイラムから脱走した大馬鹿が、信捧する狂信者どもを従え殺人ゲームを開催した。
それが真実であると。

だがブルースにはそう単純な話とも思えないのだ。
ハ・デスの姿を目の当たりにした時、ブルースは久しく味わう事の無かった感情を抱いた。
恐怖。人間ならば誰しもが抱くであろう感情。
ブルースにとっては己が何故ハ・デスに恐怖を感じたのか、それがハッキリしない。
例えばゴッサムの一般市民が、今は亡きカーマイン・ファルコーネと対面した時、何故恐怖を抱くかは簡単に答えが出せる。
銃を持っているから、屈強な部下を従えているから、未だ逮捕に至っていない大悪党だから。
疑いようの無い脅威である。しかしそれらは理由の付けられる、現実に存在する恐怖。
ハ・デスにはそれが無い。正体も、目的も、人間なのかすらハッキリとしない。
分からない、分からないからこその恐怖があの男にはあった。

分からないのはまだある。
己の身体をゆっくりと見回しながら、ブルースは思考の海へ沈んでいく。
ウェイン家の御曹司に相応しい大層な金を掛けたスーツは無い。
黒。月明かりが無かったなら、夜の世界と同化してしまいそうな黒に包まれている。
ゴッサムの人間に、その姿を知らぬ者は存在しない。
『彼』を象徴するエンブレムが刻まれた装甲、夜風に靡くマント、何よりも特徴的なマスク。
誰もその正体がブルース・ウェインだとは夢にも思わないだろう。
ブルースが最も疑問視するのはそこだ。
ハ・デスはブルース・ウェインとしてではなく、もう一つの姿としての自分を参加者として拉致した。
つまり奴は知っているのか、マスクの下に隠れた素顔を。
ゴッサム・シティの悪人たちを恐怖に叩き込む、闇の騎士(ダークナイト)の正体を。


365 : Pleasure of Darkness ◆ytUSxp038U :2022/06/27(月) 21:34:58 nLMfyzjA0
「……」

得体の知れない敵、と言う点ではリドラー以上かもしれない。
しかしリドラーも永久に正体不明だった訳では無い。
ならば、ハ・デスも同様に正体を暴けばいいだけのこと。
その為に必要なのは情報だ。
ハ・デス本人を知る者が参加者にいるかはまだ分からないが、別の方向から攻められるカードならある。
イソノと呼ばれていた、ハ・デスの部下らしき日本人。
あの男に突っかかり殺されたホンダと、その友人らしきユウギ。
死んでしまったホンダはともかく、ユウギと接触しイソノに関する情報が集まれば、ハ・デスに近付く一歩となるかもしれない。
情報収集以外にも、友を無惨に殺された少年を捨て置けない理由もあるのだが。

アルフレッドの支援も受けられず、ゴードンのような協力者が得られるかも不明な状況。
小さく漏れたため息は風に混じって流される。
ふと、眼下の光景に一つの変化があるのに気付いた。
小さい影が、複数人に追いかけられている。
必死に逃げているだろう者が薄汚い路地裏に入ると、追跡者たちもこぞってビルとビルの陰に消えて行った。
ここが殺し合いの場でなくとも、見逃せはしない光景である。
腰から先端にフックの付いた銃を取り出す。
元々使っていた物ではない。スーツこそ着たままであったが、幾つかの装備は失われていた。
誰が使っていたのかは知らないが、高所からの移動やその他諸々に有用な支給品。
急ぎ目的地へ到着するべく引き金を引いた。





路地裏に降り立ったブルースは、少しばかり呆気に取られる羽目になった。
逃走していた者は少女、それもまだエレメンタリーに通っているだろう子どもだ。
それだけならまだ良い。
幼い少女まで巻き込まれたのは全く良くは無いが、想定していなかった訳では無い。
だが追いかけていた連中が、ボロキレを纏った死者の群れだと誰が予測出来るのか。
ひょっとすると自分は気付かぬうちに命を落とし、冥界で魂を弄ばれているのだろうか。
一瞬浮かんだ馬鹿げた考えから現実に引き戻したのは、怯える少女の姿。
月光すらも遮られる場にあっても浮かび上がる白い肌と、ほんのり色付いた赤い唇。
青い瞳を震わせ恐怖を訴える様は、紛れも無い現実のものに決まっている。


366 : Pleasure of Darkness ◆ytUSxp038U :2022/06/27(月) 21:35:49 nLMfyzjA0
少女とブルースの視線が交差した時、死者の一体が飛び掛かった。
骨だけになった指先で引き裂くべく腕を振るうも、右腕の装甲で防がれる。
キィと不快な音、左拳を剥き出しの髑髏へ叩き込むと石膏のように砕け散った。
人間を殴ったのとは明らかに違う感触。
仮装した小児性愛者でもなければ、遠隔操作した人形でも無い。
何にせよ、人間で無いなら手加減は無用。

次いで襲って来た死者の腕掴み、アスファルトへと叩きつける。
まだ動くそいつの頭部を踏みつけ粉砕。
仲間の死を嘆きもせずに襲い掛かる三体目。
胴体へと真っ直ぐに放たれる一撃、よろける無防備な体を押し倒し頭部目掛けて拳を振り下ろして終わり。

ブルースを見下ろす位置へ立った四体目が、奇妙なマスク諸共頭部を叩き割ろうと得物を振り下ろした。
今しがた永遠に動けなくした死者が纏うボロを引っ掴み、迫る凶器へとぶつける。
仲間の剣によって更に体を破壊された死者へ同情など抱かない。
立ち上がり放った蹴りは、反対の手に持つ盾に防がれた。
伸ばしたままの脚目掛け振るわれる剣、咄嗟に引っ込め空振った瞬間にもう一度蹴りつける。
今度は防御が間に合わず、蹴り飛ばされアスファルトを転がった。
しかしあっさりと立ち上がる。どうやら他の死者よりも幾分かタフらしい。
すかさず銃を撃ちワイヤーフックを発射。
胸骨に突き刺ささったかと思えば、ワイヤーが巻き取られブルースの元へ引き寄せられる。
剣も盾も使わせはしない、顔面を殴り飛ばされ再度叩きつけられた。
その際落とした剣を拾って突き刺した所で、ようやく動かなくなった。

振り返ると少女が口を結んでこちらを見上げている。
怯えさせないよう、敵では無いと伝えるようにゆっくりと近付く。
少女は背を向けはせずに、ただじっとブルースの姿を網膜へ焼き付けていた。

「あなたは誰?」

瑞々しい唇を割って出たのは、か細い声。
年頃の少女らしい好奇心と、子供らしかぬ落ち着きの混じり合った質問。
足を止め少女をじっと見つめる。
逃げないでと伝えているようにも見えるから目を逸らさず、ブルースもまた簡潔に答えを返す。
己のもう一つの名を。ゴッサムにとっての脅威にも、希望にもなり得る存在を。

「…バットマンだ」


367 : Pleasure of Darkness ◆ytUSxp038U :2022/06/27(月) 21:37:29 nLMfyzjA0



ママが死んだ。
チャーリーが殺した。

エリザベスが死んだ。
チャーリーが殺した。

私も殺されそうになって、キャサリンも殺されそうになった。
殺そうとしたのはチャーリーだった。

チャーリーが死んだ。
でもチャーリーなんていなかった。皆を殺したのはパパだった。

12歳の少女が体験するには、余りにも惨たらしい殺人事件。
しかし全てを引き起こした父が死に、エミリー・キャラウェイは父の教え子だった女性の元で新しい生活が始まる。
その筈だったが、彼女はハ・デスに決闘(デュエル)の参加者として選ばれてしまった。
神が実在するなら余程性根が腐り切っているのだろう。
ようやっと平穏な生活を取り戻した少女を、再び惨劇へ突き落としたのだから。

だが果たして本当にそうなのだろうか。
もしかすると、あの事件はエミリーにとっての始まりに過ぎないのではないか。

己を見下ろす二つの瞳。
そこに宿るものが何か、エミリーには分かる。
狂気だ。だが父が抱いていたモノとは明らかに違う。
父よりも遥かに荒々しく、それでいてどんなナイフよりも研ぎ澄まされ、気を抜けば呑まれそうな底知れなさ。
果ての見えない巨大な穴を前にしたような気分になり、ゾクリと肌が総毛立つ。
それが恐怖によるものか、それとも新たな「喜び」を見つけた歓喜によるものか。
ブルースにも、エミリー自身にも今はまだ判断が付かない。

リドラーがゴッサム・シティで引き起こした騒動が、ブルース・ウェインという男へ多大な影響を齎したのは間違いない。
あの事件でブルースは復讐鬼からヒーローへ生まれ変わる事が出来た。
同時に、バットマンという狂人の完成へより一層近付いた事を意味する。

人は仮面の裏に何かを隠して生きている。
ブルースも、そしてエミリーもだ。
建物同士の僅かな隙間から降り注ぐ月光が二人を照らす。
その足元、水溜まりに映ったエミリーの顔はブルースを見つめる人形のような無表情とは裏腹に、さも楽し気に笑っていた。


368 : Pleasure of Darkness ◆ytUSxp038U :2022/06/27(月) 21:38:34 nLMfyzjA0
【バットマン(ブルース・ウェイン)@THE BATMAN-ザ・バットマン-】
[状態]:健康
[装備]:バットスーツ@THE BATMAN-ザ・バットマン-、エイダのフックショット@バイオハザードシリーズ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを止める。
1:少女(エミリー)を保護する。
2:ユウギと呼ばれた少年に接触し、磯野の情報を得る。
3:ハ・デスは何者だ?
[備考]
※参戦時期は映画本編終了後。
※バットスーツはバットマンのコスチューム扱いで没収は免れました。
 グラップルガンや万能ベルト等の装備一式は没収されています。

【エミリー・キャラウェイ@ハイドアンドシーク 暗闇のかくれんぼ】
[状態]:健康、???
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本方針:?????
1:バットマンと話す…?
[備考]
参戦時期は映画本編終了後。(劇場公開版ED後)

【バットスーツ@THE BATMAN-ザ・バットマン-】
ブルース・ウェインがバットマンとして活動する際、身に纏うコスチューム。
胸部にエンブレムが施された装甲服、黒いマント、コウモリをモチーフにしたマスクのセット。
銃弾を弾き、至近距離からの爆風にも耐えるなど耐久性と動き易さを両立している。

【エイダのフックショット@バイオハザードシリーズ】
エイダ・ウォンが使用するワイヤーフックを発射する銃。
主に長距離や高低差のある場所への移動手段として用いられる他、標的の足にワイヤーを引っ掛け転倒させた事もある。
実写映画版では直接相手に刺して殺害する描写もあった。

『NPC紹介』
【ワイト@遊戯王OCG】
通常モンスター
星1/闇属性/アンデット族/攻 300/守 200
どこにでも出てくるガイコツのおばけ。
攻撃は弱いが集まると大変。

【アンデット・ウォーリアー@遊戯王OCG】
融合モンスター
星3/闇属性/アンデット族/攻1200/守 900
「ワイト」+「格闘戦士アルティメーター」
尚NPCなので別にアルティメーターと融合しなくても出現する。


369 : ◆ytUSxp038U :2022/06/27(月) 21:39:16 nLMfyzjA0
投下終了です。


370 : プランドロール・シップヤード ◆EPyDv9DKJs :2022/06/27(月) 22:04:42 nkLVqmYU0
投下します


371 : プランドロール・シップヤード ◆EPyDv9DKJs :2022/06/27(月) 22:06:14 nkLVqmYU0
「お前の世界ではアイツの言う通りでカードでしかないと?」

「ああ。そのはずだ。モンスターが実体化するという現象についても心当たりもあるが、
 あそこまで意志をもって此処まで行動を起こすカードは、俺も初めて見ることになる。」

「こうして集ってみると、本当に異世界とかそういうのなんだなって実感しますねー。」

 荒野のような港に停められた護送船のとある一室。
 質素な椅子と机だけの簡素な部屋の中に、三人の男女が集う。

「船が人になるとかっつー、そっちの所も大概だと思うぞ。」

「いやいや、世紀末みたいな日本も似たようなものですよ。」

 殺し合いの場ではあるがさほど重苦しい空気は感じられず、
 互いのことをある程度知る程度に打ち解けている状態にあった。
 一人はステレオタイプの海賊を彷彿とさせる、右腕が異形の腕の男性。
 一人は長いピンクの髪を揺らしている、セーラー服を着た妙齢の女性。
 一人は青ジャケットを羽織った、蟹のような独特な髪形をした青年。
 共通性があるとすれば、いずれも海に関わる要素があるというべきだろうか。
 まあ、一人は海に関して特別深い関わりがあるわけではないのだが。

 海賊の名は蛇王院空也。キュウシュウを統治していた連合組織『スカルサーペント』の番長。
 セーラー服の女性は明石。深海棲艦から制海権を奪還せんとする、戦船の魂を持つ工作艦の艦娘。
 蟹頭の彼は不動遊星。この中で最もハ・デス達を知る、シグナ―の痣を持つ男。
 この場にはその三人の男女が一堂に会していた。

 三者共に殺し合いには懐疑的な人物。
 最初は遊星と明石が邂逅して、目に映るこの船へ足を運べば蛇王院と出会い、
 彼のそのステレオタイプな恰好は二人を警戒させるに至るには十分だったが、
 話してみれば思いのほか気さくな人物であったことがり割と馴染めている。

「やはり、私達にとって現状主催に一番近いのは遊星さんですね。」

 話を互いの事を知ったことで、明石は結論を出す。
 この中で唯一あの主催陣営を知ってる存在が彼だ。
 ハ・デスと言うデュエルモンスターズのカードに加えて、
 KCのロゴが入ったデイバック。この会社についても遊星は知っている。
 ネオ童実野シティでも海馬コーポレーションの存在は忘れてはならない。
 永久機関モーメントを完成させ、街を発展させたのだから当然のことだ。
 同時に、彼の両親とも深い縁があるのだがその辺は割愛させていただく。

「海馬コーポレーションっつー会社は今のこれが実現できるのか?」

「いや、あの会社は軍事産業は控えていたことを考えると、
 恐らく磯野と海馬コーポレーションは利用されてるだけかもしれない。
 本田と言う彼も、そういうことをする人物とは思ってなかったようにも見える。
 それと技術だけで言えば、この状況はもしかしたらできる可能性はないとは言えない。」

「いや、どんな会社なんですか……」

 遊星はイリアステルの過去へ来る技術を考えれば、
 今も既にそういうのができあがってるのではないかと察せられる。
 当然、明石からすれば無茶苦茶すぎるにもほどがある会社の認識だ。
 ゲーム事業どころでは済まされないレベルに手を出してるのも中々にぶっ飛んでいる。
 一つの企業で、一人の若い社長の存在からそこまでできる会社など想像つかない。

「それでだ遊星。武藤遊戯を探す……この方針だが大丈夫なんだな?」

「ああ。遊戯さんは必ず俺達に協力してくれる人だ。」

「それを俺は信じるつもりだが、その前に聞いておくぞ。
 あいつは最初に仲間をやられていた。あれが俺の女、
 美汐やシャイラだったら俺だってキレる可能性は十分にある。
 まあ、俺ならその後ハ・デスの野郎をぶっ殺すことを選ぶだろうがな。」

 あの場で殺された本田と遊戯の関係は知らないが、
 あの様子から遊星におけるジャックやクロウに近しい間柄だ。
 殺し合いに乗る、と言うことは完全にないと判断できる程遊星は遊戯とは親しくはなかった。
 確かに一度パラドクスを十代と共に戦い通じ合ったと言えども、基本の交流関係とは別だ。
 彼が万が一殺し合いに乗るなんてことになって困るのは間違いない。

「完全にないと言い切れるほど、俺はあの人と彼の関係をよく知らない。
 だが、俺は信じる。共にパラドクスを打ち破ったようにこの戦いを終わらせる!」

 自分と遊戯の間にも絆があると思っている。
 であれば、それを信じずにどうするのだ。
 絆の力がチーム5d’sであり、絆の力で多くの事を乗り越えた。
 時空どころか世界を超えた絆で、ハ・デスを打ち倒す覚悟はある。
 真っすぐな瞳。蛇王院にとってはとても見覚えのある瞳だ。


372 : プランドロール・シップヤード ◆EPyDv9DKJs :2022/06/27(月) 22:08:27 nkLVqmYU0
「斬真狼牙みてえないい面じゃねえか。
 いいぜ、お前の言う絆を俺は信じてやるさ。」

「俺のわがままを聞いてくれてすまない。」

「代わりにと言っちゃなんだが、
 ハ・デスが持つ願望を実現させる能力。
 あれが手に入るなら、俺が貰ってもいいか?」

「え、まさかハ・デスの力を手に入れる気ですか!?」

「そうだが、信用はならねえかか?」

 驚嘆する明石に顔を近づける蛇王院。
 彼自身は別に威圧するつもりはなく、単に確認したいだけだ。
 強面ではあるが女性受けは良さそうな堀のある顔つきに、明石は視線を海へと逸らす。

「あー……えー、ちょっと不安になってしまって。すみません。」

 何でも願いが叶ってしまう。
 まかり通れば一体どうなるか想像もつかない。
 一個人の人間が持っていいものかとは思えなかった。
 或いは、持てるのかもわからない危険な力の可能性もある。

「ま、そういうもんだろな。信じるかは別だが、俺は悪用するつもりはねえさ。
 元々海賊なんてアウトローをやってた以上は、その辺は艦娘からは信用が薄いかもだがな。」

 別に蛇王院は悪用するつもりなどなかった。
 元々身寄りのない連中を保護したり引き取ったりと、
 特体生同士の戦いに疲れ切った他の学園の生徒の面倒を見てきている。
 日本の後のことは自分に勝った狼牙に任せた。どうせ目的を考えるなら、
 燃えるグランメサイヤに置いてきてしまった美汐やシャイラ、それにスカルサーペントの連中。
 彼らを引き連れて、異世界のそういう身寄りのない奴を引き取って新たなスカルサーペントを築く。
 なんてのも面白いかもしれないと思っているが故にその力はある意味ほしくもあった。

「んじゃ信用できねえって言うなら、その力が手に入ったらお前にやるよ。」

「え!? 私!? なんで!?」

 あっさりその権限を渡してくるとは思っておらず、
 明石は思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。

「俺が信用できねえって言うなら、
 俺が信用しているお前にやる方がいいだろ。
 そっちは深海棲艦とやらで海もゴタゴタだし、お前もいいよな?」

 日本は狼牙なら統一し、神威も倒してくれる。
 あいつなら成し遂げられる。似た者同士なのでよくわかる。

「ああ、俺が持つべきではないとも思っているから二人に任せたい。」

 嘗てのゼロリバースをなくしたい気持ちはあるが、
 それは今まで築いてきたチーム5d’sの絆を否定することになる。
 事故を引き起こした両親を持つのに、それで家族を失ったというのに。
 それでも受け入れてくれたジャックたちのおかげで乗り越えることはできたが、
 万が一にでもそれを願ってしまって事が起きてからでは手遅れになる。
 故に遊星は手に入れない。手に入れれば過ちを起こすのが分かっているから。
 二人が不要で野放しにもできない。となれば結果的に明石になるのは必然だ。

「わ、私の方でも無用の長物と言うか……と言うより、あるとはちょっと思えないので。」

 頬を掻きながら願いについて語る二人に申し訳なさそうに返す。
 深海棲艦を消し去ることができれば、それはどれ程いいだろうか。
 ただ彼女は工作艦。多くの戦場において守られながら事を起こす艦娘。
 だから彼女は旗艦として見てきた。隊はする艦娘や、時には轟沈もする厳しい世界を。
 やってることは戦いだ。誰が沈んだっておかしくはないと分かっている。
 沈んだ艦は戻ったことはない。故に、それを覆せるだけの力があるとは思えなかった。

「そうか……んじゃとりあえずそれがあったら明石に任せるって方針として。」

「あ、結局私なんですね。」

「信用できねえ奴に渡して納得すんならいいけどよ。」

「いえ、そんなにあっさり譲ってくれる人ですし、
 多分悪いことには使わないと思いますから、蛇王院さんが持っていいですよ。」

 自分達よりもずっと強いこの人なら優勝して願いを叶えられるだろうに、
 それをせず態々協力してこのバトル・ロワイアルを終わらせてくれるのと、
 どうにも土壇場で裏切る狡猾さと言うものが彼からは感じられなかった。
 馬鹿正直と言うかストレートと言うか、提督一直線の金剛を思い出させる。

「話が脱線したが、当面は遊戯を探すのが一番ってことにするが、
 俺は元の組織でも同じように保護やら何やらで傘下を広げるつもりだ。」

 することは変わらない。
 戦いから逃げたい奴、戦いたくない奴。
 スカルサーペントはそういう連中が集い一つの勢力となった。
 何も変わらない。自分がやるべきことは常に同じだ。
 ホーリーフレイムのジャンヌのようなイカれた野郎とは違う。
 日本人だから穢れた血を滅ぼすなんて排他的な考えをするアイツとは絶対に。

「分かってる。俺も人を集めるつもりだが……この場合三人行動は安全だが得策じゃない。」


373 : プランドロール・シップヤード ◆EPyDv9DKJs :2022/06/27(月) 22:10:20 nkLVqmYU0
 遊星はテーブルに地図を広げて現在地を示す。
 フィールドは広大だ。仮にこれが百人と多めでも、
 一つのエリアに参加者がいる確率は相当低いものになる。
 あくまで百人だ。実際は半分以下の可能性だって存在するのだから、
 出会う確率や人数は一、二時間では全然足りないだろう。

「本来は三手に別れて広範囲に行くのがベストだが、
 明石さんは余り戦闘は不向きではない工作艦では危険だ。」

「艦娘なので常人よりは強いのと頑丈ですが、
 一方で私の武器って艤装もないので残ってるの、これですから……」

 気が引けてることが分かるような言葉と共に出された猫の顔がついたマイク。
 一応ただのマイクではないのと明石にも十分扱えるものであることは確認したが、
 実戦でちゃんと使えるかどうかと言われてしまうと、少々難しいのは想像がつく。
 と言うより、マイクによる超音波とかいきなり扱える気がしない。

「となると二手に分かれるのがベストだ。蛇王院、悪いが明石さんを頼む。」

 この中で最も実力に優れているのは彼だ。
 工作艦である彼女は機械にも強く精通しており、
 メカニックである遊星よりも首輪の解除に重要かもしれない。
 彼に守ってもらうのがこの殺し合いを打破できる最大の要因になりうる。

「構わねえが、そっちは武器は大丈夫か?」

 彼の言っていたデュエルディスクはつけているようではあるが、
 デッキが置かれそうな場所にはほんのちょっぴりしかカードがなかった。
 カードがないということはそれだけ出せるカードの選択肢は減っていく。
 デュエルモンスターズに理解はないが、カードゲームのセオリーは理解している。
 7並べで言えば、カードが多い程できることが多い。盤面の理解もある方だ。

「カードはこれから拾っていく。」

「は?」

 蛇王院は変な声が出る。
 いやカードってそんなホイホイ拾えるものなのか。
 一瞬疑問に思ったところある違和感に気付く。

「明石、お前は知ってるのか?」

 彼女は特別驚いていなかった。
 恐らくそれの意味を知っており尋ねる。

「遊星さんの支給されたデッキ? が特殊でして。
 私、出会って早々NPCに襲われたんですよね。」

「セイクリッド・アクベスを召喚!」

 遊星がデッキ……と呼べるほどではない中から。
 カードを一枚引いてそれをデュエルディスクにセットする。

 彼の前に現れたのは、白銀の装甲を纏ったロボットのような戦士。
 左腕は盾を、右手には蟹のハサミのような武装をしたモンスターだ。

「これに。」

「お前、NPCを使役できるのか?」

「厳密には俺の支給品がこれになる。」

 彼の持つカードの大半は白紙であり、
 それでカード化できれば自分のモンスターとして使役できる。
 つまり遊星は此処で出会ったNPCの質によって強さが変わっていく。
 元々遊星はカードを拾ってデッキを組むぐらいにカードを無駄にしない主義だ。
 だからライディングデュエルでは装備魔法に多大なリスクがあるというのに、
 タイミングが極めて限られる罠カードのイクイップ・シュートとかも入ってた。
 集めたカードで戦うことには慣れているものの、この都合殆どデッキはモンスターカードだけになる。
 その上で性能もNPC次第のランダムだ。

(ジャックにも言われたが、これが今できる俺の全力だ。)

 『デュエルとは、モンスターだけでは勝てない』とはジャックの言葉だ。
 確かにその通りだが、自分のデッキを取り戻すまでの間は彼等が頼りになる。
 この戦いは単なるデュエルでは終わらない。長丁場の中でカードが確保できるのは大きい。

「だったら戦力はある程度整ってるか、整えられるみてえだな。」

「ひとまず九時間経過したら指定の場所に集合する。
 敵でない参加者を集めて、再度作戦会議と行こうじゃねえか。」

「了解です!」

「ああ。だが念の為三つポイントを作っておこう。
 ルールには禁止エリアと言うのがある。具体的には書いてないが、
 エリアに入ることができなくなったら集合できなくなる可能性もある。」

「やっぱブレインはいねえと、見落とすな……」

 蛇王院はスカルサーペントのボスではあるが、
 主に作戦に関しては提督こと美汐が請け負っていた。
 明石も遊星も、何方も十分に頭が回り気配りもできる。
 今の彼にとっては重要な存在でもあるのは間違いない。


 ◇ ◇ ◇


「それと遊星。これを使っていきな。」


374 : プランドロール・シップヤード ◆EPyDv9DKJs :2022/06/27(月) 22:11:01 nkLVqmYU0
 三人は船から地上へと降りると、
 蛇王院が開けた場所でデイバックからカードを取り出して翳す。
 光を放った後、そこには黒を基調とした小型の飛行船と思しきものが鎮座する。
 タイヤに当たる部分ははなく、どうやって動くのかについて外見だけでは判断がつかない。

「Dホイール、とは違うな。」

「走艇っつーらしい。名前は『ナイトサイファー』だそうだ。
 俺は特体生だし明石は艦娘だ。体力には常人よりもずっと多い。
 だがお前一人じゃ限度があるし、乗り物も乗りこなせるってのは分かった。
 俺が持つよりも有効活用してくれるだろうし、移動速度もかねてるし便利だろ?」

「……誰のかは分からないが、大切に使わせてもらう。」

 素直に受け取り、軽く練習がてらナイトサイファーを操縦する遊星。
 高速で動くなんてことはまず望めない安全運転ではあるものの、
 操作自体は蛇王院から説明を貰って多少はなれることはできた。
 元々レース用の走艇からすれば、あり得ないぐらいに遅いが。

「とりあえずは操縦できそうだ。助かる蛇王院。」

「なら問題はないな。これから俺達は……いや、どうせだから組織名でも考えるか。」

 スカルサーペントはあの日本での組織だ。
 どうせだから此処では特別な名前で行きたい。
 軽く思案した後、蛇王院は思いついたものを宣誓する。

「今から俺達は『プランドロール』としてこの殺し合いに叛逆する!
 ハ・デスの野郎! 待ってやがれ! てめえのようなイカれた野郎は必ずぶっ飛ばす!」

 高らかな宣誓は周囲によく響く。
 敵に聞かれても構わないという程に包み隠さない発言に、
 明石が少し戸惑いながら周囲を見てるが、彼は気にしない。

「プランドロール……どういう意味になるんだ?」

「Plund(奪う)とRole(任務)……でしょうか。
 ハ・デスに奪われた自由を奪う任務で『プランドロール』ってことですね。」
 
 敵に聞かれてないことが分かると、
 優勢の疑問に対し明石が冷静になって答える。
 彼としてはよく考えられた名前だと感心するも、

「ん? そうなのか? 響きがいいからロールってつけたんだが。」

 全く違ったことを知って思わずこけそうになる。
 この人は思ってるより感覚で動いてる人だと、
 そろそろ覚えるべきだと明石も感じ始めていた。

「じゃあな遊星。九時間後にまた会おうぜ。」

「ああ!」

 ナイトサイファーがゆっくりと動きながら、港から去っていく。
 しばらくその後姿を見送った後、二人も別の方向へ歩き出し行動を開始する。

「しっかし、いい女に出会っただけに残念だな。」

「え?」

 突然の一言に明石は戸惑う。
 艦娘は女性である以上そうみられることもあるが、
 いきなり言われるとは思ってもみなかった。

「流石に既婚者相手には手は出せねえさ。」

 蛇王院は女好きでもあるものの、
 そこは狼牙と同じで無暗に略奪するようなことはしない。
 何故そんなことを言うのか。明石の左手にはめられた指輪が輝いてるからだ。
 特別飾っているわけでも、宝石があるわけでもない。何処にでもあるようなシルバーリング。
 薬指にある以上、それが何を意味するかなど分かり切ったことではあった。

「え? あ、ああ! これですか! 結婚とは少し違うんですよ。
 ただまあ、私にとって大事な提督が待ってるのは変わりありませんが。」

 実際の所はちょっとだけ違う。
 艦娘の中でも特別な条件を満たさない限り得られない指輪。
 『ケッコンカッコカリ』と呼ばれるそれにより得た指輪を、彼女は貰っていた。
 戦艦でも空母でもない。戦場での戦力ではとても乏しい自分なんかにこれをくれた。
 とても貴重品であるそれを使ってくれたものであり、だからこそ帰りたいと思う。

「羨ましい限りだな。いい男に恵まれてるじゃねえか。」

「いやいや、恋仲とかそういうわけじゃ……どうなんでしょう?」

「いや俺に聞くな。」

 あくまで提督と艦娘だ。
 特別な感情はあるとしても、それは恋愛とは少々違うがする。
 もしかしたら、提督にとっては恋愛感情込みかもしれないが。
 普通に考えてみればそうかもしれない。戦力の向上を顧みずに、
 工作艦に指輪を送る提督など早々いないのだから。

(あれ、もしかしてあれってそういうことだった?)


375 : プランドロール・シップヤード ◆EPyDv9DKJs :2022/06/27(月) 22:13:43 nkLVqmYU0
 真意について少し察して頬が赤くなる。
 事実かは不明だし真意については一先ずしまうとして、
 戻ったらそのことを聞いてみようと思う明石だった。





 殺し合いの最中に結成された連合組織『プランドロール』。
 殺し合いと言うルールそのものを奪って、殺し合いを終わらせんとする。

【蛇王院空也@大番長 -Big Bang Age-】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本方針:普段どれだけキレても殺しはしないが、てめえも別だぜハ・デス。
1:うちの傘下や同じ考えの奴がいるならなるべく優先する。
2:九時間後に指定されたエリアの一つに向かい、再度作戦会議。
3:明石、いい女なんだが残念だな。

[備考]
※参戦時期は狼牙に敗北後。
※異形の腕はそのままです。そのためゲーム上の攻撃で使ってる砲撃も可能です。

【明石@艦隊これくしょん】
[状態]:ケッコンカッコカリによる強化(耐久や幸運以外意味なし)
[装備]:指輪@艦隊これくしょん、大地鳴動『ヘヴィプレッシャー』@アカメが斬る!
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本方針:ハ・デスを倒して生きて提督(元の世界の方)へ帰る。
1:蛇王院さんと行動する。
2:九時間ほど散策して、指定の場所に遊星さんと合流。
3:帝具、ちょっと調べたくなってしまいますねー。
4:首輪を解除できるだけの装備を整えないと。
[備考]
※改装後、ケッコンカッコカリ済み、所謂ジュウコンなし、轟沈経験ありの鎮守府の明石です。
 
※艤装はありませんが、水上スキーそのものは可能です。
※指輪は没収されていませんが、偽装がないため耐久以外ほぼ意味がありません。

【不動遊星@遊戯王5d’s】
[状態]:健康、ナイトサイファー操縦中
[装備]:ホカクカード×70枚@スーパーペーパーマリオ、何かしらのモンスターカード×5@遊戯王OCG、オベリスク・フォースのデュエルディスク@遊戯王ARC-V、ナイトサイファー@グランブルーファンタジー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜1
[思考・状況]基本方針:ハ・デスの野望を止める、俺達の手で。
1:蛇王院と協力する。第一放送終了後指定の場所(有事に備えて三か所のどれか)に集まる。
2:遊戯さんを探す。
3:デッキを作る。カードは今拾った。
4:海馬コーポレーション……どういうことだ?
5:5d’sのみんながいたら合流したい。
[備考]
※参戦時期はジャック戦(4戦目)終了後(原作で言う最終回)。
※何のモンスターをホカクカードによってカード化したかは後続にお任せしますが、
 モンスターカード、或いは罠モンスター等効果でモンスターカード扱いになれるカードのみが対象です。
※デッキの代わりにホカクカードが割り当てられています。



【ホカクカード×75@スーパーペーパーマリオ】
不動遊星に支給。作中ではコレクション兼特効アイテム。SPは通常よりも成功率が高い
一定確率で生物をカードにするアイテム。所持してるだけで対象に二倍のダメージを与える。
レベル差があるとより成功しやすくなるのがゲーム上での扱いだが、参加者は披露してるほどカード化されやすい。
カードにされた参加者やNPCについて死亡した扱いではなく、破いたり燃やせば元の状態へと戻る。
カード化の際は相手が視界に入ってる必要があり、成否問わず使用したら消耗するので無暗に使えない。
ぶっちゃければ参加者に使えるモンスターボール、ないしエニグマの紙。
また断片的ではあるが、カードにした参加者にヒストリーが書かれる。
本ロワではカード化すると、デュエルモンスターズのカードになる。
エクストラデッキのモンスターを想定した75枚セット。怪人にも使える。

【オベリスク・フォースのデュエルディスク】
不動遊星に支給。融合次元のオベリスク・フォースが持つデュエルディスク。
デッキの代わりにホカクカードが支給されている

【大地鳴動『ヘヴィプレッシャー』@アカメが斬る!】
明石に支給。ワイルドハントの一人、コスミナが所持していた帝具。
ネコの顔がついたマイクの帝具で、耳を塞がなければ骨が砕ける程の超音波を発生する。
ただし基本的には正面と極めて近い場合限定で、カロリーもかなり消費する帝具。
奥の手の『ナスティボイス』で無差別広範囲に超音波を放ち、範囲内にいる人間を行動不能にする。


376 : プランドロール・シップヤード ◆EPyDv9DKJs :2022/06/27(月) 22:14:41 nkLVqmYU0
【指輪@艦隊これくしょん】
明石に支給ではなくデフォルト装備。効力が低いので没収されなかった。
極めて練度の高い艦娘にのみ効力を発揮する、ケッコンカッコカリに用いる指輪。
使うと燃費やステータスが向上するが、艦娘の偽装がない為耐久や幸運以外ほぼ効果はない。
また、明石の性能ではそれらが上昇しても微々たるものなのでさして強みでもない。

【ナイトサイファー@グランブルーファンタジー】
蛇王院空也に支給。騎空艇と違いレース用の走艇と呼ばれるレースマシン。
グラン(またはジータ)がレースに参加する際にシェロカルテから譲ってもらったもの
ナイトサイファーは星の民の技術が使われてたりするちょっと特殊なもの。
走艇は空を飛ぶ能力はなく、飛ぶ場合は滑空に近い代わりにスピードがよく出る。
速度制限はかけられてるが、そもそも乗りこなせない遊星は速度を出さない。

NPC紹介

【セイクリッド・アクベス@遊戯王OCG】
星4 光属性 機械族 攻撃力800 守備力2000
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、
自分フィールド上の全ての「セイクリッド」と名のついた
モンスターの攻撃力は500ポイントアップする。
硬化の都合実際のステータスよりは強い。
因みにこのカードのモチーフは「蟹座」である。

施設紹介

【隠れ港+護送船@テイルズオブアライズ】
ダナの惑星、アウメドラが統治するミハグサール地方に存在する港と、
アルフェン達が逃走したアウメドラを追うために使ったマハバルが操船した護送船が置かれている。
護送船であるため戦うには向いておらず、また動かすことは現状ではできない。
マハバル曰く「からっぽで速い」とのことなので、大したものはない様子。
内装はゲーム上では見れないが、広いのでそれなりの部屋はありそう。


377 : プランドロール・シップヤード ◆EPyDv9DKJs :2022/06/27(月) 22:15:03 nkLVqmYU0
以上で投下終了です
デッキにあたる部分が別作品の支給品を経由しているので、
デュエルディスクとは別枠に扱ってますが1枠でいいなら採用された際にそういう扱いにします


378 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/27(月) 22:39:41 BveRwbW20
投下します


379 : 消せない傷と、蒼い夢の残響 ◆2dNHP51a3Y :2022/06/27(月) 22:39:55 BveRwbW20
満天の星空の下、散らす刃鳴りの音は如何ほどか。

決闘の舞台、或る場所にて、刃金と刃金を斬り結ぶは二人の剣士。

片や、フードを被り、その隙間より中性的な顔立ちを見せる女剣士――神道無念流、獅童真希。

片や、氷にして鋼鉄、その心は不動とばかりに相手の太刀筋を受け流す男――柳生新陰流、柳生但馬守宗矩。否、『一切両断』セイバー・エンピレオ。


「……ふむ、ここまでに食らいつこうとは。少しばかり甘く見ていたか。」

「お生憎、柳生新陰流の使い手が知り合いには居てね。僕はその子と直接手合わせしたことは無いけれど。」

「……ほう。異界の剣士、侮ったつもりは無いのだがな。」



事の始まりは半々刻前。獅童真希と柳生但馬守宗矩。両者は同じ場所、同じくこの場所に飛ばされ、出会った。

柳生宗矩……いや、英霊剣豪の骸の残骸は、生前最後の戦いの感触を忘れずにあった。新免武蔵との戦いを経て剣客としての業を自覚した。
もとより剣の道とは殺人の道。そこに特別な意味など無いと断じた人生。然してかの剣豪との邂逅はその業を目覚めさせるのに十分であった。
外道へ堕ちた果て、武蔵に敗れ、潔くその生に幕を下ろしたはずのその骸は、何の因果かこの歪んだ決闘の舞台に蘇り堕ちた。
然して既に魔縁に堕ちた身。悪鬼羅刹が宿業を持ちしこの骸、殺戮の魔宴に呼び込まれたのならば為すは2つ、宿業のままに屍山血河を築こうぞ、未だ見ぬ強者との立ち会いを臨もうぞ。

それに待ったを掛けたは獅童真希。と言いつつも、彼女は寸前まで迷いの縁にいた。地獄のような宴の舞台、悪魔から提示された甘美な誘惑。もしかすれば失った仲間を――燕結芽を取り戻せるかも知れないと
皮肉にも彼女の天秤の傾きを戻したのは悪鬼羅刹たるセイバー・エンピレオの存在。
元の世界にて彼女が追いかけていた大荒魂タギツヒメ。それに匹敵する禍津の瘴気を漂わせるそれを、獅童真希は放ってなどおけなかった。この男を放置しておけば不要な犠牲が出ることになる、と。

発端の前に多少の会話こそあったも意味はない。至高天に堕ちた剣士はもとより殺戮を是とする一介の剣鬼に成り果てている。だが、柳生宗矩には得物があれど当時の獅童真希には得物は無く。見かねた宗矩が己が支給品にあった一本の刀―――獅童真希の御刀である薄緑こと吼丸を投げ与えた。

強き者との死合いを望む剣鬼にとって、相手が手持ち無沙汰の剣士というのは目覚めが悪い。故に投げ与えたが、まさかその相手が元の持ち主というのは些か予想外ではあったようだ。
あと薄緑に付いていたねこストラップを剣鬼は完全にスルーした模様、閑話休題。


○ ○ ○

(神道無念流、はるか未来にこの様な使い手が生まれようとはな。)

真希の剣技を捌きながら、宗矩は冷静ながら真希の実力に心の内で感嘆する。

(だが、まだ若い―――)

獅童真希の一撃が迫る。刀を逆手に地面に刺す。残る空き手で剣を掴む。

「……!」
「ふんっ……!」

掴み、刺した刀を地面ごと切り上げる。真希に迫った斬撃は当たる直前に幽体離脱のような何かに阻まれる。そして後退。再び攻める。剣鬼は再び捌き、躱す。

(――原理はわからぬが、厄介だな。)

写シ――刀使の基本的な特殊能力の一つ。体をエネルギー体に作り変えて身体能力を強化すると共に、物理的ダメージを無効化するもの。柳生宗矩は刀使を知らず、当然として写シを知らない。

(……やはり、強い!)

獅童真希もまた、柳生宗矩の強さに焦りと関心を同時に抱いていた。剣聖、そして剣術無双。初陣にて武者七名を瞬時に切り捨てたという逸話は事実だと言わんばかりの、その圧倒的実力。

柳生新陰流には「水月」という概念が存在する。相手に場を取らせることを先行させ、自分は何もせずに相手が焦って場所を取ったと同時に自分の位置を計算し素早く決める。これによって、敵の有利は微妙に変化し、勝負の半分はそこで付く。

焦らず、然し確実に追い込まんが為に攻める。自分の場を安定させず、流動させる。決まった場は作らない。焦ればそこで相手の『場』が決まる。
相手はどうしようもなく格上。それこそ折神紫と同等か、それ以上の。故に一瞬の勝機を見いだせなければ――終わる。

「――む」

打ち合いの中、剣鬼の刀は折れた。元より鈍らの刀であったのか、偶然の産物であったのか定かではない。だが、これが獅童真希にとっての唯一の勝機。

「――やぁっ!!」

迅移――刀使の攻撃術の一つ。単純な説明をしてしまえば瞬間的な高速移動。一瞬の、格上の剣鬼が見せた唯一の隙間。唯一見いだせた勝機。確信と共にその速度のままに目の前の剣鬼に斬りかかる。




「――そうか。」





そして刃鳴りは散らされた、昏き紅月の元に。


380 : 消せない傷と、蒼い夢の残響 ◆2dNHP51a3Y :2022/06/27(月) 22:40:21 BveRwbW20
○ ○ ○

「―――あ、れ―――」

獅童真希は、その身に何が起こったのかわからなかった。

相手の刀は折れた、迅移を使った。二度目の写シは張っている――なの、に―――






「これで、終いだ。神道無念流の若き使い手よ。」






斬られていたのは、獅童真希の身体の方なのだ。写シごと、斬られていた。


柳生但馬守宗矩。至高天の名を関する英霊剣豪セイバー・エンピレオ。
その身に宿りし宿業は『一切両断』。何もかもを両断するその宿業による力は、獅童真希を写シ諸共切り裂いた。
獅童真希には柳生宗矩のこの一撃が見えなかった。あまりにも早すぎた。獅童真希は自分よりも上の段階の写シを使う刀使を知っている。だが今の柳生宗矩の剣戟は明らかに――早すぎた。
その余りにも早すぎる一撃に獅童真希は切り裂かれた。しかも折れた刀によって。

あの時、宗矩は自らの刀が折られたあの時に『水月』は完成していた。一瞬の勝機に見えたそれは、紛れもなく獅童真希にとっての『場』と同義。
故にその余りにも隙を晒したその姿こそ、『水月』である。ならば後は相手の動きを見抜いて斬ればいい。それだけの話。それだけの事、ただそれだけである。

「――中々に、愉しめたぞ。」








○ ○ ○

「――ふふっ」

思わず、笑みが浮かぶ。あっけない幕切れではあったが、やはり命と命のやり取りは愉しいものだと

「――さて、これからは如何様とするか」

柳生但馬守宗矩自身は殺し合いの賞品に何ら興味はない。家光公への忠義も、守るべき民衆も、江戸柳生もどうでもいい。剣鬼が望むはただ強者との死合いと、屍山血河を築き上げること

「……この剣は、もらっておくぞ」

死した骸の手に握られた薄緑を拾い上げ、振るい血飛沫を飛ばす。先に使っていた鈍らが折れてしまった以上、仕方のないこと

「では、征こうか」

剣鬼は征く。その身が通るは屍山血河を築かんがため。その心は強者との死合いを求めんがため。

【セイバー・エンピレオ(柳生但馬守宗矩)@Fate/Grand Order】
[状態]:健康、高揚
[装備]:薄緑@刀使ノ巫女
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:強者と死合う。屍山血河を築く
1:ハ・デスよ、決闘というのなら我が渇きを満たす相手を用意していることを期待しよう。
[備考]
※参戦時期は死亡後


381 : 消せない傷と、蒼い夢の残響 ◆2dNHP51a3Y :2022/06/27(月) 22:40:58 BveRwbW20
○ ○ ○


流れ出てゆく血が余りにも冷たく感じる。その手に薄緑はなく、剣鬼は既に立ち去った。

「僕、は……。」

余りにも情けなくて、涙が溢れ出る。贖罪のため、元より刺し違える覚悟でタギツヒメを追っていた。
だが結局の所自分が何をした? 何が出来た?
そして殺し合いに巻き込まれ、剣鬼に敗れ去り命を落とそうとしている。

「すまない……すまない、夜見、結芽、寿々花……。」

世界は広く、自分という存在は余りにもちっぽけで。

「僕は、何、も―――。」

結局、自分は何も、為せなかった。そんな後悔が、彼女の意識を永遠の黒へと埋め尽くす。

(もし、僕に、もっと、力が―――。)

だが、彼女が命を落とすことはなく、意識を失う最後に見たのは、或る一人の少女の姿で。





「探しものをしていたら、見つけたのは死に体の誰かさんなんて笑えないな。」


薄青色の髪を揺らし、傷だらけで今にも息絶えそうな獅童真希に対し応急の措置及び、なにかの薬を呑ませながら一人呟くのは、31A部隊所属の天才ハッカーこと和泉ユキ。
説明書には『グレート回復薬』なる、どこぞのハンティングゲームで出てきそうな色合いの薬品。それを呑ませたお陰か、外傷は兎も角呼吸は落ち着いたように見える。

「……誰かに出会えたのは僥倖、とは言いづらいか。」

和泉ユキが此処に来た理由の一つ、首輪解析の為の資材集め、あるいは首輪の入手手段の思案である。

「死体じゃなくてよかったよ。見ず知らずとは言え、二度目は流石に精神的にくる。」

此処に来る前、悲しい別れがあった。
オペレーション・プレアデス。その最中に現れた超巨大キャンサー。
その戦いで、31B部隊長である蒼井えりかが、自分たち31A部隊や31B部隊を守るために、己の限界を超えたデフレクタを使用した代償で戦死してしまった。
いつかあり得ることではある、キャンサーとの戦いで死者が出る事ぐらい。全員生還のハッピーエンドなんて夢の又夢、遥か彼方の奇跡のような話。でも、ただ不運と踊ってしまったなんて言葉で片付けられない。


――こんな、こんな結末で…作戦成功なんて言えるかよ!


あの時の茅森の、悔しそうな顔は覚えている。
確かにオペレーションは無事終了した、だが彼女にとって、犠牲が出てしまった時点で成功も何もなかったのだろう。ただ悔しかったのだろう、悲しかったのだろう。
はっきり言って、もし呼ばれたのが茅森だったら確実にキレている。かくいうユキ自身も怒りを抑えられていない。
だって、よりにもよって、彼女の葬式の直前に、和泉ユキはこの決闘の舞台に呼び寄せられたのだから。

だが、それはそれだ。この手の殺し合いにおいて参加者は首輪をつけられた犬の過ぎない。
最初に考えるのは、この首輪をどうにかするか。それをしなければ殺し合いの脱出も主催の打倒も叶わない。
首輪解析・分解に必要な道具の回収。余り好ましくない事だが、死体から首輪を回収するというのも念頭に置いていた。それで見つけたのが先の彼女である。

「……今は、彼女を安全な所へ運ぶか。」

気絶している真希を背負い、一通りの安全確認が済まし、和泉ユキは安全な場所、工具が存在するであろうデパートの類を目指し足を進める。
こんな所で足踏みしている暇なんて無い。あの状態で自分まで居なくなったら、茅森の悲しみのキャパシティがオーバーフローして間違いなく暴走する、悪い意味で。
だから、参謀ポジは参謀ポジらしく、やれることからやりはじめるのだ。


382 : 消せない傷と、蒼い夢の残響 ◆2dNHP51a3Y :2022/06/27(月) 22:41:27 BveRwbW20
【和泉ユキ@ヘブンズバーンレッド】
[状態]:健康、怒り
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2、グレート回復薬(4/5)@モンスターハンターシリーズ
[思考]
基本:さっさと殺し合いから脱出して、茅森の所へ戻る。
1:首輪の解析を最優先。
2:彼女(真希)の為にも安全な場所に移動。どうせなら解析用の工具等を探したいのでデパートの類を希望
3:……出来れば彼女(真希)がボケるタイプじゃないことを願いたい、切実に。
[備考]
※参戦時期は第二章、蒼井の葬式直前からの参戦です。


【獅童真希@刀使ノ巫女】
[状態]:気絶中、身体正面に大きな刀傷(大)、大量出血(既に止血済み)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考]
基本:僕、は――
1:(気絶中)
[備考]
※参戦時期は15話以降


『支給品紹介』
【薄緑@刀使ノ巫女】
獅童真希の御刀。真希自身は吼丸という名称で呼んでいる。
現在は柳生但馬守宗矩が所有。

【グレート回復薬@モンスターハンターシリーズ】
和泉ユキに支給。このロワの置いては飲ませた対象の体力の50%を回復させる。


383 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/27(月) 22:41:54 BveRwbW20
投下終了します
今作は辺獄で投下したものを追記・修正させてもらったものです


384 : ツン×デレ ◆s5tC4j7VZY :2022/06/28(火) 00:08:04 MiAhBFJM0
投下します。


385 : ツン×デレ ◆s5tC4j7VZY :2022/06/28(火) 00:09:08 MiAhBFJM0
愛することによって失うものは何もない。
しかし、愛することを怖がっていたら、何も得られない。
バーバラ・デ・アンジェリス

「フザっけるんじゃないわよ……ッ!」

キッと眉を上げ、この状況にイラつきを隠せない少女。
少女の名は中野二乃。
怒りは美容の肌に悪いと知りながらも怒りが抑えきれない。
それは自分が巻き込まれたの理由だけではない。

「ただでさえ、私をこんな悪趣味な催しに無理やり参加させたこと自体が許せないってのに、もしこれでフー君に他のみんなを巻き込んでいたら本当にだだじゃすまさないわよ!」

そう、愛する人。
愛する姉妹がこのふざけた決闘に巻き込まれているんじゃないかと危惧しているからだ。
中野二乃という少女はそういう子だ。

「ていうか、冥界の魔王を名乗るんなら空気ぐらい読みなさいよ」

人を拉致同然に連れてくるなら他のタイミングでだってよかったはず。
二乃は空気が読めないハ・デスに悪態つく。
無理もない事だ。
なぜなら、ニ乃にとって恋の決着を迎える寸前だったのだから。
5人で話し合った。
誰が選ばれても祝福すると。
だからこそ、結末をこの目で確かめ、受け入れなくてはならない。
二乃にとってデュエルキングの称号も願いを叶えられる権利も興味を惹かれない。
自分で勝ち取ってこそ意味が意味がある。
他人の力で叶える恋なんて必要ない。

「人を何でも思い通りにできると思ったら、大間違いだわ!」

恋する女は冥界の魔王に反逆の意思を見せつける。

【中野二乃 @五等分の花嫁(映画) 】
[状態]:健康 ハ・デスによる怒り(大)
[装備]:無し
[道具]: 基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本方針:生きて帰る
1:周囲を探索する
[備考]
※参戦時期は文化祭最終日放課後、教室で一人待っているとき

☆彡 ☆彡 ☆彡


386 : ツン×デレ ◆s5tC4j7VZY :2022/06/28(火) 00:09:27 MiAhBFJM0

一人の恋するツンデレ少女が反逆の意思を示す中、別の場所にも一人の少女が立ってた。

「何?何?一体これは、何の冗談!?」
少女の名は柊かがみ。

嵐を呼ぶ幼稚園児と同じ埼玉県に住み、私立陵桜学園に通う高校2年生。
友達との間では、ツッコミキャラとしての地位に留まっているごくごく普通の女子高生である。

「おい、まて。なんか悪意ある紹介しなかったか?」
……地の文にツッコむな

(何?こなたが遊んでそうな設定のデスゲーム……こちとら普通の女子高生よ)
かがみの脳裏に浮かぶのは、オタクの友人の顔。
夢だと思いたい。

だが――――

「夢……じゃないわよね……」
これが夢ではないことを理解する。
かがみは見世物として殺された自分と同年代らしき男子に顔を顰める

「いいわ……冥界の魔王かしらないけど、人間なめるんじゃないわよ!」

かくして二人目のツンデレ少女が冥界の魔王に反逆の意思を見せつける。

「つか二人目って、一人目がいるんかい」

どこまでもツッコむツンデレ少女であった。

【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:生きて帰る
1:周囲を探索する
[備考]
※参戦時期はアニメ12話〜13話の間


387 : ツン×デレ ◆s5tC4j7VZY :2022/06/28(火) 00:09:39 MiAhBFJM0
投下終了します。


388 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/28(火) 04:07:40 3mROIVD60
投下します


389 : ツクモノツキ ◆QUsdteUiKY :2022/06/28(火) 04:08:23 3mROIVD60
 ぼくにはどうしても取り戻したい人がいる。

 昔から仲良しの兄弟だったのに、いきなり家を出て行って。
 元々は兄ちゃんだったのに、いつの間にかお姉ちゃんになってて――。

 再会出来たのはほんとにただの偶然だった。
 お姉ちゃんがなんで女のかっこなんてしてるのか当時はわからなかったけど……姿が変わってもすぐにお姉ちゃんだってわかった。ぼくはお姉ちゃんの弟だから、そんなの当たり前。

 そしたら椎名とかいうやつにいきなり目の前でキスされて。兄ちゃんが――お姉ちゃんが女の子にされたって言われた。

『お姉ちゃんを助けたいなら、ここにおいで』

 そんなことを言って地図を渡してきたから、ぼくは迷わずに乗り込む。ぼくが兄ちゃんを助けたいという気持ちと――お姉ちゃんになった兄ちゃんのメスの顔が忘れられなくて。

 そしたらお姉ちゃんが目隠しされて、ちんちんやお尻丸出しで椅子に固定されてた。
 お姉ちゃんのそんな姿を見て、当時のぼくは嫌だと思った。今とは違ってそういう趣味がなかったから。
 そんなにも嫌だったのに……あそこが反応しちゃって……。

 結局、お姉ちゃんを解放するためにぼくとお姉ちゃんで銭湯の女湯に入ることになった。椎名がそういう条件を突き付けてきたから。

 あの時がぼくの初女装で――。
 女声を作るお姉ちゃんに「声作るの……キモいんだよ……」なんて当時は言っちゃったことを覚えてる。

 当たり前だけど女湯はみんな裸で、ちんちんが反応して……。

『どうしたの……?もしかして……勃っちゃった?』

 お姉ちゃんが嬉しそうにぼくのちんちんを眺めて。

『だめだよ、なーくんな今女の子なんだから……。お姉ちゃんが治してあげるね』

 そんなことを言いながらぼくのちんちんを握って。

「さあ――白いの出して女の子に戻ろうね」

 シュッシュって何度もちんちんを上下されて。
 お姉ちゃんの胸やちんちんがぼくに当たって。それだけで色々と意識しちゃって。
 ――ぼくは女湯で出しちゃった。

「ねえねえ、みて。すごいでたよ〜」

 お姉ちゃんは嬉しそうな顔で、お姉ちゃんの手についたぼくの白くてねっとりとした汁を見せてきた。
 ぼくは恥ずかしくなって――体を洗うと銭湯を出た。

「ごめんね……。お兄ちゃんどうかしてた。いやだよね、こんなお兄ちゃん……」

 ――違う。
 ぼくはそんなつもりじゃなかった。
 あの時のお姉ちゃんの悲しそうな表情は、今でもよく覚えてる。


390 : ツクモノツキ ◆QUsdteUiKY :2022/06/28(火) 04:08:52 3mROIVD60

 ぼくはいきなりエロくて可愛くて、いい匂いがするようになったお姉ちゃんに素直になれなかっただけで――。

「ぼく……兄ちゃんとセックスしたい」

 だから素直に本音を言った。――そんな顔をされたら、本音を言うしかなかった。

 そしたらお姉ちゃんとセックス出来ることになった。――ただしぼくが女装した状態で。

「セックスしてもいいけど、なーくんか女の子役だよ」

 女物のパンツから大きくなったちんちんを出して、お姉ちゃんは可愛らしく条件を言ってきた。
 そしてちんちんを顔の前に出されて……ぼくは生まれて初めて、ちんちんを舐めた。

 ちんちんなんて汚いのに不思議とおいしくて。おちんぽみるくを口に出されたけど、大好きなお姉ちゃんのちんちんだから嬉しかった。

「ねえ……おしりにちんちんいれるのってきもちいい……?」

 お姉ちゃんに膝枕されながら、質問する。
 元々は男のヒザなのにあまりゴツゴツしてなくて、柔らかい。ほんとに兄ちゃんはお姉ちゃんになったんだなって――。

「きもちいいよ」

 お姉ちゃんがぼくの質問にそう答えたから――ぼくはお姉ちゃんとセックスした。
 ちんちんを舐めるだけじゃなくて、ベッドの上に座ってるお姉ちゃんのちんちんに、ぼくのおしりを――。騎乗位。
 お姉ちゃんのちんちんがおしりに挿入って、お腹の苦しさと一緒に幸せも感じる。お腹の苦しさは……うんちが出そうなあの感覚に、少し似てた。

 お姉ちゃんのちんちんがめちゃくちゃ硬くなってるのが、伝わってくる。――お姉ちゃんの愛が伝わってくる。
 そしてドキドキして、ちんちんが恋しくなって――ぼくはお姉ちゃんにお願いした。

「あのさ……。またお風呂のときみたいに手で……ちんちん……」
「だーめ♡」

 お姉ちゃんは意地悪な顔で微笑むと――

「次はこっちを弄ってあげるね」

 お姉ちゃんはぼくの乳首をくりくりと弄り始めた。
 それがすごく気持ちよくて――乳首もすぐに勃っちゃって。

「女の子みたいな喘ぎ声でちゃってるね。乳首弄られて感じちゃってるんだ」

 ――お姉ちゃんはエッチな声でぼくに意地悪してくる。
 でもそれがまた気持ちよくて……。

「そろそろ下の方も……気持ちよくしてこっか」
「ひゃっ♡あっ♡」

 ちんちんでおしりを突かれて、勝手に女の子みたいな声が出てくる。
 特におちんちんの裏側が気持ちよくて、そこを突かれる度にキュンキュンきて――。

 ――ぼくとお姉ちゃんは同時にイった。
 ちんちん触ってないのにせーしを発射して……体が痙攣して動けない。

「メスの快感……味わっちゃったね」

 ――メスの快感。その言葉が今も離れない。
 この時からぼくの性癖はおかしくなった。


391 : ツクモノツキ ◆QUsdteUiKY :2022/06/28(火) 04:09:41 3mROIVD60
 ちんちんをシュッシュってするのも気持ちいいけど――おちんちんの裏側を突かれる方がもっと気持ちよかった。
 それがメスの快感……。普通の男だと……オスだと味わえない、気持ちいいこと。

 それから夕方になって――ぼくは帰る準備を始めた。

「兄ちゃん……家帰らないの?」
「うん……」

 ぼくはお姉ちゃんに家に帰ってほしかったけど……すぐに「うん」って答えられた。
 複雑な気持ち。……兄ちゃんはお姉ちゃんになってからエッチで可愛くなったし、メスの快感もわかった。それでもやっぱり離れ離れになりたくないから。

「あいつのせい?」

 あいつ――椎名のせいだと思って、ぼくはお姉ちゃんに質問した。あいつは色々と怪しい変なやつだったから。

「違うよ。あの人は……悪い人だけど……好きなんだ」

 そんなことを言われたら、連れ戻せる気がしなくて――ぼくはそのまま、お姉ちゃんと別れた。

 それでもお姉ちゃんと離れたくないから――それからぼくも女装を始めて。

「お姉ちゃん♪」

 ぼくが呼び掛けると、お姉ちゃんが振り向いてくれた。

「どぉ……?似合う?」
「うん。似合ってる、かわいい」

 ぼくの女装をお姉ちゃんは可愛いって褒めてくれた。
 それが嬉しくて――ぼくは素直にニッコリと笑う。

「じゃ……行こっか」
「うん♪」

 お姉ちゃんと仲良く手を繋ぐ。
 昔は仲良し兄弟で、今は仲良し姉妹。
 お互いに色々と変わったけど――そんなのどうでもいい。お姉ちゃんは可愛くてエッチで、ぼくの自慢のお姉ちゃんだから。

 ――それなのにハ・デスはこんなゲームにぼくを巻き込んで、またお姉ちゃんと離れ離れにした。
 ぼくはハ・デスを許さない。絶対に倒して、お姉ちゃんとまた仲良く遊ぶんだ。

 そのためにもぼくは力が欲しくて――そう願ってるとデイパックから不気味なペットが出てきた。

「君は力を求めているようだね」
「うわっ、喋った……!?」

 赤い目玉のそいつはいきなり日本語を喋ると無表情のまま言葉を続けた。

「魔法少女になればこの決闘でも戦う力が手に入るよ。しかも主催者の影響でソウルジェムに穢れは溜まらないし、魔女化の危険もないようだね。決闘を円滑に進めるための計らいかな。
 その代わり願いを叶えることは出来ないけど、戦う力が欲しいだけの君にはうってつけじゃないか」

 戦う力――たしかにハ・デスを倒すためにぼくはそれがほしい。でも一つ問題点があるはず。

「……でも、ぼくは男だよ?」
「本来は少女と契約することになってるけど――ここでは君のような少年でも契約出来るようだよ。そこら辺は僕自身にもよくわからないけどね。
 ちなみに変身した時の服装以外は体付きも何も変わらないから安心して契約してほしいな」

 この変な生き物――どう見ても怪しい気がする。ずっと無表情だし。


392 : ツクモノツキ ◆QUsdteUiKY :2022/06/28(火) 04:10:22 3mROIVD60
 でもお姉ちゃんとまた会うためなら魔法少女になるしかない。……もしかしたら可愛い服で、お姉ちゃんがまた褒めてくれるかもしれないし。

「わかった。魔法少女に……なるよ……」
「契約成立だね。支給品として配布された僕はこの契約を成立させた時点で消滅する仕組みになってるけど――名残、君の健闘を祈るよ」

 ――そして変なやつが消えると、ぼくは魔法少女に変身する力を手に入れた。

 試しに変身すると、剣が出てきた。
 衣装は――初めてお姉ちゃんとセックスした時のゴスロリ服に似てる。

 ぶんっ――。
 勢い良く剣を振ると、なんだか今までより強くなれた気がする。
 そして調子に乗って何度も遊んでると――

「あの……パンツ、見えてるよ」

 変な服の男の人に注意された。つい恥ずかしくなって剣の舞をやめると、サッとスカートを抑える。

「俺は天空寺タケル。えっと……パンツが膨らんでたけど、君は男の子なのかな」
「ぼくは月見名残。魔法少女に変身して女装してるけど、一応男だよ」

 ……男なのかな?
 ぼくはまだオスなのかな?結構メスに近付いてる気がする。
 でもいきなりそんなこと言ってもタケルさんは驚くよね?

 とりあえず魔法少女の変身を解除する。

「どぉ……?」

 ――女装外出に慣れてないわけじゃない。
 でも魔法少女の変身を解除した姿も女装なんてタケルさんは引くかな?
 不安でちょっと緊張する……。

「うん。何も言われなきゃ男の子って気付かないし似合ってると思うよ、名残くん」

 タケルさんはぼくの趣味を何も引かずに受け入れてくれると、色々と話した。
 お姉ちゃんのことについても「もしかしたらこの決闘に巻き込まれてるかもしれないし。俺も名残くんのお姉ちゃんを探すの手伝うよ!」って協力してくれることになった。

 ちなみに魔法少女の時は魔法の力で月牙天衝みたいな必殺技が使えるらしい。必殺技だから使い所が大事だろうけど……。

「よし。じゃあ頑張って名残くんのお姉ちゃんを探しながら、ハ・デスを倒そう!」
「うん。がんばろーね、タケルさん!」

 ――ぼくとタケルさんは熱い握手を交わした


【月見名残@女装男子のつくりかたシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:タケルさんと一緒にハ・デスを倒す
1:お姉ちゃんが巻き込まれてたらお姉ちゃんを探す
2:魔法少女の力、使いこなせるかな……?
[備考]
※参戦時期は女装男子のおとうと終了後
※キュゥべえと契約して魔法少女になりました。決闘を円滑に進めるため、ソウルジェムの穢れや魔女化などのデメリットはありません。魔法少女としての武器は剣です。月牙天衝のような魔力の斬撃を飛ばす必殺技が使えます

【天空寺タケル@仮面ライダーゴースト】
[状態]:健康
[装備]:ゴーストドライバー&オレゴースト眼魂@仮面ライダーゴースト
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:名残くんと一緒にハ・デスを倒す
1:名残くんを守る
2:名残くんのお姉ちゃんを探す
3:マコト兄ちゃんやアランや他の仮面ライダー達も居るなら、みんなで協力してハ・デスを倒す!
[備考]
※参戦時期は少なくとも仮面ライダー平成ジェネレーションズ FINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー以降。参戦時期の関係で多数の仮面ライダーと面識があります

『支給品紹介』

【キュゥべえ@魔法少女まどか☆マギカ】
月見名残に支給。決闘ロワ用に様々な細工を施されており、契約終了後は消滅する。
つまり主催側が非力な参加者でも決闘を行うための力を与えるために用意された便利アイテムのようなもの。決闘に重きを置いている関係で魔法少女としての各種デメリットが消されているが、願いを叶える機能も失っている


393 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/28(火) 04:10:35 3mROIVD60
投下終了です


394 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/28(火) 04:18:44 3mROIVD60
>>392
タケルが自分の意志でムゲンゴーストアイコンを出せることをど忘れしていたのでタケルの状態表を修正します

【天空寺タケル@仮面ライダーゴースト】
[状態]:健康
[装備]:ゴーストドライバー&オレゴースト眼魂@仮面ライダーゴースト
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:名残くんと一緒にハ・デスを倒す
1:名残くんを守る
2:名残くんのお姉ちゃんを探す
3:マコト兄ちゃんやアランや他の仮面ライダー達も居るなら、みんなで協力してハ・デスを倒す!
[備考]
※参戦時期は少なくとも仮面ライダー平成ジェネレーションズ FINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー以降。参戦時期の関係で多数の仮面ライダーと面識があります
※ムゲンゴーストアイコンを自分の意思で出すことは制限により不可能です。他の参加者に個別に支給されているか、何らかの条件によって出すことが可能になるかもしれません


395 : 醒めない夢 ◆s5tC4j7VZY :2022/06/28(火) 05:49:29 MiAhBFJM0
投下します。


396 : 醒めない夢 ◆s5tC4j7VZY :2022/06/28(火) 05:49:43 MiAhBFJM0
言葉ーーーーー人が声に出して言ったり文字に書いて表したりする、意味のある表現。言うこと。
goo国語辞書より引用。

「『理性は羅針であり欲望は嵐である』というけど、正に悪魔の手によってここは嵐の中のコップというわけだ」

ハ・デスによる決闘という名の殺し合いが行われる大陸。
一人の女性はしたり顔で現状を分析した。

女性の名は件。
しかし、それは本名ではない。
さらに付け加えるなら、姿も違う。

リグレットが創造した”理想世界リドゥ”での”理想の姿”
ドールPにして、音楽集団オブリガードの一人。

「しかし、強制的に殺し合わせる首輪をつけるとは、まったくおそれいったよ『2%の人が兵役を拒めば戦争は続けられない』というからね」
件は己の首輪を撫でりながら感心する。

そう、つまり、ここでの殺し合いを拒むということは首輪爆破による死が待ち受けているということだ。

「はぁ……『恐怖は惨酷の両親である』というけど、まったくもってありがたくない親だよ」
件も己の願いを叶える為に、ブラフマンに手を貸してはいるとはいえ、この催しには眉を顰めるしかない。

しかし、件の心に、渦巻く言葉が楔として突き刺さっている。

「詳しいルールは決闘者諸君に配布済みの『説明書』に記載されている。最後の一人まで生き残った者をデュエルキングとし、富と名誉を与える。更に一つだけどんな願いでも叶えることが可能となる」

そう、件を縛る楔とは磯野が発した優勝賞品についての説明。

”どんな願いでも叶える”

件にとってそれは喉から手がでる”ワード”

「『守るではなく、奪いにいく。この差は大きい』……私は奪うよ。その優勝賞品を」

故に、件は”奪う”ことを選択した。

【件@Caligula2】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:自分の願いを叶える(優勝狙いと対主催狙い現在は半々)
1:ハ・デスに自分の願いを叶えさせる(そのためなら、優勝でなくても構わない)
2:早速、行動を開始しようじゃないか『素晴らしい計画は不要だ。計画は5%行動は95%だ』というからね。
[備考]
※参戦時期は帰宅部と一度戦った直後


397 : 醒めない夢 ◆s5tC4j7VZY :2022/06/28(火) 05:49:55 MiAhBFJM0
投下終了します。


398 : ◆0EF5jS/gKA :2022/06/28(火) 21:00:06 1nkjiUxk0
投下をします。


399 : 裏切られても生きていくしかない ◆0EF5jS/gKA :2022/06/28(火) 21:00:49 1nkjiUxk0
「何なんだよ…!俺の何がだめだったんだよ…」

吸血鬼少年のゆう太は裏切られたのだ、困っていたから助けてあげた勝っちゃんは
左肩に生えていた化け物の触手で友達を一人残らず殺してしまったのだ。
友情を結んだはずの相手こと勝っちゃんがなぜか食料でしかない
家畜以下なクソ人間への吸血をやめるよう訴え、あまつさえ友達を殺した。

吸血鬼ウイルスに感染した際に変な異常がでて変異し
絶望の果てに自ら命を絶ったかつての弟のように思えた少年が殺してしまった。

「ひでえよ…ひでえよ…!母ちゃんだってどうなってんのかわかんねェ…!」

もうゆう太はわけがわからなかった。
母ちゃんに言われたとおり困っている者に手を差し伸べて優しくしたのに仇で返してきた。
さっきまでおしゃべりしたり血の楽園がいかにして作られたのを教えたりして
互いに楽しくしていたのに。ゆう太は泣きじゃくり心は悲しみでいっぱいだった。

そして吸血鬼がしあわせに暮らす血の楽園は
我らが豹丸と隻腕の悪魔こと宮本明の対決で半壊し、
とどめに国連軍の数え切れないほどのミサイルで町の面影すら残らず完全に破壊された。
大好きな母ちゃんは生きているのかもわからない。

血の楽園が崩壊した直後にゆう太は
決闘会場という名のバトルロワイヤルワールドへ召喚された。

「うわあああん!ぐっす…ひっぐ…」



やっぱり無理なんだ、私のような弱くて無力な鬼が安全に生きるなんて
どこにいようが弱肉強食の摂理はかわらない。

全てを諦めなにもかもに絶望した鬼の少女が会場をただ歩きさまよっていた。
名は誰にも知られていない。少女も自分の名を思い出せず
鬼のほとんどは人だったころの記憶を保てない。

この少女は累という鬼が率いる偽りの家族の一人だった。
だが彼女は累の意味不明家族ごっこに疑問を感じずにはいられなかった。
ただ鬼狩りが怖くて仲間が欲しいかっただけだ。
嫌気がさし新参の妹を連れて逃げようとした。
だができなかった。その妹は裏切り累へ密告していたのだ。
本当の妹のように思えたほど大切な存在に、
裏切りられた少女は日光に晒され灰となった。

しかし今は何事もなかったように生きている。
鬼が陽のきらめきを浴びて生きれるわけがない。
あのハ・デスという鬼や磯野という者によって復活したのだろう。

「どうせもう私は…」

だが生きていても意味など無い
どうせまた自分より強い者に蹂躙されあるいは欺かれ地獄を見るだけだ。
ましに思えるようなことなんてなにも…

「え?」

幼い子どもの泣き声が聞こえたのはそのときであった。



泣いていた子どもは当初は肌の色を見て人間だと思ったがどうやら違うようだ。


400 : 裏切られても生きていくしかない ◆0EF5jS/gKA :2022/06/28(火) 21:01:21 1nkjiUxk0
確かに肌の色は人間と同じだが、するどい牙が生えていた。

彼はいったいどうして泣きじゃくっているのだろう。

「ねえ、何かあったの?」

殺し合いの始まり早々に泣いていたのだ。
その理由は殺し合いに召喚される前にあるよう思えた。
まだ始まったばかりなのに泣きじゃくるような惨劇が起きたとは思いにくい。
殺し合いに巻き困られたこと自体に恐怖したのなら別だろうが。

「ハァ ハァ ハァ えぐっ…ひっぐ…あんたは誰なんだよ…?」

泣いている少年から名を聞かれたが自信の名は思い出せない。

「…ごめんね、私に名前はあるかもしれないけど思い出せないの。」

「…?なんで思い出せないんだ?認知症ってやつか?」

「そんなことよりどうしてこんなに泣いていたの?」

「どうしてってひどいんだよ!勝っちゃんは俺を裏切るし!
血の楽園も壊されて母ちゃんだって死んじゃったかもしれねェんだ!」

「ら、楽園…?そんなところがあるの?」

この子も同じ鬼に裏切られ嘆きながら地獄を見せられたのだろう。
…私と同じなのかも。

それにしても楽園とはいったい?あのお方や累は
家族や同族に対しても優しさを見せるようなことは全くなく、
むしろ目的のための道具や不要となったら切り捨てるくらいの価値しかない。

そんな二人が楽園を作るなんてとても考えられない。
もし作っても累やあのお方だけに都合が良いような楽園だろう。

「そうだよ!みんな毎日楽しくてこれ以上無いくらい幸せだったさ!
でもたった一夜で全部おじゃんさ!こんなのってねえだろ!うああああん!!」

「そのごめんね、あなたの言う楽園がわからないのよ?よかったら教えてくれない?」

少女は少年の頭を優しく撫で、赤子を落ち着かせる母のように温かく接した。
少年は多少落ち着き、少し冷静になったことで説明できるくらいの余裕が戻ったようだ。

「ぐすっ…ああいいよ。」

少年ことゆう太は再び楽園の詳細を知らぬ者に解説するのだった。



少年から聞いたこと全てが少女にはあまりに衝撃的だった。
血の楽園を築き上げた豹丸様、
日本国そのものをひっくり返した吸血鬼ウイルス、
そのウイルスをばらまいた雅様というあのお方とはまた別の鬼の頂点、


401 : 裏切られても生きていくしかない ◆0EF5jS/gKA :2022/06/28(火) 21:01:42 1nkjiUxk0

正直に言って全てが信じがたいことだ。鬼とは同族への優しさが殆ど無く
平和な楽園をつくるなんてありえない。
しかもその楽園は努力次第で出世できる階級社会だという、まるで人間たちのようだ、
自分のような化け物が食料の人間どもと同じで平穏で楽しく生活しているという。
この少年にも母親がいて何不自由なくともに生きていたそうだ、今は生死不明らしいが。


そして日本を滅ぼした吸血鬼ウイルス、
えっくすでえなる日に雅という吸血鬼が大感染を引き起こした。
この話を聞いたとき少年と少女はまた別の異形だという確信が持てた。
鬼はあのお方だけにしか作られない。例外もあるようだがいわゆる一次感染だけだ。
しかしウイルスは二次感染が可能であり化け物から人へ、
その人からまた別の人へとどんどん感染していくという。
鬼と吸血鬼という異形が厳密に言えば別の種族だろう。

少年は人から吸血鬼になったことには最初は混乱し、
感染して見た目は異形と化して自殺した弟のこともあり
一時は戸惑っていたが今は新人類になれたとして光栄に思い受け入れているという。

少年は楽園でずっと幸せに生きていけると思っていたが
信じていたものは音すらも立てず、一瞬でくずれた。

血の楽園創設者と豹丸とまるで鬼狩りの
柱みたいに強い人間の宮本明による激戦で町は滅び、豹丸は殺された上に、
こくれんぐんなる組織の連続爆撃で全て廃墟となって
完膚なきまでに壊されたという、最愛の母ちゃんも死んだかもしれないようだ。

鬼殺隊以外にも鬼を刈り尽くさんとする猛者がいることに驚いたが
町が破壊されたことに対し少女は深い悲しみを感じた。

累の家族ごっこに付き合うような馬鹿な者たちではなく
本当の家族が愛し合って暮らす町が消えたのだ。

弱くても強くても化け物は勝てず哀れな生涯を送るしかないと思えてしまった。
本当の平穏なんてどこにもないのかも。

「あと質問とは関係ない事なんだけど…聞いて欲しいことあるんだ」

「もしかして最初に言ってたかっちゃんに裏切られたってこと?」

「そうさカンがいいんだな、あと名前言うの遅くなっちまったなゆう太だ、よろしくな。」

「こちらこそよろしくね。」





「あんたに話して愚痴も言えてちょっと落ち着いてきたよ、ありがとう。」

「別に、私は聞いただけでそんな大したことはしてないわよ」

根本的な心の傷はまだまだ癒えていないが
少年は悲しいことをじっくり聞いてもらいさらに落ち着いたようだ。

やはりゆう太も裏切られており、困って警察から逃げている勝っちゃんを匿い
自宅の部屋につれて仲良しな友達になり、一緒に人間の血を他の友達を連れて吸血しに行ったら
吸血した様に深く動揺し、激情した勝っちゃんは友達を化け物触手で殺したという。
恩を仇で返されトラウマになるほど悔しくそして悲しんだ。
母のいった通り優しくしただけだというのに、何がいけなかったのだ。

ゆう太はやっぱり私と一緒だ、実の兄弟のように大切に思えたが


402 : 裏切られても生きていくしかない ◆0EF5jS/gKA :2022/06/28(火) 21:02:48 1nkjiUxk0
裏切られ惨めな思いをした同じ仲間。少女はゆう太に仲間意識すらも感じていた。

「あんただってなんか浮かないつらしてるよな、そういうあんたもなにかあったんだろ?」

「そんな聞いて得するような話じゃないから聞かない方が良いわ」

「そんなこと言うなよこっちだけ聞いてもらうだけじゃもうしわけねえってば」

「ほんとに良いの?」

「良いってば!じらすなよ!」



少女は裏切られ、家族ごっこのまとめ役だった累に処刑された話を全て話した。

「まじかよその話…?累ってやつリーダーのようなのにひたすらクソじゃないか、
同じリーダーでも豹丸様とはひどい違いだな!!」

「ひどいのはほんとに同意よ、累の言うことを聞かなかったり刃向かったりしたら知能を取られたり、最悪私みたいに殺されるのよ。」

「そんなの家族ごっこどころかたんなるDVの遊びじゃん!性格悪すぎないか!」

「うんうん(リーダーとかでぃぶいってなんなんだろう?)」

話の中ででできた知らぬ言葉にちょっと困惑したが
ゆう太は同情し話しを最後まで聞いてくれた。
裏切ってしまった妹とは違い義理堅くてとても優しく立派な子に見える。
このゆう太は本当の兄弟、兄か弟のようにだって心から思えた。

「なあなあ俺とお前の二人でさ、裏切られコンビ結成しね?」

「結成って?(こんび…?)」

「だから一緒になって勝ちのこってさあ願い叶えようぜ!
血の楽園を蘇らせてそこであんた住めばいいじゃん!
母ちゃんにはバレないようにするしバレてもなんとか説得してみるからさ!」

「いやでも…優勝できるのって一人だけなんじゃないの?」

「そーなんだよなあ…とにかく問題なのはそこなんだよ、
優勝するにしてもすくなくとも俺かお前死ななきゃいけないんだ、
死ぬのなんて誰だって嫌だよ。」

「じゃあ、私が死んでみよっかな、平和に暮らしたいみんなが救われるなら嬉しいし。」

「えっ!いや何言ってんだよ!暗いよ!」

少女がはかなげにつぶやいた言葉にゆう太は驚いた。
いきなり自己犠牲を暗喩する発言や
自分を犠牲にしてでも他者のために楽園を生き返らせようとする優しさにもだ。

「んなこと言わないでなんとかして吸血鬼みんなで
生き残る方法を見つけようぜ!在るかも知れないだろ活路は!」

とても明るく前向きな子だと思う死人を蘇生させるは・ですと磯野といい
もう何が起きても不思議ではないのに、臆せず未来をつかみ取ろうとしている。

そんなゆう太を少女は心底まぶしく思えた。


こうして裏切られた鬼と吸血鬼は再び進み出したのであった。
また困難に何度も何度も打ちのめされるかもしれない。


403 : 裏切られても生きていくしかない ◆0EF5jS/gKA :2022/06/28(火) 21:04:04 1nkjiUxk0
ただどんなことに遭っても歩みつづけるはずだ。

かくも残酷な世界で二人はどんな未来を見るのだろうか。


【姉蜘蛛の姉@鬼滅の刃(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝時の願いで血の楽園を復活させる。
1:とりあえずゆう太と行動する。
2:人間は殺す。
3;他の鬼や吸血鬼はどうすべきかしら…できれば仲間に引き込みたいけど…
4:鬼狩りやあのお方とか累には要注意。
[備考]
※参戦時期は死亡後です。

【ゆう太@彼岸島 48日後…】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝で血の楽園を復活させるんだ!
1:この子(姉蜘蛛の姉)と一緒にがんばってやるぜ!
2:人間は血を吸ってから殺す。
3:他の吸血鬼がいたら合流したい。
4:宮本明や勝っちゃんには気をつける。
[備考]
※参戦時期は血の楽園が国連軍の爆撃で崩壊した後です。欠損した片腕は殺し合いに呼ばれた際に主催によって再生しました。


404 : ◆0EF5jS/gKA :2022/06/28(火) 21:04:22 1nkjiUxk0
投下は以上です。


405 : ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/28(火) 22:21:04 SOyM2BoA0
投下します。
コンペロワに投下した作品に大幅な加筆を行った作品になります。


406 : 日米スピードスター、幻想ブン屋が突撃インタビュー! ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/28(火) 22:21:55 SOyM2BoA0
そこかしこで血生臭い殺し合いの前哨戦が巻き起こりつつある『決闘』会場。
そこに一陣……いや、『二陣』の旋風が巻き起こっていた。

他の参加者やNPCの目には止まらぬ程の速さで会場各地を駆け巡る、二つの赤と黄色の旋風。
ビデオカメラで撮影してスロー再生しても、ぼんやりとした赤い影にしか見えないだろう……
それほどに凄まじいスピードだ。

北へ南へ、東へ西へ。
会場内を一通り一周し終えて……二つの赤い旋風はとある草原で動きを止めた。

そこには、2人の人物が立っていた。
一人は黄色い大きなボタンが着いた赤い服を着て、先端が地面につく程に長い黄色いマフラーを首に巻いた、十代後半程の短い栗色の髪を持つ日本人少年……
もう一人は胸元に稲妻のシンボルが着いた赤いジャンプスーツを着用し、顔を口元が露出するタイプのマスクで覆い隠した白人男性だ。

『………』

二人の赤い男は静かに視線を交わす。

「……同着、かな?」
「……そうみたいだね」

二人の赤い男はどちらともなく、笑いだした。
一対一の真剣勝負を終え、相手の力量を確認した戦士がするような笑みだ。

「しかし凄いなぁ、君は。『地上最速の男』である僕と同じ速さで走れる男が、日本にいるなんて……本当に驚きだよ」
「いやぁ〜そんな……」

マスクの男性に誉められ、少年は照れ臭そうに頭を掻いた。

「僕は加速装置内蔵式のサイボーグだから……改造されてない生身の体で、あれだけのスピードで走れる君の方が凄いよ」
「そうかい?ハハハ!」

謙遜するような少年の言葉に、今度はマスクの男性が照れ臭そうに笑いだした。

「……そう言えば、まだちゃんと名乗ってなかったね」

マスクの男性はおもむろに自身の顔を隠していたマスクを外した。
マスクの下から出てきたのは、20代半ば程の金色の髪の白人青年の顔だった。

「僕の名前は、バリー・アレン。仲間からは『フラッシュ』って呼ばれているよ」

自己紹介をしながら、マスクの男性……バリーは右手を差し出した。

「……僕の名前は島村ジョー。仲間からは『009』って呼ばれているよ」

少年……ジョーも自己紹介して差し出された手を握り返し、二人のスピードスターは固く握手を交わしたのだった。

「……『009』?ジェームズ・ボンドみたいだね」
「……『フラッシュ(閃光)』なんて呼び名も安直だと思うけどね」
『ハハハハハハ!!』

既に二人は軽口が叩き合える程仲良くなっていた。
その姿は、さながら長年に渡る親友のようだった。

パシャッ!パシャッ!

『?』

突然、カメラのシャッター音のような音が聞こえ、ジョーとバリーは音のした方に顔を向ける。

見れば、ジョーとバリーから少し離れた位置から一人の若い女性が握手を交わすジョーとバリーの姿をデジタルカメラで撮影していたのだ。

「えっと……」
「……何をしてるんですか?」
「……あやややや、バレてしまいましたか」

ジョーとバリーに存在を気づかれた若い女性は、まるでイタズラのバレた子供のようなしまりの悪い笑みを浮かべる。

歳の頃は10代後半〜20代前半程。
『鴉の濡れ羽色』という例えがぴったり合う艶のある黒髪をセミロングで切り揃え、
白い半袖シャツとフリルの付いた黒いスカートを着用して、
頭には山伏が被るような帽子を被っており、
下駄の歯のような物が底についている赤い靴を履いている……
大きな黄色いボタン付きの赤い服と黄色いマフラーを身につけたジョーや、
真紅のジャンプスーツ姿のバリーに勝るとも劣らない珍妙な服装を着た女性だった。

「あ、どうぞどうぞ。私の事はお気になさらず」

女性は人懐こっこそうな笑みを浮かべながらデジタルカメラを構え、握手を交わすジョーとバリーの姿を撮影する。

「いや……『気にするな』って言われても………」
「……ちょっと、無理かな?」

自分達の事を撮影する若い女性にジョーは唖然となり、
バリー……フラッシュは冷や汗を流しながらマスクを被り直して顔を隠したのだった。


407 : 日米スピードスター、幻想ブン屋が突撃インタビュー! ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/28(火) 22:22:20 SOyM2BoA0
「えぇっと……聞いても良いかな?君、誰?」
「あやややや……これは申し遅れました」

フラッシュからの問いかけに、若い女性はデジタルカメラを下ろしてジョーとフラッシュににこやかな笑みを向ける。

「私(わたくし)、『幻想郷』という土地で新聞記者をしております、清く正しい『射命丸 文(しゃめいまる あや)』と申します。以後、よろしくお見知りおきを♪︎」

女性……文は『幼い少女の可愛らしさ』と『大人の女性の妖艶さ』が不思議に同居している顔に微笑みを浮かべながら、自己紹介をする。
10代の初心な少年が見たら、一目で恋に落ちてしまいそうな……不思議な魅力に溢れた笑みだった。

「……新聞記者?それが何でこんな所に?」
「あやややや……それは私の方が聞きたいですよ。自宅兼仕事場で明日の朝刊の記事を仕上げていた筈が、いつの間にか見知らぬ場所に拉致された上に……」

ジョーの質問に答えながら、文は自身の首に装着されている無骨な金属製の首輪を忌々しげに撫でる。

「……犬猫のように首輪を巻かれて、『殺し合い』を強要されているのですからね……詳しい事情は、あの『冥界の魔王』とかいう人にでも聞いて下さいよ」
「は、はぁ……」

疲れの混じったため息を漏らす文の姿に、ジョーとフラッシュも内心で『確かに同感だな……』と感じていたのだった。

「……ところで、お二方」

文はその目に獲物を捕えた肉食獣を思わせる怪しい輝きを放ち、
手にしていたデジタルカメラを自身のデイパックに仕舞うと、
代わりに参加者共通の支給品であるタブレットを取り出し、タブレットのメモ機能を起動させた。

「……先ほどより隠れて拝見させていただきましたが、何やらお二人とも『普通の人間』とは違う『特殊な力』を持つご様子!私(わたくし)も幻想郷の外に出るのはずいぶんと久しぶりなので、是非とも詳しいお話を聞かせていただけませんでしょうか!?」

文はまるで、好奇心旺盛な幼い子供のように目を輝かせながらジョーとフラッシュへ取材交渉を始めた。

「えっ?いやあの……」
「そ、それはちょっと……」

当然と言うべきか、ジョーとフラッシュは躊躇いの表情を浮かべる。

「もちろんタダとは申しません!私(わたくし)に関する情報もお話いたしますので、『情報交換の一環』とお考えいただければ結構です!何とぞ!何とぞお願いできませんでしょうか!?」
『……………』

結局、ジョーとフラッシュは文の熱意に負け、自分達の事を語りだした。
もちろん約束通り、文も自身の事を語ったのだった


☆☆☆


数十分後―

「ふむふむ……なるほど」

文はジョーとフラッシュから得られた話をタブレットにメモしながら、怪訝な表情を浮かべていた。

「では、要約しますと……そちらの009こと島村ジョーさんは、『ブラックゴースト』なる非合法団体によって肉体を文字通りの機械化兵士に改造され、同じく改造されたお仲間達と共にブラックゴーストへの反抗活動を行っている……という訳ですか?」
「うん、その通りだよ」
「そして……そちらのフラッシュことバリー・アレンさんは、アメリカ合衆国の『セントラルシティ』という街の警察機構の一員であると同時に、同市内に所在する『S.T.A.R.(スター)ラボ』という民間研究機関で発生した事故の影響で特殊能力を得た『メタヒューマン』と呼ばれる人々の一人であり、そのS.T.A.R.ラボの職員の方々と協力しながら『フラッシュ』と名乗ってその能力を悪用するメタヒューマンを捕える自警団活動を行っている……という訳ですね?」
「あぁ、間違いないよ」
「ふむぅ〜………」


408 : 日米スピードスター、幻想ブン屋が突撃インタビュー! ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/28(火) 22:22:49 SOyM2BoA0
ジョーとフラッシュの話を聞き終えた文は、頭をポリポリと掻きながら苦虫を噛み潰したような顔になった。

「なんともはや……以前、知人の経営する貸本屋で『SF小説』なる読み物を拝読した事がありますが……お二人のお話は、まさに『SF小説』から抜け出てきたような内容ですねぇ〜」
「まぁ……確かにそう思われるのも仕方ないかな?」

文はいささか呆れが混ざった感想をこぼし、フラッシュはマスクごしに苦笑を浮かべたのだった。

「……ちょっと待ってよ、それなら、君の話はどうなんだい?『人々から忘れられたモノが流れ着く『幻想郷』という土地で新聞記者を生業とする烏天狗の一匹』なんて……僕らの話が『SF』だとしたら、君の話は『和風ファンタジー』じゃないか」
「あややや……これは一本取られてしまいましたねぇ〜」

ジョーからのツッコミを受け、文はテヘペロとでも言いそうな顔になった。

「とはいえ……あのハ・デスなる人物も、『この世には無数の世界がある。このデュエルでも様々な世界から決闘者を呼び寄せてある』と申しておりましたし……少なくとも、私達はそれぞれ『理(ことわり)の異なる世界』よりこの場所に呼ばれた……と考えるのが『妥当』と申しますか、『自然』でしょうね」
「『並行世界(パラレルワールド)』……『多元宇宙論』って奴だね。僕も理論は聞いた事はあるけど」
「あややや、理解が早くて助かります♪︎」

文の仮説にフラッシュは一応納得したが、一方のジョーはまだ少し納得がいかないようだった。

「う〜ん………ちょっと僕にはまだ、『突拍子も無い話』に聞こえるけど……」
「ま、世の中『あり得ない物は無い』って事だよ」
「う〜ん………」

フラッシュに諭され、ジョーはまだ渋い顔をしながらも一応は納得したのだった。

「では、次に……お二人の『今後の方針』についてお伺いします。お二人はこの『決闘』と題された殺し合いで、どのように行動するおつもりなのですか?」
『………』

文からの問いかけに、ジョーとフラッシュは少し考える素振りをする。
そしてまず、ジョーが口を開いた。

「……僕は、進んで『人殺し』をするつもりは無いよ。僕達と同じように無理やりここに連れて来られた『参加者』達を助けて、この島から脱出する……その為に、脱出に協力してくれる仲間を集めようと思っているんだ」

続いてフラッシュが口を開いた。

「僕も大体、彼と同じ考え……かな?強いて言えば、僕は『参加者』達を助けるだけじゃなく、あのハ・デスって奴を倒すか捕まえるかできないか?……って考えているよ。こんな事件を起こせるような奴を野放しにしていたら、また別の『決闘』って奴を企てるかもしれないからね」
「ふむふむ……」

ジョーとフラッシュの方針を聞き、文はその内容をタブレットにメモしていった。

「それで……君の方はこれからどうするんだい?」
「……ん?私ですか?」

ジョーからの逆質問に、文は即答する。

「私はもちろん!生きて『幻想郷』へと帰還し、今回の事件を私が発行する『文々。新聞』で発表しようと思っております!このような特ダネ、早々巡り合う事などありません!もし、この事件を記事にすれば……我が『文々。新聞』の購買数と読者はうなぎ登り間違いなしです!!」
『………』

目を輝かせながら語る文の姿に、ジョーとフラッシュは白い視線を向ける。
その白い視線に気づいた文は「……ごほんごほん」とわざとらしく咳払いをし……

「ま、まぁ……だからといって、進んで殺人を行って優勝を目指すつもりはもちろんありませんが……」

……と、閥が悪そうに付け加えたのだった。


409 : 日米スピードスター、幻想ブン屋が突撃インタビュー! ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/28(火) 22:23:18 SOyM2BoA0
☆☆☆


「……お二方とも、取材協力ありがとうございました!」

ジョーとフラッシュから一通りの情報を聞き終えた文は、最敬礼の姿勢を取りながらお礼を述べた。

「いや、別にお礼を言われる程じゃないよ」
「僕らはただ、聞かれた事に素直に答えただけだしね」
「いえいえ!私からすれば、とても貴重なお話でした!本当にありがとうございます!」

謙虚な態度を崩さないジョーとフラッシュに、文は深々と頭を下げるばかりだった。

「それで、物は相談なのですが……私も、お二人とご同行させていただいてもよろしいでしょうか?」
『えっ?』

文が脈絡も無く『同行したい』と願い、ジョーとフラッシュは顔を見合わせた。

「いや、一緒に来たいなら別に良いけど……」
「ありがとうございます!」

ジョーが同行を許可した事で、文は満面の笑みを浮かべながらまた最敬礼の姿勢で感謝を述べたのだった。

「けど……何で僕たちと一緒に来たいんだい?」
「フッフッフッ……決まっているではありませんか!」

文は不敵な笑みを浮かべながら同行の理由を語り始めた。

「島村さんやアレンさんの存在から考えるに、この場所にはお二人と同等かそれ以上の力を持った参加者もいるはず……その中には殺人に忌避感を持たず、『富と栄誉と願いを叶える権利を与える』というハ・デス氏の甘い言葉を信じて、躊躇無く他の参加者を殺害していく者もいるでしょう……となれば、お二人のように『相応の実力を持ちつつ、殺し合いに乗る事を良しとしない参加者』と行動を共にする事が、そのまま私自身の『生存確率の上昇』に繋がっていくのです!」
「ふぅん、なるほど……確かに一理あるね」

意外と抜け目の無い文の思考に、ジョーとフラッシュは感心する。

「……そして!お二人が『会場からの脱出』や『ハ・デス氏の打倒』の為に協力者を集めるというのであれば、必然的に複数人の参加者と接触する機会があるという事で……すなわち、接触した参加者の持つ『未知の情報』が得られるという事!それらを持ち帰り、記事として発表すれば我が『文々。新聞』の購買数並びに読者数は天井知らずになる事は間違いありません!!」
「…………結局、自分の新聞の為なんだ」
「私(わたくし)、清く正しい新聞記者ですので♪︎」

ジョーとフラッシュは文の新聞記者根性に呆れかえるが、文はそれを気にする素振りも見せずに、満面の笑みを浮かべたのだった。


410 : 日米スピードスター、幻想ブン屋が突撃インタビュー! ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/28(火) 22:23:43 SOyM2BoA0
【島村ジョー(009)@サイボーグ009 THE CYBORG SOLDIER】
[状態]:健康
[装備]:サイボーグ戦闘服@サイボーグ009
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本:参加者達を救い、会場から脱出する
1:バリー(フラッシュ)、文と協力して仲間を集める
2:他のゼロゼロナンバーサイボーグがいるのなら、合流する
[備考]
『地下帝国ヨミ編』開始前からの参戦。
サイボーグ戦闘服は支給品ではありません。
『The FLASH/フラッシュ』世界(というか、その根幹である『アローバース』世界)と『東方project』世界に関する情報を得ました。

【バリー・アレン(フラッシュ)@The FLASH/フラッシュ(ドラマ)】
[状態]:健康
[装備]:フラッシュスーツ@The FLASH/フラッシュ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本:参加者達を救い、ハ・デスを捕まえる
1:ジョー(009)、文と協力して仲間を集める
2:STARラボの仲間がいるなら合流する
[備考]
シーズン1終盤付近からの参戦。
フラッシュスーツは支給品ではありません。
制限並びに参戦時期の関係により、「分身する(スピードミラージュ)」「全身の細胞を高速振動させてトランス状態にし、物体をすり抜ける」「時空間を移動する」「タイムレムナントを生成する」等は使用不可能です。
『サイボーグ009』世界(平成テレビシリーズの世界線)と『東方project』世界の情報を得ました。

【射命丸文@東方project】
[状態]:健康
[装備]:デジタルカメラ@現実
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本:生きて帰り、今回の事件を文々。新聞で公表する
1:島村さん(009)、アレンさん(フラッシュ)と行動を共にする
2:支給されたカメラとタブレットのメモ機能を使って、できるだけ多くの記録を残す
3:もし知り合いが居たら……まぁ、大丈夫でしょう(* ̄∇ ̄*)(根拠の無い自信)
[備考]
少なくとも、『東方鈴奈庵』完結後以降からの参戦。
制限により、飛行速度が通常よりも低下しています。
『The FLASH/フラッシュ』世界(というか、その根幹である『アローバース』世界)と『サイボーグ009』世界(平成テレビシリーズの世界線)に関する情報を得ました。
得た情報はタブレットのメモ機能に保存しています。


【サイボーグ戦闘服@サイボーグ009】
009/島村ジョーを初めとするゼロゼロナンバーサイボーグ達が戦闘時に着用しているお揃いのスーツ。
大きな黄色いボタンのついた赤い上下の服と黒いブーツ、立った時に地面に届く程長い黄色いマフラーで構成されており、銃弾が当たってもびくともしない防御力を持つ。

【フラッシュスーツ@The FLASH/フラッシュ】
バリー・アレンがフラッシュとして活動する際に着用している深紅のジャンプスーツ。
元々はバリーの仲間の一人であるS.T.A.R.(スター)ラボの科学者シスコ・ラモンが消防士用に開発した耐熱・耐摩擦スーツ。
胸にある稲妻のシンボルはバリーが着用するようになった後にシスコが付け加えた。
作中本編では幾度か破損・焼失しており、The FLASH/フラッシュのシーズンが進むごとに外見がマイナーチェンジしていく。
このロワでのバリーの参戦時期はシーズン1の為、スーツの外見もそれに準ずるものとする。

【デジタルカメラ@現実】
射命丸文に支給。
電器店等で2000円くらいで売っていそうな安っぽいデジタルカメラ。
付属のSDカードの容量は16GB(写真だと約10160枚分のデータを保存可能)。


411 : 日米スピードスター、幻想ブン屋が突撃インタビュー! ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/28(火) 22:24:06 SOyM2BoA0
投下終了します


412 : 名無しさん :2022/06/28(火) 22:31:51 2M4HaYBU0
投下します


413 : 死人が二人 ◆/dxfYHmcSQ :2022/06/28(火) 22:33:24 2M4HaYBU0
大気を震わす轟音と、地を震わせる轟音が連続する。
 連続する砲火。途切れる事のない着弾音。時折周囲を眩く照らして飲まれたものを消し飛ばすドーム状の光。
 バトルロワイヤルの一角は、正しく戦場と化していた。
 破壊を撒くのは一個の巨影。漆黒のオーラを全身から立ち上らせる、鋼で出来た怪獣を思わせる巨影は、一歩を踏みしだく度に、地面が揺れ、地表が砕ける。その巨躯に相応しい重量を鋼の巨獣は有している様だった。
 巨獣の身体の一部が光り、放たれた砲弾が、建造物ごとコマンドロイドと屑ヤミーとインベスを消し飛ばす。
 巨獣が振るった前肢が、破れかぶれの特攻を試みた荒ワシ師団長配下の戦闘員を木っ端微塵に撃砕した。

 「何やねん…アレは?」

 離れた場所で怪物の暴れっぷりを呆然と見つめるのは、ニコラス・D・ウルフウッド。黒いサングラスとに黒いスーツという出立ちは、明らかに堅気では無いが、彼は歴とした堅気である。それもただの堅気ではなく牧師である。信じ難いが事実である。
 その仕草や雰囲気は、どう考えても暴力に生きる無法の輩だが、彼は歴とした牧師である。

 「あないなもん、見た事ないで」

 遠ざかっていく閃光と轟音を見送って、独り呟く。
 死んだと思ったら、冥界の魔王とやらに、こんな所へ放り込まれ、挙句殺し合えときたものだ。流石は冥界の魔王などという大層な名乗りを言うだけあって、珍妙なシロモノが徘徊している。あんなものと殺しあわされる身としては、たまったものではないが。

 「まぁ、ええわ。アレならどうにでもなりそうやし」

 あの巨大物体は、舐めてかかることなど決して出来ない脅威ではあるが、それでもウルフウッドの胸中に恐れは無い。
 生前に見た規格外の魔人達。己が業を磨き上げ、魔技と呼ばれる域にまで押し上げた者達の中にあって、尚逸脱しているといえる二名。エレンディラ・ザ・クリムゾンネイルと、レガート・ブルーサマーズ。
 この両名に感じた『圧』を、あのデカブツからは感じ無い。
 ましてや、クリムゾンネイルとレガートの上に君臨する超越存在。ミリオンズ・ナイブスと対峙した時に抱いた『生き延びたい』という欲求を、あの鋼の巨獣に抱かなかった、
 だからといってあんなのを、単騎で破壊するのは骨が折れるし、何よりウルフウッドには、戦う動機が今ひとつ存在し無い。そしてパニッシャーも存在し無い。
 愛用の武器を思った途端。ウルフウッドは凄まじく嫌な予感に襲われた。
 
「モーレツに嫌な予感がするんやが。アイツら、ワイの墓標にしとらんやろうな」

 幾ら愛用の品だったとはいえ、幾ら十字の形をしているからとはいえ、あのクソバカデカい物体を乗せられたら、到底眠る事など出来はし無いだろう。

「ワイがこんな所で彷徨ってるんはその所為か?」


414 : 死人が二人 ◆/dxfYHmcSQ :2022/06/28(火) 22:34:03 2M4HaYBU0
有り得る。今度トンガリに会ったら事実確認してから殴ろう。当分先の事だろうが、当分先でなければならないが。何しろ後事を託したのだ。あの後、あの星を襲うだろう、空前絶後の人の姿をした災害。あの災害に対してウルフウッドが命を賭して守り抜いたものを託したのだ。
 再会は先で─────遥か先でなければならない。ミリオンズ・ナイブスをどうにかして止めてから、トンガリ─────ヴァッシュ・ザ・スタンピードには死んで貰わなければならない。でなければウルフウッドの死んだ意味が消失する。
 とまれ当分は今の事態にどう対処するかだ。
 生き返ってヴァッシュとリヴィオを手伝ってやるという選択も、有る。
 パニッシャーも代謝促進薬も拳銃も置いてきた身だが、新たに手に入れた武器(?)は、パニッシャーにも匹敵する─────或いは凌駕するシロモノだ。
 勝ち上がって、ハ・デスとやらに願うという選択を、ウルフウッドは選べるのだ。選べるだけの『力』が有るのだ。
 そしてハ・デスに反旗を翻すという選択肢も、ウルフウッドには存在する。
 首輪を嵌めて、生命を握り、死にたくなければ殺し合え。などと言うハ・デスに、ウルフウッドはこの上なく腹を立てているのだ。
 然し、ウルフウッドがどちらの道を選ぶにせよ─────。

 「死んでからも殺し合いとか、業の深い話やけどな」

 仕方無い。そう諦観している自分を自覚する。
 あれだけ殺し合いに身を投じ、死体を作って生きてきたのだ。血と硝煙の匂いは最早洗い落とす術とて無い。為したことは己が選択。誰かにせいにするつもりは毛頭無いが、死んだ後まで付いて回ると、流石に気が滅入る。

 ウルフウッドは溜息を一つ吐くと、煙草を取り出そうとして─────煙草も火も無いことに気が付いた。

 「湿気とんのう。煙草くらい入れとけ」

 舌打ちしてウルフウッドは支給されたバイクに跨った。

 「何方にせよ、アレをどうにかせんとな」

 ハ・デスと戦うにしろ、ハ・デスの望み通りに動くにしろ、どのみちあのデカブツは避けては通れない。
 仕留める為の隙を窺い、機を見出せれば瞬時に仕留める。そう、当面の方針を決めたウルフウッドは、暴れ回る怪物の後を尾ける事にした。




【ニコラス・D・ウルフウッド@TRIGUN MAXIMUM】
[状態]:健康
[装備]: キャバリエーレ@DEVIL MAY CRY 5 不明支給品0〜2
[道具]:無し
[思考]
基本:ハ・デスは気に入らない
1:あのデカブツはどないかせんといかんやろ
2:煙草吸いたい
[備考]
死亡後からの参戦です

 
支給品紹介
キャバリエーレ@DEVIL MAY CRY 5

雷を纏うキャバリエーレアンジェロを、ダンテが景気良く切り刻んでいたら、飛散したキャバリエーレアンジェロの鎧がバイクと融合して出来た魔具。
バイクとして使える他、アジの開き見たいに真ん中から二つに割れて、双剣の様に振るうことも出来る。
 

───────────


415 : 死人が二人 ◆/dxfYHmcSQ :2022/06/28(火) 22:34:37 2M4HaYBU0
轟音を圧して咆哮が大気を震わせる。
 鋼の巨獣の頭部に佇立する、漆黒の魔力を全身に纏った男の咆哮は、数多のモンスターと怪人達の戦意を霧散させるだけの『圧』と怨嗟が籠っていた。
 逃げ惑う怪人やモンスターに、容赦なく砲弾が降り注ぎ粉砕する。
 狂気に堕ちた男は決して止まらない。その身が再び朽ちるその時まで。
 生前の未練により現世に舞い戻った男は、騎士であることを辞め、誇りも尊厳もかなぐり捨てて獣と堕ちた。
 この獣は止められない。止まる事もない。
 止まる時があるとすれば、再度の死が与えられるか、生前の未練を果たしたその時のみだ。
 


【ランスロット@Fate/Zero】
[状態]:健康
[装備]: アレクシス・クライシス@アズールレーン 不明支給品0〜2
[道具]:無し
[思考]
基本:A――urrrrrrッ!!
1:
2:
[備考]
騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)でアレクシス・クライシスを制御しています。


支給品紹介
アレクシス・クライシス@アズールレーン

SSSS.GRIDMANとのコラボイベント、『弧光は交わる世界にて』で、新条アカネが作ってもらった艤装。見た目はアレクシス・ケリヴを元にしている。
怪獣としか言い様が無い外見と巨躯を持つ。艦種は戦艦。


416 : 死人が二人 ◆/dxfYHmcSQ :2022/06/28(火) 22:34:52 2M4HaYBU0
投下を終了します


417 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/28(火) 22:37:38 UNLGRilQ0
投下します


418 : 心の闇と言う名の泥濘 ◆2dNHP51a3Y :2022/06/28(火) 22:37:55 UNLGRilQ0
――大切なみなさまへ――


せめて思い出だけでものこせるよう、

私の思いをここに記すことにいたします。

【美食殿】のみなさま。

なにも言わずに去る勝手をお許し下さい。

わたくしは、かけがえのない大切な方たちを

傷付けぬよう、みなさまの元を離れます。

心配はいりません。

わたくしはみなさまのにぎやかで、すこやかで、

楽しい日々が続くことを遠くよりお祈りしております。

……たとえみなさまの記憶から、わたくしが消えてなくなったとしても。

この祈りだけは、永久に消えることはありません。






『―『―『それがお前の心の闇か』―』―』




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





「申し訳ございません。キャル様。ペコリーヌ様。……主、さま。コッコロは、悪い子になってしまいました。」

その宣言は、正しく決別だったのか。後悔だったのか。それとも、歓喜と再誕の言葉だったのか。
掌に1枚の緑色のカードを握りしめ、コッコロと呼ばれるエルフの少女は乾いた呟きを漏らす。

耐えられなかった。
美食殿の仲間を、主であるユウキを傷付けないように、自ら一人になることを選んだ。
だが、或るカードによって増幅された孤独という名の心を蝕む闇は、いとも容易くコッコロの心を侵食する。

「やっぱり、寂しいのです、私は。」

忘れ去られるのは嫌だ。一人になるのは嫌だ。孤独という毒は、1枚のカードの手によってその思想ごと歪まされた。

「なので、お待ち下さい皆様。コッコロは、今直ぐにでも主様たちの所へ、戻りますので。」


――コッコロの持つカードの名は『オレイカルコスの結界』
故に、彼女の歪曲は運命付けられた道筋だった。



【コッコロ@プリンセスコネクトRe:Dive】
[状態]:オレイカルコスの結界による心の闇の増幅
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2、オレイカルコスの結界@遊戯王デュエルモンスターズ(アニメ版)
[思考]
基本:主様たちの所へ戻る、たとえどんな手段を使ってでも
1:コッコロは、悪い子になってしまいました
[備考]
※参戦時期は『絆、つないで。こころ、結んで』前編3話、騎士くんに別れを告げて出ていった後


『支給品紹介』
【オレイカルコスの結界@遊戯王デュエルモンスターズ(アニメ版)】
このカードはいかなる場合にも無効にならず、破壊および除外することもできない。
自分フィールド上に存在するモンスターは攻撃力が500ポイントアップする。
自分フィールド上に前衛モンスターが存在する限り、後衛モンスターを攻撃することはできない。
このカードを手札から墓地に送る事で、あらゆるカードを無効にし破壊する。
このデュエルに敗北したデュエリストは勝者に魂を奪われる。

コッコロに支給。発動した者が持つ心の闇を原動力とする。
このロワにおいてはただ持っているだけで使用者の心の闇まで増幅させる他、単純な持ち主への強化として機能する。


419 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/28(火) 22:38:06 UNLGRilQ0
投下終了します


420 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/29(水) 00:58:15 WrfZoeFo0
投下します、辺獄ロワにて投下した作品に追記・修正した物です。


421 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/29(水) 00:59:41 WrfZoeFo0
「…クソっ…なんで…なんでこんなっ…!」

決闘の会場の一角。そこでバッグを片手に一人の少年は必死に走っていた。
少年の名前はシン・アスカ。本来の歴史ではザフト軍のエースパイロットになる筈だった彼は…その2年前である14歳の時にこの殺し合いに巻き込まれてしまった。
ここで時を少々遡るとしよう。

ーーーー

シンがこの場に巻き込まれてしまったのはよりにもよって、MS同士の戦いの余波の爆風によって自分以外の家族が死に、妹の携帯を拾いに行った自分だけが生き残ってしまった直後からであった。
見せしめである本田と呼ばれていた青年が殺され、遊戯と呼ばれていた青年の悲痛な叫びが響いたその時、シン・アスカは思わず父の、母の、そして妹マユの亡骸を脳内にフラッシュバックさせてしまい…声にもならない嗚咽と慟哭を響かせ吐き気を催した。
それになんとか耐えたはいいものの、死への恐怖と、自分だけが生き残ってしまった事への怒りと悲しみと、主催に対する怒りで感情がぐちゃぐちゃになり危うく発狂してもおかしくなかった所を…自分より年上であろう軍服を着た少女に保護された。

少女は口数こそ少なかったが…不器用ながらも優しく努めて、落ち着かせるように彼女がシンを励ました事によりなんとかシンは落ち着いた。
なおこの時、そんな余裕が全くなかったのもあって…彼女が下にパンツ…もといズボンしか履いてなかったことと、脚部に機械を装着していたことにシンは気付いていなかったのであった。

そしてその流れで少女が、自らの名前をシンに紹介しようとしたその時───襲撃者は現れた。

ーーーー

襲撃者はヒトの形をしながらも全身に蔦のような植物がまとわりついており、右腕からは植物状の触手を、肩には棘が生えた伸縮する蔓を生やしていた。
襲撃者が二人を発見できたのは、地中に根を生やす事によって感知したからである。

「危ないっ…!!っ!?」

襲撃者が触手でシンを襲おうとしたところを、すんでで反応が間に合った少女が魔法陣のような何かを展開させて触手を防ぐ。
そのまま拳銃を取り出し相手を撃とうとする少女であった…が、発砲しようとした瞬間、突然まるで何かが脳裏に映ったかのように彼女の手は震え息は荒くなり、狙いは定まる様子がなかった。

一瞬の躊躇の後、その少女はシンに向かって叫ぶ。

「私が抑えてる内に、きみは逃げろ!!」
「…に、逃げろったって!あんたを放って行けっていうのかよ!?」

突然そんなことを言われたシンは思わず反発するも…彼女は先程展開した魔法陣のようなもので相手の触手を防ぎつつなお叫ぶ。

「私なら…大丈夫だ…!…頼むっ…やらせて、くれ…今度、こそっ…今度こそ、守りたいんだ!!」
「…っ…わかった…死ぬなよ!」

少女の気迫に押されたシンは、躊躇を見せながらも逃げる事を選んだ。
去り際に、少女が一人溢した言葉に不安を抱きながらも…。

「…さて、おまえにも付き合ってもらうぞ……私の、罪滅ぼしに!!」

ーーーー

そして時は現在へと戻る。
シンは少女に言われるがまま…襲撃者から一目散に逃げていた。
…が、彼はふと足を止める。

(…いいのかよ…あんな事言ってたのに…あの人を見捨てて、放っておいて…僕だけが逃げてていいのかよっ!?)

シンの足を止めさせたのは、脳裏に浮かんだ家族達の凄惨な最期と先程の青年の死と慟哭。

(っ…このままじゃ、あの時と…何も変わらないじゃないか!また僕だけが…僕一人だけが、のうのうと生き残るのか!?
……嫌だ…こんなところで…こんなところで僕は…僕は……俺はっ…あの人を見捨てるなんて…出来るかよっ!!
ふざけるなぁっ!!)

吐き気に耐えながら一瞬の躊躇をした後、シンはバッグの中身を見る。
バッグの中に入っていた剣を手に取ったシンは、急ぎ説明書を読んだ後…反対側の方向へと一目散に走り出した。

そして剣は、姿を変えて行く───


422 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/29(水) 01:01:03 WrfZoeFo0
ーーーー

一方シンを逃した少女は、魔法陣のようなもの…シールドを駆使して、なんとか相手の攻撃を防いでいた。
しかし今の彼女には、左手や背中から放たれる蔓の一撃や右手から振われる触手の一撃を防ぎ続ける事しか出来ず…また銃を撃とうにも撃てない状況にあった。

(くっ…なぜだ…銃の引き鉄を…引かなければ…だというのに…!!)

少女の名前はアンジェラ・サラス・ララサーバル。
第504統合戦闘航空団、通称アルダーウィッチーズに所属しているウィッチである。
そんな彼女はなお相手に発砲しようとする…が、引き鉄を引く寸前に、脳裏にこの殺し合いに呼ばれる前の出来事がまた映り込む。

かつてララサーバルは、ベルリンでの戦いにて住民達を守ることが出来ずに撤退せざるを得なかったことがあった。
その時のことがずっと心の片隅から消えずに残っているが故に、彼女は守ることに拘っている。
理由はどうであれ…住民達を見捨てて逃げた形になったという事実を悔やみ、また引き摺っていて…それを自らの罪だと背負い込んでいるのだ。

そんな中、504に所属したララサーバルはある時ネウロイと対話を試みるトラヤヌス作戦に参加する…も、作戦は失敗、多数のネウロイが現れる中彼女は肩に負傷を負ってしまう。
それでも彼女は、殿を務めてネウロイ相手に戦い…重傷を負いながらもなんとか持ち堪えて見せた。
───だが、問題はそこから復帰した後だ。

傷が癒えた彼女は、隊の仲間と模擬戦を行なったのだが…そこでペイント弾を発砲しようとした際、負傷した際の記憶が脳裏に再生されて…結果なかなか発砲できず、発砲したはいいが、射線が乱れたのか初撃を当てれなかったりと不調が発生していた。
違和感を感じたララサーバルは…重要な作戦であるオペレーション・マルスの目前なのもあって、誰にもこの事を告げない事にした。彼女は一人で思い悩み、抱え込みがちな性格であった。
そして作戦が決行される前日の夜───気付くと彼女はこの殺し合いに放り出されていた。

ーーーー

再び時は今へと戻る。

発砲が出来ない現状では、ララサーバルの固有魔法である「魔法炸裂弾」は何の役にも立たない。
よって今の彼女には、シールドを使って防ぐか…シールドを使わずに攻撃を回避するかしか手段はない。
だが相手は避けさせる間も与えずに攻撃を重ね、更にララサーバル自身も記憶のフラッシュバックが理由で不調から脱せずにいた。

そんな状況が暫し続いた後、相手はララサーバルに背中の蔓の一撃を当てようとし…それとは時間差で右腕の触手を使い、不意を突き彼女を吹っ飛ばした。

「っぅ!?しまっ…ぁ、うぁぁ!!?」

相手はララサーバルに立て直す時間を与えずに、背中の蔓で全身を絡め取ってしまう。
そのまま相手は彼女の体液を養分として啜り出そうとし、またそれを効率良く行う為か右手の触手を使い、力任せに彼女の首を締めていく。

「ぁっ…!?ぁぐ、は…っ、ぅぁあ…!!」

思わず悲鳴をあげ、棘の生えた蔓で全身を絡め取られたせいで服がところどころ破けてしまいながら、自分の命の終わりが近付いている事を感じているララサーバルは一人思考する。

(…ここで私は、終わるのか…。
…報いなんだろうな、あの時…守れなかった罪の…。
…隊長、シュレーア大尉…シェイド中尉…すまない。私は…もう…戻れないようだ…。
…出来れば、あの遊戯という少年を見つけ話を聞いておきたいところだったが…あの少年を逃がせたことが、せめてもの救いか……こうなることがわかっていれば、美味い飯を食べてから…死にたかった、な……。

……っ!?)

無理矢理自分を納得させ意識を闇に落とそうとしていた彼女はある光景を目に映し、混乱する。

それは…先程逃した筈の少年が、扶桑刀に近いが違う、まるで龍の尾のような三日月型の刃が鎖によって柄尻に繋がれている刀を持ちながらこちらに向かってきている姿であった。

(…な、んで…きたんだ…逃げろ…私なんて、見捨てて…きみだけでも逃げて…くれ…)


423 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/29(水) 01:01:33 WrfZoeFo0
ーーーー

ララサーバルの命が消える一歩手前で、少年は───シン・アスカは間に合った。


(…死なせない、あんたを…死なせるもんか!!)

そのまま彼は、彼女を…ララサーバルを救う為に刀の能力を使う。
…しかし、説明を読んだとはいえ、扱うのは初めてであるシンには、ララサーバルの身体に絡まっている蔓のみを攻撃することは不可能…な筈だった。

だが彼は…彼女を救う為にひたすらに集中し、その結果……種が弾けるような感覚と共に、シンの目からハイライトが消え、更に集中力が研ぎ澄まされた。

相手は少女の体液を啜り首を折ろうとする事に集中していて、シンの接近には気付かなかった。そのままシンは刀の…氷輪丸の始解により発動可能な技である「群鳥氷柱」を使う。
射出された紫色の氷柱は…シンの驚異的なコントロール力によりララサーバルを傷付けず周りの蔓のみを切り裂いていった。

この一撃によりララサーバルは命を拾い、咄嗟に距離を取れた…が、相手は今度は集中力が切れたシンに向かって触手を伸ばそうとする。

(…ここで、ここで撃たなければあの少年は…!!)

再び銃を構えようとするララサーバルであった…が、過去の記憶が再び呼び起こされ手は震え息が荒くなってしまう。

(…引き鉄を引け私っ…!!頼む!!このままでは…また私は、守れずに…あの時に、ベルリンで敗走した時に決めただろう!?
今度こそ守ると…あんな、たった一度の負傷で…負けてられない…だからっ…!!)

いつの間にか、震えは止まり息も落ち着いていた。
そしてララサーバルは…引き鉄を引き数発発砲。着弾と同時にそれらを、自らの固有魔法で炸裂させた。

結果───怪物の触手がシンの心臓を貫く直前に、炸裂した銃弾のダメージでそれは吹き飛ばされた。
首輪への直撃は避けたとはいえ思わぬダメージを負った怪物は……今は撤退し別の相手を狙う事として、シン達とは反対の方向へと全速力で去っていく。

「っ…待て!…クソ!」
追おうとしたシンだが、先程群鳥氷柱を使った際の疲労と、ララサーバルを放って置けなかったのもあり悔しそうにしつつ踏みとどまった。

「…でも良かった…間に合って…なんとかあんたを助けられた…」

駆け寄った後ため息を吐くシンに対しララサーバルが抱く感情は二つある。
一つは、何故自分を見捨ててそのまま逃げてくれなかったのかという思い。
そしてもう一つは……

「…感謝する。私を…救援に来てくれて…」
「…俺はただ、自分だけのうのうと生き残るのは…もう嫌だったから。無我夢中でやったら…いつのまにか出来てたんだよ」
「……そうか」

ララサーバルは彼の過去を知らない。だが…自分だけがのうのうと生き残るのはもう嫌だと、そう寂しそうに言った彼の表情に、親近感のような何かを感じた。

「しかしそれでもだ。きみがいなければ私は、間違いなくあの化け物の餌だっただろう。
…名前、言い忘れてたな。
私はアンジェラ・サラス・ララサーバル。アンジー…と、そう呼ばれることも多い」
「…シン。シン・アスカ」
「…よろしく頼む、アスカ」
「こちらこそ…よろしくな、アンジ…うわあっ!?」

握手を求めたアンジーにシンが応えようとした…その時であった。先の戦いでの消耗もあって身体をふらつかせてしまったアンジーが、シンを押し倒す形で勢いのまま倒れ込んでしまったのは。
いくらコーディネイターとはいえ、彼もまた先の戦いの際の消耗により注意力が散漫となっていた。
しかも運が良いのか悪いのか、シンの手の先には───


「はぅ、ぁん……ぅ……っ!?」
「へ?…あぁっ!?ごめんっ…!!」


軍服越しとはいえ、アンジーの豊満な胸が鷲掴みの状態となってしまっていた。
シンは顔を赤くしながら年相当に慌てていて、アンジーはみるみる内に顔を紅く染めて行った。

ーーーー

こうしてアンジェラ・サラス・ララサーバルは、本来オペレーション・マルスの作戦中に克服する筈だったPTSDらしき症状をそれより前に克服し、またシン・アスカに至っては、本来の歴史ならば2年後、MSのパイロットとして戦う最中に発現する筈であったSEED能力をそれより前に発現させ、トラウマを振り切る事を選んだ。
二人は過去に囚われながらも、未来を殺さないようにどうにか足掻いてみせたのだ。
───しかし全てがプラスに働くわけではない。


424 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/29(水) 01:02:34 WrfZoeFo0
ーーーー

殺し合いに巻き込まれてからずっと、心の片隅で考えていた。どうして父さんや母さんやマユが死んで…俺だけが生き残ってしまったんだろう…って。

でも、あの人に助けられて…何となく、理由がわかった気がした。

…ごめん、父さん、母さん。…マユ。俺はまだそっちには逝けないや。
俺は…偶然拾った命を使って、あの人を…年上なのに危なっかしくて、放っておけないあの人を…守るから。

…多分それが…俺にとっての、一人だけ生き残った俺の、罪滅ぼしなんだ。

ーーーー

【アンジェラ・サラス・ララサーバル@ストライクウィッチーズシリーズ】
[状態]:ダメージ(中)、恥じらい(大)、服がところどころ破けてる
[装備]:ファロット G55Sストレーガ@ストライクウィッチーズシリーズ
[道具]:基本支給品、グロック26@フルメタル・パニック!、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:殺し合いの打破
1:今はアスカと共に行動。
2:できればアスカを信頼のおける誰かに預けたい…が、当人が拒否しそうな気もする。
3:シェイド中尉達が巻き込まれていない事を願う。
4:……胸を…胸を揉まれたのは、隊長…ドッリオ少佐に揉まれた時以来、だな……。
5:今度こそ守り切りたい。
6:武藤遊戯を探し、合流したいところだ。
7:カードから生まれた存在…?
[備考]
※参戦時期は「ストライクウィッチーズ 紅の魔女たち」の3巻、オペレーション・マルスの実行前日からです。
※作中にて舞台になっている年代が1945年な為、それ以降に出来た物についての知識は原則ありません。

【シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEED DESTINY】
[状態]:健康、主催への怒りと疑問、決意、疲労(中)
[装備]:氷輪丸@劇場版BLEACH The DiamondDust Rebellion もう一つの氷輪丸
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:主催を許すつもりはない
1:アンジーを守る。
2:あんな事をする奴ら(磯野とハ・デス)…許すものかぁっ!!
3:…まだ俺は、マユ達の所には逝けない。
4:遊戯って人が心配だ。
5:カードから生まれた…どういう事だよ?
[備考]
※参戦時期はPHASE-01「怒れる瞳」にて、妹のマユの携帯を拾いに行った後爆風に吹き飛ばされ、家族の遺体を発見した直後からです。
※SEED能力が発現しましたが、まだ自由には発動させる事はできません。


【ファロット G55Sストレーガ@ストライクウィッチーズシリーズ】
大型のネウロイ戦を想定し、DB605DCMエンジンというリベリオンの高品位な燃料に対応したエンジンを搭載する事で攻撃力を強化したユニット。
しかし肝心のエンジンの数が少なかった為に、ごく少数のみがエース用として配備された。

【グロック26@フルメタル・パニック!】
同作の主人公である相良宗介が「フルメタル・パニック!The Second Raid」までのアニメ版にて携帯している拳銃。
サイズが小さい為日常的に隠して携帯し易く、またサイズの割には装弾数が多めなのも特徴。

【氷輪丸@劇場版BLEACH The DiamondDust Rebellion もう一つの氷輪丸】
斬魄刀の一つ。日番谷冬獅郎の斬魄刀…ではなく、こちらは彼のかつての親友である草冠宗次郎が所有していた方。日番谷の氷輪丸とは鍔の形状に差異があり、また日番谷の氷輪丸とは違い発生させた氷が紫色になっている。
能力は日番谷冬獅郎の物と同一で、大気中の水分を凍らせたり、刀に触れた物を凍らせたり、水と氷で竜を造り出したり出来る。
しかし日番谷とは違い、草冠は卍解へと至っていない。
なお今ロワでは、主催の手により始解と始解で放つ技は持ちさえすれば誰でも使用可能。
ただし卍解に辿り着くことは不可能となっている。


425 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/29(水) 01:04:43 WrfZoeFo0
ーーーー

一方、シン達から距離を取った怪物は…暫く移動した末に、本を読んでいる首輪が付いた黒髪の青年を見つける。
先程は失敗したものの、今度こそは…そう思ったかは定かではないが、怪物は蔦を相手に放とうと───した矢先だった。
本をパタンと閉じ読み終えた様子の青年が、手を怪物に構えると…そこから一瞬後に、怪物を光の柱と爆発が襲う。
辛くも首輪による死を無自覚の内に回避しつつ、吹っ飛ばされた怪物は緑色の血を垂らしながら先の戦いのように撤退を図ろうとした…

「今ので死なないんだね。不死の怪物…というのも間違ってないのかな?なら…試しに使ってみる事にするよ」

が、青年の方が一手早い。先程読んでいた本とは別の…古めかしい本を持った後、手を怪物に向けた後上へと向ける。直後怪物を襲ったのは、ブラックホールめいた形で闇が荒れ狂う魔法攻撃であった。

ーーーー

闇の魔法の攻撃が決め手となり、不運にも不死の怪物である筈の彼(あるいは彼女)は先のダメージもあり首輪によって……呆気なくこの決闘での死を迎えた。
倒れ伏しピクリとも動かない怪物を、青年は興味深そうに暫し見ていたが…やがて目線を先程まで読んでいた本へと移す。

「…緑色の血にバックル…これはやっぱりこの本に書いてあったアンデッドみたいだね。本の通りならラウズカードで封印するしかない筈だけど…これのせいかな?」

青年は怪物の首輪にまた目を向ける。そして怪物からそれを取ろうとしてみるが…取れそうに無かった為断念した。

「これが本当に不死の怪物なら、この首輪を介して不死性を制限しているのかも知れないね。…そうなら仕方ない、僕が持っているのはカードはカードでも…これだから、他の参加者から取るのが手っ取り早いかな」

独り言を呟き、手元にある『終焉のカウントダウン』と書かれている支給されていたカードを見た青年は考える。

(…あの磯野と名乗った男にハ・デス…それに殺された本田という青年と武藤遊戯……命の重みを思い出させる為、なのかどうかは知らないけど…今の僕をこの場に呼び出して、こんな悪趣味な物を見せるとはね…。
いいだろう。彼らには罰を与える…僕に命の重みを思い出させようとした罪だ。そしてその為に僕は───)

「…他の参加者を殲滅して優勝する」

改めて決意を固めた青年だったが、ここでふと考えが浮かんだ。

(…不死の存在を封印する為のシステムがライダーシステムなら……もしかしたら僕を…。
……さっきの仮説が正しいのなら、今の僕は不死では無くて……いや、ここで終わってしまえば目的が果たせない。だけどこの首輪がある限りは……でも……。)

「とりあえず…殺す前に心当たりがあるかどうかを聞いてみるくらいは、してみようかな。
……何かの音が聞こえるね、他にも戦っている参加者がいるのなら……行こう」

ひとまず方針を定めた後、怪物の持っていたバッグを回収した青年は、音が聞こえた方角へと向かう。

残されたのはバックルが開いた怪物のみであった。

【プラントアンデッド@仮面ライダー剣 死亡】

※死亡後にラウズカード(アンデッドを封じる為のトランプ型に近いカード)になるか否かは後続の書き手にお任せします。


426 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/29(水) 01:05:24 WrfZoeFo0
ーーーー

参加者の殲滅を目的としながら、同時に首輪とライダーシステムへの淡い希望を持つ…相反した思考もあり情緒不安定になっている青年の名はゼレフ・ドラグニル。
黒魔導士にして、アルバレス帝国の皇帝スプリガンその人。弟を甦らせる為に研究を続けた結果かけられた呪いによって、400年間ずっと不老不死の状態で命を奪いながら生き続け…そして既に覚悟を決めてしまっている男。

参加者を殲滅し主催に罰を与えた暁には、彼は当初の予定通りに元の世界にて全てをやり直そうとするだろう。
それを止める事が出来るかどうかは……主催や参加者達の手にかかっている。

【ゼレフ・ドラグニル@FAIRY TAIL】
[状態]:健康、アンクセラムの黒魔術による呪い、主催への怒り、決意、ライダーシステムへの興味や微かな希望、呪いによる思考矛盾と頭痛(極小)
[装備]:エレシュキガル@ファイアーエムブレム 烈火の剣
[道具]:基本支給品、「仮面ライダーという名の仮面」@劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE、終焉へのカウントダウン@遊戯王OCG、プラントアンデッドが持っていた基本支給品及びランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:参加者を殲滅した上で主催に罰を与える
0:帰還後はメイビスの力を得てネオ・エクリプスを発動させ、時間を自分が不死になる前までリセットさせる
1:今は参加者がいる事を期待して音が聞こえた方へと向かってみる
2:ライダーシステム…それがあれば…もしかしたら
3:ナツ…たとえ君がここに呼ばれていても、今の君じゃもう僕を壊せないよ
4:皇帝に相応しい服を着る前に呼ぶとはね…
5:カードから生まれた…ラウズカードじゃなくこのカードと同じ物…かな?
6:部下達が呼ばれていたら…その時はその時考えよう
7:解除の為にも首輪は欲しいところだ
8:でも仮説が正しかったら首輪がある限り僕は……
9:解除に成功した場合は、他の参加者が解除に成功する前に…全て終わらせて絶望を与えよう
10:一発で終わらせれなかった…魔法の威力が落ちてるのか、それともあれ(プラントアンデッド)が硬かったのか…どっちなんだろうね
[備考]
※参戦時期は55巻の466話「暗殺者」にて、兵を進軍させる事を決めた後からです。
※本来はアンクセラムの黒魔術による呪いにより不老不死ですが、首輪の制限によって少なくとも不死ではなくなっています。
※支給品によりアンデッド及び仮面ライダー(どちらも出典は仮面ライダー剣)についてある程度把握しました、把握した詳細は後続にお任せします。
※首輪により不死性が制限されているのでは?と考えています。

【エレシュキガル@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
本作のラスボスであるネルガルが使用する闇魔法の魔導書。古代の超魔法らしい。
使うとブラックホール状の穴が対象の周辺に大量に出現しダメージを与える。
ゲーム上だと威力だけならゲスペンストの方が高いものの、こちらは高い命中率を誇る。
ちなみに敵専用である都合上か、他の闇属性の魔導書と違って使用回数に制限は無い。

【「仮面ライダーという名の仮面」@劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE】
白井虎太郎が執筆した仮面ライダーとアンデッドの戦いの真実が記されている本。劇場版ではこの本が2000万部の大ヒットを記録し、虎太郎は印税収入により裕福な生活を送っていた模様。
本編でも虎太郎が原稿を編集長に持ち込んでいる他、(正史かは不明だが) 仮面ライダー剣 超バトルビデオ 仮面ライダー剣VSブレイドにおいて虎太郎がこれの原稿と思わしき文章を執筆している。

【終焉へのカウントダウン@遊戯王OCG】
通常魔法カードに分類される。2000ライフポイントを支払う代わりに発動してから20ターン(20ターン目の相手ターン終了後)経過後までライフポイントが残っていて敗北していなかった場合は、無条件でそのデュエルでの使用者側の勝利が確定する効果がある。
このロワでは一度使用すると暫くの間使用不可能になるが、具体的な時間は後続にお任せします。またリアルファイト用に効果が調節されている可能性もありますがこちらも後続にお任せします。


427 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/29(水) 01:06:18 WrfZoeFo0
投下終了です、タイトルは「二律背反」です


428 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/29(水) 01:39:07 WrfZoeFo0
先程投下した候補作の文を修正します

【プラントアンデッド@仮面ライダー剣 死亡】

※死亡後にラウズカード(アンデッドを封じる為のトランプ型に近いカード)になるか否かは後続の書き手にお任せします。

【プラントアンデッド@仮面ライダー剣 死亡】

※プラントアンデッドが持っていたデイバッグは支給品が抜き取られた状態で付近に転がっています。
※死亡後にラウズカード(アンデッドを封じる為のトランプ型に近いカード)になるか否かは後続の書き手にお任せします。


429 : 人間賛歌 ◆s5tC4j7VZY :2022/06/29(水) 06:16:42 r0egwuPY0
投下します。


430 : 人間賛歌 ◆s5tC4j7VZY :2022/06/29(水) 06:17:10 r0egwuPY0
下剋上ーーーーー下の者が上の者に打ち勝って権力を手中にすること。
デジタル大辞泉より引用。

決闘という殺し合いのある場所

そこで出会った一組の男女が情報交換をしていた。

「どうやら、わたしたちは冥界の魔王さんがいうように別々の世界から集められたみたいです」
そう、自分の推測を話す少女。

少女の名はコニシマイン。
超難問エリート校で名高い”MEDA学院”を異例の飛び級で入学した超天才少女。

「にわかには信じられないけれど……マジなようだな」
マインの推測を聞き、始めは信じられないといった顔をしていたが、信じるしかないといった

少年の名は日吉若。
氷帝学園中等部3年にしてテニス部の新部長へと着任したばかりだ。

「今や日本中で販売されている”メダロット”を知らないなんて私達の世界ではありません」
「メダロットもそうだが、”ロボトル”なんてスポーツは一回も聞いたことはない」
マインが発した”メダロット”と”ロボトル”という単語を日吉は今の今まで聞いたことが無い。
故に結論が出た。

日吉は一見、ファンタジーでしかないマインのいう”別世界”を信じるという結論。

「それじゃあ、あの磯野とかいう男も俺たちとは別世界の可能性があるわけだ」
「はい。おそらく」
日吉の見立てにマインは肯定する。

「それじゃあ、首輪を解除とあの男の関係者を探すのが最善ってことか……」

そのとき――――――

2人の耳に女性の声が聞こえた。

「日吉さん!」
「ああ!いくぞ!」

その声は”悲鳴”
マインと日吉は声の主を救うべく走り出す。

☆彡 ☆彡 ☆彡


431 : 人間賛歌 ◆s5tC4j7VZY :2022/06/29(水) 06:17:43 r0egwuPY0

「えっと……殺し合いってマジ?」
冥界の魔王ハ・デスによる決闘と言う名の殺し合い。

一人の女子高生は夢かそれとも現実かどちらなんだと困惑している。

女子高生の名は和泉愛依。
283プロに所属するアイドルにして、ユニットStray lightの一人。

レッスンを一通り終えた愛依は、事務所でダラダラと過ごしていた。
すると、急に意識を落とし、目を覚ますと、先の出来事。

「……」
正直、アイドルというゲーノー人という立場になったため、これはプロデューサーが持ってきたTVの仕事なのではと思った。

「けど、あれがドッキリだとしたら、マジさいてーな番組だよね」
そう、愛依の心中を渦巻くのは”キモイ”の感情。
たとえTVの企画だとしてもこちらから出演を辞退するレベル。

「はぁ……一体、どうしようかなー」
愛依はどうしたらいいか、わからず佇む。

すると……

————ザッ!

「……」
愛依の前に一人の男?が姿を現した。

「おじさん〜〜〜ちょっと怖い顔しすぎだよ」
(何、あのおじさん……こわ)
愛依は目の前に現れたおじさん?の異質な雰囲気にドン引き。

「……」
愛依におじさんといわれた男は口から涎を垂れ流しながら愛依に一歩ずつ近づく。

「ちょっと、ちょっと!うちにこれ以上近づくのはやめてくれる」
愛依はおじさんを睨みつけながら、後ずさりする。

「う゛へ゛へ゛ぇぇぇ!!!」
ちなみに愛依から”おじさん”と呼ばれている男。
男の名は凶悪犯チョップマン。
ハ・デスが用意したNPC。

————————バッ!

チョップマンは愛依に襲い掛かるッ!

☆彡 ☆彡 ☆彡


432 : 人間賛歌 ◆s5tC4j7VZY :2022/06/29(水) 06:18:01 r0egwuPY0

「ちょっ……やめ……ッ!?」
「おとなしくしろ゛ぉぉぉおお!」

チョップマンは愛依を組み伏せる。

「ッ!!いやぁぁあああ!!??―――――ッ!……」

愛依は必死に抵抗しようとしたが、チョップマンによるチョップにより愛依は意識を落とす――――――

—————二ィ。

悪辣な表情。
NPCに抵抗できぬ決闘者は決闘者にあらず。
チョップマンは愛依の命を奪おうと……

そのとき……

————シュパン!

風を斬るかのような音がした。

「ッ!!」
チョップマンの頭に固定物がガツンと当たる。

——————トス。

チョップマンは頭を摩ると、当たった物に視線を向けた。

視線の先にあったのは……

「!!!!!?????」

——————爆弾だった。

直後、強烈な爆発音がしてチョップマンは黒こげになって斃れた。

「マイン!そっちはちゃんとできたか!?」
爆風をなんとか耐えきる日吉はマインに声掛けする。

「成功しました!女子高生の子は無事です」
マインの頭にかぶっているヘルメット型のロボットアームが愛依をがっしりと支え、無事に救出した。

☆彡 ☆彡 ☆彡

「とりあえず、ここで一度休憩するか」
「はい」

日吉の視線の先には先ほど、助けた女子高生が木の傍で横たわっていた。

「気絶していますが、後遺症に残るような怪我はありませんでした。とりあえずは、目が覚めるまで待ってあげた方がいいと思います」
マインは日吉に助けた女子高生—————愛依が心身共に無事であることを伝える。

「……そっか、それはよかった」
日吉はマインの報告を聴いてホッと胸を撫で下ろした。

そして……

サンキュなとマインにお礼の言葉を伝える。

「なら、良かったです!」
マインはニコッと日吉に笑顔を向ける。

「はい。それで……どうしますか、日吉さん」
マインは日吉の顔を覗く。

「……そんなの決まってるじゃねーか」
マインの問いかけに日吉は当然だといわんばかりに高らかに答える。

「下剋上だ」
「はい!下剋上しましょう!」

舐められている人間たちの反抗が今始まる!!!


433 : 人間賛歌 ◆s5tC4j7VZY :2022/06/29(水) 06:18:29 r0egwuPY0

【コニシマイン@メダロット9】
[状態]:健康
[装備]:爆弾セット@アトリエシリーズ 帽子型ロボットアーム@メダロット9
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:科学の力であの男(ヒエール)に下剋上する
1:日吉と共に下剋上をする
2:首輪の回収並びに解析を目指す
3:気絶している女子高生の目が覚めるのを待つ
4:もしかして、支給品にメダロットも……?
[備考]
※参戦時期はED後

『支給品紹介』
【爆弾セット@ソフィーのアトリエ2】
アトリエシリーズの錬金術でつくられた爆弾。
今回はフラム、レへルン、プラジク、ルフトの4種類。
それぞれ、5個ある。現在フラム×5レへルン×5プラジク×5ルフト×5である。

【帽子型ロボットアーム@メダロット9】
マイン愛用のヘルメット。
モデルは真型メダロットのビートを模している。
左右に生えているロボットアームは非力なマインをサポートして、とても便利。

【日吉若@テニスの王子様】
[状態]:健康
[装備]:myテニスラケット@テニスの王子様
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:磯野並びにハ・デスに下剋上する
1:マインと共に下剋上をする
2:気絶している女子高生の目が覚めるのを待つ
[備考]
※参戦時期は新テニスの王子様 33巻 氷帝の部長に就任後

【日吉のmyラケット@テニスの王子様】
日吉若愛用のmyラケット。
なお、隕石を降らして恐竜を絶滅させる力は有しておりません。


434 : 人間賛歌 ◆s5tC4j7VZY :2022/06/29(水) 06:18:44 r0egwuPY0

【和泉愛依@アイドルマスター シャイニーカラーズ】
[状態]:健康 気絶
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:元の日常……283プロへ帰りたい
1:????
[備考]
※参戦時期はちょー早い!のコミュ中

【NPC紹介】
凶悪犯チョップマン@遊戯王OCG
闇属性 レベル3 アンデッド族 ATK/1100 DEF/500
本来は反転召喚に成功したとき、自分の墓地から装備カードをこのカードに装備することができるという効果があるが、この決闘ロイヤルでは何の意味もなさない。
なお原作では海馬に雇われた猟奇連続殺人犯チョップマンというヤバイ奴がいる。
海馬のシャレにならん行動ベスト1だと筆者は感じている。


435 : 人間賛歌 ◆s5tC4j7VZY :2022/06/29(水) 06:18:54 r0egwuPY0
投下終了します。


436 : ◆dltjJrbYYM :2022/06/29(水) 13:32:13 TiVx9AYU0
投下します


437 : 機械の歌 ◆dltjJrbYYM :2022/06/29(水) 13:32:51 TiVx9AYU0

 回って、回って、回り疲れて。そう、僕は、君が望むピエロだ。


 ピノキオは人間になれました。メデタシメデタシ。






 殺し合いという異常な状況の中。高校の制服に身を包んだ少女が、膝を抱えて蹲っていた。

「怖いよ、咲希、穂波、志歩……」

 彼女……星乃一歌には幼馴染がいた。いつからか疎遠になってしまった幼馴染が。

 病気で遠くに行った咲希が帰ってきて、ヴァーチャルシンガーのはずのミクと交流する不思議な体験があって、ひょっとしたらこれから色んなことがあって、昔みたいに戻れるのではないかと思っていた矢先に、一歌はこの殺し合いに巻き込まれた。

「助けて、ミク……歌で私に、勇気を……」

 いつも一歌に元気を与えてくれたヴァーチャルシンガー、初音ミク。彼女の歌声を脳裏に浮かべても、それでも怖い。記憶の中のミクの歌声が、あの爆発の時の音や周りの悲鳴で掻き消されていくようだ。
 自分も本田という男の子のように、首輪を爆発させられて死ぬかもしれない。そう思うと動けない。


「……あれ? この、音……クラシックギター?」

 その時、一歌の耳に殺し合いの場に似つかわしくない音が聞こえてきた。ギターの音色だ。

「聞いたことない曲だけど……」

 なぜだか一歌にはその音色が、とても哀しく聞こえた。
 だからと言うわけでもないが、思わず、と言った風にギターの音色の方へ歩いていく一歌。
 不気味さよりも物悲しさが勝る廃村の奥へと進んでいくと、やがて音の正体が見えてくる。

「あの、なに、してるんですか?」

「……音楽で『心』を、落ち着けてたんだ」

 ギターを弾いていたのは、一歌とそう歳の変わらないように見える、ゴーグルを額にかける少年だった。





「ジローさん、すごくギターが上手ですけど、バンドが何かやっていたんですか?」

「いや、ただ、父さんが音楽好きで、僕や兄さんに楽器を持たせてくれたんだ」

 ギターの少年……ジローは年齢を言いたがらなかったが、落ち着いた物腰からおそらく年上だろうと、一歌は敬語を使っていた。

「あ、お兄さんがいるんですね」

 家族構成の話というのは会話の取っ掛かりとしては定番の部類だ。一歌も例に漏れずそこから会話を広げようとする。
 しかしアンニュイな雰囲気の、幼馴染の中で言えば少し穂波に近い感じのするジローは、なぜかより一層表情を暗くしてしまった。

「うん……いたんだ」

『いる』ではなく『いた』。その言葉のニュアンスの違いに気づかないほど、一歌は鈍感ではなかった。

「一歌ちゃん、あまり僕に近寄らない方がいい」

「あっ、あの、気を悪くしたなら謝ります」

「いや、そういうんじゃないんだ。ただ……」

 兄の死に触れられて気を悪くしたのかと謝罪しようとする一歌を制すジロー。

「僕は、人間じゃないんだ」

「え?」

 突然、ジローの姿が、異形のものへと変わる。
 左右で赤と青の対象的な色を持ち、左側の顔からは電子回路のようなものが覗くグロテスクな未完成の機械。

「僕は……機械だ」

 未完成の『良心』を持つが故に、人間に最も近い機械……人造人間、キカイダー。それがジローの正体である。



 その後。

「あまり驚かないんだね」

「その、確かに驚きましたけど、さっきの会場でのこととか、セカイでミクたちと会ったりとか、色々あったから」


438 : 機械の歌 ◆dltjJrbYYM :2022/06/29(水) 13:33:16 TiVx9AYU0

 ジローのグロテスクな見た目に最初こそ驚いた一歌だったが、機械……ヴァーチャル世界にしか存在しないはずの初音ミクたちと関わったことのある彼女は、思いのほかすんなりとジローの姿を受け入れた。
 なにより、あんなに感情を込めた演奏のできる彼が、悪人だとは思えなかったから。

「そっか」

「あの、はい……」

 ジローも一歌も決していわゆるコミュ障ではない。だがどちらも根っこは強いものの基本的には繊細な性格だ。
 この緊急事態の初対面で何を話せばいいのか分からない。

 とりあえず配られた支給品でも見せ合うか、と二人がどちらともなく動き出そうとした時。

「ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ア゛!!!!」

「な、なにっ!?」

「グッ、ガ……っ!」

 突然その場に、甲高い絶叫が響く。

(この感覚、ギルの横笛やハカイダーの口笛と同じ……!)

