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Fate/Over Heaven

1 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/09(月) 00:00:25 H15yPo1Q0




     今が最悪の状態、と言える間は、まだ最悪の状態ではない。


                                ウィリアム・シェイクスピア



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2 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/09(月) 00:00:51 H15yPo1Q0
地方都市『見滝原』。
日本の中心都市たる東京とは異なり。最先端技術を積極的に取り入れた近未来都市である。
その為か、建築物は日本らしかぬアメリカやヨーロッパじみた芸術性を帯びた景観は多く見受けられる。
タッチパネルによる操作機能は、公共施設のみならず。
一般家庭ですら定着し、洒落たアンティークが目につく。


独りの男がいた。30代前半だが独身貴族。特別視される機会にも恵まれない。
パシリ紛いの雑用を押し付けられるが、嫌な顔一つせずそつなくこなす。
雰囲気や物腰はエリートを彷彿させるものの。経歴にはコレと言って光るものが不気味なほど無い。

彼は、別にこんな平穏が毎日続く事に退屈や不満はない。
むしろ逆だった。
植物のような平穏で静かな生活が、今日これから先も、ただただ続けばいいと願っている。


だが……何故だろうか。
彼は自分が『何かを見落としている』気がしてならないのである。確実に……重要な『何か』を……
疑念がフツフツと込み上げ始めた時。
男にとっての『平穏』に幕が閉じたのだった。

どことなく『見滝原』という場所に不満を抱き始めた。
近未来都市。住人に配慮されたシステム、風力発電による環境保護など、建て前の響きは心地よいが落ち着きが無い。
自分にこの町は相応しくない。どこが自分に適した町かも分からないが……


周囲を観察し始めた。
男は必ず女性の存在に注目するように、否――正しくは『手』だ。女性の手。
美人を求めている訳でもなく、結局集束される先は『手』に行き着く。

彼にとって女性の顔や気品の良さなんて、心底どうでもいい。
例え、本心から男を愛してくれる女性を相手にしても、手されあれば。
違うのだ。『手』以外は要らない。切り取って然るべき不必要な付属品でしかなかった。


――また発見される『赤い箱』。震撼する見滝原!


――警察は容疑者と思しき黒コートと黒帽子が特徴の男性の映像を公開。


――鋭利な凶器を所持している可能性あり……


バス車内にある液晶パネルで繰り返し流される報道。
思考に乱れを感じた頃合いからだ。
至って平和だった見滝原に謎の猟奇殺人が発生するようになった。なんでも人間一人そのものが『収められた』赤黒いガラスの箱。
一体、何の目的で。どういう思考回路、趣味思想を持ち合わせているか。
到底理解したくもない。
謎めいた猟奇殺人犯が徘徊する町なんて一刻も早く立ち去りたい。
元より、逃れられる安全領域はないのだが……思わず溜息ついて男は下車した。


(おや?)


男が共に下車した少年の行く先に振り向く。
あの先は―――確か風力発電の風車がある……しかし『それ以外なにもない』。そんな場所に何の目的が?
………まあ。私には関係ないか。

踵返そうとした時、男のポケットの中に何かがあると気付く。
取り出せば――装飾の枠に収められた掌に収められる大きさの『宝石』。
透明で色彩のないガラス細工みたいな宝石を――誰かが『ソウルジェム』と呼んだ。






3 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/09(月) 00:01:57 H15yPo1Q0

ソウルジェム。
当初は『魂の保護』を目的として産み出された宝石。
魂が色彩を放ち、様々な色や形状のソウルジェムがこれまで幾つもあったことだろう。
『この聖杯戦争』にてマスターの元に配布されるソウルジェムは、無色透明な、ガラス細工の美しさだけ。
素人目でも魂のない空っぽだと察せる。


―――ソウルジェムに7騎のサーヴァントの魂を加えた時、聖杯へと変貌する。


あらゆる願いを叶える奇跡を為す聖杯になりえる『器』を手にした『怪盗』は
黄昏に墜ちた空の元で、常人とは異なる目論みを思案する。
つまり、ソウルジェムはサーヴァントの全てを収める『箱』と同じ。
ルールを考慮するに、主従一組に一つある代物。

丁寧に一つ一つ。
サーヴァントの魂を一騎だけ全て収められるし。観察できる。『視る』事ができる。
嗚呼。どんなものかな。

ヒトが恐怖する『怪盗』の様子は、無邪気な人間の子供そのものだった。







風は如何なる世界も変わらないらしい。
目が痛い光源から離れ、ちっぽけな少年が一人だけ風車と共に風を受け続けている。
ここに、誰も居ない。そう誰も居ない筈だ――『自分以外』(だったら■■■■は?)
少年は船を脳裏に蘇らせる。空を飛ぶ船である。名をグランサイファー……

船に帰ろう………少年は静かに、誰にも聞かれずに決心した。
聖杯を、どうするか分からないが。
第一。少年が抱える最大の問題は――自身が召喚したサーヴァント。
聖杯戦争において切っても切れない関係にも関わらず、よりにもよって、何故なのか。
何故あのようなサーヴァントを召喚してしまったのか……少年自身感じ取っている。

『自分がそうだから』
その『縁』であのサーヴァントが召喚されてしまっただけだ。
恐らく、サーヴァントの方は気付いているのだろうか。動きは見られないのだが……

分かっている。個人の問題に過ぎない、と。
少年の中では未だ複雑な感情が渦巻いたままだった。
実際、例のサーヴァントに関して少年は何一つ知らないでいる。中身の問題は、今回ばかりは後回し。


「見つけたぞ! 『アイル』!! テメェ何勝手に出歩いてやがる!」


黄昏ていた少年――アイルの名を吠えたのは、彼のサーヴァント。
何故か生きたカエルを耳に当てる姿は『まるで誰かと電話している』ようで、否、実際そのサーヴァントは『誰か』と電話する
特別な雰囲気もない少年は会話を続けていたのだ。


「ボス、奴を見つけましたよ! ボスの忠告に耳も傾けないなんて……こらしめてやった方が――え?」


面倒くさそうにアイルが振り返った先には、先ほどの威勢の良さとは変わり。
へこへこと上司に頭下げる部下のような態度で、誰かと電話する『一人芝居』を繰り広げるサーヴァントの姿があった。


「ほ……本当に何もしなくていいんですかボス? マスターの事情? 何かご存じなんですか?」


「……………」


「わかりました……」


4 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/09(月) 00:02:29 H15yPo1Q0
ガチャ、と電話を切る動作と音を立てて、カエルを適当に放り捨てる。
アイルがサーヴァントの『一人芝居』を眺める表情は、複雑怪奇なものだった。
不快でもあり憤りでもあり、憐れみでも虚しさでも。
ハタから見た一般人からすれば気の触れた奴程度で意図して避け、無視するに限るのだが。
アイルの眼差しは、どれでもない。
故にサーヴァントは理解が出来ずに睨む。


「言いたいことでもあるのか。『マスター』」


「別に」


深淵に潜む『帝王』は知っている。否、直感的に感じたのだ。アイルの中には『もう一人』居る!
『自分』と同じ。二つの魂を持つ者なのだと。であれば、成程、『私達』を召喚したマスターなだけある。
だからこそ警戒している。
未だにアイルの中で潜めている魂は、表に顔を出さない。
意図して表に出さないのか? その魂を『保護』する為に……あるいは……








高層ビル群の一つ。屋上から、人工光源が何万カラットの価値となる夜景と化した見滝原を眺めるは
召喚されたサーヴァントの一騎。
邪悪の象徴たる王がここに登場を果たした。
色の無いソウルジェムを掌で持て余しながら『世界』を象徴する邪悪は、ゆったりと口を開く。


「必要なのは『極罪を犯した36名以上の魂』だ。マスター」


もう一人。
赤縁眼鏡をかけた三つ網の少女が重々しく「はい」と口を開いた。
彼女の様子は、どこかオドオドして。恐怖と不安、表情からも、本来なら其処の邪悪とすら無縁な平凡な少女。
……だったのだろう。
それ以前から少女の平穏は、失われてしまったのかもしれないが。


「天国への到達……それこそが魔法少女が救われる道だ」


大切な友達を、大切な人達を、それだけじゃあない。
全ての魔法少女が救う。全ての魔法少女が『騙された』。哀れな結末に至らない為に、聖杯ではない。
絶対的な奇跡。魔法少女を欺いた存在を凌駕する力が欲しい。
少女が抱える『感情』は確実に計り知れないものへと変貌するのだった。






5 : ルール設定 ◆xn2vs62Y1I :2018/04/09(月) 00:03:18 H15yPo1Q0
・当企画はTYPE-MOON原作の『Fateシリーズ』と『魔法少女まどか☆マギカ』の設定の一部を組み合わせた聖杯戦争コンペとなります。
・現段階においてOPに登場した採用主従数は最低ラインとして『14組』とします。
 14組を下回ることはなく、集まり次第では更に採用するかもしれません。
・投下候補作の投下数制限は、原則ありません。
・当企画は『版権キャラ』限定とさせていただきます。オリジナルキャラクター・実在する人物等の主従は禁止とします。



<設定>
・何者かによって再現された『見滝原』が舞台です。電脳世界ではなく現実世界です。
・見滝原の周辺には結界のような物が施されており脱出は困難を極めます。

・聖杯戦争への参加条件は『ソウルジェム』を手にする事です。
 『まどか☆マギカ』の設定とは異なり、無色透明の宝石状態です
・ソウルジェムを手にした者が舞台の『見滝原』に転移されます。
 そこで記憶を取り戻すことでマスターとして覚醒し、サーヴァントを召喚します。

・マスターは基本な聖杯戦争の知識を与えられます。それに加え『ソウルジェム』に関する情報も与えられます。
・ちなみに舞台は日本ですが、異国・異世界の人間も生活に支障のないよう言語に不便がないよう処理されています。

・『ズガン』は禁止となります。


<ソウルジェムについて>
・ソウルジェムにサーヴァントの魂を7騎分回収することで『聖杯』として完成され、主従は願いを叶えられます。
・ソウルジェムは原作の設定同様、指輪の形になります。

・ソウルジェムは色のない透明な宝石です。
 サーヴァントの魂が入ると宝石に色が入ります。色に関しては書き手様の自由にしていただいて構いません。
 サーヴァントの魂が加わる度、色も変化するでしょう。

・双方の同意の元ソウルジェムを合わせることでソウルジェム内にあるサーヴァントの魂を受け渡す事が可能です。
・ソウルジェムは原則、主従に一つの配布です。
・物理攻撃でソウルジェムの破壊は不可能です。サーヴァントあるいは魔術系統の攻撃でのみ破壊できます。
・ソウルジェムを破壊等で失ったとしても、新たにソウルジェムを配布することは基本的にありません。
 特別な事情でソウルジェムが配布されることがありえるかもしれません。

・倒されたサーヴァントの魂は自動的に『ソウルジェム』へ移動します。
 ただし、近くにある『ソウルジェム』に移動する性質の為、倒す際には注意が必要です。


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6 : ルール設定 ◆xn2vs62Y1I :2018/04/09(月) 00:03:55 H15yPo1Q0
<マスターについて>
・令呪の全消費=マスターの死亡ではありません。
・サーヴァントを失ったマスターは、聖杯戦争終了まで見滝原に残り続けます。
・上記のマスターは新たにサーヴァントと再契約することが可能です。


<サーヴァントについて>
・原作における通常7クラス及び、エクストラクラスの投下を可とします。
 また、ルーラーおよびビーストの投下は禁止とします。


<NPCについて>
・見滝原にはNPCがいます。基本的には何の能力もない再現された偽物ですが
 NPCにはマスター候補として呼び出され、記憶を取り戻してない者もいるかもしれません。
・過度のNPCの殺生及び魂喰いに対し、現時点でペナルティはありません。


<最後に>
『聖杯』が一つ作成された時点で『聖杯戦争が終了することはありません』。
『聖杯』を獲得した主従が帰還を果たすことはありません。
そして『聖杯』を獲得した主従の契約が終了する事はなく、サーヴァントも現界を継続し続けます。
詳細な当聖杯戦争の終了条件は、現時点では不明とします。


7 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/09(月) 00:04:32 H15yPo1Q0




どこにでもいる平穏な生活を営んでいただろうサラリーマンが召喚したのは、
彼の世界を魅了した頬笑み『モナ・リザ』そのものを体現した英霊・キャスターのサーヴァント。
一方の男は呆然と彼女を眺め続けていた。
どうも彼の様子は変だった。
単純に、有名なモナ・リザが現れたから驚いている風でない。
落ち着きなく、緊張か混乱か。整っていた金髪をくしゃくしゃに掻きまわすほど冷静を失っている。
男は震える声で問う。


「き……君がッ………ま、まさか。君が私のサーヴァント………」


「うん。そうだとも」


モナ・リザの微笑を間近で目にし、男は――


「良かった……他の奴が君を召喚していたら、発狂していたかもしれない……本当に良かった」


男は心底『安堵』を露わにしている。決して冷静ではないが、ひきつった口元は高揚を表現していた。
キャスターが尋ねてもないが、男は勝手に話を続ける。


「私は聖杯戦争に巻き込まれた事に嫌気が差していた。これは事実なんだ。私は平穏でストレスのない生活を望んでいる。
 それだけで良かった……だが『君』に出会えた『奇跡』に感謝しなくちゃあならない」


「………」


世界に誇る笑みを崩さずにいるキャスターだが、彼女は気付いていた。


「『君』と一緒なら聖杯戦争だって特別な思い出になる。さあ、共に勝ち抜こうじゃあないか……」


男はキャスターではなく。
キャスターの『手』だけに語りかけている事を―――


8 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/09(月) 00:07:00 H15yPo1Q0
以上でOP&ルールの投下は終了します。
問題の締め切り期限ですが、一先ずゴールデンウィーク頃に触れる予定とします。
私も、ちまちま候補作を投下していく予定です。よろしくお願いします。


9 : ◆lkOcs49yLc :2018/04/09(月) 04:14:13 fhLFp.pE0
新企画設立乙です。
それでは私も自作を投下させていただきます。


10 : 藤堂鏡志朗&ライダー ◆lkOcs49yLc :2018/04/09(月) 04:15:32 fhLFp.pE0
「偵察が終わったぞ、我が主よ。」
「忝ない。」

一軒の武家屋敷の、静かで開放的な庭。
雀の声がより良く鳴り響く、青空の下の和式の空間。
この平和な国には似つかわしくない様な目つきをした着物の男性がそこに二人、座っていた。

「サーヴァント、及びマスターは見つかったか。」
「幾ばくかは察知出来たが、今後は如何様に取り扱う?」
「暫くは様子見だ、方針次第では同盟相手にも成り得るが、逆に敵対する事が避けられなくなる者かもしれん。」

武家屋敷の庭を照らす空に目を向け、藤堂鏡志朗は平穏で眩しい青空を見上げた。
外では子供達が無邪気に走り回り、通行人達がすれ違いざまに挨拶を交わしている頃だろう。
その誰もが、皆日本人で、外国人の姿は殆ど見受けられない。

この世界の日本は武器を投げ捨て、欧州と和平を結び戦争とは縁のない生活を送っていた。
一年前まで徹底抗戦を続けてきた藤堂からすればプライドが傷つきそうな聞こえ方だが、それでも藤堂が元いた世界と比べれば大分マシだった。
寧ろ、日本人が大振りで歩き、貴族の差別行動も見受けられない、この平穏な国こそ、藤堂の理想にして願望とも言える。
勿論、こうした虚構の平和に満足していられる状況ではないのだが。

因みにこのロール上で藤堂が上官として迎えられているのは、最早日本軍ではなく自衛隊。
今の時期は訓練の様な物はどういう訳かなく、藤堂は事実上の休暇時期に置かれ今この武家屋敷で寛いでいるのだった。
軍人としてはやけにのんびりしている様に感じられるが、一方でこうして偵察や作戦会議の時間が開ける事は十分運が良いとは考えられる。
ロール上の役割に縛られて面倒事を起こすことを考えればずっとマシな状況であろう。

「変わり果てたな、拙者の祖国も。」

ふと、そんな懐かしむ様な独り言を呟いたのは、藤堂ではなくもう一方の男性だった。
声色が嘗て同じ組織に属していたテレビ屋に良く似ていた為か少し胡散臭い気もしたが、藤堂は顔色には出さず会話を続ける。

「聞いたところライダー、お前は私よりも昔の時代の人間の様だが、お前のいた時代は―」
「拙者の住んでいた頃の日本は未だ戊辰戦争の真っ只中だったが、もうその頃の事はほぼ忘却に追いやったと言っても良い。
その後の半生は米国で過ごしたからな。」
「戊辰戦争、それに米国……か。」

何れも、藤堂のいた世界では聞き覚えのない言葉だった。
聞けば、ライダーのいた世界やこの空間では二つとも小中学校の過程で習う程度の事柄だそうだが。
戊辰戦争……聞けば日本が開国する際に起こった、新政府とそれに反対する尊王攘夷派による戦争だと聞いている。
しかし自身のいる時代にてブリタニアが日本を開国させた際にも新政府による徹底抗戦が行われていたが、その様な名で記されてはいない。
またアメリカ……米国という国も藤堂の世界にはない為、あまり聞き慣れた国名ではなかった。
その名の通り北米大陸に根城を張り、世界でもトップクラスの軍事力を誇り、数多くの国々を従えている大国だとは聞いているのだが……

(我々の言う所の、ブリタニアの様な国なのか……)

多くの民族が集まった複合国家だとは聞いている。
この空間に記されている歴史によれば、元となったのはワシントンの乱にて勝利を勝ち取った独立軍らしい。
藤堂のいた世界ではワシントン率いる反乱軍はブリタニア軍に滅ぼされ、北米大陸はブリタニア本国へと変わっていったのだが……

「私の世界とは、大分歴史がズレているようだな。」
「………。」
「話を逸らすがライダー、お前は聖杯に一体何を望む?」
「……拙者の望みは唯一つ、この場に集いし強者達との戦いのみよ。」

ライダー、と名乗った着物の男は淡々とその質問に応える。
その時、彼の唇が微かに弧を描いたのを、藤堂は見逃さなかった。

「随分と酔狂な願いだな、生前は人斬りか浪人か何かだったのか。」
「概ね間違ってはいない。因んで話すと、嘗て拙者の与していた組織には『己が欲すがままに行え』と言う標語があってだな。
それに従っている……と言う訳でもないが、拙者のそれとは大分合致した方針よ。」
「……。」

マスターには、自身に性質の似るサーヴァントが喚ばれるパターンが多いと聞く。
しかしそれにしては、価値観がやや逸れている様な気がしなくもない。
ある意味、自分達旧日本軍よりも血生臭い方針だなと藤堂は思う。
ブリタニアの弱肉強食主義にも、この男なら迷わず賛同するだろう、とすら考えられる。
最も、そんな些細な事で唯一戦う武器を手放す理由にはならないのだが。


11 : 藤堂鏡志朗&ライダー ◆lkOcs49yLc :2018/04/09(月) 04:15:58 fhLFp.pE0

「それで、お主は何を望む?」
「私の願いは……占領され旗と名を奪われた祖国の解放だ。」

一瞬笑った相方とは対象的に、藤堂は眉を引き締める。
祖国日本。
今ではエリア11と呼ばれ、神聖ブリタニア帝国の植民地となった、藤堂の祖国。
それを解放することが、彼の七年もの悲願である。

これまで、日本を取り戻すことを目的に藤堂は戦い続けてきた。
同胞達から背負わされた『奇跡の藤堂』の名を背負って。
その名がいっそズタボロになるまで戦い続けてやろうとまで意気込み、仮面の英雄ゼロの奇跡にも賭けた。
確かに、ゼロは優秀であった。
正体が不明とは言え、彼程の卓越した戦略眼を有した人間を、藤堂はこれまで見たことがなかった。
こうして藤堂は配下と共に彼と行動を共にし、勝とうにも勝てなかったはずのブリタニアに対し勝利を重ね続けた。

だが、ゼロはもういない。
あと一歩の所で奇跡は失われ、自分達は檻の中に閉じ込められてしまった。
そんな時に、奇跡の藤堂の元に漸くやってきたやってきた皮肉過ぎる奇跡が、これここ、聖杯戦争とその舞台だ。

万能の願望機『聖杯』。
欧米諸国の伝承にて語られた聖なる杯を取り合う殺し合い。
『マスター』と呼ばれる参加者が、『サーヴァント』と呼ばれる使い魔を操って戦う、オカルト極まりない催し。
それが藤堂鏡志朗にやってきた奇妙奇天烈な奇跡であった。

この誘いに、自分は勿論乗るつもりである。
己や同胞の悲願のためにも聖杯は必ず手に入れる。
どんな手段を使ってでも。
祖国を解放するためにも、これ以上、片瀬少将の様な犠牲を出さないためにも。

今藤堂の眼の前に広がる平和な日本を、聖杯なら再現できるはずだ。
或いはブリタニアの侵略戦争を押し留め、全てのナンバーズを解放することすらも。
片瀬達を蘇らせる事は―死んだ同胞達の魂を弄ることは、流石にしたくはないが。

そして今、藤堂は『騎乗兵(ライダー)』のクラスに置かれたこの侍と契約を交わしている。
能力としては魔術―何かしらの神秘の力―と、刀剣による接近戦だそうだ。
その剣技は最早常人の域を出ていると言っても過言ではないだろう。

一度藤堂も試しに道場で勝負してみたが、それはもうあっという間に、まるで赤子の手を捻る様に倒されてしまった。
速さもそうだが、力技も人間のそれではなく、まるで化性のようであった。
自分が嘗て武術を教えた枢木スザクと互角か、或いはそれ以上か。
姿形は一見人間のようなのに、あの時はまるでナイトメアフレームとでも戦っているような気がしてならなかった。
英霊との格の違いを、まず思い知らされた物だった。

この、眼の前の男を使って戦うと言うのだ。
だが油断はならない。
嘗てゼロの奇跡を目の当たりにした時の様な心強さは無いわけではないが、このライダーを上回る実力者は山程いるだろう。
なんせ聖杯戦争の参加者は三桁や四桁にも及ぶ、恐らく自分達以上の実力者などゴマンといるはずだ。
だから今は慎重に情報収集を行っている。
今はまだ予選の真っ最中だ、下手に動かず土台作りから進めていった方が良い。
そうすれば、このライダーの能力を最大限にまで引き出す戦術等も考案できる。
同胞達が望むような奇跡は出ないだろうが、それでもある程度長生きは出来るはずだ。

「成る程、愛国心によって国を護り奪い返す、それがお主の願望か。」

クックッと卑屈げにライダーは笑い、言葉を続ける。

「拙者とはまるで大違いだ、今も尚義や忠に歩み続けるとは。」

その言葉に藤堂は、跳ね除けるように言い返す。

「こうして今も尚、矜持によって前に進むことしか出来ない者は、少なくともお前の考える以上にいるということだ、『アンチクロスのティトゥス』。」


12 : 藤堂鏡志朗&ライダー ◆lkOcs49yLc :2018/04/09(月) 04:16:26 fhLFp.pE0

ティトゥス。
米国のとある都市に在る凶悪な犯罪組織にしてカルト集団『ブラックロッジ』の幹部が一人である魔術師、それが藤堂の招いたライダーの真名であった。
無慈悲に殺戮と略奪を繰り返し、『己の欲すがままに』動く邪な集団。
力なき全ての者達を統べ圧制者に反逆する事を是とする藤堂達『黒の騎士団』とは、共に黒の名を持つ反社会勢力でありながらまるで真逆の在り方を有する組織であった。

「……拙者の思うよりも、か。」

先程の藤堂の言葉を聞き、ライダー……ティトゥスはどこか惚けた様な顔になり、空を見つめる。

「どうした?」
「何……嘗て、拙者を悦ばせた者の事を、思い返したまでのことよ。」
「……そうか。」

呆れた顔で腕を組み直し、藤堂もまた空を見上げ、溜息を付き口を開く。
嘗てティトゥスを歓喜させた者が、修練を重ねた人間にして忠義の者であることを、藤堂は知らない。

「それで、先程のサーヴァントの情報についてだが、どの様な者だったか?」

黒に与した二人の武人は、再び作戦会議へと移る。


一人は己の歓喜が為に。
一人は己が矜持が為に。


13 : 藤堂鏡志朗&ライダー ◆lkOcs49yLc :2018/04/09(月) 04:16:46 fhLFp.pE0



【クラス名】ライダー
【真名】ティトゥス
【出典】機神咆吼デモンベイン
【性別】男
【属性】混沌・悪
【パラメータ】筋力C 耐久C 敏捷A 魔力A+ 幸運E 宝具A+

【クラス別スキル】

・騎乗:A+
乗り物を乗りこなす才能。
竜種を除く全ての乗り物を乗りこなす。

・対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法等大掛かりな物は防げない。

【保有スキル】

・心眼(偽):A
第六感、虫の知らせとも言われる危険予知。
視覚妨害に対する耐性ともなる。
鬼戒神に乗せれば走りながら追尾弾を叩き落とせる程の技量を発揮する。

・魔術:A+
魔術を扱う技能。
ライダーは高位の魔導書に選ばれる程の実力者である。

・魔人:B
外道の領域に踏み込んだ者。
常人を越えた程の肉体を有し、人間が乗れば命に関わると言われている鬼戒神も乗りこなせる。
同ランクの『魔力放出』『自己改造』等を含めた複合スキル。

【宝具】

『屍食教典儀(カルツ・ディ・グール)』
ランク:A+ 種別:魔術宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
ライダーを選んだ魔導書。
鬼戒神を召喚できる程極めて強力な魔導書であり、これを扱えるライダーの実力が伺える。
人体の治癒や改造に特化した魔術を扱うが、少なくとも他のアンチクロスとの魔導書と比べれば呪いじみた術は殆ど見受けられない。
それでもライダーの肉体から日本刀を取り出したり、腕を四本にしたりと使い方はやはり人外のそれ。

『鬼戒神・皇餓(オウガ)』
ランク:A++ 種別:対神宝具 レンジ:1〜30 最大捕捉:1000人
『屍食教典儀』が召喚する神の模造品、鬼戒神(デウス・マキナ)。
魔術で生成した刀剣を利用した接近戦を得意とする。
その巨体を持ちながらも他の機体と比べて高い敏捷性を持ち、ライダーの剣術を最大限にまで発揮できる。
また、奥の手として腕と刀剣を四本にまで増やす能力も有しており、これで不意を突くことも出来る。
他の鬼戒神と比べると些か兵装に乏しいが、それを補うのがライダーの卓越した戦闘技術である。
ただし、召喚する魔力に限界があるのが欠点な他、聖杯からの制限により大きさが本来の50mから半分の25mにまで下げられている。
また、この宝具は屍食教典儀ありきの魔術であるため、屍食教典儀を失えばこの宝具も同時に召喚不能となる。

【Weapon】

『日本刀』
ライダーの基本装備。
『屍食教典儀』の力でライダーの体内から取り出して使うが、逆にこの刀で空間を裂いて魔導書を取り出す事も出来る。
取り出せる刀の本数に制限はない様で、ライダーは本気を出す時には二刀流を扱う。

【人物背景】

アーカム・シティに住まう犯罪組織『ブラックロッジ』の幹部アンチクロスの一人。
侍の様な格好をしており、魔術師でありながら刀剣による生身での戦闘を好む。
戦いに飢えており、常に強者との死線を交えた戦いを望んでいる。それ以外はどうでも良いらしく、主君を裏切ることにも躊躇は殆どない。
彼自身武士道は捨てていると言っているが、その一方で敵からの借りを返したり無関係な人間を巻き込むことを好まなかったり等ある程度武人としての矜持は併せ持っている。
その戦いへの渇望が無意味かつ空虚な物だと知らされた世界線もあったが、此度においてはそれを知らずに逝った剪定事象から現界している。

【聖杯にかける願い】

英雄、特に人間との戦いを愉しむ。


14 : 藤堂鏡志朗&ライダー ◆lkOcs49yLc :2018/04/09(月) 04:18:29 fhLFp.pE0

【マスター名】藤堂鏡志朗
【出典】コードギアス 反逆のルルーシュ
【性別】男

【能力・技能】

・軍略
卓越した戦術家としての技能。
念入りな情報収集と裏工作、更には地の利を応用した作戦展開によって厳島の奇跡を引き起こした。
四聖剣による旋回活殺自在陣と呼ばれる陣形を組むことを得意とする。

・ナイトメアフレーム操縦技術
人型機動兵器『ナイトメアフレーム』を操る技能。

・戦闘技術
軍人としての技能。
合気道や剣道等にも精通している他、ナイトメアに乗せれば戦艦や選りすぐりの精鋭を叩き落とせる程の実力も見せつけている。
余談だがコードギアス屈指の身体能力を誇る枢木スザクに武術を叩き込んだのは彼である。

【人物背景】

日本がエリア11と呼ばれる前から旧日本軍中佐として神聖ブリタニア帝国と戦った人物。
その優れた指揮能力で不敗を誇り、厳島の奇跡と呼ばれる初勝利を成し遂げた事から『奇跡の藤堂』と呼ばれ日本解放の象徴となっていた。
日本が神聖ブリタニア帝国の植民地になった後も尚、日本解放戦線の客人として旧日本軍を率いていたが大きな成果は出ず、リーダーの片瀬は死に自らも捕えられる。
その時に反ブリタニア勢力『黒の騎士団』に救出され、その象徴にして指導者である仮面の英雄ゼロに諭され配下の四聖剣と共に黒の騎士団に所属することになる。
嘗ての教え子であった枢木スザクとの邂逅と決別を重ねながらも騎士団の主戦力として活躍するが、第一次トウキョウ決戦の指揮系統の混乱を抑え切れずに敗北。
他の黒の騎士団のメンバーと同様捕縛され、檻の中で死刑執行を刻一刻と待ち続けていた。
今回はその間からの参戦。

今のエリア11もとい日本にはあまり似つかわしくない渋めの武人。
高い洞察力と戦闘力を兼ね備えており、片瀬達解放戦線からも最後の希望としての名を背負わされ続けていたが、一方で奇跡の名に重みを感じている一面も。
意志は強いが、一方で自分を卑怯だ臆病者だと罵る面もある。

【聖杯にかける願い】

ブリタニアの支配から日本を解放する。

【方針】

念入りに情報収集を行いながらも、ライダーを扱い聖杯を手に入れる。
いざという時の為にも同盟も考えておく。

【把握資料】

・ライダー(ティトゥス):
性格はPC版『斬魔大聖』(R18)、PS2版『機神咆吼』、小説版、何れでも把握は可能です。
ティトゥスはどのルートにも結びつかない剪定事象からの参戦ですので、どのルートでの把握でも構いません。
お勧めするのは彼の過去がより深く掘り下げられている瑠璃ルートか一番手っ取り早い小説版です。

・藤堂鏡志朗:
テレビ本編第一期全25話の把握を最低限でも推奨いたします。因みに藤堂はSTAGE11から登場します。
もっと把握したい方は『LOST COLORS』や『亡国のアキト(小説版)』、ドラマCDを把握してみましょう。
藤堂が捕縛されているのはR2序盤(TURN1〜4頃)で描かれています。
現在第三章の公開が予定されている劇場版三部作もございますが、出番が少ないのであまり把握には向いていないかと思われます。


15 : ◆lkOcs49yLc :2018/04/09(月) 04:21:49 fhLFp.pE0
投下を終了いたします。
尚、ステータスシートの執筆におきまして
『聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚』の◆7bpU51BZBs氏のライダー(マスターテリオン)、
『Fate/Fessenden's World-箱庭聖杯戦争-』の◆v1W2ZBJUFE氏のキャスター(ネロ)を参考にさせていただいたことを明記いたします。


16 : ◆lkOcs49yLc :2018/04/09(月) 19:25:08 fhLFp.pE0
続いて投下します。


17 : 不知吟士&ランサー ◆lkOcs49yLc :2018/04/09(月) 19:25:50 fhLFp.pE0
「はぁっ!!」
「うぉっ!!」

ある道場らしき空間にて、運動着を着た二人の人物が取っ組み合いを行っていた。
黒髪の少女の長柄物を使った素早い攻撃を、おかっぱの青年がひらりひらりと間一髪のスキを突いて次々と躱していく。
長柄物はありとあらゆる部位を狙ってくる。
手、脚、胸、鳩尾、しまいには頭部まで。

その精密さに、嘗て休憩時にゲーマーなルームメイトがシューティングゲームで見せた精密射撃を思い出す。
突きの素早さは上官にも通じるが、避けながらもどこか違うような感覚がする。
まるで、狙いを定めた敵(エネミー)を撃ち落とすような感覚である。

心臓に武器が向かう。
飛んで避ける。
続いて右脇を狙う。
くの字に曲がって避けられる。

狙う、狙われる。
避ける、避けられる。

そうした、二人の攻防戦が続いて、凡そ45分が経過した。


◆  ◆  ◆


訓練が終わった後、二人は外食としてうどん屋に寄った。
因みにうどんなのは珍しく少女……ランサーの強い希望である。
本当ならファミレスにでもしようかと考えていたが、いつもはクールな彼女が異常な程に推してきたため、今に至る。

店は前によく他の捜査官が来る所に良く似ていた。
場所が元の世界の職場から大分近いこともあって、以前仲間達と共に来たことが何度かある。
思えば前はあちらの壁沿いのテーブルにいたが、今回は四人分のテーブルを二人で占拠して座っている。


「……んで、あれでちゃんとチームワーク出来んのかよぉ、俺達?」
「……さあ、少なくとも今の所は私の仲間と比べると大分下よ、貴方とは。」

箸をお椀の上に置き、聖杯戦争のマスターとして招かれたおかっぱの青年……不知吟士(シラズギンシ)は、気怠げに布団干しの様に首を背もたれに寄っかける。
うどんを完食し、携帯ゲームに耽っているロングヘアーの少女……ランサーのクラスで喚ばれたシラズのサーヴァントは、素っ気なく返事をしながら携帯ゲームに熱中している。

不知吟士がこの舞台に巻き込まれたのは、丁度昨日のことであった。
参加条件を満たし、ランサーと出会い、それなりにお互いのことに付いて紹介し合った。
サーヴァントというのは、歴史にもオカルトにも殆ど詳しくないシラズには無縁のことであったが、歴史上に存在する英霊其の物であるらしい。
しかし彼女は、どう考えても昔の英霊とは思えない様な存在であった。
非戦闘時には学生服を着ていて現代技術に詳しく、才子並にゲームに溶け込んでいる英霊等、流石にシラズからしても眉唾物な存在だ。最もこの聖杯戦争にも言えることだが。


18 : 不知吟士&ランサー ◆lkOcs49yLc :2018/04/09(月) 19:26:12 fhLFp.pE0

しかし話し合って分かったことは、ランサーもまた、シラズ達クインクスと同様に仲間とチームを組み、寝食を共にし、現代と同様のトレーニング施設で訓練を重ねていたことである。
話しによれば彼女もまた、喰種と同様―本人に言わせれば喰種よりも質の悪いとされる―に人を喰らう怪物と戦っていたらしい。

つまりシラズもランサーも、共に怪物退治に勤しむ中で、仲間との連携をより強化することを大きな目標としているということになる。
チームワークを取ることの重要性は、メンター……サッサンや瓜江から耳にタコが出来る程聞いているので馬鹿な自分にも良く分かる。
とのことで、今後においてお互いの信頼関係を結び、戦闘においてより円滑な連携を取れるようにする、ということになったのだが――

(いや、本当に大丈夫なのかよこれ……)
(……………)

まだ召喚して間もないとは言え、溝があまりにも大きすぎる。
クインクスの仲間やメンターとはアカデミーで顔見知りだったからそれなりに溶け込めたとは言え、彼女は初対面だ。
その上彼女は英霊なのだが、年齢は何と高校生、つまり自分より年下ということだ。
いや自分より年下なのに英霊になれるというのも中々凄いことなのだが、問題は子供にどの様に付き合っていけばいいという話だ。
体つきが子供のように華奢な睦月や、立派な大人なのに圧倒的にだらしない才子とは明らかに訳が違う。

(考えろ……考えるんだ不知吟士!!俺はクインクス班長だぞ!!仲間とのチームワークが考えられなくて何がリーダーだこんちくしょう!!)

「っしゃあやってやるぞぉ!!!」
「すみませーん、他のお客様の迷惑になりますのでー。」
「あ……すんません。」

溜息を付き、まだ残っていたうどんの残りを啜る。

(冷めてんじゃんこれ……)

どうやら大分話しすぎてしまったようだ。

沈黙は尚も続く。
お互いの椀がとうとう空っぽになっても尚、会話の一つや出やしない。
満腹感も相まってそろそろ眠たくなってくるほどだ。


19 : 不知吟士&ランサー ◆lkOcs49yLc :2018/04/09(月) 19:26:43 fhLFp.pE0

(あー……えーっと……こういう展開どっかで見たことあるような……)

そうだった。
思えばクインクス時代でも似たような空気になっていたことがある。
いつも無口で他人とコミュニケーションをロクに取ろうとせずに暗い雰囲気を催す奴……

(そうだ思い出した!!こいつウリ坊とおんなじタイプじゃねぇかよ!!!)

――いっちゃん面倒くせえ奴じゃねえかよチクショー!!

そうだった。
思えば自分の前任のクインクス班長にして自分よりも階級が上の優等生、ウリ坊……瓜江久生も彼女に近いタイプの人種だった。

(でもあいつも生活してみると結構良い奴だったしよぉ……やっぱりなんか話題出してみっか!!)

そうだ。
まず話すには話題作り。
自分やハルも良くやっていた友達作りの基本――

(えーと、いや、何を話せば良いんだ?)

それもそうだ。
出会ったばかりの人間と話が合うような事柄とは何だろうか。

(仲間のことはさっき話しちまったし、訓練のことも……ん?)

……そう言えば、ランサーは携帯ゲームにのめり込んでいるではないか。
毎日のように携帯ゲームにのめり込んでいる人物、シラズはゲームよりもバイクが欲しい様な人間だが、そういった人物を己は知っている。

(そうだ才子だ!才子のゲームなら横で見ているし身近な話題作りになるかもしれねぇじゃん!!)

「おいラン……」「あの……」

同時に口が合った。


「………。」
「………。」

(いや、そう言えばゲームとかあまり話せそうにねぇしなぁ……)

ていうかそもそも何で元の世界では治療費にすら困窮している自分がゲームとかいう贅沢品持っているのかすら謎なのだが、まあそこは置いておこう。
多分ここでのせってい?ろーる?って奴ではあっちよりも大分裕福に暮らせているという事になっているそうなのだが。

「あーえっと、取り敢えずお前から話せよ。」
「……マスター、貴方に、叶えたい願いはあるの?」
「……あー、いや、まあ、一応。」


シラズの聖杯にかける……いや、正確に言えば「掛けたい」願いは、自分の妹を回復させることである。
妹のハルは今、身体の血液凝固成分が異常に活性化し他の身体の部分にまで回ってくる病に侵されている。
完治する手段はなし、今は病状を遅らせることだけが唯一の手段だが、その費用も決して有限というわけではない。

「……だったら、戦うまでよ。貴方の願いがどんなのだかは知らないけど。」
「わりぃ、俺には無理かもしんねぇ。」

少し前の……あのナッツクラッカーと戦う前のシラズなら、戦う覚悟を決めていたかもしれない。
妹を生き返らせるために喰種捜査官になったのだから。
ハルの為ならどんなことも出来るからと。

そんな何も知らないような馬鹿な考えに、自分はきっと至っていたと思う。
だが―


20 : 不知吟士&ランサー ◆lkOcs49yLc :2018/04/09(月) 19:27:26 fhLFp.pE0

――きれいに

Sレート喰種、通称『ナッツクラッカー』。
男性の睾丸を潰して捕食することが好みの喰種(グール)である彼女は、その類稀なる実力で多くの捜査官を殺し、自身も殺されかけた。
妹の治療費を稼ぐためには金が必要だった。
だからクインクスになり、捜査官になり、必死に戦ってきた。
トップクラスの喰種である彼女を倒せば、高い金が手に入る。
だから殺した、殺したのに。

――きれいに、なりたい。

高い賞金首が遺した言葉は、普通の人間が思うような、純粋な女性が口にするような、そんな言葉だった。
人に紛れる喰種に人並みの知性があれば、人並みの願望があった。
つまり自分は人間を殺してしまった様な物である。
そう回想していたその時である。

「うっ!!」

突如、胃が踊るような感触がしてくる。
赫子を出そうという意識もないのに、まるで赫子や排泄物が出そうな感覚が、胃から食道に渡って滲み出てくる。

(またかよ……ちくしょう……)

ナッツクラッカーを手に入れて以来これだ。
人を殺してしまったというような感覚が、夢に出てくる程に嫌になっていたのだ。
頭がフラフラしてくる。

「どうしたの!?」
「わり……い、ちょっとトイレ……う…おぅぇえ……。」

よろよろと、身体をくの字に曲げてゆらゆらとトイレへと向かう。
さっき食べていたうどんの感触が喉から感じられる。

<<わりぃ、ランサー。俺やっぱ、人殺せねぇよ……>>

喰種(ひと)一人殺しただけでこの感覚だ。
生憎自分は、サッサンや瓜江、他の先輩みたいになることは出来ない。
こんな状況で生き残れるのかが心配だ。

(けど、やっぱり死にたくは、ねぇかも……)
「おっぷぅ……」

そんな考えを浮かべながら、青い人型のマークが目印の男子トイレのドアノブに手を掛ける。



◆  ◆  ◆


21 : 不知吟士&ランサー ◆lkOcs49yLc :2018/04/09(月) 19:28:16 fhLFp.pE0


気分を悪くしたマスターがトイレへと入り込む姿を一瞥した後、ランサーはイヤホンを耳に装着し、ゲームへと自分の視界を飛び込ませる。
遊んでいるのは簡単なハンティングゲームだ。
ドラゴンを倒して皮を剥ぎ取り、食料や装備とする、そんな内容のゲーム。

ランサーは生前、今ゲームで操作しているプレイヤーキャラの様に人とは相容れぬ巨大な怪物と戦ってきた。
世界を今にも荒廃させようとする化物から、世界を守るために。

聞けば、ランサーのマスターである彼も、人間を襲う怪物を倒すことを生業としていると言う。
人間に紛れている敵を殺す分、自分よりもシビアな倫理観を持っているはずの彼が、どうしてあそこで吐き出すのかは分からない。
あの陽気さは、嘗て自分と共に戦った土井球子に少し似ている気がしたが、そんな彼が何故そこまで怯えるのだろうか。
自分にはとても手に入らない明るさを持っているにも関わらず、何故その様な脆さを抱えてしまうのか。
マスターよりも生きた年の数が少ないランサーには、とても入り込めない様な世界であった。


(だんだん貴方を責められなくなってきたわね、乃木さん)

嘗て怪物たちに復讐心に駆られ、誤って友を怪我させた戦友を思い出す。
私情ではお役目は果たせない、チームワークがなっていないと彼女を詰ったことを思い返す。
――たった今、クエストの対象であるドラゴンを倒せた。
ゲームの世界では自分の技量で楽々倒せるが、怪物はそうも行かなかったことを思い出す。
思えばゲームでも、彼女との協力プレイだと序盤こそ足を引っ張られがちだが、最終的には以前より遥かに楽になったと追憶する。

(………)

気持ちは分からなくもない。
自分も、好んでゲームの世界の様に人を殺したがる性質ではない。
あの時故郷の人間を衝動的に殺しかけた時を除いて。


(けど、今の私はサーヴァント……)

そうだ。
今の自分はサーヴァント。マスターの刃となり彼を守護する存在である。
ならば、今は彼の代わりに自分が戦ってやろう。


(きっとそのために、私は喚ばれたのだから――)


――私は、価値のある存在ですか?


小さい頃から、自分に価値なんてないと思っていた。
だから、世界を怪物…バーテックスから救う役割を頂いた時は、あの人生の中で一番幸せだった時だと思う。
自分の価値観を他者に証明できるのだから。
が、世界を永続させるため、今の自分の名はその罪と共に抹消された。
だけど、今は違う。

(今度こそ、誰かを守るために戦ってみせる。サーヴァントとして……勇者として)


失われた勇者は、今こそ友を守護するサーヴァントとして、再び英霊として花を咲き誇らせた。





   ――郡千景という勇者がいたことを、私は忘れない。
   ――彼女は最後に確かに、自分に勝ったのだ。

                  勇者御記 二〇十九年七月
                        乃木若葉記


22 : 不知吟士&ランサー ◆lkOcs49yLc :2018/04/09(月) 19:29:09 fhLFp.pE0

【クラス名】ランサー
【真名】郡千景
【出典】乃木若葉は勇者である
【性別】女
【属性】秩序・中庸
【パラメータ】筋力B 耐久C 敏捷A+ 魔力B 幸運D 宝具B(勇者変身時)

【クラス別スキル】

・対魔力:A
神樹様の加護による物。
凡そ現代の魔術師では傷を付けられない。

【保有スキル】

・勇者:A
神樹様を守護する役割を授かった少女達。
勇者スマホを使用することで勇者装束を纏って戦う。
Aランクの『神性』とCランクの『魔力放出』、そして『勇猛』と同等の効果も有する。

・神樹の加護:A
八百万神の集合体である神樹様から、精霊のデータを引き抜いて借りる能力。
ランサーは主に『七人御先』による分身攻撃を得意とする。
ただし、精霊の力を借りれば借りる程負の感情に押し潰されてしまう。

・影なる勇刃:A
光に立つ事を許されなかったランサーの固有スキル。敏捷に補正が掛かる。
ゲームで培った高度な反射神経に加え、『気配遮断』『単独行動』等も含めた複合スキル。
また、ランサーが公的文献から削除された逸話から、Aランクの真名秘匿も有する。
郡千景という少女は、最期まで光を我が物にすることは出来なかった。
だが、無数の侵略者を斬り裂いたその勇姿は、正に勇者と呼ぶに相応しい物であった。

【宝具】

『大葉刈(おおはかり)』
ランク:C 種別:対人・対神宝具 レンジ:1〜5 最大捕捉:1
ランサーがバーテックス初襲撃の日に入手した聖遺物である大鎌。
味耜高彦根命が葬式にて、天若日子と勘違いされ激怒した際に振るったと伝えられている。
その逸話からBランクの『神殺し』に加え、同陣営のサーヴァントに対しても特攻が掛かる。
生前とは異なり、自在に霊体化させられる上、勇者装束とは別に召喚出来るため、変身前でも実体化可能。
召喚時には刃は畳んであるが、即座に変形して鎌となる。

『千景殿(せんけいでん)』
ランク:B+ 種別:対城宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
瀬戸大橋に続く霊的防御機構として造られるはずだった塔。
元となったのは旧世紀において『ゴールドタワー』と呼ばれた建造物。
内部には大赦関連の施設に加え訓練場に宿泊施設が揃っており、外の世界を除くために派遣された防人達が拠点としていた場所でもある。
この逸話から、宝具を顕現させた際には周囲に防御結界が敷かれる。
また、この宝具はバーテックスが襲来した際にロケットのように射出される様な仕組みにすることが考案されており、実際にロケットとして発射できる。
しかし、この機能は完成する前に建造する機会が失われてしまっており、実際に日の目を見てはいない。
高い神秘性を持ってこの宝具が顕現したのは、宛らアルキメデスのレンズの様にもしも出来ていたらという空想が信仰となって形作られたからである。

因みに、この千景殿という名称は、上里家がゴールドタワーの頂上の展望台から千の景色を見られるためと言う事を由来として名付けている。
果たして、郡千景という失われし勇者が如何にしてこの後世に生まれた宝具を手にした所以は、我々の知る由もない。
「相変わらずお節介ね、上里さん。」


23 : 不知吟士&ランサー ◆lkOcs49yLc :2018/04/09(月) 19:29:37 fhLFp.pE0


【Weapon】

『勇者スマホ』
大社から特別に作り出されたスマートフォン。
『NARUKO』と呼ばれるアプリケーションを使用することが可能。
このアプリを介し、変身ボタンを押すことで勇者に変身できる。

【人物背景】

世界が地球外生命体バーテックスにそれ程汚染されず、神世紀がまだ始まる前の四国。
其処にバーテックスから世界を守る役割を与えられた、四人の勇者がいた。その四人の勇者の『五人目』が、郡千景である。
自身の存在意義を見いだせずに荒んでいた千景は、バーテックスの最初の侵略にて大葉刈を手にしたことにより、勇者として戦う事となった。
三年の訓練を経て、仲間達と絆を育み、乃木若葉を初めとする四人とは共に戦う仲間になるが、しかし数々の事情が積み重なり彼女の心は磨り減っていく。
精霊の召喚の副作用による負の感情が徐々に増えていき、勇者達への不満の声が自身に降り掛かったことで人々に再び見放され、虐められていた頃のトラウマが再発。
勇者に歯向かい、人間を傷つけ、精霊の負の力に敗北してしまった事から、死後勇者としての資格が剥奪されかけたが、仲間達によって勇者の名は残され続けた。
しかし、後世にてその名を悪用されるのを防ぐため、郡千景の記録は全て抹消された、と言う事に至る。

家族とも不和でいじめられっ子だったため、敢えて人から遠ざかるような素振りを見せる。
その為か承認欲求が非常に強く、勇者であることを自分が必要とされていると感じ、己のアイデンティティを取り留める為にも戦っている。
寡黙で内気だが、自分に常に明るく接してくれた高嶋友奈と出会った事により、彼女に心を開くようになる。
一方で陽気で人を引き付ける何かを持っている若葉や土居珠子とは反りが合わないが、仲間意識は友奈達と同等。
ゲームが大得意で、ありとあらゆるゲームにおいて無敵を誇る。

【聖杯にかける願い】

もう一度高嶋さんや皆に会う。


【方針】

マスターに従う。


24 : 不知吟士&ランサー ◆lkOcs49yLc :2018/04/09(月) 19:29:54 fhLFp.pE0

【マスター名】不知吟士
【出典】東京喰種:re
【性別】男

【Weapon】

『赫子(かぐね)』
喰種が人間を喰らう際に発生させる捕食器官。
血液で形成されており、自在に形や硬度を変えてうねる。
シラズの赫子は『羽赫(うかく)』。遠距離攻撃に特化しており火力が高いがその分燃料切れしやすい傾向にある。
発生させた山の様な赫子からミサイルのように弾を発射する。

『ナッツクラッカー』
喰種の赫包を科学技術で武器に改造した武器『クインケ』。
普段はスーツケースに赫包を収納する形で携帯しており、取っ手のスイッチを押すことで内部の赫包が武器を形成する。
男性の睾丸を好物とする喰種の赫包を元に造られた物で、レートはSと非常に高い。
槍状の武器で、投擲し対象の体内に突き刺すことでサッカーボール状の糸を繋げ合わせた球体へと変化し膨張、そのまま対象を破裂させる。
ただし、現状シラズはこの武器を使いたがらない。


【能力・技能】

・クインクス
人間の体に喰種が持つ独特の臓物『赫包(かくほう)』を人工的に移植した存在。
半喰種と異なる所は、赫包に特殊な素材で作られたケースを設け『体内にプラント』する事にある。
これによりRc値にリミッターを掛け力を制御することが可能となり、人間の食事も取れるようになる。
常人よりも高い身体能力を持ち、耐久力も上がるためある程度魔力量に補正が掛かる。
ただし、シラズの赫子は燃料切れに定評のある羽赫なのでそこら辺はあまり期待しない方が良いかもしれない。

【人物背景】

人を食らう亜人『喰種(グール)』に対抗するために作られた喰種の力を埋め込まれた捜査官『クインクス』の一人。
体内のRc値が異常をきたす難病に侵されている妹の治療費を稼ぐためにクインクス施術を受けた。階級は二等。
陽気で喜怒哀楽が激しく、容姿はヤンキーじみておりそれに良く似合う荒っぽい口調と好戦的な気質が特徴。
戦いにおける勘や洞察力は鋭い一方で頭に自信はなく、座学の成績は授業をサボっていた米林才子に僅差で負ける程。
しかし推察力や嗅覚は悪い方ではなく、また見た目の割には常識的かつ真面目な価値観の持ち主であり、仲間達を想う思慮深さも併せ持っている。
このことをメンターに評価され、能力はあるが独断専行の多い瓜江久生の代わりにクインクスチームのリーダーを任されたこともある。

多くの捜査官を殺したSレートの喰種を倒した功績からそのクインケを入手するが、自分で他人を殺したことを切っ掛けに戦うことに躊躇を覚える。
今回は、未だ悩んでいる時期からの参戦。そのためまだ丸刈りにはしていない。


【聖杯にかける願い】

妹を回復させたい……けど、命を奪って良いのか?


【方針】

まだ悩んでいる。


25 : ◆lkOcs49yLc :2018/04/09(月) 19:30:11 fhLFp.pE0
投下終了です。


26 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/09(月) 23:51:26 H15yPo1Q0
候補作投下ありがとうございます!感想は後日まとめてします。お待ち下さい。

設定に一つ加え忘れました。
・現在、マスター候補の覚醒を待つ所謂『予選期間』であり、サーヴァントの召喚して直ぐに本戦へ移行しません。
 本戦は後日、主催者より宣言されるまで開始しません。これは聖杯戦争の知識等と共に
 マスターとサーヴァント。双方把握しています。


もう一つ。wikiの方を製作しました。マップの方もすでにありますので参考になればと思います。
【www65.atwiki.jp/fate_overheaven/pages/1.html】

引き続き候補作の投下をお待ちしています。


27 : ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 17:34:17 /B5PN1/k0
お疲れ様です。私も一作投下致します。


28 : 西田啓&セイバー ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 17:36:16 /B5PN1/k0



 憂いの心持ちの儘に、西田啓は聖杯戦争の朝を迎えた。
 平生彼の住まいとする家屋の一室、十畳間の畳の上に、黴の臭いひとつとしてない座布団を引いて、西田はどこか構えるように肩を張って正座している。
 西田は、七十幾歳の瘦せこけた男性だった。決して貧しい生活を営んでいる訳ではないが、元来肥える事を嫌う小食主義と、視力を斬り落した為の食生活の不便から、彼がこれ以上に余分な肉や脂肪を増やす事は無かった。
 早朝、郵便配達の音に目覚めてから白米と味噌汁と焼き魚と漬しを食べて、一杯の日本茶を嗜み、昼は閣僚や学者仲間と会食し、夜は大概茶漬けで済まして、偶に食後に団子を食らう程度の日々で、それ以上を望む事もなかった。いや、望めなかった。
 容貌は、短い白髪を頭の後ろに流していて、瞳はすっかり閉じきっていた。その開かない両瞼の上には、そこだけ色の薄い線が入って窪んでおり、浅はかな傷痕を思わせていた。事実として、これは自らの刃を受けての刀傷だった。
 今は傍らに刀長二尺三寸ほどの刀剣を置いているが、西田はいつでもその刀剣を触れられるところに持ち歩いていた。
 国の西洋化と余り迎合する事のないその精神は、西田に未だ着物での生活を強いていた。畳と線香の臭いが、それとなく西田からは香っている。西田はこの安息の空間でのみ流れるその香りを好んでいた。
 一方で、こうした場に居ない時、表に出て通りを歩く時などは、その匂いが搔き消える事に堪えようのない苛立ちを覚えてばかりであった。それは、別段、西洋文化が気に入らないと云う意味合いではなかった。もっと、精神的な意味合いを伴っている。

 日本人の醜さに失楽し、両目の視力を自ら絶って以来、彼の嗅覚は、より鋭敏に日本人の醜さを察知するようになってしまっていた。
 表を歩かば、脆弱で自らの事しか考えない俗物の声が聞こえ、風情のない無臭の意思達が鼻を突いた。米国の傲慢を覚えさせる憤りのニュースが聞こえたとして、その内容に反応する者はなかった。それは、見せかけの豊かさに真の活力を失った、抜け殻の日本人達が構築する現代の様相だった。
 寄る辺のない怒りを押し込め、関り合いそのものを嫌って閉じ籠り、根本と無関係な形での発散を求める有象無象の群れ々々が、西田の周りを常に取り囲っているようだった。それは比喩ではあったが、殆ど的外れでないのを、西田は深く実感していた。
 たとい眸に映る事がないとしても、西田には闇の中に吐泥の沼のように底のない、滑(ぬめ)った穢れは、ジッと見えている。視力の健在であった頃よりも、寧ろ余計に醜くなった日本の社会が、その穢れの正体だった。
 そうした音と臭いは、そんな日本の姿を、ひたすらに架空の光景として闇に浮かび上がらせ、西田を懊悩させた。
 西田にとって、それは遂に目を背けたくても瞑る目の在り得ない、地獄のやうな日々だった。背けたい目に視力がなく、瞑った儘なのに醜さが見えると云う訳だ。

 しかし、視力を絶った事で却って醜さの増した日本を感じるようになったのは、否応のない現実から目を背け、逃避の術を選んだ自分への戒めであると思い、当面は甘んじて受け入れる道を選んだ。
 この憂国の士にとって、今の状況は望む処ではないのだが、それにしても反骨の精神は耐え忍んでも押し込めない性格だったので、彼は先ずしばらく耐えて、それから準備を整える事を考えた。
 何を成したかではなく、何を成そうとするか。それが西田の尺度だった。
 本来の和の姿を取り戻し、日本再生を成すのが、西田の考えだつた。ある時、その手段を西田は、三島由紀夫以来のクーデターに見出した。……そして、近頃、西田はそれを同志と共に興して見せた。
 経緯は簡潔に書くが、こうだ。
 兼ねての西田の予想の通り、経済不況の責任を日本に擦り付け、穀物モラトリアム(※1)を発動したのはアメリカだった。それに対し、西田は故国最大の防衛壁である自衛隊に決起を促した。第三国の日本へのテロへとカムフラージュされた、日本への武力闘争にさえ発展した。それも又、アメリカの定石と予想していた西田は、タクティカル・アーマー(※2)の配備で防衛策を取った。
 結果は、総てではなかった。仮に敗北したとて、意志が遺っていたならば、西田のように、今の日本の様相に不安を覚え、西田の遺言を拾い上げて決起の時を待ち望む者はやがて現れる。
 出来る、出来ない、勝つ、勝たないは、西田が、来る日米経済戦争に臨む上で、然ほど重大な事ではないと云う。何より不可欠なのは、それだけの爪痕を遺せるほど大きな期待を、国民たちに示す事であった。それはやらねばならぬ事だった。何かを成そうとした事実が残れば、それは次の世代の可能性へと変じる。それこそが西田の思想の本質だった。
 何より、その意志を遺す為には、聖杯戦争という突然西田を拉致誘拐した障壁は、取り払わねばならなかった。


29 : 西田啓&セイバー ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 17:36:52 /B5PN1/k0

「今の日本人の魂は、まさにこのソウルジェムのような物です」

 西田は、鼻の先で同じように正座を組む若い婦人へと云った。若いと云っても、生れた年を西暦で確かめるならば、西田より遥かに前に生まれ没した経歴があるのだが、今はまずサーヴァントの特質による物と納得してもらいたい。
 婦人は、サーヴァントだった。その程よく肉のついた華奢な体を桜色の袴に纏い、長く艶光る黒髪を束ね、数時間の正座にはまるで足を痺らす事もなく、何より西田に見せたい程の美しい姿勢で、西田の言説を聞いていた。西田は、そんな彼女の確固たる様には気づかず、毅然としたまま続けた。

「……貴女に依ると、このソウルジェムは無色透明であるそうですが、それは実に、今の日本の在り様に似ています。
 他者に向けられた悪辣とした害意も大きくないが、それと共に善や施しや慈しみ、尊厳や矜持、あらゆる意志も持たず、ただ、ひたすらに矮小で姑息な欲望の為に蠢いている。
 多くが他者や自然の為に何を成す事もなく、我々を生んだ国土と名誉が、他国の姦計と私欲に穢されている事に気付きながら、それを誰も自分の問題と捉えない。
 同時に、物質的な豊かさばかりを追い求めた結果、個の欲は見えやすい形になりました。やがて、それが膨れ上がってこの国の首を絞め、それが自身の下に還ってくる事実にさえ、彼らは気づこうとはしないのです。
 それが、今のこの国が持つ根源的な問題なのです。もしも、この在り様に誰かが一石を投じれば、日本人の魂は再び、色を取り戻す。いえ、必ず投じなければならない。
 気づきさえしたのならば、今起きているその他の問題は、本来日本人の持つ、他国と比しても類稀なる才覚によって、すべて快方へと向かえる事でしょう。
 私は、屹度(きっと)そうだと信じています」

 色合いのない、ただ生きるだけの生命を西田は、剣の刃のように硬く研ぎ澄ませた言葉で否定していた。
 唯生きるだけの、意志なき生命がこの国に如何ほどいるのか。アメリカの属国として、あらゆる無理難題を作り笑いで答える政府、それに口先だけ反発するも結局は成すが儘の国民。そこに西田の望む日本国民の形容は合致しなかった。

 一応、注釈しておくが、全ての諍いや暴動に対して、西田は否定的な感情を抱えている。武力は本来棄てるべき物であり、戦争は終わらせる物と切に思う。しかしながら、傲慢と横暴の被害に喘ぎ、それでも黙せよというのは、西田にとっては耐え難く、多くの人にとっては、事実黙しながらも、その鬱屈とした不安を何かの形で発散しないのは、むつかしい話だった。
 結局、そうして貧困や理不尽の渦中に溺れさせられた国民たちは、誰かにその憤りをぶつけ己を守らなければならなかった。そのやり方しか知らない者が矢鱈に多かった。すると、穀物モラトリアムが興れば、同じ国民同士が、末端で、少ない国産の米を奪い合い、暴動し、斯(か)くも醜い姿を晒すのである。それが今の日本の実体だった。
 そうではないのだ。そのエネルギーを向けるべきは、もっと大きく、一度は力を示さねばならない大国なのだと示さねばならない。我々は一丸となって大国の傲慢と横暴と戦い、出来るのならかの国に初めての敗北を認めさせ、それから後で自信を持ってそれを受け、最後は敢えて武力を棄てなければならない。さうして、彼らの矛先を正す事で、彼らが気づいている筈の方向へと誘う事で、魂は色を成す筈だ!
 ……その為に、先ずこの国がすべきは、アメリカの経済を叩き、その余波を受け、胸を張って貧しい国に立ち返る事だ。
 戦いによって生じる貧しさの坂を胸を張り下り、その姿に日本人を魅せる冪なのだ。

「私は、聖杯などと云う物に興味はありません。まして、人の欲望を煽り、極私的な願いの為に多くを巻き込む在り様には、断固として反対の姿勢を取らせて頂きます。
 仮にあらゆる大義が叶う力があるとして、その手法には理と因果関係が必要です。どう方策を変えれば、政治の中で何が動き、何が得られ、何が捨てられていき、人々の心はどう動くのか。
 そうした過程を除外した大義は、国の為であれ、平和の為であれ、統べて自壊し、願いそのものの意義を腐らせます。極私的な願いの為に使うなどは、以ての外です。
 貴女にとっては失礼ながら、しかし、これは今ここにいる貴女という存在を否定する積りの言葉ではありません。あくまで、聖杯という願望器に対しての、批判です」


30 : 西田啓&セイバー ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 17:37:19 /B5PN1/k0

 西田は、聖杯戦争については、このように述べた。
 国学者として幾つかの思想書を世に出した西田は、聖杯戦争の話を聞けばこう答えるのみだった。
 簡略に説明すると、この聖杯戦争という営みは、聖杯の効力が信頼に値するとして、極めて意志薄弱で不徳な行いだと断定するのである。
 例として国際世界における戦争の根絶を願うならば、その為の政治的訴えが始めにあり、その主張が国民を何を得て、国民の何を捨てゆくのかを統べて考え浮かべ記して案じなければならない。その後、もしもその政治的訴えが実行に移されたとて、それで実際には如何なる動きや食い違いや批判が生じていくのかも確認し、思想や手法を後世に残さねばならないだろう。寧ろ、それこそが西田たちの世代にとっての本義と云える。
 模し、人間の醜さが故に戦争を起こす欲望を捨て去れないと仮定するのなら、その醜さを利用し制御して、彼らから別の豊かな感性を引き出せる環境を政治によって産出し、非戦の為にそれを行使してゆくしかない。あるいは、欲望など浮かばずに多くが幸せを分かち合える世を作りえる教育と、制御をしなければならないだろう。
 これらはあくまで机上の空論だ。だが、そうある努力がすべて実行と共に、現実という障壁に衝突し、徒労に帰るとして、そんな失敗と意志の歴史が積みあげ、後の世を引き離すように講じられなければ、そもそも人間社会と戦争とを断絶する意味などどこにもないと云える。
 聖杯は、そうしたプロセスや思想とは無関係に、ただ意志と願望にだけ呼応してそれを叶える物と考え得る。西田もその不条理たる聖杯のメカニズムや実際を詳しくは知らないが、仮にそのようにプロセスを短縮できてしまうものならば、その行使は軽率であると思えた。
 ……地蔵のように黙していた婦人が、西田の言から暫くの間を感じ取り、一言、口を添えた。

「西田さん、國を想う貴方の心中、お察し致します。
 それから重ねて、聖杯戦争への反対の姿勢について、私の方からも尊重します。
 ……ただ、これから共に戦う者としていくつか意見を挟ませて頂いてもよろしいですか?」

「構いません、どうぞ」

 西田は云った。
 元より、一方的な演説をしたいのではない。完全な賛同者ではなく、理解し、した上で意見する者を欲した。理解の壁にぶつかる者や、個人の意識で反発する者でなければ苦にはならない。まだ彼女がいずれかはわからない。
 丁重に、婦人は云った。

「ありがとうございます。
 まず、西田さんの考えについて幾つかお聞きしたいのですが、西田さんは聖杯の力で平和を得る事は、反対だと考えて良いですか?
 それから、過程がなければ、大義であっても願いの意義がなくなると考えるのは、何故ですか?」

「……少々、言葉足らずでしたか。申し訳ない。
 つまるところ、そうした政治的手段や人身を無視した平和は、一過性の物でしかあり得ません。
 後世にその為の算段が残らない限り、一時平和を得ても、人は別の手段でまた闘争の術を見つける事になります。すると、今度は解決の道を見出せず泥沼に没します。それでは、真の平和とは言えません。
 人は皆、今ではなく、常に未来、次代の為に真の平和を探るのが本来の義務です。
 今はあくまで国や平和の為の話ですが、これについては、その他のいかなる目的に置き換えても同様でしょう」

「――」

「私の目指す日本の回帰も又、誰かの行動によって、人々が自力で気づかなければ意味を持ちません。
 しかし、それは統べて、日本人ならば自分たちの力で可能である筈と信じています。聖杯など不要です。
 そして、確かに気づいてもらうまでは、闘争という愚かな術にも委ねるしかない。それが私の結論です」

「……承知しました。私も深く、同意します。それでは、西田さん、質問を変えます。
 西田さんは、かつての日本人らしさは現代日本には無いと言っていましたけれど、この国の人は時代が変わっても、その在りかたを柔軟に変えて生きてきました。
 私の時代と西田さんの時代も、日本人らしさという物は、かなり違うものであると思います。
 この時代の価値観にはまだ私もあまり慣れてはいませんが、西田さんの時代にはその時代で別の日本人らしさがあるかもしれない、と私は思いますけど、どうですか?」

 西田は、少々だけ黙した。
 それは、決して婦人の言葉を否定したのでも図星を突かれたのでもなく、少々の呆れと己の説明不足を悔いる意味合いの成された物だった。ここに至ったばかりのサーヴァントに、西田の時代の日本人論を告げても、前提を欠いたわかりづらい議論に霧散するのは必然だった。
 思い直して、西田は口を開いた。


31 : 西田啓&セイバー ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 17:37:57 /B5PN1/k0

「確かに、貴女の言う通り、日本人は中国や西洋のあらゆる文化を吸収し、それを独自の形で発展させる力がありました。
 それを否定はしません。いいえ、寧ろ肯定なのです。多くを受け入れる土壌も又、素晴らしいこの国の美徳の一つです。
 私自身も現在は、生活の上で確実に新たな文化や思想の恩恵を受け、この精神もその不可欠を望んでいます。
 ですが、私の言いたいのは、そういった物質や文化や考え方の話ではありません。もっと、根源的で精神の支柱にある日本人の形を問いたいのです」

「精神の、支柱?」

「日本には、精神論という独自文化が存在します。
 悪徳により、一方的に自身の論法で他者を押さえつけ、想う通りに利用する様を皮肉する時にも使われがちな言葉であるものの、同時に悪徳や過ちに対抗する美徳の言葉にもなり得ます。
 世界が一斉に過ちを始めている時、太い精神によって、最初にそれを打破するのも、この精神論の在り方です。今こそ、日本人は、その精神で戦わなければなりません。
 そう、たとえば……」

 西田は、そう言葉を釘って、現代日本(※3)の抱える問題をいくつか、彼女に伝達しようと試みた。
 如何なる話をすれば、理解に値する反応を頂けるのか、これから少々の時間だけ思考の回路を巡らせた。今日までの百年の新聞を読んだ事のない婦人に、そこで積み上げられた歴史の前提を説明するのはとてもむつかしい事である。
 しかし、不自然過ぎないほどの時間とともに、西田は己の考えを云ってみせた。分らなければ分らないで良いとも思った。少々長くなるが、西田は歴史と思想を即座に纏め上げ、緩やかにそれを語った。

「……我々現代日本人は、第二次世界大戦での敗戦以来、アメリカという後ろ盾ありきで工業国として発展してきました。
 しかし、それは逆に経済大国であるアメリカの下であらゆる無理難題を強いられ、逆らう事も許されぬ儘に自国の問題のスケープ・ゴートとして利用される時代の到来を意味しました。
 その思惑の渦中で、日本はアメリカ無しには成立しえない物質的な豊かさを持ち、それに甘んじてきたのが、現代社会史の実情です」

「更には、この国の豊かさに目がくらみ、周辺アジア諸国の難民たちはこの国に移民だけの居住地域を作り、生活するようになりました。
 それは静脈瘤の如く日増に膨れ上がり、この国を侵食していこうとしている。
 多くの日本人はそうした他国の利己に不条理を感じながらも、それを言えない儘、ひたすらに押し込め、無視して生活していく事になった。
 そして、やがてはそういった危機や悪意を察知する嗅覚さえ衰え、感じる事さえ無いままに豊かさの裏の危機に押しつぶされ、他国の利己主義がこの国の人間にも伝染していった」

「ですが、あくまで、日本人は再生を望まないというよりは、再生を望む事を諦め果てているに過ぎないと思います。
 今の日本人は、生息できないほど落ちていく事もないままに、しかし国の名誉の穢される、その永久的な生殺しを無自覚に許容するしかないのです。
 そんな中で彼らに可能なのは、国の為ではなく自分個人の為の姑息な欲望だけを満たす事だけだった。故国を利用せんとする大国を、今度は故国の為ではなく自分の為に利用し、自分だけ恩恵を授かる者も現れた。
 ゆくゆくは、その姑息な欲望もまた膨れ上がって、今度は世界規模で大きな経済や自然を破綻させるでしょう。このままでは、欲望の果て、すべての世界の共倒れへと緩やかに向かっていく筈です」

「つまり、日本人は、一面では醜く愚かな物です。
 しかし、それと同時に、成功と失敗、闘争と平和の歴史が刻まれ続け、政治や制度や環境が変われば、自ずと悪徳も憂鬱も空虚も制御し脱し、本来の善き心を浮かび上がらせる事も可能であると信じられるほど、可能性を持った民族です。
 強いて、いま最も愚かと云えるのは、その利点に気づく間もなく、制御の術さえ捨て去り、本来利己に走るべきでない者までが利己に走り、問題に目を背ける事。では、制御する術とは、一体何か」

「そう、我々は、一度豊かさではなく、貧しさに振り返るしかありません。
 その下り坂を胸を張って歩き出す事で、破裂寸前まで膨らんだ風船を萎ませなければならない。
 欲ではなく、世界の未来の為に。競争のようにして膨らませていったこの風船から、最初に空気を抜き去ってみせるのです。
 それを最初に行い、手本を示せるのは、その下り坂を三年耐え忍ぶだけの知恵と、矜持と、大義が、その精神の中に含まれた、日本だけなのです。
 優秀な国は、その日本に倣って、それぞれの政策や国民性に合致したやり方で、坂の下り方を学ぶ筈です。
 だから、一度、もとの世界の日本人には、私の行動に目を向けて頂き、そして何かを感じてもらいたい。少々ばかり過激な言葉も使いましたが、私の真の狙いは、その事です」


32 : 西田啓&セイバー ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 17:38:22 /B5PN1/k0

 そう言い切ると、西田は、傍らの刀剣を刀袋から取り出して見せた。
 それは、剣客のサーヴァントであり、刀について漢よりも高い審美眼を持つ婦人の側から見れば、それは美しくも実用性に欠いた一本であった。しかし、あらゆる良刀に比しても、稀有な迫力が感じられた。
 西田は、何を斬りかかるでもなく、ただ刀を見せる為のように、それを視えない眼の前に立てた。盲にして、それは極めて自然な平衡感覚によって構えられており、流石に国を背負う様は、大言壮語でないと婦人に思わせる。柔に肩を丸くして構えているというのに、それは唯の趣で帯刀している者のそれではなかった。

「私からも貴女にひとつ、お聞きしたいのですが、貴女の目から見て、この刀はどういう風に映りますか? 是非、正直に述べて頂きたい」

 婦人は、「失礼します」と声をかけてから、その刀身に寄った。
 袴の裾を捲り、西田の日本刀を、一介の剣客として審美する。思いのほか、奇妙な均衡の上に成る刀だと気付き、婦人は感想を述べた。

「焼身を研ぎ直したものでしょうか、よく見ると身幅の割に重ねが薄く、ただ、この刀紋はとても繊細で美しいです。
 それに、何となく、怜悧な気を感じることはできます。実用的ではないのかもしれませんけど、西田さんにはとても似合っているように思います」

「……そうですか。ありがとうございます。
 古の剣客に認められたのであるならば、さる方に告げた言説を、今一度自信を持って諳んじる事が出来ます」

 そう云うと、微かににこやかに笑ったように見えた。
 そして、過去に同志に告げた日本人の論を、西田は再び展開した。剣客の婦人は、そっと元の座布団の上へと席を戻した。

「私は、真なる日本人の姿を、この刀に見出しています。
 透明な真理の中に生き、郷土を愛し、その美しい自然を慈しみ、自らに厳しくあることを尊び、利己を潔しとしない。そうした理念が息づいていた事を、何よりも無言のこの刀が語ってくれているように、私は感じています。
 精粋のように透明で美しく、しかし、これは永い年月の間に数え切れないほどの戦火を潜り抜け、その度に鍛えられ上げられた末に至った究極の姿。この帳面さは日本人が本来持っていた心。
 それ故、これは既に武器ではなく、己が心。己が心を他人に向ける者はありません。もし向けられるとしたら、それは己自身……」

 己が辿べき未来を暗示し、戒めるが如く、西田は告げていく。
 刀剣の本質を告げた西田の言葉に、剣客として生きた婦人は、強い共感を覚えていく。彼女も又、破邪剣征の精神の上で、その霊剣の在り様を問うた事がある。そして、統べて刀剣はただ他者を斬る武器に在らずと学んだ。
 眼前にいるのは、ただの国学者ではなく、魑魅魍魎の跋扈する太正の俗世でさえ生きられるかもしれない、一人の侍であった。
 婦人は、そんな西田へと、こう告げた。

「……セイバー、真宮寺さくら。今日この日を以て、主、西田啓のサーヴァントとしてお仕え致します。
 私たちの意志は、聖杯戦争の打破と、正義を示す事。がんばりましょう、西田さん」

 それは、唯の主従関係に留まらない、主の意思を受け入れ、力となる事を望んだ刀剣の覚悟だった。


33 : 西田啓&セイバー ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 17:38:45 /B5PN1/k0





【クラス】

セイバー

【真名】

真宮寺さくら@サクラ大戦

【パラメーター】

筋力B 耐久C 敏捷C 魔力B 幸運C 宝具EX

【属性】

秩序・善

【クラススキル】

対魔力:C
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

騎乗:E
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら何とか乗りこなせる。

【保有スキル】

心眼(真):B
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。

破邪剣征:A+
 真宮寺に伝わる剣技の力。
 邪な魔力を持つ者、あるいは魔獣に対してかなり有効な攻撃力で、「混沌」や「悪」の属性を持つ相手と戦う際に補正がかかる。

【宝具】

『霊剣荒鷹』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大補足:1〜50

 真宮寺家に伝わる魔を退ける剣。「二剣二刀」の一つであり、彼女の父・真宮寺一馬の形見でもある。
 意思を持っていると言われ、さくら自身の意思の持ち様に応じて、この宝具の技の種が増え、剣の威力も上がる。
 ステータス上でわかりやすく解説すると、「破邪剣征」のスキルのある者に呼応し、そのスキルの高低によって威力が変動する為、さくらには非常に合致した刀となる。
 現時点でのセイバーは、『破邪剣征・桜花放神』、『破邪剣征・百花繚乱』、『破邪剣征・桜花霧翔』、『破邪剣征・百花斉放』、『破邪剣征極意・桜花爛満』、『破邪剣征・桜花天昇』などの技が使用でき、それらを駆使して邪を撃退する。
 腕を磨けば更に多くの技を身に着ける事ができるが、おそらく聖杯戦争の期間から考えてもこれ以上は不可能であろう。

『霊子甲冑』
ランク:B 種別:対人・対獣・対機宝具 レンジ:1〜50 最大補足:1〜50

 高い霊力を持つ者だけが操る事が出来る鎧のようなメカ。
 一見すると搭乗型巨大ロボットのようでもあるが、その性質上、騎乗スキルの有無に関わらず使用可能(ただし先述通り高い霊力は不可欠)であり、セイバーもこれを手足のように自在に操る。
 生前のセイバーが光武、神武、光武改、天武、光武弐式などの機体を操った伝説に基づき、このいずれかを選択して現界させ戦う。これは後継機ほど強力であり、それゆえに魔力負担も大きいが、それだけ多くの敵に対応できるだろう。
 この『霊子甲冑』を纏えば、筋力・耐久のステータスがAランクやBランクまで上昇し、魔族・魔物・魔獣などの怪物や巨大な機械などとも互角の戦闘を可能にする。
 しかし、一方で敏捷のステータスがDランクやEランクまで下降し、敵を追尾するのには全く向かない。まさに甲冑の如き宝具である。
 セイバーの場合は、生身のステータスも極端に高い為、最大値ではA+レベルに相当する事もある。
 なお、こうした高い利点のある宝具ではあるが、常に優秀な戦闘指揮と仲間ありきで戦ったセイバーにとって、単騎での使用は必ずしも由とは言えない難点もある。

『魔神器』
ランク:EX 種別:対魔宝具 レンジ:∞ 最大補足:∞

 「剣」、「鏡」、「珠」の三種の神器。
 真宮寺の血を受け継ぐセイバーの命と引き換えに、 降魔を全て封印して都市を救う事ができる最終手段である。
 聖杯戦争の場合、周辺区域及びマスターの護衛と、その時点で帝都内に存在する全ての「混沌・悪」及び「混沌・狂」のサーヴァントや、魔獣・魔物の殲滅が可能となる。
 但し、使用に際しては、マスターの命を害しかねない膨大な魔力と二画以上の令呪、そして、セイバー自身の全魔力が必要となる為、発動の機会は滅多になく、その一度の使用が聖杯戦争の敗北を意味する事になる。

【weapon】

『霊剣荒鷹』

【人物背景】

 太正時代に活躍した帝国華撃団花組の隊員。宮城県仙台市出身。
 元陸軍対降魔部隊・真宮寺一馬大佐の一人娘であり、強い正義感と、魔を祓い封印させる破邪の力を持つ真宮寺一族の血を受け継ぐ。
 剣術の達人で、北辰一刀流免許皆伝の実力を誇り、鍛錬を決して欠かさない。
 帝国華撃団花組の隊員は全員、舞台に立って女優として活躍するが、彼女はドジでおっちょこちょいな面がある為、うっかり舞台を台無しにしてしまう事も……。
 恋愛面では、純情一途である反面、嫉妬深い面も見られる。
 ちなみに、好きな食べ物はオムライス。ネズミや雷が苦手である。

【サーヴァントとしての願い】

 マスター・西田啓を守り抜く事。
 また、西田啓の多くに共感し、彼女もまたその正義を示す事を目的とする為、聖杯の破壊が一つの方策となっている。
 敵対する者、相反する者については、静観、説得、撃退など、相手の事情や状況に応じて様々な術を取るが、少なくとも力のない人間や平穏を望む者には危害を加えず、その剣となる事を望む。


34 : 西田啓&セイバー ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 17:40:09 /B5PN1/k0




【マスター】

西田啓@ガサラキ

【マスターとしての願い】

 日本再生の意志を示す事と、本来の過程を短縮する聖杯を徹底的に否定する事。
 また、成さねばならぬ理念を持った指導者として、特務自衛隊のある世界へ帰還し、せめて「失敗」する事。

【weapon】

『日本刀』
 西田が所有している日本刀。
 焼身を研ぎ直したもので、身幅の割に重ねが薄い。
 他者ではなく、己に向けるものと定義し、彼はこの刀で自らの視力を絶ち、最期は自らの腹を切る事となった。

【能力・技能】

『指揮能力』
 高い教養、経験、思想、分析力、観察力、推論能力などから来る、敵の動向予報に基づいた戦略指揮。
 米国の穀物モラトリアムや武力攻撃を予想し、それに合わせた対抗策を講じていく事が可能となる。

【人物背景】

 国民的軍事アニメ『ガサラキ』の後半の実質的主人公。
 国学者。憂国の士。現代日本人の醜さとアメリカの汚さを訴えかけ、2014年にクーデターを起こした老人。
 かつて、日本の醜さを憂うあまりにその視力を自ら絶ち、今現在は盲目であるものの、それにより却って日本人の醜さを以前より強く認識するようになり、自分への戒めとしている。
 かねてよりアメリカ合衆国の属国としての日本の姿に疑問を抱いていた彼は、アメリカが後に引き起こす穀物恐慌を事前予測するなど、政治動向を探ったうえでの推論によってアメリカの手段やタイミングを近未来まで把握しており、そうした能力や思想によって多くのシンパを抱えている。
 そんな彼は、日本再生の術をクーデターに見出し、同志たる広川中佐や豪和一清を従え、主人公・豪和ユウシロウの属する特務自衛隊(※4)タクティカル・アーマー実験中隊までもその思想に取り込んで、自衛隊を決起させていった。
 しかし、あくまで本人の望みは、こうして政治を動かす事によって日本人が本来の清らかな心を取り戻す事であり、心根は平和主義者。権力そのものを得るのは手段に過ぎないと思われ、闘争を始めた自分自身よりも、闘争を辞めた者たちを真に称える。
 つまりは、「利己によって戦争を長引かせるよりは、早期に負けを認めても両国にとっての最良を選ぶ」「一度経済発展の幻想にすがるのを辞めて、坂を下る事で調和すべき」という、追及しない事によってバランスを取る美徳を由とする。
 また、理念や過程を重視し、結果を全てとはせず、あくまで、決起してその姿を日本人に示す事を一つの大きな意味としている。
 穀物モラトリアムや、シンボル(※5)のバックアップを受けた米国との武力衝突を経て、「アメリカ経済を破綻させ、故国も貧困に陥る(それにより胸を張って坂を下る事で、利己に囚われない日本人の心を取り戻す)」という経済攻撃を最終手段とした。
 こうした西田の攻勢により、合衆国大統領が早期に敗北を認めた事を受け、電話で貴国の判断やその姿勢を称えると、指導者として全責任を負い、割腹自殺を遂げた。事実上のガサラキ最終回である。
 そして、そんな彼の遺言として、「特務自衛隊の解体」を願う旨が告げられた。それは、彼が究極に目指したものである、「地上から国権の発動たる軍事力を抹消する」という理想を、日本が率先して行うべきだという意味合いであった。
 後世では、特務自衛隊の解体こそないものの、軍事力としてでなく災害支援などタクティカル・アーマーの平和利用を理念とした運用方針が発表されている。西田にとってそれが良い事なのかはわからない。
 クーデターを罪状とする。

【方針】

 他のマスターへの接触や、帰還の術を探る事。


35 : 西田啓&セイバー ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 17:40:28 /B5PN1/k0




【注釈】

(※1)【穀物モラトリアム】
 世界の穀物生産が熱波の影響で壊滅的な打撃を受け、各国の穀物不況に伴い、アメリカ合衆国が打ち出した日本に対する穀物輸出停止政策。向こう一年の停止。
 これにより国内の食糧備蓄量は激減し、穀物の価格は高騰。国民の生活は大きな打撃を受ける事になる。
 実情としては、単なる穀物不況によるものだけではなく、輸出国としての日本をスケープ・ゴートとして切り捨てる事で、貿易赤字を取り除き、経済不況に伴うアメリカ国民の不安を軽減させる思惑もあった。

(※2)【タクティカル・アーマー】
 通称TA。特務自衛隊が装備する人型兵器。

(※3)【現代日本】
 『ガサラキ』における現代日本は、西暦2014年とされる。
 但し、1998年の作品における現代日本である為、それ以降の経済不況や政治状況などはあまり考慮されず、あくまでパラレルワールドの日本における価値観である。
 その為、現実の2010年代をモデルとしていると思われる見滝原市においての政治経済の動き等に西田は明るくない。
 また、この章題において西田の口から批判される日本やアメリカの姿は、あくまで『ガサラキ』作中に準じたものであり、あくまで架空のキャラクターの把握によって生じた解釈であり、架空の年史における各国である事を留意頂きたい。

(※4)【特務自衛隊】
 通称特自。陸海空に続く第4の自衛隊。海外派兵を主任務としている。

(※5)【シンボル】
 国際企業をいくつも傘下に抱える世界規模のコングロマリット(複合企業)。米軍の司令官や保有戦力を私的に利用する異様な影響力を持つなど、世界を裏で暗躍する秘密結社としての側面がある。
 特自がタクティカル・アーマーを保有しているように、シンボルはメタルフェイクと呼ばれる人型兵器を保有しており、主人公・豪和ユウシロウの属する豪和家と同一の目的を持ちながらも、敵対している。


36 : 西田啓&セイバー ◆CKro7V0jEc :2018/04/10(火) 17:45:17 /B5PN1/k0
投下終了です。
ちなみに変な思想とかはないです。

早速、スレに映して文字化けしてたので以下を修正。

>>28

> 西田は、七十幾歳の�覧せこけた男性だった。決して貧しい生活を営んでいる訳ではないが、元来肥える事を嫌う小食主義と、視力を斬り落した為の食生活の不便から、彼がこれ以上に余分な肉や脂肪を増やす事は無かった。

 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

> 西田は、七十幾歳の痩せこけた男性だった。決して貧しい生活を営んでいる訳ではないが、元来肥える事を嫌う小食主義と、視力を斬り落した為の食生活の不便から、彼がこれ以上に余分な肉や脂肪を増やす事は無かった。

それと、

> 一方で、こうした場に居ない時、表に出て通りを歩く時などは、その匂いが�惜き消える事に堪えようのない苛立ちを覚えてばかりであった。それは、別段、西洋文化が気に入らないと云う意味合いではなかった。もっと、精神的な意味合いを伴っている。

 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

> 一方で、こうした場に居ない時、表に出て通りを歩く時などは、その匂いが掻き消える事に堪えようのない苛立ちを覚えてばかりであった。それは、別段、西洋文化が気に入らないと云う意味合いではなかった。もっと、精神的な意味合いを伴っている。



修正点は以上です。>>1さんも収録面倒で大変だと思うので、私の書いたほんへはメモ帳のデータから後で自分でwikiに収録します。


37 : ◆7PJBZrstcc :2018/04/10(火) 18:53:11 V61jv3YI0
投下します


38 : ブローノ・ブチャラティ&セイバー ◆7PJBZrstcc :2018/04/10(火) 18:54:34 V61jv3YI0
 夢を見た。
 1人の少年の冒険譚だ。

 森で育った彼には、他の住人と違い相棒が居なかった。
 しかしある日、その相棒が彼の前に現れた。
 それが始まり。
 育ての親を喪い、悪と戦う勇者という使命の為に故郷を旅立つ少年。
 森の外に広がる平原を抜け、待っていたのは城での運命の出会い。
 そこか火ら山を登り、川を上った。

 しかしそれで終わることなく、彼は7年の時を超えた。
 そして故郷を、火山を、湖を、村を、砂漠の奥を巡る。
 こうして最後には運命の出会いを果たした城で、悪の大魔王を倒し彼は7年前へと帰還し相棒と別れ、物語は一旦幕を下ろす。

 だが勇者の英雄壇はまだ続く。
 別れた相棒と再会する為旅を始めた少年は、ある日別の世界へ行くことになる。
 そこは3日後に月が落ちてくる滅亡寸前の世界だった。
 しかし彼はその3日間を繰り返しながら、4つの神殿を巡り元凶である魔人を倒す。
 こうして世界は救われ、彼はまた旅立ち、物語はそこで幕を下ろす。


 さて、そんな2つの世界を救った勇者である彼にも願いがある。
 それは己の名を後世に残すことだ。
 これほどの偉業を残した彼の名が残っていないのには理由がある。

 悪の大魔王を倒し7年前に帰った彼は、帰った直後に未だ動いていない後の大魔王の野望を未然に防いだ。
 これにより被害は抑えられたが、同時に彼の戦いも無くなった。
 また別の世界で彼は魔人と戦った。
 しかしその世界は彼では無い別の少年の夢の世界、彼が旅立った後にその少年は夢から目覚め世界は消滅した。

 彼は思った、己の名を残したいと。
 せめてもの慰めに、己の子孫に己の剣技を授けたがそれだけでは嫌だった。

 別に誰かから褒賞が欲しかった訳では無い。
 別に己の力を見せつけたかった訳では無い。
 別に己の偉業を称賛されたかった訳では無い。

 ただ誰かに覚えていて欲しかった。
 この冒険で得た称号を、その為に歩いてきた道のりを。
 たった一人でいい、知って欲しかった。
 唯一覚えているはずの相棒とは、会う事は終ぞ無かった。



 だから――


39 : ブローノ・ブチャラティ&セイバー ◆7PJBZrstcc :2018/04/10(火) 18:55:12 V61jv3YI0





「夢か……」

 見滝原の繁華街にあるホテルの一室で、1人の青年が目を覚ます。
 彼の名はブローノ・ブチャラティ。
 イタリアのギャング『パッショーネ』の幹部を務めている男だ。
 そんな彼がなぜ日本に居るのかというと、仕事漬けの日々を送っていた彼を見かねて部下が骨休みの機会をくれたのだ。
 彼はその好意を無下にせず、こうしてここに旅行に来た。

 という事になっている。
 だが実際は違う。

「セイバー、来てくれ」

 ブチャラティは己のサーヴァントを呼ぶ。
 そう、彼はここに聖杯戦争のマスターとして連れてこられたのだ。

「……」

 ブチャラティの呼びかけに応え、セイバーが姿を現す。
 緑の衣に金色の髪、そして背負う剣と盾。彼がブチャラティのサーヴァントだ。
 ブチャラティはセイバーに話す。

「セイバー、お前の過去と願いを夢で見た。
 だからこそ聞くぞ。お前はそれを聖杯、願望器に願って満足か?」
「……」

 ブチャラティの問いに無言で首を横に振るセイバー。
 満足なわけがない。
 セイバーの願いを叶えるという事は、何も知らない人間に苦難の記憶を植え付けることと同義だからだ。
 そんな己の利己的な思いを、人に押し付けて平然と出来るならセイバーは英雄になどなっていない。

「セイバー、俺はお前と初めて出会った時こう言ったな。俺はこの聖杯戦争を潰すと。
 それに対しお前は承服しかねる態度だった。
 理性では何も知らない人間を殺し合いに呼び出すなどあってはならない、と思っていてもお前の心に願いがあったから賛同しきれなかった。
 それは叶えてどうなる問題ではないと分かっているにも関わらずだ」
「……」

 ブチャラティの言葉に何も返すことが出来ないセイバー。
 だがブチャラティの話は続く。

「セイバー、もう1度だけ言うぞ。俺はこの聖杯戦争を潰す。
 吐き気を催す邪悪とは、何も知らぬ無知なる者を利用することだ。自分の利益だけの為に利用することだ。
 俺はこんな悪を見過ごして生きるなど出来ない。
 勇者なんて大層なものじゃないが、悪に屈するのではなくお前の様に悪と戦う道を選びたい。
 自分を殺すのではなく、自分を生かす道を往きたい。
 ――だが」


40 : ブローノ・ブチャラティ&セイバー ◆7PJBZrstcc :2018/04/10(火) 18:55:49 V61jv3YI0

 ブチャラティはそこで言葉を途切れさせ、セイバーを見る。
 そして手を伸ばしてこう言った。

「それにはお前の力が必要だ。
 俺だけではサーヴァントには勝てない。だから、俺と共に戦ってくれセイバー」

 その言葉にセイバーは考える。
 本当はすぐにでもこの手を取りたい。
 だが己の願いが邪魔をする。己の願いの小ささがそれを阻みそうになる。
 否、そうじゃない。
 本当は――

「……俺の手を取ってくれたのか、セイバー」
「……」

 セイバーはブチャラティの手を取り、聖杯戦争と戦う道を選んだ。
 躊躇いは在った、なぜならセイバーには誰かと組んで戦った経験が無いから。
 かつていた相棒は、決して弱くは無かったが直接的な戦闘はずっと1人だった。
 そんな自分が、誰かに背中を任せる戦いが出来るのか。
 自分以外の全てを敵と決め倒すのでなく、誰かを守る戦いが出来るのかが、ずっと不安だった。
 だがもう迷いは無い。
 セイバーは選んだ、マスターと共に戦う事を。
 まだ見も知らぬ誰かの為に再び戦うと、セイバーは決断した。

「ならば早速行動しよう。まずは他のマスターとサーヴァントを探すぞセイバー。
 そいつが聖杯を狙うなら排除し、そうでないなら一緒に戦ってくれる同盟を組む。
 異論はないな?」

 セイバーはブチャラティの方針に異を唱えることは無かった。
 それを確認したブチャラティは、ホテルのドアを開ける。

「セイバーは霊体化して着いてきてくれ」

 その言葉と共にセイバーは霊体化する。
 そしてブチャラティは歩き出した。
 歩きながら彼は思う。

(すまない。アバッキオ、ナランチャ。
 俺はまだお前達の元へは逝けない。俺にはやるべきことが出来てしまったからな。
 だがこの聖杯戦争を潰した暁には、きっと……)

 彼は歩く。
 例えこの戦いを終わらせても、待っているのが死だけであったとしても。
 ブローノ・ブチャラティとはそういう男なのだから。


41 : ブローノ・ブチャラティ&セイバー ◆7PJBZrstcc :2018/04/10(火) 18:56:22 V61jv3YI0
【クラス】
セイバー

【真名】
リンク@ゼルダの伝説 時のオカリナ

【パラメーター】
筋力A 耐久A 敏捷B 魔力B 幸運C 宝具A

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
対魔力:A
魔術に対する抵抗力。
Aランクでは、Aランク以下の魔術を完全に無効化する。事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。

騎乗:B
乗り物を乗りこなす能力。
Bランクでは魔獣・聖獣ランク以外を乗りこなすことができる。

【保有スキル】
時の勇者:E
ハイラルを救った勇者。
あらゆるダンジョンを1人で攻略した逸話から、トラップや仕掛けを見抜く事が出来る。
さらに、あらゆるアイテムを使いこなした逸話からどんな武器でもある程度の技量を持って扱う事が出来る。
ただし、セイバーが歩んだ歴史には時の勇者が存在しないためランクが大きく下がっている。

勇気のトライフォース:A
ハイラルに伝わる聖三角の一つ。
同ランクの戦闘続行と無窮の武練を兼ね揃えた特殊スキル。

【宝具】
『時を超える退魔の剣(マスターソード)』
ランク:A 種別:対魔宝具 レンジ:1 最大補足:1
ハイラルに伝わる伝説の剣。
混沌もしくは悪属性を持つ者には、本来以上のダメージを与える。

『勇者を支えたもう一つの武具たち』
ランク:D 種別:対魔宝具 レンジ:1- 最大補足:1-
セイバーの持つ『時を超える退魔の剣(マスターソード)』以外の武器。
ハイリアの盾、爆弾、弓矢、ロングフック、メガトンハンマーなど。
この中で消耗品である爆弾や矢は魔力を消費することで補充が可能。
ただし、セイバークラスとして召喚されたため本来より効果が落ちており、中には再現されていないものもある。

【weapon】
上記の宝具。

【人物背景】
大魔王ガノンドロフを倒した時の勇者。
そして彼は過去に帰り、ガノンドロフの野望を未然に防いだ。
だがそのせいで、時の勇者としての戦いは無くなり彼は歴史に名を残すことが出来なかった。

【サーヴァントとしての願い】
自らの名を残したい。
だがそれは聖杯に祈ることでは無い。

【運用法】
高い水準で安定しているのでどんな状況でも安定した戦いが出来るサーヴァント。
マスターも戦闘力があるので気をそれほどやらなくていいのもプラス。
欠点は、主従揃って遠距離攻撃に乏しい事。(セイバーの宝具に弓があるものの決め手にはならない)
アーチャーやキャスターと同盟を組めれば盤石となるだろう。


42 : ブローノ・ブチャラティ&セイバー ◆7PJBZrstcc :2018/04/10(火) 18:56:50 V61jv3YI0
【マスター】
ブローノ・ブチャラティ@ジョジョの奇妙な冒険 Part5 黄金の風

【マスターとしての願い】
この聖杯戦争を潰す。

【weapon】
スタンド『スティッキィ・フィンガーズ』

【能力・技能】
・スタンド『スティッキィ・フィンガーズ』
触れた対象にジッパーを取り付ける能力のスタンド。このジッパーは遠隔からでも開閉可能。
別の空間を作り出して物を隠す、ジッパーを開ききって切断など様々な方法で使用可能。
なお、近距離パワー型のスタンドなので単純なパワーとスピードも優れている。

・嘘を見抜く
ブチャラティは顔の汗のテカリ具合で嘘を見分けることができる。
汗を舐めればもっとわかる。

【人物背景】
ギャング組織「パッショーネ」の幹部
だったがボスに反旗を翻し、ボスを倒すために戦った男。
正確は冷静沈着、頭脳明晰で部下思い。
温厚で責任感も強く、街の人々からの人望もある。

自身と父親の人生を狂わせるきっかけとなった麻薬を憎悪している。

【方針】
聖杯戦争を破壊するために動く。そのために同じ志の仲間も欲しい。
戦う意思の無いマスターは守る。

【備考】
参戦時期はディアボロ戦で死亡した後です。
ですが肉体は普通の人間に戻っています。


43 : ◆7PJBZrstcc :2018/04/10(火) 18:57:25 V61jv3YI0
投下終了です


44 : ◆lkOcs49yLc :2018/04/10(火) 19:46:17 tQjaT8ms0
投下します。


45 : 呉榮成&セイバー ◆lkOcs49yLc :2018/04/10(火) 19:47:00 tQjaT8ms0



深夜の高層ビル。
上海から日本に進出するようになった、某IT企業の社長室に踏ん反り返りながら、窓から夜の景色を眺める男性がいた。
男は名を呉榮成(ン・ウィンシン)と言った。
榮成は元々は上海マフィアの人間だったが、海外進出に伴いそのフロント企業の管理を任された――

と言うのが、榮成に与えられていたロールであった。
しかし、榮成はこうして記憶を取り戻せている。

(しっかし、あの劉が海外進出、ねぇ……そうなると奴さんも今よりも随分良いお身分になったってことか)

元の世界において、裏工作と弁舌とを用いて組織をこの半年にまで拡大させた、榮成が所属していたマフィアの副賽主を思い出す。
彼が気に入っていたガイノイドの納入はまだだが、今頃彼は何をしているのだろうか。



「あ、たっだいまマスター!偵察終わった所よぉ〜!!」


後ろから、明るく可愛らしい少女の声が突然聞こえる。
回転椅子を90度回転させてみれば、そこには左側に向けてポニーテールを巻いた、黒髪の少女がいた。
可愛らしいドレスを着たお転婆なその姿は、嘗てはこの上海に存在していたという錆び果てていた文化を思い起こさせる。

「お嬢ちゃん、おじさんみてぇな偉い人の部屋に入る時にはノックしろって、お母さんから教わらなかったのかん?
ま、それは良いとして、首尾は上々か?」
「う〜うんぜ〜んぜん。ここの土地鑑には自信があったんだけど、サーヴァントは全然見つからないよぉ〜。悲しいよ〜」

口調はそのまま、さっきの無邪気な笑顔から困ったような素振りを見せる顔に少女は変え、メソメソと泣いたふりをしだす。
若干のウザさに引きかけている榮成を尻目に再び笑顔を見せ、ポケットからキラキラと輝く卵型のアイテムを見せる。

「こ〜んなにキレイな心の宝石(ソウルジェム)が、まだ見れないなんて。
欲しいな〜とぉ〜っても欲しいなぁ〜、皆の輝き。
見たいなぁ〜、皆の心の色。」
「………はぁ。」

少女の演技じみた口調に疲れながらも、榮成もまたポケットから何かを取り出す。
そこには、彼女と同じ宝石―色はまだない―があった。

「ねぇ、マスターの色は、一体何色なんだろうね?」
「知らねぇなぁ、俺みたいな汚い大人はきっと泥色だろうね。」

適当に返しながらも、榮成は宛ら電池の切れた小型のライトの様な卵型のソウルジェムを指先でコロコロと回してみる。
少女が嬉しそうに眺めているソウルジェムを一瞥すると、そちらには純粋な『色』がキラキラと輝く液体で満たされていた。
こうしてみると、電池が切れたライトと言うより、空っぽな器と言った方が正しいのかもしれない。

しかし、こういった空っぽな器に呼ばれたことを考えると、榮成も少し不気味な感触を覚える。
科学と共に生きてきたような榮成にしてみれば、こういった非現実的な出来事は寒気がしてくる。

話に聞いてみれば、この舞台はどこかで作られた謎の世界。
自分の様にこの『ソウルジェム』と呼ばれるアイテムを手にした物が、この世界に呼ばれるという。
ふと、机の引き出しに目を当ててみる。
元の世界にいた机とは大分異なるが、この引き出しの丁度一番上の部分が、自分をこの聖杯戦争に招き入れたような物である。


経緯から話してみれば、呉榮成は元はと言えば上海最大手のサイバネティクス企業の社長であった。
と言っても、社長の座をあの手この手で奪い取った副賽主から組織の舵取りを任されたような物だが。
そしてその社長の椅子に初めて座った日、引き出しを開けてみれば。
この机の引き出しに、何かしらの宝石が置いてあったのだ。

そして記憶を取り戻し、セイバーであるこの少女を召喚して今に至るというわけなのだが―

セイバーが丁度同じアイテムを持っていたので問いただしてみれば、それはだいぶ違うという。
聞いてみれば、ソウルジェムとは本来、人間の魂を物質化した物らしい。
つまり、自分が今持っているソウルジェムは、セイバーの物とは大分異なるらしいが……

「全く冗談じゃねぇぜ、それじゃまるでファンタジーみてぇじゃねぇか。」
「うんうん!!最初は私も思っていたよ!!魔法少女になる前まではね!!」

魔法少女。
榮成が生まれる前、まだ上海が汚染される前に流行っていたお伽噺の主人公。
魔法という神秘を操り、誰かを助けるメルヘンチックな存在。
そしてその魔法少女を魔法少女たらしめるアイテムこそ、ソウルジェムなのだという。


46 : 呉榮成&セイバー ◆lkOcs49yLc :2018/04/10(火) 19:47:53 tQjaT8ms0

「んで、何でよりによってこのソウルジェムが俺の所にあるんだ?まさか俺に魔法少女になれってんじゃねぇだろうなぁ。
ごめんだぜ、いい歳こいたおっさんがコスプレとか、そんなものはガイノイドにでもやらせろってぇんだ。」
「うーん、それは分からないなぁ。」

しかし、榮成の頭の中には今自分が手にとっているソウルジェムがどの様な役割を果たすのかがきちんと埋め込まれている。
ソウルジェムに与えられた役割とは、倒したサーヴァントの核……即ち霊基を封じ込める役割にあるという。
そして、そのソウルジェムにサーヴァントの霊基が貯まれば貯まるほど、輝きは徐々に増していくというのだが……

「んで、仮に俺達がここにいる連中を全て潰しちまえば、俺の空っぽなライトは煌めく宝石に変わるって訳だ。」
「そうそう、そうだよ!!それでね――」
「んじゃもうちょっと貸してくれねぇか、完成品の聖杯とやらのサンプルを見てみてぇんだ―――」
「それは出来ません。」

その時。
セイバーの声が変わった。
彼女を包む純白のドレスは禍々しい光へと変わり、白は赤へと変質する。
ポニーテールの向ける位置は90度反転し、サーベルが己がマスターの所に向かわれる。

「おおっと!!」

榮成は椅子に座ったまま机を蹴って、回転椅子の車輪を後転させて仰け反り、サーベルの切っ先はそのまま先程まで自身の首先があった空間を斬り裂く。
椅子はそのまま壁にぶつかり、机の側に置いてあったデスクトップPCが一瞬で真っ二つに割れた。
企業の重要なデータが詰まっているであろうハードディスクの入っている位置からほんの僅かだけズレていたことに感謝しておこう。
多少は人工物が混じっているであろう榮成の顔に、一本の冷や汗が流れ出す。

「おいおい嬢ちゃん……随分と危ない真似をするじゃないの……。」

苦笑いを無意識に形作り、ジョークを口走る。
お気に入りのガイノイドを破壊されて激情した時の副賽主を一瞬思い返す。
そう言えば、彼女も彼女で彼とはまた違うような悍ましさを感じさせる。
そしてそんな彼を尻目に、赤いドレスへとコスチュームチェンジしたセイバーは、ソウルジェムを両手で優しく包み込み、まるで酔ったような表情を見せる。

「あやせのジェムは私の宝物です……例えマスターであろう貴方であろうと、触ることは許しませんよ。」
「おおぅ……怖え。」

しかし苦笑いを作る中で、榮成はセイバーに対する違和感に勘付いていた。
まず誰がどう見ても分かることとしては、セイバーは先程まで白いドレスを着ていた。
その時は明るい口調だったのに対し、今は赤いドレスを着て、まるで嘗て自分が犯した孔(コン)の妹の様なしとやかさを持っている。
これではまるで……

「あんた、もしかして、二重人格って奴?」

驚いた表情を見せる榮成に対し、クスッと笑顔を見せるセイバーは優しい口調で答える。

「正解(コレクト)、概ね間違ってはいませんね、でも、厳密には異なります。」
「は?」
「私達は、二つのソウルジェムに一つの体を入れているのですよ。」
「……どういうことなのん?」
「つまり――」

再び、少女の真紅のドレスが白い光へと変質していく。
光が収まった頃には――

「私達は、二人で一人ってこと。」

――あやせのジェムは私の宝物です……例えマスターであろう貴方であろうと、触ることは許しませんよ。

(さっきの言葉は、そういう意味ってことか……)

「それで、どうやってそのソウルジェムを二つ持って、それで一つの身体を取り持っているんだ?」
「それはなーいしょ。だけど、一つだけヒント。ソウルジェムには、私達の魂が入っているの。
要するに、私達の身体という瓶から魂を注いで、それを冷凍庫で固めたのが、このソウルジェムって訳。」
「成る程ねぇ。」

つまり、セイバーは人格というデータを保存したソウルジェムという外付けのハードウェアを、同時に一つの端末でデュアルブートしている様な状態なのだという。
生憎、ソウルジェムとかいうオカルトじみた概念に関する知識を、榮成は持ち合わせていない。
しかし、それに良く似た概念の存在を一つ知っている。

左道鉗子と呼ばれた名医謝逸達(ツェ・イーター)が生み出した、人間の脳を複数の有機メモリに保存した新型の玩具用人形『ガイノイド』。
榮成もこれの一つであるガイノイドを一つ保有している。戦闘用プログラムも内蔵している為戦いには役に立つかもしれないが、生憎今は置いてきてしまっているのが残念だ。
あちらは複数の人形に一つの人格を置いたアルターエゴの様な物だが、一つの水瓶の中身を複数の水瓶に置いたガイノイドと、その逆を行くセイバーは、ある意味同種と言えよう。


47 : 呉榮成&セイバー ◆lkOcs49yLc :2018/04/10(火) 19:48:37 tQjaT8ms0

「成る程ねぇ、それなら、ソウルジェムにサーヴァントの魂が入れられるのも納得って訳だ。
ありがとよ、疑問が一つ減った。」

しかし、気になることが一つある。
榮成は、セイバーが自身に向ける視線を一つ気にする。

「おいおいどうしちまったんだよ、そんなジロジロと俺のブランクなジェムを顔見しやがって。」
「だってさ、気になるじゃ〜ん。」

クスクス。
クスクス。
セイバーは笑う。
楽しそうに、好奇心旺盛な子供の様に。

「マスターのソウルジェムが、一体何色なのか。」

その眼差しに、副賽主の見せるような狂気に塗れた獣の眼光を感じ取り、また榮成の頬を汗が伝う。

「おいおい、そりゃぁおもしれぇ冗談じゃねぇの。」
「冗談じゃないって。だって――」


「私とルカは、その為にこの見滝原にやってきたんだから。」


◆  ◆  ◆



呉榮成の目的は、聖杯戦争からの脱出である。
他の参加者には生憎だが、彼にはまだ上海でやりたいことが沢山ある。ここで死ぬわけには行かない。
だからこそ、セイバーを使って勝ち抜く。
お得意のハッキングとセイバーの偵察した情報を以って、情報戦においてイニシアチブを取り、他の敵を出し抜いて勝つ。

セイバーのサーヴァントは、魔法少女である。

――しっかし……

契約と引き換えに魔法を手にし、人々を襲う怪物と戦わなければならない存在である。

――しっかし、こうもメルヘンチックから程遠い娘が魔法少女とか、つまらねぇ笑い話にも程が有るよなぁ。

そして彼女は、他の魔法少女の魂が入ったソウルジェムを手に入れるのが趣味である『ジェム摘み(ピッグジェムズ)』である。
即ち、他のサーヴァントの魂を吸って手に入れようとするのが、彼女の願望なのだという。
そう考えると、この聖杯戦争とやらも実に彼女向け……いや寧ろ、彼女の為に作られたステージの様だとすら形容できる。

(時折魂食い、ってのも悪くねぇだろうなぁ……嬢ちゃんならせっかくのスイーツに跳ね喜びそうだ、が。)

魂を集めるのが好物であるジェム摘み。
それは皮肉にも、自分の様に人に良く似ていながら全く人でない人形を可愛がるのが大好きな人形気狂いとは真反対の趣向の持ち主であった。
方や内側を喰らい、集めるジェム摘み。方や外側を飾り愛でる人形狂(ドール・フリーク)。

(こりゃぁ、とても趣味が合いそうにねぇや)

因みに、セイバーが魔力で動く人形(ドール)であることを、彼はまだ知らない。


48 : 呉榮成&セイバー ◆lkOcs49yLc :2018/04/10(火) 19:49:16 tQjaT8ms0


【クラス名】セイバー
【真名】双樹あやせ/双樹ルカ
【出典】魔法少女かずみ☆マギカ
【性別】女
【属性】混沌・悪
【パラメータ】筋力C 耐久B 敏捷A 魔力A 幸運D 宝具B(魔法少女変身時)

【クラス別スキル】

・対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法等大掛かりな物は防げない。


【保有スキル】

・魔法少女:A+
願いと引き換えに己の肉体を呪った少女。
自身の霊核を第二魔法によって物質化したアイテム『ソウルジェム』によって、様々な能力を行使できる。
簡単な治癒魔術から願いを魔法として解釈した魔法等が使える。
霊核はソウルジェムの中に移っているので、ソウルジェムが破壊されれば消滅してしまう。
セイバーの場合、ソウルジェムが二つになっていること、魔女に大分近くなっていることから、ランクはかなり上。
因みに本来ならグリーフシードが無ければソウルジェムは濁り魔力は失われるのだが、サーヴァント化したことでマスターの魔力で代用できる様になった。

・戦闘続行:A
往生際の悪さと、魔法少女としての生命力の高さ。
ソウルジェムを破壊されない限り致命傷を受けても尚立ち上がり、生き延びる。

・自己改造:D
自身の肉体に別の物質を付与する能力。
ランクが高ければ高い程、正規の英雄からは遠ざかる。
セイバーの場合、二つの魂を一つの肉体に付与する、と言う状態をスキルとして解釈した物。

・陣地作成:B
自身に有利な陣地を作り出す魔法少女としての能力。
外界から対象を阻む結界を作成できる。

【宝具】

『双頭の邪翼(ビッチ・ジェネラーティ)』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大捕捉:1
セイバーの魔法少女としての力。
『あやせ』と『ルカ』がそれぞれ持ち合わせる超高熱と超冷気の魔法。
スキルとして解釈するのなら『魔力放出』が近いかと思われる。
真名解放により、この二つの魔法を同時に放ちプラスとマイナスをぶつけることにより莫大な反作用エネルギーを生み大爆発を引き起こす。
この力は1mmでも誤差が起これば発動せず、二人のコンビネーションの高さが窺い知れる程。
他の魔法少女の固有魔法を昇華させた宝具と同様、魔力消費が比較的少なめなのも特徴である。

【Weapon】

『ソウルジェム』
魔法少女の本体である卵型の宝石。
セイバーの場合あやせとルカのとで二つずつ有しており、二つの姿、二つの人格に変化できる。
これにより人格や魔法少女としての衣装や魔法を変化させることが可能となる。

『サーベル』
魔法少女の力で生成される物。
軽いが威力は高い。
宝具で二本生成できる。

【人物背景】

願いと引き換えに魔女を狩らなければならなくなった魔法少女の一人。
あすなろ市を縄張りとする魔法少女で、他の魔法少女を狙っている。
しかしその目的はライバル減らしと言うではなく、魔法少女のソウルジェムを集めることであった。
謂わば『ピックジェムズ(ジェム摘み)』であり、他の魔法少女からもある程度名は知られている。
命の輝きを素晴らしいと感じ、それを集めて愛でようとする極めて歪んだ価値観の持ち主。
実は二つのソウルジェムを一つの肉体に込めた『二人で一人』の魔法少女。
あやせは純白のドレスを着た無邪気な性格の持ち主で、ルカは古風な喋り方をする落ち着いた性格の持ち主だが、何れも残忍な気性の持ち主。
宝具の真名解放を発動する時は半分があやせ、半分がルカのドレスに変化、刀剣が二振りに増え、同時に人格が発現するようになる。
互いを大切な存在としており、互いのジェムを宝物と称している。

【聖杯にかける願い】

色んな魂の輝きを見てみたい。


【方針】

マスターのソウルジェムをもっと輝かせる。


49 : 呉榮成&セイバー ◆lkOcs49yLc :2018/04/10(火) 19:49:46 tQjaT8ms0


【マスター名】呉榮成(ン・ウィンシン)
【出典】鬼哭街
【性別】男

【Weapon】

「義体」
身体の一部をサイボーグ化している。
脳をLAN経由でネットワークに接続できるが、戦闘力は低い。

【能力・技能】

・網絡蟲毒
その筋の人間を震わせたハッキング能力。
管制局のPCを瞬く間に制圧した他、若き頃はその異名の元となったコンピューターウイルスを作成している。
それは一見ファイアウォールを模した様なプログラムの形を取り、防壁が突破された際に正体を現し、相手のコンピュータを乗っ取る、といった物。
プログラムはそのまま成長を続けていき、やがては如何なるワクチンであろうと喰われてしまう程の凶悪なウイルスに成長していく様に仕組まれている。
正に生きたプログラムと言って差し支えないが、暗証コードの持ち主には忠実に動く。
ただし、ウイルスをコピーされる可能性もあるので全ての網絡蟲毒が言う事を聞いてくれる訳でもない。
現在その網絡蟲毒はこの世界のネットワークには生息していないので、一から作り出すことが必要となる。
また、映像関連にも非常に明るく、防犯カメラの映像を簡単に捏造している。

・人形狂(ドール・フリーク)
ガイノイド等の人形を愛する変態共。
特に彼は人形は人間から程遠いからこそ価値があると考えるマジモンの人形狂である。
メイクアップの才能も併せ持っている他、義体の開発にも携わっている。
その技術は一流の物で、限りなく人間の体の構造に近い義体を作り上げている。


【人物背景】

上海を牛耳る青雲幇(チンワンパン)の香主の一人。
元々は網絡蟲毒の異名を持つ凄腕のハッカーだったが、そのハッキングの腕前を高く買った副寨主の誘いで今に至る。
副寨主が買収したサイバネティクス技術業界最大手の上海義肢公司の社長の椅子を譲り受け、ガイノイドや義体の開発を半年程行っている。
傲岸不遜で人を食った様な態度を取るが、敢えて笑顔を作ることで本心を知られないようにする為でも有る。
好戦的だが頭の回転は非常に速く、怒りと計算外の事態に直面しながらも辛うじて冷静に合理的な戦略を立てている。
システムの穴を見抜こうとする眼差しと、制圧しようとする攻撃的な性格は、正に猛獣を狙うハンターそのもの。
趣味は人形だが、風俗にあるような人形には興味がないらしい。
本編開始前からの参戦。

【聖杯にかける願い】

とっとと脱出する。

【方針】

とにかく生き残る。


【把握資料】


・セイバー(あやせ/ルカ):
登場するのは原作2巻のみなのでそれだけで把握可能。

・呉榮成(ン・ウィンシン):
グラフィック・ノベルがR18版とリメイク版(R15版)でそれぞれ販売されています。
原作と全く同じ文章の小説版が刊行されていますので、そちらでの把握を推奨いたします。


50 : ◆lkOcs49yLc :2018/04/10(火) 19:50:17 tQjaT8ms0
投下を終了します。


51 : ◆Il3y9e1bmo :2018/04/10(火) 22:41:57 zuq9h0wA0
投下します。


52 : vivid color ◆Il3y9e1bmo :2018/04/10(火) 22:43:12 zuq9h0wA0
とある通り。沢山の人が行き交う中を悠々と進むボロボロの白衣を纏った男が一人。
口笛を吹きながら男は手の中で檸檬を弄んでいた。

「嗚呼、この街は素晴らしい! 新鮮な空気! 生い茂る草木! そしてそれに見事に合致した安穏とした雰囲気(アトモスフィア)! これこそが僕の求めていた理想郷(シャングリラ)!
――と、まあそれは置いておいて……疑問なんだがアサシン、君はどうして船乗りなのにライダークラスで召喚されなかったんだい?」

突如、意味不明なことを叫び始めたその男――、梶井基次郎は急に後ろに振り返って誰ともなく話しかけた。

「知るかそんなこと! おれだって本当はライダーとして召喚されたかったわ!」

霊体化していた梶井のサーヴァントであるアサシンがそれに答えて吠える。

「うはははは、ところでもう一つ質問。霊体化(それ)は他の参加者と遭遇するまで解かないのかな?」

「ああ、おれの格好は目立ち過ぎるからな……。なるべく解かないようにするぜ」

アサシンはいかにも海賊然とした自分の服装を見て言った。

「確かに。その混沌(ケイオス)を内包した鼻はよく目立つ」

「誰が目立ち過ぎるハデな赤っ鼻じゃい!!」

アサシンが首をいくつかのパーツに『分離させて』叫ぶ。
そう、アサシンは『身体を自在に分離することが出来る』のだ。
アサシンが言うには、昔食べた「悪魔の実」なる果物の呪いらしいのだが、その時、梶井はいつもの『実験』に夢中で詳しく聞いていなかった。

梶井のサーヴァントである『道化のバギー』は海賊だ。だが、海賊の癖に泳げない。それはやはり「悪魔の実」の影響であるようだった。

「そこまでは言ってないんだけどなあ」

「うるせえ! ハデにぶっ飛ばすぞ!!」

梶井は一応弁解したが、鼻のことに関すると全く聞いてもらえないのが常である。

「おい、そろそろ『時間』だ」

アサシンが途端に真面目な顔になって広場の時計を見てながらそう言った。

「うははは、いよいよか! 記念すべき第三回目の『実験開始』だ!」

梶井とアサシンは喧騒とした通りを抜け、暫く歩いた。
十分程歩くと、豪奢なビルの前に辿り着く。

ビルの屋外看板には、洒落た筆記で「丸善」と記されている。

梶井はそれを見てニッと嗤った。

「仕掛けは?」

「済んだ」

櫛で髪を几帳面に整える。

「時間は?」

「ぴったり」

早足で階段を駆け上がる。

「被験者は?」

「たくさん」

屋上まで一気に登り終える。

「素晴らしい。では、行こう」

「ああ、ハデにな」


53 : vivid color ◆Il3y9e1bmo :2018/04/10(火) 22:44:04 zuq9h0wA0
――二人が屋上の柵から揃って町を見下ろした途端。

ドゴォォォォォォォォン!!!!

鼓膜をつんざかんばかりの轟音と、身を焦がさんばかりの熱風が丸善ビルの客らを襲った。

梶井とアサシンの手によって、丸善ビル中に仕掛けられた檸檬型爆弾が一斉に起爆したのだ。
それによってビルは半壊し、爆風と爆熱によって死傷者は百人は下らないだろう。

もちろんそんなことをすればビルの屋上にいた梶井自身もただでは済まないのだが――、

「ふぅっ、実験結果は上々だぁ。死と爆発が奏でる極上の協和音! 何時もながら素晴らしい!
ただ思ったよりもピンポイントでの破壊が出来なかったなあ。これは次回までの課題か。手帳(メモ)に記しておこう」

――梶井は生きていた。
梶井基次郎の異能、『檸檬爆弾(レモネード)』は「檸檬型」爆弾による爆発のダメージを一切受けないというものである。
正直言って弱能力だが、これによってビルの爆破に巻き込まれても無事で済んでいるのであった(もちろん天井の崩落に遭えば大変なことになるため屋上で起爆し、さらに床が崩れないよう細心の注意を払ったが)。

「よう、マスター。まーたハデにやったな! これでおれの魔力も増すってもんだぜ!」

魂を大量に喰らって魔力を補給したアサシンは、上機嫌で梶井の肩をバシバシと叩いた。

「趣味と実益を兼ねた素晴らしくハデな作戦だ! いやー、当たりのマスターを引き当てたぜ。
まあ、今日のところは面倒事にならない内にハデに逃げるとするか」

「アサシン、これで満足していては駄目だぞぅ。もっと、もっとだ!! 僕たちの実験はこの街の人間――いや、サーヴァントも含めた全てを被験体として、更なる段階(ステイジ)に進まなくてはならない!」

梶井は身のこなしも軽やかに屋上から一気に一階まで飛び降りた。
すると先に階下にいたアサシンが、梶井が落下する直前に腕を分離させ、それを空中で受け止める。

「おうともよ! そんでもって、ついでに『ソウルジェム』も集めて聖杯ゲットだ!」

間もなく、救急車のサイレンが近づいて来た。

「ぎゃははははははは!」

「うはははははははは!」

二人が闇に溶けた後も、彼らの笑い声は何時までも、何時までも焼け跡にこだましていた。


54 : vivid color ◆Il3y9e1bmo :2018/04/10(火) 22:44:42 zuq9h0wA0
----
【クラス名】アサシン
【真名】バギー
【出典】ONE PIECE
【性別】男性
【属性】混沌・悪
【パラメータ】筋力:C 耐久:B 敏捷:D 魔力:E 幸運:A+ 宝具:D

【クラス別スキル】
・気配遮断:D
自身の気配を消す能力。攻撃態勢に移るとランクが下がる

【保有スキル】
・嵐の航海者:B
船と認識されるものを駆る才能。
集団のリーダーとしての能力も必要となるため、軍略、カリスマの効果も兼ね備えた特殊スキル。

・海賊の誉れ:D
海賊独自の価値観から生じる特殊スキル。
低ランクの精神汚染、勇猛、戦闘続行などが複合されている。

【宝具】
『分離自在の悪魔(バラバラの実)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
アサシンは体の各部を自在に分離させる事ができる、斬っても斬れない「バラバラ人間」である。
切り離した体のパーツは自在に操る事が可能で、空中に浮遊させたり、それぞれに別々の動きをさせたりすることもできる。
ただし、操作できる範囲は地面に付いている自分の足を中心とした一定の範囲内に限られ、その範囲の外に出てしまったパーツはピクリとも動かせない。
なお、その制約の関係で足だけは浮かべる事ができず、完全な意味で全身を浮かべたり、体だけ飛ばして遠くまで飛んで行ったりするのは不可能である。
また海や川など水が溜まっている場所に入ると、たちまち全身の力が抜けて体が沈んでしまうという制約も持っている。

【Weapon】
・ナイフ
指の間に挟んで斬りつける。

・特製マギー玉
小さな村程度ならたった一発で滅ぼせる威力を持った「特製バギー玉」を靴の先に仕込めるほどに小さく改良したもの。アサシンの切り札。

【人物背景】
ピエロのような顔立ちをした男で、自分の赤くて丸い大きな鼻に凄まじいまでのコンプレックスを抱いており、鼻を指摘されると激怒する。
望みは世界中の財宝を手に入れること。笑い声は「ぎゃはははは」。口癖は「ハデに〜」。
性格は卑怯かつ残忍で、鼻を馬鹿にされたと勘違いした時は部下を容赦なく爆殺した。
実は海賊王「ゴールド・ロジャー」の海賊団の元船員。
戦闘時は体を分離させて主に奇襲狙いで戦う。

【聖杯にかける願い】
ハデに遊んで暮らす。

【方針】
現状、非常に魔力に乏しいので一般人をハデに爆殺して魔力を大量に手に入れる。
邪魔するやつは一緒に爆破する。
----
【マスター】梶井基次郎
【出典】文豪ストレイドッグス
【性別】男性

【Weapon】
・檸檬爆弾
体中に大量に仕込んでいる。
なお、全て梶井の手作りであり、爆薬成分が一切検知されない特別製。

【能力・技能】
『檸檬爆弾(レモネード)』
檸檬型爆弾による爆発のダメージを受けない能力(なぜなら檸檬は美しき紡錘形だから)。

【人物背景】
横浜の裏社会に君臨する「ポート・マフィア」の幹部。死そのものを「無数の状態変化の複合音楽」と称するマッドサイエンティスト。
金色の髪と黒グラスのゴーグル、襟にバッジを止めた袖がボロボロの白衣を羽織った派手な出で立ちをしている。
隠密主義であるマフィアの構成員にしては珍しく指名手配犯として名の知られた爆弾魔。

【聖杯にかける願い】
聖杯戦争を通して、「死」についてより理解を深める。

【方針】
アサシンと共に一般人を爆破する。


55 : ◆Il3y9e1bmo :2018/04/10(火) 22:44:58 zuq9h0wA0
投下を終了します。


56 : ◆cgWdPX4osQ :2018/04/10(火) 23:37:34 QdE.Q1Xo0
皆様投下乙です。
自分も投下させて頂きます。


57 : 氷川紗夜&キャスター ◆cgWdPX4osQ :2018/04/10(火) 23:38:16 QdE.Q1Xo0
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『そんなモノに構ってる場合?』


混じるノイズ。煩わしい雑音。
頭に割り込む不快なモノ/念話を振り払うように。
少女は無我夢中に、旋律を掻き鳴らす。


『あなた、随分と暇みたいね』


酷く呆れた眼差しを向けられても尚。
少女はピックを握った右手を忙しなく動かす。
無心を装い、冷静を取り繕い。
そうして自らを誤魔化しながら、茶々を入れる『英霊』の言葉を無視し続ける。


『……はあ、毎日この体たらく。マスターとしての自覚がまるで足りてない』


少女は己の技術を磨くべく、スタジオでギターを弾き続ける。
現実を突き付けられた筈なのに、彼女は普段通りの日常に没頭する。
演奏者としての矜持か。現実からの逃避か。
あるいは、理不尽に対する苛立ちか。
その答えは少女自身にも解らない。


『この際だから、はっきり言わせてもらうわ』


聖杯戦争だの、サーヴァントだの、ソウルジェムだの。
意味の解らない知識が、少女の頭の中に根付いている。
興味もない。そんなおとぎ話を信じるような年頃でもない。
そう思っていた筈なのに、少女の脳裏から『奇跡』という言葉は離れない。
得体の知れない現実を、内心では受け入れていた。

しかし、こうしてギターを弾いている。
行き場のない意思を吐き出すように。
少女は、ただただ掻き鳴らす。



『“お遊び”なら後にしろ、阿呆』



絞り出される音色は、歪みを増す。





58 : 氷川紗夜&キャスター ◆cgWdPX4osQ :2018/04/10(火) 23:39:16 QdE.Q1Xo0



正午の時刻から既に数時間。
青空に浮かぶ太陽は次第に傾き始めていた。
『指輪』を嵌めた右手で長い髪を撫で上げ、少女は空を見上げる。
闇を追い立てる“日”が去り、やがて“夜”が顔を出すだろう。
それは至極当然の現象であり、子供にだって解る常識だ。
しかし、少女は何かを思い出したように僅かに顔を歪める。

川沿いの道を歩くと、近未来的な光景が目に入る。
風力発電用の風車が幾つも建ち並び、遠方の町並みとのコントラストを形成している。
さながら都市部の竹林とも言うべき数々の風車を見上げ、少女は帰路を進み続ける。
この町の施設、技術は極めて著しく発展していることが用意に解る。
作り出された都会の景観。未来都市を思わせる洗練された施設の数々。市街地に浸透した最先端の技術。
そのいずれも少女にとっては未知だった。
『元いた町』では、こんな風景を見ることが無かったのだから。
だと言うのに、もはや目の前に広がる世界に心を動かされることもない。

見慣れぬ世界も、住み続ければ日常になってしまう。
見滝原。少女にとって聞いたこともない町だった。
何処にあるのかも解らない場所で、何の疑問も持たずに暮らしていた。
途轍もない異常事態であることは、少女にとっても明白だった。
にも関わらず、今の彼女は取り乱すことも慌てることもなく。
あてのない現実に呆れながら、無意味な日々を漠然と過ごし続けている。


聖杯戦争。
穢れの宝石を手にした者達による闘争。
奇跡を巡って競い争う、非日常の物語。
少女―――氷川 紗夜はそれを知った。
何も知らぬ時と変わらず、日常を過ごしていた。


一週間ほど前、サーヴァントを召喚した日に紗夜は問い質した。
「元いた所に帰らせてほしい」と。
当然だ。聖杯だの、魔術だの、そんなものを「はいそうですか」と受け入れられるような人生を紗夜は送っていない。
参加したいと思ってもいない戦争とやらに駆り出されて、黙って従うほど利口でもなかった。
紗夜には元の生活がある。帰る家があり、通うべき学校があり、やらなければならないことも山ほどある。
だから、こんなところで道草を食っている場合ではない。そう考えていた。

されど、現実は非情だ。
「元の世界には戻れない。あなたに与えられた道は戦いだけ」。
それが紗夜のサーヴァント、キャスターから返ってきた答えだった。
棄権は不可能。闘争だけが道標。
理不尽としか言いようがない、紗夜はそう考えていた。
第一、何の予告もなくこんなことに巻き込まれる意味が解らない。
せめて、もっとこう―――事前通知とか、参加の是非とか―――そういうものが欲しかった。
紗夜はやや呑気にそう思い、同時に溜め息を吐き出した。


59 : 氷川紗夜&キャスター ◆cgWdPX4osQ :2018/04/10(火) 23:40:10 QdE.Q1Xo0

こんなことをしている場合ではないのに。
その思いが幾度となく紗夜の脳裏を駆け巡る。
氷川紗夜は、バンド「Roselia」に所属するギタリストだ。
このまま行方を眩ましていれば、今後の活動にも支障が出るだろう。
だから、今すぐにでも帰らなければならない。
そう思っていた筈だったのに、どうしようも出来ない。
町から抜け出すことは出来ない。
戦い以外に手段を模索しようとしても、あてが何一つ存在しない。

今の紗夜にとって、やれることと言えば。
此処での日常を過ごすこと。
そして、自宅や貸しスタジオでギターの練習をすることぐらいだった。
例え戻ることが出来なくても、演奏の腕を鈍らせることだけはあってはならない。
ギターは紗夜の全てだからだ。
ギターだけが紗夜の価値だからだ。
これだけは、手放すわけにはいかない。


『まだ決心が付かない?』


ノイズが、頭に割り込んでくる。
不愉快で鬱陶しい濁音が紗夜の脳内に響く。
思わず舌打ちをしそうになるも、紗夜は何とか堪えた。
氷川紗夜のサーヴァント、キャスターによる念話の声だ。
彼女はこうして幾度となく紗夜に語り掛けてくる。

1時間ほど前に投げかけられた言葉が脳裏をよぎる。
―――“お遊び”なら後にしろ。
僅かながら、眉間に皺が寄った。
お遊び。キャスターは、紗夜の執着をその一言で切り捨てた。
込み上げる苛立ち。どうしようもない怒り。
それらを紗夜は胸の内で何とか食い止める。

『あなたはソウルジェムを手にしたマスター、言うなれば選ばれし人間。
 逃れようとしたところで意味なんて無い。大人しく現実を受け入れなさい』

こんな小言が毎日、毎日飛んでくる。
紗夜は己の従者がただただ煩わしかった。
キャスターは紗夜を戦いへと誘おうとしている。
紗夜は戦いになど興味は無かったし、戦いたくも無かった。
普通の日常を生きてきた紗夜に闘争願望など無い。
ましてや聖杯戦争という超常の戦いとは無縁の存在だし、縁を持ちたいとも思っていなかった。


『奇跡に興味が無いのか?』


その一言。
それだけで、心に寒気が走る。
紗夜が思うのは、「元いた場所に帰りたい」。
ただそれだけだった。
戦いたくは、無かった。
戦うことになれば、手が届いてしまうから。


『願いの一つや二つ、あなたにだってあるでしょう』


戦うことになれば。
奇跡というものに、縋れてしまうから。
そうすれば、己の胸の歪みを振り払えるから。
しかし、それは最悪の選択に繋がる。
実行してしまえば、何もかも変わってしまう。
だから紗夜は、それ以上先を考えることを拒絶する。



『いい?聖杯を手に入れれば……』
「っ……うるさい!!黙ってて!!!」



空気が、微かに震える。
気がつけば紗夜は声を荒らげていた。
誰もいない虚空へと目掛け、やり場のない怒りを吐き出した。
思わず足を止めた紗夜は、肩を強ばらせながら息を整える。
そのまま苛立ちで顔を微かに赤く染めながら周囲を見渡した。
川沿いの道の周囲に人はいない。
誰にも見られていないことを確認した後、僅かな恥じらいを感じながら紗夜は咳払いをした。


60 : 氷川紗夜&キャスター ◆cgWdPX4osQ :2018/04/10(火) 23:41:05 QdE.Q1Xo0

取り乱してしまったことを紗夜は悔いた。
解っていたことだったのに。
とっくに認識していた筈なのに、紗夜は“それ”から目を逸らし続けている。
戦いたくない。そもそも戦いに興味がない。
そんなことよりも、早く元いた場所に帰りたい。
紗夜のそういった思いは全て事実だった。
だから聖杯戦争を避け続けていた。

同時にそれらは、本心を誤魔化すための殻でしかなかった。
紗夜が抱く忌避感。
その根底にあるもの。
それは紗夜自身が自覚し、後ろめたく思う、一つのコンプレックス。
逃れることの出来ない縁が生んだ、どうしようもない捻れ。
『奇跡』が目の前に照らされれば、紗夜はきっとしがみついてしまう。
奇跡でも起こらなければ、きっと抜け出せないから。


―――お姉ちゃんお姉ちゃんってなんなのよ!
―――憧れられる方がどれだけ負担に感じてるか、わかってないくせに!
―――なんでも真似して!自分の意思はないの!?
―――姉がすることが全てなら、自分なんていらないじゃない!!


紗夜が思い出すのは、元いた場所での出来事。
それは自らが感情を爆発させた、恥ずべき瞬間。
姉の話を嬉しそうにするバンドメンバーに対して、我武者羅に怒りをぶつけてしまった。
どう考えても自分が悪いと、紗夜自身も解っていた。
なのにあの時は、ただ感情に突き動かされていた。
姉であることの重荷。姉として慕われることの苦痛。
それらが迸ってしまったから、紗夜は取り乱した。

その怒りのきっかけは今でも覚えている。
楽器屋で偶然見かけたのは新たに結成するバンドのポスターだった。
そこに映っていたのは、紗夜と瓜二つのギタリスト。
知っている人物だった。知っていて当然だった。
常に気難しい表情を浮かべる紗夜とは違う。
彼女は、太陽のような笑顔を見せていた。


氷川日菜。
紗夜を慕う双子の妹。
紗夜を追い詰めた光。
紗夜の歪みを生んだ張本人。


いつも姉である紗夜にくっついて。
紗夜のやることを何でも真似して。
常に紗夜の才能を軽々と飛び越していく。
紗夜はいつでも二番手だったし、決して日菜を追い越すことが出来なかった。
何故なら、紗夜は日菜に劣っているから。
太陽に追い立てられる夜でしかなかった。

紗夜は嫉妬に絡め取られ、劣等感に喘ぎ、そして歪んだ。
完璧であることを求め続ける少女へと成り果てた。
その末に辿り着いたギタリストとしての道こそが、紗夜にとっての唯一だった。
されど今、それさえも日菜に踏み込まれている。
たった一つの自己を見出だしたギターさえも、侵食されようとしている。
紗夜はそれが許せなかった。
妹からようやく逃げられたと思っていたのに。
日菜は、また自分を追いかけようとしている!

氷川紗夜は影だった。
少なくとも、紗夜はそう思っていた。
氷川日菜がいる限り、氷川紗夜は『完璧』にはなれない。

変えることの出来ない血縁。
どうしようもない運命。
それも、奇跡に頼れば。
そう考える紗夜の脳裏に、日菜の穏やかな笑顔が浮かぶ。
同時に、日菜に追い越され続けた日々が炙り出される。
感情がぐちゃぐちゃになって、複雑に絡み合う。
紗夜は、未だ答えを出せなかった。





61 : 氷川紗夜&キャスター ◆cgWdPX4osQ :2018/04/10(火) 23:41:40 QdE.Q1Xo0



身の程が解っていない。
やっぱりこの小娘はとんだ愚か者だ。


霊体化した状態で紗夜を見、キャスターは改めてそう結論付ける。
氷川紗夜はそこいらの馬鹿とは違う。
学業は優秀だし、完璧を求める姿も好ましい。
諸々の所作にも品格が伴っている。
キャスターがまだ『魔法少女』になる前、会社員時代にいた愚鈍な輩共と比べれば。
紗夜はよほど人間が出来ているし、優秀な素質を持っている。
なのに、頑なに戦いを受け入れようとしない。
奇跡を掴み取ることを拒むように、普段通りの日常を過ごし続けている。
生前キャスターが従えていた部下達でさえ戦う意欲はあったというのに。
紗夜は戦意すらも放棄して、ギターに情熱を傾けている。

―――さっきは少し言い過ぎたかもしれない。

ギターを“お遊び”呼ばわりしたことを思い出し、キャスターは僅かながら反省の念を覚える。
尤も、キャスターは自らの威厳を保つことを優先するので謝りはしない。
サーヴァントはマスターに従えられている。
その点で考えると、キャスターよりも紗夜のが序列は上かもしれない。
だが、キャスターは魔法少女であり偉大なるリーダーだ。
凡百の輩よりも余程地位が高い、と自負している。
よってキャスターは此処でも自らこそが上位であると認識し、紗夜への不用意な言動を悪びれもしなかった。

生前は思わぬ敗北を喫してしまった。
部下達全員に裏切られ、無惨な死を余儀無くされた。
下手をすればリーダーとしての自信さえも砕かれかねない事実。
しかしキャスターは、サーヴァントの肉体を介して得られた記憶にあまり現実味を感じられなかった。
記憶が焼き付けられているというより、まるで記録を読んでいるような感覚に近い。
スキルによる恩恵――己への過信によって精神干渉等の公開を軽減する――もあるが、結果としてキャスターは己の敗北の記憶を案外すんなりと受け入れられたのだ。

故に彼女は、挫折を深く反省することが出来なかった。
それは不幸なのか。むしろ幸いなのか。
答えは誰にも解らない。キャスターさえも知らない。
キャスターは変わらぬ慢心と自尊心でふんぞり返る、わがままなお姫様だった。
とはいえ、敗北をしたのも確かだとキャスターは認識する。
打算による思わぬ裏切りが生前の結末を招いた。
今後は注意し、より頭を振り絞って立ち回ることを要求されるだろう。

キャスターにとって、望むところだった。
この戦いに勝利すれば箔が付く。
偉大なるリーダーとして、今度こそ確固たる証を打ち立てられる。
そのためにも聖杯戦争に勝ち残らなければならない。
故に紗夜との協力も不可欠なのだが、この有り様だ。
どうやってやる気を引き出すべきか。
自己啓発本だの、リーダーとしての指南書だの、キャスターはそういう下らないものが嫌いだった。
しかし、今後は生前の失敗を踏まえ、尚且つ紗夜を従わせることが必要となる。
そのためにも、よりリーダーシップを取るための技術を磨くべきかもしれない。
キャスターは思案に耽り続ける。

キャスターのサーヴァント、ルーラは完全無欠のリーダーに成り損ねた魔法少女だ。
彼女は太陽にはなれず、宵闇に淡く君臨する月でしかなかった。
しかし、それでもルーラは己への過信を絶やさない。
自らを哀れな影であるとは欠片も考えない。
何故ならば、己こそが絶対無二の優秀な人間だと信じているからだ。
此処で勝利を収めて、ルーラは今度こそ『完璧』なリーダーへと至るのだ。


62 : 氷川紗夜&キャスター ◆cgWdPX4osQ :2018/04/10(火) 23:42:41 QdE.Q1Xo0
【クラス】
キャスター

【真名】
ルーラ@魔法少女育成計画

【属性】
中立・中庸

【ステータス】
筋力E 耐久E 敏捷D 魔力A 幸運D 宝具C++

【クラススキル】
陣地作成:D
自身の拠点となる陣地を作成する。
とはいえキャスターが作れる陣地は極めて簡素なものに限る。

道具作成:-
道具作成に関する逸話を持たないため、スキルを保有していない。
偉大なるリーダーはわざわざ無駄な道具を作らない。

【保有スキル】
魔法少女(魔法の国):B
ソウルジェムを介して変身する少女達とは異なる存在。
キャスターは『魔法の国』の技術によって変身する魔法少女である。
魔法少女へと変身することで常人を凌駕する身体能力を獲得し、更には固有の魔法をひとつ行使することが出来る。
サーヴァントとして召喚されたキャスターは常に変身が維持される。

カリスマ:E
軍団を統率する才能。
少数の部下さえも制御できなかったキャスターのカリスマは最低ランクに位置する。
集団戦においての士気向上は殆ど見込めないが、当人の意図せぬ所で他者からの思慕や畏怖を受けやすくなる。

孤聳の君主:C+
己に対する絶対的な自信の具現。あらゆる事象を以てしても、彼女は自らの優秀さを疑わない。
精神干渉・バッドステータスなど自身の能力を脅かす全ての魔術の効果を軽減する。
ただし徹底的に歪んだ自尊心は周囲に対する慢侮へと繋がる。
このスキルが機能する限りキャスターは他者を見くびり、内に秘めた思惑や野心を看破しにくくなる。


【宝具】
『目の前の相手になんでも命令できるよ(グレイテスト・オーダー)』 
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1〜3 最大補足:1
その名の通り、目の前にいる相手になんでも命令できる魔法。
発動時には王笏を突きつけるポーズを取り、「ルーラの名の下に命ずる」という詠唱が必要になる。
発動すれば真名の露呈は避けられない上、射程距離の短さ・発動時の隙の大きさ・キャスター自身の身体能力の低さといった欠点を併せ持つ。
戦闘では扱いの難しい魔法だが、一度命令を実行すれば令呪に等しい強制力を以て確実に従わせることが出来る。

『集え、麗しき阿呆共!(ザ・フールズ)』 
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
キャスターが生前従えていた愚かなしもべ「スイムスイム」「たま」「ピーキーエンジェルズ」を召喚する。
彼女達の戦闘力はサーヴァントには及ばないものの、等しくDランク相当の「魔法少女(魔法の国)」「単独行動」スキルを保有する。
更にはそれぞれの固有の魔法も問題なく発動できる。
尤も、一度はキャスターを裏切ったしもべ達を正しく制御できるかどうかは別の話である。

『白雪を踏み荒らすお姫様(ソウイング・ホワイト)』 
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜2 最大補足:5
死後、魔法の国で尾ひれがついた『ルーラの伝承』が宝具化したもの。
キャスターことルーラは魔法少女狩り・スノーホワイトに唯一土をつけた存在として名を知られることになった。
キャスターと同じ戦場に存在する英霊スノーホワイトの全ステータスを一時的に劣化させ、「魔法少女狩りになる以前(=候補生時)」の能力値へと強制変動させる。
更に魔法少女狩り由来のスキルや技能、宝具も全て封印する。
効果は戦闘終了時まで持続する。尤も、肝心のスノーホワイトが現界していなければ無用の長物である。

【Wepon】 
王笏

【人物背景】 
N市の試験に参加した魔法少女候補生。
作中では四人の魔法少女を部下として従え、最後は裏切られた。
高慢な完璧主義者。常に高飛車な振る舞いが目立つ。
偏屈だが根は努力家であり、面倒見の良い一面も。
かつては大手企業に勤めるエリートだったが上司とのトラブルを起こし、地方に左遷させられた過去を持つ。

【サーヴァントとしての願い】 
聖杯戦争に勝ち残り、完全無欠のリーダーとして君臨する。


【マスター】 
氷川 紗夜@BanG Dream! ガールズバンドパーティ!

【マスターとしての願い】 
???

【能力・技能】 
ギターの演奏において高い技術を持つ。
文武両道で学業や運動の面でも優秀。
ただし、妹の日菜は常に紗夜の一歩先を行く。

【人物背景】 
バンド「Roselia」のギター担当。高校二年生。
生真面目で常にストイック、妥協を嫌う完璧主義者。
気難しい振る舞いも目立つものの、根は努力家で心優しい性格の持ち主。
天才肌の妹・日菜に対する強いコンプレックスを抱き、ギターの才能を磨くことに執着する。

後に日菜とは和解するが、此度の聖杯戦争では和解前の時間軸から参戦している。
そのため日菜に対する鬱屈を常に抱えている。

【方針】
ギターの練習は欠かさない。
場合によっては奇跡に縋る……?


63 : 名無しさん :2018/04/10(火) 23:42:57 QdE.Q1Xo0
投下終了です


64 : ◆Pw26BhHaeg :2018/04/11(水) 01:02:11 5EKuTcss0
投下します。


65 : Eye of the Beholder ◆Pw26BhHaeg :2018/04/11(水) 01:04:15 5EKuTcss0



燃え盛る炎から、巨大な怪物が産み落とされる。かつて世界を滅ぼした神が。ああ、なんと、素晴らしい。

「ホラホラ、化物が動きはじめたぞ。お前がこいつの産みの親ってわけさ」

ざまあみろ。救世主ヅラして、お前は怪物を世に放したのだ。なにが救済だ。なにが愛だ。くたばっちまえ。くそくらえ。
弟と同じことをいいやがって。来世も再生もありはしない。世界は滅び、人間は簡単に死ぬ。死ねば終わりだ。それまでに何をするかだ。

「貴様をひきむしって、はずかしめてやる。その上でこいつをくれてやろう。お供もつけてやる」

やりたいことがあれば、やればいい。したい放題にしてこそ、生きがいがあるってものだ。
喰らい、飲み、まぐわい、殺し、犯し、奪い、破壊しろ。わかるぞ、お前も呪われた種族、人間の女だ。
感情のままに振る舞い、全部ぶち壊せ。それこそ救いだ。俺がやりたかったことを全部やっちまえ。

「みんな清浄の地とへやらに連れていくがいい。腐った土地も、土民共も、みんなくれてやる。全部背負って這いずり回って、世界を救ってみせろ!」



弱い雨の降る午後。とある高層ビルの屋上。

「ヒヒ…イヒヒヒ……ハハハ……」

見滝原の風景を見下ろし、男が両腕を広げて笑っている。よだれを垂らし、心底嬉しくて楽しくてたまらない、というように。
彼は、本来この世界の人間ではない。その世界の基準からすれば、ここは……。

「いやはや、素晴らしい。イイ世界だ。楽園だな、ここは」

目も眩むほど高度な文明社会。立ち並ぶ家屋や高層建築。平和を満喫する穏やかな住民。飢渇も闘争も死体もない。
空気も水も大地も植物も、驚くほどに清浄。食糧は豊富にあり、残飯すら有り余るほどだという。
来世がこんなに素晴らしいとは、弟もびっくりするだろう。千年前に滅んだという、伝説の「旧世界」さながらだ。
というより、ここはまさに「旧世界」、あるいはそれを模した世界であるらしい。

「これが戦場か! ここで、俺の大好きな殺し合いが始まるとは。俺がその参加者だとは。神がいるとすれば、随分慈悲深いことだなァ!」

哄笑する男の背後から、うんざりしたような声がかけられる。
「いい気になってんな、てめー」
男は首を斜め後ろに倒し、満面の笑みを浮かべて答える。
「いかにも。オレは今、最高にいい気分だ。歌でもひとつ歌いたいようないい気分だ、マスター」




66 : Eye of the Beholder ◆Pw26BhHaeg :2018/04/11(水) 01:06:27 5EKuTcss0
十数分前。ボロアパートの一室で、二人の男が対峙している。
片方の男の手には、奇妙な宝石。もう片方の男は、奇妙な兜を被り、縞模様の戦衣と甲冑を纏っている。腰には剣。兜にも戦衣の胸にも、大きな一つ目。

「……おめーが、おれの……『サーヴァント』ってやつか」
宝石を持つ……年の頃三十台半ばと思われる、目つきの甚だ悪い男が、兜を被った男に尋ねる。
兜の男は、一つ目を模したバイザーを上げ、せせら笑う。その顔は少年のようでもあり、青年や壮年のようでも、年寄りのようでもある。
互いに、どこか……自分と似た雰囲気、似たにおいを感じる。悪くはない。いや―――『悪い』。
クソ外道のにおい。便所のネズミもゲロを吐くような、ドス黒い、ドブ川の腐ったようなにおい。己の快楽のために生きる虚無主義者のにおい。

「さよう。俺が従僕になるとは、意外なことだがなぁ。主人が女ならよかったが……ははは」
「へッ。おれは『片桐安十郎』。『アンジェロ』って呼んでもいいぜ。いや、『マスター』って呼ばせりゃあいいんだな」
「さよう。マスター・アンジェロ殿」

アンジェロは鼻を鳴らす。人を食った野郎だ、というのが、次に持った印象。殺し合いには乗り気そうだが、言うことはあまり聞いてくれそうにない。
単独行動を好み、仲間を作らない彼にとって、見知らぬ他人と協調して戦うというのは面倒な話だ。だが、そうせねばならんというなら、仕方ない。
女や美少年なら、無理やり犯してやったところだが、生憎こいつは趣味ではない。そんなことに令呪を使うのもバカバカしい。

「じゃあ、おめーのクラス名と、真名ってのを名乗りな。おめーが手下として使える奴かどーか、確認しねーとなァー」
指さされ、ヒヒ、と兜の男が笑い、名乗る。
「俺のクラスは『アサシン(暗殺者)』。真名は『ナムリス』だ。……くくっ、暗殺者か。そうといやあ、そうだなあ」
「いつの時代の、どんな野郎だ」
「土鬼(ドルク)諸侯国連合帝国の皇帝様だ。知らぬかな」
「……知らねえな」

彼の知識にある限り、歴史上にそんな国もなく、そんな皇帝もいない。アサシン・ナムリスは少し首を傾げ、腕組みして言った。
「ふむ。俺に与えられた知識と、マスターの記憶を少し覗いた限り……どうも俺は、この世界よりは遥かな未来から来たらしい」
「イカれてんのか」
「然り。気が触れた皇帝だ。俺は弟に実権を奪われて百年、ついに弟を殺して実権を奪い、而して帝国を滅亡に追いやったのだ!」

アンジェロはしばらくアサシンの瞳を観察し、舌打ちした。確かに狂っている。が、それだけではない。
知性と理性のひらめき、虚無の闇、そして王の器が見える。信じ難いが、この狂人は本当に皇帝であったようだ。直感的に分かる。


67 : Eye of the Beholder ◆Pw26BhHaeg :2018/04/11(水) 01:08:44 5EKuTcss0
アンジェロが畳に座り、問う。
「で……おめーにゃあ何ができる。アサシン。言ってみな」
アサシンは立ったまま、腰の剣の柄に手をあて、ニヤニヤと嗤う。
「戦える。お前にはできまい」
「できるさ。おれにゃあ、既に従僕はいるんだよ。『スタンド』……ってんだが」

アンジェロが指を鳴らすと、畳から何かが這い出して来た。アンジェロの体を這い上がり、肩にとまる。
「名付けて『水の首かざり(アクア・ネックレス)』。水と同化し、敵の体内に潜り込み、操ったり殺したり出来る。
 殴られても斬られても焼かれても効かねえ。パワーはねえから、狭いとこに封じ込められるとヤバイが……」
「ほう。面白いな。俺にも従僕がいる」

アサシンが指を鳴らすと、その背後にゴリラのような大男が出現した。棍棒を握り、ズボンを穿き、一つ目のついた布で顔を覆っている。
「『ヒドラ兵』だ。知能は低いが凶暴で怪力。負傷は自己修復し、頭を破壊されねば死なぬ。一体だけではなく、何体も動かせるぞ」
「サーヴァントがサーヴァント(従僕)持ってるってのは、ややこしいな」
「あと、生前は俺も肉体をヒドラ化していてな。やはり頭を破壊されねば死なん。そればかりではないぞ」

アサシンは右手を差し出す。その掌の上に、目玉のついた黒い立方体が乗っている。
「…………なんだ、こりゃあ」
「俺の宝具、『シュワの墓所(クリプト・オブ・シュワ)』だ。はは、こんなに小さくなるとはな。城塞ほどに大きくもなるが、目立つか」
立方体の目玉がぎろりと動き、アクア・ネックレスを睨む。ジュッ、と音がして、熱線が天井まで貫通した。
「うおおッ!?」

アンジェロはビビるが、アクア・ネックレスは無傷だ。
「なるほど、効かんな。英霊には効くだろうが……」
「てめー、なにしやがるッ!?」
「試し撃ちだ。さて、ではそろそろ様子見に行くか。戦が始まるまで、じっとしておってもしょうがない」


68 : Eye of the Beholder ◆Pw26BhHaeg :2018/04/11(水) 01:10:24 5EKuTcss0
アサシンの発言に、アンジェロは眉根を寄せる。
「おいおい。おれは部屋でじっとしてるぜ。おめーだけで行って来な」
「案内ぐらいしてくれてもよかろう。知識こそ吹き込まれたが、俺はこの世界に不慣れでな」
「おれだって、この街についちゃあ詳しくねーぜ」
「はは。では共に観光しようか、マスター。土地勘を掴むには、まずは上から見下ろして見ねばなあ」



そんなこんなで、無理やり高層ビルの屋上まで連れて来られたアンジェロは、頬杖を突いてアサシンの後ろ姿を見やる。

ったく、なんなんだ。気がついたら岩から解放されてて、見も知らねえ街にいて、聖杯戦争だと?
有り難えっちゃあそうだが、どうも胡散臭え。しかもなんだ、サーヴァントってスタンドみてえなもんを勝手に与えられて?
そいつらをたった七匹狩るだけで、なんでも願いの叶う聖杯ができちまうだと? それで元の世界へ還れるなら文句は言わねえが、そうじゃあねえらしい。

おれの望みは、ただあのクソ岩から出たかっただけだ。もう叶っちまってるぜ。あとはまあ、自由気ままに好き放題やりてえぐらいなもんだ。
そこんとこは、あのナムリスとかいうイカれ皇帝野郎と同じだが―――あいつは『戦いがしたい』と来やがる。そこは違う。
おれは『殺人や強姦がしてえ』んだ。格闘マニアや戦争狂じゃあねえ。弱い奴や間抜けな奴、いい気になってる奴を、一方的にいたぶっていい気になりてえだけだ。

ま、いいや。参加者が何十人いるんだか知らねえが、とにかく生き残って、殺して勝ち残りゃあいいんだ。
聖杯をゲットしてアサシンを強化し、さらに大勢を殺しゃあ済む。あいつの宝具ってのを活用するにゃあ必要だろう。そこらへんの一般人を捕まえて生贄にしてもいい。
おれのスタンドは……とっ捕まっちまうとまた酷え目に遭うから、切り札としてしまっとこう。戦闘や情報収集はアサシンにもできる。
あとは、そうだな、あいつがやられちまった時のために、代わりになりそうなサーヴァントでも見つけとくか。

「――――おし、そんじゃあ行くか、アサシン」


69 : Eye of the Beholder ◆Pw26BhHaeg :2018/04/11(水) 01:12:17 5EKuTcss0
【クラス】
アサシン

【真名】
ナムリス@風の谷のナウシカ(漫画版)

【パラメーター】
筋力C 耐久B+ 敏捷C 魔力D 幸運D 宝具A

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
気配遮断:C
自身の気配を消すスキル。隠密行動に適している。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。
皇弟ミラルパを暗殺したことで「アサシン」として登録されたために獲得。

【保有スキル】
皇帝特権:A
本来持ち得ないスキルを、本人が主張することで短期間だけ獲得できる。該当するのは騎乗、剣術、芸術、カリスマ、軍略、と多岐に渡る。
Aランク以上の皇帝特権は、肉体面での負荷(神性など)すら獲得が可能。曲がりなりにも神聖皇帝(皇兄)として100年も在位した。

自己改造:B
自身の肉体に別の肉体を付属・融合させる適正。このスキルのランクが高くなればなるほど、正純の英雄からは遠ざかる。
旧世界の超科学技術が産み出した人造生物「ヒドラ」の肉体を度重なる手術で移植し、ほぼ不老不死の肉体を獲得した逸話によるスキル。
青年のように若々しく、頑健で、高い身体能力を持つ。毒物が効かず、負傷しても自己修復し、頭部を破壊されない限り死なないが、苦痛は感じる。
生前は肉体維持のため定期的に特殊な薬物を摂取する必要があったが、英霊化したので免除されている。

反骨の相:EX
生粋のトリックスター。あらゆる権威を否定し嘲笑う無法者。何者にも従わず、己の欲することを行う虚無の道化。
カリスマや皇帝特権等、権力関係のスキルを無効化し、逆に弾き返す。令呪についても具体的な命令であれ決定的な強制力になりえない。
このクラスになると「精神異常」も含まれ、虚言癖あるいは典型的なサイコパスとなる。契約と禁忌に理解を示さず、平然と誓いを踏み躙ることができる精神性を持つ。
他人の痛みを感じず、周囲の空気を読んだ上であえて読まない。精神的なスーパーアーマー能力。


70 : Eye of the Beholder ◆Pw26BhHaeg :2018/04/11(水) 01:14:32 5EKuTcss0
【宝具】
『シュワの墓所(クリプト・オブ・シュワ)』
ランク:A 種別:対星/人理宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

歴代土鬼(ドルク)王朝の聖都シュワの中心部にある旧世界の遺跡。黒く四角い建築物で、超硬質かつ自己修復する外壁に守られ、門の上の目からは熱線を、十字型の銃眼からは破壊光線を放つ。
外壁は並大抵の攻撃では破壊できず、破壊光線は巨神兵の肉体にも重傷を与えうる。内部には科学者たちが住み、中枢部にある生体機械「墓所の主」から提供される旧世界の情報を研究している。
彼らは歴代の王と契約を結び、協力者である限りは技術を提供して来た。ただし外部の権力には従わず、相手の武装解除を交渉条件とする。
ナムリスは皇帝であるためこの墓所の技術を利用でき、ヒドラの量産や肉体改造、巨神兵の養育を行った。ゆえに彼の宝具として登録されている。
本来は巨大な城塞並みの大きさを持つが、魔力消費を抑えるため掌サイズにまで縮小可能。これを所有することは、スキル「蔵知の司書」をAランクで持つに等しい。
外壁をシールドとして呼び出せるほか、魔力を消費することで「ヒドラ兵」を複数召喚出来る。霊脈や聖杯級の大魔力があれば「王蟲の群れ」や「巨大粘菌」「巨神兵」とかも召喚できるかも知れない。
なおアサシンが消滅しても、この宝具は消滅せず、次の主を求める。「墓所の主」の最終目的は、文字通り「世界(地球環境)の浄化」である。

【Weapon】
『神聖皇帝の剣』
両刃の直剣。たぶん強化セラミック製。

『神聖皇帝の兜』
脳とアイカメラを直結させ、全方位を見渡せる特殊な兜。文字通り「後ろにも目がついて」いて、不意打ちなどを防ぐ。

『ヒドラ兵』
不死身の人造人間。腕が長いゴリラのような体型をしており、皮膚はサボテンのようで首がなく、頭には小さな赤い三つの目が三角形を形作っている。
顔面に食い込む様に頑丈に作られた面甲と、一つ目の紋章が入った面布、ズボンを着用する。知能は低く凶暴で怪力を持ち、棍棒や大剣を振るって戦う。
身体に大きな損傷を受けても、頭部を破壊されなければ再生する。先代神聖皇帝が建国の際に使役し、以後は使用が禁じられていた。
だがナムリスは秘密裏に量産と調教を進め、12体を率いて出陣した。宝具『シュワの墓所』から召喚可能。

【人物背景】
宮崎駿の漫画版『風の谷のナウシカ』に登場する人物。土鬼(ドルク)諸侯国連合帝国の神聖皇帝(皇兄)。
100歳を超える老人だが、数十度に渡る肉体移植によりほぼ不死身の肉体を得ており、外見は青年のように若々しい。身体能力は高く、剣術にも長ける。
先代の初代神聖皇帝が崩御した後、皇弟ミラルパと共に帝位を継いだが、超常の力は持たないため弟により実権を奪われ、軟禁状態に置かれた。
このため冷酷で狂気に満ちた性格となり、自他の生命に拘泥せず、「血をたぎらせずに一生を終える」ことだけを恐れるようになる。無神論者で、面白い奴や有能な人間は好き。
弟が対トルメキア戦役の前線視察に赴いている隙に、旧世界の超科学遺跡「シュワの墓所」を掌握、治療のため帰還した弟を殺して実権を奪還する。
父が使役していたヒドラを率い、弟が統治に利用していた僧会を粛清、自ら出陣してトルメキア王女クシャナを捕縛、政略結婚を迫る。
さらに飛行戦艦と巨神兵を引き連れてトルメキアへ侵攻しようとするが、諸侯を離反させ戦艦に乗り込んできたナウシカと戦闘。
これを追い詰めるも、覚醒した巨神兵とクシャナに体を引きちぎられ無力化。「墓所の主」の存在を明かした後、頭部は腐海へ落ちていった。
戦艦に残った死骸は土鬼の長老たちに確認され、神聖皇帝の支配は終わりを告げた。セイバーなどの適性もあるが、今回はアサシンとして現界。


71 : Eye of the Beholder ◆Pw26BhHaeg :2018/04/11(水) 01:16:42 5EKuTcss0
【サーヴァントとしての願い】
戦を楽しむ。聖杯そのものはどうでもいいが、獲れるものはもらう。

【方針】
この世界を楽しみ、自他の戦いぶりを面白がる。聖杯を集めて宝具や自己を強化し、優勝を狙う。

【把握手段】
漫画版『風の谷のナウシカ』全7巻。ナムリスの出番は5巻から7巻まで。アニメ版には登場しない。



【マスター】
片桐安十郎@ダイヤモンドは砕けない

【Weapon・能力・技能】
『水の首かざり(アクア・ネックレス)』
破壊力、スピード、精密動作性:C 射程距離、持続力:A 成長性:E

水分を媒体として実体を持つ遠隔操作型スタンド。ビジョンは全身に目玉模様を持つ不気味な人型。
サイズは同化した水分の体積によって変わり、熱せられて水蒸気になってもダメージを受けることなく空中を行動可能。物理的な攻撃は効かない。
形状や色彩を自在に変化させられ、相手の体内に侵入して内側から攻撃、即死させる。また侵入した相手を意のままに操ることも出来る。
ハマってしまうと恐ろしいスタンドだが、弱点は直接的なパワーやスピードに乏しく、物質を透過できないこと。スタンドを解除して消すこともできない。
そのためスタンドを密閉容器に封じ込まれると、自力で破壊して脱出することすらできず、本体もその場から動けなくなってしまう。

【人物背景】
『ジョジョの奇妙な冒険』第四部「ダイヤモンドは砕けない」に登場するスタンド使い。CV:浜田賢二。1964年杜王町生まれの34歳(1999年当時)。
通称「アンジェロ」。日本犯罪史上最低の殺人鬼で、あらゆる犯罪を犯し、人生の大半を獄中で過ごして来た男。IQ160と知能は高く狡猾だが、衝動的に犯行に走るサイコパス。
心の底から犯罪行為が好きで、息をするように強盗や殺人、強姦(少年含む)を行う。いい気になってる奴が大嫌いで、執念深く追い詰めて必ず殺す。
いい気になってる奴が絶望の淵に足を突っ込むのを見ると気分が晴れ、予想したことがそのとおりハマってくれると腹の底から笑いが込みあげて来て幸せな気持ちになれる。


72 : Eye of the Beholder ◆Pw26BhHaeg :2018/04/11(水) 01:18:36 5EKuTcss0
【ロール】
チンケな下層労働者。ボロアパートに住み、牛乳配達などのアルバイトをしながら食いつないでいる。独身。
記憶が戻ってスタンドも出せるようになったので、これからは窃盗や強盗で稼いでもいい。無論、バレないように。

【マスターとしての願い】
現世への帰還。大金持ちとかになれるっつうんならそれでもいい。

【方針】
生き残り、慎重に行動しつつ帰還方法を探る。自分の正体を知っている奴は消す。手を組める奴とは組む。

【把握手段・参戦時期】
単行本29巻。「アンジェロ岩」にされた後。



投下終了です。


73 : ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/11(水) 01:27:00 pYXWDb1k0
皆様投下乙です
私も投下します


74 : 白銀のように煌いて、炎のように荒ぶって ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/11(水) 01:29:03 pYXWDb1k0
〝相撲〟

土俵上で廻しのみを身につけ戦う日本古来の武道であり

数少ない『無差別級』の格闘技

ゆえに「大きく」「重く」ある者が絶対優位――


高校相撲においても体重100kgを優に超える巨漢がひしめく中、横綱という頂を目指さんとする彼の体はあまりに―


75 : 白銀のように煌いて、炎のように荒ぶって ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/11(水) 01:29:22 pYXWDb1k0



『個人戦優勝は、○○くん』

「......」

少年は、その光景を眺めていた。
自分が敗北した相手が、皆から拍手で讃えられ、両手で表彰状を受け渡されるその光景を。
自分が立たねばならないあの場所へと思いを募らせ、両の腕を握る手には自然と力が篭っていた。

表彰式が終わり、皆が帰りの支度をするように、少年もまた会場を去る準備をする。

「あーあ、やっぱりあいつが優勝か」

少年の耳がピクリと動いた。

「圧倒的だったからな。そりゃそうだよ」
「ズルイよなぁ、あんだけ恵まれた体格ならなにやっても勝てるって。あんなん試合じゃなくて処刑よ処刑」

それは少年に向けてのものではない。どころか特定の相手に向けたものでもなく、顔見知りが互いに言葉を交し合っているだけ。
所謂世間話という奴だ。

「特に最初の試合。ありゃ酷かったね。なんだっけ、あのチビ...えっと」
「『鬼丸』だろ?ほんとみっともねえよな」

だが、少年の耳には否が応でも飛び込んできてしまう。

「チビならチビらしくそれっぽくやりゃいいのにさ、なんでバカ正直に正面から立ち会うかね」
「もう『鬼丸』なんて呼ぶのもあきれてくるよ。ただのチビだぜあんなの」
「そんな大層な名で呼ばれるんだから、昔は強かったのかどうか知らないけどさ、向いてないんだって」
「チビはチビらしく別の競技にいけばいいんだよって忠告してやりたいぜ」

そんな自分へと罵詈雑言を悔しがらずにいられるものか。
連中は自分が傍にいることに気がついていない。やかましいと怒鳴りつけて黙らせてやりたい。
だが、その悔しさも怨念も全てを堪え、少年は会場を後にする。

それでも。声は聞こえていないはずなのに。

もう会場は自分のことなんか気にもしていないというのに。

『お前にはその相撲は向いていない』

その罵倒だけは、いつまでも耳にこびりついて離れてくれなかった。


76 : 白銀のように煌いて、炎のように荒ぶって ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/11(水) 01:29:55 pYXWDb1k0



ゴッ

夜の神社に鈍い音が響く。少年が、大木の一つに頭をぶつけたのだ。

(...わかっとる。木に八つ当たりしたところでなにが変わるわけでもねぇ。じゃが...)

「くそっ...ちくしょう...!」

それは、今日初めて少年が口にした嗚咽だった。
悔しさも遺恨も。涙と共に全てを投げ出してしまえば、いっそ楽なのかもしれない。
だが、少年は泣かなかった。
悔しくない筈がない。
ただ、挫けているヒマがあるならば、少しでも"体"を埋めなければならない。
その不器用な"心"は、彼に涙を流させることすら許さないのだ。

だから、悔やむ時間は先の一撃でお終いだ。

(負けたのはワシの鍛錬が足りんからじゃ...もっと...もっと鍛えねえと...)

ザッ ザッ

すり足。相撲でも見られる、足を上げず、足全体で地面をするようにしてに移動する方法。
これを砂場の上で行えば、それだけでもトレーニングになるのだ。

「ふっ...ふっ...!」

少しでも、少しでも"体"の差を埋めなければ。
でなければ、天辺に昇ることなんぞ...


77 : 白銀のように煌いて、炎のように荒ぶって ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/11(水) 01:30:42 pYXWDb1k0

「...さっきの試合、お前は決して劣っちゃいなかった」

かけられる声に、少年の足はピタリと止まる。

「スピードも、技も、筋肉量も、相手には劣っちゃいなかった。だが、立会いではかち合い負け、そのまま立て直す前に敗北...原因はわかっているな」

スピードと技量が同等であれば、後はなにがモノを言うか。そんなことは言われるまでもなくわかっている。

「...見とったんか」
「言ったはずだ。俺は俺の事情でお前の傍から離れられないと」
「......」

少年は数秒の沈黙の後、再びすり足を始める。

「もう一度聞かせてもらうぜ。聖杯を使えば、お前の"体"の不足を補える。お前の境遇を知ってりゃ、けなす奴もそうはいねえだろう。それでも、お前の考えは変わらねえのか」
「......」

ズリ、ズリ。

少年のすり足は止まらない。

「...わかっとるんじゃ。ワシが横綱相撲に向いていないことは。誰よりもワシ自身がわかっとる」
「相撲には様々な型がある。真っ向勝負じゃなくとも、それを侮辱する気はさらさらねえし、それに命を吹き込むなら、むしろそれが正しいとも思っとる」
「じゃが、ワシはこの相撲に決めた。この身体で、この相撲で天辺を獲ると決めたんじゃ」

少年の言葉へと、男は黙って耳を傾ける。
やはり少年の足は止まらない。


78 : 白銀のように煌いて、炎のように荒ぶって ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/11(水) 01:31:12 pYXWDb1k0

「誰かを殺して願いを叶えたくなんかねえ。当然、その思いはある。...が、それ以上に気に入らねえんじゃ」
「相撲の神様がワシのことを嫌いなのは構わねえ。才能だとか運命だとかをワシから抜くのも構わねえ」
「それでもワシが折れねえから、今度はダチ高のみんなや爺ちゃんたち、他の国宝たちからも引き剥がし、あまつさえ相撲に関係なく相手を殺して才能を手に入れろ―――ふざけんのも大概にしやがれ」

ギリ、と歯軋りと共に少年の目に炎が宿る。
百戦錬磨の英霊である男の背筋に冷や汗をかかせるほどのドス黒い殺気と執念の炎が。

「そこまでしてワシから相撲を奪いてえか。ワシの心を折るためならなんでもするつもりか」
「上等じゃ。相撲の神様がなにを仕掛けてこようが関係ねえ。聖杯だろうがなんだろうが、ワシはソイツをぶん投げてやる」
「ワシは逃げんぞ。かーちゃんから貰ったこの身体で、ワシが好きなこの相撲で横綱になる。それがワシの生き方じゃ」

聞き遂げた男は、口元に小さな笑みを浮かべる。
彼は理解した。少年にとって、相撲とは己の生涯を費やす戦場なのだと。
ばかげている、などとは思わない。
かつて、命を賭けて戦い続けた自分達の旅と彼にとっての相撲。そこに優劣もなにもありはしないのだから。

「...随分と大きく出たじゃねえか」

だからこそ。
だからこそ、少年こそがこの戦いを共に勝ち抜くマスターとして相応しい。

「なら見せてもらおうか。この聖杯戦争をぶん投げる、お前の横綱相撲をな」

少年は、男の言葉を受けキョトンとした表情を浮かべる。
そこには、先ほどまでの憤怒の表情は見られず歳相応のあどけなさすら覗かせていた。

「あんた、英霊なのに聖杯戦争とやらを壊してえのか?」
「俺は一度も戦いに『乗る』とは口にしてねえぜ」
「いや、ワシを勧誘しとるように聞こえたからてっきり...なんであんたは聖杯を拒むんじゃ?」

少年からしてみれば当然の疑問だろう。
眼前の男は聖杯という常識外れなモノからの遣いでありながら、その聖杯に対して牙を剥くというのだから。


79 : 白銀のように煌いて、炎のように荒ぶって ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/11(水) 01:31:58 pYXWDb1k0

「簡単なことだ。こんな『気に入らねえ』モノを易々と肯定できるほど、俺は器が大きくねえ。ただそれだけだ」

男は、その身に着ける一昔前の学帽学ランが示すように、かつては不良のレッテルを貼られていた。
ケンカの相手を必要以上にブチのめし、イバるだけの能無し教師には気合を入れさせ、料金以下のマズイめしを食わせるレストランに代金を払わないこともしょっちゅうあった。
そんな彼でも吐き気がするほど許せない『悪』はあった。
『悪』とは自分自身のためだけに弱者を利用し踏みつける者のことだ。

それは聖杯戦争も同じこと。
『誰か』が自分の欲を満たすために、願いを餌に多くの人間を巻き込み惑わさせ、『悪』を蔓延らせる。
そして、その『誰か』は積み重なる屍を遥か高みから見下ろして悦に浸るのだろう。

男はそれが気に入らない。
気に入らないからぶちのめすという、なによりもシンプルで何物よりも固い白金のような信念だった。

「..うへへ、あんたも随分頑固者のようじゃな」

少年の頬は思わず緩み、稽古をする足を止め改めて向き合う。
共に戦う"同志"には礼儀を。少年は、男へと名乗りを上げた。

「ワシの名は潮火ノ丸。後に大相撲の最高位"横綱"になる男じゃ!以後お見知りおきを!」

右足と左足を開き、背筋を伸ばしたまま腰を下ろす。
そして両掌は己の膝に着け。
相撲の基本姿勢のひとつ、四股の構えである。

「ワリーが、俺は相撲は好きだが力士じゃあないんでな。その構えをするわけにはいかねえ」
「うへへ、構わんよ」
「礼儀の代わりと言っちゃあなんだが、俺の真名を教えておく。空条承太郎―――JOJOでも構わねえ。しばらくはよろしく頼むぜ、マスター」

承太郎から差し出された掌を潮が力強く握り返す。

人生の全てが戦いだった男と常に逆境に晒され続けた少年。

決して折れぬ二人が進む先は希望か絶望か、それとも―――


80 : 白銀のように煌いて、炎のように荒ぶって ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/11(水) 01:33:20 pYXWDb1k0

【クラス】バーサーカー

【真名】空条承太郎

【出典作品】ジョジョの奇妙な冒険

【ステータス】
本体
筋力:C 魔力:D 耐久:C 幸運:E 敏捷:B 宝具:B

スタープラチナ
筋力:A 魔力:C 耐久:A 幸運:C 敏捷:A 宝具:B


【属性】
中立・善

【クラススキル】

狂化(プッツン):A+
怒りにより全能力を向上させるが、マスターの制御が不可能になる。



【保有スキル】

観察力:A
戦闘時、つねに相手の癖や特徴などを見逃さない力。
子供の頃から刑事コロンボが好きだった為に、細かいことも見逃せない性質から培われたもの。


頑健:C
異様に丈夫で壊れにくい肉体を維持するスキル。耐久力を向上させる。

戦闘続行:A
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

テメーは俺を怒らせた:A+
プッツンした時のみ、稀に発動する。
怒りにより己の限界以上の力を引き出すことが出来る。



【宝具】
『星の白銀(スタープラチナ)』
ランク:B 種別:対人宝具(自分) レンジ:1 最大補足:己のみ。
圧倒的なパワーとスピード、そして精密動作を誇る近接戦最強格のスタンド。

『無限の拳(オラオラ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ1〜1000 最大補足:拳の届く範囲
星の白銀から放たれる強烈な拳でのラッシュ。その速さと力強さを捌ける者は、同じく近接戦に特化した者くらいだろう。


『星の白銀・世界(スタープラチナ・ザ・ワールド)』
ランク:A 種別:対人宝具(自分) レンジ:1 最大補足:己のみ。

真名解放と共に最大5秒間時を止める。
光よりも早く動く事による時間の超越であり、停止した世界では同種の能力を持つ者以外は動く事はおろか、何が起きているかを視認する事も判断する事も不可能。
宝具であるため、使用する度にマスターから魔力と体力を吸収しなければならない。
そのため過度の連発は厳しいものがある。



【weapon】
・拳
スタンドによる拳は勿論、本人も喧嘩慣れしているためやる時はやる男。

【人物背景】
ジョジョの奇妙な冒険第三部『スターダストクルセイダース』の主人公。ジョースター家の末裔の一人である。
スタンドと呼ばれる能力を有しており、同じ力を有した仲間たちと共に、邪悪の化身DIOを倒し母を救うために旅に出る。
『ただ強い』というこの上なくシンプルな『スタープラチナ』を『スタンド』として持ち、本体の頭の回転の速さと分析能力も相まって最強のスタンド使いと形容される。

【方針】
聖杯をぶち壊す。


81 : 白銀のように煌いて、炎のように荒ぶって ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/11(水) 01:34:52 pYXWDb1k0

【マスター名】潮火ノ丸
【出典作品】火ノ丸相撲
【性別】男

【weapon】
・素手
相撲取りに凶器は必要ない。


【人物背景】
大太刀高校に入学した少年。小柄な体でありながら相撲を心から愛しており、土俵での礼節や流儀を乱すものは許さない。
基本的には優しく、笑顔もよく見せる人当たりのよい性格だが、勝負になるとまさに『鬼』のように一切容赦のない取り組みを見せる。
また、両親を既に亡くしている。

かつては小学生相撲で2冠を取り天下五剣『鬼丸国綱』に例えられる異名を持ち(後の大相撲編ではそのまま四股名として名乗っている)恐れられていたが、中学になっても全く身長が伸びず、小柄な体のせいで屈辱を味わう。
身長が160㎝にも満たない彼は、大相撲の新弟子検査を受検すらできない体格なのであった。
それ故に、体格基準を不問とされるアマチュア相撲のタイトルを総ナメにして、大相撲界が自分に頭を下げてくることを望んでいる。

部員への助言も理に適った物が多く、単なる脳筋ではないところを見せる。また、計算づくめの言動が多く、学業面での成績もかなり優秀な部類である。なお、言葉遣いと信念は時代に逆行していて実直で、かなり謙虚である。



【能力・技能】
・相撲
相撲を愛し、相撲を捧げてきた者として何年も積み重ねられたその鍛え上げられた身体と技は、まさに燃え盛る火の如し。
小兵の身でありながら巨漢を投げ飛ばす様は、見る者の心を掴んで離さない。

・不屈(こわれた)の心
相撲とは心・技・体の三つが試される戦場である。技は鍛錬を積めばモノにできるがそれにも限度がある。身体に恵まれない小兵である彼が体を補うには、心を鍛えるしかなかった。
その心を、時に対峙者に絶望すら与えるほどの執念を折ることは誰にもできないだろう。


【方針】
聖杯戦争をぶん投げる(誰も殺さず聖杯戦争を止める)。そして改めて自分から相撲を奪うことはできんと相撲の神様に思い知らせる


82 : ◆DIOmGZNoiw :2018/04/11(水) 04:59:27 kRxIcVJk0
投下します。


83 : ◆DIOmGZNoiw :2018/04/11(水) 05:00:48 kRxIcVJk0
 視界の端から端まで埋め尽くして余りある財宝の海を目前にして、ジョルノ・ジョバーナは感嘆の吐息を零した。石段に腰を降ろし、己を取り囲む世界をぐるりと見渡す。剣に槍、斧に弓、食器に財宝、果ては巨大な飛行船。この世に現存するあらゆる宝具の原点と呼ばれる代物が、そこかしこに転がっている。この蔵に存在する宝の中に、ただのひとつとして贋作は存在しない。正真正銘の宝の山だ。
 この世に現存する宝と黄金をありったけ集めたとて、この黄金の蔵を再現するには及ぶまい。ましてや、たったひとりの人間がこの規模の宝を集めたとなると、それはまさしく夢物語のように思われた。けれども、それを成し遂げた英雄の王がいることを、ジョルノは知っている。かの王にしてみれば、眼前に積み上げられた財宝の山ですら数ある偉業のうちのひとつにすぎない。
 
「これが世界最古の英雄王が誇る宝物庫……まるで御伽話の世界にでも迷い込んだ気分だ」

 自分が今見ている夢が、いったいいかなる性質のものであるかをジョルノは既に理解している。この風景を見せた張本人に心当たりがあった。
 首を回して石段の上を仰ぎ見ると、西へと傾き始めた強い陽射しがジョルノの目を射した。反射的に顔の角度をそらして、目を細める。視界の先に佇む男の輪郭が、陽の光よりもなお黄金に輝いているようにジョルノには見えた。

「――英雄王」

 ぽつりとその称号を呟く。
 英雄王は、陽の光を全身に受けて、その身に纏った黄金の鎧を煌めかせている。一歩ずつ石段を降りで、ジョルノへと歩み寄る。ジョルノは自然と立ち上がり、英雄王へと向き直っていた。それが礼儀だと自ずと思わされたからだ。
 英雄王は、その燃えるような赤の瞳で、しかし底冷えするほどの冷たい眼差しをジョルノへ送った。舐め回すようにジョルノを見て、やがて英雄王はふん、と小さく鼻をならした。

「我が宝物庫を前にして物欲のひとつも抱かぬか。礼儀を弁えていると言えば聞こえはいいが」
「このジョルノ・ジョバァーナには……黄金のような夢がある。どれほどの財宝であろうと、その夢を眩ませることはできない……とでも言っておきましょう」
「ほう」

 英雄王の笑みは、やはり冷たかった。けれども、その笑みには幾分かの喜悦が含まれているように感じられた。



 規則的に体を揺さぶる車の振動の中、ジョルノは目を覚ました。
 短い時間だが、夢を見ていた気がする。小さくかぶりを振って、靄の掛かったような思考を覚醒させる。

「お目覚めですか、GIOGIO(ジョジョ)」

 ミラー越しに視線を向ける運転手と目が合った。運転手は、ジョルノが支配する組織、パッショーネの構成員だ。今日はこうしてジョルノの送迎を買って出てくれている。

「ええ、どうやら少し微睡んでいたようです」
「お疲れだったのでしょう、今は少しでもお休みください」
「ありがとう、そうさせてもらいます」

 言いながらジョルノは、シートに後頭部を深く預けたまま、ぼんやりとした視線を窓の向こうへと注いだ。ジョルノが生まれ育ったイタリアの景色と似た、芸術性にすぐれた建物が立ち並んではいるものの、通りを歩く人々の多くは日本人で、ここが故郷から遠く離れた土地であることを否応なしに認識させられる。
 ポケットの中から取り出した宝石を、手の中で転がす。ちらりと視線を下ろせば、ジョルノに握られた宝石は、きんきんきらきらと過ぎる程に黄金色に輝いて、その存在を主張していた。サーヴァントの自己顕示欲がよく現れている。ジョルノは己のサーヴァントの存在を思い、ふ、と笑みを零した。


84 : ◆DIOmGZNoiw :2018/04/11(水) 05:02:42 kRxIcVJk0
 
 ジョルノの監視の目を外れたパッショーネの構成員が、遠く離れた日本で独自の麻薬密輸ルートを確立し、大きなカネを動かしている。そういう話を聞いた。パッショーネが麻薬に関わっている以上、看過する訳にはいかない。今回はカネの規模の大きさもあって、ジョルノが直々に日本へと足を運ぶことになった。
 麻薬の売人を見つけることは容易かった。よもやパッショーネのボスが直々に日本まで出向くなどと思ってもいなかったのだろう、売人連中が油断していたことも、迅速な事件解決に至った大きな要因のひとつだったといえる。
 けれども、ジョルノは未だイタリアに帰れずにいた。この街から、出られずにいた。
 売人から無色透明の宝石を接収したあたりから、ジョルノを取り巻く世界が変わった。本来ジョルノが見ていたはずの、日本元来の風景はもはやこの空間には存在しない。そこにあった街も、人も、風も、空気も、なにもかもが、異質だった。
 ジョルノは、聖杯戦争に巻き込まれたのだ。



 見滝原の誇る高層ビルの上層階に宿をとったジョルノは、誇りひとつ存在しないスイートルームをざっと見渡し、早々に窓の際に立ち、カーテンを開けた。夜の見滝原は、芸術的な装いの建造物もさることながら、街中の至るところに設置された光源に照らされて、幻想的な風景を演出していた。
 川に視線を向ければ、淡い光源を浮かべたゴンドラが行き来している。ベネツィアの町並みをそのまま再現したような景色だ。こうして街全体を高い場所から俯瞰して、ジョルノは改めてこの街の異質さを認識した。
 遠く離れたビルの屋上で、火花が走った。なにか、金属のようなものが打ち合って、それが火花と、魔力による光を迸らせている。そこで相争っている二者がサーヴァントであることはすぐに察しがついた。

「どうやら血の気の多い雑種どもは既に始めているらしい」

 後方から、嘲りを多分に含んだ冷笑が聞こえた。ほぼ同時、窓の向こうの戦いにも決着がついた。片方のサーヴァントが、霊子となって霧散したのが見えた。ジョルノは片手でカーテンを閉めながら、声の主へと向き直った。
 手元で黄金の盃を揺らしながら、ひとりの男が備え付きのソファに深く腰掛けている。夢で見た黄金の鎧は今は纏っていない。白の長袖のVネック一枚に、ヘビ柄のパンツを身に纏い、長い足を膝の上で組んでいる。絹糸のような金色の髪の隙間から赤い双眸をちらつかせて、男は口元を歪めた。

「で、雑種よ。貴様はここで高みの見物か」
「ええ。悪戯に戦って体力を消耗する必要もない……ましてや、ここでことを焦って無駄に手の内を晒すことは、愚かなことです。僕はそういう、無駄なことが嫌いなんです」

 ふむ、と唸ると、男はもう一口黄金の盃を煽った。

「妥当な判断だな。年は若いが、案外とものの道理が見えている」
「そうでなければ、あなたもとうに愛想を尽かしているでしょう、アーチャー」

 アーチャーと呼ばれた男は得意そうに笑った。

「当然だ。無聊の慰めとはいえ、我が眼前に拝謁するに能わぬもののために時間を使ってやれるほど、我は優しくはない。この我を召喚した男が然様な無能であったなら、今頃その四肢は吹き飛んでいた頃であろうよ」
「肝に銘じておきましょう」

 ジョルノは窓から離れ、アーチャーの眼前へと歩を進める。己がサーヴァントに対して、極端に上から命令をする気も、必要以上に媚び諂うつもりも、ジョルノにはなかった。あくまで対等の立場として、ジョルノは振る舞うつもりでいる。


85 : ◆DIOmGZNoiw :2018/04/11(水) 05:03:19 kRxIcVJk0
 
「しかし、アーチャー。戦うべきときが来れば、僕は戦います。そして、その時は近い……そういう予感がある。この見滝原に来てからというもの……奇妙な感覚だ」

 首筋のアザが疼く。痛みを感じているわけではないし、不快というわけでもない。なにか自分に親しい存在が近付いているような、言語化するのが難しい奇妙な感覚を、ジョルノはこの見滝原で感じ続けていた。

「そのために、この英雄王に力を貸せと」
「ええ。あなたには、僕と一緒に聖杯を獲ってもらう」

 アーチャーの表情がぴくりと動いた。眉根が寄る。瞳が細められる。

「口の聞き方を知らぬ雑種よな……ならば問おう。貴様は、聖杯に如何なる願いを託す」
「僕の願い」
「くだらぬ願いを口にすれば、この場で我が誅罰を下す。その覚悟を以て口を開けよ、雑種」

 ガラスのテーブルに杯を置いたアーチャーが、組んだ足の上で指を組み合わせた。ソファに後頭部を預け、見下ろすような視線をジョルノへと送る。
 視線を逸らさず、英雄王をまっすぐに見据えたまま、ジョルノは己の意思を述べた。

「このジョルノ・ジョバァーナには黄金のような夢がある。しかしそれは、聖杯に望むものではない……夢とは、自分自身の力で実現させるものだからです」

 アーチャーはなお、顔を顰めた。理解に苦しむといったそぶりだったが、構わずジョルノは続けた。

「聖杯は獲る。しかしそれは、己が欲望を叶えるためではない。このジョルノ・ジョバァーナは……二度とこんな催しが開かれないよう、聖杯を管理……、または……破壊する」

 ジョルノはカーテンで閉ざされた窓へと視線を向けた。
 さっきの戦いはどうなったのだろう。窓の向こうへと思考を向ける。片方のサーヴァントが消滅したのは見た。ならば、そのマスターは。
 きっと本来ならば聖杯戦争になど巻き込まれる必要のなかった人間が、これから犠牲になるのだろう。本来ならば平和に暮らせる筈だった無辜の民が、麻薬に狂わされ、ギャングの抗争に巻き込まれ、その人生を狂わせる。それと同じことが、この聖杯戦争で起ころうとしている。
 ギャングスターを夢見た少年には、それが許せなかった。

「願いを叶える願望機を、手ずから破壊すると」
「結果だけを追い求めていると……人は近道をしたくなるものです。しかし、近道をしたとき……真実を見失ってしまうかもしれない。大切なのは、真実に向かおうとする意思です……僕は、僕の夢を聖杯に託しはしない。結果だけを追い求めて、近道をしようとは思わない」
「それは矛盾だな。貴様はこの戦争を気に入らぬと断じた。だが、戦争には乗るだと? 綺麗事を並べ立てようと、それでは聖杯を狙う凡百の簒奪者どもとなにも変わらぬではないか。物は言いようとはよくいったものよ」
「聖杯は獲る。しかし、マスターは殺さない。サーヴァントだけを『始末』します……理論上、すべてのサーヴァントが消滅すれば、それで聖杯戦争は終わる筈だ」
「ものの道理が通用せぬ外道がマスターであった場合はどうする」
「その場合も……迷うことはありません。必要であると判断したなら、マスターを『始末』することも躊躇わない。それがギャングのやり方です。今更この手を汚すことを厭いはしない」

 悪をもって悪を制する。この世の正義では裁き切れない悪を、パッショーネが始末する。それはあの日ディアボロを倒して以来、ジョルノが歩み続けた道だった。今更立ち止まる気は毛頭ない。ギャングスターを目指すならば、とことんまで悪の花道を突き進むまで。
 ジョルノの真っ直ぐな瞳を、アーチャーはじいっと見つめる。ほんの数秒の時間が、何倍にも引き伸ばされたように感じられた。けれども、その間ジョルノは一度足りともアーチャーを捉えた視線を外しはしなかった。
 やがて、折れたのはアーチャーの方だった。


86 : ◆DIOmGZNoiw :2018/04/11(水) 05:03:44 kRxIcVJk0
 
「フ……、ハハハハハハハッ! 貴様は度し難いほどに歪んだ男よな。不遜にもこの英雄王を喚んだ魔術師が、どれほどの猛者かと思えば……聖杯を獲るため、他者を蹴落とすならばまだ分かる。それこそが遍く魔術師の懐く正しき目的なのであろうよ」
「僕は魔術師じゃあない」
「ハッ、これよ。よもや蓋を開けてみれば、この我を喚んだ男が『救世主気取り』だったなだと――笑い話でなくてなんとする! これでは興醒めもいいところよ。最早此度の聖杯戦争の愉しみなど、貴様の奮戦ぶりを眺めて嗤うほかにはあるまい。人の身に余る救世の大望を背負い込み、苦しみ、足掻く、その葛藤……慰みモノとしては上等だ」

 言いつつ、アーチャーの口元の笑みは深まっていった。口角が不敵につり上がり、機嫌よく盃を煽っていく。ジョルノは怪訝に眉根を寄せた。

「それは……どちらの意味と捉えればいいのか。僕とともに戦うのか、それとも」
「フン、精々己の限界に挑み、奮戦することだ。案ぜずとも、貴様の足掻く様は我が見届けてやる」

 無言のまま、ジョルノはアーチャーの次の言葉を待った。

「貴様の道化ぶりは度し難いが、曲がりなりにも我がマスターゆえな……ことによれば、我が力を下肢してやってもよいというのだ。見込んだ玩具が早々に壊される様を見せ付けられることほど興の冷めることもあるまい」
「それでは……僕らはこれより、共闘の間柄にあると考えさせてもらっても構わないと」
「フン、貴様が我を飽きさせぬ限りにおいては、我もまた物見遊山がてら務めを果たしてやってもよい、というだけの話よ。だが、逆に、無様を晒して我を失望させるようなことがあれば」

 くつくつと不敵に笑うアーチャーの傍らに、金の波紋が広がった。
 波紋の内部から射出された金の短剣が、ジョルノの首筋を擦過して、背後の壁に突き刺さった。首筋に傷はついていないが、しかし確かな熱を感じる。額を、冷や汗が伝って落ちていった。

「その時は、わかっているな?」

 背筋を悪寒が突き抜けていくような冷笑を浮かべて、アーチャーは、大気に解けるようにその姿を消した。霊体化だ。魔力消費を抑えながら、気が向いた時だけ姿を見せる。まさに神出鬼没というに相応しい。

「僕は、一度口に出してやると言ったら……必ずやります。あなたを失望させるようなことは、ないと思っていただきたい」

 たった一人の室内で、ジョルノはどこへともなく言葉を投げた。

 ――おまえの気高き『覚悟』と……
 ――黄金のような『夢』に賭けよう、ジョルノ・ジョバァーナ。

 ジョルノの胸の中には、今も大切な仲間から貰った言葉が強く息づいている。仲間たちに誓った、黄金のように気高い夢がある限り、ジョルノはいかに困難な道であろうとも歩みを止めようとは思わなかった。
 あの黄金の英雄王を失望させる気は毛頭ない。必ずこの聖杯戦争を生き残り、二度とこのような悲劇が繰り返されないように聖杯を管理、ないし破壊しなければならない。この胸に宿った黄金のような夢にかけて。
 ふいに、背後の壁に突き刺さった短剣に視線を送った。金の短剣が粒子となって消えていく。夢で見た、あの莫大な数の宝物と金とを収めた蔵へと還っていったのだろう。
 あの、黄金の風が吹く気高き場所へ。

「これからよろしくお願いします、アーチャー……黄金の英雄王、ギルガメッシュ」

 強い眼差しは決して崩さず、しかしジョルノは微かに微笑んでみせた。


87 : ◆DIOmGZNoiw :2018/04/11(水) 05:05:03 kRxIcVJk0
 
 
【出展】Fate/Grand order
【CLASS】アーチャー
【真名】ギルガメッシュ
【属性】混沌・善
【ステータス】
筋力B 耐久C 敏捷C 魔力B 幸運A 宝具EX

【クラス別スキル】
対魔力:E
 魔術に対する守り。無効化はできず、ダメージ数値を多少削減する。

単独行動:A+
 マスター不在でも行動できる能力。もはややりたい放題。

神性:B
 最大の神霊適正を持つのだが、ギルガメッシュ本人が神を嫌っているのでランクダウンしている。

【保有スキル】
カリスマ:A+
 大軍団を指揮・統率する才能。
 ここまでくると人望ではなく魔力、呪いの類である。

黄金率:A
 身体の黄金比ではなく、人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。
 大富豪でもやっていける金ピカぶり。一生金には困らない。

バビロンの蔵:EX
 ギルガメッシュは財宝のコレクターでもある。
 地上のものはすべて集めた、とは彼の口癖だが、それは比喩でもなんでもない。
 彼は彼の時代において発生した、あらゆる技術を集め、納め、これを封印した。

【宝具】
『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』
ランク:A++ 種別:対界宝具 レンジ:1〜99 最大補足:1000人
 エヌマ・エリシュ。
 乖離剣エアによる空間切断。
 圧縮され鬩ぎ合う風圧の断層は、擬似的な時空断層となって敵対するすべてを粉砕する。
 対粛正アーマークラスか、同レベルのダメージによる相殺でなければ防げない攻撃数値。
 乖離剣エアは剣のカテゴリではあるが、その在り方は杖に近い。三つの石版はそれぞれ天・地・冥界を表し、これらがそれぞれ別方向に回転することで世界の在り方を示している。この三つすべてを合わせて宇宙を表しているとも。アルトリアのエクスカリバーと同等か、それ以上の出力を持つ「世界を斬り裂いた剣」である。

『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』
ランク:E〜A++ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足-
 黄金の都に繋がる鍵剣。
 空間をつなげ、宝物庫にある道具を自由に取り出せるようになる。
 所有者の財があればある程強力な宝具になるのは言うまでもない。

【人物背景】
 言わずと知れた英雄王である。
 今回はGrand orderからの参戦のため、このギルガメッシュ自信に他の聖杯戦争の記憶はない。が、他の聖杯戦争で戦った自分自身を知識として知っていてもおかしくはない。

【サーヴァントとしての願い】
 とくになし。

【基本戦術、方針、運用法】
 ギルガメッシュは気が向いた時、または気まぐれでジョルノを助けることはあるのだろうが、ジョルノがギルガメッシュに助けを求めることは(よほどのっぴきならない状況でない限りは)おそらくない。
 ギルガメッシュとしても、一応当分はジョルノを見殺しにする気はない。

 

【出展】ジョジョの奇妙な冒険 Parte5 黄金の風
【マスター】ジョルノ・ジョバァーナ

【人物背景】
 ジョジョの奇妙な冒険 第5部主人公。
 父親は邪悪の化身DIOだが、その肉体はジョナサン・ジョースターであったため、ジョルノにはDIOのカリスマ性と、ジョナサンの誇り高き黄金の魂の両方が受け継がれている。
 ギャングによって腐り切った街を救うため、ディアボロを頂点とする組織・パッショーネに入団し、組織を内部から変えるため、ブチャラティらとともに戦った。
 かつてのボス、ディアボロを打倒し、パッショーネのボスと成り代わったジョルノは、今も街の浄化のために日夜戦っている模様。

【能力・技能】
『ゴールド・エクスペリエンス』
 破壊力 - C / スピード - A / 射程距離 - E(2m) / 持続力 - D / 精密動作性 - C / 成長性 - A
 テントウムシがモチーフの接近パワー型。触れた物体に生命力を注ぎ込み、無機物から動物や植物といった生物を生み出す能力を持つ。
 既に生きている生命を殴るなどして、更に生命力を注いだ場合、過剰になった生命力が暴走を始め、対象は動作やものの見え方が非常にゆっくりとなる。もしこの状態で攻撃を受けると、ゆっくりとダメージを受けて行き必要以上の痛みを感じることになる。

【ロール】
 元々の目的はパッショーネのボスとして、日本で暗躍する麻薬密売組織を叩くこと。
 実質役目を果たしたため、現在のところ、表向きには日本に滞在している旅行者のような状況。

【マスターとしての願い】
 聖杯を獲る。
 その後は二度と聖杯戦争が起こらないように管理、ないし破壊する。

【令呪】
 左手の甲に三角。


88 : ◆DIOmGZNoiw :2018/04/11(水) 05:08:38 kRxIcVJk0
以上です。
以前、箱庭聖杯で投下した拙作をリメイクしたものとなります。


89 : ◆lkOcs49yLc :2018/04/11(水) 18:52:57 Mwm6xQJs0
投下乙です。
見滝原に光り輝く黄金の風達にこちらも目を焼き焦がされそうになる思いになりました。
それではこちらも箱庭聖杯で投下した拙作を一部改変したものを投下いたします。


90 : エンポリオ・アルニーニョ&ライダー ◆lkOcs49yLc :2018/04/11(水) 18:53:42 Mwm6xQJs0
エンポリオ・アルニーニョは母親を失った。
母を殺したのは、一人の神父だった。
エンポリオは、母親の仇を取る為に生きた。
刑務所に入り込み、幽霊を操り、幽霊の本を読みながら、彼は成長していった。
やがて、彼には多くの仲間が出来た。

分解癖のある変人。
記憶のない寡黙な男性。
明るく面倒見の良い黒人の女性。
偶然にも出会ったショートヘアの少女。
そして、星型の痣を持つ少女。

幾つもの出会いと戦いの日々が、彼らの間で繰り広げられた。
神父の刺客は、常日頃から「スタンド」と呼ばれる強力な力を手に取るように振るい、エンポリオ達を苦しめていった。
それでも、エンポリオ達が挫けることは無かった。
恐怖を己のものとし、誇り高き勇気のままに彼らは戦いを繰り広げていく。
その過程で、仲間が死んだ事もあった。
それでも諦めることはなかった。

やがて彼らはとうとう、神父に対面することが出来た。
しかし、既に神父の力は彼等を凌駕していた。
「時」を加速させるその力。
世界を再構築させるほどの時の動きに、世界が、彼等が掻き乱されていった。
しかし、これまでの熾烈な戦いを潜り抜けた機転と力と勇気で彼等は神父に立ち向かっていった。
時を静止させる者が仲間にいるとはいえ、勝算はほぼゼロに等しかった。
そして、多くの仲間が死にゆく中エンポリオは全てを託され、生き残り、只、加速される時の中を彷徨い続け―



◆  ◆  ◆


91 : エンポリオ・アルニーニョ&ライダー ◆lkOcs49yLc :2018/04/11(水) 18:55:15 Mwm6xQJs0

「エンポリオッ!お前はここに来てはならなかったのだッ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

逃げる、逃げる。
始まりの場所、薄汚い刑務所の中を、エンポリオはみっともなく走っていく。
追いかけるのはエンリコ・プッチ神父。
徐倫を、エルメェスを、アナスイを、ウェザーを、承太郎を殺した張本人。
しかしプッチは、その潰れた右目を晒しながらも、己のスタンド「メイド・イン・ヘブン」を容赦なくけしかけてくる。
DIOとの戦いに勝利した承太郎でさえ為す術もなかったその力にエンポリオは、只々、逃げるしか無かった。

無論、手段がないわけではない。
徐倫が遺してくれた切り札なら、既にエンポリオの帽子の中に隠されている。
プッチがウェザーから奪い取りDISCにしたそのスタンドを、エンポリオは持っている。

「ウェザー・リポート」

所持者であるエンポリオの仲間の一人である男の通称と、同じ名を持つスタンドだ。
その能力は「天候操作」。
それさえ使えれば、エンポリオに勝ちは見えるかもしれない。
だが如何に勇気があろうが、幾ら死線を潜り抜けようが、エンポリオは只の子供。
恐ろしいほどの暴力には、逃げまとうしか無かった。

しかしエンポリオが、「メイド・イン・ヘブン」の攻撃を避けようと仰け反ったその時である。
エンポリオの掌が置かれた場所には丁度、卵型のランプが置いてあった。


◆  ◆  ◆

「思い出した……」

自宅の本棚にある本を横になって読んでいたエンポリオは、其処までの記憶を取り戻した。
取り戻した切っ掛けは、己が読み返したその本だ。
其処には空気の物質に関する記述が有るのだが、その本をエンポリオは嘗て読んだ事があるのだ。
己のスタンド「バーニング・ダウン・ザ・ハウス」で。
そもそもからすれば、エンポリオの母親は普通に生きていたのだ。
そしてエンポリオがいるのは、刑務所ではなく普通の家。
思えばこの時点で、エンポリオは既に違和感を感じていたのだ。
そして読んだ本の文章に既視感を覚え、エンポリオは今に至った。

今のエンポリオに流れるのは、「聖杯戦争」に関する記憶だ。
此処は日本―徐倫の生まれ故郷―を再現した、エンポリオのいた世界とは違う『どこか』
この世界で記憶を取り戻した者は7騎の「サーヴァント」と呼ばれる使い魔を操り、殺し合い、そして戦いの果てに「聖杯」と呼ばれる願いを叶えるアイテムを手にするというのだ。
その聖杯戦争に招かれる鍵は、何やら「ソウルジェム」と呼ばれるアイテムだそうなのだが……
しかし、ソウルジェムと言う物はエンポリオも持ち合わせていない。

(何処に有るんだろう……)

そう考え、ガバリと起き上がったエンポリオは辺りをキョロキョロと見回す。
すると、自分の真後ろに模様が書かれた卵型のランプ……ソウルジェムが置かれているではないか。
エンポリオは身体の向きを変え、そのソウルジェムを拾う。
無論、このカードが己の背中に置いてあったということなど、エンポリオは知る由もないだろう。

◆  ◆  ◆

「そうだ、ぼくは徐倫に託されて、プッチから逃げようとした所で……。」

何の宛も無く、エンポリオはジェムを手に街を歩きながらも、聖杯戦争について考える。
今の所、エンポリオのサーヴァントがやって来る兆しは見られない。
実のところ、エンポリオには叶えたい願いなど無いのだ。
いや、願いなら有る。
エンリコ・プッチを倒すこと、それだけだ。
死んでいった仲間達を生き返らせようなどとは思わない。
それでは、彼等の覚悟は全て、無駄になってしまうのだから。
他者を殺めて願いを叶えるとなるのなら、尚更の話だ。

結局、エンポリオが選んだのは、誰も殺さずに生き残る道。
或いは聖杯を破壊する道だ。

(聖杯に縋って叶えたい願いなんて僕には無い……願いなら、ぼく自身の手で叶えてやる!)


そう思った時、エンポリオの持ったソウルジェムの周りが、光り輝いた。

「うわっ!!」

その眩い光に、エンポリオも思わず目を覆う。


◆  ◆  ◆


92 : エンポリオ・アルニーニョ&ライダー ◆lkOcs49yLc :2018/04/11(水) 19:08:55 Mwm6xQJs0


天道総司の妹は病を患った。
病が患った原因は一つの超巨大隕石だった。
妹を治す方法は最早見つからないと分かった中、天道はある一つの噂に希望を見出す。

「時を超える力を持つ黄金のライダー」

それに目をつけた天道は、行動を起こした。
世界では、既に天道と同じ「ライダー」達の争いが勃発していた。
「秩序」を護る組織と、壊す組織。
二手に別れたライダー達は潰し合う中、天道は姿を表した。
己の力を見せつけた彼は2つの組織に内通し、己を売る。
彼の思惑通りにライダー達の潰し合いは加速を初め、ついに天道が求めた男はその姿を表した。

同時期に、天道に悲しい知らせが届いた。
妹の命が、もう長くはないのだと。
更に、ライダーを失った秩序の組織が怪物達と手を組み、世界を蹂躙しようとしたと言うことも。
最早、天道に遺された時間は無かった。
天道は妹を愛し、愛された男と手を取り合い、宇宙へと旅立つ。
そして宇宙に到着した天道達の前に現れたのは、黄金のライダー。

黄金のライダーとの戦いは歯列を極めた。
只のライダーではまともに太刀打ち出来ない程に。
だが、妹を愛した男が、天道を庇ってくれた。
彼の想いを乗せ、黄金のライダーから奪った時を超える力を、天道は遂に使った。
奪われた力の前に黄金のライダーは倒され、天道は念願の想いを届けるために全てが始まった7年前へと旅立つ。

隕石は爆発四散、天道は7年前の己に妹を託した。



◆  ◆  ◆




「お前か、この俺を喚んだマスターと言うのは。」

光が止んだ時、そこには白いコートを羽織った、一人の長身の東洋風の青年が立っていた。
如何にも英雄とは言い難い様な出で立ちだったが、そのオーラは何処か、凄みを持っていた。
それも、エンポリオが嘗て出会った仲間達にも劣らないような。
それに、この男を見た時、何やら数値と、「Rider」という文字が浮かび上がってきたのだ。
間違いない、彼こそが、己のサーヴァントだ。

「はい、そうです。」


◆  ◆  ◆


93 : エンポリオ・アルニーニョ&ライダー ◆lkOcs49yLc :2018/04/11(水) 19:13:55 Mwm6xQJs0

エンポリオが召喚したサーヴァントのクラスは、「ライダー」という物だった。
その名の通り、乗り物を宝具として手繰るサーヴァント。
今エンポリオと天道は、自宅のキッチンで昼食を作っている。
一応、母親が作り置いてくれた料理があるのだが、ライダーが「それでは足りんだろう」と言い出し今に至る。

味ならスタンドで作るとも言って遠慮したが、結局ライダーに言い包められてしまった。
曰く「お婆ちゃんが言っていた、料理の味は一瞬で終わる、だが、その食べた料理は永久的に身体の中に残り続けるとな。
食うなら本物の料理を食った方が満足だろう。その方がそれとも、俺の料理より幽霊の方が余程ご馳走なのか?」と。

因みにスタンドで本も用意できると聞いた時、日本製のある料理書を無理くりおすすめされた。
曰く、「俺がこの世で最も尊敬する料理人」だという。

(一体、この人はどんなことを成し遂げたんだろう)

「マスター。」

ふと、フライパンで魚の切り身をあしらいながらライダーが声を掛ける。

「は、はい。」
「お前が持つ願いは何だ。」
「僕に願いなんか……有りません。」
「ほう?」
「僕は、この聖杯戦争から抜け出したい。僕は託されているんです、死んだ仲間達から、宿敵をぼくの手で倒すという使命をッ!」


―仲間、か。
ライダーのサーヴァント、天道総司は、その言葉に懐かしみと、疎遠さを同時に浮かべていた。
天道は、これまで一人でずっと戦ってきた。
だが、黄金のライダーとの戦いにおいて、共に戦った男がいた。

(加賀美、俺とお前はこのフライパンの上にある鯖の切り身よりもずっと薄っぺらい仲だ……
だがそれでも俺達は、共にひよりの為に戦った。)

嘗て、共にひよりを救うために戦ったライダーを、天道は思い出した。
彼はひよりを愛していた。
その想いは天道と同じだった。
何より彼は、己を庇ってハイパーゼクターへと道標となってくれたのだ。
加賀美とは所詮昨日一昨日出会った敵に過ぎなかったが、守りたいものは同じだった。
行く道は同じだった、そう云うのを仲間だというのだろう。
美味い料理はほんの一口しか食べていなくとも、十分すぎる程愛おしい味であるはずだと、お婆ちゃんも言っていた。
ひよりが作る鯖味噌の様に。


「マスター、お前の名前は何だ?」

天道は、まだ聞いていなかった己の相棒の名を問う。
うしろにしがみついているエンポリオはそれに答え、輝かしい目で答える。

「ぼくの名前はエンポリオです。」

天道はその言葉を聞きフッと笑うと、同じく己も答え返す。

「おばあちゃんが言っていた、俺は天の道を生き、総てを司る男……」

そして天道は左手でフライパンを握ったまま、、空いた右手で天を指差す。

「天道……総司!!」

その姿は、エンポリオにはより一層輝かしく見えた。


その日の料理は鯖味噌だった。
味は、ライダーが天の道を豪語するだけあって、バーニング・ダウン・ザ・ハウスよりも遥かに美味かった。


94 : エンポリオ・アルニーニョ&ライダー ◆lkOcs49yLc :2018/04/11(水) 19:15:52 Mwm6xQJs0

【クラス名】ライダー
【真名】天道総司
【出典】劇場版 仮面ライダーカブト GOD SPEED LOVE
【性別】男
【属性】混沌・善
【パラメータ】筋力B 耐久B 敏捷C 魔力E 幸運B 宝具B+(マスクドフォーム変身時)
       筋力C 耐久C 敏捷B++ 魔力E 幸運B 宝具B+(ライダーフォーム変身時)
       筋力A 耐久A 敏捷A++ 魔力E 幸運A 宝具B+(ハイパーフォーム変身時)

【クラス別スキル】

・騎乗:B
乗り物を乗りこなす才能。
大抵の乗り物は人並み以上に乗りこなす。

・対魔力:E
魔力に対する耐性。
無効化はせず、ダメージを軽減する程度。

【保有スキル】

・仕切り直し:B+
不利な戦闘から離脱する能力。
他の敵同士による戦闘を水入りにすることも出来る。
また、海に落ちたり瓦礫が落ちてきた場合には高確率で敵の目を免れ生存することが可能。

・心眼(真):B+
修行、鍛錬によって培った洞察力。
窮地に陥った時、逆転の可能性が1%でもあるのなら、それを手繰り寄せる戦闘論理。

・単独行動:A
マスターとの魔力供給を絶っても現界を保つ能力。
Aランクなら、マスターが死んでも1週間は現界を保てる。

・天の道:EX
世界にも時の流れさえも届くことは許されなかったライダーの行く道。
命ある限り人は強くなれることを示す、自分が変わることで世界を変える、それが天の道である。
あらゆる難行を不可能なまま可能としてみせる。
また、多種多様なスキルを一時的に高い習得度で入手することが可能。
具体的には大出世、診察、レア食材入手、投擲術、戦術指揮、語学、ムエタイetc....


95 : エンポリオ・アルニーニョ&ライダー ◆lkOcs49yLc :2018/04/11(水) 19:16:26 Mwm6xQJs0

【宝具】

「頂に輝く太陽の神(マスクドライダー・カブト)」
ランク:C+ 種別:対人・対時間宝具 レンジ:- 最大捕捉:1
地球外生命体「ワーム」に対抗するために作られたマスクドライダーシステムの記念すべき第一号。
カブトゼクターを呼び出しベルトに装填することでシステムが起動、「カブト」へと変身する。 「ヒヒイロカネ」で鍛えられた装甲を 武器に戦う「マスクドフォーム」、
マスクドフォームの装甲を外して時空を超えた「クロックアップ」と呼ばれる高速移動を武器とする「ライダーフォーム」の2つの姿を併せ持つ。
また、別の逸話ではカブトには暴走システムが仕組まれていると言う逸話が残されているが、この世界では逸話として確認されていない。

「銀角突き刺す真紅の甲車(カブトエクステンダー)」
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:30 最大捕捉:1
ライダーが乗りこなした高性能バイク、カブトエクステンダーを召喚する。
カブトの資格者に忠実であり、自動走行も可能である。
キャストオフによりエクステンダーモードに変形、壁を走り、巨大な角で敵を攻撃できる他、クロックアップの世界での走行も可能となる。
耐久力も高く、成層圏から落下しても尚原型を保っている。

「時空を超越する愛の翅(ゴッド・スピード・ラヴ)」
ランク:B++ 種別:対時間宝具 レンジ:- 最大捕捉:1
ライダーが黄金のライダーから奪い取ったゼクター、ハイパーゼクターを召喚する。
これをベルトに付け、ハイパーキャストオフを発動することで「ハイパーフォーム」へと変身できる。
ハイパーフォームの戦闘力は相当なものとなり、空中飛行も容易にできる。
そして更には「ハイパークロックアップ」と呼ばれるクロックアップを超える時間制御能力を持つ。
時間を巻き戻す事すら容易な能力だが、時間逆行は令呪一角につき8時間が限度。
また、逸話として確認されていないパーフェクトゼクターの召喚は不可能。

【Weapon】

「カブトゼクター」
マスクドライダーシステム「カブト」のコアを担うカブトムシ型ロボット。
「ジョウント」と呼ばれる時空を超えた転送システムを搭載しており、
「クロックアップ」の空間を通して資格者の元にタイムロスなしで駆けつける。
そしてデバイスに装填することで資格者をライダーに変身させる。
普段は何処かを飛び回っているが、ライダーの命令には忠実。
意外と器用で、高速で麺打ちを行うことも出来る。

「ライダーベルト」
マスクドライダーシステム「カブト」を起動するためのベルト型デバイス。
腰に嵌めるだけで14歳の少年が瓦礫の下から自力で抜け出せる程度に力が増大する。
内部にはカブトのスーツの中身が圧縮されて入っており、カブトゼクターをバックルに装填してロックを解除することで装着される。

「カブトクナイガン」
カブトの装備。
当然の如くヒヒイロカネで作成されており、ジョウントで自在に召喚できる。
「ガンモード」にはストック部分に刃が付けられており、持ち替えて「アックスモード」にすることも出来る。
更に銃身部分を引き抜くことで「クナイモード」に変化させることも可能。
サイレンサー付きで、レーザーを周囲に照射することで動きが見えない敵の位置を掴める。

【人物背景】

運命に絶えず、常に味方された男。
劇場版からの参戦。

【聖杯にかける願い】

マスターを護ってやる。


96 : エンポリオ・アルニーニョ&ライダー ◆lkOcs49yLc :2018/04/11(水) 19:17:06 Mwm6xQJs0



【マスター名】エンポリオ・アルニーニョ
【出典】ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン
【性別】男

【Weapon】

「バーニング・ダウン・ザ・ハウス」
エンポリオが持つスタンド。
既に消滅した存在、つまり物の「幽霊」を呼び出すことが出来る。
幽霊は実物と同じように使うことが可能で、例えば本は読めるし、パソコンは回線が無くてもインターネットに繋げる。
ただし食べ物は喉を通らず、腹の足しにならない。
重火器も実弾は当たらず、音による虚仮威しにしか使えない。

「ウェザー・リポートのDISC」
ウェザー・リポートと、空条徐倫を通して手に入れた彼のDISC。
「ウェザー・リポート」と呼ばれるスタンドが入っており、高度な天候操作能力を持つ。
使いこなせば発火現象、凍結現象、空気中の酸素濃度の操作を行える他、カエルを上空から降らせることも可能。
【破壊力 - A / スピード - B / 射程距離 - C / 持続力 - A / 精密動作性 - E / 成長性 - A】

【能力・技能】

・スタンド
力を具現化したかの様な特殊なパワー。
スタンドはスタンド使いにしか見えず、スタンドにしか対処できず、またスタンドが傷つけば本体も傷付く。

・専科百般
幼い頃からあらゆる本を読み続けてきたため、あらゆる事柄に詳しい。
ヘリコプターの操縦法も知っている。

【人物背景】

運命に勝たせてもらおうとした男。
加速された時間からの参戦。

【聖杯にかける願い】

エンリコ・プッチを殺す。


97 : ◆lkOcs49yLc :2018/04/11(水) 19:19:53 Mwm6xQJs0
投下終了です。
尚、ライダー(天道総司)のパラメータの作成において◆HOMU.DM5Ns氏のライダー(天道総司/カブト)を参考にさせていただいたことをこの場をもってお礼申し上げます。


98 : ◆lkOcs49yLc :2018/04/11(水) 19:48:02 Mwm6xQJs0
それとお手数おかけしますが、ミスを発見したのでWiki収録後に修正をお願いいたします。

>>93
曰く「お婆ちゃんが言っていた、料理の味は一瞬で終わる、だが、その食べた料理は永久的に身体の中に残り続けるとな。
食うなら本物の料理を食った方が満足だろう。その方がそれとも、俺の料理より幽霊の方が余程ご馳走なのか?」
と。



味ならスタンドで作るとも言って遠慮したが、結局ライダーに言い包められてしまった。
曰く「お婆ちゃんが言っていた、料理の味は一瞬で終わる、だが、その食べた料理は永久的に身体の中に残り続けるとな。
食うなら本物の料理を食った方が満足だろう。それとも、俺の料理より幽霊の方が余程ご馳走なのか?」と。


99 : ◆v1W2ZBJUFE :2018/04/11(水) 22:23:28 kZstO2M20
投下します


100 : 最後の希望 ◆v1W2ZBJUFE :2018/04/11(水) 22:24:44 kZstO2M20
「暦……」

壁も天井も床もコンクリートで出来た部屋に男の声が響く。
壮年の男の声、無限の疲労と激しい怒りとを感じさせる声。
男は聖杯戦争に召喚されたマスターだった。
己が役割(ロール)としてあてがわれた『実直な宝石商』などに甘んじていた時間は極小、如何なる犠牲を払っても叶えなければならない願いが、即座に男の記憶を呼び覚ますまでの間だった。

「暦……」

この世の全ての人間を骸と変えて積み上げたならば願いに届くというならば、躊躇わずに積み上げる。
その思いが男を死ぬまで、そして死んでからも突き動かしていた。
あの時、己の作り出した亡霊(ファントム)に斬られた時、転がっていた鉄片を握り締めた。
その鉄片が導いた此の地、死後の敗者復活戦の片道チケット。もうこの機を逃せば暦に未来は無い。この機を逃す訳にはいかない。
男…笛木奏は不退転の意思を以って己がサーヴァントを召喚する。

「来い…!!」

短く絞り出した一言に込められた無限の意志。
英霊なぞ所詮亡霊(ファントム)。必ず御してみせるとの決意も顕にサーヴァントを召喚する。
逆らう様なら撃ち倒して屈服させると、その姿は白いフードのついたローブを羽織った、仮面の魔法使いのそれに変わっている。
吹きすさぶ魔力の風、男は何時の間にか地下室が、石造りの部屋に変貌していることに気が付いた。
床に魔法陣が描かれ、奥に両開きの巨大な扉が有る。
目の前に現れる人影、齢の頃は暦と同じ位の全裸の美少女。長い黒髪を血の気の無い裸身に妖しく絡みつかせ、瞳を閉じて佇んでいる。
その圧力、その魔力。笛木が今迄作り出したファントムの比では無い。


101 : 最後の希望 ◆v1W2ZBJUFE :2018/04/11(水) 22:25:31 kZstO2M20
「汝、我を召喚せし者か」

笛木が言葉を発せないでいると、唐突に少女が語りかけてきた。

「そうだ。聖杯と令呪に依り、私に従え、サーヴァント」

少女の瞼が開かれる。現れた瞳の色は、鮮血で染め上げたかの様な真紅。
そのまま、自分より高い位置に有る笛木の顔を見つめる。

「汝との繋がりを感じる。汝を召喚者と認めよう」

笛木は短く息を吐いた。現れたのが暦と同い年位の少女、というだけなら兎も角、このサーヴァントが放つ気配は余りにも異常だった。
過去の英雄などでは無く、怪物の類を喚んだのかと思う程に。
尤も、そのステータスは充分に怪物と呼べるが。キャスターというクラス名に相応しく無い程に。

「それで、お前の能力は?」

笛木は訊く。真名などどうでも良い。重要なのはこのサーヴァントの宝具とスキルだ。所詮ファントムと同じく道具、暦の為に使い潰すだけの存在なのだから、重要なのは性能のみ。
少女は思考も感情も窺い知れない瞳で笛木眺めていたが、やがてその姿を変え始めた。

「ハロー」

少女の姿と声が青年の其れに変わる。笛木を殺し、そして恐らくは暦も殺したであろうファントムの人間隊の姿に。
仮面の複眼が烈しく燦めく、思わず右手が腰のドライバーに伸びる。

エクスプロージョン、ナーウ。

右手を真っ直ぐ己がサーヴァントに伸ばすと、激しい爆発が連続して青年を包む─────筈が何も起こらず、逆に青年から放たれた四本の雷の矢が笛木の四肢を貫く。
短く呻いて、再度ドライバーに右手をかざし、今度は眩い稲妻を放った。
青年目掛けて迸る光が霧散したと同時、飛んできた火球を避け、一気に間合いを詰めて渾身の右拳を胸に打ち込む。鈍い音を立てて、青年の背中から拳が突き出た。

「此れが我の能力だ。主よ」

耳朶に響く女の声。妖艶と微笑むその顔は─────。


102 : 最後の希望 ◆v1W2ZBJUFE :2018/04/11(水) 22:26:45 kZstO2M20
「メデューサ………」

呆然と呟いた笛木は蹴り飛ばされた。無様に転がり、起き上がって、サーヴァントを睨む、その眼に映ったサーヴァントの姿に、真性の憎悪の叫びを上げる。

「貴様アアアアアッッ!!!」

猛然と地を蹴り顔を目掛けて渾身の拳を繰り出す。最愛の娘と同じ姿になった怪物(サーヴァント)に。

「そうよ、お父さん」

微笑んで語るその口調、その仕草、正しく笛木の記憶に有る暦のそれと変わらない。

最早絶叫としか形容出来無い叫び声と共に、怪物(サーヴァント)の─────己が最愛の娘の─────顔面を撃ち砕く。
繰り出した右手が掴まれ圧搾される。苦痛に呻く笛木の身体が振り回され、壁に投げつけられる。
凄まじい轟音と共に石の壁が砕け、床に伏した笛木を瓦礫が埋めた。

「何をするのお父さん。これから二人で聖杯を獲るんでしょう」

確かに暦の声で、しかし悪意を顕にした嘲笑を浮かべて玩弄してくるサーヴァントに、笛木の理性が弾け飛んだ。

「令呪を以って命じるッッ!」

殺意そのものと言って良い声と共に放たれた言葉。三度だけの絶対命令権を、笛木は己がサーヴァントの抹殺に用いようとしているのだ。

「死ねええええ!!化け物がああああ!!!」

右手の三指に指輪の様に刻まれた令呪の内、人差し指の輪が眩い光という共に消滅する。
暦の姿をした怪物(サーヴァント)の体が震え、右手が左胸─────心臓にあてがわれた。

「死ねえええええええええええ!!!」

再度の絶叫。暦の右手が胸を抉り心臓を潰す。
膝から崩れ落ちた怪物(サーヴァント)を見届けると、笛木は背を向けて部屋を出ようと歩き出し─────。


103 : 最後の希望 ◆v1W2ZBJUFE :2018/04/11(水) 22:27:17 kZstO2M20
明らかに怪物(サーヴァント)に関わるであろう部屋が、怪物(サーヴァント)が死んだにも関わらず、安定したまま存在している事に気付いた。

「な─────」

愕然と振り向いた笛木の眼に、平然と立つ暦の姿が映ると同時、強い衝撃を受けて笛木の身体は再度飛翔し、壁に叩きつけられた。


「指輪を用いる、仮面の魔法戦士か」

暦の姿をしたサーヴァントは、生前に戦った者達を思い出して呟きながら、瓦礫に歩み寄ると、笛木を引き摺り出した。その胸に空いた穴は当に塞がって痕跡も無い。
憎悪そのものと言って良い視線を向けて来る笛木に、暦の声と口調で教えてやることにする。

「今の我はクラス制限により魂砕き(ソウルクラッシュ)を持たぬ。喜んでお父さん、私は最早何者にも斃されない」

獣じみた唸り声。此処まで娘の存在を穢されても、何も出来無い己の無力さ。笛木には単独で聖杯を取れず、サーヴァントに制裁を加えることも出来無い。
それを理解しているからこその怒りだった。

「私を滅ぼした英雄達は七人居たの。判る?破格の英雄が七人居無いと私は滅せなかった。私に一対一で勝てる英雄は居ないのよ。お父さん」

笛木は叫喚して床に拳を振り下ろす。石の床が砕け、10mに渡って床が陥没した。
己の引き当てたサーヴァントは聖杯を取れる強さ、しかしこのサーヴァントは暦を穢す、己の中に在る暦の姿を血と臓物で穢し尽くすまで。
其れを理解しても、笛木奏には何も出来無い。聖杯を取るまでは。


104 : 最後の希望 ◆v1W2ZBJUFE :2018/04/11(水) 22:28:07 kZstO2M20
─────人の想いか。

己の無力さを噛みしめる笛木を見下ろし、怪物(サーヴァント)は、胸中に呟く。
怪物(サーヴァント)は人の想いの強さを知っている。その強さが齎す結果もまた。
嘗て、疑わしき者を殺す以外の方法では決して見破れぬ鏡像魔神(ドッペルゲンガー)の入れ替わりを次々と見破った’聖者",
その正体は狂気にも似た思い込みにより、怪物(サーヴァント)の眷属たる鏡像魔神(ドッペルゲンガー)の意識を奪った男だった。
兄に対する道ならぬ想いに胸を焦がし、怪物(サーヴァント)の器となった少女の想いは、生前の怪物(サーヴァント)を縛り、死した後も未だに執着として残っている。
もしも怪物(サーヴァントが聖杯に願う事が有るとすれば─────。
そんな事を考えていると、ふと、生前の事を思い出した。

─────子の未来の為か。

未知の言葉で詠唱しながら、悔しさと怒りに震える己がマスター見下ろし、怪物(サーヴァント)は生前に思いを馳せる。
“呪われた島”ロードスの歴史に名高い伝説、“魔神戦争”。
その始まりは、己が息子に輝かしい未来を与えようとした小国スカードの王ブルークが、魔神王を解放したのが始まりだった。
魔神の軍勢を解放。その力を以ってロードスを征服し、魔王として子に討たれる事で、才能溢れる王子、ナシェルをロードス初の統一王とする、その為に魔神の軍勢を率いようとしたのだった。
魔神の軍勢を率いる魔神王は“器”となる生贄と召喚者との間にある血の繋がりを以って制御される。
その為に娘であるリィーナを生贄として魔神王を召喚し、支配下におこうとしたのだが、母親が密通した結果産まれた不義の子であるリィーナに血の繋がりが無かった為に結局その目論見は失敗。
結局ブルークは全てに絶望して、解放した魔神王に殺され、ロードスに巨大な災禍を齎すだけに終わったのだ。


子に未来を齎す為に、過ぎた力を求め、世に災厄を齎す。嗚呼、人の親とは─────。

奥の扉が開くのを見ながら少女は嗤う。己がマスターを、己を生前に解放した愚かな王を。

─────なんと愚劣か!!

開いた扉から溢れ出た無数の異形に囲まれ、笛木暦の姿をした魔神達の王は艶然と微笑んだ。

「ああ、主よ。こういう時はこう言うのだな」

笛木の襟首を掴んで持ち上げ、思い出した様に呟く。
呻きながら憎悪に満ちた眼差しを向けて来る笛木に怪物(サーヴァント)は告げる。

「我がお前の最後の希望だ」


105 : 最後の希望 ◆v1W2ZBJUFE :2018/04/11(水) 22:30:05 kZstO2M20
【クラス】
キャスター

【真名】
魔神王@ロードス島伝説

【ステータス】
筋力:C + 耐久:EX 敏捷:D 幸運:D 魔力:A+ 宝具:A++

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】

道具作成:B
魔力を帯びた器具を作成する代わりに、死体からアンデットを作成する事や、魔物の類を作り出せる。

陣地作成:ー
宝具がこのスキルを兼ねている為機能していない。


【保有スキル】

魔神:A++
異界の住人である魔神としての格を示すスキル。
ランク相応の精神異常、精神耐性、怪力、天性の魔の効果を発揮する複合スキル。
魔神達の王であるキャスターのランクは最高峰であり、魔神達に対しAランクのカリスマを発揮する。


不死身:A+++
通常の武具では斬るとほぼ同時に傷が塞がり傷つける事が出来ず、高い聖性や神性を帯びた武具で漸く傷つけられる。
それでも傷付いた部位は極短期間で再生する為に、ダメージを与えることが極めて困難。
四肢を切り離しても短期間で生えてくる。
少女の身体は仮初めのものでしか無い為、肉体を消し去っても斃す事は出来ない。


変化:A
姿を変え別人の姿になることが可能。
自身の肉体を変化させる事で、ステータスを変化させることも可能。
記憶解析スキルと併せる事で、完全に別人に成りすます事が可能となる。
NPCとなった状態では、Bランク相当の気配遮断スキルを発揮する。
別人になった際は、ランク以上の真名看破スキルが無いと正体を見破れない。


記憶解析:A
対象の脳を食べる。若しくはある程度の時間観察することで記憶を読み取ることが可能。
真名看破と同じ効能を持つが、サーヴァントと他マスターに関しては機能しない。例外としてパスの繋がった己がマスターには有効。
脳を食べることにより、対象の技能や知識や記憶を獲得できる。此れはサーヴァントや他マスターにも有効。
デメリットとして捕食した対象の精神の影響を受ける。高ランクの精神異常や精神汚染持ちが相手の場合、逆に意識を乗っ取られることもある。
解析した記憶に有る人物へ変化する事も可能。


対魔力:A++
A+以下の魔術は全てキャンセル。魔術ではデーモンに傷を与えられない。
生前にいかなる魔術師も魔術を以って傷つけることが出来なかった。
魔神達の王であり、長い歳月を生きた魔神王の神秘は破格である。
神の権能に対しても精神力を奮い起こすことで対抗可能。


106 : 最後の希望 ◆v1W2ZBJUFE :2018/04/11(水) 22:30:55 kZstO2M20
【宝具】

魔神戦争(デモンズ・ウォー)
ランク:B+++ 種別:対人宝具 レンジ:冬木市全域 最大補足:冬木市全域

生前にキャスターが率いたロードスに恐怖と戦乱を撒き散らした魔神の軍勢を召喚する。
魔神の軍勢を使役する為には魔神王を召喚し、契約しなければならない為宝具として扱われることとなった。
魔神将、上級魔神、下級魔神という階級があり、下位のもの程召喚に魔力を必要としない。
魔神将ともなれば、本来ならサーヴァントにも引けを取らないが、聖杯戦争の枠組み上、召喚される際には使い魔と堕しており、大幅に劣化する。



最も深き迷宮(ディープ・ラビリントス)
ランク:A++ 種別:迷宮宝具 レンジ:0 最大補足:500人

魔神王が封じられていた場所。最も深き迷宮を再現する。
固有結界に近い大魔術であり、地下に構築される。
全十層からなる迷宮は致死性のトラップと凶悪な魔物や魔神がひしめいている。
死後に英霊として座に登録される英雄を多数含む500人の精鋭を投入しても、そのほぼ全てが死に絶えた程の堅牢強固な守りを突破することは困難を極める。
キャスターが解除するか、キャスターを斃すかしない限りこの迷宮は消滅しない。
地脈を汲み上げられる位置に設置すれば維持に必要な魔力を減らすことが出来る。


始まりと終焉の場所(魔神王の間)
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:0 最大補足:1人

キャスター召喚の際に自動的に展開され、キャスターが消滅しない限り残り続ける宝具。
嘗て魔神王が召喚された場所であり、六英雄に滅ぼされた場所である広大な石造りの広間で、床には魔法陣が、奥には両開きの巨大な扉が有る。
この宝具の使い途は、キャスターが斃された時、十分以内にこの広間の魔法陣に“器”となる者を横たえ、魔神王を召喚する呪文を唱えて“器”を殺害する事でキャスターを復活させることが可能となる。
“器”はNPCであろうがマスターであろうが“人間”であれば問題無い。
この宝具有る限り、キャスターは不滅の様に思えるが、キャスターが滅ぼされた場所でもある為、この場でキャスターが斃された場合、そのままキャスターは消滅する。
また、場所を問わず、魂を打ち砕く様な攻撃で斃された場合も復活は不可能。
ロードスの歴史に名高い“魔神戦争”の始まりと終焉の場所。
最も深き迷宮(ディープ・ラビリントス)を展開した時には最下層にこの広間が配置される。
蹂躙殺戮す魔神の軍勢(デモンズ・ウォー)で召喚される魔神達はこの広間の奥の扉から出現する。






【weapon】
自身の肉体。口から吐き出す瘴気。毒を帯び、瘴気に変わる血液。無尽蔵の再生能力。
キャスタークラスの為魂砕き(ソウルクラッシュ)は持ち込めなかった。

【人物背景】
古代魔法王国の時代に、ロードスの地に召喚され、古の魔術師達に従僕として扱き使われた者達の王。
元居た魔界と、召喚された先の物質界の狭間に長い期間幽閉されるが、スカード王ブルークの手により復活。ブルークの血の繋がらぬ娘リィーナの身体を器として復活。
ドワーフの“石の王国”を攻め滅ぼし、スカードの全住民をゾンビに変える。
その後もロードス各地に手を伸ばし、 後に“魔神戦争”と呼ばれる戦いを起こす。
人間達を分断し団結させない奸策と魔神達の戦力とで、ロードスを席巻するかに見えたが、スカードの王子ナシェルを中心とする、ロードス中から集った勇者達や、各国に連合軍に敗れ、封じられていた“最も深き迷宮”に押し込まれる。
そして勇者達が身を呈して道を開き、魔神王の元へと送り届けた七人の英雄達との戦闘となる。
そして七人のうちの一人に己の剣を奪われ、その剣に依り滅ぼされた。
魔神王と戦い、勝った者達は“六英雄”と讃えられた。


【方針】
皆殺しにして聖杯を手に入れる。

【聖杯にかける願い】
復活。ナシェルと一つになる。


107 : 最後の希望 ◆v1W2ZBJUFE :2018/04/11(水) 22:31:58 kZstO2M20
【マスター】
笛木奏@仮面ライダーウィザード

【能力・技能】
魔法:複数の強力な魔法を使いこなす。
ワイズドライバーや、科学と魔法の混合物である人造ファントム“カーバンクル”を作り出すなど、高い技術力を持つ。
格闘戦でも非常に高い戦闘能力を発揮する
体内に埋め込んだ人造ファントムのおかげで膨大な魔力を持つ。

【weapon】
ワイズドライバー:
白い魔法使いの姿に変わる為の変身ベルト。変身した姿は仮面ライダーウィザードインフィニティースタイルと互角に戦うことができる能力を有する

カーバンクル:
笛木が魔力を得る為に精製した人造ファントム。体内に埋め込むことで笛木に魔力を齎している。期間は分から無いが量産することも可能。
体内で魔宝石を精製し、胸から排出する。
魔力を吸収する能力を持つ。

【ロール】
新都に自宅兼店舗を持つ宝石商

【人物背景】
娘を失い、再度の生を娘に与える為に魔法を求めた父親。
その為に多くの人を絶望させ、更に多くの人を犠牲にした。
あと一歩というところまで届くも、結局彼はアーキタイプと見下して居た男により計画を潰され、己が創り出した絶望の産物に娘共々殺されて終わった。


【令呪の形・位置】
右手の人差し指、中指、薬指に指輪状の形

【聖杯にかける願い】
暦に幸せな生を

【方針】
皆殺しにして聖杯を手に入れる。デーモンは必ず殺す

【参戦時期】
グレムリンに殺された後

【運用】
直接戦闘に強く、召喚系宝具持ちの為に数押しも可能。
最大の特徴はスキルの都合上異常に死ににくい上に、始まりと終焉の場所(魔神王の間)とテレポートリングを併用することで、最悪何度倒しても死なない処。

【備考】
令呪を二角使用済み


108 : 名無しさん :2018/04/11(水) 22:33:35 kZstO2M20
投下を終了します
これは以前混沌聖杯に投下したのをサーヴァントのクラスを変えたものです


109 : ◆GO82qGZUNE :2018/04/12(木) 20:38:58 T9aJeM2M0
投下します


110 : 胡蝶の夢 ◆GO82qGZUNE :2018/04/12(木) 20:39:53 T9aJeM2M0


 アラもう聞いた? 誰から聞いた?
 葬列のそのウワサ

 知らないと後悔するよ?
 知らないと怖いんだよ?

 どこまでも長く続く一本道の向こう側
 気付けば夕闇の山奥にゴショウタイ!

 ちょっと裏道入ってみれば
 そこは誰かの死を悼むソウレツの国!

 火葬炉の扉を開けてごらん?
 納骨堂の扉を開けてごらん?

 目と目が合ったらコンバンハ!
 そしてそのままサヨウナラ!

 無垢な問いかけに騙されちゃって
 ハイと答えたらもうお終い
 見滝原の人の間ではもっぱらのウワサ

 それだけじゃないよ? まだまだあるよ?
 お菓子の家のそのウワサ

 昔なつかし絵本に載った、魔女が住んでるお菓子の家
 でも魔女じゃないよ? おじちゃんだよ?

 おじちゃんお菓子をくださいなって
 貰ったお菓子を食べたなら
 甘いお味は全部まやかし、食べたお菓子はヤバイもの!

 水族館のそのウワサ
 真っ暗闇の水族館
 誰もいない水族館
 お客サンが帰ったあとで、秘密の楽園が始まるの

 水たまりアパートのそのウワサ
 暗い梯子を下りてみたら
 そこにあるのはオッキな水たまり!
 住んでる人はみんな■■■■
 ■■■■■■■■あがっ■■■■■■クリス■■■■たすけ■■■■■■■■■
 ■■■微睡■■森■■■ウワサ■■■■おっきな猿が■■■■■うるさ■■■■
 もう誰もいな■■■■病院■■■■■嫉妬の■■■■■■■■飛び降りないで■
 ■■■■トコヤミタウン■■■■埋葬者■■■■■■燃える■■■■熱い■■■
 ■■■■■■■■■ッピーバースデ■■■■飛べ■い天使■■■■潰れろ■■■
 ■■■誰か■■■助けて■■■■忘れないで■■■■■■許して■■■■■■■
 ご■ん■さいごめん■■いごめんな■■ごめんなさ■■■■なさ■■めんなさ■
 ■め■な■■■■■なさ■■■■■さい■■■■■いごめん■■いご■■■■い
 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
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 ────────────────────────────────────。


111 : 胡蝶の夢 ◆GO82qGZUNE :2018/04/12(木) 20:40:54 T9aJeM2M0



「…………」

 放課後の学校の薄暗い廊下を、一人の少女が歩いていた。
 夕方というには遅く、夜というには早い、そんな半端な時間。少女は学校指定のバックを小脇に下げて、静まり返った廊下を一人歩いていた。
 伸ばし気味の髪が、背中で揺れている。
 誰もいない廊下の、くすんだ白いウレタンを少女の靴が踏む。
 そうやって廊下を進む少女の表情は、何故だか妙に硬かった。少女の向かう先には彼女の所属する教室があり、そこへ向かいながら、少女はバックの端を握りしめながら、不安な表情でぽつりと呟いた。

「うぅ……嫌な話聞いちゃったなぁ……」

 それは廊下に広がる沈黙を紛らわそうとするような、少女の独り言だった。
 少女はただ忘れ物を取りに行こうとしているだけだったが、いつも自分の通う見慣れた学校の中で、何故だか怯えていた。
 放課後の学校に来るのは初めてではなかったが、今日に鍵っては事情が違った。それは今日、友達の一人から、ある"噂話"を聞いたことが原因だった。
 それは、この学校にまつわる一つの怪談だった。
 それは昔、教師と肉体関係にあった女子学生が殺され、その死体がこの学校の建設工事の際に埋められて今も掘り出されていないという話だった。
 ゴシップじみた都市伝説としてはよくあるタイプの話だったが、少女はどちらかというと怖がりな子供だった。だから話を聞いてからというもの、少女はこの学校の床や物陰が、この上もなく気になって仕方ないのだ。


 ───自分の教室の下に、死体が埋まってるかもしれない。


 一度そうイメージしてしまうと、もう不気味な想像が止まらなかった。
 しかも間の悪いことにこの忘れ物だ。教科書や筆箱程度なら放っておいても良かったのだけど、明日提出の宿題となれば無視もできない。よりにもよってそんなものを忘れてしまった数時間前の自分が、恨めしくてしょうがない。
 放課後の学校は、いつも見ている光景とはまた違った装いを見せる。
 空虚な空気。いつも人の気配で満ちている校舎が、今に限っては死んでいるかのようだ。
 こうして歩いている廊下にも、不気味な静けさが広がっている。それを紛らわせるための呟きも自分の靴音に吸われて消え、落ち着いたモダンな内装さえも、ただ不気味に少女の不安をひしひしと煽っているのだった。

「……やだなぁ」

 少女は再び、独りごとを言った。
 少女は耳に聞こえる静寂と無機質な靴音を、そうやって自分の声で消し去ろうとしていた。
 そして無用に周りが目に入らないように、努めて意識的に前だけを向いた。今物陰などに目を向ければ怖いものが見えそうで、また静寂に耳を傾ければ嫌なものが聞こえそうで、それを少女は酷く恐れて、怯えていたのだ。
 学校が、怖い。
 暗闇から何かが出てきそうで、臆病な少女はどこからか視線すら感じるほどだ。
 それでも少女は、今すぐ踵を返して帰る気にはなれない。宿題もあるが、今も校門近くで待ってくれている友達に、ますます笑われてしまうからだ。
 あの話を聞かせてくれた友達に。
 彼女との仲は良いものだと思っている。他にも友達はいるが、この学校に入学して以来一番の親友は彼女だ。それは断言していい。

「でもなぁ……」

 仲の良い彼女ではあったが、あの趣味だけはやめてほしいと思う。
 彼女は少女が怖がるのを面白がって、色々怖い話をして喜ぶ趣味があった。先輩から聞いたというその怪談を話す彼女は、満面に悪戯者の笑みを浮かべて心底楽しそうだった。
 少々悪ふざけが過ぎるが、無邪気なところもある良い子だ。
 別に少女も、彼女に対して怒ってはいない。


112 : 胡蝶の夢 ◆GO82qGZUNE :2018/04/12(木) 20:41:14 T9aJeM2M0

「それでも、なぁ……」

 それでも少女は、ぼやかずにはいられない。
 別に怒ってないからと言って、今感じている不気味さが、少しでも無くなるわけではないからだ。
 この床に、窓に、暗がりに、感じる不気味さが無くなるわけではない。
 この夕闇の不気味さが無くなるわけではない。

 少女は教室のある二階に続く階段を登った。こつり、こつりという靴音が反響し、夕闇に吸い込まれて消えていく。そして踊り場の高窓から差し込む夕日と、その脇で切り取られたかのような暗闇に、一瞬だけ躊躇する。

「…………」

 ぼんやりとシルエットを見せる、踊り場の光景。
 そこには少女の身長よりも大きな姿見が、静かに立てかけられていた。

 姿見。大きな鏡。
 近代化や開発がどうこうとうるさい見滝原にそぐわない、時代遅れの鏡。
 いつもなら気にしない。でも今は、なんでこんなものがという気持ちが沸き上がってくるのを抑えられなかった。

 知らず、視線を足下に向ける。
 赤く染まるウレタン樹脂の床、ちょっと汚れた校靴、滑り止めの安っぽいテープ。
 思わず足を止めたせいで、しん、と静まり返る踊り場。
 姿見と、その前で俯く少女。

「…………」

 少女は意を決して一歩踏み出した。こつり、という靴音が再び反響する。
 足元だけを見て、前も左右も、上も見ることがない。
 こうした、一人で無人の校舎を歩く時間が、少女は嫌いだった。
 僅かな怯えはあれど、かと言って全力で駆けだすには気恥ずかしく、大した時間ではないのにずっと長く感じてしまう。
 歩く以外やることがないから手持無沙汰になって、俯いた視線を周囲にやることも何だか怖くて、自然と何かを思い浮かべてしまう。
 窓がそっと開いて、何かが覗いているかもしれない。
 後ろの壁から手が伸び、自分を掴もうとしているかもしれない。
 俯いた自分の頭上の天井から何かが釣り下がって、ゆっくり降りてきているかもしれない。
 背後に誰かが立って、じっ、とこちらを見下ろしているかもしれない。

「…………」

 加速する、嫌な想像。
 そしてそのうちに、少女は嫌なことを思い出して、足の進みを鈍らせた。
 途端に少女の背筋に、ざわ、と嫌な悪寒が走った。それは、少女が今まで必死に忘れようとしていた、この状況では決して思い出したくなかった怪談だ。


113 : 胡蝶の夢 ◆GO82qGZUNE :2018/04/12(木) 20:41:29 T9aJeM2M0


 ───女の子の死体が、校舎に埋められている。


 それだけでも少女には十分怖かったが、その話には続きがあった。
 そしてその続きこそ、少女にとって一番思い出したくないことだった。思い出さないように気を逸らし、ずっと考えないようにしていた、何より嫌な話だった。
 少女は思い出した。その怪談の続きを。


 放課後に呼び出された女の子は、教師の手によって殴り殺され、そのまま建設中の校舎に埋められた。
 しかし、実はその時女の子はまだ生きていて、殴られた怪我で体が動かせないまま、生きながらにして埋められたというのだ。
 女の子は、生きたまま自分の体が埋められていくのを見ていた。
 声も出せず、ただ心の中で教師に助けを求めながら、必死の形相で自分を埋める教師の目を見つめながら。
 やがて顔も土で埋もれて、目も見えず、息もできなくなった。
 そして女の子は、心の中で助けを求めながら、苦しみ抜いて死んだ。
 女の子の死体は、今も校舎のどこかに埋まっている。
 その後、女の子の呪いが校舎に残って、女の子が殺された時に似た状況を作ると、そこに女の子の亡霊が現れるという。
 あの時と同じ、夕闇が包む放課後に。
 姿見で、自分と目を合わせると───


「……!」

 慌てて、少女は思考を振り払った。
 しかし時既に遅く、少女は話の全てを思い出し、また思い浮かべてしまった。階段を昇る足は、いつの間にか止まっていた。気のせいか、どこからか冷たい風が入ってくる、そんな気がしてくる。

「……」

 思い出してしまった。
 徐々に自分の中に恐怖が湧きだし、五感が過敏に周囲を気にし始めた。
 足元の先の闇が急速に広がっていく錯覚を覚え、聴覚が踊り場全体を捉えはじめる。埃の匂いが鼻孔を満たし、静寂の空気を肌が敏感に拾い始める。
 周囲が、背後が、酷く気になる。
 しかし、ここで後ろを振り返るわけにはいかなかった。
 せめて早く昇ってしまおう。少女はそう思って棒のようになった足を無理やりに動かそうとするが、今度は階段の上が気になりはじめる。
 ここで、誰かがいたらどうしよう。
 勢いよく駆け上がって、そこに人の体があったらどうしよう。
 怖い想像は加速し、追い払おうとするほど纏わりつく。既に少女の腕には鳥肌が立ち、俯いた先の階段上にありもしない気配を感じている。
 少女の手が、ぎゅっとバックの端を握る。
 コンクリの手すりに預けた手のひらが、無機質な冷たさを芯に運んでくる。
 動け、動けと思いながらも足は動かず。
 そして背中に冷たい風を感じて───


 かたん、と背後で、小さな音が聞こえた。


114 : 胡蝶の夢 ◆GO82qGZUNE :2018/04/12(木) 20:41:47 T9aJeM2M0


「……!」

 勢いよく振り向いた先には、何もなかった。
 自分以外誰もいない踊り場と、相変わらずそこに立っている姿見。角度が斜めにズレた立ち位置のため、自分の姿は鏡に映っていない。

 ほっ、と一息。胸をなで下ろす。次いで湧き上がる、何を下らないことをしているんだろうという気恥ずかしさ。
 普通に考えて、"そんなこと"はあり得ないだろう。けれど一人っきりだと怖い想像も出てくるのだと、そう考えても自然と頬が赤くなるのを止められない。

 何やってんだか、と無理やり気持ちを切り替えて、改めて教室に向かおうと振り返り。


「こんにちは」


 かけられたその声に、ひっ、という声にならない悲鳴を少女は上げた。
 階段の上に、いつの間にか人影が現れていた。逆光で黒く染まって誰だか分からない。
 何? 誰? 混乱する頭がぐるぐる回って、けれど数瞬して落ち着きを取り戻す。

「ら……ラッセルくん?」

 恐る恐る、問いかける。
 その人影は、男の子は、肯定するように笑いかけた。

「なんだぁ……ビックリさせないでよ……」

 気の抜けた声で胸をなで下ろす、本当に心臓に悪いったらない。

 ラッセル・シーガ―。それは少女のクラスメイトの男子の名前だった。
 開発が進む見滝原では、必然海外からの移住者も多い。彼もそうした家庭の子らしく、少女と同じクラスに在籍していた。
 大人しい子だと思う。そんなに目立たないけど、決して悪い子じゃない。別に親しいわけじゃないけど、時たまいる粗暴な男子よりはずっと好印象だ。少なくとも少女はそう思っていた。

「……あれ? でもラッセルくん、どうしたの? 私は忘れ物しちゃったんだけど、っていうか珍しいね、ラッセルくんが学校来るなんて」

 安堵した反動か、内気な少女にしては珍しく口数が多くなる。ラッセルと呼ばれた少年は、ただ黙ってそれを聞いていた。
 珍しい、というのは彼が若干不登校気味の子だったからだ。全く来ないというわけじゃないが、よく休んでいるのを目にする。そのせいで友達少ないんじゃないの、なんて陰口を叩いてる人もいるけど、少女は別に気にしてはいなかった。
 とはいえ珍しいというのも事実だ。それもこんな時間にたった一人で。いや、今は自分がいるんだけど、と。
 そこまで考えて。

(あれ?)

 ふと気づく。
 言い知れない違和感が、そこにはあった。

 なんで彼は、こんな時間に一人でここにいる?
 なんで彼は、自分の言葉に何も返さない?
 彼は、こんなにニヤニヤと笑う子だったろうか。
 彼は、そもそもなんで制服じゃない黒い服を着ているのだろうか。
 そして、そもそも───


115 : 胡蝶の夢 ◆GO82qGZUNE :2018/04/12(木) 20:42:04 T9aJeM2M0

「ら、ラッセル、くん……?」

 彼は───

「何か……言って、よ……」

 最初に「こんにちは」と口にした時、その唇が動いていなかったように見えたのは、気のせいなのか?

「っ、ひ……!」

 瞬間、無機質な笑みはそのままに、何の予兆もなく"機械的な、およそ非人間的な動きで急激に近づいてきた"彼に気圧される形で、少女は思わず後ずさる。
 人間のしていい動きではない。それはまるで、昆虫か何かのようで。
 再び鎌首をもたげた恐怖が、その一瞬で一気に高まる。少女は悲鳴を上げようとして、けれど緊張に張り付いた喉が音を出してくれない。

「……っ!」

 必死に手足を動かし、何とか逃げようと足掻く。そして少女は何とか立ち上がり、駆けだそうとした瞬間、自分がいるのが"あの姿見の前"であることに気付いた。
 鏡の向こうの自分と、目と目が合う。
 恐怖に歪んだ、自分の目。
 そして、ああそして。今まさに自分の背後から迫ってきているはずなのに、鏡には自分一人の姿しか映ってなくて。
 彼の姿は、鏡のどこにもなくて。

「──────あ」

 とん、
 と、背中を押された感触があった。

 ………。

 ……。

 …。

 ────────────────────────。



 踊り場には、持ち主のいない打ち捨てられたバックだけが転がっていた。
 中の携帯端末から、連絡を知らせる機械音が、夕暮れの階段に響いていた。





   ▼  ▼  ▼


116 : 胡蝶の夢 ◆GO82qGZUNE :2018/04/12(木) 20:42:23 T9aJeM2M0





 誰かの声が聞こえた。
 少年はそれで目を覚ます。

「……」

 まず感じたのはシーツの柔らかな手触り。窓から差し込むのは、明るい朝の陽射し。
 傍らの机に目を向ければ、そこには誰かが置いていったであろうバスケット。中には焼き立てのアップルパイが三つ入っている。
 ガーデニアかな、それともコーディ? どちらにしろ嬉しかった。後でお礼を言いに行かなければ。

 玄関の扉を開ければ、薫る草花の匂いに出迎えられた。
 右を向けばタバサが放牧している動物たちの芝生が見える。馬や牛、他にもたくさんの動物たちが仲良く生活している場所だ。羊は見たことがなかったから上手くイメージできなかったけど、他の動物なら大抵大丈夫。大体同じ姿のはずだ。猿だけは嫌いだから絶対入れてやらないけど。
 左の路地を少し進むと、コーディや閑照の営む店が見えてくる。ショートケーキ型のお洒落な店はコーディの雑貨屋だ。近くの森から獲れるものを加工して便利な道具にしてくれる。使い方が分からないよ、と言ったら「実際使ってみればすぐ分かるわよ」と背中を叩かれた。
 閑照の薬局は風情ある佇まいで、何でも極東の古い店を再現したんだとか。出される薬も苦いけど効き目はばっちりで、よく使わせてもらってる。とうの閑照は……今日ものんびり散歩だろうか。街を歩いていればそのうち会えるだろう。
 少し歩くと目に入るのは共同の畑。子鬼カブが目をパチクリさせ、元気ニンジンが元気に動いている。この分だと今夜にもガーデニアに収穫され、美味しい料理に姿を変えることだろう。

 暖かな日差しが、歩くラッセルの全身を包む。
 心地よい風に抱かれて、澄んだ空が頭上いっぱいに広がる。
 今日もまた、明るく楽しい一日が始まる予感があった。

 ラッセルはこの街が好きだ。この街も、この街に住んでいるみんなも大好きだ。
 優しくて楽しくて、嫌なことを全部忘れられるこの世界が大好きだ。
 誰憚らず外を歩けて、誰かと手を握ることができて、悪口も暴力も振るわれない。要らないものと無視されることもない。それがどうしようもなく嬉しくて仕方ない。
 街の人はみんな優しいし、街の外だってどこも楽しくて飽きさせない。毎日がドキドキとワクワクの連続だ。
 だから今日も、ラッセルは歩く。かけがえのない日々を謳歌するように、この世界を心から愛するように。

 街の中で、ラッセルは祈る。
 夢の中で、ラッセルは願う。

「どうか、この毎日が終わりませんように」

 けれど、同時にラッセルは知っている。
 この毎日は終わる終わらない以前に、そもそも始まってすらいないのだということを。
 自分がどうしようもなく弱虫で、ありもしない楽園から立ち上がることもできないのだと。
 ラッセルは知っていた。

 ……路地裏の隅の一角には、魂を食われた少女が一人、死体となって転がっている。





   ▼  ▼  ▼


117 : 胡蝶の夢 ◆GO82qGZUNE :2018/04/12(木) 20:42:52 T9aJeM2M0





「僕が思うに、ラッセル。キミは十分に"現状"を理解しているみたいだね」

「ああその通り。ここはキミのいた留置所じゃないし、ハッピードリームの作る夢の世界でもない」

「現実? まあそう考えてもらってもいいだろう。ともあれキミは、見事聖杯戦争のマスターに選ばれた。良かったね、誰かを殺し続ければキミは願いを叶えることができる」

「拒否権はないよ。"これ"はそういうものだから、もう後戻りはできない。殺すか殺されるか、未来は二つに一つだ」

「殺されたくはないだろう? キミの心はこの世界に依存しきっている。今さらここを手放すなんてできはしない」

「そして殺したくもないだろう? キミの心はもう限界だ。自分のしてきたことを悔やんで、その罪悪感は極限まで膨れ上がっている」

「だから、後はもう僕に任せておやすみ。そしてまた明日、この街で会おう。この世界で共に生きよう。
 歪みのないこの世界を謳歌しよう。ああ、たまにはあっちの学校に行ってみるのもいいかもね」

「うん、僕はキミのサーヴァントだからさ」

「キミにできないことは、全部僕がしてあげるよ」



 ────────────────────────。



 空は荒れ、木々は枯れて、花は崩れ朽ち果て。
 楽園のようだった夢の世界とは裏腹の腐敗した大地に、その少年は立っていた。

 彼は、ラッセルとうり二つの姿をしていた。
 それは、ただの少年であるかのように佇んで。
 気配も在り、息遣いも在るドッペルゲンガーが如き少年。
 見る者が見れば、容易に分かっただろう。
 少年は、およそ人の身ならざるものだ。
 肌の下には血潮を感じる。人だ。
 息遣いには肉体を感じる。人だ。
 よもや、夢幻や影の類ではないはずのもの。
 だが正しく人ではない。
 見た目通りのものでは。

「結局のところ、僕(ラッセル)はどうしようもなく弱かったんだ」

「哀れラッセル、喪われた楽園を終わらせたくないと願ってしまった。
 もう何もかもが手遅れだというのに、夢はなんて残酷なのだろう」

「居場所があった。幸せがあった。それだけで良かった、ずっとずっとこのままで。
 ずっとずっと、それだけで良かったのに」

「ラッセル。キミはどうしようもなく救われない、救われちゃいけない大罪人だけど。
 僕だけはキミを肯定しよう。大人にも子供にもなれず何をも知らなかったが故に罪を犯したキミを、子供となって自らの罪を自覚したキミを」

「キミの夢である僕だけは、絶対見捨てたりしないから」

 そうして"彼"は辺りを見回す。
 そこはラッセルの暮らす街。虚飾が剥がれた、楽園の本当の姿。
 故に、彼は願う。楽園の永遠を。
 故に、彼は祈る。少年の幸福を。
 それがどれだけあり得ず、許されないことであるかを知ってもなお。
 空想を現実とするために、彼は己が力を具現するのだ。
 世界の裏側で繰り広げられる、偽りの日常を。

 ───世界の果てでは、今も誰かが夢見ている。


118 : 胡蝶の夢 ◆GO82qGZUNE :2018/04/12(木) 20:43:08 T9aJeM2M0



【クラス】
アサシン

【真名】
ナーサリー・ライム@Fateシリーズ

【ステータス】
筋力D 耐久D 敏捷C 魔力A 幸運B 宝具EX

【属性】
中立・悪

【クラススキル】
気配遮断:A
『おまつりはおわったよ。あとかたもなく。
 おまつりはおわったよ。もういらないから。
 おまつりはおわったよ。みんなもきえていった。
 おまつりはおわったよ。ほんとははじまってもいなかったのさ』

【保有スキル】
変化:A+
『変化なんかいらない。変わるなんて必要ない。
 君は僕で、僕は君。
 夜は闇に等しく、闇は暗に等しく。
 暗で見る夢は、貴方に等しい』

自己改造:A
『自身の肉体にまったく別の肉体を付属・融合させる適性。
 このランクが上がれば上るほど正純の英雄から遠ざかっ
 カカ、かかか関係ない関係ないそんなのまったく関係ない!
 みんなが死んだのは誰のせいだ? みんなが不幸になったのは誰のせいだ?
 誰も彼も関係ない! 全部お前が悪いんだ!』

一方その頃:A
『楽しくみんなと笑い合い、細やかな願いを叶えて回り、また明日ねと手を振って。
 そんなものが罪滅ぼしのつもりか。
 懺悔ってのは免罪符じゃないんだよ。今更言っても遅いけどね』

【宝具】
『誰かの為の物語(ナーサリー・ライム)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1
『この物語はエンドロール。
 流れる文字の背後に映される、細切れになった過去の追憶。
 全てはもう終わってしまって、取り返しがつくことなど何もない』

固有結界。サーヴァントの持つ能力が固有結界なのではなく、固有結界そのものがサーヴァントと化したもの。マスターの心を鏡のように映して、マスターが夢見たカタチの疑似サーヴァントとなって顕現する。
ナーサリー・ライムというサーヴァントであると同時に字義通りの固有結界でもあり、この聖杯戦争の舞台である見滝原市と重なり合うようにして存在している。
鏡合わせとなった現実と固有結界は互いに干渉することがないが、出入りできる入口は複数存在し、またアサシンの意思次第で新たに作り出すことも消し去ることもできる。夕暮れの路地裏から迷い込むこともあるし、玄関の扉を開けばそこが固有結界に繋がっていることもあれば、学校の踊り場にある姿見に手が吸い込まれることもある。眠りに落ちた先の夢がこの世界ということもあるだろう。
裏世界たる固有結界の内側にあって、マスターの見る悪夢の具現たる怪物が湧き出ることもある。一体二体程度であることもあれば、無尽蔵に湧き出ることもある。


119 : 胡蝶の夢 ◆GO82qGZUNE :2018/04/12(木) 20:43:31 T9aJeM2M0

『永久楽土・空想世界(フールズ・グラスゲーム)』
ランク:C 種別:対己・対界宝具 レンジ:0 最大捕捉:1
『物語は永遠に続く。
 か細い指を一頁目に戻すように。
 あるいは二巻目を手に取るように。
 悲しい読み手が、現実を拒み続けるかぎり』

自身や創造物の時間を巻き戻す、「明日を拒絶し、同じ今日を永遠に繰り返す」力。
ラッセルとアサシンの場合、七日間の夢を繰り返し上映している。
ただし、絵本の内容が何度読んでも同じであるように、既に決定された結末を変えることができないように、彼らの行動もまた固定される。
詠唱による時間回帰だが、時間を操る第五魔法とは違い自身とその創造物にしか効果は適用されない。

【weapon】
・割れた酒瓶、血濡れたナイフ、歪んだバット
『これは貴方の攻撃性そのもの。
 どうか、お気をつけて』

マスターの強すぎる罪悪感が物質として現実に固定された器物。
物質でありながら想念であり、また罪悪感という強い指向性を持つため一種の概念武装にも近しい性質を有している。


・罪悪のコート
『これは貴方の防衛心そのもの。
 どうか、怖がらないで』

マスターの強すぎる罪悪感が物質として現実に固定された器物。
物質でありながら想念であり、また罪悪感という強い指向性を持つため一種の概念武装にも近しい性質を有している。

【人物背景】
特定個人ではなく絵本のジャンルであり、一種の概念。子供たちの英雄。決まった形を持たず自らを召喚したマスターの心を鏡写しにして現界する。
本来的にはキャスターで呼ばれるはずのサーヴァントだが、マスターであるラッセルの強烈すぎる罪悪感と自らを血濡れた殺人鬼と定義する心からアサシンのクラスとして固定された。
外見はラッセルとそっくりの少年であり、言動は彼の夢に登場した「情報屋」と酷似している。

【サーヴァントとしての願い】
???


【マスター】
ラッセル・シーガ―@END ROLL

【マスターとしての願い】
夢を見る。そして天国に行って皆に謝りたい。

【weapon】
分厚い日記帳:
自分の部屋すら与えられなかった彼の、唯一と言っていい「自分のもの」。持っていると安心する……らしい。
中には今まで犯してきた様々なことが書かれている。

【能力・技能】
身体的にも頭脳的にも年相応の少年。
元来、彼は何の異常性も特別性も持たないただの少年でしかないはずだった。

【人物背景】
「たくさん思い出をくれてありがとう。
 僕は……みんなに会えて良かった。
 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい───」

夢の世界を失うのが怖かった弱虫の罪人。
絶対的に救われない、救われてはいけない哀れな子供。

【方針】
この世界を絶対のものとする。


120 : 名無しさん :2018/04/12(木) 20:43:46 T9aJeM2M0
投下を終了します


121 : ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/13(金) 00:54:37 PQJnH1Qs0
投下します


122 : 夢の途中 ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/13(金) 00:55:07 PQJnH1Qs0


夢を見ていた。夢の中の『オレ』は、傷だらけの身体で、砂漠のど真ん中で独りポツンと椅子に座っていた。

『オレ』の後ろには沢山の墓標が突き立てられていた。

墓標に刻まれた名前は全部同じだった。その全てがエレナだった。胸が苦しくなった。

そのたくさんの『エレナ』の死には『オレ』が関わっているのは馬鹿な俺でも解る。けれど、そのどれもが丁寧に手入れされていて。

その墓の一つ一つに、たとえ一人でも絶対に忘れられないほどの後悔や悲しみが詰まっているのも解る。

誰も近づけず。誰にも近付かず。

『オレ』はその墓を背にただただ真っ直ぐに眺めていた。

その先にいたのはエレナだった。

エレナは笑っていた。ガドヴェドや今まで関わってきたやつらに囲まれて。楽しそうに、幸せそうに過ごしていた。

『オレ』は、その光景を愛おしそうにただただ見守っていた。エレナが気付く素振りすら見せなくても、雨の日も、風の日も、雪の日も。『オレ』はエレナが幸せそうに過ごしているだけでも満足しているようだった。

やがてエレナは、俺じゃない素敵な男と寄り添って、子供が生まれて、子育てを頑張りながら仕事で疲れた旦那の帰りを待って。

いつかはその子供も大人になって、エレナたちにはだいぶ白髪と皺が出来ていて。旦那が逝くのを見届けたエレナが、しばらくしたら沢山の奴等に囲まれて。

そして最期はベッドの上で、大勢の奴等に悼まれながら、幸せそうに笑顔で瞼を閉じた。

その笑顔が、エレナをずっと見守っていた『オレ』に1度たりとも向けられることはなかったことに、少し胸がチクリと痛んだが、あいつが誰かに殺されるよりはだいぶマシだった。

『オレ』は小さく呟いた。「生きていてくれてよかった」と。それだけ口にすると、『オレ』は椅子から立ち上がり、後ろにあった墓たちに寄り添うように眠りについた。

『オレ』の姿を見て、俺は―――


123 : 夢の途中 ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/13(金) 00:55:28 PQJnH1Qs0


夢を見ていた。夢の中の『わたし』は、巨大な何かと対峙していた。

『わたし』は、その巨大ななにかの光り輝く手を差し伸べられていた。

巨大ななにかは語りかけてきた。これをとれば、『わたし』が憎む巨大ななにかは消えうせ、かつて失ったものを取り戻せると。

なんと甘美な響きだろう。

けれど、『わたし』は全力で振り払った。滾る憎悪を露にし、力強く言い放った。

まどかは死んだ。私からまどかの死を奪うな。死んだ者は絶対に戻らないと。

『わたし』は徹頭徹尾、まどかとの絆に殉じていたのだ。短くはあったが、彼女と共に笑顔を、幸せを分かち合ったあの日々を。

たとえどれだけ傷つこうとも、挫けようとも、折れかけようとも。『わたし』はまどかとの絆を確かに信じていた。

まどかを殺したなにかを倒した『わたし』は、その後は特に大きなことをするわけでもなく余生を過ごしていた。

ここまで付き合ってくれた人たちとそこそこに顔を合わせ、けれどそのだれもをまどかの代わりに置こうだなんて考えず。

ぽっかりと空いた空白を抱えながら、ぶらぶらと歩き渡り、やがてはまどかの墓の前に居座って瞼を閉じた。

死の際に、向こうで待ってるまどかに『お疲れ様』とでも声をかけられたかのように穏やかな顔だった。

幸せの絶頂はありえなかったにせよ、きっと『わたし』はそれなりに満足していることだろう。

『わたし』のその姿を見て、私は―――


124 : 夢の途中 ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/13(金) 00:55:49 PQJnH1Qs0






―――チリン


125 : 夢の途中 ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/13(金) 00:56:36 PQJnH1Qs0



「もう一度確認するわね」

とある民家に二人の男女が向き合い座っていた。
タキシードに身を包んだ男の方はヴァン。名字などない。ただのヴァンだ。
学生服に身を包んだ少女の方は暁美ほむら。一見ではただの少女だが、その実は魔法少女。奇跡のために戦いに身を捧げた存在である。
その年齢もそこそこに離れた二人は、見様によっては兄妹にでも見えるかもしれない。
無理はない。なんせ二人の目はソックリ。両者とも死んだ目をしており、更には無愛想。
しかし、彼らは兄妹などではないし、互いの名前も知ったばかり。家族とは程遠い間柄である。
では、赤の他人であるこの二人はなにをしているのだろう。
ナンパ。待ち合わせ。援助交際。どれも違う。


「私はサーヴァントで、あなたは私のマスター...ここまではいいわね」
「ああ」

ヴァンの前に並べられるのは出来合いのハンバーグ。その脇に並べられるのはマヨネーズ、ケチャップ、ソース、ワサビ、辛子、バニラエッセンス...とにかく大量の調味料だ。
どれをつけてもいいように手元においてあるのだろうか。

まず手を伸ばしたのはケチャップだ。焦げ目のついた肉が瞬く間に赤に染まっていく。

「私たちは、これから他のマスターやサーヴァントと戦い倒さなければならない。サーヴァントはおおまかにセイバー、ランサー、キャスター、アーチャー、ライダー、バーサーカー、アサシンなどの種類に分かれていて、そこからある程度の戦闘スタイルを予測することができる」
「そうか」

空になったケチャップの容器を脇に寄せ、次いでマヨネーズに手を伸ばす。
真赤だったハンバーグの色に黄が混じり次第に変色していく。
空になった容器をケチャップ同様脇に寄せ、今度はソースに手を伸ばす。

「その目的は、願いを叶える聖杯を手に入れること。これを手に入れれば、私たちは願いを叶えることが出来る」
「......」

ソースを出し終えた辺りで面倒になったのか、ヴァンは両の指に容器を挟み一気にハンバーグにぶちまける。
マスタード、辛子、タル○ルソース、和風ドレッシング、ごまドレッシング、エ○ラ焼き肉のタレ。
それらがぶちまけられたハンバーグは、そもそもハンバーグなのか怪しい様相を醸し出していく。
空になった容器を脇に寄せ、今度は醤油、ポッ○レモン、ワサビ、生しょうが、おろしにんにくを投下。
目の前で繰り広げられる悪魔の所業に思わずほむらは口元を押さえた。
いったいハンバーグになんの恨みがあるのか。そう問いただしたくなる衝動を抑え、ほむらは話を続ける。

「そのため、私たちは協力してこの戦いを勝ち残らなくてはならない...これでわかったかしら」
「まあ、半分くらいは」
「...とにかく、私たちは協力しなければならない。それだけは覚えておいて」

容器が空になったところで、トドメといわんばかりにバニラエッセンスと粉チーズをキリキリと振り掛ける。
それらもかけ終えたところでハンバーグだったものは改めてその異様さを醸し出した。
赤と黄と無色の油と緑と肌色と黒と...とにかくしっちゃかめっちゃかに混ぜられた調味料たちは見るも無残な毒沼に変貌していた。
もはや異臭を放っているレベルである。


126 : 夢の途中 ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/13(金) 00:56:59 PQJnH1Qs0

「...本当に食べるの?」
「やらねえぞ。これは俺のもんだ」
「いらないわよ」

ナイフで調味料の山をかき分け肉を切り分ける。
フォークで口に運ばれる変色しきったソレを見るだけでほむらは胸焼けしてしまう。
それを口に含んだヴァンは目を見開きひとこと。

「からあああああああああぁぁぁぁぁい!!!!」

当然の叫びである。

眼前の馬鹿を放っておきつつ、ほむらは自分の食事にとりかかる。
サーヴァントであるため、食事を取らなくても生きてはいけるが、少しでも魔力を温存するためだ。
彼女の食事はなんとも味気ないもので、スティック状の菓子が数本。つまりカロリーメイ○だけだ。

「そんだけでいいのか」
「食事なんてエネルギーが取れればそれでいいもの」
「そうか」

極限まで味を求める男は変色した肉を口に運び、味など求めない少女は簡素な食事を続ける。
食物を咀嚼する音のみが支配する食卓。ただ食事を堪能しているだけならいいのだが、何故か二人の間には第三者からみれば重苦しい沈黙すら漂っている。
だが、二人は空気を変えようだとか話題を探そうだとか、相手に気を遣う素振りなど一切見せない。
むしろ黙っている間は互いの声を聞く必要もないのでむしろマシだった。
ただ、最低限の意思疎通は必要だし、下手に離れる訳にもいかない。
そのため、否が応でも互いに目の届く範囲にいなければならないだけだ。


127 : 夢の途中 ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/13(金) 00:57:19 PQJnH1Qs0

「......」

食事を続けながらヴァンは思う。
気に入らない。現状も、ここに連れてこられたことも、いまの彼をとりまくなにもかもだ。
ここに連れてこられる前―――あのパリカールとかいうロバの背で眠っていたら、いつの間にかここへ飛ばされていた。
カギ爪の男への道を邪魔されたというのだからそれだけでも憤慨ものなのだが、それ以上に気に入らなかったのは、最愛の妻であるエレナの記憶を一時的に消されていたことだ。
この数週間、ヴァンは欲望のままに暮らしていた。
気に入らないことがあれば大抵は暴力に訴え、腹が減れば金を奪うことすらあった。
エレナやガドヴェドから教わったことを全て忘れて、だ。
もちろん故意に彼らの教えを頭の隅にやったわけではない。本当に、彼らが記憶から跡形も無く失せていたのだ。
お蔭で彼らと出会う前の金と暴力のままに生きたあの時を過ごすハメになった。
許せない。許せるはずもない。
セイハイだかなんだか知らないが、勝手に他人様の記憶を弄り、愛しのエレナを一時でも忘れ去らせるなどその時点で殺意が湧いてくる。
故に、ヴァンの方針はここから脱出しもとの場所へと帰ること、そして旅の邪魔をしたセイハイをぶった斬ることに自然と定まっていた。


「......」
食事を続けながら暁美ほむらは思う。
己の目的は円環の理からまどかの人間での部分を引き離すことである。
生前―――円環の理に導かれる寸前のこと。
暁美ほむらは、唯一彼女へと干渉できるそのチャンスを逃さなかった。
彼女に触れられる前に、逆に彼女を掴みまどかを引きはがす。本来の魔法少女ではできないことだ。
だが、暁美ほむらにはこれまで積み重ねてきた因果、なにより『救済を否定する意思』があった。
その僅かなアドバンテージに賭け、微かな可能性を掴み目的を達成した―――はずだった。
だが、彼女は失敗した。あと少しでまどかを裂けるといっったところで、まどかと円環の理は再び融合。
結局、円環の理と鹿目まどかを引きはがすことはできなかったのだ。
なにがいけなかったか―――いや、なにがいけなかった、というわけではない。
ネットに弾かれたテニスボールはどちらに落ちるかわからない―――つまり、単純に賭けに負けたのだ。
そして、神の救いを拒んだ代償がただの失敗で終わる筈も無し。
ソウルジェムが変質し、もはや魔法少女でなくなった彼女は円環の理の救済を受けることができない。
彼女がいきついた結果は、希望も絶望も無いただの虚無。つまり死だ。
最早誰からも救われず、救うこともできず。彼女はなにも掴めぬままに命を散らした。

だが、いまはこうして英霊として復活し、聖杯戦争にも参加することが出来ている。
しかも、見滝原にソウルジェムという慣れ親しんだ仕掛けを加えてだ。

またインキュベーターの小細工かとも思ったが、そこで考えるのをやめた。
再びチャンスが巡ってきたというのなら、それを存分に利用し願いを叶えるだけ。
例えその道が自らの救いにならずともだ。
彼女は、聖杯を手にするため如何なる手段をも行使することに決めた。


128 : 夢の途中 ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/13(金) 00:57:51 PQJnH1Qs0

食事に味のみを求める男、食事に最低限の栄養のみを求める女。
聖杯を殺す男、聖杯を狙う女。
刀を武器にする男、銃を武器にする女。
一見にして正反対の彼らだが、共有する思いはある。

―――この眼前の女【男】は気に入らない。

いまの二人はその理由を知る由がない。
当然だ。両者ともロクに互いの情報を交換していないのだから。
だが、もしも彼らがより多くの言葉を交わせばその嫌悪はより強固なものとなるだろう。



男は一人の女を愛した。ずっと独りぼっちだった男は、彼女の優しさに触れ、共に幸せになりたいと願った。

女は一人の少女を愛した。ずっと独りぼっちだった女は、彼女の優しさに触れ、共に幸せになりたいと願った。

原点は同じ。そして、その愛した者を理不尽に殺され奪われたのも同じ。

だが、彼らは決定的に道を違えた。

男は仇を討つために旅に出た。誰のためでもない。他ならぬ自分自身のために。

女は少女を救うための旅に出た。他でもない。ただただ少女を救うために。

男はただ一人しか愛せなかった。例え愛した女と寸分違わぬ者と出会える可能性があろうとも、彼はそれを断固として否定した。
彼と過ごした女は、二度と触れることのできないところへ行ってしまったのだから。

女はただ一人を愛する訳にはいかなかった。例え己を知らぬとしても、疎むとしても。
目の前にいるのが、愛した少女ではないただの偶像だとしても。愛した少女と同じ者であれば―――『鹿目まどか』であれば見捨てることなどできなかったから。

彼らにはそれが許せない。

どのツラさげてエレナとの愛を裏切るつもりだ/まどかとの約束を守ると息巻いてなにを自己満足しているの。

そうやってエレナの死を消して、あいつのためだとカッコつけてあの時の俺に目を背けるのか/そうやってまどかに許してもらってあの時の私に目を背けるのか。

―――それができれば、どれほど幸せだったことか。


129 : 夢の途中 ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/13(金) 00:58:27 PQJnH1Qs0

もしも彼が彼女のように愛した者の幸福に殉ずることができれば/もしも彼女が彼のように愛した者との絆に殉ずることができれば。
ヴァンはエレナの救世主になれただろう/暁美ほむらは鹿目まどかを裏切ることなく真の絆を結べただろう。

エレナを決して裏切らないヴァン。まどかを裏切ってでも彼女の幸福を願う暁美ほむら。

彼らはお互いの弱(つよ)さが疎ましい。

故に、互いの選べなかった道へ向かう彼らがひどく羨ましかった。

そんな互いに秘めた想いなど露知らず。

互いが見た夢の正体も知らず。

彼らは黙々と食事を続けるのだった。




これは、愛に生きた者たちの物語。

一人の少女は、愛する者のために地獄へと赴いた。

一人の男は、愛する者のために叩き落された地獄を耐え抜いてきた。

彼らの旅は多くの人々の未来を変え、時には奪い、奪われてきた。

どんな旅もいつかは終わる。

人は、その終わりにどこへ辿りつくのか

見捨てられた流刑地。

希望と絶望が渦巻く宇宙の再生地点。

惑星・エンドレスイリュージョンはそんな星。

所詮、宇宙の吹き溜まり。


130 : 夢の途中 ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/13(金) 00:59:28 PQJnH1Qs0

【クラス】アヴェンジャー

【真名】暁美ほむら

【出典作品】魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語

【ステータス】
筋力C 魔力B 耐久D 幸運E 敏捷C 宝具:B



【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】

復讐者:A
まどかを苦しめる運命への復讐心。彼女を脅かす運命や使命などこの手で壊してやる。


忘却補正:A
忘れない。決して彼女(まどか)を忘れたくない。


自己回復:C
魔法少女であるため、魔力がある限りは身体の修復は可能だが、回復速度はあまり速くない。



【保有スキル】

対英雄:EX
英雄を相手にした際、そのパラーメーターをダウンさせる。
反英雄や怪物など、一般的な“英雄崇拝”から外れた存在であるほど影響を受けない。

奇蹟:B
時に不可能を可能とする奇蹟。固有スキル。
星の開拓者スキルに似た部分があるものの、本質的に異なるものである。適用される物事についても異なっている。

精神異常:E
鹿目まどかに対する異常なまでの執着。他の精神干渉系の魔術を極稀にシャットアウトする。




【宝具】
『魔法:時間停止』
ランク:B 種別:対人宝具(自分) レンジ:1 最大補足:己と己が触れたもの。
魔力を消費し文字通り己以外の時間を止める。その中で動けるのは、ほむら自身と彼女があらかじめ触れていたものに限る。

『魔法少女の絶望』
ランク:B 種別:結界宝具 レンジ:1〜50 最大補足:30人
魔力を大幅に消費し魔女の結界を張る。結界内は使用者の思うままに操れるが、取込まれた者の動きを制限する力はないため、単純な拘束にはあまり向いていない。


『漆黒の翼』
ランク:A 種別:対人宝具(自分) レンジ:1 最大補足:己と翼が触れたもの。
己の因果と背負ってきた呪いの詰められた禍々しい翼。基本的に発動はできない。魔力もほとんど尽き、打つ手が無くなった時に限り偶発的に発動できる。
翼そのものに大した威力はないが、その因果と呪いを受けた者にはなにかが訪れるだろう。※個人差はある。



【weapon】
・ベレッタ
拳銃。魔力を込めることで弾の威力が増す。

・その他銃火器。
機関銃や対空ミサイル、タンクローリーなど種類は様々。どう見ても物騒な現代武器ばかりだが彼女はれっきとした魔法少女である。



【人物背景】
魔法少女。ファンからの愛称はほむほむ。貧乳。
本来の時間軸では病弱で内気なメガネ少女だったが、魔女に襲われた所を魔法少女の鹿目まどかと巴マミに助けられる。
その後ワルプルギスの夜戦にてまどかが死亡し、「まどかとの出会いをやり直したい、彼女に守られる私じゃなくて、彼女を守れる私になりたい」と願い魔法少女として契約を交わす。
手にした願いは時間跳躍(タイムリープ)。
以降、まどかやその周囲を救うために奔走するが、様々な苦難や絶望を経験した結果、まどか以外のすべてを諦めるしかないと答えを出し、冷徹な言動しか吐けなくなった。
しかし、なんやかんやで未だに他の者も気にかけている辺りやはり根は甘ちゃんである。
本編最終話でワルプルギスの夜に敗北。絶望しかけたところで、まどかが叶えた「全ての時間軸から魔女を消す」という願いにより、円環の理という概念となったまどかのいない時間軸を過ごす。
もう時間を戻せなくなった世界で巴マミや佐倉杏子と共に魔法少女としての戦いの日々に明けくれるが、インキュベーダーの実験により半魔女化。
結果、マミや杏子ら身近な人物や円環の理であるまどかを巻き込んでの大事件を起こす。
自らが作りだした結界の中で、まどかの本音ともとれる言葉を聞いてしまい―――。

この聖杯戦争では、叛逆の物語にてまどかを裂くのを失敗してしまい死亡という形で参戦している。悪魔化は不可。


余談だが、彼女にはほむほむ以外にも作中とファンを問わず色々とあだ名が多い。
以下は暁美ほむらのあだ名一覧である。
メガほむ、転校生、イレギュラー、サイコな電波、ホマンドー、クーほむ、リボほむ、変態ほむらさん、戦場ヶ原ほむら、たむら、悪魔ほむら、クレイジーサイコレズ。



【方針】
聖杯を手に入れるために戦う。


【聖杯にかける願い】
円環の理からまどかの人間部分を引きはがす。


131 : 夢の途中 ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/13(金) 00:59:46 PQJnH1Qs0


【マスター名】ヴァン
【出典作品】ガン×ソード
【性別】男

【weapon】
・蛮刀
一見すると銃のようだが、抜くと長い布状になり、さらに硬化して蛮刀になる。その特殊な性質もまたG-ER流体のなせる業である。
ヴァンの意思によって、無数の穴が剣の表面に開き、その状態で刀をV字型に振りかざすことで発せられる高周波により、オリジナルセブン「ダン・オブ・サーズデイ」を衛星軌道上から召喚する。
また、ダンに搭乗後にはコクピットの床に突き刺し、ヴァンのタキシードの右手首のカバーで固定することでヴァンの思考とダンの動きをリンクさせる思考制御ツールになる。

この聖杯戦争では、ダンを直接呼ぶことはできない。が、もしかしたら会場のどこかに隠されている可能性が...?


【人物背景】
『ガン×ソード』の主人公。ファンからの愛称は童帝。
両親を知らずに育ち、金と力だけで生きてきた無法者。童貞。
途中、居着いた町でオリジナル7の一機〈ダン・オブ・サーズデイ〉のテストパイロットに選ばれる。
そこでダンの調整を行っていたエレナという女性に生まれて初めて“優しさ”を与えられ、恋に落ちた。
エレナとは相思相愛となるが、結婚式の当日に恩師ガドヴェドが呼んでいた『カギ爪の男』の手によりエレナと共に重傷を負ってしまう。
延命の為に瀕死のエレナとガドヴェドにより改造を施され〈オリジナル〉となって生き長らえ、同時にダンの正式なパイロットとなる。 しかし手術後にエレナは死亡。
それ以降エレナを殺した(厳密には重傷を負わせたたが)『カギ爪の男』を殺すために旅を始めた。
エレナ以外の女性に興味が無い為に女性の名前を覚えるのが苦手で、 旧知の仲の女性すら覚えられないほど。
しかし「面白い奴」は例外で、女性的には興味はないものの、その面白い部分を認めてあっさりと覚えられることもある。
逆に言えば、女性として見ていない者の名前なら覚えられる...ということかもしれない。


かなり腕が立ち、そこかしこで暴れているらしく(自分から暴れることはほとんどないが、巻き込まれたり仕事たりするため)通り名を持っている。
...が、ころころ変わるため数がかなり多い。
基本的に『○○のヴァン』という形式だが派生形も多く、当人はその中で比較的新しく、かつ何となく気に入ったものを名乗る。
以下は『ガン×ソード』作中でのヴァンの通り名一覧である。
無職、食い逃げ、地獄の泣き虫、寝場所を選ばない男、夜明け、二日酔い、鋼鉄、縁の下の力任せ、いい人、悪魔の毒毒タキシード、掃き溜めのプリティ、だめ

非情に味覚オンチであり、食事にはいつも大量の調味料をかける。

実際に食べてみると案外いける...が、そのあとは保証できないので実食には注意しよう。
※実食する際には水分とトイレの確保をお忘れなく。
また、食べ物を粗末にしてはいけません。作った調味料は責任を持って使い切りましょう。


【能力・技能】


・身体能力
高い方。また、我流の剣術も使える。

・改造人間
死の淵に立たされたヴァンを生かすために改造を施された。それによりダンと遠隔接続され、生命と体調が衛星システムによって維持される体になってしまったが、その恩恵として弾丸を撃ちこまれた程度では死なない身体になっている。



【方針】
さっさと帰る。セイハイとかいうやつも叩き斬る。帰るのを邪魔する奴は状況次第では容赦しない。
※聖杯戦争について基本的なルール以外はあまり理解していませんが、興味もないため覚えるつもりもありません。

【聖杯にかける願い】

カギ爪は俺が殺さなきゃ意味ねえだろ

※参戦時期は17話以降です


132 : ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/13(金) 01:03:47 PQJnH1Qs0
投下終了です
こちらは以前、箱庭聖杯に投下したものを手直ししたものになります

あと、>>80の承太郎のステシの宝具に『星の白銀』とありますが、誤字です。
『星の白銀』→『星の白金』
wiki収録時に修正したいと思います。申し訳ありません


133 : ◆NIKUcB1AGw :2018/04/13(金) 21:47:33 hPUgg2V20
皆様、投下乙です
自分も投下させていただきます


134 : ヒカゼ&セイバー ◆NIKUcB1AGw :2018/04/13(金) 21:48:32 hPUgg2V20
文明の水準が高くなれば、貨幣経済が生まれる。
そうすれば、金銭の取引そのものを商売とするものが現れる。
もっともわかりやすいのが、「金貸し」だ。


◆ ◆ ◆


「社長、お疲れ様でした!」
「ああ、お疲れ」

社員と軽く挨拶を交わし、その男は迎えの車に乗り込む。
男の名は、ヒカゼ・アーディカイド。
若くして金融会社「MF」を起ち上げ、飛ぶ鳥を落とす勢いで業績を上げている傑物。
それが、この世界ので彼のロールであった。


◆ ◆ ◆

「今日も一日金貸し稼業か。呑気なものだな」

帰宅後、すぐさまヒカゼにそう語りかけたのは彼のサーヴァントだった。
クラスはセイバー。見た目はヒカゼとそう変わらぬ年頃の青年であり、身に纏った装備も簡素なものだ。
だがその身には、英霊と呼ぶにふさわしい風格が宿っていた。

「別に呑気にはしてないさ。ちゃんと自分が聖杯戦争なんていう最低の催しに巻き込まれたことは理解してる。
 けど、変な行動を取ったら他のマスターに怪しまれるだろう。
 まだ戦いは本格化してない。今の時点では、あくまで一般人を装っておくのがベターだ。
 その間に、ちゃんと策は練るさ」

非難めいたセイバーの言葉にも、動揺することなくヒカゼは返す。
セイバーの方も本気でヒカゼを責めていたわけではないようで、それ以上の追求はなかった。


135 : ヒカゼ&セイバー ◆NIKUcB1AGw :2018/04/13(金) 21:49:14 hPUgg2V20

「それにまあ、あんたみたいな英雄がいつも霊体化してそばにいてくれるわけだしな。
 こんなに頼れるボディーガードは、そうそういないぜ」
「あまり過信するな。あくまで私は、剣で斬ることしかできないサーヴァントだ。
 剣に魔法が込められてるわけでもないし、特殊な武器を持っているわけでもない」
「いや、魔法の力もないのにあれだけの戦果挙げられるって逆にすごいからな?」

ヒカゼはセイバーを召喚した直後に、彼の記憶を夢で見ていた。
彼が見たのは、何百何千という軍勢を剣術のみで蹴散らしていくセイバーの姿だった。

「すごいのは私じゃない。部下だ」
「いや、たしかに部下の人たちもすごかったけどさ! あんたも充分すごかったよ!」
「そうだろうか……」

賞賛の言葉に対し、セイバーは釈然としないような態度を取る。

「すごいというのなら、マスターの世界の魔法の方がすごいだろう。
 話として聞いただけだが、私よりよほど効率よく大群を蹴散らせる」
「まあ、たしかにものによってはそうかかもしれないが……。
 だからといって、セイバーのすごさがかすむわけじゃないと思うぜ。
 それに俺は、魔法使えないしな」

ヒカゼは一流の魔術師と言われるラインの、実に数万倍の魔力を有している。
しかし、同時にいかなる魔術も使えない体質である。
そのままでは、莫大な魔力も宝の持ち腐れ。
だが彼はそれを活かすために、魔力を他人に貸し与えることのできる独自の術を開発した。
「錬魔術」と名付けたその術を利用した、魔力の融資屋。
それが、本来のヒカゼの職業なのである。

「まあそんなわけだから、戦力として頼りになるのはあんただけだ。
 頼むぜ、セイバー。この聖杯戦争ってやつをぶっつぶすために、力を貸してくれ」

ヒカゼは狡猾で冷徹だが、根っこの部分は善人である。
おのれの利益のために、他者を意図的に不幸に追い込むことはしない。
そんな彼にとって、その意志のない人間を殺し合いに巻き込む聖杯戦争は唾棄すべき催しであった。

「改めて言われずとも、そのつもりだ。私とて、この戦いを肯定するつもりは欠片もない」

セイバーもまた、同じような思いを抱いていた。
彼に、聖杯にかける願いはない。
召喚に応じたのは、理不尽な戦いを叩き潰すためだ。

「自分を善人と主張するつもりはない。ただ、気に入らないものを斬る。
 それだけのことだ」
「さすが、3000人の軍勢に勝った王子様は言葉の重みが違うね」
「私一人で戦ったわけじゃないぞ。それに、さすがに全員斬り殺したわけじゃない」
「わかってるわ! それでも充分すごいんだよ! 何回言えばわかるんだ!」

聖杯戦争が本格化する前に、もう少し意識のすりあわせをしておきたい。
そう思うヒカゼであった。


136 : ヒカゼ&セイバー ◆NIKUcB1AGw :2018/04/13(金) 21:50:15 hPUgg2V20

【クラス】セイバー
【真名】イェルケル
【出典】無双系女騎士、なのでくっころはない
【性別】男
【属性】秩序・中庸

【パラメーター】筋力:B 耐久:A 敏捷:C 魔力:E 幸運:A 宝具:D

【クラススキル】
対魔力:E
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
Eランクでは、魔術の無効化は出来ない。ダメージ数値を多少削減する。

騎乗:D
乗り物を乗りこなす能力。「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。
乗馬の心得はあるがあくまで常人の範疇であるため、ランクは高くない。

【保有スキル】
戦闘続行:A
名称通り戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
「往生際の悪さ」あるいは「生還能力」と表現される。
絶望的な戦力差を覆して勝利、生還した逸話から高ランクとなっている。

勇猛:B
威圧、混乱、幻惑といった精神干渉を無効化する。また、格闘ダメージを向上させる。

精神汚染:E
精神が錯乱しているため、他の精神干渉系魔術をシャットアウトできる。
ただし、同ランクの精神汚染がされていない人物とは意思疎通ができない。
彼の場合異常な経験の数々と倫理観のぶっ飛んだ部下の影響で、感性が若干歪んでしまっている。

対集団:A
絶望的な数の差を幾度も覆してきた逸話から生まれたスキル。
敵の数が味方より多ければ多いほど、筋力と耐久が上昇する。


【宝具】
『第十五騎士団』
ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:― 最大捕捉:―
セイバーが生前率いていた、第十五騎士団に所属した3人の女騎士を召喚する。
一人ずつでも、全員まとめてでも召喚可能。
彼女達は本来セイバー自身を上回る戦闘力を持つが、サーヴァントではなく宝具として扱われるために力が大きく低下している。
それでもなお、騎士たちが一騎当千の強者であることは変わらない。

【weapon】
「無銘の剣」
セイバークラスでありながら、彼の武器は欠片ほどの神秘も宿さない平凡な剣である。
彼の強さは、あくまで本人の身体能力と技巧によるもの。

【人物背景】
カレリア王国の第十五王子。
騎士学校時代は、並ぶ者のない剣術の達人として名を馳せる。
しかし元帥の孫の顔に泥を塗ったことで恨みを買い、死地に送り込まれてしまう。
生還は絶望的な状況でありながら、同じく厄介者として処分を考えられていた女騎士たちによって助けられる。
その後3対3000というさらに絶望的な戦いを強いられるも、大将首を討ち取り生還。
その功績により、自らの騎士団を結成することを認められる。
部下たちの血の気の多さに悩まされているが、本人も奴隷市場の惨状に逆上して後先考えず奴隷商人を皆殺しにするなど、かなりの激情家である。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯戦争の破綻

【基本戦術、方針、運用法】
シンプルなステータス特化型サーヴァントであるため、真っ向勝負には強いが搦め手には切る手札がない。
支援型のサーヴァントと同盟を組むことができれば、弱点をカバーして盤石の状態で戦えるだろう。
宝具で召喚できる部下たちは、戦闘面では頼りになるが暴走して余計なことをしでかす危険性があるので取り扱いに注意。


137 : ヒカゼ&セイバー ◆NIKUcB1AGw :2018/04/13(金) 21:51:20 hPUgg2V20

【マスター】ヒカゼ・アーディカイド
【出典】魔力融資が返済できない魔導師はぜったい絶対服従ですよ?
【性別】男

【マスターとしての願い】
聖杯戦争の破綻

【weapon】
なし

【能力・技能】
「錬魔術」
錬金術と呪術を組み合わせてヒカゼが生み出した、彼オリジナルの術。
ヒカゼの魔力を他人に貸与するために使用する。
契約の内容を相手に確認させ、魔力で作られたカードを相手が割ることで契約が成立する。
相手が了承さえすればかなり無茶な制約を課すことも可能であり、極端な例で言えば
「魔力の返済が不可能になった場合、肉体を魔力に変換する(=死ぬ)」という契約も可能である。

【人物背景】
莫大な魔力を持ち、それを他人に貸し与えることを商売とする魔力の融資屋。
一流魔導師の最低ラインが魔力量100万とされる世界で、彼の魔力量は9999億にも及ぶ。
(しかもその数値は自分で認識できる分であり、実際の上限はそれ以上とされる)
しかし、魔法はいかに簡単なものであっても一切使用できないという特異体質でもある。
基本的に善意で行動する人物ではあるが、魔力の取り立てのためなら非道な手段も辞さない。
とはいえ(相手が極悪人でない限り)命を危機にさらすような取り立てはしないため、開き直られると弱いという一面もある。
人生の目標を「理想の家庭を築き上げる」こととしているが、その真意は滅亡した祖国を再興することにある。

【ロール】
金融会社の社長

【方針】
対聖杯


138 : ◆NIKUcB1AGw :2018/04/13(金) 21:52:24 hPUgg2V20
投下終了です


139 : ◆Il3y9e1bmo :2018/04/13(金) 22:59:59 vTgdZOwQ0
投下します。


140 : 狼はいつだって嘘つき ◆Il3y9e1bmo :2018/04/13(金) 23:00:43 vTgdZOwQ0
ここは見滝原。異界の徒――、サーヴァントが跳梁跋扈する地である。
その見滝原の、繁華街から少し南下した所には、下層民たちの吹き溜まりである大小様々な安っぽい家々が立ち並んでいる。
それらの中で最も安普請と思われるボロアパートの一室では、鼻と顎が少々尖った青年がうつ伏せになってジタ、ジタと蠢いていた。

「くそっ……! 出られねえっ……! 本当に脱出不可能っ……!」

男の名は伊藤開司。先程聖杯戦争のマスターとして、記憶を取り戻したばかりだ。
カイジはもちろん非力な一般人であり、他サーヴァントとの戦闘となれば、あっという間に殺されてしまうだろう(他に脱出したい理由はもう一つあるのだが、今は説明を省く)。
そのため、見滝原からの脱出を試みたのだが、どうやっても不可能だった。
街の境は透明の結界のようなもので覆われており、蹴っても叩いてもびくともしなかったのである。
自身のサーヴァントに脱出を手伝って貰おうかとも一瞬考えたが――。

「いやっ……! 駄目だ……! そんなことを言い出したが最後、俺が殺られるっ……!」

カイジは完全に怯えていた。

――理由を語るには、二時間程、時を遡る必要がある。


141 : ◆Il3y9e1bmo :2018/04/13(金) 23:01:08 vTgdZOwQ0
◆ ◆ ◆

「只今参上いたしました。このアーチャー、マスターのためであれば身命を賭して聖杯戦争に臨む覚悟であります」

「本当かっ……!」

「はっ!」

現われたアーチャーは力強く頷く。

『ソウルジェム』を手にしたカイジは、アパートの自室でサーヴァントを召喚していた。
召喚したサーヴァントのクラスはアーチャー。狼の顔をし、昆虫のような四肢を持った獣型サーヴァントである。
アーチャーの頭の上にぼんやりと浮かび上がったステータスは、「筋力:C 耐久:C 敏捷:A 魔力:C 幸運:D 宝具:C」。中々俊敏なサーヴァントのようだ。
サーヴァントの事など何も分からないカイジであったが、Eを最低、Aを最高と考えると、このサーヴァントのステータスは中の上ぐらいだろう、と考えた。

カイジもその時は聖杯戦争を勝ち抜き、どんな願いを叶えて貰うのか、己が欲望で頭が一杯だった。

「アーチャー、お前が居ればこの聖杯戦争っ……! 勝てるのか……?」

「もちろんです、マスター。万事お任せ下さい」

アーチャーはやはり力強く頷いた。

「アーチャーっ……!」

「何でしょう」

「ステータスは何となく把握したんだが、サーヴァントの持ってるスキルっていうのも詳しく教えてもらっても構わないか……?」

「もちろんです、マスター。まずは……『対魔力』から説明致しましょう。これは魔力に対する抵抗を表すスキルです。私めのは『D』とランクが高くないのであまり期待なさらない方が宜しいかと」

「なるほど……」

「次に、『単独行動』です。マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力ですね。私はマスターを失っても一週間現界可能です」

「あっ……!」

「どうかされましたか?」

「……いや、何でもない。続けてくれ……」

――しかし、その時カイジに電流が走っていた。

(何だよ、その『単独行動』ってスキルっ……! 「マスターを失っても一週間現界可能」っ……!? とどのつまり、そのスキルっ……! マスターを殺そうが、聖杯戦争に参加できるってことじゃねえかっ……!)

(……む、臭いが変わった。コイツ……何かに勘付いたな……?)

狼の獣人型サーヴァント――、ウェルフィンはその強すぎる猜疑心により、マスターさえ一切信頼していなかった。
寧ろ行動を縛る令呪を持っているので邪魔だと思っていた。

――一方のカイジは。

(考えろっ……! どうすればこの窮地を脱出できるっ……!? そうだっ……! 街から出ればいいっ……!)

一応、『この街から出ることはできない』という情報はソウルジェムを手にした時に得ていたはずだが、カイジはそんなことも忘れるほど焦っていた。
兎に角アーチャーのいる場所から一刻も早く立ち去りたかった。

「続いて『追い込みの美学』について説明しますが――」

「い、いや……いいっ!」

「おや、どうなさったのですか?」

アーチャーは首を傾げた。

「ぱ、パチンコだっ……! パチンコに行ってくるっ……!」

「では私めもお供しましょう」

そそくさと立ち上がろうとするアーチャーを尻目に――。

「臭いぞっ……!」

「は?」

「パチンコ屋はとてつもなく臭いっ……! 博打狂い共の脂や汗、タバコにビール、ニンニクの臭いが充満しているっ……!」

「……はあ」

「狼のお前に耐えられるかっ……! その臭いっ……! 悪魔的悪臭にっ……!」

「そう言われますと自信を無くしますが、はて……」

アーチャーは座り直して頭をポリポリと掻いた。

「行ってくるっ……! 一人でっ……!」

カイジ、無頼の強行脱出……!

(ククク、何に勘付いたか知らんが好都合だ……。オレも『魔力補給』をする必要があるからな……)

一方のアーチャーも心の中で舌を出していた。

◆ ◆ ◆


142 : 狼はいつだって嘘つき ◆Il3y9e1bmo :2018/04/13(金) 23:01:50 vTgdZOwQ0
――そして脱出に失敗し、今に至る。

幸い、アーチャーは『戦闘前の仕込み』とやらでどこかに外出したまま帰ってきていなかった。

(今は慇懃な態度を見せているあのアーチャーも、裏では何を考えているのか分からないっ……! 危険過ぎるっ……! 使うかっ……?)

カイジは自身の左手に刻まれた三画の令呪を一瞥した。

「いや……! ダメだっ! 下手に使ったら後で困るに違いないっ……!」

「どうかなさいましたか、マスター?」

「うわっ! あ、アーチャーっ……!」

カイジ、独り言を聞かれる痛恨のミス……!

(無理だっ……! こいつ、恐らく俺の思惑に薄々気づいてやがるっ……! 令呪を使う前に噛み殺されて終わりっ……! ジ・エンドっ……!)

(クク、なーるほどね……。オレに令呪を使うつもりか、だがそうは行くかよ……。こんなヘタレマスターなんか一噛みで――、いや、待てよ。一応は大切な魔力の供給源だ。下手に怯えさせるよりは懐柔するほうがいいか……?)

アーチャーの悪魔的発想……! まさかの懐柔案……!
カイジにとっては噛み殺されるよりもある意味地獄……!

「マスター、もしや、私に令呪を使われるおつもりですか……?」

アーチャーは猫なで声でカイジに囁いた。

「い、いやっ……! 違うっ……! そんなことは――」

「いえいえ、皆まで言わなくても大丈夫です。マスターは初めての聖杯戦争、心配なのは分かります。ここは多少なりとも場数を踏んだ私が令呪を使うと良い時をお教えしましょう」

欺瞞……! アーチャーとて今回が初めての聖杯戦争……!
圧倒的欺瞞……!

「う、うーん……」

カイジは考えた。――正確には考えるふりをした。なにしろその時には既に、アーチャーの言葉に乗ってしまっていたのだから。

しかし……! 我々とてカイジを責めることはできない……!
アーチャー、虚実混交の策士……! 恐怖の鞭と飴戦法……!

「……分かった。じゃあ、その時が来たら教えてくれ……」

カイジ、屈する……!
狼の甘言に……! 屈する……!!


143 : 狼はいつだって嘘つき ◆Il3y9e1bmo :2018/04/13(金) 23:02:24 vTgdZOwQ0
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【クラス名】アーチャー
【真名】ウェルフィン
【出典】HUNTER×HUNTER
【性別】男性
【属性】秩序・悪
【パラメータ】筋力:C 耐久:C 敏捷:A 魔力:C 幸運:D 宝具:C

【クラス別スキル】
・対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

・単独行動:A
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
マスターを失っても一週間現界可能。

【保有スキル】
・追い込みの美学:B
敵に先手を取らせ、その行動を確認してから自分が先回りして行動できる。

・嗅覚:A+
鼻の良さ。臭いを正確に嗅ぎ分け、遠方の標的を捕捉してどこまでも追跡したり、果てはそこで何をしていたのかまで把握することができる。

・魔力放出(念):D
アーチャーは魔力を消費して、『念』と呼ばれる超能力を使用することができる。
これにより、武器・自身の肉体に『念』を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させることができるが、燃費はあまり良くないため使いすぎは禁物。

【宝具】
『卵男(ミサイルマン)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:1
背中に人体を模した醜悪な砲台を具現化し、そこから一度に四発のミサイルを放ち、対象者の体内に『黒百足(クロムカデ)』を植え付ける宝具。

攻撃手順としては、
1:「対象者(ねらい)」を定める。
2:「質問・命令(たま)」を込め、それに偽った者、逆らった者がいる。
3:その対象目がけてミサイルが発射される。
と言った手順。

ミサイルには追尾機能があり、対象者に命中するまで追い続ける。このミサイル自体に殺傷力は無く、植え付ける『黒百足』は一発につき一匹である。
発動条件はアーチャーが相手に対して質問か命令をすること。これに対して相手が偽ったり逆らったりした場合に、攻撃が可能になる。誰かに対して呼びかけられていればいいので、アーチャーが相手を認識できてなくても攻撃は可能である。
ただ、能力の性質上、アーチャーはどうしても行動が後手に回ってしまう上、相手が痛みや死を覚悟したり、耳を傾けずに攻撃された場合には自身を危険に晒しかねない。

黒百足(クロムカデ)
アーチャーに対する反抗心を糧にして成長する生物。彼によって創られた。
アーチャーの命令を背いたり、危害を加えようとすれば、宿主の体に激痛を与え、最終的には体を突き破り死に至らしめる。
最大の反抗心は彼を殺そうとすること。アーチャーに殺意を抱いた場合、一気に最大まで成長する。
黒百足はアーチャーの心に呼応しており、本人が弱気になったり本音を語ると、虫は苦しみやがて死滅する。

【Weapon】

【人物背景】
甲虫の様な四肢と人間の肉体を合わせ持つ狼の獣人。
猜疑心が強く、悪知恵の働く小悪党タイプ。支配欲も強い。
その疑り深さは筋金入りで、一度彼に疑われたら最後その者をウェルフィンは死ぬまで信用することはないとされている。

【聖杯にかける願い】
見滝原を裏から支配する。

【方針】
とりあえずは潜伏する。
手を組めそうなやつとは手を組むが、最終的には(マスター含めて)確実に裏切る心づもり。


144 : 狼はいつだって嘘つき ◆Il3y9e1bmo :2018/04/13(金) 23:02:37 vTgdZOwQ0
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【マスター】伊藤開司
【出典】賭博黙示録カイジ
【性別】男性

【Weapon】

【能力・技能】
『博才』
博打の才能。極限状態に置かれた時のみ発揮する。
神がかり的な閃きにより、状況を打破して行く。

【人物背景】
高校卒業後、東京に上京してきたフリーターの青年。就職せず、安酒と博打に明け暮れ、さらに街で見かけた違反駐車の高級車への悪戯で憂さを晴らすという日々を過ごしていた。
バイト先の知人の借金の保証人となったため、その肩代わり返済のためにギャンブル船エスポワールへ招待されたことを機に、危険なギャンブルの世界に足を踏み入れていく。
社会に出てからのいわゆる「生きる目標」というものを全く考えていないため、平穏な環境下では「人間のクズ」と言われる、怠惰で自堕落なダメ人間。
しかし、命が懸かった極限の状況下に置かれると並外れた度胸と洞察力を発揮し、論理的思考と天才的発想による「勝つべくして勝つ策略」をもって博打地獄を必死に戦い抜いていく。
どんな状況であろうと信頼した人間を裏切ることは決してしないが、信頼を寄せた人間に裏切られる経験を何度も繰り返しており、たびたび苦い思いを味わわされている。
そのため他人を突き放す口ぶりが多いが、実際には追い詰められた人を見捨てられずに己の利を蹴ってでも救おうとする、良く言えば心優しい、悪く言えば甘い性格である。

【聖杯にかける願い】
勝ち抜いて元の世界に帰還したい。

【方針】
死にたくない。誰も信頼できない。


145 : ◆Il3y9e1bmo :2018/04/13(金) 23:02:47 vTgdZOwQ0
投下を終了します。


146 : ◆DIOmGZNoiw :2018/04/14(土) 02:41:21 liwvW5nA0
投下します


147 : ◆DIOmGZNoiw :2018/04/14(土) 02:41:44 liwvW5nA0
 洋風の建造物が立ち並ぶ町並みの、石壁と石壁に挟まれた路地裏で、鮮血のような真紅が闇夜に煌めいた。魔力で精製された蝙蝠たちを宙に描いた魔法陣から無数に放ちながら、ランサーは腰の翼を羽撃かせ、掌の中に赤く輝く魔力の稲妻を迸らせる。稲妻は瞬く間に槍の形を形成した。ランサーは標的へ向けて頭から突っ込んでいく。
 どこぞの国の騎士のような風貌をした敵は、手にした洋剣を構え直し、ランサーの突撃に備えた。最初に殺到した蝙蝠たちをすべて剣で叩き落とし、次いで赤い光の弾丸となって加速するランサーの槍を、その剣で受け止めた。ランサーの口元が、にい、と歪む。衝突の衝撃によって両者後方へと後退る中、ランサーは上空へと飛び上がり、地面から垂直にそそり立つ壁を足場に、着地した。けれども、動きを止めたのは一瞬だ。間髪入れずに壁を蹴ったランサーは、敵のセイバーへ向けて急降下する。
 剣を振り上げて対応するセイバーだが、今度はその剣に触れる気はなかった。槍だけを投げたのだ。剣と槍が衝突して、魔力で精製された槍が爆散した。

「う……っ」

 赤い魔力の粒子の奔流を受けて、セイバーが怯んだ。ランサーはすかさず空宙で翼を羽撃かせ、セイバーの後方へと降り立つと、その首筋に喰らいついた。鮮血が迸って、ランサーの薄桃色のドレスを赤く汚した。体内に、魔力漲る血液が取り込まれてゆくのを。セイバーはランサーに食いつかれながら、即座に剣を逆手持ちに持ち帰ると、脇の下からランサー目掛けてその切っ先を突き立てた。
 セイバーの刃が、ランサーの右の翼を貫いた。穿たれた翼は、無数の蝙蝠となって空へと舞い上がる。翼を失ったことで、重力に引かれて落下を始めたランサーだったが、着地するよりも先に左手作った手刀をセイバーの心臓部目掛けて突き立てた。敵が完全に振り返るよりも先に、その爪は甲冑を抉り、心臓を破壊した。

「ひっ」

 己のサーヴァントが敗北したことを悟ったマスターが、踵を返して走りだした。ランサーは、敵が路地裏から表通りへと出るよりも先に、左手で生成した魔力の槍をぶんと投擲した。狙い過たず、槍は的確に心臓部へと突き刺さった。
 穿たれた心臓部から、瞬く間にランサーの魔力が全身へ伝播する。体中に火ぶくれができたようにぼこぼこと皮膚の表面を膨れさせた敵のマスターは、次の瞬間には内側から弾け飛び、鮮血の如き赤の霧となって霧散した。断末魔は痛みすら感じる間もなく、命を終えたことだろう。
 ランサーはふう、と一息つくと、口元に残ったセイバーの血を片手で拭った。

「よくやったぞ、ランサー。相変わらず見事な手際じゃあないか」

 路地裏の奥から、一部始終を見守っていた金髪の少年が現れた。スーツを身に纏っている。まだ十年かそこらしか生きていない幼い少年だが、それでも彼の笑みには、幾つもの修羅場をくぐり抜けてきた極悪人のような風格があった。
 ランサーは少年へと向き直り、ほぼ平と言ってもいい胸を僅かに逸らして鼻を鳴らした。

「当然。あの程度なら問題にもならないね。わざわざこの私が手にかけてやる必要があったのかすら怪しい」
「今の敵は確かにどうしようもないクズだったが……本戦が始まる前に少しでも多くのライバルを減らしておくことは、決して無駄な作戦なんかじゃあない。ぼくは無駄なことが嫌いでね。そのためには君の力が必要なんだ」
「はっ、そうかい。大した戦略家じゃあないか」

 言われて悪い気はせず、ランサーは口角を歪め鼻を鳴らした。

「いいかいランサー、ぼくは一番が好きだ。ナンバーワンさ。誰であろうと、ぼくの上に立たせたくはないんだ。だからこうして、事前の準備も含めて万全の状態で挑んでいる……聡明なきみならわかってくれるね、ランサー」

 ランサーのマスターは、時折子どもとは思えない程の野心を秘めた瞳をする。漆黒の炎が宿った、殺人者の瞳だ。その危ない炎を揺らめかせて、ランサーのマスター――ディオ・ブランドーは不敵に微笑んだ。
 このディオという名の少年が、聖杯戦争において他者を蹴落とすことになんら罪悪感を覚えないタイプであることを、ランサーは既に知っている。
 ランサーは、聖杯戦争にはさほど興味がないし、叶えたい願いがあるわけでもない。けれども、少年ディオが抱く野心は、嫌いではなかった。幼い身なれど、支配者でありたいと願うその強く気高い心に導かれて、ランサーはこの場に召喚されたのだと思っている。


148 : ◆DIOmGZNoiw :2018/04/14(土) 02:43:40 liwvW5nA0
 
「そうね、同じ。このレミリア・スカーレットを召喚しておいて、無様に負けを晒しました、じゃあ私は納得できない。やるからには頂点を。支配者として、当然の考えね……ま、私ほどじゃあないけれど、その歳にしてはなかなか見込みのある考え方をする」

 ランサーは満足気に薄水色の後ろ髪をかきあげて笑った。ドレスの裾を翻して、踵を返す。

「私は別に願いがあるわけじゃあないが、お前と一緒ならそこそこ楽しめそうだ。私も、お前の野心が進む先には興味がある」
「かのヴラド・ツェペシュの末裔たる吸血鬼にそこまで褒めてもらえるとは光栄の極み。その言葉、胸に刻んでおくとしよう」

 ディオは野心に満ちた不敵な笑みを浮かべると、うやうやしく頭を下げた。

「はん、そう畏まる必要はないわよ。これから一緒にやっていくんだから、もっと楽にしたって罰は当たらないわ」
「いいや、これはぼくなりのけじめさ。偉大なる吸血鬼に対する礼儀と思ってほしい」
「……そう。まあ、いいわ。なら好きになさい」

 ランサーはちらと一瞥を返すと、すぐに視線を戻して歩き始めた。はじめの数歩はヒールの音が鳴り響いていたが、それもすぐに鳴りを潜めた。ランサーの体は、つま先から頭まであまさず小さな無数の蝙蝠へと姿を変えて、夜の闇へと溶けていった。

「先に屋敷に帰っているわ。帰り道くらい、私のお守りは必要ないでしょう」

 ランサーの声だけが路地裏に響いた。



 無数の歯車が、ぎぎぎと耳障りな音を合ってて回っている。ひとつの歯車が回ると、隣接した歯車が周り、また別の歯車へと回転を伝えていく。その回転の連鎖で、時計は周り、時を刻む。けれども、その回転になめらかさはない。どこかで、なにかが上手く噛み合っていないのだろう。
 気が付くと、レミリア・スカーレットは十九世紀の英国風の屋敷の中にいた。部屋の中には誰もいない。ただ、部屋の中心のテーブルに、懐中時計がひとつ、ぽつんと放置されている。歯車の耳障りな音は、その懐中時計から聞こえていた。
 つくりの細かいその懐中時計は、貧民が容易く手に入れられるものでもない。世が十九世紀の英国ならば、まさしく上流階級の人間が持っていたものであろうことはすぐに察しがついた。
 ぎぎぎ、ちく、たく。歪な音を刻む懐中時計に、レミリアは歩み寄る。そっと手に取ると、懐中時計はぴたりと時を刻むのをやめた。壊れてしまったのだ。
 秒針の動きが止まる。歯車の耳障りな音もやんだ。世界は、しんとした静謐に包まれた。
 レミリアには、時計が壊れたというよりも、壊れるべき運命にあった時計が、今ようやくあるべき姿を形どったように感じられた。壊れて、時を刻むことをしなくなった懐中時計の中身の歯車は、すべてがきれいにガッシリと噛み合っていた。なにゆえか、暗闇に光が差し込むような晴れ晴れとした気分になった。

 閉じられていたまぶたをそっと開けると、レミリアは見滝原に用意された屋敷の一室で、安楽椅子に深く腰かけて微睡んでいた。サーヴァントは夢を見ない。レミリアが見ていたのは、誰かの「運命」だ。それが誰の運命であるかは、すぐに察しがついた。


149 : ◆DIOmGZNoiw :2018/04/14(土) 02:44:10 liwvW5nA0
 


 ――ディオ。なにがあろうと気高く、誇り高く生きるのよ。そうすればきっと、天国に行けるわ。

 どうしようもなく愚かな女の言葉が、ディオの心に呪いのようにこびりついている。
 地獄のどん底のような貧民街で、それでも誰かのために生き、決して報われることなく落命した母親を、まだ幼いディオは心底から蔑んでいた。
 あの母親が本当に天国に行ったとは、ディオには思えない。自分の息子ひとり満腹にしてやれなかった母親が、天国になど行けるものか。その点で言うならば、最後の最後、死の間際、ディオに人生を変えるきっかけをくれた父親の方が、よほど天国に行った可能性が高い。少なくともあのクズのような父親の方が、幾分ディオの役には立った。
 だが、もしもあの父親が天国に行ったとするならば、それはそれで、やはり許せない。あのクズのような父親に救いがあってはならない。母親を見殺しにし、ディオを虐待したあの父親に、安住の地などがあっては困る。
 もしも天国というものが本当にあって、いつかそこへ行けるとするなら。
 ディオは、天国でもう一度あの父親を殺してやりたいと思う。



 見滝原に用意された屋敷の一室で目覚めたディオは、睫毛に残った涙を拭い、窓の向こうから射し込む朝の陽射しを全身に受ける。本来朝の陽射しは気持ちのよいものである筈だが、この日は些か、気分が優れなかった。なにか気分の悪い夢を見た気もする。こういう日は、虫の居所も悪くなる。ディオは肺に溜まった息を大きく吐き出すと、ぐっと伸びをして、ベッドから足を降ろした。
 身だしなみを整えて、廊下に出た。ディオの自室は二階に位置しており、扉を開けると一階へと続く大階段が見える。屋敷の構造は概ねジョースター邸と同じだった。日本の家屋としては異質であるようにも思うが、元より洋風建造物が立ち並ぶ見滝原の中ならば、さして浮きもしない。
 ディオには元来、この見滝原における現代の知識はなかった。十九世紀の英国と比べれば、この見滝原の技術はどれも目を見張るものがあったし、最初は驚いた。だが、すぐに慣れた。ディオが暮らした貧民街と比べれば、天国のような環境だったからだ。
 欲しいものは望めばなんでも手に入るし、食いっぱぐれて餓死する浮浪者もいない。外を歩けば物取りに出くわして金品を奪われるということもない。どの死に方が最もリスクが小さいか、そういうことを考えながら生きねばならない貧民街と比べれば、この時代に生きる現代人はどいつもこいつもなまっちょろい。
 生ぬるい温室で暮らしてきたジョナサンが許せなかったように、ディオはこの時代の人間のことも毛嫌いしている。窓の向こうに目を向ければ、往来にはそういう手合いの人間が無能なツラをさげて腐るほど歩いている。

(フン! 平和ボケしてぬくぬく暮らしてきたクズどもがッ……今に見ていろよな。利用できるものはなんでも利用して……おれは必ず誰にも負けない男になってやるぞ!)

 他人からなにも奪わずとも生きていける甘ったれたボンボンが、ディオは許せない。叩きのめさなければならない、痛めつけなければならないと、強く思う。

(お前らもそうだ……なまっちょろい感情で、このディオに施している気になってんじゃあないぞ、下っ端のカスどもが!)

 怪談を下りながら、すれ違いざまに微笑みを浮かべ、うやうやしく礼をした使用人に流し目を送る。こいつらも所詮はディオにとって駒のひとつに過ぎない。聖杯戦争も、サーヴァントも、すべては飢え続けてきたディオがまともな人間世界への切符を手に入れるための道具だ。とことん利用してやる。
 階下に降りたディオが食堂の扉を開けると、既に薄桃色のドレスを着た少女が、長方形のテーブル席に着席していた。窓はすべてカーテンで閉め切られており、朝だというのに電気の灯りで室内は照らされている。吸血鬼であるランサーの指示だろう。
 使用人たちがテーブルへ食事を運んで行く。食事は、二人分用意されていた。白米に味噌汁、納豆、目玉焼きという、和風の献立だった。


150 : ◆DIOmGZNoiw :2018/04/14(土) 02:44:40 liwvW5nA0
 
「また和食か。ぼくは久々にパンが食べたいんだけどね」
「パンは飽きたわ。長い人生で、この私がいったい何枚のパンを食べてきたと思ってるの」
「きみは今まで食べたパンの枚数を覚えているのかい」
「覚えてないわ。私は和食派だから」

 ランサーのくだらない冗談を聞き流しながら、ディオは着席した。この屋敷は一応、レミリアお嬢様の屋敷というていになっているらしい。そのため、出てくる食事は彼女の好みに寄り添って作られている。というよりも彼女が作らせている。
 料理を用意したり、身の回りの世話をする使用人らは、みなランサーの魔力によって操られた小間使いらしい。時たま使用人が減ったり、増えたりしているものの、その理由を探る気にはならなかった。大方ランサーの機嫌を損ねて消されたか、餌になったか、それを補充するためにまたどこからかさらってきたか、そんなところだろう。細かい部分にまで突っ込んで面倒ごとに関わる気にはなれず、ディオはその辺りの話題に触れたことはない。なんにせよ、使用人たちの人権をさほど気にする必要がないことは、ディオからしてみれば都合がよいのだった。

(所詮は家畜ほどの役にも立たないクソのような命ッ……だが、我が使い魔の魔力の足しになって死ねるなら、間接的にではあるがこのディオのために死んだことにはなる。その一点においてならば褒めてやってもかまわん)

 表情には出さず、心中のみでディオは冷たく笑う。
 最終的にディオが優勝して、願いを叶えられるのならばなんだっていい。それまでの間、利用できるものはとことんまで使い倒してやるだけだ。目の前の図に乗りやすいサーヴァントも、令呪があるかぎり、所詮はディオの駒だ。いかな強大な吸血鬼といえども、所詮はただの道具にすぎない。
 実のところディオは、己のサーヴァントに対し敬意を抱いたことなど一度たりともなかった。適当におだてていればご機嫌がとれるのだから扱いやすい。

「ところで、ディオ」
「なんだい、ランサー」
「あなたは、聖杯戦争で頂点を極めたら、なにを願うの」

 ディオは箸に伸ばしかけていた手を止めて、ランサーを見た。ランサーは質問を投げるだけ投げて、既に食事に手を付け始めている。

「どうしたんだい、藪から棒に」
「さっき、あなたの運命を覗いたわ」
「ほう」

 ディオの表情からすっと笑顔が消えた。しかし、それでも最低限の愛想は表情に張り付かせたまま、ディオは視線を伏せた。

「それで、なにかぼくの望みでも見えたっていうのかい」
「そういうわけじゃないわ。ただ、懐中時計が見えたのよ。古いつくりの懐中時計だったわ」
「懐中時計? ああ、そういえばジョジョのやつから借りたっけ……とっくに壊れちまったがね。それがどうかしたのかい」
「いいえ。それがどうということはないけれど……ただ、あの懐中時計が刻む『時が止まった』とき、あなたの進む運命が決まった……ように感じたのよ。奇妙なことを言っているようだけど、私にもどうしてそういう風に感じたのかはわからないわ」
「時が止まった、とは……また、奇妙な表現をする。ただ壊れただけだろうに」
「あら、そうかしら。身内にひとり、時を止めるヤツがいるものだから、ついそういう表現を取ってしまったみたい」

 ランサーはなんでもないように笑った。
 かつて懐中時計を忍ばせていた胸に内ポケットには、今は緋色の輝きを宿した宝石が入っている。ランサーのソウルジェムだ。時の止まった懐中時計をいつまでも持ち歩く必要はない。


151 : ◆DIOmGZNoiw :2018/04/14(土) 02:45:23 liwvW5nA0
 
「思うに……時を止める、などといった能力があれば、なんだってできるんじゃあないだろうか。それこそ、世界を支配することだって」
「いやいや、それはないものねだりの小者の考えだよ、ディオくん」

 嘲るような声。
 ぴくりと、ディオの眉根が動いた。

「このディオが……小者、だと」
「ええ。アイツはそんなことはしない。第一、そういうのはアイツには向いてないわ」

 ディオは眼を伏せ、黙考する。
 世界を支配する能力。時間を止める能力。
 すばらしい力であることは間違いないが、少年ディオが本当に望むものはなにかと問われれば、そんなものではない。どん底の世界で生きてきたディオだからこそ、富も名声も欲しい。けれども、どんな願いでも叶うというのならば、もっと欲しいものがあるのではないか。
 事実、ランサーの知る時間を操る能力者は、それがくだらないことだということを理解しているからこそ、そういうことをしなかったのだろう。ならば、このディオはもっと上を行かなければならない。世界を支配するだけでは、足りない。

「そうかもしれないな」
「あら、意外ねえ。認めるの」
「ランサー……きみは、天国の存在を信じるかい」
「は?」

 ここではじめて、ランサーが顔を上げた。くりくりとした人形のような瞳が、余計に大きく見開かれている。
 会話の流れを断ち切ったようなかたちになることは、ディオも承知している。けれども、それが先のランサーの問いに対する答えに繋がるとディオは思った。

「世界を支配するなんてのは……確かに、過程でしかないのかもしれない。ぼくは、もしも本当に天国というものがあるのなら……誰も生きては辿り着いたことのないその世界に、行ってみたいと思う」
「あんた、気は確か? 仮に確かだとしたら、私が悪魔で吸血鬼だってことは理解して言ってる?」

 ディオは決然と頷いた。
 ランサーは諦念の溜息を零した。

「……そんなとこ行ってどうするの」
「会いたい人がいる」

 母さん。
 聖母マリアのような、慈愛に満ちたあの母の顔が、一瞬脳裏によぎった。
 けれども、それ以上に大きな闇が、ディオの心に影を落とした。それを思い描いた瞬間、ディオのつくられた愛想笑いが消し飛んだ。胸の内で燻っていた憎悪が、増幅して表へと現出する。

「ダリオ・ブランドーッ! ぼくの父だった男だが……あいつがもしも天国にいるなら――」

 母への暴力、息子への虐待、……死んだ母への/奴が死なせた母への侮蔑の言葉、
 そして、クズのような男の人生の中、最後の最後にディオへもたらした施し、その屈辱。
 生きる価値のないこの世の毒虫のような男の存在を思い出した時、ディオの喉はふるえた。

「今度こそ、地獄に堕としてやらねば気がすまないッ!」

 それは、ディオがはじめてランサーに打ち明けた嘘偽りのない本心だった。
 この数日ふたりで戦って来て、はじめて、己の心からの願いを明かしたのだ。後悔はない。あの父のことを話題に出して、それでもまだ優等生でい続けることの方が、ディオにとっては苦痛だった。

「それがお前の本音か、ディオ・ブランドー」

 ランサーは、にい、と頬を歪めた。口元から見える尖った糸切り歯を隠しもせずに、歯の隙間からきししと息を漏らす。人形のように小さく可憐な少女は、今、正真正銘の化け物の笑みを浮かべていた。

「よく聞かせてくれた。このままずぅっと本音を隠し続けるつもりかと思っていたが……いや、その方が私もやりやすい。子供みたいに世界を支配したいなんて待望抱くよりも、ある意味ずっと純朴で、面白みがある……まあ、私はゴッドにもヘブンにも興味はないが」

 ぶつぶつと呟きながら、まあいい、と一言、ランサーは上目遣いに不敵な笑みを向ける。肩肘をついて、手の甲に頬を乗せながら、ランサーは可憐な外見の印象とは裏腹に、どこまでも艶やかに笑った。

「我こそは最強にして最速のランサー、その真命はレミリア・スカーレット。喜びなさい、ディオ・ブランドー。夜の女王(ノーライフクイーン)たるこの私が、お前に聖杯を約束してやろう」


152 : ◆DIOmGZNoiw :2018/04/14(土) 02:46:10 liwvW5nA0
 
 
 
【出展】東方Project
【CLASS】ランサー
【真名】レミリア・スカーレット
【属性】混沌・中庸
【ステータス】
筋力B 耐久A 敏捷B 魔力A 幸運EX 宝具C

【クラススキル】
 対魔力:B
 魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。

【保有スキル】
 吸血鬼:B
 吸血行為による体力吸収&回復。
 ランクが上がるほど吸血による回復力は上昇するが、ランサーは一度に多量の吸血をすることはできない。よって、本物の吸血鬼でありながらランクダウンしている。
 また、対象が魔力や神秘を纏わないNPCに限り、簡単な暗示にかけてある程度は操ることもできるが、戦闘に融通が効く程の精度で操ることはできない。

 戦闘続行:A+
 日光には弱いが、肉体は非常に頑丈に出来ている。
 蝙蝠一匹分でも残れば、魔力補給と時間経過次第で万全の状態まで再生可能である。
 ランサーの場合は『仕切り直し』と同様の戦闘から離脱するスキルとしても作用する。

 変化:C
 霧や無数の蝙蝠などに姿を変化させる。
 近接戦闘においては極めて有用だが、広範囲攻撃に対しては効果が薄い。
 
 運命を操る程度の能力:EX
 周りにいると数奇な運命を辿るようになり、ランサーに一声掛けられただけで、そこを境に生活が大きく変化することもある。
 ただし「運命」などという実体のない不確定要素を扱う能力であるため、自力で行使できない部分も大きい。
 ランサーの「幸運」ステータスはこのスキルによってその時々で大きく変動する。
 また、他者の運命が見えることもあるらしい。どの程度まで使いこなせるのかは誰にもわからない。

【宝具】
『鮮血奔る紅魔の神槍(スピア・ザ・グングニル)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大補足:5人
 ランサーの魔力で精製された長大な槍。魔力の塊であるため槍自体が真紅に発光しており、注ぎ込む魔力次第で形はある程度融通が効く。
 ランサーの運命操作の能力を最大限発揮させれば、「心臓に槍が命中した」という結果を作ってから「槍を放つ」という原因をもたらし、必殺必中の一撃を可能とする。
 ただし、同じく運命操作の能力によるランサー自身の幸運の数値が常に変動しているため、攻撃対象の幸運ランク次第では能力を十全に活かし切れない場合もある。

『鮮血翔る紅魔の神槍(スピア・ザ・グングニル)』
ランク:C+ 種別:対軍宝具 レンジ:5〜40 最大補足:50人
 ランサーの魔力で精製された長大な槍。魔力の塊であるため槍自体が真紅に発光しており、注ぎ込む魔力次第で形はある程度融通が効く。
 ランサーが全身の力と全魔力を使った上で相手に投擲する特殊使用宝具。放てば一撃で一軍を吹き飛ばす威力を誇る。
 運命操作による必中効果は健在であるものの、概念的な特性がないため必ず心臓に当たるわけではなくなっており、あくまで単純威力系の宝具に分類されるが、スキル「運命操作」の判定次第では何度かわされようと標的を捕捉し続ける特性は維持している。

『永遠に赤き紅霧の世界(エンボディメント・スカーレットデビル)』
ランク:C+ 種別:大界宝具 レンジ:??? 最大射程:-
 かつて幻想郷を覆い尽くした赤い霧を発生させ、周囲を闇夜へ変性させる固有結界。
 結界内に陽の光は届かず、ランサーは吸血鬼・悪魔としての全能力を発揮出来る。また、結界を満たす紅霧そのものがランサーの魔力で精製されたものであるため、空間内での戦闘において、ランサーはあらゆる魔力消費が軽減され、全能力が僅かに向上する。
 ただし、そもそも宝具の発動に多大な魔力が必要であるため、結果的には消費の方が大きい。


153 : ◆DIOmGZNoiw :2018/04/14(土) 02:47:16 liwvW5nA0
 
【Weapon】
『サーバントフライヤー』
 蝙蝠型に精製された魔力を飛ばす。
 同時に複数展開可能で、標的に向けて軌道を操ることで指向性を持たせられる。

『スペルカード』
 本来所持している各種スペルカード。
 宣言と同時にその能力を発揮する。

【サーヴァントとしての願い】
 ディオが進む運命に興味がある。
 彼はきっと、数奇な運命を辿ることになる。

【基本戦術、方針、運用法】
 吸血鬼として破格の身体能力を誇るレミリアと、狡猾なディオによる戦略が肝。
 昼間は『永遠に赤き紅霧の世界』で敵を己の有利な空間に引きずり込み、夜間ならば闇夜からの奇襲を仕掛けるというのが基本戦術なのだろうが、
 マスターであるディオはまだ経験を積む前の子供時代からの参戦のため、結局レミリア主導の脳筋戦術が主になる可能性が高い。

【人物背景】
 かつて幻想郷を妖気を帯びた紅い霧で包んだ、紅霧異変の首謀者。誇り高き紅魔館の当主にして、吸血鬼である。
 異変を起こした理由は、幻想郷全体を紅い霧で覆ってしまえば、日光が遮られ、昼間でも騒げるようになるんじゃないか、とのこと。
 吸血鬼としては少食で、一度に人間から多量の血を吸えない。また、吸いきれない血をこぼして服を真っ赤に汚してしまうことから「スカーレットデビル(紅い悪魔)」の異名を持つ。
 本人はワラキア公国君主、ヴラド・ツェペシュの末裔を名乗っており、自らのスペルカードにも彼の名を冠するものがあるが、別にヴラド・ツェペシュの末裔ではない。血縁関係もない。
 その本質は尊大かつ我が儘で、非常に飽きっぽいという見た目通り少し幼い思考。常日頃から退屈しており、気紛れで突拍子も無いこと(ロケットを造って月に行きたい、など)を思いついては周りを振り回している。
 また、運命を操る程度の能力を持っているとのことだが、それが有用性を見せたことはないため、どのような能力であるかはイマイチ不明。

 その本質は、目にも留まらぬスピード、岩をも砕くパワー、思い通りに悪魔を使役できる莫大な魔力といった反則的な身体能力にあらわれており、小手先のテクニックを無視する戦法を好む。
 また、防御面においても優秀で、自らの身体を霧や蝙蝠に変えることも可能。頭以外が吹き飛ぶ怪我を負っても、一晩で元通りになる。
 ただしその反則的な身体能力に比例して弱点も多い。
 日光に弱い、流れ水を渡れない、にんにくを嫌う、鰯の頭なんて持っての他、と散々だが、十字架には強い。というか彼女は、なんでそんなもんにやられなきゃいけないのか常々疑問に思っている。


154 : ◆DIOmGZNoiw :2018/04/14(土) 02:48:09 liwvW5nA0
 

【出展】ジョジョの奇妙な冒険 Part.1 ファントムブラッド
【マスター】ディオ・ブランドー

【人物背景】
 ジョジョの奇妙な冒険における、伝説のはじまりにして、諸悪の根源。その子供時代からの参戦。
 まだ吸血鬼とも波紋法とも関係を持つ前からの参戦だが、それでもディオは生まれついての悪。ジョナサンへの悪辣な嫌がらせの数々は子供ながらに徹底している。
 父を憎んでおり、母を否定している。
 ダリオが母のドレスを売れと言った折、涙を流しながら父の殺害を心に誓った。また、酒を飲まずにはいられなかった夜更けも、母を侮蔑するような言葉を受け、激怒し酒瓶で男の頭をぶん殴っている。
 宿敵ジョナサンから父の名誉に誓えと迫られた折にも激怒したことを思えば、多分両親を引き合いに出すと割と簡単にキレる。

【能力・技能】
 幼き日々を貧民街で生き抜いてきた知恵と技術。

【ロール】
 金持ちの家のおぼっちゃま。
 だが、今は実質レミリアお嬢様の屋敷という扱いになっている。

【聖杯にかける願い】
 誰にも負けない男になり、天国へいく。
 そこにダリオがいたなら、もう一度殺し、地獄に堕としてやる。
 母がいたら、その時は――?


155 : ◆DIOmGZNoiw :2018/04/14(土) 02:49:06 liwvW5nA0
投下終了です。


156 : ◆DIOmGZNoiw :2018/04/14(土) 12:42:14 liwvW5nA0
すみません、投下して早々ですが、
>>147->>148にかけての最初の◆までの描写にモブのズガンが含まれていることと、
ここを丸ごと削っても話には特に影響がないことから、冒頭を丸々カットしようと思います。
お目汚し本当に申し訳ないです…。


157 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/14(土) 15:21:04 IQn7wkhw0
皆さま投下ありがとうございます。
候補作を沢山いただき非常にありがたいのですが、感想がまったく追いつかないもので申し訳ございません。
現時点で書き終えてる感想だけ投下します。



藤堂鏡志朗&ライダー
 世界観が異なっていますが同じ『武人』を冠する主従ですね。
 それが故に『戦争』とは無縁な平和と秩序が、最低限保たれている場所に思うところがあり
 結局のところ、聖杯戦争で町が再び死に満ちる事を想像するだけで、非常にやるせない。
 しかし戦いと奇跡を手にするには、刃を手に取らなければならないのですね。
 投下していただきありがとうございました。


不知吟士&ランサー
 非常にチグハグした主従ですが、どうにかチームワークを深めようとする意志があるだけでも
 見滝原内に存在を確認できる他の主従と比較すれば、大分マシと言えるでしょう。
 シラズに関しては、トラウマ化しつつある事件後の参戦の為、戦闘相手次第で
 それを克服せざるおえない状況まで追い詰められる不安が残ります。
 投下していただきありがとうございました。

 
西田啓&セイバー
 とにかくまず、近現代文学を連想させるかのような重厚な文章に驚いてしまいました。
 文体と主従の雰囲気そのものを融合した発想に、これは果たして候補話なのだろうかと困惑でした……
 そして、彼らが問答するのは『日本らしさ』。日本らしくある、という定義を突き詰める。
 真なる日本人や、日本の在り方に対する考えさせるのは、現実に置き換えても大切なことではないかと改めさせられます。
 投下していただきありがとうございました。 


ブローノ・ブチャラティ&セイバー
 人間とは自らの生きた意味を見出すように、誰かの記憶に残り続けたいという証を欲するものなのでしょう。
 失われた時間で悪を滅ぼした勇者ですら同じで、彼の願いは決して傲慢ではなく。
 誰もが思う当然の意義であると思います。勇者と共に聖杯戦争の破壊へ一歩踏み出すブチャラティもまた。
 ある意味、過去の、既に死に絶えた人間ですが、それでも成し遂げたい後悔の一つは赦されて欲しいものです。
 投下していただきありがとうございました。


呉榮成&セイバー
 二重人格の魔法少女、しかもソウルジェムの輝きを求める彼女らにとって、今回の聖杯戦争ほど似合った舞台が
 あるでしょうか。似たような方針を持つ『怪盗』とひょっとすれば敵対するか、何らかの通じ合いに発展する
 かも分かりませんね。呉榮成の想像とは異なる、メルヘンじゃあない魔法少女の世界観を聖杯戦争で垣間見えれば
 多少、魔法少女たちに対する考え方に変化が見られるかもしれません。
 投下していただきありがとうございました。
 

vivid color
 ハデなのにアサシンとは既に残念過ぎるバギーですが、マスターとの相性は最良そうで何よりです。
 聖杯戦争ではやはり、相性の良し悪しやコンビネーション等が重要になる場面が今後幾つもあるでしょう。
 第一、気が合わなければ、方針のズレが綻びとなりません。……とは言え。序盤で事件を起こす(逆に
 起こさざる負えない?)のは他主従に注目されやすい為、注意を払わないといけませんね。
 投下していただきありがとうございました。


158 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/14(土) 15:21:41 IQn7wkhw0
氷川紗夜&キャスター
 やっぱりルーラはルーラのままじゃないか!このままでは確実に二の舞となりそうなので、軌道修正を
 かけたいものです。人は変われるものですが、直ぐ変われるかは個人差があるものです。不安ですね。
 マスターの紗夜にも願いがあり、しかしギターに関して彼女にとって大切かつ重要。
 聖杯戦争が迫っている危機感もそうですが、主従間のわだかまりを解消して欲しいです。
 投下していただきありがとうございました。


Eye of the Beholder
 主従双方共々どうしようもないほど腐りきっていますがアンジェロに関しては『一般社会にいる犯罪者』としての
 立場で語っているのが、戦争を知るナムリスと対比の構造となっており。中々考えさせられます。
 好き勝手良い気分になりたい。と至極全うな快楽犯罪思考が、戦闘狂のそれとは違って『普通』で
 平和に蔓延る身近な悪である事を象徴しており。方針の差で何かしらトラブルが発生しそうですね。
 投下していただきありがとうございました。


白銀のように煌いて、炎のように荒ぶって
 既に居る悪が引力で引き寄せたであろうバーサーカー。彼のマスターは聖杯を望まず
 そして、自らの持つ力を以て生き方を曲げること無い意志もまた、黄金の精神を感じさせられます。
 ……ですが、彼らの行く末以上に、この聖杯戦争において彼らを待ち受けるものを想像すれば
 一筋縄にいかない道のりを、どう乗り越えて往くか期待を抱かずにはいられません。
 投下していただきありがとうございました。


ジョルノ・ジョバーナ&アーチャー
 文字通りの黄金コンビ。見滝原で感じる相手に恐らくジョルノは巡り合う運命にあるでしょう。
 だからこそ、その瞬間にジョルノがどう判断を下すか。英雄王も、そんな彼をしばらくは見守るだけでしょうが
 戦況やマスターの黄金の精神を目にした時。恐らく何らかのアクションを起こす筈ですが、彼の事だと
 大それた事態に発展しそうで、期待と不安を同時に感じられます。
 投下していただきありがとうございました。


エンポリオ・アルニーニョ&ライダー
 少年には戻らなければならない理由がある、仲間に全てを託されたのだから。聖杯へ願うよりも自らの手で
 成し遂げる意志を持った彼を導くライダーの主従による、まさかの料理に関する描写が、なかなか良いものです。
 それこそ、戦争とは無縁の。日常的な行為を通しての話は、戦いで得られるものとは全く異なります。
 彼らが黄金の精神を掲げ、聖杯戦争を前進するのを楽しみでなりません。
 投下していただきありがとうございました。


最後の希望
 気持ちは分かる……分かるけども令呪の二画消費が大分痛手となってしまいますね……
 何とか首の皮一枚繋がった状態の笛木がここから挽回するには、新たな希望を探さなければならないでしょう。
 聖杯だけでなく、デーモンの抹殺をも目的とするならば、キャスターが最後の希望ではない、と諦めない事こそが
 彼にとっての残された道であり、果てにあるものこそ『最後の希望』でしょう。
 投下していただきありがとうございました。


159 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/14(土) 15:23:32 IQn7wkhw0
感想の投下はここまでになります。
続いては企画の盛況につき、ちょっとしたおまけのOPを投下します。


160 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/14(土) 15:24:53 IQn7wkhw0
かつて『黄金の精神』を持つ者たちにより滅ぼされた悪が存在していた。
敗北した邪悪は、死後もなお根を張り、世界を蝕もうと因果の糸を絡ませ、ジョースターと呼ばれる血族との因縁を永続させる。
最も。
彼が本来目指す『天国』への到達は、異なる平行世界で実現した。と――
どこかの噂で耳にするだろうが。
死した事により、邪悪の化身は英霊――即ち、サーヴァントとして召喚。聖杯戦争の参加の権利を得る。
聖杯と云う奇跡の願望機を、邪悪の手に渡らせればどうなるか。説明するまでもないだろう。


紛れも無く。
その邪悪だけでない。彼に似通った執念と後悔とを持ち合わせる『悪』は、彼と同じように聖杯を求めるのは至極当然だった。
―――しかし!

誰もが。
邪悪ですら『予想外』であった事態が巻き起ころうとは、誰も知る由もない。
『予想外』の要因はサーヴァントのシステム、在り方。
その『能力』にある。


まず、英霊には異なる側面を持つ者がいる。
アーサー・ペンドラゴンがエクスカリバーを扱う剣士(セイバー)でもあるが
聖槍ロンゴミニアドを扱う槍使い(ランサー)としての側面を持つように。
同じ英霊でも、クラスが異なる可能性を秘めていた。


あるいは宝具やスキル。
文豪や芸術家が実際に魔術めいた技法を作品に加えていたか、と問われれば『否』であるのが確実だろう。
それだけじゃあない。
逸話などが形となって『宝具』や『スキル』に形取られる。
風評被害で姿の有りようが歪められたり、功績や偉業が『宝具』になり特殊な効果を発揮させたり……
『生前、本人が持ち合わせていない能力』を得られるのがサーヴァントの特権でもある。



そして――彼の『救世主』が召喚された。







魔法少女。様々な世界線で定義も、存在理由も、在り方も大分異なるもの。
その少女――『暁美ほむら』。
彼女の世界における魔法少女とは………


あらゆる願いを叶えられる代償に魔法少女として『魔女』と戦う宿命を科せられる。
しかし、魔法少女と成った際に得られる『ソウルジェム』が絶望により濁り切った瞬間。
感情エネルギーの放出と共に、魔女を産む。

魔女は魔法少女の成れの果て。
奇跡をかざして少女たちを騙す獣の真の目的の過程で発生する産業廃棄物。
人格失い、性質を満たすだけの化物でしかない。
全て魔法少女が逃れられない宿命。謂わば『呪い』。


ほむらは元々親友の死を覆す為に、魔法少女となった。契約を交わした。その過程で『時間』に関する能力を得て。
魔女化の真実を知った。だからこそ呪いを覆そうとあがき続けた。
仲間たちにも呼びかけたのに、魔女化のことは信じて貰えなかった。

挫けそうになった。
結局、親友は救えずに居る。
魔法少女の呪いを覆したい。どうしかしたい。どうすればいいのか。嗚呼、絶望してしまえば、ソウルジェムが黒く濁る。
呪いを帯びた色彩を放ち、親友も誰も救うことが叶わなくなる。


――誰か、助けて


誰も、自分に手を差し出してくれる者はいないのに。暁美ほむらは、どこかの時間で『救済』を求めた。
自分だけが全てを知り、自分だけがあがき続け。
そんな彼女を理解してくれる『救世主』すらいないのだから。
……もう誰にも頼らずに。冷酷に自分を殺すしかない。一つの『負』を胸に秘めた時。

ほむらは、どこかで見つけてしまった。
無色透明な。色彩のない『ソウルジェム』を。
幾度も時間を繰り返す中で、彼女が目にしたことない代物だったから。思わず、誰か――自分の知らない魔法少女のものか、と。
疑わず手に取った。


161 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/14(土) 15:25:27 IQn7wkhw0




美しいネオンの輝きが揺れる夜。


「これって………」


記憶を取り戻した暁美ほむらが困惑するのは無理もない。
彼女は『見滝原』に居た。普通のことだったが、何かが異常だった。魔法少女であったことを忘れていたのだ。
透明なソウルジェムが手元にあり。
そして、聖杯戦争の知識を得て、更に混乱する。

どういうことなのか?
確かな事実。ソウルジェムを用いている時点でキュゥべえ――インキュベーターの関与が明白だ。
ならば、これはキュゥべえに仕組まれた聖杯戦争……?
ソウルジェムが『聖杯』になる?

駄目だ。
ほむらは直感する。
この聖杯戦争に乗ってはならない。キュゥべえが新たに何かを目論んでいる。
魔法少女システムに似た呪いを帯びた、無情な悲劇を招く……


刹那。空間を裂いて一筋の閃光が、ほむらの眼前で走った。
問答無用に聖杯戦争のシステムは発動されてしまう。彼女のサーヴァントが召喚された。
魔力の炸裂が終息し、白煙が晴れた先にいる『邪悪』を直視した時。
ほむらが覚悟した意志を一瞬にして崩壊させるような、全身に冷気と恐怖に包まれ、汗と動機が止まらない。
目を逸らしたいのに『逸らせない』。

アレは魔女に似た化物なのか。
しっかりとヒトの形をしている。大柄で芸術美を感じさせるような肉体と、透き通る美しさの肌と滑らかな金髪。
男性にも関わらず妖艶な色気を漂わせる。
耳元で囁かれている錯覚を覚える声で、どこか優しく穏やかで、引き込まれる言葉を紡ぐ。


「君が私のマスターか?」


「あ…………あ、ああ……………!」


ほむらは、言語ではない呻きを幾度か続けて、ようやっと伝えたのは


「ち、違います……私………ごめんなさい………!」


という否定だった。
召喚したサーヴァントに対し失礼な態度だ。否定など。けれども、ほむらは自覚しつつも否定したかった。
自分が『こんなもの』を召喚してしまった事実を!
自分が『このようなもの』を召喚出来る訳がないのだと!!
自分が―――この化物を、召喚してしまった『罪』を。全てを否定し、拒絶する。

無意識に、彼女は魔法少女に変身。
そして魔法である『時を止める』ことでサーヴァントから逃走する。
見滝原がほむらの土地勘ある町なのは救われた。
幾度も時間を繰り返したおかげで、入り組んだ町で隠れられる場所を知り尽くしている。
こういった場所で、戦いになれる為の特訓を親友と、魔法少女の先輩が付き合ってくれた……


162 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/14(土) 15:26:05 IQn7wkhw0
必死に逃げ、呼吸が途絶えそうになるだけでない。産まれたての小鹿の如く、足が震えて。
ほむらは立つ事すら精一杯だった。
漸く時間停止を解除し、かすれ声で叫ぶ。


「キュゥべえ……! どういうことなの、説明して!!」


いるんでしょう!? 出てきて!!!
ほむらの叫びは虚しく反響するだけで静寂を広げた。誰も居ない。何も居ない。不気味であった。
最早、仕組んだ張本人だからこそ容易に現れる必要なく。
聖杯戦争という、魔法少女の契約とは異なる陰謀の趣旨から、必要以上の説明を避ける為なのか……
魔法少女の立場である、ほむらが理解したらキュゥべえ側で不都合なものがあるのか。

あれやこれやと想像しても空想論で終わる。
次を考えなくてはならない。
でも……ほむらが冷静を時間をかけて取り戻し、僅かな後悔が芽生え始めた。
混乱していたが、自らのサーヴァントにあのような……一方で、即座に切り捨て、なかったことにしようとした自分の判断に
間違いはないと確信を、ほむらの中で掴んでいた。
あのサーヴァントは危険だった。
聖杯戦争において、サーヴァントなしでの行動が不利だったとしても――
往くアテも見当つかないほむらが、一歩踏み出そうとする。


(え?)


動かない。
体も、髪の毛一本すら微動だにしない。
それどころか――我に返れば、ほむらの周囲は完全に停止していた。空も風も物も、あらゆるもの全てが。
まるでコレは……そう。


「私が時を止めた」


「………………………………………ッ!!!」


世界は停止していた。ほむらが使用する魔法の『時間停止』と同じく、だが!
時を止めたのは――
ほむらの背後より聞こえた声は、紛れもない。間違いようない、ほむらが『召喚してしまった』サーヴァントのもの。
音も喪失する停止の世界で、しっかりと足音が耳につく。
嘘だと思った。まさか、偶然? 
ほむらの背後についた邪悪の化身が言う。


「驚いた。私を召喚したマスターもまた『時を止める』とは………」


殺される。
停止した世界を支配しているのはサーヴァントの方。ほむらは停止した世界を認知出来るだけで、ただの傍観者。
この状況で指一本も動かせない。


163 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/14(土) 15:26:43 IQn7wkhw0
嗚呼、駄目……このまま死ぬしかない………
親友も救えないまま。誰も救えないまま。何も成し遂げられないまま。
ほむらの視界に背後より現れた邪悪が写り込んだ瞬間。彼女は『死』という絶望に至る。
男が定める視線は、ほむらのソウルジェムに辿り着く。
魔法少女に変身した後にソウルジェムが位置取る左手の甲を、男が手にとってゆっくり持ち上げれば
ソウルジェムは呪いの色を帯びている。

自然に。
ほむらが、どうしようもなく無意味な悲痛を漏らした。


「助けて」


誰に?
一体誰がこんな自分を、どうやって助けると云うのか??
絶望が溢れた少女に対して、邪悪が微笑む。


「助けるさ」


彼が、滑らかな動きでソウルジェムを指でなぞれば――そこには呪いも絶望も無い。少女の『魂』が美しく綺麗に輝いていた。


「………………え……!? う、そ」


我に帰った頃には、時は動き出していた。
ほむらは、自分が言葉を漏らしたあそこで『時が動いた』ことなど後回しにして。
ソウルジェムの輝きに目を奪われる。

浄化された? 穢れが、なくなった?
魔女になるか曖昧な状態のソウルジェムを、一体どうして。何故。
なんで―――彼は暁美ほむらを救ったと云うのか。わけがわからない。疑念と困惑が幾度も続く、無限の螺旋が如く。
彼は、手元で掴んだ『感触』を確かめながらも、ほむらに対し落ち着いた口調で告げた。


「安心するといい……君は『幸運』だ。
 『私』でなく『俺』であれな『時の静止』………私の世界に踏み入る愚行に憤りを覚えただろう。
 しかし――それはない。私は『ほんの少し』違う」


「えっ……と……」


どういう……?
ほむらは、サーヴァントが語る全てを理解できずにいた。
だた皮肉にも。彼に対する警戒心は、ほむらの中で若干緩んでいる。
改めて――ほむらが一つの疑問を口にする。


「あなたは…………セイ、ヴァー?」


セイヴァー。
『セイバー』の誤字などでない。ほむらが彼を目にし、ステータスと表示されるクラス名をしかと口にしただけ。
其のセイヴァーは、奇妙な雰囲気を漂わせながら笑みを浮かべる。


「誰かが『私』を『救世主』と呼んだのさ」


救世主は確かに存在する。だたし


「マスター。君が『悪』であるのなら、私は君を救おう」


醜悪と妄念の屍たちによって作り上げられた『悪の救世主』が――


164 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/14(土) 15:27:22 IQn7wkhw0
【真名】DIO@ジョジョの奇妙な冒険
【クラス】セイヴァー
【属性】混沌・悪


【パラメーター】
筋力:A 耐久:A 敏捷:A+ 魔力:C 幸運:C 宝具:EX


【クラススキル】
悪の救世主:A


            <現在開示されない情報>



対魔力:A
 魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
 Aランク以下の魔術は全てキャンセル。事実上、現代の魔術師では傷をつけられない


【保有スキル】
直感:A
 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。
 視覚・聴覚への妨害を半減させる効果を持つ。


吸血鬼:B
 伝承で語られる不死の怪物。
 セイヴァーの場合は、誰もが良く知る牙を立てる吸血以外にも、指を突き差しても可能。
 脅威的な生命力と屍生人を作る力を備えている。
 頭部の完全破壊。太陽光や太陽に通ずる力が弱点となる。


スタンド使い:A
 後述にある宝具『世界』のような能力をスタンドと呼称されている。
 『矢』を受けてスタンドを得たのか、生まれついてのものか。様々ある。
 そして「スタンド使いはスタンド使いとひかれ合う」運命が付きまとう事から
 マスターであれサーヴァントであれ。彼の前にスタンド使いは現れるだろう……



【宝具】
『世界(ザ・ワールド)』
ランク:A 種別:対人・対界宝具
 スタンドと称される精神が具現化した人型。時間停止の能力とサーヴァント一騎に匹敵するステータスを兼ね備えている。
 時間停止した世界をDIOだけが自由に行動する事ができる。
 時間に干渉する能力を備えていれば、DIOの世界に『入門』可能。
 スタンドはスタンド使いにしか認知されない制約は、宝具となったことにより失われている。


『漆黒の頂きに君臨する王(ヴードゥーキングダム)』
ランク:EX 種別:対悪宝具 レンジ:■■■ 最大捕捉:■■■



                <現在開示されない情報>




      ―――この邪悪の化身は『黄金の精神』を以て討ち滅ぼす他ない―――


165 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/14(土) 15:32:13 IQn7wkhw0
追加OPの投下を終了します。

そして一点、私も説明不足だったと思い改めてルールに捕捉します。

・ズガン禁止
 これは登場話でのモブ主従予選落ちのことを意味しております。
 ただし、NPCの殺害に関しては問題ありません。

誤解を招く説明不足で本当に申し訳ございませんでした。
引き続き候補作の投下を心よりお待ちしております。


166 : ◆lkOcs49yLc :2018/04/14(土) 18:13:49 iQMg7xRE0
ご感想ありがとうございます。
それと、Wikiにおいて拙作の文章を追記、修正したことをこちらに明記させていただきます。


167 : ◆dt6u.08amg :2018/04/14(土) 23:02:31 Kg5RTeVc0
投下します。


168 : No Desire ◆dt6u.08amg :2018/04/14(土) 23:03:57 Kg5RTeVc0
「や、やめてください……」

繁華街の裏路地。表通りから十数メートルしか離れていないにも関わらず、人々の視界から切り離された見滝原の死角。
そこには見滝原中学校の女子生徒が一人と、その生徒よりも年長で見るからに不良じみた一団の姿があった。
明らかに尋常な雰囲気ではない。今まさに犯罪行為が行われようとしていることは、もはや誰の目にも明らかだった。

「いいじゃねーか、ちょっとくらい相手してくれよ」
「そうそう。楽しいことしようぜ?」
「いやっ……!」

暴漢の手が女子生徒の肩を掴もうとした瞬間、路地の入口から強く澄んだ声が響いた。

「ちょーっと待ったぁ!」

男達が驚いて振り返る。そこにいたのは高校生くらいの背格好の、二人の少年少女だった。
茶色く染めたショートカットで、制服のスカートと緑色のジャージを合わせて着た少女。
詰め襟の学生服の前ボタンを全て開いた、一見ごく普通の少年。
不良達は最初こそ驚き焦っていたが、声の主がただの学生であると気付くや否や、にわかに調子づいて威圧し始めた。

「何だテメェら!」
「そっちからヤられてぇのか?」
「泣いて謝るなら今のうちだぞ。分かってんのか、ああっ!?」

しかし、少女と少年は怯みもしなければ怖気づいてもいなかった。

「うーん、完二くんがいたら大変なことになってそーなシチュ。でもまぁ見過ごせないしね! 行くよ、武藤くん!」
「分かってる。里中さんも無茶はしないで!」




――戦いの顛末は改めて語るまでもない。
男達は凶器まで持ち出しておきながら、素手のままの少年少女に手も足も出ずに敗北したのだった。




「いやー、ごめんね。面倒なことに付き合わせちゃって。はいこれ、お礼」
「そんなことないって。俺も同じ気持ちだったしさ」

里中千枝は、近くの店で買ってきたばかりの牛肉の串カツを、学生服の少年――武藤カズキに手渡した。

購入したのはもちろん二人分。一つはカズキに譲り、もう一つは何のためらいもなく自分で食べる。
そもそも串カツを選んだのは、男子高校生の食欲と味覚に配慮したわけではなく、百パーセント混じりっけなしの千枝の好みだった。

年頃の女子高生にあるまじきチョイスだが、これが千枝の平常運転である。
何が何でも肉、肉、肉。どんな状況でも決して揺らぐことはない。
たとえ、この街が異様な魔術的儀式の渦中にあったとしても。

「ほんとはビフテキ串を奢ってあげたかったんだけど、こっちじゃ売ってないみたいでさ」
「ビフテキ串? 何それうまそう!」
「お、ひょっとしてイケる口かな? 八十稲羽のローカルB級グルメっていうのかな。食べごたえあって最高ぞよ。まー、固すぎて噛み切れないって人も結構いるけど。その辺は『注意:個人差があります』ってことで」
「うーん、聞いてるだけで空腹感が。銀成市にはそういう名物とかなかったなぁ」


169 : No Desire ◆dt6u.08amg :2018/04/14(土) 23:04:59 Kg5RTeVc0
学校帰りの高校生にしか見えないこの二人。
その正体はソウルジェムに導かれて見滝原に現れたマスターとサーヴァントである。
主従関係や戦いに臨む剣呑さをまるで感じさせないのは、両者の生まれ持った基質と言うより他にない。

触媒を用いない召喚ではマスターに似た基質のサーヴァントが召喚されやすいとされるが、彼らはその典型例と言えた。

人当たりがよく性別問わず健全な友人関係を築く一方で、正義感が強く窮地に陥っている人を見捨てられず、その際に自らの危険を顧みないことがままある。
彼らの人となりを知人友人に尋ねれば、どちらも共通してこれらの特徴を挙げることだろう。
もちろん大なり小なりの相違点は幾つもあるが、本人達が『似た者同士である』と自覚する程度にはよく似ていた。

「そうそう。当面の方針なんだけど、聖杯を悪用しそうな奴らや、一般人に迷惑かける奴らをやっつけて、そうじゃない人達をサポートするってことでいいんだよね」
「うん。前に話し合ったとおりでいいよ。そのために来たようなもんだし」
「いやぁ、良かった良かった。パートナーが意地でも聖杯ゲットしてやる!って人だったらどうしようかと思ってたけど、君ならほんとに安心だね!」

カズキの倍近いペースで串カツを消費しながら、千枝は満足そうにうんうんと頷いた。

「オレだって、聖杯があったら使ってたかもしれない理由はあったけどさ。それはもう昔のことだし、他の誰かを犠牲にするなんて絶対にできなかった。もしもあのときのオレがここにいても、きっと同じことをしてたと思う」

かつて武藤カズキは、本人にはどうしようもない経緯から死をばら撒く人外の存在になりかけ、味方だった者達から命を狙われた。
きっとそのときに聖杯を得ていれば使ったに違いないが、他人の願いを踏みにじり、命を奪ってまで獲得しようと思うことは絶対に有り得なかったと断言できる。
もしもそうなったら、むしろ他人の切なる願いのために聖杯を勝ち取ろうとする可能性すらあっただろう。

実際、彼は一つしか存在しない『人間に戻れる方法』を、同じく怪物と成り果てた他人に使い、自身は解決策が新たに作られるときまで眠りにつく決意を固めたほどなのだから。
――ただ、その決意は予想外の事態によって異なる結末を迎えたのだが。

「あたしも同じ。これ以上の犠牲を出したくないから活動してたのに、そのために犠牲者なんて出してたら意味ないもんね」

かつて里中千枝は、生まれ育った故郷の八十稲羽市で起きた連続殺人事件の真相を、仲間達と共に追い求めた。
事件の背景に超常的な能力と未知の異世界があり、特殊な力を持つ自分達にしか解決できないという確信があったからだ。
これ以上の犠牲を出さないために、犯行を未然に防ぎ新犯人の正体を掴む。自称特別捜査隊はそのために結成された。
誰かを犠牲にした手段で真実を見つけるだなんて、仲間の誰一人として望みはしなかっただろう。

――聖杯があれば使っていたかもしれない理由はもう一つあった。
事件の後始末のための理不尽な消滅を受け入れようとした、ぶっきらぼうで素直じゃない新しい友人のことだ。
もしもあのとき聖杯とやらが手元にあれば、彼女のためにためらうことなく使っていたに違いない。
けれど、それでもやはり、他人を犠牲にしてでも得ようとは思わなかっただろう。
彼女はそんなこと望まないはずだし、決して受け入れはしなかったはずだから。


170 : No Desire ◆dt6u.08amg :2018/04/14(土) 23:05:25 Kg5RTeVc0
「そういえばさ。あたし達って二人揃って聖杯戦争ノーサンキューって立場じゃん? どうしてそんなマスターが呼ばれたりしたんだろ」
「うーん……意外とテキトーにランダムで決めてるだけだったりして」
「ありえないって言い切れないのが何とも……」

現状、この謎だけはどうしても解けそうになかった。
カズキが想像したとおりランダムなのかもしれないし、何かしらの明確な意図があるのかもしれない。
こればかりは、主催者を問い詰める以外に解き明かす方法はなさそうだ。

「よっし! 腹ごしらえもしたことだし、パトロールの続きといきますか!」

千枝はベンチから勢いよく立ち上がり、串カツを食べきる寸前のカズキに向き直った。

「ところで武藤くんは……って、そうだ。本名はバレない方がいいんだっけ」

しまったという風な顔になり、カズキに対する呼び方を訂正する。

「やっぱり『ランサー』って呼んだ方がいい? なんかあたし的にはしっくり来なさすぎてヤバいんだけど」
「別にそのままでいいよ。オレも『マスター』じゃなくて里中さんって呼ぶから」

それを聞いて、千枝はにっこりと笑った。
マスターとサーヴァントという役割上での呼び名よりも、人間らしい当たり前の呼び方の方が自分達の性にあっている。
この点においても、二人の価値観はぴったりと合致していた。

「よしっ! それじゃあ参るぞよ、武藤くん!」
「任せろ! 何を隠そう、オレはパトロールの達人だ!」

揃って腕を高く突き上げ、見滝原の街並みへ溶け込んでいく。
聖杯を望まず、無益な戦いを食い止める――異例の目標を掲げた二人。
彼らの行く末に何が待ち受けているのか、今は誰一人として知る由もない。


171 : No Desire ◆dt6u.08amg :2018/04/14(土) 23:09:17 Kg5RTeVc0
【CLASS】ランサー
【真名】武藤カズキ
【出典】武装錬金
【性別】男
【身長・体重】170cm・59kg
【属性】中立・善

【パラメータ】筋力B 耐久C 敏捷A 魔力C 幸運A 宝具B++

【クラス別スキル】
対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

【固有スキル】
戦闘続行:C+
 類稀なガッツと核鉄による自然治癒力の向上。
 加えて、心臓が存在しないため左胸へのダメージが致命傷にならない。

魔力放出:A
 宝具の突撃槍の特性であるエネルギー放出。
 本来は生命エネルギーの放出だが、サーヴァント化にあたって魔力放出にシフトしている。

エネルギードレイン:B
 隠しスキル。通常状態では発動せずステータスにも表示されない。
 サーヴァントを含む周囲の生物から魔力と生命エネルギーを無差別に吸収する。
 宝具『第三の存在』の使用中は強制的に発動し続け、完全停止は不可能。
 マスターであってもその被害から逃れることはできない。

【宝具】
『突撃槍の武装錬金(サンライトハート・プラス)』
ランク:B++ 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大捕捉:1人
 "黒い核鉄"がランサーの闘争本能に呼応して変形した突撃槍。
 通常時は柄の長い両手剣に近い形状で、必要に応じてエネルギー体の穂先を展開する。
 穂先を閉じて剣のように振るう、展開して突撃槍のリーチと破壊力を駆使する、エネルギー放出で擬似的に飛翔するなど、応用の幅は極めて広い。

 この宝具は"黒い核鉄"の状態でランサーの左胸に埋められており、心臓の代替として機能している。
 よって、この宝具の完全破壊はランサーの死を意味する。
 ただし石突部分が残る程度の破壊ならば完全破壊とはみなされない。

『第三の存在(ヴィクター・スリー)』
ランク:B 種別:対人(自身)宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
 人間でもホムンクルスでもない、赤銅色の肌と蛍火色の髪を持つ存在への変異。
 幸運を除く全ステータスが1ランクアップ。対魔力、戦闘続行、魔力放出が2ランクアップ。
 更にランクBのエネルギードレインのスキルと、極めて高い再生能力を獲得する。
 ランサーはよほどのことがない限りこの宝具を使用しない。


172 : No Desire ◆dt6u.08amg :2018/04/14(土) 23:09:31 Kg5RTeVc0
【weapon】
『核鉄』
 かくがね。錬金術による戦術兵器の成果。手のひらサイズの六角形の金属。
 所有者の闘争本能の昂ぶりに応じて、それぞれの個性を反映した武器『武装錬金』に変形する。
 発動時には敵も味方も「武装錬金!」の掛け声を口にするが、別に何も言わなくても発動できる。
 生存本能に働きかけて治癒力を高めることもできるが、やり過ぎると体に負担を掛けてしまう。
 核鉄の状態でも強度は凄まじく、武装錬金による直接攻撃を受け止める盾代わりに使っても傷一つつかない。

『黒い核鉄』
 武藤カズキの胸に埋め込まれた核鉄の正体。
 核鉄のシリアルナンバーI〜IIIを素材として賢者の石を作ろうとした試みの成果物。
 百年前に三つだけ精製され、ナンバーIが当時最強と謳われた戦士ヴィクターの救命措置に用いられるも、その肉体を第三の存在に変えてしまう。
 カズキの黒い核鉄はシリアルナンバーIII。
 ヴィクターの妻が夫を人間に戻す研究の過程で生み出した、黒い核鉄の力を封じて通常の核鉄に戻したもの。
 措置は完璧と考えられていたが、ヴィクターの武装錬金との激突で封印が破れ、黒い核金に戻ってしまった。

『サンライトハート』『サンライトハート+(プラス)』
 武藤カズキの武装錬金。形状は突撃槍。
 連載初期の形態は大型の槍で、飾り布をエネルギー化して突撃の加速などに応用していた。
 大型故に取り回しが難しく、近接戦に対応しづらいのが欠点。
 連載中盤、ヴィクター化の影響で形状が変化。
 エネルギー内蔵型になり、穂先を閉じたまま素早く戦ったり、展開して破壊力を高めたりと戦術が多彩になる。

 完全破壊と長時間の分離で死に至るとのことだが、ボーダーラインは不明。
 穂先が砕け散っても石突周りさえ残っていれば問題ない様子。
 また、ヴィクター化中に一ヶ月ほど展開・分離しっぱなしでも平気だった。

【人物背景】
私立銀成学園高校二年B組、十七歳。
朗らかで行動力のある性格で、誰かが犠牲になるのを決して見過ごせない少年。ボケかツッコミかでいうと圧倒的ボケ。
物語後半に『誰かを守ろうとするときに真の全力を発揮する』と称されたように、人外の存在に成り果てる瀬戸際であっても他の人達のことを考え続けた。
クライマックスには、自分を犠牲にしてでも皆を守り、更には敵すらも救おうとする精神が憎悪にまみれたラスボスの心すらも動かし、ラスボスの手助けと地上の仲間達の尽力で月面から無事帰還。

詳しく書くとストーリー全てのあらすじになってしまうので、詳細は省略。
キャラ把握は原作漫画(全10巻、文庫版も発刊)かアニメ版(中盤〜終盤の一部展開を除いて原作通り)のどちらか。
(小説版は主人公以外のキャラクターの過去の掘り下げが中心)

【聖杯にかける願い】
ない。性質の近いマスターの求めに応じて駆けつけただけ。


173 : No Desire ◆dt6u.08amg :2018/04/14(土) 23:10:38 Kg5RTeVc0
【マスター名】里中千枝
【出展】ペルソナ4
【性別】女

【能力・技能】
・ペルソナ能力「トモエ」
ペルソナ4におけるペルソナとは、抑圧していた感情が形となったもう一人の自分「シャドウ」を自らの一部として受け入れることで発現する能力。
ゲーム本編では各種スキルの発動時にのみ呼び出され、通常攻撃の格闘はペルソナ使い本人が直接行う。
アニメ版では戦闘開始時に呼び出されたペルソナが出ずっぱりで格闘戦も行っている。

ゲーム中の性能は物理系のスキルを単体・全体問わず幅広く習得する物理アタッカー。
氷結系のスキルも使えるが、習得するのは中程度のスキルまで。上位クラスの氷結スキルは習得できない。
強力な氷結系スキルを習得する仲間が途中参入なので、それまでの繋ぎくらいの性能。

 既プレイの人は「本編終了後ならペルソナはスズカゴンゲンかハラエドノオオカミじゃね?」と思われるかもしれないが、後日談にあたるP4Uではトモエがペルソナになっているので、そちらに準拠した。

・自己流カンフー
ゲーム本編での直接攻撃は千枝本人が行う。攻撃手段は主に蹴り技。
ペルソナ4の戦闘では特定条件下で仲間の追撃が行われるが、千枝のそれ(通称「どーん!」)は蹴りの一撃で敵を吹き飛ばして星にし即死させるというとんでもないもの。
流石にボス級の敵には通じないが、中ボスクラスまでなら問答無用で一撃必殺。
格闘ゲーム版の一撃必殺技の締めもこれ。相手は死ぬ。

【人物背景】
八十神高等学校二年二組、十七歳(本編終了時点)
身長158cm、体重非公開。元気で明るく正義感の強い性格。
自称特別捜査隊のメンバーとして、八十稲羽市で起きた連続殺人事件を仲間達と共に解決へ導いた。
詳しくはペルソナ4本編を参照。参戦時期は本編終了後。
非公式考察Wikiのキャラクター個別ページにも詳細な記述がある。

好きな食べ物は肉。カンフーマニアで自己流のトレーニングも積んでいる。
ボケかツッコミかでいうと、周囲がボケ寄りのため相対的にツッコミ寄り。
基本的に男勝りだが、雷や虫がとことん苦手という一面もある。
また、主人公の幼い従妹を死に至らしめた犯人を手に掛けるか否かの決断のシーンでは、他の女性陣(一名除く)と共に否定的な反応を示していた。

【聖杯にかける願い】
なし。何故呼ばれたのかも分かっていない。

【方針】
聖杯を悪用しそうな連中を倒し、そうでない人達を助ける。


174 : ◆dt6u.08amg :2018/04/14(土) 23:11:01 Kg5RTeVc0
投下を終了します。


175 : ◆WoXWsSrmTY :2018/04/14(土) 23:14:12 mabQK8bs0
投下します


176 : 平賀才人&ランサー ◆WoXWsSrmTY :2018/04/14(土) 23:15:18 mabQK8bs0

黒髪の少年が小高い丘の上で一人、剣を握りしめ、目の前に広がる光景を見据えていた。
その視界の大半を占めるのは、甲冑に身を包んだ兵士、杖を携えた魔術師(メイジ)。狂暴なトロル鬼にマンティコア、竜騎兵に大小さまざまな火砲……
その全てがたった一人の少年を殺すために存在していた。
それらと相対する少年の表情には英雄の様な勇壮さなどなく、見て取れるのは明らかな怖気。
だが、逃げることはできない。何故なら彼の後ろの街では大切な人たちが必死に戦禍から逃れようとしているのだから…
その人々を守るために、自分は殿(すていし)を務めたのだ。
震えあがる心を、守ると決めた主を想起し奮い立たせ、相棒の剣を握って疾走を開始する。
敵陣のど真ん中に突撃し、少年は暴れ狂った。狙うは指揮官。頭を潰せば体の動きも鈍る。
一分一秒でも長く敵軍をここに釘付けにする。それこそが自分と、ここにはいない自分の小さくて可愛いご主人様に与えられた使命なのだ。
少年は風のように速く。火のように強く。土のように動じず。水の様に臨機応変だった。
しかし、雨の様に殺到してくる矢は、魔法は、少しずつ少年を削っていった。
魔法の直撃を受けた片腕は炭化し、最早戦える状態でなくなっても少年は剣を振り続け。
しかし、遂に限界の二文字が彼の精神に追いつき…どうッと音を立てて体が崩れ落ちた。
相棒である剣の悲壮な叫びが耳を叩くが、最早指一本動かすこと叶わず。

握りしめた掌から完全に力が抜けると同時に、ころりと透明な指輪が転がり落ちた。
少年の霞んだ瞳を通して映される風景が切り替わる。
切り替わり広がった景色は少年の主人である桃色の髪をした少女との、二人きりの結婚式。
この戦場へ赴く前の、「さよならの結婚式」だった。
二人は誓いの言葉を交わし、敵軍が迫っているこの場を慌てて離れようとする露天商からタダ同然で購入した二対の指輪を交換する。
夕日に染まるステンドグラスの光を浴び、彼が盛ったポーションにより眠りに落ちる彼女は…呆れるほど綺麗だった。

風景が戻る。それと同時にいよいよ少年の呼吸も鼓動も止まろうとしていたその時、
無色の指輪が輝きを放ったのを軍勢の将兵たちが確認する。
その光がやんだ時、七万の軍勢を単騎で止めて見せた『英雄』の姿はどこにも無かった。


177 : 平賀才人&ランサー ◆WoXWsSrmTY :2018/04/14(土) 23:16:02 mabQK8bs0









―――神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守り抜く。







178 : 平賀才人&ランサー ◆WoXWsSrmTY :2018/04/14(土) 23:16:43 mabQK8bs0


瞑想を終え、瞼を開く。
どうやら瞑想の最中パスを通したマスターの夢を見ていたらしい。
自分を呼んだマスターの顔と夢の中の少年の顔を一致させながら、朱い髪の槍兵が立ち上がった。
赤を基調とした中華服に、精悍な顔立ち、鍛え抜かれた鋼の五体。
李書文。
それが武の神髄に至り、死してなお槍の英霊としてこの見滝原に現れた男の真名だった。


「終わったかい。槍兵の兄ちゃん」
「……ああ、マスターが後数十秒ほどで帰ってくるのでな」

サーヴァントとして世界に祭り上げられたランサーにとっても奇妙な感覚だった。
人以外の、文字通り”物”と言葉を交わすというのは。
そう、今大して広くない2DKマンションで彼に語りかけたのは人ではなく、『剣』なのだった。
遥かな昔、それこそ封神の世であれば言葉を介する武具も存在したと聞くが…
果たして、この片刃の大剣の様に柄と刀身を繋ぐ繋目の部分をガチャガチャ鳴らして、
べらんめぇ口調で流暢に喋っていたのだろうか。
そんな風に彼が遠い過去の武具達へ思いを馳せていると、玄関の方から「ただいまー」と主の帰宅を告げる声が響く。
ランサーが瞑想を終えてきっかり数十秒。目算通りであった。
八極拳の神髄に到達したランサーの知覚能力なら、魔術など使わずとも近づいてくる主の歩調を感じ分ける事など容易い事だ。

「お帰り、相棒」
「あぁデルフ、ランサーも。悪いけど今日も部屋で食ってくるよ」

返事もそこそこに青いパーカーを着た少年、平賀才人は一人と一本の前を通り過ぎる。
ハンバーガーチェーンの袋を掴む彼の両手は、痛々しいナニカに目覚めた中学生がするように包帯で巻かれていた。
表情は痛々しさとは裏腹の、どこか空虚というか、憂い気だったが。
そんな彼が部屋に入ったのを見計らって、「デルフ」と呼ばれた大剣はぽつりと言葉を漏らす。

「……元々戦争が嫌いだった相棒だ。
あの様子だともしかしたら、この戦いを放り投げるかもしれねぇな」

何故この大剣がそんなことを漏らしたか、意図は分からない。だがランサーの目から見ても自分の主には覇気というのもが一切感じられなかったのは確かだ。

デルフはそのままランサーに向けて「そうなったら兄ちゃんはどうするね」と続けた。
問われたランサーは顎に当て、「さて、な」と曖昧な返事を返す。



「確かに儂はサーヴァントであるが、それだけで平伏するほど人間ができておらんのでな。あの小僧(マスター)が戦う事を放棄すると言うのなら、代わりを探すほかあるまいよ」


179 : 平賀才人&ランサー ◆WoXWsSrmTY :2018/04/14(土) 23:17:31 mabQK8bs0


瞑想を終え、瞼を開く。
どうやら瞑想の最中パスを通したマスターの夢を見ていたらしい。
自分を呼んだマスターの顔と夢の中の少年の顔を一致させながら、朱い髪の槍兵が立ち上がった。
赤を基調とした中華服に、精悍な顔立ち、鍛え抜かれた鋼の五体。
李書文。
それが武の神髄に至り、死してなお槍の英霊としてこの見滝原に現れた男の真名だった。


「終わったかい。槍兵の兄ちゃん」
「……ああ、マスターが後数十秒ほどで帰ってくるのでな」

サーヴァントとして世界に祭り上げられたランサーにとっても奇妙な感覚だった。
人以外の、文字通り”物”と言葉を交わすというのは。
そう、今大して広くない2DKマンションで彼に語りかけたのは人ではなく、『剣』なのだった。
遥かな昔、それこそ封神の世であれば言葉を介する武具も存在したと聞くが…
果たして、この片刃の大剣の様に柄と刀身を繋ぐ繋目の部分をガチャガチャ鳴らして、
べらんめぇ口調で流暢に喋っていたのだろうか。
そんな風に彼が遠い過去の武具達へ思いを馳せていると、玄関の方から「ただいまー」と主の帰宅を告げる声が響く。
ランサーが瞑想を終えてきっかり数十秒。目算通りであった。
八極拳の神髄に到達したランサーの知覚能力なら、魔術など使わずとも近づいてくる主の歩調を感じ分ける事など容易い事だ。

「お帰り、相棒」
「あぁデルフ、ランサーも。悪いけど今日も部屋で食ってくるよ」

返事もそこそこに青いパーカーを着た少年、平賀才人は一人と一本の前を通り過ぎる。
ハンバーガーチェーンの袋を掴む彼の両手は、痛々しいナニカに目覚めた中学生がするように包帯で巻かれていた。
表情は痛々しさとは裏腹の、どこか空虚というか、憂い気だったが。
そんな彼が部屋に入ったのを見計らって、「デルフ」と呼ばれた大剣はぽつりと言葉を漏らす。

「……元々戦争が嫌いだった相棒だ。
あの様子だともしかしたら、この戦いを放り投げるかもしれねぇな」

何故この大剣がそんなことを漏らしたか、意図は分からない。だがランサーの目から見ても自分の主には覇気というのもが一切感じられなかったのは確かだ。

デルフはそのままランサーに向けて「そうなったら兄ちゃんはどうするね」と続けた。
問われたランサーは顎に当て、「さて、な」と曖昧な返事を返す。



「確かに儂はサーヴァントであるが、それだけで平伏するほど人間ができておらんのでな。あの小僧(マスター)が戦う事を放棄すると言うのなら、代わりを探すほかあるまいよ」


180 : 平賀才人&ランサー ◆WoXWsSrmTY :2018/04/14(土) 23:18:39 mabQK8bs0






何故か置いてきたはずのノートパソコンの前で、久々に大好物だったてりやきバーガーを食べる。
懐かしいソースの味が鼻を突き抜けて、何故だか目頭が熱くなった。
マルトーのおっさんやシエスタの料理も美味かったけど…それでもこのジャンクな味はハルケギニアにはなかったものだ。
俺は主人であるルイズの手によって召喚された異世界ハルケギニアから、
一応、日本に帰ってこれたらしいというのを一つしかない月を見て気づいた。
らしい、というのはここが本当に俺の住んでいる日本じゃないかもしれないという事だ。
俺が元々住んでいた日本には見滝原なんて町は無かった。
寂れた街なら単に俺が知らなかっただけかもしれないが、ここまで発展していて、変わった街を知らないのはおかしい。
そして最も変なのは行方不明だったはずの俺が昨日までこの見滝原にある学校に通っていたことになっている事だ。
住所や通っている高校なんかの情報は勿論、周囲の人間の認識や月を見て気づくまで俺自身ハルケギニアの事なんてすっかり忘れていた。
どうやら記憶を魔法か何かで弄られて、その上アニメでよく出てくる平行世界とやらに放り込まれたらしい。
聖杯戦争なんて言う殺し合いのために。


「しかし聖杯戦争にソウルジェム、なぁ……」


卵に似た形の、ルイズとの結婚指輪代わりに偶然買った宝石がそんなものだなんて思いもしなかった。
ましてや聖杯戦争なんて願いを叶えるための戦争に巻き込まれる何て俺はおろかルイズですら予想もしなかっただろう。

「まぁ剣と魔法のファンタジーだってあったんだ、地球にも願いを叶えるための殺し合いぐらいあるのかもな……」

殺し合い。という単語から向こうで世話になったコルベール先生の手紙を思い出した。

『これから君は戦争へ行くんだ。多くの人の死に触れねばならんだろう…だが、慣れるな。
それが当たり前だと思うな。思った時、何かが壊れる。だから―――』

「戦に慣れるな。殺し合いに慣れるな。”死“に慣れるな、か……」

コルベール先生の手紙の内容を反芻しながら、俺は考えを巡らせる。
殺し合いに勝ってまで願いを叶えようとは思わない。

しかし、この聖杯戦争はチャンスでもある。
聖杯を取らなくてもこの宝石を持って生き残れば世界を渡る――帰る方法が見つかるかもしれない。
だが、ここで問題が出てくる。
一体どっちの世界に帰るべきなんだろうか。
前々から日本へは帰りたかったし、母さんの味噌汁がずっと飲みたかった。
でも、帰ったとして、ハルケゲニアの事は、どうなるのか。
いや、ハルケギニアの事は本当はどうでもいい。でも俺にとって重要なのは向こうで友達になった奴らや、ルイズの事だった。
俺の小さな可愛いゴシュジンサマは今、どうしてるだろう。アルビオン軍から無事逃げきれただろうか。
どんな事も知っている目の前の機械の箱も、それだけは教えてくれなかった。

「…ま、この世界から抜け出しても、その先が日本とは限らねーよな。
ここへ来る前いた場所の事を考えればハルケギニアに戻る可能性の方が高いんだ」

てりやきバーガーの最後の一口を食べて、またパソコンを少し弄る。
これは俺がハルケギニアに呼ばれた時に持っていたノートパソコンだ、間違いなかった。
電池切れになってからはルイズの部屋に仕舞ってあったはずなのになぜかこの部屋にあった。
電波が飛んでいるこの世界なら充電すればインターネットも勿論できる。
だが、メールだけは繋がらなかった。
俺は地元から通えば遠距離通学になるので、この見滝原に一人暮らししているということになっている。
だから、その設定に合わせて両親から毎日メールが来ていた。だが、何故か開けない。
開こうとしても「失敗しました」の一点張りだ。
まるで子供の頃ゲームのヒロインのスカートを覗こうとしたらヒロインのスカートの中まで作りこまれてなくて、真っ黒な空間が広がっていた様に。
それでも諦めきれなくて毎日こうやって時間があれば試している。
カチカチ、と一番新しいメールをダブルクリック。
まぁ、開くとは思っていなかったが…次の瞬間、俺は目を見開く。
メールが、開いたのだ。今まで決して開かなかったメールが。
完全に不意を打たれた形になり、俺は唖然としながら画面をスクロールした。
メールにはこう書かれていた。


181 : 平賀才人&ランサー ◆WoXWsSrmTY :2018/04/14(土) 23:19:37 mabQK8bs0

『才人へ。
あなたがいなくなってからそろそろ一年になります。今、どこにいるのですか?
いろんな人に頼んで、捜していますが、見つかりません。
もしかしたら、メールを受け取るかもしれないと思い、料金を払い続けています。
今日はあなたの好きなハンバーグを作りました。
タマネギを刻んでいるうちに、なんだか泣けてしまいました。
生きていますか?それだけを心配してます。他は何もいりません。
あなたが何をしていようが、かまいません。ただ顔を見せてください』



それは、この世界で用意された平賀才人の母ではなく、本物の、元の世界の母からの手紙だった。
才人はそれを悟った時、瞼から熱いものが零れ落ちるのを感じた。
猛烈な郷愁の念が彼を襲い、「帰りたい」という感情が渦巻く。
だが、その度に脳裏に浮かぶのは自分が好きになった少女の姿。

―――忘れないで、アンタは私の使い魔なんだからね。


「―――俺は」


才人は震える指で返信のメールを打ち込んだ。


182 : 平賀才人&ランサー ◆WoXWsSrmTY :2018/04/14(土) 23:21:04 mabQK8bs0






嗚咽が止んだ。
魔剣デルフリンガーとランサーは、その事を同時に感じとった。
その予想は正しく、程なくして部屋から一人と一本の主(マスター)である少年現れる。
少年の瞼は僅かに朱かった。だが、気にする様子もなく、赤の槍兵は言葉を投げる。

「さて、マスターよ。良い知らせだ」
「聖杯戦争ってのが、始まるんだろ」
「然り、そして始まってしまえば今までの様にのんびりとはしておれん」


そこで、どうするかを聞いておきたい、とランサーは続けた。
問われた才人は目の前の男をじっと見つめて、

「俺は殺し合いなんてやっぱり御免だ」
「では聖杯戦争を放棄すると、マスターは儂に願いを諦めろというのだな?」
「………あぁ、そうだ。でも、帰るためには戦わなくちゃいけない。それにはランサー、お前の力が必要だ」

そう言って、才人はバッと頭を下げた。

「俺にはまだやらなきゃいけないことが残ってる。だからこんなところじゃ死ねないんだ。
一緒に聖杯ってのを目指してはやれねーけど……力を貸してくれ」

ともすれば聖杯を目指すサーヴァントであれば見限られてもおかしくない発言だった。
お前の願いなどどうでもよいが、自分が帰るために戦え、と言っているのだから。
それでも才人はハルケギニアの貴族たちの様に腹芸などできないし、彼に選択肢はこれしかなったのだ。
頭を上げる主を見てもランサーは表情を変えず、また何も言わない。
お喋りなデルフリンガーですら言葉を発さず、緊張の時間が流れていく。
そしてたっぷり三分はたった頃。

「呵々、少し意地が悪かったか。いいだろう、承服した。顔を上げろ、才人よ」

先ほどの無表情とは打って変わって、ランサーは朗らかですらある雰囲気で声を上げた。

「……いいのか、あんたにも願いってのがあるんじゃないのか?」
「あれは嘘だ。願望などこの肉があれば事足りるのでな。元より儂の分が余るのなら、お主にくれてやるつもりだった」
「何だ、騙しやがって。でもだったらあんた何のために呼ばれて来たんだよ」
「なに、この街には戦士がたくさんいる。となればどちらが上位か比べたくなるのが人情だろう?」

とどのつまり、目の前の朱い男はこんな所まで腕試しするために来たのだという。
方針について衝突しないサーヴァントを引けたのは望外の幸運だったが、才人は少し呆れた。


183 : 平賀才人&ランサー ◆WoXWsSrmTY :2018/04/14(土) 23:22:02 mabQK8bs0

「でも、兄ちゃん。相棒が戦いそのものを放棄してモグラみてーに引きこもるっていったら殺すつもりだったろ」

と、ここでここまで沈黙を保っていたデルフが突然ダイナマイトを放り込み、才人の血の温度が一気に下がる。

「さて、今の段階だとそこまではな。マスターの鞍替えを考えてはいただろうが…
どの道この街にいる以上戦からは逃れられん、他の主従に殺されるくらいなら
儂の手で葬ってやるとのが慈悲と考えたかもしれんが」
「おいおい」
「今はそんなつもりはない。既に意味のない仮定だ。
召喚の際に名乗りは済ませたが、この神槍李書文。存分にお主の槍として振るうがいい」
「…それなら、アンタの腕っぷしを見込んで早速一個頼んでいい?」

才人は掌にまいた包帯を外し、どこから買ってきたのかポケットからごそごそとメリケンサックを取り出して両手につける。
すると、それと呼応するように令呪のある右手の逆、左手に刻まれた『ガンダールヴ』のルーンが輝きを放つ。

「相棒、心臓が止まる前にここへ来れてよかったさね。
お陰で使い魔契約もお役御免といかねぇで、ガンダールヴのルーンも持ち越しと来た。
だからそんな玩具使わずに俺っちを―――」
「日本でお前下げて歩いてたら捕まっちまうんだよデル公…ちゃんと連れてってやるから安心しろって」

そう言って才人はこの日のために貯金を切り崩して買ったスポーツバッグにデルフを放り込む。

「よし。準備もできたし、一つ稽古でもつけてくれよランサー」

才人は元々嫌いな人物で真っ先に体育教師をあげるインドア派だったが、ハルケギニアに来てからは頻繁に素振りをやっていたし、今はとにかく何かに撃ち込んでいたかった。
それに、どうせハルケギニアに帰るならきっともっと強くなってからの方がルイズやみんなの役に立つはずだと思ったのだ。
歴史に名を遺した拳聖に鍛えてもらえるのなら、これ以上の鍛錬はない。

「……仕方あるまい、では突きから教えてやるとするか」

ランサーもそんな彼の思いを汲んでか、本来なら鍛えたいなら他を当たれとにべもなく断るところだったが、二つ返事で快諾する。
実を言えば、瞑想時に見た才人の単騎掛けを見たことで彼の中の餓狼が戦う事を望んだのが大きいのだが。
ランサーの返答にそうこなくっちゃなと才人が快哉を上げ、デルフが入ったスポーツバッグを担ぎ、ランサーと連れ立って外へと向かおうとする。
と、そこで何かを思い出したようにデルフをランサーに預け、「先に出といてくれ」と踵を返す。
そして、パソコンのある部屋に戻り、カチカチと操作したが…今までと同じく、新たにメールの画面を開くことはできなかった。

「マスター!何をしている」

複雑な表情をしていた才人だったが、ランサーの声に慌てて返事をして、再び玄関に向かう。
開いたメールの画面が消えないよう、パソコンは付けたままで。
…暗い無人の室内で光を放つノートパソコン。そこには母からのメールと、その返信内容が映されていた。


184 : 平賀才人&ランサー ◆WoXWsSrmTY :2018/04/14(土) 23:23:11 mabQK8bs0


『母さんへ。
驚くと思うけど。才人です。黙って家を出てしまい、本当にごめんなさい。
いや、本当は黙って出た訳じゃないけど…、言っても理解されないと思うので、そうゆうことにしておきます。とにかく、ごめんなさい。
メールありがとう。心配してくれてありがとう。俺は生きてます。無事ですから、安心してください。
俺は今、色々大変で俺自身混乱していることが多いです。
帰るのは、今やってることが解決しても当分先になりそうです。
俺の大切な人たちが俺の力を必要としてくれているから。
でもいつか帰ります。お土産を持って、帰ります。だから心配しないでください。
父さんやみんなによろしく伝えてください。
母さんありがとう。本当にありがとう。心配してくれてありがとう。
結構大変だけど、俺は幸せです。
それではまた。平賀才人』


185 : 平賀才人&ランサー ◆WoXWsSrmTY :2018/04/14(土) 23:23:58 mabQK8bs0

【クラス】
ランサー

【真名】
李書文@Fateシリーズ

【ステータス】
筋力B 耐久C 敏捷A 魔力E 幸運E 宝具-

【属性】
中立・悪

【クラススキル】
対魔力:D
魔術に対する耐性。一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

【保有スキル】
中国武術(六合大槍):A+++
中華の合理。宇宙と一体になる事を目的とした武術をどれほど極めたかの値。修得の難易度は最高レベルで、他のスキルと違い、Aでようやく“修得した”と言えるレベル。+++ともなれば達人の中の達人。
ランサーとして召喚されているが、槍術含めて八極拳を極めている。

絶招:B
李書文が学んだ八極拳の奥義。対人における、一つの究極とも言える。
例え自分の動きが読心、未来予知などで予測されていたとしても、必ず技を必中させ、十全の威力を発揮させる。

圏境:B
気を使い、周囲の状況を感知し、また、自らの存在を消失させる技法。 極めたものは天地と合一し、その姿を自然に透けこませる事すら可能となる。今回はランサーとして召喚されたため、完全な気配遮断ほどには到達していない。

【宝具】
『神槍无二打』
ランク:- 種別:対人宝具 レンジ:2〜5 最大捕捉:1

李書文の剛打は、牽制やフェイントの為に放ったはすの一撃ですら敵の命を奪うに足るものであった。
「李書文に二の打ち要らず(神槍无二打)」。神槍无二打は、そんな彼の称号が力夕チになったものである。
自身の気で周囲の空間を満たし形成したテリトリーで相手の「気を呑む」ことで相手をショック死させる。
槍を持つ分レンジが幅広いことに加え、壁に止まった蝿を、壁を傷つけずに貫く等精密動作性も素手での一撃に比べなんら見劣りしない。

【Weapon】
『六合大槍』
李書文が生前愛用した、5mを超えるほど長大で重い大槍。

【人物解説】
『神槍』の異名を持つ、李氏八極拳の創始者。
「一撃で相手の頭を胴体にめり込ませた」、 「壁にとまったハエを、壁を傷つけることなく槍で打ち落とした」などの逸話を持つ。
また、秘奥義である『猛虎硬爬山』の牽制の一撃で相手がことごとく絶命し、 二撃目以降の詳細が不明なことから、『二打不要』の異名も持つ。
技の伝授を断られるほどに苛烈な気性だったが、 家族や身内には優しい性格をしていたという。
今聖杯戦争では肉体的全盛期である青年時代の李書文がランサークラスで召喚された。

【サーヴァントとしての願い】
この神槍がどこまで今聖杯戦争で通じるか試す。


186 : 平賀才人&ランサー ◆WoXWsSrmTY :2018/04/14(土) 23:24:41 mabQK8bs0

【マスター】
平賀才人@ゼロの使い魔

【マスターとしての願い】
ハルケギニアへの帰還及び世界を行き来する方法がないか探したい。

【weapon】
魔剣デルフリンガー:
意思を持った片刃の長剣。口はすこぶる悪いが6000千年生きる魔剣なだけあって「外見を錆びた剣に変えたり戻したり出来る」、「攻撃魔法を吸収し、また吸収した分だけガンダールヴの体を操る」、
「触れた剣士の力量や武器の情報を読み取る」などの特殊能力を有している。


【能力・技能】
神の左手ガンダールヴ:
武器として用いることさえできれば、あらゆる物を使いこなせる能力。
具体的には、武器に触れることで構造・作動方法が瞬時に理解でき、零戦や戦車でさえも何不自由無く操縦することができる。
本来ならば使い魔の死亡と共に左手に刻まれたルーンが消え、能力が喪失するはずであったが、才人の心臓が止まるまえにソウルジェムによって治療・拉致されたため、ガンダールヴのルーンも問題なく機能する。

【人物背景】
異世界ハルケギニアの貴族、ルイズの「使い魔」。物語開始時は17歳。平凡な高校生だったが、ルイズの召喚魔法により「使い魔」として東京からハルケギニアへ召喚された。身長は172cm。
好物はテリヤキバーガー、嫌いなものは体育の先生、特技はアクションゲーム。
原作七巻『銀の降臨祭』(またはテレビアニメ第二期最終話、「さよならの結婚式」)にて七万の軍勢に特攻した直後より参戦。

【方針】
ルイズの元へと帰る。


187 : ◆WoXWsSrmTY :2018/04/14(土) 23:25:01 mabQK8bs0
投下終了です


188 : ◆cgWdPX4osQ :2018/04/14(土) 23:51:03 v.jQvACg0
投下乙です。
自分も投下させて頂きます


189 : 堕天使たちの挽歌 ◆cgWdPX4osQ :2018/04/14(土) 23:51:49 v.jQvACg0





どれだけ生きれば、癒されるのだろう―――







曇天の空が墓場を覆う。
無数に立ち並ぶ墓石は暗雲の影に染められる。
吹き流れるのは、仄暗く淀んだ風。
静寂と仄暗い闇が微かに入り交じる空間に、男は佇む。

ぼさぼさに乱れた黒髪。
長身痩躯の体格。
紺色のスーツ。
眼差しは影を落とし。
口元は儚げに笑みを溢している。
何かを悟って、自嘲するかのように。
男―――スパイク・スピーゲルは、墓石の前に立ち尽くしていた。

墓石に刻まれた名を、スパイクはただ静かに見つめる。
それは此処に眠っている筈のない女の名。
それはかつて彼が愛し合い、共に夢を見た女の名。
それは彼の目の前で命を落とした、女の名。
添えられているのは赤い花束。スパイクが手向けた、弔いの品だ。
スパイクは毎週墓場に通い続け、彼女の墓石へと花束を置いていた。
何も気付かなかった。今日に至るまで、その違和感に。

彼女は、ジュリアは逝った。
スパイクの腕の中で、悪い夢から醒めた。
『此処に葬られているはずがない』。
荒廃している筈の地球で、彼女が眠っているはずがなかった。
それに気付くこともなく、スパイクは『日常』を送り続けてきた。

だが、それももう終わった。
スパイクは己の記憶を取り戻した。
スパイク・スピーゲル。それは賞金稼ぎであり、元マフィアであり、夢を見続けていた男だった。
そして今はこの聖杯戦争のマスターとして見滝原に存在している。
今に至るまでそれに気付かず、こうして夢を見続けてきた。
スパイクはそんな自分が滑稽で、自嘲するような笑みを溢していた。

血は流し尽くし、己の生を確かめて『終わった』筈だった。
だというのに、何事も無かったかのようにスパイクは生きている。
あの時の傷は一つもない。決死の戦いを挑んだ時の爪痕は、何処にもない。
―――とうとう『天国の扉』でも開いてしまったのだろうか。
そんな思考の最中、背後からの気配を感じたスパイクはゆっくりと振り替える。

そこに居たのは、一人の男。
漆のような黒衣を身に纏ったガンマンだった。
煤けた棺桶を紐で繋ぎ、傍らに置いている風貌は異様と言う他ない。
死神を思わせる出で立ちとは対照的な蒼い目はスパイクを真っ直ぐに捉える。
色素の異なるスパイクの両目は、黒衣のガンマンを静かに見据えた。


190 : 堕天使たちの挽歌 ◆cgWdPX4osQ :2018/04/14(土) 23:52:30 v.jQvACg0


「聖杯戦争、そしてサーヴァント……ね。とんだファンタジーだな」
「……そう思うのも無理はないが、紛れもない現実だ」


スパイクは己の脳内に刷り込まれた『聖杯戦争』の知識を咀嚼する。
ソウルジェムを手にしたマスター達が、サーヴァントを従えて競い合う。
そして突如現れた黒衣のガンマン、彼こそがスパイクの召喚したサーヴァント。
クラスはアーチャー。カウボーイと呼ばれ、西部劇まがいの生業で生きてきた己がまさか西部のガンマンを引き当てるとは。
奇妙な状況を前に、スパイクはフッと口元に笑みを浮かべる。

「いつも花を手向けていたようだな」
「ああ、そうらしい」
「そこに葬られているのは、誰だ」
「……女さ。昔馴染みと同じ名前のな」

アーチャーの問いに対し、スパイクは静かにそう答える。
此処に眠る女は、昔馴染みと同じ名前の女だ。
かつて共に夢を見ていた女ではない。
スパイクはそれを改めて認識する。

「花は、彼女の為か」
「死んだ女の為に出来ることなんてない。
 どうやら俺は、それを忘れてたらしい」
「……そうだな。弔いとは感傷の為にある」
「ああ。その必要も無くなっちまった」

彼女の墓へと通い、花を手向ける。
見滝原に住むスパイクはそれを欠かすことなく行い続けていた。
その行為の意味は喪われた。もう何の意味もない。
スパイク・スピーゲルは、己の記憶を取り戻したのだから。
虚構の平穏。偽りの日常。全てが、夢だ。
目を醒ました人間が、夢の続きを見ることは無い。
だから、もう此処に来ることは無いだろう。スパイクはただ、そう悟る。


「終わりだ。全部、墓に葬るさ」


夢に浸る時間は終わった。
夢から醒めた先にあるのは、現実だけだ。





191 : 堕天使たちの挽歌 ◆cgWdPX4osQ :2018/04/14(土) 23:53:38 v.jQvACg0



『天国』を追われた天使は悪魔になるしかない。
ある男がそう言った。男は、もういない。
別の血を求め、彷徨い続けた男だった。
かつてのスパイクもそうだった。
その血を流し尽くし、それでも生きていることを確かめた。
その果てに、スパイクは――――。

果てしない道筋の結末。
続く筈のない終焉。
しかし、その先に続いてしまった。
スパイク・スピーゲルは、この見滝原に呼び寄せられた。
聖杯戦争のマスターとして存在することになってしまった。
奇跡も、魔法も、あると言わざるを得ないのかもしれない。
求めてもいなかった光を前に、スパイクは諦観のような笑みを浮かべてしまう。


「夢ならとっくに見終わったさ」


墓場から帰宅した頃、外では雨が降り注いでいた。
雨粒をぼんやりと見つめながら、スパイクは窓辺で椅子に座りながら語り出す。
思えば、あの日もこんな雨が降っていた。
愛した女が散った日も、雨が止むことはなかった。
スパイクは記憶を幾度となく反復しながら、己の過去を静かに紡ぎ出す。
アーチャーは壁に寄り掛かり、己がマスターの話に耳を傾ける。

「醒めない夢から醒めて、俺は確かめた。
 自分が、本当に生きているのかどうかを」

スパイクの脳裏に浮かぶのは、一人の男だった。
ビシャス。かつてスパイクが背中を預け、そして袂を分かった男。
同じ女“ジュリア”を愛し、最後は決着を付けた宿敵/相棒。
目を覚ましたスパイクは過去の因縁に生きた。
獣の血を流し尽くし、夢の世界に逃げ続け、その果てに『戦うこと』を選んだ。
過去を語ることなんて、滅多に無いはずだったのに。
全てを終わらせ、肩の荷が下りたせいか―――スパイクは己の身の上をアーチャーに打ち明けた。


「答えは見つけたのか、スパイク」
「……ああ。『望み通り』に」


過去に立ち向かったスパイクは、全てを終わらせた。
刹那の合間に、己の生を確かめられた。
ジュリアは逝っちまった。終わりにしよう。
その言葉を合図に、スパイクはビシャスとのケリを付けた。
ビシャスは死んだ。いつまでも見続けていた長い夢が、そのとき本当の意味で終わりを告げた。

「やれるだけのことはやったさ。その先のことなんて、考えてもみなかった」
「だが、お前は今もこうして生きている」
「そうさ。何万回でも生きちまう猫みたいに、死に損なったのかもな」
「命を拾えたのなら、その先があるということだ」

己を卑下するようなスパイクの一言に、アーチャーが反論する。
スパイクは語る口を止めて彼の方を見る。


「お前が此処にいるのは死に損なったからじゃない。生きる資格を掴んだからだ」


アーチャーの蒼い眼差しがスパイクを真っ直ぐに見据えた。
その黒衣とは不釣り合いなほどに純粋な瞳は、強い意思と共に目の前のマスターへと向けられる。
そして彼は語る。己を死に損ないと蔑むマスターを、諭すように。


「過去を清算した人間は、やり直せる。
 夢から醒めたなら、新たな日々を望んだっていい。
 例え愛を失った者だろうと―――未来は存在する」


そう語るアーチャーの表情は、真剣そのものであり。
同時に、思うところがあるように複雑な素振りを見せていた。


192 : 堕天使たちの挽歌 ◆cgWdPX4osQ :2018/04/14(土) 23:55:39 v.jQvACg0
過去に決着を付けた者には、やり直す資格がある。
夢を終わらせたなら、現実を生きることが出来る。
アーチャーが告げるその意思は、スパイクにとって単なる慈悲に彩られた言葉には見えなかった。
まるで自分自身がそうであったかのように、アーチャーは語っている。
己もまた、過去にけじめを付けてきた―――そう言わんばかりの態度だった。

「俺に願いは無い。だが、お前の背中を後押しするのも悪くは無い」
「……そうかい。物好きもいるもんだ」
「物好き、か。きっとその通りだろうな」
「どうして俺に拘る。サーヴァントだから、って訳でもないらしい」

スパイクは問いかけた。
サーヴァントもまた聖杯に用がある。
己の願いのために召喚に応じるのだという。
だというのに、アーチャーは願いを持たないと断言した。
奇妙な輩だった。同時に、どこか自分と似通った何かを持っている。
そんなアーチャーの思惑を知ろうとした。


「お前の目を見たときに思った」


アーチャーは少しの間の後、答えた。


「夢から醒め、命ひとつで過去に立ち向かった……かつての俺と同じ目をしている」


―――黒衣のガンマンの眼に、微かな哀愁が籠った。
スパイクはハッとしたようにアーチャーの眼を見つめた。
己の中に芽生えていた疑念が確信に変わったように。
アーチャーという男が抱える過去を、スパイクは感じ取った。

同時に、スパイクは思う。
この男は自分と同じである、と。
獣の血を流し。
愛を見出だし、それを失い。
醒めない夢から目覚め。
そして、過去との決着を付けた。
アーチャーの眼差しは、全てを物語っていた。
それは、スパイクの心境に強烈な印象を刻み付ける。


「理由と言えるのは、それくらいだ」


ほんの僅かな、微笑。
語り終えたアーチャーは初めての笑みを見せる。
少しばかり呆けたように彼を見ていたスパイクだったが。
いつの間にか、アーチャーに釣られるように笑っていた。


「……解ったよ。よく解った」


193 : 堕天使たちの挽歌 ◆cgWdPX4osQ :2018/04/14(土) 23:56:42 v.jQvACg0
気が付けば、雨も少しずつ止み始めていた。
落ち着き始める空模様を静かに眺めながら、スパイクは思う。

聖杯戦争、それは奇跡を巡る戦いだ。
勝利を重ね、英霊の魂を掻き集めた者の前に願望器は顕現する。
今のスパイクに願いは無い。元々奇跡とやらに縋る性分でもなかった。
だが、そんな彼にチケットが与えられた。
サーヴァントはスパイクの未来を望み、背中を押す意思を示した。

端から聞けば馬鹿げた話だとスパイクは思った。
まさか何も願いを持たず、何も願っていなかった男のために戦う意思を示すとは。
笑い飛ばしてもいいくらいだ。
だというのに、アーチャーには奇妙な親近感のようなものを抱いていた。
それは彼が『同じもの』を背負い、けじめを付けてきたからなのか。

―――奇跡も魔法も信じるつもりはなかった。
―――俺が生きてきたのは、そういう世界だった。
―――だが、全てを終わらせた俺の前に奇跡は現れた。

スパイク・スピーゲルは思う。
自分は死人だ。生きたからこそ、死を迎えた。
やることはやりきったし、後悔だって無い。
みっともなく生き足掻くつもりもなかった。
しかし、こうして命を拾った。
そして、未来を肯定する男と出会った。

ジュリアは逝った。
ビシャスも逝った。
過去は終わり、ビバップ号とも別れた。
もはや“今“との縁も無くなっていた。
それでも、まだ機会をくれるというのなら。
全てを終わらせた後の道標を示すというのなら。
もう少しばかり、『生きてみる』のも悪くないかもしれない。







泥の河に浸かった人生も悪くはない
苦しみの後に希望が湧くのなら……







【クラス】
アーチャー

【真名】
ジャンゴ@続・荒野の用心棒

【属性】
中立・中庸

【ステータス】
筋力D 耐久D 敏捷C++ 魔力E 幸運E 宝具D++

【クラススキル】
単独行動:B
魔力供給無し・マスター不在でも長時間現界していられる能力。
Bランクならば二日程度の現界が可能。

対魔力:E-
魔力への抵抗力は殆ど無い。
魔術によるダメージを微かに減少させる程度に留まる。

【保有スキル】
射撃:A
銃器による早撃ち、曲撃ちを含めた射撃全般の技術。

クイックドロウ:A
射撃の中の早撃ちに特化した技術。
凡百のガンマンを遥かに凌駕する速さで銃を抜くことができる。

戦闘続行:D+
往生際の悪さ。決定的な致命傷を受けない限りしぶとく生き延びる。
アーチャーの場合、例え両手が潰されようと執念で戦い続ける。

殺戮の用心棒:A+
『ジャンゴ』―――その名は各地に轟き、模倣され、いつしか異譚の開拓史を象徴するシンボルとなった。
正道の開拓史とは異なる信仰を得た真名が昇華されたスキル。
敵対象が用いる「銃器」の与ダメージ判定・命中判定にマイナス補正を与え、更には銃器が備える特殊能力を大幅に劣化させる。
銃の時代に君臨した真名の力によって、アーチャーは銃撃戦において絶対的な有利を得る。


194 : 堕天使たちの挽歌 ◆cgWdPX4osQ :2018/04/14(土) 23:57:37 v.jQvACg0
【宝具】
『復讐の機関砲(ガトリング・ガン)』
ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:1~60 最大補足:300
世界初の機関銃、すなわち回転式機関砲である。
アーチャーが所持する棺桶の中に保管される形で常に実体化している。
特殊な能力は何一つ持たない。敵軍勢の掃討だけを目的とする殲滅武装である。
魔力の続く限り弾丸の装填が可能。

『死人よ、土に還るべし(エイメン)』 
ランク:D++ 種別:対人宝具 レンジ:1~30 最大補足:6
死を纏いし男の最後の排撃。宿敵を葬り去った殲滅の銃撃。
重傷を負ってなお戦いへと赴き、死地にて勝利を掴んだ伝承が宝具と化したもの。
拳銃を構えて超高速のファニングショットを繰り出し、敵対象にありったけの弾丸を叩き込む。
放たれる銃弾は全て強制クリティカルヒットの効果を持つ他、ダメージ計算時には対象の耐久値をEランク相当として扱う。
更にアーチャーが極限の窮地にまで追い詰められた際には銃弾に即死効果が付与される。

【所持品】 
拳銃、棺桶

【人物背景】 
「続・荒野の用心棒」の主人公。黒衣を纏い、棺桶を引きずる賞金稼ぎ。
恋人を元南軍のジャクソン少佐に殺された過去を持つ。
ジャクソン少佐とメキシコ人のロドリゲス将軍の二大勢力が争う町に訪れ、人生をやり直すための金を掴むべく強かに立ち回る。
その過程で娼婦のマリアと恋に落ちるも、僅かな過ちから全てを失った上に深刻な傷を負う。
もはや命ひとつしか残されていない状況だったが、それでもマリアと人生をやり直すことを望んだジャンゴは最後の戦いへと赴く。
そして怨敵であるジャクソン少佐達と墓場で相対し、決死の攻撃によって彼らを仕留めた。

なお「続・荒野の用心棒」という邦題ではあるが「荒野の用心棒」とは何の関係もない。
また本作のヒット以降、マカロニ・ウエスタン(イタリア製西部劇)で『ジャンゴ』という名前の主人公が濫造されるようになったという。

【サーヴァントとしての願い】 
マスターの行く末を見届ける。彼が奇跡を望むのならば、それを掴み取るための後押しをする。
アーチャー自身は聖杯に託す願いを持たない。
過去に決着を付けることも、人生をやり直すことも、生前に成し遂げた。


【マスター】 
スパイク・スピーゲル@カウボーイビバップ

【マスターとしての願い】 
夢はもう見終わった。

【能力・技能】 
ジークンドーの達人であり、卓越した格闘能力を持つ。
また射撃にも優れる。

【人物背景】 
宇宙をまたにかけるカウボーイ(賞金稼ぎ)。
だらしない振る舞いが目立つものの、常に飄々と軽口を叩く不敵な性格の持ち主。
かつてはチャイニーズマフィアに所属し、ビシャスと相棒のような関係を構築していた。
しかしビシャスの恋人ジュリアと恋に落ちたことをきっかけに因縁が生まれることになる。

作中終盤でジュリアと再会するも、ビシャスの追手との逃避行の際に彼女を喪う。
醒めない夢から醒めたことを受け入れたスパイクは自らの過去に決着をつけることを選ぶ。
その後激しい戦いの果てにビシャスと激突、彼を仕留めた後にスパイクは倒れる。

【方針】
聖杯戦争を通じて、自分の辿り着く果てを見極める。
基本はサーヴァントを倒すが、殺意を以て襲ってくるならマスターも倒す。


195 : 名無しさん :2018/04/14(土) 23:57:56 v.jQvACg0
投下終了です


196 : ◆T9Gw6qZZpg :2018/04/15(日) 14:13:34 mx9KTcHw0
投下します。


197 : ◆T9Gw6qZZpg :2018/04/15(日) 14:14:50 mx9KTcHw0
 「絆」という字は、犬吠埼珠にとって比較的馴染みのある漢字であった。
 左側に糸。右側に半分の半、のような字。画数もそれほど多くないため、書き易い。
 意味は、簡単に言えば仲の良いこと。一般的に考えても良いものであることがわかるため、覚えることに抵抗も無い。
 そして、無才さと愚鈍さのせいで触れ合う人々の悉くに疎まれるだけの人間である珠が、仲の良いこと、好ましい人間関係というものを身近に感じられている事実自体が、数奇な運命の賜物であった。

 犬吠埼珠が『魔法少女』に変身したことを機に、彼女はある小さなグループの一員となった。
 グループ内での珠の立場は相変わらず弱いし、人目を気にして怯える性分が都合よく変わったわけではない。
 でも、別に良かった。
 連れられる形で遠くへ出かけたり、生産性があるわけでもないお喋りに勤しんだりするだけの、社会に生きる誰もが享受するような何気ない時間の中にいる、友達と一緒の自分。好きな人達に見放されない自分。
 それこそが、噛み締めたかった幸せな姿、夢見た自分自身だったのだ。

 しかし、手にした幸福は永遠などではなかったのだと知らされる時は、あまりに早く訪れた。
 『魔法少女』同士の、命の奪い合いが始まった。
 グループの面々が、他の誰かを積極的に死に追いやるための戦いを仕掛けた。
 今後も一緒に過ごすはずだった友達の一人が、グループの友達全員に嵌められて死んだ。
 グループでまた同じように殺し合いに臨み、殺されて殺して殺された。
 あんなにいた珠の友達が、気付けば残り一人だけ。
 こんなことになるに至るまで、珠は何をしていたのだろうか。
 いや、何もしていなかった。
 状況にただ流されては使い走りにされ、友達が死に向かおうとするのを知りながら止めもしなかった。
 人殺しの片棒を担ぎながら、気持ちの上では傍観者。集団に辛うじてしがみつくだけの臆病者。
 そんな、惨めで卑しい自分を変えようと決断したためか。もしくは単純に友達を助けたかったのか、ただの無我夢中か。
 自分自身すら理解しきれないまま、その瞬間に珠は身体を突き動かし、今度こそ確実に自らの手で人を殺した。
 罪に手を染め、ようやく珠は友達を守ることに成功したのだ。
 そして、達成感にも罪悪感にも満足に浸ることすらないままに、珠は守った友達の手で命を絶たれた。
 大事な友達だと思っていたはずなのに、その真意を最期まで全く理解できず珠は終わったのだった。

 絆という字は簡単だ。手と手を取り合い、互いが互いを好きであることを指す。
 それなのにどうして、現実には絆を体現することが困難なのだろうか。
 世界がどうとか、平和がどうとかなんて大層な話はしていない。
 ただ、好きな人達に付き添っていたかっただけなのに。






198 : ◆T9Gw6qZZpg :2018/04/15(日) 14:16:09 mx9KTcHw0


 彼は、絆の力を信じる者だ。
 共に笑い合える誰かと歩んでこそ、光輝く未来は切り開かれるのだと。
 恐れ、奪われ、脅かされるだけの人民に胸を痛め、故に彼は立ち上がった。
 絆の力で未来を掴むために、国中へ暴威を振るい圧政を強いる覇王を討ち取った彼は、さながら覇王に代わり正しく国を治める裁定者(ルーラー)としての姿を表明するかのようで。

――貴様は昔からそういう奴だった……己の野望を、夢という言葉で飾り立て、秀吉様の天下を穢したのだ!
――それがワシの決意だ。三成、お前にも秀吉にも、天下は譲らない!

 しかしある者にとって、彼は憎悪以外の感情を抱きようの無い仇敵であった。
 覇王を慕っていたその者は、即ち覇王との間に築いていた至高の絆を、絆という大義名分の下に破壊された。
 この事実は、絆を信じる彼にとっては紛れもなく友であったその者との絆もまた破綻した、他ならぬ彼に破綻させられてしまったことを意味していた。

――屈するものか。貴様にだけは、決して……!
――たとえ一人になろうとも、死にゆくその寸前まで、貴様を許さない!

 友は、彼の犯した罪を許さない。
 絆の素晴らしさを説きながら絆を脅かす、彼の理想の矛盾を見逃さない。

――宣言しろッ! 掲げた絆は嘘八百と! そして秀吉様に侘びを入れろ!
――それだけはならない! ワシは決して絆を捨てない!

 友の発する言葉は、既に彼との対話ではなく糾弾のための手段でしかない。
 彼の発する言葉は、既に友との和解など目的としてはいない。
 拗れて歪んだ絆は、もう二度と元には戻らない。

――情けのつもりか! 哀惜のつもりか!
――ならば初めから秀吉様を奪うなぁあッ!

 過去の一点で決別した二人が、互いに譲れぬ激情を刃に、拳に乗せて叩きつけ合う。
 親愛する者との未来を奪った仇が、その報いを受けて生命を停止させる瞬間を目指して。
 絶望に堕ちた友に残された生命すら踏み躙った先にある、希望に溢れる未来を目指して。

――消滅しろ家康……徳川家康ーーッ!
――お別れだ三成……石田三成ーーッ!

 その日、戦乱の時代が終わりの時を迎え。
 また一つ、かけがえのない絆が砕け散った。



 彼は、絆の力の可能性を今も変わらず信じている。
 真っ直ぐに、頑なに、狂おしいまでに。
 バーサーカーは、信じている。






199 : ◆T9Gw6qZZpg :2018/04/15(日) 14:17:08 mx9KTcHw0



 犬吠埼珠は、学の無い少女である。
 しかし曲がりなりにも日本で十数年の人生を送った人間として、日本史上の偉人の中でも著しく有名な部類であるなら、何人かの名前くらいは知っている。
 そして珠の知る数少ない「私でも知っている偉い人」の名前の中には、「徳川家康」も含まれている。

「成程。お前達のよく知るワシも、一つの時代を築いたという意味ではワシと同じなのだな」

 珠の通う中学校の図書室から借りてきた中高生向けの伝記本を読みながら、ふむふむと感心する青年は、バーサーカーの名を冠してたまのサーヴァントとなった男だった。
 歴史の授業に使う資料集に掲載されていた人物図の顔を思い起こし、目の前のバーサーカーと見比べる。年齢の違いや画風の問題があるとはいえ、やはり実物の方が随分と端正な顔付きだというのが正直な感想だった。
 そう思うから、尚更分からなくなる。珠にとっての既知である「徳川家康」は、本当に目の前の彼と同一人物なのだろうか。
 どういうわけか、バーサーカーの姿を初めて見たその瞬間、彼の真名が何であるか感覚的に察しが付いた。勘の鈍い珠にしては信じがたいことではあるが、事実であった。だからこそ、余計に不可思議さが募るばかりであった。
 そして、仮にバーサーカーが本当に珠の知る偉人であったとして、果たしてどのように向き合えばよいというのか。
 時代も国も背負えないし、背負う気も無い。バーサーカーの成した功績と比べるとあまりにも些細なことしか考えられない、いつでも下っ端扱いだった珠が、バーサーカーを手駒として使うなどと。
 血で血を洗う戦国の時代を生き抜いたバーサーカーの上に、これから向き合わねばならない罪を背負う覚悟すら持たない珠が立てるわけがない。

「あの、私……」
「そうか。お前は、まだ迷いを抱えているのだな」
「だって。他の人に酷いことして、ころ、殺しちゃうかもしれないのに、できないです。もうあんなこと……」
「もう、か。そうだったな、お前は既に」

 事実として、珠は既に人殺しの経験を済ませている。
 奇しくも死の運命を免れたことを機に、自らの行いを振り返ってようやく自覚を持てた珠がまず抱いたのは、自身への言い知れぬ悍ましさだった。
 夢も希望も欠片すら無い蛮行に、珠は手を染めたのだ。言い訳を並べ立てることはいくらでも出来ても、そもそも言い訳しようという考えに及んだ事実自体が既に非道を認める何よりの証拠であった。
 そして珠は、その非道を次々と重ねなければならない状況にある。
 生きるため、守るため、勝ち取るため。理由が何であれ、珠は過程で命を奪わなければならない。
 争いの中に身を落としたら最後、もう無傷で逃れる術は無いのだと、珠は嫌というほど知っているのだ。

「大切なことだ。今は好きなだけ、そうして迷えばよい。いつまで迷おうとも、ワシはお前を見放さない」
「バーサーカーさん……ごめんなさい」
「ははは、何を謝る」

 もしも、どう足掻いても奪う側の人間になることを変えられないのだとしたら。
 それはせめて、納得のいく理由であってほしかった。
 そう、たとえば。夢に見た『魔法少女』の時間を、友達との絆を、もう一度。

「バーサーカーさん」
「何だ?」
「バーサーカーさんも、その、大事な友達を、」
「ああ、ワシが死なせた。守るべき絆のためにな」
「……それって、その友達よりもっと大切な人がいたから」
「いいや。ワシは今でも思っているさ。三成は最も深い絆を結んだ、ワシの一番の友だったと」
「は」

 思わず口から吐き出される、呆けた声。
 それ以上、珠の口はバーサーカーへの問いを投げ掛けられなかった。混乱する珠の頭は、質問を構築することすら不可能となっていた。
 バーサーカーは、世の中をより良くするのは人と人の絆だと言った。そう言いながら、バーサーカーは自身にとって最も大切だという絆を取り除いてしまった。
 絆が報われる世界を夢見ながら、誰かの絆を、そして己の絆さえを無下にして、尚もその両目を強い光で輝かせる。
 珠には、バーサーカーの思いが分からない。どうして表情一つ変えずに喪ったものへと想いを馳せられるのか、理解出来ない。
 いや、そもそも彼の生きた戦国の時代にも、彼のことを真に理解出来た人は果たして本当にいたのだろうか。

「哀しいな。こんな世界にしないために、ワシらは戦ったはずだったのに。絆の世は……」

 両目を閉じ、物思いに耽るような表情と共に発せられたのは、バーサーカーの独り言。
 聞き届けて尚、珠は何も聞けなかった。

 貴方にとっての「絆」とは一体何なのか、なんて。聞けるわけが無かった。


200 : たま&バーサーカー ◆T9Gw6qZZpg :2018/04/15(日) 14:19:55 mx9KTcHw0

【クラス】
バーサーカー

【真名】
徳川家康@戦国BASARA3

【パラメーター】
筋力B+ 耐久B+ 敏捷B 魔力D 幸運B 宝具EX

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
・狂化:EX
本来の意味での理性の喪失や能力向上の効果とは全く別種の、彼の生き方を示すだけのスキル。
世を治めるは絆の力。バーサーカーの信じる理想は、決して彼の中で潰えることは無い。
己の理想が、戦国の世で誰からの理解も得られていなかった事実を前にしても。
己の理想のために他者の絆を粉々に壊し、無二の友をも絶望の底へ叩き落とした挙句に討滅した現実を前にしても。
決して、潰えることは無い。

【保有スキル】
・東照権現:EX
天下人として名を馳せる、日本一の戦国武将。
戦乱の地が日ノ本であるならば、彼は己の名への信仰による恩恵を常に受けられる。
主な効果は「護国の鬼将」とほぼ同様であるが、この場合の領土は「日本国内全土」を指すため、常にその効果が発動する。
そしてこのスキルの存在故に、日本出身の人物はバーサーカーの姿を目撃した際、高確率でその真名を直感的に悟ることとなる。

・渾身:A
彼が得意とする戦闘技術。
攻撃の際に力を溜めることで威力を増幅する。

・カリスマ:A+
大軍団を指揮・統率する才能。
このスキルはAランクで人として獲得し得る最高峰の人望とされている。
ならばそれを超えるランクを持つ彼は、もはや人ではないのかもしれない。

・単独行動:D
マスターを失っても半日間は現界可能。
天我独尊の悪辣漢・松永久秀は、徳川家康を指して評したという。
「卿には『犠牲』を贈り、『孤高』を貰おう」

【宝具】
・『昇れ、葵の絆』
ランク:EX 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大補足:1000人
家康の率いた東軍の武将・兵達をサーヴァントとして現界させ、関ヶ原の戦いを固有結界として再現する。
召喚されるのはいずれもマスター不在のサーヴァントだが、それぞれがE-ランク相当の単独行動スキルを保有し、最大30ターンに及ぶ現界が可能。
ただし、発動の際には令呪一画以上の消費による魔力の補助が必須となる。

【weapon】
手甲、或いは拳。
バーサーカーは既に兜を脱ぎ、槍を捨てている。

【人物背景】
人々が力で争うばかりの乱世を憂えた徳川家康は、絆の力こそ未来を開くと信じ、己の旗を掲げた。
彼の下には、日ノ本を二分した片方と言うにも等しい大軍勢を為すほどの、数多の武将が集った。
家康個人への忠義、或いは契約関係、或いは打算。彼等が徳川の軍門に下った理由は様々であり。
しかし、家康の理想に心酔したために馳せ参じた者など、一人としていなかった。
当然ながら、敵対関係にあった武将もまた、家康の理想に耳を傾けることはなかった。
こうして家康は遂に賛同者と巡り会えないまま、その武力で天下統一を成し遂げたのだった。
その後、戦国の終わりと共に迎えた太平の世で輝かしい生涯を遂げたという天下人の心中は、果たして。

【サーヴァントとしての願い】
不明。


201 : たま&バーサーカー ◆T9Gw6qZZpg :2018/04/15(日) 14:21:37 mx9KTcHw0



【マスター】
たま(犬吠埼珠)@魔法少女育成計画

【マスターとしての願い】
もう一度、夢見た『魔法少女』の日々を……?

【weapon】
コスチュームの爪

【能力・技能】
・魔法少女
魔法少女(正確には魔法少女候補生)としての力。
変身することで常人を凌駕する身体能力と肉体強度を獲得し、更にそれぞれ固有の能力となる魔法を使える。
また魔力を扱う存在であるため魔術師と同等以上の魔力量を備える。

・『いろんなものに素早く穴を開けられるよ』
魔法少女たまの持つ魔法。
視界内にある自分で掘り起こした穴や傷などを一瞬で、直径1メートルまでの穴に広げられる。
たとえどれだけわずかな傷であっても、傷つけることさえできれば広げることができる。

【人物背景】
誰からも蔑まれた少女が、ある日『魔法少女』となったことで友人に恵まれた。
その友人達を、突然に始まった殺し合いの中で次々と失った。
最後には、残されたたった一人の友達の手で殺された。
少女の夢見た『魔法少女』とは、結局何だったのだろうか。

【方針】
未定。


202 : 名無しさん :2018/04/15(日) 14:22:33 mx9KTcHw0
投下終了します。
なお、ステータス作成の際に『Maxwell's equations』内の◆2lsK9hNTNE氏の作品「西尾暉&ファイター」を参考にいたしました。


203 : 水底より ◆Jnb5qDKD06 :2018/04/15(日) 16:10:38 wjuA7z2k0
投下します。


204 : 水底より ◆Jnb5qDKD06 :2018/04/15(日) 16:11:25 wjuA7z2k0
 夢を見た。

 深い、深い、絶望の水底。

 誰も助けてくれることなく。
 夢見て、願った結末へと至ることなく。

 ついに魂は砕け、泡へと消えていく。


   ◆   ◆   ◆


 美樹さやかが目を覚ませばそこは水の底ではなく見慣れた天井。自室のベッドの上だった。

「……嫌な夢だ」

 酷く不快に呟いた。ベッドに立て掛けた刀が同意するようにカタカタと揺れた気がした。


   ◆   ◆   ◆


 起きて顔を洗い、タオルで顔を拭くと目の前の鏡に映る自分と目があった。何度も見ているはずなのにひどく不自然なものに見えた。

「本当に人間に戻ったんだなぁ」

 さやかの記憶では手の中にあった自分のソウルジェムは砕けてグリーフシードになり、自分は異形の存在『魔女』になった。
 覚えている。確かに覚えている。だが、その時、握っていたのはグリーフシードだけではなかった。
 砕けたソウルジェムの中からもう一つのソウルジェム。聖杯戦争参加者が持つソウルジェムが生まれていた。
 その瞬間、消滅する意識が鮮明に蘇り、そして記憶を失ってこの街にいた。

「なんていうか、都合がいいっていうか。実は全部夢でしたって言われても信じちゃいそうだ」

 独り言をつぶやきながら蛇口を閉めて、リビングに戻る。
 両親はいない。代わりにあるのは場違いな刀。

 この刀を手に入れたのは街に来てから数日経った昨晩のことである。


   ◆   ◆   ◆


205 : 水底より ◆Jnb5qDKD06 :2018/04/15(日) 16:11:46 wjuA7z2k0


 美樹さやかはいきなり思い出した。自分のこと。魔法少女のこと。友達のこと。そして────魔女になったこと。
 

 なぜ、どうして自分は生きているのかと混乱するさやかに追い討ちをかけるように聖杯戦争の知識が直接脳へ叩き込まれる。
 何が何だかわからない。どうしてこんなになっちゃうんだよと狼狽えた。
 拒否権はない。逃げる術など有り得ない。いや、そもそも自分に帰れる場所などどこにもない。
 再びソウルジェムを持たされて、また戦場へ送られる。なんて理不尽なんだ────でも。


 それはある種の緩和作用というか。
 一度極限の絶望を味わった身であるからこそ、大したことがないと思ってしまうのか。
 
 
 ────二回目の人生が来たっていうのは幸せなのかな


 一度魔女になった影響で吹っ切れたのか。さやかは前向きに現実を受け止めたのだった。
 
 
 ガタン。
 カタン。
 カタ。
 カタ。


 その時、背後で何かが地面に落ちた音がした。
 振り向けばそこに落ちていたのは刀。
 勿論さやかのものではない。
 なんだコレと刀を拾い、無用心に鞘から剣を抜くと目眩がした。
 そして───

《問おう。おまえがオレのマスターか?》

 脳に直接、声が届いた。
 後で聞けば念話というらしい。魔法少女のテレパシーとは少し違うらしいが、その時のさやかには分からなかった。
 魔法少女以外で初めてテレパシーを送られたのだ。当然、驚いた。しかし、真に驚くのはその後だった。

《誰!? どこにいるの?》
《今、おまえが握っているのがオレだ》

 今握っているものって────この刀!?

《オレはサーヴァント・セイバー。此度の聖杯戦争の召喚に応じ参上した》

 剣士(セイバー)というか剣(ソード)じゃんと心の中で突っ込みながら冷静に考えて答えた。
 聖杯戦争の知識によるとサーヴァントという奴が現れて自分と一緒に戦うらしい。

《ここにはあたし以外いないし、サーヴァントもあんたしかいない。じゃああんたがあたしのサーヴァントなんだと思うよ》
《良し。ではこれにて契約は果たされた》
《ところで刀があんたってことでいいんだよね? 実は恥ずかしがり屋の剣士が隠れているっていうのじゃないんだよね》
《────本当ならば全盛期のオレ、つまりオレを使う剣士と一緒に召喚されますはずだったのだ。
 なのに奴めェ! 二度と私に触りたくないだの、元々敵同士だの言いおって現界を拒否したのだッ!!》

 セイバーの怒りに答えるように刀身が震えて鞘とぶつかりカタカタと音が鳴る。
 美樹さやかは察した。なんというかこいつは偉そうにしているから嫌われたんだろうなと。

《そういえばセイバーっていうのはあんたのクラス名でしょ。あんたの名前は?》
《オレの名はアヌビス神。かつてDIO様に忠誠を誓い、憎きジョースターどもと戦った誉れ高き剣よ》

 名前の後については何も分からなかったが、とりあえず真名はわかった。

《ふーん。じゃあよろしくね》
《ああ。ところでマスター。おまえは研ぎができるか?》
《できないよ。あたしまだ中学生だし》
《ちっ、使えん》

 あ、こいつ舌打ちした。しかも使えんって……あたしマスターなのに。

《ではせめて大事に使え。汚れたり濡れたりしたらすぐに拭け》
《んなの霊体化すればいいんじゃん。あるんでしょそういうの》
《いいや、オレは霊体化できん》

 は? 今こいつ何て言った?
 霊体化出来ない?
 じゃああたしがこいつをずっと持つのかよ。

 当たり前だが日本には銃刀法というものが存在する。
 女子中学生がこんな刀を持ち歩けば一発で警察の御世話になることくらいさやかでも知っている。

《分かるなマスター。おまえの重要性が》

 ああ分かったよ。あんたの頼りなさが。
 半分抜いた刀を鞘に戻してベッドに立て掛け、何かゴチャゴチャ言うセイバーを無視して布団へと潜った。


   ◆   ◆   ◆


206 : 水底より ◆Jnb5qDKD06 :2018/04/15(日) 16:12:11 wjuA7z2k0


 そして今日。
 オレを連れてゆけだの、手入れしろだの、他のマスターを微塵切りにしろだの物騒なことを言う刀を放置してあたしは学校に登校した。
 見滝原中学二年。それが美樹さやかの身分だ。朝教室に来て、授業を受けて、ご飯を食べて、帰る。
 帰りにCD屋寄ったり(この街で作っていた)友達とファーストフード店行っておしゃべりしたりしたらあっという間に時間が過ぎる。

(こんな当たり前のことが幸せになるなんてなぁ)

 失われたはずの日常を取り戻して初めて、この日々が素晴らしいと月並みだが実感する。
 魔法少女になる前、願い事が見つからない自分を幸せな人間と考えていたがその実感はなかったと思う。
 不幸にあった幼馴染みや家族を喪った先輩と比べれば比較的に幸せだと思っていただけだ。
 実際に不幸な側に立てば誰であれ失いたくないと思うだろう。
 だからこそ、聖杯戦争という殺伐とした催しが気に入らないし、かといってどうすればいいのか分からない。

 正直に言えば────あたしはこんな日々が一生続いても悪くない。

 親友たちはいないけど。
 ■■■■もいないけど。
 取り戻したものと失ったものを天秤にかけて果たして釣り合うのか。
 まだこの手に残るものを失ってまで戦う必要はあるのか。

 帰ってきた時は赤かった空が今は暗い。だが結論は出ない。

《どうしたマスター》
《セイバー。あんたは戦ってまで叶えたい願いってある?》
《無論ある。我が身の復活だ》
《生き返りたいってこと?》
《ああ、その通り》
《でも刀なんでしょ? 生き返っても辛いだけじゃないの》
《だからこそ、オレを無限の無聊から救ってくださった方に恩を返すまでは死に切れんのだッ!
 あの無限に続くような闇から救ってくださったあの方のために! 何よりも強いあの方のためにッ!!》
《その人ってまだ生きてんの?》
《あの御方は不死だ。まだ生きておられるに決まっている》
《不死か……その人って魔法少女だった?》
《魔法少女……とはなんだ? 極めて嫌な予感しかしないが》
《魔法少女っていうのはね──こうよ!》

 さやかはアヌビス神の前で変身した。
 アヌビス神の驚く息遣いが聞こえる。してやったりとイタズラが成功したような笑顔でさやかは魔法少女について説明する。
 生前(で多分合ってると思う)じゃあ親友にも言い出せなかったことをこんなに簡単に打ち明けられるのは同じ人じゃないという共通点があったからかもしれない。
 
 
 何だ、簡単だったじゃん。簡単にできたじゃん私。
 
 
 未練なんだろう。少しだけ過去の自分に後悔した。


   ◆   ◆   ◆


207 : 水底より ◆Jnb5qDKD06 :2018/04/15(日) 16:12:38 wjuA7z2k0

 ソウルジェムなる物質に魂を移動させ、精神や肉体の死によって生命が失われるのを阻止する。
 なるほどとアヌビスは心の中で納得した。


 召喚されてすぐのことである。
 “いつものように”刀を抜いたマスターの精神を支配した。アヌビス神にとってマスターは戦うために一時的に体とするだけのもの。忠誠はDIO様だけに捧げたものでマスターに対してはない。
 精神支配は成功した。成功したのだが────肉体が指一本動かせなかったのだ。それまで二本の脚で立っていた体が崩れ落ち、瞬き一つできない。まるで死人のよう───

《ち、仕方ない。ひとまず契約するしかないか》

 精神支配を解除し、そしてマスター契約を持ちかけるしかなかった。


 アヌビス神の『透過』スキルは物理・精神の壁を透して我が意に従わせるスキル。
 だが、この魔法少女とやらは肉体と精神の繋がりを断ち、魂のみで肉体を動かしている。
 魂の物質化。それを為す願望器。さしずめインキュベーターとやらは意思を持つ聖杯ということか。
 ともあれDIO様が魔法少女などという疑いは晴らしておかねばなるまい。

《結論だけ教えてやろう。DIO様は魔法少女などという不思議なものではない。この世に呪いを撒くという魔女でもない。そもそも女ではない》
《へえ、魔法少女でもないのに不死身の人なんているんだ。まぁ、魔法少女は不死身というよりゾンビだけど》

 マスターのニュアンスに自虐的なモノが含まれているとアヌビス神は嗅ぎ取った。
 そしてフンと鼻を鳴らし言ってやる。

《ゾンビ……生ける屍、死後も妄念によって動き続ける者。結構ではないか。オレもまさにソレだ。
 オレからも質問させてもらうぞマスター。叶えた願いのために戦った感想はどうだ?
 おまえはゾンビとやらに自虐的だが、その体になってまで叶えた願いとやらはそんなに意味のないものだったのか?
 叶えたことが間違いだったと思うのか?》
《違う! 私の願いは間違いじゃないッ!!》

《ならば何も問題がないのだマスターよ。
 既に願いは叶った。その代価に敵を切る。単純ではないか》
《そう簡単に割り切れるものじゃないんだけど……》

 ────甘たれめ。だが、そこに付け入る隙がある。
 アヌビスは更に笑みを浮かべて言う。

《おまえは報われたかったからだ。
 そして報われる形を知らなかっただけだ。
 ならばこの聖杯戦争でおまえの望む『報われた日常』とやらを手にすればいい》

 DIO様が自分にしてくださった時のようにアヌビス神は優しく諭す。
 そうすると青臭い激昂が帰ってきた。

《ッ! ふざけるんな。私は自分のために戦ったりなんかしない!》
《ならば、聖杯戦争からおまえの言う守るべき人々を守ればよい。
 そして結果的に聖杯を手に入れ、おまえの望みを手に入れるのだ》
《だけど私は、もう魔女に……──────ごめん、ちょっと考えさせて》

 アヌビス神は我が意を得たりと確信した。


   ◆   ◆   ◆


 そう言ってさやかは一方的に念話を切った。
 頭では理解しているのだ。
 戦わないといけないことも。戦わないと守れないことも。
 戦わないと────自分にはそれしか価値がないことも。


 じゃあ、自分が目指した『正義の魔法少女』とは?


 マミさんはいない。
 ■■もいない。
 まどかもいない。
 何一つ、味方となる者はいない。

 ────あたしは本当にやれるのか。
 ────一度魔女になっちゃった私は、本当に正義の側でいていいのか

 答えはまだ出ない。


   ◆   ◆   ◆


 あの魔法少女とやらの生態は未知数だ。
 おそらくは本人すらどうして自分が考え、活動しているのかを理解していないだろう。
 つまり、小癪なことにカーンやポルナレフのように精神を丸ごと奪う方法ではマスターの肉体を扱うことはできない。

 チャカのように唆かしながらある種の方向性を与えるしかあるまい。
 少し囁けばあの小娘は間違いなく戦うことになるだろう。
 何やら戦いに躊躇っているようだが、ああいう輩は戦う理由を与えるに限る。


《DIO様! 今しばらくお待ちを! このアヌビス神、今度こそはお役に立ってます》



 戦いの日は近い。
 だが、アヌビス神はこの時気付いていなかった。ソウルジェムの奥に潜むものを。


208 : 水底より ◆Jnb5qDKD06 :2018/04/15(日) 16:13:51 wjuA7z2k0
【サーヴァント】
【クラス】
セイバー

【真名】
アヌビス神

【出典】
ジョジョの奇妙な冒険 第三部

【属性】
中庸・悪

【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:A+ 魔力:A 幸運:C 宝具:A

【クラススキル】
対魔力:C
 詠唱が二節以下の魔術を無効化する。大魔術・儀礼呪法のような大掛かりなものは防げない
 またアヌビス神は所持されている場合、所持者にも対魔力が及ぶ。

騎乗:-
 刀であるアヌビス神は騎乗できない。

単独行動:A
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。マスターを失って一週間は現界可能。ただし、その間霊体化はできない。

【保有スキル】
黄金律(品):A+
 美術品としての完成度を指す。
 アヌビス神は博物館に飾られていたほどの芸術品であり、自身の正体を知らないあらゆる者を魅了し刀に触れさせる。

動物会話:C-
 動物と会話可能。ただし傲慢な態度であるため、純粋な動物達からは嫌われやすい

透過:B
 障害を突破するスキル。
 魔力の籠っていない任意の物体を透過することができ、あらゆる盾・障壁を突破する。
 加えてアヌビス神の場合は鞘から抜かれた自身に触れた者の精神に徐々に溶け込み同化することで、精神支配して肉体の主導権を握る。
 これに抗うには精神力の強さより、狂化や心が無いことが必要とされる。

自己保存:A
 自身はまるで戦闘力がない代わりに、マスターが無事な限りは殆どの危機から逃れることができる。
 まさにアヌビス神はその究極系である。

【宝具】
『無減の剣聖』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:自分
 アヌビス神を所有した者(刀身の一部でもよい)を疑似サーヴァント化させる宝具。
 疑似サーヴァント化している間は戦闘を経るごとに筋力・敏捷のステータス及び攻撃性が上昇する。この上昇分は所有者が変わっても持ち越される。
 またアヌビス神の刀身がダメージを受けると精神的ダメージとしてフィードバックされ、刀身の半分以上の損傷ならば確実に気絶する。
 文字通り誰もが剣聖となる宝具である。だがステータスと攻撃性が極まればたとえ主であろうと切りかかる狂犬と化す。

『無限の剣征』
 ランク:D 種別:対人魔剣 レンジ:- 最大捕捉:自分
 一度見た相手の宝具・スキルを記憶し、二度目以降は無効化・カウンターを放つ。
 スパルタクスと同じく一度攻撃を受けねばならないが、それさえ凌ぎ切れば戦闘で遅れを取ることはない。
 ただし、攻撃や性能として記憶(認識)できないものには対応できない。

『銀の戦車』(シルバー・チャリオッツ)
 ランク:??? 種別:??? レンジ:- 最大捕捉:自分
 サーヴァントが全盛期で召喚される以上、アヌビス神を操る最強の剣士も共に召喚されるはずだった。しかし────

【weapon】
この身が武器である。

【人物背景】
ジョジョの奇妙な冒険三部より登場。
刀を持った者の精神を操って主人公たちに襲い掛かった。
刀剣の魅惑もあるが、それ以上に一度受けた技は二度と通じないという能力によって承太郎、ポルナレフを苦戦させた。
元はキャラバン・サライという刀鍛冶によって打たれた名剣にスタンドが宿ったもの。
博物館に飾られていたところをDIOによって解放されたため、DIOの強さも合わさって狂信する。

【サーヴァントとしての願い】
既に失われた自身を復元させる。


209 : 水底より ◆Jnb5qDKD06 :2018/04/15(日) 16:14:49 wjuA7z2k0

【マスター】
美樹さやか

【出典】
魔法少女まどか☆マギカ

【マスターとしての願い】
???

【weapon】
魔剣:
 魔力で大量の剣を生成し、投擲する。
 また蛇腹剣になったり刀身を飛ばすギミックも存在する。

【能力・技能】
リヴァイヴ:
 さやかの特性である癒しの魔法。自動で肉体を治癒し、生半可な攻撃では彼女を戦闘不能にできない。

魔法:
 基本的に万能だが、美樹さやかに素養がないためできることは少ない。

魔女少女:
 地球外知的生命体であるインキュベーターと契約し魔女と戦う(よりも残酷な)運命を背負った少女を指す。
 魂をソウルジェムと呼ばれる器に封じ込めることで肉体の損傷による死亡や痛覚による信号を軽減している。
 ただしソウルジェムが破壊もしくは一定以上の距離に隔離されれば肉体は魂無き肉の器として腐敗していく。

【人物背景】
見滝原市の中学二年。
地球外知的生命体であるインキュベーターと契約し魔法少女となる。
様々な要因が絡み、世界や人に絶望したさやかは魂が穢れきって魔女となってしまった。(同時に美樹さやかは死亡した)

本作の美樹さやかは円環の理に導かれていない。
魔女化した直後までの記憶で登場。ソウルジェムは浄化されている。


【方針】
平和を乱す奴をやっつける


210 : 名無しさん :2018/04/15(日) 16:15:20 wjuA7z2k0
投下終了します


211 : ◆EPyDv9DKJs :2018/04/15(日) 20:51:41 jpCqIfTM0
投下します


212 : ◆EPyDv9DKJs :2018/04/15(日) 20:52:24 jpCqIfTM0
 夢を見た。
 一人の大男と、もう一人の男が二人で笑い合っている夢を。
 なんとも仲の良い光景で、いつまでも続くのだろうとも思える程に。
 悪戯をしたり、喧嘩をしたり、悪党を成敗したり・・・・・・実に自由気まま。
 だが、一人の梟によって、その絆は戻ることのない亀裂が入った。

 男は助けに向かった先で見たのは、
 文字通りの死屍累々の中に立つ友の姿。
 友は一人の梟によって修羅の道へと歩みだし、
 覇道を突き進み、二人が恋した女性でさえ、天下の妨げと称し殺める。
 袂を分かった友は、やがて天下統一を果たした天下人となった。






 見滝原の中に小ぢんまりと存在する居酒屋。
 時代の先を行くような町並みの中では少々場違いだが、
 言い換えれば、此処は古き趣がある店と言うことで、
 客足はそれほど遠のいている場所ではない。

「はい、これカウンターの方によろしく。」

「あいよ、じゃなかった、わかりました!」

 見滝原のとある居酒屋にて、一人の男が必死に働く。
 男の姿は、はっきり言ってこの街には似合わなかった。
 いや、この街でなくてもこの男の似合う場所は限られるだろう。
 黄色い羽織や虎の毛皮の手袋とどれも目立つ奇抜な恰好だ。
 京都のような場所であれば、整った顔も相まって歌舞伎の役者に見えるが、
 このビルが並び、技術が進んでいる見滝原では余りに場違いであった。
 此処に鍵っては、店に多少は馴染んでるお陰で注目はされるが、訝る視線は少ない。




「お疲れさん・・・・・・っじゃなかった。お疲れ様でした。」

 陽はすっかり沈んだ暗い夜空の下、青年は蛍光灯が照らす暗い夜道の中、帰路へ向かう。
 疲労が目に見えてわかる、けだるげな表情と猫背で束ねた髪を揺らしていく。
 そんな表情で向かう家は、お世辞にもいい物件とは言えない安物アパートだ。
 かろうじて風呂と言った生活に欠かせないものはあるが、所詮それだけである。
 日当たりがいいわけではないし、ベランダがあったりするわけでもない。
 部屋もそう広くはなく、いかにも貧乏人が住むような場所だが、これが彼の自宅とされていた。

「今思うと謙信のところや前田家って、広かったんだな。」

 アパートを前に、軽くため息をつく。
 彼、前田慶次はこの世界の人間ではない。
 もっと古い、それこそ戦国時代の人間だ。
 前田の風来坊、そう呼ばれるほどに日ノ本を歩いた風の子。
 今は数百年未来の、この見滝原に招かれた聖杯戦争の参加者の一人になる。

 彼が違和感に気づくのは、そう難しいことではない。
 簡単に食料が調達できるし、寒暖双方においての対策も容易。
 伝文なんてせずともメールやSNSでの情報の入手が可能な社会。
 慶次がいた時代では、どれも考えられないような場所なのだから。
 そして、この舞台における彼の役割は、所謂『フリーター』だ。
 実家とされる場所からの仕送りと、自分が稼いだ資金でやりくりする、
 身も蓋もない言い方になってしまうが、負け組のようなものであった。
 不満はある。後の未来の選択肢によっては彼は雑賀衆に就くことになるが、
 彼は自由気ままに動く以上、縛られて生活することは余り好きではない。
 見滝原から出られたのならば、今の日ノ本を歩く風来坊になっていただろう。
 今は慣れない敬語に慣れない仕事、心身ともに疲労は蓄積していくばかりだ。

「お、今日は魚か。」

 どこかの換気扇から流れてくる、焼き魚の匂い。
 疲労がたまった彼にとって、大変食欲をそそらせる匂いだ。
 特に、この仕事に慣れるまでは大変で、料理がまったくできてない。
 卵かけご飯だのレトルト食品だの、或いは何も食べずに寝てる。
 だから焼き魚とかの簡単な調理でも、慶次にとっては高根の花のような存在だった。

「・・・・・・あれ? 俺ん家?」

 今の時間帯で料理とは珍しいと思ってると、
 匂いの元は、二階の慶次が住むことになってる場所からだ。
 換気扇は回っており、そこから漂ってくるので間違いはない。
 空腹と言うこともあってか、慶次は急いで自宅へと走り、扉を開ける。
 戸と違ってドアノブと言う、当時にはない技術が使われているが、
 聖杯によって現代の必要な知識は提供されたおかげで、特に不自由はない。

「ただいま!」


213 : ◆EPyDv9DKJs :2018/04/15(日) 20:52:47 jpCqIfTM0
「おかえりなさい、マスター。」

 帰宅すると、玄関の近くの台所から、一人の女性が言葉を返す。
 黒を基調とした、腹回りを露出させた軽装に、
 その上にエプロンを羽織った、緋色の髪の女性だ。
 仕事から帰ってくるとエプロン姿の女性が待っている。
 何とも羨ましい話だが、二人はそういう単純な関係ではない。

 今相対する彼女こそ、慶次がこの聖杯戦争における駒、サーヴァントになる。
 クラスはアーチャー。可憐な顔とは裏腹に、慶次も驚くほどの実力を有していた。
 慶次のいた戦国乱世でも、十分通用するのではないかと疑うレベルの、一騎当千の実力者。
 ・・・・・・エプロン姿の今では、そういう印象はあまり感じられないが。

「あれ、さーヴぁんとって食事の必要ないって聞いたけど、俺の間違いだったか?」
 
 サーヴァントにとって食事は必要がない。
 必要なのは、マスターからの魔力供給だけだ。
 一応魔力供給の代替えになるが、そう多くもない。
 聖杯戦争の知識はマスターとしての自覚を得た時から、一通りは手にしている。
 今までも食事をしてる場面を見たことがなければ、冷蔵庫も減った覚えはない。
 今の状況とそれは矛盾しており、聖杯の知識をちゃんと受け取れてなかったのかと記憶を掘り返す。

「いいえ。私は必要ないけど、最近の貴方を見て、ちょっとね。
 他のサーヴァントの動きも今のところはないみたいだから、
 暇があってしていたのだけど・・・・・・迷惑だったかしら?」

 最近、確かに彼の食生活は大変乱れている。
 アーチャーは不憫に思い、空いた時間で料理に励んでいた。
 もともと狩人だったので、こういう調理には手馴れている方だ。

「ああいやいや全然! 寧ろ、すごく助かってる!
 まつ姉ちゃん・・・・・・えーっと、俺には姉がいてさ。
 いつもまつ姉ちゃんがしてるから、てんで料理は苦手で。」

 後頭部をかきながら照れくさそうに慶次は笑う。
 恋人と言うわけではないが、こうして待ってくれる人がいて、
 料理をしてくれる美人がいるという点は、聖杯戦争の数少ない喜びだ。
 素直に喜べるわけではないが、実際嬉しいことに変わりはない。

「もう少しでできるから、待っててもらえる?」

「あいよ、じゃあ俺は飯よそってくる。」

 アーチャーが焼き魚をちゃぶ台においた後、
 台所の掃除にかかり、片づけを終えて狭い部屋へと戻る。
 押し入れ以外は小さい冷蔵庫とちゃぶ台と、最低限の環境を用意しただけの質素な部屋だ。
 ちゃぶ台に並ぶは白米とみそ汁と焼き魚、正統派な和食だろう。なんらおかしくない。

「あら?」

 ただ、おかしいのはその数。慶次の向かいにも同じものが置かれている。
 魚だけ少々拙い切り口で、量もそのまま半分にして少なかった。

「魔力の供給さえあればいいって言っても、
 一人で食っても寂しいだけだから一緒にどうだ?」

「食費、大丈夫なの?」

「聖杯戦争が何カ月もかかったら危ないけど、
 それまでに終わるだろうし、大丈夫だって。」

 この生活で二人分の食事は中々厳しいだろう。
 一年もすれば本格的に響くであろう出費になるが、
 そもそも、彼にとってこの役割は全て偽りでしかない。
 特にこの聖杯戦争は慶次のいた時代の戦と違い人数は少なく、
 場所もこの町のどこかで、時間も費用も全く掛からないだろう。
 場合によってはただの帰り道で出会うことすらありえるのだから。
 今すぐはともかくとして、多少の出費は対して気にしなかった。

「ありがとう、マスター。」

「あ、それとますたーってのはやめないか?
 俺、誰かの上の立場ってのはいまいち苦手なんだ。
 それに、誰かに聞かれたら色々面倒だし、慶次でいいよ。」

「確かに、そうよね。気を付けるわね・・・・・・えっと、ケイジ。」

「そうそう。」





「で、そこでまつ姉ちゃんにしかられちまって。」


214 : ◆EPyDv9DKJs :2018/04/15(日) 20:53:30 jpCqIfTM0
「フフ、そのには頭が上がらないのね。」

 食事を共にしながら、二人は談笑に花を咲かせた。
 聖杯戦争のマスターとサーヴァントと言う主従関係はなく、
 さながら同じ住居に同居している住人のような雰囲気だ。
 まじめに聖杯戦争に取り組んでるマスターが見たら、呆れられるだろう。

「・・・・・・アーチャー。」

 話がひと段落ついたところで、慶次は箸を休める。
 楽しくはあるが、やっと仕事に慣れて落ち着ける時間を手にできた。
 今までろくに話し合う時間がなかった以上、今話さなければならない。

「何?」

 声のトーンが低くなった慶次に、
 アーチャーも箸を休めて、表情を変える。
 談笑とは別の話、聖杯戦争についてなのは察していた。
 聖杯戦争について話すことを今までしてこなかったが、
 仕事が落ち着いたら話すと、事前に慶次に言われたからだ。
 初日から切り出したかったが、召喚と同時に疲労で寝たり、
 疲れ気味の彼に追い打ちをかけるのは少々忍びないと思い、
 中々切り出せないまま今日まで引き延ばすことになった。

「考えたんだけど、俺はやっぱり聖杯が欲しいって思えないんだ。
 確かに、俺にだって聖杯の力がないと無理な願いはいくつかある。
 けど、戦は嫌いなんだ。喧嘩は好きってちょっと矛盾してるけどさ。」

 叶えたい願いはたった一つ。
 嘗ての朋───豊臣秀吉とまた話し合うことを。
 けれど、死者は現世にいてはならない考えを持つ慶次にとって、
 死者の復活と言うのは、してはいけないものだと思っている。
 しかし、何よりもしたくないのは『戦争』をするということ。
 喧嘩は好きだ。お互いの気持ちが伝わって、お互いに心が通うから。
 けれど、戦国乱世に生きた人間だが、慶次は人を命を奪う戦を嫌う。
 此度の聖杯戦争は文字通り戦争、喧嘩とはわけが違う。

「年齢や性別、一切の区別もなく戦いに巻き込む・・・・・・徴兵よりも質が悪い。
 戦を望んでもない奴を、俺は相手にしたくはないんだ。わかってくれるか?」

 何よりも、無作為と言うことが戦いたくない理由だった。
 場合によっては、村人のような剣を振るったことのない人、
 子供のようなまだ戦が何かを知らぬ者を相手にすること。
 慶次にとって、なおさらしたくないことだ。

 彼は日ノ本を焦土とする織田でも、
 国の為なら自分ですら切り捨てる毛利でもない。
 ここにいるのは戦国乱世で不殺を貫く天下の傾奇者。
 少しの間を置いた後、アーチャーは答える。

「私はサーヴァント。貴方が言うなら、それに従うわ。」

「そっか、そうだよな・・・・・・って、ええっ!?
 え、いいのか!? あんたも願いあるんじゃないのか!?」

 驚くほどあっさり意見が通り、慶次は軽く焦る。
 サーヴァントは願いをもって召喚に応じると言う。
 だから願いを持たないはずがない。俗的な理由であっても。
 マスターの意見一つで諦められるような願いとも思えない。

「私にもあるわ。人から疎まれたことや、変えたかったことはたくさん。
 でも、それを変えて、その先の私が出会ったものに繋がらなかったらって思うと・・・・・・」

 表情を曇らせながら、アーチャーは語る。
 彼女は狩人として天才だった。どんなものでも射抜けて、
 獲物を逃さない常軌を逸した視力を有した、その魔眼。
 余りの強さに、嘗て自分を化け物と称したほどに。

「不幸もあったおかげで、私は今に辿り着いた。
 友達ができて、親友とも仲直りできて、皆で食事して。
 そんな人にとっての当たり前の日常を、私は手にできた。」

 『もう誰にも君を化け物とは呼ばせない。私にも、君自身にもだ。』
 あの時、距離を置いた友に言われた一言が脳裏に浮かぶ。
 自分が化け物でなければ、彼女を裏切ることになるとある弓に唆されたが、
 友と邂逅したときにそれを言われ、化け物であろうとする呪いから彼女は解放された。

「マイナスがなかったら、今の私はいない。だから、私はもういいの。」

「そっか・・・・・・ありがとな、アーチャー。」

 アーチャーの独白を聞き終え、慶次は安堵の息をつく。
 目的がアーチャーと相反するものではないと言うのはあるが、
 どちらかと言えば、友との決着をつけることができたという意味もある。
 自分のように決着をつけられなかったら、どんなに辛いかは痛感している。
 出会ってそう長くはないが、そうならなかったことを慶次は嬉しく思えた。

「さてと、難しい話はこれぐらいに早く食わないとな! 腹が減ってはなんとやらだ!」

 気持ちを切り替え、太陽のような明るい表情で食事を再開する。
 戦いの時が来ても、これで安心だと言わんばかりに。





(・・・・・・本当に、それでいいの?)


215 : ◆EPyDv9DKJs :2018/04/15(日) 20:55:33 jpCqIfTM0
 ああは言ったが、アーチャーは悩んでいた。
 嘘ではない。聖杯があれば、化け物と言われた過去を、
 傷ついたあの過去を消すことだって容易にできるのだから。
 けれど、その先にあったのは団の皆と欲し続けた日常と、親友との仲直り。
 過去を変えた先に、同じ道をたどることなど不可能だ。願うものではない。

 問題は───マスターのことだ。自分は友との亀裂を戻すことはできたが、彼は逆だ。
 アーチャーが今朝見た夢は、紛れもなく慶次と、彼の言う友人のことである。
 決着をつけられないままある男に、それも仲のいい相手によって友はこの世を去った。
 自分とは違い、友とは何もないままの現在。アーチャーはそれが不憫に思えてならない。
 本当はまだ悩んでいるのではないかと、窓から空を眺め、思う。
 空はこれから行く聖杯戦争の道を示すかの如く、漆黒の曇り空だ。






 これは、絆を取り戻せたサーヴァントと、取り戻せなかったマスターの物語。





【クラス】
アーチャー

【真名】
ソーン@グランブルーファンタジー

【属性】
秩序・中庸

【ステータス】
筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:A 幸運:D 宝具:B

【クラス別スキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない

単独行動:A
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力
ランクAならば、マスターを失っても一週間の現界が可能
十天衆はその強さと、もともと団としての関係が深くないのもあってか、
基本的に単独行動で事を済ませることが多く、ランクは高い

【保有スキル】

十天衆:C-
全空に名を轟かせた、最強の集団『十天衆』
ソーンはその一人であり、最強の弓使いとされる
このスキルが存在する限り、真名が常に看破されてしまうが、
同時にその脅威を知らせ、恐慌によるステータスをランダムに下げる効力を持つ
強者を前に高揚するタイプや、感情がない相手にはただのデメリットの塊である、
どちらかと言うと、格上キラー向けスキル

魔眼:A-
狩人であることを抜きにしても、彼女は人から外れた視力を持つ
魔導弓の特性と組み合わせれば、小島程度ならばどこにいても彼女の射程とされるほど
一方、視力がよすぎるので、日差しが強かったり海面など光が反射する場所では仇となる
この状況下に陥った場合ステータスのランクは全て二段階ダウンと大幅に下がり、
後述する天性の狩人もスキルの全てが発動しなくなるデメリットも抱えている
ビルが並ぶ見滝原の地では反射するものは少なくないので、昼間の戦闘は厳しい
対策に魔力がこもったサングラスがあるが、着用の際に魔眼はC相当に落ちる
ただし、ステータスのダウンもスキルの無効もなくなるので背に腹は代えられない

天性の狩人:B
視力のよさと才覚により、彼女は狩人としての能力は非常高い
このスキルにより彼女の攻撃は全てが対軍宝具と同等の捕捉が可能
多数の敵に立ち回ることが可能とされるが、魔眼が機能してなければ効果を失う
また、このスキルが発動する限り、彼女の矢にはバッドステータスを付与する効果を持つ
あくまで付与するだけで、そのバッドステータスは耐性や幸運判定によって決まる
ステータスの低下以外にも毒、腐敗、魅了、中には即死まであるが、
即死は彼女の幸運もあいまって、決まることはよほどのことがないと不可能


216 : ◆EPyDv9DKJs :2018/04/15(日) 20:56:16 jpCqIfTM0
【宝具】

魔眼の一矢(アストラル・ハウザー)
殲滅の鏑矢(アステロイド・イェーガー) ※二王の諍い使用後
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:測定不能 最大捕捉:1〜100
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:測定不能 最大捕捉:1〜300 ※二王の諍い使用後
槍のような巨大な矢と無数の矢を放ち、刺さった矢は中心に渦巻く光を放つ
巨大な矢をヒットさせた相手に次の矢をヒットさせると、一定の確率で相手を麻痺。
サーヴァントのステータスのランク(敏捷のみ二段階)を一つ下げるが、これも幸運判定に注意
空の世界では規格外たる存在と耐性を持つ者を除き、あらゆる行動を封じる凶悪奥儀だったが、
サーヴァントという存在である以上、その力が十全に発揮できるわけではない
二王の諍い使用後は無数の矢とともに通常以上に巨大な矢を放つ方へと変わり、威力が上昇
さらに霊核への攻撃が通しやすくなるものの、彼女の幸運はさほど高くないため不安定

二王の諍い
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:1〜100
空の民の切り札である天星器の一つ『二王弓』
弓をこちらに変えることでソーンの全てのステータスに+が付与
使用の際には令呪一画は要求されるほどの魔力消費を伴うものの、
一度発動すれば暫くの間はその状態を維持しての行動が可能
二王弓が破壊されると、聖杯戦争において使用は出来なくなる

【weapon】
浮遊リング
足に備わってる輪は、空を飛翔することを可能としている
高度は特に制約はないと思われるが、生身ゆえに肉体への影響からか、
作中においては狙撃銃の射程に入る程度の高さまでに留まっている
ダメージを受けたり集中力が切れると機能を失い、墜落の危険も伴う

魔導弓
彼女が使う矢は魔力で作り出した矢であるため、
魔力が尽きない限り、矢が尽きることは決してない
同時に魔力を消費するため、対魔力の影響を受けやすい
また普通の矢ではないので、軌道を逸らした狙撃も連射も乱射も可能である

二王弓
覇空戦争時代、空の民の切り札とされた武器『天星器』
二王弓は全てを射抜くとされるほどの強力な力を持つが、
完成に至ってもそこまでの強さは発揮できないと思われる
依り代と属性の力を付与することであらゆる属性になれるが、
ソーンが所有している都合、二王弓の属性は【光】になっている
なお、この武器には意志が宿っていて、一時期ソーンを唆したこともある
今は次の逸材に出会うまではソーンの武器として従うつもりのようだが、
この聖杯戦争でソーン以上の射手を見つけた時、彼は・・・・・・

狩人
武器と言うわけではないが、生まれた土地では彼女は狩りをしていた
身を隠して機会をうかがったり、急所を狙った一撃などの才覚は十分で、
動物の血抜きや皮を剥いだりといった解体にも精通してはいるが、
人工的な見滝原では、後者は発揮しにくい能力になるだろう

サングラス
これも武器ではないが、嘗てある海へ行ったときに、
強い日差しと反射する海辺のせいで魔眼が機能しなかったときがあったが、
ある人が魔力が込めて作ったものであり、視力はかなり落ちるが問題を回避できる

【人物背景】
全空最強の集団、十天衆の一人にして最強の弓使い
魔眼やその強さから化け物と呼ばれるほどの存在であり、
二王弓にすら次の逸材は千年後と言わしめる程の射手の腕前を持つ
本当は寂しがりやで友達や仲間と一緒にすごすのを夢みた、ある意味一番人らしい性格
生前、ある団との邂逅によりその願いは叶い、親友との悔根も既に過去のものとなっている
十人全員による食事など、彼女が願った一般的な日常は手にできた

【方針】
マスターの動向に従う、だが・・・・・・
一先ず敵状視察をしながら時が来るのを待つ

【聖杯にかける願い】
既に彼女は望むべき願いは叶った
変えたい過去はあれど、それがあって今の自分がある

だが、自分と違ってマスターは何も終えてない
それでいいのかと、今も心のどこかで悩んでいる


217 : ◆EPyDv9DKJs :2018/04/15(日) 20:56:40 jpCqIfTM0
【マスター】
前田慶次@戦国BASARA3

【能力・技能】
武将
大変ぶっ飛んだ戦国時代の世界にもれず、彼も十分ぶっ飛んでいる
胡坐をかいた状態で乗馬したり、旋風を巻き起こすのは茶飯事
大した力もない使い魔なら、簡単になぎ倒せるだろう

【weapon】
超刀
身の丈以上の巨大な刀だが、鞘に柄を挿入して紅槍としても扱う
時にはこの鞘をブーメランのように飛ばしたり、
時には刀を棒高跳びの棒のように扱ったり何をしてくるかわからない

【ロール】
フリーター

【人物背景】
絢麗豪壮
前田家の風来坊で、基本は京の都で過ごし、よく戦いに乱入する男
利家とまつの仲の良さを見続けた影響か、恋に関することでもよく首を突っ込む
空気が読めないように見えて、状況を考えてあえて空気を読まずに行くことも多数
戦国時代を生きながら、誰も殺める事はしないことにしている天下の歌舞伎者
魔王でも覇王だろうと、友人を狂わせた梟でさえも決して殺すことはしない
喧嘩は祭りと同じぐらいに好きで、悪戯好きで惚れっぽくスケベと、現代人に近い
一方で、親友の死に悩んだりとナイーブな面も持ち合わせている
癖が強いBASARAの武将の中だと普通過ぎるが、ゆえに交流の範囲は非常に広い
彼が心底嫌うのは部下も平気で捨てる毛利、秀吉を狂わせた松永、
そして彼の行く先のルートによって蘇る信長ぐらいだろう
猿の夢吉というペットがいるが、この舞台にはいない
また、死人は蘇ってはならないと思うところもある

豊臣秀吉、ならびに竹中半兵衛とは嘗て友にした友人だったが、
松永久秀によって秀吉は情を捨て、恋人のねねを殺害によって、袂を分かった
それでも友と思っており、豊臣秀吉を討った徳川家康には複雑な心境を抱き、
前田家から離れ、武田信玄が病に伏せたことで消沈し、戦から離れた上杉軍に身を置く
戦から離れたが、運命の分岐点に向かう寸前に、彼はこの見滝原に招かれた
そんな心境の中招かれた彼は明るいように見えて、未だ悩み続けている

【参戦時期】
3におけるスタート時
上杉の頼みで雑賀衆へ使いにいくか、
今後どうするかを島津のところへ相談しにいくか
数多の分岐点を持つ男、新たな道へと歩みだした

【聖杯にかける願い】
前田の風来坊は、気の向くままに道を進むことを今はできない

【方針】
敵状視察はアーチャーに任せて、今は生活費を稼ぐ

【把握媒体】
ソーン
グランブルーファンタジーの二王弓を強化する工程〜4アビ習得までのフェイトエピソード
およびイベントシナリオ『ポーチャーズ・デイ』の二種類によって把握が可能
ただ、ソーンはガチャを必要とせずとも加入できる、つまり無課金でも入手可能だが、
実装当時はエンドコンテンツとされた工程が必要で、いきなりやるとなると手間がとにかくかかる
4アビ習得に至っては一朝一夕ではどうにもならないエンドコンテンツで、動画による把握が望ましい
ポーチャーズ・デイも限定イベントの上に復刻は未定の現状、動画による視聴が必須
また、彼女に関する人物の中でもとりわけ重要なシルヴァの把握も推奨になってくる
(ただし、シルヴァとソーンのエピソードはIFになっているので混同に注意。
 同じ理由で十天衆の4アビ習得でも彼女は出番があるが、これもほぼIFである)
魔導弓についてはスーテラ(風)のフェイトエピソードで言及されるが、
特に特筆すべきものはないため、見る必要はない

前田慶次
慶次の初出は2だが、設定は3準拠のものになる
また3の際に大まかなあらすじもあるので、最悪3だけでも把握可能
アニメのシリーズは原作とは違う展開を迎えているので、
キャラクターは把握できるものの、余り設定は把握できない
(特にJudge Endは3準拠だが、かなり展開が異なっていて参考は寧ろ危険)
4と4皇は3までの設定をある程度は踏襲されていても、
それでもリセットされてる部分が多く、これまた把握に不向き
(慶次が風来坊ではなく、前田家当主になっているなど)


218 : ◆EPyDv9DKJs :2018/04/15(日) 20:57:15 jpCqIfTM0
以上で「友よ■■■」投下終了します


219 : ◆Il3y9e1bmo :2018/04/15(日) 21:54:52 glFwgCPA0
投下します。


220 : オンリー・マイ・ロード ◆Il3y9e1bmo :2018/04/15(日) 21:55:31 glFwgCPA0
音楽は世界語であり、翻訳の必要がない。
そこにおいては、魂が魂に話しかけている。
                   ――J.S.バッハ

◆ ◆ ◆

桜が丘高校、音楽室。
黒髪ツインテールが特徴的な軽音楽部の少女――、中野梓は一人黙々とギターの練習を続けていた。

「『フー 求められているのは どんなキャラですか』〜♪」

既に他の部員は全員帰宅してしまっている。残っているのは梓ただ一人だ。

「なかなか上手く決まらないなあ……」

梓は愛用のムスタングを抱え込み、口を尖らせた。

「なーんか最近、上手くいかなんだよなぁ。歯車が上手く噛み合ってない感じっていうか――あっ!」

――などと独りごちていた梓だったが、ギターを抱え込んだ拍子に手からすり抜けたピックが、楽器を仕舞っている棚の下に入り込んでしまった。

「うーん、ここかな? 暗くてよく見えないや」

屈み込んで棚の下に手を伸ばしピックを探す梓。
――すると何か硬いものに手が触れた。

「ん? 何だろ、これ」

拾い上げたのは無色透明の丸っこい宝石のようなものだった。

――と、手にした宝石が白く光り輝き始めた。

「わ、わわわわ!」

慌てる梓をよそに、光は彼女の全身を包み込んだ。


221 : オンリー・マイ・ロード ◆Il3y9e1bmo :2018/04/15(日) 21:56:45 glFwgCPA0
◆ ◆ ◆

「えっ、あれ、えっ?」

気づくと梓は床にへたり込んでいた。
いるのはいつも通りの音楽室で、別段変わったところは無いようだった。

「さっきの何だったんだろ……夢?」

梓は日頃の疲れにより、白昼夢を見たのだと考えた。

「疲れてる時は甘い物に限るよね。帰りに鯛焼き買って帰ろっと――」

と言って立ち上がった梓だったが――。

「――え、なに……これ……?」

窓から見る景色が、何もかもいつもと変わってしまっていた。

まず、校旗。
桜が丘高校の校旗とは明らかに異なるデザインの校旗が、体育館の上に飾られていた。

次に、グラウンドで部活動をしているサッカー部。
桜が丘高校は女子校である。そのため、もちろん男子サッカー部は存在しない。
だが、今はきちんと整備されたグランドで、多くの男子がサッカーに勤しんでいる。

極めつけは、すぐ脇を流れる川だった。
桜が丘高校の近くには川は存在しない。

「これって――うっ……!」

突如頭を抱えてうずくまる梓。
梓の頭の中に大量の情報が流れ込んでくる。目眩を何倍も酷くしたような嫌な感覚だ。

――聖杯戦争。ソウルジェム。見滝原。そして、サーヴァント。

「うう……」

――数分後、梓は吐き気を堪えて立ち上がった。
大変なものに巻き込まれてしまったと思った。お父さんやお母さん、唯先輩や澪先輩たち、軽音楽部のメンバーにもう二度と会えないかもしれないと思うと涙が込み上げそうになった。

――すると。

――ジャンジャジャンジャン♪

どこからか軽妙洒脱なメロディが聞こえてくるではないか。

このメロディは――具体的な曲名は分からないが――メキシコ系のそれだと梓にも理解できた。

梓が音の鳴っている方を見やると、いつの間にかギターを持った男がこっちを見て笑っていた。
梓はこの男こそが自身のサーヴァントであると直感的に理解した。

「あ、あなたが私のサーヴァントさん、ですか……?」

梓は恐る恐る話しかけた。

「エレス・コレクート!!」

「え、あ、はい?」

「スペイン語で『君は正解だ!!』と言ったのだ」

「チャロ」と呼ばれるメキシコの伝統的な衣装に身を纏ったキャスターはそう言うと、再びジャラーンとギターをかき鳴らした。

「私の真名は『ペヨーテ・ディアス』。気軽にペヨーテ(またはキャスター)と呼んでくれたまえ」

――と言うと、やはりジャラランとギターをかき鳴らした。
どうやらこの男、ギターでリズムを刻みながら喋るのが好きらしい。

「えっと、キャスター……さん。私は『中野梓』って言います。まだ聖杯戦争がどういうものなのかよく分かっていないんですけど、精一杯頑張るのでよろしくお願いしますっ!」

梓はそう言って頭を下げた。

「フッフッフ。アズサ、突然だけど私には夢があります☆」

「夢……ですか?」

「エレス・コレクート!! 私はこの街に来る前にとある御方に仕えていまして、そして、その御方に聖杯を献上しようと思っているのです☆」

「な、なるほどです。私は元の世界に帰してもらう以外には特に願いは無いので、キャスターさんに聖杯はお譲りします」

梓はツインテールをぴょこぴょことさせながら答えた。
梓としては、願いを叶えるモノなど本当に存在するのか半信半疑だったし、叶えたい願いなど本当に特には無かったのだ。


222 : オンリー・マイ・ロード ◆Il3y9e1bmo :2018/04/15(日) 21:57:35 glFwgCPA0
「素晴らしい! では、二人の利害が一致したところで、一曲いきます☆」

「え、歌うんですか!?」

梓の驚きを尻目にキャスターは弾き語りを始めた。
暫し唖然としていた梓だったが、聴いている内に何故だか心の奥の方がウズウズとしてきた。

「きゃ、キャスターさん!」

「何だね、アズサ」

「わ、私も一緒に弾かせてもらっても構いませんか……?」

「モチのロン。ララ、アズサ(マスター)と私(サーヴァント)がデュエットしたら、向かうところ敵なしだと私は思います☆」

「そ、それじゃ……。よし……」

何故かこちらの世界に持ち込めていたフェンダー・ムスタングを構え、梓は半時ほど無人の音楽室でキャスターとのデュエットを楽しんだ。

◆ ◆ ◆

――帰り道。

《キャスターさん、どうしてさっき、私はあんなにワクワクしてしまったのでしょうか?》

飲み込みの早い梓は、もう念話を使いこなしていた。

《それは私がアズサの『魂』に呼びかけたから。アズサの『魂』は私の歌のリズムに乗った。そしてアズサは歌って踊った。本当の自分を使いこなした》

よく分かるような分からないようなキャスターの言葉に首を傾げ、梓はまだ温かい鯛焼きを頬張った。

《ところでキャスターさん》

《なんだね?》

《……念話って鯛焼き食べながらでもできるから便利ですね!》

《――おそまつ》

キャスターは最後に一度だけ、ギターを鳴らした。


223 : オンリー・マイ・ロード ◆Il3y9e1bmo :2018/04/15(日) 21:57:54 glFwgCPA0
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【クラス名】キャスター
【真名】ペヨーテ・ディアス
【出典】シャーマンキング
【性別】男性
【属性】混沌・悪
【パラメータ】筋力:C 耐久:D 敏捷:C 魔力:A+ 幸運:A 宝具:B+

【クラス別スキル】
・陣地作成:-
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
キャスターはこのスキルを有していない。

・道具作成:C
魔術的な道具を作成する技能。
時間は多少かかるが、宝具の展開に必要な媒介の修復等も行うことができる。

【保有スキル】
・オーバーソウル:B
キャスターによって本来物体に憑くことの出来ない霊を無理矢理憑依させ、霊を具現化させる技術。
オーバーソウルした霊体は、霊体でありながら物理的な干渉力を持ち、霊の持つ特殊能力を具現化させることも可能。
具現化する形態は霊の性質・形状と術者のイメージで決まる。
オーバーソウルの際に霊を憑依させる物体を「媒介」と呼ぶ。

・シャーマニズム:A
精霊と対話するスキル。
キャスターはギターをかき鳴らすことにより、彼らの力を借り受けることができる。

・戦闘続行:C
名称通り戦闘を続行する為の能力。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
「往生際の悪さ」あるいは「生還能力」と表現される。
キャスターは自身が死亡しない限り戦うのを止めない。

【宝具】
『七人の無法者(カラベラドールズ)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:7
キャスターの元マリアッチ仲間である、カルロス、ジョアン、アントニオ、ホセ、パンチョ、サパタ、ミゲルの七人が宝具になったもの。
小型のカラベラ人形(メキシコの伝統的な祭りに使用される人形)にオーバーソウルして戦わせる。
七人が七人とも好戦的な性格で、生前はケンカばかりしていて有名だったという。しかし、全員ケンカにより死亡。
オーバーソウルの媒介としては、主にカラベラ人形を使うが、他人の体(骨)にオーバーソウルさせることもできる。
また他人の体を乗っ取った際には、体を巨大なサボテン状に変形することができ、その場合は殴打の他、棘を発射して攻撃する。

『偉大なる骸骨人形(グランデファンタスマ)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1
キャスターの切り札。巨大なファージャ人形(こちらもメキシコの伝統的な祭りに使用される人形)に七人全員をオーバーソウルさせた宝具。
強力だが、魔力消費が莫大な上に七人全員をオーバーソウルさせないと動かせないので非常にコストパフォーマンスは悪い。

【Weapon】
・ギター
詳細不明。キャスターはこれを奏でることによって霊を操ることができる。

・カラベラ人形
オーバーソウルに使用する「媒介」。
骸骨のような形をしていて、七体存在する。

・ファージャ人形
オーバーソウルに使用する「媒介」。
こちらも骸骨のような形をしていて、非常に巨大。

【人物背景】
1970年9月11日生まれの乙女座、血液型はA型。趣味は刺抜きと髭剃り、好物はタマーレス。メキシコ・オアハカ出身。
カラベラ人形という独特の人形を操り、シャーマン能力に目覚める前はマリアッチとして生きていた。
刹那主義者が多いメキシコ人の中でも徹底的に刹那主義者で快楽主義者、かつ破滅願望を持つ。

【聖杯にかける願い】
元の世界に帰還し、聖杯をハオ様に献上する。

【方針】
楽しく演る。
やられたらやり返す。

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【マスター】中野梓
【出典】けいおん!
【性別】女性

【Weapon】
・フェンダー・ムスタング
特に魔術的要素のない、普通のギター。

【能力・技能】
・ギター演奏
小学四年生からやっているのでなかなか上手。歌を歌うのは下手。

【人物背景】
1992年11月11日生まれの蠍座、血液型はAB型。親がジャズバンドをやっており、その影響で本人は小学四年生からギターをやっている。愛称はあずにゃん。
黒髪ツインテールが特徴。鯛焼きなどの甘いものが大好き。

【聖杯にかける願い】
元の世界に帰還したい。
聖杯はいらない。

【方針】
早く平穏を取り戻したい。
もちろん戦えないので戦闘はキャスターに任せる。


224 : ◆Il3y9e1bmo :2018/04/15(日) 21:58:13 glFwgCPA0
投下を終了します。


225 : ◆RVPB6Jwg7w :2018/04/15(日) 22:58:55 0Eiba4YQ0
投下します。


226 : ロストマン&ロストガール ◆RVPB6Jwg7w :2018/04/15(日) 22:59:59 0Eiba4YQ0

見滝原には、いくつもの怪談、あるいは怪しいお話がある。

廃ビルから飛び降りた女性が、傷ひとつない姿で下の地面に横たわっていた、とか。
見滝原市公認ゆるキャラ、タコのような「ミータくん」が工場の煙突に巻き付いていた、とか。
真っ白な野良猫をよく見たら兎のように長い耳が垂れていて、目が合うと人の言葉をしゃべった、とか。

まあ、いずれもたわいもない話ではある。
新興市街地の多い見滝原では、歴史のある怨霊や妖怪の話はほとんどなかったけれど。
でもだからこそ、無責任な、都市伝説のような話は数多く語られていた。


そして――その、都市伝説のひとつに。

「存在しないはずの小道」。

「地図に載っていない小道」。

「幽霊の少女と幽霊の犬がいる小道」。

「決して振り返ってはいけない小道」。

そんなひとつのお話が、誰も気づかないうちに、静かに加わっていた。


――――――――


「……なるほどな。話はだいたい分かった。
 まさか、『幽霊』に召喚されることになるとは思わなかったが」

手近な塀にもたれかかっていた男は、そこでゆっくりと瞼を開いた。
長身で、一見して『黒い』男である。
肌は褐色を通り越して漆黒に近く、銀の髪は短く刈り込まれている。
気の弱い者なら視線だけで気絶しそうな鋭い目で、男は眼前の少女を睨む。

「その『殺人鬼』がこの聖杯戦争の場に居るというのは、確かなんだろうな」
「根拠を求められても困るわね。
 ただ、あたしには『分かる』の。『あいつ』もここに居る、って」

少女は憶することなく、漆黒の男を見上げる。
髪留めでオールバックに挙げられた前髪。袖なしのワンピース。
片手に握られていたのは、無色透明の宝石、ソウルジェム。
そして――少女の足元には、音もなく従う、屈強な体格の一匹の犬。

真っ昼間だというのに人の気配のない路地で。
男と少女と犬は、静かに向き合う。


227 : ロストマン&ロストガール ◆RVPB6Jwg7w :2018/04/15(日) 23:01:00 0Eiba4YQ0

「わたしたちは『あいつ』を『路地』で『仕留め』て、全てに満足して成仏したはずだった――
 そのせいか、記憶を取り戻した今でも、いくつか記憶に穴があるわ。
 たとえば、確かに掴んでいたはずの『あいつ』の名前が、どうしても思い出せない」

「頼りにならんな。
 オレも人の事を笑えない、欠落だらけの記憶の持ち主だが……
 それにしたって、それはおまえの一番肝心な所じゃないか」

「それでも――いまは自分を取り戻したし、いくつかのことを確信しているッ!
 あたしは、見滝原の噂話に語られる、名無しの幽霊なんかじゃあない。
 あたしの名前は杉本鈴美(すぎもと れいみ)。
 この子の名前はアーノルド。
 わたしたちは、『前提』が覆ったから『ここ』に居るッ!
 殺人鬼の『あいつ』が、『ここ』に呼ばれたからッ!
 それも、あたしが『マスター』だということは、きっと、『あいつ』もッ」

かつて、ある地方都市で、『殺人鬼』の手にかかった少女がいた。
少女は愛犬と共に『あの世』と『この世』の境界に留まり、自分の声が届く日を待ち続けた。
『殺人鬼』はそして『爆弾の能力』を手に入れ、一切の証拠を残すことなく殺人を重ねていく。
頭上を過ぎ去っていく『殺人鬼』の犠牲者の姿に涙しながら、少女は十数年もの間、待ち続けた。

そして少女の声は、ついに、街に居た『黄金の意志』を持つ者たちに届いて。
犠牲と苦闘の果てに、少女とその協力者は『殺人鬼』に裁きを下した。
『殺人鬼』は命を落とし、そしてその魂さえも『決して平穏ではないところ』に連れていかれた――

はずだったのだ。

その大前提が崩れ去れば、少女と愛犬は『安らかに眠ってはいられない』。
『成仏なんてしている場合ではない』。
きっとそういうことなのだろうと、少女は直感し、また理解していた。
証拠もなく、証明もできないけれども、彼女には確信があった。


いま、二人と一匹が立つこの路地も、かつて少女が呪縛され留められていた路地と『同じもの』。
街は違えど、どこの土地にでも存在して、かつ、どこの土地にも存在しない狭間。

『存在しないはずの小道』。
『地図にない小道』。
『ふと見た時にあったりなかったりする曲がり角』。

『『この世』と『あの世』の境界に位置する、『決して振り返ってはいけない小道』』。


――――――――


「……お前を『マスター』と呼ぶ前に、ひとつだけ聞かせろ」
「なあに? エミヤ?
 いえ、こういう時はアーチャーと呼ぶべきなのかしら」

少女の身の上話を一通り聞いた黒の男は、呼称の確認を無視して、少女に語り掛ける。
金色の瞳で、少女を鋭く睨みつける。

「おまえの言う『あいつ』、爆弾の能力を持つ『殺人鬼』を討ちたい――それは分かった。
 その『殺人鬼』がこの地に居て、この聖杯戦争に参加している――それも良しとしよう。
 問題は、だ」

エミヤと呼ばれた男は、そして嘲笑うような形に口元を吊り上げ、少女の胸元を指さした。
そして問う。

「おまえは『何のために』その男を討つ?」

しばしの沈黙。
少女は天を仰ぐ。足元の愛犬も静かにそれに倣う。
相変わらず人の気配のない路地。音もなく雲だけが流れていく。

「……かつての対決の時には、あたしは街の『誇り』と『平和』のために戦ったわ。
 あたしの育った街。
 あたしの大好きだった街。
 その街に、あんな汚点を残してはいけない。それが最大の動機だった。
 でも。
 でも――ここは、あたしの愛した『杜王町』では、ない。
 この街にも人々が暮らして、『誇り』と『平和』を望んでいるんでしょうけれど……
 そんなもの、あたしの知ったこっちゃ、ない」

ゆっくりと鈴美は視線をエミヤに戻す。
そこにあったのは、強い意志の力。
どこかドス黒い、怒気すらも孕んだ眼の光。


228 : ロストマン&ロストガール ◆RVPB6Jwg7w :2018/04/15(日) 23:01:55 0Eiba4YQ0

「だから。

 ――『あいつが、今更、のうのうと平穏に暮らすなんて許せない』。

 ――『平穏を手にできる可能性すら、認めたくない』。

 あたしに動機と呼べるものがあるとしたら、それだけよ」

鈴美とエミヤの視線が交差する。
アーノルドが静かに、しかし緊張感もって2人の意志のぶつけ合いを見守る。
先に眼を逸らしたのは……エミヤだった。

「……いいだろう。請け負った。
 『マスター』の望み通り、『そいつ』の首、オレが獲ろう」
「あ……」
「運が良かったな、マスター。
 もし『今回も誇りと平和を守るため』なんて『正義の味方』のようなことをほざいていたら。
 オレは即座におまえを撃って、さっさと『座』に帰っているところだった。
 いや、今回の聖杯戦争、素直に帰れるのかどうかも分からんが」

漆黒の反英霊はニヤリと哂う。
対する鈴美は、ホッとした雰囲気を隠しきれない。

無理もない。
常人を遥かに超える、英霊のプレッシャーに晒され続けていたのだ。
一言間違えればマスター相手といえども躊躇なく命を奪う、その殺気を当てられていたのだ。
かろうじて立っているのがやっと、といった雰囲気の鈴美に、アーノルドが身を摺り寄せる。

「そういえば……オレの名だが。
 そうだな、『エミヤ〔オルタ〕』とでも呼んでくれ。役割通りアーチャーでもいいが」
「……オルタ?」
「オレの記憶もマスターと一緒で、あちこち腐り墜ちて残っているモノの方が少ないくらいだが。
 『いつか』の『どこか』で、オレはそう呼ばれていたらしい。
 おおかた、『オレが奈落に墜ちなかった可能性』あたりが先に喚ばれていたんだろうな」

エミヤ〔オルタ〕はそして、なんてことない風に路地の外に向かって歩き出す。
鈴美と因縁ある『殺人鬼』を殺す。
そう決めた。
ならば行動する。それだけの話。

「気を付けて。路地を出るまで、決して振り返ってはダメよ。あいつらが色々な誘惑を……」
「なんてことはない。
 歩き出した途端になにやら聞こえてはきたが、オレにとっては馴染みの声だ。
 いつもの亡霊どもの恨みごとだ。
 心に鉄しか残っていないオレには、こんな惑わしは効かないよ――」

隔世の境界にて、数多の亡霊に手を伸ばされながらも、エミヤ〔オルタ〕は見滝原の街へと歩を踏み出す。
善に与するもよし、悪に与するもよし、最後に全ての帳尻が合えばそれでいい。
狙いはただひとつ、この街のどこかに潜む、『殺人鬼』の始末。
路地に呪縛された主人を残し、漆黒の銃弾は駆けだした。


――――――――


229 : ロストマン&ロストガール ◆RVPB6Jwg7w :2018/04/15(日) 23:03:05 0Eiba4YQ0

【クラス】
 アーチャー

【真名】
 エミヤ〔オルタ〕@Fate/Grand Order

【パラメーター】
 筋力:C、耐久:B、敏捷:D、魔力:B、幸運:E、宝具:?

【クラス別スキル】
 対魔力:D
 一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔除けのアミュレット程度。

 単独行動:A
 マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
 エミヤ〔オルタ〕の場合、一週間程度は現界可能、単独での戦闘も可能。

【保有スキル】
 防弾加工:A
 もはやエミヤ〔オルタ〕自身も由来を忘れた能力。
 効果は明瞭で、回数制限のある非常に強い防御力増加効果を自分自身に付与するもの。
 発動時にはサーヴァントとしても破格の守備力を誇るが、自動発動ではなく能動的に発動する必要がある。
 また、数度の攻撃で解除されるため、連続攻撃系の能力相手にはやや相性が悪い。

 投影魔術:C
 道具をイメージで数分だけ複製する能力。
 愛用する斬撃・銃撃が可能な二刀/二挺拳銃『干将・莫耶』も投影魔術の産物(の改造品)。
 『干将・莫耶』は双剣に戻して使ったり、剣の状態で連結させて使ったりもできる。

 嗤う鉄心:A
 反転の際に付与された精神汚染系スキル。一種の洗脳に近いもの。
 既に精神に影響を受けていることから、他の精神干渉系の魔術や効果をシャットアウトする。
 それこそ「振り返ってはいけない小道」の惑わしの囁きなど、通用するはずがない。

【宝具】
 無限の剣製(アンリミテッド・ロストワークス)
 ランク:E〜A++、種別:対人宝具、レンジ:30〜60、最大捕捉:?
 本来は剣を鍛えることに特化した魔術師が到達した固有結界。これを彼は弾丸として用いる。
 着弾すればそこから極小の固有結界が発動し、結界内の無数の剣が敵を内側から破壊し破裂させる。
 その威力はすさまじく、また無生物にも有効で、「いつかどこか」で小惑星を破砕したこともある。

【weapon】
 干将・莫耶。

【人物背景】
 無銘の英雄のオルタナティブ。失墜した無心の執行者。
 かつて剣の如き心を持っていた男は、悪を追う中で無辜の民の犠牲を多数出し、悪を裁くことができなかった。
 男は魔道に墜ち、道徳を見切り、親愛を蔑み、生きる屍となった。
 自らを「腐り果てた」と表現する彼からは、記憶も、過去も、五感も零れ落ちていく。
 どうやら「いつかどこか」で「エミヤ〔オルタ〕」と呼ばれた記憶があるようだが、その記憶もほとんど……。

【サーヴァントとしての願い】
 マスター・杉本鈴美の願いを叶える、つまり殺人鬼(吉良吉影)を倒す(ただし今は名前も未把握)。
 そのためなら「なんでも」する。
 聖杯および聖杯戦争には興味がなく、この状況を利用できるだけ利用する。

【運用法】
 おそらく何らかの形で他の参加者に接触し、共闘しつつ『殺人鬼』を探す恰好になるだろう。
 この際、主従ともに「聖杯にかける願いがない」ことは交渉材料になりうる。
 組む相手の候補は必ずしも善人だけとは限らないことに注意。むしろ悪人の方がやりやすそうだが、さて。


230 : ロストマン&ロストガール ◆RVPB6Jwg7w :2018/04/15(日) 23:03:34 0Eiba4YQ0

【マスター】
 杉本鈴美@ジョジョの奇妙な冒険 Part 4 ダイヤモンドは砕けない
 (+アーノルド?)