 ジローは不完全な良心回路の弱点を突かれ、敵に操られかけたことが何度もある。今響いている叫びは、その時の感覚と似ていた。


「ジローさん、大丈夫、です、か……」

 突然苦しみだしたジローに駆け寄ろうとした一歌だが、急に力が抜けたかのようにペタンと女の子座りでへたり込んでしまう。


「あ……ぁ……」

「一歌ちゃん?」

「来ないで!!」

 頭を抑えて苦しみながらも一歌に寄り添おうとしたジローを、鋭い声で拒む一歌。

「違う……ミクたちとは違う! ジローさんは、ミクたちと違って、本当に機械だよ! あのセカイでもミクは暖かったし、優しかったし、ミクは……!」

「一歌ちゃん! 落ち着くんだ!」

「無駄だよ」

 支離滅裂なことを言い出した一歌を落ち着かせようとするジローに、声をかけるものがいた。


「私の叫びは、『絶望』の叫び……私の声を聞いた人は、みんな絶望しておかしくなる」


 紫色の長髪に、被るというより引っ掛けるといった風な小さなパンプキンハット。そして包帯で右目を隠している少女……トリシュナ・ノールアミン。

「お前……!」

「私はトリシュナ。さっきの叫びは私の叫びだよ」

「それに、皆も皆だよ……! 確かにちょっと色々あったけど、私たちは、友達だったのに! みんなのこと、大好きだったのに!」

 絶望に犯された一歌は、支離滅裂な心情……本来の感情を『絶望』で塗り変えられた悪意を吐露し続ける。元々繊細な性格の少女である。一度絶望に呑み込まれてしまえば、あとは脆かった。


「なんで!! なんでみんな、あんなに仲良かったのに、一緒に、星を見たのに!! どうして、私は、これじゃ、自分だけどこか、取り残された……!」


439 : 機械の歌 ◆dltjJrbYYM :2022/06/29(水) 13:33:57 TiVx9AYU0

「こうなった人を、私は何人も見てきたから分かる。些細なことでいがみ合い憎しみ合い、争い合う……こんな状況だもん、余計に私の叫びが効いてるみたい」

「一歌ちゃ、ん……」

「来ないでよ!!」

 一歌はジローから距離を取ると、自らの支給品……仮面ライダー斬鬼の音撃弦・烈雷を構える。

「うわぁあああああ!!!!」

 焦っているからか、技巧も何もなしに烈雷を掻き鳴らす一歌。しかし音撃弦の『清めの音』は相手に直接流さなければ効果が薄い。

「くっ……! トリシュナ! 人を絶望に陥れて、自分は安全な所で見ているだけのつもりか!」

「別に安全な所にいるつもりはないよ。貴方みたいにあまり効かない人もいるし」

「……なに?」

「私の大切な人がずっと追いかけてる相手もそうだから分かる。貴方、機械でしょ?」

 トリシュナが全てを捧げる男性、アスタル・テイム。彼は宿敵のテツジン・グランキオに勝つためだけに生きている。戦争用機械兵であるテツジンは強い。アスタルが全てを投げ売ってでも勝ちたいと思うほどに。


「心のない機械には私の絶望は効かないけど、女の子と一緒にいてくれてよかった」

 トリシュナの願いはただ一つ。ただ、大切な人の……アスタルの望みを叶えてあげたいだけだ。アスタルがこの場にいるかいないかは分からない。いるなら彼の為に死ぬし、いないなら優勝して、アスタルをテツジンに勝てるくらい強くしてもらう。

 幸い自分の能力とこの殺し合いのシチュエーションは相性が良い。戦わずに絶望を振りまいて参加者に同士討ちをさせる。そうすれば自然と敵も減るし、消耗した所を漁夫の利すれば終盤に備えて支給品も貯められる。



「うわぁああああ!!!!」

 完全に錯乱した一歌が、今度は烈雷をジローに向けて突き刺しにかかる。


 自分たちの一応のリーダーであるシック辺りなら大喜びしそうな光景だが、別にトリシュナは好きでこんな悪趣味なことをやっているわけではない。ただこれしかできないだけだ。



 錯乱した一歌を止めるのは手を焼くだろう。落ち着いて対処されないように同時に攻撃して、よりジローを消耗させようと企むトリシュナの前で。



「ごめんね」

 ジローの貫手が、一歌の胸を貫いた。


440 : 機械の歌 ◆dltjJrbYYM :2022/06/29(水) 13:34:17 TiVx9AYU0

「え?」

 間の抜けた声を出すのは、二人が争うように仕向けた張本人であるトリシュナ。
 一歌は明らかに錯乱しているだけだった。ジローはそんな少女をいきなり手にかけるようには見えなかった。仮に殺すとしても、もっとギリギリまで粘ってから、ジロー自身に無視できないダメージが溜まってからだと思っていた。



「お前は一つだけ間違えた」

 ジローは俯きながら一歌の胸から手を引き抜く。夥しい血が溢れ、力無く倒れる一歌。即死のようだ。

「確かに僕は機械だ。だけど、不完全な良心と完全な悪の心を植え付けられた……人間と同じ『心』を持った機械なんだ」

 ジローは泣いていた。オイルかなにか知らないが、機械の涙にしては、綺麗な涙だった。

「機械が、心……?」

 トリシュナにも覚えがある。アスタルがテツジンとの闘いで追い詰められた時、トリシュナは咄嗟に絶望の叫びを放ったことがある。心のない機械に効くはずのない……と思っていたが何故かテツジンは急に苦しみだし、トリシュナとアスタルは撤退できた。

「僕にとっての絶望は、ギルに植え付けられた服従回路(イエッサー)。お前の絶望のせいでそれが強まった」

 悪質な命令に背くための良心回路(ジェミニィ)が不完全なまま作られたジローは、善悪の判断に迷う、ある意味で人に近い機械だった。人にも機械にもなりきれずに苦しんでいたジローは、ある時悪の命令に従わされてしまう悪の心……服従回路(イエッサー)を埋め込まれてしまう。

 良心と悪意を両方持ったことで……善と悪の間で揺れ動く心を持ったことで、ジローは人間と同じになれた。けれどそれは、悪と良心の心の戦いが永久に続くことを意味していた。


「だからお前の絶望に狂わされただけの可哀想な子も殺せる。いや……殺してしまった」

「心で苦しんでるんだ……アスタルと同じだね、体はテツジンと同じなのに」

「ああ、思えばいつも僕は、心もないのに『良心の呵責』に苦しめられてたよ」

 そう言ってジローは一歌の血に濡れた腕を掲げ、高らかでもなく、気高くもなく、ただ悲哀に満ちた声で叫ぶ。


「……チェンジ!!」


 再び、ジローの体が左右非対称の未完成で不完全な機械……キカイダーのものへと変わる。

「だからトリシュナ、お前を殺す!!」

「ゔ、あ゛、あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

 凄まじいスピードで迫るキカイダーに対して、再び絶望の叫びを放つトリシュナ。機械とはいえ『心』があるなら多少は怯ませられるのだが……

「無駄だ! お前の絶望は、僕の服従回路(イエッサー)を強めるだけだ! むしろそのおかげで、俺はより残酷になれる!」

 叫びをものともせずにトリシュナに肉薄したキカイダーは、包帯を巻いている方の死角から鋭い横蹴りを放つ。

「あぐっ……!」

「ブラスターがなくても、お前程度!」

 キカイダーの内蔵武器にして最強兵器……敵に操られた兄弟3人を皆殺しにしたブラスターはハ・デスに取り上げられていたが、それを抜きにしてもキカイダーは強い。
 ましてトリシュナは叫び以外の純粋な戦闘能力は低い部類だ。

『悪の心』が命じるまま、一歌を殺させられた恨みを晴らすように、キカイダーは何度も何度もトリシュナを殴り、蹴り、最後に近くの廃屋の壁に叩きつけた。

「あ゛あ゛っ……ぐぅう゛うう゛……ひぐぁ゛っ……!」

 殴られながら合間合間に悪あがきのように絶望の叫びをあげるトリシュナの声が痛々しい。しかしそんなことで手を緩めるキカイダーではない。

「終わりだ……電・ジ・エンド!!!」

 腕をクロスさせて高圧電流をスパーク。必殺技の体勢に入るキカイダー。

「死ぬわけには、いかない……アスタルの所に、帰る!! ゔぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛!!!!」


441 : 機械の歌 ◆dltjJrbYYM :2022/06/29(水) 13:34:56 TiVx9AYU0

「無駄だと言って……!」

 キカイダーの必殺技を前に、再び叫ぶトリシュナ。いい加減声が鬱陶しくなってきたキカイダーが、一息にクロスさせた腕をぶつけようとした瞬間……

「なにっ!?」

 トリシュナの『絶望』に吸い寄せられた悪霊型のモンスター……闇よりの恐怖がトリシュナとキカイダーの間に割り込んできた。

 仕方なく電・ジ・エンドを邪魔な闇よりの恐怖に当てるキカイダー。

 そして、爆風。

 ──特撮好きの読者諸兄にはいちいち説明するまでもないだろうが……ヒーローが怪人を倒すのは二回目の時だ。一回目はたいてい、色々あって取り逃がすのだ。

 闇よりの恐怖が爆散した後、そこにトリシュナの姿はなかった。

「逃したか」

 シュン、と変身を解くジロー。無意味に叫んでいるように見えたが、モンスターを呼び寄せて注意を逸らすためだったとは読めなかった。
 今すぐに追えば見つけられるかもしれないが……自分が殺した少女をそのままにするのは『良心』が咎めた。

「一歌ちゃん……ごめん」

 トリシュナがいなくなったことで『心』が落ち着いたジローは、何が起こったのかも分からないまま息絶えた一歌の見開かれたままの瞳をそっと閉じた。

 絶望の叫びで服従回路(イエッサー)が増幅されなければ、気絶くらいで済ませられただろうか。

 分からない。後悔してもしきれない。心さえなかったら、ただ命令を聞くだけの機械ならこんな風に迷うことも悔やむこともなかったのに。


「……こんなもの!」


 ジローに支給されたギター……海堂直也のクラシックギターは、本来の末路と同じように、粉々に砕けた。



     ピノキオ
 ──からくりピエロは人間になって、本当に幸せになれたのだろうか? 



【星乃一歌@プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク 死亡】





【ジロー@人造人間キカイダー(漫画版)】
 [状態]:疲労(小)
 [装備]:なし
 [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
 [思考・状況]
 基本方針:基本的には『良心』に従って行動する。
 1:僕は……どうしたいんだろう。
 2:一歌ちゃんを埋める。
 [備考]
 制限でブラスターは取り外されています。
 近くに音撃弦・烈雷@仮面ライダー響鬼が落ちています。



【トリシュナ・ノールアミン@回転むてん丸】
 [状態]:疲労(大)、ダメージ(中)
 [装備]:なし
 [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
 [思考・状況]
 基本方針:優勝してアスタルの望みを叶える。アスタルがいた場合は彼の為に戦う。
 1:まずは体を休めつつ名簿が現れるのを待つ。
 2:絶望の叫びを振りまいて参加者同士を争わせる。


【NPC紹介】
 闇よりの恐怖@遊戯王OCG
 効果モンスター
 星4/闇属性/アンデット族/攻1700/守1500

 最上級アンデットモンスター、闇よりいでし絶望の下位種。トリシュナの絶望に吸い寄せられたのもその為。
 ガス状の悪霊型モンスターである。一応自身を蘇生させる効果があるが本ロワでは無関係。ていうかOCGでもほとんど使う機会がない。


442 : 機械の歌 ◆dltjJrbYYM :2022/06/29(水) 13:35:09 TiVx9AYU0
投下終了です


443 : 誰にも譲りたくはない夢を掴みたい ◆EPyDv9DKJs :2022/06/29(水) 13:47:15 8AwpL4fg0
投下します


444 : 誰にも譲りたくはない夢を掴みたい ◆EPyDv9DKJs :2022/06/29(水) 13:48:35 8AwpL4fg0
 森の中で乾いた笑いが虚しく響く。
 その中心にいたのは、わらの束を頭に巻いた和服の青年だ。

「ハ、ハハハ……」

 彼、ヌワンギはようやく目が覚めた。自分のやり方が間違ってるのだと。
 大好きなエルルゥから何度も否定されながらもそれを理解しようとすることなく生き、
 取り返しのつかないことをしでかして、最後は彼女から最後の情けを受けて彼は生き延びた。
 自分のせいでこうなった。ならインカムに戦をやめさせようと、彼は行動を改めることを選んだ。
 せめてもの償いなど、することもできずにその命を落とすことになったしまったのだが。
 落ち武者狩りと言う、命令でも徒に戦火を増やした結果を考えればそれは因果応報だ。
 今更過ぎた。何もかも手遅れだった彼に待っていたのは、二度目の生と殺し合い。
 冥界の魔王とやらはまだ許さないそうだ。もっと地獄を見せてやるとでもいうのか。

「どうしろって、言うんだよ。」

 項垂れるしかない。
 戦をどんなことをしてでも止めたいとは思った。
 でも今度は相手が悪すぎる。ギリヤギナ族すら見たことない彼に、
 人間離れした超常的な力を持つ相手に対してどう立ち向かえと言うのか。
 結局、自分には何もできない無力感に打ちひしがれてるだけだ。
 もうどうにもならない。全てがどうでもよく感じてしまった時。

「───もう!!」

「!?」

 彼の耳に届いた誰かの声。恐らくは同じ参加者だろうか。
 何を言ってたか分からないが、ヌワンギはその声に強く反応する。
 聞こえた声はまさかと思った。そんなこと、あっていいはずがない。

「い、今の声……エルルゥ、なのか!?」

 死んだ人間以外も来ているのか。
 不安が一気に膨れがあり、ヌワンギは走り出す。
 あいつは贅沢を望まなかった。あいつは着飾りたくなかった。
 ただ、ありふれた幸せを妹と祖母と、いけ好かないがあの男と過ごしたかっただけだ。
 自分は仕方ないとは思った。冥界の魔王の見世物にされるのは、当然の報いだと。
 でも、あいつは違うだろと。こんな場所に呼ばれていいような奴じゃないと。

「エルルゥ!」

 森を抜け出した先にいたのは、エルルゥと同じ獣のような耳がある女性。
 ただ向きが違う。エルルゥ達が顔の側面なら彼女は頭上でかつ縦に伸びており、
 そもそも恰好からして、とてもエルルゥとはとても似つかない程にきわどい格好だ。
 黒を基調として金の模様が目立つシックな恰好は、大人っぽさを感じさせるものの、
 問題は露出度。はっきり言って肌の面積の方が多く、背中は殆ど晒した姿は水着や下着に等しい。
 加えて長い茶髪に、御淑やかな彼女とは真逆の大人の女性とも言うべき色気が多分に含まれる。

「……アンタ誰?」

 いきなり知らない名前を出されて、当然相手は困惑するしかなかった。
 彼の聞いた声、エルルゥと似た声の質を持った状態で。
 これがヌワンギと彼女、メーテラの出会いである。

 ◇ ◇ ◇

「アンタだっさいわね〜〜〜。」

「ウグッ。」

 二人は軽く食事をとりつつヌワンギの言うエルルゥや、
 都合必要になった身の上話を聞き終え、心底つまらなさそうな顔ではっきりと言ってのける。
 『ないわー』とけだるげな声での追撃をさらにかましていき、言葉の槍が突き刺さっていく。
 自覚はあるので、まったく返す言葉もないのだが。

 税を引き上げ、トゥスクルを死なせ、
 戦を引き起こし、命令と言えども村の制圧。
 これでもかと言うぐらい男どころか人間として、
 落第点を叩きだしてる人物はそうもいないだろう。

「相手の欲しいものを考えてない、典型的なダメ男ね。
 と言うかふっつーにエルルゥって子も言ってんじゃん。
 死ぬ日になってようやく気付くとか、アンタどんだけ莫迦なわけ?
 寧ろそこまで相手に情けをかけられるとか、零点通り越してマイナス突破よ。
 あたしも出会ってきた男は数知れずだけど、論外な奴とか殆どいなかったわ。
 あ、ぶっちぎりの論外よりはましね。あの変態はもう殿堂入りの類だけどね。」

 口に含んだ飯すら喉が通らなくなるような棘のある言葉のラッシュ。
 全てにおいて何も言い返せないまま言葉攻めを受け入れ続ける。

「アンタ、戦を止めるんでしょ。」

 急に冷静な言葉遣いに変わる。
 見た目も相まって軽い人物だと思ってたので、
 そんな風に喋ってくるとは思わずヌワンギは彼女を見やる。
 おにぎりの最後の一口を放り込み、メーテラはそのまま言葉を紡ぐ。

「だったら何してんのよ。戦を止める男が、こんなところで。」


445 : 誰にも譲りたくはない夢を掴みたい ◆EPyDv9DKJs :2022/06/29(水) 13:50:30 8AwpL4fg0
「俺だってそうしてえよ……だがどうすりゃいいんだよ!?
 剣の腕も何もかも中途半端な俺が、逆立ちしたって勝てねえんだぞ!?」

 侍大将まで上り詰めたと言えども、
 所詮親の七光りで得ただけのものだ。
 ベナウィとは比べるまでもない実力差があるし、
 そのベナウィだって此処にいても頼れるか怪しい相手。
 どうしようもないとしか思えなかった。

「はぁ〜〜〜呆れた。そりゃ好かれないわ。
 ウジウジとしてる男についてくる奴なんて───いや、
 スーテラは関わりそうか……今度あの子に言ってやらないと。」

 呆れるほかない発言に長い溜息が出てくる。
 変われる機会がありながらそれを受け入れず昔のまま。
 古臭いままただ廃れていくだけの文化か何かかこの男は。

「まあ確かにあたしでも厳しいのを、あんたができるとは到底思えないのは同意する。」

 メーテラと言う人物を語るなら、天才の一言に尽きた。
 矢を必要としない魔導弓を使い、空の民でも希少な飛翔術の使い手、
 初見でありながら騎空艇を操縦する……等々、彼女のできることはとにかく多彩だ。
 だが彼女とて無敵ではない。時として彼女が身を寄せた騎空団や妹に助けられることもある。
 故に今回の事態も楽観視しているつもりはないし、結構厳しそうとは思っていた。
 とは言えそこはメーテラだ。負けるつもりもないという芯の強さは残っている。

「じゃあその……ハクオロだっけ?
 ハクオロだったらこの状況になったらどうした?
 此処でアンタ同じように、無理と分かって簡単に投げ出す奴だった。」

 無謀だと分かっていながら、戦力差もあると理解しながら、
 それでも多くの集落と結託して、着実に戦力を増やしていった。
 どれだけの時間考えたのだろうか。立場に胡坐をかいてまともに指示もできず、
 攻めろしか言わないでいた自分と違い、あの男はずっと戦場でも考え続けていた。

「違う、アイツだったら……絶対に立ち向かっていく。
 いたらこの場ですぐに動いて、策を考えてるに決まってる。」

 いけ好かない奴だからこそ分かってしまう。
 あいつならそうしてただろうし、そう考えただろうと。
 冷静になってきた今なら、そういう分析もなんとなくだができる。

「だったらシャキッとしなさい!
 あの子が好きなのって、そういう奴ってことでしょ。」

 真似をしろと言うわけではない。
 話を聞く限りの範囲なのでよくは分からないが、
 少なくともハクオロと言う人物はこの男よりはずっと人ができてる。
 まずは人並みに物事を考えてから自分らしい道を見つけていけばいいと。
 同じ道なんて退屈で仕方ない。あの故郷の古い慣習のようなものだ。

「んじゃ、アタシ行くから。」

 殺し合いに興味なんてないし、
 こんな男に付き合うなんであり得ない。
 飛翔術で空を飛んで適当に辺りを見渡し、
 良い場所を見つけたので着地してから歩き出す。

「ま、待て!」

 何処かへ行こうとしたところ、ヌワンギから静止の声がかかる。
 振り向けば『うわ、めんどくさ』とでも言いたげな心底嫌そうな顔だ。
 彼女の表情に思わず言葉が詰まりそうになったが、出る寸前の言葉を飲み込むことはしない。

「何? 仲間になれって? 正直アンタとは断りたいんだけど。」

 ダサい奴といるだけでテンションは下がる。
 殺し合いはしないけどそれはそれとしていい男がいないか。
 なんて興味を持ちつつあった彼女にとって水を差された気分だ。

「なってほしいのは確かにそうだけどよ。無理矢理っつーのは……」

 無理矢理仲間に引き込もうとするのは、それでは昔と変わらない。
 だが彼には保障できるものも、担保に入れられるものも何もなく。
 支給品は貴重だ。だからできるのはただの口約束。それだけだ。

「だから一つだけ頼む! エルルゥやバアちゃん、
 トゥスクルって人がいたら、守れ……じゃねえ、守ってやってくれ! 頼む!」

 死んだ人間が来るなら、もしかしたらトゥスクルだっているかもしれない。
 生きた人間が来るなら、もしかしたらエルルゥだっているかもしれない。
 今更死んだ身だ。自分の命がさしたる問題ではないとしてもだ。
 バアちゃんを二度も死なせたくないし、エルルゥは生きててほしい。
 それだけは譲れない願いであり、地面を頭に擦り付けながら必死に頼み込む。


446 : 誰にも譲りたくはない夢を掴みたい ◆EPyDv9DKJs :2022/06/29(水) 13:50:50 8AwpL4fg0
「何だ、度胸あるじゃない。」

 流石にこれだけ焚きつければ少しは変われるらしい。
 もし彼が自分の事を優先するようなことを言えば口を利くつもりはなかった。
 他人を思いやれるようになった点については今から加算してあげてもよさそうだ。
 現状ではマイナスからはさして変わらないが、これは少しは期待できそうではあった。
 流石に好きな相手がいるわけだから、魅力的になってもツバを付けられないのは残念だが。

「だったらいいわよ。寧ろついて行ってあげる。」

「い、いいのか?」

「スーテラとか団長いるってわかるわけでもないし。ちょっとぐらいは良いわよ。」

 いたらなるべくそっちを優先するけどね、と注釈も加えておく。
 あくまでちょっとした気まぐれ。それ以上の深い理由はなかった。

「恩に着るぜ! メーテラの姐さん!」

 彼にとって彼女は道筋を示してくれた。
 媚びる意味合いで人を敬ってばかりだったが、
 今度は純粋に相手を敬う意味合いだ。

「姐さんね……ちょっと悪くないかも♪」

 いつも姉様(あねさま)と呼ばれた彼女にとって、
 こういう呼ばれ方は少し新鮮で楽しくもある。

 ヌワンギは今度こそ走り出す。
 描く未来へと繋げようと奔走し始めた。



【ヌワンギ@うたわれるもの】
[状態]:やる気
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]基本方針:今度こそ戦を止めてやる。
1:姉さんと一緒に行くぜ。
2:エルルゥやバアちゃん、いねえよな……

[備考]
※参戦時期は死亡後。

【メーテラ@グランブルーファンタジー】
[状態]:めんどくさい
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合い? ないない
1:ヌワンギを手伝う。めんどくさいけど乗り掛かった舟だししょうがないか。
2:団長やスーテラがいたら合流も考えようかしら。
3:論外の奴? アイツよアイツ。顔は良いけど他が論外な変態堕天司。

[備考]
※参戦時期は少なくとも水着のエピソード経験済み、恰好は火属性の時のものです。
 また、000の出来事も把握してます。※イベント中には出てません
※飛翔術は少なくとも銃撃を受ける高さまでで、飛行が長引くにつれ消耗が激しくなります。


447 : 誰にも譲りたくはない夢を掴みたい ◆EPyDv9DKJs :2022/06/29(水) 13:52:32 8AwpL4fg0
投下終了です


448 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/29(水) 14:21:12 OfpbuVrc0
投下します


449 : 凶悪犯は二度目のデスゲームを謳歌する ◆QUsdteUiKY :2022/06/29(水) 14:22:22 OfpbuVrc0
「ふーん、これが新しいゲームか」

 ホラーにも似た禍々しい姿の怪物――ゴブリンゾンビを幾度となくカランビットナイフで滅多切りにして、日向蓮は手応えの無さを感じていた。
 見た目こそホラーに近いがそれはただの見掛け倒しで、その実力は奏風や天羽などバーサスロードで遭遇したプレイヤー達よりも弱い。歯ごたえがない。

 日向蓮は連続殺人鬼だ。なにより特筆すべきはその異常なまでの強さで、割り箸だけで人間二人を殺したこともある。
 GARO -VERSUS ROAD-――ゲーム内でリタイアしたら現実世界でも死亡する狂気のデスゲームでも、日向は何一つ動じることなく何人も殺している。むしろゲームを楽しみ、積極的に殺人をしていたくらいだ。

 その技術や身体能力は全プレイヤーでもダントツのナンバーワンを誇り、奏風や天羽というトップクラスの実力を持った二人が組んでも彼を倒せなかった。
 流石にホラーや魔剣の力でアンデッドになった奏風には太刀打ち出来なかったことから、魔戒騎士よりは弱いと推測出来る。
 おそらく冴島鋼牙や涼邑零ならば彼に勝つことも難しくないのだろう。

 しかし魔戒騎士が誰一人いないバーサスロードの世界では人間として異様な強さを誇る彼は猛威を振るい、結局日向がリタイアした理由もアンデッドと化した彼を空遠が魔剣で殺したから。つまり魔剣という圧倒的な強さを齎す要素がなければ、誰も彼には勝てなかった。

 だからNPCであるゾンビキャリアは為す術なく日向に瞬殺される。NPCとはそういう存在であり、NPCがプレイヤーを脱落させる状況が今は好ましくないという運営の意向もあるのだろう。
 だが普通の人間が生身でここまで一方的にゾンビを惨殺する――という光景もなかなか珍しいものである。

「いくらなんでも弱すぎ。ホラーとは大違いだな」

 予想外に歯ごたえがない相手に落胆して、日向はその場を去る。
 ハ・デスが色々と小難しい話をしていたが、そんなこと彼にはどうでもいい。一度は死亡した命が復活したわけだが、ラッキーだと思うくらいで特に深く考えるつもりはない。
 だがこのゲームがバーサスロードを更にシンプルにした殺し合いだということはすぐに理解出来た。

 どうやら支給品という要素がバーサスロードの魔剣など、強化アイテムを行き渡らせる可能性があることも理解した。
 とりあえず手馴れたカランビットナイフでゾンビを殺したが、後で他の支給品を見てみるのも面白いかもしれない。

「あいつらも来てるなら殺したいな」

 天羽涼介――日向にこそ劣るが、その実力は評価している。相方の奏風大はアンデッドとしてリタイアしたから死んだ可能性が高いが、もしかしたら自分のように生き返ったかもしれない。多少は期待しても良いだろう。

 あとは空遠世那。日向は彼に殺されたわけだが、自分を殺す瞬間――魔剣が不思議な輝きを放っていたのを日向は覚えている。
 アンデッドとなった時の記憶があるというのも不思議なものだが、そこら辺を深く考えるつもりはない。どんな仕組みのゲームだろうが、楽しめればどうでもいい。
 なにより空遠世那のあの瞬間を覚えているのはラッキーだ。あの輝きからして、もしかしたら空遠世那は魔剣に認められた者じゃないかと日向は推測した。
 もしそうなら早く彼とも殺し合いたい。空遠が参加していることにも期待しよう。

 ちなみにハ・デスは様々な賞品を用意しているようだが、あまり興味がない。
 強いて願いを言うなら、またこういうゲームを開いてもらうように頼むくらいだろうか。

「じゃあさっさと他のプレイヤーを見つけて、殺そうかな」

 日向にとって殺人とは息を吸って吐くことと何ら変わらない。
 次の獲物を探すべく最悪の凶悪犯は歩き始めた


【日向蓮@GARO -VERSUS ROAD-】
[状態]:健康
[装備]:日向蓮のカランビットナイフ@GARO -VERSUS ROAD-
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺す
1:あいつら(天羽、奏風、空遠)が参加してることに期待しようかな
2:なるべく強い奴と殺し合いたい。もちろん雑魚も殺すけどねー
[備考]
※参戦時期は死亡後
※バーサスロードに参加していた時と同等の身体能力を誇り、現実世界よりも身体能力が強化されています


450 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/29(水) 14:22:39 OfpbuVrc0
投下終了です


451 : ◆ruUfluZk5M :2022/06/29(水) 15:44:59 UgbxFNxo0
投下します。


452 : 地球が刻まれる日 ◆ruUfluZk5M :2022/06/29(水) 15:50:55 UgbxFNxo0
「デュエル……けっとー、ねえ。ただでさえ忙しい時だってのに。俺はビッグ・ファイアの命で大作を護らなきゃいけねえのになあ」
 BF団十傑集、素晴らしきヒィッツカラルドはのんきにしていたが、その実内心ではかなり焦っていた。このような催しに誘われたことではない。護衛対象から遠く引き離されたことである。
 主であるビッグ・ファイアによって怨敵「黄帝」ライセさえ倒してくれれば世界に手出しはしないとの宣言、その過程において草間大作を死守するよう十傑集は言われた。その任務を全うできないとなれば、傍若無人なヒィッツと言えどそれは困る事態である。
 どうすっかねと考えこんでいると、なにやら聞き覚えのある悲鳴があがった。遠くの声だが、人知を超えた身体能力と感覚を持った十傑集の彼は、あっさりとその声色と方向を聞き分ける。
「……なんだよ、いるじゃねえか」
 ヒィッツカラルドはにやりと笑うと、その声がした方向へと走っていった。


 
「な、なんだお前!? くるな、くるな!」
 人型の猫ともいうべき存在。怪人協会の幹部、ニャーンはふたりの男女を見て舌なめずりをしていた。
 猫が変異した怪物である彼には、それこそ動物的な獲物をいたぶる本能があった。
「くくく。こんな戦いに閉じ込められた時はビックリしたけど。ただの女子供がいるとなれば割と楽勝なのかもね。精々オモチャになってもらうよ、君たち」
「……ロボがあれば!」 
 ジャイアントロボを操る少年、草間大作は悔やむ。あのような戦いを潜り抜けて、終わりが奇怪な猫に襲われ死ぬ。そんなにもあっけないのか。せめてそこに居る女性だけでも逃がすべきかと、ニャーンを睨みつけるが、怪猫はニヤニヤと笑っている。


453 : 地球が刻まれる日 ◆ruUfluZk5M :2022/06/29(水) 15:53:40 UgbxFNxo0
 一方居合わせた眼鏡の女性……サイコスは迷っていた。目の前の少年の生死などはどうでもよかった。元々人類に敵対する自分にとって、死のうとなんだろうと。
 問題は目の前にいる怪人ニャーンが自分の知り合いだったことである。ただし、自分はギョロギョロという名の肉のダミー、超能力での操り人形越しに接していたため、ニャーンの方はサイコスをただの一般人女性だと思い込んでいるようだった。
 この場合、今サイコスがとるべき選択肢は大別してふたつ。
 怪人協会の幹部であるニャーンに協会の影のボスとしての己の正体を明かし、協力を望むか。
 それとも黙ってニャーンを始末するなり逃げるなり、だった。
(まず自分がニャーンに怪人協会サブリーダーのギョロギョロだと信じてもらえるかも怪しい。いっそのことニャーンも目撃者のこの子供も纏めて消すか? いや、序盤から幹部級の手駒と敵対するのは避けたい。しかし……)
 どうするか考えあぐね、サイコスが少しの間固まっていたが。気が付くと。
 いつの間にか三者の間にスーツ姿の男性が降り立っていた。瞳が無く白目だけの目に、頬に線。蟹の足のような逆立った髪型をした男が。
「よお、大作! 猫にでも遊んでもらってたのか?」
 男は少年の知り合いらしく、再会を喜ぶように能天気に手をあげた。
「お、お前は十傑集の!?」
(こいつ……今、いつの間にここに来た?)
「……ん、あれ? お前九大天王の守りと力はどうし」

「激・猫罰!!」

 いきなり割り込んで来た不審な男に対し不意打ち気味に放たれた、建築物をも抵抗もなくバラバラにするニャーンの交差する爪の一撃。いや二撃に、ヒィッツのスーツと皮が裂ける。だが。


454 : 地球が刻まれる日 ◆ruUfluZk5M :2022/06/29(水) 15:55:44 UgbxFNxo0
「っってぇな! 人にじゃれるのも加減しろよな!」
 が、それこそ子猫に引っかかれたかのような反応で、ぷんぷんと怒りながらヒィッツカラルドがニャーンの方を向いていた。
(あっ。こいつ、ヤバ)
 直後、ヒィッツの指が弾かれ、ニャーンが吹き飛ばされる。
「空気弾!」
(超能力者だったのか! しかもフィジカルまでS級ヒーロー並とか聞いてないぞ!?)
 指パッチンをすると相手を吹き飛ばすようで、発動に脈絡がなく回避もしにくい。あらゆる攻撃を避ける、ミリ単位で薄くできる軽い肉体も風は相性が悪い。そうニャーンは慌てた。

 ……実際は、ヒィッツカラルドの攻撃は「空気弾」ではなく「真空波」である。

 彼が「地上最強のユビ」を弾いた時、あらゆるものは切り裂かれる。今回は、ただでっかい猫のバケモノがちょっかいをかけてきたから、それこそ叱り飛ばすように峰打ちで放ったに過ぎない。
 指パッチンで放つ真空の刃を更に峰打ち……というあまりにも奇怪な挙動による読めない攻撃だからこそ、ニャーンも一切避けられなかったのである。
 ヒィッツがその気になれば、フィンガースナップ一発で無数の斬撃「一指全断」を放つことも、人体や山を木っ端みじんにすることも容易である。

「お前なんかの相手してられるかっ! 私はもうちょっと楽な相手をいたぶらせてもらう!!」


455 : 地球が刻まれる日 ◆ruUfluZk5M :2022/06/29(水) 15:58:39 UgbxFNxo0
 そう吐き捨てながらもニャーンは迷うことなく必死で体を薄くくねらせ、逃走した。地面や壁などの隙間を縫うように去るその姿を見てヒィッツはすっとぼけた声を出した。
「ありゃ? 赤影みたいに影になって「実体」を消せるのか? うーん、でも俺の攻撃は普通に当たってたな。ただの体捌きかな?」
「言ってる場合じゃないよ! アイツ、いたぶるとか言ってたぞ!?」
 大作のツッコミに、あーそうだったそうだったとヒィッツカラルドは大作と、あとついでにサイコスの手を引くと、ニャーンの行く先を追いかけていく。
 十傑集や九大天王が使う、矢のような空中飛行する移動を開始する。

「ここまでくれば……うわぁ!?」
 地形の隙間を縫うように高速で逃げても、それでも追いかけてくる先ほどのカニ頭と思わしき光の矢に、ニャーンは驚いて地上に飛び出しながら走る。こうなれば地上をひたすら全速力で逃げるしかない。
 すると、走っていく先には陰気な男がぼーっと立ち尽くしている。
「なんだお前は……なんの用だ。放っておけ」
 恐れるでもなく避けるでもなく、ただ陰気な覇気のない死んだ目を向ける男に、ニャーンは苛立ち紛れに爪を構えた。
「どけっ人間!」
 急いでいるため、嗜虐心もなにもなく乱暴に殺しにかかる。だがその人間……いや、ファンガイアの「キング」はその爪をあっさりと片手で掴んで止めた。
 そして瞬時にキングはコウモリのような姿へと変貌し、
「か、怪人……いや、待っ……仲ッ……」
 赤色の破壊光線を全身より放つ。ニャーンは、回避し得ぬバットファンガイアの怪光によって焼け、消えていった。

【ニャーン@ワンパンマン 死亡】

 この戦いに参加せしひとりの強者、その命を奪ったことになんの感慨も抱かぬ目を向けると、また何事も無かったかのようにキングは黙り立ち尽くした。


456 : 地球が刻まれる日 ◆ruUfluZk5M :2022/06/29(水) 16:05:10 UgbxFNxo0
「猫と蝙蝠の喧嘩か? にしても危なかったな大作」
 着地してその様を見ていたヒィッツは口笛を吹いていた。あの蝙蝠姿になった男が相当な腕前なのは明らかだった。
 サイコスもまた、一部始終を観察して新たなチャンスと見ていた。
(素晴らしい怪人だ……レベル竜の幹部を瞬殺するとは引き込む価値がある。この男もそうだ。間違いなくS級賞金首と言える存在だが、一体どこにこんな逸材が……)

 知り合いらしきふたりは会話を続けていたが、しばらくすると情報の齟齬に対し納得したようにヒィッツがぽん、と手を叩いた。
「あー。お前、俺の世界の大作じゃなくて並行世界の大作か。セルバンテスの舞台演劇で言ってた……そっちじゃ俺は敵のままと。BF団だから当たり前か。ハ・デスが多世界に干渉できるってのは本当みてえだな」
「セルバンテスのおじさん……並行世界?」
「おっ。十傑集のメンツは同じみたいだな。セルバンテスはパラレルワールドを巡る能力を持ってたんだ。そんでもって並行世界じゃお前はどこでも最後には地球が燃え尽きるのと一緒に死んでたらしいぜ」
「えっ……!?」
 しれっとあらゆる並行世界で自分が世界滅亡と共に死んでいる、との情報を聞いて草間大作は愕然とした。
「お前が「どこ」の大作かは知らんが。地球が燃え尽きるような事件には気をつけるこったな。どうせだ、俺たちの世界を存続させるヒントになるかもしれねえし……大作、お前と俺は同行した方がいい。駄賃がわりについでに守ってやるよ」

 その申し出に、大作は露骨に嫌がった。元々「この大作」の世界でのヒィッツは、大作を襲ってきたこともある十傑集である。女子供でも平然と切り刻める気性そのものは、どうやらあまり変わらないように見えた。
 ……別に向こうの世界のヒィッツも大作のことをいいなり襲って「地上最強のユビ」による斬撃を放ったこと自体はあるので、ある意味それは誤解による不信とはいいがたいものであった。

 だとしてもなにやら重大な戦局がために向こうの「大作」を護ろうとしていることは会話から判ったが、
 この男と組むというのはどうにも忌避感がある。九大天王と同格の実力者なのだ、心強い味方のはずなのだが、
「BF団と協力するだなんて……」
 やはり、大作からすると気が進まない。
「そのBF団の最高幹部、十傑集がこうしてなすすべも無く呼ばれてるんだ。俺らに匹敵するのは梁山泊、九大天王のみ……とは言えねえか。こりゃあのハ・デスって野郎が冥界の魔王を名乗るのもあながち嘘じゃねえ。呉越同舟と行こうじゃねえか……そっちの超能力者な眼鏡の姉ちゃんもな」
 最後の言葉に、それまで蚊帳の外気味だったサイコスが一瞬表情をこわばらせた。
「っ……いつから気付いていたんですか?」
「最初から。同僚にも超能力者は居てね。ただ者じゃねえことくらいはすぐわかる」

(軽薄そうな言動に反してバカではないか。大方のヒーローと違いやりづらいな……ここは全面的に協力すべきか。名前から察するにこんな男があと9人。BF団とは相当強大な犯罪組織のようだな。しかし並行世界に地球が燃え尽きるだと? 冗談じゃない、それが本当なら……)
 あるいは、自分が見据えていた惑星単位のビジョンそのものが前提から見直しになると、サイコスはひとり思案する。
「おい、そこの蝙蝠のアンちゃんはどうする?」
 ヒィッツの問いかけに、キングは陰鬱な目を向けると、ひとりごとのようにボソボソとつぶやき始める。


457 : 地球が刻まれる日 ◆ruUfluZk5M :2022/06/29(水) 16:07:09 UgbxFNxo0
「どうでもいい。俺は既に死んだ身だ。どのようになろうと……」
 全てが決した後から呼ばれたファンガイアの王、真の名を「暁が眠る、素晴らしき物語の果て」は自身に絶望していた。
 
 全てを失った。服も、城も、剣も、鎧も、妻も。
 ビショップのファンガイア再生術により一度は不完全ながら自我を失い現世によみがえった。が、現代のキングとしてファンガイアを復興させるかと思った自らの息子は、己を紅音也の息子と共に打ち滅ぼした。
 そして、この戦いで再度謎の復活をした自分は、その全てを克明に覚えていた。
 なんのことはない、あらゆる魔族を凌駕し覇道を打ち立てた己はもう、新しい時代に不要な遺物と化していたのだ。
 先ほどの猫は13魔族の亜種か何かか、それともその13魔族のひとつだったフランケン族のように人間が創り出した新しき魔族か。ハ・デスとやらはそれらを全て操る真に神と言える存在なのか。
 
 すべてがどうだっていいことだった。己は死せる身。王の亡霊なのだから。今さら復活させられたところで、なんだと言うのか。
 
 既にファンガイアすら自分を必要とはせぬのだろう。禁忌のハーフたる音也の息子と、我が子が結びついているのだから。時代は変革した。変革してしまった。
 ファンガイアの王は再度、あらぬ方向に目を向ける。
 キングは、今現在の事態に一切の興味が無かった。ただ、空を眺め虚ろに立っているのみである。
 襲われたことに反撃したのは、かつて魔族を統べ、惑星を覆うレジェンドルガを滅ぼし、世界の命運を賭け戦い抜いた王としての……本能にまで刷り込まれた戦闘意識が多少働いたに過ぎない。
「おいおい、このアンちゃん鬱病か? 参ったなァ……」
 ヒィッツカラルドの言葉に返答できるものはその場に居なかった。


458 : 地球が刻まれる日 ◆ruUfluZk5M :2022/06/29(水) 16:12:16 UgbxFNxo0
【素晴らしきヒィッツカラルド@ジャイアントロボ バベルの籠城】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
 1:へーパラレルワールドの大作ってこんなやつなんだ。俺の世界の大作もさらわれてんのかな?
 2: メガネの姉ちゃんありゃ中々強い超能力の使い手と見た。
 3:この蝙蝠のアンちゃん自殺でもするんじゃねえだろうな。
[備考]
 参戦時期はバベルの籠城4巻で大作と再会する直前です。

【草間大作@ジャイアントロボ 地球が静止する日】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
 1:僕がすべてのパラレルワールドで地球が燃え尽きると共に死んでいる……!?
 2:ヒィッツカラルドが今一つ信用できない
 3:なんだろうこの蝙蝠の人……すごく暗い……
[備考]
 参戦時期はOVA最終話以後です。
 あくまで出自が「地球が静止する日」の出展のため「地球が燃え尽きる日(バベルの籠城)」の世界からみたパラレルワールドの法則や死の運命が通じるかは実のところ不明です。

【サイコス@ワンパンマン】
[状態]健康
[装備]眼鏡
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
 1:なんとか周囲の強者を怪人協会の手駒として引き込みたい。
 2:パラレルワールドの概念と地球が燃え尽きるレベルの脅威に困惑。
 3:この蝙蝠怪人かなり言動が陰鬱だが、大丈夫なのか?
[備考]
 参戦時期はオロチと融合する前です。

【暁が眠る、素晴らしき物語の果て@仮面ライダーキバ】
[状態]健康、無気力
[装備]
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
 どうでもいい。
[備考]
 参戦時期は最終話の後です。


459 : ◆ruUfluZk5M :2022/06/29(水) 16:13:14 UgbxFNxo0
投下終了です。


460 : ◆0EF5jS/gKA :2022/06/29(水) 18:17:56 dNuaeMKQ0
投下をさせていただきます。


461 : アドバンスジェネレーションギャップ ◆0EF5jS/gKA :2022/06/29(水) 18:18:31 dNuaeMKQ0
…カイリュー!でんじはだ!
よーし動けなかったぞ!このまままきつくだ!


いいぞ!いけー!じわじわと体力を減らすんだ!



やったあ!カイリュー勝てたよ!
お前が頑張ってまきついてくれたおかげさ!
この調子で次も勝とうぜ!


…ん?勝てたのにどうしたんだ?浮かない顔して。



ぼくの名はカイリューだよ、
正確に言えばカイリューというのはポケモンの名前さ、
ぼく自身にニックネームはないのさ。

ご主人のトレーナーには単にカイリューって呼ばれてる。

そんなぼくだけど何の因果か殺し合いに呼ばれちゃった。
あのハ・デスというポケモンと磯野はどんな基準でよんでいるのかな。

そんなぼくにはある悩み事があってね、
それは戦い方が…地味なんだ。

他のポケモンさんもがちんこのぶつかりあいというより
かげぶんしんやちいさくなるでよけまくったりで小細工重視してるけど
ぼくの戦いはとにかく地味、ケンタロスさんみたいにはかいこうせんも撃たないし
高い素早さで的確に急所を狙うサンダースさんのようなスタイリッシュさもない。

ぼくの戦術はでんじはからのまきつくで動けなくして相手の体力をじわじわ減らしたり
つのドリルでいちげきひっさつを狙うような堅実性しかない戦い方さ。

まあ戦う手段があるだけぼくは多分恵まれてはいる。
もっと悲惨なのはかくとうタイプのみんなだろう。
人気者なフーディンさんに弱いタイプだし
特殊が低いから10万ボルトとかふぶきなどの流行っている特殊技にも弱い。

なにより彼らは強いタイプ一致技にとにかく恵まれていない。
サワムラーくんは例外だけど、一番強い一致技が
じごくぐるまってどういうことだよ。
あれは命中率も低いし、反動もある使いにくい技じゃないか。

でも弱い一致技のことを言えばぼくの方が悲惨だよな、
最強の一致ドラゴン技がりゅうのいかりってもう笑い話だろ。
40の固定ダメージだよ、ひどすぎない?。

…愚痴ばっかりになっちゃうな。とにかくぼくは地味な戦いは嫌なんだよ。
すごいわざとかっこいいわざが激突する派手なバトルがだいすきなんだ。

じわじわおいつめたり、一発逆転のいちげきロマンはあんまりすきじゃない。

でも殺し合いを強要されている状況でそんなこと言ってられないだろうな。

明らかにいつもどおりに対戦をする雰囲気じゃない。
相手を瀕死にとどまらせるようなスポーツではなく
本当に命を奪い合うに違いない。
立ち向かって死んじゃった角刈り頭の人間さんがそれを物語っている。

だからド派手な技を決めたいなんてぜーたくはもう無理無理、
いつも以上にむりだろう。

いつものようにしびれさせてから
まきついてハメたおすだけさ…
持ち前のとてもつよいこうげきりょくが役に立った事なんていちどもないんだよ…



その親子は絶対の親子愛がある。
だがその愛は別に地球を救ったり誰かを守るような美しさはない。
むしろ逆で相手を破壊し蹂躙するための破壊的な親子愛だ。

そのおそろしい親子は2体まとめてこう呼ばれていた。

メガガルーラと。

いつものような競い合いの対戦ではなく
真の殺し合いを強いられるバトルロワイヤルにはさすがに動揺し
母は驚き、子は震え上がったがすぐに冷静になった。

いつものように最強の愛を持ってぶちのめすだけだ。

グロウパンチでパワーはあがり
おんがえしでふんさいだ。
そうとなれば話は早い。

殺し合いに乗っている不届き者は愛をもって瀕死とする。

我が子とこの私を殺せる者なら殺してみろ。
やっかいな耐久型以外で真っ向から私を倒せるのは
存在感の強いテラキオンくらいだわ。
愛の前に悪のパワーは無力だということを思い知るが良い。


462 : アドバンスジェネレーションギャップ ◆0EF5jS/gKA :2022/06/29(水) 18:19:08 dNuaeMKQ0

こうして私とかわいい我が子は歩み始めた。
みていろハ・デスと磯野よ。
究極の親子を召喚してしまったのが貴様たちの最大級のミスだ。
さすがに殺しまではしないが磯野は国際警察たちに捕まってもらうわよ。

ハ・デスは…まあ誰でも良いからポケモントレーナーがいたら捕獲させればいいかしら。



会場をぶらぶらほっつき歩いていたおいらが最初にあったのは
ガルーラさん…だけどなんか変だ、
お腹の子はあんなに大きかったかな?歩いてるけど…

それにどういうことかやけに自信満々に見える。
ガルーラさんは弱いわけじゃないけどあの闘神ケンタロスさんの影に隠れがちだ。
だから対戦で活躍しているのをそんなに見たことはない。

ならどうしてあんなに張り切っているんだろう。
なにか独特の戦術でも発見したのかな。

「ガルラアア!」

「かるらああ!」

あ、呼びかけて近づいてきたぞ。
少なくとも殺し合いに乗っていないことを伝えなきゃ。

〔以下日本語で翻訳〕

「やあやあカイリューちゃんじゃないの!あんたも呼ばれちまったのね!」

「ガルーラさんも同じく呼ばれたんですね、呼ぶ基準がおいらは気になりましたよ」

「そりゃ私たちのようなむちゃくちゃ強いポケモンを
呼んだら殺し合いがスムーズになるって思ってんでしょあのあほんだらたちは?」

「確かにそう考えたらすじは通ってますね…(むちゃくちゃ強い…?)」

おいらはただ疑問だった、お腹の子がでかいことといい
自身にとても溢れていることも解せないが
なにより私たちのようなむちゃくちゃ強いと言ったことだ。

“たち”と言ったからどういうわけかおいらもむちゃくちゃ強いに含まれているらしい。

…そりゃでんじはからのまきつくが決まったら
結構有利になるし勝ちに繋がることも珍しくはない。
けど、そんな超強いほどじゃないとおもうけど…
そこでおいらは1つ聞いてみることにした。

「あ、あのちょっといいですか…?」

「ん、なによ?」

「お、おいらって…なにがそんなに強いんですか?」

「え!?いやいやいや何言ってんのよ!
あんたも超強いでしょ!すごい特性の
マルスケからの竜舞とげきりんで多くのポケモンが藻屑と化してんじゃないの!
あとじゃくてんほけんとの相性も抜群じゃないの!!
あたしと一緒で特性に恵まれてよかったわねえ!」

と、とくせい?マルスケ?竜舞?げきりん?じゃくてんほけん…?
何言ってんの?全部聞いたことがないけど…


463 : アドバンスジェネレーションギャップ ◆0EF5jS/gKA :2022/06/29(水) 18:19:32 dNuaeMKQ0

「もうあんたね〜謙虚になりゃあ良いってもんじゃないでしょ!?
すぎた謙遜は無礼でかえっていらつかせるだけだって!」

謙遜とかそうじゃなくてほんとにわからないんですよ…
おいらの表情はたちまちぽかーんな表情になった。

「…呆けた顔するあたり…なんのことだかわからないって感じね…


「ハイハイハイ!本当にどういうことかわかんないですってば!
聞いたことのない言葉だらけびっくりですよ!
いったいなんの専門用語ですか!?ポケモンでも入れる保険があるんですか!?」

「……ちょっと聞いてもいいかしら?
あんた普段どんな感じで戦ってんのよ?」

「…でんじはからの…まきつくです。」

「………えっ…?」

あ、あたしは一瞬何を聞かれたのかわからなかった…
ええと、でんじははまだわかるけど…
まきつく…??型がいくらなんでもマニアックすぎるわよ…

「あと…たまにこうそくいどうもしてつのドリルもやります…」

こ、こいつの型はマニアックとかそんな次元じゃないわ!
変態型よ!たまに見る物理サーナイトよりもさらにぶっ飛んでいるわ!
私と我が子はあまりにもびっくりしてただ唖然とするしかなかった…

殺し合いに呼ばれたことの何十倍も衝撃だわ…
あとカイリューって、つのドリルつかえるっけ?

「え、え〜とお…ぼくの型は…そんなに変ですかね…?
確かにすっごく地味な戦法だけど…ぼくらカイリューはほとんどみんな
こんな感じの戦い方なんですよ…」


…マジで?ほとんどのカイリューが…?


ガルーラさんはいったい何にびっくりしているんだろう…?

こうしてあまりに大きいジェネレーションギャップの前に2体のポケモンは
ただ解せずに唖然とするばかりなのであった。


464 : アドバンスジェネレーションギャップ ◆0EF5jS/gKA :2022/06/29(水) 18:20:13 dNuaeMKQ0


【カイリュー@ポケットモンスター赤緑】
[状態]健康、困惑(大)
[装備]特になし。
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない。
1:ぼくの型ってそんなに変なの…
2:このガルーラの言ってることがわかんない…

※備考
覚えている技はでんじは、まきつく、つのドリル、こうそくいどうです。
ハ・デスをポケモンだと思っています。

【メガガルーラ@ポケットモンスターXY】
[状態]健康、メガシンカ、困惑(大)
[装備]特になし。
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗ってるやつと主催を瀕死にする。
1:型がマニアックすぎるでしょこいつ…
2:ほとんどのカイリューがこのマニアック型ってどういうことよ…
3:ハ・デスはポケモントレーナーに捕まえてもらえばいいわね。

※備考
覚えている技はグロウパンチ、おんがえし、ふいうちです。残り1つの技は
採用された場合に後続の書き手様にお任せいたします。
ハ・デスをポケモンだと思っています。


465 : ◆0EF5jS/gKA :2022/06/29(水) 18:20:30 dNuaeMKQ0
投下は以上となります。


466 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/29(水) 19:14:28 OfpbuVrc0
投下します


467 : 新たな舞台の幕開け ◆QUsdteUiKY :2022/06/29(水) 19:16:16 OfpbuVrc0
「ふむ。互いの命を懸けた決闘――バトル・ロワイアルか」

 成田真理は――成すべく誓いのために。復讐のためにその手を何人もの者の血で染め上げ、踏み躙ってきた罪人はルールブックに目を通し、閉じる。

 まさか再び壮大な物語の舞台の幕が上がるとは思わなかったが、ハ・デスが自分に向けてくるこの悪意を甘んじて受け入れよう。成田にはそれくらいされても仕方ないくらいのことをしてきた自覚がある。

 成田真理はこの結末に至るまで、あまりにも多くのものを奪い過ぎた。
 妹さえ復讐の為に手に掛けて―――ただひたすらに復讐に生きてきた人生だった。だからこうして自分のやってきたことが返ってくる―――当然の報いだ。

 音無朔はそんな男に生きる喜びを与えてくれた。罪人でも喜びを得ていけないわけじゃないと言ってくれた。
 だから成田真理は残る全てで彼女の傍に在り続けると約束した。彼女の抱いた夢の続きをこの目で見届ける為に―――成田真理はまだ死ねない。この命と魂は―――復讐譚が終わった今でも、まだ果てることは出来ない。

 そしてハ・デスは成田真理という罪人だけでなく、数多の人々を決闘に巻き込んだ。

 成田真理を罰するというのなら―――受け入れよう。冥界の魔王が人々の命を弄んだ男を罰する。それはどこにでもありそうな、在り来りな物語だ。

 だが無関係の人々を巻き込むというのなら、話は別になってくる。
 だから成田真理の幕を下ろすには、まだ早い。成田真理はこの場で成し遂げなければならないことがある―――。

 だから成田真理がハ・デスに挑むと決意することは―――冥界の魔王を打倒しようとすることは、必然的だ。

 それはおそらく困難を極める道だ。常人ならばすぐに諦めてもおかしくない。首輪を着けられている時点で成田真理の命は握られたも同然である。

 だがそれがどれほど不可能であるかは、問題ではなかった。
 真っ当な勝ち目―――そんなものはないだろう。ハ・デスを見た瞬間、その圧倒的な力は肌で感じている。―――それでも成田真理に退くという選択肢は有り得ない。

 望まずして悲劇の舞台へ招かれた。
 それは新たな物語の幕開けであり―――成田真理は再び強大な敵へ立ち向かう。

 一つの舞台が幕を下ろし、次なる舞台へ。
 しかし今回の舞台は成田真理が選んだわけじゃない。本当にただ偶然―――いや、必然的に罪人は巻き込まれた。
 だが一度上がった舞台だ。降りる気はないし、此度の物語でも成田真理は成すべきことを成す。

 それが成田真理という男の在り方。
 相手は冥界の魔王―――その称号に偽りはないだろう。
 その身には爆弾付きの首輪が嵌められた。―――命の尊厳すらこのゲームの参加者は踏み躙られた。

 ―――だがそれでも成田真理には強固な意志がある。

「待っていろ、冥界の魔王。―――私は成すべきことを成す。貴様を倒して、このふざけた悲劇の幕を引いてやる。―――――覚悟を決めろ、冥界の魔王ハ・デス」

 この舞台で成田真理に与えられた役割はわからない。
 だが最後の最後まで―――幕引きのその瞬間まで足掻いて、成し遂げてみせよう。

 勝ち目がない?
 たかだか人間が魔王に勝てるはずがない?
 ―――――否。

 例え目の前にあるものがどのような絶望であれ、挑む前に『無理だ』などというのは成田真理の流儀に反する。
『やはり無理だった』という言葉は全身全霊を尽くしてもなお破れた時に使うものだ。


【成田真理@ハロー・レディ!】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:ハ・デスを倒し、この舞台の幕を下ろす
1:朔達はいるのだろうか?
2:ハ・デスに挑む為に首輪の解除が出来る者を探したい
[備考]
※参戦時期は朔ルート終了後
※ハローは制限により封じられています。これについては成田も把握しています


468 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/29(水) 19:16:34 OfpbuVrc0
投下終了です


469 : ◆bLcnJe0wGs :2022/06/29(水) 20:15:38 ypHlOdDY0
投下します。


470 : 願いなんて、そう簡単に叶うものではない ◆bLcnJe0wGs :2022/06/29(水) 20:16:28 ypHlOdDY0
『このセリフ…、この動き…。
 「おしゃべりキュティちゃん」と全く同じだ……。』
『ホビーだ!』
『あら〜御金賀さん、新しいホビー買ってもらったの〜?』
『お嬢様、耳を貸してはなりません!』
『ごっこ遊びじゃなくて本気で信じていたのか…。』
『今年はうちの学校がWHF(ワールドホビーフェア)開催地になったん!?』
『ブブー!!正解は…、ホビーでした♪』




───────────────────





 ─願いなんて、そう簡単に叶う訳がない。



 会場内のとある場所。

 周辺を見渡しながら、そこを歩く金髪の少女が居る。

 名前は御金賀 アリス(おかねが-)。
 祖父は彼女が元いた世界で最も有名な遊園地『キュティランド』の創始者であるカワイー・ノスキー、父親は有名なおもちゃ会社の社長。
 つまりは超がつく程の社長令嬢である。

 ある日、命が宿ったスライム『ぷにる』の話を耳にし、『彼女』の存在を確かめた。
 そしてアリスも自分が幼少期に考案したオリジナルキャラクター『ルンルーン』も人間にならないか、願った翌日、『彼女』も人型の姿になっていた。

 でもそれは、メイドの宝代さん達家の使用人達がその願い為に作った『まがい物』だった。
 それは使用人達でも叶えられるものではなく、大人気ホビー『おしゃべりキュティちゃん』の中身を流用する等、突貫で作られた『人型ロボット』であったのだ。

(願いなんて、簡単に叶うものではありませんわ。)

 そんな彼女は、『願い』というものが容易に叶うものではないと一番に理解している。

(それに…殺し合いで得られる富も名誉も断固として要りません、ですからワタクシはこんな殺し合いには乗りませんわ!)

 かくして彼女は、決意を胸に殺し合いには決して乗らないという道を選択したのであった。


471 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/29(水) 20:16:38 WrfZoeFo0
拙作の「二律背反」にて、支給品の名称間違いがあった為訂正させてもらいます、申し訳ありません。

[道具]:基本支給品、「仮面ライダーという名の仮面」@劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE、終焉へのカウントダウン@遊戯王OCG、プラントアンデッドが持っていた基本支給品及びランダム支給品1〜3

[道具]:基本支給品、「仮面ライダーという名の仮面」@劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE、終焉のカウントダウン@遊戯王OCG、プラントアンデッドが持っていた基本支給品及びランダム支給品1〜3

【終焉へのカウントダウン@遊戯王OCG】

【終焉のカウントダウン@遊戯王OCG】


472 : 願いなんて、そう簡単に叶うものではない ◆bLcnJe0wGs :2022/06/29(水) 20:16:46 ypHlOdDY0
【御金賀アリス@ぷにるはかわいいスライム】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]:殺し合いには決して乗らない。
1:知り合いが巻き込まれていないか心配。
[備考]
※参戦時期は原作10話以降。


473 : ◆bLcnJe0wGs :2022/06/29(水) 20:17:06 ypHlOdDY0
投下終了です。


474 : ◆bLcnJe0wGs :2022/06/29(水) 20:18:15 ypHlOdDY0
>>471
申し訳ございません。
割り込んでしまいました。


475 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/29(水) 20:19:11 WrfZoeFo0
>>474
こちらこそ、リロード忘れによる割り込みをしてしまいすみませんでした


476 : ◆NIKUcB1AGw :2022/06/29(水) 20:45:44 j2sgUX9c0
投下します


477 : 全てを解決する力 ◆NIKUcB1AGw :2022/06/29(水) 20:46:54 j2sgUX9c0
無人の倉庫の中で、一人の参加者が別の参加者を襲撃していた。
襲撃者は、金属と筋肉が入り交じった異様な姿をしていた。
この姿は、本来のものではない。
地球の記憶を収めた「ガイアメモリ」と呼ばれるアイテムによって変貌した姿、「ドーパント」である。

「死ねぇぇぇぇぇ!!」

殺意に満ちた叫びを上げながら、ドーパントは目の前にいる老人を殴りつける。
そのパンチをまともに食らった老人は大きく吹き飛び、空中で爆発四散した。

「まずは一人……。チョロいものね。
 なんで爆発したのかはわからないけど……。首輪の誤作動かしら?」

独り言を漏らしながら、ドーパントは変身を解除する。
現れたのは、美女といって差し支えない容姿の若い女性だった。
彼女の名は、桐江想子。
今は亡き推理小説家に仕えていたメイドである。
だがメイドとしての彼女の姿は、偽りのものに過ぎない。
自分の父からアイディアを盗用して築いた、小説家の財産を奪い取る。
それが、彼女の真の目的だった。
そして小説家の死をきっかけに、彼女は動き出す。
遺産相続人に指名された小説家の関係者たちを殺し、自分が遺産を手にする。
桐江はその計画を実行する直前、この決闘へと参加させられてしまった。
最初は計画を台無しにされて激怒した彼女だったが、冷静に考えれば悪くない話だという結論に至る。
殺さなければならない人数は跳ね上がったが、その分手に入る金も増えたのだから。
実際には具体的な金額は提示されていないのだが、彼女の中では「これだけ大規模なんだから1000億くらいもらえるだろ」ということになっている。
小説家への復讐ができなくなるのが問題だが、そこは何か別の手段を考えることにする。
ちなみに、見ず知らずの人間を殺すことへの罪悪感は全くない。
元々なんの恨みもない遺産相続人たちを殺そうとしていたのだから、当然といえば当然か。

「よかった……。焼け焦げてはいるけど、中身は無事ね」

老人のデイパックを回収した桐江は、中身を抜き取って自分のデイパックに移す。
武器はいくらあっても、困ることはない。
何せ……暴力は全てを解決するのだから。

【がんばれ!ガンバンジー@デュエル・マスターズ! 死亡】


【桐江想子@金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿】
[状態]健康
[装備]T2バイオレンスメモリ@仮面ライダーW
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜5
[思考・状況]基本方針:優勝して、賞金を手に入れる
1:問題は暴力で解決していく
[備考]
参戦時期は、「やはり暴力……!! 暴力は全てを解決する……!!」の直後


【T2バイオレンスメモリ@仮面ライダーW】
「暴力」の記憶を内包したガイアメモリ。
使用するとバイオレンス・ドーパントに変身できる。
発展型のT2メモリはコネクタの刻印なしで使用することができ、また相性のいい人物と引かれあう性質を持つ。
作中ではウォッチャマンが落下してきたメモリに選ばれ、強制的にドーパントに変身させられてしまった。


478 : ◆NIKUcB1AGw :2022/06/29(水) 20:47:53 j2sgUX9c0
投下終了です


479 : ◆7PJBZrstcc :2022/06/29(水) 22:24:12 bLjgbwQw0
投下します


480 : つまづき ◆7PJBZrstcc :2022/06/29(水) 22:25:11 bLjgbwQw0


 シ ―― ン


 皆さんこんばんわ。私の名前は黒音今宵、現役JKです。
 私の話を聞いてください。

 まず、私には前世の記憶があります。
 とはいっても大したものではありません。「オレ」だったころの記憶は、無味無臭と言ってもいいくらい何もありません。
 ただクリスマスの日、夢の中でサンタさんが出てきて「美少女に生まれ変わりたい」と願ったらかないました。
 皆これくらいの欲望はありますよね? え、ない?

 こうして美少女に生まれ変わりました。
 前世と違うところもありますが、基本的に前と変わらない現代日本なので知識チートとかは無理ですが、まあ問題ないでしょ。
、美少女なんだしちやほやされて人生イージーモードだ、と思った私ですが、そうはいきません。
 なぜなら私には、コミュ力がなかったからです。
 前世からなかったものは、美少女になってもオプションでついてきたりはしませんでした……っ!

 おかげで幼稚園から小中学校、そして高校生になってもずっとぼっち。
 そして2018年、高校二年生になった時何かしなきゃと思い、ふと勢いでVTuberグループ『あるてま』の二期生に応募しました。
 正直後で黒歴史確定だと悶えましたが、なんか通りました。

 まあ通った以上うまくやって、これでコミュ力も上げてリア充になってやると意気込みましたが、そう上手くはいかず。
 初っ端からやらかすし、後頑張って清楚系を目指しても炎上芸人みたいな立ち位置になるし、リアルでのコミュ力は上がらないし。
 正直VTuberやめようかとすら思いましたが、リスナーから思わずマジ泣きするようないい話を貰い、私も頑張ろうと思いました。
 とりあえず、まずはクラスメイトに挨拶するところからやろう――

『これより決闘について説明する』

 と思ったらこれだよちくしょう!

「VTuberからデスゲームはジャンル変わりすぎでしょ……
 どうなってんの私の現世……」

 正直、状況が変わりすぎて全然ついていけない……
 ただ、さっき死体を見たせいでちょっと吐きそう。いや嘘、ちょっと吐いた。
 多分そこらへんに私のゲロある。

「だ、誰もいないよね……?」

 とりあえずデイパックにあった包丁を構えながら、慎重に進む私。
 正直、誰とも会いたくない。しかし現実はいつも非情だ。

「グオオオオオオオ!!」

 目の前にいきなり、二つの頭を持ったキメラが現れた。
 大きさは数メートル程で、こちらを殺そうとしていることだけは分かる。

「あ、終わった」

 こんなの、勝てるわけない。
 結局友達もできず、VTuberとしての活動も中途半端なままで。
 私の人生って何だったんだろう……


 だけど――


481 : つまづき ◆7PJBZrstcc :2022/06/29(水) 22:25:35 bLjgbwQw0

「たたっ斬る」

 サ ン ッ

 いきなりキメラが真っ二つになり、その後ろには歴戦の風格を漂わせる男が立っていた。
 よく見えなかったけど、刀か何かを使って斬ったのかな?
 とにかく助かった……と思うと、思わず腰が抜けて立てない。

 すると、男の人はこっちに近寄り私に話しかけてきた。

「大丈夫か?」

 心配して声をかけてくれるが、私のコミュ症が邪魔してうまく声が出ない。
 それでも頑張って、これだけは言った。

「あ、あの……腰が抜けて立てないんで、助けて下さい……」


【黒音今宵@美少女になってちやほやされて人生イージーモードで生きたい!(漫画版)】
[状態]:健康、腰を抜かしている
[装備]:野々原渚の包丁@ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れないCD
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:死にたくない
1:助けて下さい……
[備考]
参戦時期は2話終了後

【宮本明@彼岸島シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:とりあえず殺し合いに乗る気はない
1:目の前の少女(今宵)と話す
2:この殺し合いに雅は関わっているのか……?
[備考]
参戦時期は少なくとも無印終了以降


【野々原渚の包丁@ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れないCD】
黒音今宵に支給。
渚がCDパッケージで持っている包丁。
特に変わったところのない包丁だが、多分人を刺したことはある。


【有翼幻獣キマイラ@遊☆戯☆王】
星6攻撃力2100。
幻獣王ガゼルとバフォメットを融合させることで生まれるモンスター。
本来なら破壊された際、ガゼルかバフォメットのどちらかをフィールドに召喚するが、このロワでは不可能。


482 : ◆7PJBZrstcc :2022/06/29(水) 22:26:03 bLjgbwQw0
投下終了です


483 : ◆ruUfluZk5M :2022/06/29(水) 22:58:40 UgbxFNxo0
投下します。


484 : ヘンタイ・デュエル ◆ruUfluZk5M :2022/06/29(水) 23:04:27 UgbxFNxo0
 ミネルバXは、ひとりで心細かった。
「どうすりゃいいの……」
 機械獣ガールズ(実際は男だが)である彼女は普通の人間に負ける気はしなかった。
 しなかったが、さすがにこんな場で優勝できる気も、する気も無かった。
 別に自分のことを善人とは思ってないが。だとしても優勝ってことはつまり大量殺戮に手を染めるということで……いや、いくらなんでもそりゃまずいだろう、と思っていた。
 デュエルとか、そこらへんのルールとかよくわからないし。
「お姉ちゃん……」
 不安からか姉と慕うZちゃんの顔が浮かぶ。彼女も巻き込まれてやしないだろうか。
 そうしていると、なにやら人の声がしたため、おそるおそる物陰を除くと。
「ゴ……ゴブリンが!」
 そこにはゴブリンが居た。しかし、それだけではない。

 なんと、3人の男たちがゴブリンを犯していたのだ。ゴブリン、という空想上のモンスターが存在したことにも驚きだが、状況はそれどころではなく狂っていた。
 屈強な土木矜持の作業員のような姿をした緑色のゴブリンたちは、ぐったりしながら3人の男たちにレイプされていた。顔や腕には殴られた痕が見え、異常に生々しい。悪夢の重ねがけのような光景であった。
「なんやお前」
 男たちがミネルバの存在に気付いて、振り向いた。
「なっ……なにを……」
 質問と言うよりうめき声に近い形で、ミネルバが後ずさりしながら声を出すと。

「何って……」
「見ての通りレイプしとるやん」
「俺ら徒党を組んでるんだけどこいつらヤラれるのには弱くてさあ。なんかこの場のルールだとモンスター扱いみたいだけど、俺らにとっちゃ同じ穴だしな」


485 : ヘンタイ・デュエル ◆ruUfluZk5M :2022/06/29(水) 23:07:59 UgbxFNxo0
 ニヤニヤと笑っている。チンピラじみた人間の姿をしているのに、人間とは思えない。常人を遥かに超えた強さを持つミネルバと言えどさすがにこの野放図っぷりにはビビった!
「は、はは……じゃ、じゃあ私はこれで……」
 かかわったら何をされるかわからない。あのモンスターたちは正直気の毒にすら思えるが、自分の身の安全の方が最優先だ。逃げた方がいい。
 ミネルバはそぉっと距離を取り始めたが……しかし、スッと男の内一人が距離をタックルで詰めた。

「えっ」

 手慣れた動きに、転がされて関節を固められる。あまりの手際の良さに、一瞬呆けてしまう。
「俺たちってタチ悪いよなあ」
「こんな殺し合いだってのに適応するくらいにはメンタルもフィジカルも鍛えられまくってるし」
「女好きだし…」
 ぎくり、となる。自分を手近な女として犯そうと言うのか。かちかちと奥歯を震わせ、ミネルバXは慌てて弁解しようとした。
「ちょ、ちょっと。私は実はおと……」
「男もいけるしな」
 ヌッと男どもはズボンを脱ぐと、ミネルバの後ろへ回りはじめた。こいつらは一目で自分を男だと見抜いていたのだ。それに、元々モンスターすらレイプするような異常性愛者どもだった。
 こいつらは自分がなんなのか理解した上で、強姦しようとしているのだ。その事実に、ミネルバXは震え上がった。もはや彼我の戦力差など無関係の、純粋な貞操を狙う輩への本能的恐怖があった。
「や、やめてええええええ! 嫌っ! 嫌ぁっ!!!」
 つんざくような悲鳴が辺り一帯を包む。
 しかし、その時。

「やあ、ムチャなことしてるね」

 中年男性が空気をたたっきるかのように、平然と顔を出した。ごく普通の中年といった感じだが、目だけが異常なまでに真っすぐに澄み切っていた。


486 : ヘンタイ・デュエル ◆ruUfluZk5M :2022/06/29(水) 23:10:17 UgbxFNxo0
「た、たすけ……」
「しかし……同意のないムチャは好かんなあ」
 ミネルバの助けを求める懇願を聞いているのかいないのか、ふーむと考え込んだ直後。
「なんやおっさ……」
「おーい! 鬼ごっこしようぜー!」
 と言いながらムチャおじさんこと宝井は、レイパーの腹に向けていつの間にか持っていたバットで思いっきりフルスウィングをした。
「ぐぅっ」
 ごいん、と言った音がする。しかし荒事慣れした強姦魔どもは、それだけでは倒れずキレて宝井を襲わんとする。
「てめぇーっごらーっ」
「舐めてんのかっブっ殺すぞっあーっ」
 その恫喝する言葉を聞き流して、追撃をひょい、ひょいと避けながら、スッとミネルバを抱えて宝井は逃げていく。
「ホッホーイ! ウホホーイ!」
 身体能力や戦闘の技巧が特別に優れているわけではない。にもかかわらず、異常に手慣れた動きでおじさんはレイパーたちをからかいながら振り切った。
 するっとすぐそこに停車してあったキャンピング・カーにミネルバと一緒に入ると、直後アクセル全開で走って行ってしまう。

 強姦魔たちはあと少しであの女顔の少年をレイプできたのにと惜しんだ。
「ちっ、なんだアイツ」
「あー冷めたわ。またゴブリンでもヤルかっ」
「せやなっ」
「待てい!」
 なんだ、と3名が振り向くと、そこには更なるチン入者……いや、闖入者が居た。それは……忍者服を着た、切れ長の美丈夫であった。
「あー、なんじゃいなんじゃい次から次へとぞろぞろと。さっきのガキと言いおかしな格好してからに」


487 : ヘンタイ・デュエル ◆ruUfluZk5M :2022/06/29(水) 23:12:40 UgbxFNxo0
「さっきから見てれば無理やり犯そうとするとは笑止千万。男でしか勃たないのは俺もそうだが……強引すぎる男はモテないのよ!」
 オネェ口調混じりの忍者服の男はしゃしゃり出てきて、3人を止める。
「とりあえず、ここは落ち着いて俺と情報を交か――」

「あ? なんだお前ホモか?」
 露骨にバカにするような態度をとる。いきなり出てきた忍者のコスプレイヤーらしきホモの言葉など、この野蛮人たちには通じなかった。
「別にワシらは女もイケるんやで。男でしか無理なホモなんぞと違ってなっ」
 せせら笑うような差別的ニュアンスとジェスチャーを込めた言葉に、びくりと忍者が震えだす。

「まあコスプレの兄ちゃん、そんなにイケるんやったら俺らの相手でも」
「ホモを……」
 直後、強姦魔のうち一人の首がすぽーん、と飛んだ。
 忍者――美女丸が刀を抜き放っていた。
「貴様らもホモをバカにするかぁっ」
「なっなんだぁっ」
「うぁぁぁっ」
「男で勃つのならそれはホモでいいじゃないか! 俺もお前たちもみんなみんなホモ・サピエンスじゃないのか!」
 わけのわからない言葉を叫びながら、美女丸は残りのうち一人の身体を切り刻む。
「聞くに今の世は21世紀っ! えるじぃびいてぃとやらでホモにも理解があると思ったのにー!!!」
 逃げようとした最後の男も睾丸を蹴り飛ばされ、悶絶したところを唐竹割りに斬られた。
 ついでにNPCモンスター、穴埋めゴブリンたちもが切り刻まれていく。辺りは瞬く間に血の海と化した。

【我龍院清丸を犯した不良三人組@TOUGH外伝 龍を継ぐ男 死亡】

 なにやら危ないことを叫びながら、美女丸は悶えつつ死体を更に粉みじんにして、ホモの権利向上を叫ぶのであった。
「俺は、俺は世間にホモを誇れる社会を望むぞぁーっ!!」
 しばらく興奮のまま周囲を破壊し尽くしてはぁ、はぁと荒げた息が落ち着くと、美女丸はそうだ逃げていった彼らにも事情を聴かねばと先ほどのキャンピング・カーを追いかけていった。

 ●

「た……宝井さん、でしたっけ? 助けてくれたのは感謝しますけど……ムチャが過ぎますよ!」


488 : ヘンタイ・デュエル ◆ruUfluZk5M :2022/06/29(水) 23:14:32 UgbxFNxo0
「そうかい。ムチャだろう?」
 キャンピング・カーの中で。ミネルバXが落ち着いてきて話すと、なぜか宝井は自慢げな顔を見せた。むやみやたらに爽やかなまなざしなのが逆に恐ろしかった。
「なんであんな風に私を助けて……」
「おじさんはねぇ……ムチャがしたいだけなのだよ」
 答えになってない言葉に、ミネルバはぽかん、とした。

「はっはっは、ともかくだ。このような争いの場で女装コスプレしているそこそこムチャな少年よ。おじさんの支給品を全部あげようじゃないか。おっと、この全国指名手配(メジャーデビュー)の手配書だけは持っておこうかな」
「し……指名手配犯!?」
 命がけで強姦魔たちから助けてもらったのにその救いの手が指名手配犯。一体どういうことかとミネルバは困惑する。
「ん? 脱獄と刑務所への出入りを繰り返しただけだよ。ちょっとムチャがしたくてねハッハッハ」
 ヤバい。この人はこの人でヤバい。ミネルバの柔らかな肌にゾッ……と鳥肌が立った。しかし、自分を助けてくれた心強い人な事実にも間違いは無い。どうするべきか困っていると。
「おい宝井、話は済んだか?」
 そう言ってきたのはキャンピングカーの運転席には身長がやや低いがどこか凄みを感じさせるトレンチコートの男。その傍には……更に、珍妙な恰好をした男が屹立していた。
 
 片方の珍妙な恰好とは。
 シャワーキャップをかぶりグラサンをかけオヤジシャツを身にまとい水色の短パンをはいている。さらに伝線した黒ストッキングと短パンで絶対領域を主張している変態振りである。
(変態だ……)
 一目でわかる、女装しているだけの自分が及びもつかぬような変態であった。

「わたしの名はチャハーン……」
 変態の方が名乗り始めた。
「世間の罵声にたたかれへこむ……チャハーンがやらねばだれがやるの……チャハーンだ!」
「……はぁ」
 またワケのわからん人が増えた。ミネルバは段々すり切れたような顔で返した。こっちのキャラまで崩壊しそうだった。
 大体自分は小悪魔系で腹黒で生意気で百合っぽい(相手は憧れの女性で自分は男だからヘテロだけど)男の娘キャラじゃなかったのだろうか。
 目の前に出てくるやつがおっさんとかむさい男の変態やら変人ばかりじゃないか。
 責任者出てこい。と言いたかった。
 
「ん?」


489 : ヘンタイ・デュエル ◆ruUfluZk5M :2022/06/29(水) 23:16:34 UgbxFNxo0
 運転していた渋い男がふと、キャンピング・カーを止める。
「どうしたね?」
「いや、血濡れの忍者が追いかけてきてだな」
「待って! 待ってくれ! 俺は……俺はただ平和的に情報を交換したくて!」
 必死で言ってくるその声に全員が顔を見合わせると、とりあえずまあ、話だけなら聞くかとばかりに車を止めて降りた。
「で、あの……なんで血まみれなんですか?」
 そう、ミネルバが聞いた瞬間。

「ここの電柱、景観に悪い!」
 チャハーンという中華炒めしのような名前をした変態は、何が嫌なのか急に道路の傍にあった電柱をチョップでへし折ると、振り回しはじめた。
「えっ!?」
 ただ怪力というだけではなく、なにか物理的な挙動が不自然すぎる変な動きである。
 そしておかしくなったのはチャハーンだけではなかった。
「あいつらが……あいつらがいけないのよ。ホモを差別するから……」
「な、なんか様子が」
 ぞわぞわと美女丸の殺気が膨れ上がる。思い出し殺意だ。これまでなら相棒の忍者が忍法珍静剤を一発ブチこんでくれるから大人しくなれるのだが、生憎ここに相棒でありセックスフレンドの忍者小天狗は居ない。

 つまり、美女丸のホモの激情を制御できる存在は……今、居ない!

 ひっとミネルバが息を飲んだ直後、咄嗟にチャハーンが異次元からの使者のような動きで跳躍し、美女丸の前に立ちはだかった。
「いかんっ! チャハーンフラッシュ!」
 グラサンを外してチャハーンの出したその閃光が、美女丸へと突き刺さる!
 チャハーンフラッシュは3つの条件のうちひとつでもかすったものに相応のダメージを与える目から出る謎の怪閃光である。
 その条件は
・心が醜い者
・嘘をつく者
・コレステロール値が高い者
 このどれかが強くあてはまるほど、当たった者に強いダメージを与えるのだった。
 美女丸は……えーと、あぁー、まあ、嘘をつく者とかには普通に該当するんじゃないかな。忍者だし。

「うぬっ忍法か!!」
 美女丸はチャハーンフラッシュにより苦悶し、一端これはたまらんとばかりに逃げることにした。追いかけるのも速ければ逃走も速く、あっという間に見えなくなる。
 暴れ尽くしたチャハーンの奇妙奇天烈な動きと怪閃光により、辺り一帯はズタボロになっていた。
 当のチャハーンは一仕事終えたかのようにワンカップ酒を地面に横たわりながらまるで居間でテレビのチャンネルをザッピングでもしている休日のお父さんのようにリラックスして飲んでいる。
「なに……なんなの?」
「人生こんなこともある」
「ないよっ!!」
 コートを着た小男の達観したようなハードボイルドな言葉をミネルバは反射的に否定した。

 とりあえず瓦礫の山で、皆は一体それまでどうしていたのかぽつぽつとしゃべりだす。


490 : ヘンタイ・デュエル ◆ruUfluZk5M :2022/06/29(水) 23:18:14 UgbxFNxo0
「えっと、私はさっき強姦魔たちに襲われてたところを宝井さんに助けてもらって……」
「うむ、君と会う前、我々はキャンピング・カーに乗るまでは電車ごっこをしてここいらを一周してたのだが……」
「一周!? 殺し合いの起こるような土地を!?」
「いやあ電車ごっこで飛行するとは中々のムチャっぷりだったよ」
「飛行!?」
「日本―北極間を小一時間で飛んだ時よりかはまだ客も入ったな。あの時は折角超音速エクスプレスを作ってやったのに誰も乗りやがらねえ」
 電車ごっこで極地まで飛ぶと言い出していたこの男の言動と存在はもはやツッコむ気にもなれなかった。
 
 頭の痛くなってきたミネルバが額を抑えると、トレンチコートの男がポン、と肩を叩いてくる。
「まあまあデカいヤマってとこだな。魔王か……ふっ、邪神だのなんだのの相手も初めてじゃあない。いけるさ」
「あなたは……」
 そういえばひとりだけ名前を聞いていなかった。
「宇賀神=ミハエル=恭介だ。私立探偵をしている。宇賀神でいい」
 元刑事であり元力士であり元饅頭の皮職人であり元NINJAであり元砂金掘りで元FBIで元ICPOで元フランス外人部隊……
 つまりは万の経歴を持つ男、宇賀神の探偵としての直感を越えた超人的な思考回路が言っていた。このロワにおける回答を七色の脳細胞がはじき出す。
「まあこの話が採用される確率は限りなく低いんだ。本来出典すら違う(※元は町痛のキャラ)のにクトゥルフ物フリーゲームのオマケストーリーにメタ発言全開で乱入した存在(おれたち)や、ギャグ漫画の狂人をうっかり採用したらロワがまともに成立するとは到底思えないからな」
「ごめんなさい何かとても今言っちゃいけないことを言った気がするんだけど」
「気にするな。男の度量と言うものはこういう時こそ試されるんだ」
「絶対ウソだ……」

 落ち着いた宇賀神は唯一正常な精神構造を持った男に見えたのだが、どうやら全くの気のせいだったようだ。ある意味一番手に負えない男な気さえしてきた。
 この男は果たして対主催なのだろうか? かといって殺し合いに乗っているようにも見えない。
 完全な狂人だ。
 他のやつらも対主催だったとしてもやはり狂人だ。


491 : ヘンタイ・デュエル ◆ruUfluZk5M :2022/06/29(水) 23:19:11 UgbxFNxo0
「ともかく、俺たちは宝井のムチャに手を貸すつもりだ。やつのムチャが突破口になりそうなんでな」
「あの……じゃあ肝心の宝井さんとかはこの戦いに……」
 おそるおそる聞いてみると。
「ははは、面白いことを言うね君は。誰かを殺して得た優勝なんてどれほど辛くても安易な道だよ。そんなつまらんムチャを私はしないさ」
 どうやら当人なりの美学で生きているようだった。
 
 指名手配犯・宝井清。
 ムチャの連続で全国指名手配の犯罪者にまでなった男。

 今ここに集った者たちは、しかしその宝井の神が相手だろうと刃向う狂ったムチャに賭ける気満々だった。
「さあ、また旅に出発だ! 俺の支給品のキャンピング・カーに乗るぞ!」
「キャンピング・カーでこの破壊された場所を走るのは……」
「安心しろ。俺は万の経歴を持つ男。当然ドライビングテクニックも超一流だ。瓦礫だらけの道も舗装された道路に等しい」
宇賀神の根拠になってない異常者の言葉にミネルバはツッコミを入れるのをやめた。

「……わー、すごーい」
 瓦礫だらけの道を平然と奇矯な動きでするする通っていくキャンピング・カーの姿にミネルバはどっと疲れたように棒読みで褒める。
みんながみんな、各々の図太さでロワに適応していた。変態たちに巻き込まれたミネルバX以外。
(助けて、お姉ちゃん)


492 : ヘンタイ・デュエル ◆ruUfluZk5M :2022/06/29(水) 23:20:49 UgbxFNxo0
【ムチャおじさん(宝井清)@+チック姉さん】
[状態]健康、ムチャ
[装備]全国指名手配(メジャーデビュー)の宝井清の手配書@+チック姉さん
[道具]なし(全国指名手配の手配書以外はミネルバXにあげた)
[思考・状況]
基本行動方針:ムチャがしたい。
1:ムチャがしたい。
2:ムチャがしよう。
3:ムチャをした。
[備考]
 ムチャです。

【チャハーン@クトゥルフの弔詞】
[状態]変態
[装備]
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2、ミニ五郎のワンカップ酒@現実
[思考・状況]
基本行動方針:チャハーンは正義の味方なので困っている人を助ける。
1:わーいドライブだぁ
[備考]
 脳みそが空(比喩ではなく物理的)の状態なので脳や神経に作用する攻撃が効きません。
 チャハーンエクスプレス(超音速飛行電車ごっこ)や能力の制限はお任せします。

【宇賀神=ミハエル=恭介@クトゥルフの弔詞】
[状態]健康
[装備]
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜2、キャンピング・カー
[思考・状況]
基本行動方針:探偵としてこの事件を解決する。
1:わーいドライブだぁ
[備考]

【ミネルバX@ロボットガールズZ】
[状態]健康、憔悴
[装備]
[道具]基本支給品×2、ランダム支給品0〜4(ムチャおじさんの分含め)、金属バット
[思考・状況]
基本行動方針:この戦いから逃げたい。
1:変態の相手はもう嫌だあ!
2:凄く嫌だけどこの人たちが心強い仲間なことには違いない。
[備考]

【美女丸@伊賀淫花忍法帳】
[状態]健康、ホモ
[装備]忍者服、忍者刀
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本行動方針:この怪しげな決闘ろわいやる、いかに突き崩すか。
1:俺はホモだぁーっ!!!
2:参ったな、彼らに怪しまれてしまったぞ。
[備考]
 ホモをバカにされると暴走し殺戮の限りをつくします。


493 : ヘンタイ・デュエル ◆ruUfluZk5M :2022/06/29(水) 23:21:52 UgbxFNxo0
【NPC紹介】
ゴブリン穴埋め部隊@遊戯王OCG
星4/地属性/戦士族/攻1500/守 400
罠や落とし穴を無効にする効果があるため、ロワに出現した場合も罠や塹壕の類は軒並み見破り襲ってくる可能性があった。
が、穴を埋めることは得意でも穴を掘られることには慣れてなかったと見える。


494 : ◆ruUfluZk5M :2022/06/29(水) 23:22:17 UgbxFNxo0
投下終了です。


495 : ◆ruUfluZk5M :2022/06/30(木) 00:16:39 m29ZlHS60
すいません、修正描写を以下に追加します。

 なにやら危ないことを叫びながら、美女丸は悶えつつ死体を更に粉みじんにして、ホモの権利向上を叫ぶのであった。
「俺は、俺は世間にホモを誇れる社会を望むぞぁーっ!!」
 しばらく興奮のまま周囲を破壊し尽くしてはぁ、はぁと荒げた息が落ち着くと、美女丸はそうだ逃げていった彼らにも事情を聴かねばと先ほどのキャンピング・カーを追いかけていった。

 ●


 なにやら危ないことを叫びながら、美女丸は悶えつつ死体を更に粉みじんにして、ホモの権利向上を叫ぶのであった。
「俺は、俺は世間にホモを誇れる社会を望むぞぁーっ!!」
 しばらく興奮のまま周囲を破壊し尽くしてはぁ、はぁと荒げた息が落ち着くと、美女丸はそうだ逃げていった彼らにも事情を聴かねばと先ほどのキャンピング・カーを追いかけていった。
 血だまりのすぐ近くには死んだ者らの支給品もろもろ、しかも3人分が残されていたが、それらが果たして強姦と惨殺の重なった現場でどれほど損壊していないかは定かではない。
 ゴブリンと強姦魔の汚物めいた残骸に満ちたその場からわざわざ支給品を回収する参加者が居れば、その内容も伺いしれるだろうが。
 
 ●


496 : ◆diFIzIPAxQ :2022/06/30(木) 00:26:48 aXoUD5A60
投下します


497 : THE BEGINNING ◆diFIzIPAxQ :2022/06/30(木) 00:28:42 aXoUD5A60
「クックックッ…………ハァーハッハッハハハハハハハハ!!!!」

人の気配はおろか、NPCの気配も感じない荒野で、一人の男が嗤う。
参加者を刈り、蹂躙していく立場のNPCがいないのは単純に近くにいないからか、それとも男の存在の恐ろしさを本能で理解しているからか。

男の名は、アーカード。
彼は人間ではない。数世紀の時を生きる吸血鬼だ。

「デュエル! 決闘! 見せしめの人間! この首輪! 
 なんとまあ欺瞞に満ち溢れた果たし合いであることだろうか!」

彼の発する言葉に怒りや悲しみなどは感じ取れない。あるのは喜びと期待だ。実際に彼は今、まるで無邪気な子供のように破顔している。
アーカードが望むのは、一心不乱の果てなき闘争。そしてこの地は戦いの為に用意された戦場に対して彼が喜ばない訳はなかった。

「冥府の王よ。オリュンポス十二神の1柱を名乗る悪魔よ。私はお前の望むままにこの決闘を踊ってやろうではないか!
 お前の云う数多の世界から、あえて私を選んだという事はそういう事なんだろう。」

始まりのデモンストレーションともいえる場において、如何なる手段を使ったか原理は不明だが、幾年の時を生きる暴力の化身とも云えるアーカードさえもあの場では動く事は出来なかった。
しかし、アーカードは吸血鬼。血の匂いや味で人間と吸血鬼の違いを理解できるように、あの場には多くの強者が存在する事を姿を見る事無くとも、肌で感じ取れた。
アーカードは強き者を常に求める。自分の退屈を癒してくれる強敵を、自分を楽しませてくれる強敵を、そして自分を滅ぼしてくれる強敵を。

目は細まり口の端がにやけ、これからの決闘(じごく)をアーカードは想起する。

自分がこれから出会う参加者はどのような者たちなのか!

闘いの恐怖を乗り越え、怪物(オレ)に立ち向かう輝かしい人間なのか!

それとも、食屍鬼(グール)が如く無差別に牙をむけてくる殺戮者なのか!

はたまた、友好を向ける笑顔の裏で策略を練る、策士きどりの愚者なのか!

Hurry! Hurry!! Hurry!!!

嗚呼、想像するだけで愉しみに満ち溢れる!


「さあ来い参加者(ヒューマン)達。私は"ここにいる"ぞ」

【アーカード@HELLSING】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、不明支給品(1〜3)
[思考]
基本:決闘/殺し合いを楽しむ。
1:サーチアンドデストロイ。容赦はしない
*参戦時期は、1巻〜4巻の間のどこかです


498 : ◆diFIzIPAxQ :2022/06/30(木) 00:29:37 aXoUD5A60
投下終了です


499 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/30(木) 00:36:17 Kvzqh2Mo0
投下します

遊戯王OCGのカードについて独自の解釈を含んでおります


500 : 空に月が 花にミツバチが 必要なのと同じように ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/30(木) 00:37:18 Kvzqh2Mo0
ここは会場内にあるツリーハウスの近く、そこでは一種奇妙な光景が広がっていた。

そこではなんとスズメやツバメ、カナリアに青いコマドリなどの小鳥たちを模したスーツを着ているような姿をした女性たちが、覆面レスラーを思わせる格好をしたコンドルの鳥人に情熱的な目線を向けながら彼の後を付いて行くという光景が広がっていた。

なぜこの場所がそんな状態になっているのかというと、それは数分前にさかのぼる……
-----------------
ここは会場内にあるツリーハウスの中、そこでは赤や緑などの鮮やかな羽根をした鳥人が怒りに燃えていた。

「ハ・デスとやら……貴様の行いには戦いの美学というものがない」

その鳥人の種族名はルチャブル。かくとうタイプとひこうタイプを併せ持つレスリングポケモンである。

そんな彼が怒りに燃えている理由、それは当然ながらこの殺し合いによるものだった。

『戦う意思のないものを無理やり連れて行き、そして命のやり取りをさせる』……それは彼の美学に反するものだったからだ。

「故に貴様はこの私、ルチャブルと……この地にいるであろう、私と同じ思いを抱く戦士たちが全力をもって打ち倒させてもらうぞ!」

そして彼はツリーハウスのデッキから外に出て、空を見上げながらどこかで自分を見ているであろうハ・デス達主催者に向けての宣戦布告を叫んだ。

「……さて、そういえば奴らは何か"道具を渡す"みたいなことを言っていたな……念のため確認してみよう」

それからしばらくして、彼は自身に支給されたものは何なのかを確認し始めた。すると……

「うおぉぉっ!何だ君は!?モンスターボールもないはずなのに、いったいどうやってこの中に入っていたというのだ!?」

何とそこから青い肌に青い髪の鳥人の娘が飛び出してきたのだ。

「♪♪♬♪♪、♪♪!♪♫♪♪、♪♪♬?」

それに対し彼女はルチャブルの質問に答えているのかは分からないが、彼を見ながら楽しげに微笑んで歌い始めた。

(……歌声で会話をしているのか?何を伝えたいのかはうまく理解できていないが…黙っているのは無礼だろうな)
「ん…♪♩♬、♪♩♩、♪♩♩……」

そう考えた彼は咄嗟に思いついた音程を口ずさみ、彼女との対話を試みた。その結果……


501 : 空に月が 花にミツバチが 必要なのと同じように ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/30(木) 00:37:51 Kvzqh2Mo0
「♪♪!♪♫♪♩♪!!」

目の前にいた彼女は興奮した様子で熱を帯びた視線で彼を見ながら、その周囲を飛び回りだした。

(……どうやら、上手くいったらしいな)

それを見たルチャブルは、何とか彼女とコミュニケーションをとることに成功したと認識した。

そんなさなか、突如としてツリーハウスの入り口めがけて何かが入り込もうとしてきた。

『グルアアァァァァァッ!!』

それは鎧のような固い身体をしたトカゲの怪物だった。

「新種のトカゲのポケモン……?貴様、何者だ?」

その姿を見たルチャブルは怪物に対し何者かを尋ねた。

『ガアァァァァァッ!』

しかし彼のその言葉に対し怪物は鋭い牙による噛み付きで答えたのだ。

「……問答無用か。ならば押し通させてもらうぞ!」

彼は怪物のその行動を宣戦布告と認識し、その両手で怪物の口をこじ開けてそこから抜け出した。

「突破するぞ、付いてこい!」

そしてルチャブルは先ほどの青い鳥人の娘にそう言うと優雅に宙を舞い、目の前にいるトカゲの怪物へとタックルを放った。

「『ブレイブバード』!!」

そしてその言葉と共に彼は目にもとまらぬ速さとなり、その結果彼にタックルされたトカゲの怪物は勢いよく吹き飛ばされてそのままツリーハウスから落下していった。

「ぐぅっ……好機!続けて行くぞ、『フライングプレス』!!」

彼は自身が使った技の反動でよろめきながらもデッキから飛び上がり、そのままの勢いで先ほど落下したトカゲの怪物にボディプレスのような技をかけたのだ。

それにより怪物は内臓を傷つけてしまったのか口から血を噴き出し、そのまま動かなくなっていった。

「……10カウント、私の勝利だ」

その光景を見届けたルチャブルは静かにそうつぶやき、自らの勝利を宣言したのだった。

-----------------
そして舞台は現代に戻り……

「私はこれからともに戦う仲間を集め、そしてハ・デスを打倒しようと考えている……ともに戦ってくれるか?」

無事に怪物を倒し、ツリーハウスから脱出した彼は目の前にいる青い鳥人の娘《LL-アンサンブルー・ロビン》を含むモンスターたちに対して今後の目的を説明していた。

「♪♫♪♬!」

それに対し彼女たちはそれにうなづき、彼のその言葉を肯定するかのように歌を歌った。

しかし彼は知らなかった。先ほど彼女たちと対面した際に使った歌が、どのような意味で伝わっていたのかを。


502 : 空に月が 花にミツバチが 必要なのと同じように ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/30(木) 00:38:37 Kvzqh2Mo0
「♪♪♥♪♫♪♪♥♪♬♪♥♥♥」
(翻訳:出会っていきなり愛の告白をしたことで引かれると思ったけど、まさかあんな情熱的な返事をしてくれるなんて……!)

彼女たちが最初に歌った歌は求愛の歌であり、ルチャブルが返した歌の音程はその求愛に応じる意味を持つものであったことを……。


【ルチャブル@ポケットモンスターシリーズ】
[状態]:鎧蜥蜴の噛み付きとブレイブバードの反動によるダメージ(小)
[装備]:デュエルディスクとデッキ(LL《リリカル・ルスキニア》)@遊戯王OCG
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜1
[思考・状況]基本行動方針:ハ・デスたちを倒し、皆を救う。
1:ハ・デスたちを倒すために、ともに戦ってくれる仲間を探す。
2:さっきの人(武藤遊戯)を探しに行く。
3:彼女たち(LL《リリカル・ルスキニア》)はどこから来たポケモンなのか?
4:……ポケモントレーナーというのは、こういった気分だったのだろうか?
[備考]
性別はオスで、特性は『かたやぶり』です。
また、覚えている技はブレイブバード、フライングプレスです。
(残りの技構成は採用された場合に後続の書き手様にお任せいたします)
デュエルディスクとデッキの使い方を理解していません。
そのため自分が召喚したモンスターのことを『理由は分からないが自分に懐いている、新種のポケモン』と思っています。


『NPC紹介』
【鎧蜥蜴@遊戯王OCG】
通常モンスター
星4/地属性/爬虫類族/攻1500/守1200
かたい体のトカゲ。大きな口で噛みつかれたら、ひとたまりもないぞ。


『支給品紹介』
【デュエルディスクとデッキ(LL《リリカル・ルスキニア》)@遊戯王OCG】
ルチャブルに支給。『LL《リリカル・ルスキニア》』カテゴリーのカードを中心にした鳥獣族デッキで、
切り札は《LL-アンサンブルー・ロビン》、《LL-アセンブリー・ナイチンゲール》及び《LL-インディペンデント・ナイチンゲール》。
(詳細なデッキ構成については後続の書き手に任せます)


『施設紹介』
【ツリーハウス@現実】
生きた樹木を建築上の基礎として活用する、人用の家屋。
1本の木を支柱にして作られることが多いが、安定性を考慮して複数の木々を支柱として利用することもある。
なお一般的に使用される樹木として最も理想的なのはモンキーポッド(『日立の樹』として有名)とされており、先ほどルチャブルたちがいた場所の樹もそれである。
(他に適した植物としてはリンゴやオークの樹、マンゴーにカエデなどがある)


503 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/30(木) 00:39:21 Kvzqh2Mo0
投下終了です

以上、ありがとうございました。


504 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/30(木) 01:01:24 5cDIQu2k0
投下します。


505 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/30(木) 01:01:55 5cDIQu2k0
「……ふざけやがって…!何が決闘だ!回りくどく言っても結構殺し合いしろって言ってるのと同じじゃねえか!」

会場のどこかにて、青いバンダナを頭に巻いた男は主催への怒りを露わにする。彼の肩書きはビサイド・オーラカの元キャプテン兼コーチ。そして召喚士ユウナのガード。そんな男の名前はワッカというのであった。

「最悪だぜ……勝手に殺し合いなんてもんに巻き込まれるなんてよ…」
(昔のオレならまあ、この機械で出来てそうな冷てえ首輪を勝手に着けられてる…って時点でめちゃくちゃに怒ってただろうな…。)

などとふと考えたワッカ…だが、それはそれとして彼は怒っていた。勝手に呼ばれて殺し合いを強制されているから…だけではない。
先程の遊戯と呼ばれていた男の、友を目の前で奪われた慟哭の叫び…『シン』により両親を、そして弟をも殺された過去があるワッカからすれば…失った者が弟か友かの違いこそあれど、遊戯が抱いているであろう悲しみはある程度察しがついたのである。

「遊戯つったな…絶対落ち込んでるだろうな…探してやらねえと」

そう言いながら、無意識の内に自分が決闘に呼ばれる直前の出来事から目を逸らそうとしていたワッカであった…が、とりあえずバッグの中身を見ようとした事によって、それと向き合わされる事になる。

「……どういう事だよ……これって…まさかあいつの……」

バッグの中から最初に見つけた物はブリッツボール…それも、この決闘に呼ばれる前に夢として消えて行った、ワッカからすると弟分的存在である青年ティーダが持っていたそれと同じ物であった。

「……クソッタレ!オレにあいつのブリッツボールで人を殺させたいのかよ…舐めやがって…!!」

そう怒りながらも、同時にワッカの心中には悲しみと後悔の感情が湧き出す。

(……あいつ、知ってたはずだ…エボン=ジュを倒したら、祈り子は夢を見るのをやめて…夢のザナルカンドの住人だった自分も消えちまうんだって…。
…だってのにオレは…言っちまったぞ!?
「全部終わったらよ、お前のザナルカンド探しだな」……って!!
あいつの気持ちも知らないでさあオレは……なのに……なのにあいつは……クソっ!!)

ブリッツボールを片手にしたまま立ち尽くし、感情がない混ぜになったワッカはついもう片方の手で壁を殴る。
その後であった。

「……え、えっと…どしたの…?大丈夫…?
…あっ!アタシは決闘に乗ってないから安心して!」

褐色肌でツインテールの髪型をしていて、下が下着のような物だけな少女が心配そうに彼に声をかけて来たのは。

ーーーー

あの磯野って人と、ハ・デスって人がなに言ってるかは…あんまりわかんなかった。でも……本田って人をあんな……あんなひどい殺し方したってだけで、アタシはあの人たちをウィッチとして止めなきゃ…って思って…だから最初アタシは「武藤遊戯」って人を探してうろうろしてた。…あの人にとって本田って人は、友だちだっただろうから…芳佳が来る前のバルクホルン大尉やペリーヌみたいに、背負い込んでないかと……シャーリーに出会う前のアタシみたいに、悲しさや寂しさを感じててもおかしくないって…心配になったんだ。

そしたら…凄い悲しそうな顔してた男の人が、壁殴ってて……遊戯って人は探したいけどっ、でもこの人をほっとけないって…だから話してみたの。

……乗ってないってアタシは信じる。きっと…こういう時芳佳ならそうするから。シャーリーだってきっと…どうするか考えそうだけど…最後にはほっとけないってなると思う。

こゆときシャーリーなら、気が効く言葉言えたりするのかなあ…。

ーーーー

こうして男と少女は出逢った。この殺し合いの場の中で…どのように進んでいくは、未だ誰も知らない。


506 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/30(木) 01:02:07 5cDIQu2k0
【ワッカ@FINAL FANTASY Ⅹ】
[状態]:健康、主催への怒り、悲しみと後悔(大)、武藤遊戯への心配
[装備]:ティーダのブリッツボール@FINAL FANTASY Ⅹ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:殺し合いに乗る気は無い
0:最悪だぜ…
1:…カッコ悪いところ、見られちまったみてえだ。
2:あいつ(ティーダ)の気持ちも何も知らねえでオレは…!!
3:…こいつ(ルッキーニ)、リュックよりもっと年下、って感じか…?
4:あの遊戯って奴が心配だな…。
5:ユウナ達まで巻き込まれてなきゃいいけどよ…。
[備考]
※参戦時期はエボン=ジュを撃破しティーダが消滅してからです。
※技やオーバードライブ技の獲得状況、及びオーバードライブ技を使用可能な場合の発動条件については、後続にお任せします。

【ティーダのブリッツボール@FINAL FANTASY Ⅹ】
ティーダがオーバードライブ技である「エース・オブ・ブリッツ」にてオーバーヘッドシュートする際に使うブリッツボール。原作ではティーダに対する好感度が1番高い女性陣がこのボールのトスを行う。

【フランチェスカ・ルッキーニ@ストライクウィッチーズシリーズ】
[状態]:健康、主催者を止めるという決意、武藤遊戯やワッカへの心配
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:ウィッチとして殺し合いを止める
0:こゆときシャーリーならなあ…
1:とりあえずこの人(ワッカ)と話してみる。
2:芳佳やシャーリーなら…信じるよねきっと。だからアタシも信じる!
3:…遊戯って人、大丈夫かな…。
4:あんな悲しそうな顔してる人、ほっとけないよ…ウィッチだもん、アタシは!
[備考]
※参戦時期は「ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN」終了後からです。
※作中にて舞台になっている年代が1946年な為、それ以降に出来た物についての知識は原則ありません。


507 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/30(木) 01:02:47 5cDIQu2k0
投下終了です。タイトルは「ガードwithウィッチ」です。


508 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/30(木) 01:42:49 5cDIQu2k0
拙作の「ガードwithウィッチ」の修正をさせて貰います。

「……クソッタレ!オレにあいつのブリッツボールで人を殺させたいのかよ…舐めやがって…!!」

「……クソッタレ!オレにあいつのブリッツボールで参加者を殺させたいのかよ…人をコケにしやがって…!!」

【フランチェスカ・ルッキーニ@ストライクウィッチーズシリーズ】
[状態]:健康、主催者を止めるという決意、武藤遊戯やワッカへの心配
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:ウィッチとして殺し合いを止める
0:こゆときシャーリーならなあ…
1:とりあえずこの人(ワッカ)と話してみる。
2:芳佳やシャーリーなら…信じるよねきっと。だからアタシも信じる!
3:…遊戯って人、大丈夫かな…。
4:あんな悲しそうな顔してる人、ほっとけないよ…ウィッチだもん、アタシは!

【フランチェスカ・ルッキーニ@ストライクウィッチーズシリーズ】
[状態]:健康、主催者を止めるという決意、武藤遊戯やワッカへの心配
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:ウィッチとして殺し合いを止める
0:こゆときシャーリーならなあ…
1:とりあえずこの人(ワッカ)と話してみる。
2:芳佳やシャーリーなら…信じるよねきっと。だからアタシも信じる!
3:…遊戯って人、大丈夫かな…。
4:あんな悲しそうな顔してる人、ほっとけないよ…ウィッチだもん、アタシは!
5:芳佳やシャーリーたちまで呼ばれてたら…それはヤダけど、もしそうなら…一緒に殺し合いを止めたい!


509 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 01:45:42 HDozZHCg0
投下します


510 : そして道化は再び足掻く ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 01:47:43 HDozZHCg0
 ハロー、ワールド。ナグスケです。
 最後に一言……って言ったけど、俺は今また新たなゲームに巻き込まれています。
 みんなは魔界や冥界という言葉を信じるかな?
 ――俺もこの目で見て、この体で体験するまではそんなフィクションを信じようとは思わなかった。
 でもGARO -VERSUS ROAD-に巻き込まれて―――否が応でも現実にそんな有り得ないものが存在するって知ってしまったんだ。

 俺達はGARO -VERSUS ROAD-で玩具のように命を弄ばれ、黒幕共の兵器を作る為に利用された。
 あの後、空遠がどうなったのか―――最終決戦を前に脱落した俺にはわからない。
 でも俺は信じてる。あいつが最後まで戦って、俺達を弄んだ奴らに一矢報いたって。


 〇


「くそ……っ!」

 ナグスケという名前でYチューバーをしていた男、南雲太輔は一人呟くと拳を地面へ叩きつけた。
 独り言の内容からもわかるように彼は一度、死んだ身だ。
 それが傷一つない状態で蘇った。あんなにも溢れていた血が、一滴も垂れ落ちない。

「また俺は利用されるのかよ……!」

 ナグスケはGARO -VERSUS ROAD-の真実に最も近付いた男だ。
 独自の調査でその秘密を知り―――そして知りすぎたがゆえに運営側から目を付けられた。
 GARO -VERSUS ROAD-の真の目的は陰我を集め、最強の鎧を作ること。陰我を効率良く集める為にあんなゲームでプレイヤー同士に争わせたのだ。人間同士の醜い争いほど陰我を簡単に集める手段はない。

 ナグスケはゲームを止めようと奔走したが志半ばで死亡してしまう。空遠という信じられる仲間に後を託すことは出来たが―――それでもやっぱり死ぬのは怖かった。

 ―――そしてナグスケは再びデスゲームに呼ばれる。
 彼はまたしても何らかの計画に巻き込まれてしまったのだ。
 磯野やハ・デスの説明は慎重に聞いていた。何か情報を得られる可能性があるからだ。

 無数の世界―――あまりにもぶっ飛んだ言葉だが、魔界の存在を知るナグスケは自然とそれを受け入れた。
 一枚のカードにより生まれた存在―――こればかりは耳を疑ったが、しかしあまりにも現実離れしたゲームを経験し、ホラーという化け物を目にしているナグスケはこれも情報の一つとして覚えておくことにした。

 あのクソゲームの経験が活きるというのは複雑な心境だが、今はこのゲームをなんとかすることを優先する。
 優先するべきだが―――やはり怒りの感情は抑えきれない。

 だから彼は拳を地面に叩き付けたのだ。
 ナグスケは怒る。

 人々を玩具のように扱い、その命を弄ぶ奴らに。
 一度は死亡したのに再び復活して、またこんなゲームに巻き込まれた理不尽に。
 またしてもクソ野郎共の身勝手な理由で計画に巻き込まれている、今の状況に。

 ―――こんな事をされて怒らず冷静でいられるほど、ナグスケは出来た人間ではない。

「俺は。俺達は、お前らの玩具じゃねぇんだよ!」

 死んだと思ったら蘇生されて、またゲームに放り込まれる。
 まるで玩具のような扱いだ。ハ・デスはプレイヤーを駒呼ばわりしていたが、ナグスケが受けた仕打ちは正に駒のようなもの。

 必死に真実を追求して、ゲームを止めようとするも志半ばで死亡して、今度はまた違うゲームに参加させられた。これでは道化もいいところだ。

 ―――だがナグスケは諦めていない。

「今度こそ、こんなゲームは止めてやる……!」

 世に蔓延る悪を見逃すつもりはない。
 この現実を見て見ぬふりをする気もない。真正面から向き合い、こんなゲームは中止させてやる。
 相手は冥界の魔王だが―――ナグスケは目を背けない。彼の拳は戦う為にある。

 だから戦うのだ。―――信じれば誰だってヒーローになれるから。

 そんなナグスケには一本の聖剣が支給されていた。
 空遠が後にガロになったように―――ナグスケにも彼がヒーローになるための聖剣が。


【南雲太輔@GARO -VERSUS ROAD-】
[状態]:健康
[装備]:雷鳴剣黄雷&聖剣ソードライバー&ランプドアランジーナワンダーライドブック@仮面ライダーセイバー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:ゲームの真実を暴き、終わらせる
1:手を組める仲間がほしい
2:ゲームの真実を暴く為に情報を集める
[備考]
※参戦時期は死亡後
※バーサスロードに参加していた時と同等の身体能力を誇り、現実世界よりも身体能力が強化されています


511 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 01:48:08 HDozZHCg0
投下終了です


512 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 02:39:20 HDozZHCg0
投下します


513 : 黄金騎士はデュエルの終幕を決意する ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 02:42:40 HDozZHCg0
 ―――どうして僕は蘇ったんだよ……!
 星合翔李は―――理不尽にもホラーに憑依されてしまった悲劇の男は、自分が生き返ってしまったことを嘆いた。

 彼は本来、陰我とはかけ離れた存在だ。
 しかしGARO -VERSUS ROAD-の運営はそれを知った上で彼をプレイヤーとして選び―――そして起爆剤として利用された。

 星合は醜い争いが起こるゲームでも最後まで人を殺したり蹴落とそうとはせず、必死に生き残っていた。
 そんな陰我が全く存在しない彼でも運営のさじ加減一つでホラーになってしまう。だが最後まで彼はゲームに抗い、ホラーになって人々を殺すことを嫌がり―――首輪のスイッチを押すことで自爆。誰一人として犠牲者を出すことなく、この世を去った。

 これにて星合翔李の物語は―――悪魔によって弄ばれた人生は終わったはずだったのだ。
 だがいつの間にか蘇生された挙句、またしてもゲームに巻き込まれた。
 しかも運の悪いことにホラーに憑依された状態で―――。

 ―――運が悪い?
 果たして本当にそんな理由なのだろうか?
 主催者が明確な悪意を持って彼をホラーとして参加させたのではないのだろうか?

 とにかく自分がホラーとして犠牲者を出したくないと願った星合は自分に着けられた首輪を確認する。
 ゲームの時とは材質が違いそうだが―――もしもあのゲームと同じルールならば、スイッチを押すことで自決出来る。
 藁にもすがる思いで星合は首輪を何度も触り、スイッチを探すが―――なかなか見付からない。

 それも仕方のないことだ。この首輪に爆破スイッチなんてないのだから。

「誰か、殺して……」

 意識が朦朧としてくる。
 まだギリギリ保っていられるが、そろそろ限界だ。このままだとホラーとなって誰かを殺してしまう。
 そんなことを星合は望んでいない。それにせめて……人間として死にたい。

 でもそれは難しいことだろう。
 星合はホラーの強さをこの目で見て、よく知っている。
 だから今の自分を殺せる者なんて、なかなか―――。

「―――わかった」

 絶望する星合の前に白コートの男が現れ、力強く返事をした。
 まるで金色のオーラを纏っているかのような―――気高く、眩い魂を宿した男だ。

 返事は短く、あまりにも無骨。
 だが鍛え上げられた肉体や歴戦の英雄のような雰囲気は、星合にとって光にすら思えた。

「貴様の陰我、俺が断ち切る―――!」

 男は剣を構え―――星合を難なく切り捨てた。
 ホラーと人間では圧倒的に力の差がある。

 だが男は―――冴島鋼牙は普通の人間ではない。
 魔戒騎士。それも黄金騎士ガロの称号を持つ者だ。
 ガロの称号を景品として行われていたゲームのプレイヤーは、牙狼によってその魂を救済された。

「ありがとう……」

 星合は自分を殺した鋼牙を憎むことなく―――むしろ彼の存在に感謝した。
 自分がやっていたゲームのキャラクターに似た服装の英雄に。

「このゲームを……終わらせて……」

 それは親友である空遠への言葉であり、自分を殺してくれた名も知らぬ英雄―――冴島鋼牙への願いでもある。

「ああ。この決闘は必ず俺が終わらせる」

 鋼牙の力強い返事を聞くと、星合は静かに目を閉じ―――その肉体が灰と貸す。バーサスロードでゲームオーバーになった者と全く同じ末路だ。

 カラン、カラン―――。
 首輪の落下音が虚しく響き、鋼牙はそれを手に取る。これはホラーになりかけていた名も知らぬ男の形見だ。この決闘を終わらせるには首輪を外すことが必要不可欠であり、この首輪は何かの役に立つかもしれない。

 星合翔李は運命に弄ばれて二度目の死を迎えた。
 だが彼の意志は黄金騎士ガロ―――冴島鋼牙が受け継いでくれることだろう。
 どんな醜い争いでも他者を踏み台にしない心優しい男は、首輪を遺すことで死してもなお誰かの力になったのだ。

【星合翔李@GARO -VERSUS ROAD- 死亡】


【冴島鋼牙@牙狼-GARO-シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:冴島鋼牙の魔戒剣@牙狼-GARO-
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:守りし者として人々を守る。この決闘も終わらせる
1:首輪の解析が出来そうな参加者を探し、この首輪を託す
[備考]
参戦時期は牙狼-GARO- 〜MAKAISENKI〜終了後


514 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 02:42:58 HDozZHCg0
投下終了です


515 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 02:50:42 HDozZHCg0
>>513
星合の分が抜けていたので鋼牙の状態表を修正します

【冴島鋼牙@牙狼-GARO-シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:冴島鋼牙の魔戒剣@牙狼-GARO-
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜5、首輪(星合翔李)
[思考・状況]基本方針:守りし者として人々を守る。この決闘も終わらせる
1:首輪の解析が出来そうな参加者を探し、この首輪を託す
[備考]
参戦時期は牙狼-GARO- 〜MAKAISENKI〜終了後


516 : ◆wJPkWOa93Q :2022/06/30(木) 04:41:12 rJaA95us0
投下します


517 : セキュリティのプライド ◆wJPkWOa93Q :2022/06/30(木) 04:43:37 rJaA95us0
「たくっ、どうなってやがる……。あの遊戯と本田はどう見ても、俺がボディガードをやろうとしてた頃の……」

牛尾哲は、先ほど繰り広げられた殺し合いの開幕と惨劇の一部始終をもう一度頭の中で再現し、その矛盾について思案していた。
彼は武藤遊戯が千年パズルを完成させる以前、まだ城之内克也とも遊戯が友達にもなっていない頃に、
虐められていた(といっても、ちょっかいを掛けてくる城之内に、遊戯も相応には言い返せていた程度には対等ではあるが)遊戯にボディガードとして自分を無理やり売り込み、代わりに20万円という高校生としては大金をせびるという実質的なカツアゲ行為を行っていた過去を持つ。
しかし、目の前でその城之内達をリアルファイトで完膚なきまでに打ちのめしたものの、それが心の優しい遊戯の怒りに触れ、結果として千年パズルを完成させ現れたもう一人の遊戯に闇のゲームで制裁されてしまった。

「あの遊戯も千年なんたらとかいう、俺をとっちめた時の変なネックレスをしてやがるし……こいつはいよいよ分からなくなってきやがったな」

その後、もう一人の遊戯に敗北して罰ゲームを受けたもののお金に恐怖感を植え付けられた以外は、特に後遺症もなく、少なくとも遊戯がもう一人の遊戯と決別し、名もなき王を冥界へと還して以降、不動遊星が生まれ、童実野町がネオ・ドミノシティとして呼ばれている頃には、セキュリティと呼ばれる警察組織に、刑事として籍を置いている。
元々、風紀委員であり遊戯に対してもギャラは破格の額だが、一応筋を通して遊戯に害を与えていた城之内達を締め上げていた事から、正義感も相応にはあり、天職ではあったのだろう。

「ハ・デスって言えば、有名なカードだが……もしかして、本当に過去の時代から遊戯達を呼んできたってのか?」

当然、あの世界の警察官を務める以上、デュエルは必須項目であり牛尾も高い実力を誇るデュエリストだ。
悪人をデュエルで拘束するのは、常日頃から当たり前であり、後に英雄となる不動遊星すらも何度も苦しめさせた。
それ故、本田を殺害したあの異形がデュエルモンスターズであるのはすぐに分かった。

「まあ、冥界の王が居るってのは間違いなくこの目で見てるしな。……色んな世界があるってのは、確かなんだろう」

この異常事態に対し、社会で培われた常識から飛躍した展開に付いていけなくならないといえば嘘になるが、だが疑っているだけでは前には進めない。
何より、今この場で牛尾哲という男が何をすべきか。
それはもう、火を見るよりも明らかだ。だからこそ、彼は戸惑いこそすれ迷うことなくすんなりと事態を受け入れた。

「待ってろ遊戯。
 ボディガードってわけじゃねえが、今のオレはセキュリティだ。身内を殺された一般市民を放っておくにはいかねえ」

恨まれているのは重々承知だ。こちらも謝罪したこともない。
なんなら、あの時代の遊戯が呼ばれているのなら、牛尾に闇のゲームを挑んだもう一人の遊戯が憑りついているかもしれない。正直、言えばそれに苦手意識がないとも言えない。
もしかしたら先述の件で警戒され、殺し合いという状況のなかパニックに陥った遊戯から攻撃を受ける事だってありえる。それだけのことを自分はしてきたし、文句を言える立場ではないと自覚もしてる。
はっきり言えば、もう会いたくはない。考えうる限り、牛尾にメリットは何もない。

だが、かつての傲慢で身勝手な風紀委員だった頃とはもう違う。刑事であり、デュエリストであり――――こんな殺し合いを断じて認める訳にはいかない。

ならば、その殺し合いに反するのなら、それに巻き込まれた無辜の民を可能な限り守り上げる。それが今の牛尾に課せられた責務だろう。

「ま、俺はあいつに信頼されちゃいねえだろうが……構いやしねえさ。あいつは重要参考人でもある、何にせよ刑事が見過ごすわけにゃいかねんだ」

刑事らしい、それっぽい屁理屈で自身を鼓舞する。
そして、息を吸い一言大きく叫んだ。

「どうせ首輪に盗聴機能でも付いてるんだろう? なら一つてめえに言っておくぜ。
 ハ・デス……封印していた言葉だが、このクズ野郎……! 必ずてめえをとっ捕まえてやる!!」



【牛尾哲@遊戯王5D's】
[状態]:健康、ハ・デスに対する怒り
[装備]:牛尾のデュエルディスクとデッキ@遊戯王5D's
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:ハ・デスを逮捕する。
1:遊戯や殺し合いに巻き込まれた人達を保護する。
2:もし、遊星達もいるのなら合流したい。
[備考]
※参戦時期は本編終了以降です。
※原作、無印アニメ、アニメ2作目のデュエルモンスターズ(回想で出てきたのみ)で闇遊戯に制裁されたあの牛尾さんと同一人物です。公式がそう言ってるので。


518 : ◆wJPkWOa93Q :2022/06/30(木) 04:44:42 rJaA95us0
投下終了です


519 : ◆4u4la75aI. :2022/06/30(木) 06:07:17 UPt4cCvI0
投下します


520 : 強引niマイYeah ◆4u4la75aI. :2022/06/30(木) 06:08:02 UPt4cCvI0
金属音が響く。
モーニングスターとトライデントが弾き合う音だ。

灰色髪の少女は、この場に降り早々NPC達と出会ってしまった。
そのNPCの名はカッシーン。ある一つの世界、とある組織によって生み出された機械兵である彼等は今、冥界の魔王に仕えるだけの傀儡と化している。

一般の人間、それも幼い少女が単独で彼らに立ち向かっても当然勝ち目はない。
しかし少女は、ただの人間ではない。彼女は魔法少女だ。
一般の人間をはるかに上回る能力は、カッシーンに対応することが可能なライダー達にも通づる。
だが、それでも状況は不利であった。

彼女の持つ魔法少女としての固有能力は『精神攻撃』。能力自体は非常に強力であり、心を揺さぶることで生かすも殺すも自在となる。
だが心持たぬ機械兵相手にはどうだ。当然、通じない。
そのためただ彼女の専用武器であるモーニングスターを振り回す戦法しか取れないのだ。

「……っ!」

それこそ、カッシーン達も単体であれば簡単に対処できたであろう。
だが、集団でかかってこられればやはり数の暴力という言葉がある様、どうしてもメインは防御となってしまう。
逃げようにも、囲まれている以上タイミングが掴みづらく戦わざるを得ない。
このままでは最悪大怪我でもしかねないと彼女は判断する。なるべく目的を逃走に集中し――

「助太刀するぞ」

――突然、紅い槍が通り過ぎた。

言葉通り、助太刀に少女が現れる。
襟元の宝石から、その少女も魔法少女であると判断する。

彼女は手慣れた様に槍を振りまわし、それを多棍棒へと変えたりもしながら、カッシーン達を一人一人討っていく。
少女もそれに続き、モーニングスターを振るう。助太刀が入ったおかげか、頭部を確実に狙える余裕もできた。



――2、3分後。彼女等の周りからカッシーンは完全に消滅した。

「いきなり災難だったねぇ」

助太刀――赤髪の魔法少女は、変身を解く。


521 : 強引niマイYeah ◆4u4la75aI. :2022/06/30(木) 06:10:46 UPt4cCvI0
「……ありがとう」

「礼なんかいらねえよ、ただムカついてたから発散に使ってやったまでさ」

感謝の言葉を述べるとぶっきらぼうにそう返される。
彼女はデイパックから何かを取り出し、少女の方へ振り向いた。

「あたしは、佐倉杏子。決闘なんざ乗るつもりは無い」

手元には、一つのスティック菓子。

「食うかい?」

差し出されたそれを受け取る。
杏子はそれをもう一本取り出し、封を開け出す。少女もそれに続いた。

「ま、名前教えてくれよ。話しようぜ」

一口齧りながら彼女は問う。答えない理由もない。彼女は口を開いた。

「……あすみ、神名あすみ」

これが魔法少女達、神名あすみと佐倉杏子のファーストコンタクトだった。


◆◆◆◆

杏子からの質問は少なかった。
『ハ・デスや磯野について知っていることはあるか』。
『ゆまという少女を見なかったか』。
どちらもあすみは何も知らない。
NOと事実を答えると、杏子は『ならいい』と言い、次の話へと進めた。

「あんた、魔法少女はなったばかりだろ」

「まぁ、そんなに時間は経ってないです」

「だろうな、あんな奴らに押され気味じゃあまだまだ甘ちゃんだ」

杏子はそう突きつける。だが、続いて

「だが、別にあんたは弱いわけじゃねえ。だからここで一つ提案だ。あたしと即席でタッグを組まないか?あたしからしても誰か味方にいた方が心強いからな。あんたにも損は無いはずだぞ」

提案。あすみからしても、カッシーン達を容易く薙ぎ倒した杏子を味方につけるのは心強い。
即ち断る理由はない。

「……佐倉さんが良いなら、組みます」

「おう、タッグ成立だ。まぁうんまい棒もあげたしな」

そうけらけらと笑うと、彼女は立ち上がる。

「何かこの先方針はあるかい?無いならあたしの用事にちょっぴり付き合って欲しいんだが」

「……別にないです。付き合いますよ」

「なら、ちょっと頼むぜ、人探しさ。あんたよりもちっちゃなガキの子守をさっきまでしてたからね」

人探し。佐倉杏子は、ガキ――千歳ゆまを探すことを最優先とした。


◆◆◆◆


522 : 強引niマイYeah ◆4u4la75aI. :2022/06/30(木) 06:11:41 UPt4cCvI0
佐倉杏子が神名あすみと組んだ理由。
それは彼女が口頭で話したモノだけではない。

杏子が注目したのは――あすみの『眼』だ。

職業柄、人間の悪意というものは多く見てきている。
愚かな人間はたいてい眼が常人のソレとは違う。
そこには自分も含まれる。使い魔を放置し、人間を襲わせてまでただただ生き続けた愚かな自分の眼。

あすみの眼は、それらと同じ眼をしていた。
示すのは、必要であれば悪意を振りまける様な性格。

だがこれもあくまで杏子の直感であり主観。実際あすみはまだ何も悪意ある行動を犯してはいない。
最初交戦していた者もNPCである為、強制的に戦う羽目になったのであろう。

だからあくまでも『監視』目的である。
あすみが決闘に乗る様な真似をすれば、すぐに討てる様に。
そして何もかも未知数なこの場所、単純な戦力増強としても味方をつけるのは頼もしい。

――それに彼女がそこまでして決闘に反対する理由。
ハ・デス達に従うのが気に食わないのもある。だがそれ以上に。
幼女――千歳ゆまとの出会いが彼女を変えたのだ。

この場所でなら、少しくらい正義の味方みたく人助けでもしたっていいじゃないかと考えるくらいには。


◆◆◆◆


神名あすみの心は、悪意で満ちていた。
それは、復讐心から来るもの。

世界は汚れきっていると、彼女は十二歳という幼さで知ってしまった。
だから、そんな世界は自分が潰す。
当然、この決闘――殺し合いにも乗る。

だが、最初の時点で実力の差というものは見えてしまった。
自らより上の存在は、幾らでもいる。
自分は劣っている存在であることをを嫌でも認識させられる。

ならば劣っている存在なりに出来ることはある。
それは殺し合いに反旗を示すものの中に紛れ、やがて崩壊させること。
今、こうして力あるものを味方につけた。この調子で行けば大きな問題はないと考える。

自身の魔法は精神を操る。使い道は多い。
洗脳し、自らの操り人形にすることも可能。
記憶の奥に眠るトラウマを刺激し、絶望に突き落とすことだってできる。
魔法少女相手には魔力の差によって通じづらいが、いくらでも使い用はある。

過去の自分とは違う、今の自分は力を持っているのだ。
劣っているならば、劣っているなりにこの場を勝ち残る。
彼女はそう決めた。


◆◆◆◆


名前――神名あすみ(かんな-)。
年齢――十二歳。
髪型――銀色のボブ。
キュゥべえへの願い――自分の知る周囲の人間の不幸。
魔法少女の衣装――ゴスロリ。
使用する魔法――精神攻撃。
使用する武器――モーニングスター。
魔女名――Entbehriliche・Braut。その性質は鬱屈。
決め台詞――サヨナラ勝ち。
性格――実に陰湿。

幼い頃に親が離婚してしまい母子家庭にて苦しい生活を送った彼女。そんな生活も母と共に乗り越えてきたが、やがて過労によって母は急死してしまう。

その後母方の親戚に引き取られたものの親戚は彼女を邪魔者としか思っておらず、結果彼女は想像を絶する虐待を受ける日々を過ごすこととなってしまう。

心身共に傷ついた彼女はなんとか実の父親に助けを求めるも、彼は既に新たな家庭を築き上げ幸せな日々を送っていた。

そんな実父を見た彼女は絶望し、自身の苦しみも知らず幸福に過ごし続ける実父、そして自らを虐める周囲の人間全てを恨む。

そんな彼女の元にまるで狙っていたかの様にキュゥべえが現れ契約を持ちかける。
結果キュゥべえが運んできたたった一つの奇跡を、彼女は『自分の知る周囲の人間の不幸』という願いに使ってしまった。




――――彼女には、それ以上もそれ以上もない。
本来彼女は『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズなどには登場しない、架空の存在。
とあるインターネットの奥底、様々な人間の様々な感情が生み出した架空の魔法少女。
神名あすみは過去、映画魔法少女まどか☆マギカに登場する新たな魔法少女の偽リークを創り出し、作品のファンを『釣る』為だけに作られた存在だ。

よって彼女に感情や願いはあれど、物語などない。
この決闘を生き抜いたとて、いつか自らの存在に気付きその確立にでも願いを使わない限り、帰る世界などない。

特異の中の特異なる魔法少女。
陰湿な性格と設定された彼女が決闘の舞台に降り立ってしまった以上、ただ悪意を振り撒く存在となるであろう。

それを彼女がこれから襲う人間達の悲劇と見るか、彼女を襲う悲劇と見るかは、自由だ。


523 : 強引niマイYeah ◆4u4la75aI. :2022/06/30(木) 06:12:02 UPt4cCvI0
【神名あすみ@2ちゃんねる】
[状態]:健康、疲労(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:勝ち残る
1:杏子を上手く使う
[備考]
※魔法少女システムなどは原作準拠で、ソウルジェムが濁り切れば魔女化もしますし破損すれば絶命します。
※魔法少女としての実力は新人に毛が生えたレベルです。

【佐倉杏子@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、うんまい棒×7@魔法少女まどか☆マギカ、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない。ハ・デス達はぶっ潰す。
1:神名あすみの監視
2:ゆまが居る可能性が高いから探したい
[備考]
※参戦時期は織莉子達の襲撃(第5話)前。



【うんまい棒@魔法少女まどか☆マギカ】
佐倉杏子に支給。十本セット。
現実世界でも有名な一本十円で買える某スナック菓子。
既に二本杏子は食べており、一本はあすみへと差し出した為残り七本。


『NPC紹介』
【カッシーン@仮面ライダージオウ Over_Quartzer】
クォーツァーという組織が生み出した量産型戦闘メカ。
三又槍を扱う槍術を得意とする。
Over_Quartzer出典であり、出典内で使えていた様子がない為破壊光線を撃ち出す機能等は無くなっている。


524 : ◆4u4la75aI. :2022/06/30(木) 06:13:25 UPt4cCvI0
投下終了です。
あすみの出典を2ちゃんねるにしましたが、問題があれば変更します。


525 : ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/30(木) 08:15:56 SNdeg.HU0
投下させていただきます。
以前、コンペロワや辺獄ロワ、エロトラロワに投下した作品に加筆修正を行った作品になります。


526 : 誤解は更なる誤解を呼ぶ ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/30(木) 08:16:46 SNdeg.HU0
「クソッ!どうして、どうしてあんな……」

フクロウをモチーフにしたコスチュームを纏い、仮面とゴーグルで顔を隠した男……ナイトオウル2世ことダニエル・ドライバーグは、巨木に拳を叩きつけながら『冥界の魔王』への怒りと憎悪を滾らせていた。

その見た目からもわかる通り、ナイトオウルことダニエルはヒーローである。

ヒーローの活動を禁じる法律『キーン条例』の制定によってやむなく引退したが……つい先日、とある理由から活動を再開。

不当に逮捕されたヒーロー時代の相棒・ロールシャッハの脱獄計画を実行しようとした矢先に、この『決闘』と題された殺し合いに参加させられたのだ。
しかも、『ヒーロースーツ姿』で。

ダニエルにはこれが、あの『冥界の魔王』を名乗る『決闘』の主催者からの『挑戦状』に思えてならなかった。
『お前が本当にヒーローだと言うのなら、ヒーローの姿で殺し合いを止めてみせろ』。
そう言われているように思えてならなかったのだ。

ダニエルは……いや、ナイトオウルは仲間のヒーロー達と比べると『平凡』な部類に入る人物である。

『超人』であるDr.マンハッタンのように、超能力があるわけではない。
『出世頭』であるオジマンディアスのように、『世界一』と評されるような財力と頭脳と肉体があるわけでもない。
『盟友』であるロールシャッハのような、自分の信念に決して妥協を許さない狂気的な精神も、
『大先輩』であるコメディアンのような、暴力行為を心から楽しむような衝動も、
『紅一点』のシルクスペクターのような、セックスシンボル的な魅力も持っていない。

あるのは……

銀行家だった亡き父が残したある程度は働かなくても生活していけるだけの財産、
ハーバード大学で手に入れた機械工学と動物学の博士号、
その機械工学の知識と父の遺した財産を活かして作り出した様々な秘密兵器の数々、
その秘密兵器群を自力で作成できるだけの発明の才能、
一般人よりは鍛えられた肉体……

そして、少年のような『ヒーロー』への純粋な憧れと正義感だけである。

「……やってやろうじゃないか」

ナイトオウルは自身に支給されたデイパックを担いで動き出した。

『ヒーロー』として、『ナイトオウル』として……一人でも多くの人を助ける為に。
それが彼なりの、『冥界の魔王』への反抗だった。

しばらく歩いて……茂みの中から声が聞こえてきた。
若い女性の叫び声だ。

「……!?」

まさか襲われているのでは?
ナイトオウルは駆け出した。

「大丈夫ですか!?」

そして声の主の下へと駆けつけて……

「……えっ?」

……マスクから覗く口をあんぐりと開けて、呆然となったのだった。


527 : 誤解は更なる誤解を呼ぶ ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/30(木) 08:17:15 SNdeg.HU0
☆☆☆

少し前……

「………へっきし!まったくぅ〜」

グラビアモデルも裸足で逃げ出しそうなグラマーな美女……怪盗『ルパン三世』一味の紅一点・峰不二子は『決闘』の主催者である冥界の魔王に対して、不満を募らせていた。

それもそのはず。

「なんで『こんな格好』で、殺し合いなんかさせようとするのよ〜!?」

現在、不二子は『裸』だったのだ。

豊満すぎる胸はピンク色の先端もむき出しになっていて、括れたウエストや安産型のヒップも丸出し。

唯一身に付けている衣類は股間を隠しているショーツだけで、両腕は後ろ手にロープで縛られているときた……。

第三者から見たら、『恥女』扱いされても仕方のない姿だが……これには理由があった。

この殺し合いに呼ばれる直前……不二子を初めとするルパン一味は、とある少数民族が残した財宝を目当てにモロッコにいた。
不二子はそこで、同じく財宝を狙う『結社』に潜入したのだが捕らえられてしまい、結社に雇われていたオカマの殺し屋に拷問にかけられ、パンツ一丁の姿で天井からつるし上げられ……その時に、この『決闘』に呼ばれたのである。

「もう……冗談じゃないわ!」

こんな姿では他の参加者から『変態』扱いされてしまうし、最悪『性的な意味で』襲われてしまう。

不二子は何とかロープを外そうと悪戦苦闘するが……中々きつく結ばれていて一向にほどける気配はなかった。

その時である。

「……大丈夫ですか!?」

その場に不二子以外の参加者が現れたのだ。

☆☆☆

「……えっ?」
「……あっ」

突然の事態に二人は固まってしまった。

ヒーロー仲間の紅一点であるシルクスペクター以上のグラマーな美女が、裸で緊縛されているという状況にナイトオウルは唖然となり、
不二子もまさか、映画に出てくるスーパーヒーローみたいなコスチュームを着た人物が突然現れるとは思っていなかったので、呆然となったのだ。

「……」

ナイトオウルはマスクから覗く口元を茹で上がったタコのように赤くし……

「し、失礼しました!」

……少々声を裏返させながら、回れ右して立ち去ろうとしたのだった。

「……ち、ちょっと待ちなさいよ!」

立ち去ろうとするナイトオウルを、不二子は呼び止めた。

「は、はい!な、なんでしょうか!?」
「なんで立ち去ろうとするのよ!?ロープ外してよ!!」
「は、はい!ちょっと待って下さい!今、目隠しを……」
「バカ!見たって良いから、早くロープを外してよ!!」

不二子に急かされるまま、ナイトオウルは不二子を縛るロープに手をかける。

その時である。

「……どうしたんですか!?」

また別の参加者がその場に乱入してきたのだ。


528 : 誤解は更なる誤解を呼ぶ ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/30(木) 08:18:00 SNdeg.HU0
☆☆☆

「そんな……どうして……どうして、あんな事を……」

緑色の髪に蛙と蛇を模した髪飾りを付け、青を基調にした巫女服を着た少女……幻想郷は妖怪の山に立地する『守矢神社』の『風祝』である東風谷早苗は、最初の場所で見せしめとして無惨に殺された少年を思い、さめざめと涙を流していた。

早苗とて、幻想郷で妖怪退治を行う者。
これまで幻想郷で巻き起こってきた、様々な異変の解決に尽力してきたのだ。

だが……幻想郷の異変はあくまでも『お遊び』の範疇で済む物であり、死人はおろか重傷者が出る事も一度としてなかった。

だが、この『冥界の魔王』が主催者する『決闘』というイベントは、そんな生ぬるい『異変』とは全く違う。
文字通り命懸けの戦いなのだ。

いかに守矢の風祝とはいえ、早苗は年端も行かない少女……生き残れる可能性は限りなく低かった。

「……」

さめざめと泣いていた早苗は、急に涙を袖で拭い取り、頬を叩いて活を入れた。

「いけない……こんな時こそ頑張らないと。こんな姿、神奈子様や諏訪子様に笑われちゃう」

そう……自身の敬愛する祭神達ならば、きっとこの『決闘』を打破する為に動く筈。
そう考えた早苗は自身に支給されたデイパックを手に立ち上がった。

「神奈子様、諏訪子様……私、やります!」

あの『冥界の魔王』を名乗る妖怪を退治し、巻き込まれた参加者達を救う。
そう決意した早苗は移動を開始したのだった。


歩き始めてしばらくした頃……どこかからか年上の男女の諍いの声が聞こえてきた。

「!?」

早速誰かが襲われている。
そう確信した早苗は声のする方に駆け出した。

「……どうしたんですか!?」


529 : 誤解は更なる誤解を呼ぶ ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/30(木) 08:18:26 SNdeg.HU0
☆☆☆

「……えっ?」
『……えっ?』

突然の早苗の乱入にナイトオウルと不二子はまたも固まってしまった。
しかし、それは早苗も同じだった。

映画に出てくるヒーローのような格好をした男性が、裸の女性を縄で縛っている姿を目にし、早苗の頭は一瞬真っ白になった。
(※本当は縄を『ほどこうと』していたのだが、早苗には『縛っている』ように見えた。)

「あ、あの……」

早苗の顔は瞬時に熟れたリンゴのように真っ赤になり……

「し、ししししし失礼しましたぁぁ!!」

……顔を両手で覆って一目散に来た道をUターンしたのだった。

『ちょっと待ってぇぇぇ!!!』

猛スピードで来た道をUターンしようとする早苗を、ナイトオウルと不二子は慌てて引き留める。

「は、はははははいっ!な、なななんでしょうか!?」
「あ、あの違うんだよ!これは『人助け』であって、決してイヤらしいプレイとかじゃないんだよ!」
「そうよ!私達別に、恋人でも何でもない赤の他人同士だし……」
「あ、赤の他人同士で、こんな……まさか貴方がた、イメクラ嬢とそのお客さんなんですか……?」
『ちっがーう!!!!』

斜め上な解釈をする早苗の誤解を解こうと、ナイトオウルと不二子は必死に説明したが……

「えっ!?何?どうしたの!?」

……そこに、更なる乱入者が現れたのだ。


530 : 誤解は更なる誤解を呼ぶ ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/30(木) 08:18:50 SNdeg.HU0
☆☆☆

「う〜ん……ドッキリ、とかじゃないよね?」

青い髪を腰まで伸ばし、ピンク色のセーラー服を着た小柄な少女……秋葉原のサブカルショップ界隈では『伝説の少女A』と呼ばれているオタク少女・泉こなたは、
自身の首に嵌められた無骨な金属製の首輪を撫でながらため息混じりに呟いた。

最初の場所で磯野なるサングラスの男性から説明を受けた時は『あれ?何かのイベント?』と思ったが、
それに反抗した自分と同い年くらいの少年が見せしめのように殺害され、
極めつけに『冥界の魔王』を名乗るコンピューターRPGに出てきそうな異形が登場し、こなたは冷や汗が止まらなかった。

こなたは重度のオタクであることを除けば、どこにでもいる平凡な女子高生。
合気道を嗜んではいるが、それがこの血生臭い『決闘』というイベントにおいて、有利に働くかどうかは微妙だった。

「全く……ただのイベントに興味ありません、なんてレベルじゃないよ」

どっかで聞いたようなセリフを口にしながら、こなたはとぼとぼと歩き続ける……その時だった。

どこかから人の叫び声のようなものが聞こえてきた。

「!?」

まさか、本当に殺しあいをしているのか?
いてもたってもいられず、こなたは叫び声が聞こえてきた方に走った。

「えっ!?何?どうしたの!?」


531 : 誤解は更なる誤解を呼ぶ ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/30(木) 08:19:12 SNdeg.HU0
☆☆☆

「……えっ?」
『……えっ?』

こなたという更なる乱入者の出現に、ナイトオウルと不二子のみならず、早苗もまた固まってしまった。
しかし、それはこなたも同じだった。

叫び声の聞こえた場所に来てみれば……
アメコミに出てくるヒーローのコスプレをした男性が
裸の女性を縄で縛り、
その横で巫女服らしきコスプレをした少女が顔を赤くしているという、『どんなエロゲだよ』とツッコミたくなる光景を目にし、こなたは目を丸くしたのだ。

「……」

こなたは真顔に戻ると……

「すいません、お邪魔しました」

……何事もなかったように去っていった。

『………ちょっと待ってぇぇぇぇぇ!!!!』

真顔でその場から去ろうとするこなたを、ナイトオウルと不二子、そして早苗は大声で呼び止めたのだった。

そして………

「待てぇー!!」


532 : 誤解は更なる誤解を呼ぶ ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/30(木) 08:19:36 SNdeg.HU0
☆☆☆

「ひどい……酷すぎる」

ビビッドカラーの衣裳を纏った可愛らしい金髪の少女……『人間型衛星(ヒューマン・サテライト)』の異名を持つロボット超人・アースちゃんは、
会場の一角に佇みながら、その可愛らしい顔を歪ませていた。

これまで多くの悪人、怪人、怪獣と戦い続け、多くの人々を助けてきたアースちゃんではあるが……
突然拐われて『決闘』という名の『殺し合い』に強制参加されるのは、初めての事だった。

同時に……人間の首から上が呆気なく吹き飛ぶ様を間近で見せられ、ロボットでありながらも吐き気を催すほどの嫌悪感を感じたのだ。

「………」

アースちゃんはただ静かに目をつむる。
そして、『冥界の魔王』を名乗る悪の怪人によって
この『決闘』という悪趣味なイベントに集められた参加者からの『助けを求める脳波』を待つ。

例えここが人間が『地獄』と呼ぶ場所であろうと関係無い。
『純粋な助け』を求める者を救う。
それがアースちゃんの使命であり、存在意義なのだから。

「!」

全身に気持ちいい感覚が走る。
助けを求める者の脳波をキャッチしたのだ。

アースちゃんは即座にロケット形態に変形し、助けを求める者の下へと飛んでいった。

「……待てぇー!!」

☆☆☆

「……‥‥えっ?」
『………えっ?』

更なる乱入者……アースちゃんの登場に、ナイトオウルと不二子、早苗やこなたまでもが固まってしまった。

しかし、それはアースちゃんも同様だった。

助けを求める脳波を追って来てみれば、
『超人』らしき男性が裸の女性を縄で縛ろうとしており、
そのすぐ真横では、10代後半くらいの巫女装束姿の少女と、
セーラー服を着た10代前半程の少女の姿があったのだから。

「あ、ああああ……」

アースちゃんはその可愛らしい顔をトマトのように赤く染め………

「こ……この、強姦魔ぁぁぁ!!」

……ナイトオウルの顔面に、右ストレートパンチを叩き込んだのだった。

「ちがぶふぅぅ!?」

アースちゃん渾身の右ストレートパンチを顔面に叩き込まれ……ナイトオウルは悲しい悲鳴を上げたのだった。

アースちゃんは顔を赤く染めながらナイトオウルのコスチュームの襟首を掴みあげる。


533 : 誤解は更なる誤解を呼ぶ ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/30(木) 08:19:59 SNdeg.HU0
「……何が『違う』だ!?『妙齢の女性を裸にして縄で縛る』なんて!それは『婦女暴行』という『悪いこと』なんだぞ!?」
「そ……そうです!『悪いこと』ですよ!」

ナイトオウルの襟首を掴んでナイトオウルを叱りつけるアースちゃんの言葉に、横で見ていた早苗が同調するように叫ぶ。
二人ともその顔はリンゴのように真っ赤になっていた。

「だ、だからそれは、誤解なんだって……」
「この期に及んで『ウソ』をつくな!」

ナイトオウルの弁解にアースちゃんは聞く耳を持たず、ナイトオウルにもう一発パンチを叩きこまんとする剣幕だった。

「まぁまぁ……少し落ち着きなよ?二人とも」

そこに、この場所で唯一冷静なこなたが、ナイトオウルに掴み掛かるアースちゃんと早苗に割って入ってきた。

「確かに……『同意も無し』に、『妙齢の女性を裸にして縄で縛る』のは『婦女暴行』の『悪いこと』だと思うよ?けどさ……『お互いの同意に基づく行為』なら、何にも悪いことじゃないんだよ?」
「むぅ……」
「確かに、それもそうですね……」

こなたの斜め上にズレまくった解釈を聞き、アースちゃんと早苗は納得しかける……が、

「……それも違ーう!!」

ナイトオウル本人がこなたの意見を即座に否定したので、雲行きは更に怪しくなっていった。

「……えぇっ!?じゃあ、『同意も無しに無理やり裸にして縛り上げた』って事!?」
「やっぱり『婦女暴行』じゃないか!?」
「いくらここが『殺し合いの場』だからといって、そこまでケダモノに落ちるなんて……最低です!!」
「いや……だから、あの………」

3人のうら若き乙女達から蔑みの視線と言葉を向けられ、
流石のベテランヒーローであるナイトオウルも、何も言い返す事ができなかった。

このままナイトオウルは、『レイプ犯』のレッテルを貼られてしまうのか………?

「………ねぇちょっと!」
『………?』

その時、それまで黙っていた不二子が声をあげ、不二子以外の全員が顔を向ける。

不二子はパンツ一丁にロープで緊縛されているというのに……その顔にはまるで怒り狂う肉食獣を思わせる本気の怒りが籠っていた。

「……何でもいいから、早くロープを外してよっ!?あと、服貸して!!」
『!』

ほぼ全裸で怒り狂う不二子の姿にこなたや早苗のみならず、ベテランヒーローであるナイトオウルやロボットであるアースちゃんまでもが肝を冷やし………

『は……はい……』

……異口同音に情けない返事を返したのだった。




その後、拗れに拗れまくった誤解を解くのに、丸々4時間かかったのだった。
まる。


534 : 誤解は更なる誤解を呼ぶ ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/30(木) 08:20:27 SNdeg.HU0
【ダニエル・ドライバーグ(ナイトオウル2世)@ウォッチメン】
[状態]:健康、動揺、困惑、顔面に青アザ
[装備]:ナイトオウルのコスチューム@ウォッチメン
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本:ヒーローとして、参加者を助ける
1:僕は強姦魔じゃな〜い!
2:裸の女性(不二子)の縄をほどく
3:少女達(早苗、こなた、アースちゃん)の誤解を解く
4:なんで彼女(不二子)は、こんな状況でSMプレイしているんだ?
[備考]
ロールシャッハを脱獄させる直前からの参戦。
コスチュームは支給品ではありません。

【峰不二子@ルパン三世】
[状態]:健康、裸にパンツ一丁で縛られている、困惑
[装備]:無し(裸)
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本:とりあえず服を着たい
1:なんで裸なのよ〜!?
2:コスプレ男(ダニエル)にロープを外してもらう
3:誰か服貸して!?
[備考]
テレビスペシャル『トワイライト☆ジェミニの秘密』で、貞千代に拷問されて五ェ門に助けられる直前からの参戦。

【東風谷早苗@東方project】
[状態]:健康、困惑、動揺
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本:主催者を退治し、参加者を救う
1:は、ハレンチな……!///
2:なんでこの人達(ダニエルと不二子)、こんな状況でイメクラみたいな事してるの?
[備考]
『東方鬼形獣』終了後からの参戦。

【泉こなた@らき☆すた】
[状態]:健康、困惑
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本:殺されたくはないけど、人殺しもしたくない
1:……これなんてエロゲ?
2:なんでこの人達(ダニエル、不二子、早苗)、こんな事してるの?
[備考]
高校3年時からの参戦

【アースちゃん@コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜】
[状態]:健康、困惑、怒り
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本:『超人』として参加者を助ける
1:この強姦魔ぁぁぁ!!(ダニエルへの怒り)
2:強姦魔(ダニエル)から女性達(不二子、早苗、こなた)を救う
[備考]
第13話『新宿擾乱』直前からの参戦。
ダニエルを『強姦魔』だと誤解しています。


【ナイトオウルのコスチューム@ウォッチメン】
ダニエル・ドライバーグ(ナイトオウル2世)@ウォッチメンがヒーロー『ナイトオウル2世』として活動する際に着用するコスチューム。
顔面以外を覆ったフード、目元を隠す暗視機能付きゴーグル、マント、全身タイツ、秘密兵器が収納されているポーチ付きのベルトで構成されており、全体的にフクロウをデザインモチーフにしている。


535 : 誤解は更なる誤解を呼ぶ ◆j1W0m6Dvxw :2022/06/30(木) 08:20:51 SNdeg.HU0
以上、投下終了します。


536 : 神盾アイギス ◆EPyDv9DKJs :2022/06/30(木) 13:07:07 OhMCVVPE0
投下します


537 : 神盾アイギス ◆EPyDv9DKJs :2022/06/30(木) 13:07:54 OhMCVVPE0
 例えるならばそれは戦乙女と言うべきだろうか。
 紅い鎧に身を包んだ金髪の女性が高所の崖から周囲を見渡している。
 何処を切り取っても女神の彫像かのごとき容姿端麗な彼女がいれば、
 この光景は聖戦や神話の一枚の絵と言われても余り疑われないだろう。
 彼女は別の世界では女神の名であるのであながち間違いでもないのかもしれない。
 もっとも、此方であっても神に等しい扱いを受けることのある存在なのではあるが。

(流石に力は落とされてますね。当然と言えば当然ですが。)

 名をアテナ。守護と平和を司る、星の民の兵器『星晶獣』の一体。
 兵器とは言うがそれは遥か昔の覇空戦争での出来事のことであって今は違う。
 星の民が撤退して空の世界に残され、平和を好む彼女はやがて人の平和を望んだ。
 人の生活に溶け込みながらも、人に守る術を享受する一人の戦士として生きていた。
 だがそれでも元々は神と崇められることもある星晶獣。並の人間では傷つけることすら困難だが、
 此処に来る前よりもずっと力が劣っていることがはっきりとわかり、公平さの為だとすぐに察する。
 それでも、そこらの三下やNPC程度の存在では、とても勝てるものではないだろうが。

(どちらにせよ、私の行動方針は変わりませんが。)

 彼女は平和を愛し、闘争を嫌う。
 話し合いで応じれる相手ならば可能な限りそうするし、
 話し合いで応じなかったとしても相手が分かればなるべく許してしまう。
 現に覇空戦争で兵器として勤めてた頃も、戦意なき空の民を見逃すと行動もしている。
 だから元々争いは好まない。可能な限り争いを避けたいが、此処ではそうはいかない。
 全員が殺さなければ生きられないという倫理の境界線が曖昧になる場面だ。
 想像してるよりもずっと多くの参加者が生きる為に殺し合いを是とするだろう。
 普段以上に対話での解決は望めそうにないことは覚悟する必要がある。
 できるだけ争わずに済むことも想定しておくが。

(ですが、そうも言ってられません。)

 そうも言ってられないのは、自分がいるということ自体が問題だ。
 殺し合いに乗ることはまずないだろう自分を態々参加させている。
 自分が必死に足掻くさまを愉しむにしても、曲がりなりにも星晶獣だ。
 そういう展開になること自体がまず稀になる。となれば稀にならないようにするにはどうするか。

「エニュオ……」

 それ相応の実力者を、殺し合いを是とする参加者を呼べばいいだけ。
 となればアテナには心当たりがある。つい最近目にしたばかりだから。
 嘗て二人で守っていた街を裏切り滅ぼした、破壊と蹂躙の星晶獣エニュオ。
 ひょんなことから彼女は今同じ騎空団で活動する身ではあり監視しているが、
 破壊と蹂躙を愉しむことを肯定してしまった彼女ならば、この場では絶対に動く。
 避けなければならない。キュドイモスと言う無尽蔵の戦力があるかは分からないが
 別に力が落ちていても並の魔物など相手にならない程の強さを彼女は持っていた。
 制限されたところで彼女は確実に強いだろうし、されたところで彼女は止まらない。
 なんとしてでも彼女を止めなければならない。

「私を守護の星晶獣と知って此処へ招いたのであれば、
 貴方が期待している通り、私はその役割に準じましょう。」

 しかし思い通りになるほど私は甘くない。
 心に抱いた言葉と共に、アテナは崖を飛び降りた。
 遠巻きに人の集落らしき場所が見えた。参加者ならどちらであれ集まるはずだ。
 黄緑の槍と盾を手に守護と防衛の女神が今、この戦場を駆け抜ける。

【アテナ@グランブルーファンタジー】
[状態]:健康
[装備]:真・氏康の獅盾+槍@御城プロジェクト:Re
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜1
[思考・状況]基本方針:守護と平和を司る星晶獣として人を守りましょう。
1:エニュオがいた場合最優先。
2:非力な参加者には戦術を教えつつ保護。

[備考]
※参戦時期はエニュオ3アビエピソード後。

【真・氏康の獅盾+槍@御城プロジェクト:Re】
アテナに支給。ゲーム上では大型兜北条氏康の持つ槍に近しい武器。
原作では盾と武器(基本は剣か槍に類する)が1セットであるが2枠扱い。
氏康の思念が宿る盾。凄まじい強靭さを誇り全ての攻撃を無に帰す。
敵の防御を僅かに無視するが大型故か攻撃速度低下のデメリットがある。
ただアテナならある程度無視できそう。多分。


538 : 神盾アイギス ◆EPyDv9DKJs :2022/06/30(木) 13:08:17 OhMCVVPE0
投下終了です


539 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 13:56:16 HDozZHCg0
投下します


540 : あまり変わらない二人組 ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 13:58:52 HDozZHCg0
 決闘。―――もっとわかりやすく言えば、殺し合い。
 普通の人間ならばこの歪なゲームに息を呑み、不安がることだろう。
 しかし彼―――朝霧海斗は違った。海斗は禁止区域出身で、過酷な環境を生き抜いてきた男だ。
 禁止区域とはスラム街のようなもの。常に死と隣り合わせで、一般人と禁止区域出身者では力量や倫理観に大きな違いがある。
 そしてこの朝霧海斗―――彼は禁止区域出身の者の中でも特に群を抜いて強い男だ。

 それは身体能力や腕っ節の強さに限った話ではない。
 メンタルも図太く、頭も良い。ピッキングや声帯模写など特技も多彩だ。
 そんな海斗にとって殺し合い―――と言われてもそこまで動じることはない。
 首輪の存在や冥界の魔王を自称する妙な男など物珍しい点は幾つかあるが、殺し合い自体は禁止区域で慣れている。

「問題はこの首輪だな」

 海斗でも問題点として考えているのが、首輪の存在だ。これをどうにかしなければ脱出しようがない。
 本田が見せしめのように殺されたことは十中八九、出来レースだと海斗は考えている。ああやって見せしめを用意することで参加者に動揺を与える算段なのだろう。
 なにより自分が何も出来ない状況で本田と遊戯は動けていた―――ということは何らかの細工が施されてたと考えるのが自然だ。

「同感です。私もこの首輪をなんとかして外さなければ、脱出すら出来ないと思っていました」

 海斗の言葉にメイド服の少女が返事をする。
 ―――その存在自体にはとっくに気付いていたので、海斗もメイドと対話することにした。

「メイドが盗聴か?あまりいい趣味とは言えねぇな」
「その割にはあまり動じてないように見えますが……」
「そんなことないぞ?元の場所に戻ったら盗聴されたって裁判起こして金を荒稼ぎしようと考えてたところだ」
「それは困りました。お手製のサメさんポーチで勘弁していただけないでしょうか?
 」
「ひゃっほー!ずっと欲しかったサメのポーチだ、仕方ねぇから到着はチャラにしてやるよ。―――ってなるとでも思ってんのか、オススメの医者教えてやるよ」
「なるほど……。ではヤブイヌポーチではどうでしょうか?それとオススメのお医者さんは知り合いのみちる様という方に紹介してあげてください」
「よしじゃあそのヤブイヌポーチとやらを今すぐ裁判長に提出してきてもらおうじゃねぇか」

 ―――とまあ暫くこんなノリの会話が暫く続き、別に海斗的にもメイドを訴える気なんて微塵もないので適当なところで話題を切り替え、互いの自己紹介をした。

 小嶺幸。何故か爆弾を作った経験があるやべーやつ。別にツキと違って本当に屋敷のメイドというわけでもないらしい。
 爆弾を作った経験があるということは、そっち方面の技術に多少は精通してるということだ。首輪を外すことが出来るかもしれない―――が専門職というわけでもなさそうだから過大な期待をするつもりはない。

 戦闘力はそれなりに自信があるらしい。何か裏の組織の人間とやり合ったことがあるらしいから、尊達よりは強いのかもしれない。そして荒事にも多少は慣れてる。
 最初に遭遇した参加者―――というか同行者としては、まあまあ当たりだ。

「とりあえずさっさと首輪を外してさっさと帰らなきゃな。オレは他人に首輪つけられて喜ぶマゾじゃねぇし」
「それならこの機会に新たな扉を開くのはどうでしょうか?」
「そういうのはモニターの前の奴次第だな―――って今は媒体が違うから選択肢とか出てこねぇのか」
「???」
「ただの独り言だよ、気にするな」

 二人は普段のペースを全く崩すことなく、決闘から脱出すべく動き始めた


【朝霧海斗@暁の護衛 トリニティ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:さっさと首輪を外して帰る
1:まずは首輪を外す手段を探さなきゃな
2:ところでどうやったら脱出出来るんだ?
3:幸には爆弾関係の知識がありそうだな
[備考]

【小嶺幸@グリザイアの果実シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:首輪を外して帰ります
1:海斗さんは風見さんと少し似ているようです
2:首輪を解除する方法と会場を突破する方法を探す必要がありそうですね
[備考]
アニメ版グリザイアの楽園終了後からの参戦。


541 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 13:59:08 HDozZHCg0
投下終了です


542 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 16:17:14 HDozZHCg0
投下します


543 : ドラゴン使いの宿命 ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 16:19:03 HDozZHCg0
「―――これはどういうことだ?」

 ミザエルと激闘の末に死亡した天城カイトは、自身が生き返ったことに困惑していた。
 遊馬やミザエルに後を託して死亡した自分が、こうして何一つダメージがない状態で生きている。死者蘇生でもしたというのだろうか?