【マスターとしての願い】
 この聖杯戦争に参加しているはずの、自分を殺した『殺人鬼(吉良吉影)』を倒す。
 聖杯および聖杯戦争には興味なし。

【weapon】
 アーノルド(大型犬)

【能力・技能】
 ・地縛霊
 杉本鈴美および愛犬のアーノルドは、既に死んだ幽霊であり、地縛霊である。
 『振り返ってはいけない小道』から離れることはできない。
 最大でも小道の入り口の角(通常の道路になっている部分)までしか行けない。
 幽霊なので、睡眠・食事・排泄・休息は不要であり不可能。
 肉体を損壊する可能性はあるが、普通の意味では『死ぬ』ことはない。
 なお、事情を知らない者が見たらとても幽霊には見えないし、普通に触れ合うことすらできる。

 ・『殺人鬼』の犠牲者の確認
 『殺人鬼(吉良吉影)』の犠牲者の魂が『あの世』に行く場合、必ず『小道』の上空を通過する。
 ほとんど何の情報も伝えることはできず、容姿の視認が精一杯だが、鈴美は必ずそれに気が付く。

 ・『決して振り返ってはいけない小道』の活用
 『小道』そのものや、振り返ってしまった時に伸びてくる手は、必ずしも鈴美の味方ではない。
 しかし鈴美は誰よりもその性質を知り尽くしている。

 ・アーノルド
 鈴美の傍にいつもいる犬。首が半分斬れたままだが、屈強な体格に見合う肉体能力がある。
 今回の参戦に際して、鈴美の一部という扱いなのか、鈴美とは独立した扱いなのかは不明。

【人物背景】
 杜王町の『決して振り返ってはいけない小道』にいた幽霊。
 かつて殺人鬼・吉良吉影の最初の犠牲者となった少女。
 吉良は潜伏し続け、少女は殺人鬼を倒すためにこの世に留まり続けた。
 紆余曲折の末、少女は『黄金の精神』を持つ者たちと巡り合い。
 吉良吉影は命を落とし、その魂さえも無数の『手』に捕まって連れ去られた。

 ジョジョの奇妙な冒険・第四部終了後からの参戦。
 多少の記憶の欠落があり、特に『吉良吉影』の名前は抜け落ちている(その名前から探すことはできない)。
 その他、吉良の能力なども把握しきれていない可能性がある。
 ただし最低でも、第四部で彼女が登場した時点で持っていた情報は備えている。
 マスターとして覚醒し記憶を取り戻す以前から、見滝原に語られる怪談にその存在を語られていた。

【方針】
 エミヤ〔オルタ〕に委ねる。
 『殺人鬼』を倒せるなら他はどうでもいい。
 自分自身は『振り返ってはいけない小道』入り口で街の噂に聞き耳を立てることくらいしかできない。

【備考】
 『決して振り返ってはいけない小道』の、マップ上での具体的な位置は現時点においては未定です。
 以後の本編(あるいはOP)に委ねます。
 周囲の風景が杜王町の『小道』から大きく変わっている可能性もあります。


231 : ◆RVPB6Jwg7w :2018/04/15(日) 23:03:51 0Eiba4YQ0
投下終了です。


232 : ◆4etfPW5xU6 :2018/04/16(月) 17:59:37 kcWkGqcM0
投下させていただきます


233 : 藤宮香織 ◆4etfPW5xU6 :2018/04/16(月) 18:00:56 kcWkGqcM0



私には気になる人がいる。

その子は何かに脅える様に此方の様子を窺い
ふい、と私から目を逸らした。

私はそんな彼を見て、ただ――
友達になりたいと、思った。


○  ×  △  □



ざあざあと、音がする。

微睡んでいた意識を、無理矢理に覚醒させる音。
まだ、早いのではないかと。
鉛のような鈍さと共に睡眠不足を訴える体を無視して、ベッドに寝転んだ体の向きを変えて窓の外を見る。
しかし生憎、部屋のカーテンは閉ざされており、外の様子を確認することは出来ない。
白い布地は、鳴り響く轟音に合わせて踊るかのようにひらひらと舞っている。

けれど、それは確認するまでもなかった。

まず初めに届くのは、まるで激しい滝の下にいるかの様な雨音。
息つく暇なく地面を打ち付け、誰かを威圧するような音。
次いで、ごうごう吹き荒れる風。
時折、何かが軋むようなミシリ、という音。

……確認するまでもなく、布生地と硝子の壁を超えた先は、土砂降りの大雨だろう。
否応無しに耳に届く、騒々しいようで、何処か不安になるような音が、そう告げていた。

「大丈夫かな」

欠伸交じりに呟いた言葉は、無意識のモノだった。
雲にかかる霞のようなソレは、雨の音に掻き消されて、消えた。
呆気なく、吐息の中に。

何かが、不安になる。
意味もなく、漠然とした感情。
誰にでもよくあるとりとめもない事。
そう認識する刹那、ソレと相反すつ疑問が水泡の様に頭の中に浮かび上がる。

「私は、何を心配しているの?」

何を、あるいは――誰を、心配しているのか。

大丈夫かな。
……これは、ついさっき自らの口で発した言葉だ。
自分の意志で、自分の口で、紡いだ言葉。
そうだと言うのに。
何を、どう大丈夫かを心配しているのかがわからない。

ソレが可笑しい事は、おっとりした性格の彼女であってもすぐに理解できた。

何か問題があって、その事を心配するならわかる、けれど。
心配という感情が先に来て、問題が起こるなんて、そんな事ある筈がない。
何かを心配する気持ちがあるから、大丈夫かと案じる言葉が生まれるのだ。
鶏が先か、卵が先か――これは少し違うかもしれないけれど、ともあれ。

そんな簡単な、考えるまでもないような事な筈なのに、その原因が彼女にはわからない。

ざあざあと、音がする。

気にしなければ良いのかもしれない。
戯れの様に浮かんで消えた思考に、大した意味はないのだと。
自分の名前や、家族との思い出、そんな大事なモノが消えたわけじゃないのだから。
気にしなければ良いのだと、わかってはいても。

何故だか、その気持ちを手放すことが彼女には出来なかった。

ギュッと、瞼を閉じて記憶を探る。
全てを洗い流すような雨が、この想いを消し去ってしまわないように。


234 : 藤宮香織 ◆4etfPW5xU6 :2018/04/16(月) 18:02:01 kcWkGqcM0
彼女は必死で記憶を手繰る、手繰る、手繰る。
靄のかかった海を、必死で泳ぐ。
蜘蛛の糸に手を伸ばすかのように。

けれども、そんな努力も虚しく終わる事になった。

「そっか、日記を見れば良かったんだ」

そう、自分自身の体質から彼女は日々の出来事を日記を書き連ねており――

「えっと、確か今日はもう鞄から出してた筈だけど」

――それを読めば、自分が何を心配しているのかわかるに違いない。

ギシ、とスプリングを軋ませてベッドから起き上がる。
丁寧に整理された机の上にお目当てのモノはあった。

数えきれない想いを連ねたソレを、慈しむように指先でなぞると。
ゆっくりと、少し汚れたその表紙を開いた。



○  ×  △  □



○月×日(月曜日)

今日は学校で、長谷くんって人に話しかけられた。
昼休みになったら急に、俺と友達になって下さいって。
話した事のない人だから変だと思ったけど……実は、先週の私の友達なんだって!
嬉しくなって、お話して、忘れちゃってて申し訳なかったけど長谷くんは凄く良い人だった!
日記を読み返したら、先週の私も長谷くんにいっぱい感謝してる。
明日が、楽しみ。

○月×日(火曜日)
今日は長谷くんの分のお弁当も作って持っていってみた。
長谷くんの好みに合うかわからなくて、ついつい作りすぎちゃいました。
喜んでくれるか不安だったけど、笑って美味しいって。勇気を出して良かった。
長谷くんはお砂糖18gの卵焼きが好きだって、ちゃんと書いておかないとね。
それと、長谷くんとトランプをしたよ!
二人きりだったからずっと神経衰弱だったけど、唸ったり迷ってる長谷くんは表情がいっぱいあって凄いなあって思います。
また明日も、お話できたらいいなあ。

○月×日(水曜日)
今日は初めて友達とカラオケに行ったよ。
ファミリーレストランの前で待ち合わせをして、友達と待ち合わせなんて初めてだったからドキドキしちゃたけど、長谷くんとちゃんと会えて安心。
友達と遊びに行ったり、買い物してみたり。そんなの漫画の世界の中だけだと思ってた。
ずっとずっと憧れてたけど、想像よりもずっとずっとずっと楽しい。


235 : 藤宮香織 ◆4etfPW5xU6 :2018/04/16(月) 18:04:23 kcWkGqcM0
○月×日(木曜日)
明日が来るのが怖い。
金曜日が過ぎてしまったら、その後は週末で学校がお休み。
長谷くんと次に会うのは、月曜日。
その時には、また長谷くんの事を忘れちゃってる。
また、友達になれるかな?
また、遊んでくれるかな?

――忘れたくない、長谷くんの友達でいたい。

○月△日(金曜日)
長谷くんから、不思議なお話を聞きました。
何でも願いが叶う、聖杯のお話。
きっと長谷くんは私を元気付けてくれてるんだと思う。
笑って、希望に溢れた目で、今度こそ私が傷付かなくて良いようにって。
一番傷付いてるのは、長谷くんなのに。
本当に、優しい人だね長谷くんは。

もしそれが本当に有ったら……ずっと長谷くんの友達でいられるのかな?

○月△日(土曜日)
凄く、色々な事がありました。
今でも整理はついてなくて、何て書いたら良いかわからないけど。
長谷くんの言ってたこ

○月△日(日曜日)
今日で、私の記憶とはお別れ。
だから、昨日書けなかった事を書いておこうと思います。

長谷くんの言っていたことは本当でした。
聖杯、マスター、サーヴァント、ランサー、バーサーカー。
どれもこれも、見た事も聞いた事もない言葉ばかり。
夢のようだけど、全部、本当の話。

目の前で、冷たくなっていく人。
笑いながら私に向けられる何か。

思い出すだけで、汗が止まらないくらい、怖い、怖い、あの光景。
もしかしたらもう長谷くんには会えないかもしれない。

だけど、私は信じてみたいって思いました。
絶対に守るって言ってくれた彼の。

――の言葉を。



○  ×  △  □



○月×日月曜日。

そうして彼女――藤宮香織は、欠けた記憶を手繰り寄せる事に成功する。
文章で見ただけで実感は湧かない、けれど確かに心に刻まれていた恐怖。
その鋭利な感覚が彼女に自らが今置かれている現実を理解させていた。

一番初めに来る感情は、怖い、だ。

どうして自分がそんな事に巻き込まれてしまうのか。


236 : 藤宮香織&バーサーカー ◆4etfPW5xU6 :2018/04/16(月) 18:05:03 kcWkGqcM0
日記を読む限り、きっと長谷くんと言う人の事を忘れたくなくて。
もう友達の存在を忘れてしまう事に脅えて。
偶然巡り合った機会に縋り付いてしまったのだろう。

日記を見ていれば、どれだけ自分が彼の事を大事に想っていたかがわかる。

それでも、それを覆い隠してしまう程。
記憶を失って尚、恐怖が蘇ってしまう程。
忘れてしまって尚、あの冷たさを思い出してしまう程。
聖杯戦争に対とは恐ろしいモノだった。
何の変哲もない女子学生が参加するには、過ぎたモノだった。
ともすれば、逃げ出してしまいそうな位には。

今自分がいる場所も、その恐怖に拍車をかけていた。
起き抜けから覚醒した今だからこそわかる。
自分の部屋と似た、それでも全く別物だとわかる部屋。
何故、どうしてこんな所にいるのかわからない恐怖が、彼女を襲う。

――だけれでも。

不思議と、目を背けようとは思わなかった。
心配になったのは――自分が、聖杯を手にする事が出来るのかと言う事。

例えどれだけ傷付いたとしても。
傷付く事すら忘れて日々を過ごしてしまっていたとしても。
諦めた事も、投げ出した事もあった。
それでも彼女は立ち上がった。

もう二度と友達の事を忘れないように、自らを一人に追い込んで。
いつか記憶を失わずに済むんじゃないかと、未来に希望を持っていた。

だからこそ――

「ますたぁ、ぼくのこと、おもいだした?」

――彼は、彼女の声に応えた。

「えっと、うん……ごめんなさい。貴方の事はわかるけど、どうしても実感がわかなくて」
「そっか、や、っぱり、わすれちゃった」

突然姿を現した大男の存在に驚きつつ、目を向ける。
大柄で、筋肉質な体は彼女の言葉に反応して心なしか小さく見え、少なからず恐怖を和らげる。
しゅん、と言う擬音がぴったりな程うなだれた大男は、不安気な視線を彼女に送っていた。
彼女には知るよしもない事だが、彼はあくまでもサーヴァントであり、マスターがいなくては存在意義が消失してしまう。

だがそれ以上に、彼は彼女に忘れられた事にショックを受けていた。
彼女の人柄に触れ、想いに触れ、聖杯が欲しいと、初めて思った。
故に、例え事前に説明を受けていたとしても、その悲しみは到底拭い切れるモノではない。

「でも、わかるんです。貴方はきっと優しくて、私を守ってくれる」

ピクリ、と。大柄な体が跳ねる。
ソレを見て少女は、今自分が抱いた想いが間違いでないと確信する。

「また、貴方の事を忘れちゃうかもしれないです」

すう、と息を吐いて、真正面から視線を交差させる。
心臓がばくばくと跳ね回っているのがわかる。
日記の彼も、こんな気持ちだったのかな、なんて考えて小さく笑う。

ふわふわとした髪の毛。
逞しそうな体。
悲しそうな瞳。
その全てを受け止めて。

「それでも、私は今度こそ友達の事を、誰の事も忘れたくないんです」

一呼吸、置いて。
素直な気持ちを告げる。
雨の音はもう、聞こえなかった。

「だから――もう一度、私と友達になって下さい。アステリオスさん」

そうして、手を伸ばした。

○  ×  △  □

○月□日(月曜日)
今日は、アステリオスさんとまた友達になれました。
暫く学校には行けないから、長谷くんに会うことは出来ないけど。
きっと、次に会えた時は、一週間の友達じゃなくて。
ずっと、ずっと友達でいられたら良いな。


237 : 名無しさん :2018/04/16(月) 18:05:57 kcWkGqcM0


【クラス】バーサーカー

【真名】アステリオス

【出典】Fate/Grand Order

【属性】混沌・悪

【パラメーター】
筋力B++ 耐久B++ 敏捷E 魔力E 幸運E 宝具A
【クラススキル】
狂化:B
バーサーカーのクラススキル。理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
理性を奪われてはいるが、たどたどしい言語ながら言葉を交し意思疎通する事は可能。

天性の魔: A++
生まれついての怪物(ばけもの)。後の人間のイメージから怪物と扱われる無辜の怪物とはある意味真逆のスキル。肉体、精神に対する弱体への耐性を付け攻撃に関わるランクを上げる事が出来る。

怪力:A
魔物、魔獣のみが持つとされる攻撃特性で、一時的に筋力を増幅させる。一定時間筋力のランクが一つ上がり、持続時間は「怪力のランク」による。

【宝具】
『万古不易の迷宮(ケイオス・ラビュリントス)』
ランク:EX 種別:迷宮宝具
アステリオスが封じ込められていた迷宮の具現化。一旦発現してからは、「迷宮」という概念への知名度によって道筋が形成される。
一定範囲内の侵入及び脱出を阻害する結界としての効果も持ち、その結界を解除するにはアステリオス自身が宝具を解除するか、迷宮に潜ってアステリオスを討つしかない。
ただでさえ迷宮は広大な上に、魔物がウヨウヨしているのでアステリオスの元に辿り着くことすら困難。
しかもアステリオスが死ぬと迷宮が崩壊するというまるでRPGのラストダンジョンみたいな機能が付いているため、一度潜れば生還する事は極めて難しい。
また、一定時間の間敵全体の攻撃と防御に関わるランクをダウンさせる。

【weapon】
ハルバードに似た二丁の斧

【人物背景】
『Fate/Grand Order』に登場する「狂戦士」のクラスのサーヴァント。牛の被り物を着けた全身傷跡だらけの怪物。しかし仮面をつけた初期の外形からは想像もつかないが、仮面を外したその顔は屈強な肉体に反して意外なほど幼く、言葉遣いや発言内容も子供の様である。とはいえ、かろうじて意思疎通は可能なので、他のバーサーカーよりは遥かに御しやすい。
生まれついての怪物だったとされており、また実際に(ミノス王に命令されたとはいえ)何も知らない子供を殺害するなど、悪の所業を行っていたものの、彼の本質は悪ではない。彼本人は闇ではなく光を、陰鬱な迷宮ではなく涼やかな自然の風や豊かな森を求めている。
メインストーリーでは第三章で登場する。黒ひげに狙われていたエウリュアレを守るべく結界を展開しており、そのとばっちりで足止めを食らい原因究明のために迷宮に踏み入った主人公らを敵と判断して攻撃を加えたが、最終的に主人公とエウリュアレとの間で誤解を解き、ドレイクの提案で揃って仲間に加わる。その後は、持ち前の怪力によって様々な場面で活躍を見せる。
拉致されたエウリュアレを奪還すべく向かったアルゴー号との戦いにおいて、ヘラクレスに単身立ち向かう。その命を一つは奪ってみせたものの敵うはずもなく、最終的に自身が死ぬのを承知の上でヘクトールの『不毀の極槍』にヘラクレスもろともその身を貫かせ、共に串刺しになったヘラクレスごと船から飛び降りる。いかにヘラクレスが不死身と言えどこうなっては彼が力尽きるのを待つほか脱出の術はなく、エウリュアレが主人公らと共に撤退できるだけの時間を稼ぐことに成功した。
身体能力は他のサーヴァントと比較しても頭一つ抜けており、重傷を負ったボロボロの体で船底に穴の開いた「黄金の鹿号」を背負って岸まで泳いだり、宝具を用いずに『十二の試練』を突破する等、文字通り化け物じみているが、今回はマスターが一般人であるためステータスがダウンしている。

【サーヴァントの願い】
ますたぁの、きおく、が、なくならない、ように、する。


238 : 藤宮香織&バーサーカー ◆4etfPW5xU6 :2018/04/16(月) 18:06:47 kcWkGqcM0
【マスター】
藤宮香織@一週間フレンズ。

【マスターとしての願い】
聖杯を手に入れて、友達の記憶がなくならないようにしたい

【weapon】
素手

【能力・技能】
なし、一般人である

【人物背景】
小学生時代にある出来事が原因で「1週間で友達との記憶を失くしてしまう」という障害を持ってしまった。それ以来人付き合いをしたがらなかったが、山岸と友達になったことがきっかけで、クラスメイトと徐々にだが打ち解けるようになっている。
友人との記憶は週末にリセットされ、月曜の登校時にはそれがまっさらな状態になっている。なお家族との記憶や友達でない人との記憶は失くしていない。
普段はクラスで冷たい人を演じているが、心を許した相手には人懐っこい本来の顔を見せる。今まで友達がいなかったため、カラオケなどの遊びに疎い。
得意教科は数学で、クラスの数学係を務めている。
失われるのは友達と認識した相手だけで、家族や単なる知り合いの記憶は失われない。

【方針】
未だ、無し。少なくとも誰かを殺して勝ち抜くつもりはなく、サーヴァントさえ倒せばいいと考えている。


239 : 藤宮香織&バーサーカー ◆4etfPW5xU6 :2018/04/16(月) 18:09:46 kcWkGqcM0
途中名前抜けてしまいましたが以上で投下終了です。
以前他企画で投下させていただいた話のリメイクです。


240 : ◆dt6u.08amg :2018/04/16(月) 23:27:31 hokuCiCg0
投下します


241 : 力なんていらなかった ◆dt6u.08amg :2018/04/16(月) 23:28:28 hokuCiCg0
記憶を取り戻したその晩、アリサ――成見亜里紗はさっそく使い魔の召喚に取り掛かった。
場所は川の東側の資材置き場。この時間帯なら通行人もほぼいないはずの立地だ。
大事な記憶を奪われていたことはもちろん腹立たしい。
けれど、その憤りを押し殺してでも、この新たな戦いに参加しなければならない理由があった。

聖杯。

願いを叶えた代償として戦わされるのではなく、戦い抜いた報奨として願いを叶える存在。
それさえ手に入れられれば、果たせずに終わったあの願いを叶えることができるかもしれない。

もちろん聖杯なんて嘘っぱちで、キュウべぇのように自分達を騙して利用しようとしているという可能性も捨てきれない。
だがそれでも、聖杯を求めないという選択肢は思い浮かばなかった。
何故なら、自分は既に一度死んでしまった存在なのだから、このチャンスを見逃す理由なんてないからだ。

「これでよしっと」

儀式の準備は万全だ。後は与えられた知識のとおりに呪文を唱えればいい。
万が一に備えて魔法少女の姿に変身してあるし、得物の大鎌もしっかり携えている。
更に、身体能力をブーストする自分の魔法があれば、相手が敵対的でもどうにかなるだろう。
それらに加えて、令呪なんていう便利極まりないモノまで手に入れているのだから。

「――素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公――」

成見亜里紗は魔法少女だ。
キュウべぇと名乗る妙な生き物と契約し、願いを叶える代償として魔女と戦う役目を負った。

「――汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に――」

アリサの願いは、強くなること。強くなって、自分を虐めてきた連中を見返すこと。
けれどそれは、あまりにも愚かで救いようのない過ちだった。

「――汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――!」

魔法陣の中心に膨大な魔力が渦巻き、瞬く間に形を成していく。
眼前に顕現したサーヴァントを、淡い色の瞳とマスターとしての透視力で捉えた瞬間、アリサは自分の想定が浅すぎたことを自覚した。

見上げるほどに巨大な肉体。目測だが自分の背丈の倍は下らない。
革のような質感の黒衣とジャケットに包まれた細身の肉体は、一見すると人間に近いように思えるが、鋭い爪と強靭な尾の存在がそんな考えを吹き飛ばしてしまう。
首が痛くなるほどに視線を上げると、猛禽の嘴のような形状をした紫色のヘルメット――あるいは外殻に開いた穴から、碧色の瞳がこちらを見下ろしているのが分かった。
そう、三つの瞳が。

ステータスを見ても、マスターとして絶望を感じずにはいられない。
対魔力A――令呪の一画に抗いうる耐性。
反骨の相A――魔力によらないカリスマ性でも従えられない気質。
単独行動A+――たとえ魔力の供給を断ち切ろうと、マスターが命を落とそうと、何ら問題なく戦い続けられる能力。
こんなもの『制御不能』の一言が書いてあるのと何も変わらないだろう。

「アーチャー、ベルゼブモン。テメェは何者だ」

三眼の悪魔がアリサを見下ろしたまま口を開く。

今ここで、左足のホルスターに収められた規格外の大型拳銃を抜き、アリサの頭を粉々に吹き飛ばしたとしても、このサーヴァントは平然と聖杯戦争を継続できる。
ここから先、返答を大きく間違えたら――

「あ、アリサ。成見亜里紗。アタシがアンタのマスターよ」

選んだ選択肢は胸を張って対応すること。決して弱さを見せないこと。

「それでアンタは……ベルゼブブ? 何か凄い悪魔だっけ?」
「ベルゼブモンだ。お前は知らねぇだろうが、まぁ当然だな」

値踏みするような視線を睨み返す。
いつの間にか与えられていた知識によると、サーヴァントは元々人間とのことだったが、このアーチャーは明らかに人間ではなかった。
体が大きすぎるとか、尻尾が生えているとか、三つ目だとか、そんな表面的な違いではない。
もっと根本的なところで人間とは違う存在のように思えてならなかった。

「気が向いたら手伝ってやる。せいぜい頑張りな」

アーチャーはアリサを無視するかのように歩き出し、無造作に資材の山に腰掛けた。
明らかにサーヴァントとして従うつもりがない様子だが、サーヴァントなくして聖杯戦争を生き残れないことは分かっている。
今はアーチャーの召喚に成功しただけで良しとした方がよさそうだ。

「あっそ。呼んだらちゃんと来なさいよね」


242 : 力なんていらなかった ◆dt6u.08amg :2018/04/16(月) 23:29:35 hokuCiCg0
 




    ◇ ◇ ◇




その夢は私の鏡写しのようだった。

彼は自分の弱さに打ちひしがれ、強大な存在と契約を結んで力を得た。
代償として要求されたのは友達の命。それを自分自身の手で奪うこと。
そして、自分を諭そうとしてくれた存在を殺し――絶望的な悲劇の引き金を間接的に引いてしまった。

力なんか要らない。そう叫んで力を捨て、かつての弱い姿のまま、思い出の場所を訪れる。
暖かく迎え入れてくれる、家族のようなパートナー達。
そこで友達が窮地に陥っていることを知り、彼は友達を助けに行くことを決意した。
受け入れてはもらえないかもしれない。敵意を向けられるかもしれない。それでも彼は迷わなかった。
パートナー達から笑顔で送り出され、失った力以上の新たな力を自ら手に入れ、絶望的な戦いに身を投じた。

結末は、彼にとって十分に満足の行くものではなかったかもしれない。それでも私に言わせればハッピーエンドだ。
受け入れられ、許され、それ以上何も失うことはなかったのだから。

辛くて、羨ましくて、悲しい夢だった。

手に入れた力に溺れて、自分自身の手で取り返しのつかない過ちを犯す――
私だって、チサトがいてくれなかったら、いつかそうなっていたかもしれない。
彼を諭そうとした人もいたけれど、彼はその手を振り払って命を奪った。
それが少しだけ辛かった。まるで私のもう一つの末路を見せつけられたようだったから。

アーチャーはチサトに会えなかった私のような道をたどり、償うために全てを懸けて戦って、受け入れられ、許された。
それが少しだけ羨ましかった。私はもう、自分ではどうしようもないところまで来てしまったから。

最後に待っていたのは物悲しい離別。けれど悲劇ではなく、希望を感じさせる涙の別れ。
――私には決して訪れることのない結末。




    ◇ ◇ ◇




その夢は昔の俺を見ているようだった。

かつてあいつは理不尽に虐げられ、力を求めて契約を交わした。
確かに、自分を虐げていた連中を蹴散らすことはできた。それだけの強さがあった。
だが、あいつは孤独なままだった。自分を虐げる奴らはいなくなったが、それは自分の周りから誰もいなくなるという結果でしかなかった。
力に目が眩んで、力を手に入れた後のことを考えていなかったのだ。

俺とあいつに違いがあるとすれば、あいつは『間に合った』ということだ。
力を振るって荒れ狂う日々の中、自分を諌めようとする奴の手を取ることができた。
その土手っ腹に穴をブチ開けてロードした俺とは違って。
ギリギリのところで踏みとどまって、何一つ恥じることなく『仲間』として肩を並べることができた。

――それだけで終わっていれば良かったんだろう。

あいつに手を差し伸べた人間は殺された。
しかも、あいつが交わした契約には裏があった。

俺のように力を与えた代わりに何かをする契約ではなく、力と引き換えに、まさにその瞬間に、自覚すらないままに全てを奪われるという契約だった。
契約を交わしたガキ共は、力を得ると同時に人間ではなくなる。
いずれ怪物に成り果てることが確定していて、後はそれが早いか遅いかの違いでしかない。

だからそうなる前に殺した――そんな理由で納得できるはずもなく。
仲間を殺した奴への恨みと、契約を結んでしまったことへの後悔を抱えたまま、仇を討つという最後の拠り所にすがって戦いを挑み――

そして、横槍を入れてきた何者かの手で殺された。

ああ、さっきの感想は取り消しだ。俺とあいつは違う。
俺はテメェ自身の愚かさの報いを受けただけ。当然の自業自得だ。誰も恨むつもりはないし、そもそもそんな権利はない。
あいつは肝心なことを教えられずに契約を結び、知らず知らずのうちに取り返しのつかないところまで転げ落ちていた。胸糞悪い顛末だ。俺に契約を持ちかけた神――スーツェーモンだってそんなことはしなかった。

だからきっと、あいつには願いを叶える権利があるはずだ。


243 : 力なんていらなかった ◆dt6u.08amg :2018/04/16(月) 23:30:50 hokuCiCg0
 



    ◇ ◇ ◇




もしも聖杯を手に入れられたらどうするのか――昨日、アーチャーとの契約を終えた後にそんなことを考えた。




天乃鈴音に復讐をしたい。真っ先に思い浮かぶのはそれだ。けれど他にもあるんじゃないかという思いは捨てきれない。

チサトとハルカを生き返らせたい。聖杯が本当にノーリスクで願いを叶えてくれるなら願う価値はあるはずだ。けれどたとえこの願いが叶えられたとしても、皆いつか魔女になってしまうだけだろう。

――人間に戻りたい。魔法少女を辞めたい。
ああ、それが叶うのならどんなにいいことか。けれど自分一人だけが助かるなんて嫌だ。チサトとハルカを救うチャンスを見逃して、まだ魔法少女として戦っているはずのマツリを見捨てるなんて。

万能の聖杯なら全てが叶えられるはず――そんな都合のいい考えはしたくない。
なにせ、甘い言葉に乗せられて痛い目を見たばかりなのだから。





気持ちがぐちゃぐちゃのまま朝を迎え、隠れ家にしていたアパートの外に出る。
その直後、頭の中にぶっきらぼうな声が響いた。

『よぅ』
「……アーチャー? 霊体化、だっけ?」

辺りを見渡してみても、あの巨体はどこにも見当たらない。
サーヴァントなら誰でも出来るという霊体化とやらで姿を消しているようだ。

「どうしたのよ。アタシ、別に呼んでないんだけど?」
『知るか。俺は好きに動くだけだ』

ここに来たいから勝手に来ただけ、そう言いたいんだろう。
まぁ、自分勝手に動きたいならそうすればいい。こちらもこちらで好きに動くだけだ。
そう思って町に繰り出そうとしたのだが、アーチャーは予想外の言葉を投げかけてきた。

『サーヴァントの気配がある。本戦とやらはまだ先だが、一人でうろついてたらブッ潰されるぞ』
「えっ……?」

予想外の忠告だった。助けらしいことなんかしてくれないだろうと思っていたのに。

「どういう風の吹き回しだ?」
『暇潰しに決まってんだろ。他に何かあるか?』

……本当、制御不能なサーヴァントだ。こちらが思ったとおりには動かず、考えもしなかった行動ばかり取ってくる。
アリサは諦めの溜息を吐き、霊体化したアーチャーを伴って、見滝原の町へと駆け出していった。


244 : 力なんていらなかった ◆dt6u.08amg :2018/04/16(月) 23:31:45 hokuCiCg0
【CLASS】アーチャー
【真名】ベルゼブモン
【出典】デジモンテイマーズ
【性別】デジモンに性別はないが男性的
【身長・体重】人間の大人の二倍はくだらない巨体
【属性】混沌・悪
【パラメータ】筋力A 耐久B 敏捷A 魔力B 幸運E 宝具A

【クラス別スキル】
対魔力:A
 A以下の魔術は全てキャンセル。
 事実上、現代の魔術師ではアーチャーに傷をつけられない。

単独行動:A+
 マスター不在でも行動できる能力。

【固有スキル】
騎乗:A
 乗り物を乗りこなす才能。呪われた騎乗物であろうと難なく乗りこなす。
 ただし、アーチャーの体格に適合しないものに乗り込むことはできない。

反骨の相:A
 人間にも神にも従うことを拒絶する気質。
 同ランクのカリスマを無効化する。

自己改造:-
 ロード。殺害したデジモンのデータを吸収して自身を強化する。
 これ自体は普遍的な能力だが、アーチャーは積極的にロードを繰り返して強化を重ねてきた。
 現在は過去の所業に対する後悔から封印している。

モードチェンジ:-
 ブラストモードへのモードチェンジ。
 翼による飛行能力を獲得し、敏捷に瞬間的倍加の補正が入る。
 聖杯戦争において、アーチャーは意図的に通常形態を基本状態としている。

【宝具】
『疾走せし魔弾の王(ダブルインパクト)』
ランク:B+ 種別:対人・対軍宝具 レンジ:1〜20 最大捕捉:200人
 二挺拳銃型の宝具『ベレンヘーナ』による連続射撃。
 弾丸を中心とした広範囲に攻撃判定が発生し、ただ撃ち続けているだけで対軍規模の殲滅攻撃と化す。
 アーチャーにとって通常攻撃の延長線上に位置するため、魔力消費は極小。
 たとえマスターを失った状態であっても、この宝具を用いた戦闘には支障をきたさない。

『陽電子砲・混沌火焔(カオスフレア)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:400人
 モードチェンジで解禁される宝具『陽電子砲』を用いた最大攻撃。
 砲身で前方に逆五芒星の魔法陣を描き、それを通過させる形で『陽電子砲』の射撃を放つことで、威力・射程・範囲を極限まで増幅させる。
 一度魔法陣が完成すれば、後は通常攻撃を放っているに過ぎず、砲撃の継続可能時間も凄まじく長い。
 ただし魔法陣の位置や角度を変更することはできない。

【weapon】
『ベレンヘーナ』
 宝具その1。主に通常形態で扱う二挺拳銃。厳密にはショットガンだが弾は単発で連射可能。
 現実の武器でいうなら、ソードオフ・ショットガンからスラッグ弾を放っている形。
 ホルスターの位置は左の太ももと背中。ブラストモードになっても装備し続けていて普通に使用できる。

 アニメ劇中では登場時点で既に持っていたが、別作品も包括したシリーズ全体の設定として、ウルカヌスモンというオリンポス十二神モチーフの神人型デジモンがベルゼブモンの力に惚れ込んで作った逸品という設定がある。

『陽電子砲』
 宝具その2。右腕の肘から先と一体化した大型の兵装。
 必殺技ではない通常射撃の名称は「デススリンガー」といい、場面によって光球だったりビームだったりする。
 外部作品では原子崩壊を引き起こす破壊の波動など物騒な設定がある。
 ブラストモードにモードチェンジしたときに得た新たな力。
 アニメ劇中においては、幼いパートナーからもらったおもちゃの光線銃が変化したもの。

 ブラストモードの公式ビジュアルでは必ずと言っていいほど右腕に装備されているが、少なくともアニメ劇中では出し入れ自由。
 陽電子砲を装備せず翼だけを生やした姿で登場するシーンもあり、その場合、陽電子砲は右腕の肘から先が光に包まれて形を変えるというプロセスで出現する。

『爪』
 指に生えている鋭い爪。通常技として分類される「ダークネスクロウ」を放つ。
 紫色の光を帯びた両手の爪で敵を切り裂く攻撃で、範囲は腕の長さより明らかに広い。
 完全体(最終形態の究極体の一つ前)デジモンを一撃で仕留める威力。
 描写的に並のデジモンの必殺技クラスの威力だが、ただの通常技。

【人物背景】
魔王型デジモン。同種族の別個体が様々な作品に登場している。このベルゼブモンはアニメ「デジモンテイマーズ」に登場した個体。
アニメでは特に言及されていないが、デジタルモンスターシリーズ全体の基礎設定として「ベルゼブモン」は七大魔王というかなり規格外のカテゴリに属する種族とされている。
英霊として分類するなら間違いなく反英雄。
力を渇望したために悪魔のような神と契約を交わし、命を奪うという取り返しのつかない過ちを犯し、償いのために全身全霊をかけて戦ったダークヒーロー的存在。

【聖杯にかける願い】
興味はないが、強いていうなら離別したパートナー達に会いに行ってもいい。


245 : 力なんていらなかった ◆dt6u.08amg :2018/04/16(月) 23:33:49 hokuCiCg0
【マスター名】 成見亜里紗(アリサ)
【出展】魔法少女すずね☆マギカ
【性別】女

【能力・技能】
武器は大きな鎌。ソウルジェムの位置は背中。
魔法少女としての基礎能力に加え、以下の個別能力を持つ。

・ブーストアップ
 シンプルに身体能力を強化する魔法。出力は調節可能で、切り札として最大出力(フルブースト)も発動可能。
 使い過ぎると大きく消耗してしまうリスクがある。

【人物背景】
中学二年生。身長156.2cm、体重45.8kg。

勝ち気で喧嘩っ早い。勉強が苦手で体を動かすのが好き。
契約前は大人しい性格でいじめのターゲットにされていたが、強くなりたいという願いを叶えてもらって魔法少女になる。
力に物を言わせる乱暴者になっていたところ、魔法少女のチサト(詩音千里)との戦いを経て更生。仲間達と共に魔女と戦うようになる。

しかし、魔法少女狩りの犯人だったスズネ(天乃鈴音)にチサトを殺害され、更に仲間の一人であるハルカ(奏遥香)が目の前で魔女になってしまう。
ここで初めて、魔女が魔法少女の成れの果てであることを知り、安易な願いで人間を止めてしまったことを強く後悔する。
チサトに出会う前の荒れ切った性格に戻り、スズネを倒して仲間達の仇を討とうとするも、戦いの最中に背後から黒幕の攻撃を受けて死亡する。

【聖杯にかける願い】
・スズネに復讐がしたい
・仲間を生き返らせたい
・人間に戻りたい

これらの願いがせめぎ合っていて、一つに絞りきれていない

【方針】
積極的に打って出て、聖杯戦争を勝ち残る


246 : ◆dt6u.08amg :2018/04/16(月) 23:34:17 hokuCiCg0
投下終了です


247 : ◆cgWdPX4osQ :2018/04/16(月) 23:56:50 wfISVums0
皆様投下乙です。
自分も投下します。


248 : filthy diamond ◆cgWdPX4osQ :2018/04/16(月) 23:57:43 wfISVums0


「沙々ちゃん、ごめんね」
「どうしたんですか?」
「噂話あんまり集められなくて……」


今日も学校が終わって。
『出来たばかりの友達』と一緒に下校をしていた。
穏やかな並木道を歩きながら、私は友達に謝る。
友達である『この娘』に頼みごとをされていた。
同じ見滝原中学三年生で、隣のクラスの女の子だ。

「周囲で気になる話があったら私に伝えてほしい」。
「出来れば不審に思われない程度に聞き出してほしい」。
どうしてそんなことを頼むの、とは聞けなかった。
だけど、友達は心の底から私に頼み込んでいた。
だったら無下にするわけにはいかない。
力になってあげる。それがこの娘の友人である私の務めだ。

だけど、結局大した噂話は無く。
ほぼ手ぶらに近い状態で報告することになった。
ばつの悪い気持ちが胸中に浮かび続ける。
怒られないかな。がっかりされないかな。
気持ち悪い感覚がぐるぐると回り続ける。
恐る恐る友達の反応を伺った私だった。


「うふふ、いいんですよ!お気持ちだけでも十分です!」


だけど、そんな心配も杞憂で。
友達は笑顔でそう答えてくれた。
跳ねた茶髪を少しだけ揺らし、ニコニコとお礼を告げてくれた。
その暖かな笑顔に、安堵を覚える私がいた。

「ありがとう!頼りにしてますよっ!」
「沙々ちゃん……」
「また後日、よろしくお願いしますねー!」

気が付けば、あっという間に別れるポイントについていた。
分かれ道の左側に進んだ友達は、私に手を振りながら去っていく。
ここから先、友達とは別々の帰路に着く。
自宅の方向が違うせいで一緒に下校しても少しの間だけしか喋れない。
それがもどかしいけど、ほんの僅かにでもお喋りが出来るのは楽しい。

まだ、ほんの少しだけの付き合い。
だけど、間違いなく仲良しだった。
沙々ちゃんには他にも何人か友達がいる。
他の娘達とも親しげに会話しているのを何度か見たことがある。
きっと私以外にも親友と呼べる存在がいるのだろう。
けれども、私にとって一番の親友はあの娘だけだ。
何故だかあの娘の言うことなら何でも聞ける気がしちゃう。
我ながらちょっとヘンな気持ちだと思う。
出来たばかりの友達だというのに。
だけど、それくらい彼女のことを想っている。


優木沙々ちゃんは。
間違いなく、私の親友だ。





249 : filthy diamond ◆cgWdPX4osQ :2018/04/16(月) 23:58:27 wfISVums0



都合のいい間抜けがいると助かる。
こうして自分の「洗脳」に簡単に引っ掛かってくれるのだから。


くふふふ、と笑いながら私は思考する。
見滝原中学校に通う生徒数名は既に私の手駒になっている。
今は彼女らを経由して情報をかき集めている所だ。
小さな噂話程度でも現時点でな貴重な情報足り得る。
状況把握の糸口にはなるだろう。
故に骨の髄まで利用させてもらうつもりだ。

とはいえ所詮は学生。限界もある。
いずれ来る本戦に備え、より情報網を強固にすることも考えている。
より情報を集めやすい立ち位置の人間を探しだし、支配下に置く。
そうすれば自分が労すること無く優位に立てる。
尤も、魔法も決して万能とは言えない。
本体である私が衝撃を受ければ解除される危険性はあるし、魔法である以上他の主従に感付かれる可能性だってある。
故に、誰彼構わず不用意に多用するのは禁物だ。
警戒しなくてはならない。大丈夫、私になら出来る。
頭を振り絞り、必要最低限度のラインを見極めるのだ。

そんなことを考えながら、私は住宅街を歩く。
自宅のマンションはもうすぐそこだ。
帰ったらゆっくり休みたいところだが、あいつのせいでそうも行かないだろう。
私は思わず溜め息を吐いてしまう。


私、優木 沙々は魔法少女である。
そして同時に、聖杯戦争に参加することになったマスターだ。
見滝原に乗り込んで、失敗して、終わった筈だった。
だが、聖杯とやらの奇跡が私をここへと呼び寄せたらしい。


此処に呼び寄せられる前。
最後の記憶は、絶望だった。
縄張り拡大のために見滝原に乗り込み。
そこで美国織莉子と呉キリカに敗北し。
終いには、魔法少女の真実を伝えられ。
魔女の正体を知った私は、自らソウルジェムを砕き―――。

あの瞬間、意識が闇に沈んだのは何となく覚えている。
まるで眠りに落ちるような感覚だった。
きっと自分は死んだのだと思う。
あのときは間違いなく恐怖していた。
今だって思い出すとほんのり寒気がする。
真実を知ってしまい、死を選んだのだから。

だが、同時にそこまで実感がないのも確かだ。
現在の私はこうしてピンピンしているし、死の感覚も一瞬過ぎて大した感慨がない。
砕いたはずのソウルジェムも何事も無く指に嵌められている。
聖杯戦争の予選期間、偽りの日常というクッションを挟まれたことで「変に冷静」になってしまっているらしい。


250 : ◆EPyDv9DKJs :2018/04/16(月) 23:58:55 qO0M43jA0
拙作のアーチャーのスキルの詳細に間違いがあったのでWikiにて修正しました
(後、些細なレベルの誤字修正)


251 : filthy diamond ◆cgWdPX4osQ :2018/04/16(月) 23:59:01 wfISVums0

冷静になってみると何がなんだか解らない。
気がつけば、この見滝原の住民になっていて。
いつの間にか、本当の記憶を取り戻して。
訳が解らぬ内に聖杯戦争の当事者になっていた。
今の私は見滝原中学に通う生徒で、マスターだ。
別に参加したいと言ったわけでもないのに、勝手にマスターにさせられている。
勝手に聖杯戦争の知識をインプットされ、断りもなくサーヴァントを召喚させられている。
はっきり言って傍迷惑とも捉えられる状況だ。


―――――くふふふふ。


とはいえ、これはチャンスと言ってもいい。
自分は生きていて、聖杯戦争のマスターになっている。
死の記憶など無かったかのように。
見方によっては敗者復活戦だ。
私は資格を得たのだ。選ばれたのだ。
ならばそれを存分に利用させてもらう他ない。
私はそう考え、サーヴァントを従える戦いへと身を投じたのだ。

心のなかでほくそ笑んでいたのに。
気がつけば、そんな思いも急速に萎えていた。

そう。この私にもサーヴァントがいる。
あのクソッタレのアホサーヴァントが。
サーヴァントとは古今東西の英雄、らしい。
マスターに従い、マスターと共に戦う戦士、らしい。
マスターにも願いがあり、戦う理由がある、らしい。
聖杯戦争に与えられた知識によれば、だが。
自分のサーヴァントにそんな大それた野望があるようには見えない。
そもそも従者だというのに、私に従おうとする意欲が見られない。
いつも横柄。気だるげ。しかも下品。
召喚してから三日ほど経つが、殆ど家でくつろいでいるだけ。
リビングでテレビを眺め、勝手に冷蔵庫を漁り、暇になると部屋のものを物色したりする。
デリカシーの欠片もない。便所のネズミのクソみたいな男だ。
あんな輩を引き当てたくなど無かった。
叶うことならば追い払いたいが、今は贅沢を言っていられない。

そう思っている内に私はマンションの自宅前にまで辿り着く。
再び憂鬱に溜め息を吐きながら、ガチャガチャと鍵を開ける。
どうしようもない鬱屈を抱えながら玄関へと足を踏み入れ。
靴を脱いだのち、とぼとぼとした足取りでリビングへ向かった。
そして、あいつが視界に入る。



「およッ!戻ってきたのかい!」



―――クソ野郎がノーテンキに挨拶してきた。
思わず舌打ちをしそうになったが、何とか堪えた。
こんな奴に苛立たされてるという事実を表に出したくない。


252 : filthy diamond ◆cgWdPX4osQ :2018/04/16(月) 23:59:39 wfISVums0

男はリビングのソファーに図々しくふんぞり返り、テレビを見ながらくつろいでいた。
シルクハットやコートを纏った黒尽くめのファッションは端から見れば洒落ている。
黙っていれば伊達男に見え―――るかは疑わしい。
癖のついた頭髪を揺らし、不細工な面構えでニヤつく姿にはとにかく腹が立つ。
この冴えない男が私のサーヴァント、アサシンだった。

「なあ……ユウキ……なんだっけ?お前」
「だから沙々ですってば」
「あぁ!それだッ!ユウキササ!」
「覚えられましたか?」
「たぶんなァ」

こいつは従者の分際で口が悪い。
そもそもこっちの名前をちゃんと覚えようとしないし、そのことを悪びれもしない。
一発殴ってやりたくなるし、何なら魔法で支配してやりたい。
尤も、それが出来ないのでイラつかされているのだが。
「強いものを従わせたい」という願望から発現した洗脳魔法も、サーヴァントという強大すぎる存在には全く通用しない。

「ウイスキー買ってきてくれる?ノド乾いたんだよ」
「……マスターに命令するつもりですかぁ?」
「は?歳上の言うことは聞くもんだろ」
「いや、あなたが従者であって……」
「アメリカ産な、ジャパニーズウイスキーなんざ買ってくるんじゃあねーぜ」

だからこいつの横柄な態度を魔法で黙らせることも出来ない。
人の話を聞かずに注文をぶつけてくるアサシンに対し、思わず青筋が浮かびそうになる。

「何様のつもりなんですか?」
「知らねえよガキ、早くしろよ」
「未成年なんだから買えるワケないじゃないですか」
「メンドくせーな……魔法とか使えよ」
「はい?こんなことの為に?」
「おうッ、当たり前だろ」

喧嘩売ってんじゃねえ。
当たり前のように「当たり前だろ」とか言ってるんじゃあない。
初めて召喚した日からずっとこのふざけた調子だ。
クソほどイラつくし、クソほどムカつく。

「はぁ……そんなデカい態度取ってんですから、ちゃんと仕事はしてくれるんですよね?」
「おおッ!そこは任せとけ!オレだって聖杯に用があるんだ!」

こいつに願いがあることを今初めて知った。
というか何もしてないのに何故そんなに堂々としているのか。


「オレを裏切りやがったウェカピポ……オレを助けに来なかったDio……
 あいつらは許さねェ……存在ごと消し去ってやるぜ……へへッ」


忌々しげに、憎々しげにアサシンはそう呟いた。
軽薄な表情は変わらない。だが、明確に憎悪の色が見えた。
どうやら私怨で聖杯を求めているらしい。
まあ、心底どうでもいいが。
重要なのは私の願いなのだから。このクソの望みなんかどうだっていい。


253 : filthy diamond ◆cgWdPX4osQ :2018/04/17(火) 00:00:44 Nu8oVjD.0

「あッ!そうだそうだ」
「今度はなんですか……?」
「つまみ買うの忘れんなよ」
「いや、あの、ふざけてんじゃ……」
「よろしくなァー」

なんでもう買いに行くことが前提になってるんだ。
本当に身の程が解っているのか。
令呪を使ってやろうか―――そんな考えが脳裏をよぎるも、思い止まった。
令呪はサーヴァントに対する絶対命令権。いわば最強の切り札だ。
それをこんな下らないところで使う訳にはいかない。
ましてや「下っ端のクズを従えられず令呪に頼る」という構図そのものが屈辱的すぎる。
プライドの問題に加え、絶対的な勝利を得るためにも温存しなくてはならない。

「あとさァ」
「今度は何ですか……?」
「お前って戦う気あんだよな」
「いや、当たり前でしょ」
「キミ 女子供がいたら躊躇うタイプかい?」

そんな思考を続けていた矢先。
アサシンが急に変な質問をしてきた。
いや、まあ、答えは簡単なのだが。


「別に……躊躇いませんよォ」
「よかった、じゃあ楽だわ」


しれっとそんなことを言ってのけた。
少しだけハッとしたように、私はアサシンを見てしまった。
再びテレビに目を向けてニヤニヤ笑っている。
一瞬だけ垣間見えた薄気味悪い雰囲気は、すぐに消え失せていた。
素っ頓狂な輩だと思っていたが。―――いや、実際そうなのだと思うが。
一応は手段を選ばずに戦う意思がある、らしい。
何だかんだで、こいつも勝ちたくて此処にいるのだ。
そうだ。私も勝たなくてはならないのだ。


魔女にだけは、なりたくない。
なってたまるものか。


魔法少女の現実は虚飾で塗り固められていた。
魔法少女の敵、魔女の正体は魔法少女の成れの果てだった。
知りもしなかった。キュゥべえに騙されたと言ってもいい。
あいつは肝心の魔女の正体を一言も伝えず、詐欺のような形で奇跡を売り付けてきたのだから。
その一件もあり、聖杯がもたらす奇跡への疑心も少なからず抱いている。
だが、つべこべは言ってられない。
自分が化け物になるかどうかの瀬戸際なのだ。
もはや藁にも縋る想い。これで願いが叶うのならば、それで万々歳。
そもそも一度死んだはずの自分が此処にいるという時点で、奇跡の実在はある程度約束されている。
ならば賭けるまで。賭ける価値はきっとある。きっと。

魔法少女はいずれ魔女に成り果てる。
その運命から逃れられるというのなら、自分は何だってする。
聖杯を掴むために他の主従を蹴落とすことだって構わない。
私、優木沙々は決して手段を選ばない。
どんな強者だって屈服させられる強かな魔法少女なのだ。


【クラス】
アサシン

【真名】
マジェント・マジェント@ジョジョの奇妙な冒険 第7部「スティール・ボール・ラン」

【属性】
中立・悪

【ステータス】
筋力D 耐久E+ 敏捷E 魔力E 幸運D 宝具D

【クラススキル】
気配遮断:E+
サーヴァントとしての気配を断つ。
アサシンとしてはあるまじきランクの低さであり、効果は微弱。
しかし後述のスキル「下衆の輩」の影響で特殊な隠密性を備えている。

【保有スキル】
射撃:D
銃器による早撃ち、曲撃ちを含めた射撃全般の技術。
殺し屋として最低限の射撃技術を備えている。

仕切り直し(偽):D
しぶとく生還する能力。
瀕死の重傷を負った際、アサシンの意図とは関係無く戦場から離脱しやすくなる。

傲慢:B
土壇場で謙虚に振る舞うことのできない浅はかな性分。
戦闘で優位に立った際、全判定のファンブル率が上昇する。

下衆の輩:A
敵存在からターゲットとして捕捉される確率を大幅に減少させる。
脳ミソが少なめの三下を警戒する英雄など殆どいないし、ましてや下っ端のクズの生死など誰も気に止めない。
戦闘態勢を維持している際には効果が多少劣化する。


254 : filthy diamond ◆cgWdPX4osQ :2018/04/17(火) 00:01:28 Nu8oVjD.0

【宝具】
『20th Century Boy(トゥエンティース・センチュリー・ボーイ)』 
ランク:D  種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
アサシンの精神の具現、通称「スタンド」。
能力は「絶対防御」。本体がスタンドを身に纏うことであらゆる害を無効化する。
単純な物理攻撃は勿論、酸欠など生命活動に関わる状況からも完全に本体を守り切る。
サーヴァントの特殊能力や宝具さえも完全に遮断するが、発動中はアサシン本体が一切動けなくなるという欠点を持つ。

『死に損ないの虫螻(ボーン・トゥ・ブギー)』
ランク:E+  種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
瀕死の状態から生還を果たし、舞台から退場した際にも死を回避した逸話が宝具と化したもの。
アサシンは外傷では決して消滅しない。
全身を刻まれようと、脳天を撃ち抜かれようと、霊核を攻撃されようと、絶対に消滅しない。
どんなダメージを負おうと瀕死の状態で必ず現界し続ける。
言うなれば“絶対にHPが1だけ残る”宝具。ただし魔力枯渇の際には消滅を免れない。

【Weapon】 
拳銃、二連装散弾銃

【人物背景】 
合衆国大統領「ファニー・ヴァレンタイン」の部下にしてスタンド使い。
気だるげで陽気な性格だが短慮な一面も持ち、ウェカピポからは「下っ端のクズ」と称されていた。
聖人の遺体奪取のためにウェカピポとコンビを組み、ジャイロ・ツェペリとジョニィ・ジョースターに襲い掛かる。
しかし油断の隙を突かれて敗北。瀕死の重傷を負うも、通り掛かったディエゴ・ブランドーに助けられてかろうじて生還する。
後に再登場し、自身を裏切ったウェカピポと激突。
スタンドの特性を活かして追い詰めるも、ウェカピポの奇策の前に敗北する。
スタンドによる絶対防御を展開した状態で川底に沈められ、抜け出すに抜け出せない状況を前に考えることをやめた。

【サーヴァントとしての願い】 
ウェカピポとDioを存在ごと消し去ってやる。

【マスター】 
優木 沙々@魔法少女おりこ☆マギカ〜symmetry diamond〜

【マスターとしての願い】 
いつか魔女に成り果てる運命を何がなんでも覆す。
キュゥべえの一件から聖杯への疑心も捨てきれないが、つべこべは言ってられない。

【能力・技能】 
ソウルジェムによって魔法少女に変身することができる。
固有の魔法は「洗脳」。作中では複数の魔女を従えたり、他者の記憶を書き換えて支配することが出来た。
ただし沙々がダメージを受けた際には洗脳が解除されるなど、強制力はそこまで高くない。
手に持った杖から魔力の球を形成して攻撃することもできるが、魔法少女としての単体の戦闘力は極めて低い。

聖杯戦争においては存在としての格が遥かに勝るサーヴァントを洗脳することもできない。
また魔法である以上洗脳の術には魔力が籠められており、魔力探知に優れる存在ならば他者の洗脳を見破れる可能性もある。

【人物背景】 
見滝原の隣町・風見野で活動する魔法少女。
表面上は明るく丁寧な物腰だが、実際は極めて陰湿で利己的な性格の持ち主。
固有の魔法も「自分より優れたものを従わせたい」という願望の発露である。
「symmetry diamond」では縄張りの拡大を狙って見滝原に来訪し、魔法を駆使して美国織莉子・呉キリカを翻弄するも最終的に敗北。
更には魔女の真実を知ったことで絶望し、自らソウルジェムを砕いて自害した。

聖杯戦争においては見滝原中学に通う学生となっている。
原作中で年齢は明かされていないが、本企画ではキリカや織莉子と同じ中学三年生として扱う。

【方針】
どんな手を使ってでも勝ち残る。
いけ好かないアサシンもいつか屈服させる。
魔女にだけは絶対になりたくない。


255 : 名無しさん :2018/04/17(火) 00:02:03 Nu8oVjD.0
投下終了です


256 : ◆dt6u.08amg :2018/04/17(火) 22:34:10 BD4G4UNQ0
投下します


257 : 尽きぬ邪悪 ◆dt6u.08amg :2018/04/17(火) 22:34:43 BD4G4UNQ0
その男は、この街で最も高いビルの最上階から、見滝原の街並みを睥睨していた。
表情に肯定的な感情はまるで見受けられず、険しい顔立ちは無感情のようにも感じられる。

男の名はムラクモ。またの名をアカツキ零號。

元帝国駐独陸軍武官にして、軍技研究機関ゲゼルシャフト元総帥。そして人口調節審議会創設者。
古代文明の遺産、生物工学によるクローン技術、神秘の秘跡による転生……
あらゆる手段を用いての人類救済を目的とするこの男は、とある企業の若き社長の肉体と地位を乗っ取る形で、閉鎖されたこの世界に存在を確立させていた。

「やはり、多すぎるな」

見滝原を見下ろしながら、ムラクモは誰に聞かせるためでもなく、独白のように語り始める。

「産業革命以前、人類の繁殖限界はせいぜい数億だった。これほどまでに膨れ上がった現状が如何に異常であるか、そしてこの先に待つのが破滅であることは論をまたない」

軍服のような外観の最新装備――六〇式電光被服をまとった腕を、ガラス張りの外壁に振り向ける。

「人類は殺してでも減らすべきだ。そうしなければならぬ。聖杯が有用な軍需資源たりうるのであれば、入手のために時間を割く価値は十分にあるだろう。六十億を越える人類を、必要な分のみ残して殺し尽くすために」

それは奇しくも、とある世界において存在した、この世全ての悪に汚染された聖杯が最も得意とするところ。
ムラクモがそれを知ることはありえないが、仮にそれを入手し得たのならば、彼は躊躇することなくそれを殺戮兵器として行使しただろう。
良心の呵責など感じる余地は微塵もない。彼はただ、正しいと確信していることを遂行するだけなのだから。

「ライダー。貴様らにはその礎として死んでもらう。よもや異存はあるまいな」

ムラクモは振り返り、背後に控える"六体"のサーヴァントへ言葉を向けた。

「斥候として死ね。殿として死ね。先陣を切って死ね。肉壁となって死ね。その生命の尽くをこの星のために使い潰せ」

"彼ら"は誰一人として異を唱えない。そもそも感情機能すら備わってはいなかった。
その真名はショッカーライダー。裏切り者たる二体のバッタ型改造人間"ホッパー"を原型とする新型改造人間である。
世界支配を目論む秘密結社ショッカーの上級兵力であり、他の改造人間のように明確な人格は与えられていない。

彼らの宝具は『常に六体である』という概念的能力。
そもそも彼らは非人道的な新技術によって改造された量産型であり、たとえ一体や二体が破壊されたとしても、すぐさま予備が投入されて六体編成を維持し続けた。
この宝具はそうした特性が能力として昇華されたものだ。

「やはり、エレクトロゾルダートよりも格段に有用そうだ。組み込み可能な電光機関が手元にないことが惜しまれるな」

ムラクモにとってライダーは実に都合のいい戦力だった。

同時運用可能数が六体までとはいえ、総数はマスターが健在である限り無尽蔵。
死を厭わない威力偵察によって、実質的な損失無しで敵戦力を推し量れることの有利さは改めて論ずるまでもない。

更に人格らしきものが存在しないことも好都合。
あらゆる命令に絶対服従ということは、即ち三画しかない令呪を絶対遵守以外の用途に回すことができるということ。
加えて、裏切りの懸念もなければ殺戮に対する心理的反発もない。
真っ当な英雄豪傑であれば、無力なマスターをくびり殺せという命令には叛意を覚えるかもしれないが、彼らは作業的に首をへし折ることだろう。実に理想的だ。

「さぁ、疾く開始の号令を放つがいい。この土地を粛清の嚆矢としてくれよう」

世界を救うための人類殺戮を是とする男は、改めて見滝原の街並みに視線を落とした。
その顔に喜楽もなければ怒も哀もない。当然の措置としての殺戮を前にした、超越者たる現人神の顔があるだけだった。


258 : 尽きぬ邪悪 ◆dt6u.08amg :2018/04/17(火) 22:35:51 BD4G4UNQ0
【CLASS】ライダー
【真名】ショッカーライダー
【出典】仮面ライダーTHE NEXT
【性別】恐らく男性のみ
【身長・体重】175〜190cm/65〜80kg(個体によって異なる)
【属性】中立・中庸(自我らしきものを持たない)

【パラメータ】筋力C 耐久C 敏捷B 魔力E 幸運E 宝具C

【クラス別スキル】
対魔力:-
 高度な科学の産物であるライダーは対魔力を一切持たない。

騎乗:C
 機械工学で作られた乗り物であれば、何であれ苦もなく乗りこなせる。

【固有スキル】
コンビネーション:C
 特定の味方との連携攻撃の精度を表すスキル。
 ライダーの単体性能は平均的なサーヴァントの六分の一程度だが、
 連携によって二対一、もしくは三対一かつ宝具を度外視すれば互角の戦闘が可能。
 六対一であれば万全の状態のサーヴァントすら追い詰めうる。

改造人間:A
 最新技術によって、自我が希薄になるほどの改造を受けている。
 機械的な判断機能しか持たず、精神干渉効果はメリット・デメリットに関わらず無効。
 また、どれほどのダメージを負っても痛覚を感じないかのように戦闘を継続できる。

【宝具】
『量産型改造人間(ホッパー・マスプロダクションモデル)』
ランク:C 種別:対人(自身)宝具 レンジ:- 最大人数:6人
 一つの霊器を六分割し、常に六体で存在し続ける概念防御。
 たとえ何体かが破壊されようと、戦闘終了後に自動的に員数が補充され六体に戻る。
 ライダーを直接戦闘で完全撃破するには、六体全てを一度の戦闘で全滅させるより他にない。
 この完全消滅を迎えて初めて、ライダーのサーヴァントの魂は聖杯にくべられることになる。

【weapon】
・改造された肉体
・バイク(特別なものではない)
・爆発する投げ矢

【人物背景】
映画「仮面ライダー THE NEXT」に登場する量産型仮面ライダー。
性能では1号2号に劣るものの、数の暴力と連携攻撃で1号2号を追い詰める。扱い的には凄く強い戦闘員。
本作では仮面ライダーV3もショッカー製改造人間と設定されており、ショッカーライダーの製造方法は1号2号のような旧方式ではなくV3と同じ最新式とのこと。

宝具の元ネタは、何体倒されても次の出番ではまた六体に戻っているという作中演出。

ちなみに、本作の改造人間は正体隠しのために仮面とスーツを着ているだけであり、ショッカーライダーも装備を脱げば普通の人間の姿をしている(はず)
市販されているフィギュアでも、それを反映してヘルメットとスーツの隙間の素肌や、ヘルメットの隙間から出た頭髪などが再現されている。

メタ的には、残り生存者数を気にせず殺せる便利な殺害描写&ピンチ展開材料の無限湧きエネミー枠を想定。
他キャラの強さを描写するための使ってもなくならないやられ役や、マスターを容赦なく殺しにかかってくる返り討ち前提の襲撃役と用途は幅広く、数体で連携させればサーヴァントのピンチ展開にも使用可能。

【聖杯にかける願い】
一切なし。ただマスターの命令に従うだけ


259 : 尽きぬ邪悪 ◆dt6u.08amg :2018/04/17(火) 22:36:23 BD4G4UNQ0
【マスター名】 ムラクモ
【出展】アカツキ電光戦記、エヌアイン完全世界
【性別】男

【能力・技能】
「電光機関」「六〇式電光被服」を用いた戦闘を行う。
球状の電撃を放つ、電光地雷なる兵器を用いる、軍刀による白兵戦を仕掛けるなど。

・電光機関
古代文明アガルタの超科学技術を元にナチスが開発した秘密兵器。
人体に埋め込めるサイズでありながら、敵兵器の装甲を溶かすほどの膨大な電力を生み出す装置。
発生する電磁波によって電子兵器は無効化され、敵対者は前時代的な白兵戦を強いられる。

そのエネルギー源は、人間の肉体を動かすエネルギーであるATP(アデノシン三リン酸)そのもの。
先天的にATP保有量の多い体質の人間(アガルタ人の末裔)を除き、文字通り使用者の命を猛烈に削り取る代物である。
ムラクモは「転生の法」によって複製體(クローン)の肉体を乗っ取ることで、限界になるたびに肉体を乗り換えて対応している。

・六〇式電光被服
電光機関と組み合わせることで、着用者に超人的な身体能力を与える「電光被服」の最新型。
多機能ではあるが、多機能ゆえの脆弱性も抱えているらしく、アカツキ(主人公)が装備している戦時中に作られた旧式に敗北する。

・転生の法
転生を繰り返すことで死を超越した存在「完全者」から盗み取った秘術。
あらかじめ世界中に潜伏させておいた自身の複製體に転生することで、使用するほど死に近付く電光機関の欠点を克服している。
複製體は権力者として社会に溶け込んでいるらしく、その権力を用いた社会的工作も行う(例:チャイニーズマフィアの当主や軍の三佐)
なお、本家本元の「転生者」はクローンの使用を「脆弱である」という理由で否定し、素質のある他人の肉体を乗っ取っている。

【人物背景】
力による支配を良しとする思想の持ち主であり、増えすぎた人類を戦争によって減らし、その後の世界に現人神として君臨することを目論む。
人間そのものに価値を見出しておらず、老若男女、人種も貴賤も問わず平等に殺すと豪語している。

……と、ストーリー中ではシリアス一辺倒のラスボスなのだが、戦闘モーションが何かとネタに満ちている。
前進すればダカダカダカダカと重心の低い十傑集走りを披露し、後退すれば宙に浮かんでスライド移動、電光地雷を設置する際にはどこからともなく取り出して「コレデヨイ」と素手で足元に置くなど、やたらとシュール。
挙句の果てに、公式ラジオで「現人神」の読み方を間違えられたことから、付いたあだ名が「げんじんしん」

【聖杯にかける願い】
願望器ではなくエネルギー資源とみなしている。

【方針】
ライダーの宝具を駆使して戦略的に立ち回る。
最終的にはマスターを殺し尽くして聖杯を得る。


260 : ◆dt6u.08amg :2018/04/17(火) 22:36:44 BD4G4UNQ0
投下終了です


261 : ◆Pw26BhHaeg :2018/04/18(水) 00:24:18 4ifQguEE0
投下します。


262 : United We Stand ◆Pw26BhHaeg :2018/04/18(水) 00:26:31 4ifQguEE0
「ライダー。おれの望みは――――『おれのおやじを殺す』ことだ」

夕刻の自室。喚び出したばかりの己のサーヴァントに望みを問われ、学生服の男、『虹村形兆』は、そう告げた。
万能の願望器にかける望みとしては、あまりにささやかな、個人的な願い。ライダーは少し沈黙した後、口を開く。
「……恨みでも、あるのか」

無表情のまま、ふん、と鼻を鳴らす形兆。見知らぬ男だが、これから命を託す相棒だ。
しっかり説明しておかねば、相手も納得はできまい。特に善良な奴であれば。手の中の宝石、ソウルジェムを弄びつつ、答える。
「恨みねえ。なくはねーなあーッ。おれがガキの頃にでけー借金抱えて、お袋は病気で死んじまった。
 いつもイラついてて、理由もなくおれや弟を殴ったよ……。完全に負け犬のクズだった……」

形兆は俯き、吐き捨てる。狭くはないが、そう広くもない家。一人暮らしの身ながら、きちんと整理整頓されている。
ここに、この見滝原に、彼の父親や弟はいない。母親も。親の遺産で生活しているという点だけが同じだ。

「しかし……ある時から、急におやじの羽振りがよくなった。後で知ったことだが、『DIO』って男の手下になったせいだ。
 だが、いいことばかりじゃあねえ。そのDIOがくたばったら、おやじは……不死身の化物になっちまった。
 知能は犬並みで、体はグチョグチョでよ。DIOの……『吸血鬼』の不死身の細胞が、脳ミソに埋め込まれてたせいらしい。自業自得さ」

ライダーは黙って聞いている。吸血鬼。不死身。自分が英霊という存在になっていることからすれば、あり得ない存在でもなかろう。
「それから10年間、おやじはそのままさ。殺そうとしても絶対に死なねえ。あのまんま永遠に生きるだろう。
 だからおれは、あのおやじを『フツーに』死なせてやりてえ。家族としてな。いや、そうしなけりゃあ、おれ自身の人生が始まらねえ。
 おれはそう思ってる。生まれつき几帳面なタチでよ、物事にはきちっと始末をつけてえんだ。納得してえんだ」

ぽつりと、ライダーが尋ねる。
「治す、のでは、ダメなのか」
「治せたらな。そうしてもいい。――――おれ個人としては、殺してやりてえがな。とにかく、望みはそれだけだ。
 殺し合いで得られる聖杯ってのも、どうせろくなもんじゃあねーだろーし、欲かいて無理に手に入れることもねーかもな。
 どのみち、おやじのいる元の世界へ戻らにゃあなるまい。手間のかかる弟もいるしよ」


263 : United We Stand ◆Pw26BhHaeg :2018/04/18(水) 00:28:36 4ifQguEE0
形兆は話を終え、ライダーに無言で顔を向ける。ライダーは……髭面を苦悩に歪ませ、拳を握りしめている。
「……お前も、家族という鎖に繋がれているのだな」
「ほう?」
「お前も不幸だが、俺から見れば幸福だ。お前から見れば、俺は幸福に見えようがな」
「不幸自慢をしてるんじゃあねえ。さっさとあんたが何者かを教えりゃあいいんだぜ、ライダー。真名だけでもいい」

ライダーは無言で右掌を形兆に向け、思念を放った。
形兆の目の前が暗くなり、ライダーの生涯が……神話が、英雄叙事詩が展開する。



古代インド。ライダー……『バラーラデーヴァ』は王族に生まれついた。彼の父本人は王になれず、その弟、ライダーの叔父が王位にあった。
叔父が死んだ時、叔父の息子、ライダーの従弟も生まれた。父は王位を継げず、その妻、ライダーの母が国政を執った。
ライダーと従弟は兄弟として育てられ、どちらが王位に相応しいか比べられる日々が始まった。

母は優しくも厳しく、公平だったが、父は彼をえこひいきした。何が何でも彼を王位につけようとした。
だが、彼の弟……『アマレンドラ・バーフバリ』は、彼より遥かに優秀だった。
父と彼は策略を巡らし、弟が王座につけぬようにした。弟も王座にはこだわらぬ男だった。
彼は王位についたが……国民は彼を望まなかった。父と彼は焦り、再び奸計を巡らして弟を排除した。
母と弟を殺し、弟の妻を監禁して、ライダーは王位を安泰とした。

だが……。



眼の前に、弟が立っている。若々しい、あの時の姿のままで。俺に怒りを向け、拳を握って立ち向かってくる。
そうだ、そうしろ。俺と闘え。俺は今度こそ負けはせぬ。人である俺は、神であるお前に、負けはせぬ。この時を待っていた。

断崖を登り、城壁を飛び越え、奴が来た。奴が来た。囚われの母を、妻を、取り戻すため。復讐のために。
暴君から王国を取り戻すため、奴が来た。生まれ変わった、奴が来た。俺の子を殺した、奴が来た。

俺は! お前を打ち倒す! 乗り越える! そうしなければ、俺は真の王になれぬ!
さもなくば、俺を殺せ! 殺してくれ! 俺をこの業苦から、解き放ってくれ! 神よ! 弟よ!




264 : United We Stand ◆Pw26BhHaeg :2018/04/18(水) 00:30:38 4ifQguEE0
数分が過ぎ、形兆はライダーの事情をおおむね理解する。一言では語り尽くせぬ、複雑な事情を背負っていたようだ。
「……なるほどな。おれの弟は無能でアホだが、あんたの弟は優秀過ぎたってわけだ」
「ふん。俺が英霊となっているなら、当然弟もだろう。弟の妻や、その子、俺の母もなっておっておかしくない」

ライダーが腕を組み、嗤う。形兆も無言で同意する。
確かに、それほどまでに凄まじい連中だった。インド神話には詳しくないが、まさに神話伝説の英雄そのものだ。
「そうすると、あんたの望みは何だ? 生き返って、今度こそ弟を超える王になることか? だとしても、おれは別に構わねーが」

ライダーは目を閉じ、鼻から息を吹き、首を振る。
「違う。俺はもう、二度と王になどなりたくない。王族に生まれたくもない」

しばしの沈黙。形兆は無言で待つ。ライダーが再び目と口を開く。
「……俺は、弟と……弟の息子と戦って、敗北し、死んだ。俺自身のカルマと因縁は、それで清算されているはずだ。
 死後も縛り付けられて使役される身になるとは腹も立つが、どうしようもなかろう。これはこれで、俺のカルマだ」

カルマ。業、か。己が納得するために随分人を殺した。おれはたぶん、ろくな死に方はすまい。形兆はそう考える。
「……英霊ってのは、どっかに登録された情報から引っ張り出されてくるんだろ?
 つまりあんた自身の魂は、既にどっかへ輪廻転生してんじゃあねえか? インド人ならよ」
「そうでもあろうな。そうしたわけで、俺に聖杯にかける望みはない。マスターであるお前の命令に従い、護り、敵と戦おう。それでいいな」
「ああ。助かる。第一目的はおれの帰還。シンプルになったな」

ふ、と互いに微笑む。肩の荷が降りたといった表情だ。
「こちらも気が楽で助かる。しがらみを背負わず、一人の戦士として戦えるのだからな。無論やるからには真剣にやるが」
「おれには身を護る程度の能力はある。だが英霊を相手取るにゃあ不足だろう。その時は存分に力を振るってもらうぜ、ライダー」

改めてステータスを確認したところ、ライダーの能力はなかなかのものだ。
戦闘力も知能も水準以上。敵に無用な情けをかけるタイプでもない。暴君であったとは言え、敬意を払うに足る人物だ。
ただ……少々、精神的な弱さが見える。彼があのような死を遂げたのも、因果応報とは言えよう。


265 : United We Stand ◆Pw26BhHaeg :2018/04/18(水) 00:32:39 4ifQguEE0
「――――あんたの生涯を見て、おれが偉そうにこう言うのもなんだがよ」

ぽつりと、形兆が呟く。顔を合わせずに。
「人は『成長』してこそ生きる価値がある、と思っている。前よりも強く賢くなること、過去を反省して未来に活かすことだ。
 おれの弟はアホで、無能で、おつむが成長しねえ。そのうちマシになるとは思うんだがな。
 おやじは……あれ以上成長も変化もしねえ。しても困るが。だから、殺してやった方がいいと思ってる。余計なお世話かも知れんがな。
 おれは……さあな、生きる価値があるのかどうか。おやじをどうにかしねえことには決められねえ」

ゆっくりと、ライダーに顔を向ける。目を合わせる。
「あんたは、どうかな。生きてた頃よりゃあ、成長してくれるといいんだがよ」
「肝に銘じよう、マスター。互いにな」
どちらからともなく手を差し出し、握手する。契約は成立した。



聖杯戦争の本戦は、まだ始まらないらしい。学校へ行き、街を出歩いても、他のサーヴァントに出会うことはない。
それまでにNPCを殺すなりして、サーヴァントの魔力を増やすことは可能だが……目立つ。リスクの方がよほど大きい。
まずは情報を集めることだ。1999年にはそれほど普及していなかったPCや携帯端末も、不自由ないほどには使いこなせる。
見滝原の地理。人やカネのおかしな動き。テロや殺人、行方不明、不審な火事や爆発事故。そういったものをそれとなく探っていけばいい。
手を組めそうな奴とは組む。むやみに殺して恨みを買うのも厄介だ。いずれにせよ見滝原から脱出せねばならない。

なにより――――『スタンド使いは引かれ合う』。
DIOやエンヤ婆の足跡を辿り、『弓と矢』を得てスタンド使いとなり、身をもって知った法則。
この見滝原に『スタンド使い』が、おれの他にもいるとするなら……かなりの確率で、そいつもマスターだろう。
スタンドとサーヴァント。この二つの似通った能力を使う人間は、相当な脅威だ。手を組めるなら組んでおいたがいい。
ヤバい敵がいたとしても、団結すれば立ち向かえる。おれのスタンドそのままに。



聖なる川を、黄金の巨像の頭部が流れていく。
滝から落下し、水を浴び続けるリンガの前に崩れ落ちる。
滔々たる大河をさらに下り、大海へ。
火と水によって、罪業を浄化するように。生まれ変わるように。


266 : United We Stand ◆Pw26BhHaeg :2018/04/18(水) 00:34:35 4ifQguEE0
【クラス】
ライダー

【真名】
バラーラデーヴァ@バーフバリ

【パラメーター】
筋力B 耐久B 敏捷C 魔力D 幸運D 宝具B

【属性】
秩序・悪

【クラス別スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術を無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

騎乗:B
大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、幻想種あるいは魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなすことが出来ない。
自前の宝具に乗って自在に飛行する。

【保有スキル】
皇帝特権:B
本来持ち得ないスキルも、本人が主張する事で短期間だけ獲得できる。該当するスキルは騎乗(習得済み)、剣術、芸術、カリスマ、軍略等。
人並みを超えるカリスマは持っているのだが、都合によりこのスキルに圧縮されている。

ダヌルヴェーダ:B
古代インドの正統総合武術・兵法。様々な武器や軍勢を自在に操り、格闘術にも優れる。

黄金律:A
身体の黄金比ではなく、人生においてどれほどお金が付いて回るかという宿命を指す。
莫大な富を保有し、一生金に困ることはない。在位中に自らの巨大な黄金像を建設した。


267 : United We Stand ◆Pw26BhHaeg :2018/04/18(水) 00:36:46 4ifQguEE0
【宝具】
『暴帝制覇鉄輪宝(チャクラ・ラタ・サムラージャン)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1-50 最大捕捉:1000

ライダーたる所以の宝具。前方に回転する巨大な卍型の鎌が複数ついた恐るべき戦闘牛車。無数の矢を発射する機構も備え、自在に疾走して敵陣を蹂躙する。
宝具化することでさらなる強化を遂げており、左右に羽撃く翼を展開して空を飛び、望遠レンズに魔力を集束させてレーザー光線を放ち、
周囲に多数の卍型の鎌を手裏剣めいて撒き散らすなど、完全に超常の兵器と化した。モデルはレオナルド・ダ・ヴィンチの兵器スケッチ。
閻浮提洲のみを統治する最下級の転輪聖王「鉄輪王」であることを示す鉄輪宝(ローハ・チャクラ・ラトナ)と融合しているが、本人の徳は低い。
なお古代マガダ国の暴君アジャータシャトル(阿闍世)は、前方に槌矛を備えた戦闘馬車を開発して国土を広げたという。

『鉄鎖牢縛金剛棍(ヴァジュラ・ガダー・サムラージャン)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-30 最大捕捉:100

ライダーが振るう巨大な棍棒(ガダー)。俗称チュッパチャプス。柄に鎖が仕込んであり、これを伸ばして大鉄球を射出、敵を薙ぎ払う。
宝具化することでさらなる強化を遂げており、鉄球からも鎖を射出して敵を絡め取り、電撃を放って焼き滅ぼす。柄自体も伸縮自在。
雷神インドラの武器・金剛杵(ヴァジュラ)と融合している。インド神話において、棍棒(ガダー)は猿神ハヌマーンや死神ヤマの武器として知られる。

【Weapon】
二種の宝具。虚空から槍や弓矢、刀剣なども召喚する。戦闘時は甲冑を身に纏う。

【人物背景】
傑作インド映画『バーフバリ』の名悪役で、マヒシュマティ王国の国王(皇帝)。演:ラーナー・ダッグバーティ。
父はビッジャラデーヴァ、母はシヴァガミ。愛称はバラー。大柄で筋骨隆々な髭面の男。身長192cm、体重95kg。額に太陽の紋章(ティラカ)がある。
父と共に奸計をもって従弟アマレンドラ・バーフバリから王位を奪い、追放・暗殺させた。その後25年に渡り圧政を敷き、苛烈な暴君として君臨していた。
アマレンドラの遺児シヴドゥ(マヘンドラ・バーフバリ)は、これを聞いてマヒシュマティに攻め寄せ、彼を激戦の末に打倒し、自ら王位を継いだのであった。
性格は生真面目で寡黙。文武ともに優秀だが、両親とのしがらみ、弟がほぼ神、惚れた女が弟のものだったなど、いろんな要因をこじらせて煮詰まってしまった可哀相な人。
主人公バーフバリ父子が神とすれば、バラーラデーヴァは神に挑む人間であると評される。なお生涯独身で、息子バドラは養子。

【サーヴァントとしての願い】
なし。

【方針】
マスターの指示に従う。

【把握手段】
映画『バーフバリ』伝説誕生&王の凱旋。


268 : United We Stand ◆Pw26BhHaeg :2018/04/18(水) 00:38:50 4ifQguEE0
【マスター】
虹村形兆@ダイヤモンドは砕けない

【Weapon・能力・技能】
『極悪中隊(バッド・カンパニー)』
破壊力、スピード、持続力:B 射程距離、精密動作性、成長性:C

ミニチュアの歩兵60名、戦車(M1エイブラムスやT-55)7台、戦闘ヘリ「アパッチ」4機、グリーンベレー等から構成される、遠隔操作可能な群体(軍隊)型スタンド。
歩兵はM16カービン・ライフルで武装し、パラシュートを装備している。本体の几帳面な性格を反映して規律正しい行動を取り、数体破壊されても本体に影響はない。
一体一体の破壊力はさほどでもないが、歩兵の一斉射撃や戦車砲、アパッチのミサイルは壁や手足を吹っ飛ばすほどの威力。
攻撃の精度や反応速度も高く、小型地雷を敷設するなど小技も使う。物陰が豊富な暗い室内での防衛戦は独擅場。想定外の奇襲に対しては反応できない。

【人物背景】
『ジョジョの奇妙な冒険』第四部「ダイヤモンドは砕けない」に登場するスタンド使い。CV:志村知幸。
年齢は18歳(1999年当時)だが、表情は荒んでおり老成した雰囲気。金髪で筋肉質な長身の男で、改造学ランを纏う。
性格は極めて几帳面で冷酷非情、計算高く物事を進め、目的のためには手段を選ばない。『人は成長してこそ生きる価値あり』との哲学を持つ。
かつてDIOの手下であった自分の父親が、肉の芽の暴走で不死身の怪物となってしまい、10年かけて全てを調べた。
その過程で『弓と矢』を手に入れ、弟億泰と共にスタンド使いとなる。そして「父親を殺せるスタンド」を生み出すため無差別に『弓と矢』を使い、
数多くのスタンド使いを生み出し、適合できなかった多くの人間を死に至らしめた。悪人だが信念を持ち、心の底では家族を大事にし、己の所業に罪悪感を抱く男。

【ロール】
高校三年生。原作通り親の遺産で生活している。両親や億泰はいない。

【マスターとしての願い】
現世に帰還し、可能なら聖杯の力で親父を普通に死なせてやりたい。もしくは治したい。

【方針】
生存と帰還を第一目的とする。対主催に回るか否かは状況次第。なるべく敵を増やさず、利用できる味方や駒を増やす。
無差別に殺戮を行うような危険な奴は、可能なら殺す。できれば聖杯を持ち帰りたいが、余計な欲はかかない。

【把握手段・参戦時期】
原作29巻&30巻。杜王町でスタンド使いを増やしている最中に参戦。


269 : ◆Pw26BhHaeg :2018/04/18(水) 00:40:24 4ifQguEE0
投下終了です。


270 : ◆NIKUcB1AGw :2018/04/18(水) 21:34:48 ZKFzQr5w0
皆様投下乙です
自分も投下させていただきます


271 : 村上外印&アヴェンジャー ◆NIKUcB1AGw :2018/04/18(水) 21:36:21 ZKFzQr5w0
村上外印は、焦燥感にさいなまれていた。
とにかく、現状に我慢がならない。生と死がせめぎ合う、闘争の場に身を置きたい。
遅れてきた中二病と言うにしては、あまりに深く心に食い込む感情。
だが記憶を取り戻したとき、外印は自分がその感情を抱いていたことに深く納得した。
自分は本来、何十年も平和が続いているこの時代に生まれたのではない。
幕末という動乱が過ぎた、明治の世に生きていたのだ。
彼が抱く焦燥感とは、戦乱の世を生きるために身につけた力を振るうことができなかったという苛立ちだった。


◆ ◆ ◆


「サーヴァント、アヴェンジャー。召喚に応じ参上した」

外印の前に現れたサーヴァントは、簡潔にそう名乗った。
2本の剣を携え、鎧を纏ったその姿は典型的な騎士そのもの。
顔立ちはやや年齢を重ねているが、美形と言っていいだろう。

「見た目はいかにも剣士のサーヴァントという感じなんですが……。復讐者のサーヴァントですか」
「俺とて、こんなクラスで召喚されるのは本意ではないのだがな」

外印の反応に対し、アヴェンジャーは苦々しげな表情を浮かべる。

「ああ、気を悪くしたのならすみません。別に文句があるわけじゃないんです。
 特殊なクラスが出てきたのが意外だっただけですよ」
「ふん……」

外印のフォローにも、アヴェンジャーの表情は変わらない。

「まあいい。それよりお前は、この聖杯戦争に何を望む」
「戦いを」


272 : 村上外印&アヴェンジャー ◆NIKUcB1AGw :2018/04/18(水) 21:37:19 ZKFzQr5w0

アヴェンジャーの問いに、外印は即座に答える。

「戦うこと自体が目的か」
「まあね。それも、とびきり派手なのがいい。
 できる限りたくさんの人間を巻き込んで、それこそ戦争と呼ぶにふさわしい戦いを起こしたいですね」
「まともな思考ではないな」
「そうかもしれませんね」

おのれの考えを異常と断じられても、外印は微笑を浮かべるだけだ。

「僕は自分の願望に忠実ですから。他人からどう思われようと気にしません。
 あなたにも、そういうところあるでしょう?」

外印の発言に、アヴェンジャーはぴくりと眉を動かす。

「あくまで雰囲気で判断しただけだけど……。
 あなたは僕と同じじゃないが、似た部分はある。
 意気投合するのは難しいが、協力することは難しくない。
 そんな感じがするんですが、どうですかね?」

相変わらず微笑を浮かべたままの外印に、アヴェンジャーは言葉を返さない。
しばしの沈黙の末、ようやく彼は口を開いた。

「お前と気が合うかどうかなど知らないが……。とりあえずは力を貸してやろう。
 俺を使いこなせるかどうか、楽しみにしているぞ」
「よろしくお願いします」

外印は笑う。上っ面だけでなく、心から。

(いやあ、楽しくなりそうだ。
 今度こそ、存分に戦争をしてやる!)


273 : 村上外印&アヴェンジャー ◆NIKUcB1AGw :2018/04/18(水) 21:38:22 ZKFzQr5w0


◆ ◆ ◆


(この俺がアヴェンジャーとはな……。
 そう簡単に、心の闇は晴れるものではないか)

霊体化していったん外印から離れた後、アヴェンジャーは改めて自分自身について考えていた。

(死に際に、恨みは全て吐き出したつもりだったが……。
 世界は、あくまで俺を復讐者として扱うということなのかもしれないな。
 まあいい。聖杯を手にできたのなら、俺はそんな人生を変えてやる)

アヴェンジャーの真名は、ホメロス。
親友と共に英雄として讃えられ、その親友への嫉妬から道を踏み外した男。
彼はそんな生き方を悔い、聖杯の力で人生をやり直そうとしていた。
彼にとってこの聖杯戦争は、過ぎ去りし時を求める戦いなのだ。


【クラス】アヴェンジャー
【真名】ホメロス
【出典】ドラゴンクエストXI
【性別】男
【属性】中立・悪

【パラメーター】筋力:C 耐久:B 敏捷:C 魔力:B 幸運:D 宝具:B

【クラススキル】
復讐者:C
復讐者として、人の怨みと怨念を一身に集める在り方がスキルとなったもの。怨み・怨念が貯まりやすい。
周囲から敵意を向けられやすくなるが、向けられた負の感情はただちにアヴェンジャーの力へと変わる。

忘却補正:C
人は忘れる生き物だが、復讐者は決して忘れない。
時がどれほど流れようとも、その憎悪は決して晴れない。たとえ、憎悪より素晴らしいものを知ったとしても。

自己回復(魔力):B
復讐が果たされるまでその魔力は延々と湧き続ける。魔力を微量ながら毎ターン回復する。

【保有スキル】
軍略:C
多人数を動員した戦場における戦術的直感能力。
自らの対軍宝具行使や、逆に相手の対軍宝具への対処に有利な補正がつく。

魔術(闇):B
彼の世界で「ドルマ系」とよばれる、闇の力を操る魔術を修得している。


【宝具】
『邪悪に堕ちし銀の宝玉(シルバーオーブ)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大捕捉:1人(自身)

強い神秘を秘めた六つの宝玉、「オーブ」のうちの一つ。
この宝具を解放することにより、アヴェンジャーは「魔軍司令ホメロス」としての姿に変身する。
幸運と宝具を除くステータスが1段階上昇し、使用できる技も増加する。
外見は肌が紫に染まり、角、翼、尻尾が生えたいかにも悪魔といったものになる。

【weapon】
「プラチナソード×2」
切れ味はそこそこだが、特殊効果は持たない剣。
アヴェンジャーは二刀流で用いる。

【人物背景】
デルカダール王国の将軍兼軍師。
幼なじみであり親友であるグレイグと共に「双頭のタカ」と讃えられ、民衆の支持を集めていた。
しかしグレイグが自分より重用されることに内心では劣等感を抱いており、そこを魔王ウルノーガにつけ込まれしもべとなる。
以後は本性を隠しつつ、魔王の宿敵である勇者を討ち取るべく行動していた。
世界崩壊後は六軍王の一人「魔軍司令」の座に就き、精神のみならず肉体も魔物と化す。
魔王の本拠地である「天空魔城」で勇者一行を迎え撃つが、成長した彼らには叶わず討伐されることとなる。
最期に、友としてグレイグと言葉を交わして。

【サーヴァントとしての願い】
人生をやり直す

【基本戦術、方針、運用法】
明確な弱点がない代わりに飛び抜けた長所もない、バランス型のサーヴァント。
マスターが魔術師でないため、魔力量を考えるとあまり無茶な戦い方もできない。
戦略でどこまで自分たちを優位に持っていけるかが鍵となるだろう。


274 : 村上外印&アヴェンジャー ◆NIKUcB1AGw :2018/04/18(水) 21:39:43 ZKFzQr5w0

【マスター】村上外印
【出典】るろうに剣心 銀幕草紙変
【性別】男

【マスターとしての願い】
戦争がしたい

【weapon】
「鋼線」
目を凝らさねば見えないほど細い鋼線。
ダイヤモンドの粉末をまぶし、たいていのものを切断できる「斬鋼線」と物を引き寄せたり持ち上げたりする際に使う「斬れない鋼線」の2種類を使い分ける。

【能力・技能】
「話術」
事実無根の嘘を大勢の人間に信じさせ、意のままに操るほど弁が立つ。

【人物背景】
隠密御庭番衆の候補生として、修行を積んでいた青年。
御庭番衆になった暁には「黒子」の名前を授かることになっていたが、その時が来る前に戦乱は終わり、御庭番衆は解体される。
力をもてあました彼は、武器商人・武田観柳の配下に。
彼の計画に乗じて政府に不満を持つ者たちを扇動し、大規模テロにより経験できなかった戦争を自らの手で起こそうとする。
外面は社交的な好青年だが、内面は自己中心的でひねくれた幼稚な男である。
……機巧芸術家のジジイ? 誰のこと?

参戦時期は斎藤に倒され、死亡する直前。倒れたときに、偶然落ちていたソウルジェムをつかんでいた。

【方針】
できるだけ大人数を巻き込んで、戦乱を起こす。
満足できる結果が残せれば、後は最悪死んでもかまわない。


275 : ◆NIKUcB1AGw :2018/04/18(水) 21:40:46 ZKFzQr5w0
投下終了です


276 : ◆Vj6e1anjAc :2018/04/19(木) 01:47:20 Dyv0/1jM0
皆様、投下お疲れ様です
自分も投下させていただきます


277 : まだ渇くならば ◆Vj6e1anjAc :2018/04/19(木) 01:49:33 Dyv0/1jM0
 ――町外れの教会に、外国人の神父がいる。
 それ自体は別段と、珍しくもないことだった。
 そもそも教会の宗派とは、西洋発祥のものである。いわゆる本場の神父達が、海外から移り住んできたとしても、決して不自然ではないだろう。
 そして現在、この見滝原市の教会にいる神父は、そういう類の人間だった。

「では神父様、ごきげんよう」
「ええ。主のご加護があらんことを」

 黄昏の色が世界を包む。
 茜色の空の下で、老婆が小さく会釈をする。
 ゆっくりと立ち去るその背中を、小さな教会の前に立ち、見送る者の姿があった。
 黒い法衣を纏う者は、金髪碧眼の美丈夫だ。
 怜悧な眼差し、見目麗しい顔立ち。理知的な印象を与える男は、その顔に柔和な笑みを浮かべて、歩み去る老婆の姿を見送る。
 そうしてしばしの時が経つと、彼は教会のドアを開き、ゆっくりと身廊を歩いていった。
 かつり、かつりと靴の音。他に音を立てるものはない。この時分ともあれば、礼拝に訪れる者が現れるのは稀だ。
 神父はややあって、祭壇へ至り、聖者の姿を静かに見上げた。
 殉教の図だ。
 磔刑に処せられた神の息子は、救世のために穢れを背負い、茨の冠を被って逝った。

「神がこの世におわしめすなら、私のような不心得者は、とうに裁かれているのだろうな」

 ふ――と。
 聖者は一人、シニカルに笑う。
 信仰など、心にもないと。この救いようのない世界では、とうに神など死に果てたのだと。
 十字架を見上げる金髪の男は、慈愛の表情が嘘だったかのように、ひどく冷たい笑みを浮かべたのだった。

「――主を試すことなかれ。悪なる者の誘いの声に、神の子はそう返したという」
 
 深淵から、囁く声だった。
 神父の他に誰一人として、いるはずのなかった教会に、低く響く声があった。
 人の言葉にありながら、人の世の者の声ではなく。
 まるで闇の奥底から――異界から囁きかけるような、そうした響きの声色だった。

「戒めであれ恵みであれ、神の見えざる手を疑うこと。確かめんとすること自体が、教義においては悪徳なのだ」
「手厳しいな。君にとってこの装いは、よほど気に障るものらしい」
「贅沢は言わない。謂われもない宴に招かれた時点で、意にそぐわぬと言えばそぐわぬが故にな」
「それはどうも」

 おぞましさすら漂わす声にも、神父は肩を竦めて応じる。
 声の主を、振り返りはしない。男の視線は今もってなお、正面の祭壇に向けられたままだ。
 何せ彼は知っている。その囁きを口にする者と、既に縁で結ばれている。
 白い手袋の下に隠した、血よりも赤き、罪人の烙印。
 神の信徒の装いにあって、なお殺戮を世に敷く者。聖杯戦争の参加者の証を、神父は既に宿している。
 なればこそ、彼はその男を知るのだ。天上の座へと祀り上げられた、英霊の存在を知っているのだ。
 たとえそれが世を乱す者――昏き復讐者(アヴェンジャー)であったとしても。


278 : まだ渇くならば ◆Vj6e1anjAc :2018/04/19(木) 01:49:55 Dyv0/1jM0
「相も変わらず、冷めたものだ。尋常ならざる監獄に、囚われ閉じ込められていながら」
「傍目にそう見えているのなら、きっと私には思った以上に、役者の才があったのだろう」

 私がお前が思う以上に、心を揺さぶられてはいるのだよ、と。
 割り当てられた盤上の駒に、笑顔の神父は語りかける。

「マスター。いかな因果か応報か、オレなぞを引き当ててしまった不運な男よ」

 その装いは、黒かった。
 ただの黒ずくめではない。目深に被ってみせた帽子も、羽織った外套も漆黒だったが、それだけの装いでは断じてない。
 ステンドグラス越しに注ぐ、茜の光を浴びてなお、その男の有様は黒かった。
 その佇まいそのものが、闇に魅入られた黒だったのだ。
 宵闇よりもなお暗く、暗黒よりもなお黒く。
 聖域に似つかわしい男ではない。正道を歩んだ者ではない。
 邪道外道よりなお暗い道――恩讐の魔道に囚われたが故。それ故の闇であり、黒であると。
 全身から滲み出る存在感、それそのものが物語るような、黒い男の姿があった。
 そうしていつの間にか現れ、長椅子に座り込む男こそが、教会の戸を叩き現れた者――神父に招かれしサーヴァントだった。

「オレは今なおお前を知らぬ。聖杯なぞを求める理由――オレを使う理由を知らぬ」
「いいだろう、名高きモンテ・クリスト伯。君には問う資格がある」

 黒い男の不躾な問いにも、神父は鷹揚に応じた。
 本来サーヴァントというものは、主君の手足となるべき道具だ。それこそ意に従わぬというなら、令呪で罰するだけの駒だ。
 しかし彼は男に対して、常に敬意を払って接した。
 彼が問うなら答えたし、拒まれたならば深入りを避けた。
 真名で呼ばれることに対して、不快感を示したならば、通称でこそ彼を呼んだ。
 モンテ・クリスト伯爵とは――彼の引いたアヴェンジャーとは、そうするべき相手であると見なしたからだ。
 仮に令呪をかざしたとしても、この男は決して止まらぬだろう。己が戒めるより疾く、彼の恩讐は己の胸を、深く抉って死に至らしめる。
 それは御免だ。まだ死にたくはなかった。なればこそ金髪の神父は、名高き英霊に対して、敬意を以て接したのだった。

「私が生まれ落ちた時代は、とうの昔に堕落していた。誰が神を試したことやら、主に見放された我らの星は、退廃と悪徳に穢れ、荒れ果てていた」

 神父が語るのは、歴史だ。
 モンテ・クリストの復讐譚が、世に語られた時代より後。
 この見滝原よりも更に未来、遥か数百年を隔てた時代。それこそが男のあるべき場所だ。
 神父が生まれたその時代は、厄災に穢された地獄であった。
 戦乱を乗り越えた人の姿が、輝いて見えるのはまやかしに過ぎない。
 為政者は権威主義に堕し、人身売買が公然と行われ、搾取と偏見が蔓延る時代は、中世の暗黒の再来とすら言えた。
 アンノ・ドミニを越えた時代――ポスト・ディザスターとは、そういう時代だ。

「私はね。世界を救いたいのさ。誤ったまま進んだ時計の針を、あるべき形へと戻し、歩み直す。それこそが聖杯にかける願いだ」

 そしてその時代に生きる彼は、なればこそと口にしたのだ。
 聖人と同じ、救済の願いを。
 強きが落ちぶれ、弱きが涙し、悪しきのみが笑う時代を、この手で正してやりたいのだと。
 男は為政者を志していた。
 それも連なる七星の、たった一つでは満たされない。
 その背に世界の全てを背負い、その手で世界の全てを救う。絶対的な救世主こそ、彼の求める在り方であった。
 故にこそそのための力を、己は聖杯に望むのだと。
 己が挑むこの戦いは、世界を救う戦いなのだと。
 何のてらいもなく言い放つ姿は、確かに、堂に入ってはいた。
 敬虔な信者を作り笑いで欺き、信じるべき神を皮肉ったとは、到底思えぬような自然体で、彼はそう言ってのけたのだった。


279 : まだ渇くならば ◆Vj6e1anjAc :2018/04/19(木) 01:50:15 Dyv0/1jM0
「――いいや、違う。そうではない」

 しかし、返るのは否定だ。復讐の器は切って捨てた。
 それが聞きたいのではないと。求めた言葉はそれではないと。
 心底に救世を願うのならば――真に聖人君子であるなら、己になど行き会うはずもない。
 人でなしの復讐鬼ごときを、こうして引き当ててしまったからには、それは本音ではないのだろうと。

「そんなお為ごかしではない。オレが聞いているのは、マスター――『お前』の話だ。マクギリス・ファリド」

 主の名前を。共犯者の名前を。
 業腹ながらも、己が身命を、預けねばならぬ男なればと、モンテ・クリストは口にする。
 誰にでも口にできるような、大義名分などではない。
 肝要なのは、そうした理由を、選ばれるに至った心根こそだ。
 他の誰にも語りえない――マクギリス・ファリドなればこその動機を、伯爵は問いかけたのであった。

「……ああ、つまりそういうことか」

 声のトーンが、僅か変わる。
 清廉を気取った男の声音に、僅か暗い影が落ちる。
 聖人の語る正義ではない。それは只人であるが故の揺らぎだ。
 マクギリス・ファリドとその名を呼ばれた、法衣姿の金髪の男が、ゆっくりと己を振り向かせる。
 明後日を向いていた彼の視線が、アヴェンジャーの血塗れの瞳に、遂に真っ向から向き合う。

「心奥を晒せと――『俺』を語れと? 自分は黙して拒んだ割に、随分と虫のいい話じゃないか。巌窟王(エドモン・ダンテス)」

 その有様は、一変していた。
 仮面のような笑顔は消え失せ、氷のような真顔があった。
 あるいは遠目に見たのであれば、そのようにも解釈できたかもしれない。
 しかし男の青い瞳は――涼やかであるはずのマクギリスの瞳は、今は激情に燃え盛っていた。
 青くあれども、それは炎だ。分け入るものを焼き焦がさんと、怒り猛って狂う業火だ。
 清らかさという仮面を剥ぎ取り、酷薄さすらも見透かした先に、初めて垣間見える心象の光景。
 それこそがマクギリス・ファリドの抱く、煮えたぎる憎悪の炎であった。
 なればこそだと、英霊は語る。それを本質と抱えたからこそ、己などを引き当てたのだと。
 復讐鬼――巌窟王エドモン・ダンテスは、戦禍(メギド)の熱に中てられ晒され、ようやく薄ら笑ったのだった。


280 : まだ渇くならば ◆Vj6e1anjAc :2018/04/19(木) 01:50:40 Dyv0/1jM0


 マクギリス・ファリド。
 ポスト・ディザスターの地球を治める、治安組織「ギャラルホルン」の名士。
 最高機関セブンスターズに、若くして席を置くその男こそ、巌窟王のマスターであった。
 何の因果か宿縁か。それが何者かの呼び声に招かれ、遥か過去の世界へと落とされ、そして目覚めた結果が、これだ。
 教会の神父などという、当てつけのような枠に嵌められ、道化を演じていた男は、そういう道筋を辿って来たのだった。

「ハハ。少しはらしくなった。オレもその方が心地良い」

 その男の逆さ鱗に触れて、なおも巌窟王は笑う。
 気色の悪い作り笑いなど、早々に捨ててしまえばいいと。
 地獄を味わい、憎悪に狂い、悪徳にこそ堕した己には、この熱こそが心地良いと。

「驕ってくれたな、巌窟王。俺の令呪は飾りとでも? 臆病者の主など、顔色を伺う謂れもないと?」
「使わんよ、お前は。恐れではなく、意地にこそ誓って。お前はそういう性根の男だ」

 たとえ生意気を口にしても、マクギリスは命じないだろう。
 戯言ごときを黙らせるのに、強権などを行使はしない。
 それが言い返せなかった己の、敗北なのだと知っているからだ。
 なればこそだと、理解している。瞳に炎を確かめたからこそ、エドモン・ダンテスは確信している。
 聖人君子などとんだペテンだ。冷酷非情ですら真からは遠い。
 こいつの本質に当たる部分は――そうした類の負けず嫌いだ。なればこそと巌窟王は、不遜を口にしたのだった。

「気に食わない。反吐が出る物言いだ。見透かしたような口ぶりで、俺を枠に嵌めようなどと」
「それは経験則か、マスター? あるいはそれこそがお前の、大層なお題目の動機であると?」

 善光を見た。悪徳を見た。なればこそ彼は見逃さない。
 マクギリスの口を突いて出た、その言葉尻を聞き逃さない。
 人を見下す物言いが。あるいは決めつける物言いが。それこそがマクギリスという男を、こう形作った理由なのかと。

「……世は既に堕ちたと、先程言ったな。俺の生まれはその奥底……地獄の果てこそに生まれ落ちた」

 マクギリス・ファリドは語って聞かせる。最奥で燃える炎の種を。己が絶望の成り立ちを。
 栄光あるファリド家の家紋は、最初から持っていたものではなかった。
 腐敗したポスト・ディザスターの、最底辺の貧民街こそが、かつてのマクギリス・モンタークの出生地だった。
 栄達など、望むべくもない果てだ。生きるためには残飯も食らい、食うためにこそ体すら売った。
 いかなる星の巡り会わせか、下衆な義父の情夫として、光の下へと拾い上げられても、なお偏見の目は付きまとった。
 全てを黙らせ、生きてきたのだ。
 己を貶めるものを。己を底辺に押し込めるものを。
 己が持つべきはずだった、尊厳を取り上げんとする者全てを、マクギリスはねじ伏せてきたのだった。
 ただ、怒りと憎しみを火種に。
 媚を売るための善良も、敵を切り捨てるための冷徹も。全てを迸る激情こそを、慰め満たすための術として身につけ。

「復讐だな。お前の動機とは」

 それがお前の本音だろうと、巌窟王は一言で括る。
 同じ境遇に生まれた哀れな者を、慰め救うなど心にもない。調停調和などという大義は、この男からは程遠い。
 ああ、そうだ。それは方便だ。
 聞こえのいい言葉で人を惑わし、味方につけて利用するため。そのために掲げた題目でしかない。
 この男の本質とは、怨みだ。
 謂れのない不幸を押し付けられ、台無しにされた半生を呪い、なればとぶち壊さんとする怒りだ。
 調停者(ルーラー)などを名乗れはしまい。マクギリス・ファリドとはその対極――同じ穴の復讐者(アヴェンジャー)なのだと。


281 : まだ渇くならば ◆Vj6e1anjAc :2018/04/19(木) 01:52:10 Dyv0/1jM0
「だとしたならば、満足するのか?」
「まさか。ようやく及第点だ」

 そしてそこまで語り聞かせて、なおも巌窟王の評価は、それだ。
 己を身命を捧げ従うに、十分に相応しい器であるとは、未だ到底言い難いのだと。
 だとするならば、この身の上語りは、一体何だったというのだ。必然、マクギリスの視線には、そうした棘の色が宿る。
 隠すことには、慣れていたはずだ。だとしてもその哄笑の前では、どうしても地金を晒してしまう。
 あるいはそれこそが怨念を集めた、アヴェンジャーの性質なのかもしれない。

「そうヒリつくな。救いようのない落第生より、多少はマシに思えているとも」

 そんな棘を突きつけられても、なおも巌窟王は笑う。
 肩を竦めて座席を立ち、かつかつと靴音を立てて歩む。
 元より仮面を被ったままなら、従ってやる謂れなどなかった。
 適当なタイミングで早々に見捨て、形だけの関係に終始し、さっさと脱落するつもりでいた。
 望みを持たぬ巌窟王には――光を喪ったアヴェンジャーには、その他に為すことなどなかったからだ。
 叶えるべき願いをとうに捨て去り、目的すら見失った憎悪にひた走る者が、聖杯など求めるはずもないのだ。

「故にだ、マスター。マクギリス・ファリド。ここからはお前の振る舞い次第だ」

 せいぜい振り向かせてみせるがいいと、視線を合わせて彼は言った。
 マクギリスの目鼻の先へと迫り、真っ向から見据えて口にしたのだ。
 何の面白みもなかった男が、隠していた己を曝け出した。
 それが怨念であるというなら。生粋のアヴェンジャーたる己の前で、復讐を語ってみせたのであれば。
 なればこそ、査定くらいはしてやろうと、ようやく腰を起こしたのだった。
 もはや巌窟王は亡霊ではない。為すべきことも、望みもなく、ただ招かれただけの囚人ではない。
 その身は虎だ。燃え盛る虎だ。煌々と怨嗟の炎を灯し、毒牙を突き立てる恩讐の獣だ。
 そしてだとすれば、お前はどうする。その虎をマクギリスはどう制する。
 あるいは己を屈服させるに、相応しいだけの魂の形を、魅せつけることはかなうのかと。

「……言われなくとも、知らしめてやろう。世界を壊す万能の器は、我が手にこそ相応しいのだと」

 ああ、もちろんだ。そのつもりだと。マクギリスは強く言い放つ。
 人の世を救う神は死んだ。厄祭戦の忌まわしき炎が、人の良心ごと焼き殺してしまった。
 なればこそ、人が立たねばならない。神が世界を救わぬのなら、人が世界を壊さねばならない。
 人類史に刻まれた英雄達が、我こそがと吼え叫んだように。
 人類最期の善性が――救世主アグニカ・カイエルこそが、終末の中でなお輝いたように。
 これは復讐だ。八つ当たりでしかない。そんなことは承知している。
 しかしそれが何よりも強く、己を突き動かす動機となるなら、従わずには救われない。
 この業炎から目を背けて、安穏と生きられるような腑抜けた性根を、マクギリスは持ち合わせられなかった。
 それは不幸ではあるのかもしれない。だとしても、哀みを許す気はない。
 他人の無責任な憐憫も、己の安寧も許せぬのなら、その怒りこそを撒き散らすまでだ。
 餓えるのならば。渇くのならばと。
 地位と名声も慰みに至らず、未だ餓鬼であった頃のように、貪ることを忘れられぬなら。
 己の激情を煽る全てを、薙ぎ倒し尽くした更地にこそ、渇望するものがあるのであれば。
 応報の結末を。奪われた宝を。
 掴めなかったからこそ憎んだ――その原初の望みたる、自由を。それこそを得たと納得する日を、迎えることができるのならば。


282 : まだ渇くならば ◆Vj6e1anjAc :2018/04/19(木) 01:52:36 Dyv0/1jM0
【CLASS】アヴェンジャー
【真名】巌窟王 エドモン・ダンテス
【出典】Fate/Grand Order
【性別】男性
【属性】混沌・悪
【パラメータ】筋力B 耐久A+ 敏捷C 魔力B 幸運? 宝具A

【クラス別スキル】
復讐者:A
 復讐者として、人の恨みと怨念を一身に集める在り方がスキルとなったもの。
 周囲からの敵意を向けられやすくなるが、向けられた負の感情は直ちにアヴェンジャーの力へと変化する。

忘却補正:B
 人は多くを忘れる生き物だが、復讐者は決して忘れない。
 忘却の彼方より襲い来るアヴェンジャーの攻撃はクリティカル効果を強化させる。

自己回復(魔力):D
 復讐が果たされるまでその魔力は延々と湧き続ける。魔力を微量ながら毎ターン回復する。

【固有スキル】
鋼鉄の決意:EX
 この世の地獄とさえ呼ばれた監獄シャトー・ディフ(イフの塔)から脱獄し、復讐の人生を歩んだ鋼の精神と行動力とがスキルとなったもの。
 痛覚の完全遮断、超高速行動に耐えうる超人的な心身を有している。複合スキルであり、本来は「勇猛」と「冷静沈着」スキルの効果も含まれる。

窮地の知慧:A
 危機的な状況で幸運を呼び込む。ファリア神父から授かった多くの智慧と天性の知恵によるもの。
 エクストラクラスの特殊性が合わさることで、ランクB相当の「道具作成」スキルが使用可能となる。

黄金率:A
 人生でどれだけ金銭に恵まれたかという、いわゆる財運。Aクラスなら大富豪として一生金に困らず暮らすことが可能。
 シャトー・ディフにてファリア神父から伝えられた「隠された財宝」を手に入れ、尽きぬ財と権力を得た巌窟王は、まず金に困ることがない。


283 : まだ渇くならば ◆Vj6e1anjAc :2018/04/19(木) 01:52:54 Dyv0/1jM0
【宝具】
『巌窟王(モンテ・クリスト・ミソロジー)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
 サーヴァントとして現界した彼は後悔と改心の果てに救われた存在ではなく、復讐心滾らせてパリへと舞い降りた「巌窟王」そのものであり、復讐の化身である。
 それ故にエクストラクラス・アヴェンジャーとして現界した肉体は、その生きざまを昇華した宝具と化している。
 (一説では、生前に邂逅したという「14の遺物」が関係しているとも)
 死に至る毒炎を怨念の魔力として行使する他、あらゆる毒を受け付けず、精神干渉系の効果を軽減する。
 自らのステータスやクラスを隠蔽、偽の情報を見せることも可能。
 真名解放すれば、溜め込んだ怨念が一気に周囲へと撒き散らされ――敵は疑心暗鬼に陥って同士打ちを始めることになる。

『虎よ、煌々と燃え盛れ(アンシェル・シャトー・ディフ)』
ランク:A 種別:対人/対軍宝具 レンジ:1〜20 最大捕捉:1〜100人
 地獄の如きシャトー・ディフで培われた鋼の精神力が宝具と化したもの。
 肉体はおろか、時間、空間という無形の牢獄さえをも巌窟王は脱してみせる。
 人間には有り得ないほどの超高速思考を行い、それを無理矢理に肉体に反映することで、主観的には「時間停止」を行使しているにも等しい超高速行動を実現させる。

『待て、しかして希望せよ(アトンドリ・エスペリエ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:1人
 悪逆と絶望と後悔に満ちた暗黒の中に在ってまばゆく輝く、一条の希望。
 人間の知恵は全てこの二つの言葉に凝集される。すなわち。
 待て、しかして希望せよ――。
 自陣のうち一名を、瀕死(戦闘不能状態)からでも完全回復させる上に、全パラメーターを一時的にランクアップさせる。

【weapon】
・毒炎
怨念による魔力投射攻撃。
黒い怨念のエフェクトが発生し、敵にダメージを与える。直接ダメージに加えて、持続ダメージやステータス異常を与える毒の炎。

【人物背景】
復讐者、として世界最高の知名度を有する人物。
通称「巌窟王」もしくは「モンテ・クリスト伯爵」として知られる。
悪辣な陰謀が導いた無実の罪によって地獄の如きイフの塔(シャトー・ディフ)に投獄されるも鋼の精神によって絶望せず、
やがてモンテ・クリスト島の財宝を得てパリへと舞い降り──フランスに君臨する有力者の数々、すなわちかつて自分を陥れた人々を地獄へと引きずり落としたという。

真名こそエドモン・ダンテスだが、マルセイユの海の男であった「エドモン・ダンテス」と自分は別人であると彼は認識している。
なぜなら「エドモン・ダンテス」はパリに於ける凄絶な復讐劇の果てに悪性を捨てたが……サーヴァントとして現界した自分は「復讐鬼の偶像」で在り続けている。
ならば自分はエドモンではない、と彼は言う。

我が名は巌窟王(モンテ・クリスト)。
愛を知らず、情を知らず、憎悪と復讐のみによって自らを煌々と燃え盛る怨念の黒炎と定め、すべてを灰燼に帰すまで荒ぶるアヴェンジャーに他ならない。
この世界に寵姫(エデ)はおらず、ならばこの身は永劫の復讐鬼で在り続けるまで──

【聖杯にかける願い】
そもそも聖杯というものを、悪逆の坩堝であると見なしている。
復讐にのみひた走る彼が、それに何かを願うこと自体、有り得ないと見ていいだろう。


284 : まだ渇くならば ◆Vj6e1anjAc :2018/04/19(木) 01:53:21 Dyv0/1jM0
【マスター名】マクギリス・ファリド
【出展】機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ弐
【性別】男

【能力・技能】
・騎乗
各種乗り物の操縦技術。特にモビルスーツの操縦に関しては、超一流の技量を有している。

・阿頼耶識システム(改)
 上記モビルスーツ操縦を補助するため、人体と機体を直結させる端末。
本来は子供の頃にしか埋め込むことができないが、マクギリスが新たに取り付けたものは、
「ある実験」の成果として生み出された改良型であり、成人後にも埋め込むことができた。
性能及び形状は、過去の大戦「厄祭戦」当時に用いられていたオリジナルのものを、忠実に再現している。

・実務能力
政治手腕および、古巣の監査局にて培った監査手腕に長ける。
優れた頭脳・判断力・洞察力を有しており、ギャラルホルンの将来を担う人材として期待されていた。
あるいは彼にとっての悲劇は、

・会社経営
秘密裏に自身の私財を管理する企業として、「モンターク商会」を経営している。
人々の暮らしを支える企業として、地道に堅実に経営されているというのが、表向きの顔。
しかし実際には、マクギリスの暗躍のため、武装組織に兵器を横流しする場面も見られる。
更には企業沿革もでっち上げたものである可能性が高いなど、その実態は非常にきな臭いものになっている。

・奸計
望むにせよ望まざるにせよ、マクギリスという男の性質は「悪」である。
彼は旧時代の英雄を気取るには、あまりにも多くの者を利用し、そして切り捨て続けてきた。
たとえ最愛の友人であっても、彼はその理性と冷酷さをもって、地の底までも貶めるだろう。
もっとも、それが僅か残った彼の良心に、全く傷を残さないというわけではない。

【人物背景】
ポスト・ディザスターと呼ばれる時代にて、地球を支配していた武装組織「ギャラルホルン」。
その最高決定機関に当たる、セブンスターズの一角を成すファリド家において、若くして当主となった男である。

しかし幼き日のマクギリス・モンタークは、貧民街の最底辺から拾われた捨て子である。
彼は、そんな自分を生み出した社会に対して、強い復讐心を抱いていた。
表向きには理知的な青年を装っているが、その胸中には冷酷な野心と、社会への煮えたぎる憎悪が隠されている。

過剰なまでの権威主義に堕したギャラルホルンに対し、彼は強い軽蔑の目を向けていた。
このため彼は、来たるべき組織転覆・改革の日を迎えるに当たり、最も重要なファクターとなるものを、
ギャラルホルン創始者の魂が宿った神器――モビルスーツ「ガンダム・バエル」であると定めている。
正当な改革の理由を主張し、それをバエルの意志が後押しするのなら、勝ちの目もあると考えたのである。
……しかし、マクギリスは気づいていない。人類は彼が思っているほど、盲目に成り果ててはいないということに。
人の心を知らず、知る機会からも目を背けた彼を、失墜させるに足る証拠は、既に敵の手にあるということにも。

【聖杯にかける願い】
改革を成し遂げ、自由を勝ち取るための力。
それは自身の活動の補助となるものでもいいし、それ単体で世界を塗り替えることになってもいい。

【方針】
極力狡猾に立ち回り、本性を隠した上で聖杯を手にする。
利用できるものは全て利用し、何が何でも優勝する。


285 : ◆Vj6e1anjAc :2018/04/19(木) 01:53:49 Dyv0/1jM0
投下は以上です
マスター・マクギリスの参戦時期は、モビルアーマー復活以前を想定しています


286 : まだ渇くならば ◆Vj6e1anjAc :2018/04/19(木) 01:58:55 Dyv0/1jM0
状態表に抜けがあったので、修正します

【マスター名】マクギリス・ファリド
【出展】機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ弐
【性別】男

【能力・技能】
・騎乗
各種乗り物の操縦技術。特にモビルスーツの操縦に関しては、超一流の技量を有している。

・阿頼耶識システム(改)
 上記モビルスーツ操縦を補助するため、人体と機体を直結させる端末。
本来は子供の頃にしか埋め込むことができないが、マクギリスが新たに取り付けたものは、
「ある実験」の成果として生み出された改良型であり、成人後にも埋め込むことができた。
性能及び形状は、過去の大戦「厄祭戦」当時に用いられていたオリジナルのものを、忠実に再現している。

・実務能力
政治手腕および、古巣の監査局にて培った監査手腕に長ける。
優れた頭脳・判断力・洞察力を有しており、ギャラルホルンの将来を担う人材として期待されていた。
あるいは彼にとっての不幸は、己の心の在り方に比して、不相応なまでの力を身につけてしまったことなのかもしれない。

・会社経営
秘密裏に自身の私財を管理する企業として、「モンターク商会」を経営している。
人々の暮らしを支える企業として、地道に堅実に経営されているというのが、表向きの顔。
しかし実際には、マクギリスの暗躍のため、武装組織に兵器を横流しする場面も見られる。
更には企業沿革もでっち上げたものである可能性が高いなど、その実態は非常にきな臭いものになっている。

・奸計
望むにせよ望まざるにせよ、マクギリスという男の性質は「悪」である。
彼は旧時代の英雄を気取るには、あまりにも多くの者を利用し、そして切り捨て続けてきた。
たとえ最愛の友人であっても、彼はその理性と冷酷さをもって、地の底までも貶めるだろう。
もっとも、それが僅か残った彼の良心に、全く傷を残さないというわけではない。

【人物背景】
ポスト・ディザスターと呼ばれる時代にて、地球を支配していた武装組織「ギャラルホルン」。
その最高決定機関に当たる、セブンスターズの一角を成すファリド家において、若くして当主となった男である。

しかし幼き日のマクギリス・モンタークは、貧民街の最底辺から拾われた捨て子である。
彼は、そんな自分を生み出した社会に対して、強い復讐心を抱いていた。
表向きには理知的な青年を装っているが、その胸中には冷酷な野心と、社会への煮えたぎる憎悪が隠されている。

過剰なまでの権威主義に堕したギャラルホルンに対し、彼は強い軽蔑の目を向けていた。
このため彼は、来たるべき組織転覆・改革の日を迎えるに当たり、最も重要なファクターとなるものを、
ギャラルホルン創始者の魂が宿った神器――モビルスーツ「ガンダム・バエル」であると定めている。
正当な改革の理由を主張し、それをバエルの意志が後押しするのなら、勝ちの目もあると考えたのである。
……しかし、マクギリスは気づいていない。人類は彼が思っているほど、盲目に成り果ててはいないということに。
人の心を知らず、知る機会からも目を背けた彼を、失墜させるに足る証拠は、既に敵の手にあるということにも。

【聖杯にかける願い】
改革を成し遂げ、自由を勝ち取るための力。
それは自身の活動の補助となるものでもいいし、それ単体で世界を塗り替えることになってもいい。

【方針】
極力狡猾に立ち回り、本性を隠した上で聖杯を手にする。
利用できるものは全て利用し、何が何でも優勝する。


287 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/19(木) 22:48:04 JkIAhI520
皆さま投下お疲れ様です。
現在、書き終えた分の感想だけ投下させていただきます。

胡蝶の夢
 どこかで聞いた事あるような『ウワサ』の前口上にニヤリとさせられます。FGOに登場するナーサリーライムの姿に
 関しては、彼女なりの意志と理由があるので納得はしているのですが。本来のナーサリーライムの性質、マスター
 の心の鏡合わせというのを深く味わえる今回の話については、個人的な満足と「本来こういうものだよなあ」という
 感傷深いものを感じました。誰かと同じく『天国』へ目指す罪人の行く末を見届けたいものです。
 投下していただきありがとうございました。


夢の途中
 愛という絶望より深い感情を持った少女と、同じく愛を抱えた男の主従。背景と感情は非常に重みがある二人なのですが
 食事シーンの情景がまどマギ風、所謂シャフト節が再生できてしまって非常にコミカルでした。
 しかし、ソウルジェム関連からインキュベーターの影を見ているほむらは、願いの為ならばと思考放棄してしまった
 点が彼女らしいのですが、やはり足元をすくわれる結果になってしまうか不安を感じさせます。
 投下していただきありがとうございました。


ヒカゼ&セイバー
 聖杯戦争を破壊する方針の主従は少なからずあるとして、双方共に癖のある能力と素質を兼ね備えており、今後進んでいく
 為には、やはり相応の行動が取れるよう、他主従との取引が重要でしょう。しかしながらサーヴァントの能力というのは
 敵味方なんであれ予想外はつきもの。現状はヒカゼが不安を覚える通り、マスターとのチームワークが肝心なところで不備
 が生じては元も子もありません。宝具で召喚される彼女たちが現れたら尚更……
 投下していただきありがとうございました。


狼はいつだって嘘つき
 カイジ……不信感丸出し……!痛恨のミス……!!しかもまだ、聖杯戦争は始まってすらいない……!
 土壇場でやってくれる男ではあるのですが、ギャンブルとは違う戦争・戦闘・そして戦術に関する立ち回りには
 やはり不安を感じさせられますね。当然、ウェルフィンもカイジの目論みに勘づいている状況。
 友好関係どころではない、どちらが先に出しぬくのか。という新たな主従の攻防が非常に面白いです。
 投下していただきありがとうございました。


288 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/19(木) 22:49:09 JkIAhI520
ディオ・ブランドー&レミリア・スカーレット
 吸血鬼でも救世主でもない、ただの少年としてのディオの状態だからこその願いと思い、天国に至ろうとする決意。
 過去と未来。いざ比較すると微妙なズレが生じるもので、ディオに関しては『確かな』違いを明白に表したと思います。
 彼の運命を何となく見たランサーは、彼の願いに対し、サーヴァントとして戦う意義を掲げましたが、彼女だからこそ
 ディオの運命を導く力を駆使し、新たな可能性を見出して欲しいですね。
 投下していただきありがとうございました。


No Desire
 やはり高校生の二人組っぽさ、いや主従の関係性としてもソレに近しいもので、良くも悪くも問題はないように感じます。
 彼らなりに見滝原のパトロール……聖杯戦争だけでなく、町全体を守ろうとする黄金の精神を兼ね備えていますが、故に
 同じくしてこの見滝原に降臨している邪悪との対立は避けて通れないでしょう。ただそこに、二人だけではない同じ
 志を胸に秘めた仲間が共にあることを願いましょう。
 投下していただきありがとうございました。


平賀才人&ランサー
 異世界に居続けた才人だからこそ、聖杯戦争に巻き込まれた形とはいえ元の、本来自分がいるべき世界に戻ってきた
 のに複雑な苦悩を覚えてしまうのは当然のこと。特に母親からの手紙を、彼女の想いを知った事で才人の心情は
 より一層混沌に渦巻いてるでしょう。彼がメールの返信を『した』だけで決して、元いた世界への道を諦めていない
 諦めたくない意志が非常に伝わって来ます。そんな彼を武を極めしランサーが支えてくれるのを期待します。
 投下していただきありがとうございました。


堕天使たちの挽歌
 長い夢を終えた男。彼が再び聖杯戦争を舞台に仕方なく歩みを始めることになるのですが。天国から追い出された天使
 たちにとって、天国へ到達する術とはどう聞こえるのでしょうか。実際、舞台となっているまどマギの世界には奇跡も
 魔法もあるようでない。側面だけ切り取ってしまうと『同じ世界』なのに変わりない残酷さがある。ただ、パンドラの
 箱のように絶望の奥底に『希望』がある。その希望に目指して人間は向かって行くのでしょう。
 投下していただきありがとうございました。


たま&バーサーカー
 善にも関わらず『絆』の力を妄信しているからこそのバーサーカーとは、納得と同時に予想外の発想に驚きが絶えません。
 対するマスターのたまは、魔法少女としての在り方を失ったよりかは元よりなかったのかも分かりません。
 思えば彼女はまだ、完全に魔法少女『らしさ』を得ないまま死してしまった。友達や好きな人達の為だけに奔走した。
 純粋な少女でしかなかった。そんな彼女が聖杯戦争を経て、前進することを願いたいです。
 投下していただきありがとうございました。


感想は以上になります。
引き続き皆さまの候補作をお待ちしております。


289 : ◆yYcNedCd82 :2018/04/19(木) 22:58:27 Td4GOq6o0
ではお借り致します


290 : The Visitor ◆yYcNedCd82 :2018/04/19(木) 22:59:48 Td4GOq6o0


アラもう聞いた? 誰から聞いた?
メアリーさんのそのウワサ

綺麗な綺麗な女の子
ワンコと一緒の外人さん
午後十一時に現れて
遊びませんかって微笑むの!

悪い大人はにっこにこ
メアリーさんの手を引いて
アンナコトやコンナコト
ホテルに泊まってお楽しみ!

だけど朝になったらメアリーさん
どこを探しても見つからない
なにをしたかも覚えていない

メアリーさんがいた証拠は一つだけ
鏡にルージュの伝言が残ってるって
見滝原ではもっぱらのウワサ!

ワタクシザンコクデシテヨッ!


.


291 : The Visitor ◆yYcNedCd82 :2018/04/19(木) 23:00:12 Td4GOq6o0

 今夜この場で誰よりも幸運だったのは床で転がっている男だ。

 そして誰よりも幸福だったのは『彼』と、彼女だ。






 ――深夜、見滝原市繁華街のホテルの一室。

 床の上に青ざめた顔で横倒しになっているのは、ショウという名前のホストだ。
 深夜の公園でぽつりと一人佇む少女を見つけ、声をかけ、ホテルに連れ込んだ顛末については特に語るまい。
 彼の目論見は明白であったし、それが果たされずに終わったこともまた明白だからだ。

 故に見るべきは、その少女。
 浅黒い肌の上にふわりとした白いドレスを纏った、儚げとも、蠱惑的とも呼べる少女。
 夜の世界に迷い込んだという風にも見れるし、彼女こそ夜の住人なのだとも思える彼女。

 その彼女は今、一頭の犬を背に庇うようにして脅威と対峙していた。

 たとえ建前にしろ何にしろ、愛の営みを行うためのホテルには似つかわしくない者だ。

 男は時代錯誤な長ぞろい外套を着こなした紳士然とした態度で、にんまりとその顔に厭らしい笑みを浮かべた。

「メアリーさん。ははは、この都市伝説を聞いた時にピーンと来たんだ。
 おおかた聖杯戦争に巻き込まれた三流の魔術師が、必死に魔力でも集めてるんじゃあないかってね」

「……」

 少女は答えない。ただ背後で牙を剥き唸る犬を気遣い、ただそれを守ることにだけ意識を集中しているようだった。
 男はその見るも哀れな様を小馬鹿にしたように鼻で笑い、袖口から――とても中に収まるとは思えない!――杖を抜く。
 こつり、こつり。毛足の短い安物の絨毯を杖で叩きながら、男は転がされたホストを軽く小突いた。

「だが甘い。殺さずにいるからこうしてなるのだ。神秘は隠匿するものという常識すら知らないとは……」

 こつり、こつり。

 そうして男が一歩ずつ近づいてくる度、娘の背後に控えていた犬の唸り声が低くなる。
 それは明確な敵意の表明――いや、そもそもからしてこの男の全身から匂い立つ、殺意への反応なのだろう。

 鬱陶しげに顔をしかめた男は、わざとらしく目を見開いて言った。

「ほう、シベリアンハスキーか。茶色の毛並みとは珍しい」

「……っ」

 わずかに娘の表情が強張ったのを、男は見逃さなかった。
 見ればむしゃぶりつきたくなるような、瑞々しい果実を思わせるような容貌である。
 ふわりと薫る甘い匂いは、緊張から滲んだ汗のそれだろう。
 男は自身の内側で、むくむくと欲望が隆起する感触に気がついた。

「見た所、まだサーヴァントも召喚していないようだな……」

 そしてそれに抗おうかと一瞬考え――……すぐにそれを投げ捨てる。

「……これは重畳。我が魔力の供給源として有効活用してやろう」
「ダメです、お待ちください……っ!」

 その時、男の言葉を理解したかのように、一声吠えて犬が床を蹴って跳び上がった。

 太い手足は男を簡単に組み伏せるだろう。
 鋭利な牙は男の手足を縫い止めるだろう。
 鋭い牙は容易く男の喉笛を引き裂くだろう。

 人と獣の力の差は明白だ。人は獣に勝てない。
 ――だが、それは男が魔術師でなければの話だ。

「あぁ……ッ!!」
「しつけのなっていないケダモノめ……! 主の質もこれではしれたものだ!」

 娘の悲鳴が寝室に響き、ギャンという動物の鳴き声が上がる。
 男の振るったステッキから不可視の力場が放たれ、哀れな犬を致命的なまでに打ちのめしたのだ。
 犬は天上に叩きつけられて骨と内臓の砕かれる音を立てた後、ゴミを投げ捨てるように壁へ放られる。
 安っぽいホテルの壁に当たった犬はそのまま床へ落ち、ボロ布のような有様で身動き一つすらしていない。

 ――疑いようの余地なく死んだ。

「獣をしつけるにはこうするのが一番だ。なに、お前も素直に言うことを聞くのならば可愛がって――――……」


.


292 : The Visitor ◆yYcNedCd82 :2018/04/19(木) 23:00:34 Td4GOq6o0



 ――――その時、男は気づくべきだったのだ。

 娘の瞳が、今まさに襲いかかろうとする自分ではなく、ただまっすぐに床へ落ちた犬を見つめていることに。

 そしてその犬に起こった現象に。
 わずかに聞こえた異様な唸り声に!

 明らかに死んだはずだった。内臓はぐちゃぐちゃに潰されたはずだ。
 だが生きている! 呼吸もしている!

 青く変色した体毛を逆立てながら、犬がゆっくりと立ち上がる。

 いや! 「それ」はもはや犬とは呼べまい!

 瞳孔散大!

 平滑筋弛緩!

 細胞組織が変化!

 皮膚は特殊なプロテクターに変わり、筋肉・骨格・腱に宿るのは強力なパワーッ!

 額には赤い瞳の如き触角が輝き、金色の目は射抜くように男を睨むッ!



.


293 : The Visitor ◆yYcNedCd82 :2018/04/19(木) 23:00:52 Td4GOq6o0



         バ ル ッ



                     これがッ



            l| l|
     }}  {{    }}  {{
      {{   }}:    }}   }}    {{ {{ }}
      ″  "   ,〃  ゞ’    ,〃




                   こ れ が ッ



         _ _
        |: ||: |
   |:\  _|:_||:_|   |:\  _
   |:: | | ::|       |:: | | ::|     _ _
   /:  | | ::|    ./:  | | ::レ'i  |:_||:_| |\
  《:__| |_j   /:_/ 《__/     /: |
            ̄ ̄           /:/
                            ̄




           こ れ が 『 バ オ ー 』 だ ッ ! !


         ・ ・ ・ .・ ・ ・ .・ ・ ・ ・ ・ ・  ・ ・ ・ ・
       そ い つ に 触 れ る こ と は 死 を 意 味 す る ッ ! !


          rー--
         /  /
           / /
    __,、  / /             ャ――z
   /  廴丿  ̄ ̄ ̄>        /  /
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.


294 : The Visitor ◆yYcNedCd82 :2018/04/19(木) 23:01:10 Td4GOq6o0


「!? セイバーッ!!」
「御意ッ!!」

 この異常事態に対して、男はもちうる手段の中でもっとも的確なものを選択した。
 男は賢明だった。愚かではなかった。聖杯戦争という環境下で、状況を冷静に判断したのだ。

  ・ ・ ・ ・ ・ ・
 これはヤバイ――サーヴァントをぶつけるべきだ。

 男の声に応じて、その傍らに立つパワーあるヴィジョンが生み出される。
 影が滲むようにして現れたそれは、紛うことなき鎧武者であり、ゆらりと下げた刀を即座に振りかぶる。

 男たちには、目前でバイクのエンジン音が如き唸りを上げる「それ」が何であるかなど理解できなかったろう。

 秘密結社ドレスに所属する天才科学者が作り出した生物兵器。
 動物は危険が迫ったりケガなどをすると、副腎髄質という内蔵器からアドレナリンという物質を分泌し、体を緊張させる。
 このアドレナリン量を感知し、脳に寄生する「バオー」は宿主を生命の危険から守るべく無敵の肉体に変身させたのだ。
 それこそが地球上で最も生命力のある究極の生物「バオー」であるなどとは、男にはわかるわけもない。

 そしてそれは「バオー」にとっても同じだった。
「バオー」には男たちが何者であるかなど関係なかった。
 ただ生きるために戦う「バオー」には、視覚も聴覚も嗅覚も意味がない。
 額の触角が「バオー」の全ての感覚を担うのだ。

 バオーは男とセイバーの発する危険な「におい」を額の触角で感じ……その「におい」が大嫌いだった。

 恐怖の「におい」! 憎しみの「におい」! 殺意の「におい」! 敵の「におい」だ!

 バオーは思った!

 こいつらの「におい」を消してやるッ!!

.


295 : The Visitor ◆yYcNedCd82 :2018/04/19(木) 23:01:42 Td4GOq6o0

「ウオオォオオォオムッ!!」

「怪物め……ッ!!」

 吐き捨てるようにおめいて刀を振りかぶるセイバーの目前で、バオーは跳躍した。
 セイバーはすばやくその動きに応じて刃の軌跡を宙に描く。
 鎌倉時代に鍛えられた無銘の業物。退魔の剣。セイバーが頼みとする、唯一無二の宝具!
 これにて討ち果たせぬ怪物はいない。セイバーは心からそう確信していた。

 だが!

「な……ッ!?」

 バオーの四肢から伸びたきらめく光刃が、その刃をすぱりと切断し、セイバーの指を切り落とす!

 ――――バオー・リスキニハーデン・セイバー・フェノメノン!

 それはバオーの力によって皮膚を硬質化し、刃に再構成する武装現象(アームド・フェノメノン)!

 硬質化して刃と化した皮膚の表面では、サメの牙の如く生え揃った微小な棘が高速で動き回っている。
 光の乱反射を伴うその切れ味はダイアモンドカッター以上!

 自分の指先が失われ、吹き出す赤い血を信じられない思いで見つめるセイバー。
 たとえどんな剣豪や英傑であろうとも無視できない、その一瞬の驚愕。
 それが致命的だった。
 次の瞬間、セイバーの視界一杯に、バオーの大きく開いた顎が迫っていた!

「バルバルバルバルバルバルバルバルゥッ!!!!」

「がッ!?」

 サーヴァントとして顕現した以上、その肉体はおよそ獣の牙など文字通り歯が立たないものである。
 にも関わらず音もなくセイバーの喉笛は噛みちぎられ――いや! いや、これは違うっ!
 牙や唾液によって溶解され、そのままに断ち切られたのだ!

 ――――バオー・メルテッディン・パルム・フェノメノン!

 体液を強酸性のものに変化させて分泌、体外へと放射する武装現象!
 バオー・リスキニハーデン・セイバー・フェノメノンと組み合わせれば、この世のあらゆる物を切断する!

 頭部を失ったセイバーの肉体が、影が光へ溶けるように消えていく。
 主の力量不足か、まだ聖杯戦争が本格的に開始していなかったためか、英霊ではなくその影に等しい存在だったのだろう。

「ドッゲエーッ!? セイバァーッ!?」

 だが男は一声大声で喚いたかと思うと、それ以上感傷に浸ることなく脱出行動を開始していた。

 ホテルの一室。選択肢は二つ。窓かドアか。窓ははめ殺し。ドアだ。

 男は魔術刻印を起動して幾つかの身体強化を施しながら、脱兎のごとくドアに向けて走り出した。
 あの怪物は戦闘直後で即座に反応はできまい。後はあの小娘以上の速度を出せれば生存は確定する。
 この場を切り抜けさえすれば、後はどうとでもなるのだ。戦力を整え体勢を立て直しての逆襲。あるいは聖杯戦争からの逃走。

「申し訳ありません。……ここで果てていただかないと、困るのです」

 だが、男の喉にするりと腕が絡みついた。ぎくりと体が強張る。

 耳をくすぐる甘やかな声。振り返ってはいけない。鼻に薫る甘やかな香り。振り返ってはいけない。
 だが、男の意思に反して首が巡る、体が動く。わずかに眉を下げた、幼ささえ感じる少女の顔。菫色の瞳。
 そして僅かな隙間からちろりと舌が覗き、軽く唇を舐め、そして――口吻。

 その瞬間、男の全身を文字通りの意味で絶頂的な快楽が貫いた。

「お、ああ、、あ、あ、あ、あ、、あああ、あ、あ、、あ、あ!?」

 男は意味不明な言葉を喉から絞り出しながら、全身からありとあらゆる体液を吹き出し、病的な痙攣を繰り返し崩れ落ちる。
 病的な体の震えは男の四肢を捻じ曲げ、引きつったように動かし、男の体を床の上でのたうち回らせた。
 それはまさに死の舞踏(ダンス・マカブル)。
 やがて男の肉体はじゅうじゅうと煙を上げながら腐敗し、ドロドロに融け、やがて床の上の黒いシミへと成り果てた。

.


296 : The Visitor ◆yYcNedCd82 :2018/04/19(木) 23:02:16 Td4GOq6o0


「ご無事ですか……! 良かった……」

 少女はそう言って、腐食性の黒いシミが広がる床を物ともせずに跪き、バオーへと頭を垂れた。
 いや、青い毛並みは元の茶色へと戻りはじめているから、それはもうバオーではない、『彼』だ。

 先ほど内臓を叩き潰されたはずなのにも関わらず、もうそのような痕跡は一つもない。
 精悍な顔つきこそ変わらぬものの、そこにいるのはもはやただのシベリアンハスキーだった。

「どうやらあれはシャドウサーヴァントだったようです。ソウルジェムに回収されませんでしたから……」

 少女は自らの指にはめた銀の指輪をそっと撫でてそう呟き、次いで物憂げに眉を下げた。
 それは親に怒られて家の外に放り出される事を恐れる、今にも泣き出しそうな子供のような顔であった。

「マスター……。申し訳ありません。これではどちらがマスターでサーヴァントなのか、わかりませんね」

 ジール……いや、アサシンの英霊ハサン・サッバーハは、そう言いながら恐る恐る『彼』へ手を伸ばした。
『彼』はためらうことなく鼻面を押し付け、頬を擦りつけ、ばかりか躊躇うことなくその手を舌で舐めたではないか。
 毒の手。触れることは死を意味するその手。しかしバオーと『彼』は彼女の「におい」が好きだった。

 なんて悲しい「におい」だろう! なんて優しい「におい」だろう!

 それはバオーとその宿主である『彼』が、あの冷たい研究所で常に感じていたものだった。
 そして『彼』とバオーには終ぞ与えられることのなかった、心地のよい温もりだった。

「ああ……っ」

 アサシンの顔が陶然と緩み、その瞳が情愛の涙で潤む。

 他の者が見たら嘲るだろうか。犬畜生に媚を売っているなどと指差すだろうか。
 初代様がこんな浅ましい自分を見たらどう思われるだろう。きっと首を差し出さねばなるまい。

 ――――そう、この一頭のシベリアンハスキーこそが、サーヴァントとして召喚された彼女のマスターだった。

 出会ったのは霊地でも何でもない、薄暗い路地裏。
 恐らくは巻き込まれた者に召喚されたのだろう。聖杯から与えられた知識は彼女にそう囁きかける。
 だがそれでも構わなかった。
 アサシン、暗殺者たる彼女は神と主君に忠実にあり、そのためにこそ振るわれる刃であるべきだから。
 跪いて頭を垂れ、口上を述べることにいささかの躊躇もなかった。

 懸念はただ一つ。近くに人の気配が一切感じられないことだった。
 そしてだからこそ、その違和感こそが幸運だったと言っても良い。

「――――? あ……っ!?」

 不意うつように、彼女の頬を何かが舐めたのだ。
 それは薄汚れた一頭の犬で、不覚を取ったこと以上に彼女の心は千々に乱れた。
 彼女は自分がどれほどの「毒」であるのかを理解している。
 一瞬後にはこの犬が内臓から何から腐り果て、死んでしまう姿がありありと思い描けた。

 だが、そうはならなかった。
 そうはならず、『彼』は彼女と共に在る。
 契約によって繋がった魔力のラインも、そこを通じて流れ込む『彼』の気持ちも。
 全てが『彼』こそが自分のマスターであると示していた。

 これは奇跡のような出会いだ。
 恐らく何千、何万回、英霊として顕現しようとも、掴み取れる機会は数えるほどしか無いだろう。
 他の霊基でどのような巡り合わせがあるにせよ、今この場にいる彼女は、まさに運命に出会ったのだ。

 それに比べれば、たかだか異形に転じてサーヴァントとも互角に戦えることが何だというのだろう。

 静謐のハサンと呼ばれる彼女にとって、そんなことは些事に過ぎなかった。

「……では、マスター。今日はもう休みましょう。
 戦闘に感づいたものがいたとしても、我々はすぐに移動したと考えるはず。とどまっていた方が安全です。
 それで、その……」

 少女はその浅黒い肌をわずかに羞恥から紅潮させながら、手を自分の首筋へ伸ばし、服の紐をするりと解いた。
 白い衣装は音もなく彼女の足元へと落ちて蹲り、一糸まとわぬ彼女の――柔らかで美しい稜線が露わになる。

「よろしければ、今夜も褥を共にしては頂けませんか……?」

『彼』は一声吠えて、そこが自分の居場所であるとでも言うようにベッドへ上がって丸くなった。
 その姿を認めた彼女は、そっと頬を緩めて寝台に上がり、『彼』の傍らへと身を侍らせる。
 それは最愛の伴侶を見出した牝の顔でもあり、同時に大好きな犬を抱きしめて眠る少女の顔でもあった。

.


297 : The Visitor ◆yYcNedCd82 :2018/04/19(木) 23:03:06 Td4GOq6o0



 今夜この場で誰よりも幸福だったのは『彼』と、彼女だった。

 ――――そして何にせよ、今夜この場で誰よりも幸運だったのは床で転がっているホストだ。

 夢と現の区別もつかず、財布の中身も抜き取られ、散々な一晩だったと考えるのだろう。
 きっと自分が生きていることがありえないような状況にあったなんて、思いもよらないだろう。
『彼』と彼女に触れることは死を意味するというのに、生きていることがどれほど幸運かなんてわからないだろう。

 ショウという名前のホストは朝起きて、鏡を見て、その時に気づくのだ。
 鏡に描かれたルージュの伝言に。



                   『 The Visitor for "Over the Heaven"!』



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298 : The Visitor ◆yYcNedCd82 :2018/04/19(木) 23:03:19 Td4GOq6o0
【クラス名】アサシン
【真名】静謐のハサン@Fate/Grand Order
【性別】女
【属性】秩序・悪
【パラメータ】筋力D 耐久D 敏捷A+ 魔力C 幸運A 宝具C

【クラス別スキル】
・気配遮断:A+
 サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
 完全に気配を絶てば発見する事は不可能に近い。
 ただし、自らが攻撃行動に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

・単独行動:A
 マスターからの魔力供給を絶ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクAならば、マスターを失っても一週間は現界可能。


【保有スキル】
・変化(潜入):C
 文字通りに変身する能力。自在に姿を変え、暗殺すべき対象に接近する事が可能になる。
 ただし、変身できるのは自分と似た背格好の人物のみ。
 この条件さえ満たしていれば、特定の人物そっくりに変身する事も可能。
 多少の体型の違いであれば条件に影響はないため、異性への変身も可能である。

・投擲(毒の刃):C++
 短刀を弾丸として放つ能力。
 毒ステータスを対象に付与するという付帯効果を持つ。

・楽園への扉:B+
 魔性の美貌と毒により異性・同性を問わず惹きつける。
 ランクBではほぼ対象の意思を無視して精神を支配する。
 毒による効果が伴うため、対魔力スキルでは抵抗できない。


【宝具】
『妄想毒身(ザバーニーヤ)』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
 猛毒の塊と言えるアサシンの肉体そのもの。触れるすべてを毒殺し続けた彼女の在り方が宝具化したもの。
 爪、肌、体液、吐息さえも“死”で構成されており、全身が宝具と化している。またあらゆる毒を無効化する。
 宝具ではない武装であれば、瞬時に腐蝕させることも可能。武装を腐食させるかどうかは任意に決定できる。
 しかし生物に対しては「加減」することができないため、触れた相手を必ず殺してしまう。

 この毒は幻創種すら殺害するほどの威力であり、特に粘膜の毒は強力。
 人間であればどれほどの者でも接吻だけで死亡し、英霊であっても二度も接吻を受ければ同じ末路になる。
 二度の接吻に耐えたとしても、合計三度の粘膜接触で大抵の存在は絶命する――例外も存在するが。
 これは自分の意志では完全に制御することは出来ず、触れた者に無差別に作用してしまう。
 さらに犠牲者の体にまで毒は残留し、遺体に触れた者にも被害が及ぶ。

『静寂の舞踏』
 宝具『妄想毒身』を用いた範囲攻撃。
 静謐のハサンの踊りは毒を振りまき、対象を弱らせ、宝具の効果を確実なものとする。
 汗を揮発させることで密室に毒を充満させたり、風に毒を乗せて万軍をを葬り去るなども可能。
 ただし範囲が拡大される反面、毒の強度という意味では粘膜接触には劣ってしまう。
 一度きりの奥の手として、至近距離で自身の肉体を四散させて大量の毒を浴びせるという隠し技も持っている。


【Weapon】
『ダーク』
 投擲用に調整された黒灰白三色の短剣。
 宝具ではなく補充ができないため、戦闘の度に回収が必要。


【人物背景】
 髑髏の仮面を被った、瑞々しくしなやかな容姿の少女。
 暗殺教団の教主「山の翁」を務めた歴代ハサン・サッバーハの一人。
 伝説上の存在「毒の娘」を暗殺教団が再現し、暗殺の道具、兵器として作り上げたもの。
 彼女の肉体は毒の塊であり、爪はおろか肌や体液さえをも猛毒へと変化させている。
 その美貌を活かして異性を誘惑、理性を失わせ、褥に誘っては毒で暗殺するという手法を最も得意とする。
 しかし誰とも触れ合うことができない孤独感は生前から彼女を苛み、その精神を軋ませていた。

 直接戦闘は得意ではなく、純粋な暗殺者として優れた力量を発揮する。
 そのため現在は「ジール」を名乗り、主の寝床を確保するためホテルを転々としている。
 幸いなことに主が殺戮を忌避することから粘膜接触は避け、誘惑された人々は昏倒で済んでいるようだ。

 バオー犬は触れても死なないため、彼こそが自身の望んでいた相手だと認識している。
 その感情は依存、服従、忠誠、恋慕の全てが入り混じったうえで、その全てを凌駕するもの。


【聖杯にかける願い】
 主に全てを捧げ、願わくば共に生きる。


299 : The Visitor ◆yYcNedCd82 :2018/04/19(木) 23:03:31 Td4GOq6o0
【マスター名】バオー犬
【出典】バオー 来訪者
【性別】オス

【能力・技能】
・シベリアンハスキー
 ツンドラ地帯を原産とする大型犬。
 多くは白黒の毛だが、この個体は茶白である。
 一般的に強靭な体力・持久力を持ち、知能も高い犬種とされている。
 自ら威嚇することのほとんどない穏やかな犬種だが、頑固で意思が強い。
 一度共同体とみなした仲間を守るためなら勇敢に立ち向かう。

・寄生虫バオー
 秘密結社ドレスが作り出した生物兵器B.A.O.H。
 極限の環境に晒し、適応した動物を交配させる「人工進化」によって誕生した「新生物」。

 血管を通じて脳に寄生し、宿主は寄生から数日ほどでバオーの分泌液で皮膚がただれ始める。
 バオーは宿主へ恐ろしいほどの再生能力を与え、脳を完全に破壊しない限り宿主は消して死なない。
 この再生力は分泌液に由来し、バオーと宿主の意思が一致したなら、飲んだ者の致命傷すら癒やす薬となる。
 レーザーや火炎放射などの高熱が弱点であるとされるが、それに対してすら異様な耐久性を発揮する。
 また水中などで肺呼吸が完全に遮断されると仮死状態となり、この間は老化も一切進むことがない。

 そしてバオーは生物として常に学習・成長・進化を続けており、その終着点は未だ誰も知らない。

・武装現象(アームド・フェノメノン)
 危険に晒されたバオーが、分泌液によって宿主を瞬時に戦闘形態へと変態(メタモルフォーゼ)させる現象。
 宿主は身体能力の大幅な増強をはじめ完全に変化して、地上で最も生命力のある生物へ変貌を遂げる。
 これがッ! これがッ! これが『バオー』だッ!!

 発現時には全身の体毛が青く変化して逆立ち、額には第三の目を思わせる赤い触角が発生する。
 武装現象発現中はこの触角で全感覚を賄うため、通常の五感はバオーにとって無意味なものとなる。
 バオーは触角で「におい」を察知して行動し、特に邪悪な「におい」すなわち自身への殺意の「におい」を最も嫌う。
 この「におい」を察知すると、バオーは即座にこれを排除すべく行動を開始する。

 主に宿主と自身を守るために発現し、発現中はバオーが肉体の制御権を得るが、宿主の意思を尊重することもある。
 そのため宿主の意思での発現も可能だが、基本的にバオーは生物としては穏やかであり、無意味な殺戮を行うことはない。
 バオーを完全に宿主の制御下へおくためには、宿主の理性とバオーの本能が一致しなければならない。

 また武装現象発現中、バオーは「バル!」「バルバルバルバル!!」「ウォォォ――ム!!」など異様な咆哮を轟かせる。

《バオー・アームド・フェノメノン》
 バオーが最初に発現させる第一の武装能力。
 痛覚を遮断、瞳孔散大、平滑筋弛緩、細胞組織が変化。
 皮膚は特殊なプロテクターに変わり、筋肉・骨格・腱には強力なパワーが宿る。
 加えて以下の武装現象を自在に発現させ、使いこなせるようになる。

《バオー・メルテッディン・パルム・フェノメノン》
 体外に排出されると強力な溶解液へと変わる分泌液を放射し、標的の肉体や金属などを融かす武装現象。
 噴射の際に自身の体組織も溶解させるが、同時に新たな皮膚を生成・再生するため、事実上のダメージはない。
 またこの溶解液と前述の再生能力を組み合わせ、「生きた生物の中に潜り込んで身を隠す」なども可能とする。

《バオー・リスキニハーデン・セイバー・フェノメノン》
 皮膚組織を再構築し、硬質化させて刃物状にする武装現象。
 刀身の表面でサメの歯のような極小のトゲが高速で動き回り、光の乱反射を起こしつつ標的を切断する。
 柱の男たちが振るう光の流法「輝彩滑刀」と同質のものであるとされる。
 切り離して発射することで、飛び道具としても使用可能。

《バオー・シューティングビースス・スティンガー・フェノメノン》
 体毛を硬質化して射出する武装現象。
 この体毛は体温の伝導などで一定温度に達すると発火し、突き刺さった標的を焼き尽くす。
 発火自体も脅威的だが、体毛の鋭さも凄まじいものがある。

《バオー・ブレイク・ダーク・サンダー・フェノメノン》
 体細胞から発生される生体電気を直列にして放出、放電する武装現象。
 デンキウナギと同様の原理だが、バオーの筋肉細胞は一つ一つが強力なために60,000ボルトの高圧電流となる。
 直接放電する以外にも機械などへ電力供給を行うことも可能。
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300 : The Visitor ◆yYcNedCd82 :2018/04/19(木) 23:03:58 Td4GOq6o0

【人物背景】
 研究機関ドレスの実験体としてバオーを寄生させられた茶毛のシベリアンハスキー。
 既に寄生から一ヶ月が経過しており、バオーとしての完成度は高い。体毛で隠された肉体はただれている。

 秘密結社ドレスでは出資者へのデモンストレーションに用いられ、改造を施された虎との戦闘を強制された。
 頭部を砕かれた直後に武装現象を発現、一瞬の内に虎を葬り去り、出資者へバオーの恐ろしさを見せつけた。
 しかしバオーの殺害方法を説明するためにレーザー照射で脳を破壊され、焼却処分されてしまった。

 施設から脱走することができたのか、処分寸前にソウルジェムを手にしたのか……。
 そしてマスターがこの犬なのか、それとも寄生しているバオーなのかすらさだかではない。


【聖杯にかける願い】
 生きる
 この少女を守る
 見滝原に満ちる「嫌なにおい」を消してやる


【ソウルジェム】
 透き通った青の中に赤が滲むもの。
 指輪型でバオー犬が所持できないため、普段はアサシンが管理している。
 首輪を手に入れることができらバオー犬に持たせられるかもしれない。


【方針】
 専守防衛
 無害な「大型犬を伴った少女」を装って見滝原を探索し、襲撃者を排除する
 主にC3公園からB3-4駅付近のホテル、あるいはC6繁華街のホテルを転々とする
 男を誘って昏倒させる都市伝説『メアリーさん』の噂は広がっているかもしれない


【把握資料】
・アサシン(静謐のハサン)
 『Fate/Grand Order』および『Fate/prototype 蒼銀のフラグメンツ』
  本編中のマテリアルなどを参照のこと。

・バオー犬
 『バオー 来訪者』文庫版およびOVA版
  バオー犬は序盤に登場、バオーの説明をするためのデモンストレーションで殺処分となった。
  バオーそれ自体の戦闘能力は、本編主人公「橋沢育朗」のものに準拠する。
  原作コミックスでは「バオーは寄生から一定期間で成体となり、宿主を食い破る」設定があるが、
  OVA版ではカットされているため、このバオー犬についても同様に時間制限は無いものとする。

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301 : バオー犬&アサシン ◆yYcNedCd82 :2018/04/19(木) 23:04:39 Td4GOq6o0
以上です、ありがとうございました
そして遅ればせながら感想お疲れ様でした
それではどうぞよろしくお願い致します


302 : ◆5/xkzIw9lE :2018/04/19(木) 23:05:39 JmAcWW8.0
感想お疲れ様でした
自分も投下させていただきます


303 : 三嶋瞳&キャスター ◆5/xkzIw9lE :2018/04/19(木) 23:07:30 JmAcWW8.0


聖杯戦争。
願いを叶える魔法のチケットを手に入れるための命懸けの競争。
どうやら私、三嶋瞳はそんな催しに巻き込まれてしまったらしい。
いきなり連れてきてコンプライアンスとかどうなってんだとか言いたいことは山ほどあるし、
普通に考えれば最悪だけど、この見滝原に来たことで得たものが一つ。
建前上こそ新事業を展開する見滝原の視察ということになっているが、
朝起きて、学校へ行って授業を受け、夕方友達と談笑しながら帰り、夜はテレビでも見てのんびり過ごして眠りにつく今の生活がそうだ。
普通の女子学生なら誰でも享受するであろう当たり前の生活だけれど、私にとってとても懐かしいものだった。
果たしていつ以来になるだろうかと友達と帰路につきながら考える。
シェイカーを振りながら働かない詩子さんを見る夜から。
終電まで働き、終電が出ても更に働いて玄関で意識を失い、起きたら涙が零れたあの夜から。
その日々を思えば、色々なしがらみから解き放たれた見滝原での生活は存外私にとって居心地がよかった。
働くのは嫌ではなかったけど、別にやりがいとか使命感があって働いていた訳では無く、頼まれたからにすぎないし。
親元離れて一人暮らしという押し付けられた設定も、毎日深夜に半額弁当を買って誰もいない家に帰っていた時より遥かにマシだし……

そこで気づく。

(あれ、地元での私の生活、もしかしてココといい勝負なんじゃあ…)


そこまで考えて、いやいや違うだろうとぶんぶんと首を振るう。
そう、この街での生活の方がもっと最悪だ。いきなり連れてこられて命を懸けて戦いあえと競争をさせられる事もだが、もっと前提として。

「やや、ヒトミ奴隷人形(せんせい)!お帰りの所悪いですが助けてください!」
「あぁん!!」

チンピラに絡まれながら満面の笑みでこちらに助けを求めるあの金髪にスーツの上背のあるサーンヴァントだとか。
…………、


304 : 三嶋瞳&キャスター ◆5/xkzIw9lE :2018/04/19(木) 23:08:04 JmAcWW8.0

「……サヨちゃん、呼ばれてるよ」
「いや瞳先生って言ってただろ!?」

私はため息を一度吐いて、サヨちゃん達に先に帰る様に促す。
サヨちゃんは私が大丈夫だと言うと何の迷いもなく回れ右をして去っていった。
NPCとして再現されたとかどうとか言ってたけど無駄にリアルだ。
さて。

「あのー……その人が何か?」
「あぁ!?嬢ちゃんも言ってやってくれよ、この兄ちゃん仕事頼んどいて金払わねぇって言うんだよ!」

そう吐き捨ててヤクザは依頼料と銘打たれた請求書を突き出してくる。
見た目にたがわぬというか何というか…その額は明らかな暴利だった。

「ですから支払いはそこのゾウリムシ先生から干物になるまで搾り取って下さいと」
「この子どう見ても中学生なのに払える訳ねーだろーが!
アンタが金に糸目はつけないって言うから毎日ウチの手下共々不眠不休で働いたんだぞ!?」
「いえいえ、先生はこう見えて大変勤勉でして!
『労働だけが自由への道』を座右の銘に、毎日三十時間の就労を―――」

前言撤回。
ヤクザの人はすごくまともで、おかしいのは此方の方だった。強制収容所かよ。
逃げたい気持ちが一気に噴出するけれど、契約書を通した正当な契約である以上ここで逃げたら話がこじれるかもしれない。
なまじ身につけた知識のおかげで逃げることもできず、仕方なくカバンから名刺を取り出して二人へと歩み寄った。

「……取り敢えずここじゃ何ですし、何処か別の場所でお話しませんか?」
「アァン!?何だこの名刺…ってハァ!?
み、三嶋瞳っていったらウチ組の上役企業の社長でっ、それに平沢組…平成の怪物の……」

ゴキブリに対する殺虫剤みたいな効き目だ。新田さんの名前はこんな街まで売れてるらしい。

「す、すいませんでしたーァッッ」


ザザザッと後退してほとんど土下座の様な姿勢で謝るヤクザ。
勿論そんなことされても私は困るだけだ。というか周りの人々の視線が痛い。
この状況を作り出した下手人はニヤニアしてやがるし…、こんクソボケカスゥ……!

「いや、頭何て下げなくて全然大丈夫ですから、ね?
ホラ近くのお店にでも入って依頼料というか、迷惑料の相談を……」
「か、金とかとんでもないっしゅ!マジ勘弁してください!!!お、俺ッ……クツ、靴でもなんでも舐めますから!」

聞けよ、人の話を。

「いやそんなのいいですから…ホラ靴を舐めようとしないで、止めて下さい、止めなさい、やめろ」



数十分後、私の靴はテッラテラになっていました。






305 : 三嶋瞳&キャスター ◆5/xkzIw9lE :2018/04/19(木) 23:09:43 JmAcWW8.0


「……とりあえず、貴方が私のサーヴァントって事でいいんですよね。えっと、キャスターさん?」
「その通り、そして貴様は吾輩の二代目奴隷人形というわけだ。ヒトミよ」


現在の拠点である家賃三十万の高級マンションの自宅にて、私は契約したサーヴァントであるキャスターさんと向き合っていた。
金髪でスーツを着た上背のある大人―――出会った時に脳噛ネウロと名乗った、魔人という種族で、探偵をやっていたらしい人。


「…色々言いたいことはありますけど、まず一つ。
私の!家に!!死ぬような罠を仕掛けるのはやめてください!!!」
「何を言う、これは吾輩の趣味だ。やめるつもりなど毛頭ない」

結論を言ってしまうと、私の見滝原ライフでの癌は、聖杯戦争などではなくこのサーヴァントなのだった。
日夜問わず仕掛けてくる非道は数知れず、そのどれもがギリギリ死にそうで死なないラインを見極めて仕掛けてくるのだ。
そんな彼と共同生活を送っているからか、私は聖杯が憎かった。
ついでに言えば、他のまっとうなサーヴァントを引いたマスターたちのことも憎い。
何故私がキャスターで、他のマスターはまっとうなサーヴァントを引いてるんだ……!
ただ私は仕事から解放されたかっただけなのに……、
強く強くこれではいけない、と思う。
こんな所でこんな奴に弄り倒されに生まれてきたわけじゃない!!

「あのー、申し訳ないですけど聖杯戦争とか私どうでもいいので、帰る方法を教えてもらえませんか」

これは偽らざる本心だ。労働から解放されたいのは事実だけれど人を殺してまで叶えたかったわけじゃない。
だが、帰ってきた答えは冷たいものだった。

「ダメだ」

やっぱりか。まぁ素直に教えてもらえるとも思っていなかったけど。

「えっと、それじゃあキャスターさんには叶えたい願いとかあったりするんですか」
「ナメクジなりに頭を回したようだが不正解だ、吾輩は食欲を刺激される『謎』の気配を感じ、召喚に応じた」
「……は?」

事情を聴けば魔人とと言う種族、というかキャスターは犯罪が起きた時に発生するエネルギー、謎を食べて生きていたらしい。
そして、今回もその謎の匂いに釣られてよりにもよって私のもとへと表れた、という事だ。
食い意地はりすぎだろ。
とにかく、これで事情は理解した。

「で、どうやったら貴方とほかのサーヴァントをチェンジしてもらえぐおおおおおッ!」
「ほうほう、ナメクジの鳴き声とはこのようなものか」

く、首が折れるッ!
夢中で床をタップして私の首を360度回そうとしてくるキャスターにギブアップする。
げほげほとせき込む私を見下ろすキャスターの瞳は、心底楽しそうだった。

「貴様はもう吾輩を召喚した時点で、二代目魔界探偵事務所の主に決定したのだ。勿論拒否権はない」
「そ、そんなの無理に決まって」

今回ばかりは流されてはいけない。
こんなドSと一緒に戦うなんて命が幾つあっても足りない。
このままでは確実に戦う前にキャスターに弄り倒されて死ぬ。
これまでにないほど強い命の危機を感じた私は、粘りずよく反論しようとするが――、

「ところで、ここに貴様の仕事用ケータイがある」
「?」
「ここで吾輩が『見滝原の視察を終えたので休暇を切り上げて仕事に復帰する』と一斉送信すれば貴様は破滅する訳だが――――」
「謹んで務めさせていただきます」

冗談じゃない。
学校に、聖杯戦争に、キャスターの虐待。三足の草鞋を履く中で時間のゆとりがあることだけが救いだったのに、ここで労働を入れられたら間違いなく死ぬ。死んでしまう。
うぅ…でもっ!
と、ここで屈辱に浸り、俯く私にキャスターが意外過ぎる一言を放った。


306 : 三嶋瞳&キャスター ◆5/xkzIw9lE :2018/04/19(木) 23:10:31 JmAcWW8.0

「……イヤか?」

耳を疑ったが、このキャスターにも人の心はあったらしい!
私はせめて待遇改善を訴えようと顔を上げて…同時に、キャスターの顔をみて悟る。
こいつ、断ったら殺すつもりだ。それも最も悲惨な方法で。
私は遂に全てを諦め、観念した。

「……イヤじゃないですから。それで、私は何をすればいいんですか」
「ふむ、ではまず貴様が掌握しているヤクザや政界の者たちから情報を搾り取るとしよう、それから―――」

先程よりも心なしか熱を持った様子でこれからの事を語るキャスター。
まるでその顔は子供の様で、無駄に腹が立った。
だけどそれを表に出したらまた制裁が待っているので、必死にお腹で押しとどめて、それでも私は腹の内でただひたすらに願う。


どうか来世は、頼れる大人が周りにいる、普通の女の子にしてください――――と。


307 : 三嶋瞳&キャスター ◆5/xkzIw9lE :2018/04/19(木) 23:11:55 JmAcWW8.0

【クラス】
キャスター

【真名】
脳噛ネウロ@魔人探偵脳噛ネウロ

【属性】
混沌・善

【ステータス】
筋力:A(--) 耐久:A(--) 敏捷:A(--) 魔力:A++ 幸運:A 宝具:EX

【クラススキル】

陣地作成:C
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
適当な場所を乗っ取り謎を集める『探偵事務所』の設立が可能。

道具作成:E
新たな魔術的道具を作成する能力は無いが、
自らの魔力で魔界777ッ能力を作成・行使できる。

【保有スキル】

魔人:A++
人間とは異なる世界『魔界』の住人。
初期状態では一億度の火炎に耐え、核弾頭の直撃を受けても死なない程の身体強度を持ち、精神干渉にも高い耐性を備える。
肉体の切断などを受けても切断面を合わせれば即時に修復が可能であるばかりか、重力すら無視して移動もできる。
また人間とは精神構造が大きく異なるため、Aランク相当の精神干渉をシャットアウトすることも可能。
しかし、自身の肉体の維持に膨大な魔力と瘴気を必要とする。
マスターからの魔力供給では不足するため、急速に身体能力は低下していきパラメーターにマイナス補正がかかる様になっている。
主食である謎を喰うか、瘴気に満ちた異界で休息を取ることで回復可能。
ただし『謎』は天然ものでなければならない。

高速思考:A+
物事の筋道を順序立てて追う思考の速度。
卓越した思考能力により、弁論や策略や戦術などにおいて大きな効果を発揮する。
攻め手においては同レベルの心眼(真)と同様の効果を発揮する。

無窮の叡知:A
この世のあらゆる知識から算出される正体看破能力。
使用者の知識次第で知りたい事柄を考察の末に叩きだせる。

戦闘続行:B
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

【宝具】

『魔界777ツ能力』
ランク:E〜A++ 種別:- レンジ:- 最大捕捉:-
キャスターの保有する777の魔界道具。
それぞれに異なる能力を持ち、消費魔力量も道具それぞれに異なる。
余りにも膨大な数のため人間界ではキャスターも使ったことない能力も多く、
その能力はサーヴァントとして劣化した過程で削ぎ落とされ、使用不可となっている。

『魔帝7ツ兵器』
ランク:EX 種別:- レンジ:- 最大捕捉:-
キャスターの保有する7つの魔界の道具。
魔界でも数人しか使う事のできない魔界王の保有兵器。
『魔界777ツ能力』とは桁違いの威力を誇る兵器である。
それ故に莫大な魔力を使用し、発動の際にはマスターの令呪のバックアップが必要。
また上述の宝具と同じく、人間界で使用していない兵器は呼び出すことができない。

【Weapon】
上述の宝具と魔人としての身体能力

【人物背景】
かつて魔界の謎を食い尽くし地上に降り立った、人の心が分からぬ魔人。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯戦争に纏わる謎を喰う。

【マスター】三嶋瞳
【出典】ヒナまつり
【性別】女

【マスターとしての願い】
労働からの解放。でも人を殺すのは…

【weapon】
カラッカラのスポンジ並みの呑み込みの早さ。教えればたいてい何でもこなす天才肌。
また特殊部隊の訓練を受けており射撃、特にスナイパーの素質は天性のもので初狙撃で1キロ先の的に当てられるほど。
拳銃の扱いも精通する。

【人物背景】

バーテンダーから会社の社長、傭兵まで器用に何でもこなすスーパー中学生。
巻き込まれ体質で断れない性格のため、物語が進むとあっという間に普通の中学生と社畜を兼任する謎の女の子へと変貌した。
その後彼女はマルチな分野でその才能をいかんなく発揮し、行く業界先々で成果を残すため知り合いからは
「瞳が経営に口を出せばその店は既に?盛している」「仕事をし続ける概念上の存在」などと揶揄され、中学生の時点でその存在は既に政界や裏世界にも通じるほど。
しかしあくまで彼女は普通の中学生なのである。

【方針】
取り敢えず情報を集めて生存優先。あとキャスターから別のサーヴァントに乗り換えたい。


308 : ◆5/xkzIw9lE :2018/04/19(木) 23:14:59 JmAcWW8.0
投下終了です
またキャスターのステータスシートは「Fate/Fessenden's World-箱庭聖杯戦争-」における拙作の流用となります


309 : バオー犬&アサシン ◆yYcNedCd82 :2018/04/19(木) 23:53:14 Td4GOq6o0
投下お疲れ様です

大変もうしわけありませんでした
>>165の規定を見落としておりました
近い内に改訂版を投下させていただきたいと思います


310 : ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/20(金) 00:12:50 R1pguOk60
皆様投下乙です
私も投下します


311 : 夢の霹靂、燃ゆる恋のように ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/20(金) 00:14:43 R1pguOk60
「ハッ!」

ひとりの少女がかけ声とともにその手のマスケット銃を放つ。
その相手は人間ではなく、夥しい数の異形。
同じ程度の大きさ・姿をしたものが大半を占めるが、それに隠れるよう一際大きく全く別の形をしたものもいる。
常人ならば足を竦ませるであろうこの光景にも、少女は退かず、襲い来る怪物たちを倒していく。

だが。いくら敵を屠ろうとも、次々に沸いて出てくる怪物たちが少女の行く先を阻み続ける。

(拉致があかないわね...なら!)

マスケット銃が背後の空間から出現し、一斉に銃口を標的へと向ける。

「パロットラ・マギカ・エドゥインフィニータ!!」

叫びと共に放たれるは無限の魔弾。
放たれた弾丸はたちまちに小さな異形を撃ち抜き、煙を巻き上げ、晴れた先に残っているのは、ただ一体違う形をしていた親玉だけだった。

「これで決めるわ...ティロ・フィナーレ!!」

マスケット銃が瞬時に巨大な大砲に変わり、砲弾が放たれる。
親玉を直撃した砲弾は爆発し、その肉体を完膚なきまでに破壊した。

勝った。
それを確信した少女は、なにもない空間から紅茶の注がれたティーカップを生み出し、そっと口につける。


常人には非常事態であるこの光景も、少女にとってはとうに慣れ親しんだものだった。
守りたいものがあるから。
生きねばならない理由があるから。

少女は内に秘める恐怖を噛み潰し、怪物へと立ち向かってきた。

だから、この戦いもいつもと変わらないある種日常の光景。

ただ違うのは。

「なるほど、あれが魔女か。全くもって奇妙な存在だ」

自分以上に超常的なモノが同行していたこと。


312 : 夢の霹靂、燃ゆる恋のように ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/20(金) 00:15:39 R1pguOk60



少女、巴マミが異変に気がついたのは魔女の戦いへ赴くほんの数十分前だった。

それは学校からの帰り道のことだった。
突如、妙な記憶が彼女の脳裏を支配した。
いまここにある見滝原市ではない見滝原市で暮らし戦ってきた記憶を。
魔法少女としての魔女との戦いの記憶。そこにいまと思い出した記憶に大差はない。
しかし、確かに過去の情報では『佐倉杏子』が、現在の情報では『鹿目まどか』『美樹さやか』『キュゥべえ』の存在が急に現れ、そちらの方が正しいと確信できる奇妙な感覚に襲われた。
わけがわからない。
困惑で頭がぐちゃぐちゃになっているマミに呼びかける者が一人。


「きみが私のマスターだね」

突如現れたロン毛の美青年に声をかけられたマミは思考が停止した。
というのも、本当になにもかもが『突然』なのだ。
なんの前振りもなく、日常から非日常に飛ばされたのだから困惑してしかるべきだ。

(こ、これって...俗にいう、ナンパってやつなのかしら)

魔法少女という事情が絡んでか、マミはそういったことに慣れていなかった。
加えて、声をかけてきたのが、思わず魅入ってしまいそうな美形なのも手伝い、マミの頬はほんのりと赤みを帯びていた。

「ひ、人違いだと思います」

羞恥や緊張から慌てて離れようとするマミの肩に、青年が触れる。
瞬間、マミの世界が一変した。

先ほどまでは大勢の人が歩いていたというのに、それらが瞬時に消え去り、代わりに冷たい強風がマミの身体へと襲い掛かった。
冷えた腕を擦りながらキョロキョロと見回し、自分がここ―――ビルの屋上まで移動したのだと気がつく。
何故。いったい。どうやって。

「地上では話し辛いと思ったのでね。多少強引だが、二人きりで話せる場所を設けさせてもらったよ」

瞬間、マミの少女らしさは消えうせ、青年への警戒心と敵意が露になる。
彼の正体はわからないが、この状況は危険だと長年の経験が警鐘を鳴らしたのだ。

「その反応の早さ...どうやらきみは己の考えをただ放棄し堕落した愚か者ではないようだ。それでこそ、私と共に歩む女性にふさわしい」
「それ以上近付かないでください。用件は、まずはその場でお願いします」
「その警戒心の高さも悪くない。...だが、今この場では相応しくないな。ひとまずは私の話を聞いてもらいたい」
「―――ッ!」

突如、マミは眼を見開き青年へと駆け寄る。

「理解を得られて嬉しいよ。では、早速」
「私から離れないでください」

言葉を遮られたことに青年は不機嫌そうに眉を顰めるが、しかし変貌していく風景を目の当たりにしたことで、理由を察した。

「ふむ、これは興味深い。きみはこの事象を知っているようだが」
「...ごめんなさい。いまは説明している暇がないんです」
「なら、私はどうするべきかな?」
「...私から、離れてないでください。魔女に襲われでもしたら、命は保障できませんから」

そして、マミは青年を守る為に冒頭の戦いを繰り広げたのだった。


313 : 夢の霹靂、燃ゆる恋のように ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/20(金) 00:16:17 R1pguOk60




「えっと...エンブリヲさん、でいいですか?」
「きみの呼びやすいように呼ぶといい。"くん"でも"さん"でも、なんなら呼び捨てでも構わない」
「なら、エンブリヲさんで。座布団、使いますか?」
「ありがとう」
「紅茶やショートケーキは苦手ではありませんか?」
「...お言葉に甘えよう」

魔女を倒したマミは、ひとまず自宅で話の続きを聞こうと判断し、エンブリヲを自宅に招いていた。

二人は、三角形方のテーブル越しに向かい合い座り、眼前には、ケーキとマミの淹れた紅茶が置かれた。

「それで、私が巻き込まれたという『聖杯戦争』ってなんなんですか?聞くからに物騒な名前ですけど」
「順を追って説明しよう」

エンブリヲが空間に掌をかざすと、小型の液晶画面が浮かび上がり、簡単な図柄が表示される。


「かつて、私のように功績を遺し召還された者を『サーヴァント』。そして、きみのようにサーヴァントと共に戦う宿命を授けられた者を『マスター』と定義する。
これらを1組と扱い、万物の願いを叶える『聖杯』を巡り戦う催しのことを『聖杯戦争』と呼ぶ」
「私達の他にもいるんですか?」
「ああ。今回は何組呼ばれたかはわからないが、私の見立てでは最低でも二桁はいるだろう。どんな人物が集められたかはわからないがね」
「つまり、マスターが皆魔法少女に関わっているとも限らないと」
「その通り。狂的な殺人鬼やきみ以上に特異な存在が呼ばれている可能性も否めない」
「殺人鬼...」

マミは顎に手をやり、数瞬思考を巡らせる。ほどなくして、顔をあげエンブリヲに問う。

「もしかして...聖杯戦争では、他の『マスター』を倒す...いえ、殺さなければならない、ということですか?」
「理解が早くて助かる。そうして最後に残った一組が、聖杯を手に入れ願いを叶えることができるというシステムさ」
「―――ッ!」

マミの顔が蒼白になる。
人を殺す。それは決して許されざる行為だ。
法律でそうだから―――それ以上に、人の死を間近で味わったことがある身だからわかる。
人が死ねば、かつてあった日常は壊され、多くの悲しみを与えることになる。
それを自らの手でやれというのだ。嫌悪や恐怖があって当然だ。


314 : 夢の霹靂、燃ゆる恋のように ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/20(金) 00:16:52 R1pguOk60

「そんなこと―――」

けれど。彼女の口は勢いのままに、『できるわけがない』と紡ぐことができなかった。
彼女にもあるのだ。どんな条理を覆してでも叶えたいと願い続ける夢が。
もしも両親が戻ってきてくれるなら。
もしもかつての弟子の家族が戻り、また共に歩めたなら。
もしも自分が魔法少女なんかじゃなかったら。
今までの全てをなかったことにできたら。やり直すことができたら。
それを叶える手段があるのなら。

全てを掴める可能性は、彼女の意思を揺らがせる。

「...さっきの戦いを見ていても思ったが、きみは戦いを恐れているんだね。あの大掛かりな技や詠唱も、自分を奮い立たせるためのものだろう?」
「―――!」
「責める訳じゃない。ただ、全てを抱え込み、耐え続けるきみを見て居た堪れないと思っただけさ」
「......」
「誰かを殺すのは怖い。だが、そうしてでも叶えたい願いはあるのだろう?だから、きみは揺らいでしまった。...違うかな?」
「...はい」

マミは俯き机の下で己の膝を強く握り締める。
今まで頑張って正しい魔法少女であろうと努めてきた。
同じ魔法少女からいくら理解されずとも。誰から褒められることがなかろうとも。
必死に戦い続け、町を守り続けてきたつもりだった。
いくら戦おうとも恐怖は薄れず、死を間近にする度に独りで泣いていた。
それでも、自分の選択肢は間違っていないと、強くなったと思っていた。
此処にきてからもそうだ。
自分は、誰に言われずとも魔女と戦い人知れず皆を守ってきたつもりだ。

けれど、もしも全てがなかったことにできるなら。
その誘惑に負けそうになる自分を心底嫌悪する。

「きみはきみの願いを叶えるべきだよ、マミ」

そっと、心の隙間を埋めるように優しい声が届く。


315 : 夢の霹靂、燃ゆる恋のように ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/20(金) 00:17:39 R1pguOk60

「願いを叶えたいが、敵を殺すことも戦うことも怖い。それは仕方のないことだ。なら、なにも見なければいい」
「え...」
「きみは充分にその身を削り、人々を救ってきた。だが、その救ってきた人々はきみになにを与えてくれた?」

ズキリ、とマミの胸に痛みが走る。
エンブリヲの問いかけは、マミ自身ふと過ぎってしまうものだった。
自分はこれほど頑張っていても、誰にも理解されない。救ってきた人々に一度とて感謝されたことはない。
当然だ。自分は魔法少女だから。魔法処女のことを一般人に教えることはできないから。
だからそれも仕方のないことだと割り切る他ない。

だから、鹿目まどかや美樹さやかのように、素質を持ち慕ってくれるものには、心の底では共に戦ってほしいと望んでしまう。

「大勢の人間を救ってきたきみが願いを求めることを誰が咎めようか。かといって、嫌がる戦いを強制させるのも忍びない」

エンブリヲは、マミの目を見つめ、そっと頬に触れる。

「だから、私に全てを委ねるといい」

エンブリヲの言葉に意識は蕩け、目からは光が失われていく。

「身につけているものを全て脱ぎ捨て、その顔を私の胸に埋めるだけでいい。それだけで、目が覚めた時には全てが終わり、きみの欲しかったものは全て手に入っている。絆も、愛情も、友情も、願いも」
「......」

エンブリヲが頬から手を離せば、その言葉通りに、マミは身体から力を抜き、己の衣服を肩から肌蹴させる。
その行動に彼女の意思はあるのか。第三者が見れば、それほど彼女の行為は機械的だった。

「きみがきみを否定しようとも、私はきみを受け入れよう。さあ、こちらにおいで」

エンブリヲは立ち上がり、両腕を広げ己の胸へと招き入れる。
マミはふらふらと立ち上がり、顔を赤らめながらエンブリヲへとゆっくり歩みよる。
その歩みは、どこかぎこちない。

「迷うことはないさ。これも、きみが幸せになるためだ」

衣服をはだけさせ、顔を赤らめさせつつ己を抱きしめる巨乳の美少女。
そんな妖艶なシチュエーションに、エンブリヲの笑みは深まり情欲を滾らせる。

「これできみは私のものだ」

マミの顎に手を添え、くいと傾ける。
エンブリヲは、そっと己の唇をマミのものへと近づけた。


316 : 夢の霹靂、燃ゆる恋のように ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/20(金) 00:18:15 R1pguOk60



―――怖いよぉ、助けてよぉ

―――こーちゃん、こーちゃん!



「―――――ッ!」

互いの唇が触れる寸前、マミはエンブリヲの肩を押しのけ身体を引き離す。


「...ごめんなさい、エンブリヲさん」
「マミ?」
「エンブリヲさんの言うことは間違っていません。私は...戦いが、独りの夜が...怖い。
なにもかもが嫌になって、全部投げ出したいと思ったこともあります。だから、エンブリヲさんがくれた言葉はとても嬉しかった」
「ならば、聖杯戦争なんてものは私に委ね任せればいい...違うかな?」


「...昔、助けられなかった男の子がいるんです」

マミの身体が震えだし、その両頬から涙が伝う。

「あの時の私は、とても弱くて、魔女に捕らえられたその子を助けることが出来なかった。目の前で...殺されたんです」
「私は逃げることしか出来なかった。その先で待っていたのは、あの子の母親が子供の名前を呼び続ける声でした」

あの時の記憶は、彼らの悲痛な叫びはいまも残っている。
思い出す度に、もしも自分がもっと強ければ、もっと的確に行動できていれば。
そんな後悔と自分への憤りにとめどなく苛まれていた。

「だから、私は誓ったんです。たとえ自己満足だろうと、もう二度とあの人たちのような悲しみを起こさせないって」
「もしも私がここで他の人を...戦いを望まない人たちを犠牲にしてしまったら、目を背けてしまったら、その誓いを破ることになる。あの人たちの悲しみを...本当に無意味にしてしまう」
「だから...私は向き合い続けます。魔女との戦いも...この聖杯戦争にも」

マミの眼には光が戻っていた。
戦いに怯えるだけの少女ではなく、見滝原を守り続けてきた魔法少女としての光が。
そう。たとえ、かつて自分に助けを求めた子供を、もと愛弟子が失った家族を聖杯で取り戻したとしても。
そのためにここに集められた人々を見捨ててしまえば、自分はもう二度と魔法少女を名乗れなくなる。あの時の悲しみを嘘にしてしまう。
例え、自己満足の罪滅ぼしに過ぎずとも、魔法少女であり続けることを止めない。
その信念のもと、巴マミは恐怖を抱きつつもその膝を折ることはしない。


317 : 夢の霹靂、燃ゆる恋のように ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/20(金) 00:18:54 R1pguOk60

自分の言葉と唇を拒否され、その光に見据えられたエンブリヲはわなわなと身体を震わせ

「―――ドラマティック!!」

弾けるような笑顔と共に、盛大に讃えた。

「え...」
「きみは、己の弱さを自覚し、その上でなお己の信念を貫こうとしている。誰に与えられたのでもなく、自分の意思でだ」

エンブリヲは、片膝をつき、シンデレラにガラスの靴を差し出す王子様のようにマミを見上げ、微笑みと共に掌を差し出す。

「きみが私のマスターでよかった。その美しき姿に強き信念...最後まで見届けさせてほしい」
「い、いいんですか?その、私が勝手に決めちゃうような...」
「構わない。いまは、きみを見ていたいんだ」

マミは大げさに振舞うエンブリヲに戸惑いつつも、差し出された掌をそっと握り返した。

彼女は喜んでいた。
自分を理解してくれる人の存在を、優しい言葉をかけてくれるこの人が傍にいてくれることを。
この人となら。この人となら、共に戦える。共に歩んでいける。
そう、思わずにいられなかった。

夕日の映える部屋の中、二人は微笑を交し合い、他愛のない世間話と共に紅茶と茶菓子を堪能する。
それは、彼らを括る主従という関係には似つかわしくない光景だった。


318 : 夢の霹靂、燃ゆる恋のように ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/20(金) 00:19:41 R1pguOk60



(思いもよらぬ収穫だった)

エンブリヲはマミへと人当たりのいい笑顔を向けつつ、その傍らでお茶会を楽しむのとは別の思考を巡らせていた。

(魔法少女。サリアの趣味に似たようなものがあったが、所詮あれは空想のもの。マナとも違う本物の異能力...実に興味深い)

エンブリヲは神に等しき調律者である。
英霊と化す前の生前から、瞬間移動を巧みに扱い、自分が瀕死になれば不確定世界の自分と入れ替わり存命し、千年以上も生存し、世界が誤った方向に進めば破壊する。
これを神事といわずしてなんといおう。
だが、彼は生まれつき調律者だったわけではない。
彼は元々は科学者だった。誰よりも優秀であるが故に、科学を極め、やがて神の領域へと達したのだ。

巴マミという魔法少女の存在は、それ自体が元科学者としての好奇心をひどくそそらせたのだ。

とはいえ、エンブリヲすら知らない異能だけならば、聖杯戦争を幾度か繰り返せば目にすることもある。
彼が収穫だと感じたのは、魔法少女以上に、巴マミという少女そのものだった。

(聖杯戦争を勝ち抜くにあたり、彼女の戦闘経験の豊富さはとても有力的だ)

主に戦うのはサーヴァントの仕事とはいえ、マスターの戦闘経験の有無は戦いに非常に影響を及ぼす。
仮に実力が拮抗しているサーヴァント同士がぶつかりあえば、勝敗を決するのはマスターの差に他ならないからだ。

(だが、それ以上に、彼女は見ていて面白い)

エンブリヲは、始めはマミを篭絡し、自由に行動することで聖杯戦争を勝ち抜き願いを叶えるつもりだった。
そのために、今まで堕としてきた女たちのように、甘い言葉を囁きつつ、保有スキルの使用までした。
だが、マミはエンブリヲの誘惑を撥ね退けた。
この結果には予想外だったが、だからこそ彼は惹かれた。
マナに頼り切り堕落したものたちとも、アンジュのように決して折れぬ者とも違う。
弱さを見せながら、それでも尚、エンブリヲに身を委ねなかった脆くも確かな精神は、エンブリヲの扱ってきた女たちにはなかったものだ。


319 : 夢の霹靂、燃ゆる恋のように ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/20(金) 00:20:15 R1pguOk60

(マミ。いまのきみはとても興味深いが、私の理想の世界での伴侶になるにはまだ足りない)

知性も美貌も申し分ない。だが、まだどこか脆さがあるのも事実だ。
その脆さ故に苦悩する姿も好ましくはあるが、伴侶となれば話は別だ。
脆さとはその歪みを正し克服するためにあるのだから。

その過程で、マミは己の信念と相反する場面に幾度も遭遇することになるだろう。
それらを乗り越え正しき方向へと磨かれてこそ、エンブリヲという調律者の伴侶たる資格を得ることができる。

(この聖杯戦争を通じ、私の伴侶たる資格を手に入れられれば、改めてきみを第二夫人として迎え入れよう)
(私は必ずこの戦いに勝利する。そして、アンジュ、再び君の前に姿を現し、きみを第一夫人として据えた楽園を作り上げることを約束しよう)



表向きはマミの方針に賛同しているエンブリヲだが、彼は聖杯を手にする方針を変えるつもりはない。
聖杯を手に入れ、願いで肉体を手に入れ、今度こそ理想の世界を作り上げる。

エンブリヲは嗤う。

己の胸に燻るドス黒い傲慢さと情欲を抱いて。


320 : 夢の霹靂、燃ゆる恋のように ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/20(金) 00:21:45 R1pguOk60

【クラス】ライダー

【真名】エンブリヲ

【出典作品】クロスアンジュ 天使と竜の輪舞

【ステータス】筋力D 魔力EX 耐久D 幸運C 敏捷D 宝具EX

【属性】
秩序・悪

【クラススキル】
対魔力:B
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
サーヴァント自身の意思で弱め、有益な魔術を受けることも可能
Bランクでは、魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。


騎乗:EX
乗り物を乗りこなす能力。「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。
EXランクは乗騎と同化・融合する事が可能で、あらゆる物を乗りこなす。


【保有スキル】

誘惑:A
対象を魅了する能力。
精神耐性が低いものには、目を見つめさせ優しく言葉を語り掛けるだけで洗脳染みたことも可能。


調律者:EX
カリスマ(B)・単独行動(EX)のスキルを有する。


感覚の増幅:EX
多少の魔力を消費することで触れた相手の痛覚や感度を倍増させることができる(最大50倍)。
マスターやNPCは勿論英霊にも通用する。




【宝具】

『分身』
ランク:D 種別:対人宝具(自分) レンジ:1 最大補足:己のみ
文字通り、多少の魔力と引き換えに自分の分身を作り出す能力。この分身はライダーの思考と共有し、距離も300程度までなら問題なく動ける。
生成は最大3体まで可能。ライダー本体が消滅すれば、分身も消滅してしまう。

『瞬間移動』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:自分が触れた者
瞬間移動ができる。この聖杯戦争内では消費魔力により移動できる人数と距離が変わる。
最大距離は100m程度(自分ひとりの場合)。

『治癒能力』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:自分が触れた者
魔力を消費し、自分及び対象の怪我を治すことができる。


『ヒステリカ』
ランク:A 種別:対人宝具(自分) レンジ:1 最大補足:己のみ
魔力を消費し、ラグナメイルの初号機EM-CBX001『ヒステリカ』を召還する。
太古の地球において終末戦争時に製造された絶対兵器で、文明崩壊を引き起こした元凶たる黒い機体。
接近戦用のビームソードやビームライフル、ビームシールドを装備している。
ライダーは中に入って操縦することはなく、ラグナメイルの肩に乗って戦う。
また、この宝具を発動した時、ラグナメイルとライダーをほぼ同時に倒さなければ完全に消滅させることはできない。


『ディスコード・フェイザー』
ランク:EX 種別:対軍宝具 レンジ:1〜5000 最大補足:半径150m
ヒステリカを発動している時にのみ発動可能。
マスターがいれば、令呪の一画と魔力及びライダーの魔力と引き換えに。
マスターがいなければ、己の多大な魔力と引き換えに(魔力の補給なしでは三発が限界)。
エンブリヲの歌う『永遠語り』に呼応し強力な衝撃派を発射する。広範囲に多大なダメージを与えることができる。


321 : 夢の霹靂、燃ゆる恋のように ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/20(金) 00:22:42 R1pguOk60

【weapon】
・拳銃
・サーベル
両方とも過不足なく使用できる。正面切った戦いで一般人に負けることはないが、達人クラスの相手では実力不足か。
尤も、原作において彼が生身でまともに戦ったのはニンジャであるタスクくらいで、そのタスクも
・マナを使えない身でありながら、マナを使える武装兵士5人を瞬殺できる(さすがに不意打ちではあるが)
・エンブリヲが瞬間移動・拳銃・サーベルを組み合わせて使用してようやく互角に戦えるかどうか
・爆弾で自爆しても後遺症もなく平然と脱出できる
と異常な身体能力を有しているため、彼と比べて生身での戦闘力評価を下すのも酷な話かもしれない。



【人物背景】
TVアニメ『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』のボスキャラ且つ全ての黒幕。
「マナ」という能力を開発し、それを扱える人間を創造した科学者にして、更にはマナを扱える者がノーマを迫害する差別社会のシステムを構築した、言わば世界の創造主で、実質的な世界の支配者。
物腰は優雅で知的、一見すると女性に優しいフェミニストだが、本質は恐ろしいほど独善的で傲慢なエセ紳士。
美しい者の絶望を愉しむなど本性は極めて残忍である。
また、利用価値があると思った女性には様々な方法で付け入り、自分の手駒にするべくマメに対応している。言い換えれば女たらし。

作中では、基本的に主人公であるアンジュを手に入れる為に行動している。
最初はアンジュをあくまでも計画達成に必要な人材として勧誘していたが、洗脳を跳ね除けてからは別ベクトルにつき抜け、彼女を伴侶にするために何度も迫った。
本人なりに真面目にプロポーズしたり、痛覚や感度を弄るなどAVやエロゲのような説得方法を試みたり、誰からも干渉されない場所に連れ去ったり、無理矢理股を開かせたりするも、愛する男のいるアンジュは断固として拒絶。

最終的には「なにが愛よ!キモい髪型でニヤニヤしてて服のセンスもなくていつも斜に構えてる恥知らずのナルシスト!
女の扱いも知らない千年引きこもりの変態親父の遺伝子なんて、生理的に絶対に無理!!」
と、これでもかと罵倒され、愛するアンジュの手により塵に還され死亡した。


【方針】
聖杯を手に入れるために動く。
聖杯を手に入れた後、万が一にも新世界を穢させないために、数多の平行世界の聖杯を破壊し、二度と聖杯戦争を起こさせないようにする。

【方針2】
巴マミを見定める。もしも自分の理想に相応しい女となれば、新世界での妻(第二夫人)に迎え入れる。

【方針3】
他にも面白い女のマスターがいれば、手駒若しくは妻として迎え入れる。


【聖杯にかける願い】
今度こそ新しき理想の世界を作り上げる。そして再びアンジュを迎えに行く。


322 : 夢の霹靂、燃ゆる恋のように ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/20(金) 00:23:07 R1pguOk60

【マスター名】巴マミ
【出典作品】魔法少女まどか☆マギカ
【性別】女

【weapon】
・リボン
彼女の魔法。敵の拘束だけでなく、マスケット銃の生成、結界を作る、己の分身を生み出すなど様々な用途に応用できる。


【人物背景】
見滝原中学校の三年生であり主人公である鹿目まどかの先輩。
かつて交通事故により瀕死になっていた際に現れたキュゥべえと契約し魔法少女となる。
その際、両親は亡くなり、以後は両親を助けられなかった負い目から、町の人々のために戦う魔法少女として生きていく。
その影響で、クラスメイトからも距離を置き、ひっそりと孤独に苛まされることも少なくない。

この聖杯戦争では少なくとも鹿目まどかと美樹さやかと遭遇している時間軸からの参戦となっている。

【能力・技能】
魔法少女として培ってきた戦闘技術。
銃による遠距離攻撃だけでなく、肉弾戦も高レベルの水準に達している。
また、その実力の高さ故か、彼女を最強の魔法少女と定義する者も多く、近隣の町でもかなり有名だとか。



【方針】
どうにかして聖杯戦争を止めたい。
積極的に襲うことはしないが、襲い掛かってくる者には戦うことも辞さない。



【聖杯にかける願い】
特になし...?(まだ迷いを振り切れていない)


323 : ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/20(金) 00:25:30 R1pguOk60
投下終了です
続いてもう一作失礼します


324 : 絶対悪 ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/20(金) 00:27:03 R1pguOk60

「素晴らしい」

薄暗い路地裏で、パチパチと拍手の音が鳴る。

「......」

男は拍手の主を訝しげに睨みつけていた。

「きみは召喚されるなり、すぐに己の欲望に身を任せた。主人である私に意思疎通を図るよりも早くね」

男の傍には一つの肉塊が転がっていた。涙を流し、その実った果実からはピンク色の先端を曝け出したかつて「女」だった肉塊が。
その塊から溢れる赤い液体と白の粘液を見れば何があったかは語るまでもないだろう。

「どんな人間にも感情というものがある。犯罪を犯す時にはとりわけそれが顕著になりやすい。それが興奮にせよ後悔にせよ、だ。だがきみは違った。まるで息を吐くかのように拳を振るい、間食のインスタントラーメンの如く貪り、飽きればそのナイフを突き立てる。常人では決してできない行いだ。悪の権化とも言い換えられる」

賞賛してるのか小馬鹿にしてるのか、男はますます声の主への を募らせる。

「召還されたのがきみで良かったよ。きみのような純粋な悪こそ、私に仕える資格がある。共に、この戦いを愉しもうじゃないか、バーサーカー」

声の主は優しい声音で語りかけつつ己の掌を差し出す。
主の挙動や言葉は、彼と同じ種の者ならば嫌悪を抱かずむしろ心地の良いものだった。

「...お前、誰に指図してんの?」

だが、バーサーカーは違った。主と相対した時から、あたかも自分が主人だという上から目線な言動が癪に触っていた。

「なに調子こいてんだこのクソ親父!今の超ォォ〜〜〜〜〜ムカツクわぁーーーーッ!!」

バーサーカーは恫喝と共に側のゴミ箱を蹴り飛ばし、中身をブチまける。中からはネズミや蛆、ゴキブリが湧き出すが男は意にも介さずナイフを強く握りしめる。

「おめーみたいなイキってる奴が1番ムカツクわ」

眼前でナイフをチラつかせられるも、主はニコニコと微笑むだけで一寸の恐怖すら見せない。
それが尚、バーサーカーの腹の虫を刺激し殺意をますます滾らせる。


325 : 絶対悪 ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/20(金) 00:27:37 R1pguOk60

「オラァァァ!!死ねやァァ!!!」

一喝と共にナイフは振り下ろされる。
主がこのまま抵抗しなければ間違いなくその心臓を貫くだろう。

キンッ

しかし、突き立てられたナイフから金属音が鳴り響くも、主からは一切の血が流れていない。
金属板でも仕込んでたか、と判断したバーサーカーは一歩退くも、しかし時既に遅し。

「きみは確かに素晴らしい。しかし、噛み付く相手を間違えてはいけないよ」

ボコボコと主の腕が蠢き、その形状が変化していく。
なんだこれはと驚く間もなく、主の腕が煌めきバーサーカーへと振るわれる。
その正体が金属であることに気がついたのは、バーサーカーが壁に減り込んだ後だった。

立ち昇る砂煙に、ゴミ箱に群がっていた虫が、ネズミやネコが巻き込まれてはたまらないと一斉にその場を離れていく。

「ほう、これでもピンピンしているとは流石は英霊というだけはある」

コキコキと首を鳴らしながら壁から出てきたバーサーカーに、主は称賛の言葉をかけるも、バーサーカーは主を睨みつけるだけでそれ以上動こうとすらしない。

「どうやら私をマスターとして認めてくれたようだね」
「...ッチ 」

バーサーカーは舌打ちと共にナイフを仕舞う。
主の言葉通り、彼に服従を誓ったーーー訳ではない。
先ほどのやり取りで理解した。このマスターとの戦闘は割に合わないと。
故に今だけは矛を収めるーーーが、それで彼の殺意が収まった訳ではない。
この聖杯戦争を勝ち抜いたら必ず殺す。バーサーカーは苛立ちを胸に、この気に食わないマスターと勝ち抜くことに決めた。


326 : 絶対悪 ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/20(金) 00:29:09 R1pguOk60

「......」

そんな不満気なバーサーカーを見ながら主は思う。
こんな男は初めてだと。
主はバーサーカーを殴りつけてから、密かに脅しをかけていた。彼が持つ能力の一つ、強力で凶大な『悪意』のプレッシャーとでもいうべきものだ。
これを受ければ、一般人はもちろん現場慣れした警官ですらまともに動けなくなる。
これが効かないとすればそれは、異なる種である『魔人』のような者たちくらいだろう。
だが、バーサーカーは効く効かない以前にそもそもこの脅し自体を『認識できていなかった』。
魔人ですらそれ自体は認識できていたというのにだ。
それはバーサーカーが英霊だからだろうか。否、それ以前の問題ーーーバーサーカーが自分と同レベルの『悪』だからではないだろうか。
同じレベルの『悪』であれば、悪意のプレッシャーなど感じなくて当然。それ故にバーサーカーは悪意を感じ取ることが出来なかったのだ。

「...シハ、シハ、シハ」

かつて奪った笑い声を漏らす。
実に面白い。この聖杯戦争、できれば支配する側で傍観したかったが、たまにはこの手で血と臓物を贄に器を満たすのも悪くない。
それに、ニュースを見る限り、あの子もこの街に来ているようだ。
あの六面体の箱で自分がここにいることをアピールしているのか、それとも以前のように全てを忘れてまた自分を探すという無意味な自己満足に浸っているのか。あの子がいまどういう状況かはわからないが、ひとまずは探し出すべきだろう。
そして、ついでにNPCとして復活していたリコの自殺を今度はちゃんと見届けてあげよう。気が向いたらだが。

悪意の権化達が消えた路地裏。
そこに残された女性や窒息したネコネズミの肉塊は言外に訴えていた。

次は、お前だと。


327 : 絶対悪 ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/20(金) 00:30:21 R1pguOk60

【クラス】バーサーカー

【真名】パコさん

【出典作品】パジャマな彼女

【ステータス】
通常
筋力C 魔力E 耐久D 幸運B 敏捷C 宝具:B

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】

狂化:A+
全能力を向上させるが、マスターの制御さえ不可能になる。



【保有スキル】

直感:B
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。


戦闘続行:C
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とする。

ブチギレ:EX
なにかの拍子で突如ブチ切れる。
特に突き飛ばされたりした日には対象に地獄を見せることだろう。


【宝具】
『漆黒の殺意(オメーみたいな英霊気取ってる奴が一番ムカツクわ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:英霊1体
英霊のみに有効。パコさん若しくはマスターの指定したサーヴァントにこの宝具を使用すれば、相手の英霊としての保有スキル・宝具を短時間(少なくとも5分以上)使用不可にできる。
また、英霊としての『補正』もなくすことができるため、これを使われた英霊は生前の頃のステータス且つ宝具を使用できない状態で、英霊であるパコさんと戦うハメになる。


『スウェーバック』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:己のみ
両腕を交差させ、不意打ち気味に迫り来る得物にすら目を一切逸らさずにかわすことが出来る。
基本的には己の魔力を消費し大概の攻撃をかわすが、令呪を一画使えばかの『刺し穿つ死棘の槍(ゲイボルグ)』のように必中の武器であろうともよけることができる。




【weapon】
・ナイフ

【人物背景】
『パジャマな彼女』に登場する名無しのモブキャラ。
登場話数2話、コマ数は50コマにも満たないという登場期間の短さに反して、今まで和気藹々としていた作中の空気をぶち壊した彼の存在は多くの読者を困惑と恐怖に陥れた。
簡易的に述べると
・道行く一人で行動している人に通行料金5万円などとふっかけ、好みのタイプの女であれば「おっしゃパコろーぜ」と朝飯食いに行くような軽さで車に連れ込みパコろうとする。
・相手が嫌がると突如キレだし自分(相棒)の車をガンガン蹴り始める。
・脅した相手を慣れた手つきで車に乗せ連れ去る。
・襲った相手がTVに出てると知るやいなや、恐れを微塵も抱かずますます興奮する。
・「殺すぞマジで」と脅しかけるのがもはや脅しではなく宣告。
・殺すと決めれば、一切の躊躇いがなく心臓を突き刺しにいき、刺した後も一切怯えず笑みを浮かべる。その際相方にはドン引きされている。

など、作中屈指のクレイジーさを見せ付ける。

また
・車を蹴りで傾ける
・不意打ちを難なく避けて逆に返り討ちにする
・スウェーバックが素人ではなくプロのそれ(腕を交差するクロスガードをすることで万が一自分に攻撃が当たってもダメージを最小限に抑え、相手の武器から一切目を逸らさずに見据えている)
・相手が倒れた後も勝ち誇るのではく、まずは相方と共にボコボコにすることで抵抗を封じる。
・ナイフを一瞬で逆手に持ち替える。
など戦闘力も高い。


※『パジャマな彼女』はウシジマくんでもジョジョでもなく少年ジャンプのラブコメです


【方針】
好きにやり、好きに犯り、好きに殺る。

【聖杯にかける願い】
特にないが聖杯を手に入れられたら元の世界に帰還しあのクソガキ共(目覚計佑たち)をぶち殺す。
マスターは機会があれば殺す。


328 : 絶対悪 ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/20(金) 00:30:53 R1pguOk60

【マスター名】シックス
【出典作品】魔人探偵脳噛ネウロ
【性別】男

【weapon】
・拳銃
別に使う必要もないが、武器商人らしくいつも携帯している。

・その他兵器諸々。
武器商人であるため携帯電話ひとつで調達可能。
機関銃からステルス亜音速のステルス機までなんでもござれ。
(ただし部下が運ぶ時間は相応にかかるのでご注文はお早めに)


【人物背景】

「定向進化」から産まれ、人類から進化した「新しい血族」の長。
悪意の「定向進化」から生まれた、悪のカリスマとでもいうべき究極の卑劣男であり、人の嫌がる、苦しむ、絶望する様を見ることを誰よりも好んでいる。究極のサディストでもある。


・仕事を失敗した部下に自殺を求める際、拳銃自殺ではなくノコギリのようなもので自分の腹を徐々に裂いていくように命令する。理由は「罰なんてどうでもいいが、単に君がそれで死ぬのを見たいだけ」。尚、部下が腹を掻っ捌き始めても、シックスは葛西とのお喋りに夢中で一切目を向けず、部下が死ぬ様子になど興味はなかった。
・「6」という血文字を書かせるためだけにどこかの家族を人質にとり、父には致死性の毒を飲まなければ家族を殺すと脅し自らの吐血で「6」を書かせ、その家族には「きみたちの父親は君たちを見捨てて逃げた」と告げて絶望と憎しみの中でその命を絶たせた。

また、世界屈指の軍需企業の会長でもある。



【能力・技能】

・金属の生成
体内の細胞と合金を結合して、体内から強固な金属を生み出すことができる。足から刃物を生やすことも可能。

・「五本指」の能力。
彼の部下である、「DR」、「テラ」、「ヴァイジャヤ」、「ジェニュイン」、葛西善二郎の五人、通称五本指の力を操ることができる。
「DR」=ありとあらゆる水の流れを一目で見抜くことができる。
「テラ」=土地の状態、強度、構造を見抜くことができる。
「ヴァイジャヤ」=植物の特性、毒性、調合結果など、植物に関してあらゆる情報を本能的に感じ取ることができる。
「ジェニュイン」=群集の心理を弄び、思いのままに扇動することに長けている。
葛西善二郎=炎の流れを含む全てを自在に操ることが出来る。

尚、上記の「五本指」の能力は己の体内から生み出すものではないため、土地の状態、施設の有無などで大いに影響する。


・瞬間記憶能力
見たものを瞬間的に記憶できる力。空を舞う複数のプリントの詳細を正確に読み取るという超人染みた芸当も可。



・脳
シックスにとって一番重要な器官は脳であり、心臓を破壊されても体内の金属の制御が乱れるだけで死には当たらない。つまり、脳さえ残っていれば死ぬことはない(本人談)。
ただ、自動再生能力は有していないため、バラバラにされれば窮地に陥ることは間違いない。


【ロール】
非合法的な武器商人。裏社会では有名だが、表の世界ではまったく知られていない。


【方針】
聖杯戦争を思う存分に愉しむ。願いは特には決めていない。


329 : ◆ZbV3TMNKJw :2018/04/20(金) 00:31:27 R1pguOk60
投下終了です


330 : The Visitor ◆yYcNedCd82 :2018/04/20(金) 00:33:20 FfVfYG9A0
投下お疲れ様です
>>290-300の訂正版を投下させて頂きます


331 : The Visitor ◆yYcNedCd82 :2018/04/20(金) 00:34:00 FfVfYG9A0


アラもう聞いた? 誰から聞いた?
メアリーさんのそのウワサ

綺麗な綺麗な女の子
ワンコと一緒の外人さん
午後十一時に現れて
遊びませんかって微笑むの!

悪い大人はにっこにこ
メアリーさんの手を引いて
アンナコトやコンナコト
ホテルに泊まってお楽しみ!

だけど朝になったらメアリーさん
どこを探しても見つからない
なにをしたかも覚えてない

メアリーさんがいた証拠
それはたった一つだけ
鏡にルージュの伝言が残ってるって
見滝原ではもっぱらのウワサ!

ワタクシザンコクデシテヨッ!


.


332 : The Visitor ◆yYcNedCd82 :2018/04/20(金) 00:35:21 FfVfYG9A0

 今夜この場で誰よりも幸運だったのは床で転がっている男だ。

 そして誰よりも幸福だったのは『彼』と、彼女だ。






 ――深夜、見滝原市繁華街のホテルの一室。

 床の上に青ざめた顔で横倒しになっているのは、ショウという名前のホストだ。
 深夜の公園でぽつりと一人佇む少女を見つけ、声をかけ、ホテルに連れ込んだ顛末については特に語るまい。
 彼の目論見は明白であったし、それが果たされずに終わったこともまた明白だからだ。

 故に見るべきは、その少女。
 浅黒い肌の上にふわりとした白いドレスを纏った、儚げとも、蠱惑的とも呼べる少女。
 夜の世界に迷い込んだという風にも見れるし、彼女こそ夜の住人なのだとも思える彼女。

 その彼女は今、一頭の犬を背に庇うようにして脅威と対峙していた。

 たとえ建前にしろ何にしろ、愛の営みを行うためのホテルには似つかわしくない者だ。

 男は時代錯誤な長ぞろい外套を着こなした紳士然とした態度で、にんまりとその顔に厭らしい笑みを浮かべた。

「メアリーさん。ははは、この都市伝説を聞いた時にピーンと来たんだ。
 おおかた外国人の家出少女じゃないか? どこにでもある都市伝説だ? ふふふ、とんでもない!」

「……」

 少女は答えない。ただ背後で牙を剥き唸る犬を気遣い、ただそれを守ることにだけ意識を集中しているようだった。
 男はその見るも哀れな様を小馬鹿にしたように鼻で笑い、袖口から――とても中に収まるとは思えない!――杖を抜く。
 こつり、こつり。毛足の短い安物の絨毯を杖で叩きながら、男は転がされたホストを軽く小突いた。

「実は私はある者を探しているんだ。ここだけの話、合衆国に関係ある人々が、高い懸賞金をかけていてね。
 ちょっと特殊な能力を持った女の子なんだ。不思議な、そう魔法みたいなことのできる――いやいや、嘘じゃあない」

 こつり、こつり。

 そうして男が一歩ずつ近づいてくる度、娘の背後に控えていた犬の唸り声が低くなる。
 それは明確な敵意の表明――いや、そもそもからしてこの男の全身から匂い立つ、殺意への反応なのだろう。

 鬱陶しげに顔をしかめた男は、わざとらしく目を見開いて言った。

「ほう、シベリアンハスキーか。茶色の毛並みとは珍しい」

「……っ」

 わずかに娘の表情が強張ったのを、男は見逃さなかった。
 見ればむしゃぶりつきたくなるような、瑞々しい果実を思わせるような容貌である。
 ふわりと薫る甘い匂いは、緊張から滲んだ汗のそれだろう。
 男は自身の内側で、むくむくと欲望が隆起する感触に気がついた。

「名前はスミレ、と聞いていた……」

 そしてそれに抗おうかと一瞬考え――……すぐにそれを投げ捨てる。

「――そういえば、君の髪や瞳は綺麗なスミレ色だねぇ」
「ダメです、お待ちください……っ!」

 その時、男の言葉を理解したかのように、一声吠えて犬が床を蹴って跳び上がった。

 太い手足は男を簡単に組み伏せるだろう。
 鋭利な牙は男の手足を縫い止めるだろう。
 鋭い牙は容易く男の喉笛を引き裂くだろう。

 人と獣の力の差は明白だ。人は獣に勝てない。
 ――だが、それは男がただの人であればの話だ。

「あぁ……ッ!!」
「しつけのなっていないケダモノめ……! 主の質もこれではしれたものだ!」

 娘の悲鳴が寝室に響き、ギャンという動物の鳴き声が上がる。
 男の振るったステッキから不可視の力場が放たれ、哀れな犬を致命的なまでに打ちのめしたのだ。

 念動力! すなわちサイコキネシス!!

 意思だけで見えざる力を生み出し物体を操作するという超能力ッ!
 数十年の修行を積んだインドの修験者の中には、ヒマラヤを転がり落ちる巨石すら止められる者がいるという!

 犬は天上に叩きつけられて骨と内臓の砕かれる音を立てた後、ゴミを投げ捨てるように壁へ放られる。
 安っぽいホテルの壁に当たった犬はそのまま床へ落ち、ボロ布のような有様で身動き一つすらしていない。

 ――疑いようの余地なく死んだ。生命活動が停止したのだ!

「獣をしつけるにはこうするのが一番だ。なに、お前も素直に言うことを聞くのならば可愛がって――――……」


.


333 : The Visitor ◆yYcNedCd82 :2018/04/20(金) 00:35:33 FfVfYG9A0



 ――――その時、男は気づくべきだったのだ。

 娘の瞳が、今まさに襲いかかろうとする自分ではなく、ただまっすぐに床へ落ちた犬を見つめていることに。

 そしてその犬に起こった現象に。
 わずかに聞こえた異様な唸り声に!

 明らかに死んだはずだった。内臓はぐちゃぐちゃに潰されたはずだ。
 だが生きている! 呼吸もしている!

 青く変色した体毛を逆立てながら、犬がゆっくりと立ち上がる。

 いや! 「それ」はもはや犬とは呼べまい!

 瞳孔散大!

 平滑筋弛緩!

 細胞組織が変化!

 皮膚は特殊なプロテクターに変わり、筋肉・骨格・腱に宿るのは強力なパワーッ!

 額には赤い瞳の如き触角が輝き、金色の目は射抜くように男を睨むッ!



.


334 : The Visitor ◆yYcNedCd82 :2018/04/20(金) 00:35:46 FfVfYG9A0



         バ ル ッ



                     これがッ



            l| l|
     }}  {{    }}  {{
      {{   }}:    }}   }}    {{ {{ }}
      ″  "   ,〃  ゞ’    ,〃




                   こ れ が ッ



         _ _
        |: ||: |
   |:\  _|:_||:_|   |:\  _
   |:: | | ::|       |:: | | ::|     _ _
   /:  | | ::|    ./:  | | ::レ'i  |:_||:_| |\
  《:__| |_j   /:_/ 《__/     /: |
            ̄ ̄           /:/
                            ̄




           こ れ が 『 バ オ ー 』 だ ッ ! !


         ・ ・ ・ .・ ・ ・ .・ ・ ・ ・ ・ ・  ・ ・ ・ ・
       そ い つ に 触 れ る こ と は 死 を 意 味 す る ッ ! !

          rー--
         /  /
           / /
    __,、  / /             ャ――z
   /  廴丿  ̄ ̄ ̄>        /  /
  /    -≠ミ   ζ  lー ''''" ̄ ̄"    ̄ ̄`'、
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.


335 : The Visitor ◆yYcNedCd82 :2018/04/20(金) 00:38:56 FfVfYG9A0


「!? 第48の男ッ!!」
「御意ッ!!」

 この異常事態に対して、男はもちうる手段の中でもっとも的確なものを選択した。
 男は賢明だった。愚かではなかった。この奇妙な状況を冷静に判断したのだ。

  ・ ・ ・ ・ ・ ・     ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
 これはヤバイ――俺以外のヤツをぶつけるべきだ。

 男の声に応じて、その傍らに立つパワーあるヴィジョンが生み出される。
 影が滲むようにして現れたそれは、紛うことなき鎧武者であり、ゆらりと下げた刀を即座に振りかぶる。
 その姿を頼もしげに眺めながら、男は己の杖を振り回して声高に叫んだ。

「第48の男! 優れた鍛冶師が魂を込めて鍛え上げた武具には、念が宿り、力あるヴィジョンを作り出す!
 数ヶ月前に東北である組織の研究所が崩壊した! こいつはそこから私が拾い上げたものだ!
 人間のベテラン兵士ですら現役で戦える期間は二十年から三十年程度!
 しかし第48の男の戦歴は数百年! 殺した数も2500人はくだらん!
 命を持たぬが故にいかなる攻撃も無意味! 高度な知性に加え、殺すことをためらわない残忍な性格!
 ちょっとでも気を抜けば私だとて危ういが――――しかし頼もしいヤツよ!」

 男たちには、目前でバイクのエンジン音が如き唸りを上げる「それ」が何であるかなど理解できなかったろう。

 秘密結社ドレスに所属する天才科学者が作り出した生物兵器。
 動物は危険が迫ったりケガなどをすると、副腎髄質という内蔵器からアドレナリンという物質を分泌し、体を緊張させる。
 このアドレナリン量を感知し、脳に寄生する「バオー」は宿主を生命の危険から守るべく無敵の肉体に変身させたのだ。
 それこそが地球上で最も生命力のある究極の生物「バオー」であるなどとは、男にはわかるわけもない。

 そしてそれは「バオー」にとっても同じだった。
「バオー」には男たちが何者であるかなど関係なかった。
 ただ生きるために戦う「バオー」には、視覚も聴覚も嗅覚も意味がない。
 額の触角が「バオー」の全ての感覚を担うのだ。

 バオーは男とセイバーの発する危険な「におい」を額の触角で感じ……その「におい」が大嫌いだった。

 恐怖の「におい」! 憎しみの「におい」! 殺意の「におい」! 敵の「におい」だ!

 バオーは思った!

 こいつらの「におい」を消してやるッ!!

.


336 : The Visitor ◆yYcNedCd82 :2018/04/20(金) 00:40:08 FfVfYG9A0

「ウオオォオオォオムッ!!」

「怪物め……ッ!!」

 吐き捨てるようにおめいて刀を振りかぶる第48の男の目前で、バオーは跳躍した。
 第48の男はすばやくその動きに応じて刃の軌跡を宙に描く。
 鎌倉時代に鍛えられた無銘の業物。退魔の剣。第48の男が頼みとする、唯一無二の武具!
 これにて討ち果たせぬ怪物はいない。第48の男は心からそう確信していた。

 だが!

「な……ッ!?」

 バオーの四肢から伸びたきらめく光刃が、その刃をすぱりと切断し、ナンバー48の篭手を切り落とす!

 ――――バオー・リスキニハーデン・セイバー・フェノメノン!

 それはバオーの力によって皮膚を硬質化し、刃に再構成する武装現象(アームド・フェノメノン)!

 硬質化して刃と化した皮膚の表面では、サメの牙の如く生え揃った微小な棘が高速で動き回っている。
 光の乱反射を伴うその切れ味はダイアモンドカッター以上!

 自分の失われた腕を、刀を、第48の男は信じられない思いで見つめる。
 たとえどんな剣豪や英傑であろうとも無視できない、その一瞬の驚愕。
 それが致命的だった。
 次の瞬間、第48の男の視界一杯に、バオーの大きく開いた顎が迫っていた!

「バルバルバルバルバルバルバルバルゥッ!!!!」

「がッ!?」

 第48の男の頭は何百年も及ぶ戦いの中で幾度となく刀で、槍で、銃で! 攻撃されて尚健在!
 鍛え抜かれた鋼鉄のその体は、およそ獣の牙など文字通り歯が立たないものである。
 にも関わらず音もなく第48の男の兜は噛みちぎられ――いや! いや、これは違うっ!
 牙や唾液によって溶解され、そのままに断ち切られたのだ!

 ――――バオー・メルテッディン・パルム・フェノメノン!

 体液を強酸性のものに変化させて分泌、体外へと放射する武装現象!
 バオー・リスキニハーデン・セイバー・フェノメノンと組み合わせれば、この世のあらゆる物を切断する!

 頭部を失った第48の男の甲冑が、影が光へ溶けるように消えていく。
 
「ドッゲエーッ!? 第48の男ォッ!?」

 だが男は一声大声で喚いたかと思うと、それ以上感傷に浸ることなく脱出行動を開始していた。

 ホテルの一室。選択肢は二つ。窓かドアか。窓ははめ殺し。ドアだ。

 男は自らの念動力を身にまとって身体強化を施しながら、脱兎のごとくドアに向けて走り出した。
 あの怪物は戦闘直後で即座に反応はできまい。後はあの小娘以上の速度を出せれば生存は確定する。
 この場を切り抜けさえすれば、後はどうとでもなるのだ。戦力を整え体勢を立て直しての逆襲。あるいは見滝原からの逃走。

「申し訳ありません。……ここで果てていただかないと、困るのです」

 だが、男の喉にするりと腕が絡みついた。ぎくりと体が強張る。

 耳をくすぐる甘やかな声。振り返ってはいけない。鼻に薫る甘やかな香り。振り返ってはいけない。
 だが、男の意思に反して首が巡る、体が動く。わずかに眉を下げた、幼ささえ感じる少女の顔。スミレ色の瞳。
 そして僅かな隙間からちろりと舌が覗き、軽く唇を舐め、そして――口吻。

 その瞬間、男の全身を文字通りの意味で絶頂的な快楽が貫いた。

「お、ああ、、あ、あ、あ、あ、、あああ、あ、あ、、あ、あ!?」

 男は意味不明な言葉を喉から絞り出しながら、全身からありとあらゆる体液を吹き出し、病的な痙攣を繰り返し崩れ落ちる。
 病的な体の震えは男の四肢を捻じ曲げ、引きつったように動かし、男の体を床の上でのたうち回らせた。
 それはまさに死の舞踏(ダンス・マカブル)。
 やがて男の肉体はじゅうじゅうと煙を上げながら腐敗し、ドロドロに融け、やがて床の上の黒いシミへと成り果てた。

.


337 : The Visitor ◆yYcNedCd82 :2018/04/20(金) 00:40:25 FfVfYG9A0


「ご無事ですか……! 良かった……」

 少女はそう言って、腐食性の黒いシミが広がる床を物ともせずに跪き、バオーへと頭を垂れた。
 いや、青い毛並みは元の茶色へと戻りはじめているから、それはもうバオーではない、『彼』だ。

 先ほど内臓を叩き潰されたはずなのにも関わらず、もうそのような痕跡は一つもない。
 精悍な顔つきこそ変わらぬものの、そこにいるのはもはやただのシベリアンハスキーだった。

「どうやらサーヴァントやマスター、ではなかったようですね。
 NPCというのでしょうか。……奇妙な存在が多いのは、今に始まった事ではありませんけれど」

 少女は自らの指にはめた銀の指輪をそっと撫でてそう呟き、次いで物憂げに眉を下げた。
 それは親に怒られて家の外に放り出される事を恐れる、今にも泣き出しそうな子供のような顔であった。

「マスター……。申し訳ありません。これではどちらがマスターでサーヴァントなのか、わかりませんね」

 ジール……いや、アサシンの英霊ハサン・サッバーハは、そう言いながら恐る恐る『彼』へ手を伸ばした。
『彼』はためらうことなく鼻面を押し付け、頬を擦りつけ、ばかりか躊躇うことなくその手を舌で舐めたではないか。
 毒の手。触れることは死を意味するその手。しかしバオーと『彼』は彼女の「におい」が好きだった。

 なんて悲しい「におい」だろう! なんて優しい「におい」だろう!

 それはバオーとその宿主である『彼』が、あの冷たい研究所で常に感じていたものだった。
 そして『彼』とバオーには終ぞ与えられることのなかった、心地のよい温もりだった。

「ああ……っ」

 アサシンの顔が陶然と緩み、その瞳が情愛の涙で潤む。

 他の者が見たら嘲るだろうか。犬畜生に媚を売っているなどと指差すだろうか。
 初代様がこんな浅ましい自分を見たらどう思われるだろう。きっと首を差し出さねばなるまい。

 ――――そう、この一頭のシベリアンハスキーこそが、サーヴァントとして召喚された彼女のマスターだった。

 出会ったのは霊地でも何でもない、薄暗い路地裏。
 恐らくは巻き込まれた者に召喚されたのだろう。聖杯から与えられた知識は彼女にそう囁きかける。
 だがそれでも構わなかった。
 アサシン、暗殺者たる彼女は神と主君に忠実にあり、そのためにこそ振るわれる刃であるべきだから。
 跪いて頭を垂れ、口上を述べることにいささかの躊躇もなかった。

 懸念はただ一つ。近くに人の気配が一切感じられないことだった。
 そしてだからこそ、その違和感こそが幸運だったと言っても良い。

「――――? あ……っ!?」

 不意うつように、彼女の頬を何かが舐めたのだ。
 それは薄汚れた一頭の犬で、不覚を取ったこと以上に彼女の心は千々に乱れた。
 彼女は自分がどれほどの「毒」であるのかを理解している。
 一瞬後にはこの犬が内臓から何から腐り果て、死んでしまう姿がありありと思い描けた。

 だが、そうはならなかった。
 そうはならず、『彼』は彼女と共に在る。
 契約によって繋がった魔力のラインも、そこを通じて流れ込む『彼』の気持ちも。
 全てが『彼』こそが自分のマスターであると示していた。

 これは奇跡のような出会いだ。
 恐らく何千、何万回、英霊として顕現しようとも、掴み取れる機会は数えるほどしか無いだろう。
 他の霊基でどのような巡り合わせがあるにせよ、今この場にいる彼女は、まさに運命に出会ったのだ。

 それに比べれば、たかだか異形に転じてサーヴァントとも互角に戦えることが何だというのだろう。

 静謐のハサンと呼ばれる彼女にとって、そんなことは些事に過ぎなかった。

「……では、マスター。今日はもう休みましょう。
 戦闘に感づいたものがいたとしても、我々はすぐに移動したと考えるはず。とどまっていた方が安全です。
 それで、その……」

 少女はその浅黒い肌をわずかに羞恥から紅潮させながら、手を自分の首筋へ伸ばし、服の紐をするりと解いた。
 白い衣装は音もなく彼女の足元へと落ちて蹲り、一糸まとわぬ彼女の――柔らかで美しい稜線が露わになる。

「よろしければ、今夜も褥を共にしては頂けませんか……?」

『彼』は一声吠えて、そこが自分の居場所であるとでも言うようにベッドへ上がって丸くなった。
 その姿を認めた彼女は、そっと頬を緩めて寝台に上がり、『彼』の傍らへと身を侍らせる。
 それは最愛の伴侶を見出した牝の顔でもあり、同時に大好きな犬を抱きしめて眠る少女の顔でもあった。

.


338 : The Visitor ◆yYcNedCd82 :2018/04/20(金) 00:40:38 FfVfYG9A0



 今夜この場で誰よりも幸福だったのは『彼』と、彼女だった。

 ――――そして何にせよ、今夜この場で誰よりも幸運だったのは床で転がっているホストだ。

 夢と現の区別もつかず、財布の中身も抜き取られ、散々な一晩だったと考えるのだろう。
 きっと自分が生きていることがありえないような状況にあったなんて、思いもよらないだろう。
『彼』と彼女に触れることは死を意味するというのに、生きていることがどれほど幸運かなんてわからないだろう。

 ショウという名前のホストは朝起きて、鏡を見て、その時に気づくのだ。
 鏡に描かれたルージュの伝言に。



                   『 The Visitor for "Over the Heaven"!』



.


339 : The Visitor ◆yYcNedCd82 :2018/04/20(金) 00:40:48 FfVfYG9A0
【クラス名】アサシン
【真名】静謐のハサン@Fate/Grand Order
【性別】女
【属性】秩序・悪
【パラメータ】筋力D 耐久D 敏捷A+ 魔力C 幸運A 宝具C

【クラス別スキル】
・気配遮断:A+
 サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
 完全に気配を絶てば発見する事は不可能に近い。
 ただし、自らが攻撃行動に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

・単独行動:A
 マスターからの魔力供給を絶ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクAならば、マスターを失っても一週間は現界可能。


【保有スキル】
・変化(潜入):C
 文字通りに変身する能力。自在に姿を変え、暗殺すべき対象に接近する事が可能になる。
 ただし、変身できるのは自分と似た背格好の人物のみ。
 この条件さえ満たしていれば、特定の人物そっくりに変身する事も可能。
 多少の体型の違いであれば条件に影響はないため、異性への変身も可能である。

・投擲(毒の刃):C++
 短刀を弾丸として放つ能力。
 毒ステータスを対象に付与するという付帯効果を持つ。

・楽園への扉:B+
 魔性の美貌と毒により異性・同性を問わず惹きつける。
 ランクBではほぼ対象の意思を無視して精神を支配する。
 毒による効果が伴うため、対魔力スキルでは抵抗できない。


【宝具】
『妄想毒身(ザバーニーヤ)』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
 猛毒の塊と言えるアサシンの肉体そのもの。触れるすべてを毒殺し続けた彼女の在り方が宝具化したもの。
 爪、肌、体液、吐息さえも“死”で構成されており、全身が宝具と化している。またあらゆる毒を無効化する。
 宝具ではない武装であれば、瞬時に腐蝕させることも可能。武装を腐食させるかどうかは任意に決定できる。
 しかし生物に対しては「加減」することができないため、触れた相手を必ず殺してしまう。

 この毒は幻創種すら殺害するほどの威力であり、特に粘膜の毒は強力。
 人間であればどれほどの者でも接吻だけで死亡し、英霊であっても二度も接吻を受ければ同じ末路になる。
 二度の接吻に耐えたとしても、合計三度の粘膜接触で大抵の存在は絶命する――例外も存在するが。
 これは自分の意志では完全に制御することは出来ず、触れた者に無差別に作用してしまう。
 さらに犠牲者の体にまで毒は残留し、遺体に触れた者にも被害が及ぶ。

『静寂の舞踏』
 宝具『妄想毒身』を用いた範囲攻撃。
 静謐のハサンの踊りは毒を振りまき、対象を弱らせ、宝具の効果を確実なものとする。
 汗を揮発させることで密室に毒を充満させたり、風に毒を乗せて万軍をを葬り去るなども可能。
 ただし範囲が拡大される反面、毒の強度という意味では粘膜接触には劣ってしまう。
 一度きりの奥の手として、至近距離で自身の肉体を四散させて大量の毒を浴びせるという隠し技も持っている。


【Weapon】
『ダーク』
 投擲用に調整された黒灰白三色の短剣。
 宝具ではなく補充ができないため、戦闘の度に回収が必要。


【人物背景】
 髑髏の仮面を被った、瑞々しくしなやかな容姿の少女。
 暗殺教団の教主「山の翁」を務めた歴代ハサン・サッバーハの一人。
 伝説上の存在「毒の娘」を暗殺教団が再現し、暗殺の道具、兵器として作り上げたもの。
 彼女の肉体は毒の塊であり、爪はおろか肌や体液さえをも猛毒へと変化させている。
 その美貌を活かして異性を誘惑、理性を失わせ、褥に誘っては毒で暗殺するという手法を最も得意とする。
 しかし誰とも触れ合うことができない孤独感は生前から彼女を苛み、その精神を軋ませていた。

 直接戦闘は得意ではなく、純粋な暗殺者として優れた力量を発揮する。
 そのため現在は「ジール」を名乗り、主の寝床を確保するためホテルを転々としている。
 幸いなことに主が殺戮を忌避することから粘膜接触は避け、誘惑された人々は昏倒で済んでいるようだ。

 バオー犬は触れても死なないため、彼こそが自身の望んでいた相手だと認識している。
 その感情は依存、服従、忠誠、恋慕の全てが入り混じったうえで、その全てを凌駕するもの。


【聖杯にかける願い】
 主に全てを捧げ、願わくば共に生きる。


340 : The Visitor ◆yYcNedCd82 :2018/04/20(金) 00:41:00 FfVfYG9A0
【マスター名】バオー犬
【出典】バオー 来訪者
【性別】オス

【能力・技能】
・シベリアンハスキー
 ツンドラ地帯を原産とする大型犬。
 多くは白黒の毛だが、この個体は茶白である。
 一般的に強靭な体力・持久力を持ち、知能も高い犬種とされている。
 自ら威嚇することのほとんどない穏やかな犬種だが、頑固で意思が強い。
 一度共同体とみなした仲間を守るためなら勇敢に立ち向かう。

・寄生虫バオー
 秘密結社ドレスが作り出した生物兵器B.A.O.H。
 極限の環境に晒し、適応した動物を交配させる「人工進化」によって誕生した「新生物」。

 血管を通じて脳に寄生し、宿主は寄生から数日ほどでバオーの分泌液で皮膚がただれ始める。
 バオーは宿主へ恐ろしいほどの再生能力を与え、脳を完全に破壊しない限り宿主は消して死なない。
 この再生力は分泌液に由来し、バオーと宿主の意思が一致したなら、飲んだ者の致命傷すら癒やす薬となる。
 レーザーや火炎放射などの高熱が弱点であるとされるが、それに対してすら異様な耐久性を発揮する。
 また水中などで肺呼吸が完全に遮断されると仮死状態となり、この間は老化も一切進むことがない。

 そしてバオーは生物として常に学習・成長・進化を続けており、その終着点は未だ誰も知らない。

・武装現象(アームド・フェノメノン)
 危険に晒されたバオーが、分泌液によって宿主を瞬時に戦闘形態へと変態(メタモルフォーゼ)させる現象。
 宿主は身体能力の大幅な増強をはじめ完全に変化して、地上で最も生命力のある生物へ変貌を遂げる。
 これがッ! これがッ! これが『バオー』だッ!!

 発現時には全身の体毛が青く変化して逆立ち、額には第三の目を思わせる赤い触角が発生する。
 武装現象発現中はこの触角で全感覚を賄うため、通常の五感はバオーにとって無意味なものとなる。
 バオーは触角で「におい」を察知して行動し、特に邪悪な「におい」すなわち自身への殺意の「におい」を最も嫌う。
 この「におい」を察知すると、バオーは即座にこれを排除すべく行動を開始する。

 主に宿主と自身を守るために発現し、発現中はバオーが肉体の制御権を得るが、宿主の意思を尊重することもある。
 そのため宿主の意思での発現も可能だが、基本的にバオーは生物としては穏やかであり、無意味な殺戮を行うことはない。
 バオーを完全に宿主の制御下へおくためには、宿主の理性とバオーの本能が一致しなければならない。

 また武装現象発現中、バオーは「バル!」「バルバルバルバル!!」「ウォォォ――ム!!」など異様な咆哮を轟かせる。

《バオー・アームド・フェノメノン》
 バオーが最初に発現させる第一の武装能力。
 痛覚を遮断、瞳孔散大、平滑筋弛緩、細胞組織が変化。
 皮膚は特殊なプロテクターに変わり、筋肉・骨格・腱には強力なパワーが宿る。
 加えて以下の武装現象を自在に発現させ、使いこなせるようになる。

《バオー・メルテッディン・パルム・フェノメノン》
 体外に排出されると強力な溶解液へと変わる分泌液を放射し、標的の肉体や金属などを融かす武装現象。
 噴射の際に自身の体組織も溶解させるが、同時に新たな皮膚を生成・再生するため、事実上のダメージはない。
 またこの溶解液と前述の再生能力を組み合わせ、「生きた生物の中に潜り込んで身を隠す」なども可能とする。

《バオー・リスキニハーデン・セイバー・フェノメノン》
 皮膚組織を再構築し、硬質化させて刃物状にする武装現象。
 刀身の表面でサメの歯のような極小のトゲが高速で動き回り、光の乱反射を起こしつつ標的を切断する。
 柱の男たちが振るう光の流法「輝彩滑刀」と同質のものであるとされる。
 切り離して発射することで、飛び道具としても使用可能。

《バオー・シューティングビースス・スティンガー・フェノメノン》
 体毛を硬質化して射出する武装現象。
 この体毛は体温の伝導などで一定温度に達すると発火し、突き刺さった標的を焼き尽くす。
 発火自体も脅威的だが、体毛の鋭さも凄まじいものがある。

《バオー・ブレイク・ダーク・サンダー・フェノメノン》
 体細胞から発生される生体電気を直列にして放出、放電する武装現象。
 デンキウナギと同様の原理だが、バオーの筋肉細胞は一つ一つが強力なために60,000ボルトの高圧電流となる。
 直接放電する以外にも機械などへ電力供給を行うことも可能。
.


341 : The Visitor ◆yYcNedCd82 :2018/04/20(金) 00:41:10 FfVfYG9A0

【人物背景】
 研究機関ドレスの実験体としてバオーを寄生させられた茶毛のシベリアンハスキー。
 既に寄生から一ヶ月が経過しており、バオーとしての完成度は高い。体毛で隠された肉体はただれている。

 秘密結社ドレスでは出資者へのデモンストレーションに用いられ、改造を施された虎との戦闘を強制された。
 頭部を砕かれた直後に武装現象を発現、一瞬の内に虎を葬り去り、出資者へバオーの恐ろしさを見せつけた。
 しかしバオーの殺害方法を説明するためにレーザー照射で脳を破壊され、焼却処分されてしまった。

 施設から脱走することができたのか、処分寸前にソウルジェムを手にしたのか……。
 そしてマスターがこの犬なのか、それとも寄生しているバオーなのかすらさだかではない。


【聖杯にかける願い】
 生きる
 この少女を守る
 見滝原に満ちる「嫌なにおい」を消してやる


【ソウルジェム】
 透き通った青の中に赤が滲むもの。
 指輪型でバオー犬が所持できないため、普段はアサシンが管理している。
 首輪を手に入れることができらバオー犬に持たせられるかもしれない。


【方針】
 専守防衛
 無害な「大型犬を伴った少女」を装って見滝原を探索し、襲撃者を排除する
 主にC3公園からB3-4駅付近のホテル、あるいはC6繁華街のホテルを転々とする
 男を誘って昏倒させる都市伝説『メアリーさん』の噂は広がっているかもしれない


【把握資料】
・アサシン(静謐のハサン)
 『Fate/Grand Order』および『Fate/prototype 蒼銀のフラグメンツ』
  本編中のマテリアルなどを参照のこと。

・バオー犬
 『バオー 来訪者』文庫版およびOVA版
  バオー犬は序盤に登場、バオーの説明をするためのデモンストレーションで殺処分となった。
  バオーそれ自体の戦闘能力は、本編主人公「橋沢育朗」のものに準拠する。
  原作コミックスでは「バオーは寄生から一定期間で成体となり、宿主を食い破る」設定があるが、
  OVA版ではカットされているため、このバオー犬についても同様に時間制限は無いものとする。


342 : バオー犬&アサシン ◆yYcNedCd82 :2018/04/20(金) 00:42:05 FfVfYG9A0
以上になります
規約見落とし申し訳ありませんでした


343 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/20(金) 22:59:16 9oX8a1jg0
皆さま投下お疲れ様です。
感想の方ではありませんが盛況につき新たなOPの投下をします。


344 : 盗【かいとう】と奪【かいとう】 ◆xn2vs62Y1I :2018/04/20(金) 23:00:23 9oX8a1jg0
少女は普通に過ごしていた。
近代都市として名高い見滝原に住んでいる、どこにでもいる平凡な女子高校生。
繁華街にある実家の花屋から見滝原高校までバスと徒歩で通学する。
自分と同じように、授業を受ける生徒たちは性別や外見、産まれと育ちを除けばどれも『同じ』に見えた。
人間が人間なのは当然なのだから。生物学上、どれも一緒で完結する話で終わるのだろう。


学校内の日常も至って普通だった。
先生の授業も、体育の身体テストも、まあ高校生だったら……な内容ばかり。
一応、少女が僅かに意識している点が一つ。
いきなり、突然なのだが、少女のクラスにいた少年――名前は『アイル』と呼ばれる彼が不登校になっている事。

別に少女と交流があった訳でもない。
むしろ、授業中は寝てばっかり。雰囲気も明るいものじゃない。正直のところ不良……なのかも。
実際の真相は不明だ。
全ては少女の憶測………クラスでの『ウワサ』だった。
先生もアイルが不登校でいる点を格別、気にしている節もなく。
「本日もアイル君は欠席のようですね」と適当に受け流して、次の話題へと展開し、ホームルームが終わる。
だから――嗚呼、別に大した問題はないんだろうな。
そう、思っていた。


第一、学校内の不穏な問題など些細な事件でしかなかった。この見滝原では恐ろしい邪悪が潜んでいる。



アラもう聞いた? 誰から聞いた?
赤い箱のそのウワサ

人のいる場所にいつの間にか置かれている真っ赤な箱。
中には【人間一人分】その全てが敷き詰め入っている。

学校に置かれていたら、生徒か先生か誰かヒトリいなくなっている。
病院に置かれていたら、患者か医者か誰かヒトリいなくなっている。

ヒトリで居たら、恐ろしい怪物がその人間を箱に詰め込んで鑑賞するって
見滝原の住人の間ではもっぱらのウワサ!!

チョーサイコ!



………事件は無差別だ。
『箱』にされている人間に共通項はなく、警察の捜査も難航を極めている状況だとか。
これも最近の話。まだ一週間経過していない。
少女はフト思うのだ。確か……アイルが不登校になった時期も同じ位だな、と。
だが、彼がサイコ染みた猟奇殺人犯には到底思えない。隣人を疑う抵抗とは違う。
明らかにそうじゃないだろう。第六感に従った確信めいたものである。

けど――分かっている。
少女は頭の中で決定的な『ナニカ』が引っ掛かっていたのだ。もしかして、アイルは知っているのかもしれない。
……自分が、探偵か警察気取りで追及したところで、無意味だけど。
少女は、授業を聞き流しながら、教室の窓より見滝原の都心を眺めていた。


私が居た町って、こんなのだっけ………



■   ■   ■


345 : 盗【かいとう】と奪【かいとう】 ◆xn2vs62Y1I :2018/04/20(金) 23:01:00 9oX8a1jg0
見滝原にある都市開発途中の地域。その廃墟にて


「あーあ、やっぱりか」


血まみれの少年、のようなナニカが心底残念そうにぼやいた。
そこには完成された『赤い箱』があり、怪物は退屈そうにそれを観察し終えている。
これで一体何人目だったろうか。数に関してあまり興味も無い。彼にとって重要なのは『中身』なのだから。

少年は『怪盗』だった。
最も世間体で知られている定義に当てはまる怪盗ではない。略称なのだ。
『怪』物強『盗』。
未知を示す『X』と不可視――『I』nvisibleから準えてメディアからは『怪盗X』と名付けられた。
無論。少年にとって本名ではないのだが、本人も本当の自分を分かっていない。
分かっていないからこそ、こうして『箱』に人間の全てを敷き詰め、自分を探す手掛かりを得ようと奔走している。


「馬鹿げた儀式は終わったか」


グロデスクで異色な光景に顔色一つ変えず、長髪の大男が恐れる様子なくXに対し告げた。
一応ヒトらしい姿をしているが、X同様全く人間とは異なる能力を備えた存在・サーヴァント。

マスター側のXですら脅威的な身体能力と再生能力、様々に姿を変化させる細胞を使った『変装』。
にも関わらず。
Xが召喚したサーヴァントは顔色一つ微動だにしないのは、彼こそX以上の怪物である他ないからだ。
『バーサーカー』のクラスで召喚された怪物の言葉に、どこか捻くれた様子でXは答える。


「一応『怪盗』をやってるんだよ、これでも」


「フン……」


怪盗、か。理解できん。
バーサーカーは一つだけ決定的な事実だけを得ていた。紛れも無くXは人間であるということ。
柵(しがらみ)を求めて、自身の存在理由に価値を見出そうと、どうにかして世に自らの痕跡を刻まんとする意志。
人間のソレでなくて、何だと云う?
真理に近いバーサーカーの思考だが、当然打ち明ける必要もない。
バーサーカーが思うに、言葉だけでXのような輩が納得をする訳がないし。したらしたで聖杯獲得から路線が外れる。
聖杯を得るにも、余計な手を加える必要は無い。


346 : 盗【かいとう】と奪【かいとう】 ◆xn2vs62Y1I :2018/04/20(金) 23:01:28 9oX8a1jg0


「ここに集められている奴らは皆『同じ』に加工されている。それが分かったかな」


記憶の封印。
Xもそうだが自身の能力どころか記憶が封印され、マスターとして覚醒するまでは怪盗とは無縁であった。
否。細胞が常に変異し続け、自分が自分でなくなってしまう恐れもあったのに。
逆に、正常な状態で『怪盗X』を取り戻せたのが奇跡である。
無論。全員が全員、記憶が封印されたマスター候補でもないらしく、人間っぽく加工された類をXの観察眼で見通せた。
魔術の類はまるで知識にないが、これほどのものかとXは関心を抱いていた。
そうそう、と物のついでのようにXが言う。


「最近『ウワサ』を聞いたんだよね。―――悪の救世主って奴」


漸くXがバーサーカーの方を振り向いた時。
箱にされた人間が所持していた板状の機械――スマートフォンを、パズルのように分解し、弄んでいるバーサーカーがいる。
バーサーカーは嗚呼と呟く。


「サーヴァントであろうな。それも……人間の意識を操作する類のスキルを持った」


「なーんだ。知ってたんだ」


Xは心底つまらなそうな態度で背伸びをした。



アラもう聞いた? 誰から聞いた?
悪の救世主のそのウワサ

悪人の前だけに現れてくれる素敵な救世主
どんな外道でも彼の前では逆らえない!

でもでも気をつけて?
救われた悪人は彼から逃れられる事は出来ない!
救われる前よりも酷い目にあっちゃう。

善人には関係ないから、むしろ悪人退治の救世主って
見滝原の住人の間ではもっぱらのウワサ!!

キャーカッコイイ!