 冥界の魔王ハ・デス―――。
 彼はカードから生まれたと語っていたが、間違いないだろう。何故ならカイトはハ・デスというモンスターカードを知っている。
 しかし何故、彼が実体を得てこんな決闘を開いた?あの口ぶりからして決闘者に何らかの怨みを持ってそうだが―――それだけでこんなことが出来るとは思えない。

 これはおそらく裏でハ・デス以外の誰かが仕組んだ決闘だ。そう考えなければ色々と説明がつかない。

「デュエルなら受けて立つが―――この首輪が厄介だな」

 デュエルで世界の命運や命のやり取りをすること自体はそれほどおかしいことでもないが、主催者はいつでも首輪を爆破出来るという状況が非常に厄介だ。
 ハ・デスにデュエルを挑み、追い詰めても首輪爆破によって物理的に殺される可能性が高い。

 デュエルにリアルファイトを持ち込むというのは野暮な話だが、ハ・デスがその気になればいつだって自分を殺せる。この状況だけはいち早く脱する必要があるだろう。
 幸いカイトはこの手の分野に精通している。オービタルを作ったのだって彼自身だ。
 だから材料や情報さえ集まれば、首輪を外すこと自体は出来るだろう。

「オービタルは……没収されたか」

 いつも一緒に居た従者が今は居ない。決闘者として巻き込まれたのか、それとも没収されただけなのか。一応オービタルもデュエルは可能であり、決闘者として巻き込まれた可能性は否定出来ない。
 ミザエル戦でも共に戦った仲であり、彼の不在は痛いところではあるが―――今は仕方ないと割り切るしかない。

「俺に支給された物はデッキと―――」

 自分に支給されたカード―――それは誇り高きドラゴンが描かれた一枚のカードだった。
 カイトはその意図を汲み取り「フッ……」と笑う。

 もしかしたら―――いや、きっとこれはハ・デスによって仕組まれた支給品だろう。
 だが何故だろうか。このドラゴンはまるでハ・デスではなく自分と激闘を繰り広げたドラゴン使い―――ミザエルに託されたように感じる。

「―――ミザエル。この決闘が終わるまで、お前の力を借してくれ」

 ミザエルが最も信用するもの―――タキオン・ドラゴンのカードに語り掛ける。
 ドラゴン使いとしての宿命が、タキオン・ドラゴンを引き寄せた。―――そう考えずには居られない。

 そしてカイトは―――誇り高きドラゴン使いは、この決闘を終わらせるために歩き始めた。


【天城カイト@遊☆戯☆王ZEXAL】
[状態]:健康
[装備]:デュエルディスクとデッキ(天城カイト)@遊☆戯☆王ZEXAL、No.107 銀河眼の時空竜@遊☆戯☆王ZEXAL
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:首輪を外し、ミザエルと共にハ・デスを倒す
1:首輪を外すための方法を探る
2:Vが参加していたら首輪解除のために合流したいが……
[備考]
※参戦時期は死亡後

『支給品紹介』
【デュエルディスクとデッキ(天城カイト)@遊☆戯☆王ZEXAL】
天城カイトに支給。カイトが愛用しているデッキ。ただし彼の切り札である銀河眼の光子竜のエクシーズ体は全て抜かれている。ただし素の銀河眼の光子竜は投入されている


544 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 16:19:19 HDozZHCg0
投下終了です


545 : ◆FiqP7BWrKA :2022/06/30(木) 18:30:20 hnTXAMfg0
投下します。


546 : 殿下面ソードが聞いてきた。 ◆FiqP7BWrKA :2022/06/30(木) 18:33:11 hnTXAMfg0
「……あんなの、あんなの酷すぎる!絶対、ぜーったい許せない!」

決闘会場、市街地から少し離れた一角にて。
猫の特徴を持つ獣人の少女が叫び出すように宣言した。
彼女の名前はヒヨリ。
ランドソルにて、天高くそびえるソルの塔の頂きを目指す
活動するギルド、トゥインクルウィッシュの一員である。
色々と冒険に繰り出すことも多い彼女は、
この世で人が死ぬことも、危険がある事も十分知っている。
が、あんな身勝手で理不尽極まるものは間違っていることも知っていた。
そしてそう思った時に行動に起こせる勇気もまた持ち合わせていた。
自分で自分の頬を張り、気合を入れたヒヨリは、
支給されたデイパックを探り、中から一本のサーベル状の剣を取り出した。
闇のような黒い色をしており、
柄には吊り上がったオレンジ色の目の恐ろしい顔のレリーフがついている。

『おい女、俺様を手にして、お前は何をする?』

パクパクと口を動かし、柄の恐ろしい黒い顔は語り掛けて来た。
流石のヒヨリもそれはそれは驚いた。
今までも奇怪な冒険や、とんでもない超常現象には散々出会ってきたが、こんな奇妙な剣は初めて見る。

「君は、その……剣なの?」

『ああ。俺様はべリアロク。斬りたい時に斬りたいモノを斬る。
果たしてお前の行く先に、俺様の斬りたいものはあるかな?』

そう問われたヒヨリはこの剣に若干不安なものを感じたが、
変に誤魔化すのも不誠実と考え、

「あたしは、この決闘に巻き込まれて、困っている人たちを助けたい!
ホンダ君を殺されたのを見たり、勇気づけたい!
それで、こんなことをするハ・デスやイソノを倒して、こんなことを終わらせたい!」

胸の内の想いを正直に答えた。

『……戦いを終わらせる、か。
この恐らくは絶対に戦いが起き続ける様にできているこの場で?
いいだろう。お前の行く道、面白いのと会えそうだ』

「てことは、一緒に来てくれるの!?」

『しばらくはお前に力を貸してやる。
精々上手く使え、猫娘』

「猫娘じゃあ他にもいるよ!あたしの名前はヒヨリ!
よろしくね、べリアロク!」

見る者が見れば、これ以上なく悍ましい魔剣を片手に、
快活な猫獣人の少女が立ち上がった。
己が道を斬り開くために。


547 : 殿下面ソードが聞いてきた。 ◆FiqP7BWrKA :2022/06/30(木) 18:33:30 hnTXAMfg0
【ヒヨリ@プリンセスコネクト!Re:DIVE】
[状態]:健康
[装備]:べリアロク@ウルトラマントリガー NEW GENEREATION TIGA
     GUTSハイパーキー(ウルトラマンZデルタライズクロー)@ウルトラマントリガー NEW GENEREATION TIGA
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:この決闘を終わらせる!
1:行くよべリアロク!あたしは道を切り開く!
2:友達が死んじゃったユウギ君は大丈夫かな?
3:もしかして騎士クンたちも来てるのかな?
[備考]
※参戦時期や制限などは後の書き手様にお任せします。

【べリアロク@ウルトラマントリガー NEW GENEREATION TIGA】
[思考・状況]基本方針:この決闘でも斬りたいものを斬る。
1:ひとまずはヒヨリの道に付き合う。
2:ハ・デスの奴ら、斬りがいの有るものを用意してるといいんだがな。
3:斬りたいものがなくなったら、ハルキたちの元に帰る。
[備考]
※所謂意思もち支給品の扱いの為、名簿に名前は乗りません。
※制限により、自立行動や次元移動などが出来なくなっています。



支給品解説
【べリアロク@ウルトラマントリガー NEW GENEREATION TIGA】
幻界魔剣の二つ名を持つ剣。
虚空怪獣グリーザの内部に存在する宇宙の穴を縫う針と呼ばれる何かに、
グリーザと半融合状態にあったウルトラマンジードの持つベリアル因子が影響した結果、
誕生した意志を持つ武器。
その見た目は完全に柄にベリアルの顔がついたサーベルとかいうインパクト強すぎな物。
傲慢不遜で自由気ままな性格で、使い手と対話し、
自分に相応しい持ち主かどうかを見極め、気に入らなければ全く手を貸そうとしない。
逆に言えば、気に入られればかなり積極的に力を貸してくれる。
必殺技はデスシウムスラッシュ、デスシウムファング、デスシウムクロー。
また、当ロワでは制限されているため使えないが、次元を切り裂き、並行宇宙へ移動することも出来る。


548 : 殿下面ソードが聞いてきた。 ◆FiqP7BWrKA :2022/06/30(木) 18:33:42 hnTXAMfg0
投下終了です。


549 : 心にペンを差す侍 ◆s5tC4j7VZY :2022/06/30(木) 19:49:13 iaCRrMgM0
投下します。


550 : 心にペンを差す侍 ◆s5tC4j7VZY :2022/06/30(木) 19:49:33 iaCRrMgM0
世に最も美しいものは、言論の自由である。
ディオゲネス

「……」

冥界の魔王ハ・デスによる殺し合いの決闘。
一人の女性は毅然と大地に立っていた。
女性の名は松方弘子
週刊JIDAI編集部に所属する女性編集者。

「許せないわ」

松形は許せない。
一人の若者の未来をあっさりと刈り取ったハ・デスを。
そして、あの場で動けなかった自分を。
故に決意した。
この催しを記事にして風化させないことを。
それは、本田と呼ばれた男子学生への哀悼。

(とりあえず、あの場で遊戯と呼ばれたツンツン頭の少年が鍵を握っているはず)

この出来事を記事にする為に欠かせない人物。
根拠はない。
しかし、編集者としての勘。
故に松方は行動を開始する。

「人間なめんなよ。冥界の魔王」

それは、一人の編集者の反逆の狼煙。
この悪辣な催しを必ず記事にする。
だがしかし、企画として提出しても成田さんが見たら、”ふうん……でもコレはボツ”と却下されるのが目に浮かぶ。
無理もない。
冥界の魔王に集められて殺し合いに参加させられたなんて、頭がイッたと思われても仕方がないだろう。

「だけど、”これ”を記事にしないと前に進めない」

後悔しない仕事をしたい。
たとえそれが理想で幻想であっても

―――男スイッチ入ります

【松方弘子@働きマン 】
[状態]:健康 男スイッチ状態
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本方針:この出来事を記事にして風化させない
1:遊戯と呼ばれた少年を探す
2:周囲を探索する
[備考]
※参戦時期は2巻こだわりマン後

☆彡 ☆彡 ☆彡


551 : 心にペンを差す侍 ◆s5tC4j7VZY :2022/06/30(木) 19:49:46 iaCRrMgM0

「ふーん。”これ”を記事にしないと前に進めない……人間も味な事いうじゃない」

宙に浮かびながら面白そうに呟く少女

レミリア・スカーレット。
永遠に紅い幼き月の2つ名を持つ吸血鬼。

「普通なら、面白そうじゃないと言いたいところだけど……」

言葉と同時にレミリアの調子のトーンが低くなる。

「まったく、不快ったらありゃしないわね…」
「この私(吸血鬼)を狗のように首輪で飼いならそうとすることがまず気に食わない」

レミリアは自らの首元に嵌められた首輪をさすると怒りを露わにする。

「それには、同感だ」

レミリアの横に蝙蝠が集まると人型になる。

「あら?名を名乗らないなんてレディーに失礼じゃない?」

「これは、失礼した。我が名はデミトリ―――「デミトリ・マキシモフ」

男は自らの名を明かす。

デミトリ・マキシモフ。
魔界の名家「マキシモフ家」の当主であり、闇の貴公子 の2つ名を持つ吸血鬼。

「そう…あなたも吸血鬼なのね」

デミトリの放つ魔力から同族であることを理解するレミリア。

「誇り高き我ら(吸血鬼)をこのような下劣な催しに参加させたこと後悔させねばな」

「そうね。吸血鬼の怖さを思い知らせないとね」

「いくか」
「いきましょう」

バサササササッッッッッ!!!!!

吸血鬼らしい吸血鬼のコンビが空を羽ばたくーーーーー

【レミリア・スカーレット@東方project 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本方針:冥界の魔王をとっちめる
1:デミトリと行動を共にする
[備考]
※参戦時期はグリモワールオブウサミ後

【デミトリ・マキシモフ@VAMPIRE 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本方針:この戯けた催しを破壊する
1:レミリアと行動を共にする
2:ふむ…様々な世界の者を呼び寄せているという言葉は妄言ではないか……
[備考]
※参戦時期はPROJECT X ZONE 2 後
※PROJECT X ZONE 2の関係で異世界の存在についてある程度知っております。


552 : 心にペンを差す侍 ◆s5tC4j7VZY :2022/06/30(木) 19:49:58 iaCRrMgM0
投下終了します。


553 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 20:42:46 HDozZHCg0
投下します


554 : 1000%の贖罪 ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 20:44:15 HDozZHCg0
 罪と罰――。
 悪事を働いたものは何らかの方法で裁かれ、その罪を償わなければならない。
 それがこの世界の常識であり、誰しもが守っているはずのルールだ。

 しかしたまにこの常識に縛られることなく、大罪人であるのにそこまで酷い仕打ちを受けない者もいる。

「ゲームか……」

 服もズボンも全身真っ白な男が自身に支給されたザイアサウザンドライバーを眺めている。
 ゲーム。冥界の魔王ハ・デスはこの決闘をゲームと言っていた。
 他にも様々な情報を語っていたが――垓が最も反応を示したのはこのゲームという単語だ。

 他者の命を軽んじてゲームと呼ぶ男を彼は知っている。だからこそ自分が何か致命的なミスをやらかした気がして、ゲームという言葉に目を細める。
 律儀に説明書まで用意して、本当に自分達をプレイヤーとして集めてゲームを行っているようだ。
 これほどまでのゲームに対する愛。その熱はもはや狂気的だとも言えるが、さうざーを愛するがゆえに過ちを犯してしまったことのある垓は『愛』が齎すマイナス効果も知っている。

「私とまたゲームをするつもりか?檀黎斗――」

 檀黎斗――彼は再び天津垓に挑戦権を与えた。
 主催者として表向き君臨しているのはハ・デスという謎の存在だったが……このゲームの裏には檀黎斗が潜んでいる可能性が高い。
 垓は人類のためにゼインへの対抗手段として檀黎斗を復活させたのだが、もしも本当に檀黎斗がこのゲームを制作したのだとしたら垓は惑星アークに人間の悪意をラーニングさせた件に続き、再び取り返しのつかない過ちを犯してしまった。

「私なりに罪を償おうとした結果、こんな事態を招いてしまうとは……!」

 天津垓は人々の未来を守るために檀黎斗を復活させた。しかし檀黎斗は垓の想定を上回り、サウザンドアークすらも撃破。……その際に野放しになった彼がこのゲームを開いたのだとしたら、本当に取り返しがつかないことをしてしまった。

「檀黎斗。このゲーム――今度こそ私が勝つ」

 天津垓は後悔するよりも、事件の解決を優先する。
 それが檀黎斗という天才を復活させてしまった彼に出来る償いだ。もしもこのまま檀黎斗を放置してこんなゲームを世界規模にでも行ったりしたら、それこそゼインどころではない。
 アークを生み出した償いを果たすために檀黎斗を復活させ、悪意の化身の力を借りてまでゲームに勝利しようとした。だが失敗して新たな罪を生み出し――償わなければならないことが増えた。
 だが今度こそ負けない。檀黎斗を倒し、人々の未来を守る。

「たとえこの身が滅びようとも――ハ・デスやその裏に潜む檀黎斗を倒し、罪を償う。それが今の私に出来ることだ」


【天津垓@仮面ライダーゼロワン】
[状態]:健康
[装備]:ザイアサウザンドライバー&アウェイキングアルシノゼツメライズキー&アメイジングコーカサスプログライズキー@仮面ライダーゼロワン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:ハ・デスやその裏に潜む檀黎斗を倒し、罪を償う
1:檀黎斗に挑む為の方法を考える
[備考]
※参戦時期は仮面ライダーゲンムズ スマートブレインと1000%のクライシス終了後
※仮面ライダーサウザーについての制限は後続の書き手にお任せします


555 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 20:44:34 HDozZHCg0
投下終了です


556 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 21:51:01 HDozZHCg0
投下します


557 : 神に立ち向かった男と神を息子に持つ男 ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 21:53:45 HDozZHCg0
 かつて神に挑んだ男が居た――。
 彼の名は津上翔一。本来の名は沢木哲也だが、記憶喪失により「津上翔一」を名乗っていた時期があり、今でもその名を使っている。

 そしてまたの名をアギト。とある世界では仮面ライダーアギトと呼ばれている。
 神にすら立ち向かった、無限に進化する力を持つ男がこの決闘で最初に出会ったのは―――。

「黎斗ぉぉおおお!!」

 ―――神を自称する息子の名を叫ぶ父親だった。

「あの……何かあったんですか?」

 いきなり人の名を大声で叫ぶなんて明らかにヤバい人だ。
 だが―――これはただの直感だが、この男は何か鍵を握っているような気がした。
 それは翔一のただの勘違いかもしれない。
 だが決闘が始まってすぐにこんな迫真な声で誰かの名を叫ぶなんて、きっと何かあるに違いない。

 例えばハ・デスの知り合いとか。
 冥界の魔王が黎斗なんて人間らしい名前をしているというのも、なんだか変な話だが。

「私の息子を止めなければぁぁああああ!!」
「息子さんに何かあったんですか?俺で良ければ、協力しますよ!」

 なにがなんだかわからないが、困っているならとりあえず手を貸す。
 自分に協力を持ち掛けてきた翔一を男はバッと見て、事情を話し始めた。

 彼の名は檀正宗。
 檀黎斗の父親であり、息子の蛮行を止めようとして死亡した男だ。
 そして彼はこのゲームに自分の息子が間違いなく絡んでいると睨んでいる。

 だから正宗は―――息子を愛しているからこそ、黎斗を絶版することを誓う。

「黎斗ォォォ!お前がラスボスなら、私はお前の元に辿り着き必ず絶版にする!!」

 神に立ち向かった男―――津上翔一。
 神を自称する天才を息子に持つ男―――檀正宗。
 彼らはこうして出会い、手を組んだ。


【津上翔一@仮面ライダーアギト】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:この決闘を止める
1:本当に檀黎斗が黒幕なのか……?
[備考]
※参戦時期は最終回後
※まだグランドフォームにしか変身出来ません。徐々に他のフォームが解禁される可能性があります。この制限は翔一も把握しています

【檀正宗@仮面ライダーエグゼイド】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:私の息子を止めなければァァァ!
1:津上翔一と手を組む
2:黎斗ォォォ!
[備考]
※参戦時期は仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング 仮面ライダーゲンムVSレーザーで死亡後
※檀黎斗が黒幕だと思っています


558 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 21:54:06 HDozZHCg0
投下終了です


559 : ◆ruUfluZk5M :2022/06/30(木) 22:09:09 m29ZlHS60
投下します。


560 : 塾長、DIEピンチである!! ◆ruUfluZk5M :2022/06/30(木) 22:12:11 m29ZlHS60
 禿頭に髭面の大男、江田島塾長は怒りに燃えていた。命のやり取りに参加させられたことに、ではない。
「わしが男塾塾長、江田島平八であるっっ!!」
 まずはいつもの名乗りを誰が聞いていない無人の場でも叫び、江田島は決意を表明する。
「決闘結構! 男児たるもの命がけの戦いのひとつやふたつや十や二十、一向に構わぬ! しかし、ハ・デスめがっ、見れば女子供まで巻き添えとは我慢ならぬ!!」
 江田島塾長はこの下らぬ催しを破壊し尽くしてやろうという覇気に燃えていた。
 が、知人がすぐそこに居ることには気づいていない。

 ●

「でも、殺し合いの場なのに友好的な人と出会えて嬉しい。えへへ♥ 腹が減っては戦ができないって言うし、私にできるのこれくらいだから奢っちゃいますね♥」
「いえいえ、わしもこうして平和的な話し合いのできる人と最初に出会えて安心しております」
(グフフ……こうも御しやすい新婚の人妻といきなり出会うとはな……)

 こんな場だ、機会があれば手込めにしてやろうと頭の上半分がハゲたハ白髪にヒゲ頭の下卑た表情をした老人、藤堂兵衛は考えていた。
 それは自分が拳法の達人である余裕もあるが、同時に意味不明の極限状況からくる現実逃避も多少はあった。
 どうやらこの殺し合いで出会った女は能天気にこちらを信用してくれたらしく。
 まあわしに従うのなら守ってやらんでもないと藤堂は尊大に考えつつ、うら若き女性がちょうど飯を用意してくれたので休憩がてらそこらへんのビルの一室で食らうことにした。
 料理を箸に取り、食べようとしたその瞬間。

「わしが男塾塾長、江田島平八であるっっ!!」

「ん、あの声は……!」
「あの声は……!」
 と、女性と藤堂はハモったような反応をする。
「ん? お前も「やつ」を知って……」
 女性の方の反応に気を取られる。藤堂兵衛はその時、直前まで箸を口にやろうとしていたのもあってか、とりあえずよく知る声の主から逃げるにしても箸に取った分くらいは食って飲み込んでしまえと、慌てて料理をぱくっと口にした。
 口にしてしまった。
 直後、絶叫が辺り一帯にほとばしった。
 
「ええい男子が何を騒ぐ……お、お前は藤堂!」
 少しして声を聞きつけた江田島塾長がドアを粉砕し、野太い絶叫のした部屋に入り込むと、そこには見覚えのある因縁の男が泡を吹いて倒れこんでいた。
 横に座り込んでおろおろしているのは……


561 : 塾長、DIEピンチである!! ◆ruUfluZk5M :2022/06/30(木) 22:13:44 m29ZlHS60
「ぽ、ぽろん!」
「平八くん!」
 小坂部ぽろん。21歳……21歳。彼女は男塾塾長、江田島平八の妻である。
 ふたりは早々に再会した。本来は喜ぶべきことであるが、状況はそれどころではない。

 藤堂兵衛は倒れ伏し、白目をむいて泡を吹いて動かない。
 そして、食卓に広がるものは嫌な意味で江田島が見慣れたもの。
 
「こ、これは!」
「私の料理を食べてたら……いきなり倒れちゃって……」
 それを聞いた江田島は青ざめた顔になり、日頃ではありえない挙動でとりみだす。
「あわわ」
 ぽろんの料理の凶悪さを日々知る人間だからこそ、やってしまったと。
 そう、男塾塾長江田島平八の新妻である小坂部ぽろんはとんでもない殺人料理の使い手だったのだ。象すら全滅させかねないレベルの料理を不用意に食べてしまったのだと、江田島は瞬時に察した。
 まさか因縁のライバルだった藤堂がこんなことで死んでしまうのか。昔からしぶとさだけが売りなところもある男だったあの藤堂兵衛が。

【藤堂兵衛@魁!!男塾 死亡確にn】

(い、いや死んではおらぬぞ! やつもひとかどの拳法家、しかもおそらく一口で倒れたせいか一命は取りとめておる!)
 しかし、ぽろんの料理は江田島平八が『死』を覚悟するレベルの味。
(いかなあの男と言えど無防備に食してしまえば誇張抜きに精神が耐えられまい……)
 江田島はとりあえずこの哀れなかつてのライバルを安置すると、ぽろんの肩を抱いてその場を立つ。
「と、とりあえずここは去ろう。この男はわしの古い知人だ。放っておいてよかろう」
「えっでも……平八くんこの人を置いては……」

「こいつのしぶとさも折り紙付きよ、大丈夫だ! いや、薬か何かを探した方が良かろう! それに急に倒れたのだろう、持病があるのやもしれん、下手にわしらのような素人が手出しするより治療できる人間を確保した方が良い!」
 慌てたように江田島が説得をするのだが、その理由は一刻も早くこの場を離れた方がお互いの身のためという必死さからだった。
 殺人料理を食わせることを毒殺未遂と藤堂のやつに思われては面倒だし、この男にとってもぽろんがすぐそこに居る方が危険だろうとの判断。
「そっか、そうだね」

 江田島はぽろんをお姫様抱っこのように抱え、その場を高速で走り去っていく。
「……平八くん、すぐに駆け付けてくれたね♥」
と、安心したように夫の胸元で大人しくしているぽろん。
 しかし、江田島の脳裏にはこれから何よりも優先すべき事項がはじき出され、その奪取のために頭脳がフル回転していた。
(トスサラだ! あの料理を美味しくする味の素の粉を探さねば、このままでは……決闘以前にぽろんの料理でこの会場は死の土地となる!)
 男塾塾長・江田島平八にとって、首輪などよりはるかに恐ろしい脅威が今迫っていた……

 ●

 一方そのころ、気絶から目が覚めた藤堂兵衛は。
「わ、わしは一体……?」
 記憶が飛んでいた。


562 : 塾長、DIEピンチである!! ◆ruUfluZk5M :2022/06/30(木) 22:15:25 m29ZlHS60
江田島平八@江田島塾長にチェックメイト!
[状態]わしが男塾塾長江田島平八である!
[装備]
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
1:こっこのままではぽろんの料理で死人が出る! トスサラはどこだ!
2:男児たるもの決闘のひとつやふたつ経験するものである!
[備考]
 基本的な能力、人格は男塾本編と変わりません。

小坂部ぽろん@江田島塾長にチェックメイト!
[状態]健康
[装備]
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
1:決闘なんて怖いけど……でも平八君がいるから安心ね。
[備考]

藤堂兵衛@魁!!男塾
[状態]記憶喪失
[装備]
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
1:ここはどこだ? なんでこんなところに居るんだわしは??
[備考]
 決闘バトルロイヤルに関しての一切をショックで忘れています。
 呼ばれる前の記憶はありますがなぜ自分がここに居るのか理解できていません。


563 : ◆ruUfluZk5M :2022/06/30(木) 22:15:52 m29ZlHS60
投下終了です。


564 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/30(木) 22:28:42 Ok2s2u820
投下します


565 : ニニンがニノン外伝 ◆2dNHP51a3Y :2022/06/30(木) 22:29:01 Ok2s2u820
「アブナイ所だったデース!」

ギルド『ヴァイスフリューゲル』所属の忍者、ニノン。
彼女がある少女を、魔物を襲われている所から助けた後、ある街の一角にて休息を取っていた。

「あ、ありがと……。って、本当にいたんだ、忍者……。」
「そうデース! ニノンはれっきとした忍者なのデス!」

そしてそんな調子のいいテンションのニノンを、琴岡みかげという少女は半分冷えた目で眺めていた。
この現代のご時世で忍者なんていう半ファンタジー的な存在がいるのも驚きであるが、みかげ当人からすればこんな殺し合いに巻き込まれてしまった今の状況が憂鬱であった。

(口調からしてアレよね。よくラノベとかである日本文化を間違って覚えた留学生とかそんなノリの子。)

琴岡みかげはそういう類の小説への知識には疎かったが、何ともテンプレじみた反応の彼女を見てみれば否応なく分かるというもの。

「……どうしましタ? どこか調子が悪いデスか?」
「あ、いや、何でも無い。ちょっと疲れただけだから問題ないから。」
「なら少し休めば心配ないデース! 大丈夫デス、あなたの事は、私が責任を持って、お守りしマース! ショーグンなら必ずそうするはずデース!」
「あ、あはは……。」

ニノンのハイテンションに気圧されながらも、気の抜けたように呆れた笑みが溢れるみかげであった。


【ニノン・ジュベール@プリンセスコネクトRe:Dive】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:ハ・デスとかいう見るからにワルモノ倒して、さっさと脱出するデース!
1:アナタ(みかげ)の事は私が守りマース!
2:ショーグンや、モニカさん達は無事なのでしょうカ?
[備考]

【琴岡みかげ@ななしのアステリズム】
[状態]:健康、不安
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:早く帰りたい
1:どうしてこんな事に……?
2:なにこのエセ忍者、いや悪い子じゃない……のかな?
[備考]
※参戦時期は第五巻、鷲尾と喧嘩別れした後


566 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/30(木) 22:29:12 Ok2s2u820
投下終了です


567 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 22:36:29 HDozZHCg0
投下します


568 : 並行世界のハーレム要員 ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 22:37:29 HDozZHCg0
 ハァ、ハァ―――。
 聖剣で思いっきり斬られたエルフの少女―――エリンは涙を浮かべて狼狽えながら、精一杯に叫ぶ。

「どういうつもりだよ、マサツグ……!」
「なんだその顔は。ふう、まるで俺が弱いものいじめしてるみたいじゃないか」

 マサツグと呼ばれた男は動揺するエリンに大した感慨もわかず、やれやれと一蹴する。
 最初はこのエリンを自分のハーレム要員のエリンだと思っていたマサツグだが、声や見た目や名前こそ同じだが性格が全く違う。

 そしてハ・デスが口にしていた無数の世界という言葉を思い出す。
 無数の世界―――それは異世界の他に並行世界(パラレル・ワールド)も含まれるのだろう。
 つまりこのエリンはエリンであっても、マサツグの知るエリンではない。
 だから決闘で生き残る為に邪魔なクズは排除することに決めた。やけに馴れ馴れしい上にツンデレ気取りなところも腹が立つ。
 何も知らない輩にいきなりツンデレ気取りされても意味不明だし、気持ち悪いだけだ。

「本当にどうしたんだよ、マサツ―――グ―――?」

 ザンッ!
 必死に説得を試みようとする少女をマサツグは容赦なく殺した。
 この決闘は殺し合いだ。そして生き残るためにマサツグは他の参加者を殺すことに決めた。
 もしもこのエリンがこのマサツグの知るエリンなら、きっと違う展開になっていただろう。
 しかしツンデレ気取りのエリンなんて不都合な存在は不要だ。だから遠慮なく殺した。

「……ん、エリンの別人がいるってことはもしかして俺の別人も居るのか?」

 マサツグは自分と同じ顔や声をした別人がいることを想像して、顔を顰めた。
 このエリンのように気持ち悪い性格の自分が居るとしたら最悪だ。
 リュシアやシーもこのエリンのように、姿形だけ同じ存在がいるかもしれない。リュシアやシーと遭遇しても、自分に都合の良い彼女達か確認だけして殺すかどうか決めよう。

【エリン@異世界で孤児院を開いたけど、なぜか誰一人巣立とうとしない件(漫画版) 死亡】


【マサツグ様@コピペ】
[状態]:健康
[装備]:聖剣ソードライバー&刃王剣十聖刃&ブレイブドラゴンワンダーライドブック@仮面ライダーセイバー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜5
[思考・状況]基本方針:他の参加者を殺して優勝する
1:並行世界の自分が居たら殺す
[備考]
※ミヤモトやトリタ戦など主にコピペになっている部分が元となって生み出された歪な存在です
※「守る」スキルは制限により弱体化しています
※クロスセイバーの制限については後続の書き手にお任せしますが、複数人で掛かれば勝てる見込みがある程度には制限されています


569 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 22:37:44 HDozZHCg0
投下終了です


570 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/30(木) 22:41:16 Ok2s2u820
投下します 辺獄で書いたものを修正したものです


571 : Revenge of New King ◆2dNHP51a3Y :2022/06/30(木) 22:41:33 Ok2s2u820
「――気に食わぬ。何故余がこのような下らぬ催しに巻き込まれなければならぬのだ。」

満天の星広がる夜空の下、黒衣の男が苛立ちの言葉を吐き捨てそこに立っていた。
男の名はベルゼバブ。空の世界において、『星の民』と呼ばれた種族の一人。

「だが、手段はわからぬがあの封印から余を開放し、ここまで連れてきた連中の力は興味深い」

彼の最後の記憶、それは特異点とその仲間たちとの戦闘中、特異点の仲間の一人である錬金術師カリオストロの策によって星晶獣封じの結界によって次元の狭間に封印された時だ。
もっとも、それは狡知の堕天司ベリアルによって仕掛けられた策であり、戦場となっていた実験場にあった資料に細工をし、それを特異点達に気づかせるというなんとも遠回しなやり方であった。
だが、仮にも星晶獣を封印出来る結界から、自身に気づかれずにここまで連れ去るなど、余りにも不可解だ。

「……狡知とルシファー、特異点どもはおらぬか。いや、もしかすれば余と同じく呼ばれている可能性もあるな。」

だが、この考察がもし事実だとすれば、最低でも想定出来る相手は天司長か高位の星晶獣に引けを取らない、もしくはそれすら凌駕した存在だと考えられる。
――だが、それがどうした?

逆を言えば、ルシファーや特異点に類する参加者が多数呼ばれている可能性があるかもしれないということだ。ならばベルゼバブにとっては好都合である。その参加者を、あわよくば主催共の力を手に入れ、今度こそ全てを超える存在として世界に君臨することだ。

だがその前に最初に邪魔となるのはこの自身に課せられた首輪の存在だ。これがある以上忌まわしいことに反抗は不可能。故に。

「まず手始めに羽虫どもの首輪を手に入れたい所か。それに、誰を殺すにしろ、会うやもしれぬ異世界の人間の実力とやらも確かめておくことも、な。」

まずは首輪のサンプルだ。解除のためにはまずこれ以外の実物を調べる必要がある。どちらにしろ他の参加者を殺す必要性があるがそれは些細な問題だ。
それに、もし仮にルシファーや特異点らがここに来ていると仮定して、やつらもまた同じように首輪を嵌められ、その力を制限させられている可能性がある。
特異点はまだしもルシファーの実力はベルゼバブ自身が一番知っている。狡知との激闘の傷が響いていたとはいえ一撃で瀕死に持っていかれた。
もしルシファーがいると仮定し、やつを打ち倒すならば早々に自身の首輪を外し、奴の首輪が外れる前に奴を仕留める他ない。もし奴の首輪がすでに外れているのであれば、その時は力を蓄え、万全の状態を持って挑み仕留めればいい。

「待っているが良い、メフィスとフェレスとやら。最後に頂点に立つのは、このベルゼバブなのだからな!」

夜天にて、蝿の王の声が、高らかに鳴り響いた。


【ベルゼバブ@グランブルーファンタジー】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:他の参加者も主催をも打ち倒し、今度こそ全てを超える存在として世界に君臨する
1:まずは首輪のサンプルが欲しいところだ
2:もしルシファーや狡知、特異点等がこの会場にいた場合の対策も取らねばならぬ
[備考]
※参戦時期はカリオストロに封印された後


572 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/30(木) 22:41:43 Ok2s2u820
投下終了します


573 : 冥界刀使 ◆EPyDv9DKJs :2022/06/30(木) 22:52:25 OhMCVVPE0
投下します


574 : 冥界刀使 ◆EPyDv9DKJs :2022/06/30(木) 22:54:09 OhMCVVPE0
 彼は引いていた。
 別に彼がおかしいからではない。
 いや、その存在はある意味おかしいとも言うが。
 DIO下にいたわけである以上、人に対する理解は十分にある。
 精神がいかれて自傷行為に浸る奴は、この世界にはいくらでもいることも。
 しかし彼は思う。と言うより思わざるを得ない。

『俺で自分斬る奴があるかぁ〜〜〜!!』

 彼、アヌビス神がこのバトルロワイアルで最初に斬ったのは、
 まさかの支給された本人だったと言う。

 ───アヌビス神。
 500年前の鍛冶師の打った刀に本体のスタンドが残っている、世間的に言う妖刀の類。
 刀であった為博物館にいたところを、DIOが外へ出してくれた恩とDIO自身の強さを知り、
 DIOの直属の部下として活動するも、最期はジョースター一行に負けてナイル川の底に沈む。
 永遠に孤独を過ごすのかと思われていた最中、同じく冥界の神由来の存在によって助けられた。
 錆びた部分も折れた部分もすべてが元に戻った上で、殺し合いにおける支給品として支給されることに。
 アヌビス神としては願ったりかなったりだ。いくらでも人が斬れるこの場に送られる何の問題もない。
 なかったのだが。支給品として登場してみれば、手にして早々持ち主は腕を斬って傷口を作り始めた。
 刀なら人を斬るのが仕事だ。しかしこの場合は流石に色々違うではないかと。
 乗っ取ろうとしてたことすら忘れて、思わず叫んでしまう。

「……喋ったのは、貴方ですか?」

 茶色の制服に身を包む黒髪から変色した白髪の少女が気付く。
 どこか薄幸そうで、無機質さが伺える十代中ごろの少女だ。
 仕切り直して問答無用で乗っ取り、身体を奪うこととする。

『これでいくらでもぶった切れるぜ!
 DIO様! 無事に戻ってジョースター共を倒して見せましょう!』

 完全復活を果たしたのならやることは一つだけ。
 ハ・デスの力をDIOの為に使う。それだけである。
 ついでにいればジョースターたちも始末するべく行動を開始───

「……妖刀の類でしょうか。御刀も確かに意思がありますが、
 こうして意思疎通ができるというのは初めてかもしれません。」

 できなかった。
 持ち主の少女の無機質さのある声が遮ってくる。

『嬢ちゃん、俺の声聞こえるのか?』

 普通に喋ってる相手に一瞬の間思考停止。
 もし姿が見えて居たら首を壊れたからくりのような、
 ぎこちない動きで視線を向けただろう。

「はい。」

『にゃにぃ〜〜〜〜〜!?』

 能面のような無表情で返され、思わず絶叫を上げた。
 全く分からなかった。ハ・デスからそんなことは一言も聞いてない。
 此処まで元に戻ったのだから何も問題ないと思っていたのだが、
 何故洗脳できないのかがさっぱりわからない。人でも動物でも操れたはずなのに。

「多分、体内にノロが含まれてるからでしょうか。それが正解かはわかりませんが。」

 少女はそのまま話を続ける。
 簡単に言えば彼女、皐月夜見はノロと言うある不純物を体内に取り込んでいる。
 ノロは密集すると荒魂と言う疑似生物に変化してしまうもので、
 それが体内にあるから洗脳がうまくできなくなってるのではないか。
 と言う可能性を推論してみたものの、

『いや嬢ちゃんふっつーに何考えてんだ!?』

「嘘でも私を認めてくださったので。」

 想像以上にぶっ飛んでいた。
 洗脳できないことじゃなくて相手の人間性が。
 刀打つときに出た不純物を体内に入れるなど常人の発想ではない。
 事実それが原因で彼女の髪の色は見事に変色しているぐらいの劇薬だ。
 何をそこまでこいつを突き動かすのかと思うが、ンドゥールの件もある。
 エジプト9栄神におけるDIOと同等と思えば、なんだか納得できてしまう。
 実験体として受け入れ、その人物に対してずっと仕え続けてたそうだから。

「或いは、主催の方は洗脳を望まなかったのではないでしょうか。」

 相手に言われみると、なんとなく納得できた。
 操ってしまえばそれはもうアヌビス神だ。彼女に非ず。
 参加者となってしまっては支給品の枠を超えており趣旨が変わってしまう。
 もしかしたら手を加えてる可能性だってあることは絶対にないとは言い切れない。
 真偽は不明のままだ。他人が手にすればわかるかもしれないので後回しとしておく。


575 : 冥界刀使 ◆EPyDv9DKJs :2022/06/30(木) 22:55:33 OhMCVVPE0
『って言うか今更だがなんで自分を斬るんだよ!? もっと自分を大切にしやがれ!!』

 思わず道徳観に塗れた言葉になってしまったとは当人(当刀?)も思う。
 別にそういうつもりはなく、刀を持つ奴が腕を傷つければ腕が鈍ることになる。
 そも。アヌビス神は持ち主が死ねば刀が本体の都合で動けなくなってしまう。
 現住生物と言うかモンスターはいるらしいので詰むことはないだろうが、
 それでも不安の目はなるべく摘んでおきたくもある。

「すみません。必要だったことですから。
 不快に思われますが暫くの間は我慢していただければ。」

『いきなりリストカットすることのどこに必要あるんだよ!?』

 自分を傷つけたら発動するスタンド使いだとでもいうのか。
 とか思ったが、そういえばラバーズなんてスタンドもあるらしいのであり得ると、
 自問に対してすぐに解決させてると、彼女の周囲に数体の蝶が舞ってることに気付く。
 明らかに普通の蝶ではない。夜なのに橙色に輝いている上に生物らしさのない不気味な蝶。

「そうですか、わかりました。」

『嬢ちゃん、蝶と話せるのか?』

「これは荒魂です。先程斬ったのはこれを出す為です。」

 体内のノロを荒魂にすることで、
 斥候や兵器として使うことができる。
 これが彼女、皐月夜見の持つ固有の力とでも言うべきか。
 納得はしたが、これから何度も本体を斬らねばならないのか。
 そう思うとアヌビス神は微妙に億劫な気分にさせられていた。

「参加者を見つけたようです。迅移もできないので向かうのがいいかと。」

 こんな山奥からのスタートでは早く降りなければならない。
 夜見は動き出すと、その最中にアヌビス神が忘れてたことを問いかける。

『待て! ところで、嬢ちゃんがどうするか聞いてないぞ!』

「どうする、と言いますと。」

『決まってんだろ殺し合いだ!』

 洗脳ができない現状、彼女のスタンスはどうするのかを聞きたい。
 刀が斬ること以外に意味など見いだせるはずがない。
 ジョースターがいるならぶった切れ! DIO様がいるならお守りしろ!
 と、本来なら言うべきことも洗脳できない手前下手なことは……もう言っていた。
 悪印象を持たれないようDIOにやジョースターについての情報はなるべく避けるか、
 人柄を知るまでは言わないようにすることを考えながら答えを待つ。

「……そうですね。今は特に決まっていません。」

『は?』

「私は弱い人間なので。殺し合いに勝ち抜くことは難しいでしょう。」

 皐月夜見は非才な人間だ。
 強くなるために手段を択ばなかった真希とは違う。
 真希に差を付けられたくなかった寿々花とは違う。
 純粋に不治の病を延命して生きてた結芽とは違う。
 彼女らには才能は元よりあった。彼女は足りない力を補うためのもの。
 そも、彼女はノロを入れなければ御刀に選ばれることもないほどの非力さだ。
 優勝経験のある真希と違い彼女には目立った戦績もない。荒魂を頼っても、
 柳瀬舞衣や衛藤可奈美のように才能のある人物ではそれすらも足りえない。
 例えアヌビス神の力を以てしても優勝できるだけには至れないと思っていた。

『おいおい! あるだろ! 未練とか、ほら!』

 必死に説得を試みることとする。
 此処で諦められたら自分はお払い箱だ。
 孤独になるのはもうごめんだ。絶対に避けたいので説得を優先したい。

「生前に未練がありませんので。」

 高津学長を荒魂から守り切って命を落とした。
 であれば、もう生前についてはさほど望むことはない。
 優勝できる実力はなければ、脱出したところで生きて戻れる確証もなく。
 何より、自分が生きて戻れば世間的に見れば荒魂の類と認識されてしまうだろう。
 そうなれば高津雪那に余計な冤罪になりかねない。彼女としてはしたくないことだ。

『じゃ、じゃあどうすんだよ……』

 目的が定まらない相手との対応なんて、
 アヌビス神が一度も経験できないことだ。
 常に意志を奪い自分が戦ってきたのだから。
 マジでこれお払い箱ではと微妙に震え始めていた。
 刀なので震えようはないが。

「……では、初心に帰ってみます。」

 初心。彼女の元のルーツ。
 自分に刀使の才能があると故郷の皆は期待してくれた。
 彼女自身は御刀は応えてはくれなかった非力な存在だが、
 元々は刀使らしく、人を守ってみる道をして見てもいいのではないか。

『待て、それだと俺は斬れないぞ!?』


576 : 冥界刀使 ◆EPyDv9DKJs :2022/06/30(木) 22:56:47 OhMCVVPE0
 善の道を歩むということはつまりそう言うことだろう。
 それでは困る。飾られるだけの刀に一体何の意味があるというのか。
 と言うよりもう孤独とはおさらばしたくて仕方がない。

「御刀ではないので途中までですが、
 その期待には沿えるように善処はします。」

 彼は誰かを斬ればそれでいい。
 つまり、そこに善悪の概念はないのだと。
 この先NPCやら敵対する参加者でも問題ないだろう。

『え? いや、ならいいんだが。』

 思ったよりも話が分かる相手に少し戸惑う。
 刀を扱うことにはそれなりではあるとのことだし、
 自分が相手を斬りたいことを尊重するなんて珍しい奴だと。
 相手が誰であっても、必要であれば斬った彼女には余り抵抗感がない。
 抵抗があるなら、独断で鎌府の生徒を瀕死に追い込むことはしないだろう。

 夜見は一先ず、参加者のいた方へと向かう。
 鬼が出るか蛇が出るか。できれば蛇であることを願う。
 彼女はこうみえて鬼が嫌いだから。

【皐月夜見@刀使ノ巫女】
[状態]:腕に複数の傷
[装備]:アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本方針:とりあえず、恥じない刀使らしさを少しだけ目指す。
1:知り合いがいた場合は一応の目標にする。
2:DIOと言う方やそれに関係する方と接触は細心の注意をしておきます。
3:荒魂が見つけた人を調べに向かう。
4:俺、これでいいのか? なんか言いくるめられてないか?(アヌビス)

[備考]
※参戦時期はアニメ版死亡後。
※御刀がないので刀使の力は使えません。
※荒魂は出せます。
※アヌビス神が洗脳できないのは制限か、
 彼女にノロが入ってるからなのかは現時点では不明です。
※アヌビス神の参戦時期は水没後ですが、
 刀身は完全に元に戻っています。
 ただし覚えたものは全てリセットされてます。
 現在覚えてるものはありません

【アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険】
皐月夜見に支給。キャラバン・サライのスタンドが刀に残った物質と同一化した本体でありスタンド。
ステータスは破壊力:B スピード:B 射程距離:E 持続力:A 精密動作性:E 成長性:C
主な能力は三つあり以下の通り
・本体である刀を抜いた者を操る能力。抜かなくても小動物なら操ることができる
・一つは物質を透過して斬れる。間の物だけを斬らずに斬るなどの芸当も可能
・一つは受けた攻撃を学習する。同じ手を使ってもそれを超える動きで対応できるようになる
刀に自我があり、持ってる人に限りその言葉が分かる。
操る能力は制限かは現時点では不明。


577 : ◆EPyDv9DKJs :2022/06/30(木) 22:57:14 OhMCVVPE0
以上で投下終了です
過去についてはソーシャルゲームであって、
アニメではそうではないかもしれない、とだけ明言しておきます


578 : ◆0EF5jS/gKA :2022/06/30(木) 23:02:14 mMbaPtvM0
投下いたします。


579 : ◆0EF5jS/gKA :2022/06/30(木) 23:02:53 mMbaPtvM0
「…」


(さっさと失せなさいよ…!)

きらびやかな金髪縦ロールで黒曜石と同じ色のドレスを着たかわいらしいお人形さん…

は確かな自我と命をもっている。

その名はプリンセスコロン、ハートランドという男によって命を吹き込まれたお人形だ。

そんなコロンちゃんは早々に危機に見舞われている。
燃えさかる獄炎のような天馬のモンスターがこちらをじっと睨んでいるのだ。
どういう理由でにらみつけているかはわからない。

コミュニケーションを全くしていないが友好的には見えない。
このままやっつけに掛かってきたらとってもやばい。
だからこうして顔を合わせた瞬間からぽてんと倒れただの人形の振りをしてごまかそうとしている。
しかし参加者であることはバレバレだった。

動いているところをもうとっくに見られているし
なにより首輪が付いているので
人形のふりがバレようがバレまいが、参加者であることを認識されるだろう。

ちなみに天馬自身はコロンに危害を加えるつもりは一切ない。
むしろ殺し合いを破綻させるために動こうとしている。
コロンをじっと見ていた理由は単に『なにこいつ』と思ったからだ。

そんな天馬こと最強れんごく天馬はこのバトルロワイヤルに呼ばれる前は
相方の最強ゲモンとコンビを組んでブイブイ言わせていた。

バイキルトでサポートし、時には自身でぶん殴ることもできて、
なによりゲモンにはあらゆる呪文を跳ね返すつねにマホカンタが、
そしてこの天馬にはあらゆる物理攻撃を反射するつねにアタックカンタの特性を持っている。
つまりこのタッグは一部を除いた全体攻撃を反射する
恐ろしくも合理的な戦術を用いる脅威のコンビなのだ。

でも即死とかの状態異常とかはやめてくれ、死んじまう。


580 : ◆0EF5jS/gKA :2022/06/30(木) 23:03:51 mMbaPtvM0
特にやけつくいきはマジでやめろ。

そんな最強れんごく天馬はまーだコロンを顔を近づけ見つめていた。

(そんなに見つめてなんなのよもう!何がしたいのよ!あと顔近いってば!荒いって鼻息!)

コロンは人形の振りが通じず巻き困られた参加者だということを
すでに見破られていることにまだ気づいていなかった。

(こんなんじゃうごけないでしょ〜!!
一体この馬なにがしたいのよ〜!!)

コロンがまともに動けるようになりには
まだまだ時間がかかるのだろう。


【プリンセス・コロン@遊戯王ZEXAL(漫画版)】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:脱出したい。
1:この馬(最強れんごく天馬)こっち見てないでどっかに行ってよ!
2:遊馬やアストラル、ナンバーズクラブのみんなもいるのかしら…?
[備考]
少なくとも九十九家に居候しはじめた後からの参戦です。

【最強れんごく天馬@ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー2 プロフェッショナル】
[状態]:健康、つねにアタックカンタ。
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いを破綻させる。
1:なんだこのモンスター(プリンセスコロン)…
2:あいつら(DQMJ2Pの主人公、最強ゲモン)もいるのか?
[備考]
修得スキルは回復SP、アッパー、かしこさアップSPです。


581 : ◆0EF5jS/gKA :2022/06/30(木) 23:04:34 mMbaPtvM0
投下は以上となります、SS名は「お馬さんとお人形さん」です。


582 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/30(木) 23:05:27 Ok2s2u820
投下します 天気の子ロワからの流用です


583 : それは紛れもなく、一発ネタであった ◆2dNHP51a3Y :2022/06/30(木) 23:05:48 Ok2s2u820
「グリームニルゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッ!!!」


【羆@大人はメスガキには負けないが羆は想定していないんだが???】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3つ
[思考・状況]
基本方針:人間は殺す


584 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/30(木) 23:06:00 Ok2s2u820
投下終了します


585 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/30(木) 23:18:51 5cDIQu2k0
投下します。辺獄ロワでの候補作とエロトラップダンジョンロワでの候補作から一部を流用・改変しています。


586 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/30(木) 23:19:31 5cDIQu2k0
決闘の会場内での一角、そこに青年と少女2人の参加者が話を交わしていた。
最も青年の方は、まるで上の空かのように無難な返答と相槌ばかりをしていて…一方少女の方はそれを気にも留めずに話したい事を話している…と言った様子だったが。

そのまま会話が暫く続く中…少女はふと青年にお願いをする。

「そうだ、もし良ければ、探して貰いたい人と、その人に伝えたい事があるんだけど…いいですか?」
「…ああ、いい。君は誰を探して何を伝えるんだ?」
「ワッカさんって…青いバンダナ着けてる人を探して欲しいんです。そして伝えたい事は…ふふっ…

「ワ ッ カ さ ん が 産 む ん だ よ ?」

…って、お願いします!」

「…………は?」

困惑する青年を他所に少女は語る。

「ワッカさんがティーダの子を産めば、スピラ中のみんなが幸せになれると思うんです…わたし」
「そ…そうか……わかった…。もし見つけたらその時は伝えよう」
「本当ですか!?ありがとうございます!
…もしよければ一緒に」
「いや、手分けして探したほうが良いんじゃないか?」
「…それもそうですね、わかりました」

納得した様子で少女は、青年に一礼した後その場から去っていった。

少女の名はユウナ。死の螺旋を断ち切り永遠のナギ節をもたらした大召喚士…しかしこの会場に招かれた彼女は、本来の者でなく…ネット上のミームによって歪められた存在。

彼女の主目的はひとつ。

「わたしはただ、ワッカさんが苦悶の表情を浮かべてあかちゃんを産むところをみたいだけなんだよね」

バッグの中にあるベルトと実に視線を向けた後、少女は歩き出した。素敵だね。

【ユウナ(FF)@ネットミーム】
[状態]:健康だね
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ワイズドライバー@仮面ライダー×仮面ライダー 鎧武&ウィザード 天下分け目の戦国MOVIE大合戦、孕々の実@西遊記(2006年版)、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:ワッカさんが産むんだよ?
0:わたしはワッカさんが苦悶の表情であかちゃんを産むところがみたいんだけなんだよね。
1:この実をワッカさんに食べさせたい。
2:さっきの人みたいに聞いてくれるなら協力を頼む、聞いて貰えないなら…ふふっ。
3:ワッカさんがいるならこの場で実を食べさせてあげる。いないなら帰還して持ち帰ってその後食べさせてあげる。
4:ティーダたちがいるなら協力して貰わなきゃ。
[備考]
※本来のユウナのように召喚獣の使役(Ⅹ)や、ドレスアップ(Ⅹ-2)が可能かどうかは後続の書き手にお任せします。
※青年とある程度の情報交換をしたようです。内容については後続の書き手にお任せします。

【ワイズドライバー&チェンジウィザードリング&ドライバーオンウィザードリング@仮面ライダー×仮面ライダー 鎧武&ウィザード 天下分け目の戦国MOVIE大合戦】
仮面ライダーワイズマンこと白い魔法使いに変身する為に必要なドライバー(別名は白い魔法使いドライバー)とリングに、ベルトを出現させる為のリング。一つの支給品扱いとなる。
本来ならウィザードライバー同様、使用者がファントムを宿した上で絶望せずにいる必要があるが、今ロワでは装着さえすれば誰でも変身可能。
また本来なら装着型ではないが、今ロワでは主催の手により装着型(ただし一度装着すると、装着者が死亡しない限りは以降は本来と同じく内蔵型となる)へと改良されている。
ちなみにこちらは出典元においてホープウィザードリングから生成されたコヨミが使用した物。ベルトの出所は不明で、本編にて笛木が使用していた物とは別な可能性あり。

【孕々の実@西遊記(2006年版)】
性別を問わず食べた者を孕ませてしまう実。孕まされた子供は急激に成長して、数日で出産まで進んでしまう。


587 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/30(木) 23:20:39 5cDIQu2k0
ーーーー

ユウナが去った後、青年は無言で考え込む素振りを見せる。

そして暫くして…彼は怒りで顔を赤くしながら叫んだ。

「あの女は危険だ!!!!俺を殺そうとしていた!!!!」

男の名はアスラン・ザラ。遺伝子を人工的に操作して生まれてきたコーディネイターにしてプラントの議長であったパトリック・ザラの息子であり、MSを駆ってC.E.世界を二度も救った紛れもない英雄である…しかし彼もまた、本来のアスラン・ザラではない。

彼は「本来の」アスラン・ザラから派生した様々なネットミームが入り混じり、元となったアスラン・ザラから剥離した一面。言ってしまえば無辜の怪物である。
…何故先程のユウナ相手にこんな風にけおらなかったのかと言うと、逆らったら殺しに来ると直感で悟った…というか決めつけた。故に「本来の」アスラン・ザラに比較的近い動きをしていたのだ。

「…俺が最初に遭遇した相手があの女だった時点で!磯野やハ・デス達主催者は俺を殺そうとしている!!!!まさか裏で議長が手を引いているのか…!?!?!?やはり議長は俺を殺そうとしている!!!!」

主催者達にギルバート・デュランダル議長が何らかの形で関わっていて自分を殺そうとしている…と、アスランはそう勝手に決めつけ怒りを向ける。

問題児としか言いようがない彼だが、ミームにより捻じ曲げられていても、彼の本質である「自分の為よりも他人の為に行動できる善人」である部分は変わらないことが多い。
最も、だからこそ厄介で迷惑な部分もある上に、「オリジナル」のアスラン・ザラはやかましくない代わりに口下手な為、人間関係や話が拗れやすいところもあるのだが。
ともかく、彼は主催に抗い、殺し合いには乗らないと方針を定めた。

「まずはジャスティスを捜索しゆくゆくは主催本拠地でジャスティスを核爆発させる!!!!」

そう叫ぶと彼は先程ユウナが去った方向とは逆に向かって走り出して行った。

なお、ネットミームの融合体のような事となっている彼だが、スペック自体は「元となった」アスラン・ザラと同様である。
その為彼は、MSの操縦は勿論、高い身体能力と戦士としての才能を持ち生身でも対人戦をこなせる他、頭も良く、トリィや大量のハロを作成出来る様に機械工学にも強い。
…ただし、言動も行動も錯乱していて理解不能な事が多く、控えめに言ってやかましい他、テンションの落差が激く思い込み易く、疑心暗鬼になりがちかつ一人で抱え込みがちな為に意思疎通や交渉には強い根気が必要になる。
また「元となった」アスラン・ザラからしてそうだが、一度迷いを抱くと弱体化しがちで、覚悟が決まってる時は決まってる時で人の話を聞かずに突っ走りがちな欠点もある為、あまり当てにはしづらいのが悲しいところである。

【アスラン・ザラ@ネットミーム】
[状態]:健康、怒り、錯乱、怒りからくる顔真っ赤っか 、ユウナへの警戒(極大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:主催者の本拠地でジャスティスを核爆発させる!!!!
0:あの女(ユウナ)は危険だ!!!!俺を殺そうとしていた!!!!
1:まずはジャスティスを捜索する。なかった場合は最悪MSならどれでも良い。
2:議長は俺を殺そうとしている!!!!
3:俺の命も他人の命もおもちゃじゃないんだぞ!!!!この馬鹿野郎!!!!
4:シン!!!!殺し合いに乗ってるようなら殴りに行くぞシン!!!!
5:名前にシンが入ってるだけで十分だ!!!!このシン野郎!!!!
6:名前の響きがシンに似ている!!!!シン野郎!!!!
7:主催者が本田を!!!!本田を殺したぁぁぁぁ!!!!
8:主催者が本田とニコルを!!!!2人を殺したぁぁぁぁ!!!!
9:主催者がニコルを!!!!ニコルを殺したぁぁぁぁ!!!!
10:わかった…。
11:俺は有害じゃない!!!!
12:キラァァァァ!!!!
13:殺し合いに乗ってるのなら!!!!倒すしか無いじゃないか!!!!何故わからない!!!!
14:何が願いが叶うだ馬鹿馬鹿しい!!!!
15:トゥ!ヘァー! モゥヤメルンダッ!!
16:殺し合いはヒーローごっこじゃない!!!!
[備考]
※メタ知識の有無や、あるとしてどれぐらい保有しているのかは後続にお任せします。
※ユウナとある程度情報を交換したようです。内容については後続の書き手にお任せします。
※ギルバート・デュランダル@機動戦士ガンダムSEED DESTINYが主催の背後にいると勝手に思い込んでいます。


588 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/30(木) 23:23:07 5cDIQu2k0
ーーーー

「…何なんだ、あいつらは…。」

ユウナが去りアスランが駆け出してから少しした後、ため息を吐きながら1人の青年が帽子を脱ぐ。
青年の名はレナード・テスタロッサ。若干16歳にしてテロ組織であるアマルガムの幹部の座に就いた、生まれながらにオーバーテクノロジーの知識を持った存在であるウィスパードの1人。
本来なら先の2名とは別のベクトルで危険な存在である筈が、ある気持ち悪い男との同盟をきっかけに最終的には自らの過ちに気付き…命と引き換えに地球艦隊を救った男。

「アスラン・ザラ…敵として戦った事しかないが、あそこまで躁鬱が激しい男だったか…?」

彼は死後、この決闘の場へと招かれた。

ーーーー

「違う形で出会えていたら、友達のようなものに…なれたと思うか?」
俺は自分の計画をぶち壊した男に聞く。

「仮定の話をしても仕方ない」
帰って来たのは、あいつらしい可愛げのない答え。
…それでも俺は…嬉しかったんだ。あいつが、その仮定自体を否定しなかったって事実が。
……サガラ。俺にも、お前みたいなガッツが有れば…な。

その思考を最後に、限界を迎えた乗機のベリアルが爆発するところが…俺がこの決闘とやらに巻き込まれる前の最期の記憶だ。

だが、終わる筈だった俺は、どういうわけかこの会場に居た。
そこでイソノと名乗る黒服の男にルールを説明されて、それに反対して声を荒げたホンダという男が殺され、ユウギという男の慟哭する様を見せられた後、気づくと会場の一角に放り出されていた訳だ。

…あの場で負けを認めた以上、今更世界をどうこうする為に動くつもりは無かった。
例え殺し合いに勝ち残ったとして、あの男やハ・デスとやらが大人しく世界の変革を認めるだろうか?答えは否だろう。
そもそも負けを認めた上に、あの場で終わった命の筈な俺をわざわざ叩き起こしておいて、首輪を付けて殺し合いに参加させようとする奴が胴元な以上…よしんば願いが叶ったとしても、奴らの都合の良い世界になっている可能性が高い筈だ。

勿論、俺には元の世界に戻るつもりも無かった。
サガラ達ならば…俺の残したデータを参考にして、世界の融合を止め、世界自体を救ってみせているだろうという確信があった。

仮にサガラなら…このような殺し合いに巻き込まれても、殺し合い自体を破綻させて、ぶっ壊そうと動くだろう。
それこそ仮定の話でしかないが……俺には、サガラのようなガッツは無い。死ぬ間際に過ちに気付けたとはいえ、気付くには遅過ぎた上、一度死んで生き返った程度で俺の犯した罪が消えるはずなんて無い。
それでも…このふざけた殺し合いをぶっ壊す為に俺は、終わった筈の命を使って、罪を背負い、なけなしのガッツを持って…主催相手に立ち向かう事を決めた。
あいつのようには行かなくても…それでもやってみたいと、そう思ったんだ。

そして俺は、アラストルでも入っていれば助かるんだが…と思いながら、支給されていたバッグの中身を確認する事にした…が、残念ながらアラストルは入っていなかった。
しかし石ころぼうしという有用な支給品が入っていたのは、説明に書いてあった時間制限を加味しても…幸先の良いスタートを切れたと…そう思って「いた」。

ーーーー

足音が聞こえた為、レナードは効果を試す意味合いもあり…帽子を被る。
暫くして現れた2人の参加者の内1人に、レナードは見覚えがあった。アスラン・ザラ。生前レナードが敵対していた地球艦隊・天駆のパイロットの1人…最も属していた世界の違いもありアスランに対する情報はそこまで詳しい物は持ってなかったが。

帽子を被ったまま静観していたレナードであったが、暫くして会話が怪しげな方向に向かい…やがて女の方がおかしな事を言い出した際には、困惑しつつも帽子を使って正解だったと安堵していた。間違いなく巻き込まれるだろうからである。

そして女…ユウナが去った後、帽子を外すか否か考えたレナードであったが、ここでアスランが唐突に怒り出したのを見て帽子をまだ着用しておく事を決めた。

(…あれが本当に俺の知っているアスラン・ザラかは不明だが、今姿を表すのは不味そうだ…下手に動くのも危険か)

そのまま動かず止まっていた所、アスランが何処かへ去って行った事により、ようやく彼は帽子を外す事が出来たのである。

「…まあいいさ。ただ…出来ることなら、あの2人とは遭遇したくはないな…」

そう呟いた後、レナードはその場から離れる…勿論方向はユウナやアスランとは別の方に向かうのであった。


589 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/30(木) 23:23:22 5cDIQu2k0
【レナード・テスタロッサ@スーパーロボット大戦V】
[状態]:健康、決意、ユウナへの警戒(大)、アスランへの警戒(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、石ころぼうし@ドラえもん、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針: この殺し合いを破綻させる
0:サガラみたいにやってみるさ、俺も。
1:あの2人とは会いたくはない…特にユウナとは。
2:とりあえずユウナとアスランとは別の方向に向かう。
3:首輪の解析を行いたい。
4:ASが欲しい所だが…。
[備考]
※参戦時期は困難ルート50話「決戦の青き星々」にて死亡後からです。
※彼の過去については出典元である「フルメタル・パニック!」の描写も使用しています。
※アスランとユウナが交換した情報を聞いていました。内容については後続の書き手にお任せします。

【石ころぼうし@ドラえもん】
22世紀の未来にて作られた未来の道具である「ひみつ道具」の一種。
被ると他者から存在を認識されなくなる効果がある、石を模した表面を持っている半球型の帽子。
原理は、ぼうしに内蔵されている無視催眠波発生ペーストなる物から放出される催眠波から来る物。
催眠波は生物以外の機械にも通じる。
今ロワでは、装着している時間が一定時間(どれぐらいなのかは後続にお任せします)を超えると、エネルギー切れにより強制的に効果が解除され、なんらかの手段でエネルギーを回復させない限りは永続的に使用不能となる。


590 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/30(木) 23:23:54 5cDIQu2k0
投下を終了します。タイトルは「サイコかもしれないだろ?」です。


591 : ◆2zEnKfaCDc :2022/06/30(木) 23:28:15 2YeP43Vc0
投下します。


592 : アンシーン・ダブルキャスト ◆2zEnKfaCDc :2022/06/30(木) 23:28:54 2YeP43Vc0
「へぇ、ロイドさんっていうんですか……。ふゆは、黛冬優子っていいます。ふゆって呼んでくれると嬉しいです!」

「ええ、よろしくお願いします。ふゆさん。」

 決闘開始から数十分が過ぎて、にこやかに邂逅を果たした二人は、挨拶の意を込めた握手を交わす。

「「それでは、よろしくお願いします。」」

 発声が被る。それへの照れ隠しとばかりに少しだけ、誤魔化すように笑って――そうして生まれた僅かな沈黙を破るように口を開いたのは、ロイドの側。

「……ところでふゆさん、鍛えていらっしゃるんですね。」

「えっ……?」

「ああ、失礼。ボクは精神科医をやっているのですが、人体構造といった医学分野もひと通り勉強しておりまして。ふゆさん、若いながらによく鍛えられているようで、感心してしまいました。」
 
「ああ、それはですね……」

 特に顔色を変えることもないままに、冬優子は語る。

「……アイドル活動、やっているんです。そこでダンスとかのレッスンを受けているから……きっとそこで鍛えられているのかなって。」

「アイドル、ですか?」

「はい。テレビ出演とかもしたことあって……もしかしたら見覚えとか、ありませんか?」

「……いえ。すみません、そういった文化には疎いもので。」

「ふふっ。だったらいつかロイドさんにも届くくらい有名になって、次はそう言えなくしちゃいますからっ。」

「ははっ、私の方ももう少し、アンテナを張り巡らせてみることにします。」

 ここが決闘の舞台であることを忘れ去ったかのように、穏やかな会話が繰り広げられていた。きっと、日常の中で出会っていたとしても、彼らは同じ顔で、同じ言葉を紡いでいただろう。

 だとしても――目に見えない領域で、彼らの様態は日常と大きく隔たりを見せていた。


593 : アンシーン・ダブルキャスト ◆2zEnKfaCDc :2022/06/30(木) 23:29:24 2YeP43Vc0


(この子は一見、殺し合いに積極的には見えないが……オレも同じだ。乗っているようには見せていない。彼女が猫を被っているだけであるのは否定できないな。)

 ロイド・フォージャー、またの名を暗号名『黄昏』。男は、スパイだった。

 冷戦の終結による東西平和の実現。その大願を叶えるために、オペレーション<梟>と称するミッションをこなしている最中、突如として招かれた決闘の舞台。主催者の目的は分からないが、現状はかなり後手に回っているのは確かだ。

 その上で素直に殺し合いに応じるべきか、ロイドは思索を巡らせていた。

(オレの正体を知った上でオレを消すつもりなら、この首輪を爆発させればいい。そうしないのには何かしらの意図が感じられる。それに……)

 説明書に書いていたルールによると、後ほど参加者の一覧が書かれた名簿が配布されるらしい。ただ見世物として殺し合うだけであれば、わざわざ名簿を配る必要はないだろうに、そこにも単なる娯楽とは違う思惑が潜んでいる予感がする。

 ただ、自分はスパイとしての活動の中で、裏社会の人間の名前や、国家の大物の名前、その他ミッションで必要となった人間の素性を概ね把握している。どういった立場の人間がこの殺し合いに招かれているのか、名簿からそれを知るだけでも主催者の目的に近付ける。

 さらに名簿と聞いて気になる点があるとすれば、自身の名がいかなる名義で記載されているのかということだ。現状の顔は、精神科医ロイド・フォージャーとしての顔。一つ前の顔では、エドガーという大物に恨みを買う立ち回りはしたが……十分に警告を施したヤツが改めて報復に……というのは考え難い。何にせよ、名簿に載っている自分の名義も、主催者の正体や目的に接近し得る情報だ。


594 : アンシーン・ダブルキャスト ◆2zEnKfaCDc :2022/06/30(木) 23:29:52 2YeP43Vc0
 そしてもう一点――ロイド・フォージャーとして巻き込まれたのであれば、懸念すべきは、家族の存在。仮にも最高峰のスパイであり、日常にも十分な注意を払っていた自分が、拉致された記憶もないままに連れてこられている。この現状、果たして、ヨルさんやアーニャが平穏無事であると言えるだろうか。

(……オレらしくないな。偽りの家族のことなど、後回しだろう。オレが考えるべきは、このアクシデントによるオペレーション<梟>の達成における障害の有無。このミッションの失敗は……国の平和にかかわる。)

 ぶんぶんと首を横に振って、ノイズとなる思考を排除する。

 何にせよこの殺し合いでいかに立ち回るのか、スタンスを考えるのはそれを踏まえた後だ。それまでに参加者と何かしら同盟関係を組めるのであれば、どうスタンスを翻すにしても遅くはないだろう。


595 : アンシーン・ダブルキャスト ◆2zEnKfaCDc :2022/06/30(木) 23:31:19 2YeP43Vc0


(ドッキリにしては、周りにカメラらしきものはない。っていうか、事前の説明もなしにやるにはさすがに悪趣味すぎる。さすがにこんな仕事をアイツが承諾するとは思えないし……。)

 ユニットグループ「ストレイライト」のメンバー、黛冬優子。女は、偶像だった。

 配布された説明書には確かに他者の命を奪うことをもって勝利条件となす記述がある。そして何より、デイパックから出てきた拳銃は、その質感が舞台道具の作り物には見えなかった。試し撃ちをしてみればその答えもハッキリとするのかもしれない。しかし冬優子はその引き金を引けなかった。

 躊躇させたのは、銃声を辺りに響かせ自身の位置を知らしめるリスク、弾を浪費するデメリット、そういった計算が無いとは言わない。だけど、本心は違う。
 
 もし、そこから銃弾が発射されてしまえば。この企画が明確に法の外にあるものだとハッキリし、連鎖的に自身が巻き込まれたものが日常から逸脱した本当の殺し合いであるのだと、分かってしまうから。遠からず向き合わなければならないことだとしても、もう少しだけ曖昧にして――逃げておきたかった。

ㅤ一方で、本物であることを直感的に確信しているからこそ、生まれる思考もある。自分はこの殺し合いにおいて、いかに立ち回るべきなのか。

(もちろん大人しく死ぬなんて、絶対にごめんよ。だけど……だからといってはいそうですかと簡単に他人を殺せるほど理性がぶっ壊れてもいないわよ。)

 先ほど手にした銃の重みが、改めて冬優子の脳裏をよぎる。物理学的な重量だけではない。もっと概念的な、命の重さだ。

 殺し合いの特典である富や名誉。はたまた、一つだけ叶えて貰えるという願いごと。それらにまったく興味が無い、などとは言わない。年相応と言うには、アイドル活動で見てきた世界は広すぎる。その分、欲しいもの、手に入らないものは山ほどある。だけど、他人から一方的に貰うだけ、そんな掴み方をしたいとは思わない。ましてや、そのために性分に合わない人殺しを強制させられるなど、真っ平御免だ。


596 : アンシーン・ダブルキャスト ◆2zEnKfaCDc :2022/06/30(木) 23:31:49 2YeP43Vc0
(だけど……もし本当に、殺さないと生き残れないのだとしたら。誰かを蹴落とさないと、自分の夢を掴めないのだとしたら。)

 それでも。勝者に与えられる特典、それら一切合切を抜きに考えても。

(……私は、戦う。そうするしか生き残る術がないのなら、私はそうするし……できる。)

 生き残る事ができる権利。それだけで、戦う理由には十分だった。

(そのためにもまずは、殺し合いの優勝以外に生還する道があるかどうかの模索……かしら。ロイドみたいに成人男性も多く紛れてるなら、体格的にふゆは分が悪い。人数的にも、真っ当に殺し合って生き残れる確率は高くないもの。)

 その上で、冬優子の出した結論は様子見だった。

 まだ、優勝でしか帰還の道がないと断ずるには早すぎる。ルール説明書で確定しているだけでも、参加者名簿が開示されるフェイズがまだ到来していないことが分かっている。その際に、もしくはその後何らかのキッカケで、主催者側から複数人で生還する方法が示されることもあるかもしれない。ふゆのような純情派アイドルを拉致しておいて、歌やダンスを差し置いて剣闘士の如く戦わせることを見世物とするのは、そういう趣味の主催者であれば考えられないこともないが、やはり腑に落ちない点もある。

 まっさらに――綺麗に生きようなんて、そんな驕りはとうに捨ててきた。ファンが理想に思う『ふゆ』として舞台に立ち始めたあの日から、ふゆは皆を騙している『詐欺師』でしかないのだから。


597 : アンシーン・ダブルキャスト ◆2zEnKfaCDc :2022/06/30(木) 23:32:36 2YeP43Vc0


 人はみな、誰にも見せぬ自分を持っている。
 友人にも、恋人にも、家族にさえも。

 張り付けた笑顔や虚勢で本音を隠し、本性を隠し。

 そうやって、世界は――

 かりそめの平穏を、取り繕っている。

【ロイド・フォージャー@SPY×FAMILY】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本方針:名簿が配られるのを待った上で立ち回りを考える。
1:冬優子に限らず、ひとまずは全参加者を警戒。
[備考]
※参戦時期は後続の書き手さんにお任せします。

【黛冬優子@アイドルマスターㅤシャイニーカラーズ】
[状態]:健康
[装備]:拳銃@出典不明
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:生還する。もしもの場合は人殺しも辞さない。
1:一旦は様子見。
[備考]
※参戦時期は後続の書き手さんにお任せします。

【拳銃@出典不明】
冬優子に支給された拳銃。少なくとも外観上は、一般的な日本人である冬優子にも拳銃であると認識される見た目をしている。何の変哲もない拳銃でもいいし、何かしらの出典を明かした上で、特別な効力のあるものであるとしてもよい。


598 : ◆2zEnKfaCDc :2022/06/30(木) 23:32:56 2YeP43Vc0
投下終了です。


599 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 23:33:15 HDozZHCg0
投下します


600 : 個性的だけど悪くはない奴ら ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 23:34:48 HDozZHCg0
 宮川尊徳はイラついていた。
 それはこの理不尽な決闘に対する怒り―――でもあるが、主な原因はそこではない。同行者共に原因がある。

「この決闘でも相変わらずボクは美しいね」

 まず一人は何故かずっと鏡を見てる。
 こんな非常事態だというのに、馬鹿にしているのだろうか?
 品性のようなものは感じるが、流石にここまで身勝手で馬鹿だと流石の尊も呆れるしかない。
 しかも本人から聞いた話によると男らしい。短小包茎でムッツリな尊が言うのもアレだが、変態過ぎる。

「いいなぁ、あいつ。ずっと鏡を見てる」

 そしてもう一人はそんな馬鹿を羨ましそうに見てる。
 こちらは服装もボロボロで、はっきり言って下品だ。しかし何故かその品性自体にはそれほどめちゃくちゃ苛立つわけじゃない。
 それは彼―――影山瞬が元はシャドウの隊長だったからだろう。過去の栄光だが―――昔は今ほど品性に欠けていたわけじゃない。

「困ったな。こいつらは海斗並かそれ以上の問題児だ……」

 あまりにも個性的な馬鹿共に呆れるしかない。
 当初はハ・デスを倒し、もしかしたら巻き込まれているかもしれない麗華たちお嬢様を守ろうと意気込んでいたが、バカ二人に遭遇したせいで出鼻をくじかれた。

 そしてそんな尊達のところへ、二匹のモンスターがやってきた。
 1匹は音速ダック―――凄まじい速さで移動するダックだ。
 彼は目にも止まらぬ速さで接近してくると―――。

「兄貴がいなくても、俺だって……!―――変身」

 ―――即座にパンチホッパーに変身した影山が、ライダーパンチで対応。
 音速ダックは爆発し、破壊される。

「やるじゃないか!」

 尊は影山の予想外の活躍に歓喜するが、モンスターはもう一匹いる。
 モンスター・エッグ―――卵のカラに身を包んだ、不気味なモンスターだ。
 不気味ではあるが、明らかに弱そうでもある。尊がモンスター・エッグに迫り、攻撃を加えようとするとモンスター・エッグは卵のカラを飛ばして攻撃してくる。
 大したダメージこそないが、単純にうざったい攻撃手段だ。このままでは近寄り難い。
 影山はすぐにモンスター・エッグも倒そうとするが、その前にずっと鏡を見ていた男の娘―――ユキが動いた。

 彼が魔法を使うと、モンスター・エッグにダメージを与えた上にカラを飛ばす攻撃がめちゃくちゃになった。
 ―――暗闇状態。
 普通のプレイヤーには制限によってどれほど効き目がわからないが、NPCには効果抜群だ。
 そしてわけもわからずあらぬ方向へカラを飛ばすモンスター・エッグに尊の拳が届き、破壊される。

 生身の人間が拳で弱小モンスターとはいえ、難なく破壊する。
 それも海斗のような超人ですらない尊が―――だ。
 その秘密はユキにある。彼はモンスター・エッグを暗闇状態にした後、尊を応援していたのだ。つまりバフを掛けたことになる。

「ふん、手応えのないやつだ」

 尊はカッコつけてそんなことを言っているが、この勝利は影山とユキのおかげだ。
 ―――尊としても二人の有用性は認めざるを得ず、意外と有能な奴らだと再評価した。

「行くぞ、お前たち。ハ・デスは僕達が倒す!」

 有能二人をゲットした尊は気分一新、意気揚々と歩き始めた。

「ああ。今度こそ光を掴んでやる……!」

 影山もそれを追う。
 ネイティブではなく人間として生き返った事で、彼は多少だが希望を見出していた。
 それでも根は地獄兄弟の弟なのでネガティブな部分はあるが―――影山の内にあった燃えカスのような正義感は、再び灯される。

「ボクの美しさをハ・デスにも知らしめてあげるよ」

 そしてユキも彼らに着いていく。
 彼はナルシストではあるが、どちらかと言えば善良な性格だ。
 それに意外と仲間思いでもある。もしもこの決闘に自分達のギルドマスター―――モニカが参加していたら、単独で突っ走らないように止めてやらなければならないくらいには考えていた


601 : 個性的だけど悪くはない奴ら ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 23:35:09 HDozZHCg0


【宮川尊徳@暁の護衛 トリニティ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:僕達がハ・デスを倒す!
1:この二人、意外と使えるな
2:まさかとは思うが、海斗のやつも参加してないだろうな……
[備考]

【影山瞬@仮面ライダーカブト】
[状態]:健康
[装備]:ホッパーゼクター&ZECTバックル@仮面ライダーカブト
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:今度こそ光を掴んでやる……!
1:尊徳やユキと一緒に戦う
2:なるべくだが人は助ける
3:兄貴も参加してるかな……
[備考]
※参戦時期は死亡後(厳密には死亡と明言されていませんがジオウ基準で死亡として扱う)

【ユキ@プリンセスコネクトRe:Dive】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:ボクの美しさをハ・デスにも知らしめてあげる
1:尊くんや影山さんはボクが応援してあげるよ
2:モニカさんは大丈夫かな?
[備考]


602 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 23:35:25 HDozZHCg0
投下終了です


603 : ◆.EKyuDaHEo :2022/06/30(木) 23:35:39 PlrKgUU.0
投下します


604 : 嵐を呼ぶ青年 ◆.EKyuDaHEo :2022/06/30(木) 23:36:03 PlrKgUU.0
「これは大変なことになったな…」

殺し合いの場で一人の青年が立っていた
青年は見知らぬ場所、突然現れた男、殺し合い宣言、突然殺されてしまった少年、これら全てに困惑していた

「オラが巻き込まれているって事はタミコや5歳のオラも来てるのか…?」

青年が次に考えたのは以前自分を助けてくれた恋人のタミコ、そして自分を救うため過去からやってきた『5歳の自分』のこと…

「タミコや5歳のオラが来てるってなったら…さすがにオラでもキレるぜ…ハ・デス…」

青年はもし最愛の人と5歳の自分が巻き込まれていたと考えたら怒りが込み上がってきていた

「おっと、オラとしたことが…こういう時こそ落ち着かなきゃな」

こういう時こそ落ち着くべきと考えた青年は呼吸を整えた、5歳のオラならきっとこういう時も落ち着いて行動するだろうから…

「さてと…とりあえず協力してくれる人を探しますかな!もちろん正義のヒーローとして困っている人も助けるけど!」

そう意気込み、成長した嵐を呼ぶ青年、『野原しんのすけ』は動き始めた、正義のヒーローとして人を助けるため…


【野原しんのすけ(大人)@クレヨンしんちゃん】
[状態]:
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]:基本行動方針:困っている人をおたすけする
1:とりあえず協力してくれる人を探す
2:タミコ、5歳のオラがいたら探す
[備考]
※参戦時期は「映画 超時空!嵐を呼ぶオラの花嫁」本編終了後
※少なくとも「オラの花嫁」より前の映画の出来事は経験しています


605 : 嵐を呼ぶ青年 ◆.EKyuDaHEo :2022/06/30(木) 23:36:20 PlrKgUU.0
投下終了します


606 : ◆wJPkWOa93Q :2022/06/30(木) 23:36:52 rJaA95us0
投下します


607 : ◆wJPkWOa93Q :2022/06/30(木) 23:37:59 rJaA95us0
「ハ・デスよ。デュエルキングの称号だと? 下らん、何故ならキングたる称号は己が掴み取るもの! このような馬鹿げた催しで、デュエルキングの称号を穢すことなど断じて認めんッ!!」

「フゥン……」

「真のデュエルキングはこのオレ―――――ッッッ!!
 歴代最強と謡われたキング・オブ・デュエリスト武藤遊戯を打ち倒し、キング・オブ・デュエリストの称号を手にするのはこのオレ、ジャック・アトラスただ一人ッッッッ!!!!
 首を洗って待っていろッ! ハ・デスッ!! このつまらんデュエルの真似事など即刻叩き潰し、貴様を捻じ伏せてくれるわッッ!!」

「ハァ?」

ラビットハウスという喫茶店からコーヒーを数杯金も払わずかっぱらってからジャック・アトラスは大声で殺し合いの撃破と、ハ・デスへの啖呵を切り、武藤遊戯への宣戦布告を宣言した。
丁度、ラビットハウスに居たうさぎはそれを横で腕組しながら聞いていた。

「あ、アトラス様ァァァ……!!」

情けない声でガリガリに痩せた三つ目のおっさんがジャックへと駆け寄る。
その怪物の名は深淵の冥王、かつて闇を支配する強大な王であったがハ・デスに全てを奪われ、文字通り深淵へと追放された元冥王だ。

「も、モンスター共がァァ……」

深淵の冥王は力も何かも奪われてしまった。当然ながら、戦う術もなにもない。
彼は本来参加者に支給されるはずの支給品すら、配られていない。完全なるハ・デス個人の私情を大いに挟んだ嫌がらせである。
ゆえに、仕方なく。ジャックに媚びを売り、その部下としてこの殺し合いを立ち回ざるを得なくなった。

「フンッ、情けない声を上げおって。
 だが、不味いコーヒー後のブレイクタイムに丁度いい。このキングのデュエルを間近で見れることを感謝するがいい!!」
「ウラ」

ジャックが深淵の冥王に命じたのは、自分の優雅なコーヒータイム中に周囲の散策をさせることだった。そこで辺りを歩き回るのだが、周りにはモンスターのNPCが山ほどおり、散策どころではなかった。

「ラビ―ドラゴンが3体、コスモクイーンが3体、ゴギガ・ガガギゴが3体……。いずれも、デュエルモンスターズの中ではトップクラスの攻撃力を持つ者ばかりではないか。
 貴様はよほど、大物からの食いつきの良い釣り餌らしいな。深淵の"元"冥王!!」

いずれも、攻撃力は2900を超える優れた戦闘モンスターが周囲に9体も配置されていた。

「見ておけ。オレもかつては元キング、いや元ジャック・アトラスでしかなかった男……だが、オレは這い上がった!!
 この我が魂と共にッ―――!!! 
 王者の鼓動、今ここに列を成す。天地鳴動の力を見るがいい! シンクロ召喚!」

ジャックが召喚したモンスター達が光りと共に一つの灼熱となり、その灼熱を砕き割るように紅蓮の魔竜が真紅の翼を広げ、ジャックの叫びに応えるかのように降臨する。

「我が魂、レッド・デーモンズ・ドラゴン!」

灼熱は業火を纏い、そう双拳に魂を込める。

「アブソリュートパワーフォースッッッ!!!」

ジャックの咆哮とと共にレッド・デーモンズ・ドラゴンは拳を大地へと叩きつけ、深淵の冥王を囲っていたモンスター達を一瞬に焼き付くし無へと還した。

「ヤハ」

そのまさに地獄の窯から漏れ出したかのような業火に燃え尽くされる大地を見ながら、ただうさぎは不敵に呟き構えたデュエルディスクを下した。
うさに支給されたのは一つのデッキとデュエルディスク、それらの中身を既に確認し終え、デュエルのルールも把握したところだ。
ここで実戦に慣れるのも良かったが、まあ殲滅したのならそれで良しとした。


608 : ◆wJPkWOa93Q :2022/06/30(木) 23:38:52 rJaA95us0

「雑魚は蹴散らした!! 行くぞ! 深淵の"元"冥王とうさぎよ! こんな下らん殺し合いでたった一人の命もくれてやるものか!
 着いてこい!!」

「流石、アトラス様ァ!!」

へこへこ媚びを売りながら、深淵の冥王はその後はおどおどしながら着いていった。誰にも見えぬようほくそ笑みながら。


(フフフ……これは良い駒を手に入れたわ)


当たり前ながら、深淵の冥王はジャックに隷属し続けるつもりなど微塵もない。
ただ、殺し合いを生き延び、ハ・デスの元へ辿り着くための駒としか考えていない。その為なら、今は見せかけだけのハリボテの馬鹿キングにいくらでも媚びを売ろう。
そして必ずや、あのハ・デスをこの手で下し、この殺し合いを乗っ取って自らが主催となり、ハ・デスを今度は自分が殺し合いに放り込んでくれる。


(しかし……ハ・デス……奴にあそこまでの力など、あったか? 分からん、ワシに度々足元を掬われるような奴があそこまでカリスマ性があるのも、違和感がない訳でもないが……)

ふと、僅かに引っかかった疑念。
だがそれを考えても結論が出る事はなく、頭の片隅に置いておく。なんにせよ、先ずは殺し合いを生き延び戦力を充実させなければならない。
その為には、このジャック・アトラスを最大限利用し尽くしてくれる。邪悪な計略を胸に秘めながら、深淵の冥王は静かにほくそ笑んだ。

「……フゥン」

うさぎは静かに深淵の冥王を眺めていた。


609 : ◆wJPkWOa93Q :2022/06/30(木) 23:39:24 rJaA95us0


【場所:ラビットハウス周辺】

【ジャック・アトラス@遊戯王5D's】
[状態]:健康
[装備]:ジャックのデュエルディスクとデッキ@遊戯王5D's
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:キングはこのオレだッ!!
1:殺し合いを潰し! ハ・デスも潰し! 武藤遊戯にデュエルを挑み倒し!! キング・オブ・デュエリストの称号を手に入れるッッ!!
2:殺し合いに反抗するための仲間も探す。
[備考]
※参戦時期は本編終了以降です。


【深淵の冥王@遊戯王OCG】
[状態]:健康
[装備]:なんもなし
[道具]:なんもなし
[思考・状況]基本方針:ハ・デスに復讐する。
1:取り合えず、ジャックを利用する。
2:何でもいいから武器が欲しい。
3:ハ・デスにちょっと違和感。
4:"元"付けるのやめてほしい。
[備考]
※いやがらせで一切の支給品なしです。


【うさぎ@なんか小さくてかわいいやつ】
[状態]:健康
[装備]:デッキとデュエルディスク@遊戯王シリーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:ヤァハァァアアアア!!
1:フゥン。
2:ハァ? ハァ? ハァ?。
[備考]
※デュエルのルールをマスターしました。


NPC紹介

【ラビードラゴン】×3
通常モンスター
星8/光属性/ドラゴン族/攻2950/守2900
雪原に生息するドラゴンの突然変異種。
巨大な耳は数キロ離れた物音を聴き分け、
驚異的な跳躍力と相俟って狙った獲物は逃さない。

【コスモクイーン】×3
通常モンスター
星8/闇属性/魔法使い族/攻2900/守2450
宇宙に存在する、全ての星を統治しているという女王。


【ゴギガ・ガガギゴ】×3
通常モンスター
星8/水属性/爬虫類族/攻2950/守2800
既に精神は崩壊し、肉体は更なるパワーを求めて暴走する。
その姿にかつての面影はない・・・。


610 : ◆wJPkWOa93Q :2022/06/30(木) 23:39:42 rJaA95us0
投下終了です


611 : ◆wJPkWOa93Q :2022/06/30(木) 23:41:46 rJaA95us0
タイトル忘れてました
「キングだからだ!」にしときます


612 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 23:45:53 HDozZHCg0
投下します


613 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/30(木) 23:45:54 5cDIQu2k0
投下します。辺獄ロワ及びエロトラップダンジョンロワの候補作から一部分を流用・改変した物です。


614 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/30(木) 23:46:52 5cDIQu2k0
>>613
こちらは一旦取り下げさせて貰います


615 : いきなり生えてくるマコト兄ちゃん ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 23:47:11 HDozZHCg0
「ふっ!はっ!」

 手足がスラリと長く、がやたらスタイルの良い男―――深海マコトがワイトの群れを蹴散らしていく。
 何故かいきなり決闘に呼び出され、妙な骸骨の群れに襲われたから対処したのだ。
 まだ変身すらしていないマコト兄ちゃんにワイト達はすごい勢いで蹴散らされて、壊滅。

「冥界の魔王ハ・デスは俺が倒す!」

 マコト兄ちゃんは声高らかに宣言すると、魔王を倒す為の道を探り始めた


【深海マコト@仮面ライダーゴースト】
[状態]:健康
[装備]:ゴーストドライバー&スペクターゴースト眼魂@仮面ライダーゴースト
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:冥界の魔王ハ・デスは俺が倒す!!
1:タケルやアランはどこにいるんだ!?
[備考]
※参戦時期はゴースト RE:BIRTH 仮面ライダースペクター終了後
※シンスペクターゴーストアイコンを自分の意思で出すことは制限により不可能です。他の参加者に個別に支給されているか、何らかの条件によって出すことが可能になるかもしれません


616 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 23:47:24 HDozZHCg0
投下終了です


617 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/30(木) 23:49:16 5cDIQu2k0
改めて投下させてもらいます。
辺獄ロワ及びエロトラップダンジョンロワの候補作から一部分を流用・改変した物です。


618 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/30(木) 23:52:04 5cDIQu2k0
決闘会場の何処かにて…青年と少女、黒髪の二人は邂逅を果たす。
青年の名は冨岡義勇。人を喰らう鬼を狩る為の組織である鬼殺隊に所属する隊士であり、隊士の中でも最高位に立つ九人の剣士である柱の一人、水柱である。
そして少女の名はジーナ・プレディ。ネウロイと呼ばれる怪異と戦うウィッチであり、第506統合戦闘航空団ことノーブルウィッチーズのB部隊の隊長、階級は中佐である。
そんな二人は、互いに警戒をしながら向き合う。
…暫し無言が続いた後、先に口を開いたのはジーナの方であった。

「…率直に答えて貰おう、貴方はこの殺し合いに乗っているのか?」
「…俺は、俺は乗っていない、乗る気もない」

支給されていた銃を手に持ちながら、そう問いかけたところ、少し間が空いてから返事が返される。
内心ではホッとしながらも、相手が刀をこちらに向けている以上、表情はそのままの状態で、ジーナは言葉を紡ぐ。

「そうか…ということは、信用していい…と、そう取っていいんだな?」
「…それで構わない」

返事を聞いたジーナは、持っていた銃をバッグの中へと仕舞う。
それを見たと同時に、冨岡も刀を鞘に収めた。

「……」
「……」

その後、また暫しの間沈黙が場を支配する。
そして…先に口を開いたのは、今度もジーナからであった。

「…私は第506統合戦闘航空団…ノーブルウィッチーズのB部隊隊長。ジーナ・プレディ中佐だ。
宜しければ…だが、貴方の名を教えて欲しい」

そうジーナは名乗る。殺し合いには乗ってないとはいえ、とりあえず相手の出方を伺おうと彼女は思っていた…が、いつまで経っても相手が名乗らない為、自分から先に名乗る事にしたのだ。

「……冨岡義勇。鬼殺隊の隊士だ」
「…わかった。では冨岡さん…二つ程聞きたいことがある。いいだろうか?」
「いい」

暫くして、返事が返って来る。鬼殺隊という単語に疑問を抱きながらもジーナは、それを一旦は仕舞い込み、先に一つ聞くことにした。

「…これも、貴方が宜しければの話だが…私と同行して貰えないだろうか?」
「何故だ」
「私は、主催…あの磯野と呼ばれていた黒服や、ハ・デス達を打倒してこの殺し合いを止めようと思っている。しかし…私単体ではおそらく不可能だ。また、部下達がこの殺し合いに巻き込まれていたら…その時は合流したいとも考えている。
どちらにせよ、他に誰が参加していて、誰が殺し合いに乗っているのかわからない今のこの状況では、人手が必要なんだ。…そちらが知り合いを探したいと言うのなら、私も…協力は惜しまないつもりだよ」

ジーナは冨岡に頼んでみる。それから暫く後、冨岡は口を開いた。

「…構わない。柱や隊士が居たら、合流した方がいいとは思っていた」

想定していたよりもあっさりと、同行を快諾されたジーナは、内心では少し困惑しながらも、相変わらず表情を変えぬまま話す。

「そうか、ありがとう冨岡さん。
…もう一つの聞きたいことだが、冨岡さんは、ウィッチの事を知っているか?
…私は、鬼殺隊という単語自体を今日初めて聞いた。扶桑にそのような組織があるとは知らなかったんだ」
「知らない、なんだそれは。
…そもそも扶桑ではない。日本だ」
「日本…??」

ここで両者は、互いの話が食い違っている事に気付く。

「…互いに知っていることを話して、整理しよう。どうやら私達は、とても大きな勘違いに気付けたのかも知れない」

バッグから筆記用具を取り出すと、彼女はそう提案した。


619 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/30(木) 23:52:56 5cDIQu2k0
ーーーー

「情報を纏めると…私と冨岡さんは、互いに別の世界からこの場所に呼ばれたことになるな」
「…年代が離れていて、国の名前が違う、その上俺はネウロイとやらもウィッチも知らない」
「そして私は、人を喰う鬼とやらも、鬼殺隊の事も知らない…ハ・デスが自身をカードから生まれた存在だと言っていたのもある。ここまで乖離している以上、同じ世界だが違う時間…というわけではなさそうだ」

互いに情報を交換した末に、二人は共通の認識を共有する事が出来た。
最も、口下手な冨岡から情報を引き出すのにジーナは苦労したが。話の途中で
「あれは2年前…」
と冨岡が言い出した際には、思わず
「いや今はそこを聞いているんじゃ…」
と口に出してしまい、思わず頭を抱えたくなってしまったり等。

「…それで、そちらの方針は…人を喰う鬼の滅殺。及び鬼の始祖である鬼舞辻無惨の殺害の為に、元の世界への帰還と、主催の打倒。そして他の鬼殺隊隊士がいるのなら、合流を目指す…また、可能なら彼の…武藤遊戯の保護、で合っているか?」
「…ああ、合っている。だが鬼がこの会場に存在しているのなら、隊士としてこの場で滅する」
「了解した。とりあえずは、周辺に敵が居ないのかと…武藤遊戯が居ないのかを確認するよ。」

魔法力を発現させたジーナは、自らの固有魔法である『ホークアイ』を使う。
ホークアイとは、元々視力が高い傾向にある
(ストライクウィッチーズ2の最終話の描写より推定)
ウィッチよりも更に遠距離を見通し、更に自らの動体視力も向上させる、魔眼と呼称される物の一つである。
しかし首輪の制限によるものか、見通せる距離が短くなっている事に、彼女は気付いた。

「…見える距離が、明らかに短くなっているな」
「…首輪か?」
「あり得るとすれば、おそらくは首輪の影響だろう。ここで気付けたのは運が良かった……」

そう言っている最中であった、彼女が自分達に近付いてきている参加者を発見したのは。

「…参加者だ。剣を持って…いや、両手が剣になっているの、か…?…こちらに向かって来ている…距離は250〜300程か。どうする冨岡さん。相手は殺し合いに乗っているようだが…」
「…鬼ではないんだな?」
「…わからない、人には見えなかったが…人型のネウロイというわけでは無さそうだ」
「…ここで迎え撃とう」
「わかった」

冨岡は刀を鞘から抜き、ジーナはバッグの中から銃を取り出して、襲撃へと備えた。


620 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/30(木) 23:53:46 5cDIQu2k0
【冨岡義勇@鬼滅の刃】
[状態]:健康
[装備]:冨岡義勇の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:対主催。主催者を打倒し、元の世界へ帰還する。
0:俺は水柱じゃない。
1:プレディと共に襲撃者に対応。
2:鬼が居たら鬼殺隊の隊士として斬る。
3:他の鬼殺隊の隊士と合流出来れば。
4:プレディは…口下手なのかと思っていたが、違うようだ。
5:もし居るのならだが、プレディの部下達とも合流出来た方がいいだろう。
6:武藤遊戯は保護した方がいいだろう。
[備考]
※参戦時期は少なくとも最初の柱合会議以降、柱稽古にて炭治郎に過去を話す前からです。
※作中にて舞台になっている年代が大正時代な為、それ以降に出来た物についての知識は原則ありません。
※ジーナとの会話で、ウィッチやネウロイ等に関する知識を手に入れました。
※自分達がそれぞれ別の世界から会場に呼ばれたと推測しています。

【ジーナ・プレディ@ノーブルウィッチーズ】
[状態]:健康、決意
[装備]:ノースリベリオン P-51D(44-14906号機)@ノーブルウィッチーズ、ディバイトランチャー@ウルトラマンネクサス
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:対主催。主催者の打倒。
0:信じるものを手放さず、なすべきことを手放さず、自分の進むべき道を手放さない。
1:冨岡さんと共に襲撃者に対応する。
2:脱出手段を探しておきたい。
3:他の506のメンバーが居たら合流しておきたいところだ。
4:他の鬼殺隊の隊士とも合流しておきたい。
5:首輪の解除も必要になってくるだろうな。
6:冨岡さんには偶に…昔の…師匠を目の前で亡くした頃の私が重なって見える時がある。心配だ。
7:武藤遊戯を探しておきたい。
[備考]
※参戦時期は原作終了後からです。漫画版は全3巻、原作である小説版は全8巻です。
※作中にて舞台になっている年代が1945年な為、それ以降に出来た物についての知識は原則ありません。
※冨岡との会話で、鬼殺隊や鬼等に関する知識を手に入れました。
※自分達がそれぞれ別の世界から会場に呼ばれたと推測しています。

【冨岡義勇の日輪刀@鬼滅の刃】
色が深い水色で、鍔が亀甲を思わせる六角形になっている日輪刀。冨岡の水の呼吸へ対する高い適性を、この日輪刀は表している。
日輪刀とは、太陽に一番近い、一年中陽が射しているという陽光山で採れる猩々緋砂鉄と、猩々緋鉱石と云う、日光を吸収した特殊な鉄を使って打たれた日本刀である。その性質故か、鬼の頸をこの刀で斬れば基本的に不死身な鬼を殺す事ができる。

【ノースリベリオン P-51D@ノーブルウィッチーズ】
ジーナのストライカーユニット。
ノースリベリオン P-51の決定版であるD型。
それまでのノースリベリオン P-51とは異なり魔力配分を効率的に出来るようになっており、更にマッピングの変更を容易にする改良が施されている為、戦場での使用目的に適時合わせたセットアップを、その場で行う事が可能である。
また形状も変更が行われている。

【ディバイトランチャー@ウルトラマンネクサス】
極秘裏にスペースビースト(わかりやすく言うとネクサスでの怪獣)を殲滅する事が任務である実働攻撃部隊ナイトレイダーの隊員が携行している、対スペースビースト用の大型銃の武装。
通常はビーム砲の形態だが、グリップとトリガーの部分を取り外す事でビームハンドガン形態のディバイトシューターに。
本体を変形させることで、ビームサブマシンガン形態のディバイトガンナーにも出来る。
ちなみに本来は、指紋認証によって管理されている為に、隊員やナイトレイダーの母体組織であるTLT関係者以外には使用不可能な特性があるのだが…今ロワでは主催の手により、それが無くなっている。
シューター形態は威力こそ低いが取り回しに優れており、ガンナー形態は連射力が優れている。ランチャー形態は威力に優れており、小型(2〜10m程)のスペースビースト程度なら殲滅可能な威力がある他、52m程のスペースビーストを怯ませる事も可能。また強化装甲弾やナパーム弾を装填する事も出来る。
ただし威力が高い分反動も大きい。
(威力については、主催により制限がかけられている可能性があります)


621 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/30(木) 23:53:56 5cDIQu2k0
ーーーー

両手が剣になっている異形は、殺意を纏ったまま二人が居る地点へと進んでいた。
異形の名は、奇怪宇宙人ツルク星人。地球に来た理由は「地球侵略が目的」とされているが、それらしき行為を一切せず、言葉を介さずに不特定多数の人間を殺傷する通り魔的な犯行を繰り返している凶悪宇宙人である。
彼…或いは彼女にとっては、他の参加者はただ殺す対象でしかなく、願いに対する興味も、見せしめの死に様に対して思う事すらも無い…はずだった。
だが…ウルトラマンレオに敗北し死亡した後、蘇生される形でこの決闘へ招かれたツルク星人には願いが芽生えていた。
───優勝し、主催者を殺した後にウルトラマンレオをこの手で今度こそ殺す。
それが異星人の目的だ。


【ツルク星人@ウルトラマンレオ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:優勝して主催者を殺した後に、ウルトラマンレオをこの手で今度こそ殺す。
0:発見した参加者を殺しにかかる。
1:この場にウルトラマンレオが居たら最優先で殺しにかかる。
2:巨大な相手や、参加者が複数人纏っている場合には、巨大化を試し出来るようなら纏めて殺す。出来ないのなら1人ずつ殺していく。
3:殺した相手の支給品は貰っておく。意志を持つ類の物は…ウルトラマンレオに勝つ為に利用できそうなら殺さない。
4:首輪を解除しようとしてる参加者は殺すのは後回し。解除方法が確立されたら可能な参加者を脅して解除させた後に殺す。
[備考]
※参戦時期は死亡後からです。
※等身大の状態での参戦です。巨大化形態になれるかどうかは不明です。
※なお、作中ではウルトラマンレオを象った宇宙金属製のレリーフを、通り魔を行った現場にわざと落としたり、ガードレールを飛び越える際に両手の刃物を外していたり、巨大化した際は両腕に手指と刃物が同居している為、ツルク星人の刃物は着脱式か、手先を変化する事が可能なのかのどちらかだと思われます。


622 : ◆8eumUP9W6s :2022/06/30(木) 23:54:27 5cDIQu2k0
投下終了です、タイトルは「魔女と鬼狩りと通り魔星人」です


623 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/30(木) 23:55:01 Kvzqh2Mo0
投下します

こちらは以前、コンペロワとエロトラロワに投下した作品に登場人物の追加など一部手直ししたものになります。


624 : お前は男じゃないのかー! ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/30(木) 23:56:00 Kvzqh2Mo0
ここは会場内の一角、そこには二人の女剣士がともに戦っていた。

一人はドラゴンをイメージした尾に角、そして胸元が開かれた上半身にハイレグというべき下半身といった、やけに露出度の高い恰好をした女騎士だった。

彼女の名前は岸部……、もとい、ラ・ピュセルといった。

そしてもう一人は鬼の角のような飾りがついた三度笠をかぶった、銀髪の女性だった。

彼女の名前はフルルドリス、またの名を『妖眼の相剣師』といった。

そんな二人の男女……じゃなかった、二人の女剣士はここである男と戦っていた。

「自在に大きさを変える剣とは珍しい!俺にくれ!」

顔に隈取りを施し、また赤い鎧をまとった筋骨隆々の男だった。

そしてその男の手には青い刃が刀身に沿って回転している大剣が握られ、その背中には三日月のような槍頭を持つ槍が差してあった。

その男は、ラ・ピュセルの持っている剣に興味を持ち襲い掛かったのである。

男の力はすさまじく、また彼が持っていた武器達がそれを後押ししていた。

そしてラ・ピュセルは彼の凄まじい力と技に対抗すべく魔法の力を駆使して、武器の大きさを変更することで間合いを図らせないようにするなどの戦法を使って彼と相対した。

また妖眼の相剣師は彼の大剣は一回でもあたってしまえば致命傷は免れないものだと気づき、目にもとまらぬスピードで彼を翻弄しながら無数の刀傷を負わせる戦法を取り、対処しようとした。

その二つの戦法により彼女たちは目の前の男に対し最初は互角の戦いを繰り広げていた。

しかし目の前にいる男は彼女たちのその戦い方に対しすぐに対処してしまった。

彼は自身の背負っている槍を引き抜くとラ・ピュセルのその伸ばした剣を絡め捕って、そのまま彼女を相剣師の方へ投げ飛ばしてしまった。

それに対し相剣師は彼女を受け止めるべく動きを止めてしまい、そのまま衝突してしまった。

目の前の男が彼女の戦法にすぐ対処できたのも、無理もない話だった。
何故なら今まで命のやり取りをほぼしたことのないラ・ピュセルをかばいながら戦っているが故に本領を発揮できない彼女と、たった一人で常に魔物たちや強者との戦いに身を置いていた男とでは、その経験の差は歴然であったからだ。

そしてラ・ピュセルを受け止めるために動きを止めてしまったことはそのまま、この戦いが終わりを迎えようとしていることを意味していた。

「戦士としての情けだ、この最強の剣で倒してやるぜ!」

そう言うと男はデイバッグから『月の紋章が付いた西洋剣』を取り出して、互いにふらつきながらも剣を構え始めた二人の身体を切り裂いたのである。

……しかしこの後、信じられないことが起こった。

切り裂かれた筈の彼女たちの身体が、まったく傷ついていなかったのだ。

ラ・ピュセルも相剣師も共に困惑した。何故なら、完全に身体を切り裂かれたと思ったのに傷一つついていなかったからだ。

それは彼女たちと相対している男も同じだった。この剣をもってすれば確実に相手を倒せると思っていたからだ。

そしてその男、『ギルガメッシュ』は叫んだ。

「ば、ばかな!最強の剣じゃないのかー!」

自分の持っている剣が真っ赤なニセモノだということに気づき、大きな声で叫んでいた。

そうしてこの白熱していた戦いは、何とも言えない微妙な空気を漂わせた状態で終了したのだった……。


625 : お前は男じゃないのかー! ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/30(木) 23:58:03 Kvzqh2Mo0
------------------------------------------------

「えっと、つまりあなたは自分のライバルと決着をつけるために元の世界に戻りたいと?」
「ああ、そのためにこうして様々な奴と戦い、そして武器と仲間を集めるつもりだぜ」
「……しかし、相手の力量を見極めるためとはいえ傍迷惑な方法を取ったものだな、君は」

そうして、戦いが終わったところで双方とも話し合いを行った結果、お互いに脱出のために行動していることが分かった。

また、彼もまた戦うすべを持たないものを襲うつもりはないこと、そして生還するためにほかの参加者の実力を試していることが判明した。

「なるほど……それならば、目的も同じなのだから、私たちとともに行動してはどうかな?」
「そうか、お前の仲間の『武器を大きくする魔法』のこともあるし、これからよろしく頼むぜ!」
「では、これからよろしくお願いします。……くれぐれも、勝手に戦いを挑んだりしないでくださいね!」

そうしてともに行動することになった彼らだが、突如としてギルガメッシュがラ・ピュセルにあることを尋ねた。

「……ところで、ええっと、『ラ・ピュセル』だったか?お前はなんで、わざわざ女に化けて戦うんだ?ものまね士も性別までは変えないぞ?」
「…それとも、女性の姿にならないと本来の力を発揮できないとか、そういう呪いにでもかかっているのか?」

「………え?」
「………お、男?この人が?」

彼女……もとい彼、岸部颯太がなぜ『ラ・ピュセル』という女性に変身して戦っているのかどうかを聞いたのだ。


……このあと彼が魔法少女に関して説明をし、ギルガメッシュに理解してもらうことと妖眼の相剣師に事情を理解してもらうことに時間を要したのは言うまでもない…。


626 : お前は男じゃないのかー! ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/30(木) 23:58:27 Kvzqh2Mo0
【ラ・ピュセル(岸部颯太)@魔法少女育成計画(アニメ版)】
[状態]:疲労(中)、本当の性別を見抜かれたことによる動揺(大)
[装備]:魔法の剣@魔法少女育成計画
[道具]:基本支給品、マジカルフォン、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:正義の魔法少女として、人々を守るために戦う。
1:まずは、妖眼の相剣師やギルガメッシュとともに行動する。
2:自分は車に轢かれて死んだはずなのに、一体なぜここにいるんだろう?
3:『ギルガメッシュ』と名乗っているけど、どう見ても弁慶だよなこの人……。
[備考]
参戦時期は、クラムベリーに敗北し死亡した後。
魔法の剣は魔法少女への変身とともに召喚されるため、支給品には含まれません。


【ギルガメッシュ@FINAL FANTASY V】
[状態]:疲労(小)
[装備]:エクスカリパー@FINAL FANTASY V
[道具]:基本支給品、古代兵装・大剣、散打の槍
[思考・状況]基本行動方針:バッツ達との決着をつけるために、この戦いから生還する。
1:とりあえず、生還するためにラ・ピュセルと行動する。
2:この武器(エクスカリパー)、最強の剣じゃないのかー!
3:こいつ(岸部颯太)はなぜ、女に化けているんだ?
[備考]
参戦時期は、エクスデスによって次元の狭間に放り出され、魔物と単身戦い続けていた時期。
制限により、ギルガメッシュチェンジ(本来の姿である、八本腕の魔人への変化)は一定時間経過すると自動で解除されます。
(制限時間と再使用できるまでの時間については後続の書き手にお任せします。)
ラ・ピュセル(岸部颯太)の本来の性別を見抜いています。また彼女を『魔法少女』というジョブの戦士だと思っています。


【妖眼の相剣師@遊戯王OCG】
[状態]:疲労(小)、ラ・ピュセルの本当の性別を知ったことによる動揺(中)
[装備]:どうたぬき@風来のシレンシリーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:主催の打倒、殺し合いからの脱出
1:ドラグマの野望を止めるために脱出する。
2:エクレシアとアルバス、二人ともどこにいるのだろうか……?
3:……え?男?この人(ラ・ピュセル)が?
[備考]
参戦時期は少なくともエクレシアに大霊峰相剣門のことを教えた後。
ラ・ピュセル(岸部颯太)の本来の性別に気づいていませんでした。


【マジカルフォン@魔法少女育成計画】
ラ・ピュセル(岸部颯太)に支給。卵のような形をした携帯端末で、魔法少女間の連絡などといった機能を持つ共通の変身アイテム。
なお今回は制限により、魔法少女への変身以外に使用することはできない。


【エクスカリパー@FINAL FANTASY V】
ギルガメッシュに支給。『剣の中の剣』との誉れ高い剣………のニセモノで、どんな敵にも1しかダメージを与えることができない剣。

しかし装備をしている場合自分の攻撃が必ず当たるようになるので、状況によっては比類なき威力を発揮する。


【古代兵装・大剣@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
ギルガメッシュに支給。古のシーカー族の技術が使われた両手剣で、独特な文様などが特徴的な武器。

起動すると刀身に沿って回転する青い刃が出現するという特殊な構造をしており、高い切断力で敵を切り裂くことができる。

……まあ要するに『チェーンソー』である。


【散打の槍@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
ギルガメッシュに支給。三日月のような、独特な形状の槍頭を持つ槍で、シーカー族の槍の達人は 湾曲した刃を引っかけて斬る使い方をしたとも言われている。


【どうたぬき@風来のシレンシリーズ】
妖眼の相剣師に支給。名のある刀工師が鍛えた一流の刀で、この武器を愛用している風来人も多い。


627 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/06/30(木) 23:58:51 Kvzqh2Mo0
投下終了です

以上、ありがとうございました。


628 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/30(木) 23:58:58 Ok2s2u820
投下します


629 : 出張!Y談ダダンダンダンダダーン(イノチ感じる) ◆2dNHP51a3Y :2022/06/30(木) 23:59:17 Ok2s2u820
「……えらくあっさり納得してくれたわね。」
「まあ、こっちは吸血鬼やらで慣れているからな。」

夜空と月明かりに照らされる湖畔の隣に二人の男女。
黒い髪を靡かせる百合ヶ丘女学院所属リリィである白井夢結と、赤い衣装と帽子に身を包んだ新横浜の吸血鬼退治人ロナルドはお互いベンチに座り情報交換をしていた。

「今更ポンチキな吸血鬼共で慣れてんだ、多少の面倒事なら問題ねぇさ。……って、これは流石に笑えねぇ所まで行ってるんだがな。」
「ポンチキって……一体どんなのがいるのかしら。」
「強制的に野球拳させてきたり、股間に植物はやしてきたり、噛んだらマイクロビキニ強制してくるやつとか、Y談しか喋れなくするやつとかな。」
「……唐突に不安になってきたんだけれど。」

ロナルドの世界の吸血鬼の話を聞き、夢結は途端に頭が痛くなる。
もしシルトである梨璃がその被害に在っていたというのなら途端にルナトラ確定暴走直行ルート確定になる。

「……さっさと梨璃を探したいわね。後は他の隊のみんな。……巻き込まれているのかどうかすら、分からないけれど。」
「色々と同意だ。色んな意味であのポンチ吸血鬼ども被害増大なんぞ御免被る。」

あの変態どもの被害に会う前に梨璃を保護する。ロナルドは弟であるが、弟/妹を心配する兄/姉の気もちはよく分かる。更に言えばロナルドにも妹がいるので、その心情は色んな意味で理解できるのだ。

「……その梨璃って子、本当に大切なんだな。」
「そうよ。何故なら……私は梨璃に耳掻きしてもらって甘い声上げたいから!」
「は?」

唐突な夢結の変な発言にロナルド思わず真顔。
そして嫌な予感が感じてロナルドが夢結の背後を見てみれば。

「なるほど、百合百合しい良い猥談を聞かせてもらった。ではさらばだ!」
「てめぇかぁぁぁぁっ!!!!」

案の定Y談おじさん。そしておじさん逃走。足が早くて取り逃がす。
頑張れロナルド、君の活躍はこれからだ!

【ロナルド@吸血鬼すぐ死ぬ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:殺し合いを止める
1:あいつぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!(半ギレ)
2:まず夢結を何とかする(Y談的な意味で)

【白井夢結@アサルトリリィ】
[状態]:健康、Y談波の影響下
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:梨璃に膝枕したい。いや逆にされたい!(殺し合いを止める。)
1:梨璃に「お姉ちゃん」って言われたい。(梨璃は何処?)
2:※※※※※※※※※※(う、うわああああああああ!?)
[備考]
※Y談波の影響下ですが、3時間後に解除されます

【Y談おじさん@吸血鬼すぐ死ぬ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:殺し合い? そんな事よりY談だ!
1:どうやらY談の聞きがいのある者たちばかりのようだ!
[備考]
※Y談波の効力は制限により、3時間経過で自動的に解除されます。


630 : ◆2dNHP51a3Y :2022/06/30(木) 23:59:29 Ok2s2u820
投下終了します


631 : ◆QUsdteUiKY :2022/06/30(木) 23:59:32 HDozZHCg0
投下します


632 : 魔王繋がりでこいつ忘れてた ◆QUsdteUiKY :2022/07/01(金) 00:00:57 B9FcIAvI0
冥界の魔王が主催するゲームにて、また一人魔王が現れた
主催者ではなく、プレイヤーとして―――


【アノス・ヴォルディゴード@魔王学院の不適合者 〜史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う〜】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:ハ・デスを倒す
1:だいぶ弱体化したな
[備考]
※かなり弱体化しています


633 : ◆QUsdteUiKY :2022/07/01(金) 00:01:11 B9FcIAvI0
投下終了です


634 : ◆QUsdteUiKY :2022/07/01(金) 00:05:55 B9FcIAvI0
投下が間に合わなかった方などもいないようなので、とりあえずコンペ終了です
沢山の投下をありがとうございました!名簿は暫くお待ちください
一応、もしも候補作の投下が間に合わなかった方がいる場合は1時までは受け付けます。
それでは名簿完成までお待ちください


635 : ◆4Bl62HIpdE :2022/07/01(金) 00:37:12 vdwH6xQU0
遅れてしまい恐縮ですが、投下します


636 : ◆4Bl62HIpdE :2022/07/01(金) 00:37:46 vdwH6xQU0


『漏胡。我々呪いがこの地球を支配した時、貴方はどうしますか?』


「....ええい、気色悪い。その口、閉じたまま念だけ発せられんのか」

『いいから。答えてください』
「....どうもせん。それこそが我々のあるべき姿であり、望むべき姿であろう」

『生命はアミノ酸から生まれたと聞きます』
「真人の本でも齧ったか?」

『ええ、何十年も活きた樹を自らの都合で知識の糧にする……とても悍ましい物でしたが、我々は学ばねばならない。呪術から人間の理まで』

「何が言いたい?」

『我々は呪い。我々は生命であり、人間に取って代わる存在のはずです』
『しかし、もし、私達の手で人間の居ない時間を作ったとしても、また何かの『起点』で人間が生まれてくる.....そんな気がしてならないのです』


「...百年後、いや千年後の荒野で笑うのはまた、"人間"だとでもいうのか?」

『違うとしても、また別の何かが増え、自然を食い荒らす....我々呪い以外の何かが。嫌な気配がするのです』

「.....貴様、やけにナイーブになっておるな」

「心配するな。人に依らずとも我々の魂は廻る。その時になったとしても、知能を持つもの、その負の感情から生まれた"呪い"がまた同じように巣くう命を消していけばいい話だ」

「我々こそは、真の人間だ」


637 : 廻生奇譚 ◆4Bl62HIpdE :2022/07/01(金) 00:38:43 vdwH6xQU0


「私、伊地知潔高と言います。高専で、事務員をやっております」
「あ、そんなご丁寧に.....私、間桐桜といいます」

「桜さんですか。これからよろしくお願いしますね」
伊地知潔高と間桐桜。二人は、この殺し合いに召喚されて直ぐ、同じエリアでばったり合流したのだった。

「あ、いえ....そんな。はい、よろしくお願いします」
丁寧な伊地知の姿勢を見て多少ぎこちなくなる桜を他所に、伊地知は考える。

自分が、この殺し合いに参加させられた理由を。

「(あのハ・デスと呼ばれる存在、あれは式神の可能性がありますね。仮に呪詛師が絡んでいるとしたら、五条さんに恨みを持っている関係者の仕業でしょうか)」

「桜さん。大変恐縮ですが、最近身の回りに何か変わったことはありませんでしたか?」

「え、いえ....特には、ありませんでした」
桜は、言いよどんだように俯きつつも答えた。

伊地知は、その澱みを見逃さなかった。
「....そうですか。失礼しました。」
補助監督というのは、時々呪いに関わる関係者への事情聴取を兼ねることもある。

伊地知の勘だったが、桜には、長年培ってきた感覚――呪いに巻き込まれた被害者のような、後悔や辛酸に混じった言い出せないよどみを感じていた。

「さて、これからの行動方針を決めたいと―――」

そう言い出した矢先だった。

「――っ!!」
「......えっ?」
伊地知と桜は、空気が振動するほどの呪力を肌で感じてしまった。

「....フン。二人か」
そこにいたのは、一つ目の火山のような貌をした、妖怪のような人型の呪いだった。



「....伊地知さん、あれは」
「桜さん。逃げてください」
桜は魔術師として感じ取った。サーヴァントと同じで、目の前の"もの"は、戦ったら確実に自分は死ぬ。


「あの呪いは特級――クラスターの絨毯爆撃でも生き残る可能性が高い化け物です。一歩でも振り返ったら死にます」
伊地知も、桜よりは冷静だったが....足が、震えていた。


伊地知はデイバッグから鞭のような物を取り出し、構える。
「私には、あるものが支給されています。――これであなたが逃げるスキを」
「させると思うか?死ね」


638 : 廻生奇譚 ◆4Bl62HIpdE :2022/07/01(金) 00:40:06 vdwH6xQU0

瞬間、化け物が伊地知に詰め寄った。
「―――ッ!!(間に合え!!)」
「一人目」
そして、伊地知の体が瞬く間に燃え上がる。
「伊地知さ―――」
「二人―――」
しかし、桜の体が燃えることは無かった。
黒い鞭のようなものが、漏胡の左腕に傷を付け、化け物――漏湖の意識が逸れた。

「ん―――?」
「今です!!早く!!!逃げて!!!!!」

「ひっ......」

「させると思う......!」
その先は言えなかった。
伊地知が支給されていた呪具――黒縄を使い、漏湖の体を絡めとっていたからだ。
「(この呪具は攻撃が当たらない五条さんにも効いた特級呪具!がんばれ私!)」
桜が、覚束ない足取りでその場から数十m離れると同時に――

「―――闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ払え」
黒い結界が、伊地知と漏湖の周囲を包んだ。
「……時間稼ぎのつもりか。足が震えておるぞ?貴様」
黒縄。その効果は、術式の無効化。
つまり、呪術で燃やしてしまえば縄は消える。

自身の体を絡めとった分を燃やし、消滅させた漏湖は愉悦の笑みを浮かべていた。


伊地知は、帳を張った。――帳の効果は二つ。

呪いを炙り出し、呪いを閉じ込める。――帳は呪いにまつわるもの全てを遮断した。
そして、帳の外、周囲を見えなくする。――桜が何処へ逃げたのか分からなくするため。


――私にできるのは、ここまでです。
桜さん、どうか逃げてください。

帳が呪術によって燃やされた頃――そこには、骨すらも消えつくした、一人の焼き跡があった。

【伊地知潔高@呪術廻戦 死亡】


「―――こんなものか」

漏湖は、焼き跡となった男を見て、心底つまらないと思った。
男の生き様――目の前の少女を守るために取った献身という行為が、心底面白くなかった。

何故なら、総てが尽きた時の男の顔は、恐怖そのものだったからだ。
「――所詮、人間など紛い物にすぎぬ」

死ぬ前、宿儺に言われたことを思いだす。

"お前は焼き尽くすべきだったのだ 打算も計画も無く手あたり次第 五条悟に行きつくまで"

「....よかろう、この殺し合いで行きつく先があるのなら――それもまた一興」

そうして、一人の"呪い"の尊厳を棄てたものの戦いの火蓋が、切って落とされた。

【漏湖@呪術廻戦】
[状態]:首輪を付けられたことに対する苛立ち、女を殺せなかったことへの苛立ち
[装備]:なし
[思考・状況]基本方針:鏖殺。参加者を皆殺しにし、呪霊が支配する世界を創る。
1:鏖殺の果てに、"行きつく先"があるというのか
2:先程の女は、追うべきか....
※参戦時期は死亡後からの参戦です。


639 : 廻生奇譚 ◆4Bl62HIpdE :2022/07/01(金) 00:41:54 vdwH6xQU0



「あは、あははははははは」
伊地知さんは優しい人だった。――こんな私でも、庇ってくれた。
それなのに、それなのに。私は、なんて弱いんだろう。
殺し合いに巻き込まれた後の、伊地知の死。桜の心はもう、限界だった。
跪き、苦しくて笑ってしまっていた。

「おい、大丈夫か」
気づいたら傍に、少年がいた。
それは、桜が好きだった人がかつて目指していた"正義の味方"とは違う、人を助け、闇を祓う"部品"―――呪術師だった。

「――落ち着いて、何があったか話してくれ。逃げてきたのか?」
「.....話したら、あなたは私をどうするつもりですか」

少年は、殺し合いに参加させられる前の、一人の同僚の死を思い出していた。

"後は頼みます"
「――助ける。俺は、人を助けなきゃいけないんだ」

【間桐桜@Fate/Staynight[Heaven's feel]】
[状態]:精神的疲労(極大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜3
[思考・状況]基本方針:どうしたら、いいんだろう。
1:誰も傷つけたくないし、誰も周りで死んでほしくない。
2:目の前の人と話をする。
[備考]:参戦時系列は劇場版第二章ラスト、間桐家に戻って行く途中からの参戦です。

【虎杖悠仁@呪術廻戦】
[状態]:精神的疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜3
[思考・状況]基本方針:宿儺が殺した分、人を助ける。
1:目の前の少女と話をする。
2:ナナミンの後を引き継ぐ。――まだ、死ぬわけにはいかねぇんだわ
[備考]:参戦時系列は渋谷事変終了後、伏黒と合流〜高専に向かう前からの参戦です。
【支給品紹介】
黒縄@呪術廻戦
伊地知潔高に支給。縄に触れた呪術を乱し、術式効果を相殺する術式を持つ。

※伊地知の支給品がどうなったのかは、後続の書き手にお任せします


640 : 廻生奇譚 ◆4Bl62HIpdE :2022/07/01(金) 00:43:55 vdwH6xQU0
投下終了です。漏湖の支給品が抜けていたので修正します
【漏湖@呪術廻戦】
[状態]:首輪を付けられたことに対する苛立ち、女を殺せなかったことへの苛立ち
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜3
[思考・状況]基本方針:鏖殺。参加者を皆殺しにし、呪霊が支配する世界を創る。
1:鏖殺の果てに、"行きつく先"があるというのか
2:先程の女は、追うべきか....
[備考]※参戦時期は死亡後からの参戦です。


641 : ◆j1W0m6Dvxw :2022/07/08(金) 09:00:31 qGTiJjmQ0
このロワの根幹をなす『遊☆戯☆王』シリーズの原作者であらせられる高橋和希先生がお亡くなりになられたそうです。
まだ参加者名簿選考中にこのような訃報を知り、とても残念です。
高橋和希先生のご冥福を御祈りします(‐人‐)


642 : ◆QUsdteUiKY :2022/07/17(日) 19:17:39 4fvXCSh.0
OP2投下します


643 : Versus Road〜神が与えしたった一つのTrial〜 ◆QUsdteUiKY :2022/07/17(日) 19:19:13 4fvXCSh.0
「プレイヤー諸君―――君たちに朗報がある」

 天空に巨大なモニターが浮かび上がり、一人の男が映し出される。
 檀黎斗。彼こそが全ての元凶であり、このゲームを開発した男。そして今回のゲームマスターであり―――神だ。

「今この放送を見ている君たちは予選に通過した。これまで白紙だった名簿にもプレイヤー達の名前が記載されているはずだ。そしてつい先程―――君たちテストプレイヤーの協力を経て、遂にこの究極のゲームは真の完成を迎えたァ!」

 予選。
 テストプレイヤー。
 磯野やハ・デスの口からは明かされていなかった衝撃の真実を、真のゲームマスターである神は惜しみなく教える。
 黎斗は大量のプレイヤーを実験体のモルモットとして扱っていたわけだが、罪悪感なんて微塵もない。
 テストプレイヤーの協力なんて言っているが、プレイヤー達は決闘を強制されて戦っていただけ。誰一人として事情を明かされているプレイヤーは居ない。

「黎斗様。あなたがゲームマスターということをプレイヤー達に伝えなければ、意図が伝わらない可能性もあるのでは?」

 ハ・デスが黎斗に敬語で話す。
 それは異様な光景にすら見えるだろう。禍々しい化け物が人間相手に敬語を使い、従っているのだから。―――だがハ・デスは所詮ただの魔王であり、神である黎斗より格下であることは称号からして明白。
 自分に意見した魔王の言葉に黎斗はニヤリと笑った。

「……そうか。ならば予選を通過した全プレイヤーに教えてやろう。私がこのゲームの開発者(ゲームマスター)であり―――神だ!」

 全てのプレイヤー達に黎斗のドヤ顔が映し出される。
 その自信に満ちた態度は人によっては苛立ちすら感じるだろう。
 これだけ大量の人々を自分勝手に巻き込んで、何ら悪びれることなくゲームの完成を誇らしげにしている。
 やっていることは決闘という名の殺し合いなのに、彼は本当にこれがゲームだと思って開催しているのだ。
 ハ・デスはこの決闘をゲームだと話していたが、それは皮肉や嫌がらせではなくこれが本当にゲームだったから。

「そして一部のプレイヤーには残念なお知らせもある。
 ―――改めて君たちにこのゲームのルールを教えよう。まず予選で散々行われていた命懸けのデュエルだが―――君たちの決闘者のゲーマーとしての才能が感じ取れて見応えがあったことは否定しない」

 遊城十代とロットン。
 アポリアとアモン。
 不動遊星とヘルカイザー亮。
 他にもテストプレイの段階で様々なデュエルが行われてきたが―――それらを見て黎斗は満足していた。

 彼らは素晴らしい才能の持ち主達だ。決闘者を招いて彼らの好きなデュエルをゲームのテーマの一つとして設定した甲斐があった。
 だがこのゲームには当然、決闘者以外のプレイヤーも居る。古今東西、様々なプレイヤーを集めたのだから当然だ。
 それに黎斗がその才能を認めている宝生永夢だって決闘者ではない。ゲーマーの代表格であるキリトもそうだ。

 もしもこのまま決闘者による『命を懸けたカードゲーム形式のデュエル』が横行したら、黎斗の望んだゲームは成り立たない。
 黎斗はデッキやデュエルディスクを決闘者や空のような戦う力を持たないゲーマーの戦闘手段として支給したのだ。一応、気まぐれにゲーマーですらない一般人にもランダム配布したが―――条河麻耶を見てわかる通り、ルールを把握する前にゲームオーバーになったプレイヤーも存在する。なんとも理不尽なことだが、それはルールも知らないうちに殺された彼女の運が悪いだけ。ゲームに運は付き物である。
 並行世界の彼女の力を発揮するアイテムでも与えてやるのが無難だったし、高確率でそうなるようにシステムを組んだはずだが―――どうやら彼女は本当に運に見放されていたようだ。一部のデッキには支給品の説明書にルールやデッキコンセプトの解説が封入されているはずだが、それすら無かったか。それともまともにルール確認をする前に襲撃されたか。とにかく不幸としか言いようがない。

 武藤遊戯と博麗霊夢のようにお遊びでデュエルをするのは勝手だが、命懸けのカードゲームは許容出来ない。
 このゲームはサバイバルゲームであり、デスゲームだ。カードゲームとして開発したつもりはない。

 それでもテストプレイの段階では命懸けのカードゲームをあえて許容していた。
 唐突にデスゲームに巻き込まれた決闘者達がどんな行動をするのか。そして彼らのデュエルをカードゲーム形式で行う場合、どんなものなのかこの目で見届けたかった。


644 : Versus Road〜神が与えしたった一つのTrial〜 ◆QUsdteUiKY :2022/07/17(日) 19:20:17 4fvXCSh.0
 ちなみにライフがバラバラであったことにも理由はある。
 遊戯王オフィシャルカードゲームという名前でカードゲームが流行っている世界ではライフは8000が標準。しかしここに寄せ集めた決闘者の大半はライフ4000でデュエルを行う世界出身が多い。
 テストプレイ中にライフが初期の8000だったり4000だったりしたのはそれが原因だ。単純に面白半分といったところか。

「君たち決闘者の才能は素晴らしいが―――このゲームのジャンルはカードゲームじゃない。互いの命を懸けた決闘―――デスゲーム!それこそがこのゲームの本質だァ!」
「―――つまりデュエルを行うにしても、カードゲームとしてではなくリアルファイト形式が好ましい。貴様らのカードもそのように細工されているはずだ」

 黎斗の説明をハ・デスが補足する。
 実体化するモンスター、現実で実際に効果を発揮する魔法・罠―――。
 これらをカードゲームではなくガチンコのリアルファイトの武器として扱うことが、黎斗の望む形だ。
 ただしテストプレイ中のデュエルで死亡した参加者については、どうでもいいのだが。予選段階で死ぬような決闘者なんて興味が無い。所詮、その程度のプレイヤーだったということだ。

「そういうことだ。だから本番ではカードゲーム形式によるゲームオーバーを無くし、ダメージも通らないようにシステムを改変した。君たちが真の決闘者ならばリアルファイト形式のデュエルにも適応してみせるがいい!ハハハハハハ!!」

 理不尽なルールを押し付け、黎斗は声高らかに笑う。
 彼はゲームマスター。全てのプレイヤーは黎斗の定めたルールに従わざるを得ない。
 実際にシステムが変更されたという証拠にハ・デスが磯野を相手にエラッタ前のダーク・ダイブ・ボンバーで先行ワンキルを決めた。
 しかしデュエルに敗北した磯野には傷一つなく、命を落とすこともない。

 逆にリアルファイト方式ならばモンスターでダメージを与えられるという証拠にハ・デスはワイトを召喚。磯野を攻撃し、その体に傷をつけた。

「これらのデモンストレーションを見てわかるように、私は本当にシステムを改変した。何故なら私は神だからだ!君たちがプレイヤーとして参加するゲームのルールは、私が決める!!」

 傲慢な態度を隠す気もなく、黎斗はゲームマスターとして―――神として振る舞う。
 自分が住む世界以外まで観測することに成功したおかげで数多の決闘者や仮面ライダーやゲーマーを集めることが出来た。

 ―――ちなみにこの黎斗、本来の檀黎斗とは違う世界線の檀黎斗だ。だから未だに神を自称し、止める気もない。
 他の世界線の自分は九条貴利矢に敗北し、神であることを辞めたようだが―――この黎斗は違う。身勝手に振る舞い、他人を平然と利用する。


645 : Versus Road〜神が与えしたった一つのTrial〜 ◆QUsdteUiKY :2022/07/17(日) 19:21:38 4fvXCSh.0
 決闘者達は彼が観測した世界の中でも特にゲームが重要視されている世界で、世界の命運すらゲームで決まってしまう程だったから目をつけられた。ただそれだけの理由で巻き込まれたのだ。

 彼らの世界に存在する海馬コーポレーションの技術力も黎斗は評価している。だからその社長である海馬瀬人は世界線の違う二人をどちらも予選通過させることにした。
 本田を見せしめに選んだ理由も、全てはその世界の王―――遊戯(ゲーム)の王である武藤遊戯の才能を刺激するために他ならない。

「そしてデュエルの意味がわからないプレイヤーの為に全てのタブレットにデュエルを理解するためのルールブックアプリを配っておいた。神の恵みをありがたく受け取れ!」

 テストプレイを終え、予選通過―――というよりも運営陣のお眼鏡にかなったプレイヤー達に褒美としてルールブックアプリを与える。シンクロやエクシーズなどの説明もしっかりと記されたものだ。

 それにしても気まぐれにホモの連中も予選に投入したが、予想以上に面白いものが見られたと黎斗は満足する。ネットミームを実体化させるという荒業で投入した甲斐があったわけだ。
 特に野獣先輩と遠野を近くに配置したのは大成功とも言えるだろう。それで冷酷な敵役が一人、出来上がったのだから。

 まあ肉体派おじゃる丸のように『ネットミームの実体化』ですらなく、本人を呼び出してその名を奪い、ミーム通りのスペックに魔改造してやったホモもいるが―――キリトと空というゲーマーとしてはトップレベルの二人を相手に良い当て馬となってくれた。事実、彼のおかげで空はデュエルに慣れることが出来たのだ。

 ちなみに天才ゲーマー空を招き、白を呼ばなった理由は嫌がらせ―――などではなく興味本位だ。それに過去にゲームを開催し、とあるプレイヤーに破れた臆病者が空白が揃うことを忌み嫌った。
 ―――その臆病者については、後々語るとしよう。

 さて。黎斗がプレイヤー達のデバイスにアプリを配布すると宣言した後、急に映像が切り替わる。
 中学生程度の少女―――条河麻耶がルールの把握も出来ずに弱小モンスターを召喚し、呆気なく殺されるグロテスクな映像だ。


646 : Versus Road〜神が与えしたった一つのTrial〜 ◆QUsdteUiKY :2022/07/17(日) 19:22:49 4fvXCSh.0
 死体まで鮮明に映し出され、一部のプレイヤーはら多大な恐怖を植え付けられることだろう。

「彼女のようになりたくなければルールの確認はよく行うことだ」

 再び映像が切り替わり、黎斗が映し出される。
 まだこれから先も未来があったはずの少女が殺される映像を垂れ流したというのに、何一つ悪びれてない。むしろプレイヤー達を煽っているようにすら見える態度だ。

「それでは改めてゲームの開始を宣言しよう。磯野、ゲームスタートの宣言を―――」
「―――そうはさせるか!」

 映像に新たな男が映し出される。
 それは始まりの男―――葛葉紘汰。
 何故か彼だけは黎斗でも補足することが出来なかったが、まさか自分からやってくるとは思わなかった。

 想定外の乱入者に黎斗はニヤリと笑う。

『フルーツバスケット! ロックオープン! 』
「―――変身!」
『極アームズ! 大・大・大・大・大将軍! 』

 対する紘汰は気合いを入れた表情で仮面ライダー鎧武―――極アームズに変身。
 他のプレイヤー達とは違い、自らの意思で―――神の力で介入した彼だけは自分の装備を何も奪われていなければ、首輪すらつけられていない。
 つまり全力で戦える状態というわけだ。

 葛葉紘汰を止めんとハ・デスが立ち塞がり、更に全身真っ黒な服装に身を包んだ男が鎧を装着。その姿は黄金騎士にこそ似ているが、まるで狼の悪魔のようにも見える。黄金騎士の対となる漆黒の騎士だ。

「ひぃぃ……」

 そして一般人である磯野だけが情けない声をあげる。様々なデュエルを見てきた彼だが、主催の一人として関与してしまった状況でこの展開―――このままでは自分も鎧武に殺されてしまうと思ったのだろう。

 だが黎斗は二人を片手で制止すると磯野も撤退させた。ハ・デスの実力やベイルの鎧の強さを測るにはちょうどいい機会だが―――葛葉紘汰だけは自らの手で削除したい。

「仮面ライダー鎧武―――葛葉紘汰か。仮面ライダーである上に神になったようだが……この世に二人も神は必要ない。不要な神は私が削除するゥ!」

『ゴッドマキシマムマイティX!』
「グレードビリオン―――変身!」

『マキシマムガシャット!ガッチャーン!
 不ー滅ー!最上級の神の才能!クロトダーン!ゴッドマキシマーム!エーックス!!』

 ―――そして黎斗は漆黒の最高神へ変身した。
 彼から何か危ういものを感じ取った鎧武は必殺技ですぐに決めようとするが―――

『ポーズ』

 ―――瞬間、世界が停止する。
 この世界で動けるのは黎斗のみ。神であり、歴史改変にも多少ならば耐えられる始まりの男すらその動きがピタリと止まった。

 これは本来ならば無双ゲーマーで得た能力なのだが、この黎斗はそれすらも扱える。

「葛葉紘汰―――君でさえ私という神の前には何もすることが出来ない」
『カミワザ!ゴッドマキシマムクリティカルブレッシング!!』

 右足にエネルギーを纏わせたライダーキック―――必殺技が鎧武に炸裂。
 そして時は動き出す。

「ぐぅわぁあああ!!」

 仮面ライダー鎧武の変身が解除されると始まりの男―――ではなく人間、葛葉紘汰が現れる。紘汰は始まりの男としての能力の一切を失ったのだ。

「どういうことだ……!?」
「君をリプログラミングして普通の人間に戻した。さあ、神の前に跪くがいい!」
「ふざ、けんな!力なんて無くても、変身出来なくても―――俺は最後まで戦う!!」

 戦極ドライバーはさっきの一撃で破壊された。紘汰はもう変身すら出来ない。

「それが俺たち―――仮面ライダーだからだ!」

 戒斗達やかつて地球の危機を救うために共に戦った仮面ライダー達を思い出す。
 変身出来なくても紘汰は仮面ライダーだ。目の前の巨悪を―――人々の危機を見過ごすわけにはいかない。

 ―――だがそうして奮起する紘汰を無常にも漆黒の剣が貫く。

「これ以上の茶番は時間の無駄だ」

 ベイルの鎧を装着した男――葉霧宵刹の言葉を黎斗は否定しない。神の座から引き摺り下ろした時点で黎斗としては満足だ。別にとどめを刺すのは誰でも良かった。

「戒斗……みんな……。俺の代わりにこいつを、檀黎斗を……止めてくれ……」

 紘汰が最期の瞬間に願いを託したのは―――かつて共に戦い、最後には激戦を繰り広げた駆紋戒斗だった。


647 : Versus Road〜神が与えしたった一つのTrial〜 ◆QUsdteUiKY :2022/07/17(日) 19:25:07 4fvXCSh.0
 その声や生き様は全てのプレイヤーに放送されている。こういう『イベント戦』はゲームでもよくあることで、葛葉紘汰の最期の瞬間を全プレイヤーに放送することに黎斗は一定の価値を見出していた。

「葛葉紘汰はルール違反だが―――残念ながら彼には首輪がないから爆発することが出来なかった」

 果たして葛葉紘汰は本当にルール違反なのだろうか?
 主催者に逆らってはいけない―――そんなルールはどこにも記載されていない。
 しかしこのゲームは檀黎斗こそが神であり、絶対的な存在。彼がルール違反だと判断したらルール違反になる。

 ―――モニターに茶髪の少女が映し出される。

「彼女の名前はアユミ。ルール違反を行った葛葉紘汰の代わりに―――今から彼女を削除する」

 ピ、ピ、ピ―――

 神の宣告と同時にアユミの首輪が音を発する。
 アユミはなんとかして首輪を外そうとするが―――外れない。

「たすけてくだ―――」

 ボン☆
 軽快な音と共に、アユミの胴と首が分離する。
 ストーカーの少女は涙を浮かべて助けを求める最中にこの世を去った。

 ―――そして再び黎斗へ映像が切り替わる。

「そしてもう一つ君たちに朗報だ。神であり最強のラスボスとしても君臨している私を倒せたら、ゲームクリアということ君たちを元の世界へ帰してやろう」

 アユミの死など気にも止めず、黎斗はルール説明を続ける。

「ただし下手に逆らえばアユミのように首輪を爆破させてゲームオーバーだ。君たちが私に挑むにはまずプレイヤー全員の首輪を外さなければその時点で生き残ってるプレイヤーは漏れなく死ぬことになるだろう!」

 葛葉紘汰が挑み、彼だけではなくアユミまで死んだ。
 それだけで大半のプレイヤーがこのゲームの理不尽さを思い知ったことだろう。

「勿論、最後の一人まで生き残ることでも君たちは元の世界へ帰ることができる。この方法だと願いを叶え、ゲームオーバーになった参加者を生き返らせることも可能だ。
 最高神である私に挑むか、それとも最後の一人になるまで勝ち残り願いを叶えるかは君たち次第だァ……!」

 黎斗はプレイヤー達に二つの選択肢を与えた。
 プレイヤー同士で圧倒的な力を持つラスボスに挑む協力プレイを選ぶか。
 それともソロで他のプレイヤーを殺し尽くし、願いを叶えるか。


648 : Versus Road〜神が与えしたった一つのTrial〜 ◆QUsdteUiKY :2022/07/17(日) 19:27:04 4fvXCSh.0
 遊び方はプレイヤー次第だ。どんな遊び方をするプレイヤーが居ても、神である自分ならば対処出来るという絶対的な自信が黎斗にはある。

「それと一つ伝え忘れていたが―――デュエルディスクとデッキを現在所持しているプレイヤー達の支給品は私が没収する。デッキが強力なアイテムだとテストプレイで判断した結果、バランス調整が必要になったからだ。
 代わりに君たちのタブレットには各自のデッキが効率的に回せるようにデュエルの基礎が学べて試運転も出来るアプリを配布しよう」

 プレイヤー全員に配布されたデュエルのルールだけが確認出来るアプリではなく、試運転まで可能なアプリ。
 マスターデュエルというゲームを模して作られたゲームアプリを黎斗はデッキを所持しているプレイヤー達に配信した。

「そして今から一つ運試しのゲームをする。私がこのボタンを押した瞬間―――君たち本戦出場者のうち何人かがランダムでゲームオーバーになるゲームだ」

 もちろん特に目を付けているプレイヤーは除外しているのだが―――そんなことは説明もせず、黎斗はボタンを押した。
 たったそれだけで幾人もの命が奪われたわけだ。モニターには証拠として凄惨な死体が順番に映し出される。

「最後に敵キャラを紹介しよう。このゲームは基本的に対人戦でNPCは出来る限りプレイヤーの命を奪わないように調整してあるが―――彼だけは別だ」

 モニターに一人の男が映し出される。
 顔に特徴的な痣がある、侍のような男だった。

「継国縁壱―――それが彼の名前だ」

 継国縁壱。黒死牟や鬼舞辻無惨というプレイヤーを知る過程でその存在を把握。人間の身でありながら完全無欠に限りなく近い、完璧とも言える存在であり人格者―――そんな彼の在り方を黎斗が歪めた。

 彼は現在、ゲームに没頭している。無数の鬼を殺すゲームだ。もちろん黎斗の声も聞こえていない。
 まだ現段階では「脳内で鬼を殺すゲーム」にしているが、会場へ放つと同時に普通に鬼を殺すゲームへ変更する。

 縁壱にはプレイヤー達が全て凶悪な鬼に見え、彼は無差別的にプレイヤーを襲うことになるだろう。

「さて。それではこれより究極のゲームを開始する。―――磯野、ゲームスタートの宣言をしろ」
「はっ……!ゲームスタートォォォオオ!」

 磯野がゲーム開始の宣言すると同時に、チラりと黒髪の少女がモニターに映し出された。
 彼女がどんな存在なのか―――それはまだプレイヤー達に明かすつもりはない。

 だが、そうだな。正義感が強い一部のプレイヤーがラスボスの攻略に少しでも精を出せるように一つだけ教えてやってもいいかもしれない。

「彼女の名前は美遊。私達が人質として捕えた少女だが―――君たちがラスボスであるこの私を倒した場合、解放してやってもいい」


649 : Versus Road〜神が与えしたった一つのTrial〜 ◆QUsdteUiKY :2022/07/17(日) 19:28:29 4fvXCSh.0


 〇


 磯野がゲーム開始の合図をして人質の説明をした後、本戦は始まった。
 本戦へ選ばれた参加者は99人。
 99。―――それは魔戒騎士にとって馴染み深い数字でもある。

 牙狼に憧れた魔戒騎士―――葉霧宵刹は黎斗と共にプレイヤー達の姿をモニターから眺める。そこには伝説の黄金騎士や銀牙騎士の姿もあった。
 冴島鋼牙と涼邑零。牙狼と絶狼。
 葉霧は空白同様、彼らを絶対ゲームに参戦させたくなかったが、同時に牙狼の称号に固執するがゆえに黎斗にそこを突かれた。

 曰く、このゲームでプレイヤーが脱落する度にベイルの鎧は強化される。
 そしてそれはやがて牙狼や絶狼すらも上回るだろう、と―――。

 ちなみに葉霧宵刹がプレイヤーとして推奨したのは空遠世那のはずだった。
 ガロの称号を手放したとはいえ彼にとっては因縁が深い相手であり、自らの手で倒してやりたいと思っていた。

 だが黎斗はあえて歴代最強の牙狼、冴島鋼牙と彼に比肩する銀牙騎士、涼邑零を選んだ。

 才能を自ら手放した空遠世那―――彼はあまり黎斗好みではない。それにやはり歴代最強の二人をプレイヤーとして招いた方が面白いだろう。
 道外流牙、蛇崩猛竜、楠神哀空吏なども検討したが、やはり冴島鋼牙と涼邑零が最も相応しいと考えた。

 そして人質の少女―――美遊は手足を鎖で繋がれた上で別室にて監禁されていた。
 彼女の部屋にもモニターは設置されている。そこから参加者達の動向を見るくらいの最低限の配慮だが、彼女の親友や兄がプレイヤーとして巻き込まれていることを考えると自分だけ何も出来ないこの状況は美遊にとって最悪かもしれない。
 だが予選段階で出会った決闘者達のことを思い出し―――諦めない。

『私は、友を独りにさせてしまった。……イリヤという娘には、同じ思いをさせるな』

 アポリアの最期の台詞が美遊の脳裏に蘇る。
 鎖で縛り上げられた手足は動かないけど、それでも心まで封じられる気はない。
 自分がどういうふうに利用されるのかは、だいたい察しがついている。

『俺も妹がいてさ、その為ならなんだってしなきゃいけないんだ。
 だから、恨んでくれるなよ?』

『死なない! あの子を殺させない! だって、私には、まだ―――。』

 衛宮士郎とイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。美遊と縁の深いこの二人だけは録画映像を美遊に見せることにしてある。

「お兄ちゃん、イリヤ……!」

 二人の姿に後押しされて必死に鎖を引きちぎろうとするが、ビクともしない。
 必死に抵抗しようとする美遊の様子をモニター越しに観察しながら黎斗はにんまりと笑っていた。
 彼女は人質だ。最初はただのプレイヤーとして参加させることも検討したが、やはり彼女の性質はプレイヤーよりもこちら側に向いている。

 さて。正史では聖杯戦争の勝者になるはずだった男―――衛宮士郎は彼女を見て、何を思うのだろうか?
 戦闘中で放送を完全に聞き取れるかは怪しいが、美遊という名を聞き逃しはしないだろう。

 そして美遊・エーデルフェルト。―――またの名を朔月美遊。彼女には人質以上の役割を期待している。だからあえて首輪は外した。
 強さ的には制限する必要もなく、なにより彼女の才能は面白いものだ。いつか最高神である黎斗にその矛先を向けるかもしれないが、ゲームにバグはつきもの。それに彼女の才能は神である黎斗の才能に何か刺激を与えてくれるかもしれない。

 もっとも善意のプレイヤー達が自分達や美遊に接触することなく、殺人プレイヤー―――murderが最後の一人まで勝ち残ってゲームクリアを果たす可能性もあるのだが。そこら辺は本当にプレイヤー次第だ、神である黎斗すらその結末はわからない。


650 : Versus Road〜神が与えしたった一つのTrial〜 ◆QUsdteUiKY :2022/07/17(日) 19:28:58 4fvXCSh.0
【葛葉紘汰@仮面ライダー鎧武 死亡】
【アユミ@プリンセスコネクト!Re:DIVE 死亡】

追加主催
【檀黎斗@仮面ライダーエグゼイド】
【葉霧宵刹@GARO -VERSUS ROAD-】

人質
【美遊・エーデルフェルト@Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ】


651 : Versus Road〜神が与えしたった一つのTrial〜 ◆QUsdteUiKY :2022/07/17(日) 19:30:25 4fvXCSh.0
参加者名簿
※OP2で例外的に乱入してきた葛葉紘汰は名簿に含まれていません

7/8【プリンセスコネクト!Re:DIVE】
〇キャル/〇コッコロ/〇モニカ/〇クウカ/〇ニノン・ジュベール/〇ユキ/●アユミ(OP2でゲームオーバー)/〇カイザーインサイト

4/6【真夏の夜の淫夢】
〇野獣先輩/●遠野/〇MNR/〇虐待おじさん/●ひで/〇肉体派おじゃる丸

4/6【まちカドまぞく】
〇吉田優子/〇千代田桃/〇吉田良子/●小倉しおん/●吉田清子/〇陽夏木ミカン

6/6【マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
〇環いろは/〇七海やちよ/〇里見灯花/〇柊ねむ/〇深月フェリシア/〇梓みふゆ

5/5【仮面ライダービルド】
〇桐生戦兎/〇万丈龍我/〇猿渡一海/〇氷室幻徳/〇エボルト

4/5【ご注文はうさぎですか?】
〇保登心愛/〇香風智乃/〇天々座理世/●条河麻耶/〇奈津恵

2/3【遊☆戯☆王】
〇海馬瀬人/〇城之内克也/●御伽龍児

2/2【遊☆戯☆王デュエルモンスターズ】
〇武藤遊戯/〇海馬瀬人

3/3【遊戯王5D's】
〇不動遊星/〇ジャック・アトラス/〇牛尾哲

4/4【遊☆戯☆王ZEXAL】
〇九十九遊馬/〇神代凌牙/〇天城カイト/〇真月零(ベクター)

3/3【遊戯王OCG】
〇閃刀姫-レイ/〇閃刀姫-ロゼ/〇深淵の冥王

2/4【クレヨンしんちゃん】
〇野原しんのすけ(大人) /●桜田ネネ/●ボーちゃん/〇パラダイスキング

3/3【仮面ライダーゼロワン】
〇飛電或人/〇天津垓/〇滅

2/2【仮面ライダーエグゼイド】
〇宝生永夢/〇花家大我

2/2【仮面ライダー鎧武】
〇駆紋戒斗/〇デェムシュ

2/2【DEATH NOTE】
〇夜神月/〇L

2/2【牙狼-GARO-シリーズ】
〇冴島鋼牙/〇涼邑零

0/1【GARO -VERSUS ROAD-】
● 星合翔李

2/2【大番長 -Big Bang Age-】
〇ジャンヌ/〇蛇王院空也

1/1【Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
〇イリヤスフィール・フォン・アインツベルン

1/1【Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ3rei!!】
〇衛宮士郎

2/2【ジョジョの奇妙な冒険】
〇空条承太郎/〇DIO

1/2【異世界で孤児院を開いたけど、なぜか誰一人巣立とうとしない件(漫画版)】
〇直見真嗣/●エリン

2/2【ななしのアステリズム】
〇白鳥司/〇琴岡みかげ

2/2【鬼滅の刃】
〇黒死牟/〇鬼舞辻無惨

1/1【鬼滅の刃+決闘ロワオリジナル】
〇継国縁壱(ジョーカー枠)


652 : Versus Road〜神が与えしたった一つのTrial〜 ◆QUsdteUiKY :2022/07/17(日) 19:30:38 4fvXCSh.0
1/1【刀使ノ巫女(漫画版)】
〇燕結芽

1/1【魔法少女おりこ☆マギカ】
〇鹿目まどか

1/1【Fate/Grand order】
〇キャスター・リンボ

1/1【モブサイコ100】
〇最上啓示

1/1【女装男子のつくりかたシリーズ】
〇土部學

1/1【仮面ライダー剣】
〇橘朔也

0/1【仮面ライダーカブト】
●影山瞬(OP2でゲームオーバー)

0/1【仮面ライダーキバ】
●紅渡(OPでゲームオーバー)

1/1【仮面ライダーゴースト】
〇深海マコト

1/1【平成仮面ライダーシリーズ】
〇門矢士

1/1【ソードアート・オンライン】
〇PoH

1/1【ソードアート・オンライン(アニメ版)】
〇キリト

1/1【ノーゲーム・ノーライフ(アニメ版)】
〇空

1/1【終末のワルキューレ】
〇ポセイドン

1/1【結城友奈は勇者である】
〇犬吠埼風

1/1【艦隊これくしょん】
〇明石

1/1【ステラのまほう】
〇百武照

1/1【HELLSING】
〇大尉

1/1【仮面ライダークウガ(漫画版)】
〇片桐章馬

1/1【Dies irae Verfaulen segen】
〇櫻井戒

1/1【不可解なぼくのすべてを】
〇百雲龍之介

1/1【TOWER of HANOI207】
〇クレヨン

1/1【暁の護衛 トリニティ】
〇宮川尊徳

1/1【ゴールデンカムイ】
〇尾形百之助

【サザエさん二次創作】
〇フグ田タラオ

1/1【超人類】
〇野比のび太

1/1【きららファンタジア】
〇保登心愛

1/1【コローソの唄】
〇ルナ

1/1【コピペ】
〇マサツグ様

1/1【ブレンド・S】
〇桜ノ宮苺香

1/1【Caligula2】
〇風祭小鳩

1/1【魔法科高校の劣等生】
〇司波達也

1/1【なんか小さくてかわいいやつ】
〇うさぎ

99/112


653 : ◆QUsdteUiKY :2022/07/17(日) 19:31:52 4fvXCSh.0
以上でOP2の投下終了、本編解禁です

予約期間は一週間。延長申請した場合は更に一週間延長出来ます
リアルファイト形式以外の真っ当なデュエルでは死人が出せないようになったので注意してください。
命のやり取りがない『お遊び』でデュエルをする場合、デュエルの詳細を描いても大丈夫ですがリレーを円滑に進めるために必ずその話でデュエルを完結させてください


654 : 名無しさん :2022/07/17(日) 19:48:39 .4SA7yOM0
OP投下、名簿作成お疲れ様です。

本編開始後の初コメが誤字報告のみなのは正直申し訳なく思っているのですが……名簿中の【TOWER of HANOI207】は、正しくは【TOWER of HANOI】かと思われます。


655 : ◆QUsdteUiKY :2022/07/17(日) 20:00:49 4fvXCSh.0
>>654
誤字報告ありがとうございます
たしかに【TOWER of HANOI207】ではなく【TOWER of HANOI】でした、申し訳ありません


656 : ◆QUsdteUiKY :2022/07/17(日) 20:04:14 4fvXCSh.0
橘朔也、天々座理世で予約します


657 : ◆4Bl62HIpdE :2022/07/17(日) 20:11:42 L2u9ERVY0
OP投下、名簿作成お疲れ様です。
鹿目まどか、千代田桃、片桐章馬、宝生永夢、百武照で予約します


658 : ◆ytUSxp038U :2022/07/17(日) 20:13:09 k5SVIS6U0
OP&名簿作成お疲れ様です。
やっぱり黒幕お前かよの神に、紘汰神乱入からの見せしめで、NPC縁壱とかいう兄上と無惨様ド級のお労しや案件など衝撃の連続でした。

桐生戦兎、エボルト、七海やちよを予約します。


659 : ◆wJPkWOa93Q :2022/07/17(日) 20:26:35 b7UdlO0.0
投下お疲れ様です
ジャック、うさぎ、深淵の冥王、遊戯、イリヤ、白鳥 予約します


660 : ◆P1sRRS5sNs :2022/07/17(日) 20:35:36 xCCaqfIk0
投下、おめでとうございます。
多くの人達が描いていく新たなロワがどうなっていくのかが楽しみです。


空条承太郎、猿渡一海、天津垓で予約します。


661 : ◆2dNHP51a3Y :2022/07/17(日) 20:53:45 TVqR.k0s0
OP&名簿投下おつです
という訳で自分も他の方に続いて予約させてもらいます
里見灯花、キャスターリンボ、最上啓示、吉田良子で予約します


662 : そそそうら :2022/07/17(日) 21:04:09 q8MAiy020
OP投下、名簿作成おめでとうございます、そしてお疲れ様です。
いきなり予約も無しに申し訳ありませんが、拙作『魔法少女とのエンカウント・IF』の鹿目まどかの状態表の支給品欄をWikiにて、以下の通り修正させていただきました。

『ホームランバット@大乱闘スマッシュブラザーズSpecial』

『ホームランバット@大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ』

急な訂正申し訳ありませんでした。


663 : ◆4u4la75aI. :2022/07/17(日) 21:06:01 q8MAiy020
本当に申し訳ありません、ミスしました……すみません……


664 : ◆EPyDv9DKJs :2022/07/17(日) 21:15:19 ajHj9pJk0
城之内、結芽、デェムシ予約します


665 : ◆n58YHB4l1A :2022/07/17(日) 21:20:42 95XNKvFE0
>>664
突然失礼します。
「デェムシュ」ではないでしょうか?


666 : ◆EPyDv9DKJs :2022/07/17(日) 22:03:38 ajHj9pJk0
ご指摘ありがとうございます。抜けてたようです、失礼しました
改めでデェムシュ予約します


667 : ◆L9WpoKNfy2 :2022/07/17(日) 23:07:05 es2jB0oE0
OP投下、名簿作成おめでとうございます、そしてお疲れ様です。

残念ながら私の作品は当選しませんでしたが、このロワがどうなっていくのかを見守っていきたいと思います。

以上、ありがとうございました。


668 : ◆wJPkWOa93Q :2022/07/18(月) 02:41:50 Z7ssv3cc0
投下します


669 : うるさくてキングなやつたちとなんか名前がなくてファラオなやつたち :2022/07/18(月) 02:46:58 Z7ssv3cc0
(やはり、ハ・デス如きが主催なワケがなかろうて……ククク、惨めな傀儡となっていたとはなあ……! ヴァーカ)

深淵の冥王はほくそ笑んでいた。
かの宿敵かつ、殺し合いの主催と思われていたハ・デスの背後に別の存在が居たこと。
普通の参加者にとっては驚嘆に値するが、むしろ彼からすればこれ以上喜ばしいことはなかった。
あんな大物ぶっても、所詮ただの傀儡でしかないのは実に心地いい。冷静に考えると、主催陣営も一枚岩ではなく事態は混迷を極めていることになるのだが、それは取り合えず置いておいくことにする。

「フゥン……」

放送を見終え、ただうさぎは無表情で腕を組み呟いていた。
深淵の冥王からすると、この生き物が謎過ぎてとっつきづらい。

「うさぎよ。何か、気に入らんと言った様子だな」

「ヤハ」

「……なるほど、何故今になってデュエルを通した命のやり取りを禁じたのかが、分からんという訳か。
 オレもそれは考えていたことだ。
 あの気に入らん胡散臭い男の言葉を借りれば、このゲームのプレイヤー達にわざわざ決闘者と称させ、
 殺し合いもデュエルと抜かし、挙句の果てにソリッドビジョンかデュエルモンスターズの精霊を呼んだか知らんが、カードのモンスターであるハ・デスに一旦はオレ達のヘイトを向かせた。
 ここまでのお膳立てをしながら、蓋を開ければデュエルを通じた戦いが本質と違うときている……。
 いや待て、あの男、まさか……オレにデュエルで敗北することを恐れているのか……? フッハハハハハ!!! 卑劣で臆病なことだ!!」

「ハァ? ハァ? ハァ? ハァ? ハァ?」

「あくまで試験的にオレ達の動向を伺い、ルール変更をした可能性もあるな。
 確かにデュエリストと非デュエリストが、デュエルで対峙するとなれば圧倒的に前者が有利だ。それを見越してとも考えられる。
 どちらにしろ、最初からデュエルなどと抜かさねば良いものを」

「ウラ」

「あるいは、奴等も一枚岩ではない、か」

「フゥン」

いずれにせよ。この首輪を外さない限り、事態は何一つとして好転はしない。
ジャックの仲間である不動遊星が、優れたメカニックであることは先ほどの名簿の確認で理解していた。
今はその遊星と合流し、首輪の解析と解除について意見を伺わねばなるまい。
そして、もう一つ。重要なのは脱出経路であると、うさぎは考える。
首輪を外したとして、この会場から抜け出せなければ、それは檻に閉じ込められたと同じだ。
恐らくだが、首輪を外すことまではこのゲームの想定内である可能性は高い。実際に檀黎斗は自らをラスボスと名乗り、倒した場合とプレイヤーとの戦闘を想定している。
あくまで、自身の根城まで辿り着くことはないという確固たる自信からの皮肉かもしれないが、ゲームと呼ぶ以上、その締めくくりの1つとしてゲームに組み込んでいる可能性は高い。
それならば、首輪の解析と解除まではゲームの一環としてある程度は寛容になるかもしれない。
1番最悪のケースが、ゲームをクリアした後、自分たちは元の世界へと帰還できるという保証が何処にもないということだ。
本人は、帰してやると抜かしているが、信じる事は難しい。神を自称するほど、己に自惚れた男が本当に自らの敗北まで考えているのだろうか。
仮に檀黎斗を倒したとして、この世界は奴の命と連動し崩壊し、帰還方法も分からぬまま、無理心中をさせられるかもしれない。
いずれにせよ。あんな男の言葉は何一つ信頼に値しない。

「プリャ」

以前、ゴブリンに捕まり長い間囚人生活を続けながら、機を伺い脱出(プリズン・ブレイク)の算段を立てていたうさぎは、同じようにこのデスゲームでも目ざとく情報を整理し、ゲーム脱出を図ろうとしていた。


670 : うるさくてキングなやつたちとなんか名前がなくてファラオなやつたち :2022/07/18(月) 02:47:44 Z7ssv3cc0





「美遊!? どうして……どうなってるの一体……!?」
「落ち着きな、イリヤ」

予選の終了と本戦の開始を告知する放送を見て、気絶から起きたイリヤは動揺を隠せなかった。
正直に言えば、状況は最悪とはいえ美遊が生きていたこと自体は素直に嬉しかった。
目の前で、世界の終焉と共に消えた彼女を結果的には救ったのだから、そこだけはあの変な男に感謝すらしているぐらいだ。
だが、その待遇は人質という最悪なものだった。

「あの神様を気取ってる男は人質と言っていた。少なくとも、今はまだオレ達よりは安全な立場だぜ」
「うん、私もそう思う。ラスボスとか言ってたしさ」
「ありがとう、2人とも……」

もっとも、奴がゲームマスターとして、正々堂々ゲームを運営するならばの話だが、と。心のなかで遊戯は付け加えた。
そこだけは最早、檀黎斗のゲーマーとしての矜持に賭けるしかなく、今の遊戯達にはどうしようもない為に敢えて触れる事はしない。
無駄に不安を煽り、イリヤに要らぬ動揺を与えるのも良くはない。

『もう一人のボク』

『どうした相棒?』

『なんで、この殺し合いを開いた人はこのゲームをデュエルと名付けたんだろう?』

『……』

『彼はデュエリストじゃない。正直言って、本田くんを殺した理由も分からないんだ。
 あまりこんなことは言いたくないけど、さっきの葛葉紘汰って人か……同じ仮面ライダーを最初から殺した方が、強さも本田くんより上だし、参加者への牽制とパフォーマンスにもなったんじゃないかな。
 デュエルキングのもう一人のボクを刺激するためかもしれないけど、それだったら仮面ライダーに反抗させた後にペナルティとか言って、本田くんの首輪を爆発させてもいいはずだし……』

『ああ、奴が見たいのがカードで行うデュエルではなく、血を流し合う殺し合いであるのなら最初からデュエルを根幹にするより、あの映像にもあった仮面ライダーという存在を主軸にした方が手っり早い。
 ご自慢のゲームとやらをお披露目して浮かれてはいるが、いまいちジャンルも定まってはいない。いわばOPとも言えるゲームの開幕から、肝心のゲーム内容が噛み合っていないぜ』

檀黎斗の様子を見れば葛葉紘汰は乱入者であり、イレギュラーだったのだろう。
だが、仮面ライダーという存在は一人ではない。葛葉紘汰の台詞からそれは伺える。それならば、彼を最初から見せしめにするのは不可能だとしても別の仮面ライダーを使えば話は早い。
それにルール把握の必要なカードより、アイテムで変身していると思わしき仮面ライダーのベルトの方が強化アイテムとしても使いやすくも見える。
結果論で言えば、最初から仮面ライダーをメインに据えたゲームとして殺し合いを開催すればよかったのではないか。

『単にデュエルを見てみたかったとか、神様のきまぐれと言えばそれまでだけど……。
 ……なんだか、神って言ってるけど……いざ実装してみたデュエルを持て余したり、一応ちゃんとテストプレイをしてバランスを考えてみたり……少し人間味が感じられるんだ。
 こんな殺し合いは間違ってるけど、ボクもたまに自分でゲームを考える時、システムが上手く噛み合わなかったりするし、気持ちは少し分かる。
 神様って言ってるけど、ボクらが思う程、彼も完璧じゃないのかもしれない』

名もなき王であるもう一人の遊戯は、常にゲームのプレイヤーであり続けていた。だが、その器たる表の遊戯はゲームのデザインにも関心がある。
無論、この遊戯は世界線が違う為に、ゲームデザイナーとして大成する未来とはまた別の未来を歩むが、本質は変わらない。
それがある意味、あの神を名乗る男に近い思考を持っていたのかもしれない。

『完璧ではない、か……。
 相棒、そこにこのゲームの攻略法が隠されているのかもしれないぜ』



「貴様、武藤遊戯だというのか!!!」



心の中で、2人の人格が考察を述べ合っていた時、やかましい声の背の高い男が現れた。


671 : うるさくてキングなやつたちとなんか名前がなくてファラオなやつたち :2022/07/18(月) 02:48:15 Z7ssv3cc0



「――――なるほどな。アンタが遊星の仲間だったとはな」

「フ、パラドックスの時は遊星が世話になったようだな」

「そうでもないぜ。アイツが居なかったら、じーちゃんも危なかったからな」

(なんだか、話が凄くなってきたぞ……)

突如として現れたジャック・アトラスとかいう五月蠅い男、ヤバい奴かと白鳥は思ったが遊戯と共通の知り合いである遊星の仲間だったらしく、それなりに信頼出来る相手らしい。
白鳥はいまだにちょっと怪訝な様子ではあったが、この二人の会話内容が時を超えて、世界の歴史を改変しようとするとんでもない相手と戦ったりだの、普通の暮らしをしていればまず聞かないパワーワードの応酬に頭が着いてこれなかった。

「なんだか、凄いことになってきたなあ……」

この目が三つあるおじさん、深淵の「元」冥王と呼ばれる人もポカンとしていた。

『私達も似たような事をやっていたとはいえ、中々そのパラドックスって人も思い切ったことをやりますねえ』
「……手段も、選べなくなるくらい。追い詰められてたのかな」
「フゥン」

(イリヤとあのステッキはまだ分かるけど、あの兎みたいなのも話に付いていけるのか? ……なんかショックだ)

「奴にも事情はあったのだ。その行いを全て認める気はないがな……今にして思えば、奴等も残された時間が少なかったのだろう」

(時間……?)

ふと、イリヤのなかでその言葉が引っかかった。
全てを救う事をイリヤは諦める気はない。でも、例え諦めなかったとしても、人の身では寿命という限界がある。
ジャックが触れているその人物も、もしかしたらと……全てを救うために奮闘して……友の意思を継いで、それでも……そんな気がした。

「……他人事じゃ、ないのかも」

ぽつりと、小さくイリヤは声を漏らした。

「これから殺し合いも本格化してくる。ジャック、アンタとオレ達で手を組んで、しばらくは行動を一緒にした方がいいと思うが」

「……確かにな。
 だが、時間は有限だ。今は手分けして、首輪の解除方法を探すことがオレは優先すべきことだと考える。グズグズしていては、首輪を外す算段も付かぬまま殺し合いが完遂するやもしれん。
 幸い、チームは分断しても戦力に偏りはそうはあるまい」

「ちょ、ちょっと待ってくれ、ジャック……あ、アトラス様……イリヤはまだ戦った後で、いま気絶から目が覚めた後なんだ……だから、もう少しくらい」
 
「……ジャックで良い」

白鳥が言うように、イリヤのコンディションは万全ではない。
安全策で言えば今はまだ人員を分けない方が良い。

「ううん、大丈夫……とは言えないけど、ジャック……えーと、アトラス様の言う通りだよ……時間は無駄に出来ない。
 いま、こうしてる間にも誰かが殺されてるかもしれないし……」

「ジャックで良いと言っているだろうがッ!」

「イリヤ……」

「白鳥さんも、探してる人が居るんだよね? それなら、手分けした方が良いよ」

名簿にあった琴岡と合流するのなら、チームを分断する方が効率は良い。白鳥本人が合流できずともジャック達が接触できればある程度は安心できる。

「……分かった」


(良くないぞ……実にいかん、このままでは……)

白鳥たちを他所に深淵の冥王は焦っていた。
彼は殺し合いに反発する者達が徒党を組み、その中で保護されることを望んでいた。実際武器も能力もないからそれしかない。
その為に、ハ・デスの宿敵というアドバンテージを最大限利用し、自分の価値を高めて優先して守られるつもりだったのだが、ここにきてあの顔芸の激しい変な男のせいで全ての関心が奴に集まってしまった。
ジャックも利用する気だったのが、完全に意識があの男の方へ向いてしまっている。
正直、かなり望まぬ方面に事態が進んでいる。冷静になれば、ハ・デスが利用されてたとか喜んでいる場合じゃない。

(身の振り方を考えねばならんが、うーんこの……正直ワシは戦力を分散したくないが、うーむ)


672 : うるさくてキングなやつたちとなんか名前がなくてファラオなやつたち :2022/07/18(月) 02:48:43 Z7ssv3cc0


「……時間がないとは言ったが、お前たち、一つだけオレのワガママを聞いてくれ」

「ジャック……?」

「武藤遊戯、今ここで貴様にデュエルを申し込みたい。
 キング・オブ・デュエリスト武藤遊戯……お前ほどの伝説を目の前にしデュエルを挑まぬのであれば、それは最早デュエリストではないッ……!」

(やっちゃ駄目って言われたそばからやるのか……)

困惑する白鳥の様子など見もせず、ジャックの視線は遊戯へと注がれていた。

「すまないが、それに応える事は出来ないぜ」

「……先ずは殺し合いの解決が先か……」

「それもあるが、今の俺にはデッキがない」

予感はしていた。
遊戯の腕にはデュエルディスクがない。
あの神を自称する男はよりにもよって、遊戯にデッキを支給しなかったのだろう。

「それは……残念だ」

この世の終わりのような表情をして、ジャックは構えた腕を下げた。

「……ヤハ」

うさぎが遊戯にデュエルディスクを突き出す。使えと言っているのだろう。

「やめろ、うさぎ……借り物のデッキを使った奴に勝ったところで、意味はない」
「ハァ?」

武藤遊戯程の相手に挑み、勝つのであれば歴代最強と謳われたその魂のデッキでなければならない。

『男って好きですよねえ、そういうの』

「何言ってんのルビー」

ジャックから漂う熱き闘志は只者ではない。本当ならば、そのデュエルを一人の決闘者として受けて立ちたかったが、状況はそれを許してはくれない。
願わくば、この男ともう一度再会できたときに、改めてデュエルをしたい。そう思わせる程に、遊戯の魂を震わせる男であったのに違いはない。





「――――お互いに必要な情報も交換した。
 これから手分けをして、首輪の解析方法を探すぞ。いいな?」

「プリャ」

「分かったよ。アトラス様」
「琴岡に会ったら頼むな、アトラス様」

「……ジャックでいい」

「ジャック、最後に一ついいか?」

「なんだ?」

「牛尾さんと知り合いらしいが、信用できるのか?」

「オレが知る限り、セキュリティの中では一番腕のいいデュエリストだ。信用も出来る。……奴ほど、立派に街を守る刑事もいないだろう」

「へえ……あの牛尾さんがね」

含みのある声で、遊戯は笑みを浮かべる。
ジャック達との別れ際に見せたその顔はデュエルキングのものとは違っていた。


673 : うるさくてキングなやつたちとなんか名前がなくてファラオなやつたち :2022/07/18(月) 02:49:19 Z7ssv3cc0


【F-5/1日目/深夜】

【ジャック・アトラス@遊戯王5D's】
[状態]:健康
[装備]:ジャックのデュエルディスクとデッキ@遊戯王5D's
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本方針:キングはこのオレだッ!!
1:主催よ、貴様が神だというのなら、悪魔と交わりし王者たるこのオレこそが真のゴッド・キングだッッ!!
2:殺し合いに反抗するための仲間も探す。武藤遊戯の仲間と白鳥の友達も探す。
3:いずれ、武藤遊戯には改めてデュエルを挑みたい。
4:イリヤ達を襲った女(ジャンヌ)を警戒。
[備考]
※参戦時期は本編終了以降です。


【深淵の冥王@遊戯王OCG】
[状態]:健康
[装備]:なんもなし
[道具]:なんもなし
[思考・状況]基本方針:ハ・デスに復讐したかった……。
1:取り合えず、ジャックを利用する。
2:何でもいいから武器が欲しい。
3:主催との因縁が薄れるの困るんだよなぁ……。誰だよあいつ、名前言わないし。
4:善良な対主催連合に保護してほしい。
[備考]
※いやがらせで一切の支給品なしです。


【うさぎ@なんか小さくてかわいいやつ】
[状態]:健康
[装備]:デッキとデュエルディスク@遊戯王シリーズ
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本方針:ヤァハァァアアアア!!
1:フゥン。
2:ハァ? ハァ? ハァ?。
3:ウラ。
[備考]
※デュエルのルールをマスターしました。
※殺し合いからの脱出経路の確保も重要だと考えています。


※遊戯、イリヤ、白鳥と情報交換しました。





【白鳥司@ななしのアステリズム】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品一式1〜3
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
1:イリヤさん、大丈夫かな……?
2:一旦はこの人(遊戯についていく)
3:琴岡を探す。
[備考]
※参戦時期は第五巻から


【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/Kaleid Liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:重症、魔力枯渇(大)
[装備]:マジカルルビー@Fate/Kaleid Liner プリズマ☆イリヤ、クラスカード『セイバー』@Fate/Kaleid Liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。元の世界に帰ってやることがある
1:美遊を必ず助けに行く。
2:襲ってきた女の人(ジャンヌ)を警戒。
[備考]
※参戦時期はドライ!!66話、6千年前に向かった直後



【武藤遊戯@遊戯王デュエルモンスターズ(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:千年パズル@遊戯王デュエルモンスターズ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1、ガーディアン・エアトス@遊戯王OCG
[思考]
基本:ハ・デスを倒し、殺し合いを止める
1:イリヤの体力の事も考えつつ、首輪の解析方法を探す。
2:仲間達との合流と、デッキも取り戻したい。
3:相棒の言うように、神(ゲームマスター)も完璧じゃない。そこに攻略法があるかもしれないぜ。
[備考]
※参戦時期は最低でもドーマ編終了後


※ジャック、うさぎと情報交換しました。


674 : ◆wJPkWOa93Q :2022/07/18(月) 02:57:45 Z7ssv3cc0
投下終了します


675 : 名無しさん :2022/07/18(月) 05:03:31 PNoEi/sQ0
すみません、名簿には未掲載の剣崎一真が、ウィキの採用作の中には含まれているのですが、剣崎は参戦なのでしょうか、不参戦なのでしょうか


676 : 名無しさん :2022/07/18(月) 05:06:41 PNoEi/sQ0
と、書き込んだ時には消えてる
表記ミスだったということなのでしょうか


677 : ◆ytUSxp038U :2022/07/18(月) 14:53:57 dS15HAoc0
投下乙です。
傍から見るとギャグなのに滅茶苦茶真剣な考察やってる冥王とうさぎに草しか生えない。
ゲーマーとしての目線から攻略法を見出す遊戯や、相変わらずの我が道を行くジャックなど遊戯王勢は安定感があって頼もしい。

投下します。


678 : 前途多難のエンカウント ◆ytUSxp038U :2022/07/18(月) 14:55:14 dS15HAoc0
情報量が多過ぎる。
巨大モニターがあっという間に消え去り、再度静寂に包まれた会場。
七海やちよが真っ先に思ったのがそれだった。

殺し合いを止める為にも、敵に関する情報が一つでも多く得られるのは良い。
正体、目的、能力、人数。判明している情報が多い程対策を立てやすくなるとうもの。
だが今しがたモニターに映し出された光景にはベテラン魔法少女のやちよであっても、そうすぐには処理し切れないでいる。

当初は黒幕だと思っていたハ・デスもまた、実際は駒に過ぎない。
ハ・デスから「黎斗様」と呼ばれていた男こそが真の黒幕らしい。
いきなり判明した事実だけでも衝撃だというのに、銀の甲冑を纏った青年の乱入と死亡、本田と同じ方法で殺されたアユミなる少女、敵キャラとして紹介された男、トドメに囚われた幼い娘。
次から次へと飛び込んでくる数々に、少しばかり混乱しかけたくらいだ。

「……ふぅ」

一度ゆっくり深呼吸をして、絡まりかけた思考をリセット。
分からない事が多い中で唯一確かな事、それは今の放送を切っ掛けに殺し合いが本格的に始まりを告げた。
先程倒した青い悪魔の集団よりもずっと危険な参加者や、その上をいく主催者が待ち受けている。
そんな戦いに臨むのならば、最初の一歩で躓く訳にはいかない。
改めて、得られた情報一つ一つをゆっくり噛み砕いていく。

あの放送では複数の人物が姿を見せたが、その中にやちよの知る者は一人も現れなかった。
当然マギウスの翼の魔法少女もだ。
とはいえこれだけでマギウスが無関係だとは断定できない。
姿を見せなかっただけで、実際は黎斗の言う究極のゲームに一枚噛んでいる可能性も有り得るのだから。
主催者の手で始末された者や、主催陣営の一員である者。
彼らのプロフィールをやちよは知らないが、参加者の中には知っている者がいるはず。
現に最初に殺された本田と殺した磯野、あの二人を知っているだろう遊戯という少年は参加者として会場にいる。
そういった者達と接触し情報を集めれば、殺し合いを止める取っ掛かりが掴めるかもしれない。
情報収集以外にも、親しい者を惨たらしく殺されただろう人々を放って置けない理由もある。
尤も今のやちよも他人を深く気遣える程精神的に余裕がある訳では無いが。


679 : 前途多難のエンカウント ◆ytUSxp038U :2022/07/18(月) 14:56:36 dS15HAoc0
「後は…名簿って言ってたかしら」

支給されたタブレットを操作しても名簿は表示されなかったが、今なら見れるらしい。
予選通過、という言葉から恐らく何人かを振るい落としてから参加者を発表するつもりだったのか。
悪趣味極まりない黎斗の言動に嫌悪感を抱きつつ、名簿のアプリを起動。
表示された名前に目を通し、

「――――――え」

頭の中が真っ白になった。

知っている名はあった。それも複数。
記憶ミュージアムに行って以降姿を眩し、恐らくはマギウスの翼の一員となったフェリシア。
彼女がいるのに鶴乃とさながいないのは何故だろうか。
マギウスの里見灯花、名前だけしか知らないが同じくマギウスの柊ねむ。そして親友であり今は敵となったみふゆ。
彼女達が主催者ではなく参加者として殺し合いに関わっている。
と言う事は、マギウスの翼は今回の件には無関係。むしろ黎斗のゲームに巻き込まれたという点ではやちよと同じ被害者である。
考えねばならない事は幾つもあるのに、たった一つの名の前にはそれら全てが吹き飛んでしまう。

「い…ろは……」

振るえる声が紡ぎ出す三文字。
見間違いではない、見間違えるはずが無いあの娘の名前。
環いろは、そう名簿にはあった。
同姓同名の別人は有り得ない。
自分を含めて神浜市の魔法少女が複数人参加しているのだ、いろは本人が参加していると考える方が自然だろう。

そう、いろはがここにいる。

「あ……あぁ……!!」

安堵か、喜びか。
殺し合いに巻き込まれたのは全く喜ぶべきでないと分かっているのに、やちよの全身が歓喜で熱を帯びていく。
死んだりなんかしていないと、自分に何度も言い聞かせた。
それでも心のどこかでは思った、また自分の願いが犠牲者を生み出してしまったと。
だけど違う。いろはは生きていてくれたのだ。
死なないと、ずっと一緒にいるという約束を破らなかったのだ。


680 : 前途多難のエンカウント ◆ytUSxp038U :2022/07/18(月) 14:58:08 dS15HAoc0
何て事だろう、さっき頭を冷やしたばかりなのにもう熱くなっている。
だってしょうがないじゃないか、一番会いたかった少女の生存を知って落ち着いてなどいられない。
今すぐにでもいろはに会いたい。
会って無事な姿を見たい、声を聞きたい、抱きしめて生きてる事を確かめたい。

(待ってて、いろは……!)

突き動かされるままにやちよは駆け出す。
感情のみで行動するのは悪手と理解しているが、今の自分を止められそうには無かった。
ただいろはに会いたい一心で、脇目も振らずに足を動かし続ける。

そんなやちよを妨害するかの如く、或いは落ち着けとでも言うように現れるモンスター。
予選が終わっても会場に放たれたNPCは健在らしく、機械仕掛けの狼が複数体襲い掛かった。

「邪魔よ!」

短く吐き捨て魔法少女に変身。
グリーフシード確保の当ても無い状況では余計な戦闘を避けるべきだが、生憎素通りさせてもらえる状況ではない。
真正面から突っ込んで来るロボットの頭上へ跳躍、脳天目掛けて槍を突き刺す。
血かオイルか判断は付かないが液体を撒き散らし動かなくなる。
仲間の死への動揺はプログラムされていないようで、続く二匹目がやちよへ牙を剥く。
黎斗の説明通りNPCは出来る限り参加者を殺そうとはしない、急所は外して噛みつこうとする。
と言っても外面のみならず口の中まで機械化されている鋼鉄製の牙だ。ダメージは決して軽くない。

「フッ!」

だが向こうからわざわざ口を開けて来たなら好都合。
自分の柔肌を噛み千切られる前に、狼の口へと槍を突っ込む。
喉奥まで突き刺さった槍を横薙ぎに振るってやれば、勢い良く首がもげた。
このまま残りも一気に片付けるべく飛び掛かろうとし、しかし攻撃から回避へと転じざるを得なくなる。

「チッ!」

軽く舌打ちして飛び退くと、光弾が直前までいた場所へ殺到。
何時の間にやら新たなモンスターの集団がやちよを狙い、一斉に攻撃をしたのだ。
コンテナを背負った装甲服の男達。
紫の悪魔や機械の狼と違い人間のようだが、やはり首輪は着けていない。
一様に無言を貫き、構えた銃を向けて来る。


681 : 前途多難のエンカウント ◆ytUSxp038U :2022/07/18(月) 14:59:05 dS15HAoc0
「次から次へと…!」

いろはとの再会を邪魔するNPC達への苛立ちを抑えられない。
やちよの怒りなど知ったことではなく、ただ与えられた役目を全うすべく背後から狼が襲い掛かった。
今度は牙だけでない、先端が杭のように鋭利な二本の尾で刺し殺す気だ。
青い衣装に覆われたしなやかな肢体が赤く染まる、とはならなかった。
やちよの反撃を受けたからではなく、モンスター達にとって想定外の方向からの銃撃を食らった為である。

「っ…!」

またもや新手のモンスターかと、光弾を警戒しながら振り返る。
しかし視界に飛び込んで来たのは、彼女の予想とは違った存在。

『俺に任せて休んでても良いって言っただろォ?年上の言う事は素直に聞いとくもんだぜ?』
「お前だけに任せて安心できる要素が一つも無ぇんだよ。…こいつら、参加者じゃないよな?」
『難波の作った玩具よりは可愛気があるじゃねぇか。今度内海に会ったらこういうの作ってみるよう勧めてみるか?』
「…お前と会いたい奴なんて一人もいねぇから本気でやめろ」

男が二人いた。
と言っても外見からでは性別が判明しない為、声で判断したが。
赤と青による二色のと、宇宙服にも似た装甲服で全身を覆った二人組。
やけに馴れ馴れしい態度で接する片方を、もう片方が心底鬱陶しそうにあしらっている。
殺し合いとは不釣り合いの空気、つい呆気に取られるやちよに気付いたのかいないのか赤青の方が話を強引に切り替えた。

「とにかくこいつらを片付けるぞ」
『ハイハイ、相棒としてご期待に沿えるよう努力するぜ、っと』

片やドリルを片手に狼へ斬り掛かり、片やコンテナを背負った集団を撃ち殺していく。
正体不明の男達だが自分を狙う攻撃は一つも無いと理解したやちよもまた、近付いた狼の首を刎ねた。


682 : 前途多難のエンカウント ◆ytUSxp038U :2022/07/18(月) 15:00:00 dS15HAoc0



「大丈b「ごめんなさい、急いでるからこれだけを聞かせて」」

NPCの群れを倒し変身を解除した戦兎は思わず鼻白む。
こちらの言葉を遮り一方的に質問をしてくるのは、自分よりも年下の女。
少女と言うには大人びていて、大人と言うには少しだけ幼さも残している、そんな容姿。
戦兎の承諾を待たずして、彼女は焦るように言う。

「人を探してるの。いろはっていう女の子、会ってないかしら?」

切羽詰まった様子から、その少女を心配してるだろうことは戦兎にも分かった。
生憎こちらは彼女が望んでいる答えを持っていないのだが。

「いや、その娘には会ってない。俺達が会ったのは…」
「そう。なら行かせてもらうわ」
「ちょ、おい!」

自分の聞きたい情報以外に興味が無い、というよりは気を回す余裕が無いのだろうか。
会話を強引に打ち切り足早に去ろうとする女を、戦兎は慌てて制止する。
別にいろはという娘を探すのを妨害したいのではない。
ただ会場にはエボルに変身した者のように危険な参加者もいる。そういった危険人物の情報は共有しておくべきだろう。
加えて彼女自身についても気になる事があった。
さっきモンスターと戦っていた時の姿、仮面ライダーとは違う力を持つ彼女は何者なのか。
そもそも互いの名前すら教え合っていない。

「何かしら?急いでるんだけど」

ギロリという擬音が付きそうな瞳で睨まれる。
思わず小声で「恐っ」と漏らしながらも、怯まず言う。

「その娘を探すのを邪魔するつもりは無いよ。ただこっちでも何か力になれるかもしれないだろ?だからもうちょっと話を…」
「そこまで答える必要はないわ」
「えー……」

取り付く島もない様子に頭を抱える。
不機嫌と苛立ちのオーラは寝起きの美空といい勝負だ。


683 : 前途多難のエンカウント ◆ytUSxp038U :2022/07/18(月) 15:01:09 dS15HAoc0
「いろはってのは、環いろはのことか?」

どうすしたら話をする気になるのか悩む戦兎の思考を遮るように、ここまで黙っていた男が口を開いた。
戦兎と同じく変身を解き、今は石動惣一の姿に擬態しているエボルトだ。
口を挟んだエボルトへ驚きの視線が集まる。
確か戦兎が聞いた限りでは、エボルトが出会った参加者は自分とエボルに変身していた者の二人だけ。
いろはという名前は一度も出さなかったが、何故知っている素振りを見せるのか。
もしや自分に隠している情報があるのか?

「エボルト、お前そのいろはって娘を知ってるのか?」
「直接会った事はねぇさ。ただ――」

言葉の途中でエボルトに変化が起きた。
石動の姿が崩れ赤いスライムのようになったかと思えば、一瞬で別の人型を形作る。
桜色の頭髪に石動よりも低い身長、学校の制服らしきものを着た少女。
戦兎には知らない、だがもう一人には、やちよには忘れることなど出来ない姿がそこにあった。

「この嬢ちゃんで合ってるかぁ?」

声すらも変えたエボルトへ、反射的にやちよは掴みかかる。

「あなた…どうしていろはを知ってるの!?」

変身の固有魔法を使う水波レナを知っているのもあってか、姿を変えたこと自体にそう驚きは無い。
何故魔法少女ではない男がこのような力を持っているかは疑問だが、今は後回しだ。
それよりもこの男はいろはの姿へ変身した。
制服こそ神浜付属校ではなく、最初に自分と会った時に着ていた宝崎のもの。しかしそれ以外は記憶にあるいろはと全く同じ。
直接会った事は無いと言うがだったらどうしていろはの姿になれるのか。
険しい表情で詰め寄るやちよを嘲笑うかのように、エボルトは飄々とした態度を崩さない。

「そう怒るなって。そんなおっかない顔してちゃあ、この嬢ちゃんも恐がるだろ?」
「ふざけないで!あなた、いろはに何を…!」
「やれやれ、恐い恐い」

本物のいろはなら絶対に浮かべないだろう軽薄な笑み。
何時も自分達へ向けていた困ったような優しい顔とは違うソレが、余計にやちよの神経を逆撫でする。
掴みかかった手に籠る力が増していくのが自分でも分かり、抑える気も無く殺気立った瞳で睨みつけた。


684 : 前途多難のエンカウント ◆ytUSxp038U :2022/07/18(月) 15:02:37 dS15HAoc0
「いい加減にしろっての!」

一触即発の空気を霧散させたるべく、二人を無理矢理引き離す者がいた。

「エボルト!俺が話をするからお前は黙ってろ!」
「おいおい、話に参加させてももらえないってのか?流石にそれは傷つくぜぇ?相棒」
「五月蠅いよこの馬鹿!」

無駄に話をややこしくする地球外生命体の軽口をピシャリと黙らせる。
しょうがねぇなと言わんばかりに肩を竦める様に苛立つが、構っていたらキリが無いため無視。
改めてやちよと真正面から向き合う。
エボルトのせいで余計に会話が難しくなっただろう彼女へ口を開く。

「連れが馬鹿やったのは謝る。悪かった」
「……」

頭を下げてもやちよの険しい視線は変わらない。
尤も戦兎の方もこれしきで引き下がるつもりは無かった。

「あいつを信用できない気持ちは分かる。俺だって全然信用してねぇ。けどあんたの力になりたいのは本当だ」
「……」
「あいつには知ってること全部無理やりにでも吐かせる。だからもう少しだけ話してくれ。いろはって娘を探すのなら、こっちも何か手伝えるかもしれない」

射殺すようなやちよの視線と、それを真っ向から受け止める戦兎の瞳。
互いに目を逸らさずぶつけ合い、暫しの沈黙が訪れる。
今の言葉で相手が納得してくれたかは分からないが、戦兎には全て本心だ。
故に臆さず視線を返し、やちよの反応を待つ。

ややあって先に折れたのはやちよの方だった。

「……ごめんなさい。焦り過ぎていたわ」

俯きがちにか細い声で謝罪を口にする。
少々荒れたがどうにか分かって貰えたようで、ホッと安堵の息を吐く。
一歩下がった所では話をややこしくした元凶がヘラヘラと笑っていた。

「そんじゃあ落ち着いた所で、早速お話しといこうじゃねぇか。無駄に拗れるんじゃないかとヒヤヒヤしたよ」
「……お前ほんっといい加減にしろよ」
「……取り敢えずいろはの姿で喋るのをやめて」


685 : 前途多難のエンカウント ◆ytUSxp038U :2022/07/18(月) 15:03:26 dS15HAoc0



戦兎とやちよ、石動の姿へ戻ったエボルトの三人による情報交換は特に問題も無く行われた。
まず一番に知りたい内容、何故エボルトはいろはを知っていたのかだが、真実はそう複雑なものではない。
答え合わせのように戦兎とやちよへ一つの支給品を見せる。
それは写真。いろはが撮影された一枚の写真こそエボルトに支給された道具の一つ。
付属していた説明書にも「環いろはの写真」と書かれており、そこから名前と容姿を知ったのである。
いろはに何か危害を加えたのでないのには安堵したが、居場所を知る手掛かりにはならなかった。

「魔法少女、か…」

次に出し合った情報は互いの素性。
戦兎とエボルトは仮面ライダー、やちよは魔法少女というどちらも人間以上の力を持った存在。
黎斗や鎧武と呼ばれていた武者も確か仮面ライダーと言うらしいが、彼らとは姿がまるで違う。
これに関しては魔法少女と同じく、変身後の姿は千差万別と考えればそうおかしい話でもない。
ついでにこの時の説明でエボルトが人間ではなく、ブラッド族と呼ばれる地球外の種族だとも明かした。
尤も旧世界での因縁を一から十まで説明すると話が長くなり過ぎる為、簡潔に纏めて伝える。
以前は敵対していたが、殺し合いにおいては共闘している。と言っても信用したのではなく、あくまで監視する為に行動を共にしていると。
わざとらしく「冷たいねぇ」と目元を拭ったエボルトは無視。一々構っていては話が進まない。

「それで、桐生さん達の知り合いは全員信用して良いのね?」
「ああ。アイツらなら七海の力になってくれる筈だ」
「で、そっちはいろはって嬢ちゃん以外は警戒しておいた方が良い、ねぇ…」

万丈、一海、幻徳。
信頼できる仲間まで巻き込まれているのには良い気分とならないが、同じく心強さを覚えるのも事実。
きっと殺し合いを止める為に各々戦っているだろう。
それに仲間となってくれる仮面ライダーは万丈達だけではない。
宝生永夢。エニグマ事件の時に共闘した並行世界のライダー、エグゼイドもまた参加している。
黎斗が変身したライダーとエグゼイドは似通ったデザインをしていた。
もしかすると黎斗に関する情報を知っているのかもしれない。
万丈達と同じく、永夢ともなるべく早めに再会しておきたい所だ。

注意した方が良いのはエボルドライバーを持っている参加者。
変身前の姿は確認できていないので、エボルの容姿を伝えておいた。


686 : 前途多難のエンカウント ◆ytUSxp038U :2022/07/18(月) 15:04:57 dS15HAoc0
一方でやちよの方は敵となる人物が多い。
マギウスである灯花は言わずもがな、面識は無いが同じマギウスのねむとも相容れない可能性が非常に高い。
彼女達の部下となり、ウワサによる被害を容認しているみふゆにも警戒が必要だ。
フェリシアはマギウスの翼に入ったとはいえ、誰彼構わず傷つけるような少女ではない。
魔女を誰よりも憎んでいる彼女が魔法少女の真実を知らされたのだ、きっとそこを突かれてマギウスの翼に入るよう誘導されたのだろう。
とはいえマギウスと敵対しているやちよの立場を考えると、やはりある程度の警戒は必要。
みふゆもフェリシアも、本当だったら戦兎の仲間達のように信頼できると伝えたいのに。
そう口に出せない現状へ苦い想いとなった。

内心の暗い感情は面に出さず、グリーフシードを持っていないかを尋ねる。
魔法少女が魔力を回復するのに必要、とだけ伝えそれ以上は話さない。
信用に欠けるエボルトがいるのも理由の一つではあるが、やはり出会ってそう時間も経っていない相手にこちらの深い事情を説明するのは憚れる。
残念ながらどちらもそれらしい物は支給されていなかったが。
代わりと言うのもおかしな表現だが、エボルトからいろはの写真を譲渡された。
自分が持っていても仕方ないとのことで、このような信用出来ない危険人物の元にいろはの写真を置いておく理由も無い為素直に受け取る。

互いに粗方の情報を出し合い、そろそろ移動しようかとなる。
と言っても三人揃っての移動ではなく、二手に分かれてだ。
安全を優先するなら固まって行動するべき、しかしより多くの情報や参加者を効率的に集めるならバラけて動くべき。
今回彼らが取ったのは後者。エボルトの監視を投げ出す気が戦兎に無い以上、やちよは単独行動になる。
不安が無い訳ではないがやちよ本人が大丈夫だと良い切り、更にいろはを早く探しに行きたいだろう彼女をこれ以上足止めするのも気が引けた。

なので一度分かれて会場を探索、6時間後に再び集まる事を提案する。

「じゃあ俺達は西を探してみるから、そっちは頼んだ」
「ええ。…もしいろはとフェリシアを見つけたら、力になってあげて」

戦兎達に背を向け歩き出す。
一人になってからもやちよは考え続けていた。

(駄目ね…あんな風に焦ってばかりじゃ…)

主にエボルトのせいで心を乱されたものの、戦兎のおかげでどうにか頭を落ち着かせられた。
最初の一歩で躓く訳にはいかない。自分でそう思っておきながらあの醜態だ。
いろはに会いたい気持ちは健在だが、焦って取り返しの付かない失敗を犯すなど以ての外。
自分への呆れを大いに含んだため息を吐き、エボルトから譲渡された写真を見つめる。

「いろは……」

写真の中でいろはは優しく微笑んでいる。
隣には不自然な空白、きっと本来ならばここにはいろはの妹が写っていたのだろう。
この写真のような笑みを現実でも、みかづき荘の皆や妹と一緒に浮かべられる日が来るのだろうか。
そう考えて、ふいに自分自身がどうしようもなく間抜けに思えた。

(どの口が言うのかしらね…)

自分の願いのせいでいろは達が死ぬのを防ぐ為に、もう誰にも死んで欲しくないから、突き放したような態度を取った。
そのせいでみかづき荘には重苦しい雰囲気が立ち込め、いろは達から笑顔が消えた。
記憶ミュージアムに行こうとするいろは達を止め、自分の口から魔法少女の真実を伝えていたら。
もっと早くに彼女達と自分の願いに向き合っていたら、バラバラになる事だって無かったかもしれない。
後悔したって後の祭りだ。だからもうこれ以上後悔しない為に、今度こそいろはの手を掴み、フェリシア達をマギウスの元から取り戻す。


687 : 前途多難のエンカウント ◆ytUSxp038U :2022/07/18(月) 15:05:58 dS15HAoc0
そう決意したのに

《本当に諦めが悪いのね》

まただ。
またこの声が聞こえてくる。

《環いろはを死なせたくないなんて言っておいて、まだ関わろうとするの?》

聞く必要は無い。
こいつの言葉に耳を貸したって何にならない。
どれだけ自分に言い聞かせても、容赦なくやちよの心へ爪を立てる。

《折角生き延びたのにまたあなたが関わろとしたせいで、今度こそ死ぬかもね?》

《本当にあの娘や皆を死なせたくないなら、あなた自身がさっさと死んじゃえば良いじゃない》

《自分で死ぬ覚悟も決められない臆病者。そのくせ自分だけは環いろはに救われたい最低の偽善者》

「うるさいっ!!!」

これ以上は何も言うなと拒絶するように叫び、周囲を睨み付ける。
それだけで声はもう聞こえてこない。
それでもやちよには、この静寂もまた自分を責め立てるように感じられた。


【E-3/一日目/深夜】

【七海やちよ@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
[状態]:魔力消費(小)、精神疲労
[装備]:環いろはの写真@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3(確認済み、グリーフシードは無い)
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを止める。
1:東方面を探索。6時間後にE-4で桐生さん達と合流する。
2:いろはに会いたい。
3:マギウスの魔法少女達を警戒。一応フェリシアも。
4:グリーフシードを手に入れておきたい。
5:桐生さんはともかくエボルトは信用できない。
[備考]
※参戦時期はセカンドシーズン2話で黒江と遭遇する前。
※ドッペルが使用可能かどうかは後続の書き手に任せます。


688 : 前途多難のエンカウント ◆ytUSxp038U :2022/07/18(月) 15:07:36 dS15HAoc0
◆◆◆


「何はともあれ情報が手に入って良かったなぁ、おい」
「お前がいらねぇちょっかい出さなきゃ、もっと穏便に話が出来たんだよ」
「悪かったよ。あいつが俺の嫌いな女とやけに声が似てるもんだからつい、な」

ついじゃねぇんだよついじゃ。
腹立たしいスマイルで言っているが、下手をしたら余計に話が拗れていたかもしれない。
それをこの男は分かっているのだろうか。どうせ分かった上でやってるんだろうな。
こいつはそういう奴だと改めて思い知らされ、深くため息を吐いた。
それはそれとして、一つだけエボルトの言葉に納得がいく部分もある。

「ベルナージュにか?」
「その名前を出すなって。嫌〜な事まで思い出しちまうだろォ」

わざとらしく身体をさするエボルトへ冷めた視線をぶつける。
実際戦兎からしてもやちよの声はベルナージュに似ていると思う。
というかベルナージュ本人が憑依しているのを一瞬疑った程だ。
美空が付けていたバングルが無かったので、それは無いと思うが。

「所で、話は変わるが」

唐突に話題を変更するエボルトに、さして驚きもしない。
自分と相打ちに持ち込んだ火星の王妃の話を長々とはしたくないのだろう。
黙って続きを促す。

「あの黎斗って奴に正攻法で勝てると思うか?」
「……無理だろうな」

エボルトが何を言いたいのか察すると、答えを返す。
戦兎の出した結論と同意見らしく、特に反論する様子は無かった。

複数の重要な事実が明らかとなったが、殺し合いを潰す上で最も無視できないもの。
それは黎斗が参加者に装着された首輪の解除を、禁止する姿勢が見られなかったこと。
むしろあの男はこう言ったのだ、自分を倒すにはその時点で首輪を解除しなくてはならない。そして黎斗自身に挑む事を新ルールとして提示してみせた。
つまり黎斗にとっては参加者の首輪解除すらゲームの一環に過ぎない。

首輪の役目とは本田のように主催者への反抗を封じる為の装置と、最初は思っていた。
だが黎斗は参加者が自分達に、ゲームの運営へ逆らうのを良しとしている。むしろ歓迎すらしているではないか。
考えてみれば、首輪解除を恐れるなら戦兎のような機械に強い人物を参加させている時点でまずおかしい。
首輪を外されても黎斗には何の痛手にもならないからこそ、戦兎の参加を認めているのだろう。


689 : 前途多難のエンカウント ◆ytUSxp038U :2022/07/18(月) 15:09:25 dS15HAoc0
参加者の反抗を抑制する首輪が解除されても問題無い、首輪が無くとも参加者を返り討ちに出来る力を黎斗は手にしている。
実際、戦兎とエボルトから見ても黎斗が変身した仮面ライダーの強さ、というより異常さは映像越しでも理解できた。
そもそもエボルトを参加させ、手元に無いがエボルドライバーを支給品にしているくらいだ。
仮面ライダーエボルが相手だろうと敵では無いと見ている証拠。
ここにあるかは不明だがエボルトリガーを使ったとしても、実際に戦ってみなくてはどうなるか分からない。
いや、もしエボルトリガーまであったらそれこそ状況は最悪だ。
何せそれはブラックホールフォームのエボルが相手だろうと、黎斗には問題にならないという事なのだから。

ではそんな黎斗を攻略する為の手は果たしてあるのか。
一つだけ戦兎には思い当たる節がある。

「あいつを倒すにはデュエルってのが重要な鍵になると思う」
「確か…デモンストレーションをしてたカードゲームか?」

戦兎が注視したのはデュエルに関する新ルール。
デュエルディスクとデッキを所持している参加者の支給品は没収するというもの。
テストプレイで思った以上に強力な支給品だと分かった為、急遽パワーバランスを調整する為らしい。
だが本番前に慌ててこういったルールを付け加えるとは即ち、黎斗自身もデュエルに関しては未だ未知数な部分があるからではないのか。
もし黎斗を倒すなら仮面ライダーの力だけではない、奴にとっても全てを把握し切れていない可能性のあるデュエルで裏をかく事こそ勝利に繋がるのでは?

「って言ってもな、俺にもお前にもそのディスクだのデッキだのは寄越されなかっただろ?」
「ああ、だからデュエルに詳しい知識を持つ参加者。決闘者(デュエリスト)とも協力が必要になる」

ビルドドライバーやトランスチームガンは変わらず自分達の手元にある。
新ルールであるデッキとデュエルディスク以外の支給品が没収されてないのは、二人にはデッキが支給されていない証拠。
使い慣れた武装を奪われずに済んだのは良いが、これだけでは黎斗に勝てる見込みも薄い。
デュエリストと呼ばれる者達との協力は必要だろう。
同じく必要不可欠なものとしては、やはり首輪の解除。
これを着けている限り、主催者達とは同じ土俵に上がる事すらほぼ不可能と言っても過言ではない。
ゲームの一環として首輪解除が存在するのなら、解除不可能な設計にはなっていない筈だ。

やるべき事は多いが、全て殺し合いを止める為には欠かせない。
まずは6時間後のやちよとの合流に向けて、西方面の探索だ。

「にしてもホッとしたぜ」

いざ出発の段階で急に出鼻を挫かれる。
何だと思い同行者を見てやれば、皮肉気な笑みを浮かべている。
またもやロクでも無い事を言う気なのは明らかだった。


690 : 前途多難のエンカウント ◆ytUSxp038U :2022/07/18(月) 15:10:53 dS15HAoc0
「あの放送で取り乱すようなら、あんまし先には期待できそうも無いからなぁ?」
「……」

巨大モニターに映し出された数々を見せつけられ、それでも戦兎は冷静に情報を整理しようと努めた。
もし何も知らない人間がその時の様子を見たら、何て冷静沈着な男だろうと感心するかもしれない。
若しくは人が死んだのにそんな冷静でいられるのかと、軽蔑するかもしれない。
だがエボルトには分かっていた。
ある意味では誰よりも桐生戦兎という人間(ヒーロー)を理解しているからこそ、分かったのだ。

あんなものを見せつけられて、何も想わない筈が無いだろう。
怒りを、後悔を、悲しみを抱かないなんて、そんな馬鹿な話があるものか。
人の死を単なるゲームとして片付けられた。
条河麻耶が必死の抵抗を踏み躙られ、命を散らした。
アユミが余りにも理不尽なルールの代償を肩代わりさせられた。
運試しという名目で名も知らぬ参加者が呆気なく殺された。
囚われた少女が幼い肉体を鎖で繋がれていた。

その全てを戦兎は見ている事以外、何も出来なかった。
何も、何一つとして。

それでも、諦める理由にはならない。
諦めだけは許されないと、そう教えてくれた男がいたのだから。

葛葉紘汰。仮面ライダー鎧武。
共に最上の野望を阻止した戦士。
彼の存在は、例え強力な仮面ライダーであっても檀黎斗には手も足も出ない事実を知らしめる絶望という役割を果たしたのか。
違うと、戦兎はそんなことは絶対にないと断言する。
確かに紘汰の死は堪えた。戦友である男が余りにも呆気なく殺され、ショックを受けなかったと言えば嘘になる。

だけど紘汰は自分の死に悲観するのでも、後悔を口にしたのでもない。
託したのだ。彼にとっての戦友に、同じく殺し合いを止めるべく奔走する者達に。
仮面ライダーである戦兎達に。

「させねぇよ」

紘汰の死を、あくまでルール違反の一環としか見ていない運営陣へ。
無駄死にと嘲笑うだろう者達へ、告げる。

「無駄だなんて、俺達が言わせない」

紘汰は命を落とした。それは覆せない。
だが紘汰の言葉は、意思は消えていない。消させない。

ここからは彼らのステージだ。
仮面ライダービルド、桐生戦兎の戦いを始めよう。


691 : 前途多難のエンカウント ◆ytUSxp038U :2022/07/18(月) 15:11:48 dS15HAoc0
【E-3/一日目/深夜】

【桐生戦兎@仮面ライダービルド】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)
[装備]:ビルドドライバー+フルボトル(ラビット、タンク)@仮面ライダービルド、ドリルクラッシャー@仮面ライダービルド
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜1(確認済み、フルボトルは無い)
[思考・状況]
基本方針:ハ・デスを倒し殺し合いを終わらせる。
1:西方面を探索。6時間後にE-4で七海と合流する。
2:監視も兼ねてエボルトと共闘する。信用した訳じゃねぇからな
3:首輪を解除する為に工具を探す。
4:万丈達やエグゼイドを探す。エグゼイドは檀黎斗を知っているのかもしれない。
5:環いろはをこっちでも探してみる。
6:デュエリストにも接触しておきたい。
[備考]
※参戦時期は『ビルド NEW WORLD 仮面ライダークローズ』以降。

【エボルト@仮面ライダービルド】
[状態]:健康、石動惣一に擬態中
[装備]:トランスチームガン+コブラロストフルボトル@仮面ライダービルド
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜1
[思考・状況]
基本方針:生存優先。あわよくば未知の技術やハ・デスの持つ力を手に入れる。
1:西方面を探索。6時間後にE-4でやちよと合流する。
2:戦兎と共闘しつつどこまで足掻くのか楽しむ。仲良くやろうぜ?
3:エボルドライバーを取り戻す。元は内海の?知らねぇなァ。
4:正攻法じゃあ檀黎斗を倒すのは難しいか。
5:やちよの声はどうにも苦手。まぁ次に会えたら仲良くしてやるさ。
[備考]
※参戦時期は『ビルド NEW WORLD 仮面ライダークローズ』で地球を去った後。
※環いろはの姿を写真で確認した為、いろはに擬態可能となりました。

【環いろはの写真@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
環いろはが妹の環ういと一緒に写った写真。
ういの存在が柊ねむの記憶以外から切り離された影響で、本来ういが写っていた部分に不自然な空白が生まれている。

『NPC紹介』

【ギガテックウルフ@遊戯王OCG】
通常モンスター
星4/炎属性/機械族/攻1200/守1400
全身が鋼鉄でできたオオカミ。
鋭くとがったキバでかみついてくる。

【科学特殊兵】
通常モンスター
星3/闇属性/戦士族/攻 800/守 800
未知の生物に対抗するため、最新の科学兵器を装備した兵士。
背中のコンテナにはさまざまな兵器が収納されている。


692 : ◆ytUSxp038U :2022/07/18(月) 15:12:23 dS15HAoc0
投下終了です。


693 : ◆2dNHP51a3Y :2022/07/18(月) 18:05:05 QdmlZkJY0
投下します


694 : 妖星絢爛 ◆2dNHP51a3Y :2022/07/18(月) 18:05:43 QdmlZkJY0
「……ふむふむ。なるほど、そういう催しと、な。」

陰陽師は嗤う。決闘舞台の神を名乗る創造主の存在と、この決闘が目指す方向性に。

「ええ、ええ! 求むるは札遊戯と言う生温い児戯でなく、屍山血河舞い散る決闘と言う名の殺し合い! クロトなる、神を騙る支配者よ、このリンボもその考えには賛同させてございまするぞ!」

元・異星の神が使徒の一柱、キャスターリンボ。その役割は狂言回し。
惑わし、欺き、騙り、惨劇を起こす事こそこの悪なる陰陽師の在り方。
故にカードバトルという遊戯ではなく、明確な殺し合いという決闘を優先させた檀黎斗の考えは、斯くもリンボにとって愉快な催しであることは周知の事実であろう。

「お前の狂言回しはどうでもいいが、あれは油断ならないぞ。」

対して、冷静に思考を定めるのは悪霊・最上啓示。
檀黎斗という男がどういう人物かなど、最上啓示にはどうでもいい事だ。
ただ、自分という悪霊を連れ去りこんなくだらない事に巻き込んだその実力だけは評価せざる得ない。
しかもご丁寧にこの身体、浅桐美乃莉から出れないようにした上で。

「それはわかっておりまする。元より異星の神との接続は切れているのを考慮してでも。ですが、使えなくなった生活続命の法が制約付きとは言え機能を回復できたのは功名でございまする。」

もちろん、リンボもまた制約がかかっている。少なくとも使徒として振る舞っていた時よりは出力は大幅に落ちているだろう。
だが、逆に使えるようになったものもある。「生活続命の法」と呼ばれる、式神に己の存在を転写する術式。
オリュンポスにてクリプターであるスカンジナビア・ペペロンチーノに封じられていたそれは、この殺し合いにおいては、ある程度の制約を置いて再び使えるようにはなったのだ。
他参加者と一定以上離れてはならない、分身の性能は本体より格段に落ちる等。それでも式神との情報共有が出来るという一点においてはこのリンボは他の参加者よりも一線を画す存在であることは確か。

「ですので、もしもの時はお任せを。」
「勝手にしろ。」

リンボの態度に、最上は軽くあしらうだけ。
勝手にこっちに興味を示してるだけで、いつ気変わりするか分からない不気味な存在。
格下ならともかく、自分より格上の悪霊であるかもしれないので尚更たちが悪い。
自分の行為が悪霊を呼び寄せることは多々あったが、ここまで厄介なのを引き寄せる程、業を背負った覚えはない。

(……まあ、精々利用させてもらおうか。)

が、実力こそは自分でも認めざる得ない程。
幸か不幸か自分のことを気に入っているという方針。
どうせ他人を他人とも思わない男だろう、精々ボロ雑巾になるまで利用させて貰うことにしよう。

「それで、あの子供はどうする?」
「……ああ、良子殿の事でしょうか?」

最上の言葉にリンボも横目を向ければ、虚空の眼でタブレットを見つめる吉田良子の姿。
心ここにあらずな静寂さであるが、その顔は明らかな笑みが浮かんでいた。

「いたんだ、お姉。それに桃さんやミカンさんまでいるし、お母さんもいた。」
「ほう。……その言い振りでは家族の方も参加させられていると察せられますが。……いえいえ、貴方様が望まぬ限りは」
「ああ、気にしないで。お姉やお母さんはこういうの嫌いそうだし、桃さんやミカンさんは魔法少女だからさ。」

歪められたとは言え、家族や友人たちに対する理解は変化しては居ない。
どちらも大切な誰かである。故に、歪められた価値観から導き出される答えは一つ。


695 : 妖星絢爛 ◆2dNHP51a3Y :2022/07/18(月) 18:06:00 QdmlZkJY0
「……聞き分けがないなら、リンボさんがどうにかしてくれそうだし。」
「ンンンンン! 何だか問題を丸投げされたような気がしますが、それはそれとして遊びがいがありますなぁ!」
「……はぁ。」

最上は思わず呆れのため息。歪められたのなら別段彼女が変な方向に軸が定まってしまったのはどうと言うか。
吉田良子にとって家族も親友も「大切」にはカウントこそされているものの、それはそれ、これはこれ。
邪魔をするなら容赦しないし、どうせ殺しても蘇らせさえすればいい。結果わりかし無茶振り投げられたリンボが笑っているが等のリンボは特段困ったわけではない様子。

「……私はてっきり「殺すな」なんて言われるとは思っていたのだがな。」
「そこは気にしていません。決闘っていう、殺し合いですから。私がお姉の為に殺し合いに乗るんだから、お姉が反発しても仕方のないことだから!」

正直な話、最上としては良子の変貌はつまらない話としては片付けられは出来ない。
最上が世直しを志すきっかけとなった母親の死。それは自らが母のためにと思って為した行動が、母を悪霊へと変えた結果へと繋がったからこその顛末。
吉田良子のそれは自分の時よりもたちの悪い悪夢だ。悪意ある悪霊により齎された三流の悲劇だ。
だが、それがどうしたというのが最上啓示。多少思うところはあれど、それが自分の方針に影響を及ぼす訳では無い。

「……と、まあ。拙僧の術に何ら問題ないとして。」
「それでも支給品込みだろう。」
「まあそうですが。――――とまぁ、余計なお喋りはこれまでにして。」

陽気に言葉を連連と吐き出していたリンボの声色が多少真面目なものとなる。
余計なお喋りをしまくっていたのはお前だろうという最上のツッコミじみた目線を無視して。

「これはまた愉快なご客人が来たようで。」
「……だったらどうする?」

リンボがすでに気づいている。この場所に近づいているであろう誰かの気配を。
それは最上も当然。哀れな羊か獰猛な野獣かはどっちの類かは直接顔を見ないとわからないわけだが。

「落ち着きなされ最上殿。ここは拙僧に全てお任せを。……お相手の方も戦闘の方は避けたいご様子ですので。」
「……?」
「先程彼女を変貌させた最中に、拙僧の式を少々見回りに回させてもらいました。」
「……なるほどな。」

手が早い、と内心呆れも含めながらも、その用意周到さに思わず感心する。
間違いなくこのリンボという男は能力者としても、悪霊としても一流だと改めて認識せざる得なかった。
人の預かり知らぬ所で交渉を仕掛けて、相手を手玉に取ろうとする。
しかもその上でこの男の都合のいいように事が運ばせんと。

「……えーっと、敵じゃないって事?」
「今のところは、話に乗る気ではある、ということで御座いますな。フフフ……。」

良子の疑問に、さも必然と言わんばかりにリンボが口を喜びに歪ませ告げる。
その表情は、最上からすれば「碌なことではない」ということだけは確かである。

「――どうやら、話が決まったようでございますよ。ンンンンン!!」

ふと思い出したかのように言葉を発したリンボの顔は、醜悪な笑みを見せびらかしながら、高らかに笑うのであった。


696 : 妖星絢爛 ◆2dNHP51a3Y :2022/07/18(月) 18:06:19 QdmlZkJY0


そういう事態は念頭に置いていたはずだった。

その可能性は考慮していたはずだった。

「……いるのですね。いろはお姉さまも。」


柊ねむはいい。自分と同じ思想、同じ考えを持って動くだろう。出来れば合流したい所。

深月フェリシア、七海やちよ、梓みふゆの三人はまだいい。あの時のように敵対するなら返り討ちにしれやれば良いのだから。邪魔をするのならそれこそ今度こそ再起不能ぐらいにまですればいい。最悪、殺すことも厭わない。その前に、みふゆには色々と問い詰めたいことはあるけれど。

だけど。

「どうして、呼ばれてしまったのですか。」

考えれば分かること。
自分たち魔法少女を、ある程度「環いろは」と「七海やちよ」を主軸として考えて呼んだのならば。
自分が「環いろは」を主軸に呼ばれた内の一人だとすれば、道理は付く。
そして、考える必要もなく結論は出ている、環いろはという人物はこの殺し合いへの叛逆を望むだろう。
自分たちを止めようとした時のように、例え自分がどれだけ傷つこうが。
でも、例え環いろはが、お姉さまが呼ばれたのを知ったとしても、自分とねむのやることは変わることはない。魔法少女の救済。ただそのために。

「でも、未だ、会いたくはなかったな。」

今の自分の顔はわからないだろうけれど、とても酷い顔なんじゃないかな、と思った。
だけど止まれないのだ、どれだけ殺して、どれだけこの手を血に染めて。
そんな自分とねむを受け入れてくれようとしたお姉さまに、今だけはこんな酷い顔は見せたくないとは思ってしまった。

「……でも、しょうが無いよね。だって私たちは、それでもやらないと行けないから。魔法少女の救済、裾の全てを。」

今更止まる訳にはいかない。この殺し合いを、決闘を勝ち抜いて、救済を果たす。
全ての魔法少女を救う。救って、環いろはを、いろはお姉さまを――――









「何やら、お悩みのようで?」

汚泥が、人の形を為して、そこに聳え立っていた。

「……え?」

信じられないことに、気配は全く感じられなかった。
魔力のようなものすらも、察知できなかった。
死臭漂う蕨の如き長身の男。その衣装は察するに平安時代の頃か。
屍の腐った匂い、乾いた骸が言葉を発し、黒い眼が自分を見つめて、会話を交わそうとしている。

「……誰?」

何者かは知らないが、敵であるなら不運だろう。自分としても、相手としても。
念には念を押して背後には召喚したモンスターたちを配置している。
下手な動きを見せれば餌になるのは相手の方。
だが、そんな自分を嘲笑うかのように、"それ"は続けざまに言葉を紡ごうとしている。

「いやはや、魔法少女の救済。大まかな内容は分からぬも、幼子の身としては大層な願望をお持ちで。このリンボ、素直に称賛いたしますぞ。」
「あなたみたいなおじさんに褒められた所で何も嬉しくはないんだけどな〜。あと、知りすぎは良くないってこと、今から教えてあげても良いんだけれど?」
「それは困りますなぁ。今の拙僧、非力ですので。ですが小娘程度撚るには訳はないのですが、ねぇ?」
「そっちこそ、只の子ども扱いで舐めてたら怪我だけじゃすまないんじゃない?」
「それも一理ありますなぁ。」

警戒なテンポで奏でられる言葉の応酬。リンボと名乗ったこの長身男。余りにも不気味過ぎる。
魔法少女でなければ魔女でもない、誰かのドッペルというわけではない。いや、見た目はある意味ドッペルっぽいとは思わなくはないが。

「ですが拙僧、別に戦いに来たわけでもなく、言い換えればちょっかいを掛けに来た。と月並みな言葉ではありますがそういうわけでありまして。」
「……へぇ。だったら何なのかな?」

戦いに来たわけではない。
その言葉を完全に信用する訳では無いが、自分の立場をちゃんとした上でその発言をしたのならば命知らずのおバカさんなのか、それとも――。

「一応、話ぐらいは聞いてあげるよ。殺すのはその後にでも考えさせてもらおうかな?」

もちろん、この言葉で何かしら利になる情報を引き出せればそれでよし。
はっきり言って、こいつは殺した方がいい。
間違いなく、自分やねむどころかいろはお姉さまの害になるであろうこの男は。


697 : 妖星絢爛 ◆2dNHP51a3Y :2022/07/18(月) 18:07:27 QdmlZkJY0
「では、素人ながらご質問を。―――先程名前を出していたであろう、いろはという誰か。どうして殺してしまわない?」
「――――――――――。」

この一言で、冷静さ全部が吹き飛びそうだった。
恐ろしくふざけた雑言をこの死体のような男の口から出た。
天がひっくり返っても絶対にしないであろう事を、尋ねてきた。

「ねぇ、聞いても良いことと悪いこと、わかってて言ってるんだよね?」
「ンン、聞き方が悪かったようで。魔法少女の救済とやらと、いろはとやらの生存は、両立しなくてもいいのでは。と拙僧は思ったぐらいですが。」

今すぐにでも背後のモンスターで襲わせたい所だった。
だが、そんな事をリンボが予想出来ていないはずもない。
間違いなく意図的に、わざとこんな発言をした、どんな意図を以てかわからないのに。
私の本心を、まるで簡単に探り当てたかのように、リンボという男は口元を歪めているのだから。

「全体像は図りかねますが、拙僧の憶測からすれば、魔法少女の救済やらのため。まあ大凡ハ・デスから何かしらの手段で反抗やら、でしょうか。その正確では誰かに従って優勝するという手段は取るようには思えませんからなぁ。」

リンボの憶測は大体会っている。優勝するのではなく、ハ・デスの力を奪う。そのための手段の模索。
まるで頭の中を読まれているような、思考を蛆虫に啜られているような気持ち悪さが、悪寒と言う形で全身を苛んでいる。

「勿論、隠れ見させてもらいましたが、名簿には宿敵や盟友、大切と思う誰かはいるようで。そしてその中で貴方にとっての重要視なのが、先程口に出ていたであろういろはという誰か。」

嫌というほどに、見透かされていた。
自分が手段を選ばない人間であることを理解した上での、その口ぶり。
本当に苛立ってくる。他人の思考を掻き乱すだけなら、アリナ以上の逸材だろう。

「では。既にいろは殿が、既に救われている、ならば?」
「――えっ?」

思わず、声が、出た。
お姉さまが、既に、救われている?
冷静に考えればそうだ、自分は蘇ったというが、いろはが自分の知っている環いろはお姉さまのままである、という確証はない。
まだ魔法少女じゃない頃? 
それとも魔法少女として戦い続けた修羅の末路?
もしくは、既に環いろはという人物が、救われた後だというのなら。

「そんな、戯言で、私を惑わせようなんて。」
「そういう貴方様の口元は震えているようで? おやおや、図星でしたか?」
「黙って。お前にいろはお姉さまの何が分かるっていうの?」

戯言だと、切り捨てたかった。でも、頭から離れない。
自分の知らない所で、いろはが救われたなんて、分かるわけがない。
少なくとも、「自分の頭の中で考えたルート」の中では、思いつかない。

「ええ、分かるはずがないですなぁ。儂は貴方の言葉の断片を繋ぎ合わせて予測を立てただけですので。ですが、救済の方向性など当人次第でしかありませぬ。」

冷静な思考が出来ない。この男の言葉一つ一つが頭の中を掻き乱す。
そうだ、所詮この男の憶測だ、勝手な妄想で自分を惑わせようとする――、狂人の、ただの、妄言――

「ですので、もし貴方が真の魔法少女の救済を望むのであれば、既に救われたいろは殿を、救う必要など、全くありませぬ、なぁ―――ンンンンン!」


698 : 妖星絢爛 ◆2dNHP51a3Y :2022/07/18(月) 18:07:44 QdmlZkJY0



「―――違う!!!!」

いやはや、煽り過ぎましたか、それとも、それが彼女の瑕疵だったのやら。
この小娘、ついに冷静さをかなぐり捨てて叫んでしまったようでございますなぁ。
それこそ弄りがいがあるというもの、とってもこの拙僧はただの式。背後にいる獰猛なのを相手取るには実力不足。
と、まあ。軽く推測で誘導しましたが、それだけでも濃厚な甘味。愛しき人を救うため、魔法少女を救うため。ですが、今の彼女は下手に選択肢を得てしまったがゆえに、ノイズが生じておりますると。

「私はいろはお姉さまを救うために魔法少女になった。ねむやういならまだしも、それ以外の魔法少女なんて本当はどうでもいいのよ! 私は、私がお姉さまが、お姉さまの笑顔が、お姉さまの優しさを……ううん。私は、お姉さまを助けたかった、魔法少女という呪いから救い出すために!」

感情的に叫ぶ小娘の姿はさぞ滑稽で、さぞ陳腐な見世物。
少々危ない橋を渡って遊んだかいがあるというもの。拙僧これには中々に満足。

「ええ。素直でよろしいですな。つまり、いろは殿さえ救えればどうでもいいと?」
「――! そ、それは……いや、でも私はお姉さまの為に。」
「今更血に汚れた手のままで日和ると?」
「違う、違う違う違う。私はそんな事で戸惑うはずがない! だって私は――。」
「いろは殿を、救いたいのであろう? 救うという行為というのは、誰かを切り捨てるという行為であるのと同義であることを、一番理解しているのは、貴方様ではなかろうか?」

どう賢く繕っても、結局は、家族、親友。いやはや、親愛の情というのにはこのリンボも辛酸を嘗められた経歴がある故、その重みも理解しているのです。
ええ、魔法少女全ての救済とやらは賞賛しますが、このリンボからすれば夢物語。平安の世、飢饉に苦しむ衆生が念仏を唱えて何になったのやら、それが合理的な救済であったとしても、取り零すものは必ず出るのです。あやつですら、すべてを救うというのは不可能であるがゆえ。
誰か一人で救われてしまう世界の在り方など、それこそ滅びたほうが末の為。

「……私は、お姉さまを、救わないと。そう、魔法少女の救済じゃない。私はお姉さまを救いたかった。」
「それが、貴方の本心、と?」

だいぶ、焦燥しておられますな。まあ、拙僧がそこはかとなく誘導させてもらいましたが。
聡明でありましたが、一度でも瑕疵を掴んでしまえばこの通り。
人間の心など、思う以上に、脆いのですから、なぁ?

「……私は取り戻したかった。ねむと、ういと、お姉さまとの日常を、そんな小さな世界で、小さな箱庭で平和に過ごすことだけが……だけ、が……?」

ですが、それだけでは少々味気ない。という訳でこのリンボ、洗脳とは違う形での下拵えをさせてもらう、ということで。
彼女のおでこに手のひらをかざし、軽く呪(しゅ)を一詠唱。
まあ、式ですので、大したことは出来ないのですが。さっきのも簡単な暗示の術程度。
最も、今の彼女には、敢えてこういう手種の方が、効果的ではありますが。
軽く馴染んだのを確認できれば、ここで一言。

「それに、貴方が奪えば良いのです。いろは殿の心を。貴方のモノにしてしまえば、いいのです。」
「……私の、もの、に? お姉さま、を?」
「ええ、貴方だけの、モノに。」
「……私だけの、お姉さま。……それ、は。――――――――。」

ふむ。まあ軽い暗示程度故。効果的ではありますが、まだ迷いはある模様。
ですが果報は寝て待て。拙僧が彼女に望んでいる役割は、もっと別のもの、なのですから。

「……まだ決断できないのであれば、少しばかり情報交換と致したい所。拙僧の本体が、背後で待っておりますので。まずは我らと会話してからでも、方針を決めるのは悪くないかと。」
「…………。」
「それに、背後に待たせております貴方の眷属。今のままでは物騒なので、下がらせてもらえると助かります。」

では、最上殿と交えて、少しばかりの小休止としましょう。


699 : 妖星絢爛 ◆2dNHP51a3Y :2022/07/18(月) 18:08:00 QdmlZkJY0
◆ ◆ ◆

「灯花ちゃんもお姉の為に頑張ってるんだね!」
「……お姉さまとは血の繋りは無いけれど、私には何ら変わりない、たった一人のお姉さまなんだ。」

「――という顛末で御座いまする。」
「色々と言いたいことはあるが、掻い摘めば手駒を一人手に入れた、ということでいいのか?」

直ぐ真隣、楽しく談笑しているであろう良子と灯花を他所に、リンボは式神による経緯を最上に向けて説明。
様々なことを省いて結論づけるなら、手駒を一人手に入れた、というのが最上としての認識であるが、実際は複雑である。

「まあそう、とは少々違いまして。拙僧が施したのは導火線を植え付けた程度で。」
「……火元はどうする?」
「火元など必要ありませぬ。どう転んでも、勝手に……フフフフフ。」

大凡理解した、とは言い難いが、あの里見灯花という小娘を危うい状態に敢えてした、というのがリンボの今回の手種らしい。
リンボの提案による灯花を交えた情報交換は功を奏し、最上自身も異世界の常識、吉田良子とは違う魔法少女のシステムのことを聞き出すことが出来た。
そして、反吐が出た。宇宙の救済を肩代わりに、たった1つの願いを対価に酷使され続ける。よくもまあ吐き気のする醜悪な維持システム。
自分の願いのためといいながら、結局はインキュベーターという他人の都合に利用され続ける。しかもそれが宇宙のためだというのだから尚更たちが悪い。
やはり世直しが必要だと、最上は心のなかで改めて思う。
ちなみにリンボの式神とやらは、眼鏡の小娘の死体から首輪及びデイパックを回収しに行ったらしい。リンボの反応からして、滞りなく済んだようで。

「……まあいい。私のやることは何も変わらない。それに使える駒が増えることに異論はない。あの二人の手綱はお前に任せておく。」
「では、灯花殿の側には拙僧の式を付き纏わせておきます故。」

情報交換の結果として。灯花は此方側に直接同行するつもりはないようである。
当人としても同行者が増えることに異論はなかったようであるが(良子に対する第一印象も良いものではあった)、「ついてくるなら一人だけの方が色々と小回りが効く」とは灯花の言。
リンボの式は、自律行動という一点に置いて殺し合いの舞台においては情報収集面で強力無比なもの。
勿論制約としては、参加者から5メートル以上は離れられないとか、本体に比べてだいぶ弱体化しているとか、消滅後の再召喚に6時間のインターバルを挟む必要があるだとかだが。


700 : 妖星絢爛 ◆2dNHP51a3Y :2022/07/18(月) 18:08:21 QdmlZkJY0
なのでリンボは灯花に対し自分の式神を付き従わせる事にした。
戦力としては心細いとしても、情報収集や搦め手担当しては優秀であるから。
ちなみに小倉しおんのデイパックは式神の方、首輪の方は此方で保有することに

「灯花ちゃ〜ん、ねむさんやいろはさんと出会えると良いね〜!」
「良子さんも、そのシャミ子さんと言う人と再開できる事を願っております。」

式神と共に街を出る灯花を、年相応に手を降って見送る良子。
まるでリンボに狂わされた影響など残っていないような振る舞いであるが、振り返り最上に視線を向ければその眼は乾いた虚空の闇そのもの。

「それじゃあ、私達も行きましょう。私もお姉ちゃんを探したいから。」
「………。」
「ンンン――♪」

三者三様に反応は違えど、彼らはこの殺し合いの舞台における災害の一つ。魂を歪め、心を蹂躙する。
美しき獣は嘲笑い、魔族の妹は狂気のままに姉を求め、そして悪霊は、ただ一人思索する。
里見灯花の去り際に言い放った言葉を思い返すとともに。
あの女もまた、誰かの為にと利用され続けた被害者であることを、ほんの少し哀れだと思うのだった。


【G-6/1日目/深夜】
【キャスター・リンボ@Fate/Grand order】
[状態]:健康、上機嫌
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2、RUM-バリアンズ・フォース@遊戯王ZEXALシリーズ、小倉しおんの首輪
[思考]
基本:ただ、己の衝動と欲望の赴くままに
1:最上啓示、悪霊の集合体であろうかの御方の行く末、見届けて差し上げましょう
2:吉田良子、どう利用してやりましょうか……ンンンンン
3:里見灯花、まあそちらは式神の方に任せておきましょう
[備考]
※参戦時期は地獄界曼荼羅、退場後

【吉田良子@まちカドまぞく】
[状態]:疑似英霊剣豪化?
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:姉とこのひと(リンボ)のためにみんなころす
1:出来ればお姉を探したい。お母さんや桃さん、ミカンさんも同じく。その後は――?
2:灯花ちゃん、ちゃんとねむちゃんやいろはちゃんと会えるといいね
[備考]
※リンボの術式とバリアンズ・フォースの影響で、擬似的な英霊剣豪の様なものとなっております。
英霊剣豪特有の不死性は存在しませんが、バリアンズ・フォースの影響もあって身体能力その他が強化されております。もしかしたら魔術等を使用できるかも知れません。

【最上啓示@モブサイコ100】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:世界の『世直し』を為す。
1:リンボはいい具合に手綱を握って利用する。裏切るなら殺す。
2:あの娘(良子)は哀れであるが、別にどうでもいい。
3:里見灯花、同じくあの女も哀れだだ。
[備考]
※参戦時期はモブ達と出会う前。
※ボディは浅桐美乃莉のものです。ボディの入れ替えは不可能となっております。


701 : 妖星絢爛 ◆2dNHP51a3Y :2022/07/18(月) 18:08:39 QdmlZkJY0
◆ ◆ ◆





『「誰かのために」などという言葉で動くのは止め給え。自分の為だけにその力を使うが良い。先達者からの助言だ』





◆ ◆ ◆

「………。」
「おや、どうしましたか灯花殿?」
「なんでも、ない。」

去り際に、最上啓示が告げたある助言。
その言葉を、理解していないわけではない。
マギウスの翼、その構成員。それは、余りにも弱すぎた。
弱すぎたがゆえに、それらの声を聞きすぎて、里見灯花は狂った。
中身のない、救いと言う名の行動原理だけが、かつて記憶を取り戻す前の彼女に宿ってしまった。

(言われなくても、私にはわかってる。)

このリンボという陰陽師、信用はならないが有能なのは認めざる得ない。
辺獄の名を関する男。天国も地獄も行けない死者が放り込まれるのが辺獄というらしい。
ならば自分も、もしかしたら辺獄に行くのではないか、と灯花は思ってしまう。
ならば、このリンボも利用する。全ては魔法少女を、環いろはを救うために。
それ以外、それ以外のことなどどうでも―――

(――!?)

「何を考えていたんだ私は」と、一瞬だけ思考が晴れる。
いろはお姉さまを救うのはまだいい。その為にねむやういすらも自分は切り捨てるのか?
いや、そもそもどうして二人まで切り捨てるような考えを一瞬思い浮かんでしまったのか。
確かにいろはお姉さまを救いたいのは本音だが、それで二人を切り捨てるという選択を、里見灯花は取りたくなかった。

(……わかってる。わかってる。)

言い聞かせるように、心の中でつぶやき続ける。
魔法少女の救済、環いろはの救済。それが自分とねむ、ういの望みだと、無理やり言い聞かせて。
だが、白紙に零れた黒インクの染みの如く。彼女の心には、間違いなく動揺は刻まれていたのだ。




式神が施した暗示は2つ。
一つは「自分に手を出さない」と言う内容。
そしてもう一つ。「環いろはを自分のものにしたい。」という衝動。

式神はそれ以外施していないし、所詮暗示は暗示。何らかの拍子で解けてしまうだろう。
が、例えそうであろうとも、刻まれたこそ、暗示が解けたところで、宿ってしまった昏い思いを完全に取り除くことなど、不可能なのだから。

【G-5/1日目/深夜】
【里見灯花@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
[状態]:あり得ない思考に対する動揺(極小)、リンボ(式神)による暗示の影響(小)
[装備]:デュエルディスク+素良のデッキ@遊戯王ARC-V
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品×1〜5、ネネの首輪
[思考・状況]
基本方針:ハ・デスの力を奪い、魔法少女の救済を果たす。
1:使える人材は生かしておく。
2:首輪を外す。取り敢えずどこかで調べたい。
3:出来ることならねむと合流。
4:深月フェリシア、七海やちよ、梓みふゆに関しては、邪魔をしてくるなら容赦しない。
5:私は、いろはお姉さま、を――?
6:この陰陽師(リンボ)、信用はできないは実力はあるから今のところは保留
[備考]
※参戦時期は死亡後。
※首輪が爆発した時、ソウルジェムも同時に破壊されると考えています。
※リンボによる暗示の影響で、リンボに危害を加えることは不可能となっております。

【キャスターリンボ(式神)@Fate/Grand Order】
[状態]:健康(本体より弱体化)
[装備]:
[道具]:小倉しおんの支給品袋及び支給品一式、小倉しおんのランダム支給品1〜3
[思考]
基本:ただ、己の衝動と欲望の赴くままに
1:里見灯花に付き従う。何時彼女が爆発するか楽しみですぞ、ンンンンン―――。
[備考]
『式神について』
※最大召喚数は1名
※他参加者から5メートル以上離れた場合自動的に消滅。
※性能は本体より著しく弱体化。
※自動消滅または撃破された場合、式神再召喚まで6時間のインターバルが必要。
※本体が撃破された場合、式神も同じく消滅する。
※式神が得た情報は本体に共有される。


702 : ◆2dNHP51a3Y :2022/07/18(月) 18:09:03 QdmlZkJY0
投下終了します


703 : ◆2dNHP51a3Y :2022/07/18(月) 19:44:33 QdmlZkJY0
wikiにて『妖星絢爛』の一部セリフを修正させてもらいました


704 : ◆ytUSxp038U :2022/07/18(月) 22:54:26 dS15HAoc0
環いろは、黒死牟を予約します。


705 : ◆2dNHP51a3Y :2022/07/19(火) 00:04:01 IGjaYdzw0
琴岡みかげ、ニノン・ジュベール、マサツグ様、カイザーインサイト、保登心愛(きらファン)で予約します


706 : ◆jHnPQaR2WA :2022/07/19(火) 21:00:03 zvnFyAsA0
投下します。


707 : ◆ytUSxp038U :2022/07/19(火) 21:00:56 zvnFyAsA0
失礼、トリ間違いました。
改めて投下します。


708 : 光芒 ◆ytUSxp038U :2022/07/19(火) 21:02:43 zvnFyAsA0





――答えのないまま それでも光をさがしている








闇。
前後左右、360度見渡す限り全てが闇。
不安、怯え、絶望。人間が考え得る不吉を運ぶ闇が、一面に広まっている。
足を竦ませ身動きが取れぬ者、我を忘れ行く当ても定められず狂走する者。
言葉に現わせぬ恐怖へ誘う闇を切り裂き、恐れなど知らぬとばかりに駆ける男が一人。
腕に抱えるは、自身が救い上げた命。桜色の髪を揺らし、ほんのり色付いた唇を固く結んだ少女。
彼らが闇を恐れる事は無い。
片や闇を掃う希望の象徴である魔法少女。
片や闇の中でしか生きられない鬼。
正史においては決して出会うはずの無かった二人、環いろはと黒死牟。
今宵語られるのは神の作り出した盤上での、ほんの小さなお話。
決闘という名目の殺戮遊戯には何ら大きな変化を齎さない、されど当人達には始まりの一歩となる、そんな話。


709 : 光芒 ◆ytUSxp038U :2022/07/19(火) 21:03:42 zvnFyAsA0



追いかけて来る気配は無い、そう判断し速度を徐々に緩めて行く。
殺す寸前だった娘と邪魔をした男、二匹の獲物を逃がすまいと追跡するやもと考えたが、存外拘りは低いらしい。

黒死牟も饒舌な性質ではないが、あの男は群を抜いて寡黙だった。
針金で結ばれたかのように一言も発さない、されど内には抑え切れぬ程の戦意を滾らせた兵士。
言葉を交わさずとも、殺意の応酬で理解した。
男もまた黒死牟と同じ、人の道を外れた化け物。
戦いの中でしか生きられない、戦った果ての死こそに価値を見出す救いようの無いなれ果て。
ああしかし、そのような化け物でも今の自分よりは遥かに上等だろうと黒死牟は思う。
望みが自身の終わりとしても、そこに至る為に全身全霊を以て闘争へ臨んでいる。
対して自分はどうだ、方針一つロクに決められていない抜け殻だ。
何故このような男を蘇生させてまで屠り合いに参加させたのか、冥界の魔王の考えにはとんと理解が及ばない。

理解不能なのは己自身に対してもか。
腕の中で小さく身動ぎをする娘。
こちらの言葉を馬鹿正直に受け入れ、運ばれている最中は一度も口を聞かなかった。
黒死牟の手で救った命。
強さを求めて汚してきた己が手で、何故今更になってあのような真似をしでかしたのか。
繰り返される自問自答でも終ぞ答えは得られず、今に至る。

「ここで降ろす……」

短く告げ、言葉の通りにいろはを地面へと降ろす。
草木が茂る森、大木の根元へ腰を落ち着けた。
太い幹に寄り掛かり、無事逃げ切れた事への安堵かふっと息を吐く。
ゆっくりと視線を上げ、命の恩人と言える男を捉える。
月の光に照らされる六眼の浮かんだ貌、男が人間で無い事の証。
真ん中の瞳にそれぞれ浮かび上がる『上弦』『壱』の意味をいろはは知らない。
確かな事は、男がいたからいろはは今も命が繋がったままということ。
もう一度礼を告げようとし、思い出したように左腕が痛んだ。

「ごめんなさい、少しだけ…」

断りを入れ回復魔法を自分へ使う。
淡い光に包まれた左腕は見る見るうちに元の形を取り戻していく。
奇跡のような光景を前に、黒死牟は僅かに目を細める。
この娘は鬼殺隊ではない。
服装、装備、何より鬼の頸を斬る為の鍛え方ではない体付き。
だが力無きただの人間とも違う。
自身の乱入まで持ちこたえた力といい、負傷を治す光といい黒死牟の記憶には存在しない何かを持っているらしい。
そう考えても、別段深く娘の正体を知ろうという気にはならない。
助けておいて無責任なのだろうが、この娘を今後どうするかすら黒死牟には思い付かないのだ。
戦意のみならず思考すら削ぎ落されたかと、己の無様さに辟易しかけたその時である。

『プレイヤー諸君―――君たちに朗報がある』

彼の心を大きく狂わせる放送が始まったのは。


710 : 光芒 ◆ytUSxp038U :2022/07/19(火) 21:04:47 zvnFyAsA0



巨大なモニターが消え去った上空を、いろはは痛まし気に見上げ続ける。
わずか数分でまたもや死人が出た。それも今度は複数。
知っている者は一人もいなかったが、あんな風に惨たらしく殺されていい理由などあって良い筈が無い。

「酷いよ……」

黎斗と呼ばれた自称神、神に付き従うハ・デスと磯野、黒い狼のような鎧を纏った男。
彼らの所業は完全に理解の範疇外にあった。
マギウスの魔法少女解放は手段こそ決して認められるべきものではなかったが、根底にあるのは他者を救いたいという願いだ。
救いを求めて集まって来た魔法少女達を、何よりいろはを救いたい。
その為に神浜市の一般人を犠牲に計画を成就させようとした。
だが黎斗らの動機は誰かの為なんかじゃない。
既に何人もの死者を出し、この先もっと多くの悲劇が生まれるだろうに、あろうことかゲームの一言で片付けている。

(どうしてあんな事ができるの…?)

黎斗という男は正気とはかけ離れた、神なんかじゃなくもっとおぞましい存在に思えてならない。
己の芸術(アート)の為だけに全人類魔法少女化計画という、狂気に満ちた世界を実現させようとしたアリナ・グレイと同じ。
私欲の為なら世界すらも平然と巻き込む、どこまでも相容れない存在。

怒りと悲しみが混じり合った表情のまま俯き、ふと気付く。
放送が終わってからというもの、傍に居る男がやけに静かなのを。
彼もまた何か思う所があって、それを言葉には出さず胸の内で整理している最中なのだろうか。
何となく気になって、視線を動かし彼の様子を除き見た。

「…っ」

言葉にならず、小さく息が漏れる。
傍らに立つ男は六つの眼を限界までこじ開けたまま、瞬き一つする事無く呆然と宙を見上げていた。


711 : 光芒 ◆ytUSxp038U :2022/07/19(火) 21:05:38 zvnFyAsA0
○○○


冥界の魔王は屠り合いの首謀者にあらず。
神を自称する、傲慢と尊大に溢れた男の部下に過ぎない。
新たに判明した事実へ多少の驚きこそあれど、黒死牟の心を大きく振るわせはしなかった。

黎斗という名の男、神を名乗るにしては俗人的過ぎる気がしないでもないが、まぁどうでもいい事だ。
得体の知れない力を手にし付け上がった人間か、それとも正真正銘の神か。
どちらが真実かなど興味も無い。

奇妙な札遊び、唐突に参戦した銀の鎧武者、またもや首が飛んで殺された者。
それら全てを無感動に眺め、

『継国縁壱―――それが彼の名前だ』

「―――――――――――――――――――――――――――――――――」

何の前触れもなく、唐突に、ソレを告げられた。

その男を見た瞬間、それまでに殺された者達の顔など遥か忘却の彼方へと消え去った。
映像の最後に紹介された人質の存在すら、黒死牟の視界には映らない。

声が、出ない。
言葉が何も見つからない。

男が誰なのか、それは黒死牟が一番よく知っている。
火炎にも似た痣、人間だった頃の自分と瓜二つの容姿。
四百年前、血だまりに浸した色の月の下で再会を果たした、枯れ木のような老爺ではない。
まだ痣が発現せず、呼吸も身に着けていない、鬼の存在を初めて知った夜。
情けなく腰を抜かした己の元へ馳せ参じた時の、鬼殺隊に所属していた若き日の姿。
死者の蘇生すら可能な力を有しているのだ、若返らせる事くらい造作も無いのだろう。

違う。容姿がどうという話はどうだっていい。
何故、何故、何故、何故、何故。
同じ言葉が幾度となく脳髄を駆け巡っている。


712 : 光芒 ◆ytUSxp038U :2022/07/19(火) 21:06:35 zvnFyAsA0
――何故お前が、そこにいる?

消滅した鬼を再び現世に舞い戻らせられるのなら、人間にだって同じ事は可能。
だから違う。そんな話ではないのだ。
自称神が自慢気に、腹立たしい笑みで何かを言っていた。
敵きゃら、げえむ、えぬぴいしい、ぷれいやあ。
言葉の意味はどれ一つとして分からない。
戦国の世に生まれ、大正にて生を終えた黒死牟の知識にはある筈の無い単語の数々。
だけど分かる。あの男が、あそこにいた理由が。

「っ!!!」

猛烈な吐き気がした。
臓腑を食い破った虫の群れが、喉元まで這いずり回っているような。
割れるような頭痛がした。
脳と骨を纏めて握りつぶされているような。
受け入れ難い現実を前に黒死牟の肉体が拒否反応を示す。

肉体の痛みに苛まれようと、逃げられはしない。
瞳を六つ全て潰したとしても、既に脳裏へ焼き付いて離れない。
耳を両方削ぎ落しても、とっくに百足のようにするりするりと奥へ奥へ侵入してしまった。
紛れも無い、これが現実なのだと黒死牟は否応なし理解する。

継国縁壱は檀黎斗の手に堕ちた。

神の寵愛を一身に受けた弟は、神を騙る外道の傀儡となった。

(馬鹿な……)

そうだ。
そんな馬鹿げた話があるものか、あってたまるものか。
もしかすると自分は夢を見ているのかもしれない。
本当は生き返って等おらず、地獄に落ちる前の僅かな微睡の中、荒唐無稽な夢現の世界に迷い込んだだけなのでは。

そんな風に否定できればどんなに良かっただろう。
弟に追いつくために鍛え、手に入れた肉体が夢ではないと告げている。
五感全てで得られる情報が、これは現実であると黒死牟に突き付けているのだから。


713 : 光芒 ◆ytUSxp038U :2022/07/19(火) 21:08:35 zvnFyAsA0
視界が安定しない。まともに立っていられない。
名前も顔も忘れ去った亡者どもが全身に纏わりついているかのよう。
縁壱の存在に動揺しただけでは、ここまで酷くはならなかった。
弟が傀儡にされたという事実に黒死牟の心が悲鳴を上げているからだ。

それもまた、黒死牟に新たな混乱を齎す要因。
弟への感情が好嫌どちらかと問われたら、迷わず後者を選ぶ。
黒死牟…継国巌勝にとって縁壱は常に嫉妬と憎悪の対象だった。
頼むから死んでくれと願った回数など、両手足の指程度では到底足りない。
赤い月の下、縁壱が息絶えた後ですら負の感情は燻り続けていた。
それ程までに憎悪していた男が、あのような外道の手駒に成り下がった。
鬼の始祖ですら叶わぬ剣の腕を持ちながら、他者を傷付ける事を嫌っていた疑いようの無い人格者が汚された。
だというのに、ざまをみろと暗い喜びは微塵も浮かばず、まるで己の心に刃を突き立てられたような痛みが広がっている。
むしろあのような男が縁壱を貶めた事への怒りで、青筋がビキリビキリと浮かび上がる。
天上の光へ己以外が泥を投げ付けたが故の、実に身勝手な理由からか。
或いは、もっと単純な――

「あ、あの……」

控えめな声が、黒死牟を現実に引き戻す。
天へ向けたままの瞳を地上へ下げれば、おずおずといった様子のいろはが自分を見上げていた。
縁壱の存在に意識を完全に奪われ、とんだ阿保面を晒したまま立ち尽くしていたのだ。
気にならない方がおかしい。

「大丈夫、ですか…?今の放送で何か…」

こちらを気遣うような言葉だが、黒死牟には不要でしかない。
むしろ、大き過ぎる混乱から抜け出せずにいる黒死牟からしたら、いろはに構っていられる余裕は無い。
訳も分からず生き返ったが為の動揺からか、らしくもなく助ける真似をした。
が、このまま面倒を見てやる義理など皆無。
それに今は自分自身の心へ整理を付けられるかも怪しい有様だ。

だからこれ以上関わる気は無い。


714 : 光芒 ◆ytUSxp038U :2022/07/19(火) 21:09:51 zvnFyAsA0
「お前には……関係の無い話だ……」
「えっ、で、でも……」
「二度も言わせるな……。……お前と共にいる理由も無い……どこへなりとも……消えるがいい……」
「えっと…じゃああなたは、これからどうするんですか…?」

どうするか。聞かれても答えは浮かばなかった。
自分がどうすればいいかなど、こっちが聞きたいくらいだ。
参加者と同じように縁壱もこの地のどこかへいるのなら、探し続ければいつかは会えるのだろう。
だが、会って一体どうするというのか。
縁壱の死後も黒死牟は鍛え続け、多くの人間を喰らい強くなった。
老いさらばえた縁壱にすら一太刀入れる事の叶わなかった自分では無い。
では今の自分ならば縁壱に勝てるのか?
余りにも馬鹿馬鹿しい問いに、失笑すら浮かんでこない。
数百年の鍛錬と取り込んだ血肉。長きに渡って維持し続けた上弦の壱の座。
あぁ、あぁ。何の意味があるのだろうか。
そもそも自分を鬼に変えたあの御方ですら縁壱には勝てなかったのだ。
百年以上の歳月が経って尚もあの御方に及ばない自分が、縁壱に勝てるなど夢物語も良い所だ。
柱三人と鬼喰い一人、歴代の柱よりは力が有ってもかの日輪には遠く及ばぬ連中にすら敗北し自壊する始末。
そのような者に勝機が見出せる筈が無かろう。

「話す必要など……無い……」

余計な質問をされて思考が更に鬱々とし出す。
いろはの言葉は耳元で羽虫が飛び回るが如く、鬱陶しいだけのもの。
これ以上は話すつもりも無く、背を向け拒絶を態度で表した。

そうだ。
不可思議な力を持っていようと、人間の小娘一人に構っている自分がどうかしていた。
所詮は困惑から生じた気まぐれにより、命を拾っただけの相手。
傍に置く理由など何も無いだろう。
互いに名前を知らないが、教える必要も無い。

だからこの娘とはこれっきりだ。


……その筈だと言うのに、

「…嫌です」

目の前に立ち塞がって、

「あなたを、一人にはしません」

はっきりと言ってのけた。


715 : 光芒 ◆ytUSxp038U :2022/07/19(火) 21:11:03 zvnFyAsA0



「お前は……」

何を言っているのだろうか。
先程まで控えめな態度を取っていたと言うのに、何故か急に強気になった。
心境の変化があったのかどうかは知らないし、別に知りたいとも思わない。
とはいえ同行を拒否したのにこうして食い下がられるのは、率直に言って鬱陶しい。
僅かに顔を顰め、ああと納得がいった。

「私に庇護を求めるか……」

何て事は無い、自分を守ってくれる存在が欲しいだけだろう。
殺そうとしていた男のような好戦的な参加者が相手では、いろはだけでは命が幾つあっても足りない。
だから自分よりも強い者の庇護下に入り安全を確保する。
その為の丁度いい相手として目を付けた黒死牟と、こうもあっさり別れる訳にはいかない。
だからこうして食い下がっているのか。

理由としては納得できるが、承諾するかどうかは別。
そのような面倒を見てやる義理は無い。
冷たく返そうとし、

「違います!私があなたに守ってもらいたいんじゃない。私があなたを助けたいんです」

「…………」

一瞬、自分の耳がおかしくなったのを疑った。
いや、おかしいのはこの娘の方か。
聞き間違いでなければ、こいつは自分を助けると言ったのか。

自分が現れねばそのまま殺されていた小娘が。
こちらの事情をただの一つとして知らぬ小娘が。
人間の小娘一人の手を借りねばならない弱者と、そのように自分を見ているとでも。
途端に己の内側が冷え切っていくのを実感する。
向こうも察したのか、頬に一筋の汗を垂らしたが今更遅い。

だが続く言葉にまたしても動揺が生まれた。


716 : 光芒 ◆ytUSxp038U :2022/07/19(火) 21:13:45 zvnFyAsA0
「継国縁壱、さん。あの人が関係しているんですか?」
「っ!?」

何故それを知っている。
この娘の前で縁壱の名を出してはいないはず。
人間であった頃ならともかく、醜い鬼と人間では容姿もまるで違うだろうに。

が、ややあって気付いた。
顔は違えど自分と縁壱には同じ特徴が存在する。
痣だ。額と顎に浮かび上がる、縁壱のものと酷似した痣。
そこから何んらかの関係があると察したのだろう。

それが何だと言うのか。

「貴様は……」

その男と自分に何があったかを知りもせず、軽々しく弟の名を口にし、
そんな程度で助けるなどとほざくのか。

仮にも一度は助けた少女にぶつけるとは思えない、抜き身の刃の如き殺意。
いろはの背を冷たいものが落ちる。
これまで様々な魔法少女と出会い、魔女やウワサと戦って来た。
しかしこれ程の、勝てるかどうかじゃなく生き残る事にすら諦観を抱くような相手は初めてだ。

だけど。

「……撤回、する気なんてないです」

神浜市での戦いで、絶対に引き下がってはならないと言う場面は幾つもあった。
やちよからチーム解散を一方的に告げられた時だったり、ウワサと一体化した鶴乃の本心を知った時と様々。
今だってきっとそう。
相手は名前もまだ聞いていない、多分人間でも無い男。
あと一つ言葉を間違えれば、即座に殺されてもおかしくない状況。
けれどいろはには、男が激情のままに刀を振るうだけの悪鬼とは思えない。
まるであの時と、記憶ミュージアムでのやちよと同じ、一人ぼっちで途方に暮れている迷子の幼子が目の前にいるような気がしてならない。


717 : 光芒 ◆ytUSxp038U :2022/07/19(火) 21:15:59 zvnFyAsA0
「あなたを助けたいっていう想いは変わりません」

だったら、絶対に引き下がってなんかやらない。
ある世界線にて七海やちよからは「恐いくらいに真っ直ぐ」と評された頑固さ。
環いろはらしさを貫く時だ。

「縁壱さんのこと…あなたの心の柔らかい部分に無理やり踏み込んだこと、それはごめんなさい」

頭を下げ、でもと続ける。

「知らないままじゃ、あなたをもっと傷つける。だから、知りたいんです」

救えなかった少女がいる。
ういから助けてあげてと言われたのに、それが出来なかった魔法少女が。
希望を与える為の言葉は呪詛であり、差し伸べた手は絶望に突き落とすトドメ。
知らないままでいたから、知った気になっているだけでいたから、自分は黒江を救えなかった。

「今すぐに、全部教えてとは言いません。ただ…」

あの時自分は絶望に陥りかけた。
そうならなかったのはやちよ達が、チームみかづき荘の皆がいたから。
自分が救えなかった事実を否定する気は無い。
でも救えなかっただけじゃあない。自分がいたから手を繋ぎ合い、環になった人達だっていたのだ。

「あなたが迷ったら、一緒に出口を探します。あなたが立ち止まりたくなったら、休める場所を見つけます。
 あなたが苦しくなったら、手を引いて息のできる所へ連れて行きます。あなたが倒れそうになったら、私が後ろから支えます」

結局は諦めたくないんだろう。
ういを、灯花を、ねむを、黒江を救えなかった事実だけを見て立ち止まるのではない。
救えなかった人も救った人も、出会い全部をひっくるめて魔法少女となった自分の選択を後悔しない為に。
自分の無力さに屈し、傷ついている人を見ない振りなんてしたくないから。

「あなたが教えても良いって思ってくれるように、頑張りたいんです」

だから、いろはは何度だって手を伸ばしてみせる。


718 : 光芒 ◆ytUSxp038U :2022/07/19(火) 21:17:55 zvnFyAsA0
「…………」

本当に、この娘は何を言っているのか。
そもそも前提からして間違っている。
自分は助けなど求めていない、己の胸の内を誰ぞ彼ぞにぶち撒けるなど以ての外。
だというのに一体何を得意気に口にしているのか。

斬ればいい、耳元で囁く声がする。
斬れ、斬ってしまえ。
口で言って黙らぬ相手に何を説いても無駄。ならば斬って黙らせろと言う。
声は自分自身のものであり、主のものにも聞こえた。
既に侍とはかけ離れた化け物へ成り果てた身。
年端も行かぬ娘を斬るという畜生の行いを重ねたとて、今更何が変わるでもない。

黒死牟の腕を以てすれば、抜刀と同時に細切れにするのは容易い。
ほんの軽く腕を振るうだけで片が付く、小娘を永久に黙らせられる。

ああけれど、己を助けたいとのたまった声に淀みはまるで無く、憐みなどは小指程も宿っていない。
生温い戯言と、甘ったるい妄言と切り捨てるには、自分を見つめる瞳は余りにも力強くて。
刀を抜くという動作一つに、どういう訳か動けない。

現実を見れていないから、強気な言葉を言えるのではない。
現実に打ちのめされても諦めないから、環いろはは強いのだ。

(私は……何をしている……)

自分自身が呆れ返る程の愚鈍に思えた。
二十年も生きていない娘の言葉に頭を沸騰させ、挙句刀に手を伸ばすとは。
無限城での最期でこれより下は無いくらいに落ちぶれたと思ったが、まさかこの期に及んでまだ落ちるとは。
生き恥ここに極まれり。ほとほと己が惨めでならない。

ああしかし、恨み辛みをぶつける鬼狩りや、見当違いの同情を向ける輩、分かり易い恐怖を露わにする有象無象には見慣れているも、純粋に助けたいと願う奇人はこの娘くらいのものだろう。
だからだろうか、決して娘に心を開いたのでないのに、こう返したのは。

「勝手にしろ……」

投げやりな言葉をどう受け取ったのか、「はい、勝手にします」と微笑んだ娘に今度こそ何も言えなくなった。


719 : 光芒 ◆ytUSxp038U :2022/07/19(火) 21:19:40 zvnFyAsA0



魔法少女と鬼のお話は一先ずお終い。
どうにかこうにか血を流さずに済んだ幕切れに、しかし安堵するには気が早過ぎる。
彼らはまだ気付いていないのだから。
信頼する仲間と、救えなかった少女達がいることを。
自身が魂を売り渡した鬼の始祖がいることを。
環いろはも黒死牟も、まだ知らない。

それでも今は、

「あっ!まだ言ってませんでした。私は環いろはって言います」
「………………黒死牟だ……」

この出会いは無駄ではないと、きっと意味がある事を願おう。


【D-6/一日目/深夜】

【環いろは@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
[状態]:疲労(大)、魔力消費(中)、両腕負傷(ほぼ完治)
[装備]:クロスボウ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを止める。
1:黒死牟さんを放って置けない、助けになりたい。
2:軍服の男(大尉)を警戒。
[備考]
※参戦時期はファイナルシーズン終了後。
※ドッペルが使用可能かどうかは後続の書き手に任せます。

【黒死牟@鬼滅の刃】
[状態]:疲労(小)、精神疲労、縁壱への形容し難い感情、黎斗への怒り、いろはへの…?
[装備]:虚哭神去@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
【思考・状況】
基本方針:分からない。
1:この娘は何なのだろうか……。
2:もし縁壱と会ったら……?
[備考]
※参戦時期は死亡後。

※どちらもまだ名簿を確認していません。


720 : ◆ytUSxp038U :2022/07/19(火) 21:20:15 zvnFyAsA0
投下終了です。


721 : レッド・デーモンズ・タイラント ◆EPyDv9DKJs :2022/07/20(水) 21:05:19 i/R1fnPI0
投下します


722 : レッド・デーモンズ・タイラント ◆EPyDv9DKJs :2022/07/20(水) 21:07:11 i/R1fnPI0
 ゲームマスター、ハ・デスから黎斗と呼ばれた男の話終わると、
 城之内はやってきていた街の中で、近くにあった街灯に拳を強く叩きつける。
 自分の引導を渡した(わけではないが)あのマリクと同等か、
 それ以上に悪辣な奴だ。態々人の死に様を見せて焚きつけてくる。
 神に倒されただけあり、神を名乗る相手に因縁を感じずにはいられない。
 殺し合いに放り込まず、人質に取った少女については謎ではあるが、
 どちらにしたってあいつらには一発殴らないと気が済まない。
 それと少女を殺していた一人の青年(ポセイドン)もだ。
 磯野については、あの様子から否応なく従ってるのは察したので、
 多少は許すつもりではある。まあ出会えば殴るかもしれないが。

「城之内のおにーさん、名簿の更新来てたよ?
 結芽は先に見たけど。知り合いはいないよ。」

 ルールとやらが追加されていたので読んでいると、
 名簿の方もざっとだが確認を終えてすぐにルールを読み返す。
 役に立たないだろうけど万が一デッキを拾ったりした際に、
 ルールが分からなかったから死にました、なんて死に方はお断わりだ。
 正直、読んだところでわかるものでもないなと言うのが正直な感想だが。
 アプリを遊べば分かるのかもしれないが、やる暇なんてそんなにないだろう。
 知り合いもいないのであれば焦ることもないがあくまで彼女の場合だ。
 他の参加者や城之内は違う。

「……どういうこった?」
 
 名簿を見た瞬間、城之内は怪訝な顔になる。
 ツッコミどころある名簿についてはまあ事実ではある。
 ジャンヌとかポセイドンとかデュエルモンスターズにもいる、
 神話や過去の偉人をモチーフとした存在はまだ普通な方であり、
 何故か様付け、同名の人物、リングネームかような明らかに実名ではない奴、
 中にはお世辞にも強くなかったデュエルモンスターズの奴までいることも気になる。
 しかし彼にはそれ以上に突っ込みたいところがあった。

「なんで海馬が二人もいんだよ?」
 
 彼にとっては、その知り合いにこそツッコミどころがあるからだ
 何故かあの海馬が二人も名前が載っているというところにある。
 心愛のように名前の場所が離れてないのと、その間は自分と御伽と遊戯だ。
 こうなるとどっちが自分達が知る海馬瀬人なのかさっぱり分からなくなる。
 海馬が二人存在してるのを脳内で軽くイメージをして見るが、
 『馬の骨』などと煽り散らして高笑いするのが二人いると思うと、
 とてもげんなりとした表情になっていく。

「同姓同名、ってことで一先ずいいんじゃない?
 それに、城之内のおにーさんとは住む世界が違うみたいだし、
 違う世界の、海馬って人の可能性でもいいと思うんだけど。」

 放送が始まる前。
 刀使を知らない城之内との齟齬から、
 互いに住んでいる世界が違うことは分かる。
 日本中で出ては祓われる荒魂を知らないのはあり得ない。
 ペガサスが世界中に広めたはずのM&Wを知らないのも同じこと。
 同じ海馬でも自分を知らない可能性の海馬には気を付けておこう、
 そんな程度でいいと割り切ることとした。

「ほら、もしかしたら私が満足できなかった世界とか、
 私が病気を克服できちゃった世界とか、案外あるんじゃない?」

 『あ、そうなると別世界の私ともいつか戦えるのかな』なんてことを考え、
 少し楽しそうと思いながら結芽は殺し合いらしからぬ笑みを浮かべる。
 下卑たというよりは無邪気な笑み。遠足を心待ちにする子供のようなものだ。

「それと、おにーさんはどうする?」

「なら、御伽と……カイトって奴を探したいんだがいいか?」


723 : レッド・デーモンズ・タイラント ◆EPyDv9DKJs :2022/07/20(水) 21:07:50 i/R1fnPI0
 遊戯は当然として、海馬も癪だが遊戯と並ぶ実力者。
 自分のようにカードやデッキを支給されてない可能性はかなり低い。
 デッキを態々用意して、更にルールにも明言するということをしている。
 となればそれがこの殺し合いにおける基本、コンセプトになるはず。
 所謂バトルシティにおける、アンティルールのようなものだ。
 神のカードを争奪するためにわざわざアンティルールを設けたとは、
 流石に城之内であったとしてもこれの意図に気付くのは難しくなかった。
 デュエルもできずにあっさり死ぬ、と言う展開を恐らく相手は望まない。
 ゲームマスターを名乗りバランスも考慮した。なら十分あり得るはずだ。
 あっさり死ぬとしても、M&Wをさせずに終わらせるとは思えなかった。
 となれば問題はデュエルはお世辞にも強いとは言えない御伽だけだ。
 別の、もう一人の海馬や遊戯の世界線ならデュエルは何度かしたが、
 彼のいた世界の御伽は残念ながらまともなデュエルを一度もしていない。
 ルールは何度か戦いを見てたし、彼もわかるとしてもタクティクスは劣る。
 彼が先の放送すら聞き届けることなく命を落としたことを知らない以上は、
 当面の探す相手は彼になるだろう。

 もう一人は神に挑んだ男、葛葉紘汰が口にした名前。
 名簿には『カイト』の名前を持つ人物は二名ほどいた。
 どちらのことを指してるかは分からないにしても、
 彼が口にする以上は同じように立ち向かう人なのだろう。
 もし参加してる二人のどちらかであるのならば、
 接触しておくことに損はないと彼は思っていた。

(と言うか、なんで牛尾の野郎までいるんだよ。)

 下の名前は忘れたが名前の近いことから、
 牛尾の名も自分が知るあの牛尾だとは察した。
 頭でも打ったのかゴミを金と思い込んで騒いでたらしくて、
 あの後鬼風紀と呼ばれた威厳はなくなってしまったそうだが。
 一体何の理由で呼ばれたのかがさっぱり理解はできないが、
 多分結芽の言ったように改心した牛尾とかでもいたのかもしれない。
 とは言え出会った時に警戒するに越したことはない相手ではある。
 またボディーガードと称して金を請求してくるならデュエルではなく、
 拳で返してやるつもりだ(デュエルで粋がればあいつと同じなのでやらない)。
 
「それでいいよ。後、
 おにーさんさっきの放送から、多分支給品減ってるでしょ。」

「え? あ、本当だ!」

 デュエルディスクとデッキを持ってた参加者は一部の支給品は没収。
 城之内も当然これに含まれるので、残った支給品も綺麗さっぱり消えた。
 借金を返すため働いてるのもありそういうところにがめつ、
 消えたことに嫌そうな表情を浮かべる彼ではあるが、

「って、俺よりもそっちだろ! 薬の方は大丈夫なのか!?」

 没収されたものには当然万病薬も含まれるだろう。
 既に飲んでしまったものにも適用されてしまえば、病人に逆戻りだ。
 どちらかと言えばそちらの方が心配である。

「多分大丈夫じゃない? 特に変なことも起きないみたいだし。」

 軽く体を動かす準備運動をしてるが、
 特に何事もいこと聞いて胸を撫で下ろす。
 病人としての生活が大変なのは妹でよく知っている。
 折角治った病が逆戻りになってないことに安心した。

「それで、減った分おにーさんにこれあげる。
 ルールは覚えてもデッキもでゅえるでぃすく?
 って言うのも持ってないし、私には今は意味がないから。」

 自分には得物は違えど御刀があれば十分に戦える。
 カードを使うためのディスクや持つためのカードと、
 そう言ったものは寧ろ邪魔になるので余り使いたくもない。
 デュエルディスクを経由せずに使えるゴールドシリーズでもなく、
 持っていてもしょうがないし、彼に渡すのが一番適切だと判断した。

「お、なんか悪いな。」

 性能の確認すらしないまま、そのカードをデッキに入れる。
 寄生虫パラサイトをデッキに入れたままデュエルする男だ。
 こういうところはざっくりとしている。そしてやらかす。

「別にいいよ。ところで───」

 結芽がその場から姿を消した。
 まだ彼女の実力を目にしてないので、
 何事かと思ったものの、すぐに音で気づいた。
 刃と刃がぶつかり合う金属音が、後方で鳴り響く。

「お兄さんの知り合いじゃないよねこの人!!」

 振り返れば、結芽が一体のモンスターと鍔迫り合いの状態だ。
 戦士族モンスターですと言われても当然のように受け入れられる姿だが、
 参加者の証である首輪が存在してるため、あれも参加者なのだと察する。

「変身とかしてても遊戯達はこんなことしねえよ!」

「じゃあ、遠慮いらないよね!!」


724 : レッド・デーモンズ・タイラント ◆EPyDv9DKJs :2022/07/20(水) 21:08:53 i/R1fnPI0
 変身の概念は仮面ライダーなるものが二人のやりとりで見た。
 だから先程カードが支給されてるとは言ったものの、
 何かしらの理由で変身してる可能性もあるにはある。
 とは言えこんな行動をするのは絶対に遊戯達ではない。
 仮にマリクの時みたいな洗脳をされた自分を想定しても、
 それなら気を失わせるなどをして戦闘不能に追い込むだけだ。

「猿どモがアアアアア!!」

 承太郎たちを追いかけたデェムシュではあったが、
 砂浜の足跡は当然途中で硬い地面に変わっている。
 完全な追跡はできずに闇雲に追いかけることになった。
 好戦的ではあるがオーバーロードだけあって知性はある。
 沢芽市の街に繰り出したように、人が集まるところに向かう。
 向かってみれば、別の猿を発見し斬りかかってきたわけだ。

(お、もい!)
 
 ガタガタと刀が揺れ出し、歯を食いしばる。
 御刀とは本来、御刀に選ばれた巫女……刀使が力を引き出せる。
 九字兼定は同じ親衛隊の一人、此花寿々花が使っていたもの。
 違う御刀で力を発揮できるようには調整はされているが、
 全てが上手くはいかない。普段よりも刀使の力が劣化している。
 筋力を挙げる刀使の能力『八幡力』を全力で行使しても、
 相手の刃を押し返すことはできず、寧ろ押され気味だった。
 兵器に匹敵するアーマードライダー、それも使い慣れた者達が複数で挑んで、
 それでもなお圧倒できたオーバーロードからの進化体が、今のデェムシュ。
 葛葉紘太が極アームズで倒せた相手を、一人で対等なわけがなかった。
 いくらバランスの為にある程度の力が制限されていたとしても、
 承太郎たちからのダメージも無視しきれないものだが結局は強い。
 力で勝つのは容易いことではなかった。

「とりあえずおにーさんもう少し離れて! 邪魔!」

「ひでえ言いようだが、この状況じゃ否定できねえな!」

 相手が近すぎて、カードを扱う暇もなく殺されかねない。
 そこそこの距離を取ってからでないとドローすらままならないだろう。
 即座に一度全力でダッシュしてある程度の距離を取る。

「逃がさン!!」

 鍔迫り合いをやめて距離を取った後、
 左手から城之内へ向けて追尾する火炎弾を放つ。
 闇のデュエルのような呪術的な意味合いとは違い、
 物理的に、それでいてファンタジーのような攻撃に驚嘆するのは当然。
 しかし彼に到達する前に、火炎弾が縦に真っ二つに切り落とされて、
 片方はアルファルトに、もう片方は街路樹へと被弾して炎上する。

「おにーさん……でいっか。おにーさんの相手は結芽だよ?」

 荒魂でも、刀使でもない、別世界の紛れもない強者。
 可奈美との戦いで満足したので寿命を対価にしてまでの執着はないが、
 彼女にとってそれが勇逸の存在証明とも言えたそれを、すぐには手放せない。
 だからちょっとだけワクワクしている。まだ半信半疑ではあるが、
 自分の病がどうなってるかどうかを確かめるためにうってつけの相手と。

「猿如きガ、吠えルのだケは得意だな。」

「そのお猿さんに足止めされてる人が言っていい言葉?」

 互いに煽り合うかのような問答を軽くした後、一瞬の沈黙からの戦闘再開。
 距離が開いていたものの、デェムシュには遠距離攻撃の手段から先手を取れる。
 火の玉を彼女目掛けて狙うが、刀使の能力の一つ『迅移』による加速。
 追尾する一発一発を回避と同時に斬り、懐へ潜り込めば喉を狙う突きの一撃。
 彼女の流派、天然理心流は相手を殺すに長けた実践剣術を持つ。
 だが御刀は頑丈ではあるが、決して使い手を最強にはしない代物だ。
 アーマードライダーでもなければ、スター・プラチナのパワーにも劣る。
 劣化した八幡力のパワーでは、デェムシュの外骨格を貫くことはできない。
 否、まともに傷をつけられない。

(かったい!)

 だから突き技の反動と金属音だけが返ってくる。
 デュエル風に言えば、与えた戦闘ダメージはゼロだ。

「ふん、その程度か!」

 口だけで雑魚に過ぎない、あのアーマードライダーの連中と同じか。
 シュイムを使っての薙ぎ払いの一撃が迫るが、全身を硬化する『金剛身』で防ぐ。
 衝撃自体はあるので横へ軽く吹き飛ばされるも、ダメージは殆どない。
 近くのマンションの壁を蹴りつつ、再び迅移で加速し間合いに入る。
 遠慮なく頭を狙ってみるが、やはり硬く怯ませても倒すには至らない。
 
(どうしようかな。)

 にっかり青江なら外骨格を貫くだけの八幡力はいけたかもしれない。
 現状では逃げたり足止めはできても、勝つには正直難しい所だ。
 単純な鎧であれば関節などの隙間を狙って攻撃はできるものの、
 相手のは最早皮膚が変質してそうなっているそんな場所は皆無。


725 : レッド・デーモンズ・タイラント ◆EPyDv9DKJs :2022/07/20(水) 21:10:41 i/R1fnPI0
 相手は最早皮膚が変質してそうなっているのでそんな場所は皆無。

 なお首輪を狙えばいいのではと言われるとそうだが、
 主催からの情報では『違反行為をしたら爆破』以外に首輪の情報がない。
 なので首輪を狙う、という発想そのものが彼女にはなかった。

「『アックス・レイダー』で攻撃! 疾風斬り!」

 背後から彼女を飛び越える形で、
 両手で斧を振りかざす戦士の一撃。
 一応の回避はしておくべきと後退されたことで、
 特にダメージを与えることなく、地面を砕くだけに留まる。
 金と赤を基調とした防具を身に着けた、筋骨隆々の戦士の隣に立つ。

「へー、これがモンスター……? どうみても人だけど。」

 気にすることの程でもないか。
 すぐに興味をなくしてデェムシュへと接近する。

(なんかアックス・レイダーのレベルが下がってるし、
 ルールも変わってるけど、俺的にはこっちの方が使い勝手は良いぜ、ラッキー!)

 バトルシティの時は生け贄召喚の概念から、
 使うことがなくなってしまったモンスターカード。
 だが此処では別の世界の基準にある程度合わせてるとは知らないものの、
 一部カードについてはレベルが下がっていて使い勝手が良くなっている。
 またルールも全部に目を通したわけではないが少し違うようだ。

「リバースカードを二枚場に出して、っと!」

 常にバトルフェイズが行われるとでもいうべきか。
 どのような動作をしていても、彼女達にターンの概念はない。
 ただ殺すか殺されるか。殺し合いに攻撃の順番などないのだから。
 結芽の頭部狙いの右薙ぎはダメージにならないが怯ませることはできる。
 続けざまにアックス・レイダーの斧の一振りが迫るも、シェイムで防ぐ。

 武器が武器だからか、下級モンスターとしては高めなステータスからか。
 結芽よりかは拮抗できてるものの、やはりパワーでは上回るのは難しい。

「マた猿が増えルか……!」

 両手剣と言う重みのある武器のはずだが、
 怒涛の斬撃に二人とも距離を取らざるを得ない。
 金剛身で防いだ際もかなりの膂力があったので、
 下手に攻撃を受ければ肉塊にされるのは目に見えている。

「リバース発動『モンスターボックス』!」

 城之内の前にセットされていたカードがオープンされ、

「え!?」
 
 同時にモンスターと結芽が地面から出てきた箱に閉じ込められる。
 いくつもの人が出てこれそうな穴が上部に空けられた箱のデザインは、
 さながら
 もぐらたたきと言えば伝わるだろうデザインだ。
 
「二分の一の確率で外せば、お前の攻撃力をその攻撃中だけゼロにできるぜ!」
 
 本来ならばコイントスによる表裏の宣言を必要とするが、
 ソリッドヴィジョンのシステム故にそこは省略されている。
 なので要するにこれは二分の一で相手の攻撃力を下げる効果のカード。

「玩具だと? ふザけていルのかァ!!」

 火に油を注がれたように怒り心頭する。
 戦いに神聖とかそういう騎士道精神はない奴だが、
 だからと言ってこういうふざけた物を出されると話は別だ。
 当然こんな遊びに付き合うつもりなどなく、横から箱ごと切り裂く。
 中にいたアックス・レイダーの上半身だけが穴から飛び出して、
 ガラス片のようにバラバラに砕ける。モンスターの破壊のエフェクトだ。
 モンスターの戦闘破壊は此方でも余り変わりはなく、その衝撃が城之内を襲う。

「ッ……外れだけってわけじゃねえみてえだな!」

 今起きている結果に城之内はほくそ笑む。
 相手が此方の、カードゲームのルールに則った動きはしない。
 だがどんな形であれ、効果の影響は受けるということは分かった。

「何!?」

 モンスターボックスは破壊は途中までで止まっていた。
 刃が突如通らず、剣をすぐに抜くことができない。

「今だぜ燕!」

「入れるなら入れるって言ってよね!」

 結芽が箱の穴から飛び出し、袈裟斬りをお見舞いする。
 モンスターボックスの効果で攻撃力がゼロと言う表現だが、
 ゲーム上では直接ダメージが通るに等しい状況でもあるということ。
 先ほどまでダメージが通らなかったデェムシュに、容易く斬撃が叩き込める。

「おおー、手応えがある!」

「ドういウ、ことだ……!?」


726 : レッド・デーモンズ・タイラント ◆EPyDv9DKJs :2022/07/20(水) 21:12:06 i/R1fnPI0
 先端すら刃が通らなかったはずが、
 なんてことはないレベルにまで柔らかさを感じた。
 お互いに驚きは隠せないが戦いとは一刻を争うもの。
 行動の手を緩めることはせずに攻防は続く。
 着地後に続けざまに勢いを利用して切り上げるものの、
 再び外骨格が硬くなっていてダメージになってるとは言えない。
 先ほど城之内の攻撃力がゼロだった状態は終わったのだろう。

「うお、なんだ!?」

 デュエルディスクから突然音が鳴って一瞬戸惑う。
 デュエルディスクを探すセンサーのようなものはあれど、当然使ってない。
 何事かと思ってると、デッキの一番上のカードが少しだけ飛び出ていた。
 多分ドローフェイズの合図ではと思ってカードを引けば音が止む。
 これがこの殺し合いに向けた主催達の配慮だろうか。
 
(と言ってもアイツも効果を理解した。
 二度目は警戒して攻撃しないかもしれないし、
 それにモンスターボックスはライフを払わないと維持できない。)

 アックス・レイダーがやられた際、いきなり疲労感が襲ってきた。
 このこと考えるにライフの概念自体はマスクデータとしてあるようで、
 モンスターが破壊された際、所謂超過ダメージは疲労の形で残るようだ。
 当然数値は見えない。だが所謂ゼロになればこの軽い疲労感を考えるに、
 ゼロ=意識を失うと言ったところだろう。敵が生きてれば死ぬだけだ。
 闇のゲームを経験していたお陰で、それっぽいものだとは感じている。
 なので開始早々無暗にライフコストを削るような事をしてると、
 後で痛い目を見そうなので此処では維持をせずに破壊することを選ぶ。
 それに二分の一で攻撃が成立するでは、動ける結芽の動きを止めただけの、
 的にしているだけの状況だ。彼女の機動力を殺すわけにはいかない。

(そういえばこれは通常のデュエルとは違うし、デッキ丸ごとドローは……)

 なんてことを考えたが、主催は態々デュエルのルールを教えてきた。
 と言うことはカードゲームのルールは守れということだろう。
 つまりこの状況で不正行為をすればどうなるかは分からない。
 無暗にやるものではないと思って、追加のドローはやめておく。
 
(どっちかと言うと結芽をサポートしたほうがいいか。)

 ゲーム上の攻撃力が相手の強さに基準になるかどうかは別だが、
 アックス・レイダーが容易く倒されている以上相手は強いのだろう。
 城之内のデッキは海馬と違って高い攻撃力は一瞬であることが多い。
 なので彼に素で対抗できるモンスターと言うのはかなり限られる。

(つってもいつも通りの俺らしく、運任せだな!)

 城之内のデッキは家庭環境からか時の魔術師で味を占めたからか。
 サイコロやコイントスなどの数多くのギャンブルカードが存在する。
 何が起きるか分からないのも彼がバトルシティ準決勝まで上り詰めた理由の一つ。

 「『ベビードラゴン』を守備表示で場に出し、
 更に魔法カード『スタープラスター』発動!」

 名前の通り小型のドラゴンが出てくるが、早々に消える。
 スタープラスターはモンスターを生け贄にサイコロを振り、
 生け贄にしたモンスターのレベルとサイコロの出た目、
 それらを合計したレベルのモンスターを手札から場に出せる効果を持つ、

(頼む、4が来てくれ!)

 手札にはダイナソー竜崎から貰った主力の真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)、
 もう一枚は儀式モンスターのロード・オブ・ザ・レッドの二枚。
 遊戯に預けたはずの真紅眼があることはこの際放っておく。
 片方は儀式モンスターでこの効果で特殊召喚はできない。
 なので此処は4を引き当てなければならない……なのだが。

「って5かよぉ!?」

 出た目は5。合計レベル8のモンスターが必要だ。
 彼の今の手札にレベル8のモンスターは存在するが、
 ロード・オブ・ザ・レッドはこの効果で特殊召喚できない。
 この場合が一番まずい。スタープラスターにはデメリットとして、
 対象のカードが存在しない場合は手札を全て墓地へ捨てる必要がある。
 当然これらのカードはすべて墓地へ送らなければならない。

「クソ〜〜〜手札がなんもねえ……」

 城之内が召喚に四苦八苦してる間、
 バトルフェイズは常に行われ続けている。
 赤黒い霧状のような姿になって、周囲を飛び交うデェムシュ。
 時折実体を一部分だけ姿を露わにして攻撃を仕掛けるが、
 ギリギリのところで凌ぐことができる。
 
(夜見おねーさんの荒魂みたい!)


727 : レッド・デーモンズ・タイラント ◆EPyDv9DKJs :2022/07/20(水) 21:13:24 i/R1fnPI0
 小型の荒魂を無数に飛ばしてるかのような、
 つかみどころのない敵を相手させられてる気分。
 此方からの攻撃は一切できず迎撃だけで対処がいる。
 これをやっていればずっと一方的だが相手がしないのは、
 長時間できないものだとは察して迎撃程度に留めていた。

(でも、本当なんだ。)

 激しい戦いをしたとしても咳をしたくなる気配すらない。
 これだけ激しい戦いを続けても胸は痛く感じない。
 本当に、本当に長年苦しめたそれないのだと実感する。

 最後の瞬間まで全力で戦うことができる。
 病気なんてハンデを背負わないで、存分に。
 楽しくて仕方がなく、苦戦しながらも笑っていた。
 命のやり取りをしてるとは思えない程に、何処か爽やかに。

「何がおカしイッ!!」

 当然、デェムシュが憤慨するのは当たり前なわけで。
 上半身だけ形を保ちながら空中で空へと炎を放ち、
 流星群の如く火の玉が彼女へと襲い掛かる。
 無論、全てが軽い追尾性能を持つ。

「やべえ! 速攻魔法『悪魔のサイコロ』発動!」

 もう一枚のカードがオープンされ、
 小さな悪魔が赤黒いサイコロを投げる。
 悪魔のサイコロを振って相手モンスター一体を、
 出た目の数字分に攻撃力を割ることができる。
 出目が2でも大きな効果を得られるものの、

「出目は4! 今度は攻撃力四分の一だ!」

 劣勢の時ほど城之内の運は輝くものだ。
 攻撃力が大きく下がったことで結芽でも充分に相手にできる。
 炎の威力もかなり縮んでおり、簡単に対処してダメージには足りえない。

「確かに、ちょっといいかも!」

 この短時間で決着をつけることを優先とする。
 迅移の段階を上げてさらに加速して背後から斬りつける。
 先程ほどとまでは行かないが、十分に刃が通るぐらいだ。

「コの、猿如きガぁ!!」

 周囲を薙ぎ払うように攻撃して距離を取らされたが、
 即座に間合いを詰めて再び剣戟による攻防を再開。
 腹部への横薙ぎは剣を縦に構えながら防がれ、そのまま剣を振るいあげる。
 サイドステップで回避し突きを狙ったところはすんでのところでデェムシュが後退。
 続けて三段突きの要領で踏み込んで連続突きを繰り返したところを気体で空を斬る。
 周囲を漂い結芽の背後の上空から頭を叩き潰さんと剣を振るわれ、姿勢を低くして迅移。
 逆に背後を取るように裏へと回りながら飛び上がりの切り上げも再び実体を消す。
 攻撃が決まらないことに軽く苛立つが、時間切れにより数メートル先で元に戻る。
 勿論出待ちするべく肉薄して実態が出た瞬間に斬りかかるが、
 悪魔のサイコロが効果が切れたことで再び刃が通らなくなる。

「よし、ドロー!」

 悪魔のサイコロが切れるのはエンドフェイズ。
 ということはドローできると分かり音がなる前にドローした。
 手札は一枚もない。このドローが一番重要となる瞬間だ。
 
(ここらで来てくれ、いいカード!)

 引いたカードは決して悪くない。
 もう一回チャンスをつかむ必要はあるものの、
 ここぞという時の運の強さを彼は理解している。

「強欲な壺を発動!」

 幸運を呼ぶとされる壺。
 カードを二枚ドローするという、
 単純明快にして協力無比なカード。
 次のカードに全てがかかっている。
 目を閉じながらデッキからカードを二枚ドローする。

「よし! 来たぜ逆転のカード! 魔法カード『死者蘇生』発動!」

 古来デュエルモンスターズに登場してから、
 バトルシティでも制限カードに指定された魔法カード。
 万人が認める単純にして最強のカードを土壇場で引ける。
 ある意味城之内のデュエルにおける運の強さを表すものだ。
 墓地のモンスター一体を特殊召喚することができる。
 当然先程スタープラスターで墓地へ送られたカード、

「甦れ! 真紅眼!」

 深紅の瞳を持つ黒紫のドラゴンがその場に光臨する。
 龍と呼ぶには細く、蛇のような姿ではなく二つの足で地上に立つ。
 攻撃的なフォルムは最上級モンスターの名に恥じない外見をしており、
 二階建ての建物を超える体躯を持ったドラゴンの存在は、
 戦っている二人の手を止めざるを得ない。


728 : レッド・デーモンズ・タイラント ◆EPyDv9DKJs :2022/07/20(水) 21:15:22 i/R1fnPI0
「おー、すっごく強そうだね。」

「タかが猿の使ウ玩具がなンだ?」

「だったら受けてみるんだな! 真紅眼の攻撃! 黒炎弾!」

 真紅眼の口を開き、そこから放たれる黒い炎の弾。
 事前に来るだろうと予想はしてた結芽は先にその場から逃げたが、
 デェムシュの攻撃のサイズと速度を超えたそれに火の弾をぶつけるも、
 相殺はできず黒い爆炎に飲み込まれる。

「よっしゃあ……ってしまった!?」

 思わず見た目がモンスターだったから応戦したし、
 あれは説得どうこうできる相手ではないので仕方ないが、
 もしあれが仮面ライダーの類だったら人を殺したことになる。
 流石に倫理的にまずいと今になって思ったものの、

「ソの程度かぁ!!」

 炎を辺りに吹き飛ばしながら、デェムシュが再び姿を見せる。
 回避が間に合わなかったのではない。あえて攻撃を受けただけだ。
 ダメージには多少なってはいるものの、大したものではなかった。
 M&Wの最上級モンスターの攻撃を以てしてもオーバーロードは越えられない。

 真紅眼が空を舞いながら黒炎弾を次々と放つ。
 しかし今度は次々と避けていき、デェムシュの炎の玉は何度も直撃する。
 サイズが違う以上、当てやすい的になっているのは無理からぬことだ。

「真紅眼!」

 十二発目の被弾でついに限界を迎えた。
 空から近くの建物をクッションとするように墜落し崩落させる。
 戦闘破壊にはまだされてないようではあるが、
 このままでは時期に破壊されるのは目に見えていた。

「じゃ、選手交代!」

 あの巨大さと攻撃の仕方も合わせて、
 連携なんてものはできなかったため控えてた結芽が妨害に入る。

「猿如きが、イつまでモ邪魔をすルなぁ!!」

 再び空へ炎の弾を無数に放ち、
 流星群のように襲い掛かってくる。
 回避を続けながら攻めの手は止めないが、うまくはいかない。
 先程は悪魔のサイコロのお陰で攻撃の威力が弱まって動きやすかったが、
 今は能力が落ちてない状態で仕掛けてきているので同じではないのだ。
 二度、三度は似たような攻防だったが四度目には攻撃を受け止めた間に、
 火の玉が彼女に直撃する。

「燕───!!」

 生きたまま焼かれる感覚はよく知っている。
 思わず叫んでしまう中、デェムシュが城之内を狙いに動く。
 真紅眼は動けてないので全力で逃げ出すが所詮人並み。
 オーバーロード相手に逃げれる速度ではなく背後から剣が振り下ろされ、

「残念だったね!」
 
 炎の中から結芽が飛び出してそれを咄嗟に防ぐ。
 刀使には写シと言う能力がありこれを張ってる間、
 上半身が横断されたところで傷にならない能力がある。
 大きなダメージを受ければ身代わりとなる写シは剥がれてしまうので、
 過信はできなければ、現に結芽は今しがた写シが剥がれた。
 炎の中で解除されれば結局そのまま燃やされていたので、
 かなりギリギリのところではあったことは知る人は伺える。
 
「わりぃ、助かった!」

「それよりもどうするか考えた方がいいよ!
 逃げるなら、殿ぐらいはしてあげてもいいけど!」

 自力ではどうあってもダメージが与えられない。
 真紅眼では(見た目では感じないせいで)此方も戦力に足りえず。
 このままでは逃げの一手も取れないなら彼女が時間稼ぎをするしかない。
 だが大丈夫なのか。相手はこっちのダメージをものともしない敵だ。
 どれだけの時間を稼ぐ必要があるかもわからない中任せられるのか。

(何かないのか、俺の手札は残ってるのは……)

 強欲な壺でドローしたもう一枚のカード。
 結芽から貰ったカードであり、特に考えずデッキに入れた奴だ。
 テキストのろくな確認もないまま魔法カードだからと入れたそれの効果。
 ほんの一メートル先にデェムシュがいるのでテキストは流し読みだが、
 今なら発動条件を満たせていることだけは分かった。

(やってみりゃ何か変わるかもしれねえ!)

 今の状況を変えられるかもしれない。
 時の魔術師だって使い方が分かってない時もあった。
 あの時のように自分の運を信じてそのカードを使う。
 
「魔法カード発動!」


729 : レッド・デーモンズ・タイラント ◆EPyDv9DKJs :2022/07/20(水) 21:16:25 i/R1fnPI0
 カードを置いた瞬間、
 城之内の背後に姿を現れる一体のドラゴン。
 赤色をベースとした、背の鱗や爪の鋭さ。
 外見は中々に獰猛さを伺わせる風貌をしており、
 真紅眼と同じかそれ以上のサイズではあるがドラゴンは二度目。
 今更驚くほどの事もなく戦闘を続けながら互いが一瞥する程度だ。


 
 ある意味これと引き合うのは必然と言うべきなのだろうか。
 これは彼とは別の城之内が手に入れた、或いは至れたもの。
 そう、そのカードの名は───

「『ヘルモスの爪』!」

 ティマイオス、クリティウスに続く名もなき伝説の竜が一体ヘルモス。
 その効果は、ヘルモスとモンスターを合体させ装備カードをその場で作る特殊な融合。

「真紅眼! 頼んだぜ!!」

 起き上がった真紅眼とヘルモスが融合する。
 この先は完全に彼にも何が起きるか理解できなかったが、
 彼の前にのアスファルトに突き刺さったのは真紅眼を模したサーベルに近しい剣、
 真紅眼の黒竜剣(レッドアイズ・ブラックドラゴン・ソード)だ。

(理由は分からねえ、だがこれは絶対にいけるはずだ!)