347 : 盗【かいとう】と奪【かいとう】 ◆xn2vs62Y1I :2018/04/20(金) 23:01:50 9oX8a1jg0
「どんな奴でも救ってくれる、って。俺でも救ってくれるか試したいよね」


冗談半分、半ば皮肉混じった態度で怪盗はあざ笑う。
怪物じみて――人間など何十何百殺している怪盗を一体誰が『救ってくれる』のか。
違う。
『誰も救わない』からこそ、なのだ。
同時に『救済』の意味も……バーサーカーはスマートフォンの残骸を塵芥のようにバラバラにまき散らす。


「本気でくだらん『ウワサ』だ。人間の本質そのものではないか」


勝手に持てはやし。勝手に祭り上げる。
元よりサーヴァント………英霊には人々による『過大解釈』で構成された怪物も存在するように。
恐らく、ウワサする人間たちの口ぶりから、罪なき悪意により誕生した『救世主』なのだ。


――バーサーカーは『違う』。
闇の一族として、地上の人間を蹂躙し、生物として頂点に君臨する『魔王』――カーズに救済など不要だった。
そして、人間によって生み出された怪物とは違う、真の怪物なのだから。






【真名】カーズ@ジョジョの奇妙な冒険
【クラス】バーサーカー
【属性】混沌・悪


【パラメーター】
筋力:A 耐久:A++ 敏捷:A+ 魔力:D 幸運:D 宝具:B


【クラススキル】
狂化:D++
 理性はあり、通常の会話も可能。ただしステータス補正はほとんど無い。
 状況問わずカーズの持つ奇妙な博愛主義が働きやすくなっており、肝心の戦闘を妨害しかねない。


【保有スキル】
闇の一族:A
 人類とは異なる進化を遂げた種族。
 全身が消化器官となっており、手に触れた部分だけを削り食す事も可能。
 カーズと対峙した吸血鬼は、彼が『捕食者』であることを本能的に察知する。
 吸血鬼とは異なり、紫外線をあびると死にはしないが石化してしまう。


文明理解:B
 高度な知能を有することを示すスキル。
 言語等を把握する速度は人を優に超えたもの。銃などの機器の構造を理解し、分解するのも容易。
 相手のスキルや宝具の効果を冷静に分析・判断する。戦闘時には『直感』の代用にもなる。


魔力放出(光):A
 武器、ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させる。
 カーズの宝具にある『光の流法』から光を司る逸話が派生し誕生したスキル。
 光を纏えば、文字通り光速で相手を圧倒させられるものの、魔力消費の負荷が強い。


道具作成:E
 薬学の技術や吸血鬼を製造する石仮面など、研究者としての側面を持つが
 バーサーカーのクラスで召喚された為、ほぼ機能していない。



【宝具】
『光の流法・輝彩滑刀』
ランク:B++ 種別:対人宝具 レンジ:1〜30 最大捕捉:1〜100人
 全身からチェインソーの原理で回転する刀身を生やせる独自の能力。
 刀身の表面に極小のトゲがあり、それが光速に動き回ることで『輝いている』風に見える。
 キレ味は絶大で、なおかつ光の乱反射を利用した用法をカーズは生前行っていた。
 また外見や光を纏った風に見えた逸話から『魔力放出(光)』のように
 サーヴァントになった事により光の魔力を得た。


348 : 盗【かいとう】と奪【かいとう】 ◆xn2vs62Y1I :2018/04/20(金) 23:02:23 9oX8a1jg0
□   □   □



「はあ………」


少女は、ただの少女でなくなってしまった。
彼女の名前は『渋谷凛』。本来あるべき世界ではアイドルをやっていた女子高校生である。
だからだろう。
別に見滝原の町並に違和感を覚えずとも、アイドルではない自分自身に違和感を覚える日が訪れてたに違いない。
結果は同じ。過程が異なるだけだ。

聖杯戦争と呼ばれるものに巻き込まれたのだが……それもアイドルとは無縁過ぎる。
戦争も魔法もない世界から不思議の国に迷い込んだシンデレラ。
未だに状況はサッパリ。
右も左どころか、上下左右どこも支離滅裂な状態の凛が、溜息ついたのは自らのサーヴァントを前にしていたから。

何故なら彼女が召喚したのは―――


「………『怪盗』?」


「ええ。私の名は怪盗シャノワール、以後お見知りおきを」


ほくそ笑みを浮かべる、黒のシルクハットと艶やかなマントを翻す、煌びやかな容姿の青年。
凛が召喚した英霊は―――そう『怪盗』だった。
凶悪犯罪者……見滝原を恐怖に陥れている猟奇殺人鬼と比べれば、まだマシなのかもしれない。
だけども。
怪盗、とは。怪盗を相方に聖杯戦争を勝ち抜けというのは、些か難しい話ではないか。
最も――凛は、聖杯を求めている訳ではない。この先、元のあるべき『アイドルの世界』に戻れるかが不安に感じているだけ。
加えて、一つ心配事が増えたのが説明するまでもない。


「まさかとは思うけど……何か盗むつもりないよね」


「まさか。召喚された以上は『怪盗』の名に恥じない様、盗み出すとも」


凛の反感を買うのも承知で堂々と宣言する怪盗の態度は、いっそ清々しい自己顕示欲を露わにしていた。
そして、凛もどこか予感していたので、変に驚いた様子もない。
ただ。
怪盗は少々顔を曇らせる。


349 : 盗【かいとう】と奪【かいとう】 ◆xn2vs62Y1I :2018/04/20(金) 23:02:56 9oX8a1jg0

「しかし……マスターも知っての通り。問題は『何を盗み出すか』の一点に絞られる」


「何を、って」


確かに『聖杯』を盗む。なんて普通のお宝目当ての、それこそ怪盗の定番方針を引っ提げるならまだしも。
聖杯戦争においての『聖杯』は、優勝賞品じゃあない。
自らの手で『聖杯』を作ると言っても過言な表現とも違う。
とにかく、怪盗にとっての『盗む標的』がサッパリ見当たらない状況。


「君の問いにはこう答えよう。『まだ盗む物は決まっていない』」


「できれば何も盗んで欲しくないんだけど」


「ならば、君は手を穢し『聖杯』を欲するのかな?」


「願いなんてないよ」


「それは安心だ。そして君も安心してくれたまえ、マスター。私は怪盗の信条にかけて、決して人を傷つける事はしない」


「―――」


なんだろうか。この説得力は。
不思議にも信頼できるような……だからといって盗みを『良し』とする訳ではないのだが。
戸惑う凛を余所に、世紀の大怪盗は予告するのだった。


「マスター。君は特等席で私の華麗なショーを見物出来る幸運の持ち主だ。必ずや偉大なる宝を君の前で盗み出そう」


350 : 盗【かいとう】と奪【かいとう】 ◆xn2vs62Y1I :2018/04/20(金) 23:03:22 9oX8a1jg0
【真名】シャノワール@グランブルーファンタジー
【クラス】セイバー
【属性】混沌・悪


【パラメーター】
筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:A 幸運:A 宝具:C


【クラススキル】
対魔力:C
 魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。

騎乗:D+
 乗り物を乗りこなす能力。
 「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。
 Dランクは大抵の乗り物なら人並みに乗りこなせる。


【保有スキル】
怪盗の美学:A
 狙った宝を盗み出す事を信条とする『怪盗』たらしめるスキル。
 盗みをする際は予告状を出す、人を傷づける事は避ける……基本中の基本だが、それを確かにさせる。
 怪盗が怪盗で『あり続ける』為の戒め。所謂、精神干渉妨害である。
 このスキルを保有するものは、盗み出したものに限り、消滅するまで盗品を保有し続けられる。


犯行予告:EX
 怪盗として盗みを予告する香水つきの予告状を差し出す。
 盗むと宣言した対象が如何なる場所にあろうと、距離関係なく位置を把握してしまえる。
 仮にサーヴァント・その宝具が霊体化状態でも捕捉可能。
 ただし、このスキルが発動するには『誰かがシャノワールの予告状を受け取り』『予告状の内容を認知する』二つの過程が必要。


魔力放出(水):C
 武器、ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させる。
 シャノワールは水の魔力を駆使し、攻撃だけでなく幻影を産み出す。


【宝具】
『変幻自在の大怪盗(ファントムイリュージョン)』
ランク:C 種別:対犯行宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:1〜200人
 機械人形を使い魔として使役する事から老若男女の様々な変装術。
 彼個人が保有する飛行艇までを網羅した変幻自在の妙技をひとまとめにした宝具。
 個別のスキルなどではなく、一連全てを宝具と定義したことにより英霊化前に実現できなかった文字通りの
 タネも仕掛けも無い。即座に発動可能な為、手間暇もいらなくなった。
 変装術に関してはサーヴァントとしての魔力やステータスの隠蔽も施される。ただし、変装が見破られれば無力化される。


『幻影を刻む刃(ファントムシーフナイフ)』
ランク:A++ 種別:対■■宝具 レンジ:■■■ 最大捕捉:■■





                      <Phantom secret>




.


351 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/20(金) 23:04:49 9oX8a1jg0
以上で追加OPの投下を終了します。
感想はまた、別で投下させていただきます。引き続き候補作の投下をお待ちしています。


352 : 星色ガール「ズ」ドロップ :2018/04/21(土) 00:18:45 6bZotDWA0
投下します


353 : 星色ガール「ズ」ドロップ :2018/04/21(土) 00:19:29 6bZotDWA0

 私、星降そそぐ。

 私がマスターってことはクラスのみんなに内緒なの。

 色々あって脱落の危機!?

 助けて大地君!

 星色ガールドロップ 第二星『ヘルプ、そそぐはマスター』

 来週も恋にドロップ、ドロップ



   *   *   *


354 : 星色ガール「ズ」ドロップ :2018/04/21(土) 00:19:50 6bZotDWA0

 投下終了します。











 投下終了しねーよォッ!!(バリバリ)



   *   *   *


355 : 星色ガール「ズ」ドロップ :2018/04/21(土) 00:20:11 6bZotDWA0

 などとタイトルをバリバリ破いて出てきたところでアニメはCMに入った。
 マシュ・キリエライトは今見たアニメの番組を吟味し、論理的に考察し、そして───

「日本ではこういうアニメがポピュラーなのでしょうか」

 困惑と共に結論を下した。
 いかんせん、マシュはカルデアの外、つまり日本の世俗に関しては疎い。
 本や資料を読んだから知識として日本の風土を知っているがこういったサブカルチャーを見るのは初めてだった。

(こういったアニメが好きなら先輩はさぞカルデアで退屈されていたでしょうね)

 目を瞑り俯きながら、自分の前のマスター、藤丸立香の姿を思い浮かべる。
 とそこへ───

「歌詞が思い浮かばなーい」

 今のマスター、星降そそぐの叫び声が2階から響いた。
 二階のマスターの部屋のドアが開く音。床の軋む音。階段からの足音。
 降りてきたのは赤みがかったプラチナブロンドの髪の毛の女子だった。
 後ろ髪を赤いリボンでまとめる彼女はマシュの前までやってくると両肩を掴んでいった。

「マシュさん、たすけてー!」
「すいません、マスター。私に作詞・作曲のスキルはありません」
「新曲の発表は来週なのに」

 雨で濡れた子犬のように目を潤ませながらマシュを見つめるマスター。
 何故か罪悪感がこみあげてきて堪らずマシュはアドバイスを出した。

「マスター。これは私の経験なのですが。
 自分が何のために歌(たたか)っているか。
 その想いを形にすればよいのではないでしょうか」
「何のため……それは勿論! 大地君!!
 そうか! 私の大地君へ想いを歌詞にすればいいんだ。ありがとうマシュさん!」

 またドタバタと二階へ上がっていった。
 何故また二階に上がったか。それは彼女が見滝原に持ってきていた「大地君ブロマイド集」とやらを見に行ったからだろう。

「エリザベートさんと清姫さんを足して二で割ったような情熱的な方です。
 まさに行動力の化身。でも悪い人じゃないようで良かった」

 それにしても何故自分がここにだろうか。
 マシュの最後の記憶は冠位時間神殿で魔神王ゲーティアの宝具を防いだところまでだ。
 あの時自分は蒸発した。聖剣億本級の熱量を浴びたマシュは消滅したはずだ。
 そもそも人理焼却されたはずなのに何故人類が活動しているのか。
 その答えは決まっている──────先輩が世界を救ったんですね。

 まるで自分の偉業のように誇らしく、頬が緩む。
 自分がここにいるのはベディビエールさんみたいに座から評価されたのだろうか。
 少なくても英霊として登録されるような偉業を成し遂げた実感はマシュにない。

(この世界について、もう少し調べないといけませんね)

 テレビに視線を戻すとさっきまでアイドルをやっていた子がいつの間にか死んで、ガイアの怪物を名乗る白い大きな何かによって蘇っていた。
 マシュは目を離した数十分のミッシングリンクを埋めようとして───

「訳が分からないです。」

 考察を投げ捨てて別のチャンネルを見た。
 キャスターがニュースを読み上げている。
 武道館でヘルシェイク矢野という人物のライブで入場者数が1万人を超えたとか、将棋界でAIが反乱を起こしたとか、スケルトンというレースで優勝者がロボットだったとか。

「訳が分かりません」

 ますます世俗との距離を感じつつ、そっとTVの電源を切った。

 2階からできたーというマスターの嬉々とした声が聞こえた。


356 : 星色ガール「ズ」ドロップ :2018/04/21(土) 00:20:44 6bZotDWA0

【サーヴァント】
【クラス】
シールダー

【真名】
マシュ・キリエライト

【属性】
秩序・善

【パラメーター】
筋力:C 耐久:A 敏捷:D 魔力:B 幸運:C 宝具:B+++

【クラススキル】
対魔力:A
 どのような大魔術だろうとA以下の魔術を無効化する。

騎乗:C
 正しい調教、調整がなされたものであれば万全に乗りこなせる

自陣防御:C
 味方、ないし味方の陣営を守護する際に発揮される力。
 防御限界値以上のダメージ削減を発揮するが、自分はその対象に含まれない。
 ランクが高くなるほど防御範囲は広がっていく。

憑依継承:
 サクスィード・ファンタズム。
 憑依した英霊のスキルを自己流に昇華する。
 マシュの場合は『魔力防御』。
 魔力放出と同じタイプで魔力を防御力に変換する。

【保有スキル】
誉れ堅き雪花の壁
 パーティ全体にかかる防御バフ。使用者の精神力を防御力に変換させるもの。

時に煙る白亜の壁
 時に煙るという名の通り、対象の時間軸を一時的にずらして攻撃を回避させる。
 ランクが上がれば高次元の攻撃も無効化する。

奮い立つ決意の盾
 一時的に自身の防御力を上げ、敵の攻撃を引き付けるスキル。

【宝具】
『いまは遥か理想の城』(ロード・キャメロット)
 ランク:B+++ 種別:対悪宝具 レンジ:??? 最大捕捉:???
 白亜の城『キャメロット』を展開し、その城壁で攻撃を防ぐ。
 マシュの精神が折れない限り白亜の城壁は如何なる攻撃からも対象を守り切るが、
 だれよりも前に出て攻撃を受け続けるマシュにその絶対防護は届かない。

【weapon】
巨大な盾。

【人物背景】
Fate/Grand Orderより。
最終章にて藤丸立香を守り切った後〜第四の獣に逢う前のマシュ。

【サーヴァントとしての願い】
自分が何故ここにいるのか。
マスターを守るべきなのか。
それとも願いを叶えるべきなのか。


357 : 星色ガール「ズ」ドロップ :2018/04/21(土) 00:21:12 6bZotDWA0
【マスター】
星降そそぐ

【出典】
星色ガールドロップ

【マスターとしての願い】
大地君のところへ帰りたい

【weapon】
なし

【能力・技能】
アイドル:
 歌って踊れるアイドル。

ストーキング:
 隠密的にすら見える献身的な後方警備。

【人物背景】
星色ガールドロップに登場するヒロイン。
主人公の平大地の幼馴染。銀河原高等学校の学生。
某事務所にスカウトされ、同級生の月野しずくと先輩の夕陽ころなと共にアイドルグループ『ドロップスターズ』を結成。秘密裏にアイドル活動を始める。
そんなときにマネージャーの病気より急遽として平大地をマネージャーに抜擢。
その間、デビルボルケーノとの対決や同じアイドルグループの二人と音楽性が違う事で解散しそうになるなど多くの苦難に晒される。
だがそれも平大地と乗り越え、共にアイドル活動をしていくうちに秘めていた愛情が暴走していった。


*   *   *


 人々は星に願い、それを夢見る。

 極天の流星雨。最終星。
 星の内海。白き花が咲き乱れる白亜の■■の前。
 彼女は魔術礼装『天の衣』を身につける。
 魂の物質化を、つまり願望を成就させる魔術礼装はホムンクルス以外の装着を許さない。
 体の端から黄金化していく中、■■■は■■■の■■を願う。



 ガイアの怪物。霊長の殺戮者。■■■■■■■は賞賛する。

 ───本当に、美しいものを見たと

 かくして星降そそぐは復活した。
 かつての約束が成就されることを夢見て




 Fate/Grand Order 〜Cosmos in Girl Drop〜

 最終章『星降る大地、大切な約束』






 いや、そうはならんやろ。



【方針】
君だけに教えねーよ。


358 : 星色ガール「ズ」ドロップ :2018/04/21(土) 00:22:08 6bZotDWA0
今度こそ本当に投下終了します。


359 : 星色ガール「ズ」ドロップ ◆Jnb5qDKD06 :2018/04/21(土) 00:28:46 6bZotDWA0
トリップキー忘れてました


360 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/21(土) 23:58:26 kq2QbnGw0
みなさま投下お疲れ様です。感想だけですが投下します。


水底より
 サーヴァントの仕様からマスターが疑似サーヴァントとなって活躍できるのは非常に面白いです。しなしながら、マスターの
 さやかが魔女化を遂げてしまった後。正義として再び戦うのに躊躇している以上、これから『悪』として戦うよりも
 そもそも再び戦場に立ち、敵に刃を向ける事ができるのかが問題に感じられます。
 アヌビス神が悪の救世主に忠誠を誓っている以上、迷いのあるさやかに再び試練が訪れることでしょう。
 投下していただきありがとうございました。


友よ■■■
 かつての絆を失った慶次の心情は非常に複雑なもので、一筋縄に結論に至る事はできないでしょう。しかしながら
 (ぶっ飛んだ世界観の)戦国武将ながら現代社会に適応できているのは、慶次にある彼らしさを一つ象徴していると
 思いました。マスターの記憶を視たアーチャーだからこそ、彼の絆に関して彼女なりに慶次の支えと成って欲しいですね。
 聖杯戦争を通して、慶次が答えを得ることを切に願います。
 投下していただきありがとうございました。


オンリー・マイ・ロード
 一見すると陽気で楽しくやっていけそうな主従に見えますが、梓が安易に聖杯を譲ると言ってしまったり、些細な
 問題をスルーしてしまっているのが、後に彼女の足元をすくってしまう気がしてなりません。
 ペヨーテも、現時点では梓に関して警戒も不審もかけていませんが、純粋な彼女をいざとなれば、どのような手段を取るのか
 戦争などとは無縁な梓だからこそ、今後が不安でなりません。
 投下していただきありがとうございました。


ロストマン&ロストガール
 過去はバラバラにしてやっても石の下から這い出て来ると言いますが、彼女・杉本鈴美に関してはその代表例でしょう。
 幽霊となってもなお、否。死人だからこそ、生者側にいる殺人鬼が平穏に生き続ける事を許せない。
 腐り果てた英霊がそれに答えるサーヴァントであったのが幸か不幸か。何であれ、彼女の復讐心に従いロストマンは
 この見滝原で悠々と生きる殺人鬼に忍び寄ることでしょう。
 投下していただきありがとうございました。


藤宮香織&バーサーカー
 彼女しか分からない『恐怖』。それを覆す為の奇跡が得られるかもしれない、聖杯の獲得を願う思いは十分理解できるの
 ですが、やはり魔術師でもない少女一人がバーサーカーを使役するには負担が重いでしょう。勝ち抜くには、それこそ
 立ち回りを徹底する他ないのですが……対して、マスターの事情を分かったうえで彼女の願いを、しっかりと意識に刻み
 叶えてあげようとするバーサーカー・アステリオスを応援したいものです。
 投下していただきありがとうございました。


力なんていらなかった
 中々に強力なサーヴァントを召喚したアリサですが、彼女自身の心理状態も相まって今後の方針や戦闘に不穏な影がちらつ
 いてなりません。加えてアーチャーの方は彼女への理解と整理がついているので、どうにか上手く関係を気付いて欲しい
 ものですが、お互いの性格にズレや噛み合わなさもあり、中々どうして難しいことになりそうですね。
 せめて聖杯戦争が本格化するまでに、アリサの気持ちの整理がつく事を願います。
 投下していただきありがとうございました。


filthy diamond
 クズだと分かっているのですが、この下っ端は少女相手でも相変わらずなのか……と呆れてしまうと言いますか。これも
 アサシン『らしさ』の一種(良い意味で?)なのでしょう。彼と沙々、どちらの能力も決定打に欠けてしまうもの
 なので、恐らく同盟を組む前提で行動しなければなりません。しかしどうも難しいと感じてしまうのは何故でしょう?
 ただ。沙々は容易に魔女の運命から救う悪の救世主をまだ知らない………
 投下していただきありがとうございました。


361 : おはよう、煉獄さん ◆BOugFaDblM :2018/04/22(日) 01:21:23 g7G791GE0
投下します


362 : おはよう、煉獄さん ◆BOugFaDblM :2018/04/22(日) 01:21:45 g7G791GE0
【05】

熱く、眩しく、太陽が空を焦がしていた。
雲ひとつ無い快晴で、空で輝くものを妨げるものはない。
夏の待ち遠しさに、季節が春を追い抜いてしまったかのような灼熱の日だった。

「うむ、今日も良い天気だ!」
汗が額からたらりと頬をつたい、地面に落ちる。
手で汗を拭い、男は建物の影を探して移動する。
うだるような暑さも、灼熱のアスファルトも、男にとってはむしろ心地よい。
太陽が燦々と輝くことは、それは人間の時間が伸びることを意味する。
夜の闇が世界を支配するまで、月と星、そして彼の知るものよりも遥かに明るい人工の光が味方をする時間が来るまで、
それまでは、この太陽が何よりも心地よい。

ガラリと戸を横に引いて、男は食堂へと入店する。
自動で動く戸には慣れたが、やはりぎょっとするものがある。
手動の戸の方が性に合っている、と男は考える。
「失礼!そこの席よろしいだろうか!」
昼食時の食堂は空腹の労働者で混雑している、他の客にぶつからないようにするりと動きながら、男はカウンター席に座る。
幸運にも一席だけ空いていたカウンター席に座った、少々詰め込むことになった隣の客に会釈した。
「感謝します!」

男の声は大きく、その身体は頭の頂点から、足の指の先に至るまで凛と伸びていた。
鍛えられたその五体が何時でも戦闘に移ることが出来るように、常に構えている。
炎を模した艶やかな外套を羽織る男が、その外套に隠して帯刀をしていることを誰も知らない。
その男が外套の下に着込む黒い蘭服は、人外の者の攻撃を想定した特別な繊維で出来ていることを誰も知らない。
果たせるかな、誰も知りはしないのだ。
この男が大正時代の人間であったことを。
この男が、人の身でありながら人の理の外にある恐ろしき鬼を狩る、強き剣士であることを。
鬼との戦いで、命を喪い――しかし、再び目を開いた時、この見滝原の街にいたことを。
すべての記憶を失い、中学校の歴史教師として働いていたことを。

得られたであろう幸福を捨てて、再び戦いに挑むことを。


363 : おはよう、煉獄さん ◆BOugFaDblM :2018/04/22(日) 01:21:56 g7G791GE0

【01】

「成程!!年号が変わっているな!!」
自室でなにかに急かされるように男はカレンダーを見た。
心がざわめいていた、何か忘れてはいけないものがあるのだと。
あるいはそれが無かったとしても、男の身体が――勝手にその変化を理解していたのだろう。
男は戦うために、その生を捧げて――鍛え、戦い続けたのだから。

穏やかに、穏やかに、安らかに男は過ごしていた。
その人生に戦いは無く、生徒に慕われる教師として授業に励む。
帰れば、父も母も弟も元気で暮らしている。
誰も死ぬこともなく、誰も傷つくこともない、安らかな生活。
それが天国であるというならば、その男にとってはまさしくそうであるのだろう。
剣士としての限界を知った父親が酒に溺れ、ただ無気力な日々を過ごすことはない。
いくら鍛錬を重ねても剣士になることが出来ず、弟が懊悩の日々を過ごすことはない。
心の底から尊敬する母親がこの世から去っているということはない。
そして、鬼と戦い死んだはずの自分も生きている――出来すぎている程に都合の良い、素晴らしい世界。
そうだ、鬼のことを忘れ、聖杯戦争に背を向け、穏やかに過ごすことが出来る。
夢を見るように、うつらうつらと暮らすことが出来る。

「大正……昭和……平成、うむ!そもそももっと早く気づくべきだった!
俺が生きた時代にこんな街はなかったのだからな!全く!恥ずかしい!!」

それでも、失った過去を求めようなことはしない、過ぎ去った時間に救いを求めたりはしない、
偽りの現実に身を委ねることはしない、逃げたりはしない。

母が死に、父が絶望し、弟が苦悩した日々。
自分の命を懸けて、掌から命を零さないように必死に戦った日々。
男がいくら鍛えようとも、どれだけ自らを犠牲にしようとも、上手くいったことの方が少ないだろう。

それでも――男にとっては、あの日々は尊ぶべきものであった。
己の天国でなくても、誰にとっての天国でなくても、それでも――幸福な日々だった。

母は、己の持つ力の正しい使い方を――弱き者のために戦うということを教えてくれた。
父は、戦い方を教えてくれた――弱き者を守る力を与えてくれた。
弟は、道を教えてくれた――弟の道標となるべく正しい生き方をすることが出来た。

何人も、尊敬できる人間に出会うことが出来た。
何人も、守ることが出来た。
あの鬼との戦いで死んだが――立派な後輩に、後を任せることが出来た。

忘れない――忘れられるものか。

強く、拳を握りしめる。
拳には三組の鮮やかな紋様――令呪が刻み込まれる。

息を大きく吸い、吐く。

息を深く吸い、吐く。

身体に、炎が宿る。

心が、燃える。

煉獄杏寿郎は記憶を取り戻した。


364 : おはよう、煉獄さん ◆BOugFaDblM :2018/04/22(日) 01:22:10 g7G791GE0
【03】

自室の片隅、畳張りの上に衣装箱が置いてある。
何故、気が付かなかったのだろうか――否、気づけなかったのだろう。
だが、どちらでもいいことだ。もう煉獄はそれを見ることが出来る。
後は、その中のものを確認するだけだ――きっと、中にはそれが入っているはずだ。

煉獄は衣装箱の蓋を開け、スーツを脱ぎ捨てる。
鬼殺隊――己が属していた鬼を狩る者の組織、その制服。
己の心の内を表すような燃え上がる炎が描かれた外套。
そして一振りの刀――その名を日輪刀、するりと鞘を抜けばその刀身は燃え上がるように炎の朱色に染まる。
剣士として力量を持つものがその刀を持てば、刀身は持つ者の性質によって色を変える。

「……あ、兄上?」
なにか異様な気配を察したのだろうか、弟の千寿郎が煉獄の部屋へと入り込む。
兄は、弟の方へゆっくりと振り向き、声を掛けた。

「千寿郎、大事な話がある。父上と母上も呼んでくれないか?」
「一体、その刀は……あの、仕事で疲れてるんだったら俺……」
「千寿郎」

兄は、弟を見た。
元の世界の千寿郎とその姿は変わらない。しかし、その生の有様は大きく異なる。
時代が変われば、一族と鬼殺隊の関わりがなければ、あるいは、あるいは――
そのような"もしも"を、煉獄は考えない。
煉獄家に生まれたから、鬼と戦っているのではない。鬼と戦うことを選んだのは自分だ。
だから、千寿郎もきっと何にでもなれる。
兄は、弟を信じている。

「夢から覚める時が来たんだ」


365 : おはよう、煉獄さん ◆BOugFaDblM :2018/04/22(日) 01:22:21 g7G791GE0
【04】

「杏寿郎」
「はい」

眼の前には父、母、弟。
煉獄は三人と向かい合っていた。
千寿郎は理解が出来ないまま、おろおろと不安そうに周囲を見渡し、
父は、どこか諦めたような、笑っているような、複雑な表情で煉獄を見据え、
母は、ただ――真っ直ぐと、煉獄を見て、言葉を放つ。

「教師を辞めると」
「ええ、やめます」
「この家からも出ていくと」
「ええ、出ていきます」

「何故ですか、杏寿郎。何をそんなにも急いでいるのですか。
仕事を辞めて、生活費はどうするのです。家を出て、どこで暮らすというのです」
「……やらなければならないことがあります」
「自分の生活よりも優先することなのですか」
「はい」

「何よりも大切なことなのですか?」
「……ええ、命を懸けてでもやらなければならないことです」

――なぜ自分が人よりも強く生まれたのかわかりますか
――弱き人を助けるためです

貴方が教えてくれたことなのですよ、と煉獄は心中で思う。
言った所で何の意味もないだろう、目の前の父も母も弟も、本人ではない。
姿だけが同じの別人――それでも俺を家族として大切に扱ってくれた大切な人達だ。

貴方達を守りたい。

「……杏寿郎」
「……はい」

「行きなさい、貴方が信じた道ならば、決して間違ったものでないと母は信じています。
真っ直ぐに、真っ直ぐに、強く、優しく、生きなさい」
「……死ぬなよ、杏寿郎」

父と母に何かを言おうとして、しかし煉獄は何も云うことが出来なかった。
ただ、幸せに生きていて欲しいとだけ願う。
己のことは忘れて欲しいとも思う。

ただ、煉獄は真っ直ぐに――頭を下げる。

「……兄上」
「千寿郎」

「父上と母上を、よろしく頼む」
「……はい!」

息を吸う、深く深く吸う。大きく大きく吐く。
炎が空気を取り込んでより大きく燃えるように。
身体の中にある炎が大きく大きく燃えるように。

「行って参ります!!」


366 : おはよう、煉獄さん ◆BOugFaDblM :2018/04/22(日) 01:22:46 g7G791GE0
【02】

握りしめた拳の中から、それが初めから存在していたかのように装飾が成された卵型の宝石――ソウルジェムが現れる。
それが果たす役割も、聖杯戦争のルールも、最初から知っていたかのように思い出す。
血鬼術――煉獄の敵対者たる鬼がつかう超常の能力の可能性を否定し切ることは出来ない。
だが、刻み込まれた知識はそうでないよう――煉獄を納得させる。
まだ、戦うべき敵を見据えることは出来ていない。故に一時保留。

「初めまして……貴方が私のマスターですか?」
空気が一変し、煉獄は瞬時に戦闘態勢を取る。
古代中国で動物の呼吸法を模すことで、その動物の力を人間が得たという逸話に知られるように、
あるいは東洋において仙道と呼び伝えられる特殊な呼吸法に知られるように、
ある種の特殊な呼吸法においては呼吸器官や血流器官を活性化させ、身体能力を強化する効用を持つ。
鬼――人智を超えた恐るべき怪物と敵対するため、人間は人間のまま強くなるために、呼吸法に於いてその身を強化している。
煉獄が修める呼吸法は――炎の呼吸。
敵対者と戦うための刀は今はない、しかし――刀が無いから、大人しくやられるというぐらいならば、最初から鬼と戦おうなどと誰も考えない。
煉獄は突如として現れた妙齢の女性を見据える。
異常なまでに豊満なその乳は、武器を内蔵しているためであろうか。

穏やかな笑みを浮かべた彼女に敵意は無い、サーヴァントと呼ばれる存在だろう。
そして、その尋ねるところに嘘がないのであれば、目の前の彼女こそが煉獄のサーヴァントなのであろう。

「俺にはわからないが、きっと、君が俺のサーヴァントなのだろう!」
「……わかりませんか?」
「申し訳ないが、初めてのことなので断言が出来ない!」

自信満々に言い切られてしまい、サーヴァントも正直な所困った。
正直な所、困ったが――しかし、ここは私が貴方のサーヴァントであることを伝えて安心させてあげることが大事であると彼女は考えた。

「改めて初めまして、源頼光――貴方のサーヴァントですわ、マスター」
にこやかに源頼光は母性たっぷりの表情で、煉獄を見つめる。
そのおっぱいで頼光は無理でしょ(笑)

「頼光……かの鬼退治の英雄、源頼光卿!女性であられましたか!」
煉獄の瞳に驚愕の色が浮かぶ。
サーヴァント――神話や伝説に於いて語られる英霊、だが源頼光であるとは。
鬼殺隊に源頼光を知らぬ者はいないだろう。
それは伝説に過ぎない、それは御伽噺に過ぎない、それは夢物語に過ぎない。
それでも、誰もが皆憧れるのだ――鬼退治の英雄に。
桃太郎の様になりたいと、源頼光の様になりたいと。

「鬼殺隊!炎柱!!煉獄杏寿郎です!よろしくお願いいたします!!」
「……鬼殺隊?」
深く頭を下げる煉獄に対し、鬼殺隊という言葉を聞き、頼光は深く考え込む。
聞いたことがある様な気がする、人から変じた鬼を狩る者たち。
鬼舞辻無惨という鬼が生み出した鬼を狩る者たち。

「鬼と戦っているのですね」
「ええ」
「辛くはないですか、人の身のまま、鬼と対峙することは」
「何一つとして辛いことはありません、俺は人間ですから」

人間が人の身のまま、鬼と戦っている。
頼光はその言葉を聞いて、泣きたいような笑いたいような祝福したいような呪いたいような痛みも喜びも怒りも嫉妬も心に広がる不思議な平穏も激情も全ての感情が入り乱れて、入り乱れて、
どうしていいかわからずに、一瞬だけ、一瞬だけ、一瞬だけ、頭の中が白くなった。

頼光も、金時も、きっと桃太郎もその出自が示すとおりに――純粋な人間は、鬼とは戦えないのだろう。
そう思っていた、けれど実際のところは違うのだろう。
人間は、人間のままでも鬼と戦える。
見ればわかる、肉体に刻み込まれた鍛錬と戦いの象徴が。
人生を捧げるほどの鍛錬と、命すら捨てていいと思えるほどの精神性で――人間は鬼と戦える。

羨ましいことだ、人間にも怪物にもなれない自分には。
愛おしいことだ、人間にも怪物にもなれない自分には。
忌まわしいことだ、人間になれなかった自分には。

それでも――

「……杏寿郎、ありがとうございます」


367 : おはよう、煉獄さん ◆BOugFaDblM :2018/04/22(日) 01:22:59 g7G791GE0
ただ、心の底から感謝したい。
人間のまま、鬼と戦ってくれることに。
血を吐きながら、治らぬ傷を引き摺りながら、戦ってくれることに。

源頼光は人間ではない、生まれついてのバケモノである。
だからその力を利用するために鬼を殺すための英雄になった。なってしまった。

人間のフリをしながら、戦ってきた。
人間のフリを長く続けてきて、バケモノにはもうなれない。
歪なまま、鬼を退治し続けた。
歪なまま、鬼と対峙し続けた。

だから、目の前にある"人間"が美しく、眩しい。
夜闇の中で焚き火を見つけたように、明るくて温かくて嬉しい。

この子を守ってあげたい。
頼光の中で母が如き思いが湧き出す。

「……頼光卿、俺と一緒に戦ってくれますか。
聖杯戦争で罪なき民が巻き込まれぬように、聖杯が悪しき者の手に渡らないように」
「……杏寿郎、貴方自身に願いは無いのですか?」

――叶えて、上げますよ。
心の中で頼光は呟く。
弱く、強く、愛おしい、子。
鬼殺の剣士。

頭を振って、煉獄は応える。
「俺は……一度死んだ身です、鬼に殺されてこの世界にやって来ました」
「後悔はないのですか、生き返りたいとは思いませんか?」

「ありません、俺は幸せ者でした。鬼を討つことも頼れる後輩が俺の後を継いでくれます」
そして、何より――煉獄は思い出す。

――母上……俺はちゃんとやれただろうか。やるべきこと、果たすべきことを全うできましたか?

――立派にできましたよ。

幻影だったのかもしれない、だとしてもそれが何だというのだろう。
幸福だったのだ、間違いなく、世界で一番の。
二度と会うことの出来ない母親に、自分の行いを認められて逝くことが出来た。
人生を何度やり直しても、これ以上の幸福はない。
だから、煉獄のやることは変わらない。
人を救うために、この聖杯戦争でも戦い抜く。

「……嗚呼」

なんて、真っ直ぐな目をしているのだろう。と頼光は思う。
なんて愛おしいのだろう、と頼光は思う。
誰にも傷つけさせたくない、子を守るように――この頼光が守りたい。

「杏寿郎、この聖杯戦争――この源頼光が貴方を守ります。
だから、母の様に……私を思い、頼ってくださいね」
「いえ、俺の母は世界に一人ですのでお気持ちだけ受け取っておきます。
それと、俺のことは守らなくて結構ですので、頼光卿も俺と一緒に罪のない人を守っていただけますか」

「早速反抗期……母は悲しいです……」


368 : おはよう、煉獄さん ◆BOugFaDblM :2018/04/22(日) 01:23:11 g7G791GE0
【06】

食堂で腹ごしらえを済ませ、煉獄と頼光は当てもなく彷徨う。

「杏寿郎」
「どうしました?頼光卿」
「そろそろ遠慮しないで、私を母と呼んでもよいのですよ。恥ずかしがらずに」
「いえ、大丈夫です!けれど……」

「我々鬼殺隊は皆、頼光卿の系譜を継ぐ子と言えるのかも知れませんね」


369 : おはよう、煉獄さん ◆BOugFaDblM :2018/04/22(日) 01:23:25 g7G791GE0
【クラス】
バーサーカー

【真名】
源頼光

【属性】
混沌・善

【パラメーター】
筋力:A 耐久:B 敏捷:D 魔力:A 幸運:C 宝具:B++

【クラススキル】
狂化:EX
理性と引き換えに身体能力を強化するスキル。
頼光の場合、理性は失われておらず、元の理知的な彼女のままだ。
だがその精神は鬼の血の濁りと、異常なまでの母性愛の発露で道徳的に破綻している。(愛するものの為ならあらゆるものを排除し、また、狂信的に守ろうとする)
まっとうな愛を語りながら、愛の為なら社会道徳が目に入らなくなり、あらゆる行為を容認する……つまり、精神的に病んでいる。
その破綻を外部にまったく悟らせないところが他のバーサーカーたちと一線を画している。
基本的に説得、改心させる事は不可能。

【保有スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
本来のクラスであればBランクだが、属性変化しているためランクダウン。

騎乗:A+
騎乗の才能。
獣であるのならば幻獣・神獣のものまで乗りこなせる。
ただし、竜種は該当しない。

神性:C
牛頭天王を源流としており、鬼の血が流れている。

無窮の武練:A+
ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
武装を失うなど、たとえ如何なる状況であっても戦闘力が低下することはない。

魔力放出(雷):A
牛頭天王は帝釈天(インドラ神)の化身でもあるため、源頼光は北野天神(雷神)の力を有している。
サーヴァントとしては、魔力放出として表現される。

神秘殺し:A
平安時代最強の神秘殺しと謳われた在り方がスキルとなったもの。
対神秘への特攻として働く。

【宝具】
〇『牛王招来・天網恢々(ごおうしょうらいてんもうかいかい)』
ランク:B++ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜100 最大補足:200人

魔性・異形としての自己の源である牛頭天王、その神使である牛(あるいは牛鬼)を一時的に召喚し、これと共に敵陣を一掃する。
神鳴りによって現れる武具は彼女の配下である四天王たちの魂を象ったものであり、金時の「黄金喰い」、鬼火を纏う「鬼切」、長巻の「氷結丸」、風を纏う「豪弓」が現れる。
強大な牛鬼を退治したという頼光にエピソードを昇華し取り込むことで、神使の破壊力は本来のものよりも上昇している。
ゲーム中のモーションではそれぞれ四天王の武器で攻撃を仕掛け、締めに自らの刀から雷撃を食らわせる。

【人物背景】
アニヲタwikiとか型月wikiとかを読めばいいと思います

【サーヴァントとしての願い】
母と子の愛に満ちた平穏な世

【マスター】
煉獄杏寿郎

【出典】
鬼滅の刃

【マスターとしての願い】
願いは無い、聖杯戦争で罪なき者が巻き込まれぬように、聖杯が悪しき者の手に渡らぬように戦う

【weapon】
日輪刀:wikipediaとかを見ればいいと思います

【能力・技能】
炎の呼吸:wikipediaを読めばいいと思います

【人物背景】
原作を読めばいいと思います


370 : おはよう、煉獄さん ◆BOugFaDblM :2018/04/22(日) 01:24:02 g7G791GE0
投下終了します
鬼滅の刃1〜11巻好評発売中!


371 : 名無しさん :2018/04/22(日) 01:28:27 g7G791GE0
1〜11巻と書きましたが、1〜10巻の間違いです


372 : ◆dt6u.08amg :2018/04/22(日) 01:49:25 NoOoLLb60
投下します


373 : 『いいよ、一緒にいてやるよ』 ◆dt6u.08amg :2018/04/22(日) 01:50:22 NoOoLLb60
どうやらあたしは、見滝原中学校の美樹さやかであるらしい。

いやまぁ、あたしは生まれたときからずっと美樹さやかなんだけど、そういう意味じゃなくて。
普段の見滝原中学校と何かが違うこの場所で、あたしは普段通りに美樹さやかとして暮らしている。
それがとてつもなく不思議で、とてつもなく違和感を覚えてしまうのだ。

魔法少女がゾンビみたいなものだと知って、がむしゃらになって戦い続けて、ソウルジェムがすっかり濁りきって、何もかもに絶望して――
それがあたしの最後の記憶。意識が途切れたと思ったら、どういうわけか今までどおりの日常に放り出されていた。

あたしが魔法少女である事実は変わらないけれど、ソウルジェムは新品同様に澄み切っている。
けれど魔女やその使い魔が現れる気配はなくて、代わりに妙ちくりんなイベントの準備が人知れず進んでいるらしい。

聖杯戦争。サーヴァント。令呪。透明なソウルジェム。
知識としては頭にしっかり染み付いていてびっくりするくらいだけど、気持ちの上ではいまいち受け入れきれていなかったりする。

だって、そうでしょ。
願いを叶えて、魔法少女になって、魔女とその使い魔と戦っていたと思ったら。
英霊なんてモノを使い魔にして、殺し合って、それから願いを叶えるなんて。
まるで逆だ。あべこべだ。順序がまるごとひっくり返ってる。

「さやかちゃん、一緒に帰ろ?」

仲のいい友達が笑顔で放課後のお誘いを持ちかけてくる。
正直に言うと、二つ返事で乗っかって遊びに行きたい。
もう戻れないと思っていた日々に頭のてっぺんまで浸っていたい。
けれど、今はダメだ。今のうちにやらなきゃいけないことがたくさんある。

「ごめーん、今日は用事あってさ。また今度ね!」

後ろ髪を引かれる思いで教室を出て、図書室に足を運ぶ。
まずは下調べだ。昔から己を知れば何とやら。
いつもなら絶対に見向きもしないタイプの本を何冊か手に取って、テーブルの上に積み上げる。




――Ophelia。ヨーロッパの女性名。
――日本語表記はオフィーリア、オフェリア、オフェリヤなど。

――ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『ハムレット』の登場人物。
――父殺しの復讐を誓い狂気を装うハムレットの言動に心を痛め、ハムレットに誤って父を殺されたことで狂気に陥り、川に沈んで溺死した。




「うーん、有名人ではあるっぽいけど、やっぱり違うよね。馬になんか乗りそうにないし。他にオフィーリアって名前で有名な人とかいるのかな」

何冊かの本をめくってみたけれど、あたしの期待したような情報はどこにも乗っていなかった。
しょうがないので、こちらは後回し。暗くなる前にもう一つの用件を済ませることにする。

学校を出て、少しばかり南へ。まばらな住宅街の途中で立ち止まる。
何もないように見える空間に手を伸ばすと、指先が何かに触れて弾かれた。

結界だ。この見滝原は結界で外から切り離されている。
知識としては最初から知っていたけれど、直接確かめてみると本当に不気味だ。
しかも町の人達がそのことを全く気にしていない……というか気付いてもいない様子なのが更に気味が悪い。

「……やっぱり、おかしいよね、これ」

この見滝原は何かが違う。あたしが知っている見滝原じゃない。
だからあたしは、今の自分のことをこう考えている。
"この見滝原"にある見滝原中学校の美樹さやかというポジションに収まった、"こことは違う見滝原"の美樹さやかなんだと。

時間が巻き戻ったわけじゃない。カレンダーの日付だってあたしが覚えているのとはぜんぜん違う。
魔女が悪さをすることもない。キュウべぇの姿すら見かけない。

あたしは、頭の中にいつの間にか収まっていた、聖杯戦争とやらについての知識を引っ張り出してみた。

『透明なソウルジェムを手にした者は、見滝原に転移して聖杯戦争の参加資格を得る』
『現地で記憶を取り戻すことでマスターとして覚醒し、サーヴァントを召喚する』

透明なソウルジェムをどのタイミングで手にしたのかは、正直よく覚えていない。
他の記憶はしっかり取り戻しているから、思い出せないんじゃなくて、最初から記憶すらしていなかったんだと思う。
喩えるなら、帰り道に石ころを蹴飛ばしたことをいつまでも覚えていないようなものだ。
きっとその程度の"何気なさ"で手に入れてしまったんだろう。絶望に打ちひしがれて、周りのことが目に入らなくなっていた間に。


374 : 『いいよ、一緒にいてやるよ』 ◆dt6u.08amg :2018/04/22(日) 01:51:07 NoOoLLb60
問題なのはそこじゃない。見滝原に転移して云々というあたりだ。
最初、あたしはてっきり『見滝原の外で透明なソウルジェムを拾った人は、見滝原に強制的に連れてこられる』という意味だと思っていた。
けれど色々な違和感を見つけていくうちに、その考えは間違っていたと思うようになった。

ここはあたしが暮らしてきた見滝原とは違う。
元々の見滝原はまた別にあって、そっちではきっとあたしはいなくなったことになっている。
ひょっとしたら体は置き去りにされていて"美少女女子中学生謎の変死"みたいなことになっているかもしれない。

「聖杯……ほんとに願いを叶えてくれるっていうなら……」

戻りたい。思い浮かぶ願いはそれだけだった。

でも、どこまで?
一体どこまでやり直したら満足できる?
願いすらもなかったことにする?

……頭の奥がズキズキする。考えているだけで吐き気がしそうだった。

そもそも、いくらなんでも気が早すぎる。
こういうのは取らぬタヌキの何とやらっていうのだ。
確かタヌキの別名ってマミっていうんだったっけ、とか、どうでもいいことまで考えまくって頭の中をリセットする。

まず考えないといけないのは、聖杯戦争を生き残る手段についてだ。
もしもあたしが戦いを拒否しても、この町のどこかにいる他のマスター達があたしを見逃してくれるとは限らない。
サーヴァントを失ったマスターでも、他のサーヴァントと契約して復帰できるわけだから、生きている限りは蹴落とすべきライバルなのだ。

まずは殺されないこと。生き残ること。それを第一に考えよう。
その過程で聖杯が手に入ったら、願い事はそのときに改めて考えよう。

「……とにかく、自分のサーヴァントのことくらいは理解しとかないとね」

周りに人がいないことを確かめてから、契約を結んだサーヴァントを呼び出す。

「出てきて、バーサーカー」

すると急に霧が辺りを包み込んで、人間離れした大きさのサーヴァントが目の前で実体化した。
歪んだデッサンの馬に乗って、赤い着物と大きな槍を身に着けていて、首の上には頭の代わりにロウソクが生えていて、めらめらと燃え上がる炎が髪のようになびいている。
……あたしには英雄というよりも魔女にしか見えない。
最初に現れたときも、魔女が出たかと思って身構えてしまったくらいだ。

「Ophelia……いろいろ調べてみたけど、やっぱりどっかの英雄とか有名人ってわけじゃないんだね。本当に……魔女だったりするのかな」

バーサーカーは何もしゃべらない。基本的にそういうものらしい。
だからこいつの正体も、何のために召喚に応じたのかもさっぱり分からない。

「ま! ほんとに魔女だったとしても、今はあたしの使い魔なんだし! きっちり働いてもらおーじゃありませんか!」

そんな風に空元気で強がってみても、バーサーカーは完全ノーリアクション。
魔女でも騒がしかったり活発だったりする奴はいるのに、こいつは静かに立っているだけだ。
放っておいたら霧の中をうろうろ歩き回っているだけなんじゃないだろうか、なんて思ってしまう。

「これじゃあ作戦会議もできないんだけどなぁ……まぁしょうがないか」

バーサーカーというクラスは強さがアップする代わりに魔力の負荷も大きくなるらしい。
一方こいつは、こうやって大人しくしている間は負担らしい負担も感じない。
それだけでも十分。あんまりあれこれ望み過ぎたらバチが当たるというものだ。

「それはそうと、召喚に応じたってことは、あんたにも願いがあるってこと?」

そんなことを尋ねてみたけれど、バーサーカーは何も答えない。
頭の代わりに生えている大きなロウソクの側面を、まるで私を見下ろすように傾けているだけだった。


375 : 『いいよ、一緒にいてやるよ』 ◆dt6u.08amg :2018/04/22(日) 01:53:10 NoOoLLb60
【CLASS】バーサーカー
【真名】Ophelia
【出典】魔法少女まどか☆マギカ ポータブル
【性別】元々は女性
【身長・体重】共に不明
【属性】混沌・狂

【パラメータ】筋力A 耐久B 敏捷A+ 魔力B 幸運C 宝具B

【クラス別スキル】
狂化:B
 全てのパラメータをランクアップさせる。
 理性と言語能力は最初から持ち合わせていない。

【固有スキル】
幻術:E
 実体化している間はこのスキルによって必ず霧を発生させる。
 かつては高度な幻惑能力を持っていたと思われるが、それを駆使することはない。

使い魔:C
 女官の人形のような姿をした使い魔の使役が可能。
 周囲を斥候する先導タイプと、それによって召喚される通常タイプの二種類。
 理由は不明だが、バーサーカーが使い魔に接近することはない。

ドレイン:B
 使い魔が使用するスキル。射程は短く、至近距離の対象にしか使用できない。
 対象のサーヴァントが幸運判定に失敗した場合、パラメータをランダムに1ランク低下させる。
 このデバフはバーサーカーが現界している限り継続する。

武旦の魔女:A
 その性質は自棄。
 与クリティカル率と被クリティカル率が共に上昇する。

【宝具】
『別れを唄う紅き亡霊(ロッソ・ファンタズマ)』
ランク:B 種別:対人(自身)宝具 レンジ:- 最大捕捉:2体
 最大HPを除き、本体と全く同じステータスを持つ分身を生成する。
 同時に維持できる数は最大二体。魔力が続く限り再度の生成が可能。
 分身へのダメージは本体にフィードバックされず、消滅してもデメリットはない。
 サーヴァント三体相当の戦力による猛攻撃は対軍宝具の真名解放にも匹敵する。
 なお、バーサーカーが言語機能を持たないためか、この宝具は真名解放を必要としない。

【weapon】
体格相応のサイズの槍を振るう。

【人物背景】
武旦の魔女。その性質は自棄。
霧の中を虚ろな足どりで永遠にさまよい続ける魔女。
いつも傍らにいる馬が何だったのか魔女にはもう思い出せない。

ゲーム「魔法少女まどか☆マギカ ポータブル」で登場した新規デザインの魔女。
プレイヤーキャラクターや使い魔がフィールド1マス分のサイズであるのに対し、Opheliaは3×3の9マス分のサイズの大型エネミー。
他の魔女と異なり、ボス戦には使い魔が出現せず、魔女自身が分身してその代わりとなる。

ちなみに名前の読みは「武旦(うーだん)」「Ophelia(オフェリアまたはオフィーリア)」

【聖杯にかける願い】
不明。




【マスター名】 美樹さやか
【出展】魔法少女まどか☆マギカ
【性別】女

【能力・技能】
癒やしの力を持つ魔法少女。高い自己再生能力を持つ。
武器は片刃の剣。大量展開や変形などかなり多彩。

【人物背景】
本ロワの舞台のベースになっている「魔法少女まどか☆マギカ」の原作キャラクター。
詳しい設定は周知の事実ということで割愛。

マスターとなったタイミングは第8話で魔女化する直前。
このため、魔女が魔法少女の成れの果てであるという事実を知らない。
また、第8話までの時点で使用されていない裏設定的な魔法も当然知らない。
故にバーサーカーの宝具「ロッソ・ファンタズマ」の名を見ても、その正体を悟ることはない。

【聖杯にかける願い】
考え中。まずは生き残ること優先なので決めるのは後回し。
ただ、元に戻りたい、という漠然とした思いは抱いている。

【方針】
ひとまずは防戦メイン。


376 : ◆dt6u.08amg :2018/04/22(日) 01:53:34 NoOoLLb60
投下終了です


377 : ◆uL1TgWrWZ. :2018/04/22(日) 03:46:10 dK0g1VyA0
投下します


378 : The Boy and The Blade ◆uL1TgWrWZ. :2018/04/22(日) 03:47:32 dK0g1VyA0

「――――どうだ?」

 青年――――衛宮士郎は、不安と期待をない交ぜにしたような声で問いかけた。
 彼の視線の先には、また青年。
 年の頃は、両者とも同じ程度であろう。
 二人とも日本人であり、十代後半。高校生ぐらいの年齢だ。
 彼らは今、座卓を挟んで向かい合っている。
 丁度対面に座り、士郎が正面の青年に問いかけた形だ。

「セイバーの口に、合うといいんだけど」

 セイバー……そう呼ばれた青年が、少し驚いたような顔をした。
 僅かに茶色がかった髪。
 白いシャツと紺のパンツの間を分けるような、赤い腰布が特徴的な青年だ。

「……ああ、うまいよ。自信持っていいんじゃないか」

 言葉少なに、端的に。
 しかしその顔は、嘘を言っているようにも見えない。
 穏やかに笑い――――彼は、箸で摘まんだおひたしを口に含んだ。

「――――そうか。なら良かった」

 その言葉に胸を撫で降ろし、士郎もまた食事を始める。
 つまるところ、二人は向かい合って食事をしていた。
 作ったのは当然、士郎だ。
 幼いころから、家事に疎い義父の代わりに台所を担当してきた。
 振舞った相手と言えば、義父と、姉貴分と、妹分と、後は友人ぐらいであったが……目の前の青年のお眼鏡に叶ったらしい。

「(やっぱり、好みってものもあるからな)」

 料理の腕に関しては、それなりに自信を持っている。
 だがそれはそれとして、彼の口に合うかというのは少しだけ不安があったのだ。
 なぜなら――――彼は、普通の人間ではないのだし。

「ていうか、セイバーはやっぱ変だよな」

 焼き魚をおかずに白米を咀嚼しながら、つぶやいたのはセイバーだ。

「ああ、うん……やっぱ、違和感あるよなぁ」
「サーヴァントはクラスで呼ぶものらしいけどさ。俺の場合、その辺の高校生とあんま変わんないだろ?」


379 : The Boy and The Blade ◆uL1TgWrWZ. :2018/04/22(日) 03:48:46 dK0g1VyA0

 セイバーは、士郎が召喚したサーヴァントだ。
 ある日、土蔵での魔術訓練中に唐突に現れた。
 唐突に表れ――――その時、士郎は全ての記憶を思い出した。
 自分の生まれ育った街が見滝原などという街ではなく、冬木という街であったことを。
 近所には姉貴分が住んでいて、学校には親友や後輩がいて。
 そのような街に住んでいたということを、彼は思い出した。
 そして――――聖杯戦争という魔術儀式に巻き込まれたことを、理解したのだ。

「まぁ、他のマスターなら、サーヴァントの気配でわかるんだろうけどな」
「刀も持ってるし、クラスもすぐにわかるだろうけど」

 そう言って、セイバーは傍らに置いていた自らの刀に視線をやる。
 刀――――刀だ。
 現代日本に似つかわしくない、鞘に包まれた日本刀。
 彼がセイバーである所以であり、証明であるそれ。

「じゃあやっぱり、名前で呼ぶことにするよ」

 士郎は苦笑した。
 セイバー……そんな珍妙な呼び名よりも、彼本来の名の方がよほど呼びやすい。
 なにせ同じ日本人なわけなのだし。
 ……否。
 厳密に言えば――――彼は、日本で育ったとも言い切れないのだが。

「ああ。悪いな。俺も、聖杯戦争にあんまり慣れてなくって……おい、笑ってんじゃねぇ」

 ふと、穏やかに笑っていたセイバーが悪態をついた。
 眉を顰め、言葉を荒げる。
 ……しかし、その視線は士郎には向けられていない。
 視線の先は、自らの胸。
 箸を握った手で、ドンと自らの胸を叩く。
 まるで自分の胸の中の誰かと会話するかのような、奇妙な光景。

「……? どうしたんだ?」
「あ、あー、いや、な、なんでもない。ちょっと、な。ははは」

 ……怪しい。
 妙に歯切れ悪く、照れたように笑っている。
 もう少し追求してみるか、と士郎が口を開きかけたところで、セイバーは慌てて机の下に手を入れた。

「ほら、チコ! お前も飯食うか? 士郎の飯はうまいぞ!」

 手の中にいるのは、白い鼠だ。
 チコと呼ばれた小さな鼠は、鼻先をひくつかせながらセイバーの手の中を飛び降りて食卓のおひたしにかじりつき始める。
 不衛生――――とは、言うまい。
 彼(?)は、他ならぬセイバーの友なのだから。

「あー……次は、俺に飯を作らせてくれよ」

 話題を逸らした自覚があるのか、大分気まずそうに硬く笑いながら、セイバーはそう切り出した。

「セイバーが?」
「ああ。俺、親父がズボラでさ。ロクに家事もしないから、俺が代わりにやってたんだ」
「ははっ。それじゃあ、俺と同じだな」
「士郎も? はは……お互い、適当な親父には苦労するな」

 士郎の父――――切嗣は、ロクに家事も出来ない人間だった。
 晩年は病気がちだったこともあり、輪をかけて。
 幼い士郎は、これではいけないと進んで家事をするようになった。
 掃除洗濯、炊事に家計簿。
 主夫のような生活を、かれこれ十年近くは続けている。


380 : The Boy and The Blade ◆uL1TgWrWZ. :2018/04/22(日) 03:49:29 dK0g1VyA0


「でも――――やっぱり、爺さんは俺の憧れだった」


 ふと、士郎が表情を引き締める。
 談笑の気配から、真剣な話へと。

「俺は、爺さんの代わりに……“正義の味方”になりたいんだ」
「…………」

 正義の味方。
 切嗣が諦めてしまった、遠い夢。
 あの日、あの夜、士郎が受け継ぐと決めた夢。

「……だから、俺はこの戦争を止めたい。誰かの願いをかなえるために誰かが死ぬなんて、間違ってる」

 聖杯戦争……記憶の流入と、セイバーの話から、それがおよそどういうものであるかは聞いている。
 魔術師と英霊が主従となり、生き残りをかけて戦うバトルロイヤル。
 時に市民を巻き込んで殺し合い、勝者が願いを叶える最小にして最大の戦争。
 それが、聖杯戦争だ。
 それが、士郎が巻き込まれたものだ。
 ……ならば、士郎はそれを止めねばならない。
 切嗣の目指した正義の味方というのは、そのようなものであるはずだから。

「改めて……力を貸してくれるか?」

 真っすぐ、士郎はセイバーを見た。
 セイバー。剣の英霊。
 士郎と共に戦う、自らの従僕。

「……ああ。当たり前だろ」

 セイバーは一瞬、眩しいものを見る様な視線を向けた。
 羨むような、懐かしむような視線を。
 しかしすぐに、彼もまた真っすぐに士郎を見た。
 意志の強い、剣士の瞳で。


「俺の――――“胸ん中の剣”にかけて。俺はお前の力になるよ」


 セイバーの親指が、自らの胸を指す。
 ……そこに、何かがあるのだ。
 士郎はなんとなく、そのことを理解する。
 何か、大事なもの。
 士郎が持つ、切嗣との思い出のような。
 大切なナニカが、彼の胸の中にある。
 それがなんだか、妙なぐらいに安心できた。


「ありがとう。よろしくな――――――――――――九太」


 ちう、と。
 白鼠が、小さく鳴き声をあげた。


381 : The Boy and The Blade ◆uL1TgWrWZ. :2018/04/22(日) 03:50:38 dK0g1VyA0

【CLASS】セイバー

【真名】九太/蓮@バケモノの子

【属性】中立・善

【ステータス】
筋力C 耐久D 敏捷C+ 魔力D+ 幸運B 宝具EX

【クラス別スキル】
対魔力:B
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

騎乗:D
 まったくできないというわけではないが、さほど得意というわけでもない。
 クラスによって最低限担保されている程度。

【保有スキル】
子鴨の見切り:A+
 類まれなる学習能力及び観察眼。
 培った経験から相手の行動を先読みし、対応することができる。
 初見の相手であっても突破口を見出すことが可能だが、当然相手の行動を観察するに越したことはない。
 よく観察した相手であれば、足音だけで動きを完全に把握・先読みする。
 『心眼(真)』と『心眼(偽)』の複合亜種スキル。

魔力放出(炎):D
 宝具の副次効果。
 武器に炎を纏わせ、自在に操る。

心の闇:-(B+)
 ニンゲンが心の中に飼っている闇。
 セイバーの中に巣食う負の感情が増幅するごとに深く大きく広がっていく。
 同時に強力な念動力を獲得し、闇が広がるほどに出力が向上する……が、現在は二種の宝具によって封印されているスキル。


【宝具】
『心剣・付喪熊徹(しんけん・つくもくまてつ)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
 セイバーの心の中に存在する『神剣』。
 極めて低級ながら文字通りの神霊であり、同時にセイバーと神剣の心象風景が融合してできた固有結界そのもの。
 通常はセイバーの心象風景の中で熊の獣人『熊徹』として存在し、セイバーの行動に時折口出しする。
 真名開放と共に神霊としての権能を解放し、剣の形をした固有結界としてセイバーの手の内に顕現する。
 その姿は燃え盛る大太刀。
 切り裂く物は心の闇。
 負の感情やしがらみを断ち、それらに由来する異能や魔性を打ち砕く信念の剣。
 セイバーの中にある物を抜き放つだけであるため、魔力消費は驚くほど少ない。
 ……ただし、神霊及び固有結界の常として世界から排斥される運命にあり、顕現できるのは真名開放の一瞬のみ。

『心獣・白鼠(しんじゅう・チコ)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
 セイバーと常に共にいる小さな鼠のような獣。
 特に強力な異能は持たないが、セイバーの心の癒しとなり支えとなる。
 この獣はセイバーの亡き母の魂であり、彼を支える母性の化身なのである。

【weapon】
『無銘・刀』
 特に特筆すべきこともない日本刀。
 怪力のバケモノの膂力による使用にも耐えられる程度には頑丈。

【解説】
 バケモノの街、渋天街で育ったニンゲンにして渋天街随一の剣士。
 幼少期に両親が離婚し、母親と二人で暮らしていたが、9歳の頃に母親が急死。
 親戚に引き取られるのを嫌い逃げ出し、紆余曲折あってバケモノの街『渋天街』に迷い込んでしまった。
 暴れん坊のバケモノ熊徹に拾われ、彼の弟子として育つ。
 当初はひ弱であったが観察の才能があり、次第に武術の達人として立派に成長した。

 青年となった後は偶然人間界に戻る道順を発見し、勉学を志すなどする。
 やがて、心の闇に囚われ怪物となった青年・一郎彦を倒すべく奔走。
 窮地に陥るも、神になる権利を得た熊徹が剣の付喪神となったことで九太を支援し、一郎彦の心の闇を討ち果たすことに成功する。

 その後、九太は自らの心に父・熊徹を宿し、人間界に戻った。
 そして二度と、彼が刀を手に取ることは無かった。

 本来の名は『蓮』なのだが、名乗りを嫌ったために熊徹に『九太』と命名されている(九歳であることに由来)。

【サーヴァントとしての願い】
 とくになし。
 ただ、9歳から17歳までの間をバケモノの世界で過ごしたこともあり、現世の暮らしに強い関心を持っている。


382 : The Boy and The Blade ◆uL1TgWrWZ. :2018/04/22(日) 03:51:09 dK0g1VyA0

【マスター】
 衛宮士郎@Fate/stay night

【能力・技能】
 二十七本と、代続きしていない魔術師としては比較的多めの魔術回路を保有しているが、魔術の腕は壊滅的。
 満足に使えるのは構造解析の魔術程度で、あとは成功率の低い強化魔術と、ガワしか作れない投影魔術しか使えない。
 その構造解析ですら「非効率的」と言われるものなのでもう本格的にへっぽこ。
 弓が抜群にうまい他、身体能力もそこそこ高い。
 体内に聖剣の鞘が埋め込まれているが、聖剣の担い手が現界しない限りは無意味。

【weapon】
 固有の武器は持っていない。
 陣地として『衛宮邸』を保有。
 本格的な日本家屋で、外敵の侵入を知らせる結界が張られている。

【人物背景】
 正義の味方を志す青年。
 冬木市で開催された、第四次聖杯戦争の余波である大災害の数少ない生き残り。
 魔術使い衛宮切嗣の養子となり、彼の「正義の味方になる」という遺志を継いで魔術使いとなった。
 彼を突き動かすのは亡き養父との誓いと、「大災害で唯一生き残ってしまった」という意識。
 生き残ってしまった自分は、その分誰かのために何かをしなければならないという強迫観念にも似た義務感である。
 その結果、人助けのみを生きがいとする破綻者が誕生した。
 彼は無私の善人のようにも見えるが、その実それ以外の生き方を選べない、機械のような存在と言っていい。
 黙々と誰かのために尽くし続け、そして大災害から10年後。
 少年は運命と出会うのだが――――その直前に、今回の聖杯戦争に招かれた。

【聖杯にかける願い】
 とくになし。
 聖杯戦争における犠牲を可能な限り減らす。


383 : ◆uL1TgWrWZ. :2018/04/22(日) 03:51:36 dK0g1VyA0
投下を終了します。


384 : ◆HOMU.DM5Ns :2018/04/22(日) 18:44:09 A.FlIAyw0
投下をします


385 : 佐倉杏子&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2018/04/22(日) 18:45:33 A.FlIAyw0



暖かい色の明かりが部屋全体を照らして、太陽が沈み暗闇に落ちた外から人を守るように、光は家族を包んでいる。
街を騒がせる恐怖を煽る猟奇的なニュースにも無縁だと、家の中は笑顔で賑わっていた。
光とは安寧の元だ。神が与えた原初の火に始まり、照らされる場所に人は集まり寄り添う。
人は闇と戦う手段を手に入れ、現代に至るまで光は人と共にある。

「わあすごい!これお姉ちゃんが作ったの!?」
「こらモモ、お行儀が悪いわよ」

四人が囲ってもまだ少し余裕があるテーブルに並ぶのは、色鮮やかな料理の数々。
やわらかいパンに新鮮なサラダ、湯気が立つスープと香ばしく焼けた肉が食欲を誘う。
幼い次女が待ち切れず、フォークを手に取ろうとするのを母がたしなめている。

「お母様の言う通りです。食事の前は神様が降りてくる時間、きちんとお祈りをして感謝の言葉を伝えなければいけませんよ」
「はーい」

まだ神の教えを十分に理解しておらず、作法の大事さもわからない幼子は、しかしもう一人の声には素直に従った。
言葉の内容云ではなく、話した人そのものへの信愛に応えたがためだ。

「ははは、おまえよりマルタさんの言葉の方がよっぽど効果があるようだ。すっかり懐いてしまったな」

椅子に座るのは家族四人と、昨日から家に招かれた長女の友人だ。旅行に海を渡ってこの見滝原に来たものの、運悪く宿泊先の手違いで予約が滞ってしまっていた。
どうしたものかと不安に思っていたところを偶然知り合い、同じ信仰を志す縁で家族のみで暮らすには広い教会に一時の滞在に預かる身であった。

「さあ、それじゃあ祈りましょう」

全員が椅子に座ったところで食前の祈りを捧げる。
父と母は教えに則り感謝の言葉を述べ、まだ意味がよく分からない次女も倣うように手を合わせる。
客分であるその女性は、神父である父から見ても完璧に過ぎた姿勢で祈りに臨んでいた。
清く美しく、無償の愛(アガペー)に満ちた聖なる画の如き佇まい。
自分以上に信仰を積んでいると確信させる女性は、僅かな日数寝食を共にしただけで夫婦双方から大きな信頼を得ていた。
ともすれば目の前のこの人にこそ自分達は祈るべきでないのかと、不遜なる考えを抱いてしまうほど。
全ての信徒が模範とすべき理想形がここには顕在していた。


「―――いただきます」

そして、祈りの動作はちゃんとしながらその光景を眺めていた長女は。
目の前の団欒に目と耳を傾けることなく食事のみに集中していた。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


386 : ◆HOMU.DM5Ns :2018/04/22(日) 18:46:11 A.FlIAyw0





教会屋上。
信仰の象徴たる十字が建てられた下で、冷えた大気に身を晒す二人。
その一人は長い赤の髪を上に纏めた十代前半の少女だ。
星空瞬く空を鏡合わせに、無数の電灯が煌めく地上。
夜の街を一瞥する瞳は生まれてから重ねた年月に釣り合わないほど冷めており―――佐倉杏子の送った人生の苛烈さの証となっている。

住む場所はなく、適当なホテルに無断で宿泊する毎日。
食料の確保には窃盗は当たり前、コンビニのレジをこじ開け金銭を奪うのも日常茶飯事。
荒んだ生活を見た目は中学生の少女が不自由なく送れるのは、奇跡の残滓たる魔法の力あってこそ。
自分の力を自分の欲望に用いる。躊躇などない。そうする事でしか生きられない以上迷いなどない。
杏子の送ってきた生活とはそういものだ。完全に順応して習慣になってしまうほど馴染んでいた。

「でさ……何やってんだよあんた?」

杏子は隣にいる英霊に問いを投げた。
先ほども家族と一緒に食事を共にしていた旅人であった。

清廉。そのような一言が凝縮された女がいた。
それだけで言い表せるような器量で収まらない乙女であるが、見た者は始めにその一言を連想するに違いない。
激する性質を思わせる杏子の赤髪に反した、紫水晶色の長髪。宝石や金銀財宝の豪奢とは異なる、渓谷に注ぐ透き通った水流の自然なる美。
地上の電灯と天空の星々に照らされてるだけの筈のそれは髪自体が光り輝いているよう。
身に纏う衣装は現代の街並みには溶け込まない意向だが、鋼の鎧といった戦士の、戦いの道具という印象からは程遠い。
手足に最低限の装具をはめる以外には実りの均整が取れた体を包む法衣のみ。彼女が武に行き覇を唱えた勇士ではない事を示している。

清らかで優しい、輝くばかりのひと。
その名だけで人々の心の寄る辺となり、希望を在り示してくれる、力ある言葉。
それ即ちは聖女。奇跡を成した聖者の列に身を置く者。

それが佐倉杏子の片翼。聖杯戦争を共に行くサーヴァントだ。
ライダー、その真名をマルタ。
救世主の言葉を直に受け、御子の処刑の後も信仰を捨てる事なく、時の帝国によって追放されるも死せず神の恩寵を受けた者。
布教の道程、ローヌ川沿いのネルルクの町にて、人々を苦しめる暴虐の竜タラスクを鎮めた竜使い。
その宗教に属さずとも知らぬ者はいない、世界中で崇敬されるその人であった。


「何、と言われても。マスターとその家族に料理を振る舞っただけよ?嫌いなものでも入ってた?」
「好き嫌いとかはないよ。ウミガメのスープは美味かったし。肉の叩きも汁がすごかった」
「お粗末様」

杏子を見つめるアクアマリンの瞳は慈しみに満ちていた。
その言葉遣いは、彼女と関わった者の多くが見る顔とは違っていた。
礼節を欠いてるわけではなく。さりとてサーヴァントがマスターに、従者が主に、聖人が他者に向けるものとしては間違いがあるような。
どちらかといえば、穏やかな気質の姉が春を迎える年頃の妹にかけるような、親しい間柄でのみ見せるやり取りだった。

「出されたものは残さず頂く。立派な心がけだわ」
「そんな大層なものでもないだろ。腹が空いたら食えるだけ食っとくってだけの話だ」


387 : 佐倉杏子&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2018/04/22(日) 18:46:43 A.FlIAyw0


選ぶ余裕のない生活を送っていた杏子にとって、食事は取れる時に取っておくという考えだ。
味の善し悪しや心情で手を付けない粗末な真似は自分は勿論、他者にも許さない。だから出された料理は食べるし残しもしない。
幼少から触れてきた教えも少なからず関係しているのだろう。どう受け止めようと過去の習慣は消えずに沁みっている。

「おかわりもしてたものね。うんうん、食べ盛りの子はそうでなくちゃ」
「っガキ扱いすんな!」

杏子の舌に残るのは素朴で、郷愁を誘う母の味だ。今も住居も兼ねている教会で眠っている実の母を尻目にして。
悪くない料理だった。美味しかったという感想に偽りはなく、また口にしたい欲求がある。

懐かしい、と憶えた感情。
家庭の料理などもう長らく食べていないと、口にした瞬間に思い知らされた。
あの日に焼け落ちて止まった記録。これから一生思い出す事のない筈だった味そのものだった。


「だから違えよ。そういう話じゃない」


こんな偽りの円満に加えられる事がなければ、決して。


「あいつらは、あの人たちは、あたしの家族じゃない」


その欺瞞に気付いた時、杏子は己の魂がどす黒く濁るのをはっきりと感じ取れた。


「みんな、みんな、偽物だ。死人だ。あっちゃいけないものなんだ。
 これを認めたら、あたしは本当に魔女になっちまう。だからいらないんだよ、こんなおままごとに付き合う真似はさ」


許せなかった。憎らしかった。
こんな偽物を用意して罠に嵌めた相手への怒りだった。
自らの手で失ったありし日で幸福を感じていた自分への怒りだった。

はじめは”魔女の結界”の仕業かと判断した。
奇跡を詐称する御遣いによって得た力、闇を齎す絶望の化身、魔女を討つ希望、魔法少女。
結界は魔女のテリトリーであり餌の狩場でもある。社会に疲れた人間の心の隙に潜り込み囁いて、自分の膝元へ招くのだ。
その中で見つけた、魔法少女の証たる宝珠が放置されているのを不審に思い手を出した直後、杏子の意識はひっくり返った。
狩人の側である魔法少女が無様に誘惑に引っかかったのだと、鬱憤を放出する矛先を定めた。
だが魔女の気配は一切探知しなかった。代わりに痛みと同時に手の甲に顕れた聖痕(スティグマ)の紋様。そして光が集合して形成して出来た聖人の姿。

杏子は事態の全てを知った。聖杯戦争。サーヴァント。殺し合い。願望器。
願いを叶えられるという、儀式。


「家族が死んだのは全部あたしの自業自得だ。誰も恨みやしないさ。けどこんな都合のいい幻想に浸かってるなんて、それだけは許せない。
 あんただって、そうじゃないのかよ?死人と戯れるなんてのを聖女さまはお許しになるのかい?」


388 : 佐倉杏子&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2018/04/22(日) 18:47:28 A.FlIAyw0



―――みんなが、父さんの話をちゃんと聞いてくれますように―――

幻惑。佐倉杏子にとっての禁忌。
困窮する家族の幸せを願い、多くの人を幸せにするものだと信じた祈り。
得られた奇跡の報酬は、願った全ての喪失だった。
人心を誑かす魔女。絶望に染まった顔で罵る父の声は、どんな鋭利な槍よりも杏子の胸を穿った。
自分だけを残し、家族を連れて荒縄で首をつり下げた姿は、杏子の心を残酷に引き裂いた。

教会で教えを説き、裕福に家族と幸せに暮らす。
再演される見滝原の人形劇は滑稽だった。
求めてやまなかった幸せを嘲った形で見せつけられるのが、これほど腹が立つとは思わなかった。
早々に家を出て今までのように流浪の生活に戻ると何度も思った。そして実行する度に、このサーヴァントに首根っこを掴まれ連れ戻されるのだ。
こうして、今も。


「優しい人なのですね、マスターは」


自分を戸惑わせる声を、真っすぐに向けてくる。


「彼らは仮初の住人。聖杯戦争の舞台を回す為の部品として生み出された偽の命。その通りです。
 命を模造し争いの消耗品として道具に使う、それはあまりにもは許されざる行為です」

些細な、決定的な変化があった。
顔も声も何もかもが変わりないのに、そこにいるのがライダーだと認識は変わらないのに。明確に印象がひっくり返る。

「けど、だからといって彼らの存在すら罪とするのはどうなのでしょう。
 複製といえど彼らには命があり知性がある。死霊などではない、生きた人なのですから」

隠す演技、人格の変更、そんな浅ましいいものではない。
分かってしまう。ライダーは変わっていない。変わらないままに身に纏う雰囲気だけを一変させる。
信仰を受ける聖女としての顔も、どこにでもいる町娘としての顔も、どちらも真なるマルタの素顔なのだ。

「あなたは優しくて、強い人。家族の複製を見て穢されたと感じ、家族を失った事を自らの罪と受け止めている。
 なら彼らと向き合ってもよいのではないですか。壊れた夢を見る事には確かに辛いもの。けどそこには、あなたが見失ったものも落ちているかもしれません」
「……随分言ってくれるじゃないか。ほんと何なんだよ、あんた」
「あなたのサーヴァントですよ。あなたを守り、導き、あなたに祝福を送るもの。
 これでも聖人ですもの。迷える子を救う事こそ私の使命なのだから」
「だから、ガキ扱いすんなっての」

忌々しいものだった。
自分が何かすれば止めに入り、正論を出しあれこれ説教してくるライダーを杏子は鬱陶しがっていた。
その多くが家を失ってからの荒れた生活で身につけたものなのだから、何も思わない事もないのだが。
発言の意図よりも、なにより、自分に世話を焼く姿勢にこそ原因が多いのではないか。
苛立ちともむず痒いとも言えぬ感情。でもはじめて知ったわけでもない。いつ以来のものであったか。


389 : 佐倉杏子&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2018/04/22(日) 18:47:45 A.FlIAyw0



「ていうかあんた、優勝する気はないんだな」
「当然です。聖杯とは救世主の血を受けたもの。そうでないものは偽なる聖杯。求める道理がありません。
 まあこんな儀式を仕組んだ奴らは後でシメ……ンンッ説伏しますが、まずは街で起こる戦いを止めなければなりません」

確かに、聖女なる者が偽の杯を求め殺し合うのは想像すら及ばない選択だ。真の聖杯が殺戮の血を注ぐのを許すとも思えない。
欲得にまみれた黄金の杯。偽物であるからこそこの聖杯は正邪問わず万人の願いを汲み取るのだろう。
だからライダーが聖杯戦争を否定するのはまったく自然な成り行きだ。想像通りというべきか。
名前を知った時点でそう来るだろうとは薄々思っていた。

「冗談」

よって杏子は考えるまでもなく、ライダーの掲げる方針の拒否を即答したのだ。

「素直に乗らないってとこだけは同意だ。奇跡と抜かしておきながらやることが殺し合いだ。どうせ碌なもんじゃない。
 けど戦いを止めるだとか、そういう慈善事業はお断りだ。聖女の行進に付き合う気はないよ」

希望が落ちたあの日から決めている。佐倉杏子という魔法少女は、全て自分だけに帰結する戦いをすると。
生きる為。楽しむ為。自分に益があり満たされるのなら何でもいい。好き勝手に生きれば、死ぬのも自分の勝手だ。誰を恨むこともしなくていい。

誰が何を願い動くのは自由だ、好きにすればいい。干渉はしない。
けれど、誰もが聖人になれるわけじゃない。
誰かの為に生きる。万人にとって口当たりのいい言葉を実践できる者は本当に一握りだ。だからこそそれを成した者は聖人と呼ばれる。
杏子はなれなかった。他の見知った魔法少女にもそんな資質の持ち主はいなかった。ただ一人を除いて。
未熟な自分を師として育て、最後まで見捨てようとしなかった黄色の魔法少女。
正義を生きがいに出来る、正しい希望の持ち主と同じ道を行く事を、杏子は出来なかった。今になって再び道を変えるなど甘い事が通用するわけがない。


ライダーに手を伸ばす。届きはしないし、届かせる気もない。
嵌めていた指輪から現出する赤い宝石。魔法少女の証、ソウルジェムを見せる。

「聖女はどうだか知らないけどさ、魔法少女をやるのはタダじゃないんだ。
 祈りには対価がある。魔力を使えばソウルジェムが濁る。犠牲がなくちゃそれを補えない。
 分かる?誰かが死ななくちゃ魔法少女(あたしら)は食えないのさ。ここに魔女がいるかはともかくな。
 どうせ消費するんなら自分のために使うべきだろ?命を賭けてまで、得もないのに誰かの為に戦うなんざ馬鹿げてるよ」

見ず知らずの人間が使い魔に食われても意に介さない。そうして育った魔女を倒してようやくグリーフシードを手に入れられる。
魔法少女として活動を続けるには、使い魔を放置するのが大事だ。聖杯戦争も似たようなものと杏子は考える。
悪目立ちして暴れる敵は放置して消耗を待つ。手堅く、確実な戦法。

「……あんたとはコンビだ。バラバラに動いて片方がヘマしたら残った方も揃ってヤバくなる。ここじゃ全員そうなら尚更さ。
 マスターっていうんならあたしの方が上だろ?いいか、あたしは乗らないからな」

マスターという立場を傘に着るわけでもないが、自分のサーヴァントにははっきりと断っておく。
伸ばした手とは逆にある令呪を意識する。ご丁寧に令呪の使用法まで教えてくれた。どう反抗されようともいざとなれば押さえつける手はある。
果たして、ライダーは動いた。向き直ってこちらを見る表情は憮然なれど、その美しさは損ないはしないまま、軽く微笑んで見せた。
意地の悪い笑みだった。杏子の魔法少女としての直感が背筋に寒いものが走るのを鋭敏に捉えてしまっていた。


390 : 佐倉杏子&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2018/04/22(日) 18:48:21 A.FlIAyw0


「……ふぅん」
「な、なんだよ」
「ちょっと借りるわね」

なにか、嫌な予感がする。警戒を強めたその時には、風は過ぎ去った後だった。
掌の上をそよぐ風。何かが、ライダーのたおやかな指が通過した音。

「な、おい!返せ!」

一秒あったか定かではない交差。それでも変化はある。
杏子の側にあった赤い輝きは、いま目の前の聖女の手で依然と瞬いていた。

「ああもう暴れないの、ちょっと見るだけだから」
「あだだだだぁぁーーー!?」

野苺でも摘むような気軽さで杏子のソウルジェムを分捕ったライダーは、手にある宝石をしげしげと観察している。
空の片手では、飛びかかって奪還しようとした杏子の頭部を掴み自分の行動を阻害させないようにして。
眉間にがっちりとはまった指の握撃による痛みは杏子の想像を絶していた。
杏子と変わりない見た目、麗しい聖女のアイアンクローは頭蓋を割らんとする威力で逆らう意識を剥奪させる。
あれほど念頭に入れていた令呪の行使ももはや頭から抜け落ちた。このまま反逆により意識が落ちるか最悪死ぬかと朧に察しはじめたところで縛りから解放された。

「……よし、と。はい返すわね」
「ぁ……とおぉっ!?」

朦朧として霞がかってぼやけた視界で、放り投げられた赤石。
自分のソウルジェムと認識して咄嗟に、必死になって手を出す。どうにか光は無事に手の中に収まった。

「オ、マ、エ、なああああ……!」

赤い旋律が魔力として現実に走って、杏子の体を包み上げる。
武装の展開を構築。怒りと痛みで熱くなった頭はとっくに統制を離れている。槍の一つでもブチ込まねば気が済まないという一念でいっぱいだ。
正常に戻る視界で女を捉え、手に握ったソウルジェムを見据え―――そこで沸騰するほどの熱は冷や水をかけられた。


「……あ?」

ソウルジェムは魔法少女にとっての要だ。戦う姿に変わるための媒体で、中身の濁りで魔力の残量を示す。故に逐一の確認は欠かせない。
今日の状態は濁りが一割。底に僅かに沈殿するのみのもの。
だが今見た宝石の中身はどうか。色鮮やかな赤には一変の濁りもない純度ある美しさを保っている。
初心者の魔法少女でも知る知識。穢れの浄化はグリーフシードを用いでしか出来ない。その常識を壊されて、杏子は首を回す。
そこにいるのは一人の女。過去に起きた偉業を成した夢の具現。聖女のサーヴァント。


奇跡―――。


今目撃したものの意味を、言葉に出来ぬまま。呆然とそれを起こした人をずっと眺める。

一分、いやそれ以上、もしかしたら以下かもしれない間隔の後。

「これで、タダ働きでも問題ないわね?」
「あるに決まってんだろ!」

反射的に叫んでいた。




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391 : 佐倉杏子&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2018/04/22(日) 18:48:50 A.FlIAyw0





結局、杏子は最後までライダーの方針を認めないまま寝ると言って下に降りていった。
残ったままのライダー、マルタは一人のまま地を見続けているが、思考は去ったマスターについてに割かれていた。

良い子ではあるのだろう。善性を持って生まれ、愛ある家族に育てられて成長した。
だが家族を襲った悲劇が自分の原因であると背負い、罪人らしく粗暴に振る舞うしか出来なくなってしまった。
家族を殺したのは自分だ。そんな自分は醜い悪ある者でなければいけない。
元来の信心深さが悪い方向に絡み、今の佐倉杏子の人格を歪めて形成している。

この所感はマルタがマスターから直接聞きだした経緯ではない。尋ねても絶対に口を開く真似もしないだろう。
サーヴァントとマスターは契約時に霊的にもパスを共有し、互いに夢という形でそれぞれの過去を覗くというが、それによるものでもない。
彼女を直に観察し、語り合い、そうして得たそのままの印象と分析でしかない。
心を読むといえば特殊な技能なりし異能を必要とするものと思われるが、それは人に予め備わった機能だ。
経験と徳を積み、真に人と向き合う努力を怠らなければ誰であろうとその心を読み解ける。少なくともマルタはそう思っていた。

「女の子捕まえて契約持ちかけた挙句魂を弄るなんて……どの世界でも胡散臭い詐欺師はいるものね」

キュゥべえなるものとの契約により生まれたソウルジェム。
目にした時、聖女としての感覚が訴える声に従いつぶさに調べその正体を看破していた。
あれは……人間の魂を収めている。

杏子は理解しているのか。あの様子では満足に知っている様子ではない。彼女だけでなく他の魔法少女もそうなのか。
その事実を今すぐ詳らかにするのをマルタは禁じた。自分の魂を肉体と切り離されたお知り少なからぬ衝撃を受けるのを避けた。
いずれ伝えなければならない。しかし遠慮なく暴露して徒に彼女の心に更なる傷を与え真似をマルタは冒したくなかった。
だからせめて淀んでいた穢れを浄化した。濁り切ってただ魔法、魔術が使えなくなるだけのものと楽観はしない。
もっと恐ろしいことのためにあれは造られたのだと、マルタの聖女の部分が警鐘を鳴らしている。

人間の『箱詰め』事件。
悪の『救世主』の噂。
街にも幾つもの物騒な噂が蔓延している。
恐るべき『邪悪』が街中に潜み、黄金の日常を食い潰そうとしている。
己が招かれた事態が偶然性が引き起こした事故などではなく、必然の、必要と求められての結果であるとしたら。
世界の焼却にも並ぶ、未曽有の危機の萌芽の可能性すらもが危惧になる。


392 : 佐倉杏子&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2018/04/22(日) 18:49:31 A.FlIAyw0






「……そうねタラスク、今度はちゃんと救いましょう。世界も、あの子も」


それでも。マルタの在り方は変わることはない。

如何なる時代でも、如何なる形であったとしても。
マルタは聖女であり続ける。人々を守り、導くこと。それが、聖者と呼ばれた者の使命。
思われ、願われた……なら、そう在ろうとするまで。





『あなたは多くのことに思い悩み、心を乱している。しかし、必要なことはただ一つだけである』



「大丈夫です。私は私の必要なこと、やるべきことを心得ております」


ですから、どうか見守り下さい。


星々の行き交う夜空を見上げ、マルタは手を合わせ天に祈った。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



結局、杏子は最後までライダーの方針を認めないまま寝ると言って下に降りていった。
残ったままのライダー、マルタは一人のまま地を見続けているが、思考は去ったマスターについてに割かれていた。

良い子ではあるのだろう。善性を持って生まれ、愛ある家族に育てられて成長した。
だが家族を襲った悲劇が自分の原因であると背負い、罪人らしく粗暴に振る舞うしか出来なくなってしまった。
家族を殺したのは自分だ。そんな自分は醜い悪ある者でなければいけない。
元来の信心深さが悪い方向に絡み、今の佐倉杏子の人格を歪めて形成している。

この所感はマルタがマスターから直接聞きだした経緯ではない。尋ねても絶対に口を開く真似もしないだろう。
サーヴァントとマスターは契約時に霊的にもパスを共有し、互いに夢という形でそれぞれの過去を覗くというが、それによるものでもない。
彼女を直に観察し、語り合い、そうして得たそのままの印象と分析でしかない。
心を読むといえば特殊な技能なりし異能を必要とするものと思われるが、それは人に予め備わった機能だ。
経験と徳を積み、真に人と向き合う努力を怠らなければ誰であろうとその心を読み解ける。少なくともマルタはそう思っていた。

「女の子捕まえて契約持ちかけた挙句魂を弄るなんて……どの世界でも胡散臭い詐欺師はいるものね」

キュゥべえなるものとの契約により生まれたソウルジェム。
目にした時、聖女としての感覚が訴える声に従いつぶさに調べその正体を看破していた。
あれは……人間の魂を収めている。

杏子は理解しているのか。あの様子では満足に知っている様子ではない。彼女だけでなく他の魔法少女もそうなのか。
その事実を今すぐ詳らかにするのをマルタは禁じた。自分の魂を肉体と切り離されたお知り少なからぬ衝撃を受けるのを避けた。
いずれ伝えなければならない。しかし遠慮なく暴露して徒に彼女の心に更なる傷を与え真似をマルタは冒したくなかった。
だからせめて淀んでいた穢れを浄化した。濁り切ってただ魔法、魔術が使えなくなるだけのものと楽観はしない。
もっと恐ろしいことのためにあれは造られたのだと、マルタの聖女の部分が警鐘を鳴らしている。

人間の『箱詰め』事件。
悪の『救世主』の噂。
街にも幾つもの物騒な噂が蔓延している。
恐るべき『邪悪』が街中に潜み、黄金の日常を食い潰そうとしている。
己が招かれた事態が偶然性が引き起こした事故などではなく、必然の、必要と求められての結果であるとしたら。
世界の焼却にも並ぶ、未曽有の危機の萌芽の可能性すらもが危惧になる。


393 : 佐倉杏子&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2018/04/22(日) 18:49:43 A.FlIAyw0





妹もいる自室。既に寝入っている妹を起こさないように、隣のベッドに潜り込んで布団を頭までかぶる。
早く寝付いてこの嫌な思いを忘れてしまいたかった。なのにこういう時に限って目が冴えたままでいる。
頭にまだ残る鈍痛が原因のひとつでも、まああるのだが。

もぞり、と動く音。横目に見れば寝返りをうった妹の顔。
幼い頃の自分に似た、何もかもあの頃のままの家族の寝顔。
これも偽りなのか。寝息を立てる仕草も、幸せな夢を見ているだろう、蕾のような微笑みも、全て。
ああ、少なくとも自分はそう捉えている。もう戻らないものと認めている。

「優しい子、だとさ。あたしをよ」

何人も欲望のために見捨ててきたあたしを。
正義の味方になれなかった自分を。
見込み違いにも程がある。聖人とは名ばかりかと笑いたくもなる。

「まったく見せてやりたいよ。あたしの本当の家族の最期をさ……」

追いつめられた人間の取る行動。行き着くところまで詰まってしまった末路。
醜さ、憎悪、怒り、悲哀、無情、絶望。世界の負を煮詰めたような光景。

「でも―――あのひとなら……本当に救えていたんだろうな」

なにせ本物の聖女マルタだ。
救世主の言葉に導かれ世界中から信仰を得た崇高なる偉人。
いち宗教家とは、その言葉の質も存在感の重みも”もの”が違う。

今のこの世界と同じく、家を訪れ、言葉を交わし、食事を共にするだけで、
仮に本物であると知れたら滂沱と涙し、自ら膝を折り跪いてしまい、娘が人を惑わず魔女だった絶望など、軽く拭い去ってしまうのだろう。

奇跡になど、頼らずとも。
魔法なんか、使うまでもなく。
培い、積み上げた徳だけで、人の心に希望を宿す。


……そうだ。反抗しなかったのは怖かったからだ。
幾ら言葉を投げつけても全てを返されてしまい、聖女の威光に自分の虚飾を剥がされるのを拒んだのだ。
彼女の方が望まずとも、彼女の克(つよ)さを見せられる側が自傷に陥ってしまう。
白日の元に投げ出される、無様な自分が残るだけ。

「…………くそ」

ライダーともうひとつ考えが一致した。
この儀式の主催とやらは、悪趣味だ。魔女に聖女を送りつけるんだから間違いない。
ベッドの中で微睡みに落ちるまで、杏子の気は晴れはしなかった。


394 : 佐倉杏子&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2018/04/22(日) 18:51:05 A.FlIAyw0



【クラス】
ライダー

【真名】
マルタ@Fate grand order

【属性】
秩序・善

【パラメーター】
筋力D 耐久C 敏捷B 魔力A 幸運A+ 宝具A+

【クラススキル】
騎乗:A++
 騎乗の才能。獣であるのならば幻獣・神獣のものまで乗りこなせる。
 例外的に竜種への騎乗可能なライダーである。

対魔力:A
 A以下の魔術は全てキャンセル。
 事実上、現代の魔術師では○○に傷をつけられない。

【保有スキル】
信仰の加護:A
 一つの宗教観に殉じた者のみが持つスキル。
 加護とはいうが、最高存在からの恩恵はない。
 あるのは信心から生まれる、自己の精神・肉体の絶対性のみである。

奇跡:D
 時に不可能を可能とする奇跡。固有スキル。
 星の開拓者スキルに似た部分があるものの、本質的に異なるものである。
 適用される物事についても異なっている。

神性:C
 神霊適性を持つかどうか。
 高いほどより物質的な神霊との混血とされる。
 聖人として世界中で崇敬されており、神性は小宗教や古代の神を凌駕する。

水辺の聖女:C
船上で漂流し、ローヌの畔でタラスクを制したマルタは水に縁深い。
水辺を認識した時、マルタの攻撃力は上昇する。ノッてくるのである。

ヤコブの手足:B
 ヤコブ、モーセ、そしてマルタへと脈々と受け継がれてきた古き格闘法。極まれば大天使にさえ勝利する。
 伝説によれば、これを修めたであろう聖者が、一万二千の天使を率いる『破壊の天使』を撲殺している。
 通常時には機能しておらず、一部スキル、聖杖、主の教え、本人の自重、聖女としての威厳を捨てる事と引き換えにステータスを一時的に向上、
 素手に手甲(ホーリーナックル)が追加、神霊、死霊、悪魔の類に対して絶大な特効状態が付与される。


395 : 佐倉杏子&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2018/04/22(日) 18:52:56 A.FlIAyw0


【宝具】
『愛知らぬ哀しき竜よ(タラスク)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:2〜50 最大捕捉:100人
 リヴァイアサンの仔。半獣半魚の大鉄甲竜。
 数多の勇者を屠ってみせた凶猛の怪物をマルタが説伏され付き従うようになった本物の竜種である。
 マルタの拳も届かない硬度の甲羅を背負い、太陽に等しい灼熱を放ち、高速回転ながら飛行・突進する。

『刃を通さぬ竜の盾よ(タラスク)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1      最大補足:1人
 一時的に怪獣タラスクの甲羅を召喚し、自分や味方を守る。
 味方(単体)の防御力を大幅にUPさせる、もしくは短期間の物理ダメージ無効。

『荒れ狂う哀しき竜よ(タラスク)』
ランク:A+ 種別:対人宝具・対竜宝具 レンジ:1〜50 最大補足:1人
 ヤコブの手足スキル発動中のみ使用可能。
 タラスクを相手に落下させた後、その上からマルタ自身が拳のラッシュを浴びせる。まさに鉄拳聖裁。
 拳には空手でいう「徹し」「寸勁」の技術が使われているためタラスクにはダメージはない―――が本体曰く実際はかなり痛いらしい。

【weapon】
『聖杖』
救世主たる『彼』から渡された十字架のついた杖。
「これを持っている時くらいは聖女らしくしてはどうか」という教えの通り、マルタの(ちょっとだけ)荒々しい面を抑える精神的リミッターの役割を兼ねている。
なお通常攻撃では、十字架に祈りを捧げる事で対象にダメージが届く。
エネルギー波等の類を射出する過程が殆どなく、目標がひとりでに炸裂、爆発する結果のみが発生している。

【人物背景】
悪竜タラスクを鎮めた、一世紀の聖女。
妹弟と共に歓待した救世主の言葉に導かれ、信仰の人となったとされる。
美しさを備え、魅力に溢れた、完璧なひと。
恐るべき怪獣をメロメロにした聖なる乙女。最後は拳で解決する武闘派聖女。

基本的に優しく清らかで、穏やかなお姉さん風の言動が多いが、親しい者の前では時折聖女でないマルタの面を見せる。
聖女以前の、町娘としてのマルタは表情と言葉が鋭くなり、活動的で勝気。……というよりヤンキー的。
どちらが素というわけではなく彼女の芯は変わらず聖女のまま。要はフィルターのオンオフの違い。

【サーヴァントとしての願い】
聖女マルタは、救世主のものならざる聖杯に何も望むことはない。
かつての時と同じく、サーヴァントとして現界しても聖女として在る。
故に、この戦争も認める事なく真っ向から反抗する。
一度道を外れたマスターが、正しき道に向かう為に。


396 : 佐倉杏子&ライダー ◆HOMU.DM5Ns :2018/04/22(日) 18:54:17 A.FlIAyw0



【マスター】
佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ

【マスターとしての願い】

【weapon】
分割する多節槍が主装。巨大化しての具現も出来る。

【能力・技能】
魔法少女として優れた身体能力に合わせ、魔女との戦闘経験も豊富。
防御の術も習得してるがスタイルが攻めに比重が偏ってるため防戦は不向き。
魂はソウルジェムという宝石に収められてるため、魔力さえあればどんな損傷でも回復可能。
ジェム内の濁りが溜まり心が絶望に至った時、その魂は魔女と化す。
かつては願いを反映した『幻惑』の魔法を持っていたが、過去のトラウマから願いを否定した事で使用不可になっている。

【人物背景】
キュゥべえと契約した赤い魔法少女。
好戦的。男勝りな口調。常になんらかの軽食を口にしている。
魔法少女の力ひいては願いや欲望は、自分のためにこそ使うべきとする信条。

他人を救おうとした父を助けたくて願った魔法は、父も家族も全てを燃やした。
魔女と罵りを受けた少女は自暴自棄気味に利己を優先するようになる。
だが根が善人なため堕ち切る事もできず、謳歌してるようで鬱屈した日々を送っていた。

【方針】
願いを叶えるという聖杯そのものについて懐疑的で素直に受け取る気はない。
かといって、積極的に戦う気もなく様子見するつもり。マルタの方針に同意する気は今のところ、ない。


397 : ◆HOMU.DM5Ns :2018/04/22(日) 18:56:15 A.FlIAyw0
投下を終了します。拙作は「-東京虚無聖杯戦争-」での候補作からの流用となっています


398 : はじめに音楽、次に言葉 ◆VJq6ZENwx6 :2018/04/22(日) 21:48:59 pL.Iu3aw0
投下します。


399 : はじめに音楽、次に言葉 ◆VJq6ZENwx6 :2018/04/22(日) 21:49:15 pL.Iu3aw0
「見事な演奏だったな、マスター」

ピアノ教室の帰り、私のサーヴァント、アヴェンジャーはそう呟いた。

「光栄です、アヴェンジャーさん」

見滝原市のコンクールが近く、今日のピアノ教室は皆熱が入っていた。

当然、その中で努力を褒められることは嬉しいが、なによりこのアヴェンジャーに認められる、ということは今までで最高の名誉だと感じる。

しかし、心にわずかに引っかかっている部分がある。

「アヴェンジャーさん」

「ん?」

「あのピアノ教室の演奏で、誰が一番上手でした?」

「…それを聞くかね」

アヴェンジャーほどの人物にたかだか市のピアノ教室のレベルについて問う。
無粋な質問だ、ボクもそう思う。
しかし、何より好奇心には勝てない。

「お願いします」

アヴェンジャーはその温和な瞳を閉じ、逡巡していたように見え、しばらく沈黙していたが
やがて口を開いた。

「………ノエル・チェルクェッティ、彼女の演奏が一番見事だった」

「じゃあ、あの話は、やっぱり本当だったんですね」


400 : はじめに音楽、次に言葉 ◆VJq6ZENwx6 :2018/04/22(日) 21:49:26 pL.Iu3aw0
「おそらくは」

あの話、元の世界ラプラス市のピアノコンクールでノエルを押し退け優勝できた理由は、市長がノエルを煽り悪魔と契約させるためだったという話、そしてあのノエルが悪魔にそそのかされて復讐の道を歩まされているという話。

その話を聞き、ノエルを止めるために悪魔と契約を結ぼうとしたところ、
この場に招かれたのだ、忘れられるはずがない。

「アヴェンジャーさん、ノエルは復讐なんてしてはいけないんです」

「………」

「ノエルがそんなことするなんて、そんなの絶対に間違ってる」

「………なぜ、そこまで彼女に拘るんだ?
 己の命を懸けて戦うこの戦争で、願いまで自分以外のために…?」

「そんなの、決まってるじゃないですか」

私は微笑む、とても簡単な理由なのだ。

「友達だからですよ」

アヴェンジャーは何故だかその答えを聞いて、茫然としたように見えた。

「友達だから…?」

「アヴェンジャーさんにはいなかったですか?」

「友達………ア、ア、ア、」


401 : はじめに音楽、次に言葉 ◆VJq6ZENwx6 :2018/04/22(日) 21:49:36 pL.Iu3aw0
アヴェンジャーの整った顔が歪む。
上品な笑みを浮かべていた口元は下品に歪み。
温和だった赤い瞳が憎悪に燃える。
まるで別人、いや違う。本当に別人となったのだ。
彼の内側に眠っていた悪魔―否、外側で眠っていた悪魔が吠えた。

「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトォ!!!神に愛された男めが!!殺してやる!!」

真紅に染まった異形の礼装がアヴェンジャーの身を包む。
もはや元の温和な面影を全く残していないアヴェンジャーだが、
見る人が見ればわかるに違いない。
顔につけたその仮面の主の名を。

「サリエリさん…」

アヴェンジャーの名前が口をついて出る。
アントニオ・サリエリ、モーツァルトを殺したと言う謂れの無いスキャンダルの中心に立たされた男。
この聖杯戦争の場においても、復讐者であることを望まれた彼の突然の絶叫。
私はそれが何を意味するのか察した。

「あなたにとってモーツァルトさんが友人だったんですか…?」

「アマデウスゥゥゥゥ!」

アントニオ・サリエリ、否、灰色の男が吼える。
それは否定なのか肯定なのか、私にはどちらにも見えた。

「それなのに…そんなに苦しんで…」

謂れの無い風評により友人を憎まざるを得ない男。
どれほど辛いのだろうか、私には想像もつかない。


402 : はじめに音楽、次に言葉 ◆VJq6ZENwx6 :2018/04/22(日) 21:49:58 pL.Iu3aw0
「ノエル…やっぱり君はこうなっちゃいけないよ」


ノエルは、こんな道を歩むべきではない。
もしもこの地獄にノエルが進むことを止められなかったら、
自分はノエルもなく、一生後悔したまま生きることになるだろう。
聖杯戦争に勝ち抜けるかは、わからない。
しかし、ノエルのため、そして自分が後悔しないためにも全力で戦おう。
悪魔の遠吠えが響く夕暮れ、私はそう決意を新たにした。


403 : はじめに音楽、次に言葉 ◆VJq6ZENwx6 :2018/04/22(日) 21:50:12 pL.Iu3aw0
【クラス】
アヴェンジャー

【真名】
アントニオ・サリエリ@Fate/GrandOrder

【属性】
混沌・悪
【ステータス】
筋力:B 耐久:C 敏捷:A 魔力:C 幸運:B 宝具:C

【クラス別スキル】
復讐者:C
復讐者として、人の怨みと怨念を一身に集める在り方がスキルとなったもの。怨み・怨念が貯まりやすい。
周囲から敵意を向けられやすくなるが、向けられた負の感情はただちにアヴェンジャーの力へと変わる。

忘却補正:B
人は忘れる生き物だが、復讐者は決して忘れない。
時がどれほど流れようとも、その憎悪は決して晴れない。たとえ、憎悪より素晴らしいものを知ったとしても。

自己回復(魔力):C
復讐が果たされるまでその魔力は延々と湧き続ける。魔力を微量ながら毎ターン回復する。


【保有スキル】

無辜の怪物:EX
生前のサリエリは誰をも殺してはいない。
だが、後年に流布された暗殺伝説が世界へと浸透するにつれ、アントニオ・サリエリは無辜の怪物と化す他になかった。
本来は別個のスキルである『自己否定』が融合し、一種の複合スキルとなっている。


404 : はじめに音楽、次に言葉 ◆VJq6ZENwx6 :2018/04/22(日) 21:50:24 pL.Iu3aw0
サリエリは反英雄としての外殻・外装を纏う。
これは、モーツァルトについての記録にしばしば登場する『灰色の男』―――1791年7月に現れて「レクイエム・ニ単調」の作曲を依頼したという死神の如き存在と混ざり合い、習合したが故の能力である。
戦闘時、サリエリは自動的にこれを身に纏い、殺戮の戦闘装置として稼動する。

燎原の火:B
呪わしいほどに広まっていった風聞、モーツァルト暗殺伝説の流布はまさしく、燎原の火の如くであったという。アヴェンジャー・サリエリは、自らを生み出したに等しい人々の悪意、中傷、流言飛語、デマゴーグ、おぞましき囁きを自らの力とする。
対象とした集団の精神をたちまち弱体化させる他、強烈な精神攻撃としても機能する。
対象が魔術的防御手段を有していなければ、自死させる事も可能。

【宝具】

至高の神よ、我を憐れみたまえ
ランク:C 種別:対軍宝具
レンジ:1〜20 最大捕捉:50人
ディオ・サンティシモ・ミゼルコディア・ディ・ミ。
一箇の生物にとっては制御不能なまでに巨大な殺意を圧縮し、凝固させ、更には魔力と混ぜ込む事で、精神と肉体の双方を蝕む破滅の曲を奏でてみせる。
生前のアントニオ・サリエリが決して持ち得る筈のなかった、無辜の怪物たるサーヴァント───アヴェンジャー・サリエリだけが有する、絶技にして音楽宝具である。

……だが悲しきかな。
アマデウスに匹敵するほどのその『音楽』を、
アヴェンジャーと化したサリエリは永遠に『音』として認識できない。


【人物背景】
アントニオ・サリエリとは18~19世紀の間、宮廷楽長としてヨーロッパ楽壇の頂点に立った男である。
名教育家としての才能も評価されており、ベートーヴェン、シューベルト、リストなどの音楽家を育てた。
しかし、彼について最も有名な要素と言えば、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトとのスキャンダルであろう。


405 : はじめに音楽、次に言葉 ◆VJq6ZENwx6 :2018/04/22(日) 21:50:41 pL.Iu3aw0
幸いにも生前の真の己を知るマスターに召喚された影響か、この聖杯戦争では若干の理性は残っている。

【聖杯にかける願い】
マスターに捧げる…つもりではあるが、それを目の当たりにした瞬間、『灰色の男』に意識を乗っ取られるであろうことは察している。

【マスター】ジリアン・リットナー
【出典】被虐のノエル
【性別】女

【マスターとしての願い】
ノエルの復讐を止める


406 : はじめに音楽、次に言葉 ◆VJq6ZENwx6 :2018/04/22(日) 21:50:51 pL.Iu3aw0
投下終了です


407 : ◆lkOcs49yLc :2018/04/22(日) 23:17:16 g/mrRync0
投下します。


408 : 引きっぱなしのTrigger ◆lkOcs49yLc :2018/04/22(日) 23:18:04 g/mrRync0

その日、彼は夢を見ていた。

――むかしむかし、ひとりのおんなのこが、とおいところにいるくにであそんでいました。

保安官ごっこ、か。
アメリカーノらしいなと思いながらも、本物の警察官であった傍観者(かれ)は皮肉げに戯れる彼女を見つめていた。
夢があっていいな、と。
夢が幻想で終わってしまう様な過酷な現実を誰よりも知っているから、生意気で無邪気な子供達を和む様な気持ちで見つめていられる。
女の子たちの遊具を見るまでは。

――おんなのこは、ともだちとほあんかんごっこをするために、おとうさんのおへやから、けんじゅうを盗み出したのです。

えッ!?
子供が銃を使うとどうなるかということは、彼は非常に良く知っている。
嘗て真っ当な意志を抱けなかった警官時代に、子供が銃を使って誤って人を殺してしまったという事例は沢山ある。
彼自身、責任能力の欠片もなく身勝手で生意気な子供達が銃を振り回す事件に何度も遭遇している。
それに、三歳の子供に拳銃等、反動の制御も出来ずに自分自身も傷つけかねない。
初めて見るわけではないが、あまりにも危険過ぎる遊びだ。

―だれがけんじゅうをつかうかでけんかがおこり、おんなのこたちはけんじゅうをとりあっていました。

やめろ。
ふと、自分の過ちで射殺された同僚が銃口が一瞬向けられそうになった少女と重なる。
そういや、このガキの顔ってどこかで――


――ばきゅん!!


◆  ◆  ◆


「うわぁッ!!」

宛ら中世ヨーロッパの宮廷を思わせる洒落た寝室で、長髪の青年、レオーネ・アバッキオは目を覚ます。
顔中に汗がべったり染み付いているのが、大変良くわかる。

(ちくしょう、夢かよ……)

汗を服で拭った後、アバッキオは一息つき、額を左手で抑える。
そして、今まで見た経験のないような夢を反芻し続ける。
仲間を銃殺された過去を持つ自分にとっては、これは少々堪える。
発砲で捕まり、拳銃を武器に戦う仲間がいるとは言え。
頭を抑える、左手には、射的の的に眼球を付けたような赤い入れ墨――令呪が刻まれていた。


カーテンで塞がれていた窓を開ける。
開けば、アバッキオのいた街よりもより四角みを帯びた様な町並みが朝日をバックに広がっていた。

(慣れねぇな、未来の世界に東洋の国は)

朝日が指す東洋の国……ジャポーネにアバッキオが来て、記憶を取り戻したのは丁度昨日のことであった。
元々アバッキオは、イタリア最大のギャング集団『パッショーネ』の幹部直属の部下であった。
しかしよりによってこの日本で仕事が出来、そこに向かうことになった――

というのが、アバッキオに与えられたロールであった。
当然それは欺瞞。今のアバッキオは、聖杯戦争に招かれたマスターの一人である。

(しっかし、まさかこんな物拾っちまうだなんて……本当に不気味だよ)

朝の日差しを確認した後、聖杯戦争のマスターの証の一つである指輪―仕舞われているソウルジェム―を眺める。
このソウルジェムを拾ったのは、パッショーネのボスがいたとされる島の砂浜であった。
最初はつまらない飾り物かと思っていたが、思えば砂浜に豪奢な飾り付けのされたライトが落っこちているというのも不思議なものだ。


「チャオ、マスター。夜の偵察が終わったぞい。」

ベッドの側にあるソファに、バールを手にとった少女が現界した。
昔観た映画の様に緑色の服装に身を包みパイロットの帽子を被った、ジョルノと同じ東洋人顔の少女。
彼女こそ、レオーネ・アバッキオが召喚し得たサーヴァント。クラスはキャスターである。

「どうだった?サーヴァントは見つかったか?」
「お生憎ですが迷子の子猫ちゃんは未だに見つからず〜しかし、足跡なら見つかりましたぞ。」

そういったキャスターは、長方形のディスプレイ―どうやらスマートフォンと言うらしい―を見せつけた。
画面には地図が記され、そこには複数の点がチカチカと点滅していた。
どうやら『真実』への手掛かりが見えてきたらしい。





◆  ◆  ◆


409 : 引きっぱなしのTrigger ◆lkOcs49yLc :2018/04/22(日) 23:18:43 g/mrRync0





サーヴァントとは、謂わば『魔力』で構成された存在であるという。
謂わばオカルトで喚び出した幽霊の様な者であろう。
そしてそのサーヴァントは、何か特殊な力を発揮したときにその残留粒子として魔力を残すらしい。

キャスターの持つ魔力探知機付きのディスプレイは、彼女の持つ能力によって生成された物である。
彼女の能力は、『創造』。魔力で編まれた物質を生成、或いは分解からの再構成を行う物である。
生意気な新人、ジョルノ・ジョバァーナの持つスタンドを思い出し、若干苛ついていた所だが――


通勤で人が通る歩道にて、隣で風船ガムを膨らましているキャスターを横目に、アバッキオは己の分身たるビジョン……スタンドを発現させていた。
彼のスタンドは『ムーディ・ブルース』。過去に起こった事象を再現するスタンドである。
因みにスタンドは魔術回路を持たぬものには見えていないようで、行き交う通行人は目に止めはすれど特に気にすることなく立ち去っていく。
ピピピピとけたたましい電子音を発しながら、ムーディ・ブルースの額にあるデジタル時計が巻き戻されていく。

<<キャスター、魔力が一番感知されやすかったのはどのくらいの時だ?>>
<<申し分ござらんがそこまではわしにも分からんよ、ただ……つい昨夜に起きたってことぐらいなら>>
<<よし、それで十分だッ>>

ムーディ・ブルースのタイマーは更に巻き戻されていく。
時間こそ掛かるが、スタンドが指し示す時間は着々と昨日へと巻き戻っていく。
死ぬ直前、トリッシュの記憶を元にパッショーネのボスの正体を突き止めようとしていた時にも、丁度この能力を使っていたのを思い返す。
スタンドに意識を集中する。この聖杯戦争で叶えたい願いの為に。

(俺は帰らなきゃならねぇ……元の世界に)

漸くボスの正体を突き止めたと思った時に、アバッキオは一瞬の痛みとともに意識を失った。
意識を失う直前、自分のせいで死んだ同僚の姿と共に、仲間達に全てを託して安らかに眠る―はずだった。

だが、アバッキオは生きていた。
いや――死にそびれたのだ。

だが、今ここにいて何をする?
しかし彼の意志は、瞬時に彼の進む道を方位磁針の様に導き出した。

レオーネ・アバッキオの方針。
それは、聖杯戦争の調査、及び脱出である。
無関係の人々を傷つけること、その選択肢は彼の中から一瞬で消え去った。
麻薬チームや暗殺チームのメンバーならともかく、ブチャラティ達もきっと同じ選択肢を選んでいたであろう。

その為にはまず、聖杯戦争について調査しなければならない。
自分が巻き込まれた世界が一体どの様な場所なのか。
聖杯戦争とは何なのか、サーヴァントとは何者なのかを。

大切なのは『真実に向かおうとする意志』である。
そしてパッショーネでの日々の中、ムーディ・ブルースを回す中で何時しか彼の意志は輝いていた。
それは今もなお変わらず、こうして。

「!?」

ムーディ・ブルースが突如、違和感のある映像を発見する。
ピピッと電子音が鳴ったと同時に、けたたましく鳴り続けた音声が終了する。

「見つかった?」
「ああ……『再生(リプレイ)』するぞ。」

直後、ムーディ・ブルースがザザザというノイズと共に形を変えていく。
それはまるで、ノイズから覚めた様なテレビ画面の様に。
そこに映っていたのは―――
ムーディ・ブルースが停止し、鮮やかな映像(すがた)を映し出す。


「こいつが……こいつが、昨日大暴れしたサーヴァントか……。」
「ま、さしずめそういうことになるね。アプリもそう示している。」

アバッキオのスマートフォンアプリのプロパティ画面を見つめながら、彼女も結論を出す。
だが、マスターであるレオーネ・アバッキオは震えていた。
ありえない事象を目にした、まるで魔女の様な怪物を目にした様な表情をしている。

キャスターのサーヴァント、神那ニコはそれを何となく察していた。
初めてミチル達と出会った時、自分や周りの仲間も同じ様な表情をしていたから。


410 : 引きっぱなしのTrigger ◆lkOcs49yLc :2018/04/22(日) 23:19:10 g/mrRync0

「で、如何いたしましょうか旦那、このネタ、放っておくわけには行きませんぜ。」
「……言われなくても分かってんだよ、ガキ。」

歳がジョルノ以上に離れているだろうキャスターの生意気な態度に、苛立ったアバッキオは振り向き言葉を返す。
震えに震え、唇を噛み締めながらも、それでもアバッキオの表情は凡そ淡々としたキャスターと相違ない冷静さを見せていた。

「ならどうする、マスター。」
「……調べるに決まっているだろ。こいつがこれまで、今、これからどう動くのか。」
「良いのかい?見た感じその調べたい事に怯えている様だが。」
「………ほっとけよ、ガキのくせに。」

図星を突かれたようにアバッキオが返す。
しかし若干感情が渦巻いていることが露になっているアバッキオに対し、キャスターは淡々とした表情のままだ。
仮にも英霊なだけあって、とても平和ボケした様な表情はしていない。
しかしそれでも、ただの子供の域を出ない神那ニコにとって、アバッキオの心の機微を感じ取ることはあっても、その本質を理解するのは到底難しい話であった。

(真実に近付こうとするのって、一体どんな気持ちだろうねぇ……)

真実に近付こうとするレオーネ・アバッキオに対し、キャスター…神那ニコは真実を遠ざける側の人間であった。
神那ニコには、自分と仲間を救ってくれた大切な仲間がいた。
しかし彼女は、魔法少女と魔女の真実のベールが明らかにされると同時に、この世を去った。
大切な仲間を失いたくないと願った自分達は、生前の彼女を再現した肉体を作り出そうとした。
幾多もの失敗を重ね、漸く生前の彼女に近い性質を持った完成型を生み出すことに成功する。
しかしその時、自分達はすでに彼女の記憶を削除することを決めていたのであった。

本当はそんなことをするつもりなどなかった。
ミチルに帰ってほしかった。
だが、クローンの肉体を以って生き返るのをミチルは拒絶した。
しかしそれでもと諦めずに、漸く記憶を消した十三番目のミチル『かずみ』が現れた。

この時、自分達プレイアデス聖団はかずみの記憶を改竄した。
ミチルの記憶を奪い取りながらも、彼女との思い出はそのままにして吹き込みただの『かずみ』として共に過ごした。
遅かれ早かれ、自分達の嘘は確実に見破られるだろう。
かずみもミチルと同様、非常に鋭い人物であったから。

(隠し続ける、ってのも、辛いもんだよ、案外)

だが同時に、彼の様な人物に喚ばれてよかった、ともニコは思っている。
聖杯に託す願いはないわけではないが、殺すことに抵抗のあるニコは、きっと自分は現界するのを拒絶するだろうと感じていた。
昔見たアメコミ・ヒーローみたいな不殺主義を貫くわけではない。ただ、あの頃の様になるのが怖いだけだ。
だからこそ、この男に喚ばれたということは、それなりに信頼できるというわけだ。

(それに、魔女研究チームのラボメンとしても、ソウルジェムが聖杯戦争の入場券だなんて中々興味深い)

彼と共に聖杯戦争について調査する。
嘗てプレイアデス聖団にいた頃を思い出す。
相性は今の所微妙な感じだが、生前の仲間であった海香等もこの様な雰囲気の持ち主である。

(ま、時間は掛かるがそれなりに良い関係を作れることを願っていますよ)

因みに昼食は先日と同様、あちらのピッツァ亭にするらしい。
その前後においても、聖杯戦争の調査は続けていく方針だ。




方や過去から落ちたことで、真実を求め続けた青年。
方や過去から逃げ出し、真実を隠し続けてきた少女。
かくして、十字架に縛られた探求者と隠蔽者の物語が、今こうして始まった。


因みに皆さんも気づいていると思うが――



一時停止したムーディ・ブルースが写し込んでいた人間の姿。
そこに映る長髪の男性は、正しく彼が最期に見た男の顔のそれと全く同じであった。


411 : 引きっぱなしのTrigger ◆lkOcs49yLc :2018/04/22(日) 23:19:37 g/mrRync0




【クラス名】キャスター
【真名】神那ニコ
【出典】魔法少女かずみ☆マギカ
【性別】女
【属性】中立・中庸
【パラメータ】筋力C 耐久C 敏捷B 魔力A 幸運C 宝具B(魔法少女変身時)

【クラス別スキル】

・陣地作成:A
自身に有利な陣地を作り出す能力。
生前、魔女の研究を行っていた逸話から、巨大な『魔女の結界』を再現できる。
結界内では外界からの干渉を阻める他、人間の記憶操作や人体の圧縮保存等が行える。
ただし、魔法少女の素材が足りないことや、結界の維持には仲間達の支援が必要不可欠であったため、完全に再現し切ることは不可能。

・道具作成:-
魔力を帯びた器具を作り出す能力。
キャスターの場合、後述の宝具で代用している為にこのスキルを失っている。


【保有スキル】

・魔法少女:B
願いと引き換えに己の身体を呪った少女。
自身の霊核を第三魔法によって物質化したアイテム『ソウルジェム』によって、様々な能力を行使できる。
簡単な治癒魔術から願いを魔法として解釈した魔法等が使える。
霊核はソウルジェムの中に移っているので、ソウルジェムが破壊されれば消滅してしまう。
因みに本来ならグリーフシードが無ければソウルジェムは濁り魔力は失われるのだが、サーヴァント化したことでマスターの魔力で代用できる様になった。

・戦闘続行:B
真っ当な肉体を失った魔法少女としての往生際の悪さ。
ソウルジェムを破壊されない限り立ち上がり、生き延びる。
治癒魔法と併せれば身体を貫通されても尚戦いを続けられる。

・冷静沈着:C
如何なる状況においても混乱することなく、己の感情を殺して冷静に周囲を観察出来る。
過去や絶望が胸を蝕もうともそれを一切表に出さない冷静さ。
精神系の効果への抵抗に対してプラス補正が与えられる。

【宝具】

『再生の願い(ウァイッセケーニギン)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
キャスターの魔法少女としての固有魔法。
物質を再構成する能力で、過去をやり直すことを願ったキャスターの願いを具現化したもの。
自身や他者をレンガ等の他の物質に変化させたり、輪っかを作ってガードしたりすることが可能。
ビームをバールから放射したり、PCやスマートフォンを介して端末や生物に能力をエンチャントしたりと使い道が非常に多い魔法。
キャスターのクラスで喚ばれた為に負担は軽減されているが、消費する魔力は生成する物質の質量に比例する。


【Weapon】

『ソウルジェム』
キャスターの本体である卵型の宝石。
一種の魔術礼装の様な効果を保有しており、念じることで魔術を行使できる。
生前は魔力を消費すればするほど色が濁っていくようになっていたが、サーヴァント化した今ではそれは克服されている。

『バール』
生成魔法で生み出した装備。
殴打用の武器としてしか使えないが、ビームを放つ際の媒介としても使用可能。

【人物背景】

嘗てあすなろ市を縄張りとし、魔女の研究を行っていたとされるプレイアデス星団のメンバーだった魔法少女の一人。
元はアメリカで暮らしていたが、幼い頃に遊びで拳銃で友人を撃ち殺してしまった過去を持つ。
これにより絶望を経験し、あすなろ市に帰国し中学生になった頃に、魔女の結界に遭遇。
そんな時に、同じく結界に巻き込まれた五人の少女と、魔女を倒しに来た和紗ミチルに出会い、彼女らを通して魔法少女となった。
飄々として掴みどころがないクールな性格で、チームでは分析やブレーンを担当している。
魔法少女としての願いは謂わば『真実の再生成』であり、真実を求めるマスターのそれとは凡そ対象的な物である。


【聖杯にかける願い】

強いて言うならミチルを蘇らせることだが、それ程執着している訳でもない。


412 : 引きっぱなしのTrigger ◆lkOcs49yLc :2018/04/22(日) 23:20:05 g/mrRync0



【マスター名】レオーネ・アバッキオ
【出典】ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風
【性別】男

【Weapon】

『ムーディ・ブルース』
【破壊力 - C / スピード - C / 射程距離 - A(再生中に限る) / 持続力 - A / 精密動作性 - C / 成長性 - C】
アバッキオが保有するエネルギーの具現体『スタンド』。
額にデジタル時計が付いたマネキンの様な姿をしており、過去にその場所にいた人間の行動を再生することが出来る。
飛行機のパイロットの動きを再現して飛行機を動かしたり、忘却した記憶や失くした物の発見したりすることが可能。
正体不明の人間の顔や指紋を発見できたりと情報戦のエキスパートの様な存在で、ブチャラティチームの行動において大変重要な役割を果たしていた。
15年前までも再生できるが、巻き戻す時間が遠ければ遠いほど再生するのには時間が掛かるのが欠点。
再生の仕方はビデオの様な感覚であり、知りたい情報に向かうために早送りしたり一瞬しか見えない情報を見るために一時停止したり出来る。
スタンドビジョン自体の戦闘力は何れも人並み程度だが、手練の人間を渡り合ったりする程度には強い。


【能力・技能】

・スタンド使い
パッショーネの試験にて与えられた特殊能力。
人間の思念による力を具現化した物。
スタンドはスタンド使いにしか見えず、スタンドにしか倒せない。

・警官の名残
嘗て警官だった頃に持っていたはずの洞察力、格闘術、そして『真実に向かおうとする意志』。


【人物背景】

麻薬取引で勢力を拡大している組織『パッショーネ』のブローノ・ブチャラティのチームの一員。
持ち前のスタンド『ムーディ・ブルース』による手掛かりの調査を担当している。
元は警官となり市民を守る使命感に燃えていたが、警察に対する世の中の理不尽さに飲み込まれ何時しかその気高き心は廃れていった。
賄賂を平然と受け取るようにもなっていたその時、賄賂を受け取った仲である男を逮捕するのに躊躇したために同僚を殉職させてしまう。
一生外せない十字架を背負わされ、絶望のどん底に陥っていた時、ブチャラティ達に勧誘され組織に所属することになる。
ブチャラティには強い信頼を置いており、彼が組織を裏切る時には二番目に彼に付いていくことに決めた(因みに一番目はジョルノ・ジョバァーナ)。
やがて組織のボスの別荘に到着し、彼の素顔をスタンドで知ることになるが、これを見破ったボスに暗殺され死亡。
今回はその直前、ソウルジェムを旅先で偶々拾ったことから巻き込まれた。

粗野だが根は真面目で正義感が強い性格。
しかし人を疑る性が強いようで、新入りのジョルノ・ジョバァーナにはアソコから淹れた茶で話をしようとする形で彼を試した。
終始ジョルノのことは面と向かって認めたことはないが、何やかんやで彼のカリスマ性に惹かれている面がある。

【聖杯にかける願い】

聖杯戦争を打破し、ブチャラティ達の元に帰還する。

【方針】

キャスターの創造能力と自身のスタンドを使って情報収集。
同盟はあまり乗り気にはなれないが良い奴には割とデレやすいのでそこは大丈夫。
特に■■■■■は優先的に調査し、見つけ次第叩く。


413 : ◆lkOcs49yLc :2018/04/22(日) 23:20:27 g/mrRync0
投下を終了します。


414 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/22(日) 23:37:04 xqOrFZZU0
皆さま投下お疲れ様です。盛況につき、またちょっとしたOPを投下します。


415 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/22(日) 23:37:53 xqOrFZZU0
.




彼には『復讐心』があった。英霊としてクラスにあてがわれるならば『アヴェンジャー』……
一個人のみならず、社会そのもの、この世の在りように恨みがあった。


母を殺した男を必ず探し出し、復讐する。
傍観者を気取って、無関係を装っていた周囲の連中も。
母と自分を見捨てた『父親』も。

どいつもこいつも有罪だ。許されては決してならないのだ!
俺は社会の頂点に立って見せる!!


故に。
彼が聖杯にかける願いもたった一つ。シンプルな願い――『復讐』だ。
漆黒の意思を以て、暗黒を駆け抜けた先。このアヴェンジャーは、とある聖杯戦争への召喚が叶う。
餓えた獣のような野心を抱え、復讐心に炎を灯そうとする。

しかし、そんなアヴェンジャーが現世へ導かれる最中だった。
『歌』が聞こえる。
不思議な『歌』だった。妙に惹かれる。誰に召喚されるかなど、誰であっても大差ないと考えていたが。
もしも願わくば『歌』の主に召喚されたいと、心のどこかで思う。


どんな奴だって構わない。無性に思う。
『歌』の主が俺のマスターなら……
聖杯を勝ち取れるか保証はない。だけど、他よりもマシに決まっている。きっと俺のマスターに相応しい……
予感がする。例えるなら幸運の女神に似た感覚だ。


復讐心が薄まり、ふと見上げれば光が見えた。
漆黒を照らす一筋の光。



★    ★    ★    ★    ★    ★    ★


416 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/22(日) 23:38:36 xqOrFZZU0
見滝原に連なる高層マンションの一つ。防音設備も整った一室で女性が歌い続けていた。
彼女の歌声で世界中のありとあらゆる人間が虜となり、ある者は涙を流し、ある者は失神し倒れてしまう。
異常な魅力に、誰もが疑わず。
彼女を世界一の歌姫だと称賛するのだった。


彼女は『ひとりきり』で歌い続けていたものの、誰かの気配に気づいて中断する。
どこから侵入してきたのか男が『ひとり』。
恰好はジョッキー……競馬騎手を彷彿させる服装で乗馬用ヘルメットに『Dio』と自己主張激しい装飾がつけられていた。
距離が離れているせいで、彼の表情は伺えない。
歌姫は顔色一つ変えずに問う。


「あなたが私のサーヴァント……アヴェンジャーさん?」


歌姫がマスターだった。
そして、男はサーヴァント。
全てが始まるこの瞬間に、どのような話をするかは様々であれ、重要なワンシーンである。
聖杯戦争の要となるサーヴァント・アヴェンジャーが静かに口を開いた。


「お前の歌は……なんだ?」


直ぐに歌姫は返答しなかった。
男は何か酷く動揺を隠せずにいる。ただでさえ表情が見えないのに、俯き、手で目元を覆い――髪をかきあげているかもしれないが
とにかく、歌姫とは視線を合わせずに続ける。


「奇妙なものを感じる。その歌は一体なんだ?」


「『音』よ」


今度はしっかりと表情を変えずに彼女は、アヴェンジャーの問いに答えた。


「大切なのは『音』。歌詞の言語は関係ないの。私は特定の波長に強く共鳴する人達の脳を揺らしているだけ」


そう。
次の瞬間には、二人の視線が交わった。
アヴェンジャーは純粋に答えを待ち構えており、歌姫は微笑のまま告げる。


「―――『私は世界でひとりきり』。そういう風に感じる人達よ」


「……世界で………ひとりきり…………」


静かにアヴェンジャーが呟いたところで、彼は納得するだろう。


そうだとも。俺はきっと『世界でひとりきり』だ。
そして、この女も『世界でひとりきり』…………間違いなく、俺のマスターだ………


417 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/22(日) 23:39:41 xqOrFZZU0
短いですが投下を終了します。
次は感想を書き貯めて投下する予定なのでお待ち下さい。


418 : 魔【まほうしょうじょと】 ◆3g7ttdMh3Q :2018/04/23(月) 00:47:16 eItHUNnM0
皆様、投下お疲れ様です。
夢現聖杯儀典:reに投下したSSを再利用し、投下させていただきます


419 : 魔【まほうしょうじょと】 ◆3g7ttdMh3Q :2018/04/23(月) 00:47:28 eItHUNnM0
【1】

脳――及び、それに付随する頭部、それさえ残っていれば生存できる人間は存在する。
いやその生物を人間と呼ぶべきではないのだろうが、敢えてこの文中では彼を人間と呼ばせてもらおう。
では逆に、頭部を失った人間は存在できるのか。
すなわち、何らかの巨大な獣によって頭部は丸々喰いちぎられたが、中学生らしからぬ豊満な肢体は残った場合である。
結論から言えば、彼女は死んだ。
死んだが、その魂は天、あるいはそれに類するものに召されることなく、この街へと辿り着いた。
この話は、今後の物語に特別に重要であるというわけではない。
だが、面白い偶然ではないか。頭部を失った少女の主人が、頭部を残して死んだ従者を引き連れるなど。

もう一つ、面白い偶然がある。

彼女も彼も――


420 : 魔【まほうしょうじょと】 ◆3g7ttdMh3Q :2018/04/23(月) 00:47:38 eItHUNnM0
【2】

学校で、彼女は一人だ。
机に突っ伏して眠る振りをする必要があるわけでもない、完全なる趣味の世界に逃げこむ必要があるわけでもない、
自分の椅子に誰かが座っている時に声を掛けられないわけでもないし、トイレや図書室――教室以外の場所に逃げ込む必要もない。
会話をする相手はいるし、クラスメイトとの仲も良好で、広義な意味で取れば友達もいる。
それでも、彼女は己の孤独感を埋めることが出来ない。
その孤独感の象徴が、彼女のはめている指輪である。
彼女はその指輪を買った覚えも貰った覚えもない、当然盗んだ覚えもない。
その指輪に関するありとあらゆる記憶が存在しない。
だが、外そうとすれば謎の焦燥感に襲われるため、外せないでいる。
誰も、何も言わない。教師でさえも何も言わない。
指輪は、彼女――巴マミにしか見えない。

「すみません」
授業が始まって十数分後、彼女はどこか異人じみてすらりと伸びた手を挙げる。
「どうしました?巴さん」
数学の授業中であり、巴マミは数学の教師にとって優秀な生徒であった。
少なくとも、黒板の数式が呪言めいて理解できない、等ということは無いはずである。
「保健室に行っても、構わないでしょうか」
「あっ、あぁ……保健委員、付き添ってあげなさい」
「いえ、一人で大丈夫です」
生徒の体調不良でありながら、教師としては胸を撫で下ろす心持ちであった。
中学生女子に抱くべきでない感想なのだろうが、巴マミは、どことなく断罪者めいている。
普通の人間とは何かが違う、それは彼女の両親が不在であることでなく、何か他の要因に端を発するような――いや、教師が考えるべきことではないのだろう。
ただ、巴マミは自分たちとは何かが違う。そして、真実がどうであれ、巴マミであろうとも体調を崩すことはある。
理解できる要因だったから、安心した。それだけのことだ。


421 : 魔【まほうしょうじょと】 ◆3g7ttdMh3Q :2018/04/23(月) 00:47:56 eItHUNnM0
【3】

込み上げる嘔吐感を抑えながら、巴マミは保健室へと向かう。
ある朝から、幾度と無く彼女は自分が死ぬ夢に悩まされていた。
その夢の中で、彼女は幼児向けアニメに出てくるような魔法少女の姿をしており、二人の後輩と白い猫のような生物が見守る中、怪物と戦っていた。
武器は――銃だろう、巴マミに銃器に関する知識はない。だが、その銃が単発式であることは戦いの中で理解できた。
次々に、新しい銃を召喚するぐらいならば、一度に何発も撃てる銃を召喚すれば良いのに、と夢の中の自分に思う。
だが、何丁も銃を使い捨てていく様には、どこか不思議な爽快感があった。
怪物を倒しながら進んでいくと、とうとう親玉らしい怪物が見つかった。
その姿はぬいぐるみのようで、どこか愛らしい。だが、夢の中の自分は容赦しない。
知っているのだ、愛らしいのは外見だけであると。
夢の中の自分が持つ単発式の銃が、巨大な大砲へと変わる。
「ティロ・フィナ――――――レっ!」
叫びとともに、耳をつんざくような大きな音が響き渡り――怪物は大砲から放たれた無数のリボンに絡め取られ、強く締めあげられて首をかくりと、落とす。
それで終わりのはずだった。
きぐるみを脱ぎ捨てるかのように、ぬいぐるみの中から黒いぐにょりとした何かが現れる。
夢の中の私の拘束などものともせずに、それは夢の中の私に接近する。
口を大きく開く。私を食べる。そして、夢が覚める。

最初にその夢を見た時、巴マミは家中に響き渡る声で悲鳴をあげた。
彼女の人生において、家族がいなくて幸運だったことはその時ぐらいだっただろう。
その声はきっと、どんな深い眠りからでも覚醒に導いていたはずだ。
その悪夢を、彼女は何度も繰り返し見た。
何度も見れば慣れる。悲鳴もあげなくなった。
だが、自分が怪物に噛み殺される感触などは何度味わっても気持ち良いものではない。
何より問題なのは、起きている時にもその夢の映像がぼんやりと頭のなかで再生されるようになったことだ。
誰かが己に呪いをかけているのではないか、そんな冗談のような発想も真剣味を帯びる。
巴マミは真剣にお祓いに行くことを考えていた。

悪夢も見ずに、うつらうつらとしていられるのならば、毎日でも保健室に行きたくなる。
最初は冷たかった布団が自分を受け入れるかのようにあたたかみを帯びていく内に、巴マミはそう思う。
ぼんやりと天井を眺めながら、指輪を何となくかざしてみる。
養護教諭は今、外出中だ。
巴マミにそういう趣味があった、というわけでは断じて無い。
ただ、何となく――本当に何となく、夢の中の自分を思い出して、彼女はこう呟いただけだ

「変身【メタモルフォージ】」

醜い蛹から蝶が飛び立つように、偽りの巴マミという存在が――魔法少女へと、変わっていく。
記憶が戻る。夢のすべてが現実だと、知る。
濁る。濁る。濁る。濁る。
彼女の魂の象徴、右側の髪飾り――ソウルジェムが濁る。
自分の死が、自分の死によって絶望的となってしまった後輩二人に対する罪悪感が、
そして自分が巻き込もうとした魔法少女という運命の苛烈さが、彼女のソウルジェムを濁らせる。

絶望が、彼女を染め上げる。

ソウルジェムとは、卵である。
雛が眠る卵が親の温もりを求めるように、ソウルジェムは魔法少女の絶望を求める。
そして、魔女としてこの世に生まれ落ちる。
それでも、未だに人間として踏みとどまっているのは――彼女の精神力の強さのためだろう。
幼少の頃から、魔法少女として命懸けで戦ってきた。
救えなかった人間もいたし、弟子と別れることもあった。
そして何よりも、彼女の願いは――生きることだった。
交通事故で両親を失い、自らも死に向かう中。
あるいは、両親と共に死んだほうが幸せかもしれない、それでも彼女は生きることを願い、魔法少女になった。
始まりから、絶望だった。だから、彼女は耐えられる。

そして、この願いこそが二度目の死に際して――彼女をこの聖杯戦争へと導いたのかもしれない。


422 : 魔【まほうしょうじょと】 ◆3g7ttdMh3Q :2018/04/23(月) 00:48:06 eItHUNnM0

【4】

半狂乱になり、涙さえ浮かべながら――それでも、彼女は立ち直った。
聖杯戦争、その情報が彼女にインストールされていく。
だが、願いなどは無かった。
いや、正確にいえば人を殺してまで叶えたい願いが無かった。
だから、このまま家に帰りたかった。
殺されてなおも、魔法少女であることが彼女の存在理由だった。
だから、戦わなければならない。
この偽物の街ではなく、本当の見滝原で。

9(キュウべえ)

己の命を助けた白い獣の名を心で呼ぶ、俗にいうテレパシーである。しかし、返事はない。
キュウべえとは特殊な生物であり、通常の人間に見ることは適わない。
魔法少女であることを思い出した今ならば、彼を見ることが出来るのではないかと思ったが、どうやらそもそもこの街にキュウべえはいないらしい。
魔法少女になったあの日から、いつも一緒にいてくれた家族のような存在である彼がいないのは少々不安だが、そもそもこういう場所であるのでしょうがないだろう。
ならば、次に呼ぶべきなのは――きっと、この場所で彼女の唯一の味方、己の従者【サーヴァント】。
もうすでに召喚されていたのか、あるいはこれから呼び出されるのか、彼女にはわからない。
だが、確信がある。キュウべえに語りかけるように、魔法少女見習いの愛おしき後輩に語りかけるように、心で語りかければ良い。

(来て、私のサーヴァント)

心の中の声と共に、空気が不自然に粘ついた。
動けなくなるような強い圧【プレッシャー】、魔法少女という外面を剥ぎ取られ、巴マミという少女になればガタガタと震えたくなるような、悍ましい悪【オーラ】。
思わず、目を閉じる。それは一瞬のことで、そして一瞬で十分だった。
彼女が目を閉じている間に、召喚は完了していた。

「問おう――」
発せられる強烈なオーラに反し、その男は穏やかな顔をしていた。
その顔は、世界中のほとんどの人間が知る、彼を思い起こさせる。

「君が、私のマスターか」

その男は救世主【キリスト】のような顔をしていた。


423 : 魔【まほうしょうじょと】 ◆3g7ttdMh3Q :2018/04/23(月) 00:48:16 eItHUNnM0
【5】

自分が魔法少女であること、自分が死んだこと、自分のこと、自分のこと、自分のこと。
己のサーヴァントに話す時、口は驚くほどによく回った。
魔法少女の才能を持った二人の後輩と会った時と同じだ、
魔法少女という特異な才能は誰にも理解されない。
だからこそ、それを理解してくれる人間に己の孤独を埋めて欲しくて話す、話す、話す。

「聖杯で叶えたい願いはありません」
「ふむ……」
そして、伝えた。
聖杯に望む願いはない、その言葉にもサーヴァントは意に介すでもなく、微笑んでいる。
巴マミは紅茶を口に運ぶ、先ほどのプレッシャーが嘘であるかのように、男は穏やかである。
「ただ、見滝原に帰りたい。それだけです」
「本当に?」
「え?」
「本当に、君に叶えたい願いは無いのだろうか?」
なんということもない、ただの確認のはずだった。
本当に、ただのそれだけのはずだった。
だというのに、魔法少女になる過程で捨ててしまったあらゆることに関して、考えてしまう。
「聖杯があれば、君の両親は生き返る。聖杯があれば、君の後輩は生き返る……もしかしたら生きているかもしれないがね。
何でも話せる友人――それを願うのもいいだろう、マミ……本当に願いはないのかな?君は……一人で寂しくはないか?」
人間社会の中で、あまりにも特異すぎる人間は孤独だ、サーヴァントはその孤独に付け入る方法を知っている。
ただ、理解者であればいい。そして――導いてやれば良い。
己の悪意で心の空白を満たしてやれば良い。
だが、今回は趣向を変えよう。そうだ、ゲームをしよう。
この真っ白な少女を悪の色に染め上げるゲーム。
あの魔人に与えた餌の様ではなく、動機を与え、己の意思で人を殺させる、楽しいゲーム。
人を守るはずだった魔法少女が、罪悪感にがたがたと震えながら、目に涙すら浮かべ、
許しを請いながら何度も何度も何度も、何の罪のない人間に己の魔法を当てさせるように育成するゲーム。

己を殺した魔人への憎悪は未だに尽きない、だが――それは聖杯を手に入れ、再び受肉してからだ。
今は己の悪意を満たさずにはいられない。


「私はアサシンのサーヴァント、シックス。マミ、どうか考えておいて欲しい。
君が願いを叶えるということを、きっと君の会いたい人は……キミの孤独を埋めてくれるはずだからね」


424 : 魔【まほうしょうじょと】 ◆3g7ttdMh3Q :2018/04/23(月) 00:48:29 eItHUNnM0
【6】

【クラス】
アサシン

【真名】
シックス@魔人探偵脳噛ネウロ

【パラメーター】
筋力B+ 耐久C+ 敏捷C 魔力E 幸運D 宝具A+++

【属性】
混沌・絶対悪

【クラススキル】
気配遮断:E
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
自らが攻撃体勢に入ると気配遮断のランクは大きく落ちる。
生前のアサシンの犯罪が明るみに出なかったのは権力者との癒着によるものであるため、ランクそのものは低い。

【保有スキル】
戦闘続行:A+
往生際が悪い。
全ての四肢を欠損しても戦闘を可能とし、
頭部さえ残っていれば決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

カリスマ:B-
プライド、トラウマ、恐怖――心の隙間に巧みに入り込む悪魔の魅力。
人外の才能を持った孤独な人間は彼に魅せられ、とある天才は彼の悪のパワーの前に全てを捧げた。
しかし、絶対悪であるが故にそのカリスマが適応される相手は限られる。

絶対の悪意:EX
他者が最も嫌がる行為を選択し、行い続ける、自分が常に絶対優位に立つことに関する天才的な才能。
悪意に関して、彼以上の人間はいない。
そして、その悪意の強さ故に――彼は悪意を発散せずにはいられない。

【宝具】
『新しい血族』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
7000年の定向進化の末に誕生した、強大な悪意と強い脳を持つに至った新種の人類たち。
彼に絶対に忠誠を誓う彼らを召喚する宝具であるが、その"謎"は暴かれた、彼は世界でただ一人の存在である。
故にこの宝具は存在出来ない。

『ただ1人の新種(シックス)』
ランク:EX 種別:対6【世界でただ一人の新種】宝具 レンジ:- 最大補足:1人
7000年の定向進化の末に誕生した、
強大な悪意と強い脳を持つに至った世界でただ一人の新種の人類、それがアサシンである。
自然を操り、人を操り、文明を操る、あらゆる悪意を遂行する彼の存在そのものが一種の宝具である。
世界で唯一人の彼と比較できるものは存在しないため、この宝具のランクもまた測定することは出来ない。



【weapon】
『細胞と金属の結合技術』
細胞を金属に変えることができる。

『剣』
アサシンの一族の鍛え上げた血脈の象徴ともいえる剣。
特殊な能力はないが、硬度と切れ味は抜群である。

【人物背景】
「絶対悪」と呼ばれている男で、「新しい血族」の最先端に位置する者。
人類種の敵という意味で疑いようもなく絶対的な悪であり、
その悪意によって間接的に怪物強盗と電人という最悪の犯罪者達を生み出した。
表向きの顔は世界最大の兵器メーカー「ヘキサクス」の会長兼死の商人ゾディア・キューブリック。

【サーヴァントの願い】
再び受肉し、己の悪意を満たす。
その過程として、主に己のマスターである巴マミで遊ぶ。


425 : 魔【まほうしょうじょと】 ◆3g7ttdMh3Q :2018/04/23(月) 00:48:52 eItHUNnM0
【7】


【マスター】
巴マミ@魔法少女まどか☆マギカ

【マスターとしての願い】
本物の見滝原に帰る……?

【アイテム】
魔法によって召喚したマスケット銃
単発銃であるが、魔力の許す限りは無数に召喚出来る。

ソウルジェム
魔法使いに変身する為のアイテム。普段は指輪として装着している。
その正体は物質化した魔法少女の魂そのもの。
ソウルジェムを破壊された魔法少女は魂を失い、死亡する。
また、ソウルジェムが肉体から100m以上離れることで仮死状態に陥る。
魔法を使うごとに穢れが溜まり、穢れがたまると、段々魔法が使えなくなっていき、穢れが頂点に達することで魔法少女は魔女に転じる。

【能力・技能】
魔法少女に変身することで様々な魔法を扱うことが出来る。

【人物背景】
中学3年生。魔女の結界に巻き込まれたまどかと美樹さやかの窮地を救い、2人の相談役となり魔法少女の存在と契約することの覚悟を説く。
魔法少女の中では珍しく、他者を魔女とその使い魔の脅威から守るという信念で戦い続けたため、まどかとさやかに大きな影響を与えた。
しかし2人の前では頼れる先輩を演じていたものの、一方で心の内に強い不安や孤独を抱き続けていた。
まどかとの会話により不安を払拭するが、直後の「お菓子の魔女」との戦闘でまどかとさやかの眼前で頭部を食い千切られるという呆気なくも凄惨な最期を遂げた


【8】

おめかしの魔女。その性質はご招待。
理想を夢見る心優しき魔女。
寂しがり屋のこの魔女は結界へ来たお客様を決して逃さない。


426 : 魔【まほうしょうじょと】 ◆3g7ttdMh3Q :2018/04/23(月) 00:49:04 eItHUNnM0
9【キュウべえは考える】

魔法少女とは別に、人間社会で暗躍する一族がいる。
その一族の祖はトバルカインと名乗り、その一族の強烈な悪意のために、アベルとカインの神話が用意された、と僕は考える。
カインの子孫だから、悪意に満ちているのではない――その悪意のために、その祖先は人間で初めての殺人を起こしたものとされたんだ。
だから、ある種の神話とは――その一族のためのものだったんだよ。

その一族はあくまでもただの武器を作る一族だったのにね。

その一族がもたらした武器で、ある地域での戦争は百年続き、
その一族がもたらした武器に触れたとある武将は、第"六"天魔王を名乗り、
文字通り、その一族が第一次世界大戦の引き金を引き、
十数年前のある戦争の原因も、その国とその一族との繋がりを大国が知ったせいだと言われてる。

感情のない身だけれど、その一族の悪意を僕達が持てないことが残念でならないよ。
僕達に悪意は無いからね。


427 : 魔【まほうしょうじょと】 ◆3g7ttdMh3Q :2018/04/23(月) 00:49:19 eItHUNnM0
投下終了します


428 : ◆Pw26BhHaeg :2018/04/23(月) 12:55:52 7zjuUADc0
二つ投下します。


429 : You only Die Once ◆Pw26BhHaeg :2018/04/23(月) 12:58:17 7zjuUADc0
目が回るほど忙しい毎日。なにかを忘れている気がする。

発展著しい見滝原に転勤して、仕事や収入も増えたが、自宅に帰れる日数は減った。
故郷への電話やメールも、たまにしか送れない。去年は何度里帰りできたか。そろそろ嫁でももらう歳だ。

「帰らにゃ」

ぽつり、と声が出る。どこへ。自宅の賃貸アパートか。それとも実家か。ああ、たぶん実家の方だ。
いや。ここは自分のいる場所で、みんなも自分を頼りにしている。投げ出してしまうわけにはいかん。
古い価値観と笑わば笑え。そう育てられて来た男だ。実家は、田舎は、ここより怖いぞ。

「そうですね、随分ご無理させましたし。一旦帰宅していいですよ、後はやっときます」

メガネの部下が、気を遣ってくれる。新人も増えた。そういやなんだか、みんなメガネだ。
上司は気紛れ、後輩は自由。自分ひとりでなんだかんだ背負いすぎたかもしれん。

「おう。では、よろしゅう」

善は急げ。机を片付け、バッグを持ち、背広を羽織って職場を立ち去る。忘れ物はないはず。

「帰ろう、帰ろう」

自宅へ、自宅へ。足取り軽く。風呂を浴びて、晩飯食って酒飲んで、泥のように寝よう。
急いで自宅へ到着し、ストレッチして風呂を浴び、テレビを見ながら飯と酒。ああ、気分がいい。
―――まだ、なにかを忘れている気がする。忘れ物では、なく。人生がどうとか、嫁とかでもなく。

「あ、思い出した」


430 : You only Die Once ◆Pw26BhHaeg :2018/04/23(月) 13:00:27 7zjuUADc0


篠突く雨の中。泥を蹴立てて、騎馬武者どもが寄って来よる。
通すかよう。野太刀を構え、道を遮る。

「お退(ひ)きあれ!! おじ上!! お退きを! ここは、お豊にお任せあれ!!」

馬上から、おじ上……義弘公が叫ぶ。
「お前も帰るのじゃ、薩摩へ! 帰るのじゃ!! 豊久ッ!!」

振り向き、笑って返す。
「帰りたかです。死ぬるなら薩摩で死にたか。でも。
 おじ上一人薩摩に戻られたなら、俺(おい)も兵子(へご)もここで皆死んでも、こん戦、島津(おいたち)の勝ちなんでごわす」

おじ上は逃がした。さぁ後は、食い止めるのみ。時を稼ぎ、足止めする。命をかけて。
「兵子ども!! 射ち方構えぃ!! 死ぬるは今ぞ!!
 敵は最強、徳川井伊の赤備え! 相手にとって不足なし! 命捨てがまるは、今ぞ!!」



「俺は帰るのだ。薩州へ」

今年三十路の男―――『島津豊久』は、全てを思い出した。現代からすれば400年以上前の記憶を持つ者として。

「俺はなぜ、こげなとこでこげなことをしちょっか。あやかしん仕業(さた)か」

そうだ。総身に重傷を負い、烏頭坂からさまよい歩いて……ふいに、左右に扉の並ぶ、妙な石造りの通路に出て。
真ん中に机があって、妙な男がおって。そいつが――――

「これだ」

懐を探って出て来たのは、そいつに投げ渡された、妙なびいどろ玉。
これを手にとった瞬間から今の今まで、自分は偽りの人生を送って来たことになる。そんなあほうな。
下等な狐狸妖怪にしては手が込んでいる。天狗か仙人か、神仏か修羅か、そのたぐいの仕業であろう。そうとしか思えぬ。
少なくとも傷は塞がっている。ならばよい。これから帰るには……どうも、戦をせにゃならんらしい。


431 : You only Die Once ◆Pw26BhHaeg :2018/04/23(月) 13:02:44 7zjuUADc0
「あ、記憶、戻りました?」

テーブルの向こうから声。少女のような、少年のような。
顔や体つきを見てもどっちか分からんが、南蛮人のようだ。緑の黒髪ならぬ緑の髪。大きな瞳。黒い具足を纏っている。
「おう。――――ぬしが、俺の、さあばん? とかか」
「はい。クラス名は『シールダー』、真名は『ニコル・アマルフィ』。はじめまして、よろしくお願いします」
背筋を伸ばし、右掌を側頭部に翳して敬礼する。随分礼儀正しい。育ちは良いのだろう。

「ん。俺ん名は、『島津豊久』。ところでぬしゃ、男か女か」
「男ですよ」



そのままマスターと会話し、情報を交換する。方言がきついが、意志は通じる。
関ヶ原。島津。ステガマリ。見た目は普通の日本人だが、記憶は何百年も前の日本のサムライらしい。
狂気を感じるが、狂人というわけではない。確かに、戦場に身を置く人の雰囲気、目つき、佇まいだ。疑いようもない。
この人の方こそ英霊になっていてもおかしくないのだが―――生憎、彼は生きていて、僕は死んでいる。

「にこる。俺ん難しかこつば分からん。なんでん願いば叶うちゅうなら、ひとつしかなか。
 俺ん故郷へ、薩摩へ帰ることよ。父代わりんおじ上も、母上も、嫁も、一族郎党ん皆して俺を待っちょる。
 あん場で死んでん不思議んなか。互いん帰れんでん覚悟ば出来ちょる。
 じゃっどん、帰るち約束しちょる。おじ上と。俺がここん生きちょる以上、帰らねばならぬ」

家族。故郷。ああ。ふっと微笑み、顔を俯ける。彼は生きていて、僕は。
「……羨ましい、ですね」
ふと呟いてしまった。マスター・トヨヒサ氏は、眉根を寄せている。僕の事も話さねばなるまい。
「僕は、祖国のため、家族のために戦って死にました。あなたのいた時代や、この街が存在する時代より、遥かな未来に。
 戦友を庇ったんです。死後に赴いた『英霊の座』というところで、その後の顛末も知りました」

僕を殺したのは、アスランの幼馴染。僕の死が、二人の仲を裂くことになってしまったらしい。皮肉な話だ。
「後悔はしていませんが――――英霊は所詮亡霊、家族や友人の元へは帰れません。
 ですから、僕はサーヴァントとして、マスターのために行動します」


432 : You only Die Once ◆Pw26BhHaeg :2018/04/23(月) 13:05:13 7zjuUADc0
マスターは、じっと僕の顔を見る。強い目だ。傍にいるだけで士気が向上するような、狂熱を秘めた目だ。
「にこる。俺ん頭ん中ん吹っ込まいた、こんおかしか戦ん掟じゃっどん」
「はい」
「聖杯ち、七騎ん英霊ば討てば、ひとつ出来る。じゃっどん、そいで帰れっちわけでんなか。ひとつは、ぬしんやる」
「……僕に、聖杯を?」

困惑する僕に、腕を組み、大きく頷くマスター。当然だ、という表情だ。
「ん。俺は薩摩ん帰る方法ば探る。ぬしゃ生き返るため、聖杯ば要る。こいでよか」
「なぜ?」
「人間、死んだらしまいじゃ。戦場(いくさば)でさぱっと死ぬるは、誉れじゃ。
 じゃっどん、あるじの俺は英霊とは戦えんのじゃろ。俺は現世(うつしよ)では死んだことんなっちょるはずじゃろ。
 英霊と戦えん俺ばかり生き返って、実際に戦うお前(まん)に褒美んなかは、理(ことわり)ば合わなかではなかか」

理(ことわり)。奇妙な理屈だが、彼にはそれが物の道理であるらしい。
「……故郷へ帰るために、別に聖杯がいるとしたら?」
「もうひとつふたつ、聖杯ば作れば済む。英霊ば何騎おっか知らんじゃっどん、倒せばよか。俺は英霊のあるじの方ば殺す」
「分かりました。……ただ、僕は英霊として、従僕として、死者として―――マスターの生存を優先します」
「そいなら、そいでよか。あとは、情報と人数ば集める。こん戦ば開いたもんに、戦ばしかけっど」

右掌を側頭部に翳し、敬礼する。僕は英霊だが、戦争に関しては彼の方が手練だ。彼の判断に従う。
「了解しました、マスター」
「ん。よか兵子じゃ」



マスターは就寝した。僕はひとり、マスターの住居の窓から夜景を眺める。
美しい街だ。あの光のひとつひとつに、人がおり、家族があり、人生がある。忘れてはならない。
僕は、戦争とはいえ、覚悟の上とはいえ、大勢の人を殺した。自分の死は正直なところ、その応報かも知れない。
この地のような平和な場所で、静かに音楽に打ち込めていたら、どんなによかったか。両親もきっとそれを望んでいただろうに。
他人が臆病者と言おうとも、その方がずっと勇気が必要な生き方だったかも知れない。

『臆病者は何度も死ぬが、勇者が死ぬのは一度だけ』だったか。
ならば、僕は臆病者になろう。生き返るために。マスターを故郷へ帰すために。何度でも。


 のがるまじ 所をかねて思ひきれ 時にいたりて涼しかるべし

                                       ―――日新公いろは歌


433 : You only Die Once ◆Pw26BhHaeg :2018/04/23(月) 13:07:07 7zjuUADc0
【クラス】
シールダー

【真名】
ニコル・アマルフィ@機動戦士ガンダムSEED

【パラメーター】
筋力D 耐久C 敏捷B 魔力C 幸運D 宝具A

【属性】
秩序・善

【クラス別スキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
宝具により強化されている。

騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、野獣ランクの獣は乗りこなせない。宝具に乗る(身に纏う)。

自陣防御:B
味方、ないし味方の陣営を守護する際に発揮される力。防御限界値以上のダメージ削減を発揮するが、自分はその対象には含まれない。
また、ランクが高ければ高いほど守護範囲は広がっていく。仲間を庇って戦死した逸話によるスキル。

【保有スキル】
音楽神の加護(偽):A
本来は、音楽の女神ミューズの加護を受けていることを示すスキル。あらゆる音を聞き分け、天才的な演奏を可能とする。
更に、音楽魔術の行使にプラス補正がかかる。生来の音感と才能、そして研鑽により、このスキルと同等の効果を自分自身の力として発揮できる。
ピアニストであったことから獲得したスキル。宝具の操縦や強化にも効果を発揮する。

機関の鎧:A
モビルスーツ・ガンダムシリーズのパイロットであったことによるスキル。宝具を展開して身に纏い、自在に飛行・戦闘する。
筋力と耐久力をランクアップさせると同時に、ブースト機能によって三つの能力値に「++」の補正が与えられる。

気配遮断:B
自身の気配を消すスキル。隠密行動に適している。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。
宝具の放つミラージュコロイドを纏って行動可能だが、使用中は防御力が低下する。


434 : You only Die Once ◆Pw26BhHaeg :2018/04/23(月) 13:09:18 7zjuUADc0
【宝具】
『闇に踊る雷の盾(ブリッツガンダム・トリケロス)』
ランク:A 種別:対城宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

彼が使用していたモビルスーツ(MS)。全高18.63m、重量73.50t。オーブ連合首長国の宇宙コロニー「ヘリオポリス」で極秘開発されていた試作型MSの一機。
黒を基調とした色彩が特徴。コードネーム「ブリッツ(電撃)」のとおり、敵陣深くへの電撃侵攻を目的として開発され、格闘戦において高い戦闘力を発揮する。
右腕にはビームサーベル、中距離用50mm高エネルギービームライフル、3連装超高速運動体貫徹弾ランサーダートを搭載した攻盾システム「トリケロス」、
左腕には有線式ロケットアンカー「グレイプニール」を装備。特殊金属に電流を流し続けることで防御力を高める「フェイズシフト(相転移、PS)装甲」を纏う。
また機体の周囲に電磁気で特殊コロイド粒子を纏わせ、視覚・電波・赤外線での探知から存在を隠匿する「ミラージュコロイド・ステルス」も備える。
ただしミラージュコロイド展開中はフェイズシフト装甲が使用できず、防御力が低下する。また電力(魔力)消費も激しいので長時間の使用はできない(80分程度)。

近未来に開発された純然たる科学の産物であるが、なんか宝具化している。シールダー自身がサイズダウンしたブリッツを身に纏って戦闘する。
マスターの魔力が乏しいため、全身を現界させることはそれなりの魔力か電力がないと困難。聖杯などがあれば十全以上の戦闘力を発揮できよう。
さらに世界の記憶を引き出せば、派生機であるネロブリッツ、ネブラブリッツなどに変化することも出来るかも知れない。

【Weapon】
宝具。ナイフや銃での戦闘も一通りこなせる。

【人物背景】
アニメ『機動戦士ガンダムSEED』の登場人物。CV:摩味/朴ロ美。近未来のスペースコロニー群国家「プラント」に属するマイウス市出身。男性。身長165cm。
父はマイウス市代表でプラント最高評議会議員ユーリ・アマルフィ、母はロミナ。遺伝子操作による生まれつき優秀な人類「コーディネイター」の第二世代にあたる。
容姿は母に似て気品漂う甘い顔立ち、緑色の髪、大きな瞳を持つ美少年。ピアニストとして活躍しており、リサイタルを開くほどの腕前。
穏やかな性格の平和主義者で、ナチュラル(非コーディネイター)への差別意識もないが、祖国と同胞を守りたいという義務感からプラントの国軍にあたる武装組織「ザフト」に志願した。

戦闘員としての能力は高く、アカデミー(士官学校にあたる)時代の総合成績はアスラン・ザラ、イザーク・ジュールに次ぐ第3位。爆弾処理技術では1位であった。
成績優秀につき「赤服」として、エリートを集めたクルーゼ隊に配属され、オーブの宇宙コロニー「ヘリオポリス」襲撃に参加。ブリッツガンダムを奪取し搭乗機とする。
ヘリオポリスを脱出した宇宙戦艦アークエンジェルを追撃し、ユーラシア連邦の宇宙コロニー「アルテミス」を陥落させるなど活躍。
だが地球降下後にオーブ近海でキラ・ヤマトが乗るソードストライクガンダムと交戦し、戦友アスラン・ザラを庇って戦死した。享年15歳。
彼の死は主にアスランの精神等へ結構な影響を及ぼした。その後32回もアスランの回想で死んだり、リマスター版で死因が改悪されたりと不憫な子。スパロボでは生存ルートも。
アサシン、ランサー、アーチャーなどの適性もあるが、今回はシールダーとして現界。

【サーヴァントとしての願い】
生き返って両親や友人たちと再会し、共に平和な世界で暮らせればいいな、と思う。

【方針】
マスターに従う。危険な主従を打倒し、友好的な主従とは手を組む。

【把握手段】
原作1話から29話まで。


435 : You only Die Once ◆Pw26BhHaeg :2018/04/23(月) 13:12:09 7zjuUADc0
【マスター】
島津豊久@ドリフターズ

【Weapon・能力・技能】
現代人のロールが与えられているため、野太刀や短筒などの武器はない。頑丈な肉体や戦闘本能、戦の勘働きは元のまま。
人馬諸共両断するタイ捨流剣術、相手をえげつなくボコボコにする組手術を習得済。薩摩隼人、島津家の人間として戦国士道を叩き込まれている。
全知全能が戦に特化しており、集団戦では偽装撤退戦術を多用し、大将首を掻き取って兵を降らせるなど、戦いの要所では常に最善の選択肢を取る。
空気は読めるがあえて読まない。人を戦いに駆り立てる「狂奔」の素質を持ち、戦功や勝利のためなら自分の命も餌にすることを躊躇わない。
逆に戦以外の役には立たず、平時は寝る・飯を食う・ぶらつく・武を練磨するといったことしかしない。

【人物背景】
平野耕太『ドリフターズ』の主人公。30歳。CV:中村悠一。薩摩弁で話す。官位は中務少輔(史実では中務大輔・侍従)。異名は妖怪首おいてけ、薩人マシーン。
戦国時代の島津家の武将。元亀元年(1570)6月、島津家久の子として誕生。幼名は豊寿丸。天正12年(1584)3月、島原の沖田畷の戦いにて15歳で初陣。
4月に元服して島津又七郎忠豊となり妻を娶るが、天正15年(1587)6月に父家久が急逝。その跡を継いで18歳で日向国佐土原城(宮崎市佐土原町)の城主となる。
伯父義弘より実子同様に養育され、豊臣秀吉による小田原征伐(1590)や文禄・慶長の役(1592-98)などに従軍し、各地を転戦。
慶長4年(1599)に日向国で起こった庄内の乱(-1600年3月)に出陣し、武功を上げた。慶長5年(1600)、中務大輔・侍従となり豊久と改名。
同年9月の関ヶ原の合戦では伯父の義弘と共に西軍として参陣するが、石田三成らへの不信から戦闘には参加せず、東軍優位となると敵中に孤立。
この時、義弘ら島津隊は東軍本陣を掠める形で敵中突破し撤退。豊久は義弘を逃がすべく「捨て奸(すてがまり)」を敢行、敵将井伊直政に重傷を負わせるも討ち死にした。
『ドリフターズ』本編では、捨て奸の後に重傷を追った豊久が、謎の男に異世界へ飛ばされることになる。

【ロール】
独身のサラリーマン。偽りの記憶と悟ったので、辞職するかしばらく休職するつもり。預貯金はそこそこ。

【マスターとしての願い】
薩州へ帰る。

【方針】
主催者に戦を仕掛ける。そのために情報と人数を集める。世に害悪を及ぼす主従は積極的に狩って聖杯の糧にする。
戦は嬉しいものの、薩州へ帰るためには死ねないし、約束した手前シールダーも死なせるつもりはない。
義弘公だってあの後随分帰国に苦労したんだから捨てがまりは我慢なさい。

【把握手段・参戦時期】
原作。1巻2話冒頭で謎の男にソウルジェムを投げ渡され、この場に飛ばされた。


436 : ◆Pw26BhHaeg :2018/04/23(月) 13:14:11 7zjuUADc0
投下終了です。
続いてもう一つ。


437 : Umbra Nigra ◆Pw26BhHaeg :2018/04/23(月) 13:16:22 7zjuUADc0


山の中で泣いている子供が見える。

回転する紋様。
床を埋め尽くす無数の白骨。
母の死。
海辺。
電車。

禍々しくうねる空。立ち並ぶ石碑。奇怪なオブジェ。……いつか、見たことがある夢。

【おお……あなたには、すごい力が秘められているのね。素晴らしいわ】

知らない女性の声。

地下の町。
墓室。
凍った湖。
密林の中の村。
海。
生首。

【その力を用いれば……あなたは……】

声が遠ざかる。

禍々しくうねる空が、裂ける。そこから光が―――――


438 : Umbra Nigra ◆Pw26BhHaeg :2018/04/23(月) 13:18:30 7zjuUADc0


「……おかしな夢だったな」

朝、自宅。少年は目覚め、身を起こす。
まだ少しフラフラする。思わず夜更かししたのだろうか。身支度を調える。
「武(たけし)、まだ寝てるの? 学校に遅れるわよ。早く朝ご飯食べちゃって」
母の声。そうだ、さっきのは夢だ。怖い夢を見た。
「今行くよ、母さん」



見滝原の中学校に通う、平凡な少年。名前は『山門武(やまと・たけし)』。
幼い頃に父は死に、母子家庭だが―――遺産や年金もあり、暮らしていくぶんに不自由はない。
「やっぱり三鷹よりかは、ずっと発展してるよなぁ……」
彼は最近、東京の三鷹市から移住して来た。母の勤め先も決まった。ここは地方都市なのに、まるで外国だ。

「おう武、おはよう」
「あ、おはよう……」
同級生だ。転校先で友達が出来るか不安だったが、杞憂だったようだ。今のところイジメも受けていない。

「……なー、将来どうする?」
「将来?」
「まだ中学生だけどさあ、10年後はどうしてるかなあ。どの高校行ってどの大学行って、たとえば公務員になって、みたいに……」
「そううまく行けばいいけどね。将来何が起きるかわかんないし……でもまあ、安定してた方がいいよね」

将来。未来。決まりきった、安定した道を行ければ、苦労はあっても幸せだろう。
うちは母子家庭なのだから、母にあまり迷惑をかけたくはない。いい就職のために、大学へ行った方が良いのだろうが……。
「今はまだ、遠い未来のことさ。ぼくは……」




439 : Umbra Nigra ◆Pw26BhHaeg :2018/04/23(月) 13:20:33 7zjuUADc0
…トマンアートマンアートマンアートマンアートマンアートマンアートマンアートマンアートマンアートマンアートマンアートマ…

禍々しくうねる空。立ち並ぶ石碑。奇怪なオブジェ。……いつか、見たことがある夢。

【夢ではない。恐れることもない。お前がここへ来ることは、決まっていたことなのだ】

知っている声。かつての残響。そうだ、これは夢だが、夢じゃない。かつての記憶であり、未来のこと。
目の前が輝き、全身全霊が広大な宇宙空間に投げ出される。そうだ、ぼくはまだ、ここにいた。

【時は来た! さあ! 決断を下す時だ! 地球というちっぽけな星の支配者におさまるか?
 あるいは地球を遠く離れ、宇宙の秘密の一部を覗いてみるか? 時間も空間も、お前の前に開かれるであろう。
 さもなくば、さらに偉大で、さらに恐ろしい運命に赴くことにもなる。お前の意志ひとつだ!】

声が轟く。星々が煌めき、銀河が遠ざかる。
彼方に見えるのは、恐ろしい力。恐ろしい、暗黒の影。ぼくに与えられたもの。
「わからない! わからない! なぜそんな必要があるんだ! ぼくにどうしろというんだ! ぼくにこんなものを押し付けるな!」
ぼくは、ただの人間だ。ただの少年だ。こんな力を得ても、大きすぎるのに。

【決定するのはお前なのだ。お前は力を求めて力を得た! もはや後戻りはできぬ。お前はすでに宇宙の歯車のひとつなのだ】

ぼくは、地球へ帰りたい。でもそうすれば、あの暗黒の影が、一緒についてくる。地球は滅んでしまう。
帰ってどうするんだ。母は死んだ。ぼくはたった一人で生きていけるのか。この力で、平和な生活や父母の生命は取り戻せないのか。
「わからない……! ぼくは……ぼくは……」

…ラフマンブラフマンブラフマンブラフマンブラフマンブラフマンブラフマンブラフマンブラフマンブラフマンブラフマンブラフマ…



「……ぼくは、どうしちまったんだ……」


440 : Umbra Nigra ◆Pw26BhHaeg :2018/04/23(月) 13:22:42 7zjuUADc0
目の前に、巨大な太陽。荒れ果てた大地。石の馬に群がる多数の餓鬼。まだ、夢の中だ。
そこへ―――肩から黒い翼を生やした、妖艶な女性が舞い降りる。ドレスを纏い、銀髪を角のように固めている。彼女は微笑み、告げる。

【ふふ。素晴らしいわ、マスター。あなたの望み、あなたの力は、よく分かったわ】
「あ……あなたは……?」
【はじめまして、私は『キャスター』。真名は『アルティミシア』よ】

アルティミシア。ギリシア神話の女神、だろうか。少し違うか。彼女は指差し、告げる。

【いい。あなたには途方もない力がある。この世界を滅ぼすほどの。少なくとも、私の活動には充分なほどの。
 でも、平和な生活や、両親の生命を取り戻す事は出来ないみたい。残酷なものね。
 願いを叶えたいなら、聖杯を手に入れなくてはならない。あなたはそのために呼ばれたの】

「聖杯……!」
そうだ。聖杯戦争。万能の願望器。英霊を用いて魔術師が戦う謎めいた儀式。記憶がわっと沸き起こり……また抜けていく。
アルティミシアは構わず、愉しげに続ける。

【私にも願いがあるの。聖杯を手に入れたら、あなたを平和な日常に帰してあげてもいいわ。
 あなたは戦えない、無力な少年。使い魔はいるようだけど、私の方がずっと強力よ。
 全部私に任せておきなさい。互いの願いを叶えるために、少し準備が必要なだけ。あなたはいつもどおりに暮らしなさい】



「……おかしな夢だったな」

朝、自宅。少年は目覚め、身を起こす。
まだ少しフラフラする。思わず夜更かししたのだろうか。身支度を調える。
「武、まだ寝てるの? 学校に遅れるわよ。早く朝ご飯食べちゃって」
母の声。そうだ、さっきのは夢だ。怖い夢を見た。
「今行くよ、母さん」


441 : Umbra Nigra ◆Pw26BhHaeg :2018/04/23(月) 13:24:47 7zjuUADc0
【クラス】
キャスター

【真名】
アルティミシア@FF8、DFFシリーズ

【パラメーター】
筋力E 耐久D 敏捷D 魔力A++ 幸運C 宝具A

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
陣地作成:A
魔術師として自らに有利な陣地「神殿」を作成する。

道具作成:B
魔力を帯びた器具を作成可能。剣・斧・槍・矢を魔力で生成し、射出して攻撃する。

【保有スキル】
魔女:A(EX)
人類の創造主の半身「魔法のハイン」の力を受け継ぐ「魔女」の一人であることによるスキル。
強大な魔力を有し、一般的な魔術の他、バイオ、メルトン、ブリザガ、サンダガ、トルネド、ホーリー、クエイク、フレア、
アルテマ、メテオ、メイルシュトローム、リフレク、デスペル、ストップ、ダブルなどの強力な魔法を振るう。
「対魔力」「高速詠唱」「幻術」など様々な魔術スキルを内包。

憑依:A
相手の精神につけ込み、肉体を乗っ取る術。無力な人間よりは魔術師の方がよい。憑依対象は女性限定で、男性や英霊には憑依不可能。
現在はマスターの母親(NPC)の肉体に間借りしている。

自己改造:B
自身の肉体に別の肉体を付属・融合させる適正。このスキルのランクが高くなればなるほど、正純の英雄からは遠ざかる。
自分の宝具と接続(ジャンクション)する。


442 : Umbra Nigra ◆Pw26BhHaeg :2018/04/23(月) 13:26:44 7zjuUADc0
【宝具】
『汝の思う最強のもの(ガーディアン・フォース・グリーヴァ)』
ランク:A 種別:幻想宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

幻想が魔力で形をなした召喚獣。翼が生えた黒い獅子のような幻獣。マスターが彼なので黒い馬になるかも知れない。
フレア、グラビジャ、ペイン、トリプル、デスペルなどの魔法を使用し、相手が魔術を使う場合は「ドロー」で奪い取る。
さらに「死の宣告」や「ショックウェーブパルサー」も放ってくる。キャスターはこの宝具と接続して融合することも可能。

【Weapon】
剣・斧・槍・矢を魔力で生成し、射出して攻撃する。

【人物背景】
『ファイナルファンタジー8』のラスボス。外見は肩に黒い羽根を生やした妖艶な長身の美女。銀髪を二本の角のように固めている。
遠い未来に存在する「魔女」であり、過去・現在・未来の時間と空間を圧縮して唯一の存在になろうと目論む。
目的を果たすため過去の世界へ干渉し暗躍したが、最後は主人公スコールらによって打倒された。某説は最近公式で否定されたが……?
『ディシディア』シリーズでのCVは田中敦子。カオス陣営で参戦しており、敵陣営に策略を仕掛けるなど暗躍していた。

【サーヴァントとしての願い】
全ての時空を圧縮し、世界を外部から観察する唯一の存在となる。

【方針】
策略を用いて他の主従同士をぶつけ合わせ、弱ったら両者を狩って聖杯の糧とする。
マスターは魔力供給源として非常に優秀なので必ず守る。彼の願いを叶えるかどうかは現状不明。

【把握手段】
原作。DFF世界から来ているのでそちらでもよい。


443 : Umbra Nigra ◆Pw26BhHaeg :2018/04/23(月) 13:28:41 7zjuUADc0
【マスター】
山門武@暗黒神話

【Weapon・能力・技能】
『聖痕』
体の八ヶ所に刻まれた蛇の刻印。アートマンのしるし。額のは目立つのでキャスターが幻術で隠している。令呪とは別。

『三種の神器』
草薙剣(天叢雲剣)、八咫鏡、八尺瓊勾玉(首飾り状)。剣で人を刺し殺すことは出来る。他の力は不明。自宅に保管されている。

『餓鬼』
不老不死の霊水で肉体が変化し、知性と理性を失った元人間たち。武の従僕として付き従い、決して死ぬことはない。
標的に集団で襲いかかり食い殺す。仏の力によって封印することは可能。数十体が自宅に潜んでいる。

『馬頭星雲』
オリオン座分子雲のひとつ。暗黒神スサノオ、天の斑駒、羅喉とも。体内で核反応を起こし星々を生み出す超巨大宇宙生物。
アートマンである武の命令に従う。かつては地球の近くにおり、太陽や月を覆い隠して天変地異を起こしていた。
現在は地球から1500光年の彼方にいるため、喚び出してからやって来るまでに最速で数百年、遅くて数十億年かかる。
しかし膨大な魔力を有しているので、これによってキャスターの活動に充分な量の魔力を常に供給することが出来る。
ただしあまりに大規模な魔術を振るうには、魂喰いなどでそれなりに魔力を集めねばならない。

【人物背景】
諸星大二郎の漫画『暗黒神話』の主人公。13歳の平凡な少年。東京都三鷹市在住。父は幼い時に死に、母と二人暮らし。
実は1600年前に死んだヤマトタケルの転生体であり、古代縄文人の血を引き、宇宙の真理ブラフマンに選ばれし者「アートマン」となる運命を持つ。
謎の老人・竹内に導かれ、日本各地を経巡って「聖痕」と三種の神器を得、ついにアートマンとして覚醒したが……。

【ロール】
中学生。母と二人暮らし。

【マスターとしての願い】
父母と三人で平和に暮らしたい。

【方針】
キャスターによって記憶に靄がかけられており、自分が聖杯戦争のマスターであることに気がついていない。中学生としての日常生活を送る。

【把握手段・参戦時期】
原作。集英社コミック文庫版が入手しやすい。最近完全版も出たが大筋は同じ。続編の『孔子暗黒伝』も読むと良い。
地球へ向かおうとする途中、なぜかソウルジェムを手に入れたものと思われる。記憶は多くが失われている。


444 : ◆Pw26BhHaeg :2018/04/23(月) 13:30:18 7zjuUADc0
投下終了です。


445 : ◆70OOnTg2F6 :2018/04/23(月) 22:58:20 1ufhS03M0
投下します


446 : 相良宗介&キャスター ◆70OOnTg2F6 :2018/04/23(月) 22:59:15 1ufhS03M0


「ヒィイイイイィッ!」

開発都市見滝原、その外れに位置する倉庫街を一人の男が命を懸けた逃走劇を演じていた。
男は非合法組織、所謂暴力団や違法滞在している外国人にこの国では所有が禁止されている火器や爆薬を売りさばき、成り上がってきた。
世渡りが上手く、幾人もの部下を従える彼は一端の悪党だったと言えるだろう。
だが、今はもう部下など一人として存在しない。
暴力団にも引けを取らない私兵たちは全員殺されたのだ、それもたった一人の学生に。
銃撃で一瞬のうち半数以上を血の海に沈め、首を折り、罠を仕掛け、ナイフで動脈を掻き切り…殺戮者は徹底的だった。
だが、自分だけは絶対に逃げ切って見せる。
永遠にも思える時間をかけて現在は血の海が広がっている取引場所から『商品』が積まれたトラックに辿り着き、キーを差し込む。
ホラー映画の様にエンジンが中々かからないということはなく、あっさりと車は発進体制へと移行した。


「よ、よし―――」


これで逃げ切れる――男に安堵が駆け巡り、つい表情が綻んだのを間抜けと罵るのは余りにも傲慢だろう。
一秒後、前方から放たれた9mmパラベラム弾により彼の脳漿が弾け飛んだとしても、だ。
男が事切れると、その後方に広がる闇の中から一人の少年が姿を現した。
否、一人ではない。
もう一人、少年の背後に巻き毛の男が立っていた。

少年はトラックの荷台へと回って積み荷を確認し、巻き毛の男は運転席へと向かう。
そして血を滴らせている今しがた事切れた男の死体に古ぼけた布をかけ…『処分』した。
文字通り髪の毛一本すら残すことなく。
それから程なくして、車は乗り手を変えて発進する、
男たちの生きてきた痕跡を全て抹消して。





447 : 相良宗介&キャスター ◆70OOnTg2F6 :2018/04/23(月) 23:00:01 1ufhS03M0



「チドリカナメ…マスターにとっての『女神』の敵勢力からの奪還。
それが聖杯にかける願いであり、試練と言う訳か、マスター…いや、サージェント・サガラ」

一般的な広さのマンション。
その一室で肥満体形の様にも筋肉質の様にも見える巻き毛の男がくつろぎながら、問いを投げた。

「はっ、肯定であります。大統領閣下」

サガラと呼ばれた少年――
相良宗介は先程反社会勢力から奪った重火器や爆薬に囲まれながら、直利不動の姿勢で答える。
まだ二十も数えていない年齢に見えるが、その顔の精悍さや揺るぎもしない長い時間をかけて研磨された鉄の様な雰囲気は彼が高度に訓練された軍人である証拠だと、
従軍経験もある大統領(プレジデント)であるサーヴァント――ファニー・バレンタインは、静かに見抜く。
しかしそれも彼が語った遍歴を考えれば無理のない話だ。
幼少期から暗殺者・ゲリラとして育てられ、その後は傭兵として各地の戦場を転戦し、
ここへ来る直前は世界を牛耳る軍事組織との戦いに身を投じていたという。
最も現在は大敗を喫し、所属していた組織も壊滅したようだが。

「ふむ。そう畏まらなくても私は気にしない。
私はサーヴァント、君にとっての『兵器』であり、ひょっとしたら『戦友』になるやもしれん間柄だ。その様に振舞いたまえ」
「はっ…では」

サガラというファミリーネームから察すれば、少年は元々は日本人。
つまりは合衆国の未来の同盟国である。
バレンタインにとっての女神ルーシー・スティールである、少年にとっての女神チドリとかいう女性の国籍もまた同じのはずだ。

「マスターは実戦経験を積んだ優秀な『兵士』であり、私と同じく聖杯を目指している。
いいだろう、気に入った。あとは君が我が国にとって『有益』な人間であり続けるのなら…
聖杯を手に入れた暁には『同盟国』大統領として、必ず君と、君の女神の属する『祖国』にも報いよう」

確固たる意志を込めて、バレンタインは宣言する。
少年の出自や経歴、現在帰属している国家はどうでもよい。
そも合衆国(ステイツ)という国家は様々な民族が寄り集まって繁栄してきた多民族国家であるのだから。
ただ合衆国にとって必要な人物であるか、それが全てに優先され、彼はその条件を満たした。それだけの事なのだった。
しかし裏を返せばそれは、相良宗介が合衆国に有益でない人間と判断した場合、腐った果実の如く切り捨てられる事も意味している。

「……閣下が聖杯を目指すのも国益のため、という訳か」
「その通り、私は民のために聖杯を獲る。
仮に君が語ったアマルガムとかいう鉄錆にも劣るゲス共に奪取されれば…悲劇は免れない。
それだけは何としても阻止し、合衆国の手によって聖杯を管理せねばならないのだ」

その為に君の力が必要だと、大統領は語る。
宗介はそこでバレインタインの弁舌へ意識がひきつけられていたことに気付いた。
静寂が場を包み、視線が交わる。
バレンタインの瞳は宿敵であったガウルンと同じドス黒い意志の光を放っていたが
――同時に傭兵である奴や宗介が抱いたことのない『正義』に裏打ちされた愛国心を宿していた。

「…ミスリルは壊滅し、陣代高校を去った俺は、
もうSRTのウルズ7でも、出席番号42番のゴミ係兼カサ係の転校生でもない」

本来ならば聖杯などという得体の知れないオカルトはナンセンスだと切り捨てる所だったが、今回ばかりは訳が違う。
自分を何の抵抗も許さず見滝原という聞いたことのない土地に拉致し、
薬物も使わずに記憶を奪い、ただの学生として生活させるなど不可能だ。
そして記憶が戻った時に出会ったサーヴァントという、これ以上ない証拠。
ここまで来て疑うのなら、それはただの愚鈍でしかない。
であれば、答えは決まっていた。


448 : 相良宗介&キャスター ◆70OOnTg2F6 :2018/04/23(月) 23:01:01 1ufhS03M0

「それでも俺は約束した。『必ず彼女と彼女の属する世界全てを護衛する』と
だから俺は、一人の男として…相良宗介として、戦う事に決めた」

この選択を、彼女はきっと許さないだろう。
だが破邪の銀(ミスリル)が壊滅した今、他の道を進むには、自分は余りにも永く戦場で生きすぎた。
例え目の前のこの男が悪魔であっても、悪魔と相乗りするまでだ。
その代わり、必ず取り戻す。
彼女が、彼女の周りにいる人々が平和な明日を迎えられるように。
『マイナス』から『ゼロ』へ歩みだせるように。
宗介は掌の白色に輝くソウルジェムという名の宝石を握りしめた。

「そうか、『感謝』するぞマスター、…では、ここで一つ見てもらいたいものがある」

バレンタインはそう言って腕から何かを『取り出した』。
取り出した、と言っても袖の下から何かを取り出したのではない。文字通り皮膚の下から何某かを取り出したのだ。
その異様な光景に宗介は一瞬瞑目する。
取り出されたのは乾燥し、ミイラの様になった一本の腕だった。

「これは…」
「生前私が手に入れた『聖人の遺体』だ。尤もこれは私の宝具であって、本物ではない。
謂わば限りなく精巧に再現された『贋作』というべきものだがね」

大元の『遺体』と違ってこれ単体では意味をなさない、とバレンタインは言い切る。

「だが…全てを集めきれば生前と同じく私は『最初にナプキンを取る権利』を得る。
そうすればこの『試練』にも限りなく有利に立ち回ることができるだろう」
「その残りの『遺体』とやらはどこに?」
「残り『三つ』の遺体は確実にこの街のどこかにある。
…私は召喚された日からずっとこの遺体を探すことに注力していた、君の『意思』を確認するまで隠しておいた事は謝罪しよう」

宗介には『最初にナプキンを取る権利』というものが何かを理解することはできなかったが、
目の前のサーヴァントの言葉と、遺体には何か『凄み』の様なものを感じるのは事実だった。

「これまでは危険を避け、『順調』に集めることができたが…ここから先は聖杯戦争が幕を開け、『遺体』を集めるのは難しくなるだろう、我々はより綿密に連携しなければならない」
「……了解した」
「無論、君の『安全は保障する』。それが私の絶対的『使命』だからな
さて、君はまだまだ『遺体』の事を知りたいだろうし、私も君の、特にAS(エーエス)とやらの話が聞きたいが――今日はもう遅い。話はここまでにするとして、最後に一つ」



「マスター。これより我々が行うのは―――紛れもなく『正義』だ」






新しい時代の幕開けの時には必ず立ち向かわなくてはならない『試練』がある。

試練には必ず『戦い』があり『流される血』がある。

試練は『強敵』であるほど良い。

試練は『供えもの』。立派であるほど良い。

試練は 極罪を犯した36名以上の血によって完遂される―――、


449 : 相良宗介&キャスター ◆70OOnTg2F6 :2018/04/23(月) 23:03:24 1ufhS03M0

【真名】ファニー・バレンタイン@ジョジョの奇妙な冒険 スティール・ボール・ラン
【クラス】キャスター
【属性】秩序・悪

【ステータス】
筋力E 耐久D 敏捷D 魔力C 幸運B 宝具A

【クラススキル】
陣地作成:-
自身の拠点となる陣地――女神を捧げる『神殿』を建設できる。
なお、これはキャスターが勝手に言っているだけであり、実際は機能していない。

聖人作成:EX
道具作成の派生スキル。
キャスター道具作成の逸話を持たない。
しかし、このスキルがあれば後述の宝具を完成させることができる。

【保有スキル】
絶対正義:A 
自国こそが世界の正義そのものだという自負。
同ランク以下のあらゆる精神干渉をシャットアウトし、
判定次第では干渉を行った相手に攻撃を行う際、有利な補正を得られる。

護国の鬼将:A
あらかじめ地脈を確保しておくことにより、特定の範囲を“自らの領土”とする。
この領土内の戦闘において、総統たるバーサーカーは極めて高い戦闘ボーナスを獲得しあらゆる判定で有利となる。

話術:B
言論にて人を動かせる才。
国政から詐略・口論・交渉など幅広く有利な補正が与えられる。
巧みな話術により自己の正当性を示し、危機的状況下に置いてもチャンスを掴み取ることが可能。

カリスマ:B
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能であり、合衆国大統領としてはBランクで十分と言える。

【宝具】
宝具
『D4C(Dirty Deeds Done Dirt Cheap“いとも容易く行われるえげつない行為”)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1〜3最大捕捉:―
隣の世界(平行世界)へと干渉する能力を持つスタンド。
同じ場所に隣同士の世界を同時に存在させたり、平行世界へと身体を移動させることが出来る。
何らかの物体の隙間(「扉と壁の間」「国旗と地面の間」等)に挟まれることで発動する。
大統領は隣の世界へと移動することで、どんな重傷を負おうと「隣の世界の自分」と交代して無傷の状態で復活することが出来る。
(交代の際に隣の世界の大統領にこの宝具を引き継がせる為、実質的にD4Cが大統領の本体と言っても差し支えない)
ただし宝具である為、交代には魔力の消費が必要となる。
また大統領自身を除き、2人の「同じ人間」が「同じ世界」に同時に存在し続けると、次第に身体が崩壊して死亡する。
この特性を利用し、大統領が「同じ人物同士」を接触させることで相手の身体を一瞬で崩壊させ殺害する事が可能。
条件を満たせば、自分以外の者でも「基本の世界」に戻ることだけは可能。
その他大統領は人だけではなく武器なども平行世界から引き込むこと可能だが、大統領の手から離れれば数分後には前述のとおり崩壊を始める。
また、マスターだけは基本世界に一人しか存在しておらず、死亡しても彼の父親と同じく平行世界から連れてくることはできない。
人型近距離タイプのスタンドである程度の格闘能力はあるが、高い近接戦闘能力を持つ相手には劣る上、射程も短い。
(サーヴァントのステータス同様に表現するならば、筋力C 耐久D 敏捷C相当)
また、精神のヴィジョンであるスタンドが傷付けば、本体である大統領もまた傷付く。


450 : 相良宗介&キャスター ◆70OOnTg2F6 :2018/04/23(月) 23:04:13 1ufhS03M0

『繁栄へと至る遺体(スティール・ボール・ラン)』
ランク:EX 種別:- レンジ:-最大捕捉:-
大統領が生前手中に収めたと言われる九つのパーツからなる聖人の遺体。
決して朽ちることなく存在し続け、この遺体を集め、所有した国家は1000年間の繁栄と栄光が約束されると言われていた。
尤もこれは大統領の逸話から再現されたいわば贋作であり、真作の聖遺物の様に単体で手に入れた者にスタンドを発現させたり、下半身不全を治療するといった様な奇跡は発揮できない。
この宝具は大統領の現界と同時に自動発動し、前述の遺体を聖杯戦争の舞台に散らばる。
そして、それを全て集め、『女神』となる女性を用意すれば後述の宝具を発動することができる。

『D4C-ラブトレイン-』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
前述の条件を満たしたときにのみD4Cが発動できる超局地的固有結界。通称「D4C-ラブトレイン-」。
遺体が完成し、『女神』なる女性が揃った際にはこの世のあらゆる善が大統領の結界の隙間に濾過されて集まり、害悪は隙間に入れず遠くのどこかに飛ばされる。
この能力はつまり、大統領が隙間の中にいる間はここに放たれた攻撃は大統領に通用する事は無く、その攻撃は何らかの災厄の形となって、遠くの誰かが代わりに「おっかぶる」事になる(列車に轢かれる等)。
また、大統領の攻撃等でうけた傷は例えかすり傷であろうが体を駆け巡って心臓や体の器官に登って来る為、致命傷を与える事が出来る。
D4C時代の、挟み込むことで自分を別の次元へ送り込む能力も、そのまま使用する事ができる。

【Weapon】
拳銃:1890年代当時のリボルバー式拳銃。装填数は6発、予備の弾丸は無し。
サーヴァントにはダメージこそ与えられても大して脅威ではないが、弱いマスターなら急所に当たれば死ぬこともある。
D4Cで連れてこられたヴァレンタインは、全員この拳銃を所持している。

【人物背景】
第23代アメリカ合衆国大統領。

元々はただの下院議員だったが一枚の「地図」が指し示す場所の一つ、サンディエゴを捜索した清教徒達のグループに同行した際に「悪魔の手のひら」に遭遇。
この際に「聖人の遺体の心臓部」と、スタンド能力「D4C」を得て、グループで唯一生還。
その後頭角を表し事件の一年後には大統領にまで上り詰め、その地位を利用してスティール・ボール・ランレースを残りの遺体を集める為のレースに作り替えた。
愛国心を絶対の価値観としており、遺体を集めるのもアメリカ国民の安全を保障するため。彼は自身の行いを、「全てが正義だ」と語る。

夫人であるスカーレット曰く「どこを歩いても足音を立てない」


夫人であるスカーレット曰く「どこを歩いても足音を立てない」

【マスター】
相良宗介@フルメタル・パニック!

【マスターとしての願い】
敵対軍事組織「アマルガム」の壊滅及び、千鳥かなめの奪還。

【能力・技能】
高度に訓練された軍人。格闘、狙撃、爆破、暗殺、AS操縦と、あらゆる破壊工作に通じる。

【人物背景】
都立陣代大高校2年4組に在籍する高校生兼、対テロ極秘傭兵組織「ミスリル」作戦部西太平洋戦隊に所属する傭兵。
全世界から優れた人材を登用するミスリルの中でも最精鋭とされる特別対応班(SRT)の一員。コールサインはウルズ7。
人型兵器アーム・スレイブの操縦にかけては世界屈指の実力を誇り、生身での戦闘力も高い。
オーバーテクノロジーを記憶する特殊な人種「ウィスパード」とされる少女・千鳥かなめを護衛する任務を受け、陣代高校へと転校・潜入する。
しかし本編中盤にて敵対組織の猛攻により所属していた組織「ミスリル」はほぼ壊滅状態に陥り、敵のアームスレイブとの一騎打ちでも大敗を喫する。
その後保護対象であった千鳥かなめは連れ去られ、正体が露呈した事により学園にもいられなくなった彼は全てを失いながら、それでも連れ去られた少女を救う旅に出た。

原作七巻「続くオンマイオウン」終了直後より参戦。
把握方法は原作七巻まで読む他には、総集編劇場版×3を視聴しその後漫画版で当該時点まで読むことを推奨。

【方針】
聖杯狙い。
一先ずは残り三つの『遺体』を探す。
その間敵対マスターの暗殺や『遺体』を探す同盟も考慮。


451 : ◆70OOnTg2F6 :2018/04/23(月) 23:04:39 1ufhS03M0
投下終了です


452 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/24(火) 23:59:48 sOrAwPZ.0
皆さま投下お疲れ様です。次は感想を投下すると言いましたが、完全に嘘でした。
追加のOPを投下します。


453 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/25(水) 00:00:38 ovVoK3EA0
.




切っ掛け………『きっかけ』はなんだったのだろうか。よく分からない。
緊張の糸とは違う。
モット違う。別のナニカがあって。

聖杯戦争。聖杯を巡る催しに巻き込まれたから、ソウルジェムと呼ばれる透明な宝石を手にしたから。
それでもない。
じゃあ、だったら一体。結論は――よく分からないだった。








私は見滝原中学校にかよっていた。
元々『日本』と呼ばれる国に住んでいなかったけど『ここ』では、そういう事になっている。
記憶を取り戻した時、学校はどうしようか悩んだけれど。
私の召喚したサーヴァント……『ライダー』が、普通に通学した方がいい。そう言ってくれた。
正直……学校に行きたい理由なんて無い。
でも『ライダー』が、そうしろと言ってくれたから。私はそうした。

最近、変なニュースを耳にする。
先生もホームルームで同じ事を呼びかけていた。寄り道しないで真っ直ぐ家に帰りなさい、って。

赤い箱。

ヒトが丸ごと入ったガラスの箱が発見されるようになったのは、私がライダーを召喚した翌朝だったと思う。
アレ……サーヴァントの仕業なのかな。
ライダーは、心配しなくていいって言ってた。……だから、大丈夫だよね。

クラスのみんなが赤い箱のウワサをするけど他にも……

救世主のウワサ。

時間泥棒のウワサ。

怪盗のウワサ。

時間泥棒と怪盗は同じじゃないのかな? でも、ちょっと違うみたい。
世界的に有名な歌手のウワサ。
まだ曲、聞いたことないの? そう聞かれたけど、別に………聞きたいとは思わない。
『モナ・リザ』が絵画から出て徘徊してるウワサ。
どうして『モナ・リザ』なんだろう……


454 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/25(水) 00:01:17 ovVoK3EA0
私は『赤い箱』が一番不安に感じるウワサだった。自分が狙われる、じゃあなくて。
あの―――人目のつかない空き地に捨てられている子犬。
それが、とても心配だったの。
あの子も『赤い箱』にされるかもしれない。ヒトしか『赤い箱』にされない保証はないから。


でも……聞いてくれるかな。私の話を……ライダーは………


私は帰る途中、子犬の入ったダンボールを持ってきた。
家のリビングにお父さんとお母さんが居る。
二人とも仲良く手をつないでテレビを見ていた。
仲良く……ピッタリくっついて、お母さんは笑って、お父さんの手は暴力を振るう『手』じゃあない。優しい『手』……


「ライダー……?」


私が辺りを見渡してもライダーの姿はなかった。
でも、魔法みたいに私の目の前に現れた。私と同じ金色の髪で、テレビで見た騎手の恰好をしている英霊。
少し緊張してたと思う。
ダンボールを持つ手が少し震えてて……中に入っている子が心配になる。


「ライダー……あのね。私の話を聞いて欲しいの」


「……なんだ」


ああ。
私は酷く安心してしまった。
ライダーは『話を聞いてくれた』『私の目を見てくれている』『無視なんかしない』。
たったそれだけの事でも。


「子犬を……飼いたいの。大人しくて……かわいい………良い子だから」


ライダーが少し間を開けてから。


「子犬は――どこにいる。その中か? 見せろ」


「…………」


私がダンボールの蓋を開けて、ライダーが中を覗きこんで。それからジッと黙ってる。
大丈夫、きっと大丈夫。
無償に体が強張っている。怖くないのに。
ライダーは……優しくて……私の話も聞いてくれる。だから怖くない。大丈夫。
そしたら、ライダーが顔をあげて。


455 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/25(水) 00:01:52 ovVoK3EA0
「お前に『責任』はあるか?」


「……責任」


「飼うと宣言した以上『コレ』を身勝手に捨てたり、世話もしない……そういう事をしないと、誓えるか?」


私は――頷いた。
良かった。やっぱり大丈夫だった。
それからお父さんとお母さん、子犬と一緒に遅くまで遊んで。夜更かししてしまったけど、とても良かった。
外は……危険だから出れない。
変なウワサも、ここじゃ関係ない。
ずっと、ずっと―――








「子犬だと? ただのゴミの間違いだろう」


ライダー『ディエゴ・ブランドー』がダンボールの中に見たのは、糸であちこち縫いつけられた子犬の死骸だった。








ハッキリ断言しよう。
『ディエゴ・ブランドー』を召喚した少女……レイチェル・ガードナーは初めから正気でなかった。
既に彼女の両親は死んでいた。
どうやってレイチェルが両親を殺害したのか?
後日、近所の評判を聞くに、両親の中は険悪そのもので、どちらかが片方を殺した可能性もありえるが、然したる問題じゃあない。

ディエゴを召喚し、聖杯戦争を理解したレイチェルが最初に命令したのは
両親をリビングに運ぶこと。
彼女は、ソファで座らされた両親の裁縫で縫い付け。父親の手を『ぬいぐるみの手』に取り変えて。
母親の顔を『笑顔』に形なるよう糸で縫い合わせたのだ。

一連を傍観していたディエゴが、訳のわからない、子犬の死骸まで『拾って』『飼う』と宣言するマスターを
さっさと切り捨ててしまおうと考えるのは自然だった。
彼女は、野心で聖杯を手にしようとするディエゴを否定も拒絶もしない。
むしろ命令を聞く。都合の良いマスターでもあったが、あんなのが長く持つ訳がなかった。
都合が良いだけが全てじゃあない。
別のマスターとの再契約を優先するべきだろう。最も……それは聖杯戦争の序盤で巡り合えない。


―――偵察をしていた『恐竜』……いくつか戻って来ないのがいるな


宝具で産み出した恐竜。
偵察とは文字通り、ただの徘徊に過ぎないが……使い魔を始末する。警戒心か、もののついでか。
とにかく、気付いた存在がいるのは明白だ。既にサーヴァントは複数召喚されている。
『ウワサ』で聞く者たちか。あるいは別のナニカか………








ああ………ああ、でも………


私は思った。


ライダーも『私のもの』になってくれれば…………







アラもう聞いた? 誰から聞いた?
町を徘徊する恐竜のそのウワサ

図鑑に載ってるあの恐竜が、夜になるとあちこちを走りまわってて
信じられないほど小さいものから、ヒトに食いつく危険なものまで

でも知ってる? 実はそれって元々別の生き物だったって
犬だったり猫だったり、きっとどれかに人間だった恐竜も混じっている

いつの間にか生き物が恐竜にされちゃうって
見滝原の住人の間ではもっぱらのウワサ

スケアリー!


456 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/25(水) 00:03:54 ovVoK3EA0
投下終了します。多分、次こそ感想を投下するのでお待ち下さい。


457 : ◆NIKUcB1AGw :2018/04/25(水) 21:34:50 4UmNIxMY0
投下乙です
自分も投下させていただきます


458 : 川尻早人&アーチャー ◆NIKUcB1AGw :2018/04/25(水) 21:35:46 4UmNIxMY0
僕のパパはパパじゃない。
そして、僕のママもママじゃない。


◆ ◆ ◆


川尻早人が記憶を取り戻したきっかけは、家族に対する違和感だった。
父を殺して成り代わった殺人鬼は、その報いを受けて死んだ。
もう二度と父が帰ってこないのを知りながら、それを隠して母と共に父が帰ってくる日を待つ。
それが、今の早人の日常だったはずだ。
だが今の川尻家には、父がいる。
決して夫婦円満とは言えないが、母と日常を過ごしている。
それは、もう二度と実現しないはずの光景だった。
ゆえに、早人は気づいてしまう。
この家族は、偽物だと。


459 : 川尻早人&アーチャー ◆NIKUcB1AGw :2018/04/25(水) 21:36:26 4UmNIxMY0


◆ ◆ ◆


「坊主、お前は俺に何を望む」

早人の前に現れたのは、アーチャーのサーヴァントだった。
まだ少年といっていい年齢だが、纏う雰囲気はかなり物々しい。
目つきは悪く、全身のあちこちにアクセサリーをつけている。
特に、指に輝くリングが目を引きつける。
「仗助とは違うタイプの不良」。それが早人からアーチャーへの第一印象だった。

「僕は……」

アーチャーの気迫に冷や汗を浮かべつつも、早人は口を動かす。

「僕は、聖杯なんていりません。元の世界に帰るのが、望みです」
「ふーん。欲がねえことだな」

つまらなそうに、アーチャーが答える。
これはまずい、と早人は察した。
アーチャーは自分の答えに満足していない。
この聖杯戦争という戦いにおいて、サーヴァントとの信頼関係は命綱だ。
サーヴァントに主と認めてもらえなければ、生存の確率は大きく下がってしまう。
ならば、この場で早人がやるべきことは一つ。
さらに言葉を紡ぎ、アーチャーの気持ちを引きつける。それ以外にない。

「僕は……ママのところに帰らなきゃいけないんです」

早人が呟いた言葉に、アーチャーの眉尻が動く。

「僕のパパは、殺人鬼に殺されました。法律では裁けない方法で……。
 パパが殺されたことは、誰にも証明できない。
 だからママは今も、パパの帰りを待っています。
 ここで僕が死んだら、それもママには伝わらないでしょう。
 ママはずっと、絶対に帰ってこないパパと僕を待ち続けることになってしまいます。
 そんなことにはしたくないんです!」

精一杯の思いを込めて、早人は語る。
それに対し、アーチャーは小さく溜息を漏らした。
思いは届かなかったかと、失望しかける早人。
だがそれは、彼の早とちりだった。

「まいったな。母親のためにがんばるなんて言われたら、見殺しにはできねえや」
「じゃあ、力を貸してくれるんですね」
「別に貸さねえとは一言も言ってねえんだけどな。適当にやってよさそうな事情じゃねえってのはわかったぜ。
 本来なら俺が主と認めるのは十代目だけだし、十代目以外で俺に命令できる人間も限られてるんだが……。
 この聖杯戦争の間は、お前をマスターだって認めてやるよ」
「ありがとうございます……!」

万感の思いを込めて、早人は差し出されたアーチャーの手を握る。

「そういや、まだマスターの名前を聞いてなかったな。教えてくれよ」
「あっ、はい。僕の名前は、川尻早人です」
「川尻……早人……?」
「どうかしました?」

自分の名前に対して妙なリアクションを見せるアーチャーに対し、早人が尋ねる。

「いや、こういうのも縁なのかと思ってよ。
 俺の名前も……ハヤトだ」

照れくさそうに笑いながら、アーチャー……獄寺隼人は答えた。


460 : 川尻早人&アーチャー ◆NIKUcB1AGw :2018/04/25(水) 21:37:16 4UmNIxMY0


【クラス】アーチャー
【真名】獄寺隼人
【出典】家庭教師ヒットマンREBORN!!
【性別】男
【属性】混沌・善

【パラメーター】筋力:D 耐久:C 敏捷:B 魔力:C 幸運:B 宝具:A

【クラススキル】
対魔力:D
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
Dランクでは、一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

単独行動:C
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
マスターを失っても、Cランクならば1日は現界可能。

【保有スキル】
死ぬ気の炎(嵐):B
人間の持つ生命エネルギーが具現化した炎。
アーチャーは「分解」の性質を持つ嵐の炎をメインとするが、雨、雷、雲、晴の炎も微弱ながら使うことができる。
これらの炎も、このスキルに内包されている。

嵐の守護者:A
嵐のごとき猛攻で、組織の敵を打ち砕く者。
攻撃を連続ヒットさせる度に、与えるダメージが増加する。

爆弾作成:B
「道具作成」が変化したスキル。
爆発物を魔力から生み出すことができる。
ダイナマイトが彼のシンボルとして語り継がれていることから、このスキルが生まれた。

【宝具】
『嵐のボンゴレリング』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:―
ボンゴレファミリー「嵐の守護者」に代々受け継がれる指輪。
もう一つの宝具の始動キーとして用いる。
これ自体に攻撃能力などは無いが莫大な魔力を秘めており、単独行動スキルと相まって、
アーチャーはよほどのことがなければ魔力供給なしで行動し続けることが可能。

『ボンゴレ筺(ボックス)・Gの弓矢(アーチェリー)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1-70 最大捕捉:3人
ミルフィオーレファミリーとの決戦のために生み出された武器で、初代嵐の守護者・Gの武器を模した弓矢。
獄寺がそれまで使用していた「SISTEMA C.A.I」と統合する形で完成した。
SISTEMA C.A.Iのメイン武装である赤炎の矢(フレイムアロー)にヤマネコ型生体兵器「瓜」が合体し、「形態変化」することで生み出される。
瓜の意識が残っているため、使用者の指示なしでジェット噴射を行い方向転換を助けるという場面もあった。
なおアーチャーは後に別の武器を使用しているが、今回はアーチャーのクラスにもっともふさわしい武器ということでこれが宝具に選ばれている。


【weapon】
「ダイナマイト」
アーチャーの代名詞と言える武器。
全身至る所に仕込んでいる。
サーヴァントとなり「爆弾作成」のスキルを得たため、いくらでも補充可能。

【人物背景】
有力マフィアのボスと、その愛人であったピアニストとの間に生まれた子供。
幼い頃に母が死んだことで父に不信感を抱き、家出(実際には事件性のない病死であったことが、後に判明する)。
自力でマフィアになることを目指す。
そんな中でボンゴレファミリー十代目候補である沢田綱吉と出会い、彼に心酔。
「十代目の右腕」を自称し、彼と共に数々の戦いに挑む。
性格は短気でけんかっ早いが、根は実直。
勤勉な努力家だが、理屈で考えすぎる傾向がある。

【サーヴァントとしての願い】
小さな願いならいくつかあるが、まずはマスターの願いを優先

【基本戦術、方針、運用法】
筋力こそ高くないが攻撃手段はいずれも筋力に依存しないため、攻撃力に不安はない。
猛攻で相手に反撃の機会を与えず、一気に撃破するのがベストと言える。


461 : 川尻早人&アーチャー ◆NIKUcB1AGw :2018/04/25(水) 21:38:16 4UmNIxMY0


【マスター】川尻早人
【出典】ジョジョの奇妙な冒険 第4部
【性別】男

【マスターとしての願い】
母親の待つ杜王町に帰る

【weapon】
特になし

【能力・技能】
邪悪を倒すためならば平然と命がけの行動を行える、小学生離れした精神力。

【人物背景】
杜王町に住む小学生。
元々は陰気な性格だったが、父親が殺人鬼と入れ替わったことを知り、対決を決意したことでたぐいまれなる精神力を開花させる。
殺人鬼こと吉良の「バイツァ・ダスト」を攻略するために孤軍奮闘し、攻略成功後も仗助をサポートして勇敢に戦った。
スタンド能力を持たないただの小学生でありながら、吉良打倒に大いに貢献した恐るべき少年である。
参戦時期は、第4部終了後。吉良が別の時間軸から参戦していることは、まだ気づいていない。

【方針】
脱出狙い


462 : ◆NIKUcB1AGw :2018/04/25(水) 21:39:21 4UmNIxMY0
投下終了です


463 : ◆XjwV8kaNTA :2018/04/26(木) 10:25:45 QkPbqJow0
投下します


464 : 全ては■■の為に ◆XjwV8kaNTA :2018/04/26(木) 10:26:54 QkPbqJow0


時刻は誰そ彼時。場所は見滝原の外れにある過疎マンションの一室の前。
学生服にミニスカートの上にコートというスタイルで、魔法少女狩りスノーホワイトは臍を噛む思いで立っていた。
その胸中を占めるのは、自分はどうしてこんなところにいるのかという、焦燥。


あと少し、あと少しで―――『プク様』が全ての魔法少女をお友達にする世紀の瞬間に立ち会うことができたのに!


昔、児童向けアニメに出てくる様な、優しくて可愛くて正しい魔法少女に憧れていた姫河小雪という名の、ただの少女がいた。
姫河小雪は中学生になって本物の魔法少女に選ばれ、幼馴染と優しい人助けの日々を送る『スノーホワイト』になった。
その少しあと、スノーホワイトは森の音楽家クラムベリーという魔法少女が起こしたデスゲームの被害者であり、生還者になった。
その過程で、心を通わせた幼馴染も、優しい先輩魔法少女も、自分を守ってくれた少女も、一人を除いてみんな死んでいった。
だからよろず相談魔法少女ではなく、魔法少女狩りになろうと決め、『魔法少女狩り』スノーホワイトが誕生した。


訓練を積み、戦闘用ではなかった自分の魔法を鍛え上げ、悪事を働く魔法少女を狩り続けた。
勝って、勝って、勝ち続けた。狩って、狩って、狩り続けた。
人間の争いと違い、魔法少女の戦闘における敗北は、死を意味する。
魔法少女になる人間は全員大なり小なりネジが飛んでいる。悪事を働く者なら、猶更だ。
殺すことを忌避しない相手に負ければ命はない。だから人助けに使うはずだった魔法を相手の弱みを暴くような形に変質させてまで鍛造した。
もう後悔しないように、もう理不尽に奪われることがないように、走り続けた。

けれど、得られたものは何も無かった。
例え悪い魔法少女を狩り続けても死は泥の様に纏わり続け、周りの者たちを沈めていく。
理想はいつしか苦悩へと変わり、責任やプレッシャーだけが募っていく月日は確実に精神を摩耗させていった。
そして、無明の荒野を行く様な日々の果てに、ついに魔法少女狩りは『折れた』。
折れて、それでも無様に掌に熱を込めて立ち上がろうとしたところで―――出会ったのだ。
プク・プックという名の救世主に。

「……聖杯を、何としてもプク様の元に」

魔法少女全てをお友達にした後、魔力が枯渇し亡国の危機に瀕している魔法の国を維持するエネルギーにするというプク・プックの計画。
その計画を聞いた時、スノーホワイトは涙が溢れそうになった。
みんなプク・プックのお友達になれば悪事を働く魔法少女はいなくなる。何故なら、プク・プックが悲しむからだ。お友達はお友達を悲しませるようなことはしない。
争いはなくなり、この世で最も尊く偉大なプク・プックの名のもとに全ての魔法少女が笑いあえるのだ。

――――魔法の装置の中、どろどろに溶かされながら。


465 : 全ては■■の為に ◆XjwV8kaNTA :2018/04/26(木) 10:27:25 QkPbqJow0


その夢が叶うまであと少し、後はプリンセス・インフェルノを殺したオスク派の遺跡を奪還し、妨害を退け、装置を起動させるだけ。
プク・プックは普通の魔法少女が千人集まっても勝てないほど強く、愛らしく、その魔法を使えば誰も傷をつけることができない。
だがプク・プックを傷つける事はできずとも、プク・プックの計画を妨害する悪い魔法少女は出てくるだろう。
そんな魔法少女達を相手に、純粋なプク・プックが悲しむ事がないようにプク派の魔法少女達は立ち回れるだろうか。
答えは否だ。だからこそ魔法少女狩りスノーホワイトが必要なのに。
万が一計画が頓挫していたら。プク・プックが悲しんでいたら。
想像して、スノーホワイトは胸が締め付けられるような感覚を覚えた。
それを防ぐには、聖杯を持ち帰るほかない。
聖杯を持ち帰れば、計画が失敗していてもその願望器としての権能でチャラにできる。
成功していても献上すれば何かに必ず役立ててくれるはずだ。

『スノーホワイトお姉ちゃんも頑張ってるし、プクも頑張らないと!』


スノーホワイトはここへ来る前にプク・プックより賜った宝石、ソウルジェムを掻き抱く。
計画の大詰めという重要な時にこんな街連れてきた原因ともいえる宝石だが、端末を置いてきてしまいプク・プックの動画を見るすべがない現状ではプク・プックを感じることができる唯一のアイテムだった。
じっと見つめ、握りしめて、香りを嗅いで、思考を切り替える。

計画実行目前での失踪。この失態を挽回するには聖杯しかない。
しかし、その為には問題がある。


「帰ったか、マスターの情報は掴んだのだろうな?」
「……いいえ、すみません。バーサーカーさん」


身を寄せている自宅のドアの先、薄暗い闇の中に一人の男。
ハート形のサークレットを嵌め、筋骨隆々の肉体をレオタードで包んだ偉丈夫。
バーサーカーと呼ばれたその男は、主の報告に「フン」と鼻を鳴らした。

「何故、DIO様ではなく貴様の様な無能なマスターが私を呼べたのか不思議でならん。
困っている衆愚共の心の声が聞こえるのではなかったのか?それを使えばマスターを探しだすなど…」
「…………」

スノーホワイトは言い返さず、俯いて叱責に耐える。
バーサーカーの物言いは使い魔と思えないほど尊大だが、的を得ているからだ。
スノーホワイトは魔法少女としての固有魔法により、困っている人間の心の声を聞き取る読心術ができる。
訓練により深層意識まで聞き取ることができるようになったそれを応用し、街を散策すればマスターを見つけることは容易…そのはずだったのだが。
結果はこの見滝原に来て数日、記憶が覚醒して直ぐに捜索を始めたのにもかかわらず空振りを続けている。
この原因をスノーホワイトは「マスターには読心に対して何らかのプロテクトがかかっているか
あるいは自分の記憶が戻るのが早すぎたせいではないか」と推察していた。

スノーホワイトはこの見滝原で目覚めた時からプク・プック邸までの記憶を持ち、偽りの記憶を植えつけられることがなかった。
この世で最も尊いプク・プックの記憶が奪われることがなかったのは僥倖と言えたかもしれないが、
そうであればいくらマスター候補の心を声を聞こうと無駄である。
何故ならまだ記憶の戻っていないマスターが聖杯戦争について困った事、など考えるわけがないからだ。
全く知らない事柄について悩んだり、困ったりする人間はいない。
こうなればリスクを覚悟で殺人鬼の方を追うべきだったか。


466 : 全ては■■の為に ◆XjwV8kaNTA :2018/04/26(木) 10:28:13 QkPbqJow0

「…モラトリアムが終わるなら聖杯戦争について考えるマスターも一気に増えるでしょう。
その時こそ、私の魔法の真価が発揮できます」
「どうだかな。まぁ私は最初から貴様に何も期待してはいない。
ただしこのヴァニラ・アイスがDIO様に忠誠を示す時、足を引っ張れば生かしてはおかん。即刻暗黒空間にバラまいてやる」

生前の主であるDIOへ聖杯を献上する。それが狂信者ヴァニラ・アイスの願いだった。
その為に邪魔するものはすべからく暗黒空間にバラ撒く心づもりでいる。
無論、マスターであっても例外ではない。
マスターも崇拝する存在がいるらしいが何処の馬の骨ともしれない輩に聖杯を渡せばあの便所のゴキブリにも劣るジョースターの血統の様にDIOの障害になりうるかもしれない。
世界を統べるものは天上天下にDIOただ一人。それ以外は不要である。
令呪がある以上迂闊に手は出せないのが歯がゆいが、聖杯のもとへ辿り着いた暁には…。
どうせ本心を隠しても小賢しい魔法で暴かれるのだ、ならば本来の態度を隠すつもりはなかった。

そんな腹積もりのバーサーカーの恫喝を受けてなお、魔法少女狩りは鉄面皮を崩さない。
この時点でスノーホワイトはすでに、ヴァニラ・アイスという名のバーサーカーより弱くても御しやすいサーヴァントがいれば鞍替えを視野に入れていた。
一度宝具を確認し、その実力は本物であると分かっているがこちらの命令を聞く気が一切なく、協力は望めない。
一人で戦うのは慣れているが、背中を撃たれるリスクを背負い続けるつもりはなかった。
だが、今はまだ駄目だ。肝心のサーヴァントが見つかっていないし、その選定も慎重に行わなければならない。
それまではこのバーサーカーとやっていかねばならないのだ。
こんな時、ファルがいたらと思う。
ルーラと四次元袋は持ち込めたが、端末とファルを置いてきてしまったのはかなりの痛手だ。
おかげで迂闊に変身を解除することもできず、また容姿が目立ちすぎるため学校も休学せざるを得なかった。
状況は悪く、道行は遠い。けれど今までに比べればずっと気は楽だ。
この戦いが終われば、全てが報われる。もう、泣くことも後悔することもない。
何かを選ぶ必要もなくなる。
そんな未来を、プク・プックは作ってくれるのだから。


「プク様が創る、もう選ぶことも後悔することもない世界。
 
           ―――その為に、私は戦う」



全ては、DIO様/プク様のために。


467 : 全ては■■の為に ◆XjwV8kaNTA :2018/04/26(木) 10:28:40 QkPbqJow0
【クラス】バーサーカー

【真名】ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険

【パラメーター】
筋力:B 耐久:A+ 敏捷:C 魔力:D 幸運:D 宝具:EX

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
狂化:EX
邪悪の化身の殉教者としての狂的なまでの忠誠。
精神干渉を一切シャットアウトし、全パラメーターを1ランクアップさせる。
その狂気を一言で表すならば『バリバリと裂けるドス黒いクレバス』であり、
特定の人物以外がマスターであれば反旗を翻しかねない。

【固有スキル】

狂信:A
バーサーカーの忠誠の高さを表すスキル。
普段は物静かな男だが一たび崇拝対象への逆鱗に触れれば豹変しその狂暴性を露わにする。
発動時にはその威圧感から対象のファンブル確立を向上させる。

吸血鬼:D
生と死を超えた者、または生と死の狭間に存在する者。死徒。
多くの伝承に存在する、生命の根源である血を糧とする不死者。
並外れた不死性と吸血能力、怪力を備えるが生前吸血鬼になって間もなく、血を吸う事もなく没したため、ランクは低い。
また日光や紫外線に弱く全身浴びれば灰となって消滅してしまう。

戦闘続行:A
往生際の悪さと吸血鬼としての生命力の高さ。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の重傷を負ってなお戦闘可能。
彼は脳髄を串刺しにされても主の敵を追い詰め続けた。


【宝具】
『亜空の瘴気(クリーム)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
バーサーカーが有する実体ある精神のビジョン『スタンド』
その口の中は暗黒空間に繋がっており、バーサーカー以外の物が触れると耐久値を無視して消滅する。
また本体とスタンドを飲み込むことによって完全に無色透明かつ、無臭で気配を感じられない存在になることが可能で、この状態のバーサーカーは初撃に限りAランク相当の気配遮断を得る。
クリームに飲まれた状態のバーサーカーは暗黒空間という異次元に存在し、如何なる攻撃も防御も意味をなさないが、その代わり令呪や念話等の恩恵も受けることができない。

また暗黒空間からは外の様子が見えず、攻撃の際に一切の衝撃・手ごたえが無い。
そのため、逐一顔を出して相手の位置を確認する必要がある。

【weapon】
・宝具『亜空の瘴気』のスタンドビジョン
サーヴァント換算でそのステータスは筋力B、耐久C、敏捷B相当

【人物背景】
悪の救世主の信奉者の男

【サーヴァントとしての願い】
DIO様に聖杯を献上する。

【マスター】スノーホワイト(姫河小雪)@魔法少女育成計画QUEENS

【能力・技能】
『困っている人の心の声が聞こえるよ』
魔法少女がそれぞれ持っている固有の魔法。 困っている人間の考えていることが聞こえる。
本人の意識していない反射や深層心理の声も聞こえるため、行動の先読みや隠し事の傍受も可能。

『誰とでも友達になれるよ(被)』
魔法の国の三賢人、プク・プックがスノーホワイトに仕掛けた魔法で、彼女を『お友達』にしている。
そのためスノーホワイトはDランク相当までの精神干渉をシャットアウトし、思考の優先順位が全てプク・プックのためのものとなっている。
この魔法は聖杯の記憶操作も退けるほど非常に強力で、特にスノーホワイトには念入りに掛けられている。
だが絶対ではない。プク・プックから離れた時間が経つにつれて魔法の効果も弱まっていく。
……甘やかな夢から醒める瞬間は、必ず訪れる。

【Weapon】
『ルーラ』
魔法の国製の武器で、絶対に壊れない。

『四次元袋』
見た目は口に紐のついた布袋。
一人で持ち上げられる重さなら、生物、無生物を問わず、何でも、いくらでも入れられる。
本当は中に色々なものが入っていたが、うるるがぶちまけて回収する暇もなく見滝原に来たため現在は空。

【人物背景】
三賢人にして魔法の国の救世主である魔法少女の信奉者である少女。
【ロール】
「姫河小雪」の戸籍で一人暮らしの高校生。しかし現在は休学中。

【マスターとしての願い】
プク様に聖杯を献上する。

【方針】
聖杯狙い。


468 : ◆XjwV8kaNTA :2018/04/26(木) 10:28:56 QkPbqJow0
投下終了です


469 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/26(木) 17:38:08 bDFUQZ9k0
感想だけ投下します。




尽きぬ邪悪
 願う為ではなく、聖杯をエネルギーとして……理由はどうあれ皮肉にも『正しい』解釈として聖杯を利用するのは
 偶然の一致とはいえ。確かな願いを持つ主従達にとっては堪った話ではありませんね。無論、聖杯戦争を始めた
 ものにとっても……そんなムラクモが召喚したサーヴァントも、途方もないほど厄介な存在。ただ命令に従うだけ
 バーサーカーのような僅かな個性が残っている状態でもない、淡々と命令に順応なものほど恐ろしいものはいません。
 投下していただきありがとうございました。


United We Stand
 家族という絆、あるいは呪いでしょうか。どうにも家系の因縁というのは根強く、元々ジョジョの奇妙な冒険すら
 因縁たる宿命による物語でしたね。改めて父親を救う為に殺す。形兆の考えは道徳を除いてみると、現代社会問題
 との重なりを垣間見える部分があり、賛同してしまうような思いがあります。ライダーとの家族に纏わる語り合い
 を終えて、聖杯戦争を勝ち抜こうとする彼らの姿勢を次を見たくなります。
 投下していただきありがとうございました。


村上外印&アヴェンジャー
 闘争本能、というのは漫画や小説ではよく見かける設定なだけあって、実際に中二病など言われてしまうと「確かに」
 そう思ってしまいますね。何であれこの村上外印は戦闘・戦争狂であることに間違いはありません。聖杯戦争なる
 新たな戦を彼なりに楽しもうと奔走する事でしょう。一方で復讐者、すなわちサーヴァントとしての在り方に戸惑う
 ホメロス。彼の救世主もそうですが、英霊である以上、観測された側面だけを持つ宿命は悲しいです。
 投下していただきありがとうございました。


まだ渇くならば
 野心や憎悪で何かを見落とす事は在り触れた事ですが、社会に対する恨みの『飢え』は果たしてこの男の場合は、どこまで
 凌駕することができるのでしょうか。どこかで人類史の滅亡に対し、それを阻止するものが現れるのを、彼は返り打ちする事が
 叶うのでしょうか。……など様々に思いを起こせますが、野心や憎悪を糧にする者の運命とは良くも悪くも過酷になるもの
 です。復讐鬼の偶像であり続ける英霊が、如何に男を導くか楽しみです。
 投下していただきありがとうございました。


The Visitor
 静謐にとっては最適なマスターですが、バオーを今後も支えて行くという方針には多くの苦難がありそうです。
 それは毒という性質でも、ウワサになるほど目立つ事でもない。邪悪を滅ぼさんとするバオーの暴走に限ります。
 バオーの方は、彼女を安心でき、信頼しえる存在と認めているのは十分ですが、衝動的行動を今回のように抑えられ
 なければ何の意味もありません。静謐がサーヴァントとして行動する時は直ぐそこに迫っているでしょう。
 投下していただきありがとうございました。


470 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/26(木) 17:39:07 bDFUQZ9k0
三嶋瞳&キャスター
 すでに普通の、ごく一般的なマスターから逸脱しているような中学生にも関わらず、不幸な事に更なる異常に巻き込まれて
 しますとは――三嶋瞳。彼女の運命らしいと言えばらしい。彼女の才を利用すれば他のマスター以上の活躍が期待できる
 でしょうが、よりにもよって召喚した魔人は典型的なSなんですよね。まだ魔人を理解していない瞳は、労働からの解放
 ばかりを想って、大切なものを見落とさないか心配ですね。
 投下していただきありがとうございました。


夢の霹靂、燃ゆる恋のように
 出会って早々なにやってるんだ、このサーヴァントは(褒め言葉)まあ、それは彼に限った話じゃありませんし、もっと酷い
 マスターとサーヴァントがいますし、大したレベルでないのでしょうが(?)一番心配なのは精神面で不安を隠せないマミ
 さんの方でしょうか。ライダーの誘惑にもどうにか抗えたものの、逃れられないの魔法少女の宿命がこのままでは待ち受け
 ますし、まだライダーも魔女を把握しておりません。何にせよ今後が見逃せない主従です。
 投下していただきありがとうございました。


絶対悪
 ついに現れてしまった悪。そして彼が召喚するのは勿論、悪。しかも古典的なありふれた『悪』。登場して早々、マスターの
 しかも絶対悪に対し喧嘩を吹っ掛けながらも通常運転なパコさん。彼特有の宝具や戦闘能力からしてジャイアントキリングが
 可能なロマンを秘めているのが何とも面白いです。英霊とそうでないものの差、というのが今回表現されているのも深いです。
 恐らくここに犇めく邪悪と絶対悪は必ず巡り合う。その時、どうなるのかが楽しみですね。
 投下していただきありがとうございました。


星色ガール「ズ」ドロップ
 マシュ……そのクソアニメは参考にしちゃ駄目だ……聖杯戦争に巻き込まれたことで外の世界を知れた。そんな形のマシュの
 召喚には嬉しいような悲しいような。彼女にはまだ帰るべき場所があり、その先の未来を守る役目もあるのですが
 対して、恋に歌に情熱をそそぐ少女は確かに善なのでしょう。ですが時に善ですら暴走してしまう。特に生死に関わる戦争に
 おいてマシュがサポートしなければ少女はきっと破滅に陥るでしょう。
 投下していただきありがとうございました。


おはよう、煉獄さん
 >そのおっぱいで頼光は無理でしょ(笑) それ言ったらもうfateに登場する大多数のサーヴァントに言える事なんですが(困惑)
 普通は突っ込まざる負えない展開に、通常通り、あまりにも彼らしさを体現した煉獄さんのテンションと行動力は流石でしょう。
 ヒトのまま鬼と戦う。その姿勢を見たバーサーカー・頼光は驚きながらも、煉獄たちの世界における人間と鬼との戦いと
 彼の炎のような意思を守ってやろうとする感動は、FGOを把握している身として深いものを受けました。
 投下していただきありがとうございました。


今回の感想はここまでです。残りは後日になります。


471 : ◆0VSR7vZCCQ :2018/04/27(金) 08:44:08 3pmP48860
投下します


472 : ジョセフ・ジョースター&セイバー ◆0VSR7vZCCQ :2018/04/27(金) 08:45:27 3pmP48860
 日本に嫁いでいった娘が病気で倒れたと聞いて、男はすぐに娘の家に転がり込んだ。病気は命に関わる重いものだったが五十日間の闘病生活の末完治。
 このままこの家に居座ってはかえって病み上がりの娘に負担をかける。そう思ったが死にかけた娘を置いて地球の裏側へと帰るのはまだ不安が残った。
 そこで男は日本の地方都市『見滝原』にある別荘に行き、そこでしばらくの間過ごすことにした。それが男の近況。そう思い込んでいた。今日までは。
 記憶は偽物だったのだ。
 娘が五十日間苦しみぬいた末に回復したのは本当だが、単なる病気などではなかったし、男もただ手をこまねいていたわけでもない。まして『見滝原の別荘』なんてものも持っていない。
 全てはこの聖杯戦争を仕組んだ何かによって植え付けられた記憶だったのだ。
 男は今マスターとして自分のサーヴァントと対面している。
 二メートル近い巨体は全身の隅々に至るまで鍛え抜かれている。衣服は今どき南米の原住民がなにかでしか見ないような面積の少ないものだ。その姿はまさしく太古の時代を生きた戦士。だが男は生前のサーヴァントと出会ったことがあった。

「まさかわしのサーヴァントがお前とはのう」

 男が顎に手を当てる。サーヴァントは堂々と男を見据え、口を開いた。

「その目、その立ち振舞い。老いて姿は変わったようだが俺にはおまえが何者なのかはっきりとわかるぞ」

 そしてサーヴァントは静かな笑みを浮かべた。

「まさかお前が俺のマスターになるとはな。JOJO」
「久し振りじゃのう、ワムウ」

 ジョセフ・ジョースターは懐かしむようにその名を口にした。
 五十年ほど前、長き二千年の眠りより目覚めた『柱の男』と呼ばれる者たちとジョセフは戦った。ワムウはその中の一人だった。
 人を人とも思わぬワムウの姿に最初は怒りを覚えたジョセフだったか、戦いの中で互いを戦士として認め合った。敵同士である立場こそ最後まで変わらなかったが、個人としてはワムウの死の直前、彼に友情を感じるまでになっていたのだ。
 そのワムウがサーヴァントとなり味方としてこの場にいる。そのことにジョセフは奇妙な感慨深さのようなものさえ感じていた。
 しかし再開を喜んでばかりもいられない。友情を感じても敵だったことには変わりないのだ。共に聖杯戦争に挑む前に確認しておかなくてはならないことがある。

「ワムウ、一つ訊かせてくれ。お前はなにを願ってサーヴァントになった」

 ワムウには彼よりも凶悪な性格の仲間がふたりいた。誇り高き戦士であるワムウは、敗北という結末を覆し聖杯の力で現世に舞い戻ろうなどとはしないだろう。だが仲間に対しての考えがそうかはわからない。
 もしふたりを生き返らせることが願いならやはりワムウとは敵対することになる。
 ワムウは質問の意図を察したようだった。

「安心しろJOJO。このワムウが求めるのは戦士たちとの純粋なる闘争それのみよ。それさえ叶うならサーヴァントとしておまえの方針に従うこともやぶさかではない。カーズ様とエシディシ様が目的を達せられずに亡くなられたことは無念でならんが……それもまた定めであり、摂理だ。聖杯によって捻じ曲げようなどとは思わん」

 その言葉を聞いて脳裏に浮かんだのは戦いで亡くしていった仲間たちのことだった。彼らの消えた喪失感はジョセフにとって地球にも匹敵するほど重い。だが聖杯の力で彼らを生き返らせるかと聞かれたら、答えはノーだった。
  
「……そうじゃな、生きる者は皆いずれ死ぬ。それが自然の摂理じゃ。聖杯などというもので捻じ曲げることは許されん」


473 : ジョセフ・ジョースター&セイバー ◆0VSR7vZCCQ :2018/04/27(金) 08:47:28 3pmP48860

 ジョセフは噛みしめるように言う。ワムウは頷き、それから何かを思案するように少しの間だけ目を閉じ、開いて言った。
 
「JOJO、俺には聖杯にかける願いはない。だが聖杯戦争決着の後に叶えたい願いが一つできた」
「なんじゃ?」
「もう一度お前と決闘を行いたい」
 
 ワムウは言葉を続ける。

「一度はお前に敗北して死した身だ。再び挑むのはあるいは戦士として恥ずべきことかもしれん。それでもこの身から溢れ出る闘争心を抑えられんのだ。JOJO、もう一度俺と決闘してくれ」

 正直にいって今のジョセフは好んで戦いをするタイプではない。若い頃は喧嘩っ早いところもあったが、今は穏便に済ませられることは穏便に済ませるし、戦うにしてもできるだけ楽に、安全に勝つ方が好きだ。
 ワムウの決闘に応じればそれは命がけのものになる。彼の力は恐るべきものだ。一度は勝ったが、あれは自分だけの力ではないと思っている。身体機能も衰えている。あの時には無かった力も得たが、今一度戦って勝てるという保証はどこにもない。
 だが――

「望むところじゃよ。ワムウ」

 ジョセフはニヤリと笑う。彼もまた感じていたのだ。このサーヴァントと相対したときからずっと。自分の内から湧き上がる闘争心を。この男ともう一度戦いたいという想いを。

「誓おう。聖杯戦争に片がついたらおまえともう一度決闘を行う」
「その誓い、忘れるなよ、JOJO」

 言ってふたりは視線を交わす。それで十分だった。互いを認めあった戦士が決闘を約束するのに、妙な儀式や保証などなにも必要なかった。



 ワムウは言った「聖杯で仲間を生き返らせるつもりはない」と。だがサーヴァントとして生きてこの町に存在する仲間と出会った時ワムウは、そしてジョセフは、いったいどういう行動に出るのか。それはこの時にはまだふたり自身にもわからないことだった。
 


【真名】ワムウ@ジョジョの奇妙な冒険
【クラス】セイバー
【属性】混沌・善


【パラメーター】
筋力:A+ 耐久:A++ 敏捷:B 魔力:D 幸運:D 宝具:B

対魔力:A
 A以下の魔術は全てキャンセル。
 事実上、現代の魔術師ではセイバーに傷をつけられない。

騎乗:B
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせる。
 魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせい。


【保有スキル】
闇の一族:A
 人類とは異なる進化を遂げた種族。
 全身が消化器官となっており、手に触れた部分だけを削り食す事も可能。
 ワムウと対峙した吸血鬼は、彼が『捕食者』であることを本能的に察知する。
 吸血鬼とは異なり、紫外線をあびると死にはしないが石化してしまう。


文明理解:B++
 高度な知能を有することを示すスキル。
 言語等を把握する速度は人を優に超えたもの。銃などの機器の構造を理解し、分解するのも容易。
 相手のスキルや宝具の効果を冷静に分析・判断する。戦闘時には『直感』の代用にもなる。
 ワムウは戦闘時において特に強い力を発揮する。


戦闘技法(風):A
 風の流法と呼ばれる、ワムウが編み出した戦闘法。
 ワムウは風や空気を利用した戦いに長けており、肉体もそれに合わせて進化している。

無窮の武練:A
 ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
 心技体の完全に近い合一により、いかなる地形・戦術状況下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。

【宝具】

『風の流法・神砂嵐』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜3 最大捕捉:1〜2人
左腕を関節ごと右回転・右腕を関節ごと左回転させ、その二つの拳の間に生じる真空状態の圧倒的破壊空間は正に歯車的砂嵐の小宇宙。

『風の最終流法・渾楔颯』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大捕捉:1〜5人
 身体から生えた管より膨大な量の風を取り込み肺の中で超圧縮、それを極限に狭い隙間から超高圧で好き出す。いわば「烈風のメス」
 しかし風の圧縮にともなう摩擦や熱によってワムウ自身の肉体も崩れていく。

【人物背景】
 2000年周期で眠りにつく謎の生物「闇の一族」のひとり。
 自分が認めるに足る敵と戦うことを名誉とする誇り高き男。

【サーヴァントとしての願い】
 戦士との闘争。


474 : ジョセフ・ジョースター&セイバー ◆0VSR7vZCCQ :2018/04/27(金) 08:48:10 3pmP48860
【マスター】
 ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険

【能力・技能】
『波紋』
 東洋の仙道に伝わる秘術の1つ。独特の「呼吸法」により血液中のエネルギーを蓄積し、生命エネルギーを活性化させる。呼吸法により練り上げた生命エネルギーは特有の振動を持ち、水面に奇妙な「波紋」を起こすことからそう呼ばれる。「波紋の呼吸」で作り出されるエネルギーは「太陽光と同じ波動」であり、強い波紋エネルギーは太陽光に弱い吸血鬼を死滅させることができる。
 若い頃は波紋を使った様々な技が仕えたが今どの程度使えるかは不明。

『ハーミット・パープル』
 棘の生えた茨の形のスタンド。
 カメラや砂などを媒体に任意の対象の情報を念写できる。
 また茨に波紋を流すこともできる。
 
【人物背景】
 かつて波紋の戦士とて「柱の男」と戦い、年老いて再びスタンド使いとしてDIOと戦った。

【マスターとしての願い】
 聖杯戦争の打倒。

【参戦時期】
 三部終了後間もない時期。


475 : ◆0VSR7vZCCQ :2018/04/27(金) 08:51:14 3pmP48860
投下終了です
ステータス作成にあたってxn2vs62Y1Iさんの「盗【かいとう】と奪【かいとう】」を参考にさせて頂きました


476 : ◆V3zFiKmoXQ :2018/04/28(土) 00:40:31 7s1T5O1c0
投下します


477 : オルガマリー&キャスター ◆V3zFiKmoXQ :2018/04/28(土) 00:42:23 7s1T5O1c0

見滝原市にある高級ホテル。その中のとあるレストランを貸し切りにしている者がいた。
外国から旅行のため来日した貴族令嬢、そういう設定を与えられた少女は憮然とした面持ちで対面に座る男を見やる。
男は少女の眼光に気づいているはずだろうに、まるで気にも留めることなく百点満点と言える作法で食事を進めている。
作法も知らぬ野蛮人と過ごすよりはマシとはいえ、主を前にこうも泰然自若とされては少女としても愉快ではない。
ともかく、あちらからのアクションが望めないなら自分から話しかけるしかないか。

「確認するのだけど、あなたが私のサーヴァントなのよね?」

問いを投げて初めて男は食事をする手を止めこちらに反応を示した。

「もちろんそうだとも。敢えて聞くまでもないことだろうに」
「ええ、あなたがもっとサーヴァントらしければ私としても余分な労力を割かずに済んだわ。
サーヴァント。人理に刻まれた境界記録帯(ゴーストライナー)、英霊の似姿。
ふん、あなたのどこが英霊なんだか。聞いたこともない真名に一般人みたいな姿、おまけに主人への態度もなってない」

英霊たる者に対する明確な侮辱、それを聞いても男が激昂する様子はない。その事実が少女をより苛立たせる。
つまりは自分はこの男に歯牙にもかけられていないのだ。

「君がどう思おうと私は私でしかない。
それに座から派遣された英霊の影というのも考え方次第ではそう悪いものでもないさ。
聖杯戦争に召喚されたサーヴァントはやがて座にその時の記録だけを持ち帰る。つまり記録は持ち帰れるわけだ。
人類史、この聖杯戦争に限って言うならば数多ある並行世界や全く異なる世界から見滝原という一つの都市に集った英霊たち。
それほどの者たちなら私の才能を刺激してくれるだろう。ここで得たインスピレーションは必ずや座の私に繋がる。
そして何より……人理に刻まれ座に登録されたこの私は、不滅だ」

異様なまでの前向きさ、決して揺るがぬ自信。
どちらも少女が未だ持ち得ない、これから持てるかさえわからないものをこの男は持っている。
自分の中の何かが揺れていることを自覚し、それを必死に押しとどめる。
私はマスターでありサーヴァントを使役する者。使役される側の、如何に魔術師の及ばぬ神秘を纏うとはいえ使い魔の言うことに逐一振り回されるなどあってはならない。
あの現代魔術科(ノーリッジ)の変人講師でもあるまいに。

「大した自信ね。それで?あなたは三大騎士クラスに著しく不利なキャスターというクラスで、その貧弱なステータスでどう私を勝たせてくれるというの?」
「心にもないことを言うのは良くないな。オルガマリー・アースミレイト・アニムスフィア」

ワインを一口呷り、少女―――オルガマリー・アースミレイト・アニムスフィアの何かを見透かしたように不敵な笑みを浮かべる男、キャスター。

「君は今、大きな不安を抱えている。
魔術師とはいえまだ十一の、日本人ですらない少女が見知らぬ極東の都市に一人投げ出されたというだけで、どれほどの精神的重圧か察するに余りある。
使用人はそれなりにいるようだが彼らは全てNPCであり、君の本当の知り合いというわけじゃない」
「…このぐらい大したことじゃないわ。ええ、聖杯戦争ならこの程度のことは起こり得るでしょうね」


478 : オルガマリー&キャスター ◆V3zFiKmoXQ :2018/04/28(土) 00:43:05 7s1T5O1c0

子供の強がりだ。そんなことはキャスターでなくても容易に察せられる。
現にオルガマリーの目は寝不足か充血しており、キャスターの召喚から幾ばくかの時間が流れた今でも膝の震えは完全には止まっていない。
この状況下で未だ強がっていられること自体評価に値することではあるのだが。

「投げ出された先が十数年も先の未来だったとしても?
君は本来2004年の時代の人間。故に君はこの見滝原を覆う結界を突破して外へ出られたとしても帰る場所がない」
「心配なんて無用よ。それこそ聖杯戦争を勝ち抜いて、聖杯に元いた場所への帰還を願えば良いだけ。
なら私たちが考えるべきはどう聖杯戦争を戦うか。違う?」
「だが君はそう思っていないだろ?」

ビクリと、僅かに少女の肩が震えた。
それを見逃すキャスターではない。彼女の本音を引き出すためさらに畳みかける。

「君は利発な少女だ。それにどうやら英霊や聖杯戦争について何らかの予備知識を持っているらしい。
だからこの聖杯戦争が如何に異質なものか理解できる。同時に聖杯戦争を起こした者の思惑が読めないこと、得体の知れなさに恐怖を感じている。
ひょっとすると聖杯戦争に乗ること自体が取り返しのつかない事態を招くのではないか……そういう可能性まで考慮している。
けれどサーヴァントは生前果たせなかった願いを叶える、あるいは未練を拭うために令呪による束縛を受け入れて現界した者たちだ。
そのサーヴァントの前では優勝を目指すマスターらしいマスターを演じなければならない。
でなければ戦う意思のないマスターと見做され反逆される恐れがあるからだ」

初めてオルガマリーが黙り込んだ。
サーヴァントに見抜かれた。自分の内にある戸惑いと恐怖を。
何が何だかわからないなりに、キャスターに内心を悟らせないことだけは上手くやれていると思っていたのに。

記憶を取り戻し、自分が聖杯戦争に巻き込まれたことを理解した日の夜は恐怖と混乱から一晩中ベッドの中ですすり泣いた。
一夜明けて、少しばかり冷静さを取り戻して自身の置かれた状況について思考すると、疑問ばかりが頭に浮かんできた。

時計塔にいたはずの自分をどうやって誰にも気づかれずに拉致し、そしてどうやって2018年という未来に送り込んだのか?
拉致しておいてただ殺すでもアニムスフィアへの人質にするでもなくこれほど手の込んだ殺し合いに参加させるのは何故なのか?
冬木でもないのにどうやって英霊召喚の術式やサーヴァントを召喚・維持せしめるリソースを準備したのか?
(使い魔を通してでしか確認していないが)街を覆う結界は何なのか?
アニムスフィアの調査した聖杯戦争のデータには存在しなかったソウルジェムとは何か?
そもそもこれだけの、それこそ神霊にも届き得る領域の事象を起こせる力を持つ者が主催したならわざわざ聖杯という願望器を作る必要もないのでは?
―――これは、本当に聖杯戦争なのか?