「燕! こいつを使え!」

「でも私、二刀流の経験ないんだけど!」

 新選組の流派が天然理心流ではあるが、
 二刀流を用いた新選組、伊東甲子太郎は北辰一刀流。
 流派が違う以上、二刀流の経験なんてものは何処にもない。
 と言うより振ったことすらない武器が馴染むとは思えなかった。
 その武器で戦うと今度は刀使としての力が使えなくなってしまう。
 だから使うならば必然的に二刀流のみだ。

「でも力になるはずだ!」

 彼女は群れるのは嫌いだった。
 群れるのは弱い奴がすることだから。
 でも何故だろう。今は不思議と悪い気分ではない。
 親衛隊にいたあの頃のような、どこか楽しくあるこの感覚。

「……分かった!」

 一人で強い所を見せつければそれでよかった生前とは違う。
 可奈美との戦いで執着が少しだけ薄れたから、と言うのも恐らく一員だろうか。
 これは弱い奴が群れるのではない。親衛隊のように『共に戦っている』のだと。
 だから受け取る。九字兼定を左手に持ち、真紅眼の黒竜剣を右手に構える。

「おおー軽い!」

 九字兼定よりも長い、剣とも受け取れるレベルの長さ。
 しかしその見た目の割には明らかに軽く、動きに支障が出ないレベルだ。
 両手に得物を構えながら、迅移で加速して袈裟斬りで斬りかかる。
 デェムシュは何度やっても同じだと防がなかったが、結果は違う。

「ヌォ!」

 モンスターボックスの時とまではいかないが、
 表面上に新たな傷を負わせることができたから。
 ダメージは微量かもしれないが、ダメージが通る時点で別だ。 
 ライフが減らない相手とライフが減る相手とは天と地ほどの差がある。
 数をこなせば、確実に倒すことができる。 
 
「確かに、力になるみたいだね!!」

「貴様ぁ!!」

 傷を負わせた怒りに身を任せ剣を振るう。
 両方の得物で一度防いでバックステップから低い姿勢で走る。
 迎撃の一の太刀を右の剣で弾き返し、続いて二の太刀を左の刀で防ぎ、
 三の太刀が入る前に真紅眼の黒竜剣で同じ個所を斬りつけ、火花が散る。

「なん、だと……!」 

 彼女に二刀流の経験はない。
 だが二刀流の相手については、
 恐らく誰よりも挑んでいると自負できる。
 それもそのはずだ。彼女は何度も見てきた。
 何度も勝負を挑んだ。何度も返り討ちにあった。

「紫様の見様見真似でも、案外戦えるね!」
 
 折神親衛隊が仕える主君折神紫、その流派は二天一流。
 あの宮本武蔵が使ったとされる流派、と呼ぶ方が伝わるだろう。
 無論見様見真似のなんちゃって二天一流でしかないものの、
 元々剣の腕に関しては天才的だ。親衛隊の一人も対抗心を燃やすほどの。
 見様見真似は二天一流としては確かに不格好で未完成だとしても、
 剣術としては決して劣るものではなかった。


730 : レッド・デーモンズ・タイラント ◆EPyDv9DKJs :2022/07/20(水) 21:16:38 i/R1fnPI0
 カードを置いた瞬間、
 城之内の背後に姿を現れる一体のドラゴン。
 赤色をベースとした、背の鱗や爪の鋭さ。
 外見は中々に獰猛さを伺わせる風貌をしており、
 真紅眼と同じかそれ以上のサイズではあるがドラゴンは二度目。
 今更驚くほどの事もなく戦闘を続けながら互いが一瞥する程度だ。


 
 ある意味これと引き合うのは必然と言うべきなのだろうか。
 これは彼とは別の城之内が手に入れた、或いは至れたもの。
 そう、そのカードの名は───

「『ヘルモスの爪』!」

 ティマイオス、クリティウスに続く名もなき伝説の竜が一体ヘルモス。
 その効果は、ヘルモスとモンスターを合体させ装備カードをその場で作る特殊な融合。

「真紅眼! 頼んだぜ!!」

 起き上がった真紅眼とヘルモスが融合する。
 この先は完全に彼にも何が起きるか理解できなかったが、
 彼の前にのアスファルトに突き刺さったのは真紅眼を模したサーベルに近しい剣、
 真紅眼の黒竜剣(レッドアイズ・ブラックドラゴン・ソード)だ。

(理由は分からねえ、だがこれは絶対にいけるはずだ!)

「燕! こいつを使え!」

「でも私、二刀流の経験ないんだけど!」

 新選組の流派が天然理心流ではあるが、
 二刀流を用いた新選組、伊東甲子太郎は北辰一刀流。
 流派が違う以上、二刀流の経験なんてものは何処にもない。
 と言うより振ったことすらない武器が馴染むとは思えなかった。
 その武器で戦うと今度は刀使としての力が使えなくなってしまう。
 だから使うならば必然的に二刀流のみだ。

「でも力になるはずだ!」

 彼女は群れるのは嫌いだった。
 群れるのは弱い奴がすることだから。
 でも何故だろう。今は不思議と悪い気分ではない。
 親衛隊にいたあの頃のような、どこか楽しくあるこの感覚。

「……分かった!」

 一人で強い所を見せつければそれでよかった生前とは違う。
 可奈美との戦いで執着が少しだけ薄れたから、と言うのも恐らく一員だろうか。
 これは弱い奴が群れるのではない。親衛隊のように『共に戦っている』のだと。
 だから受け取る。九字兼定を左手に持ち、真紅眼の黒竜剣を右手に構える。

「おおー軽い!」

 九字兼定よりも長い、剣とも受け取れるレベルの長さ。
 しかしその見た目の割には明らかに軽く、動きに支障が出ないレベルだ。
 両手に得物を構えながら、迅移で加速して袈裟斬りで斬りかかる。
 デェムシュは何度やっても同じだと防がなかったが、結果は違う。

「ヌォ!」

 モンスターボックスの時とまではいかないが、
 表面上に新たな傷を負わせることができたから。
 ダメージは微量かもしれないが、ダメージが通る時点で別だ。 
 ライフが減らない相手とライフが減る相手とは天と地ほどの差がある。
 数をこなせば、確実に倒すことができる。 
 
「確かに、力になるみたいだね!!」

「貴様ぁ!!」

 傷を負わせた怒りに身を任せ剣を振るう。
 両方の得物で一度防いでバックステップから低い姿勢で走る。
 迎撃の一の太刀を右の剣で弾き返し、続いて二の太刀を左の刀で防ぎ、
 三の太刀が入る前に真紅眼の黒竜剣で同じ個所を斬りつけ、火花が散る。

「なん、だと……!」 

 彼女に二刀流の経験はない。
 だが二刀流の相手については、
 恐らく誰よりも挑んでいると自負できる。
 それもそのはずだ。彼女は何度も見てきた。
 何度も勝負を挑んだ。何度も返り討ちにあった。

「紫様の見様見真似でも、案外戦えるね!」


731 : レッド・デーモンズ・タイラント ◆EPyDv9DKJs :2022/07/20(水) 21:17:52 i/R1fnPI0
 折神親衛隊が仕える主君折神紫、その流派は二天一流。
 あの宮本武蔵が使ったとされる流派、と呼ぶ方が伝わるだろう。
 無論見様見真似のなんちゃって二天一流でしかないものの、
 元々剣の腕に関しては天才的だ。親衛隊の一人も対抗心を燃やすほどの。
 見様見真似は二天一流としては確かに不格好で未完成だとしても、
 剣術としては決して劣るものではなかった。

 加えて真紅眼の黒竜剣はただの剣と言うわけではない。
 このカード装備した対象に攻撃力を上げることができるカード。
 更に、墓地のドラゴンの数に比例して別途で攻撃力が上昇していく。
 城之内の墓地はスタープラスターのコストとしてベビードラゴンを、
 デメリットの効果でロードオブザレッド、ヘルモスの爪で真紅眼と、
 地道にドラゴン族が増えており、上昇値はゲーム上ならば合計2500。
 真紅眼単体で使うよりも高い数値を、彼女に上乗せする形となる。
 真紅眼単体の攻撃で駄目ならば、一人に集約させた火力を叩き込む。

「ほら、どんどん斬るよ!!」

 背後へ回り込みながらの逆袈裟にデェムシュが対応し、
 振り返りながら弾くも、続けて真紅眼の剣による突き。
 腹部に突き刺さりそうなところではあったが、
 先の一撃を弾いた剣が振り下ろされ攻撃は決まらない。
 葛葉紘汰こと鎧武の戦い方の基本は二刀流でもあった。
 すぐに別のフォームに変身していた為余り経験はないものの、
 そこはオーバーロード。数少ない経験だけで対応は可能だ。

「隙だらけだよ。」

 攻撃を防いだ隙を狙って九字兼定が側頭部を叩く。
 真紅眼の黒竜剣は剣そのものが強いのではなく所持した存在を強くする。
 なので今まで刃が全く通らなかった御刀であっても刃は多少通った。
 それでも強い打撲に僅かばかり表面が斬られる程度のものだが。

「キ、サマ、ラァ……!!」
 
 なんだこれは。
 さっきまで一方的だったはずだ。
 所詮猿の実力一つではこの程度だと。
 だがこれはなんだ。四人連続で猿に押されているのか。
 変身せずの相手に殴り飛ばされ、またしても押されている。
 フェムシンムの僅かな生き残りであり、選ばれた者のはず。
 自分が強者であることを信じて違わずにいたというのに。
 猿に首輪をつけられ、その上敗北しそうになっている。
 当然、そんなことを認めるわけにはいかなかった。

「ウオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 叫ぶ。
 周囲の人物の鼓膜を揺らすほどの叫び声を。
 猿に負けるぐらいならば、猿の道具を使ってでも対処する。
 屈辱と思いながら攻撃を回避と同時に大きく飛びのいてデイバックに手を伸ばす。
 何かするのは分かってたしさせるつもりもなかったが、それは間に合わない。
 手にした時点で、使うとか宣言とかがない。いや、とうに使う意思があったから、
 だから手にしただけで効果を発揮したとも言えるかもしれない。
 外見は焔のように、性格も苛烈な業火のごとき性格をしている。
 そんな彼が得た新たな力は、

「ふぇ!?」

 ───氷。
 周囲から次々と地面から隆起する、無数の氷柱と冷え切った温度。
 彼が手にしていたそれは五人の領将(スルド)が持ち合わせた一つ。
 それぞれに属性の力が籠められ、ダナの奴隷から得た力を以って力を放つ。
 名を主霊石(マスターコア)と呼ぶ。そして彼が持つのは、水属性のものだ。

「これはダメかな!」

 即座に攻撃を中断し、距離を取り始める結芽。
 氷柱が周囲に隆起するせいで足の踏み場がない。
 下手をすれば写シでは脱出不可能な足を凍らされる可能性もある。
 近づくことができないが、同時にちゃんと制御しきれてないのか、
 彼自身も若干凍っていて足の身動きがとりづらくなっていた。

「よし、逃げよっか城之内のおにーさん!」

 即決で逃げを選び、
 剣を置いて氷から逃げるように城之内の所へ行けば、
 そのようなことを口にしながら彼を抱えて走り出す。

「え、おい! いいのか!?」


732 : レッド・デーモンズ・タイラント ◆EPyDv9DKJs :2022/07/20(水) 21:18:36 i/R1fnPI0
「多分、もう近づかせてくれない!」

 あの氷柱を出す攻撃をされては、
 満足に近づくことは許されない。
 足の踏み場がないとは地上戦をするだけで不利になる。
 当然のことながら空中から攻撃も可能かもしれないが、
 ただでさえダメージは通ってると言っても微量のものだ。
 つまり、当てて回避してを繰り返すにしても回数が尋常ではない。
 それを何十、何百と一発誤ればアウトの戦術を長時間かけられるか。
 彼女は強い相手に挑むことを好むが、別に高難易度を楽しむわけではない。
 別の彼女だが、群れる刀使相手に戦意喪失したり、割りとやる気の問題で行動する。
 やる気が出ないような相手に時間をかけて戦う気など毛頭なかった。
 幸いなことに、相手は自分の出した氷で身動きできない状況だ。
 今なら追跡されずに逃げることもできるので撤退の方を選ぶ。
 遠慮なく撤退を選べるのも、今の環境の変化とも言えるだろう。
 釈然とはしないものの、手札がない今攻略法を探すのも難しい。
 加えて戦闘ができる彼女が言うのなら、無理をしない方がいい。
  そう察して、これ以上何かを言うことはなかった。

 

 

 下半身が氷で覆われたのを、
 自力で砕いて脱出するデェムシュ。
 周囲には二人の姿はなく、またしても逃げられた。

「許さンぞ……許さんゾおおおお!!」

 癇癪を起こし、近くの建物の壁を破壊する。
 コンクリートの壁だろうと彼にはクッキーのようなもの。
 パラパラと音を立てながら、虚しい音だけが耳に届く。
 この短時間で此処までコケにされるとは思いもしなかった。
 逃げたことから勝つことが難しいとは判断したのだろう。
 結果で言えばそれは勝利とも言える。相手は勝ってないのだから。
 しかし納得がいくわけがない。そも、フェムシンムが何故滅んだのか。
 自分こそ相応しいと驕った結果、彼等は争ったことで破滅の道を辿った。
 そんな生き残りが、逃げた相手を勝利と思うことなどあるはずがない。

 オーバーロードは怒り狂う。
 王を決めるべくその候補者に渡された、
 主霊石から新たな力を得ながら。

【E-6/一日目/深夜】
 
【デェムシュ@仮面ライダー鎧武】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、怒りと屈辱(特大)
[装備]:両手剣シュイム@仮面ライダー鎧武、水の主霊石@テイルズオブアライズ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜1
[思考・状況]
基本方針:ハ・デスも参加者も皆殺し
1:猿は見つけ次第殺す。
2:さっきの猿ども(承太郎、一海、城之内、結芽)は必ず殺す。
3:猿共に負けるぐらいならば主霊石を使っていく。
[備考]
※参戦時期は進化体になって以降〜死亡前。
※水の主霊石を手にしたため水、氷の攻撃が可能になりました。 
 制御はうまくできてない為自分が巻き添えになる可能性はあります。
 代わりに制御と言うブレーキがないため、強めの力を放つことができます。
 なお、彼が凍ってもダメージはありません。






 


 
「一先ず大丈夫かな。」

 街から離れたことで、城之内を降ろす。
 普段よりも八幡力が落ちてて移動しづらかったが、
 とりあえずは相手からは認識されない程度には離れることはできた。

「悪い、助かった。」

 落ち着いたところで、改めて先の戦いを思い返す。
 どちらも千年アイテムを持った遊戯やマリクのような、
 人知を超えた力を発揮した戦いに自分も巻き込まれたのだと。
 M&Wが武器と言うコンセプトがなければ、とっくに命もなかっただろう。
 守ってあげるという言葉の意味を最初は何を言ってるか分からなかったが、
 確かにあれだけ戦えるのなら、そう言えるのも納得はできる。

「あれだとおに-さん巻き添えなのは間違いないし、逃げが一番だね。」

「でもどうすんだ? あれだと俺達に対処法は殆どねえよな。」

 遠距離攻撃できそうなモンスターはなくはないものの、
 相手は気体となって空中移動もできる。此方の接近は難しく、
 相手の接近は容易と言う状況は戦うには分が悪すぎる。

「使ってる最中じゃ、墓荒らしで奪えないしなぁ。」

「ま、今は諦めるしかないんじゃない?」


733 : レッド・デーモンズ・タイラント ◆EPyDv9DKJs :2022/07/20(水) 21:19:50 i/R1fnPI0
 あれと戦うのは難儀だ。
 対抗できる参加者を探す方が効率的にいい。
 せめてにっかり青江があればまだ勝ち目はあると思うのだが、
 誰に御刀が渡ったかさえわかればいいが、そう都合よくわかるはずもなく。
 敵を前に逃げるのは釈然としないが、仕方がないと今は割り切った。
 ダメージこそ与えたが、長期戦ではどうなっていたかは分からない。
 過去に真希に独断行動でこっぴどく叱られたことを思い出す。
 一人で戦ってない時はしっかり周りのことも考えるべきだと。
 慣れないが、新鮮でちょっと楽しいかもしれない。

「で、どこに向かう?」

「どうすっか。」

 危機を一先ず脱した二人は、
 一度ちゃんとした装備を探しに歩き出す。
 先に歩く結芽の背を見ながら、デッキからカードを取り出す。

(ヘルモス、か……)

 何故か分からないが、なんだかしっくりくる。
 謎の感覚を感じながら、それをすぐにデッキに戻した。
 
【E-6 西/一日目/深夜】

【城之内克也@遊☆戯☆王】
[状態]:疲労(小)
[装備]:城之内のデッキとデュエルディスク@遊☆戯☆王
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本方針:黎斗を倒し、本田を生き返らせる。
1:御伽、カイト(どっちか不明)を優先して探す。遊戯や海馬についても一応は優先
2:牛尾と参加者を殺した奴(ポセイドン)には警戒。
3:刀使ってすっげー。
4:ヘルモスの爪、頼りにしているぜ!
5:あのモンスター(デェムシュ)何なんだよ!?
6:とりあえず今は逃げる?
[備考]
※参戦時期はバトルシティ準決勝一回戦にて敗北した後から蘇生するまでの間です。
※城之内のデッキの一部がOCG準拠になっています(一部原作、アニメ準拠)。
 またヘルモスの爪が入ってますが融合モンスターはその場で出され、
 テキストの確認はデュエル中に出さなければできません。
 ヘルモスの爪が変化するのは原作で登場した五種類のみです。
※刀使ノ巫女の世界の情報を得ました。

【燕結芽@刀使ノ巫女(漫画版)】
[状態]:疲労(中)、ちょっと楽しい
[装備]:九字兼定@刀使ノ巫女
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]基本方針:生きて帰る。
1:体の調子がいいお礼に、しばらくは城之内のおにーさんに付き合う。
2:カードで人は戦えるんだ。不思議。
3:強い人とは戦いたいけど、面倒なのはやだ。
4:群れるのは嫌いだけど、今はちょっとだけ別かも。楽しい。
5:あんな面倒なの(デェムシュ)は今は戦いたくない。
6:紫様の流派、楽しい! 見様見真似だけど!
7:カイトって人とおにーさんの知り合いを探す。
8:あの人(ポセイドン)も強いのかな。
[備考]
※参戦時期は死亡後です。
※九字兼定でも写シなどは使えますが、能力は本来の御刀より劣化します
※万病薬@ドラえもん の効果で病気が治りました。また飲んだ分は没収されてません。
 荒魂がどうなっているかは現時点では不明。後続にお任せします。
※強者との戦い、一人で戦うことの執着が少し薄れています。
※遊戯王の世界の情報を得てます。


※E-6の一部建物等が崩落、破壊されてます
 また真紅眼が召喚されていたので、誰かが目撃してるかもしれません

【ヘルモスの爪@遊戯王OCG】
燕結芽に支給。ドーマ編に登場した名もなき伝説の竜の一体。
効果はOCGを踏襲しており、装備魔法になれる融合モンスターを出す効果を持つ。
但しOCGと違い該当するモンスターを融合(エクストラ)デッキになくても発動可能で、
所謂『無からカードを生み出す』カードの一つ。このためテキスト確認はその場限定。
変化できるのはOCG、及び原作に則って以下の五種類。※()は原作の融合対象
戦士族  :ロケット・ヘルモス・キャノン(ロケット戦士)
戦士族  :女神の聖弓-アルテミス(クイーンズ・ナイト)
魔法使い族:タイムマジック・ハンマー(時の魔術師)
ドラゴン族:真紅眼の黒竜剣(真紅眼の黒竜)
機械族  :ビッグバン・ドラゴン・ブロー(ビッグバン・ブロー・アーマー) ※どちらも未OCG

【水の主霊石@テイルズオブアライズ】
デェムシュに支給。主霊石と書いてマスターコアと読む。
領将の証となる霊石で、元々はヴォルラーンが持っていたもの。
ダナ人の奴隷の霊石を通じて集霊器に集められた星霊力が貯蓄されており、
戦闘の際には主霊石から星霊力を引き出し、同じ属性術を行使することもできる。
本来は領将にしか使えないが、本ロワでは誰が使っても力を行使することは可能。
ゲーム上ではヴォルラーンの戦闘以外での使用の描写がないので、
使うとどうなるかは書き手任せ。


734 : レッド・デーモンズ・タイラント ◆EPyDv9DKJs :2022/07/20(水) 21:20:45 i/R1fnPI0
以上で投下終了です
カードの一部はOCG、一部はアニメ準拠についてですが、
これについては企画主に確認してOK貰ってます


735 : ◆ytUSxp038U :2022/07/20(水) 21:50:59 2X7pjzRk0
深月フェリシア、滅を予約します。


736 : ◆7PJBZrstcc :2022/07/23(土) 20:01:11 JCL48SsQ0
司波達也、不動遊星 予約します


737 : ◆4Bl62HIpdE :2022/07/24(日) 10:23:02 9Fj9e.C.0
予約を延長します


738 : ◆2dNHP51a3Y :2022/07/24(日) 12:10:23 g3X0LoQg0
投下します


739 : マラフトノカの行く末 ◆2dNHP51a3Y :2022/07/24(日) 12:10:45 g3X0LoQg0
こんな時になっても思うこと、何処で失敗しちゃったのかなって。

小学生の頃、私はお友達の女の子に告白した。
笑顔が似合う女の子で、そんなあの子が最初の恋。
同性なんて意外にありふれていて、だから行けると思ってた。
だけどあの子は違ったみたい。『普通』だから。私が『普通』じゃなかったから、拒絶されたんだ。

私は『普通』になりたかった。
いつまでも一緒の『三人組』の友達のままでいたかった。
でも、また失敗した。あの時のように。
ぐるぐると、辛い気持ちがこみ上げて、どうしようもない気分になってくる。
『三人組』を守るために色んなことをしたけれど、自分から壊してしまった。

今の私には好きな人がいる。だけれどその人は同じ友達を好きになって、その友達は私に恋をしている。
今まで男の子に恋されたことはあっても、女の子に恋されたことなんてなかったから。ほんの少しばかり気恥ずかしい。

私は『普通』になりたかった。二度と傷付きたくないから。
私が好きな人、白鳥司はいつか『普通』になる女の子だから。恋心に蓋をして、あの子が男の子と結ばれるように応援している。
友達の一人、鷲尾撫子は私のことが好きみたい。少し嬉しくは思うけれど、それでも私は受け入れることが出来ない。
そして、白鳥司は鷲尾撫子の事が好きみたいで。
どうして、よりによって私達三人組でこんな事になったのやら。三人組じゃなかったら、ここまで私も拗れることなんてなかったはずなのに。

でも、何もかも、過ぎ去ったこと。
壊れた欠片はばらばらになって、何処に散らばったか見当もつかない。
自分から壊してしまって、自分から傷付いて、一体私は何をしたかったのか。
私だけが悪者で、私だけが損をして。


それで、決闘だか何だか分からない、こんなふざけた殺し合いに呼び出された。
眼の前で人の命が消し飛ばされた、死んだ。
訳が分からない。分かりたくもない。夢だと思いたかった。夢であってほしかった。夢じゃなかった。
あんな簡単に誰かが死ぬなんて場所、どうしてこんな事に、本当にどうしてこうなったのか。
私が悪いの? 私が『普通』じゃないから? 『普通』じゃないから呼ばれたのかって?

冗談じゃない、どうしていつも私ばかりがこんな目に。
嫌だ、死にたくない。死出の土産が壊れた友情の残骸だけだなんて。そんなの嫌だ。
一人このまま、『普通』じゃなくなって、殺されるなんて、絶対に嫌。

だから。誰もでいいから、私を助けて、お願いだから。
私の意識が、深い深い闇の中へと、沈んでいきながら。
まるで悪夢のような、泥濘の奥底に飲み込まれるように。
そんな残酷な現実、私の前に突き付けられる、星が変わらず輝きを放つかのように。
それが当然であると、私への罰だと、宣告されるように。

私の零した涙も、声も、全て無の夜空に、意識の断絶と共に、最初から何もなかったかのように、消え失せる。
そして目覚めて思う。ここは現世の地獄だと。


740 : マラフトノカの行く末 ◆2dNHP51a3Y :2022/07/24(日) 12:11:04 g3X0LoQg0
☆ ☆ ☆

会場の最西端、オーエド街と呼ばれるエリアがある。
アストライア大陸におけるトーゴクなる島国の文化を再現した街並み。
例えるなら某映画村みたいな、時代劇じみた一種の昔ながらな市街地。
人々の喧騒響き渡るこの場所に、今は静寂と、二人の少女しか存在しない。

「アユミ、さん………。」

その片方、ニノン。ギルド『ヴァイスフリューゲル』所属の忍び少女。
忍びというよりも、一種の侍衣装の少女とも見て取れるが、赤と金を基調とした衣装の派手さとは裏腹に、彼女の表情は今は暗いものである。

先程追加で殺されたであろう一人の少女、アユミ。
彼女もまた、ニノンが所属するヴァイスフリューゲルの大切な仲間の一人である。
存在こそ薄いものの、それを活かした隠密の才能は皆が認めている。当人にとっては羞恥の事実ではあるが、それでもニノンにとってのショーグン、アユミが先輩と仰ぐユウキへの思いは強い。
だが、そんな影薄の心優しい少女は、神を名乗る極悪非道の輩の手により簡単に命を奪われた。

「……許しておけない、デス。」

彼女のいるランドソルにおいて、小さな騒ぎや危機など日常に転がっている。
世界を賭けた危機といえば覇瞳皇帝の時ぐらい。間違いなく、ニノンが巻き込まれたこの殺し合いは、それに類するかそれ以上に計り知れない巨悪の野望の中である。
らしくもなく、拳を握りしめる自分の手を見つめる。自分でもここまで憤ったのは初めてだから。
不謹慎なのかもしれないが、もしあの場で殺されたのがアユミでなく、彼女が慕うショーグンこと、プリンセスナイトであるユウキであったなら、正気を保てていたかと言われれば、それは間違いなく否となる。

「クロトとか言う極悪人は、ワタシ達ヴァイスフリューゲルが必ず成敗しマス。」

幸運なのか不運なのか、自分以外の、それこそ殺されたアユミ以外の、ニノンを含めたヴァイスフリューゲルのメンバーが同じく殺し合いに巻き込まれている。
ヴァイスフリューゲルは、そのリーダーであるモニカは、困っている人たちを絶対に見捨てない。
仲間の一人が殺されたのだ、なおさらこんな殺し合いなど、絶対に許してはおけない。


「……なん、でよ。」

一方、もう片方の少女、琴岡みかげ。
神を名乗る男、殺された乱入者に新しい見せしめ。彼女の脳のキャパシティを超える光景。
非現実的な出来事が続々な中で、恐る恐る更新されたであろう名簿を確認してみれば、そこ明記されていた『白鳥司』の名前。

友達で、喧嘩して、未だ話一つすら切り出せられない状態に陥った。
あの時みたいに、昔みたいに2対1みたいになって、自分だけ一人になって。
それが嫌で、二度と傷つくのが嫌で、『普通』になりたいと。
それが一番楽だから、それが一番拒絶されないからと。

「なんで、いるのよ……。」

胸がむしゃくしゃする。と言う状態はこういう事を言うのだろうか。
こんな物騒な事に巻き込まれて無事なのだろうかという焦燥、今は顔も合わせたくないと言う一種の嫌悪。
「こんな状況だから仲直りしよう」なんて頭の湧いた行動なんて実行できるわけもない。
けれども、喧嘩別れしたからってそれきり他人のままで、と切り捨てるには好意の矢印が大きすぎる。
割り切るには踏ん切りがつかず、接触するにしては不安。
要するに、司の事が心配なのに、司には今は会いたくないという矛盾を抱えているのだ。


741 : マラフトノカの行く末 ◆2dNHP51a3Y :2022/07/24(日) 12:11:23 g3X0LoQg0
「ずっと画面見つめテ、どうしマシた?」

「う、うわぁっ!?」

みかげの真後ろから、名簿を覗き込みながらニノンが声を掛ける。
考え込む彼女が気になって背後からコソコソと近づいてみたのだ。
みかげが呆然とずっと名簿のある名前を見つめていたのを気になっての事。
一切悟られずそよ風のように後ろからこう出来たのは間違いなく努力の賜物ではあるが。

「お友ダチの名前でもありマシたか?」

「……うん、まあ。その……。」

如何せん歯切れの悪いみかげに、ニノンが首を傾げる。
仕方ないのでみかげも事情を話す。
かつて付き合っていた元カレの親友から、再び元カレの告白に付き合ってほしいと言われたこと。
知らなかったとは言え、ムキになってキツい言い方で返してしまった事。
その際に、友人に窘められて、思わず怒ってしまったこと。
その結果、三人組がバラバラになってしまったこと。

「……ニノンには、難しい問題デス。」

思わず、ニノンはそう言葉を零してしまう。
喧嘩別れ、という類は意外にもヴァイスフリューゲルではなかったが為に。
趣味嗜好はバラバラなれど、一つにまとまった白い翼の義勇軍。
それこそお互いが拗れるような喧嘩の経験など、ニノンは経験などしていなかったから。

「……そうよね。貴方には余り縁のない話かもね。」

「…………。」

「……そうやって、私だけ悪者になって、……『普通』からかけ離れて。」

自嘲するかのように、罪人が自白するかのように、琴岡みかげは言葉を続ける。
一度壊そうと思ったツケなのか、だとしてもここまではやり過ぎだと。
『普通』になって、ごくごくありふれた三人組の関係を守ろうとして。
結局、自分でそれを壊して傷付いて。

「……はぁ。」

深い溜め息が、深夜のオーエドにて静かに木霊する。
そう、自分が別に同性の事が好きになっても、それはおかしな事でないのは頭ではわかってる。
それでも、あんな嫌な思いするなら、『普通』になった方が楽だから、傷付きたくないからと。
自分の『好き』から目を背けても、琴岡みかげは『普通』になりたかった。
だが、今の状況はどうだ。『普通』なんてものから遥かに乖離した異常。
夢だと思いたかった。でも、夢でもなく、現実だった。

「ミカゲさんにとって、『普通』ってなんデスか?」

「……何よ、藪から棒に?」

暗い顔を覗き込き、ニノンが問いを投げた。

「ワタシには、ミカゲさんの『普通』って言うのガ、よくわからないデス。でも、『普通』って言った時のミカゲさん、一番ツラそうな顔してマシた。」

「………それが、何。」

「でも、ワタシとしては、お友達とはちゃんと話し合っタ方が良いと思いますし。ミカゲさんには無理はしないで欲しいと思ってマ……。」

「……何よ。」

ニノンが、自分ができる限りの言葉を紡ごうとする。
彼女からすれば琴岡みかげの事情も、過去も断片しか知り得ない。
だが、彼女の何か辛そうな、我慢しているような表情に思わずそう言葉を投げざる得なかった。
だが、それが琴岡みかげの地雷に不意に触れてしまったことに気づかずに。

「……私が、普通を『無理』してるって言いたい訳!?」

「えっ、ミカゲさん。ワタシ、そういうツモリは……。」

「だってそうじゃないの! 私が『普通』じゃないから、無理に抑えるなって言いたいんでしょ!?」

「マってくだサイ、ミカゲさん。今は落ち着いて……。」

「落ち着いてられるわけないじゃない! それに今更あいつに何を話せっていうのよ!? 何なの!? あんたまで私を悪者扱いしたいわけ!?」

「ちがっ、違うんデス、ワタシは……。」


742 : マラフトノカの行く末 ◆2dNHP51a3Y :2022/07/24(日) 12:12:11 g3X0LoQg0
「もう良い!! ……助けてくれたのは感謝するけれど、今は一人にさせて。」

「あっ、ミカゲさん……!」

怒りの余り、吐き出すことだけ吐き出して、ニノンから逃げるように琴岡みかげは走り去ってしまう。

「……オーノー……。」

やってしまった。自分以外いなくなった夜街の暗闇の中、流石のニノンも落ち込みの表情を隠せない。
何処で間違ったではなく、もうちょっとマシな言い方はなかったのかと、自問自答したくなる。
ニノンは『忍者』という『特別』であるが、琴岡みかげは『普通』になりたい女の子だ。
一般視点から見れば『特別』であるニノンにとって、『普通』になりたい琴岡みかげの心情を理解しきれないのは、当然の帰結でしかないのだ。

「ショーグンなら、ワタシなんかよりも、もっとイイやり方をしてくれタのでショウか……?」

思いを馳せるのは、今はこの場所には居ないショーグン、プリンセスナイト・ユウキ。
ニノンが心に決めた仕え主。彼という優しいショーグンが、いつか天下を統一して優しい世界を作らんと信じて。
もし彼ならば、もうちょっと上手い方法を提示してくれたのか、などと脳裏によぎってしまう。

「……ううん。ナイモノネダリしても仕方のない事デース。」

だが、居ない誰かに願ったところで何も進展はしない。
ならば自分で出来るべき事をしなければ、と心機一転しようとする。
どちらにせよ、モニカ達との合流は優先すべきだし、投獄されたはずのカイザーインサイトの存在には警戒すべき。それに今すぐにでもみかげの安否を確認したい所ではあるが―――。

「それに――。コソコソしないで、早くデてこいデース!」

「……フンッ。」

ニノンの言葉に反応し、物陰に隠れていた一人の男が姿を表す。
一見爽やかな好青年ではあるが、奈落の闇とも言うべき漆黒の眼が、その風貌に似合わぬ邪悪さを漂わせている。
そしてニノンはひと目見て察した、この男は殺し合いに乗っている、と。

「……もう一人いたようだが、何処に逃げた?」

「……! さぁ、ワタシはそんなコト、知らないデース。」

「とぼけるな低能。それか片方に逃げられるほど無能だったのか?」

地面の砂の跡だけで、男は『二人』いたと言う事を見抜いた。
言い方こそ傲慢不遜の極みであるが、見る目と力量だけは事実。
ニノンも思わず、冷や汗が一つ流れるほどに。

「まあ、お前の無能に付き合うつもりはない。それに、――順番が変わっただけの話だ。」

火を見るよりも明らかな殺意。人を人とも思わず傲慢。自らを頂きと驕る怪物。
傲慢と憎悪のみで構築された、或る人物の別人格(アルターエゴ)。
それが、今からニノンに凶刃を剥こうとしている『マサツグ様』と呼ばれる個体の存在。

「教授してやろう。無価値なお前らは、俺の人生の糧となることが相応しい。」

「……そんな偉ソウな事言ってるヤツ程、足元掬われるってのを、逆に教えてあげるデース!」

だが、今のニノンにそんな事情は関係ない。
生き残るため、生きて帰るため、そして何より、今は彼女までこの男の魔の手が伸びないように、戦うだけなのだから。

【一日目/深夜/D-1】
【マサツグ様@コピペ】
[状態]:健康
[装備]:聖剣ソードライバー&刃王剣十聖刃&ブレイブドラゴンワンダーライドブック@仮面ライダーセイバー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜5
[思考・状況]基本方針:他の参加者を殺して優勝する
1:並行世界の自分は殺す
2:まずは目の前の邪魔な女を片付ける
[備考]
※ミヤモトやトリタ戦など主にコピペになっている部分が元となって生み出された歪な存在です
※「守る」スキルは制限により弱体化しています
※クロスセイバーの制限については後続の書き手にお任せしますが、複数人で掛かれば勝てる見込みがある程度には制限されています


【ニノン・ジュベール@プリンセスコネクトRe:Dive】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:ハ・デスとかいう見るからにワルモノ倒して、さっさと脱出するデース!
1:眼の前のヘンなやつさっさと倒して、みかげサンを探したいデース
2:ショーグンや、モニカさん達は無事なのでしょうカ?
[備考]
※参戦時期は少なくとも第一部終了後


743 : マラフトノカの行く末 ◆2dNHP51a3Y :2022/07/24(日) 12:12:47 g3X0LoQg0
☆ ☆ ☆



「―――なるほど。」

ただ静かに、カイザーインサイトは名簿の名前を見下ろし、小さく呟く。
ヴァイスフリューゲルのギルドメンバー。そしてあのプリンセスナイトの従者たるエルフと、己が部下であるキャル。
肝心のプリンセスナイトや例のお姫さまが居ない事こそ少々残念ではあるが、今となっては些事。
なぜなら、彼にとってはもっと懸念すべき事項が出来てしまったのだから。

「ゲームマスターに、神とは、ねぇ。」

クロト、と呼ばれたハ・デスが従っていた男。
ゲームマスターであり、神を名乗る男。
カイザーインサイトがいたアストルムもまた、ゲームの世界。
七冠と同等、はたまたそれ以上の頭脳を持った、神たる存在。

「忌々しいけれど、事実じゃない、と断ずるわけには行かないわね。」

認めざる得ない。先の放送で、葛葉紘汰とやらを意図も容易く仕留めたその力。
感覚や、制限された覇瞳天星で観測した違和感から察するに、タイムの強制停止。
言う慣れば『ポーズ』と呼ばれる普遍的なゲームシステムの一つだろう。
それだけに飽き足らず、変身解除に追い込んだ力は七冠の権能の様な単純な管理者権限。
一人で七冠全ての権能に加えて時間停止の力を持っていると考えれば妥当な所だろう。

「――陛下。」

ポツンと、不安そうな声色で、それに酷く似合わない冷たい無表情で、保登心愛が尋ねる。

「心配はいらないわ。ゲームだから、素直に優勝しようなんて思った考え、改めないといけないわね。」

優勝して、願いを叶える。なんて単純な催しで終わると思って優勝を狙っていたが、『ゲーム』マスターを名乗る男が出てきたならば話は別。
自分たち全ての参加者が玩具とならば、クロトは間違いなく『玩具支配者(ゲームマスター)』である。
利用されるのは性に合わないし、何よりあの神を名乗る男が先ず気に入らない。

さらなる手駒が必要になってくる。捨て駒としてのも、含めて。
こうなった以上はさっさとキャルを連れ戻す必要もある
あれを相手に首輪がつけられたままでは抵抗も何もない。

「――いいえ、実は。一人、捕まえたのが。」

保登心愛が、また言葉を紡ぐ。
一人誰かを捕まえた、との言葉。

「……へぇ?」

薄く笑みを浮かべたカイザーインサイト。保登心愛が少し退ければ、ロープと猿轡で縛られたであろう一人の少女の、琴岡みかげの姿があった。


744 : マラフトノカの行く末 ◆2dNHP51a3Y :2022/07/24(日) 12:18:31 g3X0LoQg0
☆ ☆ ☆


何もかもが災難、何もかもが突拍子で。

どうして、どうして自分だけが、と。頭の中がぐちゃぐちゃになって。

せっかく助けてくれたあの子に、あんなこと言って。

自分は結局を何をしたいのだろうか、と自問自答したくなる。

だからか、だからなのか。こうなったんだと。

逃げ出した先で、よくわからない女の子に、突然捕まって。

隣の木箱から取り出したロープと猿轡で、縛られて、口を封じられて。

次に出会った誰かは、まるで獣人のような女の人。

この時私は悟ったんだと思う。結局神様も、私が悪者だって認識して。

こうして私に、罰が下るのだと。

「――ねぇ。まずは、話ぐらい聞いてもいいかしら?」


【一日目/深夜/D-2】
【カイザーインサイト@プリンセスコネクトRe:Dive!】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:あの神を名乗る男は気に入らない、出し抜く手段を考える
1:壊れたこの子(保登心愛)は使い物にならなくなるまで利用する。
2:なるべく使える駒を集める
3:あの子(キャル)も連れ戻すべきか
4:この忌々しい首輪もなんとかしたい
5:この子(琴岡みかげ)、どうしようかしら?
[備考]
※参戦時期は第一部第13章第三話以降
※覇瞳天星に関する制限は後続の書き手にお任せします

【保登心愛@きららファンタジア】
[状態]:操り人形、忠誠(カイザーインサイト)、プリンセスナイト(カイザーインサイト)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2、ラーの翼神竜@遊戯王デュエルモンスターズ
[思考]
基本:陛下に従う
1:―――
[備考]
※参戦時期は第二部五章第20節から
※カイザーインサイトによりプリンセスナイトとなりました。魔物の操作能力が使えるかどうかは後続の書き手にお任せします

【琴岡みかげ@ななしのアステリズム】
[状態]:健康、焦燥、拘束&猿轡状態
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:早く帰りたい
1:司がいる、私は……。
2:どうして、どうしてこんなことに
[備考]
※参戦時期は第五巻、鷲尾と喧嘩別れした後



『施設紹介』
【オーエド町@プリンセスコネクトRe:Dive】
D-1エリアに存在。ランドソルに搬入する資源を集めるために作られた町。
建築を担当した業者がトーゴク文化の愛好者だったために、ランドソルの文化とトーゴクの文化が入り混じった様な形となった。


745 : ◆2dNHP51a3Y :2022/07/24(日) 12:18:44 g3X0LoQg0
投下終了します


746 : ◆7PJBZrstcc :2022/07/24(日) 13:50:19 mPYNCtcQ0
投下します


747 : そう言われればそうかもしれない ◆7PJBZrstcc :2022/07/24(日) 13:50:57 mPYNCtcQ0
「疑問点が増えたな」

 それが、草原の上で檀黎斗が主演を務める放送を見終えた、司波達也の最初の感想だった。
 正確に言うなら、情報が多すぎる。

 黒幕かと思っていたハ・デスはその実、真の黒幕である檀黎斗の手下でしかないこと。
 ルールの追加と支給品の没収。
 突然の乱入者。そして敗北。
 理不尽な爆破に殺される予選を通過したはずの参加者など。

 それらは達也に多くのものをもたらすが、しかし彼の助けにはならない。
 何故なら、それらは全て彼の知らないものでしかないからだ。

 予選通過と言ったが、ならば通過しなかった参加者はどうなったのか。
 カードゲームがどう殺し合いに絡んでくるのか。
 仮面ライダーとは何か。

 確認した自身の支給品にデュエルに関するものはなく、ウィザードライバーやリングは仮面ライダーという名称こそあるものの、それが何かは説明していない。
 放送の前にとりあえず一度使い、NPC相手に軽く戦ってみたものの、彼には特殊なスーツと関連するアイテム位にしか思えなかった。
 しかし、放送に現れた葛葉紘汰の物言いは、どうにも達也の認識とは違うものだと言っているような気がする。

「分からないといえばだ」

 そう言って達也はタブレットを起動する。
 開いたページは参加者名簿。そこには当然の如く、参加者の名前が載っている。
 だが――

「なぜ、俺だけがこの殺し合いに呼ばれた?」

 達也には、それが分からない。
 無論、殺し合いの中に知人がいて欲しいわけでは断じてない。ないが、疑問だった。
 彼の知人はそう簡単に死ぬような存在ではないが、未知の殺し合いでは何が起こるか分からない。不覚を取ることもありえる。
 特に、達也の妹である深雪は危うい。もし彼が死亡すれば、彼女は彼を生き返らせるために優勝を目指す可能性すら存在している。
 それは彼も同じ。もし妹が死亡すればどんな行動をとるか、彼自身にすら想像がつかない。
 しかしそれは、主催者側にとっては都合のいい行動のはずなのだが、現実にはここにいるのは彼一人。
 ミスをしないとは言わないが、少なくとも深雪が居るよりは間違いなく冷静な行動をとれる。

「そもそも、なぜ俺なんだ?」

 一人思考の海に沈み始める達也は、根源的な部分に疑問を覚え始めた。
 そもそも、わざわざ魔法と技術を封じてまで自分を参加者を選ぶことが若干不可解に思えてくる。
 自分が持つ『分解』と『再成』が殺し合いに不都合なのか分かる。
 そして、この殺し合いは恐らく首輪が解除されるところもゲームの一部であり、だからこそ科学技術に精通した参加者が必要なのも想像がつく。

 しかし、だからと言って自分である必要性はあるのか。
 世界が無数にあるのなら、戦えはするもののもう少し戦闘力が低い技術者がいてもおかしくないはずで、わざわざ自分を選ぶ理由がない。
 
「居るのなら、あの檀黎斗を知る参加者と合流すべきだな。
 もしくは、仮面ライダーについて詳しい者か」

 達也が一人行動方針を纏めていると、視界の端に何やら小型の飛行機のようなものが、低空かつ低速飛行しているのが映る。
 彼がその方向に視線を向けると、向こうも気付いたのか、飛行機から降り、こちらに近づいてきた。

 青いジャケットを着た、まるで蟹のような変わった髪形をした青年だ。
 警戒する達也だが、青年は抵抗の意思はないとばかりに両手を上にあげながら話しかけてくる。

「俺の名前は不動遊星。情報交換がしたい」
「……分かった」

 遊星の提案に、一瞬躊躇しそうになる達也だが、向こうが殺し合いに乗っている様子もないので、彼は大人しく話に乗ることにした。


748 : そう言われればそうかもしれない ◆7PJBZrstcc :2022/07/24(日) 13:51:21 mPYNCtcQ0





「……すみません」

 情報交換自体はつつがなく終わったものの、遊星の話を聞き終えた達也は頭を下げる。
 何せ、遊星がもたらしたものは達也にとってあまりにも大きい。

 デュエルモンスターズや海馬コーポレーション。
 名簿にある者に加え、一度出会っている参加者の情報。

 それらは未だ遊星しか出会えず、知識も欠けている達也には非常にありがたい。
 一方、参加者に知人のいない達也が出せるものは己の推測と、支給された物くらいしかない。
 交換と言いつつ、実際は殆ど彼が遊星に情報を貰っている立場だったので、思わず頭を下げていた。

「気にしないでくれ。別に司波のせいじゃない。後敬語もいい」
「……ではお言葉に甘えて。
 情報の代わりと言ってはなんだが、俺はそっちのデッキ作りなら手伝えると思う。
 元々体術なら心得があるし、今はそれに加えて別のアイテムも支給されているからな」
「ありがとう」

 達也の言葉に素直に感謝する遊星。
 しかし、彼にはあるアテがあった。

「だがおそらく、俺のデッキは支給されている。
 司波、さっきの放送で殺されていた女の子を覚えているか?」
「……ああ、覚えている」
「その子が使っていたカードは、恐らく俺の物だ。
 そうでなかったとしても、似たようなデッキのはず。少なくとも、今持っているものよりは使いやすい筈だ」
「成程。だがあの金髪の男が持っていった可能性はないのか?」

 遊星の言葉に疑問を覚える達也。
 最初の放送で流れたのはあくまで少女、マヤが金髪の男ポセイドンに殺される瞬間だけ。
 その後、ポセイドンがデッキや他の支給品をどうしたかは映し出されていないので、達也は思わず問う。
 しかし遊星はそれを否定した。

「いや、あの男は召喚されたモンスターを簡単に倒していたし、こんな言い方はなんだが、奴は少女にもモンスターにも興味すら示していなかった。
 ならば、奴から見て何かよく分からないものをわざわざ拾うことはないと思う」
「確かにそうか」

 遊星の言葉に納得する達也。
 しかし、ポセイドンが拾わずとも他の参加者が拾う可能性は否定できない。
 なので二人は、デッキ捜索自体はするものの、平行してデッキ作りも行うことにした。

「とりあえず今は、人を集めようと思っている。場所はここだ」
「ブランドール……だったか。俺も参加しよう。
 だがなぜ三つも場所を……いや、禁止エリア対策か」

 説明するまでもなく瞬時に理解する達也に、遊星は少々驚きを見せる。
 まあそれはそれとして、早速仲間が増えた彼は達也をナイトサイファーに乗せようとする。
 しかしそれを達也は引き留め、代わりに地面を指差す。
 そして近くに落ちていた小石を使って、そこに何やら文字を書き始めた。

『ここからは盗聴を警戒して筆談で話す。
 メモ帳アプリも駄目だ。あのタブレットが主催の物である以上、のぞき見されるかもしれない』

 達也の書く文字に疑問を抱く遊星。
 元々参加者が首輪を解除し、自身を倒しに来ることすら想定している檀黎斗に対し、わざわざバレないようにする意味がつかめない。
 いずれは必要になる時は来るだろうが、少なくとも今ではないだろう。
 そう考えていたが、次に書く達也の言葉に驚愕することになる。


749 : そう言われればそうかもしれない ◆7PJBZrstcc :2022/07/24(日) 13:52:08 mPYNCtcQ0

『主催者は一枚岩ではない可能性がある』
「!?」

 声こそ出さなかったものの、驚きを隠せない遊星。
 むしろ声が出なかったことが奇跡にすら思えるほどに。
 それでもすぐに彼は落ち着きを取り戻し、達也に視線で続きを求める。

『そもそもチグハグなんだ。
 例えば遊星のデッキが本人ではなく、あのルールすら知らなかったであろう少女に支給されたのはなぜだ?』
『主催者の気まぐれや、俺への嫌がらせじゃないのか?』
『俺は違うと思う』

 ここで達也は一度目を閉じて少しだけ休み、それから再び目を見開き続きを書き始める。

『俺は、主催者の中には遊星に早く死んでほしい一派がいると睨んでいる』
『理由は?』
『それだ』

 ここで達也はホカクカードを指差し、話を書き続ける。

『俺にはデュエルモンスターズがどれほどの力を持つのかや、遊星のカードの腕前はまだ分からない。
 理解したのは基本的なルールくらいだ。
 だがデッキを持っていない今は、遊星にとって拙いことは分かる』
「……」

 コクリ
 
 達也の言葉に頷く遊星。
 確かに彼は警備員三人くらいなら素手で倒せるフィジカル強者だ。
 しかし達也やポセイドンに勝てるほどの身体能力を持っているかと言われたら、否だ。

『にも関わらず代わりに支給されたのはカードを体力消費で拾うもので、それ以外は没収だ。
 これで生き残るとは向こうも思っていないだろう。にも関わらず遊星のデッキ自体はある。だから俺はこう考えた。

 ――主催者の中には、遊星に生きて欲しい者と死んでほしい者の二派が存在すると。
 遊星の支給品自体は決まってしまい変えられない段階になったとしても、別の参加者に支給すれば最終的に譲渡自体は可能かもしれないからな』
「……」
『無論、これは推測に推測を重ねたものだ。正しい保証はどこにもない。
 あえて誤解を恐れず言うが、たかだか一参加者の生死がこのゲームに多大な影響を与えるとは思えない。
 だが少なくとも、主催者の中でも思想統一は完全になされていないとは思う。
 檀黎斗の性格は、あの放送を見る限り敵を作ることを恐れるタイプではないだろう。
 恭しく従っている者の中に、反意を持つ者が居ても不思議ではないように見える』

 達也の言葉に対し、考え込む遊星。
 彼の考えはしっかりしているようにも見えるし、少々こじつけが過ぎるようにも見える。
 しかしチグハグさが垣間見えるのも事実であり、否定することも難しい。

 しばらく考えた遊星は、結局この話を保留にすることにした。
 正しい保証も、間違っている確証も何一つないからだ。
 達也もそれに関して「それはそうだ」と納得したので、考察はこれでおしまい。
 二人はナイトサイファーに乗り込み、新たな仲間と遊星のデッキを求め出発する。


 ここまで多くの推測を語った司波達也。
 しかしその中にどれだけ正解があるのか、そもそも正解があるのか。
 それを知るものは誰一人いない。少なくとも、参加者の中には。


750 : そう言われればそうかもしれない ◆7PJBZrstcc :2022/07/24(日) 13:52:33 mPYNCtcQ0


【D-5/一日目/深夜】

【司波達也@魔法科高校の劣等生(アニメ版)】
[状態]:健康、ナイトサイファーに搭乗中
[装備]:ウィザードライバー&ドライバーオンウィザードリング&ウォーターウィザードリング&キックストライクウィザードリング@仮面ライダーウィザード、
     ディフェンドウィザードリング@仮面ライダーウィザード
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1(確認済み、遊戯王出展の物ではない)
[思考・状況]基本方針:まずは首輪を解除して、その後ハ・デスと檀黎斗に挑む
1:不動遊星と行動し、デッキ作りと捜索を手伝う
2:今は出来る限り情報を集めたいな。
3:武藤遊戯や様々な世界の参加者と接触するべきか……? 特に檀黎斗や仮面ライダーについて知っている者と接触したい
4:何らかの手段でサンプルの首輪を手に入れたい。今のところは最初の放送で殺された少女(マヤ)の首輪が狙い
5:主催者は一枚岩ではないかもしれない
[備考]
※元々使えた全ての魔法や技術が制限で封じられています。ただし仮面ライダーウィザードなどこの決闘で得た魔法や技術は使用可能です。体術は一切衰えていません

【不動遊星@遊戯王5d’s】
[状態]:健康、ナイトサイファー操縦中
[装備]:ホカクカード×70枚@スーパーペーパーマリオ、何かしらのモンスターカード×5@遊戯王OCG、オベリスク・フォースのデュエルディスク@遊戯王ARC-V
     ナイトサイファー@グランブルーファンタジー
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本方針:ハ・デスと檀黎斗の野望を止める、俺達の手で。
1:司波達也と行動する
2:蛇王院と協力する。第一放送終了後指定の場所(有事に備えて三か所のどれか)に集まる。
3:ジャック、牛尾、遊戯さんを探す。
4:デッキを作る。カードは今拾った。平行して自身のデッキも探す
5:海馬コーポレーション……どういうことだ?
6:主催者は一枚岩ではないかもしれない……?
[備考]
※参戦時期はジャック戦(4戦目)終了後(原作で言う最終回)。
※何のモンスターをホカクカードによってカード化したかは後続にお任せしますが、
 モンスターカード、或いは罠モンスター等効果でモンスターカード扱いになれるカードのみが対象です。
※デッキの代わりにホカクカードが割り当てられています。
※蛇王院、明石と情報交換しました。


751 : ◆7PJBZrstcc :2022/07/24(日) 13:53:01 mPYNCtcQ0
投下終了です


752 : ◆4Bl62HIpdE :2022/07/24(日) 15:46:30 9Fj9e.C.0
投下します


753 : ◆4Bl62HIpdE :2022/07/24(日) 15:47:05 9Fj9e.C.0



B-5、住宅街。
映し出された、主催――檀黎斗のメッセージを永夢は怒りの眼で見つめていた。



『データまで削除した訳じゃないんだからいいだろ』
『だから消滅した人間をデータとして保存し、コンティニューできるシステムを作った』

「…違う。……あれは、黎斗さんじゃない」


永夢の知る黎斗は、「命を保存する」ことを偉業として考えていた。
だが、目の前に映し出された光景は―――永夢が知る黎斗が持っていた、保存できる命の尊厳すら無視した、悪魔の所業だった。

「……エムせんせいの、知り合いなのかな、この人は」
「………はい。でも、僕達が知ってる黎斗さんは、ここまでする人じゃありませんでした」

「"ここまで"?.....だとしても、危険な人には変わりないってことかなー?」


永夢を照は、疑問の瞳で見る。

「.....」
永夢は黙り込む。しかし、照はこう告げた。

「エムせんせいは、今目の前に映ってるこの人を――どうしたい?」
「えっ……」
永夢は少し迷い、口を開けて喋った。
「……僕は医者です。人を殺すことはできません、でも」

「僕があの人を何とかしなかったから、こんな事になっちゃったって思ってない?」
「.......。」

そんな中、モニターの前の黎斗はランダムに参加者を間引くボタンを押した。
「あ、何かボタン押されちゃったね。――私達、だいじょうぶみたいだから続けるね」
そうしている間にも、参加者の死体は映し続けられる。永夢はただ、拳を握っている事しかできない。
「テルさんはね、死んじゃった子も、このクロトって人も、人に人をどうこうできるものじゃないって思ってるんだ」

「どういうことですか」
永夢は、様々な感情を堪えて照の話を聞く。
「エムせんせいも、わたしも、クロトって人も――みんな、生きるのがうまくないからこうなったって思わない?」

「え……」
「エムせんせいが気に病むことは全然ないよって話。お医者さんはひとを救うけど、救われなかったり相談することができない人だって、沢山いるわけだし」
永夢は何か言いたそうな顔をするが、照はその調子で続ける。
「この人を何とかしようと思っても、無駄だったと思うよ」
照は張り付いた笑顔でそう告げた。

「分かりました」
永夢は曇った顔で、こう続けた。
「それでも……僕は、この殺し合いの中で、救えなかった命の分も人を救けたいです」
永夢がその決意をすると同時に、放送は終わった。
「うん、いいね。それじゃ、救ける人達の名簿を確認しよっか」

照の言い方に永夢は、ふと気づく。
「それって……」
「私もエムせんせいみたいにできるなら、手伝おうかな〜ってこと。私は何でもできるテルさんだからね」
照はさっきまでの虚無の塊のような顔とは違う、多少生気が宿った笑顔をしていた。
永夢も、さっきの言葉は照なりに永夢の心情を心配しての発言だという事に気づいた。

「よろしくね、エムせんせい」
「……はい、テルさん!」


754 : 後悔のParadox ◆4Bl62HIpdE :2022/07/24(日) 15:48:44 9Fj9e.C.0




「....ひどい」
鹿目まどかの発した言葉が、それだった。

モニターに次々映しだれた凄惨な死体と、鎖に手足を繋がれた少女の姿がまどかの中でフラッシュバックする。
「どうして、あの黎斗って人はこんなことができるの…?」

狼狽えているまどかの肩を、桃は宥めるように掴んだ。
「落ち着いて。....動揺したら、奴らの思う壺だよ。....この世界には、理解できない考えを持つ人もいるから」
「....桃さん」
まどかは桃を見る。
桃も、強烈な何かを思い出したかのように、顔色が良くなかった。

「まず、名簿を確認しよう。予定通り、まどかちゃんの友達がこの会場に居たら探そう」
「はい……!」

桃はそう告げ、まどかと共にタブレットを起動した。

「.....まどかちゃん、知り合いはいた?......」
「あっ......居ませんでした、桃さんは.....?」
――まどかは自分の知り合いがいない事に一先ず安堵しながら、桃の瞳を見る。

「..............なんで」
「桃、さん.....?」

シャミ子、良ちゃん、小倉、清子さん、ミカン。
私が全力で守りたい、ごくごく小さな街角だけが、殺し合いに呼ばれていた。

「優子さん....呼ばれて、たんですね」
「......それだけじゃない」
「.....え?」

「シャミ子の妹やお母さん、一応クラスメイトの人、友達の魔法少女も......呼ばれてる」

「...........そんな」
まどかは絶句した。
さやかや仁美、ほむらだけじゃない。もし、自分の弟や母親が殺し合いに巻き込まれていたら。
そんなイメージが、どうしても頭をよぎってしまう。

「まどかちゃん、方針、変更していい?」
「.....はい」

「私たちはまず、清子さんと良ちゃん、小倉とシャミ子を探す。.....ミカンは、強いから心配ないと思うけどできれば合流しておきたい。.....呪いのこともあるし」

二人は、方針を決めた。
まず戦う力のない清子と良子の保護を最優先。――小倉しおんとシャミ子も心配だが、今までの経験を通じて、いざという時に逃げれる機転は前者の二人よりはあると信じたい。

「まどかちゃん、付き合わせてごめんね。....一応聞くけど、それでも付いてくる?」
「はい、大丈夫です!...私も、桃さんに助けられたからその分、助けになれたらなって、思うんです」

まどかは、ぎゅっとホームランバットを握りしめた。

「.....ありがとう」
そんなまどかの姿を見て、桃は少しだけ微笑んだ。


755 : 後悔のParadox ◆4Bl62HIpdE :2022/07/24(日) 15:49:57 9Fj9e.C.0



「ほう……これが、クロトという男が開催したゲゲルですか」
主催者直々のゲゲル....ゲーム開始宣言を、片桐章馬は空洞のような瞳で覗いていた。

「それにしても、自分を討伐の対象とするとは……」
女性を殺す事を目的とした片桐にとっては、特に最初の放送と変わることは無かったが、一つだけ、片桐のようなキラー....俗に言うマーダーには不利となる情報も開示された。

主催である黎斗はプレイヤー達が自分の元に辿り着く...自分を攻略することを認めている。

つまりマーダー達は、積極的に殺し合いに乗らない者を狩り続けなければ、黎斗に対する徒党を組まれ、逆に狩られる可能性もあるということだ。

「....いいでしょう。このゲゲル、受けて立ちます」

実質これは時間制限付きのゲゲルだ。
アギトである自分が呼ばれているという事、さらにはわざわざ火付け役として人質の存在を開示したということは、十中八九いるのだろう。

津上翔一のような、アギトのような能力を持つ正義感ぶった人間たちが。
しかし、片桐は――そのような人間たちをアギトの力で殺していくのも、また魅力であると感じた。

一先ずは、参加者を見つけなければならない。
清子が吊るされた樹がある公園を後にしようとしていた所。

「(やはり、私は運がいい)」
存外、次のターゲットは見つかった。







「あ……」
片桐がエンカウントしたのは、千代田桃と鹿目まどかだった。
「下がって、まどかちゃん」
桃は変身こそしていないが、ステッキを片桐に向けている。

第一声を発したのは片桐だった。

「こんにちは。私は片桐章馬と言います。情報交換を、させてもらえませんか?」

「……その前に。何故デイバッグを二つ持っているの?あとこの化粧品の匂いは何?」
依然桃は警戒を解かない。片桐は話を続ける。

「……このデイバッグと化粧品の匂いは、母さんの物です。僕の母さんは……天使になりました」

「えっ、それはどういう……」
桃が返答を投げかけた矢先、
「……あなたのお母さんもこの殺し合いに参加してて……守れなかったって事?」
まどかが口を挟んだ。片桐はこれ以上俯いたまま、何も言わなかった。

ひょっとしたら予選の段階か、先ほどのランダムな首輪の爆発に、母親が巻き込まれたのかも。そんな推測が二人の頭の中をよぎる。

「……事情は分かった。でも、そこから動かないで」

「いいですよ。何か聞きたいことはありますか?」

「さっきモニターに映し出されてた黎斗ってやつについて、何か知ってることはある?」

「……すみませんが、わかりませんね。」

「そう。あと、『吉田優子、吉田良子、吉田清子、小倉しおん、陽夏木ミカン』って名乗ってる人に会った事はある?」


756 : 後悔のParadox ◆4Bl62HIpdE :2022/07/24(日) 15:50:50 9Fj9e.C.0


「……」
片桐は思い出す。
先刻まで『母さん』が呟いていた名前を。

『優子、良……』

「あぁ......あの二人ですか」

「桃さん...!」
「....知ってるなら、答えて、誰と誰で、どこにいるのか」

「優子さんと....良子さんの事を聞きました。タブレットで場所を教えてあげましょう」

片桐は、桃の返答を待つ。
もう少しで、シャミ子に、会えるかもしれない。――今の桃の思考には、一途にもそれしかなかった。

「.....分かった」
「よかったね、桃さん!」


桃さんの探してた人が見つかりそうで、私はとても嬉しかった。
片桐さんは、桃さんをすり抜け、何でか私の所に来て、こう言いました。
「ところで――あなた、名前は何と言うんでしょうか?」
「え?私ですか?....はい、鹿目まどかっていいます」

この時桃さんは焦ってて、気づかなかったんです。

「まどかさんですか......なるほど、ありがとうございます。名前を教えてくれて」



「もう少し年を重ねていれば、天使になれたかもしれないから」
「え?」

片桐さんが、人を殺してきた怪人だったという事に。

血が、飛び散りました。
桃さんが、私を庇って、怪人に変身した片桐さんの刃を手で受け止めた血が。


757 : 後悔のParadox ◆4Bl62HIpdE :2022/07/24(日) 15:51:51 9Fj9e.C.0


拳と刃が交錯する。

桃は幾度もパンチを繰り出すが――当たらない。
ロッドを出し、フレッシュピーチハートシャワーを撃つ暇が見つからない。恐らく、スピードは自身が負傷している分、片桐の方が上だ。
「……っ!」

「……やりますね、君もアギトでしょうか」
先程の失血もある。桃の世界の魔法少女にとって血を失うことは魔力を失う事と同じことを意味する。依然、片桐の方が優勢だった。

「....あのデイバッグは......一体、誰を殺したの?」

「殺した?――失礼ですね。天使にしてあげたんです」
桃は考える。片桐の口ぶりからして、この男が人を殺したのは初めてではないのだろう。

「答えろ。....一体、どれだけ人を殺した?」
桃の拳のスピードが上がる。
片桐は――ラッシュに徐々に追いつけなくなり、肩にヒットした。
「ぐっ.....!」
片桐は拳の力に吹き飛ばされたまま抱え込み、桃はフレッシュピーチハートロッドを構え、必殺技を撃つ準備をする。
しかし、片桐の口は減らない。
「....どれだけ?愛に際限はありません。繰り返し繰り返し母さんを殺し、天使にしてあげるのが私の愛なんです」


「………ぁ、ああああああああああああああ!」

突如、まどかが恐怖の叫びを上げた。
「まどかちゃん、どうし.....」
桃は、周りを見渡し――絶叫の正体は、すぐに分かった。

「.....あ」
片桐が吹き飛ばされた先には、公園があった。

住宅街の一角に設置された、緑道公園。そこには全裸で白い布を着せられ、一際大きな巨木に吊るされた清子の姿があった。

「……シャミ子、の、お母さ、」




758 : 後悔のParadox ◆4Bl62HIpdE :2022/07/24(日) 15:52:32 9Fj9e.C.0


「桐生戦兎、万丈龍我、花家大我、駆紋戒斗って人がエムせんせいの知り合い?」

「はい。....みんな、頼れる人達です」
桐生戦兎、万丈龍我。かつてエニグマ事件の時に葛葉紘汰と共に共闘し、融合した二つの世界の切除に成功した平行世界の仮面ライダー達。

花家大我。共に死線を潜り抜け、チーム医療を成し遂げ檀正宗の野望を食い止めた、ドクターとしても仮面ライダーとしても先輩にあたる男。
檀黎斗が主催である以上、彼が参戦していることは、不謹慎とはいえ心強いことこの上なかった。

そして――駆紋戒斗。
彼は以前も檀黎斗が主催したゲームに呼び出され....永夢を助けてくれた恩人だった。
紘汰も戒斗の名前を呼んでいたことから、恐らくは紘汰の仲間だったのだろう。

「でも、戒斗さんはもう.....死んで、いるはずです。以前黎斗さんが作ったゲームが、そういうルールでしたから」

「....クロトが言ってた、ゲームオーバーとなった参加者を生き返らせられるって言葉は、嘘じゃないって事かな」

「……」
永夢は黙りこくってしまった。

「....そっか。続けて?」
照は、その沈黙が答えだと考え、永夢に考察の続きを話すように促す。

「....平行世界の仮面ライダー...ビルドが巻き込まれているという事は、黎斗さんはエニグマを使って平行世界を行き来させているはずです」

永夢の知るゴッドマキシマムマイティXガシャットには、平行世界を移動できる力はない。
だが、平行世界の移動・融合を成し遂げた人物は存在する。

最上魁星。永夢の世界では財団Xという組織の幹部だった男だ。
勿論、ゲームシステムの中核はゴッドマキシマムマイティXの「ゲームを生み出す」能力を使っているとしても、黎斗が首輪を解除し自身の元にたどり着く可能性を示唆しているとすれば.....

永夢の、ゲーマーとしての勘が唆す。
ラスボスへの、チェックポイントとして、あるはずだ。

移動(ワープ)装置となる、エニグマが。

「本当に、平行世界ってあるんだねー。ゲームのネタとしてはベタだけど、テルさんびっくり」
「はい。....まずは、エニグマを探しましょう」

永夢の世界のエニグマは、宇宙のエネルギーが集まる天ノ川学園高校に存在した。

なら、同じ要領でエネルギーが強い場所にエニグマがステルスで置かれている可能性も無くも無い。

そう考え、移動しようとした矢先.....

『………ぁ、ああああああああああああああ!』

「.....っ、叫び声!?」

「....え、誰かが襲われてるってこと!?」

「.....行きましょう、テルさん!」
そう言って永夢は、駆け出して行った。

「え.....待ってよ、エムせんせい.....。」
照も追う、.....が、足取りは永夢より遅い。

誰かが襲われているという事は、戦うかもしれないという事。
「たまたまちゃん、....私は.....戦えるのかな」
照は、自分に支給されたSNS部のゲームCDをぎゅっと握っていた。


759 : 後悔のParadox ◆4Bl62HIpdE :2022/07/24(日) 15:53:36 9Fj9e.C.0


「……シャミ子、の、お母さ、」
私が守りたかった、ごくごく小さな街角を――守れなかった、と思った直後。
内臓に、鈍い衝撃が来た。
「がっ......!」
片桐のアギトが、桃の脇腹にドロップキックを打ち込んだからだ。

魔法少女は、例え腕が骨折したとしてもダメージが無いように装うことができる他、身体の大部分が欠損したとしても活動は可能だ。

だが、逆に言えば、腕が骨折すれば腕は使えなくなるし、内臓器官が損傷すれば暫く肉体を動かすことは出来なくなる。

「いやっ、桃さん...!」
「だい....じょうぶ....だから」
桃は、何とか立ち上がろうとする。
が、そこにアギトの容赦ない連打が桃の腹、胸に目掛けて2,3発以上続く。
「ふふ....やはりアギトの力は、素晴らしい」

さらに内臓を苛めるかのようなキックが炸裂し、ついに桃は、血反吐を吐いて倒れた。

「がぁっ....!」
「油断しましたね。面白かったですよ」

片桐は、そんな桃を雑巾のように引き上げ、肘の刃で殺そうとする。


が――それをまどかが止めた。
「......やめて、ください。」
「うん....?」

まどかが、ホームランバットを振り下ろして刃を止めたのだった。


桃さんは、私を守ってくれた。
だから――今度は私の番だって、思ったんです。

「あなたが、望むなら私は天使にだって、お母さんにだってなりますから――だから、桃さんを離して、ください」

「.......」
「あぐっ」

「あなたが....母さんに.....?」
アギトの手から、引き上げられた桃が落ちる。
まどかは、泣きそうになりながらも引きつった笑顔で、片桐を受け入れる姿勢を見せた。

「頑張ったね......もう、大丈夫、だよ.....」
「....母さん...................!!!」


760 : 後悔のParadox ◆4Bl62HIpdE :2022/07/24(日) 15:54:22 9Fj9e.C.0




「がっ.....がはっ......!あっ.....はっ、.....はぁっ.....!!」

「いいよ....大好きだよ....気持ち良いよ、母さん......!!」

まどかは、足をばたばたさせながら、じわじわと首を絞めつけられていく。

アギト――片桐は、まどかを絞め殺しながら、今までとは別物の、この上ない快感を味わっていた。
思えばいつも片桐の天使たちは、生前は怯えた表情で片桐を否定するような行動しかとってこなかった。

が、今目の前にいる「母さん」は違う。自分を受け入れて、命を捧げてくれている――これほど尊いことが、あっていいのだろうか。

「もも、さん....ごめ、んね」
「.....まど、か、ちゃん」
桃は、そんなまどかの惨状を這いつくばりながら見ている事しかできなかった。
下手にフレッシュピーチハートシャワーで吹き飛ばせば、まどかごと死ぬ。

いや、もうどの道....このままだと、まどかは死ぬ。
そして、今の片桐の行為が終わったら自分も殺される。

なら、覚悟を決めるしか.....ないのだろうか。
「........フレッシュ、.......ピーチ、.......ハート」

だが、助けの手は突然訪れた。

「大変身!」

「レベルアップ!マイティマイティアクション、X!」

公園を通って駆け付けた永夢が、アギトをガシャコンブレイカーで斬りつけた。

「ぐっ!.....痛いですね」
先程の左肩の痛みも相まって、思わずまどかに向けられていた手を離し、エグゼイドに向き直る。

エグゼイドはガシャコンブレイカーでチョコブロックを壊し、エナジーアイテムをゲットした。

「伸縮化!」

そして、遅れてやってきた照に呼びかける。

「テル、その子に心肺蘇生と気道確保を!顎を上に上げて、人工呼吸をするんだ!」

「え、そんな……私、やったこと」

突然の呼びかけに、照は戸惑う。

「心肺蘇生が無理なら気道確保だけでも!!俺が引き付けている間に、早く!!」

そう言いつつ、エグゼイドは伸縮化でアギトを巻き付け、後ろにある公園の敷地内に叩きつけた。

「....邪魔しないでもらえますか」
「お前の運命は、俺が決める」

アギトvsエグゼイドの戦いの火蓋が、切って落とされた。


761 : 後悔のParadox ◆4Bl62HIpdE :2022/07/24(日) 15:55:08 9Fj9e.C.0



ピンク色の髪をした、その女の子の具合は、とても悪そうだった。
そして息をしていなかった。当然だ。今まで、じわじわと首を絞め続けられてきたのだから。

「...頑張ったね」
私は、その子の顎を上に上げ、気道を確保させ、人工呼吸をした。

でも、やったことないし、正しいやり方がどうだったかも覚えていない。

私がやったことは、口移しで息を吹き込んだだけ。

息が吐きだされるのを待ってから、同じことを何回も行う。
――正直、もう嫌になっていた。

こんなこと、ちゃんとした医者であるエムせんせいに、任せたかった。
「だって、これで死んだら.....」

私のせいになる。
それが嫌で、何度もやり方も分からずこの子の口に息を吹き込んだ。



「がっ....!」
「....遅いですね」
エグゼイドのスーツから、ショートの火花が散る。
永夢は、アギトのスピードに圧倒されていた。

エグゼイドは、何度もガシャコンブレイカーを振り回すが、まるでRPGのMISS表記のように悉く躱され、カウンターを受ける。

「あなたの攻撃は...私のスピードの前では無意味です」
高速化のエナジーアイテムを取る暇すらない。
アギトのパンチにより、エグゼイドのライダーゲージはあっと言う間に半分となった。

「それでも....諦めて、たまるか」
「ガシャット!キメワザ!」

永夢はガシャットをガシャコンブレイカーに刺した。
アギトは、挑発するかのようにクイ、と一指し指をエグゼイドに向け、折り曲げた。

「マイティクリティカルフィニッシュ!」

「うおおおおおおおお、っらぁ!」
エグゼイドは跳躍し、ブレイカーによる斬撃は――空振りに終わった。

アギトが跳躍し、壁キックの要領で上空のチョコブロックを次々と壊していく。
「仮想空間を出現させ、そこでゲゲルをするのですね……面白いです」

落ちる瞬間、アギトは、エナジーアイテムをゲットした。

「高速化!」

「マッスル化!」

「....あ......」
「腰の霊石を壊せば、貴方は死ぬんでしょうか」

超高速の、瞬間移動にも等しい乱打がエグゼイドを襲った。
「うわああああああああ!!」
エグゼイドは、ゲームオーバーより先に―――腰のゲーマドライバーが、破損した。




762 : 後悔のParadox ◆4Bl62HIpdE :2022/07/24(日) 15:55:51 9Fj9e.C.0


その子は、ずっと目を見開いていた。
眼を見開いたまま、光を無くしたまま、死んでいった。
「.........あ」

「....まど、か、ちゃん」
その子の心音が聞こえなくなった時点で、私は息を吹き込むのをやめた。

「.....まどかちゃんって言うんだ、この子の名前」
わたしは、まどかちゃんの傍にいたツインテールの、顔が腫れてる子に言った。

「....何、やってるの、早く、続けて」
ツインテールの子は、わたしに救命活動を続けるよう懇願した。

でも、わたしはもう、続けられなかった。
「....だめだよ、だって、この子.....もう、死んじゃってるからさ」

「.......!!」
その子は、悔しさで口から血が出るほど、歯を食いしばっていた。
そんな姿を見て、私は、少し笑った。
「...あはは」
「....何、笑ってるの」
「...命って、こんなにも脆いんだなぁって」


私が心肺蘇生を知っていれば、いや、取り組んでいれば。
この子は死なずに済んだのかもしれない。

「……私は、後悔の無いようにって………。」

【鹿目まどか@魔法少女おりこ☆マギカ 死亡】



そこには、変身が強制解除された永夢と、それを悠々と見つめる片桐のアギトがいた。

決闘の、勝敗は決した。あとは、処刑するのみ。

「.....ぐ.....」
「…死にませんでしたか。中々楽しかったですよ、ゲゲルとして」
そう言って、アギトは永夢の首根っこを掴み、肘のブレードで永夢の腹部を引き裂こうとした。

永夢は目をつぶる。……だが、その時は訪れなかった。
「……?」

「……が……あっ」

永夢の額に、片桐が吐血した血が付着した。

「……最初から、こうすればよかったんだ。」


――片桐は、油断していた。いや、気づこうとしなかった。
乱入した、もう一人の、プレイヤーの姿を。


わたしが戦って、エムせんせいが救命活動をする。
そうすれば、あの子は、死ななかったのかもしれない。

照だった。
「SNS部のゲームCD」を使用して魔王と融合し、変身した照が、羽織っているコートから伸びた猫のような腕で片桐の胴を貫いたのだった。

「テルさ……!」
変身した照の姿に永夢は驚くが、はっと照がその前にしていたことを思い出す。

「患者は……!」
「………ダメだったよ、エムせんせい。わたしじゃ、駄目だったみたい」
照は首を横に振って、虚しく笑った。

「……そう、ですか」
照の感情に呼応するかのように永夢も、表情が濁っていく。

「......う........」
まだ、片桐は息をして、呻き声を上げていた。
照は、それを心底不快な目で見つめた。
「……」
「うぁぁっ」

照は、貫いたままのアギトの胴体から伸びている腕を引き抜いた。そして、こう続けた。

「……わたしも、もう駄目みたいかも。何かさっきから、声がうるさいし」
「声……?」

永夢は問いを投げかける。照は、それに応じた。

「この殺し合いで、好きにやってみようかなって」
照は、先程アギトの腹部を貫いた蹠球で永夢の腹部を殴った。

「ぐふっ……!」
永夢は、ダメージに耐え切れず倒れ、うつ伏せになる。

「私は、エムせんせいみたいにはできないみたい。――それなら、悔いの無いようにしてみるのもありかなって」


763 : 後悔のParadox ◆4Bl62HIpdE :2022/07/24(日) 15:56:36 9Fj9e.C.0



照は、貫いたアギトの胴から、野球ボール程度の目立った器官――霊石がはみ出ているのを見つけた。


「……どういう、こと、ですか……?」
「この殺し合いで、みんな関係なく壊しちゃおうってこと」

照は片桐の霊石を拾い上げ、ぐしゃりと潰した。

「あぁぁぁぁぁああああああああ!!!」
片桐の絶叫。そして、照はこう告げた。

「エムせんせい、さっき言っていたムテキの力があれば、あのクロトって人も倒せるんでしょ?」

「………」






"エムせんせいは、あのクロトって人に勝てると思う?"

放送終了直後に、永夢と照は話していた。
永夢が、黎斗に勝てる可能性について。

"分かりません。....ただ、ゴッドマキシマムマイティXに対抗できる力は知ってます"

".....あるんだ。すごーい"

"ハイパームテキって言って....黎斗さんが作った、主人公最強の無双ゲームをゲーマーMである僕が使えば、負けることはありません。"






照はその存在を思い出し、こう言った。
「だったら.......もし私が、ぜんぶ人を殺しちゃった後でも生きてたら、私を、殺しに来てね」

「....なんで、ですか」

「私ね、すべてが嫌だったんだ。....だから、死のうとしてたんだけど、どうせ死ぬなら―――目ざわりな人やもの、すべて壊してからでもいいかなって」

照は、永夢に対して背を向ける。

「……待って、ください」
永夢は、それでも尚、立ち上がり、照を追おうとする。....が、すぐに姿勢が崩れた。

照は、だからエムせんせいを嫌いになれないのかも。誰かさんと似てるからかな、と思い……

そんな一心不乱に自分を手伝おうとしてくれた少女のことが少しだけ、頭をよぎった。

「じゃあね、エムせんせい。―――それと、もし生きて帰れたら本田珠輝って子に―――」

「…………」


764 : 後悔のParadox ◆4Bl62HIpdE :2022/07/24(日) 15:58:46 9Fj9e.C.0



魔王に変身した照は去っていった。

「私………私、は」
変身が解除された片桐は、這いつくばりながらも、まだ息があった。

腹部を貫かれ、後ろに背負ったデイバッグは引き裂かれている。
片桐は、その場に散らばった自身の支給品にすべてを賭けようとした。
諦めてたまるか。後は虫の息の二人さえ殺せば、一先ずこの場は凌げる。

「あれを手にさえ、すれば私は………やはり、私は、運が」

が、それを片桐が手にすることは無かった。

「ここにあったのか」
立ち上がった永夢がガシャコンブレイカーを構えながら、それを手に取ったからだ。

「あ……」

それは、永夢のよく知る、ライダーガシャットだった。
――ガシャットギアデュアル。それがガシャットの名前だ。

「パラド。お前の力、使わせてもらう」
「Perfect Puzzle! 」
ダイヤルを回し、軽快な音楽と共に、処刑へのカウントダウンが始まる。

「What’s the next stage?」

「変身」

「Dual up! Perfect Puzzle!!」

本来ならバグスターが扱っていたガシャット。
だが、宝生永夢は、一度変身したことがある。


「人を殺した、お前の運命は俺が決める」
「.....あ......」

永夢は両腕を振り上げ、エナジーアイテムによるパズルを行う。
その刹那、様々な思いがフラッシュバックのように流れた。

“―――それと、もし生きて帰れたら本田珠輝って子に―――伝えて。「ごめんね」って。”


僕のせいだ。
僕が黎斗さんを許さなければ。
この殺し合いは行われなかったのかもしれない。


僕にはもう、医者としての資格はない。


永夢は正確な動作でエナジーアイテムを選択した。
「マッスル化!マッスル化!マッスル化!」

永夢.....パラドクスは、ガシャットをギアホルダーに入れた。
「Dual gashat! perfect critical combo!」
「ぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!母さぁぁぁあああん!!!」

片桐は、這いずりながらも最後まで逃げようとした。
だが、次の瞬間には強化されたライダーキックにより、片桐章馬の肩が、顔が、腹が、爆裂した。

多くの女性を殺してきたサイコキラーは、命を助ける医者であった青年のゲームによって、命を落とした。

【片桐章馬@仮面ライダークウガ(漫画版) 死亡】

「........」

心が震える。
パラドクスから変身を解除した永夢は、自分の殺した相手、片桐章馬の肉片をじっと見つめた。


「……あなたは……一体、何がしたいの?」

そこに、一部始終を見ていた少女がようやく公園に入ってくる。
桃は、変身を解除し、しかし永夢を理解できないような物を見つめるような――

黎斗やかつて敵対した魔法少女、那由多誰何と同じ位置に存在するものを見るかのような、恐怖の目で見る。

「これで、僕も黎斗さんと同じ罪を背負いました。」

永夢は空洞のような顔で笑い、そして、桃にこう告げた。

「僕は、黎斗さんがもう蘇らないように、消さないといけない。」

今ここに。宝生永夢の水晶は、完全に暗黒と化した。


765 : 後悔のParadox ◆4Bl62HIpdE :2022/07/24(日) 15:59:35 9Fj9e.C.0

【B-5(南側住宅街)/一日目/深夜】

【宝生永夢@仮面ライダーエグゼイド】
[状態]:肉体へのダメージ(中)、疲労(大)、ストレス(大)
[装備]:マイティアクションXガシャット、ゲーマドライバー(破損)@仮面ライダーエグゼイド、ガシャコンブレイカー@仮面ライダーエグゼイド、ガシャットギアデュアル@仮面ライダーエグゼイド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1
[思考:状況]基本方針:黎斗さんを消す。…僕にはもう、医者としての資格はない。
1:この決闘ゲームを攻略する。まずは目の前の人(桃)と話す。
2:黎斗さんと対峙したら、データが保存されているプロトガシャットごとこの世から消さなきゃいけない。
3:......照さんを、救えなかった。
4:全てが終わったら、可能な限りこの人達(清子、まどか)の遺体を元の世界に帰してあげたい。
[備考]
※参戦時期はアナザー・エンディング、ゲンムvsレーザー終了後からの参戦です。
※ゲーマドライバーは片桐によって基盤が出て大きな傷が付いているぐらいに傷つけられており、修復しない限りドライバーを使っての変身はできません。


【千代田桃@まちカドまぞく】
[状態]:左手に裂傷、内臓損傷(中)、額と腹に幾つか殴られた痕、まどかを守れなかった悔しさ、永夢への恐怖
[装備]:ハートフルピーチモーフィングステッキ@まちカドまぞく
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本方針:私が守りたい街角の人達を最優先で探す。その後会場からの脱出、もしくは打破。
1:シャミ子、良ちゃんとの合流を最優先。....もし、清子さんのことを聞かれたら.....
2:目の前の人(永夢)に対する疑心。助けてくれたのは事実だけど信用していいんだろうか.....
[備考]
※参戦時期は2度目の闇堕ち(アニメ2期8話、原作45丁目)以降です


※B-5エリアの公園・出口に続く住宅街に片桐章馬・鹿目まどか・吉田清子の遺体・支給品が転がっています。



心が、壊れる。

魔王と融合するという事は、魔王の思考や記憶とも共有するという事。
つまり照は、平行世界に存在する自分自身の記憶を見ていた。

『"私は――私は、私以外の誰かに私を殺させるつもりはない!"』
「....羨ましいな」

照は、七賢者に封印されそうになる中でそう言い切った別の世界の自分を、本当に羨ましく感じた。

「私は....自分で自殺しようとしたけど、できなかったから、流されているだけ。....はは」

『そう言うな、照。吾輩はもう一度会えて嬉しいぞ?』

照の中から、いや照の顔が勝手に動き、喋ってくる。
声の正体は、かつて照と融合した魔王だった。

「....黙ってて」

『まぁまぁ。吾輩にも檀黎斗の手によって現在の状況がCDにインプットされててな。今は照、お前としか融合出来んようになってるらしい。謂わば運命共同体なう。』

「.....」

『そんな運命共同体から忠告させてもらうが....お前、自分を殺してもらう為に継国縁壱を探しているな?』

「....なんで」

『そりゃ融合してるし、吾輩はお前だからな。簡単には死ねないと思って、諦めたか?』


766 : 後悔のParadox ◆4Bl62HIpdE :2022/07/24(日) 16:01:04 9Fj9e.C.0

事実、照は、ジョーカーである継国縁壱を探していた。
圧倒的な力を持つ黎斗が放ったマーダーなら、魔王となった自分を殺してくれると考えていたからだ。

「あなたこそ、前に自滅願望に付き合わされる気はないって言ってなかったっけ?ふよんふよんの魔王さん」

『あの時はな。だが、今は状況が違う』

「.....どういうこと........?」

『吾輩にも復活という叶えたい願いがある。照、お前は....殺されること以外にも、願いがあるな?』

魔王は照の心を見透かしたように発言した。
「.....わたしは」

ふと、思った。
もし、わたしが生まれてこなければ。
誰にも迷惑を掛けずに、いや自分はこんな思いをしなくてよかったんじゃないか。

『それがお前の願いだ、照』

「.......魔王さん」

『「自分が産まれてこなかったことにする」ことも、立派な願いだと吾輩は思うぞ?....どっちが先に願いを言うかは、競争になるがな』


照は、黎斗が言ったことを思い出す。
死者を蘇らせることができるなら、そもそも生まれてこなかったように歴史を改変する事も、出来るのではないか。

「"私は、私以外の誰かに私を殺させるつもりはない"、か」

『そうだ、それまでの共闘だ。よろしくな、照』

「うん――ありがとう。」

人を殺すのは、こんなに不快な気持ちだと知った。
その気持ちを何度重ねれば、私は生まれずに済むのだろうか。

「もういいや、テルさんは大魔王。あははっ」

融合体は、当ても無く道を進んでいった。
その先に居るものを屠るのか、あるいは命を奪われるのかも知らないまま。

ふと、自分を助けてくれた青年と少女、そして病院で「生きててください」って言っていた金髪の少女の姿が頭をよぎったが――直ぐに消えていった。

【C-5/一日目/深夜】

【百武照@ステラのまほう】
[状態]:変身中(魔王と融合)、強い希死念慮(極大)、疲労(大)
[装備]:SNS部のゲームCD@きららファンタジア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考:状況]
基本方針:優勝して、たまたまちゃん達の世界を自分が産まれてこなかった世界にしたい。
1:人を殺すのって、こんなに不快な気持ちなんだ
2:魔王さんと一緒に目ざわりな参加者を皆殺しにする。
3:...エムせんせい、これでいいんだよね
[備考]
※参戦時系列は原作10巻、星ノ辻高校の屋上から飛び降りる直前です
※優勝した時の願いは「ステラのまほうの世界から自分ごと存在を抹消し、自分が産まれてこなかった世界にする」事です


767 : 後悔のParadox ◆4Bl62HIpdE :2022/07/24(日) 16:01:52 9Fj9e.C.0


【支給品(意志持ち込み)紹介】
【ハートフルピーチモーフィングステッキ/フレッシュピーチハートロッド@まちカドまぞく】
千代田桃に支給。変身用のステッキと、魔法使用用の武器であるロッド。
本来では桃は変身卍句の使用にコンパクトも使っていたが、主催側の支給品削減の為かステッキのみで変身が可能となっている。
花家大我の例と同じく、変身した時の武器セットで一つとして支給されている。

【ガシャットギアデュアル@仮面ライダーエグゼイド】
片桐章馬に支給。
単体で使用することにより仮面ライダーパラドクスLv50 パズルゲーマー/ファイターゲーマーに変身が可能。……だが、片桐は自身のアギトの力を信じていたため使わなかった。

【魔王(SNS部のゲームCDに封印)@きららファンタジア】
きららファンタジアイベント「SNS部と復活の魔王」で登場した(自称)魔王。
エトワリアで太古から何度も復活と封印を繰り返していた所、遭遇した平行世界の百武照と融合、復活した。
過去より大迷惑な災害を引き起こしただけのことはあり、エトワリアの幹部クラスである七賢者を圧倒し、クリエメイトを秒で消し炭にできると豪語するなど相応の力を持つ。
照と融合した場合の主な攻撃手段はコートから伸びた猫のような腕による近接戦、眼球や手から発射する魔法のビーム、飛行能力(制限あり)。


768 : 後悔のParadox ◆4Bl62HIpdE :2022/07/24(日) 16:02:07 9Fj9e.C.0
投下終了です


769 : ◆2dNHP51a3Y :2022/07/24(日) 19:23:45 g3X0LoQg0
桜ノ宮苺香、吉田優子で予約します


770 : ◆P1sRRS5sNs :2022/07/24(日) 20:24:59 FnyY40D.0
すみません、投下の延長をします


771 : ◆QUsdteUiKY :2022/07/25(月) 00:10:52 WFkt0Re20
予約期限を数時間過ぎてしまって申し訳ありません、期限を過ぎたので一度予約破棄します
近日中にゲリラ投下という形で投下する予定です

それと書き手ルールを追記します

・支給品で出せるアイテムについて
基本的には参戦作品と既に支給品だけでも出ている作品のみ。ただし平成仮面ライダーの変身道具についてはどれも大丈夫です。また遊戯王シリーズについてもロワのコンセプト上、どの作品も大丈夫ということにします

・ゲリラ投下、追加予約についてはもちろん大丈夫です。明言しておかないとわからない人もいるとのことなので、一応明言しておきます

・理由付けさえあればカードの創造など「遊戯王シリーズお決まりの展開」は大丈夫です。こちらも質問があったので記載しておきます
・同様に理由付けさえあれば参加者同士の融合・エクシーズなども大丈夫です。

後は感想を
自分は感想を書くのにも結構時間が掛かってしまうタイプなので少しずつ書いていきます。申し訳ありません

>うるさくてキングなやつたちとなんか名前がなくてファラオなやつたち
一見ただのネタキャラに見えてしっかり考察をするうさぎで笑いました
そして黎斗が完璧な存在じゃなくて人間味を感じ取る表遊戯の考察も彼らしくてお見事。
ジャックと遊戯の会話内容がぶっ飛び過ぎててついていけないの、一般人の白鳥はともかく深淵の冥王までポカンとしてるのは草
そして遊戯にデュエルを挑むジャックという展開、ジャックならそりゃこうなるよな!っていう感じがすごい。武藤遊戯という存在が知れ渡っていて、遊星という共通の知り合いがキッカケで始まった遊戯とジャックのやり取りは遊戯王のクロスオーバーものとして本当に面白い

>うさぎが遊戯にデュエルディスクを突き出す。使えと言っているのだろう。
>「やめろ、うさぎ……借り物のデッキを使った奴に勝ったところで、意味はない」
>「ハァ?」
>武藤遊戯程の相手に挑み、勝つのであれば歴代最強と謳われたその魂のデッキでなければならない。
>『男って好きですよねえ、そういうの』

こういうの、いいですよね...。
ジャックから牛尾のことを聞いて笑みを浮かべる遊戯もすごくいい。原作、DMと5D'sでかなりの変化を遂げたキャラだからこそ遊戯王のクロスオーバーで牛尾さんという存在はかなり美味しいんですよね...

>前途多難のエンカウント
冷静に情報を整理した後、感情に突き動かされて駆け出すやちよ。悪手と理解しつつ止められないというのが好きです。
そして戦兎とエボルトのやり取りは普段の彼ららしくて、安定しているとすら思えるのも面白い。こいつら主人公とラスボスなんだけど、平ジェネでエボルトが戦兎に助け舟を出したりと絶妙な関係だから利害が一致してるとこうなるのが面白い
戦兎と協力関係になりつつも色々とややこしくするエボルトがこれまた本当にこいつらしくて。
戦兎は考察面に強いのもまた彼の持ち味。エボルト共々、本当に安定感がある
そして桐生戦兎というヒーローをある意味誰より理解してるのがエボルトというのは本当に皮肉な話だけど、その通り。

>確かに紘汰の死は堪えた。戦友である男が余りにも呆気なく殺され、ショックを受けなかったと言えば嘘になる。
>だけど紘汰は自分の死に悲観するのでも、後悔を口にしたのでもない。
>託したのだ。彼にとっての戦友に、同じく殺し合いを止めるべく奔走する者達に。
>仮面ライダーである戦兎達に。

平ジェネでの繋がりをしっかりと拾いつつ、想いを託された戦兎が奮起する展開が熱くてめちゃくちゃ好きです。
個人的にも平ジェネを意識して紘汰が戒斗だけではなく仮面ライダー達にも託すというネタを書いたので、拾ってくれて嬉しいです

>ここからは彼らのステージだ。

ここで鎧武の決め台詞をさりげなく入れてくるのも良かったです。


772 : ◆QUsdteUiKY :2022/07/25(月) 01:32:30 WFkt0Re20
投下します


773 : 力を持った意味を求めて、戦う為の理由を探した ◆QUsdteUiKY :2022/07/25(月) 01:33:53 WFkt0Re20
『ふざ、けんな!力なんて無くても、変身出来なくても―――俺は最後まで戦う!!』
『それが俺たち―――仮面ライダーだからだ!』

 鎧のような仮面ライダーに変身していた男が口にしていた言葉を橘は思い返していた。
 仮面ライダー。それは橘朔也という男を語るに欠かせない単語だ。そして彼の友―――剣崎一真を語ることにも。

「仮面ライダーか……」

 あの放送で色々なことがあった。
 神を名乗る男、未知の仮面ライダー、理不尽に命を散らされた少女。運試しのゲームという名目で行われた殺戮。
 幸い自分とリゼは生き残ることが出来たが―――放送で見たあの様子からして、あの男は本当にあの一瞬で何人もの命を奪ったのだろう。

 当然、主催者達に対して怒りという感情が芽生える。様々なことが起こったが―――剣崎のように正義感に溢れた仮面ライダーが殺されたことがなにより橘の心を燃え上がらせた。
 きっと剣崎が参加していても、彼と同じようにゲームマスターに挑んでいたのだろう。勝ち目を失っても、仮面ライダーとして必死に戦ったのだろう。

 そんな剣崎と似た志を持った仮面ライダーを失った。
 それだけじゃない。自分が何も出来ていない間に、多数の命が失われた。
 その悲しみが怒りと変わり、心に火が灯される。

 仮面ライダー鎧武―――葛葉紘汰。
 神を名乗るゲームマスターはあの勇敢な仮面ライダーのことをそう呼んでいた。
 橘朔也は葛葉紘汰のことを絶対に忘れない。彼の意志を無駄にしないためにも、このバトルファイトにも似たゲームを終わらせることを改めて誓う。

「橘さん。今すぐ私を鍛えてくれ!!」

 怒りという感情。それは橘だけでなく、リゼも同じだ。しかし彼女の場合、橘とは違い「覚悟」よりも「友を殺された純粋な怒り」なのだが……。

 力を得た彼女はゲームマスターに対する恐怖よりも怒りが上回った。なにより自分の友達であるマヤがあんなふうに殺されるところを、まるで見せしめみたいに放送されて平常心が保てるわけもない。

「ああ。もちろん鍛えるが……」

 橘はリゼの様子を注意深く見る。
 今の彼女は明らかに怒りという感情に支配されている。
 怒りとは恐怖の克服にも繋がり、決してその感情が悪いというわけじゃない。橘だって大切な者を失った際に怒りによって恐怖を乗り越え、強敵を倒したことがある。

 だが今のリゼの様子は明らかにおかしい。
 まるで怒りという感情に囚われ、それに支配されているようだ。

 どう考えても良い状態ではない。負の感情に支配されたら判断力が鈍くなり、迷走してしまうことを橘は身をもって理解している。
 それに焦燥感に駆られてることも見て取れる。まずはリゼを落ち着かせることが先決だと考えた。

「頼む、橘さん。私はみんなを守らなきゃいけないんだ……!」

 名簿は確認した。
 ココア、チノ、メグ―――。
 リゼの友達の名前が三人もあった。
 そしてマヤは――――殺された。

 名前も知らない金髪の偉丈夫に――リゼの友達は殺された。

 彫刻のように鍛え抜かれた肉体。
 モニター越しにも伝わってくる、まるで神の如き圧倒的な存在感。
 そして槍の一振りで未知のモンスターを呆気なく破壊する、途轍もない力。

 はっきり言って勝てる気がしないくらい、相手は規格外の化け物だ。
 そんなことはわかってる。もしもマヤの仇じゃなければ、あんな怪物とは戦いたくない。

 ――――それでも私がやらなきゃ、ダメなんだ。ココアも、チノも、メグも……誰も殺らせない。戦わせたくもない。だからマヤの仇は、私が取らなきゃダメなんだ……!

「一つ聞かせてくれ、リゼ。君はどうしてそんなに焦ってるんだ?」

 相手を落ち着かせるには、まずは原因を探るべきだ。橘はリゼに問い掛ける。

「……橘さん、仮面ライダーは大切な人を守れないことも多いって言ってたよな」
「ああ。それがどうした……?」

 たしかに自分はリゼと出会った時に仮面ライダーについてそう語った。それは間違いのない事実だ。
 怒りと焦燥感にこそ苛まれているが、リゼは昔の橘ほどおかしくなっているわけじゃない。
 とりあえずまともに対話が出来ることはありがたいが、リゼの言っていることはどういうことだろうか?

『橘さん。私もみんなを――友達を守りたいんだ』
『頼む、橘さん。私はみんなを守らなきゃいけないんだ……!』

 リゼの発言を思い返す。
 彼女は一貫して友達を守りたいと口にしていた。
 そして葛葉紘汰が散ったゲーム開催の儀――あの時、何人もの命が失われた。

「まさか――友達が殺されたのか?」

 リゼの様子に変化があったのはあれ以降だ。


774 : 力を持った意味を求めて、戦う為の理由を探した ◆QUsdteUiKY :2022/07/25(月) 01:34:49 WFkt0Re20
 必然的に答えは導き出される。これだけ判断材料があれば、否が応でもわかってしまう。

「ああ。そのまさかだよ、橘さん。金髪の男に殺されたのが、私の友達のマヤだ」

 ――――私は橘さんの言葉を肯定する。
 そうだ。私は大切な友達を……マヤを殺された。
 マヤの上半身と下半身が離れ離れになる瞬間を、この目で見た。
 いつも元気に笑ってたあいつが恐怖に震えて、殺されるなんて――――そんなの絶対に見たくなかったのに。

 だからアレを見た瞬間――――私はあの金髪の男を倒すことを考え始めたんだ。
 私は絶対にあいつを許さない。それにあいつが居る限り、犠牲者は増え続ける一方に違いない。
 それなら私が倒すしかない。ココアとチノとメグを守るために、私があの化け物を倒すんだ。そしてマヤの仇を取ってやる。

 もう二度とマヤと触れ合うことは出来ない。
 もう二度とチマメ隊が揃うことはない。
 もう二度とみんなで遊ぶことは――――。

「ああああああ!!!」

 ――――絶叫。
 もうマヤと遊べないって考えたら、いつの間にか私の喉から感情が溢れていた。

「リゼ……」

 橘さんが心配そうに私の方を見てくる。
 もしかしたら気でも狂ったと思われたのかもしれない。でも私自身、今の自分が正気かはわからないから、そう思われても仕方ないとは思う。

「君の気持ちはわかる」
「なに言ってるんだよ、橘さん。今の私の悲しみや憎しみが橘さんにわかるっていうのか……!?」

 橘さんは私に気遣ってくれてるだけだ。
 そんなことはわかってるのに、知ったふうな口を利かれて、つい八つ当たり気味に言ってしまう。
 だが橘さんの反応は――――意外なものだった。

「わかるさ。――――俺も大切な人を殺されて、この手で仇を討ったことがあるからな」

 仇討ち。それは私が今、目標としていることの一つだ。
 もちろん最優先事項はみんなを守ることだ。あの金髪を殺してもマヤは戻ってこないから。

 それでも私はマヤの仇討ちをしてやりたい。戦場で命を落としたマヤのために私が出来ることは、それしかないんだ。

 ――――そしてこの時の橘さんは、嫌なことを思い出すような苦い顔をしていた。
 その表情が橘さんの言葉が嘘じゃないことを証明してる。
 橘さんはきっと……ほんとに悪い人じゃないんだろうな。

「悪い、橘さん。私が言い過ぎた……」

 失礼なことを言ってしまった橘さんに謝罪する。
 ――――落ち着け、私。

 橘さんに八つ当たりしても状況は何も変わらないはずだ。
 それに橘さんにはきっと嫌なことを思い出させた。

『……大切な人は守れないことも多いけどな』

 橘さんが言ってたのは……きっとこういうことだったんだろうな。
 大切な人を殺されて、自分の手で仇討ちをした。
 結果的に仇討ちに成功したけど、大切な人は守れなかったんだ……。

 だからマヤを失った私の気持ちも、橘さんにはわかるはずだ。
 それなのに私は橘さんに八つ当たりみたいに突っかかって……ほんとに自分が情けない。

 冷静になれ。私が取り乱したら、ココアやチノやメグと再会してもみんなを不安にさせるだけだ。


775 : 力を持った意味を求めて、戦う為の理由を探した ◆QUsdteUiKY :2022/07/25(月) 01:36:05 WFkt0Re20

「大丈夫だ。……色々とあって迷走してしまう気持ちも俺にはわかる」

 迷走。
 私はたしかに迷走しかけていた。橘さんがブレーキになってなければ、感情的になってあの金髪を見つけ次第、無謀にも突っ込んでたかもしれない。

 ……でもそれじゃダメなんだ。あいつを倒してもマヤは生き返らない。もちろん仇は取ってやりたいし、あいつは危険人物だから倒すべきだと思う。そのためにはあいつを倒せるくらい強くなる必要がある。

 今の私があいつと戦っても、結果は見えてる。それは実力的にもそうだし、精神のブレは戦場で命取りだ。

「リゼ。君には守りたい友が居ると言ってたな」
「ああ。私は強くなって、みんなを守りたい」

 そうだ。私が一番優先するべきことは、仇討ちよりもみんなを守ることだ。
 マヤを殺したあの金髪は許せないけど――まずはみんなを守るために強くなるんだ。

「俺は色々と失ってきた。最後に残った友すらも……運命と戦うために人であることを捨てた」

 そして橘さんは自分や剣崎一真――仮面ライダーブレイドについて語り始めた。

 仮面ライダーは人々を守る存在だって橘さんは言ってたけど、それを体現してるのがその剣崎さんらしい。
 ほんとに正義の味方を絵に描いたような人で、ヒーローらしいヒーローだった。
 橘さんから聞いた話でしか人柄はわからないけど、私は剣崎さんに敬意を表する。

 でもそれ以上に印象に残ったのは――全てを失った橘さんの壮絶な人生だ。
 信じるべき正義も、組織も、愛する人すら失ったのに、そこから更に大切な友達まで失うなんてあんまりだろ……!

「リゼには俺のようになってほしくない。だから君がこれ以上大切なものを失わないように、俺も最大限の協力をしよう」

 今まで散々、大切なものを失ってきたのに。
 それでも橘さんはへこたれず、このゲームの優勝景品にも興味を示さないで私に協力することを選んでくれた。
 願いを叶えたら剣崎さんを人間に戻すことも、愛する人を取り戻すことだって出来るはずなのに。

 橘さんは信じるべき正義を失ったって言ってたけど――――きっとこの人の心から、正義は消えてないんだ。
 だから迷うことなく、ハデスやゲームマスターを倒すことを選んでくれた。
 剣崎さんと同じで橘さんも立派で一流の仮面ライダーなんだ。

「ありがとう、橘さん。やっぱり橘さんは一流の仮面ライダーだな……」
「いや、俺は一流なんかじゃない。こんな情けない俺のせいで愛する人を失ったんだ。
 ……だがリゼを特訓して、君の友達を守るくらいはしたいと思ってる」

 そんなことをしても橘さんには何の得もないのに、橘さんはそれが当たり前かのように言ってくれた。
 ――――そういうところを私は『一流の仮面ライダー』だと思ったんだが……本人は気付いてないらしいな。

「なあ、橘さん。橘さんはどうしてみんなを守ってくれようとしてるんだ?」

 なんとなく答えはわかってるけど、橘さんに質問を投げ掛けてみる。


776 : 力を持った意味を求めて、戦う為の理由を探した ◆QUsdteUiKY :2022/07/25(月) 01:37:12 WFkt0Re20
 そしたら期待通りの返事が来た。

「――それが仮面ライダーだからだ。剣崎や葛葉紘汰だって、きっとこうするに違いない」
「葛葉紘汰?」
「ああ。それがゲームマスターに挑んだ、あの勇敢な仮面ライダーの名前だ」

『ふざ、けんな!力なんて無くても、変身出来なくても―――俺は最後まで戦う!!』
『それが俺たち―――仮面ライダーだからだ!』

 マヤのことで頭がいっぱいになってたけど、あの仮面ライダーのことは覚えてる。
 名前は忘れてたけど……たしかにあの仮面ライダーは橘さんと同じで、何も見返りを求めずあんな反則染みた相手に立ち向かってた。

「なるほど。それが仮面ライダーっていう生き方か……」

 何も見返りを求めないで、正義の道を歩むヒーロー。それが仮面ライダーっていう存在らしい。

「仮面ライダーという生き方か......。たしかに仮面ライダーはもう職業というより、生き様なのかもしれないな」

 橘さんが私の言葉を肯定する。
 本人は気付いてないのかもしれないけど、私からしたら橘さんも立派な一流の仮面ライダーだ。

 だから信用もしてるし、この人とならこのゲームをなんとか出来そうな気がしてくる。
 そして橘さんに鍛えてもらえば――――

「......私もみんなを守れる仮面ライダーになれるかな」
「それは俺にもわからない。だがリゼが大切な友達を守りたいなら......仮面ライダーになれるように俺が君を本気で鍛えよう」

 大切な友達を守る、か......。
 色々なものを失った橘さんがそんなことを言うと、やっぱり重いな。

 でも私にも引けない理由がある。ココアとチノとメグを守ってやりたい。マヤみたいに大切な友達を失うのは、もう御免だ。

「ありがとう、橘さん。――――じゃあみんなを守る仮面ライダーになるために私を鍛えてくれ」

 気合いを入れて、真っ直ぐと橘さんの目を見て頼み込む。
 それだけで私の想いが伝わるかわからないけど......伝わってくれ......!

「わかった。リゼが立派な仮面ライダーになれるように俺も全力を尽くそう」
「ほんとか......!?」
「ああ。そのためにもまずは、ある場所へ向かう。ついてきてくれ」
「なるほど、特訓するための施設か!わかった!」

 意気込んで橘さんについていくと――――そこにあったのはまさかの建物だった。

「ここだ」
「ここだ――って言われても、これはただのバッティングセンターじゃないか?」

 そこはどこからどう見てもバッティングセンターだった。

「そうだ。まずはここで基礎訓練を行う」

 基礎訓練を行うって......まさか橘さんはバッティングセンターで何か特訓する気なのか?バッティングセンターでする鍛錬ってなんなんだ……?
 困惑する私をよそに橘さんはバッティングセンターの中に入った。まあ仮面ライダーとして戦ってた橘さんが言うなら間違いないはずだ……。私もバッティングセンターに入ることにした。

「まずは動体視力を鍛えるための訓練だ」

 橘さんは店員用のマジックペンを勝手に拝借すると幾つかのボールに数字を書いて、時速150kmのピッチングマシンに装填した。

 この人はいったい、何をしてるんだ......?
 150kmのピッチングマシンでとりあえず動体視力を鍛えるならわかるけど、わざわざ数字を書いた意味がよくわからない。

 そしてどうして橘さんはバットすら持たないんだ……?もしかして忘れたのか?


777 : 力を持った意味を求めて、戦う為の理由を探した ◆QUsdteUiKY :2022/07/25(月) 01:37:50 WFkt0Re20
 まあ鍛えてもらうんだし、文句ばかり言うのも悪いよな。とりあえず適当にバットを持ってきて……。

「…...ってバットも無しに開始するのか!?」

 橘さんはバットすら持ってないのに、ピッチングマシンを作動させた。正気か……!?

 そもそもバッティングセンターってバットでボールを打つための場所だよな?まさか私の常識が間違ってたのか……!?
 私が困惑してたら遂にピッチングマシンからボールが飛んで来て――――

「3!」

 いきなり橘さんが数字を叫んだ。……ほんとに何をやってるんだ、この人。
 でも素手で時速150kmのボールをキャッチしたのは流石だ。意味不明なことをしてるけど、やっぱり橘さんは一流だな!

「あれ?もしかしてこのボールの数字……」
「その通り。3だ」

 橘さんはキャッチしたボールに書かれた数字を私に見せてきた。3ってそういう意味だったのか……!

「リゼにはまずこの基礎訓練をしてもらう。150キロのスピードボール。そこに書いてある数字を読み取るんだ」
「これが仮面ライダーの基礎訓練か!わかった!!」

 ピッチングマシンから発射されたボールを冷静に観察する。――ダメだ、全然見えない。
 一見よくわからない訓練だけど、実は難易度が高いっていうことか。

「5!」

 なんとなくボールに書かれた数字が読めた気がして宣言。そしてなんとかボールをキャッチ……!

「――ッ!すごい威力だな、流石は150キロのボールだ!!」

 橘さんは難なくキャッチしてたけど、実践してみてその凄さがよくわかる。そしてボールの数字は7――つまり私の失敗だ。

「そうだ、頑張れリゼ。友達を想うその気持ちが君を強くするはずだ」

 友達を想う気持ち――――。
 それが今の私の原動力で、戦う理由だ。
 橘さんの言葉に背中を押されて、私は何度でも挑む。私はみんなを守るんだ、こんなピッチングマシンに負けてたまるか!

 ――――この時の私はみんなを守るために訓練することに必死で、名簿にココアの名前が二つもあることに気付いてもなかった


【F-2/一日目/深夜】
【天々座理世@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:健康
[装備]:リゼ専用スピアー@きららファンタジア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:橘さんと一緒に黒幕を倒してみんなを助ける!
1:橘さんに特訓してもらって、みんなを守れる仮面ライダーになる。まずは基礎訓練だ!
2:ココアとチノとメグは私が守るんだ!
3:マヤを殺した金髪の男は間違いなく危険人物だ。いつか私が倒してマヤの仇を取ってやる
[備考]

【橘朔也@仮面ライダー剣】
[状態]:健康
[装備]:ギャレンバックル@仮面ライダー剣
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:剣崎の分まで人々を助ける。ゲームマスターも倒す
1:リゼは俺が守る
2:リゼに戦い方を教える。まずは基礎訓練をさせる
3:決闘者の意味すら知らない参加者まで集められてるのは、どういうことだ?
4:葛葉紘汰......。君の名前は忘れない
[備考]
最終回後からの参戦

『施設紹介』
【バッティングセンター@現実】
F-2エリアに存在。何の変哲もない普通のバッティングセンター。


778 : ◆QUsdteUiKY :2022/07/25(月) 01:38:08 WFkt0Re20
投下終了です


779 : ◆ytUSxp038U :2022/07/25(月) 17:39:04 j2AjiOaw0
投下します。


780 : オレはダレにも止められない ◆ytUSxp038U :2022/07/25(月) 17:40:43 j2AjiOaw0
「何なんだよ、アイツら……」

上空を睨み付け、不機嫌を露わにした声で吐き捨てる少女がいた。

磯野と名乗ったサングラスの男による決闘開始宣言後、深月フェリシアが出会った参加者は一人。
飛電或人、そう簡潔に名前を告げ、ある男の情報を求めた参加者。
探し相手に並々ならぬ憎悪を抱いているようではあったが、殺し合い自体には否定的。
同じくフェリシアも他者を殺して生き延びようとする少女でもなく、両者の間に戦闘は起こらなかった。
尤も向こうの殺気立った様子に声を掛けられず、去って行く姿を黙って見送るだけで終わったのだが。
何とも言えないモヤモヤを抱えたまま、頭の後ろで腕を組みぶらぶらと歩いて数十分が経過した頃だろうか。
突如空一面に巨大なモニターが浮かび上がったのは。
画面いっぱいに黎斗とかいう男のドヤ顔が映し出された時は、ついついイラっときてハンマーを投げ付けたくなったがどうにか我慢。
その直後、次から次へと人が殺される様が流れ凍り付くフェリシアを嘲笑うかのように気付けばモニターは消えていた。

「…あぁーっ!クソッ!ほんっとに気にいらねぇ!」

溜まりに溜まったムシャクシャを吐き出すように叫ぶ。
別に自分を正義感溢れる魔法少女だなんて思ってはいない。
みかづき荘で暮らす前は金銭を対価に魔女を狩る傭兵稼業をしていたし、綺麗ごとだけで世の中が回らないくらい理解しているつもりだ。
だけどあんな風に、魔法少女でも無い、本来なら戦いとは無縁のやつが殺されて。
ふざけた自称神に立ち向かった勇敢な青年の死を見世物のように扱われて。
あくまでゲームの一環という名目で命が踏み躙られて、それで何も感じない程冷めてもいない。
いろはからは我慢する事を教えられたけど、あの映像を見て尚も耐えるのは無理そうである。
魔女を利用していたマギウスの翼より尚も酷い、純粋な悪意の塊のような奴らだ。
今すぐにでも黎斗達を一人残らずぶっ飛ばしてやりたいが、連中が何処にいるのかはまるで見当が付かない。
或人との出会いにより妙にモヤモヤしていた気持ちが、放送のせいで余計にささくれ立つ。
堪え切れない苛立ちに身を任せ、もう一度足元の小石を思い切り蹴飛ばした。

暫くはイライラを解消するように地面を蹴り、時にはうがーっと叫んでみたり。
その甲斐も空しく、却って自分が馬鹿をやっている気になっただけだが。
未だ胸の内にはモヤモヤしたものが燻ってはいれど、何時までもこんな事を繰り返してる場合でないとも分かってはいる。
ぶすっとした表情のままデイパックを乱暴に開き食料を取り出した。


781 : オレはダレにも止められない ◆ytUSxp038U :2022/07/25(月) 17:41:45 j2AjiOaw0
(とりあえず食うか…)

食べて空腹を紛らわせれば少しはマシになるかもしれない。
両親が死んでからはその日の朝食を手に入れるのにも苦労していた為か、食べる事は誰よりも好きだ。
包装を開いてハンバーガーを取り出す。
少し冷めてはいるけど、濃い目のソースはフェリシア好みの味。
その筈なのにどうしてだろうか、今はあんまり美味しいとは思わない。
むしろ今はいろはの作った薄味の料理の方が妙に恋しく感じる。
大好きな肉のハンバーグを食べているのに、いろはの豆腐ハンバーグの方が食べたくて仕方ない。
折角のハンバーガーも微妙な気分になってしまい、水で無理やり流し込んで食事を終わらせた。

口元を乱暴に拭い、次いでタブレットを取り出す。
さっきの放送は気に入らない事ばかりだったけど、必要となる情報もあった。

「名簿が見れるとか言ってたよな」

最初に会場へ立っていた時にも試したが、その時は白紙のままだった。
今なら誰が参加しているかを確認できるとのこと。
どうにも嫌な予感がしながらもアプリを起動、ずらりと並んだ名前に目を通す。
すぐにタブレットを持つてに力が籠る。嫌な予感が早速的中してしまった。

「いろは…!やちよもいるのかよ…!」

薄々気付いてはいた事だ。
自分一人が巻き込まれているのは少々不自然、親しい魔法少女もここにいるのではと。
案の定だ、大切な仲間である二人まで参加させられている。
おまけに見滝原の魔法少女、鹿目まどかの名もあった。
鶴乃とさな、それにまどかの仲間で自分とも縁のある佐倉杏子は難を逃れたようで、彼女達は不参加なのが唯一の幸いか。

代わりにいろはとやちよ以外にも、無視できない名前が載っていたが。

「何で白いねーちゃんとマギウスの奴らが……」

梓みふゆ、里見灯花、柊ねむ。
三人とも既にこの世にはいない、ソウルジェムが砕け散り死んだ筈の魔法少女。
名簿にあった名前が誰か一人だけなら、同姓同名の別人という線も無くは無かっただろう。
しかし三人も載っていれば幾ら何でも別人は不自然。正真正銘本人達が参加していると考えるべきだ。
問題は死者である彼女達が参加者としてフェリシアと同じ地にいる事だが、ここで思い出すのは一番最初の光景。
主催者達が言っていた、どんな願いでも叶えるという言葉。
あの時は気にする余裕も無かったが、もしあれが出鱈目ではなく真実だとしたら。
本当にどんな願いも叶えられると言うのなら、死者を生き返らせる事も可能。


782 : オレはダレにも止められない ◆ytUSxp038U :2022/07/25(月) 17:42:52 j2AjiOaw0
(なら白いねーちゃん達は本当に生き返ったのか…?)

考えてみれば既に自分達魔法少女は、キュゥべえという存在と会っている。
アイツは魔法少女に関する重大な事実を隠していたが、願いを叶える能力は本物だった。
だったらキュゥべえ以外にも、そういった力を持つ存在がいても何らおかしくはないのかもしれない。
本当に死者を生き返らせるのが可能なら、いろはとやちよの、フェリシアの望みだって叶えられるのではないか。
いろはは妹を、やちよは昔のチームメイトを、そして自分は両親を取り戻せる。
そうすればみかづき荘には前のような明るい雰囲気に――

「っ!?な、何考えてんだよオレ……」

願いを叶える、つまり最後の一人に勝ち残る。
自分が思い浮かべたもおぞましさに慌てて我に返った。
あんな連中の言い成りになるなど真っ平だし、いろは達を傷付けるなど死んでも御免だ。
大体願いを叶えるという言葉を素直に信じられるものか。どうせキュゥべえと同じくこちらを都合よく動かす為の甘言に決まっている。
馬鹿げた考えを振り払うように頭をぶんぶんと振るう。

「人間の子ども、か」

ぴたり、唐突に掛けられた声に動きを止めた。
聞こえて来たのは背後からだ。
気付かれないように近付いた、というよりはフェリシアに気付く余裕が無かったと言うべきか。
周囲の警戒という基本的な事すらも頭から抜け落ちていた自分に、内心で舌打ちする。
いろは達が参加している事や死者の蘇生などに気を取られ過ぎた。
自らの迂闊さを長々と悔やんでいられる場面でも無い、先手を取られる形となったが現れた者へ対応せねば。
念の為、何時でも魔法少女へなれるよう警戒しながら振り向く。
声で男だとは分かったがその通りだ。全身を黒に包んだ茶髪の青年がそこにいた。

「…んだよ、子どもで悪かったな」

不躾な物言いに、こっちも不機嫌を隠さず言い返す。
初対面の相手にする事では無く、いろは達がいたら窘められそうだが先に言って来たのは向こうだ。
相手の男はフェリシアの言葉に機嫌を損ねた様子は無い。
かと言って友好的なソレとは程遠い、見ていて不安になるような冷めきった表情。
自分はこの男を一体どうするべきか考え、ふと相手の姿に奇妙な感覚を覚える。
男とは初対面同士のはずなのに、どこかでこのような人物の事を聞いたような気がしてならない。
目を細くしじっと見つめ、ああと気付く。


783 : オレはダレにも止められない ◆ytUSxp038U :2022/07/25(月) 17:44:40 j2AjiOaw0
「お前もしかして…或人ってやつが言ってた…っ!?」

最初に遭遇した青年が探している男と、外見の特徴が一致する。
もしやこいつがそうなのかと思い口から出た言葉は、途中で遮られた。
男が急に発した殺気によって。

「貴様…飛電或人と会ったのか?」
「…だったら何だよ」
「奴はどこに行ったのか教えろ」
「……」

相手が或人の仲間とかなら隠す理由も無いので教えていた。
だが実際には違う。
男との関係を或人は口にしていなかったが、あの憎しみに染まった瞳を見れば察せられる。
黒づくめの男…滅は或人にとって復讐の対象。そして滅の反応からも、或人へは並々ならぬ怒りがあるのだろう。
或人は復讐に燃えていたが殺し合いに乗る気は無かった。では目の前の男は?

「その前にそっちが教えろよ。お前、あの黎斗とかって奴の言う通りにすんのか?」
「…下らん。奴の奴隷に成り下がる気など有りはしない。俺は俺の意思で人類を滅ぼす。檀黎斗、当然あの男もその対象だ」
「は、はぁ?滅ぼすって……お前何言って…」
「もう一度聞く。飛電或人はどこへ行った?答える気が無いのなら――」

言葉を区切り懐から赤い機械を取り出す。
滅亡迅雷.netが使用するフォースライザーとは違うが、その機能は既に把握済み。
躊躇なく腹部に当てると自動認識装置が作動、瞬時にベルトが巻き付いた
本来ならネビュラガスが注入されていな滅では使用可能であるが、ゲームマスターによる調整を施された為に無問題。
続けて二本のボトルを取り出した。

『COBRA!』『RIDER SYSTEM!』

『EVOLUTION!』

エボルボトル装填を認識した事を知らせる音声。
青いグリップの持ち手を握り締め、勢い良くレバーを回す。
回転する度に中枢ユニットから特殊な微小体が、エボルボトルの成分を取り込んで大量に増殖する。
パイプオルガンのような荘厳な音声が鳴り響く中、生成装置が展開。
全ての準備が整った。


784 : オレはダレにも止められない ◆ytUSxp038U :2022/07/25(月) 17:45:35 j2AjiOaw0
『Are You Ready?』

「変身」

『COBRA…COBRA…EVOL COBRA!』

『フッハッハッハッハッハッハァッ!!!』

赤と黄金に彩られた装飾と、星座盤を填め込んだ頭部。
仮面ライダーエボルへの変身を完了させれば、相手の少女もまた動き出す。

「お前が何考えてんのか全然分かんねーけど…!」

ベルトを使って姿を変えるのは或人や紘汰と呼ばれた青年に続き、見るのは三度目だ。
一々驚きはしない。
滅が何をそこまで怨んで人類を滅ぼそうなどという発想に至ったのだって、こっちには知る由も無い。
ただ一つ、この男を放置すればいろは達にも危害が及ぶ。
それだけハッキリしてるのなら、やる事は決まった。
こいつを憎んでいる或人には悪いが、大切な仲間に手を出されるかもしれないとあっては無視できない。

「オレがここでぶっ飛ばしてやる!!」

ソウルジェムが光を放ち、魔法少女への変身を遂げる。
牛に似た角を生やした頭巾を被り、大胆に腹部を曝け出した衣装を纏い、手には身の丈程もあるハンマーが出現。
既に殺る気満々の相手の出方を待ってやるのは性に合わない。
先手必勝あるのみとばかりに得物を構え突撃。
鎧を纏っていようと関係無し、強力な一撃で粉砕してやるだけだ。
エボル目掛けてハンマーを豪快に振り下ろす。

「ドーン!」

擬音を口に出すのはフェリシアの癖。
相手が使い魔やなり立ての魔女であれば、この一撃で勝利は確定となっただろう。
此度の相手はそう易々と勝利を譲る気は皆無。
迫るハンマーを前にしエボルもまた構える。
スーツ内部を満たす地球外の物質、葛城巧でさえ完全には解析不可能であったエネルギーが変身者の能力を限界以上まで強化。
真っ向から迎え撃つように拳が放たれた。
伸ばした腕にハンマーの進撃は止められ、そればかりか衝撃が得物を握るフェリシアにまで到達。
引っ掛けたワイヤーを巻き取るが如く勢いで、後方へ吹き飛んで行く。


785 : オレはダレにも止められない ◆ytUSxp038U :2022/07/25(月) 17:47:13 j2AjiOaw0
「おっ、わぁ!?」

フェリシアの体は宙を浮き、数秒後には地面へ激突だ。
魔法少女へ変身中なら耐えられると言っても、余計なダメージは回避するに限る。
足場のないまま体勢を整えようと藻掻き、その間にもエボルは動く。
今しがた殴りつけた方とは反対の腕をフェリシアに向けた。

「うぐぅっ!」

宙に浮いたままの状態で固定されたように、フェリシアの身動きが取れなくなった。
原因はエボルが掌から放出したオーラによる拘束。
身動きを封じただけではない、腕を引っ張る動作をすればフェリシアがエボルの方へと引き寄せられていく。
このままでは手痛い一撃を食らうのは確実。

「う…がああああああああああああああああっ!!!」

見えない鎖を引き千切るかのように、全身へ力を込める。
僅かながら動かせるようになった右腕、即座にハンマーを投擲。
全力で投げ付けた時に比べたら威力低下は免れない。
だがフェリシアはみかづき荘の魔法少女の中でも、特にパワーへ秀でている。
不安定な状態からの攻撃だろうと、防御も無しに当たるのは避けるべき。
瞬時に判断したエボルは拘束を解除、身を捩らせハンマーを躱す。
一方で地面を転がり受け身を取ったフェリシア、低い姿勢のまま駆けだし投げたばかりの得物を掴み取った。

「どっりゃー!」

横薙ぎの大振りな攻撃。
巨大なハンマーならリーチは十分、横合いからエボルに叩きつける。
しかし手応えは無い。赤と金の残像を生み出し、エボルはフェリシアの眼前へと急接近。
目の前で握られた拳にフェリシアは猛烈な焦りを覚える。
ハンマーを手元に戻す余裕は無い。巨大さ故に至近距離での取り回しには向いていない。
咄嗟に手放し大きく距離を取る。僅かに遅れて放たれたエボルの拳。
顔に当たる空気がやけに痛いが今だけは無視だ。


786 : オレはダレにも止められない ◆ytUSxp038U :2022/07/25(月) 17:48:49 j2AjiOaw0
「ちっくしょ…!」

相手はパワーもスピードも、これまで戦って来たどの敵より上。
仲間が共にいれば自身の攻撃の隙をカバーしてもらい、或いはコネクトで反撃に移れた。
生憎今はフェリシア一人。
昔のように周りを気にせず単独で突っ込んでいた時の感覚で戦うには、仲間の存在というものを知り過ぎた。
それを嫌とは思ってなどいない。だから仲間に危害を与えるだろう存在を前に逃げも選べない。

新たな得物を手にする。
魔力を消費しハンマーを出現させるのではなく、デイパックから別の武器を取り出した。
黎斗やハ・デスが寄越した物に頼るのは気に入らないが、そんな苛立ちを抱いている場合ではない。

表面をイエローグリーンで彩られた斧。
握り手をしっかりと掴み軽く素振りをする。
ハンマーよりもリーチはずっと短いが、その分近距離での取り回しはこちらの方が幾らか上だ。

斧の名はオーソライズバスター、元は仮面ライダーゼロワン用に開発された可変型武器。
ゼロワンが使うのを想定し設計された為、本来なら人間に振り回せる重量では無い。
尤も魔法少女であるフェリシアには無問題である。

「ドッカーン!いやズッバーンだ!」

先程よりもより近付かなければ攻撃が当たらない。
ロケットのように突っ込んで行きオーソライズバスターを振り下ろす。
厚さ5メートルものコンクリートだって豆腐のように斬り裂く刃、されどエボルの胴体には当たらず両腕に阻まれる。
エネルギー増幅機構により破壊力を高めた一撃だが、エボルの装甲とて見栄えだけの代物ではない。
元々地球外生命体のエボルトが変身していたライダーだけあって、地球上のどの物質よりも優れた耐久性を持つ。
金属同士が擦れ合う音、交差させた両腕を強引に押し出しフェリシアの体勢を崩した。

「っ!!」

すかさずフェリシアの柔らかな体、露出させた腹部を狙う一撃。
当たれば間違いなくぶち抜かれ、そこら中にちと臓物が撒き散らされる。
どう動くべきか選択肢は三つ、防御、回避、迎撃。
即座に選んだのは二つ目の回避、胴体を痛いくらいに捩って躱す。
回避成功を呑気に喜んではいられない、拳を放ったままの体勢で固まる相手へ斧を振るう。
だが敵は反応速度も非常に高いらしい、左腕で防ぎ次いで蹴りを放った。
脚力を大幅に強化された上での一撃、身を大きく屈めて真っ直ぐに伸ばされた足をやり過ごす。
立ち上がるには早い、地面を転がり一度距離を取る。
自分がいた場所が踏みつけられたのは直後のこと、もう少しで地面の染みになる所だった。

最初にハンマーを殴り返された時の一撃を思い出し、防御しても意味は無いと判断。
だからこうして回避へ移ったのだ。


787 : オレはダレにも止められない ◆ytUSxp038U :2022/07/25(月) 17:50:12 j2AjiOaw0
(さっきよりは当て易いけど、アイツ硬過ぎだろ!?)