考えれば考えるほど不気味だった。
しかも知らぬうちに頭の中を弄られ、絶対に知らないはずの日本語や日本文化、この時代の機械の使い方が一通り頭に詰め込まれている。
人知を超えた、人ならざる者の力や思惑が働いているように思えてならなかった。
そんなものの思惑をどう読み取る、どう抗う。


479 : オルガマリー&キャスター ◆V3zFiKmoXQ :2018/04/28(土) 00:43:47 7s1T5O1c0

自分と同じように強制参加させられたマスター全員の命なんて背負えるわけがない。
いくら君主(ロード)の家系とはいえ一魔術師にこんな巨大な魔術儀式をどうこうするなんてできるわけがない。
さりとて召喚されたサーヴァントにそんな弱気を悟られるわけにもいかない。令呪で自害させようにもそれをすると敵のサーヴァントから身を守る術がなくなる。
そう、サーヴァントだ。以前この目で見たことがあるからこそわかる。サーヴァント一騎ですら魔術師には手に余る。

手詰まりだった。
サーヴァントが闊歩しているであろう街に出たくもなかったのでひたすらホテルの自室の魔術防御を固めていた。
サーヴァント相手にそんな行為がさしたる意味を持たないと知りながら、自分を誤魔化すためだけに意味のないことを続ける自分がどうしようもなく惨めで嫌だった。

―――そして、そんな内心にずけずけと踏み込んでくる傲岸不遜なキャスターが最悪に嫌いだった。

「先に言っておくわ。私はお前みたいな誰に何を言われても平気で自分を保っていられる自己完結したやつが嫌いよ」
「そうか。それで?」
「…それでもあなたはこの聖杯戦争で何かを為せると言うの?
こんなどこまでも胡散臭い儀式で、こんなどうしようもないマスターに呼ばれて!
それでも何とかできると、本気でそう言えるの?」
「誰に向かってものを言っている」

チッチッチと指を振りニヤリと笑うキャスター。
心底気持ち悪い笑顔だった。

「全く君は頭が回るわりに肝心のことが見えていない。
この状況を打破できる者なら目の前にいるじゃないか。神の名は捨てたが、神の才能を持つ男が」

キャスターの持つ唯一の宝具、ライダーガシャットとかいうアイテムをチラつかせながら傲岸に言い放つ。
本人が言うには文字通り世界を変える力を持つ、ゴッドマキシマムとかいう頭の悪い名称だったことを思い出す。

「君は運が良い。あらゆる不可能を可能にするこの私を引き当てたのだから。
正直に言えば私も最初から願望器なんてものを景品にしたデスゲームの運営なんて信用していなかった。そもそも人の命を完全に消すゲーム自体が気に入らない。
こんな下らないゲームは木っ端微塵に破壊するつもりだったんだ」
「あなた……聖杯が欲しくないの?
ええ、いくら疑わしいとはいえもし本物ならそれこそ根源にだって到達できるかもしれない願望器なのよ?
手に入るものならどれだけ他人を蹴落としてでも求めるのが普通じゃないの?」
「神の才能を持つ私にそんなものは必要ない」

どこまでも傲慢に、しかしどこまでも真っすぐな瞳で言い放つキャスター。
己に出来ないことなど何もないと本気で確信している者の目だ。
やはり、嫌いだ。その嫌いな男を直視できず、つい俯いてしまう。

「しかし…魔術師とはそういうものなのかもしれないが、そこまで子供らしさを削ぎ落さなくてもいいだろう」
「馬鹿にしてるの?」
「いいや、そんなつもりはない。もっと素直になっても良いということさ。
君は理不尽に殺人ゲームに巻き込まれた被害者で、しかも子供だ。そんな目に遭わせた相手に対して怒っても誰も咎めやしない。
君は自分がどうすればいいのかということは考えても、自分がどうしたいのかは考えたことがないだろ?」


480 : オルガマリー&キャスター ◆V3zFiKmoXQ :2018/04/28(土) 00:44:22 7s1T5O1c0

キャスターにしてみれば、思ったことをストレートに口にしただけだったのだろう。
けれどその言葉はオルガマリーの中に埋もれていた記憶を思い起こさせるには十分だった。



“立ち上がったわけじゃない。―――単に、うずくまる方が辛いだけだ”

“諦めなかったわけじゃない。―――単に、思考を止められないだけだ”


“勝ってみたくないか、オルガマリー”


絶対に自分とは相容れないと確信できるあの若き君主(ロード)の言葉と執念。
短い人生の中で、初めて天体科(アニムスフィア)でもなく君主(ロード)でもない、ただのオルガマリーを必要だと言われたあの瞬間。
それまで感じたことのない、熱いものが胸の内にこみ上げてきたのではなかったか。
そう、その感情は確か―――

「そう、だったわね」

顔を上げたオルガマリーに、キャスターが僅かに関心した様子を見せる。
少女の瞳には先ほどまでの疲れただけの色ではない、燃え滾る鮮烈さが宿っていた。

「私は、怒るべき時には怒っても良かったんだ」

聖杯戦争。あるいは、その名を借りた別の魔術儀式であるかもしれない殺し合い。
その理不尽、底の見えない規模と悪意に押し潰されて、最近のことであったはずの魔眼列車の事件で一度は得たはずの答えさえ見失っていた。

「…お馬鹿なマリー。しゃんとなさい」

祈るように、誓うように。小さな声で今はもういない従者によく言われた小言を反芻した。
今ならはっきりと思える。私をこんな目に遭わせたやつが許せないと。
その怒りのままに戦っても良いのだと。

「キャスター、方針を伝えるわ。
この聖杯戦争は信用するに値しない。姿も影も見せない主催者が額面通りに優勝者の願いを叶えるとは思えないわ。
私の父は以前冬木という土地で行われる予定の第五次聖杯戦争について調べていたのだけど、英霊の召喚以外は似ても似つかないぐらい形式もルールも違う。
何より冬木の聖杯戦争は誰が何のために主催し、どれだけの歴史があるかが調べればわかる程度にははっきりしていた。でもこの聖杯戦争にはそれがない。
だから私たちは知るところから始めなければならない。この見滝原という舞台の裏に何があるのかを」

調べる、と簡単に言ったが実際には魔術師としての観点からしてもおぞましい手段が用いられていたのだが今ここでキャスターに語ることでもない。というか語りたくもない。
キャスターは微塵も揺らぐことなく泰然としたまま確認を取ってくる。

「つまり君の方針は聖杯戦争への反抗だと?」
「……それは状況次第ね。いくら信用ならないと言ってもこの聖杯戦争の主催者が途方もない、何らかの力を持っていることだけは疑いようもないもの。
そいつの思考形態は人間のそれとも魔術師のそれとも違うのかもしれない。
情報が出揃った時点でどう足掻いても聖杯戦争の転覆も脱出も不可能と判明した、なんてことは当然考えられるわ。
そうなった場合は生還を最優先として優勝狙いに舵を切るしかない。
私には一部とはいえアニムスフィアの魔術刻印が移植されている。刻印を遺せず死ぬなんていうのは魔術師にとっては親殺しにも勝る罪なのよ」

主催者に対する怒りを自覚しようとも、怒りに支配され魔術師として為すべきことを見誤ってはならない。
オルガマリーには自らの血に流れる責任がある。死にたくないという感情とは別に死んではならない理由がある。
故に手段を問わず生還こそを第一義としなければならない。
優勝という選択肢は完全には捨て去らず、可能な限り長く保持しておく。

「私の神の才能にかかればこんなゲームを打ち砕くなど容易いが、まあ見てもいないものを信じられないのも無理はない。
経営者をしていたこともあるからな、実績なくして信用が得られないことぐらいは理解しているとも。
だが君はすぐに知るだろう。レベル10億の力を」


キャスターとして現界した男、その真名を檀黎斗。
彼は確信している。己の才能こそがこのゲームに終止符を打つことを。
時代から拒絶されるほどの巨大な才能がこの世界では求められていると信じている。

無論、サーヴァントとなった以上大小様々な制約は付いて回るのだろう。
だがゲームでは縛りなど当然付いて回るもの。取り立てて騒ぐほどのことでもない。
真のゲームマスターが誰なのか、それを思い知らせてやろう。

「私のゲームに終わりはない」


―――さあ、この世界に神話を打ち立てよう


481 : オルガマリー&キャスター ◆V3zFiKmoXQ :2018/04/28(土) 00:45:10 7s1T5O1c0
【クラス】
キャスター

【真名】
檀黎斗@仮面ライダーエグゼイド

【ステータス】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運A 宝具EX

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
陣地作成:EX
魔術師として自らに有利な陣地「工房」を作る能力。ただし檀黎斗は通常の陣地作成能力を持たない。
代わりにライダーガシャットの起動時にゲームエリアと呼ばれる独自の領域を展開する。
彼の保有するゴッドマキシマムマイティXガシャットは見滝原市全域をゲームエリアとすることができる。

道具作成:-
檀黎斗は通常の道具作成スキルを持たず、彼自身の保有スキルで代用している。

【保有スキル】
クリエイター:EX
ライダーガシャットと呼ばれる特殊なアイテム、及びそれに付随する武器や道具を作成する。黎斗はこのスキルを道具作成スキルの代わりとして使用する。
限定的ではあるが時間操作、死者蘇生、新たな生命種の創造など人類を新たなステージへ導き得るほどの神の才能。
後述の星の開拓者との併せ技によってランクEXの宝具に相当するガシャット、技術さえ開発することができる。

天才ゲーマー(偽):A
あらゆるゲームを攻略する才能。
ゲームであるライダーガシャットを用いた戦闘における各種判定に中程度のボーナスを得る。
元々黎斗が有していた能力ではなく父・正宗から生まれたバグスターであるアナザーパラドを吸収したことによって得たスキル。

星の開拓者:EX
人類史においてターニングポイントになった英雄に与えられる特殊スキル。
生命の在り方、再生医療に革命を起こした檀黎斗はEXランクを所有する。
彼の場合は「現在の人類では不可能なことを可能にする技術を生み出す」ことに特化している。

【宝具】
『最上級の神の才能(ゴッドマキシマムマイティX)』
ランク:EX 種別:対人(自身)宝具 レンジ:1〜999 最大捕捉:-
檀黎斗が天才ゲーマーMこと宝生永夢をも超えるほどのゲームの腕前を身に着けたアナザーパラドを吸収し、天才ゲーマーの力を得たことで生み出したライダーガシャット。
ゲーマドライバーに装填することで仮面ライダーゲンム・ゴッドマキシマムゲーマーレベルビリオンに変身する。
レベル0形態のゲンムがゴッドマキシマムゲーマに搭乗したような状態となり、合体状態では伸縮自在の手足を伸ばしたり、背中のブースターで飛行(少なくとも大気圏突破、再突入までを問題なく行える程度)、胸部からビームを照射する機能を標準装備している。
またゴッドマキシマムゲーマからゲンムを射出・分離して個別に戦うこともできる。分離してもステータスに変化はない。
変身中は黎斗のステータスが以下の通りに変化する。
スペックは黎斗の匙加減ひとつで自由に設定できるが、通常のクラスのサーヴァントの霊基に収まる範疇を超えることはできない。
当然ながらステータスを高く設定するほど維持に必要な魔力消費は跳ね上がる。逆に消耗を抑えるために敢えてステータスを低く設定することもできる。


482 : オルガマリー&キャスター ◆V3zFiKmoXQ :2018/04/28(土) 00:45:59 7s1T5O1c0

筋力E〜EX 耐久E〜EX 敏捷E〜EX 魔力E〜EX 幸運A 宝具EX

唯一最大の特殊能力として黎斗のアイデア一つであらゆるゲームを生み出す能力を持ち、生み出したゲームに存在する技や能力を自由自在に取り出して使用する。
この能力の応用により、デフォルト状態のゴッドマキシマムゲーマーに存在しない能力や耐性であっても自由自在に付与できる。例として原作では「コズミッククロニクル」というゲームを生み出し、「宇宙は時の概念を歪める」という能力によって仮面ライダークロノスのポーズ能力(時間停止)を無効化した。
なおこの能力は厳密には変身したゲンムの能力ではなく、ガシャット自体に備わった能力である。故に変身前であっても生み出したゲームを起動し能力を使うことができる。また複数のゲームを同時に起動することも可能。
まさしく世界を意のままに操る神の如き力であるが、サーヴァントとなった今では通常のクラスのサーヴァントの力量の限界を超えるような事象は実現できない。
また大規模・強力な能力を使用するとその分魔力消費も増大する。
自己主張の塊のような変身音声により、変身音声を聞いた瞬間対峙したサーヴァントは黎斗の真名を自動的に認識・把握する。

【Weapon】
ゲーマドライバー:仮面ライダーゲンムへの変身ベルト

ガシャコンキースラッシャー:ゴッドマキシマムゲーマーの専用装備。黎斗は主に分離状態の時に使用する。
対応するボタンを押すことでブレード、アックス、ガンの三つのモードに切り替えられる。

【人物背景】
かつて神を名乗っていた男。ゲンムのやべーやつ。
英霊として座に登録されたことでまたしてもコンティニューの機会を得た。

【聖杯への願い】
命を消すことを前提とした下らないゲームなど木っ端微塵に破壊してやる

【方針】
戦闘になった場合極力サーヴァントのみを倒す。
マスター、NPCの殺害は避ける。ただしバグスターウィルスに感染・消滅させてデータを保存する分には問題ない。


【マスター】
オルガマリー・アースミレイト・アニムスフィア@ロード・エルメロイⅡ世の事件簿

【聖杯への願い】
聖杯戦争自体が信用ならないので脱出ないしゲーム転覆の機会を狙う。
ただし生還が第一であるため、脱出が不可能な場合優勝を狙う選択肢はギリギリまで捨てない。


【能力・技能】
歴史ある魔術師の家系として一流の魔術回路を持つ。
何の準備もなくとも魔力を凝集させた高密度の魔弾を放ち、然るべき準備を整えれば大魔術も発動できる。
また幼いながらアニムスフィア家次期当主としての教育は受けており、高い洞察力や分析力、政治力を有している。
無意識ながら俯瞰的な視野から物事を見通すことに長ける。

【人物背景】
魔術協会の総本山、時計塔の天体科の君主(ロード)、マリスビリー・アニムスフィアの娘。11歳。
異なる時空の未来においては人理継続保障機関フィニス・カルデアの所長を務めることになる人物。
性格は気高く高慢で寂しがり屋、やや神経質でネガティブ。
魔眼蒐集列車の事件終了後からの参戦。

【方針】
誰が、何のために、どのようにして聖杯戦争を開いたかを調査し見極める。
特に聖杯の有無やその性質については慎重に調べたい。


483 : ◆V3zFiKmoXQ :2018/04/28(土) 00:46:39 7s1T5O1c0
投下を終了します


484 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/28(土) 11:38:26 ODTnmliM0
皆さま投下お疲れ様です。またちょっとした追加OPを投下します


485 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/28(土) 11:39:07 ODTnmliM0
.



アラもう聞いた? 誰から聞いた?
時間泥棒のそのウワサ

折角、料理を作ってたら、一体どうして? 全部丸焦げ!
楽しみにしていた映画を見てたら、肝心なシーンがいつの間にか終わってる!

それは全部、時間泥棒の仕業!
人の都合なんて気にしない。自分勝手に『結果』だけを残しちゃう。

だけど誰もその正体を知る事は叶わないって
見滝原の住人の間ではもっぱらのウワサ

チョーメイワク!



○   ○   ○   ○



―――とおるるるるるる…………


見滝原の一角で『電話』が鳴り響いた。ハッとしたのは一人の少年、ドッピオと呼ばれる彼だけだった。
これはきっとボスからの『電話』だと周囲を見回す。
だが、公衆電話ボックスは一切無い。このご時世。どこの誰も携帯電話もといスマートフォンを所持している。
ドッピオはスマートフォンを所持していなかったのだ。
当然ながらソレは、彼が英霊だと云うやむを得ない事情があってのこと。


「どこから電話が鳴ってるんだ?」


―――とおるるるるるるるるるるるるるる


実際『電話』の音を鳴らしているのは、ドッピオ本人だった。
奇声じみた電話音を言葉で鳴らす有りようは、一見すれば異常者でしかない。
いくら実体化しているとはいえ、目立ち過ぎる奇行。しかし英霊として『気配遮断』のスキルを保有する為
ドッピオが少なくとも、一般人に怪しまれる心配は無い。
おっ、と。ドッピオが(彼が認識する)電話を発見する。


「この時代じゃ電話は板チョコみたいに平べったいんだよな。最新機種を用意してくれるなんて、流石はボスだ」


ドッピオは、路上にポイ捨てされていたお菓子の空き箱を『ガチャリ』と取って、耳に当てた。


「もしもし、ドッピオです」


『わたしのドッピオ……首尾はどうだ。サーヴァントか、マスターの手掛かりは掴めたか』


「ボス! それが『奇妙』なんです……何かおかしな事が起きているんです」


ドッピオは彼なりに『ボス』の役に立とうと奔走した。
『ボス』から貸して貰っている『気配遮断』や『宝具』を駆使し、情報収集に徹している。
だからこそ。
この見滝原で奇妙な現象が起きていると判断できた。
平静ながら困惑を交えた口調でドッピオは話を続ける。


「近頃よく聞く『ウワサ』……間違いなくサーヴァントの情報だ。でも魔力を感知できない!
 オレだから分からないんですか。僅かな魔力すら掴めないなんて………」


『落ち着くのだ、ドッピオよ……サーヴァントの情報だけでいい。「ウワサ」を一つでも多く得るのだ』


電話ごしに居る邪悪は、一番に警戒するべき存在を知っている………!


『ドッピオよ。前に伝えた筈だ――「時を止める能力を持ったサーヴァント」!
 奴だけは迅速に始末しなければならない。奴は必ず私にとっての脅威となるからだ!!』


486 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/28(土) 11:39:30 ODTnmliM0
時間。全ては『時間』という世界を支配する能力である!
彼らの持つ宝具には『時間停止』の効果は無い。だが『時間の支配』に分類されたサーヴァントとしての影響だろう。
『時間』に関する能力を認知する事が叶った。
……むしろ、先に気づけたのは一つの幸運。
ひょっとすれば逆。彼らの――『深紅の王の宮殿(キング・クリムゾン)』 が認知されていた方が不味い。
手の内を知っているか否かで、大きな差が生じる……


『お前にも時の停止を認知できるようスタンドの一部を貸している……
 そして、サーヴァントであってもお前を即座に攻撃できないよう気配遮断もある。
 お前の任務は「時を止めるサーヴァントに近づく事」だ……私が奴を殺る。いいな、わたしのドッピオ』


「はい。わかりました、ボス」


時の停止。
手掛かりは僅かだが、どうもニュースで報道される『赤い箱』の猟奇殺人犯とは無縁に感じる。
注視するべきは……『悪の救世主』のウワサだ。
悪を先導し、悪に崇拝されている。新手の新興宗教じみたものに発展していると影では話が絶えないのだ。
まずはここから………



○   ●   ○   ●   ○   ●   ○   ●



            underground



●   ●   ●   ●   ●   ●   ●   ●




時は少し遡る―――


ドッピオの影にいる本体とも呼べるサーヴァント・アサシンの人格。
『ディアボロ』は聖杯戦争に召喚されて以降。いいや……召喚された直後からドッピオの状態のまま。
現在進行形で表舞台に顔を、姿をあらわにした事は無かった。

ディアボロは、その『魂』の波長。感覚でマスターのアイルには、もう一つの人格があると理解している。
恐らく、アイルも知っている。
なのに……アイル本人がドッピオに対し、ディアボロの存在を言及したりせず。
アイル自身も、内に秘めている人格を表に出す事は無かった。


最初は『保護』だと疑った。
二重人格の在りようは様々な要因、過程がある。
本来あるべき主人格を保護している。聖杯戦争に怯える臆病者であれば逆にそのまま『保護』を継続して欲しい。
しかし……
後の、アイルの態度を考慮するに『保護』ではないと察せる。
ならばディアボロと同じく、人格を支配下に置いているのか?
違う。しっくりこない。


487 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/28(土) 11:39:58 ODTnmliM0
「あー……やっと見つけた」


驚いた事に、ディアボロだけがいる深淵に一つの声が響き渡る。
金髪碧眼のガタイの良い男。容姿だけでは誰とも分からない。少なくともディアボロが認知していない存在。
だが。
この領域に侵入できるならば一人しか心当たりはなかった。
警戒するディアボロに対し、男は気さくな態度だった。


「おいおい。そう怖い顔すんなよ。お前が表に出てこねぇんだから、こっちから顔出すしかねぇだろ」


「どうやってここまで来た」


「何となく? 適当に? ハハハ、冗談じゃねぇって! サーヴァントとの契約?繋がりってのが影響してるんだろ」


へらへらした男にディアボロは舌打ちを漏らす。
アイル当人とは性格が大分ズレている。
態度が気に入らないのではない。ディアボロは接触したことで確信を得た。
悪魔の囁きのように、男が言うのだった。


「なあ。アイルの奴を警戒してるんだろ? 令呪で命令されるとか、余計な真似をされるのを」


「…………」


「俺と『取引』しねぇか? 別に悪い話じゃあないと思うぜ」


わざわざ顔を出して来たのだから、必ず――それこそ『面倒』な要求をする筈だ。
ディアボロの疑念が的中し、彼は不敵に笑いながら告げる。


「戦わせてくれねぇか? マスターでもサーヴァントでも」


嗚呼。こういう奴か。
典型的な凶悪で暴力思考の、単純だからこそ面倒な部類の戦闘狂だ。
よりにもよって『時間』を支配するサーヴァント……ソイツがいなければ問題無い方だったが。

アイルの支配が保証されるともディアボロは考えていない。
意気揚々な態度の男に対して、帝王は威圧した。


「断る。どこに貴様を信用する要素がある? どこの誰かも分からない、そんな奴を頼るオレではない」


「なんだよ。そんな顔して神経質か? どうせ俺と同じなんだろ? お前もさあ。表にいる奴を利用して――」


「―――消えろ」


心底不愉快なアイルの別人格は、幻覚のように消失していた。

同じだと? このディアボロと貴様が『対等』だと?
私は違う……私『達』は違う。
『片方いればどうでもいい』……お前『達』と私『達』は全くの別物だ。私はドッピオと共に帝王の座に戻るのだ!

帝王の叫びは誰にも聞かれずに、深淵で響き渡っていた。


488 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/28(土) 11:40:22 ODTnmliM0
【クラス】アサシン
【真名】ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険

【ステータス】
筋力:B 耐久:C 敏捷:D 魔力:A 幸運:A 宝具:A

【属性】
混沌・悪


【クラススキル】
気配遮断:EX
 光と影。表と裏。二重の人格がある限り絶頂と幸福が保証される。
 もう一つの人格である『ヴィネガー・ドッピオ』が存在し続ける限り、気配遮断の効果は永続する。
 実体化し、攻撃態勢に陥っても、サーヴァントの魔力だけでなくステータスも隠蔽される。


【保有スキル】
カリスマ:C-
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
 国家運営は出来ないが、一大組織のボスとしては問題は無いランク。

情報抹消:C
 目撃者と対戦相手の記憶から、能力・真名・外見特徴などの情報が消失する。
 戦闘が白昼堂々でも効果は変わらない。

仕切り直し:B
 戦闘から離脱、あるいは状況をリセットする能力。機を捉え、あるいは作り出す。
 不利になった戦闘を初期状態へと戻し、技の条件を初期値に戻す。

スタンド使い:D-
 自らの存在を徹底的に隠蔽・情報抹消し続けたディアボロは
 スタンド使いとの遭遇率を低下させる。


【宝具】
『深紅の帝王の宮殿(キング・クリムゾン)』
ランク:A+ 種別:対人・対界宝具
 時間を消し飛ばす『深紅の王』と十数秒先の未来予知の『墓碑銘』の二つを含めた能力。
 全ての過程を消し飛ばした結果だけを残す。ディアボロのみが消し飛ばす時の中を認知、自由に行動できる。

 空の雲は、ちぎれ飛んだ事に気づかず。消えた炎は、消えた瞬間を炎自身さえも認識しない。
 消し飛んだ時で何かに触れたりする事は不可能。ただの傍観者。
 ……が、恐らく『時』に纏わる能力を保持する者にも、その情景を認知する事が出来るだろう。

 以上が、スタンドと称される精神が具現化した人型の能力である。
 サーヴァント一騎に匹敵するステータスを兼ね備えたスタンドの方が基本的に戦闘を行う。


<その他>
『ヴィネガー・ドッピオ』
 ディアボロのもう一つの人格。
 サーヴァントとしてのステータスはEランク相当に過ぎない。
 ディアボロが対象になったバッドステータスを代わりに請け負う役目になれる。
 改めてディアボロにバッドステータスを付与しても、ドッピオが請け負っている状態の為、意味は無い。
 ドッピオは宝具やスキルに分類されておらず、それらによる妨害スキルの効果は受け付けない。


489 : ◆xn2vs62Y1I :2018/04/28(土) 11:41:11 ODTnmliM0
追加OP投下終了します。


490 : ◆Pw26BhHaeg :2018/04/28(土) 15:27:22 neZ9eyLE0
投下します。


491 : Disposable Heroes ◆Pw26BhHaeg :2018/04/28(土) 15:29:30 neZ9eyLE0
「……以上の件について、報告を終わります。では……」

見滝原を一望できる超高層ビルの一室。大きく重厚な机と立派な椅子に座るのは、40がらみの偉丈夫。
眉目秀麗な男性秘書の報告を聞いていたその男は、差し出された書類に判を押した。

「ご苦労。下がってよろしい」
「はい。それでは、失礼致します。CEO」
秘書は、男の放つ威圧感に冷や汗をかきつつ、完璧な所作でお辞儀し、退室した。

男は視線を背後の窓の外、夕景に移す。記憶はあるのに、記憶にない街だ。
立ち並ぶ高層ビル。最先端技術を積極的に取り入れ、一般家庭にも普及させた近未来的な理想都市。
清潔で、芸術性すら帯びた景観。かつていた、碁盤の目のように整然とした街並みとは程遠いが……。

「……それなりに、美しい」



――また発見される『赤い箱』。震撼する見滝原!

――警察は容疑者と思しき黒コートと黒帽子が特徴の男性の映像を公開。

――鋭利な凶器を所持している可能性あり……


巨大モニタに繰り返し流れる物騒なニュース。おそらく、暴走した主従の仕業だろう。
急に力を獲た低能者は、己の力を過信し、ほとんどの者が暴走する。世界の王にでもなった気分で。
それから、壁にぶつかる。少し賢くなると、自分が檻の中にいると悟る。鎖に繋がれ、思ったほどには自由でないと分かる。
檻を破り、鎖を断っても、檻の外にはより大きな檻。より長い鎖。それが死ぬまで続く。


492 : Disposable Heroes ◆Pw26BhHaeg :2018/04/28(土) 15:31:32 neZ9eyLE0
「……この街には、秩序が必要だ。低能な者は低能なりに、然るべき檻(ケージ)と鎖(チェイン)が必要なのだ。
 そう思わないかね、アーチャー=サン」

男は……超高層ビルの一室の窓から、遠く駅前のモニタを眺め下ろし、そう呟く。
立ち上がった姿は長身。彫刻のように均整が取れ、高貴な気品が漂い優雅ですらある。
白く波打つ長髪を後ろへ撫で付け、上等なスーツと白手袋を着用し、胸元にはハンカチーフ。
顔にはやや皺が刻まれているが、精悍でエネルギッシュ。その目は白金色の虹彩と、暗黒の瞳孔を備える。

「ああ、そうだな、マスター。必要さ。――――弱者を守るためにもな」

部屋の隅から答える声。空中に金色の粒子が凝集し、若者が姿を現す。
黒髪で短髪、褐色の肌。鍛え上げられた肉体に軽装の鎧を着け、大きな赤い弓を携えている。
背格好は、マスターと呼ばれた男と同じ程。

「しっかしまあ、大きな街だ。建物も多けりゃ人も多い。それに面白い。
 移動に鉄の箱を使うのも初めは面食らったが、見慣れれば味わい深いぜ」

軽口を叩く若者。彼はマスターからしばらく離れ、街中を偵察していたのだ。
マスターは振り返り、自分のサーヴァント、アーチャーと改めて対面した。



「さて、アーチャー=サン。これからの予定だが……君には『狙撃』に徹してもらう。それが最適だろう」

マスターはにこやかに告げる。アーチャーは鼻を鳴らし、腕を組む。
目上の者に対するタイヘン・シツレイな態度だ。ケジメを要求されても不思議ではなかろう。
否、彼は英霊、それも三千年以上前の大英雄。従僕とはいえ、目の前のマスターが何者であれ、それほど畏まることはない。

否。目の前のマスターこそ、この大英雄の国における最高神「アフラ・マズダー」の霊を宿す者なのだ。
正確には、異なる世界においてその神として崇められた、恐るべき神代の存在――――「マズダ・ニンジャ」のソウルを宿す者。

「そうだな。我がマスター、『イグゾーション』さん。俺が狙撃に徹すれば、普通の聖杯戦争ならあっさり片がつくぜ。普通ならな」


493 : Disposable Heroes ◆Pw26BhHaeg :2018/04/28(土) 15:33:33 neZ9eyLE0
イグゾーション(Exhaustion)。使い尽くすこと、消耗、枯渇、疲労困憊を意味する英単語。
彼はガイジンではなく、普段は通常の日本人名を名乗っているが、この異名、ニンジャネームを持つ。
平安時代以前の世界を数千年の間カラテによって支配した半神的存在、『ニンジャ』の掟として。

彼はアメリカ大統領めいたにこやかな表情を崩さず、丁重に接する。古事記にも書かれた英雄として、彼なりに敬意を払っているのだ。
「狙うのは……君が『悪』と断ずる者だ。ああ、私を狙わないでくれよ。君にとって私は悪だろうが、私にも信念がある」
「狙わんよ。あんたがこれから、何か非道を行おうってなら別だがな。敵に襲われたら、俺が護ってやる」

アーチャーは笑う。マスターが、生身の存在としては非常に強いことは見て取れる。彼が宿す邪悪な霊と、彼自身の卓越した強さを。
例えば英霊や神霊が人間に宿り、その人間が英霊になれるほどの鍛錬を積めば、こうなるのだろうか。
しかしアーチャーは、並大抵のサーヴァントではない。神代に先祖返りした存在だ。このマスターを殺そうと思えば、たぶん殺せる。

「はは。私もカラテに多少自信はある。君よりは……うーん、どうかな。ゴジュッポ・ヒャッポかな。
 近接物理戦闘であれば、私はそう負けんよ。まあ特殊なジツを使う者もいるだろうが、なんとか対処しよう。
 とはいえ、君という頼もしい仲間がいるんだ。せっかくだから護ってもらおう」

マスターも笑う。アーチャーは頷く。互いのことは、既に情報交換している。千里眼によって、彼の心を垣間見ることも出来る。
彼は悪人だ。自分の信念を正義で善だと当然のように考え、それを邪魔する者を踏み躙って顧みない悪人だ。
災害じみた暴力と邪悪な策略、権力とカネと文化と文明の力を、並み外れた知性と理性によって行使する暴君だ。
彼が聖杯を獲得すれば、生きて現世に帰還すれば、あまり良くはなかろう。

「私はね……本来、あまり『暗殺』という野蛮な方法は使いたくないんだ。戦争は、個人の武勇だけで決まるものではない。
 謀略、経済、政治、全てが戦争の一部。否、戦争こそ政治の一部に過ぎない。他の主従を炙り出し、社会的に孤立させる。
 弱い者は狩り、強そうなら互いにぶつかり合わせ、弱らせればいい。無駄な労力を使うことはない。そう思っていたが」

令呪はまだ使われていない。裏切ることは可能。ただその場合、彼は即座に自分を自害させ、平然と次のサーヴァントを獲得するだろう。
あるいは令呪で絶対服従を強いられるか。彼の魔力なら、自分を令呪でそこまで縛り付けることも可能。先手を打てば、いけるか。
彼を―――見張らなくてはいけない。彼は危険だ。人間と神の境、ボーダーラインを超えてはいけない。

「そう。俺は『個人の武勇で戦争を終わらせた』本人だからな。回りくどいことをせずとも出来るさ。それと」
アーチャー、『アーラシュ』は告げる。イグゾーションに、そして「マズダ・ニンジャ」のソウルに対して。
「あんたは、それなりに正しい。ただ―――俺は自分が守りたい者を守る。
 それは、弱者だ。あんたのような奴に踏み躙られる弱者だ。俺が国境を作ったのは、そのためだ」


494 : Disposable Heroes ◆Pw26BhHaeg :2018/04/28(土) 15:35:34 neZ9eyLE0
嫌悪を露わにする従僕に対し、マスター・イグゾーションは目を細める。
単純な男だ。カラテは相当なものだが、一介の戦士に過ぎない。心や未来は見抜けるが、政治を理解しない。ならば、好ましい。

「そうかね。では、君は君の守りたい者を守り、弱者を寄せ集めたまえ。手駒が多くて悪いことはない。
 いずれ我々は、この聖杯戦争の主催者にも挑むことになるだろうからね」

アーチャーは眉根を寄せた。彼は邪悪だが、強く、賢い。指導力もある。
他の邪悪な主従を潰し、主催者に挑むには、彼の力も必要かも知れない。
しかし、いずれは――――



赤い箱。救世主。時間泥棒。怪盗。歌手。徘徊するモナ・リザや恐竜のウワサ。
奇妙なウワサばかりが広まっている。これらもまた、主従のウワサか。
そうしたウワサを流すメリットはなにか。そもそも、誰が流しているのか。


アラもう聞いた? 誰から聞いた?
罪罰罪罰罪罰のそのウワサ

今日も何だかユーウツね
やる気の出ないオトナでも
肩を叩けばやる気が出るの
過労死上等 飛んで行け!

罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰

見滝原の住人の間ではもっぱらのウワ罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰
罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰
罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪<◎>罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰
罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰
罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪

インガオホー!

罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰
罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰
罪罰罪罰罪罰罪<◎>罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪<◎>罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪<◎>罰罪罰罪罰罪罰罪
罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰
罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰

ニンジャは実在しない。いいね?


495 : Disposable Heroes ◆Pw26BhHaeg :2018/04/28(土) 15:38:08 neZ9eyLE0
【クラス】
アーチャー

【真名】
アーラシュ@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ、Fate/Grand Order

【パラメーター】
筋力B 耐久A 敏捷B+ 魔力E 幸運D 宝具B++

【属性】
混沌・中庸

【クラス別スキル】
対魔力:C
魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

単独行動:C
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。マスターを失っても1日は現界可能。

【保有スキル】
頑健:EX
神代の名残を色濃く有する彼は、生まれついての特別な頑強さを有する。
戦場であっても傷を受けず、生来より病を受けたことさえない、という逸話がスキルとなったもの。
耐久のパラメータをランクアップさせ、攻撃を受けた際の被ダメージを減少させる。対毒スキルの能力も含まれる。

千里眼:A
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。遠方の標的捕捉に効果を発揮。
Aランク以上ならば一種の未来視(未来の予測)や読心さえ可能。

弓矢作成:A
女神アールマティから授かった「弓」の設計者であり作成者。材料さえあればたちまち弓と矢を作成する。
弓には物質的な材料が必要だが、矢であれば自らの魔力を削ることで作成可能。これにより無数の矢を断続的に放つことが可能となる。


496 : Disposable Heroes ◆Pw26BhHaeg :2018/04/28(土) 15:40:12 neZ9eyLE0
【宝具】
『流星一条(ステラ)』
ランク:B++ 種別:対軍宝具 レンジ:1-99 最大捕捉:900

イラン(エーラーンシャフル)とトゥーラーン(トゥルキスターン)の間に国境を作り、争いを終結させた究極の一矢。
射程距離は2500km、威力は大地を割る、人ならざる絶技。純粋な威力では対城宝具、発生魔力総量と効果範囲は対国宝具レベル。
しかし宝具の使用と同時に、アーチャーごと爆発四散して消滅する。

【Weapon】
弓矢。スキルにより瞬時に生成した山をも削り取る威力の矢を、視認できないほどの超遠距離から同時に数十発も標的に当て、
空を埋め尽くすほどの矢の雨を降らせることが可能。宝具を使わなくても対軍宝具級の攻撃を放てるに等しい。
しかし街一つを軽く崩壊させる事が可能なため、街中では建造物にまで配慮して何も壊さないように戦う。

【人物背景】
イラン・ペルシア神話における伝説の英雄。CV:鶴岡聡。
聖典『アヴェスター』のティシュタル・ヤシュトではウルフシャ(Erekhsha)、『ブンダヒシュン』等の中期ペルシア語ではエーラシュ(Erash)、
新ペルシア語やアラビア語ではエラシュ(Erash)、イーラシュ(Irash)、アーラシュ(Arash)。
また「速い矢の(shewatir)」「射手の(kamangir)」といった添え名を持つ。アーリヤ人で最も弓矢の術に優れた勇士とされる。
伝説によれば、イランの王マヌーチェフルはトゥーラーンの王アフラースィヤーブと60年間戦ったが、包囲されて不利な条件で講和を結ばざるを得なくなった。
それは「弓矢の届く限りの土地をマヌーチェフルが統治し、残りをアフラースィヤーブのものとする」というものであった。
この時、大地の守護女神スプンタ・アールマティが特別な弓矢を英雄アーラシュに授け、ダマーヴァンド山の頂上から東方へ向けて矢を射させた。
矢は夜明けから正午(あるいは日没)まで飛び続け、40日の旅路の距離、あるいは1000パラサング(5600km)を飛んでバクトリア地方の山に到達し、
大地を割ってワフシュ川(現アム川、かつてはバクトリアからカスピ海へ注いでいた)を創り出した。
アーラシュ自身は途方もない弓矢の威力で五体が爆発四散したが、こうしてイランの領土は護られ、両国の間に平穏と安寧が到来したという。

いつもの彼。マスター運が良い彼も、今回はあまり善くないマスターに喚ばれてしまった。マスターが極めて強大なニンジャなので魔力切れの心配はない。

【サーヴァントとしての願い】
なし。

【方針】
己の正しいと思うことを行う。弱者を守る。倒すべき悪を見つけたら超遠距離精密狙撃で狩る。
マスターには今のところ従うが、非道な命令には従わない。襲撃されたら守ることは守る。宝具使用は最後の切り札。

【把握手段】
原作、ないしFGO。いつもの彼。


497 : Disposable Heroes ◆Pw26BhHaeg :2018/04/28(土) 15:42:17 neZ9eyLE0
【マスター】
イグゾーション@ニンジャスレイヤー

【Weapon】
ニンジャとしても非常に高いカラテのワザマエを持つ。第二部時点でのニンジャスレイヤーやダークニンジャよりも「やや強い」と評される。
生身でありながら、その凄まじいカラテは実際英霊にも通用・匹敵するだろう。またスリケンを生成して投擲する。
さらに周囲の生物を「バリキ・ジツ」で爆弾化し、標的に突撃させて爆発させる。

【能力・技能】
『ニンジャ』
ニンジャソウル憑依者であること。ニンジャの始祖に最も近いとされる神話級アーチニンジャ「マズダ・ニンジャ」のソウルを宿す。
そのアトモスフィアは常人(モータル)を畏怖させ、NRS(ニンジャ・リアリティ・ショック)症状を引き起こさせる。
常人が彼に立ち向かうのは、竜巻やドラゴンの前に立ちはだかるにも等しい。銃弾が急所に当たれば死ぬが、平然と避けるのでまず当たらない。

『バリキ・ジツ』
接触した相手に特殊波長のカラテ(魔力)を少量流し込むことによって生命力をオーバーロードさせ、生体爆弾に変化させるユニーク・ジツ。
「バリキ爆弾」と化した被害者は、オーバーロード時の熱エネルギー反応によって目や口などから異常発光を始めた後、爆発四散し死に至る。
脳機能にも影響し、被害者は思考力が著しく低下し、両腕をバンザイさせた状態で、設定された標的へまっすぐ突っ込んでいく。
副作用で痛覚が麻痺するのか、生半な攻撃では突撃してくる犠牲者達を止めることは困難。動物も爆弾化させられるが、人間よりやや威力は落ちる。
手当たり次第に周囲の生物を生体爆弾に変え特攻させる戦法は実際脅威。常人や動物ならば接触するだけで爆弾化が可能だが、
ニンジャなどの強力な存在を爆弾化するにはやや長く触れる必要があるため、対ニンジャ戦で相手を爆弾化させることはしない。
また流すカラテを弱めて尋問(インタビュー)にも利用できるが、繊細な作業ゆえ調整を誤れば尋問対象を爆死させかねない。

『セルフ・バリキ・ジツ』
自らにバリキ・ジツを用いて、自身のカラテ能力を飛躍的に高める応用技。もともと最強格のカラテを持つが、さらに強くなる。
ただし加減を間違えるとあっと言う間にオーバーロードして自爆する禁断の奥の手。副作用として躁めいた状態になる。
自分以外のニンジャなどにバリキ注入してパワーアップさせるという使い方は、コントロールが難しいため無理のようだ。


498 : Disposable Heroes ◆Pw26BhHaeg :2018/04/28(土) 15:44:28 neZ9eyLE0
【人物背景】
小説『ニンジャスレイヤー』第二部「キョート殺伐都市」に登場するニンジャ。CV:鳥海浩輔。
キョート共和国を支配するニンジャ組織「ザイバツ」の最高幹部(グランドマスター)の一人であり、その中でも最強の実力者。
身長185cm、40がらみの皺が刻まれた頬を持つ男。白金色の虹彩と暗黒の瞳孔を持つ。
戦闘時等には赤熱する炭を思わせる赤橙色のニンジャ装束を生成して纏い、メンポ(面頬)とブレーサー(手甲)を装着する。

上流階級出身であり、生まれつきの貴種が上に立つのを当然とする。優雅な立ち居振る舞いと深い教養、高い政治能力を併せ持つ。
卓抜したカラテ(戦闘力)を持ちつつ、政治的策謀こそ真の闘争と考え、自らが戦うよりは部下に任せることを好む。
部下に対しては鷹揚に振る舞い労をねぎらうなど良き上司として振る舞うが、部下は道具・手駒としか考えておらず、「愚鈍」な者を好む。
この場合の「愚鈍」とは無能という意味ではなく、有能ではあっても主体性や広い視野を持たず、上司の命令に忠実なことをいう。
表面上は良き上司であるため心酔者も少なくなく、彼の派閥はザイバツの中でも最大であった。

キョートから離れた異世界に来たため、ロード・オブ・ザイバツのジツは解けている(はず)。
最初は随分ショックだったが、気を取り直して自分の野望を果たすことにした。

【ロール】
見滝原に政治的・経済的な強い影響を及ぼす暗黒メガコーポのCEO。本社から視察に来ており、市内の最高級ホテルに宿泊している。
普段は「コジマ」という偽名を名乗る。彼自身のモータルネームは明らかでない。

【マスターとしての願い】
ニンジャ千年王国の樹立。

【方針】
まずはアーチャーの狙撃による強敵の排除。アーチャーを活用するため、彼が生きているうちは、なるべく非道は行わない。
襲撃されたら自分を護らせる。いずれは主催者にも挑むため、手駒を集め策を練る。権力やカネ、報道機関や情報機器もフル活用する。

【把握手段】
忍殺第二部「シー・ノー・イーヴル・ニンジャ」及び「デス・フロム・アバブ・セキバハラ」。
物理書籍では第二部第1巻「ザイバツ強襲!」と「ゲイシャ危機一髪!」に収録。ドラマCDもある。

【参戦時期】
死亡直前。地面にソウルジェムが落ちていたものと思われる。サイオー・ホースな。


499 : ◆Pw26BhHaeg :2018/04/28(土) 15:46:13 neZ9eyLE0
投下終了です。


500 : ◆dt6u.08amg :2018/04/28(土) 20:21:42 0XIyQmWA0
投下します


501 : 喫茶サンクチュアリ ◆dt6u.08amg :2018/04/28(土) 20:22:35 0XIyQmWA0
見滝原の一角にレトロな喫茶店が佇んでいる。
知る人ぞ知ると評判のその店は、とある理由から客層がひどく偏っていると評判だった。

店長は長身美形の外国人。日本語は堪能だが、接客態度は唯我独尊の一言で、客に媚びるという発想そのものが存在していないとしか思えない。
それでも一部の女性客からの人気は高く、傲岸不遜に扱われたいという層の客足が絶えない。

店員は黒髪長髪の女子高生。見た目は可愛らしいが、言動の端々に嗜虐性が滲み出ていて、息をするように慇懃無礼な罵倒が飛び出してくる。
それでも一部の男性客からの人気は高く、豚のように扱われたいという層の客足が絶えない。

そこは知る人ぞ知るレトロで小さな喫茶店、喫茶Sanctuary(サンクチュアリ)――
誰が呼んだかドS喫茶――








「――というのが、このお店の評判らしいんですけど」

営業中、桜ノ宮苺香は店長役を務める自身のサーヴァントにひそひそとささやきかけ、抗議混じりの視線を向けた。
まるで侮蔑と嫌悪を剥き出しにしたかのような目付きだが、本人にそんなつもりは全くない。
本当は真面目で礼儀正しく優しい性格なのだが、何かと目付きが悪くなって見下しているような表情になってしまう癖があるだけである。

「ほう」

桜ノ宮苺香が図らずも召喚してしまったサーヴァント・アサシンは、紅茶を淹れる準備を進めながら、意外だと言わんばかりに視線を下げた。
苺香とアサシンの身長差は三十センチ以上もあり、ただ会話するだけでも見上げ見下ろす位置関係になってしまう。

腰まで届く豊かな長髪。一九〇センチ一歩手前の長身。バーテンダー風の制服越しでも分かる、しなやかに鍛え抜かれた肉体。
普通の一般人だとは思えない見た目だが、かといってサーヴァントとかいう人外の存在にも見えない。
アサシン本人は気配遮断スキルの効果が出ているんだろうと言っていたが、苺香にはいまいちピンとこなかった。

「俺はともかく、マスターに関しては的確な評価だと思ったが?」
「マスターさんの方こそー……」

お互いにマスターと呼び合う奇妙な応答だが、もちろんそれぞれの言う『マスター』の意味合いは別物だ。
苺香からアサシンへの呼びかけは喫茶店のマスターという意味。
アサシンから苺香への呼びかけはサーヴァントの契約者としてのマスターの意味。

苺香自身もややこしいとは思っている。だが『店長さん』という呼び方は使いたくなかった。
その呼称は、苺香にとって喫茶店スティーレの店長であるディーノを呼ぶときの言葉だ。
ちなみに、拠点として喫茶サンクチュアリを使うと決めた当日、苺香はそのことをアサシンに伝えたのだが、アサシンはびっくりするくらいにあっさりとそれを了承した。

「現に今日の客もお前目当てだろう。そら、持っていけ」

アサシンは適度に蒸らした紅茶をカップに注ぎ、トレーに乗せて苺香に押し付けた。
文句は言い足りないが仕事が優先。苺香は常連客のテーブルまで紅茶を持っていき、いつものように接客をした。

「いつもありがとうございます。お暇なんですね」

そして本人としては自然に笑ったつもりの、見下しているとしか思えない笑顔。
発言内容すら無意識のチョイスという天然ぶりに、常連客の満足度もうなぎ登りのようだ。

「な?」
「な? じゃないです! スティーレみたいにわざとやってないはずなんですけど……」

苺香は思わず頭を抱えた。
元の世界で苺香が働いていた喫茶店スティーレでは、店の方針として特定のキャラ付けを演じて接客することになっていた。
そして苺香の担当は「ドS」キャラ。意識せずとも浮かぶサディスティックな笑顔と、時たま飛び出す天然の嗜虐的発言でなかなかの人気を博していた。

一方、こちらの世界で拠点としている喫茶サンクチュアリは、そのような変わり種の営業方針を採用していない。
なので苺香としては、あくまで自然体の接客をしているつもりだったのだが、何故か客層の半分がスティーレのときと変わらなかった。
しかも残りの半分は女性客なので、男性客のほとんど全てがそういう方向性ということになる。

そうこうしている間に、扉のベルがカランカランと音を立てた。
入ってきたのは女性客の一団。どうやら今度は店長目当ての客のようだ。


502 : 喫茶サンクチュアリ ◆dt6u.08amg :2018/04/28(土) 20:23:04 0XIyQmWA0
「来たか。適当に座っていろ。要求があればそこの小娘に言え」

客を客とも思わない対応に黄色い声が上がる。
苺香には全く理解が及ばなかったが、世の中にはこういう対応への需要もあるらしい。
スティーレの店長のディーノや同僚達が言うところの『俺様系』というものだろうか。
しかも完全に素の対応だというのが恐ろしい。それを指摘すると「人のことを言えた口か」と言われるので黙っているが。

「ええと、次のお客さんは……」

そのとき、店の隅の席で椅子が大きな音を立てて倒れた。
客同士のトラブル、それも男性客が女性客に無理に言い寄っているようだ。
ほとんど全てが苺香目当ての男性客のうち、それと知らずに入ってきた新規客を除いたごく一部の例外――それがこの手の迷惑客だ。

「マ、マスターさん……!」

苺香は自分の手には余ると判断してカウンターの方に振り返ったが、そこにアサシンの姿はなかった。

「その手の行為に及びたいなら、他所を当たることだ」

迷惑客の体が宙に浮かぶ。いつの間にか隣に移動していたアサシンが、大の大人を片手で軽々と持ち上げていた。
そして、忍び込んだ野良猫の首を掴んで追い出すように、男を腕一本の力だけで店の外に放り出してしまった。

アサシンの人間離れした腕力を見るのはこれが初めてじゃない。
以前、サーヴァントになったからそんなに力持ちなのかと聞いてみたことがある。
けれど、答えは|否《ノー》。人間として生きていた頃から、アサシンは人間離れしていたのだという。








 夕方の閉店後、苺香が店内の掃除を終えたところで、バーテンダー服姿のアサシンが不意に声をかけてきた。

「そろそろ覚悟は決まったか?」
「……っ!」

 喉に言葉が詰まる。アサシンは召喚されたその日にも同じ問いを投げかけてきて、そして苺香はそれに答えることができなかった。

 覚悟。それが意味するところは一つ。聖杯戦争の参加者として戦いに身を投じる覚悟のことだ。

「お前に戦う覚悟がないのなら、俺は戦わん。襲ってくる輩を返り討ちにする程度のことはしてやるが、それ以上は期待するな」

 もちろん、ごく普通の少女に過ぎない苺香が首を縦に振れるはずなどなかったが、アサシンは冷たくこう言い放つだけだった。あのときも、そして今も。

 そもそもソウルジェムを拾ったことだって偶然なのだ。こんなことになると分かっていたら拾わなかったに決まっている。

「ご、ごめんなさい……」
「謝罪の必要などない。これはお前の問題だ。サーヴァントという名の武器を振るう決意を固めるか、武器を置いて諦めるか。ただそれだけだ」

 アサシンの言葉に失望の色はない。苺香が未だにためらうのも想定内といった態度だ。

 そしてアサシンは、召喚された日と同じように、強い自信に裏打ちされた不敵な笑みを浮かべるのだった。

「お前が戦うというのなら、たとえ神が相手だろうと戦い抜いてやろう。この双子座(ジェミニ)のアスプロスがな!」


503 : 喫茶サンクチュアリ ◆dt6u.08amg :2018/04/28(土) 20:23:35 0XIyQmWA0
【CLASS】アサシン
【真名】アスプロス
【出典】聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話
【性別】男
【身長・体重】188cm・83kg
【属性】混沌・中庸

【パラメータ】筋力B 耐久C 敏捷A+ 魔力B 幸運C 宝具A++ (通常時)
【パラメータ】筋力A 耐久B 敏捷A++ 魔力A 幸運B 宝具A++ (宝具装備)

【クラス別スキル】
気配遮断:C-
 サーヴァントとしての気配を断つ。
 戦闘態勢に入るか、宝具『黄金聖衣』を装備した時点で効果が失われる。
 本人の気質に合わないため、戦闘で活用することはあまりない。

【固有スキル】
幻朧魔皇拳:A+
 対象の脳を直接支配する魔拳。
 洗脳や催眠術、幻覚など幅広い効果を発揮する。
 受肉しているのであれば神霊にすら有効。

戦闘続行:C++
 往生際の悪さ。
 心臓を貫かれてもなお意識を保ち、最期の幻朧魔皇拳を自らに放った。
 その執念は冥界に墜ちても消えることなく、冥王との取引による蘇生を勝ち取るに至った。

心眼(真):A
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
 逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

己のために:A
 強靭極まる自我。善でも悪でもなく、ただ「我」があるのみ。
 宿命的な戦いの末に至った、あるいは取り戻した精神性。
 サーヴァントとしては精神干渉に対する強い耐性として機能する。

【宝具】
『黄金聖衣(ゴールドクロス)』
ランク:A 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
 女神アテナに仕える戦士の中でも最上位の十二人に与えられる鎧。
 黄道十二星座を象徴し、神話の時代から連綿と太陽の光を浴び続けたことで、膨大な光とエネルギーが蓄積されている。
 装着者の小宇宙を高める効果があり、着用中は全パラメータが1ランクアップする。
 防具としての強度も凄まじく、完全破壊には高位の神霊クラスの威力が必要。

『異界次元(アナザーディメンション)』
ランク:A+ 種別:対次元宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:50人
 次元操作能力により標的を異次元空間に転送する。
 本来は攻撃技だが、亜空間を経由しての移動方法としても利用できる。
 また、応用次第で相手の時空間干渉に対抗することも可能。
 これによって、アサシンは刻の神による時間停止を無効化した。

『銀河爆砕(ギャラクシアンエクスプロージョン)』
ランク:A++ 種別:対人・対軍宝具 レンジ:2〜15 最大捕捉:100人
 双子座の聖闘士の奥義。銀河の星々をも砕くと謳われる。
 絶大な破壊力を誇るアサシン最大最強の攻撃手段。
 同名の奥義を歴代の双子座の黄金聖闘士が習得しており、形式や構えには多少の差異が存在する。
 アサシンも両手での発動と片手での発動を自在に使い分けられる。

【weapon】
聖闘士は原則的に武器を使用しない。

【人物背景】
THE LOST CANVASにおける双子座の黄金聖闘士。
ストーリー中の活躍は各種wikiが詳しいのでそちらを参照。
ドヤ顔が似合う聖闘士ぶっちぎりナンバーワン。
本編含む全ての関連作品で双子座は最強格だが、やりたい放題っぷりでは間違いなく歴代トップ。
時間神カイロスの時間停止を無効化した際に、1700年代半ばの舞台設定なのに特殊相対性理論や光速度不変の原理を持ち出したのはその好例。
聖闘士星矢シリーズのファンなら「『神の道』を自力で開いたうえ、そこに敵を押し込んで消滅させる攻撃手段に使った」というのもわかりやすいか。

アサシンのクラスで召喚されたため筋力と耐久がやや低下している。
教皇暗殺未遂の件と、殆ど誰にも知られることなく神殺しに準ずる大戦果を挙げたことから該当するものとした。
黄金聖衣以外の宝具の漢字表記は、別作者の作品における双子座のサガの技名からの流用。

【聖杯にかける願い】
現時点では不明。マスターの戦う意志に任せている。




【マスター名】 桜ノ宮苺香
【出展】ブレンド・S
【性別】女

【能力・技能】
特になし。基本的にただの女子高生。

【人物背景】
16歳。身長156cm。真面目で礼儀正しい性格だが、無意識に目付きが悪くなってしまったり、天然でドSな発言をしてしまうことから、周囲から誤解されやすい。
そのせいでバイトの面接に連戦連敗していたところ、黒髪ぱっつんのビジュアルと天然ドSな性分を店長に一目惚れされ、喫茶店スティーレで働くことになる。

実家は純和風の豪邸で、着物が家族の普段着なほどだが、そんな家庭で育ったせいで幼くして和風に飽き、海外に対して強い憧れを抱いている。
そもそもバイト先を探していたのも海外留学の費用を貯めるため。

【聖杯への願い】
なし(そもそも戦う覚悟すら固まっていない)


504 : ◆dt6u.08amg :2018/04/28(土) 20:24:53 0XIyQmWA0
投下終了です

Q.何でこの組み合わせ?
A.LC外伝の担当回の冒頭で優雅に紅茶淹れてたのが面白すぎたのが悪い
 あとスティーレの店長のディーノと身長設定が同じだったのが悪い


505 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/01(火) 22:41:21 1yQFDpYM0
皆さま投下お疲れ様です。感想を投下させていただきます。


『いいよ、一緒にいてやるよ』
 魔女化一歩手前の参戦という時期が既に不穏さを醸しだしておりますが、意味深な魔女が皮肉にもサーヴァントとは
 一体このさやかちゃんの場合はどうなってしまうのでしょうか。彼女の中で迷いは生じていますが、それでもいつも通り
 さやからしさが垣間見える場面があり、どこか希望を見出してしまいます。少なくとも、聖杯戦争の参加が確認されて
 ている眼鏡の少女の存在に彼女は果たしてどう反応するのか楽しみですね。
 投下していただきありがとうございます。


The Boy and The Blade
 普通でいて普通じゃあない少年たち。衛宮士郎はもう固定されたかのような衛宮士郎っぷりですが、それは彼らしさで
 なく機械的なものだと十分知れている話ですね。ただ、彼のセイバー・九太/蓮はまだ異常性を理解しておらず。
 しかしながら、士郎の正義に応じて共に闘う事を決意してくれる姿勢は、大変輝かしいものです。この絶望と邪悪に
 満ち溢れた聖杯戦争に光を差し込んでくれるのではと期待してしまいます。
 投下していただきありがとうございます。


佐倉杏子&ライダー
 これはオラオラ殴る聖女ですね、間違いありません(確信)偽りとはいえ本来亡き家族が存在するだけでも
 杏子にとっては精神にブレを与えるには十分過ぎるでしょう。何より、本物の『救世主』という存在を知ってしまい
 救世主の偉大さを感じたのは考えさせる事態に違いありません。そして救世主だからこそ、彼女と対峙し合える
 悪の救世主との巡り合いは必然になるのではないでしょうか。
 投下していただきありがとうございます。


はじめに音楽、次に言葉
 友人の復讐を止めるべく、復讐者を召喚してしまったジリアンですが、実際どうしようもない復讐劇が始まってしまう
 事を思えば、彼女を応援したくなるのです。果たして彼女の思いが聖杯戦争においてどこまで通用するのかが鍵でしょうか
 幸いにもアヴェンジャーの事をジリアンが理解し、またどこかでアヴェンジャーもジリアンとノエルの友情に関して
 思うところがあります。今後の展開が楽しみである主従でした。
 投下していただきありがとうございます。


引きっぱなしのTrigger
 真実に向かおうとする意志の重要さを体現したかのような主従が、果たしてこの聖杯戦争においてもそれを貫き通せるのか。
 魔女化という絶望、途方もない悪に屈服せざるおえない絶望。彼らの持つ力とは、決して悪を滅ぼしえる絶大なものではなく
 それに抗える可能性を見いだせる力なのですから、当然彼らだけでは真実に到達することすら叶わないでしょう。
 彼らが産み出す意志と行動を共にするものたちが、きっと邪悪を滅ぼす筈です。
 投下していただきありがとうございます。


魔【まほうしょうじょと】
 頭部繋がりで絶対悪が召喚されるって、もうどうしようもないマミさん……しかも、その悪意に対してあの白い獣は
 なんて事を言うのでしょう。我々から聞けば単なる皮肉にしか聞こえませんね。参戦時期やサーヴァントの要因も
 相まって、マミさんのソウルジェムの穢れが不安で仕方ありません。絶対的な悪から逃れる術、悪に手を差し伸べてくれる
 おとぎ話のような都合いい『救世主』がいれば話は別ですが……
 投下していただきありがとうございます。


You only Die Once
 部下がみんなメガネのところで思わず笑いが込み上げてしまいました。笑顔も眼鏡も絶えない職場だったのでしょうか。
 薩人マシーンらしくサッパリ戦に関して最善を選んでいる姿は、彼の魔王も王に相応しいと評するだけはあります。
 とはいえ戦以外の、特に戦とは無縁になった現代である見滝原においては、豊久も動きにくい状況でしょう。その
 辺りをニコルが理解してやって、上手く支えてくれる事を願います。
 投下していただきありがとうございます。


Umbra Nigra
 記憶の操作は基本!と言わんばかりですが、状況を考慮するに不安な要素が多々ありますね。悲しいかな平和で平凡な
 日常こそが少年にとっての救いで、それが表面上続くだけでも記憶を再び取り戻すには時間がかかりそうです。
 例え記憶が戻ったところでアルティミシアと友好関係を築ける訳ではありませんし。一方でマスターの少年の方も
 それなりの力を備えている為、何らかの切っ掛けで覚醒することを祈ります。
 投下していただきありがとうございます。


506 : ◆dt6u.08amg :2018/05/02(水) 22:52:37 Yc5kpj5E0
投下します


507 : ◆dt6u.08amg :2018/05/02(水) 22:55:57 Yc5kpj5E0
十九世紀英国のブルジョワジーを思わせる薄暗い食堂で、二人の男が優雅なディナーを囲んでいる。

長い食卓の上座には、白いスーツに身を包み、金髪で眼鏡を掛けた小太りのゲルマン系の男。
その名はモンティナ・マックス。人は彼を少佐と呼ぶ。
彼こそが聖杯戦争におけるマスターであり、今宵のディナーの賓客(ゲスト)である。

反対側の席には、同じく白いスーツに身を包み、長い黒髪で異様に長い帽子を被った長身の男。
その名はトート=シャッテン。人は彼を死体卿と呼ぶ。
彼こそが聖杯戦争におけるサーヴァントであり、今宵のディナーの主催(ホスト)である。

傍に侍るはメイド型の人造人間(フランケンシュタイン)が四体。
おおよその見た目は人間と変わりないが、その実態は動く死体。
両方の側頭部に埋め込まれた一対の電極には『死』の一文字の意匠が大きく施され、彼女達が死体卿の被造物であることを表していた。

「キャスター。私が預けた社員達はしっかり仕上がっているかな?」

ひとしきりの食事を終えた少佐が、メイド型人造人間に注がせたワインを傾けながら口を開いた。
見滝原において、彼は記憶を取り戻すまでの間、外資系警備会社の幹部という立場に収まっていた。
その会社は今も隠れ蓑として利用しており、社員というのは文字通りの意味である。

「もちろんだとも、我がマスター。みな素晴らしい人造人間に仕上がっている。平時は人間に紛れて潜伏し、合図一つで本性を現す。貴殿の要望通りのゲリラ戦仕様だ」
「流石だ。その様子だと、他の戦力も順調に拡充できていそうだな」
「当然。人間への偽装を考慮しない戦闘タイプも増産している。単体ではサーヴァントに敵うものではないが、数を揃えれば話は別。キャスターとしての強みを存分に活かさせてもらう」

この聖杯戦争には一定の予選期間が設けられている。
予選と言っても戦闘が繰り広げられることはなく、全てのマスターとサーヴァントが出揃うまでの待機時間と表現した方が正確だ。

彼らはこの期間を、キャスターのクラスのための準備期間と認識していた。

通常、キャスターのクラスは聖杯戦争において不利な立場にあるとされている。
直接的な魔術は対魔力に阻まれやすく、召喚術やゴーレムの類は純粋な性能差でサーヴァントに蹴散らされる。
これを補うためにはクラススキルの陣地作成と道具作成を活用することが肝要である。
裏を返せば、準備を妨害されない期間が長ければ長いほど、キャスターは不利を埋めて優位に立っていくことになる。

「君を召喚したときは、呪文ではなく死体を紡ぐキャスターというものに少々驚かされたが、蓋を開けてみれば随分とキャスターらしい立ち回りになったものじゃないか」
「聞いた話では、いわゆるフランケンシュタインの怪物をフレッシュゴーレムの一種とみなす説もあるそうだ。ならば人造人間の創造主たる私は、紛れもなくゴーレムマスターということ。キャスターらしいのは当然だね」

口振りこそ冗談めかしていたが、死体卿の発言は真実を射抜いていた。
彼がキャスターとして召喚されたのは、人造人間(フランケンシュタイン)の創造主がゴーレムマスターの一種として定義されうるからに他ならない。


508 : Supply and Demand ◆dt6u.08amg :2018/05/02(水) 22:58:12 Yc5kpj5E0
「それにしてもだ、我がマスターよ。この舞台はなかなかに恵まれた環境だとは思わないか」
「ふむ?」
「早くも魂食いに走る愚鈍なサーヴァントの『食べ残し』がそこら中で手に入るうえ、街中にくまなく張り巡らされた送電網から電力を失敬すれば、人造人間の起動に必要な1.21ジゴワットの電力も貯めやすい。我が工房の自家発電装置と組み合わせれば尚更だ」

死体卿の『生前』と呼べる時代は十九世紀末。
エジソンの石炭火力発電所の完成から十年程しか経過しておらず、ニコラ・テスラの理論に基づいた水力発電所の完成はごく最近。
1.21ジゴワットの電力の供給源としては、発電機が生んだ電力よりも自然の雷を引き込んで利用する方が一般的であった。

「電力か。確かに君の工房は、魔術師の穴蔵というよりは近代的な工場、あるいは手術室に近い。しかし火葬が一般的な国柄というのはマイナスだな」
「その通りだ。実に惜しい。私は焼死体も愛好しているが、さすがに燃え尽きた骨からは人造人間の創造(つく)りようがない」

そう言って、死体卿は心底残念そうに肩をすくめた。

「しかし不幸中の幸いだったのは、火葬までに最低一晩の安置期間を挟む風習があることだ。死体をフェイクとすり替える猶予がゼロでないのはありがたい」
「なに、戦闘が激化すれば否応なしに死体は増える。戦えば戦うほど、死ねば死ぬほど我々の戦力は拡充していくわけだ。想像するだけで面白いじゃないか」

そう言って、少佐は口の端を釣り上げて笑みを浮かべた。
彼らの発言は全てが本気だ。大袈裟なことなど何一つ口にしていない。

少佐は戦争狂である。戦争という手段のためには目的を選ばないとまで言い切るほどの。
そして聖杯戦争においても当然それを期待している。
マスターとしての彼の目的は再びの戦争を引き起こすこと。
かつては吸血鬼の真祖を打倒することも目指していたが、今の彼はそれを果たし終えた後であり、聖杯に託す願いではない。

死体卿は死体愛好家である。人間が実現しうるあらゆる死体を素晴らしいと言い切るほどの。
そして聖杯戦争においても当然それを期待している。
サーヴァントとしての彼の目的は死体の楽園を作ること。
十分な量の死体さえ手に入れば自力で成し遂げうる理想であり、故に彼は聖杯の入手をさほど重要視していない。

「マスターよ。我らの利害は一致している。いや、職人が削り上げた歯車のように噛み合っていると言うべきかな」
「ああ、その通り。私が殺し、君が創る。戦闘と死体は未来永劫不可分の運命共同体だ。聖杯戦争を勝ち残るため、大いに殺し大いに創ろう」
「事が済めば、聖杯は約束通り貴殿に差し上げる。そして貴殿の戦争で生じた幾多の死体は、我が楽園の礎として……」

――そう、噛み合っていた。あまりにもおぞましい異形の歯車同士が、奇跡的な確率で。

「そうだ、キャスター。一つ頼みがあるのだが、私が直接指揮する人造人間の部隊を編成してはくれないか」
「構わないとも。何なら創造済みの人造人間から希望に沿うモノを持っていってくれてもいい。部隊編成の経験では貴殿に一日の長があるだろう」
「ありがたい。知っての通り、私個人の戦闘能力は高が知れていてね」

誰もその存在を知らない地下工房の一室で、悪魔の如き企みが刻一刻と進められていた。
戦争狂と死体愛好家。死体を作る者と死体から創る者。史上最悪の需要と供給。
戦争において不可逆の消費であったはずの『死』が新たな兵力を生み出す資源となるのなら、それはまさしく地獄の具現。

少佐はワインを飲み干し、万感の思いを込めて次の一言を口にした。

「ところで、デザートはまだかな」


509 : Supply and Demand ◆dt6u.08amg :2018/05/02(水) 23:00:43 Yc5kpj5E0
【CLASS】キャスター
【真名】死体卿 トート=シャッテン
【出典】エンバーミング
【性別】男
【属性】混沌・悪

【パラメータ】筋力C〜A+ 耐久C〜A+ 敏捷C〜A+ 魔力B 幸運D 宝具EX

【クラス別スキル】
陣地作成:B
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
 人造人間(フランケンシュタイン)を創造するための工房の作成が可能。

道具作成:C
 魔力を帯びた器具を作成できる。
 キャスターの場合、人造人間の創造に関わる物品とその応用に限られる。

【固有スキル】
創造(人造人間):A
 人造人間を創造する知識と技量を持つことを表す。
 同ランクの外科手術と人体理解の効果も兼ね備える複合スキル。
 ただしキャスターは基本的に生者を治療しようとはしない。

観察眼:C+
 素材として有用な死体を選り抜く。また、死体に施された高度な偽装を看破する。
 キャスターは死体の目利きに極めて優れ、該当分野ではランクAを上回る。
 その他、敵の能力とその欠点を素早く理解することで戦闘を有利に進められる。

人造人間:A++
 死体を材料に創造された存在。調整と改造を続ける限り何百年でも活動できる。
 生前の人間性がそのまま残ることはなく、人格か記憶のどちらかあるいは両方が必ず変質する。
 起動用の一対の電極が弱点であり、これを破壊されると修復不可能となる。
 サーヴァントとして召喚された場合、霊核の位置は頭部と心臓ではなく脳と電極に変更される。

カリスマ:D-
 大集団を率いるには申し分ないカリスマ性。
 ただしキャスターのそれは人造人間または各種の"動く死体(リビングデッド)"にのみ効果を発揮する。

【宝具】
『究極を超えた究極(フランケンシュタイン・アハト)』
ランク:EX 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
 再生機能特化型人造人間としての特化機能。万能細胞で構成された肉体そのもの。
 細切れの肉片からも即座に再生可能で、脳と電極を頭部以外に移動させることすら容易。
 更に万能細胞を変化させることで、構造を把握しているあらゆる生体組織を再現可能。
 これにより、キャスターは他の機能特化型の能力を自由に行使することができる。

『人造細菌(バクテリア・フランケン)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1000人
 キャスターの体内にセットされた、世界最小の対人大量殺戮兵器。
 接触した人間に対して「感染」「致死」「防腐」の三段処置を一瞬で行う。
 発動は文字通り一瞬。電気信号による起動命令が下った瞬間、触れていた人間は即死する。
 触れてさえいなければ付近にいても影響を受けないが、『死溜まり』を介して広域に拡散するため回避は困難。


510 : Supply and Demand ◆dt6u.08amg :2018/05/02(水) 23:01:00 Yc5kpj5E0
【weapon】
『死溜まり』
キャスターの肉体からあふれた万能細胞の塊。泥のような外観をしている。
本体同様にあらゆる生体組織を再現する能力があり、更に他の細胞を養分として吸収できる。
再現の対象はキャスター自身も含み、全く同じ能力と人格を持つダミーすら生成可能。
肉体に収まりきらなくなった万能細胞の塊なので、れっきとした宝具の一部。

原作においては、細切れからの全身再生の余りとして、明らかに人体の体積を越える量が出現。
更に濁流のように増殖し、密集した五、六百人の人間の足元を浸して『人造細菌』によって殺害。
その死体を養分として、一瞬のうちに数十メートルかそれ以上の規模の醜悪な怪物に変貌した。

『骨格機能特化』
究極の八体の一体目(アイン)、エクゾスケルトンの特化機能。
骨の形状を変えたり鋼鉄以上の硬度にすることができ、キャスターは拳に纏わせたり、拳から剣のように突き出させたりして戦闘に活用した。

『肺機能特化』
究極の八体の二体目(ツヴァイ)、リッパー=ホッパーの特化機能。
肺で生み出した圧縮空気を全身に送り、手足からの噴射による飛行や、手から刃物のように噴出しての切断、破壊的な竜巻の生成、水平に竜巻を放つことによる攻撃などを可能とする。
キャスターは戦闘において上記の能力をフル活用した。

『消化機能特化』
究極の八体の三体目(ドライ)、スカベンジャー=ベービの特化機能。
消化器官に寄生蟲型人造人間の擬似卵を大量に内包し、必要に応じた種類の巨大な寄生蟲を吐き出す。また、胃酸は石材を瞬く間に溶かすほどの強酸性。
キャスターは口から吐くのではなく、死溜まりを寄生蟲に変化させる形で使用した。

『筋力機能特化』
究極の八体の四体目(フィーア)、ムスケル=ウンゲホイヤーの特化機能。
筋繊維の自由な変形と無尽蔵の生成が可能で、人間的な形状にすら囚われない。
キャスターは超強化した筋繊維を作り出し、骨格機能特化と併用して打撃力を飛躍的に向上させた。
変形と無尽蔵の生成は、自身の特化機能で実現できるためか使用しなかった。

『感覚機能特化』
究極の八体の五体目(フュンフ)、タイガーリリィ=コフィンの特化機能。
五感全てが大幅に強化されているが、とりわけ眼球に絡む機能が多彩。
熱感視覚への切り替えや、カメラ・マイク・スピーカー・プロジェクター機能を持つ眼球型端末の生成、「光彩点滅催眠(フラッシュポイントヒュプノス)」による精神干渉などの搦め手に加え、攻撃手段として眼球に集中させた高圧電流を高エネルギーの光線として放つ「光速視線(レイ・アイ)」も備える。

キャスターは動体視力の強化と肺機能特化の高速機動を組み合わせることで超高速戦闘を実現し、更に自身の眼球や胸部に生成した巨大な眼球から放つ「光速視線」を使用した。

【人物背景】
人造人間研究の聖地「ポーラールート」から離反した人造人間の集団「稲妻の兄弟(ブリッツ=ブルーダー)」の統率。
世界一の死体愛好家(ネクロフィリア)を自称し、死体の楽園を生み出すために暗躍する。
自身も人造人間であると同時に人造人間を創造する技術を持ち、創造の拠点を放棄した直後でありながら「五百体程度なら一年もあれば作れる」と豪語するほど。

人間や人間社会と関わりたくないと語っているが、死体の安定供給のため大英帝国と交渉による取引を試み、その過程では人間相手でも紳士的な態度で接するなど、何かと知的な立ち振舞いが印象に残るタイプ。
敵対する人造人間であってもスカウトしようとするシーンが多く、優れた能力を持つ人間であれば生きたまま味方に引き入れることも許容する。
ただし、全面拒否された場合は一旦破壊したうえでの再創造にシフトするほか、全ての人造人間の破壊を目的とする主人公ヒューリー=フラットライナーだけは全面的に敵視している。

本編においても、列強諸国に兵器として人造人間を提供し、その戦争で生じた大量の死体を獲得するプランを考案していた。

生前は自己嫌悪と人間不信の塊のような人間だった。
自己嫌悪は人間嫌いに転じ、自分を引き取った家族を皆殺しにして逮捕されるも、創造の才能を買われて大創造主Dr.リヒターの助手となる。
その後、リヒターが隠していた秘密を目利きの技術で暴き、口止めの対価として自身の人造人間化を要求。八体目の機能特化型人造人間となる。
なお、自分の容貌も酷く嫌悪していたことから、本来の肉体は脳髄のみを使用し、肉体は別人のものを利用している。

【聖杯にかける願い】
聖杯はマスターに譲る。
マスターが引き起こす大戦争で生まれた死体を確保し、人造人間の楽園を生み出す。


511 : Supply and Demand ◆dt6u.08amg :2018/05/02(水) 23:01:38 Yc5kpj5E0
【マスター名】 少佐
【出展】HELLSING
【性別】男

【能力・技能】
基本的に指揮能力や組織運営能力全振り。
戦闘能力は皆無で拳銃すらろくに当てられない。

全身が機械に置き換えられているため、生体に作用する類の能力は効かない可能性がある。

【人物背景】
ナチス残党組織「ミレニアム」のリーダー。総統代行、大隊指揮官などの肩書でも呼ばれる。
戦時中から研究していた吸血鬼化の技術を完成させ、吸血鬼化させた兵士1000人から成る「最後の大隊(ラスト・バタリオン)」を率いて英国に宣戦布告をした。
根っからの戦争狂であり、兵士達を前に行った「私は戦争が好きだ」から始まる演説はあまりにも有名。

「人間とは意思の生き物である」という信念を持ち、たとえどんな姿になっても確固たる意思を持っていれば人間であると考える。
吸血を介して他者の意思を取り込み融合する吸血鬼という存在を嫌い、真祖たるアーカードの打倒を目的として英国に侵攻した。
そのため部下達は吸血鬼化させてiいるものの、自分は吸血鬼化を拒み全身を機械化することで生きながらえている。

【聖杯にかける願い】
大戦争を引き起こす。
アーカード打倒以降の時間軸のため、それを願うことはない。
(アーカードは後に復活するが、現時点では知る由もない)

【方針】
人造人間の軍勢を率いて戦略的に『戦争』を勝ち抜く。


512 : ◆dt6u.08amg :2018/05/02(水) 23:02:04 Yc5kpj5E0
投下終了です


513 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/02(水) 23:27:00 deVhrhtc0
皆さま投下お疲れ様です。
追加OP投下&重要なお知らせをします。まずは追加OPから


514 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/02(水) 23:27:22 deVhrhtc0



「ああ……どうしよう………」


金髪の女子高校生が『制限時間まで完食すれば無料(タダ)!』とアオリに出しているラーメンを5杯ほど平らげて
店主から「当分ウチには来ないでくれ」と宣告される数分前。彼女は机に突っ伏していた。
決して満腹感による不調じゃあなく。
聖杯戦争の知識を得た。
否、本来あるべき自分の記憶を取り戻したことで、彼女は途方に暮れていた。
どうしようもない感情を解消するべく、彼女はメガ盛りラーメンに挑戦していたものの。
食欲が湧かない(これでも)と実感していた。


「早く帰らないと―――殺される」


聖杯戦争で命を落とすよりも、聖杯戦争に巻き込まれ元居る世界から離れた事に焦りを感じている。
そんな彼女の名は『桂木弥子』。
アチラ側じゃ女子高生名探偵と肩書きが定着しつつある人物。
だが、弥子自身に推理力は皆無なのである。
謎解きの方は、謎を喰らう魔人が主に担当しており、彼女はただのペテンな囮でしかない。
サド魔人に一体どんな事をされてしまうのか。想像するだけで恐怖だ。


「テレビを見てたら絶対思い出せたはずなのに……カキフライ200個食べるまで気付かなかったなんて」


『マスターは面白い奴だよなあ』


「ううん。面白くなってるつもりはないよ」


溜息しながら否定する弥子は、常に青ざめていた。念話で声をかけてくる弥子のサーヴァント・アーチャー。
今は霊体化の状態で姿は見えないが、何と言うか……魔女っ子。
少女なのだけど、男っぽい口調で典型的な黒帽子に白エプロンと黒スカートを着こなす。
彼女曰く『普通の魔法使い』。真名は――霧雨魔理沙と言った。

……が。
あくまで『普通』というのは彼女の世界観における『普通』でしかなく。
魔理沙のいる世界には、妖精から妖怪、吸血鬼、幽霊、あげくに神様まで何でもござれ。
ウワサに聞く時間泥棒に関しても「時を止める程度の奴もいたから、どうにかなると思うぜ」と平然に。
変にドヤって自慢げでも、不自然に警戒する様子でもない。
魔理沙にとっては『可笑しくも特別でも不思議なんかじゃあない』程度に、普通な態度で答えた。
住む世界が違う――それを文字通り体現したかのような存在であった。

ふと、例の宝石を眺める弥子。
ソウルジェムと呼称されるソレがおとぎ話に登場する『聖杯』に変貌する代物。
何でも願いが叶う……


515 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/02(水) 23:27:43 deVhrhtc0


聖杯戦争は謎に満ち溢れていた。


会計を済ませて、もう残金がヤバイとぼんやり思いながら弥子は帰路につく。
時刻は夕日が沈み切ろうとする頃合い。
霊体化している状態だが、アーチャーも一緒に来ているのかな。と不安に感じながらバス停に向かう。

そもそも何故、聖杯戦争をやろうとしているのか?
主催者側に利益がなければ、こんな大それた舞台だって用意しないだろう。

どうして自分が聖杯戦争のマスターに選ばれたのか?
確かに『普通』の領域から踏み出しているから、それが理由だと言われれば納得してしまう。

弥子がバス停にあるベンチに座り、携帯でニュースに目を通す。
意気揚々と楽しんでいる姿が想像できる『怪盗』と
心ではなく脳を揺らし感動を与える『歌姫』と。
彼らに対して弥子は沈黙していた。―――あの魔人はいないのだ。解決するのは自分の力だけ……


「どうしよう」


悩んでいた。
聖杯戦争に対する方針じゃあない。彼女は聖杯の獲得ではない、聖杯戦争の謎に挑もうと考えていた。
勿論、彼女は推理など出来ないに等しいが。
それでも聖杯戦争にある『謎』を解き明かさなければ、きっと後悔すると確信していた。
故に――どうしたらいいのか途方に暮れていた。
聖杯戦争の開幕を告げる主催者の言葉を聞けばヒントが得られるのだろうか。


「あの、どうかされましたか?」


弥子の呟きを聞いていたのか、通りかかった女性が一人声をかけてきた。
我に返って少女は「大したこと無いです」と答える。


「個人的に解決しなくちゃいけないっていうか……自分自身の問題みたいなものなんで」


「そうですか……」


女性は納得したかのような反応したものの。しばしの間を置いてから


「でも、誰かにお話した方がいいと思いますよ。独りで抱え込むよりも、ずっと良い筈です」


「うーん。居ればいいんですけど」


516 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/02(水) 23:28:14 deVhrhtc0
せせ笑って弥子は誤魔化す。
無理だし、無駄だし。
聖杯戦争の話なんて一体誰に相談すればいいのか。相方であるアーチャー・魔理沙を除いて、だ。
テスト勉強を付き合ってくれる友人のような、気軽な存在は見滝原に居ない。
少なくとも現時点では……果たしてマスターの中に、そんな人達がいるのだろうか。

一方で、女性の方は勝手に喋り続けたのだ。


「私も……そうだったんですよ。私………実は万引き常習犯みたいなもので……」


「……え?」


「本当に……恥ずかしい話です。仕事とかプライベートでストレスが溜まったり、ムシャクシャすると衝動的に
 癖とかじゃあなくって、私が思うに『病気』なんです……どうしようも出来なくて……」


「…………」


弥子は彼女に振り向くと、既に不安や哀しみに満ちた女性はそこになかった。
女性の様子は、むしろ何か『救われた』ようだった。


「でも、あの御方に出会って……世界が変わった。私は自分自身が嫌で仕方がなかったけど、でも


 『それでいいんだよ』とあの御方は私を拒絶も否定もしなかった………」


弥子が今まで遭遇した『悪』ではない。
彼女自身の在り様はまるで芯のある悪とは違って、悪という糸で操られている人形であった。
弥子の感覚に頼るならば
ここに彼女の意志も、芯もない。空虚な【がらんどう】。彼女は『ただ勝手に救われている』。
女性が語り終えるとチラシのようなものを弥子に差し出す。


「もし興味がありましたら是非こちらに。今度の火曜日に集会が行われます」


恐る恐る弥子はチラシを受け取ると、夢から醒めたように女性は「私はこれで」と立ち去ってしまう。
やや遅れて、念話で魔理沙が「宗教勧誘か?」と珍しくない風に呼びかける。
まあ、一種の宗教染みている。弥子は一つのウワサを脳裏に浮かべた。


――悪の救世主……




☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆



       憎しみを天に享くるすべての邪悪は、その目的非を行うにあり


       しかして、いっさいのかかる目的は、


       あるいは力により、あるいは欺瞞によりて他を苦しむ。


                                       ダンテ 「神曲-地獄編十一曲」


517 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/02(水) 23:29:10 deVhrhtc0
【真名】
霧雨魔理沙@東方project

【クラス】
アーチャー

【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:A++ 魔力:B 幸運:C 宝具:B

【属性】
中立・中庸


【クラススキル】
対魔力:E
 魔術に対する抵抗力。無効化は出来ないが、ダメージ数値を多少削減する。

単独行動:A
 マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
 ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。


【保有スキル】
魔力放出:C+++
 武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。
 彼女自身【光と熱】に関する魔法を主として、破壊のみ重点を置いている。また属性に【星】がついてたりする。

心眼(真):B
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 戦場において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”

蒐集癖:C
 一種のバッドスキル。興味を持った他人のものを堂々と奪っていく。
 彼女曰く「死ぬまで借りるだけ」
 手で持って運べるものに限り、一時的にだが彼女が擬似的に使用することが可能。
 無論宝具でも適応されるが、発動した際のランクや威力は大分低下してしまう。


【宝具】
『恋符「マスタースパーク」』
ランク:B- 種別:対軍宝具 レンジ:1〜300 最大捕捉:1〜500
 巨大レーザー砲をぶっぱなす「弾幕はパワー」と表現する彼女らしさが凝縮されている必殺技。
 魔理沙の代名詞と称されるほどだが、実は彼女が他人からパクったとの噂もある。
 彼女の所有する「ミニ八卦炉」との組み合わせで発動する。
 また他の派生や強化版もあり、それらもこの宝具に含まれている。

『魔符「スターダストレヴァリエ」』
ランク:C+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜500 最大捕捉:1〜500
 星型の弾幕を広範囲にバラ撒く弾幕。マスタースパークよりも威力は低いが、比較的低燃費。
 ただし「ミニ八卦炉」の魔力放出との組み合わせで彗星の如く、高速で敵に迫る。
 ちなみに弾幕の味は甘い。


【weapon】
ミニ八卦炉
 魔理沙が所有するマジックアイテム。自在に調節可能な火力を出す。
 炉の一角から風を出す機能もある。

魔法の箒
 いつも魔理沙が乗ってる箒。これがなくても空が飛べなくなることはない。


【人物背景】
どこかの世界にいる普通の魔法使い。

【サーヴァントとしての願い】
とくにないけど、折角だから聖杯は貰っておきたい


518 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/02(水) 23:30:05 deVhrhtc0
投下終了です。
皆さま改めまして候補作の投下ありがとうございます。
OPに登場した確定枠の一覧は以下となります。


暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ&セイヴァー(DIO)@ジョジョの奇妙な冒険

X@魔人探偵脳噛ネウロ&バーサーカー(カーズ)@ジョジョの奇妙な冒険

アイル@グランブルーファンタジー&アサシン(ディアボロ)@ジョジョの奇妙な冒険

吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険&キャスター(レオナルド・ダ・ヴィンチ)@Fate/Grand Order

渋谷凛@アイドルマスターシンデレラガールズ&セイバー(シャノワール)@グランブルーファンタジー

逢沢綾(アヤ・エイジア)@魔人探偵脳噛ネウロ&アヴェンジャー(ディエゴ・ブランドー)@ジョジョの奇妙な冒険

レイチェル・ガードナー@殺戮の天使&ライダー(ディエゴ・ブランドー)@ジョジョの奇妙な冒険

桂木弥子@魔人探偵脳噛ネウロ&アーチャー(霧雨魔理沙)@東方project


以上となります。
皆さまお察しでしょうが、もう一つだけOPを投下させていただきますが、これ以上の主従はOPに投下されません。

これら確定している8組+候補作からの選出14組(最低数、これ以上増える可能性あり)となります。


519 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/02(水) 23:34:16 deVhrhtc0
更に候補作の締めきりについても触れます。
現在FGOがイベント期間中につき、GWにかけて候補作の投下が停滞すると考慮し
締めきりは6月中にしようと考えております。

長々と申し訳ありません。引き続き候補作の投下をお待ちしています。


520 : ◆EPxXVXQTnA :2018/05/03(木) 18:51:47 A8YhuG/20
皆様投下乙です。自分も投下させて頂きます


521 : 零にしか至らない物語 ◆EPxXVXQTnA :2018/05/03(木) 18:52:51 A8YhuG/20

 ジョルノ・ジョバーナのレクイエムにより、ディアボロは永遠の零となった。

 車に轢かれて死んだ。戦場で流れ弾に当たって死んだ。火事に巻き込まれて死んだ。崖から突き落とされて死んだ。解剖されて死んだ。飛行機の墜落で死んだ。
 とにかくとにかく死に続けて、あれは何度目の死だったか。

 最早数えるほども馬鹿らしい回数死に続ける日々のなか、ディアボロは偶然にもソウルジャムを手にし、この聖杯戦争に参加する資格を得た。

(これが最後のチャンス……ここで聖杯を手にいれれば、俺はレクイエムから解放され、再び永遠の絶頂へと到達できる。
 どんな手段を使ってでも絶対に俺は聖杯に至るッ!!!)

 そのためには、まずは生きねばならない。
 
 ディアボロは空腹に耐えつつ、路地裏でごみ箱を漁っていた。
 彼のロールは、無い。厳密に言えば不況で倒産した会社の元社長で、今では住所不定無職……つまり、ホームレスである。

(……惨めだ。何故俺がこんなことを……糞ッ、糞ッ……)

 生きるために残飯を漁る姿は、組織のボスとして君臨していた男とは思えないほど惨めなものだった。
 そこらの通行人から金を巻き上げてもいいが、予選の段階で目立つ行動はまずい。
 腐っても帝王。苦渋の決断だったが、繰り返される死の連鎖の中でディアボロの心は既に折れていたのかもしれない。

「ウイイイイイイイイイイイイ↑ッス!どうも、バーサーカーで〜す!」

 偵察に差し向けていたバーサーカーが霊体化を解除し、軽快に挨拶する。
 ディアボロはオーバーグラスをつけた小柄な男を一瞥すると、気を引き閉め直して向かい合った。
 現状、唯一の手駒であるバーサーカーは上手く扱わなければならない。

「戻ったか、バーサーカー…… 他のマスターの目星はついたか?」

「参加者〜は居ると思うんですけど、なぜ来なかったんでしょうかね〜?不思議ですね〜」

 能天気に報告するバーサーカーに苛立ちを押さえきれない。
 バーサーカーは、どう贔屓目に見ても無能であった。何故か会話はできるが、意思疏通が成立しない狂人であり、能力も貧弱である。
 サーヴァントはサーヴァントでしか倒せないという大原則を抜きにすれば、そこらのNPCにすら負けるだろう。
 唯一の利点は、バーサーカーでありながらアサシンの真似事ができることぐらいか。
 聖杯からの知識によると、サーヴァントとは過去の英雄であるという。本当にこの無能が英雄なんて大それた存在なのか、ディアボロにとって心底疑問だった。

「収穫は無し、か。……貴様、本当に偵察してきたのか?また其処らのカラオケとやらで遊んできたんじゃあないだろうな?」

 サーヴァントにとって衣食住は必要ない事もあり、バーサーカーがホームレス状態のディアボロに関しては何ら手を貸すこともない。
 それどころか数少ないディアボロの所持金を勝手に使って遊ぶことすらある。
 貴重な資金でレトルト食品を買い漁り、オリジナルメニューと称して食べ物で遊んでいたときは、本当に令呪を使ってやろうかとすら考えたほどだ。

「ほならね、自分がサーヴァント殺ってみろって話でしょ?私はそう言いたい」

「それでも俺のサーヴァントなのかッ!! 少しは役に立てッ!!」

「それは君がそう思ってるだけやでぇ。なんで俺がやらなあかんねん。 
 時分の身は、自分で守れる筈です!」

 激昂するマスターを歯牙にもかけないサーヴァントに、自らの前途多難さを再認識し、ディアボロは頭を抱えるのだった。


522 : 零にしか至らない物語 ◆EPxXVXQTnA :2018/05/03(木) 18:53:52 A8YhuG/20

【CLASS】バーサーカー
【真名】Syamu-Game
【性別】男
【属性】混沌・狂
【ステータス】筋力0(E) 耐久0(EX) 敏捷0(E) 魔力0(E) 幸運0(E) 宝具0(EX)
※宝具の影響により閲覧ステータスは全て「0」と表記される。
実際のステータスは括弧内のもの。

【クラススキル】

狂化:EX
 一見、バーサーカーは理性を持って普通の言葉を話し、コミュニケーションが取れるように見える。
 しかし、彼の話す言葉の一部は、我々にとって意味不明で理解不能な物ばかりであり、肝心な部分でコミュニケーションが取れない可能性が高い。

【固有スキル】  

運命の数字:A+
 生前に固有の数字に関する逸話のある人物が希に所持するスキル。
 彼の場合、運命の数字とは零を示す。
 バーサーカーの接する『数字で表記できる事象』は高確率で0に終息する。
 同盟0人、敵対者0人、犠牲者0人、生存者0人、目撃者0人……etc。
 このスキルの影響は非常に多岐にわたり、どういった形でこのスキルが発動するのかはバーサーカー自身も予想できず、その匙加減はこの世界の観測者に委ねられる。

無力の殻:A+
 サーヴァントとしての戦闘力を零にする代わりに、他者にサーヴァントであると認識されなくなる。
 サーヴァントでありながらそこらのNPCよりも存在の格が低く、彼をサーヴァントであると看破することはほぼ不可能に近い。

無辜の土竜:EX
 大物YouTube r 『Syamu-Game』
 趣味人により素材として培われたイメージにより存在が変貌している。
 このスキルは外せない。

【宝具】

『零の加護を受けた男(Syamu_Game)』
ランク:0 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:0
 存在そのものが零という概念を内包しているため、外的要因による状態変化を受け付けない。
 0×0が変わらず0であるように、劣化も進化もせずそこに存在し続ける。
 例え大軍宝具の直撃を受けようとも傷すら負わずに変わらず現界し続けるだろう。
 よってバーサーカーを消滅させるには、マスターを殺害するか、何らかの方法で"真実を上書きする"しかない。
 また、零の概念を相手に用いることで「動作や意思の力をゼロにする」といったレクイエムの真似事が出来る。

『伝説の始まり』
ランク:0 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:0
 特定のエリアを自らのオフ会の開催地と定義し、そこから強制的に自身を除く全ての人間(NPC、サーヴァント、マスター)を退去させる。
 因果が確定されているため、何者であろうともオフ会が開催されている限りはそのエリアに近づくことはできない。
 本来なら自身のマスターも弾き出されるのだが、後述の宝具による影響でディアボロに限りオフ会に参加する事ができる。


523 : 零にしか至らない物語 ◆EPxXVXQTnA :2018/05/03(木) 18:54:38 A8YhuG/20

『ほならね理論』
ランク:0 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:0
 バーサーカーが攻略できない/打破できない困難に遭遇したときに発動可能な宝具。
 聖杯戦争での敗北という結果にいたる過程を、第三者におっかぶせる事ができる。
 例として強敵に遭遇→敗北→『ほならね』→自身と『困難そのものに該当する者以外』の誰かに敗北への過程を体験させる。
 対象がその困難を打破できなかった場合、それは元からその人物による敗北であったとして因果を塗り替える。
 なおこの宝具の発動には条件があり、
1)バーサーカーの敗北への過程と結果を直接目撃している
2)自分ならもっとうまく対処できる(〜がつまらない)』と考えてる
3)令呪を1画使用する
この三つを満たして初めてほならね理論は完成する。 
なお、発動させても相手が正攻法で困難を打破すれば逆に論破されたとして、以後この宝具は使用できなくなる。

『順平新説シリーズ』
ランク:0 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:0
 同質の宝具をもつ男優と異なり、万物に変身はできない。
 今回はバーサーカーと同一存在であると考察された三人のスタンド使いの概念を礼装とし、空条徐倫の『ストーン・フリー』、吉良吉影の『キラークイーン』、そしてマスターでもあるディアボロの『キングクリムゾン』を限定的に使用できる宝具となっている。
 なお、ストーンフリーの展開にはバーサーカー自身の肉体がスタンドに変化する。
 ただし、三体のスタンドを同時に展開したり、能力を併用して使用することはできない。また、成長性も0(なし)となっているため能力の成長は見込めない。
 数字の零を内包したバーサーカーは時間に関連する能力と相性が良く、時の静止/消し飛ばされる世界を認識できる。
 しかし新説で提示された通り、時を飛ばす能力は使用できない。
 観測世界においてバーサーカーと同一の存在と語られた影響により、
マスターであるディアボロは徐々に"Syamu-Game"に侵食されつつある。
 (具体的に言うと突然オフ会を開きたくなる、オーバーグラスを着けたくなる、など)

【Weapon】


【人物背景】
 人生の30年間を消し飛ばした男にして、日本一有名な無職件大物YouTuber。
 無辜の土竜とバーサーカーで呼ばれた事が合わさった結果、彼はSyamu-Gameという存在が動画内で放った台詞や取った行動をトレースし続け、『Syamuさんが聖杯戦争で言うであろう事』を喋り、『Syamuさんがするであろう』行為をするだけの存在となっている。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯で助詞とコイニハッテンシテ…  素敵なことやないですかぁ


【マスター名】 ディアボロ
【出展】ジョジョの奇妙な冒険 第五部 黄金の風
【性別】男
【能力・技能】
スタンド『キングクリムゾン』

【人物背景】
 巨大ギャング組織「パッショーネ」の元ボスにして、レクイエムにより『「死んだ」という結果』にすら到達出来ず、永遠に「死に続ける」事になってしまった男。
 世界のどこかで死に続けている最中にソウルジャムを拾ったことでこの聖杯戦争に参戦した。

【聖杯への願い】
 レクイエムから抜け出し、再び永遠の絶頂を目指す。


524 : ◆EPxXVXQTnA :2018/05/03(木) 18:55:09 A8YhuG/20
投下終了です


525 : ◆uL1TgWrWZ. :2018/05/04(金) 02:42:39 .Q3m/2ug0
投下します。


526 : Take Me Home, Country Roads ◆uL1TgWrWZ. :2018/05/04(金) 02:43:58 .Q3m/2ug0

 昼、見滝原。
 薄汚れた路地裏で、銀髪の男が壁を背に立っていた。
 アメリカ人だろうか。日本人ではあるまい。
 整った精悍な顔立ちは、テレビの向こうで見ても違和感があるまい。
 まるでモデルか役者のように、奇妙な色気を纏った立ち姿。

 ……その服装は、いささか古めかしい。
 まるで西部開拓時代のようなスタイル。
 ヒョウ柄のジャケット。ゼブラパターンのカウボーイハット。
 それこそ、映画に出てくるアウトローにでも見えるだろうか。
 これが現代の街を歩き回るのは、流石に多少浮く。
 まぁ、少し“気合い”の入ったファッションだと言われれば、それまででもある。
 投げ縄は……中々気合いが入っていると言わざるを得ないが。
 逞しい体つきや、アンニュイな立ち姿、美形と言って差し支えない顔立ちが、違和感をファッションに昇華させている。


 ――――――――腰のホルスターに提げた、拳銃から目を逸らせばの話だが。


『――――それで、マスター』


 男が、ふと視線を上にやった。
 男性にしては長いまつげが、中空に角度を上げる。

『“お楽しみ”からは抜け出せそうか?』

 念話。
 契約したサーヴァントとマスターの間で交わされる、思念による対話。
 発声する必要なく、距離も関係なく、主従の間でのみ行われる密談。
 彼はサーヴァントなのだ。
 英霊。人類史に名を遺した偉大なる人。
 クラスは“騎兵(ライダー)”。
 世界一のカウボーイとも言われた男。

 そんな偉大なカウボーイを召喚したラッキーなマスターは、一拍遅れて念話を返した。

『ま、待ってくれ。こちらはもうすぐ終わりそうだ。これが終わればすぐに合流する』

 精悍な男性の声だ。
 硬い声色は、軍人を思わせるか。
 ただ、少し声がうわずっている……どうも、運動しているような具合だ。

『そうか? まぁ、ゆっくり楽しむといい。それが最後だろうからな』

 からかうように、ライダーが返す。
 恋人と相瀬でもしているのか、あるいは。
 閨にまで野次を飛ばすというのも、あまり行儀のいいことではないが。

 ……が、幸いにして。
 この物語に、R-18の指定がかかる心配はない。

『すまない。必ずそちらに向か……うおぉっ!?』

 視点を、少し動かそう。


527 : Take Me Home, Country Roads ◆uL1TgWrWZ. :2018/05/04(金) 02:44:25 .Q3m/2ug0



   ◆   ◆   ◆



 ――――遥か未来、世界は邪悪な支配者によって管理されるディストピアと化していた。

 差別。
 貧困。
 迫害。
 搾取。

 民衆は弾圧され、日々を苦しみの中で生きていた。
 当然、その地獄めいた社会を生み出し、成立させているのは――――暴力だ。
 町では監視ドロイドが闊歩し、極悪グリーンベレーや電撃怪獣、バイオサソリなどが反乱者を殺戮している。

 幾度となく反乱者が蜂起し――――その全てが蹂躙されていった。

 もはや、この世界に希望は存在しない――――誰もが、そう思っていた。


 ――――――――ただ、一人を除いては!


 KABOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOON!!!!!!!!!!


「爆発だー!」
「侵入者の仕業だ!」
「追え! 排除するんだ!」

 爆発! 混乱! 無数の兵士たちが基地内を駆けまわる!
 そう、彼ら世界政府のアジトは、謎の侵入者によって甚大なダメージを受けてしまったのだ!

「いたぞ! あそこだー!」
「撃て撃て撃てー!」

 侵入者発見! 極悪グリーンベレーマシンガン射撃!
 アジト内部を走って逃げていた侵入者は、哀れ蜂の巣か!?

 ――――否、断じて否である!

「トウッ!」

 跳躍!
 とんぼ返り! 
 天井のパイプを掴んで銃弾回避!
 そして素早く右腕から……レーザー発射!

「グワーッ!」
「ヤラレターッ!」

 おお、なんと華麗なる早業か!
 ヒーローの左腕から放たれた赤い光線が、雑兵をなぎ倒していく!
 天井から降りて着地!
 その姿は……白き鎧に身を包む、偉大なるハイテック戦士だ!
 笑うと歯が光る! ナイスガイ!

「マズい、手間取りすぎたな……!」

 だがしかし、そのナイスガイスマイルは鳴りを潜めている。
 なぜなら彼は焦っている! この基地を脱出しなければならないのだ!
 端的に言って爆発するからである! 下手人は自分自身だ!


528 : Take Me Home, Country Roads ◆uL1TgWrWZ. :2018/05/04(金) 02:45:15 .Q3m/2ug0

「早く脱出しなければ、爆発に巻き込まれてしまう!」

 迂闊! このまま因果応報に爆発四散してしまうのか!?
 逃げ出すだけなら問題あるまい!
 問題は――――おお、見よ!
 通路前方より現れるは、極彩色の巨大バイオサソリ!

「あれはバイオサソリモンスター!」

 バイオサソリモンスターだ!
 ハサミとか……毒とかある! すごく強いし凶暴だ!
 咄嗟に腕のレーザー銃口を構えるナイスガイ!
 おお、しかし背後に危険!

「ぶじゅうぅぅぅぅぅぅぅ………」

 電撃的鳴き声!
 咄嗟に振り替えれば……背後に現れたのは危険ミュータント電気鼠!
 インド象もイチコロの電撃を放つ凶悪な戦闘怪獣だ!
 黄色のボディに茶色の横縞! 赤い頬からは断続的に電撃が放たれている!

「危険ミュータント電気鼠! 完成していたのか!」

 前門のバイオサソリモンスター!
 後門の危険ミュータント電気鼠!
 このままでは挟み撃ち死亡可能性甚大!

「トウッ!」

 だがヒーロージャンプ! 放たれた電撃回避!
 天井に足を引っかけ、天地逆転!

「キシャアアアアアッ!」

 そこにバイオサソリモンスター強襲!

「トゥアーッ!」

 レーザー迎撃! 素早く切断される危険毒尻尾針!

「トゥアーッ!」

 先端を失った尻尾をキャッチ!
 そのまま……おお、逆さジャイアントスイング!

「トゥアーッ!」
「キシャアアアアアッ!」

 投擲!
 向かう先は当然……危険ミュータント電気鼠!

「ぶじゅううううぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

 直撃!
 二体の哀れな化学モンスターは絡み合いながら通路を進み……


 KABOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!!


 ――――爆発四散!


529 : Take Me Home, Country Roads ◆uL1TgWrWZ. :2018/05/04(金) 02:46:35 .Q3m/2ug0

「強敵だった……手間取りすぎたな……!」

 だがしかし、ナイスガイスマイルが披露されることはない。
 なぜなら彼は焦っている! この基地を脱出しなければならないのだ!
 端的に言って爆発するからである! 下手人は自分自身だ!

「早く脱出しなければ、爆発に巻き込まれてしまう!」

 迂闊! このまま因果応報に爆発四散してしまうのか!?
 逃げ出すだけなら問題あるまい!
 問題は――――おお、見よ!

「逃がさんぞ、スペースレンジャー!」

 通路前方より現れるは……ニンジャ!
 フウセン・カタナを構えたピエロめいた恐るべきニンジャ・ウォーリアーだ!

「アイエッ!? ニンジャ!?」

 これには流石のスペースレンジャーもニンジャリアリティショック発症!
 ニンジャ……ニンジャだと?
 ニンジャは神話的フィクション存在だったはずでは!?

「ドーモ、ピエロ・ニンジャです」

 電撃的オジギ!
 アイサツは大事だ。古事記にもそう書いてある。
 だがニンジャでないスペースレンジャーにアイサツ必要性無し!

「トゥアーッ!」

 レッドレーザー発射!

「イヤーッ!」

 ブリッジ回避! ワザマエ!

「トゥアーッ!」

 レッドレーザー発射!

「イヤーッ!」

 側転回避! ワザマエ!

「イヤーッ!」

 スリケン投擲!

「トゥアーッ!」

 ブレーサーでスリケンを弾く! ワザマエ!

「トゥアーッ!」

 レッドレーザー発射!
 だが……その狙いはニンジャにあらず!
 腕が向けられた先は、ニンジャの頭上!
 天井崩落! 瓦礫殺到!

「グワーッ!」

 瓦礫直撃!
 ニンジャの体勢が崩れる! これを見逃すスペースレンジャーではない!
 素早く接近! 右フック!


530 : Take Me Home, Country Roads ◆uL1TgWrWZ. :2018/05/04(金) 02:46:58 .Q3m/2ug0

「イヤーッ!」
「グワーッ!」

 左フック!
 
「イヤーッ!」
「グワーッ!」

 右フック!

「イヤーッ!」
「グワーッ!」

 左フック!

「イヤーッ!」
「グワーッ!」

 右フック!

「イヤーッ!」
「グワーッ!」

 左フック!

「イヤーッ!」
「グワーッ!」

 右フック!

「イヤーッ!」
「グワーッ!」

 左フック!

「イヤーッ!」
「グワーッ!」

 右アッパー!

「イヤーッ!」
「アバーッ!」

 芸術的宇宙アッパーカットにより、ピエロニンジャの顎が打ち砕かれた!
 ニンジャは天井スレスレまで吹き飛び……墜落!

「サヨナラ!」

 それと同時に爆発四散!
 そしてスペースレンジャーは……おお、見よ!

「トゥアーッ!」

 ニンジャの爆発を利用し、天井に空いた穴からジャンプ脱出!
 背中の翼が展開し、ジェット噴射によって空を飛ぶ!
 なんたるフーリンカザンか! 基地脱出! 基地爆散!
 おお、この英雄は! この英雄の名前こそは!


「――――――――無限の彼方へ、さぁ往くぞ!」


 ――――――――――――無敵のスペースレンジャー、バズ・ライトイヤーである!!!

 さぁ、戦いは終わった。
 だが世界の英雄である彼には、さらなる使命が……「ゆうたー! ご飯よー!」えっ、もう? わかったー! ちょっと待ってー!


531 : Take Me Home, Country Roads ◆uL1TgWrWZ. :2018/05/04(金) 02:47:23 .Q3m/2ug0



   ◆   ◆   ◆



 扉を閉め、少年が母親の待つ食卓へと去っていく。
 その、足音が聞こえなくなったのを確認して――――“彼ら”は動き出した。

「――――お疲れー」
「いやぁ、今日はアクティブだったなぁ」
「おい、俺の尻尾の先端どこいった?」

 一仕事終えた劇団のように、思い思いに羽を伸ばす異形たち。
 国民的電気鼠がいる。
 極彩色のサソリがいる。
 小さな兵隊の群れや、その他様々な者がいる。

 ――――彼らは、おもちゃだ。

 たった今、持ち主であるゆうた少年(想像力が豊かだ)によって遊ばれていた、おもちゃたちだ。
 おもちゃが歩き、喋っている。
 異常な光景である。異様な光景である。
 だが――――真実だ。
 おもちゃたちは、生きている。
 それをちょっと、人間たちが知らないだけだ。
 彼らは生きていて――――いつも、持ち主と一緒に遊んでいるのだ。

「最近、ゆうたも力が強くなってきたからなぁ」
「俺、尻尾が緩くなってきちまったよ」
「まぁ、パパが直してくれるさ。お前を買ったのはパパだしな」
「ニンニン」

 今は“遊びの時間”が終わって、思い思いに休憩をしている。
 文句を言っているようにも見える。
 子供と遊ぶというのは、中々重労働だ。おもちゃとなれば、なおさら。
 だが――――よく見れば、彼らが笑っているのがわかる。
 みな一様に。
 ……まぁ、顔が無かったり変わらなかったりするおもちゃも結構あるけれど。
 ともあれ……みんな、幸せなのだ。
 子供と、ゆうたと遊べるのが。
 おもちゃにとって、それが一番幸せなことなのだ。
 自分の持ち主に、思いっきり遊んでもらえるのが。

「……あー、オホン。お疲れ、諸君」
「ニンニン!」
「おっ、来たなスペースレンジャー」
「相変わらずの主役ぶりだったな!」

 そして、ゆうたが一番気に入っているおもちゃが、彼だ。
 バズ・ライトイヤー。
 とある大人気アニメの、主人公のおもちゃ。
 光る! 回る! 音が出る!
 空は飛べないが翼も展開するし、電池があれば赤外線でレーザーっぽいのも出る! すごいおもちゃだ。
 彼は不動の主役として、ゆうたの部屋に君臨する。
 今日も主役だったし、昨日も、一昨日もだ。
 明日も、明後日もそうなのだろう。
 ……誰もが、そう思っていた。


532 : Take Me Home, Country Roads ◆uL1TgWrWZ. :2018/05/04(金) 02:48:20 .Q3m/2ug0

「ところで……みんな、聞いてくれ。実は話があるんだ」

 少しだけ言いづらそうに、バズは他のおもちゃに切り出した。
 なんだなんだと、おもちゃたちがバズに寄ってくる。

「実は、その……」
「どうしたんだよバズ?」
「まさか、どこか故障?」
「そりゃ大変だ! 電池切れじゃないのか!?」
「待ってくれ、そうじゃない。私はいたって健康だ。話と言うのはそうじゃなくて……」

 心配そうに詰め寄るおもちゃたちを、バズはゆっくりと見回した。
 その表情が曇る。
 悔恨と、焦燥が彼の顔を彩った。
 ……それも一瞬。
 彼の言葉を待つおもちゃたちに……意を決して、言葉を告げた。


「……すまない。私は、この家を出て行かなければならなくなった」


 ――――それは、離別の言葉だった。

「……えっ?」
「じょ、冗談でしょ?」
「ニンニン」
「おいおい、なに言ってんだよバズ! どこかぶつけたか?」
「見ろよこいつの右手! アザなんかできてるぜ! ぶつけた拍子にスタンプでも押したのか?」
「正直、面白くない冗談ね」

 ざわざわと、おもちゃたちがどよめき始める。
 渇いた笑いを浮かべ、バズの言葉を冗談として処理しようとする。
 ……バズは、悲しげに首を振った。

「……いや、本当だ。私は……帰らなくてはならない」

 冗談ではない。
 それを理解したおもちゃたちが、呆然とする。
 怒り出す者も、いた。

「おい……いい加減にしろよバズ! 今日はエイプリルフールか!?」
「そうだぜ! 大体帰るって、ここがお前の家だろ!?」
「マジで壊れちまったのか!? 正気に戻れよ!」
「違うんだ、私は……!」

 詰め寄るおもちゃたちをどうにか宥めようと、顔を顰めるバズ。
 だが、おもちゃたちはそれどころではない。
 彼らの英雄バズ・ライトイヤーが、突如トチ狂った発言をして家を出て行こうとしている。
 バズを正気に戻さなければ……誰もがその想いでいっぱいだった。


533 : Take Me Home, Country Roads ◆uL1TgWrWZ. :2018/05/04(金) 02:49:11 .Q3m/2ug0


「――――――――行かせてやりな」


 ……ただ、一人を除いては。

「ピカ……!」

 声の主は、国民的電気鼠。
 赤いほっぺがキュートで、触ると声が出るすごいやつだ。
 彼は積み木に腰かけ、ハードボイルドに煙草(おもちゃだ。探偵鼠セットという拡張セットの付録)を吹かし、言葉を続ける。

「お前のことだ。事情があるんだろう?」
「……ああ。説明してもわかってもらえないかもしれないのだが……」
「十分だ。行けばいいさ」

 ある種、そっけないとすら言える態度で。
 国民的電気鼠は、顎をしゃくって窓を示す。

「待てよ! こいつは……こいつは、ゆうたの一番のお気に入りなんだぜ!?」

 極彩色サソリが声を荒げる。
 ……ゆうたの父が昔買ってくれた、ドッキリジョークグッズのリアル極彩色サソリ。
 ――――バズが来る前、ゆうたの一番のお気に入りだったおもちゃ。

「おもちゃは持ち主と遊ぶもんだ! なぁ、そうだろう!?」
「それは……」

 だからこそ、彼は声を荒げた。
 かつて一番であったが故に。
 今はもう、一番ではないが故に。
 彼の暴走を止めねばならぬと、声を荒げた。

「やめな、サソリ」

 ……また、国民的電気鼠がそれを制する。

「バズは……俺らとは違う。そんな気がしてた」

 煙草から口を離し、どこか遠くを見る。
 ちなみに当然だが煙は出ない。

「……本当の居場所に、帰るんだろ?」
「…………ああ。私は……ゆうたのおもちゃじゃない。ボニーのおもちゃなんだ」

 鼠とバズの視線が交差する。
 それだけで、十分だった。

「俺にはお前がなにを言っているのか、てんでわからん。が……お前を待っている子供が、いるんだな?」
「そうだ。他のおもちゃもいるが……私を、きっと探しているはずだ」
「なら、行きな。ゆうたは俺たちで楽しませるよ」
「おいピカ!」
「……ニンニン」
「ピエロニンジャまで……!」

 それでもなお食い下がるサソリを、鼠が一瞥し……

「………バズ。俺たちは、友達だよな?」

 問うた。
 バズが、答えた。

「もちろんだ。みんなも、ゆうたも……友達だ。間違いなく」
「なら、それで十分だって言ってる。……俺たちは何度もアンタの世話になった。友達の願いは叶えたい」


534 : Take Me Home, Country Roads ◆uL1TgWrWZ. :2018/05/04(金) 02:49:46 .Q3m/2ug0

 それきり、鼠はバズに背を向けた。
 もう、交わす言葉は無いと。
 バズは周囲を見た。
 みな、複雑な表情をして……少し、笑った。

「ニンニン」
「……うん。よくわからないけど……待ってる子がいるなら、仕方ないよ」
「アンタの分も俺らが遊んでおくぜ!」
「寂しくなるけどナァ」

 明るく、バズの背を叩くおもちゃたち。
 バズはそれが無性に嬉しく、しかし申し訳なくもあり、泣き笑いのような顔をした。

「……なんて顔だよ」

 サソリが悪態をつく。

「クソッ……わぁった、わぁったよ! 行けばいいさ! ゆうたの一番はまた俺さ! むしろせいせいするぜ!」
「サソリ……」

 彼もまた、バズに背を向ける。
 別れの握手すらする気はないと、そう言わんばかりに。

 ……いや。
 尻尾が、少し垂れ下がっていて。

「……ありがとう。キミの実力なら、私よりゆうたを楽しませることができるはずだ」
「……当然だろ」

 バズは静かにその先端を掴み、軽く上下に揺らした。

 その時、部屋の外から声が聞こえてきた。

「ゆうたぁ! 食器は片付けなさいって!」
「また今度ね!」
「! マズい、ゆうたが帰ってくる!」
「戻れ戻れ」

 家主であるママと、ゆうたの声。
 昼食が終わったのだ。
 ゆうたが部屋に帰ってくる。
 つまり――――出ていくなら、今だ。

 他のおもちゃたちが定位置に戻る中、バズだけは開かれた窓辺に向かって駆けて行く。

 最後に、部屋を見渡した。
 定位置に戻ったおもちゃたちが、期待に満ちた目でバズを見ていた。
 ……待っているのだ。
 彼の、いつもの台詞を。
 最後になる、あのセリフを。

 バズはヘルメットを展開し、翼を広げ、叫んだ。


「――――――――――――――――――――無限の彼方へ、さぁ往くぞ!」


 スペースレンジャーは、外の世界へと飛翔した。


535 : Take Me Home, Country Roads ◆uL1TgWrWZ. :2018/05/04(金) 02:50:45 .Q3m/2ug0



   ◆   ◆   ◆



『――――待たせたな、ライダー』

 そして、様々なアクロバットを駆使した道中がありつつ……バズ・ライトイヤーは、自らのサーヴァントと合流した。

「ああいや、大して待っちゃいない……ってのは、女の子にでも言ってやるべきだが」

 軽口で返しながら、ライダーは自らのマスターを見る。
 ……路地裏に積まれた段ボールの上に立つ、小さなマスターを。

「いやしかし……マジに驚いたな。まさか、オレのマスターが……」
『おもちゃだとは、か?』
「……早押しクイズじゃあないんだぜ」

 苦笑しつつ、帽子を目深に被る。
 いやまったく……おもちゃとは。
 バズの右手には、確かに(非常に小さな)令呪が刻まれている。
 資格はあるのだろう。……なぜか。

『私も驚いている。魔術など、フィクションの中だけかと……』
「スペースレンジャーが言うと重みが違うな」
『からかうなよカウボーイ』

 不服そうにバズが腕を組んだ。
 ……小ささ故、まともに会話をするとバズは声が小さすぎる。
 そのため、彼は念話で自らのサーヴァントと会話を行っていた。

「だが、おまえはそのフィクションみたいな戦いに身を投じなくちゃあならないわけだ」
「…………」

 ライダーの瞳が、静かにバズを見据えた。
 意志の強い、優しくもタフな瞳が。

「危険はデカい。それでも。あんたは戦うのか? なんのために?」

 バズは……きっと、あのままでも幸せだった。
 あの、ゆうたという少年のおもちゃとして一生を終えることも、できたはずだ。
 ……それでも、バズは戦うことを選んだ。
 戦って……帰ることを、選んだ。

『……待っているんだ。ボニーや、友達が』
「どうしてそう言い切れる。案外、あんたの事なんか忘れてるかもしれない」
『かもしれない。それでも――――』

 バズが右脚を上げ、自らの足の裏を見る。
 ……文字があった。
 かつては、“ANDY”と。
 今は、“BONY”と。

 ――――――――バズを待つ、大切な人の名前がそこにはある。


536 : Take Me Home, Country Roads ◆uL1TgWrWZ. :2018/05/04(金) 02:51:35 .Q3m/2ug0

『私は、ボニーのおもちゃだ』
「代わりのおもちゃを買ったかもしれないぞ?」
『それでもだ』
「いつか捨てられるかもしれない」
『それでもだよ、カウボーイ』

 彼の意思は強かった。
 幾度も危機を超え、幾度も闇を見た。
 捨てられたおもちゃの悲哀を、己と他人で味わってきた。
 それでも、それでもなのだ。

『私は学校から帰ってきたボニーが、ただいまと言うのを聞きたいんだ。あそこが、私の家なのだから』

 だから、帰らなくてはならない。
 どんな危険が待っているとしても、その願いだけは変えられない。
 彼はバズ・ライトイヤー。
 宇宙を救うスペースレンジャーではないし、空も飛べないが……ボニーという少女の、おもちゃなのだから。

「……そうだな。きっと、そうなんだろう」
『ライダー?』

 僅かに俯いたライダーに、そっとバズは手を伸ばす。
 もちろんその手はまるで届きはしないのだが……ライダーは、苦笑して。

「ただ、旅立つときに微笑みかけ、帰ってきたときに笑いかける。
 本当に重要なのは……それだけなんだ。最初から」

 ライダーが帽子のひさしを上げ、ニヒルに笑った。
 ハンサムな顔が、より一層ハンサムに映える。

「いいだろう、スペースレンジャー。
 ちょいと奇妙なマスターではあるが……オレは、あんたに力を貸そう。
 どうあれ、あんたが帰らなきゃ一人の女の子が悲しむらしいからな」
『……ボニーはまだ子供だぞ』
「冗談さ。真面目な奴だな」

 ライダーが人差し指を差し出した。
 バズがそれに応えるように、彼の指を握る。
 ……握手だ。おもちゃと、カウボーイの。

『ありがとう、カウボーイ。心強い限りだ』
「ああ、任せてくれ……オレはアメリカじゃあ一番のカウボーイって呼ばれてたぐらいでね」
『アメリカで一番?』

 バズが、笑って肩を竦めた。

「おっと、疑ってるのか?」
『まさか。ただ――――』

 ライダーの実力を疑うわけではない。
 わけではないが……だが、その称号は――――


『――――――――親友が、世界一のカウボーイでね』


537 : Take Me Home, Country Roads ◆uL1TgWrWZ. :2018/05/04(金) 02:52:48 .Q3m/2ug0

【CLASS】ライダー

【真名】マウンテン・ティム@STEEL BALL RUN

【属性】中立・善

【ステータス】
筋力D 耐久C 敏捷C 魔力E 幸運D 宝具D

【クラススキル】
騎乗:B++
 乗り物を乗りこなす能力。
 「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。
 彼の騎馬技術は世界でもトップクラスのものであり、馬であれば自由自在に乗りこなすことができる。

対魔力:E
 魔術に対する守り。
 無効化はできず、ダメージ数値を多少削減する。

【保有スキル】
射撃:C+
 銃器による早撃ち、曲撃ちを含めた射撃全般の技術。
 彼は自らの宝具の力を使い、変幻自在の射撃を可能としている。

投擲(投げ縄):A++
 投げ縄の扱いの熟練度を示すスキル。
 A++ランクともなれば、もはや手先を超えた次元の精度で投擲が可能。

単独行動:A
 マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
 Aランクは魔力供給なしで1週間現界可能とされる。

牛飼いのカリスマ:B
 馬や牛に対する威厳、統率能力。
 カリスマに類似した効果を、馬や牛に対してのみ発揮する。
 全ての馬は彼に敬意を表して首を垂れる。
 毎年3000頭の牛を連れ、4000kmを旅するカウボーイに備わった風格。


【宝具】
『牛飼いは荒野に死す(オー! ロンサム・ミー)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:2人
 ライダーが所有する投げ縄。……厳密には、投げ縄を用いた彼自身の異能。
 ロープ上に限り、ロープに触れた者の肉体を分割して移動させることができる。
 肉体をバラバラにして攻撃をかわしたり、狭い場所に入ることもできるし、腕を滑らせて遠くのものを掴むこともできる。
 ……ただ、それだけの能力。
 この宝具を活かせるのは、類まれなるロープ捌きの技術を持つライダーだからこそなのだ。

【Weapon】
『ゴースト・ライダー・イン・ザ・スカイ』
 ライダーの愛馬。品種はマスタング。
 持久力を重視して交配を重ねた名馬である。

【人物背景】
 毎年3000頭の牛を連れて4000kmを旅する、ワイオミングの伝説的カウボーイ。ルックスもイケメンだ。
 保安官の友人がいる関係で、保安官の補助や代理の任務を受けることもある模様。
 15歳の頃、呪われた土地「悪魔のてのひら」に迷い込み、生死の境をさまよう中でスタンド能力を獲得する。

 アメリカ大陸横断レース「スティールボールラン」に優勝候補として参加……したのだが、残念ながら二回戦で負傷して敗退。
 その後、愛した女を守るために追っ手と戦い、死亡した。享年31歳。

【サーヴァントとしての願い】
 とくになし。
 カウボーイの人生に悔いはあっても、やりなおしたいとは思わない。
 ただ、マスターを家に帰してやりたい。彼には帰る家があって、待つ子供がいるのだから。


538 : Take Me Home, Country Roads ◆uL1TgWrWZ. :2018/05/04(金) 02:53:49 .Q3m/2ug0

【マスター】
 バズ・ライトイヤー@トイ・ストーリー

【能力・技能】
 おもちゃの肉体を持つ。
 なので小さく、そこそこ頑丈である(が、所詮はプラスティックなので強い衝撃には弱い)。
 赤外線レーザー(ただの赤外線ライト)やヘルメット展開、飛行翼の展開など、様々なギミックを持つすごいおもちゃ。
 光る! 回る! 音が出る! が、空を飛ぶことは出来ない。
 背中の電池入れの下にあるスイッチを押すことで、初期化や言語変更などのモード切替もできる。

 当然、おもちゃであるため他のおもちゃとも会話が可能。
 ただし全てのおもちゃは決して人前では喋らないし動かないようにするため、基本的にはバズ単独の場合でしか会話は不可能だろう。
 これは絶対のルールというわけではないのだが、それでも彼らは決して「おもちゃが生きている」ことを人間にバラそうとしない。
 ……というか、小ささ故か彼らの話し声は人間に聞こえないようでもある。犬には聞こえるようだが。
 (ただし今回、バズは状況の特殊性からライダーと念話を行うことにしている。他の主従を前にしても動くが、民間人の前では動かない)
 逆にバズは長年人目から隠れて冒険を繰り返してきたため、類まれなる気配遮断能力を持つ。

 おもちゃに共通することだが身体能力もかなり高く、人間の幼児程度の筋力がある。
 痛覚はかなり曖昧で、衝撃にある程度痛みを感じることはあるが、腕がもげても(ショックは受けるが)さほど痛みを感じる様子はない。
 バズ個人の才としては作戦立案能力や状況整理能力、行動力がズバ抜けており、まとめ役として非常に優秀。なんと車の運転もできる。

【人物背景】
 大人気テレビアニメ「バズ・ライトイヤー」のおもちゃ。
 『トイ・ストーリー』はおもちゃたちに自我があるという設定の作品だが、かつての彼はおもちゃである自覚が無かった。
 だがライバルであり仲間であるウッディとの出会いや冒険を乗り越え、自らを「アンディのおもちゃ」と肯定的に考えるに至る。
 アンディのおもちゃたちの中ではサブリーダーとでも言うべきポジションであり、責任感が強く冷静で真面目。
 ウッディが不在の時は彼がリーダーとなって行動することも多い。

 ……やがてアンディは大人になり、彼は次の子供のおもちゃになった。
 それは少し悲しいけど、悲しいばかりのことではなく……ボニーのおうちでも彼は楽しくやれているようだ。

 彼はもう、自分が宇宙を救うスペースレンジャーでないことを知っている。
 空は飛べないし、レーザーは出ないし、悪の帝王ザーグもいない。
 しかし、彼はバズ・ライトイヤーだ。彼が、誰かのおもちゃである限りは。

【参戦時期】
 『トイ・ストーリー3』終了後。
 ボニーのおもちゃとして暮らしている中、見滝原に呼ばれた。

【聖杯にかける願い】
 ボニーの家に帰る。


539 : ◆uL1TgWrWZ. :2018/05/04(金) 02:54:46 .Q3m/2ug0
投下終了です。ズガンとかは無かった。実際合法な


540 : ◆As6lpa2ikE :2018/05/04(金) 07:47:06 FNt4f.j20
投下します


541 : おとなになれないこどもたち ◆As6lpa2ikE :2018/05/04(金) 07:47:32 FNt4f.j20
疲れた顔に足を引きずって。

照り返す夕日に顔をしかめて。

行こうか。

戻ろうか。

悩みはするけど、しばらくすれば歩き出す背中。

そうだ行かねばならぬ。

何はなくとも生きて行くのだ。

僕らはどうせ、拾った命だ。

ここに置いてくよ、なけなしの──




542 : おとなになれないこどもたち ◆As6lpa2ikE :2018/05/04(金) 07:48:36 FNt4f.j20
そう遠くない内に地獄の如き様相を呈する未来が確定している場──それが、見滝原という街である。
其処彼処で殺人事件が発生し、彼方此方にサーヴァントという名の魔人が跋扈しているのだ。
そんな、魔戦の舞台と化しつつある恐るべき場であっても、千翼にとっては心安らぐべき所であった。
何せ、この世界には『アマゾン』という存在がいない。
己が狩っていた怪物も、己を狩ろうとしていた組織もいないのだ。
だからこそ千翼は、記憶を封印されている間、NPCとしての生活を送る事が出来たのである。
彼が、ただの人間として生きる──それは何と幸福な、夢みたいな事であろうか。
だが夢はいつか醒めるもの。
記憶は封じる事が出来ても、アマゾンの特性である食人衝動を封じる事は出来ない。
見滝原に呼ばれてから一日も経たない内にその衝動を自覚した途端、彼の記憶にかけられた封印は解かれ、マスターとして聖杯戦争に参加するに至ったのである──夜。
月明かりが見滝原を照らす夜。
都心から離れた郊外に位置する廃屋にて。

「聖杯戦争が始まるまで、あともう少し。闘いはすぐそこだ。──いや、もう既に始まっているのかもしれないね」

現在見滝原を騒がせている数々の怪事件──ウワサを思い出しながらそう語るのは、千翼が召喚したサーヴァント、バーサーカーであった。
狂戦士のクラスであるとは思えないほどに、彼の話し方は理知的なそれである。

「準備は出来ているかな? マスター」
「…………」

バーサーカーの問いに対し、千翼はズズズッと音を鳴らしながらチューブ型の栄養食品を一気に吸っただけだった。
聖杯戦争のマスターに選ばれたという事実にまだ困惑しているというのに、戦う準備など完了しているわけがない。
確かな願いを持つ他のマスター達を斃し、彼らの願いを踏み躙る覚悟など、まだ決まっているはずがないのだ。
それでも。

「……俺は戦う」

未だ迷いがありながらも、彼の根本的な方針は定まっていた。
マスターとして覚醒した今、元の世界の記憶ははっきりと思い出せる。
千翼がいた世界は、彼が生きるにはあまりにも向いていない世界だった──いや。
人喰いの怪物であるどころか、人を怪物(アマゾン)へと変える特殊な細胞を持つ千翼の生存が受け入れられる世界など、平行世界中を見回しても存在しないだろう。
それこそ聖杯にでも願わない限り、彼の存在が祝福と共に受け入れられる現実など絶対にありえないのだ──いや、もしかすれば聖杯に願ったって叶わないかもしれない。
それでも、千翼が戦う意思を持っているのは──

「元の世界に戻るために──イユと共に生きる為に」

大切な彼女にまた会いたい。
共に生きたい。
そんなささやかな、しかし切実な願いを胸に、前に進もうとする。


543 : 名無しさん :2018/05/04(金) 07:49:25 FNt4f.j20
「…………」

──もうトーカにあえないのか

──退かない 前に進む 百足みたいに

そんなマスターの姿に、バーサーカーはかつての自分を重ねた。
腕と脚を失い、絶体絶命の窮地に陥ってなお、大切な彼女の為に前に進まんとした、かつての自分を。

「……わかった」

千翼の言葉を受け、バーサーカーは頷く。

「君の思いはわかったよ、マスター。その思いに応えて、僕は誓おう。君を、元の世界に必ず返すと」

君を、生かすと──と。
絶対の意志をもって、そう告げた。
ああ──だが、バーサーカーよ。
金木研よ。
悲劇の舞台で踊る事を宿命付けられし演者よ。
お前は気づいているだろうか。
──何処かから、百足が這う音が聞こえたことに。


544 : おとなになれないこどもたち ◆As6lpa2ikE :2018/05/04(金) 07:50:29 FNt4f.j20
【クラス】
バーサーカー

【真名】
金木研@東京喰種

【属性】
混沌・中庸

【ステータス】
筋力C 耐久A 敏捷B+ 魔力D 幸運E 宝具D

【クラススキル】
狂化:E++++
理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
金木研は通常時は狂化の恩恵を受けないが、その代わりに正常な思考力を保つ。
ダメージを負うごとに幸運判定を行い、失敗すると魔力と幸運を除くステータスが上昇する代わりに、理性が消失し暴走する。

【保有スキル】
喰種:EX
種を喰らう種。人類の天敵。霊長の捕食者。
人肉を喰らう事で魔力が回復し、ステータスが上昇する。
ランクはバーサーカーが希少な隻眼の喰種である事から特異性のEXを意味する。
このスキルは『人を喰らう』という点を見れば、『対人類』と言い換えられるかもしれない──あるいは『獣の権能』とも。

戦闘続行:A+
往生際が悪い。
このランクにまでなると、霊核を完全に破壊されても判定次第では戦闘が続行可能になる。
いかなる負傷を受けたとしても、護るべきものがある限りバーサーカーは退かない。百足みたいに前に進む。

単独行動:C+++
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
バーサーカーは生前から多くの仲間に支えられて行動していたが、それと同じくらい単独での行動にも慣れていたため、下記の宝具の機能低下に伴い獲得した。
通常時だとCランク相当だが、下記のスキルで姿が変化した後はプラス値分上昇する。プラス値発揮後の数値を見るならば、単独行動のウルトラ上位互換のスキルにも匹敵する効果を有する。

喰竜変生:EX
変化スキルの最高位。あるいは赫者の究極体。もしくは『こうりゅうぎ』とも。
発動する事で己を竜へと変じさせ、多重のバフを獲得する。
肉体ステータスも全てが最大まで上昇するが、それに伴い狂化スキルも一気に上昇し理性を失う。
竜と化し、圧倒的な力を備えたバーサーカーの姿は大災害としか形容できない。
このように、実に強力なスキルだが、その分発動に必要な魔力量は凄まじく、令呪によるバックアップ、あるいは複数のサーヴァントを短時間で一気に喰らう必要がある。

【宝具】
『黒山羊(ゴート)』
ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

隻眼の王が率いる喰種と人間の集団組織を召喚する宝具──だったが、金木研のバーサーカーとしての召喚に伴い、隻眼の王の側面よりも、東京を脅かした竜としての側面が強調された状態となった為、召喚は現在発動不可能となっている。

【weapon】
・赫子

【サーヴァントとしての願い】
マスターを助けたい。

【人物背景】
彼を召喚するには、特別な触媒も資格も必要ない。
ただ求められる事。それがバーサーカーが召喚されるたった一つの条件である。
ステータスが高く、話が通じるタイプのバーサーカーである金木研は当たりの部類のサーヴァントと言える──だが。
だが、彼が登場し、関わる事になった物語が辿る結末は、悲劇に他ならないだろう。


545 : おとなになれないこどもたち ◆As6lpa2ikE :2018/05/04(金) 07:51:09 FNt4f.j20
【マスター】
千翼@仮面ライダーアマゾンズ

【能力技能】
・アマゾン
ネオアマゾンズドライバーを用いる事で仮面ライダーアマゾンネオへと変身できる。
また、極限まで追い詰められる事で、オリジナル態へと変化する。

【人物背景】
人の世に生まれるべきではなかった怪物。

【願い】
大切な人と共に生きたい、という誰もが持つ根本的にして本能的な欲求こそが、彼の切なる願いである。
万能の願望器を用いれば、その願いが祝福とともに叶えられる未来もあり得なくはないだろう。


546 : おとなになれないこどもたち ◆As6lpa2ikE :2018/05/04(金) 07:51:30 FNt4f.j20
投下終了です


547 : ◆RVPB6Jwg7w :2018/05/04(金) 21:49:58 2mOu0aSg0
投下します。


548 : シールダー&シールダー ◆RVPB6Jwg7w :2018/05/04(金) 21:50:35 2mOu0aSg0


――放課後を告げる鐘が鳴り響き、級友たちと穏やかな別れの挨拶を交わした後。
少女は、静かに図書室へと向かった。

片目を半ば隠すような、薄い桜色の前髪。
その下に光る眼鏡。
その身を包むのは、周囲の学生たちと何も変わらない、ごく普通の日本の学生の制服。

少女は迷いのない足取りで、本棚の間を進み、図書室の最も奥まった場所へ。
自習スペースは離れたところに別に作られており、この場所この時間は人の気配がない。
そんなところも込みで、この空間は少女にとってお気に入りの場所の1つだった。
改めて回りに誰もいないことを確認すると、少女は虚空に呼びかける。

「……ブローディアさん。ここなら大丈夫です」
「……了解だ、マスター」

少女の呼びかけに答え、何もない空間に人影が現れる。
一見して派手な、女性の姿だった。
燃えるような赤い長髪。
整った容姿ながらも、鋭い視線。
白と紅とを基調とした、派手な服。丈の短いスカート。
そして、女性自身よりも長いほどの、これもまた紅白に塗り分けられた、巨大な刀。
ブローディアと呼ばれた女性は、目の前の桃色の髪の少女と向き合う。

「それで、考えの整理はついたのか、マスター。――マシュ・キリエライトよ」
「ええ。決めました」

射貫くような視線に憶することなく、マシュと呼ばれた少女は、自らのサーヴァントと向き合った。


 ――――――――――――――――――――――――


かつてマシュ・キリエライトは、人理継続保障機関フィニス・カルデア所属のデミ・サーヴァントだった。
英霊と人間の融合を目指して「創られた」デザイン・ベイビー。
デミ・サーヴァント作成実験の唯一の成功例。
一時期は隔離され存在を秘匿されていた彼女だったが、紆余曲折の末に人理修復の旅に身を投じ。
最終決戦において、彼女は短い寿命から解放されるのと引き換えに、デミ・サーヴァントの能力を失った。
以降、一局員として、細々とした仕事をしながらカルデアに入るはずの査察を待っていた――はずだったのだ。

マシュの記憶は、掃除の際、カルデアの倉庫で、記録にない無色透明の宝石を見つけた所で終わっている。

「気が付けば……ここで、日本で、ひとりの学生として暮らしていました。
 昨夜、記憶を取り戻して、ブローディアさんを召喚する時まで、何も疑うことなく」
「…………」

名前といい、外見といい、ただの『日本人』で押し通せる訳もないマシュであったが。
血筋の上では外国人、育ちは日本。
両親は仕事の都合で先に『母国』に帰り、マシュは学校を卒業するまではと日本に残ることにした……
という『設定』で、『両親からの仕送り』を受けながら、一人暮らしを続けていたのだった。

「おかしいですよね、存在しない『両親』、顔も知らないのに、違和感すら感じなくって」
「まあ、そういうものではあるようだからな」

英霊として呼ばれた女剣士・ブローディアは、笑いもせずにマシュの言葉に頷く。
聖杯戦争のルールと共に叩き込まれた、記憶の喪失と回復についてのルール。
それに照らし合わせてみれば、偽りの経歴とその記憶とはいえ、抵抗などできる者の方が珍しい。

「それで、どうするんだ、マスターは」
「思い出してしまった以上、私は帰らなければなりません……カルデアに」
「帰る、か」
「ええ。先輩たちにも心配をかけてると思いますし、何より、私が、戻らなきゃいけないって。そう思うんです」

元居た場所に戻る。
願いとかどうでもいいから、ただ、帰る。
今回のこの強引な参加を強いる聖杯戦争では、誰もが抱く動機だ。誰もが考えることだ。
そして『ただそれだけ』のことであっても、『聖杯の奇跡を要する程のことかもしれない』。
時と場所と、下手すれば世界さえも超えたこの空間、脱するにはそれくらいの奇跡が要るかもしれない。
これはおそらくほとんどの主従が一度は考えるであろうこと――ただし。

「――でも」

だが、マシュ・キリエライトの願いは、そこに留まらなかった。
真っ直ぐにブローディアの目を見つめながら、彼女は、さらに言葉を紡いだ。

「でも――だからといって、『この街』の人々が、見滝原が、どうなってもいいとは思っていません」
「ほぅ?」

マシュの言葉に、ブローディアの口元が、初めて笑うように吊り上がった。


 ――――――――――――――――――――――――


549 : シールダー&シールダー ◆RVPB6Jwg7w :2018/05/04(金) 21:51:32 2mOu0aSg0

マシュ・キリエライトの行動指針は、やはり次の一言に集約される。
『これが先輩だったらどうしただろう?』、だ。

あの時、瀕死の自分の手を握ってくれた先輩。
デミ・サーヴァントとしてのマシュの『マスター』を務めた先輩。
共に人理修復の旅を駆け抜けた先輩。
マシュの信じる先輩。

「この街に暮らす人々が、本当の血の通った人間なのかは私には分かりません――
 ひょっとしたら、昨日までの私に刷り込まれていた記憶と同様、『偽りのもの』なのかもしれません。
 あるいは人理から切り離された、『見捨てたとしてもどこにも影響の及ばないもの』なのかもしれません。
 でも、それでも」

そう、例えそうだとしても、きっと先輩なら。

「それでも――私は、『彼ら』を守りたい。
 この街で、当たり前にくらす、『普通の人々』を、できる限り守りたい。
 こんな街中で英霊同士がぶつかり合えば、おそらく、出なくても良い被害が沢山出るでしょう。
 全てを守り切る、なんて傲慢を言う気はありませんが――それでも、可能な限りは、助けたい」

ある意味でそれは、恩返しでもある。
先輩が普段から語っていた、『ごく平凡な日本の学生の暮らし』を体験することができた。
カルデアの外の、『あたりまえの生活』を体験することができた。
偽りの経歴と偽りの背景に支えられたものではあったけれど、それは本当に泣きたくなるくらい幸せな日々で。

先輩なら、彼らを見捨てない。
自分としても、彼らを見捨てたくない。

帰らなければならない、それは百も承知だけど。
帰るための手助けにはならないどころか、おそらく、無駄に危険と苦労を背負う道になるけれど。

聖杯戦争のマスターでもサーヴァントでもない、『普通の人々』の犠牲を、見過ごしたくは、ない。

その真摯な願いは、そして、清廉なる英霊の心も動かして。

「――いいだろう、マスター。
 ならばこのゴッドガード・ブローディア。
 全身全霊をもって、マスター・マシュ・キリエライトの想いに応えよう」

女剣士は鷹揚に頷く。
彼女の正体は、空に島々が浮かぶ世界で、星の民に創られた星晶獣。
土の大天司の使徒にして、今は『特異点』と彼らが呼ぶ一人の若者の騎空団に属する騎空士。

「私も、帰りたい、と言えば帰りたいのだがな――ウリエル様、それに『特異点』のところへ。
 しかし私もまた、無辜の民の犠牲を見殺しにしてまで帰りたいとは思わん。
 それこそ、皆に合わせる顔がないだろうよ」

ブローディアもまた、それが容易い道でないことは理解している。
例えば本来彼女が持つ能力の一部は、英霊のクラスというシステムの関係上、制限されてしまっている。
普段通りの力が発揮できない条件下、自らと同等の存在たちを相手に、力なき民を守って回る――
その難しさを理解できない彼女ではない。

それでもきっと、これが『特異点』、いや『団長』だったなら、諦めない。

ブローディアの胸の内にもまた、そう信じられる相手がいるのだった。


 ――――――――――――――――――――――――


「それでマスター。
 守るのはいいが、この『学校』とやらはどうするんだ? 立場上、毎日通う必要があるのだろう?」
「『ここ』を守る意味でも、可能な限りは通い続けようと思います。ただ……」

夕日の差す図書室の中。
ブローディアの問いに、マシュは少し悪戯っぽく微笑む。

「記憶が戻ってから、改めて私の『ここでの』経歴を確認してみたんですが。
 私はどうやら『昔は病弱だった』ことになってて、『休学していた時期もある』ようなんです。
 たぶん、現実の私の、昔の寿命に関する事実を反映した『設定』だと思うんですが」
「ふむ」
「それから、自分で言うのもなんですけど、私、どうやら真面目な優等生ってことになってるようです。
 なので――『早退』も『病欠』も、あまり疑われないかと」

ブローディアは一瞬目を丸くして、そしてフッと笑う。

「悪い子だ」
「こういうのは嫌いですか?」
「昔の私なら、怒っていたかもしれないな。
 しかし、まあ、その程度はいいだろう。
 私もいつの間にか、丸くなったものだ。これも『団長』の影響か」
「私もたぶん、先輩と知り合う前なら、思いつかなかったことだと思います」

かつて盾を持って駆けた少女と、盾そのものを体現する剣士。
どちらの胸の内にも、大切な存在がいる。二人を変えた存在がいる。

夕日の中、二人は改めて、どちらからともなく手を差し出すと、力強い握手をした。


 ――――――――――――――――――――――――


550 : シールダー&シールダー ◆RVPB6Jwg7w :2018/05/04(金) 21:52:28 2mOu0aSg0

【真名】ブローディア@グランブルーファンタジー

【クラス】シールダー

【ステータス】
筋力:B 耐久:B 敏捷:B 魔力:A 幸運:C 宝具:A+

【属性】秩序・善

【クラススキル】
対魔力:A
 Aランク以下の魔術を完全に無効化する。事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。

騎乗:EX
 騎乗の才能。
 例外的な処置として、このサーヴァントは特定の竜種「のみ」を扱うことができる。
 とはいえ、本来の相棒である『刃鏡の躯を持つ守護竜』は、シールダーのクラスでは召喚・使役ができない。
 他の竜種を強引に従わせる能力がある訳でもなく、事実上、無価値なスキルと化している。

自陣防御:B
 味方、ないし味方の陣営を守護する際に発揮される力。
 防御限界値以上のダメージ削減を発揮するが、自分はその対象には含まれない。
 また後述する法具『不可侵神域』は、このスキルにより増幅を受け、この場合に限り本人も対象となる。

 (仮にこのサーヴァントがシールダー以外のクラスで召喚された場合、この増幅分が失われる。
  そのため『不可侵神域』の効果は、100%カットから約70%カット相当にランクダウンすることになる)

【保有スキル】
空界の理(土):A+
 ブローディアは極めて強い『土』の『属性の力』を宿している。
 そのあまりの強さから、ブローディアに対する攻撃・ブローディアからの攻撃については、
 『この世界』の属性間の『相性』を『上書き』し、『空の世界』での強弱関係に従わせてしまう。

 攻撃方法や相手の性質に合わせ、『土・水・風・火・光・闇』のいずれかに無理やり分類し、相性を参照する。
 (厳密には第七の属性『無属性』も存在するが、極めてレアであり、原則として該当しないものとする)
 ブローディア自身は常に『土属性』に固定される。
 ランクの『A+』は、この属性間相性についての『上書き能力』の強さを表す。
 A++相当以上の宝具・スキルならばこれを無効化する可能性がある(なおEXは単純な強弱ではないので別枠)。

 なお『空の世界』においては、『土』は『水』に強く、『風』に弱い属性である(それ以外は同等)。
 それぞれ、攻撃/防御/状態異常の成功率に大きなボーナス/ペナルティを受ける。
 『土・火・光・闇』の4属性にはボーナスもペナルティもなく、実際問題としては無意味な相手の方が多い。
 ちなみにこの『属性』の判定において、『水』属性は冷気や氷なども含んだ概念として扱われる。
 その一方で、雷や電撃は『風』ではなく『光』に属する。

魔力放出(刃鏡):A
 武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ瞬間的に放出することで能力を向上させるスキル。
 ブローディアの場合、これを後述する刃鏡に限局して使用する。
 魔力放出によるブーストをかけることで、刃鏡の攻撃力・防御力・移動速度の全てが飛躍的に向上する。
 また戦闘中、放出される余剰魔力を少しずつ刃鏡にチャージしていくことも可能。
 これにより、長期戦になればなるほど刃鏡の性能は向上していく。

【宝具】
『不可侵神域』(アンクロッサブル・レルム)
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜5 最大捕捉:10人
 広げた刃鏡を起点に展開する、絶対防御障壁。
 展開されたこの障壁は、理論上、あらゆる攻撃を完全に防ぐ(100%カット)。
 レンズ状に展開し、敵からの攻撃を真っ向から受け止め自陣営を守るのが基本の使用法。
 しかし障壁の形状はかなり融通が効き、状況に合わせて自在に変更することができる。
 例えば機械兵器が自爆を試みた際、完全に包み込む球形の結界を展開し被害をゼロに抑えたこともある。

 なお形状を選べるのは展開する瞬間のみで、一旦展開した後は一切の変更が効かない。
 使用の際には膨大な魔力を消費し、手持ちの刃鏡を全てこの宝具のために回す必要がある。
 また使用した後は長い再準備期間を要し、事実上、1回の戦闘においては1回きりしか使用できない。

『刃鏡螺旋』(ミラー・ブレード・ヘリックス)
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜25 最大捕捉:1人
 刃鏡をすべて攻撃に回す攻の奥義。
 巨刀ニーベルンクリンゲを構えた本体の突進に合わせ、円錐状に展開された刃鏡がドリルのように高速旋回。
 魔力と刃をただ一点に集中させたその攻撃は、大概のものは貫通できる威力がある。

 刃鏡を全て使う関係上、上記の『不可侵神域』との同時使用は不可能。
 またこちらも連続使用は困難だが、『不可侵神域』よりは消耗が少なく、遥かに融通が利く。


551 : シールダー&シールダー ◆RVPB6Jwg7w :2018/05/04(金) 21:53:01 2mOu0aSg0
【武器】
『ニーベルンクリンゲ』
 鮮やかな紅白二色に塗り分けられた、ブローディア自身の身長よりも長大な両手持ちの刀。
 これ自体が絶大な力を持つ魔剣であり、ブローディアはこれを軽々と扱う。

『刃鏡』
 ブローディアの周囲に多数浮かぶ、割れた鏡のような形状をした虹色の刃。数と個々のサイズは不定。
 意のままに宙を舞って動く攻防一体の武器。
 突進して敵を貫いたり切り裂いたり。敵の攻撃の進路上に浮かび、攻撃を受け止めたり、魔法の類を弾いたり。
 主に巨大な刀を振るう本体の隙を埋めるために使われるが、抜群のコンビネーションで本体をサポートする。
 宝具『不可侵神域』『刃鏡螺旋』の展開の際にも不可欠な存在。

 ちなみに、めったなことでは破損するものではないが、万が一破損しても魔力消費で再作成できる。
 なお、シールダーのクラスの時には射程は比較的短く、飛び道具や使い魔のように使うことはできない。

【人物背景】
 土の属性を持つ星晶獣にして、土の大天司ウリエルの使徒。
 元々は天司とは別個に生み出された星晶獣だったが、ウリエルと巡り合い弟子入りし、使徒となった。
 ウリエルの命により、『特異点(主人公)』の旅に同行するようになった後からの参戦。
 正義感が強く善行を志向する性格だが、『特異点』の影響で多少の融通は利くようになっている。

【サーヴァントとしての願い】
 マスターの願いに応え、一般人を可能な限り守り抜く。



【マスター】マシュ・キリエライト@Fate/Grand Order

【性別】女

【能力・技能】
 シールダーのデミ・サーヴァントであった時期もあったが、今はその能力を失っている。
 社会経験は乏しいが知識は多く、幅広い分野に及んでいる。
 さらに、サーヴァントの能力を喪失した後、オペレーターとしての訓練と経験も積んでいる。

【人物背景】
 人理継続保障機関フィニス・カルデア所属の局員の一人。
 英霊と人の融合を目指すデミ・サーヴァント唯一の成功例。そのためだけに創られた存在。
 その代償に短い寿命を背負っていた。
 人理修復の旅の最後の局面において、彼女はデミ・サーヴァントの能力を失い、同時に短い寿命も克服した。

 Fate/Grand Order、第一部終了後、第二部序章開始前からの参戦。
 すなわち1.5部の途中になるが、少なくともイベント進行中ではなかった(詳しい参戦時期は後続に委ねます)。

 見滝原におけるロールにおいては、外国人の両親を持ち、日本で育った学生という身分。
 『両親』は仕事の都合で母国に先に帰っており、彼女は学校を卒業するまでという条件で一人残っている。
 また、かつて身体が弱く、休学していた時期もある、という設定もついている。
 (彼女の通う学校については、後続の書き手もしくはOPに委ねます)

【聖杯にかける願い】
 元のカルデアに戻る。
 しかし、だからといって見滝原の一般人の被害を見過ごすことはできない。


552 : ◆RVPB6Jwg7w :2018/05/04(金) 21:53:20 2mOu0aSg0
投下終了です。


553 : ◆GO82qGZUNE :2018/05/05(土) 08:59:22 PgfwCWfg0
投下します


554 : 千翼&バーサーカー ◆GO82qGZUNE :2018/05/05(土) 09:00:21 PgfwCWfg0





 あなたの命に刻み込まれた、たった一つの小さな力。
 すべての生ある者に与えられた、取るに足らない小さな祈り。
 あなたが、いま、ここに在るという。
 ただそれだけの、奇跡。





   ▼  ▼  ▼


555 : 千翼&バーサーカー ◆GO82qGZUNE :2018/05/05(土) 09:00:38 PgfwCWfg0





 ただひたすらに"生きたい"と願った。
 けれどそれは、他者を"食らいたい"と願ったわけではないのだ。



 見滝原の郊外には工場群が存在する。
 いや、存在した、と表現したほうがこの場合は正しかろう。
 昨日までは多くの工員が行き来したであろう鉄錆と灰色の建物群は見る影もなく、砕けたガラスやセメントダストに覆い尽くされてキラキラと輝いていた。
 周囲一帯には無数のクレーターが穿たれ、掘り返された土砂がコンクリの灰色の上に生乾きの土気色を晒している。無残にも半壊した工場の壁面の多くは炎で炙られたかのように黒く焼けつき、あるいは淡青色に氷漬けにされ、その破壊痕を氷像のように固定されている。
 栄華極めし人の営みの証たちは、今はただ冷たい雨に晒されて陰鬱な水音を跳ね返すだけだった。

「……やめてくれ」

 およそ尋常には考えられない、この世の地獄と形容しても良い惨状に、響く声がひとつ。
 そこには、ひとつの人影が力なく膝をついていた。
 ひとり。少年である。
 年の頃は十代の半ばか少し上と言ったところか。背は低めで童顔であり、雨に濡れる黒髪は艶やかな光沢を放っている。一見すれば市井によく見る少年であり、何の変哲もない一市民でしかない。
 だが彼の顔に浮かべられる表情は、どう見ても年相応の少年のものではあり得なかった。
 悲嘆。
 あるいは、哀絶。
 それはまだ十七かそこらに見える、そんな幼い少年が浮かべるには酷く疲れた、消え入りそうな表情だった。

「もういい、俺は大丈夫だ。だから……」

 目に見える全ては暴威か炎か氷に蹂躙され尽くして、
 けれど少年の周囲だけは、綺麗なほどに何の影響もなかった。
 少年と、少年の周り一メートル程度の空間。それはまるで、"何者か"が彼を守ったかのように。
 けれど、彼の顔は悲しみに歪められて。
 ならば、彼は一体何を思っているのか。

「もう、やめてくれ」

 覇気の感じられない声が、虚空に溶けて消える。
 破壊と死に彩られた廃墟は、ただ冷たく無機質な雨音だけを返した。
 そこには何も残ってなどいない。誰も、何も、救いさえも。

「人間を、殺さないでくれ」

 残っているのは、ただの怪物が一人きりだ。








556 : 千翼&バーサーカー ◆GO82qGZUNE :2018/05/05(土) 09:00:58 PgfwCWfg0





 "それ"は、いつでも千翼のことを見守っている。
 冷たい雨に濡れる街の中で、淡く光るその姿だけは濡れることなく浮かんでいる。

 金糸の髪。純白の衣服。光を編んで紡がれた翼。
 柔らかな短髪と細い体躯は抱けば折れそうなくらい華奢で、繊細な飴細工を思わせる精緻さがあった。
 彼女は浮かぶ。言葉なく、表情もなく、ただそこに浮かんでいる。実像としては確かに存在しているのに、彼女の気配はどこまでも希薄で、軽い。

「俺は……」

 何をすべきなのか。
 雨に濡れそぼる手のひらを見つめ、呟く。かつて血に濡れたはずの手は、あまりに空虚で、無力だった。

 ───溶原性細胞は危険すぎる。

 ───俺が七羽さんのところに送ってやる。

 ───人間なんかじゃない、ただの化け物だ。

 頭の中に響く声がある。告げられた言葉、直視したくなかった真実、自分が背負うべき罪と罰。
 生きていてはならないのだという、ただそれだけの事実。
 自分が生きるためには誰かを殺す他になく、食らう他になく、滅ぼす他になく。
 その現実は、聖杯の奇跡でもなければ覆すことなどできないけれど。

「それでも俺は、誰かを殺したくなんてなかったんだ」

 生きたいと思った。それのみを願った。
 求めたのはイユとの平穏な日々。誰も傷つけず傷つけられない、そんな当たり前の日常。
 そんなものは何処にも存在できないのだと、気付いた時には全てが手遅れだった。

 自分が死ななくてはならない理由は、千翼自身もよく分かった。
 溶原性細胞。人食いの本能。人類社会さえ崩し得る致命的な害悪。
 人が生きている限り、決して相容れることのない自分という存在。

 自分を殺す人類を、憎いと思ったわけではない。
 自分とイユさえ生き残れるなら、人類全てが滅びればいいと願ったわけでもない。

 ただ───

「生まれたことがどうしようもなく間違いだったとしても……それでも俺は、最期まで生きたかった」

 願ったのは、きっとそれだけ。
 生きとし生けるものに共通した、たったひとつの小さな祈りだ。


557 : 千翼&バーサーカー ◆GO82qGZUNE :2018/05/05(土) 09:01:13 PgfwCWfg0

「なあ……君はどうなんだ?」

 その問いに答えが返ってこないことは、最初から知っている。
 背後に漂う彼女が、横顔を覗きこむのが分かった。
 彼女の表情は何も変わらない。何を考えているのか、口に出すこともない。
 彼女はただ見つめるだけだ。街を、世界を、人の営みを、そして千翼自身を。

 少女がどのような存在なのかは分からない。だが彼女が何を基準にその牙を剥くのかは分かった。
 《天使》は、千翼を傷つけるものだけを傷つける。
 子を守る親のように。親を庇う子のように。
 同族を庇護する、家族であるかのように。

「俺を守ってくれた君に……俺の声に応えてくれた君に、俺は何もしてやれなかったけど。
 それでも俺は、せめて君と話してみたいって思う」

 母さんから聞いたことがある。天使様は人を救うために降りてくるのだと。
 そうだとするならば、人を救う天使は誰によって救われるのだろう。
 神様はどこにもいない。彼女は誰にも見られない。そして千翼でさえ、その手を掴むことは叶わない。
 彼女は、どうあっても救われない。

 ふと空を見上げた。
 止まない雨の中、翳り行く世界はどうしようもなく、進路も退路も塞がれた道の中で。
 滴る雨に濡れることもなく、浮かぶ金糸の髪と光の翼は、現実の風ではない流れにふわふわと揺れていた。











 かつて誰かが歌っていた。青い空があり緑の草原があり、そして愛する者が傍にいればそれだけで世界は美しい。
 それさえ失ってしまえばどうなるか、歌は何も教えてはくれなかった。

 空と君との間には、今日も冷たい雨が降る。


558 : 千翼&バーサーカー ◆GO82qGZUNE :2018/05/05(土) 09:01:40 PgfwCWfg0

【クラス】
バーサーカー

【真名】
《天使》@ウィザーズ・ブレイン

【ステータス】
筋力- 耐久- 敏捷E 魔力A++ 幸運E 宝具C

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
狂化:EX
彼女たちは人間的な感情、思考、在り方を求める、この世に生まれず生きることもなかった可能性存在である。
己が持たないが故に羨望し、眩しいが故に手を伸ばす。その有り様は赤子のそれと同じであり、およそ理性的な思考体系は存在しない。

【保有スキル】
無我:A
自我・精神といったものが極めて希薄であるため、あらゆる精神干渉を高確率で無効化する。

蔵知の司書:D
同調能力者三十九体による精神結合体。
多重層記憶媒体により記録を分散させており、LUC判定に成功すれば過去に知覚した知識、情報を、たとえ認識していなかった場合でも明確に再現できる。

情報制御:A+++
超高々度の演算により情報の海へと介入し既存世界を改変する技術。
バーサーカーの場合は同調能力により物質の根源的な情報に直接アクセスすることが可能であり、「高速で思考する物体」を除くあらゆる存在をほぼ無制限に改変することができる。
高速思考、分割思考のスキルを内包する。

うたかたの夢:EX
集団の願望から作りだされた存在。その性質上特定の方向性に対して極めて強い力を持つが、同時に一つの生命体としては永遠に認められない。
バーサーカーの場合、人類という一つの共同体に捧げられた「生まれることなく殺された子供たち」である。彼女はマスターを除いたこの世の誰にも知覚されず、実在さえ持たないが、一個の意識体として確かにそこに存在している。

【宝具】
『《天使》(マザーコア・コードアンヘル)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜999 最大捕捉:20
自身を中心とした一定の半径内に情報的な支配領域を広げ、領域に触れた対象の全存在情報を取り込み、情報の側から支配する。物理でも魔術でもなく「情報」の側からの支配であるため、対魔力による軽減は不可能。
ただし支配領域は球形上かつ触れる者全てを無差別に取り込むため、遠隔の対象を選別して取り込むことには向かない。また、領域内の情報量があまりに多くなると自動的に発動がキャンセルされる。取り込み限界は常人ならば20人、サーヴァントならば2〜3人、空間や無生物であるなら無尽蔵。
この宝具によって支配した物体は、情報強度が低い(=思考速度が遅い)ものであるなら無制限に操作が可能となる。分子配列変換による食糧等の生成、気体操作による居住可能環境の構築、重力改変による飛行など、応用の幅は広い。
また、同調であるため思考・記憶の読み取りを行える他、自身の思考・記憶を相手に押し付けることも可能。
最大の特徴として、この宝具によって取り込まれた全生物の状態は共有される。例えば領域内で誰かが傷を負えばその痛覚が全員に行きわたり、誰か一人でも死んだ場合は全員が死亡する。
ただし共有されるのはあくまでパーソナル的な「状態」のみであり、例えば誰かの腕が切断されたとしても、共有されるのは痛覚のみで腕の損失自体は共有されない。


559 : 千翼&バーサーカー ◆GO82qGZUNE :2018/05/05(土) 09:01:57 PgfwCWfg0

『白翼の墜ちるが如く、慟哭せよ死告天使(アンチマター・アースキャンサー)』
ランク:EX 種別:対国宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:10000000
それは一つの街を、国を、共同体を崩壊せしめた特異存在。
語られぬ逸話、誰も知らない御伽噺。
現状この宝具の情報は封じられている。
判明しているのは、これがバーサーカーの持つ最大最悪の暴威であることと、使えば全てが終わってしまうことと、
この宝具の使用を以て、初めてバーサーカーが"降誕"するということ。
それ以外は、例えマスターであっても実使用の瞬間まで詳細を把握することはできない。

【weapon】
通常時は同調支配した周囲の物体を改変して作り上げた腕や、分子運動制御により生み出した窒素結晶の銃弾や熱量などで攻撃する。

【人物背景】
殺されるためだけに生み出され、生まれることなくその命を落とし、それでも生きたいと願った少女たちの残骸。
滅びに向かう人類が作り上げた、仮初の救済たる39人の天使たち。

【サーヴァントとしての願い】
???



【マスター】
千翼@仮面ライダーアマゾンズseason2

【マスターとしての願い】
生きたい

【weapon】
ネオアマゾンズドライバー:
アマゾンネオの変身ベルト。後述するアマゾンズインジェクターを投与することで自らのアマゾン細胞に多様な変化をもたらす。

アマゾンズインジェクター:
変身に必要な特殊な薬液とそれが封入された注射器状のアイテム。
これをベルトに注入することで変身や武器の生成が行える。
数に限りがあり、現状複数回の戦闘に耐える程度の数はあるが考えなしに多用はできない。

【能力・技能】
オリジナルアマゾン:
食人本能を持つ人工生命体。外見上は人間そのものだが、それはあくまで人間態に変身しているからである。
超人的な身体能力と再生能力を持つ反面、強烈な食人衝動に襲われる。彼の場合その衝動は通常以上に強く、また彼の細胞を摂取した人間をアマゾンに変異させる力もある。

アマゾンネオ:
上記ドライバーと薬液を使用することで変身する、千翼の仮面ライダーとしての姿。アマゾンとしての力を制御・抑圧した姿であり、彼の通常戦闘スタイルと言っていい。
変身中に更に薬液を追加することでブレード、クロー、ニードルガンなどを生成する。

オリジナル態:
千翼のオリジナルアマゾンとしての姿。ネオの口が裂け、六本の腕と無数の触手を併せ持つ。いわば暴走形態。
戦闘能力は非常に高く、人間態やアマゾンネオの状態とは比較にならないほど。ただしこの形態においては理性を失っている場合がほとんどであることに留意したい。

【人物背景】
この世に生まれた罪を刻まれ、生きるという罰を背負い、それでも生きたいと願った少年。
参戦時期は最終回終了後。

【方針】
自分が生きることを許されない存在だということは分かっている。
それでも最期の瞬間まで、生きることを諦めたくはない。


560 : 名無しさん :2018/05/05(土) 09:02:18 PgfwCWfg0
投下を終了します


561 : ◆0VSR7vZCCQ :2018/05/05(土) 10:01:11 BlhOeZJ60
投下します


562 : スイムスイム&ライダー ◆0VSR7vZCCQ :2018/05/05(土) 10:02:46 BlhOeZJ60
 彼女の言葉は絶対だった。
 彼女は誰よりも強く、賢く、可愛く、そして正しい。
 だから彼女に従った。彼女の教えを一言一句間違いなく覚え、その全てを忠実に守った。
 時には大変なこともあったが嫌だと思ったことは一度もなかった。彼女が大好きだったから。憧れだったから。
 彼女に仕えているだけで幸福だった。これからもずっと仕えていようと思った。
 だがある日気づいてしまった。彼女の言葉に忠実であるためには彼女を殺さなければいけないという事実に。
 『透明な宝石』を拾ったのはそんな時だった。





 ライダーが激しく前後する。スイムスイムはそれを黙って受け入れた。一般的に慣れないうちは痛いらしいが魔法少女の頑丈さゆえか、スイムスイムはさほど痛みを感じたことはなかった。ただこの男に身体を使われていることに対する気持ち悪さだけがいつもある。
 顔の下半分をマスクで覆い、拘束具のような服を着た男。スイムスイムのサーヴァント。
 ライダーは衝動のままに放出し、それはスイムスイムの身体を通り抜けて辺りに飛んだ。スイムスイムの身体に触れられるのはスイムスイムが許可したものだけだ。今許可しているのはライダーの身体だけ。そこから出るものまでは許していない。そして身体を許すのもここまでだ。
 ライダーが抜くのを待たずスイムスイムは立ち上がる、ライダーの身体をすり抜けながら。ライダーは振り返り、不服そうに言った。

「オイオイもう終わりかよ。このまま二回戦と洒落込もうぜ」
「一回出したら終わり。そういう話だった」

 言いながらスイムスイムは用意しておいたトイレットペーパーを手に取った。ライダーが出した物をさっさと掃除しなければならない。自分でしてくれればいいのだが、残念ながらこの男が後始末を自分でしてくれたことはこれまで一度もなかった。
 ライダーと行為をするようになったのは会ってからまだ日が浅い時だった。能力を隠しもせずNPCの殺害と強姦を繰り返すライダーを諌めると、大人しくするかわりとして要求してきたのが始まりだ。
 最初はどういう意味の行為かもわからなかったが、今はインターネットで調べて知っている。
 ああいった意味合いのことをこの男とするのは不快ではあった。自分が気持ちよくなることしか考えていない男だ。そのうえ短絡的で目先の快楽ばかり求める。最初の頃なんてやっている最中にスイムスイムに暴力を振るってきたのだ。その方が気持ちいいとかいう理由で。ライダーの攻撃は全て通り抜けられるので無駄ではあったが。
 普通ならその時点で一緒になんていられない。それでも自分のサーヴァントである以上組まざる得ないし、組んでいるなら言うことを聞かせるために相応の努力をしなければならない。身体を使わせるのはやむを得ないことだった。
 掃除を終えたスイムスイムにライダーが近寄ってくる。胸に手を這わせてきた。触れないので正確には胸のあたりで腕を動かしているだけだが。

「お前の身体――魔法少女っつったっけ? 変身したら美人なるらしいが、具合のほうも良くなるんじゃねえか? 生きたまま俺をあそこまで気持ちよくした女は他にいねえぜ。まあそもそもヤルときゃいつも殺すんだけどよ。やっぱもう一回ヤんね? ストレス溜まると俺自身なにしでかすかわかんねえし」

 要するに『ヤラせてくれなきゃまた殺す』ということだろう。だが、

「やらない」

 にべもなく告げた。ライダーは舌打ちする。

「チッ、わあったよ、気晴らしに散歩でもしてくるぜ」

 そう言って霊体化した。気配が遠ざかっていく。散歩と言ったが間違いなくNPCを殺しに行ったのだろう。
 止めはしない。ここで止めて身体を差し出せばアイツはどんどんつけ上がってくるだろう。主導権はあくまでこちらが握らなければならない。
 こちらの不興を買わない程度には隠匿に気をつけるだろうし、NPCを殺すメリットだってないわけではないのだ。


563 : スイムスイム&ライダー ◆0VSR7vZCCQ :2018/05/05(土) 10:04:22 BlhOeZJ60


(本当に面倒なサーヴァント……)

 それでも上手くやっていかければならない。スイムスイムにはどうしても聖杯が必要なのだ。

「ルーラ……」

 呟いた。憧れの人の名前
 ルーラの言葉は絶対だった。
 ルーラは誰よりも強く、賢く、可愛く、そして正しい。
 だからルーラに従った。ルーラの教えを一言一句間違いなく覚え、その全てを忠実に守った。時には従うのが大変なこともあったが嫌だと思ったことは一度もなかった。ルーラが大好きだったから、憧れだったから。。
 ルーラに仕えているだけで幸福だった。これからもずっと仕えていようと思った。
 だがある日気づいてしまった。ルーラの言葉に忠実であるためにはルーラを殺さなければいけないという事実に。
 スイムスイムが『透明な宝石』を拾ったのはそんな時だった。
 どんな願いでも叶える聖杯。その力があれば不可能さえも可能にできる。ルーラを殺さずにルーラに忠実でいることができる。
 絶対に聖杯を手に入れる。そのためなら気に入らないサーヴァントとだって行動を共にする。身体だって許す。聖杯が取れるならその程度なんてことはない。
 大好きな人を殺すよりも辛いことなんて、この世には存在しない。





 まず最初に父親。ライダーは身体から湧き出す汚泥を向かわせた。父親は逃げる間もなく全身を汚泥に包まれ、直後に肉の潰れる音が響いた。そのまま悲鳴をあげる暇を与えず母親と息子も包み込む。ふたりは父と全く同じ音を鳴らした。
 主たちの居なくなった一軒家、その居間でライダーは退屈そうにぼやいた。

「アー、やっぱ物足んねェー」
 
 本来こういうあっさりとした殺し方は趣味ではない。もっとひとりひとりをじっくりと虐めながら殺すのが好きだった。もしくは派手に何十人も同時に殺すのが。
 だがそれで誰かに目撃されるようなことがあればマスターの不興を買う。あの肉体が貪れなくなる。
 死姦趣味の自分が殺すのが勿体ないと思ってしまうほどの快感、あれが遠のくのは嫌だった。

(つったっていつまでも我慢してらンねえよ)

 ライダーは自分が堪え性のない性格であることを自覚している。代価がストレス解消に適した性交だからまだしも耐えられているが、いずれ限界が来ることは明白だった。
 できればそうなる前に仲良くなっておきたい。仲良くなれば今より気軽にヤラせてくれるだろうし、殺しに関してもいくらか寛容になるだろう。
 強引に言うことを聞かせられればそれでもよかったのだが、あいにくライダーの攻撃はマスターには通じない。脅す材料も特にないし、令呪まで持たれていては無理な話だった。
 それに元来ライダーは寂しがり屋だ。最低のクズであるためろくに仲間ができないが、欲しいとはいつも思っている。
 ライダーの仲間になるのは同じようなクズだけだ。マスターはクズではない。だが素質はあると思う。頭のネジが一本抜けている感じがある。
 あれはまだ肉体関係を結ぶ前、ライダーが虐殺をする現場にマスターも居合わせたことがあった。あのときマスターは自重しないライダーに苛立ってこそいたもののNPCの死には全く心が動いていない様子だった。犠牲者は所詮作り物のNPCとはいえ眉くらいひそめるのが普通の反応だ。真っ当な倫理観が欠如している。
 それに本来の姿は見たことがないが、おそらくあのマスターはまだ子どもだ。殺しや破壊の快楽を覚えるか正常でいられないほど精神が疲弊すれば、ブレーキが効かずに一瞬でクズになるだろう。

(ま、切っ掛けがあるまで待つしかねえか)

 聖杯戦争が本格的に始まればまあなんか色々と起こるだろう。それくらいならたぶん我慢できるはずだ。身体のことを抜きにしてもライダーは頭のイカれたあのマスターのことをそこそこ気に入ってもいた。
 と、玄関の方からドアの開く音がした。

「ただいまー、お腹すいたー」

 十代後半くらいか、若い女の声。どうやらまだ家族がいたようだ。

「我慢するため……もう少し発散しねえとなァ。へへへへ」

 ライダーは玄関に向かった。今度はさっきよりもう少し時間をかけた。



【クラス】
ライダー

【真名】
デスドレイン(ゴトー・ボリス)@ニンジャスレイヤー

【ステータス】
筋力E 耐久C 敏捷C 魔力A 幸運A+ 宝具A

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】

騎乗:B
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
 魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。

対魔力:C
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。


564 : スイムスイム&ライダー ◆0VSR7vZCCQ :2018/05/05(土) 10:05:09 BlhOeZJ60
【保有スキル】

運命の加護:A+
 インガオホーの宿命を退ける運命力。
 逆境に陥れば陥るほど、幸運を用いる判定の成功率が上昇する。

戦闘続行:B+
 往生際の悪さとすら言える生存能力。
 瀕死の傷であっても生き延びることが可能。

人間観察(偽):C
 人々を観察し、理解する技術、ただしデスドレインの場合は観察ではなく勘によって理解する。
 顔を合わせただけの相手や、新聞記事など伝聞情報からだけでも相手の人間性を推測できる。
 また特別な力を隠し持った人間を見抜くことにも長けている。ただし力を持っているということがわかる程度で、どんな力か、どの程度の力かといったことまではわからない。

直感:C
 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
 敵の攻撃を初見でもある程度は予見することができる。

【宝具】
「ダイコク・ニンジャ」
ランク:A 種別:対己宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
 ニンジャとは平安時代の日本をカラテによって支配した半神的存在である。
 この宝具はデスドレインに憑依したダイコク・ニンジャのニンジャソウル、つまり魂そのもの。
 ニンジャソウルに憑依されたものは個人差こそあれど、超人的な身体能力や生命力を獲得する。
 その戦闘力は常人を遥かに凌駕するものの、急所への攻撃はニンジャといえど致命傷となる。


「死の濁流(アンコクトン)」
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000
 暗黒物質とも称されるユニーク・ジツ、つまりデスドレイン固有の特殊能力。
 コールタールめいた可燃性の流動状エネルギー「アンコクトン」を自在に操る。
 主に触手状になって他者を捕獲・吸収する他、他者の体内に侵入させ窒息・破裂させることも可能。
 更に物理攻撃に対する防御、本体の負傷部分の治癒や再生など、非常に応用が利く。
 ただしアンコクトンの守りを上回る威力や魔力さえあれば防御を貫通することが可能。
 他者の生命を力の源とし、生命を補食することで際限なく増殖を繰り返す。
 アンコクトンから直接NPCを魂喰いすることも可能。

【Weapon】
宝具「死の濁流(アンコクトン)」

【人物背景】
 強姦殺人、連続放火、銀行強盗など数々の凶悪犯罪を起こした囚人「ゴトー・ボリス」。
 死刑判決が下された直後、法廷内で神話級アーチニンジャ「ダイコク・ニンジャ」のソウルが憑依。
 邪悪なるニンジャ「デスドレイン」として覚醒し、法廷に出席した人間を皆殺しにして逃走した。
 極めて凶悪な殺人鬼であり、自らの欲望のままに刹那的な犯罪を繰り返す。
 また凄まじい強運の持ち主で、窮地において幾度と無く生還している。
 一方で幼稚な寂しがり屋の一面も持ち、イマジナリー・フレンドと会話をする癖がある。
 そういった性格故か法廷からの逃走後は仲間を集めようとした。
 ニンジャとしての能力はジツ特化型であり、身体能力こそ高いもののカラテの実力は皆無。
 強大なニンジャ組織からの刺客を幾度と無く始末し、幹部クラスのニンジャとも互角に渡り合う等その実力は高い。
 ノーカラテ・ノーニンジャの理念が基本とされるニンジャの中でも異色の存在。

【サーヴァントとしての願い】
 欲望の赴くまま。いまはスイムスイムと身体を好きなだけ抱ける関係になるたい。

【マスター】
 スイムスイム@魔法少女育成計画

【人物背景】
 本名、坂凪綾名。N市で魔法少女スイムスイムとして活動する七歳の女の子。
 魔法少女としての指導役だったルーラに心酔しており、彼女の言葉を教えを全て覚え従っている。

【能力・技能】
 魔法少女スイムスイムに変身できる。
 魔法少女は皆容姿が可愛らしく常人を超えた身体能力や五感を持ち、精神力も強化される。
 通常の毒物なども効かず、食事や排泄なども必要なくなる。また魔法少女それぞれに固有の魔法も持っている。

「どんなものにも水みたいに潜れるよ」
 スイムスイム固有の魔法。
 物体を透過し、その中を泳ぐことができる。敵の攻撃などをすり抜けることも可能。
 触りたい物があれば任意でその物体にだけ触ることもできる。
 音や光などは透過できない。


565 : スイムスイム&ライダー ◆0VSR7vZCCQ :2018/05/05(土) 10:07:46 BlhOeZJ60
投下終了です。
Gotham Chalice、1k3rE2vUCMさんの「ハナ&キャスター」から、宝具や人物背景など一部引用させて頂きました。


566 : ◆cgWdPX4osQ :2018/05/05(土) 15:44:26 doiZHb2U0
皆様投下乙です。
投下します


567 : 雨上がり、虹に染まるころ ◆cgWdPX4osQ :2018/05/05(土) 15:45:05 doiZHb2U0

見知らぬ町。
平穏に暮らす人々。
見覚えのない日々。
営みが繰り返される社会。
こんなものを目の当たりにするのは、いつぶりだろう。

『かれら』が現れた日から。
当たり前の日常を、全て奪われた。
街は滅んで、人は消え去って。
それでも皆と手を取って生き抜いていた。

なんで、こうなってしまったんだろう。
どうして、上手く行かなかったんだろう。
奪われた『あの娘』が脳裏に焼き付く。
こんなことをしてる場合ではないと、心に訴えかけている。
待ち望んでいた日常が眼前に広がっているのに、どうだってよかった。
今、やるべきことは、一つだった。

雨が降り注ぐ中、傘を指すこともなく走り続けていた。
嵌められた指輪のことなど、気にも止めなかった。


「るーちゃん……るーちゃん……っ!!」


周りの目なんて気にする余裕もなかった。
彼女はただ、必死に叫び続けていた。
大事なものを守るために、今度こそ助けるために。
『あの娘』は、きっと彼処にいる。
根拠も何もない確信を胸に、若狭悠里は人通りの少ない歩道を走る。
時折人にぶつかりそうになっても「ごめんなさい」と謝り、再び疾走する。

行くべき場所は解っている。
『あの娘』が何処にいるのかも理解している。
だから悠里は、迷わず走り続ける。

そして、辿り着いた。
雑居ビルに挟まれた地点。
薄汚れたゴミ捨場に、足を踏み入れた。


『りーねー……』


―――いた。
悠里の顔が綻び、安堵の表情が浮かぶ。
幼い少女がゴミに埋もれるように横たわっていた。
悠里は駆け寄り、小学生程度の小さな身体をギュッと抱き締めた。


「るーちゃん、よかった」


少女“るーちゃん”を抱き締める悠里。
その瞳からは、涙が溢れていた。
間に合った。今度こそ。
もう絶対に離さない。何があっても。


「よかった……無事で……!」


心の底から、安心していた。
あの『武闘派の連中』に拘束されてから、ずっと心配で仕方がなかった。
何がなんでも助けないといけないと誓っていた。
今はただ、“るーちゃん”の温もりを感じていたかった。

聖杯戦争の知識が、悠里の脳に焼き付けられていた。
奇跡の願望器を巡る闘争、らしい。
夢物語のような話だった。それでも、現に悠里は奇跡を目の当たりにしている。
戻らないはずの日常。『かれら』のいない世界。
喪われた楽園が此処にはあった。

聖杯というものの為に、他の参加者と争うことになるらしい。
それを手にすれば、平和な日々を取り戻せるのだろうか。
取り零した未来を再び手に入れられるのだろうか。
状況は掴み切れない。どうするべきかは、まだ決めていない。
それでも、一つだけ確かなことがあった。


「お姉ちゃんが、絶対に守ってあげるから……!」


この両手の中にいる『妹』だけは。
命に換えてでも、守り通すということだった。





568 : 雨上がり、虹に染まるころ ◆cgWdPX4osQ :2018/05/05(土) 15:45:38 doiZHb2U0



雨は少しずつ止み始めていた。
晴れゆく景色の中に、男の輪郭が浮かび上がる。
水溜まりを踏む音と共に、ゆっくりと歩を進め。
何かを抱き締める少女――若狭悠里を見下ろし、男は立ち止まった。

目の前でしゃがみこむ少女こそがマスターである。
男は――バーサーカーは、その指に嵌められた指輪を見て理解した。
狂化を掛けられてもなお消えぬ思考能力によって、バーサーカーは言葉を紡ぐ。


「何を望んでいる……?なんのために『ここに来た』」


問いかけは、それだけだった。
余計な言葉はいらない。戦うか、どうか。
重要なのは其処だ。
理性の箍を壊され、怒りと憎しみだけがバーサーカーの魂を支配している。
この感情を晴らすためにバーサーカーは召喚に応じた。
願いを叶えるための意思も活力もなければ、この少女に価値はない。
そう考え、バーサーカーはただ問いの答えを待つ。

暫しの沈黙が続いた後。
悠里は、胸元に抱える『それ』に目を向けた。


「『この娘』を……守らなくちゃいけないの……」


そして、絞り出したような声を発した。
悠里が抱えていたものは、クマのぬいぐるみだった。
その毛並みはボロボロに荒れ果て、更には泥や雨で汚れきっている。
持ち主の子供に使い倒され、消耗し、そして飽きられ、捨て去られた代物だということは用意に想像できる。
この路地のゴミ捨て場で彼女が拾ったものだろう。


「私が……お姉ちゃんだから……」


使い降るされたゴミでしかないぬいぐるみを。
悠里は、強く抱き締めていた。
まるで愛する家族を愛おしく守るように。
表情から伺えるのは、確固たる決意。
瞳に映し出されるのは、濁った意志。
その瞬間、バーサーカーは何かを察した。

――――ああ、呪われているのか。

何も気付かず。何も解らず。
彼女は、自分の世界だけを信じ込んでいる。
己の『精神』に飲み込まれている。
他の全てを省みずとも、これだけは貫き通すという意志。
それに、取り憑かれている。
バーサーカーは、そんな少女を酷く哀れんだ。

近いものを感じる、と思った。
愛する者を奪われ、死に切ることも出来ず。
溢れ返る憎悪と後悔に突き動かされていた。
彼女を守ることが出来なかった絶望を、バーサーカーは憤怒へと昇華させた。
目の前の少女、悠里もまた何かしらの絶望を抱えているのは見て取れた。
彼女は今、『ぬいぐるみを守ること』で絶望を振り切ろうとしている。

一度背負った絶望は、決して拭えない。
それを覆さない限りは。


「だったら……守ってやれよ」


バーサーカーは、ぽつりと呟く。
悠里はゆっくりと顔を上げた。


「ずっと一緒にいたいんだろ?なら、やるしかないだろ」


必要な言葉は、それだけだ。
バーサーカーはそう思った。
守るためには、戦うしかない。
絶望から逃れるためには、克服するしかない。
それだけが真実だ。バーサーカーはそう信じた。


569 : 雨上がり、虹に染まるころ ◆cgWdPX4osQ :2018/05/05(土) 15:46:09 doiZHb2U0

バーサーカーはかつて絶望に憤った。
逃れることのできない悲哀に狂った。
だが、今は違う。
この激情から解き放たれるための手段が存在する。

――――聖杯。奇跡の願望器。

それを掴むことが出来れば、すべてをやり直せる。
過去をやり直し、愛する者”ペルラ“を取り戻すことが出来る。
そのためなら何だってやる。
これからはもう、なんでもする。
英雄だって、殺す。
バーサーカーは再び決意した。
その決意を、悠里にも求めた。


「……るーちゃんだけは、絶対に守る。そのためなら……」
「何だってする、か?」
「ええ、ええ……私は……そうしなくちゃいけないから……!」


ぼんやりと疲れ果てていた悠里の顔が、決意の表情へと変わった。
そこにあったのは、漠然とした狂気だけではない。
何があっても愛する者を守り抜くという『活力』が芽生えていた。
その瞳に宿る濁りは、消えないまま。
彼女が意志を貫き通せるのかどうかは、まだ解らない。
だが、今はこの答えが聞けただけでもバーサーカーは満足だった。


「そうだよ……そうこなくっちゃあな……」


バーサーカーの口許から、知らぬ間に笑みがこぼれていた。
悪魔のような嗜虐的な微笑と共に、景色が『揺らぐ』。

雨が上がる。次第に青空が見えてくる。
雲の隙間から陽の光が射し。
そして、七色のプリズムが浮かぶ。 
それはまるでバーサーカーの周囲を取り囲むように存在し。

地を這うネズミが、虹に触れる。
その瞬間、肉体を蝕まれていく。
グジュグジュと手足が変化し、頭部から触覚が生え、まるで軟体動物のような姿へと変貌していく。
それは即ち、カタツムリ。
軟体動物腹足綱、有肺類に属する生物。
ネズミが徐々にカタツムリになっていく。


「きれい……」


彼女がその異常な光景を認識することはない。
すぐ傍に浮かび上がる『虹』を、悠里は見つめた。
それは悪魔の虹。止めどない憎悪の化身。

―――――ヘビー・ウェザー。

バーサーカーの代名詞として宝具へと昇華された、最悪の能力。
虹に触れたが最後、サブリミナル現象によって『カタツムリになった』と錯覚する。
それは幻影でしかないのに、虹やカタツムリに触れることで錯覚は次々に伝染していく。
やがて、町中がカタツムリで埋め尽くされる程に。

バーサーカーの意に呼応し、虹は延々と展開を続ける。
つまり、彼が其処にいる限り。
この宝具は決して止まらない。
虹の影響を受けない者は、バーサーカーとそのマスターだけ。
虹の影響を受けずにカタツムリを認識できる者は、バーサーカーだけ。
つまり、悠里は何も知らない。
悠里は虹がもたらす悪夢を決して認識できない。
虹の術中に嵌まらなければ『人々がカタツムリになりつつある幻想』さえ理解できないのだから。

だから、悠里は夢を見続ける。
その両手で『ぬいぐるみ』を抱き抱えて。
全てを蝕む『虹』をぼんやりと眺める。



「ねえ、るーちゃん……虹が出てるわ。きれいでしょう……?」



―――虹は、架かり続ける。


570 : 雨上がり、虹に染まるころ ◆cgWdPX4osQ :2018/05/05(土) 15:47:09 doiZHb2U0
【クラス】
バーサーカー

【真名】
ウェス・ブルーマリン@ジョジョの奇妙な冒険 第6部「ストーン・オーシャン」

【属性】
中立・狂

【ステータス】
筋力D 耐久D 敏捷D 魔力C++ 幸運D 宝具C+

【クラススキル】
狂化:D
言語能力は喪失していない。
その代わり、理性の大半を奪われている。
彼はもはや『救われた』ことさえ忘れ、魂を憎悪に支配されている。

【保有スキル】
運命の血縁(偽):B
ジョースターの血縁の証明『星型の痣』による共鳴。
バーサーカーは彼らとの血縁関係を持たず、後天的に発現している。
『星型の痣』を持つ者の気配・居所を魔力探知無しで察知することが出来る。

忘却の烙印:C
一度は奪われた記憶を取り戻したことを示すスキル。
伽藍堂な空虚は果てしない憎悪によって埋められた。
記憶や認識を支配する精神干渉の効果を軽減する効果を持つ。

呪われし意志:B
憎悪に囚われている限り、彼は死にたくても死ねない。
バーサーカー本体に生命の危機が迫った時、スタンドが自動的に防御行動を行う。
このスキルはバーサーカー自身の意思で行われた自殺にも適応される。

【宝具】
『風が吹き、雨は荒れ(ウェザー・リポート)』 
ランク:C  種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大補足:1000
バーサーカーの精神の具現、通称「スタンド」。
能力は「天候や気象現象を操ること」。
周囲一帯の天候を変化させる他、雲や突風などの気象現象を自在に発生させて制御できる。
また近距離パワー型であるためスタンド自体の格闘能力も高い。
ただしバーサーカーの分身であるスタンドが傷つけば本体も傷つき、スタンドの破壊によってバーサーカーも消滅する。

『嵐の果てに……(ミステリアス・トラヴェラー)』
ランク:D  種別:対軍宝具 レンジ:1~60 最大補足:500
突風によって運んだヤ大量のドクガエルを刑務所に降り注がせた逸話が宝具になったもの。
宝具化したことによって、現地の生態系に関係無く『突風によって空からヤドクガエルを降り注がせる能力』へと昇華されている。
ヤドクガエルに触れた者は猛毒に犯され、サーヴァントだろうと肉体を蝕まれることになる。

『そよ風は去りゆく(ヘビー・ウェザー)』
ランク:C+  種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大補足:1000
スタンド『ウェザー・リポート』の秘めたる能力。
悪魔の虹と呼ばれる異常現象を発生させ、虹に触れた者をカタツムリに変貌させる。
更にはカタツムリに触れた者もカタツムリ化させ、際限のない感染を巻き起こす。
カタツムリ化は虹が引き起こすサブリミナル現象による幻覚でしかないのだが、一度でも能力の影響下に置かれれば凄まじい強制力によって術中に嵌まることになる。
ただしあくまで幻覚であるため、視覚を持たない者には効果を発揮しない。

バーサーカーの憎悪の具現たるヘビー・ウェザーは常時展開されている。
この能力の影響を受けない者はバーサーカー本体、そしてそのマスターのみ。


571 : 雨上がり、虹に染まるころ ◆cgWdPX4osQ :2018/05/05(土) 15:47:52 doiZHb2U0
【Weapon】 
なし

【人物背景】 
グリーンドルフィンストリート刑務所に収監されている記憶喪失の囚人。
その正体は教誨師エンリコ・プッチの実の弟。

奇妙な出自を除き、元々はごく普通の青年だった。
しかし愛する者/実の妹を奪われた怒り、帰るべき場所を奪われた絶望、そして死にたくても死ねない理不尽が彼を狂気へと陥らせる。
世間への憎悪に突き動かされ、暴走していた彼を止めたのはプッチだった。
プッチに記憶を奪われたウェスは『ウェザー・リポート』として刑務所に収監されることになる。

【サーヴァントとしての願い】 
ペルラを取り戻す。



【マスター】 
若狭 悠里@がっこうぐらし!(原作)

【マスターとしての願い】 
るーちゃんを守る。

【能力・技能】 
『かれら』が蔓延る世界でサバイバルを続けてきた経験を持つ。
基本的にはまとめ役であり、肉体労働を担当する機会は少ない。

【人物背景】 
『かれら』に支配された世界で懸命に生きる『学園生活部』の部長。通称りーさん。
家庭的で穏和な性格だが、同時に慎重で思い詰めやすい一面も持つ。
小学生の妹がいたらしく、『卒業』後に通り掛かった小学校で救助したるーちゃんと重ね合わせている。

時間軸は単行本9巻、51話終了時点。
そのため彼女はただのぬいぐるみを『るーちゃん』と思い込み続けている。

【方針】
絶対にるーちゃんを守り通す。
精神的に磨耗し、冷静な判断ができない。


572 : 名無しさん :2018/05/05(土) 15:48:19 doiZHb2U0
投下終了です


573 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/05(土) 21:13:06 dXDozrRE0
皆さま投下お疲れ様です。感想だけいたします。

相良宗介&キャスター
 正義の為、自分の世界を守る為に聖杯を目指す彼らの在り方は正義なのでしょうか。捉え方次第では正義でも善でもあり
 人によっては悪であり自己満足に過ぎないと受け止められてしまいそうな、非常に複雑で難しい問題ではないかと思います。
 そして、聖人の遺体。キャスターの宝具、また贋作とはいえ、他の主従たちに利用されてしまいそうなのが少々不安に
 なりますが……彼らの『正義』が完遂されることを祈ります。
 投下していただきありがとうございます。


川尻早人&アーチャー
 精神力が尋常ではない小学生にも関わらず、これが一般人なのかよと向こうの世界線は驚かせる要素がありますが、この
 早人に関しては代表に相応しい一般人?だと私はつくづく思います。皮肉にも『悪』という敵が現れたからこそ彼の人格
 はここまで成長できたのですから、そうでなかった場合。きっと彼はアーチャーのマスターの相応しくない、本当の意味
 での一般人になっていただろうと感じます。一度勝った『悪』と再び対峙するとは夢にも思っていないでしょう……
 投下していただきありがとうございます。


全ては■■の為に
 いや、お前ら。そういうところだぞ、そういうところなんだぞ……とお互いの方針や思考を見て突っ込んでしまいました。
 お互い鞄変えしようと目論んでいるのが一周回って滑稽に思えてしまいますし、スノーホワイトに関しては洗脳が解けて
 しまう恐れ(?)があるのが心配ですね。思考や方針がブレてしまえば、昔のように何もしない状態が続いてしまう恐れが
 ありますから。何より既にいる悪の化身を考えると一筋縄にいきそうにありません。
 投下していただきありがとうございます。


ジョセフ・ジョースター&セイバー
 再び敵と、それも聖杯戦争という形で出会うとしても主従の関係とはまた意外なものです。しかし、縁在る者が集い
 縁ある者に惹かれるのは『運命』に違いありませんし。誰よりもジョセフに関しては理解している筈でしょう。
 何よりもジョセフは一度滅ぼした敵と、ワムウはかつての仲間と……しかし、一つ重要なのは見滝原に召喚された
 あの吸血鬼はジョセフの知る彼とは『少し違う』……それに気付いた時。果たしてどうなるのか見ものです。
 投下していただきありがとうございます。


オルガマリー&キャスター
 FGOではなく事件簿出典のオルガマリーですが、これまた面倒なサーヴァントをひいて……いえ、やっぱり厄介な
 男を召喚してしまった時点で、彼女の今後が不安ですし、キャスターの自惚れと傲慢とまだ隠されている本性が露わに
 なった時。果たしてコントロールする事ができるのかが怪しいものです。そんなオルガマリーも聖杯戦争の概要を
 知る貴重な存在である以上、聖杯戦争での奔走を応援したいですね。
 投下していただきありがとうございます。


Disposable Heroes
 ニンジャは実在しない。いいね? 全く星1とは思えない性能と在りようを持つアーチャーを召喚したイグゾーションは
 彼自身の信念に基づいて――それこそ自らの行いが『正義』であると振舞うような、確固たる意志がそこにはあります。
 アーチャーも十分理解しているでしょうし、やはり彼の宝具の仕様上。他の頼るべき仲間を見つけなければ、そして
 英霊である以上。イグゾーションを見逃す訳にはいきません。
 投下していただきありがとうございます。

本日はここまでとします。残りの感想は後日とさせていただきます


574 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/05(土) 23:15:06 dXDozrRE0
後日と云いましたが書き終えたので感想投下します

喫茶サンクチュアリ
 世界観次第ではありがちな平凡さにも関わらず何故か『ウワサ』として広まりそうな苺香の存在とは……ウワサになっている
 マスターは何人かいますが、彼らと違って天然ドSなだけで普通の少女には変わりないですし、精神面において戦争という
 日常とは無縁な過激な世界と向き合う覚悟がまだ定まっていないのが不安ですね。とは言え。戦闘では何ら問題ない愚か
 最早恒例の光速度による時間停止突破が可能な戦士を召喚したのは、幸か不幸か……
 投下していただきありがとうございます。

Supply and Demand
 どうしようもない馬鹿共が再び戦争を起こそうとしているのか……再びなのか、と言わんばかりの利害が一致したからこそ
 戦争狂が水を得た魚の如く意気揚々と暗躍し、肉を頬張っている姿が容易に脳裏に浮かびます。死体であれ、彼が引き起こした
 惨劇と戦争が見滝原で再び起きる前兆が着実に侵攻しており、聖杯戦争にいる全てのものが軽視してはおけないものに
 変貌するに違いありません。いいえ、あるいは本来あるべき『戦争』が体現されようとされているに過ぎないのかも……
 投下していただきありがとうございます。

零にしか至らない物語
 マスターとして運命に抗おうとする悪魔に対し、よりにもよってなサーヴァント。意志の疎通どころか指示も聞かないし
 遊び呆けているのか。ですが、どういう訳か宝具や能力。非常にトリッキー過ぎるものの。レクイエムの影響か、それに
 通ずる性質が垣間見えるのは皮肉と同時にディアボロの中でレクイエムに対する恐怖がこびりついたままであるのが
 不思議と伝わってきてしまいます。サーヴァントの侵食によりある意味で精神を取り戻せればチャンスがあるのかも……?
 投下していただきありがとうございます。

Take Me Home, Country Roads
 アイエエエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!? ……とビックリしたら、成程と面白いオチと話の構想に良いですし
 おもちゃの中でイケメンオーラを放つ電気鼠に思わず笑いが込み上げてしまいました。かっこいいなぁ、コイツは。
 そしてバズが召喚したのが親友と同じくカウボーイ。親友が世界一であるなのは不動で変わらないのだという主張には
 バズらしい、影ながらライバルを認めた光景が想像できてしまいます。
 投下していただきありがとうございます。

おとなになれないこどもたち
 ムカデのように這ってでもいい。この二人に対しては、生きるべきか死ぬべきかという論争が発生しかねないですが
 既に生きる事を望んでいるのです。例えこの先、どんな悲劇や喜劇が起きようとも。誰が死ぬことになっても。
 分かっていても、生きたいという生命が持つ本能に近い願いは誰よりも確固たるでしょう。無常な世界に生きるならば
 尚更、聖杯は必要不可欠でしょうが……どのような結末に至るのか期待します。
 投下していただきありがとうございます。


575 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/05(土) 23:16:13 dXDozrRE0
シールダー&シールダー
 皮肉にも様々な形で世界を巡ったマシュだからこそ冷静に、それでいて順応に物事を対処しようとする心構えがあります
 が、しかしながら、一般的なマスターと比べてサーヴァントとの戦闘に馴れているだけであり、先輩が主に前線で対応
 していた交渉や交流をマシュ自身の決断に委ねられるのでは、大きな差が生じる事でしょう。そしてブローディアも
 マシュと同じく、誰かと関わり持った事で変わった存在だからこそお互いに支えられると思います。
 投下していただきありがとうございます。

千翼&バーサーカー
 こちらの場合は、純粋にかつ徹底的にマスターを庇護する天使……生きたいと祈ったからこそ現れたまさに救いの
 存在ですが、逆に守りや救いが良心が人を苦しめるとはこういうものを指し示すのではないでしょうか。
 千翼は天使との対話を試みる姿勢を見せていますが、天使の在り方などを知ってしまったら知ったで
 また一悶着ありそうですし、この現状だと天使による被害が広がりそうです……
 投下していただきありがとうございます。

スイムスイム&ライダー
 典型的なクズの象徴たるライダーですが、スイムスイムの方も通常運転を保ち続けている点は流石というか。彼女の
 子供らしかぬ冷徹さは原作でも十分把握していますが、ルーラを殺す決断と彼女の精神性は『強い』よりも『恐怖』を
 感じさせられてしまいます。ライダーも彼女の本質を薄々感じ取っているようですが……だからと言え、果たして
 ルーラの憧れを上回る強いものを与えられるかを考えると、彼の思惑も困難を極めそうですね。
 投下していただきありがとうございます。

雨上がり、虹に染まるころ
 どうして見滝原に導かれる少女たちはこうも悲惨で狂気に蝕まれるのでしょうか? 悠里は元居た世界の事情があれ
 『妹』を守り通す家族の絆が齎す意志の強さを表しているのは、まだ彼女の人間らしい強さの象徴であり、バーサーカーも
 理由はどうあれ、悠里個人の決意を求めた姿勢には良いものを感じます(なおスタンド能力)凶悪かつ最悪な能力の
 光景が、不思議にも悠里同じく思わず「美しい」と感動してしまいます。
 投下していただきありがとうございます。


改めて皆さま投下お疲れ様です、そしてありがとうございます。
引き続き候補作の投下をお待ちしてます。


576 : 天へと至る ◆Jnb5qDKD06 :2018/05/05(土) 23:22:11 e.E1lK3U0
投下します


577 : 天へと至る ◆Jnb5qDKD06 :2018/05/05(土) 23:22:59 e.E1lK3U0
 エンリコ・プッチ神父は今、攻撃されていた。
 右から迫る凶手。剛力と遠心力を乗せたその手は人間がまともに受ければ骨を砕き、肉を潰す一撃だ。
 しかし、プッチ神父はまともな───この場合は、無力と言う意味の───人間じゃない。彼の背後から伸びた手がその凶手を掴んだ。
 スタンド『ホワイト・スネイク』。端的に表現すれば彼の守護霊であり、彼自身である。

「ふむ」

 続く片腕の攻撃も掴み、その腕を観察する。
 それはゴム質の白い手だった。形状は人間の手をしているが、それが柔軟に変形し、槍にも刃にもなることを知っている。
 そしてこの手の持ち主はというと更に異形。手と同じ材質であるのは勿論、その顔は黒い点が点在するだけの怪物である。

「これがホムンクルスというものか。これが君の作れる最高の兵士か『キャスター』
 だとするととんだ期待外れだが」

 プッチ神父が目線を移した先には椅子に座った老人が居た。
 その黄金の目がプッチ神父を映している。自身の駒を見下されたにも関わらず、その表情には怒りや、申し訳なさといったものは一切浮かんでいない。全くの無感だった。
 部屋が暗いせいかその表情がより冷たく、より人外めいて見えた。

「もう少し強いものが必要か、ならば更に人間を調達して賢者の石を生成せねばなるまい」
「あまり目立ちたくはないが、仕方ない。この試練に打ち勝つのであれば、犠牲は当然必要となる」

 その発言にキャスター……『フラスコの中の小人』あるいは『お父様』と呼ばれた存在は鼻で笑う。
 かつて自分の力に縋ろうとした人間共と全く同じ言葉でありながら、全く意味が異なるからだ。
 他者を犠牲にして自分達だけが恩恵を授かるのではなく、他者に恩恵を授けるためにあらゆるものを犠牲にする。
 世が世ならば聖人と言われるだろうが、今の世では悪と言っていいだろう。
 そもそも人殺しを忌避せず自ら行う時点であの愚民達とは精神的にも能力的にも一線を画している。

「マスター。お前は神を信じているか?」

「主は存在し、我々に試練を授けてくれる」

「ならば、神の領域に手を伸ばすお前の行為は神への不敬とならないか?」

「主がそう思われるのであれば必ず私は滅ぼされるだろう。
 だが、主がそう思われないのであれば私は天国へと至るだろう」

 キャスターはそうかそうかとうなずいて───



「ならば神に滅ぼされた私は不敬を働いた愚か者と貴様はいうのだな?」


578 : 天へと至る ◆Jnb5qDKD06 :2018/05/05(土) 23:23:22 e.E1lK3U0
 瞬間、暗い室内に極寒の殺意が埋め尽くし、エンリコ・プッチの周囲から剣山の如く刃が生えた。
 その錬成速度は超高速かつ無詠唱、無拍子。スタンド使いとはいえ、生身の人間であるプッチ神父は反応すらできないだろう。
 キャスターが頬を突きながら目で「どうなのだ?」と問いかける。回答次第ではその剣山がプッチ神父の全身へと突き刺さることは想像に容易い。
 ホワイトスネイクはキャスターが作ったホムンクルスを抑えていて動けない。
 一度止まった刃は木が枝を伸ばすように刃はゆっくりとプッチへと伸びてくる。
 薄氷の上を歩くような状況でプッチ神父は。



「そうだ」



 迷いなき即答。そして同時に剣山の一本に自らの首を突き立てた。
 キャスターが目を見開く。
 まさかの自殺───かと思ったその時、口から血を吹きながらプッチ神父はキャスターを睨み付けた。

「あと1ミリ、少しずれていれば頸動脈を切って私は死んでいただろう。
 だが、私は生きている。
 これは『啓示』だ。私は此処で死すべきではないという主の導きであり、お前の問いに対する答えの証明だ」

 首を引き抜き、出血を抑えながらはっきりと言う。

「私は勝つのではない。ただ到達するのだッ! 『天国』へとなッ!!」


579 : 天へと至る ◆Jnb5qDKD06 :2018/05/05(土) 23:23:50 e.E1lK3U0
 その清廉なる異端宣言にキャスターは僅かに笑みを浮かべる。
 生前もこのような人類への愛のあまりに異端へと堕ちた錬金術師を知るが故に。
 なるほど、異端ならば人間風情に協力してやるのもやぶさかではない。よくよく考えればフラスコをサーヴァントの器に置き換えると懐かしい光景を思い出すではないか。

「────よかろう。ならば天国への門は私が開いてやる」

 そう言って安楽椅子から立ち上がると作り出したホムンクルスを手で貫いた。
 ホムンクルスは声を上げることもなく、まるで蝋燭が溶けるように液状化してキャスターの爪先から吸われていった。

「そのスタンド『ホワイトスネイク』の能力は血の紋を刻むのも、賢者の石の材料となる人間を調達するのにも向いている。
 協力してもらうぞマスター。我々は神の領域へと辿り着くのだ」

 厳かに言葉を告げるキャスターの姿は賢者か、王族、或いは神官か。
 ある種の王気と神性を帯びながら、しかしその実情はまるで反対の怪物。そしてそれはプッチ神父も同じ。

「ああ、協力してもらおうキャスター」

 このようにして二人の誓いは結ばれた。
 場所は廃ホテルの寂れた教会。魂を抜かれた死体が積み上げられた聖域の中のことである。
 この時、既にキャスターの賢者の石の生成に使われた生者(NPC)の数は十人を超えていた。
 そして聖杯戦争が続く限り増え続けるだろう。


580 : 天へと至る ◆Jnb5qDKD06 :2018/05/05(土) 23:24:28 e.E1lK3U0

【サーヴァント】
【クラス】
キャスター

【出典】
鋼の錬金術師

【真名】
"お父様" または フラスコの中の小人(ホムンクルス)

【属性】
秩序・悪

【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:E 魔力:A+ 幸運:A 宝具:A

【クラススキル】
陣地作成:A++
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
 お父様の場合は、『錬成陣』であり、最大で国家規模まで構築可能。
 ただし宝具に利用する場合は、陣の外周部の必要な箇所に『流血』が必要。

道具作成:EX
 魔力を帯びた道具を生成する。
 錬金術を伝えた伝説の賢者であり国家そのものを形成した逸話を持つ彼はEXランクで習得している。
 賢者の石と呼ばれる人間の魂を利用した特殊な結晶、高度な判断力と疑似的な不死、更には錬金術由来の特殊能力を兼ね揃えたホムンクルス等々の作成が可能。

【保有スキル】
賢者の石:A
 自ら生成した強力な魔力集積結晶───ないしフォトニック結晶を操る技術。
 ランクは精製の度合いによって大きく変動する。
 ランク次第でさまざまな効果を発揮するが、Aランクともなれば疑似的な不死を任意の対象へもたらすことも可能。
 オシリスの砂と同様にお父様は人の魂を利用する事で賢者の石を生成し、それを魔力源として多くの事象を発生させる。

錬金術:EX
 錬金術師として実力を表すスキル。ランクが高いほど高速錬成が可能
 物理現象を超越したものすら錬成するキャスターのランクは真っ当な錬金術ではないという意味でEXランク。本来ならばA++ランク。
 ホムンクルスの始祖であるキャスターは材料さえあれば詠唱や錬成陣すら不要となる。

千里眼:D
 千里眼としてのランクは低く、遠くを見通せるものではない。
 ただし、目の前の人間の欲望や真理を見抜き、自分本位の結末へと誘導する。

鋼の大地:A
 錬金術による意図的な自然への介入。
 大地に自身を構成する賢者の石のエネルギーを流して細工をする事で自然からのバックアップを遮断する。また、『鋼の大地』と化した箇所は自身の存在が及ぶこととなる。
(エネルギーを流し込んだ場所の音を聞いたり見たりすることが可能になると同時に、大地に細工していることが気配を通して察知される)
 ただし自然の化身である精霊や神霊、ガイアの化身であればごり押しでこのスキルを無効化する。
 また錬丹術のような精霊から直接力を貰う術式にも通じないため、エルキドゥのように自然から直接力を与えられる者くらいしか影響をうけない。


【宝具】
『獅子、太陽を喰らう』(ゲート・オブ・クセルクセス)
 ランク:C 種別:対国宝具 レンジ:作成した陣地全て 最大捕捉:約100万人
 陣地作成内の全ての生命を捧げて莫大な数の賢者の石を生成する。
 全ての人間は分解され、賢者の石となって人の中心にいる人物へと圧縮される。
 もしもサーヴァントのフレーム以上の賢者の石が生成された場合は余剰分の石が排出される。

『天の瞳、地の扉』(ゲート・オブ・アメストリス)
 ランク:A++ 種別:対国宝具 レンジ:作成した陣地全て 最大捕捉:約5000万人
 賢者の石の形成までは『獅子、太陽を喰らう』と同じであるが、生成した賢者の石の莫大な魔力を使用し『星』と接続する。
 これにより自身を疑似的な星の触覚へと昇格させ、生成した賢者の石が無くなるまでの間、あらゆる空想具現化を可能とする。

『七つの大罪』(シン・ホムンクルス)
 ランク:A 種別:- レンジ:- 最大捕捉:-
 七つの大罪を分離してサーヴァントクラスのホムンクルスを生み出す宝具。
 しかし『お父様』は全ての大罪ホムンクルスを分離した姿での現界なのでこの宝具は使えない。

【weapon】
なし:
 ノーモーションであらゆる武器を生成・射出できるため不要。


581 : 天へと至る ◆Jnb5qDKD06 :2018/05/05(土) 23:24:41 e.E1lK3U0
【人物背景】
鋼の錬金術師より登場。全ての黒幕。
かつてクセルクセスという国でホーエンハイム少年の血と錬金術で偶発的に誕生したホムンクルス。
フラスコの中でしか生きられない彼は次第に外界へ出たいと思うようになり、クセルクセス王の不老不死計画を歪めてクセルクセス国民全員を賢者の石へと変換した。
その際に肉体も人体錬成で構築し、成人のホーエンハイムと瓜二つの肉体を獲得して西のアメストリス国へと渡る。(ホーエンハイムは東へと渡った)
アメストリス国でも同じように国民全員を賢者の石に変換。今度は神の領域へと至ろうとしたところでホーエンハイムとその息子達に妨害される。
血を分けた家族に破れ、生まれた場所へと戻され、この世から排除された。
神曰く「盗賊」。彼は何かを為す方法ホーエンハイムとその息子達を見ていながら理解できなかった。

本聖杯戦争においては七つの大罪を抽出した姿であるため一部の宝具が封印されている。
また原作では賢者の石により半ば不死身であるが、キャスターとして現界した今は純粋なエーテルの肉体を保持している。

【サーヴァントとしての願い】
天国へと至り、神を知る。


【マスター】
エンリコ・プッチ

【マスターとしての願い】
天国へ至る

【weapon】
なし

【能力・技能】
スタンド:ホワイトスネイク
 【破壊力 - A / スピード - A / 射程距離 - ? / 持続力 - A / 精密動作性 - ? / 成長性 - ?】
 触れた対象の記憶・精神・或いは感覚などをDISCへと封じ込める能力。
 DISCを植え付けて、NPCに特定の命令を実行させたり、記憶を植え付ける。
 またDISCを読み取ることも可能で、直接触りながら相手に見ている者を語らせるなど尋問が可能。

【人物背景】
 ジョジョの奇妙な冒険 6部 ストーンオーシャンを参照。

【方針】
血の紋を刻み、賢者の石を生成し、そして『天国への扉』を開く。


582 : 名無しさん :2018/05/05(土) 23:25:18 e.E1lK3U0
投下終了します


583 : ◆RVPB6Jwg7w :2018/05/06(日) 00:26:46 gkHGv3fs0
投下します。


584 : アンラッキー・ガール&ステアウェイ・トゥ・ヘブン ◆RVPB6Jwg7w :2018/05/06(日) 00:27:28 gkHGv3fs0

――いつの間にか、とっぷり日が暮れていたらしい。
引っ越して来て間もない、見滝原の自分の部屋。
すっかり暗くなった部屋の中、僅かに窓から差す今日最後の残光に照らされて。
少女の身の上話を全て聞き終わった、黒い肌の神父は、静かに語りだした。

「ホタル……君は、『運命』というものを信じるかね」
「う、『運命』……ですか?」
「他人よりも『不幸』だという君……ならば、わたしに言われるまでもなく肌で感じているはずだ。
 偶然ではなく必然。
 コインを投げれば決まって大事なところで裏が出る。
 サイコロを振れば常に1のゾロ目。
 降水確率20%の予報に反して土砂降り。
 統計学もギャンブラーの勘も全てを裏切る……『予め決まっていた』、そんな『運命』のことだ」

少女はごくり、と唾を飲み込み、それに合わせて短く切りそろえられた黒髪が揺れる。
整った容姿の少女だった――いや、それも当然。
少女はアイドルである。
それも、日本でそれなりに名の知られたアイドルである。
白菊ほたる。
所属プロダクションの倒産に伴い、見滝原の芸能プロダクションに移籍し、今は再デビューの準備中……
ということになっている、ひとりのアイドルである。
少女は神父の言葉を受けて、思わず自分の胸に手を当てる。
不幸。運命。必然。
あまりにも身に覚えが、あり過ぎた。

「そしてまた、この出会いも『運命』なのだろう。
 わたしがサーヴァントとして呼ばれたことも。
 この『能力』を携えて現界したことも。
 そして、わたしのマスターが君であることも。
 わたしは、君のような子をこそ、『救いたい』のだ」
「ライダーさん……」
「どうやら私の真の能力――『第二宝具』は、今は使用ができないらしい。
 魔力が足りないのか、条件が整っていないのか。
 しかしそれも、『聖杯』があればなんとかなるのだろう。
 そして私の『第一宝具』、『メイド・イン・ヘブン』があれば、おそらくは――」
「『聖杯』……『聖杯戦争』……」
「約束しよう、ホタル。
 この『ライダー』、『エンリコ・プッチ』は、必ずや君を『天国』に連れていく、と。
 わたしの願いが実現すれば、君はもう、『不幸』に怯えて過ごすことはない。
 『覚悟』を得ることで、君は『幸福』になるのだ――」

神父の姿をしたサーヴァントは、熱っぽく語る。
少女には神父の語る言葉の半分も理解できなかったけれど。
たったひとつ、神父が本気であることだけは、少女にも理解できた。

手の内にある、透明な宝石を改めて見つめる。
それは夕日に照らされ、深紅に輝くようで。
以前の所属事務所が倒産する際、最後にせめてと掃除を手伝った彼女が、倉庫で見つけたソウルジェム。
これを手にしたのは、果たして『不幸』だったのか、それとも『運命』だったのか。
記憶を取り戻し、聖杯戦争の知識を得たばかりの白菊ほたるには、判断がつけられなかった。


585 : アンラッキー・ガール&ステアウェイ・トゥ・ヘブン ◆RVPB6Jwg7w :2018/05/06(日) 00:27:57 gkHGv3fs0

【クラス】
ライダー

【真名】
エンリコ・プッチ@ジョジョの奇妙な冒険 第6部「ストーン・オーシャン」

【属性】
中立・善

【ステータス】
筋力:B 耐久:C 敏捷:EX (スキル参照) 魔力:C 幸運:C 宝具:EX

【クラススキル】
対魔力:B
 魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。
 プッチには特に何か際立ったエピソードがある訳ではないが、彼は聖職者であり、このランクに至っている。

騎乗:―(A)
 乗り物を乗りこなす才能……なのだが、このライダーは乗り物を必要としない。
 後述する宝具/スタンド『メイド・イン・ヘブン』はどんな乗り物よりも速い。
 なお便宜上、『メイド・イン・ヘブン』の疾走に判定が必要な場合、A相当の騎乗スキルとして判定を行う。

【保有スキル】
加速:EX
 敏捷のステータスおよび移動速度を限度なく上げる能力。
 常時発動型のスキルであり、自動的に敏捷のステータスも『EX』となる。
 通常、表記『EX』は決して『A++』よりも『上』を意味しないが、これに限ってはその例外に相当する。
 敏捷『A++』と比べても、遥かに、純粋に、さらにケタ違いの速度で動くことができる。
 全速力で移動した場合、サーヴァントの視力をもってしても視認は困難。心眼(偽)等をもっても回避は困難。
 そして能動的に発動させるタイプの能力は大抵は後手に回るしかないという、破格で常識外のスピードを誇る。

【宝具】
神の思し召し(メイド・イン・ヘブン)
 ランク:EX 種別:対人(自身)宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
 エンリコ・プッチの最後のスタンドであり、破格の『加速:EX』の力の源。
 『加速』のためにはこの宝具を展開する必要があり、特に消耗などはない。
 馬の前半身と人の上半身を繋げたようなヴィジョンのスタンドで、プッチ自身から遠く離れることはできない。
 速度は速いが、精密作業性は決して高くはない。
 そのあまりの速度に水面を走るような芸当も可能だが、基本的に、速さ一辺倒の能力である。
 なお『メイド・イン・ヘブン』の前の2つの能力、『ホワイトスネイク』『C-MOON』は使用できない。

天国への階段(ステアウェイ・トゥ・ヘブン)
 ランク:EX 種別:対世界宝具 レンジ:全世界 最大捕捉:全世界
 世界全てを『加速』させ、『特異点』を超えて一巡させる能力。
 むしろこれこそがプッチのスタンドの真価であり、加速能力などそのための手段でしかない。
 しかし現時点において、この宝具は何故か使用不能となっている。
 プッチ自身にもその理由は分かっていない。
 『聖杯』の力があればあるいは、と思っているが、果たして。

【武器】
 スタンド『メイド・イン・ヘブン』

【人物背景】
 グリーンドルフィンストリート刑務所の教誨師。
 善良な神父と思われていた彼こそが、徐倫を冤罪にハメた一連の事件の黒幕であった。
 承太郎の記憶から友人・DIOの残した『天国に行く方法』を手に入れた彼は、そして行動を起こす――
 ジョジョ第六部、世界が一巡した後、敗北してからの参戦。

【サーヴァントとしての願い】
 使用不能となっている第二宝具を解放し、ふたたび世界を一巡させ、『天国』を実現させる。
 そして白菊ほたるを含めたすべての人類を『幸福に』する。


【マスター】
白菊ほたる@アイドルマスター シンデレラガールズ

【能力・技能】
 その圧倒的な『不運』。
 アイドルとしての歌唱力、およびそれなりの知名度。

【人物背景】
 不幸体質の薄幸少女。
 その『不幸』の内容・程度は多岐に渡る。
 引いたおみくじが全て大凶、といった冗談めいたものから、所属プロダクションの倒産まで。
 しかし彼女自身には自覚がないが、どんな『不幸』であれ、彼女の命に関わるような事態は一切起きていない。
 アイドル活動も多難続きではあるが、曲がりなりにもデビューは果たし、既にそれなりのファンがついている。

 以前まで所属していた芸能プロダクションが倒産した所からの参戦。
 いわゆるゲームにおける『プロデューサーさん』に出会う前に相当する。
 見滝原での設定上では、そこから見滝原にある別の芸能プロダクションに移籍し再デビューする直前だった。

【マスターとしての願い】
 ライダーがもたらすという『天国』に期待する……?
 そのために聖杯戦争を頑張って貰う……?


586 : ◆RVPB6Jwg7w :2018/05/06(日) 00:28:17 gkHGv3fs0
投下終了です。


587 : ◆Pw26BhHaeg :2018/05/06(日) 22:56:07 AkQIvnXo0
投下します。


588 : Two Heads are Better than One ◆Pw26BhHaeg :2018/05/06(日) 22:58:25 AkQIvnXo0
夜。見滝原に聳える高級マンションの一室。シャワーの音、乙女の影。

「♪んふふー・んふふー・ふんふふふー……ふふふー・ふふふー・ふふんふふー……」

鼻歌を歌いながらシャワーを浴びる乙女。読者の皆様にはシルエットだけでご勘弁頂きたい。
やがてシャワーは止まる。……しばらくして、バスローブを纏った乙女がベッドルームへ。
黒髪の東洋人。なかなかの美少女だ。年は16、17といったところか。

「ふわーあ……。そうだ、寝る前に、アレをしましょう」

はらりとバスローブをはだけ、肩から背中にかけてを露わにする乙女。若く美しい肌だ。
そのままベッドにうつ伏せになる。

「セイバーさん、お願いします」

彼女が虚空に呼びかけると、顔を赤らめたもうひとりの乙女が金色の粒子と共に出現した。
そう、彼女は英霊、セイバー(剣士)のサーヴァント。バスローブの乙女は、そのマスターだ。
童顔だが、年格好はマスターと同じぐらい。やはり黒髪で東洋人の美少女。頭に大きな赤いリボン。赤白の衣服を纏っている。

「は、はい……失礼します」

セイバーは戸棚から薬を取り出すと、マスターの肩や背中に塗り広げ、揉み始めた。マッサージ、のようである。

「ど、どうでしょうか……」
「ふふ、上手ですよ。使い立てしてすみません」
「い、いえ……」

やがて、セイバーは戸棚から、もう一つのものを取り出す。
「そのう、どうすれば」
「図が箱に描いてありませんか。その通りにお願いします」


589 : Two Heads are Better than One ◆Pw26BhHaeg :2018/05/06(日) 23:00:15 AkQIvnXo0
セイバーは恐る恐る箱を開け、その図の通りに、箱の中のものをマスターの背に……肩に貼り付けていく。
「こ、こうですか」
「そうそう、上手ですよ。どうも私、肩凝りが酷くて……」

その箱には……『磁気絆創膏』と書かれている。



あの時……大自然に身を捧げ、命を捧げて、私は死んだ。
いや、現世から離れて別の状態になり、眠っていただけだ。不思議な夢を幾度も見た(nukar)。
異なる世へ赴き、遥かな未来を見、異国の人々や魔物と戦い……もうひとりの自分と出会ったり。
いろんな事があった。沈んでいた私の心が、明るくなっていくようでもあった。

これもまた、夢か幻か。異なる世の、異なる時の流れ。『英霊の座』に登録された私の冒険。私の道(ru)。
聖杯にかける願いは、今のところない。人それぞれがそれぞれに、時代を築いていけばいい。
しかし、私のマスター、あるじとなった人は……人、なのだろうか。なにか、よからぬ気配がする。



「あの、マスター。湿布薬や鍼灸、温泉なども肩凝りには良いと聞きますが。これは……?」
「磁石です。鉄を引きつける、あの石。私もこの前まで知りませんでしたが。街で売っていて助かりました」

苦笑するマスター。まだ若いのに、こんなに肩が凝るとは。
……胸が大きいと、肩が凝るのだろうか。そのう、少なくとも、私よりは大きい、気がするが。

「なぜ、そんなに肩が凝るのです?」
つい聞いてしまった。マスターは振り返り、じっと私を見る。
「……あなたに伝えていいものでしょうか。いえ、いずれ知らねばならぬこと。見ても驚かないと、約束頂けますか?」
「は……はい。驚いたりは、しません」


590 : Two Heads are Better than One ◆Pw26BhHaeg :2018/05/06(日) 23:02:18 AkQIvnXo0
マスターはニッコリと微笑み―――それはまるで、和人の地で見た菩薩像のように見えたが―――
再び風呂場へ向かった。手招きされ、ついていく。マスターは纏っているものを脱ぎ、裸身となる。

「とくとご覧なさい」

マスターが桶に冷水を注ぎ、ざぶりと被ると――――

「あ、あああああ!」

思わず約束を破り、驚いてしまった。だって、だって。
マスターの顔が3つになり。腕は6つになり。黒髪は短くなり、恐ろしい形相になり。口には牙が。

「……どうじゃ、驚いたであろう。わしは『阿修羅(アシュラ)』よ。けけけけけ」

阿修羅。遠い異国の、天竺の悪神(wen-kamuy)。和人の地には、その像も祀られているとか。
いつの間にか、阿修羅は衣服と装身具を身に着けている。その周囲は煌々と輝き、火の傍にいるように熱い。恐ろしい。

阿修羅は桶にまた水を注ぎ、ざぶりと被る。すると、どうだ。
湯気とともに阿修羅は消え、もとのマスター、『ルージュ』さんがいる。衣服と装身具は残っているが。

「……どうですか。驚いたようですね。頭は3つ、腕は6つ。これでは、肩も凝ります」
ふふ、と笑うマスター。
「水を被ると阿修羅となり、阿修羅が水を……湯を被れば、元の私。どちらも私なのです。これは呪いによるものです」
「呪い、ですか」



―――私の心の中で、もうひとりの私が蠢いている。羅刹、と呼ばれた私。紫の闇。悪しき風(wen-rera)。
だからか。だから私は、『ナコルル』は、彼女のサーヴァントとして喚ばれたのか。




591 : Two Heads are Better than One ◆Pw26BhHaeg :2018/05/06(日) 23:04:13 AkQIvnXo0
マスターは衣服を脱ぎ装身具を外し、体を拭く。……私はベッドに戻ったマスターに、もう一度薬を塗る。
二度手間になってしまったが、磁石付き絆創膏は、湯を浴びた程度では剥がれないようだ。

「そのう、マスター。あなたが聖杯にかける願いとは、その呪いを……?」
「いいえ、セイバーさん。私に聖杯にかける願いなどありません。娘溺泉に入れば呪いは解けますし」
「はい?」
「これはこれで、気に入ってるんですよ。強いですし、いろいろ便利ですし。
 変身している時ほどでなくても慢性肩凝りに悩まされるのは、実際どうにかしたいんですが」
「はあ……」

マスターは、割と図太い人のようだ。聖杯戦争の戦場にいると気づいた時は、嘆き悲しんでいたのに。

「ただ、私は死にたくありません。殺されたくもありません。殺しをするのもなんか嫌です。
 そもそもこんな見知らぬ場所からは、とっととおさらばしたいのです」
「はあ」
「あと、私をこんな酷い事に巻き込んだゲス野郎な主催者を、ギタンギタンに叩きのめして土下座させてやりたいと思います」
「はい」
「他の参加者は……まあ私が帰れればそれでいいのですが、脱出して主催者に挑むには、協力する必要もあるでしょう。
 私本人は、阿修羅化しないと無力で可憐な乙女に過ぎませんから、あなたが護って下さい。いいですね、セイバーさん」
「アッハイ」

……なんだか外見に比べて、随分こう、口と性格が悪い人のようだが。ともあれ、彼女を死なせるわけにはいかない。
少なくとも、世界を支配するとか、愚かな人類を滅ぼすとか、そういう方面に悪いわけではない。自己中心的なだけだ。
なにより、この聖杯戦争はおかしい。物騒な事件も街中で起きている。真相を突き止め、場合によっては主催者に挑むこともあり得る。
私は―――それほど強力な英霊とは言えない。確かに他の主従との協力は不可欠だ。三人寄ればなんとか、と言うではないか。



マスターの就寝を見届け、警備につく。夜目のきくシマフクロウ(kotan-kor-kamuy)は、この夜なお明るい街にはいない。
ぎゅっ、と唇を噛み、拳を握りしめる。自然の少ないこの大都市で、カムイの加護がどれだけ届くか。
カムイよ、大いなる自然よ。父母よ、先祖よ。宝刀チチウシよ。どうか、我らをお守り下さい。


592 : Two Heads are Better than One ◆Pw26BhHaeg :2018/05/06(日) 23:06:12 AkQIvnXo0
【クラス】
セイバー

【真名】
ナコルル@サムライスピリッツシリーズ

【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷B 魔力A 幸運B 宝具C

【属性】
秩序・善

【クラス別スキル】
対魔力:B+
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
宝具と大自然の加護によりランクアップしている。森林・山岳などの環境ではより強くなるが、大都市などの人工的環境では弱まる。

騎乗:C
騎乗の才能。幻想種を除き、大抵の乗り物を人並み以上に乗りこなせる。

【保有スキル】
動物会話:A
言葉を持たない動物との意思疎通が可能。知能差と種族差を乗り越えて、互いに心を通じ合わせられる。

巫術(トゥス):A
ト゜ス。アイヌ民族に伝わる巫術。精霊(カムイ)との対話。契約により、彼らの力を借り受けることができる。
周囲に存在する霊的存在に対し、依頼という形で働きかけることにより、様々な奇跡を行使できる。
行使される奇跡の規模に関わらず、消費する魔力は霊的存在への干渉に要するもののみである。
また「精霊の加護」スキルを含んでおり、危機的な局面において優先的に幸運を呼び寄せる。

千里眼(ウェインカラ):B+
巫女(トゥスクル)としての霊視能力。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。遠方の標的捕捉に効果を発揮。
ランクが高くなると、透視、未来視さえ可能になる。英霊化したことでランクが上がっている。


593 : Two Heads are Better than One ◆Pw26BhHaeg :2018/05/06(日) 23:08:12 AkQIvnXo0
【宝具】
『龍より賜いし勇士の宝刀(チチウシ・メノコマキリ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-2 最大捕捉:1

セイバーの家系に代々伝わる神聖な小刀(メノコマキリ)。セイバーたる所以の宝具。刀身二尺五寸(75cm)で鎬造。
美しい民族的意匠が施され、女性(メノコ)でも十二分に取り回しのきく軽量さを誇る。刀身は鋭く、邪を祓う不可思議な力で悪を断つ。
伝説によれば、むかし旅の若者が村娘と恋に落ちた。ある時化物のような熊が現れ、若者も立ち向かったが深手を負った。
若者は湖畔に辿り着き、天に向かって嘆き叫ぶと、天地が轟いて湖から二頭の龍が出現した。
龍は若者の願いに応じて宝刀を授け、若者はこれを用いて熊を殺したが、自らも息絶えた。
村人たちが駆けつけると、宝刀はこの経緯を自ら語り、自らを「チチウシ」と名乗り、若者に勇士(ラメトク)の称号を与えた。
この若者と村娘の間の子がセイバーの先祖であるという。所持者は対魔力が向上し、宝刀の守護者ママハハが付き従う。

・ママハハ
 宝刀チチウシを守護する聖なる鷹。セイバーを足に掴まらせて飛行する他、炎を纏って敵に襲いかかる。
 あくまで「チチウシの」守護者であり、セイバーがチチウシを取り落とした時はその上に留まる(呼べば来る)。

『紫風羅刹女(ウェン・レラ)』
ランク:- 種別:対己宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

セイバーのもうひとりの自分(アルターエゴ、オルタ)であるレラ(アイヌ語で「風」の意)と人格交替する。CV:氷上恭子。
戦闘力(と胸のサイズ)が上昇するが、属性が「混沌・悪」に変化し、思いのままに振る舞う。記憶は共有している。
彼女はこの宝具を使わないが、気絶した時や危機に陥った時、あるいは怒り狂った時、レラが表に現れるかも知れない。

・シクルゥ
 シベリアから渡来した狼。レラ化するとママハハに代わって現れ、レラを背に乗せて移動する。

【Weapon】
宝具とママハハ。


594 : Two Heads are Better than One ◆Pw26BhHaeg :2018/05/06(日) 23:10:16 AkQIvnXo0
【人物背景】
格闘ゲーム『サムライスピリッツ』シリーズ等に登場するアイヌの少女。
明和八年(西暦1771年)10月11日、アイヌモシリ(蝦夷地/北海道)・カムイコタンに生まれる。身長五尺一寸(154.53cm)。
三体数(スリーサイズ)は17-18歳時に73・50・82。黒髪に赤いリボン、青みがかった瞳、黒目がちなタレ目の童顔。赤白のアイヌ風衣服とマントを纏う。
主なCVは生駒治美。『天下一剣客伝(剣サム)』では高橋美佳子、電撃CD文庫版では國府田マリ子、TVアニメ版では千葉麗子、
パチスロ版・KOF14・グラブルでは中原麻衣が演じている。名の語源は不明。

家族は祖父サノウク、祖母モナシリ、妹リムルル。代々千里眼(ウェインカラ)や巫術(トゥス)を受け継いで来た巫女(トゥスクル)の家系に生まれた。
カムイ(神々・精霊)に愛される清い心の持ち主。大自然と意思を疎通する能力を持つ。森の中で自然の声を聞くことを好み、自然を汚す悪人は許さない。
護身術としてシカンナカムイ流刀舞術を修める。15歳の時、亡き父の用いていた宝刀チチウシ及びその守護者ママハハを継承した。
世界に広がるウェンカムイ(悪神)の気配を感じ、その原因を探り正すために和人の地へ渡る。初代では明るく勝ち気で活発な少女(17歳)だったが、
第二作『真サム』では敬語を使う儚く大人しい性格(18歳)となり、エンディングでは荒れ果てた自然を復活させるために命を捧げた。
なお同年(寛政元年、1789年)には蝦夷地でアイヌと和人の衝突「クナシリ・メナシの戦い(寛政蝦夷蜂起)」が起きている。

アメリカ忍者ガルフォードとフラグが立ったりしているが、露出の少ない清楚な美少女として、格闘ゲームのヒロインとしては絶大な人気を集めた。
そのため以後の作品でもほぼ皆勤賞。『斬紅郎無双剣』『天草降臨』では初代と第二作の間の時系列ゆえ、『零』では初代より前の時系列(15歳の時)ゆえ出演。
『侍魂』は第二作の後の時系列だが、自然の中で眠りについていただけであっさり復活しており、ついでに胸のサイズが9センチも大きくなった。凄いねガイア。
その他にもクロスオーバー作品やアニメ、コミカライズで出演しまくり、2Pカラーが別人格になったり、妖精になったり惨殺されたり、
石川賢キャラになったり脱いだり吸血鬼コスになったりした。このナコルルは、そういういろんななんかが座に登録されたナコルルである。
アイヌを世に知らしめたキャラクターとしても名高いが、実際のアイヌ文化とは忍者とNINJAぐらいに違うので気をつけよう。ヒンナヒンナ。
キャスター、アサシンとしての適性も持つが、今回はセイバーとして現界。さほど強力ではないため他者との連携が必要となろう。

【サーヴァントとしての願い】
なし。

【方針】
マスターを護り、自然を汚す悪人を滅ぼす。弱者は庇護する。都市は苦手なので、出来れば山や森林へ移動したい。

【把握手段・参戦時期】
原作や派生、コラボ作品のどれか。YouTubeやWikiだけでもたぶん大丈夫。
第二作で大自然に命を捧げたことで英霊に登録されたと思われるが、性格は割と明るくなっているかも知れない。


595 : Two Heads are Better than One ◆Pw26BhHaeg :2018/05/06(日) 23:12:17 AkQIvnXo0
【マスター】
蕗珠(ルージュ)@らんま1/2

【Weapon・能力・技能】
『阿修羅変化』
中国青海省バヤンカラ山脈拳精山の呪泉郷に存在する泉の一つ「阿修羅溺泉(アシュラ・ニーチュアン)」。
四千年前にインドの魔神・阿修羅が溺れたという悲劇的伝説がある。ルージュはこの泉で溺れたことにより、水を被ると阿修羅になってしまう特殊体質となった。
阿修羅の姿は三面六臂で、ほぼ奈良興福寺の有名なアレだが、胸はあるのかないのか微妙なところ。
装飾品が増えたり薄布のズボンが消えたり現れたりするので、衣服や装飾品は変身時に自動生成されている気がする(初登場時は裸になってたが)。
光球を纏って自在に空中を飛行し(一人を乗せて飛べる)、口や手から炎や雷を操って敵を討ち滅ぼす。三面は各々意志があり、ご飯も三人前食べる。
相当に強いものの弱点も多々あり、早乙女乱馬&触手付き変身後パンスト太郎でなんとか対処可能。英霊相手なら多分負ける。
全力飛行速度は青海省から練馬区まで2000kmほどを数時間(昼過ぎから夏の日没後まで)で移動できるほどだが、戦闘時はそんなに高速ではない。

・光球
 阿修羅の半径数メートルを覆っている熱いオーラ。光り輝き、大変目立つ。任意で消すことも出来、弱体化時は勝手に消える。
 強く光らせて目眩ましにすることも可能(阿修羅フラッシュ)。触れた水を瞬時にお湯に変え、家屋程度なら突き破る。
 多少の水なら蒸発させることも出来るが、雨などを浴びると「お湯を被った」ことになり変身が解けてしまう。飛行時には注意。

・阿修羅ファイヤー
 3つの口から火炎を吐く。フライパンなど金物で防げ、口を塞ぐと暴発して頭がひとつピヨる。うる星のジャリテンめいている。

・六掌流星乱打
 6つの掌で6つの火球を投げつける。フライパンなど金物で防げる。

・火竜大輪舞
 空中で炎を放ちながら激しく回転し、炎の竜巻を作り出す最大奥義。フライパンなど金物では防げない。
 真上には炎が出せないので弱点となるが、口から炎を吐いて迎撃は可能。

・雷蛇天誅殺
 6つの腕から雷の蛇を放つ最終奥義。回避することは可能だが、金物を身に着けていると纏めて落雷する。

『力の源』
阿修羅の力の源。阿修羅時には背中にこれを装着していないと体力を著しく消耗し、大技も出せない。
正体は磁気絆創膏。6本も腕があるせいで肩凝りが酷く、これが手放せない。装着は自分の手で可能。
失われたオリジナルは発する磁力が強すぎたため、近くに鉄製品があるとそちらへ高速で飛んで行って奪われてしまうという欠点があった。
現代文明社会では街中の薬局などで購入出来る。肩揉みや肩叩きをすれば一時的に肩凝りが解消され、力を発揮できる。鍼灸や温泉でもよさそう。


596 : Two Heads are Better than One ◆Pw26BhHaeg :2018/05/06(日) 23:14:06 AkQIvnXo0
【人物背景】
高橋留美子の漫画『らんま1/2』単行本32巻に登場する少女。ゲーム『らんま1/2 バトルルネッサンス』ではCV:西原久美子。
中国青海省在住、乙女座のA型。ちょっぴりシャイで美しい娘(自称)。菩薩風の衣服と装身具を纏った黒髪長髪の美少女で、敬語で話す。
憂いを帯びて淑やかだが、口と性格は悪くエゴイスト。水を被ると阿修羅に変身して好戦的な性格になり、口調も古風になる(私→わし)。
ルージュ本人は無力な毒舌乙女に過ぎず、戦うには阿修羅化するしかない。なのでたぶん女傑族ではない。

【ロール】
高校生。中国系大企業の役員の娘。父母は仕事で外出がち。通いの家政婦はいる。

【マスターとしての願い】
帰還。出来れば慢性の肩凝りを治したい。

【方針】
様子見。出来れば仲間を増やしたい。阿修羅化は大変目立つし肩が凝るので、あまりしたくはない。

【把握手段・参戦時期】
原作単行本32巻。帰国後しばらくして参戦。


597 : ◆Pw26BhHaeg :2018/05/06(日) 23:17:05 AkQIvnXo0
投下終了です。


598 : ◆NIKUcB1AGw :2018/05/06(日) 23:37:02 JkGstWa60
皆様投下乙です
自分も投下させていただきます


599 : 仙水&バーサーカー ◆NIKUcB1AGw :2018/05/06(日) 23:38:19 JkGstWa60
この見滝原にも、素行の悪い青少年は存在する。
その日、5人の不良少年が人気の無い郊外でたむろしていた。
常識的な人間なら、殺人鬼が猛威を振るっている現状で必要もなく人の少ない場所に行こうなどとは考えない。
だが、彼らは常識に当てはまらない。自分たちは大丈夫だと、根拠もなく思い込んでいるからだ。
結果として、その過信ゆえに彼らの人生はここで終焉を迎えることになる。


におう……におうぞ……
命のにおいだ……


翌朝、彼らが残したと思われるゴミと、おびただしい血痕だけがその場で発見された。


◆ ◆ ◆


街の中心でも外れでもない微妙な立地に、探偵事務所がある。
事務所の主は、いちおう勤務中だというのにデスクでくつろいだ様子を見せていた。
彼こそが、自らのサーヴァントに不良を襲わせた聖杯戦争の参加者である。
名は、仙水忍。
いや、この言い方は正しくない。
「今の」彼は、忍の中に宿る別人格のひとつ、ミノルである。

(昨日のテストは、とりあえず上々といったところか……)

昨夜のことを思い返しながら、仙水はコーヒーを口に運ぶ。

彼が召喚したサーヴァントは強力ではあったが、いくつか不安点があった。
異形かつ巨体であるため、社会に溶け込んでの行動はできないこと。
バーサーカーのクラスで召喚されているがゆえに、知性に欠けること。
そして、本来は海で活動する存在であること。

陸上でどの程度戦えるかの確認。
それが昨夜の行動の理由だった。

(まあ、実際に他のサーヴァントと戦ってみないことには、気休めにしかならないが……。
 まだ自重すべき時期のようだからな)

聖杯戦争は、彼にとって未知の戦いだ。慎重になるに越したことはない。
ゆえに仙水は、本戦が始まるまで「蛮行」は今回限りにすると決めていた。

(本戦が始まったら、君には存分に暴れてもらおう。
 期待しているよ、バーサーカー)

最高峰の霊能力者である仙水には、霊体化しているサーヴァントの姿も視認できていた。
事務所内の空きスペースをほぼ占拠する、巨大な青い龍の姿が。
覇海軍王ジャコラ。魔王のしもべとして、海を恐怖で支配した魔獣である。


600 : 仙水&バーサーカー ◆NIKUcB1AGw :2018/05/06(日) 23:39:17 JkGstWa60


◆ ◆ ◆


不可抗力とはいえ、樹には悪いことをした。
これから計画を実行に移そうというところで、別の世界に連れて来られてしまうとはな。
まあ、実行途中で連れて来られるよりはマシか。
今は強力な結界が張られているから無理だろうが、この聖杯戦争という催しが終われば彼も自分を見つけられるだろう。
自分が勝者として生き残っていても、敗者として死んでいても。
むろん、後者は避けたいところだが。
聖杯とやらの力を使えば、自分の真の願いも叶うかもしれない。
何にせよ、やるべきことはたいして変わらない。
舞台と道のりが変わっただけのことだ。


俺たち7人で墓を掘る。
人類全ての墓を掘る。


601 : 仙水&バーサーカー ◆NIKUcB1AGw :2018/05/06(日) 23:40:08 JkGstWa60

【クラス】バーサーカー
【真名】覇海軍王ジャコラ
【出典】ドラゴンクエストXI
【性別】雄
【属性】混沌・悪

【パラメーター】筋力:B 耐久:B+ 敏捷:E 魔力:B 幸運:E 宝具:B

【クラススキル】
狂化:C
理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
身体能力を強化するが、理性や技術・思考能力・言語機能を失う。また、現界のための魔力を大量に消費するようになる。
ジャコラの場合はかろうじて言語機能は残っているが、独り言を漏らすのみで会話は成立しない。

【保有スキル】
海の暴君:B
海において暴虐の限りを尽くした逸話から生まれたスキル。
水中または水上で戦闘を行うとき、敵対者にプレッシャーを与え精神状態を悪化しやすくする。

生命探知:A
生物の存在を探知するスキル。
いかに気配を消そうとも、生命力そのものをかぎ分ける魔獣の嗅覚はごまかせない。
ただしサーヴァントは生物ではないため、探知不可能。


【宝具】
『邪悪に堕ちし紅の宝玉(レッドオーブ)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大捕捉:1人(自身)

強い神秘を秘めた六つの宝玉、「オーブ」のうちの一つ。
常時バーサーカーの肉体を覆うように赤いバリアを張っており、後述する弱点属性以外の攻撃を全て無効にする。
勇者の雷によって無効化された逸話から、「勇者の力」「聖属性」「雷属性」のうちいずれかの条件を満たした攻撃を受けると機能しなくなる。
一度無効化されると、その聖杯戦争中は機能回復は不可能である。

なおもう一つの効果として使用者が敵に与えるダメージを増加させる「クリムゾン・ミスと」という霧を発生させる力もあるが、
こちらには真名解放が必要であるためバーサーカーとして召喚された今回は使用不能である。

【weapon】
特になし

【人物背景】
魔王ウルノーガの配下、「六軍王」の一角。海の支配を任されている。
海に魔物以外の生命が存在することを許さず、人魚や船で海に出た人間たちを襲っていた。
一度は勇者一行の船を難破させるものの、再戦時には勇者の力によりバリアを破られ敗北した。

【サーヴァントとしての願い】
今一度、ウルノーガの支配する世界を作り出す

【基本戦術、方針、運用法】
高い攻撃力と防御力を誇るが、巨体ゆえの鈍重さ、隠密性の低さなど弱点も多い。
宝具も一度攻略されると二度と使えなくなるため、過信は禁物である。


602 : 仙水&バーサーカー ◆NIKUcB1AGw :2018/05/06(日) 23:41:20 JkGstWa60

【マスター】仙水忍(および彼の別人格6人)
【出典】幽遊白書
【性別】男

【マスターとしての願い】
妖怪への転生

【weapon】
「気硬銃」
義手となっている右手に仕込まれた、霊力をビーム状にして撃ち出す銃。
カズヤの人格が出ているときのみ使用可能。

【能力・技能】
「聖光気」
伝説の存在とされていた、究極の聖なる気。
忍の人格のみ使用することができる。
戦闘時には鎧として具現化し、彼の体を包む。
形状を変化させることで、攻撃特化のスタイルを取ることも可能。

「霊光烈蹴拳」
蹴り技を主体とした「烈蹴拳」という拳法に、霊力をミックスした仙水オリジナルの戦闘スタイル。
球状にした霊力を蹴り飛ばすのが、基本の攻撃方法となる。

【人物背景】
浦飯幽助の前任の霊界探偵。
生まれつき高い霊力を持つために幼い頃から妖怪に襲われ、「妖怪は滅ぼすべき絶対悪である」という価値観を持っていた。
しかしある事件で「人間が力の弱い妖怪をいたぶって楽しむ」という惨劇を目にしてしまい、今までの価値観が崩壊。
程なくして失踪する。
10年後、人間界と魔界を繋ぐ「界境トンネル」を開けるために活動を開始。
それを阻止しようとする幽助たちと対決する。
その肉体は不治の病に冒されており、真の目的は魔界に行ってそこで死ぬことであった。

前述の事件で精神を病んだことがきっかけで、主人格以外に6人の人格を持つ多重人格者となっている。
幽助との戦いで出現したのは忍の他に理屈屋の「ミノル」と、下劣な殺人鬼の「カズヤ」。
それ以外に武器コレクションの手入れを担当する「ジョージ」、家事を担当する「マコト」、
育てている動植物の世話を担当する「ヒトシ」、泣き虫の女性人格「ナル」がいる。

参戦時期は、界境トンネル計画を実行に移す直前。

【ロール】
私立探偵

【方針】
聖杯狙い


603 : ◆NIKUcB1AGw :2018/05/06(日) 23:42:33 JkGstWa60
投下終了です


604 : ◆ZbV3TMNKJw :2018/05/07(月) 18:06:48 uFzFEfy.0
投下します


605 : 夢はこの部屋の中で ◆ZbV3TMNKJw :2018/05/07(月) 18:07:55 uFzFEfy.0
その日、鹿目まどかは不運であった。
『たまたま』普段より少しばかり早く目が覚めて。
『たまたま』ちょっと早めに学校へ行ってみようかなんて思いついて。
『たまたま』塀の上で毛づくろいをしていた可愛らしい黒猫さんを見かけて、「にゃー」なんて声をかけてみたらそっぽを向かれて。
『たまたま』黒猫さんが塀から降りた先で、明らかにスピード違反な車が超高速で迫ってきていて。
『たまたま』まどかは黒猫さんよりも先に車の存在に気がついて。

だから、彼女はほぼ反射的に「黒猫さんを助けなくちゃ」と思う暇すらなく、道路に飛び出した。


彼女は知っていたのかもしれない。
死にゆく誰かの命を救うことは、対価として命を支払わなければならないことを。

知っているからこそ、数多の世界線においても、いつだって他者の為にその身を捧げてしまう―――のかもしれない。
だから、この場で黒猫さんを庇い命を落とすとしても、その選択肢を選んだのは自分だ。
ならば、それはやはり不幸ではなく「目の前で命が失われ行く瞬間を目撃してしまった」不運だとすべきだろう。

だが、それで彼女の命が費えるわけではない。

なぜなら

パァン

不運な彼女を救う者が密かに傍にいたのだから。


606 : 夢はこの部屋の中で ◆ZbV3TMNKJw :2018/05/07(月) 18:08:24 uFzFEfy.0

「あれ...?」

まどかはキョロキョロと見回し己の状況を確認する

たしかに自分は轢かれると思っていた
だが、自分の身体には傷一つなく、代わりに車は道脇に寄せられボンネットが大破している始末だ

訳がわからない。だが、自分も黒猫も無事なのは素直に喜ぶべきだろう

ほっと胸をなでおろすのも束の間、今度は車の運転手が気にかかり、助けなくてはと車に駆け寄る

それがいけなかった。

車から降りてきた男は、大丈夫ですか、と声をかけようとしたまどかの首根っこを掴み、力強く頬を叩いた。
頬に走る痛みに、遅れて恐怖を覚え、声すら出せず硬直するまどか。
その様を見て男はにやりと口角を吊り上げ、傍にあった細道へとまどかを引きずっていく。

ダンッ、と壁に叩きつけられ、首筋の痛みと共にまどかは咳き込む。

「このクソガキが。俺の車をあんなにしやがって」

こめかみに青筋を立て、歯軋りと共に恫喝する男に、まどかの喉がヒッ、と鳴った。

「ご、ごめんなさ...」
「ごめんなさいで済むなら警察はいらねェんだよ、エェ?あの車がいくらすると思っていやがる」

男はこめかみに青筋を浮かべながらも、内心は舌を出してあざ笑っていた。
非は明らかにスピード違反を犯していたこの男にある。百歩譲って飛び出した方を責めるにしても、まずは轢きかけた相手の容態を確認するのが常識だ。
だが、この男、自分に非があることを隠すどころか、むしろまどかを脅して金を毟り取ろうとしているのだ。


607 : 夢はこの部屋の中で ◆ZbV3TMNKJw :2018/05/07(月) 18:09:07 uFzFEfy.0

「とりあえず修理費の100万を払いな。話はそれからだ」
「ひゃ、百万なんて、そんな...!」
「てめェが壊した車だろうが!!」

パァン、と再び小気味良い音が鳴り、まどかの頬が赤みを増す。
彼女から漏れる悲鳴と涙が、男の興奮を煽り欲をそそり勃たせる。

「ハッ、良い声で鳴きやがるじゃねェか」
「うっ...えぐっ...」
「まあ、俺も鬼じゃねえ。今すぐ払えとは言わねえよ。代わりに」

男は下卑た笑みを浮かべ、舌なめずりする野獣のようにまどかの服へと手をかける。

「いっちょ身体でも張ってもらおうじゃねえか!」
「―――!!」

響く悲鳴をあげようとするまどかの口を押さえ、しかしその微かに漏れる悲鳴に男はますます息を荒げる。
背後のかばんから取り出すのはビデオカメラ。余すことなくまどかのつま先から髪の先までねっとりと視線を這わせる。

「いいねェいいねェ、その恥辱と恐怖で歪んだ顔を女子(おなご)でしか勃たねえ変態共に売りつけりゃボロ儲けだ。俺もしばらく使わせてもらうぜ」
「や...やめて...」
「やめられねェな、ええ!?お前はこれから俺の奴隷になるんだよ!」

ガハハハ、と男の笑い声が木霊する。

「ちくしょう勃起が半端ねェ。もう我慢できねェよ」

男はズボン越しに己の局部をまどかへと押し付けようとする。
まさに人生の終末への分岐点とでもいえる、この瞬間にも鹿目まどかは『不幸』ではなく、やはり打ち消すことができる程度の『不運』だ。

何故なら。


ヌッ

背後から現れた手が、男の口元を抑え

グイッ

男を無理矢理まどかから引き剥がし

「フンッ」

ぐしゃっ

男が落としたカメラを踏みつけ壊してしまったからだ。


608 : 夢はこの部屋の中で ◆ZbV3TMNKJw :2018/05/07(月) 18:09:31 uFzFEfy.0

「ウチの者に、手を出さないでもらおうか」

声の主は男だった。
細身の体躯に、晴れの日だというのに身を包むレインコート、そしてその顔を隠す丸メガネとマスクといった明らかに"変質者"の出で立ちである。
当然、そんな男に投げ飛ばされた男は思わず言葉を失ってしまい、パクパクと口を開閉するだけ。

しかし、まどかの反応は違った。

「あ、篤さん!!」

まるで窮地にヒーローが現れた子供のように、パァッ、と顔を輝かせたのだ。
篤と呼ばれた男は、ハァハァと呼吸を繰り返すのみで、まどかへと言葉を返さない。

「警察はもう呼んである。退くならいまのうちだ」

丸メガネが煌き、その双眸を微かに覗かせる。

(ち、チクショウ...)

男は、現状の不利と篤の脅威を感じ取り、早々に背を向け、壊れた車に乗り込み去っていった。

「...ほら、立てるか?」

篤は振り返り、まどかへと手を差し伸べる。

「は、はい。ありがとうございます」

まどかは、お礼と共に、その目に涙を浮かべつつもにこやかな笑顔を浮かべた。

「そういえば警察は...」
「あれは嘘だ。俺の立場でそんなものを呼べるわけがないだろう」


609 : 夢はこの部屋の中で ◆ZbV3TMNKJw :2018/05/07(月) 18:10:16 uFzFEfy.0







てく。てく。てく。

まどかと篤の二人は、通学路を並列で歩いている。車道側が篤なのは、彼なりの気遣いからだ。

「なあ、なんでさっきのやつに抵抗しなかったんだ?」
「え...」
「魔法少女だったか。お前ならあんな奴の腕をへし折るくらいはできただろ」
「へし折るだなんて、そんな」
「聖杯戦争が始まれば、あんなものじゃすまなくなる」

篤の顔が険しくなり、まどかを見る目もかける言葉も自然と力み始める。

「さっきの奴はNPCで、ただの一般人だった。だが聖杯を狙うマスターやサーヴァントはあんなものじゃない。もっと残酷で、卑劣で、予想外の行動すらとるだろう。
そんな時ですら、お前はああやって相手に遠慮して力を振るわないつもりか?」

投げかけられる厳しい言葉に、まどかは思わず俯いてしまう。

「...わかってます。どこかで戦わなければいけないことは」

まどかは、静かに、震えつつある声で搾り出す。

聖杯戦争。
この世界に連れてこられた際、封印されていた記憶の再構成の際に知ることができた断片的なその全貌。
それは、如何な願いも叶える器『聖杯』を勝ち取るための、命を賭けた争奪戦だった。
自分に他者を蹴落としてまで叶えたい願いはないし、当然、魔女でもない人々を殺めること自体が嫌だ。
誰も傷つけあわず、このままもとの世界に帰ることができればどれほどいいか。
けれど、聖杯戦争では帰る権利すら、他のマスターと戦い、蹴落とし、勝ち取らなければならない。
人に害為す魔女を倒せば元通り、なんて甘い考えは通用しない。
たとえ相手が一般人であろうとも、殺さなければ帰ることすら許されないのだ。


610 : 夢はこの部屋の中で ◆ZbV3TMNKJw :2018/05/07(月) 18:11:20 uFzFEfy.0

「でも、わたしは殺すために戦いたくはありません」

それが困難な道であることはわかっている。わかっているからこそ、まどかは顔を上げ力強い眼差しで篤を見据えた。


「きっと、わたし以外にも聖杯戦争...ううん、そんな大層な名前で誤魔化したくない。殺し合いをしたくない人はいるはずです。そんな人たちを見捨てることなんてできません」
「甘い考えだ。お前の言うような人間でも、自分が生き残るためなら...願いを叶える為ならどんな手段も平然と使ってくるぞ」
「甘くていいじゃないですか。魔法少女は、みんなの夢と希望を叶えるんですから。もしここで誰かを見捨てたら...わたしは、もう魔法少女じゃいられなくなる」

鹿目まどかは、なんの取り得もない少女だと彼女自身が自覚していた。
ドジで、弱虫で、のろまで、なんの役にも立てない。そんな自分が大嫌いだった。
けれど、魔法少女となってからは、だいぶ変わったように思えた。
魔女と戦い、間接的に人々が救われているのを見て、これでよかったんだと思えるようになった。
こんな自分でも誰かの役に立てるんだと、そう実感し、自分にもそれなりに自信がついてきた。

だから、この殺し合いでも同じ。
救いを求める声が聞こえれば、必ず『魔法少女』として力になる。
それを破ってしまえば、彼女はもう『魔法少女』でいられなくなるから。
だから、彼女はこの場に於いても己の信じる『魔法少女』で在り続けようと決意した。

「......」

フードから顔を覗かせる篤の顔色は、まどかから見れば暗く写っており、正確には読み取ることができない。
ある種の威圧感すら感じるその面持ちに、思わずまどかの鼓動は緊張感からドキドキと波打ち、自然とハァハァと息が漏れ始める。
いくら魔法少女となりそれなりに自信を持てるようになったとはいえ、根が温厚な少女である。
そんな彼女が篤からプレッシャーを感じれば、そうなるのも必然なのかもしれない。

「―――そうだな」

そう、口を開いた篤は、影が晴れ朗らかな微笑みを浮かべていた。

「誰も死なないにこしたことはない。お前の言うとおりだ」
「篤さん...!」
「ああ。俺も、及ばずながら力になるよ」

まどかの顔がパァッ、と明るくなる。
聖杯戦争はマスターとサーヴァント、どちらが欠けても為しえない戦いだ。
ここで二人が仲たがいしてしまえば、それだけで無力な存在と化してしまう。
だから―――いや、それ以上に、篤が賛同してくれたことがまどかにとって理由なしに嬉しかった。
魔法少女でもない彼が、共に手を携え戦ってくれる。これほど素敵なこともないだろう。


611 : 夢はこの部屋の中で ◆ZbV3TMNKJw :2018/05/07(月) 18:12:03 uFzFEfy.0
「あっ...そういえば篤さんはなにか願い事はあるんですか?」

ふと、そう問いかける。
わざわざ英霊と化してまで戦いに臨むというのだから何かしらの理由があるはずだ。勿論、意図せず呼ばれた者もいるだろうが。
ただ、あまり篤自身の素性は聞いていなかったため、自然と疑問に思った。

「そんな大層な願い事じゃないさ」

篤は笑みを崩さず、しかし丸メガネからのぞかせるその瞳にはどこか懐かしむような寂寥を帯びて言葉をつむぐ。

「ただ、弟や大切な人たちに幸せに暮らして欲しい。俺の願いはそれだけだよ」

まどかは思わずキョトンとした表情を浮かべてしまう。
篤の風格は、漫画やドラマなんかで見るような所謂『戦士』的なものだった。
それこそ、敬愛する師である巴マミ以上にだ。
しかし、その口から出た願いはなんとも素朴なもので。
だからだろうか。まどかの頬は自然と綻んでいた。

「篤さん、弟がいるんですね」
「ああ。俺の、かけがえのない弟だ」

弟の話題に触れた途端、篤の眉間からは皺が消え、その口のまわることまわること。
まどかがひとつ質問すれば、その答えに更にひとつ情報を加え、微笑みながら弟について語りだす。
まどかの目には、その姿が、英霊などという大層なものではなく、ただ弟思いな兄としか写らなかった。

「もしもあいつと会わせられる機会があったら会わせてやりたいよ。結構お前に似てる奴だし、仲良くなれると思う」
「ふふっ、楽しみです」

きっと、弟がかわいくて仕方ないのだろう。弟がいるまどかにはその気持ちがよくわかった。
だから、篤の弟の話は聞いていて楽しかった。
自分が弟のタツヤの話を振れば、篤は笑顔のまま聞き入ってくれた。

互いに弟の話に熱が入りつつも、まどかは思う。

もしもこれから起こるのが聖杯戦争なんかじゃなかったら。
こうして、過去の人と仲良くなれる催しだったらいいのにと。

けれど、これから起こるのは間違いなく聖杯戦争だ。己の願いの為に、他者を蹴落とし、そして勝利する。

そんな潰しあいなどしたくない。その気持ちに嘘はない。
しかしだ。もしも篤が語ったように、守ろうとした人が牙を向いてきたら。
果たして自分は魔女でもない人たちと戦えるのだろうか。戦った上でなお『魔法少女』でいられるだろうか。

まどかの不安と恐怖は拭い去れない。

(でも、わたしは一人じゃない)

まどかのサーヴァント、篤は言った。犠牲者が出ないのに越したことはないと。
犠牲者を出さないよう、共に戦ってくれる者がいる。それだけでも、まどかの背を押すには充分だ。

(わたしは、最後まで希望を振りまく魔法少女らしく生きる。きっと、マミさんがいたらそうするだろうから)

憧憬と理想を胸に秘め、鹿目まどかは密かに決意するのだった。


612 : 夢はこの部屋の中で ◆ZbV3TMNKJw :2018/05/07(月) 18:13:00 uFzFEfy.0



グジャッ

「ヒイイイィィィ!!吉川がぁ!吉川の頭が丸太にィィィ!」

グシャリ。

「嫌ァァァァァ!!」

パァン。

「な、なんなんだよ!俺たちはただ、ちょっとイタズラしようとしただけで...」
「イタズラ、か。車の腹いせで家に火を放つのをイタズラで済ませる奴を生かして置く訳にはいかないな」
「ヒィッ、た、たすけ」

グチャッ。


613 : 夢はこの部屋の中で ◆ZbV3TMNKJw :2018/05/07(月) 18:13:48 uFzFEfy.0

ハァ、ハァ、と呼吸音が大気に溶けていく。

月夜が照らす夜。
英霊・宮本篤の眼前には多くの肉塊が転がっていた。
その中には、今朝まどかを襲った男も混じっていた。

篤は、男がなんらかの形でまどかへと報復に来るであろうことを察していた。
その予感は見事に当たっていた。男達は、あろうことか10人以上の仲間を連れ、車が壊れた腹いせにまどかの家を襲撃しようとしていたのだ。
そこで篤は、男達がまどかの家へ向かう前に彼らと接触したのだ。
篤は彼らの姿を認識するや、即座に行動を開始。
対話を試みる暇すらなく、その手の丸太で問答無用で全員を叩き潰した。
これは全て、まどかの意思の介在しない、篤の単独行動である。

「...あいつが知れば、幻滅するだろうな」

『あいつ』とは、現在の己のマスター・鹿目まどかであり、最愛の弟・宮本明でもある。

鹿目まどかはこんな異様な状況に巻き込まれても、己の信じる道を進むと腹を括っていた。
明は吸血鬼でない者をどうにか助けようといつも奮闘していた。

篤のやったことは、全て彼らの意思に反する行為だ。

もしも彼らが篤の立場であれば、まずはどうにか犠牲者を出さないように穏便に済ませようとしたことだろう。

だが、篤は違う。
吸血鬼でもない普通の人間を問答無用で殺したのだ。

(それでも構わない。俺は、俺の願いを叶える為なら幾らでも手を汚そう)

篤の願い。
それは、聖杯で願いを叶え、吸血鬼の首領・雅を抹殺し、明を始めとした大勢の者たちを呪われた因果から解放すること
そして。

(まどか...お前の手は汚させない。お前にかかる火の粉は、俺が振り払う)

鹿目まどかが、その手を汚す前に元の世界に帰してやること。


614 : 夢はこの部屋の中で ◆ZbV3TMNKJw :2018/05/07(月) 18:14:25 uFzFEfy.0

篤は、本来なら従来の聖杯戦争のルールに則り、マスターと共に敵を斃して聖杯を手に入れるつもりだった。
まどかに対してもそうだ。
まどかを車から助けた後、男に乱暴をされてもギリギリまで助けに入らなかったのは、彼女というマスターを確かめる意味合いがあった。
もしも、魔法少女の力を使い男を捻じ伏せていれば、篤は共に勝ち抜くマスターとして彼女を扱った。
だが、まどかは自分の身が危険に晒されても魔法を使わなかった。

極め点けに、殺すために戦いたくないというあの返答だ。

篤は理解した。
鹿目まどかは、優しく、自分の為に頑張れない―――明と似通った人間なのだと。

明が幼稚園の頃、轢かれた猫を見てずっと泣いていたことがある。
そこには、打算のような邪な気持ちはなく、純粋に猫を悼んでいただけだった。
まどかが猫を庇ったのも同じだろう。邪な気持ちで身を投げ出すことなどできるはずもないのだから。

加えて、昔から明は、自分のためには頑張れない人間だった。
かつて明の運動会を見に行った時、徒競走の順位は5位。友達のケン坊は1位だ。
明は自分の順位を恥じることなく友達と笑いあっていた。
彼は、人を蹴落とすくらいならと頑張るのを諦めてしまう性格だった。

まどかもそうだ。
自分の命が懸かっているというこの状況でも、実際に恐怖を味わってもなお、他者を蹴落とすことに嫌悪を抱いていた。

同じだ。

鹿目まどかは、彼岸島へ渡る前の明そのものなのだ。

(まどか、お前は間違ってない。なんであれ、殺し合いで解決するなんてのは最低な解決方法だ)

自分と戦い見事に勝利した明を否定するつもりはない。
彼は彼岸島で友の死を背負い、本気で強くなりたいと願い、誰よりも頑張り始めた。
篤が内心で恐れるほどの資質はあれど、それを活かそうとしない明にもどかしさを感じていたが、強くなった明と全力で戦いあえたことはこれ以上ない喜びだった。
最後の最後で、明が自分との別れを涙し惜しみつつも、その悲しみを背負い刀を振り下ろしたことには誇りすら抱いている。


615 : 夢はこの部屋の中で ◆ZbV3TMNKJw :2018/05/07(月) 18:14:47 uFzFEfy.0

けれどその一方で、彼に自分と同じ道を歩んでほしくないと思っていたのも事実だ。

かつての親友、村田藤吉の弟、武。
彼もまた、明と同様、生き物を殺せないほど優しい少年だった。それも、吸血鬼相手でもだ。
村田の頼みで修行をつけてやっていたが、当初は彼のことを足手まといだと感じていた。
だが、まだ本土にいた明の姿と重ねるうちに、武はこのままでいいと思えるようになっていった。
彼岸島は地獄だ。それこそ、聖杯戦争以上におぞましく、残酷で非情な、命が紙切れのように散っていく地獄だ。
その地獄にあってなお、武は紙切れのような命を手放さず、生き物を殺せなかった。
篤はそれを恥だと思わず、むしろあの島でまともでいられる武を誇りにすら思っていた。
...そんな武がついに敵を殺し真に彼岸島の住人となった時には、ねぎらいの言葉をかけながらも涙を隠すことが出来なかった。

武も明も、本当はその資質をもっと別のことに使ってほしかった。
勉強でも、スポーツでも、仕事でもなんでもいい。
ただ、殺し合いなんかじゃなく、もっと他のことで自分と競い合って欲しかった。

(だからこそ、お前には敵を殺す憎しみを覚えてほしくない。お前には、まともでいてほしいんだ)

鹿目まどかは篤にとって『希望』だ。かつて、明や武を守りきれなかった自分への、最後のチャンスだ。

(まどか。お前にはそのままでいてほしい。勿論、この戦いでそんな悠長なことを言っていればいつかは殺されてしまう)

救世主、赤い箱、時間泥棒、怪盗。
このごろ囁かれる噂はロクなものではなく、それだけでも危険人物であることを察せられるものばかりだ。
もしもこの『噂』がまどかと遭遇すれば必ずや相容れず戦いが始まるだろう。

(だから、俺が守ってやる。手を汚すのは、何百人と殺してきた俺の役目だ。お前は、その純粋な眼差しを失わないでくれ)

わかっている。
たとえこんなやり方でまどかを守ろうとも、誰も喜ばないことを。
まどかを守ったところで、かつての失敗がなかったことになどならないことを。
それでも彼は決めたのだ。
自己満足であっても、かつての希望は必ず守ってみせると。


くるりと踵を返し、凄惨な現場を後にする。
宮本篤。
かつて彼岸島で戦い続けてきた男は、英霊と化してなお武器を取る。
かつて愛した全てのものを取り戻すために。かつての希望を守る為に。

彼の孤独な戦いは、舞台を変えてなお続く。


616 : 夢はこの部屋の中で ◆ZbV3TMNKJw :2018/05/07(月) 18:16:01 uFzFEfy.0

【クラス】ランサー

【真名】宮本篤

【出典作品】彼岸島

【ステータス】筋力:C+ 魔力:E 耐久:B 幸運:E 敏捷:A 宝具:B

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
【保有スキル】

矢よけの加護:D
飛び道具に対する防御。
狙撃手を視界に納めている限り、弓矢による攻撃を肉眼で捕らえ、対処できる。
また、あらゆる投擲武器を回避する際に有利な補正がかかる。
ただし、超遠距離からの直接攻撃は該当せず、広範囲の全体攻撃にも該当しない。

単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
本来はアーチャーのクラススキルだが、長年の修練によって独自のスキルとして反映された。

気配遮断:B
サーヴァントとしての気配を絶つ。完全に気配を絶てば発見は困難。
本来はアサシンのクラススキルだが、長年の修練によって独自のスキルとして反映された。

無窮の武練:C+
かつて彼岸島の吸血鬼のボスである雅と一騎討ちの果てに一時的にとはいえ勝利を収めた武練。
いかなる戦況下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる


【宝具】

『丸太』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜4 最大補足:1〜15
彼岸島の主要武器のひとつ。これを振り回すことで篤や仲間たちは吸血鬼や亡者といった人外の者たちを葬ってきた。
また、矢を防ぐ盾になるのはもちろん、車に槍状に括り付け亡者の壁を突破、巨大な丸太で分厚い城の門を破壊する、ケーブルカーに括り付け吸血鬼を一掃など応用性も半端ない。

『薙刀』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大補足:1〜30
篤の本来の武器。これを手にした篤はまさに縦横無尽じゃ。携帯に不便なため、普段は薙刀より運びやすい日本刀や丸太を使用している。
日本刀はともかく丸太の方が持ち運びにくいのではとかツッ込んではならない。それには訳があるんじゃ。

『吸血鬼化』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:自身のみ。
彼岸島の吸血鬼の身体になる。吸血鬼になれば力は増すわ病気にはかからないわ少々の怪我ならすぐに治る体質になる。
デメリットとして定期的に人間の血を飲まなければ意識の無いままに暴れまわる邪鬼や亡者のような醜い怪物に変貌してしまうこと。
この宝具は一度発動すると二度と元に戻ることができなくなる。


『感染』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:血を与えた者。
宝具『吸血鬼化』を発動した時のみ発動できる。魔力を消費することにより血を与えた者を彼岸島産の吸血鬼にすることができる。
NPCのみに有効であり、マスターやサーヴァントには効果がない。


【weapon】
・刀
篤の主要武器。
その腕前は、並みの人間の数倍は強いはずの吸血鬼ですらまるで歯が立たないほど。


617 : 夢はこの部屋の中で ◆ZbV3TMNKJw :2018/05/07(月) 18:16:39 uFzFEfy.0

【人物背景】
彼岸島の主人公である宮本明の兄。作中の通称は兄貴。二年前、婚約者の涼子と共に来た神社で、閉じ込められていた吸血鬼の雅を開放してしまった為に、悲劇を起こす事になる。
後に明を助けるために雅の返り血を浴びて吸血鬼ウイルスに感染し、雅の動きを封じたまま、明が邪鬼を落とした振動で起きた雪崩に巻き込まれ死亡したかに思われたが、吸血鬼として五十嵐の研究所址にて再登場し、その際に自らの意志で雅に従っている事を告白。
明側、ひいては人間側と訣別。吸血鬼側につく。
涼子を傷付けた事への贖罪も兼ねて、人間を捕まえられず雅に見捨てられた年寄り吸血鬼達の面倒も見ており、皆から信頼されている。
お互い守る者(明は人間、自分は涼子達)があることを明に教え、自分が弟に超えられる事を恐怖に思っていたことを告白。ワクチンを賭けて明と真剣勝負を挑む。初めの頃は雅から「丸メガネ」と呼ばれていたが、後に「篤」と呼ばれている。以前は青山冷と組み、雅の不死の秘密について調査していた。
武器は丸太と日本刀を愛用していたが、実際には薙刀をもっとも得意とし、その腕前は師匠をも上回る(大型の武器で携帯に不向きなため、あまり使用していなかった)。
明との真剣勝負で深手を負い、それにより吸血鬼の血が覚醒、逃亡した先の教会において、そこで行われていた結婚式に乱入、そこに居た神父、花嫁、参加者を皆殺しにし、自分の血で吸血鬼にして利用するという吸血鬼の本性を表した。
激戦の際に左目を潰され失明した挙句、明に深手を負わされている。涼子やお腹の中にいる子供、そして村の老吸血鬼達を守らねばと命乞いをするが、直後に足場が崩れ転落した。
その際、落下の衝撃から明を庇ったため下半身を失い瀕死の重傷を負う。その後、明にとどめを請い、彼の介錯でその生涯を終える。享年25。平成15年4月3日の事であった。


【方針】
聖杯は狙うが、なによりもまどかがその手を血で汚さないことが第一。


【聖杯にかける願い】
雅を抹殺し、愛する者たちを呪われた使命に縛られない元の生活へと戻す。



【マスター名】鹿目まどか
【出典作品】魔法少女まどか☆マギカ
【性別】女

【weapon】
・弓矢
彼女の魔法。魔力を消費し放つことができる。

【人物背景】
名前から察せられる通り、魔法少女まどか☆マギカの主人公。
大好きな親友にクラスメイト、心優しい家族に囲まれた温かく平凡な日常を謳歌していた彼女だが、キュゥべえと呼ばれる耳毛の長い獣との出会いと契約となり魔法少女と化してから全てが変わり始める。
魔法少女と化してからは、師である巴マミと共に魔女との戦いへ日常的に臨むことに。
戦いはやはり怖い。それでも、優しい師に恵まれ、大切な人たちや新たにできた友達を守れることに彼女は充実していた。
しかし、そんな日々にも終わりが訪れる。最大の魔女、ワルプルギスの夜の襲来。
共に戦った師は打ち砕かれ、見滝原市に最後に残った魔法少女は鹿目まどかただ一人。
逃げることもできた。自分の命と傍にいた一人の友達だけ、或いは自分に密接に関わった者達だけを選び、探し出し、生き延びることもできたかもしれない。
けれど、彼女はできなかった。大好きで、大切なあの日々から目を背けることができなかった。
だから、彼女は唯一人己の身を案じ涙してくれる友達の制止を振り払い、その身を焦がしつくしてしまった。
その選択肢こそが、より多くの人間を巻き込む最悪の■■を産むことになるとも知らずに。

この聖杯戦争には、第一週目のワルプルギス襲来前からの参戦(少なくとも暁美ほむらとも面識がある時期)となっている。

参考資料:TVアニメ10話を見れば大体わかる。
より掘り下げたい人はドラマCDやまどか☆マギカポータブルのストーリーを追うといいかも。


【能力・技能】
魔法少女として培ってきた戦闘技術。
ただし、まだ新米であるためそこまで熟成されておらず、肉弾戦はあまりできないものと思われる。
また、暁美ほむらが魔法少女になる前であるため魔力もそこまで高くはない。



【方針】
どうにかして聖杯戦争を止め、みんなで脱出する。



【聖杯にかける願い】
なし。聖杯を狙うための戦いはしない。


618 : ◆ZbV3TMNKJw :2018/05/07(月) 18:17:31 uFzFEfy.0
投下終了です

ランサーのステータス作成に際してFate/Reverse ―東京虚無聖杯戦争―での◆.wDX6sjxsc氏の松野カラ松&アサシン(宮本明)を参考にさせて頂きました


619 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/07(月) 22:35:06 TkK8kB9Q0
皆さま投下お疲れ様です。今日は最後のOP投下をします。


620 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/07(月) 22:35:48 TkK8kB9Q0
.




アラもう聞いた? 誰から聞いた?
徘徊するモナ・リザのそのウワサ

有名な絵画『モナ・リザ』。彼の絶世の微笑を浮かべる彼女が
近頃、この町に姿を現れたってあちこちで目撃情報多数!

だけどよく考えてみて? 本物の『モナ・リザ』は日本にはない。
それが偽物の『モナ・リザ』だって気付かないと大変!

絵画を元にした恐ろしいモンスターじゃないかって
見滝原の住人の間ではもっぱらのウワサ

ビューティフォー!




☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆




「そうだとも! 改めて自己紹介しよう。クラスはキャスター。真名は『レオナルド・ダ・ヴィンチ』。
 喜べ、マスター。今からは、きみだけのダ・ヴィンチちゃんというコトさ!」


当たり前の話だが『モナ・リザ』が英霊として召喚される可能性は、まさしく奇跡が起きなければ叶わないのである。
しかし、モナ・リザに近しい。
……ぶっちゃけると彼女を描いた人物。レオナルド・ダ・ヴィンチ。
彼こそがサーヴァントに成りえる逸話と偉業を保有する。
即ち、モナ・リザの正体はレオナルド・ダ・ヴィンチ………正しくは自らの肉体をモナ・リザに再設計した新手の変人だった。

してやった。
そう言わんばかりの陽気なダ・ヴィンチの告白に対し。
どこぞの携帯恋愛小説じみた熱っぽい言葉を口走っていた『普通の』サラリーマンらしい彼、吉良吉影は思わず「は?」と
驚愕と困惑を表情に顕わにし、状況を理解すると爪を齧りながらブツブツと独り言を繰り返す取り乱しようは
ダ・ヴィンチも、思い出すだけで微笑ましかった。

結局、彼の動揺が眺められたのは、しばらくの間だけだったが。

相変わらず視線は手元に向かうし、会話もごく普通に交わすのだが。嗚呼、コイツは本当に中身なんて見てないんだな。
ダ・ヴィンチでさえも納得させてしまう。吉良吉影という男は性癖に忠実だった。
手フェチ。
砕けた表現ならばソレ切りで済ませる程度。
ダ・ヴィンチは、そうは感じていない。
直感の類に近い感覚。幾度か会話と交わして彼……否、彼女が素直に捉えた印象を伝える。


「私が思うに、きみは相当出来る奴じゃあないかい。出世どころか、一般職に落ち着いているのが不思議だね」


621 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/07(月) 22:36:09 TkK8kB9Q0
最初、彼女の指摘を吉良は適当に受け流した。それは錯覚だよ、と。
どうだかな? ダ・ヴィンチは意味深めいた微笑を浮かべた。
独身故に自炊も家事も手際よくこなすし、キッチリ定時になったら問答無用に規律良く帰宅する。
出世コースとは無縁に脱線した在りよう。
格別彼自身の趣味趣向に金と時間を費やす様子もない。
就寝時間も起床時間も、スケジュール通り。日々のルーティーンも乱れは無い。定められた枠に収まった普通の生活。

―――だからこそ『異常』だった。

全てが完璧たる人間はいない。
ダ・ヴィンチの肉体美が絶対的でも、根本の発想が凡人とかけ離れているように。
普通の人間が、普通であり続ける事は不可能なのだ。


「きみ自身の『欲』が見えないのは異常だよ。本当にきみは聖杯を諦めるつもりなのかな?」


やれやれと表情で訴えながら吉良は、漸く答える。


「以前、君に伝えた通りだよ。私は平穏で静かな生活を望んでいるだけさ……どうしても何か願えと言うなら
 この先。私自身の『平穏』を保証することを願うだけだね。出世には……興味ない。
 正しくはそれが『ストレス』に変わってしまって『平穏』から脱線するからだ」


機械的な定められた生活を強いる事に精神の安定を求めている。
彼の姿勢は、決して充実した幸福感で満たされているか。それこそ凡人には理解不可能な領域。
が。
ダ・ヴィンチだけは世界的有名な顔に不敵な笑みを作った。


「いいや、違うな」


彼女による明確な否定を断言された時。男の邪悪な眼光がギロリと蠢く。


「きみの場合は『目立つと都合が悪い』んじゃあないかい。『人に知られたら不味い事』とか……
 例えば――そう………『人を殺している』……とか?」


腹を探る様に問いかけるダ・ヴィンチ。
双方に沈黙が保たれた後、深く長い溜息をついた吉良は平静に、格別顔色一つ変えず。


「随分と面白い発想だが……私は君が期待しているほど特別な人間じゃあないよ。残念ながらね」


疑惑の話題を逸らすように、返事をしたのだった。
まあ、そう答えるしかないだろうな。とダ・ヴィンチは微笑む。
同じ様子で平然と人間の一人や二人、殺せるだろうと想像しながら。



☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆


622 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/07(月) 22:36:38 TkK8kB9Q0



アラもう聞いた? 誰から聞いた?
孤独の歌姫のそのウワサ

あまりに美し過ぎる美声で、世界を魅了する歌姫
聞く人を感動させるだけじゃなく、失神だってしちゃう

彼女の力を持ってすれば人間は皆降伏して
動物や植物まで引き寄せるかも!?

日本の総理大臣も彼女の歌の虜になっているって
見滝原の住人の間ではもっぱらのウワサ

アメイジング!



☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆



どうやら聖杯戦争開戦の号令は『まだ』らしい。
曖昧なのは明確な日時を参戦する主従たちに、一切誰にも告げられていないからだ。
時間の猶予があるか否かで、戦況は大分変化するだろう。
特にキャスターの場合。
猶予があるなら陣地の作成を主として、三騎士相手の準備を整えられる。
逆を言えば、下準備なしで格上に挑むのは、それ相応の宝具を持ち合わせなければ難しい。

最も、ダ・ヴィンチの場合は別の目的がある。
何故、胡散臭い吉良吉影のサーヴァントで居続けるのか?
それは『ソウルジェム』。聖杯戦争の根本。
ダ・ヴィンチの場合、ソウルジェムを解析したのだった。


結論から述べると、確かにソウルジェムは英霊の魂を保護・保管するに最適な小規模の聖杯の器。
精巧な美しい宝石の設計はまさに完璧だ。
……あまりに完璧過ぎる。元より『魂』の保管に使用され続けてたかのように。

それを示唆する補強部分をダ・ヴィンチが発見していた。
前提として本来は魂一つ。
否、在る程度の魔力めいた……エネルギーが充満すればソウルジェム事態が『内側』から破壊される仕組みだ。
雛が卵を割って産まれるように。

このような技術を持つ存在が、一体どうして聖杯戦争を招いたのか。
彼女は見過ごす訳にはいかなかった。


623 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/07(月) 22:37:23 TkK8kB9Q0



アラもう聞いた? 誰から聞いた?
大食い探偵のそのウワサ

デカ盛り専門店からバイキングまで
全部が食い尽くされていたら、きっとそれは大食い探偵のシワザ!

でも探偵だから、ちゃんと推理はするらしい?
犯人は、まるで彼女に見透かされてる気分になるとか

神出鬼没で飲食店はてんわやんわって
見滝原の住人の間ではもっぱらのウワサ

ハングリー!



☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆



吉良吉影は本当の意味で、普通のサラリーマンだった。
見滝原で秩序的に続けている日常を、元いた世界でも繰り返すような、ごく平穏な独身男性。
ダ・ヴィンチが睨んだ通り。
出世しようと思えば、可能な実力は秘めており。
一つの分野に特化すれば名を残す才能を隠している。
だが、平穏な生活と無縁な世界を意図して回避に徹底し、現在の生活に落ち着いている。
そんな人間。


たった一つ。


殺人癖を除けば


よくある話かもしれない。
三大欲求に殺人が追加してしまった歪んだ人間。平穏を愛するのに対し不釣り合いな性。
美しいと感じた女性の手を『切り取って』。
恐らく40人ほどは殺しただろう。
あくまで切り取った女性の数であって、排除してきた人間に関しては数えてすらいない。

……だがそれも性癖の問題に過ぎない。
吉良吉影は一刻も聖杯戦争から逃れたいと切に願う一般人。
聖杯に『平穏』を願う必要は、これっぽっちも考えちゃいなかった。
彼は別に願わなくとも自らの力で成し遂げた方がマシだと、殺人鬼ながら感じている。
自分だけが、聖杯を使おうなど……それこそ第三者から恨みや因縁を買われそうだった。


だけど。
一つだけでも良いならば平穏より―――『彼女』を切り取って杜王町に帰りたい……


624 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/07(月) 22:38:18 TkK8kB9Q0
以上で投下終了となります。感想の方は後日とさせていただきます。


625 : 夢幻《汚れた英雄》 :2018/05/08(火) 02:16:57 5r46Kw3M0
投下します。


626 : 夢幻《汚れた英雄》 :2018/05/08(火) 02:31:04 5r46Kw3M0



                斜凛──────。闇へ響く。




 世   仰   下   紅   今   春    ♪♪〜〜
 は   ぎ   に   い   朝   の  
 泡   嗅   往   仇   も   都  
 沫   ぎ   く   花   今   に    ♪♪〜〜
 の   て   者   咲   朝   ゃ  
 詠   は       き   と
 を           乱   て
 よ           れ
 む    ♪♪〜〜

 街灯の僅かな灯。
 路傍のアスファルトにしゃがみこんで三味線を流す──────女がいた。
 よく通る声で撥を弾く女のその容顔《かんばせ》は白い肌。涼しげな目元にすっとした鼻梁。口角の上がった唇。
 チャイナドレスを連想させる艶美なその扮装《いでたち》。

                          べんっ……!

 床    流    見    浮    引    鼠
 屋    れ    ろ    世    く    小
 の    行    や    騒    手    僧
 彦    く    隅    が    あ    の
 一    の    田    す    ま
 で    は    を    相    ね
 ね              死    く
 ェ              に
 か              の

 若さに似合わぬ堅実かつ老練、その様を一体いかな麗句で云い遂せるだろう?
  
                                   べんっ……


 こ 蟹  連   小   さ   咲   花    人
 れ に  れ   指   れ   け   へ    目
 も つ  は   結   ば   よ   誓    憚
 愛 つ  長   べ   輪   桜   い    る
 で か  者   ど   廻   よ   ぞ    想
 も れ  の   逝   も   我   云    い
 │ 烏  二   く   影   等   い    人
 │ に  番   の   を   を   刻    ら
 │ 踏  妻   は   成   糧   む    は
 │ ま      一   す   に
   れ      人



『浮かばぁれぇぬぅ……』

                                  べべんっ……!


627 : 夢幻《汚れた英雄》 :2018/05/08(火) 02:33:14 5r46Kw3M0


 風が通り抜けると、しんと静まり返った──────。
 風に吹き払われたような通りにはいつになく人影はなく、何の雑音にも汚れてはいない。
 あまりに静かな春の夜更けである。
 
 そして静寂は破られた。

 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ。

 一人の少女が拍手をした。聴き手は己が主ただ一人だけだった。
 ランサーは首を撫でながらぽつりと述べた。

『……有り難う。藤乃ちゃん……』

 少しだけ恥ずかしそうの微笑む。
 しかし、いつみても彼女は昏い眼だ。そこに光が宿ることは一度もないのだろうか。
 目尻を下げてニコリとして云うと、槍の英霊“己橘槇絵”は荒織利を深く引きかぶった。

「お上手です。とっても」

 石段に腰掛けていた一人の白杖をついた黒い制服の女の子。
 前髪を切り揃えた長く黒いのロングストレート。左右対象のシンメトリー。
 お人形のように大人しいく優しげな印象は一目で良家のお嬢様を連想させる身形だった。
    
『ははは、緊張しちゃった。こういうの本当に久しぶりで────』

 軽い咳払いとともに我藍ッと音が鳴った。槇絵の手から三味線が滑り落ちる音だった。
 痰が絡まったのか、咳がなかなか止まらなかった。

「槇絵さん……?」

 浅上藤乃は少し眉を寄せた。
 血のような臭いが鼻腔を掠めた気がした……が、一瞬だった。
 浅上藤乃は特に咎めようとは思わなかった。その代わりにこう言った。

「今夜はもう帰りましょう、槇絵さん。アテは外れました」

 浅上は虚空を見上げ、眼を眇める。

「一体何処に居るのでしょう──────“殺人鬼”は」
                                  


 
◇◇◇◇


 風に攫われて桜の花弁が地に落ちる。
 花は散ると、やがてジメジメした梅雨がやって来る。
 この分だと数日のうちに、桜木は新緑に変貌を遂げるだろう。
 花弁で隙間なく敷き詰められたら真白な住還。
 白い花弁は濡れた地面に触れるとそこから徐々に黒ずんでゆく……。

 ────可蘭ッ

 下駄がそれを踏み躙ると花弁は真黒な泥屑へと変わり儚く消えた。

                        ────可蘭ッ



 ──────私の胸の内は、寂しさで埋まっている。

                ────可蘭ッ
 ──────この現の空の高さ。春の風。踏みしめる地面。なんだか全てが淡い夢みたい。

                    ────可蘭ッ
 ──────“あの頃”に有ったものと比べながら、私は得心しかけたが、

             ──────可蘭ッ 
 ──────“私”の心にはまだ春も訪れてはいない。

                  ──────カッ……

『私は一体……影久様……』

 掠れた白い息を洩らし、泣くように呟いた。
 寂しさはどこかへ消えた。その代わりに迷いが増えた。
 これから一体どうやって道を進めばいいのか解らなかった。




 ──────苦界にしか棲めなかったこの獣《わたし》に一体何ができようと云うのだ?


628 : 夢幻《汚れた英雄》 :2018/05/08(火) 02:34:46 5r46Kw3M0

◇◇◇◇◇


【出典】無限の住人
【SAESS】 ランサー
【性別】女性
【真名】乙橘槇絵(おとのたちばなまきえ)
【属性】中立・悪
【ステータス】
筋力C 耐久C 敏捷A++
魔力E 幸運E 宝具なし

【クラス別スキル】
対魔力:E-
三騎士最低ランク。

陣地作成:C+
乙橘槇絵の刃圏と周囲に畏怖を撒き散らす。

【保有スキル】
心眼(偽):A+
直感・第六感による危険回避。
天性の才能による危険予知。
一瞬たりとも止まらない敏捷性。

人斬り:A++
全てを尽く斬り斃してきた剣士。
対人ダメージの向上。
彼女の一太刀でサーヴァントの身体は真っ二つになる。

病弱:B
虚弱体質。槇絵の場合、生前の労咳を患っている。
戦闘中の急激なステータス低下・活動停止。
彼女の場合は肉体より精神面だ。

単独行動:A
マスターなしで一週間以上現界できる。
根暗な引きこもり体質。

【宝具】
『逸刀流』
ランク:なし 

 逸刀流とは──────

 一、謝礼を求めず

 二、乞われなければ剣を教えず

 三、形も奥義もない


 それは数多の斗いを誰の教えなく──────。

       嗅覚ひとつで勝ち続けた──────。

              その積み上げたものの名だ──────。


【 weapon 】
・“春翁”
はるのおきな。
両端は槍となっている全長二,五メートルの三節槍。普段は三味線の中に収納している。
おそらく琉球や中国からの舶来品を改造したと思われる代物。

【人物背景】
原作・無限の住人『最強の剣客』。
十歳の時に無天一流の次期統主と目されていた兄を剣術で破ってしまい、その兄を切腹に追い込んだことで母親と共に家から絶縁された。
その後、遊女に身をやつしていたところを天津影久に身請けされ、彼と連れ添う。
人を斬り殺すことに迷いながらもその尽くを屠る。
六鬼団の追撃の折、銃撃を受けると彼に船へ担ぎこまれるも既にこときれていた。

【サーヴァントとしての願い】
無し。現在は殺人鬼探しを手伝っている。


【出展】空の境界
【マスター】浅上藤乃
【人物背景】
『死に接触して快楽する存在不適合者』 だった。
出自は退魔四家の一つである長野の名家・浅神家。 
温和で受け身な性格だが、一度たがが外れると自分では止まれない潜在的な加虐性質。
参戦時期は“痛覚残留”後。
人知れずに世直ししてます。

【能力・技能】 
・歪曲の魔眼
能力は視界内の任意の場所に回転軸を作り、歪め、捻じり切る“サイコキネシス”。 右目は右回転、左目は左回転の回転軸を発生する。 彼女の能力は超能力であるものの、人為的に手が加えられているために魔術と超能力の間にある。複雑なことはできないが、物の硬度・構造・規模を無視して問答無用で曲げられる。
作中、ブロードブリッジ崩落事故に巻き込まれて二月ほど入院し、視力も事故の際にほとんど失ったとされている。 
しかし魔眼は尚健在で行使する際には対象を識別することもできるようだ。 
未来福音では手に握ったカッターをピンポイントで曲げられるくらい精度が高く、行使にまったく支障はない。
そのため単純な力比べであれば『空の境界』中最高の性能といえよう。

【マスターとしての願い】
この斗いをちょっと捻る。


投下終了


629 : 名無しさん :2018/05/08(火) 02:38:53 5r46Kw3M0
読めんかった人は画面を横にして読んでね


630 : ◆ZbV3TMNKJw :2018/05/09(水) 01:12:10 Ih.b69G.0
投下します


631 : ■■■■は静かに暮らせない ◆ZbV3TMNKJw :2018/05/09(水) 01:12:51 Ih.b69G.0
アラもう聞いた?誰から聞いた?
通り魔殺人鬼のそのウワサ。

彼女のお手手はとてもキレイ。
性格ブスでもとてもキレイ。

そんな女の子がヒトリで歩いていたらさあ大変!

恐ろしい殺人鬼が綺麗なお手手を残して粉々にしてお持ち帰り。
見滝原の住人の間ではもっぱらのウワサ!!

ヤダブキミ!

犯人は『■■■■』、33歳独身。

仕事はまじめでそつなくこなすが今ひとつ情熱のない男......

なんかエリートっぽい気品ただよう顔と物腰をしているため女子社員にはもてるが、会社からは配達とか使いっ走りばかりさせられているんだぜ 。

悪いやつじゃあないんだが これといって特徴のない......影のうすい男さ


632 : ■■■■は静かに暮らせない ◆ZbV3TMNKJw :2018/05/09(水) 01:13:46 Ih.b69G.0

なんど彼女の姿に釘着けになっただろう。
雑誌で見るその度に僕の想いははちきれんばかりになった。

「ふっ、ふっ」

動悸が高鳴る。
目測、およそ10m。その先には憧れのあの人がいる。

(お茶に誘うだけだ...誘って、少し仲良くなりたいだけなんだ...)

緊張で手が震えてしまう。
けれど、この一歩が踏み出せなければ、二度とこんな機会はこない。

(行け...行くんだ!)

呼吸は乱れ、頭は真っ白のまま一歩を踏み出そうとしたその時だ。


「やめとけ!やめとけ!」

背後から割って入る声がひとつ。
振り返れば、そこにはにやけ顔が特徴のサラリーマンが立っていた。

「あいつは付き合いが悪いんだ。仲間になろうぜって誘われても嬉しいんだか嬉しくないんだか...
『七海やちよ』、19歳大学生。20歳前にして未だに魔法少女を務めているが、今ひとつ少女感のない女...
なんかエリートっぽい気品ただよう顔とモデルをしているため、色んな方面からモテるが、最近は自宅に住所不定の女の子を大量に連れ込む趣味が発覚してるんだぜ。
悪いやつじゃあないんだが、必殺技の名前も叫べない...魔法少女感の薄い女さ」

突然の解説に思わず疑問符を浮かべてしまう。
この男はなんなのか。なぜ彼女についてそこまで詳しく知っているのか。
というか、魔法少女ってなんだ。

そう、問いかけようとしたその矢先、首筋に走った衝撃に―――僕の意識は途絶えた。


633 : ■■■■は静かに暮らせない ◆ZbV3TMNKJw :2018/05/09(水) 01:14:13 Ih.b69G.0



「どうやらウワサの犯人ではなかったようね」

七海やちよはそうひとりごちる。
通り魔殺人鬼のウワサ。
そのウワサを確かめるべく、やちよは己を囮に調査していた。
聞けば、一人でいる女の子が狙われやすいとのことで、それならば...と思い、わざわざ人通りの少ない道を選んできたのだが...

(この男がそうは思えない。なら、他のマスター?)

その割には英霊の姿が見えないが。

(...もしかして、NPCかしら。なら、このまま放置しておけば)
「やめとけ!やめとけ!」

いいかもしれない、と続きかけた思考は男の声に遮られる。

「あいつはいつも雑誌の切り抜きで興奮してる危ない奴なんだ。懐には刃物を忍ばせてるんだか忍ばせてないんだか...
『ストーカー男』、35歳独身。情熱はあるがいまひとつ倫理に欠ける男...
ストーカーという語源は獲物に忍び寄る者という意味だったのが、いつしか執着心の強い者を指すことになったんだぜ。
悪い奴じゃあないんだが、思い込みの激しい...危険極まりない男さ」

サーヴァントの解説を受けたやちよは、ふむ、と顎に手をやり思考する。
どうやらこの男はNPCではあるが、同時に危険な男らしい。
無論、魔法少女である自分が負けるはずはないのだが、万が一戦いの邪魔でもされたらたまったものではない。

「...そうね。ひとまず警察に通報しておくべきかしら」

携帯で警察の番号を押す傍らで、やちよは思考を巡らせる。
聖杯戦争。
記憶を呼び起こされる傍らで大まかな概要を把握することができた。
...が、果たしてこれが本当に『聖杯戦争』なのか。それとも『ウワサ』によって象られたものなのか。
それを確かめる為のウワサ狩りだ。このままウワサを狩りつづけ、元の世界に戻れればそれでよし。
もしも戻れず、これが真に聖杯戦争なのだとしたら...

何れにせよ、自分はみかづき荘へと戻らなければならない。
いろはが待ち、連れて行かれてしまった三人の帰るあの場所へと。


634 : ■■■■は静かに暮らせない ◆ZbV3TMNKJw :2018/05/09(水) 01:14:42 Ih.b69G.0

そのためならば、自分は...

(...いいえ、まだ尚早ね。わたしは魔法少女だもの。一般人を見捨てて脱出なんて、リーダーは許さないでしょうね)

もしもそんなことをすれば、環いろはは、きっと間に合わなかった自分自身を責めてしまうだろう。
それは御免こうむりたい。彼女には、あの眩しいほどの笑顔が似合っている。
そんな新たな『リーダー』に責を負わせるのはごめんだ。

(幸い、私のサーヴァントは戦闘タイプではなく、相手を分析する補佐タイプ。なら、相手の弱点を知り無力化することも可能ね)

戦闘慣れしていない一般人にとっては役に立たないハズレのサーヴァントだが、やちよにとってはまだマシなタイプであったのは幸いか。
実際、彼の解説のおかげで多くのウワサを集めることができ、この短期間でウワサファイルは従来のものの半分ほどの量が集まったのは喜ばしいことだ。
ただ、アサシンが探しているという男...即ち通り魔殺人鬼のウワサの犯人の名前が、何故かノイズが走り聞き取れないことには一抹の不安を覚えてしまうが。

(待っていて、いろは。私は必ずあなたのもとに戻るから。私の願いなんかじゃ大切な人たちを殺せないってことを、必ず証明してもらうから)

やちよは携帯を鞄にしまい、警察が来るのを待つ。
その傍らで。アサシンは、やちよの意識外で彼女の手を見つめ、ニヤリと口角を上げた。
果たしてそれは彼女に見とれているのか、それとも彼の求める者への供物として見ているのか。

その真相を知るのはアサシンただ一人のみである。


635 : ■■■■は静かに暮らせない ◆ZbV3TMNKJw :2018/05/09(水) 01:16:57 Ih.b69G.0


【クラス】アサシン

【真名】吉良の同僚

【出典作品】ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない

【ステータス】筋力:E 魔力:E 耐久:E 幸運:A 敏捷:C 宝具:EX

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】

気配遮断:A+
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を絶てば発見することは不可能に近い。
ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】
探知:C(EX)
人間・英霊の気配を探知することができる。
とある男に対してだけは半径30mの範囲ならどこにいても捕捉できる。




【宝具】

『解説』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
サーヴァント、マスター、・NPC問わず、自分のマスターが知らない者について解説してくれる。
基本的には視界に入る者が対象だが、とある男については居場所をなんとなく察知しており、彼を見つけた際には能力や性格に留まらず、日頃からの癖や隠している趣味まで聞いてもないのに必要以上に情報を語ってくれる。
この宝具からは誰も逃げることが出来ず、必ず赤裸々にされてしまう。
ただし、一人の解説が終わるまで次の解説には移れない。また、解説は一度始まると中断できなくなる。



『業務委託』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
このサーヴァントは戦う力を持たないため、己の宝具以外のステータスを自マスターに上乗せさせることが出来る。

簡単に書くと

【マスター:七海やちよ】
【ステータス】筋力:C 魔力:B 耐久:C 幸運:E 敏捷:B 

これが

【ステータス】筋力:C+E 魔力:B+E 耐久:C+E 幸運:E+A 敏捷:B+C

といった具合である。
また、その際にはアサシンは一般人となんら遜色のない程度の存在と成り下がってしまう。



【weapon】
なし。このサーヴァントは戦う力を持たない。


【人物背景】
やめとけ!やめとけ!俺は特に語る背景のないモブなんだ。
吉良の同僚、年齢は不詳、恐らく独身。仕事は今ひとつだが女の子へのアプローチは欠かさない男...
なんか妙に吉良に詳しい解説とその佇まいからネタにされやすいが、荒木先生としては単に吉良吉影の客観的な説明役が欲しかっただけなんだろうぜ。
悪いやつじゃあないんだが これといって特徴のない......影のうすい男さ



【方針】
●●●●を探し出す。

【聖杯にかける願い】
悪いが、人のプライバシーを詮索するもんじゃあないな。


636 : ■■■■は静かに暮らせない ◆ZbV3TMNKJw :2018/05/09(水) 01:17:18 Ih.b69G.0

【マスター名】七海やちよ
【出典作品】マギアレコード
【性別】女

【weapon】
・槍
彼女の魔法。



【人物背景】
アプリ「マギアレコード」の登場人物。プレイアブルキャラ。主人公の環いろはの相棒或いはもう一人の主人公枠ともいえる。
属性は水で、複数の敵を攻撃できるブラストタイプ。

7年もの間、魔法少女として活動を続けており、魔法少女の中でも年長の部類。
年下に対して保護欲が強く、年下の魔法少女に対しては好意的だが少し過保護な態度が目立つ。
そのためにお節介が過ぎる場面や時に厳しく当たる場面もあるが、基本的には頼りにされている。
観察眼が鋭く、冷静で頭の回転も速いことから調べ事や推理が得意であり、しばしば知り合いからは探偵のようだと評されている。
大学生とは別に「雑誌のモデル」を兼業しており、大学生と魔法少女の二重生活どころか、学生・モデル・魔法少女と三重生活を行っている。

昔は魔法少女同士でチームを組んで戦っていたが、ある事件をきっかけに他の魔法少女とは距離を置き、チームに属さず活動するようになった。

環いろはと関わるようになってからは態度も幾分か軟化。
最近はいろはとフェリシア、さなの三人を自宅の『みかづき荘』に住まわせている。




【能力・技能】
・魔法少女として培ってきた戦闘技術。7年間の経験は伊達じゃない。



【方針】
聖杯戦争からの脱出。ひとまずはウワサを潰していくことが中心。


【聖杯にかける願い】
脱出を第一としているため、今は無し。ただし、もしも聖杯を手に入れることができたら...?


637 : ◆ZbV3TMNKJw :2018/05/09(水) 01:17:47 Ih.b69G.0
投下終了です


638 : ◆c4fux.z/qk :2018/05/10(木) 02:21:51 /lXL/8XM0
投下させていただきます。


639 : ◆c4fux.z/qk :2018/05/10(木) 02:23:05 /lXL/8XM0
見滝原の公園近くの寂れたホテルの一室で、ある男が目覚める。
しかしそれは目を覚ますなどという生温いものではなく、飛び起きると言った方がいいような目覚めであったが。
飛び起きた余波で、既に使い古されてボロボロになったベッドは今にも壊れそうにギシギシと音をたてて軋む。
男はその端正な顔立ちを恐怖心に歪め、顔中から汗を噴き出している。息も絶え絶えだ。
中途半端に突き出した左腕はまるで、『何か』から逃がれようとしているかのようである。

そんな異様ともいえる寝起きを披露した彼だったが、異様なのはそれだけではない。
有り体に言ってしまえば、彼が着用している服。
普通、寝起きと言えば、パジャマを想像するのが常だろう。
しかし、彼が着ているのはパジャマどころか普段着としても着用しないようなウェスタンファッションなのである。
100人の人間がいたとして、92人は彼のことを徹底したコスプレイヤーか何かだと認識するだろう(そして残りの8人は脳ミソの代わりにクソが詰め込まれている異常者だ、と考えるだろう)。
しかし彼が所有している衣装はあいにくこれだけなので仕方がない。
『夕陽のガンマン』に出てくるクリント・イーストウッドを彷彿とさせる西部劇さながらのカウボーイ風の服を纏った彼の名はホル・ホース。
『幽波絞』と呼ばれる精神エネルギーを持つ凄腕の殺し屋だ。

彼は備え付けのサイドテーブルから煙草のケースを掴み、その中の一本を咥え、未だ恐怖に震える指でライターの火をつける。


(チクショオーッ、またあの夢だぜ)


ここ数日、彼は毎晩のように悪夢に悩まされていた――尤も、そのおかげで彼は記憶を取り戻し、『聖杯戦争』への切符を手に入れたのだが。
彼の心は――邪悪の化身に支配されていた。



                   『何か……用か?』
                      『それで…といったのはおまえのことだよ、ホル・ホース』
『情報連絡員なら誰にでもできるぞ』
                      『2度も失敗して…逃げ帰って来たな…』
    『殺して来てくれよ。わたしのために』
                               『さもなくばわたしがおまえを殺すぞ!』


               『本当にオレを撃とうとしているのか?』


640 : ◆c4fux.z/qk :2018/05/10(木) 02:23:55 /lXL/8XM0


ホル・ホースは過去に2度もジョースター一行を仕留め損ねていたのだ。
そして3度目もまた、失敗した。
ならば待ち受けている運命が「死」のみであることは『トト神』を見るまでもなく確実だ。
実際、DIOからもそういった旨のことを告げられていた。
このままおめおめと退院後にDIOの元へと戻れるはずもない。
いや、既にホル・ホースを始末すべく刺客が放たれているかもしれない――そんなことを考えていたのだが。


(ラッキーだったぜ。前にDIOの館からくすねておいた宝石のおかげで一時的にでもヤツから逃れてこれたんだからなッ!
おまけに、なんでも願いを叶えてくれる願望器だと! こいつぁついてるぜ!)


聖杯をDIOに捧げれば――いや、聖杯の力でDIOや配下どもを亡き者にしてしまえば。
命の危険はなくなるし、財宝だって総取りだ。

だが、それには熾烈な争いを勝ち抜かねばならない。他の参加者を蹴落とし、『奪う者』にならねば。
もはやホル・ホースからは恐怖は消えていた。
汗が引き、呼吸の乱れも消え、その瞳には『覚悟』が宿っていた。


「DIO! おれはあの時てめーに屈服させられ跪いちまった。呪うぜ……精神的に屈した自分をな!
だがな、魂だけは死んでも売り渡さねぇ! 2度とあの時のみじめなホル・ホースには絶対に戻らないッ!」


641 : ◆c4fux.z/qk :2018/05/10(木) 02:25:20 /lXL/8XM0

(な〜んて啖呵切ったが、あいつで大丈夫なのかねぇ)


『一番よりNo.2』を人生哲学とするホル・ホースにとって誰とコンビを組むかは死活問題だった。
そういう意味では相方をあてがってくれる聖杯戦争のシステムはありがたいものだったのだが――召喚されてきたサーヴァントが問題だった。
ステータスを確認しようにも、靄がかかったようになって見えないのだ。
しかもそのサーヴァントは、ホル・ホースが尊敬している女――それも年端のいかぬ少女だった。


(召喚した時に魔法少女だとか言ってたからキャスターってやつなんだろうが……相方の能力を知らないってのはやりにくいぜーッ
ファンタジーやメルヘンみてーにどジャアあああ〜〜〜ンって感じにお菓子の家でも出せんのかッ!
そもそもあんなお嬢ちゃんを戦わせていいのかよーッ)

(あれ? そういえばそのキャスターはどこ行きやがったんだ?)


ホル・ホースが慌てたように自身のサーヴァントを探そうとしたその瞬間―――


「――ぴたり」
「ッ!」

彼の首筋に、わざわざ横を向かなくても確認できるような重厚感のある刃物が突きつけられた。
凄腕の暗殺者であるホル・ホースに気配を悟られずに背後に回り込むのは人間離れした芸当――ならばサーヴァント。
このままではあとコンマ数秒もしないうちに彼の頭は斬り落とされるであろう。
そこで問題だ!
首に刃物を当てられているこの絶望的状況、どうかわすか?
3択――ひとつだけ選びなさい
答え① ハンサムのホル・ホースは突如反撃のアイデアがひらめく
答え② キャスターが来て助けてくれる
答え③ かわせない。現実は非情である。

(おれが○をつけたいのは答え②だが期待はできない……あのトボケたようなキャスターがここぞとばかりにジャジャーンと登場して「まってました!」と間一髪助けてくれるってわけにはいかねーぜ。やはり答え①……自分でなんとかするしかねーぜ)

瞬時にそう判断した彼はサイドテーブルを蹴り上げた。
そして相手が気をとられている隙に座ったままの体勢でベッドから転がり落ちる。


「武器を持ってないと思って甘く見たなッ! あんさんの負けだッ!」


煙草を吐き捨てながら右手を上げる。
メギャン!
するとホル・ホースの掌にどこからともなくリボルバー式の拳銃が現れる。
これこそが彼のスタンド『皇帝』。この至近距離であれば彼の独壇場。寸分違わず相手の眉間に風穴を開けるだろう。


―――が、彼の『皇帝』が火を噴くことはなかった。


642 : ◆c4fux.z/qk :2018/05/10(木) 02:25:54 /lXL/8XM0

彼は攻撃しなかった――否、攻撃できなかったのである。





「ゆらーりぃ……あなたマスターですよね?そのひだ」
喋るのに疲れたらしく、そこで言葉を切って休憩する。
「りての令……なんだっけ……? ゆらり…ええっと……左ってどっちだっけ……? あれ? あたしって誰だっけ? ああ、西条玉藻ちゃんでした」


その銃口の向かう先にいた、脳内のネジが2,3どころかすべて抜け落ちてそうな少女は―――紛れもなく彼のサーヴァントだった。


「にゃあにいいいい〜〜〜〜〜ッ!?」
「えーっと。そう。あなたはあたしとあたしのマスターが聖杯を獲るのに邪魔です。だから――」

自分で「じゃきーん」と擬音を口にしながら両手に携えた刃物を胸の前で交差させる。

「ズタズタの八つ裂きにしちゃいます。えへへ」
「ま、待てよ、キャスターのお嬢ちゃん! おれだ! ホル・ホースだ! お嬢ちゃんのマスターだッ!」
「? あたしのマスターは子お……いえ、それは生前の話でした………生前……あたし死んだんですか?
まあいいや、それであなたがあたしのマスターなんでしたっけ」
「ああ、そうだよ!」
「じゃあ刺しちゃいけないですねー……ゆらりぃ……それなら誰を殺せばいいんですかね……えっと、手近なところでまず自分から……」

言いかけて慌てて首を横に振る。

「ダメダメ、自分は刺しちゃいけないってちゃんとあたし学びました。『馬の面に屁を浴びせると鬼が笑う』です……」

そんな自身のサーヴァントの様子を見て、ホル・ホースはハットを目深に被りため息をつく。
「……」
(おいおい、こいつ大丈夫なのかあ〜〜〜ッ!! しょ、正気の沙汰じゃあねーーーーこっ、この女!)

ホル・ホースがハットの下から訝しむような視線を送っていると、彼女は「えへへ」と照れたような笑みを浮かべる。
凝視していて気がついたのだが、どうも彼女の姿を明瞭に捉えることができない。
この間合いで、しかも弱々しいライトスタンドだとはいえ、光源だってきちんとあるのに。
まるで膜が張っているかの如く、その姿は曖昧だ。

(そういえば、さっきだってまるで気配を感じられなかった……このおれの背後をああも容易く……)

ひょっとしたらこのサーヴァントはスゴいやつなんじゃねーのか。
そう考えると、自然に闘志にますます火がついて熱くなってくる。
どんどんと熱さは増していく。
ホル・ホースの中で燃えたぎる闘志は―――

「いや、ちがうッ! これは! ベッドが燃えているんだッ! アチぃっ! キャスター、さっさと逃げるぞ! さもないとおれたちまで……」

先程ホル・ホースが吐き捨てた煙草が出火の原因だったが、そんなことはお構いもなしに逃げようとする。
そんな彼を尻目に、「ゆらり」と呟いて燃え盛るベッドの足を掴む者がいた。


「おいっ! おめー自殺願望か!? 何やってんだよ、キャスター!」
「火事は怖いですからねー。『地震はおやじの元』って言葉知らないんですか?」

彼女はその細腕のどこにそんな力があるのか、ベッドを持ち上げると、そのまま――投げた。
窓の外に。
幸い、ホテルのすぐ裏は公園の池なので二次災害はなさそうだが。


(迅速な火元の排除、冷静な判断力……間違いない、コイツは“アタリ”だッ! これなら聖杯を獲ってDIOの野郎どもを始末できるッ!)
「おれたちは無敵だッ! タマモとこのホル・ホースは無敵のコンビだぜーっ!!」







―――――このとき、ホル・ホースは不幸にも2つの読み違いをしていた。


1つは、彼のサーヴァントである西条玉藻はキャスターなどではなく、文字通りのバーサーカー、狂戦士であること。
これについては、彼女が初対面のときに「魔法少女、西条玉藻ちゃん、です……」と言ってしまったのに加え、後に図書館で玉藻前という妖狐の記述を見つけてしまったのが原因なのだが。







2つ目は――この戦争の舞台にDIOがいるということだ。


643 : ◆c4fux.z/qk :2018/05/10(木) 02:26:48 /lXL/8XM0
【真名】 西条玉藻@クビツリハイスクール

【クラス】 バーサーカー

【属性】 混沌・中庸


【パラメーター】
筋力:B+ 耐久:D 敏捷:A+ 魔力:E 幸運:E 宝具:C


【クラススキル】
狂化:EX 
 読んで字の如く狂戦士。
 一応コミュニケーションはとれるが、意思の疎通はほぼ不可能。
 全てのパラメーターをアップさせる。


【保有スキル】
澄百合学園:A
 表の顔は天下に名だたるお嬢様学校。
 しかし、その実態は傭兵育成機関。
 自らのステータスを隠蔽し、筋力と敏捷のステータスに補正を得られる。

殺戮技巧(道具):C
 使用する道具の「対人」ダメージ値のプラス補正をかける。

戦闘続行:B
 瀕死の傷でも意識を失わない限り戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
 

【宝具】
『闇突』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大捕捉:―
 常時発動型宝具。
 霞のように捉えられない彼女の通り名にして存在そのもの。
 Bランク相当の気配遮断とAランク相当の精神汚染を得られる。
 さらに彼女が戦いに「病み付き」になったときに、筋力に補正を得る。


【Weapon】
 大振ナイフ2つを逆手持ちで装備している。
 右手にエリミネイター・00。
 左手にグリフォン・ハードカスタム。


【人物背景】
 全国に支部を持つ澄百合学園の生え抜きの1年生。
 期待のルーキーとして『クビツリハイスクール』に登場するも、気絶している間に糸で首を切断されて死亡。
 その強烈なキャラクター性故か、主人公の戯言遣いの記憶に色濃く焼き付いたようで、度々回想されている。
 その後、スピンオフ作品の『零崎軋識の人間ノック』では花も恥じらう初等部時代の彼女が描かれている。
 

【サーヴァントとしての願い】
 ゆらぁーりぃ……聖杯獲ったら子荻先輩喜びますかねぇー




【マスター】  ホル・ホース@ジョジョの奇妙な冒険 第3部 スターダストクルセイダース


【weapon】
『皇帝』
 【破壊力:B スピード:B 持続力:C 射程距離:B 精密動作性:E 成長性:E】
 拳銃の形をしたスタンド。
 撃ち出される弾丸もスタンドであるため、弾道を自在にコントロールしたり瞬時に消したりできる。
 弾数はスタンドパワーの続く限り無限でリロードも必要なし。


【能力・技能】
スタンド使い:傍に現れ立つ精神エネルギー『スタンド』を使う者。 スタンド使いはひかれ合う。


【人物背景】
 DIOがジョースター一行に差し向けたスタンド使いの1人。
 No.2をモットーとしており、スタンド使いには珍しく他人に能力を隠さずにコンビを組む。
 初登場時には、J・ガイルとのコンビでアヴドゥルを一時再起不能にするものの、花京院とポルナレフの2人によってJ・ガイルが殺されたために逃亡した。
 2度めの登場では、味方のはずのエンヤ婆に逆恨みされてポルナレフ共々殺されそうになるが、なんとか生還。ジープを奪って退却した。
 その後は伝令係めいたことをしていたものの、DIOに咎められる。その際、DIOを暗殺しようとするが、能力の片鱗をみせられ失敗。
 物語の終盤で、同じく相方を失ったボインゴと無理矢理ではあるがコンビを組んで承太郎たちのもとへ姿を現した。
  ブスだろうが美人だろうが女を尊敬しているらしく、嘘はつくが殴りはしないと豪語していた。
 外伝小説の『OVER HEAVEN』ではDIOから、その善にも悪にも属さない飄々とした性格をもって、個人的な好みとして捨てがたいと評されている。


【参戦時期】
 ボインゴとのコンビが敗れ、入院している最中。


【マスターとしての願い】
 聖杯を獲り、その力でDIOとその配下どもを斃して粛正から逃れる。DIOの財宝もすべて頂く。


644 : ◆c4fux.z/qk :2018/05/10(木) 02:27:39 /lXL/8XM0
以上で投下を終了させていただきます。


645 : ◆c4fux.z/qk :2018/05/10(木) 02:29:29 /lXL/8XM0
題名は「今SADISTICな愛から抜け出して」です。


646 : ◆EPxXVXQTnA :2018/05/10(木) 15:53:56 Y8Mdv8TU0
投下します


647 : リベンジャーズ・アヴェンジャーズ ◆EPxXVXQTnA :2018/05/10(木) 15:56:35 Y8Mdv8TU0
アラもう聞いた? 誰から聞いた?
魔法少女サイトのそのウワサ!

不幸な女の子だけが見れる魔法のサイト、そこの管理人から貰える、持てば誰でも魔法少女になれる素敵なステッキの噂!

だけどよく考えてみて? うまい話には裏がある!
ステッキの対価は寿命!使えば吐血に昏睡、まさに早死待った無し!
さらに謎のカウントダウン『テンペスト』!他のステッキを集めなきゃさぁ大変!

マジカルガール!



「戻ったぞ、マスター」

偵察に向かわせたサーヴァントの言葉に、さりなは視線を向ける。
いつの間にか側に立っていた男は、静かにマスターの反応を待っていた。

「収穫は?」

「残念ながら、無しだ。本戦はいまだに始まっていないからか、他の主従は大人しくしているらしい。
……『悪の救世主』やら『殺人鬼』やら『歩くモナ・リザ』やら、色々と妙な噂で街が賑わっている程度だな」

「はっ、使えないじゃん、あんた」

「……善処する」

 舌打ちする。無手で戻ってきた男への苛立ちを隠そうとはしない。男も非を感じているのか、無表情だ。
 さりなは自身のサーヴァントを信用していなかった。別に言うことを聞かないとかそういうことではなく、(寧ろ素直に従ってくる)
 時折自身を見る目付きに邪な感情を感じるのだ。具体的に何を考えているまではポーカーフェイスで伺えないものの、彼女は本能的にそれを察していた。
 マスターの疑心を感じ取ったのか、男は呆れたように諌め始めた。

「安心しろマスター…… サーヴァントはマスターに従う。それが聖杯戦争の"流儀"だと心得ている。」

「はっ、どうだか?口ではどうとでも言えるでしょうよ」

「……それは聞き捨てならないな。いいか、マスター。
 流儀とは、ただ漠然とした物ではない。現代に至るまで、尊敬すべき先人たちが一歩一歩積み上げてきた歴史そのものだ。
『尊敬』には『敬意』が伴い、そしてその流れは必ず吉となって俺たちに報いてくれる。だからこそ、流儀は何物にも優先されるのだ」
 


「マスター……お前の聖杯に託す望みは"復讐"だったな?」

「だから、何?」

「俺も、かつて義兄と呼ぶかも知れなかった男に誇りを汚された…… その屈辱は、聖杯によってあがなって貰うッ!」

 珍しく熱く語る男に目を丸くする。
 復讐。そうか、なぜこの男が自身のサーヴァントとして召喚されたのか、府に落ちた。
 この男もまた、プライドのために復讐に身を焦がす同類なのだ。
 その感情は理解できるし、共感もできる。

「……解ったよ。手を貸してもらうよ。アヴェンジャー」

 アヴェンジャー。復讐者のエクストラクラス。
 今でも信頼はできないが、男の流儀とやらにかける信念は信用はできる。
 彼女はそう判断した。
 どっちみちサーヴァントの相手はサーヴァントでしか勤まらない。聖杯を勝ち取るには、この男を利用するしかないのだ。

「二度も言わせるな。サーヴァントはマスターに従う。それが、流儀なのだ」

「はいはい」





(ようやく納得したか、小娘がッ…… 畜生、マスターでさえなければなぁ)

アヴェンジャーは悪態(勿論、口には出さないが)をつくと、霊体化した状態で己のマスターをしげしげと見据える。

"こうした気の強い性格の女を殴りながらヤレば、さぞ気持ち良いだろうな"

そんなゲスそのものの感想を抱きつつ、マスターへの裏切りは流儀に合わない、
ただそれだけの理由でアヴェンジャーは手を出すことはなかった。
年下の小娘に偵察に差し向けられるのも不快だったが、それがマスターとしての流儀だ。ならば仕方ないと己を納得させる。

(これも全てヴェカピポ……あの男のせいだッ!許さんッ!奴が大人しく決闘で敗北していればこんな事には……
 聖杯を手に入れた暁には生まれたことすら公開する報復を行ってやるッ!)

 しかし、何かの切っ掛けがあれば、彼は容易く己のマスターに欲望を向けるかもしれない。
 結局のところ、彼の抱く復讐心はただの逆恨みに過ぎず、高潔な英霊などではないのだから。


648 : リベンジャーズ・アヴェンジャーズ ◆EPxXVXQTnA :2018/05/10(木) 15:57:43 Y8Mdv8TU0
【CLASS】アヴェンジャー
【真名】???(ヴェカピポの妹の夫)
【マスター】雫芽さりな
【属性】秩序・悪
【ステータス】筋力D 耐久E 敏捷E 魔力D 幸運B 宝具D+

【クラススキル】

復讐者:D+
 復讐者として、人の恨みと怨念を一身に集める在り方がスキルとなったもの。
 周囲からの敵意を向けられやすくなるが、向けられた負の感情は直ちにアヴェンジャーの力へと変化する。

忘却補正:D
 人は多くを忘れる生き物だが、復讐者は決して忘れない。
 忘却の彼方より襲い来るアヴェンジャーの攻撃はクリティカル効果を強化させる。

自己回復(魔力):D
 復讐が果たされるまでその魔力は延々と湧き続ける。
 微量ながらも魔力が毎ターン回復する。

【保有スキル】
 
流儀の誉れ:A
 祖先から受け継がれる伝統を重んじる精神性。
 聞こえは良いが、アヴェンジャーの流儀に沿わなければマスターの指示すらも無視する可能性がある。 
 また、流儀によっては自身が不利となる行動でも行う。
 流儀の定義については、アヴェンジャーの感性に委ねられる。

真名秘匿:EX
 真名及び過去に何をしていたかと言う事の露呈を防ぐスキル。ランクEXはあらゆる宝具やスキルは当然の事、魔法を用いたとしてもその素性が割れる事はない。

加虐体質:B+
 自己の攻撃性にプラス補正がかかるスキル。
 これを持つ者は戦闘が長引けば長引くほど加虐性を増し、普段の冷静さを失ってしまう。
 攻めれば攻めるほど強くなるが、反面、防御力が低下してしまう。
 それだけに、バーサーカー一歩手前の暴走スキルと言える。
 女性に対してはワンランクアップ。
 
【宝具】

『鉄球(レッキングボール)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:30 最大補足:20
 祖先から脈々と受け継がれてきた、肉体を動かさずに掌にある物体に「回転」を加える特殊技術。
 鉄球を回転させてその振動で特定の事象を引き起こす。

『決闘』
ランク:D+ 種別:対人宝具 レンジ:100 最大補足:3〜8
 自身と敵対者1名、そしてその決闘を見届ける付き添い人のみの空間を作り出す。
 マスターだろうが何だろうが決着がつくまで、決闘の当事者に一切の危害を加えることはできない。部外者も同様である。
 この宝具は自身と敵対者の決闘への合意の元で発動し、展開時には己のスキルと宝具のみによる、純粋な決闘が執り行われる。



 ……はずなのだが、この宝具には裏の効果があり、敵対者が決闘に勝利、即ちアヴェンジャーを殺害した場合、
 アヴェンジャーの絶命と同時に呪いが発動、勝利者の全ステータスがワンランクダウン、幸運値がE-まで激減し、
 国外追放の逸話に倣って、マスターと引き剥がされ、聖杯戦争の舞台の何処か(マスターから最も遠い場所)に強制転移させられる。
 アヴェンジャーの消滅後もステータスダウンの効果は残り続ける。
契約の繋がりも大幅に阻害されるため、勝利者は令呪を用いなければマスターと合流する事すら難しくなる。
 逆にアヴェンジャーが勝った場合は特に何も起こらない。

 ちなみに本人はこの宝具の真の能力を認識しておらず、あくまで流儀に乗っ取った決闘を執り行う宝具と勘違いしている。

【weapon】
『鉄球(レッキングボール)』
投球による攻撃の他に、衛星による「半身失調」や「肉体の硬質化」、もしくは簡単な「治療」ができるかもしれない。

無銘の剣
アヴェンジャーの流儀に合わないため、基本使用されない。

【サーヴァントとしての願い】
ヴェカピポへの復讐。


649 : リベンジャーズ・アヴェンジャーズ ◆EPxXVXQTnA :2018/05/10(木) 15:59:02 Y8Mdv8TU0
【人物背景】
 SBR13巻、ウェカピポの過去話の中に登場する男。
 本名は不明で、読者からは記事タイトルの呼び名のほか「義弟」とも呼ばれている。
 彼はネアポリス王国の裕福な財務官僚の息子で、ウェカピポとは仕事を通じての友人であった。
 将来の財産と地位が保証されていることから、ウェカピポは自分の妹を彼と結婚させた。
 しかし、義弟には暴力癖があり、その激しさは妻の左目を失明させるほどだった。ウェカピポは慌てて法王に請願し、婚姻無効の許可を取り付けた。
 だがこの行為が逆鱗に触れた義弟はウェカピポを暴行、さらに「殴りながらヤりまくるのがいい女だった」「じゃなきゃあちっとも気持ちよくねーし……つまんねぇ女だった……」と己のゲスさを強調。そしてウェカピポとの正当なる決闘を申し込む。
 決闘は祖先から伝わる流儀に則り、鉄球(レッキング・ボール)によって行われた。例の台詞を放ち決闘が始まった直後、ウェカピポの鉄球の“衛星”が義弟の頭部に直撃し絶命する。
これによりウェカピポの勝利かと思われたが……

【マスター】
雫芽さりな@魔法少女サイト

【weapon】
『ヨーヨー』
 ヨーヨーの形をした魔法のステッキ。どんなものも切り裂いてしまう斬撃能力を有する。紋章はΦ。ステッキの使用で出血する部分は耳から

【能力・技能】
魔法少女。変身はしないが、身体能力は高い。

【人物背景】
 魔法少女サイトの主人公・朝霧彩をいじめていたグループの中心人物であるクラスメイトで、魔法少女の一人。
 うじうじしてる人を見るとイライラしてしまう性悪な性格で、学校では親友の貝島えりか・川野愛と共に常日頃から彩に対してひどいいじめを行っており、学校内でも評判の悪い不良生徒・荒井翔太とも親しい関係であったが、親友共々、クラスメイトからは軽蔑され、荒井を忌み嫌う一部の生徒からにも疎まれつつあった。
 しかしその欠点さえ除けば、親友のことを大事に思う、姉御肌あふれる義理堅い少女であるとも言える。
 魔法少女サイトと出会った彩が学校の下駄箱に入っていたステッキを手にしたその日、彼女が密かに可愛がっていた子猫を殺し、荒井に彩をレイプするよう仕向けるも、子猫を踏切内に放り込んで事故死させた張本人のえりかが荒井諸とも彩のステッキの力で子猫が亡くなった同じ踏切内に瞬間移動し、そのまま電車に撥ねられ、無惨な事故死を遂げてしまう。
 その事から復讐鬼と化したが、客観的に見て逆恨みに等しいのは否めない。

【参戦時期】
アニメ5話、管理人からステッキを授かった後

【マスターとしての願い】
朝霧彩と奴村露乃への復讐


650 : ◆EPxXVXQTnA :2018/05/10(木) 15:59:30 Y8Mdv8TU0
投下終了です


651 : 名無しさん :2018/05/10(木) 16:35:05 jjhsneGo0
宝具名見ただけで義弟が浮かんでしまうなんて………
義弟は存在を俺の意識に刻んだッ!


652 : ◆.wDX6sjxsc :2018/05/10(木) 23:23:46 3OJ1r3Gs0
投下します


653 : 六星竜一&アヴェンジャー ◆.wDX6sjxsc :2018/05/10(木) 23:25:22 3OJ1r3Gs0

天国。
死後の世界に存在すると言われている理想郷。
争いはなく、争いから派生するあらゆる災厄もまた存在しない。
訪れた者全てに『安心』と『祝福』が授けられると伝えられる彼方の世界。
そんな世界へ至ることができる魂とは、いったいどんなものであろうか。


―――少なくとも、俺や若葉が居れる場所じゃないんだろうな


そう、天国は善良で敬虔なる者以外は立ち入り禁止だ。
だから今呟きを漏らした男―――六星竜一の様な人間は入れない。
彼の魂は既にどうしようもない程、『呪われて』いるのだから。



――竜一、お前はあの村の奴らを殺すんだよ…お前は、その為に生まれてきたんだから…!



竜一の人生を一言で表すならば、『運命の奴隷』だった。
幼い頃から母親の復讐代理人として育て上げられ、人としての人生など彼には用意されていなかった。
極貧の暮らしの中、血塗られた技術を身に着ける事だけが彼の生きる糧だったのだ。
そして自分に代わる復讐者としての教育の仕上げとなる課題を、竜一の母は出した。
自分(実の母)を殺せという、親殺しを。
竜一はそれを達成し、人から人のコロロを持たない『七人目のミイラ』という怪物になった。


復讐は粛々と進んだ。
母を焼き殺そうとした村の連中を、一人を除いて残らず血祭りにあげた。
愛した女も、復讐に利用して葬った。
だが竜一にとって一度きりの誤算―――共に村を訪れた少年探偵に『罪』を暴かれ。
最後は『除いた一人』、実の父親に銃で蜂の巣にされて死亡した。
そうして、彼は『命』を『運』び、奪っていく『運命』の奴隷としてその生涯を終えた。
殺し以外に為せた事など何もなく、ただ一度きりの人生を無駄にして。


654 : 六星竜一&アヴェンジャー ◆.wDX6sjxsc :2018/05/10(木) 23:26:24 3OJ1r3Gs0

「なぁ…あんたはどうなんだ。アヴェンジャー?」

附属中学校も有する見滝原で最も著名な進学校、不動高校。
その放課後の教室で、虚ろな瞳をして竜一は問いを投げる。
視線の先には、一人の男が立っていた。

ハァ ハァ ハァ ハァ…

古ぼけたコートを着て、片手が義手の男。
肉食獣の様な鋭い双眸に、顔に走る刻印じみた傷跡が印象的だった。


「…『天国』なんて俺にはどうでもいい。俺は、吸血鬼を根絶やしにする為にここへ来た」


燃える様な復讐心と果てのない使命感を胸に、アヴェンジャーは答えた。
アヴェンジャーは多くの物を取りこぼしながら、吸血種を殺して殺して殺しぬいただけで英霊へと至った身だ。
今回もそれは変わらない。彼から家族を、故郷を、仲間を、夢を奪った者達への復讐心だけを胸に聖杯を目指す。


障害は全て叩き斬る。人々を救うために人を手にかけることも覚悟しよう。
人殺しの誹りも甘んじて受け入れ、目を背けはしない。
ただし例え百億の憎悪を向けられても、足を止めるつもりは毛頭ない。
迷いなど、兄を、師を、友誼を交わした仲間を斬った時に既に置いてきている。
決して揺らぐことない一ゆらの炎で胸を焦がし、アヴェンジャーは地獄の地平を進むのだ。


「……ふふ……はははは…」

アヴェンジャーの尽きることのない意志力の一端に触れて、竜一はおかしくなった。
この男を呼び出してからずっと疑問だった事が、たった今納得がいったのだ。
生前化け物を散々殺してきたらしい男。人類を救うのだという男。
全く大した英霊だと思う。
そんな大したサーヴァントが卑しくも殺人鬼である自分が呼べたのか。


655 : 六星竜一&アヴェンジャー ◆.wDX6sjxsc :2018/05/10(木) 23:28:47 3OJ1r3Gs0


きっと、この男も『殺し』以外の選択肢が用意されていない人生だったのだろう。
『命』を奪い『運ぶ』運命の奴隷。ただ尽きぬ復讐を果たすだけの装置。
自分と同じ『呪われた魂』だ。


「いいぜアヴェンジャー。どうせ殺ししか能がない俺達だ。
お前の『戦争』に一口乗ってやる。一緒に願いを叶えるとするか」


そう言って竜一は懐から一つの宝石を取り出す。
淡く、紅く、光るソウルジェム。若葉から渡された、今となっては形見となった一品。
彼の願いの。聖杯に賭ける願いの象徴。
アヴェンジャーの様に人類を救うだとか一つの種を滅ぼすだとか。
そんな大層なものではないけれど。
成し遂げた復讐の、一つきりの心残りを晴らす。



―――先生



本当に、大したことではない。
ただ天国に行けない、救われぬ魂の席を一つにするだけだ。
自分に騙され『共犯者』として手を汚し、最期は抵抗もせず絞殺されたバカな女。
その女の死を、罪を、無かった事にするだけだ。
自分にさえ関わらなければ、バカな女――時田若葉という少女はそれなりに幸せになっただろう。
そのまま真っ当に暮らせば、『天国』へいけるかもしれない。

いつだって怪物は、地獄の炎に焼かれながら、それでも天国に憧れる。



「…あぁ、俺達は必ず、聖杯へ辿り着く」



言葉とともに、涙さえ忘れてしまった二人の『流血鬼』は動き出す。
友情も親愛も、全て彼方へ置きざりにして駆け抜ける。
待ち受ける苦難と戦いと殺しの果てに、たとえ地獄に落ちるのだとしても。
―――果たして、彼らが行きつく未来は二度目の『運命の奴隷』として終端か。
それとも、目醒めたことで何か意味のあることを切り開いていく、『眠れる奴隷』の栄光か。


656 : 六星竜一&アヴェンジャー ◆.wDX6sjxsc :2018/05/10(木) 23:29:41 3OJ1r3Gs0



【真名】宮本明@彼岸島
【クラス】アヴェンジャー
【属性】中立・中庸

【パラメーター】
筋力A 耐久A+ 敏捷B 魔力E 幸運E 宝具C

【クラススキル】
復讐者:A
復讐者として人の恨みと怨念を一身に集める在り方。
周囲からの敵意を向けられやすくなるが、向けられた負の感情はアヴェンジャーの力に変わる。

忘却補正:B
人は多くを忘れる生き物だが、復讐者は決して忘れない。
忘却の彼方より襲い来るアヴェンジャーの攻撃はクリティカル効果を強化させる。

自己回復(魔力):D
全ての化け物への復讐が果たされるまでその魔力は延々と湧き続ける。魔力を微量ながら毎ターン回復する。

【保有スキル】
虚偽の英雄(偽):A
人々に祀り上げられ、しかし救い導く事はできず屍を積み上げ続けた英雄譚。
人在らざる者と相対する時、スキルを含めた全てのステータスが1ランク上昇する。
しかし、真っ当なる『人間』と相対する時、スキルを含めた全てのステータスが1ランク下降する。
家族を失い、仲間を失い、故郷を失い、想い人も失い続けた青年に遺されたのは、ただ人類最後の希望として死徒を狩り続ける血塗られた使命のみ。

戦闘続行:B
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

無窮の武練:B
死徒である吸血鬼数十人を一瞬で瞬殺し、その上位種である邪鬼すら討ち果たす卓抜した武練。
いかなる戦況下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。

【宝具】
『義手刀』
ランク:D+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜2 最大補足:1
アヴェンジャーがかつて友誼を結び、葬った吸血鬼が鍛えた義手に仕込まれた刀。
多くの怪物を切り伏せたことで怪物特攻の霊刀となっており、対象の硬度や大きさを無視した両断が可能。
物理法則を超越しその斬撃は相手を討つ。

『吸血殲鬼』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
かつて吸血種を狩り続け、人類最後の希望として人々に讃えられたアヴェンジャーの生きざまが宝具となったもの。
近辺に存在する怪物に属する者の気配を察知し、精神干渉を完全に跳ね除ける。
加えてフィールドに存在するあらゆるもの(丸太、ロープ、ガソリン、車両etc…)に『退魔』の特攻概念を付与、装備する。
化け物が強力なほど、その化け物の被害者が多いほど、そしてその助けや討伐者を願う声が多いほど、アヴェンジャーは人間の限界を無限に更新し続け化け物を滅ぼす。

【weapon】
前述の義手刀。

【人物背景】
彼岸島にて吸血鬼と戦い続け、そして仲間を喪い続けてきた数奇な運命の青年。
奮戦虚しく遂に勝利できることは無く、吸血鬼の首領は日本を占領した。
そんな絶望の中でも彼は諦めず、意志だけを抱き、生き残りの人間に救世主と崇められながら吸血鬼の根絶を目指し戦う。
例え、嘗ての仲間を手にかけても。

【サーヴァントとしての願い】
吸血鬼を根絶やしにする。


657 : 六星竜一&アヴェンジャー ◆.wDX6sjxsc :2018/05/10(木) 23:30:20 3OJ1r3Gs0

【マスター】
六星竜一@金田一少年の事件簿 

【マスターとしての願い】

時田若葉の蘇生

【weapon】
なし。

【能力・技能】

殺人術
銃殺や絞殺、それにナイフでの刺殺などの様々な殺人術。

格闘術
警官二人を圧倒できるほどの格闘術。

演技力
1年近い間本性を隠し、冴えない教師を演じ続ける演技力。

【人物背景】

両親を殺され、更に自身も焼き殺されそうになった母親の復讐の為に殺人マシーンとして育てられた男。

性格は残忍で狡猾。人殺しをハエやゴキブリを殺すのと同じと言い、目的の為なら関係のない人間ですら容赦なく殺す。
その一方で、復讐のために近づき恋人となった少女を後に本当に愛してしまったり、その恋人を殺す際には涙を流すなどまるで心のない人間という訳ではない一面も見せる。
実の父親に銃で滅多打ちにされ、最期を迎えた。


658 : ◆.wDX6sjxsc :2018/05/10(木) 23:30:46 3OJ1r3Gs0
投下終了です


659 : ◆EPxXVXQTnA :2018/05/11(金) 13:11:32 eFOt5VGU0
投下します


660 : Er ist wieder da ◆EPxXVXQTnA :2018/05/11(金) 13:12:51 eFOt5VGU0
アラもう聞いた? 誰から聞いた?
『霧雨魔理沙』のあのウワサ!

箒で飛び回る至って普通の魔法使い!好きなものはやっぱりココアのバンホーテン!
泣きながらソバを食べて、何時もの話題はラ―の鏡!
イワナを抱えて右往左往!誰もが声を聞いたらこう答えるの!『霧雨魔理沙』だって!
そんな素敵な魔法使い、嫌いじゃないけど好きじゃないよ!

サラバダー!


「『悪の救世主』『歩くモナリザ』そして『殺人鬼』……やはり、我々以外にも目立つ主従が存在するようだな」

 深夜。郊外の自宅でひとりの『ちょび髭』が、週刊紙を読破した感想を述べた。
 彼の名はアドルフ・ヒトラー。無職である。
かつてベルリンで果てた筈が現代に復活を遂げ、マスターとして参戦を遂げた総統は、慣れぬ現代の日本で情報収集に努めていた。

 かつて聖杯の探索を指示したこともあったが、よもや、こうして聖杯戦争なるものに参加するとは思いもよらなかった。
 いや、そもそも聖杯戦争に参加する前にも時間移動なんて馬鹿げた事態に遭遇しているのだ。そういうオカルト方面はヒムラーの方が適任だが、居ないものを頼っても仕方ない。

「さて……キャスター。君には引き続き噂の収集と宝具の拡散を任せたい。できるかね?」

 ヒトラーは側に座っている自身のサーヴァントを一瞥する。
 童話の魔法使いを思わせる服装の少女は、外見に違わず『魔術師』のサーヴァントだ。
 彼女は貪っていたブラウニーから慌てて口を離すと自身の考えを返答する。

「やっぱりマスターの作る作戦は上手いな。指示がしっかりしていて、それでいてベタつかない。すっきりした方針だ。
 大戦での経験を使用したのかな?」 

 キャスターの珍妙な言い回しに眉を潜めることもなく、ヒトラーは答える。
 スキルによるものか、キャスターとの意思疏通はやや難儀するが、こうした素直な反応は実に好感を覚える。
 加えて、理想とするゲルマン系であるキャスターは、共に戦う同胞として相応しい。
 お世辞にも荒事には向いているとは言えないが、そういう人物を言葉で導くのがマスターである彼の仕事だ。

「それもあるが、物事に必要なのは柔軟さだ。勿論経験も大切だが、それだけでは成り立たないよお嬢さん(フロイライン)。
 大衆を導くにも、まずは情報と物資が必要だ。故にまずはそれを得る必要がある。
 君も私についてはよく知っているだろうが、一人では成せることに限度があるからな」 

 ヒトラーの最終方針は聖杯の獲得であるが、キャスターは直接戦闘には向いていない。よって、勝ち残るには同盟が必須だ。
 話術で政界を支配したと言っても過言ではないヒトラーには大きな自信があった。
 最も、ある大きな問題をクリアできればだが……

「最大の問題は……私がこの街で目立ちすぎていることか」

 アドルフ・ヒトラーのロールはまさかの『YouTuber』であった。
 マスターとして覚醒する前に、既に自身の思想や現体制への指摘を暑く語る動画をアップしてしまっていた。
 それはヒトラーそっくりのYouTuberによる物申す系動画としてかなりの再生数をあげており、見滝原市でのヒトラーの知名度は極めて高いと言える。

 また、それを抜きにしても『アドルフ・ヒトラー』の名前は余りにも有名すぎる。主に悪い意味で。
 そこまで歴史に詳しくない人間でも、彼の顔を見れば一発で名前を言い当てるだろう。教科書にもご丁寧に顔写真つきで載っている。
 必要なことだったとはいえ、あまり誇れる事ではない『作業』に関する実績も、マスターとの交渉では大いに響くことは容易に予想できる。

 さて、どうするか?

 悩むマスターを労ったのか、霊対化する直前、キャスターはマスターに敬礼する。

「さらば愛しの大統領」
「違うぞアーチャー。私は総統だ」

 訂正に関する返答は無かった。


661 : Er ist wieder da ◆EPxXVXQTnA :2018/05/11(金) 13:14:28 eFOt5VGU0

【CLASS】キャスター
【真名】UDK姉貴@クッキー☆BB
【マスター】アドルフ・ヒトラー@帰ってきたヒトラー(映画)
【属性】秩序・善
【ステータス】筋力E 耐久E 敏捷B 魔力A 幸運A- 宝具B+

【クラススキル】

陣地作成:ー
第三宝具の代償にこのスキルは失われている。

道具作成:C
 魔術的な道具を作成するスキル。そこまでランクは高くないが、
 UDK姉貴に由来する道具は自由に作成できる(ラ―の鏡など)

【保有スキル】
 
カリスマ(偽):C
 個人としての魅力、人々を惹きつけるキャラクター性。
 軍団を率いることはできないが、一部の人間を魅了する。

芸術審美:E++
 芸術作品、美術品への執着心。芸能面における逸話を持つ宝具を目にした場合、低い確率で真名を看破することができる。
 美大落ちのためランクは低いが、ドラクエに由来する宝具は高確率で看破できる。

仕切り直し:B-
 サラダバー!
 戦場から逃走する能力。
 某ヴォイスドラマ企画の騒動から一時的に逃れられた逸話から獲得。
 ただし、ターンの巻き戻しは出来ない

無辜の声優:A
 UDK姉貴。
 某ヴォイスドラマ企画とそれを素材としたBB劇場のイメージにより、
 能力・容姿・その他諸々が変質している。
 スキルとしては狂化に近く、UDK姉貴の語録そのものか、それに沿った形でしか話せない。容姿もMMDだったりイラストだったりとコロコロ変貌する。
 このスキルは外せない。 

霧雨魔理沙(偽):EX
 無辜の声優の発生スキル。
 自演によるもののため(偽)となっているが、『霧雨魔理沙』がサーヴァントとして
保持するスキル・宝具をそのまま使用できる。
 また、『霧雨魔理沙』を知る人物から誤認される確率を上昇させる。

【宝具】

『恋符・マスタースパーク』
ランク:A- 種別:対城宝具 レンジ: 最大補足:
 キャスターの演じたキャラ、霧雨魔理沙を象徴する宝具。
 魔理沙としての知名度に引きずられる形で宝具となった。
 八卦炉より放たれるその破壊力は対城宝具に匹敵する。 
 原典と異なり、イワナカッターと呼ばれる光球か、もしくは岩魚そのものを弾幕として発射する事もできる。
 また、下記の宝具で姉妹が揃っている場合はさらに高火力の「トリプルマスタースパーク」を放つことができる。

『UDK姉妹と愉快な仲間たち(マリナーズ・クッキーズ)』
ランク:D+ 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大補足:ー
 キャスターと同じく霧雨魔理沙を演じた声優たちを疑似サーヴァントとして召喚する。
 彼女らは全員が単独行動と『無辜の声優』を所持し、キャラクターに沿った固有のスキルを保持する。
 宝具としてマスパを持つものも居たり居なかったりする。
 大抵は長女であるキャスターの指示を聞くが、キャラクターによっては暴走する可能性もある。
 召喚の魔力負担は下記の宝具の発動具合によって減少していき、最終的には姉妹のみならずキャスターに縁のあるキャラクターも召喚できるようになる。

『東方合同動画企画(魔理沙とアリスのクッキーKiss)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1000 最大補足:1000
 言うなれば現在進行形で形成される無辜の怪物の強化版。
 聖杯戦争で流布された『霧雨魔理沙=UDK姉貴』のキャラクターの知名度に比例して、聖杯戦争を自身を主人公としたBB劇場として再定義し、侵食させる。
 侵食が高まれば、主人公であるキャスターはあらゆる判定に有利なボーナスを得ることができる。
 ただし、一人歩きするキャラクターの宿命か、侵食度に応じて本家の『霧雨魔理沙』とはイメージが分離していく。
 また、キャスターにとって不利益な設定も自身に取り入れられてしまうため、例えば霧雨魔理沙の死亡説が流布されれば、それに引きずられて消滅する可能性すらある。


662 : Er ist wieder da ◆EPxXVXQTnA :2018/05/11(金) 13:15:13 eFOt5VGU0

【weapon】
『恋符・マスタースパーク』

『無銘・箒』
道具作成で作り出せる。これに乗って飛行できるがライダー時ほど出力は高くない

【サーヴァントとしての願い】
 無辜の声優の削除。現状、そのイメージを拡散しなければ戦えない現状にジレンマを感じている。

【人物背景】
 東方Projectの二次創作動画、「【東方合同動画企画】魔理沙とアリスのクッキーKiss」(通称クッキー☆)にて霧雨魔理沙役を演じた女性である。アカ名は「宇月幸成」。
 淫夢の笛にしてイワナ民の玩具と化した声優であり、美大落ちの縁とアドルフ・ヒトラーと同一視された新説が一定の知名度を得ているため召喚された。

【マスター】
アドルフ・ヒトラー@帰ってきたヒトラー

【ロール】
無職。ヒトラーそっくりのYouTuberとして活動しており、初回から知名度が高い。

【weapon】
『銃』

【能力・技能】
『話術・カリスマ』
演説の天才にしてカリスマ。
アドルフ・ヒトラーの所業を知っている人物でも、不思議と彼に引き付けられる。

【人物背景】
 映画版からの参戦。TVデビューしてブレイクした直後から。
 ナチス・ドイツの総統。アドルフ・ヒトラーその人。世界一有名なちょび髭。
 1945年の自殺後に2011年のドイツにタイムスリップしてくる。
 持ち前の知能の高さから、自分がタイムスリップした事実とドイツの戦後の歴史を理解し、再び政界復帰を目指していた。
 現代知識にも精通しており、自分が歴史上でどういった扱いなのかも理解しているが、根本的な思想は変わっていない。


【マスターとしての願い】
聖杯を獲得し、再び大衆を導く。


663 : Er ist wieder da ◆EPxXVXQTnA :2018/05/11(金) 13:16:35 eFOt5VGU0
投下終了です


664 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/11(金) 22:38:13 IfsOuXpk0
皆さまお疲れ様です。今日は書き終えた感想分を投下します。


天へと至る
 例え如何なる悪であろうとも、覚悟と精神の強みだけは確固たるものだと言わんばかりの存在。その結末が世界を
 一巡させるに至るのだから、やはりこの邪悪の強さは何であれ認めざる負えないでしょう。『天国』に至る協力をする
 キャスターもまた、ある意味『天国』へ至ろうとするもの。そして、双方共に『天国』へ至る為への犠牲を厭わない
 悪は同じである……良い表現で最悪な主従に違いありません。
 投下していただきありがとうございます。

アンラッキー・ガール&ステアウェイ・トゥ・ヘブン
 ただでさえ聖杯戦争に巻き込まれた以上、不幸だというのに人類悪レベルの途方ない邪悪を召喚してしまったのが
 ぶっちぎりで不幸という……悪の救世主を召喚してしまった少女といい勝負(?)してますね。目に見える悪徳な
 詐欺とはまさにこの事。このまま、ほたる自身だけで考えこんでしまったら取り返しのつかない事態に発展しかねない
 いえ、確実にしてしまうので、これ以上の不幸がない事を願いしましょう。
 投下していただきありがとうございます。

Two Heads are Better than One
 肩こりの酷さは私も最近常にこっているなぁと感じるようになり、不思議と共感してしまったワンシーンでした……私情
 ですみません。ただ『悪』とひとくくりにまとめてしまえば、屁理屈突っ込めば何でも『悪』になってしまいますが
 間違いなく蕗珠に関しては、討ち滅ぼすまでにもいかない。良くも悪くも、我々一般人にもありがちな『悪』であると
 ナコルルがしっかりと見極めているのに一安心すると同時に、彼女の良心をしかと感じられました。
 投下していただきありがとうございます。

仙水&バーサーカー
 私個人、多重人格ほど都合の良い逃げ道はないと思ってしまいます。既に参戦が確認されている『悪魔』に関しては
 謎が多く、経緯が不明ですが。結局は精神的な弱さよりかは「都合の良い結果を残す」「都合の悪いものをなすりつける」
 そんな風に感じられてしまいます。仙水も「過程」に拘りがなく「結果」を追い求めている。そしてバーサーカーの
 邪悪たる使役がまさしく悪だと感じられます。
 投下していただきありがとうございます。

夢はこの部屋の中で
 心なしか治安が悪化しつつあるのは、召喚されている邪悪たちの影響なのでしょうか? 本来の見滝原に住まい
 魔法少女たる鹿目まどかは、この混沌とした聖杯戦争の最中で『魔法少女』を貫き通せるのか。また彼女の
 友達を邪悪の魔の手から救い出せるのか。そんな彼女が「でかした!」と言わんばかりの対吸血鬼の人物を召喚
 したのは何たる皮肉。篤とまどかのそれぞれの在り方の対比が映える話でした。
 投下していただきありがとうございます。

夢幻《汚れた英雄》
 まさに幻想的な獣たちの宴。聖杯戦争の開幕までに様々な主従のやり取りが交わされるでしょうが、この二人に関して
 単純な言葉を紡ぐよりも、これ先を語るよりも。その先をどうすればいいのか。などと想像するよりも、見滝原に集う
 主従たちによって今後が左右されるものだと十二分に伝わって来ます。行き着く果てが危うい妖艶な美しき迷う者たち
 がどのような運命に導かれるのか楽しみでなりません。
 投下していただきありがとうございます。

■■■■は静かに暮らせない
 やめとけやめとけ! 見滝原の聖杯戦争に参加するなんて。吐き気を催す邪悪が犇めいているんだかいないんだか
 ……ってお前がサーヴァントなのか!? という驚き(?)ネタにされている意味ではある意味、英霊かも?
 そんな同僚をしっかり使って情報収集する、やちよさんが無性にシュールで笑いが込み上げてしまいます。
 彼女も魔法少女の一人として、聖杯戦争に関わる謎とウワサに挑む姿勢はマギレコで見られる精神性があります。
 投下していただきありがとうございます。

今SADISTICな愛から抜け出して
 残念!悪の救世主からは逃れられない。つくづく『運命』とは厄介だと幾度も私は言ってきたかと思いますが
 運命の最中、ホル・ホースに関しては確実に『運』というのがついており。思い返せば、よくこの男はあの三部で
 幾度も死線を乗り越えられたものだよなぁと関心を抱かざる負えないです。ただ、ちょっと扱いに困るバーサーカー
 (自称:魔法少女)を召喚してしまい、今後上手くコンビネーションを取れるか不安ですね。
 投下していただきありがとうございます。


665 : 名無しさん :2018/05/12(土) 09:46:22 yEiJ1Yk.0
やちよ&同僚組が情報抜いた相手を
業務委託で宝具以外全ステータスBランクオーバーという大英雄並のスペックになった戦闘技術持ちマスターが交戦という割とガチな組み合わせなのが草w


666 : 名無しさん :2018/05/12(土) 14:04:27 Qo.eRS2E0
草に草生やすなカス


667 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/12(土) 18:18:05 g4dhBRFo0
候補作初投下させていただきます


668 : おめかしの魔女のウワサ ◆xn2vs62Y1I :2018/05/12(土) 18:19:06 g4dhBRFo0



思い返せば浮かれていたのだろう。
自分は一人ぼっちじゃあなくなって、先輩だから後輩の前で良い所みせようと張り切って。
でも、人間だったら「良くある事」「良くある失敗」。
肝心なところで駄目。恥ずかしい………ただ。

彼女の場合は違った。
それが日常の些細なシーン。部活の最中や勉強会、お菓子作り――在りふれたワンシーンだったら、どれほど良かったか。
それが死線を交えた怪物との戦闘でなければ、どれだけ良かっただろうか。
ちょっとした失敗が命取り。
彼女だって、幾度も戦いを経て、戦闘経験は豊富だったのに。

あの時だけ。
ふと、隙を見せてしまった瞬間。
彼女は怪物に頭をばっくりと切断され、死に絶えたのである。
折角恵まれた後輩の前で。



「――――――――!!!!」



洒落たショッピングモールの一角で買い物カゴが落下し、ザワザワと雑音に紛れて響いた。
幸いな事に、誰にも注目されておらず。
少女――巴マミはバクバクと張り裂けそうなほど動悸を起こす胸を抑えながら、しゃがみこんでカゴを手に取った。
既にカゴへ入れてある茶葉やクッキーを目にして、何とか落ち着こうと呼吸を整える。


(ああ……駄目ね。私…………)


マミは理解していた。自分が――魔女との戦いで命を落とした事を。

魔法少女。……魔女と戦う使命を背負った者。
彼女が白い獣に願い、ソウルジェムを手にした事で契約は成立してしまった。
孤独な戦いを常に強いられ続け。どこか寂しさも抱えていた。

分かっていた筈なのに。

魔女の結界で命を落とせば誰にも『死んだ事すら知られず』に終わってしまう恐怖。
自分が死ねば誰かが死ぬ事も。
あの後……居合わせた後輩達はどうなってしまったのか。想像したくなかった。
否。
ひょっとしたら。


マミは買い物を終えて帰路につきながら、聖杯戦争参加の切符である透明なソウルジェムを掌に乗せる。
お菓子の魔女の結界内でソレを拾った。と考えられた。
正確には、彼女自身記憶にない。
死んだ先に偶然、そのソウルジェムが落ちていただけかも。


669 : おめかしの魔女のウワサ ◆xn2vs62Y1I :2018/05/12(土) 18:19:30 g4dhBRFo0
(どういうことなのかしら……)


マミの不安はソウルジェムと聖杯戦争の結びつき。
恐らく魔法少女を勧誘する白い獣・キュゥべえと関与があるのは明白だが、彼が現れる様子はまるでなく。
代わりに、聖杯戦争と関わりありそうな様々な『ウワサ』を耳にするようになった。

何故、死んだ筈の自分が生き返っているのか。
聖杯戦争とキュゥべえ……もしくは魔法少女が関係あるのか。
聖杯で……もう一度、何かを願えるというのか。

疑問を抱え続けても好転しない。
やはり、聖杯戦争が始まるまでは――マミが険しい表情のまま自宅マンションの扉を開けば


「おかえりなさい、マミ〜」


と、中性的な黒髪の美少年がにっこりな笑顔で出迎えてくれた。
彼こそがマミの召喚したサーヴァント・ランサー。
偉大な英霊とは思えない雰囲気の、マイペースな彼に少々驚きながらもマミは「ただいま」とほほ笑む。
家に誰かいる……誰かが帰りを待ってくれる。
普通じゃ『当たり前』のこと。マミにとっては感傷深いものだった。
束の間。ランサーはごそごそと彼女の懐を探ってお菓子をちゃっかり入手している。
えへへと満足げなランサーに対し、マミは「もう」と呆れつつ。満更ではなかった。


「マミが買ってきてくれるお菓子も、作ってくれるケーキも美味しいですよ」


子供っぽい無邪気な笑顔を浮かべるランサー。
彼が戦う姿すら想像つかないほど、穏やかでひと時の平穏が流れている。
「飲み物を用意するから」とマミがキッチンで準備を始め、改めてクッキーを頬張る少年をカウンター越しから眺めた。
自分と同じように、影ながら怪物と戦っていた人間には思えない。
少年は『魔女』ではなく『喰種』を屠る英霊である。

喰種。人を喰らう者。
能力はヒト成らざる捕食器官を持ち合わせるが、姿形は人間そのもので、パッと見た目で判断つけるか怪しい。
ランサーが相手してきたのは、そんな存在。
人々の平和を守る為なら、魔法少女と違わないかもしれない。でも………

マミは、幾度も不安を脳裏に過らすのだった。
ルール上。聖杯戦争はサーヴァントを倒して、その魂をソウルジェムに回収すればいいだけ。
だから戦闘はサーヴァント同士で行えば良い筈……しかし。

……彼女が不安に思うのは、マスターも敵として襲ってくる可能性。
悪意ある人間だったとしても、ひょっとして自分と同じ少女だったとしても。
説得が通じないような。そんな人間だった場合、どうすればいいのか………


670 : おめかしの魔女のウワサ ◆xn2vs62Y1I :2018/05/12(土) 18:19:52 g4dhBRFo0
前ぶれも無く唐突にランサーが告げた。


「ちょっと準備運動してきたですよ」


「準備運動?」


「はい。この近くで小さい恐竜を見かけたです」


普通の顔で報告する彼の様子に、何ら焦りも緊迫感もない。緊張感に欠けているのは悪い表現だが。
自分らしく在り続ける強さを強調させているとも捉えられた。
マミは、少しばかり顔を強張らせる。


「それって『ウワサ』に聞く……やっぱりサーヴァントの仕業なのね?」


「ですねえ」


ランサーはカーペットに座り込みながら上の空で返事をした。
『恐竜』に関するウワサを彼女も知っている。だけど、あれが事実であったら………
ランサーが倒したのは小さいもの。マミが恐怖を覚える最悪のケースじゃなかった。
聖杯戦争が開始される時は近い。
覚悟を……覚悟を決めなくては………


「私…………もう一度、戦えるのかしら」


あれ以来、魔法少女にも変身していない。魔女とも無縁な生活が続いたせいで、感覚も遠のいている。
こんな自分で大丈夫なのか。


「マミ。魔女がどんなものか僕には分かりません。でも」


ランサーは変わらぬ様子で言う。


「お仕事が終わった後、ゆっくりお菓子を食べられる時間は僕達、同じだと思います」


戦いが終わって、平凡な日常で。
そう例えば、後輩達と一緒に楽しくお茶会を開いて。魔法少女同士で相談しあったり、それ以外の普通の話をしたり。
確かに……本当は、そんな事を願っていたに違いない。それが叶おうとしていた。


「ええ……そうね。きっとそう」


もう一度だけ、奇跡も魔法もあるならば――あの日常へ。


671 : おめかしの魔女のウワサ ◆xn2vs62Y1I :2018/05/12(土) 18:20:16 g4dhBRFo0




アラもう聞いた? 誰から聞いた?
おめかしの魔女のそのウワサ

秘密のお家で毎日お茶会を開いている、優しい魔女
彼女が振る舞うケーキとお茶は格別美味しい!

でも、食物を口にしたヒトはみんな魂が抜かれちゃって
誰ひとりお茶会から逃げられない

きっと彼女はとっても寂しがり屋なんだって
見滝原の住人の間ではもっぱらのウワサ

ココカラダシテー!




【クラス】
ランサー

【真名】
鈴屋什造@東京喰種:re

【属性】
混沌・中立

【ステータス】
筋力:C 耐久:A++ 敏捷:B 魔力:E 幸運:D 宝具:C


【クラススキル】
対魔力:C
 魔術に対する抵抗力。
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。


【保有スキル】
沈着冷静:A
 如何なる状況にあっても混乱せず、己の感情を殺して冷静に周囲を観察し、最適の戦術を導いてみせる。
 精神系の効果への抵抗に対してプラス補正が与えられる。混乱や焦燥といった状況に対しては高い耐性を有する。

喰種殺し:A
 人を喰らい糧とする怪物を屠り続けた功績。
 喰種または吸血鬼、もしくは人を喰らう怪物に対し攻撃のプラス補正。
 また、それらに対しての感知が鋭く。気配遮断・霊体化などの潜伏効果を打ち消し、捕捉する。

痛覚遮断:B
 如何に傷つけられようとも肉体が怯む事がない。
 戦闘続行と組み合わせれば、決定的な反撃に成功できる。
 
戦闘続行:C
 名称通り戦闘を続行する為の能力。往生際の悪さ、もしくは生還能力。


【宝具】
『ⅩⅢ Jason(ジューゾーズ・ジェイソン)』
ランク:C+++ 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大補足:1〜10人
 13に通じる場所に居た怪物から造られたクの字型の大鎌。ランサーの象徴たる宝具。
 喰種と呼ばれる人喰いを狩る武器であり、人を喰らう性質を持つ敵に対して特攻ダメージを与える事が可能。


【weapon】
サソリ
 小型ナイフ計56本。義足の右足に収納されており『ⅩⅢ Jason』同じく喰種特攻の効果が付与されている。


672 : おめかしの魔女のウワサ ◆xn2vs62Y1I :2018/05/12(土) 18:20:39 g4dhBRFo0
【人物背景】
喰種を狩るもの。喰種捜査官の一人。
かつて喰種に飼われスクラッパーとして優れた運動神経と痛覚の鈍さから、保護された後に捜査官へと道を期待されていた。
しかしながら、当時は精神面・価値観共に問題が多く。
ランサーとして召喚された特等クラスの時代に至るまでは、人間として成長するまで困難を極めた。
場合によってバーサーカーで召喚される事もある。

黒髪の中性的な美少年。まるで人形のようで、女装しても違和感がない。
戦闘時でなければ、のんびりゆっくりお菓子を食べている。


【聖杯にかける願い】
とくにない。
薄々感じ取っている『怪物』たちは狩ろうと思っている。



【マスター】
巴マミ@魔法少女まどか☆マギカ


【聖杯にかける願い】
不明。彼女自身まだこの状況に困惑している。
できれば聖杯戦争に関与しているキュゥべえと接触したい。


【能力・技能】
魔法少女としての戦闘技術
ただし、お菓子の魔女に敗北した後の為、精神面が不安定で支障を来すかもしれない

彼女の基本的な魔法はリボン
敵を拘束したり、マスケット銃を作りだすなどバリエーション豊富


【人物背景】
見滝原中学校の三年生。孤独な戦いを強いてきた魔法少女。
彼女に関することは説明するまでも無い。
参戦時期はお菓子の魔女に敗北した後。


673 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/12(土) 18:22:01 g4dhBRFo0
投下終了します


674 : ◆Pw26BhHaeg :2018/05/13(日) 00:22:26 1eGu1nUI0
投下します。


675 : Pink Elephants on Parade ◆Pw26BhHaeg :2018/05/13(日) 00:24:33 1eGu1nUI0
夜。ネオン煌めく、見滝原の歓楽街。その片隅の路地裏。派手な格好をした美女がため息を吐いている。
警察帽にピンクの長髪、豊満なバストとヒップ、露出度の高い服装にハイヒール。目鼻立ちは日本人ではなさそうだ。

「はぁ……またまた、とんでもないことに巻き込まれちまったみたいね……」

彼女はたった今記憶を取り戻し、現状を把握したところだ。道で拾ったこの宝石に、こんな大それた力があったとは。

ジャパン。いい国だ。カネはあるし治安は良い。自分みたいなワルには、ちと退屈だが。
いつの間にやら、自分はアメリカからここジャパンのミタキハラって街に来て働いてたらしい。
そういう記憶を刷り込まれている。日本語もペラペラになってる。どういうことなのか。

「ヒューゴーの奴もいないみたいだし……ま、あたし一人でもないらしいけど」

しかもだ。これから始まるのは、格闘大会でもなければロックコンサートでもない。聖杯戦争とかいう殺し合い。
集められた連中に英霊、サーヴァントって手駒が割り当てられ、そいつと協力して戦うのだという。
で、そいつらを七匹倒せば……万能の願望器『聖杯』がひとつ出来る。でも、それだけでは帰れない。
ってことは、聖杯に帰還を願うことになるが……なんだか勿体無い話だ。二つ作れば、一つは持ち帰れるのだろうか。
折角なので貰えるものは貰いたいし、夢がないではないが、なんでも叶うとなると迷ってしまう。

「サーヴァント、ねぇ……あたしは、そいつがうまく戦えるよう仕向けるのが仕事ってことかァ。
 結局やることは、マネージャーみたいなもんね。ガチの殺し合いってのが引っかかるけど」

肩を竦め、眉根を寄せる。爪をかじる。サーヴァントの能力は人間では太刀打ち出来ないレベル。
しかしマスターを殺せば、大概のサーヴァントは消えるらしい。狙うならそっちだろう。
殺しはあまり好きではないが、殺さねば帰れないなら仕方ない。言ってはなんだが、やるのは自分の手下だ。
この、手の甲に刻まれた『令呪』を使えば、三回までは命令に従わせたり、強化したり出来る。切り札の使い所も見極めねば。

では早速、自分のサーヴァントを喚び出してみようではないか。出て来た奴によって作戦も変わってくるだろう。

「強くて、従順な奴がいいねえ。いかつい武人とか、イケメンとか。
 美女や美少女や美少年が出てきちゃったら、フフ、どうしてやろうかねぇ」


676 : Pink Elephants on Parade ◆Pw26BhHaeg :2018/05/13(日) 00:26:29 1eGu1nUI0
掌に乗せたソウルジェムを頭上のネオン看板に翳し、苦笑する。と―――それは光り輝き、虚空に金色の粒子が凝集する。
「お……来たね」
魔術師でもなければ魔法少女なんて柄でもないが、彼女の目は好奇心に輝く。
ともかく、自分のこれからの相棒だ。ビッといかせてもらおう。

「………!?」

彼女の目は驚愕に見開かれる。現れたサーヴァントは、3メートル近い巨漢! あのヒューゴーよりも大きい!
そればかりではない! 筋骨隆々の巨漢が身に纏うのは、毛皮! 顔の上半分はその毛皮で隠れている!
そこから伸びるのは―――! その姿を見た時、彼女はこう叫ばざるを得なかった!

「ゲ――――ッ 象のサーヴァント…………」

巨漢は両腕を振り上げ、長い鼻と大きな牙を天高く伸ばす!

「パオオ――――ッ! オレを喚び出すとはなあーっ!
 オレは『ランサー(槍兵)』のサーヴァント! 真名は『マンモスマン』だ――――っ!!」



目の前には、ピンク色の髪をした女。感じ取れる魔力は弱いが、オレを召喚した以上はマスターということになる。
魔術師でも超人でもない、普通の人間の女だ。見るからに水商売系で、そこそこ鍛えており、カタギとはいい難いものの。
ただ……何か、こういうことに「慣れている」感じがある。やはり只者ではないのか。

女はしばらく唖然としていたが、気を取り直して名乗った。
「あーっと……あたしは『ポイズン』よ。よろしく、ランサー。……バーサーカー(狂戦士)じゃないのね?」
「その適性もあるようだがな。この牙と鼻が宝具として、『槍』にあたるとみなされたようだ」

差し出された手を握る。強くなるため熊(ベア)の毛皮を被った戦士がバーサーカーの語源だそうだが、オレの毛皮は自前だ。
そしてオレの宝具というなら、確かにこの牙と鼻だ。英霊化し、宝具化したことで、生前よりパワーアップしている気もする。


677 : Pink Elephants on Parade ◆Pw26BhHaeg :2018/05/13(日) 00:28:38 1eGu1nUI0
「まずは聞いておこうか、マスター。おまえは聖杯に何を望む?」

マスター・ポイズンは顎に手をやり、小首をかしげながら答える。
「……帰還? かな。聖杯がなんでも叶えてくれるんなら、そう願えばいいんだろ?」
「欲のないことだな。聖杯を複数作れば、持って帰ることも出来るだろうさ」
「つってもさ、一つ作るのにサーヴァントっていうのを七匹狩らなきゃだろ? 二つで十四。そんなに行けるかねえ、と思ってて」
「フフ……運が良かったな、オレになら可能だ。超人だか英霊だか知らんが、何人でも来るがいい!」

マスターは怪訝な顔をしている。どうもこのオレのことを知らんらしい。まあ1980年台より随分未来のようだし、仕方あるまい。
「確かに強そうだけど、随分な自信だねえ。……あんたには、望みとかないのかい」
「ないな。現世でやることは大体終わった。悔いはない。超人だから、何者かが生き返らせてくれることもあろうが……」
「生き返る? いや、だから何なのさ、超人って。英霊じゃないのかい」
「超人は超人だ。人間の力を超えた者だ。おまえの国にはいないのか?」
「? スーパーマンとかスパイダーマンとかなら、いるのかも知れないけどさあ。フィクションでしょ?」

超人がいない。オレとは違う世界の住人か。その方が人類にとってはマシかも知れん。
「生憎、オレはフィクションじゃないぜ。ま、安心しろ。おまえが死ねばオレも消えちまうんだ。
 令呪もあることだし、守ってやろう。……酷い扱いを受ければ裏切るかも知れんがな」

軽い脅しに、女が青くなる。
「ちょちょちょ、あんたに抜けられちゃ、あたしは死んじゃうよ。あんたみたいのがゴロゴロいるんだろ。
 それにパワーでなんとかなりゃいいけど、魔術師ってのもいるらしいし。仲間がいた方がいいんじゃない?」
「ウーム、それもそうだな。暴力だけではなく、知性を使わねばならん。
 では、弱くて油断していそうな主従を見つけたら、奇襲を仕掛けよう。不意打ちで殺して聖杯の糧にする」
「いきなり卑劣だねえ。どうせ生き残らなきゃいけないし、卑怯だの卑劣だの言ってられないか……」


678 : Pink Elephants on Parade ◆Pw26BhHaeg :2018/05/13(日) 00:30:40 1eGu1nUI0
PRRRRRR……女の腰ポケットから音。板のようなものを取り出し、話し始めた。
「……あー、ごめんごめん。今戻るよ。……じゃランサー、話は後でね」
「何だそれは。電話か?」
「スマホよ。知らないの? ……ああ、昔の英雄なんだっけ。まあ、電話ね」



ポイズンには夜の仕事があり、本戦はまだ始まらない。
とりあえずランサーには霊体化し、偵察してもらう。情報収集も大切だ。ついでに現代社会にも慣れてもらおう。

「ロキシー、ただいま」
「どこ行ってたのよォ、もうお客さん来てるよ」
「悪い悪い、ちょっとね。じゃ、始めよっか!」

ポイズンはギターをチューニングし、ロキシーと共にステージへ向かう。ここは彼女たちのライブハウス「POISON&ROXY」だ。

妹・ロキシーは、自分がいた世界の本人ではない。この客たちも、この街の連中も。いずれ帰れば、別れねばならない。
たとえこの世界のロキシーが死んでも、元の世界に帰れば、ロキシーはピンピンしてるはずだ。
だが……彼女を死なせたくはない。悪党ばかりの中で過ごしてきて、死人は見慣れているにしても。
割り切れるものではない。こっちでの人生も、案外愉しいのだから。

タフに笑う。いいだろう、戦ってやろう。帰るために、生きるために、守るために、勝利のために。
負ければおしまいのデス・ゲームだ。戦って、勝つ!

「さぁ、派手にいくよ!」


679 : Pink Elephants on Parade ◆Pw26BhHaeg :2018/05/13(日) 00:32:35 1eGu1nUI0
【クラス】
ランサー

【真名】
マンモスマン@キン肉マン

【パラメーター】
筋力A+ 耐久A+ 敏捷C 魔力D 幸運C 宝具C

【属性】
混沌・中庸

【クラス別スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

【保有スキル】
超人:A
人間の能力を超えた半神的存在。人の身では絶対に不可能なランクの筋力と耐久に到達している。
マンモスから超人に突然変異した生粋の怪物。蛍石や鉄鉱石を食らうことでその性質を吸収するなど奇妙な能力を持つ。

戦闘続行:A
戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
「往生際の悪さ」あるいは「生還能力」と表現される。もとのタフネスも高いのでかなり厄介。

反骨の相:B
一つの場所に留まらず、また一つの主君を抱かぬ気性。自らは王の器ではなく、自らの王を見つける事ができない流浪の星。
同ランクまでのカリスマを無効化する。酷い扱いを受けると呂布めいて裏切ることが多々あるが、基本的には忠義者のはず。
悪役ゆえ仕方ないものの、『Ⅱ世』でのアレは不死鳥乱心波にでもかかってたのかな……。


680 : Pink Elephants on Parade ◆Pw26BhHaeg :2018/05/13(日) 00:34:35 1eGu1nUI0
【宝具】
『血を啜る暴獣の大牙(ビッグ・タスク)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-10 最大捕捉:2

顔の横から伸びる二本の巨大な牙。伸縮自在で触手のように動き、獲物を刺し貫く。
ドリルのように回転させることで破壊力を増し、リングの一角をコーナーポストごと抉り取る威力を誇り、バッファローマンすら恐怖させた。
枝分かれさせて相手を捕らえ(ブランチ・タスク)、板状のものを牙に刺して扇ぎ突風を起こすことも可能。
この牙はランサー自身が相手を感知していなくても、新鮮な血液や汗に反応して自動的に襲いかかり、養分を吸い取ろうとする。
しかし傷を負ったり返り血を浴びたりすれば、自分自身が攻撃されてしまうという面倒な弱点を持つ(割と判定はガバガバ)。
現在は宝具化しているため意のままに動かせ、自分を攻撃することはない。

『吹雪呼ぶ暴獣の長鼻(パワフル・ノーズ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-10 最大捕捉:10

牙の間に生える長い鼻。超人を軽く投げ飛ばすパワーを持ち、刺し貫いたり巻き付けたり打ち叩いたりして攻撃する。
また鼻を振り回すことで吹雪を起こし(ノーズ・フリージング)、捕まえた相手を振り回して氷漬けにしたりも出来る(アイス・ロック・ジャイロ)。
英霊化したせいか威力はさらに上がっている。なお「鼻先を本につけるとその知識を吸収出来る」という特技がある(本の方も特殊だったが)。

【Weapon】
己の肉体と二種の宝具。また被っている毛皮から巨大な耳を出して攻撃・滑空に利用する。
相手の首をキャンバスにめり込ませた上でねじ切る「ゴーストキャンバス」、
放り投げた相手をアルゼンチンバックブリーカーで捕らえる「マッキンリー雪崩落とし」などの技も用いる。


681 : Pink Elephants on Parade ◆Pw26BhHaeg :2018/05/13(日) 00:36:43 1eGu1nUI0
【人物背景】
ゆでたまごの漫画『キン肉マン』シリーズに登場する超人。CV:佐藤正治。マンモスから突然変異したシベリア出身の古代超人だが、
氷河時代に一族諸共アラスカの永久凍土に閉じ込められ、一万年の眠りから目覚めた男。
身長279cm・体重400kgの巨漢で、筋骨隆々の肉体にマンモスの頭部のような毛皮を被り、ベルト付きパンツ、交叉鎖、手甲を身に着ける。
膝から下はマンモスのもの(長靴?)。超人強度は7800万パワーと非常に高く、圧倒的な戦闘能力を誇る。精神面が弱点。

「王位争奪編」でキン肉マンスーパー・フェニックス率いる「知性チーム」のメンバーとして登場。
強力チーム戦では怒涛の三人抜き&余裕の引き分け。残虐チーム戦ではバッファローマンと激闘を繰り広げるがKOされる。
しかしこれは策略であり、隙を突いて「超人予言書」のページを奪い焼却、残虐チームの大将を死に至らしめることに成功した。
さらに決勝前にはウォーズマンを闇討ちしてマスクを破壊、戦闘不能に追い込む。

決勝戦では3対3の戦いでロビンマスクと戦うも、ロビンの作戦により自分の予言書が燃えてピンチに陥ったことで自軍の大将に見放され離反。
どちらにもつくことなくロビンと死闘を繰り広げ、KOされるも、ロビンは自らの予言書を燃やしてまで技をかけることを躊躇わず消滅。
マンモスマンも真剣勝負の素晴らしさと友情に魅せられ、涙を流しながら満足そうに消滅した(毛皮と鎖を残して)。
原作ではそのままだが、アニメではキン肉マンのフェイスフラッシュで他の超人ともども復活している。
悪魔将軍、スーパー・フェニックスと並ぶ三大悪行超人として語り継がれ、続編『キン肉マンⅡ世』にも登場するが……………ウメーウメー

どこからどう見てもバーサーカーだがランサー。イヴァン雷帝とはたぶん無関係。

【サーヴァントとしての願い】
なし。全力で戦うことが望み。

【方針】
辻斬り。街中に身を潜めて様子を探り、油断している主従を不意打ちで襲う。真剣勝負出来る相手は歓迎する。
自分が消滅してしまわないようマスターは守る。

【把握手段】
原作の「王位争奪編」(単行本24-36巻、文庫版12-18巻)。可能ならTVアニメ版も。
『Ⅱ世』第二部「究極の超人タッグ編」でのあれこれはなかったことになっているような気がするが、参考にしてもよい。
公式web小説『ディープオブマッスル!!』にはマンモスマンのエピソードもある。


682 : Pink Elephants on Parade ◆Pw26BhHaeg :2018/05/13(日) 00:38:36 1eGu1nUI0
【マスター】
ポイズン@ファイナルファイトシリーズ

【Weapon・能力・技能】
『喧嘩殺法』
ストリートで身につけた我流戦法。アクロバチックな動きをし、格闘のプロ相手にも戦えるが、英霊相手にはどうにもならない。

『馬上鞭』
振ると衝撃波が出たりする。

『手錠』
相手を拘束したり、これで殴ったり、投擲したりする。

『投げキッス』
ポイズンキス、ハニートラップとも。相手を魅了する。

【人物背景】
対戦格闘ゲーム『ファイナルファイト』シリーズなどに登場する人物。CVは田中敦子(『ウル4』など)ほか。
身長175cm・体重52kg、スリーサイズは88・66・89→91・60・89。好物はフライドポテト、嫌いなものは警察。
ピンク色のロングヘアに警察帽を被り、露出度の高いパンクファッションでキメたホットなベイブ。長身で筋肉質。
アメリカ・ロサンゼルスの孤児院出身で、ロキシーという妹(妹分)がおり、共にメトロシティの犯罪集団「マッドギア」の構成員になった。
マッドギア壊滅後は、同じく構成員だった巨漢ヒューゴー(アンドレ)のプロレスラー転向を聞きつけ、彼のマネージャーとなる。
サバサバした男勝りの姉御肌で、頭の鈍いヒューゴーをよく補佐し、要領よくテキパキと物事を進め、世界を股にかけて活動中。

初代『ファイナルファイト』で雑魚敵として登場したが、『ファイナルファイト リベンジ』でプレイアブルキャラに昇格。
『ストIII』シリーズと『SNK VS. CAPCOM SVC CHAOS』ではヒューゴーに随伴するサブキャラクターとして登場するが、
『ストリートファイター X 鉄拳』と『ウルトラストリートファイターIV』ではプレイアブルキャラ。
性別については女性ともニューハーフとも言われ、性的な意味で注目を集めている。

【ロール】
歓楽街でSMクラブの女王様兼ロックミュージシャンとして働くアメリカ人。性別は不明。
ライブハウス「POISON&ROXY」を借りており、妹ロキシー(NPC)と二人暮らし。

【マスターとしての願い】
生き残りたい。出来れば聖杯を持ち帰りたい。

【方針】
戦いは基本的に任せるが、足手まといにならないよう手助けはする。ロキシーが別人だとは理解しているが、死なれるのも嫌なので守る。

【把握手段・参戦時期】
参戦時期は『ウルトラストリートファイターIV』の頃。


683 : ◆Pw26BhHaeg :2018/05/13(日) 00:40:39 1eGu1nUI0
投下終了です。


684 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/13(日) 23:47:30 OLx/iol20
投下させていただきます


685 : 孤独な森のメロディー ◆xn2vs62Y1I :2018/05/13(日) 23:48:16 OLx/iol20
ああ、なんという美しき町。
日本とは思えない、ヨーロッパ基調が随所に散りばめられた、芸術性すら感じられる見滝原。
まもなくここが戦場となって、血肉と硝煙が漂うとは想像できない。

『音』が響いていた。

穏やかに流れる『時』と聖杯戦争の舞台として用意された『空間』……これらの支配をすり抜けて
音だけは、町のどこからか聞こえる。
美しさと感情を混入させた、人々を感動させるありふれた音色じゃない。

誰かに対して
この『世界』のどこかに居るであろうヒトに対して音は響き続けていた。
音は誰に聞こえるだろうか。

マスターか、サーヴァントにか。
悪か、畜生にか。救いようのない者に、あるいは救われてはならない者に対して。
悪魔へ、それとも魔女に?
もしかして、全てに対してなのかもしれない。

音を聞いた者は、抗う前に何かを感じる。
独りの魔法少女が優れた聴覚をもって『音』を耳にし、僅かな時も経たない間に、静かな涙を一筋流した。







「聖杯戦争――とても素晴らしいです」


幻想に登場するエルフのような容姿の魔法少女が、まるで言い聞かせるかのように独り呟く。
彼女の手は、もうすでに。
戦争などに導かれる前から血にまみれ、彼女の気品ある服ですら血みどろになった事もあった。
夢と希望に満ち溢れた幼い少女が描く正義と善良な魔法少女と異なり。
死線と絶望に満ち溢れた戦場でほくそ笑むのが、彼女――森の音楽家クラムベリーだった。

強者との殺し合い。
正々堂々たる闘争を愛しやまない、救いようのない戦闘狂。
彼女がどうしようもなく。彼女に闘争を制す事のできなかった世界。
クラムベリーは、魔法少女たちを殺し合わせた、魔法少女たちと殺し合い続けた。
そして、彼女のように魔法少女たちは――狂っていった。

聖杯戦争は、クラムベリーの知らぬ未知の戦争であったが根本は同じ。することも、為す事も同じ。
殺し合い。殺し合わせ。
強者を討ち滅ぼし、勝利する。強者だけが生き残る。
まさに真理だ。


「ですから私が願うのは一つ。あなたと殺し合う事です」


ホウ、と老いた槍兵が言う。


「わしとの殺し合いを望むか」


「ええ。望みますとも。あなたであれば尚更です。ランサー『李書文』」


八極拳を始めとする伝説を産み出した武術家。
クラムベリーが最も欲する肉弾戦のプロであり英霊たる彼、李書文と合い見えるなど夢ではないか。
魔法少女のスペックで、かつての武術を極めし者に挑めるなど、果たして普通に叶えられるのか。
でもまあ。クラムベリーも冷静に


「それは最後まで取っておくとしましょう」


聖杯戦争に導かれし強敵は、確実にいる事だろう。
マスターであれサーヴァントであれ。
対して李書文は


「今のわしでは拳で本気を出せんが、それでも良いのならば構わんぞ。マスター」


ただ答えた。
ランサーである以上、槍の方が優れているが、それを望まぬならそうしよう。
彼はきっと誰よりもマスターを理解していた。
この町に訪れたクラムベリーが、あの音を聞いて涙を流した時から――


686 : 孤独な森のメロディー ◆xn2vs62Y1I :2018/05/13(日) 23:49:01 OLx/iol20
【クラス】
ランサー

【真名】
李書文@帝都聖杯奇譚

【属性】
中立・悪


【ステータス】
筋力:C 耐久:D 敏捷:A 魔力:E 幸運:D 宝具:-


【クラススキル】
対魔力:D
 魔術に対する抵抗力。
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。


【保有スキル】
中国武術(六合大槍):A+++
 中華の合理。宇宙と一体になる事を目的とした武術をどれほど極めたかの値。
 修得の難易度は最高レベルで、他のスキルと違い、Aでようやく“修得した”と言えるレベル。
 +++ともなれば達人の中の達人。
 ランサーとして召喚されているが、槍術含めて八極拳を極めている。

絶招:B
 李書文が学んだ八極拳の秘奥。対人における、一つの究極。

圏境:B
 気を使い、周囲の状況を感知し、また、自らの存在を消失させる技法。
 ランサーとして召喚された為、気配遮断ほどには到達していない。



【宝具】
『神槍无二打(しんそうにのうちいらず)』
ランク:- 種別:対人宝具 レンジ:2〜5 最大補足:1人
 宝具として昇華されるまでに極まった術技。
 効果はアサシン召喚時の「无二打」と同じだが、槍を持つ分レンジが幅広い。


『猛虎硬爬山(もうここうはざん)』
ランク:- 種別:対門宝具 レンジ:1 最大補足:1人
 神槍・李書文の切り札。八極拳の奥義であり厳密には彼のオリジナルではないが、
 生涯を通じ頼りとした必殺の套路。李書文が最も得意だったとされる絶招。
 天地すなわち八極と一体化した状態から放たれる大地そのものともいえる一撃。
 ランサーでありながら無手による奥の手を持つという初見殺しの宝具でもある。


【weapon】
六合大槍
 ぶっちゃけ槍じゃない方が強かったりするけど、突っ込んだら負け


【人物背景】
八極拳の使い手として『神槍』と呼ばれる槍技を究めた者として、数多の伝説を生んだ武術家。
本来サーヴァントは全盛期の姿で召喚されるが、彼は二度、全盛期が訪れた稀にみる存在。
今回は武術の全盛期とされる老いた姿。
青年時代と比べて大人しいが、根本は変わっていない。


【サーヴァントとしての願い】
マスターの望みに答える





【マスター】
森の音楽家クラムベリー@魔法少女育成計画


【マスターとしての願い】
強者との闘争
最後は李書文と殺し合う


【能力・技能】
音を自由自在に操ることができるよ
 自分が認識する範囲の音を想い通りに奏でられる。
 また聴力が優れており、僅かな、些細な音も聞き逃さない。
 音による衝撃波で攻撃する事も可能だが、本人の戦闘スタイル上、あまり使用しない。


【人物背景】
闘争に全てを狂わされた魔法少女。
そして、彼女の闘争によって多くの魔法少女が狂わされた。
彼女は『ひとりきり』だが、殺し合っている間だけは『ひとりきり』ではない。


687 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/13(日) 23:49:59 OLx/iol20
投下終了します


688 : ◆dt6u.08amg :2018/05/14(月) 14:48:18 gb14RZPI0
投下します


689 : 天人閑居して不善をなす ◆dt6u.08amg :2018/05/14(月) 14:49:05 gb14RZPI0
「素材が美味しかったわ」

店員や他の客達の注目を浴びながら、青い髪の少女がファミリーレストランを後にする。
少女の佇まいは、頭の先から足の先までくまなく浮世離れしていた。

腰に掛かるほどに長く鮮やかな青い髪。
髪の上に鎮座する帽子には本物の桃の果実が飾られていた。
幾重ものフリルで装飾されたスカートは空の青を映したようで、虹色の飾り紐で彩られている。

浮世離れした服装であるにも関わらず、それらの全てが調和していた。
コスプレなどとは明らかに違う。明らかに自然な着こなしだ。

「あー、それって味付けは不満だったってことか?」
「そんなことはないわ。真っ先に印象に残ったのがそこだっただけよ」

青い髪の少女――セイバーのサーヴァントは上機嫌にマスターの前を歩いている。
セイバーのマスターは赤茶けた短髪の少年、いや、青年に片足を踏み入れた若い男だ。

「さてと、次はどこに行こうかしら」
「ちょっと待て、比那名居。まだ食べ歩くつもりか?」
「軍資金は私のスキルで集まってるんだから文句ないでしょ」
「そうじゃなくてだな……」

マスターの男はセイバーの姿をまじまじと眺めてから、決定的な一言を口にした。

「目立ちすぎだろ。いくらなんでも。変なウワサにでもなったらどうするんだ」
「あんた、仮にも聖杯戦争を勝ち残った人間なんでしょう。もっと堂々と構えなさい、衛宮士郎。私という大当たりを引き当てたのだから!」

そう言ってセイバーは心の底からの自身に満ち溢れた顔で笑った。

セイバーのサーヴァント、比那名居天子。
人間から天界に召し上げられた一族の総領娘。
素行不良なれど霊格は人の粋を超え、元人間であるという一点をもって辛うじてサーヴァントの枠に収まっていると言っても過言ではない。

セイバーのマスター、衛宮士郎。
冬木における第五次聖杯戦争の最終的勝者。
かつてセイバーのサーヴァントと共に戦い、最強の敵を下して最後の一組となるも、聖杯を用いることを良しとせず破壊した魔術使い。

まるで馬が合わないであろう一人と一騎は、それでもお互いをパートナーとして戦うことに一応の同意を結んでいた。

「ところで、私のことはセイバーって呼ぶべきじゃない? サーヴァントってそういうものなんでしょう」
「悪いけどそれは駄目だ。俺にとってセイバーは一人だけなんだ」

真っ直ぐな目でそう言い返されて、セイバー――比那名居天子は面食らったように目を丸くした。
そして、これ以上の問答も要請も衛宮士郎という男の判断を覆せないと悟ったのか、あっさりと要求を撤回する。

「じゃあそれで妥協しましょ。ただし次のお店にも付き合ってもらうから」
「はいはい。今の時代の料理が食べたいってだけなら、言ってくれたら作ってやるのに」
「えっ、見た目によらずそんな技能が?」

天子は驚いた様子で振り返った。

「見た目によらずってどういう意味さ」
「そういうことなら腕を振るってもらわないわけにはいかないね。まぁ今は次のお店だけど!」

勝手に納得しながら歩き出す天子。
士郎は仕方なさそうにその後をついて行きながら、聖杯戦争に関する話を進めようとした。

「比那名居。最初にも言ったけど、俺は聖杯を手に入れる気も使うつもりもないぞ」
「聖杯を悪用するような奴には渡さない、でしょう? 鉄心石腸の心意気は結構だけど、身の程はわきまえた方が長生きできるよ。まぁ退屈はしなさそうだからいいけど」
「退屈……ね。比那名居が戦う理由は本当にそれだけなのか?」
「もちろん!」

それは紛れもなく心の底からの返答だった。

「だってどう考えても、喧嘩を売ったり売られたりしまくるに決まってる方針じゃない。最高の退屈しのぎだわ」
「小人閑居して何とやらってことわざもあったよな」
「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや。満ち足りることのない下界の民には、真の意味で足るを知る天人の考えを理解できないものなのです」

天人の中でも多分こいつが例外的に無茶苦茶なだけなんだろうな、と士郎は察したが、あえて言葉にはしなかった。
そしてそれと同時に、このサーヴァントが聖杯を手に入れたら絶対にろくでもないことになるな、という確信を抱いたのだった。


690 : 天人閑居して不善をなす ◆dt6u.08amg :2018/05/14(月) 14:51:10 gb14RZPI0
【CLASS】セイバー
【真名】比那名居天子
【出典】東方Project
【性別】女
【属性】秩序・悪
【パラメータ】筋力B 耐久A+ 敏捷B 魔力A 幸運A+ 宝具A

【クラス別スキル】
対魔力:A+
 A以下の魔術は全てキャンセル。
 パラメータ低下に対する耐性も強く、特に幸運は決して低下しない。

騎乗:C
 騎乗の才能。野獣ランクの獣は乗りこなせない。
 ちなみに自前の要石は異様に上手く乗りこなせる。

【固有スキル】
神性:A
 天界に住まう元人間の天人。
 死神を返り討ちにして寿命による死を回避するという天人の習性から、
 この神性は即死効果に対する一定の耐性として機能する。

黄金律:C
 身体の黄金比ではなく、人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。
 裕福な過程に生まれ育ち、貧乏神と行動を共にしても金銭に困ることがない。

仙桃:A
 天界において天人が主食とする仙果。
 身体能力を強化する効果があり、物理ダメージに対する耐性を高める。
 これを常食し続けたことで、セイバーの肉体は生半可な物理攻撃を通さなくなった。

大地を操る程度の能力:EX
 地震、地盤沈下、土砂崩れなど大地に関わる自然現象を操る。
 有効範囲は狭いとされるが、小都市程度なら全域を対象に含められる様子。

【宝具】
『天空の霊石(かなめいし)』
ランク:A 種別:対地宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
 要石。地面に挿すことで地震の発生を抑制する宝具。
 大地の歪みは消滅せず、除去すると蓄積したエネルギーが解放されて大地震が発生する。
 セイバーは自力で大地を操れるためか、この宝具を補助的にしか用いない。
 主な用途は高ランクの物理的オブジェクトとしての活用。
 直接打撃、足場としての利用、攻撃を防ぐ障壁、魔力攻撃の発動起点など多岐に渡る。
 ――そもそも天界と呼ばれる異界の大地は、宙に浮かぶ巨大な要石であるという。
 かつてこれが大地を離れた際には、歪みの解放によって地上の生物が死に絶えたと伝えられる。

『緋想の剣(ひそうのつるぎ)』
ランク:A 種別:対人・対天宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
 気質、すなわち万物に宿る「気」を見極める力を持つ剣。
 斬られた気質は緋色の霧となり、天候を気質に応じたものに変化させる。
 そしてこの宝具は対象の弱点となる気質を纏い、いかなる相手に対しても必ず弱点を突けるようになる。
 また「気」を集めて攻撃手段に転用することも可能。
 気弾やレーザー状の放射といった基本技のみならず、超高速・超高密度の気弾の集合体を放つ最終奥義を繰り出すこともできる。

【weapon】
『要石』
 地震の発生を抑制する霊石。比那名居一族のみが触れることができる。
 原作において本来の用途で使われたことはあまりなく、乗って移動したり発射してぶつけたりファンネルみたいに遠隔制御して魔力弾を撃ちまくったりと、もはや何が何だか分からない。
 しかも様々なサイズの要石が多数存在し、比較的小さいものを何十と同時に放つ攻撃も披露している。
 ちなみに、一族以外に触れられない理由は「すり抜けてしまうから」とのことだが、武器として使用した場合は普通にヒットする。理不尽。

『緋想の剣』
 気質を見極める程度の能力を持つ宝具。刀身は炎のようにゆらめく不定形。
 天界の宝物を勝手に持ち出してきたのだが、未だに没収されている様子がない。
 つまみ食いを咎められて地上へ追い払われたときも普通に持ってきていた。もはや完全に私物化されている。
 公式設定によると、
 「この剣はまず相手の気質を霧に変え、誰の目にも見えるような形に変える。
  そして、その気質の弱点である性質を纏う。
  緋想の剣が見せる気質の形とは、天気の事である。
  緋想の剣で斬られた気質は緋色の霧となり、天気を変えるのである。」
 とのこと。
 大地を操るのは本人と要石の能力だが、何故か剣を突き立てることで地面を隆起させる攻撃技がある。ただ格好つけてるだけかもしれない。

 ゲーム中で出現する気候は以下の通り。ストーリーモードではキャラごとに固定だがゲーム的な効果のない演出で、対戦モードではランダム発生だが対戦に影響を与える効果を持つ。
 「快晴」「霧雨」「曇天」「蒼天」「雹」「花雲」「濃霧」「雪」「天気雨」「疎雨」「風雨」「台風」「極光」「凪」「ダイヤモンドダスト」「黄砂」「烈日」「梅雨」「川霧」「春嵐」
 これらに加え、ストーリーモードの演出のみの天候として「緋想天」がある。


691 : 天人閑居して不善をなす ◆dt6u.08amg :2018/05/14(月) 14:51:25 gb14RZPI0
【人物背景】
ひななゐてんし。ひなないでもてんこでもない。天人くずれ。不良天人。
元人間の天人。ただし本人に能力や功績があったわけではない。
一族が仕えていた神官が神に昇格したついでに、一族もろとも天人にされた。
なお、本人は生粋の天人であると事実に反したことを口にしている。

超がつくほど自分勝手なワガママ娘。他人の迷惑を顧みないこと甚だしい。
しかし教育の賜物か頭自体は良いようで、知恵も働き猫をかぶったり目的のために負けを装ったりすることも。
天人らしい上から目線で他人に忠言したりもするが、大抵は本人も実行できていない内容ばかり。
しかも自分のことを棚に上げている自覚はあり、その上で平然と言い放っている。
そのくせ天人としての能力は本物で、刃物の刺さらない肉体や貧乏神の力が通じない天賦の幸運を持ち、大地を大気圏まで隆起させることすらできる。

根本的に愉快犯。初登場作では、自分を倒しに来た人妖と戦って暇潰しをするためだけに地上に混乱を巻き起こした。
しかも異変解決の役割を持つ主人公を確実に動かすために、主人公の住居である神社を破壊するという徹底ぶり。
この神社はシリーズの舞台である幻想郷を維持するにあたって重要な施設でもあり、罰として再建させられた際に身勝手な仕込みをしたことも重なって、幻想郷の管理者をキレさせた。

【聖杯にかける願い】
基本的に聖杯戦争で暇潰しするのが目的だが、もし手に入ったら面白そうなことに使う。
(その場合は絶対にろくなことにはならない)




【マスター名】衛宮士郎
【出展】Fate/stay night
【性別】男

【能力・技能】
原作通りの投影魔術使い。
Fateルート終了後なので固有結界の展開は不可。アヴァロンの投影も不可。
それ以外はUBWルートくらいにはあれこれできるんじゃないかな?的な想定。

【人物背景】
説明不要の原作主人公。Fateルート終了後。

【聖杯にかける願い】
当然なし。

【方針】
正義の味方として二度目の聖杯戦争を戦う。


692 : ◆dt6u.08amg :2018/05/14(月) 14:51:42 gb14RZPI0
投下終了です


693 : ◆dt6u.08amg :2018/05/14(月) 14:52:48 gb14RZPI0
スキルのところに一つ誤字が

✕裕福な過程に生まれ育ち
○裕福な家庭に生まれ育ち


694 : ◆EPxXVXQTnA :2018/05/16(水) 02:19:26 .yDsL/RM0
投下します


695 : 無銘の男たち ◆EPxXVXQTnA :2018/05/16(水) 02:20:52 .yDsL/RM0

 君たちは中沢という人物を知っているだろうか?
 中沢とは、一般的な日本人の姓であるが、ここでは、魔法少女まどか☆マギカの登場人物である『中沢』少年の事を示す。
 『魔法少女まどか☆マギカ』とは、日本のアニメを嗜む人物なら一度は目にしたことのあるであろう傑作作品であり、魔法少女の悲劇とその運命に立ち向かう女の子たちの物語を描いた魔法少女アニメである。

 今日のパロロワ系のみならず、様々な二次創作が製作され、聖杯企画にも引っ張り凧なまさに名作中の名作である『魔法少女まどか☆マギカ』であるが、
本作には主要人物の他にカルト的な人気を誇るキャラクターが複数存在する。

 例えば、電車でゲスな会話を行い美樹さやかが魔女化する後押しをしたと言えなくもないホストの『ショウさん』。
 彼は短い登場シーンであるにも関わらず、屑全開な会話が印象に残るのか一部ではかなりの人気を誇る。
 ……といった風に、必ずしも主要人物でなくても人気を得てしまうキャラクターは存在するのだ。

 ここまで言えば察するだろうが、今回の主題はそのショウさんと同系統の人物である中沢少年である。
 さて肝心の本編での中沢少年についてだが、何と彼はショウさんと異なりアニメ第1話から登場する古参である。
 第1話で中沢少年は、担任の早乙女先生が破局した恋人の愚痴を授業中話した際に、「目玉焼きは半熟か固焼きか」という質問に対し、「どっちでもいいんじゃないかと…」と答えている。
 これは先生の元彼氏が半熟にこだわっていたことに関する質問であり、結果的に中沢君の回答は質問者の早乙女先生を満足させているので概ね正解である。
 ドラマCD第1巻によれば違う時間軸においても似たようなやりとりをしていた事から、中沢少年は相手の質問の意図(ただ同意が欲しかっただけ)を見抜く的確な観察眼があることが予想できる。
 また次の登場話である第7話では、退院し、松葉杖を突きながら登校した上条恭介に「もう怪我はいいのかよ」と声をかけ、肩を貸してあげる人間の鏡っぷりを疲労している。

 以上。これが中沢少年の全てである。

 以下はそんな『モブ』である筈の中沢少年が、奇特にも聖杯戦争なる非日常に巻き込まれる物語の、その序章である。


696 : 無銘の男たち ◆EPxXVXQTnA :2018/05/16(水) 02:22:55 .yDsL/RM0


 深夜。中沢少年は自室で途方にくれたようにベットに寝転がっていた。
 漠然とした視線の先には、両手で掲げるように持ち上げられた宝石ーーソウルジャムが掲げられている。
 彼の非日常は、つい先日、この綺麗な宝石を帰路で発見したことから始まってしまった。


「マスター、決心はついたのか?」

「聖杯、かぁ……正直、願い事なんてないからどっちでも良いんだよなぁ」

「マスター。そういった発言は控えた方が良い。オレ『たち』なら兎も角、他のマスターは良い顔はしないだろう」

 無表情で諌めるアサシンに、中沢少年は困ったような顔で返答する。
 別に聖杯は欲しくない。召喚当初、そう馬鹿正直に伝えられたアサシンは、特に反応を示すことなく中沢少年に従っていた。
 その時点で願いをもつ大半のサーヴァントは中沢に見切りをつけるだろうが、
 アサシン自体が特に聖杯に対して強い願いを持たない奇特なサーヴァントであった事と、律儀に契約を守るタイプだった事が中沢にとって幸運だった。

 ただ一点、アサシンは無理強いをしないが、覚悟はしておけ、とだけ忠告してきた。
 彼らの目から見ても、この聖杯戦争はどこか異質さを感じる。
 それにこれは曲がりなしにも聖杯『戦争』、巻き込まれただけの一般人であるにしても、中沢少年はマスターとなった以上、争いから遠ざかるのは不可能だ。
 そういう点は、非日常とは全く関わりのなかった中沢少年も薄々察してはいた。
 しかし……

「そう言われてもなぁ……俺にとっては聖杯戦争なんて寝耳に水なんだよ。
マスター?ってのに成れたのだって、帰り道でこの宝石を拾っちゃったからってだけだし」

 それでも、ただの男子学生である彼がそう簡単に『覚悟』できるわけがない。
 こうしてアサシンと話している事すらも、単なる悪い夢なんじゃないかとすら思ってる。
 魔法少女の存在どころかその騒動と一切の関わりがなかった彼には、聖杯戦争の現実感が持てないのだ。

「そうか、それならそれでいい。オレ『たち』は依頼通り、お前を守るだけだ」

 そんな頼りないマスターに呆れているのか、それとも元から宛にして居ないのか、アサシンは一言言い残すと霊体化した。
 残された中沢少年は(無愛想な人たちだなぁ)と溜め息をつくと、仮眠をとるために電気を消すのだった。



【CLASS】アサシン
【真名】無銘(11人の男達)@ジョジョの奇妙な冒険 SBR
【マスター】中沢@魔法少女まどか☆マギカ
【属性】中立・中庸
【ステータス】筋力D 耐久E+ 敏捷E+ 魔力E 幸運C 宝具D+

【クラススキル】

気配遮断:A
 サーヴァントとしての気配を絶つ。
 完全に気配を絶てば、探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは非常に難しい。
 ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】

射撃:C+
 銃器による早撃ち、曲撃ちを含めた射撃全般の技術。
 暗殺者として優秀な水準で修得している
 11人全員による一斉射撃にプラス判定

騎乗:D+
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる
 11全員の連携騎乗にプラス判定

冷静沈着:C
 仲間の死にも動揺せず、己の感情を殺して任務に徹し、その場で最適な戦術を実行する。
 精神系の効果への抵抗に対してプラス補正が与えられる

連携攻撃:B+
 複数人による攻撃に長けていることを示す能力。アサシンの場合、11人全員で同時に行う攻撃判定に有利な修正を得る

【宝具】

『11人の男たち(イレブン・ボーイズ)』
ランク:D+ 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大補足:11
 本来1人1体である筈のスタンドを、11人全員が本体としてひとつのスタンドを共有していた逸話と、常に11人でチームとして行動していた逸話が共に宝具に昇華された結果、
 アサシンは11人全員を含めてひとりのサーヴァントとして現界している。
 この"11人"という数は概念的な物なので、極論を言えば戦闘で全滅しても1人でも生き残っていれば、
 残りの10人は自動的に補充される。
 よって、アサシンを完全に殺害するには全員を一度に殺害するしかない

『TATOO YOU!(タトゥー・ユー)』
ランク:D+ 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大補足:12
 11人のアサシン全員が共有しているスタンド能力。
 全員のコートの背中に描かれている、お互いの絵の中を自由に空間移動出来る。
 所持品も一緒に持ち込める他、絵の主が既に死亡していても移動可能。逆に死んだ仲間を盾に攻撃を回避したりできる。
 絵に入っている間は無敵であり、絵を攻撃しても本体にダメージはない。
 10人が1人の絵に入ったり、逆に1人の絵から一度に複数で出てきたりできる。
 また、サーヴァントの特性として、アサシンと魔術的な繋がりのあるマスターも同じく絵の中に入らせることができる


697 : 無銘の男たち ◆EPxXVXQTnA :2018/05/16(水) 02:24:36 .yDsL/RM0

【weapon】

・リボルバー式の拳銃
 弾丸は魔力で補充可能

・無銘の馬
 最大で11頭召喚できるが、魔力消費がかさばるので、
 1頭に11人騎乗する運用がおすすめ

【サーヴァントとしての願い】
 無し。召喚されたからには任務は全うする

【人物背景】
 ジョジョの奇妙な冒険・第7部「スティール・ボール・ラン」の登場人物。
 ジョニィ・ジョースターとジャイロ・ツェペリから”聖人の遺体”を奪うために大統領が送り込んだ刺客。11人一組のチームで行動する。
 スティール・ボール・ラン第6ステージで登場。11の馬の足音が1つに聞こえるほどに統率がとれており、ジャイロには「軍隊以上」と評されている。
 リーダーがいるのだろうが、それが誰なのかは彼等しか知らない。彼らの本名についても明かされていない。
 全員が同じ服装をしており、短く刈り込まれた髪型(なぜか髪の毛と髭は英文の写植)と、多少の差異はあるものの、一様に無表情で険しい顔立ちも共通。
 スタンド『タトゥー・ユー』による奇襲と、11人という大人数を活かした集団攻撃を得意とし、ジョニィやジャイロ達を死の一歩手前まで追い詰めた。この際、ジョジョでも珍しい見開きを使った演出がとられた。

【マスター】
中沢@魔法少女まどか☆マギカ

【聖杯にかける願い】
 不明。というか自分がマスターであることと聖杯戦争に参加してしまった事の重大さをあまり理解していない。

【能力・技能】
『善人』
 教師からの意味不明な質問も無視せず律儀に答えてあげたり、負傷した友人に肩をかす優しさも持ち合わせているまさに人間の鏡。
 あと席が暁美ほむらの隣である。思わぬ所で役に立つかもしれない

【人物背景】
 見滝原中学校の二年生。苗字が中沢であることは分かっているが、下の名前は不明。
 鹿目まどか・美樹さやか・暁美ほむらのクラスメイトであるため、面識はあると思われる。


698 : ◆EPxXVXQTnA :2018/05/16(水) 02:26:34 .yDsL/RM0
投下終了です


699 : ハートフルストーリーの夜明け前 ◆As6lpa2ikE :2018/05/16(水) 23:55:24 f1sQCCvM0

heartful

心温まる・心のこもった・ぬくもりを感じる




700 : ハートフルストーリーの夜明け前 ◆As6lpa2ikE :2018/05/16(水) 23:55:59 f1sQCCvM0
己が聖杯戦争のマスターであると自覚した時、市原仁奈は恐怖と不安で涙を流した。
当然の反応である。
いつのまにか見知らぬ土地に連れて来られたばかりか、そこで開催される殺し合いに強制的に参加させられるという現実は、齢九歳の少女が受け止めるにはあまりに辛いものだ。
住んでる家が違い、周囲の人間関係が違う──世界が、違う。
そんな光ひとつ無い暗闇の中にいるかの如き孤独な状況において、仁奈が背負っているマスターとしての使命を相談できる相手はおろか、頼りに出来る相手など、存在し得ないのだ──たった一人を除いて。

「初めまして、マスター」

ベッドにうつ伏せになり、涙で枕を濡らしていた仁奈は、自分の耳に響いた挨拶の言葉に反応し、顔を上げた。
ベッドのそばには、いつのまにか一人の男が立っていた。
黒い外套に黒い手袋、頭全体を覆う黒い仮面。
黒、黒、黒、とまるで底が深い穴を覗けば眼に映る闇を人型に切り取ったかのような格好だ。唯一、そのファッションスタイルから外れているのは、胸元で白い輝きを放つ、人の手を模した笛だけである。
まるで妖怪やモンスターのような風体をしている不審極まりない男だ。
だが、その声は優しげであり、聞くものに安心感を与えるものであった。
男の姿を認めた瞬間、出かかった悲鳴を呑み込みながら、仁奈は悟る。
彼こそが、自分の元に召喚されたサーヴァントなのだと。

「まずは名乗らせていただきましょうか──私のクラスはアーチャー。真名はボンドルド」

黒い男──ボンドルドは、両腕を広げるポーズを取りながら、自己紹介を続けた。

「人からは『黎明卿』とも呼ばれています。好きな名で呼んでくださいね」




701 : ハートフルストーリーの夜明け前 ◆As6lpa2ikE :2018/05/16(水) 23:56:50 f1sQCCvM0
数日後。

「おかえりなさいでごぜーます! アーチャー!」

偵察(フィールドワーク)に行っていたアーチャーが帰還したのを知った途端、トタトタというオノマトペを立てながら、仁奈は駆け出した。
アーチャーの仲間である『祈手』と呼ばれる集団の脚の隙間を器用に潜り抜けながら、仁奈はアーチャーの元に到着する。

「ただいま、ニナ。何か変な事はありませんでしたか?」
「なにもなかったですよ。普通にお留守番してたでやがります」
「そうですか、留守番お疲れさまです。ニナは偉いですね」

そんな労いの言葉をかけながら、ボンドルドは仁奈の頭をポンポンと撫でた。
頭を撫でて褒められる
普通の子供ならば、親から何度かやってもらっているはずの経験だが、家庭環境が少しばかり特殊な彼女にとっては、得難い貴重なものであった。
パパとママにだってされた事がない撫で撫でを味わいながら、仁奈は口を開く。

「そういうアーチャーは、街に出て何か見つけたですか?」
「貴重な情報が得られましたよ。『殺人鬼』に『キョウリュウ』、『時間泥棒』……これらは聖杯戦争の参加者によって起こされた事件と見ていいでしょう」

まだ戦争が始まって間もないというのにこれほどまでの騒ぎが起きるとは、みなさん元気ですね──と、ボンドルド。
彼の報告を耳にし、仁奈は少しばかり顔を曇らせた。
アーチャーとの出会いを経て聖杯戦争への不安が少しばかり軽減されたが、しかし完全になくなったわけではない。通常の魔術師に比べれば、まだ覚悟も決意も決まっていないのだ。
だが、目まぐるしく変化していく見滝原の状況は、仁奈を待ってはくれない。
彼方此方で暴力と、破壊と、死が発生しながら、街は魔戦の舞台へと着々と変化して行くのである──仁奈を置いてけぼりにして。

「──ですが」

見滝原で芽吹きつつある脅威について暫く語った後、ボンドルドは次のように言葉を続けた。

「ですが、安心してください。この工房(基地)がほとんど完成した今、私も十全の状態で戦争に挑めます。あなたを傷つけ、怖がらせるもの全てから、守ってあげますよ」

ボンドルドは弓兵(アーチャー)の召喚された身でありながら、魔術師(キャスター)並の陣地作成能力を有している。そういう理由があり、彼はここ数日間、フィールドワークと並行して、『祈手』達と共に陣地の作成に取り掛かっていた。
それこそが、今仁奈達がおり、アーチャーが便宜的に『前線基地(イドフロント)』と呼んでいる場所である。
魔術師でない仁奈には実際に居ても分からない事だが、彼ほどのサーヴァントが数日かけて作成したのだ。半端な陣地でない事は確かである。
頼りになるボンドルドのその姿に、仁奈は少しだけ安心した。

「アーチャー、初めて会った日に仁奈が言ったお願いを覚えているでやがりますか?」
「ええ、覚えてますよ。『元の世界に戻りたい』ですよね」
「もう一回……改めてお願いするでごぜーます。アーチャー、仁奈を元の世界に戻してくださいです」
「了解です、ニナ。大丈夫ですよ。あなたと私が一緒なら、そこに不可能などありません。必ずや聖杯に至れますよ」

そう告げるアーチャーの声音は、日の光のような暖かさに満ちていた。
彼の言葉を受け、仁奈は破顔する。
彼女の顔に、もう先程のような不安や恐怖の色は見られなかった。




702 : ハートフルストーリーの夜明け前 ◆As6lpa2ikE :2018/05/16(水) 23:57:52 f1sQCCvM0

hurtful

苦痛を与える・痛ましい・痛手となる




703 : 名無しさん :2018/05/16(水) 23:58:38 f1sQCCvM0
【クラス】
アーチャー

【真名】
ボンドルド@メイドインアビス

【属性】
混沌・善

【ステータス】
筋力- 敏捷- 耐久- 魔力B 幸運C 宝具EX(肉体ステータスはその時々の『ボンドルド』や『暁に至る天蓋』毎に異なる)

【クラススキル】
対魔力:D
呪いを肩代わりする肉がない限り、アーチャーのこのスキルのランクはこの程度である。

単独行動:E
アーチャーの探究は常に誰かの想いと共にある。

【保有スキル】
奈落の智慧:B+
奈落の奥深くに身を置くが故に得た数々の智慧と、アーチャー自身の類稀なる探究心によるもの。
ボンドルドのキャスター適性の高さも合わさる事で、Bランク相当の『道具作成』と『陣地作成』スキルが使用可能となる。

観察眼:C
研究者としての観察眼。
なお、人の心を観察する方面の技能は致命的に欠けている。

黎明の光:EX
高ランクの精神異常スキル。
イキモノの心に作用するありとあらゆる干渉を無効化する。
如何なる倫理も感情も道徳も、ボンドルドの憧れを止める障害となり得ない。

星の開拓者:EX
人類史においてターニングポイントになった英雄に与えられる特殊スキル。
あらゆる難航、難行が『不可能なまま』『実現可能な出来事』になる。

【宝具】
『暁に至る天蓋』
ランク:D〜A+ 種別:対人・対軍宝具 レンジ:? 最大捕捉:?

探窟・戦闘向けの鎧。 パワードスーツ。
装備することでステータスと対魔力が上昇する。
遺物と生物由来の繊維を複雑に組んで作られ、様々な武装を内蔵する。その中でも、触れた物質を分解し消し飛ばす熱線を放つ『枢機に還す光(スパラグモス)』が特に代表的な武装であるため、彼はアーチャー適性を獲得した。
戦闘以外にも様々な機能のカスタマイズや調整が施されており、鎧によって性能や価値はバラバラ(それ故に宝具ランクは上記のようになっている)。

『精神隷属機(ゾアホリック)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

アーチャーの意識を他人へと植え付けることで『ボンドルド』を増やすことができる宝具。
意識を植え付けるのに成功した者は『祈手』と呼ばれ、『祈手』同士で互いに意識の共有が可能。 聖杯戦争の舞台にいる人間相手に使用した場合、その人物はボンドルドと同等の神秘(精神)と『単独行動:E』を獲得する。
つまり、奈落のアーチャー、ボンドルドを聖杯戦争の舞台から完全に退場させるには『祈手』を含めた全員を殺しつくす必要があり、この宝具があるため、ボンドルドは実質的な不死性を得ている。
なお、この宝具は魔力ではなく電力を消費して運用することが可能であり、そうした場合、マスターへの負担はほぼゼロである。

『黎明卿(ボンドルド)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

環境と伝統と生命を踏み躙ることで奈落の探究を飛躍的に進め、人類の発展に多大な貢献を成し、また研究の過程で様々な遺物を所有したボンドルドの偉業が昇華された宝具。
ボンドルドは人類の切り札である探窟家『白笛』である。
固有結界や異界など、この世の法則から外れた不可思議な現象と遭遇した際、有利な補正を得られ、幸運ランクにプラス値が2つ振られる。
また、探究の成功により得られたものであれば、たとえ他サーヴァントの宝具であろうとも、物体としての形を持っている限り、使いこなせるかどうかは別として、己の宝具として使用・改造することが可能。
条件さえ揃えば歴史的な大英雄の誇りである宝具すらも振るい、改造を施せるボンドルドは、まさに人理の冒涜者にして冒険者と言えるだろう。

『夜明けの花(プルシュカ)』
ランク:- 種別:- レンジ:- 最大捕捉:-

アーチャーの娘と名前を同じくするこの宝具は、実体どころか概念的効果すら持っていない。あってないような宝具である。
だが、彼女の意志は確かにアーチャーのそばにある。共に夜明けを見るために。

【人物背景】
人の世に夜明けを齎す者。故に二つ名は黎明卿、新しきボンドルド。

【備考】
見滝原の郊外に、工房を作成しています。

【サーヴァントとしての願い】
万能の願望器そのものの研究。それこそが、狂気の科学者ボンドルドの純粋な願いである。


704 : ハートフルストーリーの夜明け前 ◆As6lpa2ikE :2018/05/16(水) 23:59:03 f1sQCCvM0
【マスター】
市原仁奈@アイドルマスターシンデレラガールズ

【能力技能】
歌って踊れる着ぐるみアイドル

【人物背景】
9歳のアイドル少女。家庭環境に問題アリ。

【マスターとしての願い】
元の世界に帰りたい。


705 : ◆As6lpa2ikE :2018/05/16(水) 23:59:44 f1sQCCvM0
投下終了です。開始の方の挨拶をうっかり忘れてました、すみません


706 : ◆dt6u.08amg :2018/05/17(木) 02:13:46 ak5jVk2A0
投下します


707 : 錬金術の落とし子達 ◆dt6u.08amg :2018/05/17(木) 02:14:32 ak5jVk2A0
『――次のニュースです。本日未明、××県見滝原市の繁華街で原因不明の集団昏倒事件が発生しました。
 発症者数は重軽症者あわせて百名以上と見られ、現地は混乱に陥っています』

『警察と消防の発表によりますと、有毒ガス等の有害物質は検出されていないとのことです』

『多数の昏倒者を収容した見滝原病院は、本日十二時頃に記者会見を開き、中毒症状やウィルス、細菌の影響を否定し、昏倒者は一様に過剰な疲労状態に近い症状を呈していたと発表しました』

『これを受け、見滝原市役所は声明を――』




    ◇  ◇  ◇




集団昏倒事件発生のまさに直前、繁華街の一画のとあるビルの屋上で、一騎のサーヴァントが召喚されていた。

身長は実に二メートル半。筋骨隆々の巨体は赤褐色に染め上げられ、腰にまで達する頭髪は蛍火色に輝いている。
その肉体が現実世界に形を成した瞬間、周囲一帯に存在するありとあらゆる生物から生命エネルギーが吸い上げられていった。

人々は倒れ膝を突き、鳥は地に落ち、路地裏の鼠までもがもがき苦しみ泡を吹く。
完全なる無差別。サーヴァントが行いうる魂食いが比較にならないほどに無慈悲な命の収奪。
被害がこの程度で済んでいるのは、夜の繁華街という生命あふれる環境だからこそ。
仮に一個人に収奪の作用が集中したとすれば、ほんの刹那のうちに命を奪われることになるだろう。

しかしながら――サーヴァントを召喚したマスターだけは、眉一つ動かすことなく、その怪物と対峙していた。

「キミがオレを喚んだマスターか」
「ええ、そうですよ。ガリィ・トゥーマーンと申します。以後お見知りおきを」

少女の形をした存在が優雅に一礼する。
関節が動くと同時に機械的機構が駆動する音が鳴り、血の通わぬ白い肌が月光に照らされる。
フリルで飾られたスカートの下から伸びた脚は、人形のそれと同じ球体関節で構成されていた。

「ところで、そちらのお名前と目的もお教え願えません? 召喚に応じたんならあるんでしょう? 戦うり・ゆ・う」
「……アヴェンジャーのサーヴァント、ヴィクター=パワード。オレの存在理由は錬金術に関わる全てを消し去ることだ。聖杯も、それを求める者も例外ではない。一つとして、一人として残さず破壊する」
「あらあらあら。要するに錬金術への復讐ってワケですか。ガリィ、聖杯欲しがってるヒト達が泣き出すジョーカー引き当てちゃったみたいです」

ガリィは無差別のエネルギードレインが吹き荒れる中、バレェの振り付けのような大仰な身振りでくるりと回った。
彼女がエネルギードレインの影響を受けていない理由は、決してマスターだからというわけではない。
このスキルはたとえマスターであろうと例外なく収奪の対象とし、死に至らしめうるのだから。

「なるほど、自動人形(オートマトン)か。生命エネルギーとは異なるエネルギーを動力源としていると見える」
「正確にはオートスコアラーですよ。ちなみにエネルギー源は精神エネルギーみたいなものなので、そのおかげで効いてないんでしょうねぇ。ところでコレ、流石にちょっと尋常じゃないんですけど、止められません?」
「エネルギードレインは能力ではなく生態。呼吸と同じようなものだ。霊体化すれば話は別だがな」
「……実体化してる限りは、止められても息止め程度ってことですか。はいはい分かりましたよ」

一瞬ガリィは顔を歪めたが、すぐに取り繕ったすまし顔に戻った。
アヴェンジャーはそんな表情の変化を気にする様子もなく、冷徹な態度のまま続けて口を開いた。


708 : 錬金術の落とし子達 ◆dt6u.08amg :2018/05/17(木) 02:15:15 ak5jVk2A0
「マスターよ、一つ問う。キミの製造手段はどのようなものだ」
「あー、分かっちゃいました。錬金術の産物だって言ったらソッコーで壊すつもりなんですねぇ。仮にそうだとして、正直に答えると思います? 仮に違ったとして、正直に答えたら信じてもらえます? どっちも無理ですよねー?」

揶揄するような態度でガリィはそう言った。
しかしアヴェンジャーは眉一つ動かしはしなかった。

「どうやら先に目的を開示したことは誤りだったらしいな。確かにこれでは無意味な質問だ。問いかけは撤回する」
「あらま、意外と素直。ちなみに一途なガリィちゃんは、ご主人様のところに帰りたいだけなのであしからずぅ」
「真偽は戦いの中で見極める。必要があれば呼ぶといい。オレはしばし身を潜めることにしよう」

そう告げるが早いか、アヴェンジャーは実体化を解いて霊体になった。
肉体が物理的に消失したことを受け、無差別に続けられていたエネルギードレインも中断を迎える。
呼吸と同じ生態である以上、物理的実体がなくなれば影響を及ぼさなくなるのは明白だ。

「それじゃ、まったね〜」

遠ざかっていくアヴェンジャーの気配に向けて、ガリィはひらひらと手を振り続けた。




    ◇  ◇  ◇




「チッ、大当たりかと思ったらド地雷じゃん。はー、最悪」

アヴェンジャーの気配が感じ取れなくなった途端、ガリィは吐き捨てるようにそう言った。
パラメータ、スキル、宝具。全てにおいて高水準。
ステータスをひと目見ただけで『当たり』と確信できるほどのスペックだった。

「復讐に狂った復讐鬼。これじゃ狂戦士の方がマシね。錬金術に親でも殺されたんでしょーか」

アヴェンジャーというクラス。錬金術に対する無差別な憎悪。
誰がどう見ても、そういう方向性の復讐者である。
そしてガリィもまた錬金術の産物。
先程はうまく誤魔化すことができたが、下手をすれば召喚直後に脳天を叩き割られていた可能性すらあった。

更に都合の悪いことに、アヴェンジャーは自力で魔力を回復できる二種のスキルと、ランクA+もの単独行動スキルを併せ持っていた。

通常のサーヴァントなら、マスターの殺害は消滅に直結する愚行である。
アーチャーの単独行動スキルにも限界があり、高ランクでもマスター不在なら魔力不足で宝具を十全に扱えない可能性がある。
だが、あのアヴェンジャーは違う。単独行動によって現界を維持し、自己回復とエネルギードレインによって十分な魔力を確保し続けることができるのだ。
即ち彼にとってマスターとは不要な存在であり――

「――おやぁ?」

そこまで考えたところで、ガリィはふとあることに思い至り、性根の腐った笑みを浮かべた。

「どうして私を壊さなかったんでしょうねぇ。錬金術の産物かもしれないモノに令呪を持たせておくくらいなら、疑わしきは罰するの精神でぶっ潰しちゃうのが一番いいハズなのに」 

こういう場合、理由はおおよそ決まっているものだ。

「よほどのお花畑ちゃんだったのか、それとも正義の味方気取りだったのか。まぁどっちでもいいんですけど、要するに余計な被害を出したくないってことですよねぇ。おやおや、何だかつけ込めそうな気配?」

無人の屋上で人ならぬ少女がプリマドンナのごとく軽やかに舞う。
バックグラウンドミュージックは緊急車両のサイレンのオーケストラ――


709 : 錬金術の落とし子達 ◆dt6u.08amg :2018/05/17(木) 02:16:05 ak5jVk2A0
【CLASS】アヴェンジャー
【真名】ヴィクター=パワード
【出典】武装錬金
【性別】男
【身長・体重】250cm・200kg
【属性】混沌・善

【パラメータ】筋力A 耐久A 敏捷A 魔力C 幸運C 宝具A

【クラス別スキル】
復讐者:A
 復讐者として、人の恨みと怨念を一身に集める在り方がスキルとなったもの。
 周囲からの敵意を向けられやすくなるが、向けられた負の感情はただちにアヴェンジャーの力へと変わる。

忘却補正:A
 時がどれほど流れようとも、彼の憎悪は決して晴れない。
 過去の過ちを忘却する人間の在り方が憎悪を更に燃え上がらせる。

自己回復(魔力):A
 復讐が果たされるまでその魔力は延々と湧き続ける。
 エネルギードレインとの相乗効果により、運用可能なエネルギー総量は文字通り無尽蔵。

【固有スキル】
心眼(真):A
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
 逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

錬金術:D
 魔術師ではないが、ホムンクルスの創造方法を伝授できる程度の知識を備えている。
 ただしこのホムンクルスとは、人体を乗っ取る形で創造される人喰いの怪物である。

エネルギードレイン:A
 周囲の生物から生命エネルギー(サーヴァントの場合は魔力)を無差別に吸収する。
 厳密には能力ではなく生態。自分の意志で完全に止めることはできない。
 マスターすらも被害から逃れることは叶わない――それが生物である限りは。

単独行動:A+
 マスター不在でも行動できる能力。
 一ヶ月もの間、月面で完全無補給活動を続けた強靭さが昇華されたスキル。
 エネルギードレインによる補給が万全であれば宝具の発動にも支障を来さない。

【宝具】
『大戦斧の武装錬金(フェイタルアトラクション)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:2〜4 最大捕捉:1人
 "黒い核鉄"がアヴェンジャーの闘争本能に呼応して変形した大戦斧。
 重力操作の特性を持ち、重力の方向と強弱を自在に操作できる。
 瞬間的に小型ブラックホールを生成して攻撃の破壊力を高めるほか、
 天体の重力を局所的に反転させて対象を遥か上空へ打ち上げることも可能。
 ただし、これらの特性はアヴェンジャー本人には作用しない。

『第三の存在(ヴィクター=パワード)』
ランク:A 種別:対人(自身)宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
 常時強制発動宝具。"黒い核鉄"によって変異したアヴェンジャーの肉体そのもの。
 生態としてのエネルギードレインと飛行能力、瞬間的な再生能力を持ち、
 幸運を除く全パラメータがステータス表示から更に1ランクアップしているものとして扱われる。
 更にある程度の時間経過で変異が進行し、エネルギードレインがワンランク上昇、擬体生成能力を獲得する。
 次段階に変異して以降に、何らかの外的要因によって宝具が封印される場合、完全封印はできず前段階に逆行するに留まる。

【weapon】
『核鉄』『黒い核鉄』
 錬金術による戦術兵器研究の成果。手のひらサイズの六角形の金属。
 所有者の闘争本能の昂ぶりに応じて、それぞれの個性を反映した武器『武装錬金』に変形する。
 アヴェンジャーのそれは賢者の石精製実験の成果として生み出された『黒い核鉄』であり、かつて致命傷を負った際に心臓の代替として左胸に埋め込まれた。
 しかし、当時知られていなかった作用によって、アヴェンジャーは人間でもホムンクルスでもない第三の存在に変貌してしまうこととなる。

『擬体』
 生物の死骸を操って作り出される、全高五十〜六十メートルの擬似的な肉体。
 擬体はアヴェンジャーが内部に収まることで自在に操作でき、本体同様の瞬間再生も可能。
 ただし武装錬金までは模倣されていないため、戦闘は徒手空拳。
 それに加えて口からエネルギーを放射して攻撃できる。


710 : 錬金術の落とし子達 ◆dt6u.08amg :2018/05/17(木) 02:16:37 ak5jVk2A0
【人物背景】
漫画およびアニメ「武装錬金」のラスボス。
人喰いの怪物ホムンクルスの組織「超常選民同盟」が王として戴くべく復元を試みていた存在。
作中の他登場人物と比べてあまりにも次元が違う強さを持ち、負傷したのはまだ本調子ではない復元直後に主人公と初めて戦ったときのみ。

その正体は、百年前に錬金戦団(錬金術の管理とホムンクルスの討伐を目的とした組織)に所属していた最強の戦士。
決戦で致命傷を負い、治療のために開発中の"黒い核鉄"を移植されて第三の存在へと変貌した。
覚醒時に図らずも妻を含む多数の仲間を犠牲にしてしまい、裏切り者として追撃を受ける。
しかもまだ子供だった一人娘が全ての責任を負わされてホムンクルスに作り変えられ、父を殺すための討伐隊に組み込まれた。
これらの経緯から錬金戦団と錬金術を深く憎み、錬金術に関わる全てを地上から消し去ることを目的とするようになった。

最終的に、自らと同じ境遇であるはずの主人公の意志に感化される形で復讐を捨て、錬金戦団とも事実上の和解を果たす。
しかしアヴェンジャーのクラスで召喚されたことで「復讐者」としての側面が強調されており、それ以降の記憶はおぼろげにしか残っていない。

【聖杯にかける願い】
必要としない。錬金術に関わるものは全て葬り去る。
聖杯も、それを求める者も例外ではない。







【マスター名】 ガリィ・トゥーマーン
【出展】戦姫絶唱シンフォギアGX
【性別】外見的には女

【能力・技能】
水を操り、水流や氷を駆使した戦闘を行う。
汎用性が極めて高く、直接攻撃のみならず水に幻を映してダミーにしたり、足元を凍らせてスケートのように高速移動したりも可能。

オートスコアラーとしての標準能力として、バリアの生成や粘膜経由の「思い出」の吸収が可能。
更に吸収した「思い出」を他のオートスコアラーに分け与えることもできる。
「思い出」を吸われた人間は枯れ果てたようになり、髪も真っ白に変わり果ててしまう。

【人物背景】
錬金術師キャロル・マールス・ディーンハイムが作成した、四体の自動人形(オートスコアラー)の一体。
青を基調とした可憐な衣装を身にまとうが、その下のボディは人形そのもの。
本作における錬金術は「思い出」を共通のエネルギーリソースとしており、オートスコアラーも他者から搾取した「思い出」によって駆動する。

主であるキャロルからも「性根の腐ったガリィらしい」と称され、まさしくそのとおりの性格。
常に人を食ったような態度で振る舞い、上品な口調も慇懃無礼にしか聞こえない。
何気ない動作にバレエの振付のような動きを加える傾向にあり、本拠地での待機時もバレリーナを思わせるポーズで止まっている。
(他のオートスコアラーも、一体を除いて特定ジャンルのダンスの決めポーズを取っている。残り一体のポーズの元ネタはきゃりーぱみゅぱみゅ)

ちなみに、四体のオートスコアラーはそれぞれタロットの小アルカナをモチーフにしている。
ガリィが司るのは「聖杯」である。

【聖杯にかける願い】
願いはないが、持ち帰れそうなら持ち帰ってマスター(キャロル)に譲る。

【方針】
アヴェンジャーをうまく誘導して聖杯戦争を勝ち残り、元の世界に戻る。


711 : ◆dt6u.08amg :2018/05/17(木) 02:17:56 ak5jVk2A0
投下終了です。

錬金術繋がりでもあり、ドレイン繋がりでもあり。
以前投下した主人公サイドとは、マスターが氷系の技を使う繋がりでもあり。


712 : ◆Pw26BhHaeg :2018/05/17(木) 14:57:21 7nTkEgZY0
投下します。


713 : Tender Sugar ◆Pw26BhHaeg :2018/05/17(木) 14:59:25 7nTkEgZY0
ボクと契約して、魔法少女になって欲しいんだ。
ボクは君たちの願いごとを、なんでもひとつ叶えてあげる。
なんだってかまわない。どんな奇跡だって起こしてあげられるよ。
でも、それと引き換えに出来上がるのがソウルジェム。
この石を手にしたものは、魔女と戦う使命を課されるんだ。



最近、私は同じ夢を見る。
誰か知らない女の子が病室にいて、ベッドの上に座ったまま本を読んだり、食事をしたりする姿を、ただ眺める夢。
その子は時々、私に笑いかけて何かを言う。だけど私には、その声が聞こえない。
きっとそれは、私が病室にいないから。私は画面の向こうにある別の世界を、ただ眺めているだけだから。

どうして私…こんな夢ばかり見るようになったんだろう。


――見滝原市――


私が繰り返し、あの夢を見るようになったのは、前にこの町に来てから…
あれからずっと、夢を見る度に胸がざわめく…
私の中に押し込められた何かが、しきりにうごめくように…

…だから、私は真相を知りたい。夢のことも、胸がざわつく理由も…
だって、そのために、この町に来たんだから…

見つけないと…そして確かめないと…


714 : Tender Sugar ◆Pw26BhHaeg :2018/05/17(木) 15:01:32 7nTkEgZY0


「甘いのは、好き?」
「……はい……」
「じゃ、これ食べる?」
「いえ……私は、遠慮しておきます」

自分の部屋で全てを思い出した時、私の目の前に、奇妙な女の子が立っていた。
金髪のおかっぱで、前髪で目が隠れていて、ほっぺに黒丸、胸にバツ印。
ショートジャケット、ズボン、腕と脚にストライプ。指先に結んだ糸の先には4つのキャンディ。
年齢は、わからない。私よりは年上に見える。女の人、と言うべきだろうか。年齢を聞くのも失礼だろうか。

「わかんない」
「え?」
「私、自分でも年齢、わかんないんだ。忘れちゃった。もともとないのかも、年齢」
「はい……」

心を読まれたのか。……彼女は、私のサーヴァント。使い魔の一種、だそうだ。
『英霊の座』というところから霊的にコピーされた、過去や未来の英雄、異世界の存在の霊。
そういう記憶や知識が、私の頭の中に入っていた。魔法少女の力とか、ドッペルとか、魔女とは違うらしい。
ただ、彼女が……魔法少女よりは、ドッペルや魔女に近い存在だとは、なんとなくわかる。
名前……真名や、クラス名は、まだ教えてくれない。

「このゴミ箱の中身なら、いい?」
「あ、はい」

彼女が手を触れたものから、ざらざらと砂糖が湧き出す。いや、触れたものが砂糖に変わる。
メルヘンチックな能力だ。生きたものは変えられないらしい。そして、その砂糖は魔力を含んでいる。
彼女は普通の食事をせず、この砂糖ばっかりを好んで食べる。彼女が霊でなければ、糖尿病になりそうなほど。

「いろんなものから簡単に作れるのはいいよね。もともとは、■■■■の■■を■■して作られてたのに。
 それにしても、どうしてあれもこれも、ぎょっとするモノばかりなんだろ。おかげでタイクツしないけど。:-)」

彼女の言うことは、脈絡がない。あったりなかったりする。どうやら、あの砂糖には精神を狂わす性質があるらしい。
やめさせることは出来ない。あれは彼女そのものだ。あれを食べ続けねば彼女は消えてしまう。
彼女が消えれば、私は―――『環いろは』は、聖杯戦争から脱落してしまう。


715 : Tender Sugar ◆Pw26BhHaeg :2018/05/17(木) 15:04:14 7nTkEgZY0


「シュガー」
「……え?」
「『シュガー』よ。この物質。で、私の名前。クラスは『バーサーカー(狂戦士)』だって。世界は5つの要素から構成されてる」

急に名乗られた。そして意味がわからない。狂戦士。狂っているのは、わかる。
「煙、メタル、プラスチック、肉、シュガー。このゾーンは、そうじゃないみたいだけど」
何を言っているのか、全然わからない。『シュガー』が真名、らしい。砂糖さん。佐藤さん?

「紛らわしい? そうよね。物質もシュガー、私もシュガー。私の方は『スクレ(Sucre)』って呼んでもいいみたい。:-)」
スクレ。……たぶん、英語ではシュガーで、何語だかではスクレ。砂糖のこと、だろう。
「フランス語だって。フランスってなんだろ?」
彼女はフランスを知らないらしい。全然違う世界の人なのだろうか。それとも、砂糖の食べ過ぎ?

「あ、イローハ。私、毒に弱いのかも。体力が多いから、毒が効く。気をつけて」
「はい……」
会話にならない。毒に弱い。それは、まあ、そうだろう。あと、イローハじゃなくて『いろは』なんだけど。
「ええと、私、治癒の魔法が得意です。毒は……体力は回復できますけど」
「すごいね。イローハ。頭の方は治らないよ。シュガー食べないとダメだから。私の望みはシュガーを食べることだけ」

……この人を治すと、消えてしまうのだろう。治したくはあるが。
いろいろ置いておいて整理すると、こうだ。彼女は『シュガー』ないし『スクレ』、クラスは『バーサーカー』。話は通じない、こともない。
生きていない物質を砂糖(シュガー)に出来る。このシュガーは魔力を含んでいて、多幸感を与え、依存性がある。
バーサーカーはたくさん魔力を消費するけど、彼女はシュガーを貪ることで補給出来る。そこはメリットだ。

真名を知ったのでステータスが確認出来るようになった。そこそこ戦えるが、強力ではない。
仲間が必要だ。やちよさんのような魔法少女が来ていたら、協力出来るだろう。
聖杯は―――どうするか。願いはある。妹を助け出し、治すことだ。でも、ここから神浜市に帰るにも、聖杯が要るのかも知れない。
いやそもそも、聖杯を作って大丈夫なのか。この戦争の主催者は、何を企んでいるのだろう。


716 : Tender Sugar ◆Pw26BhHaeg :2018/05/17(木) 15:06:56 7nTkEgZY0
□□

ぼくらはここで■■を燃やして、出た蒸気を画期的な下水システムによってシュガーに変えてるんです。
作られたシュガーは、工場の壁を縦横に走る下水チューブで処理室へ送られます。
そこで残った灰を取り除くために洗浄を受け、精製されるんです。
完成したシュガーは、日々の仕事のご褒美として、従業員全員に配給されます。

隠された…第五のエレメント…もっとも重要なエレメント…

だってシュガーが無ければ、人々はこれ以上現実に耐えられず、みんな狂ってしまうでしょうから。

□□□

:-)

ステキなモノのこと、すーっごく真剣に考えてみなよ。そしたらキミにだって、ステキなモノが見えるかも。
それってたとえば、ステキな一日みたいなカンジ。おっきなアヒルちゃんとすごす日みたいな。
それも、ぎょっとするようなアヒルちゃんと。

□□□□

シュガーが歌う。スクレが唱う。
英語で歌う。フランス語で唱う。日本語で詠う。


♪私が頼りにする小さなもの
♪白い砂糖が私を優しく隠す
♪ああ、甘い砂糖が私を救う
♪それは私を閉じ込める部屋
♪私を閉じ込める 甘い砂糖


717 : Tender Sugar ◆Pw26BhHaeg :2018/05/17(木) 15:08:39 7nTkEgZY0
【クラス】
バーサーカー

【真名】
シュガー@OFF

【パラメーター】
筋力C 耐久B 敏捷C 魔力B+ 幸運C 宝具C

【属性】
中立・狂

【クラス別スキル】
狂化:C
理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。身体能力を強化するが、理性や技術・思考能力・言語機能を失う。
また現界のための魔力を大量に消費するようになる。そこそこ会話可能だが、シュガー中毒によりよくわからないことばかりしゃべる。
シュガーを作り出して貪り食うことで魔力を補給出来るため、燃費は比較的良い。

【保有スキル】
シュガー中毒:EX
自分で生成する魔力を帯びた物質「シュガー」を貪り続けたいという欲望。シュガーは多幸感を与え依存性があり、多量の使用は精神を狂わす。
「精神汚染」「精神異常」のスキルを包含し、他の精神干渉系魔術をシャットアウトできる。

陣地作成:C
本来はキャスターのクラス特性。地下室に自分の「工場」を作成し、材料があれば大量のシュガーを作ることが可能になる。

シュガーアタック(仮):C
シュガーを消費して敵を攻撃する技ないし術。幾つかの種類がある。

・キャトル・キャール:単体にダメージを与える
・パフェ・ショコラ:全体にダメージを与える
・ミル-フィーユ:単体の攻撃力を低下させ、激怒(命令を聞かず、物理攻撃しかしなくなる)を付与する
・ダム・ブランシュ:単体に錯乱を付与する
・ハードキャラメル:単体を麻痺させる


718 : Tender Sugar ◆Pw26BhHaeg :2018/05/17(木) 15:10:31 7nTkEgZY0
【宝具】
『甘いの四つ欲しい?(ダミー・シュガー・キャンディ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-5 最大捕捉:4

砂糖でできた、四粒のおいしいキャンディ。両手に二つずつ弦で結んで持っている。
各々が弛緩の仮面(全体・魔力上昇)、盲いの仮面(全体・筋力上昇)、病の仮面(全体・耐久上昇)、共感の仮面(全体・敏捷上昇)という技を使う。
これにより自他のパラメーターを一時的に強化出来る。ダメージを与えると砕けるが、シュガーによって再生可能。
最大で四つまでしか同時には持てない。砕くと銀の肉を落とすかも。

『甘いのはお好き?(グランド・ショコラティエ)』
ランク:C 種別:対物宝具 レンジ:1 最大捕捉:-

砂糖を連想させる奇妙な物体。シュガーの霊核と融合しており、彼女が触れた物質(無生物)を「シュガー」に換える。
シュガーはこのシュガーを摂取することで魔力を短時間増強させられるが、多幸感を与え依存性があり、多量の使用は精神を狂わす。他人に与えることも可能。
死体など魔力量の多いものほど高純度のシュガーになる。土や岩をシュガー化して脆くすることも可能。生物や英霊を直接シュガー化は出来ない。

【Weapon】
宝具。

【人物背景】
フランス名はスクレ(Sucre)。ベルギー産フリーゲーム『OFF by Mortis Ghost』の、とある場所に存在する隠しボス。
金髪メカクレおかっぱ頭で、ほっぺに黒丸、胸にバツ印が描かれている女性。 :-)  CVは自然ガイド。
OFF世界のエレメントのひとつ「シュガー(砂糖)」を好み、地下室にある巨大なシュガーの山の近くにいて、それを貪っている。
シュガー中毒であるらしく、話しかけても奇妙なことしか言わない。仮面の商人ザッカリーとなんらかの関係があるが、確かなことは不明。
「お互いが好き(like)なことは確かだが、彼らが友人なのか、恋人なのか、兄弟や姉妹であるのかはわかりません」と原作者にコメントされている。
少なくとも「ザッカリーの母親ではない」。シュガー工場のあるゾーンのガーディアン・イーノックとの関係も全く不明。

【サーヴァントとしての願い】
なし。シュガーを作って貪りたい。

【方針】


【把握手段】
ああ… 原作をプレイすることですね。日本語OFFwikiも見るといいです。派生とかはよくわかりません。


719 : Tender Sugar ◆Pw26BhHaeg :2018/05/17(木) 15:12:38 7nTkEgZY0
【マスター】
環いろは@マギアレコード

【Weapon・能力・技能】
『魔法少女』
キュゥべえとの契約により、自分の魂を封じ込めたソウルジェムによって魔法少女に変身できる。
変身することで常人を凌駕する身体能力と肉体強度を獲得し、それぞれ固有の能力となる魔法を使える。
彼女は光属性・ヒール(治癒)のタイプに属し、体力の回復に関する魔法に長ける。

『クロスボウ』
小さなクロスボウ。魔法少女としての固有武器。敵の頭上から光の矢を降らせて攻撃し、
力尽きた仲間一人を復活させる「ストラーダ・フトゥーロ(未来への道)」というマギア(必殺技)を使う。

『ドッペル』
ソウルジェムが濁りきった際に、内なる魔女の力を部分的に発動・自由に行使する能力。
覚醒した魔法少女だけが備え、神浜市でのみ体現できる不可思議なちから。
現在いろははこの能力を使いこなせてはいないが、ソウルジェムが濁りきった際、無意識のうちに発現する場合がある。

いろはのドッペルは「沈黙のドッペル」と呼ばれる。その姿は、呼子鳥。このドッペルは沈黙の写し。
ソウルジェムが黒く染まりきる時、いろはの髪の毛が変化しこのドッペルは姿をあらわす。
臆病な性格のこのドッペルは沈黙し耳を塞ぎ、あらゆるものを布で覆い隠そうとしてくる。真名はGiovanna。

【人物背景】
アプリゲーム『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』の主人公。CV:麻倉もも。15歳の中学3年生。
妹「うい」の病気を治すため、キュゥべえと契約した魔法少女。姿を消し、記憶からも消えていた妹を探すため、不思議な夢に導かれて神浜市にやって来た。
性格は明るく真面目、お人好し。控えめで周囲に気を遣いすぎるところはあるが、ここ一番では芯の強さを見せる。
趣味は料理(味付けは薄い)。得意料理は豆腐ハンバーグ。最近の流行には疎く、スマホの扱いもぎこちない。方向音痴でよく道に迷う。

【ロール】
中学生。両親はいるが妹はいない。

【マスターとしての願い】
妹の病気を治したい。現世への帰還。

【方針】
ひとまず仲間と情報を集めて、この聖杯戦争がなんなのか調べる。戦いは当面避ける。

【把握手段・参戦時期】
原作。ドッペル発現後。


720 : ◆Pw26BhHaeg :2018/05/17(木) 15:14:22 7nTkEgZY0
投下終了です。


721 : ◆NIKUcB1AGw :2018/05/17(木) 21:46:41 wPY39Qk.0
皆様、投下乙です
自分も投下させていただきます


722 : 森宇多子&アサシン ◆NIKUcB1AGw :2018/05/17(木) 21:47:51 wPY39Qk.0
見滝原市内の、とある高校。
そこに通う一人の女子生徒が、ある日突然失踪した。
市内に連続殺人犯が出没していることもあり、当然の流れとして周囲の人間は事件に巻き込まれた可能性を考えた。
だが数日経つと、奇妙な噂が校内に広まった。

「ねえ、森さんの噂聞いた?」
「ああ、赤と黒の花嫁に魅入られた、とかいうやつ?」
「そう、それ」
「私、詳しく知らないんだけど。何なの、赤と黒の花嫁って」
「都市伝説らしいよ。不幸な死に方をした花嫁が幸せな新郎新婦をねたんで、呪い殺しちゃうんだって。
 そして呪い殺された花嫁は、赤と黒の花嫁の仲間になってまた別の花嫁を呪い殺す……」
「怖いけどさあ、森さん関係なくない? 別に結婚したわけじゃないでしょ、あの人」
「でも、森さんこういうオカルト話好きだったし。
 それで悪霊に取り憑かれたとか、そういう話になったんじゃない?」
「でも、取り憑いたのが花嫁である必然性はないんじゃないの」
「たしかに……。なんでそんな話になったんだろ」


723 : 森宇多子&アサシン ◆NIKUcB1AGw :2018/05/17(木) 21:48:39 wPY39Qk.0


◆ ◆ ◆


「ねんねん〜ころ〜り〜よ、おころ〜り〜よ〜……」

町外れの、放棄された教会。
森宇多子の姿は、そこにあった。
彼女の周りには、複数の女性の影がある。
いずれもウェディングドレスや振り袖に身を包んでいるが、それらは全て汚れ、破れている。
だが、それは些細なことだ。着ている本人たちの体が、醜く崩れていることに比べれば。
彼女達こそが、宇多子が召喚したアサシンのサーヴァント。
都市伝説に飲み込まれた悪霊たち、「赤と黒の花嫁」である。

「もうすぐよ……。もうすぐみんなに、素敵な花婿さんを見つけてあげるからね……」

虚ろな瞳で、宇多子が呟く。
本来の彼女は、物騒な発言で周囲の反発を買うことはあっても、直接的に他者を傷つけるような人間ではない。
だが彼女は自らのサーヴァントに共鳴し、その邪気に取り込まれてしまった。
今や宇多子とサーヴァントの関係は、逆転してしまっている。
サーヴァントに捧げる生け贄を求める従者、それが今の宇多子なのだ。

「ねんねん〜ころ〜り〜よ、おころ〜り〜よ〜……」

物音一つしない教会に、宇多子の子守歌だけが不気味に響いた。


724 : 森宇多子&アサシン ◆NIKUcB1AGw :2018/05/17(木) 21:49:41 wPY39Qk.0

【クラス】アサシン
【真名】赤と黒の花嫁
【出典】サタスペ(ホラーリプレイシリーズ)
【性別】女
【属性】混沌・悪

【パラメーター】筋力:C 耐久:C 敏捷:D 魔力:B 幸運:E 宝具:C

【クラススキル】
気配遮断:B
自身の気配を消すスキル。隠密行動に適している。
完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。

【保有スキル】
精神汚染:EX
精神が錯乱しているため、他の精神干渉系魔術をシャットアウトできる。
ただし、同ランクの精神汚染がされていない人物とは意思疎通ができない。
怨念の塊と化した彼女達の心に、人の思いが届くことは決してない。

非現実の恐怖:A
表の世界を生きる者にとっては、現実にいてはならない存在。
一般人がこのサーヴァントを初めて目撃したとき、幸運判定を行う。
判定に失敗した場合、混乱状態に陥る。

偏光:A
遠距離攻撃に分類される攻撃を受けたとき、その軌道をねじ曲げ別の対象に当てることができる。
ただし、対象が「サーヴァント自身の肉体による攻撃が届く範囲」にいなくてはならない。


【宝具】
『赤の花嫁』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:無制限 最大捕捉:1人
アサシンの中核を成す、一人の花嫁の存在そのものが宝具と化している。
効果は男性一人の呪殺。
発動条件は対象の男性についてある程度の情報を得ていることで、条件を満たせば相手がどこにいようと発動できる。
発動後は一日に2回まで対象に四肢がもぎ取られる悪夢を見せることができ(寝ていなくとも、白昼夢を見せる)、
5回目の悪夢で首をもぎ取ることで現実でも対象はバラバラ死体となる。
殺害までは最低三日かかることになり、期間の限られた聖杯戦争で殺害まで持っていくのは困難と言わざるを得ない。
だが途中までの発動でも、相手を消耗させるには充分だろう。

『黒の花嫁』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:―
赤の花嫁以外の花嫁たち。召喚された直後は5人いる。
彼女達に殺された女性はその時点で「黒の花嫁」となり、サーヴァントの一部として取り込まれてしまう。
「赤と黒の花嫁」とは彼女達全員の集合体であり、中心である赤の花嫁が倒されても黒の花嫁が合わせて消滅することはない。

【weapon】
「触手」
肉体の一部。
「偏光」の効果範囲を広げるための器官であり、攻撃力は低い。

【人物背景】
不幸な死に方をした花嫁たちの霊が、都市伝説に縛られ悪霊と化した存在。
都市伝説に同情し詳しく調べていた女性にとりつき、彼女の周囲の男性を次々と呪い殺していった。
その魂は、幸福への渇望と生者への妬みで満ちている。

【サーヴァントとしての願い】
幸せになりたい

【基本戦術、方針、運用法】
宝具による呪殺は強力だが、時間がかかるためメインに据えるのは厳しい。
肉弾戦も決して弱くはないので、数の優位を活かした戦い方を心がけたい。


725 : 森宇多子&アサシン ◆NIKUcB1AGw :2018/05/17(木) 21:50:35 wPY39Qk.0

【マスター】森宇多子
【出典】金田一少年の事件簿
【性別】女

【マスターとしての願い】
アサシンに花婿を与える

【weapon】
特になし

【能力・技能】
「霊能力者?」
霊の声が聞こえると自称している。
ただの妄言なのか、本当に霊感があるのかは定かではない。
彼女がいた世界に、霊という概念が存在するのは事実のようだが……。

【人物背景】
有名予備校「四ノ倉学園」に通う高校生。
眠たげな目つきと口元のほくろが特徴的で、怪しい雰囲気を漂わせる。
学園内で起きた連続殺人事件に対し、「1年前に自殺した生徒・深町充の怨霊が呪い殺した」と主張し、捜査陣を困惑させた。
金田一が彼女と関わったのは一度だけだが強烈な印象が残っていたらしく、
後に他の事件でエキセントリックな言動の容疑者に彼女を重ねる一幕があった。

【方針】
聖杯狙い?


726 : ◆NIKUcB1AGw :2018/05/17(木) 21:51:39 wPY39Qk.0
投下終了です


727 : ◆l0C5KD2sdM :2018/05/17(木) 22:22:13 Q5d5jfxs0
皆様投下乙です
私も投下します


728 : ◆l0C5KD2sdM :2018/05/17(木) 22:22:58 Q5d5jfxs0

「ただいまー」

見滝原にあるとあるアパートメントの一室に家主である青年の声が響く。
本来なら彼は帰宅したからといって挨拶をする必要などない。一人暮らしだからだ。
では何故か……今は同居人がいるからだ。


「おかえりなさい、マスター」


居間の方から金髪の少女が行儀よく歩いてきて青年を出迎えた。
誰が見ても十五には満たぬであろう幼さを色濃く残す顔立ち、日本人離れした容貌は家主の青年とは似ても似つかない。
見る者が見れば事件性を疑われるような取り合わせではあった。

青年もそう見られかねないことは理解しており、少女とまともに外を出歩けずにいた。
正確には少女が現世に実体化した状態では共に外を歩けない……という話なのだが。

聖杯戦争。万能の願望器を巡るマスターとサーヴァントによる戦争。
記憶を取り戻し状況を理解した青年が召喚した……正確には突然現れた少女が彼に配されたサーヴァントだった。


「おう、飯にするか。帰りにちっと百貨店に寄って美味いもん買ってきたんだよ」
「ありがとう、マスター!……でも、あまり無理はしないで。
今の私はサーヴァントで……本質的には食事の必要ない身体だから」


青年がここ数日接した少女はこのように、他者への気遣いを第一にする心優しい良い子としか言いようがなかった。
見た目からして食べたい盛りであるだろうに真っ先にするのが食費の心配ときたものだ。


「お前なあ、大の男に子供の目の前で一人だけ飯食えってか?ふざけんな。
良いから一緒に食うぞ。さっさと皿出せ」
「………ええ。本当に、いつもありがとうマスター」


だからこうして遠慮がちな彼女を引っ張ってやらなければならない。
もう少し器用に接してやれたら良いのだが生憎そこまで細やかな神経も豊富な語彙力も青年は持ち合わせていなかった。
それでも少女は聡明なようで、不器用な青年の意図を的確に汲み取ってくれる。
……ある意味こちらの方が助けられているのかもしれない。


(そういや美空も見た目はともかく精神的にはこいつとあんまり変わんねえのか)


元いた世界で今頃心配しているであろう仲間を思い出す。
あいつもあいつで普段から俺や戦兎に気を遣ってたなあ、などと益体もないことを考える。
そうして、自分が如何に仲間に助けられてきたかを改めて実感する。
皆がいれば、という弱音を寸でのところで押しとどめて買ってきた料理を皿に載せた。


「まあ!これはローストチキンにポテトフライ?すごいご馳走だわ!」
「いやわりとどこでも普通に売ってるやつだし。って文化とか習慣とか全然違えのか」
「ご、ごめんなさい。はしゃいでしまって……聖杯からこの時代の知識は与えられているのだけど、実感するのとでは全然違ってて」
「別に怒ってるわけじゃねえよ。ほれちゃんと袖捲ってから食えよ、タレついても知らねえぞー?」


729 : 万丈龍我&フォーリナー ◆l0C5KD2sdM :2018/05/17(木) 22:24:09 Q5d5jfxs0


少女は所謂キリスト教の信徒であるらしく、いつも食事の前などに行う祈りを欠かさない。
そのせいで特に宗教に興味のない青年もつい釣られて見様見真似で祈りの動作らしきことを行うのがここ最近の習慣になっていた。
どうして、こんな大人しい善良な娘がサーヴァントなどというものをやっているのだろうか。










食事を終え、二人とも一息ついた。
テレビをつけようとリモコンに手を伸ばす。テーブルの対面に座る少女は気軽に外の世界を見ることができるテレビに興味津々だったから。


「マスター。お話、して下さらない?」


リモコンを手に取った青年を少女が止めた。
やや思いつめているような、言いたくないが言うべきことがあるような、そんな顔をしていた。
青年は「何の話だよ?」と返した。予想される答えに薄々と気づいていながら。


「…聖杯戦争のこと」


まあそう来るだろうな。……と思いながら青年、万丈龍我は少女の声に応えるようにいくらか姿勢を正した。
出来ることならこの少女を聖杯戦争なんてものに巻き込みたくはなかった。それがどれほど無理のある願望だとしても。


「あなたが私を気遣ってくれているのはわかるの。本当に感謝しているわ。
でももうすぐ本格的に聖杯戦争が始まるから、私を置いて外を出歩くのはやめてほしいの。
……サーヴァントにマスターだとバレてしまえばきっとひとたまりもない」


サーヴァントである少女から見て、万丈龍我は間違いなく良い人に分類できるマスターだった。
粗野ではあるが粗暴ではなく、不器用だが確かな優しさを感じさせる。
きっとこの数日自分一人で聖杯戦争を解決しようとしていたのだろう。実際いつも難しい顔をしていた。
断言できるが彼は己の欲望のために聖杯を手中に収めんとする人間ではない。


「別に俺は良いんだよ。元いた世界じゃ戦争やってたし、スカイウォールのない世界に飛ばされるのだって初めてじゃねえ。
けどマスターが全員俺みたいに戦えるってわけでもねえんだろ?戦いたくもないやつらを勝手に集めて殺し合えとかふざけんなよ。
…お前のことだってそうだ。前にお前の名前聞いてから本屋とかで調べてみたんだよ。アビゲイル・ウィリアムズについて」


730 : 万丈龍我&フォーリナー ◆l0C5KD2sdM :2018/05/17(木) 22:25:22 Q5d5jfxs0


エクストラクラス、フォーリナー。真名、アビゲイル・ウィリアムズ。
それが万丈に宛がわれたサーヴァントの正体だ。
どう見ても十五歳よりは下であろう彼女が如何なる英雄だったのか気になったのでこっそりと調べていたのだ。
そして史実のアビゲイルについて多少なりとも知った時、彼女をサーヴァントとして送り込んだ存在に対して怒りがこみ上げてきた。



「魔女裁判がどうとかってのは俺にはさっぱりわからねえし突っ込んで聞こうとも思わねえよ。
俺にわかってるのはお前が昔セイレムってとこに住んでて、そこで妙な事件があったってことだけだ。
…お前、戦いをやってきたわけでもなけりゃ得意なわけでもないんだろ?」
「……確かに戦いは怖いわ。でも私にはあなたを守れるぐらいの力はある」
「かもな」


意外な肯定をされ、アビゲイルが驚きで目を丸くする。
もっともある意味で当然の返答ではある。契約者である万丈はアビゲイルのステータスを正しく把握している。
全ての能力値がアベレージ以上と控え目に言っても当たりの部類に入るであろうし、万丈自身アビゲイルの妙に高いステータスに納得できる根拠があった。


「俺の仲間に美空ってやつがいてさ、そいつには火星の王妃様が取り憑いてるんだよ。
美空自身は戦えねえけどその王妃様がまた強えの何の。スカイウォールを動かしちまうんだもんなあ、今考えてもありゃ反則だわ。
けど、そのせいで美空が無茶して戦いに割り込んできて危うく死なせちまうとこだった。
お前もサーヴァントなんてもんになってるぐらいだから何かとんでもねえ力を持ってるんだろうけど、だからって戦いたくもないやつを戦わせる理由にはならねえだろ」


断言できるがアビゲイルは戦いを望んでいない。あるいは恐怖している。
そうでなければもうとっくの昔に万丈に聖杯戦争に積極的になるよう催促しているはずだからだ。

故に万丈は一つの決意を固めていた。
マスターであれサーヴァントであれ、戦いを望まない者に戦いを強いる者の思い通りには絶対にならない。
戦争なんてものは戦いに乗った者だけで戦って終わらせれば良い。
……無茶ではあるのだろう。無謀ですらあるかもしれない。だが今は自分以外にやれる者はいない。


「ってか、どっちみちお前の出番は来ねえよ。
俺のクローズマグマはマジ最強だから、どんなサーヴァントでもぶっ飛ばしちまうからよ」
「マスター……」
「悪いな、この戦争を終わらせるヒーローは俺だ」


731 : 万丈龍我&フォーリナー ◆l0C5KD2sdM :2018/05/17(木) 22:26:02 Q5d5jfxs0












「悪いな、この戦争を終わらせるヒーローは俺だ」


マスター、万丈龍我はアビゲイルを人間として扱い、守ろうとしている。
それがどれほど無謀なことか、本人も薄々とは気づいているにも関わらず。
サーヴァントとしては彼の無謀を止めなければならない。
単純な自惚れではなく、真心から生じる行動であればなおのことだ。

けれど。嗚呼、けれど。


(私は悪い子ね)


彼の優しさに甘えたいと思ってしまう自分がいる。
だって彼を止めるということはアビゲイル自身が戦うということだ。
戦いは、怖い。けれどそれ以上に怖いのは戦うためにセイレムの魔女としての姿を見せることだ。
本格的な対サーヴァント戦闘をするには霊基解放を行う必要がある。……邪神の力を解放しなければならない。
如何に契約者と言えどあれを見せれば心を壊してしまうかもしれない。
仮に、自分を救ってくれたカルデアのマスターのように耐えられたとしても、拒絶されるかもしれない。
こんなことではサーヴァント失格もいいところだ。


「…あー、ところでさ。前から聞こうと思ってたんだけど、お前のこと何て呼んだら良い?
いつまでもお前呼びってわけにはいかねえし、フォーリナーって呼び方も何つうかしっくりこねえし、かといって名前を直に呼ぶのもまずいんだろ?」
「え?……え、ええ」


惚けている間に話しかけられていた。これはいけない。


(もう少し、もう少しだけこのまま)


きっと現実逃避なのだろう。
それでも、もう少しだけ今のままでいたい。この瞬間を大切にしたい。
いつか戦う時が来るとしても。マスターに魔女を見せる時が訪れるとしても。


「……なら、アビーと呼んでくださいな。マスター」




遠からず、この凪いだ日々が崩れ落ちるのだとしても。


732 : 万丈龍我&フォーリナー ◆l0C5KD2sdM :2018/05/17(木) 22:26:51 Q5d5jfxs0
【クラス】
フォーリナー

【真名】
アビゲイル・ウィリアムズ@Fate/Grand Order

【属性】
混沌・悪

【ステータス】
筋力B 耐久A 敏捷C 魔力B 幸運C 宝具A

【クラススキル】
領域外の生命:EX
地球の理では測ることのできない生命体。
高位の千里眼を持つ者でもその姿を捉えることはできない。

狂気:B
人を容易く狂わせる彼女自身もまた胸の内に狂気を宿す。

【保有スキル】
信仰の祈り:C
清貧と日々の祈りを重んじる清教徒の信条。

正気喪失:B
少女に宿る邪神より滲み出た狂気は、人間の脆い常識と道徳心をいともたやすく崩壊させる。
第一霊基の姿では十分な効果を発揮せず、マスターのステータス透視能力でも視認されない。

魔女裁判:A
本人が意図することなく猜忌の衝動を引き寄せ、不幸の連鎖を巻き起こす、純真さゆえの脅威。
第一霊基の姿では十分な効果を発揮せず、マスターのステータス透視能力でも視認されない。

神性:B
その体に神霊適性を持つかどうか、神性属性があるかないかの判定。異端の神であるヨグ=ソトースに関わる「銀の鍵」そのものとなった彼女は高い神性を持つ。

【宝具】
『光殻湛えし虚樹(クリフォー・ライゾォム)』
ランク:EX 種別:対人宝具(対界宝具) レンジ:??? 最大捕捉:???
人類とは相容れない異質な世界に通じる“門”を開き、対象の精神・肉体に深刻なひずみを生じさせる、邪悪の樹クリフォトより生い添う地下茎。
効果対象は“鍵”となるアビゲイル個人の認識に束縛される。それゆえの対人宝具。
本来ならば対界宝具とでもいうべき、際限のない性質を有している。
第一霊基の姿においては眩い光を放つ鍵穴に相手を吸いこみ、何処へと誘って消し去る。
しかし邪神の力を解放した第二霊基以降の姿となるとその本性を現し、無数の冒涜的な触腕によって対象を次元の闇に引きずり込み、外宇宙へと放逐する。
命中判定の発生と同時に対象にかかっている一時的な強化効果を全て解除する。

【Weapon】
銀の鍵、人形、触腕、蝶
アビゲイルが通常攻撃で用いる攻撃手段。
場合によっては額からビームを放つこともある。

【人物背景】
17世紀末。
清教徒の開拓村セイレムで起きた「魔女裁判事件」。
最初に悪魔憑きの兆候を示した一人が少女アビゲイル・ウィリアムズだった。
悪魔憑きの異常な症状は他の少女たちにも伝播し、およそ一年に渡って多くの村人が告発された。
その結果200名もの逮捕者、うち19名もの絞首刑、
2名の獄死、1名の拷問死という惨劇を招いた。
少女たちの真意やその引き金となった要因など、いまだに多くの謎が残されている。
清教徒の信徒としてのアビゲイルは、神を敬い、感謝の祈りを欠かさぬ無垢の少女だ。多感で疑う事を知らない年頃の娘に過ぎない。

清貧を信条とする清教徒たちは、権威におもねる教会の弾圧を逃れて海を渡り、新世界へと至る。しかしやがて彼らは追いつかれ、追い詰められた。彼らの抗議(プロテスト)の矛先は、身近な隣人へと向けられた。

退廃と抑圧の世にこそ“英雄”が立ち上がるように───
自分を律するはずの潔白の信条は、他者を監視する道具となり、戦乱と略奪が繰り返される植民地の不穏な暮らしは、猜疑心と利己心を育んだ。

───彼らはやがて心の底に狂気を、“魔女”を求めるようになる。私たちのこの不幸と苦しみは、悪魔の仕業でなければ何なのだ、と。

果たしてセイレムに魔女は現れ、凄惨な魔女裁判の門は開かれた。“鍵穴”となる狂瀾たる状況。人々の欲望を映しとり“鍵”となった少女。その両者が欠かせぬのだとしたら、さて、罪はどちらにあるのだろうか。


この聖杯戦争におけるアビゲイルは通常時において敬虔な清教徒としてのアビゲイルである第一霊基の姿を取っている。
彼女がその身に宿す異端の神の力を本格的に解放する時に限りセイレムの魔女たる第二段階以降の霊基解放を行い、その状態で初めて正気喪失、魔女裁判のスキルが完全に機能する。
例えアビゲイルの真名を知ったとしても普段の清教徒としての彼女の姿しか知らない者に深淵は見通せない。

【聖杯への願い】
どうかこの世界にも安らぎと信頼を。

【方針】
マスターからは戦うことを止められている。


733 : 万丈龍我&フォーリナー ◆l0C5KD2sdM :2018/05/17(木) 22:27:32 Q5d5jfxs0



【マスター】
万丈龍我@仮面ライダービルド

【聖杯への願い】
特に考えていない。強いて言うなら愛と平和。

【能力・技能】
ハザードレベル
ネビュラガスと呼ばれる、人間を怪物・スマッシュに変貌させる火星由来の特殊なガスへの耐性。
レベル2.0以上でネビュラガスを注入されてもスマッシュに変貌しなくなり、3.0以上でビルドドライバーを用いたライダーシステムで変身できるようになる。
感情の昂ぶりに呼応してレベルが上がり、レベルが上がるほど身体能力が上昇し、より上位のライダーシステムの使用にも耐えられるようになる。
万丈は他のライダー、トランスチームシステムの変身者に比べハザードレベルの上昇が極端に早いという性質を持っている。

格闘術
システマの格闘家であり、戦闘時にも培った格闘技術を用いる。

領域外の生命(エボルトの遺伝子)
地球の理では測ることのできない異星生命体。
万丈龍我は人間ではない。数多の星を滅ぼした異星生命体、エボルトが23年前に地球を調べるために火星に送り込まれた無人探査機に潜ませた自身の細胞、それが地球に帰還した際偶然近くにいて身ごもっていた万丈優里の体内にいた胎児に寄生して生まれた存在。
言うなればもう一人のエボルトとでも言うべき存在。
石動惣一に寄生したエボルト曰く「戦うことでしか満たされない、全てを滅ぼすまで戦い続ける」。
万丈のハザードレベルの上昇率が異常なまでに高いのはこの特殊な出生のため。また人間が触れても何も起きないパンドラボックスの力を発現させるなど不可思議な力を発動させることも。
この聖杯戦争では魔術的強化なしでもサーヴァントの殺傷を可能とする他、人属性に対する特攻効果を半減し、アビゲイルの正気喪失、魔女裁判スキルの影響を受けにくくなっている。

【Weapon】
ビルドドライバー
仮面ライダークローズへの変身ベルト

フルボトル
同じく仮面ライダークローズへの変身に使うボトル型アイテム。
変身に使わずとも振るだけで中の成分を活性化させ、使用者を強化することができる。
万丈が所持しているのはドラゴンフルボトル、ロックフルボトル、タカフルボトル、ドラゴンマグマフルボトルの四種。

クローズドラゴン
元々は桐生戦兎が万丈へのお目付け役として開発した自立行動するドラゴン型サポートメカ。
口から炎を出したり、毒に侵された対象に噛み付き、吸い出して解毒する能力まで持つ。だがその反面、独特な音を撒き散らすというデメリットもあり、隠密行動には不向き。
万丈の強い思いを観測しシンクロすることで変身状態へと移行し、ビルドドライバーに装填することで資格者を仮面ライダークローズに変身させる。
本来ビルドドライバーは異なる二本のボトルによる変身を前提としているが、クローズドラゴンはドラゴンフルボトルの成分量を二倍に増幅するためボトル一本でも変身できる。

ビートクローザー
仮面ライダークローズ変身時に使用する剣

クローズマグマナックル
クローズの強化形態、クローズマグマの変身に使う他通常のクローズの装備武器としても使えるブラスナックル型のアイテム。
ドラゴンマグマフルボトルをセットしビルドドライバーに装填することでクローズマグマへと変身する。
セットしたボトルの成分を超高音で加熱し成分量を四倍に増幅させる機能がある。
変身したクローズマグマは全体的にクローズを強化した性能を持ち、新たに背部ブースター「ソレスタルパイロウイング」が搭載され、燃え盛る炎の翼で飛翔する。
また変身者のハザードレベルに応じて基本スペック自体も向上していく。

【ロール】
現役のプロボクサー。階級はフェザー級、国内王者。
多額のファイトマネーにより贅沢をしすぎなければ数か月は生活できる程度の貯蓄がある。

【人物背景】
横浜の産婦人科で3203gの元気な赤ん坊で生まれた男。両親は十年前に事故で他界しているが本人は当時の記憶を失っている。
システマの格闘家だったが、重い病に侵された恋人の治療費を稼ぐために八百長試合に手を出しそれが発覚して格闘技界を追放された。
その後恋人の紹介で科学者・葛城巧の助手のアルバイトをするため彼の自宅を訪れたところ彼の死体(正確には別人だったが)を発見、直後に警察に踏み込まれ冤罪で逮捕された。
一年後、闇の組織「ファウスト」の人体実験でネビュラガスを注入され逃亡。逃げた先で仮面ライダービルド=桐生戦兎と出会い彼と共に真実を探す戦いを始める。
恋人の死、仮面ライダーへの変身、北都や西都との戦争の勃発など目まぐるしく推移する事態の中でハザードレベルを上げていき、クローズマグマの力を手に入れた。
31話終了直後からの参戦。それ故に自身の出生に関する秘密はまだ知らない。


【方針】
聖杯戦争に乗った奴や市民に危害を加えるサーヴァントを優先してぶっ倒していって聖杯戦争を終わらせる。


734 : 名無しさん :2018/05/17(木) 22:28:06 Q5d5jfxs0
投下終了です


735 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/18(金) 00:25:43 GuJKxvoY0
本日は感想だけ投下します

リベンジャーズ・アヴェンジャーズ
 同じ復讐者同士。しかしお互いに歯止めが効かなくなり、それが問題となってしまう欠点が強いですね。
 二人が前進し、マイナスからゼロへと向かうには改めて自らの過去、そして過去に犯した所業を見返す必要があるでしょう。
 最も、彼らの場合は自らの非を認めるどころか、自らの罪すら理解していない節があるので非常に困難な道
 となりそうです。なんだか宝具にも不穏なフラグが……
 投下していただきありがとうございました。

六星竜一&アヴェンジャー
 実際のところ『天国』だけでなく『あの世』も実在するものか定かではないのですが、あえて言うならば、この天国聖杯
 の『天国』は紛れも無く、独りよがりで自分だけが良ければいいだけの、悪にも通ずるものでしかないです。
 悪の救世主やいづれ悪魔になる魔法少女、その他の悪たちが抱く『天国』さえも。
 単純に『復讐』を突き詰めるだけの、勝手にやってろとあしらえる程度の方がよっぽどマシなんて、受け入れ難いですよね……
 投下していただきありがとうございました。

Er ist wieder da
 あえてウワサを利用することで有利になれるとは、ある意味盲点でした。しかし、ウワサに左右されかねない諸刃の剣。
 現代社会を基準とした舞台では、中々ウワサや風評被害を簡単に拭うことは出来ません、それが理由でキャスターも皮肉
 ながら英霊になったのですから……そう考えると。確かにキャスターもマスターであるヒトラーも『無辜の怪物』の影響が
 現在進行形で続いている不可思議な存在。やっぱり現代は歪みが激しいと感じさせられます。
 投下していただきありがとうございました。

Pink Elephants on Parade
 聖杯系で一番の特徴なのが普通に生活があることと、そこには無銘の人々が暮らしている事。さらには知り合いに似た誰かが
 いるかも……ポイズンもその一人でして、ハッキリと割り切れないし、見滝原での人生も楽しいと決め打ったのが良いですね。
 人によっては、別人だからと割り切ったり、見捨てたりしたり、あるいはモヤモヤ抱え込んだまま奔走することもありますが
 それを序盤で『決めた』ポイズンの在り方は私個人として清々しく感じられます。
 投下していただきありがとうございました。

天人閑居して不善をなす
 彼女・セイバーの行動そのものがウワサになるよりかは、彼女の在り方そのものがウワサになるのか。それは今後次第でしょう。
 衛宮士郎にとってのセイバーが「ただ一人しかいない」と聞いて、やっぱりそうだろうなぁと感傷に浸りつつも。きっとそれは
 召喚されたサーヴァントも印象に残るもの。現に原作のサーヴァントも契約したマスターに影響されている節がある者がちら
 ほらいます。今回の聖杯戦争でも、そんな影響を残す英霊がいるかもしれませんね。
 投下していただきありがとうございました。

無銘の男たち
 そらいきなり大舞台の主役に抜擢されてはモブ……いえ中沢少年のような立場の人間だって戸惑いますし、覚悟すらない
 でしょう。彼のような人間が、いざ役者として名前が刻まれるとなれば、覚悟以上に彼自身の個性を最善につくさなけ
 ればならないのですから。中沢少年を後押すように呼びかけるアサシン『達』。11人いるにも関わらず、彼ら自身の
 個々の意志がまるで感じられないのが、いっそ不気味に私が思えてしまいます。
 投下していただきありがとうございました。

ハートフルストーリーの夜明け前
 吐き気を催す邪悪とは(以下略)さてマスターの仁奈にとっては過酷……召喚したサーヴァントを含めて、召喚されている
 &参戦するマスターを含めてもなお過酷な状況です。何故アイドルには悲痛が付きまとう宿命が科せられるのでしょうか。
 彼女の純粋な気持ち、子供だからという点を加えればアーチャーの存在そのものが、仁奈にとっての枷であり罪……
 このまま着ぐるみなんて着てる場合じゃあなくなる日は近いですね
 投下していただきありがとうございました。


736 : 立花響&バーサーカー ◆tHX1a.clL. :2018/05/20(日) 18:45:41 O6iLcsvQ0
投下します


737 : 立花響&バーサーカー ◆tHX1a.clL. :2018/05/20(日) 18:45:55 O6iLcsvQ0
  燃えていた。
  少し寝心地が悪くなってきたベッドも。
  小さい頃からお気に入りのぬいぐるみも。
  来るべき明日のために済ませておいた宿題も。
  今までのとりとめもない日常を綴ってきた日記帳も。
  少女の集めてきたささやかな幸せのすべてが燃えていた。

  少女が目を覚ました時、周囲は既に火の海だった。
  少女が状況を理解するよりも早く、火は扉を食い尽くし、真っ赤に染め上げてしまった。
  出口を塞がれ、周りからは火の手が迫ってきている。
  泣いても、叫んでも、返事が届くことはない。
  そのうちに煙が視界を埋め尽くし、床は火が這い回る。
  頭がくらくらし、新鮮な空気を求めて開いた口が熱に炙られ更に乾く。
  それでも叫び、助けを求め、そして来ない助けに心が折れていく。
  遂に壁を火が駆け上がり家具を飲み込み始める。たくさんの想い出の詰め込まれた本棚が燃え上がり、ぎしぎしと嫌な音を立て始める。

(誰か、助けて)

  声にならない願いは、炎に埋め尽くされ消えていく。
  そのはずだった。


738 : 立花響&バーサーカー ◆tHX1a.clL. :2018/05/20(日) 18:46:37 O6iLcsvQ0



  ―――歌が、聞こえたんだ。



  熱を孕んだ風に乗り、旋律が聞こえた。火の爆ぜる音に混ざって、聞いたことのない歌が届いた。
  力強くて、暖かくて、優しい、誰かのための歌。
  少女が最後に見たいと願った、太陽みたいな歌。
  歌声に揺れ、本棚が崩れ落ちる。炎の燃え移った本を少女に向かって吐き散らしながら倒れかかってくる。
  少女が諦めかけたその瞬間。どこからか、少女と本棚の間に煌めく『何か』が飛び込んできた。
  少女を押しつぶそうとした本棚を殴り飛ばし、『何か』は腰に携えた袋から武器を抜き放つ。
  それは、少女の常識には存在しない恐ろしい武器―――後で調べたところ、偃月刀というらしい―――だった。
  『何か』が偃月刀を振るえば、炎はまるではためくように偃月刀の軌道を追い踊る。火事の火よりも強い炎が、全ての本を急速に燃やしあげる。
  あわや少女を飲み込もうとした燃える本の山は、その一刀の元に全て瞬時に燃え尽きた。

「マスター!! ここッ!!」

  『何か』が『誰か』に声をかける。
  近づいてきていた歌声が、更に力強く響き渡る。
  歌声はぴたりと少女の部屋の前で止まり、そして。

「つらぬけえええええええええええええええッッ!!」

  少女を閉じ込めていた炎の壁を、一撃の元にぶち破った。
  黒煙が少し晴れ、『何か』と『誰か』の姿がぼんやりと見える。
  それは、輝くような美貌の、二人の少女に見えた。


739 : 立花響&バーサーカー ◆tHX1a.clL. :2018/05/20(日) 18:47:03 O6iLcsvQ0

「あなた、たち、は……」

  水分を失ってがらがらの声。
  でも、そんな声に、歌っていた少女は振り向き、ニッコリ笑ってくれた。太陽みたいな暖かさの笑みだった。

「私たち? 私たちは―――」

  崩れ落ちてくる瓦礫を、二人の少女が蹴散らしていく。

「通りすがりの、おせっかいやきなッ!」

  太陽の少女とは真逆の、雪みたいに白い少女(最初に入ってきてくれた方だ)が、再び懐から何かを取り出す。
  それは、炎にも負けない真っ赤な塗装の消火器。
  宙を舞う消火器に、太陽の少女が動きを合わせる。そっと手のひらを当て、叫ぶ。

「女の、子ぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!」

  掌底の叩き込まれた消火器が背面から爆裂する。それが中国拳法の『発勁』という技術だということを、少女が知るよしもない。
  爆裂に従い、消火剤があたり一面の火に降り注ぐ。
  本来ならばそんな使い方で効果的な消火は出来ないはずなのに、火はすぐに勢いを失くし、三人の少女に道を譲った。
  太陽の少女が駆け出し、壁に向かって拳を叩き込む。人のものとは思えぬ力が、壁に大穴を穿つ。

「だからもう、大丈夫!」

  穿たれた壁の先に広がっていたのは、泣きたくなるほどいつもどおりの夜空だった。
  少女を取り囲む災厄は、遂に膝を折ったのだ。

***

  その後、少女が目覚めると、そこは病院の一室だった。
  手を握り泣く父母が言うには、放火だったというらしい。
  寝心地が少しだけ良い、それがとてもつらい病院のベッドで一人横になり考える。
  少女を助けてくれた二人の少女のことを。
  父母に聞いても何も分からなかった少女にとっての命の恩人のことを。
  そして、いつか聞いたことのあるウワサのことを。


740 : 立花響&バーサーカー ◆tHX1a.clL. :2018/05/20(日) 18:47:33 O6iLcsvQ0


―――

  アラもう聞いた? 誰から聞いた?
  ■■■■のそのウワサ

―――

  アラもう聞いた? 誰から聞いた?
  ■■■■■のそのウワサ

―――

  アラもう聞いた? 誰から聞いた?
  ■■■■■■■■のそのウワサ

―――

  二人の少女は、駆けていく。
  ウワサの数だけ立ち上る、怪しい煙と争い目掛けて。
  そして二人は手を伸ばす。
  失せ物捕り物探し人、地震雷家事育児。
  ウワサで揺れる全ての人の、『困った声』に駆けつけて、彼らのために力を振るう。

  少女たちもまた、ウワサの一部に溶けていく。
  怪しいウワサほどじゃないけど、こっそりひそひそ、小さな声で。
  表沙汰にはならないけれど。
  少しずつ、少しずつ。


741 : 立花響&バーサーカー ◆tHX1a.clL. :2018/05/20(日) 18:47:52 O6iLcsvQ0

―――


「良かったんですか?」

  夜風に花が揺れている。電灯の光が、頼りなさげにちらついている。
  夜の見滝原は、昼とは違った怪しさに満ちていた。ウワサに流れる様々な『何か』が起こりそうな、そんなひんやりとした怪しさに。

「何が?」

  怪しい空気の只中に、白雪みたいな少女が一人。太陽みたいな少女が一人。
  二人揃って、ウワサの一部。怪しいウワサほどは取り沙汰されない、『歌うって踊る魔法少女』と謳われるウワサの少女たち。
  サーヴァントである白雪みたいな少女は、マスターである太陽のような少女に問いかける。

「聖杯戦争に巻き込まれた以上、マスターが目立てばその分マスターを狙う人物は増えていく。
 そうなれば、マスターの命にも危機が及ぶと思いますけど」
「うーん、確かにそれは困るなぁ。私が狙われて、戦闘が起こって、それで大事になったりしたら意味ないもんね」

  ずれた答えにも、サーヴァントの少女の表情は変わらない。
  彼女も理解しているからだ。マスターである少女の持っている、自身と同じ性質を。

「でも、困っている人がいるなら……それでも私は助けに行くよ」

  向き合う瞳と瞳。そこに込められた信念に曇りはない。

「これをやめちゃったら、私は私じゃなくなっちゃう。
 私は立花響で、今まで積み上げてきたすべてが立花響で、そんな立花響が私なんだ。
 だったら私は、立花響らしくいく」

  マスターの少女―――立花響の根底。誰かを助けたいという強い願い。
  響は装甲を解いたばかりの手を握りしめ、己の内の熱を吐く。

「それに、この手は、誰かと繋ぐために、伸ばしていきたい」

  その言葉は、二人が出会った時から揺るがない。
  そしてこの『誰か』は、困った人だけを指すものではない。『他のマスターやサーヴァント』だって、彼女の『手をつなぎたい人々』に当然含まれている。
  呆れるほどに聖杯戦争には向いていない少女・立花響の願い。聖杯では絶対に叶えられない願い。
  誰かが聞けば馬鹿らしいと笑うだろう。お節介だと嫌がるだろう。理由も知らずにと憤慨するだろう。
  それでも、響はそんな願いを貫くために戦い、歌に想いを乗せ、誓いを貫き通してきた。
  彼女は変わらず歌い、そして戦う。誰かとその手を繋ぎ、いつかわかりあうために。


742 : 立花響&バーサーカー ◆tHX1a.clL. :2018/05/20(日) 18:49:25 O6iLcsvQ0

「そんな感じなので! これからも、私はこんなマスターだけど、よろしくね、えっと……バーサーカー?」

  バーサーカーと呼ばれた少女は、そんな命知らずな誓いに対し怒るでも笑うでも呆れるでもなくただ見つめ返す。
  その表情は、いつもの無表情とはまた違う……あえて形容するならば、まるで遠い昔に置いてきた夢の残骸に向けるような寂しげな表情だった。

「だったら、私はマスターに危険が及ばないよう、出来る限りサポートをします。
 だからマスターも、極力、命を危険に晒すようなことはないようにしてください」
「あ、あはは、気をつけまーす!」

  少女が二人、月を見上げた。
  きっとこれから先、見滝原には彼女たちの手には収まりきれない災禍が振りまかれる。
  彼女たちの手では拾いきれない戦火が広がっていく。
  それでも、少女たちの願いは変わらない。二人は一途に、願いに向けて走り続ける。
  もう誰かの手を握れない、誰かを助けるために武器を携えた少女。サーヴァント・バーサーカー。『魔法少女狩り』スノーホワイト。
  それでも誰かの手を握りたい、誰かと分かり合うために武器を手放した少女。マスター・立花響。
  共に胸に誓ったのは、『誰かを救いたい』という願い。


743 : 立花響&バーサーカー ◆tHX1a.clL. :2018/05/20(日) 18:50:19 O6iLcsvQ0

【クラス】
バーサーカー

【真名】
『魔法少女狩り』スノーホワイト@魔法少女育成計画シリーズ

【パラメーター】
筋力:C(B→A) 耐久:D(B→A) 敏捷:D(C→B) 魔力:B(A) 幸運:D(C++) 宝具:EX

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
狂化:EX
正義と強さに固執し、国家や法に縛られることなく己の信念に従い続けた少女。
通常狂化スキルの影響を受けることはなく、逸話に頼らぬ戦闘も可能。
自身の狂化に関する逸話を開放することで耐久力に二段階、それ以外のパラメータに一段階の補正を得る。
相手に真名を看破された場合、その相手をレンジ内に捉えた瞬間自動で狂化の逸話が開放されてしまうデメリットが存在する。

【保有スキル】
魔法少女狩り:EX
一人の極悪人から少女に渡された呪い。彼女の逸話がスキルになったもの。
基本の性能は【魔法少女:A】と同等。身体能力の向上や毒物耐性などを持っている。
魔法少女と違う点は彼女が『魔法やそれに近い技術を使う者』を敵に回した場合、Aランクの【仕切り直し】と【戦闘続行】【単独行動】、幸運値に大きな補正を得るという点。
更にその『魔法やそれに近い技術を使う者』が『少女』の場合、筋力耐久敏捷も上昇し、対魔法少女特攻状態になり更にステータスが向上する。

クラムベリーの子供:C
魔法少女として殺し合いを生き抜いた証。
クラムベリーの子供は全員『強さへの飽くなき飢餓感』を有しており、このスキルが彼女の狂化の根本と言えるだろう。

困った人の心の声が聞こえるよ:A
周囲にいる人物の思考を限定的に読むことができる。
『知られたら困る』ことをすばやく聞き、相手の攻撃を先読みすることも可能となる。
ただし、同ランク以上の『心を閉ざす能力』に対してはこのスキルは通用しない。

軍略:D
相手の弱点を先読みすることで組み上げられる先手打ちの妙手の山。
読心を利用した戦闘の数々によって得た後天的な才能。
自身の戦闘効率の向上の他、大局を動かす軍略を用いる場合味方の性能を底上げすることが出来る。

不殺:EX
決して誰かを失わぬように戦う者。
バーサーカーは、たとえ悪人であっても生きている者を殺すことは出来ない。


744 : 立花響&バーサーカー ◆tHX1a.clL. :2018/05/20(日) 18:51:13 O6iLcsvQ0
【宝具】
『夢と希望を守る正しい魔法少女(スノーホワイト)』
ランク:EX 種別:― レンジ:― 最大捕捉:―
彼女に押し付けられたいくつもの理想。その残骸。彼女を縛る呪いの半分。
この宝具がある限り、スノーホワイトは自身の生き方を曲げることは出来ない。
そしてこの宝具に対して強い矛盾を抱えた場合、バーサーカーは顕現し続けることが不可能になる。


『我は一人、闇の荒野へ挑む者。悪の野望を挫く者(スノーホワイト)』
ランク:C 種別:対軍 レンジ:1-30 最大捕捉:54
彼女に押し付けられたいくつもの理想。その残骸。彼女を縛る呪いの半分。
彼女がその生涯を賭して築き上げてきた『魔法少女』としての、『魔法少女狩り』としての姿。
この逸話を開放することでステータス向上の他にいくつもの恩恵を受ける。
・レンジ内に存在している悪属性、あるいは敵性人物の攻撃すべてを察知し、必中の攻撃も回避が可能となる。
・レンジ内における宝具・スキル・魔術・その他一切の特殊攻撃の発動に対して必ず先手を打つことが可能となる。
・この宝具発動中にサーヴァントに対し勝利判定を得た場合、相手を殺すことなく英霊の座に返すことが可能となる。

ただしこの宝具を長時間発動し続けた場合、上記宝具『夢と希望を守る正しい魔法少女』の逸話との矛盾により正当な英霊としての存在を保てなくなり最後には消滅してしまう。


『月下に誓いし忠誠の剣(エクステンドカリバー・ラ・ピュセル)』
ランク:― 種別:― レンジ:― 最大捕捉:―
『魔法少女狩り』となった彼女の前には二度と現れてくれない過ぎし日の残骸。
スノーホワイトが歴史に残された英霊・スノーホワイトである以上絶対に効果を発揮することのないブランク。
それでも、スノーホワイトを護ると誓った彼の想いは、きっと失われることはない。


745 : 立花響&バーサーカー ◆tHX1a.clL. :2018/05/20(日) 18:51:59 O6iLcsvQ0
【weapon】
・ルーラ
魔法の人切り包丁と表現される武器。薙刀のように長い柄に出刃包丁をそのまま大きくしたような刃が付いている。
魔法の国製の武器で切れ味鋭く、『どんな衝撃でも壊れない』ものである。

・四次元袋
様々なものを収納可能な不思議な袋。容量制限はない。
マスター・サーヴァントを別個で閉じ込めることに成功すれば魔力の供給をカットすることが可能。

・魔法の消火器
四次元袋にしまってある何の変哲もないはずの消火器だが、何故か魔法のアイテムとして神秘が付与されている。
炎に対して強い効果を発揮し、たとえ強い魔力の篭った炎であっても確実に鎮火出来る。

・魔法の偃月刀
プリンセス・インフェルノの遺した魔法の偃月刀。魔法の武器としての高い切れ味・炎に対して高い耐性を持つ。
更に、炎の魔法が込められているため魔力に応じて火炎を生み出し、操ることが出来る。

・兎の足
赤みがかった白兎の足。窮地に限り幸運値に補正がかかる。

【人物背景】
誰かの手を掴みつづけることは出来なかった少女。

『一人のかわいらしい少女が中東の政府を一つ潰した』。
国家規模の都市伝説として語られている救世主の正体は、自身の正義感を曲げぬ頭の固い魔法少女。
魔法の国に背き続けながら戦い続けるその姿は、かの国では狂人として多くの人に知られていた。

なお、彼女は逸話における『魔法少女狩り』として呼び出されているため、姫河小雪の姿を取ることは出来ない。
基礎ステータスについても『魔法少女狩り』という名に対する魔法の国が抱えた畏怖の念によって押し上げられている。
本来のスノーホワイトとしてのスペックは歴戦の英霊と比べれば大きく劣るだろう。


746 : 立花響&バーサーカー ◆tHX1a.clL. :2018/05/20(日) 18:52:56 O6iLcsvQ0
【マスター】
立花響@戦姫絶唱シンフォギアシリーズ

【マスターとしての願い】
誰かの手を取り、護りたい。

【能力・技能】
第三号聖遺物ガングニール。
誰かの手を掴むことの出来る力。神殺しの槍。立花響のシンフォギア。
通常はペンダントの形をしており、聖詠を口にすることでギアと呼ばれる装甲を身にまとうことが出来る。
さらに時系列の関係から魔剣ダインスレイヴの力を繰り、イグナイトモジュールを使用することができる。
ただし、見滝原にはS.O.N.Gがないのでバックアップは期待できない。

中国拳法。
ハンチモー。常人離れした身体能力の持ち主。師である風鳴弦十郎ほどの練度ではないが、素の身体能力で彼女を上回れる人間は少ないだろう。

浄罪。
人の背負う罪を雪がれた証。世界で最もカストディアンに近づいた人間。神の器へと近づく人。

【人物背景】
それでも、手を掴みたいと願った少女。
誰かを救うことに対して強い強迫観念を持っている少女。「へいき、へっちゃら」が口癖。
時系列は戦姫絶唱シンフォギアGX終了後。AXZ開始前。

【方針】
困っている人が居たら助ける。
少女たちにとって聖杯戦争でもそれは変わらない。


747 : 立花響&バーサーカー ◆tHX1a.clL. :2018/05/20(日) 18:53:23 O6iLcsvQ0
投下終了です


748 : ◆dt6u.08amg :2018/05/21(月) 13:25:24 y/Fjo25g0
投下します


749 : 探偵王子とアイドルの影 ◆dt6u.08amg :2018/05/21(月) 13:27:51 y/Fjo25g0
転校生はアイドル級の美少女!