リーチが短くなった分、至近距離での攻防はやりやすい。
とはいえやはり敵は相当手強い。
自慢のパワーで腕ごと叩っ斬ってやりたかったものの、斧を防いだ両腕はくっ付いたまま。
装甲には小さな傷一つ無し。
厄介をそのまま具現化したような相手に愚痴の一つでも零したくなるが、それで状況が変わる訳でもない。
前の自分なら全然倒せない事に苛立って、頭を沸騰させたままデタラメに突っ込んでいたかもしれない。
ある程度落ち着いて戦況を見れるのも、いろは達と出会ったおかげだろう。

「ならやっぱり…逃げんのは無しだ!!」

仲間を守る為の戦い、そう考えるだけで戦意がより一層溢れ出す。
気合を入れ直すように大きく咆え、エボルへと斬り掛かった。
足が痛むくらいに力を込めての一撃、爆発的な加速で以て叩き込まんとする。

だが足りない。仮面ライダーエボルを相手にその程度は届かない。

「なっ!?」

エボルの姿が消えた。
違う、消えたのではない。フェリシアを拘束したオーラを自身に纏わせての移動。
瞬間移動もかくやと言った速度でフェリシアの背後を取ったのである。

「やべ――」

回避はもう間に合わない。悪手ではあるがオーソライズバスターで防御。
直に受けるよりはマシであろうとの判断、それすら無駄に思える一撃が襲い来る。
体の外も中も振るわせるような衝撃、悲鳴も出せずにフェリシアは殴り飛ばされた。





檀黎斗の放送が滅の考え方を変える事は無かった。
むしろより一層決意が深まった程だ。
人類滅亡、新たなアークを生み出さない為には、悪意を生む人類そのものを滅ぼす以外に道は無い。
神を自称する黒幕が悪意の体現者のなのは明らか。
あの男を生かしておく事は、世界にとって害にしかならない。
黎斗の持つ強大な悪意に魅せられた別の人間が新たなアークへとなりかねない。
ならば滅ぼすのみ。
ヒューマギアの安息の為に、悪意を生みだし、伝染させる存在は滅ぼさねばならないのだから。


788 : オレはダレにも止められない ◆ytUSxp038U :2022/07/25(月) 17:51:47 j2AjiOaw0
だけど唯一、己の使命感とは別の理由で殺したい者がいる。
飛電或人。飛電インテリジェンスの現代表取締役社長にして、仮面ライダーゼロワンの変身者。
滅亡迅雷.netとは幾度となく争い、だが時には助けられ、互いを認め合った青年。
何かが違えば手を取り合う未来があったかもしれないが、今となっては実現不可能である。
向こうは滅への憎悪で新たなアークとなり、滅もまた或人への憎悪でアークへなった。
あの男が自分を破壊するか、自分があの男を殺すか。
どちらか一方の結末以外には有り得ない。
そんな状況を作ってしまったのが誰なのかは十分理解している。
機械には存在しない筈の感情、己に芽生えたモノに恐怖しイズを破壊した滅だ。
人類の守護者であると同時にヒューマギアの守護者でもあろうとした男を、滅が絶望へ突き落とした。
新たなアークが生まれる原因を、他ならぬ滅が作ってしまった。
だが悪意とは連鎖するもの。
故意でないとはいえ或人に迅を破壊された事で、ようやっと己に芽生えた心を理解。
或人とは対を為すアークとして、人類滅亡の聖戦を改めて始めようとした矢先に、檀黎斗主催のゲームへ招かれた。

最初に見つけた赤と青の仮面ライダーが乱入者と共に逃げた後、天空に巨大モニターが出現。
またしても殺された者や人質の存在に心は揺り動かされず、滅ぼすべき者達の姿を保存。
情報確認の為に名簿アプリを起動した所、目当ての人物の名を発見した。
飛電或人も自分と同じく、参加者として会場のどこかにいる。
決して黎斗らに感謝などしないが、この機会を見逃すつもりも無い。
あの男だけは自分が殺さなければならないのだから。
自分の心が悪意に呑まれていると分かっていても、止められはしなかった。
他に知っている名前と言えば、ZAIAエンタープライズジャパンの天津垓か。
前々からヒューマギア廃棄を進めていた事もあり、滅亡迅雷.netの怨敵とも言える男だ。
心境の変化でもあったのか、アーク相手にゼロワンと共闘していたが結局はあの男も人間。
滅ぼす対象である事に変わりはない。

或人への殺意を改めて抱き移動を再開し、フェリシアを見つけた。
相手が子どもだろうと人間ならば容赦しない。
予想外だったのは相手が既に或人と接触していたこと。
最終的に殺すのに代わりはないとはいえ、先に或人の情報を聞き出してからでも遅くはない。
どうやら仮面ライダーやレイダーとも違う特別な能力を持っているようだが、自分が変身したライダーには手も足も出なかったようだ。

「うぁ……」

うつ伏せに倒れ、全身を苛み続ける痛みに呻き声が漏れる。
弾き飛ばされたのかオーソライズバスターは手から消えていた。
手強い、なんてもんじゃない。強過ぎる。
大きさで言えば人間の成人男性くらいなのに、強力な魔女やウワサ数体にも匹敵、或いは凌駕しかねない強さだ。


789 : オレはダレにも止められない ◆ytUSxp038U :2022/07/25(月) 17:53:19 j2AjiOaw0
仮面ライダー、と一口に言っても数は膨大で種類は千差万別。
それぞれのライダーシステムが生まれた経緯が違えば、役割も違う。
バグスターと呼ばれるコンピュータウイルスを切除する為、ヘルヘイムの森の侵略から生き延びる根幹ツールの為、最後の一人だけが願いを叶えられるライダーバトルに勝利する為。
もっと大雑把に言えば、悪の怪人から人々を守る為。
だが滅が黎斗主催のゲームで変身したライダーは、間違っても人々を守る正義のヒーローなどではない。

仮面ライダーエボルとは惑星侵略の兵器である。
地球外生命体のエボルトが星を滅ぼす際に、パンドラボックスと同じく用いるのがエボルドライバーだ。
滅に支給されたのは人間用に調整された複製品であり、星狩りの本領を発揮する拡張ツール、エボルトリガーも手元には無い。
加えて主催側の手でゲームバランス調整の為にある程度機能を制限されている。
しかしそれでも尚、ビルドドライバーなど地球産のライダーシステムを凌駕する破格の性能を持つ。

更に変身者が滅であると言う点も強さに磨きを掛けている。
滅は人間ではなく人工知能を搭載した人型ロボット、ヒューマギア。
元々持つ人間以上の運動機能と動体視力に、エボルのスペックを上乗せし大幅に強化された力を存分に振るった。

「もう一度聞く。飛電或人はどこへ行った?」

このまま殺すのは簡単だが、その前に或人の情報を得ておかねば。
傷付いた少女の姿に罪悪感を刺激される事もなく、宿敵の行方を問う。
額から血を流したフェリシアが顔を上げ、エボルの仮面を睨み付ける。
素顔は覆い隠されて見えないが、どんな表情を、目をしているのかは分かった。
こちらの命に価値など見出していない冷めた表情、憎悪でドス黒く染まった瞳。
数十分前に出会った青年と同じ、復讐だけが頭に詰まっているのだろう。

「ふざけんなよ……」

全身が悲鳴を上げるのも厭わず、震える両足で立ち上がる。
体の痛みよりも、モヤモヤだったりムカムカだったり言葉じゃ上手く言い表せない心の不快感。
溜まりに溜まった苛立ちを吐き出そうと、感情のままに言う。


790 : オレはダレにも止められない ◆ytUSxp038U :2022/07/25(月) 17:55:40 j2AjiOaw0
「お前も…あの或人ってやつも……」

復讐。それ自体を否定する気は無い。
フェリシアとて、元は復讐に生きていた魔法少女。
両親を魔女に殺され、でもどの魔女が殺したのか分からない。
だから見つけた魔女を倒していけば、いつかは両親の仇を討てる。
そう信じて自分を雇った魔法少女のチームへの迷惑も鑑みず、魔女を片っ端から叩き潰した。
魔女を全て消し去るというマギウスの翼の言葉に釣られ、裏切った事だってある。
一生そうやって生きていくのだとしても、それで両親の仇を取れるなら構わなかった。

「誰もいなかったのかよ…」

そんな自分をいろは達が変えてくれた。
新しい居場所をいろは達がくれた。
魔法少女の行きつく果てが魔女だと知りマギウスの翼に入ったのだって、自分が救われたいからじゃあない。
自分を救ってくれたいろは達を、今度は自分が救いたかったからだ。

「一緒に帰ってくれるやつとか、飯作ってくれるやつとか……心配して迎えに来てくれるやつとか…!死んで欲しくないって思ってくれるやつとか…!一人もいなかったのかよ…!!」
「……」
「お前らを一人ぼっちにさせないでくれるやつが、本当にいなかったのかって聞いてんだ!」

恐かったのかもしれない。
滅も或人も復讐以外目に入っていない様子で、もしかしたら彼らは自分の有り得た未来なのかもしれいように思えて。
いろは達と出会わず魔女を殺し続けていたら、自分も彼らのような黒く染まり切った瞳になっていたのかと考え。
或いは、いろは達をも失った自分がこんな風に戻ってしまいそうで。

「オレにはいる…。とーちゃんとかーちゃんは死んじゃったけど…二人みたいに、あったかい皆が……だから…!」

だから、守らなければならない。
大切な人達を失って、以前よりも暗い顔をする事が多くなったいろはとやちよを。
もうこれ以上、二人が傷つけられないように。
これ以上大切な人を誰一人として失いたくないから。


791 : オレはダレにも止められない ◆ytUSxp038U :2022/07/25(月) 17:58:24 j2AjiOaw0
「オレが…守る!」

魔力を消費しハンマーを作り出す。
傷だらけの肉体を酷使し跳躍。
エボルを見下ろす位置まで大きく跳び上がり、両手で持ったハンマーへ魔力を集中させる。
急激な魔力の消費によりソウルジェムが濁り出すも、今だけは後回し。
護りたいという願いがフェリシアに力を齎す。
身の丈程もあるハンマーが更に巨大化、小柄なフェリシアの体を覆い隠す程規格外のサイズと化した。

「仲間を…家族を…!オレが守るんだあああああああああああああああああああああああっ!!!!!」

振り下ろされる巨大な鎚。
魔女への憎悪ではない、居場所をくれた少女達への想いを込めた必殺の一撃(マギア)。
直撃すればエボルであろうと無傷で済むかは怪しい。
頭上からどんどん近付いて来るハンマーを前に、エボルは無言。
胸に宿るのは諦めか?それともフェリシアの叫びに動揺し硬直しているのか。

「ッ!!!」

どちらも違う。
激情を勢いに乗せたが如き速さで、エボルドライバーのレバーを回す。
一度の回転の度に内部の発動機が高速稼働し、エヴォリューションチャージャーからエネルギーが生成される。
エボルボトルの成分を純粋な破壊のエネルギーに変換しているのだ。
再度パイプオルガンの演奏にも似た音声が流れ、同時に体の真横へ星座盤が出現。
敵が最大の技で挑むのなら、こちらはそれを上回る力をぶつけてやるのみ。

(家族…だと)

ああ、自分にもいた。
人間のような血の繋がりは無くとも、大切に想っていたヒューマギアが。
生きて欲しいと願った息子のような存在が。
自分を庇って破壊された家族が、確かにいた。
だが最早過去の話。
迅はもういない、しかし飛電或人はまだ生きている。未だ破壊を逃れている。
ならばこんな所で倒れてなどやるものか。飛電或人を、人類を滅ぼすまで、自分は止まれない。


792 : オレはダレにも止められない ◆ytUSxp038U :2022/07/25(月) 17:59:15 j2AjiOaw0
『Ready Go!』

『EVOLTEC FINISH!』

星座盤が収束した右拳を、間近に迫ったハンマー目掛けて放つ。
拮抗は僅か一瞬だ。
数多くの魔女を粉砕してきたフェリシア自慢の大鎚に、亀裂が生まれる。
一度崩されたら後はもう抗う術は無い。
亀裂はあっという間に全身へと広がっていき、柄だけを残して崩壊した。

「オオオオオオオオッ!!」

武器を壊した程度でエボルは止まらない。
再びハンマーを生み出す間も、逃げる隙だって与えてはやらない。
鮮血よりも色濃く、目が霞む程の眩さを纏った拳が、フェリシアの全身を照らし――

『CIAO!』

「ごめん皆…。オレ、帰れないや……」

視界いっぱいに広がる赤い輝きの中、砕け散って宙を舞う宝石。


――それが、フェリシアが見た最後の光景だった。





少し離れた位置に転がっていたオーソライズバスターを拾う。
元は飛電インテリジェンスが開発した武器。
思う所はあるものの、放置して他の参加者にくれてやる理由も無い。
結局は意思無き道具だ。使ってやらねばただのガラクタと変わらない。
回収したデイパック諸共、自分のリュックへ仕舞う。

或人がどこへ行ったかは聞けなかった。
とはいえフェリシアが或人と遭遇したのはタイミングから考えても、恐らく放送の前。
ならまだそう遠くへは行っていない。
それにフェリシアが滅の事を或人から聞いていたという事は、向こうも滅を探しているのだろう。
であれば、再会の時はそう遠くないのかもしれない。

ここでやれる事はもうない。
早々に立ち去ろうと背を向け、


793 : オレはダレにも止められない ◆ytUSxp038U :2022/07/25(月) 18:02:34 j2AjiOaw0
『本当に、これでいいのか?』

聞こえた声に動けなくなった。
聴覚センサーに破損は無い、正常に動いている。
ならばこの声は……。

『あの女の子を殺す必要が本当にあったのかよ』

『あの娘はアークになるような人間じゃない。ただ必死に家族を守ろうとしていただけだろ』

『僕が滅を守ったみたいに』

「ッ!」

背後へ向けて腕を振るうも、そこに生きた者は一人としていない。
寒々しい風が滅の人口皮膚を撫でているだけだ。

心が芽生えたせいで幻聴まで聞こえるようになったのだろうか。
くだらないとでも言いたげに険しい表情を作り、頭を振るう。
これ以上ここに居たら不要な事ばかり考えそうだ、やはり早急に立ち去るべきと踵を返す。

最後にもう一度だけ、物言わぬ少女の屍を視界の端に入れて。


【深月フェリシア@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版) 死亡】


【F-3/一日目/深夜】

【滅@仮面ライダーゼロワン】
[状態]:健康、激しい怒り
[装備]:エボルドライバー(複製)+エボルボトル(コブラ、ライダーシステム)@仮面ライダービルド
[道具]:基本支給品一式×2、オーソライズバスター@仮面ライダーゼロワン、ランダム支給品×0〜4
[思考・状況]
基本方針:人類滅亡。迷いは無い。
1:飛電或人は自分が殺す。
2:天津垓を含めた参加者の殲滅。
2:絶滅ドライバーとアズから与えられたプログライズキーを取り戻す。
[備考]
※参戦時期は43話終了後。

【オーソライズバスター@仮面ライダーゼロワン】
通信衛星ゼアの危機管理判断により構築・製造された新装備の可変式武器。
アックスモードとガンモードの2つの形態を持つ。
主にゼロワンが使用するが、仮面ライダーバルカンアサルトウルフに貸与されることもある。


794 : ◆ytUSxp038U :2022/07/25(月) 18:03:27 j2AjiOaw0
投下終了です。


795 : ◆ytUSxp038U :2022/07/26(火) 00:16:02 wjDtH//.0
冴島鋼牙、柊ねむ、野獣先輩を予約します。


796 : ◆FiqP7BWrKA :2022/07/27(水) 17:44:58 f2Fjyy3w0
キャル、氷室幻徳、梓みふゆで予約します。


797 : アウトローの三方陣 ◆EPyDv9DKJs :2022/07/27(水) 22:39:28 dOZeT1T60
投下します


798 : アウトローの三方陣 ◆EPyDv9DKJs :2022/07/27(水) 22:40:27 dOZeT1T60
 遊馬にナッシュにカイト。
 Dr.フェイカー以降何かと敵対し続けたあの三勇士が揃い踏みとは。
 こいつらを揃えるということは、随分な自信家だということは分かる。
 あの三人が揃ったらどうなるかなど、彼自身が理解していることだ。
 バリアン相手に三人で挑んでるようなものなのだから実力は折り紙つきになる。

「おーおー、こいつぁ狙ってるなぁ黎斗とか言う神は。」

 月までカイトとをお出迎えするあたり、涙ぐましい努力をしてる様子に笑いがこみ上げる。
 人のこと言えねえけどな、なんてことを思いつつ笑いをやめ真面目な顔つきで考え出す。

(さーて、遊馬君がいるって言うならこれを返しておかねえとな。)

 希望皇ホープとデュエルディスクは此処にある。
 此処ではデッキとデュエルディスクが支給されるなら、
 必然的にアイツが持っているデッキはないということになる。
 と言うよりこの殺し合い、デュエルディスクがある=最悪遊馬のデッキはどこにもない可能性もある。
 アイツだけベリーハードすぎるねぇとケタケタと笑いつつ、とりあえず返却だけは考えておく。
 何処にもない可能性も高いとは言ったが、何かしらの形で出てくる可能性は無きにしも非ずだ。
 例えば『参加者を殺した人数が多かった人へ景品として提供』なんてのもゲームらしくある。

「ま、そういうことだ。暫く俺に使われるこったな。」

 一瞥したホープをエクストラデッキに置いて、適当に歩く。
 山に囲まれた場所と照らし合わせるにB-7辺りなのだとは察する。
 試しにC-6などの人が集まりそうな場所に向かおうと、適当に歩いていた。
 町も近く、道なりに進んでいたところで物陰から音が聞こえてスターの銃を構える。

「待ってください。私は殺し合いに乗ってません。
 できれば銃を下ろしていただけるとありがたいのですが。」

 姿を見せた相手はどうにも殺し合いに向いてなさそうな姿だ
 何処にでもいる人間界の恰好で、身だしなみも特別気にしていない。
 銃の引き金一つで命が奪えそうな貧弱そうな姿をした相手になる。
 荷物もすぐそこに投げ捨てた。回収する前に攻撃が間に合うだろう。
 と、単純に見ていればそう思うのが自然ではあるがベクターは目聡い。

「よく言うぜ。そのベルト、神を名乗ったあいつに殺されたやつと同じベルトだろ。」

 破損していたので具体的な形は分からないが、
 相手がつけているのは葛葉紘汰のそれと同一、仮面ライダーと呼ばれていた姿になるものだろう。
 無抵抗と見せかけてちゃっかり武装している強かな奴だと言うことが伺える。

「武装を解除しているとは一言も言ってねえからな、
 嘘は言ってないってのは分かる。だが信用に欠けちまうなぁそれじゃあ。」

「そうですね。試すような真似をしてすみません。
 ですが、あなたも殺し合いに乗ってないことも分かりました。」

「あ?」

 戦う必要がない故か、相手はベルトをあっさりと手放す。
 ベクターからの視点では少なくとも戦える手段はない。
 ただ、小鳩のカタルシスエフェクトを見たので警戒は緩める気はないが。

「腕に付けてるそれは、恐らくデュエルに使うものでしょう。
 ですがカードはありません。デッキに必要なカードは四十から六十枚で、
 デッキがないことから貴方はデュエルで戦う手段が取れないことが判断できます。
 必然的にその銃が頼れる武器であり、相手は嘘ではありませんが無害を装っていた参加者です。
 既に信用は少ない相手でありながらも撃たないなら、無暗には殺さないタイプの確率は高いので。」

「高いってだけで確定はしてねえだろそれ。ついでに言えば、
 俺の方こそ装ってるって言う話はねえのか? 友情ごっこを演じ不意打ちを狙う奴とかな。」

「それを言う時点で既に答えは出てますが、
 今の発言を抜きにして考えるなら……そうですね。
 貴方が『不意打ちをすることを手段とする参加者』と仮定しましょう。
 なら、既に信用が低い状態の私を相手に撃つのを躊躇う理由はありません。
 不意打ちをされるかもしれない相手に不意打ちするよう装う理由は少ないですし。
 潜んで殺すのであれば『貴方を疑わない善良な人間』をターゲットにする方が楽です。
 爪を隠す相手にそういった行動を取ってまで時間をかける理由は低い……と言ったところでしょうか。」

 何処のプロファイリングだと言わんばかりにこっちを見透かしてくる。
 こいつ相手に遊馬にやったやり方は、絶対に通じそうにない相手だ。
 殺し合いに乗らなくて良かったとこんな形で感じるとは思いもしない。
 もし乗っていれば早々にこの戦いは危険だった可能性も高いから。

「お察しのとおり敵じゃないさ。
 だがこういう試すタイプは、あんまり勧められねえな。」


799 : アウトローの三方陣 ◆EPyDv9DKJs :2022/07/27(水) 22:41:48 dOZeT1T60
 仮面ライダーの力はお互いに知ってる筈。
 それを捨ててでも対話を望む相手が乗るわけがない。
 銃を降ろして敵意がないことを此方も示しておく。

「よく知ってます。以前それで一度離れた人もいますから。
 ただ、今は迅速に情報網を広げて牽制したい相手がいて時間が惜しいもので。
 後申し訳ないのですが、乗ってないのも事実で嘘もついてませんが言ってないことはまだあります。」

 右手を上げると、物陰からもう一人男が出てくる。
 相手は二人いたということで、やれやれとベクターは肩をすくめた。
 これについても嘘は言っていない。一人だけとは言ってないのだから。
 乗っていたらもっとろくなことにならなくて助かったなと。










 ───時は少しだけ遡り。

 葛葉紘汰を殺したのは単なる見せしめなのだろう。
 『自分達はその気になれば君達など無力化できるのだ』と。
 だが彼はそう受け取らない。道は違えたが奴は認めた相手になる。
 そんな彼に対する勝ち方は、一方的な理不尽を吹っ掛け勝利を収めるだけのもの。
 どこぞの、キルプロセスと言うせこい手を考えてた戦極凌馬と殆ど変わらない。
 そう、例えるならば正々堂々とゲームをしていた相手にチートで勝つようなもの。
 殺し合いにフェアを求めるつもりはないが、あれでは神を名乗る程度が知れる。
 勝つならば純粋な力のみで踏みつぶすのであればまだ評価はしていたかもしれないが、
 この程度の奴に首輪をつけられるとは、彼より自分の不甲斐なさの方に怒りがこみ上げる。

「黎斗と言ったか。奴は何処までも俺を苛立たせたいらしいな。」

「戒斗さんの知り合いですか。」

 ハンドルつきの双眼鏡をしまいながら、
 あたりを警戒しつつタブレットをしまうL。
 彼の反応と変身のベルトと彼の名前を呼んでいた。
 カイトはもう一人いるので彼とは限らないものの、無関係ではないことは察せられた。

「俺を殺し、俺が認めた男だ。」

「彼がですか……なるほど。」

 同情の眼差しは向けない。
 彼はそういう誰かに憐れまれることを嫌う。
 そういう人物だと理解してるのもあり特に言わなかったが、
 どちらかと言えばそちらよりも厄介なことがいくつかあった。

「今と開示された情報で当面の行動で問題が少なくも三つ、
 いや四つ生じてます。其方について共有しておきましょう。」

 些細なことからロジックを解き明かす。
 殺し合いと言う、高難易度のパズル攻略のピース探しは既に始まっている。
 世界一の探偵と言うのであれば、その四つは捨て置けないのだろう。
 角のピースと言う単純なもの程行動の基盤となりうるものだ。

「まず一つ目。単純な問題としまして、キラが参加しています。」

「お前が追っていた存在か。」

 タブレットをテーブルの上へと置き、
 戒斗にも促して二つのタブレットが置かれる。
 タブレットには名簿のリストが載せられており、
 互いに一字一句全てが同じ情報が出されている。
 二人揃って嘘の名簿を渡されている可能性は考えたが、
 戒斗の知り合いならザック、或いは戦極凌馬や湊耀子の方がいいのに、
 極アームズに倒されたあのオーバーロードだけで、奴との関係は今一つだ。
 態々選ぶ意義が見受けられない奴が参加者に選ばれている。
 このことから、自分達だけ偽情報を掴まされてるとは考えづらい。
 なおLはLの一文字で出されていて本名は載っておらず、
 本当にこれで通るのかと若干訝しんだりもした。

「名簿が本物であるようなので話を戻します。
 此方の名簿ですが『吉田』や『閃刀姫』の人物が、
 かなり近くにあることから名簿は知人を近くに配置してるのでしょう。」

 カイザーインサイトの次は野獣先輩から肉体派おじゃる丸。
 この辺りは名前がフルネームどころかあだ名である人物の方が多い。
 そこから急に吉田優子と一般的な名前がしばらく続いている。
 流石にこの名前の羅列だけでいくつ世界か関わってるかは判断は付かないが、
 少なくともある程度の人数のグループについては判断することができる。

「海馬瀬人については、最初に出会った際の件で解決するので割愛しましょう。」

 少なくとも別世界が確立されてる中、
 同姓同名の人物が二人いることは何らおかしくない。
 なので特に気にすることもないのでこれについてはスルー。
 互いの間に序盤に出た武藤遊戯がいるのは無関係ではない可能性があり、
 一応気にしておくべきところではあった。


800 : アウトローの三方陣 ◆EPyDv9DKJs :2022/07/27(水) 22:44:17 dOZeT1T60
「それで私のすぐそばに『夜神月』と言う名前があります。
 彼は私の学友であり協力者であり、そしてキラでもあります。」

 件の容疑者が、殺した相手が同じ舞台にいるという状況。
 ただそれだからと復讐だとか、そんな程度の低いことをこの男は考えない。
 仮にするのであれば奴を逮捕し、法の下に裁くつもりなのだと。

「キラはほぼ確実に、この殺し合いでの方針は我々と同じです。」

 犯罪者を殺すことによって犯罪を抑止するという、
 L曰く幼稚な考えを持っていて賛同しかねることだが、
 一方で彼は彼なりに世の中を良くしようと考えたところはある。
 (まあLも自分が幼稚で負けず嫌いであり、彼と同族と思ってるが)
 弱い奴も報われる世界、と言う点はある意味葛葉紘汰とは似てるだろうか。
 曲がりなりにも世界をよくしようとしていたところは揺るがないので、
 此処でも決して黎斗に煽られるだけで殺し合いに乗るつもりはないだろう。

「だが貴様は違うと。」

 言いたいことは分かった。
 どれだけ己の正義感から反抗するとしても。
 キラを追っていて、ほぼ確信まで追い詰めたLだけは例外だ。
 自分を追ってくるものは善良でも始末する。これだけは絶対に譲らない。

「はい。厄介なことに私と同じ世界の出身は恐らくキラだけです。
 キラの逮捕には私自身の生存が必要不可欠であり、この点も少々問題でしょうね。
 仮に私が半ばで力尽き、他の人が捕まえて元の世界へ帰ろうとしたとして、
 それは別の世界であって我々とは違う以上は、逮捕はできませんし。」

 別世界の認識を向こうがしてるかどうかはまだ不明だが、
 少なくとも自分が辿り着いたならキラもたどり着けるはずだ。
 だから誰かに任せて彼を逮捕、と言うのはほぼ不可能になる。
 また、名簿ではLの次にある冴島鋼牙の名前に彼は覚えはない。
 彼が自分の死後キラに関わった人物や警察の人間なら別かもしれないが、
 余り楽観視はしない。最悪、キラの味方である可能性だってあるのだから。
 一先ずここでは同じ世界の出身は自身含めて二人だけと言うことで話を進めていく。

「となれば殺し合いの破綻とキラの逮捕、そして同時にそれに伴う生存が必要か。」

「はい。そして二つ目の問題です。戒斗さんは先程の映像で名前を呼ばれてます。」

 タブレットを回収し、画面を操作しながら会話を続ける。
 カイトと言う名前の参加者はもう一人いるものの、
 どちらかを件の人間と結びつける可能性については十分にありうる。
 参加者全員がそれに結びつけるかは別ではあるものの、ゼロでもない。
 敵味方問わず、関わることが多くなるだろうことが考えられた。

「敵であれば構わん。ねじ伏せるだけだ。」

「問題は貴方と同行することを利用して隠れ蓑にする人物もいる、と言うことです。」

 主催に立ち向かった人間がただ一人口にした男の名前。
 彼と共にいればそれだけで殺し合いに対して懐疑的な人物と言う箔がつく。
 キラもそういうポジションではあるが、Lの存在でそれは今や不可能だ。
 だが他にも集団に紛れてことを起こす、獅子身中の虫を目論む輩がいるはず。
 自分の存在は思いのほか厄介なものに仕上がってしまったということに彼も気付く。
 無論そのことで自分が強者と認めたあの男を悪く言うつもりはないし、
 寧ろ彼の嫌いな、強者を背後から襲うような輩の類の方が許せない。

「こればかりはどうにもなりませんね。
 私の推理で見抜く以外の手段が取れません。
 三つ目ですが、デスノートがこの舞台にある可能性です。」

 先程Lは戦極ドライバーは戒斗から譲ってもらった。
 戦極ドライバーが元々彼が使っていたものであることから、
 参加者の私物となるものが支給品として出てる、と仮定していた。
 (無論私物どころか、それぞれの世界の関係のある支給品も念頭に入れている)
 だがキラが参加してるとなれば彼の私物、即ちデスノートも誰かに支給されてると。

「意味が分かったと同時に、かなり厄介だな。」

 名前さえ知ってれば誰だろうと殺すことができる。
 強さも弱さも、意志の強さすら一切の関係もない。
 場合によっては自分の運命すら操られてしまう。
 デスノートなら一般人だろうと使いこなせる代物だ。
 知性のある誰かの手に渡るだけでも危険なものになる。
 加えて別の弊害もあった。


801 : アウトローの三方陣 ◆EPyDv9DKJs :2022/07/27(水) 22:47:53 dOZeT1T60
「ええ、安易に自分の本当の名前を名乗ってはいけない。
 そして、名乗れないということは信用を得にくいということです。」

 この手の殺し合いでまず最低限名乗ることは、信用を勝ち取る最初の一歩だ。
 偽名や名乗れないなど、後ろ暗いことがなければ普通は名前を名乗るのだから。
 デスノートのことを戒斗は理解してくれたが、全員はそうだとは思わない。
 そもそも、L自身名前を書いたら人が死ぬなんてものを確信に至るまで随分と時間がかかった。
 刻一刻と死が迫る最中で、デスノートを信じきれるだけの信頼関係を結ぶのは全員は不可能だ。

「ではどうするつもりだ。名前の読みを変えて名乗ろうとも意味はないのだろう。」

「はい、読みを間違えていたとしても字が合ってれば殺せるでしょう。
 ただしノートを使うことで殺せる範囲は、全員とまでは行かないのでましなレベルですが。」

 名簿にはフルネームどころか本名ですらない名前だってある。
 確実に殺せる人物、と言うのはそこまで多くはないだろう。
 顔と写真が分かるものが支給される可能性も限りなく低い。
 デスノートとの組み合わせですぐにバランス崩壊が確定してしまう。
 バランスを調整の為道具を没収したことから、この殺し合いはゲームとしての公平さを重んじている。
 そんなバランスを気にかけた彼らが、そのような展開を簡単に望むともあまり思えない。
 なんせ見栄えが悪い。ゲームで言えばガード不可の即死攻撃を射程外から連打するキャラなど、
 格闘、シューティング、ローグライク、アクション。ありとあらゆるゲームで早々許されるものではない。
 仮にどちらも支給するとしても、それらの所持者の位置を大幅に離れさせることを考えるはずだ。

「支給品の開示も確実性に欠けますし、
 時間が経てば死者も増えて支給品もかさむので対策にはなりえません。
 中身をすべて出すよう要求するにしても、時間がかかりすぎるでしょうし。」

 一人二人ならまだしも、この殺し合いはキラとデェムシュと自分達を抜きでも百八名もいる。
 (見せしめで殺された少女達のことを除外すればさらに減って百六名ではある)
 殺し合いに懐疑的な人物だけで構成されてるとは限らないので必要な人数は減るが、
 一人一人に毎回それを要求し、此方もしなければならないのは時間がかかりすぎてしまう。
 それにノート以外の極悪性能な支給品を手にしたことから、開示を恐れる可能性もあるはず。
 容易く相手を殺せるアイテムを持った相手との同行を嫌がられることは分からない話ではない。
 信用を得ることが大事であるのは、同時に疑われたくないのも大事にする。

「強引に確認すれば、いずれ軋轢を起こします。
 信用を得るために信用を失っては意味がありません。」

「そこまで考えているならば、対策はあるんだな。」

「まあ現状では簡単な手段しか取れませんがね。
 それについては実践で試すとしましょう。最後の四つ目ですが、デュエルについての知識は?」

「ないな。」

 デモンストレーションのカードゲームは何方にも覚えはない。
 しかし態々説明を入れ、ルールを書き換え、支給品も回収している。
 バランス調整やこれを主軸にすることを望んでいるような発言・行動の多さ。
 この先デュエルを理解してないと戦いを生き抜くことは難しいようにも思える。

「今の話の最中にルールとプレイをしてましたが、
 正直申し上げると、付け焼刃では難しいでしょうね。」

 一通り終えてタブレットをテーブルに置く。
 さらりとこの男は会話のひと手間にプレイしていた。
 やってみたところ、単純なやり方についてはさして問題ではなかった。
 モンスター・魔法・罠を駆使してダメージを与えてライフをゼロにする。
 あくまで単純な話だ。これをより深く理解するとなると流石に話が変わってくる。
 優先権、ダメージステップ、チェーン、強制効果と任意効果、時と場合、相互リンク。
 専門用語の多さ、ルールの難解さ、カードプールの量。短時間で覚えきれるものではない。
 基礎的なルールは話の合間にプレイをしており把握はしてもこれで熟練相手に戦うことや、
 問答無用で殺しに来る相手に対し冷静にデュエルを継続できるだけの精神力を持たなければならない。
 それこそ、ルールを理解してもデッキを使いこなせなかったあの少女のように殺されるだけだ。


802 : アウトローの三方陣 ◆EPyDv9DKJs :2022/07/27(水) 22:49:47 dOZeT1T60
「一時間もあればなんとかなるとは思いますが、
 参加者との合流、支給品の奪い合い、敵との遭遇。
 そういった目的があってはルールは把握できないでしょう。」

 全員が全員知り合いか会うべき相手とは限らない。
 特にデェムシュは今となっては脅威ではない敵だが、
 あくまでそれはオーバーロード・バロンに至ったからの話だ。
 あれでも並みのアーマードライダーではまるで歯が立たない。
 余り悠長な時間を過ごしていると余計な殺戮が広がっていく。

「問題は山積みですし、現状解決や推測の域を出ないのも多いです。
 一先ず情報収集のため……ああ、一人見つけました。早速向かいましょう。」

 タブレットの代わりに手にした双眼鏡で、
 一人の参加者を見つけたこと其方へと優先する。

「敵かどうかを確認したいので、こういう感じでお願いできますか。」

 元々戒斗は融通が利かないと言うところについては自覚はある。
 生前もそれで必要以上の敵を増やすことになってたのも事実だ。
 死してもそれを治すつもりは余りないものの、状況を見誤ることはしない。
 融通が利かないと言っても、不和の原因であればチームから脱退する行動もとれる。
 単なる力で敵をねじ伏せるだけでは黎斗に辿り着けないことは分かっており、
 Lは貴重なブレイン。殺し合いを停滞させるには重要な人材になると。

「ああ、分かった。」


 ◆ ◆ ◆


 話し合う相手として問題ないと判断され、
 移動しながらベクターの話を聞く二人。
 丁度欠如していたデュエルモンスターズを知る人物。
 そして、ただのカードゲームと呼ぶには無理がある程の情報量だ。

「世界の命運をかけたデュエルか。」

 信用できないかどうかで言えば普通に信用できる。
 戒斗にとってはビートライダーズの御遊び要素のロックシードが、
 最早世界の命運をかけた戦いにまで発展してしまったのだから。
 Lもまたあり得ないなどと断じていれば迷宮入りのキラ事件を前にした。
 カードゲームで命のやり取りと言った突拍子のないのも、今に始まったことではないのだと。

「にしても仮面ライダーの情報も手に入っちまうか。
 情報量だけで言えば随分とアドバンテージが得られてるな。」

 話を一通りしてみれば、
 仮面ライダーとデュエルモンスターズ。
 主催の力とそれに拘っている節があるその二つ。
 今この場にはその双方に明るい人物がいる状況。
 開始早々としては悪くないものになってることは分かる。

「まだ問題は山積みですがね。
 とは言えドン・サウザンドの話は少し考える余地があるかと。」

 ベクターたちバリアン世界の神ドン・サウザンド。
 自らを神と名乗った黎斗が興味を持たないとは限らない。
 寧ろベクターのように融合を考えて更なる高みを目指す可能性もある。
 彼は他人は当然として、自分すら実験材料にしてでも目指したいものを目指す、
 そういうことをしてきそうなタイプの人間と考えていた。

「ゲームと言うのはカモフラージュで、
 目的はドン・サウザンドの復活ってか?」

「可能性としてはなくはないかもしれません。」

「だがそれならば何故ここにこいつがいる?」

 ただ、その考えで行くとおかしな話がある。
 ドン・サウザンドの復活にはベクターたちが持つナンバーズ、
 オーバーハンドレッドナンバーズを回収することで復活できる。
 ベクターが吸収されたところを見るに七皇全員を吸収せずとも、
 復活できるようではあるのだが、だとすればなぜここにベクターとナッシュがいるのか。
 殺し合いに招かず、吸収してしまえばそれでいいのではないかと。

「さてな。俺はその辺は分からねえ。
 曲者揃いの俺らを纏めてたドルベなら出てたんだろうな。」

「……戦わせることそのものが目的ではないでしょうか。」

「どういうことだ?」

「理不尽に戦いを強いられた人たちは、
 少なからず負の感情を持つことになります。
 その状態で死亡した場合、その魂は何処へ行くのか。」

 オカルト的な話ではあるが、
 死者の魂が転生したのがバリアンの人間だ。
 突飛な話のように見えて意外と現実的な話になる。

「! バリアン世界に追放されるってことか。」

 Lの言っていた言葉の意味を理解する。
 アストラル世界が更なるランクアップの為負の感情を持つ者は追放され、
 やがて負の感情を持つ存在を切り離した結果出来上がったのがバリアン世界だ。
 悪の感情や憎悪を持った人物はアストラル世界から追放される存在であり、
 ベクターもまた自分の記憶をドン・サウザンドによって改竄された結果、
 狂気の王としてバリアン世界へと追放されている。


803 : アウトローの三方陣 ◆EPyDv9DKJs :2022/07/27(水) 22:52:22 dOZeT1T60
「もしもですがこの舞台で殺された人たちが、
 ベクター……失礼、真月さんの世界へ送られれば、
 最終的にアストラル世界へ行くことはできません。
 多くの人は巻き込まれたことで憎悪を持つでしょうし、
 殺しを愉しむ参加者もまたアストラル世界へ行くことはありません。」

「バリアンの尖兵を欲した結果が殺し合い……にしては矛盾しているな。」

 となるとそれもまたおかしな話だ。
 ドン・サウザンドは殆ど復活していたし、
 ベクターを吸収すれば恐らく復活はできたはず。
 と言うよりミザエルは放置、ベクターは復活、ナッシュは参加。
 残っているバリアンに対する扱いも、どこかちぐはぐなものになっている。
 ナンバーズの回収を目論んだことから復活さえすれば一人で侵攻できる算段もあったはず。
 今更尖兵欲しさに殺し合いを用意させる意味が果たしてあるのだろうか。

「さてな。案外あの後遊馬とナッシュがなんとかしたのかもしれねえし、
 結果ドン・サウザンドはぼろぼろの状態でまたしても身動きが取れなくなった。
 なのでまたバリアン世界に住人が欲しい……なんて展開とかもあるかもしれねえ。」

 なんてたってバリアン七皇は壊滅状態だからとケタケタと笑いながら返す。
 自分の悪行を遠慮なくひけらかすというより、反省している様子はない。
 Lはともかく、戒斗は少しばかり眉をひそめてる。

「単純な話、敵が一枚岩ではないだけではない可能性もあります。
 黎斗は殺し合い以上に、ゲームを楽しんでいる節があるものの。
 別の人にとってはドン・サウザンド復活の為の儀式のようなもの。
 或いはもっと別の事の可能性はないとも限りませんから。」

「組織の上の連中だろうと、思想が合わないというのはそう珍しいものではないな。」

 ユグドラシルの上の面々がそうだったように、
 思想を統一させることなどそう簡単なものではないことは分かる。

「一先ず候補としては置いておきましょう。
 ただもしそうなった場合はデュエルもまた重要な要素です。
 デュエルができる人材を探しておくのに越したことはありません。」

 先程のデュエルの中継を見るに、デッキ一つでもできることは多い。
 熟練の使い手が使えばただ使うだけの参加者よりもはるかに頼れる。
 推測であろうとなかろうと、今後の戦況を左右していくかもしれないのだから。

「ま、一通り話すこと話した。んでどうする?
 二つ程世界を滅ぼそうとした大悪党を迎え入れるか?」

 当然だがベクターの概ねの話は聞いている。
 今は殺し合いに否定的な人物ではあるものの、
 過去の悪行についてはとても褒められたものではない。
 善意であった分キラの方がましとさえ思えてくるかのようだ。

「無論迎えますよ。其方がいいのであれば。」

「おいおい、随分あっさりとしてるな。」

 もっとこう駆け引きとか葛藤とかあるだろ。
 遊馬ならまだしも、彼はそういうお人好しではない。
 打算目的としても、デッキがない自分に期待するとは思っていなかった。

「もうする気にはならないんでしょう。
 それと、私は犯罪者を仲間に迎え入れることに抵抗はありません。
 ついでに言えば、私も法外な手段を用いて調査してたのも事実です。
 と言うより、隣にいる彼も世界を一度滅ぼすつもりでしたから増えても変わりはありません。」

 真っ当な手段で逮捕ができないということから、
 詐欺師や泥棒を味方につけるし、拉致監禁を筆頭に倫理に欠ける行動もとった。
 現にそのやり方から相沢のように軋轢が起きた人物だって少なからずいる。
 今回の殺し合いも同じ。綺麗な手段だけを選んでるようでは殺し合いを終えられない。

「そうかよ。そっちの駆紋はどうなんだ?」

「改心だとかそういったことはどうでもいい。
 こいつの言った通り俺も人のことなど言えなければ、
 俺は俺がしようとしていたことを間違っていたとも思わん。」

「そいつぁとんでもねえメンバーだな。」

 やれやれと肩をすくめる。
 殺し合いを打破する連中でありながら、
 全員思考がアウトローよりな連中ばかりだ。
 確かに人数を合わせなきゃ受け入れにくい曲者揃いになる。

「ま、いいぜ。どうせ行き先は細かくはねえしな。」

「分かっていただけたようで何よりです。よろしくお願いしますね。」

「ま、敗残兵の集いって言うのも悪くねえか。」


804 : アウトローの三方陣 ◆EPyDv9DKJs :2022/07/27(水) 22:53:36 dOZeT1T60
 誰も彼もがアウトローであり敗者。
 しかし辿ろうとする道は正道を往く奇怪なチーム。
 ちょいと面白く感じながらその提案を受け入れる。
 いびつな関係から三勇士に至ったあの三人を思い出す。

「それで、実践するつもりだった内容はなんだったんだ。」

 ベクターの支給品はすべて開示されている。
 なのでLの言うデスノートの所持者を見分ける簡易的な手段、
 と言うのは実践されないままであったことを思い出す。

「単純に情報交換の際に私がこう言うだけですよ。
 『紙類を持ってませんか。長いメモを取りたいのですが電子のメモ帳は余り信用できないので』と。」

「なるほどそう来たか。」

 簡単な手段とはこういうことだ。
 紙類で支給されてるのはルールブックや支給品の説明書。
 必然的に長いメモや考えを纏める為のメモ帳は存在しない。
 デジタルなメモ帳のアプリでは監視されている恐れから控えるのもわかる。
 必然的に紙類の支給品を出す必要があり、その際の反応で判断していく。
 何もなければ『ルールブックではだめか?』と言った返答が多くなる。
 たかだか紙を出すだけに一時的にも戸惑ったりするような状況は少ない。
 なので相手がノートを持っていると自覚した際は行動に移すことができる。

「簡単にできるだけで、全員に通じるかは分かりませんが全員実践可能なので覚えておきましょう。」

「覚えておくか。いつばらけるかわからねえし。」

 デスノートを支給された相手にメモ帳などの紙類が支給されては、
 結局確実な手段と言うわけではないので抜け穴は存在してしまう。
 とは言え、少なくとも簡単に済ませられる手段ではあるし相手がノートを狙ってると予想はしにくい。
 今できる手段として理解しながら、三人は南下していく。



 神に挑もうとした男。
 神を取り込もうとした男。
 ある意味神を目指そうとした男。
 神にまつわる三人は新たな神との戦いへと挑む。


【C-7/一日目/深夜】

【駆紋戒斗@仮面ライダー鎧武】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2(確認済み)
[思考・状況]基本方針:殺し合いを力で叩き潰す。
1:殺し合いに乗っている参加者は潰す。
2:首輪を外せる参加者を見つける。
3:L、ベクターと共に行動する。
[備考]
※参戦時期は死亡後です。
※クラックを開き、インベスを呼び出すことは禁止されています。

【L@DEATH NOTE】
[状態]:健康
[装備]:量産型戦極ドライバー@仮面ライダー鎧武、バナナロックシード@仮面ライダー鎧武、真中あおの杖@きららファンタジア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×〜3(確認済み、武器の類はなし)
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める
1:駆紋戒斗、ベクターと共に行動する。
2:他の参加者を探し、情報交換をする。
3:無暗に犠牲を強いるつもりはないが、綺麗な手段だけで終わらせられるとも思ってない。
[備考]
※参戦時期は死亡後です
※この殺し合いにドン・サウザンドが関係してる説を考えてます。
 (関係してるだけで関与してない可能性も高く、現時点では推測程度)

【真月零(ベクター)@遊戯王ZEXAL】
[状態]:ちょっとセンチな気分
[装備]:ショット・オブ・ザ・スター@グランブルーファンタジー、九十九遊馬のデュエルディスク@遊戯王ZEXAL、No.39希望皇ホープ@遊戯王ZEXAL
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本方針:ハ・デス相手に良からぬことを始めようじゃねえか。
1:遊馬にデュエルディスクを返すが、デッキはどこだよ。
2:ナッシュや遊馬がいることだし少しだけ協力は考えてやる。ナッシュは……いややっぱやめとくか?
3:帰宅部ねぇ。ま、いたら声はかけるか。
4:Lに駆紋、アウトローで構成されてるねぇ。
5:ま、俺らしく外道な手段でやってやるさ。
6:ドン・サウザンドの復活ねぇ……どうだか。

[備考]
※参戦時期はドン・サウザンドに吸収による消滅後。
※ドン・サウザンドの力、及びバリアン態等の行使は現状できません。
 力が残っていて、バリアンスフィアキューブがあれば別かも。
※Lの考察については半信半疑です。

【真中あおの杖@きららファンタジア】
Lに支給。恋する小惑星から参戦した真中あおが持っている、
ハンドル付き双眼鏡に杖のような装飾がされたアイテム。
まほうつかいのあおが所持してることから専用ぶきと思われるが、
本作投下時点では専用ぶきが未実装であるため性能については不明。
と言うより専用ぶきなので参加してない以上ただのハンドル付き双眼鏡か、
魔法を使える人物の杖の代替品として使う以外の使い道は恐らくない。


805 : アウトローの三方陣 ◆EPyDv9DKJs :2022/07/27(水) 22:54:08 dOZeT1T60
投下終了です


806 : ◆ytUSxp038U :2022/07/28(木) 00:31:54 mRyNKzyU0
投下します。


807 : 邪剣 ◆ytUSxp038U :2022/07/28(木) 00:33:30 mRyNKzyU0
光ありところに、漆黒の闇ありき。

古の時代より、人類は闇を恐れた。

しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、

人類は希望の光を得たのだ。





随分と喧しい男だった。
眠たげな瞳の中に呆れを滲ませ、モニターが浮かんでいた上空から視線を落とす。
冥界の魔王の次は神ときたか。
絶対的な自身に満ち溢れ傲慢さを絵に描いたような男、それがねむの黎斗に対する印象。

「魔王も悪い神様も最後は必ず報いを受ける、というのが物語のセオリーだけど彼らはどうなんだろうね」

黎斗は如何にも悪役らしく自分を倒せるものなら倒してみろと言わんばかりに、参加者へ挑戦を叩きつけた。
王道ストーリーならば勇気ある者達が一致団結し悪い神様を打倒するのだが、現実はそう都合良くいかない。
心意気は立派でもあっさり返り討ちに遭うかもしれないし、団結どころか参加者同士の不和で瓦解の可能性もある。
神に辿り着くか、挑戦者の全滅か、ただ一人の優勝者が生まれるのか。
どんな結末であれゲームが盛り上がるのなら満足なのだろう。
ねむとしては主催者の持つ力さえ手に入れられれば、どんな過程だろうと問題無い。
実はハ・デスも傀儡に過ぎないのには多少の驚きこそあったが、方針を変える程重大な事実でも無かった。

黎斗に関して考えるのもそこそこに、タブレットを取り出す。
テストプレイが終了し、名簿が完成した。
つまり自分は主催者のお眼鏡に叶い、改めて殺し合いへの参加を認められたのだ。
運試しの名目で行われた無差別首輪爆破も生き残り、正式な参加者の資格を得ている。
あれが本当に参加者の運のみに左右されたのかは分からないが。
ひょっとすると黎斗が特別視している人物だけは首輪爆破の対象から外していた、何て考えられなくもないが別にどうでもいい。
それより名簿が見れるようになったのだから、そっちを確認しておく方が大事。


808 : 邪剣 ◆ytUSxp038U :2022/07/28(木) 00:35:03 mRyNKzyU0
表示された名簿に目を通し終えると、無言でタブレットを仕舞う。
暫しの沈黙、やがて俯いたまま重苦しいため息を吐いた。

「薄々予感はしてたんだけどね……」

知っている名前は、あった。
予測出来た事だ。
黎斗は殺し合いをゲームと称していた。ゲームを盛り上げる為の参加者…魔法少女が自分一人なのは不自然。
正直に言って、自分よりもゲームに向いている魔法少女には心当たりがある。
だから彼女達も参加しているのに驚きは抱かない。

灯花を参加させたのは分かる。
魔法少女の解放を実現させる為に、ねむ以上にブレない精神の持ち主だ。
同胞のマギウスであり、親友の一人でもある彼女が巻き込まれていて素直には喜べない。
しかし同じ目的を持った者同士で心強さを覚えるのも事実。
出来れば早めに合流しておきたい。

七海やちよと深月フェリシアの参加も分かる。
マギウスの翼と敵対していた彼女達が、殺し合いに乗るとは考えにくい。
きっとあの二人の役目は、他の参加者と協力し黎斗を倒そうとする挑戦者だろう。
黎斗を排除したいという点はねむと一致しているが、元々敵対していたのもあって協力は難しいだろう。
むしろ他の参加者にマギウスの警戒を促されれば、こっちは非常に動き辛くなる。
場合によっては纏めて始末した方が良いのかもしれない。

みふゆには思う所がある。
彼女はマギウスの翼を裏切ったが、その理由はねむからしても分からんでもない。
羽の中にはマギウスへの忠誠よりも、みふゆ個人への信頼が大きい者は少なくなかった。
そういった魔法少女達を、神浜市の一般人に犠牲を出すやり方に巻き込み続けている罪悪感。
更に以前の仲間だった鶴乃をウワサと融合させられた事による、マギウスへの不信感。
遅かれ早かれみふゆとは決別していたと思う。
あの時はみふゆへの罪悪感もあったが、今更許しを請う気も考えを改める気もない。
邪魔をするならやちよ達と同様の対処を取らせてもらう。

意外にもアリナは参加していないらしい。
狂人と言う他ない三人目のマギウスは、こういった残酷な催しに打って付けの人材のはず。
とはいえ不参加なら、それはそれで問題ない。
また前のような暴挙に出て邪魔をされるよりなら、いない方が遥かにマシだ。


809 : 邪剣 ◆ytUSxp038U :2022/07/28(木) 00:36:28 mRyNKzyU0
そして最後に一人。
一番参加して欲しくなかった人の名前も、間違いなく載っていた。

「やっぱり、いろはお姉さんも……」

理解はできる。
自分と灯花がいて、七海やちよ達もいるなら、環いろはが参加していない方が不自然。
それにいろはの参加を全く考えなかった訳ではない。
もし黎斗が神浜市の魔法少女を集中して参加させたなら、いろはの存在は無視できないだろう。
だが理解はできても、あの人にだけは参加して欲しくなかった。

「会いたいけど、同じくらい会いたくないよ…お姉さん……」

いろはがどう動くかなんて考えるまでもない。
魔法少女の力を人助けの為に使う、やちよ達と同じく殺し合いを止める為に奔走するだろう。
ねむや灯花がやろうとしている事を知ったら、反対するに決まっている。
だから会いたくないのだ。
もう一度いろはに止められたら、涙ながらに説得されたら決意がブレてしまいそうだから。
魔法少女の解放が叶わず、ういがもう戻って来ないとしても、いろはの傍にいられる幸福へ逃げてしまいそうだから。

(でも……それじゃあ駄目なんだ…)

そうだ、自分は決めたんだ。
どれだけの屍を積み重ねる事になろうと、どれだけ大勢に怨まれようと、いろはを救ってみせると。
ういとの約束は自分と灯花が絶対に果たすと誓ったのを、忘れるつもりはない。
いろはの傍に自分達がいられないとしても、いろはが救われるのならそれで良い。

僅かに潤んだ目を擦り、眼鏡を掛け直して思考を切り替える。
いろはが参加していると分かった以上、優勝を目指すという方針は有り得ない。
やはりまずは、荒事を引き受けてくれる人材を確保すべきだろうか。
並行して灯花との合流も目指したい。

考えを纏めながら俯けていた顔を上げ、



「お ま た せ」



直ぐ近くに野獣がいた。


810 : 邪剣 ◆ytUSxp038U :2022/07/28(木) 00:37:22 mRyNKzyU0
「――っ!?」

この見るからに臭くて汚そうな男には見覚えがある。
放送の前、御伽と一緒にいた自分を殺そうとした危険人物だ。
右手には鞘から抜いた一本の刀。刀身には赤い汚れがベッタリと付着しているのが確認できた。
予想はしていたが、やはり御伽は殺されたらしい。
それにしたってこうも早くに追いつかれるとは思わなかった。
いろはが参加している事に気を取られ過ぎたか。
否定はしない。それくらい心を激しく揺さぶる存在なのだから。

(全く…僕も運が無い…!)

声には出さずに愚痴り、搭乗中のポッドを動かす。
なるべく魔法少女の戦闘を控えたいねむとしては、この汚物に手足が生えたような男とマトモに相手などしていられない。
急発進すべく方向転換させる。

が、相手はねむの逃亡を許しはしなかった。

「逃げんなよ…逃げんな…」

何と言う速さだろうか。
男はねむの目の前へ立ち塞がるように急接近、右手を真っ直ぐ突き出した。
刃が迫る。

このまま轢いてやろうか、駄目だ向こうの方が速い。
何か別の支給品を、いやそれより四の五の言わずに魔法少女へなるしか、
どっちも駄目だ、もう間に合わない。

「♰悔い改めて♰」

あっ
まずい

死――


811 : 邪剣 ◆ytUSxp038U :2022/07/28(木) 00:38:22 mRyNKzyU0



「え、なにあいつは…(困惑)」

ハ・デスとか言う化け物を押し退けて、我こそが頂点と猛アピールする自称神。
真の黒幕と思しき男の出現には野獣先輩も幾分かの困惑を隠せずにいた。
尤も野獣先輩からしたら誰が黒幕か何てどうでもいい。
神だろうと魔王だろうとホモビ製作会社の社長だろうと、淫夢くんだって構わない。
重要なのは一つ、遠野を蘇生できるか否か。
何やらどっかのメスガキが金髪のイケメンに殺されたり、乱入して来た鎧武者が返り討ちに遭ったり、また別のメスガキが人質になったりと目まぐるしく変わる映像。
それら全てがどうでもいい。強いて言えば金髪のイケメンの肉体美に己のイチモツが反応を見せたくらいか。

自称神が幾つかルールを追加していたが、優勝したら願いを叶えられるという点は同じ。
ならやる事は変わらない。

「殺りますよー殺る殺る(サイコ)」

既に少年を一人殺した為か、皆殺しにも抵抗は皆無。
次の獲物を狩るべく駆け抜けた先で、早速一人の参加者を発見。
よく見ればそいつは先程逃がしたメガネのメスガキ。
さっき殺した少年はメスガキだけは逃がせたと思っていたようだが、結局は無意味に終わる。
名前も知らない少年の無駄な努力を嘲笑い、メスガキへ接近。
こちらに気付いたようだがもう遅い。
愛する後輩の為に、そのちっぽけな命を刈り取らせてもらう。

「♰悔い改めて♰」

メスガキの薄い胸を一突き。
心臓を串刺しにして終わりっ!閉廷っ!のはずだった。

ならこの手応えは何だ?
柔らかな肉を貫いたのではない、硬い何かにぶつかったような感触は。

「えっ?」

メスガキが間の抜けたような声を出す。
それを鼻で笑えはしない。
自分もまた困惑している真っ最中だから。

メスガキと自分の間に割って入った、この男は何者だ?


812 : 邪剣 ◆ytUSxp038U :2022/07/28(木) 00:40:27 mRyNKzyU0



鞘に収めたままの魔戒剣で防ぎつつ、もう片方の手を汚らしい男の眼前に翳す。
カチリと乾いた金属音。
幻想的な緑色の炎が、男の顔を照らし皺やイボの汚さがより鮮明となった。
だが冴島鋼牙が見たいのは男の容姿などではない。
瞳に浮かび上がる、己が倒すべき魔界の住人の証だ。

「ホラーでは無いようだな」

ジッポライターの形状をした装備、魔導火が照らし出したのは汚い以外は普通の瞳。
男がホラーに憑依されてはいない証拠。
しかし純粋な人間というには何かが引っ掛かる。

ホラーの探知を得意とする相棒は、己の指に填められていない。
旧魔界語で友を意味する名の彼ならば、この男の正体にも気付いたかもしれないが、いない者を頼っても意味は無し。
長年の修練と実戦で鍛え上げられた五感のみならず第六感、戦士の直感とも言うべきものが告げている。
目の前の男をただの人間として見るべきではないと。

歴戦の魔戒騎士だろうと、男の正体に気付くのは不可能だろう。
まさかネットミームを実体化させられたホモビデオ男優など、分かれと言う方が無茶だ。

膠着状態を嫌ったのか、野獣先輩が一度距離を取る。
いきなり現れメスガキ殺害の邪魔をし、何故かライターを翳してきた。
挑発のつもりか?表情が憤怒に染まっていく。

「あ、お前さ初対面の癖にさ、流石に失礼過ぎィ!お母さんごめんなさい、お婆ちゃんごめんなさい、僕を死刑にしてください!って言ってみろよホラホラホラホラ」

意味不明の言いがかりを付けるステハゲを前に、鋼牙は油断なく睨み付ける。
相手がホラーに憑依された者でないからと言って、殺し合いに賛同しているのならこのまま見逃すつもりはない。
鞘から魔戒剣を抜き構えを取る。
本来ならば人間相手に魔戒剣を使う気は無いが、この男相手にそれは悪手であると本能で理解した。
鋼牙の戦意に応えるかのように、野獣先輩もまた得物を収め抜刀の姿勢を取る。

「下がっていろ」

破裂寸前の風船のように緊張感が高まる中、浮遊する壺らしき物に乗った少女へ短く告げ、
それを合図に激突した。


813 : 邪剣 ◆ytUSxp038U :2022/07/28(木) 00:41:34 mRyNKzyU0
先手を取ったのは野獣先輩。
足元が陥没する程の勢いで急接近し抜刀、横薙ぎに振るわれた一閃を以て首を落とし、早急に決着を付ける算段だ。
刀身から柄を握り締めた手へ伝わるのは先程同様、金属に当たった感触。
見なくとも防がれたと分かる。

「邪剣・【夜】、逝きましょうね」

死刑宣告を言い切るより早く、刀を振るう。
刃が当たったのは生身の体では無く、敵の剣。
二度目の防御に顔を歪め、三度四度と更に振るわれる刀。
直立不動の体勢なのに、右腕だけが目にも止まらぬ速さで動いている。
真っ当な剣士とは思えぬ型を前にしても、鋼牙に動揺は無い。
野獣先輩に負けじと振るわれる魔戒剣。
自身を狙う殺意の嵐を一つ残らず捌き切った。

「は?(威圧)」

己の刀が届いていない、掠り傷すら付けられていない。
ビキリと額に浮かぶ青い血管。ホモは短気、ハッキリ分かんだね。
馬鹿の一つ覚えのような打ち合いを中断、身を屈め足元を狙う。
いきなり命を奪えなくとも、まずは機動力を奪ってやれば有利は自分に傾く。
下衆の発想、とは言い切れまい。殺し合いにルールを持ち出す方が悪い。

「ハッ!」

脚を貫かれる前に鋼牙は跳躍、空しく空気を裂いた刀には見向きもしない。
敵の頭部より高い位置まで跳び、顔面目掛けて蹴りを放つ。
刺し貫いてやるつもりだった脚は頬を直撃。
硬い靴底による痛みに一瞬視界が暗転、背中から地面に倒れた。

だが倒れたままでいるのもまた一瞬のみ。
立ち上がり刀を滅茶苦茶に振り回す。
ロクに狙いを定めてもいないが、牽制の役目は十分果たした。
追い打ちを掛けようとした鋼牙の動きを止め、こちらもすぐさま構え直す。


814 : 邪剣 ◆ytUSxp038U :2022/07/28(木) 00:42:28 mRyNKzyU0
「頭に来ますよ!」

よりにもよって敵は自分の顔を蹴り付けた。
自慢の顔に傷が付いたらどうするつもりだ、折角遠野を生き返らせても拒絶されたら意味が無い。
ただ斬り殺すだけでは気が済まない、相手の顔に穴をあけてそこにブチ込んでやる。
空手部の後輩に無理やりペニスをしゃぶらせている時のような、クッソゲスい顔へと変わった。

「ハァッ!」

クッソ汚いホモのクッソおぞましい考えなど鋼牙には知る由も無いし、知ろうとも思わない。
ハッキリしているのは、この男は超人的な能力を人殺しの為に使っていること。
自分が現れねば殺されていただろう少女でも、お構いなしに殺す気でなのだろう。
たった一つのその事実に心を奮い立たせ、力強く踏み込んだ。

「死んで、どうぞ(無慈悲)」

迎え撃つべく四方八方からの斬撃が鋼牙へ殺到。
出鱈目なようでいて、その実こちらの急所を確実に狙った攻撃。
このままでは人参しりしりならぬ人間しりしりとなってしまう。
だが無数の刃など鋼牙には珍しくも無い。
両目だけではなく、研ぎ澄まされた感覚により防ぐべき刃を全て捉える。
各部を狙った一撃が悉く弾かれた。

「ふざけんな!(声も迫真)」

怒声を放ち刀を振るう速度を上げれば、鋼牙もそれに追いついて来る。
互いの得物が絶えずぶつかり合い、金属音は鳴り止まない。
刀身同士が火花を散らすも、使い手の体には未だ刃は奔らず。
常人ならばとっくに限界を迎えただろう互角の剣戟は、遂に片方へと傾いた。

「ファッ!?」

刀が野獣先輩の手から弾かれ宙を舞う。
袈裟斬りを防いだと思えば、次の瞬間には魔戒剣の斬り上げ。
ほんの少しだけ力が入り切らないまま防御、ダメージこそ無いが手元から刀が離れてしまった。
跳躍し掴み取る隙は与えてくれそうもない。
重力に従い落ち来るまで待ってる余裕などある訳がない。
一時的とはいえ、武器の損失は圧倒的な不利を意味する。
だというのに野獣先輩に焦りは無い、むしろ不敵な笑みさえ浮かべているではないか。


815 : 邪剣 ◆ytUSxp038U :2022/07/28(木) 00:43:44 mRyNKzyU0
「ホラホラホラホラホラホラホラホラホラホラホラホラ!」
「ぐっ!」

刀を手放してしまったと認識した直後、野獣先輩は素手で殴りかかった。
ヤケクソで拳を振るったのではない、機関銃の掃射に等しい速さで拳を放っているのだ。
参加者である空条承太郎、彼のスタンド「スタープラチナ」のラッシュにも負けず劣らずの勢い。
でもホラホラだとJUTRUじゃなくてPLNRHなんだよなぁ。

刀と同じく、敵の拳もまた甘んじて受け入れる気は鋼牙に無し。
魔戒剣と鞘を交差させ防御、殴打の嵐を己が身に一撃たりとも食らわせない。
防ぎ続けている間、魔戒剣は元より鞘も軋み一つ上げず使い手を守っている。

拮抗を崩すべく一際力を込めた拳を放つ野獣先輩。
拳は正確に鋼牙の顔面を捉えるも、数ミリの間を開けて止まった。
野獣先輩の意図した行為ではない、低く呻き己の腹部へ視線を落とす。
赤い棒、いや魔戒剣の鞘が腹を突き拳を強制的に止めたのだ。

一瞬の硬直後、頭上から落ちて来る刀の存在が野獣先輩を動かす。
鞘を蹴り上げ鋼牙の左腕もまた跳ね上がる。
腹部の痛みは無視、死ぬ程でも無ければ耐えられない程でも無い。
視線は鋼牙から逸らさずに刀を掴み、そのまま振り下ろした。

互いにすっかり聞き慣れてしまった、甲高い金属音。
野獣先輩の刀は相手を押し切れず、鋼牙の魔戒剣も相手を押し返せない。
鍔迫り合いでは埒が明かない、両者共通の判断で足を伸ばす。
互いの胴を蹴り飛ばし、距離が開けば二度目の仕切り直し。

(この男……)

野獣先輩を睨み付ける鋼牙の瞳に油断は一切ない。
ここまでの攻防で敵の正体が一層分からなくなった。
この男は強い。魔戒騎士である自分とこうも渡り合う事からも、強さそのものに疑う余地は無い。
だからこそ余計に分からないのだ、男のどこかチグハグな力に。
男が剣を振るい拳を放つ一連の動作、それらは鍛えた達人の洗練された動きとは違う。
まるで人形に無理やり動きをさせているような、そんな歪さ。
幼少時より魔戒騎士の修行に明け暮れ、現在でも鍛錬を怠らない鋼牙だからこそ気付いた不自然さが男にはあった。

檀黎斗が登場した二度目のOPを読んだ読者兄貴達は既に知っていると思うが、野獣先輩とは厳密に言えば人間ではない。
真夏の夜の淫夢というホモビデオに出演した男優が、膨大なネットミームにより歪められた偶像。
現実世界には存在しないソレを実体化させ、「野獣先輩」という便宜上の名を与えられた参加者こそ、このおはぎうんこの正体だ。
当然元となったホモビ男優に超人的な戦闘能力など無いが、「野獣先輩」は違う。
ヴォー動画サイトにおける彼の異名の一つにこんなものがある。
BBの数だけ強くなる男。
ホモビデオの場面を切り抜き、ホモビ男優のクッソ汚い人形劇の素材として使うクッソおぞましいホモガキの遊びが発端となり、野獣先輩のみならず淫夢ファミリーにがDNホモ以上の戦闘力を得るに至った。
ステロイドで得た偽りの肉体ならぬ、BBで得た偽りの強さである。


816 : 邪剣 ◆ytUSxp038U :2022/07/28(木) 00:45:27 mRyNKzyU0
(こいつちょっと強過ぎィ!)

鋼牙が野獣先輩を強く警戒する一方で、野獣先輩もまた鋼牙への警戒を数段引き上げていた。
最初に殺した御伽(名前は知らない)とは比べ物にならない強さ。
向こうが振るう剣でまだ一度も斬られていないが、こちらもロクにダメージを与えられていない。
本人の強さだけでなく、使う武器も厄介だ。
あれだけの打ち合いをしたのに軋み一つ上げない頑丈さ。
苦も無くメガネのメスガキを殺す予定だったのに、とんだ労力を使う羽目になってしまった。

冴島鋼牙は魔戒騎士最上位の称号を得た青年だ。
幼少時に父を奪われ、同じ釜の飯を食った同胞(はらから)を奪われ、その無念さえも強くなりたいという決意に変え鍛え続けて来た。
強大なホラーや暗黒騎士との戦いにも打ち勝つ力、心の弱さへつけ込む闇の誘惑を完全に払い除ける精神。
心身共に決してブレる事のない強さは、黎斗主催のゲームにおいても健在。
黎斗にとっては葉霧宵刹の反対を押し切ってでも、参加させる価値のあったプレイヤーだ。
また魔戒騎士の武器や鎧は、ソウルメタルと呼ばれると特殊な金属を加工した物。
野獣先輩が使う刀もヒューマギアを破壊する程の強度を持つとはいえ、対ホラー用に生み出された武器の破壊はほぼ不可能だろう。

鋼牙の強さの秘密を知る由が無くとも、厄介な敵なのは確か。
このまま刃物を振るい合った所で、無駄に体力を消耗するだけ。
ならばここいらで別の武器を使わせてもらおう。
説明書通りなら、いやさっきの映像でコレが単なる玩具でないと理解した。

「(俺の変身)見とけよ見とけよ〜」

野獣先輩が新たに取り出した箱と一枚のカード。
カブトムシのような姿が描かれたカードを箱へ挿入、腹部へと当てる。
すると箱からは無数のトランプが現れ、野獣先輩の腰に巻き付いたではないか。
トランプに見えたのはベルト、箱はどうやらバックルらしい。

ソレの正体が何なのか。
橘朔也がこの場に居たなら、愕然とした表情になっただろう。

「変身!」

『TURN UP』

バックルの前面部を回転させると、スペードマークが露わとなる。
同時に青い壁らしきナニカが出現。
挿入したカードと同じ、ヘラクレスオオカブトが浮かび上がった壁を突き抜けた。

そこにいるのはさっきまでの汚いステハゲではない。
排泄物のような色の体は青いスーツで覆われ、更にその上から白銀の装甲を纏う。
西洋の騎士にも見える体、顔には天を突く角のようにも、剣のようにも見える仮面。
ベルトの左部分に差した剣が、キラリと反射する。

名は仮面ライダーブレイド。
不死の生物と戦い、世界と親友の両方を守った青年のもう一つの姿。

「良いねぇ〜Foo〜↑」

それが神主催のゲームにおいては、クッソ汚いホモの暴力として顕現した。


817 : 邪剣 ◆ytUSxp038U :2022/07/28(木) 00:46:26 mRyNKzyU0



刃が幾度もぶつかり合い、火花が散って夜闇を照らす。
滅亡迅雷.netのリーダー格、滅の愛刀。
仮面ライダーブレイドの専用武器、ブレイラウザー。
得物を増やし、より勢いを増した斬撃に対抗するは冴島鋼牙の魔戒剣。
数多のホラーを一刀両断の下に浄化、魔界へ送り返して来た名剣。
互いの得物は引けを取らない。では使い手の技量は?

「イクイクイクイク!」

掛け声は非常に汚いが、振るわれる武器の威力は本物。
神秘の金属・オリハルコンプラチナを極限まで研磨して作り上げた刃だ。
ブレイドに限らず、仮面ライダーの武器とはどれもが容易く壊せない強度を持つ。
だが当たれば人体を紙の様に切り裂く刃だろうと、そもそも当たらないなら無意味。
右手には魔戒剣、左手には赤い鞘を持ちブレイドの猛攻を防ぐ。

休む暇もなく剣を振るう鋼牙の表情は自然と険しさを増していく。
誰が変身しようとブレイドの基本的なスペックは変わらない。
しかし変身者が元々高い身体能力を持っていれば、その分変身後に発揮可能な力はより高くなるだろう。
ならば生身の状態でも超人的な力を持つ男が白銀の鎧姿に変身、それは当然更なる脅威と化す。
加えて振るう武器の数も一本増え、単純な手数も増した。
元より敵を前に油断や慢心を抱く性質でないとはいえ、僅かでも気を抜けばあっという間に細切れだ。
ブレイドの一挙一動を見逃さず、鋼牙は両腕を振るい続ける。

表情が険しいのは野獣先輩も同様。
今の自分は生身の時より強くなっているのは、軽くなった肉体からも明らか。
だというのに敵は未だ倒れる事無く食らい付き、二振りの剣を完璧に捌いている。
これまた野獣先輩が知らぬ事だが、鋼牙は双剣使いとの戦闘は初めてではない。
鋼牙が思い浮かべるは自身とは反対に黒衣を纏った魔戒騎士。
銀牙騎士・涼邑零。
プレイヤーとして会場のどこかにいるだろう男。
今でこそ互いに信を置く友だが、出会った当初は零が鋼牙を仇と勘違いしていたのもあって険悪な関係だった。
時には禁じられている魔戒騎士同士の戦闘に発展した事もある。

あの時の戦いは決して称賛されるべきでは無いが、さりとて無駄でもない。
現に鋼牙は零との戦闘を糧とし、ブレイドの双剣に渡り合っていた。


818 : 邪剣 ◆ytUSxp038U :2022/07/28(木) 00:52:08 mRyNKzyU0
体は休めず、心は熱く、されど思考は冷静に戦況を見る。
鋼牙の知る限り、最も優れた双剣の使い手は零。
ブレイドからは零程の苛烈ながら研ぎ澄まされた剣術を感じない。
とはいえブレイドが脅威にならないという事には断じてならず、鋼牙も警戒度は変わらない。
今は食らい付いているものの、やはり身体能力を急激に強化した分有利なのはブレイド。
いずれ敵の双剣で血祭りにあげられるのも、時間の問題やもしれぬ。

「ぬわあああああああああああああん飽きてきたもおおおおおおおおおおおおん」

馬鹿みたいな声を出しながらブレイドが後退。
意外にも、優勢を保っていた相手の方から距離を離した。
理由は何であれ今が鋼牙にとってのチャンス、魔戒剣を頭上に掲げる。

『THUNDER』

「で、出ますよ…」

が、必要な動作を中断し即座に回避へと移った。
地面を転がる鋼牙、その真横へと放たれたのは青い電撃。
ブレイラウザーから放たれたものだ。
急ぎ立ち上がる鋼牙へブレイドは次の手に出る。

『TACKLE』

すかさずブレイラウザーのカードホルダーを展開し、必要なカードを抜き取る。
ブレイラウザーは単に切れ味の良いだけの武器ではない。
その真価は不死の生物アンデットが封印されたラウズカードを読み込み、能力を発動するカードリーダーとしての機能にある。
電撃を放ったのはスペードの6、ディアーアンデットの力によるものだ。
今リードしたカードはスペードの4。封印されたボアアンデットの能力がブレイドに付与される。

「ほらいくどー」

肩を突き出し、突進力を強化したタックルを仕掛ける。
ブレイドの装甲に使われているのは、ブレイラウザーと同じオリハルコンプラチナ。
120tもの衝撃にも耐える硬度で激突されれば、幾ら魔戒騎士でも無事では済まない。
クッソ気の抜けた声と正反対の、大型トラックにも匹敵する勢いでブレイドが迫る。

対する鋼牙はここで回避ではなく防御を選択。
魔戒剣を前面に翳し構え、剣諸共粉砕しようと突撃するブレイドと真正面から激突。
強化されたタックルには敵わなかったのか呆気なく吹き飛ぶ。
否、鋼牙は衝突の勢いに逆らわず自ら後方へと跳んだのだ。


819 : 邪剣 ◆ytUSxp038U :2022/07/28(木) 00:53:18 mRyNKzyU0
「フンッ!」

背後にある大木へ叩きつけられはせず、蹴り付けブレイドの元へと斬り掛かった。
手には当然魔戒剣。勢いを付けた上で剣を振り下ろす。
これをブレイド、新たなカードをリードする暇は無いと判断。
交差させた刀とブレイラウザーで防ぎ、キリキリと鳥肌が立つ音を鳴らしながら至近距離で睨み合う。

「折角仮面ライダーとかってのに変身したのにしぶと過ぎィ!早く死んでくれよな〜頼むよ〜(懇願)」
「何…?」

仮面ライダー、聞き覚えのある言葉だ。
ホラーに憑依された青年を斬り少し経った後に始まった放送。
神を名乗った男と対峙した鎧武者がそう呼ばれていた。

この男も鎧武者の青年も、腰にベルトを巻いて姿を変えていた。
魔戒騎士の鎧召喚とは違う、科学技術の産物だろうか。
鎧武と呼ばれた仮面ライダーと目の前の白銀の装甲ではた目が違うが、それは魔戒騎士の鎧も同じか。
とにかく特殊なベルトを用いて変身する、という点が共通した戦士だろう。

「俺は仮面ライダーとやらを詳しくは知らんが……」

放送の内容を鋼牙は決して忘れないよう脳裏に刻み込んだ。
平然と人々の命を踏み躙る、決して許してはならない巨悪への怒りを。
手の届かぬ場所で命を散らされた者達の無念と悲しみを。
嘗てこの手で斬った暗黒騎士・バラゴとは違うが、映像越しにもその邪悪さを感じ取った黒い鎧への警戒を。

そして、檀黎斗を倒すべくたった一人で立ち向かった戦士を。
戦う為の力を失って尚も立ち上がった、葛葉紘汰という男の名を決して忘れまいと刻んだのだ。

神に逆らった罪への見せしめのように殺され、それでも紘汰が口にしたのは後悔や命乞いではない。
同じ志を持った者達へ託す言葉。
鋼牙は仮面ライダーではない、だが守りし者として紘汰の願いは聞き入れた。
ホラーに憑依された名も知らぬ青年の願いに、力強く応えたように。

「その力は、お前が持っていて良いものではない!」


820 : 邪剣 ◆ytUSxp038U :2022/07/28(木) 00:54:55 mRyNKzyU0



(さて、どうするべきかな)

鋼牙とブレイドが戦闘を続けている場所より少し離れた位置。
宇宙の帝王専用の小型ポッドからぴょこりと可愛らしく顔を覗かせ、ねむは自分がどうすべきかを考えていた。

危うく殺されそうになった所を、突如現れた白コートの男に救われた。
自己紹介の暇もなく彼は自分に短く警告し、臭そうな男と戦闘を開始。
巻き込まれては堪ったものじゃないので、言われた通りに退避。
戦闘の余波がギリギリ届かない位置で二人の戦いを観察していたのだ。

(それにしても彼らは一体何者なんだろうね)

表情こそ普段と余り変わらないが、これでも内心は驚いている。
戦っている真っ最中の二人はどちらも男。どこをどう見ても魔法少女には見えない。
だというのに彼らの力は並の魔法少女を軽く凌駕しているではないか。
敵対者として見るなら紛れも無い脅威、だが荒事担当の人材としては文句なしだ。
汚そうな男は確実にゲームに乗っているが、白コートは違う。

悪い男に襲われている女の子を助けた剣士様。
使い古された展開を自分の身を以て体験するとは思わなかった。

観察を続けていて一つ気付いた事がある。
白コートの剣士は先程から何かの機会を窺っているように見えた。
例えば青い電撃を避けた時。
回避の直前に剣を頭上へ掲げており、その後も隙を見ては同じような動作に移りかけていた。
しかし相手も気付いているのか偶然かは知らないけど、その度に攻撃を仕掛けて妨害されている。

(彼にとって勝負を変える何かをしようとしてるのかな?)

魔法少女で言う所の大技(マギア)に該当するだろうモノ。
それの発動に少々梃子摺っている、そんなところか。
正体が何であれ茶色い男が死ぬのならそれに越したことはない。
あんな汚物を生かしておいていろはに危害を加えられるなど、決して許されない。
それに白コートの剣士はここいらで手に入れておきたい人材でもある。
いざとなったら面倒ごと全部を押し付ける駒として、申し分ない戦力だろう。
もしこの場で白コートの剣士が殺されるとしてもだ、その前に出来るだけ相手を疲弊させるないし相打ちに持ち込んで欲しい。


821 : 邪剣 ◆ytUSxp038U :2022/07/28(木) 00:57:05 mRyNKzyU0
そうと決まれば白コートの剣士を援護する必要がある。
手っ取り早いのは魔法少女に変身して戦うものだが、極力魔力は使わずにいたいねむとしては本当に最後の手段だ。
となると後は支給品に頼る方法。
現在搭乗中の小型ポッド以外にも支給された物はある。
正直自分に寄越されても使い道に困るのだが、こういう使い方なら良いかもしれない。
デイパックの口を全開にし、戦闘中の男達の元へ接近。
余り大きな声は出したくないけど、今だけは仕方ないと大きく息を吸い込む。

「お兄さん避けて!!」

こんな風に叫ぶなんて自分らしくないかも、胸中で思わずむふっと独自の笑い方。
背後を見ないまま弾かれたように飛び退く白コートの剣士を見送らず、デイパックを思いっきり振り被る。
標的は不潔そうな男、どう考えてもデイパックに入る大きさではない、鉄の塊が飛び出した。





「ファッ!?」

野獣先輩独特の高音で驚きを口に出す。
胸にかけてと懇願したのに顔にかけられた時よりも、驚きの度合いは強い。
メガネのメスガキが何かを叫んだ次の瞬間、持っていたデイパックから黒い何かが物体が飛び出たのだ。

それは車、黒塗りの高級車。
参加者に渡されたデイパックは基本的に大きさや重量関係なく収容可能。
小型ポッドが入っていたなら、それより大きい物が入っていても何ら不思議はない。
成人した参加者なら移動手段として当たりの部類に入るのだろうが、小学生のねむにはかさばるだけで邪魔。
よって特に躊躇もせず、ブレイド目掛けて中身を放り投げた。

迫り来る鉄の塊にブレイドもまた慌てて飛び退く。
幸い直撃は避けたものの、ブレイドの意識は黒塗りの高級車へと向けられた。
彼自身にも理由は分からない、だがどうしてかこの車からは自分と近いナニカがビンビンに感じ取れる。
旧知の仲の友に出会ったような、何とも言えぬ懐かしさ。

奇妙な感覚に酔いしれる野獣先輩だが、この状況では最大級の失敗だ。

ブレイドが黒塗りの高級車に気を取られている間、ねむはそれを見ていた。
自分を助けた剣士、冴島鋼牙が剣を掲げる姿を。
掲げられた剣が円を描き、天からの祝福の如き光を一身に浴びる様を。
遅れてブレイドがようやく敵の異変に気付くも、既に遅い。


822 : 邪剣 ◆ytUSxp038U :2022/07/28(木) 00:57:56 mRyNKzyU0
魔戒騎士による鎧召喚は、たった今完了した。

「っ!!?!」
「ファッ!?ファッ!?ファッ!?(ビーストドライバー)」

光が晴れる、否、更なる輝きを以て姿を現わす。
目も眩むほどの黄金。
豪奢だとか俗物的な感想を抱ける者など、誰一人としていまい。
闇を照らす希望の証。
悪しき魂を浄化し、生ける者の為に剣を振るう守護者。
その姿はまさしく――

「黄金の、狼……?」

感嘆か、畏怖か、或いは別の感情か。
ねむ自身にも判別不能な呟きへ応えるが如く、勇ましい咆哮を上げる。

黄金騎士・牙狼。
旧魔界語で希望を意味する名を冠する、最高位の魔戒騎士。
神の仕組んだ殺戮遊戯の地にて、その輝きに翳り無し。

――99.9――

「あ、頭に来ますよ!(二回目)」

我に返ったブレイドが動揺を誤魔化すように怒声を放つ。
穢れた魂の持ち主を問答無用で浄化しそうな牙狼の輝きへ、本能的に恐怖を抱いたのだろうか。
うんこの擬人化だからね、しょうがないね。

「爆砕かけますね〜」

一瞬とはいえ自分を戦慄させた相手への怒りを乗せた剣。
巧みに操った双剣を前にしても、牙狼に避ける素振りは無い。

そんなもの必要ない。

ガキンと、これまで以上に大きく鳴り響いた。
ブレイドの振るった剣は両方とも黄金の鎧へと直撃。
それだけだ。切り裂けもしない、掠り傷すら付けられない。
剣を握る手にどれだけ力を込めても、牙狼は微動だにせず悪足掻きを見つめるだけ。


823 : 邪剣 ◆ytUSxp038U :2022/07/28(木) 00:59:09 mRyNKzyU0
不意に衝撃がブレイドの胸部へと走った。
オリハルコンプラチナ製の、アンデットの攻撃も耐える装甲。
脆弱な威力では痒いとすら感じられ無い装甲でも殺し切れない、鈍い痛み。
突き出された黄金を纏った右腕、ブレイドが殴られたと理解した時には地面を転がっていた。
ブレイドに変身してからは初めて受けるダメージ。
痛みはそうすぐには消えないが、戦闘不能になる程でもない。
だから直ぐに立ち上がる。
体力、まだ余裕あり。武器、両方とも破損無し。戦意、確認するまでもない。

素手でラッシュを放った時のように、今度は双剣で突きを繰り出す。
向こうが生身のままであれば、砂へ指を突っ込むよりも容易く風穴まみれだ。
そんな簡単にいかない事くらいブレイドにも分かるが。

――91.2――

黄金騎士の剣が抜き放たれる。
魔戒剣よりも幅が広く両刃、紋様の刻まれた牙狼剣に、ブレイドの姿が反射した。

「オオッ!」

ブレイドの突きに劣らぬ速度で振るわれる。
より長く、大きさを増した剣。だが速さもまた、生身の時より上がっていた。
首を、左胸を、脇腹を狙った切っ先が悉く弾き返される。
その度にブレイドの腕を襲う痺れ。徐々に剣を握る力が緩められていく。

「オォン!アォン!」

非常に不快な声で自身の劣勢をアピール。
牙狼は聞く耳持たず。気のせいか剣の勢いが強まった気さえする。
このまま突きを繰り返しても勝機は見えてこない。
判断してからの行動は迅速だ、数度目となる背後への跳躍。
ただ剣を振り回すだけがブレイドの力ではない。

「こ↑れ↓とこ↑これ↓」

ブレイラウザーのカードホルダーを展開、二枚を抜き取る。
ラウズカードをリードする事で、固有の能力を発動するのは既に試してある。
だがラウズカードの使い道とはそれだけに留まらない。
複数のカードを組み合わせる事で、より高威力の技へと繋げられるのだ。


824 : 邪剣 ◆ytUSxp038U :2022/07/28(木) 01:00:14 mRyNKzyU0
――80.4――

ブレイドが選択したのは先程電撃を出したカード。
もう一枚はまだ使っていないが、その効果は把握している。
素早く二枚をリードした。

『SLASH』

『THUNDER』

『LIGHTING SLASH』

二枚のラウズカードがそれぞれ力を解放、やがて一つの技へと成る。
鋼牙へ放った青い電撃をブレイラウザーに纏わせ、更に切れ味も強化。
アンデットの硬い外皮だろうと切り裂く刃と化した。

ラウズカードを使わずともブレイドは驚異的な速度を発揮。
頭にあるのは、相も変わらず優勝への道を阻む邪魔者の排除。
そして全てが終わり、取り戻した愛しの後輩との熱く幸福な口づけ。
悪だ外道だと罵るのなら好きにしろ、遠野の死で自分の何かが壊れた事くらい理解している。
帯電する剣を前に牙狼もまた迎え撃つべく構える。
瞳が捉えるは邪な想いを隠そうともしない白銀の騎士。
元の持ち主がどんな人物なのか、今の鋼牙が知る術は無い。
しかし、葛葉紘汰のような勇気ある戦士と同じ信念の持ち主ならば、その者の生き様を穢す非道な行いを見過ごせはしない。
殺し合いに乗った男を止めるだけの戦いに非ず、悪しき者に囚われた魂を取り戻す戦いでもある。

黄金騎士と仮面ライダーブレイド。
互いの距離は瞬きの間に狭まり、交差。
キィンという音が、森の中へ木霊する。
どちらも動かない。互いの得物を振るった体勢のまま微動だにせず。

時間にすればたった数秒の硬直、先に動いたのは白銀の騎士。

胸部装甲に大きく散る火花。
膝を付き、武器まで取り落としそうになるもどうにか握り直す。
仮面の下では苦悶の表情が浮かんでいた。

――73.1――

「ハァ、ハァ、アァ…アァン……」

汚い。
それはそれはとても汚い声だった。
何もホモセックスの快感を訴えているのではない、斬られた痛みに呻いているのだ。
オリハルコンプラチナの装甲越しにも感じた一閃。
派手な技ではない、しかし鋼牙の意思を乗せた何よりも重く鋭い刃。


825 : 邪剣 ◆ytUSxp038U :2022/07/28(木) 01:01:22 mRyNKzyU0
「アーイキソイキソ……」

先程から非常に汚い声で痛みをアピールしているが、ブレイドはまだ変身を解除されていない。
震える手付きで新たなカードを取り出し、ブレイラウザーに読み込ませる。
これまで使ったのとはまた別のカードだ。

『MACH』

カードを剣に通し異なる効果を発揮する。
原理こそ不明だが力の発動方法は把握した。
次なる攻撃に備えブレイドに向き直る牙狼。

「何!?」

直後、その警戒は全くの無意味と嘲笑われた。
ブレイドの姿がブレたかと思えば、疾風の如き速さで駆け抜けた。
牙狼へ高速接近しての攻撃、ではない。
何せブレイドが駆け出した先は牙狼とは正反対の方向。草木が広がる森の中へと姿を眩ませたのだ。
ブレイラウザーにリードしたカードはスペードの9。
ジャガーアンデットが封印されたカードの効果は、今ブレイドが見せた通り高速移動。
此度はそれを逃走の為に使ったのだろう。

咄嗟に追跡しようとし、だが実際に駆け出しはしなかった。
逃げ足は速いが今ならまだ追い付けるかもしれない。ならグズグズしている暇では無い。
ここにいるのが鋼牙一人ならばそうしただろうが、今はもう一人いる。
殺されかけた場面で救出、先程は鎧を召喚する隙を作ってくれた少女。
自分が逃げた男にかまけている間、騒ぎを聞きつけた危険人物に襲われないと何故言い切れるのか。
危険人物の対処は最もだが、その為に誰かの犠牲を容認はできない。

逃げた男から仮面ライダーの力はいずれ取り戻す。
今すぐに出来ない事を胸中で謝罪し、鎧を解除。
剣を鞘に収め、これまで自己紹介すらしていない(そんな余裕も無かったので当然だが)少女の元へと歩く。


826 : 邪剣 ◆ytUSxp038U :2022/07/28(木) 01:02:20 mRyNKzyU0
襲撃者が逃げた為、戦いは一先ず終わった。
そう判断したねむだが、内心は落ち着きがなくざわざわとした感覚を覚えていた。

(さっき僕は…)

デイパックから自動車を吐き出させた直後だ。
白コートの剣士が、目も眩むような黄金の鎧を纏ったのは。
あの姿を目の当たりにした時、ねむは久しく感じる事の無かった感情が自分の中に宿るのを実感した。
全身に電流が走ったかのような衝撃、体の内側から熱を帯び高揚を隠せない。

あれは、あれは自分には、魔法少女には無縁のモノ。
『希望』、ではないだろうか。

(っ、何を馬鹿な……)

今浮かんだのが余りにも馬鹿馬鹿しくて、いっそ嫌悪感すら覚える程だ。
確かにあの黄金の狼は不思議な力強さに溢れている気がしないでもない。
けど、だから何だと言うのだ。
どこからともなく現れた剣士様が、誰も悲しまない優しい世界へ導いてくれるとでも?
ふざけている、本当にふざけた考えとしか言いようが無い。

現実は絵本とは違う。
そんなもの自分が一番よく分かっているだろうに。
何の疑いも抱かず無邪気にハッピーエンドを信じて、その結果どうなったかを忘れた訳ではないだろう。
里見メディカルセンターの屋上で何が起きたか。
希望を打ち砕かれた瞬間を、取り返しの付かない失敗を思い出せ。
夢物語に酔っていては魔法少女は解放されない、ういとの約束は果たせない、いろはは永久に救われない。

内心の苦々しい想いは表情に出さず、傍まで来た剣士を見上げる。

「さっきは助かった」

簡潔に告げられた礼の言葉。
話す表情はお世辞にも愛想が良いとはいえず、整った顔立ちながら近寄り難いしかめっ面。
けど別に怒っているとかではなくて、こういう顔しかできない不器用な人なんだろうとは、初対面のねむにも何となく分かった。


【C-6(北部)/一日目/深夜】
【冴島鋼牙@牙狼-GARO-シリーズ】
[状態]:疲労(中)
[装備]:冴島鋼牙の魔戒剣@牙狼-GARO-、魔導火のライター@牙狼-GARO-
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜4、首輪(星合翔李)
[思考・状況]基本方針:守りし者として人々を守る。この決闘も終わらせる。
1:少女(ねむ)を保護する。
2:逃げた男(野獣先輩)から必ず仮面ライダーの力を取り戻す。
3:首輪の解析が出来そうな参加者を探し、この首輪を託す。
4:零との合流を目指す。
5:葛葉紘汰、あの男の事は忘れない。
6:あの黒い騎士(葉霧)は何者だ…?
[備考]
※参戦時期は牙狼-GARO- 〜MAKAISENKI〜終了後

【柊ねむ@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
[状態]:健康、いろはの存在へ動揺、黄金騎士への複雑な感情
[装備]:フリーザの小型ポッド@ドラゴンボール
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜1
[思考・状況]
基本方針:手段を問わずにハ・デスの力を奪って魔法少女を救済する。
1:代わりに荒事を引き受けてくれる駒が欲しい。その為にこのお兄さん(鋼牙)と話す。
2:魔法少女への変身はなるべく控える。
3:灯花とも合流しておきたい。
4:七海やちよと深月フェリシアは邪魔になるなら排除。みふゆにも容赦はしない。
5:もしいろはお姉さんと会ったら僕は……。
6:希望…馬鹿馬鹿しいよ……。
[備考]
※参戦時期は死亡後。

※近くに黒塗りの高級車@真夏の夜の淫夢が放置されています。


827 : 邪剣 ◆ytUSxp038U :2022/07/28(木) 01:03:45 mRyNKzyU0
◆◆◆


「ぬわあああああああああああああん疲れたもおおおおおおおおおおおおおおおん」

こいついっつも疲れてんな。

逃走に無事成功した先輩は変身を解除、誰に向けたのか疲労を全力でアピールしている。
校庭114514周と腕立て伏せ364364回をやらねばならない迫真空手の部活とどっちが辛いかはさておいて、命は助かっても野獣先輩の顔は浮かない。
白コートのイケメンとメガネのメスガキ、そのどちらも殺せなかった。
流石に自分一人で残りの参加者を皆殺しにできるとは思っていないが、折角の殺せるチャンスをふいにしてしまったのは納得がいかない。

「痛いですね、これは痛い…」

神妙な顔つきで顎を擦り、今後の立ち回りを考える。
最初に殺した少年のように楽勝な相手ばかりではない、なら狂犬のように暴れ回っても優勝は遠のくだけ。
ならばもっと頭を使うべきだ。
ある時は言葉巧みに後輩を屋上に誘い睡眠薬入りのアイスティーを飲ませ、またある時は言い負かされそうな池沼タコ坊主を援護したように。
ホモセックスの為に働かせた悪知恵を総動員させる。

「あっ、そうだ(閃き)。よく考えれば俺が無理して殺さなくてもいいじゃんアゼルバイジャン」

さっきの白コートの剣士。
わざわざ自分が殺さなくとも、他の参加者を煽って殺し合わせるという手があるではないか。
実はあの剣士は殺し合いに乗っていて、自分が出会った少年(御伽)も奴に殺されてしまった。
そういう悪評を流して、無駄に正義感に熱い連中を焚き付ける。
後は勝手に殺し合って両方死ぬなら良し、生き残っても無傷では済まないだろう。改めて自分が始末してやるだけ。
恐らくメガネのメスガキを保護するだろうが、ノンケのロリコンでよからぬ目的の為に連れ回しているとでも言っておけば良い。

他に仮面ライダーという存在も利用価値がある。
放送を見る限り、仮面ライダーとは所謂正義のヒーローのような連中を指すのだろう。
なら自分に仮面ライダーの変身道具が支給されたのは実に好都合。
正義のヒーローのフリをしておけば、馬鹿なノンケはホイホイこちらの言う事を信じるに違いない。
機を見て殺すか、何かに利用するかはその時その時で考えよう。

「それと、『コレ』の効果も後で試しておきたいっすねぇ〜」

新たにデイパックから取り出したのは、このゲームの肝と言ってもいいアイテム。
デュエルディスクとデッキ。
放送の後、何故か御伽から奪った拳銃が消失し落としてしまったと慌てた。
が、落ち着いてデイパックの中身を確認しデッキを発見。
黎斗の言っていた新ルールの通り、デッキ以外の支給品は没収されたのだった。

余談ではあるが元々支給された御伽もデッキの存在は把握していた。
だが城之内克也が危惧した通り、ルールこそ把握しているものの遊戯など歴戦の決闘者のようなタクティクスを発揮できない彼には宝の持ち腐れ。
御伽自身もその点は自覚しており、使いこなせるか微妙なデッキよりも拳銃という分かり易い武器を装備していたのだ。

「遠野、すぐにお前を生き返らせてやるから待ってろよな〜」

汚くゲスい、同時に決定的な何かが壊れてしまった笑みを浮かべる。
檀黎斗の気まぐれにより選ばれた偶像が殺し合いの果てに手にするのは遠野との愛か、それとも救いのない地獄か。
結末を知っているのはただ一人、本物の神であるGOだけだ。

GO is GOD
KRT is NOT GOD


828 : 邪剣 ◆ytUSxp038U :2022/07/28(木) 01:04:37 mRyNKzyU0
【B-6/一日目/深夜】

【野獣先輩@真夏の夜の淫夢】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)
[装備]:滅の日本刀@仮面ライダーゼロワン、ブレイバックル@仮面ライダーブレイド
[道具]:基本支給品一式×2、デュエルディスク+デッキ@???、ランダム支給品×0〜1
[思考・状況]
基本方針:勝ち残り遠野を生き返らせる。
1:殺りますねぇ!(溢れ出る殺意)。
2:白コートの剣士(鋼牙)や厄介そうな参加者は悪評を流して同士討ちを狙う。
3:仮面ライダーの名を利用する。
4:後でデッキの力も試しておきたい。
5:遠野を殺した奴は絶対に許さない。
[備考]
※バトル淫夢みたいな戦闘力があります。
※御伽のランダム支給品の一つはデュエルディスクとデッキでした。デッキの種類は後続の書き手に任せます。

【魔導火のライター@牙狼-GARO-】
魔界の火であり、魔戒騎士の携行するライター状の魔導具に貯えられている。
番犬所からの指令書の解読、ホラーの探知、傷の治療など用途は様々。
但し魔戒騎士の修行を受けた人間しか扱うことはできず、常人が扱おうとすれば瞬時に焼き尽くされる。
剣や全身に纏うことにより攻撃力・防御力を高める必殺奥義、烈火炎装の使用にも必須。

【ブレイバックル@仮面ライダーブレイド】
BOARDが開発した仮面ライダーブレイドの変身ベルト。
♠のエース〜10までのラウズカードとのセット。
ラウズアブゾーバー及び♠のJ〜Kのラウズカードは無い。誰かに支給されているかは不明。

【黒塗りの高級車@真夏の夜の淫夢】
暴力団員谷岡俊一が搭乗していたトヨタ・センチュリー。
恐らくは組の所有車と思われるが疲れからか、不幸にも黒塗りの高級車に追突してしまう。
後輩をかばいすべての責任を負った三浦に対し、車の主、暴力団員谷岡が言い渡した示談の条件とは…。


829 : ◆ytUSxp038U :2022/07/28(木) 01:05:14 mRyNKzyU0
投下終了です。


830 : ◆QUsdteUiKY :2022/07/30(土) 16:30:26 qM6EtLJE0
直見真嗣、クウカ、奈津恵で予約します


831 : ◆P1sRRS5sNs :2022/07/31(日) 17:12:06 gVmOiRTE0
投下開始します


832 : ◆P1sRRS5sNs :2022/07/31(日) 17:21:42 gVmOiRTE0
(…やれやれだぜ、予想以上のヘヴィな奴が相手だったようだ)

最初に承太郎が敵だと想定していた相手は冥界の魔王ハデスだけだった。勿論それ以外の黒幕もいるだろうなとは考えていたが。

そしてそれは実際にいた、王をも超える神として名乗り出たのだ。

姿は人のようにしか思えない、が、主催がいる場に乱入してきた白い騎士…仮面ライダー鎧武こと葛葉紘汰を一撃で戦闘不能に出来る力を持つ時点で強さは伊達ではないことが分かる。

そしてどのような仕組みで倒したのかも簡単に分かった。



自分の宿敵、そして自分が使える能力そのものだからだ。

時間停止…どのような相手でも、どんな強さすら無に帰す能力、それがあの男も使えるとなると主催の打倒は難しくなる。

何故ならハデスだけなら時を止めれば…あまりしたくはない行為ではあるが攻撃されないまま首を落とせば倒す事が可能だ。

だが相手が時間停止を使えるという事はこちらの時間停止も効かない可能性がかなり高い、(DIOとの戦いの経験を元にした考えだが)

そしてあの姿では防御力も高い可能性が高い、自分でラスボスを気取っているからな、簡単に倒す事は絶対にできないだろう。

となると例え首輪を解除しても主催を打倒する事は難しいだろうと考えざるおえない

(だが例えそうであろうと…俺の考えは絶対に曲げねェ)



最高神である私に挑むか、それとも最後の一人になるまで勝ち残り願いを叶えるか

あの檀黎斗と名乗る神を称する野郎はこう俺達に問いかけた。

答えは当たり前だが前者だ

どんなにテメェ等が強くても関係ねぇ、こんな命を弄ぶふざけた殺し合いをゲームと言い、罪のない奴を簡単に殺しやがるテメェ等は俺が…いいや、この殺し合いに反対する奴らと共に必ずぶちのめす。

1人でも無理なら多くの人と共に協力してテメェ等を倒す。DIOを倒す旅と時と同じようにな




『ふざ、けんな!力なんて無くても、変身出来なくても―――俺は最後まで戦う!!』

『それが俺たち―――仮面ライダーだからだ!』



『戒斗……みんな……。俺の代わりにこいつを、檀黎斗を……止めてくれ……』



「…あんたの事は忘れねぇぞ、葛葉紘太」



ラブ&ピースの為に戦う、それが俺達の仮面ライダー、戦兎、万丈、そしてヒゲとの共通した想いだ。

あの仮面ライダー鎧武も…多くの人の為に戦う正義の仮面ライダーだったという事は一連の流れで分かった。

アンタの想いは絶対に無駄にしねェ、必ず神とやらふざけた事を抜かす檀黎斗とその部下共を必ず止める

多くの参加者の…ラブ&ピースを護る為にな


833 : ◆P1sRRS5sNs :2022/07/31(日) 17:28:18 gVmOiRTE0
とりあえず簡単な自己紹介をする為に砂浜から大分離れた場所で立ちながら二人は話し合いを行う事にした…因みに切り裂かれた枕は離れる前に綿も含めて全てしっかりカバンに詰め直していた。誰かに直してもらう為らしい、承太郎は無理だろうなという思いを抱きながらその様子を見ていた。

「俺の名前は空条承太郎、日本の学生だ」
「日本…?東都、北都、西都、この三つのどれかじゃねぇのか?」
「聞いた事ねェ、そんな場所」

早速話が合わない事態が起きる。

一海は一から十まで自分が経験した出来事を話した。

だが承太郎はその全てを知らなかった

そこで承太郎が1999年生まれであるという情報を知り、一海は納得した

「成程な、つまりお前は俺達の時代より過去から来たようだな」

と考えたが…承太郎は少し考えてから否定した

「いいや、あのハデスって奴が言ってただろ」
『この世には無数の世界がある。カードの種類だけデッキがあるように、だ。このデュエルでも様々な世界から決闘者を呼び寄せてある。楽しむが良い』
「ってな、そもそも俺のスタンドも、アンタの仮面ライダーというのも特殊な力だ、その二つが同じ世界にある事の方が珍しいはずだ、となるとアンタと俺は無数の世界…平行世界の存在の方が可能性は高いはずだ」
「…確かにその可能性の方がたけぇかもな、平行世界については俺も戦兎から聞いた事がある」

平行世界で数多くの仮面ライダーに出会い戦った事があったらしい、そしてそれだけではない、そもそもエボルトがいない新世界を作る為に別の世界が必要だったことも知っている。つまり平行世界の存在は知っていたのだ。

…もし平行世界での様々な仮面ライダーに出会った時の事を詳しく聞いていたらその中に鎧武もいた事を知る事が出来たのだがそれは仕方がない事である。

「だが過去から俺が連れてこられた…というのも十分可能性はあるかもな」
「…というかお前のあの紫の人みたいなの出す能力、スタンドというんだな、そして何で俺が仮面ライダーって分かったんだ?」
「あの仮面ライダー鎧武って奴はベルトに何か装填して変身していた。そしてアンタもベルトに何かを装填した状態であの姿になっていたからな、そう考えただけだ」
「そうか…自己紹介が遅れたな、俺は猿渡一海、仮面ライダーグリスだ、さっきはありがとな」
「礼を言われるようなことはしてねーぜ…オメェ、俺のスタンドが見えるのか?」
「あん?どういう質問だ?」
「スタンドは一般人には見えねェはずだ、スタンド使いにしか見えないはずだ」
「そうかよ、でも俺はスタンド使いじゃねぇぞ?」
「…首輪に仕掛けられたか?スタンドを見えるようにな」
「そうか…となると仮面ライダーの力にも制限があるかもな」

改めて自己紹介を終えた所で…まずは名簿を確認する事にした、知り合いがいるかどうかを知る為である。その結果

「エボルト…!!「DIOッ…!!」」

最悪の宿敵の名を目にした…!!

「…その様子を見るにとんでもねぇ奴がいたようだな」
「ああ…お前もそうなんだろ?承太郎」


834 : ◆P1sRRS5sNs :2022/07/31(日) 17:28:37 gVmOiRTE0
二人は名簿の名前を元に情報交換を始める

まず最初に伝えたのはDIO、エボルトという巨悪がいるという事である

「アンタが言っていた通り…過去から呼ばれた奴がいるというのもあり得る話になってきたな」

何故なら承太郎は一度DIOを倒した、完全に灰にしたからだと、吸血鬼である事も含めてDIOの事を一海に伝えた

「とんでもねぇ奴だな、まぁ俺が知っているコイツもそいつに劣らずの邪悪だけどな」

地球外生命体エボルト…様々な惑星を滅ぼし、そして日本で戦争を起こした事などの情報を伝えた。

「やれやれだ、こいつら二人は早い所倒さなくちゃいけねぇようだ…」
「ああ、多くの参加者が犠牲になる前にな…」
「それにしても…時間への介入までしてくるとはな…本当に予想以上の力を持っているようだぜ」
「でも死んだ奴等は蘇らされた可能性もあるだろ、主催の一人に冥王がいるからな、それに俺自身も一度死んだはずだったのに目が覚めたらここにいた立場だ」

自分が死んだときの状況も含めて説明すると承太郎は死者蘇生の可能性もある事を納得出来た。

「納得は出来るが…一つ疑問がある。死者蘇生が出来るのは分かった。だがそんな簡単にできる事とは俺は思えねェ、アイツ等は何故そこまでアンタをわざわざ蘇らせたのか?」
「それは分からねぇが…考えられるのは、なんでも願いを叶えられる事の信頼性を高める事による殺し合いの加速を促す…というのはどうだ?」
「成程な…そう考えると筋は通る、となるとこの殺し合いには多くの死者が招かれている可能性が高い、という事になるか?その方が主催の力を思い知らせることが出来るだろう」
「その可能性もあるな、ただ、お前の言った通り、過去から人が呼ばれている可能性もある、二つの可能性を考えといて良いかもな」
「何れにしても底知れない力を秘めている奴等というのは変わらねェがな…」

改めて主催の力を思い知らされる二人、勿論屈する気が全くないが


835 : ◆P1sRRS5sNs :2022/07/31(日) 17:30:21 gVmOiRTE0
次に話し合うのは仲間の情報だ。
承太郎は仲間がここに来ていない事を伝える。良かったというべきか、良くなかったというべきか…それは分からない
一海は俺の知っていて信頼できる仮面ライダー全員がここに来ていると伝える。マッドローグ?この一海が知っている内海は仮面ライダーと呼べる資格はない為にカウントはしていない。そして首輪について戦兎ならどうにか出来る可能性がある事も伝えた



続いて所持品の確認だ
承太郎が取り出したのは…赤いベルトだった、更に謎の錠前がついている

「まさかコイツが変身ベルトって奴か?」
「そうみてぇだな、俺が知らないライダーに変身できるようだが、してみるか?変身を」
「…俺にはスタンドがあるから必要ねぇ、戦力がない奴に会った時に渡す方が良いかもな」
「そうか?確かに戦力がない奴に渡す方が一番かもしれねぇが…十分な鎧にもなるんだぜ?その傷を追う事もなかったかもしれねぇ」



デュムシュとの戦いは承太郎に少なくない傷を与えていた。ダメージは一海も負ったが身体への影響は承太郎の方が強かったのである。今は上着の袖を一部破って包帯代わりにして縛っている



「念のためにその戦力がない奴に会うまではそのベルトは腰につけといた方が良いだろうな」
「…分かった」
「…どうした?その二つの錠前をじっと見て」
「何でもねぇよ」



とりあえず万が一の時の為にベルトは腰につけておくことにした。


836 : ◆P1sRRS5sNs :2022/07/31(日) 17:31:34 gVmOiRTE0
そしてもう一つ気になる支給品は…このカードだな」

「ああ、ソイツについても話し合いてェが…今はまずここから離れるべきだな」

「そうだな、ここじゃあ落ち着いて話せねぇ、どこか建物で話したほうが落ち着けるな」



まず他にも長く話し合うべきではと思うが、その為には情報が欲しい、それに、建物の中に入って話をした方が色々な奴らと合流してから改めて長い話をするべきではないかと考えたのだ

その為に少し遠くに見えるあの白い建物に向かう事へ決めた

白い建物であるという事は…つまり病院なのかもしれない、治療手段の確保にもつながるのだ



こうして二人はその建物へ向かいながら軽く会話を進める



「まず俺達には情報が多く必要だよな」

「ああ、一番欲しい情報は主催…檀黎斗の情報だな、アイツの事を知っている奴に会えたらな…」

「そうだな、だがそんな簡単に都合よく会えるわけ…」



「私は知っているぞ、あの男を」



その声に反応し、二人が振り向いた先にいたのは

上下真っ白い服を着ている男だった



(…やはり、な)



予想は見事に的中していた…檀黎斗がやはり裏で関わっていた



勿論、この事について、私は非常に自分の行いを悔いる…はずであった

その主催の檀黎斗がヒューマギアモジュールを付けていたら、である



あの檀黎斗は…私が生み出したヒューマギア 檀黎斗ではなかった

となるとあの檀黎斗は私が知っている男ではないのか?

性格にほとんど違いは見られなかった、となると平行世界の檀黎斗か?

…何れにしてもあの男を倒さなければいけない事には変わりがない、多くの人との協力が必要だ。自分が知っているあの男の情報を使えば手が組みやすくなるはずだ

そう考えていながら歩いていた時、私はとある施設を見つけて…その周囲を探ってみる事にした結果…学生の服を着ている背が高い男と、茶色い上着を着た男を見つけた。

私は用心して話を聞いてから二人と話そうかと考えた、そしてその結果彼等は信用できる相手である、と考える事が出来た為に…交渉してみる事にした。



「テメェは…誰だ?一海、アンタ知ってるか?」

「知らねェが…敵ではなさそうだな」

「自己紹介が遅れた、私は天津垓、仮面ライダーサウザーだ」

「アンタも仮面ライダーか…所で、あんた檀黎斗について知ってるって本当か?」

「私が知っているあの男とは少し違うようだがな、性格にはほとんど変化は見れなかった、話せる事はあるはずだ」

「そうか…」



まさか都合よくすぐ主催を知っている人に会う事が出来るとは、こうなると落ち着ける場所で長く話す事も考えの一つに入れても良いかもしれない

「それについて深く話し合える場所について私は考えがある…あの白い建m」

「…テメェ等!!避けろ!!」


837 : ◆P1sRRS5sNs :2022/07/31(日) 17:36:47 gVmOiRTE0
承太郎は天津垓が万が一敵だった場合の為にスタンドを出しながら話していたが…そのスタンドは近くでは見えない場所にいた敵を目に捉えたのだ。
その瞬間、赤い光線を天津の方向から三人を一瞬で襲った
三人は戦いを経験してきた猛者、避けることはたやすかった。
避けた後にその方向を見て、底にいた異形、それは



蒼いクワガタを模した怪物、赤い城を模した怪物、黄色い鳥を模した怪物、彼等は先程話したように、特徴的な色も纏ってはいるが、全面的な色はどす黒かった
一方でその近くにいた二体の怪物、一体は青く、かつて天津が道具として扱っていたジャッカルレイダーに似た頭である怪物であり…もう一体はトラの顔を持つオレンジ色の怪物だ
彼ら五体がたまたま同じ場所にいたのは偶然である。そして出会った相手があの三人である事も、だがこの偶然は天津垓、一海にとって残酷だった。
何故なら…彼ら二人と怪人達の因縁は強い物だったからだ

(首輪がねぇな…こいつ等は、となると主催の奴が言ってたNPCって奴か?)

勿論首輪を外したからという可能性も考えた。だがこんな序盤で外す事が可能になるように設定されるとは思えない、と承太郎は推測した

そして横の二人を見ると…1人は激怒しているように、もう1人は悲しみの症状を見せていた…が



『サウザンドライバー!』『ゼツメツ!Evolution!』『ブレイクホーン!』

サウザンドライバーを腰に付けて…流れるような操作でキーみたいなものを一つ差し込んでいた

「二人とも、あの白い建物は病院だ、そこでならその傷を治しながら落ち着いて話し合えるはずだ」

「そうか…分かったがアンタはどうするつもりだ?」

「私はあの青とオレンジのNPCを1000%の確率で倒す、残り三体を君たち二人に任せていいか?」

「…アンタ俺達の事どれくらい盗み聞きしてたんだ?」

「勘違いするな、君たちが戦力を持っている事を聞いていたわけではない、君達の眼に…私の仲間たちの事を思い出させてな、頼れる仲間と同じ眼をしている君達なら何か力があると思っただけだ…頼んだぞ…変身」

『パーフェクトライズ!』

『When the five horns cross, the golden soldier THOUSER is born.  Presented by ZAIA.』

仮面ライダーサウザー、かつて仮面ライダーサウザントアークになる前に天津が手にしていた力、再び変身する機会が訪れるとは考えていなかったが…今、ここに再誕した

『サウザンドジャッカー』

黄金の槍を手に持ち、襲ってくる二人の怪物の攻撃を受け止めながら病院の方向へ向かって押していく。

そして残り三体の怪物が二人に迫りくる。


838 : ◆P1sRRS5sNs :2022/07/31(日) 17:37:30 gVmOiRTE0
「下がってろ承太郎、俺一人で十分だ」

「…アンタこいつ等と戦って死んだんじゃなかったのか?」

『スクラッシュドライバー!!』

「こいつ等は誰よりも俺が倒さなくちゃいけない相手だ…例えNPCだとしても」

『ロボットゼリー!』

「変身」

『潰れる! 流れる! 溢れ出る!』『ロボットイングリス!』『ブラァ!』

奇しくもサウザーと同じく黄金の仮面ライダーが再び現れる

「アンタ…まさかここで死ぬ気か?この殺し合いは始まったばかりって事忘れてんじゃねーだろうな?」

「悪いがコイツ等は譲れねぇ…何が何でもだ」

一海は覚悟を決めているように見えた。下手したらたとえ刺し違えてもこいつ等を倒す覚悟を

…だったら



「スタープラチナ ザ・ワールド」


「なっ!?」

グリスが気付いた頃にはオウルロストスマッシュ、キャッスルロストスマッシュをスタンドで抑えながらこの場から離れていく


「テメェ!!」

「悪いが俺もアンタには死んで欲しくねぇんだよ、俺もそれは譲れねェ!!」


慌てて追いかけようとするが、その瞬間、後ろの足音に反応して振り向いた、そこにいたのは

上半身が水色、そしてはしごの銃を持った、一海がとても見覚えがあるスマッシュだった

頭がおかしくなるくらい怒りに支配されそうになる、ここまで俺を…怒らせたいのか、嫌がらせをしたいのか、と

「心火を燃やして…必ず…テメェを潰す!!檀黎斗ォ!!」

その為に…目の前の奴等を…倒す!!

こうして…三つの戦いが、始まる


839 : ◆P1sRRS5sNs :2022/07/31(日) 17:41:36 gVmOiRTE0
ダイアウルフソルドマギアが殴りかかってくるのを頑強な装甲で受け止めながら殴り飛ばす、そして剣で襲い掛かってくるサーバルタイガーマギアの剣もサウザンドジャッカーで受け止める。

二体のこのマギアの連携はサウザーを苦戦させていた。この二体は仮面ライダー滅、仮面ライダー迅という強い仮面ライダーとも渡り合える実力を持つ。サウザーも久しぶりに変身しただけあって、苦戦も仕方がないだろう。



受け止めた後に弾き飛ばしてサーバルタイガーを殴り飛ばす。だが殴り飛ばした隙に後ろからのダイアウルフの攻撃で殴られる。

殴られた勢いに任せて前に回転し、距離をとった後立って二体のマギアを改めて見る。

サウザーは二体のマギアについて知っていた…刃唯阿から一連の事件を聞いていたからだ
それぞれの夢を見つけていた同志、滅、迅、不破…それだけではない、亡、雷、合わせて五人の仮面ライダーが死んでしまった事件を
天津は激しく後悔した、もしリオンからドライバーを意地でも奪われないようにしていたら、このような事件は起きなかったかもしれない、と
自分はいくつもの数えきれない数の罪を重ね続けている、本当に自分は生きていていいのかと思うくらい、これから償っていけばいいというのも本心だ。だが本当はそれだけでいいのだろうかとも考えてしまう自分がいるのも事実だ。



今目の前にいる敵はそれを思い出させた、だがそれに気を取られている場合じゃない。そう思い天津はサウザンドジャッカーを構える
二体のマギアはただのNPC、心はない、だがマギアの元はヒューマギアである。敵を倒す為に効率のいい戦い方を構築し、襲い掛かる。二体は人数の利を生かして挟み撃ちをすることにしたのだ。
前からダイアウルフが、後ろからサーバルタイガーが襲い掛かる。
それに対するサウザーの答えは…何と攻撃に合わせた回避である。
サウザーは予想以上の頑強さに倒す為には今のままでは駄目だと考えた。と同時に、今まで全く使ってこなかったプログライズキーを使って慣れておくべきだと考えたのだ。よけたサウザーはバックから新たな所持品を取り出す事にした。





「オラオラオラッ!!」

承太郎はスタープラチナでキャッスルロストスマッシュの盾を殴り壊そうとするが…予想以上に…硬い
盾を動かし、手を弾かれて即座にビームを放たれる。承太郎は即座に避けるが…その避けた先にいたのは空から突撃してくるオウルロストスマッシュ、両腕を交差してガードするがそのまま掴み持ち上げられてしまう。
慌てて振り払おうとするがその前に急上昇して地面に投げ落とされてしまう



「くっ…!!」

そしてその先に放たれる光線…!!

「スタープラチナ・ザ・ワールド!!」

時間停止と同時にスタンドを展開し、ダメージを和らげる…!!
と同時に光線の射程内から回避し…時は動き出す。

(予想以上の強さだ…!!今まで戦った奴等と違って肉体の防御が硬い…!!)

今までの戦いではDIOを除いてスタンド使いに対して一度攻撃出来たら圧倒的な攻撃力でねじ伏せる事が出来た。相手のスタンドの特殊能力が厄介だっただけで相手自身は基本的にただの人だったからだ。こうなると…こちらも生身のままでは簡単には勝つことは出来ないかもしれないな



(使ってみるか…コイツを)

一海の言っていた事が実感になって湧いてきた。意地を張っている場合じゃない。そう考えて承太郎は

『チェリーエナジー!!』

自らも仮面ライダーへの変身を決めた


840 : ◆P1sRRS5sNs :2022/07/31(日) 17:43:07 gVmOiRTE0
うぉらああああ!!」

グリスはツインブレイカーを使いスタッグロストスマッシュに殴り掛かる

だがスタッグロストスマッシュは大きく後ろへ回避、攻撃をかすった隙を

アイススマッシュが銃で攻撃してくる。流石にグリスの鎧にダメージはほとんど通らないが気を向けてしまう。その瞬間スタッグロストスマッシュが高速移動で攻撃してくる。

だがもうグリスはスタッグの攻撃スピード、そしてやりかたは見ているし、知っている、高速移動を見切りがっしり受け止めた後に

『スクラップフィニッシュ!!』

巨大なロボットハンドをヴァリアブルゼリーで形成、握りつぶそうとするが

その瞬間アイスは手からアイシクルチルアローを放ち、ヴァリアブルゼリーを凍らせる

少し驚いた隙に剣戟をグリスに与えながらスタッグは離れてしまった。

ならば先にアイスから倒そうとロボットゼリーをツインブレイカーに嵌める

『ロボットゼリー!』

『シングルフィニッシュ!!』



黄色い巨大なエネルギー弾を放つが…なんとスタッグが高徳移動でエネルギー弾の前に回り込み防御し始めたのだ。そしてアイスは氷の壁を展開して、それが爆破されたが…二体はダメージを受けなかった

(連携してやがる…!!NPCのくせに…!!)

グリスの大切な仲間であった北都三羽カラス、そして直進との関係はただの仲ではない、四人との縁はグリスにとって大きな力になっていた。特に三羽カラスとは長期間一緒に戦い、笑って、泣いて、信頼し合った関係であることは間違いない。

そんな信頼関係もクソもない奴らのくせに連携してきた事に腹が立ってきた。グリスは支給されたフルボトルを使い、早急に倒す事に決めたのだった。


841 : ◆P1sRRS5sNs :2022/07/31(日) 17:49:50 gVmOiRTE0
仮面ライダー、始まりの男、本郷猛は言った。

ライダーはいつも君たちのそばにいる。何があっても君たちと一緒だ。生きて生きて生き抜け。ライダーは君たちと共にある、と



この殺し合いには予選があった、その予選には多くの仮面ライダーがいた
だがその中で、参戦する事が出来ずに神の手によって物語を消された仮面ライダー、またはその力もあった。
ブレイド アギト カブト フォーゼ ジオウ ゴースト ドライブ
以下七名である。
更に、神の気まぐれで殺されてしまった仮面ライダーもいた…仮面ライダーキバの事である。
そして勇敢に主催に挑むも…散ってしまった仮面ライダーもいる。ご存じであろう。仮面ライダー鎧武だ。
彼等の想いは、この殺し合いに対する怒りは…無意味だったのだろうか?



言ったはずである。ライダーはいつもそばにいる、と
彼等の想いは…いつもそばにいてくれている。
そして…この場にいる『仮面ライダー』にも、力を貸してくれるようだ
勿論、実際に貸しているかどうかは分からない、偶然彼らのアイテムの力が退場した仮面ライダーの力と一致しただけかもしれない、そして力自体は他の人に渡っている可能性も普通にあるだろう
だとしても、彼らが手に入れた力には奇妙な運命を感じても…おかしくはないはずだ

サウザーが取り出したのは滅亡迅雷フォースライザー、しかもただのフォースライザーではない、仮面ライダー雷のフォースライザーだ。彼のベルトには八つのプログライズキーがつけることが出来るのだ。そして実際にその八つのホルダーには…レジェンドプログライズキーが装填されていた。

サウザーはその中から白いレジェンドキーを取り出す

『EVOLUTION!』

そして装填

『Progrise key confirmed. Ready to break』

その瞬間、サウザンドジャッカーはフレイムセイバーの様に燃え始めた

火力のある剣戟はサーバルタイガーの剣を弾き飛ばした後に一撃をくらわせる。

そして次に取り出したのは青いプログライズキーだ

『JOKER!』

『Progrise key confirmed. Ready to break』

剣が纏うのは雷、地面に向かって放つことで雷を広範囲に放ち迫っていたダイアウルフを痺れさせて動きを止める。勿論サーバルタイガーも巻き込むことを忘れてはいない

『FULLTHROTTLE!』

『Progrise key confirmed. Ready to break』

 別の白いプログライズキーを装填すると同時に回転しながら二体を斬り飛ばす。『ドリフトカイテーン』のように

しかも互いにぶつかるように調整して斬り飛ばしていた為に空中で衝突する。バチバチと二体のマギアは火花を散らし始めていた。


842 : ◆P1sRRS5sNs :2022/07/31(日) 17:51:39 gVmOiRTE0
サウザーは二体のマギアにサウザンドジャッカーで触れて



『ジャックライズ!』



二体のプログライズキーのデータを取っておく。…そして、トドメの一撃を決める時だ。



『サウザンドディストラクション!』



T

H

O

U

S

A

N

D

D

E

S

T

R

U

C

T

I

O

N 

データを吸収され、弱まっているマギア達にジャンプしてからの飛び蹴りを放つ、そして交互に連続で蹴り続ける。



THOUSAND DESTRUCTION

必殺技を受け続けた二体のマギアは…耐えきれずに爆発していった。



変身解除した天津は…改めて装填してあるレジェンドプログライズキーを見つめる



(これ等のプログライズキー…貴重な戦力だ、大事にしなければな)



アギト、ブレイド、カブト、キバ、ドライブ、ジオウ

彼等の意志はプログライズキーとして天津の元へ託されていた…のかもしれない。

このプログライズキーのデータは一応ジャックライズをしておいてある、が、これは本当に奥の手にしておかなければならない

何故ならサウザンドジャッカーに制限がかけられてしまっているからだ。
『ジャックライズ等で貯めたデータは一回しか使えない、使うと消えてしまう』という制限を
つまり、一度手に入れたプログライズキーの力を使い放題になれるわけではないという事だ、その為、データを貯めといてはあるけれどもわざわざ装填して技を使ったのはこれが理由だ。手間が増えるが…無制限に使えたら強すぎるという訳か、と天津は納得している。



そして、残り二つのプログライズキーは

ライジングホッパー、スティングスコーピオン

…或人、滅の愛用のプログライズキーだ

(この二つも早く二人に渡さなければ)

天津は…無性に嫌な予感がしている。この二つは会場にいる二人がそれぞれゼロワン、滅になる為に必要な物だ。それがこちらの元にあるという事は今の二人が仮面ライダーではないという事ではないか?そう考えたが…それだけではないかもしれないと考えている。
それは、本来会場にいないはず…破壊されていて、バックアップのデータがないはずの滅がいる事からの推測であるが…もしかすると参加者は過去から来ているのではないか?という事だ。となると二人が殺し合いに巻き込まれる時にもっとも都合のいい時期は…それぞれアークワン、アークスコーピオンに変身していた時期だろう
そうだとしたら彼等を一刻も早く止めなくては、とも考えた上で…早く二人と合流して…もしアークに捉われているのならば…覚悟は決めている

そう思いながら…天津は病院へ向かっていった。


843 : ◆P1sRRS5sNs :2022/07/31(日) 17:53:12 gVmOiRTE0
音声と共に承太郎は錠前の果物を見て…思い出す、変わった食べ方をしていた花京院典明を、旅の仲間を

…感傷に浸っている場合じゃないと、エナジーロックシードをゲネシスドライバーに装填する。



『ロックオン』



グリップを押し込むと同時に…承太郎を仮面ライダーへと変身させる



「変身」



『ソーダァ!チェリーエナジーアームズ!』



アーマードライダー…シグルド、承太郎が変身した姿である。

本来の変身者、シドとの違いは承太郎の利き手が右である為に「チェルエナジースリーブ」が右にある事である。



「これが変身ってやつか…なかなか動きやすそうだ」



ソニックアローを手に持ち…キャッスルを攻撃し始める。

アークリムで斬りつける…が、盾で守られてしまう、傷をつける事は出来ていても、である。

だがそれでもいい、シグルドの狙いは盾を傷つける事で割れやすくする事である。

同じ個所を何度も傷つける、キャッスルは守り続けている、破られることがないだろうと高を括っているのだ。シグルドの狙いに気づかずに



「流星指刺!!」



壊れやすくなった場所に指による一撃で盾を貫き強烈な一撃を与える

その攻撃にキャッスルが怯んだ瞬間、補うかのようにオウルが襲ってくる

シグルドは回避、オウルは避けられた後に反撃を恐れて高く飛んでいく

だがその瞬間、承太郎は…時を止めた



『ロックオン』



シグルドはエナジーロックシードをソニックアローに装填…狙いを定める



『チェリーエナジー!!』



茎で繋がった2個のサクランボの形をしたエネルギー弾がオウルにぶつかり、二つの果実がアメリカンクラッカーの要領で挟み込んで圧砕する。それと同時に時は動き出した。

オウルは自分が死んだことさえ知る事が出来ず死んだ。


844 : ◆P1sRRS5sNs :2022/07/31(日) 17:55:34 gVmOiRTE0
だがその瞬間キャッスルは高火力のビームをまき散らせ始めた
二枚の盾のうち一枚の盾を壊された事から、防御していては勝てないと悟り、防御を捨てて攻撃の量で押しつぶす作戦に変えたようだ。
シグルドは光線を受け止めたり、ソニックアローで弾きながら…あるロックシードを手に取る。



オレンジロックシード

仮面ライダー鎧武に変身する為のロックシード…でもあるが承太郎にとっては別の意味合いがある物であった。



ンドゥールに目をやられた花京院の様子を見にいった時、食べた果実だ。

…やたらと自分の旅に関係ある果実ばかり与えられていると自分の旅の事を主催の奴等に知られているようで無性に腹が立ってくるが…その怒りを抑え、オレンジロックシードをソニックアローに装填する。



『オレンジチャージ!!』



シグルドはソニックアローをクロスするように振り、斬撃を飛ばしてオレンジの炎に閉じ込めて光線を封じる。



(さて、トドメといくか)



このままさっきと同じように射抜いても良いかもしれない。だが試してみたい事がある。

シグルドはドライバーを操作、シーボルコンプレッサーを絞り切る



『チェリーエナジースパーキング!!』



すると全身に力が漲ってきた。これでライダーキックをするのが仮面ライダーにとっての基本である。

だが承太郎はスタンド使い…別のやり方を行使する事にした。全身にみなぎるエネルギーを両腕に集中させる。すると何とスタープラチナの両腕にも同じく濃淡の異なる赤いエネルギーが漲っているではないか

キャッスルは何とかもがきながら残っている一枚の盾を構える、だがはっきり言わせてもらおう



「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」



仮面ライダーの力まで込められたオラオララッシュの前では無意味であった、と

盾を粉々に粉砕しながらキャッスル自身も殴られていく

「オラァァァァァ!!」

ラッシュを終えて殴り飛ばすと同時にキャッスルは盛大に爆発した…


845 : ◆P1sRRS5sNs :2022/07/31(日) 17:55:55 gVmOiRTE0
変身を解除し、承太郎はひと息つく



(仮面ライダー…予想以上の力だぜ)



DIOや主催の奴等と戦う為に使えるかもしれない

そしてこの力は正しく使わなければいけないとも考えた

葛葉紘太の最期は承太郎にとっても偉大な物に見えていたた。そして『仮面ライダー』という物がどういう物なのかも知った。

だが本当に仮面ライダーが正義の為だけに使われているのか考えてみるが答えはNOだ。スタンド使いにだっていい奴も悪い奴もいた…ならば仮面ライダーにも悪い奴がいても不思議じゃねぇ

だったらそういう奴の変身ベルトは俺の時間停止を使って変身前に必ず奪い取る。それがあの勇敢に悪へ挑んだ『仮面ライダー』…葛葉紘太の想いを汲むことになるだろう。



そう考えながらカバンに変身道具をしまおうとした時に気が付いた



(そういやカバンは向こうに置きっぱなしだったな)



承太郎はあの時距離を精いっぱい取るためにカバンを置いて移動していたのだ。

承太郎は…一海を信じて荷物を任せる事に決めた。

あの白い建物…病院との距離は近い、そこまで病院に行くまでに一海も迷う事はないはずだ。そして何となくだが…一海がどういう男であるのか、短い時間の中で確信している。最初は変態の一面を見せていて少し引いたが…それでも根っこの部分は信用できる男…『仮面ライダー』であると



そう思い、承太郎は病院へ向かう事を決めた。病院に来て欲しいと言っていた天津垓についてはとりあえず信じられるだろうと考えた。敵意はなかったようだしな。それから先は話していく中で見定めればいいだろう

因みにむかう途中にふと思った。

もしカバンが近くにあったらこの戦いにあのカードを使用してみても良かったかもな、と


846 : ◆P1sRRS5sNs :2022/07/31(日) 17:58:28 gVmOiRTE0
グリスが取り出した支給品はパンドラパネルである。

パンドラパネルには10本のボトルが装填する事が可能である。

その為、10本のボトルがそれには嵌められていた。

だがその嵌められていたボトルは…一海が全く知らないボトルであった。

それでも一海は…使うしかないと覚悟を決めた。



まず最初にツインブレイカーに嵌めたのは



『おばけ!』『パーカー!』



たまたまとなりあっていたから装填したフルボトルである。

だが



『ツインフィニッシュ!』



ビームモードへと変更し、ビームを何度か放つが…そのビームはゲルで形成されたパーカーゴーストとなってスタッグに襲い掛かる。高速移動する暇も与えない

これでアイス…一体だけに集中できる。祭りの始まりだ



『ロケット!』『友情!』

『ツインブレイク!』



ツインブレイカーの周囲がゲルに覆われるとロケットモジュールと成り…アイスがいる所に一直線へ向かっていく
アイスは氷の壁を展開する、だが



『スクラップフィニッシュ!』

必殺技で壁を突き破る、技はそれで終わるが…ロケットはまだ止まらない、アイスへ向かって一直線に進んでいき

「粉砕!!」

ロケットモジュールを叩きつけて大ダメージを与える

更にビームモードへと変更させて



『ツインフィニッシュ!』



ビーム…ではなく、ゲルによるランチャーモジュールを展開し幾つものランチャーを放つ

ランチャーに直撃したアイスはダメージの限界を超えて一瞬で爆発、グリスはスタッグの方へ向かった


847 : ◆P1sRRS5sNs :2022/07/31(日) 17:58:47 gVmOiRTE0
パーカーゴーストを倒し終えたスタッグはグリスの周囲を回り始めた。正しく分身しているように見える。だがグリスは慌てない



『ロック!』

『ディスチャージクラッシュ!潰れな〜い!』



使い慣れているロックフルボトルで鎖を大量放出、そのうちの一本がスタッグを絡めとる

そして



『ドラゴン!』『クロコダイル!』

『ツインブレイク!』



ゲルで形成した蒼い炎の球を加えこんだ鰐を手に携えながら突っ込む…!!



「圧砕!」



噛み砕きながら蒼い炎がスタッグを燃やす、それによるダメージによって限界を迎えていく



「爆散!」



ダメ押しの木に向かっての何度もの殴打…!!

スタッグはダメージに耐えきれず…盛大に爆発して死んだ…

敵を倒し終えたグリス、だが吠える、それでも吠える



「足りねぇなぁ…まだまだまだ足りねぇなあああああああ!!」



足りない、まだ足りない、怒りを、主催の連中に対する怒りを発散する為には

…と言った所で意味がないのも分かっている。

変身を解除してひと息つきながら…改めてボトルを見た。

オレンジ、友情、パーカー…聞いた事がないフルボトルだ。どこで手に入れたんだ、あの主催の奴等は…まぁいい



一海は知らない、このフルボトルにはフォーゼ、鎧武、ゴーストの思いが込められている…かもしれないという事を
それだけではない、ロボット、ドラゴン、クロコダイル…この三つは自身と万丈、ヒゲと同じような力を持つフルボトルだ。使いこなしやすいかもな、とも考えた

さて、俺も病院まで向かうとするか…あ、承太郎のバックだ…ついでだ、コイツも持って行ってやるか


848 : ◆P1sRRS5sNs :2022/07/31(日) 18:00:29 gVmOiRTE0
こうして三人はそれぞれの戦いを終えて…病院に真っすぐ向かった

…ここで疑問に思った人もいるだろう、方向音痴の一海は迷わなかったのか?と

運が良かったのか、悪かったのか、それは分からないが…何と一海の戦っていた場所からただ病院を見続けて歩いて行けば辿り着ける場所に病院があった為に…流石に迷う事もなかったのだ











(この病院…名前は…聖都大学付属病院?)



承太郎は今、病院の前で名前を確認したのだ。この病院の名前を



(おそらくこの病院を知っている人物も参加者の中にいるはずだ…それも参加者に接触しなくちゃ分からねぇだろうな)

「何ボケっと立ってるんだ、承太郎」

「…一海か」

「オラよっ」



バックを投げ渡され、それを受け止めた



「ありがとよ」

「まぁな…聖都大学付属病院って言うのか」

「そうらしい、アンタここについて知ってるか?」

「知らねぇよ…ただ、俺の仲間に聞いてみてもいいかもな」

「そうか…」

「後さっきはすまなかったな、俺は冷静を欠いていたみてぇだ…この殺し合いは長期戦だ…多くの人を護る為に、死んじゃいけねぇよな…簡単に」

「分かったならもう別に良い、その事は…早く病院に入ろうぜ」

二人は病院に入った時…玄関に

「待っていたぞ、二人とも」

あの男…天津垓がいたのを確認した。


849 : ◆P1sRRS5sNs :2022/07/31(日) 18:01:04 gVmOiRTE0
私は傷が増えている様子、ある程度時間をかけてここに来た事、そして爆発の音が何度も響いてきたことから…しっかりと敵を倒して病院まで来たことを確信した。そして、二人は私等の殺し合いに反対の人達にとって頼もしい味方になるだろうとも分かった。



しかし殺し合いに反対である人達は恐らく彼等のような人達だけじゃない。何も力を持たない人達もいるだろう

そういう人達もまずはこの病院に皆集めるべきだと考えた。そうすれば失われる命は少しでも減らせるはずだ。

そうして大人数になれば…必ずあの男を倒せるだろう

…だがそれは恐らく殺し合いに乗った人達も同じように考えるはずだ。そうなると弱った人が集まるであろう子の場所は狙いに来る可能性が高い、となると激戦も起きてしまう可能性も高いだろう。だがそうなったとしても私達仮面ライダー…だけじゃない、殺し合いに乗らない強者と共に守り通してみせる



1000%の確率で



「まずは病室で互いの軽いけがを治そう、それから互いに話し合うのはどうだろうか?」



一階の玄関近くの病室を休憩する場所に決めた三人、彼等はまず病室の棚にあった軽い医療品を使い、包帯を巻くなどの応急処置をし始めた、その後にベットが部屋に四つあった為にそれぞれが座った所で



「さて、今から長時間話す事になると思うが…君達はそれで良いか?他に何かやる必要のある事はないか?」



天津垓は話を切り出し始めた。



「…良いぜ、暫くはこの病院にやってくるであろうけが人を治す事もあるかもしれないし、その為にもここは重要な拠点になるから暫くは守っていても良いかもな…その間、何もせずにいるのは時間の無駄だからな、アンタはどうする?」

「俺も文句はねェよ…ただ、長すぎると判断したらこの場から離れるからな、俺としてはあの三人と…」



…そう言いかけて一海は気づいたのだ。参加者は過去から来ている可能性がある。そう考えると…あの三人も過去から来た可能性はあるんじゃねぇか?という事を

戦兎はハザードフォームの暴走で青羽を殺してしまい…戦う気力が全く失せていた時

万丈はエボルトから遺伝子を取られて…変身できなくなった時期

玄徳はスカイウォールの光の影響が抜けずに…支配欲に駆られている邪悪だった時期

もしその時期から来ていて多くの参加者に害をなしていたら?もしくは何もできず殺されてしまったら?

…あの三人がどうなっているのか、早く確認するべきじゃねェか?



「あの三人と合流する事を優先したいからだ」



恐らくこの場に主催について知っている天津垓がいなかったら彼はこの場を離れる事を優先していただろう



「分かった…さて、まず私から話そう、あの男の事を」



スタンド使い、仮面ライダー、非凡な生き方をしてきた黄金の精神を持つ猛者達、彼等が話し合うのはこの殺し合いの根源と未来、果たしてどのような物が描かれるのだろうか?



そして…ここで空条承太郎の持っているカードのモンスターを紹介しよう



…結論から言えば正直言って雑魚だと考えて問題がないモンスターだ



その名前は…クリボー

攻撃力300、防御力200という貧弱なモンスターである。だが攻撃を受けた時手札から捨てるとその戦闘ダメージを無効化する能力があるのだ

とても弱い雑魚と言っても良いモンスターだが…この殺し合いではどのように活かされるのだろうか?それはまだ誰にも分からない


850 : ◆P1sRRS5sNs :2022/07/31(日) 18:05:20 gVmOiRTE0
【D-6 島 聖都大学付属病院/一日目/深夜】

【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】

[状態]:疲労(大)、全身に斬傷、背中に少しダメージ

[装備]:ゲネシスドライバー+チェリーエナジーロックシード@仮面ライダー鎧武

[道具]:基本支給品一式、クリボー@遊戯王デュエルモンスターズ(アニメ版)、オレンジロックシード@仮面ライダー鎧武

[思考・状況]

基本方針:打倒主催者。どんなに敵が強くても必ず倒す

1: 病院で天津垓と一海と詳しく情報交換する。特に天津垓には主催について話をより聞いておきたい。

2:しばらくはこの病院に留まるべきか…それとも一海の人探しに付き合うべきか?

3:DIOを警戒、どうやって蘇ったのか、それとも時を超えてきたのかも知らないが必ず倒す。

4:仮面ライダーの力…大切にしなくちゃいけねぇようだ

5:悪党がもし仮面ライダーの力を悪用するならば変身前に時間停止で奪い返す

6:この遊戯王カードも調べてみる必要があるな

[備考]

※参戦時期は第三部終了後。



【猿渡一海@仮面ライダービルド】

[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)

[装備]:スクラッシュドライバー+ロボットスクラッシュゼリー@仮面ライダービルド

[道具]:基本支給品一式、みーたんの抱き枕(破損)@仮面ライダービルド、パンドラパネル@仮面ライダービルド

[思考・状況]

基本方針:心火を燃やして檀黎斗と従ってる連中をぶっ潰す。

1:病院で天津垓と承太郎と詳しく情報交換する。今の所二人とも信用できるな

2: エボルト、DIOは早く倒す必要があるな

3:戦兎、万丈、ヒゲとは早く合流したい、だから話し終わったらここから離れたほうがいいか?

4:他にも殺し合いに乗っていない奴と合流していきたい

5:この未知のフルボトルは何だ?戦兎なら分かるか?

6:葛葉紘太…アンタの事は忘れねぇ

7:ごめんねみーたん……直せる人いねぇかな…?

[備考]

※参戦時期はTV版で死亡後。



【天津垓@仮面ライダーゼロワン】

[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)

[装備]:ザイアサウザンドライバー&アウェイキングアルシノゼツメライズキー&アメイジングコーカサスプログライズキー@仮面ライダーゼロワン

[道具]:基本支給品、滅亡迅雷フォースライザー&プログライズキーホルダー×8@仮面ライダーゼロワン、ランダム支給品0〜1

[思考・状況]基本方針:檀黎斗とその部下を倒し、罪を償う

1:檀黎斗に挑む為の方法とこの殺し合いについて彼等二人と共に考える

2:彼ら二人が持っている情報、力も詳しく知っておきたい、特に学生服の青年の後ろにあった人みたいな物は何だ?

3:出来る限り多くの人を病院に連れて来て治療したい、後、この病院について知っている参加者と話したい

4:飛電或人、滅と合流したい。もしアークに捉われていた時にこの場に来ていたのならば必ず止める

5:これ等のプログライズキーに映っている仮面ライダー達は誰なんだ?知っている人に会えたらいいが…



[備考]

※参戦時期は仮面ライダーゲンムズ スマートブレインと1000%のクライシス終了後



※仮面ライダーサウザーについての制限

サウザンドジャッカーに制限がかかっています。

『ジャックライズ等で貯めたデータは一回しか使えない、使うと消えてしまう、もう一度データを使うには再びジャックライズをする必要がある』という制限です。


851 : ◆P1sRRS5sNs :2022/07/31(日) 18:06:52 gVmOiRTE0
【支給品説明】

【パンドラパネル@仮面ライダービルド】

猿渡一海@仮面ライダービルドに支給。

火星で発見された核よりも強大なエネルギーを内包される禁断の箱

パンドラボックスのパネル。

ここには10本のフルボトルをセットする事が可能である

当ロワでは、オレンジ、ロック、ドラゴン、クロコダイル、友情、ロケット、おばけ、パーカー、ロボット、そして普通のフルボトルの10本のボトルと共に支給される。最後の一本については後続の書き手にお任せします。

【滅亡迅雷フォースライザー&プログライズホルダー@仮面ライダーゼロワン】

天津垓@仮面ライダーゼロワンに支給

プログライズキーを装填する事で仮面ライダーへと変身させる。ヒューマギアが変身する為の物である為、人間が変身すると体に負担とダメージがかかる。特殊な通信制御能力を有するプログライズホルダーを合計8つ装備しており、かつて仮面ライダー雷が通信衛星アークの知能を復活させる為に使われた物である。今回は『トリプルフラッシングアギト』『ターンアッピングブレイド』『クロックアッピングカブト』『ウェイクアッピングキバ』『タイヤチェンジングドライブ』『ライダータイミングジオウ』『ライジングホッパー』『スティングスコーピオン』の8つのプログライズキーと共に支給されていて、『ドードーマギア』のゼツメライズキーはない。更にレジェンドプログライズキーには制限がかかっていて、変身に使用する事が不可能である。

【ゲネシスドライバー@仮面ライダー鎧武&チェリーエナジーロックシード@仮面ライダー鎧武】

空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険に支給

エナジーロックシードを装填し、新世代アーマードライダーへの変身に用いられる変身ベルトとエナジーロックシードの一種。

ゲネシスドライバーへの装填によりチェリーエナジーアームズのアーマードライダー…シグルドと呼ばれる仮面ライダーへ変身することができる。

ここにおいてはゲネシスドライバーとセットで一つの支給品となっている。ソニックアローも同時に現れる。

【オレンジロックシード@仮面ライダー鎧武】

空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険に支給

ロックシードの一つ、戦極ドライバーに装填する事でオレンジアームズ…鎧武と呼ばれる仮面ライダーへの変身を可能にする。

【クリボー@遊戯王デュエルモンスターズ(アニメ版)】

空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険に支給

効果モンスター

星1/闇属性/悪魔族/攻 300/守 200

(1):相手モンスターの攻撃で自分が戦闘ダメージを受けるダメージ計算時に

このカードを手札から捨てて発動できる。

その戦闘で発生する自分への戦闘ダメージを0にする。

NPC紹介

【ダイアウルフソルドマギア@ゼロワン Others 仮面ライダー滅亡迅雷】

ダイアウルフゼツメライズキーを用いて変身するソルドの戦闘形態。

攻撃方法はシンプルで、徒手空拳による純粋な格闘攻撃。

【サーバルタイガーソルドマギア@ゼロワン Others 仮面ライダー滅亡迅雷】

サーバルタイガーゼツメライズキーを用いて変身するソルドの戦闘形態。

攻撃方法は徒手空拳による純粋な格闘攻撃の他、二刀の太刀を用いた近接戦闘を行う。

【キャッスルロストスマッシュ@仮面ライダービルド】



砲撃ユニット『カタプルタキャノン』から放つビームと可動防壁『グランドランパート』による防御力とビーム攻撃が武器だ、ロストスマッシュだけあって強さもビルドの怪人であるスマッシュと呼ばれるものの中では驚異の強さを誇る

【オウルロストスマッシュ@仮面ライダービルド】



浮遊、飛行が得意であり、飛行の突撃スピードもかなり速い、ロストスマッシュだけあって強さもビルドの怪人であるスマッシュと呼ばれるものの中では驚異の強さを誇る

【スタッグロストスマッシュ@仮面ライダービルド】

素早い身のこなしで相手との距離を詰めて2本の刀『ラプチャーシザース』を利用して繰り出す高速切断技で相手を仕留める戦法を使う。ロストスマッシュだけあって強さもビルドの怪人であるスマッシュと呼ばれるものの中では驚異の強さを誇る

【アイススマッシュ@てれびくん超バトルDVD 仮面ライダービルド 誕生!クマテレビ!!VS仮面ライダーグリス】

体内に氷を生み出す器官が備わっており、戦闘時は「アイシクルチルアロー」という氷柱状の矢を大量に発射して周囲を凍結させる戦法を得意としていて、はしご車のはしごに似た銃器も所持している。

『施設紹介』

【聖都大学附属病院@仮面ライダーエグゼイド】

鏡灰馬が病院長を務める大型総合病院。

地下深くにはゲーム病患者に処置を施す為の特別エリア、CRが設けられている。

CRにはドレミファビートの筐体も設置されている。


852 : ◆P1sRRS5sNs :2022/07/31(日) 18:08:46 gVmOiRTE0
以上で投下終了です、タイトルは「受け継がれるクロスファイアと黄金の意志」です


853 : ◆2dNHP51a3Y :2022/07/31(日) 21:33:21 35GgM/Po0
延長します


854 : ◆FiqP7BWrKA :2022/08/02(火) 23:25:19 RjoONQpA0
投下します


855 : POWER to TEARER ◆FiqP7BWrKA :2022/08/02(火) 23:27:09 RjoONQpA0
「なんてことだ……」

真なる主催者を名乗るクロトなる者の放送から数分後。
マジック&ウィザードのルールや、公開された名簿、
追加、変更されたルールを確認し終えた氷室幻徳と梓みふゆは、頭を抱えた。

「お知り合いがいたんですか?」

「ああ。桐生戦兎、万丈龍我、猿渡一海に……エボルト。
最初の3人は間違いなくこの殺し合いを止めるために動くと思うが、
エボルトの動きは全く読めない。
俺と同じように元々使っていたベルトを奪われて、
別のベルトを持たされている可能性もあるが、
もしそうでないとしたら、厄介どころの話じゃない」

残念ながら檀黎斗の正体については、
2人の最上魁星が時空を股にかけて起こしたあの事件、
ある世界においては仮面ライダー平成ジェネレーションズFINALという映画にて描かれた事件に立ち会えなかったため、
気付くことはかなわなかった。
葛葉紘汰の件に関しても同様である。

「と言いますと?」

「エボルトこそ、俺たちの全ての戦いの元凶。
俺の知る限りだが、奴は最終的に自分一人で惑星一つを粉々に出来る力さえ手に入れることができる地球外生命体だ」

「……」

災害規模どころか、惑星規模の攻撃ができる宇宙人。
ワルプルギスの夜が可愛く見えてくる紹介に一瞬眩暈がした。
彼は、彼らはよくそんな圧倒的絶望に立ち向かえたものだ。

「そっちはどうだ?」

「環いろは、七海やちよ里見灯花、柊ねむ、深月フェリシアの5人です。
環いろはにやっちゃ……んんっ!
七海やちよに深月フェリシアは殺し合いにのることは無いと思いますが、
里見灯花と柊ねむは、特に里見灯花はワタシから見れば、
氷室さんにとってのエボルトみたいなものですね。
圧倒的なパワーって言うよりは、恐ろしく頭が回るっていう方向性ですけど」

「……若いうちから大変だな」

とりあえずエボルト、里見灯花、柊ねむは要注意。
それ以外の6人を優先的に探すことで決定し、二人はさらに考察を進めた。

「ハ・デスが黒幕で無かったことは驚きましたが、
あのクロトという男は……」

「俺の知らない仮面ライダーだ。ベルトの形も初めて見た」

「という事は、やはりその、並行世界の存在、
という事なんでしょうか?」

「俺は神浜何て名前の街を知らないし、
君がスカイウォールを知らないことからも、ほぼ確定だろう。
葛城……記憶をなくす前の戦兎が並行世界に移動するための研究をしていたとも聞いている」

「じゃああのクロトには、
その研究を完成させるだけの力があると?」

「そしてこれだけ大規模で使うだけの力もな。
エボルトに首輪つけれるのも頷ける」

「……それだけ強大な敵が相手でも、戦いますか?」

「ああ。仮面ライダーだからな」

やることは変わらないと、幻徳が改めて決意を示したその時だった。
突如、空気その物が揺れる様な衝撃と、爆発音の他重奏が響き割った。

「な、なにが!?」

バーの外を見ると、10m程離れた場所から、
黒い煙と火の粉があがっているのがわかる。

「行くぞ」

「行くって、あそこにですか!?」

「誰か襲われているかもしれない。
ならば止めない訳にはいかない」

スカルガイアメモリを握り直し、
走り出した幻徳にみふゆも続いた。


856 : POWER to TEARER ◆FiqP7BWrKA :2022/08/02(火) 23:27:39 RjoONQpA0

全力で走り、瓦礫を超えて向かったその先に広がった惨状に二人は思わず息をのんだ。
みふゆはテレビ画面の向こうでしか見たことのない魔女結界とはまた別の惨状を、
幻徳にとっては、今も瞼の奥に焼き付いて離れない自分が引き起こした戦災にもにた光景を思い出した。

だが、これは違う。

あれは明確に人間や、それらが生み出した兵器による破壊の跡だった。
ビルを破壊したのも、地面をえぐったのも、血を流し倒れ伏すのも、
全て人の業だった。


だが今回のは、全て怪獣だ。


人ならざる姿、人ならざる力、人ならざる巨体。
人類が火星に進出し、禁断の箱を開けることなく、
移住に成功した世界において、ゴルバーと呼ばれた闇の合体怪獣は、
15mの巨体を震わし、背中の翼を目一杯広げると。
もう何度目かもわからぬ咆哮をあげ、光となって忽然と姿を消した。

「消えた?」

「力尽きたんでしょうか?」

みふゆのつぶやきを、幻徳はいや、と首を振って否定した。

「だったらさっき倒した奴らみたいにならないとおかしい。
あんな風に光って消えたりしない。
最も近い物を挙げろと言われたら、変身解除」

みふゆが驚いて幻徳を覗き込んだ。

「いやいや、あんな化け物に人間が変身……」

するわけがないと言いかけて、みふゆは黙ってしまった。
思えば魔女も元をたどれば人間だし、
幻徳の話によれば、彼の居た世界のスマッシュという怪物の中には、
人間が変身したものが半分だったと言うではないか。
だったら自分には想像もできない異世界において、
怪獣に変身する技術もあるのかもしれない。
そう思って二人は、ゴルバーが消えた地点に急いだ。


857 : POWER to TEARER ◆FiqP7BWrKA :2022/08/02(火) 23:27:56 RjoONQpA0

「あーあ。何やってんだか」

変身を解除し、超古代闇怪獣ゴルバーから元の姿に戻ったキャルは盛大に溜息をついた。
我ながら何て短絡的に、しかもこんなにも派手に暴れたんだろう?

いや、答えは簡単だ。
今まで最大の敵と思ってたやつより上の変な男が出てきた上に、
そいつがふざけたテンションでなんだか見覚えのある……多分ユウキの知り合いなんだろう少女が殺され、
大事な仲間であるコッコロに、
ユウキの友人たちであるモニカ達が巻き込まれてると知らされ、
更には、自身にとってどうしようもない程の恐怖と畏怖の象徴である覇瞳皇帝まで参戦していると知ったのだ。



これだけの最悪の状況が一度に押し寄せた14歳の少女に冷静でいろと言う方が無茶だろう。



実際真のゲームスタートを告げられたキャルは、心が折れかけた。
自分が歯向かおうとしているのは、
各々の全力、そして仲間たちとの絆が合わさって漸く勝てた覇瞳皇帝を簡単に拉致し、
恐らくは七冠級の力を持っていた仮面ライダー鎧武を簡単に無力化する超越者。
正に神の如き力の持ち主だ。
自分一人じゃ1参加者に過ぎない覇瞳皇帝にすら及ばない。
ただでさえ基礎能力で不利なのに、
自分に与えられた力は魔獣への変身。
もし覇瞳皇帝が新たなプリンセスナイト……否、この殺し合いで便利な手ゴマに魔物を使役する力を与えるとしたら、
自分は格好の傀儡だ。

恐怖した。あのクロトという最強の力を持つ男に。
戦慄した。間違いなく脅威と言える存在が複数いることに。
憤慨した。ユウキやペコリーヌがここに居ないことを心細く思う自分に。
軽蔑した。コッコロがこの場に居る事に頼もしさを覚えた自分を。
殺意を抱いた。ユウキの仲間を殺したクロトに何もできない自分に。

それでも、それでもすがる思いで支給品を漁ったのは、
彼女にまだ戦う意志があったからだろうか。
はたまたもうそれぐらいしかすることが思い浮かばなかったからか。
それは定かではないが、キャルは幸運にも指針を得る事が出来た。

「詳細地図アプリ?」

タブレットに支給品1個の代わりに入っていた特殊アプリ。
これには、会場内に設置された様々な特殊な施設や装置の位置を知ることの出来るアプリだった。
これを見たキャルは今居るA-5から、はるかG-6にある怪獣メダル生成機、メダルガッシャ―を目指すことを決めた。
ウルトラゼットライザーと今ある手持ちのメダルで、3つの姿に変身できる。
さっきまで変身していたゴルバー。
ゴルバーに超コッヴの力を加えたトライキング。
そして残るガンQとレイキュバスの力を上乗せしたファイブキング。
ゼットライザーにスロットは3つしかないが、
一度変身した姿に更に力を上乗せすることはできる。
なら、他の参加者に支給されているでかもしれない他の怪獣メダルや、
メダルガッシャ―で新たに造るメダルのパワーを上乗せし続けていけば、
プリンセスナイトの力でも支配できない、覇瞳皇帝をも倒しうる力を手に入れることができるかもしれない。

(本当の強さに遠く及ばないただの力だけど、
それでコロ助を、モニカたちを、アイツの絆を守れるなら……ッ!)

やることを決めたキャルは、街ごとNPCを蹂躙した。
逃げる背中に光線を吐き、倒れ伏す頭上に砕いた岩を叩き落とし、
近接格闘の心得なんてない彼女は無茶苦茶に暴れに暴れて、
ようやく落ち着いた時には、戦災と見まごう惨状が出来上がっていた。

「ま、一応目的は果たせたし、やることやっちゃいますか」

キャルはゼットライザーのスロットに仕込まれた刃で、
倒れ伏すNPCどもの体の一部を切り取りながら歩いた。
怪獣メダルにも、元になる怪獣の材料はきっと必要だろうと思ったからだ。

「おい、大丈夫か?」

もうそろそろ二桁に届くだろうか?
そう思いながら、次の素材をデイパックに入れた時だった。
彼女が初めて他の参加者に出会ったのは。


858 : POWER to TEARER ◆FiqP7BWrKA :2022/08/02(火) 23:33:38 RjoONQpA0
そこでNPCのモンスターの目玉をえぐっていたのは、ファンタジー世界から飛び出て来たみたいな恰好をした、
否、きっと本当にファンタジー世界から出て来た少女だった。
年齢は、いろはと同じぐらいだろう。

「アンタらこそ、さっきのゴルバーの攻撃は平気だったの?」

「ゴルバー?」

みふゆが聞き返すと、少女は怪獣メダルと、さっきまでNPCの目をえぐるのに使っていた道具を見せた。

「これで変身できるのよ」

「やっぱりか。なんでこんなことをした?」

「魔物の死体が必要だったから。これね、ウルトラゼットライザーって言うんだけど、説明書によれば、強化変身アイテムってやつで、魔物と魔物の力を合わせた姿に変身して、さらにそこから魔物の力を重ねがけ出来るのよ。
だから倒したこいつらのメダルを造れれば、後付けでパワーアップできるって訳。今のままじゃ、逆立ちしたってあのクロトに勝てない訳だし」

「あなたも戦うつもりなんですか?」

「ええ。仲間を殺して帰ろうとするまで落ちぶれてないわ。そういうアンタらもでしょ?」

「はい。まあ、帰れるかは怪しいですけど」

なにせ二人は一度死んだ身である。ゲームクリアして、主催者たちの力が失われた瞬間に黄泉送りなんてことも、有りえなくはない。

「?……そう。ところで、アンタらこのくらいの背丈の白髪、紅眼のエルフの女の子を見なかった?」

そう言ってキャルは手で背丈を示した。それくらいの身長だと、10歳ぐらいだろうか?

「エルフって……あの耳の尖ってるエルフ?」

「他にどんなエルフが居るのよ?それで見てるの?見てないの?」

苛立った様子の彼女に、出会っていないことを伝えると

「そう。ならいいわ。もし見つけたらキャルがG-6で会おうって言ってたと伝えておいて。
あと、ユウキってやつを知ってるって言う連中にも。それから、覇瞳皇帝っていう白い狐の獣人には気を付けなさい」

「カイザー……なんですって?」

「カイザーインサイト。そうね、さっきの放送のクロトの半分ぐらいの力を持っていると思っても考えすぎじゃないぐらい厄介な相手よ」

また自分にとってのエボルトみたいな奴か。
ウンザリすると同時に、主催者の悪辣な趣向が見えてきた気がする幻徳だった。

「そうか。ならエボルトに里見灯花、柊ねむにも同じぐらいの警戒を頼む」

「アンタらのヤバい知り合いって訳ね。他には?」

「桐生戦兎、万丈龍我、猿渡一海、環いろは、七海やちよ、深月フェリシアとは、協力できるはずだ」

「そう、そいつらに何か伝えておくこととかある?」

「……氷室幻徳と梓みふゆとここで出会ったと伝えてくれ」

「そう。分かった。じゃあ、急ぐから!」

「まて!」

「何よ?」

「……君は、力を求め続けるのか?クロトに対抗する力をもし一人で持つつもりなら、それは君に耐えられるのか?」


859 : POWER to TEARER ◆FiqP7BWrKA :2022/08/02(火) 23:37:51 RjoONQpA0
「……さあ?」

かつて覇瞳皇帝のプリンセスナイトだった彼女は、その力を一度に完全に受け取る事が出来なかった。
そんな彼女に檀黎斗を超える力を個人で持てるかと言われたら、それは間違いなく不可能だ。それはキャル自身にもわかっている。

「きっとロクなことにはならないでしょうね。
でも……これ以上仲間の死体を持って帰るぐらいなら!
悪魔に魂を売ったってかまわない」

そう言ったキャルを幻徳は止める事は出来なかった。みふゆも否定できなかった。
かつてその血を蒸発させた悪魔だったからこそ、かつて悪魔に魂を売ったからこそ、何も言う事が出来なかった。

「それじゃあ、先を急ぐから」

そう言ってキャルは手にしたゼットライザーを起動し、ウルトラアクセスカードを装填。

<MomochiAccess Granted!>

「アビスフュージョン!」

スロットに今度は3枚のメダルをセット。1枚ずつスキャンさせていく。

<Golza. Melba. Super C.O.V!>

「チェンジ・テリブルモンスターフォーム!」

<Tri-King!>

ゴルバーに更に宇宙戦闘獣超コッヴの力が加わったトライキングに変身。
その翼をはばたかせ、飛び去っていく。
幻徳とみふゆはそれを見送るしか出来なかった。

「……氷室さん?」

「俺は、なんて声をかけるべきだったんだろうな?」

答えを待たずに幻徳は歩き出した。
その背中がまるで父親に叱られた子供みたいに見えたのは、
みふゆの見間違いじゃなかったかもしれない。



【A-5/一日目/深夜】

【氷室幻徳@仮面ライダービルド】
[状態]:健康
[装備]:ロストドライバー+スカルメモリ@仮面ライダーW
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:クロトたちを倒して殺し合いを止める。
1:梓と行動する。
2:エルフの少女(コッコロ)とユウキを知る者にキャルの伝言を伝える。
3:エボルト、里見灯花、柊ねむ、カイザーインサイトを警戒。
4:俺は、なんて声をかけるべきだったんだ?
[備考]
※参戦時期はTV版で死亡後。

【梓みふゆ@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
[状態]:健康、魔力消費(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを止める。
1:氷室さんと行動する。
2:絆を守るため、かぁ……。
3::エルフの少女(コッコロ)とユウキを知る者にキャルの伝言を伝える。
4:エボルト、里見灯花、柊ねむ、カイザーインサイトを警戒。
[備考]
※参戦時期は死亡後。


860 : POWER to TEARER ◆FiqP7BWrKA :2022/08/02(火) 23:40:38 RjoONQpA0
それは一体いつ、どこでの出来事であっただろう?
あくなき力を求め続ける地球人に、このままでは延々と醜く強大な力の造り合いが続くことを予見した男がいた。
遠くの星から来たその男はこう言ったそうだ。

「それは、血を吐きながら続ける、悲しいマラソンですよ…」

と。はたしてキャルはそれに気付けるのか。
そしてそれに気付いた者は彼女を止めれるのか。
それはまだ、神のみぞ知ると言ったところだろう。



【A-5/一日目/深夜】
【キャル@プリンセスコネクト!Re:DIVE】
[状態]:健康、トライキングに変身、G-6方向へ向けて飛行中
[装備]:ウルトラゼットライザー@ウルトラマンZ
     ウルトラアクセスカード@ウルトラマンZ
     怪獣メダル(ゴルザ、メルバ、超コッヴ)@ウルトラマンZ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1、詳細地図アプリ@ロワオリジナル
     怪獣メダル(ガンQ、レイキュバス)@ウルトラマンZ
     NPCモンスターの残骸×??
[思考・状況]
基本方針:クロトや覇瞳皇帝からコッコロたちを守るために更なる力を求める。
1:まずは仲間たちを探しながらG-6にあるメダルガッシャ―を目指す。
2:途中誰かに出会ったら、覇瞳皇帝に関して警告し、コロ助への伝言を頼む。
3:エボルト、里見灯花、柊ねむ、カイザーインサイトを警戒。
4:こんな力、強さじゃないってわかってる。
  けどこれで守れるものがあるなら……。
[備考]
※ウルトラゼットライザーは、アクセスカード、
 ファイブキングを構成する怪獣のメダル5枚で一個の支給品扱いです。
※ウルトラアクセスカードは、一番最初に支給された参加者の物のみ支給されています。
※ウルトラゼットライザーは変身の際に、
 インナースペース(安全圏)にいる時間が短くなる様に、
 怪獣の力が本来のスケールで出せない調整されています。
 恐らく、ウルトラマンに変身する際も、同様であると考えられます。
※今回回収したNPCの残骸の詳細は、後の書き手様にお任せします。



【全体備考】
※A-5の一部がゴルバーに変身したキがNPCを蹂躙したことにより、
戦場跡の様相を呈しています。
足場は非常に悪く、NPCの死骸も散乱しています。
詳細は後の書き手様にお任せいたします。

※エリアG-6のどこかに怪獣メダル製造機、メダルガッシャ―が設置されています。
支給品やNPCの残骸を投入してレバーを回すと対応するモノのメダルを製造できます。
詳細は後の書き手様にお任せいたします。


861 : POWER to TEARER ◆FiqP7BWrKA :2022/08/02(火) 23:40:52 RjoONQpA0
投下終了です。


862 : ◆P1sRRS5sNs :2022/08/03(水) 02:03:21 ozaH1iUM0
正式に採用していただき、ありがとうございます、Plsです。今回ひとつ話があってスレを訪れました。

まず、申し訳ございません、タイトルについてですが、クロスファイアではなく、クロス・オブ・ファイアが正しいです

因みにタイトルの意味の説明ですが、クロス・オブ・ファイアは『仮面ライダーウィザード特別編』にて全ての仮面ライダーの力の原点とされているものです。それに加えて黄金の意志というのはジョジョで歴代主人公に受け継がれている意志とされています。

今回はその二つを合わせ、参戦出来なかった主人公ライダー達の無念の想いが晴れるように、受け継がれいく思いを込めてタイトルにしました。

それから、少し文章に修正をしたいと思いました。というのも、投稿したssに空白が目立つという意見が見られたので、その空白を調整して、誤字を直し、それと同時に少しだけ内容を変えたいと考えたのですが、よろしいでしょうか?勿論大きく変えるつもりは全くございません

では失礼します


863 : 名無しさん :2022/08/03(水) 05:58:12 SH0iPuCE0
私的な意見ですが、極端に展開が変わるとかでないのであればWIKIで報告せず修正してもいいかと。
支給品の総数とかそういうのが変わるレベルだと事後でも報告は必要ではあるとは思いますが。


864 : ◆ytUSxp038U :2022/08/03(水) 21:28:04 BJSlyJVY0
閃刀姫-ロゼ、涼邑零、香風智乃、野比のび太を予約します。


865 : ◆QUsdteUiKY :2022/08/03(水) 22:34:31 zUNMNsaM0
>>862
タイトルの説明ありがとうございます。参戦出来なかった主人公ライダー達の想いが受け継がれていく光景は、本当に黄金の精神を思わせますね。
紘汰や渡だけでなく、予選で落ちたライダー達も含めて想いを繋ぐという展開は、コンペ形式を上手く活用している上にとてもライダーらしい感じがして好きです
本郷の言葉といい、ライダーへの深い愛を感じる力作をありがとうございます

修正については>>863氏と同意見です
内容を少し変えるというのが展開自体が多少でも変わるようなものなら教えてくださると幸いですが、空白の微調整や誤字についてはご自由に修正していただいて大丈夫です


866 : ◆P1sRRS5sNs :2022/08/04(木) 04:01:55 dh3pZkVs0
>>865

返信ありがとうございます

自分の書いた作品を評価していただいて、とても嬉しいです。

そしてごめんなさい、貴重なレスを使ってひとつ報告させて頂きます。というのも、これは展開に関わる誤字だからです

懇龍雄さんの地図を見て気づきました。3人がいる病院があるのはE-6ではなく、E-5です。

それ以外の修正は近々自分で行います

では失礼します


867 : ◆P1sRRS5sNs :2022/08/04(木) 07:59:59 qedgEDWo0
>>866

本当にまたごめんなさい、D-6の島が病院の位置でした。

繰り返しミスをしてしまい、すみませんでした


868 : 名無しさん :2022/08/04(木) 12:08:48 nnsR/DIA0
個人的な意見となりますが、企画に関係するものとはいえtwitterでの話を外部に持ち出すのは控えるべきですよ


869 : ◆EPyDv9DKJs :2022/08/04(木) 13:54:42 QJjA5HuM0
件の物を作ってる者なのですが、
可能であれば今後はスレ内において、
一部の活動に対する言及は控えていただければ幸いです

禁止事項に触れているとかそういうわけではないのですし、
企画に関係しているものであるというのは事実ではあります
ただスレしか見てない人からすれば「誰?」ともなってしまうので
外部を見てる人は多いとはいえ、そっちはそっちとして分別はしておきたいものでして
ついでに言うと、私企画主でもないのに勝手に作っちゃってると割と後ろ暗いので……
もし今後どうしても自分の名前を出す必要がある場面に出くわした場合につきましては、
当方のトリップで呼んでいただければ幸いです

別に怒ってるとかそういうのではないので余り気負わないでくださいね
投下された作品も、仮面ライダーやジョジョに対する愛に溢れていてとても読み応えがありました


870 : ◆P1sRRS5sNs :2022/08/05(金) 08:38:08 gobkOTwA0
>>869

おはようございます

分かりました。以後、名前を出す事はしないようにしていきます。迷惑をかけてしまい本当にすみませんでした。

そして私のssを褒めていただき、本当に嬉しいです。ありがとうございました

では失礼します


871 : ◆2dNHP51a3Y :2022/08/05(金) 19:43:57 MnD6.nkQ0
投下します


872 : 嵐の前の静けさ 〜心を無くした系〜 ◆2dNHP51a3Y :2022/08/05(金) 19:44:35 MnD6.nkQ0
「ご、ごめんなさーい!!」

恐ろしく見事までに地面を頭にこすりつけた土下座状態のまんまる魔族状態のシャミ子を前に、桜ノ宮苺香は安堵の表情を浮かべていた。……シャミ子視点からは「ようやく理解したようね豚が」的な視線で睨まれているようには見えなかったわけだが。
細んだ眼に多少はビビりながらも、苺香が殺し合いに乗っている心を無くした系では無いと理解したので、こうして全力土下座しているわけであるのだが。

「いえ、全ては私のこの目が……。」
「あ、きにしないででででください。誰しも素で野獣みたいな眼光する人だっているとおもいますししし。」
「ああ!? やっぱりちょっと怖がってる! やはりこの目が、私のこの目が……!」
「あー! あー! 落ち着いてー!?」

が、それはそれ。苺香当人の申し訳無さそうな表情だが、目を細めた恐ろしい女王様的な見下し目線にはまぞくちょびっと恐怖。それを察した苺香が項垂れ、シャミ子が止めに入る。

「……すみません。取り乱してしまいました。」
「いえ、取り乱していたのはこちらの方ですので。ちょっと目つきが気になる程度で、苺香さんがいい人だって私はわかって良かったです。」
「そう言われると、ちょっとはありがたいです。……うん、やっぱり目つきは気になるんですね。」

シャミ子はこうは言ってくれた……やっぱり目つき気になるのは指摘されたにしろ、痴女手前なコスプレな格好相手にこうも落ち着いていられるのは、シャミ子当人の器質がこうであるのかは兎も角。

「でも驚きました、本当にいるんですね、魔族って。」
「私も自分の家系が闇の一族だとか言われた時は最初はよく飲み込めませんでした。なぁなぁで何だか色々あって、雪だるま式に因縁やら関係やら増えていって。」

苺香からして吃驚仰天だったのは、この世界に魔族やら魔法少女やらが存在する、という事実だ。
ゲームやアニメやらの世界だけの存在だと思っていた代物が、現実にこうも居るなどと。
ハ・デスとかいうなにかの時点で非現実に両足突っ込んでいるわけであるが、こうも普遍的に「日常の中にそういうのがいます」とかいうのをその身を以て認識させられるとなると多少は戸惑う。
あと、それはそれとして「魔法少女」と聞くともっと詳しそうな先輩の麻冬さんとか、年上だけど後輩な美雨さんとか、苺香が思いつくのはそっち方面であった。
……思わず「制服を縛る本」と、ドSパフェの一件で魔法少女のコスプレさせられた際の塩辛い記憶が思い浮かんで思わず目を細ませてしまい魔族にビビられた、閑話休題。

「今では借りばっかりが増えて、それを返したくて奮闘中の雪だるまぞくというやつです。」
「な、なんというかすごい人生です……。」

そして、シャミ子から華麗(笑)なまぞく経歴を聞かされ、多少残念どころはあるにしろ通常の一般人が経験するような物事ではないので、苺香は思わず感嘆。


『プレイヤー諸君―――君たちに朗報がある』


そして、この決闘の本当の始まりを告げる――神の宣言が鳴り響いたのはこの直後であった。


873 : 嵐の前の静けさ 〜心を無くした系〜 ◆2dNHP51a3Y :2022/08/05(金) 19:45:50 MnD6.nkQ0
■ ■ ■



文字通り一人だった。
名簿に知り合いの名前は誰も書かれていなかった。ある意味、この場合はスティーレのみんなが巻き込まれなかった事だけが、本当に良かったのかもしれない。
少なくとも、少しばかりの寂しさを含めて桜ノ宮苺香がそう思っていた。

「良に、お母さんまで!?」

一方のシャミ子。桃、ミカンの名前があるまでは良かった。
だが、自分の家族に加え、良の級友である小倉しおんまで呼ばれてるのは予想外。
まるでシャミ子特攻ともいうべき参加させられた名前を目撃し、当のシャミ子も冷静ではいられず。

「……シャミ子さん。」
「……大丈夫です、きっとみんな無事です。」

自分に言い聞かせるように、シャミ子が呟く。
微かに、肩を震わせならがも。
それでも、何かを振り切るように自分の顔をパチーンと叩いて。

「なので、早くみんなを探して、みんなでこんな下らないことなんて終わらせちゃいま――――」

高らかに啖呵を切ろうとした途端に。


「コワーイ、コワーイ――――。」

「……はえ。」


それは 獣と言うには あまりにも大きすぎた

大きく 毛むくじゃらで 重く そして 大雑把すぎた

それは 正に バフォメットだった

「・・・・・・」
「・・・に、逃げましょう!!!」
「えっあっ」

シャミ子、苺香の手を連れ、逃走。
兎に角ダッシュ、危機管理フォームである程度身体能力は向上してるので逃げ切れると高を括っていた。

「……あれ!? 思ったより速い!?」

このバフォメット、競歩なレベルで早かった。
なので徐々に距離を狭めている。
シャミ子の走る速さではどうにもならない。
このままでは追いつかれる。

頑張れシャミ子! とりあえず今はこの妙に速いバフォメットから逃げることを考えよう!