今日一日、見滝原高校はその話題で持ちきりだった。
男子はひと目見ようとひっきりなしに教室へ押しかけて、女子も大盛り上がりで噂を語り合う。
教師が制止しても全く意味がなく、授業が授業にならないときすらあるほどだった。

緩くウェーブの掛かったディープブラウンの髪を二つに括り、愛らしい顔立ちに華のような笑顔。
間違いなく美少女と呼ぶに相応しい容姿に加え、男子達は声を聞くだけで蕩けさせられる。
そして何よりも、自身の魅力を隠しもしない大胆な振る舞いが、生徒達の視線を引いて止まなかった。

「やっほー! 皆みてるぅー?」

まるで見られることが快感だと言わんばかりに笑みを振りまく転校生。
しかもただ注目を集めるだけではない。
転校初日だというのに、彼女は何一つ物怖じすることなくクラスメイトに話しかけていた。

「ねぇねぇ! 何か面白い噂とか聞かせてよ!」

転校生、久慈川りせ。
金色の瞳の転校生の噂は、クラスの垣根を超えて学校中に広まっていた。








高校では転校生の噂が流行していたが、世間ではもう一つ別の噂が広まっていた。

――美少年が経営する私立探偵事務所。

普通の人は探偵事務所などに頼ることなど滅多にないが、それでも頻繁に聞き込みをしているクールな少年の姿はよく印象に残るものだ。
彼が一体どんな仕事を請け負っているのかは誰も知らない。
聞き込みの内容も意図がよく分からないものが多く、それゆえにミステリアスな存在として噂の的になっていた。

その屋号は白鐘探偵事務所。唯一の所員にして所長の名は白鐘直斗。
そして今、学校を騒がす噂の転校生が、噂の探偵事務所の扉を開けた。

「ただいまぁー」
「おかえりなさい、アルターエゴ。学校では指示通りにやれましたか?」
「むり、きらい、しんどすぎ。ちょーっと愛想振りまいてやっただけでヘラヘラしちゃって馬鹿じゃないの? ていうかこんなコトして意味あるわけ?」
「シャドウの君に説明して意味があるとは思えませんね」

シャドウ――目を逸らしていた自分自身の一側面が暴走したもうひとりの自分。
秘めていた思いや悩みを悪質に曲解したものを行動原理とし、本人が決してしないような言動でそれを実現しようとする。
彼らは発生源の人間を精神的に追い詰め、お前は自分ではないと否定させることで怪物的な姿へ変貌し、その人間を殺す。
しかし、シャドウもまた自分の一部であると認めることができれば、シャドウは戦うための力『ペルソナ』へと姿を変える――そういう存在だ。

直斗も自らのシャドウと直面し、仲間達のおかげで窮地を乗り越えることができたという経験がある。
そして久慈川りせのシャドウとは直接相対することはなかったが、ある程度の概要は仲間達から聞き及んでいる。

りせのシャドウが発生した原因の感情……それは本当の自分を見てもらいたいという願望。
アイドルとして人気を集めていたりせは、作られたキャラクター性ばかりが注目されることに思い悩み、芸能活動を休業した。
現在は活動再開に向けて準備を進めていると聞いているが、ともかくりせのシャドウはりせ本人に受け入れられ、ペルソナ『ヒミコ』に変化してりせの力となったはずだった。

「サーヴァントはあくまでオリジナルの一側面を切り取ったもの……だとすると、久慈川りせに受け入れられる前の、アルターエゴというクラスに最も適合する時期が抽出されたと見るべきでしょうか」
「何ブツクサ言ってんのよ。令呪まで使われたから大人しく命令されてやったけど、意味ないことさせてるんならぶっ壊すからね?」
「……仕方ありませんね。流石に二画目を切るには時期尚早ですし、他のマスターに事情を説明するリハーサルのつもりで話すとしましょう」

直斗はデスクに座ったまま書類整理の手を止めた。


750 : 探偵王子とアイドルの影 ◆dt6u.08amg :2018/05/21(月) 13:28:22 y/Fjo25g0
「知っての通り、僕はこの異世界において『転校生の少年探偵』という役割を与えられるはずでした。ですが、どうやら僕は記憶を取り戻すのが早すぎたらしく、転入手続きを始める前にマスターとしての自覚を得てしまったわけです」

原因は直斗自身にも分かっていない。
単にそういうこともあるだけなのか、何かしらの作為が関わっていたのか。
どちらにせよ、それは直斗にとって好都合だった。

「聖杯戦争とやらの開催目的と元の世界へ帰る方法を調査するにあたって、できることなら探偵としての活動に専念したいものです。しかし、学校は僕が配置されるはずだった舞台のひとつ。そこが何かしらの形で重要なポジションになる可能性は否定できません」
「だから『学校に溶け込んでケンゼンに噂を集めてこい』なんて命令したわけ? 三画しかない令呪で? 馬鹿なんじゃない?」
「どんな推理も地道な情報収集あってこそですよ。幸い、君は大人しくしていれば気配を悟られにくくなるスキルを持っていましたから。提出書類に手を加えて『転校生は白鐘直斗ではなく久慈川りせである』ということにする作戦さえ通れば、後は楽なものです」

アルターエゴはソファーに寝そべったまま、見下すような眼差しを直斗に向けている。
久慈川りせ本人がこの場にいないせいか、それともサーヴァントとして召喚されたからか、無秩序に自分の欲求を発散するようなことは今の所していない。

「帰る方法なんて七体ぶっ殺して聖杯ぶんどればオシマイなんじゃないの」
「いいえ、違いますよ」

直斗は一切の躊躇なく断言した。

「君がいない間に、いつの間にか覚えさせられていた最低限のルールを改めて精査しました。七騎分の魂をソウルジェムに満たすことで聖杯は完成するとされていますが、聖杯を得れば脱出が許されるという取り決めはありません。それどころか生還条件そのものが明示されていないのです」

先程から直斗が整理していた文書は、無意識下に刷り込まれていた聖杯戦争関連の知識を文章として書き出し、更に推理と考察を加えたものだ。

「聖杯が単なる勝者への報酬なら、最終的な勝者が決した後で授与するか、聖杯を得た時点で勝ち抜けとされているはず。裏を返せば『そうではない』可能性が充分にあるのだと考えるべきでしょう」

それらの文書の中でも特に確信が持てると感じた数枚をデスクの上に並べる。
直斗の語り口は、もはやアルターエゴに聞かせるためのものではなく、自分自身の考えを発展させるための考察と化していた。

「戦いが進行すればするほど聖杯の数は増えていく。つまり聖杯戦争の主催者が望んでいるのは、見滝原に聖杯を持つマスターが複数存在するシチュエーションか、もしくはマスターは無関係で複数の聖杯の存在が重要なのか……いや、そうだとしたら戦いを優位に進めるための消費が禁止されていないのは不自然だ」
「ねぇもう引っ込んでていい?」
「使えないようにすることが不可能だったから、戦闘での消費は致し方のないリスクとして許容した可能性もある。だけどもしかしたら、主催者が望んでいるのは『見滝原という限られた範囲内で、一定数の聖杯が消費されること』なのかもしれない……例えばそれが何か別の事象のトリガーになっているとか」

直斗は書類を再び一つの束に纏め、ソファーの方をみやった。
アルターエゴはいつの間にか霊体化して姿を消していた。長話に飽きてしまったのだろう。

「仮に聖杯を消費して帰還することが許されているとしたら、その可能性は飛躍的に高まりますね。元の世界に帰りたいという誰もが抱く欲求が、主催者の目的の成就に直結するわけですから。無論、まだ仮説としても弱い段階ではありますが」

最後に現時点での推測を言葉にしてから、直斗はデスクから立ち上がる。
気配からしてアルターエゴはまだ建物の中にいるので、言葉にすれば間違いなく耳に届くだろう。

もちろん未だ真相には程遠いと分かっている。
聖杯は殺し合いを促進する餌に過ぎず、主催者の目的には何の関わりもないという可能性も否定しきれない。
そもそも脱出手段があるということすら仮定に過ぎない。皆殺しが大前提というパターンも考慮しておくべきだろう。

だが、今はまだ何も分からないということは、真相究明に挑む価値が存在しないことの根拠にはなり得ない。
たとえ真実が深い霧の向こうに隠されていたとしても、諦めさえしなければたどり着くことができるのだから――


751 : 探偵王子とアイドルの影 ◆dt6u.08amg :2018/05/21(月) 13:30:38 y/Fjo25g0
【CLASS】アルターエゴ
【真名】久慈川りせ(シャドウ)
【出典】ペルソナ4シリーズ
【性別】女
【身長・体重】155cm・41kg(共に事務所公称値)
【属性】混沌・中庸

【パラメータ】筋力E 耐久E 敏捷D 魔力B 幸運C 宝具B

【クラス別スキル】
対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

単独行動:C
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。

【固有スキル】
魅惑の美声:C
 人気絶頂のアイドルとしての天性の才能。
 男性に対しては魅了の魔術効果として働くが、対魔力スキルで回避可能。
 対魔力を持っていなくても抵抗する意思を持っていれば、ある程度軽減することができる。
 女性に対しても1ランク下がるものの効果を発揮する。

ペルソナ(偽):C+
 困難に立ち向かうための人格の鎧。ペルソナ"ヒミコ"を使用する。
 敵の解析を得意とする情報支援形態と、攻撃端末を操る戦闘形態を切り替えられる。
 本来ペルソナはシャドウが変化したものであり、通常であれば併存しない。
 しかし特殊な状況下で併存した事例があることからスキルとして獲得している。

シャドウ:B
 誇張され暴走した「もう一人の自分(アルターエゴ)」
 発生源と同じ姿を取っている間はサーヴァントとして感知されにくくなり、
 ステータスが大幅に低下し宝具も使用できなくなる。
 人の姿を捨てることで十全の能力値を発揮し、宝具が解禁される。
 同時に固有スキル全てが使用不能になり、代わりにBランクの魔術スキルを獲得する。

【宝具】
『我は影、真なる我(マハアナライズ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:5人
 完全解析。対象の戦闘データを秘匿情報も含めて解析し尽くす。
 解析された相手は攻撃傾向すら事前に予測され、攻撃を当てることすらできなくなる。
 直接攻撃のみならずデバフ付与スキルすらも通じない。
 更に魔術スキルと組み合わせ、解析した弱点を確実に突く攻撃を繰り出すこともできる。
 情報アドバンテージを活用できるマスターであれば他を寄せ付けない性能を発揮する。

【weapon】
『マイクスタンド』
 打撃に使用するが、特別な効果があるわけではない。

『ペルソナ ヒミコ』
 オリジナルの久慈川りせのペルソナ能力。
 主にアナライズ等のスキルとナビゲーションによる情報支援を担当する。
 派生作品「P4U2」では前作ペルソナ3のナビゲーションも登場し、情報支援能力でそちらが上回っていたことから自身の価値に悩み、色々あって戦闘形態を獲得した。

 本編においては、りせ本人に受け入れられたりせのシャドウが変化したもの。
 つまりヒミコとりせのシャドウは完全に同一の存在であり、同時に存在することはなかった。
 シャドウがペルソナを使用した事例は「P4U2」でのこと。
 該当作品ではほぼ全ての操作キャラクターのシャドウがペルソナ付きで登場している。
(本編のシャドウとは違う経緯で生まれたもの)

【人物背景】
「誰も本当の自分を見てくれない」「本当の自分を見て欲しい」という願望から生じたシャドウ。
本人の性格とは完全に乖離した過激な発言を口にし、自分のすべてを見せつけると称してストリップショーを催そうとする。
目を逸らしてきた本質をりせにぶつけ、本人に否定されたことで歓喜しながら暴走状態に突入。
極彩色のサイケデリックな体表の巨大な女性の姿に変貌し、ポールダンスのような艶めかしい動きをしながら圧倒的な力で主人公達を追い詰めた。

原作では終始ビキニ姿だったが、「P4U2」ではもっと酷い有様だった巽完二のシャドウと同様、ちゃんと服を着ている。
サーヴァントとしての姿は制服を着た状態がデフォルト。任意で原作のボス形態になる。

ペルソナスキルのランクは、ヒミコをCとして進化順にカンゼオンがB、コウゼオンがAという想定。
P4U2のヒミコは戦闘形態を獲得したのでC+、りせのシャドウはヒミコしか使っていないのでこのランク。

【聖杯にかける願い】
本当の自分を見せつける。気に食わないものは全部ぶっ壊す。


752 : 探偵王子とアイドルの影 ◆dt6u.08amg :2018/05/21(月) 13:31:04 y/Fjo25g0
【マスター名】 白鐘直斗
【出展】ペルソナ4
【性別】女(男装している)

【能力・技能】
・ペルソナ能力「ヤマトタケル」
ゲーム中の性能は高速で即死呪文を使い雑魚を蹴散らす役割が中心。
それ以外は万能属性や物理属性スキルを使うが、弱点を突きにくくボス戦では扱いづらい。
アッパーバージョンのP4Gでは性能が調整され、各属性の呪文や支援呪文もそれなりに習得できるようになり、ボス戦のサポート役としても役立てるようになった。

・探偵としての能力
警察から調査協力を依頼されるほどの推理力を持つ。異名は探偵王子。
ちょっとした機械の改造などもでき、探偵グッズ的なものも作成できる。
十分な設備があれば通信機能付きの探偵バッジも作れたという。

【人物背景】
身長152cm(帽子と靴込みで165cm)、体重非公開。十六歳(高校一年生)
代々探偵家業を続けてきた一族の生まれで、学生ながら現役の探偵。直斗の代で五代目。
稲羽市連続殺人事件の調査のため特別調査協力員として警察に招かれ、主人公達と関わっていくことになる。
詳しくはペルソナ4本編を参照。参戦時期は本編終了後。
非公式考察Wikiのキャラクター個別ページにも詳細な記述がある。

学生ながら警察に協力するほどだが、年齢の若さから現場の警官からは軽んじられることも多く、用が済めば逆に厄介者扱いされることも少なくなかった。
子供のくせにと軽んじられ、必要とされないことへの苦悩が「大人の"男の"探偵になりたい」という形でシャドウを生み、人体改造を施されそうになった。

【聖杯にかける願い】
なし

【方針】
聖杯戦争とその主催者について調査と推理を進める。


753 : ◆dt6u.08amg :2018/05/21(月) 13:31:27 y/Fjo25g0
投下終了です


754 : ◆Pw26BhHaeg :2018/05/23(水) 12:20:51 IVBKILsM0
投下します。


755 : ◆Pw26BhHaeg :2018/05/23(水) 12:22:57 IVBKILsM0


「ハルミ……! サトシ……!」

忘れはせぬ。あの絶望を、怒りを、苦悩を。殺され、復讐を誓い、地獄から甦った時を。
当の仇に謀られ、必要なき殺しを行い、さらなる悲劇を生んだとしても。地獄で死んで、神々の奴僕となっても。
俺の生前の記憶が薄れ、死後の記憶が薄れても、なお。妻と子を、その死を、忘れた時はない。
復讐。復讐こそが、今の俺の存在理由だ。地獄の力で奴を殺す。そのためだけに……!

『……では、ひとつ機会を与えよう。とある戦場が用意されている』

これは、俺か。あるいは、俺の意識の残滓か。
地獄で永遠に悶え苦しむ時間を過ごしていた時、そいつは呼びかけてきた。

目の前が急に明るくなり―――――



雨の夜。自宅の寝室で記憶を取り戻した途端―――目の前に恐ろしい、悪魔か死神のような男が立っていた。
黄色と黒の装束を纏い、2本の剣を背負っている。むき出しの腕は筋肉隆々。
顔の下半分は金属質のマスクで覆われ、頭には黒頭巾。手甲と脛当て。目は白く輝き、纏う空気は地獄の炎。
彼は腕を組んで見下ろし、マスクから炎を噴きながら、地獄めかした声で問いかけてきた。

「……お前が、俺のマスターか」


756 : The Frog and The Scorpion ◆Pw26BhHaeg :2018/05/23(水) 12:25:08 IVBKILsM0
つい、顎に指先をあて、小首を傾げる。彼が私のサーヴァント、ということか。
「そうみたいね。私の名は『蛙吹梅雨(あすい・つゆ)』。あ、タメ口でいいかしら。ケロ」
「かまわん」
男は眉根を寄せ、名乗る。
「俺は『アヴェンジャー(復讐者)』のサーヴァント。真名は『スコーピオン』だ」

アヴェンジャー。スコーピオン。なんと禍々しく、恐ろしい。見かけで判断するのもなんだが、見るからに「ヴィラン」だ。
「よろしくね。……あ、ちょっと待って。気持ちと情報を整理する時間を頂戴」
「もっともだ。よかろう」

目を閉じ、記憶をたぐる。今までの記憶、与えられた記憶、聖杯戦争の情報。
真名を知ったことで閲覧可能となった、アヴェンジャーのステータスと簡易プロフィール。

聖杯戦争とかいう、よくわからないイベントに突然放り込まれてしまったが……やることはまあ、今までと同じだ。
ヒーローとして弱者を救助し、生還すること。可能ならば主催者の思惑を探り、可能ならば打倒すること。
魔術や幻術の心得はないものの、超自然的なパワーを振るう連中は、自分を含め見慣れている。
また英霊、サーヴァントを倒すには、別の英霊によるか、マスターを倒すかせねばならないらしい。
彼はぼちぼち強いが、無敵ではない。やるべきことは、彼のサポート。幸い令呪というものがある。これを活用すべきだろう。



俺を地獄から……今回は英霊の座から喚び出したのは、蛙のような、とぼけた面と声をした妙な小娘。
それなりに鍛えられており、さほど動揺してもいないが―――少しは震え、汗を滲ませてはいるが―――
よりにもよって俺を喚んだ割には、妖術師にも復讐者にも見えん。
しかもこいつを殺されれば、俺は消えねばならんらしい。護衛しろというのか。

「…………お待たせ。まずはブリーフィングね。なにか聞きたいことあるかしら」
「……マスター。次に問う。貴様が聖杯にかける望みはなんだ」
「ないわ。私は巻き込まれただけ。自分の望みは自分で叶えるわ」
即答された。妙に肝の座った女だ。


757 : The Frog and The Scorpion ◆Pw26BhHaeg :2018/05/23(水) 12:27:14 IVBKILsM0
「あなたの望みは……復讐よね。アヴェンジャーだもの」
「そうだ。俺は妻子と一族と主君を殺され、俺自身も殺された。その復讐のために地獄から甦った亡者だ」
怒りが募り、体から炎が噴き上がる。そうだ、甦った。妖術師によって甦らされた。復讐のために。
「しかし、復讐によって彼らが生き返るわけではない。生き返らせるには聖杯が必要だ。俺はそのために喚ばれたのだろう」

俺を甦らせた妖術師クァン・チーは、俺を騙し、利用していた。俺と妻子と一族と主君を殺したのは、クァン・チーだったのだ。
真の仇であるクァン・チーは、俺を地獄へ送り返そうとした。俺は奴を道連れに地獄へ戻り……しかし……それからの記憶は定かでない。
分かっているのは、俺が神々の代理戦士『サーヴァント(従僕、聖戦士)』となったこと……そしてクァン・チーが滅んでいないことだ。

俺は何を望むべきか。俺が復活し、妻子と一族と主君が復活し、平和な日常を取り戻すことか。
あるいは復讐か。サブ・ゼロは殺したが、奴は仇ではなかった。妖術師クァン・チーを今度こそ滅ぼさねばならない。
どちらを選ぶにせよ、聖杯が複数必要。神々の力をもってすれば願いは叶うかも知れないが、奴らもあまり信用ならない。
まずは、復讐。己の手で禍根を絶つ。それから復活だ。地獄暮らしも長くなったが、いよいよチャンスが巡って来たか。

聖杯戦争。試合場での一対一の闘いではない、なんでもありの殺し合い。
幾度も殺し、幾度も死んだが、忍者として戦うにはこちらの方がよい。姿を隠し、闇に紛れて標的を暗殺するのだ。
恨みはないが、俺のためだ。死んでもらおう。死闘(Mortal Kombat)の幕開けだ。

「なるほどね。……あなたの能力はざっと見たわ。私は……」

小娘は舌を出し、鞭のように伸ばして振り回すと、電気のスイッチを押した。
「『蛙っぽいこと』ならだいたいなんでも出来るわ。舌を伸ばしたり、高く跳躍したり、水中を泳いだり。
 あんまり破壊力とかはないけど、人助けには充分。あとは頭と心の使いようね。サポートするわ」


758 : The Frog and The Scorpion ◆Pw26BhHaeg :2018/05/23(水) 12:29:15 IVBKILsM0
「……人助け? 俺に人助けをさせる気か」
「そうね。私はヒーロー『フロッピー』。仮免だけど。……今、この街には殺人鬼とかのウワサもある。
 私の性格上、受けた教育上、困ってる人は見捨てられないの。人殺しはしたくないし、放置したくもないわ。
 帰還だけを望む人々は、帰還させなきゃ。場合によっては、この聖杯戦争の主催者に挑まなくてはならないかも」

荒事には慣れており奇妙な能力はあるが、性格は善良な小娘のようだ。やりにくい。
「……聖杯を手に入れるには、他の英霊を狩らねばならん。時にはマスターの方を殺さねば、手に負えんものもいよう。
 お前に出来なくとも、俺には出来る。地獄でも現世でも数え切れぬほど殺した。お前がやりたくないなら、俺が勝手にやる」

小娘は、ふるふると首を振る。
「英霊だけを倒し、悪人は無力化出来ればいいの。私が殺したら、あなたに殺しを許したら、生きて還っても心の汚点になる。
 それはヒーローじゃなくて、ただの敵(ヴィラン)、悪役への道なのよ。そこは譲れない」
言葉を切り、じっと俺の目を見る。私ごときが、とは言わず。
「あなたに起きた悲劇を、繰り返してはいけないわ」



「……よかろう」
地獄の亡者、復讐鬼は、禍々しい声で宣告する。
「なぜお前が俺を喚んだのかは知らん。興味もない。俺は自らのために、聖杯を獲得するために動く。
 だが―――お前に免じて、生きた人間は殺さん。敵対する英霊だけを殺す。お前の命を守ってもやろう」
「わかってくれて嬉しいわ。ありがとう」
「聖杯は俺に必要だし、帰還のためにはお前にも必要だろう。聖杯が一つ余れば、お前を現世に返してやる。
 お前がそれまで生き残っていればだがな。見返りは、俺をサポートすることだ」
「もちろんよ」

彼にも人間性は残っているようだ。ほっ、と息をつく。しかし……安心は出来ない。

不吉なことだが、海外の寓話に『蛙とサソリ』というのがある。亀とサソリ、とも。
対岸へ渡ろうと蛙の背を借りたサソリが、つい蛙を刺してしまい、共に沈んで死ぬというものだ。
なぜサソリは、自分の破滅を招くと知っていて蛙を刺したか。それがサソリの本性だから、というのだが……。



心正しき者の歩む道は、心悪しき者のよこしまな利己と暴虐によって行く手を阻まれる。
愛と善意の名において、暗黒の谷で弱き者を導く者は幸いだ。彼こそは真に兄弟を守り、迷い子達を救う羊飼いであるから。
よって我は、怒りに満ちた懲罰と大いなる復讐をもって、我が兄弟を毒し、滅ぼそうとする汝に制裁を下す。
そして、我が汝に復讐する時、汝は我こそが主である事を知るだろう。

                       ―――――『エゼキエル書』25:17、映画『ボディガード牙』序文


759 : The Frog and The Scorpion ◆Pw26BhHaeg :2018/05/23(水) 12:31:13 IVBKILsM0
【クラス】
アヴェンジャー

【真名】
スコーピオン@モータルコンバットシリーズ

【パラメーター】
筋力C+ 耐久B 敏捷B+ 魔力C 幸運D 宝具C

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
復讐者:A
復讐者として、人の恨みと怨念を一身に集める在り方がスキルとなったもの。
周囲からの敵意を向けられやすくなるが、向けられた負の感情は直ちにアヴェンジャーの力へと変化する。被攻撃時に魔力を回復させる。

忘却補正:A
復讐者は英雄にあらず、忌まわしきものとして埋もれていく存在である。人は多くを忘れる生き物だが、復讐者は決して忘れない。
忘却の彼方より襲い来るアヴェンジャーの攻撃は、正規の英雄に対するクリティカル効果を強化させる。

自己回復(魔力):B
復讐が果たされるまでその魔力は延々と湧き続ける。微量ながらも魔力が毎ターン回復し、魔力に乏しいマスターでも現界を維持できる。

【保有スキル】
忍術:A++
忍者たちが使用する諜報技術、戦闘術、窃盗術、拷問術などの総称。各流派によって系統が異なる。将軍に仕える白井流の師範級忍者であった。
Aランクの「気配遮断」に相当し、忍法により相手の背後に瞬間移動して攻撃する(テレポート・パンチ)。

魔力放出(炎):A
武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。
燃え盛る地獄の炎が常時武器と肉体に宿る。拳や蹴りに纏わせ、口や眼窩からも噴いて敵を火達磨にする。
霊体をも燃やす超常の炎であり、敵は肉体を焼き尽くされて骨だけになる。トースティ!

旧き神々の加護:EX
宇宙最高の全能の神々「エルダーゴッズ」の加護。危機に際してなんらかの形で様々な加護が与えられる。
神々にとって都合の悪い敵を排除するため「サーヴァント(従僕)」として使役された逸話によるもの。
しかし神々は人間を虫けら程度にしかみなしておらず、彼が要求した「妻子の復活」もアンデッドとしての不完全な復活であったという。


760 : The Frog and The Scorpion ◆Pw26BhHaeg :2018/05/23(水) 12:33:09 IVBKILsM0
【宝具】
『忍者の戦に耐える剛健な銛(バトルハープーン・オブ・スコーピオン)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-10 最大捕捉:10

スピアー(槍)とも。縄(MK9からは鎖)の先に苦無をつけた投擲武器。標的に投げつけて突き刺し、引っ張って引き寄せる。
頭や胴体を貫き、首や手足をもぎ取るほどの威力がある。カメェ!ゲロオバヒア! 実は2本ある。
映画版やTVドラマ版では掌を突き破って飛び出す蛇めいた生体武器で、かなりの距離まで伸びる。

『奈落より来たれ亡者(インフェルノ・ミニオン・ヘルファイア)』
ランク:C 種別:対人/結界宝具 レンジ:1-10 最大捕捉:10

地獄(Netherrealm)から燃え盛る亡者を召喚し、一瞬だけ戦わせる。標的の足元に喚んで拘束させたり(ミニオン・グラブ)、
空中で喚んで飛び蹴りを食らわせたり、敵の背後に喚んで体当たりさせたり(ミニオン・チャージ)使い勝手がよい。
固有結界として展開すると、掴んだ相手を燃え盛る熔岩が流れる地獄へ引きずり込み、自分に有利な舞台で戦える。

【Weapon】
宝具、2本の忍者刀、己の肉体。カニバサミで相手をダウンさせる「蠍双脚」、空中で巴投げをかます「幻空脚」などの技を使う。

【人物背景】
アメリカの残虐対戦格闘ゲーム『モータルコンバット(Mortal Kombat)』シリーズに登場するダークヒーロー。
地獄から甦った復讐の忍者。CV:エド・ブーン他。身長188cm、体重95kg、髪は黒く、目は白い。
黄色い忍者装束と黒頭巾、面頬を身に着け、地獄の炎とハープーン(銛)で戦う。実は顔はマスクで、その下は髑髏である。生前は髭面。
もとは日本人で、本名を「ハンゾウ・ハサシ(Hanzo Hasashi,波佐志半蔵)」といい、忍者組織・白井流の師範(グランドマスター)であった。
だがある時、彼の妻子(ハルミ、サトシ)と一族は、凍気を操る忍者サブ・ゼロが属する中国の忍者組織「リンクェイ(燐塊/林鬼)」によって皆殺しにされてしまう。
彼もサブ・ゼロの手にかかり死んだ(享年32歳)が、地獄へ落ちた彼の魂は妖術師クァン・チーによって甦り、スコーピオン(全蠍人)と名付けられた。
そしてサブ・ゼロへの復讐のために、彼が出場する暗黒少林武道会「モータル・コンバット」に参加したのだった。
首尾よく仇を討ったスコーピオンであったが、不死の肉体となってしまった為救われず、永遠に地獄を彷徨うことになる。

MK4ではクァン・チーに唆され「旧き神々」に反逆するが、実は彼の仇はサブ・ゼロではなくクァン・チーであったことが明らかになる。
これを知った彼はクァン・チーを巻き添えに地獄へ戻る。DAでは地獄での戦いで敗れ肉体を失うが、旧き神々によって救われ「サーヴァント」となった。
その他にも彼にはいろいろな逸話・異説があり、このスコーピオンはそういういろんななんかが座に登録されたスコーピオンである。
彼の人気は高く、本来の主人公リュウ・カンを差し置いて『モータルコンバット』シリーズの主役的存在となっているほどである。
またライバルのサブ・ゼロを含め多数のコンパチ・カラバリがいる。『ニンジャスレイヤー』に登場する様々なニンジャたちの原型のひとつ。
クロスオーバー作品ではスーパーマンやバットマンとも戦った。アサシン、ランサー、バーサーカーなどの適性もあるが、今回はアヴェンジャーとして現界。

【サーヴァントとしての願い】
クァン・チーへの復讐、妻子と一族と自らの復活。

【方針】
邪魔する者は殺し、聖杯を獲得する。敵対すれば女子供でも無慈悲にフェイタリティする。
ただしマスターに誓った手前、殺すのは英霊に限る。マスターは殺さないまでも再起不能ぐらいにはするかも。

【把握手段】
『モータルコンバット』シリーズのどれか。YouTubeとかWikiとかを参照したり、ご近所のモータリアン(MKのファン)に聞いたりしよう。
勝利後に自分の人形を宣伝したり、ペンギンや巨大サソリや赤ん坊に変化したりは(多分)しない。


761 : The Frog and The Scorpion ◆Pw26BhHaeg :2018/05/23(水) 12:35:19 IVBKILsM0
【マスター】
蛙吹梅雨@僕のヒーローアカデミア

【Weapon・能力・技能】
『“個性”:蛙』
「蛙っぽいこと」ならだいたい出来る特異体質。蛙を人間大にスケールアップしたような様々な身体能力を持つ。
水中(海水含む)での自在な活動が可能。強靭な脚力を持ち、50mを5秒58で駆け抜け(現実世界なら男子世界記録級)、
人間二人を抱えて高く跳躍でき、キックも強烈。走るときは四つん這い。壁に両手足の裏を吸着させて移動する。
舌は最大20mまで伸びて標的を鞭打ち絡め取り、胃袋は物を飲み込んで収納でき、胃袋自体も出し入れ自由。
多少ビリっとする程度の毒性粘液を分泌したり、体色を変化させて周囲の背景に溶け込んだり(保護色)も可能。
火力は低いが汎用性に富む。突出した長所も短所もないが、寒さには弱い。家族一同蛙めいた容姿であり、“個性”は遺伝によるもの。

『ヒーローコスチューム・フロッピー』
緑を基調とした水中戦想定のボディスーツ。大き目のグローブ、ゴーグルを着用。そのシルエットはまさに蛙。

【人物背景】
堀越耕平の漫画『僕のヒーローアカデミア』に登場する少女。CV:悠木碧。国立雄英高校ヒーロー科1年A組所属の15歳。
身長150cm。腰でリボン状に結んだ長い黒髪、どんぐり眼にひの字口、下睫毛の蛙顔ケロイン。手足が大きく小柄で猫背だが割とナイスバディ。
個性は『蛙』。自分で考案したヒーロー名は「梅雨入りヒーロー『FROPPY(フロッピー)』」。友達になりたい人には「梅雨ちゃんと呼んで」と言う。
思ったことを何でも言っちゃう性格だが、常に冷静で洞察力・判断力・先見性も高い。善良で正義心は強く、勇敢かつ仲間思い。
「課題らしい課題のない優等生」「人々の精神的支柱となり得る器」と評される。表情は乏しいものの笑顔はカワイイ。
コミュ力は意外に高いが割合繊細。何かしら思うところがあると、口元へ人差し指を当てる癖がある。

【ロール】
高校生。超人社会ではないため、普段は“個性”を人前で出さないよう注意する。
家族もNPCとして存在しているが、蛙っぽいだけで“個性”は持たない。

【マスターとしての願い】
なし。自分の願いは自分で叶える。

【方針】
弱者を保護・救助し、帰還希望者を率いて脱出する。
また主催者の思惑を探り、可能ならば打倒する。殺人はしないし、させない。

【把握手段・参戦時期】
原作。仮免取得後。


762 : ◆Pw26BhHaeg :2018/05/23(水) 12:37:10 IVBKILsM0
投下終了です。


763 : ◆dt6u.08amg :2018/05/24(木) 01:05:50 JkEqMf0E0
投下します


764 : パートナーズ・イン・バーガーショップ ◆dt6u.08amg :2018/05/24(木) 01:06:47 JkEqMf0E0
見滝原駅前のとあるハンバーガーショップは、今日も大勢の客で賑わっていた。
中高生はもちろんのこと、家族連れからサラリーマンまで客層は幅広い。
そこにいる誰もが、この平穏な時間が乱されることはないと心の底から信じていた。
――彼らが現れる瞬間までは。

「ハンバーガーセットを二つ。ドリンクはアイスコーヒーを」

あまりにも不審な二人組の出現に店内が凍りつく。

一人は肌の露出が全くない"銀尽くめ"の長身の人物で、注文をした声からして男であることは間違いない。
銀色のカウボーイハット状の帽子を被り、これまた銀色のコートをまとい、襟のボタンを全て閉めて顔すら隠している。
手には丈長の革手袋を嵌めていて、コートの袖口からすら素肌が見えないという念の入れようだ。

もう一人は"銀尽くめ"と比べると常識的な変装の範疇だが、念入りすぎて完全に不審者と化していた。
ニット帽で髪を隠し、大きなサングラスとマスクで顔を隠し、季節感のないガウンジャケットで体型を隠している。
個人特定の手がかりこそないものの、ひと目見たら忘れられそうにないビジュアルだった。

「こ、こちらでお召し上がりになりますか? それともテイクアウトで……!?」
「こちらで」
「……ハイ、ゴユックリ……」

早く帰って欲しいという店員の願いも虚しく、怪しすぎる二人組は店の一画に居座って話し込み始めた。
しかし他の客は盛大に距離を取ったり、足早に店を出ていったりしていたので、彼らの話を聞こうという者は誰ひとりとして現れなかった――




「マスター・奈緒。嫌だと言っていた割には実にブラボーな変装じゃないか。さすがはアイドルというだけのことはある」
「普段はしないからな、こんな変質者レベルの変装! 間違ってもあたしだってバレたくないから仕方なくだからな!?」

二人組の不審者の正体。
それはシールダーのサーヴァント・キャプテンブラボーとそのマスター・神谷奈緒であった。
奈緒の服装は純然たる変装だが、シールダーの格好は変装でもなければ仮装でもない。
この銀色の装束は、彼をシールダーたらしめる鉄壁の防御宝具なのである。

「正しい判断だ。マスターであるという事実はなるべく気取られない方がいい」
「いやそうじゃなくって。全身コートの不審者と一緒にいたとか噂になりたくないんだってば」
「安心しろ。俺はいかなる局面でも本名を名乗らずにやり過ごすことが得意中の得意だ。警察の職務質問だろうと容易に切り抜けられる」
「『仕切り直し』スキルってそういうことかよ!」

変装したまま頭を抱えて突っ伏す奈緒。
そんなマスターに対し、シールダーは急に真面目な口調で語りかけた。

「マスター・奈緒。ここはキミにとって本来あるべき世界ではない。旅の恥はかき捨てというほど気楽な問題じゃないが、マスターとしての自覚を取り戻した以上、過剰に周囲の目を気にする必要はないだろう」
「……何ていうか、その……」

奈緒は否定も肯定も出来ずに言葉を濁した。

「ふむ、なるほど。俺に改めて相談があると言っていたが、それ絡みの問題か」
「実はさ……あたしの友達っていうか、アイドル仲間も……ここに連れてこられてるみたいなんだ」


765 : パートナーズ・イン・バーガーショップ ◆dt6u.08amg :2018/05/24(木) 01:07:10 JkEqMf0E0
ためらうような素振りを交えながら、奈緒はシールダーとの対話を望んだ理由を説明する。
記憶を取り戻し、マスターとしての自覚を得た奈緒は、同じ高校の生徒に元の世界でアイドルユニットを組んでいた少女がいたことに気がついた。

その少女の名は渋谷凛。奈緒と同じトライアドプリムスのメンバーだ。

奈緒と凛は学年が違うので、彼女の存在に気がついたのは今日になってからのことだった。
驚いて声をかけようかと思ったが、様々な可能性に思い至ったので、まずは放課後にシールダーと相談をしてから行動することにしたのである。

「だってさ、ほら……あっちはまだ記憶が戻ってないだけかもしれないし、ただのそっくりさんって可能性もあるだろ? それに……」
「既にマスターとして覚醒し、聖杯戦争の準備を進めているかもしれない。そういうことだな」
「……うん……」

奈緒は気弱に俯いた。注文されたハンバーガーセットとコーヒーにも口をつけていない。

「あまり悲観的になり過ぎる必要はない。キミの友人は他人を傷つけることを厭わない人間ではないのだろう? ならば問題なく同盟を組むことができるはずだ」
「けど、もしも、もしもだぞ? サーヴァントに脅されて無理やり戦わされてたら……?」
「そのときこそ俺が戦おう。シールダーのクラスは護るという一点においてどのクラスよりも優れている。俺の宝具ならキミの友人を護りながらサーヴァントと戦うこともできる」
「ほ、ほんとか!? やってくれるのか!?」

力強い言葉で保証され、変装の下の奈緒の顔に笑顔が戻る。

「無論だ。俺の信念は一人でも多くの人を救うこと。それに、たとえマスターだとしても子供が死ぬのだけは避けたいからな」
「よーし……! そうと決まったら色々と準備しないとな!」

奈緒は腹ごしらえだとばかりにハンバーガーにかじりついた。
シールダーのサーヴァントが全面的に協力してくれるなら、凛のことでこれ以上悩むことは何もない。
無邪気にそう信じている顔だった。

――だがシールダーは、キャプテンブラボーは、防人衛は、ひとつだけ奈緒に語るのを避けていた。

一人でも多くの人間を救う。それこそが彼の行動原理とも言える信念。
子供を犠牲にしたくないと思う気持ちは本物だが、どうしても二つを天秤にかけなければならないとき、彼は苦しみぬいた末に前者を選ぶ男なのだ。

もしも渋谷凛が心の底から聖杯を欲し、大勢の人を犠牲にしようとしていらなら、彼は間違いなく彼女を手に掛ける。

無論、それが平気というわけでは決してない。悩み、苦しみ、苦悶の果てに自ら手を汚す。
奈緒がそれを恨むのは全くの正当だと受け入れるだろうし、令呪で自死を命じるつもりなら命じられる前に自ら命を断つだろう。
そうと覚悟した上で、彼は自ら殺すのだ。より多くの人を救うために。

「頼りにしてるからな、シールダー!」
「……ああ、任せてくれ」

過剰な変装越しに天真爛漫な笑みを向けられ、シールダーは帽子の鍔を下げて視線を遮った。


766 : パートナーズ・イン・バーガーショップ ◆dt6u.08amg :2018/05/24(木) 01:07:58 JkEqMf0E0
【CLASS】シールダー
【真名】キャプテンブラボー
【出典】武装錬金
【性別】男
【身長・体重】185cm・75kg
【属性】秩序・中庸

【パラメータ】筋力B+ 耐久EX 敏捷B 魔力D 幸運C 宝具A

【クラス別スキル】
対魔力:EX
 ドレイン系も含め、攻撃と判断される魔術に対しては事実上無敵。
 攻撃に該当しない魔術の場合は対魔力C相当で判定される。

騎乗:E
 現代文明で用いられる乗り物であれば人並み以上に乗りこなせる。

自陣防御:D+++
 味方、ないし味方の陣営を守護する際に発揮される力。
 防御限界値以上のダメージ削減を発揮するが、自分はその対象には含まれない。
 守護範囲は決して広くはないが削減数値は圧倒的。

【固有スキル】
心眼(真):B
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
 逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

特性看破:C
 心眼から派生したスキル。武器や防具が持つ特殊機能を見抜く眼力。
 道具としての実体を持つ宝具の能力を一定確率で看破する。

仕切り直し:C+
 戦闘から離脱、あるいは状況をリセットする能力。
 不利になった戦闘を初期状態へと戻し、技の条件を初期値に戻す。
 瞬間的倍加の補正は、宝具と併用して状況をリセットする場合に適用される。

【宝具】
『防護服の武装錬金(シルバースキン)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1、1〜5 防御対象:1人、1〜5人
 全身をくまなく覆うオーバーコート型の防護服。
 攻撃に対し即座に金属硬化、破損部が瞬間生成することで着装者を防護する。
 物理攻撃のみならず、核・生物・細菌兵器もシャットアウト。宇宙空間での行動も可能。
 更にエネルギードレイン等の非物理的干渉すら遮断する。
 また、シールダーの任意で分解して形状を変えることができ、他者を護る『盾』にもなる。
 この宝具はシールダーが戦意を昂ぶらせることで強度が上昇し、条件次第で対城宝具の直撃をも防ぎうる。

『拘束服の武装錬金(シルバースキン・リバース)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜5、1〜10 最大捕捉:1人、30人
 シルバースキンを裏表反転させ、その特性すらも反転させた形態。
 外部からの攻撃に対する絶対防御が、内部からの攻撃に対する絶対拘束と化す。
 通常形態と同様、六角形の細かな金属板への分解と変形が可能。
 これにより、単体の対象への強制着装のみならず、数十体の標的をまとめて拘束・捕縛することもできる。

【weapon】
『核鉄』
 錬金術による戦術兵器研究の成果。手のひらサイズの六角形の金属。
 所有者の闘争本能の昂ぶりに応じて、それぞれの個性を反映した武器『武装錬金』に変形する。
 シールダーはこれを二個保有し、両方同時に発動させられる。
 すなわち「防護服または拘束服を重ね着にして効果倍増」「一着ずつ発動させて併用」「自分自身とマスターを同時に防護」などの戦術を取ることができる。

『鍛え抜かれた肉体』
 シールダーの攻撃手段は肉弾戦のみだが、明らかに人間の粋を超えている。
 手刀で海を割り、渾身の拳の踏み込みで地面を砕き、軽く数十メートル以上の高さと距離を脚力だけで跳躍する。

【人物背景】
錬金術の管理とホムンクルスの討伐を目的とする組織、錬金戦団に所属する男。肩書は戦士長。
本名は「防人衛(さきもりまもる)」だが、新人時代に任務失敗で大勢の犠牲者を出してしまったことを理由に名を捨てた。
その名を知るのは昔からの知己に限られ、組織内では部下に対しても「キャプテンブラボー」で通している。故にサーヴァントとしての真名もこちら。

平時はノリが良くてとっつきやすい好人物。師として主人公を鍛え上げた。
戦士としては一人でも多くの人を救うという信念を持ち、その一方で戦士であっても子供が死ぬのは避けたいと考えている。
物語中盤、主人公が死をばら撒く怪物になりかけたとき、多くの人を救うためなら部下殺しの汚名を着て悪に堕ちることも厭わないと宣言。
主人公の命を狙う敵となり、全ての決着を付けた後には自害するつもりでいた。
しかしそれが逆に主人公の戦意に火をつけ、死なせないためにも勝つと決意した主人公に倒され、愛弟子の成長を喜びながら道を譲った。

【聖杯にかける願い】
なし。見滝原の人々を守るために戦う。


767 : パートナーズ・イン・バーガーショップ ◆dt6u.08amg :2018/05/24(木) 01:08:12 JkEqMf0E0
【マスター名】神谷奈緒
【出展】アイドルマスターシンデレラガールズ
【性別】女

【能力・技能】
とくになし。アイドルのレッスンで体力はついているはず。

【人物背景】
身長154cm、体重44kg。高校2年生の17歳。
ユニット「トライアドプリムス」の中では一番年上で一番小柄。
渋谷凛より11cmも背が低い(あちらが女子としては比較的長身なのもあるが)
ちなみに凛が所属する別ユニット「ニュージェネレーション」のメンバーを加えても一番小さい。

正統派なツンデレキャラにしていじられキャラ。
ユニットでは一人だけ学年が上だが、年上として扱われることはまずありえない。

【聖杯にかける願い】
なし

【方針】
元の世界に帰る。可能なら凛と共闘したい。


768 : ◆dt6u.08amg :2018/05/24(木) 01:09:26 JkEqMf0E0
投下終了します
そういえばブラボーって川島さんや早苗さんと同い年なんだね


769 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/24(木) 22:22:50 YGmbCVRI0
皆さま、お久しぶりです。投下していただきありがとうございます。
本日は感想投下となります。


錬金術の落とし子達
 悪が善良なものに触れてどう思うか? 尊さか、同情か。ガリィの場合はつけ込める、利用できるとしか
 発想が転換しない時点で、彼女は本当に本当にどうしようもないのだと理解できます。まぁ、それは彼女
 以外の悪たちも揃い揃って『同じ』なんですが。精魂が破綻レベルに腐りきったマスターに対し
 ヴィクターがどのような行動を取って行くかは注目していきたいですね。
 投下していただきありがとうございました。

Tender Sugar
 純粋かつ強情な魔法少女のいろはですが、召喚したのが何とも厄い存在。シュガーを放置してしまえば
 周囲のみならず見滝原全土に影響を与えてしまいそうで不安です。そんないろはですが、彼女自身の願い
 と聖杯に対する疑念をしかと以て、聖杯戦争と向き合おうとする精神が相変わらずで安心します。
 シュガーも彼女で言うギョッとするようなおっきなアヒルちゃんと出会えるのか楽しみですね。
 投下していただきありがとうございました。

森宇多子&アサシン
 短い話ながらも宇多子の狂気とアサシンの怪異が不気味に映えます。犯罪を犯したりする人間は紛れも無く
 悪なのですが。彼女のように、悪によって利用された者も果たして悪なのか? 純粋にその人は悪くない
 と云う人もいれば。騙される方が悪い、なんて意見も近年あります。私個人としては、兎に角被害を抑える
 為に双方潰した方がいいと考えています。皆さまはどうでしょうか?
 投下していただきありがとうございました。

万丈龍我&フォーリナー
 一見、かわいい少女でも裏は悪い子だったり、なんて実にありがちですが。フォーリナーことアビーの場合は
 ちょっと所の悪い子じゃ済まされない。邪神の片鱗を抱え込み、あげくには世界を侵食させんが勢いです。
 マスターの万丈が『良い子』の側面を強く見てきただけに、暴走してしまった場合のアビーに対し
 どう対応するのかが重要な『鍵』となりそうですね。
 投下していただきありがとうございました。

立花響&バーサーカー
 純粋なお人よし。人間であれば誰もが抱ける黄金の精神。それを掲げられる響に対し、魔法少女狩りとしての
 側面であるスノーホワイト……同じ志を持つにも関わらず、どこか正反対。対極的に感じさせられてしまいます。
 ただ、私としてはサーヴァントのシステム上『魔法少女狩り』としての逸話が根強く残るスノーホワイトが
 バーサーカーであることが、非常にしっくりきて、納得していたりします。
 投下していただきありがとうございました。

探偵王子とアイドルの影
 本物の探偵だ……(え)僅かな情報から精密に推理を重ねて行く姿勢と洞察力。全く以て探偵に相応しい在り方
 を見せつけて行くスタイルに関心せざるおえません。直斗が考える通り、実際のところ聖杯を完成させ、願いを
 叶えて。はい、お終い。で終わらないのが今回の聖杯戦争になります。恐らく数的にも複数の聖杯が完成される
 ことが間違いありません。なら……この聖杯戦争の結末も他とは一層異なるでしょう。
 投下していただきありがとうございました。

The Frog and The Scorpion
 サソリの話を上げると、宮沢賢治の『蠍の火』が私個人の印象に残っています。命を奪うのがサソリの
 本性だと理解しているからこそ、サソリは最終的に自らそのものを誰かの幸いになることを願った訳です。
 それが最良なのか、最善なのかは分かりませんが。つまるところ、自分の事は自分が一番分かっている筈
 ではないでしょうか? そうであればこそ。復讐を止められない復讐者が行く末など……
 投下していただきありがとうございました。


770 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/24(木) 22:45:20 YGmbCVRI0
もうそろそろ頃合いと見て、本日は候補作締め切り日を発表させていただきます。

候補作締め切りは6月3日 24時(6月4日 0時)

とさせていただきます。
当日はギリギリの投下があるかもしれませんので、仮に投下が遅延状態になっていた場合は延長となります。
皆さまからの候補作の投下をお待ちしています。


771 : ◆dt6u.08amg :2018/05/26(土) 22:07:43 8H8Wz1d60
投下します


772 : Journeyer and Bandit ◆dt6u.08amg :2018/05/26(土) 22:08:46 8H8Wz1d60
キノは安宿のベッドの上で、「木乃」という名前の書かれた制服と通学道具一式をトランクに詰め込んだ。
自分が何者かを思い出した今となっては、これを着て学校に馴染んでいたことが嘘のように感じられる。
本来の用途で使う予定はなかったから、別にもう捨ててしまってもよかった不用品だ。
しかしまだ変装などには使えそうだったので、この国を出るまでは取っておくことにしたのだった。

『準備は終ったかい?』
「はい、ついさっき」

頭の中に直接響く声にそう答えると、安宿の部屋の隅に一人の男が何処からともなく現れた。
黒いズボンとノースリーブという涼し気な格好の上から、長袖で丈長の黄色いコートを着た青年。
着替えの間、視覚を遮断するためにと言って自主的に霊体化していたアーチャーのサーヴァントだ。
キノにとってはさほど関心のない要素だが、客観的に評価するなら、顔の造形自体は割と整った部類に入るだろう。

「んじゃ、マスターとサーヴァントの最初のディスカッションでも始めるとしますか」
「そうですね。お互いのことは分かっておいた方が何かと便利です」

手短に前置いて話し合いを始めようとした矢先、アーチャーの傍らからデフォルメされたカラスのような生き物が飛び出してきて、妙に良い声で下らないことをまくし立てた。

「ちょ、ちょっとキミキミぃ! せっかく似合ってたのにもう脱いじまったのぉ!? あー、もったいない! 可憐な乙女は可憐な衣装に身を包んでこそ――」

投げナイフがカラスらしき生物のすれすれを掠って壁に穴を開ける。

「そいつもサーヴァントの一部みたいなもんだから、ナイフは効かないぞ」
「でしょうね」

翼で器用にホールドアップしたカラスを尻目に、アーチャーとの最初の会議を始める。
まずはお互いの方針のすり合わせからだ。

キノは旅人である。どこか目的地があるわけではなく、旅を続けること自体が目的と言ってもいい。
当面の目標はこの街を出ること。聖杯とやらが手に入っても路銀に変える以外の用途はない。
旅人として、一つの国に滞在するのは原則三日までとしているが、状況が状況なので強くはこだわらないことにする。
これまでの旅でも、諸般の事情から一つの国に四日以上滞在したことは何度かある。
幸いにも、使い慣れたパースエイダー(銃火器)とモトラド(二輪車。空を飛ばないものだけを指す)は一通り揃っている。
必要なら人を撃つことは躊躇しないが、この国はの携行が厳しく取り締まられているので、普段通りにはいかないかもしれない。

――まずはキノが以上のことを伝え、次にアーチャーが自分達のことを伝える。

アーチャーはドロボウである。真名はジン。カラスっぽい生物は相棒のキール。
召喚に応じた理由はもちろんお宝を盗み出すこと。標的はこの聖杯戦争の主催者達。
最終的に目的さえ達成できれば構わないので、マスターの希望はできる限り尊重する。
サーヴァントとしての本体はジンの方だが、キールもサーヴァントの一部として扱われているらしい。
使い魔みたいなものかとキノが聞くと、むしろオレの方が主人だとキールが主張した。
もちろんジンには無視されていた。

「とりあえず、お互いの方針を嫌わない者同士だと分かったのは良かった」です」
「だね。銃刀法違反のドロボウと、それに輪をかけて銃刀法違反な旅人じゃ、真人間のパートナーは尻尾を巻いて逃げちまう」

ナイフやパースエイダーを隠して持ち歩くことを咎めるサーヴァントじゃなくてよかった――ひとまずキノはその点を喜んでおくことにした。
この国の法律だと、キノもアーチャーも反社会的な人間のカテゴリに放り込まれてしまう。
しかもこの国のモトラドや鳥や犬は喋れないというから、普段通りに会話しているだけでも不審者だ。
宿の駐車場で待たせてあるエルメスがうっかり独り言なんか呟いてしまったら、世にも珍しい喋るモトラドだと騒ぎになってしまうかもしれない。

「なぁおい、ジン。お宝ってのは聖杯のことなんだろ? 他の連中からいくつか盗んで、そこの物騒なお嬢ちゃんと山分けしてトンズラってことでいいのか?」


773 : Journeyer and Bandit ◆dt6u.08amg :2018/05/26(土) 22:09:19 8H8Wz1d60
そんなエルメス並におしゃべりな鳥のキールが、アーチャーの頬に翼を押し付けながら詳細な方針を問いただす。
あれを売ったら当面は美味しい料理と新品の肌着に困らないんじゃないだろうかと思ったが、とりあえず忘れておくことにした。

「いいや。もっと大物が眠ってるはずだぜ、キール。大聖杯っていうとびきりの大物がな」
「大聖杯?」

アーチャーは部屋に備え付けのメモ帳とペンを取ると、簡素な図を描きながら説明を始めた。

「マスターが持ってる宝石……ソウルジェムにサーヴァント七騎分の魂が収まると聖杯になるわけだけど、こいつにはサーヴァントを召喚する機能は備わっちゃいない。魂を回収してビン詰め加工するだけの代物だ」
「オレたちゃジャムにされる運命のアプリコットってわけね」
「だけどサーヴァントの召喚と維持はそれ自体が一大プロジェクトだ。"果実(ソウル)"を詰める空っぽの"宝石(ジェム)"だけ用意してどうこうできるもんじゃない」

紙上に描き込まれていく記号と矢印。
そして最後に、紙の中央に大きな円が描かれた。

「魂を回収するソウルジェムとは別にある、聖杯戦争のシステムを回すメカニズム。それが大聖杯だ。もっとも、主催者達がその名前で呼んでるかは知らないけどな」
「大聖杯ねぇ。ん、ちょっと待てよジン。そいつを盗み出すってことは――」
「――あなたは『聖杯戦争そのもの』を盗むつもりなんですね」

キールが言おうとした言葉の続きを、キノが横取りする。だとしたら大した大泥棒だ。

「ボクとしては、この街からの脱出手段を探す方を優先したいんですけど」
「同じことさ。聖杯戦争のシステムの一環として街に閉じ込められているのなら、外へ出るにはそのシステムをどうにかするしかない。だったら大聖杯について探ってる間に答えも見つかるんじゃねーか?」

そういうことなら反対する理由はない。
なのでついでに、キノは取り分の条件も確定させておくことにした。

「聖杯が手に入ったら半分ずつ。一つしか手に入らなかったり、奇数個だった場合の余りはボクがもらうということで。大聖杯とやらは丸ごと差し上げます。どう考えても大荷物になりそうなので」
「おいジン。この子意外と強かだぜ。可愛い顔して熟(こな)れてんな」
「頼もしいマスター様じゃないか。いいぜ、それでいこう」

当たり前のように『聖杯が二つ以上手に入る』前提で話しているが、それに疑問を差し挟む者は誰もいない。
そもそもアーチャーはドロボウなのだから、つまりはそういうことである。
方針のすり合わせも済んだので、安宿を引き払って駐車場で待たせていたエルメスを叩き起こす。

「あれ、もう出発?」
「条件のすり合わせも済んだからね。とりあえず重要そうな施設を回ってみようということになったよ」

ちなみにアーチャー達は既に霊体化して姿を消している。
アーチャーはモトラドの運転の心得もあるそうなので、機会があったら調達してきてもらってもいいかもしれない。

「それにしてもさ、キノ。後ろにくっつけたアレ、何とかならない?」
「ナンバープレート? 仕方ないよ、この国だとモトラドは登録制なんだ。ボクだって慣れないモノを被らされてるんだからお互い様さ」

キノはいつも頭に乗せている帽子とゴーグルではなく、オープンフェース型のヘルメットを被ってからエルメスにまたがった。

「それもそっか。如何におかんむりでも正しくって言うしね」
「……李下に冠を正さず?」
「そう、それそれ」

排気音を響かせながらエルメスが車道を駆け抜ける。
ひとまずの目的地は街の中心部。人口の多い場所なら何かしらの手がかりが見つかるだろう。

「ねぇ、キノ。そういえばこの国ってモトラドの運転にライセンスが要るんだよね。それはどうしたの?」
「役人にバレそうになったらアーチャーに何とかしてもらうよ。持ち物検査なんかされたら一発で重罪人だからね」
「うわぁ。無免許だ」


774 : Journeyer and Bandit ◆dt6u.08amg :2018/05/26(土) 22:10:17 8H8Wz1d60
【CLASS】アーチャー
【真名】ジン
【出典】王ドロボウJING / KING OF BANDIT JING
【性別】男
【属性】混沌・善

【パラメータ】筋力C 耐久D 敏捷A 魔力C 幸運A+ 宝具E〜A++

【クラス別スキル】
対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

単独行動:A+
 マスター不在でも行動できる能力。

【固有スキル】
直感:C+
 自身にとって最適な展開を“感じ取る”能力。
 視覚・聴覚に対する妨害の軽減効果としてはCランク相応。
 窮地の突破や障害の打破において真価を発揮する。

欲望制御:A
 各種の欲望を手足のようにコントロールし、精神干渉を無効化する。
 たとえ人格支配レベルの干渉であっても跳ね除ける。

盗賊の心得:A
 盗賊として要求される多数のスキルにB〜Aランクの習熟度を発揮できる。
 効果対象は、変装、解錠、脱獄、気配遮断、戦闘撤退、芸術審美など多岐に渡る。
 これらは超常能力に属するものではなく、磨き上げた純粋な技量によって実現されている。

【宝具】
『黒き翼と王の罪(キール・ロワイヤル)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜15 最大捕捉:1人
 相棒のキールを右腕に合体させてエネルギー弾を放つ。
 厳密には合体状態が宝具であり、光弾は宝具を用いた攻撃に相当する。
 威力を下げた連射や何かしらの物体を利用した属性変換などの応用も可能。
 一発辺りの威力はランク相応だが消費魔力はごく少量。
 アーチャーが魔力不足に陥るよりも、キールが喉の限界を訴える方が早い。

『輝くものは星さえも(キング・オブ・バンディット)』
ランク:E〜A++ 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:-
 常時発動宝具。森羅万象を盗むと謳われる伝説が昇華したもの。
 盗みに関わる判定において、幸運と直感に宝具ランク分の数値を上乗せする。
 犯行過程で必要となる戦闘や逃走における判定も発動対象。
 宝具ランクはターゲットの価値に応じて変動し、最大でA++相当の数値が加算される。
 (すなわち幸運の瞬間的最大値の上限はAランクの五倍、直感はAランクの四倍弱となる)
 この場合の価値とは金銭的価値ではなくアーチャーの主観に依存する。
 また、ターゲットが物質的な実体を備えている必要はない。
 それが「賛美に値するもの」であるのなら、王ドロボウはたちまち盗み出すことだろう。

【weapon】
『仕込み刀剣』
 右腕の手甲に仕込んだ刃物。これを用いた白兵戦を得意とする。
 使用頻度は多いが、登場するたびにデザインや機構がよく変わっている。

『キール』
 相棒。人の言葉を喋る黒い鳥。女好きで人間の美女・美少女に目がない。
 合体技のキール・ロワイヤルの発射はキール側の意志で拒否できる。
 特別な存在というわけではなく、同族の鳥や同系統の能力を持つ動物が何度か登場している。
 宝具の漢字表記は過去編のみで登場した銃「王の罪(クリム・ロワイヤル)」とキールの外見から。

【人物背景】
輝くものは星さえも 貴きものは命すら 森羅万象たちまち盗む王ドロボウ

「王ドロボウJING」と続編「KING OF BANDIT JING」の主人公。
星すら盗む伝説の一族の子孫「王ドロボウ」の少年、あるいは青年。
初期は感情表現豊かな少年だったが、成長するにつれてクールな側面が強調されるようになった。
サーヴァントとしては肉体的最盛期ということで「KING OF BANDIT JING」の青年期で召喚されている。

ThiefではなくBandit。予告状は出すタイプ。犯行にあたっては大立ち回りを演じることが多い。
そういう主義かどうかは不明だが、肉体的に普通の人間を殺傷することはまずない。
(追っ手など、危害を加えようとしてきた相手に対しては、負傷の可能性がある手段で蹴散らしたりはする)
また、事あるごとに美女や美少女と関わり合うことになるが、彼女達を見捨てることは決してない。時には盗み出す予定だったものを破壊してまで助け出すことも。

ちなみに、最大火力の攻撃手段であるキール・ロワイヤルは、原作では意外と耐えられたり防がれたりすることが多い。
本人も効かないことを驚いたのは最初期くらいで、以降は即座に撃ち方を工夫したり別の対抗手段を取ったりしている。
この異様なまでの判断力の早さと創意工夫の引き出しの多さが最大の武器ともいえる。

【聖杯にかける願い】
ソウルジェムが変化する聖杯は副次的な標的。機会があるなら盗んでおく。
メインターゲットは主催者が抱えているであろう大聖杯(またはそれに相当するもの)


775 : Journeyer and Bandit ◆dt6u.08amg :2018/05/26(土) 22:11:01 8H8Wz1d60
【マスター名】キノ
【出展】キノの旅
【性別】女

【能力・技能】
銃器の扱いは達人級。プロの軍人からも称賛されるレベル。
護身用に複数のナイフも身に着けていて、そちらを使った格闘戦も強い。
所持している主な銃器は以下の通り。

「カノン」
44口径リボルバー拳銃。装弾数6発。薬莢を用いない古いタイプの銃。
現代の銃は弾と火薬と雷管が最初からくっついた銃弾を使うが、このタイプは手作業でそれぞれ順番に入れる必要がある。
旧式ゆえにかなり不便な構造だが、いざというときに弾丸を自作できるからか、キノはこれを主武装としている。

「森の人」
.22ロングライフル弾を使用する小口径のオートマチック拳銃。装弾数10発。
命中精度が高く、レーザーサイトやサイレンサーも使用できるが、威力は低い。
こちらは出来合いの銃弾しか使えない。左手用の構造なのでキノも主に左手で使う。サブ武装。

「フルート」
二つに分解して持ち運び可能な半自動式ライフル銃。装弾数9発。
スコープを装着可能で、キノは狙撃の際にこれを用いる。

【人物背景】
国から国へ気ままに渡り歩く旅人。服装や口調から男性と勘違いされやすい。
他人にあまり関わろうとしないタイプで、身を護るためなら殺人も躊躇わないが、それ以外の理由で人を殺すことは滅多にない。
貧乏性な一面もある一方で意外と大食い。国の環境や懐具合次第では食べすぎてしまうことも。
ただし食い意地のせいで罠にはまるといったことはない。

【聖杯にかける願い】
売り払うなりして路銀に変える。

【方針】
アーチャーと協力して脱出方法を探す。
お互いに旅人としての、ドロボウとしての理念や方針には干渉しない。


776 : ◆dt6u.08amg :2018/05/26(土) 22:11:25 8H8Wz1d60
投下終了です


777 : ◆Pw26BhHaeg :2018/05/27(日) 01:05:31 NwxH6Wvg0
投下します。


778 : Save My Soul ◆Pw26BhHaeg :2018/05/27(日) 01:07:59 NwxH6Wvg0
夜、ベッドの上で不意に目が覚めた。
今までの人生が偽りで、思い出した記憶が本当の人生だったと、すぐに理解できた。
身を起こし、顔を洗う。記憶は鮮明だ。死の瞬間まで。夢ではない。



僕は、生前の父を知らない。

僕が生まれる前に、父は死んだ。新婚旅行の時に豪華客船が爆発、沈没し、母だけが生き残った。
正確には、母の胎内に宿っていた僕と……父が救い、母に託した赤ん坊、エリザベスも。

成長した僕は、全てを知った。吸血鬼ディオのこと、吸血鬼が作り出す屍生人(ゾンビ)のこと、波紋のこと。
母はずっと黙っていたが、スピードワゴンさんとストレイツォさんは、父の誇り高き生涯をどうしても僕に語り伝えたかったのだ。
ディオは僕の父と共に大西洋に沈んだ。けれど、吸血鬼を生み出す石仮面は、ひとつだけだったのだろうか。
そして、吸血鬼やゾンビ、死にぞこないたちは……世界の闇のどこかで今も蠢いている。そんな予感がしたのだ。



1914年、サラエボでオーストリア皇太子が暗殺され、戦争が始まった。
オーストリア=ハンガリー対セルビア、ドイツ対ロシア。ドイツはベルギーやフランスにも侵攻し、イギリスはドイツに宣戦布告。
僕も王立飛行クラブから海軍航空隊に入隊し、祖国のために戦った。最新鋭の兵器がゴミのように人間を殺戮する、地獄のような戦場だった。
1918年4月1日、陸軍航空隊と海軍航空隊の融合によってイギリス空軍が設立。同年11月11日にドイツとの休戦協定が結ばれ、戦争は終結。
僕とエリザベスは結ばれ……1920年9月27日、息子ジョセフが生まれた。ジョースター家の跡継ぎだ。僕たちは幸福の絶頂にあった……。


779 : Save My Soul ◆Pw26BhHaeg :2018/05/27(日) 01:10:06 NwxH6Wvg0


「あの司令官は……『吸血鬼』か『ゾンビ』かも知れない」

思い返せば、おかしな司令官だった。はじめからなにか奇妙な雰囲気を纏っていた。
戦争で負傷したといって車イスにのり、昼間は決して表には出ず、それでいて社会にとけ込んでいる。
いかに新設の空軍とはいえ、あんな得体の知れない男が、なぜ司令官に?

とはいえ肩書や経歴、軍歴はしっかりしたものだ。政治的思惑が絡んでの人事だろうか。
だが、この間の行方不明事件は……。あるいは本来の彼が、何者かに乗っ取られているのかも……。
まさか。いや、考え過ぎか。確かなのは、僕にはいやな雰囲気がするってことだけだ。

エリザベス――――リサリサは、ストレイツォさんから波紋の修行を受け、達人の域に達している。
彼女なら吸血鬼やゾンビを殺せるだろう。だが、確証が得られたわけではない。
なにより空軍司令官という要職にいる男。おいそれとは殺せない。
それに彼女はジョセフを産んだばかりで、育児で手一杯だ。もしものことがあれば……。

僕自身は、波紋の修行を受けたわけではない。
父が波紋使いだから素質はあると言われたが、軍務で忙しくて修行している暇はない。
日光を浴びせれば死ぬだろうが、僕が無理やり上官を外へ連れ出す事は出来ない。怪しまれてしまう。
第一、日光で蒸発した上官の姿を目撃でもされたら、どう説明する。
吸血鬼やゾンビや石仮面の話をしても、狂人か狂言だと思われるのが落ちだ。
やはりチベットのストレイツォさんに連絡を取るしかない。そう思い、密かに手紙を書いていた矢先。



僕は……確か、あの空軍司令官の正体を探ろうとして、逆に襲われて死んだはず。
実際無念だが、復讐者となるのは……考えたくはないが、リサリサだ。
彼女なら僕の不審な死を疑い、証拠を見つけ、復讐を遂げてしまうだろう。
いや、ここにこうして僕が生きてるってことは―――それも、未来の日本に、独身の英語教師として―――ここは、来世なのか?


780 : Save My Soul ◆Pw26BhHaeg :2018/05/27(日) 01:12:21 NwxH6Wvg0
胸ポケットに違和感がある。探ると、丸く透明な宝石が出て来た。
あの司令官、吸血ゾンビに襲われ、仰向けに転び、手をついたところに……そうだ、この宝石があったのだ。
その瞬間、僕はここにいて、しかも偽りの記憶を植え付けられ、聖杯戦争の参加者とされてしまった。
聖杯。アーサー王伝説にうたわれる聖遺物。万能の願望器。もし僕がそれを手に入れたら、どうすればいいのか。

「…………!」

見る間に、その宝石……ソウルジェムがボウッと光り始めた。
淡いその光は、闇の中に黄金の粒子となって広がり――――――人間の姿を形作る。

それは、東洋人の少年だった。黒髪で、額が出るほど短髪。眼鏡をかけ、白い詰め襟の制服を着ている。
傍らには重そうな鉄の鞄。軍の関係者か、士官学校あたりの学生か。だが流石に英霊、鍛え抜かれた戦士の面構え。
すうっと目を開くと、こちらに話しかけてきた。

「……問おう。貴方が俺のマスターか」
「そうだ。僕の名は『ジョージ・ジョースター』。『ジョジョ(JOJO)』と呼ばれている」

祖父と同じ名。そして、僕が成人した頃からのイギリス国王と同じ名だ。ありふれているが。
祖父が1世なので『ジョージ2世』となるが、皆からは父と同じく『ジョジョ』と呼ばれる。
息子ジョセフも、やがてそう呼ばれるだろう。

東洋人の少年は、右手を挙げ……敬礼した。
「俺の名は『葉隠覚悟』。クラス名は……『セイヴァー』です。以後、よろしく」


781 : Save My Soul ◆Pw26BhHaeg :2018/05/27(日) 01:14:31 NwxH6Wvg0


現人鬼と化した兄との戦闘は、曽祖父・四郎を共に打倒することで終焉した。
和解は成った。兄は地球環境を癒やすため、俺は人類を護るため、それぞれの道を歩んだ。
それから……俺は、どうしたろうか。戦術鬼の生き残りを狩り、人類文明がそれなりに復興するのを見届けて……。
そうだ、眠りについたのだ。平和な社会に戦士は不要。俺は眠りにつかされた。いつかまた、親しき人々と逢えると信じて。

聖杯戦争に関する記憶は、英霊の座とやらで与えられた。
英霊とは死せる英雄の残滓。だが俺は、まだ死んだわけではないはず。冷凍睡眠の中のはず。
ならば、これは夢か。あるいは冷凍睡眠の失敗で死んだか。いや、迷うな。

「マスター、『ジョジョ』。偶然巻き込まれたようですが、聖杯にかける望みは、帰還ですか」
「ああ。僕は……生き残りたい。愛する妻子と母のもとへ帰りたい。僕の望みはそれだけだ」

それを聞いて、頷く。幸いなことに彼は善人だ。嘘をつけるような人でもない。
「そして、戦いは君に任せる。僕は魔術師でもなんでもないからね。無論、出来る範囲のことはしよう。ただし」
「ただし?」
「無力な女子供や一般市民、帰還だけを願う善良な人々は犠牲にしないと、約束してくれ。これは命令ではない、お願いだ」

――――セイヴァーはマスターの瞳に『黄金の輝き』を見る。誇り高き勇気と正義の心を。
マスターもまた、セイヴァーの瞳に、同じものを見る。

俺がここにいる理由。マスターのような無辜の善人をも巻き込む、この聖杯戦争は『悪』だ。
この忌まわしき聖杯戦争を破壊し、悪を絶つ。立ちはだかる悪にも容赦はしない。そして。

「無論です。俺は牙なき者の牙、盾なき者の盾となりましょう」


782 : Save My Soul ◆Pw26BhHaeg :2018/05/27(日) 01:16:37 NwxH6Wvg0
【クラス】
セイヴァー

【真名】
葉隠覚悟@覚悟のススメ

【パラメーター】
筋力B+ 耐久A 敏捷A 魔力D 幸運A 宝具EX

【属性】
秩序・善

【クラス別スキル】
カリスマ:C
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
国家運営は出来ないが、志を共にする仲間とは死を厭わない強固な繋がりを持つ。

対救世者:A+
「救星主」となった兄と敵対した逸話によるもの。セイヴァーを相手にした際、そのパラメータを2ランクダウンさせる。
また誘惑や説得、カリスマ等を鋼の意志で撥ね返す。英霊を成仏させるような霊的攻撃も、彼と「零」を消滅させることは出来ない。

【保有スキル】
零式防衛術:A++
第二次世界大戦中に生み出された最終格闘技。人類の潜在能力を極限まで引き出し、一触必殺を可能とする。
相手の力を利用する迎撃術「因果」、自ら仕掛ける「積極」、掌を振動させ硬いものを粉砕する「超振動」などの技がある。
その本質は使用者自身の「認識(こころ)」の制御であり、感情や恐怖心を滅殺し、常に冷静な戦いを可能とする。
スキル「無窮の武練」に相当し、宗和の心得・見切り・心眼・仕切り直し・追撃・一気呵成などをAランク相当まで発揮できる。

戦闘続行:A+
往生際が極めて悪い。霊核が破壊された後でも、最大5ターンは戦闘行為を可能とする。

騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。バイクに乗る。


783 : Save My Soul ◆Pw26BhHaeg :2018/05/27(日) 01:18:31 NwxH6Wvg0
【宝具】
『零式鉄球(ぜろしきてっきゅう)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-50 最大捕捉:1

肉体に直接埋め込まれた、特殊金属製の球体。気合を入れると体内に吸引され、血小板と同化して血液中に溶解、
表皮に分泌されて迅速に凝固し、皮膚を装甲化する。装甲化された皮膚は高熱や至近距離からの弾丸をも跳ね返し、かつ柔軟で動きを制限しない。
1個につき皮膚の7%を装甲化可能であり、8個を持つセイヴァーは56%までを装甲化出来る。
防御の他、打撃に用いる部位を装甲化して威力を増すことや、身体から鉄球を取り出して変形させ、攻撃・防御に用いることも可能。
全力で投擲した場合は戦車砲並みの威力があり、着弾した瞬間に膨張変化して内部から破裂させる。

『強化外骨格”零”(ぜろ)』
ランク:EX 種別:対国宝具 レンジ:1-99 最大捕捉:1000

意志持つ超鋼。第二次世界大戦中に開発された、一体で一国を滅ぼす生ける鎧『強化外骨格』のひとつ。
白いマフラー、赤いゴーグルを持ち、頭部に星型レリーフと七生の文字が刻まれている。重量90kg。
非戦闘時には鞄の中に収納されており、戦闘時には瞬間的に着装される。装着者には常軌を超える心技体の鍛錬が求められる。
外部には複合装甲展性チタン合金を用いており、瞬間的衝撃には戦車並みの耐久力を持つ。凍結・圧迫・打撃浸透攻撃が弱点。
内部には臓腑のような暖かさを持つ生体細胞が用いられ、伸縮自在な触手を着装者に吸着させ、状態管理や意志反映を行う。
また人体実験の材料にされた三千の英霊(戦争被害者の怨霊、CV:藤本譲)が宿っており、着装者の行動を補佐する。

腰部左右に「着装者生命維持装置」(持続時間は40日間)と「化学兵器調合装置」を有し、毒物・薬物問わず各種化学薬品を調合可能。
指先や掌から非致死性麻酔液、昇華弾(高熱の火球)、超凍結冷却液、超脱水鱗粉、戦術神風(無色無臭の超強力毒ガス)を発射し、
足(脚部装甲「爆芯靴」、通常時の着装も可能)や背中からは噴射剤を噴出して強い推進力を得る。
外骨格自身を超高温にして打撃威力を高める「赤熱化」や、一瞬で着装を解除して超鋼外骨格を射出する「瞬脱装甲弾」などの技も備える。
筋力と耐久力をランクアップさせると同時に、ブースト機能によって三つの能力値に「++」の補正が与えられる。

『人間の尊厳(ヒューマン・ディグニティ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1

セイヴァーの体内に宿るゼリー状の生命体。悪鬼となる人体改造を受けたが、善良な意志を保っていたため「失敗作」となった者たちの集合体。
その心と肉体によってセイヴァーを敵の攻撃から保護し、自らを犠牲にして死からさえも蘇らせる。


784 : Save My Soul ◆Pw26BhHaeg :2018/05/27(日) 01:20:29 NwxH6Wvg0
【Weapon】
四肢五体及び宝具の他、以下の武装を持つ。

『武装常装』
耐熱眼鏡、光線屈折ボタンなど、数々の特殊機能を持つ日常装備。

『無銘・日本刀』
四百の雑兵を斬った後も刃毀れを起こさぬ業物。

『逆鱗号』
兄から餞別として受け取ったバイク。本来は特攻兵器で、敵艦などに突っ込んでも抜けないように「かえし」のある形状になっている。

【人物背景】
山口貴由の傑作漫画『覚悟のススメ』の主人公。CV:山寺宏一/関智一。1999年12月25日生まれ。
黒髪の短髪で、純白の詰め襟制服に身を包み、眼鏡を掛けた少年。非常に生真面目な性格で、礼儀正しく自己抑制が強いが、本性は熱い男。
地殻変動や核戦争で荒廃した世界において、父・朧より兄・散と共に零式防衛術を習い、零式鉄球と強化外骨格を授かった。
だが兄が父を殺し、自身も兄に敗北。生き延びた後は兄を探して全国を転々とし、やがて逆十字学園に転校。
人々を襲う悪鬼「戦術鬼」を退治していくうち、その首領が生き別れた兄であることを知り……。
ライダー、シールダーなどの適性もあるが、今回はセイヴァーとして現界。救世主、救済者(Savior)というより「救助者(saver)」として。

【サーヴァントとしての願い】
なし。

【方針】
聖杯戦争の破壊。牙なき者の牙となり、悪を討つ。マスターや無辜の人を護り、救う。

【把握手段・参戦時期】
原作。幸いにもエクゾスカル版ではない。


785 : Save My Soul ◆Pw26BhHaeg :2018/05/27(日) 01:22:25 NwxH6Wvg0
【マスター】
ジョージ・ジョースター2世@戦闘潮流、JORGE JOESTAR?

【Weapon・能力・技能】
記憶は空軍パイロットであるが、あくまで1920年当時の水準なので現代の飛行機は操縦できない。
体格はよく、それなりに肉体を鍛えており、礼儀正しく学もある。波紋やスタンドは習得していないものの、『黄金の精神』を秘めている。

【人物背景】
George Joestar。『ジョジョの奇妙な冒険』第二部「戦闘潮流」の主人公であるジョセフ・ジョースターの父。ジョナサン・ジョースターとエリナの息子。
祖父ジョージ・ジョースター卿が同名であるためジョージ2世と呼ばれる。1889年12月生まれ。父ジョナサンは同年2月7日に死去していた。
第一次世界大戦の時、イギリス空軍のパイロットとなる。のちにエリザベス(リサリサ)と結婚、1920年9月27日に息子ジョセフを儲けた。
だが同年、上官である空軍司令官(ディオの作ったゾンビの残党)に殺害された。享年30歳。舞城王太郎の小説『JORGE JOESTAR』では主人公をつとめる。
ジョースター家の男として、背は高く体格はよく、肩に星の形のアザがある。顔はジョナサンやジョセフそっくり。
スピードワゴンやストレイツォから、石仮面の吸血鬼やゾンビ、波紋のことを聞いている。スタンドについては知らない。

【ロール】
イギリス人の英語教師。独身。そこそこ裕福。

【マスターとしての願い】
現世への帰還。母や妻子と再会する。

【方針】
戦闘はサーヴァントに任せる。

【把握手段・参戦時期】
原作(単行本12巻に回想で数コマだけ登場)。『JORGE JOESTAR』は……まあ……多少参考にしてもよい。
ゾンビに襲われて蹴躓いて倒れ、偶然落ちていたソウルジェムに触れた。


786 : ◆Pw26BhHaeg :2018/05/27(日) 01:24:17 NwxH6Wvg0
投下終了です。


787 : ◆mtsNaPlNVI :2018/05/27(日) 22:29:16 i7OiGIVg0
皆様投下乙です
投下します


788 : No cross, no crown ◆mtsNaPlNVI :2018/05/27(日) 22:31:21 i7OiGIVg0


地平線まで続く砂漠と、空に浮かぶ金色の満月。昔の歌に歌われていたようなラクダの隊商でも通りかかりそうな幻想的な風景の一角から、砂漠中に響きそうな爆音が轟いた。
金属と金属が軋む音を上げ、土煙を上げて大地をめちゃくちゃに踏み荒らしながら、疾走するのは一機の巨大なロボットだ。
なぜか既に多大な損傷を受けているようで、中心にはぽっかりと穴が開いているだけでなく機体全体は鈍色の金属の骨組が露出しており、僅かに残っているひび割れが目立つ外装の残骸から、元は水色と黄色を基調としていたことが辛うじて分かるそれは、手に持つこれまた大きなハンマーを振り回した。
その暴威に晒されているのは一人の少女だ。どこかの学校の制服に黒マントという服装で、片手に持つタブレット以外に丸腰というとても戦えるような風貌をしていない彼女はしかし、その長いマントをひらめかせながらなんと重力というものを完全に無視して地上十数メートルを直立した体制のまま飛行し、なんてことも無い様に大ぶりの連撃を華麗に回避した。そのままふわりとロボットの頭頂部よりもさらに上方へ移動し、にこりと笑った。

【念力「テレキネシス 電波塔」】

少女によって高らかに「スペルカード」が宣言される。
直後、知性などとうに消し飛ぶほど暴走している筈のロボットは、ついさっき自身の金属でできた機体を照らしていた月光が遮られていることを奇跡的に察知して、事態に対処しようと何物かが落としている影を頼りに其方を振り返る――――――できた事はそれだけだった。

背後から黒と紫に発光する電波塔が振りかぶったままのハンマーとアームを押し込むように倒れ込み、機体を打ち据える。間髪入れずに反対方向からも同じ物体が現れた。鉄と鉄が擦り合わされる耳障りな音をたてながら折り重なった二つの鉄塔の下敷きとなったロボットは、武器と腕をへし折られ、頭部を元の半分ほどの長さに拉げさせられて今度こそ完全に沈黙した。



◆    ◆



「よーし、いっちょあがりっと」

見事な満月の下でうっすらと煙を上げて地面に突っ伏している元ロボットのスクラップ。そんなシュールな光景を一応記念としてスマホで撮影した少女は一息つく。そんな彼女の隣の空間が四角く切り取られ、まるでドアのように開かれた。


789 : No cross, no crown ◆mtsNaPlNVI :2018/05/27(日) 22:34:03 i7OiGIVg0
そこから入ってきた人物――――――否、「物体」はその大きな丸い目を弓なりに細めながら、電子音じみた独特の声音で彼女に話しかけた。

「ヤァ、菫子はすごいネェ。『デデデロボ』まで倒しちゃうナンテ!ホントはコノゲーム、遠くカラ専用の銃で壊していくんダケド…キミならキット、サーヴァントとダッテ戦えるヨォ」

「……ありがとー。ここにはいい練習台がいっぱいあるし、外じゃこうも気軽にぶっ放せないから助かるわ。」

返答しながら彼女、菫子はその物体、もとい自身が召喚したキャスターのサーヴァントをまじまじと観察する。
全長およそ二十センチの黒い球体。それが水色の耳付きフードのローブを着用し、菫子と視線が合う程度の高さのところを浮遊している。マジシャンが使用するような白手袋に包まれた両手は、人間でいう「揉み手」の状態に組まれており、胴体から離れてこれもまた宙に浮いている。――――どう見ても人類にというか地球上の生命体に見えない。そのアニメチックにデフォルメされた姿は手を身体に付けてじっとして居れば常人にはぬいぐるみか、はたまた小型のクッションとしか認識されないだろう。
実際、菫子自身彼(性別が雄かは菫子には分からないが)が召喚された直後、誘惑に負けて両手で全身を揉みしだいてみたが、マシュマロのような極上の触り心地であった……キャスターには「ウワーッ!マスターのエッチー!!」という悲鳴と共に怒られた。無念


それはさておき、キャスターの言うには彼は銀河を股にかける旅人で、これまでたくさんの星を訪れたが地球という惑星は見たことも聞いたこともないという。ならばと星図や天体の観測写真をいくつも見せてみたものの、彼が身に覚えがある星は一つもなかった。どうやら大分遠くからの客人らしい。人類が接触できる知的宇宙人はこの宇宙には存在しないというのが菫子の持論だったが、なるほど外宇宙、平行世界の遥か向こうまで探したのなら存在してもおかしくないのかもしれない。まあ、それでもこうして宇宙の向こうから「召喚する」という反則技でも使わない限りは地球人が出会うことは不可能だろう。


菫子はキャスターと共に今しがた開いたドアをくぐってその向こうに出た。夜の砂漠とは打って変わって、全体に灯りが行きわたっている部屋だ。寒色系のつるつるした素材で作られたそこは、巨大なモニターや蛍光色のボタンのついたキーボードのような物が目を引く空間だった。
ただでさえ日本離れした景観である外の見滝原よりもさらにSF的な見た目だ。まるで、ゲームやアニメに出てくる宇宙船内のような。
ここは見滝原郊外の廃工場の地下・・だったが、キャスター曰く彼のスキル陣地作成によって空間が大幅に広げられ、所有している宝具の一つである『宇宙船』の内部に似せた造りにされているのだそうだ。
先ほどの砂漠とロボットもその船内に備え付けられた『ゲーム』を再現したものだという。菫子が本物の『超能力者』であることはキャスター興味を惹いたようで、ゲームという形でその力をぜひ見せてほしいと頼んできた。結果はさっきの通りだが、どうやら彼はご満悦のようだ。こちらを振り返り、声を弾ませてこちらに話しかけてくる。

「ネエ菫子ッテ、ネガイゴトはまだ決まってないのカナ?イッショに戦ってくれるのはアリガタいケド、ヤッパリキミにも決まった目標があったほうがイイと思うヨォ」

「そうねえ、ちょっと前ならかの『幻想郷』の秘密を暴くことに活用したいなーって思ったかもだけど。もうそのためのアイテムはできちゃってるんだよねー。一応、それなりにがんばって作った物だから使わないともったいなさすぎだし。それ以外の願いだと焼肉とか寿司とか……?
まあ、今のところは考え中かな。聖杯ができても自動で帰れるわけじゃないっぽいし、もしかしたらここから帰りたいっていう事を願わなきゃいけなくなるかもしれないしね。」


790 : No cross, no crown ◆mtsNaPlNVI :2018/05/27(日) 22:35:22 i7OiGIVg0

結界によって現世から隔離された神秘溢れる異界『幻想郷』。菫子は己の知的好奇心のためにその秘密を暴きたいと願った。そしてまず、行き来を自由にするために現実と幻想、または常識と非常識を隔てる結界を破壊することを目論んだ。
そのために彼女が創り出したアイテムが『オカルトボール』。世界各地のパワーストーンから成るそれの素材として集めていたものの中になぜか混ざっていたソウルジェムをうっかり手にしてしまった菫子は今に至る。全く予定外で突然の事態にどうしたものかというのが本音だ。


「そっか……マァ、イキナリ連れてこられたらソウなっちゃうよネェ。ケド、ボクにもどうしても叶えたいネガイがあるんだヨォ。
仲のいいトモダチのフリをして油断させ、ボクのコキョウを侵略シタ悪魔、カービィ!アノ邪魔も…イヤイヤ、チョーキケンなやつを野放しにはしておけないヨォ!
そう簡単にとはいかないだろうケド、菫子ほど強イマスターとならきっとダイジョウブ!オネガイ!宇宙の平和のためにも、ボクのためにも、アイツを倒せるネガイを叶えられるように力を貸してほしいんダ!」

「ああ、そっちも私が元の世界に帰れるように協力してくれるって言うんなら別にいいわよ。負けるとは思わないし。」

黄色の丸にデフォルメされた目をぎゅっと細めて切実な表情(恐らく)を作り、浮遊する両手を固く組んで訴えてくるキャスターを眺めてその両手はどうやって動かしているのだろうと思いながら、菫子は了承する。別の選択肢があるとは思えなかったし、近未来的な見滝原と比べても恐ろしく発展した技術や不可思議な魔術を自在に操るキャスターならば、優勝することは不可能ではないだろうと感じたからだ。
彼女としては元の世界に帰り、幻想郷の研究を続けられるのならば別に文句はない。
それに、本物の宇宙船に魔術、そしてサーヴァント。幻想郷のことが最優先だけど、ここには割と興味を惹かれる物がいっぱいあるので退屈することはなさそうだ。せいぜい別世界で見聞を広めてやるとしよう。

その答えを聞いたキャスターはパッと目を輝かせて(いるように見える)、感謝を述べ、そしてまだおもしろいゲームがあるのだと己のマスターの手を引いて船内を案内する。マスターの少女は物珍しそうに辺りの設備を見渡すのだった。




――――これから出会うかもしれない他のマスターやサーヴァント達がもしも彼、彼女らを目の当りにしたのなら。それなりに仲が良いと感じるかもしれない。友人のようだとも思うものもいるだろう。
だがしかしこの主従、実は互いを全く信頼していないのである。

キャスター、真名マホロアは虚言の魔術師と呼ばれた邪悪であり、彼が語った「友に裏切られた」というのは真逆で、友達のふりをして油断させたのも、侵略・支配しようとしたのも自分自身のことである。この調子の良い言動のおかげでかつてのキャスターを憐れな遭難者と思い込んだかの星の勇者は、知らず知らずのうちにキャスターが宇宙の秘宝を強奪する計画の片棒を担がされる羽目になった。菫子に対しても、聖杯を手に入れた暁には独り占めするために始末する気満々で、ゲームと称して超能力とやらの手の内を見ておこうという魂胆で愛想よく接しているだけに過ぎない。『サーヴァントとだって戦える』と調子の良いことをほざいているが、サーヴァントどころか『ゲーム』のロボットでさえ倒すのでさえ数分程の時間が掛かってしまう程度の能力だと内心では嘲笑っていた。
それでも、何の力も無い一般人よりはまだマシだろう。彼のマスコット的な外見とは程遠い真っ黒な思考はマスターをどう上手く利用してやろうかという方向に回りつつあった。


791 : No cross, no crown ◆mtsNaPlNVI :2018/05/27(日) 22:39:00 i7OiGIVg0

一方、当の菫子はその真意の全ては読み切れてはいないものの、キャスターの言動から胡散臭さを感じ恐らく信頼できない奴だろうと看破していた。そもそも彼女は「仲間」とか「友達」というものを必要ないと思っている人種だ。そういうものは一人では何もできない凡人が群れる言い訳に使っている薄っぺらな言葉で、高みに居る菫子を同じ底辺のレベルへ引きずり落とそうとする悪魔達が用いる名称だ。そういうわけで始めからキャスターの兵器としての強さしか信じてはいなかったが、彼の友達に裏切られたという話を聞いた時は、指を差して笑いたい気分になった。────────英霊という偉そうな名前の区分のこいつも所詮、友達とかいうものに頼り、揚句足元を掬われたちっぽけな存在なのだろう、と。
彼女はキャスターを心底馬鹿にし、軽蔑していた。だが、それで警戒を緩めたりはしていない。その証拠に菫子はゲームとはいえ巨大なロボットを嗾けられていながら、自身が使える超能力の手の内全てを出し切ってはいなかった。
やろうと思えば『発火能力』で動力部を爆発させてスクラップにすることができたし、『瞬間移動』を使えばわざわざ動かなくても鉄塊の暴威を簡単に回避することができただろう。スペルカードもあれが最後の切り札というわけではないし、必要以上の力を出さないようにする、一応は不殺の決闘に使う手段なのだ。
何よりこちらには令呪がある。もしもキャスターが何か凶行に出るとしたら予備期間中の今ではなく戦争が始まって大きく戦況が動いてからになるだろうが、怪しい挙動を感じればすぐにでも使うつもりだ。


水面下では不仲という言葉が生ぬるいほどに互いを馬鹿にし、陥れようとしている主従。これが平均的なサーヴァントと凡人のマスターならば早々に悲惨な結末を一直線に辿ることだろう。だがしかしこのふたりは規模は違えどそれぞれ一つの世界を混乱に陥れた/陥れることになる運命の高い能力を持つ者たちだ。たとえどれほどの絆で結ばれた主従が立ち塞がろうとも生半可な者たちでは圧倒的な力の前に蹂躙され、聖杯の糧として消えていくことだろう。

そうして他主従全てを殲滅し終えた後、共に戦った仲間という建前を投げ捨て、完成した願望器の前でついに同士討ちを始めるのか。もしくは逆に彼ら以上の強者に屈する羽目になるのか。あるいは─────キャスター自身も、彼のステータスを閲覧できるマスターでさえも一切関知していない第三の宝具がそんなものは些事だと言わんばかりに全てを握り潰してしまうのか。彼らの戦争はまだ、始まったばかりだ。



◆   ◆



【CLASS】キャスター

【真名】マホロア@ 星のカービィWii

【パラメーター】
筋力E 耐久D 敏捷C 魔力A++ 幸運C 宝具EX

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
陣地作成:A
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
Aランクとなると「工房」を上回る「神殿」を構築する事ができる。
多数のトラップや敵モンスターを配置した通称「テーマパーク」を暇つぶし感覚で建造できる。

道具作成:C
魔力を帯びた道具を作成できる。
後述のスキルであるメカニックと組み合わせる様な応用もできる。

【保有スキル】
メカニック: B
機械を修理、改造、解析する才能。キャスターには未知の機械でもある程度対応できる。

話術:D
言葉によって他人に影響を与えられる才能。
キャスターの場合は主に被害者のようにふるまうことを得意とするが、彼自身が苛ついていたり、敏い者が相手だった場合はボロが出る危険もある。

異形:EX
通常の地球に生息する生命とはかけ離れた容姿・体の構造。地球外生命体であるキャスターは主に球状に近い体型であり、手が身体から離れており、足が存在せず空中を浮遊して移動する。
キャスターに対する人体理解や人間特攻の効果を大幅に弱体化または無効にし、フェロモンなどの性的な魅了も無効化する。

【宝具】
『遥かなる漆黒の天船(ローア)』
ランク:B- 種別:対城宝具 レンジ:1000 最大補足:1〜100
かつてキャスターが所有していた宇宙船。ある超文明作のオーパーツ。高速で飛行し、エネルギー弾や船体の一部を飛ばす、シールドを張るなどして戦闘を行う。
宇宙空間を航行でき、遠く離れた星に一瞬で辿りつけるワープ能力も持っているが、今のところは見滝原市内しか移動できない制限が付けられている。
本来は意思を持ち、A+相当のランクがあるが、キャスターに強制的に操られているためにランクダウンしている。


792 : No cross, no crown ◆mtsNaPlNVI :2018/05/27(日) 22:41:06 i7OiGIVg0

『遥かなる魔の王冠(マスタークラウン)』
ランク:A+ 種別:対知生体宝具 レンジ:- 最大補足:自分自身
ハルカンドラに伝わる伝説の秘宝。黄金でできた冠の形をしており、中央には蒼い宝石が付いている。本物ではなくそれをかつてキャスターが使用した時の状態の再演。
キャスターがこれを頭に乗せると、キャスターは巨大化し禍々しい魔術師らしい姿に変化する。
ステータスに補正がつき、主に空間を操ったり、ビームを放射するなど強力な魔術を使えるようになるが、Eランク相当の狂化が付与され、好戦的になり傲慢かつ狡猾な本性が出やすくなる。また、この宝具を発動したまま致命傷を負うと後述の宝具(状態)が自動発動する。

『魂魄喰らわれし虚言の魔術師(マホロアソウル)』
ランク:EX 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大補足:4
上述の宝具『遥かなる魔の王冠』を使用中にキャスターが致命傷を負うと強制的に発動する宝具(状態)。マスタークラウンに魂を取り込まれた成れの果て。ステータスが引き上げられてAランク相当の単独行動スキルと狂化を獲得し、再び霊核を破壊されるまで周辺一帯を破壊・殺戮する。キャスターの自我はほぼ消滅している、いわゆるゾンビ状態。なおキャスターはこの宝具の存在を知らず、彼のマスターとなった者も宝具が発動されるのを認識するまで気付かない。

マホロアソウル
筋力A+ 耐久B 敏捷C+ 魔力EX 幸運E 宝具EX

【weapon】
なし

【人物背景】
星のカービィWillのラスボス。
マスタークラウンの強奪のために守護者ランディアを襲撃したが敗北し、不時着したプププランドでカービィ達に出会う。
船の修理を手伝ってくれたカービィ達を利用しランディアを悪者に仕立て上げ、ランディアを倒させたあとマスタークラウンを強奪。
クラウンの力を用いて全宇宙の支配と最初にポップスターを支配することを宣言するもランディアの協力を得て追いかけてきた一行に敗北。最終的に暴走したマスタークラウンに取り込まれてしまう。
マホロアソウルが撃破された後の時間軸から参戦。ソウル時の記憶は無いが、自分がカービィによって倒されたことは知っている。

【サーヴァントとしての願い】
カービィを確実に始末し全宇宙を支配できる力を手に入れる。

【方針】
聖杯狙い。聖杯を独占するために用済みとなった時点でマスターは始末する。


793 : No cross, no crown ◆mtsNaPlNVI :2018/05/27(日) 22:41:40 i7OiGIVg0

【マスター】宇佐見菫子@東方深秘録

【マスターとしての願い】
聖杯を取ってから考える。とりあえず無事で帰れるなら何でもいい。

【weapon】
『3Dプリンターガン』
3Dプリンターを使用して製造した青色の拳銃。

『タブレット』
金色で六芒星マークが入った黒色のタブレット。能力を使用するときの補助として使用することがあるようだ。

『オカルトボール』
世界各地の霊地から採れるパワーストーンを加工したアイテム。闘いとその勝敗でのみ所有者が移動するという性質がある。幻想郷の結界を破れるポテンシャルを持っており、菫子のラストスペルに使用されるが幻想郷に放たれていない現時点でどの程度の効力があるかは不明。

【能力・技能】
『超能力を操る程度の能力』
身体的延長等による物理的力によらない「念力」、「サイコキネシス」。空間的に離れた場所を瞬時に移動する「瞬間移動」、「テレポーテーション。火気の無いところに発火現象を発生させる「パイロキネシス」。他の物理的力などによらず中空に浮遊する「空中浮遊」などの力を自在に行使する、生まれながらの超能力者。特にサイコキネシスは電柱や鉄骨、電波塔などを動かす様子から高い出力が窺える。
なお超能力と頭脳以外は一応普通の女子高生並みなので、体術などの心得は無い。

【人物背景】
東方深秘録のラスボス。高校一年の女子高生であり、自身を「超能力者」と称している。 秘封倶楽部初代会長を自称する。
頭脳明晰であり、他の人間とは違って超能力が使え、おまけにあらゆる情報をネットで得られる時代による全能感もあって、他の人間を見下し、始めて見る妖怪などにも物怖じしない。さらに友達作りは群れたがる奴らがすることだと考えているために仲間もいない。
高校に進学したあとは、霊能サークル会長を名乗り、意図的に周囲の人間を寄せ付けないようにしていた。
あるとき幻想郷の存在を認識した彼女は、幻想郷の秘密を暴くことに執念を燃やし始める。 なんとか侵入を試みるも幻想郷の大結界に阻まれ、滞在できる時間はごく短いものであった。
そこで彼女は外の世界の聖地の石を加工して作った、高い霊力を持つパワーストーン(オカルトボール)を幻想郷に放った。
外の世界の土地に根差した霊力を持ったパワーストーンを幻想郷の人間や妖怪に集めさせることで、常識と非常識の結界を破綻させ、幻想郷を内側から破壊させようという目論見である。東方深秘録本編では、異変を察知した幻想郷の賢者の一人や結界の巫女たちの活躍により計画を挫かれ、少し丸くなる・・・のだが、この菫子は本編より以前、オカルトボールを幻想郷に放つ前の状態なので、まだ驕り高ぶっている。


【方針】
一応聖杯狙い。キャスターは警戒する。


794 : ◆mtsNaPlNVI :2018/05/27(日) 22:42:17 i7OiGIVg0
投下を終了します


795 : ◆EPxXVXQTnA :2018/05/28(月) 16:07:02 SIQksGwU0
投下します


796 : 見えたら、■■■ ◆EPxXVXQTnA :2018/05/28(月) 16:09:18 SIQksGwU0


 最初は小さな違和感だった。
 普通に小学校に通う自分、級友と普通に食事をとる自分、そして医者の父と専業主婦の母と裕福な家庭で普通に暮らす自分。
 その全てが笛口雛実にとっては確かに幸福であり、同時に明確な異常で、
 そして、それを自覚した瞬間、幼い喰種は全てを思い出した。

 そう、喰種。自分は人間ではないし、普通の食事は摂れない。ましてや学校なんて通える筈もなく、両親だってーー

 パパは鳩に殺された。殺されて切り刻まれた。優しかったママは自分を守るためにパパの赫子で殺された。
 大好きだったあんていくの皆も、私に文字を教えてくれたあの人もここには居ない。

 その瞬間、少女の幸福は崩壊した。
 
 普通の食事が一切摂れなくなった。
 先日まで味わえた筈の食べ物が腐った生ゴミのような異物になり、食欲を刺激する芳しい香りもおぞましくなった。
 大好きだった母の手料理も、たべるどころか嗅ぐことすら厳しい。 
 対して、それまで普通に接してきたクラスメートや周囲の皆が、とても美味しそうに見え始めた。  
 それが正常なのだ。逆に今までの生活が異常で、あり得なかったもの。
 それだけなら、まだ耐えられた。
 雛実が真に絶望したのは、引きこもった雛実を心配する両親から抱き締められた時。
 鼻孔を擽る香りとともに、ふたりを美味しそうと感じた。感じてしまった瞬間だった。

   
 ーーーやぁ、マスター


 絶望する雛実の耳に、ふと声が届いた。
 眼前の両親には聞こえず、無垢な彼女だけに聞こえる囁きで。
 続けて目に飛び込んできた血のように赤いバルーンが、ふわふわと浮かんでいる。
 風船の紐を手に持つ怪人は、透き通る青い瞳で雛実を見つめる。
 白い衣装に真っ白なメイク、微笑みを浮かべる何かはお茶目な仕草で手を降り、そして……




 ーーー浮かぶ時間だよ。私とふたりで皆をふわふわ浮かばせるんだ。『マスター』



 部屋に戻ると、既にアサシンからの贈り物が机に置かれていた。
 ふわふわと揺れる風船の紐の下に、無造作に鎮座する肉片をかじる。
 マスターが人肉しか受け付けない体質であることを知ってからは、アサシンはこうしてちょくちょくと食料を届けてくる。
 真っ当な英霊ならば即座に雛実を見捨てるだろうが、アサシンもまた人を喰らう怪物であった事が幸いと言えるかもしれない。

「……聖杯を作れば、幸せになれるのかな」

 ソウルジャム。この宝石にサーヴァントの魂を捧げれば、何でも願いが叶うらしい。
 雛実の願いは『平穏』。鳩にも怯えず、両親と皆で何時までも普通に暮らしたい。普通に学校に通って、勉強して、普通に生きていたい。
 喰種に生まれた宿命か、幼さが抜けない少女が抱くとは思えない願い。
当に諦めていた筈のそれは、見滝沢での生活で再び彼女に思い起こさせた。
 
 アサシン……あのピエロの姿をした怪人は、雛実に対して何も強制しない。戦いに躊躇する心情も否定せず、喰種として人を襲う覚悟も持ち得ない点も殆ど触れなかった。
 NPCの両親と過ごしたいと言っても、好きにすればいいと言ってくれた。
 それだけなら、あの人は良い人なのかもしれない。
 しかし、雛実はどうしてもアサシンを心から信用することができなかった。
 理由としてはただ一点、アサシンが雛実を見る目に、危うい何かが見え隠れするから。
 それが何なのかは本能的に悟っている。しかし、あえて考えないようにしていた。
 サーヴァントが自身のマスターに『食欲』を感じていることなど、絶望以外の何物でもないのだから



アラもう聞いた? 誰から聞いた?
妖怪ピエロのそのウワサ

最近物騒な見滝沢、子どもたちを拐って消える怖いピエロ!
赤い風船に白いメイク、愉快な踊る道化師さん!
でもでもそれはピエロじゃなくて、皆が見れば千差万別!
ゾンビにミイラにお母さん!自分の一番怖いものに大変身! 
でも怖がったら駄目!何処かに浚われて影も形もない!
助けを呼んでもあら不思議!そこにいるのに居なくなって、あっという間に狼少年!
拐われたら二度と帰ってこなくて、皆で浮かぶのふわふわと!!

バルーン!


797 : 見えたら、■■■ ◆EPxXVXQTnA :2018/05/28(月) 16:12:17 SIQksGwU0


【CLASS】アサシン
【真名】ペニーワイズ@IT/“それが”見えたら、終わり。
【マスター】笛口雛実@東京喰種
【属性】混沌・悪
【ステータス】筋力B 耐久EX 敏捷E 魔力A 幸運E 宝具EX

【クラススキル】

気配遮断:EX
 サーヴァントとしての気配を絶つ。完全に気配を絶てば特殊な才能を持たないNPCやマスターには一切視認されない。
 このアサシンの場合、実体化しても殆どの大人には見ることができず、思春期の少年少女など、多感で夢のある子供にのみ姿が見える。
 ただし、其処に要ると強く認識されると、誰の目にも明らかな程アサシンの姿は現実のものとなり、出現を余儀なくされる

【保有スキル】

魂喰い:A+
 ソウルイーター。
 魂喰いによる魔力値が増大するスキル。
 特に子どもの魂喰いには大幅な魔力ボーナスを得られる。
 このランクだと数回の魂喰いにより、現界に必要な魔力はほぼ賄える。
 反英霊、子喰らいの怪物ゆえのスキル

シェイプシフター:EX
 自由自在に変身し、神出鬼没に現れる魔性の存在。
 変化、幻術スキルを内包し、肉体の破損を厭わず人々を襲う高い不死性を誇るが、
 強く団結し恐怖を克服した相手には……

下水道の怪物:C
 街の地下に張り巡らされた下水道に陣地を作成できる。この陣地内では物理防御と魔術防御時に有利な補正を得る。
 また、下水道からパイプで繋がっている場所にならどこにでも移動できる

【宝具】

『IT(イット)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大捕捉:1
 各人にとっての恐怖の形。対峙した者を恐慌状態に陥れる。
 恐慌状態となった相手からの物理攻撃、魔術攻撃及び奇襲攻撃に対して、アサシンは攻防ともに高い補正値を受ける。
 対峙した相手の恐怖によってアサシンは強化されるが、その恐怖を克服したものに対しては害を及ぼせない。
 この宝具はアサシンの力の源であるが、これを克服した
 相手に対しては無力である

『再演(リターン・オブ・イット)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大捕捉:1 
 死亡あるいは消滅等原因は問わずペニーワイズが「いなくなった」場合、27時間以内(マスターの魔力が高いほど早くなる)にマスターの元に再登場する。
 ただしマスターが不在の場合はそのまま消滅する。また、宝具『IT』を真に克服した相手には再発動できない

【weapon】
 武器は持たず、爪と牙で人を狩り、相手の恐怖そのものを武器とする。

『風船』
 赤い風船。ふわふわ浮かぶ。視界を塞いだり目眩ましに使えるかもしれない

【サーヴァントとしての願い】
 現世への復活。聖杯獲得の暁には見滝沢に永住したい

【人物背景】
 ピエロの姿を取り、子供達を町から消し去ってしまう悪夢的存在。対象を威嚇・捕食する際は鋭い牙を剥き出す。
 人々の恐怖と魂を食べて生きており、古来よりデリーに27年周期で現れ、その都度事故や天災に見せかけては住人を襲っていた。
 原作出典ならフォーリナー適性もありそうだが、今回は基本的な設定は2017年放映の『IT/“それが”見えたら、終わり。』を基準とする

【マスター】
笛口雛実@東京喰種

【weapon】
『赫子』
 喰種の補食器官。
 ヒナミの場合、攻撃力のある父の赫子と、防御に長けた母の赫子を両方受け継いでおり、非常に強力。

【マスターとしての願い】
 両親に合いたい

【能力・技能】
 参戦時期の都合上、まだ幼く未熟な少女ではあるが、赫子以外でも喰種としての才能は高く、潜在能力は底知れない

【ロール】
小学生。医師の父と専業主婦の母の核家族として生活している。
NPCの両親は喰種ではなく人間である

【人物背景】  
20区にいる十代前半の喰種の少女。通称「ヒナミ」。
心優しいが引っ込み思案な性格をしており、戦闘には不向き。
父を失ってからは母親の笛口リョーコと二人で生活していた。 母・リョーコが人間を上手く狩れないこともあり、母子であんていくに食の面で世話になり始めた事から、霧嶋董香や金木研達と縁ができた。
義務教育を受けられずに育っているため、読み書きを教えてくれるカネキになついていた。アニメ版では恋愛感情を抱いているような描写がある。

【方針】  
 聖杯で本当の両親を生き返らせて、皆で幸せになる。NPCの両親にも愛情を感じているため、自分が喰種であることは知られたくない


798 : 見えたら、■■■ ◆EPxXVXQTnA :2018/05/28(月) 16:12:51 SIQksGwU0
投下終了です


799 : ◆/sv130J1Ck :2018/05/29(火) 16:58:40 KiRhqpVM0
投下します


800 : ◆/sv130J1Ck :2018/05/29(火) 16:59:16 KiRhqpVM0
見滝原に流れる複数のウワサ。

曰くッッ!悪の救世主ッッ!

曰くッッ!徘徊せるモナ・リザッッ!

曰くッッ!時間泥棒ッッ!

曰くッッ!徘徊する恐竜ッッ!

曰くッッ!箱詰めの人体ッッ!


これらの奇怪なウワサと 比すればそれはとてもとてもささやかなウワサだった。


801 : ◆/sv130J1Ck :2018/05/29(火) 17:00:32 KiRhqpVM0
分厚い雲が空を覆い、奇怪な事件とウワサにより人の気配が絶えた見滝原。
照明もロクに無い暗い夜の公園に湿った音が響く。

咀嚼音。おそらくは骨だろう硬いものを噛み砕く音。液体を啜る音。咀嚼音。

地面にぶち撒けられた物体に、周りに飛散した夥しい液体。
もしこの場に灯りが有り、何がこの場に有り、何がこの場で起きているか、見てしまった者は生涯悪夢に悩まされて過ごすだろう。
地面に転がるのは、複数の箇所で捩くれ折れ曲がった人の四肢。
地面を濡らすものは、バケツ一つでは到底及ばぬ量の鮮血。
舌を眼球を引き抜き喰らい、頭蓋を割り開いて脳を貪り尽くした''ソレ''は、喰うところが無くなった頭部を乱雑に放ると、腹に口をつけて腸を引きずり出した。

「いつまでも喰っているんじゃない、このバカ猫がッ!」

公園に突如響いた怒声の主に''ソレ''は緩慢に顔を向けた。

「ぐるるる………」

"ソレ''は少女の姿をしていた。
麻薬中毒患者を思わせる濁った瞳、剥き出した歯、内から湧き上がる凶猛な衝動に歪んだ顔、唇の端からしとどに溢れる涎が、老若男女を問わず人の目を惹きつけるだらう少女の顔を、醜悪怪奇な''バケモノ''のソレに変えていた。
その顔の悍ましさに比べれば、少女の頭から生えた一対の猫耳や、尻から伸びる猫の尾など些細なものだ。

「チッ!さっさと喰い終えろッ!人目につくと厄介だ」

そう忌々しげに毒づくのは、緑色の学ランに身を包んだ長身の少年だった。
線の細い、端正な顔を、憤怒と嫌悪に歪めて少年は少女に怒鳴りつける。

「さっさと霊体化しろッ!私の魔力を無駄にするなッ!」

「ぐるるる…狩………死、血………」

「すぐに飽きるほど狩らせてやる」

忌々しげに少年が言い聞かせた言葉に納得したのか、少女の姿は虚空に溶け込むように消えていった。
少女が消えるのを見届けて少年は短く息を吐く。
少年は凡人より魔力の持ち合わせこそあるが、バーサーカーのクラスで顕現した少女を実体化させておく事は、流石に負担が大きいのだ。

「何故わたしが狂戦士(バーサーカー)なんぞを………しかし切り捨てるわけにもいかん」

いくら負担が大きくとも、 少女と縁を切れば、少年は単騎で聖杯戦争に望む事になる。そのような状態で勝てると思うほど少年は愚かではない。

「………あの方からの命令を邪魔されてこんな所に拉致されてしまった以上、聖杯とやらを得なければ戻る事もできん」

こんな事に巻き込んでくれた奴が呉れると言っているのだ。勝ち上がり、獲得した聖杯を献上すれば、あの方も喜ばれるだろう。
というより無様過ぎて戻る事が出来ない。何としても聖杯を獲得して、埋め合わせをしなければならなかった。
少年は思い出す。三ヶ月前のエジプトでの出会いを。
あの運命の出会いを思う都度、少年は決意するのだ。

かならずあの方の為に役に立ってみせる────と。


少年の決意に呼応するかの様に、少年の額で不気味な肉片が蠢いていた。


802 : ◆/sv130J1Ck :2018/05/29(火) 17:01:17 KiRhqpVM0
見滝原に流れる複数のウワサ。

曰くッッ!悪の救世主ッッ!

曰くッッ!徘徊せるモナ・リザッッ!

曰くッッ!時間泥棒ッッ!

曰くッッ!徘徊する恐竜ッッ!

曰くッッ!箱詰めの人体ッッ!


これらの奇怪なウワサと 比すればそれはとてもとてもささやかなウワサだった。


曰くッッ!人を喰う女ッッ!


803 : ◆/sv130J1Ck :2018/05/29(火) 17:02:01 KiRhqpVM0
【CLASS】
バーサーカー

【真名】
緋鞠@おまもりひまり

【属性】
混沌・狂

【ステータス】筋力:A+ 耐久:B 敏捷:A++ 魔力:A 幸運:E- 宝具:B+


【クラス別スキル】

狂化:B
全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。



【保有スキル】

妖猫:A+
天性の魔・魔力放出・吸血・加虐体質を併せ持つ複合スキル。
このランクでは完全に獣となり、理性を喪失して無差別に襲い、殺し、喰らう存在となる。


変転の魔:A
英雄や神が生前に魔として変じたことを示す。過去に於ける事実を強調することでサーヴァントとしての能力を著しく強化させるスキル。
このスキルによりバーサーカーの筋力と耐久は跳ね上がっている。
バーサーカーが金毛白面九尾から妖力と共に取り込んだ無数の妖の負の情念と、バーサーカーが生来持っている獣性が混じり合った結果、バーサーカーは獣と堕ちた。
この為ランク相応の精神汚染スキルの効果も併せて発揮する。


怪力:A +
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。
完全なる魔と化したバーサーカーは、これを高ランクで所持する。


妖殺し:A+
野井原の緋剣として数多くの妖を屠った逸話を持つ事と、数多の妖を喰らった金毛白面九尾の力を取り込んだ結果このスキルランクとなった。
魔物・魔性といったものとの戦闘時に敵のステータスを1ランク下げる事が可能。
魔に属するものを喰らう事で自身のステータスに補正を掛ける事が出来る。


804 : ◆/sv130J1Ck :2018/05/29(火) 17:03:46 KiRhqpVM0
【宝具】
宴の時 狩りの夜 紅き血に染まり狂う

ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:10 ~40 最大捕捉:500人

一定範囲内を現世から切り離し、異界とする宝具。
内部にはバーサーカーの妖力が満ちていて一般人は即座に気絶する。外部から内部を観測する事は出来ない。
魔術師やサーヴァントであれば意識は保てるが、体内の魔力の流れや魔術行使の阻害、全ステータスやスキルランクの低下、全感覚の鈍化、宝具の弱体化といった効果を対魔力に応じてつけられる。
Dランク以下であれば全ての効果が。
Cランクであれば体内の魔力の流れや魔術行使の阻害、全ステータス若しくはスキルランクの低下、全感覚の鈍化が。
Bランクであれば体内の魔力の流れや魔術行使の阻害、全感覚の鈍化が。
Aランクでも全感覚の鈍化が発生する。
これらの効果はバーサーカーの認めた者には発生しない。

この異界は外部からの侵入は容易だが、脱出は困難。また、異界化した領域は認識できなくなる訳では無く、普通に認識できる。
バーサーカーは異界内部の事は細部に至るまで把握する事が可能だが、バーサーカーの精神状態ではそんな器用な芸当は期待できない。
異界内部の任意の場所に、妖力を固めて作った自身の姿を象った傀儡を作成可能。
この傀儡は物理的な干渉は出来ない代わりに、脳に直接攻撃を受けた、接触した、といった認識を送り込む事で攻撃してくる。

異界は構造が非常に不安定な為、バーサーカーを倒すと''崩界''を引き起こし、異界内部の全てが現実から消滅する。
異界の維持に必要な魔力量はそれ程でも無い。


【Weapon】
爪と牙


【解説】

おまもりひまりのメインヒロイン。cv小清水亜美

青みを帯びた黒のロングヘアー。赤い大きなリボンでポニーテールにしている。瞳は赤みを帯びた紫色。かなりの巨乳で、スタイルは抜群。
その正体は、猫の妖(あやかし)。戦うときは猫耳を晒す。他の妖たちには「野井原の緋剣」(のいはらのひけん)と呼ばれている。人間としての生活などで必要があれば、野井原姓を名乗る(これは緋鞠自身が名乗っているものであり、先祖代々が「野井原」を名乗ってきたわけではない)。本来は白猫の姿であり、かつて野井原に居た幼少の優人とはこの姿で共に過ごしていた(猫の姿のままでも人と会話が可能)。人間に変化しているときでも妖と戦うときや怒ったときなどには猫耳と尻尾が出る。


このバーサーカーは、緋鞠が金毛白面九尾と戦った際に、金毛白面九尾が数多の妖を喰らう事で蓄えていた妖力と喰われた妖達の負の情念が、緋鞠の内にある獣としての本質と融合して邪妖と堕ちたもの。
本来ならば最後に残った一欠片の意志が邪妖に抗っていたのだが、バーサーカーのクラス特性である『狂化』にその意志は呑み込まれた。
彼女を救った、心を通いあわせた少年の刻んだ光は、この邪妖の内には存在しない。


【聖杯に掛ける願い】
????


805 : ◆/sv130J1Ck :2018/05/29(火) 17:05:08 KiRhqpVM0
【マスター】
花京院典明@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダーズ

【能力】
法皇の緑(ハイエロファントグリーン)

【破壊力:C / スピード:B / 射程距離:A / 持続力:B / 精密動作性:C / 成長性:D】


ボディを帯状に変化させることが出来る人型の遠距離操作型である。人型といってもスタープラチナのような近距離パワー型とは違い、パワーは劣るものの射程距離は最大100m以上とかなり長い。
空条承太郎曰く「緑色でスジがあって、まるで光ったメロン」とのこと。

他にも、スタンドを糸状にし周囲に張り巡らせることで結界を張り、それをセンサーとして相手が認識していない場所からの不意討ちもできる。結界は網目状に広く法皇を張り巡らせるため、その状態で一部分を切断されても元に戻した時はなんてことはなく、結果的に花京院本体へのダメージはほとんど無い
人間の体内に入れる事でその人物を操る事ができる。


エメラルドスプラッシュ:
体液を固めて超高速で飛ばす必殺技。
この技の為に遠距離型にも関わらず、近距離パワー型にも負けない破壊力を持つ。
DIO様にはデコピンであしらわれたが。
物体に反射させて相手を誘導・翻弄できる。
コブラチームのジョジョゲーではこの技のおかげで花京院は最後までアタッカーとして戦える。


【人物】
DIOに出逢ってゲロ吐く程怯えていたらカリスマッ!されてDIOの舎弟になった日本人のスタンド使い。
現在の性格は卑劣で残忍。自身の為に他者を平気で踏み躙り、悪とは敗者であり正義とは勝者であると定義する。
空条承太郎曰く『はき気のする悪』

【聖杯に掛ける願い】
無い。聖杯はDIO様に捧げる。


【参戦時期】
空条承太郎の抹殺命令を受けた直後。
脳には肉の芽が埋まっている。


806 : ◆/sv130J1Ck :2018/05/29(火) 17:06:43 KiRhqpVM0
投下終了です

タイトルは【歪んだ二人】でお願いします


807 : ◆zzpohGTsas :2018/05/29(火) 22:05:10 g6v1l5n20
投下します


808 : 繋がれたる者 ◆zzpohGTsas :2018/05/29(火) 22:05:49 g6v1l5n20





     黒奴美人は半開きの戸棚です

     中には濡れた珊瑚がしまってある

                     ――ジャン・コクトー




.


809 : 繋がれたる者 ◆zzpohGTsas :2018/05/29(火) 22:06:23 g6v1l5n20
――――

 俺は、そいつ程弱そうな白人を見た事がなかった。
黒い色をみるや下卑た輝きを瞳に湛え、体の良い農奴か家事手伝い、そして、サーカスの見世物になるかどうかしか考えない馬鹿野郎。
銃を腰に差してなければ、自分の強さすら認識出来ないあの思い上がった阿呆共。俺が見た白い肌をしたサル共は皆、そんな奴らばかりだった。
肌の色、持ってる土地の広さ、金。そんな物でしか、人を判別出来ない奴ら。黒人である俺達を、農園の歯車としてしか見ない奴ら。俺らに対してのみ、強く出れるキリギリス共。俺にとっての白人とは、そんな奴らだった。

 ――だがそいつは。
マスターと仰ぎ見なければならない――死んでも御免だが――その男は、俺の知る白人のイメージを、尽く裏切る、そんな男だった。

「……」

 そいつは、一言も、何も言葉を発する事なく。
シャベルを使って地面を掘っていた。一時間近い時間をかけて、漸く、そいつの膝下までの深さの穴を掘る事が出来た。
何を埋めるのか、と言われればゴミである。確かにゴミに相違ない。俺達が呼び出されたミタキハラ・シティ。
その外れの教会跡近くのボロボロの廃屋から、その白人を立ち退かせようとしたギャング――ヤクザと言う名らしい――の一人。
それを、男は埋めようと言うのだ。シャベルを振う男の近くには、首を銃で撃ち抜かれた、黒とも白とも違う、黄色がかった赤っぽい肌の男の死体があった。
と言っても、もうすでに死体の為か。凄い速度で青褪めかけているのだが。

 その白人は、単調な作業が好きらしい。
飽きもせず、休みを挟む事もなく、ただひたすらに、穴を掘る。人を埋められるだけの大きさの穴を作ると言う事は難しい。
昔俺が農園で奴隷として働いていた頃、同じような作業をしていた事があるからよく解る。あんなひ弱そうな白人に務まるような、作業じゃない。
ない筈なのだが、黙々と、奴は続けている。それがまるで、自分の性にあっているのだと言わんばかりに。錆の浮いたシャベルを、軍手とやらを付ける事もなく振い続ける。

「手伝って欲しいか?」

 意地悪の悪い事を俺は言ってみる。手伝うつもりは、勿論ない。奴が白だからだ。
言葉を受けて、その白人は俺の方を振り向いた。顎に生えた髭を、髑髏の形になるように剃った異様な風体の白人。
何処にでもいそうな奴の典型のような男だったが……そうではないと、奴の目が語っている。両目の底で輝くその瞳は、異様な雰囲気を持っている。狂気と言う名の空気が、あの白人の目の其処で凝り固まっていた。

「自分で殺した相手の落とし前ぐらいは自分でつける」

 そうとだけ言って、奴は再び穴に集中。シャベルを振い始めた。
強情、強がり。そんな物とも違うらしい。本心からそう言っているようだ。

「アンタからはやる気って物を感じられないな。聖杯戦争に勝ち抜こうと言う気力がない」

 その言葉を受けて、奴は、スコップを振う手を止めた。
そして、今度は身体ごと俺の方に向き直らせ、ザックと、シャベルを地面に突き刺してから口を開いた。


810 : 繋がれたる者 ◆zzpohGTsas :2018/05/29(火) 22:06:41 g6v1l5n20
「聖杯とやらを必要とする、と言う意味じゃあ、確かに気力はないかも知れない」

「聖杯以外に目的があるのか」

「無論」

 奴は即答した。

「俺は自己を高める為に此処にいる」

「人を殺す事が修行なのか、イカれたHonkyだな」

 Honky、その言葉は、俺を『目覚め』させた、流離の歯医者であったドイツ人から習った言葉だった。
白人共の肌の色を、血を浴びたみたいに怒りで真っ赤にさせる魔法のワード。相棒であり恩人であったあのドイツ人は人前で使うなと言っていたが、
俺はそんな事はお構いなしだ。マスターを挑発する為に口にした言葉だったが、奴は無反応だった。ある種の力強さを宿した瞳で俺を見ている。
怒ってはいないようだった。だが――怒ってはいないのに、大した速度で腰のホルスターに掛けられたコルトを引き抜こうとし始めた。
確かに、速い。だが、その程度の速さでは南部の荒野を生きる事は出来ない。奴以上の速度で俺は、腰のホルスターに差されたレミントンを引き抜き、その銃口の照準を奴の額に合わせた。その時点でまだ、俺のマスターはコルトを引き抜こうと言う段階だった。奴と俺との速さ比べはこの時点で、素人でも明白な物にだった。

「撃て。果たし合いは、お前の勝ちだ」

 眉一つ動かす事なく、Honkyは言った。『リンゴォ・ロードアゲイン』と言う名のHonkyが。
動揺している風を全く感じさせない。怯えている風にも、全然見えない。俺との早撃ちの結果を、正統な物として墓場まで持って行くつもりであるらしかった。

「殺すのは後回しにしてやる。それよりも――続きが気になる。話してみろ」

「ふざけるな。公正な殺し合いの果てにあるのはどちらかの明白な死だ。恥辱と凌辱は、男の世界から最も遠い考えだと知れ」

 此処で明白に、リンゴォは怒気を露にした。言葉にも明白に、怒りの念があった。

「俺が生きるのは男の世界じゃなくて生き死にの世界でな。決闘に負けた奴が、勝った奴の言い分を全て聞く事も、男の世界に必要な事なんじゃないか?」

 リンゴォが閉口する。屁理屈である、と思っているのかも知れない。しかし、理がない訳じゃないとも。思ってるそんな目だ。
癪と言うような態度で、そいつは口を開いて、話の続きを口にする。

「オレの目的は、俺を殺しに掛かって欲しい事だ。真正面から公正に、そして、顔も過去も知らない俺を明白に殺してやると思えるだけの、『漆黒の殺意』を伴わせてだ」

「それに何の意味がある」

「オレを、高めさせてくれる」

 やはり即答だった。それも、奴の心の深根の部分にまで行き届いてなければ、出てこない程の即答振りだ。

「人としてオレは未熟だ。聖書の事も全然解らないし、手紙の書き方だってどうすれば良いのかこの歳で悩む位だ。穀潰しの田舎者。そんなオレを、公正な殺し合いは聖なる領域に高めさせてくれる」

 話を続ける内に、力強い輝きがリンゴォの奴の目で底光り始めた。狂気と言う名の輝きが。

「オレはまだ、オレの人生に立ちはだかる山を登っている途中だ。公正なる果し合いだけが、オレをその山の頂に到達させようと後押ししてくれる」

 「解るか?」、リンゴォが続ける。

「ウソも卑劣もない殺し合いは、聖なるものなのだ。神聖さは、立ちはだかる崖を登り詰める力となる。殺し合いによる勝利は、崖から落ちようとするオレを助ける活力となる。オレは、オレの成長の為に果し合いを望む。聖杯戦争には、これしか期待していない」


811 : 繋がれたる者 ◆zzpohGTsas :2018/05/29(火) 22:06:58 g6v1l5n20
 今になって、俺は解った。実を言うと、俺は如何してリンゴォを初めて見た時、この男が弱そうに見えるのか理解が出来なかった。
別段どこも病弱に見えず、瞳の奥の輝きも確かなものなこの男の何処に、俺は、弱さを見出したのか?
だが、リンゴォの考えを聞いて漸く悟った。こいつは――この、髑髏の髭を持った男は、奴が言う所の『果し合い』でしか自己を確認出来ないのだ。
だから、弱いのだ。黒人奴隷のように、弱いんだ。自分が何処の国から連れ去られ、祖父や祖母の名前すら知らず。
ただ大農園(プランテーション)で、疲労で濁った瞳をして、長い時間での立ち仕事で痛みを訴える背中と脚と腰を叱り付けながら、生綿を摘む事でしか、
己を実感出来ない黒人の奴隷。リンゴォは確かに白人なのかも知れない。だがこいつは、ただ『肌が白いだけの弱者』だ。
寄り添える物が全くない黒人奴隷と、俺がマスターと認めねばならないリンゴォ・ロードアゲインは。まるで同じ人間にしか俺には見えなかった。

「ブルームヒルダのいない、ジークフリートか」

 南部の荒野を共に歩き、共に同じ飯を喰らい、共に同じ紅茶を分けて飲んだ、あのドイツ人の男性から聞いた話を思い出す。 
高い山の王者であるヴォーダンなる神の怒りに触れた姫、ブルームヒルダ。火を吹く竜が住む山に建てられた牢屋を、これまた地獄の業火で取り囲んだ所に閉じ込められた、
プリンセス。そしてこの姫を助ける為に現れた、命知らずの英雄、ジークフリート。あの男から聞いた話では、ジークフリートはブルームヒルダを救って幸せに終わったと言う。

 強さと志だけは立派だが、愛する伴侶を――強さと志以外に寄り添える何かを持たなかったら、ジークフリートは如何なっていたのだろう。
俺はきっと、目の前にいるこのリンゴォのような男になってしまったのではないかと思う。戦いと勝利でしか己を見つめられない男。弱者。
そしてそれは生前、俺が歩みかけた道だ。偶然俺がカルーカンの大農園で働いていなければ。ブルームヒルダと言う名の妻がいなければ。
――キング・シュルツと言う名の賞金稼ぎと出会っていなければ。俺はきっと、アヴェンジャーと言う霊基で英霊の座と言う場所に登録すらされなかった、
ただの無名の黒人奴隷として一生を終えていたかも知れない。寄り添える物が一つ、いや、何もない奴隷として終わっていたかも知れない。
笑う程ツイた偶然があったから、俺は俺として此処にいる。そしてリンゴォは、ツイてなかった。それだけの事なのだろう。

「ブルームヒルダ? ジーク、フリート?」

 リンゴォが疑問気に言った。知らない言葉のようだった。

「気にする程の言葉でもない」

 レミントンをホルスターにしまい、俺は言葉を返した。今まで、リンゴォの頭に照準を向けたままであった。

「勝負はお預けにしておいてやる。その神聖な殺し合いとやらで十分自分を高めきったら、また早撃ちの勝負を受けてやる」

「お前は、サーヴァントとして――」

「その名前はやめろ。心底反吐が出る。俺を呼ぶなら、アヴェンジャーか自由人(フリーマン)と呼べ」

 名前自体が決まり事でそうなっているのかも知れないが、俺はもう奴隷などと言う名で呼ばれるのは御免だ。次に呼ぼうものなら、殺してやるつもりでもあった。

「解った。フリーマン。お前はアヴェンジャーとしてどのように、聖杯戦争を迎えるつもりだ」

「目的はない。向かってくる奴を、撃つ。それだけだ」

「汚らわしい対応者。貴様のような男をオレはそう呼ぶ」

「お前はそれに負けた」

 リンゴォが黙った。

「撃って、勝って。お前の足掻く様子を見てやるよ」

 本当は、違うのだろう。人種も境遇も違うこの白人が。異なる未来を歩んだ『俺』が。
聖杯戦争を勝ち残って、そして聖杯戦争自体が。何をリンゴォに齎すのか、俺は見たいだけなのかも知れない。見届けたい、だけなのかも知れない。

「貴様なぞ外れも良い所だな、『ドジャンゴ』」

「本当に殺し合い以外は駄目みたいだな」

 テンガロンハットを指で摘まみながら、笑顔を浮かべる俺。
サーヴァントと言われるのは我慢が出来ないが、名前を間違えられると、実は俺も嬉しい。キメの台詞を言えるからだ。
リンゴォ自体は、脳内に浮かび上がった俺の真名とやらを無意識に口にしただけなのかも知れないが、発音の仕方が違う。

「俺の名前の『D』は発音しない」

 直に、続けた。

「俺の名前は『ジャンゴ』と読む」

 誰に名付けられたのか解らないその名を、俺は気に入っていた。白人の無教養さを当人に刻み込んだまま、死を運ぶ銃弾を、ぶち込めるからだった。


812 : 繋がれたる者 ◆zzpohGTsas :2018/05/29(火) 22:07:15 g6v1l5n20




【クラス】

アヴェンジャー

【真名】

ジャンゴ@ジャンゴ 繋がれざる者

【ステータス】

筋力D 耐久D 敏捷B 魔力E 幸運A+ 宝具C

【属性】

中立・悪

【クラススキル】

復讐者:C+
復讐者として、人の恨みや怨念を集めやすくなるスキル。
平時ではそうでもないが、敵対的な行動をとった場合ヘイトを向けられやすくなる。また特に、白人系のサーヴァントやNPCの場合これは顕著になる。

忘却補正:C
人は多くを忘れる生き物だが、復讐者は決して忘れない。
忘却の彼方より襲い来るアヴェンジャーの攻撃はクリティカル効果を強化させる。

自己回復:E+
アヴェンジャーは時間経過で魔力が回復しない。
代わりに、投影する銃器の修復と弾丸の補充は、本人の魔力とは関係なしに勝手に行われる。

【保有スキル】

射撃:A++
銃器による早撃ち、曲撃ちを含めた射撃技術。A++は百年に一度の天才。
アヴェンジャーは特に、どんな銃でもそつなく扱える事と、相手の意識の外を狙った不意打ちの射撃に天稟の才能を見せる。

ファニング:A+
射撃の中の技術、『ファニング』の練度。クイックドロウとの相違点は、このスキルは複数人を一時に早撃ちで殺せるかどうか。
このランクになると、状況次第であるが一気に四人以上は戦闘不能の状態に持ち込む事が出来る。

窮地の智慧:B++
危機的な局面において優先的に幸運を呼び込む能力。生前は命の危機に陥る事がままあったが、その全てを抜群の幸運と己の実力でアヴェンジャーは切り抜けている。

【宝具】

『黒よ、白を喰らえ(アイハブアドリーム)』
ランク:C++ 種別:対人宝具 レンジ:1〜100 最大補足:1〜20
アヴェンジャーの持つ、銃器を扱う事への天稟の才能が宝具となったもの。
即ち、銃器を手にしたアヴェンジャーの技術全体を包括して宝具と扱い、言ってしまえば固有スキル。
アヴェンジャーは初めて対峙した相手で、かつ初回の一回に限り、銃を現在進行形で手に持っている状態であっても、相手からはその銃を発射する瞬間を知覚出来ない。

 だがこの効果は、この宝具で相手を殺しやすくするためのお膳立てに過ぎない。
この宝具の真の効果は、アヴェンジャーの殺意と敵意で威力が跳ね上がる点。
相手が白人系サーヴァント或いはNPCであった場合にアヴェンジャーが拳銃を発砲した際、相手の耐久・敏捷・幸運と、防御・回避に纏わるスキルのランクを半減させる。
また相手が白人系のサーヴァントでなくとも、相手を殺意と敵意を抱いた状態で銃を撃った場合には、宝具の威力がBランクの対人宝具並に上方修正され、
防御・回避に纏わるスキルのランクが半減すると言う効果になる。上2つの効果は重複し、白人系サーヴァントが相手でかつ、
アヴェンジャーが対象に敵意と殺意を抱いていた場合には、この宝具の効果は最大まで発揮され、その場合には『相手サーヴァントは耐久・敏捷・幸運ステータスが半減、防御・回避に纏わるスキルが一時的に完全消滅した上で、Aランクの対人宝具並の威力の銃弾を発射する』、と言う効果に変化する。

 この宝具の悪辣な点は、2つある。1つは、技術と意思力と言う2つの点に宝具の概念が割かれている事による、消費魔力の少なさ。具体的にはDランク相当の燃費である。
そしてもう一つは、この宝具が真の効果を発揮するのには、『相手が白人である』と言う事すら必要がないと言う事。
例え相手が白人でなく、黄色・黒色人種であろうが、地球外の生命体であろうが、アヴェンジャーが極限まで憎い・殺したいと思った場合には、白人であろうが関係なくこの宝具は最大限の威力で発動される。


813 : 繋がれたる者 ◆zzpohGTsas :2018/05/29(火) 22:07:30 g6v1l5n20

【weapon】

レミントン M1858、デリンジャー、コルト・ドラグーン等、ジャンゴ作中で使った銃器を投影し、これを扱う事が出来る。

【人物背景】

南北戦争直前のアメリカ南部にいた黒人奴隷。
ドイツ人賞金稼ぎの歯科医キング・シュルツが追う標的の顔を偶然知っていた為彼に助けられ、三兄弟を仕留めた後、天才的な射撃の腕をシュルツから認められ、
銃の扱い方と賞金稼ぎと言う仕事を教え込まれ、その才能を開花させる。
離れ離れになった妻ブルームヒルダを、悪しき大農園の主人から救い出した彼のその後は、杳としてしれなかったと言う。

白人と、それに与して取り入ろうとする黒人やそのほかの人種に対する怒りにクローズアップされており、他の適性クラスはアーチャー或いは、ガンナーである(アヴェンジャー自体も適性クラスの一つである)

【サーヴァントとしての願い】

聖杯自体は、聖杯戦争を勝ち抜いたバウンティとしてしか思っていない。詰まる所、願いはない




【マスター】

リンゴォ・ロードアゲイン@ジョジョの奇妙な冒険 第7部 スティール・ボール・ラン

【マスターとしての願い】

聖杯自体には無い。聖杯戦争自体が齎す公正な殺し合いが、自分を高めてくれる事を願っている。

【能力・技能】

スタンド・『マンダム』:
背中に取り付くような形状のタコのようなスタンド。
『破壊力-なし/スピード-A/射程距離-なし/持続力-E/精密動作性-なし/成長性-C』と言うステータスを持つ。
但しスタンドの持つステータスは、サーヴァントの持つステータスと同じ出力を出せると言う意味ではない。あくまでもスタンドの中で、このステータスと言う意。
自分の腕時計のツマミを回して秒針を6秒戻すことで、現実の時間もきっかり6秒だけ戻す事が出来る能力を持つ。
戻った後は、戻す前に起こった事の記憶のみが残るため、相手の攻撃を先読みして回避することが可能。
効果範囲は広く、少なくとも当聖杯戦争においては、一地区、或いは都市全体の時間を巻き戻す事が出来るのかも知れない。

【人物背景】

SBRに登場するスタンド使いの一人。大統領の刺客として登場したが、当人には刺客としての意識は薄く、ただ自己を高めさせる公正な闘いを求める人物。
嘗ては臆病で皮膚が弱く、原因不明の出血もあって身体も弱い少年時代を送っていたが、兵士に家に強盗に入られた事件で、
銃を奪って母と姉を殺害した強盗兵士を逆に殺し返す事で、自分が進むべき『光輝く道』を見出した。
同時に、彼の心に巣食っていた不安や原因不明の出血なども治まり、この経験から、『公正な闘い』は人間を成長させると信じ、『男の世界』に生きる事を決めた。

ジョニィ達と出会う前の時間軸からの参戦。

【方針】

基本は待ち。自分の事を聞き、殺し合いを挑んで来た者のみを相手として選ぶ


814 : 繋がれたる者 ◆zzpohGTsas :2018/05/29(火) 22:07:41 g6v1l5n20
投下を終了します


815 : ◆T9Gw6qZZpg :2018/05/30(水) 00:10:32 mD5I0rrE0
投下します。


816 : Merciful Merciless Girl ◆T9Gw6qZZpg :2018/05/30(水) 00:12:56 mD5I0rrE0
 一人の中学生男子である岸辺颯太が魔法の力で変身する姿が『魔法少女ラ・ピュセル』であり、その姿のモチーフは『騎士』である。
 そんな彼が意図せずして招き入れられた聖杯戦争の舞台において、彼の従者として召喚された『アーチャー』のサーヴァントは、奇しくもラ・ピュセルと同じく『騎士』であった。

「……やっぱり、弓には見えないよなあ。アーチャーのそれ」
「ええ。時折言われたものです。貴方は弓というものを根本的に勘違いしていると」

 夜の公園のベンチに二人、腰掛ける。二人が口を閉じれば、しんと冷えた空気を柔和に震わせる音色が再びこの世界唯一の音となる。曲の名前を颯太は知らない。ただ、耳を傾けているだけで穏やかな心地に浸れることを理解できていれば、それで十分に思えた。
 そういえば、颯太と同じ魔法少女達の中にも『音楽家』を名乗る者がいた。彼女とは今日に至るまで直接言葉を交わす機会も無かったために颯太はその人間性をよく知らず、実の所あまり意識的に観察したことも無い。願うならば、命の奪い合いに対し悲嘆の感情を抱くことを忘れない人間であってほしい、などと考えながら、颯太はアーチャーの姿を眺める。
 ハープのような外観の楽器で音楽を奏でる、長髪の優男。その楽器の本質が弓であり、彼がその弓によって名立たる軍勢を屠った騎士であるなど、大抵の者は思いもよらないだろう。騎士について世間一般に浸透する程度の精度でしかイメージを持たない颯太にとっては、尚更だ。
 しかし、事実だった。アーチャーは『騎士』であり、それも人々が持つ騎士のイメージの原型を齎したと言えるだろう欧州の伝承にも名を刻む勇士、『円卓の騎士』の一人であった。

「五枚……いえ、六枚でしょうか」
「え、何が?」
「ご覧ください」

 ぽろろん。やや低めの音調で、旋律が短く響く。
 ぱし。がさ。左斜め前方で生じた騒音は、木の葉が揺れる音だ。
 はらり、という音すら立てず、夜闇を僅かに照らす淡い光の中、数枚の割かれた葉が着地するのを辛うじて目で捉えた。

「数えに行ってみますか? 正確な枚数であったか」
「……いや、いいよ。見なくてもわかるから」

 アーチャーのしなやかに伸びる指が糸をつま弾く瞬間、放たれるのは真空の刃。その速度と精度を目の当たりにするのは数度目であり、しかし颯太はまたも背を震わせた。
 目視できない凶器などというものを見せられるのは初めてであり、正々堂々の果し合いに到底向かないそれは、ともすれば悪辣な虐殺にも使えてしまうのではないかと颯太ですら想像してしまうような代物だ。
 しかし、有り得ない話だろうと颯太は思う。それは、今日に至るまでに交わしたさほど多くない言葉からでさえ感じ取れるアーチャーの人柄の穏やかさ、そして颯太の掲げる方針を共感に値すると告げるほどに崇高な理念故であった。
 颯太は既に確信しつつある。アーチャーと一緒なら、きっと正しい未来へと辿り着ける。
 この街に根を下ろしてこの街を脅かす殺人鬼の悪意も、願いを叶える器などという物を餌にした戦争を仕組んだ黒幕の思惑も、必ず挫く。
 その上で、岸辺颯太は姫川小雪の下へと帰るのだ。心優しい魔法少女スノーホワイトの涙を拭うため、彼女のための誓いを立てた魔法少女ラ・ピュセルとして。
 立ち塞がる困難の強大さは、きっと颯太の想像を遥かに超えるのだろう。それでも、この心も剣も、折らせはするものか。
 颯太は何度目かの決意をした。その決意を鈍らせないだけの自身を与えてくれる自らの境遇に、同じ『騎士』との縁が繋がれた運命的な境遇に、颯太は、高揚していた。


817 : Merciful Merciless Girl ◆T9Gw6qZZpg :2018/05/30(水) 00:13:57 mD5I0rrE0
「ところでマスター。伺い損ねていたことが一つあります」
「何? アーチャー」
「貴方が守ると誓ったという少女のことです」
「それって、小雪のこと?」
「はい」

 唐突な問いかけだった。
 どうして、アーチャーがこの場にいない彼女のことをわざわざ知りたがるのだろうか。

「その少女は、他者を殺めることはおろか傷を負わすことすら厭う心優しい少女であると伺いました。それは、揺るぎない事実ですか?」
「……どういう意味?」
「彼女がそのような魔法少女でありたいと、確かにマスターが彼女の口から聞いたのか。それは、誰にとっての理想像であるのかと」

 その問いは颯太への、若しくは颯太の慕う少女への不躾な疑念も同然の、アーチャーに憤慨したとしても文句を言われる筋合いの無いはずであった。
 それなのに、颯太は言葉に詰まっていた。颯太に問い掛けるアーチャーの面立ちが決して下賤なものではなく、表情の変化に乏しい彼には珍しい程、真に迫るものであったためであった。
 相変わらず意図は読めない。しかし、何かを強く憂えていることはわかる。

「大丈夫、いらない心配だよアーチャー。小雪の優しさとか夢は、僕が絶対に一番わかってるって信じているから」
「……そうですか。ならば、良いのです。申し訳ございません、突然の無礼な質問をしてしまって」
「いいよいいよ。わかってもらえれば。そんな小雪だから、僕は一刻も早く駆けつけて守ってあげなければって思ってるんだ」

 アーチャーの持つ懸念を、颯太は一笑に伏付した。それはアーチャーを嘲るためでなく、純粋にアーチャーを安堵させるためであった。
 今も鮮明に思い浮かべられる彼女の姿を、悪党共のそれと重ね合せようとする。無理だ。彼女には暴威も害意もまるで似合わない。
 一点の穢れも無い清廉さ。それが姫川小雪の魅力であり、岸辺颯太の惹かれる人間性であるのだ。

「なんで急にそんなこと気にするんだ? アーチャー」
「……何故、でしょうね。今は私にも上手く言葉で纏められそうにありません。ただ、漠然と芽生えたとしか」
「それより、これからどう動くか考え直そうぜ。ほら、同じ『騎士』の縁で呼ばれた同士さ」
「縁、ですか」

 努めて朗らかに呼びかけて、応じるアーチャーの表情には、やはり未だ陰があった。
 その細められた両目は、まるで、颯太には見えないほど遥か先の地を見据えているようであった。


818 : Merciful Merciless Girl ◆T9Gw6qZZpg :2018/05/30(水) 00:14:43 mD5I0rrE0



【クラス】
アーチャー

【真名】
トリスタン@Fate/Grand Order

【パラメーター】
筋力B 耐久B 敏捷A 魔力B 幸運E 宝具A

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
・対魔力:B
魔術に対する守り。魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷付けるのは難しい。

・単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

【保有スキル】
・治癒の堅琴:C
宝具である弦を使っての演奏。
味方の精神的動揺を鎮め、敵の闘争心を失わせる。

・祝福されぬ生誕:B
生まれついての悲運。哀しみの子トリスタンと呼ばれるほど、彼の生誕には嘆きがついてまわる。
哀しみに満ちた歌声により、楽器演奏に追加ボーナス。

・騎士王への諌言:B
かの騎士王に刻んだ決定的なトラウマ。
本人としても、最後に残した一言としてはあまりに心無い発言であるため、いたく反省している模様。

・弱体化(毒):D
伝説において幾度となく毒に弱らされ、瀕死に追い込まれたため、毒への耐性が若干低くなっている。

【宝具】
・『痛哭の幻奏(フェイルノート)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:5〜100 最大補足:10人
「無駄なしの弓」「必中の弓」ともいわれるトリスタンの弓。
ではあるがその宝具としての形は単なる『糸』。愛用していた堅琴の弦である。
つま弾くことで敵を切断する真空の刃を飛ばせる。その特性から片腕、ひいては指さえ動けば発射でき、一歩も動かず、弓を構える動作を必要としないという利点を持つ。
また角度調整、弾速、装填速度が尋常ではないため全弾回避はほぼ不可能。
レンジ外まで転移するか次元を跳躍するなどでしか対抗できない。

【weapon】
宝具『痛哭の幻奏』

【人物背景】
アーサー王は立派な王だった。公平で、誠実で、人の感情が這い入る隙間すらないほどに。
しかし己を殺して戦い続ける王の姿は、あまりに痛ましかった。
正しいからこそ痛ましく、正しいからこそ悲しい。
トリスタンは、既にそれに耐え切れる精神を持ち合わせていなかった。
円卓の騎士を離れる際に思わず衝いて出た言葉。
それはあまりに多くの騎士たちに――そして、彼も与り知らぬところで王にも呪いを与えてしまった。
彼は悲しげに、こう呟いたのだ。

“王は、人の心が分からない”

【サーヴァントとしての願い】
マスターの意向に従うまで。
……もしも己個人のための奇跡が許されるならば、その時は「アーサー王への非礼を詫びる機会」を。


819 : Merciful Merciless Girl ◆T9Gw6qZZpg :2018/05/30(水) 00:15:53 mD5I0rrE0



【マスター】
ラ・ピュセル(岸辺颯太)@魔法少女育成計画

【マスターとしての願い】
『魔法少女』として人々を助ける。
そして、『騎士』としてスノーホワイトの下へと帰る。

【weapon】


【能力・技能】
・魔法少女
魔法少女(正確には魔法少女候補生)としての力。
変身することで常人を凌駕する身体能力と肉体強度を獲得し、更にそれぞれ固有の能力となる魔法を使える。
また魔力を扱う存在であるため魔術師と同等以上の魔力量を備える。

・『剣の大きさを自由に変えられるよ』
魔法少女ラ・ピュセルの持つ魔法。
持っている剣と鞘をその時々で最適な幅、厚み、長さに変えることが出来る。
ただし、自在とは言っても自分で持つことが不可能なサイズにすることは出来ない。

【人物背景】
数少ない「変身前が男」の魔法少女で、姫川小雪(魔法少女スノーホワイト)の幼馴染の中学生。
魔法少女同士のマジカルキャンディー争奪戦の中、スノーホワイトの騎士となることを誓う。

ルーラの脱落が通達された後の時期から参戦。
この時点でのラ・ピュセルは、まだ何も知らない。
争奪戦の首謀者の正体も、いずれ自身が辿ることとなる末路も。
密かに恋する心優しい少女が、『魔法少女狩り』へと変わり果てる未来も。

【方針】
帰るための手段を模索しつつ、人々を脅かす悪を成敗する。


820 : 名無しさん :2018/05/30(水) 00:16:15 mD5I0rrE0
投下終了します。


821 : 地獄の序曲 ◆/Pbzx9FKd2 :2018/05/30(水) 11:13:56 gkewoyCo0
投下します


822 : 地獄の序曲 ◆/Pbzx9FKd2 :2018/05/30(水) 11:15:07 gkewoyCo0


霧が立ち込める大きな街。雪が降り、道路や建物の屋上に僅かながら積もっていた。
あるのは物静かで静寂に支配された街と決して晴れないであろう煙霧。
まさに、閉鎖が似合う街だった。

「ここは何処だ?」

道路の脇にて歩いている男性がいた。
男性は、この街に見覚えが無かった。
何より、この男性は記者として沼地に出向いていたが、突然、後ろから殴打され気を失っていた。
殴打された痛みを思い出し、起き上がって目にしたのは、この街の景色であった。男性にとって初めて目にする街であり、自分は『見滝原』にいたのだ。
そして、内心では受け入れずにいた。

――あり得ないぞ。冬でも無いのに。

それは、冬の季節では無い筈なのに、雪が降っていた事だった。
雪が降るまでに、時間が経過していた事を意味していた。
誰かに殴打され、気を失うまでの記憶は残っていた。冬とは無縁の湿気地帯にいた事は覚えている。しかし、雪が降るなんて聞いたことも無い。異常気象じゃなければ説明が付かない。
苛つき出したのか、いつの間にか指に付着していた雪の一粒を潰していた。潰した瞬間、その指は真っ黒に染まっていた。

男性は、これを見て気付いた。

――まさか、これ全部、降っているのは灰なのか?

異常気象なら受け入れたものの、灰が雪のように降る現象は聞いた事もなかった。
下手をすれば専門家がニュースに出演しても説明が出来ない程、世間が騒いでもおかしくなかった。
見渡すのは閑散とした景色。人がいる気配など微塵も感じられなかった。
とても、幻想的であり現実的では無かった。

どうするかと考える男性だったが、目に止まったのは看板。

そこには――

「サイレント……ヒル?」

と書かれていた。


823 : 地獄の序曲 ◆/Pbzx9FKd2 :2018/05/30(水) 11:16:52 gkewoyCo0


「携帯が繋がらない……」

男性は出来る限り、住民を探し回ったが、誰も見つからなかった。
知る限りだと、ここはゴーストタウンである事に間違いなかった。そして、街から出ようとしたが、この街を取り囲むように崖が出来ていた。
つまりは此処から逃げられなかったのだ。

――糞っ!行方不明者が絶えない沼地に出向いたってのに何て様だ!

心中では穏やかじゃない男性は、隣にあるゴミ箱を蹴っていた。
霧の中へとゴミ箱が転がった先に、人影が見えた。

「人が居たのか?」

彼は人影を見るや否や、その方向へ駆け出していた。
ようやく、助かるのだと心の底から疑いもしなかった。

「すみませんが……」

しかし、彼は立ち止っていた。
それは、恐怖の余り脳が拒否して動けなかった。

グチャ、グチャ、グチャ、グチャ。

男性の目に映るのは、住民だと思っていた2本脚で立つ異形とも言うべき怪物だった。
ゴムのような皮膚に、生物としてある筈の両腕や顔が無い。
不気味に歩く度に体をくねらす様は、無機質で感情すらも見受けられなかった。
すると、歩いていた怪物は立ち止り、目の前にいる男性を認識した途端、苦しみ、もがきだしていた。

――不味い!不味い!動け!逃げろ!

男性は逃げろと体に命令を出すが、体が命令を受け付けず動けなかった。
体の中央にある裂け目から、黒い液体が飛び出していた。
液体に体が降り掛かる瞬間に、避ける事に成功した。
道路のコンクリートに液体がぶちまけられ、煙を立てながら溶け始めていた。

「うわぁ!糞っ!何だよ!何だよ!糞ったれ!」

男性は悲鳴を上げ、振り返る事も無く、ただ走り続けていた。
あの怪物は何だったのかはどうでも良かった。思考を停止させ、安心するまで一心不乱に逃げていた。

すると、彼の耳の鼓膜に破れそうなサイレンが聞こえてきた。


824 : 地獄の序曲 ◆/Pbzx9FKd2 :2018/05/30(水) 11:17:58 gkewoyCo0
余りの轟音に耳を塞いでいた。そして、辺りが真っ暗となり、暗闇が彼を飲み込んでしまった。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

彼は理解できないものの恐怖に怯えながら、手探りでポケットからライターを取出していた。

カチッ、カチッ、カチッ、カチッ。

やっと、火がついた事で、辺り一面をようやく目視出来た。
そこには、無機質な街とは打って変わって、何かもが廃れ、浸食され錆びていた。
自分がいた街とは何かもが違っていた。あの響き渡ったサイレント共に。

「次から次へとどうなってんだ!」

男性は髪をかき乱しながら、冷静さを取り戻そうと必死だった。
自分は何故、誘拐されて、此処に放り込まれたのかは知らない。
確かなのは彼の知る限り地獄に放り込まれたという事だった。
彼は、安全を確保するべく籠城する為、建物の扉へと駆け寄る。
扉に駆け寄ると、ドアノブを引いて押したりするがビクともしない。

「糞っ!開け!開け!」

扉に鍵が掛かっていた事は知っていた、だが、他に通じる扉を探す余裕は無い。
探そうと手間を掛ければ、いつ何時、あの怪物が襲い掛かるかも分からなかった。
男性は扉を蹴り破ろうと、足を上げた瞬間。

後ろに此方へと歩む音が聞こえた。

足を下げ、後ろへと振り向いた。

そして、振り返った先は先ほどの怪物とは違う悪魔とも言うべき異形だった。
生物の色としては灰色であり、生気が感じられなかった。頭と顔が不自然に歪んで後ろに曲がっている。

「ウァァァァァァ!」

目が合った瞬間、その悪魔は断末魔を上げ、男性に襲い掛かった。
怪物に掴み掛れ、人間とは思えないぐらいの力が加わり、振りほどくにしても困難だった。
男性は幸いにも掴まれた上着を脱いで捨て、足を必死に動かし、逃げていく。
後ろから断末魔が聞こえ、悪魔に捕まらないと必死に逃げていた。

「おい、嘘だろ……」

男性が逃げる先には、先程の悪魔達だった。
断末魔が彼に降り掛かるように恐怖を染み込ませる。

「ウァァァァァァ!」「ウァァァァァァ!」「ウァァァァァァ!」「ウァァァァァァ!」「ウァァァァァァ!」
「ウァァァァァァ!」「ウァァァァァァ!」「ウァァァァァァ!」「ウァァァァァァ!」
「ウァァァァァァ!」「ウァァァァァァ!」「ウァァァァァァ!」
「ウァァァァァァ!」「ウァァァァァァ!」
「ウァァァァァァ!」

10、20、それ以上の数が引き締めており、突破するのは容易ではない。
他の道は途絶え、引き返そうと後ろを振り返れば、いつの間にか群れを成していた悪魔が歩み寄ってきた。

「ははは……」

彼は現実を受け入れず、狂うしか無かった。
もうすぐ、死神は間近に迫ってきている。
生き残る為の打つ手が無かった。
彼はズボンのポケットから、あるものを取り出していた。
それは、映像を残す為のカメラだった。
それは記者が持つべき道具であり、欠かせないものだった。

――俺はもうすぐ死ぬだろう。だから俺の他にもやってくるかもしれない者の為に地獄絵図を残そう

迫りくる死神の手は、すぐそばまで迫ってきた。
彼は画像を残そうとシャッターを何度も切ながら、悪魔の群れに呑まれていった。
彼の死に際に見たのは、建物に取り付けられたカメラ。
そのカメラは廃墟と同じように壊れているものでもない。
この時刻絵図のような光景をカメラが電源ランプを付けながら視ていたのだった。


825 : 地獄の序曲 ◆/Pbzx9FKd2 :2018/05/30(水) 11:20:20 gkewoyCo0


「これでゲームオーバーかよ。しゃーねぇ、こんなもんだろ」

20代ぐらいの男性が、つまらなそうに悪魔達が埋め尽くす映像を流しているモニターを眺めていた。
彼が居る部屋の中には、数多いコードが血管のように張り巡っていた。数多くのモニターが彼に見せるように至る所に配置されていた。
フードの上着、丸刈りの頭、全体的に痩せ細っていた彼はクルリと椅子を回しながら、独り言を呟く。

「しかし、驚いたぜ?俺はあいつに殺されたのに、何で此処にいるのかってな。ひょっとしたら、此処が天国だったってオチなのかもな」

そう愉快そうに呟く彼は本来なら、この世界に居ない存在。もとい彼は、別世界にて殺されて居た筈の存在だった。
先程の映像をゲームプレイをしたかのような感想を言う彼は、一般人ですら無い。
別世界にて世間に恐怖を与えたベイカー家の長男のルーカス・ベイカーだった。
エヴリンというの少女に力を与えられ、自分は好き放題にやってきた。
自作したゲームを自分の家族が誘拐してきた人間を放り込み、何時だってモニターから覗いて楽しんできた。
だが、この楽しみはいつまでも続かなかった。
イーサンという男性を誘拐し連れ込んだ後は、何かもが崩れた。
そのイーサンは父親や母親を倒しただけではなく、力を与えたエヴリンを倒してしまった。
ベイカー一家はイーサンによって壊滅させられたが、一人生き残っていた自分は組織に追われながらも優勢を保っていた。
生意気にも、その組織の人間の反撃に遭い、そいつに殺されそうな時、薄れゆく意識の中で「ゲームオーバーだ」と呟かれ、この世を去ってしまった。
気が付いた途端、自分は何故か、ベイカーの農家に居たのだった。
撃たれた筈の胸に痛みは無かった。銃の引き金で引かれ頭部を失っていたのに頭があった。
彼は追手が居ないか辺りを見渡したが、誰も居なかった。
それどころか、ここら一帯が田舎町だった筈が沼地を抜けると高層ビルが立ち並ぶ都市部が見えたのだ。
彼は、さすがに驚きを隠せなかった。
自分の住んでいた世界と全く違うものだと証明するとしても十分すぎるものだった。

――マジかよ、どんなファンタジーだよ?

その光景に目にしたルーカスは、口を塞いでいた。
彼は久しぶりに都市部に出向き、フラフラと周りを調べていた。
そんな中で通行人から声を掛けられ、ルーカスの内心では焦っていたが、自分が住んでいたアメリカの言語と変わりなかった。
調べた時に分かった事だが、自分は『見滝原』にいる事が判明した。
『見滝原』という文字で日本にいる事が分かり、混乱を極めていた。

そこから今に至っているという事である。
しかし、ルーカスの悩み所は……。

「あら、此処が天国ではないでしょう?少なくとも現実よ」

ルーカスの背後で現れたのは青のドレスを着た少女だった。
その少女の顔は生気すらも感じられず、絶望に満ちていた。
現れたと知るとルーカスは少し不機嫌な顔に変わる。

「驚かすなよ、驚かすのは好きでも驚かされるのは嫌いなんだよ」

「貴方の趣味に言う事はないけども、くれぐれも慎重に動いてもらいたいわね」

「分かってるよ。でもよ、目撃者を消す為には仕方のねぇ事だろ?」

「そうね、今のままで結構よ」

少女は答えると、何処かへと消えていった。
ルーカスは消えていったのを見届けると、悪態付いていた。

「あー、糞っ。折角、エヴリンからの支配を抜け出せたってのに、これじゃあ、本末転倒だろうが」

その少女は、かつてルーカスの家族を支配していたエヴリンと何も変わらなかった。


826 : 地獄の序曲 ◆/Pbzx9FKd2 :2018/05/30(水) 11:23:05 gkewoyCo0
【クラス】

アヴェンジャー

【真名】

アレッサ・ギレスピー@サイレントヒル(映画)

【ステータス】

筋力E 耐久E 敏捷E 魔力A 幸運E 宝具EX

【属性】

中立・悪

【クラススキル】

復讐者:A

忘却補正:A

自己回復(魔力):A

【保有スキル】

怪物使役:A+
自身の記憶、感情から具現化し異形と化した怪物の集団を従える。
中には並みのサーヴァントと渡り合える存在も居る。
怪物に対峙した者に強烈な生理的嫌悪を与え、毎ターン精神判定を行なわせる。
判定に失敗した場合、対象のあらゆる行動にペナルティが入る。

悪魔創造:A
本体は『静かなる丘(サイレントヒル)』の病院の地下に潜んでいる。
本体を潰さない限り、ダークアレッサを消滅させても、また創り出す事が出来る。
悪魔のダークアレッサは原則として一人のみ。

結界支配:A
『静かなる丘(サイレントヒル)』の浸食固有結界の中なら、空間転移は可能。
更に敵サーヴァントに対する宝具真名解放の封印、ある程度のステータスの低下で施される。

復讐の意志:EX
教団に対する復讐心は決して消える事が無い。
その為に叶える聖杯に執着しており、その為なら手段を一切選ばない。
自分の復讐に意を唱える者がいるとすれば、決して容赦はしない。

【宝具】

『静かなる丘(サイレントヒル)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:- 最大捕捉:1000人
並行世界に存在するもう一つの世界の有り様。
異界に没し、白い霧に閉ざされたゴーストタウンである『静かなる丘(サイレントヒル)』を世界に侵食させる。
要は侵食固有結界。
聖杯による制限と世界の抵抗によって、際限なく侵食する事は無い。
しかしながら、その規模は街全体ぐらいは軽く飲み込んでしまう。
長時間『静かなる丘(サイレントヒル)』内部にいた対象は、時間に応じた『精神汚染』を取得することがある。
また、ランダムで血と錆に満ちた“裏世界”へと変貌する場合がある。
その時間帯は、自身の心の奥底にあるものが具現化され、毎ターンごとに異形の怪物が生み出される。
この世界を脱出する為には、アヴェンジャーを消滅させる必要がある。

【weapon】

本体たる自身はベッドにまとわりつく鉄線を武器にする。
それは人間ならば容易く貫き、切断する事も可能である。
その鉄線は魔力を帯びている。

【人物背景】

元々、サイレントヒルの小学校で生徒から「魔女の娘」と呼ばれいじめの標的とされ孤立していた少女。
母であるクリスタベラが率いる狂信者たちによって魔女と認定され、鉄檻に閉じ込められて火炙りにされたという惨いものだった。
母親の通報で駆け付けた警部の手で鉄檻の中から助け出され病院に運ばれ、奇跡的に一命を取りとめた。
その後も瀕死の状態で生きていたが、いつしか自分の身に起きたことだけでなく、看護師から向けられる好奇の目にさえも憎しみを抱くようになった。
その苦痛が憎しみに変わったアレッサから生まれた悪魔、それがダークアレッサだった。
霧と血と錆に包まれ怪物の徘徊する呪われた異世界を作り出した。

【サーヴァントとしての願い】

聖杯に願うものは、自分を火炙りにした教団の皆殺しである。


827 : 地獄の序曲 ◆/Pbzx9FKd2 :2018/05/30(水) 11:24:57 gkewoyCo0
【マスター】

ルーカス・ベイカー@バイオハザード7 レジデント イービル

【マスターとしての願い】

楽しみながら世界を支配する。

【能力・技能】

幼少時から発明大会で幾度も賞を取る程に機械工作などの才能に恵まれ、天才的な技術力を持つが、その才能を悪用する形で軍事関係者顔負けの巧妙なブービートラップや拷問具、武器、からくりを自作する。
特異菌に感染している影響で、腕がもげても再生する機能が備わっている。又、致命傷を負えば体内にある特異菌の臨界が達して、クリーチャーと化する。

【Weapon】

人を殺傷させるナイフを携帯

【人物背景】

ジャックとマーガレットの長男で、ゾイの兄。素行の悪い不良で、過去のVTRに登場するテレビ局のクルーたちも彼の悪評を語る程。
自身の家族に拉致されてきた被害者をゲーム感覚で甚振ったり、殺害する事を楽しむ非常に悪辣且つサディスティックな性格や嗜癖の持ち主。
また軽薄かつ挑発的な態度とは裏腹に勘が鋭く、アンブレラの隊員達や、コネクション、遂にはエヴリンをも出し抜くなど演技力や奸計にも長けた策略家でもある。
その反面、自身の嗜癖や慢心が仇となって、詰めの甘さを見せてしまう事もある。幼少期には友人を自室に仕掛けたトラップによって閉じ込めて餓死するまで監禁するなど、特異菌に感染した事で人格が豹変した両親とは違い、彼自身の猟奇的な性格を生まれ持つ。
その為、精神を支配されていたことに嫌悪を抱きつつもエヴリンに与えられた力を受け入れている。

【方針】

聖杯は、あくまで二の次にしか過ぎず、彼の楽しみはマスターやNPCを玩具にしながら、遊ぶ事である。


828 : 地獄の序曲 ◆/Pbzx9FKd2 :2018/05/30(水) 11:25:20 gkewoyCo0
投下終了します


829 : ◆V3zFiKmoXQ :2018/05/30(水) 13:34:25 t8y0T2Y60
投下します


830 : 女騎士たちの聖杯戦争 ◆V3zFiKmoXQ :2018/05/30(水) 13:35:55 t8y0T2Y60

深夜。見滝原中学校にある剣道場。
本来であればとうに人はいなくなり、施錠されているはずのそこには二人の少女が向かい合っていた。

「来なさい」

一人は美しい金髪が目立つ青を基調とした鎧を纏った少女。
華奢な体躯でありながら凛々しい立ち振る舞い、見れば誰もが彼女を騎士と認めるであろう風格を醸し出していた。

「………」

そしてもう一人、鎧の少女から立ち上るプレッシャーを受けながら無言で相対する軽装鎧の少女。
グラマラスな肉体が強調された露出度の高い装束、何より目を引くのが頭の角と下半身から生えた尻尾だった。
少女たちは共にそれぞれ別の意味合いで派手な衣装には不似合いな竹刀を手にしていた。

「はあっ!」

軽装鎧の少女が踏み込む。
剣道の型など知らぬとばかりに金髪の少女に一発でも当てるために必死に竹刀を振るう。
もっとも必死と言っても本来の彼女の全力からは程遠い。超常の存在である二人の少女が全力を出そうものなら竹刀など一合打ち合っただけで壊れるからだ。

一方の金髪の少女は涼やかな面持ちのまま相手の攻撃を難なく捌いていく。
彼女の剣捌きも日本の剣道とは異なるものだがその動作には一切の淀みがない。
やがて軽装鎧の少女が放った大振りの一撃を重心をずらして躱し、態勢の崩れた相手の頭部に竹刀の一発を叩きこんだ。



「くっそー…今日も一本も取れなかった」
「当然です。この身はセイバーのサーヴァント。
あなたならいずれは私から一本を取れる域に達するかもしれませんが、それも長い年月を剣に費やさねば有り得ぬことです」

二時間の後、金髪の少女であるセイバーは短髪の少年と共に校舎の片隅で休息していた。
先の肉感的な軽装鎧の少女はどこへ行ったのか?答えは少年が変身した姿だ。

岸辺颯太。またの名を魔法少女ラ・ピュセル。
スマートフォンアプリ「魔法少女育成計画」のユーザーの一人だった彼は男でありながら本物の魔法少女に選ばれてしまった。
16人の魔法少女による生き残りを賭けたマジカルキャンディー争奪戦に巻き込まれた一人、とも言えるか。
バディを組んだスノーホワイトと共に人助けをしていたところ、偶然見つけた宝石―――ソウルジェムを拾った。
そうして記憶を一時的に取り上げられ聖杯戦争のマスターとなっていた。

「とはいえ、敵マスターから自衛をする分には十分でしょう。
万が一私と離れている時にサーヴァントから襲撃を受けた場合はすぐに令呪で私を呼び出してください」
「うん……けどセイバー、僕は誰彼構わず戦うようなことはしたくない。
僕もそうだけど、宝石を拾っただけでマスターなんてものに仕立てられるなんてあんまりだろ」

マスターも何時戦いに巻き込まれても不思議ではない聖杯戦争で魔法少女ラ・ピュセルである颯太は有利な部類に入る。彼自身もそう認めている。
セイバーもまた十二分に強力なサーヴァントだ。今わかっている限りでも全てのステータス、スキルがBランク以上。
これを当たりと呼ばずして何と言う。
自惚れでも何でもなく優勝を視野に入れられる陣容だろう。そうでないなどと謙遜すればむしろ他のマスターに対して失礼ですらある。


831 : 女騎士たちの聖杯戦争 ◆V3zFiKmoXQ :2018/05/30(水) 13:36:38 t8y0T2Y60

けれど、だからといって自分と同じように巻き込まれただけの被害者たちを蹴落としてまで聖杯を手に入れるのは違うと思う。
そんなことを平然と受け入れる者は断じて正義の魔法少女ではない。
確かに魔法少女として、騎士として強敵と戦いたいと、そう心のどこかで考える自分がいたことは今となっては否定できない。
しかしそれはあくまで強者二人が技を競い合い、最後には互いに認め合うようなスポーツマンシップに満ちたものであって、ルール無用の殺し合いがしたかったわけではない。
第一殺し合いに乗って元の世界に帰れたとしても両親やスノーホワイト―――姫川小雪にどう顔向けしろというのか。

「そうですね。どうやらこの聖杯戦争ではマスターの参加は任意ではなく条件を満たした者が強制的に集められる形式になっているようだ。
魔術師(メイガス)ですらない者にまで戦場に臨んだ者の覚悟を強いるのはあまりに酷だ。
わかりました。戦う意思のない者との交戦は極力避けるよう努力します。
ですがそれだけでは根本的な解決とはならない。この異常な聖杯戦争で元の世界への帰還を望むならば聖杯を使う他ない、それはわかりますね?」

セイバーから突きつけられる現実に返す言葉がない。
つまるところ彼女はこう言っているのだ。生還したければサーヴァントを倒しソウルジェムを満たせ、と。
生きて帰るには聖杯を完成させる以外の手段などない、と。

「貴方には聖杯を手に入れてもらいます。―――私の願いを叶えるために」

そして何よりも、聖杯戦争によって召喚されたサーヴァントであるセイバーは聖杯の奇跡を求めている。
仮に聖杯戦争をやらずに帰る手段があったとして、どうやって彼女を納得させるというのか。
無理だ。できない。聖杯戦争に乗らずに帰還する手段、聖杯を求めるセイバーを説得する手腕、そのどちらも岸辺颯太は持ち得ない。

颯太が見てきたテレビの中の魔法少女たちなら何もできずに燻ってなどいない。
こういう状況なら大抵主人公の大胆な提案から局面を打開するような夢と希望のある展開に繋がっていくものだ。
対して自分はと言えば、自衛のためにセイバーに剣の稽古をつけてもらうぐらいのことしか思いつかない。
それ自体は成果があるような気がするが事態の解決には繋がらない。

そもそも小雪は無事なのか。颯太が調べた限りでは小雪の姿や名前は見なかったので聖杯戦争に巻き込まれた可能性はそう高くない。
それは良いが、マジカルキャンディーの争奪戦は今も続いている。
困った人の心の声を聞けるスノーホワイトの魔法はことキャンディー集めでは圧倒的なアドバンテージではある。
だが魔法少女の中には自分たちが助かるためなら平気で他の魔法少女からキャンディーを奪い取ろうとする者もいる。あのルーラ一党のように。
もしまたああいった連中が襲撃してきたら小雪は無事でいられるのか。シスターナナかトップスピードあたりが守ってくれれば良いのだが。


832 : 女騎士たちの聖杯戦争 ◆V3zFiKmoXQ :2018/05/30(水) 13:37:23 t8y0T2Y60

「……わかった。でもセイバー、それでも僕は魔法少女なんだ。騎士なんだよ。
だから戦うにしても街の人を助けることが優先で、倒すのは無関係な人を襲う連中だけにしたい。
いくら聖杯戦争だからって人助けだけはやめたくない。それをやめたら僕は魔法少女ですらなくなってしまう」

岸辺颯太は中学二年生の男子だ。
世の中のことなどまだまだわからないことだらけだし、人間心理というものも十分知っているとはとても言えない。
それどころか聖杯戦争に巻き込まれるまでは無意識ながらスノーホワイトという姫を守る騎士というロールプレイに酔いしれていた。

そんな彼でも全てのマスターが善良な人というわけではないことは認識していた。
自分の命惜しさに他人からマジカルキャンディーを奪おうとする魔法少女や、それとは関係なく西部劇のガンマンを気取った無法者、カラミティ・メアリのような魔法少女もいる。
サーヴァントなどという魔法少女以上の強大な存在を味方につけたマスターの中には平気で市民を害する者もいるだろう。
聖杯戦争をやるしかないとしても、そういった悪党、もっと言えば悪党が率いるサーヴァントだけを倒してソウルジェムを満たしていく。
それならば人を殺すことなくセイバーの願いを叶え、颯太も元の世界に帰還できるはずだ。
そう信じなければとてもではないが命の奪い合いなどやっていられない。

「……何で笑ってるんだ?」

セイバーからは「甘い」と一言で切って捨てられるのではないかと、恐る恐る彼女の反応を窺った。
何故か彼女は颯太に向けて柔らかな微笑みを浮かべていた。出会ってから初めて見る彼女の笑顔だった。

「そうですね。貴方の在り方が私にとって好ましいからでしょう。
この時代は私が統治していた時代から千年以上の時が経ち、当時の面影を見出すことすら難しい。
けれど、この時代にあって騎士として在ろうとする貴方というマスターに出会えた。それが私には嬉しい」
「…いや。君に比べたら多分見習い以下だ」

颯太はセイバーの真名も宝具も知らない。キャスターなどに魔術で心を読み取られるとまずい、というセイバーの意見を受け入れたからだ。
心を読む能力について心当たりがありすぎる颯太に拒否できるものではなかった。
しかし正体がわからずともセイバーが騎士の中の騎士であることは数日も過ごせば嫌というほど理解できた。
少女でありながら堂に入ったセイバーの立ち居振る舞いを間近で見ていれば自分のそれが子供のままごとレベルに過ぎないことが嫌でもわかる。

「最初から成熟した者などいませんよ。私にも未熟な修行時代がありました。
貴方は騎士として自らに足りないものがあることを知った。ならば焦らず、一つずつ積み重ねていけばいずれ貴方の目指す理想に辿り着くでしょう。
……聖杯戦争の間しかその成長を見守ることができないのは残念ではありますが」
「セイバー……」

まさかセイバーからこんな暖かい言葉を掛けられるとは思わなかった。
颯太にとってのセイバーは願いのために殺し合いを割り切る冷酷な面のある少女騎士だった。
けれど今わかった。彼女には確かに他者の幸福を願う暖かな心がある。
どんな願いを秘めているかはわからないまでも、誰かのために今も剣を振るっているのだろうと今なら信じられる。
守りたい誰かのために敢えて冷徹に見える振る舞いをしているだけなのだ。

「それに私自身嫌な予感がしてならないのです。
この聖杯戦争ではサーヴァントによる魂喰い、人間を襲い魔力を補充する行為に対する罰則が設けられていない。
戦いが本格化すればサーヴァントを消耗から回復させるために多くのマスターが魂喰いに走る可能性すら考えられます。
私とて聖杯は欲しいが、だからといって無辜の民の犠牲を容認したくはない」
「そういえばマジカルキャンディー集めの時も似たようなことがあったよ。
要するに最終的に勝者が決まるなら何をやっても許される……ってことなのか」
「極論すればそうなるでしょう。ですから我々は先んじて魂喰いに向いた場所に検討をつけてそこに網を張りましょう。
上手くすれば民への被害を防ぎつつサーヴァントを倒すこともできるかと」
「ああ、それでいこう」

セイバーはきっと信じられる。
彼女となら、どんな困難が待ち受けていたとしても戦っていける。そう思えた。


833 : 女騎士たちの聖杯戦争 ◆V3zFiKmoXQ :2018/05/30(水) 13:38:13 t8y0T2Y60
【クラス】
セイバー

【真名】
アルトリア・ペンドラゴン@Fate/stay night

【ステータス】
筋力B 耐久B 敏捷B 魔力A 幸運A+ 宝具A++

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
対魔力:A
魔術への耐性。魔法陣及び瞬間契約を用いた大魔術すら無効化する。
事実上現代の魔術ではセイバーには傷一つつけられない。

騎乗:B
乗り物を乗りこなせる能力。魔獣・聖獣ランク以外なら乗りこなせる。

【保有スキル】
直感:A
戦闘中の「自分にとっての最適の行動」を瞬時に悟る能力。
ランクAにもなると、ほぼ未来予知の領域に達する。視覚・聴覚への妨害もある程度無視できる。

魔力放出:A
魔力を自身の武器や肉体に帯びさせる事で強化する。ランクAではただの棒切れでも絶大な威力を有する武器となる。

カリスマ:B
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
清廉潔白、滅私奉公を貫いた王。その正しさに騎士たちはかしずき、民たちは貧窮に耐える希望を見た。
彼女の王道は一握りの強者たちではなく、より多くの、力持たぬものたちを治めるためのものだった。

【宝具】
『風王結界(インビジブル・エア)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜2 最大捕捉:1個
セイバーの剣を覆う風の鞘。
正確には魔術の一種で、幾重にも重なる空気の層が屈折率を変えることで覆った物を透明化させ、不可視の剣へと変える。当然相手は間合いを把握出来なくなるため、特に白兵戦型のサーヴァントに対して効果的である。
他にも纏わせた風を解放することでジェット噴射のように加速したり、バイクに纏わせて空気抵抗を減らしたり、風の防御壁として利用したり、と応用技も多く披露しており中々に使い勝手が良い。
しかしこの宝具の真価は彼女が持つあまりにも高名な聖剣を秘匿することにある。

『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』
ランク:A++ 種別:対城宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
生前のアーサー王が、一時的に妖精「湖の乙女」から授かった聖剣。アーサー王の死に際に、ベディヴィエールの手によって湖の乙女へ返還された。
人ではなく星に鍛えられた神造兵装であり、人々の「こうあって欲しい」という願いが地上に蓄えられ、星の内部で結晶・精製された「最強の幻想(ラスト・ファンタズム)」。聖剣というカテゴリーの中で頂点に位置し、「空想の身でありながら最強」とも称される。
あまりに有名であるため、普段は「風王結界」で覆って隠している。剣としての威力だけでも、風王結界をまとった状態を80〜90だとしたら、こちらの黄金バージョンのほうは1000ぐらい。
神霊レベルの魔術行使を可能とし、所有者の魔力を光に変換、集束・加速させることで運動量を増大させ、光の断層による「究極の斬撃」として放つ。
攻撃判定があるのは光の斬撃の先端のみだが、その莫大な魔力の斬撃が通り過ぎた後には高熱が発生するため、結果的に光の帯のように見える。言うならば一点集中型の指向性のエネルギー兵器でその膨大なエネルギーを正しく放つには両手での振り抜きが必要とされる。
威力・攻撃範囲ともに大きい為、第四次聖杯戦争時に切嗣が大型客船を緩衝材として使ったり、第五次でビルの屋上から空へ向けて放ったりと、常に周囲への配慮を必要とする威力に比例して扱いが難しい部分もあるが、出力は多少ならば調整可能であり、抑えた場合宝具の起動まで一秒未満に短縮することも出来る。

【Weapon】
約束された勝利の剣

【人物背景】
説明不要の原作メインヒロイン。
今回は第四次聖杯戦争を経て、第五次聖杯戦争に召喚される直前の時期からの参戦。
生者のため本来は霊体化できないが、この聖杯戦争ではルールの枠内に組み込まれた存在となっており、霊体化が可能になっている。

【聖杯への願い】
王の選定のやり直し

【方針】
マスターの方針に合わせて戦意のない者との戦いは避ける。
また魂喰いなどの非道な行いに走る者の討伐と市民の保護を優先する。


834 : 女騎士たちの聖杯戦争 ◆V3zFiKmoXQ :2018/05/30(水) 13:38:51 t8y0T2Y60


【マスター】
ラ・ピュセル(岸辺颯太)@魔法少女育成計画

【聖杯への願い】
帰ること以上の願いはないが、だからといって人殺しはしたくない。
できれば聖杯戦争自体を何とかしたいがセイバーを納得させる方法が思いつかない。

【能力・技能】
・魔法少女
魔法少女(正確には魔法少女候補生)としての力。
変身することで常人を凌駕する身体能力と肉体強度を獲得し、更にそれぞれ固有の能力となる魔法を使える。
また魔力を扱う存在であるため魔術師と同等以上の魔力量を備える。マスターとしての適性はノーマル以上一流未満。
颯太は希少な変身前が男の魔法少女であり、ラ・ピュセルに変身すると肉体的には完全に女性になる。

・「剣の大きさを自由に変えられるよ」
自分の手に持てる範囲で剣のサイズを自由に変えられる。
一見使い道の狭い能力に見えるが魔法少女であるため持てる剣のサイズの上限は常人より高く、逆に爪楊枝サイズにまで縮小化することもできる。
また剣を収める鞘のサイズも自由に変えることができ、応用性は高い。
能力の発動条件は『発動時に視界に入っていること』。このため必ずしも手に持っている必要はない。

【人物背景】
本作の主人公、姫川小雪の幼馴染である中学二年生。
小雪とは中学校が別だが、小学生時代は魔法少女好きの同士として良き友人だった。
学校ではサッカーに打ち込む一方、周囲の人間には内緒にしながら魔法少女作品の鑑賞も続けている。ルーラ脱落後からクラムベリーとの決闘を行うまでの間からの参戦。

【方針】
聖杯戦争であろうと人助けはやめない。
市民に危害を加える悪党を倒す。しかしマスターを殺す覚悟は………


835 : ◆V3zFiKmoXQ :2018/05/30(水) 13:39:29 t8y0T2Y60
投下終了です


836 : ◆Pw26BhHaeg :2018/05/30(水) 13:41:44 wuvHl8fs0
投下します。


837 : When the Saints Go Marching In ◆Pw26BhHaeg :2018/05/30(水) 13:43:59 wuvHl8fs0
キリスト・イエスに属する者は、自分の肉を、その情と欲と共に十字架につけてしまったのである。

                        ―――新約聖書『ガラテヤ人への手紙』5:24



わたしは『罪』を背負っている。拭えない……誰にも告白できない罪を。

神には、キリストには、告白出来るだろうか? いや、神は全知だ。
わたしの罪を知らないはずはない。そして、罪人を罰さないはずも、悔い改めた者を赦さないはずもない。

世の中にはいろいろな罪を背負った人がいる。わたしより重い罪を背負った人だって、罰も赦しも受けず、幾らでも生きている。
だが……わたしは自分を赦せない。神に祈って告白し、教会で赦してもらったって、自分で納得できない。
『聖なる遺体』……あの方ご自身なら、本当にわたしを清め……赦して下さる。そう信じる……。



「何だと…!! 何なんだ、これは!! !? 手の中に…あたしの……い…いつ!?
 手の中に…ク…クモが……移動していく… いや ク…クモだけじゃあない!!
 ハエも……!! あたしの手の爪まで!?」

何か、異常なことが起きている! これは! 遺体の……? それとも大統領の……!?
「ハッ!!」

攻撃を避け、窓を突き破る! だが今、飛び降りるわけには……! うッ!?
「まっ……窓ワクがッ!!」

体内に窓ワクが、ガラス片が入った! 移動してくる! 体の中心に向かって……クモやハエや、手の爪が……
中心! 心臓に! 肉スプレーがきかないッ! 止められない! ヤバイ! ヤバイ!

ブチンッ


838 : When the Saints Go Marching In ◆Pw26BhHaeg :2018/05/30(水) 13:45:54 wuvHl8fs0
■■■

……あなたは運がいい。心臓に木片が突き刺さり、死にかけていたのに……
平行世界だとか、そういった世界から……この宝石が飛び出して……『ぶつかった』……
……この宝石は『吉良(きちりょう)なるもの』ではない……だからか……

■■■

「ハッ!!」

目を覚ますと……目の前に、異様な男がいた。
開いた文庫本に穴を開けたような、眼鏡状のマスク。髪は黒く長く、肌の色は灰色、青い唇。
上半身を布で覆い、脚を露出した妙な服装。あまり関わりたくない、胡乱で胡散臭いオーラ。
だが……その男の後頭部には光輪(ハロー)があり、背中からは黒く大きな翼が生えている。
聖なる存在ではあるようだ。右手でつまんでいるのは丸い宝石。ソウルジェムだ。

「お気づきになりましたか、マスター」
「ええ……あなたが、わたしのサーヴァントってわけ?」
「はい。私のクラスは『ウォッチャー(見張るもの)』。真名を『マンセマット』と申します。今後ともよろしく……」

黒い翼の男は、恭しく、慇懃無礼なほどに恭しく名乗った。
マンセマット。確か……ヴァチカンの図書館とかでちらりと名を見たことはある。
旧約聖書偽典『ヨベル書』に登場する悪霊の長、サタンの異名。マステマ、マスティマとも。

ここは、21世紀の日本。ホテルの一室。1890年からは1世紀以上も未来。わたしはアメリカ人観光客として、この見滝原に来ていた。
かつては、そうではない。わたしはヴァチカンの法王庁に仕える修道女のひとり。
『聖なる遺体』を巡ってアメリカ大統領と死闘を繰り広げ……そして。

「わたしの名は『ホット・パンツ(H・P)』。偽名だけどね。……あなたは、天使? それとも、堕天使かしら」
男はふわりと宙に浮かび、怪しく微笑む。黒い羽根が舞い散る。
「フフ……そのどちらでもある、と言えましょう。私は……唯一なる神の忠実なしもべ。
 悪霊を率いて人類の信仰心を試し、まことの義人を選び出す者です。あなたは……どうですか?」


839 : When the Saints Go Marching In ◆Pw26BhHaeg :2018/05/30(水) 13:47:59 wuvHl8fs0


私を喚び出したのは……どうやら、過去に修道女であったニンゲンらしい。
心の奥底に、拭えない罪を、罪悪感を抱えている。罪の女……娼婦であったわけではなく、殺人の罪。
なるほど。心に弱さがある。利用しやすい。『天国』へ行けるかどうかは神のみぞ知る、だ。

「マスター。あなたが探していた『聖なる遺体』は、まことに尊く得難いもの。
 この世界で獲得できる『聖杯』もまた、あなたの罪を赦し、なぐさめを与えて下さることでしょう。
 そして私の望みは、神の国を地上に築くことです。選ばれし民の千年王国、地上天国を。
 私とあなたがここにいるのは、『聖杯』を手に入れよという神の思し召しではありませんか?」

心を読まれ、女は驚いている。ウォッチャー、「見張るもの」である私にとって、心を読むことなどたやすい。
それも、自分と霊的回路で結ばれたマスターだ。手に取るようにわかる。

「あなたは……ユダヤ教の天使でしょう? キリスト教の聖遺物でもいいの?」
「神は唯一つです。そして神は人に試練を与え、それを耐え抜く者に恵みを、従わぬ者に罰を下される。
 この『聖杯戦争』は、悪しき者を滅ぼし、選ばれし者を『聖杯』に導く儀式……私はそのようにとらえています」
「……悪というなら、わたしは……悪だわ。罪人よ。弟を殺したわたしなんかに、聖なる杯を手に入れられると思うの?」

女は脂汗を垂らし、震え出す。ついには両手で顔を覆った。自分が罪人だという自覚があるのは好ましい。
その罪を拭うために、自己中心的な行いを重ね、多くの人を殺してきたというのは問題だが。

「幸福も不幸も、全ては神に遡及します。あなたの罪も苦しみもまた、神の思し召し。
 我らはただ、今与えられた運命に従って、より善く行動すればよい。それが神に喜ばれることだと思います。
 そして、案ずることはありません。私はあなたの味方。つまり、神があなたを助けているのですよ」

……とは言うものの、御使いにも人の子にも、神の御心を完全に理解出来る者はいない。
私がそう推量しているだけだ。私がこの地のニンゲンどもを利用し、神の喜ぶであろうと思うことを成せばよい。
まずは、この街に流れるウワサ―――世界を魅了する『孤独の歌姫』。彼女を天使に変容させれば、話は早いだろう。
否、孤独を好むのであれば、人々を導く「秩序(LAW)」の象徴とはなりにくいか。あるいは洗脳してみるか。


840 : When the Saints Go Marching In ◆Pw26BhHaeg :2018/05/30(水) 13:49:53 wuvHl8fs0


……すすり泣くのをやめ、顔をあげる。いつまでも泣いてはいられない。ここは既に戦場だ。
わたしには強力な味方がおり、スタンド(立ち向かう)能力『クリーム・スターター』がある。

心は決まった。元の世界へ帰るかどうかは後で考える。どのみちあの世界、あの時代に未練はない。
わたしはおそらく死んだことになっている。ならば、この未来の異邦で、新しい人生を始めてみてもいい。

「ウォッチャー。わたしは聖杯を獲得するわ。ふたつ以上手に入れば、ひとつは頂戴」
「素晴らしい。いいでしょう。それで、あなたの望みは決まりましたか? 罪を赦されることが望みですか?」

ニコリと笑うウォッチャーと、目を合わせ、告げる。
「わたしの罪は、きっと神が赦して下さる。聖杯や聖なる遺体がなくても、心から悔い改めれば。
 あなたが築くという地上天国、千年王国でも、赦してはもらえるのかも知れない。
 でも、それじゃあ納得できない。罪が帳消しになった気がしない。わたしの弟が生き返るわけじゃあないもの」

弟が特別好きだったわけじゃあない。結局、わたしは自己中心的なのだ。わたしが救われれば、生き残れば、それでいいと。
弟を「差し出して」から、その傾向は強くなった気がする。わたしの罪は、わたしが背負うべきもの。わたしのものだ。
天使でも悪魔でも、神でも人間でも、聖杯だろーと聖人の遺体だろーと、利用できるものは利用する。わたしのために!

「『弟を蘇らせる』。これがわたしの、聖杯にかける願い。シンプルになったわ。
 弟から恨まれようが感謝されようが、それは別にいい。心が救われるかどうかは、わたしの納得の問題だもの」


841 : When the Saints Go Marching In ◆Pw26BhHaeg :2018/05/30(水) 13:51:51 wuvHl8fs0
【クラス】
ウォッチャー

【真名】
マンセマット@真・女神転生SJ/DSJ

【パラメーター】
筋力C 耐久B 敏捷A 魔力A+ 幸運B 宝具EX

【属性】
秩序・善

【クラス別スキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
氷結・疾風を反射し、破魔・呪殺を無効化するが、火炎が弱点。

千里眼:A
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。遠方の標的捕捉に効果を発揮。
ランクが高くなると、透視、未来視さえ可能になる。天使(「見張るもの」)であることから取得。

【保有スキル】
天使の御業:A++
唯一神に仕える天使としての「権能」。背中の黒い翼で空を飛び、素手で結界を破ることができ、人間に変装する。
さらに汚れなき風(全体疾風攻撃)、ジャッジメント(全体破魔即死攻撃)、メル・ファイズ/メギドラオン(全体万能攻撃)などの技を使う。
また儀式によって霊的に素質のある人間を「天使」に変容させる。「天使」化した人間は歌唱で他人を魅了し、超常の力を振るう。
ただし変容は一人につき一度きりで、人間に戻る事は出来ず、適性と信仰がなければ霊肉ともに破滅してしまう。

神の敵意:A
神の意に沿って動く悪魔として、人類からの恨みと怨念を一身に集める在り方がスキルとなったもの。
周囲からの敵意や恐怖・憎悪を向けられやすくなるが、向けられた負の感情は直ちに力へと変化する。被攻撃時に魔力を回復させる。
他者からの信頼・信用を得にくくなるデメリットはあるものの、宝具で魅了することでなんとかしている。

道具作成:A
魔力を帯びた器具を作成可能。Aランクとなると、擬似的な不死の薬すら作成可能。
様々な技術に関する知識を持つ。また霊的存在から「シボレテ」という結晶を作成できる。


842 : When the Saints Go Marching In ◆Pw26BhHaeg :2018/05/30(水) 13:53:33 wuvHl8fs0
【宝具】
『大いなる嘆願(グレート・エントリーティ)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1-100 最大捕捉:1000

旧約聖書偽典『ヨベル書』において、唯一神に「悪魔たちの命乞い」をした逸話による宝具。姿形はなく、彼の祈り、歌唱、言霊そのもの。
その場にいる全員の精神に働きかけ、魅了する。これは属性が「秩序」か「中立」のものにのみ効果があり、「混沌」のものには無効である。
善・悪・中庸は問わない。この宝具により、彼は胡散臭さを漂わせながらも、そこそこ他者の信頼を得る事が出来る。

【Weapon】
『シボレテ』
2体の霊的存在を用いて(搾って?)作られる奇妙な結晶。他の霊的存在に対する攻撃手段として用いることも出来る。

【人物背景】
ゲーム『真・女神転生 ストレンジジャーニー(SJ)/ディープストレンジジャーニー(DSJ)』に登場する大天使。CV:森川智之。
『真・女神転生4』にも同じ姿で登場するが、立ち位置や性格、技能、声(高木渉)などが異なり、同一個体かは疑問。
奇妙な仮面と奇妙な服を纏い、黒い翼を背負った黒髪長髪の男。敬語で喋るが見るからに胡散臭く、「ペ天使」とあだ名される。
『北斗の拳』のアミバに激似。マンマセットやサンマセットではない。

名はマステマともいい、ヘブライ語で「敵意」「憎悪」を意味する。あるいはアラム語マスティマ(非難者)からともいう。
ユダヤ教の伝承によれば悪魔の長(サタン、敵対者)にして全ての悪の父であるが、唯一神YHVHに仕える天使(堕天使)でもある。
『ヨベル書』によると、かつて「見張るもの」という天使たちが地上に降り、人間の女たちを娶って巨人族を儲けた。
彼らは堕天使となって人類に文明や悪行を教えたので、神は怒って大洪水を起こし、ノアの家族を除く全人類ごと彼らを滅ぼした。
だがノアの洪水から二世代後、彼らは悪霊となって人類を惑わし、互いに殺し合わせるようになった。
神はノアの祈りを受けて彼らを捕縛するため天使を遣わしたが、この時「悪霊たちの長」マンセマットが神にこう嘆願した。
「彼らのうち幾らかを残して、私に従うようにさせて下さい。私は彼らを率いて人の子を堕落させ、惑わせましょう。人の子の悪が大きいからです」
そこで神は悪霊たちの九割を地獄へ落とし、残り一割をマンセマットに従わせることにしたという(ヨベル書10章)。


843 : When the Saints Go Marching In ◆Pw26BhHaeg :2018/05/30(水) 13:55:08 wuvHl8fs0
以後マンセマットはせっせと悪を行い、人類を惑わせ苦しめ、信仰心を試した。
飢饉も疫病も洪水も火災も、カラスの群れが畑から種をついばんで奪うことさえも彼の仕業である(アブラムはこれを追い払って有名人になった)。
彼は神を唆してアブラハムを試させ、息子イサクを生贄にさせようとした。またモーセを殺そうとし、エジプトの魔術師を支援した。
過越の時には仔羊の血を門に塗っていない家の初子を全て殺し、エジプトを去ったヘブル人をファラオに追わせたという。
要するに聖書における神の「悪行」をおっかぶせるために後付で生み出された汚れ役・やられ役であり、『ヨブ記』のサタンと共に悪魔の初期の姿を伝えている。
死海文書『戦いの書』やダマスコ文書などにも、ベリアルと並んでマンセマットが悪魔の長として記される。

SJ/DSJにおける彼は、唯一神に忠実な天使である。敵対しない限りは穏健で、数多くの天使を配下に従えて主人公たちに協力する。
その目的は選ばれた者を天使化して、人類を支配する「歌唱」の力を授け、神を讃える選民だけが生きる理想世界を作ること。
人類を評価はするものの道具程度に見なしており、手柄によって自分が出世することが本当の目的であった。
真4における彼も唯一神の忠実なしもべとして行動するが、「地上は人間が支配するのが神の意志」とし、慇懃無礼ながら敵対的ではない。

根本的に人間でなく、「唯一神」の御使いなので、本来ならば英霊として喚ばれる存在ではない。
英霊の座に登録されているのは、おそらく彼の分霊か何かである。アヴェンジャーやルーラー、キャスターの適性もあるかも知れない。

【サーヴァントとしての願い】
悪しきものが滅び、唯一神を讃える者だけが暮らす地上天国(千年王国)の建設。

【方針】
必ず聖杯を獲得する。そのために情報や仲間を集め、利用する。最終的に自分が勝利すればよい。
マスターか、適性のある者を「天使」に変容させたい。

【把握手段・参戦時期】
原作(SJ/DSJ)。真4の彼も参考にして良い。


844 : When the Saints Go Marching In ◆Pw26BhHaeg :2018/05/30(水) 13:56:43 wuvHl8fs0
【マスター】
ホット・パンツ@スティール・ボール・ラン

【Weapon・能力・技能】
『クリーム・スターター』
破壊力:D スピード:C 射程距離:C 持続力:A 精密動作性:E 成長性:B

本体が道具として使用するスタンド。全長10cmのスプレーヘッドがついた2本のスプレー型。
別名「肉スプレー」。自分や接触した相手の肉を搾り取ってスプレー状に放射する。
相手に噴きつけて切り裂く、目や口を塞ぐ、体を分解して狭い場所を通り抜ける、怪我の治療や変装など、高い汎用性を持つ。
分解は自分の片手だけ移動させて遠隔操作でき、その手にもう一つのスプレーを持たせて攻撃も可能。
他人の肉体を分解する場合、全身を分解すると殺害する危険がある。死体を人知れず処理するには楽。
相当な致命傷でも肉で埋めれば治療でき、(生きていれば)平行世界に本体がいても他人でも使用可能。
変装は姿形はもちろん声や匂いまで変えられ、一度だけなら接触した人物にそのまま成り代わることすら可能。

【人物背景】
漫画『ジョジョの奇妙な冒険』第七部「スティール・ボール・ラン」に登場するスタンド使い。CV:豊口めぐみ。
名前はH・Pとも略称されるが偽名であり、本名は不明。ピンク色のおかっぱ頭で、偽って男性として振る舞うが女性。長身で割と胸がある。
もとはローマ法王庁の修道女であり、かつて弟を灰色熊に差し出して死なせてしまったことに強い罪悪感を抱いている。
「聖なる遺体」を集めれば自分の罪が赦されると信じ、北米横断レース「スティール・ボール・ラン」に参戦した。
やがてファニー・ヴァレンタイン大統領を敵に回し、遺体を奪取するためDioと共闘するが……。

【ロール】
アメリカ人観光客。

【マスターとしての願い】
弟を蘇生させる。元の世界にはあまり帰還したくはない。

【方針】
聖杯を獲得する。そのために情報や仲間を集め、利用する。最終的に自分が勝利すればよい。

【把握手段・参戦時期】
原作20巻で列車から転落した際、ソウルジェムに触れた。


845 : ◆Pw26BhHaeg :2018/05/30(水) 13:58:05 wuvHl8fs0
投下終了です。


846 : ◆zzpohGTsas :2018/05/31(木) 15:33:50 tnK4LLQc0
投下します


847 : 光『明』 ◆zzpohGTsas :2018/05/31(木) 15:34:36 tnK4LLQc0
「……先生、作風変えました?」

 上質紙を捲る手を止めながら、男が言った。
よれよれのシャツに、アイロンの掛かっていない皺だらけのスラックス。ネクタイは巻いていない。
真っ当な会社にこの格好で出社しようものなら、即時直属の上司に警告を出される事は間違いない恰好ではあるが、男の会社に限っては、
そう言った格好をしていても別段咎めはない。男は出版社の編集部に関係する人物であった。よく見てみると、男がもつ上質紙の束には、文字がプリントされている。
先生……即ち、担当作家の原稿である。男はそれを二〇ページ程眺めた後で、このような事を口にしていたのだ。

「そう思った訳は?」

 マグカップに入ったコーヒーを、ズズ、と音を立てて飲む少女がいた。
いや、少女ではない。れっきとした成人の女性だ。二十歳を過ぎて四年以上の年月が経つが、中学生と間違えられても詮の無い位には背が低い。
加えてその顔立ちだ。二十代も半ばに入ろうかと言う女性にしては、童顔も良い所だ。幼さを残してはいるが……しかし、整っている。
目鼻立ちも眉の形も、唇の形も。どれもこれもが、男性を魅了するに足る造詣をしていた。驚く事に、これで『すっぴん』であると言うのだから恐ろしい。
この歳になればもう女性は化粧の一つや二つをして外に出るのがエチケットの領域となると言うのに、この女性作家の場合は化粧なしで通用してしまう。信じられない程に恵まれた女性であった。

「いやぁ……流石のぼくでも解りますよ。此処まで文体を変えられたら、ねぇ?」

「うーん、きみの御眼鏡には叶わなかったかな」

「いやいやいや!! 当初は面喰いましたけど、二〇ページもスラスラ没入させてしまう時点で、もう十分過ぎますよ!!」

 慌てて男が否定する。この女流作家は、彼の勤める出版社を代表する稼ぎ頭、大先生である。
機嫌を損ねたらどうなるか解った物ではない。男の編集者としての腕前はそれ程良くない。
それにもかかわらず男が、今の部署にしがみつけていられるのは、目の前の女性の温情が全てであった。

 ――塩野くん以外に編集を任せるつもりはないな――

 「それ以外の編集に? 任せないよ」、その言葉の後にはこう続いた。
こうと言われたら、上は従うしかない。変に機嫌を損ねて、他の出版社に移ってしまったらそれこそ大損害。
塩野瞬二と言う名の編集者は結局、この女流作家の個人的なリクエストで、年八〇〇万超の高収入を得られている、と言う訳だ。
その事は他人に言われるまでもなく、塩野当人もよく理解している。だからこそ彼女には頭が上がらない。
そして同時に、疑問に思う事がある。何故この女性は、自分を贔屓するのか? 
自分で言うのもあれだが、俺より優秀で作家への気配りも熟達した編集者など、部署内にはごまんといる。それを蹴って、何故自分を?
幾度となく塩野は思ったが、結局解らないし、彼女自身に聞いても、はぐらかされるだけだった。

「ただ、珍しいなぁと思いましてね。自分の作風を頑として変えもしなかった先生が、此処に来て大きく路線変更に舵を取るなんて……」

 既に述べた通り、塩野の編集者としての腕前は、お世辞にも良いとは言えない。
彼の編集生命を長らえさせているこの女流作家は、元々持ち込みでこの出版社にやって来たのだが、その時に彼女の原稿を見たのが他ならぬ塩野だった。
しかしこの男は、彼女の文章は気取っていてウケないと一蹴し、彼女を追い返したのである。後に売れっ子作家となる彼女をだ。
結局彼女がこの会社と契約している作家になれたのは、塩野が彼女から預かった原稿を偶然見た彼の上司に、三顧の礼をしてでも迎え入れて来いと言われ、
急いで引き戻したからであった。金の卵を産む鶏を見抜けない。石ころに混じったダイヤモンドを選別出来ない。
それは、一流の原石を探す事もまた仕事である出版社の人間にとって、致命的なまでのディスアドバンテージであろう。

 そんな塩野ですら、いや。普段真っ先に彼女の原稿を目の当たりにする彼だからこそ解るのかも知れない。
今を時めく売れっ子作家、『高槻泉』は、作風から文体、果ては普段のキャラクター造形まで、ガラリと変えて来た。
まるで別人に書かせたか、何か幽霊にでも憑りつかれたのかとしか思えない程の変わり具合。塩野でなくとも、何かあったのでは? と疑ってしまうであろう。


848 : 光『明』 ◆zzpohGTsas :2018/05/31(木) 15:35:25 tnK4LLQc0
「まぁわたしも、大衆に迎合した作風と言う物を模索するのも悪くはないかなと思うようになってね」

 今や誰もが認める人気作家である高槻であるが、その作風・文体は、幼そうな容姿とは裏腹に暗く、人によっては『陰惨』と言うイメージを抱く程であった。
一部の短編集などではその傾向は薄れるが、本人の『地』が露になりがちな長編小説になると、彼女の作風は途端に厭世かつ破滅的で、陰鬱の気を露とする。
加えて地の文や台詞回しに、持って回ったポエティックな表現を用いる事も多く、上記の作風以外にも、こう言う面で敬遠する読者も少なくはない。
要するに、作家を構成する上で重要となるあらゆる要素が、クセが強いのだ。この作風で文壇のメジャー作家の一人になれた、この事自体が一種の奇跡だろう。

 容姿も端麗で、作品自体ではなく高槻泉と言う個人自体のファンもいる程の人気作家なのだ。
これで今の作風と、大衆向けの作風を使い分けてくれていたら、さぞ今より人気が出る事だろうとは、ファンは元より、出版のプロ達の間ですら言われていた。
だが、基本的に人格面でもアクの強いのが作家連中と言う物。そう簡単にそんな意見を聞き入れる筈がなく、高槻とて同じだろうとは思っていた。
それが此処に来ての、方向転換だ。生来のものであるポエティックな表現は散見こそ出来るが難解さは薄れており、何よりも台詞が主体となっていて読みやすい。
一般小説、と編集者が聞いて真っ先に想起されるような文章が、その原稿にはあった。高槻と長い付き合いの塩野が、驚かぬ筈がなかった。

「勿論、今までのような作品も出すつもりではいるが。まぁ今回の原稿は手慰みに執筆した実験作と思ってくれ」

「はは、実験作でこれだけ書いてくれるあたりが、高槻先生らしい」

 編集の道を進むと、一目見て原稿が何枚あるのか解る力が直に付く。
如何贔屓目に見ても、高槻が持って来た原稿は三〇〇ページ程もあり、とてもではないが、手慰みに書いたとは思えない量だ。彼女は速筆としても有名だった。

「ところで先生、此方の作品は連載を想定しているんですか?」

「うーん、予定は未定って奴だ。その質問の意図は?」

「いえ、直感でそう聞きました。まだこれだけしかページを見ていないので何とも言えないんですが、続きそうな設定だなと思いましてね」

 高槻の持って来た原稿の内容を現状塩野が読んだ内容で纏めるのなら、『人一人簡単に殺せるレベルの超能力に目覚めた少年』の冒険……と言う風なものだ。
超能力の描写はアニメ的、ライトノベル的で、まるでコミカライズやアニメ化を想定したような内容だ。
塩野の出版社は、ライトノベルも扱っており、描写のライトさから、どちらかと言うとそっち向けの風がある。
ライトノベルは通常続き物、連載を想定している事が殆どだ。但しそれは、人気が出ていれば、の話。
高槻程の地力と実績のある作家なら、連載も余裕であろう。今日日大作家がそう言った作品を書いてみる、と言う事例も珍しくない。
後で同僚や上司に掛け合って見るか、と塩野は次の予定を組み上げ始める。

「まぁ連載云々については、そっちの意向に任せるよ。人気が出たなら連載、出なかったらそれまで、で良いじゃないか。その原稿は一応、一巻で綺麗に終われるようストーリーを導いてはいる。編集部の意向次第で如何とでも転がせられるよ」

「かしこまりました」

「さて、と」

 コーヒーを飲み干してから高槻は立ち上がり、グッと背を伸ばす。おや、と塩野が反応する。

「おかえりですか? 原稿まだ読み終えてませんが」

「ちょっと用事の方があってね。原稿を読み終えて、今後の方針が決まり次第、わたしの方に何か連絡を入れて欲しい」

「解りました。急いで読んでおきますね」

 原稿用紙を丁重にアタッシュケースの中に入れてから、塩野も立ち上がり、お辞儀をして高槻を見送ろうとする。


849 : 光『明』 ◆zzpohGTsas :2018/05/31(木) 15:35:40 tnK4LLQc0
「ところで、塩野くん」

「? 何でしょう」

「きみ、今月の公休は幾つになってる?」

「え、ぼくの休みですか? うーん……一応暦通り、と言う事にはなってはいるんですけど……。こう言う仕事ですからねぇ、多分今月も、四日ぐらいしか休めないんじゃないんですかねぇ」

 編集者のスケジュールと言うのは究極の所、担当している作家のスケジュールに合わせなければならない。
作家、つまり先生達のスケジュールを何よりも優先する。原稿の進捗を確認したり、締切が迫れば発破を掛けたり、時には差し入れをいれたりなどは当然の仕事。
それ以外にも社内の別部署に足を運び交渉や調整をしたり、その作家の一種のマネージャーとして渉外活動もしたり等。
勤務時間は9:00〜18:00と言う事になっているが、今年に入って塩野が定時に帰れた日等ゼロである。泊まり込みの作業なども、上等の世界だ。
土日祝日返上は当たり前、不規則な勤務体系が避けられない。それが、書籍編集の世界なのである。

「働き過ぎだぞ塩野くん、もう少し有給を使いたまえよ」

「いやぁ、使ったら使ったで面倒でして……。それに、先生が本当に優秀で助かってますよ。何せ僕の担当してる先生達の中で、締切よりも遥かに早く原稿を上げてくれる優秀な人なんですから」

 暗に、俺の担当している作家は締切ギリギリに仕上げるか、最悪守らない奴が殆どだと言っているのと同じだ。
納期、即ち締切は編集の世界でも絶対である。これが近づけば近づく程、編集者の内臓は荒縄できつく縛られたようにキリキリと痛み出す。胃痛止めは友達だ。
作家が締切を守れそうにないからその場から逃走する事を防ぐ為、寝ずの番を敢行する為の眠気覚ましが離せない同僚だっている程だ。
それを考えると高槻泉は、本当に優良な作家である。自分の編集者としての立場も保障してくれるし、締切も守る。塩野はこの女流作家に、全くと言って良い程頭が上がらない。

「そうか……」

 ふっ、と笑みを零し、高槻は塩野に背を向け、その状態のままヒラヒラと手を振って、ロビーから去ろうとする。

「身体は大事にしろよ、塩野くん」

 そうとだけ言って、高槻はその場を後にした。


850 : 光『明』 ◆zzpohGTsas :2018/05/31(木) 15:35:52 tnK4LLQc0





 ――

 粋な事をする、と思った。いや、嫌味な事をする、と言う方が正しいのか?
どちらにしても、作為的なものを感じなくもない。『差し入れ』として自分に出され、そして喰らった相手を、自分のロールと縁深いNPCとして出すなど。

 高槻泉と言う名前はペンネームである。今まで隠して来た真なる名は、『芳村エト』。
最も、エトと言う名前自体は、割と表舞台にも流して来たつもりであるのだが。自己顕示欲が強い性格であるらしかった。

 この見滝原と呼ばれる街に呼ばれて数日が経過した今でも、当惑している所がある。聖杯戦争。そんな名前だったか。
サーヴァントと呼ばれる、嘗て人類史に於いて華々しい活躍を遂げた万夫不当の猛者や、神話や叙事詩の中に登場する大英雄を駆って勝ち進むバトロワ。
そうと、エトは記憶している。ファンタジーにも程がある。事実は小説より奇なりと言うが、自分の巻き込まれているこの状況の方が、
塩野に手渡した超能力少年の原稿よりもよっぽどファンタジーではないか。生きていると不思議な事に出会うものである。

 しかし、乗り気でない訳じゃない。喰種仲間やCCGからもよく認識されてるし、直接言われたりもしてきた。
何よりもエト自身ですら自覚している。今更言われた所で否定もしない、激昂する権利もない。エトは喰種としても人間としても、下衆の部類だ。
元居た世界で自分に致命傷を与えた、フルタと言う名の汚害――きたがいと読む。無論エトの造語だ――野郎と本質的には変わりない。
人類と喰種の相の子、ハーフ。それが彼女、芳村エトだ。互いの悪い所も、高いレベルで引き継いでいるのだろうと、割り切ったのは何年も前の話の事である。

 結論を言えば聖杯は欲しい。聖杯戦争と言う名が仄めかす通り、聖杯と言う字は戦争に掛かっており、この聖杯なるものが主体である事は容易に想像がつく。
そして事実それはその通りで、聖杯とはこの戦争でサーヴァントを殺し続けた者に与えられるギフトである。
その内容が凄まじい。どんな願いも叶えると言う物だ。人の倫理観では殺し続けた末に得られる願望器など、いらない、と答える者もいるだろう。
しかし、人を殺して喰らわねば生きていけない喰種にとっては違う。言ってしまえば殺しが生態として組み込まれている彼らにとってしてみれば、
人を十何人か殺すだけで打出の小槌が手に入るのなら安すぎるものであろう。誰だって手に入れたくなる。

 聖杯戦争には乗り気である。だが、叶える願いは俗ではない。
世界と言う概念を比喩する言葉に、鳥籠がある。広いようで狭い、閉じ込められている、と言う意味では妥当な表現だ。
そう言ってしまうと悪い響きに見えるだろうが、鳥籠自体には罪はないし悪くもない。籠の中で一生を終える人間や喰種がいるのも、また事実だからだ。
だが――その鳥籠が歪んでいると、途端に宜しくない出来事が頻発する。籠は脆くなるわ、鳥も逃げ出すわで、滅茶苦茶だ。
世界の均衡、即ち、人と喰種の天秤は著しく不安定だ。その天秤は、歪んだ籠の上で成り立っていると言うのだから、重さの釣り合いが取れる筈もない。

 ならば一度、籠をなかった事にし、重石を見つけて天秤の釣り合いを水平にしてやればいい。
言うだけは簡単だが、やるとなると難しい。現にそれを行う為に、半生に近い人生を費やして来て、それでも届かなかった程である。
確か自分をいとも容易く倒して退けた、和修のゴミも、同じような目的を抱いていたか。残念ながら彼の目的は、ベクトルこそ同じであり、
行き着く先が排斥者目線からの平和である。排斥される側にとっての平和を望むエトとは根本的に相いれない。

 結局元の世界でエトは排斥されてしまったが、何の因果か、こうして全く知らない世界に呼び出され、チャンスを与えられている。
疑わしい部分も多分にあるが、自分が生きていると言う事実は大き過ぎる。命あっての物種はこの世の真理だ。跡目は既に真なる王に託したが、自分にもやれる機会が巡って来たと言うのなら、存分にその機会を活かすべきだろう。

 だがやはり問題は――

「今帰って来たじょー」


851 : 光『明』 ◆zzpohGTsas :2018/05/31(木) 15:36:05 tnK4LLQc0
 住まいである都市部のマンションに戻り、帰宅するなりエトは間延びした口調でそう言った。
独身である彼女に、夫も子供もいない。であるのに、誰か人がいるような言葉を口にする。いるのは無論の事、聖杯戦争を構成するもう一つの重大要素。
サーヴァントだった。彼女はそのサーヴァントに留守番を命じていたのである。

 そして、そのサーヴァントは確かに部屋で大人しくしていた。
……その仕方が問題だ。冷蔵庫に冷蔵していた、プラスチックの保存容器に入れていた人体を腑分けした物。
それを取り出して、自前の能力でふわふわと空中に、DNAの二重螺旋構造のような形で浮かばせている少年。これこそが、彼女、芳村エトが召喚したサーヴァントであった。

「……おーい、食べ物で遊ばないでくりー」

 皮膚や筋肉がついたままの耳や鼻、眼球に指が二重螺旋のまま宙を浮かんでいるのは、ちょっと見ていて面白かったが、
これらは全て、エトがこの街のNPCをハントして得た貴重な食料である。喰種が一般的どころか、存在すらしていない世界では、
人間が誰かに喰らわれたと言う事件はそれこそ重大犯罪、こと此処日本においては数十年に一度あるかないかの大事件とまで騒がれる。
元の世界では喰種に人が喰らわれる事は日常的な事であったが、喰種が常識でない世界は大きく騒がれるのだ。だからエトは慎重に人を殺し、食料を回収した。
それに、エトが人を喰らうと、その分魔力も回復するし、体力や傷の回復も早くなる。単なる生態系以上に、NPCを喰らう事は重要な意味を持つ。
この重要な保存食で遊ばれると、流石のエトも困る。それに血が垂れてフローリングも汚れるし。

「……」

 エトの召喚したサーヴァントは、エトよりもなお小柄な、十歳にも満たないのではと疑う程幼い、黒髪の子供だった。
大人びた顔付きをしており、育てば美男子になるであろう素質はある。だが――異常なまでに感情を感じられない。
石ですらまだ感情を湛えているのではないかと思う程、少年の表情からは情動の兆しを感じ取る事が出来ない。
特にその『目』だ。エトは此処まで、心を感じさせない瞳は見た事がない。喰種として幾つもの死線を掻い潜って来たエトだったが、
此処までの物を年端もいかないこんな少年が持っているとは……。初めて少年の目を見た時は、久方ぶりにゾッとした感覚を覚えてしまった。

「ほら、それを元の所に戻して戻して。お菓子あるからそれ食いねい」

 言ってエトは、塩野から差し入れに貰った饅頭の入ったビニール袋を見せ付ける。
食性が喰種である為こう言う菓子類はエトは駄目なので、貰ったらいつも捨てる事にしているが、処理してくれる人間――サーヴァント――がいるのはありがたい。
人の子供は甘いものが好きであると聞いた事がある。喜んでくれるだろう。

 少年はやはり表情を動かさず、宙に浮かせていた肉片を消え失せさせる。
テレポーテーション、と言うものだ。これ以上と無い単純な能力だが、望む者は数多い能力だろう。エトも、出版社まで電車で行くのがたまに面倒になるからだ。
恐らくはこれを使って、元のプラスチックのパックに戻したのだろう。実際冷蔵庫の中を見てみると、不足なく、人体はパックの中に入っていた。
「よーしいい子だぁ」と棒読みで褒める。少年は無反応。「反応しろガキ」、と小声でエト。

 塩野に手渡した原稿である、超能力に覚醒した少年の話は、目の前のサーヴァントがモデルになっている。
無論エトは、少年の過去を知らない為、適当に過去をでっちあげ、即席で小説の形に整えた。
作家としてのエトは、インスピレーションを大事にし、ネタの鮮度を優先するタイプだ。
意外と筆が進んだ為、今後もし、聖杯戦争を無事に勝ち進めれば、第二弾を執筆するのも吝かじゃないなと思って来た。
それにこの少年から発散される臭い……。誰かに捨てられた者だけが醸せる、この寂しげな雰囲気は、身に覚えがあり過ぎるのだ。
今更見捨てたくない、放っておけないと言う青い感情に振り回されるエトではないが、それでも、無視出来ない何かをこの少年バーサーカーには憶えていた。
完全なる人間ではあるのだが、喰らう気も起きない。サーヴァントだからと言う理由ではない。もっと根源的な理由で、だ。


852 : 光『明』 ◆zzpohGTsas :2018/05/31(木) 15:36:21 tnK4LLQc0
 塩野から手渡された饅頭の包装を破き、その内の一個を少年に放るエト。
それを、レビテーション能力で浮遊させ手元に取り寄せる少年。それを手に取り、眺めていた。

「食べるのは初めてか? 『アキラ』くん」

「……」

 こくり、と頷いた。
人間の子供はこう言う甘いものが好きだから、食べた事がありそうな物だと思ったが。
アキラと言う名のサーヴァントは、食べた事もなかったようである。そう言った物を食性以上に、境遇から食べられなかったエトと同じである。
饅頭を齧り、その甘さに少し驚いたような表情を浮かべる少年を見ながら、エトはPCの電源を入れ始める。書きかけのストーリーのプロットを練る為だ。
モチーフは聖杯戦争。勝ち残ればきっと、良い物が書ける。そんな予感を感じながら、知恵を絞り始めたのであった。





【クラス】

バーサーカー

【真名】

アキラ@AKIRA

【ステータス】

筋力E 耐久E 敏捷E 魔力EX 幸運D 宝具EX

【属性】

中立・中庸

【クラススキル】

狂化:EX
バーサーカーは嘗ては感受性も感情も豊かだった一人の少年だったが、ある実験を境に得た強大な力と引きかえに、その感情が全て吹き飛んでしまった。
この場合のランクEXは特異性を表したもの。バーサーカーには元々、狂化を起こせる程の感情の総量が絶対的に足りない。
言葉を理解もするし、命令にも素直だが、今のバーサーカーは、超能力の力を命令によって外部に放出する蛇口でしかない。

【保有スキル】

超能力:EX
ESPやテレポーテーション、予知にサイコキネシス、サイコメトリーなどと言った魔術に拠らぬ異能の持ち主かどうか。
バーサーカーはこれらの能力についてA+ランク以上の実力で発揮する事が出来るだけでなく、彼だけの持つ特殊な超能力を有している事から、このランクに至っている。なお、その彼だけの特殊な超能力は、後述する宝具としてカウントされている。

無我:B
バーサーカーは感情の類が極端に希薄なサーヴァントである。Aランクまでの精神干渉に関わる魔術を全て無効化し、読心術を行った場合、その対象に精神的な大ダメージを与える事が出来る。

【宝具】

『無銘(超能力)』
ランク:EX 種別:対人〜対星宝具 レンジ:1〜 最大補足:1〜
バーサーカーが生前施された、超能力を得る為に施された処置。それによって得られた能力の一つが宝具となったもの。
その正体は、此処とは違う何処か別の、膨大なエネルギーが大量にプールされている次元に接続し、其処から力を引っ張り出してくるというもの。
限定的な第二魔法そのものであり、この力を行使している限り、バーサーカーに魔力切れと言う概念はない。
その性質上、本来は極めて多様な使い方が出来た筈の宝具だが、バーサーカーの精神性は極めて幼い為、集めた力を運動エネルギーや熱エネルギー等に変換し、
一気に解き放つと言った使い方以外、殆どしない。引っ張って来たエネルギーの総量次第では、簡単に対城宝具を上回り、最大の対星規模のそれにまでなってしまう。


853 : 光『明』 ◆zzpohGTsas :2018/05/31(木) 15:36:38 tnK4LLQc0

【weapon】

【人物背景】

28号。日本国家の超能力研究極秘プロジェクトで超能力を開発された、人造の超能力者の一人。
凄まじい超能力の才能を持っていたが、その能力を暴走させ、東京の街を滅ぼしてしまった。 

【サーヴァントとしての願い】

??????




【マスター】

芳村エト@東京喰種シリーズ

【マスターとしての願い】

迫害されている喰種でも、輝ける世界を

【能力・技能】

赫子:
種類としては羽赫と言う事になっているが、その姿形は異例中の異例。過去に喰種の共食いを行いまくったせいか、赫者となってしまった。
極めて多くの共食いを行ってきた為、極めて巨大かつ異形の形状の赫者と化している。
推定5mは軽く超える巨体であり、赫者の基準である纏うような赫子の範囲を超え、殆ど着ぐるみ状態になっている。
巨大な異形の姿に裏打ちされた打撃力と頑強な装甲を持ち合わせ、 肩に備わる刃で接近戦、羽赫特有のショットガンのような赫子で中遠距離をそれぞれ受け持つ。
異質なのは姿のみならず、赫子自体もイレギュラー。赫子それぞれがまるで意志をもって口を開き言葉を発し、『骨』と呼ぶ赫子を他人に埋め込むと、
喰種の域を越える治癒力を与えられるなど、他の喰種とは比較としても異常と言える能力を持つ。

【人物背景】

職業は小説家であり、ミステリーを中心に執筆しており、高い人気を持つ若手小説家。
その正体は喰種組織『アオギリの樹』の創設者『隻眼の梟』エトであり、アオギリを率いるリーダー『隻眼の王』とCCG上層部からみなされている最強の喰種。
人間と喰種の間で産まれ落ちた天然の半人半喰種のハーフであり、『あんていく』の店長、芳村は彼女の実の父に当たる。

8巻の時間軸から参戦

【方針】

打って出るのも待つのも良い。ただ、アキラの実力が解らない上、此処では喰種のネットワークもない為、慎重に動く事も大事。

【把握方法】

アキラ:コミックス全6巻の把握必須。

芳村エト:東京喰種全巻+次シリーズの:reを8巻まで読めば把握は可能。特に描写の都合上、:reの把握は必須となる


854 : 光『明』 ◆zzpohGTsas :2018/05/31(木) 15:36:51 tnK4LLQc0
投下を終了します


855 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/31(木) 16:13:13 BBjg4sHo0
皆さま投下して頂きありがとうございます
感想の方を投下していきます

パートナーズ・イン・バーガーショップ
 この不審者っぷりはある種のウワサになって広がりそうな……奈緒は仲間である凛の存在に気づき、彼女と共に
 聖杯戦争から抜け出したい、と思うのは当然でしょうか。形式は違えど聖杯戦争は『殺し合い』のジャンルに
 含まれます。純粋に、仲間を信じるという単純ながら誰しもが抱ける黄金の精神を兼ね備える奈緒と、一人の
 犠牲に躊躇なく手をかけるシールダーとの対極が、今後の行く末を不安視させますね。
 投下していただきありがとうございました。

Journeyer and Bandit
 無免許いうなら、英霊全員免許持ってないので大した問題じゃないから大丈夫ですね(?)コミカルなやり取りが
 キノの旅の原作を彷彿させる穏やかな雰囲気なのがとても良いです。"果実(ソウル)"を詰める空っぽの
 "宝石(ジェム)"とはなかなか上手い表現で脱帽してしまいます。大泥棒が狙うものは、主催者が用意した
 システムそのものであり、それを利用するかはともかく盗み出す事が彼にとっては重要なスタイルが素敵でした。
 投下していただきありがとうございました。

Save My Soul
 影ながら存在する『ジョジョ』の一人であるジョージ2世も原作においての活躍だけで、代々引き継がれる
 黄金の精神をしっかりと備えている証拠を表しています。軍人としての経験だけで、他のジョジョと違って
 何か特別はありませんが。否、それがジョージの、ただの人間が悪に立ち向かう勇気を体現しているのでしょう。
 彼が召喚したセイヴァーの葉隠を見れば、彼のジョジョとしての運命が見えてきます。
 投下していただきありがとうございました。

No cross, no crown
 クソとクソを組み合わせたらどうなるか? 一周回って笑い話になるってことです。この主従の腹の探り合い
 具合や本性を理解すると、不思議と笑いが込み上げてしまいます。まぁ、滑稽なのを差し引いて、実力は
 しっかりとしたもので菫子もマスターの中では戦闘力は上位に匹敵するだけ、例えサーヴァントと互角に渡り
 会えずとも、マスターを一方的に倒すのは容易でしょう。
 投下していただきありがとうございました。

見えたら、■■■
 >聖杯獲得の暁には見滝沢に永住したい。 これほどいい迷惑な願いをしている英霊は見た事ありませんね。
 世界を一巡させる方がマシじゃないかと思います。便所に吐かれたタンカスみたいな奴を召喚してしまった
 ちゃんヒナも、まだ奴の本性を理解しきれていないのが子供らしくて悲しいです。聖杯戦争の最中で、彼女
 を正しく導いてくれる存在と出会える事を切に願います(ただし人肉は食う)
 投下していただきありがとうございました。

歪んだ二人
 深く読めば光を失ってしまった主従なのだと分かります。原作において花京院は救われたとはいえ、この聖杯
 戦争おいて果たして彼に救いはあるのでしょうか。少なくともバーサーカーとして召喚され、人を食い散らかし
 てしまった緋鞠に関してはもうどうしようもないですし、誰かの言葉を借りるなら『死ぬしかないな』。だけど
 そんな彼らを救うとすれば、イカれたお人よしか。悪の救世主ぐらいでしょう。
 投下していただきありがとうございました。


856 : ◆xn2vs62Y1I :2018/05/31(木) 16:13:39 BBjg4sHo0


繋がれたる者
 『男の世界』は実にロマンある世界です。本当にロマンに過ぎないし、一般人に吹っ掛けられたら理不尽にも
 ほどがあるものです。リンゴォの時間はきっと事件があったあの時から静止してしまっているのだと私は思います。
 彼は、それが高めるものだと勘違いしていますが、結局は過去の鮮烈な衝撃を引きずり、ジャンゴの指摘通り
 寄りすがる生きがいを求め続ける亡霊のようなものでしょう。そして最期までそれに気付けないのでしょう。
 投下していただきありがとうございました。

Merciful Merciless Girl
 弓みえないというか、弓使ってるアーチャーはアーチャーではないので颯太ことラピュセルは、ちゃんとした
 アーチャーを召喚したと思います(?)魔法少女ながら騎士として、一人の少女を守ろうと刃を持つ少年
 はまだ絶望を味わっておらず。しかしながら、トリスタンは少年の危うさを薄々感づいているようです。
 ならばこそ、彼が真の意味で少年を支える時が来ると願います。
 投下していただきありがとうございました。

地獄の序曲
 改めて支配者は誰であるのか良いか、どうあればいいのか。を考えさせられます。私としては、ルーカスなんかより
 ディアボロやDIOが世界を支配した方がマシだと思います。どっちだって悪に転びますが、どちらが指導者
 らしさやカリスマ性や、支配した先を見据えているのかを考えているを冷静に判断すれば当然のことです。
 とはいえ、ルーカスも自らのサーヴァントの支配から逃れる為、如何に行動を起こすか期待してます。
 投下していただきありがとうございました。

女騎士たちの聖杯戦争
 こちらもこちらで、まさか騎士王とラピュセルの主従とは前の主従とは異なる皮肉でまた……
 魔法少女らしさ、とは作品によっては解釈は様々なのでしょう。ならばこそ、むしろ殺し合いとかいう場所に
 魔法少女が存在する時点で駄目ですし、まほいく原作のマジカルキャンディー争奪戦とかやってる時点で
 終わってますし……だからこそラピュセルは彼の理想の魔法少女らしさを貫き通さなければなりませんね。
 投下していただきありがとうございました。

When the Saints Go Marching In
 私はあのシーンでホットパンツが脱落したとは今日まで釈然としないんですよ。という個人的な話はさておき
 神だとか罪だとか、本当に面倒な話が多いのが宗教ですが。幼い頃は私も訳わかんないで御祈りとか、聖書の
 復唱をしてたものです。最近になって聖書の内容を見て、意味わかりませんし、神様のやってることいい迷惑だし
 天罰で相手を恐喝して異教徒弾圧して信仰強制させててゲロ吐きたくなりました。
 投下していただきありがとうございました。


857 : 地獄の序曲 ◆/Pbzx9FKd2 :2018/05/31(木) 23:15:08 zlzavLow0
再投下します


858 : 地獄の序曲 ◆/Pbzx9FKd2 :2018/05/31(木) 23:16:29 zlzavLow0


これは何たる噂にしか過ぎない。

そう、これは皆が囁き合う都市伝説である。

「知っているか?見滝原にある沼地の事?」

「沼地?見滝原に、そんな所にあったけか?あそこは林しかなかったよな」

「その沼地は見滝原の地図に無かったんだ。突然、現れたかのようにね。で、調べようと連中が行ったんだけど、誰も戻ってきてないんだ」

「はぁ?何それ?只の遭難で野たれ死んだだけだろ」

「それがさ、続いてんだよ。行方不明者が何人も」

「警察の方は?」

「警察も探したんだけど、お手上げ状態で見つからないって」

「ヤベェ所だな。俺も行ってみるか」

「辞めておけよ、今じゃあ、誰も寄り付かない。心霊スポットよりも物騒になってるからさ」

何時しか忘れ去られるかもしれない噂。

しかし、それに魅了されたかように人々は集まっている。




濁った雲で晴れない大空、霧が立ち込める大きな街。雪が降り、道路や建物の屋上に僅かながら積もっていた。
あるのは物静かで静寂に支配された街と決して晴れないであろう煙霧。
まさに、死に相応しい街だった。

「ここは何処だ?」

道路の脇にて歩いている男性がいた。
男性は、この街に見覚えが無かった。
何より、この男性は記者として沼地に出向いていたが、突然、後ろから殴打され気を失っていた。

殴打された痛みを思い出し、起き上がって目にしたのは、この街の景色であった。男性にとって初めて目にする街である。思い返す男性に頭が過ぎる。

――自分は此処ではなく確かに『見滝原』の沼地にいたのだ。

そして、内心では受け入れずにいた。

――あり得ないぞ。冬でも無いのに

それは、冬の季節では無い筈なのに、雪が降っていた事だった。
雪が降るまでに、時間が経過していた事を意味していた。
誰かに殴打され、気を失うまでの記憶は残っていた。冬とは無縁の湿気地帯にいた事は覚えている。しかし、雪が降るなんて聞いたことも無い。異常気象じゃなければ説明が付かない。
苛つき出したのか、いつの間にか指に付着していた雪の一粒を潰していた。潰した瞬間、その指は真っ黒に染まっていた。

男性は、これを見て気付いた。

――まさか、これ全部、降っているのは灰なのか?

異常気象なら受け入れたものの、灰が雪のように降る現象は聞いた事もなかった。
下手をすれば専門家がニュースに出ようが説明が出来ない程、世間が騒いでもおかしくなかった。
見渡すのは閑散とした景色。人がいる気配など微塵も感じられなかった。
とても、幻想的であり現実的では無かった。

どうするかと考える男性だったが、目に止まったのは看板。英語で書かれていたものの男性にとって読めない文字ではない。

そこには――

「サイレント……ヒル?」

と書かれていた。


859 : 地獄の序曲 ◆/Pbzx9FKd2 :2018/05/31(木) 23:20:17 zlzavLow0


「携帯が繋がらない……」

男性は出来る限り、住民を探し回ったが、誰も見つからなかった。
知る限りだと、ここはゴーストタウンである事に間違いなかった。そして、街から出ようとしたが、この街を取り囲むように崖が出来ていた。
つまりは、此処から逃げられなかったのだ。

――糞っ!ネタが見つかるかと行方不明者が絶えない沼地に出向いたってのに何て様だ!

心中では穏やかじゃない男性は、隣にあるゴミ箱を蹴っていた。
霧の中へとゴミ箱が転がった先に、うっすらと人影が見えた。

「人が居たのか?」

彼は人影を見るや否や、その方向へ駆け出していた。
ようやく、助かるのだと心の底から疑いもしなかった。

「すみませんが……」

しかし、彼は立ち止っていた。
それは、恐怖の余り脳が拒否して動けなかった。

グチャ、グチャ、グチャ、グチャ。

男性の目に映るのは、住民だと思っていた2本脚で立つ異形とも言うべき怪物だった。
ゴムのような皮膚に、生物としてある筈の両腕や顔が無い。
不気味に歩く度に体をくねらす様は、芋虫のような気持ち悪さが滲み出ていた。
すると、歩いていた怪物は立ち止り、目の前にいる男性を認識した途端、苦しみ、もがきだしていた。

――不味い!不味い!動け!逃げろ!

男性は逃げろと脳から体に命令を出すが、体が命令を受け付けず動けなかった。

突如、怪物の胸にある裂け目から、黒い液体が飛び出していた。その液体は今すぐ動かなければ男性に降り掛かるであろう。
液体に自分の体が降り掛かる寸前に男性は、よろめき何とか避ける事に成功した。
男性にとっては偶然にも避ける事が出来たのであった。
道路のコンクリートに液体がぶちまけられ、煙を立てながら溶け始めていた。

「うわぁ!糞っ!何だよ!何だよ!糞ったれ!」

男性は悲鳴を上げ、振り返る事も無く、ただ走り続けていた。
あの怪物は何だったのかはどうでも良かった。思考を停止させ、安心するまで一心不乱に逃げていた。

すると、彼の耳の鼓膜に響くサイレンが聞こえてきた。
余りの轟音に耳を塞いでいた。そして、辺りが真っ暗となり、暗闇が彼を飲み込んでしまった。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

彼は理解できないものの恐怖に怯えながら、手探りでポケットからライターを取出していた。

カチッ、カチッ、カチッ、カチッ。

やっと、火が付いた事で、辺り一面をようやく目視出来た。
そこには、無機質な街とは打って変わって、何かもが廃れ、血に浸食され錆びていた。
自分がいた街とは何かもが違っていた。あの響き渡ったサイレンと共に。

「次から次へと、どうなってんだ!」

男性は髪をかき乱しながら、冷静さを取り戻そうと必死だった。

自分は何故、誘拐されて、此処に放り込まれたのかは知らない。
確かなのは、彼の知る限り地獄に放り込まれたという事だった。

彼は、安全を確保するべく籠城する為、建物の扉へと駆け寄る。扉に駆け寄ると、ドアノブを引いて押したりするがビクともしない。

「糞っ!開け!開け!」

扉に鍵が掛かっていた事は知っていた。だが、他に通じる扉を探す余裕は無い。
探そうと手間を掛ければ、いつ何時、あの怪物が襲い掛かるかも分からなかった。
男性は扉を蹴り破ろうと、足を上げた瞬間。

後ろに此方へと歩む音が聞こえた。

足を下げ、後ろへと振り向いた。

そして、振り返った先は先ほどの怪物とは違う悪魔とも言うべき異形だった。
生物の色としては灰色であり、生気が感じられなかった。頭と顔が不自然に歪んで後ろに曲がっている。

「ウァァァァァァ!」

目が合った瞬間、その悪魔は断末魔を上げ、男性に襲い掛かった。
怪物に掴み掛れ、人間とは思えないぐらいの力が加わり、振りほどくにしても困難だった。
男性は幸いにも掴まれた上着を脱いで捨て、足を必死に動かし、逃げていく。
後ろから断末魔が聞こえ、悪魔に捕まらないと必死に逃げていた。


860 : 地獄の序曲 ◆/Pbzx9FKd2 :2018/05/31(木) 23:21:32 zlzavLow0
「おい、嘘だろ……」

男性が逃げる先には、先程の悪魔達だった。
断末魔が彼に降り掛かるように恐怖を染み込ませる。

「ウァァァァァァ!」「ウァァァァァァ!」「ウァァァァァァ!」「ウァァァァァァ!」「ウァァァァァァ!」
「ウァァァァァァ!」「ウァァァァァァ!」「ウァァァァァァ!」「ウァァァァァァ!」
「ウァァァァァァ!」「ウァァァァァァ!」「ウァァァァァァ!」
「ウァァァァァァ!」「ウァァァァァァ!」
「ウァァァァァァ!」

10、20、それ以上の数が引き締めており、突破するのは容易ではない。
他の道は途絶え、引き返そうと後ろを振り返れば、いつの間にか群れを成していた悪魔が歩み寄ってきた。

「ははは……」

彼は現実を受け入れず、狂うしか無かった。
もうすぐ、死神は間近に迫ってきている。
生き残る為の打つ手が無かった。
彼はズボンのポケットから、あるものを取り出していた。


それは、記者が持つべき象徴であり、欠かせないものだった。

それは、画像を残す為のカメラだった。

――俺はもうすぐ死ぬだろう。だから俺の他にもやってくるかもしれない者の為に地獄絵図を残そう

迫りくる死神の手は、すぐそばまで迫ってきた。
彼は画像を残そうとシャッターを何度も切ながら、悪魔の群れに呑まれていった。

死に際に立たされながらも彼は記者としての最後を迎えた。

彼の死に様を視ていたものがいた。
それは、決して手が届かない建物の横に取り付けられたカメラだった。
そのカメラは廃墟と同じように壊れているものでもない。
取り付けたばかりのような新品のカメラである。
この地獄絵図のような光景をカメラが電源ランプを付けながら視ていたのだった。


861 : 地獄の序曲 ◆/Pbzx9FKd2 :2018/05/31(木) 23:23:41 zlzavLow0


「これでゲームオーバーかよ。しゃーねぇ、こんなもんだろ」

20代ぐらいの男性が、つまらなそうに悪魔達が埋め尽くす映像を流しているモニターを眺めていた。
彼が居る部屋の中には、数多いコードが血管のように張り巡っていた。数多くのモニターが彼に見せるように至る所で配置されていた。
フードの上着、丸刈りの頭、全体的に痩せ細っていた彼はクルリと椅子を回しながら、独り言を呟く。

「しかし、驚いたぜ?俺はあいつに殺されたのに、何で此処にいるのかってな。ひょっとしたら、此処が天国だったってオチなのかもな」

そう愉快そうに呟く彼は本来なら、この世界に居ない存在。もとい彼は、別世界にて殺されて居た筈の存在だった。
先程の映像をゲームプレイをしたかのような感想を言う彼は、一般人ですら無い。

別世界で世間に恐怖を与えたベイカー家の長男のルーカス・ベイカーだった。

エヴリンという少女に力を与えられ、自分は好き放題にやってきた。
自作したゲームに自分の家族が誘拐してきた人間を放り込み、何時だってモニターから覗いて楽しんできた。

だが、この楽しみはいつまでも続かなかった。

イーサンという男性を誘拐し連れ込んだ後は、何かもが崩れた。

イーサンは父親や母親を倒しただけではなく、エヴリンを倒してしまった。

事実、ベイカー一家はイーサンによって壊滅させられたが、一人生き残っていた自分は組織に追われながらも優勢を保っていた。

生意気にも、その組織の人間の反撃に遭い、

そいつに殺されそうな時――

薄れゆく意識の中で――

「ゲームオーバーだ」

――と呟かれ、この世を去ってしまった。

気が付いた途端、自分は何故か、ベイカーの農家に居たのだった。

撃たれた筈の胸に痛みは無かった。銃の引き金で引かれ頭部を失っていたのに頭があった。彼は追手が居ないか辺りを見渡したが、誰も居なかった。
それどころか、ここら一帯が田舎町だった筈が沼地を抜けると高層ビルが立ち並ぶ都市が見えたのだ。
彼は、さすがに驚きを隠せなかった。
自分の住んでいた世界と全く違うものだと証明するとしても十分すぎるものだった。

――マジかよ、どんなファンタジーだよ?

その光景に目にしたルーカスは、口を塞いでいた。
彼は久しぶりに都市部に出向き、フラフラと周りを調べていた。
そんな中で通行人から声を掛けられ、ルーカスの内心では焦っていたが、自分が住んでいたアメリカの言語と変わりなかった。
調べた時に分かった事だが、自分は『見滝原』にいる事が判明した。
『見滝原』という文字で日本にいる事が分かり、混乱を極めていた。

そこから今に至っているという事である。
しかし、ルーカスの悩み所は……。

「あら、此処が天国ではないでしょう?少なくとも現実よ」

ルーカスの背後で現れたのは青のドレスを着た少女だった。
その少女の顔は生気すらも感じられず、絶望に満ちていた。
現れたと知るとルーカスは少し不機嫌な顔に変わる。

「驚かすなよ。アヴェンジャーだっけ?驚かすのは好きでも驚かされるのは嫌いなんだよ」

「そう。貴方の趣味に言う事はないけども、くれぐれも慎重に動いてもらいたいわね」

アヴェンジャーと呼ばれる少女は、悲惨な映像を流すモニターに目もくれず、ルーカスに無表情で釘を刺す。
今までは、ルーカスが取り仕切っていた空気が彼女の出現により一変した。

「分かってるよ。でもよ、目撃者を消す為には仕方のねぇ事だろ?」

目撃者――それは映像に映っていた男性の事だが、それは単なる名目にしか過ぎない。
実際は沼地に踏み込んだ男性を鈍器で殴り、地獄の空間に放り投げたというものだった。
ルーカスにとって蛇がいる飼育ケースにマウスを放り込んだという感覚にしか過ぎない。

「そうね、今のままで結構よ」

少女は答えると、何処かへと消えていった。
ルーカスは消えていったのを見届けると、愚痴を零していた。

「あー、糞がっ!折角の所で糞ガキからの支配を抜け出せたってのに、これじゃあ、何も変わらねぇな」

その少女は、かつてルーカスの家族を支配していたエヴリンと何も変わらなかった。

――あの、アクセサリーみたいな石を触ってから、こうなったんだよな?畜生が……

自分を追う者は居ない、自分を知る者は居ない。
ルーカスは自由になれたと歓喜している最中、不意に気になった『宝石』を触ってしまった。

――聖杯戦争?上等だ、随分とお気楽で欠伸が出る程、優しい戦争じゃねぇか。いいぜ、遊んでやるよ!

彼は苛立ちから子供の様に無邪気に笑いながら思った。


862 : 地獄の序曲 ◆/Pbzx9FKd2 :2018/05/31(木) 23:24:19 zlzavLow0


――随分と滑稽なマスターに引かれたものね

アヴェンジャーと呼ばれている少女――ダーク・アレッサは思った。
ルーカスが嘘を付いた事ぐらい分かっていた。
しかし、サーヴァントとして余り強く強いる事はない。
彼女にとっては些細な事だから。

――全く感謝ぐらいはして欲しいものね。貴方が居るのは決して見つからない世界だから

ルーカスとダークアレッサが居るのは別世界。
異次元の狭間にある異世界だった。
それ故、誰にも知られない。誰にも見つからない。誰にも干渉される事はない。

この世界で過ごしている彼女は思う。

自分を火炙りにした連中を許さない。

彼らは、それらの行為を正当化し続ける。

彼らは、罪から目を背け続ける。

彼らは、正義を掲げ続ける。

だから、私は彼らを

――苦しませて殺してあげるわ、そして、彼らの血を浴びたい


863 : 地獄の序曲 ◆/Pbzx9FKd2 :2018/05/31(木) 23:27:11 zlzavLow0
【クラス】

アヴェンジャー

【真名】

アレッサ・ギレスピー@サイレントヒル(映画)

【パラメータ】

筋力E 耐久E 敏捷E 魔力A 幸運E 宝具EX

【属性】

中立・悪

【クラススキル】

復讐者:A
復讐者として、人の恨みと怨念を一身に集める在り方がスキルとなったもの。周囲からの敵意を向けられやすくなるが、向けられた負の感情は直ちにアヴェンジャーの力へと変化する。

忘却補正:A
人は多くを忘れる生き物だが、復讐者は決して忘れない。

自己回復(魔力):A
復讐が果たされるまでその魔力は延々と湧き続ける。

【保有スキル】

怪物使役:A+
自身の記憶、感情から具現化し異形と化した怪物の集団を従える。
中には並みのサーヴァントと渡り合える存在も居る。
怪物に対峙した者に強烈な生理的嫌悪を与え、毎ターン精神判定を行なわせる。
判定に失敗した場合、対象のあらゆる行動にペナルティが入る。

悪魔創造:A
自身に仕える悪魔を創造しスキル。
本体は『静かなる丘(サイレントヒル)』の病院の地下に潜んでいる。
本体を潰さない限り、ダークアレッサを消滅させても、また創り出す事が出来る。
悪魔のダークアレッサは原則として一人のみ。

結界支配:A
結界の権限を持ち合わせるスキル。
『静かなる丘(サイレントヒル)』の浸食固有結界の中なら、空間転移は可能。
病院の地下は更なる異空間となっており、病院の地下に入るまで本体たるアレッサー・ギレスピーの気配を感じさせない。
更に敵サーヴァントに対する宝具真名解放の封印、軒並みのパラメータの低下で施される。

復讐の意志:A
教団に対する復讐心は決して消える事が無い。
その為に叶える聖杯に執着しており、その為なら手段を一切選ばない。
その為、善悪に囚われない考え方になっている。
場合にとって、中立から混沌に変わる可能性が高いスキルとなっている。


864 : 地獄の序曲 ◆/Pbzx9FKd2 :2018/05/31(木) 23:27:53 zlzavLow0
【宝具】

『静かなる丘(サイレントヒル)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:- 最大捕捉:1000人
並行世界に存在するもう一つの世界の有り様。
異界に没し、白い霧に閉ざされたゴーストタウンである『静かなる丘(サイレントヒル)』を世界に侵食させる。
要は侵食固有結界。
この世界に出入りする為には、アレッサー・ギレスピーの許可、もしくはダーク・アレッサによる空間の繋ぎが必要となる。
世界の抵抗によって、際限なく侵食する事は無い。
しかしながら、その規模は街全体ぐらいは軽く飲み込んでしまう。
長時間『静かなる丘(サイレントヒル)』内部にいた対象は、時間に応じた『精神汚染』を取得することがある。
また、ランダムで血と錆に満ちた“裏世界”へと変貌する場合がある。
その時間帯は、自身の心の奥底にあるものが具現化され、毎ターンごとに異形の怪物達が無限に生み出される。
怪物達が誕生しても、『静かなる丘(サイレントヒル)』の一部の為、魔力を必要としない。
仮に怪物が倒されても『静かなる丘(サイレントヒル)』の方に還元される為、魔力の消費にはならない。
世界の抵抗により、怪物達を召喚、展開は出来ない。
しかし、怪物達を数十万程度に抑えられるなら、召喚及び現界は可能となる。

『悪魔少女(ダーク・アレッサ)』
ランク:B 種別:対人(自分による分身)の宝具 レンジ:- 最大補足:-
アレッサ・ギレスピーから生み出される自分と似る悪魔。
自我から生まれる点についてアルターエゴに似ているが、クラスを持たない為、宝具も持ち合わせない。それ故に彼女の使い魔となっている。
彼女自身、戦闘力がないものの、何時でも怪物達を生み出したり、自分を起点にして『静かなる丘(サイレントヒル)』への空間を繋げる事が可能。
『静かなる丘(サイレントヒル)』とは違い、怪物達を生み出すにも、魔力が必要となる。
拘束や拷問をされた時には自分自身を燃やし、何事もなく自害する。その際に周りにある全てを火に変える。
彼女が消滅した場合、その時の記憶と経験が次のダーク・アレッサに上書きされる。


【weapon】

本体たる自身が縛られているベッドに纏わり、その土台を支える無数の鉄線を武器にする。
それは人間ならば容易く貫き、切断する事も可能である。
敏腕性の高いサーヴァントでも逃れる事は困難であり、獲物を追いかける蛇のように追跡出来る。
その鉄線は魔力を帯びている。

【人物背景】

元々、サイレントヒルの小学校で生徒から「魔女の娘」と呼ばれいじめの標的とされ孤立していた少女。
祖母であるクリスタベラが率いる狂信者たちによって魔女と認定され、鉄檻に閉じ込められて火炙りにされたという惨いものだった。
母親の通報で駆け付けた警部の手で鉄檻の中から助け出され病院に運ばれ、奇跡的に一命を取りとめた。
その後も瀕死の状態で生きていたが、いつしか自分の身に起きたことだけでなく、看護師から向けられる好奇の目にさえも憎しみを抱くようになった。
その苦痛が憎しみに変わったアレッサから生まれた悪魔、それがダーク・アレッサだった。
霧と血と錆に包まれ怪物の徘徊する呪われた異世界を作り出した。

【サーヴァントとしての願い】

聖杯に願うものは、自分を火炙りにした教団(母親以外)の皆殺しである。


865 : 地獄の序曲 ◆/Pbzx9FKd2 :2018/05/31(木) 23:29:15 zlzavLow0
【マスター】

ルーカス・ベイカー@バイオハザード7 レジデント イービル

【マスターとしての願い】

楽しみながら世界を支配する。

【能力・技能】

幼少時から発明大会で幾度も賞を取る程に機械工作などの才能に恵まれ、天才的な技術力を持つが、その才能を悪用する形で軍事関係者顔負けの巧妙なブービートラップや拷問具、武器、からくりを自作する。
特異菌に感染している影響で、腕がもげても再生する機能が備わっている。又、致命傷を負えば体内にある特異菌の臨界が達して、クリーチャーと化する。

【Weapon】

人を殺傷させるナイフ。

【人物背景】

ジャックとマーガレットの長男で、ゾイの兄。素行の悪い不良で、過去のVTRに登場するテレビ局のクルーたちも彼の悪評を語る程。
自身の家族に拉致されてきた被害者をゲーム感覚で甚振ったり、殺害する事を楽しむ非常に悪辣且つサディスティックな性格や嗜癖の持ち主。
また軽薄かつ挑発的な態度とは裏腹に勘が鋭く、アンブレラの隊員達や、コネクション、遂にはエヴリンをも出し抜くなど演技力や奸計にも長けた策略家でもある。
その反面、自身の嗜癖や慢心が仇となって、詰めの甘さを見せてしまう事もある。幼少期には友人を自室に仕掛けたトラップによって閉じ込めて餓死するまで監禁するなど、特異菌に感染した事で人格が豹変した両親とは違い、彼自身の猟奇的な性格を生まれ持つ。
その為、精神を支配されていたことに嫌悪を抱きつつもエヴリンに与えられた力を受け入れている。

【方針】

聖杯は、あくまで二の次にしか過ぎず、彼の楽しみはマスターやNPCを玩具にしながら、遊ぶ事である。


866 : 地獄の序曲 ◆/Pbzx9FKd2 :2018/05/31(木) 23:29:34 zlzavLow0
再投下終了します


867 : 地獄の序曲 ◆/Pbzx9FKd2 :2018/06/01(金) 09:07:01 hvBfwP2.0
すみません。
文字に誤りがあります
863のスレに書かれている部分の『場合にとって』
正しくは『場合によって』です
864のスレに書かれている『敏腕性』
敏腕性ではなく、敏捷性です


868 : <削除> :<削除>
<削除>


869 : ◆0VSR7vZCCQ :2018/06/01(金) 20:27:30 o13lcIb60
投下します


870 : ◆0VSR7vZCCQ :2018/06/01(金) 20:34:18 o13lcIb60
すいません。なんかNGワードがあるみたいで投下まで時間が掛かりそうです
他にしたい人がいたらどうぞ


871 : ◆0VSR7vZCCQ :2018/06/01(金) 21:12:32 o13lcIb60
再び投下を試みます


872 : ◆0VSR7vZCCQ :2018/06/01(金) 21:23:33 o13lcIb60
未来都市『見滝原』。最先端の技術を加えて芸術性まで意識されたその町に、似合わない格好とした男がひとり歩いていた。
 毛皮のマントを纏い、犬の耳を思わせる髪型に同じく犬を思わせる尻尾のアクセサリーをつけた男。人によって可愛らしくさえなる組み合わさだが、その男がするとむしろ獣のような威圧感があった。


873 : ◆0VSR7vZCCQ :2018/06/01(金) 21:38:59 o13lcIb60
 人の往来の多い道を歩くには目立つ出で立ちだが周囲の人間に気にした様子はない。彼は自分の気配を完全に消していた。ただの一般人では例え眼の前に立たれても彼の存在に気づけないだろう。


874 : イブ&アサシン ◆0VSR7vZCCQ :2018/06/01(金) 21:39:52 o13lcIb60
 アサシンのサーヴァント。本名は津久井道雄。英霊としてなら怒突という仕事名のほうが知れ渡っているか。
 彼は見滝原の町並みになど目もくれていない。彼の意識は周囲への警戒、そして自身のマスターへと向けられていた。
 見た目は十歳前後の少女といったところか。長いブロンドの髪を揺らしながら町並みを眺めていた。人形のように整った顔は表情が薄いようで、よく見るとその瞳は好奇心で輝いているのがわかる。
 つい最近まで自宅の屋敷からほとんど出たことがなかったという彼女は、この聖杯戦争においても親に監禁同然の生活を強いられ、家出して隣町の見滝原までやってきたという設定が与えられている。怒突も安全のため拠点であるホテルから出ないように言い含めていた。
 もともとは怒突ひとりで情報収集に出かけていたのだ。しかし奇妙な噂や事件の話はあっても戦いが始まっている気配は微塵もない。それならば必要以上に警戒して精神を疲弊させるよりも、好きに出歩かせて気晴らししたほうがいい。そう思って外出を許可したのが今朝のことだった。気分が高揚するのも無理はない。 
 と、公園の近くまで来たところで、あっちにこっちに視線を動かしていたマスターの目がふいにある一点を向いて止まった。怒突もそちらを見て合点がいく。アイスクリーム屋があったのだ。

「食いたいのか?」

 マスターはこくりと頷いた。

「なら買ってくりゃいいじゃねえか」
「どうやってかえばいいのわかんない」
「おいおい、外に出たのは最近つっても、ひとりで列車乗ったり、ホテル取ったりしたんだろ?」

 無論その記憶は偽物であり、本当はホテルに泊まっている状態からスタートしたのだが。偽物でも記憶は記憶だ。買い物の仕方くらいわかっていなくてはおかしい。

「あのときは、ちかくにいたヒトにたすけてもらったの」
「なんともまあ都合のいい話だな」

 列車はともかく子どもがひとりでホテルに泊まるのを手伝う大人というはちょっと想像し辛い。下心でもあるなら別だが。

(変態には受けの良さそうな容姿だしな)

 しかし彼女の様子からしてそういうことがあったわけでもないだろう。
 所詮は偽物の記憶ということか。リアリティは薄いようだった。

「わかった。俺が買って来てやる」
「ほんと? ダブルっていうのでもいい?」
「ああ。なんでも好きなのにしな」
 
 そのくらい大した手間でもないしマスターにはなるべく好かれておいたほうが都合がいい。
 マスターはメニューが書かれた看板の前までで走っていった。
 
「どうだ?」

 看板を凝視するマスターの横に並んで尋ねる。しかしマスターは「うーん」と唸るばかりだった。
 まあアイスの存在自体知ったのはつい最近らしいので二十を超える種類の中から選ぶのは難しいかもしれない。

「なあ店員さん、あれくらいの子供におすすめなのはどれだい?」
「え!?」

 店員は驚いた様子でこっちを見た。『気配遮断』もさすがにこちらから話しかけた相手にはバレる。向こうからすれば誰もいないところに突然人が湧いて出たような感じだろう。しかしそこは店員もプロですぐに冷静さを取り戻し、おすすめの味を上げ始めた。怒突はその中から二つを選んで注文した。


875 : イブ&アサシン ◆0VSR7vZCCQ :2018/06/01(金) 21:41:17 o13lcIb60
「ほら」

 出来上がったアイスをマスターに渡す。彼女は「ありがとう」と言って受け取った。

「向こうにベンチがあるからちゃんと座って食えよ」
「うん」

 アイスを持ちながら動き回って落として泣く子供を怒突はこれまで何度も見たきた。もっともそういうのは大体言っても聞かないような子供なので、彼女のような素直な子には必要なかったかもしれないが。
 マスターは言われたとおりにベンチに座ってアイスを舐め始めた。怒突はその横に立っていて、ふと彼女の目がじっとこっちを見ているのに気づいた。

「なんだ?」
「アサシンは座らないの?」
「ああ、俺はいい」

 疲れているわけでもないし、戦いが始まった気配がないといっても用心はしておいたほうがいい。

「ふーん」

 そう言ってマスターは視線を再び辺りの観察へと戻した。なんとなく気になり今度は怒突のほうが尋ねる。

「そんなに面白いか?」

 マスターは頷いて、

「うん、こんなにいっぱいヒトがいるところはじめて」
「人?」

 てっきり町並みを見ているのだとばかり思っていたが。確かに見滝原は都会だし、この公園は駅に面していることもあってか人は多い。

「スヴェンがいってた。オマツリっていうのいけば、もっといっぱいヒトがいるって」
「まあでかい祭りならそうだな」
「いってみたいなあ」

 その呟きからは憧憬のようなものが感じられた。
 現代での生活に慣れたアサシンからすれば人混みなんて鬱陶しいとしか感じないが、狭い世界の中で生きてきた彼女には惹かれるもののようだ。
 彼女の本当の生い立ちも怒突は聞いていた。
 体内で生成されるナノマシンによって原子配列を組み換え、身体の形状や組成を自在に変化させる人間兵器。それが彼女の正体だ。
 自分を生み出した男の屋敷で人の殺し方を学んでいた彼女はある日屋敷の外でスヴェンという男と出会う。その出会いを切っ掛けに彼女は自由に憧れ、殺しを忌避するようになった。一度は生みの親の命令に従い、屋敷に戻った彼女だったが追いかけてきたスヴェンの説得によって自分の意思で生きることを決意。屋敷を抜け出し、これからはスヴェンと一緒にいると決めた。要約すると大体こんなところだ。

(皮肉なもんだな。兵器だった娘が殺しを強要されなくなった途端に聖杯戦争に呼ばれるなんてよ)

 もしスヴェンと出会う前の彼女がマスターになっていたなら、きっと疑問も覚えず、躊躇もせず、ただ聖杯戦争のルールに従ってマスターたちを殺していただろう。しかし彼女は自分の意思を持ってしまった。

「なあ、そろそろ決心はついたか?」

 アイスクリームを食べ終わったタイミングで怒突は言った。それを聞いたマスターは表情を曇らせて首を振った。
 マスターを狙うかどうかの話だった。強い敵を避け弱い敵を狙うのは戦いの常套手段だ。それは聖杯戦争においても変わらない。なるべくサーヴァントよりもマスターを狙ったほうが安全だし効率も良い。聖杯を欲していないとしても生き残りたければそれが得策だ。
 仮にも兵器として育てられてきた身だ。彼女だってそれくらいのことはわかっているだろう。
 しかし成仏してない幽霊のような存在のサーヴァントと違ってマスターは生きた人間だ。彼女は決められないでいた。殺したくないという意思を貫くのか、生きるために曲げるのか。


876 : イブ&アサシン ◆0VSR7vZCCQ :2018/06/01(金) 21:42:05 o13lcIb60

「もう何度も言ったが、こっちとしてはできるだけ速く決めて貰ったほうがありがてえ。方針が定まってたほうが戦略も練りやすいしな」
「……うん」
 
 しかし彼女もこればかりは怒突の言葉に従えない様子だった。無理もない。殺したくないという意思に反して人を殺すのは、初めてのうちは相当の覚悟がいる。決められなくてもおかしくないし、決めた覚悟を土壇場で覆してもおかしくない。

(命運を共にする相方にとっちゃ迷惑な話だがな)

 実のところ怒突が練っている戦略の中にはマスターを見限るという選択も含まれている。相手を生かすこと考えながら戦う戦士なんてよほどの実力者でなければ足手まといにさえなりかねない。
 しかし彼女がそうするには惜しいマスターであることも事実だった。兵器として作られただけあって戦闘力は光るものがあるし、論理だって説明すれば理解してくれる利口さもある。才能なのか常人に比べれば魔力量も悪くない。
 それにナノマシンの能力もある。怒突は体内で毒や薬を生成する能力を持っているが、彼女はナノマシンの能力でそれを再現できるのだ。ナノマシンで身体を変化させる能力と聞いた時、もしやと思い怒突が指導した。まだ実践で使えるレベルではないが、厳しい指導の結果(それに耐える根性も彼女の利点のひとつだ)段々とものになってきている。
 性格に問題はあってもそれ以外のステータスはなかなかの逸材なのだ。

(しかし、これもまた皮肉な話だな)
 
 怒突が英霊などというものになった理由――つまり死んだ理由は教え子に殺されたからだった。別に裏切られたとかそういう話ではない。裏切るような絆など最初から存在していない。正確に言えば教え子ではなく商品というべき存在だったのだ。
 生前、怒突は戦士として戦場で戦う傍ら、素質ある子どもを鍛えて適切な組織に売る商売をしていた。金儲けがしたかったわけではない。それが目的ならわざわざ鍛えずに変態にでも売ったほうがよっぽど手っ取り早く稼げる。
 怒突が商品としたのは、放っておけば死ぬか、死んだほうがましな状況になる子供だけだった。そういう子供を見捨てたり一思いに殺したりするのが後味が悪いと思い始めた商売だったのだ。
 真っ当に面倒を見るほどの聖人になれないから生きられる力だけ与えて売り払う。売った先でどうなったかなんてろくに気にもしない。所詮は『俺はやれるだけのことはやった』と言い訳するための自己満足の行いでしかなかった。戦争犯罪人になった教え子にかつての関係すら思い出してもらえず殺されたとしても、自業自得、因果応報、当然の成り行きといえるだろう。
 しかしだから素直に受け入れられるかといえば話は別だ。万能の願望器なんて物で人生がやり直せるというなら当然やり直すに決まっている。
 中にはどんな辛い出来事でもやり直したりなんてしちゃいけないとか、そういうようなこと言う奴もいるだろう。それはあるいは正論かもしれないが怒突から言わせれば所詮恵まれた者の言葉だ。理不尽な目には会っていても進む道は自分で選べた者たちの言葉だ。世の中には選択の自由すら与えられず決まった結末に向かうことしかできない者だっている。怒突はそうではない。だがそういった人間を何人も見てきた。怒突を殺した教え子だってそうだ。
 あいつらのために聖杯が欲しいとか、そんなことを言うつもりはない。一番の目的はやはり自分が生き返ることだ。だが誰だって助けようとした相手にはちゃんと助かって欲しいと思うだろう。
 今度こそあいつらを救いたい。戦士として鍛え上げるのではなく、真っ当な幸福を与えてやりたい。そういう思いがあることは事実だった。

(だっつうのにこうしてまたガギに殺人術を仕込むなんてよ。これが皮肉じゃなくてなんだってんだ?)

 自分はそういう運命の下で生きるしかない人間なのか。そんな悲観的な考えも一瞬よぎってしまう。ちょうどその時だった。
 
「うんめいなのかな」

 マスターの呟きが耳に入った。

「やっぱりわたしはヒトをころすしかないのかな。ジユウにはなれないうんめいなのかな」

 その言葉を聞いて怒突はふと思った。この娘はどうなのだろうか。
 兵器として生み出され、今また聖杯戦争という殺し合いの場は連れてこられた彼女は。
 自分の道を自分で選べる人間なのだろうか。


(チッ、余計な思索だぜ)

 必要以上にマスターのことを慮る必要などない。聖杯戦争を勝ち抜くためだけの相方、利用できるなら利用するし、できないなら切り捨てる。それだけの存在だ。
 第一彼女ができない側の人間だとしてそれでどうするというのか。怒突はそういった者たちを救えなかったからこそ今ここにこうしているのだ。
 聖杯を取らない限り、怒突は彼女を救うことすべなど持っていないのだ。


877 : イブ&アサシン ◆0VSR7vZCCQ :2018/06/01(金) 21:42:43 o13lcIb60
【真名】
怒突@十二大戦対十二大戦

【クラス】
アサシン

【パラメーター】
筋力:B耐久:D 敏捷:A 魔力:D 幸運:D 宝具:D

【属性】
中立・中庸


【クラススキル】
気配遮断:B
自身の気配を消すスキル。隠密行動に適している。
完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。

【保有スキル】

毒/薬生成:A+
 体内で毒や薬を作り出す能力。
 特に毒や解毒薬の生成に秀でている。
 通常の毒が通じない相手にも効く毒や、初見の毒物に対する解毒薬も作り出せる。

心眼(真):C
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
 逆転の可能性が数%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。


【宝具】

『ワンマンアーミー』

ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
 対象者の潜在能力を限界まで引き出す増強剤。
 筋力や五感などはもちろん頭脳や精神といったものまで強化される。
 反面効果が切れた後はその後の人生に作用するほどの副作用がおきかねない。重ねがけなどすればその場でショック死してもおかしくない。

『破傷風』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:1
 体内で作り出した毒や薬を匂い分子に乗せて飛ばす技。
 目に見えないよう極少量ずつ飛ばすため、効き始めるまでにある程度の時間を要する。
 

【weapon】
『狂犬鋲』
敵を噛み切る牙。毒や薬の投与も基本はこの牙を通して行う。

【人物背景】
十二年に一度干支の冠する十二人を戦士を集めて行わる十二大戦の戌の戦士。
普段に保育園に勤めており自身にも血の繋がらない娘がひとりいる。趣味は書道。


【サーヴァントとしての願い】
目的達成を遮るあらゆる障害に勝てる力を持って人生をやり直す。



【マスター】
イブ@BLACK CAT


【聖杯にかける願い】
わからない


【能力・技能】
体内で生成されるナノマシンによって身体の組成や形状を作り変えることができる。
理論上は身体を全く違う形にすることも可能だが、そのためには変化後の姿を強くイメージする必要があり、精神的な未熟なイブではそこまでのことはできない。毒と薬に関しては怒突からの指導のおかげ他の物よりレベルが高い。
また治療用のナノマシンも備えており常人より傷の治りが早い。


【人物背景】
大体本編に書いたのでそちらを参照。
原作2巻からの参戦。


878 : ◆0VSR7vZCCQ :2018/06/01(金) 21:45:18 o13lcIb60
投下終了です。大変お時間お掛けしました
理由はわかりませんがどうやら
に、か、け、る、
を続けて書いたところが駄目だったみたいです


879 : <削除> :<削除>
<削除>


880 : 月下麗人 ◆/sv130J1Ck :2018/06/02(土) 20:19:07 vFwVAe.g0
投下します


881 : 月下麗人 ◆/sv130J1Ck :2018/06/02(土) 20:19:27 vFwVAe.g0
見滝原の一角に、広大な竹林の中に建つ広壮な洋館と、洋館と棟続きになっている鍼灸院がある。
此処に住まうのは見滝原どころか、日本中に名の知られた鍼灸医。
如何なる病気も鍼の業のみで治療してのけると言われる技量に加え、もう一つ、鍼の業よりも知られているのは────。

「全く面倒な事に巻き込まれたものだ。殺し合いをさせたければ紅虫でも呼べば良いのだ」

溜息交じりに愚痴をこぼす男が一人。
聞いたもの全てがもう一度聴きたいと願う美声が空気を震わせる。
精緻な彫刻が施された重厚な黒檀の机に手をついて立つ姿は、黒ずくめの服装に腰まで届く黒い長髪と相まって、気障ったらしいと言われても仕方がない。人によっては見ただけで怒気を抱くだろう。
だが────。この男に限ってそれは無い。
個人の好み、その時代その土地の美的感覚。そういったものを超越して燦然と輝くその美貌。
その目に見つめられたものは永劫に視線を独占したいと願い。
その唇から溢れた吐息に触れたものは、生涯にわたって恍惚とその瞬間を思い出すだろう。


882 : 月下麗人 ◆/sv130J1Ck :2018/06/02(土) 20:20:31 vFwVAe.g0
「面倒?」

男の声に応じるか細い少女の声。水晶の鈴の音の様な澄んだ美声。
ソファに腰を下ろす、男に負けず劣らずの漆黒の長髪の少女が放ったものだ。
如何なる優れた美幌の主でも、その存在が霞んで見える男と向かいあって、微塵も揺らぐ事なくその美を主張出来る麗姿。
紅薔薇の花弁のように赤く、桜の花弁の様に繊細な唇が、男に向かい言葉を紡ぐ。

「貴方は聖杯が欲しく無いの?」

「言われた課題をクリアすれば、望んだ報酬が手に入る…。それで本当に渡すつもりがあると思うかね?聖杯戦争とやらを催した事で黒幕が何の利益を得るか、それが判らない限りは何とも言えんよ。最悪、勝ち残った所で用済みとして始末されるかも知れん」

一旦うごく事を止めた男の唇が、再度動いて言葉を紡ぎ出すより早く、少女が口を開いた。

「言われてみればそうよね…。そういえばさっき紅虫って言っていたけれど、虫の妖怪か何か?」

少女の問いに、男は僅かに苦笑した。

「いいや、千年前に藤原氏の一人として生を受けながらも、''向こう側"の存在と融合して生まれてきた為に、凡ゆる記録から抹消された男だ。
尤も、''向こう側"の存在というのが、蜘蛛だったから、虫といえば虫だが」


883 : 名無しさん :2018/06/02(土) 20:21:48 vFwVAe.g0
「藤原氏………」

少女が感慨深げに呟く。

「かつて君を欺こうとした男の子孫が気になるかね?」

「いいえ、その男の娘と知り合いだもの。数多く居る子孫なんて今更気にもならないわ」

「ふむ………。その娘が復讐でも誓って追ってきたのかね」

「ご明察。逆恨みも良いところだと思うけれど。貴方はどうして千年前の貴族と知り合いなのかしら」

男は短く息を吐いた。

「その所業の故に私の先祖が倒して地の底に封したのだ。地の底から蘇ったら、私を仇呼ばわりして付け狙ってくる困った相手だよ。
尤も、自分以外の魔性を毛嫌いしていてね。世界中の魔性を殺し回ってくれたお陰で随分と楽をさせて貰った」

「今はどこで何をしているのかしら?」

男は少女を見つめて微笑した。
輝く様な美貌に微笑みかけられても、少女は全く揺らがずに平然と男を見ていた。

「色々あって今は月に居るはずだが………どうかしたのかね?君の出自に思うところが有るのかね?」

何やらしきりに頷いている少女に問いかける。

「思い出したのだけれど、さっき言った私の知り合いも、過去に妖怪を退治していたそうだけど、 藤原氏というのは存外武闘派なのかも知れない」

「単に妖怪を殺すのが趣味な一族なのだろう」

にべもない返しに少女が妙な表情で固まった。

「ふむ、話が逸れてしまったが、君はどうなのだ。聖杯に託す願いがあって此処に来たのだろう」

「え?無いけど」

即答。答えるまでの時間が秒にも満たぬその速度は、少女の回答が疑念の余地など全く存在しない真実の意思を告げていると明確に示していた。


884 : 月下麗人 ◆/sv130J1Ck :2018/06/02(土) 20:22:38 vFwVAe.g0
「聖杯に願いたい事なんて無いけれど、好事家としては聖杯自体は欲しいわね」

男は肩を竦めて苦笑した。気障ったらしい仕草がやけに絵になる男だった。

「それはそれは………てっきり死でも願うのかと思っていたが。まあこの様な事態を引き起こす時点で、
聖杯は破壊するか封じるかしなければならんとは思っていたが、君が持ち去るのならばそれでも構わんだろう」

「どうして死を願うと思うのかしら?不老不死は貴方達人間が求めて止まないものでしょう?」

「経験さ。長く生きたものは大抵死を願うようになる」

「私も何時かは死を願う事になるのかしら」

「さて」

「それで…もしもよ、もしも私が死を願うと言ったらどうするつもりだったのかしら」

男は心底嫌そうな顔をした。そして言った。

「他のものならば兎も角、死ならば心当たりがある」

「言っておくけれど、私の不死は私と"月の賢者"との合作。貴方の技は見せてもらったけれど、そう簡単に破れると思わない事ね」

己の身体に鍼を打つ事で皮膚を鋼のように硬くしたり、死体となって心臓を貫かれても問題なく立ち上がったり、果ては空間に鍼を打つ事で虚空に穴を開けて少女の放った弾幕を吸い込んだりしたが、それでもどうにかなるとは思えない。

「私の技では不可能だ。万物が陰陽の気に支配されつつ流転する。その流れを我が流派では"'脈"という。
君の肉体はともかく、固定化された君の魂には"脈"が無い。これでは私の技の及ぶところではない」


885 : 月下麗人 ◆/sv130J1Ck :2018/06/02(土) 20:23:36 vFwVAe.g0
「つまり代わりを用意すると」

「その通り、私の力が及ばぬならば力及ぶものを用意すれば良い。
其方が月ならば此方は星だ。妖剣''我神''、夜狩省三羽烏と謳われた紫紺の家に伝わる剣。
この国がまだ形を成さぬ時代に天より堕ちた星を鍛えて剣としたという。
正当な使い手の手になれば、如何なる妖物の装甲をも貫き、傷一つつけずにその魂のみを斬り滅ぼしたとされる妖剣。
その力全てを解放すれば、世界を支配することも可能となるという。この剣ならば君に死を齎す事が可能だろう。
継承者がいれば厄介極まりないだろうがね。あの妖剣を振るうとなれば、おそらくはサーヴァントと同等の強さだ」

「まあ私もその内に死を願うようになるかも知れないから聞いておくけれど、今は何処にあるのかしら?」

「さて。絶えていなければ紫紺の末裔が所持しているだろうが、あれは相当な力を持つ妖剣。
京の羅生門に夜な夜な鬼が出没していた頃、紫紺の家の者が'我神''を羅生門に安置した事があったそうだ。
その結果"我神''を手にした鬼により、他の鬼が皆殺しにされ、殺した鬼も自殺したと聞く。
紫紺の末裔が妖剣の''気''に耐えて現在まで続いているかどうか」

「………何処に在るかも分からない上に、危険極まりないものをよくも渡そうとするわね。しかも他人のものだし」

「世に在っても碌なことにならないからな。君が持ち去るというのならそれでも構わん」

「私の処で問題が起きても構わないと?」

「自己責任という言葉があってな」

ぬけぬけと言う美貌をジト目で見据える。
マスターである男の性格が大分掴めてきた。


886 : 月下麗人 ◆/sv130J1Ck :2018/06/02(土) 20:24:49 vFwVAe.g0
「………………どうやって譲ってもらうつもりだったのかしら」

「人間誠意を以って話し合えば必ず通じるものさ」

「せーい」

長く生きてきた中でもこれ以上のものはそうは無いと断言できる棒読みの返答。
僅かな付き合いだが、この男が凡そ『誠意』等というものから程遠い人間性を有している事は理解できていた。

「疑うのかね。こうやって目と目を合わせて話せば皆分かってくれたさ」

ズイ、と夜天に白く輝く月のような美貌が眼前に迫り、少女は思わず仰け反った。
僅かに頰が紅くなっただけで済んでいるあたり、呑気そうに見えて随分精神力が強いらしい。
常の者ならば、恍惚と意識が蕩けて忘我の態となっていただろう。
互いに同等の美を持つ二人だが、男が少女の麗姿を至近で見ても平然たるものであるのに対し、少女の方に動揺が見られるのは、精神力でも容姿の差でもなく、経験の差。
男が男女問わず自身に並ぶ美の持ち主と対峙してきたのに対し、少女の方は美女の類はそれなりに見てきたが、そもそも男とは接した事すらロクに無かった。
この経験の差が両者の態度の差に現れているのだった。

────この男絶対性格悪い。

自分の顔が他人に対してどういう効果を発揮するのか、知り尽くした上でのこの振る舞い。これを性格悪いと言わずして何と言う。

「はああ………」

溜め息が溢れる。
そもそもこの身は元より不老不死、死んではいない。
腐れ縁の相手と殺し合った後、眠りに就いたら此処にいた。謂わばこの身は邯鄲の夢。覚めれば消える夢の中に居る身だ。
どうせ夢ならもう少しまともな相手と組みたかったが、なんでこんな性格の相手と組まなければならないのか。

「はああ………………………………」

急激にヤル気が無くなっていくのを感じる少女は、見知った顔が自分を指差して笑っている姿を幻視した。


887 : 月下麗人 ◆/sv130J1Ck :2018/06/02(土) 20:25:24 vFwVAe.g0
【CLASS】
アーチャー

【真名】
蓬莱山輝夜@東方Project


【属性】
中立・中庸

【ステータス】
筋力:B 耐久:EX 敏捷:C 魔力:A 幸運:B 宝具:A +


【クラス別スキル】
対魔力:A
 A以下の魔術は全てキャンセル。
 事実上、現代の魔術師ではアーチャーに傷をつけられない


単独行動:C
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。


【固有スキル】

蓬莱人:EX
老いず朽ちず、死なず死ねない。蓬莱の薬を服用する事で不死になった者の通称。
老いる事も病になる事も無く、死んでも肉体を再構築して復活する。如何なる毒も効かないが薬も効かない。
魂を打ち砕くような攻撃でもなければ即死攻撃も通じない。
戦闘続行スキルと対毒スキルの効果を待ち、あらゆる毒を受け付けないが、あらゆる薬も効果を発揮しない。
致命傷を負っても、例え肉体が消滅しても、任意の場所に肉体を再構成して復活する。この際マスター共々魔力を大量に消費する。
どちらかの魔力が足りなかった場合そのまらま消滅する。


命名決闘法:A
アーチャーの故郷、幻想郷で行われていた決闘方。
弾幕の美しさを競うもの。トラウマ級の高難易度弾幕なんで最高ランク。
同ランクの射撃と矢避けの加護の効果を発揮する。


魅了:D−
麗しい容姿と人を惹きつける仕草や立ち居振る舞い、話し方などを持って人を魅了する能力。
極まれば精神力以外での対抗が不可能な洗能能力となるがアーチャーはその域に到達していない。
性格が変わった上に長らく使っていなかった為に、ランクダウンを起こしまともに機能しない。


透化:C +
極めて呑気な性格から来るスキル。精神干渉を無効化する精神防御。
自身の容姿や環境も有ってか金品や魅了に対しては特に強い。


888 : 月下麗人 ◆/sv130J1Ck :2018/06/02(土) 20:26:09 vFwVAe.g0
【宝具】
永遠と須臾を操る程度の能力
ランク:A+ 種別:対人・対界宝具 レンジ: 最大捕捉:

永遠とは歴史の無い世界の事で、未来永劫変化が訪れない世界である。
輝夜が永遠の魔法をかけた物体、空間では幾ら活動してようとも時間が止まっているのに等しく、一切は変わらず、腐らず、壊れない。


須臾とは、永遠とは反対にもの凄く短い時間の事である。
人間が感知出来ない程の一瞬で、彼女はその一瞬の集合体だけを使って行動する事が出来るという。
その時間は須臾の集合体だから普通に時間が進んでいるが、輝夜以外の人間には全く感知出来ない。そのため他人には輝夜が「いつのまにかそこにいる、いつのまにか全部の工程が終わっている」といった具合に見える。

これを応用すると「異なった歴史を1人で複数持つ」といった技能も可能であるらしい。


月都万象博
ランク:C ~A 種別:対人~対軍宝具 レンジ:1 ~99 最大捕捉:1 ~1000

アーチャーが幻想郷で開催した『月都万象博』に出展した品を取り出す。
地球よりも遥かに進んだ文明を持つ月の都産の兵器や、''月の賢者"謹製の薬物等がある。


神宝・難題
ランク:B ~A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1 ~99 最大捕捉:1 ~300

アーチャーが過去に収集した物品。
神宝は現物で難題はレプリカ品であるらしい。
某魔法使いが狙っていたりする。



………天井板以外を。



【Weapon】
神宝・難題

【解説】
御伽噺に語られる『かぐや姫』その人。
不死となる蓬莱の薬を服用した罪で地上に流罪となり、幻想郷に流れ着いて数百年程を迷いの竹林に在る全く変化の無い永遠亭の中で過ごす。
永夜異変と呼ばれる異変の後、永遠亭の外に出る様になり、現在はやりたい事を探している。
里の子供達に昔話を聞かせたり、月都万象博を催したり、同じく不死の昔馴染みと殺し合ったりと今を生きる事を愉しんでいる様子。
天真爛漫で暢気かつ育ちの為か常人とは思考がやや異なっている所為か人間味が薄い様にも感じられるが、身内に対する優しさや、自分を育てた老夫婦への感謝の念を持ち合わせていて、情愛が存在しないわけでは無い、
過去よりも現在と未来を大切にする。
好事家を自称しており、珍しいものを収集し、他人に見せるのが趣味。


【聖杯への願い】
無い。好事家として聖杯は欲しいが。


889 : 名無しさん :2018/06/02(土) 20:26:40 vFwVAe.g0
【マスター】
大摩@退魔針シリーズ

【能力】
大摩流鍼灸術:
万物が陰陽の気に支配されつつ流転する。その流れを『脈』と呼び、経穴を打つ事で『脈』を操る技法。
元々は妖魔を滅ぼす為のものだが、鍼灸術としても用いる事が出来る。

美貌:
ランク付けるならC相当。交渉事を有利に進めたり、気迫を込めると相手の動きが一瞬止まる程度。
洗脳とか出来ないし月にビーム撃たせるなんて夢のまた夢。


【人物】
清和源氏の成立と共に設立された『夜狩省』の末裔。世間一般的には鍼師で通っている。
性格は阿漕でケチ。楽して結果を出せればそれで良いという思考の主。
超然としていてあまり感情が動かない為に人間味が薄い様にも見える。少なくとも何考えてるかは解り難い。
しかし、ヨグ=ソトースやザグナス=グドに対しては逃げずに率先して立ち向かい、鬼の王に対しては二度使うと死ぬ『崩御針』の二度目の使用を行おうとするなど、先祖代々継いで来た役割に対しては強い義務感と責任感を持っているようだ。

絵的には斎藤岬版とシン・ヨンカン版とが有るが、斎藤岬版で。


シン・ヨンカン版は大摩と十月をもう少しどうにかならなかったのだろうか。



【参戦時期】
紅虫魔殺行終了後


【聖杯に対する願い】
無い。聖杯は破壊するか封じる。


【把握媒体】
魔殺ノート 退魔針@全7巻
退魔針 魔針胎動篇@全3巻
紅虫魔殺行は読まなくても良い

原作小説は全2巻


890 : 月下麗人 ◆/sv130J1Ck :2018/06/02(土) 20:27:22 vFwVAe.g0
投下を終了します


891 : ◆dt6u.08amg :2018/06/02(土) 21:12:04 W1R0Vcis0
投下します


892 : JOKER ◆dt6u.08amg :2018/06/02(土) 21:14:07 W1R0Vcis0
見滝原の一画に建つマンションの一室は、もう三日も玄関の扉が開いていなかった。
住人がいないわけではない。見滝原高校の生徒が確かに暮らしている。
住人が帰ってこないわけではない。最後に扉が開かれたのは唯一の住人の少女が帰宅したときだった。

では何故、この部屋は三日も閉ざされたままなのか。
その理由は、唯一の住人の少女が『何故自分は、この部屋にひとりきりで暮らしているのか』と疑問を抱いたことにある。

――聖杯戦争。偽りの肩書き。偽りの生活。
当たり前だと思っていた日々が欺瞞に過ぎず、殺し合いの準備段階に過ぎなかったという残酷な事実。
それは十七歳の少女が他者との交流を拒み、寝室に引きこもるには充分過ぎる理由だった。

「んひひっ……卯月ちゃんよぉ、まぁだヘコんでやがんのか」

ベッドの上で膝を抱える少女――島村卯月の眼前で黒い闇が渦巻き、奇妙な風体の男が姿を現す。
十九世紀頃を思わせる黒い礼服にシルクハットを被り、無精髭を生やした顔にニヤケ笑いを浮かべた長身の東洋人。
彼は現代を生きる人間ではない。島村卯月をマスターとして召喚されたアサシンのサーヴァントである。

「来ちまったもんは仕方がねぇんだ。そろそろ腹くくった方がいいんじゃねぇの?」
「無理ですよ、そんなの……」
「殺し合いなんざ御免こうむるってか。いい子ちゃんだねぇ。だがそいつはよくねぇな」

アサシンは嘲るような態度を隠しもせずに言い募る。

「あんたがどう思おうと聖杯戦争は始まっちまうんだぜ。空っぽの器を七騎分の魂で埋めようとする馬鹿騒ぎだ。まさかとは思うが、令呪で俺に自決を命じたらリタイアできるなんざ思ってねぇだろうな」
「…………」
「そいつは無理な相談だ。一度マスターになっちまったら、サーヴァントを失っても他の奴と再契約できる。あんたにその気がなくったって、他のマスターはそうは思わねぇ。テメェの駒を寝取って戦線復帰するかもしれない敵としか見ちゃくれねぇよ」

口振りはともかく、アサシンの言葉に嘘偽りは全くない。
どのような理由にせよ、一度得てしまったマスターの資格を手放すことはできない。
主を失ったサーヴァント、あるいは主を見限ったサーヴァントと再契約することで、いつでも聖杯戦争に復帰することができてしまう。
殺し合いを是とする者達にとって、他のマスターは生きている限り安心することができない存在なのだ。

「覚悟を決めな。このままだと大事な『凛ちゃん』がおっ死んじまうぜ?」
「――――っ!」

卯月は絶句して顔を上げた。
アサシンを召喚して三日、自分の個人的な情報は何も喋っていないはずだ。
渋谷凛という友人がいることも、彼女としか思えない後輩が見滝原高校にいたことも、アサシンにはただの一度も話していない。
なのにどうして――


893 : JOKER ◆dt6u.08amg :2018/06/02(土) 21:14:55 W1R0Vcis0
「おいおい。最初にちゃんと説明したのに覚えてねぇのか? 俺ぁちょっとばかり未来が見えるんだぜ。そいつでチラッと見ちまったのさ。お前さんが長い黒髪の嬢ちゃんの死体抱えて、凛ちゃん凛ちゃんって泣きじゃくる姿をな」

アサシンがそう言うや否や、周囲の光景が一瞬のうちに塗り替えられる。

雨が降りしきる裏路地。止めどなく溢れ広がる鮮血。
幻影の中の卯月は雨に打ちひしがれながら、血の気を失った少女を抱きかかえて慟哭していた。

果たしてそれが真実の未来の光景なのか。それとも偽りの幻なのか。
卯月は信じがたい出来事を前にして、真偽を疑う冷静さすら失ってしまっていた。

「あ……あああ……嘘、嘘……っ!」

アサシンがどこからか折れ曲がった傘を取り出し、卯月に差し出して幻影の雨を受け止める。

「可哀想になぁ。あの嬢ちゃんもマスターなのか、それともイケニエみてぇに連れて来られただけなのかは知らねぇけど、友達が怖気付いて引きこもってたせいでぶっ殺されちまうなんて」
「私、そんなことっ……!」
「あんたが動かなくても世界は回るが、そうやって回した結果がこのザマってことだ」

パチン、と指を鳴らす音がして、周囲の風景がマンションの寝室に戻される。
服も髪も全く濡れておらず、傘も見当たらない。だが見せつけられた光景はしっかりと卯月の心に刻み込まれていた。

嘘だ、幻だ、何かの間違いだ。
そう思い込んで自分をごまかそうとしても、知りえないことを知られていたという事実がそれを妨害する。
本当に未来を見たからこそ、自分と渋谷凛の関係を知っていた――
一秒ごとにそんな考えが支配的になっていき、それこそが真相だという思いが強くなっていく。

そしてアサシンは一礼をするように身を屈め、恐怖に打ち震える卯月の耳元で囁きかけた。

「だが良いお知らせがひとつある。未来は変えられるんだ」
「……未来は……変えられる……?」

それは暗闇に差し込む一筋の光のようでいて――

「ああそうさ。他の連中を殺せば、その分だけ望まない未来から遠ざかれる。もしものことがあっても、あんたの手元に聖杯があれば覆せる。こんなところでバッドエンドを待ってる場合じゃねぇだろ?」

――その実、悪辣な悪魔から差し出された契約書であった。

「あ……う……」
「殺しちまえ。誰もあんたを責めやしない。なんてったって、実際に殺すのは俺なんだからな。あんたは口出しするだけでいい。引き金を引くより簡単にお友達を救えるんだぜ」

卯月の心に一滴の闇が落ちた。
殺さないことによる悲劇。殺すことによる利益。殺しを肯定する免罪符。
苛烈な現実に軋んだ温和な少女の心のひび割れに、それらが黒い水のように染み込んでいく。
そして、今にも引き裂かれそうな心が出した結論は。


894 : JOKER ◆dt6u.08amg :2018/06/02(土) 21:15:25 W1R0Vcis0
「私……やります……!」
「よく言った!」

パンッ!と手が叩かれ、再び周囲の風景が様変わりする。
無数の映像が凄まじい速度で流れては通り過ぎ、膨大な情報量を卯月の視界に流し込む。

誰かを殺す自分がいた。誰かに殺される自分がいた。
誰かを騙す自分がいた。誰かに騙される自分がいた。
誰かを守る自分がいた。誰かに守られる自分がいた。
生き残る自分がいた。息絶える自分がいた。

渦巻く未来の只中で、アサシンは悪魔のように嗤っていた。

「んひひ。いい感じにかき混ざってきたじゃねぇか。生きるか死ぬか、殺すか殺されるか、白と黒とのマーブル模様だ。気張れよ卯月チャン。自分好みの未来をもぎ取れるかどうかは、これからの頑張り次第だぜ?」







「ったく、育ちの良いお嬢ちゃんはこれだから。やる気にさせるだけでも一苦労だぜ」

卯月が戦いに身を投じる決意を固め、明日に備えて三日ぶりのまともな眠りに身を委ねた頃、マンションの屋上に黒い闇の翼を広げたアサシンが降り立った。

「放っといても良かったんだが、魔力を断たれたり令呪で邪魔されたら面倒だし、まかり間違って自殺でもされたらたまったもんじゃねぇからな」

アサシンは毒づきながら、手元に球状のヴィジョンを出現させる。
映し出された光景は熟睡にひたる彼のマスターの姿。
苦労したと語る割に、アサシンは愉快そうに笑みを浮かべている。

事実、彼は楽しんでいた。

争いとは無縁な時代の少女が、友を救うためという大義名分を盾にして、血腥い殺し合いに手を染める残酷悲劇。
純朴を絵に描いた少女がどんな末路を辿るのか。想像するだけで笑いが止まらない。

「にしても、だ。サーヴァント……英霊なんて枠に押し込められた時点で不愉快極まりねぇが、貰えるもんは貰っておきましょうかね」

手元の映像をかき消し、アサシンは夜の見滝原を睥睨した。

「しょせんは人間ごときの浅知恵の産物。クロノス相手にゃ焼け石に水だろうが、腐っても願望器なら無いよりゃマシだ」

アサシンの目的も存在も人の粋には収まりきらない。
神霊を神霊のまま召喚することすら叶わない聖杯ごときでは、彼の本来の願いを実現することは不可能だろう。

何故なら彼の願いとは、時という概念を神格化した神性――クロノスという神霊を根底から討ち滅ぼすことなのだから。

だが、無意味とまでは思わない。
目的のために達成すべき事柄を一つでもクリアできるのなら、時間を割いて獲得を試みるだけの価値はある。

「まぁ、聖杯なんざ二の次だ。この街は可能性が入り混じりすぎて未来もロクに定まらねぇ。聖杯戦争っつー乱痴気騒ぎからどんなサプライズが飛び出すことか、今から楽しみでしょうがねぇや」

複雑な人間模様や運命が織りなすマーブル模様から飛び出すサプライズ。
それを愉しむことこそがアサシンの最も好むところ。
人間の生を丸ごと踏みにじるおぞましき愉悦。

「せいぜい楽しませてくれよ、マスターさん達よぉ!」


895 : JOKER ◆dt6u.08amg :2018/06/02(土) 21:16:19 W1R0Vcis0
【CLASS】アサシン
【真名】杳馬
【出典】聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話
【性別】男
【身長・体重】180cm・76kg
【属性】混沌・悪

【パラメータ】筋力C 耐久C+ 敏捷A 魔力A 幸運D 宝具EX

【クラス別スキル】
気配遮断:A+
 サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
 完全に気配を絶てば発見する事は不可能に近い。
 ただし、自らが攻撃行動に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【固有スキル】
闇の一滴:A
 疑心と悪意の植え付けに特化した対個人扇動スキル。
 対魔力によっては軽減も抵抗もできない。

天魁星:-
 冥王に従う冥闘士として背負う魔星。
 アサシンは通常の冥闘士と異なり、冥王への忠誠心を持たない。

戦闘続行:EX
 極限まで極まり、人知を超えた往生際の悪さ。
 肉体を完全に滅ぼされ、魂を封印されてもなお止まることのない執念。
 この執念は身体面のみならず、精神面においても強い影響を与えている。
 外部からの干渉で思想を変えられたり、従属させられたりすることは決してない。

【宝具】
『時よ止まれ、お前は美しい(メフィストフェレス)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
 アサシンが保有する生来の時空間操作能力。
 その効果は多岐に渡り、時間停止、空間転移、空間湾曲等に留まらず、
 遠方の光景の認識、限定的な未来視と平行世界分岐の認知、
 異空間への強制転送による分解消滅や体内時間の巻き戻しによる対象の消滅すら可能。
 大規模な発動でない限り消費魔力は極めて少なく、アサシンは気軽にこれらの能力を行使する。

『人よ贖え、魂を以て(ディヴィニティ・オブ・カイロス)』
ランク:EX 種別:神霊宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
 神霊召喚。封じられた自らの本体を限定顕現させる。
 掛け値なしの神霊そのもの。英霊の域を超えた出力で時空間操作能力を行使する。
 膨大な貯蔵魔力を内包しており、アサシンの魔力的負荷は召喚時の消費のみ。
 アサシンはこの姿を出したくもない本性と称し、決定的な窮地に陥るまで使うことはない。
 この宝具の存在は他の宝具によって隠蔽されている。

『永劫輪廻・無限牢獄(パニッシュメント・オブ・クロノス)』
ランク:EX 種別:対神宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
 時の神クロノスによる封印。アサシンが使用する宝具ではなく、使用されている宝具。
 対象となった神の存在そのものを神話から抹消し、本来の肉体を封じ、
 魂を人間の肉体に結びつけ、生と死を無限に輪廻させる。
 これにより、いかなる者も本人からの暴露なくして真の正体を推測・看破することができず、
 それを知るまで『時よ止まれ、お前は美しい』以外の宝具の存在を認識できない。
 英霊の宝具ではなく神霊の宝具。自発的な看破や封印への干渉には神霊クロノスの阻害を打ち破る力が必要となる。

【weapon】
通常時は武器を使わない。主な戦闘手段は時間と空間の操作。
空間の歪みらしき黒い渦や黒い波動による遠距離攻撃手段もある。
主な技は各種wikiなどに詳しく記載されているので、参照のこと。

一例を挙げると、時間停止は技名すら設定されていないくらい普通に実行可能。
望む相手を停止から除外することもでき、会話中に邪魔が入らないようにする程度のノリで軽く時間を止めたことも。
主観的な時間制限やエネルギーの消耗などのデメリットは見受けられない。

『冥衣』
 サープリス。冥王ハーデスに仕える冥闘士に与えられる鎧。
 着用者の肉体を作り変え、一切の訓練を必要とせず強力な戦士に仕立て上げる。
 しかしアサシンはこれを得る前から特殊能力を持っており、本気で戦うとき以外は着用すらしない。
 耐久パラメータの+はこれの着用時という想定。


896 : JOKER ◆dt6u.08amg :2018/06/02(土) 21:17:03 W1R0Vcis0
【人物背景】
聖闘士星矢 冥王神話LCにおける天魁星の冥闘士。シルクハットにスーツという姿の飄々とした東洋人。
主人公テンマの父。人間関係や神々の思惑をかき回し、それによって生じる結果を愉しむ悪辣な男。冥王ハーデスの魂すら利用したほど。
聖闘士星矢シリーズでは非常に珍しい、飄々として砕けた態度で嗤いながら立ち回るトリックスター。
ちなみに「杳(よう)」の漢字は「ようとして」と変換すれば比較的簡単に出せる。

その正体は時の神クロノスの弟、カイロス。もう一人の時の神。つまり正真正銘の神霊。
兄によって歴史から抹消されると共に、人間としての存在に縛り付けられて生と死を繰り返す宿命を科され、復讐の機会を伺っていた。
暗躍の数々もその下準備だったようだが、明らかに趣味と娯楽が混ざっていた感があるのは否めない。
肉体的には人間(サーヴァントとしても神性スキルを持たない)であり、それが双子座の黄金聖闘士に起死回生の逆転を許す要因となった。

【聖杯にかける願い】
クロノスへの復讐に利用する。
聖杯単体では明らかに力不足だと考えているため、あくまで計画の補助扱い。




【マスター名】島村卯月
【出展】アイドルマスターシンデレラガールズ
【性別】女

【能力・技能】
とくになし。アイドルのレッスンで体力はついているはず。

【人物背景】
身長159cm、体重44kg。高校2年生の17歳。
笑顔が素敵でキュートなアイドル。頑張ります!という意気込みをよく口にする。
他のアイドルの個性が強すぎるため、相対的に普通の子寄り。
複数のユニットに所属するが、最も有名なのは渋谷凛、本田未央の二人と組む「ニュージェネレーション(ニュージェネレーションズ表記の場合も)」だろう。

【聖杯にかける願い】
元の世界に帰りたいが、凛ちゃんに何かあったらそのために使う。

【方針】
友達を守るために精一杯頑張る。


897 : ◆dt6u.08amg :2018/06/02(土) 21:17:25 W1R0Vcis0
投下終了です


898 : ◆NIKUcB1AGw :2018/06/02(土) 21:41:12 dqszs6760
皆様、投下乙です
自分も投下させていただきます


899 : エシディシ&ランサー ◆NIKUcB1AGw :2018/06/02(土) 21:42:11 dqszs6760
見滝原市の美術館に、1体の石像が展示されていた。
作者は不明だが、まるで生きているかのような見事な造形に多くの人々が感銘を受けた。
だがある日、その石像はこつぜんと美術館から姿を消してしまった。
警察は盗難事件として捜査を開始したが、手がかりはまったく見つからなかった。
それも当然のこと。
石像は盗まれたのではなく、自ら動いて美術館を出て行ったのだから。


◇ ◇ ◇


エシディシは、下水道の中で何をするでもなく佇んでいた。

(この俺ともあろう者が、こんな不衛生な場所に身を潜めねばならんとは……。
 だが、手軽に隠れられて太陽の光を避けられる場所となれば、こんな所しかないからな……。
 さっさとまともな隠れ家を見つけたいものだ……)

溜息を漏らしながら、エシディシは自分の現状を整理する。
彼は主人であるカーズや同志であるワムウと共に、ローマの地下で石化して眠りについていたはずだ。
だが運命の神のイタズラか、その空間にソウルジェムが転がり込んできた。
それが偶然体に当たったエシディシはこの世界に転移し、記憶を取り戻すまで美術品として展示されていたのである。

(聖杯戦争か……。人間も面白いものを思いつくものだ。
 カーズ様以外に従うのは癪だが、聖杯というのはなかなか興味深い。
 持ち帰ることができれば、「赤石」以外での我らの進化の可能性につながるかもしれん。
 どのみち、ジッとしていても仕方ないのだ。
 しばらく人間の戯れに付き合ってやるか)

聖杯戦争に乗ることを決意し、エシディシはどう猛な笑みを浮かべる。
そこへ、一つの影が歩み寄ってきた。
それは、筋骨隆々の老人だった。

「貴様だな、わしのマスターは」
「お前がサーヴァントというやつか」
「先に質問をしたのはわしだ。貴様は質問には質問で返せと教わっているのか?」

サーヴァントの態度に一瞬怒りをあらわにするエシディシだったが、すぐに冷静さを取り戻す。


900 : エシディシ&ランサー ◆NIKUcB1AGw :2018/06/02(土) 21:42:45 dqszs6760

「よかろう、先にお前の質問に答えてやろう。
 他に誰もおらぬのだ、お前のマスターは俺しかいるまい。
 俺の名はエシディシ。俺のような優秀なマスターを持ったこと、喜ぶがいい」
「くくく、ずいぶんとおのれに自信があるようだな。
 まあよい。わしはランサーのサーヴァントだ。仲良くやろうではないか」
「ランサー? 槍使いということか? お前が?」

サーヴァントが告げたクラス名に、エシディシは怪訝な表情を浮かべる。

「おいおい〜、まさかお前の槍というのは、その傘じゃあないだろうなあ?
 だとしたら、くだらん冗談にも程があるぞ」

エシディシの言うとおり、ランサーが手にしているのは槍ではない。
武器にすら見えぬ、ただの傘である。
エシディシの馬鹿にしたような態度にも、ランサーは不快な様子を見せない。
ただ無言で、手にした傘を下水道の壁に向かって振るう。
轟音が響き、壁は広範囲にわたって崩れ落ちた。

「ほう……」
「見た目で侮ってもらっては困る。この傘こそが我ら夜兎族にとって最強の武器。
 そして日の光を遮る、命の盾よ」

感心した素振りを見せるエシディシに対し、ランサーは自慢げに語る。

「日の光を遮る……。なるほど、お前も太陽の下では生きられぬ体か。
 同じ弱点を持つ者同士を組ませるとは、気が利くのか意地が悪いのか……。
 まあ、どちらでもかまわん。
 ランサーよ、お前の力は見せてもらった。俺のパートナーを務めるに値すると認めよう。
 存分に力を振るってくれ」
「貴様に言われずとも、そうするさ」

ここに、闇の一族と夜の王が手を組んだ。


901 : エシディシ&ランサー ◆NIKUcB1AGw :2018/06/02(土) 21:43:39 dqszs6760

【クラス】ランサー
【真名】鳳仙
【出典】銀魂
【性別】男
【属性】秩序・悪

【パラメーター】筋力:A 耐久:A 敏捷:B 魔力:E 幸運:D 宝具:C

【クラススキル】
対魔力:E
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
Eランクでは、魔術の無効化は出来ない。ダメージ数値を多少削減する。


【保有スキル】
カリスマ:C+
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
ランサーの場合は、特に女性に対して強い効果を発揮する。

夜兎:―
星の彼方で生まれた、強靱な肉体を持つ種族。
ランサーの場合後述の宝具に昇華されているため、スキルとしては機能していない。


【宝具】
『夜王』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大捕捉:1人(自身)

吉原の支配者としての、ランサーの人生そのものが宝具と化している。
日没以降の時間であれば、Bランクの「戦闘続行」「心眼(真)」「頑健」を得る。
一方太陽が出ている間は全てのステータスが1ランクダウンし、太陽光を直接浴びると大ダメージを受けてしまう。

【weapon】
「傘」
夜兎にとって必需品である、鋼鉄製の傘。
日を避ける本来の用途の他、打撃・刺突武器としても使用される。

【人物背景】
地下歓楽街・吉原を支配する夜兎の老人。
かつて最強の夜兎と言われた星海坊主と三日三晩互角の戦いを続けたという逸話を持ち、
老いてなお凄まじい戦闘力を維持している。
しかし長年地下で暮らしていたことで他の夜兎よりはるかに日光に弱い体質となってしまっており、
吉原の天井が開けられたことで注ぎ込んだ日光にとどめを刺されることとなった。

【サーヴァントとしての願い】
太陽の下で生きられる体で、もう一度生きてみたい

【基本戦術、方針、運用法】
肉弾戦オンリーだが、その格闘能力は凄まじいので不安はない。
だが昼間はパワーダウンするというデメリットも抱えているため、強敵との対戦はなるべく夜に行いたいところ。


902 : エシディシ&ランサー ◆NIKUcB1AGw :2018/06/02(土) 21:45:13 dqszs6760

【マスター】エシディシ
【出典】ジョジョの奇妙な冒険 第2部
【性別】男

【マスターとしての願い】
聖杯をカーズに捧げる

【weapon】
肉体そのもの

【能力・技能】
「炎の流法」
熱を操る能力を利用した戦闘スタイル。
自身の血液の温度を最大500℃まで高め、体から伸びる「血管針」で相手の体内に送り込むことで内部から溶かしてしまう。

【人物背景】
人類より以前に地球上に存在していた「闇の一族」の1人。
さらなる進化を求めるカーズに賛同し、彼と共に他の一族を滅ぼした。
その後カーズや当時赤ん坊だったため殺さなかった同族のワムウと共にローマの地下で石化して休眠していたが、やがて復活。
彼らの進化に必要とされる「エイジャの赤石」をめぐり、波紋戦士たちと激闘を繰り広げる。
仲間たちの中ではもっとも感情が表に出る性格だが、一方で戦闘では策をめぐらす頭脳派でもある。
また大きく動揺すると、号泣して精神状態をリセットするという変わった癖がある。

【方針】
聖杯狙い


903 : ◆NIKUcB1AGw :2018/06/02(土) 21:46:46 dqszs6760
投下終了です


904 : ◆RVPB6Jwg7w :2018/06/02(土) 22:51:40 oiXu2g1E0
みなさんお疲れ様です。
こちらも投下します。


905 : デテクティブ・ガール&ホワイト・チェイサー ◆RVPB6Jwg7w :2018/06/02(土) 22:52:36 oiXu2g1E0

  ―――――


「――蛾だ」
「死んでますね……」

広い公園の片隅、遊ぶ子供もいない真っ昼間。
一組の男女が、しゃがみ込んで虫の死骸を覗き込んでいた。

「叩かれたような痕跡はあるが、噛みつかれた形跡はないな。
 ……今回の件の『ターゲット』は、確か『箱入り』だったな?」
「はい。そう聞いています。
 病院に行く時とか以外は、おうちから出たことはないとか」
「さっき見つけたフンも、人工的なペットフードの成分だけからなるものだった。
 ならばこれも、本能的に飛び掛かってみたはいいが、その後どうすれば良いか分からなかった……
 それを食べていいのか悪いのか、判断がつかなかった。そんなところだろう」

帽子からコートから白づくめの、長身の男は立ち上がる。
眼鏡をかけ、何やら耳の上に長い角のような飾りをつけた少女も、立ち上がる。弾みで豊かな胸が揺れる。

「じゃあ、この近くに居るということでしょうか」
「その可能性は高いな」

男はそう言うと、タイミングよく懐の中で震えた携帯電話を取り出し、耳に当てる。
待っていた連絡が来たらしい。手持ち無沙汰な少女は、周囲を見回すともなく見まわす。
どこまでもしっかりと続く大地。木々の向こうにそびえる近代的なビル。
少女が『記憶』を取り戻すまで『当たり前』と思っていて、そして、今は全然『当たり前』ではない光景。

『SPW財団調査部です。『ターゲット』を見つけました。やはりその公園の中です』
「詳しい場所を教えろ。すぐに向かう」

男は携帯電話を耳につけたまま歩き出す。少女は長い栗色の髪を揺らしてその背を追う。


  ―――――


先ほどの電話の声の主の姿などどこにもない、公園の中の別の一角で。
白い男と小柄な少女は揃って頭上を見上げていた。

「あー、危ない……!」
「ちっ……登ってみたはいいが、降りられなくなったか……!」

高い木の上、細い枝の先。
消え入るような鳴き声を挙げていたのは、白い子猫だった。
見るからに落ち着かない様子で、周囲を見回している。

「うーん、あそこまで木登りするのは無理ですねぇ……
 かといって、あの子も動けないようですし……ああ、落ちちゃったら受け身も取れないっぽいです」

何故か大きな虫眼鏡を片目に当てて、眼鏡の角つき少女は嘆息する。
虫眼鏡近くの虚空には、何やら赤い輪のようなモノが浮かび、焦点を合わせるかのように動いている……
こことは異なる世界の技術による、分析の術の一端であった。
白いコートの男は溜息をひとつつくと、ポケットに突っ込んであった片手を出す。

「手っ取り早く済ませるぞ、サーヤ……いや、『マスター』」
「あっ、ちょっ、『アーチャー』さん?!」

いつの間にか男の傍に立っていたのは、男と同じくらいの背の、筋骨隆々たる半裸の男の姿。
肌の色からして普通の人間ではありえない、その『人の姿をしたヴィジョン』は、そして指で何かを弾いた。
ヒュッ。
ガッ。
メキメキ……バキッ!
射出された『小さなパチンコ玉』は狙い違わず子猫の乗っていた枝を直撃し……
悲鳴を挙げる余裕もなかった子猫は、枝もろとも垂直に落下。
男とその傍らのヴィジョンは、そして、


 『スタープラチナ・ザ・ワールド』!

 ……っと、そうだ、『使えない』んだったな」

一瞬、『何か』をやりかけて……しかし、すぐに『気が付いて』。
それでも悠々と余裕をもって、足からスライディングするような姿勢で子猫の下に到達。
落ちてきた子猫を、しっかりと受け止めた。
背後から、サーヤと呼ばれた少女の安堵の溜息が聞こえてくる。

  ―――――


906 : デテクティブ・ガール&ホワイト・チェイサー ◆RVPB6Jwg7w :2018/06/02(土) 22:53:05 oiXu2g1E0


職業、探偵助手。
あの『空の世界』、どこまでも青い空が広がり島々が浮かぶ世界と変わらぬ、それが少女の肩書だった。

助手と言いながらも、探偵そのもののような仕事をしているのも一緒だ。
請け負う仕事のほとんどが、迷い猫探しのような、ある意味でつまらない仕事なのも一緒。

違うのは――助手として補佐をする相手。
こちらでの『探偵』は、既にほとんど引退したような身分の老探偵。
半ば道楽で閑古鳥の鳴く事務所を開けたままにしている老人だった。
サーヤに対しても良くしてくれる有難い雇い主ではあったけれど。
『記憶』を取り戻した今、物足りなさを感じるのは否定できない。

「今日はありがとうございました、承太郎さん……いえ、アーチャーさん」
「呼び方はどちらでもいい。大したことじゃない」

依頼主の所に子猫を届けて、事務所に戻る帰り道。
小柄な少女は長身の男……自らのサーヴァントに改めて礼を言う。

サーヴァント。聖杯戦争。英霊。ソウルジェム。
そう、元居た『空の世界』で、失せもの探しの依頼を受けて。
ちょっとした冒険の果てに探し出した『失せもの』こそがソウルジェムだった。
気が付けばこんな土地で、自分の頭に生えた角もアクセサリーだと思い込んで、日々を過ごしていた。
事務所のオーナーである老探偵を『先生』と呼ぶたびに、何か胸の奥にざわめくものを感じながら。

「『スタープラチナ』さんにも、『SPW財団』の人にも、お礼を言いたいんですけど」
「どちらもサーヴァントとしてのオレの一部だ。独立した人格を持つ存在じゃあない」
「そうなんですか? なら、承太郎さんに重ねて『ありがとう』って言っておかなきゃ、ですね」

不愛想な態度を崩さない男に、サーヤはそれでもニッコリと微笑む。
まだ浅い付き合いだが、悪い人ではないのは分かっている。

「それで……承太郎さん。承太郎さんの方は、欠けた『記憶』、戻りましたか??」
「いや……まだだ。
 こうなると、これは『戻らないもの』と考えた方がいいかもな」

サーヤの問いかけに、白い服の男は表情を一切変えないまま応える。
サーヴァント、アーチャー、空条承太郎。
彼は英霊であり……自らが『殺された』という自覚をもっており……しかし。
自らが死んだ時の状況を、殺された相手の心当たりを、一切思い出すことができずにいた。
英霊の座からも、その時の状況を調べることはできなかった。

「仗助に会いに来て、そのまま『弓と矢』を探すことになったのは把握している。確保したことも憶えている。
 問題はその先だ。記憶に奇妙な空白がある。
 まさかヒトデの論文のためだけにオレが杜王町に留まっていたはずがない。『何か』があったんだ。
 さらに、英霊の座からの俯瞰でも、SPW財団の調査でも知ることができないとなると……
 何らかの能力による妨害、情報の抹消を疑わざるを得ない」
「情報の抹消、ですか……」
「おそらくはスタンド能力。
 オレはおそらく、追跡すら拒む『能力』の前に、負けたんだ」

男は天を仰ぐ。少女もつられて空を見上げる。
どこまでも地面が続き、あるいは海が続いているというこの世界ではあるが、見上げた空の青だけは変わらない。
これと同じような空の下、この冷静沈着な男が敗北し、記憶すら奪われた……
サーヤにはとても想像することができなかった。

「そんなオレがこの土地に呼ばれた理由。
 ……根拠はないが、『何か』に引き寄せられた可能性がある」
「何か、って……」
「それは1つではないかもしれない。
 可能性としては、さっき挙げたオレの死に関わる『何者か』、あるいはその縁者。
 それから、もう一つは……DIO」
「DIO?」
「英霊、アーチャーとして使えるはずの能力が1つ、何故か使えなくなっている。
 『スタープラチナ・ザ・ワールド』。
 最大で2秒、時を止める能力であり……かつて俺達が戦った相手、DIOが持っていた能力。
 奴もまた、この場に関わっている可能性がある。
 英霊の立場からも理解できないこの状況……あいつも呼ばれているのなら、あるいは」

男の言葉に、一緒に空を見上げていた少女は、少し考え込んで。
ふと何かに気付いたように、ポン、と手を打った。

「……なるほど!
 それはきっと、『運命』ってことなんですね!
 バロワ先生と怪盗シャノワールみたいな感じの!」
「……運命?」
「承太郎さんと、そのDIOさん! そして、謎の殺人者!
 世界が変わっても、英霊になっても、『自分と関係していない訳がないと思えるほどの信頼』!!
 わたし、応援しますから!! DIOさんや殺人犯との対決、ぜったい応援しますから!!」

拳を握りしめて、目をキラキラさせる少女。見下ろすアーチャー。
一筋の冷や汗を流しながら、そして英霊は絞り出すようにつぶやいた。

「イカれているのか……? 応援……?? 運命、だと……???」


907 : デテクティブ・ガール&ホワイト・チェイサー ◆RVPB6Jwg7w :2018/06/02(土) 22:54:17 oiXu2g1E0


【クラス】
アーチャー

【真名】
空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険 Part4 『ダイヤモンドは砕けない』

【属性】
中立・善

【ステータス】
筋力:A 耐久:B 敏捷:A 魔力:C 幸運:D 宝具:B?(いずれもスタンド能力を含む)

【クラススキル】
対魔力:C
 魔術に対する抵抗力。魔術詠唱が2節以下のものを無効化する。
 有名なエピソードがある訳ではないが、落ち着きを得た承太郎に生半可な術は通用しない。
 ……とはいえ、『ネズミの弾丸』のように、生半可ではない術ならば通用するということでもある。

単独行動:D
 マスター不在・魔力供給なしでも長時間行動できるスキル。
 ……なのだが、4部承太郎はむしろ単独で行動したエピソードを欠いている。
 そのためこのスキルを持たない他のサーヴァントよりは多少マシ、という程度に留まっている。
 基本的にアテにはできないスキル。

【保有スキル】
追跡:A
 高い観察力と豊富な知識を活用し、神秘の力に頼らずに対象を追跡する複合スキル。
 動物相手なら僅かな痕跡を手掛かりに、人間相手なら探偵のような地道な調査で対象の足取りを掴む。
 そのために必要な一般的知識も適宜自動的に獲得する。
 時間がかかってしまうことはあるが、いったん何らかの手がかりを得たならほぼ必ず対象に到達できる。

冷静沈着:B
 いついかなる時も慌てずに最善最良の策を考えることのできる能力。
 精神に影響を与える効果に高い耐性を得る。
 また負傷によっても思考力の低下などをきたさない。

【宝具】
『SPW財団の支援』
ランク:C 種別:対軍宝具(支援) レンジ:1 最大捕捉:1人(自分)
 スピードワゴン財団(SPW財団)の支援を受けることができる。
 サーヴァントの側の言葉で表現すれば、「非戦闘用で直接姿を見せない使い魔」のような存在。
 アーチャークラスの場合、以下の2つの目的に限局して利用できる。
 ・物資調達
 お金を出せば購入可能な量産品を必要なだけ入手できる。銃刀法などの制限は無視できる。代金は不要。
 ただし実際に使用する目的であること(換金目的などではないこと)が条件。普通の通販程度の手間を要する。
 また後述するベアリング、ライフル弾については別枠扱い。
 ・情報収集
 それなりの諜報機関なら人間技で収集可能な情報を集めてくる。調査結果は携帯電話に伝えられる。
 ただし何について調べて欲しいのかをアーチャーの側から指示する必要がある。

『星の白金(スタープラチナ)』
ランク:B 種別:対人宝具(自分) レンジ:1 最大捕捉:1人(自分)
 高いパワーと速度、精密操作性を誇る人型スタンド。
 射程は短く、本体と重ねるようにして使うことがほとんど。
 引っ込めておくこともできるが、後述のベアリングの使用など、基本的に戦闘では常時展開することになる。

『もうひとつの世界(スタープラチナ・ザ・ワールド)』
 ランク:―(EX) 種別:対人宝具(自分) レンジ:1 最大捕捉:1人(自分)
 無敵のスタープラチナの切り札、『時間を止める』能力。
 『ネズミ狩り』エピソードの再現であるアーチャーは、最大2秒までの時止めが可能。
 ……のはずなのだが、何故か今回の召喚では使用することができない。
 アーチャー自身にも理由は不明。「英霊として召喚されたなら、本来なら可能なはず」という理解に留まる。

【weapon】
ベアリング
 パチンコ玉。アーチャークラスでの召喚時のメインウェポン。
 ただスタンドの指で弾くだけではあるが、高い命中率を誇る飛び道具。有効射程はおよそ20m。
 弾数はほぼ無限であり、一応魔力を消費して作成しているが消耗は無に等しい。

ライフル弾
 アーチャークラスでの召喚時の、とっておきの切り札。
 ベアリングよりも遥かに長い射程・高い命中精度・高い威力を誇るが、数に限りがあり乱発はできない。
 基本は4発。
 英霊の武器として魔力消費による再作成も不可能ではないが、過去の逸話に反することであり、消耗は激しい。


 もちろん素直に殴り合いをしても強い。
 むっちゃ強い。


908 : デテクティブ・ガール&ホワイト・チェイサー ◆RVPB6Jwg7w :2018/06/02(土) 22:54:48 oiXu2g1E0
【人物背景】
 ジョジョの奇妙な冒険第四部にて登場した、白い服の承太郎。海洋学者。
 歳を経て落ち着きと幅広い知識を手に入れた。その分、爆発力にはやや劣る部分がある。

 アーチャーのクラスでの召喚は、主に『ネズミ狩り』のエピソードを反映したもの。

 また同時に、英霊としての彼は『バイツァ・ダスト』で『爆殺された』時の霊魂が座に登録された存在。
 『バイツァ・ダスト』の『情報の抹殺』という特性から、彼は吉良吉影に関する記憶を根こそぎ喪失している。
 座からそれに関する情報にアクセスすることもできないが、そこに情報の欠損があることは認識している。

 さらに『スタープラチナ・ザ・ワールド』が使用不可能な現状について、DIOの存在や関与を疑っている。

【サーヴァントとしての願い】
 欠落している記憶、自らの死にまつわる状況を知りたい。
 ただしこの願いの優先順位は決して高くはなく、目の前の状況に対応することの方が大事。


【マスター】
サーヤ@グランブルーファンタジー

【能力・技能】
 独自の魔法的技術と推理力の組み合わせにより、いくつかの補助的効果を発揮できる。
『状況整理』
 じっくり思考し現状を把握することで、味方にかかっている弱体効果を1つ解除する。
『証拠発見』
 愛用の虫眼鏡を構えることで発動。
 対象の弱点を看破するとともに、何らかの手がかりを得る確率を上げる。
『真相解明』
 火属性の物理的ダメージを発生させ、精神的動揺とちょっとした隙を生じさせる。

 いずれも連続使用は難しく、またサーヴァントの場合は抵抗の余地が十分にある。
 しかし非サーヴァント相手であれば、実はそれなり以上に戦える能力を備えている。

【人物背景】
 名探偵バロワに付き従う、探偵助手。
 種族はドラフ族、性別は女性(頭から生えた2本の角と低身長、大きい胸が女性ドラフの種族的特徴)。
 推理力を欠き力技に走ることの多い迷探偵バロワを推理力と観察力で支える存在であり、本当の探偵役。
 しかし彼女は探偵バロワと怪盗シャノワールの関係性に惚れ込んでおり、あえて助手の立場に身を置いている。
 主人公(グラン/ジータ)の騎空団と行動を共にすることも多い。

【ロール】
 探偵助手。実質上、探偵そのもの。
 ほとんど隠居状態の老人探偵(オーナー)が半ば道楽で続けている探偵事務所に所属。
 たまに浮気調査や迷い猫探しの依頼が来る程度。ヒマな時間の方が多い生活。

 ちなみに、『サーヤ』という姓の無い名であることや、頭に生えた角については不思議とツッコミを受けない。
 角についてはアクセサリーの一種として認識されており、基本的にスルーされている。
 あまり目立つものでもなく、むしろ大きな胸の方が人々の記憶に残りやすいほど。
 聖杯戦争関係者(サーヴァントや、記憶を取り戻したマスター)ならば違和感を抱ける可能性がある。

【マスターとしての願い】
 元の世界に帰りたい。
 ただし、承太郎の過去や現在の状況に対する興味の方がやや強い。


909 : ◆RVPB6Jwg7w :2018/06/02(土) 22:55:14 oiXu2g1E0
投下終了です。


910 : ◆mMD5.Rtdqs :2018/06/03(日) 04:53:33 7Wt29dAQ0
投下します


911 : 織莉子と黒い森の怪物 ◆mMD5.Rtdqs :2018/06/03(日) 04:56:10 7Wt29dAQ0

――むかしむかし……いえ、この間まで、この町ほど清高な街はないのではないか、と思っていました。
私たちは日通りの良い道の反射を受けて、微笑みながら暮らしていたのです。
母とは死別して二人っきりでしたが、政治家の父と何不自由ない生活を送っていました。

 白い鳥が彼女の上を羽ばたいています。パタパタ。パタパタ――。小さいて愛らしい、
彼の身体は一般的な小鳥と変わらないぐらいに華奢です。
ただ、ほかの小鳥と違い、彼の胸元には赤くて深い嘴があり、そして、大いなる罪に対して立ち向かおうとする強い決意を持っていることでした。
……小鳥は、いつの間にか彼女の腕に降り立つと、ひどくひどく白い腕をつっつき始めました。
白い肌の上を、生命維持にはいささかたよりないさらさら血液が、パタ、パタ、と落ちていきます。
彼女は小鳥を振り払おうとして――愚直すぎる覚悟に身を引き裂かれる未来を見てやめました。

 鳥が彼女を見つめている。彼女の名前は何ですか?

 ――ある日、平和な街に一人の魔法少女が誕生しました。彼女は良家の子女であり、学校の白百合であり、そして予言者になりました。
そこには母を失い子供を止めた少女も、父親を失い誇りを見失った女性も、醜聞により羨望が反転した学生もいませんでした。
しかし、彼女は同時に何者でもなかったのです。彼女は誰よりも生きる理由を求めていました。

 首の長い鳥が彼女の後ろに天秤を携えて立っています。その高鳥――背の高いことからそう呼ばれていた――は、重大な責務によりやせ細り、
頭部は包帯状のもので覆われていて、視界が阻害されているようです。不安定な首の上に乗った天秤が、カタ、カタ、と時折音をたてて傾きます。
片方だけの底が厚く作られている不器用な天秤は、かつて彼が森において公正なる裁判官を務めていた証です。
森の平和のための、正しく罪を測れるはずだった天秤。ある意味でそれは少女のあこがれでもありました。
母を失ってから、感情に惑う少女のままでは、行き先も決まらず漂流する小娘がいるばかり。彼女には正しさが必要で、一身にそれに奉仕しなければなりませんでした。
彼女は、天秤に衝動のまま手を伸ばし――罪が身体を突き破る未来を見てやめました。

 町に住んでいる彼女は、住民たちが災厄に飲み込まれることを放っておけなかった。
目的は純粋だ。
理由も純粋だ。
傾いた天秤と共に動機と手段が汚れに濁っていく。


912 : 織莉子と黒い森の怪物 ◆mMD5.Rtdqs :2018/06/03(日) 04:57:18 7Wt29dAQ0
 ――彼女は人々の中に入りたがっていましたが、人々は彼女の有様を見て遠ざけました。
彼女はそれでも怒らずに自身が持つ使命を、言い聞かせるかのように語り続けます。

『やがてこの町に災厄が訪れるだろう。
 町は絶望と悲劇に染まり、暗闇が絶えぬだろう。
 悲劇が終わるときは恐ろしい怪物が町に現れ、すべてを飲み込んだ時だ。
 そうなったら二度と世界に太陽と月は昇らぬ。 ……私は絶対に阻止しなければならない』
どんなことをしても――

 いつの間にか視界が真っ暗になっていました。不意に彼女の前に明かりが揺れます。
明かりの持ち主は、翼の名残と真っ黒な腕を持っています。彼女のすべてを観測するかのようにたくさんの目があちらこちらを眺めます。
その大きな鳥は森の平和を守っていました。いつでも、どこでも、怪物が現れないようにずっと。
煌々と燃え続ける明かりは、彼の使命の現れ。すなわち、森の仲間たちの平和と安寧を見守り続けること、そしてそのために救いを与えること。
彼女の眼にはそれはとても気高い意志に満ちているように思いました。彼はその明かりのために自らの翼をすべて火種にしてしまったからです。
彼女は明かりに惹かれて近づいていき――頭を食い千切られる未来を見てやめました。

 たくさんの未来予知は絶望の未来を見ています。
町に住んでいた彼女は、人々が災厄に飲まれるのを見ていられません。

 『――が災厄の要因を摘んだのならば、人々は誰も災厄に飲まれない』

 彼女が未来を善くするたびに、あの娘は信仰を手に入れました。
彼女はどれだけ疲れていても予知を止めることはできませんでした。災厄はいつでも彼女たちの使命を台無しにできるからです。
使命が彼女を覆いつくす頃には、彼女の周りには誰もいませんでした。
彼女の崇高なる願いのために、無限に有限な愛のためにあの娘はすべてを使いました。
そのためあの娘の名残はすべて消え去り、魔法少女と呼ばれることもありません。

 こうして――彼女は災厄を防ぐためにいかなる手段をも用いました。
無垢な幼女を唆し、助けの手を罠に嵌め、無関係な人を多く巻き込み――
彼女は、(当たっていれば) 使命を果たしました。「……ああああ」災厄になるはずだった少女を、当たっていれば。
親友の断片で貫き、「あああああ」無事に討ち果たしたのです。当たっていれば! 迫害された予言者に、救世主に!
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 外した、外した。
信念の怪物は、繰り返す時の管理人に敗れました。


913 : 織莉子と黒い森の怪物 ◆mMD5.Rtdqs :2018/06/03(日) 04:57:45 7Wt29dAQ0


 ※ ※ ※


 災厄を予知した予言者、しかし、災厄の証明はいかにしてなされていたのでしょう?
彼女たちはあらゆる犠牲を用いて災厄の予防に努めました。
「その小さな少女のままでは何もできないよ!」彼女は決意をため込み、自らの心象を取り去りました。
「もしも惑ってしまったらどうするの?」彼女は変わることなき正しさを掲げ、災厄に傾くだけ傾く天秤に障害をかけました。
「暗い夜に災厄が現れたら?」彼女は何でもしてくれる狂信者を用意しました。
そして予言者自身の命すら生贄にして、災厄は存在しないと証明しました。

 しかし、彼女は誤ったのです。災厄に――鹿目まどかに、当たるはずだった礫は外れてしまいました!
その瞬間に――彼女が捧げてきたあらゆる犠牲は無駄となり、彼女は無のために大きな犠牲を出した、怪物になってしまいました。
元々、無理のあることだったのです。中学生の身の上で意志を貫き通し、禁忌を犯し続け目的を遂行することは。
徐々にはがれ始めていた心のメッキは外れた最期の一撃によって、ついに彼女の素の心を露にさせました。
小さな子供が言います。「結局、認めたくなくて大暴れしただけだったね」彼女の決心が折れました。
冷酷な女性が言います。「何をやっているの? これじゃあ何の意味もないじゃない!」彼女の天秤が壊れました。
黒い少女が言います「お前なんか※※※※じゃない」彼女は予知を信じられなくなりました。

 迫害された予言者は生きる意味を求め続けました。だからこそ、災厄に対してあそこまで苛烈に立ち向かったのです。
しかし、それも失敗し這いつくばってそして再び聖杯という希望を見つけた、彼女の顔は、皆が口をそろえて言うでしょう。

 ――あそこに怪物がいる!


914 : 織莉子と黒い森の怪物 ◆mMD5.Rtdqs :2018/06/03(日) 04:59:04 7Wt29dAQ0
【クラス】バーサーカー

【真名】
罰鳥/大鳥/審判鳥

【出典作品】
Lobotomy Corporation

【属性】
秩序・善

【ステータス】
罰鳥
筋力:E 耐久:D 敏捷:C 魔力:D 幸運:E 宝具:C

大鳥
筋力:B 耐久:A 敏捷:D 魔力:B 幸運:E 宝具:B

審判鳥
筋力:D 耐久:C 敏捷:D 魔力:A 幸運:E 宝具:A

【クラススキル】
狂化:A
バーサーカーのクラススキル。理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
彼らの思考は【怪物】から森を守るという一点に固定されており、事実上意思疎通は不可能である。

森の守護者:A
仕切り直しと戦闘続行の複合スキル……だが、
バーサーカーは【怪物】から森を守らなければならないために、霊体化に際して抵抗し魔力を消費する。
これは霊体化している数が多いほどに上昇し、三鳥すべての場合は莫大な量となる。
また、三鳥すべてが実体化したときに強制的に【森の入り口】を開く。


915 : 織莉子と黒い森の怪物 ◆mMD5.Rtdqs :2018/06/03(日) 04:59:48 7Wt29dAQ0


【宝具】
『処罰!(小さなくちばし)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:5 

罰鳥の宝具。相手から攻撃を受けたとき筋力、敏捷、耐久を最大3ランク引き上げる。

『永久の平和のために(大きな目)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:20

大鳥の宝具。周辺から光を奪い薄暗闇を展開する。ランクB以上の精神抵抗を持たないとき、判定によっては明かりに魅入られてしまう。

『審判(長い腕)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:50

審判鳥の宝具。不平等な天秤によって周辺に持続ダメージを与える。また、元の平等な天秤としての性質により、
固有結界および時空間干渉に対しててある程度の抵抗を持つ。


『黒い森の怪物(終末鳥)』
ランク:EX 種別:- レンジ:-
三鳥が実体化し、森の入り口に入った時に発動する。三鳥が同化し一つの大きな怪物となった姿。

終末鳥
筋力:A 耐久:EX 敏捷:B 魔力:A 幸運:E 宝具:EX

三鳥すべての宝具をワンランク上げたうえで使用できる。周辺に宝具の卵を設置し、すべて破壊されるまで消滅しない(しかし、宝具の効果は消失する)。
また、範囲内ならば一定時間において自在に転移することができる。

【人物背景】

森の怪物。元々はただの森の住民だったが、ある日現れた予言者に怪物の出現を予言されたことによって狂気に陥る。
悪化していく森の状態に対して、彼らが選んだ最終手段は力を合わせることだった。


916 : 織莉子と黒い森の怪物 ◆mMD5.Rtdqs :2018/06/03(日) 05:00:26 7Wt29dAQ0
【マスター】
美国 織莉子@おりこマギカ

【マスターとしての願い】
聖杯により見滝原を災厄から守る。

【能力・技能】

魔法少女
魔法少女に変身することができる。
彼女の固有魔法は予知、しかし、断片的であり、自由に発動することはできない。
攻撃手段は宝石を飛ばす、宝石から光線を出す(オラクルレイ)等

【人物背景】
新約おりこ☆マギカ?sadness prayer?の終盤時間軸から参戦。おおむね作品通りの性格だが、
まどかの殺害に失敗したことにより、妄念に取りつかれてしまっている。

【方針】

どんな手段を使ってでも勝利する。


917 : ◆mMD5.Rtdqs :2018/06/03(日) 05:00:47 7Wt29dAQ0
投下終了です


918 : ◆Pw26BhHaeg :2018/06/03(日) 14:00:07 MqKz85gI0
投下します。


919 : Temple of the Black Pharaoh ◆Pw26BhHaeg :2018/06/03(日) 14:02:04 MqKz85gI0
アラもう聞いた?誰から聞いた? そのウワサ
もっぱらのウワサ 皆ご存知 知らないなんてオクレテル!
ウワサによればね…

(誰もほんとは知らないの その本質がなんなのか
 誰が流して、誰が得する? 信じるばかり?疑わないの?)

ジークハイル!




夕暮れの見滝原。とある博物館の一室で、その男は不意に記憶を取り戻した。
今までの平和な人生が偽りで、その記憶の方が本物だと直感する。
これから争奪するのは『聖杯』だ。万能の願望器。世界を手に入れることも可能な聖遺物。

「ふふ…………くっくく……ははは……」

よかろう、手に入れてくれる。この俺が世界を支配するのは当然だ。そう言わんばかりの凄惨な嗤い。
彼は……30年近く前に死んだはずの男。もしも彼を、彼の名を知る者がいれば、驚愕するだろう。武器を向ける者も、ひれ伏す者もいよう。
その男がなぜここに? 理由は簡単、ソウルジェムだ。あらゆる時代、あらゆる時空にランダムにバラまかれたそれは―――
よりにもよってこの男を、死の運命から救い出した。そればかりか、彼にチャンスを与えてしまった。


920 : Temple of the Black Pharaoh ◆Pw26BhHaeg :2018/06/03(日) 14:03:45 MqKz85gI0



人間は死にたがるよりは、生き続けたがる動物である。生きるためには食べなくてはならない。そのために『道具』をつくった。
―――石器、骨角器、棍棒、槍、投槍。生きるための武器だ。
ところが今度は道具の性能がよくなりすぎ、人口が増え始めた。
―――例えば『石器時代の自動小銃』と呼ばれた投槍器。
当然、食べ物が足りなくなる。さて、どうするか。もちろん「法律/社会」をつくる。
―――動物を狩猟するための道具を、同じ人類に向けて、共同体を害する暴力を抑制する。

その結果、どうなるかというと……法律の「効率の良さ」でもって、どのタイプの法律が生き残るかの勝負になる。
理想主義者なら「良い法律が残る」と言うだろうが、実は違う。残るのは「他人をたくさん操る法律」である。
―――暴力による支配だけでは限界がある。

それは……たくさんの人間を、宗教や文化やら噂やらといったもので「何かに信じこませ、熱中させ、考える時間を与えずに」あやつり、動員させ、
彼らが働いた結果を「自分のほうが偉いからと信じ込ませることによって」全部かすめとるシステムである。
―――魔術、神話、伝統、倫理、道徳、思想、カリスマ、王、神。国家、国民、企業、金融、マスコミ、インターネット。社会という大いなる詐欺。
これを、古代エジプトの現人神王にならって『ファラオ・ゲーム』と呼ぼう。

ファラオ・ゲームの「ファラオ」は、上手になればなるほど、使われる者=駒に比べて知識の量がケタ違いに大きくなり、またこれを操作できる。
駒は、ファラオが何を目指しているのか、何が彼にとって『勝ち』なのかさえ、情報操作によって解らなくさせられてしまうので、勝ちようがない。
他の法律も、ファラオ・ゲームを前にしては、遅かれ早かれ倒されて、その駒になってしまう。
なぜなら両者が対決したとき、動員効率の良いファラオのほうが結局は勝つからである。
要するに人類の歴史とは、より優れたファラオ・ゲームをめざす道のりであったといえる。




……これを開催している連中は、気に入らん。要は俺を手駒にして、遊んでいるも同然だからな。
『聖杯戦争』はまさにファラオ・ゲームだ。ウワサを流し、情報を握っているのは主催者どもだ。
奴らはデスゲームを見て楽しみ、優勝者に賞品を与えるだけの暇な連中か? 馬鹿め、そんなものであるはずがない。
当然、奴らには奴らの目的がある。たとえば、殺し合いによって作られた聖杯を総取りするとか、だ。
しかしこのゲームは、前提条件を変えれば容易に崩壊する。手駒が盤面をひっくり返せる。
聖杯は手に入れる。その上で奴らをも出し抜き、俺が奴らを操って、全てを手に入れてくれよう。


921 : Temple of the Black Pharaoh ◆Pw26BhHaeg :2018/06/03(日) 14:05:19 MqKz85gI0
ここは蓬莱学園ではない。知力こそあるが、権力、武力、財力は今の自分にはない。
裕福な旧家の出身ということになっているが、所詮はただの学生。
『応石』を介して人を操る『傷石』も失われているが……手元にあるのは『ソウルジェム』という、別種の宝石。
内側に魂を封入・保存し、これに七騎の英霊の魂を納めれば『聖杯』となる。しかし、それで即座に現世へ還れるわけではない。
聖杯に願えば帰還できようが、それでは意味はない。聖杯はおそらく「幾つか」作れる。それをどう用いるか。
そして聖杯を作れそうな連中から、どうやってそれを巻き上げるか。

―――まずは、俺の手駒である英霊を喚ぶとしよう。いかなる奴が来るか。




【我は汝… 汝は我… 我は汝の心の海より出でし者… 力を貸そうぞ…!】

闇の中に言霊が轟く。手の中の宝石が輝き、金色の粒子が空中に凝集、黒い影を形作る。
現れ出たのは―――ダークスーツに身を包んだ長身の男。黒髪短髪でサングラスをかけ、顔の左右には裂傷。
ヤクザの類か。あるいは現世風の装いをした悪魔の類か。

「……お前が、俺の従僕か。まずは名乗るがいい」
「そのようだな、マスター。俺は『神取鷹久(かんどり・たかひさ)』。クラス名は……『アルターエゴ(もうひとりの自分)』だ」
「知らんな。一体誰の『アルターエゴ』だという」

アルターエゴ・神取は、サングラスを外す。眼窩はぽっかりと空いており、眼球のない闇だ。
「フフ……俺の『ペルソナ』であった存在、『ニャルラトホテプ』。俺はその化身だ」
「ほう! かの邪神か! それは心強い」
口角を吊り上げる。自分に相応しい、強力なサーヴァントというわけだ。

「俺は『南豪君武(なんごう・きみたけ)』だ。よろしく頼む」

神取のステータスを確認し、南豪は大いに満足する。なかなかの当たりだ。人を騙し、利用するには、もってこいの能力だ。


922 : Temple of the Black Pharaoh ◆Pw26BhHaeg :2018/06/03(日) 14:07:07 MqKz85gI0



「マスター。俺はニャルラトホテプの傀儡に過ぎぬ男。聖杯は君にやろう。好きにするがいい」
「欲のない奴だ。いや、俺がそうすることが、かの邪神の思惑に沿う、ということかな」
「その通りだ」

南豪は至極気分が良さそうだ。神取は虚無的な表情で、それを見る。
「……言っておくが、君は俺に似ている。ということは、ニャルラトホテプにも似ている。
 君の行動はきっと、破壊と殺戮と破滅と狂気への道行きだ。それが奴の望みなのだからな」

神取は自らの本質について呟く。覚悟を試すように。
「俺を操る『ニャルラトホテプ』は、クトゥルフ神話にいうあの邪神そのもの、ではない。
 人類の集合的無意識に潜むネガティブマインド、悪意、破滅願望そのものだ。似たようなものだろうが。
 その目的は、人類を嘲笑い、苦しめ、自滅させること。人類を『支配』することは、その手段に過ぎない」

南豪にも、それは感覚的に分かっている。自分がここに生きていることは、ニャルラトホテプの仕業だろう。
あるいは……自分自身、ニャルラトホテプが―――人類が生み出した影ではないか。神取のように。
記憶はあるが、かつての自分とは違うのかも知れない。それでも、それでも。

南豪は嗤う。

「悪くないな。全人類の悪意を飲み込めんような貧弱なエゴでは、世界征服など出来まい!」




空に瞬く黄金の星に
止まった刻は動き出す

享楽の舞
影達の宴
異国の詠

贖罪の迎え火は天を照らし
偶像の咆哮はあまねく響く

冥府に輝くは聖なる杯
天上に輝くは聖なる骸

天に昇りて星が動きを止める時
魔法の乙女の鼓動も止まる

後に残るは地上の天国
そして刻は繰り返す


923 : Temple of the Black Pharaoh ◆Pw26BhHaeg :2018/06/03(日) 14:08:46 MqKz85gI0
【クラス】
アルターエゴ

【真名】
神取鷹久@ペルソナ2罰

【パラメーター】
筋力C 耐久C 敏捷C 魔力EX 幸運D 宝具EX

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
対魔力:A
A以下の魔術は全てキャンセル。事実上、現代の魔術師では傷をつけられない。

狂気:EX
詳細不明。理性や人倫による枷が外れている。攻撃力を上昇させるパッシブスキル。
彼の「本体」は、存在自体が狂気そのものであり、さらにそれを周囲に無遠慮にばら撒く混沌そのものである。

正気喪失:EX
深淵より滲み出た狂気は、人間の脆い常識と道徳心をいとも容易く崩壊させる。敵全体を恐怖させ防御力を下げる。

【保有スキル】
幻術:A
人を惑わす魔術。精神への介入、現実世界への虚像投影などを指す。
Aランクともなると精神世界における悪夢はもちろん、現実においても一つの村程度の虚像を軽く作りあげ、人々を欺く事ができる。
「陣地作成」スキルも包含しており、ウワサ(言霊)や魂喰いで得た魔力を用いて幻の城「デヴァ・ユガ」を作り上げる。

反骨の相:EX
生粋のトリックスター。あらゆる権威を否定し嘲笑う無法者。何者にも従わず、己の欲することを行う虚無の道化。
カリスマや皇帝特権等、権力関係のスキルを無効化し、逆に弾き返す。令呪についても具体的な命令であれ決定的な強制力になりえない。
このクラスになると「精神異常」も含まれ、虚言癖あるいは典型的なサイコパスとなる。契約と禁忌に理解を示さず、平然と誓いを踏み躙ることができる精神性を持つ。
他人の痛みを感じず、周囲の空気を読んだ上であえて読まない。精神的なスーパーアーマー能力。正確には彼ではなく、「本体」が持つスキル。

深淵の邪視:EX
深淵の闇を覗き、また覗かれてしまった者の末路。その眼は変貌し、眼球のない暗黒の眼窩となった。
暴力、威圧による恐怖ではなく、あくまで相手自身の内側にある"未知への恐れ"を沸き立たせるもの。ロストサニティ。
敵全体に恐怖を与え、目の前の人間の欲望や真理を見抜き、暴きたてる。


924 : Temple of the Black Pharaoh ◆Pw26BhHaeg :2018/06/03(日) 14:10:56 MqKz85gI0
【宝具】
『神気取不滅ノ暗黒(ゴッド・カンドリ)』
ランク:EX 種別:渾沌宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

アルターエゴのペルソナ。ガワが割れた仏像の姿で、黒くて吸盤のついたアレがニャルっとはみ出ている。
「ガルダイン」「ジオダイン」「ザンダイン」「刻の車輪」「不滅の黒(全員の体力半減)」「刹那五月雨撃」などを放つ。
人類のネガティブマインドの化身であり、周囲の人心が不穏になるほど魔力を増す。また「ウワサを現実化させる」能力を持つ。
アルターエゴが戦闘不能になると、本体を乗っ取って異聞録での姿になったり、這い寄る混沌になったりする。

【Weapon】
宝具と日本刀。

【人物背景】
ゲーム『女神異聞録ペルソナ』及び『ペルソナ2罰』の登場人物。CV:小杉十郎太。11月8日生まれ。血液型はA。身長182cm、体重71kg。
名家の出身で、聖エルミン学園元生徒会長。20歳でオックスフォード大学を卒業し、28歳でSEBEC日本支社長に就任。
実はペルソナ使いであったが、自らのペルソナ『ニャルラトホテプ』によって心の闇につけ込まれ、乗っ取られてしまっていた。
物質転移装置「デヴァ・システム」と謎の少女「あき」の力を用いて現世を支配し、人類抹殺を目論んだが、主人公たちに倒される。

『ペルソナ2罰』では秘密結社「新世塾」幹部の一人で、「神条久鷹」の偽名を使い、須藤竜蔵の秘書をつとめている。
ペルソナの力を欲した竜蔵が「噂の力」で復活させたとされ、眼球のない眼窩をサングラスで隠している。
実際はニャルラトホテプ(邪神そのものではなく、人類のネガティブマインドの化身)によって作られた偽物である。
己がニャルラトホテプに魅入られた者であると自覚しており、単なる駒に過ぎない新世塾に忠誠を誓うように見せかけながら、
その先にある事件の本当の意味を知り、障害となる役割をあえて演じている。「狂気に飲まれた」存在なのでフォーリナーではない。

【サーヴァントとしての願い】
なし。ニャルラトホテプの願いは……?

【方針】
聖杯を獲得する。自ら戦うことは控え、他人を操って戦わせる。
まずは街に流れるウワサを利用し、不安を養分として魔力を蓄える。

【把握手段】
原作。


925 : Temple of the Black Pharaoh ◆Pw26BhHaeg :2018/06/03(日) 14:12:39 MqKz85gI0
【マスター】
南豪君武@蓬莱学園シリーズ

【Weapon・能力・技能】
なし。悪魔的カリスマと話術、知略と行動力によって人心を誑かす。

【人物背景】
遊演体によるPBM(プレイバイメール)『ネットゲーム90 蓬莱学園の冒険!』に登場した悪役NPC。
中村博文のイラストでは黒髪を真ん中分けにした切れ長の目の美形で、額にほくろがある。学園内に絶大な力を持つ四大家系「四天王家」の血筋。
1971年(昭和46)7月5日、米国に生まれる。蓬莱学園に入学後、すぐさま非常委員会生活指導(SS)本部に入部する。
これは大正時代に発足した整理整頓(SS)委員会、終戦直後に改組された生活指導(SS)局の流れを組む政治組織で、70年台以来学園を支配していた。
南豪は己の血筋と悪魔的カリスマを武器に副本部長の地位にのし上がる。のち本部長の風間神平を愛人宅で暗殺し、本部長職を簒奪。
生活指導本部を私兵集団に変え、機械化部隊「武装班(武装SS)」を組織、学園を事実上の独裁支配下に置いた。
その真の目的は、蓬莱学園に伝わる「地球最後の秘宝」を独占し、世界を支配することであったという。

1990年、犀川静がSS解体を公約に生徒会長に当選すると、これを不服とした南豪は突如として「生活指導(SS)委員会」を設立。
非常委員会を有名無実とし、自らを第一生徒官に任命して、協力体制にあった査問委員会と共に戦車部隊等の武力による学園クーデターを引き起こした。
これが「90年動乱」の一幕「6・4内戦」の始まりである。だが第16SS機動大隊隊長であったアブラハム・カダフィ、第二生徒官離修竜之介らが離反し、
SSは学園中央部占拠に失敗。新生徒会勢力とSS勢力による大規模な武力衝突により、学園全土は戦火に包まれた。
のち南豪は愛人であった神代鏡子に刺殺され、SSは求心力を失い瓦解。一連の内戦による学園生徒の死者は5000人から1万人に及んだ。
この後、生活指導委員会は公安委員会などに吸収・合併されたが、SS残党は現在も南豪を神格化して活動を継続している。
異母妹を含め何人もの女性を侍らせ妊娠させており、ご落胤伝説も多い。また南豪本人も容姿や経歴を変えて生存しているとも噂されている。

父から受け継いだ「ファラオ・ゲーム理論」を振りかざす悪の独裁者。人間性が全く欠如しており、独善、利己、権力欲のかたまり。
「根っからのイヤな野郎。信念のある高貴な悪ですらない、無責任と自信過剰の権化」と評される。

【ロール】
高校3年生。裕福な旧家出身。

【マスターとしての願い】
世界征服。

【方針】
聖杯を獲得する。手段は問わないが、戦闘はなるべく他人に行わせる。

【把握手段】
「90年動乱」を纏めた『蓬莱学園の復刻!』等。現在入手は困難。webで情報を集めるか、最寄りの蓬莱学園関係者に聞いてみよう。

【参戦時期】
「6・4内戦」の終盤。何らかの理由でソウルジェムを手にした。


926 : ◆Pw26BhHaeg :2018/06/03(日) 14:14:06 MqKz85gI0
投下終了です。


927 : 後悔なんて、あるわけない ◆/sv130J1Ck :2018/06/03(日) 18:56:45 RlxgqsOo0
投下します


928 : 名無しさん :2018/06/03(日) 18:57:08 RlxgqsOo0
「その女の人あんたの事が大事で、喜ばせようと思って頑張ってたんでしょ?」

「なのに犬と同じなの?」

「ありがとうって言わないの?」

「役に立たなきゃ捨てちゃうの?」

「ねぇ、この世界って守る価値あるの?」

「私なんのために闘ってたの?」

「教えてよ…今すぐあんたが教えてよ」

「でないと私……」


堕ちていく、堕ちていく。

どこまでも暗い奈落の底へと少女の魂は堕ちていく。
身体は既に動く骸。こんな身体で想いを寄せる少年の前に立てる訳が無い。
目指したモノには到底至らず。想いは告げられる事すらなく。
只々嘆きと悲哀のみが募り、心に溜まった澱みは少女の心から希望を奪い去っていく。

あたしって、ほんと────。

魂が砕け、絶望が芽吹くその刹那────。

落ちていた宝石にさやかの足が触れて────。


''座''へと届いた少女の嘆きがある英霊の逆鱗に触れたッ!


◆ ◆ ◆


929 : 後悔なんて、あるわけない ◆/sv130J1Ck :2018/06/03(日) 18:57:41 RlxgqsOo0
「え………?」

美樹さやかはキョロキョロと周囲を見回す。確かに電車に乗っていたのに、何故か廃墟に佇んでいた。
ソウルジェムを確認すると、真っ黒に濁りきっていた宝石は、魔法少女に成り立ての頃の様に青い輝きを放っていた。

「え?なんで⁉︎」

疑問に答える者など当然存在せず、代わりに一陣の風が吹いた。
啾々と吹く夜風が、随分と前に枯死したであろう枯れ木の梢を揺らしている。
樹と風の立てる音に、亡者が呻きながら這いずり回っているかの様な気がして、さやかは我が身を抱きしめた。

「嗤わせる。高々この程度で絶望したのか」

不意に後ろからかけられた声に、さやかの全身が発条と化して後ろを向いた。

「誰よ?アンタ」

振り返ったさやかの眼は、艶やかな繭袖(けんちゅう)の布地に龍の刺繍をあしらった長衫を纏った男の姿を捉えていた。
均整のとれた長身は、男の麗貌と相まって美丈夫と呼ぶに相応しい。 陽光の下、街中を闊歩すれば、老若を問わず異性の目を引くだろう。
だがさやかの気を引いたのは、男の容姿ではなくその眼差し。
何もかも諦めた目をしてる。空っぽの言葉をしゃべってる。
眼だけはさやかを見ているが、意識は全然別のことを考えている。

────この眼。何処かで。

さやかの思考は、男の言葉で遮られた。

「見て分からんのか?愚鈍だとは思ったがここまでとはな」

心からの蔑みが込められた男の声と表情とが美樹さやかの逆鱗に触れたッ!


930 : 名無しさん :2018/06/03(日) 18:58:15 RlxgqsOo0
「なんでアンタにそんな事言われなければ────」

言葉が途切れる。気がついた時にはさやかの身体は地面と水平に飛んでいた。

「グハッ!」

枯れ樹の一つに背中からぶつかって漸く止まる。
男の方に目を向けたさやかは、男が緩やかに足を降ろすところを見た。
距離を詰めて蹴り飛ばす。只それだけの事だが、さやかの目に映りもしなかったその速度は、正に超常存在であるサーヴァント。

「想いを寄せる相手に己の気持ちを伝える努力を何もせず、只嘆くだけ。これを愚鈍と言わず何と言う。
その程度の想いだから、他の女に奪われるのだ」

「…アンタに何が判る!こんな体で抱きしめてなんて言えない!キスしてなんて言えるわけが無いッ!」

己の嘆きを慟哭を、全て否定されたさやかの激昂は、男に更なる侮蔑と、怒りの念を抱かせた。

「判るとも。お前の絶望…ソウルジェムとやらの濁りこそが、俺の現界に際しての魔力となったのだから」

つまりこの男は、さやかの絶望を余さず飲み干して、その上でさやかを嘲っているのだった。

「俺の妻はな、どれ程想っても想いの届かぬ愛する男に、自分の気持ちを伝える為に、獣共に自分を輪姦させた」

男の言葉を聞いてさやかはよろめいた。男の言葉は今までに受けてきた魔女の攻撃全てを合わせたものよりも重かった。

「その上で魂は五等分され、五つの電脳に収まった。そして猶も魂の欠片の入った人形を獣共に苛まれ続けた。
それ程までの事をしてあの娘は想いを伝え、そして叶えたのだ。
お前は一体何をした?自分の想いを伝える為に、一体何をした?どんな犠牲を払った?」


931 : 名無しさん :2018/06/03(日) 18:58:59 RlxgqsOo0
「わ…わたし………は…」

何もしていない。想いを伝える為に何も行動しなかった。

「理解できたか?貴様に嘆く資格は無い」

男はさやかの慟哭を、嘆きを、ただの一言で切り捨てた。

「それにな、お前は一体何の為に魔法少女とやらになったのだ?
好きな男の不幸を嘆きを見過ごせなかったからだろう」

男の声は変わらず平坦なまま。だが"変わった''。
さやかの身体が震える。男の声に含まれたもの。大紅蓮地獄の氷ですら暖かく感じる程に凍てついた声。その冷たさの裡に込められた、焦熱地獄の焔ですらが涼風と感じられる程に熱い激情。

────殺意。

男はさやかに対し、真正の殺意を抱いているのだった。

「お前は何の為に今まで血を流してきた?
正義とやらを行う為だろう」

さやかの視界が横に流れた。男に蹴り飛ばされたのだと理解した時には、地面に転がっていた。

「男は幸を得た。お前は正義とやらを為した。ならば何故嘆く。
貴様は理解する事が出来るか?愛する女の嘆きを只見ることしか出来なかった俺の心が。
俺が彼女に捧げられる全てが彼女には塵芥程の価値も無く、自分の全てが彼女にとって無駄だと知った俺の絶望が」

さやかの襟首を掴んで持ち上げ、男は更に裡にある激情を吐露する。


932 : 後悔なんて、あるわけない ◆/sv130J1Ck :2018/06/03(日) 18:59:35 RlxgqsOo0
「お前は一体何を嘆く。願いを叶えておいて何を哀しむ。望んだものを得ていながら、未だに足りぬと泣き喚くのか」

「け…けど、こんな身体────」

急激に遠ざかる男の姿。顔を殴られたと理解したのは、鼻梁に熱と痛みを感じてからだ。
肉体に蓄積された魔女との戦闘経験が、意識とは関係無く咄嗟に受け身を取る。

「ガハッ」

身を起こそうとしたさやかの胸を、男の足が踏みつけ、地面に縫い止めた。

「この身体は、脳を除いて生身の部位が無い。貴様は俺にはあの娘を愛する資格は無いとでも言いたいのか?」

脚に力が篭り、胸骨の軋む音をさやかは聞いた。

「俺の生きた時代はな、脳以外の生身を持たず、用途に応じて義体を変える、そんな人間が普通に居たぞ」

「グハッ………あ、あああああッ!」

胸骨と肋骨に亀裂が走る。その音の悍ましさと苦痛にさやかは絶叫した。

「痛みを感じ、傷つけば血を流す、お前の身体は正しく人のものだろう。
これでなお人の身で無いというのならあの娘はどうなる。
機械の身体に五つに裂かれた魂の一欠片をいれただけのあの娘は」

男にさやかの嘆きは理解出来ない。身体に対する概念が違い過ぎる。
男にさやかの慟哭は理解出来ない。愛する女の魂の一欠片を収めたガイノイドに、変わらぬ愛を捧げ続けた男なれば。

「身体などに拘る蒙昧な貴様には理解出来まい。真に大切なものはな、心であり………魂だ」


933 : 名無しさん :2018/06/03(日) 19:01:41 RlxgqsOo0
さやかの身体が痙攣したかの様に震えた。震える唇が途切れ途切れに言葉を紡ぎ出す。

「わたしって………本当にバカ。………わたしは何も失ってなかった…願いなんてとっくに叶えていた………………。
後悔なんてする理由が無かった………………。なのに…そんな事に気付きもしないで…アンタのおかげで目が醒めた………」

男は無言。冷え冷えとした眼差しをさやかに注いだままだ。
だがさやかの胸を圧迫する重さが緩んだのは、さやかの言葉が届いたからか。

「有難うアサシン………………………。わたし決めた。生きて帰る…必ず生きて帰って………恭介に告白する」

「好きにすれば良い」

男の────アサシンの脚が上がり、解放されたさやかは蹌踉めきながら立ち上がった。
アサシンを真っ直ぐ見つめて、さやかは問う。

「アサシン…貴方は好きな人の為に聖杯を望むんだよね」

「当然だ。彼女が地獄を望めば地獄に落とし、世界を望めば世界を獲る。
花は彼女の為だけに咲けばいい。鳥は彼女の為だけに鳴けばいい。
彼女の為になるのであれば、世界であっても捧げよう。ましてや英霊如き」

「その事を止めはしない。けれどこれだけは誓って。マスターは殺さないって」

「マスターを殺すのがサーヴァントを斃す最も確実で安全な手段であり、サーヴァントを失っても、他のサーヴァントとの再契約が可能だと知らないのか」

「私は正義の魔法少女だから、マスターを殺す事は認められない………だから、お願い、誓って、マスターを殺さないって」

「………………修羅場では何が起こるか判らん。たが、善処はしよう」

「有難う」

さやかは解っていた。アサシンが誓いを守る意思を持たない事を。 令呪を用いてでも誓わせようとしたさやかの意志を読んでの応えだという事を。
それでも構わない。アサシンに人を殺させない様にするだけだ。美樹さやかは正義の魔法少女であらうと望み、その望みを叶えたのだから。

「アサシン………最後に聞かせて…貴方の名前と、願いを」

さやかの呼びかけに、背を向けて霊体化しつつあったアサシンが振り向いて言葉を紡ぎ出す。

「俺の願いなど彼女の為のみ存在する。
『彼女の幸を永劫のものとする』此れのみだ」

アサシンの姿が揺らぎ、虚空に溶け込む様に消えていく。
アサシンの姿が薄らぐのに合わせるかの様に風が吹きすさび、夜気を震わせた。
唸りを上げて吹く風の中で、さやかはアサシンの名乗りをはっきりと聞いた。

「劉豪軍(リュウ・ホージュン)」

名乗りと共にさやかに向けられた視線。
その視線がさやかの記憶を呼び覚ました。
何もかも諦めた目。それは、さやかの知る魔法少女の一人。
暁美ほむらの目と同じだった。


934 : 後悔なんて、あるわけない ◆/sv130J1Ck :2018/06/03(日) 19:03:37 RlxgqsOo0
【クラス】
アサシン

【真名】
劉豪軍(リュウ・ホージュン)@鬼哭街

【ステータス】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 幸運:E- 魔力:E 宝具:E(通常時)

筋力:C+ 耐久:D+ 敏捷:C+ 幸運:E- 魔力:B 宝具:B (内功使用時)



【属性】
中立・悪

【クラススキル】
気配遮断:C
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
アサシンの場合はスキルにより、初撃に限り攻撃対象に直感や感知に類するスキルがない限り、気配遮断のランクは落ちない。



【保有スキル】

内功:A+
呼吸法により丹田に気(サーヴァントとしては魔力)を練り、全身に巡らせて、森羅万象の気運の流れに身を委ねる技法。
このスキルが低下すれば、後述の戴天流、軽身功スキルも低下し、使用不能ともなれば、戴天流、軽身功スキルも使用不能となる。
呼吸法により魔力を幾らでも精製することができる為、実質的にアサシンは無尽蔵の魔力を持っているに等しい。
修得の難易度が非常に高く、Aランクで漸く『修得した』と言えるレベル。
使うと内傷を負い、内臓や経絡に損傷を齎す……が、セイバーは宝具により内傷を負う事が無い。


戴天流:A(A++)
中国武術の二つの大系のうちの一つ、『内家』に属する武術大系。
型や技法の修練に重きを置き、筋肉や皮膚など人体外部の諸要素を鍛え抜く武術大系である『外功』と対になる武術大系。
外功の“剛”に対する“柔”であり、力に対する心気の技である。体内の氣が生み出すエネルギー“内勁”を駆使することにより、軽く触れただけで相手を跳ね飛ばしたり、武器の鋭利さを増したり、五感を極限まで研ぎ澄ましたりといった超人的な技を発揮するほか、掌法と呼ばれる手技により、掌から発散する内勁によって敵にダメージを与えたり治癒能力を発揮したりもする。
内家功夫は外家功夫より修得が難しく、その深奥に触れうるのはごく一握りの者しかいない。
修得の難易度が非常に高く、A+ランクで漸く『修得した』と言えるレベル。
敵手の“意”を読んで、“意”より遅れて放たれる攻撃を払う事で、“軽きを以って重きを凌ぎ、遅きを以って速きを制す”事が可能となる。
ランク相応の魔力放出、矢避けの加護の効果を発揮する複合スキル。
効果を引き出すには、其れに見合った内功スキルが必要になる。

アサシンは絶技に開眼してはいないが、練達の武人であり、修得した戴天流の武功は、宝具の効果により、極めた者の其れを遥かに凌駕する。
内勁の込められた刃が齎すは因果律の破断。凡そ形在るもの全てを斬断する。
内功を充分に練らなければ使用不能だが、練る事さえ出来れば、同等の功の持ち主か、宝具でもない限り防げない。


一刀如意:A
意と同時に刃を繰り出す剣の境地。通常は意に遅れて刃が放たれる為に事前に察知する事が可能となるが、この境地に至れば事前に知ることは不可能となる。
攻撃に際しCランク以下の直感と心眼(偽)を無効化し、Bランク以上の直感と心眼(偽)の効果を半減させる。


鬼眼:A
心眼(真)の上位互換スキル。
卓越した観察力と洞察力により個人戦闘は元より、組織運営、集団戦闘、対外交渉に至るまでを予測し、最善の手段を取る事ができる。
武では無く智を以て青雲幇(チンワンパン)に迎え入れられ、隆盛へと導いたアサシンの持つ''智"の顕れ。
但し、予測する為には情報を必要とし、質量伴った情報で有る程予測の精度は高まる。
裏を返せば知らない事は予測出来ない。



狂愛:A+
精神を病む程の愛。一人の女に己の全てを捧げた結果、周囲の事がな全く気にならなくなっている。精神的なスーパーアーマー。
このスキルの為にアサシンの幸運値はマイナス方向に突き抜けているが、アサシンは全く意に介していない。
このスキルは外せない。


軽身功:B+
飛翔及び移動の為の技術。多くの武術、武道が追い求める運体の極み。単純な素早さではなく、歩法、体捌き、呼吸、死角など幾多の現象が絡み合って完成する。
アサシンの縮地は宝具との組み合わせにより、技法の域を超えている。
その速度は複数の残像を伴いながら間合いを詰め、複数人数から同時に攻撃されたと誤認させる程。
アサシンにとって、間合いとは存在しないに等しいものである。


935 : 名無しさん :2018/06/03(日) 19:04:24 RlxgqsOo0
【宝具】
電磁発勁
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:なし 最大補足:自分自身

対サイボーグ気功術である。体内の氣の運行によって瞬間的に電磁パルス(EMP)を発生させ、それを掌力として解き放つ,
EMPにより電子機器を破壊する''轟雷功"及び轟雷功"に耐えうるシールドを施した電子機器を瞬時に焼き切る''紫電掌''が存在する。紫電掌は電磁パルスに耐えられる戦闘用サイボーグを倒す為に編み出された技である為、同ランクまでの電撃に対する守りを無効化する。
Aランク以上の内功スキルがなければ使用不能。



黒手裂震破
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人

内家掌法の絶技。胸への掌打を以って五臓六腑を四散させる。
受けた者の胸に黒い手形が付くのが特徴。
対象の対魔力により効き目が減少し、Cランク以上の対魔力の持ち主には無効化される。


内勁駆動型義体
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:なし 最大補足:自分自身

生前に己の肉体を寸分たがわず再現させた、史上初の内剄駆動型義体の試作品が宝具化したもの。
アサシンの肉体をを完全に再現した義体であり、経穴まで存在する。
この為内功を駆使できるが、義体そのものの性能は、生身より多少丈夫というだけである。
人造器官の強度とパワーで駆使する内功は尽きること無く、内傷を負うことも肉体の限界に縛られることも無い、全ての流派を過去の遺物とセイバーが豪語する程。
この宝具により戴天流スキルは()内の値となる。
この身体で軽功を繰れば、敏捷の値がA++にまで引き上げられる。
絶縁体で構成されている為に電撃系の攻撃を無効化する。
しかし、首筋だけは接続端子がある為に電撃が通る。
痛みも疲労も感じず、出血も無い為に、継戦能力はかなり高い。
しかし、損傷を回復魔術で治すことが出来ず、自然回復の速度も通常より遥かに遅い。
この義体の為にアサシンを知る者達から、その実力を過小評価された逸話から、無冠の武芸の効果を発揮する。


【人物背景】
望むならば世界の全てを手に入れる。そう思うほどに愛した妻が実際に愛していたのは自分ではなく実の兄というどうしようもない悲劇。
「兄を愛してるけど、兄は自分が幸せだと本気で思ってるから、自分の思いには気付いて貰えない」
「だから地獄に落ちた自分の姿を見せて、兄を振り向かせたい」
と妻が望んだので、実際に妻を地獄に落として、義兄で有り弟弟子でもある主人公に、妻の気持ちに気づかせようとした。
取り敢えず主人公にマカオで重傷負わせて、妻を仲間四人に輪姦させる。その後妻の脳内情報を全部吸い出して、五体のガイノイド(人間の脳内情報を入力したアンドロイド)に五分割して入力。
そして妻そっくりのガイノイドを自分の手元に置き、残りの4体は仲間に分ける。
うち一人は義兄の事を嫌っていて、女を嬲り殺すのが趣味というロクデナシだが、妻が望んだ事なので無問題。
自分は妻そっくりのろくに反応を返さない人形をひたすらひたすら愛でる。
端麗を模したガイノイドの肌に5mm傷付けられた程度で、傷付けたメイドを原型無くなる力で殴り殺す程にに愛している。
義兄が戻ってくると、仲間四人はおろか、自身が属する組織すらも妻への贄として義兄により壊滅させる。
最後は荒涼と荒れ果てた妻の邸宅で義兄である主人公と決戦。恨み言まじりにネタバレかまして主人公を精神的に嬲りながら刻み殺そうとするも、
絶技に開眼してい主人公と相打ちになって死ぬ。
最後の最後まで主人公に呪詛を吐いていた。

英霊となった事で、端麗が幸を得た事は知っている。ならばその幸を永劫不変のものとする。
それが豪軍の願いである。


CV
鈴置洋孝(旧) 速水奨(新)

【weapon】
レイピア


【方針】
聖杯を獲る。手段は選ばない。


936 : 後悔なんて、あるわけない ◆/sv130J1Ck :2018/06/03(日) 19:04:52 RlxgqsOo0
【マスター】
美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ

【能力】
剣とか沢山出せる。見た感じはサーベル。
刀身射出したり蛇腹剣にしたり出来る。
投擲して使う事もある。

再生能力が高く、生半可な攻撃では戦闘不能になる事はない。
痛覚を遮断する事でゾンビじみた戦い方を可能とする。

ソウルジェムという宝石に魂を封入する事で、肉体の損傷や痛みを無視して戦う事を可能とするが、魔法少女としての力を使う程、精神的な苦痛を感じる程、ソウルジェムは濁っていく。
ソウルジェムが肉体から100mも離れてしまえば、肉体を制御できなくなり、肉体は只の死体となる。


【人物】
正義の魔法少女を目指した少女。色々あってソウルジェムが濁り切り魔女化する直前にこの事態に巻き込まれた。

【聖杯への願い】
帰還

【方針】
生きて帰る。アサシンには聖杯を取らせたいが、人殺しはさせない。


937 : 後悔なんて、あるわけない ◆/sv130J1Ck :2018/06/03(日) 19:05:58 RlxgqsOo0
さやかの悪墜ち話の筈が立ち直ったんだぜ………。

投下を終了します


938 : ◆9fa99EOArg :2018/06/03(日) 19:23:49 IJcLBKu60
投下します


939 : エドワード・メイソン&バーサーカー ◆9fa99EOArg :2018/06/03(日) 19:24:55 IJcLBKu60
『住宅街からほんの十五分ほど歩いた、山の中にある、空き家』

『いつからそこにあるのか、誰が住んでいたのかも、分からないその館には』

『お化けが出るという噂があった』






「ねえ、せんぱーい。聞いてます?」

 ホームルームも終わり、特に用事も無いため帰ろうとするユカリを止める声が教室の一角に響く。
 また面倒なのがやって来たと、ユカリは髪留めを整えながらため息と共に彼女を見た。

「なによミカ。あたしはこれから帰るとこだったんだけど」

 ミカとはユカリの一つ下の後輩になるイマドキの女子高生だ。
 所謂ギャルと呼ばれるカテゴリーに分類され、見滝原の中でもこのご時世に珍しい存在でもある。
 顔が整っており、彼氏は常にキープしている彼女には癖の強い趣味があった。

「だーかーらー! 街の外れにあるお化け屋敷に行きましょうって!」

 一度言い出したら止まらない彼女は謳うようにユカリを説得する。
 ミカの趣味はオカルトであり、それも根も葉もない噂に興味本位で首を突っ込むような野次馬根性丸出しの塊だ。
 一人で噂を確かめに行くのは怖いという真っ当な理由で、先輩であるユカリを毎度のように誘うのだが、怖いのなら行くなと彼女はこれまた毎度のように忠告している。

「一人で行きなさいよ。唯でさえ最近は物騒だってのに……その屋敷ってイワクツキのアレでしょ?」

「もちのロンですよ! その屋敷に入った人は誰一人として帰ってこないっていう神隠しの!」

「……神隠し、ねえ」

 ユカリは最近は物騒と小言を漏らしたが、見滝原の街ではとある噂が流行している。
 なんでも、学生を中心に少数ではあるのだが、行方不明事件が重なっているらしく、一部地域では警備が厳重になっているとのこと。
 公に発表されている訳でもなく、行方不明になった生徒は体調不良、会社員は休職中などと、お誂え向きな理由で処理されているだとか。
 実際のところ、行方不明など証拠も無ければ、本当に消えたかどうかも分からない。ただ、休んでいる人を面白おかしく囃し立てているだけだ。

「神隠しですよ、カ・ミ・カ・ク・シ! イマドキこんなの無いですって!」

 しかし、根拠のない噂とは時にして誰かの妄想を大いに駆り立てる絶好のスパイスとなる。
 世から陰謀論から消えないことが何よりの証拠だ。ミカの瞳はこれまた純粋なまでに輝いており、ユカリは目線を反らすと机に突っ伏した。
 もう本当に面倒くさい。何が神隠しだ、お化け屋敷だ。あたしは花の女子高生なんだ、どうして放課後をそんな無駄な時間に捧げないといけないのか。
 このまま机に伏していればミカも諦めるだろうと、ユカリは彼女の言葉を無視し続けた。
 全く関係無いのだが、根比べには自信がある。さぁ、早く諦めてちょうだいと願うばかりだった。





「うわ……なんか本当にお化け屋敷って感じですね」

 あれからミカに根負けしたユカリは彼女に連れられ、こうして噂のお化け屋敷まで来てしまった。
 我ながらなんだかんだで甘いな……顔を抑えながらユカリは見上げるようにお化け屋敷を見回す。
 大きさはかなりのものだ。大型デパートとまではいかないが、二階建のスーパーよりは大きいと言った具合か。
 造りは外見から洋館だと分かる。神隠しと噂されているが、なるほどこれはゾンビの一体や二体でも潜んでいそうだ。


940 : エドワード・メイソン&バーサーカー ◆9fa99EOArg :2018/06/03(日) 19:26:30 IJcLBKu60
「……ってミカ、あんたなにやってんのよ」

 気付けばミカは屋敷の扉の前でリュックを漁っていた。
 ポーチから安全ピンを取り出すと、自慢するようにユカリへ見せびらかし、何も気にせず鍵穴へ差し込む。

「あんた、犯罪だってソレ」

「えー? 今更ですよせんぱーい。夜の学校に侵入したり、防空壕に入ったりしたじゃないですかー」

「そ、それはそうだけど……」

 ユカリにとってミカに付き合わされるのは何も初めてじゃなく、最早、日常のような習慣になってしまった。
 普段は友達であるチサトも一緒に居るのだが、彼女は都合があり今回は欠席となっている。自分もそうすればよかったとユカリは後悔する。
 
「開きましたよー☆」



 中に入れば外見から予想出来たとおりの広い造りとなっていた。
 左右に続く長い廊下、奥行きもあり、当然のように階段も天高く連なっている。
 神隠しとはかくれんぼでもしていて、迷子になってしまった子供のことだろうか。そんなことさえ思えてくる。
 
 屋敷に入ったところで、ミカはスマホ片手に単独行動をしてしまい、手持ち無沙汰になったユカリはとりあえず右に進むことにした。
 特別な理由は無いのだが、身体を動かしていなければ気持ちが悪い。この屋敷にいると説明は出来ないが、身体が重く感じてしまう。
 ドアノブに手を掛け、ガチャリと音を響かせながら回すと、ソファーとテーブルが視界に映る。
 数歩進めばテレビや食器が並んでおり、ダイニングキッチンだと認識するのに時間は必要無かった。

 せっかくの……という訳でもないのだが、腰を掛けて休もうとユカリが思った刹那、ふと皿が床に落下しその破片を飛び散らした。
 身体が大きく反応し、ユカリの全神経が皿の破片に集中する。突然の出来事に彼女の心拍数は急速に上昇し、呼吸が荒くなる。
 胸元に手を当て深呼吸を繰り返し、心拍数を整える。落ち着け、ただ、偶然にも皿が落ちただけだと。

「……もう帰ろう」

 一度でも思い込んでしまえば駄目だ。
 ユカリにとってこの屋敷はもう、恐怖の対象となったのだ。
 皿が落ちただけ。偶然にも、だ。そんな偶然があってたまるか。
 嫌な予感だけが彼女の心を塗り潰す。嗚呼、霊感の強いチサトが居てくれればどれだけ心強かっただろうか。


941 : エドワード・メイソン&バーサーカー ◆9fa99EOArg :2018/06/03(日) 19:26:57 IJcLBKu60
 ダイニングキッチンを後にしたユカリは廊下を戻り、入り口付近まで到着すると、耳を澄ませる。
 ……何も聞こえない。
 足音やら吐息の一つも感じられず、どうやら近くにミカはいないようだ。
 ユカリからすればこんな屋敷は一秒でも早くお去らばしたいが、腐っても後輩であるミカを置いて行くのは気が引ける。
 記憶を遡ればたしか彼女は階段を上がったはずだ。後を追いかけるようにユカリも二階へ足を踏み入れると、不自然に扉が空いている部屋を見付けた。

 大方、ミカが締め忘れたのだろう。
「ミカ、早く帰ろうって」
 彼女に語り掛けるように部屋へ入るのだが、予想と反してミカの姿は無かった。
 これでは独り言をしただけであり、無性に恥ずかしくなるのだが、誰も聞いていなければ問題は無いのだろう。
 部屋を眺めると物は少なく、必要最低限の机や椅子、タンスが並んでいるだけだ。
 先のダイニングキッチンもそうだが、お化け屋敷と言われているのにも関わらず、全体的に掃除が施されているのだ。
 主不明の屋敷と言われているが、もしかしたら実は人が普通に住んでいるのでは無いだろうか。そうなると完全に不法侵入となってしまう。
 何にせよさっさと帰ろうと、ミカを探すために扉へ向いた瞬間だった。
 ガタッと音を響かせたのはタンスだった。反射的に振り向いたユカリの全神経がタンスへ注がれる。

 勝手にタンスが動くことなどあるだろうか。
 中に何かがあるかもしれない――注視していると、急に戸が開けられ、中には震えるミカが座っていた。
 予想外の展開にユカリはタンスへ駆け寄り、ミカに事情を聞こうとするが、彼女は何かに怯えているようだった。

「……ミカ?」

 どんな言葉を投げても返答は無く、たった一つの返しは「警察」の一言。
 顔面蒼白、身体は絶え間なく震えおり、目の焦点も定まっていない彼女は明らかに普通の状態では無い。
 まるでこの世の地獄を見たかのような、生気を感じられないミカの姿にユカリは気付けば走っていた。

 まずは警察を呼ぼう。そしてミカから何があったかを聞く。
 彼女の生存本能が危険の警報を鳴らす。この屋敷に留まれば危険だと。そして、もう手遅れだと。

「な、なんで鍵が!?」

 入り口に突撃するような形で衝突し、ユカリは何度ドアノブを捻っても開かない扉に声を荒げる。
 なぜ鍵が閉まるのか。自分もミカも閉めておらず、ならば外から誰か鍵を掛けたのか。
 どうして、誰が、どんな理由で、何のために。或いは中に――――――――――――――。

 その瞬間、まるで時が停止した感覚に襲われた。


942 : エドワード・メイソン&バーサーカー ◆9fa99EOArg :2018/06/03(日) 19:27:25 IJcLBKu60


 ユカリは背後から殺気のようなものを感じた。
 女子高生にとって殺気など縁もゆかりも無い存在であるが、何かひんやりとした寒気が全身を支配する。
 振り向いては駄目だ、自分の背後には説明の出来ないヤバイ存在が居る。
 生存本能が必死に彼女を説得するが、人間の好奇心とは残酷である。振り返る自分を抑えられなかった。


「……ぁ、い、いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 怪物だ。
 人間と同程度の大きさを誇る顔。
 恐怖を植え付けるような巨大な目、人間を飲み込めるような開けた口。
 不快感を煽るようなブルーベリー色の巨人が――ユカリに迫っていた。

 喰われると悟った彼女は全力で扉に体当たりを何度も繰り返す。
 来た道を戻ることは怪物に近付くこと。誰が好き好んで怪物の元へ行くものか。
 じゃあどうするのか、扉を壊して逃げるしか選択肢は無い。


「あれれ、望んでいないお客さんが迷いこんでいたんだね」


 もうどうにでもなれ。
 青い巨人から逃げようと屋敷で抗っていたユカリは、気付けば墓地の真ん中に立っていた。
 摩訶不思議の超常現象に脳の処理が追い付かず、後退りすると、何やら背中に衝突する物があった。
 確かめれば墓地なのだから、当然のように墓が立っており、目を凝らすと見慣れた名前が刻まれていた。


『ユカリ』


 それは自分の名前である。


「もう、噂に釣られるのはどうして関係無いバカばっかりなんだろう」


 先からおどけたように語るは、かぼちゃのような被り物をした少年。


「僕が待っているのは聖杯戦争の参加者だけなんだ」


 手に持ったスコップをぐるぐると回す。


「僕はね。早くみーんなを殺して願いを叶えるんだ」


 首に巻いた赤のマフラーが風に靡く。


「殺したい人がいるんだ。僕の大切な……大好きな人のために」


 そして被り物の奥から覗く瞳が笑った。





「……あ、聖杯戦争のことを言っちゃった。じゃあ、君を生かしてあげられないなあ――バーサーカー、食べていいよ」


943 : エドワード・メイソン&バーサーカー ◆9fa99EOArg :2018/06/03(日) 19:28:53 IJcLBKu60

 


 エドワード・メイソン。
 彼は『ユカリ』『ミカ』と刻まれた墓標の前に座っていた。
 空を見上げれば月が嗤うように世界を照らしており、バーサーカーが食い散らかした二人の残骸が黒く輝く。

「いい肥料になりそうだなあ。それぐらいしか使いみちはない……かなあ」

 けたけたと嗤い、血に染まったスコップの表面を布で拭き取る。
 バーサーカーの宝具の実験と称し、『屋敷を墓場に変貌』させたが、サーヴァントとは全く以てバカな存在だ。
 エドワード・メイソンとはまだ中学生かどうかも分からないような少年である。
 墓守の一家の三男として生を授かり、気付けば彼はとあるビルのフロアを任される番人となっていた。
 彼の仕事はこの世を去った人間の墓を作ること。それは彼にとって代わり映えしない日常だった。

 そう、彼女が来るまでは。

 彼女が来てから彼の日常に淡い色が加わった。
 殺したい、彼女をこの手で殺したい。
 太陽が落ち、月が昇るように。彼は日夜、彼女のことを思うように為った。
 
 キミの存在はボクにとって特別なんだ。

「ボクはキミに会えないと思ってた。でも、ふふっ……ソウルジェムはボクに夢を見せてくれるんだ。
 最初は信じなかったよ。願いが叶うだなんて……こんな特別なことがあるなんてね。でも一番の特別は――キミなんだ」

「もうね、兄達のおさがりは嫌なんだ。弟のボクに回ってくるのは必ずお古……でもね。
 ボクがこの手で殺せば、それはボクのモノなんだ! だって『一番』なんだから! 最初に手にするのはボクなんだ!」

 少年は謳う。
 その心は湖に立つ一羽の白鳥のように、誰にも穢されぬ清き存在。

「嗚呼――また会える! 聖杯戦争ってのは簡単に言えばボク以外を殺せばゲームクリアなんだ!」

「ボクのサーヴァントのバーサーカーは癖がある。消費も激しいし、必ず勝ち抜けるとも限らない。
 だけど乗り換えだって可能なんだよ……おっと、落ち着きなよバーサーカー。ボクには令呪があるんだ。その気になれば――そう、分かればいい」

 月が照らすは右腕に迸る赤黒き令呪。 
 青い巨人をも黙らせる聖杯戦争の忌まわしき鎖。

「他のマスターを殺せば次はキミだ! ボクは聖杯にお願いするんだよ……もう一度、キミに会いたいって。
 もうキミを離したりはしない、ボクがキミを天国まで連れて行ってあげるんだ……ふふっ、キミのお墓はもう、とっくに用意してあるんだから」



◆ 



 もう誰にも邪魔させない。


 あの包帯男はいないし、ボクらを縛るルールも無い。


 ボクがキミを天国に連れて行ってあげる。だってキミはボクにとって、テンシのようで、カミサマだから。


 キミの理想のお墓はボクが用意するよ。キミはボクのモノになる。


 キミはボクが殺してあげる。それがボクの美学だから。



 ――ねえ、レイチェル。


944 : エドワード・メイソン&バーサーカー ◆9fa99EOArg :2018/06/03(日) 19:29:16 IJcLBKu60

【マスター】

 エドワード・メイソン@殺戮の天使

【通称】
 エディ

【マスターとしての願い】
 
 もう一度レイチェルと会うこと
(そして自分自身の手で殺す)

【装備等】

 かぼちゃのような被り物、スコップ、赤いマフラー。
(ソウルジェムはマフラーに隠れる形で首に掛けている)

【能力・技能】

 普通の人間と比べ――彼は壊れていた。
(いわゆる魔法や魔術と呼ばれる特別な力を所有していません)

【人物背景】

 とある墓守の三男として生を授かった少年。
『生き物は誰のものでもない』と育てられる。やがて彼は墓を作る過程で『生き物は墓に入る=自分のモノになる』という歪んだ感情に囚われる。
(これは彼が三男として育ち、兄達からのおさがりばかり与えられていた影響も考えられる)

 気付けばとあるビルの四階を任されていた彼は来る日も来る日も死者のために墓を作る日々を過ごす。
 そんなつまらない日常に光を与えた存在がレイチェル・ガードナーと呼ばれる少女であった。
 彼女との出会いはエドワード・メイソンの運命を大きく狂わせることとなり、彼は彼女に執着するようになる。
 
【ウワサ】

 見滝原の街からはなれたとある屋敷に『神隠し』のウワサを流している。
 狙いは聖杯戦争の参加者を誘き出すためである。一般人がやって来た際は魂食いを行い糧とする。

【方針】

・自分の願いを叶えることが再優先事項。
・状況が状況ならば、同盟も視野に含める。
・サーヴァントの乗り換えも検討している。
・自分からは仕掛けず、屋敷に踏み入った者を仕留めるスタンス(現状は)

【ロール】

 学生(小学生or中学生)
(ちゃんと学校に通っているかはお任せします)


945 : エドワード・メイソン&バーサーカー ◆9fa99EOArg :2018/06/03(日) 19:30:38 IJcLBKu60
【クラス】
 バーサーカー


【真名】
 青鬼@青鬼


【パラメーター】
 筋力A 耐久A+ 敏捷C 魔力B 幸運EX 宝具B


【属性】
 混沌・悪


【クラススキル】
 狂化:A
 全てのステータスを上昇させる。
 バーサーカーの真意を見抜いた者は存在せず、彼に理性があるかも不明である。


【保有スキル】
 精神汚染:EX
 精神が錯乱している為、他の精神干渉系魔術を例外なくシャットアウトする。
 
 無辜の怪物:EX 
 ウワサの昇華。
 本来の彼の姿は誰も知らず、サーヴァントとして具現化された姿もまた、彼とは限らない。
 敵対する相手がバーサーカーのウワサを知っている場合、彼はサーヴァントとして認識される。
 逆にウワサが知られていない場合、彼はサーヴァントとして認識される前に、相手の精神へ『目の前の存在は怪物』という概念を植え付ける。

 追跡者:A
 相手と遭遇し5分位内ならば必ず追跡するスキル。
 固有結界を用いられ世界と隔絶されようが、ワープされようがバーサーカーは相手の背後に現れる。
 5分経過した場合は、再度遭遇するまで無効化される。


【宝具】

『F.O.A.F』(誰も出ては為らぬ)
 ランク:B 種別:対界宝具

 とあるウワサを宝具へ昇華した固有結界に似て非ずの現象。
 バーサーカーが足を踏み入れた建物を問答無用で生前、彼が居たとウワサされる屋敷を再現する。
 屋敷から外へ繋がる扉は全て魔術的施錠が掛けられ、また、構造も発動の度に些細ではあるが変化する。
 この屋敷に座標が固定する間は外部との連絡が全て遮断され、相手サーヴァントへ全てのステータスが1段階低下してしまう。


『這い寄る混沌』
 ランク:B 種別:対人宝具
 
 上記宝具と連携し発動されるモノ。効果は大きくわけて2つ。
(1)バーサーカーの仲間とウワサされる怪物達の具現化。
(2)気配察知・遮断系のスキルを全て無効化し、バーサーカーの存在を相手に把握させないこと。


【weapon】
 存在


【人物背景】
 全てが謎に包まれた存在。ウワサが独り歩きした無辜の怪物。
 ブルーベリー色をした怪物であり、人間を捕食する。
 相手に恐怖を植え付け、相対した者は彼と戦う選択を選ばない。
 彼がどんな怪物なのか。元は人間だったのか。どのように生まれたのか――全てが謎に包まれている。


【サーヴァントとしての願い】
 不明。


946 : エドワード・メイソン&バーサーカー ◆9fa99EOArg :2018/06/03(日) 19:31:15 IJcLBKu60
投下を終了します


947 : ◆HOMU.DM5Ns :2018/06/03(日) 19:48:18 QgJByI1g0
投下いたします


948 : ◆HOMU.DM5Ns :2018/06/03(日) 19:49:01 QgJByI1g0

聖杯戦争の舞台である見滝原市。
本来あるべき見滝原とは別の世界。もしくは、模したのみの偽の世界。
しかしある『魔法少女』を中心とした枠組みがない以外は、その大凡が元の構造に準じたものとなっている。この邸宅もそのひとつだ。
かつて財務省の大臣で党の党首も輩出した大家、自身もまた国会議員だった男が住んでいた。
世間知らずな男に良くしてくれた人々に自身もまた報いんと、国政でなく身近な街を良くしようと尽力した。

今は違う。
既に議員でもないし、この家に住んですらもいない。
男は汚職を犯した罪から自宅で首を吊った。妻も早くに亡くし、だだ広い屋敷に住むのはただひとり。
誰もが憧れるお姫様の肩書の上から、汚職議員の娘という烙印を焼き刻まれた、娘がいるのみである。



「虚しい屋敷だな」

邸宅の中。
清潔、というよりも色の落ちた、褪せてしまった部屋。
白い空間の居間から、男の声がする。

「地上を生きる民の活気に華やぐでもなく、さりとて死者が眠る墓地にするにも静謐さが足りぬ。娘一人が住まうには侘しかろうよ。
 ましてや、太陽でありファラオである余を招くには無色透明極まる場所といえよう」

力強く、そして自信に満ち溢れた声だった。
褐色の肌に黄金の装飾、輝かしき半身には白衣を纏っている。太陽の瞳を持つ男は、己が召喚者を見据えている。
サーヴァントでありながら主を差し置いて椅子に深く腰を掛け、頬杖をつく姿は、まるで男こそがこの家の主と宣言しているがばかり。
だが放たれる威風堂々たる風気―――王の気配を湛えさせる男にしてみれば、それが自然であり、見るものもまた、同様に思うだろう。
サーヴァント、ライダー。
太陽が天上に昇り地を照らすのと同様の理屈で、男は地上全てに君臨する王(ファラオ)であればこそ。

「召喚場所の指定はこちらでは操れないのだから、そう言われてもどうしようもないわね」
「ほう」

返す声が答えられる。
王の威圧を前にして萎縮も怯えも見せぬ声。かといって自身に阿るでもなくあくまで対等に接しようとする召喚者に、男は僅かに目を見開く。
対峙するのは、女であった。ライダーと違い立ったまま向かい合っている、銀の長髪に玲瓏なる瞳の少女。
まだ十五に満たぬかどうかの、春を謳歌する最中の年頃。
少女は、マスターだ。この屋敷の本来の主。汚職議員の血を引く恥知らずとして中傷誹謗を受け続ける哀れな娘。
名を、美国織莉子という。
この見滝原に招かれた聖杯を求めるマスターの一人。
そして、本来の見滝原に住まう、魔法少女の一人だった。


949 : これは、世界を救う戦いです ◆HOMU.DM5Ns :2018/06/03(日) 19:52:26 QgJByI1g0



「確かにな。此度の聖杯戦争、召喚に際して英霊の触媒とする聖遺物は用いない、半ば自動的なものである。
 本来余が現世に引かれるとすれば余に纏わるものでなく、我が寵姫ネフェルタリの香りに惹かれるのが道理。
 そうであれば即刻神獣に生きたまま喰わせるか灼熱の光で焼き殺すかであったが、その点では貴様は運がいいと言うべきだろう」
「それはそうよ。そうなる未来を見て、そうなるよう選んだのだから。
 だからこそ私はここにいる。貴方と契約を交わすまでの生存の道を手繰り寄せられた」

魔法少女の固有魔法。それは願いの内容に左右される。
織莉子の願いが生んだ魔法は『未来の光景を見て、引き寄せる』神の瞳。
記憶を取り戻すきっかけも、またそれだ。唐突に脳裏に映った「自らが巨大な獣に食い殺される」イメージの強烈さで、たちどころに本来の自分に立ち戻った。
吐き気を抑え帰路につき、落ち着きを見せたところで、召喚の条件が満たされこのサーヴァントが目の前に顕れた。ここまでの経緯はそんなところだ。

「未来視か。世界の果てその場からを見渡す千里眼ほどではないようだが、ホルス神ならぬ人の身が持つとは、小癪なものだが。
 その力を用い、余に謁見する資格を自ら掴んだ器量は褒めてつかわそう」

ファラオに対して不敬と咎められても不思議でない物言い。
しかしライダーはこれを寛容と流した。気骨ある言葉は嫌いではない。そしてそれを言い放った者も、器の小ささに溺れる凡俗とは違うようだ。
恐らく目にしたこともないであろう、王威溢れるファラオと邂逅したばかりでこうも平静を保っていられる。
即ちは、たとえ小さくとも、彼女もまた王者の素養を持つということ。
並の者では竦み上がるほどのプレッシャー。この時代に望むべくもない種であると、ライダーは理解している。


「だが」


今宣言した通り、触媒を用いない召喚自体はファラオの怒りを買う行為ではない。
しかし、それと裁きを行わないのは別の理由だ。
それよりも遥かに重大なこと、聞き咎めるべき事柄が存在するからだ。


「それを貴様をマスターとして認めるかは別の話だ。
 東の果ての魔術師よ。貴様らは魔法少女と名乗っていたか。その魂を贄とし消える定めの虚しき者よ。
 美国織莉子。貴様の魂は何色を見せる。この神王を認めさせる願いと価値を、貴様は果たして有するか?」

力はある。それに見合う精神も持ち合わせている。
悪くはない。だが、まだ足りぬ。
誇り高きファラオは下賤下卑なる魔術師に付き従う気など毛頭ない。不敬者の手で踊るよりは、自ら召喚者を灼き即時に消えるほうがましとしている。

故に、問うは覚悟。信念。
己が伴い、戦場を馳せるに相応しいものを持つかどうか。そこに尽きる。

美国織莉子、魔法少女に秘められた神秘を、ファラオはたちどころに理解している。
元より古代エジプトは魂の造詣に深い。まして彼は王たるファラオ。織莉子の魂が肉体を離れ一個の器物に集約した絡繰りを見抜くのは造作もない。
聞けば、魂を収める宝珠はソウルジェムといい、この聖杯戦争における『聖杯』の原型と同型であるという。
空の宝石に英霊七騎の魂を込めることで聖なる杯は満ちる。確かに、似通っている。
そして見滝原という舞台も彼女の生地。そこに因果を見いだせぬほどの愚物ではない。
聖杯戦争は、魔法少女のシステムと深い関わりがある。そこに興味を引かないといえば嘘になるが、やはり問うべきは先にある。
その上で聞きたいのだ。織莉子の意志を。
かような地で、彼女が何を為すのかを。


950 : これは、世界を救う戦いです ◆HOMU.DM5Ns :2018/06/03(日) 19:54:57 QgJByI1g0



「私は……」


織莉子が口を開く。答えようとして、途中で詰まる。
言葉に窮しているのではない。願望はとっくに決まっている。それだけのみに費やされるのが、魔法少女となってからの人生なのだと了解している。
迷いは目の前の黄金の男に対して。
これまで出会ってきた人間、魔女、魔法少女の中で、あらゆる意味で危険であり、規格外。
そのような人物に、みだりに目的を晒してもいいものなのか。

聖杯戦争という、予知に全く引っかからず突如として起きた儀式もそうだ。
ライダーの見立て通り、聖杯のシステムの根幹には魔法少女―――即ちその開発者であるインキュベーターの影が濃厚に感じられる。
奴らの目的は判然としているとはいえ、このような出鱈目な計画を実行する経緯については不明な点が多すぎる。
希望を叶える願望器に至っては、さんざ手垢の付いた詐術だ。まず鵜呑みのまま信用していいものではない。

当初の予定を大幅に切り崩されたこの状況で、どう動くか。何を求めるか。
手駒も、友人もいない。魔力を回復させるグリーフシードの当てがあるかもわからない。
引き寄せるべき未来は?信じられるものは?
多くの疑問が胸中を占め脳内をかき乱し――――――視界は、太陽の瞳をした男で埋め尽くされた。

現実にある光景?いいや違う、織莉子の資格は未来視の最中にある。
実際の姿と寸分違わず、指し示す未来が一致している。変わっているのは背景。殺風景な白壁ではない、王が背負うに値する、黄金の光輝のみ。

目に元の光が戻る。
思考と光景はほんの一瞬。それだけで、心は決まっていた。



「私は、世界を救います」


織莉子は命運を告げた。


「未来に起きる破滅の未来。世界の終わりを防ぐ。そのために、ある少女を殺す。
 たとえその過程で、他人の命を切り捨てることになっても。あらゆる敵を葬り去り、遍くすべてを救いましょう。
 それが、今の私の生きる意味。そのために」

そう。近すぎるがゆえ気づかなかった。答えはとうに手にしていたのだ。
真に叶うか疑わしい聖杯に頼る?そうではない。力ならあるではないか。
今ここに在る、確かに実在している。サーヴァントという、絶対のカタチが。


951 : これは、世界を救う戦いです ◆HOMU.DM5Ns :2018/06/03(日) 19:58:35 QgJByI1g0



「貴方の力を借ります、ライダー。神王オジマンディアス。古代エジプトを統べし太陽の化身よ。貴方と共に私は聖杯戦争に勝利する。
 そして勝利の暁に、私の世界に貴方は君臨する。絶望を絶ち、破滅を滅ぼす王として」



人の感情の影から生まれ這いずるのが魔女であるならば。
この世の全てを照らす光ならば、影も闇も残さず消し去ることも可能なはず。



「余に世界を献上するときたか」

真名を以て言われたライダー――オジマンディアスは笑う。
サーヴァントにも聖杯を求めるだけの願いがある。
生前の最期に抱いた嘆き。地上における我が身の脆弱。
光り輝く太陽にして、最大最強のファラオたる己が定命の者であるという、永遠でなきこと。
聖杯に願うは我が命。だが統べるに値しない痩せた地に降り立ったとしても意味はない。
三千を超えた歳月の世界に、自分が再臨するだけの価値があるか、揺らいでいた思いもある。

だがここに。
まったくの道の可能性が拓ける。
ファラオの威光の届かぬ、異聞の世界。そこが救いを、己を求めるというのなら。
応えてやらねばなるまい。

「良かろう、認めよう!その信念、世界を救わんとする者であれば余の無聊も慰めになるというもの。
 そうとも。魔法少女が希望を生み、絶望を育む者というならば。
 余は絶望を殺し、未来永劫繁栄を謳うまで!」

全てに得心してはいない。
織莉子には未だ翳がつき、心には矛盾がある。神王の信頼を得るには不足しているものがある。
これは先物買いのようなものだ。世界を救わんとする意志の強さ、ファラオをも利用せんとする信念の固さ。
小さきなれど王者の気風を持つ娘を見守り、導くのもたまには良かろうという程度。
道半ばにて折れるつまらぬ結末であればそれまでのこと。王を弄んだ代償を、然るべき形で与えてやるまで。

「ありがとう。では、始めましょうライダー。そう―――」

オジマンディアスの覇気を浴びながら、魔法少女は微笑む。
白い部屋にいる、白い少女と黄金の男。
部屋の雰囲気はとうに神王たるライダーの気質に呑まれて華やぐように変質してしまっている。
その中で、染まっていないのは少女だけだ。
他に染まることをよしとせず純粋を守るように。
あるいは、万象全てを塗り潰す、絶対のように。





「これは、世界を救う戦いです」


952 : これは、世界を救う戦いです ◆HOMU.DM5Ns :2018/06/03(日) 20:00:46 QgJByI1g0







【クラス】
ライダー

【真名】
オジマンディアス@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ

【属性】
混沌・中庸

【パラメーター】
筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:A 幸運:A+ 宝具:EX

【クラススキル】
騎乗:A+
騎乗の才能。「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。
ほぼ全ての獣、幻獣・神獣の類まで自由に乗りこなせる。ただし、竜種は該当しない。

対魔力:B
魔術に対する耐性。三小節以下の魔術を無効化する。大魔術、儀礼呪文であってもダメージを与える事は難しい。

【保有スキル】
カリスマ:B
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。

神性:B
神霊適性を持つかどうか。ランクが高いほど、より物質的な神霊との混血とされる。
太陽神ラーの子であり、化身とされる。

皇帝特権;A
本来持ち得ないスキルも本人が主張することで短期間だけ獲得できる。

太陽神の加護:A
オジマンディアスは太陽神ラーの加護を受けている。

【宝具】
『闇夜の太陽船(メセケテット)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大補足:500人
太陽神ラーの駆る舟を、自身をラーそのものであると見做すオジマンディアスは我が物として使用する。
太陽の力を具現した「蛇を屠る蛇(ウラエウス)」と呼ばれる強力な魔力光を地上に放射して、敵対者だけでなく、地上さえ灼き尽くす。
空間から舳先のみを出現させ、砲台のように使用することも可能。

『熱砂の獅身獣(アブホル・スフィンクス)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ2〜50 最大補足:300人
天空神ホルスの化身であり、荒ぶる炎と風の顕現として人々から恐れられる、古代エジプトに伝わる伝説の人面獅子獣。
幻創種でも最高位の神獣であり、一体のみでも上級サーヴァントに匹敵する力を持つ。
両足の爪、灼熱の咆哮、知能も高く、生命力も首を落とされても動くほど強靭。
これほど強大な獣を、オジマンディアスにとって変えの効く斥候か偵察、「我が威光の一欠片」といい無数に保有している。

『光輝の大複合神殿(ラムセウム・テンティリス)』
ランク:EX 種別:対城/対人宝具 レンジ1〜99 最大補足:1人
固有結界に類する、最大の切り札。
ファラオ・オジマンディアスの威を宝具として具現化させた大複合神殿。
デンンデラ大神殿、カルナック大神殿等の「複数の神殿から成る複合神殿体」を更に複数混ぜ合わせ、
アブ・シンベル大神殿、ラムセウム等の巨大神殿や霊廟をも組み合わせることで、現実には存在し得ない異形の巨大複合神殿体と化している。
これは生前に「過去現在未来、全ての神殿は自分のためにある」と宣言したことに由来している。
オジマンディアスと配下のスフィンクスを擬似的に不死とし、サーヴァントの全能力を下げる重圧を与え、
神に連なる以外の英霊の宝具を封印し、毒耐性のあるサーヴァントすら吐血させる毒を散布させる等、
神殿ごとに祀る神にまつわる加護や呪いを任意に与えることが可能。
デンデラの大電球による太陽面爆発にも等しい超遠距離神罰の他、墓自身を切り離し敵にぶつけるという奥の手も存在する。

【weapon】
無銘・短刀


953 : これは、世界を救う戦いです ◆HOMU.DM5Ns :2018/06/03(日) 20:01:50 QgJByI1g0


【人物背景】
建築王。太陽王。神王。ラムセス二世。メリアメン。
広大な帝国を統治した古代エジプトのファラオ。オシリスの如く民を愛し、そして大いに民から愛された。
苛烈であれど民に最上の幸福を与えんとする名君であり、ごく自然に神王(ファラオ)として振る舞っている。
王たるもの、聖者たるものには興味を抱き、自ら進んで事を行う。
ただ前提として、彼にとっての「最愛」は常にネフェルタリ王妃であり、「無二の友」はモーセである。

【サーヴァントとしての願い】
織莉子の世界に降り立ち、邪悪を滅ぼし世界を治める






【美国織莉子@魔法少女おりこ☆マギカ】

【マスターとしての願い】
オジマンディアスを自分の世界に招き、救済の魔女(鹿目まどか)を殺す。

【能力・技能】
魔法少女として優れた身体能力を備える。またベテランの魔法少女も竦ませるほどのプレッシャーを放つ。
戦闘では肉弾は避け、宝石形の球体を射出しての遠距離攻撃を得意とする。球体から刃を生成して突き刺すことも可能。
契約による固有能力は未来視であり、戦闘から長期の計画にまで応用は幅広い。対象の特定の未来まで指定できるが魔力の消耗も比例して激しくなる。
魂はソウルジェムという宝石に収められてるため、魔力さえあればどんな損傷でも回復可能。
ジェム内の濁りが溜まり心が絶望に至った時、その魂は魔女と化す。

【人物背景】
キュゥべえと契約した白の魔法少女。
市の議員を父に持ち、お嬢様学校でも成績優秀品行方正と尊敬の的だったが、父が汚職により自殺したことにより評価が一点。
自分が議員の娘としてしか見られてなかったことに絶望し、【自分の生きる意味を知りたい】と願うことで魔法少女になる。
だがその際発動した未来視で【救済の魔女】が世界を破壊する光景を目撃。
魔女になる前の少女―――鹿目まどかを感知し、彼女を殺すことで世界を救うのが自分の意味と定義して【魔法少女殺し】の事件を起こす。

基本的に優雅かつ上品で物腰柔らか。だが目的の為にいかなる犠牲も許容する、できてしまう冷酷さも備えている。
しかしそこに罪悪感を抱き不安定なのもまた事実である。


954 : ◆HOMU.DM5Ns :2018/06/03(日) 20:02:25 QgJByI1g0
投下終了です


955 : 復活の『Q』 ◆/sv130J1Ck :2018/06/03(日) 21:22:47 RlxgqsOo0
投下します


956 : 復活の『Q』 ◆/sv130J1Ck :2018/06/03(日) 21:23:33 RlxgqsOo0
一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままにとどまる。だが、もし死ねば、多くの実を結ぶ。


ヨハネ福音書。





いつものうどん屋でうどんを啜りながら考える。


一、挨拶はきちんと
一、なるべく諦めない
一、よく寝て、よく食べる
一、悩んだら相談!
一、なせば大抵なんとかなる


自分が大切にしている心掛けだがどうにも引っ掛かる。
これを決めた時、私は一人で決めたのだろうか?
周囲に誰か居た気がする。
しかめっ面して考える。女子力が急激に減少して行く気がするが、女子力よりも大切な事だという確信が何処かに有った。
うーんうーんと唸りながら思考するも、皆目見当がつかない。
結局思い出せずお代を払って店を出た。

夕暮れの道をテクテク歩いてお家へ帰る。静けさに寂寥を覚えるがどうしてだか分からない。
私の登下校はもっと賑やかで………。
いやそれよりも私はこんなに穏やかな日々を送ってて良かったっけ?
何かやらないといけないことが有る筈………。
真剣に考える。茜色の空を見上げて思考する。
結局分からずじまいのまま家に着いた。
そんな日々が続き、“その時”は唐突にやってきた。
通っている学舎での一日が終わり、変わらず釈然としないものを抱えて帰る最中、通りかかった公園で小学生がジャングルジムの上に仁王立ちして居た。
注意しようと思って近づく耳に聞こえる、下から見上げる小学生達の「凄ェ!!」だの「そこにシビれる!憧れるぅ!」だのに混じって聞こえた一言。

「勇者だ!!」

この一言が頭蓋の内側に大鐘音と響き渡り、取り戻す己の過ちと抱いた激情。
叫び出したくなる衝動を抱えて、私はその場を立ち去った。
円蔵山の中に駆け入り、周囲に誰も居ない場所まで走り抜けて、私は感情を解き放つ。

「うわあああああああ!!!!」

手近な樹の幹を殴りつける。皆を巻き込んで!樹の夢を潰して!!何であんなのうのうとしていられたのか!!!
何でこんな大切な事を忘れていたのか!!何で自分で思い出せなかったのか!!!
幹を殴りつける。何度も何度も。本当なら骨が折れるまで続けたかったが、頭の中で囁く酷く冷静な声が止めさせた。


957 : 復活の『Q』 ◆/sv130J1Ck :2018/06/03(日) 21:24:12 RlxgqsOo0
─────これは好機(チャンス)だ。

巻き込んだ勇者部の皆の運命を、私が奪った樹の夢を、取り戻す好機(チャンス)。
この好機は絶対に逃さない。“何でも願いが叶う”というならこれ位は叶えられる筈。
“大赦”と違って、最初から代償は説明している。信じても良いだろう……一応は。
失敗すれば死ぬが、だからどうした。こうでもしなければ、樹に…皆に合わせる顔が無い。

「皆……ゴメン」

勇者なんてものに巻き込んでしまった事を改めて、そしてこれから私がやる事を予め謝っておく。
これから私がやる事は、人の願いを踏み躙って、誰かを泣かせて、皆の未来を掴むという事。
きっと皆は哀しんで…怒るだろうなあ…………けれど…こうでもしなければ私は皆に顔向け出来ない。

「私は聖杯を手に入れる。そして皆を必ず救う……だから…私を許してね………」

呟いた私の耳に、声が後ろから聞こえた。

「気は済んだかい」

白い毛並みに赤い目の愛らしい小動物は、記憶と共に得た知識に照らし合わせれば、私のサーヴァントなのだろう……けれど…。

「ウォッチャー……?」

現れたサーヴァントのクラスはウォッチャー。明らかに戦闘向きとは思えない。しかも見た目小動物だし。

「どうして、あんなことをしていたんだい」

淫じ………もとい小動物は愛らしく首を傾けて尋ねてくる。身体が震えた。

「………私は」

正直言って迷う…が、これは話さなければならないだろう。

「私は……私達は……………神樹への供物だった」

途切れ途切れに語る。神樹の事、勇者部の事、満開とその代償の事、そして全てを知りながら伝えずに自分達を供物とした大赦の事。

「だから…私は……許せなくて………」

涙が溢れる。それでも目を逸らさずウォッチャーを正面から見る。

「私だけならまだ良かった!樹の為!皆の為に!私だけが犠牲になるのなら受け入れた!!
けれど!大赦は!私は!皆を樹を巻き込んで!!!」


「それで、君は大赦を─────」

「その前に…此処に……」

ウォッチャーが感情を全く感じさせない目線を向けてくる。

「其れで、君はどうしたいんだい?『僕は』戦うことは出来ないけれど、君の目的に力を貸すことは出来るよ」

「私は……皆を……救いたい!!」

心の底からの叫び。絞り出すような声を聞いてウォッチャーは。

「それが君の得る報酬かい?それなら……此処に契約は結ばれた。君の願いを叶える為に僕も力を尽くそう」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


958 : 復活の『Q』 ◆/sv130J1Ck :2018/06/03(日) 21:25:25 RlxgqsOo0
〜深夜〜

「マスターもキッチリ殺すのがセオリーだ。彼らの死は無駄にはならない。宇宙の為に死ねるんだ。喜んで良いことだと思うよ」

複数の影に囲まれたウォッチャーの感情の全く籠らぬ平坦な声は、決して解けぬ疑問を偶々居合わせた野良猫に向かい、唯々語る。

「それにしても解らないなあ?決して死ぬことが無い。生命体にとって絶対に避けたい存在である、生命活動の終わり……『死』から保護されているのに、何が不満なんだろうね」

長い爪を振りかざした燕尾服の少女の影法師と、ショールの付いた帽子を被った少女の影法師が、マスターやサーヴァントの姿を求め、連れ立って夜の街へと消えていく。

「僕達は願いを叶える。神樹は『死』から護る。その代わりに世界の為に戦って、代償を払う。公平な等価交換だろう?死なない分、魔法少女よりマシだろう」

長剣を持った少女の影法師が、マントを翻して駆け出して行く。
長槍を持った少女の影法師が、後を追って跳躍する。

マスケットを銃を持った少女と、盾を持った少女の影法師が、高層ビルの上から見滝原を監視する。

「やっぱりわからないね。人間が家畜にやっている様に話しかけてみたけれど、一体なんの意味が有るんだい?」

長い耳を振って野良猫を追い払うと、ウォッチャーは首を傾げた。

「まあ勇者システムは非常に興味深い観察対象ではあるけどね。円環の理やほむらの様に、僕が宇宙の理となった時に活かせるかもしれない。
沢山の魔法少女を見てきた僕の知識に照らし合わせれば…聖杯を手に入れれば風は死んで贖罪をするだろうね。
実験やデータ採取に風を使えないのは残念だけど、彼女の居た世界にサンプルはまだ居るしね」

風の慟哭と嘆きを聞きながら、ウオッチャーが考えていたのは、自分達が構築したシステムに、“勇者システムというものを、どう組み込むか”というものだった。

「“満開”は実に効率的なシステムだ。厄介な魔女や魔獣の処理を行うにも、効率良く魔法少女を絶望させるのにも」


犬吠埼風の語った真実は、ウオッチャーの関心を引いた。それは魅了と言っていいかもしれない。
しかし、それは犬吠埼風にとってはさらに過酷な現実を招いただけ。
祈りと希望を種子とし、呪いと絶望を実らせる苗床の候補として見込まれたというだけ。
『座』という時間も空間も超えた場所に登録されたウォッチャーは、二度に渡る宇宙法則の改変の影響を受けなかった。
座のウォッチャーは只、女神と悪魔の宇宙の改変を観測し、“人間の感情は危険”だと結論したに過ぎない。
そしてウォッチャーは、人間の感情に依らない新たなシステムの構築を考え、此の地で聖杯戦争と勇者システムを知ったのだった。

「まあ、全ては観測を終えてからの事だけれどもね。目的達成の為に最も効率の良い方法は、宇宙法則となることだと教えてくれて、有難う。まどか、ほむら。
尤も、君たちとはもう対立することもないだろう。僕は人間の感情に依らない、新しいシステムを構築するからね」



ああ、真実ほど人を魅了するものはないけど。
ああ、真実ほど人に残酷なものもないのだろう。


959 : 復活の『Q』 ◆/sv130J1Ck :2018/06/03(日) 21:26:09 RlxgqsOo0
【クラス】
ウォッチャー

【真名】
キュウべぇ(インキュベーター)@魔法少女まどか☆マギカ

【ステータス】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 幸運:B 魔力:C 宝具:EX

【属性】
秩序・中庸

【クラススキル】
戦場把握:C+
戦場となる土地の状況を監視、把握することが出来る。Cランクでは大雑把なマスターとサーヴァントの位置しか掴め無いが。宝具と併用することで精度を高めることが可能。

【保有スキル】

話術:D+
素質がある人間を魔法少女に勧誘する営業トーク。
技術としては並以下だが、断れないタイミングを狙ってセールスを行うので成功率は高い。


蔵知の司書:EX
インキュベーターの性質によるによる記憶の分散処理。
過去現在未来に知覚した知識、情報を、 たとえ認識していなかった場合でも明確に記憶に再現できる。


戦闘続行:EX
死なない。
総身が消し飛んでも何処からとも無く沸いてくる。
マスターが居る限り不滅と呼んで良い。


諜報:C
このスキルは気配を遮断するのではなく、
気配そのものを敵対者だと感じさせない。


単独行動:A+
マスター不在でも行動できる能力。


960 : 復活の『Q』 ◆/sv130J1Ck :2018/06/03(日) 21:26:58 RlxgqsOo0
【宝具】
希望の土壌に、祈りの種子よ芽吹いて育て(魔法少女)
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大補足:ー

ウォッチャーが過去現在未来において観測した魔法少女を影法師として使役する。
魔法少女達はウオッチャーの指令を遂行する意識は有るが、自分で何かをする意思は無い。
ウォッチャーは必ず魔法少女の誕生に立ち会っている為、観測出来ていない魔法少女は存在しない。
『予知』の魔法を使う魔法少女の影法師を用いる事でスキル『戦場把握』の精度を高められる。


絶望を糧に、満開と咲き誇れ呪いの花(魔女)
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大補足:ー

ウォッチャーが過去現在未来に於いて観測した魔女を影法師として使役する。
魔女達はウオッチャーの指令を遂行する意識は有るが、自分で何かをする意思は無い。
大抵の魔女は観測しているが、ホムリリィの様に観測出来ていない魔女も居る。


僕らは種を蒔き実を収穫するもの(インキュベーター)
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大補足:ー

インキュベーターという存在そのもの。宇宙にどれだけ居るかもわからぬ群体で、意識と情報を共有しているインキュベーターの性質が反映されている。
英霊の座に登録された後も、現世のインキュベーターの観測した情報は座のインキュベーターに供給され続ける。
英霊の座に登録されたインキュベーターは、二度に渡る宇宙法則の改変の影響を受けず、宇宙の変化を観測した。
その為にインキュベーターの知識には“円環の理”が誕生する前の宇宙の知識や、悪魔となった暁美ほむらによる改変前の宇宙の知識が存在する。
魔法少女としての“鹿目まどか”や、その魔女としての姿も知識の内に存在し、宝具【希望の土壌に、祈りの種子よ芽吹いて育て(魔法少女)】で影法師として使役できる。
しかし、女神となった鹿目まどかや悪魔となった暁美ほむらは、聖杯の上限を遥かに超える為に再現不可能。
“インキュベーター”という英霊の正体は個では無く群れで有る。斃されても湧いてくるのは復活しているわけでは無く、群体で召喚されたインキュベーターから、新たな個体が湧いて来ている為で有る。これはマスターが健在な限り発動する。
インキュベーターを始末するには、マスターを排除して、新しい個体が湧いてこない様にする必要がある。
マスターの側に侍っている個体以外は、マスターやルーラーにすら観測出来ない。そして侍っている個体以外は何らの影響も現世に及ぼせない。
本来ならば、魔力の回収能力や、人間を魔法少女に変え、その代償に願いを叶える願望機としての能力も持つが、サーヴァントとしての分を超えている為に使用不可能。

【weapon】
見た目の愛らしさ

【人物背景】
宇宙のエントロピーを減少させる為に日夜営業に励む淫獣
二度に渡る宇宙の改変を越えて、自らを宇宙法則にすることを思いついた。
数多の魔法少女に信仰された事で『座』へと至った。

【方針】
優勝狙い。後腐れ無い様にマスターもきっちり殺す。
聖杯の仕組みや勇者システムを研究したい。


【聖杯にかける願い】
宇宙の理になって効率良いエネルギー採取を行う。




【マスター】
犬吠埼風@結城友奈は勇者である

【能力・技能】
「勇者システム」
神樹から力を授かって変身する。「勇者スマホ」のボタンが変身キー
「満開」しても精霊が増えたりはしない。

【weapon】
大きさを自在に変えられる大剣。

【ロール】
女子中学生
眼帯はものもらいという事になっている。

【人物背景】
『大赦』から派遣された勇者候補であり、勇者の資質がある生徒を集めて『勇者部』を作る。
バーテックスや勇者についてある程度の知識は有ったが、『満開』の代償については知らされておらず、妹の夢を結果として潰してしまった。

【令呪の形・位置】
オキザリスを象ったものが喉の部分に。

【聖杯にかける願い】
勇者を満開の後遺症から救う。

【方針】
優勝狙い。マスターは殺さない。

【参戦時期】
9話で大赦潰しに行く直前。泣いてる時に偶然転がっていたソウルジェムを握ってしまった


961 : 名無しさん :2018/06/03(日) 21:28:37 RlxgqsOo0
投下を終了します

このS Sは混沌聖杯様に投下した(泣きっ面にスズメバチの群れ』を修正したものです


962 : ◆0VSR7vZCCQ :2018/06/03(日) 22:12:30 YAoYY/ck0
投下します


963 : 竈門炭治郎&アーチャー ◆0VSR7vZCCQ :2018/06/03(日) 22:14:15 YAoYY/ck0
「すっかり遅くなっちゃったな」

 星の少ない夜空を眺めて炭治郎は呟いた。
 迷子の子供を見つけて一緒に親を探していたのだ。本当は今日は早く帰って母さんの内職を手伝う約束だった。

「母さん、怒ってるかな」

 事前に家に連絡できれば良かったのだが炭治郎は携帯電話を持っていなかった。機械の類がどうにも苦手なのだ。リモコンでテレビをつけたり、固定電話を掛けるくらいのことならなんとかできるが、ちょっと複雑な物になるとてんで駄目だった。
 なんというか違和感があるのだ。嫌いなわけではないのだが、どうにも変な感じがする。まるで自分は元々機械のない世界にいたのではないかと思えるほどに。

「急がないと」

 炭治郎の家は学校から遠く離れた町外れの場所にある。大抵の人間はバスを使う距離だが炭治郎は徒歩で通っていた。母がひとりに兄弟が自分を含めて六人もいるのだ。節約できるところは節約しなくてはならない。
 母さんも毎日いっぱい働きながら皆の面倒を見ている。長男の炭治郎もできることはしなければ。
 街灯に照らされた道を早足で進む。
 違和感を感じたのは我が家であるボロの日本家屋が見え始めた時。最近隙間風も入るようになったその家の方からわずかに血の匂いが漂ってきた。

「いや……まさか……」

 そんなはずはない。きっと皆無事でいる。そう思おうとしたが上手くいかない。家族が血の海に沈んでいる光景が頭を過る。まるで実際に一度見たことがあるみたいに真に迫った光景。
 気がつけば炭治郎は走り出していた。

「みんな! ただいま!」

 玄関の扉を開けて大声で叫ぶ。「おかえり」という返事が聞きたくて、みんなの声が聞きたくて。家中に響くような大声で叫んだ。
 待っていたのは無言の静寂と、真っ赤に染まった六つの箱。頭に浮かんだのは巷を騒がせる『赤い箱』の事件。
 そして、その瞬間炭治郎の脳内を閃光が迸った。
 惨殺された家族、鬼に変えられた禰豆子、終わらない鬼との戦い、戦い、戦い。
 過去の惨劇と目の前の惨劇。喉から声にならない叫びがせり上がった。全身を奔る痛みは幻痛なのか。汗が吹き出す。頭が割れないのが不思議なほどの記憶の本流、鼓動が速まり。呼吸さえままならない。そんな状態が続いて。
 終わりを迎えた時、炭治郎は床の間に向かって駈けた。飾られていた刀を手に取る。今まではただの飾り刀だと思っていた。でも違う。これは日輪刀だ。人が鬼を斬る為に作られた刀。炭治郎の武器。
 炭治郎は玄関から飛び出す。その前に、立ちふさがる影があった。

「無駄よ」


964 : 竈門炭治郎&アーチャー ◆0VSR7vZCCQ :2018/06/03(日) 22:15:03 YAoYY/ck0

 その少女は月に照らされながら堂々と立っていた。胸の辺りに目玉の形をした奇妙な飾りを垂らした、色の薄い少女。

「退いてくれ」

 炭治郎は湧き上がる怒気を精一杯抑え込んで言った。少女はまるで動じずに答える。

「犯人はもう近くにはいないわ。今更追いかけようとしても無意味よ」
「いいから退いてくれ!」
「刀を剥き出しにして歩いても捕まるだけよ。貴方の気持ちはよく分かるけれど、今はまず落ち着きなさい」
「助けられなかったんだ! 俺はまた間に合わなかった! 今度は……禰豆子まで……」
「記憶の戻っていない貴方がいたところでなにもできなかった。間に合わなかったんじゃない。貴方はまた生き残ることができたのよ。それとも貴方の家族は貴方ひとり生き残ったことを責めるような人達なの?」
「そんなわけっ……!」

 そんなわけない。きっと良かったっていう。炭治郎だけでも生きてて良かったって。責めるなんてそんな真似、絶対にするわけがない。

「ううぅぅぅあああああああああああああああああああああ!!」
 
 炭治郎は叫んだ。内から湧き上がる抑えられない感情を全部吐き出すかのように。いくら叫んだところで到底吐ききれるはずなんてないけれど。
 そして――叫びを終えた炭治郎は呼吸をした。全集中の呼吸常中。鬼と戦う為に身に着けた力。禰豆子を守り抜く為に身に着けた力。
 炭治郎は真っ直ぐに少女を見つめる。

「ありがとう。きみのおかげで無茶をしでかさないで済んだ」

 少女は首を振り、言った。

「礼には及ばないわ。貴方が無茶したら困るのは私もだから」

 その言葉を聞いて炭治郎は確信した。

「それじゃあ、やっぱり君がそうなんだね」
「そう、私は貴方のサーヴァント、古明地さとり。第三の眼で心を読む能力を持っています」

 そう言うと彼女の胸の前の目玉が動いた。どうやらただの飾りではなかったようだ。
 心を読む力、近くに犯人がいないことや、炭治郎の過去や家族のことが分かったのもその力のおかげなのだろうか。

「貴方が無意識の内にそのことを考えていたからね。さすがの私でも意識の奥底に沈んでいる心までは読めないから」

 彼女はこともなげに言った。

「本当になにを考えているかわかるんだね」
「ええ、貴方が今なにを考えているのかもね……」

 もう俺のような思いを誰にも味わわせたくない。炭治郎の中にはその想いが強くあった。
 聖杯にかける願いとかはまだよく分からない。だけどあんな殺し方ができるのはサーヴァントかマスターだけだろう。身勝手に人々に害を成そうとするのはきっと一組だけじゃない。彼らを止められるのは同じくサーヴァントとマスターだけだ。

「だから俺やっぱり行くよ。警察に連絡とか先にしなくちゃいけないことはいっぱいあるけど。今度はちゃんと刀も隠して、行く」
「……でも泣くくらいしたっていいんじゃない?」

 さとりはそう囁いた。

「あの時とは違う。今は守るべき妹もいない。だったら今くらい思い切り泣いたっていいんじゃない?」
「守るべき人ならいる」

 この町に住む人々を守り切るまで、炭治郎は立ち止まるわけにはいかない。


965 : 竈門炭治郎&アーチャー ◆0VSR7vZCCQ :2018/06/03(日) 22:17:24 YAoYY/ck0





 さとりが聖杯戦争に参加した理由はただの暇つぶしだった。聖杯に願いだとかサーヴァントとしてやり遂げたいこととか、そんなものはなにもない。ほどほどに相性の良いマスターと組んで退屈がしのげればそれでよかった。
 だけど炭治郎の心が見えた。
 全身を斬り裂くような激しい怒りと悲しみと、その奥にある暖かな想い。さとりはその暖かさに惹きつけられた。
 彼のサーヴァントとなって目の前に現れ、無茶をしようする彼を本気で止めた。
 さとりの心を読む能力を聞いても彼はまるで嫌がらなかった。それは彼の話す言葉に裏がないからだろう。大抵の人間は心を読まれるだけでも嫌がるが、彼は心を土足で踏み荒らすような真似でもしない限りきっと怒らないだろう。
 さとりは心を読まれて狼狽えた者の顔を見るのも好きではある。しかし本当に好感を持つのは素直で純粋な者に対してだ。さとりの周りにいた動物たちのような。

(本当に純粋で、そして優しい子)

 だからこそ心配になる。その純粋さと優しさがいずれ彼自身の破滅を招いてしまわないか。
 涙を内に秘められる強さが決定的に彼の心を折ってしまわないか。
 さとりは炭治郎の後ろ姿を眺め、呟いた。

「頑張るのは……ほどほどにするつもりだったんだけどね」


【真名】
古明地さとり@東方project


【クラス】
アーチャー


【パラメーター】
筋力:E 耐久:D 敏捷:C 魔力:A++ 幸運:C 宝具:EX


【属性】
秩序・中庸


【クラススキル】
対魔力:B
 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

単独行動:C
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。


966 : 竈門炭治郎&アーチャー ◆0VSR7vZCCQ :2018/06/03(日) 22:18:04 YAoYY/ck0


【保有スキル】
読心:A+
 相手の心を読み取る能力。
 相手が現在考えていることなら完全に読み取れる。
 さとりは神など高位の者の心も読むことができ、彼女が心を読めない相手はほぼ存在しない。

魔力放射:B
 自身の魔力を撃ち出し攻撃するスキル。
 魔力放出とは違い肉体や武器を強化することはできない。

高速思考:B
 物事の筋道を順序立てて追う思考の速度。
 高い読心能力を持つさとりは、複数の心を同時に読み理解する能力と、なにを思われても堪えない図太さを持っている。

想起「テリブルスーヴニール」
種別:対人催眠 最大捕捉:5人
 魔力放射によって出した弾と光の組み合わせで相手に催眠を掛け、意識の底に沈むトラウマを浮上させる。
 基本的に視覚から作用する催眠術であるため、対魔力などでは防げない。


【宝具】
『想起「■■■■」』
ランク:E〜EX 種別:対人宝具 レンジ:??? 最大捕捉:???
 以下の二つの効果のどちらかを使用できる。
 1:相手の心から読み取ったトラウマを再現した幻覚を見せる。テリブルスーヴニールの記憶の呼び覚ましを併用することで、精神力の弱い相手になら今この瞬間に起こっているかのように錯覚させられる。
 2:相手の心から読みったトラウマとなっている技などをさとりが再現する。さとり自身の能力を超えて再現することが可能で、独自のアレンジを加えることもできる。
 

【人物背景】
心を読む能力を持つ「さとり」という種類の妖怪。
その能力ゆえ人や他の妖怪には嫌われているが、言葉を持たない動物たちには好かれていて、屋敷にはペットがいっぱいいる。
本人は自分の持つ能力のことを高く評価しており、気に入っている。

【サーヴァントとしての願い】
退屈しのぎ。その予定だった。


【マスター】
竈門炭治郎@鬼滅の刃

【マスターとしての願い】
町の人々を守りたい。悪事を行うマスターやサーヴァントは放っておけない。

【weapon】
『日輪刀』
鬼殺隊に支給される鬼を斬る為の刀。特殊な金属で作られておりわずかに神秘を帯びている。

【能力・技能】
特殊な呼吸法を用いた剣術。
また嗅覚に優れており、単純に匂いを嗅ぎ分ける他にも、悲しい匂い、怒ってる匂いなど感情も匂いで読み解ける。

【人物背景】
人を喰らう鬼を狩る「鬼殺隊」の一員。鬼になった妹を元に戻すため鬼の大本である鬼舞辻無惨を追っている。

【参戦時期】
6巻終了後。


967 : ◆0VSR7vZCCQ :2018/06/03(日) 22:19:50 YAoYY/ck0
投下終了です


968 : ◆ZbV3TMNKJw :2018/06/03(日) 23:07:21 lgcEVKjQ0
皆様投下乙です
私も投下します


969 : 犯【にんげんてき】 ◆ZbV3TMNKJw :2018/06/03(日) 23:08:23 lgcEVKjQ0

「あんたが俺のサーヴァントってやつか」

「らしいな」

薄暗い路地裏で、帽子を被った中年の男と坊主頭の中年の男が佇んでいる。
帽子を被った男は名を葛西善二郎、坊主頭の男は浦上といった。

「まあ、まずはお近づきの印にどうだい一本」

葛西が差し出す煙草に浦上は首を横に振る。

「ワリィな。あんまり煙草は吸ったことがねえんだ」
「こいつは失礼した。健康に気を遣ってんのか?」
「そういう訳じゃねえが、なにぶんムショ暮らしが長いせいで馴染みがねえんだ」
「ムショか。火火ッ、確かにあそこはつまらねえところだ。俺も経験がある」
「女もいねえ、殺しもできねえ、生活リズムも強制される。ほんとやんなるぜあそこは」
「同感だ。...俺は吸っても?」
「構わねえよ」

葛西は煙草に火をつけ、フゥ、と一息つきつつ思いにふける。

ここに連れてこられる前。
葛西は、絶対悪の王者である男、『シックス』の集めた組織、『新しい血族』の一員として生きてきた。
元々、『シックス』に出会う前から犯罪を美学と称していたし、彼と出会った後でもやはり犯罪を犯していた。
葛西善二郎という男は誰に命令されるまでもなく犯罪を犯していたし、そんな自分が決して嫌いではなかった。
ただ、生きる意味だけは確かに変えられていた。
かつては犯れるだけ犯ってあっさりと燃え尽きれる犯罪者の花道を歩んでいた彼だが、『シックス』に生きる悦びを植え付けられて以降は一転。
葛西善二郎は、誰よりも『人間の犯罪者らしく』長生きをしたいと思うようになった。

さて。そんな葛西善二郎だが、自分の同格の仲間は全て死に絶え、『シックス』は魔人探偵に殺されたことで再び1人の犯罪者となった。
『シックス』よりも長生きをしたいという彼のささやかな願いは見事に叶い、彼を縛るものも無くなった。
だが、それで彼という男がなにか変わったのかと問われればそのようなことはない。
なにも変わらず、人間の知恵と工夫のみで犯罪を犯しつつ、誰よりも長生きする犯罪ライフスタイルはなにも変わらなかった。

ここに連れてこられ、記憶を失っていた今までもだ。

そう。彼という男はどこまで行っても人間の犯罪者だったのだ。


970 : 犯【にんげんてき】 ◆ZbV3TMNKJw :2018/06/03(日) 23:08:47 lgcEVKjQ0

タバコを灰皿に押し付け、再び浦上へと向き合う。

「なああんた」

浦上は薄ら笑いを浮かべつつ葛西へと問いかける。

「あんたから見て、俺はなんに見える?」
「なにって...」

葛西は浦上の質問に眉をひそめる。
なにに見える、とはどういう意味か。
葛西の見る限り、浦上にはなにも変哲なものは―――

「...火火火ッ、まいったねこりゃ」

葛西は思わず帽子に手をやり苦笑する。

浦上は葛西が召喚したサーヴァントである。
サーヴァントとは、英雄が死後、人々に祀り上げられ英霊化したものを、魔術師が聖杯の莫大な魔力によって使い魔として現世に召喚したものである。
そのため、少なくとも並の人間よりは知名度があり且つ優れているのが最低限の条件だ。
だが、浦上には並の人間以上のものはなにも感じない。
もしも葛西と浦上が拳を交えれば、間違いなく葛西が勝利するだろうと思えるほどにだ。

「一応、人間とバケモノを見極めるくらいはできるけどな。まあコイツは一杯遊んだ成果だがよ。しかしあんた、俺みたいな大外れを引くなんざツイてねぇなあ」

うひゃひゃと浦上は他人事のように笑い転げる。
そもそも、この浦上という男は英雄として祭り上げられるような男ではなく、他のサーヴァントのように大層な人生を送った訳でもなければ聖杯を求めるほど願いに飢えている訳でもない。
生前は目いっぱい遊んだし、最後には化け物と人間の中間の少年と言葉を交わすこともできた。
完全に満足したとは言い難いが、かといって後悔や渇望がある訳でもない。
つまり聖杯戦争におけるサーヴァントには成り得ない存在なのである。

だが、彼はこうして葛西善二郎に召喚されている。それも、人間の頃の能力に寸分違わずだ。

これはもうツイてないなどというレベルではない。
バグだ。サーヴァントとして完全なる失敗策だ。
恐らく、原初のサーヴァントを作り上げる際に打ち捨てられてきたような出来損ないたちと同じだろう。


971 : 犯【にんげんてき】 ◆ZbV3TMNKJw :2018/06/03(日) 23:09:23 lgcEVKjQ0

(ま、それはそれでやりがいはあるがな)
「なんだぁ?あんた、ずいぶん余裕こいてるがそんなに自信があるのかよ」
「火火火っ、さてどうだか」
「まあいいや。マスターよ、あんたこれからどうするつもりだ?」

浦上の問いかけに、葛西はあごに手をやりしばし考える。
この聖杯戦争、見滝原市という箱庭で自分は如何に立ち回るか。

「ま、当面はのんびりと過ごしましょうや。派手に騒がず、密かに楽しみつつってな」

葛西は、己の圧倒的な不利を理解してなお己のペースを崩さない。
それは自分への絶対な自負からか。それとも英霊を相手どってもねじ伏せる圧倒的な力があるからか。
否、彼は誰よりも自分の力量を把握しているし、己を超越する者を誰よりも恐れ警戒している。

それはこの聖杯戦争においても変わらない。

この街でよく耳にする奇妙なウワサ。
奇怪なものが多いが、その中でもとりわけ印象深いのは、『赤い箱』と『悪の救世主』だ。

赤い箱。
人間を箱詰めにするなんてイカれた行為をするヤツがそう何人もいるとは思いたくはない。

悪の救世主。
かつて従ってきた王は、確かに悪の権化ではあったが、救世主とは口が裂けても言えないだろう。
まあ、突き詰めれば結果的には悪にとっての救世主たりえるのかもしれないが。

葛西にとって、その二つのウワサが指す人物には心当たりがあり、どちらも決して会いたくはない存在だ。
だが、こうして聖杯戦争に参加させられている以上、必ずや出くわすことになるだろう。

かといって、やつらにおめおめと命を差し出す、なんてのは以ての外だ。
なんせ葛西善二郎の願いは、そんな怪物たちよりも長生きすること。

それも、生まれ持った超能力だとか強化細胞のような代物に頼るのではなく、小細工や己の技術・経験を駆使した『人間であること』を超えずに、だ。

故に、聖杯戦争という超常染みた催しの中でも人間らしい浦上を引き当てられたことは、彼の美学にとって幸運だったのかもしれない。

「まあ、英霊様相手じゃお互い難儀しそうだが、精精長生きできるように頑張りましょうや」
「長生き、か。下手なお題目掲げて誤魔化すよりは正直で人間らしくて嫌いじゃないぜ」
「人間らしく、か。火火火ッ、そうじゃなくちゃ意味がねえ」

犯罪者二人はケラケラと笑いあう。
誰よりも人間らしく生きるために。誰よりも正直に生きるために。
人間の枠に縛られた二人の無謀な挑戦はかくして幕を上げた。


972 : 犯【にんげんてき】 ◆ZbV3TMNKJw :2018/06/03(日) 23:10:53 lgcEVKjQ0

【クラス】セイバー

【真名】浦上

【出典作品】寄生獣

【ステータス】筋力:E 魔力:E 耐久:D 幸運:C 敏捷:D 宝具:無

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
対魔力:E
人間に魔術を防ぐなどという超常的なことができるはずもない。

騎乗:E
乗り物を乗りこなす能力 。まあ、車やバイクの運転くらいならできるだろう。



【保有スキル】

人間:EX
『セイバー』・『ランサー』・『アサシン』・『アーチャー』・『ライダー』・『バーサーカー』のクラススキルをすべて使用できる。
...が、それはあくまでも『人間』としての範囲である。実際には人間としてできる程度のことしかできない(ランクはE以下)。
そのため、このスキルはほとんど意味がないハリボテ同然のスキルである。


単独行動:EX
マスターを失っても滞在することができる。
本来はアサシンのクラススキルではあるが、人間にはもともと誰かとツルむのを強制される云われはないため浦上には関係ない。



気配遮断:E
人並みに気配を殺せる程度。あまり期待できない。



【宝具】
使用不可。"人間"にそんなものはない。
逆にいえば、英霊から見てもこの男を英霊だと認識することすら困難なほどに人間的であるという証拠でもある。


【weapon】
・ナイフ。
召喚時に所有していたごく普通のナイフ。
これしか使えない、という訳ではない。本人曰く『銃は腕が痺れるのでナイフの方が好き』とのこと。
逆に言えばそこまで武器に拘らないため知らない武器にも適応力はそこそこある。

・身体能力
一般人の女性では拘束を振りきれない程度にはあるが、そこまで高い訳ではなく、そこそこ鍛えた人間には太刀打ちができない程度と思われる。
ただ、人間の急所を捉える能力はかなり培われてきたようだ。


【人物背景】
犯罪者。己の本能に忠実な人間であり、それを満たすためならば殺人も平然と行う。
人間とそうでないものを見分ける目と勘を持つが、それは生来のものではなく長年遊びと称して多くの人間を解体し味わうなどして培われたもの。
己を特別な存在とは思っておらず、自分の行為は人間が隠している本性にしかすぎないと確信している。


【聖杯にかける願い】
特にない。最後まで"人間らしく"好きにやる。


973 : 犯【にんげんてき】 ◆ZbV3TMNKJw :2018/06/03(日) 23:11:15 lgcEVKjQ0

【マスター名】葛西善二郎
【出典作品】魔人探偵脳噛ネウロ
【性別】男

【weapon】
袖に仕込んだ火炎放射器。これを使えば傍からみれば手から炎を出しているように見える。



【人物背景】

シックス率いる「新しい血族」の中でも選りすぐられた五人の腹心、「五本指」の一人。
全国的な指名手配犯であり、放火を主に脱獄も含めて前科1342犯のギネス級の犯罪者。
先祖代々、火を扱う者としての「定向進化」を受け継ぎ、その恩恵により火の全てを司ることができる...が、彼の美学は人間を越えないこと。
彼の手品のような炎の扱い方は、全て小細工と知恵、計算によるものであり、全ての「新しい血族」の中で、唯一「定向進化」に頼らず人間の犯罪者として在りつづけた。
また、葛西の目標は「人間としての知恵と工夫で、人間を超越したシックスよりも長生きすること」であり、「新しい血族」の中でも、唯一シックスに対する絶対な忠誠心を抱いていない。
そのため、自己中極まりないシックスに対して唯一意見ができ、且つシックス自身もそれを不快にも思わない、云わば友人(対等ではないにせよ)とも言える数少ない存在である。

重度のヘビースモーカーであり、一日に8箱ものタバコを消費する。



【能力・技能】
・炎を操る
前述した通り、全ては知恵と工夫の結晶であり、何も無いところから火を放つことなどはできない。
そのため、火を起こす時にはマッチや火炎放射器を使用している。

・身体能力
他の「五本指」と違い、身体能力を飛躍的に上昇させる強化細胞を身体に埋め込んでいないため、純粋に生身の人間である。
しかし、高層ビルの壁をすいすいとよじ登る、強酸を仕込んだ銃弾を何発も受けても割りと余裕ある動きができるなど、かなり高い身体能力を有している。

・火にかけた親父ギャグのレパートリー:1000以上。


「ヒヒヒッ」→「火火火ッ」

【聖杯にかける願い】
己の美学である"人間を越えないこと"は決して曲げずに長生きする。そのため、聖杯そのものには大した興味は無い。


974 : ◆ZbV3TMNKJw :2018/06/03(日) 23:12:14 lgcEVKjQ0
投下終了です
続いて投下します


975 : 漢なら、誰かのために強くあれ ◆ZbV3TMNKJw :2018/06/03(日) 23:13:09 lgcEVKjQ0
とある民家の一室。

「夢じゃ...ねえんだよな」

金髪の青年―――初見では不良にしか見えない風貌の高校生、巽完二。
彼は、ベッドに腰掛け此処に至るまでのことを思いだしていた。

彼の住む稲羽市で起きた連続怪奇殺人事件。
その元凶となったマヨナカテレビにて真犯人を捕まえ、事件は終わりを告げた。
そして、その中心となった完二の先輩に当たる青年にして特別捜査隊のリーダー、鳴上悠は都会へと帰ることになり、彼の送別会の準備にとりかかっていた時のことだった。
折り紙で飾りを作っている完二の目に一枚の白紙のトランプがとまる。
それは買った覚えのないものだったが、偶然完二だけが見ていたのか、誰もそれに言及はしなかった。
なにかに使えるか、という算段もなく、彼はただそれに手を伸ばす。
それに触れた途端、気が付けば世界は変わり、仲間たちは『マヨナカテレビのことは知らないが仲のいい学友』になっており、自分もまたその一員となっていた。

「セーハイだかなんだか知らねえがよ...なんだっつーんだよ、クソッ」

頭を掻きつつそう吐き捨てる。
彼は勉強が得意な頭ではないことは自覚している。
しかし、そんな彼でも現状が「なにかとてつもなくヤバイ」ことは直感していた。

「どうだ。少しは落ち着けたか?」

ドアを開け、完二に声をかけるのはリーゼントをこしらえがっしりとした体格の巨漢。
彼こそが、完二のサーヴァントであり、生前の名はブラート。かつて殺し屋・ナイトレイドの一員として活躍した漢である。
召喚され、聖杯戦争について語ったのはいいものの、混乱する完二に落ち着ける時間を作るため、見張りがてら部屋に彼を一人残していたのだ。


「あ...ワリッス。なんか気を遣わせちまったみてぇで」
「ハハッ、気にするな。こんな状況受け入れられなくても仕方ないからな」

朗らかに笑うブラートに、思わず完二も笑みを零す。

「えっと...名前、なんでしたっけ?ら、ラ...」
「ランサーな。まあ呼び辛かったら兄貴かハンサムでいいぜ。いや、むしろそっちの方がいい」
「んじゃ、兄貴でいいっスか」
「よし!いい感じだ!」

ブラートの口元がキラリと光る。
その歯並びからしてかなり丁寧に磨いているのが窺える。

「それで、マスター。お前はこれからどうするつもりだ?」

スッ、と自然な流れでブラートは完二の隣に腰掛ける。ギシリ、と微かに軋む音がした。


976 : 漢なら、誰かのために強くあれ ◆ZbV3TMNKJw :2018/06/03(日) 23:14:50 lgcEVKjQ0

「そういやまだ名前言ってなかったっスね。俺は巽完二。完二でいいっスよ。マスターがどうとかは俺の柄じゃねえんで」
「タツミ...」
「?」
「いや、かつての仲間にタツミって名前の熱い男がいてな」
「マジっスか。珍しい偶然もあるもんスね」
「まったくだ。まあ、それは置いておいてだ。完二。お前はこの聖杯戦争をどう勝ち抜くつもりだ」

ブラートの目付きが変わり、先程までの朗らかな雰囲気が一変引き締まったものになる。

「勝ち抜くってのは...」
「この聖杯戦争はただの喧嘩じゃない。正真正銘、れっきとした殺し合いだ」

"殺し合い"。その言葉に完二の目が見開かれる。

「殺しって...んなのヤるわけねえだろ!」

殺し。他者の命を奪いこの世から亡くすこと。
殺人は法律で禁じられた許されざる行為である。
だが、それ以上に完二は知っていた。
花村陽介。普段は軽い態度で、どうやったら女にモテるかを本気で考えるような、一言で言えば"チャラい"性格の完二の先輩。
だが、彼のかつての想い人であり、連続殺人事件の被害者である小西早紀の話題になると、いつも誰よりも悔しげに顔を歪ませていた。
小西尚紀。小西早紀の弟であり、突然の彼女の死にどう反応すればいいか戸惑い、一時期はロクに会話をしようともしなかった。
ようやく受け入れた時には、誰よりも姉を想って泣き腫らしていた。
それに、完二自身も経験がある。いや、彼以外の特別捜査隊の者も同じだ。
鳴上悠の妹同然の堂島菜々子が息を引き取った時、彼らは胸が張り裂けそうな苦しみを味わった。
悲しみ、怒り、憎み、下手人に対して本気の殺意をも抱いた。
奇跡的に息を吹き返したからよかったものの、もしその奇跡が起きなければ、皆の心には決して癒えない傷跡が残っていたはずだ。

人が殺される―――死ぬ。それは、多くの人間を傷付け地獄に突き落とす所業だ。

巽完二という男が、そんな残酷な所業に手を染められる筈もなかった。


977 : 漢なら、誰かのために強くあれ ◆ZbV3TMNKJw :2018/06/03(日) 23:15:36 lgcEVKjQ0

「誰かを殺そうって奴がいるなら俺がブン殴ってでも止めてやる」
「それで済ませられると思ってるのか」

ブラートの声が一段と低くなる。

「聖杯戦争は、なにもただ殺し合うだけじゃない。勝ち残った奴には如何なる願いも叶える権利が与えられる。聖杯を狙うのは、単純な損得で動く奴らだけじゃねえ。例えどれだけ傷つこうが、屍を積もうが叶えたい願いのために戦う奴らもいる。例えお前がそいつらを殺さずに止めたとしてもだ。そいつらは決して夢を諦めない。命が尽きるまで戦い続けるだろう。
完二、もう一度聞くぜ。もしも命がけで願いを叶えるために戦う奴が現れた時。お前はそれでも敵を殺さないつもりか」

ブラートの言葉に、完二のこめかみから冷や汗が伝った。

目を伏せて考える。

完二とて、今まで何の苦労もしていない訳ではない。
だが、今まで自分の命を投げ打ってまで挑んでくる敵と一人で相対したことはなかった。
戦ってきた相手は、大概は己の欲圧された心のやり場を求める独りぼっちの影(シャドウ)であり、自分にはいつも信頼し合える仲間が大勢いた。
今回の聖杯戦争はそれとは状況が全く違う。
サーヴァントという仲間はいるものの、それは別の者も同じだ。
2対2、単純に考えれば1対1の構図になる。
そんな状況で、今まで通りにブッ飛ばすだけでは済まない相手と戦った時―――完二は、相手を倒せるのだろうか。

やがて、完二は意を決したようにブラートへと向き合った。

「...兄貴。俺ァ、人様に胸張れる人間じゃねえ。警察にはなにかと目をつけられるし、お袋や先輩たちにも迷惑をかけっぱなしだった」
「そんな俺でも、やっぱり人を殺しちゃいけねえのはわかるんだ。どんな理由があってもだ」

甘い考えだ、とブラートは思った。
彼にそれを非難するつもりはない。むしろ、一般人である彼にそう易々と殺し屋のような覚悟はしてほしくないとさえ思っている。
だが、聖杯戦争に選ばれてしまった以上、彼も敵を打ち倒さなければならないのだ。

そんなブラートの想いを、完二はわかっている、とでもいうように正面から見据える。


978 : 漢なら、誰かのために強くあれ ◆ZbV3TMNKJw :2018/06/03(日) 23:16:02 lgcEVKjQ0

「けどよ、兄貴の言う本気の奴らはそこまでしても叶えたい願いって奴を抱えてるんだよな」
「ああ」
「だったら―――俺は、ソイツらを受け止めてやりてえ」

ブラートは耳を疑った。完二は、相手が殺意を持っていてもなおそれを受け止めたいというのだから。

「死ぬつもりか」
「んなつもりはねーよ。けど、そいつらは誰にも自分の想いを打ち明けられねえんだろ...ずっと抱え込んで戦うなんて、辛すぎるだろ。だったら、ソイツらが抱え込んでるモンを全部俺にぶつければいい。そんで、俺も本気で止めてえんだってことを伝えてやりてえんだ」

かつて、自分が向き合うことになった影(シャドウ)のことを思いだす。
彼(じぶん)は、男の身でありながら繊細な趣味であったことにコンプレックスを抱いていた。
そのことで自分を馬鹿にしてくる女が怖い。男らしいってなんだ。そうじゃなきゃ認められちゃいけないのか。
極め付けに、彼(じぶん)は言った。
『僕を受け止めて』と。
完二は知った。存在を認めることが、想いを受け止めることがどれほど救いになるかを。
彼(じぶん)だけではない。
直人も、りせも、クマも、自分が直接見た訳ではないがセンパイ達も。
みんな、そうやって己を受け入れ前へと進んできたのだと。

「あ〜、うまいこと纏まらねえや。...とにかく、俺は、最後までわかりあうことを諦めたくねえんスよ」
「...なるほどな」

ブラートは完二への認識を改める。
どんな相手でもただ否定するのではなく理解を測る。
言葉にすれば簡単だが実行するのは困難だ。
相手は理念が違うのなら住む世界も違う。己の世界の常識が通じないのは当たり前だ。
完二はそれを承知のうえで解り合いたいと言うのだ。
頑固と言うべきかどこまでも純粋というべきか。
聖杯戦争を勝ち抜くマスターとしては厄介なタイプだろう。

だからこそ、共に戦いたいと思う。

もともと、ブラートの願いも聖杯を消すことだった。
どんな願いも叶うモノなど人間には過ぎた力だ。
強大な力は人を欲と狂気に溺れさせ、傲慢に陥れ、闘争を誘い、多くの人々を滅ぼす。
ブラートの生きた時代もそうだ。強大な暴力や権力を持った者が闊歩し力無き人々はいくら苦しんでも泣き寝入りするしかない。
そんな時代だったからこそ、ブラートは反乱軍に加わり国を変えようとした。
だから、この聖杯戦争でも願いは変わらない。
聖杯を消し、二度と聖杯戦争を起こさない。それがブラートの願いだった。
力を持とうとも他者を踏み台にすることをよしとしない完二は、反乱軍の目指した世界の理想の人間だ。
そんな男だからこそ、単に他のマスターを殺して願いを叶えるのではなく、共に違う方法を模索し聖杯を消したいと思う。


979 : 漢なら、誰かのために強くあれ ◆ZbV3TMNKJw :2018/06/03(日) 23:17:03 lgcEVKjQ0

「お前の覚悟は認めるぜ、完二。俺はおまえがそれを望むまで一緒に戦わせてもらう」
「兄貴...!」
「だが、勢いだけでどうにかなるもんじゃねえことはわかってるな」

ブラートがゆっくりと距離を詰める度に、ギシ、ギシ、とベッドの軋む音が鳴る。

「人の関係ってのは繊細なものなんだ。俺が見る限り、お前は優しい奴だが周囲には誤解されやすい...違うか?」
「うっ...否定できねっス」
「だから」

俯く完二の顎に手をやり、くいっと持ち上げる。

「俺が教え込んでやるよ。手取り足取り...な」

徐々に近づくブラートと完二の顔。
やがて、互いの吐息が交わり合い―――

「なななな、なにやってんだコラァ!!」

完二は思わず顔を真赤に染め上げ飛び退く。

「ハッハッハッ、冗談だ」

豪快に笑い飛ばすブラートだが、彼が本当に冗談だったのかマジだったのか...その真意は完二にはわからない。

「まあとにかくだ。俺たちの目指す場所は同じだって分かったんだ。改めてヨロシクな、完二」
「ウッス!男・完二、身体張らせていただきます!」
「よおし、その意気だ!」

マスターとランサー。信頼を築いた二人の男は、固い、固い握手を交わした。
その信頼は、山より高く鋼よりも厚いだろう。

「さて。親睦を深めるために裸の付き合いとシャレ込むか!」
「オウ!...って、はだか?」
「なにキョトンとしてんだ。風呂だよ、風呂」
「あ、あぁ...風呂っスね。そういやここらへんにでかいサウナで有名な大浴場が...」

『僕の可愛い子猫ちゃん...』『あ、嗚呼、なんてたくましい筋肉なんだ!』『怖がることはないんだよ。さぁ、力を抜いて...』

「だだだだだ、だから俺はそういうンじゃねえって言ってんだろうが!キュッと絞めんぞコラァ!!」


980 : 漢なら、誰かのために強くあれ ◆ZbV3TMNKJw :2018/06/03(日) 23:17:28 lgcEVKjQ0

【クラス】ランサー

【真名】ブラート

【出典作品】アカメが斬る!

【ステータス】
通常
筋力B 魔力E 耐久B 幸運C 敏捷B 宝具:EX

宝具発動後
筋力A+ 魔力E 耐久A+ 幸運C 敏捷A+ 宝具:EX


【属性】
秩序・善

【クラススキル】
対魔力 :C

第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】

直感:B
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。

頑健:A
体力の豊富さ、疲れにくさ、丈夫な身体を持っている事などを表すスキル。
通常より少ない魔力での行動を可能とし、Aランクであれば魔力消費を通常の4割近くにまで抑えられる。

戦闘続行:A
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。


【宝具】
『悪鬼纏身インクルシオ』
ランク:EX 種別:対人宝具(自分) レンジ:1 最大補足:己のみ。

鎧の帝具。
凶暴な超級危険種タイラントを素材として作られた帝具で、素材となった竜の強靭な生命力により装着者に合わせて進化すると言われている。

非常に高い防御力を誇り、生半可な攻撃ではダメージを受けず、毒等の特殊な攻撃も無力化または大きく軽減できる。また、副武装として「ノインテーター」と呼ばれる槍が備わっており、これを主な攻撃手段として用いる。 ほか、使用者の身体能力を飛躍的に向上させる効果もあり、武器を持たず戦うことも十分可能。
ただし、使用者に大きく負担が掛かる為、並の人間が身に着けると死んでしまう恐れもある。
また、適正があったとても長時間の使用は厳しく、体力の低下に伴い自動解除される為、持久戦に持ち込まれると不利になることも。

『インクルシオの能力』

・透明化

周りの風景に合わせて姿を消せる能力だが気配や殺気まで消すことは出来ない。
これは生前のタイラントが高い環境適合力と防衛本能により身に付けた能力である。


・進化
帝具の材料となった竜型超級危険種「タイラント」の筋繊維や闘争本能は未だ生きており、使用者の思いと成長に合わせて進化するという強力な特性を持っている。



【weapon】
・インクルシオの鍵剣
この状態ではただの頑丈な剣だが、宝具を発動するとインクルシオとなり、武器も槍に変わる。



【人物背景】
殺し屋「ナイトレイド」の一人。
筋肉質の大男で、同じくナイトレイドの一人であるタツミからは「兄貴」と呼ばれている。
豪快な性格で面倒見がいい兄貴分。タツミに目をかけており、いずれ自分を超えるかもしれないと期待を寄せている。
同時に、殺し屋としての非情な現実を突きつけることも多い。タツミとの会話で顔を赤らめることからホモ疑惑が浮上しているが、その性癖はナゾに包まれている。
元は帝国の有能な軍人だったが、帝都の腐敗を知ってナイトレイドに仲間入る。彼のトレードマークでもあるリーゼントヘアーはナイトレイド加入に際して行ったイメチェンであり、以前はかなりの美形だった。軍人時代は「100人斬りのブラート」として名が通っており、その戦闘力はナイトレイド随一。帝具がなくても十分な強さを持ち、ニャウからは「エスデスに次ぐ」とまで評されている。船上での護衛任務にてエスデス直属の帝具使い「“三獣士”」と戦闘になった際には、圧倒的な実力でダイダラを瞬殺。次いで、かつて尊敬していた上司リヴァと対峙し激戦の末、致命傷を与えるものの、猛毒を仕込まれた血を撃ち込まれこれに侵される。死を悟ったことでタツミにインクルシオを託し、その奮戦を見届けながら静かに逝った。


【方針】
完二に付き合い共に聖杯戦争を止める。だが、どうしても止まらない奴がいれば完二の代わりに手を汚すつもり。


【聖杯にかける願い】
聖杯を壊す。


981 : 漢なら、誰かのために強くあれ ◆ZbV3TMNKJw :2018/06/03(日) 23:17:50 lgcEVKjQ0


【マスター名】巽完二
【出典作品】persona4 the animation
【性別】男

【weapon】
・己の拳
そんじょそこらの不良では相手にできないほどのケンカが強い。

・デスク
鈍器として使用可能。

【人物背景】
稲羽市中央通り商店街にある染物屋「巽屋」の一人息子。 八十神高等学校に通う一年生で、主人公達の後輩にあたる。
中学時代から札付きの不良としてその名を轟かせており、過去にたった一人で暴走族を壊滅させたという話で周囲から恐れられているが、根は仁義にあつく、子供や動物にも優しい性格。
また信頼できると目上の人間にはちゃんと敬意を払うなど、ちゃんと礼節もわきまえられる実直な部分もある。が、からかわれたり興奮したりすると時々口調が荒くなる。
その風貌からは全く想像できないが、実は裁縫や編み物が趣味のオトメンであり、かわいいもの(モノ・動物問わず)が大好きである。
そのため、周囲の視線はきつく、本人も傷つくことは少なくなかった。

マヨナカテレビに落とされ、己の認めたくない部分である『影(シャドウ)』と対峙することになるが、主人公たちの助力を借りつつも己の影と向き合うことでペルソナ『タケミカヅチ』を習得。
以来、主人公たちの仲間の一員として事件の解決に協力した。


【能力・技能】

・タケミカヅチ
真っ黒な鋼鉄のボディに骸骨の文様という、それまでの『女神転生』系とは一線を画すデザインが成されており、手に持った稲妻形の鈍器を武器に戦う。
攻撃手段として強力な物理攻撃と電撃を有している。
この聖杯戦争内ではペルソナは進化前のものらしいが...

【方針】
聖杯を狙って誰かを殺そうとする奴を止める。


【聖杯にかける願い】
対聖杯派。元の世界に帰る。


982 : ◆ZbV3TMNKJw :2018/06/03(日) 23:19:37 lgcEVKjQ0
投下終了です
以前箱庭聖杯の候補話にて投下したものを再投下いたしました
>>975のトランプと記載されている部分をソウルジェムに修正します

続いて投下します


983 : 食【えじき】 ◆ZbV3TMNKJw :2018/06/03(日) 23:20:31 lgcEVKjQ0
見滝原市の一角で連日大繁盛のレストランがある。

なんでも、そこの料理は美味いだけではなく食べた者に成功を呼ぶとの噂が絶えないとか。

店の名はシュプリーム・S(しろた)。

店主の名は至郎田正影―――


984 : 食【えじき】 ◆ZbV3TMNKJw :2018/06/03(日) 23:20:57 lgcEVKjQ0



パリィン。

ガラスを突き破り、階下に着地。
その際の痛みも無視して、俺は我武者羅に足を動かす。


「はぁっ、はぁっ...」

うす暗い路地から指す光に向かい俺は必死に逃げていた。
どこへ向かっているか―――そんなのを考える余裕すらない。
疲労と恐怖で肺が張り裂けそうだ。だが捕まれば命は無い。

俺はどこで間違ったのだろう。
奴のもとについたことか?料理人としてのプライドを持ち妙な正義感に駆られたことか?
もうそんなことはどうだっていい。
とにかく今は逃げなければ。そして、警察に俺の知ったことを全て話すんだ。
あの男は狂っている。
あんなモノ、世にのさばらせてはいけないんだ―――!!

光は次第に近づいてくる。
やった。あそこを出れば人通りのはずだ。
あそこにさえ出れば、奴も手が出せない筈―――

「ん」

ふと、目に止まった不自然なでっぱり。
足は止めないがすれ違いざまに確認する。
なんだコレは。
缶詰?書かれている文字は、D・C・S...



「ドーピングコンソメスープだ」



ゴ シ カ ァ ン


985 : 食【えじき】 ◆ZbV3TMNKJw :2018/06/03(日) 23:22:29 lgcEVKjQ0


「終わったか」

シュプリームSのオーナーシェフ・至郎田正影は背を向けたまま確認した。

「ああ。これで俺たちの邪魔をする者はいなくなった」
「ふふふ...」

至郎田は鍋を掻き混ぜ不敵に微笑む。

(あともう少しだ...もう少しで俺の至高にして究極の料理は完成する...)

至郎田正影は天才的な料理人であった。
それ故に美味い料理など息を吸うかのように作ることが出来た。
だが。それではだめだ。
美味い料理を作れるだけでは、世間では天才と持て囃される凡人共と同じだ。
真の天才料理人は、料理で人を支配するべきなのだ。
そこで至郎田が求めたのは、成功と引き換えに彼に縋らざるをえない中毒性の高い料理だった。

これが完成していれば悲願は達成できたはずだった。

(海野め...何度も俺を裏切りやがって)

だが、至郎田の作る料理の材料を知った海野は、このことを警察に公表すると脅してきた。
間抜けめ。だからお前は俺に敵わないんだ。
そう思い立った至郎田は、己の"料理"で強化した腕で海野を撲殺しようとし―――そこで降って来たソウルジェムに触れ、改めてレストランのオーナーシェフとなっていた。
この時は至郎田は究極の料理のことも忘れ、海野もまたそれを忘れていた。
だが、数週間後、調味料に紛れていたソウルジェムに触れた至郎田は記憶を取り戻し、再び究極の料理の研究に没頭。
あと一息で完成といったところで水を差したのが、またしても海野だった。
以前と一言一句違わず邪魔をしようとした海野に苛立ち、至郎田は思わず正面から殴りかかった。
しかし、それが災いし、海野はそのまま裏口から逃亡。
追いかけようとしたが、いまのが騒ぎにになって無闇に厨房に入られるのはマズイ。
そこで、記憶を取り戻す際に手に入れたサーヴァント―――キャスターにあとを追わせたのだ。

結果、滞りなく海野を始末及び処分をしてくれたサーヴァントに、至郎田は流石はオレだと称賛を送った。

(聖杯戦争...フッ、これを勝ち残れば俺の食の千年帝国は完全なるものとなる)

サーヴァントが語った聖杯戦争は至郎田の興味を非常にそそった。
聖杯を手に入れれば、海野のような凡才に足を引っ張られることもこそこそと警察から隠れて料理をする必要もなくなる。
ならば手に入れない理由は無い。如何なる手段を持ってしても、俺は聖杯を手にしてやる。

至郎田の背を押すように、至郎田の視ていた料理も完成する。

「完成だ...俺の至高にして究極の料理...」
「では、景気づけにひとつ」
「ああ」

至郎田は鍋から煮込んだ液体を掬い皿に注ぐ。
スープだ。紛れも無くコンソメスープだ。

キャスターもまた、空中に浮かんだ鍋から液体を掬い皿に注ぐ。
スープだ。こちらもまたコンソメスープだ。

流石はオレだ、と内心で互いを褒め合い邪悪な笑みを交わす。

至郎田は自分が為るであろう姿を見つめ。

キャスターは未だ成長を止めないかつての自分を見つめ。


「「では、俺たちの食の千年帝国へ向けて―――乾杯」」

これから共に創り上げる王国を夢見て。
マスターとサーヴァント―――二人の『至郎田正影』は、互いのドーピングコンソメスープを飲み交わした。


986 : 食【えじき】 ◆ZbV3TMNKJw :2018/06/03(日) 23:23:20 lgcEVKjQ0


【クラス】キャスター

【真名】至郎田正影

【出典作品】真説ボボボーボ・ボーボボ

【ステータス】
通常
筋力B 魔力C 耐久C 幸運C 敏捷D 宝具:B



【属性】
秩序・悪

【クラススキル】
陣地作成:C
魔術師として自らに有利な陣地を作り上げる。
作れる施設はレストラン。

道具作成:EX
無からDCS(ドーピングコンソメスープ)を生み出すことができる。


【保有スキル】

料理:A
大概のものなら調理できる。得意料理はドーピングコンソメスープ


トリック:C
食材を使用した犯罪が得意。中でもDCSを使用した撲殺が得意。


DCS真拳:EX
ドーピングコンソメスープ。


【宝具】
『DCS(ドーピングスープコンソメ)真拳超奥義、食【えじき】食の千年帝国』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:DCSを摂取・かけられた人物
鍋でしっかりと煮込んだドーピングコンソメスープを漫画で使用したトリックと共に敵にぶっかける大技。


【weapon】
・DCS(ドーピングコンソメスープ)
様々な食材や薬物、その他諸々を煮込み続けて完成させた至高にして究極の料理。
肉体を超人級に活性強化させる奇跡の食材だが、一瞬でマッチョな筋肉質になって体型自体が倍くらいでかくなるという物理法則を無視した代物である。その成分は血液や尿からは決して検出されず、尚且つ配合した全ての薬物の効果も数倍となり、血管から注入(たべ)る事で更に数倍になるという。
これを食したサーヴァントは一時的に筋肉が膨大し『狂化:B』のスキルを手に入れることができるが、反動も強く最悪の場合、再起不能状態に陥ることも。

DCSの材料(警視庁押収レシピ参照)
牛スネ肉、骨付き鶏、タマネギ、ニンジン、セロリ、ニンニク、クレソン、長ネギ、パセリ、タイム、ローリエ、卵白、黒粒コショウ、シェリー酒、塩、湯葉の●、
●●イン、●●状●●、太刀魚、牛の●、豚の●、馬の●●の●●、人の●●を●したもの、秋の●、●の粉末、泊方の●、カマキリの●、電球の●、●●●味噌、
●●こ、男の●、女の●、DH●A、DHA、より●●した時の●、●●への●、美味しく作ろうという情熱、その他諸々



【人物背景】

真説ボボボーボ・ボーボボ49話に登場したスペシャルゲスト。常にDCS使用後の姿をしている。
ナインエキスパート・黒賭博騎兵衆の一人、雨水の助っ人として竜騎士と共に忍者大戦3狩リアに参戦。
登場早々に雨水にDCSを無理やり飲ませようとしたりDCS真拳を使いボーボボと首領パッチにかましたりと暴れ放題であった。
ゲストキャラということで倒されるにしても気を遣われるのが普通だがそこはボーボボ世界。容赦なく巻き糞で締め上げられてしまった。
他作品の他作者のキャラクターがカメオ出演するのはまだしも本格的にバトルにまで絡んできたのは武藤遊戯と至郎田くらいだろう。
ゲスト出演でありながら人気投票で227票を獲得し堂々の15位を飾っている。

バトル面では武藤遊戯、人気投票では空条承太郎、荒木飛呂彦、プロシュート兄貴に並ぶ快挙(太臓モテ王サーガの人気投票において準レギュラーを差し置きそれぞれ9位、11位、13位に入賞している)を成し遂げた彼は英霊になる素質は充分だろう。


【方針】
マスターと共に食の千年帝国を築き上げるために邪魔者を排除し聖杯を手に入れる。


【聖杯にかける願い】
食の千年帝国を創る。


987 : 食【えじき】 ◆ZbV3TMNKJw :2018/06/03(日) 23:26:57 lgcEVKjQ0

【マスター名】至郎田正影
【出典作品】魔人探偵脳噛ネウロ
【性別】男

【weapon】
・調理器具
レストランにある機器も彼にかかれば立派な凶器に。


【人物背景】

各界の有名スポーツ選手から「成功を呼ぶ店」と噂されるレストラン『シュプリーム・S(シロタ)』のオーナーシェフ。その実は違法ドラッグを大量に混入した創作料理を提供する異常思想の持ち主。
ドラッグ入りの料理を用いて「食の千年帝国」なるものを作ることが夢だったが、薬物混入の事実を知った同業の海野浩二に反対され、警察に告発しようとする彼を殺害する。殺害を偽装するために「犯行予告の脅迫状を受け取った」と装い警察を呼び、時間差トリックで海野が突然死亡したようにアリバイを工作する。
自身の作る料理を「至高にして究極」と自負しており、それを貶されると異常なほど怒りをあらわにする。現場検証中に彼の料理を試食した弥子から「食べる事に失礼」という評価を下され、激しく怒って事情聴取を取りやめ厨房に籠ってしまうほど。
彼が最高傑作と称する料理「ドーピングコンソメスープ」がカルト的な人気を博し、多くのファンだけでなく同業の漫画各作品でパロディされるほどになった。
基本オリジナルエピソードで構成されていたアニメにおいても、第一話にこのエピソードが起用されるなど、他のキャラクターに比べかなり優遇されている。

余談だが、DSゲームJUS(ジャンプアルティメットスターズ)においてはネウロの必殺技のひとつという形で参戦している。当時の準レギュラーであった五代はヘルプコマにすらなっていなかったというのに...
加えて、携帯アプリ・ジャンぷちヒーローズにおいても怪盗XやAYAを差し置いて敵キャラとして出演している。

【能力・技能】
・料理
天才的。凡人では追いつけない。

・ドーピングコンソメスープ
上記サーヴァントの項目参照。



【方針】
如何なる手段を用いても聖杯を手に入れる。


【聖杯にかける願い】
食の千年帝国を創る。


988 : ◆ZbV3TMNKJw :2018/06/03(日) 23:27:57 lgcEVKjQ0
投下終了です
箱庭聖杯の候補話にて投下したものを再投下させていただきました


989 : ◆W7QaZkLeGg :2018/06/03(日) 23:32:10 vRgvRaws0
投下します。


990 : 黒白ノ奏者 ◆W7QaZkLeGg :2018/06/03(日) 23:33:28 vRgvRaws0

 夕暮れ。
 人々の雑踏や喧騒の時間帯。
 あまりにも当たり前な日常は、しかし彼女にとっては今や異質な雑音として傍を通りすぎていった。

 父と母への帰宅の挨拶もそこそこに、逃げるように少女は足早に自室に向かう。
日課であるピアノの練習すらせず。備え付けのピアノの前を通りすぎ、人一人すっぽり入れるほどの大きな姿見の前に立つ。

 映るのは、真っ直ぐに立つ自分の姿。
手と足、傷ひとつない整った顔。人として当たり前の、五体満足な形だ。
そう。何一つ、異常なことなどなかった。

───だからこそ、『異常』であった。少なくとも、彼女にとっては

「マスター?大丈夫ですか?」

 突如として、自分以外誰もいないはずの室内で、背後から声がかかる。
ビクリと僅かに驚き、そろりと振り返った。

「え、ええ……大丈夫、ですわ。……ええっと、ライダー、さん?」

声に対し、少女────ノエル・チェルクエッティは、そう返す。
 ライダー。ノエルのサーヴァントであるその少年は、自身をそう名乗っていた筈だ。

「あ、すみません。突然声をかけてしまって……驚かせてしまってしまいましたか?」

黒く、細かい装飾が施された団服を身に纏ったライダーは、白髪を揺らし、申し訳なさそうに眉を下げる。





 ずっと、違和感ばかりだった。切っ掛けらしい切っ掛けはどれとは言えない。
けれど、一番の違和感は───

 今日も、いつも通りピアノ教室に通い、いつも通りにピアノを弾いていた。
美しく、淀みない旋律。聞く人が聞けば拍手が沸き上がるであろう音色は、しかしたった一人の親友の賞賛しかなく。教室内には嫉妬混じりの悪口にも近い悪評がささやかれるのみだった。
 そんな中、ノエルは手足に違和感を覚えていた。
怪我をしているわけでも、痺れているわけでもない。だが、ここ最近感じる居心地の悪い違和感。
「当たり前にピアノを弾いている」。そんな自分自身すらも、何故だか信じられないことのように思えていた。

 ピアノ教室が終わり、親友とも別れた帰り道。あるひとつの「事件」がノエルの耳に入った。

───聞いた?猟奇殺人のハナシ!
殺された被害者の死体は皆、真っ赤な箱の中に詰められてるんだって!

───箱の中?それって、手足をバラバラにされてっ……てこと?

───そんなもんじゃないって!なんでも、体の中身が隅から隅まで観察できるように箱に敷き詰められてるらしくて───


 女子学生が話すことではない、あまりにもグロテスクな内容。
しかし、ノエルにとって重要なのはそこではない。

   『手足をバラバラに』

何故だろうか。ひどく……ひどく、頭に引っ掛かるワードだった。
 聞き慣れている、というより。「身に覚えがある」感覚。
猟奇的であるのに、何故。

  異常ではない異常
  違和感のある手足
  『悪魔』の所業のような、猟奇事件  

 何かのキーワードが、偶然にも揃っていく気配がする。

ふと、ノエルは顔を横に反らした。そこにあったのはショーウィンドウ。
パーティーに着るような豪華なドレスを着たマネキンが、今にも踊り出しそうなポーズで並べられている。
目の前には、黒いドレス


───それを着ていたのは、右目に眼帯をした、左手以外の四肢を失っている───


 カチリと、最後のピースが嵌まる音が、した。


991 : 黒白ノ奏者 ◆W7QaZkLeGg :2018/06/03(日) 23:34:37 vRgvRaws0


 そうして記憶を取り戻したノエルは、混乱しながら人気のない場所へ移動し、そこで召喚されたサーヴァントと初めて顔を合わせ。簡単な事実確認の情報整理をしながら帰路についた。
それが、これまでの経緯である。

自室にて、自分の手の中にある小さな物体を転がす。
ソウルジェム
『聖杯戦争』とやらの重要アイテム。サーヴァントの魂を注ぐもの。

「ライダーさん。本当に聖杯は、手にしたものの願いを叶えるのですわよね?」
「はい、聖杯戦争を勝ち進んだマスターとサーヴァントのみが手にいれることができる願望機……それが、聖杯です。」

 願望機、と聞いてノエルはぐっと息を詰まらせる。
この世界にくる前、記憶を失う直前まで、ノエルにはとある願いがあった。

  復讐
  自身を陥れた者たちへの、報復

 ノエルが本来住んでいた街。ラプラス市の市長であるラッセル・バロウズに騙され、「悪魔」と契約し、代償として四肢を失った。
紆余曲折をへて、契約した大悪魔「カロン」と協力して、ノエルは市長への復讐の決意を固めた。
そして、秘書官であるシビラを追い詰めたところで───記憶は途絶えてしまっている。

 改めて、鏡に映る自分を眺める。
どうゆう理屈かわからないが、そこにいるのは悪魔と契約する以前の……即ち、手足の揃った紛うことなき自分の姿である。
 失ったものが、そこにある。
沸き出る感情は喜び……ではない。
愕然。そう表現するにふさわしい、行き場のない空虚が、ただただ広がっていた。

台無しにされた。ぶち壊された。そんな感想しか出てこない。

(……今の私に、あの時のような復讐心は、あるの?)

復讐を決意したのは、奪われた屈辱。そして親友を巻き込んだことが許せなかったから。だが……
脳裏に浮かび上がる、親友の姿。
偽りの日々の中の、あどけない笑顔。

たったそれだけのことで、怒りと憎悪が薄れ、霧散していく感覚がした。

……わからない。これからどうしたらいいのか、すべてを敵に回してでも叶えたい願いが今の自分には……果たして、存在するのか。

「……マスター、貴女がどのような願いを叶えたいと思っているか、僕には分かりません
しかし、サーヴァントとして、マスターである貴女を守り抜く。その事だけは、必ず約束します。」

 行き場のない感情を胸に茫然としているノエルに、ライダーはそう声を掛ける。

「守る…本当、に?」

 隣で共に戦っていた悪魔は今はいない。世界にただ一人取り残されたような恐怖と寂しさに、その言葉はほんの少しの慰めと救いとして心に響いた。
 その反応に、ライダーは安心させるように笑顔を浮かべる。

「はい、……改めて、自己紹介しますね。

サーヴァント、ライダー。真名、アレン・ウォーカー
「AKUMA」を破壊する、エクソシストです。」




  悪魔と契約し、復讐を誓った少女
  AKUMAを破壊する、救済の悪魔祓い

属性の相反する二人の行き先は、果たして。


992 : 黒白ノ奏者 ◆W7QaZkLeGg :2018/06/03(日) 23:37:05 vRgvRaws0

【クラス】
ライダー
【真名】
アレン・ウォーカー
【出典】
D.gray-man
【属性】
中立・善

【ステータス】

筋力:B 耐久:C+ 敏捷:C 魔力:C 幸運:D 宝具:A+


【クラス別スキル】

対魔力:C
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

騎乗:─
 「奏者ノ資格」スキルにより失われている。

【固有スキル】

奏者ノ資格:A
 航海のスキルが変異したもの。船と認識されるものを操縦することができる。
 このスキルで奏でられる「子守唄」を聞いたものは、精神汚染系の効果を確率で解除。同時に一時的に精神対抗ロールにプラスの補正が掛かる。
 後述の宝具を使用するのに必要。

貧者の見識:B
 相手の性格・属性を見抜く眼力。言葉による弁明、欺瞞に騙され難い。
 幼い頃、拾われたサーカス団でこき扱われたり、師に押し付けられた借金の返済に死ぬほど苦労した経験から獲得したスキル。

戦闘続行:A+
 往生際が悪い。
 霊核が破壊された後でも、最大5ターンは戦闘行為を可能とする。
 ライダーは心臓に穴が空いてなお生き延びたことがある。

呪いの左目:A
 ライダーの呪われた左目。
 AKUMAとなった養父から受けた傷が変容したもの。本来はAKUMAに囚われた魂が視認できるが、スキルとして昇華され能力が若干変質している。
 自身を中心とした半径300m圏内の英霊及び英霊由来の存在(使い魔など)を探知。霊体化を強制解除させることができる。
気配遮断などの隠蔽系スキルは中程度の確率で無効化する。
 破壊されても極少量の魔力供給によって修復が可能。

エクソシスト:B
 悪性殺戮兵器「AKUMA」を刈る組織「黒の教団」に所属していた証。
 魔獣や魔性など、魔に属するものへの行動判定にプラスの補正。及び自身へのターゲット集中の効果が得られる。


993 : 黒白ノ奏者 ◆W7QaZkLeGg :2018/06/03(日) 23:37:24 vRgvRaws0

【宝具】

『神ノ道化(クラウン・クラウン)』
ランク:A 種別:対軍/対魔宝具 レンジ:1~20 最大捕捉:50人
 ライダーの左腕である神秘の結晶「イノセンス」の真の姿。
道化を連想させるフード付きの白いマントを纏い、左腕は大きな鉤爪に変貌する。
 この宝具を解放中、魔に属するものへの特攻、及びDランクの神性を獲得する。

 セイバーで召喚されれば、この宝具を転換(コンバート)した剣の宝具が追加される。
 

『ノアの方舟(メモリー・オブ・ノア)』
ランク:B+ 種別:結界宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:300
 全ての生物のつがいを乗せ、神の粛清を逃れたとされる船。見た目は巨大なキューブの形をしている。
宝具内への侵入はライダーが出現させる扉によってのみ可能。扉はライダーが行ったことのある場所であればどこでも出現させることができる。

 内部には白い街並みが広がっており、家々の扉は宝具内部の別の空間、あるいは外部へ通じている。
 この空間内はライダーの自陣扱いになる。敵対サーヴァントは全パラメータがダウン。及び宝具使用不能になる。
 外部からの干渉は、Bランク以上の神秘によってのみ可能。


『悪性絶無・種護運船(アーク・オブ・ノア)』
ランク:A++ 種別:結界宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:500
 「ノアの方舟(メモリー・オブ・ノア)」発現中に真名解放が可能。「殻を被るようにして」発現するため、上記の宝具の能力を丸々引き継いでいる。

 堕落した人類を滅ぼす大洪水を乗り越えた船───神とともに歩んだ人間・ノアと、すべての動物のつがいを乗せた「方舟」。
 これは、「伝承としてのノアの方舟」を再現した宝具である。
 真名解放時、外見は白い巨大な船の姿へと変貌する。

 宝具の内部と外部を完全に遮断。因果干渉や時空跳躍による攻撃をも無効化する。
 内部にいる間は、「死を観測されない」
 生命であれば、木端微塵になろうが、霊核が破壊されようが、仮死にすぎず。
 宝具の外に出ることで初めて死ぬことができる。 


 ライダーが自軍───「仲間」と認識したサーヴァントには以下の補正が付与される。

・属性が秩序、もしくは善ならば幸運以外のパラメータがワンランク、両方備えているならツーランクアップ
・混沌及び悪属性サーヴァントからの攻撃を十分の一カット。(攻撃と見なされない行動判定に、この補正は働かない)

 「船」というカテゴリにおいて世界でも屈指の神秘と知名度を誇るからこそ可能な、まさしく「奇跡の再現」である。
 しかし、ライダーは「ノアの方舟を所持している」という事実のみでこの宝具を所持しているため、
真名解放には「令呪の二画消費」という厳しい条件がつく。
 
【Weapon】

 小さい妖精のようなゴーレムを使い魔として使役できる。
 余談だが、本来「奏者ノ資格」はこのゴーレムとセットで初めて機能するが、スキルとして昇華されているためライダー単体でも問題なく機能する。

【解説】
 悪性兵器「AKUMA」を破壊するヴァチカン直属の組織「黒の教団」に所属する少年エクソシスト。

【サーヴァントの願い】
特になし。マスターを守る


【マスター】
ノエル・チェルクエッティ
【出典】
被虐のノエル
【マスターとしての願い】 
自分を陥れた市長とその秘書官への復讐……のはずだった。今は……?
【weapon】 
特になし
【人物背景】 
 ラプラス市に住む、ピアノの名門チェルクエッ ティ家に生まれた少女。
ラプラス市長であるラッセル・バロウズに騙され、大悪魔「カロン」と契約し、代償として四肢を失う。
 自身の不甲斐なさが招いた結果に、一時期は自分に復讐の資格はないと弱気であったが。
親友であるジリアンが巻き込まれたのを期に、ラプラス市すべてを敵に回してでも市長に復讐を果たすと、決意を固める。

 参戦時期は、海運会社アクエリアスで秘書官シビラ・ベッカーを屋上まで追い詰める直前から


994 : ◆W7QaZkLeGg :2018/06/03(日) 23:37:46 vRgvRaws0
投下終了します。


995 : ◆ZjW0Ah9nuU :2018/06/03(日) 23:48:38 uepcdwiQ0
皆様、投下お疲れ様です。
期限ギリギリになってしまいましたが、私も『Fate/Mythology――混沌月海神話』からの流用で微修正したものを一話を投下します。
多分1000レスまで残り少なく、足りないと思われるので投下終了宣言も同時にしときます。


996 : ようこそJapa-R.I.P.-arkへ ◆ZjW0Ah9nuU :2018/06/03(日) 23:52:44 uepcdwiQ0
見滝原の教会跡の外れに、人ひとり立ち入らない緑に溢れる雑木林があった。
開発され、街中の自然がほぼ人の手によるものとなった見滝原では異質で、鬱蒼と木々が生い茂る、まさに森と形容しても過言ではない場所だった。
そんなところに、根が浮き出ている土を踏みしめる音が立つ。
音源にあたる地点にいたのは、人間の男。 見た感じでは丸腰で、水色のTシャツにブルージーンズを履いているどこにでもいるような壮年に見える男性だった。
何故この地に足を踏み入れたのかは分からないが、男は殆どが幹と葉で埋め尽くされた周囲を見回すと、その場で黙々と作業にあたった。

手始めに、男は近くの木を素手で殴り始めた。
男は木を切るための斧すらも持っていないので、頼れるのは己の拳のみである。
特におかしいところはない。これは男が開拓する際に真っ先にやるべきことなのだ。
しばらく木の幹を殴っていると、やがてポン、という小気味いい音と共に、木の幹の一部が小さな立方体となって傍らに弾きだされる。
男はそれを拾ったのを皮切りに、周辺の木の幹を自らの拳で数本、立方体にして自身の懐に収める。
幹を取られた木の葉は何故か据え置かれていて宙を舞っていたが、時間が立つと次第にその姿を忽然と消していた。
おかしいところは何もない。

それなりの数の木を拾った男は、今度は立方体に変えた木の幹をさらに4つの木材へと変えた。
いや、厳密には原木を手作業で木材に加工した、と言った方がいいのかもしれない。
しかし、実際には魔法のように「変えた」としか形容のしようがないほどの手慣れた手つきだった。
男は次に、生まれた4つの木材を合成して作業台を製作した。
男がひょいと軽い手つきで腕を振ると、ポンという音と共に立方体の作業台が設置される。
上面には3×3マスの格子模様が、側面には作業用の道具などが取り付けられており、これでより複雑な道具を作成可能になるだろう。

そんな折、雑木林に二人目の来訪者が現れる。背後からは長い間隔で土を踏む音が男の耳に入ってきた。
しかし、土を踏む音はか細く何かを恐れているようで、男とは違ってこれといった目的を持って踏み入った者ではなかった。

「わぁぁぁっ!?」

男に寄ってきた誰かは、男を見て驚きのあまりその場に尻餅をついてしまう。
この場所に人がいることに驚いたかは定かではないが、悲鳴にこっちがびっくりしそうだと男は思った。
男が来訪者の方へ向くと、羽が二つ着いている穴の開いた帽子を被り、リュックサックを背負った中性的な外見をした子供がいた。
子供は、怯えた上目遣いで男を見上げる。

「た、食べないでください!」
「食べねえよ!ゾンビじゃあるまいし。いくら何でもビビり過ぎじゃないか?人をそんな目で見るんじゃない」

男はやれやれという形で肩をすくめながら言う。
誰しも過度に怖がられると不愉快な思いが多少は湧くものだ。
男は子供を相手に少しだけ陽気な成分を含んだ口調で話すも、子供は態度を変えない。
それどころか、子供の目は明らかに人間ではないモノを見る目を宿していた。

「ヒト…?ヒトって、そんな形をしているんですか!?」

子供は男の姿を見た上で言った。
子供がそう言うのも尤もで、男の身体構造はヒトというにはあまりにもかけ離れていた。
作業台や収集した木の幹と同じく立方体の頭部に、関節のない四角柱の形をした手足、そして幾何学的な直方体の胴体。
男の体は、全て角ばった四角でできていた。

「いや、俺は元々こんなだから人間が全員そうってわけじゃないさ。ここは見滝原でも辺境だから俺達以外誰もいないが、街の方へ行けばきっとアンタと似た外見のヒトもいるだろうよ」
「ヒトがいるって…じゃあ、ここはジャパリパークじゃないんですか!?」
「ジャパリパークってのはどこだか知らねえが、そういういことになるな」


997 : ようこそJapa-R.I.P.-arkへ ◆ZjW0Ah9nuU :2018/06/03(日) 23:54:32 uepcdwiQ0

子供は考え込むように俯き、混乱が抜けきっていないようだった。

「低い声…髭も生えてますけど、もしかしてオス…じゃなくて男のヒトですよね?」
「オスって、随分とませた言い方だな…見りゃわかるだろ?」

男は立方体の頭部にある無精髭を関節のない手で指しながら言う。
子供も考える力はあるようで、努めて冷静になろうとしている。

「…ということは、あなたはフレンズさん、じゃないんですよね?」
「ふれんず?いいや、俺は確かにヒトだが、サーヴァントだ。“クラフター”のサーヴァント。そのくらいは知っといてくれよ、マスター。
真名は…特に名はなかったが、民間伝承じゃあ『スティーブ』なんて呼ばれてたらしい。何はともあれ、よろしくな」

スティーブは子供――かばんに、しっかりしてほしいという意味合いも込めて答える。
マスターから離れた場所で、サンドスターによりフレンズが生まれるが如く自然発生的に召喚されたからか、少しばかり見つけるのに手間取ってしまったが、
あの様子からしてこの子供が記憶を取り戻した自身のマスターで間違いないだろう。
こんな辺境にNPCがのこのこと顔を出すとも思えない。

「僕は…かばんっていいます。でも、クラフターさんがサーヴァントってことは…聖杯戦争…やっぱり、ボクはあの後――」
「何かあったのか?サーヴァントなんだから、話はいくらでも聞いてやるぜ?」











――ありがとう、元気で。





かばんが最後に見たのは、巨大化した黒いセルリアンが自身に覆いかぶさってくる光景だった。
決死の思いでセルリアンに飲み込まれたサーバルを救出し、どこまでも付き添ってくれた親友を守らんがために囮になり、かばんはそのままセルリアンに捕食された…筈だった。

泥とも取れぬドス黒い流体に飲み込まれ、意識が無くなったかと思うと、気が付けば木々の生い茂る雑木林の中。
付近にはフレンズどころか、動物のいる気配すらなかった。
そしてしばらくして脳裏に浮き出たのは、セルリアンに飲み込まれた時の生々しい感覚と『聖杯戦争』『ソウルジェム』という単語。
「ヒト」のフレンズとして生まれてからというものの、ヒトの社会に溶け込んだことがないかばんには、そもそも聖杯戦争という単語はもちろん、魂のような形而上的な概念を理解するには少々レベルが高すぎた。
そしてわけもわからずに雑木林を彷徨っていると、離れたところでいつの間にか召喚されていたスティーブと出会った、というのが事の次第である。

「へえ、マスターにもいろいろあったってワケか」
「いきなり見滝原ってところに飛ばされたのはびっくりしましたけど、確かに僕以外のヒトに会えると思うと嬉しい気持ちはあります」
「マスターなりに、頑張ってきたんだな」
「い、いえ、そんな…」

自身の覚えていることをできる限りスティーブに伝えたかばんは、帽子を深く被る。
眼前にいる四角形でできている自身のサーヴァントは、話してみると悪い人柄でもなさそうだった。
ジャパリパークで出会ったたくさんのフレンズには見られない「男」ではあるが、それは同時にフレンズの枠に入らない生粋のヒトでもあるということだ。
外見こそ驚いたが、そこはヒトもフレンズも同じ、十人十色、博士の言っていたように多様であることを表しているのかもしれない。

「だが、ヒトに会ってそれからどうするんだ?マスターはもうここに来ちまった。もう後には引き返せない。
既に知ってるだろうが、聖杯戦争は有体に言えば殺し合いだ。もしかしたら、かばんちゃんが本当に食われるなんてこともあり得るかもしれない」

ここはジャパリパークではなく、聖杯戦争のために再現された見滝原という場所で、街にはかばんと同じヒトが住んでいる。
それはかばんの探し求めていたヒトの住むちほーがあることを意味していたのだが、それをかばんは素直に喜ぶことはできなかった。

「それはもう、わかっています。正直に言うと、セルリアンに襲われた時よりも怖いです。でも、あんな別れ方でよかったのかなって…」

かばんはジャパリパークでの旅の中で出会ってきたフレンズを思い返す。
思えば、サーバルにも、ラッキービーストにも、フレンズの皆にも別れの一言も言えずにここに来てしまった。
そして、気付けばまた独りぼっち。
傍にはスティーブがいるものの、かばんのジャパリパークでの思い出は切り離せないものになっていた。

「だから、もし叶うのなら、もう一度ジャパリパークに帰ってみんなに会いたいんです。あのままだときっと、サーバルちゃんも、パークの皆さんも悲しませてしまいます」
「けどな、マスター。もう一度言うが、一旦聖杯戦争に首を突っ込めばいつ抜け出せるか分からねえ。正直、俺の力だけじゃかなり厳しいものがある。それでもやるのか?」


998 : ようこそJapa-R.I.P.-arkへ ◆ZjW0Ah9nuU :2018/06/03(日) 23:55:40 uepcdwiQ0
スティーブは立方体に浮き出た顔を険しいものに変えてかばんに忠告する。
スティーブのクラフターとしての能力は、即ちモノづくりに特化した能力だ。
道具作成や拠点づくり、地形変動には長けるが、三騎士ほど直接的な戦闘に秀でているとは言い難く、パラメータも並のサーヴァントよりも劣る。
聖杯大戦のようなチーム戦ならまだしも、この聖杯戦争はあくまで個人戦だ。
そうなればスティーブのようなサーヴァントは同盟なりを駆使して泥臭く勝利を勝ち取っていくしかない。

「僕が願うとするなら、『フレンズの皆さんにまた会うこと』です。これから色んな人に出会うと思いますから」
「…そうか」

かばんに対して、スティーブは何も言わずに小さく頷きながら答える。

「これまでの旅の中で、フレンズの皆さんは力のない僕を何度も助けてくれました。
だから、ジャパリパークのフレンズさん達のように力になってくれるマスターさんやサーヴァントさんもきっといると思うんです。クラフターさんだって――」

かばんはスティーブをじっと見据える。
純真ながらも力強い視線に、スティーブは恥ずかしげに目を逸らし、作業台へと向かっていった。

「…よし!まずはしっかりとした拠点作りだな!『来客』のためにも広めに、武器も多めに作っておこうか。マスターも手伝ってくれるか?」

数拍子置いて、スティーブの意図を汲み取ったかばんは元気よく「はい!」と返事し、スティーブの方へ向かっていった。




【クラス】
クラフター

【真名】
スティーブ@Minecraft

【パラメーター】
筋力C 耐久C 敏捷E 魔力C 幸運B 宝具B+

【属性】
中立・善

【クラススキル】
道具作成:C(EX)
ツルハシに剣、鎧、果てには加工素材からポーションまで、スティーブのいた世界に存在したあらゆるモノを製作することができる。
作成には相応の素材が必要になるが、『匠の境地』を発動している間はその限りでなく、ランクも()内のものに修正される。
なお、スティーブの場合は作成とは逆に解体も可能。

【保有スキル】
専科百般:A
スティーブが元いた世界を開拓するにあたって、多方面に発揮されていた才能。
武術、馬術、農業、牧畜、鍛冶、狩猟術、交渉、破壊工作、その他様々な専業スキルについて、Cクラス以上の習熟度を発揮できる。

陣地建築:E〜A+
自らに有利な陣地を作り上げる、というより建築する。
ほんの小さな家から神殿クラスの城まで、スティーブの腕次第で自由自在に展開することができる。
ただし、基本的に陣地のランクに比例して作成に時間がかかる。

【宝具】
『匠の境地(クリエイティブ・モード)』
ランク:C+ 種別:創造宝具 レンジ:自分 最大捕捉:-
あらゆるモノを投入して荘厳な建造物を創り上げたスティーブが至った高みであり、クラフターたる所以。
この宝具を発動すると、あらゆる攻撃に対して無敵かつ飛行が可能になり、無から有を創り出すことまでもが可能になる。
本来は素材を集める必要があるものもこの状態ではその場で自由に創造でき、基本的にスティーブのいた世界にあったモノは全て取り出すことができる。
なお、この状態のスティーブはマスターが死なない限り不死身だが、この宝具は文字通り創造するための宝具であるため、
敵を倒す目的には使えず、敵を攻撃した場合は自動的に宝具の効果が解けてしまう。
敵の一切の干渉を寄せ付けないため、陣地を作成したり、地形を変えたり、道具素材を用意するなどあらゆる方面で有用だが、同時に穴も多い。

『付呪の台座(エンチャント・テーブル)』
ランク:B+ 種別:付呪宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
本、ダイヤモンド、黒曜石から作成できる、アイテムをエンチャントするための宝具。
スティーブはこれを多用していたため、あらかじめ宝具として所持している。
その名の通り、武器などのアイテムを強化することができる。
本を介して様々な概念が付与されるが、どんなものが付くかは運次第。
付与された概念にもよるが、エンチャントしたダイヤモンドの剣ともなれば、高ランクの宝具とも遜色ない出来になるだろう。
付近に本棚があれば、より高レベルのエンチャントが可能になる。
なお、『ドロップ増加』のついた武器でサーヴァントを倒すと2騎分の魂を複数落とすことがある。


999 : ようこそJapa-R.I.P.-arkへ ◆ZjW0Ah9nuU :2018/06/03(日) 23:58:00 uepcdwiQ0
『箱庭の天国(ザ・ワールド・イズ・マインクラフト)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:-
範囲内のモノを立方体のブロックで構成された世界のモノに置き換える宝具。
この宝具の範囲内にあるものは、すべてスティーブの見てきた立方体のブロックで構成された物に置き換わってしまう。
それは生物やサーヴァントも例外でなく、スティーブのような角ばった四角形で構成された身体に状態変化してしまう。
その状態の身体に慣れていない内は行動に著しい制限を食らうことになり、スティーブ以外の者は殆ど無力化されてしまう。
性質としては空想具現化に近いが、人工物や生物にも影響を与えるという点では固有結界の性質も併せ持っている。

【weapon】
・製作した剣や斧など。威力は使った素材によって変化する。

【サーヴァントとしての願い】
かばんちゃんを元の世界に還す

【人物背景】
Minecraftでのプレイヤーの使用する標準スキン。一般的にスティーブと呼ばれているため、それが真名として定着している。
原作でもこれといって台詞はなく、口調は書き手各々の想像に委ねられている。
把握の際には、Minecraftのシステムへの理解に重点を置くといい。




【マスター】
かばん@けものフレンズ

【マスターとしての願い】
ジャパリパークへ帰る。

【参戦方法】
黒いセルリアンの内部でソウルジェムを手に入れた。

【weapon】
特になし

【能力・技能】
身体能力は他に比べて劣るが、他のフレンズに比べて一線を画した知能と観察力、発想力を持つ。
一応、身体能力も木登りをできる程度までには成長している。

【人物背景】
けものフレンズの主人公。
名前や出自を含むこれまでの記憶が一切なく、気が付いた頃にはさばんなちほーを宛てもなくさまよい歩いていた。
「本名がわかるまでの間の名前」として、背中に背負っていた鞄(かばん)に因み「かばん」という仮称を与えられ、以降は彼女自身も周囲に対してこの名前で自己紹介している。
性格は温厚で心優しく控えめ、若干気弱なところもある。言葉遣いは丁寧で、打ち解けた関係になった後のサーバルを除き、ですます口調で話しさん付けで名前を呼ぶ。
身体能力は他のフレンズに比べ著しく劣り、「潜水」や「飛行」といった能力も持たない。
一方で、他のフレンズたちとは一線を画した知能と観察力、発想力を持ち、旅の間、行く先々で出会ったフレンズの抱える問題ごとを次々と解決している。

参戦時系列は11話のラストから。
此度の聖杯戦争では、さばんなちほーを宛てもなく彷徨い、そのフレンズにも属さなかった背景を反映してか役割が設定されていない。
要するに、浮浪児である。

【方針】
積極的に同盟を組み、フレンズもとい主従達と脱出を目指していく。


1000 : ようこそJapa-R.I.P.-arkへ ◆ZjW0Ah9nuU :2018/06/04(月) 00:00:00 aGjt70uc0
いちたりた!

>>998の『2騎分の魂を複数を』は厳密には『複数騎分の魂を』ですので一応修正しときます。

投下終了します。


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