【一日目/深夜/G-7】
【桜ノ宮苺香@ブレンド・S】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式ㅤ桜ノ宮苺香専用ㅤクリスタル@きららファンタジア、ハーブティー@かぐや様は告らせたいㅤ天才たちの恋愛頭脳戦、光の護封剣(ゴールドシリーズ)@遊戯王OCG
[思考・状況]
基本方針:殺し合いに乗らず、みんなで協力して生還する
1:またこの目つきのせいで怖がらせてしまいました……
[備考]
※参戦時期はお任せします。

【吉田優子@まちカドまぞく】
[状態]:健康ㅤ危機管理フォーム
[装備]:
[道具]:基本支給品一式ㅤランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:みんなが仲良くなりますように
1:バフォメット!? バフォメットナンデ!? しかもなんか速い!?
2:桃やミカンさんだけじゃなくて、なんでお母さんと良まで……
[備考]
※参戦時期は夏休み(アニメ2期7話、原作43丁目)以降です。


『NPC紹介』
【心を無くしたバフォメット@まちカドまぞく】
名前の通りの心を無くしたバフォメット系のまぞく……というミカンの独自妄想
少なくとも歩く速度は、危機管理フォームのシャミ子の走る速度よりは速いと思われる(このロワ独自設定)


874 : ◆2dNHP51a3Y :2022/08/05(金) 19:46:05 MnD6.nkQ0
投下終了します


875 : ◆QUsdteUiKY :2022/08/06(土) 14:11:01 fi2D5bSM0
予約延長します


876 : ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:05:35 0GjTuVqA0
投下します。


877 : Realize ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:06:57 0GjTuVqA0
『なんてことしてくれたのよ!!』

どうして…どうしてそんな事を言うんだ……

『のび太さんの責任よ!』

そんな……僕はただ……

『のび太さんなんか大っ嫌い!!!』

ふざけるな……ふざけるなよ……あのブタ野郎の犬に股を開いた売女が…!この俺を拒絶するだと…!?

「このアバズレがあああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」

怒りの咆哮と共に腕を振り回せば、もたれ掛かっていた大岩が粉砕された。
ハッと目を見開くとそこは見慣れたすすきヶ原の町ではない。

「夢、か…」

自らの声で悪夢から覚めたのび太は軽く頭を振り、ゆっくりと立ち上がる。
将来結婚するはずの自分を裏切り、成金のお坊ちゃんに抱かれたメス豚に罵倒された時の記憶。
あの女を手に掛け、自らの血肉とした感触はハッキリと思い出せる。
最愛の相手の命を奪ったという事実は、復讐に燃えるのび太を止めるには至らない。

魔法を使う少女との戦闘中、第三者による超火力の不意打ちを受け傷を負った。
その後、傷を癒す為に手頃な場所で仮眠を取っていたのだ。
超人類となった為か普通の人間よりも回復する速度は上。
火傷の痛みこそ多少残っているものの、戦闘を行う分には全く問題ない。

早速参加者を狩るべく動き出そうとした時、出鼻を挫くかのように巨大なモニターが現れた。

「神だと?ならば俺達は神の掌で踊る犬だとでも言うのか?」

放送が終わり、答えが返って来ないと理解しながらも疑問を口にする。
都合の良い駒として利用されるのにはウンザリだ。
だがのび太の目的は優勝し、憎きドラえもんに復讐すること。
気に喰わない男なのは間違いないが、自称神の相手をしている暇は無い。
名簿を確認した所、ドラえもんや同じく超人類計画の発案者であるドラミは不参加であると分かった。
ならばやる事は変わらない。デュエルだかゲームだか呼び名はどっちでも良いが、殺し合いに優勝してあの忌々しい青狸への復讐を果たす。
その為なら無数の屍を積み上げる事になっても構いはしない。

今度こそ獲物を探すべく移動を開始した。


878 : Realize ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:08:25 0GjTuVqA0
◆◆◆


胸糞悪い。
嫌悪と怒りを露わに吐き捨てられた言葉がロゼの耳に届く。
横目で見やれば険しい顔で上空を睨み付ける青年の姿。
飄々とした、悪く言えば軽薄な態度を見せていたがそれは彼の一面でしかない。
人の命をゴミ同然に扱う邪悪を許さない、正しき心の持ち主。それこそが涼邑零の本質なのだろう。
自らを守りし者と指した零の言葉は間違いでは無かった。
瞳のずっと奥に宿った覚悟と決意は、見間違えなんかでは無かった

そして口には出さないが、ロゼもまた零と同意見である。
閃刀姫として己が手を血に染めて来たとはいえ、不要な犠牲は望まない少女だ。
我こそは神と高々に宣言した男と配下達の行いに嫌悪感を抱くのは当然のこと。
兵士の戦死などではない、怯える少女達や勇敢に立ち向かった青年を惨たらしく殺した。
彼らの死もこれから先で巻き起こる死も、主催者達はゲームの一言で片付けようとしている。
これで不快感や怒りを感じるなと言う方が無理な話。

同時にふと思う。
もしレイに助けられる前の自分が参加していたら、一体どうしていたのだろうと。
ハ・デスや檀黎斗に嫌悪を抱きつつも、もしかしたら殺し合いに乗ってしまったのではないか。
自分は列強国の閃刀姫、こんな所で道草を食っている間に他国が攻めてくるかもしれない。
だから一刻も早く元の戦場へ帰る為に、手っ取り早く優勝の道を選ぶ。
そうなった可能性をロゼは否定できない。
嘗ての自分はレイに呆れられるくらいに頭が固くて、閃刀姫としての使命以外に生きる理由なんて無いと思っていた。
力無き人々を殺す事への迷いと葛藤の果てに、祖国の為なら仕方ないと無理矢理自分を納得させたかもしれない。
でもそうはならなかった。ここにいるのは列強国の閃刀姫ではなく、レイの隣にいる事を選んだ少女なのだから。

レイが自分を変えてくれた。
その事実を改めて噛み締めるも顔には出さず、主催者打倒を誓った仲間へ話しかける。

「零、連中を許せない気持ちは私も同じ。でも焦ったら駄目。焦りと怒りに囚われたらそこを突かれる」
「…分かってるって。何かロゼちゃん、シルヴァみたいな事言うんだな」
「誰のこと?零の仲間?」
「っていうよりは相棒…かな。まぁ心配しなくても怒りで馬鹿になるつもりは無いよ」

前にそれで失敗した事あるし。
自嘲するような呟きに、何があったか全く気にならないと言えば嘘になる。
しかしそのあたりを根掘り葉掘り聞こうとするような、無神経な人間になったつもりも無い。
だから零の過去には触れずに話を続けた。


879 : Realize ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:09:29 0GjTuVqA0
「殺し合いを仕組んだのがハ・デス以外にもいるとは考えてたけど、まさかハ・デスも部下の一人に過ぎないのは予想外」
「黎斗とかって自称神様が本当の黒幕ってやつか。それと…黒い鎧の男も、な」
「零はあの男を知ってるの?」
「いや、初めて見る顔だよ。ただなんていうか、俺の大嫌いな奴にちょっと似ててね」

零が脳裏に思い浮かべるのは婚約者と師匠の仇の男。
闇に堕ちた魔戒騎士、バラゴだ。
と言ってもバラゴは既にこの世にはいない。
究極のホラーであるメシアの降臨を目論んだが、そのメシアによって吸収されるという因果応報の末路を迎えた。
無数の怨念が宿った暗黒騎士呀の鎧も鋼牙の手で斬られている。
それに映像で見た鎧は呀とは全く違う造形だったし、鎧を纏った男もバラゴとは別人。
だが零にはあの鎧が魔戒騎士と無関係だとはどうしても思えなかった。

(バラゴの奴以外にもホラー喰いの魔戒騎士がいたってのか?)

考えても答えは出ない。
こういう時に首から下げた相棒がいたら何か手掛かりをくれるのだろうが、残念ながら今は不在だ。

「……嘘、ですよね…?」

小さい、緩やかな夜風にすら掻き消されそうな程小さい声がした。
誰に向けて発した言葉なのか、本人にすら分かっていない。
されど仲間の二人は確かに小さな声を拾い上げた。
ロゼと零が揃って視線を向けた事にすら気付いていないのか、彼女は上を向いたままもう一度言う。

「嘘……ですよね……」

香風智乃のただならぬ様子、二人はすぐ原因を察する。
今しがた行われた黎斗の放送。
次から次へと人が殺される光景にショックを受けた。

或いはもっと最悪な展開。

「な、なんで…マヤさんが……」

殺された者の中にチノと親しい人物がいたということ。


880 : Realize ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:11:37 0GjTuVqA0
条河麻耶が殺された。
起こってしまった事を説明すればその一言で足りるも、チノには理解も納得もできない。

普段のマヤらしからぬ怯え切った表情で抵抗を続け、無意味とばかりに一瞬で片が付いた。
地面に転がる上半身と下半身。
おへその下あたりから沢山出ていた赤い液体と、ピンクが混じった色のぐちゃぐちゃしたモノ。
安らかなとは程遠い、一生分でも足りないくらいの恐怖を味わった顔でピクリとも動かなくなった親友。
受け入れ難い、しかし現実に起きてしまった惨劇。

「あ、あ…あの…!これ…何かのイタズラとかで……マヤさんも、実はイタズラの仕掛け人とかだったりで…!」

途中まで言いかけて、自分が物凄く馬鹿馬鹿しい発言をしている気持ちになった。
例えイタズラだとしても人が殺されるような悪趣味極まりないものに、マヤが加担するはずが無いだろう。
映像越しだけどマヤの怯えた顔は演技なんかじゃない、本当に殺されるかもしれないが故の恐怖。
チノは聡明な少女だ、これが所謂ドッキリ企画の類でない事くらいとっくに理解している。
本物の殺し合いだと分かっているからこそ、本当の姉かそれ以上に慕う少女を守るべく『変身』したのだから。

「う…うぁ……」

金髪の偉丈夫はどうしてマヤを殺したのだろうか。
檀黎斗はどうしてマヤの死を見世物のように扱えるのだろうか。
整った顔の裏に隠されたドス黒いモノなどチノには分からないし、分かりたいとも思わない。
嫌でも分かってしまうのは、チノの大切な友達が殺された事だけ。

「返して、ください……」

もしチノが無事に元居た街へ、ラビットハウスへ帰れたとしても。
元通りの日常へは帰れない。
ココア達はいても、一人分の穴がポッカリと開いた日々。
そんなものは、ココアと一緒に住むようになってから少しずつキラキラしていった毎日なんかじゃない。
チマメ隊がこんな残酷な形で失われるなんて、信じたくなかった。

「返して……!」

私の大事な友達を、返してください。私の大好きな日常を、返してください。
願いを聞き入れてくれる優しい神様はいない。
いるのは「ならばゲームに勝ち残ってみせろ」と悪びれもせずに言い放つ、檀黎斗(わるいかみさま)ただ一人。


881 : Realize ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:12:24 0GjTuVqA0
だけど、チノの願いは叶えられないけど、チノの悲しみを拭おうとする者はいた。

「えっ…?」

ふいに自分の体へ柔らかいものが押し付けられる感触がした。
視線を上げると、悲しそうな瞳をした少女が見える。

「ロゼさん…?」

名前を呼ばれ、ロゼは自分よりも小さい少女を抱きしめる力を強めた。
自分でも何となくぎこちない抱きしめ方だとは理解している。
こういう時レイだったら、もっと自然に優しく抱きしめてあげられただろうに。
そんな思いは胸に仕舞ったままでチノの頭を撫でる。
出会ってすぐの時、黒づくめの集団を蹴散らした直後の時よりも精一杯の優しさを込めて。

「前に…私が不安をうっかり顔に出した時、レイがこうしてくれた」

レイとの二人旅は毎日が楽しくて幸せだったけど、時折どうしようもなく不安に囚われた事もあった。
閃刀姫である事から逃げた自分を列強国は許さない。
追っ手が現れた時、レイにまで被害が及ぶのではないか。
自分のせいでレイまで傷ついてしまうのではないだろうか。
嫌な可能性ばかりを考えていて顔に出た時は、決まってレイが抱きしめ頭を撫でてくれたのを覚えている。
レイからしたら妹分を可愛がる感覚だったのかもしれないが、ロゼにはその行為もレイへの気持ちをより大きくさせるものだった。

「私はレイみたいに優しくはなれないけど、チノの支えになりたい」
「ロゼさ……」

こんな風に優しくされたら、我慢なんて出来る筈が無い。

後はもう言葉にならずに、嗚咽が続く。
胸に小さな頭をグリグリと押し付けられ服が涙で濡れても、ロゼはチノを拒絶しない。
ただ少しでも彼女の心にできた傷を癒せればと、頭を撫で続けた。


882 : Realize ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:14:25 0GjTuVqA0



「ご、ごめんなさい…」

恥ずかし気に縮こまって謝罪するチノに、ロゼは首を傾げる。
ある程度落ち着いたチノはロゼに抱きしめられている現状に頬を染め、慌てて離れた。

「別に謝られるような事はされてない。…もしかして、私の抱きしめ方が嫌だった?」
「そっ、そんなことないです…!あったかくて、優しい匂いがしました」

もしこれをココアが聞いたら対抗意識を燃やして、「私の方がチノちゃんをぎゅーってしてあげられるよ!」と言うかもしれない。
自分で浮かべた想像図に思わずクスリと笑みを零せば、ロゼも安堵したように小さく笑った。

「落ち着いたみたいだね、チノちゃん」
「あっ、零さん…。あの、ご迷惑をおかけしまして……」
「ありがとう零」
「いやいや、謝罪もお礼も言われるような事してないって」

肩を竦めて返されるが、ロゼは気付いていた。
自分がチノを落ち着かせている間、ずっと周囲へ気を張ってくれていた事に。
余計な茶々を入れず、空気を読まずに襲って来る者がいないかの警戒。
飄々とした態度の裏に信頼できるものを宿していると、改めて思う。

「ところで、ちょっと確認しといた方が良いのがあるぜ」

どことなくむず痒い空気を変える為にか、少々強引に話題を変える。
零が提案したのは名簿の確認。
三人とも会場に転移された際にタブレットを起動してみたが、名簿は白紙の状態だった。
だが先程の放送によると今なら見れるようになったらしい。
確認しておくべきという至極真っ当な意見を否定する気は無く、三人揃ってそれぞれのタブレットを開いた。

「やっぱり、ココアさん達も……」

ココア、リゼ、メグ。名簿に記されたチノの大切な人達。
マヤがいた事から薄々そうでないかと考えてはいたが、悪い予感は的中してしまった。
幸いと言うべきか千夜とシャロ、自分の家族は不参加のようだが、やはりココア達まで巻き込まれたのには気持ちが沈むのを抑えられない。
もしかしたらココア達までマヤのような目に遭ってるかもしれないと考えると、体が震え出す。


883 : Realize ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:16:34 0GjTuVqA0
(っ、いえ、こんなんじゃ駄目です私!)

弱気になりかけた自分を内心で叱咤する。
もしココアが危険な目に遭っているなら自分が守る、そう決意して剣を手にしたのだ。
早くも怖気づいていてはココア達を守れはしない。

「チノ、知っている名前はあった?」
「あ、はい…。ココアさんとリゼさん、メグさんが…。でも、これ……」

一つだけ名簿に奇妙な点が存在した。
それはココアの名前だけ何故か二つ記載されている事だ。
名前の並びを見るに、恐らくは知り合い同士で固めているのが分かる。
チノの名前の前と後ろにそれぞれココアとリゼの名が載っており、リゼに続く形でメグとマヤの名前があった。
だからこそ余計に分からない。どうしてもう一つのココアの名は自分達から離れて記載されているのかが。
そっちは前後どちらの名前もチノの知らない人物。
同姓同名の別人の線もあるにはあるが、どちらかと言えば珍しい名前が一致するなど有り得るのだろうか。

ココアの名前が二つあるのは気になるが、今はそれ以上にココア達が本当に参加している方が重大だ。
自分の知っている名前がこんなにあるなら、ロゼも同じかもしれない。

「あの、ロゼさんもですか?」
「うん……」

ロゼもまた可能性として考えていた事が的中していた。
殺し合いにはレイも参加させられている。
自分もそうだが、ご丁寧に閃刀姫の肩書付きで。
既に閃刀姫ではなく少女として生きる道を選んだのにわざわざ付けるとは、黎斗への不快感が増す。

(レイ……)

彼女の強さは自分が一番よく知っているし、このようなゲームを肯定するような人間でもない。
レイの優しさに救われ、惹かれたロゼだからこそ確信を持って言える。
だが同時に、その優しさのせいで無茶をしないか心配でもあった。
今すぐにでもレイを見つけ、守ってあげたい。


884 : Realize ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:17:44 0GjTuVqA0
少女達の切実な想いを察したのか、明るい声が二人に掛かる。

「だったらさ、まずはチノちゃんとロゼちゃんの友達を探しに行こっか」
「それは…嬉しいけど、零は良いの?」
「そうですよ、もし零さんのお知り合いもいるんだったら…」

零の提案は嬉しいが、自分達の事ばかり優先して良いのだろうか。
申し訳なさと後ろめたさを含んだ言葉に、零は変わらず笑みを返す。

「心配しなくても、鋼牙なら大丈夫だって」

楽観的に考えて言ったのではない、確信があっての事だ。
そんじょそこらの悪党やホラーが相手だろうと、不覚を取るような力の持ち主ではない。
黎斗やハ・デスに屈し殺し合いを肯定するような未熟者でもない。
バラゴとの戦いでは焦りと怒りから、自ら心滅獣身へ化したがそれも過去の話。
今更闇への誘惑に惑わされる馬鹿をやらかすような奴ではないだろう。
冴島鋼牙の心身の強靭さを知っているからこそ、大丈夫だと言える。
無論、合流できれば心強いがこういった状況ではバラけて動いて一般人の保護や協力者を探す方が良いのかもしれない。

「それにもしかしたら、今頃二人の友達と一緒にいるかもしれないしさ」

だからこっちは心配しなくても、遠慮を感じる必要もないと告げる。
そう言われたら必要以上に遠慮するのも逆に失礼というもの。
レイやココア達と一刻も早く会いたいのも本当なので、素直に礼を言う。

「ありがとうございます、零さ――」
「「――ッ!!」」

感謝の言葉を言い終わるより先に、チノの体が宙に浮いた。
より正確に言えばチノを引き寄せたロゼが跳躍し、同じく零も飛び退く。
そうしなければ自分達は無事では済まない。
歴戦の戦士であるロゼと零だから気付けたのだ、急接近する殺意の塊を。

轟音が響く。
発生源は三人が立っていた場所。
地面が砕け、土煙が周囲を覆い隠す。
それもすぐに搔き消された。襲撃者の腕の一振りによって。


885 : Realize ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:19:14 0GjTuVqA0
「あえて抵抗し、苦しみながら死ぬ道を選ぶか」

現れたのは一人の青年。
鍛え抜かれた肉体を持ち、丸眼鏡の内側に隠し切れない殺意を宿す様は危険人物以外の何者でもない。

落ちこぼれの代名詞。
勉強・スポーツダメダメ男。
いじめられっ子代表。
居眠りの天才。
0点チャンピオン。
誰かの為に泣ける少年『だった』者。

そして、超人類。

復讐鬼・野比のび太が、参加者の気配を感知し襲撃して来たのである。

「派手に登場したとこ悪いんだけどさ、こっちは女の子がいるんだよね。あんまり恐がらせないでくれる?」
「零、私は恐がってなんかない。そんな風に思われるのは心外」

軽口を叩きつつも、二人の剣士は油断無く襲撃者を見据える。
既にどちらも愛剣を構え臨戦態勢に入っており、瞬きの間に斬り掛かる事が可能。
だが簡単に片が付くような相手でない事も分かっていた。
全身を刺すような殺気はより激しさを増し、見掛け倒しでは無いだろう肉体が膨れ上がる。

「貴様らに恨みは無い。だが俺の目的の為に、ここでその命を散らして行け」

来る。
ロゼと零がそう思ったのと、実際に拳が放たれたのはどちらが先か。
確かな事は一つ、戦闘が始まった。
握り締めた拳は岩石の如く硬い、それでいて銃弾よりも速い。
拳圧とでも言うべきか、放たれた際の勢いだけで常人ならば紙の様に吹き飛ばされそうだ。
直撃した際に受ける被害は考えるまでも無い。

二人の剣士がのび太を簡単に倒せる相手でないと見たように、のび太もまた易々と勝ちを奪える連中で無いとは思っていた。
その考えを証明するかのように、ジャイアンですら叩きのめした拳は空を切るに終わる。
剣士達はそれぞれ別方向へと回避、初撃で呆気なく死ぬ結末にはならなかった。
尤もこの程度で驚くのび太ではない。


886 : Realize ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:20:51 0GjTuVqA0
「ハァッ!」

紅と白銀。
左右二方向から迫る計三本の剣。
大切な人を守る為、命を無為に奪う者を止める為。
純粋な想いの込められた刃は、復讐という負の感情を宿したのび太の攻撃とは正反対。

「ヌゥンッ!」

だが想いの強さだけで勝てる戦いでも無し。
両腕を伸ばし、右足を軸に回転するとのび太を中心に暴風が発生。
刃は肉体に到達せず、二人は揃って吹き飛ばされる。
あわや地面、若しくは付近の木々や岩に激突、とはならない。
空中という不安定な位置ながらも体勢を整え着地、素早く各々の剣を構え直した。

「ホォォォーーーッ!!」

距離を詰めに動いたのはのび太。
伸ばした足を縦横無尽に振るい、鞭のようなしなやかさを以て攻撃。
拳同様にこちらも威力は桁外れ。
皮膚が裂けるのみならず、人体だろうと容易く引き千切られるだろう。

これに対しロゼ、地面スレスレまで姿勢を低くし回避。
のび太の右脚が軍帽を掠めるも無視、軸となっている左脚目掛けて剣を突き出す。
ロゼとは反対に跳躍しのび太の頭上を取ったのは零だ。
真下にいるのび太へと魔戒剣を振るう。
首を斬り落とす気こそ無いが、両腕を潰して戦闘不能に追い込むくらいは躊躇しない。

「甘い!」

突きの体勢から一転、ロゼは体を倒して地面を転がる。
原因はのび太が振るっていた右脚で、真下のロゼを踏み潰そうとした為。
骨を砕かれ内臓を潰されるリスクを負ってでも攻撃するか、素直に回避へ移るか。
ロゼが選択したのは後者。
踏みつけられ氷の張った水溜まりのように砕ける地面、小石や土が目に入りそうになり咄嗟に目を瞑った。
一方で零の動きは止まらない。二振りの魔戒剣がのび太へと迫り来る。
キッと頭上を睨み付けるのび太、両手をバネのように跳ね上げた。


887 : Realize ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:21:37 0GjTuVqA0
「なっ!?」

驚きの声を上げる零が見たのは、自身の愛剣が両方とも止められた光景。
何とのび太、両手でチョキを作り魔戒剣の刃を指で挟んだ。
剣を引き抜こうにもどれだけの指にどれ程の力を込めているのか、ビクともしない。
厳しい修行を積んだ魔戒騎士が超人的な身体能力を有しているのは言うまでもなく、まして零は黄金騎士に匹敵する程の強さの持ち主。
そんな自分の剣が素手で止められた事実に息を呑む。

魔戒剣を防いでいるのび太も僅かに目を細める。
現在進行形で止めてはいるものの、ほんのちょっぴり力を緩めれば即座に手を斬られ使い物にならなくされる。
そんな予感を抱くくらいには、零の刃は勢いがある。
加えてどれだけ指に力を込めようとも、刃には罅一つ入らない。

(つまらん真似をしてくれる……)

相手が思ったよりも強く、振るう剣もまた相当な業物だから。理由はそれだけではないだろう。
恐らく、超人類としての戦闘能力に何らかの枷を付けられている。
檀黎斗は殺し合いをゲームと称した。
ゲームである以上、極端にパワーバランスを崩壊させる参加者には調整を施したと考えるのが自然。
放送でもデッキとやらを支給された参加者は他の支給品を没収する形で、戦力過多になるのを防いでいる。
そういう事ならば自分がある程度弱体化しているのも頷ける。
気に喰わない事に変わりは無いが。

「零!」

例え力を制限されていようと、のび太が強者である事実に変わりはない。
斬り掛かって来たロゼへ投げ付けるように指を放す。
錐揉み回転しながら吹き飛んで行く零と、避けるか受け止めるかで迷い動きが止まったロゼ。
激突は当然の結果だ、揃って地面を転がる。
ズキリと鈍く痛む体に顔を顰めながら零が短く謝罪を告げれば、気にしなくて良いと簡潔に返された。
別に怒っていないのは本当だし、そんなものを気にしている場合にあらず。
何せ敵はとっくに目の前まで来ているのだ。

「アタァ!」

拳の回避と同時に剣を振るう。
右からは零、左からはロゼ。
たかだか一人を相手に振るわれるには十分過ぎる速度、迫る脅威を前にしてものび太に焦りは皆無。
小さく息を吐き呼吸を整える。


888 : Realize ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:22:24 0GjTuVqA0
「見切った!」

カッと目を見開き大胆にも一流以上の腕を持つ剣士へ宣言する。
それが妄言でない事は、実際に起きている光景からも明らかだった。

「ホォォォアァァァーーーーッ!!!」

前面へ円を描くかのように振るわれるのび太の両腕。
適当な動きをしているのではなく、全てが己を狙う刃への対処を完璧に行っている。
拳が剣の腹を叩き、或いは手刀で弾き、時には指で挟んだ刃でもう片方の剣を防ぎ、更には受け流した刃を別方向からの刃にぶつける。
零とロゼが剣を振るう速度を速めれば速める程、のび太が凌ぐスピードも増す。
二体一にも関わらず、余裕が無いのは前者の方だ。

時折刃が掠めるも致命傷には程遠い。
魔戒剣もロゼの剣も切れ味の高さに疑う余地は無くとも、のび太相手では自慢の切れ味もいささか届かない。
超人類と化したのび太はスネ夫が搭乗したνガンダムの攻撃を受けても、五体満足でいた。
制限下にあろうと、単純な肉体の強度すら一般人を超えている。
だからといって敵の刃を甘んじて受け入れるつもりはない。
何度剣を振るおうと捌く事は容易い、超人類故の慢心からか口の端を吊り上げるのび太。
その真正面から、新たに三本目の剣が襲い掛かった。

「やあああ!」

夜風に靡かせるは薄水色の長髪。
深い海色のリボンをあしらった衣装は可愛らしいだけのものではない、少女が『変身』を遂げた姿。
天上の星々に負けない輝きを放つ銀の星を象った剣は、彼女にのみ力を与える特別。
想いの強さならば歴戦の閃刀姫や魔戒騎士にも負けない、チノが繰り出す一刀だのび太へ迫る。

「小賢しい…!」

短く吐き捨て両手を左右へ杭打機のような勢いで突き出す。
突き出された拳の威力はそんなものには収まらない、人体など障子紙より脆い。
片方は剣を翳し、もう片方は双剣を交差させる。
咄嗟の判断で防御の構えを取ったのは流石の判断力か。
それでも武器を通じて両腕に走る痺れと、宙に浮き後方へと吹き飛ばされる体まではどうしようもない。
左右の剣士は離れた、真正面から振るわれた刀を両掌で挟み込み強引に止める。真剣白刃取りである。
魔戒騎士の零ですら指二本から武器を引き抜けなかったのだ、身体能力が上がっていようとチノの細腕では不可能でしかない。
必死に引き抜く姿を無駄な努力と笑いもせず、淡々と足を振るう。
両腕が塞がっていようと問題無い。小柄な少女の体を一撃で原型を留めぬ肉片に変えられるのだ。
しかしチノに放たれる筈だった蹴りは左方向へと急に向きを変えた。
視線を寄越さなくとも分かる。今しがた殴り飛ばした剣士、その女の方だ。


889 : Realize ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:26:42 0GjTuVqA0
「っ!!」

急接近からの強引な回避、半身を捩ると蹴りが胸の位置スレスレを通過。
列強国の駒だった頃は気にも留めなかった、今ではレイの影響か気にするようになった少女らしい膨らみ。
僅かにでも回避のタイミングがズレていたら抉り潰されていただろう。
ヒヤリとした背中を流れる汗すらも、気を回す暇は与えられない。
体を捩った無理な姿勢のまま胴体へ剣を突き出すが、のび太は先程と同じ対処法を取る。
ロゼにぶつける形でチノの剣を解放、小柄とはいえ衝撃で狙いが逸れた。
二人纏めて粉砕すべく拳を振り下ろそうとし、別方向から迫る敵意に意識を持って行かれる。
逆手に構えた双剣で斬り掛かる零だ。

「ホアタァッ!」

目障りな羽虫を潰さんと放たれる裏拳。
対する零は直前で剣を引っ込めのび太の拳を蹴り付ける。
相手が一般人ならこれだけで拳を使い物にならなくできたが、のび太の拳はノーダメージ。
無論そうなる事は零にも分かっていた事だ。蹴った際の反動を利用し大きく後退。
のび太の意識が外れた隙にロゼはチノを抱え跳躍、零の隣へ降り立った。

「二人とも無事か?」
「はい、大丈夫です…。ロゼさん、零さん。ここからは私もお手伝いします…!」

そう言ったチノの顔は緊張からか若干強張ってはいたが、同じく決意に満ちていた。
相手は強敵だ、チノが加勢したとしても厳しい戦いに変わりは無い。
加えて閃刀姫や魔戒騎士と違い、チノは元々争いとは無縁の世界に暮らしている少女。
支給品の恩恵で身体機能が劇的に向上しても、経験という点において二人に大きく劣る。
だからといってチノのやる気を削ぐような事を言う気は無い。
足りない分は自分達がカバーしてやれば良い、零とロゼは互いの目を見て小さく頷き合った。

「うん。私たちは一緒に頑張るって約束した仲間。三人であいつを倒そう」

一瞬たりとも目を離してはならない敵の為、チノの方を見ないまま言う。
自分へ集中する鋭い視線を意に介さず、のび太は威圧するように両手の骨を鳴らした。

「一人増えた所で退いてもらえるなどと思うな。何より女や子どもだろうと容赦する気は無い」
「女だからって甘く見るのは不愉快。そうやって油断してる奴に限って足元を掬われる」
「油断ではない、事実を告げているに過ぎん。…そこのお前」
「っ、何ですか…?」
「お前の剣が一番軽いぞ、小娘。怒りも憎しみも敵意すら薄い生温い剣で、俺をどうにか出来ると思っているのか?」

丸眼鏡の奥の眼光に射抜かれると、チノは全身が強張り言葉に詰まる。
反論したいが相手の言っている事が分からない訳でもない。
自分はロゼと零程戦い慣れてはいない。丸眼鏡の男が襲い掛かって来た当初、目出し帽の黒タイツ集団とは段違いの迫力に動けずにいた。
ロゼと零はまるで漫画のキャラクターのように華麗な剣捌きで戦い、それでも苦戦する程に丸眼鏡の男は強い。
そんな相手からしたらココア達を守りたいという想いで振るう剣など、見下す対象でしかないのだろうか。


890 : Realize ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:27:32 0GjTuVqA0
「チノ」
「っ…」

自分を呼ぶ名前に視線を上げると、こちらを見ずにいるロゼが映る。
辺り一面を覆う夜の闇の中にあっても、爛々と輝く真紅の瞳。
そんな場合では無いと分かっているのに、チノは宝石なんかよりも綺麗な目だと思った。

「あいつの言葉を聞く必要は無い」

えっ、というチノの呟きはのび太に剣を突き付けたロゼの言葉に掻き消される。

「チノの剣は軽くなんかない。チノの勇気を否定するなら、私はお前を許さない」

のび太は知らない、けれどロゼは知っている。
チノがココアとの日常を守る為に、勇気を振り絞って剣を手にした瞬間を。
自分と違って元々戦士ではないけど、大切な人の為に戦う決意を固めた事を。
ロゼはレイがいたから戦い以外の生き方を知れた、チノはココアがいたから毎日がより楽しいものになった。
愛する人との日常を守りたい切な願い、それは決して否定されていいものではない。

「怒りと憎しみ、ね……」

のび太の言葉に零は思う所が無い訳ではない。
零も嘗ては復讐の為に生きた男。
勘違いだったとはいえ、黄金騎士への憎悪が己を突き動かす原動力だったのは紛れも無い事実。
但しそれらは過去の話に過ぎない。

「別に怒りとか相手への恨みは絶対に持つなとは言わねぇよ。
 ただ、それに執着し過ぎて自分の目を曇らせるな。俺も、俺の知る中で一番強い男もそれで失敗したからさ」
「零、やっぱり……」

零の言葉は己自身に言い聞かせている、どうしてかロゼにはそう思えた。
最初に出会った時も言っていた、大切な人を失った事があると。
きっと零はその人を奪った相手への復讐に燃えていた時期があったのだろう。
声の調子から察するに、復讐を果たす為の戦いで零と零の仲間は何らかの間違いを犯した。
あくまで推測に過ぎないが。


891 : Realize ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:28:16 0GjTuVqA0
実際、ロゼの推測は間違っていない。
婚約者である静香と師である道寺の二人を殺されて以来、零は本来の名前を捨て復讐の道に走った。
自分から大切な人達を奪った黄金騎士牙狼、冴島鋼牙を殺す。魔戒騎士の掟を忘れた訳では無くとも、当時の零にとっては復讐を果たす事が重要だった。
尤も黄金騎士が仇というのは勘違いに過ぎず、真の復讐対象はホラー喰いの魔戒騎士・バラゴだと知るのは随分後になってからのこと。
復讐に執着する余り己の目を曇らせ、時には鋼牙と共にいた観月カオルを危険に晒した事もある。
しかし誤解が解けた後、鋼牙は零を責めるでもなく共に戦う魔戒騎士として受け入れた。
だからこそ鋼牙が決して犯してはならない過ちに手を染めようとしたのを、零は命懸けで止めたのだ。
父、冴島大河を侮蔑された怒り。カオルを攫われ、圧倒的な力を持つバラゴに勝つ術を見出せない焦り。
それらが要因となり鋼牙は自ら心滅獣身と化し、バラゴと同じ闇へ堕ちかけた鋼牙を零は正気に戻した。

「ま、今俺からチノちゃんに言えるのは一つだけだよ」

チノとロゼは大切な人との日常を守る為に剣を取った。
大切な彼女達がゲームに参加していると知り、守りたいという決意が一層強くなった。
その想いを零は決して否定しない。
何故なら彼もまた守りし者。命の尊さを知り、魔界の住人から人々を守る為に剣を振るう魔戒騎士。

「誰かを守りたいって想いは間違ってなんかない。アイツの言葉なんざ気にしないのが一番だよ」
「……はい!ロゼさん、零さん、ありがとうございます…!」

仲間達からの心強い言葉に、チノの不安は何時の間にか消え去っていた。
戦意を取り戻したチノの姿を前にのび太は思う。
誰かを守りたいという気持ち。昔は自分もそれがあった。
様々な大冒険に繰り出し、その度に未来の犯罪者や異世界の怪物、超化学の産物に大魔王や大妖怪。
思い返せばひみつ道具が手元にあったとはいえ、小学生に過ぎない自分達がよく生き残って来れたものだ。
多くの悪者を倒せたのは相手を野放しにできない正義感、何より友だちを守りたい想いがあったからこそ。
ああそういえば、アイツを助ける為に危ない橋を渡った事もあったかと、らしくなく感傷に浸る。
それも僅かな間だけだ。数々の冒険を通して友情を育んだと思っていたのはのび太だけだったのだから。

闘気が膨れ上がる。
許してはおけぬ、生かしてはおけぬゴミ野郎への憎しみが再点火されたからだ。
ドラえもんへの復讐を果たすまで、のび太は殺し続けるのだろう。

「向こうがその気なら、こっちも本気でいかないとな」

本来ならばホラーではない人間相手に使う気は無かった手。
だがのび太の戦闘力は間違いなく、歴戦の魔戒騎士や上級ホラーにも匹敵する。
となれば出し惜しみなどはしていられない。
今は非常事態なのだから、番犬所も少しくらいは大目に見てくれる筈。


892 : Realize ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:28:56 0GjTuVqA0
魔戒剣で空を突くように両手を頭上に掲げる。
双剣で円を描くと真下の零へ光が降り注ぐ。
天からの、神々からの祝福を一身に受けるかのような光景。

瞬きする一瞬で、頭上からの光を更なる輝きで塗り替えるが如き姿へ変わった。

闇を切り裂く刃を纏ったかのような銀。
睨めつける眼光は鋭く、響く咆哮は勇ましい。
銀牙騎士絶狼。黄金騎士牙狼とも肩を並べる、歴代最強の魔戒騎士。

「零、その鎧は……」
「零さんも変身が出来たんですか…!?」
「説明は後後。今はあのメガネくんの相手が先だよ」

驚きを隠せない少女達への返答もそこそこに双剣を構える。

敵の変化を目の当たりにしたのび太もまた、デイパックから支給品を取り出す。
奇しくも絶狼の鎧と同じ銀のガントレットを両腕に装備する。
敵が剣を持っていようと素手で叩きのめすつもりが急に武器を使い始めた理由は、零が纏った鎧にあった。
超人類となったのび太は集中する事で相手の体内を透視し、筋繊維の一本一本の動きまで視認が可能な力がある。
偶然にもゲームの参加者として登録された、ある双子の兄弟と酷似した能力だ。
だが不可解な事に鎧を纏った零の体内は透視出来なくなっている。
例え分厚い装甲を着込んでいようと、本来ならば超人類の力の前には無意味の筈。
代わりに鎧は眩い輝きのみならず、異様なまでの熱を帯びているのが分かった。
ソウルメタルを加工した魔戒騎士の鎧は常に超振動を繰り返し高熱を発している。
素手で触れようものなら瞬時に焼け付くされるだろう。
となると素手で直接打撃を放てばこちらの拳が使い物にならなくなるかもしれない。
その可能性を警戒し、拳を守りつつ効果的なダメージを与える手段としてガントレットを装備したのだ。

そういった事情を説明してやる気はなく、向こうも期待なんかしていない。
ルール無用の殺し合いに合図は不要、有無を言わせぬ拳が三人へと放たれた。


893 : Realize ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:29:42 0GjTuVqA0
「アタァッ!」

飾り気のないストレートパンチだが、威力はプロの格闘家“程度”では決して届かない領域だ。
ブタ野郎ことジャイアンに重症を負わせた拳を覆うのは、とある聖女愛用の打撃武具。
のび太の力にも十分耐えられる代物である。

「ハァッ!」

その拳が双剣で弾かれた。
銀牙騎士の鎧を纏った事で零の魔戒剣は一回り巨大化し、銀狼剣と化している。
今の一振りのみでも、敵の力は見掛け倒しなどではないとのび太は理解。

「行きます!」

のんびり敵の力に関心を抱くのは強者の特権だが、見ようによっては油断と慢心にも取れる。
ほんのちょっぴりの思考に耽るのび太へここぞとばかりに斬り込む少女達。
獣のように駆け、喰い千切る牙の如き剣を同時に放つ。
手応えは肉を斬った感触ではなく、金属へぶつかった衝撃と耳障りな音。
ガントレットを装着した事で、回避や受け流しだけでなく防御が可能となっていた。

両腕の筋肉が盛り上がりガントレットが僅かに軋みを上げる。
強烈なのが来る。瞬時に察したロゼがチノを呼ぶと、頷きながら共にのび太から離れた。

「アタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタァッ!!」

一発二発どころではない、数十発もの殴打の嵐。
紙一重でロゼは躱すもチノは少しだけ遅い、一発が胴体に当たる。
強化された身体能力だからこそ耐えられたが、痛みを無効化する訳ではない。
細い体に走る鈍痛に短い悲鳴が上がっても、のび太は攻撃の手を緩めるつもりは無し。
だがそれ以上傷つけさせるかとチノを庇うようにロゼが前に出た。

「ぐっ…!」

愛剣を盾にし拳を防ぐも、ふざけているとしか思えない勢いにへし折られそうだ。
しかしまだ退けない、退いたら拳の餌食になるのはチノなのだから。


894 : Realize ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:30:31 0GjTuVqA0
仲間への猛攻を止めるべく斬り掛かるのは絶狼。
絶狼の方を見ないままにのび太は蹴りを放つ。
すると絶狼もそれに合わせて脚を振るった。
短パンを履いただけの太い脚と、銀の装甲に覆われた足が激突。

「ぬ…!」
「づ…!」

短い苦悶の声は両方から出たもの。
のび太は焼けるような熱さを、零は鎧越しにも伝わる痛みを感じた。
すぐさま互いに足を戻し、一手早く攻めに移ったのは絶狼。
生身の時は逆手持ちだった魔戒剣を順手持ちに変え、銀狼剣を巧みに操る。

ロゼへの殴打を中断し、標的を絶狼へ変更。
双剣を弾き、時には拳を放つも逆に銀狼剣で弾き返される。
恐るべき事だが鎧を纏っていても、のび太の拳を受け、弾く度に双剣から伝わる衝撃で痺れを感じるのだ。
それ程大きな痺れで無いとはいえ改めて強敵だと思い知らされた。

金属同士の激しい衝突の繰り返しで絶えず火花が散る。
剣と拳、どちらも振るわれる速度が徐々に増加。
互いに未だ一撃も食らってはいない。状況を変えるのは彼ら以外の存在だ。

大きく息を吐き剣の柄を強く握り直すチノ。
大丈夫かという問いに、大丈夫ですと強気な言葉を返す。
殴られた箇所は痛い、大人の男の人に暴力を振るわれるなんて、本当だったら恐くて泣き出していたかもしれない。

だけどチノは、こういう暴力の対象がココア達にまで向かう事の方が恐いと思った。
マヤのように理不尽な恐怖に晒されてこれ以上大切な誰かを失くしたくない。
それを考えれば戦う為の気力は幾らでも湧いて来る。

「分かった。でも無理をする前に私達を頼って」

力強く頷き返し、再度のび太へと二人は斬り掛かった。
戦場に長くいたロゼにとって、この程度の痛みなら問題なく耐えられる。
仲間達が戦意を見せているのなら、自分だけ先にダウンは有り得ない。
まだ戦える、一人で敵の相手を引き受けている零に加勢出来る。
チノと同じように強く握り直した剣が、のび太の肉体へ吸い込まれるように振るわれた。


895 : Realize ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:33:42 0GjTuVqA0
絶狼と殺意の応酬を続けている最中でも、少女達の接近を瞬時に察知。
まず左手の銀狼剣を右腕で防御、次に左手でアッパーカットを放つ。
これを零は上体を後ろに引いて回避したが、それはのび太の狙い通り。
真正面を蹴り付けると右の銀狼剣で防ぎ、幾らか距離を取らされた。
ダメージを期待しての蹴りではない、絶狼を少しでも遠ざける為。

直後、のび太の視界に入り込んだのは真紅の剣。
同じ色の瞳に殺意を宿したロゼの踏み込みに、のび太は慌てず数ミリ体を捩って躱す。
避けた先で襲い来るのは薄水色の疾風。
殺意とはまた別の、強き想いを乗せた剣だがのび太はこちらも最小限の動作で避けてみせた。

「お前たちの剣は俺に届かん」
「じゃあ届かせる」

挑発にしては淡々した言葉を投げ合い、それ以上の会話は不要と激突。
のび太がロゼ達だけでなく自分以外の参加者に求めるのは一つ、死のみ。
死んで自分が優勝する為の礎となればそれで良い。

(だが思ったよりも梃子摺らされるな……)

自分の力が制限されているのを抜きにしても、中々の力を持つ連中が多数参加している。
最初に戦った魔女を思えば、そう驚く事でも無いが。
思いは口に出さず、ただ黙々と攻撃を捌く。
こちらを斬る為に絶えず振るわれる二本の剣。
一人が二本を振るっていたのと、二人が一本ずつ振るっている違いはあれどのび太の動きに変化はほとんどない。
ガントレットを装着した腕で剣を弾き、時には軽く身体を捩って躱す。
そうやって敵の体勢が崩れたり隙が生まれた瞬間に拳を放つ。
こちらの攻撃も向こうに届く前に防がれたりしているが、それでも有利なのは自分の方とのび太は確信していた。

のび太がどこまでも余裕を持っているのに対し、ロゼとチノは額に汗を滲ませどうにか対処に回っている。
一撃が重い、だから防いでも両腕が痺れる。一撃が速い、だから躱した傍から次が来る。
集中力を決して切らさずにいても一撃を凌ぐ度に疲労が着実に溜まっていく。

同じタイミングで迫る刃を受け止め、刀身を掴んだまま両腕を振り回す。
足が地面から離れ、不格好なアトラクションのように二人は宙を舞う。


896 : Realize ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:34:36 0GjTuVqA0
「きゃっ…!」

とうとう剣を握っていられなくなり、チノはより高くに放り出された。
このまま地上への落下を待つよりも早く、チノが手放した剣をのび太が投擲。
よりにもよって自分の武器で殺される、だがチノが剣を手放した時点でロゼもまた動き出していた。
剣から手を離し跳躍、チノの腕を掴むと間近に迫った切っ先をどうにか避けようと、

「オオッ!!」

する必要は無かった。
ロゼの視界いっぱいに入り込む、眩しい銀色の背中。
庇うように跳んだ絶狼がチノの剣を地面にはたき落とす。
使い手の血で刃を汚す事にはならずに済み、チノを抱えてロゼは着地。

「そらよっ!」

無事に地面へ降り立ったと気配で分かった絶狼はロゼ達の方を見ない。
銀狼剣の柄底面へもう片方を組み合わせ、二双の刃を持つ銀牙銀狼剣を作り出し投擲。
円盤が飛来していると錯覚する程の速さで回転し、のび太の体を斬り落とすのを今か今かと待ち侘びていた。

これでもまだのび太は顔色一つ変えずに回避。
ついでに握ったままの真紅の剣を絶狼目掛け投げ付けた。

しかし慌てる様子が無いのは絶狼も同じだ。
真紅の剣を掴み、視線はそのままで背後に投げた。
再び手元に愛剣を取り戻したロゼが簡潔に礼を告げ、のび太へと走る。
絶狼も同様に駆け出し、のび太に投げた銀牙銀狼剣がブーメランの要領で戻って来たのを掴む。
一本から再度双剣へと分離させ、ロゼに続くように斬り掛かる。

(このままじゃダメです……)

果敢に攻め立てるロゼと零の背後でチノは唇を噛む。
自分も共に戦うと宣言したが、実際はどうだ。
二人に庇われ、助けられ、足を引っ張っている始末。
自分が弱いせいで二人を余計に苦戦させてしまう、そんなのは絶対にダメだ。
ならどうすれば良いのか。

(力を貸してください…)

変身し剣を振るい、時間が経つ毎に不思議な現象が起きた。
どういう訳か、この剣に秘められた力の使い方が分かって来るような気がしたのだ。
怪しいと言えばその通りであるし、大体この剣は檀黎斗によって支給された物。
信じ過ぎるのは良くないと言われてしまったら、流石に否定は出来ない。


897 : Realize ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:35:24 0GjTuVqA0
(でも今は…)

今は、今だけはこの剣が、戦う為の力が必要なのだ。
戦って、守らなければいけない人達が同じ地にいる。

マヤが死んで、心に穴が開いたような気がした。
きっとこの穴は永遠に塞がらない、一生抱え続けねばならない喪失感なのだろう。
もしも他の皆まで死んでしまったら、心の穴はもっと広がりチノを痛めつけるに違いない。
だからもうこれ以上失わない為に、死なせない為の力を求める。
一緒に木組みの街へ帰る人達を、一緒に戦ってくれる仲間達を守る為の、

「皆を助けられる力を!!」

剣に光が灯る。
青く淡い輝きを放つ刀身の周りに浮かぶは雪の結晶。
幻想的な光景だが見惚れてはいられない。
チノには分かった、今なら仲間達の助けになれると。
それが可能な力が自分の手の中にある。

光を放つ剣を地面に思いっ切り突き刺す。
放たれるのはチノの“とっておき”だ。

「ぐおおおおおおおおおお!?」

この戦闘で初めて苦悶と驚きの声がのび太の口から飛び出した。
無理もない事だ、何の予兆も無く唐突に足元から突き出た巨大な塊が当たったのだから。
のび太を襲った塊の正体は氷。
突如出現した巨大な氷塊がのび太を直撃、更には四方八方へ剣のような突起を生み出した。
咄嗟に両腕を交差させ防御したが、防ぎ切れなかった箇所がじくじくと痛む。

一番下に見ていた相手からの予想外の攻撃とダメージ。
それはつまり、のび太であっても隙を晒す羽目になったということ。

「二人とも今です!」

チノの言葉が言い終わるより早くに斬り掛かる二人の剣士。
まさかチノがこんな力を秘めていたのは彼らにも驚きだが、それらは後回し。
千載一遇の好機を逃すような、仲間が作り出した勝機を捨てる愚行は犯せない。
ロゼと絶狼、今度こそ二人の剣がのび太を討つ時が来た。


898 : Realize ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:36:25 0GjTuVqA0
「それがどうした」

が、現実は甘くない。
野比のび太という復讐鬼は、とことん常識外れの怪物だった。

「俺は…スーパーのびー太だあああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」」

氷塊が砕け、地面が捲れ、空気が悲鳴を上げる。
のび太の全身から放たれる、圧倒的なエネルギーが周囲一帯を薙ぎ払う。
放送前に一戦交えた魔女、ルナが放ったセルフバーストに似た攻撃方法だ。
違いはルナが魔力を放出したのに対し、のび太は気を放出させた事。
どちらも強大なエネルギーを内包しているという点は同じである。

「きゃああああああああっ!?」

気の放出を食らった事で近くにいたロゼと絶狼のみならず、少し離れた位置にいたチノまでもが吹き飛ばされた。
鎧を装着した零ですら地面から足が離れたのだ、三人の中で一番小柄なチノに踏ん張れる筈が無い。
風に飛ばされた枯れ葉のようにもみくちゃにされた挙句、運悪く後方にどっしりと鎮座する大岩に背中から激突した。

「チノ…!!」

ロゼも同じように大岩へと激突しかけるが、間一髪で蹴り付けると反動を利用し強引に着地。
足を襲う痺れるような痛みに構わずチノへ駆け寄った。
目を閉じ身動ぎもしない姿に一瞬焦るも、小さく胸を上下させており気を失っているだけらしい。
だが安堵するにはまだ早い。

「アタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ!!」

いち早く体勢を立て直した絶狼の双剣と、追撃を仕掛けたのび太の拳がぶつかり合う。
ガントレット諸共拳を叩っ斬らんとする絶狼、双剣も鎧も菓子のように砕き生身へ拳を到達せんとするのび太。
両者譲らぬ拳と双剣の激しさを増す真っ向勝負、やがて互いに決めの一手を繰り出す。
絶狼の鎧を叩く右拳、ソウルメタルの鎧であっても殺し切れぬ痛みと衝撃に殴り飛ばされた。
それはのび太も同じであった。胸を走る赤の一本線、少し遅れて地面に血の雨が降り注ぐ。


899 : Realize ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:37:14 0GjTuVqA0
(そろそろヤバいか…!)

鎧を召喚してから大分時間を消費している。
99.9秒という制限時間を過ぎる前に解除しなければ、待ち受けるのは心滅獣身。

「零!こっちに来て!」

自分を呼ぶ声へ瞬時に応え、ロゼの元へと大きく跳ぶ。
腕に抱かれたチノの姿にまさかと悪い予感をしかけるが、察したロゼから気絶しただけと言われた。
敵はまだ健在、こっちは一人が気を失っている。
ここからどう動くか、ロゼは既に答えを出していた。

デイパックに手を突っ込み、目当ての物を引っ張り出す。

「は!?」
「なにっ」

のび太だけでなく味方である零までもが素っ頓狂な声を出した。
それもその筈、ロゼが出したのは二階建ての建造物くらいの大きさの物体である。
大きさや重量に関係無く収納可能な構造のデイパックと言えど、まさかこれ程巨大な物が入っていたとは思わないだろう。
おまけにこの物体、何とも奇妙なデザインをしており用途が不明。
いや、よく見るとロケットに見えなくもない。

「乗って!」

チノを抱えたロゼが真ん中の板らしき部分に飛び乗り、呆気に取られている零へ叫んだ。
切羽詰まった声に我に返った。
どうやら乗り物らしい物体を前に呆けてしまったがそんな場合では無いのだ。
鎧を解除した零が自分の隣に飛び乗るのを確認すると、ロケット(仮)を急発進させる。
どこを見ても操縦桿は見当たらないが、説明書によると乗っている人間の意思で動くとのこと。
何から何までおかしな乗り物だが今はそんなのどうだっていい。

「ぬう…!」

スラスターらしき箇所から猛烈な炎が発射され、逃亡を阻止しようとしたのび太は思わず足を止める。
その僅かな隙でロケット(仮)はあっという間に飛び去って行った。


900 : Realize ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:38:01 0GjTuVqA0
(追いかけるか…?)

タケコプターなどと言うゴミ野郎のひみつ道具に頼らずとも、今の自分は空を飛べる。
暫し考えた後、やはり止めにした。
想定したよりもこの身に負わされた傷は大きい。
分かっていた事だが、超人類となった自分でも苦戦するような強者がゴロゴロいる。
未だ一人も殺せていない自身への不甲斐なさはあれど、苛立ちに身を任せて動ても優勝への道は遠のくだけ。
理解しているからこそ、こんな序盤で無理は禁物。

「…俺はまだ死ねん。貴様を地獄に叩き落とすその時までは!」

自分を騙し、裏切り、切り捨てたドラえもんへの復讐心。
どれだけ冷静に努めようとも、己を焦がす憎しみだけは無くなりそうもなかった。


【C-3/一日目/深夜】

【野比のび太@超人類】
[状態]:全身に火傷(中)、上半身に細かい切り傷、胸部に裂傷(中)、疲労(大)
[装備]:ホーリー・ナックル@Fate/Grand Order
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2
[思考]
基本方針:優勝して、あの裏切り者を必ず殺す
1:あの娘とはいずれ雌雄を決する事になろう
2:あの炎は、一体何だ?
3:やはり手強い連中が多いな
[備考]
※参戦時期は第4話、スーパーのびー太になった直後


◆◆◆


「ごめんなさい零、あの男を放置して逃げて…」
「謝んなくても良いよロゼちゃん。今はチノちゃんのが大事だしさ」

申し訳なさそうに頭を下げるロゼを窘め、寝かされた少女を見る。
気を失っただけで命は繋がっていても、浮かべる顔はどこか苦しそうだ。
心配気に頬を撫でるロゼの気持ちは零にも分かった。

「早めにどこかに降りて、チノを休ませないと」

ロゼの言葉に異論は無い。
チノが心配なのもあるし、何よりこんな馬鹿デカい物で飛行し続けるのはよろしくない。
徒歩よりも上等な移動手段があるのは良いが、夜でも目立つコレでは今この瞬間にも地上から撃たれそうだ。

だが他にも理由があるのか、少々気まずそうな顔をしてロゼが言う。

「それにこの乗り物、10分経ったら動かなくなるらしい。だから急がないと墜落する」
「……マジで?」


901 : Realize ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:38:40 0GjTuVqA0
【C-3(上空)/一日目/深夜】

【閃刀姫-ロゼ@遊戯王OCG】
[状態]:疲労(中)、両腕と片足に若干の痺れ、ロケットに搭乗中
[装備]:閃刀姫-ロゼの剣@遊戯王OCG、チームみかづき荘のロケット@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜1
[思考・状況]
基本方針:檀黎斗やハ・デスを斬り、大切な人(レイ)の待つ平和な日常に帰る
1:今はチノを休ませられる場所へ降りないと
2:チノや涼邑零と協力する
3:レイを見つけて守る
[備考]
※遊戯王カードについての知識はありません。

【涼邑零@牙狼-GARO-シリーズ】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、搭乗中
[装備]:涼邑零の魔戒剣@牙狼-GARO-
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:守りし者として人々を守る。檀黎斗達も倒す
1:墜落ってマジかよ
2:ロゼちゃんとチノちゃんを守りつつ、二人の友達を探す
3:他の参加者に支給された可能性があるシルヴァを探す
4:鋼牙を探して共闘する。あいつなら大丈夫だろ
5:あの黒い鎧、ホラー喰いの魔戒騎士か?
[備考]
※参戦時期は少なくとも牙狼-GARO- 〜MAKAISENKI〜終了後。

【香風智乃@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、悲しみと決意、搭乗中、気絶中
[装備]: チノ(せんし)の剣@きららファンタジア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:ハ・デスや檀黎斗達を倒して平和な日常に――ココアさんのいる場所に帰りたいです
0:……
1:ロゼさんや零さんに協力します
2:ココアさんやみんなを探したいです
3:ティッピーはここにはいないんでしょうか……?
4:マヤさん……
5:どうしてココアさんの名前が二つあったんでしょう……?
[備考]

【ホーリー・ナックル@Fate/Grand Order】
マルタ(水着)の絆礼装。
金の装飾が施された打撃用のガントレット。

【チームみかづき荘のロケット@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
ファイナルシーズンで登場した乗り物。
チームみかづき荘の抱えるそれぞれの絶望に、ありったけの希望を込めた5人のコネクトにより生まれた。
クロスボウ、ハルバード、鉄扇、ハンマー、盾といったそれぞれの固有武器が合体したような外見をしている。
本ロワ独自の制限として一度飛び立つと10分経過で強制的に停止、再起動には3時間のインターバルが必要。


902 : ◆ytUSxp038U :2022/08/10(水) 13:39:13 0GjTuVqA0
投下終了です。


903 : ◆QUsdteUiKY :2022/08/11(木) 23:15:18 jOUSqBn60
予約分にコッコロを追加して投下します


904 : DIVE to DEEP ―青い季節の罪深き夜に― ◆QUsdteUiKY :2022/08/11(木) 23:21:01 jOUSqBn60
香風智乃と条河麻耶と奈津恵。
チノとマヤとメグ。
三人の頭文字をとって、チマメ隊。

彼女達は仲良しな3人組で、いつだって一緒だった。
ずっと一緒だと信じていた。
どんなことがあっても、変わってく季節の中でも――――。

「マヤちゃん……?」

ずっと一緒が良かった。
この殺し合いみたいなゲームでもみんな同じ気持ちで、みんなを大事にしたかった。

今は離ればなれだけど、きっといつかまた会えるって。みんな大好きなラビットハウスにちゃんと戻ってきて、いつもみたいに仲良く遊んで――――。

「嘘、だよね……?」

だってチマメ隊は仲良しだから。昨日もみんなに会えて、そんな日常がずっと続いて……。仲良しだから会いたい時に会えるはずだと思っていた。

それなのに運命は残酷にも、マヤの死を突き付けた。
大切な友達の命が槍の一振りで刈り取られる様子を、メグは目を見開いて眺めていた。

信じられない。マヤがあんなに呆気なく死ぬなんて、チマメ隊がみんなバラバラになるなんて――――有り得ない。

その後も色々なことが起こっていたが、メグの精神状態はそれどころじゃなかった。

(メグ……?)

メグの様子が明らかにおかしいことにいち早く気付いたのは、意外にもマサツグだった。
彼はこれまで孤児たちの面倒を見てきた。当然洞察力はあるし、なにより――――。

(俺はあの時、こんな顔をしていたのだろうか?)

マサツグは身内を失う悲しみや寂しさを知っている。
死別したわけじゃないから、メグほどの絶望感を味わったわけじゃない。――だがそれでもメグの感情はなんとなく理解出来る。

あの時は全くもってどうでもいい存在たちだなんて自分の心に嘘をついた。マサツグはひねくれ者だから。
だが本当に大事な家族だからこそ、孤児たちのことを考えて里親の元に送り出したのだ。

それにマサツグは昔、親に見捨てられたこともある。
本当にロクでもない親で――だからこそマサツグはそれを反面教師としている節もある。

(今のメグは何を感じているのだろうか?)

孤児たちに出会うまで、マサツグは無感動な自分を育て上げてきた。
孤児たちを里親へ送り出す時も出来る限りそういう振る舞いを心掛けてきた。

彼女たちが戻って来ないと知った時――マサツグは本当に寂しそうな表情をしていたのだが、彼自身そんなことに気付いていない。

マサツグはひねくれている。
孤児たちに出会ったことで真っ直ぐと素直な面も出てきたが、過去の家庭環境があまりにも悪すぎた。
だから昔のマサツグならメグの気持ちなんて考えようともしなかっただろうが――今の彼は違う。

それに今のメグを見て、ようやくあの時の自分の感情が理解出来た気がする。今のメグは虚空を眺めて――見るに堪えない表情をしている。

(メグの有り様はわかった。……だが俺に何が出来る?)

マサツグは孤児院の院長をしていたが、同時にこういうことには不器用な人間でもある。
これがマサツグじゃなくてリュシアなら、素直に優しい言葉を掛けてあげたり励ましたり、メグを気遣った行動を取っていたに違いない。

だがマサツグはそういうことを態度に出すという行為に慣れていないし、そもそも上手い言葉も思い浮かばない。

『ご主人様が私たちのことを凄く考えていてくれているのよくわかってます。態度には出されませんが……。
毎日、私たちのことで戸惑ったりお困りになってますよね。口調はきつくても全部、私たちを思ってのことだというのが伝わってくるんです』


905 : DIVE to DEEP ―青い季節の罪深き夜に― ◆QUsdteUiKY :2022/08/11(木) 23:24:12 jOUSqBn60

――――これはかつてリュシアがマサツグに話した言葉だ。
マサツグは本当に不器用で、ひねくれてる男だ。

だがリュシアという少女はマサツグの根底にある優しさを知っている。マサツグという男を、おそらく誰よりも理解している。
もちろんマサツグの不器用な優しさを知っているのは、リュシアだけじゃない。エリンやシーだって知っている。

彼女達ならばマサツグでもなんとか出来ただろう。
だがメグはマサツグのことをあまり知らない。
――出会ったばかりとはいえ、マサツグと共に戦ったクウカ以上にメグは何も知らない。

そしてマサツグもメグのことをあまり知らない。当然、いい言葉なんて思いつくことも無く。
ならばクウカがメグをフォローしてやればいいのだが――――クウカはクウカで放送を見て動揺している。

メグほどではないが、他人に気を回す余裕なんて今の彼女にはないだろう。

――――つまりマサツグだけが今この場で、未だ冷静を保っている。
もちろんあの放送を悪趣味だと思う気持ちはマサツグも同じだ。

だが皮肉にも無感動な自分を育て上げてきた結果、何の接点もない他人が死んでも他の二人ほど大袈裟に動揺することはない。
神を自称するゲームマスターの話を聞きつつ、メグの様子を注意深く観察する。

見守ることしか今のマサツグには出来ない。
守るスキルが発動するのは物理的な現象のみ。

人の心を守れるのは――――スキルなんかじゃなくて、マサツグ自身の心だ。
だが残念ながら今のマサツグにはメグの心を守ることなんて無理な話でもある。

もしもある程度メグと交流して、今より信用を得た後だったらまた何か違ったかもしれない。
だがそんな「もしも」の話を考えても意味がない。無意味な空想をする趣味なんてマサツグにはない。

とりあえずカードゲームがルール確認が必須だということを頭の片隅にしっかりと記憶し、モニターで起こっているゲームマスターと鎧武者の戦いに注目する。

現段階ではメグに掛けられる言葉が思い浮かばない。ならばメグやクウカを守るためにも、この放送を自分がしっかりと見ておく必要がある。
そしてだからこそマサツグは見逃さなかった。

(……なんだこれは?いったい何が起こった?)

ゲームマスターが変身したと思ったら、いつの間にか鎧武者の変身が解除されて元の青年に戻っていた。

意味不明な現象だ。――彼が何らかの攻撃を受けたことはわかるが、まるで過程を飛ばして鎧武者の敗北という結果だけを見せられたかのような感覚。

(本当にあいつが神ならば、その神性は時間か……?)

自称・神のゲームマスター。
彼が自称ではなく本当に神である可能性をマサツグは考える。

自分が面倒を見ていた孤児の一人、シーは水の女神だ。そういう存在が身近に居たから神という存在に今更、驚く気もない。

それに女神のシーをも凌駕する死神――モルテッシモと対峙したことだってある。
シーすらも一瞬で殺しかけた圧倒的な存在だ。マサツグが原初のスキル――原典に届いていなければ、間違いなく全滅していた。

(やれやれ。冥界の魔王の次は時を支配する神か。厄介な存在ばかりだな)

この決闘から脱出するにはおそらく黒幕達の打倒が必須となる。
ハ・デスだけならまだしも、自称・神のゲームマスターまで倒すというのはあまりにも難易度が高い。


906 : DIVE to DEEP ―青い季節の罪深き夜に― ◆QUsdteUiKY :2022/08/11(木) 23:24:48 jOUSqBn60

鎧武者の戦士は間違いなく強かった。 まず彼には首輪がない。この時点で他の参加者とは一線を画す存在だということがわかる。
そしてゲームマスターの場所を突き止め、単独で挑んだ。つまりこの短時間で首輪を外し、自称・神の計画を阻止しようとしたということになる。

実際は葛葉紘汰という存在が本当にあまりにも異質な存在――――始まりの男だからこそ檀黎斗の魔の手から逃れ、その結果として首輪を嵌められていないのだがそんなことマサツグが知る由もない。

黎斗の発言で葛葉紘汰が神格ということまでは気付けたが、神格にも差がある。
シーがモルテッシモ相手に何も出来なかったのが最たる例だ。

それもあってマサツグは葛葉紘汰もプレイヤーとして参加させられて、首輪を解除した後にあそこへ辿り着いたという結論に至った。
鎧武に変身しても返り討ちにあったというのもまた彼がプレイヤーであったという可能性に説得を持たせる。

皮肉な話だが葛葉紘汰の惨敗は檀黎斗の圧倒的な強さを引き立たせた。そしてあれほど強い男なら他の神だろうが自身のゲームに放り込んでも何ら不思議じゃない。

『ふざ、けんな!力なんて無くても、変身出来なくても―――俺は最後まで戦う!!』

だが葛葉紘汰はそんな圧倒的な強敵を前にしても諦めない。
彼が変身するために必要なベルトは破損して、もう使えない。どう見ても勝ち目のない戦だ。

(変身を強制解除されるほどの攻撃を受けてただで済むはずがない。それでも引く気がないというのか……?)

勝負の決着は着いたようなものだ。
そんなことは誰から見ても明らかであり、当然マサツグは彼の行動に疑問を覚える。

変身を解除されたなら、撤退するという手段もあるだろう。首輪がないのなら、首輪爆破に恐れる必要もない。逃げられる確率は低いかもしれないが、この状況で面と向かって戦うよりはマシだ。

だが紘汰の瞳に宿った覚悟の炎は途絶える。ことなく――――彼は叫んだ。


907 : DIVE to DEEP ―青い季節の罪深き夜に― ◆QUsdteUiKY :2022/08/11(木) 23:26:27 jOUSqBn60

『それが俺たち―――仮面ライダーだからだ!』

――仮面ライダー。
その言葉の意味をマサツグは知らない。
だがあの男に何か引けない理由があるということはわかった。

(仮面ライダー……か)

男の在り方や言葉に誇りや信念を持っている点を考えると、それは勇者や英雄と同じような存在なのだろう。
それもミヤモトのように浮かれて調子に乗ってるだけではない。

何故なら葛葉紘汰――仮面ライダー鎧武と呼ばれた彼は、変身が解除されても『仮面ライダー』として戦おうとしている。

(ふ……)

とんでもないバカにマサツグは思わず笑ってしまう。
あの男はバカだ。どう見ても負け戦だとわかりきっている状況で未だに闘志を燃やし続ける――――気高き馬鹿だ。

マサツグには正義感なんてあまりない。
家族や孤児院など守りたいものは守るが、国を救ってくれと言われたら迷わずNOを突き付けるような男だ。
それに彼には仮面ライダーの在り方なんて、あまりわからない。そもそも仮面ライダーなんて存在を全く知らないのだから、当然だ。

だが――――大切なものを守ろうとする気持ちは理解出来る。
だから葛葉紘汰の行動は馬鹿だが、愚か者だとは思わなかった。
あの男にも何か守りたいものがあって、そのために戦っているということはマサツグにも伝わっている。

だからマサツグは紘汰の奮闘を――仮面ライダー鎧武の犠牲を無駄にはせず、その一挙一動を見守る。

ゲームマスターを倒すためのヒントや攻撃手段が多少はわかるかもしれないから。実際、紘汰が乱入していなければ『時間』を司る神だという予測すら出来なかった。

『これ以上の茶番は時間の無駄だ』

――紘汰の体が漆黒の剣に貫かれる。
漆黒の騎士による無情な一撃。神格を失っていた紘汰はそれだけで命を奪い取られる。

(茶番か。たしかにその通りだ)

茶番――――その一言で紘汰の奮闘は片付けられる。そこについてはマサツグも認めざるを得ない事実だ。
ゲームマスターに打撃を与えたわけでもないし、誰かを救えたわけでもない。
これを茶番と言わずして、なんと言う。

だが――――。

(だがこの茶番がなければゲームマスターの能力の片鱗を知ることも出来なかっただろう……)

紘汰の死は決して無駄じゃない。
彼のおかげでわかったこともある。そして主催者同士の連携がどことなく拙そうだということも知ることが出来た。
紘汰を排除する時の主催陣営の行動――――アレは明らかに連携が取れていないように見える。

ゲームマスターの態度も傲慢で、とてもじゃないが他人と協力出来るようなタイプには見えない。
これはもしかしたら、ゲームを攻略する上で重要な情報になるかもしれない。

メグやクウカと共に脱出するためにも、情報は多いに越したことはないのでマサツグは今回得た情報を頭に叩き込む。

『戒斗……みんな……。俺の代わりにこいつを、檀黎斗を……止めてくれ……』

かいと。
どんな人物かはわからないが、葛葉紘汰の口から名前が出たということは信用出来る人間なのだろう。そして名指しで後を託せるくらいに、強い存在だとマサツグは推測した。

――仮面ライダーという存在についてもその『かいと』が詳しく知っていることだろう。

そしてみんなという言葉が仮面ライダー以外のプレイヤーのことも指しているのならば――――。


908 : DIVE to DEEP ―青い季節の罪深き夜に― ◆QUsdteUiKY :2022/08/11(木) 23:27:38 jOUSqBn60

(やれやれ……)

葛葉紘汰。彼はマサツグにとって何も知らない、心底どうでもいい人間のはず。
――だが彼の奮闘を見て、何も思わなかったわけじゃない。
なんならマヤの死を見ても――冷静さこそ保てたが、何も無関心というわけではないのだ。

だからといってマサツグの心に一気に火がつく――なんてこともない。
所詮、他人は他人だ。言葉を交わしたことすらない、モニター越しの赤の他人だ。

――――だがマサツグは紘汰に後を託されてしまった。
たかだか赤の他人。だが大切なものを守りたいという気持ちはわかる。
それがマサツグにとっては家族や孤児院で、紘汰にとっては違うというだけだ。

そして自分をこんなゲームに巻き込んだ愚か者共を見逃すつもりもない。
別にマサツグ自身、そんな期待をしているわけじゃないはずだが――マサツグがいなければ、もしも孤児達が帰ってきた時に帰る場所がないだろう。
ならばマサツグと紘汰の目指すべき方針は一致する。

(ほんとに困難な道になりそうだな……)

ゲームマスター――檀黎斗を倒す。
決闘から脱出するために必須事項だと思っていたことに、葛葉紘汰に託された想いが重なっただけ。それだけの話だ。

(でも勘違いするな。別に俺の意向が変わったわけじゃない。……ついでにお前の目標も達成してやるだけだ)

ナオミ・マサツグという人間は、ほんとに不器用な男だ。

それ以降も悪趣味な放送は続いた。
茶髪の少女が殺されてクウカの表情が曇る。
だが彼女の心を守る術は今のマサツグにはなく――そして放送が終わった。


909 : DIVE to DEEP ―青い季節の罪深き夜に― ◆QUsdteUiKY :2022/08/11(木) 23:28:42 jOUSqBn60

𓃺

「マサツグさん。マヤちゃん、次はどこに行ったのかな?」

メグがマサツグに問い掛ける。

(マヤ?さっきの放送で殺されたガキのことか?あれからメグの様子が急変したが……あの光景を見てないとでも言いたいのか?)

どこに行った――なんて言われても、あの世だろうとしか言いようがない。
そんなことはさっきの放送を見ていたメグも知っているはずで、マサツグには彼女が何を質問しているのかよくわからなかった。

「メグはマヤがどこかに移動したと思っているのか?」
「うん。ゲームなら負けても他の場所で復活するかな〜って」
「それはゲームだけの話だ。この世界はゲームではない」

厳しい言葉だが――それだけは理解してもらわなければ困る。

マサツグはメグとクウカを守ってやると決めた。ならばまずはこの決闘がゲームなどではなく、殺し合いだと理解してもらわなければない。

ゲームとして参加するのと殺し合いとして生き残ることに専念するのでは、考え方も必然的に変わってくる。
ゲームの世界だと思ってリスポーン前提で考えるなんて、もってのほかだ。

「でもゲームマスターさんはゲームって言ってたよ〜?」
「都合のいい言葉を使っているだけだろう。これの本質はどう見ても殺し合いだ」

メグの言葉をマサツグはキッパリと否定する。
檀黎斗はゲーム感覚で開催したのかもしれないが、これは現実世界で起きている殺し合いだ。
一度死んだ命は帰ってこないし、なによりマヤの凄惨な死体を見たら誰だってゲームなんかじゃないとわかるはずだろう。

『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!お兄ちゃん、お姉ちゃん、助けて!!』

――それにマサツグはマヤ以外にも死体を見ている。
生きているプレイヤーが殺された瞬間をこの目で見た。
そしてキチガイ染みた狂人とも戦った。支給された刀で受け止めた竹刀の、あの重み――あれは間違いなくゲームのものなんかではない。

(マヤが殺されて現実逃避でもしているのか……?)

頑なに現実を認めようとしないメグを見て、マサツグは彼女が現実逃避を始めていると推測した。

ゲームならば死者は蘇り、何度でもコンテニュー出来る。ノーコンテニューでクリアしなければならないシビアな現実とは大違いだ。
現実逃避をするために『ゲーム』という言葉はあまりにも便利過ぎた。


910 : DIVE to DEEP ―青い季節の罪深き夜に― ◆QUsdteUiKY :2022/08/11(木) 23:29:51 jOUSqBn60

「ク、クウカもマヤちゃんが復活することはないと思います……」

クウカもマサツグの言葉を肯定する。
妄想癖のある彼女はメグが自分に都合のいい妄想をして、その世界へ逃げようとしていることを察した。

「えっと、その……メグちゃんの気持ちもわかります。でも死んだ人が生き返ることはないのです……」

大切な仲間を失ったのはクウカも同じで――メグの気持ちは痛いほどわかる。
メグがチマメ隊のマヤを失ったように、クウカもまた不思議な絆で結ばれた白翼の団員を一人失っている。

もう生きているアユミに会うことは二度と出来ない。
それはすごく辛いことで、クウカの心に重くのしかかる。――だが仲間の死を現実逃避の理由にするつもりはない。

流石のクウカもゲームマスターの放送には恐怖した。アユミの死はとてつもなく悲しい。
名簿にヴァイスフリューゲルの団員が全員揃っていることに気付くまでは――ずっと俯いていた。

放送終了後に名簿を確認した時、一番衝撃を受けたのはクウカだ。
メグは名簿確認どころではないというのもあるが――まさかヴァイスフリューゲルが全員集っているとは思わなかった。

もう全員が揃うことはない。アユミが死んでしまったのだから。
アクダイカンを倒し、オーエド町を救った時――白翼の絆の真価が発揮された。
アユミはもう帰ってこないが、モニカ、ユキ、ニノンは失いたくない。

「だ、だから……クウカ達に出来るのは他の人を守ることだけだと思います」

メグの友人――チノ、ココア、リゼも名簿に記されていた。
マヤはもう死んでしまったが、彼女達を守ることならまだ出来る。

「その通りだ。ゲームという言葉に惑わされるな、これは現実だぞ」

メグの目を覚ますためにも、現実を突き付ける。
曲がりなりにも戦場を駆け抜けてきたマサツグとクウカは殺し合いだということを理解するまで時間が掛からなかった。


911 : DIVE to DEEP ―青い季節の罪深き夜に― ◆QUsdteUiKY :2022/08/11(木) 23:30:56 jOUSqBn60
――だがメグは違う。普通の日常を過ごして、こういう荒事に慣れていないからこそ現実逃避がまかり通ってしまう。

マヤさえ死んでいなければ現実を見据えて行動出来ていたのだろうが――あんな凄惨な死体を見てしまったのだ。どうしてもこの殺し合いをゲームだと思い込みたい。

メグにとってマヤはそれだけ大切な存在だ。
クウカだってアユミのことは同じくらい大切に思っているが、メグとは住んでいる世界が違うから奮起出来た。

白翼の絆は――決して折れない。
そしてチマメ隊の絆もまた、決して壊れない。

だからクウカはヴァイスフリューゲルの団員として仲間の死を乗り越えてでも、みんなを守ろうと奮起した。
だからメグは平和な日常を守るために――チマメ隊の絆を途切れさせたくなくて、現実逃避を選んだ。

「じゃあ……マヤちゃんはほんとに死んじゃったの……?」

――信じたくない。
大切な友達があんなわけもわからずに殺されたなんて、信じたくない。

「それともみんなでドッキリをしかけてるのかな?」

チマメ隊は永遠だから。
この絆は誰にも裂けないから。

『勿論、最後の一人まで生き残ることでも君たちは元の世界へ帰ることができる。この方法だと願いを叶え、ゲームオーバーになった参加者を生き返らせることも可能だ。
 最高神である私に挑むか、それとも最後の一人になるまで勝ち残り願いを叶えるかは君たち次第だァ……!』

――ゲームマスターの言葉を思い出す。
ゲームオーバーになった参加者を生き返らせる。それはマヤを蘇生出来るという意味でもある。

しかし名簿にはチノやココア、リゼも載っている。メグとしては絶対に失いたくない日常だ。

――だがもしこれがほんとにゲームだったら?
それにゲームオーバーになった参加者の死者蘇生が一人だとは誰も言ってない。

「――そっか。私がこのゲームで優勝したらいいんだ……!」

藁にもすがる思いでメグは現実逃避の沼に沈んでゆく。
深く、深く――深淵へ潜っていく。


912 : DIVE to DEEP ―青い季節の罪深き夜に― ◆QUsdteUiKY :2022/08/11(木) 23:32:51 jOUSqBn60

『DIVE to DEEP』

メグがデイパックから取り出したのは、不気味な形状をした丸い玉――眼魂だ。
まるで悪者が使うようなソレは禍々しくもあまり、どう見ても危険が伴いそうな代物。

本来の使い手である深海マコトは一切の悪影響なく使用していたが――上手く使いこなさなければ恐ろしい力を持つ眼魂という側面もある。
何らかの悪影響を及ぼす可能性については付属の説明書にも記載され、だからメグは喧嘩を止める際にもディープスペクターに変身することはなかった。

だが今は状況が違う。
メグの腰にはベルトが装着され、紫炎のオーラが纏わりつく。それと同時に現れたパーカーにマサツグとクウカは息を呑み、戦闘態勢に入る。

『ギロットミロー!ギロットミロー!』

ふざけた電子音から繰り出される圧倒的な存在感にマサツグは苦笑せざるを得なかった。
そして紫炎で誰もがメグの姿を視認出来ない中――彼女はパーカーと向き合う。

「……」

パーカーは何も話さない。
彼は言葉を持たないが、メグを試すかのように無言で見つめている。
だからメグはパーカーを真っ直ぐと見て――――。

「みんなのために――私に力を貸してくれないかな……?」

自分のためじゃなくて、みんなのために。
誰一人欠けることなくあの日常に。木組みの街へ帰るためにメグは優勝を誓うしか道がない

かつて深海マコトは友を守るためにこの眼魂を使い、ディープスペクターに変身した。
皆を守る深海マコトと、血の道を歩んでも日常を取り戻そうとするメグ。

その在り方は正反対だが――ディープスペクターへ初変身する理由は奇しくも一致していた。

そしてメグは深淵へと至る――――。


913 : DIVE to DEEP ―青い季節の罪深き夜に― ◆QUsdteUiKY :2022/08/11(木) 23:34:29 jOUSqBn60

『ゲンカイガン! ディープスペクター! ゲットゴー!覚悟!ギ・ザ・ギ・ザ!ゴースト!』

「……やれやれ。それがお前の答えか、メグ」

マサツグが日輪刀を構え、ディープスペクターへ変身したメグと対峙する。
仮面で顔が隠されているが――彼女は今、どんな表情をしているのだろうか?

「うん。マサツグさんや他のプレイヤーさん達のことも後で生き返らせるから、だから……」
「ふっ。まさか自分が優勝して願えば全員蘇生出来るとでも思っているのか」

軽口こそ叩いているが、こうして対峙しているだけで冷や汗が垂れる。
歪な変身音といいあの形状といい、アレは明らかに危険なものだとマサツグは察した。

それに相手はメグとはいえ、仮面の戦士だ。ゲームマスターや葛葉紘汰の戦闘を見て、変身することで途轍もない力を発揮することがわかった。

(とりあえずあの怪しい変身道具を破壊して強制解除を狙いたいところだが――手加減などしたら逆に殺されるか)

マサツグの狙いはメグの無力化だ。今ならまだ引き返せる可能性はある。
――というよりもディープスペクターの眼魂が何らかの悪影響を及ぼしているとマサツグは推測している。

だからその破壊が第一優先なのだが――手加減してなんとかなる相手だとも思えない。クウカの戦闘力は未知数だが、あまり期待しない方が良いだろう。

「最後の一人になったらどんな願いも叶えるって、あの人は言ってたよ」

どんな願いも叶えるという甘い蜜。
普段のメグなら興味を示さなかっただろうが、それでまたみんなで笑い合えるなら――。

「チマメ隊は永遠だから……。この絆は誰にも裂かせないよー!」

メグが駆け出し、拳を振るう。

「まったく、大した力だ……!」

マサツグが日輪刀を盾にディープスペクターの拳を受け止める。
少女とは思えない重い一撃。マサツグは知らないことだが、メグが変身した仮面ライダーはただのスペクターではなく、その強化形態であるディープスペクターなのだから当然だ。

「――お前は自分の友人を殺したやつの言葉を信じるのか?」
「どっ、どういうことかな……!?」

マサツグの言葉にメグが動揺し、ディープスペクターの力が僅かに緩む。
その一瞬を逃さず盾にしていた剣でディープスペクターの拳を弾くことで均衡状態を崩す。

「動揺したということは、実は気付いているのではないか?」

直接的にマヤを惨殺したのはモニターに映されていた金髪の男だ。
だが全ての元凶であり、マヤが命を奪われるキッカケを作ったのは――。

「メグ。お前はマヤを拉致して殺し合いに巻き込んだ檀黎斗を信じるのか?」
「そっ、それは……」

こんなゲームがなければマヤが死ぬことも無い――そんなこと、とっくに気付いていた。

そもそもゲームという言葉で現実逃避をしようとしているが、あの生々しい映像を見て「これはゲームで誰も死なない」なんて本気で思えるはずがない。

『君たち決闘者の才能は素晴らしいが―――このゲームのジャンルはカードゲームじゃない。互いの命を懸けた決闘―――デスゲーム!それこそがこのゲームの本質だァ!』

そもそもゲームマスター檀黎斗がこう口にしていたのだ。殺し合いなんて本当はメグもわかってる。
それでも――だからといってマヤの死を認められるかどうかは、別問題だ。

もしもここにいるのがもっと面倒見の良い人間だったらメグを上手いこと立ち直らせたかもしれない。

――だがマサツグは不器用で、クウカも同じ痛みを味わったからこそどんな言葉を掛けたらいいのかわからなくて。
二人はメグを物理的に守ることは出来ても、その心まで守る術は持たない。

「ク、クウカはメグちゃんのこと優しい子だと思ってます。喧嘩で傷付いたクウカが今もピンピンしてるのは、メグちゃんのおかげなのです」

――ズキン。
クウカの言葉がメグの心に突き刺さる。
優しい子。それが本来のメグの姿だ。
たとえ親友が死んでも、誰かを殺すようなことは絶対にしない。

殺し合いという異常事態やマヤの悲惨な末路を見てしまったせいで迷走してしまったが――本来のメグは誰かを傷付けて、殺そうとしたりはしない。

「それに……メグちゃんが他の人たちを殺してマヤちゃんを生き返らせても、マヤちゃんは喜ばないと思います」


914 : DIVE to DEEP ―青い季節の罪深き夜に― ◆QUsdteUiKY :2022/08/11(木) 23:35:00 jOUSqBn60

𓃺

いきなり人がわけのわからない場所に連れてこられて、リーゼントの人が殺された。
私にとって当たり前だった楽しい日常が、いきなり壊される。
名簿には――何もなかった。チノやメグは大丈夫かな?
私たちは三人揃ってチマメ隊!今は不安だけど……三人揃えば、勇気が出てくるかもしれない。

それにチマメ隊で一番強いのは私だと思うんだ。
だからチノやメグを助けるためにデイパックを確認しなきゃ!

「なにこれ?不動遊星のデッキとデュエルディスク……?」

これって何かのカードゲームかな?説明書にはそんな名前が書いてあるけど、よくわからないなー……。
とりあえず腕に着けて使うらしいけど――。

「ボルト・ヘッジホッグを召喚!」

私がデュエルディスクにカードを出すと、ほんとにモンスターが出てきた!

「すごい!これならチノやメグを助けられそうだよ!」

私たちはずっと親友だ。
だからこんなところで死にたくない。
あの男の人が殺された時は「みんな死んじゃうのかな……」ってネガティブなこと考えてたけど――今の私には戦うための力がある!

「……」

そんな私をからかうように出てきたのは、骸骨のモンスター(ワイト)だった。
カタカタカタ――。
不気味に笑ってるけど、ひょろひょろで弱そうだ!

「ボルト・ヘッジホッグで攻撃!」

ボルト・ヘッジホッグに命令すると、骸骨の化け物をすぐに破壊出来た!
うん……これならみんなを助けられる!

「よし。これからよろしく、ボルト・ヘッジホッグ!」


915 : DIVE to DEEP ―青い季節の罪深き夜に― ◆QUsdteUiKY :2022/08/11(木) 23:35:45 jOUSqBn60

𓃺

ボルト・ヘッジホッグでワイトを破壊したマヤは嬉しそうに笑っていた。
彼女は元々、明るく元気な性格だ。最初は恐怖に支配されていたが、ボルト・ヘッジホッグによって徐々に調子を取り戻しつつある。

ちなみにボルト・ヘッジホッグの攻撃力はたったの800。本来ならば能動的に墓地へ送ったあとにシンクロ素材として活用するべきモンスターなのだが、マヤは何も知らない。

最初に出会ったモンスターがワイトだったから何の苦もなく倒せたが――それは相手が最弱クラスのNPCだったことが大きい。
それよりも強い相手に遭遇したら、当然ボルト・ヘッジホッグの方が破壊される。

「えっ……」

――ワイトを破壊したマヤの表情が一瞬で凍り付く。
この決闘場には絶望を希望に変える参加者もいれば、希望から絶望へ転落してしまう参加者もいる。
残念ながらマヤは後者だった。

「そ、そんな……」

いきなり金髪の男が来たと思ったら、槍の一振りでボルト・ヘッジホッグが破壊された。
乗り越えたはずの恐怖に再び支配されそうになり、体が震える。

それでも――マヤは諦めなかった。
圧倒的な力に猛烈に震え、カードを持つ手が震える。
そんな彼女に勇気を与えたのはチマメ隊やココア達、友達の存在だ。

(生きてみんなで帰りたい……!)

だから最後まで抗い続けるつもりだった。
手札にはくず鉄のかかし、ジャンクシンクロン、ニトロシンクロン、エンジェル・リフト――どれも弱そうなカードばかりだ。

これが不動遊星ならばジャンクシンクロンを召喚し、その効果でボルト・ヘッジホッグを特殊召喚。二体のモンスターをチューニングし、ジャンクウォリアーをシンクロ召喚。
更にくず鉄のかかしをセットすることで相手の攻撃を防ぐ策も講じていただろう。

しかしロクにルールを把握出来ず、シンクロ召喚を知らないマヤにそんな発想は出来ない。
カードを新たにデッキからドローして、引き当てたこの手札で最も強そうなモンスターを召喚する。

「スピードウォーリアーを召喚! 攻撃!!」

スピードウォリアー。
バトルステップに自身の効果で攻撃力を倍に出来るモンスターだが、マヤはそんなこと知らない。
もっとも効果を発動して攻撃力1800になったところで結果は変わらないだろうが。

(頼むよ、神様!私は絶対に生きるんだ……!!)

少女の切実な願いは――――神によってへし折られた。
マヤは神様にお祈りをしたが、その神こそが目の前に存在するこの金髪の男である。

スピードウォリアーは呆気なく破壊され、手札のジャンクシンクロンを召喚する前に――上半身と下半身が分断された。

(そんな……)

僅かに残った意識。
霞む視界と思考回路で――マヤはぼんやりと自分の死を実感する。
どうしようもない致命傷だ。条河麻耶はここで死ぬ。
チマメ隊は――これで解散されてしまう。

(チノ……メグ……)

ずっと一緒のはずだった。
こんなことがなければ、チマメ隊は永久不滅のはずだった。

(また……三人で一緒に……)

勇気を持って殺し合いに抗い、日常へ帰ろうとした少女が目を覚ますことは二度となかった。


916 : DIVE to DEEP ―青い季節の罪深き夜に― ◆QUsdteUiKY :2022/08/11(木) 23:36:38 jOUSqBn60

𓃺

――――条河麻耶は最期まで殺し合いに抗い続けた。

彼女がどんなことを考えて金髪の男に立ち向かったのは――それは誰も知ることが出来ない。何故ならマヤはもう死んでしまったのだから。

だがメグが最後まで生き残って、マヤやみんなを生き返らせてもマヤが喜ぶことがないというのは、メグもわかってる。
内心ではわかってるけど目を逸らしていたことで――そこをクウカに射抜かれた。

別にクウカには何の悪気もない。
しかしクウカの言葉にメグの心はズキリと痛む。
現実とは残酷なもので――だから見えないフリをしていたのに。

「じゃあ私は、どうしたらいいのかな……」

ディープスペクターの変身を解除したメグが力なく項垂れる。ようやく多少は目が覚めたのだろう。

「……やれやれ。ようやく落ち着いたか」

落ち着きを取り戻したメグにマサツグは態度にこそ出さないが多少は喜び、クウカも安心して胸を撫で下ろす。
これにて一件落着――――。

『CLOCK UP』

――――みんながそう思っていた瞬間、緑の閃光が奇襲を仕掛ける。
残像しか目に見えないような圧倒的な速度。速さに特化した者やよっぽど動体視力が良いならともかく、素人がどうこう出来るような相手ではない。

マサツグ達が理解出来たのは、緑の何かが自分達を襲って来たということだけ。
まずはクウカが蹴り飛ばされる。緑の物体を視認した瞬間にスキルを使い、ヘイトを向けた結果だ。

何故ならソレの狙いは最初からメグだけ。他の二人は邪魔者でしかない。
邪魔なクウカを蹴り飛ばし、瞬く間にメグに接近。これで誰も邪魔出来る者は――――。


917 : DIVE to DEEP ―青い季節の罪深き夜に― ◆QUsdteUiKY :2022/08/11(木) 23:37:36 jOUSqBn60

「……ふん。最初からメグ目当てだったということか」

一人だけ居た。
クロックアップの速さに対抗する手段――それは守るスキルだ。

メグを守ろうとしたマサツグは緑の物体の手を日輪刀で弾く。緑の物体はメグの手を引っ張り、連れ去ろうとしていたのだ。
生身なら切り落とされていたはずの腕は落下する気配もなく、まるで装甲を叩いてるような感覚だ。

『CLOCK OVER』

そしてクロックアップが終わり――緑の戦士、キックホッパーが姿を現した。

「これはまずいですね……」

キックホッパーが周りを見回してひとり呟く。
クロックアップは連続で使用出来ない。そして相手はクロックアップに対応出来るほどの手練もいる上に三対一だ。

どう考えてもキックホッパー側が不利で、勝てる可能性もわからない。
メグ達のやり取りを遠目に見ていたこともあり、メグがディープスペクターに変身出来ることも把握している。

「仕方ありません。これを使うしかないようですね……!」

キックホッパーがカードを上に翳すと、黄色い煙幕が広がる。

――盗っ人の煙玉。
本来ならば装備魔法だが、今回のゲームではリアルファイトに適したカードにするためにただ煙幕を張るだけの効果と化している。
その名やイラスト通りのわかりやすい支給品だ。

そして周囲が見えないこの状況では流石のマサツグでもメグを守ることは出来ない。守るべき対象の姿を見失い、スキルが発動されない。

キックホッパーはメグの手を引っ張る――がどうやらそう簡単に連れ去られる気はないらしく、足に力を入れて踏ん張ることで抵抗された。

あまり手荒な真似はしたくないが――キックホッパーはメグの腹を軽く殴ると気絶させて肩に担ぎ、連れ去る。

「メグを連れ去って何をするつもりだ……?」

煙が晴れた時には、キックホッパーとメグの姿が消えていた。
マサツグは冷静で無感動な自分を装うが――。

「メグちゃん、マサツグさん……」

少しだけ寂しそうにも見える表情のマサツグをクウカが心配そうに眺める。
自分がそんな表情をしているだなんて、マサツグ本人は気付いていない。
ナオミ・マサツグは不器用な青年なのだから。


918 : DIVE to DEEP ―青い季節の罪深き夜に― ◆QUsdteUiKY :2022/08/11(木) 23:38:56 jOUSqBn60
𓃺

マサツグ達から逃げ去ったキックホッパーは、ひとまず変身を解除した。
その正体は白髪のエルフ耳の少女――コッコロだ。
他人の話し声が聞こえたコッコロは、息を潜めてマサツグ達の会話を聞いていた。

そこでメグが抱えている心の闇に気付き、彼女となら協力関係を望めると思ったのだ。

名簿は確認した。ユウキやペコリーヌの名前が無かったのは幸いだ。
キャルは――残念だが優勝するには殺す他ない。

主催陣営の言葉は普段のコッコロならば疑っていただろうが、今は藁にもすがる思いで信じるしかない。
コッコロの目的を叶えるには、願いを叶えるしかないのだから。

(……優勝するまでに願いを決めなければなりませんね)

キャルを殺してまで願いを叶えるのか――。

正直、それについても迷いはある。当然だがキャルは殺したくない相手だ。美食殿の仲間を傷付けないため孤独になる道を選んだのに、キャルを殺したら本末転倒でもある。

そもそも優勝を狙おうと決意したコッコロだが、まだまだ覚悟が甘い。そこら辺は先程のメグと似ているのかもしれない。

そんなコッコロがこんな強硬手段に出ても仲間を得ようとしたのは、オレイカルコスの結界の仕業だ。こんなものを支給されなければ心の闇が増幅されることなく、真っ当に檀黎斗を倒そうとしたかもしれない。

それとなんだかメグが他人には見えなかったというのもある。
失った居場所へ帰るために戦う――それがコッコロとメグの共通点だ。

ちなみにオレイカルコスの結界は持っているだけで心の闇を増幅させる。コッコロとしてはあまり気が進まないが――これを上手く利用することで心の闇を持つ者と手を組むことも可能かもしれない。


【D-4/一日目/深夜】
【直見真嗣@異世界で孤児院を開いたけど、なぜか誰一人巣立とうとしない件(漫画版)】
[状態]:健康、疲労(小)
[装備]:竈門炭治郎の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:ラスボスを倒す。殺し合いを脱出するには、これしか手段がないようだな
1:エリン、クウカ、メグとその友人を守る。
2:メグを連れ去った仮面の戦士はどこへ逃げた?
3:俺はまた失うのだろうか……?
[備考]
「守る」スキルは想いの力で変動しますが、制限によりバランスブレイカーになるような化け物染みた力は発揮出来ません
参戦時期はリュシア達が里親に行ってから。アルノンとも面識があります

【クウカ@プリンセスコネクトRe:Dive】
[状態]:ダメージ(小)、魔力消費(中)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:こ、困ってる人を助けます……
1:ク、クウカはメグちゃんを取り戻したいのです……
2:モニカさん達と合流したいです
3:クウカ、マサツグさんのことが気になりますが……今はそれどころじゃないですね
[備考]
頑丈です。各種スキルも使えますが魔力を消費します。魔力は時間経過で回復していきます

【D-4(少なくともマサツグ達とは別の場所)/一日目/深夜】

【奈津恵@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:魔力消費(小) 、精神的疲労(大)、迷い、気絶中
[装備]:メグ専用ロッド@きららファンタジア、ゴーストドライバー&ディープスペクターゴースト眼魂@仮面ライダーゴースト
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:私はどうしたらいいの……?
1:……。
2:マヤちゃん……
3:今はマサツグさんとクウカさんの居る場所に帰りたいよ……
[備考]
ディープスペクターの武器であるディープスラッシャーについては、変身しても出現しません。他の参加者に武器として支給されている可能性があります。
ディープスペクターへの変身は他の仮面ライダーと同じく魔力を消耗しません

【コッコロ@プリンセスコネクトRe:Dive】
[状態]:オレイカルコスの結界による心の闇の増幅 、迷い
[装備]: ホッパーゼクター&ZECTバックル@仮面ライダーカブト
[道具]:基本支給品一式、オレイカルコスの結界@遊戯王デュエルモンスターズ(アニメ版) 、盗人の煙玉@遊戯王OCG
[思考]
基本:主様たちの所へ戻る、たとえどんな手段を使ってでも
1:コッコロは、悪い子になってしまいました
2:メグ様が目を覚ましたら、会話してみましょう
[備考]
※参戦時期は『絆、つないで。こころ、結んで』前編3話、騎士くんに別れを告げて出ていった後

『支給品紹介』
【盗人の煙玉@遊戯王OCG】
カードを翳すことで発動可能。
本来ならば装備魔法だが、今回のゲームではリアルファイトに適したカードにするためにただ煙幕を張るだけの効果と化している。
その名やイラスト通りのわかりやすい支給品。再び発動するには前回の発動から6時間経過してなければならない


919 : ◆QUsdteUiKY :2022/08/11(木) 23:39:16 jOUSqBn60
投下終了です


920 : ◆ytUSxp038U :2022/08/13(土) 17:50:48 HGcLa3xI0
環いろは、黒死牟、空条承太郎、猿渡一海、天津垓、デェムシュ、大尉を予約します。


921 : ◆EPyDv9DKJs :2022/08/14(日) 02:07:32 OA5zQWU.0
小鳩、牛尾で予約します


922 : NEPTUNE ◆EPyDv9DKJs :2022/08/14(日) 20:50:18 OA5zQWU.0
投下します


923 : NEPTUNE ◆EPyDv9DKJs :2022/08/14(日) 20:51:10 OA5zQWU.0
あ、失礼
予約に追加キャラ込みで投下します


924 : NEPTUNE ◆EPyDv9DKJs :2022/08/14(日) 20:51:56 OA5zQWU.0
 名簿を見終えた後、癇癪を起こして地面にモーニングスターを叩きつける小鳩。

「ぶっちょなし、帰宅部なし、楽士なし、神様あり! はいクソがぁ!!」

 仲間がいなかったことについてはどっちかと言えば安堵の方があったと言うべきだろうか。
 ただ、小鳩と言う男は普段は飄々と女子にナンパを仕掛ける性格をしてるが、こう見えて卑屈だ。
 人生が上手く行かずどん底に漂っている。主役キャラのスポットライトを浴びることもない。
 だからこそ、帰宅部の部長といた時は主人公のようになれた。モブが魔王を倒す瞬間もあり得た。
 そんな部長は参加者にはなく、ただ一人ぽつんとデスゲーム物の一登場人物の役割をあてはめられる。

「あー、もう自称神とか飽きてるんで勝手にやってろってんだよ。」

 しかもあてはめたのが神を名乗る存在。彼にとってはもううんざりな存在だ。
 メビウスにリドゥと二度も神様気取りの連中によって人生滅茶苦茶にされて、
 それでもなおも神と言う存在がまとわりついてくることについて心底腹が立つ。
 此処には帰宅部も楽士もいない。だったら神までも出てくるんじゃねーよと。
 とか言ってたらポセイドンとか本当の神が参加者にいるのだから始末に負えない。
 流石に本物と鵜呑みせず、楽士のようなハンドルネームとかそういう類だと思ってるが。

(しっかし、どういうことだよこれ。)

 キレ散らかしてる中でも小鳩も多少は考える。
 普段は帰宅部だとブレインを担当する劉都と衝突するし、
 本人もまともにを過ごせなかった都合決して頭がいいとは言えない。
 でも人並みの知恵がないわけでない。だからおかしいことにだって疑問を持つ。

 何故、カタルシスエフェクトが使えるのか。
 カタルシスエフェクトはいわば心を武器として具現化させる力。
 彼が持つ力は現実の力ではなくメビウス、或いはリドゥで使われるもの。
 現実の彼は今の高校生の見た目じゃないし、モーニングスターの出し入れも角も出せない一般人だ。
 当然、此処がメビウスやリドゥでなければ全てがあり得ないので一つの結論、
 『此処はリドゥの延長線上の舞台』と言う考えが一応あった。

 リドゥは来る以前に集合的無意識と化した電脳世界、
 キィ曰く『メタバーセス』が侵食したことで崩壊している。
 最早仮想世界の街に、戻れるような状態ではなくなっていた。
 (仲間のが得た力を借りれば疑似的な復元はできたりはするが割愛)
 楽士の一人である件(クダン)は崩壊を想定していたかのような口ぶりだったので、
 崩壊しかけたところで何ら問題なくリドゥを動かすことはまだできたのだろう。
 とは言え、だ。一時的にでも崩れかけたリドゥ。その隙を突かれたのではないかと。

(あいつの言い方、何つーかゲーマーっぽいんだよなぁ。)

 黎斗はこの殺し合いをゲームのような言い回しが多かった。
 電子ゲームやデジタルな傾向には特に強いことは考えられるし、
 元を辿るとバーチャドールは電脳世界で自我が芽生えている存在だ。
 ついでに言えばバーチャドールの原型はボーカルソフトとデジタルな代物になる。
 なのでハッキングだなんだのをあーだーこーだされ主導権を持っていかれて、
 自分はそこに巻き込まれてしまったのではないか、なんてことを考えていた。
 これならばカタルシスエフェクトが使えても問題ないし、モンスターを召喚すると言った、
 デジタルなシステムだって再現できるのではないかと。

「ま、意味ねえんだけどな!」

 だが、考えたところで意味などない。
 彼は考えることはできてもそれを活かせるだけの知識がなかった。
 だから先程もあーだーこーだと、具体的な表現の仕方が見つけられない。
 こういう時こそブレインとなる劉都が悔しいが頼らざるを得ない存在だ。
 もしかしたら、予選とやらに知り合いがいた可能性はあったかもしれない。
 予選を通り抜けられなかった連中の末路を考えると、腹立たしいことだが。

(ま、いねーならいねーで合流とかで焦る必要もねえけどよ。)

 知り合いがいないなら、それはそれとして都合は良かった。
 此処で出会った奴の知り合いを探せるし、何よりカードゲームのルールも調べる時間ができる。
 もし部長やマリマリ達がいたら居ても立っても居られない状態になってただろう。
 なので軽くルールを把握しようとした結果、


925 : NEPTUNE ◆EPyDv9DKJs :2022/08/14(日) 20:51:58 OA5zQWU.0
 名簿を見終えた後、癇癪を起こして地面にモーニングスターを叩きつける小鳩。

「ぶっちょなし、帰宅部なし、楽士なし、神様あり! はいクソがぁ!!」

 仲間がいなかったことについてはどっちかと言えば安堵の方があったと言うべきだろうか。
 ただ、小鳩と言う男は普段は飄々と女子にナンパを仕掛ける性格をしてるが、こう見えて卑屈だ。
 人生が上手く行かずどん底に漂っている。主役キャラのスポットライトを浴びることもない。
 だからこそ、帰宅部の部長といた時は主人公のようになれた。モブが魔王を倒す瞬間もあり得た。
 そんな部長は参加者にはなく、ただ一人ぽつんとデスゲーム物の一登場人物の役割をあてはめられる。

「あー、もう自称神とか飽きてるんで勝手にやってろってんだよ。」

 しかもあてはめたのが神を名乗る存在。彼にとってはもううんざりな存在だ。
 メビウスにリドゥと二度も神様気取りの連中によって人生滅茶苦茶にされて、
 それでもなおも神と言う存在がまとわりついてくることについて心底腹が立つ。
 此処には帰宅部も楽士もいない。だったら神までも出てくるんじゃねーよと。
 とか言ってたらポセイドンとか本当の神が参加者にいるのだから始末に負えない。
 流石に本物と鵜呑みせず、楽士のようなハンドルネームとかそういう類だと思ってるが。

(しっかし、どういうことだよこれ。)

 キレ散らかしてる中でも小鳩も多少は考える。
 普段は帰宅部だとブレインを担当する劉都と衝突するし、
 本人もまともにを過ごせなかった都合決して頭がいいとは言えない。
 でも人並みの知恵がないわけでない。だからおかしいことにだって疑問を持つ。

 何故、カタルシスエフェクトが使えるのか。
 カタルシスエフェクトはいわば心を武器として具現化させる力。
 彼が持つ力は現実の力ではなくメビウス、或いはリドゥで使われるもの。
 現実の彼は今の高校生の見た目じゃないし、モーニングスターの出し入れも角も出せない一般人だ。
 当然、此処がメビウスやリドゥでなければ全てがあり得ないので一つの結論、
 『此処はリドゥの延長線上の舞台』と言う考えが一応あった。

 リドゥは来る以前に集合的無意識と化した電脳世界、
 キィ曰く『メタバーセス』が侵食したことで崩壊している。
 最早仮想世界の街に、戻れるような状態ではなくなっていた。
 (仲間のが得た力を借りれば疑似的な復元はできたりはするが割愛)
 楽士の一人である件(クダン)は崩壊を想定していたかのような口ぶりだったので、
 崩壊しかけたところで何ら問題なくリドゥを動かすことはまだできたのだろう。
 とは言え、だ。一時的にでも崩れかけたリドゥ。その隙を突かれたのではないかと。

(あいつの言い方、何つーかゲーマーっぽいんだよなぁ。)

 黎斗はこの殺し合いをゲームのような言い回しが多かった。
 電子ゲームやデジタルな傾向には特に強いことは考えられるし、
 元を辿るとバーチャドールは電脳世界で自我が芽生えている存在だ。
 ついでに言えばバーチャドールの原型はボーカルソフトとデジタルな代物になる。
 なのでハッキングだなんだのをあーだーこーだされ主導権を持っていかれて、
 自分はそこに巻き込まれてしまったのではないか、なんてことを考えていた。
 これならばカタルシスエフェクトが使えても問題ないし、モンスターを召喚すると言った、
 デジタルなシステムだって再現できるのではないかと。

「ま、意味ねえんだけどな!」

 だが、考えたところで意味などない。
 彼は考えることはできてもそれを活かせるだけの知識がなかった。
 だから先程もあーだーこーだと、具体的な表現の仕方が見つけられない。
 こういう時こそブレインとなる劉都が悔しいが頼らざるを得ない存在だ。
 もしかしたら、予選とやらに知り合いがいた可能性はあったかもしれない。
 予選を通り抜けられなかった連中の末路を考えると、腹立たしいことだが。

(ま、いねーならいねーで合流とかで焦る必要もねえけどよ。)

 知り合いがいないなら、それはそれとして都合は良かった。
 此処で出会った奴の知り合いを探せるし、何よりカードゲームのルールも調べる時間ができる。
 もし部長やマリマリ達がいたら居ても立っても居られない状態になってただろう。
 なので軽くルールを把握しようとした結果、


926 : NEPTUNE ◆EPyDv9DKJs :2022/08/14(日) 20:53:07 OA5zQWU.0
「分かるかぁ!」

 暫くの時間の経過後、
 余りの複雑なルールに機械ごと投げそうになった。
 『こんなのを短時間で覚えられるかバーカ!』と軽く叫ぶ。
 刻一刻と命の危機が迫ってる中でカードゲームをやるのはまだわかることだ。
 これはさっき出会った参加者がカードで戦っていたのだから一応の理解はあった。
 主催もこれを危惧していたし、どれだけ汎用性が高いかを物語ってるだろう。
 ただ、だからと戦える武器にするまでがやってられるかレベルの難しさはある。

「そりゃまあかわいこちゃんいるのはいいよ!?
 エクソシスターとかドラゴンメイドとかめっちゃ可愛くていいし!
 でもちょっと考えろッ!! 融合にシンクロにエクシーズと多すぎんだよクソがッ!!」

 デッキを持っていたら必要なルールを絞ることはできただろう。
 だが彼の支給品にデッキのセットはない。必然的に覚えることは全部の一択。
 こんなのどうしようもない。必要なものだけを得ることができないのだから。

 軽く癇癪起こしていると、彼の前に現れる一匹の犬。
 パワードスーツのようなものを身体の一部纏っており、
 警察犬のような細身の身体ともあって強そうな印象が伺える。

「チッ、またモンスターかよ!!」

 出会えど出会えど参加者よりもモンスターばかりだ。
 付き合ったら絶対ろくなことにならないであろう男といるべきだったかとも思えた。
 カタルシスエフェクトとなるモーニングスターを取り出し、臨戦態勢に入る。
 相手に攻撃の意志はないようにも見えるが、正直今の彼にはどうでもいい。
 そも参加者ではなくモンスターだ。邪魔になる可能性があるなら蹴散らすだけで、
 横に回転しながらの振るった一撃で簡単に吹き飛ばされる。

「ヘッ! 大した事……」

 吹き飛んだことで消滅。
 楽な戦いだったと思ったのもつかの間。
 なぜかその犬がさも当たり前のように分裂した。

「増えてんだけど!?」

 倒せば倒すほど増える系のタイプなのか。
 となれば相手するものではなく、逃げるが吉か。
 幸いその犬も向かってくる様子はなかいのでチャンスと思うも、

「何処へ行ったかと思ったらこんなところにいやがったのか。」

 続けて出てきた相手に足を止める。
 今度の相手は人だし首輪があり、参加者であることは伺えた。

「悪い坊主。こいつら……二体に増えてるし襲っちまったか?
 此処でのデュエルモンスターズのルールに慣れてねえもんでな。
 俺はセキュリティの人間だ。殺し合いに乗るつもりはねえことだけは言っとくぜ。
 こいつらが襲ってきたってんなら悪かったな。守備表示でも大人しいと思ったが……」

 相手の男、牛尾はこうは言ってるが最低限の警戒はしている。
 と言うのも彼のモンスター『アサルト・ガンドッグ』が二体いるからだ。
 アサルト・ガンドッグは戦闘で破壊された際に同名カードを二体特殊召喚する効果を持つ。
 つまり、彼はモンスターを破壊できるだけの戦闘能力を有しているということ。
 生身でモンスターと殴り合う選択ができた時点で少なからず戦いの経験はあるだろうし、
 ただの一般市民として保護ではなく、犯罪者としての逮捕の必要もありえた。

「セキュリティ? ポリ公みてえなもんか?」

「まあポリ公みてえなもんだな。」

「なんつーか、あんまポリ公らしくねえな。」

 小鳩の仲間には刑事であった人物がおり、
 決断ができない優柔不断なところはともかくとして根は真面目だ。
 なので刑事と言う存在に対する印象はその人物が基準となっており、
 いかつい顔つきやどちらかと言えば、走り屋にありそうな格好は印象とかけ離れる。

「そうか? まあ主催の連中は言ってたし、
 別の世界の人間だったらそう受け取れるのかもな。」

「ああそうか。アンタもデュエルディスクだっけか?
 つけてるし俺のいた世界とは絶対に違うってのは分かる。」

 その後も軽口を言い合って、
 互いに敵意と言う物は感じられないと判断し、
 その場で互いの得ている情報を交換し合うことを選ぶ。
 (アサルト・ガンドッグは周囲の哨戒にあたらせている)
 牛尾とその知り合いもデュエリストでとても頼りにはなれる。

「なあ、それデュエリストずるくね?」

 支給品没収されたのはあるものの、
 正直反則級の代物だと思わざるを得ない。
 真月の時は一枚だけだったのでさして問題とは思わなかったが、
 実質四十以上の支給品を用意されてるような代物に近かった。
 勿論デュエル中に最適なカードが引けるかどうかはまだ別であるが。

「確かに否定できねえよな。ただそうとも限らねえ。あの青髪の子もそうだった。」


927 : NEPTUNE ◆EPyDv9DKJs :2022/08/14(日) 20:55:25 OA5zQWU.0
「ん、そうなのか?」

「あのデッキに俺は俺の知り合いのだ。」

 思い返すのは二人は名前については知らないが、条河麻耶の死に様だ。
 スピード・ウォリアーを筆頭に使用カードから遊星のデッキなのは察せられる。
 あれは個々の力が弱いモンスターだけで戦うことが想定されてないデッキだ。
 シンクロ召喚につなげていくことで大型モンスターへと昇華させるので、
 基本ルールを把握した程度ではとても使いこなせる代物ではなかった。
 特殊召喚の手順、チェーンの組み方。複雑なルールに踏み込む必要がある。

「なんつーかめんどくさそうなデッキだなおい。」

 劉都なら難なくできそうではあるが、
 自分だとどうしても聴講してしまいそうだ。悔しいが。

「んで、俺はついでにあのデッキを探してるってわけだ。」

 殺した奴が持って行った可能性は無きにしも非ずだったが、
 そも彼は槍一つで容易にモンスターを蹴散らせる実力がある。
 態々そのようなものに頼るとは思えないようにも見えたので、
 恐らく彼女の遺体と共に何処かに放置されたままの可能性は高い。

「あれがあそこにあるなら遊星はデッキがねえのはまずい。」

 いくら街を救ってきた遊星と言えども、
 デッキがなければ腕っぷしが強いだけのメカニックと、
 いや普通に考えても十分スペックが高いような気はするが、
 この殺し合いの場においてはかなり不利な立場になってしまう。
 だから早急にあれを遊星に届けることが第一目標になる。
 何度も戦ってきたし、何度も見届けた牛尾だから遊星の実力を理解している。
 この状況でも、あいつなら道を切り開く可能性は十分にあると。
 無論、自分は遊星に任せて何もしないつもりはなかった。
 上位存在がいようとも自分出来るセキュリティの仕事を全うするだけだ。

「で、犬で探してたってわけか。」

「まあ嗅覚とかそういうのが警察犬みたいかどうかは別だけどな。
 犬なら俺と遊星は何度か接触して匂いももしかしたら追えるかもしれねえしな。」

 デュエル以外でも実体化すると言う従来の使い方とは違う。
 だったら使うなと納得する。戦いは数だと何処かの楽士も言ったことだ。
 特に人間にはない翼や移動能力を兼ね備えたモンスターなら更にできることが多い。
 勿論引きたいカードが引けるかどうかについてはまた別かもしれないが。

「お、戻ってきたか───」

 少し遠くからアサルト・ガンドッグの鳴き声がした。
 なので戻ってきたと思って視線を向けると二人は絶句。
 二匹のうちの一体だけが二人の所へと辿り着くことはできた。
 もう一匹はと言うと、先程の少女のように両断され消滅していく。
 下手人の姿を見た瞬間、二人は全身から汗が噴き出そうになる感覚がする。
 だって、相手は───










「ふん、雑魚(カス)が。」

 さっきその少女を殺した神(ポセイドン)だったから。

 ポセイドンにとって先の演説に興味などさしてない。
 元々ハ・デスを騙る輩に妥協などするつもりはなかったが、
 黎斗と名乗る上位の神の登場に、感情は揺れ動かなかったがそう一蹴する。
 神は頼らぬ。神は謀らぬ。神は群れぬ。それがポセイドンの、神としての在り方だ。
 ハ・デスを騙り、あまつさえアダマスのように群れることを選ぶなど神とは思わない。
 恐らく彼ぐらいだろう。黎斗以上にハ・デスを殺すことを優先とする参加者は。

 そして彼は他の事に関して視線をくべることすらしない。
 名簿にも一切目を通さない。神がいたところでやることは変わらない。
 仲間意識などない彼が他の神と手を取り合うことはしないのだから。

 自分が先程の雑魚(麻耶)を殺した光景が映像として流された。
 となれば必然的にこれ以降彼は誰からも用心されるのは必然のことだ。
 だがそんなこと、彼の知ったことではない。
 負けを恐れて誰かを頼ろう存在など神に非ず。
 敗死を恐れて誰かを謀ろう存在など神に非ず。
 勝利の求めて誰かと群れる存在など神に非ず。
 彼が経験しない、本来の未来で剣豪の敗北して彼はなんと言ったか。
 人間の勝利に対して彼は称賛も敬意もなく、ただ『雑魚が』の一言だ。
 一点の揺らぎのない水面の如く、不変を貫くのがポセイドンだ。

 誰よりも神らしくあると称される存在。
 だから何も変わらない。目の前の雑魚二人に視線も向けやしない。
 神が人を殺すなど、象が蟻を踏むのと同じだ。何も思うことなどない。
 明後日の方向を眺めながら前進と共に来る雑魚を振り払うだけ。
 本来の彼であれば自ら人間相手に近寄ることなどはしないが、
 目的はハ・デス。その為であれば歩くぐらいのことはする。


928 : NEPTUNE ◆EPyDv9DKJs :2022/08/14(日) 20:56:47 OA5zQWU.0
(あ、俺死んだわ。)

 歴戦の猛者なら映像で感じただろうことを、小鳩たちは目の前で理解した。
 うろ覚えの記憶なのでさして此処では物差しにならないがμであっても、
 リグレットであっても黎斗であっても此処まではっきりとは思わなかった。
 ───これは相手にしちゃいけない。いや、その考えすら烏滸がましいものだと。
 辛うじてカタルシスエフェクトが出せただけでも彼は褒められるべきだろう。

 牛尾も同じだ。
 五千年の眠りから目覚めた神とか、
 何かととんでもないものに出くわしたことはある。
 だからと言って強大な相手に恐怖しないわけではない。
 と言うより、彼にとっての一番の恐怖はぶっちゃけあの男(遊戯)だ。
 それと比べればまだ悪行を知った程度の相手に臆してはセキュリティの名折れだ。

「クッ、『アサルト・ガンドッグ』をリリース!
 『手錠龍(ワッパー・ドラゴン)』を守備表示でアドバンス召喚!」

 残された猟犬を生け贄にし、
 現れるの巨大な手錠が如き牙のようなものを持つ細身のドラゴン。
 細身とは言うが牛尾の体格を超える巨大さは手錠の名を持つも、
 とても手に錠をかけられるような小さなサイズではないだろう。
 
「リバースカードを三枚セットして───」

 ポセイドンの周囲を飛び交う手錠龍もまた、
 先程同様に槍の振り払い一つで容易く倒される。
 下級モンスター並のステータスで彼の相手など勤まらない。

「雑魚が。」

「それが目的だ! 手錠龍のモンスター効果発動!」

 両断された手錠龍が巻き戻しのように姿が戻り、
 彼の胴体を、その手錠の如きモノを使い縄のように締め付ける。
 手錠龍は戦闘で破壊された場合、破壊した相手に装備されるモンスターカード。
 更に装備した相手は攻撃力が大きく下げられるというデメリットもついている。

「ついでにおまけだ! 罠発動『デス・ペナルティ』!」

 モンスターが戦闘で破壊された際に、
 破壊されたモンスターの攻撃力の半分をダメージを与える罠カード。
 物理的な怪我はないものの、体力が軽く減らされるような感覚がポセイドンを襲う。
 とは言え数値的な部分を考えると、痛手と呼べるほどのものでもないが。

「おらあああああ!!」

 ポセイドンが手錠龍に構っている間に、
 モーニングスターを空へ飛ばすことで勢いよく飛んだ小鳩による振り下ろしの一撃。
 所謂パワータイプの小鳩はどうしても攻撃速度の遅さから戦いでは命中率に難がある。
 だから槍も胴体と一緒に縛られ、左手しか拘束されてない相手当てられる可能性は十分だ。
 しかし、振り下ろされたモーニングスターを空いた左腕を翳す形で容易に防がれる。

(な、素手で防いでんだぞ!? 出血の一つぐらいしろって言うんだよ!?)

 帰宅部の中で小鳩の攻撃性能は極めて高い部類になる。
 それを自負するつもりはなかったが、片手で止めてほぼ無傷は冗談だろと疑いたくなった。
 小鳩としては嘘だろと正直思うだろうが、ポセイドンを知る神々は『当然』の感想になることだろう。
 ポセイドンが此処に来なければ参加するはずだった神VS人類最終闘争(ラグナロク)では、
 どう考えたって人類の方が圧倒的不利であり、そのままではただの神側の蹂躙にしかならない。
 なので人類側にはワルキューレの力を合わせた道具こと神器錬成(ヴェルンド)を使うことで、
 人類が培ってきた能力を十全以上に振るわせ、それに伴い神々相手も殺しうることができる力を得た。
 人類がラグナロクで使ってきた武器がないことを考えれば、当然ポセイドンの弱体化は必須事項になる。
 神器錬成なしの人間と同じ土俵で戦うなど、殆どの確率で一方的な蹂躙だから仕方ないだろう。
 それがまだ成立しない程度には弱体化してることは、この状況を見れば一目瞭然。

 しかし、しかしだ。
 たとえそうだとしてこの男は紛れもない最強の一角。
 鬼の王、オーバーロード、バリアン七皇、羅刹王と数多の強者がいるが、
 彼らをも十分に凌駕できるであろう、誇張も比喩でもない正真正銘の『神』だ。
 人類の命運を左右する戦いにおいて、トールやゼウスに続いて参戦するはずだった神。
 軍神アレス等、数多の神々の中から選ばれた十四の(裏切り者含む)神側の一人。
 そんな相手に、たかが一個人の心の具現化などそれはちっぽけなものでしかない。
 寧ろ傷がつけられる分だけ調整ができてると黎斗の涙ぐましい努力が伺えてくるものだ。
 
「雑魚が。」

 視線は相変わらず向けられることはない。しかし敵の位置はしっかりと捉えている。
 手錠龍の拘束を強引に引き離し、無数の槍の刺突───怒れる波濤(アムピトリテ)が小鳩を襲う。
 一撃が全て必死とも受け取れるような、死が無数に迫りくる。


929 : NEPTUNE ◆EPyDv9DKJs :2022/08/14(日) 20:58:19 OA5zQWU.0
「雑魚が。」

 視線は相変わらず向けられることはない。しかし敵の位置はしっかりと捉えている。
 手錠龍の拘束を強引に引き離し、無数の槍の刺突───怒れる波濤(アムピトリテ)が小鳩を襲う。
 一撃が全て必死とも受け取れるような、死が無数に迫りくる。

「やべ!!」

 小鳩が槍の間合いを警戒してたことと、
 すんでのところでモーニングスターを引き戻し即席の盾にした。
 お陰で肉はいくらか抉れた気はするが死も重傷も辛うじて免れる。
 攻撃の反動で距離を取ることはできたが、その程度で終わらない。
 拘束されながらも歩みを止めることなくポセイドンがゆっくりと迫る。

「無茶するんじゃねえ小鳩! 『ゲート・ブロッカー』を守備表示で召喚!!」

 彼の前に立ちはだかるように瞳のついた壁のようなものが召喚される。
 その隙に一度小鳩は牛尾の所へと戻り、壁は容易く破壊されてしまう。

(手錠龍で攻撃力が結構下げられてるはずなのに無茶苦茶しやがるなおい!)

 手錠龍の効果による攻撃力の減少値は1800。
 一般的な下級モンスターの攻撃力なら無力に等しくなる。
 勿論あれだけ強いのだから最上級モンスター並みだと推測するが、
 ゲート・ブロッカーも下級モンスターとしては高い守備力を誇る。
 それでも容易くでは、圧倒的な強さを秘めていることは間違いなかった。
 (因みに手錠龍は再び彼の胴体を締め付けてはいるが、今度は逆に左手だけが拘束されている)

「罠発動『ブロークン・ブロッカー』!! ゲート・ブロッカーを二体特殊召喚するぜ!」

 守備力が攻撃力よりも高いモンスターが戦闘破壊されれば、
 同名カードを二体特殊召喚することができるカードで後続を呼ぶ。
 しかしこれもわずかな時間稼ぎにしかならないのだろうことは分かっている。」

「おい小鳩! てめえはこいつから逃げとけ!」

「は!? 何言ってんだおっさん! こいつ相手に一人で勝つって言うのかよ!?」

 今でも勝てるところが想像できない絶望的な状況だ。
 自分が戦力になってるかどうかと言えば否ではあるだろうが、
 一体どこに一人だけで勝てる要素があるのか彼には想像つかない。

「なきゃ言わねえ! だが、この近く勝てるかもしれねえ手段があんだよ!」

「あんの!? マジで!?」

「っとさせるかよ! 罠発動『進入禁止! No Entry!!』だ!」

 二体目のゲートブロッカーが破壊されそうになったところに、
 すかさず攻撃してきた相手を守備表示、基攻撃を中断させる罠を使う。
 強制的に守備をさせられたことで辛うじてまだ時間を稼ぐことができる。

「直接言うとあいつにバレそうだから言うぜ! 遊星だよ!」

 牛尾の言いたいことを小鳩は理解する。
 あいつが此処にいると言うことは少女の死体が、
 つまり遊星のデュエルディスクとデッキが存在するはず。
 ルールはざっくりとしか把握してないが彼のデッキは世界を救ったデッキ。
 彼のデッキであればきっとポセイドンを打ち破る可能性は少なからずあると。
 勿論その遊星のデッキの使い方を理解等で来ているわけではないのだが、
 今のどうしようもない状況をどうにかできる可能性はまだあるだろう。

 急いでその場から、ポセイドンの横を迂回して彼の歩いてきた方角を調べにいく。
 無論ポセイドンが近くにいる羽虫を捨ておくなどすることは絶対にせず狙いを優先。
 すかさずそこへゲート・ブロッカーが庇う形で彼に逃げる時間を稼いでくれる。

「ふん、雑魚が。」

「何度も何度も雑魚ばかり言いやがってよぉ、
 てめえは昔の俺か! 他の言葉を知らねえってんなら教えてやるぜ!」

 何処か昔の自分を思い出すみたいで苛々させてくる相手だ。
 選民思想のようにサテライトの連中を見下していた過去を思い出す。
 同じ言葉ばかりで相手を罵るところも妙に自分ソックリで腹が立つ。
 特に腹が立つのは目を一度たりとも合わせようとはしてこないところ。
 彼は敵としても、殺すべき相手とも何一つとして認識してない。
 それがどうしようもなく腹立たしく思えてならなかった。

「俺はチューナーモンスター『ジュッテ・ナイト』を召喚!」

 眼鏡をかけた、岡っ引きのモンスターがゲート・ブロッカーの横に並ぶ。
 ステータスは弱小ではあるものの、このカードの本領はそこではない。

「俺はレベル4、ゲート・ブロッカーにレベル2、ジュッテ・ナイトをチューニング!」

 ジュッテ・ナイトはチューナーモンスターであるということ。
 彼のいた世界においては戦術の基本の一つとしても成り立っていた、
 シンクロ召喚を行うための布石となる必須カードだ。
 二体のモンスターのレベルが星となり、緑の輪を描き光射す道を作る。


930 : NEPTUNE ◆EPyDv9DKJs :2022/08/14(日) 20:58:56 OA5zQWU.0
「艱難辛苦を乗り越えて、いざ見せてやろうか男意気!
 シンクロ召喚! 現れろ『ゴヨウ・ガーディアン』!!」

 まばゆい光の中から現れるのはジュッテ・ナイトのような岡っ引きだが、
 白粉を使った歌舞伎のような化粧を施された姿も特徴的なモンスターだった。
 セキュリティにおけるエースカードであり、レベル6の最高峰の攻撃力を誇るモンスター。
 余りの強さにセキュリティ以外では使うことが禁止されてるほどのパワーカードだ。

(手錠龍が装備されてるなら攻撃力はあのブルーアイズであっても1200。
 ゴヨウ・ガーディアンは2800とレベル6最強の攻撃力! 十分勝機はあるはずだ!)

 彼のデュエルでは出しては負けることに定評のあるカードだが、
 レベル6の範囲で2800と言う打点を超えるモンスターは存在しない。
 普通に考えれば理不尽極まりないステータスであり突破は十分に困難だ。
 寧ろ突破してきた相手がメタだったり優れたデュエリストだからと言うのも否定できない。

「ゴヨウ・ガーディアンの攻撃! ゴヨウ・ラリアットォ!!」

 ひも付きの十手を振り回し、それをポセイドンに振るう。
 弾丸のように迫るそれは、生身の人間だったら普通に無傷では済まない。
 しかし相手が人間ではないと牛尾も気づいている。捕縛も荒っぽいものになると、
 そのことを理解したうえでのゴヨウ・ガーディアンを使用している。





 もっとも、ダメージになればの話だが。

「な……」

 槍の一振りでその一撃は容易く防がれた。
 確かにゴヨウ・ガーディアンはレベル6のステータス最高のモンスター。
 手錠龍も合わせれば青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)すら勝てるだろう。




 ───だが。
 相手はモンスターではない。
 ───正真正銘の神だ。

「神との戦いに一体何を期待していた……雑魚(ボウフラ)が。」

 怒れる波濤(アムピトリテ)によりゴヨウ・ガーディアンが細切れにされる。
 一体何十、何百槍が当たればそのようなレベルにまでできるのだろうか。
 牛尾の手札はもうない。すべて使い切り、他の支給品も既に没収されている。
 仮にドローが間に合ったところで、神相手に戦えるカードなど一枚もない。

「ッ……俺はセキュリティだ。世界は違うが、市民を守るのが仕事なんだよぉ!!」

 デュエルディスクを投げ捨てる。
 此処からは学生時代に培ったステゴロだ。
 勿論こんなもの何の足しにだってならない。
 バーチャドールの異能を得たカタルシスエフェクトで多少傷がつく程度。
 こんなのを相手に、たかがステゴロでダメージなど絶対に入りはしない。

「雑魚が。」

 否。そも当てることすらできなかった。
 彼にとって麻耶も牛尾の強さの差など何も変わらない。
 人など所詮その程度でしかなく、顔面をトライデントが貫く。

(後は頼んだぜ……小鳩、遊星。)

 自分ではどうにもならないとは悟ってはいた。
 でもやらなければならない。それがセキュリティだから。
 こいつを倒せるのは遊星だけだ。あのデッキを届けてくれ。
 後のことを小鳩に託しながら、牛尾のライフは一瞬にして潰えた。

【牛尾哲@遊戯王5D’s 死亡】










 小鳩は死に物狂いでデッキを探し続ける。
 しかしこの殺し合いの舞台は余りにも広い。
 動かぬ死体と言えども、彼一人で探せられるほど狭くはなかった。
 牛尾が時間を稼いでいる間に支給品を確認し、今使えそうな羽を装備している。
 天使から生えて総出、しかもピンク色との片翼とはっきり言って不格好極まりないが、
 これでも身軽になってるのだからそんなことはこの状況に於いて言っていられない。
 加えて効果自体は事実であり、武器を持ってない都合もあれど随分と身軽に動けている。

(クソ、俺一人じゃ広すぎて見つけられねえ!!)


931 : NEPTUNE ◆EPyDv9DKJs :2022/08/14(日) 21:00:16 OA5zQWU.0
 恩恵があったところでどうにかなるものではなかった。
 ローラー作戦をするにしても体力ばかりは限界がある。
 重傷は避けれたとはいえ無視できるようなダメージでもない。
 何よりも、

「……」

 視界に入ってしまった。
 暴君が平然と後方に迫っている。
 当然、それが何を意味するかなど決まっている。

「おい、おい。まじかよおっさん……」

 会って少ししか経ってない相手ではあるが、
 こんな理不尽に死んでしていい奴じゃないとは思う。
 と言うより、殺して置いてすまし顔でいるこいつが気に入らない。

「てめえの態度が気に入らねえんだよ、こん畜生がぁッ!!!」

 目を合わせない。視界に入れる価値すらないとでも言いたいのか。
 何処までも上から目線で神様気取りのようで腹立たしく思った。
 三度もこんな殺し合いに巻き込まれてもう上位存在とかにうんざりだ。
 だから立ち向かって横薙ぎにモーニングスターを振るうが、当然無駄なことである。
 手錠龍で弱まっても劣勢だった相手を解放された状態で相手できようものか。
 否。ありはしない。服についた埃でも払うかのように容易く槍で止められた。

「神に勝てる道理がどこにあると感じた? 雑魚(カス)が。」

 初めて雑魚以外の言葉が出てきた。
 だが正直、聞かない方が良かった気はする。
 μもリグレットも、黎斗やハ・デスもどいつも神様気取りの連中だった。
 だがこいつは違う。ハンドルネームとかそんなではない。本物の神だと。

「ポセイ、ドン……?」

 名簿の中にいた、ただ一人の神の名。
 槍を持ち、先程の攻撃は文字通りの怒涛。
 学があると言えない彼でも否が応でも察せられる。
 こんなの、本物の神じゃねえかと。気取った連中なんて比にならない。

(モブキャラが勝てる段階超えてるだろうが、クソが……)

 神にとって人間は有象無象。
 しかもその中でモブキャラときたら最早論外だろう。
 欠片も勝てる要素がないではないか。










「だったら見つけてやるんだよぉ!! 罠発動!!」

 が、こんなところで諦める男ではなかった。
 相手が本物の神? だったら殺し合いの参加者になってんじゃねえよバーカ。
 本物でも偽物でも、こんな殺し合いに参加した時点でどっこいどっこいだ。
 諦めなかった理由は二つある。一つは彼が最初に考えた主催者がゲーマーであること。
 これを企画した奴はゲーマーであることは明らかだ。バランス調整も考慮していた。
 であれば、こいつを殺せるだけの存在かアイテム、手段は必ずあると。
 だったらやってやろうじゃねえか。本物の神殺しをするモブキャラ伝説を。
 究極のクソゲーとして名を馳せさせてやるよと。

 そしてもう一つ。牛尾が時間を稼いでくれたお陰で、
 同時に彼がデュエルのスタイルを見せてくれたお陰で、
 この支給品を確認し、どう使えばいいかはっきりとわかった。
 力強く宣言すると同時に、小鳩は思いっきり空へと飛んで行く。
 十メートル、二十メートル、制限されたポセイドンでは最早ついていけない距離だ。
 彼が使ったのはゴールドシリーズ、消耗するがデュエルディスクの軽油がなく発動できる、
 汎用性の高いモンスターバウンスの代名詞の一つである罠カード『強制脱出装置』だ。

 牛尾のお陰で生きることができたし、
 牛尾から事実上託されることになってしまった、遊星のデッキの件。
 義理人情に厚い男ではないが同時に後味の悪いことは基本的に避ける。
 以前水口茉莉絵に真実を伝えたのも、彼女にだって知る権利があったから。
 知らないまま一方的に事を収めるなんてことは絶対にしたくなかった。
 だから小鳩はやる。後悔なき選択として希望の星を探し、本物の神を殺す。

【B-6 空中/一日目/深夜】


932 : NEPTUNE ◆EPyDv9DKJs :2022/08/14(日) 21:01:03 OA5zQWU.0
【風祭小鳩@Caligula2】
[状態]:ハ・デスに対する怒り(特大・ただある程度落ち着いた)、いたるところに裂傷、精神疲労(中)
[装備]:カタルシスエフェクト、身軽の羽根DX@大番長
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜1
[思考・状況]
基本方針:黎斗とハ・デスぶっ潰す。主人公から降ろしたツケ払いやがれ。
1:知り合いいないってんなら自由にやるか。
2:真月って奴は、まあ敵じゃないんだろな。知り合いいたら言っとくか。
3:牛尾のおっさんの知り合いに会ったらどう説明すりゃいいんだよ……
4:此処、もしかしてリドゥ?
5:流石にこの羽根は俺には合わねえって……まあ仕方ねえけど。
6:やってやろうじゃねえか、神殺し!
7:不動遊星とデッキを探す。B-6近くのどっかにあんのか?
[備考]
※参戦時期はエピメテウスの塔攻略中、
 かつ個人エピソード完全クリア済みです。
※部長の性別は採用された場合、かつ後続の方に一任します。
※カタルシスエフェクトは問題なく発動します
※①黎斗はそれを利用して殺し合いの舞台を作ってるのではないか。
 ②黎斗がゲーマーであることを示唆する言い回しがいくつかあった。
 ③元を辿ればバーチャドールは電子ボーカルソフトから誕生。
 これらからこの舞台をリドゥの延長線上にあるのではないかと思ってます。
※デュエルモンスターズのルールについてはざっくりと把握してます。
 可愛いモンスターにはそれなりに目を付けてます。多分閃刀姫も知ってるかも。
※牛尾との情報交換で5ds+遊戯達の情報を得ました。
※強制脱出装置で吹っ飛んでいます。B-6以外に落ちます。
 なお何もしないで無傷で着地できるかどうかは後続の書き手にお任せします。
※身軽の羽根DX@大番長で回避率、基スピードが強化されてます。
※名前は分かりませんがあの男がポセイドンだと察してます。




 小鳩に追いつけないとわかると、彼は興味をなくした。
 些事だ。あの程度の雑魚に執着することなど神に非ず。
 一瞥を終えると、次の雑魚を始末するべく暴君は動き出す。
 全てを波濤に沈めるその在り方、まさしくこう称するにふさわしいだろう。





 The tyrant NEPTUNE(海王星の暴君)と。



【B-6/一日目/深夜】

【ポセイドン@終末のワルキューレ】
[状態]:健康、黎斗とハ・デスに対しての苛立ち、疲労(極小)、打撲(超軽微)
[装備]:トライデント@終末のワルキューレ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本方針:偽りの神共を殺す。
1:一刻も早く雑魚(カス(参加者))共を殺し、殺し合いに優勝して雑魚(ハ・デスと黎斗)の元へたどり着く。
2:雑魚(小鳩)のことなど興味はない。
[備考]
※参戦時期は本編登場前。
※通常の兵器でもポセイドンにダメージは与えられます。
※牛尾が死亡したため手錠龍の弱体化はなくなってます。



※B-6に顔面が貫かれた牛尾哲の死体と彼のデイバック(基本支給品)、牛尾デュエルディスクとデッキ@遊戯王5D’sがあります。
※B-6か遠くないエリアに両断された条河麻耶の死体と、彼女のデイパック(基本支給品)、不動遊星のデッキ&デュエルディスク@遊戯王5D’sがちかくのエリアにあります。

【身軽の羽根DX@大番長】
風祭小鳩に支給。原作では捕虜を一定の回数釈放で手に入るアイテム。
回避率が向上するアイテムで、それに伴って移動速度も上がっている。
ピンク色の羽なのではっきり言って小鳩のビジュアルにはキツイ。なお片翼で飛べない。

【強制脱出装置(ゴールドシリーズ)@遊戯王OCG】
風祭小鳩に支給。ゴールドシリーズについては他のカード参照。
モンスター一体を対象に取り、そのモンスターを手札に戻す効果。
本ロワでは参加者やNPCなどに対応。使用者本人でもOK。
着地まで安全を保障してくれるかどうかは現時点では不明。


933 : NEPTUNE ◆EPyDv9DKJs :2022/08/14(日) 21:02:29 OA5zQWU.0
投下終了です


934 : NEPTUNE ◆EPyDv9DKJs :2022/08/14(日) 21:03:04 OA5zQWU.0
あ、今更ですがタイトルミスりました
「The tyrant NEPTUNE」でした


935 : ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:08:37 nVFCYNl20
投下します。


936 : ロゴスなきワールド ─戦争の夜に─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:10:52 nVFCYNl20
闘争の時間だ





治った。
六眼の侍に斬り落とされた左腕。
肘から先は細切れになって地面に散らばり養分と化した筈が、すっかり元通りだ。
指一本一本が問題無く動き、爪の先まで喪失する前と全く同じ。
人間であれば有り得ない光景。
移植手術をされたのでもない、人体の失われた箇所が時間経過で元に戻るなど、どれだけ優れた肉体の人物だろうと不可能。
治癒と言うより、最早再生と言っても過言ではない。

奇跡のような現象を目の当たりにしても、左腕が再生した当人の心に揺れは無し。
数ミリ程度の表情筋も微動だにしない。
一言どころか一文字すらも発さず沈黙を貫いたまま。
彼にとって驚く要素は見当たらない。
何故なら彼は化け物。大尉と時に親愛を、時には畏怖を込めて呼ばれた人狼(ヴェアヴォルフ)。

昼間は普通の人間として生活し、満月の夜になると獣へ姿を変え、獣や人間の血肉を糧とする。
そんな使い古されカビだらけとなった人狼のイメージを、この男には当て嵌められないだろう。
旧ドイツ軍の制服で顔意外の全てを覆い隠した男と、世界中でメジャーな怪物は合致しない。
されど揺らぐ事の無い事実として存在するのだ、大尉は人狼であると。
ミレニアム。またの名を最後の大隊(ラスト・バタリオン)。
誰よりも戦争を愛し、誰よりも戦争に魅せられた肥え太った狂人率いるナチスの残党。
構成員1000名が吸血鬼で結成されたそれこそ、大尉が所属していた組織。
ほとんどの兵士達が吸血鬼の中で、大尉は数少ない大幹部の人狼。
吸血鬼をも凌ぐ戦闘能力持ち、数多の戦場で死体の山を築き上げて来た。

「……」

大尉が求めるものは一つ、闘争の果ての死。
ロンドンを火の海に変えたミレニアム、イスカリオテ、ヘルシングによる三つ巴の大戦争。
あの戦争で大尉は死に場所を見つけた。
ヘルシング所属の女吸血鬼(ドラキュリーナ)、セラス・ヴィクトリア。
ミレニアムの硬式飛行船内で大尉はセラスと闘争を繰り広げ、敗北した。
セラスと彼女と同化した傭兵に、人狼の弱点である銀を撃ち込まれて、満足のいく死を迎えた。
子どものように無邪気な笑みを浮かべながら、死んだのだ。


937 : ロゴスなきワールド ─戦争の夜に─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:11:57 nVFCYNl20
だというのに、生き返ってしまった。
セラスとの闘争に、ようやく死に場所を見つけられた喜びに唾を吐きかけられたような気分。
それでも大尉に怒りは無い。
冥界の魔王、神、自分を蘇生させた連中へ思う事など何も無い。
まだ生きているなら、まだ死ねないのなら、今度こそ自分が満足のいく死を手に入れる。
その為に再び闘争の渦へ飛び込んでいくだけ。
殺し合うのなら、六眼の侍やどこぞの執事(バトラー)のような連中とぶつかり合うのなら、万全の状態で臨みたい。
だからこうして腕の再生が完了するのをじっと待っていた。
普段よりも完全治癒に時間が掛かったがどうでもいい。

鼻をひくつかせ駆け出す。
求めるのは強者。
求めるのは闘争。
求めるのは己の死。
鼻孔を刺激し心臓を昂らせる匂い、臭い、におい。

やがて見つけた。
人間どもの匂い、血の臭い、闘争を予感させるにおいだ。
こうなればとるべき行動は一つだけ。
そびえ立つ白亜の建造物へ、ロケット弾の如き勢いで突撃あるのみ。


◆◆◆


正直予感はしていた。
屠り合いと言うからには、それに適した人材を集めるのが当然の話。
であるなら、抜け殻のような有様と成り果てた自分以外にも鬼が参加していても不思議は無い。
むしろどこか納得している自分がいた。

黒死牟からしたら、鬼舞辻無惨も参加者としてこの地のどこかにいるという事実はそう驚く程のものでも無かったのである。

聞いてもいないのに桜色の髪をした娘、いろはから名を告げられた。
春の色を表したような笑みで見つめて来るものだから、どうにも面倒に感じこちらも名前を返してやった後。
名簿を確認しようと提案されたのだ。
それ自体に断る理由は無いが、そもそも名簿をどうやったら見れるのかが黒死牟には不明。
気が付いた時には背負っていた袋からそれらしい紙は見当たらない。
代わりに見つけたのは、恐らくこの世で最も自分に馴染みがある物。
黒死牟以外が見たら何の価値もないガラクタとしか思わないだろう、所謂外れ支給品。

(これを私に寄越すとは……)

怒りか、苛立ちか、或いは安堵か。
自分でもどんな顔をしているのか分からないままサッと懐に仕舞ったのは、木彫りの笛。
忘れもしない、忘れられないあの夜に自分が二本に断った筈だが、元の形を取り戻している。
それに自分が何を感じたのか、何を想って未だ己の手元に置き続けようとしたのか。
余計な事を考えてしまうよりも前に、いろはが話しかけてきた。

「どうかしたんですか?もしかして、タブレットが入って無かったとか…?」

たぶれっと。
聞き慣れない言葉に眉を顰め、いろはの手に持つ物体に気が付いた。
奇妙な板らしき道具。
用途不明の為放置していた板をどうして今取り出しているのだろうか。


938 : ロゴスなきワールド ─戦争の夜に─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:12:57 nVFCYNl20
「その板を……何に使う気だ……?」

疑問を口にしたら、何を言っているのか分からないという顔をされた。
その後、微妙に噛み合わない会話を続けて知れたのは、このたぶれっとなる板で名簿を見れるとのこと。
とは言っても具体的にどうやれば見れるのか、黒死牟には全く見当が付かない。
すると見兼ねたのか哀れにでも思ったのか知らないが、いろはから使い方を教えられ無事名簿アプリの起動に成功した。

「私もこういうのはあんまり得意じゃないですけど……」

何故か恥ずかし気な表情で呟くいろはに、無知な自分よりは上等だろうと投げやりに思いながら名簿を見る。
黒死牟に倣いいろはも自身のタブレットから名簿を開いた。

そうして見つけたのだ。
自分、弟、主。知っている三つの名前を。

縁壱に関しては先程大々的に参加を知らされた為、特に驚きはしない。
これで縁壱が神を騙る男の傀儡と化したのが決定的となり、胸中でさざ波が音を立てたが。
それはともかく、考えねばならないのは主の事だ。

(やはり……無惨様もおられるか……)

無限城で自分が鬼狩りの相手をしている時、無惨はまだ解毒の真っ最中だった。
しかし屠り合いに参加しているのなら、自分の死後に解毒を済ませたのだろう。
無惨が参加しているのなら、部下である黒死牟が取る行動は決まっている。
参加者を排除しつつ無惨の元へと馳せ参じ、その後指示を仰ぐ。
もしここに自分以外の鬼がいてもそのように動いただろうし、黒死牟としても異論は無い。

そうだ、それこそが十二鬼月・上弦の壱としてのあるべき姿。
では何故自分は、そのように動こうとしないのか。

頭では分かっていても、体に力が入らない。
主の為に殺す。至極当然の思考に行き付いても、行動に移そうとすればどういう訳か「気力」とも言うべきものが抜けていく。
自分自身が俄かには信じられず愕然とする。
この場にいる唯一の部下として為すべき事を放棄しようとするとは。
戦意や思考のみならず、忠義すらも削ぎ落されたと言うのか。

「嘘……」

己の無様さを再認識する事すら放棄したくなった黒死牟の意識を引き戻したのは、震える少女の声。
つい先刻、縁壱の存在に心を乱された時もこの声に意識を戻されたのだった。
一つどうでもいい事を思いながら視線を動かすと、目を見開きたぶれっとを凝視するいろはの姿が見える。
黒死牟の知る者が参加しているのだ、他の参加者に同じ事があってもおかしくはないだろう。


939 : ロゴスなきワールド ─戦争の夜に─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:14:00 nVFCYNl20
尤もいろはの場合は知り合いの名前があったなどと単純な話ではない。
七海やちよ、深月フェリシア、鹿目まどか。
信頼する仲間達と、キレーションランドで共闘した見滝原の魔法少女。
名簿にあった名前が彼女達だけなら、強く動揺はしなかった。
やちよ達も殺し合いに巻き込まれているのは歓迎すべきではないが、一刻も早く合流しようと決心しただろう。
問題は後の三人。
里見灯花、柊ねむ、梓みふゆ。
何故死者の名まで記載されているのか。

灯花とねむの最期はこの目でハッキリと見た。
イヴと同化したアリナを止める為に、ドッペルを出現させ相打ちに持ち込んだ。
その記憶に間違いは無い。
みふゆだって直接最期を見てはいないが、ドッペルが暴走した魔法少女達を救う為に命を懸け、ももこと共に力尽きたと聞いている。
だが名簿の情報が正しいなら、現実に殺し合いの参加者として登録されている事になる。

「そんな……だって灯花ちゃんもねむちゃんも、みふゆさんだってもう死んで……」
「おかしい事ではあるまい……」

ポツリと、呟かれた言葉に顔を上げる。
自分を見つめる六眼、そこに宿る感情は読み取れない。
どういう意味で言ったのかすら分からないいろはへ、淡々とした言葉が放たれた。

「冥界の魔王か……神を騙った者かは知らぬが……奴らが死者の魂を現世に呼び戻す術を手にしているのは……疑いようの無い事……
 それが……人間であっても……私のような……鬼であっても……蘇生は可能なのだろう……」

別に何か思う所があって言ったのではない。
自分がここにいる事自体が、主催者が死者の蘇生をも可能だという何よりの証拠。
それを隠し通す理由も無いから、或いは無惨の為に動こうとしない己の不可解さから目を逸らす為にか。
理由は黒死牟本人にも釈然としないまま告げた内容に、いろはは口元を手で覆い暫し閉口した。
黒死牟の語った内容が理解出来ないのでも、狂人の戯言と思ったのでもない。
齎された情報をどうにか飲み込み理解しようとしている真っ最中なのだ。

死者の蘇生。
真っ当な人間ならば否定して当然の奇跡。
黒死牟の言葉が正しければ、彼はその奇跡の恩恵を受けたのだと言う。
馬鹿げている、と否定はできない。
出会って僅かな時間の間柄だが、下手な冗談を口にするような男でない事くらいはいろはにだって分かる。
しかしいろははそういった奇跡に心当たりがあった。
魔法少女の契約時、どんな願いでも叶えられるキュゥべえの力。
助かる見込みのない病気の妹だって治せたのなら、この世から消え去った魂を復活させる事だって不可能とは言い切れない。
優勝者の願いを叶えると主催者達は言っていた。
それはキュゥべえの持つようなのと同じ力を有している、或いはキュゥべえが檀黎斗に協力している。
どっちが本当かはともかくとして、殺し合いの為だけに灯花達が蘇生させられたと考えて間違いは無いのかもしれない。

(本当に灯花ちゃん達が…)

灯花達の命を殺し合いなんかに利用されたのは許し難い。
けれど黒死牟の言った通り生き返ったのなら、会いたいに決まっている。
ういと同じくらい大切に想っていた、本当の妹のような少女達なのだから。
それにやちよだって、みふゆが生きていると知ったらきっと喜ぶ。
いろは達よりも付き合いの長い親友なのだから、当たり前だ。

だが同じく、いろはには懸念する事もあった。

みふゆはきっと殺し合いを止める為に動くだろう。
マギウスを裏切り、鶴乃からウワサを引き剥がすのに協力してくれた人物だ。
今更魔法少女解放の為に誰かを危険に晒したりはしない筈。


940 : ロゴスなきワールド ─戦争の夜に─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:16:00 nVFCYNl20
では灯花とねむは?

いろはの率直な想いとしては、もう誰かを危険に晒すような事は絶対にしないと信じたい。
一方で、またイヴを使い魔法少女解放を実現した時と同じ真似を繰り返すのではないか。
自分の為に、今度は殺し合いの参加者を犠牲にしようとするのではないか。
そんな風に考えてしまう自分もいる。
二人を疑うような考えを抱く自分への嫌悪が湧き出す。

(でも……もしそうだったらその時は……)

その時は、もう一度止める。
灯花とねむが間違いを起こそうとするのなら、何度だって止めてみせる。
あの時掴めなかった手を、今度こそ掴んでみせるのだ。
だって自分は、灯花とねむ、そしてういのお姉ちゃんなのだから。

完全に切り替えられてはいないが、黒死牟の言葉には他にも気になる部分があった。
聞き間違いでないなら、彼は自分を『鬼』と言ったか。

「あ、あの、鬼っていうのは何ですか?」

直接聞くと、ジロリと六眼がこちらに向けられる。
威圧するような眼光に一瞬怯むも目は逸らさず、負けじと力強く見つめ返す。
彼の助けになると、彼が心の深い部分を教えても良いと思ってくれるよう頑張ると決めたのだ。
一々萎縮していては話にならない。

「……」

こちらを見上げる娘がおかしな部分で頑固なのは、さっきのやり取りで分かった。
どうせ「余計な事は聞くな」と言った所で引き下がらないのだろう。
子ども一人に怒気や苛立ちを露わにするのも、馬鹿馬鹿しい事この上ない。
ややあって小さいため息交じりに口を開いた。

「人では決して……到達出来ぬ領域に届く存在……。人の血肉を喰らい……己の糧とする者……。
 あらゆる傷も寿命も……鬼の肉体には無意味だ……」

最後に小さく、太陽には忌み嫌われているがなとだけ零し口を閉じる。
言い終わった後で、我ながら酷い矛盾を孕んだ内容に呆れを抱いた。
人では決して到達できない領域。
その言葉を真っ向から否定する存在を知っているのに、何ともまぁ大口を叩いたものだ。
生前ならば、無限城で死ぬ前の自分だったら相も変わらず弟への憎悪を燻らせるのだろうが、今は嫉妬より自分の惨めな最期への鬱々とした感情の方が先に来る。

説明を聞かされたいろはは案の定驚いた表情と化している。
何を思っているのかは安易に想像が可能。
こちらの正体が人喰いの化け物と知り、警戒と恐怖を引き上げているといったところか。
当然だろうなと黒死牟は思う。
善人の側に位置するだろうこの娘が、自分と同調するなど有り得ない。
力を求めて自分も鬼になりたいと言うような人間性を持っているでもない。
今からでも自分を助けたいとほざいた戯言を撤回するとしても、黒死牟は「だろうな」としか思わない。


941 : ロゴスなきワールド ─戦争の夜に─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:17:29 nVFCYNl20
が、黒死牟の予想に反していろははムッとした表情を作ったかと思えば、いきなり詰め寄って来た。

「どうして、そういう大事な事を先に言ってくれないんですか?」
「なに……?」
「太陽に嫌われてるって、つまり日が昇ったら黒死牟さんが危ないって事ですよね?
 それなら早くどこかの建物に行かないと駄目じゃないですか!」

捲し立てるいろはに、黒死牟は黙り込む他無い。
一体この娘は何を言っているのか、本当に理解に苦しむ。
太陽が顔を見せる前に移動すべきというのは、鬼である自分からしたら確かにその通りだ。
だがそうではないだろう。
何故今の内容を聞いて自分への、人を喰う化け物への嫌悪や恐怖ではなくそんな反応を返すのか。
無理に恐怖を覆い隠しているのではない、本気の心配と怒りを向けて来る。
環いろはという娘を理解出来ず木偶のように立ち尽くしていると、痺れを切らしたのか着物の袖を掴まれた。

「あっちの方に見える白い建物、とりあえずあそこに行きましょう!」

言いながらも袖は掴んだまま。
動く気が無いなら、無理矢理にでも引っ張って行くという意思表明のつもりだろうか。
流石にそれをされれば恥と自己嫌悪で消えてしまいたくなる。
放せと言えば素直に従ったが、動かなければ同じ事の繰り返しだ。
太陽の光を避ける場所への移動自体は理に適っている。
どこか億劫ながらも歩き出せば納得したのか子犬のように後ろを付いて来た。

移動を始めて間もない頃、いろはがあっと声を出した。
振り返ると申し訳なさそうな顔をされ、何か言う前に言葉を向けられた。

「あの、ごめんなさい。黒死牟さんの探したい人がいるかもしれないのに、勝手に行き先を決めちゃって……」

頭を下げられるが黒死牟には不要な行為にしか見えない。
知っている者は二人、屠り合いに参加している。
だからといってもしその二名を探すのを手伝うと言われても、首を縦に振る訳がない。
檀黎斗の傀儡となった縁壱は言わずもがな。
主に関しても…

「やめておけ……」
「えっ?」
「お前があの御方に会ったところで……無意味に命を散らすだけ……。
 不要な考えを抱き……愚かしい真似に出て……あの御方の手を煩わせるな……」

言った後で、自分は何をしているのかと柄にもなく頭を抱えたくなった。
もし無惨の元へいろはを連れて行ったとして、待っているのは悲鳴を上げる事すら許されずに訪れる死か、何らかの必要性を見出して鬼にされるかの二択。
だからいろはが無惨に会っても良い結果にならないのは本当だが、何故それをいろは本人に伝えたのか。
何故わざわざ警告するような事を言ってしまったのか。
自分は本当におかしくなったのか、蘇生される際に脳髄を弄られたのかと突拍子も無い疑いを持ち始め、ふと気付いた。


942 : ロゴスなきワールド ─戦争の夜に─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:18:36 nVFCYNl20
屠り合いには無惨も参加している。
現在地は不明だが、無惨も黒死牟と同じ島のどこかにいる。
なのに無惨から黒死牟に対して一向に何もされていない。
たとえ傍にいなくとも全ての鬼は無惨に知覚を掌握されており、黒死牟がこの島で見、聞いた全ての情報が無惨に伝わっているのだ。
当然自分がいろはを殺すどころか助け、未だ腑抜けたままなのも把握済みの筈。
それがどうした事か、念話の一つすら飛んで来ていない。
よもやと、黒死牟の脳裏にある可能性が思い浮かぶ。

(無惨様から刻まれた呪縛が……切れている……?)

それならば納得はいく。
上弦の壱としてあるまじき醜態を晒している自分に対し何の動きも無い事に。
縁壱も島のどこかにいるという状況で、唯一の駒である自分を使おうと念話すら寄越さないのに。
一度死んだのが原因なのか、それとも檀黎斗に体を弄られたからなのかは分からない。
仮に本当に無惨の支配下から抜け出せているとしても、今の黒死牟には余計にどうすれないいか分からなくさせるものでしか無いが。

またもや己を困惑させる事態から目を背けるように、歩く速さが心なしか上がった。


◆◆◆


全てを説明し終えると、天津はやけに喉が渇いているのに気付いた。
目の前の二人に一言断りを入れ、デイパックから水を取り出す。
何の変哲もない、市販のミネラルウォーターだ。
キャップを開け口を付けると、臭みの無いサラサラとした感触が喉の奥まで流れ込む。
本当ならば上質な茶葉を使った紅茶でも飲みたい所だが、そういったささやかな欲は堪えキャップを閉じる。

「さて、これが私の知っている限りでの檀黎斗に関しての情報だ。何か質問があるなら受け付けよう」

喉を潤し水を仕舞うと、天津はベッドに腰掛けた男達へ視線を戻した。

天津が檀黎斗に関して知っている全て。
ウイルスとして黎斗に感染された事に始まり、黎斗を追うようにして現れた檀正宗。
会社愛と事業愛という譲れないモノを懸けて行われた壮絶な親子喧嘩。
ゼインへの対抗策として黎斗をヒューマギアとして復活させるが、天津の思惑など知った事かとばかりにヒューマギア黎斗は行方を眩ませてしまった。

以上のひたすら黎斗に振り回された体験談を二人の男、承太郎と一海は余計な口を挟まずに黙って聞いていた。
途中で話を遮られなかったのは、天津としても有難い点である。
お陰でスラスラと説明が出来た。
質問があるかという問いに、まず手を挙げたのは承太郎だ。

「とりあえず、ヒューマギアってのが何なのか分からねぇ。そいつが檀黎斗の正体なのか?」
「…何だって?」

予想外の質問に天津の方が聞き返してしまう。
ヒューマギアを知らない。
つまらない冗談を口にしたので無い事は、真剣さを保ったままの表情からも分かる。
だからこそ余計に混乱してしまう。
飛電インテリジェンスが始めたヒューマギア事業は、今や日本国民全員が知る所にある。
街を歩けば至る所で目にしてもおかしくはないだろうに、それをよりにもよって分からないとは。


943 : ロゴスなきワールド ─戦争の夜に─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:19:45 nVFCYNl20
あからさまに困惑の表情を見せる天津の様子に、もう一人の男…一海が事情を察し口を開いた。

「なぁ、あんたはスカイウォールを知ってるか?」
「スカイ…?いや、申し訳ないが聞いたことは無いな」
「…成程。承太郎、どうやらこいつも“そういうこと”みたいだぜ」
「らしいな」

自分を差し置いて納得し合う様子の二人に説明を説明を求める。
すると返って来たのは、自分達がそれぞれ別の世界の住人であるとのこと。
一海の言うスカイウォール、天津の言うヒューマギア。
どちらもその世界の人間ならば、知っていて当然。というか知っていなければ逆におかしい存在だ。
天津と出会うより前に、承太郎達は互いが並行世界の出身である事に気付けた。
なら自分達以外の参加者もまた、異なる世界の出身だとしても不思議は無い。

驚きこそあれど納得した天津は改めてヒューマギアの事を二人に教える。
以前の自分であればここぞとばかりにこき下ろした内容を伝えたのだろうが、過去の話だ。
説明を終えると今度は一海の方が軽く手を上げ質問をしてきた。

「そのヒューマギアってロボットになった檀黎斗がこのふざけたゲームを始めた、って事で良いのか?」
「私も最初はそうだと思っていたのだが…。先程放送を行った檀黎斗にはヒューマギアとしてあるべき特徴が存在しなかった。
 推測だがあの檀黎斗は私と出会うより前の檀黎斗という可能性がある」
「それか天津の知る檀黎斗とは全くの別人。並行世界の出身て線も考えられなくはねぇ」

黒幕の黎斗がヒューマギアでないなら、それこそ天津が言った通り過去の黎斗が殺し合いを始めた。
更に承太郎の言う並行世界の黎斗という線もまた否定できない。
だがどの黎斗であろうとゲーム開発に異様なまでの執念を燃やしている、その点は共通していると天津は睨む。
ヒューマギアの黎斗が自分の命令そっちのけで、ゲーム制作に取り組んでいたのは記憶に新しい。
ハ・デスやその他の主催者の思惑は不明でも、黎斗が何を考えて殺し合いを始めたかは容易に想像が付く。
自身の考える最高のデスゲームを多くの者にプレイさせる為。
或いは、自分達が殺し合いを行う事で黎斗の考える最高のデスゲームは完成されるから。
何にしても巻き込まれた側にとっては迷惑以外の何者でもなく、既にゲームのせいで複数の死者まで生まれている始末。
例え自分が復活させたヒューマギアの黎斗とは無関係であっても、見過ごす事は出来ない。

改めて決意を固めると、一番大事な事を承太郎達に伝える。

「檀黎斗の事で私が知るのは無いが、君達に聞いておいて欲しい事がある」
「何だよ?急に改まった態度で」
「……私自身についてだ。予め言っておくが、これを聞いて君達がどんな行動を取ろうと私は責めたりはしない。
 ただ一つ、檀黎斗の情報に関して嘘は何も言っていないと誓おう」

前置きをする天津の瞳に緊張が宿っているのを見て取り、承太郎は無言で続きを促す。
一海もまた余計な口出しをしていい内容でないと察し、天津の話を待ちに入った。
二人が再度聞く姿勢になったのを確認すると、一呼吸置き話し始める。
罪の告白、とでも言うべき内容を。


944 : ロゴスなきワールド ─戦争の夜に─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:21:22 nVFCYNl20
自分が元の世界で何をしたのか。
人工知能アークに人間の悪意をラーニングさせるという愚行、それによりどれだけの悲劇が生まれたのか。
どれだけの人やヒューマギアを傷付けて来たのか。
承太郎も一海も、一度も口を挟まずに最後まで無言を貫いた。

「…以上が、私という人間がやって来た事だ。君たちに問いたいのは、そんな男と共に戦えるか否か、だ。
 無論、さっきも言ったが私を信用できないと突き放しても構わない」

天津の言葉に嘘は無い。
もし承太郎達が天津とは共に行動できないと言っても、その判断を責めようとは思わないからだ。
当時は自分の行いに何の疑いも持っていなかった。
しかし今となっては、或人との語らいで父の呪縛から解き放たれ、もう一度さうざーを抱きしめる事が出来たからこそ思う。
自分は何と愚かしい行為に手を染めたのだろうと。
己の犯した罪の重さを再度噛み締める中、先に口を開いたのは承太郎だった。

「何でわざわざそれを俺達に教えた?黙ってる方がテメーには都合が良いだろ」
「フェアじゃないと思ったからだよ。君達は本気で檀黎斗に抗うつもりのようだった。
 ならば私自身も半端な覚悟で奴を倒そうと言うのでないと示すのに、こういった方法しか思い浮かばなくてね」
「もし俺達がテメーと手を切りたいと言い出したらどうする気だ?」
「別にどうもしない。私一人になっても檀黎斗を倒すと言う方針は変わらない。
 信じてもらえるかは分からないが、この方針だけは1000%揺らがないと宣言しよう」

そうして再び沈黙が訪れる。
黙して二人の答えを天津が待つ中、今度はもう一人の男が沈黙を破った。

「償いの為に戦うってんならよ、俺らに協力して檀黎斗をぶっ潰せば良いだけの話、だな」
「…良いのか?私の罪を聞いた後でその答えは……」
「良いも悪いもお前本人が償いたいって言ってるんじゃねえか。だったら俺から反対する理由も無いってだけだ」

そう言った一海が思い出すのは、同じく罪を犯した仲間。
パンドラボックスの影響とはいえ多くの命を奪って来た男もまた、過去の罪に苛まれていた。
だがあいつは自分と万丈の言葉を受けたのもあるが、逃げずに元凶の地球外生命体と戦う道を選んだ。
天津も同様に過去の罪を悔い、それでも戦おうと言うのなら、その決意を否定するつもりは一海に無い。

「で、俺はこんな感じだけどよ。承太郎、お前も本当は手を切る気なんて無いんだろ?」

肩に手を乗せ告げて来る一海。
やれやれと言わんばかりにため息をつくと、承太郎もまた己の考えを口にする。


945 : ロゴスなきワールド ─戦争の夜に─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:22:28 nVFCYNl20
「俺はテメーが元の世界で何をしでかしたのかに興味はねぇ。ただ、殺し合いに乗る気は無いってんならそれで十分だ。
 考えが変わって乗るって言うんなら容赦はしねぇがな」

それっきり腕を組んで黙り込む承太郎。
無愛想な態度に一海は呆れ笑いを浮かべるも、天津には十分だ。
彼らは自分を共に戦う仲間と、自分の罪を知った後でもそう認めてくれた。

「感謝する。君たちの信頼を決して裏切りはしないと誓おう」

柄にもなく胸の奥が熱くなるのを感じながら礼を告げ、

正にそのタイミングで激しい物音が聞こえた。

「っ!?今のは…」
「どうやら派手な来客があったみてぇだな」

ただ単に目立つ施設を見つけたからや、傷の手当ての為に訪れたのでないのは明白。
それぞれドライバーを取り出し、音が聞こえて来た一階ロビーヘと走る。
現場に駆け付けてみれば、確かに招かれざる人物がいた。

「……」

ガラスが散乱したロビーへ立ち、承太郎達を睨む軍服の男。
見るからに殺気立った様子からは、友好的な態度は一切感じられない。

(野郎……)

外見だけなら人間そのもの。
しかし放つプレッシャーはNPCの怪物が小動物のように感じられ程重々しい。
まるで宿敵である吸血鬼、DIOと対峙しているかのようだ。
横目で見ると一海と天津も敵の危険性に気付いているらしく、強張った顔をしている。

三人の男達から最大限の警戒をされる当人、大尉は思う。
目の前の連中は自分を殺せるだけの者か否か。
答えは実際に殺し合えば分かること。
もし取るに足らない雑魚だったとしても、殺さない理由にはならない。

カチリと奥歯を軽く打ち鳴らす。
それが合図となり、爆発的な加速を以て化け物が人間達に牙を剥いた。


946 : ロゴスなきワールド ─魔界境界線─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:24:10 nVFCYNl20



近付いて殴る。
素手での戦いにおいて基本中の基本と言える動作。
銃どころかナイフ一本すら持っていないなら、当然距離を詰めねば拳も蹴りも当たらない。
だからこそ如何に素早く接近し、相手に対応させず殴りつけるか。
それが素手で戦う上でのポイントとなる。

「――ッ!!!」

では、今起こっているこれは何なのだろうか。
離れた位置にいる敵への接近、それで床が砕け散り椅子や案内板が天井に届くまで吹き飛んだ。
距離を詰めたら真っ直ぐに拳を突き出す。
その速さたるや、人間が目で追える限界を軽く超えている。
威力もまた人間が出せるソレではない。人体どころかコンクリートですらいとも簡単に破壊可能な程。

近付いて殴る。
大尉が行えばたったこれだけの動きですら、絶大な脅威として機能するのだ。
だから彼は化け物。人を超えた力を持ち、人に恐れられて来た人狼。

「スタープラチナ!」

だが人は絶対に化け物には勝てないと、誰が決めたのか。
大尉と相対する少年は空条承太郎。吸血鬼との戦いをも制した最強のスタンド使い。
力強い呼びかけに応え現れる、白金を名に冠した拳闘士。
近接戦においてトップクラスの性能を誇る自慢の拳が、大尉の拳と真っ向から激突。
顔を熟れたトマトのように潰される末路を見事に回避した。

「テメェ…」

拳を叩きつけ合った瞬間に、敵の強大さを改めて理解。
冗談のようなスピードもさることながら、パワーもまた桁違い。
生身だというのにスタープラチナを出さねば止められず、しかも相手の拳は破壊されていない。
戦闘に手を抜く気が一切無いとはいえ、これは全力で当たらねば勝ち目は無いと確信。

「オラオラオラオラオラオラオラオラァッ!」

二撃目、三撃目と同時に放たれる互いの拳。
人狼とスタープラチナ、どちらも破壊力・スピード共に引けを取らない。
顔面や伝いを狙った拳はお互い悉く防がれる。
険しい顔の承太郎とは反対に、大尉は人形染みた無表情。
されど攻撃の勢いが衰える事は無い。


947 : ロゴスなきワールド ─魔界境界線─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:25:22 nVFCYNl20
「「変身!」」

『潰れる!流れる!溢れ出る!ロボット・イン・グリス!』

『When the five horns cross, the golden soldier THOUSER is born.  Presented by ZAIA.』

突如響くのは異なる二つの電子音声。
グリスとサウザー、黄金色の装甲を纏った仮面ライダーが変身を遂げていた。
一海は北都代表の仮面ライダーだけあって非常に高い格闘能力を持ち合わせている。
天津もまた、45歳という年齢ながら仮面ライダーアバドン数名を生身であしらえるくらいには身体能力が高い。
だが変身している状態ならともかく、生身で大尉の動きに反応するのは不可能。
迫る拳に唯一対処出来たのは、同じ超常の能力を持つ承太郎のスタープラチナくらいだ。
その為暫し遅れを取ったものの承太郎のみに任せるつもりは無く、両名共に変身をしたのだ。

「ゥオラッ!」

駆け出しながらグリスはドライバーを操作し、両腕にツインブレイカーを装備。
慣れた感触を確かめ、承太郎と交戦中の大尉に殴りかかる。
生身の相手に仮面ライダーの力を使うなど、普通は有り得ない。
しかし、スタープラチナと生身で渡り合う輩が普通に当て嵌める方がおかしい。

「ぐっ!?」

くぐもった声は承太郎から。
グリスの接近を察知した大尉は拳の応酬を中断、代わりにスタープラチナへ前蹴りを放つ。
両腕のガードこそ間に合ったが、本当にただの蹴りかと疑いたくなるような衝撃が来たのだ。

本体へのフィードバックにより両腕に痺れを感じる承太郎。
僅かに顔を顰めるも、既に大尉は標的をグリスに変更。
高速回転する打撃装置、レイジングバイルは仮面ライダーの装甲であろうと削り取る威力だ。
それも当たればの話。
体へ風穴を開けられる前にグリスの腕部を掴み、五指に力を込める。
ヴァリアブルゼリーを硬化させた装甲がミシリと嫌な音を立て、このままでは装甲諸共へし折られるのは明白。
阻止するべく左腕のツインブレイカーで殴るが、そちらもアッサリと掴まれた。

仲間の危機を黙って見ているだけの者はここにいない。
三人目の男が動く。

脚力増強装置により爆発的な加速で以てサウザーが急接近。
突き出されるは刺突剣型の装備、サウザンドジャッカー。
顔を逸らし回避されたが、大尉の頬には赤い一本線が付けられる。
更に僅かながら両手の力が緩んだ、またとないチャンス。

「放し…やがれぇっ!!」

雄叫びと共にグリスの力が増す。
スーツ内部の伸縮ゲルパッドが腕力を強化し、拘束を強引に振り払った。
腕の自由を取り戻したグリス、掴まれていた際の痛みを無視して大尉へ腕を突き出す。
別方向からはサウザンドジャッカーによる突きが迫り、このままでは二つも穴が開けられる。
大尉は微塵も動揺を態度に表さず対処へ回った。
リーチがあるサウザンドジャッカーが先だ、モデル顔負けの長い脚で刀身を蹴り上げる。
サウザンドジャッカーを握った右腕がサウザーの意思とは無関係に跳ね上がった。


948 : ロゴスなきワールド ─魔界境界線─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:27:41 nVFCYNl20
これで容易くがら空きの胴体が完成。
続けて視線を向けずに体を捻り、ツインブレイカーを回避。
ただ避けて終わりではない。
回避と同時にグリスの腕を再び掴む。
今度はさっきのように握り潰す為ではない、突進した勢いを後押しするかのようにグリスを突き放す。
ツインブレイカーが向かう先はサウザーの胴体、よりにもよって味方へ本気の拳が向けられた。
慌てて引っ込めようにも既に遅く、サウザーの対処も間に合わない。

「変身」

『ロックオン!ソーダ!チェリーエナジーアームズ!』

グリスとサウザーだけでどうしようもないのなら、もう一人が何とかするだけ。
エネルギーを変化させた矢がレイジングバイルに命中。
衝撃に狙いが逸れ、どうにかサウザーの胴体を掠めるだけで済んだ。
同士討ちを防いだのはサクランボの装甲を纏ったアーマードライダー、シグルド。
大尉の意識がグリスたちに向かった隙に変身を完了させた承太郎だ。

目論見が失敗に終わった大尉は己の肉体で直接仕留めに掛かる。
そこへ殺到するは無数の矢、シグルドがソニックアローを連射しグリス達への攻撃を阻止しているのだ。
エナジーロックシードのエネルギーを変換させた矢はアーマードライダーのみならず、ロストスマッシュにも有効打を与えた。
一発ごとの威力の高さに疑う余地は無いが、だからといって大尉に対処不可能とはならない。
シグルドのカメラアイには最小限の動作のみで矢を躱し、接近する大尉がハッキリと映し出されていた。

無数の矢という攻撃方法はゲーム開始直後に遭遇した魔法少女、環いろはとの戦闘で既に見覚えがある。
発射速度と勢いなら弦を引き絞るという動作が必要なソニックアローより、照準を合わせるだけで矢を連射したいろはのクロスボウが上だった。
そのいろはの矢ですら大尉にアッサリ対処されたのなら、威力こそ上だろうと連射性で劣るソニックアローを避けられない理由は無い。
何より大尉はセラスとの戦闘で銃火器の掃射をも凌ぎ切った化け物だ。

「オラァッ!」

シグルドの武器はソニックアローのみではない。
変身者である承太郎本来の異能、スタープラチナを出現させ迎撃。
敵スタンド使いを再起不能に追い込んだラッシュだが、此度の相手は傷の一つすら簡単にはくれてやらない強敵。
スタープラチナと真っ向から殴り合えるのなど、DIOのザ・ワールドくらいのもの。
それがどうだ、この男はあろうことか生身で互角の殴り合いを繰り広げている。
否、互角以上と言って良いのかもしれない。
徐々にだが、スタープラチナよりスピードが上がっている。

「退がれ!」

『Progrise key confirmed. Ready to break』

短いサウザーからの警告。
スタンドを解除すると言われた通りに飛び退く。
味方の巻き添えを気にする必要が無くなったサウザーが得物を地面に突き立てる。
サウザンドジャッカーから放たれたのは電撃。
レイダー相手にも使ったプログライズキーを装填しアビリティを付与したのだ。
標的となった大尉だがシグルドと同じように、跳躍して電撃を回避。
サウザーが警告を発した時点で何か来ると分かっていたのだから、馬鹿正直に食らってはやらない。


949 : ロゴスなきワールド ─魔界境界線─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:29:06 nVFCYNl20
『シングルフィニッシュ!』

『チェリーエナジースカッシュ!』

着地した大尉へ襲い来るはエネルギーの弾と刃。
ガンモードのツインブレイカーと、ソニックアローのシャフト部分から発生させたエネルギー刃による挟み撃ち。
スマッシュやインベスならばこれだけで片が付く。
というよりオーバーキルな連携技。

「なっ!?」

それでも届かないのは、誰が上げたか分からない驚愕の声からも明らかだ。

大尉は何を足元に指四本を突き刺し、畳を引っ繰り返すかのように床を引き剥がした。
地面に顎が接触するかと言う程に姿勢を低くし、グリス目掛けて床を投擲。
床は回転する刃のようにグリスの脚部へ直撃。
装甲に覆われている為潰されも切断もされなかったが、大尉の腕力で投擲されたのだ。
無視できない痛みに悲鳴が出た。

グリスへの命中を確かめないまま、大尉はシグルドヘと駆ける。
体勢は低いままだ、背中をエネルギー刃が掠め軍服に焦げ目が付く。
その程度では足を止めるに至らない。

「スタープラチナ・ザッ!?」

ここでシグルド…承太郎が切るのは自身が持つ中で最も強力な力。
DIOとの決戦で開花させた時間停止だ。
しかし時は変わらず動いたまま。何故か。
時を止めようと動いた寸前で胸部に走った痛みが原因だ。

「くっ…」

痛みの原因は即座に判明した。
何時の間にやら大尉の右手に握られた、黒光りする物。
ソレが何のか、承太郎でなくとも知っている。
銃。弾を込めて引き金を引くと離れた距離にいる人間を殺せる道具。
だが果たして大尉が持つソレを銃に当て嵌めて良いのか、そんな場違いな思いが承太郎にあった。
大尉が手にするのは銃身が異様に長い。
拳銃など映画やドラマ、ホル・ホースのエンペラーくらいしか見た事の無い承太郎でも、流石におかしいと分かる造形。
そも、ただの拳銃程度アーマードライダーの装甲なら軽く弾き返せる。
痛みどころか痒いとすら感じない。
なのに現実にはシグルドの装甲越しにも痛みが来た、攻撃を咄嗟に止めてしまう程の。
外見に違わず威力も馬鹿げている銃、という事か。

(野郎には過ぎた道具だな…)

承太郎が内心で悪態を吐くのも当然である。
大尉が撃った銃の名はジャッカル。
ヘルシング機関のジョーカー、アーカード専用に製作された特製の拳銃だ。
ジャッカルは吸血鬼や食屍鬼と言った化け物を殺す為の武器では無い。
イスカリオテ所属、アレクサンド・アンデルセン神父用に作られた物。
化け物よりも化け物染みた能力を持つアンデルセン相手に、元々使っていた装備だけでは不十分。
そこで対アンデルセン用にオーダーメイドしたのがこのジャッカル。
アンデルセンへの対抗策として作られた以上、当たり前だが人間に扱える代物ではない。
アーカードにも引けを取らない、最上級の化け物である大尉ならば使いこなせるが。


950 : ロゴスなきワールド ─魔界境界線─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:30:25 nVFCYNl20
『Progrise key confirmed. Ready to break』

と言った銃の詳細を知らない承太郎達には関係の無い事だ。
装填したプログライズキーの力で、回転切りを仕掛けるサウザー。
相手の武器に一々驚く暇が会ったら、攻撃を続けるべき。
行動で表すも届かない。
サウザンドジャッカーを素手で掴まれ、強制的に回転を止められた。
手袋が擦り切れ掌の皮が剥がれてもお構いなし。
どうせすぐに再生される。

「なに!?」

敵の身体能力が桁外れと分かってはいたが、流石に驚きを隠せない。
サウザーの驚愕に嘲笑の一つすら浮かべずに、大尉は銃口を添える。
装甲の上からだというのに異様な冷たさが体に感じ、すぐに痛みへと変化した。
至近距離で何度もトリガーを引き、炸裂徹鋼弾が直撃。
ZAIA製の装甲であっても痛みを完全には殺せない。

カチリという乾いた音。
弾切れまでは一瞬であっても、サウザーが感じた痛みは強烈だ。

「オラッ!」

大尉をサウザーから引き離すべく、グリスが拳を突き出す。
脚には鈍い痛みがジンジンと来てはいるが、耐えられない程の激痛にもあらず。
元いた地球での戦いだって、無傷で済ませられた事など数えるくらいしかない。
なら一々痛みに構うよりも敵を殴る事を考える方が建設的だろう。

バックステップで躱されるが予測済み。
スクラッシュドライバーを操作。
両肩部の装甲、マシンパックショルダーより黒煙にも似た液体が噴出。
これはスクラッシュドライバーを用いたライダーのエネルギー源、ヴァリアブルゼリーだ。
ツインブレイカーを装着したままの両腕に力が漲る。

『スクラップフィニッシュ!』

ヴァリアブルゼリーの噴射で爆発的な加速力を得たグリスの放つパンチ。
直撃すればマトモな死体は残らない威力の技を前にし、大尉が取る手は跳躍しての回避。
退いた所でグリスの加速では即座に追いつかれ、真っ向から迎え撃つのも得策とは言えない。
十分理に適った行動。グリスの読み通りだ。

『Progrise key confirmed. Ready to break.』

空中という逃げ場の無いフィールドに自ら飛び込んだ。
そうなればこっちのものとサウザーが得物を地面に突き立てる。
サウザンドジャッカーにはプログライズキーが装填済み。
元は滅が所有するスティングスコーピオンだ。
地中から生成されたのは蠍の尾を思わせる伸縮刺突ユニット、アシッドアナライズ。
巨大な毒針が大尉を貫かんとし、命中を確信。


951 : ロゴスなきワールド ─魔界境界線─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:31:37 nVFCYNl20
だが当たらない。
被害を被ったのは軍服の切れ端のみ。
大尉本人は足場のない場だろうと関係なしに回避行動へ移り、見事成功。
悠々と床に降り立ち、背後へと振り返った。

「チッ!」

空のマガジンを取り出すと、シグルド目掛け投擲。
躱すと背後の壁に突き刺さった。
人狼の腕力で投擲すれば、あらゆるガラクタだろうと立派な凶器と化す。
しかし当たってないなら問題無しだ、承太郎は止まらない。
先程は阻止された能力を今度こそ発動する。

「スタープラチナ・ザ・ワールド!」

時が止まる。
殺し合いで数回時を止めているが、DIOとの戦闘時よりも短い時間しか止められないのは把握済み。
ならば与えられた僅かな猶予は無駄に出来ない。
ソニックアローにエナジーロックシードを装填し、スタープラチナでラッシュを放った。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」

どれだけ驚異的な能力を有していようと、時間停止中は無防備。
回避も防御も許されず、一方的に殴打の嵐を受けるだけ。
加えて殴った際の感触で分かる。
この男は真紅の騎士やNPCの怪人程の堅牢さは無い。
スタープラチナ拳は問題無く効いていると。

確信した所で安堵もしなければ勢いを弱めたりもしない。
そのような考えで倒せるような相手で無い事は、これまでの攻防で嫌という程に分かった。
加減も容赦もする気は皆無。最後の一発が叩き込まれた。

「オォォォラァァァッ!!!」

そして時は動き出す。
大尉からしたら理解不能だろう。
予備のマガジンをジャッカルに装填しようとした筈が、どういう訳か体が宙に浮いているのだから。
理解させる気は承太郎に毛頭無い。

『ロックオン!チェリーエナジー!』

スタープラチナのラッシュだけで終わらせはしない。
既にエネルギーが充填されたソニックアローの弦を引き絞る。
矢が狙う先は宙に浮いたままの大尉だ。

通常時と違いサクランボの形状をした矢が大尉に命中。
茎の先に揺れる二つの果実に挟み込まれる。
数多の戦場を駆け抜け、撃たれ、斬られ、爆撃されたが初めて感じる痛みだ。
散々空中で痛めつけられた挙句に落下、奇跡的に形を保っていた受付に叩きつけられた。

「……」

ようやっと与えられたマトモなダメージ。
相手がNPCであれば、今ので確実に倒せている。
しかし無惨にも破壊された受付跡を睨む承太郎に、気を抜く素振りは一切見受けられない。
宿敵であるDIO、最初に戦った真紅の騎士、一海が強く警戒するエボルト。
檀黎斗によって集められた参加者は、いずれも一筋縄ではいかない化け物揃い。
スタンドや仮面ライダーの力があっても苦戦は免れないような連中ばかりだ。
軍服の男もそう。
今の攻撃だけで倒せたとは思えない、それくらいの力と存在感が相手にはある。


952 : ロゴスなきワールド ─魔界境界線─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:33:25 nVFCYNl20
「倒した、って訳じゃ無さそうだな」

脚を擦りながら隣に並んだグリスの言葉に、無言で頷く。
その隣を見るとサウザーもまた警戒心を緩めず承太郎達と同じ方を睨んでいる。
時折胴体に手を当てては小さく呻いてはいるが、今は脅威が本当に沈黙したか否かが重要。
傷だらけにされるのには慣れているのだ。
自分よりも年下の仲間はまだ立っている。
なら今更この程度の痛みで情けなく悲鳴を上げたりはしないと、サウザンドジャッカーを強く握り締めた。

三人の警戒が徐々に高まりつつある中、ソレは唐突に起きた。

「「「―――――ッ!!!!!」」」

ぶわり。そんな擬音がマッチする現象。
全身の肌が総毛立つと言うのか。
三人共に仮面ライダーへ変身しているにも関わらず、堅牢な装甲など無意味とばかりに細胞の一つ一つが刺激される。
簡単に死ぬような相手でないとは思っていた。
まだ戦わなければならいとしても、続ける心構えは十分に出来ていた。
だとしてもこれは、このプレッシャーには冷汗を抑えられない。

敵はまだ姿を見せていない。
それでもこの瞬間、改めて承太郎達は理解した。

人間が化け物に挑むとはどういう事なのかを。

瓦礫が消し飛ばされ、再び大尉が姿を見せる。
着込んでいた軍服は所々が破損し、見え隠れする肌には痛々しい傷跡が刻まれていた。
目に入る情報をを承太郎は不自然に感じる。
時を止めた上でのスタープラチナのラッシュと、シグルドの高威力の技。
それらが直撃したというのに、負傷が少な過ぎるのだ。
仮面ライダーのような装甲を纏っているならまだしも、あの軍服に大きな耐久性があるとは思えない。

と、ここで別の事にも気付いた。
自分が刻みつけた傷、それらが徐々に塞がっているのだ。
人間の自然治癒とは明らかに違う、再生と言った表現がしっくりくる。
つまり敵はDIOや真紅の騎士と同じ化け物。
驚きはせず、むしろ納得がいった。

尤も傷の再生など見なくとも、敵が人間でないのは分かった事だ。

「どうやらマジに怪物だったみてぇだな」

呆れとも感嘆とも取れるグリスの言葉は正しい。
こちらを睨み付ける赤い瞳、その下にある部分が変化している。
耳元まで裂けた大きな口、中から覗くのは剣のように鋭利な無数の牙。
童話に登場する人間に化けた獣が正体を晒すように、大尉もまた人狼としての顔を露わにし始めた。

何故今になって化け物の顔を見せるのか。
向こうが話さなくとも、理由くらいは簡単に察せられる。


953 : ロゴスなきワールド ─魔界境界線─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:34:42 nVFCYNl20
「つまり…小手調べは終わりという事ですか」

天津の呟きを肯定するように、大尉が牙を打ち鳴らす。
これまでだって苦戦していたと言うのに、相手からしたら準備運動に過ぎなかった。
全く持って笑えない、或いは笑うしかない。
そうやって現実逃避出来れば楽なのだろうが、やった所で待っているのは自分達の全滅。
生き残るにはシンプルに戦って勝つ、それ以外に無い。

「面白ぇ。こっからが祭りの本番ってワケだ」

拳同士を打ち合わせグリスが笑う。
ドルオタ、兄貴分として以外にも、戦闘狂の一面があるのが猿渡一海という男。
逆境に立たされていようと猛烈に笑って見せるのは、一海らしいものだ。

「全く、開始早々骨が折れる…」

一海の様子に苦笑いしつつ、思わず愚痴を零すのは天津。
このような厄介な怪物を参加者させるとは、つくづく檀黎斗には呆れるしかない。
それでも償いの為に、共闘を受け入れてくれた二人の信頼を裏切らない為に、戦いを放棄はしない。
今もどこかでふんぞり返っているだろう自称神を引き摺り下ろすまで。

「…来るぞ」

承太郎の一言が再戦の狼煙。
極限まで高まった緊張感が弾け飛び、四人の男が激突する。

傷付いた人々を治療する為にドクター達が日々奮闘する聖都大学附属病院。
患者の命を守る為の戦場は今、人間と化け物による闘争の場へと化した。





承太郎、一海、天津。
大尉との戦闘に集中する三人は気付いていない。
気付けない、と言った方が正しいだろう。
何せ大尉を相手に他へ気を割くような真似は、自殺行為以外の何者でもないのだから。

もし三人が気付けたとして、何かが変わったかどうかは知り様が無い。
より良い結果になったかもしれないし、最悪の末路を迎えたかもしれない。
いずれにせよ、彼らが知ったのは全て終わってからのこと。
だから今は、気付かないまま物語は進む。

戦闘が起きているのは病院内だけでは無い。
病院の外でも同じく、激戦と呼ぶに相応しい光景が広がっていた。

外では一体何が起きているのか。
そちらについてもそろそろ明かすとしよう。

魔法少女、鬼、オーバーロード。
人の道を外れた者達による、もう一つの闘争を。


954 : ロゴスなきワールド ─魔刃血風譚─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:37:02 nVFCYNl20
◆◆◆


考えてみれば当たり前の事だった。
自分達がいるのは殺し合いの会場として設置された島。
何時危険な参加者と遭遇してもおかしくはない、というより遭遇しなくては殺し合いが成り立たない。
場所がどこか、時間帯がどれかに関係無く突然戦闘が起きて当然なのだ。

故に何もおかしい話ではない。
自分達が目的地としていた施設で既に争いが起こっているのは、驚くような事ではない。
と、頭で理解していても一切動揺するなと言うのは無理な話。

「あれって…」

現にこうして聖都大学附属病院に到着したいろはは目を見開いていた。
横に立つ黒死牟もまた僅かに目を細め、いろはと同じ方へ視線を向けている。
離れの島と本島を繋ぐ橋を渡り、夜でも存在感のある建物へ近付いた所で気付いた。
外から出も聞こえて来る激しい音に。
ガラスが割れ、壁が破壊され、敵意を隠そうともしない怒声が響く。
中で何が起こっているかは明白。
自分達よりも先に訪れた参加者同士の戦闘以外に有り得ない。

(行かないと…!)

戦いが起きているなら、急いで向かわねばならない。
中にいるのがやちよ達なら協力して危険な参加者を止めなければならないし、知っている者がいなくても放っては置けない。
見なかった事にするつもりなど、いろはには無かった。

「……」

一方で黒死牟は考え込む。
戦闘が始まっている事にはさして関心を抱かない。
それより問題なのは、中にいるのが誰なのかだ。
もし無惨や縁壱が参加者を殺している真っ最中なのだとしたら、自分はどうすべきかが分からない。

無惨であれば、主の手を煩わせる必要は無しと代わりに殺すべきなのだろう。
尤も、主が今の自分に生かす価値があると見ればの話しだが。
腑抜けた敗残兵をも受け入れるような、寛容な性質で無いのだから。

縁壱であれば、益々以て思考が定まらなくなる。
無惨にすら刃の届かない自分が縁壱から勝利を奪い取るのは、余りにも非現実的。
それだけではない。
もし縁壱が自分の意思で悪鬼に堕ちた兄を斬ろうとするのなら、思う所は多々あれど全霊を以て迎え撃つのみ。
だが今の縁壱は檀黎斗の命令に従うだけの、意思無き人形と同じではないか。
そのような傀儡と化した弟と対峙した時、自分自身がどうなるのかさえ黒死牟には予想が付かない。

やる気に満ち溢れるいろはとは正反対に、黒死牟は迷いという名の鎖で己を縛り上げ、

異次元の速さで刀を抜いた。


955 : ロゴスなきワールド ─魔刃血風譚─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:38:03 nVFCYNl20
無数に放たれる、三日月状の斬撃。
不可視の殺意が切り刻むは、隕石のように落ちて来た火球。
自身といろはを焼き潰さんとした殺意の塊は全て、線香を思わせる儚い光を発し消滅。
消え去ったのはあくまで今の攻撃のみだ。
火球を撃ち放った襲撃者へ、刃は届いていない。
故に刀はまだ収めない。
隣には魔法少女へ変身したいろはが、クロスボウを構えている。

二人の前に現れたのは赤い霧。
不規則に動き回った霧は地面の近くで二足歩行の生物の形を作る。
但しソレは、人間では無かった。

「まタ新しイ猿どもカ…!」

真紅の外骨格と両肩の突起物。
見ようによっては騎士にも似ている異形、オーバーロードインベスのデェムシュ。
檀黎斗主催のゲームにおいては、三度目の参加者との遭遇であった。

結芽と城之内に逃げられた後、デェムシュの怒りは収まらなかった。
何故フェムシンムである自分が、下等な種族の猿どもにコケにされなければならない。
何故自分達の玩具に過ぎない猿どもに傷を付けられ、挙句に未だ一人も殺せていない。
ロシュオ配下のオーバーロードの中でも特にプライドの高いデェムシュにとっては、耐え難い屈辱。
一刻も早く逃げた猿どもを殺さねば、怒りで気が狂ってしまいそうだった。

最初に自分を殴り飛ばした二人の猿。
自分を切り裂いた小娘の猿と、そいつの後ろで小細工をしていた猿。
優先的に殺したいのは山々だが、どこへ逃げたかが分からない。
当初の予定通り街に行けば連中がいる可能性もあると睨み、体を霧状に変化させ高く浮遊した時だ。
自分がいる場所から北上した場所に、白い建造物らしき物が確認出来たのは。
街へ向かおうとしていたデェムシュはここで考えを変えた。
アーマードライダーらしき姿に変身した猿と、奇妙な人形を操る猿。
白い建造物はあの二人と交戦した砂浜からそう遠くない場所にある。
と言う事は、あそこへ向かった可能性は決して低く無い。
仮に例の二人がいなくとも他に猿がいるならそれはそれで良い。
要はストレス発散の為の道具が見つかれば構わないのだ。

そうして予定変更し白い建造物、聖都大学附属病院へ到着したデェムシュは早速標的を発見した。
必ずや殺してやらねば気が済まない四人ではなく、初めて見る猿ども。
内一人はインベスとも違う異形のようだが関係無い。
フェムシンムの同胞ならまだしも、所詮は人間と同じ取るに足らない下等な猿。
一切の躊躇をせずに火球を放ったが、全て斬り落とされた。

小癪な猿を前に苛立つデェムシュを、黒死牟は冷静に観察する。
人間では無いが鬼でもない、未知の赤い異形。
誰と交戦したのか知る由も無いが、中々に手酷くやられたのだろう。
赤い肉体には所々傷が付けられていた。
それらの負傷があっても弱さは微塵も感じられ無い、熱した刃のような怒気を放っている。
剣を交えずとも分かる、紛れも無い強者であると。
それとは別に少々気にかかる事もあった。


956 : ロゴスなきワールド ─魔刃血風譚─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:39:34 nVFCYNl20
(この声は……あの柱のものか……?)

赤い異形に既存の生物と同じ、口らしき器官は見当たらない。
しかし言葉を話しているのだから、発声は行えるのだろう。
気になったのは異形の声、それに黒死牟は聞き覚えがあった。
無限城で自身を滅ぼした岩の呼吸の使い手と、赤い異形の声が異様に似ている。
こちらへの嘲りを露わにした異形と岩柱ではまるっきり別人だとは分かるが、それにしたって似過ぎではないか。

ふと思い浮かんだ一つの可能性。
それはこの赤い異形の正体が、あの岩柱なのではないかというもの。
人間が無惨の血を与えられて鬼になるように、赤い異形もまた元は人間だったのではないだろうか。
檀黎斗の手で人間を捨てさせられた岩柱の成れの果て、それこそがこの赤い異形なのでは。
そこまで考えて、それは無いなと自分の考えをあっさり否定する。
あの柱は人として生き人として死ぬ事を誇りに思うような男だ。
力への執着や人である事への絶望で、自ら化け物になるのを望んだりはしないだろう。
それに己の目を以てすれば分かる。
岩柱と赤い異形は肉体の作りがまるで違う。
人間で無くなった影響だとしても、ここまで別物ならそもそも別人と考える方が自然である。

「あなたはどうして私達を襲ったんですか…?」
「下らン!猿を仕留メルのニ理由なドあルもノカ!」

黒死牟が割とどうでもいい事を考えている一方で、質問をバッサリと切り捨てられたいろはは顔を強張らせる。
最初に襲って来た軍服の男と違い、一応意思疎通は取れる相手だ。
だが返って来た言葉に思わず眩暈がしそうになった。
分かり易くこちらを下に見る言葉、お人好しないろはとて言葉で武器を収めてくれる相手でないのは嫌でも分かる。
だったら、戦ってどうにかするしかないだろう。
不要な戦闘は好まない少女だが、戦わねばならない局面で今更尻込みもしていられない。

「消え失セろ猿ドもガァッ!!」

大地を震わせるような怒声。
無論激情を声に出して威圧するのみがデェムシュの行動ではない。
両手で握り締めた愛剣を振り下ろす。
下級インベスを大きく引き離した能力を持つオーバーロード。
その専用武器だけあって、一撃の破壊力が如何程かは今更説明するまでもないだろう。

「……」

頭部をかち割らんとする両手剣を前にし、黒死牟の動きに無駄はない。
同じく両手で柄を握り締めた得物で以て迎え撃つまで。
半円を描くように斬り上げれば、デェムシュの剣は髪の毛一本にすら掠らず弾かれた。
鼓膜を震わせる金属音は、戦場に響き渡るより前に怒声によって掻き消される。

「貴様ァ…!」

腕を跳ね上げられ、がら空きの胴体へと刃を走らせる。
敵が雑兵程度の力しか持っていないなら、これだけで片が付いた。
そのような結末をデェムシュは断じて認めない。

「ヌゥン!」

憎たらしい猿どもに付けられた傷が新しい胴体へ、また一つ傷が生まれる。
そうはならなかった、跳ね上がった両腕を再度振り下ろす。
隙を隙だと感じさせない速度、黒死牟の刀が弾かれた。
防御に成功したならばこのまま攻めに転じる。
相手が得物を構えるならばへし折って肉体へ到達させようと、横薙ぎに振るう。


957 : ロゴスなきワールド ─魔刃血風譚─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:40:47 nVFCYNl20
大振りながら鈍重とは程遠い速さ。
だが速さと言うならば、黒死牟とて引けは取らない。

力任せにへし折ってやる筈だった細い刀身で、己の愛剣が止められている。
視界から得られる情報はデェムシュに更なる怒りを齎した。
怒りに身を任せ、されど剣士としては完成された動作で黒死牟を殺しに掛かった。

その直前で異変が起こる。
チクリと、唐突に外骨格を刺激する感触。
それも一つではない。
二つ三つ四つと、連続して針で突かれたような痛み。
というよりはむず痒さに近いだろう。少なくともダメージには全くならない。

「脆弱極まリなイ!」

蚊でも追い払うかのように腕を振るい、刺激の原因を払い落とす。
それでも次から次へとデェムシュへ向かうのは、いろはの放ったクロスボウの矢。
淡いピンクの輝きを伴った矢の勢いは、一般的なボウガンとは大違いだ。
矢をセットし、照準を合わせ、引き金を引き、また矢をセットする。
こういった工程がいろはには必要無い。
左腕に装着したクロスボウを構え、後はいろはの意思一つで常に発射し続けられる。
魔力が続く限りはほぼ無制限に撃てるのもあって、装填という隙も存在しない。

(効いてないか…)

矢を撃ちっ放しにしながら、厳しい現実を噛み締める。
連射性こそ優れているものの、いろはの矢はデェムシュの外骨格を貫けない。
一点集中して撃ち続ければ頑丈な肉体でも亀裂を入れられる可能性はある。
その前に自分の魔力が尽きる方が先の気もするので、実行には移さないが。
だがダメージがロクに与えられないからと言って、無駄と決めつけるのは早計。

矢を鬱陶しく感じ振り払ったという事は、意識をいろはの方にも向けた事だ。
剣を斬り結んでいた相手から僅かでも目を逸らした事に他ならない。
時間にすれば5秒にも満たない、されど鬼を相手にしては致命的な隙。
尋常ならざる肺活量にて行われる呼吸、血液が沸騰し指の端まで力が漲る。

――月の呼吸 壱ノ型 闇月・宵の宮

繰り出されるは黒死牟ただ一人に許された呼吸法。
焦がれ続け、狂わされた太陽へ無謀にも近付こうと足掻き続けたその結果。
単純な抜刀術を更に磨き上げ、月の呼吸の基本となる型へと昇華させた技。
距離が開いていようと瞬時に接近し斬るが、此度は至近距離で放たれている。
最年少ながら天才的な剣士である霞柱、時透無一郎にすら回避や防御を許さなかった、悪夢の如き速さ。
人間であろうとなかろうと、等しく刃の餌食と化す。


958 : ロゴスなきワールド ─魔刃血風譚─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:42:09 nVFCYNl20
しかし忘れるなかれ。
相手もまた化け物。上弦の鬼とも肩を並べる強者である。

刀身より伝わるは何百何千と感じ取った手応え。
肉を斬り裂き、骨を断ち、命を終わらせた事への実感。ではない。
硬い、鬼の膂力を以てしても斬れぬ、砕けぬ異様な感触。
眼を六つ全て向けなくとも何をされたか分かる。
横薙ぎに振るわれた刀、異次元の速さとも恐れられた一撃と同じ速さで剣を振るった。
だから斬撃は相手の肉体に届いていない、同等の一撃により阻まれたから。
理解した所でみっともなく凍り付きはしない、向こうが力尽きるまで刀を振るうのみ。

――月の呼吸 弐ノ型 珠華ノ弄月

地面を切っ先が擦れ火花が散る。
股から頭頂部までを裂くような斬り上げ。
振るう得物は一本なれど、放たれる斬撃は三つ。
綺麗に三分割された死体の完成、そのような呆気ない末路を歓迎するような相手では無い。

「散レッ!!」

豪快に両手剣を振り回し、力づくで斬撃を霧散させる。
相手にばかり攻めさせる気は無く、胸部へと切っ先が突き出された。

「当たって!」

このまま黒死牟の心臓を一突きにする筈の一撃、結果は狙いが外れた。
外されたと言った方が正しいだろう。
刀身へ甲高い音を立てて命中したピンクの矢、武器の破壊には至らずとも衝撃を与えるのには成功。
狙いがズレた剣は恐れるに足りない。
僅かに体を捩っただけで着物にすら剣は届かず、完全な空振りとなった。

余計な真似をした小娘への苛立ちで、デェムシュの脳が沸騰。
大した力も持たない猿の分際でウロチョロと、目障りな事この上ない。
今すぐにでも四肢を引き千切り二度と動けなくしてやりたいが、知った事かと迫るは黒死牟の刀。
舌打ち交じりにこちらも両手剣を振るい、互いの得物が弾かれる。
ギラギラと殺意を光らせた黄色い瞳、息を呑む程に冷え切った六眼。
交差は一瞬、言葉は不要。
互いの死だけを望んだ刃がぶつかり合う。

「ヌォおおオオッ!!」

シュイムと虛哭神去。
数多の血を啜って来た魔剣と妖刀。
獣が喰らい合い、引き裂かんとするように相手を攻め立てる。

(暴れ狂うだけの……獣では無いようだな……)

シュイムを防ぎ、押し返し体勢を崩した隙に斬り込む。
すると反対に防がれ、怪力に物を言わせて虛哭神去を弾き返し、こちらを叩っ斬らんとする。
幾度も繰り返される攻防の最中、黒死牟は相手の力量を冷静に見極める。
想像以上に強い、出した結論はそれに尽きる。
言動だけなら癇癪を起し暴れ回る童子とも取れるが、実際はそのような生易しい者では無い。
鬼の自分とも打ち合える膂力、月の呼吸にも対応可能な速さ、出鱈目なようでいて研ぎ澄まされた剣術。
力任せに暴れる獣では到達出来ない領域、他者を猿と見下す態度は実力に裏打ちされたものらしい。
何より黒死牟が厄介と睨むのは、強固という言葉でも足りない外骨格。
月の呼吸とは鬼殺隊の隊士が使う呼吸と違い、黒死牟の血鬼術を合わせた技だ。
刀を振るうと同時に斬撃を飛ばし、周囲に無数の細かな刃を生み出す。
常に大きさや長さを変化させ回避を困難とした、広範囲への攻撃こそ月の呼吸の持ち味。


959 : ロゴスなきワールド ─魔刃血風譚─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:43:49 nVFCYNl20
(だがこの異形……)

月の呼吸の対処法は、培った経験を総動員させ感覚で回避する。
言うだけなら簡単だが実際に行動に移せば、どれだけ困難かが分かる。
当代の柱の中でも上位の実力を誇る悲鳴嶼行冥と不死川実弥でさえ、対処に手を焼き少なくない傷を負わされた程だ。
ではデェムシュが取っている対処法とは何か。
その答えは実にシンプル、何もしない。
というよりする必要が無い。
デェムシュが防いでいるのはあくまで大振りな斬撃のみで、同時に発生する三日月状の刃は全て無視している。
何せ当たった所で大したダメージにはならない、精々がほんのちょっぴりの掠り傷といった程度。
アーマードライダー5人が同時に放った必殺技、それもゲネシスドライバーで変身した者を含めた一斉攻撃すら何の意味も為さなかった堅牢さ。
例え敵が甲冑を着込んでいようと細切れにする刃も、オーバーロードの耐久力には数歩劣る。それが事実だ。

――月の呼吸 参ノ型 厭忌月・銷り

それが分かったとして、黒死牟のやる事に変わりは無い。
斬撃が連続で放たれ、舗装された地面を削り取る。
デェムシュの姿は、無い。
シュイムを振るっての防御ではない、跳躍し新たな手に出た。

「目障りナ猿どモめッ!」

地上へ向けて左手を翳し、火球を連続して発射。
直線的にのみ向かうのではない、デェムシュの意思で軌道を変えられる攻撃。
頭上のみならず左右からも襲い来る火球、だが広範囲への斬撃を得意とする黒死牟には無問題。
発声した斬撃により全て霧散させる。

火球に狙われたのは黒死牟だけでなく、いろはもだ。
迫る複数の炎の塊、ローブを翻し地上を駆け回る。
追尾してくる火球をただ走って躱すのは困難と判断。
振り返り様クロスボウを連射し撃ち落とす。

火球を凌いだいろはは魔力をクロスボウに集中。
ピンク色の光が一層輝きを増す。
黒死牟やデェムシュのような剣の腕は持ち合わせていないが、やれる事ならある。
十分な魔力が溜まったのを確認し、上空へと照準を合わせる。
とっくに地上へ降り立ったデェムシュへは掠りもしない位置だが、これで問題無い。

「ストラーダ・フトゥーロ!」

発射された一本の矢はすぐに形を変化させた。
豪雨のように降り注ぐ魔力の矢。
広範囲の敵を纏めて攻撃する以外にも、一体へ集中して矢を降らせる事も可能。
標的は勿論デェムシュ。

「ふン、下ラん猿の足掻きカ!」

魔法少女の大技(マギア)だろうと、進化態となったデェムシュには届かない。
体を霧状に変化させると矢はデェムシュをすり抜け地面を傷付けるばかり。
回避の為だけに肉体を変化させたのではない。
霧状のまま回転すると今度は赤い竜巻のように変化し、魔力の矢だけでなくいろはと黒死牟を吹き飛ばす。

「きゃあああ!」
「っ……」

大きく距離を取らされそうになるも、いろはは咄嗟に魔力で短剣を作り出す。
良い記憶がある武器では無いが、思い出している場合ではない。
地面に突き刺し、どうにかそれ以上飛ばされないようにする。
黒死牟もまた体が浮遊しかけるも、両脚に力を入れ防ぐ。
嘗て戦った暴風の如き剣技に比べれば、この程度そよ風と変わらない。


960 : ロゴスなきワールド ─魔刃血風譚─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:45:33 nVFCYNl20
「ムンッ!!」

実体化したデェムシュすかさず斬り込む。
己の刀で防ぎ、刃を肉体には届かせない。
不意打ちのつもりだったろうが、そう簡単に死んでやらないのはこっちも同じだ。
鍔競り合いに持ち込まれ両手剣を押し込まれるも、膂力なら鬼である黒死牟も桁違い。
逆に押し返そうとし、

「腑抜けタ伽藍洞ノ剣で俺ニ勝てルト思ってイルノか!」
「なに……?」

ドクンと、心臓がいやに大きく跳ねた音がした。
敵の剣を押し返そうとした腕から、急に力が抜けていく。
まさか、今の言葉に動揺したとでも言うのか。
どうせ適当に口にしたに過ぎない、つまらない挑発如きに耳を貸す必要は無い。
馬鹿げた言葉など無視して、敵を斬る事に集中しろ。

そんな言葉が次々に浮かび、全くその通りだと同意すれば良いのに。
どうしてか、それが出来ない。

デェムシュは確かにフェムシンムの中でも特にプライドが高く、好戦的である。
しかし決して馬鹿ではない、考え無しに暴れる獣などではない。
そもそも彼らフェムシンムは肉体こそ異形ではあるが、知性は保ったままロシュオに改造された存在。
ヘルヘイムの森にばら撒かれた国語辞典を拾い短期間で日本語を習得するなど、元は地球人よりも高度な文明人であったのは間違いない。
何よりデェムシュは弱者の蹂躙を勝者の権利として振りかざす非道さこそあるが、戦士としての能力は間違いなく優秀。
だからこそ沢芽市のアーマードライダー達を度々苦戦させてきた。
狡猾な策士であるレデュエとは違った面、所謂戦士としての観察眼は非常に優れているのだ。
故に殺し合いが始まってからも猿と見下す参加者への苛立ちを常に抱えつつ、敵を細かに観察していた。
それはこの戦闘でも同様。

「貴様ノ剣ニは何一ツとしテ宿ってイルモノが無イ。人形ノ剣だ!フハハハハハッ!!」

猿渡一海と空条承太郎。名前は知らないが連中からは自分への怒り、倒さねばならないという使命感が感じられた。
燕結芽と城之内克也。名前は知らないが連中からは戦闘行為自体への喜び、仲間の猿と共に勝つという小癪な気概があった。
それら全てをデェムシュは見下す。
滅びに向かうだけの猿が何を思った所で、デェムシュの考えは変わらない。

そして今、デェムシュが最も見下し嘲笑うのが黒死牟だった。
似た剣を振るっていた小娘の猿(結芽)より肉体の機能は上だろう。
鬼と人間を隔てる身体機能の差によるものとデェムシュは知らない。
だがそれでも、より下に見るのは目の前の男の方。
戦ってみてよく分かった。この男には何も無い。
沢芽市のアーマードライダーのようなデェムシュへの怒りだとか、同族の猿を守るとか抜かす下らないモノは無い。
さっきの小娘のような戦いで己自身を高揚させるのでもなく、殺し合いを仕組んだ連中のぶら下げた餌を欲するでもない。
ただ襲われたから剣を振るう、他に理由を何も持てない軽い剣。
これならまだうろちょろと飛び道具を撃っていた猿の方がマシだ。
デェムシュを止めようとする意志が見て取れたのだから。
どちらにしてもデェムシュからしたら猿の下らない考えでしかないが。

一方的な嘲笑に、黒死牟は何も言わない。何も言えない。
戯言と聞き流せば良いだろうに、馬鹿正直に言葉を受け取っている。
意味のない行為と分かっているのに、デェムシュの言葉を無視できない。


961 : ロゴスなきワールド ─魔刃血風譚─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:46:53 nVFCYNl20
(私は……)

空っぽの剣。
そんなもの、言われなくとも分かっていたつもりだ。
今自分が戦っているのだって忠義の為でも無ければ、勝ち残り何者にも負けない力を得る為でも無い。
言ってしまえば状況に流されるまま、刀を振るっているに過ぎない。
高潔な精神など言わずもがな、力への渇望のみならず忠義に縋る事すらしていない。

空っぽの剣。
他者から言われると、改めて己がどれだけ無意味な生き方をしていたのかを思い知らされる。
行かないでくれと懇願する我が子と、項垂れさめざめと涙を流す妻を捨てた。
継国の当主という立場を無責任に放り投げ、家を捨てた。
所属していた組織の長、その首を手土産にする最悪の裏切りに走り、人間である事を捨てた。
鬼殺隊の剣士として類稀な才能と仲間に恵まれた子孫を斬り、継国の血を自らの手で消し去った。

空っぽの剣。
何もかもを捨てて手に入れたのは、頸を落とされても死なぬ肉体。
あんなモノに、あんな醜い化け物になる為に生きて来たと言うのか。
恥を晒し続けたその結果がアレ。
その後どうなったかは、忘却の彼方へ追いやりたくとも叶わない。

空っぽの剣。
本当に、何故このような男を蘇生させたのだろう。

「退ケいッ!」

如何に上弦の壱と言えども、力の入らなくなった剣など恐れるに足らず。
強く押し出され体勢が崩され、足元がふらつく。
稀血の影響を受け酩酊した時にも似ている。
あの時のような、ほろ酔いすらも懐かしき感覚と余裕は持てない。

「フンッ!」

誰がどう見たって今の自分は隙だらけ。
そこを突いて剣を振るわれるのは、間違った判断ではない。
どこか他人事のようにも感じながら刀を翳す。

「っ……」

さっきまでの戦闘が嘘のように、情けなく刃を己が身に受ける。
とはいえあくまで胸元を軽く掠め、着物を裂かれただけ。
皮一枚程の傷、瞬く間に塞がった。
着物を斬られたからと言って、それが何になるのか。
こんな程度では赤子だろうと死には至らない。

刀を構え直そうとし、カランという乾いた音を鼓膜が拾った。
そして見た、化物同士の斬り合いの場には不相応な物が転がるのを。


962 : ロゴスなきワールド ─魔刃血風譚─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:49:22 nVFCYNl20
「な……」

木彫りの笛。
その道の職人が魂を込めて作り上げた逸品とは、比べることすら烏滸がましいガラクタ。
何ともまぁ粗末な作り、価値などつけようの無い童子の玩具。
それが地面を転がっている。
どこから出たのかなんて分かり切っている、着物を裂かれて落ちたのだろう。

「串刺しニしてくレルワぁ!」

転がる笛にデェムシュは気付いていない、気付いた所で猿のガラクタとしか思わないだろう。
手にした主霊石から星霊力を引き出し、水属性の力を発揮する。
途端に周囲一帯の気温が急速に低下、デェムシュの背後から複数の氷柱が出現。
その全てがシュイムと同じ、或いは上の大きさ。
結芽と城之内相手に使用したからか、二度目ともなれば猿の道具を使う抵抗も若干薄れている。
宣言通りに出現させた氷柱で串刺しするつもりだ。

自分を狙う氷柱の存在を認識して尚も、黒死牟の意識は笛から離れられない。

(何故……)

あんなガラクタに、気を取られているのか。
あれを作ったのは自分だが、思う所など何一つとして無い。
ただの憐みから作ってやっただけの、意味の無い過去の残骸。
壊されたとて、失ったとしてそれが何だと言うのか。
感じ入るものは皆無。


その筈なのに、


――『頂いたこの笛を兄上だと思い、どれだけ離れても挫けず、日々精進致します』


何故、こんなものを思い出している。


笛に手を伸ばす。
馬鹿な、そんな事をしている場合ではないだろう。
そら見ろ、氷柱が放たれるぞ。

笛に手を伸ばす。
やめろ、そんなガラクタより敵へ集中しろ。
氷柱が――





「――――は」

六眼に伝えて来る光景が、理解出来ない。

そいつは、自分と赤い異形との間に割って入り肉の盾となった。
そいつは、自分が愚図のように手を伸ばした笛を掴んだ。
そいつは、自分の目の前で氷柱に腹を貫かれた。
そいつは、間抜け面を晒した自分の目の前に転がっていた。


963 : ロゴスなきワールド ─魔刃血風譚─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:50:42 nVFCYNl20
「なにを……している……」

意味が分からない。
どんな行動を取ったかは分かるのに、何故そうしたのかが不明。
困惑が頂点に達しそうな声色で呟くと、そいつは自分に顔を向けた。

腹部を完全に貫通した氷柱のせいで、白のフードまで真っ赤に染められた。
氷柱が当たったのは腹部以外にもあるようで、千切れかかった腕や脚からも出血している。
苦しいのだろう、喋ろうとするとゴボゴボと血を吐き出す。
そんな惨たらしい状態であっても、笑いながら自分の手を取り、笛を持たせ告げた。

「だって……この笛…黒死牟さんの…大事なものみたいだったから……」

「……………………」

ここに至って黒死牟は本当に分からなくなった。
この娘は、環いろはが何なのか。
何を考えこのような真似に出たのか。

いろはにとっての仲間が危機に陥っているのなら、ここにいるのが黒死牟ではなくいろはの仲間なら、そういう行動に出る事も分からなくも無い。
だが現実にいろはがやったのは、ガラクタを拾い上げたせいで自分が重症を負うというもの。
愚かしいだとかそれ以前の話、正直に言って気狂いの類にすら思えてくる。
無視して自分の身を優先すれば良いだろうに、何故このような命を投げ捨てる真似をしたのか。
理解出来ない、本当に理解出来ない。
何より、同じくらい理解出来ないのは、

「お前は……」

このように動揺している自分自身。
おかしな娘がおかしな行動に出た、言ってしまえばそれだけの話だ。
それだけの話で、自分は一体何を困惑しているのだろう。
一体いろはに、何を感じているのだろう。

いろはも、自分自身さえも、分からない。
思考が乱雑にかき混ぜられたかのような有様で、何を口に出せば良いのかすら分からない。

「フハハハハハハハッ!!猿ニ相応しイ無様サよ!」

ああしかし、一つだけ分かる事もあった。

耳元で無数の小蝿が飛び回っているかのよう。
足元を無数の蛆が這いずり回っているかのよう。
髪の毛に蜘蛛の巣が張り付き絡まったかのよう。

「そうか……」

嘲笑が酷く耳障りだ。
視界に映る姿が酷く目障りだ。
アレがそこにいるという事実が鬱陶しい。

その為にはどうすればいいかなど、額に手を当て考えるまでもない。
これまでと同じ、この数百年ずっとそうして来ただろう。

――殺して、黙らせるか。


964 : ロゴスなきワールド ─魔刃血風譚─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:51:52 nVFCYNl20
○○○


お腹が凄く熱くて痛い。
腕と足も痛くて、体の色んな所が痛い。
痛過ぎて何だか自分の体じゃ無いような気がする。
それくらい痛い。

でも私はまだ、ちゃんと生きてる。
黒死牟さんの前に出た時、咄嗟にソウルジェムには当たらないようにした。
だからこうして息をしてるし、話だって出来る。
…うん、でもこのままじゃ危ないよね。
回復魔法を自分に使うと、痛みが少しずつ引いていった。
何だか私、ここに来てから自分を治してばっかりだなぁ。

今の私をやちよさん達が見たら怒られるのかな。
怒られるよね。

でも私、まだ死ぬつもりなんて無いよ。
やちよさんとの約束を破ったりなんてしない。
灯花ちゃんとねむちゃんともう一度会えてない。
皆と一緒にみかづき荘に帰れてない。

それに、黒死牟さんの事を放っておけない。

だから死んだりなんてしてやれない。

……よし、傷も大分塞がって来た。
早く立ちあがって――

――あれ?
変だな。体に力が入らないよ。
傷は治ってるのにどうして?



…………あ。



ソウルジェム、真っ黒。





■■■■■■■■■■わたし■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■まじょ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■だめ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■まだ
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■しねない■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■あきらめ■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■いきる










《そう。やっぱり諦めが悪いね、私》


965 : ロゴスなきワールド ─心火を燃やして─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:53:46 nVFCYNl20
◆◆◆


決して油断していたつもりはない。
敵が本気を出す前から、手を抜かずに全力で倒しにかかった。
今だってそう、持てる全てでぶつかっている。
必ずや倒してみせるという気概で、戦闘に臨んでいる。
だったらどうして、こうなっているのか。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!!」

重機関銃にも匹敵、下手をすれば凌駕しかねない勢いのラッシュ。
スタープラチナによる拳の連打、その勢いはこれまでと同じく衰えが見当たらない。
数多のスタンドの中でも、同じく最上級の性能を持つザ・ワールドにだって引けは取らない。
そんなスタープラチナのラッシュが、ただの一発として当たらないのは俄かには信じ難い光景だ。
全身余す事なく狙った殴打の嵐は、脚一本で捌かれている。
顔面を狙った拳が狙いを逸らされた。
腹部を狙った拳が弾かれた。
腕を、胸を、足を、あらゆる箇所を狙った拳が悉くいなされる。
最上級のスピードを誇るスタンドのラッシュ同様、敵の脚は残像を描く程に速い。
自分の攻撃が全くと言っていい程当たらない、顔には出さずとも承太郎の内心に焦りが生まれる。
動揺をお構いなしに大尉は脚を振るう。戦闘再開してからも、表情に変化は訪れていない。

『おばけ!』『パーカー!』

『ツインフィニッシュ!』

ツインブレイカーに装填したフルボトルの成分が、グリスを強化する。
銃口から発射されたのはゲルで形成されたパーカーゴースト。
仮面ライダーゴーストの能力を付与させた技。
迫り来るパーカーゴーストを、大尉は見向きもしない。
代わりに左脚を軸にし、スタープラチナへ振るっていた右脚で大きく円を描く。
回し蹴りという格闘技において有名な技も、大尉が行使した際の威力は桁違い。
パーカーゴーストを力技で霧散、更にはスタープラチナへも衝撃が襲う。
咄嗟のガードすら間に合わず胸部へ伝わる痛み。
シグルドに変身しているが、フィードバックにより発生するダメージは消し切れない。
必然的にラッシュへストップが掛かった。

仲間への追撃を、指を咥えて見てはいられない。
急接近したサウザーがサウザンドジャッカーを突き出す。
頭部を軽く捩って回避、だが一突きのみでは終わらず幾度も刺突剣が襲い来る。
身体機能を大幅に強化したサウザーの突き、それすら大尉には掠りもしない。
八度目の突きを回避と同時に腹部を殴りつける。
一瞬止まる呼吸、サウザーの装甲越しに受けたとは思えない痛みだ。

「退いとけ!」

『スクラップフィニッシュ!』

『チェリーエナジースパーキング!』

「っ!!」

警告と電子音声で何をする気か察したサウザー、痛みを堪えて後方へと跳ぶ。
残された大尉目掛け、頭上より蹴りを放つ二人のライダー。
ヴァリアブルゼリーにより急加速したグリスと、エナジーロックシードのエネルギーを右足に集中させたシグルド。
左右からの挟み撃ちで仕留める算段だ。

「んなっ!?」
「くっ…!」

NPCなどであれば確実に仕留められたかもしれない。
だが大尉を相手にこれは余りにも無謀。


966 : ロゴスなきワールド ─心火を燃やして─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:54:51 nVFCYNl20
別方向から伸ばされた右足が肉体を叩く寸前、大尉はバネのように跳躍。
標的を命中の瞬間に見失ったグリスとシグルドだが、放った技は止められない。
結果、大尉にぶつける筈だった蹴りは互いの体を痛めつけた。
同士討ちとなった二人はそれぞれ反対の方向に吹き飛んで行く。

大尉の攻撃はこれからだ。

着地と同時に駆け出す。
最初の標的と定めたのはシグルドだ。
床に叩きつけられる前に足を掴んで引き寄せ、胴体目掛けて拳を振り下ろす。
背中から叩きつけられる衝撃と、それ以上に殴れた箇所への強烈な痛み。
承太郎から漏れる呻き声、仮面の下で血を吐き出した。
しかしすぐに仮面は消失し、サクランボを模した装甲までもが霧散。
衝撃でゲネシスドライバーが外れ変身が解除されたのだ。
地面を転がるドライバーとロックシード。
道端の小石でも蹴飛ばすように大尉が足で小突くと、それだけでゲネシスドライバーは破壊された。
仮面ライダーへの変身道具の損失を嘆いている暇は無い、スタープラチナを出現させ殴りつける。

「オラオラオラオラオラオラオラオラ」
「……」

涼しい顔、というより人形のような無表情でラッシュを捌く。
それだけではない、拳の僅かとすら言えない間を縫ってスタープラチナの胴体を殴りつける。
承太郎の骨と内臓が悲鳴を上げ、口から血が溢れた。

「オラアアアアッ!!」

承太郎への攻撃を止め、背後から殴りかかったグリスへ拳を放つ。
ツインブレイカーが大尉を貫く事は無い、数ミリの間を開けてグリスの腕が止まっている。
グリスの腹部へ叩き込まれた大尉の拳。
黄金色の装甲が軋み、その下にある一海の体を痛めつけた。

『Progrise key confirmed. Ready to break』

プログライズキーを叩きつけるように装填し、サウザンドジャッカーに炎のアビリティを付与。
大尉へと振るうもやはりと言うべきか、届かない。
蹴りが胸部装甲を叩き後退、追撃とばかりに顔面へ叩き込まれる拳。
本当に衝撃が緩和されているのかと疑いたくなるような痛みに、脳が揺さぶられた。
背中から倒れそうになった所を踏ん張るも、今度は顔面を掴まれる。
万力のように締め付けられ、このままでは仮面ごと果実のようにクラッシュされそうだ。
しかし掴んだ力をそのままに、大尉はサウザーをあらぬ方向へと投げ付けた。
そこにいたのはグリス。
フルボトルをツインブレイカーに装填しようとしたタイミングで、サウザーをぶつけられ妨害。
二人揃って床に倒れるが、急ぎ立たねば非常にマズい。
その証拠に硬い靴底が間近まで迫っているではないか。

「クソッ!」

それぞれ別方向へ床を転がり回避。
1秒にすら満たない直後、床が粉砕された。
転がりながらもグリスはフルボトルの装填を完了。
立つと同時にツインブレイカーの照準を大尉へと合わせる。


967 : ロゴスなきワールド ─心火を燃やして─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:55:57 nVFCYNl20
『ロケット!』『友情!』

『ツインブレイク!』

ロケットモジュールによる攻撃は、仮面ライダーフォーゼの力。
煙を噴射した煙で病院内の細かな破片が舞う。
大尉はグリスへと駆ける。
泳ぐようにロケットモジュールの間をすり抜け、即座にグリスの元へと到達。
背後では標的を見失ったロケットモジュールが空しく爆散していた。

『ロック!』

『ディスチャージクラッシュ!潰れな〜い!』

だがグリス、ロケットモジュールを撃った時点で別のフルボトルを手にしていた。
スクラッシュドライバーに装填したロックフルボトルが、成分を解放。
無数の鎖が大尉に巻き付き動きを封じる。

『Progrise key confirmed. Ready to break』

『スクラップフィニッシュ!』

ロストスマッシュだろうと拘束したフルボトルだが、大尉相手に長々とした効果は期待できない。
スクラッシュドライバーとサウザンドジャッカーから響く電子音声。
必殺のエネルギーを充填した証だ。
後は拳と武器を敵へ直接叩きつけてやるのみだが、当たるどころか振るわれる事すら無かった。
力任せに鎖を引き千切った大尉の姿が、グリス達の視界から搔き消える。
どこへ行ったと焦る思考は即座に痛みへと塗り替えられた。
蹴り上げられ宙を舞うグリス、殴り飛ばされ後方へと引っ張られるサウザー。
片や床に叩きつけられ、もう片方は壁に激突。

「が……」

口の端から血を零し、痛みで呻き声すら一海は出せない。
グリスへの変身はとっくに解除されている。

「馬鹿…な……」

天津もまた生身を晒し、地に這い蹲っていた。
強制的に変身解除させられた事で、大尉にぶつける筈だったエネルギーも霧散したらしい。
仮に当たったとして倒せる保障も無いが。

(強過ぎる…!)

直立不動の体勢で自分達を見下ろす男の力に、天津はただ戦慄するばかり。
拘束を脱した男がやったのは単純明快。
接近して蹴り、殴った。
言ってしまえばそれだけの事、それだけで自分達はこの様だ。

(これが奴の本気だと言うのか…)

力強く素早い。
小細工など必要としない圧倒的な力だ。
こっちがどれだけ連携し攻め立てたとて、向こうにとってはお遊びにしか映らない気さえしてくる。


968 : ロゴスなきワールド ─心火を燃やして─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:56:59 nVFCYNl20
「ぐぅっ!?」

突然上がった声は承太郎のもの。
いや、声だけではなく重低音が連続して響いた。
何時の間にやら承太郎へ向けられた巨大な拳銃、ジャッカルが弾丸を吐き出したのだ。

(ふざけた威力だぜ…)

声には出さずに悪態を吐く承太郎。
痺れるような両手の痛みは、スタープラチナでジャッカルの弾を防いだのが原因。
一海と天津が倒れ伏し、迷う事無く時を止めようとした。
が、こちらの空気が変わったのを察知したらしい大尉が右腕を跳ね上げ発砲。
時間停止を断念し弾丸の防御に徹した。
発射された三発全て防いだものの、拳に鈍い痛みがジワジワとやって来る。
銃弾を摘まむ事すら可能なスタープラチナでもこれとは、本当にふざけているとしか言いようが無い。

と、呑気に愚痴っている余裕をくれてやる程敵は甘く無かった。

ジャッカルはあくまで牽制に過ぎない。
己の肉体で直接殺すべく握った拳がスタープラチナへ放たれた。
接近して殴るなり蹴るなりする。
この戦闘だけでも飽きるくらいに見た動きだが、脅威の度合いは一向に下がってくれない。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!!」

スタープラチナのラッシュで迎え撃つ。
これに対し大尉、先程までのようなスタープラチナと真っ向から殴り合う真似はしない。
跳躍しスタープラチナの頭上を跳び越えると、本体の承太郎を直接狙う。
予想外の動きにさしもの承太郎も冷や汗を流す。
迫り来る蹴りを前に承太郎、スタンドではなく支給品を使った。
ゲネシスドライバーが破壊されている以上、変身は不可能。
使ったのは別の支給品、奇妙な毛の塊のようなモンスターが描かれたカード。
これに関してはデュエルディスクにセットしなくても、直接召喚が可能らしい。
カードの絵柄が直接現実に現れたような外見のモンスター、クリボーが出現。
可愛らしい鳴き声を出すクリボーを大尉が蹴り付ける。
鳴き声は一瞬で断末魔に変わり、クリボーは5秒も経たない内に消滅し役目を終えた。
酷く呆気ないが承太郎にはそれだけで十分。

「オラァッ!」

再度大尉との間へ割って入らせるようにスタープラチナを出現させ殴る。
顔を逸らして避けた大尉、次の拳が放たれるより先に蹴りを放った。

スタープラチナの上半身に次々と爪先が突き刺さり、その度に本体の承太郎は血を吐く。
数手遅れて拳を放ち蹴りを防御。
それも全ては防ぎ切れず、承太郎の傷は増すばかりだ。


969 : ロゴスなきワールド ─心火を燃やして─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:58:07 nVFCYNl20
「おいコラ、ガキ相手に嬲るなんざダセェ真似してんじゃねぇよ」

ピタリと蹴りを止め振り返る。
真紅の瞳に飛び込んだのは、肩で息をしながらも不敵な笑みを浮かべる一海。
時折体中に走る痛みに顔を顰めながら、それでも挑発的な表情は崩さない。
敵はまだ戦う気でいる。なら応えてやろうと大尉の意識は完全に一海へと向けられた。
一海もまたやっぱり無しなどと逃げ腰なる気は無い。

「変身!!」

『潰れる!流れる!溢れ出る!ロボット・イン・グリス!』

『ブラァッ!!!』

強制解除からの再変身は危険。
嘗て万丈に警告した言葉が今は自分に返って来る。
それでも一海に止まる気は無し。
戦いから逃げ、諦めるのは仮面ライダーのやる事では無いのだから。

「こっからが、祭りの時間だぁ!」

戦意は十分、敵は強敵。
上等だ、こうでなければ祭りは盛り上がらない。

両の拳を打ち鳴らし、咆えながら獲物へと走る。
大尉も拳を軽く鳴らしてグリスへと接近、相手と違い無言だが勢いは見劣りせず。
同時に突き出される拳。
大尉の右拳はグリスの装甲を叩き、グリスの右拳は剥き出しの胸を貫いた。
大幅に強化された腕力で殴るも浅い、殴られグリスがよろめくと簡単に離れていく。
まだ倒れさせはしない、顔面を狙った大尉のストレート。
ヴァリアブルゼリーを硬質化させたクリアパーツの装甲だろうと、防げるかは怪しい。

「ゥオラァッ!」

グリスとていきなり無様に倒れる気は微塵もあらず。
拳を振り上げ、下から大尉のストレートを崩す。
片方が防がれればもう片方を振るうだけ。
そう来る事はグリスには予測済み、肘を振り下ろしてガードする。
両手の攻撃を防ぎ切ったグリス、大尉の顔へ自分の頭部を叩きつける。

「っ!」

頭突きをモロに食らい、声は出さないが初めて怯んだ様子を見せる大尉。
整った鼻がひしゃげ血が流れ出すも、ビキリビキリと再生が始まっている。
もう一発食らわせようと頭部を振り被るグリスへ、反対にこっちが頭突きしてやった。


970 : ロゴスなきワールド ─心火を燃やして─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 06:59:09 nVFCYNl20
「ぐぉ…」

変身していなければ潰されただろうダメージを最小限に抑えるも、痛みはゼロでは無い。
脳みそをシェイクされたように視界がぐらつく。
安定しない視界のままで捉えたのは、固く握られた敵の拳。

「がはっ!」

腹部を押し上げられ、骨が嫌な音を立てる。
臓器が形を変えてしまいそうだ。
仮面の下で吐血、その間に大尉は反対の腕を振るう。
そう何度も大人しくやられてやるのは非常に癪だ。
歯を食い縛ってこちらも殴りつけると、大尉の脇腹へ鈍い音を立て命中。

「っ…」
「へっ、ようやく体が火照って来やがったな…」

挑発とも強がりとも取れるグリスへの返しは言葉ではない。
膨れ上がる程の殺意を込めた拳で返す。
グリスも大尉に言葉は最初から期待しちゃいない、返してやるのは同じ拳だけ。

「オラァァァッ!!」

互いの頬へと突き刺さる拳。
脳へと伝達する痛みは無視、相手の胴体を殴りつければ同じように殴り返される。
だが関係無い、また殴る。
相手の体を殴りつける感触と、自分の体を殴られている痛み。
それらが絶えず同時に襲い来る。

「足りねぇなぁ」

殴られる度に体のそこかしこが悲鳴を上げる。
口から溢れる血は一向に止まらず、顎から首まで滴り落ちる。
ダメージを緩和すべくヴァリアブルゼリーの装甲が働きかけるも、徐々に効果が薄れていく。
威力が高過ぎる故にグリスの装甲にも限界が近付いているらしい。
このままでは危険な事だと、一海が一番よく分かる。

「足りねぇよ」

だが、それがどうしたと言うのか。
傷がどれだけ痛もうと、自身の命が危険へ近付いていようと。
『その程度』、一海が止まる理由としては不十分だ。
また一発拳を受け、反対に殴り返す。
そうすればさらにもう一発食らったので、こっちも負けじと叩き込む。
気のせいか、拳のキレが増していると感じられる。
いや、これは決して気のせいなんかじゃあ無い。

「全然、足りねぇんだよっ!!」

魂が震える、戦意がより昂る。
心火が激しく燃え上がる。


971 : ロゴスなきワールド ─心火を燃やして─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 07:00:02 nVFCYNl20
「もっとだ!」

自分に何が起こっているのかを一海が知らない訳が無い。
ハザードレベルの急上昇。
デェムシュ相手にも引き起こした、ネビュラガスを注入された者に発生する現象。
強敵を前に、倒れてたまるか、退いてたまるかと己を奮い立たせる感情を刺激。
グリスの能力が急速に強化されている。

「こんなもんじゃねぇ!」

だがハザードレベルを上げて、それでも敵は強い。
こちらの拳の威力が上がったのを察したのか、向こうまで一発の勢いが増したように見える。
無口無表情で愛想という言葉から程遠い男のようだが、冷めた心では無いようだ。
ついつい場違いな苦笑いを浮かべるも、すぐに獰猛な笑みへと変える。

「もっと俺を楽しませてみろやぁあああああああああっ!!!」

ストレートの交差、互いの胸に吸い込まれる拳。
倒れこそしないが堪らず後方へと大きくよろける大尉。
グリスは大きく吹き飛ばされ、ない。
立っているだけでも尋常では無い痛みに襲われる体で踏ん張る。
散々痛めつけられたがこの瞬間、ようやっと自分の拳が相手を上回ったらしい。
だが達成感を得るにはまだ早い、まだ戦わねばならないのに。

「痛ぇな……」

小さく笑いながら零した言葉が引き金となった。
ゆっくりと仰向けに倒れ、背中から床に激突。
外れたドライバーが宙を舞い、顔のすぐ近くへと落下した。
横目で見ながら掴もうとするが、困った事に腕が上がらない。
どうにかこうにか力を込めようとするも、うんともすんとも反応しない。
体を横に倒そうとしても動けない、不思議な事だが全身の傷の痛みが少しずつ薄らいでいる気がする。
代わりに体がやけに重くなった。
指一本動かすのすら億劫に感じてしまう。

(ああ…ヤベぇなこれ……)

唯一動かせるのと言ったら両目くらいか。
視線の先ではつい今しがた暑苦しく殴り合っていた男が、こっちに近付いて来る。
自分がやった事ながら酷い有様だ。体中の肉が抉れ引き千切られており、だけど元の形を取り戻そうとしている。
反則だろと呆れ交じりに笑みが浮かんだ。
笑っている場合で無いのは百も承知だが、さてどうするべきかと視線を彷徨わせ、

「……アンタは休んでな、一海」

ガチャリとドライバーを拾い上げる者が瞳に映った。

学ランを血で染め、一海に負けず劣らずの重症を負った少年。
だがその目は死んでいない、空条承太郎は未だ勝負を投げ出してはいない。
スクラッシュドライバーを腹部に当てると、ベルトが巻き付く。
反対の手に持つのはパウチ型アイテム、スクラッシュゼリー。
グリスへ変身した瞬間はこの目で見ている、故にどうすればいいかは分かっているのだ。
叩きつけるようにしてベルト中央の窪みに装填する。


972 : ロゴスなきワールド ─心火を燃やして─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 07:01:37 nVFCYNl20
『ロボットゼリー!』

「変身…!」

『潰れる!流れる!溢れ出る!ロボット・イン・グリス!』

『ブラァッ!!!』

本来であれば人体実験を受け、ネビュラガスを注入されていない者では変身不可能。
しかし黎斗主催のゲームではそう言った条件を無視し変身が出来る。
現にビルドドライバーやエボルドライバー等を支給された参加者は、ネビュラガスが注入されておらずとも変身している。
スクラッシュドライバーも同じだ。
全ての参加者が等しく扱えるように調整を施された上で、一海に支給された。

そして今、承太郎はグリスへの変身に成功し大尉と対峙している。

「……」

大尉は標的を倒れた一海から、新たに変身した承太郎へと変更。
どうせ全員殺す事に変わりは無いが、大尉が求めるのは闘争の果ての死。
だからこうして立ち上がり、戦う気概を見せている者を優先する。
ビリビリとした殺気が承太郎の全身を刺激する。
変身したとはいえ重いダメージはそのまま、承太郎もまた立っているだけでも相当な負担だ。

『Progrise key confirmed. Ready to break.』

されどこれは承太郎一人の戦いではない。

「こいつは…」

驚きを露わに承太郎は自分の周囲へ視線をやる。
承太郎と並び立つように現れたのは、複数人の戦士。
そのどれも見覚えは無いが正体は分かる、彼らは皆仮面ライダーだ。
ポンと、自分の肩に手を置いた黄金のライダー。
承太郎同様に負傷を押し殺してサウザーへと再変身した天津へ問い掛けた。

「こいつらはアンタが出したのか?」
「その通りだ。承太郎君、私もまだ戦える」

天津がサウザンドジャッカーに装填したのはアメイジングコーカサスプログライズキー。
主にサウザーへの変身へ用いるが、サウザンドジャッカーに装填した際にも特殊な効果を発揮する。
それはサウザンドジャッカーに保存されたライダモデルの一斉解放。
ランペイジバルカンとの戦闘で使用した技だが、現在のサウザンドジャッカーにはレジェンドライダーのデータを貯めてある。
これにより6体の仮面ライダーをライダモデルとして召喚したのだ。


973 : ロゴスなきワールド ─心火を燃やして─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 07:02:43 nVFCYNl20
「――ッ!!」

敵が増えたからと言って大尉は微塵も怯まない、むしろ望む所と腕を振るう。
大尉が放った拳はアギトのパンチと激突、打ち勝ったのは前者だ。
後退したアギトの首へと手刀を振るい撃破、間髪入れずに振るわれたブレイラウザーを躱す。
ならばもう一度とブレイラウザーが振り下ろされるが屈んで回避、蹴り上げた足がブレイドを引き裂く。
回転しながらハンドル剣を振るうドライブも、大尉相手では脅威とならない。
飛び掛かり拳を振り下ろし、床諸共叩き潰した。
上体を起こした大尉へと迫る回し蹴り、カブトの足を素手でガッチリ掴む。
両腕の筋肉が盛り上がりカブトを床に叩きつけた。
起き上がる暇など与えない、顔面を踏みつければ沈黙。
残る二体のライダーも仕留めようとし、

「スタープラチナ・ザ・ワールド」

世界は完全なる静寂に包まれた。

グリスへ変身した承太郎、その横へ立つスタープラチナ。
悠長にしている時間は無い。
短い間しか時を止められないのもそうだが、承太郎自身のダメージも深刻だ。
本体とスタンド、その両方が拳を握る。
ふと、倒れたままの一海と目が合った。
時の止まった世界で動き、思考が可能なのは承太郎ただ一人。
だけど承太郎には、一海の目がこう伝えているような気がした。

「ブチかましてやれ」、と。

「「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」」

拳が放たれる。
グリスとスタープラチナ、計四本の腕による壮絶なラッシュ。
拳一発を放つだけで息が上がる。しかし止めない、止めてたまるかと殴り続ける。
承太郎はこの目で見たのだ。一海が、仮面ライダーグリスの戦う姿を。
その男と同じ姿となった自分が、情けない姿を晒す訳にはいかない。

「「オォォォラァァァーーーーーッ!!!!!」」

最後の一発がブチ当たり、時は動き出す。
無防備な全身を絶え間なく襲った殴打の嵐に、大尉の肉体がひしゃげる。
それでもだ、それでも大尉は吹き飛ばされず二本の足でどっしりと耐え抜いた。
これこそ正に化け物。
甚大なダメージを負おうとも、そう簡単には決して殺されてやらない

ならば、それに抗い続けるのが人間。

『THOUSAND DESTRUCTION!』

両足にエネルギーを集中させ放つ飛び蹴り。
勝負を決める為の技を放つのはサウザー一人ではない。
キングオブバンパイア、仮面ライダーキバ。
最高最善の王、仮面ライダージオウ。
召喚された二体のライダーもサウザーと同じフォームで蹴りを放ったのだ。

回避するにはもう遅い。
人間の足掻きが叩き込まれる。
言葉はやはり発さない、されど両目を限界まで見開いたまま大尉は病院の壁を突き破り、承太郎達の視界から完全に消え失せた。


974 : ロゴスなきワールド ─Break the Shell─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 07:04:24 nVFCYNl20
○○○


体の奥が凍えていく。
じくじくと痛んで、熱を帯びていた体全部が冷えていく。
やらなきゃいけない事は沢山あるのに、何をしなきゃいけないのかが抜け落ちる。
思い出そうとしてもぼんやりした頭じゃ何も考えられない。

どこまでも吸い込まれていく。
抗う事の出来ない、深い深い底へ。
何もできずに落ちていく。
私自身の奥底へ。
ああだけど、きっと底なんてどこにも無いんだ。
このまま永遠に落ち続けるんだろう。

そう思った途端、体がやけに軽くなった。

纏う全てを剥ぎ取られ。
背負う全てを奪い去られ。

裸の上から与えられたのは無数の布。

何も見なくて良いように、目が隠された。
何も聞かなくて良いように、耳が隠された。
何もしなくて良いように、体中へ布が巻き付く。

目を逸らしたら駄目なはず。
耳を塞いだら駄目なはず。
何もしないでいるのなんて、それで本当に良いの?

《良いんじゃないの?また余計な事して誰かを絶望させるよりはマシでしょ》

聞こえた声は呆れと冷たさを含んでいて。
私を肯定したいのか、それとも否定したいのか分からなかった。


975 : ロゴスなきワールド ─Break the Shell─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 07:05:36 nVFCYNl20



「なん……だと……」
「なニィ!?」

黒死牟とデェムシュ。
殺し合っていた二体は奇しくも同じ思いで空を見上げた。
彼らが抱くのは驚愕。
デェムシュは残るもう一体の猿を始末しようとし、黒死牟は己を苛む苛立ちの原因を取り除こうと得物を振るい、
刃同士がぶつかり合う瞬間にソレが起きた。

「何故……」

彼らが見上げる先には、鬼ともインベスとも違う新たな異形。
浮遊し地上の化け物どもを睥睨するのは、形容し難い歪な存在。
巨大な頭部は鳥を思わせるフォルムなれど、左右非対称の色。
纏った粗末な布切れは使い古した毛布にも見え、どことなく女性らしい体を覆い隠す。
足は無く、卵のような下腹部からぶら下がるのは…

「お前は……一体……」

左右に大きく広げた両手は、十字架に張り付けられたかの如く微動だにしない。
夜でも目立った桜色の髪の毛は逆立ち、異形の下腹部へと繋がっていた。
俯いていた顔にはこの数時間で見知った顔は無い。
代わりにあるのは滲んだ墨汁のような目と口が描かれた、白い面。

鳥のような異形が出現する様を黒死牟は見ていた。
デェムシュを一刀の下に地獄へ叩き落とさんとし、異様な気配に振り向いた時だ。
倒れ伏した娘の髪が地面を覆う程に伸びたかと思えば、あっという間に異形へと姿を変えた。

ソウルジェムが濁り切った時、魔法少女は魔女へなる。
しかしこれは魔女では無い。
環いろはが姿を変えたこの正体はドッペル。正式名称はドッペル・ウィッチ。
ソウルジェムが穢れで満たされた時、自らの体の一部に呪いの姿を映し取り、溜め込んだ穢れを変換する。
マギウスによって生み出された、魔法少女を魔女化の運命から救うただ一つの方法。

呼子鳥へと姿を変えたいろは、沈黙のドッペルは嘴を大きく開く。
見た目に反して怪鳥のような鳴き声は無く、空気を震わせるだけ。
威圧ではない、攻撃の合図。
沈黙のドッペルの背後より出現した大量の布はゆらゆらと揺蕩う。
それが一斉に動きを止め、地上目掛けて射出された。

「っ……!」

困惑しながらも警戒は解かなかった甲斐があったのだろう。
布が動きを止めた時点で黒死牟は飛び退き、一瞬遅れて地面へ布が殺到。
柔らかく脆い布とは思えない攻撃だ、黒死牟が立っていた場所のアスファルトが粉砕される。
布というよりは鞭を振るったと言った方がしっくり来る勢いだ。


976 : ロゴスなきワールド ─Break the Shell─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 07:06:54 nVFCYNl20
「えエい!また猿ノ下らン小細工カ!?」

デェムシュの叫びからは困惑以上に苛立ちが強い。
痛め付けたと思った相手が不格好な化け物になったのだ、思うように事が進まずささくれ立っている。

そんなデェムシュにも等しく布は襲い掛かる。
何もしなければ大量の布に叩き潰されミンチになるか、締め付けられバラバラになるかの二択。
だが苛立ちは大きくとも行動へは影響しない。
シュイムを豪快に振るって近付く布を片っ端から両断。
運良く剣から逃れた布は素手で引き千切って対処。

「……」

少し離れた場所では黒死牟もデェムシュ同様に、得物を振るって布を切り裂く。
刀の一振りで発生した複数の刃が、布を次から次へと細切れにする。
そうやって斬った先から群れを成して襲い掛かる布。
これでは斬っても斬ってもキリが無い。
手っ取り早くどうにかするなら、布を飛ばす本体を斬れば片が付く。

「…………」

そうだ、斬れば良い。
この手で宙に浮かぶ怪鳥のような異形を、斬り落とせば。

ドッペルは神浜市の魔法少女が持つ能力の中でも特に強力。
個人によって差はあれど、魔女やウワサを一方的に蹴散らす程の力を発揮する。
だがドッペルとは決して無敵の能力ではない。
例え魔法少女がドッペルを出現させても、それ以上の実力を持った魔法少女に瞬殺される事も珍しくは無い。
現にいろはは殺し合いよりも前、初めてドッペルを出現させた時、巴マミの砲撃を受け一撃で沈められている。
ならばベテランの魔法少女数名に匹敵、或いは凌駕する力を持つ黒死牟でも沈黙のドッペルを一刀両断は可能である。

「…………」

だったらどうして、斬ろうとしないのか。

あの怪鳥は赤い異形のみならず、自分までも攻撃している。
つまり娘の意識とは関係なしに暴れ回る存在なのだろう。
ならさっさと斬って何もできなくさせれば良い。
未だに屠り合いへ積極的には全くなれないが、殺しに来る輩の好きにさせてやるつもりもない。
元は自分に付いて回った娘だとして、それが斬らない理由にはならない。

だというのに、何故自分は斬ろうとしない。
何故鼠のように駆け布を蹴散らすばかりで、アレを直接手に掛けない。

こちらを覆い隠すようにして飛ばされた布を跳んで躱し、追跡したモノを全て斬り払う。
降り立った先は偶然なのか、怪鳥の真下。
見上げれば白い面と視線がかち合う。
面は何も言わずに頭部を微かに振るう。
こちらを嘲笑っているような、あの娘とはかけ離れた仕草に何を思う間もなく、

「消え去レィっ!」

火球が自分達へ放たれた。


977 : ロゴスなきワールド ─Break the Shell─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 07:08:10 nVFCYNl20
○○○


何も見なくて良いのは楽だ、嫌な光景を見ずに済むから。
何も聞かなくて良いのは楽だ、酷い言葉を聞かずに済むから。
何もしなくて良いのは楽だ、傷つく事も傷つける事も無いのだから。
泥の海に沈んだような不快感、それさえも今は心地が良い。

ずっとこのままでいられたら、それはそれで幸せなのかもしれない。
自分が悲しい目に遭うのも、自分のせいで誰かを悲しい目に遭わせたりもしないから。
私のせいで絶望したあの娘。
私が手を届かせられなかったあの娘達。
私が何かをやろうとすれば、最悪の結果になる。
じゃあ私は、何もしない方が皆の為になるのかな。

『……違う』

それは、それは違う。
私は取り返しの付かない失敗もしたけど、何かも全部が間違いだったなんて思わない。

――『ありがとう…いろは』

そう簡単に死なないって、約束した人がいる。

――『私たちが来れたのは、いろはちゃんがいてくれたおかげだよ』

そう言ってくれた皆がいる。

まだ死ねない。
みかづき荘の皆が私に希望を思い出させてくれるから、私はこの先も手を伸ばせる。

それにまだ、まだあの人の助けに全然なれてない。

《そうやって空回りして、また間違えなきゃいいけど》

『あなたは私。だったら分かる筈だよ。そんな言葉で止まったりなんかしないって』

《……どうしてこんなに頑固なんだろうね、私》

そんなの決まってるよ。
それが私、それが環いろはだもの。


978 : ロゴスなきワールド ─Break the Shell─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 07:09:59 nVFCYNl20



「オノれぇぇ…!」

忌々しく自らが火球を発射した方を睨み付ける。
一般人ならば視線だけで心臓を止めかねない、絶大な憤怒が宿った瞳。
デェムシュが見るのは無様に焼け死んだ猿ではない。
何重にも折り重ねられた布、ほとんどが焼け焦げながらも火球を防いだ猿の小癪な抵抗。

「ふぅ……」

パラパラと辺りに舞い散る焼けた布の切れ端を視界に収め、いろはは小さく息を吐く。
不気味な仮面は跡形もなく消え、色白の肌に汗を垂らした素顔を見せている。
頭上に巨大な怪鳥は出現させたまま降り立ち、傍らの六眼へ視線を合わせた。

「ごめんなさい…!私のドッペル…えっと、これのせいで迷惑を掛けて……」

申し訳なさを大いに含んだその顔は間違いなく、出会ってから自分の心を乱す娘のもの。
自分は何を言えば良いのやら、一文字すら浮かばず黙って娘を見下ろす。
と、そう呑気に事を構えてもいられない。
こちらを仕留められずに怒り狂った異形が放つ殺気で、娘も弾かれたように顔を上げた。
真剣な顔つきに切り替えは早い方かと至極どうでもいい事を思う。

「どコまで俺ヲこケにスル気ダ猿どモ!」

怒髪天を突くという言葉を体現したような怒りようだ。
余程あの異形はプライドが高いらしいが、悠長に考えてはいられない。
いろはの意思に従い布が蛇のように地面を這い、デェムシュへと飛び掛かる。
布が行くのは地上のみだけでなく、頭上からも次々射出。
四方八方からの攻撃など、360度より放たれたアーマードライダーの必殺技をも防いだデェムシュにはどうという事は無い。
真紅のマントを翻しながらシュイムでの回転斬りで、布は瞬く間に裂かれる。

いろはとデェムシュの攻防を目の当たりにし、黒死牟は気の抜けたような息を吐いた。
これまでの自分を思い返し、自嘲する気にもなれない。
異形の言葉にみっともなく動揺し、人間の娘一人の言動と行動に一々呆ける。
一体全体自分はどこまで恥を晒し続ければ気が済むのか。

ああしかし、自分がこうして木偶人形のような無様を晒す最中も戦闘は続いていて。
あの娘は、環いろは何度布を斬られ燃やされても戦う事を止めようとはしなくて。
頭上に巨大な怪鳥を携えた幼い少女の背中を見つめ、誰に対してのものか分からない呆れを含んだ声を漏らし、

――月の呼吸 伍ノ型 月魄災渦

「ヌぉ!?」

「っ!?」

疾走と同時に放たれるは月の呼吸の型。
この技は他の型と違い、刀を構えるだけで斬撃を発生させる事が可能。
振り無しで攻撃するという、剣士に必要不可欠な動作を削ぎ落した鬼だからこその技。
故に接近しただけで突如飛来した斬撃に、デェムシュの反応が遅れ、肉体に刀傷を刻まれる。
斬られた痛も、自分の体にまたもや傷が付けられたという怒りで塗り潰す。
同じ得物を振るっていた為か、小娘に受けた屈辱も再来。
人間であれば顔中に血管が浮かび上がっていただろう。


979 : ロゴスなきワールド ─Break the Shell─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 07:11:28 nVFCYNl20
渦のように戦場の空気を掻き回すデェムシュの怒り。
それをさらりと受け流し、黒死牟は改めて虛哭神去を構え直す。
別に、今になって自分から戦おうという気になったのに深い理由など有りはしない。
ただ人間の娘一人に戦わせ高みの見物に逃げるような真似をして、これ以上恥の上塗りをする事もあるまい。
そう思っただけのこと。
隣に立ってこちらを見上げる娘。
環いろはに感化されただとかそんな馬鹿げた理由では断じて無い
天地が引っ繰り返っても、そのような愚かしく蕩け切った理由は有り得ない。
自分を見つめたままの視線を振り払うように、一言だけ告げた。

「私よりも……奴に集中しろ……」
「は、はい…!」

言われた通りに慌ててデェムシュへ向き直る。
強敵へ向けた表情は険しいままなれど、心はそんな場合で無いと分かってもどこか弾んでいる。
「邪魔だ」とか、「退いてろ」とかじゃない。
黒死牟にとっては大した理由も無く口にしただけかもしれないけど、一緒に戦うなとは言われなかった。
それがいろはには嬉しかったのだ。

鬼は己の意思で刀を構えた、魔法少女は変わらぬ決意を胸に隣へ立つ。
激情に自分自身を支配されたオーバーロードは、目に映るモノ全てを壊すだけ。

黒死牟とデェムシュ。
二体の異形が同時に駆け出し、魔剣と妖刀が火花を散らす。
怒りを刃に乗せた怒涛の攻めは、黒死牟に技を出す隙を決して与えようとはしない。
一見すれば童子が癇癪を起し棒切れを振るっているような動きは的確に急所を狙い、それでいて速さも別格。
これを黒死牟、焦りも苛立ちも決して面には出さず、無駄を削ぎ落した動作で防御。

「っ!?まタそれカ…!」

頭を沸騰させるデェムシュが睨むは、シュイムに巻き付いた布。
黒死牟の後方にて、沈黙のドッペルを動かし布を射出したいろはだ。
巻き付けた布はデェムシュが軽く振り払うだけで簡単に斬られる。
だがその前に、こちらが強く引いてやると剣の軌道が僅かにズレた。

――月の呼吸 弐ノ型 珠華ノ弄月

となればデェムシュへ放たれるのは、当然黒死牟の技。
地面に深い痕を生みながら、虛哭神去による三連の斬撃。
シュイムを縛る布を引き裂き防御、刀身に衝撃が伝わるも本人は無傷。
しかし続けてシュイムへと掛ったのは重み、刀で押し込まれたのだ。

「邪魔ダァッ!」

誰が馬鹿正直に打ち合ってやるものか。
体を霧状に変化させると、突然消えた感触に黒死牟が少しばかりつんのめる。
円を描くように黒死牟の周囲を飛び回るデェムシュ。
斬られた所で気体と化した体は無傷、反対にこちらは一方的に攻撃が可能。


980 : ロゴスなきワールド ─Break the Shell─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 07:12:42 nVFCYNl20
「成程……初見の術なり……」

淡々と呟くその言葉がデェムシュには気に入らない。
余裕ぶった態度を崩そうとし、急に体が自分の意思とは無関係に後方へと飛んで行く。
敵は体を霧へと変化させた。そこを斬っても傷は付けられない。
だが霧になったと言う事は元の肉体にあった重量は皆無。
鬼の膂力をここぞとばかりに発揮し刀を振るい、強風を意図的に引き起こしたのだ。
無限城で斬り合った風柱のような暴風では無いが、今はこれで十分。

「チィィィッ!!」

吹き飛ばされた先でデェムシュは実体化。
アスファルトを砕く勢いで踏みしめ、すかさず殺到する無数の布。
掌より火球を発射して焼き尽くす。
煙が僅かな間視界を塞ぐ。
ヒラヒラと宙を舞う焦げた切れ端を払い除けながら、黒死牟が斬り掛かった。
獣のように真っ向から突っ込んでくる姿を鼻で笑いつつ、シュイムの切っ先で突き殺さんとする。
真っ直ぐに迫り来る切っ先を六眼で睨みながら黒死牟は跳躍、地から足を離したまま刀を振るう。

――月の呼吸 参ノ型 厭忌月・銷り

頭上より真下の異形を輪切りにせんと、半円の刃が降り注ぐ。
黒死牟が跳躍した時点でデェムシュは次にどう動くかを決定済。
地面を蹴り上げ後方へと大きく回避、舗装された地面があっという間に破壊された。

下がった場所で両肩の突起物に力を込めるデェムシュ。
放電したのは、これより二匹の猿目掛けて電撃を落とす合図。
フェムシンムをコケにした罰を与えようとし、その顔面が勢い良くはたかれた。
痛みは無くとも予期せぬ衝撃に間抜けな声が出て、両肩の電気が霧散。
おまけに自分をはたいたソレが顔に巻き付き視界を封じる。

「貴様ァアアアアアアアアアアッ!!!」

――月の呼吸 漆ノ型 厄鏡・月映え

自分の顔をはたき、攻撃を阻止し、視界を塞ぐ。
巻かれた布を引き裂いて、許し難い罪を犯したの小娘へ火球を発射しようと掌を向けた。
だがそれもまた中断するしかない。
デェムシュ目掛けて複数の斬撃が地を這いやって来る。
遠距離の敵に対しても有効な型をシュイムで防御。
斬られはしないがとっくに振り切りつつある怒りのメーターはまたしても上昇。
感情のままに新たな手に出た。

「蹴散らしテくれル!!」

主霊石が光を放ち、再び周囲一帯の気温が急速に低下する。
デェムシュの背後より複数の氷柱が出現。
否、背後のみならず黒死牟といろはを取り囲むようにして氷柱が配置された。


981 : ロゴスなきワールド ─Break the Shell─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 07:14:15 nVFCYNl20
「死ネ!」

号令のようにシュイムを振り下ろせば、氷柱が一斉に発射される。
自分の体も凍り付いているが、少し動かせば容易く砕ける程度のもの。
猿どもの串刺し死体を拝もうとし、望まぬものを見た。
六眼の化け物、黒死牟は迫る大量の氷柱を前にして尚も平然としている。
全集中の呼吸により鬼の身体能力が爆発的に増加。
刀を縦方向に振るった。

――月の呼吸 陸ノ型 常夜孤月・無間

ただの一振りで氷柱が全て砕け散る。
広範囲に縦横無尽の斬撃を放つ攻防一体の極めて優秀な技だ。
キラキラと氷の粒が舞う中を、黒死牟は駆け抜ける。
斬ったのはあくまで氷柱だけで、デェムシュへ刃は届いていない。
しかしむざむざと近付かせてはくれまいとも確信している。
黒死牟を阻み、全身を襤褸切れに変えるべく地面から大量の氷柱が生え出した。

「生憎だが……」

――月の呼吸 拾ノ型 穿面斬・蘿月

「この手の術には……慣れている……」

脳裏に空虚な笑みを思い浮かべつつ、刀を振るう。
生み出されたのは楕円形の、現代人ならば回転鋸を髣髴とさせる斬撃。
それが二つ横に並び、凍った地面ごと氷柱を斬り刻む。
辺り一面に飛び散った氷の粒により、またもやデェムシュの視界が封じられた。
鬱陶しいとばかりにシュイムを振り回し吹き飛ばす。
瞬く間に視界が晴れ、

「――ッ!?グオオ!!」

間近に迫った巨大な嘴に突き飛ばされた。
シュイムを盾にしダメージこそ防いだが、突然の衝撃に背中から地面に倒れる。
フェムシンムである自分が猿に倒れる様を見せた。
このような無様を何時までも晒すなど自分自身が許せない。
弾かれたように立ち上がり、怪鳥を従えた小娘を睨む。

(この…猿ドモがああああ…!!!)

何たる屈辱。
自分の攻撃を悉く打ち破る六眼の化け物も、要所要所で小賢しい真似をする小娘も、絶対に生かしてはおけない。


982 : ロゴスなきワールド ─Break the Shell─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 07:15:55 nVFCYNl20
いろはには黒死牟のような剣術も無ければ、人外の身体能力も無い。
だがやれる事ならばある。
神浜市を訪れ、やちよ達と知り合ってからはいろは一人で戦う場面はほとんど無かった。
みかづき荘の皆だったり、ももこ達のチームだったり、黒江とだったり、見滝原の魔法少女とだったり。
そういった場面が多々あった為か、いろはは誰かと共に戦う際の立ち回りというものに非常に慣れている。
加えてやちよを始めとして近接戦を得意とする魔法少女が周りに多かったのも影響しており、前に出て刀を振るう黒死牟とでもどのように動けば良いかが瞬時に判断出来たのだ。

「ッ!?オノレ……!!!」

猿どもへシュイムを振り被ろうとし、だが何かに気付いたように身を震わせる。
怒りをぶつけるように咆えると体を霧状に変化させ一気に上昇。
これまでのように敵の周囲を飛んで攻撃する為ではない、戦闘から撤退する為だ。
ゲーム開始直後の承太郎・一海との戦闘、間を開けずに行った結芽・城之内との戦闘。
そして此度の戦闘とデェムシュはこれまでロクに休みもせず、感情のままに暴れ回って来た。
オーバーロードの肉体ならば人間以上に無理が効くとは言っても、流石に限度がある。
度重なる戦闘で蓄積した疲労と、傷も癒えぬままの連戦によりここに来て響き出すダメージの数々。
よって自ら退く事を選択した。

(コノ俺が、猿ドモ相手に尻尾を巻いテ逃ゲルだとォ…!!!)

合理的な判断だろうがデェムシュからしたら屈辱としか言いようが無い。
無論、撤退の必要性を全く理解していない訳では無いが、それでもやはり耐え難い。
今は本当に忌々しいが退く、しかしこのままでは絶対に済まさないと殺意を練り固める。

「なニィっ!?」

しかし今回は、相手の方にこそ逃がす気は無かったらしい。
デェムシュがいる地上よりも遥かに高い位置へ、同じく飛び上がった異形。
沈黙のドッペルを浮遊させたいろはと、怪鳥の頭部に立った黒死牟である。

「貴様ラ……!」

歯があれば抑えきれぬ怒りでガチガチと打ち鳴らしていただろう。
デェムシュが何に対してそこまで怒りを覚えているかへ、最初から興味の無い黒死牟は無言で構える。
だが今のデェムシュは体を霧状に変化させている。
通常の斬撃は無意味であり、せめてもの悪足掻きでまた強風でも巻き起こす気なのか。


983 : ロゴスなきワールド ─Break the Shell─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 07:16:52 nVFCYNl20
無意味だと最後に嗤おうとし、ゾクリとデェムシュの体を冷たいものが走った。
今の自分に物理攻撃は一切通じない。それは向こうも承知のはず。
違う、この男が見ているのは霧と化した体ではない。
霧で覆い隠した、自分を縛る忌々しい枷。

透き通る世界を通し見ても、今のデェムシュの体は気体以外の何者でもない。
しかし唯一、霧以外の物が存在した。
体を霧に変化させてもどんな仕掛けなのか、外せなかった物。
全参加者に装着された、檀黎斗に命を握られた証。
首輪である。

「ヌ、おオオオオ!!」

怒りと焦りでデェムシュは叫ぶ。
霧に変えた体の奥へ奥へと隠した首輪の位置を、この男は正しく認識している。
これを攻撃されるのが非常にマズい事は、デェムシュにだって分かった。
首輪の強度が具体的にどれくらいなのかは知らない。
檀黎斗らの手による以外の方法で爆破が可能かどうかだって不明。
だがコレは、肉体を変化させる能力を以てしても外せないこれに衝撃を与えられ爆発すれば、オーバーロードであろうと死は免れない。

焦燥に駆られ実体化、シュイムを翳し防御の構えを取ったデェムシュは見た。
先程の数倍はあろう程に肥大化した刀身と、歪な枝のように刃を生やした大剣が振り抜かれるのを。

――月の呼吸 捌ノ型 月龍輪尾

龍の尾が振るわれたと錯覚しかねない、強力無比な一撃。
シュイムを翳しても到底防ぎ切れない傷が刻まれる。

デェムシュには最早怨嗟の声を上げる事すら叶わない。
巨大な斬撃に呑まれながら吹き飛ばされ、やがてその姿は夜の闇へと消えていった。


984 : ロゴスなきワールド ─Proud of you─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 07:19:29 nVFCYNl20
◆◆◆


変身を解除すると思い出したように体中が激痛を訴える。
今すぐにでも大の字に寝転び意識を手放したいが、承太郎にはまだやらねばならない事がある。
重たい足を引き摺って、転がったままの一海の元へと近付いた。
背後を見ると、一歩離れた位置に変身解除した天津が見える。

「……っ」

その顔が決して明るいものではないから、きっとこいつも察しているんだろうと分かった。
天津に関してはそれ以上何も思わず、一海の顔を見下ろす。

「よう……勝ったみてえだな……」
「…ああ。アンタのベルトと天津の協力があったからな」
「だったら上出来……だ……」

穏やかに笑う一海。
その顔が、体から光の粒子が放出している。

ネビュラガスを大量に注入すればハザードレベルを大幅に上げられるのは確か。
だがメリットだけでなく、重大なデメリットもまた存在した。
一海は以前、内海に捕らえられ幻徳共々高純度のネビュラガスを注入されている。
結果、ハザードレベルこそ上がったもののその体は普通の人間からかけ離れたものと化した。
限界以上のダメージを与えられたら変身解除のみでは済まない、スマッシュと同じように消滅し死ぬ。

強制解除からの再変身を行った上で、傷だらけの肉体を酷使して戦ったのだ。
とっくに限界を迎えてもおかしくはない。
そして今、全ての役目を終えた体に、当然の最期が訪れている。

二度目の生は思ったよりも早くに終わるようだが、一海に後悔は無い。
みっともなく生にしがみついて及び腰になるよりも、心火が燃え尽きるまで戦う方が自分らしい。
元の世界では推しに看取られるという、ドルオタ冥利に尽きる終わりだった。
ここでは野郎二人に看取られる、何とも暑苦しい絵面だが不思議とそれも悪くはない。

帽子を深く被り直した承太郎と、悲痛な顔で目を伏せている天津に、あくまで普段の調子を崩さずに言う。

「戦兎達の事…頼んだぜ……アイツらなら……アンタの過去を知っても……仲間になる筈だ……」
「…分かった。彼らに会ったら、必ず君の事も伝えると約束しよう」

「エボルトの野郎も…神様気取りの大馬鹿も……俺の分まで…ぶっ潰せよ……」
「……ああ」

もうそろそろ限界らしく、喋るだけでも酷く疲れた。
満足気に頷き目を閉じる。

気が付いたら、目の前には見覚えのある連中がいた。
揃いも揃って変わらない顔の三馬鹿だ。
そいつらが口々に「カシラ、お疲れさまでした!」なんて口にするもんだから、小生意気な舎弟の頭を軽く小突き、
一海はクシャリと子どものように笑った。



【猿渡一海@仮面ライダービルド 死亡】


985 : ロゴスなきワールド ─Proud of you─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 07:21:13 nVFCYNl20



カランと音を立てて首輪が床に落ちたと同時に、承太郎も崩れ落ちる。
焦った天津が支え、まさかと最悪の予想をしながら脈を調べた。
幸いな事に息はある。
間近で承太郎の姿を見ると、それはもう無事な箇所を探す方が難しい。

「これだけの傷では気を失うのも無理は無いか……」

病院に到着した時に施した簡単な処置も、さっきの戦闘で傷口が開いたらしい。
これは応急処置ではなく、きちんとした手当てが必要。
とはいえ医療用のヒューマギアが都合良くいる、なんて事はないだろう。
自分が何とかしなくては。

「……」

転がる首輪を見てもう一度目を伏せる。
出会って僅かな時間を共有しただけの関係だったが、一海は自分の過去の行いを知っても仲間と受け入れてくれた男だ。
嘗ての自分ならともかく、今は一海のような男を失った事に何も感じないような冷血漢ではない。

「やらねばならない事が新たに出来たな」

一海の仲間達に、彼の最期を伝える。
そして彼らと協力し、必ずや檀黎斗を倒す。
自分が生き残った事に意味があると言うのなら、きっとそれらを成し遂げる為だ。

とにかく今は承太郎を治療し、彼が起きるまで待つ。
承太郎と一海の持つ情報を詳しく聞きたかったが、軍服の男の襲撃で後回しになった。
それについても起きたらじっくり聞くとしよう。
自分も決して傷は浅く無いとはいえ、承太郎に比べたら多少はマシ。
承太郎が目を覚まさないなら、問題に対処出来るのは自分だけ。

例えばそう、新たに病院を訪れた者をどうするかとか。

「何者ですか?」

ガラスの散乱するロビーへと足を踏み入れた者へ、警戒しながら問い掛ける。
必要とあればすぐにでもサウザーへ変身可能だが、叶うならばそんな事態にはならない事を願う。


986 : ロゴスなきワールド ─Proud of you─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 07:22:47 nVFCYNl20
◆◆◆


怪鳥の頭部から飛び降り、地面へ着地。
それを見届けるといろはもドッペルを解除。
沈黙のドッペルは姿を消し、桜色の髪も元の長さへとなった。
同時に魔法少女の変身も解き、専用の衣装から神浜付属指定の制服へと戻る。
と、急にふらつき倒れかけたいろはへ、咄嗟に手が伸びる。
自分を支える黒死牟と目を合わせ、いろはは礼を口にした。

「ありがとうございます。ちょっと疲れただけだから、大丈夫です」

そう言い自力で立とうとするも、やはり足元がふらついている。
この娘は大丈夫の使い方を履き違えているのではないだろうか。
細めた瞳に呆れを宿し、最初に会った時と同じく抱き上げる。
ここで延々とふらつかれても時間の無駄、さっさとこうした方がまだマシだ。

「あっ、あの。私自分で歩けますよ…?」
「戯言に付き合っていたら……日が昇る……」

面倒そうに言うと、バツが悪そうに縮こまった。
反論は無い、あったとしても聞き入れるつもりが無いので足早に病院へ向かう。
気付けば向こうも静けさを取り戻している。
誰が生き残り、誰が死んだのかは実際に行ってみなければ確かめようも無い。

ふと視線を下げれば、娘が瞼を必死に擦り眠気を堪えているのが見えた。
何故素直に睡魔へ身を委ねないのだろうか。
自分のような化け物の前で無防備を晒す事への嫌悪がある、と言うなら納得だが。
別に深い理由も無く尋ねると、困ったような顔でこう返された。

「私が眠ってる間に、黒死牟さんが一人でどこかにいなくなったら嫌ですし……」
「…………」

やちよが理由も話さず一方的にチーム解散を告げた、記憶ミュージアムでの出来事。
あの時を思い出してか眉を八の字にして言ういろはに、黒死牟は何度目になるか数えるのも馬鹿らしくなった沈黙に入った。

(本当に……)

理解が出来ない。
この娘も、今の自分自身さえも。

足早に病院内へ足を踏み入れ、そうして二人は新たな参加者に出会った。

「何者ですか?」


987 : ロゴスなきワールド ─Proud of you─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 07:24:36 nVFCYNl20
【D-6(島・聖都大学付属病院)/一日目/黎明】

【環いろは@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
[状態]:疲労(極大)、抱っこされてる
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを止める。
1:黒死牟さんを放って置けない、助けになりたい。
2:やちよさん達を探す。
3:もし灯花ちゃんとねむちゃんがまた間違いを起こすのなら、絶対に止める。
4:軍服の男(大尉)、真紅の騎士(デェムシュ)を警戒。
5:どうしてドッペルが使えたんだろう?
[備考]
※参戦時期はファイナルシーズン終了後。
※ドッペルは使用可能なようです。

【黒死牟@鬼滅の刃】
[状態]:疲労(大)、精神疲労、縁壱への形容し難い感情、黎斗への怒り、いろはへの…?、抱っこしてる
[装備]:虚哭神去@鬼滅の刃、木彫りの笛@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2
【思考・状況】
基本方針:分からない。
1:この娘は本当に何なのだろうか……。
2:もし縁壱と会ったら……?
3:無惨様もおられるようだが……。
[備考]
※参戦時期は死亡後。
※無惨の呪いが切れていると考えています。

【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:疲労(極大)、ダメージ(極大)、全身に斬傷、背中に少しダメージ、気絶
[装備]:スクラッシュドライバー+ロボットスクラッシュゼリー@仮面ライダービルド
[道具]:基本支給品一式、クリボー@遊戯王デュエルモンスターズ(アニメ版)、オレンジロックシード@仮面ライダー鎧武
[思考・状況]
基本方針:打倒主催者。どんなに敵が強くても必ず倒す
0:…
1:天津と行動。天津の過去に自分から言うべき事は特にない。
2:しばらくはこの病院に留まるべきか…それとも一海の仲間を探すべきか?
3:DIOを警戒、どうやって蘇ったのか、それとも時を超えてきたのかも知らないが必ず倒す。
4:仮面ライダーの力…大切にしなくちゃいけねぇようだ
5:悪党がもし仮面ライダーの力を悪用するならば変身前に時間停止で奪い返す
6:軍服の男(大尉)はあれで倒せたのか…?
7:この遊戯王カード、大して強くはないのか?
[備考]
※参戦時期は第三部終了後。

【天津垓@仮面ライダーゼロワン】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)
[装備]:ザイアサウザンドライバー&アウェイキングアルシノゼツメライズキー&アメイジングコーカサスプログライズキー@仮面ライダーゼロワン
[道具]:基本支給品、滅亡迅雷フォースライザー&プログライズキーホルダー×8@仮面ライダーゼロワン、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:檀黎斗とその部下を倒し、罪を償う
1:新たな来訪者(いろは、黒死牟)に対処。敵でない事を願おう
2:檀黎斗に挑む為の方法とこの殺し合いについて承太郎君や協力可能な参加者と共に考える
3:承太郎君が起きたら持っている情報、力も詳しく知っておきたい、彼の後ろにあった人みたいな物は何だ?
4:出来る限り多くの人を病院に連れて来て治療したい、後、この病院について知っている参加者と話したい
5:飛電或人、滅と合流したい。もしアークに捉われていた時にこの場に来ていたのならば必ず止める
6:これ等のプログライズキーに映っている仮面ライダー達は誰なんだ?知っている人に会えたらいいが…
7:猿渡一海の仲間達を探し彼の最期を伝える
[備考]
※参戦時期は仮面ライダーゲンムズ スマートブレインと1000%のクライシス終了後

※一階ロビーにゲネシスドライバー(破損)+チェリーエナジーロックシード@仮面ライダー鎧武、デイパック(基本支給品一式、みーたんの抱き枕(破損)@仮面ライダービルド、パンドラパネル@仮面ライダービルド)、首輪(猿渡一海)が落ちています。


988 : ロゴスなきワールド ─Proud of you─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 07:26:07 nVFCYNl20
◆◆◆


下半身を水に浸からせながら、大尉は夜空を見上げる。
全身に刻まれた傷は多く、今すぐに闘争の再開は難しい。
再生が始まってはいるが、元いた場所よりも治りが遅い。
暫くは大人しくしているのが賢明か。
向こうから闘争を仕掛ける奴が現れたなら、その限りでは無いが。

さっきの三人組は強かった。
奇妙な道具や能力を使っていたが、人間にこれ程の傷を負わされたのは初めて。
再び出会う時があれば、その時こそ自分を滅ぼしてみせるのだろうか。

化け物を殺すのはいつだって人間。
確か、かの不死の王(ノーライフ・キング)の言葉だったか。
あの吸血鬼は人間に殺される事へ意義を見出していたようだが、自分に拘りは無い。
人間だろうと化け物だろうと、満足のいく死を得られるのならどっちでも構わない。

微かに雲のかかった月を見上げる表情に笑みは無い。
笑うのは二度目の死を迎えた時と、そう決めているから。


【D-6(西側の川辺)/一日目/黎明】

【大尉@HELLSING】
[状態]:疲労(極大)、全身にダメージ(極大)、再生中
[装備]:ジャッカル(3/6、予備マガジン×9)@HELLSING
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本方針:闘争の中で死ぬ。
1:傷の再生を待ち、その後参加者を探して殺し合う。
[備考]
※参戦時期は死亡後。


【?????/一日目/黎明】

【デェムシュ@仮面ライダー鎧武】
[状態]:疲労(極大)、ダメージ(極大)、怒りと屈辱(超特大)
[装備]:両手剣シュイム@仮面ライダー鎧武、水の主霊石@テイルズオブアライズ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜1
[思考・状況]
基本方針:ハ・デスも参加者も皆殺し
1:(言葉では到底表現できない程の絶大な怒り)。
2:さっきの猿ども(承太郎、一海、城之内、結芽)は必ず殺す。
3:猿共に負けるぐらいならば主霊石を使っていく。
[備考]
※参戦時期は進化体になって以降〜死亡前。
※水の主霊石を手にしたため水、氷の攻撃が可能になりました。 
 制御はうまくできてない為自分が巻き添えになる可能性はあります。
 代わりに制御と言うブレーキがないため、強めの力を放つことができます。
 なお、彼が凍ってもダメージはありません。

※デェムシュがどの方角へ吹き飛ばされたかは後続の書き手に任せます。

【木彫りの笛@鬼滅の刃】
幼少時の継国巌勝が弟の縁壱に渡した手作りの笛。
特にこれといった特別な力は無い。

【ジャッカル@HELLSING】
正式名称は「対化物戦闘用13mm拳銃 ジャッカル」。
全長39cm、重量16kg。装弾数6発。純銀製マケドニウム加工弾殻に法儀式済み水銀弾頭、装薬にマーベルス化学薬筒NNA9を用いた専用の13mm炸裂徹鋼弾を使用する。
曰く「人類には扱えない代物」。銃身に「Jesus Christ is in Heaven now」と刻まれている。
ウォルター・C・ドルネーズがが対アレクサンド・アンデルセン用にオーダーメイドした物。
ウォルターが製作時に爆弾を仕掛けていたらしく、アーカードとウォルターの戦闘中に博士の遠隔操作によって爆破される。
持っていると夢の中でジャッカルの精(CV:玄田哲章)に会えるかもしれない。


989 : ロゴスなきワールド ─Proud of you─ ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 07:28:44 nVFCYNl20



魔法少女。
と一口に言っても種類は千差万別。
インキュベーターとの契約で願いを対価に魂を切り離された少女、光の一族と契約しまぞくと敵対する少女、リンカーンコアを魔力源とする魔導師。
それら魔法少女の詳細を主催者である檀黎斗は、当然把握している。

キュゥべえと呼ばれる存在の目的、魔法少女の真実、そしてドッペルシステムについても。

インキュベーターと契約した魔法少女が存在する世界は多々あれど、ドッペルシステムはある特定の世界線にしか存在しない。
環いろはが魔法少女となった世界線にしか。
そんないろはが魔法少女になった世界の内、黎斗が選んだのは「環いろはが妹を救えなかった」世界線。
この世界線では環ういが死亡し、エンブリオ・イヴもまたアリナ・グレイとの同化後、いろはとやちよの手で消滅させられている。
よって本来ならば使用不可能な筈のドッペルシステムを、黎斗はゲームの会場内において使用可能に設定した。
無論、魔法少女を魔女化させないなどの善意などではない。

ドッペルシステムにはある重大な欠陥が存在する。
それは暴走。
ドッペルを使い過ぎると自我をドッペルに乗っ取られ、魔女にも似た怪物と化す。
強力な反面危険と隣り合わせのシステムは黎斗からしたら、ゲームを盛り上げるのに使えると見なされた。
そしてテストプレイを終え、本選に選ばれた6人の魔法少女はドッペルが使用可能となり正式なプレイヤーとして登録されたのである。
が、その際黎斗はドッペルシステムにもある細工を施した。
それは副作用である暴走の確立の大幅な上昇。
環いろは達が元の世界にいた時よりも、自我を乗っ取られやすくしている。
元の世界ではドッペルを制御していたいろはがデェムシュとの戦闘では、水名神社の時の様に意識を失い黒死牟にまで牙を剥いたのもそれが原因。
イヴの覚醒と共にキレーション・フェントホープ内にいた魔法少女のドッペルが暴走した際、成熟した精神のやちよ達一部の魔法少女は暴走を免れた。
これは黎斗にとって少々つまらない。
だから全員に等しく暴走の危険性を植え付けたのだ。

制御不能の怪物と化すと知って、それでもドッペルに頼るか否か。
ゲームを盛り上げる為のスパイスとしてドッペルが存在する事を、まだいろは達は知る由も無かった。


※マギアレコード出典の参加者は全員ドッペルが使用可能です。
 繰り返し使用した際の暴走の確立が大幅に上昇しています。


990 : ◆ytUSxp038U :2022/08/18(木) 07:29:35 nVFCYNl20
投下終了です。


991 : ◆QUsdteUiKY :2022/08/19(金) 13:36:42 6tcgbJ2M0
ニノン、マサツグ様(コピペ)、モニカ、土部學で予約します


992 : ◆QUsdteUiKY :2022/08/19(金) 14:29:00 6tcgbJ2M0
予約にマコト兄ちゃんを追加します


993 : ◆IOg1FjsOH2 :2022/08/20(土) 21:30:15 .DbvFP1M0
パラダイスキング、フグ田タラオで予約します


994 : ◆EPyDv9DKJs :2022/08/24(水) 17:47:12 /hox9BoU0
投下します


995 : 白銀世界のスナイパー ◆EPyDv9DKJs :2022/08/24(水) 17:48:23 /hox9BoU0
 日露戦争が終わって間もない時代の人間。
 当然のことではあるがタブレットは扱えるはずがなく、
 デジタル機器に明るい遊馬から教えられる形で名簿に目を通す尾形。
 杉元、土方、鶴見中尉。いずれの勢力の名前はないので急くことはない。
 なのでさして彼のやることは変わらずとりあえず生存、そして───

「……」

 名簿の見知った名前を見て一喜一憂する遊馬を見やる。
 子供らしい年頃の快活さはあまり似てるとは言えないが、
 人を殺すことを忌避し、まるで偶像のような輝きを放つ。
 弟の花沢勇作と、何処か重なるような雰囲気を醸し出している。
 ……来る前にも執着していた、アシリパと同じように。

 これは彼の気付いてないことではあるのだが。
 と言うより、それに気付いてしまえば彼は直視できず、
 最悪その場で自殺してしまう可能性のあることではある。
 それほどまでに受け入れられない、勅使したくないことだ。

 彼が清廉潔白な人物に執着するのはひとえに『罪悪感の否定』だ。
 母は自分よりも父を愛し、その父もまた自分よりも弟となる勇作を愛していた。
 狩りをしても、軍人になれども、弟が死んだとしても愛は自分に向けられことはなく。
 親に愛されずに育ったことで、自分の存在の理由が希薄に近しい存在となっている。
 誰にも祝福されることなく(と思い込んだ)彼の最後に目指したのは、父の師団長になることだけ。
 それは地位や名声と言ったものではなく、誰にも愛されない欠けた人間がそこまで上り詰め、
 『欠けた奴でも師団長になることで、勇作も父も立派な存在ではない』と否定できるから。
 その為に鶴見中尉の傘下に入ったりして金塊争奪戦に関わったのだが、そこは割愛しよう。

 要するに彼自身としては『清らかな人間はいない』と証明するため、
 無意識として『罪悪感の否定』を証明するため、遊馬を堕とすことだ。
 いわば彼はアダルトチルドレン。自分がやってることは間違いではないと言う、
 子供のような理由ではあるが、それだけで彼はあの金塊争奪戦に参加して、
 あれ程までに生き延びていたことを考えるとその妄執は並々ならぬことは伺える。
 その為だけに彼は右目を喪おうとも歩みを止めなかったのだから。

「尾形の方は知り合いはいたのか?」

「俺の方にはいない。お前はどうだ。」

 だから此処であっても殺し合い以上に、生死の問題を超えた証明が優先される。
 アイデンティティが否定されてしまうと、自分が罪悪感を抱く人間と肯定してしまうと、
 彼はそれを否定するために、自ら銃口を向けるぐらいに認めたくない事柄なのだ。
 幸か不幸か、彼はまだそのことに気付いていないのでこうして生きていられるが。
 優勝よりも生存を優先とするのは事実だが、胸中はまさに深淵に潜みし者。
 ある意味、最悪な同行者を遊馬は出会ってしまったというべきだろうか。
 アポリアの遺志を継ぎ、美遊と敗走したもう一人の遊馬とは対照的である。

「ああ。シャークにカイトに、それとベクターがいんだけど……」

「どうした。」

「本当ならストレートに仲間、って言いてーんだけど……どっから説明すりゃいいんだ?」

 一言で仲間、と呼ぶには少々難しく軽く説明に入る。

 シャークこと神代凌牙。
 ドン・サウザンドを倒した後は、
 互いの世界の命運を賭けたデュエルに挑むことになる。
 デュエルの途中で此処へ来てしまったので結果は分からずじまいだが、
 あんな中断をされ、此処でその時の続きを今すぐやるとはあまり思えない。
 利害の一致があればきっと協力してくれるはずだ。
 ドン・サウザンド戦はまさにその通りだったから。

 カイトは純粋な仲間と言えるので問題はないのだが、
 彼は月面でミザエルとの戦いの後に命を落としているはずだ。
 生き返ってると言うことは、主催にヌメロン・コードがある可能性が高い。
 過去も未来も記し、それを書き換えることができる事実上の願望を実現させる力。
 尾形との時代が合わないことから、それらを使った可能性と言うのは大いにありうる。

 ───そして残るのはベクター。
 最後は根負けしてくれたようではあるが、
 ちょっと大丈夫なのかと不安にはなる。
 勿論一度信じた相手だ。信じ抜くつもりではあるが、
 この三人の中だと最も癖の強い人間になるだろう。


996 : 白銀世界のスナイパー ◆EPyDv9DKJs :2022/08/24(水) 17:51:35 /hox9BoU0
「訳ありから死人か。」

「まあでも大丈夫だ! シャークもカイトも、
 ベクターだってきっと俺達と同じ考えのはずだ!」

 遊馬からの情報で安全だと言えるのは、
 彼の懸念した通りカイトだけのような気がしていた。
 片方は利害の一致で戦うが、利害が一致しなくなったら敵になる。
 もう一人に至っては自分と同じ裏切りが大得意ときた。

『一度裏切った奴は何度でも裏切る』

 杉元が鍋を囲んだときに言った言葉だ。
 『今思えばその通りだな』と鼻で軽く笑う。
 ベクターも正直信用できるか怪しくはある。
 自分が蝙蝠を決めているので当然の考えではあるが。
 逆に、遊馬を堕とす方向で利用できる可能性はなくはない。

「黎斗に殺されたあの男はカイトと口にしたが、知り合いか?」

「俺は知らねえけど、カイトなら知ってるんじゃねえのか?
 あいつ科学者をしてたみてーだし、ああいうのもできると思うぜ。」

 バリアルフォーゼにゼアルと変身の類と身近すぎることで、
 あれもそういう類なのだと理解してしまってさほど気にしない。
 当然違うのだが、遊馬もカイトの交流関係を知ってるわけでもないので、
 そう答えるしかない、と言えばそうなのだが。

「そうか。それでそいつらのデッキとやらの構成は何になる。」

「ん? 知ってどうすんだ?」

「此処ではモンスターで戦闘を行うことができる。種族も多数あるなら、
 そいつらは自分にとって有利な場所を中心に移動する可能性はあるだろう。」

 はっきり言って尾形はゲームに興味はないので、
 ざっくりとルールやカードの種類を少し眺めた程度だ。
 だからほぼほぼわからないものの、その断片でも分かることも多い。
 寧ろデュエルを知らないからこその視点、と言うのも少なからず存在する。
 戦場を何度も経験し、自分にとって有利な狙撃のポイントはすぐにわかるものだ。

「全員が自分のデッキを持ってるとも限らないのは、お前の状態を見ればすぐにわかる。」

 遊馬の方にはデッキはなく、あったのは圧倒的なまでの武器。
 刀に銃にカードと、これでもかと人を殺せと言わんばかりの代物だ。
 カードもモンスターであり、主催からご自由に武器を選べと言うことらしい。
 もっとも、遊馬は剣を振るったことはなければ銃も威力が強すぎる余り、
 下手をすれば彼の肩が外れることは間違いないので選択肢としてはあれだが。

「おお、そういうことか! けど、
 それもシャーク以外は難しいと思うな……」

 凌牙であれば水辺や海辺と迷わず答えられるだろうが、
 カイトはフォトンとギャラクシー、ベクターもアンブラルとシャイニング。
 共に判断材料とはなりえず、海辺を調べるのが当面の目的となるしかなかった。

「それと遊馬。カードだけを支給するなら、そのままでも使えると思うがどうだ。」

「確かに、アストラル世界でも虹クリボーが呼べたからやってみるか!」

 移動しながら尾形は先程の支給品について問う。
 銃も刀も、いずれも遊馬の身体では使用に耐えうるのは厳しい。
 だが使いこなせずとも『使う行為そのもの』は可能ではあった。
 であることを考えると、単なる一枚のカードでも十分にあり得る。
 尾形に促されたのもあって遊馬はそれを普段のデュエルのように翳す。

「よし! 来い───『閃刀姫-カガリ』!」

 カードが輝き、彼の眼前に現れるのは真紅の鎧を纏い、
 後光のように多数の剣を背後に浮かばせて立つ一人の少女。
 この舞台の参加者でもあるレイの最も攻撃を重視した決戦モード、カガリの姿だ。

「お〜〜〜カッケェ〜〜〜!」

 可愛らしい少女の姿ではあるが、
 装備はまるで少年漫画のヒーローが如き重厚かつ洗練されたデザイン。
 少年である遊馬にとって、十分に心躍る見た目であるのは間違いない。

「暫くの間頼むぜ!」

 遊馬の問いに、静かに頷くカガリ。
 意志らしいものはなく、あくまで召喚した主に従うだけだ。
 大事にしまっておこうとカードをデッキのホルダーにしまう。
 一人装備に目を輝かせながら歩く遊馬だが、背後で尾形は静かに考えていた。
 単なる銃器や刀と相違ない扱いであるなら、尾形にとって救いではあると。
 いや、下手をすれば指示次第で歯止めが利かない行動に出る可能性も高い。
 誤って殺す、と言う意味合いだと撃てない、斬れないとかよりもありえる話だ。
 なんせ攻撃するのはモンスターであり遊馬じゃない。加減も躊躇もしない。

「?」

 突然、尾形がヴリスラグナのスコープで空を見る。

「ん、どうしたんだ尾形?」


997 : 白銀世界のスナイパー ◆EPyDv9DKJs :2022/08/24(水) 17:52:24 /hox9BoU0
「いや、何かが見えたから確認している。」

 尾形はそうは言うものの遊馬には見えない。
 暗い空とスコープなしに加え、更に尾形は2km先の相手を撃てる視力を持つ。
 それだけ視力がいい人間とでは、どうあっても遊馬の視力では認識できる範囲が違う。
 なお、認識するだけならばスコープなしで気づいてるのでどの道相当なものだが。

「人が乗っているのだけは確認できたが、具体的な形状や人数は不明だな。」

「おお! だったらそっちに行くか!」

「相手は空を飛んでいる。俺達の足で追いつけるかも怪しい。」

 のび太と戦った零達のロケットは、偶然にも尾形の視界に入る。
 移動速度と経路次第だが、当てもなくうごくよりは有意義だろう。
 とは言え移動速度は向こうが当然速いし、向こうは空中だがこちらは徒歩。
 真っすぐ追跡はできず、合流も叶わず徒に体力を消耗する可能性もある。

「撃ち落とすか?」

「尾形が言うとマジに聞こえるからやめてくれ。」

「冗談だ。」

 敵かどうかの判断がつかない中してはならないだろうことは、
 お互い分かってる筈なので冗談であるのは察してはいたが、
 基本的にあまり表情が動かない尾形では本気に聞こえてくるので心臓に悪い。

「一先ず追いかけてみようぜ!」

 確認を促してはいるが、
 遊馬はカガリを連れて先に走っている。
 決定事項なのだと理解しながら尾形も後をついていく。





 それと、一つほど彼等では気付きようのないことがある。
 彼が持つカガリだが。単なるカード以外にも運用が可能だ。
 運用が可能と言えども、それができるのはたった一人だけなのだが。

 そう、レイである。
 レイがあのカードを手にすれば召喚されるのではなく、そのままカガリへと変身ができる。
 デュエルディスクもなければ、正規の手段で召喚してない以上今のカガリはかなり弱い。
 だがレイの場合は仮面ライダー達で言えば、それはベルトやドライバーに匹敵する代物だ。
 当然戦力向上は見込めるうえに、カガリは元々極地特攻型閃滅モードと攻撃能力に優れる。
 彼女にとっても大きな戦力となりうるだろう……それが届けばの話であるが。

【B-3/一日目/深夜】

【九十九遊馬@遊戯王ZEXAL】
[状態]:閃刀姫-カガリ召喚中
[装備]:閃刀姫-カガリ@遊戯王OCG(カードはホルダーにある)
[道具]:基本支給品、一斬必殺『村雨』@アカメが斬る!、454カスールカスタムオートマチック@HELLSING
[思考]:絶対に乗らない。それがかっとビングだ!
1:尾形と一緒にかっとビングだ! 俺!
2:あれ、アストラルいなくねえか?
3:シャークにカイト、それと不安だけどベクターも探す。
4:シャークがいそうだから海とか水のある所を調べる。
5:空飛んでる奴(零)を追ってみようぜ!
[備考]
※参戦時期は少なくともナッシュ戦の途中です。
 どの程度の段階で中断されたかまでは後続にお任せします。
※アストラルはいません。
※カガリが残った状態で遊馬が死亡した場合、
 カガリは強制的にカードに戻されます。
 カガリは一定のダメージを受ければ消滅しますが、
 時間が経てば再度召喚は可能です。
※支給品の説明を読んでいません。

【尾形百之助@ゴールデンカムイ】
[状態]:遊馬に対する関心
[装備]:ヴリスラグナ@グランブルーファンタジー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考]:生き残れるならばそれに越したことはないが、それはそれとして……
1:九十九遊馬に手を汚させる。或いは殺しの理由を与えさせる。
2:お前のような奴がいていいはずがない。
3:ベクターは利用できるか?
4:海辺か水辺を調べたいが、空の見えたアレを追うべきか?)
5:空を飛ぶ奴を追う。
[備考]
※参戦時期は少なくとも片目になって以降です。
※ヴリスラグナの効果を受けてるかは採用次第後続にお任せします


998 : 白銀世界のスナイパー ◆EPyDv9DKJs :2022/08/24(水) 17:52:46 /hox9BoU0
【一斬必殺『村雨』@アカメが斬る!】
九十九遊馬に支給。失われた技術力で製造された四十八の帝具の一つ。
斬られればかすり傷でも呪毒が心臓に到達して死に至る文字通り一斬必殺の刀。
ただし、所有者である本人も例外ではないため手入れや奪われると非常に危険。
呪毒が通じるのは生物のみで、心臓がないゾンビや機械などには通用しない。
呪毒が回る前に該当部位を斬り落とす、複数の魂ならば大きい方を犠牲にする等で回避ができる。
奥の手に全身激痛の後遺症を対価に身体能力を底上げさせる『役小角』があるが、
条件として村雨に認められるほどに敵を斬ることが必要でこの場で使えるかは不明。

【454カスールカスタムオートマチック@HELLSING】
九十九遊馬に支給品。アーカードが最初から所持している白銀の銃。
弾丸は454カスール改造弾。アーカードならまだしも生身の人間では安定した銃撃は難しい。
その代わり威力は化け物相手にも威力はある。装弾数は七発なのだが、
作者曰く百万発入りのコスモガンらしく、事実作中でも明らかに装填せず七発以上撃っている。

【閃刀姫-カガリ@遊戯王OCG】
九十九遊馬に支給。閃刀姫-カガリのカード。
普通に使えばただのモンスター召喚ではあるが、
デュエルディスクがない上に正規の召喚は現状できないのでテキストは割愛。
そのまま召喚は可能だがステータスの都合NPC辺りはともかく、中堅以上の参加者には難しい。
参加者の方のレイに限り、使用すると装備そのものがカガリになれる一種の変身アイテム。
決戦モードの一つ「極地特攻型閃滅モード」とされる攻撃型のモードであり、
閃刀術式アフターバーナーが使えるのもこのモード。


999 : 白銀世界のスナイパー ◆EPyDv9DKJs :2022/08/24(水) 17:53:18 /hox9BoU0
以上で投下終了です
ZEXALでは決闘庵にブラック・マジシャン等、
伝説のデュエリストが使ったモンスターの木像がありましたが、
明言もされてない為一先ず遊戯の名前は知らない扱いとしておきます

後拙作では自分のこのロワにおける書き方として、
「デュエルディスクがない、正規の召喚でないと十全な強さは発揮されない」
と言うのがありますが、これは企画主の意向と言うわけではありませんので、
企画主にとって何かしら問題がありましたらその辺は修正させていただきます


1000 : ◆vV5.jnbCYw :2022/08/24(水) 21:03:50 PhdUrkk60
投下お疲れ様です。前話が大バトルだったのもあって、
「ここからどうするか」のリスタートという気がして先が気になる話でした。

>「撃ち落とすか?」
「尾形が言うとマジに聞こえるからやめてくれ。」
「冗談だ。」

ここめっちゃ好きです


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