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クライシス・ロワイヤルno.1

1 : ◆Dbja0ebxMY :2017/10/31(火) 19:15:13 FmOfOprI0
※当ロワは非リレー企画です。


【当ロワの特徴】
・基本的にはバトルロワイヤルのルールにのっとった『殺し合い』です。
・当ロワの大きな特徴として、『参加者の制限がほぼない』ことが挙げられます。
・また参加者の大半が持参品を持ち込んでおり、『道具としての支給品がほぼない』こと、
 『戦闘の舞台が宇宙そのもの』も特徴です。
・故に『首輪』に相当するモノがありませんし、俗にいう禁止エリアも存在しません。

【生還条件】
・『殺し合いに勝ち残ること』です。
  
【舞台】
・各参戦作品の世界観をモチーフにした宇宙=星々です。
 舞台全域は宇宙全土ですが、範囲的には大銀河団程度でしょう。
 ただし、現実の宇宙に比べて圧倒的な強度(物理法則の違い)があるようです。


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2 : 名簿 ◆Dbja0ebxMY :2017/10/31(火) 19:16:35 FmOfOprI0
【主催】オンスロート
【NPC】ドームズディ(複数)、センチネル(複数)、魔人ブウ(純粋悪)

【虚無戦記】
虎/夢幻弥勒/真田幸村/霧隠才蔵/ラ=グース細胞
5/5
【DORAGON BALL】
孫悟空/ベジータ/ブルマ/クリリン/セル/フリーザ
6/6
【DORAGON BALL Z】
ブロリー/クウラ/ターレス/孫悟飯(未来)/ヤムチャ
5/5
【DORAGON BALL 超】
ゴクウブラック/ザマス/ヒット/トランクス(未来)
4/4
【BLEACH】
黒崎一護/藍染惣右介/井上織姫/日番谷冬獅郎/浦原喜助/更木剣八
/バラガン・ルイゼンバーン/グレミィ・トゥ・ミュー/アスキン・ナックルヴァール/ユーハバッハ
10/10
【ハートキャッチプリキュア!】
花咲つぼみ/来海えりか/明堂院いつき/月影ゆり/ダークプリキュア/サラマンダー男爵
6/6
【ジョジョの奇妙な冒険】
空条承太郎/ジョルノ・ジョバーナ
2/2
【ジョジョの奇妙な冒険・アイズ・オブ・ヘブン】
天国に到達したDIO
1/1
【HELLSING】
アーカード/アレクサンド・アンデルセン/セラス・ヴィクトリア
/インテグラ・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング/少佐(モンティナ・マックス)
5/5
【SUPERMAN】
スーパーマン/スーパーマン/ロイス・レーン/レックス・ルーサー
4/4
【BATMAN】
バットマン/ジョーカー/ジム・ゴードン/カーマイン・ローマン・ファルコーネ/レッドフード(ジェイソン)
5/5
【JUSTICE LEAGUE】
ワンダーウーマン/グリーンアロー/ダークサイド/デスストローク
4/4
【X-MEN】
ウルヴァリン/フェニックス/ケーブル/アポカリプス
4/4
【sAVENGERS】
キャプテン・アメリカ/アイアンマン/ソー/ハルク
4/4
【DARK AVENGERS】
ノーマン・オズボーン/セントリー
2/2
【キルズ・マーベル・ユニバース/What'IF】
パニッシャー
1/1
【FANTASTIC FOUR】
リード・リチャーズ/Dr.ドゥーム/モレキュールマン/シルバーサーファー
4/4
【WATCHMEN】
Drマンハッタン/オジマンディアス/ロールシャッハ
3/3

【総勢】75/75


3 : フォーエバー・クライシス/宇宙最後の7日間 ◆Dbja0ebxMY :2017/10/31(火) 19:17:37 FmOfOprI0

 ザマスとの死闘を終えたトランクスは、全王によって消滅した世界から、
 分岐しているであろう世界へと向かうために、タイムマシンに乗り込んだ。

 時間流の中で、最愛のパートナーであるマイと共に、
 新しい世界への期待。やっと訪れるであろう平穏な世界へ思いをはせ、
 一抹の不安を抱えながらも心は穏やかであった。

 タイムマシンが強い光に包まれる。
 時間移動の終わりを告げるそれを見届け、そしてトランクスは世界から消えた。


 トランクスが異変に気付いたとき、そこは、闇の中だった。


 ■


 バットマンは高台からゴッサムを見下ろしていた。
 彼の眼下には夜だというのにめまぐるしく光が行きかっている。
 世界は一時的に平和を謳歌している。この街も例外ではない。
 しかし今、バットマンの胸中にあるのは地球を守って殉死した友への想いだった。
 
 彼は――スーパーマンは、異星人だった。
 半神存在とも謳われ、それでも地球を愛し、人間の為に力を振るった。
 彼の正義には疑問を感じることも多かったが、彼の正義感と優しさだけは、
 リーグの誰よりもバットマンは認めていたのだった。

 しかし、彼は死んだ。

 半神存在――世界最強の超人――の死が、これから世界に何をもたらすのだろう。
 世界最高ともいえる頭脳にすら、その答えは出せない。

 考えを巡らせていると、ふと、空にシンボルが浮かび上がる。
 それは自分を求めるサインだ。ここ最近、やっと街の人々の心に、
 恐怖の、あるいは希望のシンボルとして、
 自身の存在が認知されてきた証左でもあった。

 肩を唸らせ、バットマンは跳躍した。

 そして、彼は世界から消えたのだった。


4 : フォーエバー・クライシス/宇宙最後の7日間 ◆Dbja0ebxMY :2017/10/31(火) 19:18:11 FmOfOprI0
 ■


 前へ、ひたすら前へ。
 血肉の壁を斬り崩し、戦列を真っ向から斬り伏せ、
 アンデルセンはアーカードへと向かう。

 この幽鬼どもの奥で、アーカードは笑っているのだろう。
 傲岸不遜に、吸血鬼として、鬼として、怪物として。
 アンデルセンは理解している。

 これは少佐の、あの狂った男の掌の上であると。
 壊滅するロンドン。武装神父隊。吸血鬼の親衛隊。そして自分。
 あの狂った男は、50年の歳月をこの瞬間の為に用意していたのだろう。
 ただそれだけの為に生きてきたのだろう。

 それほど周到な男が、「この後のこと」を考えていないわけはない。
 だからこそ、いや、それも含めてアンデルセンは血の道を駆け抜ける。
 あんな男の思い通りになど、させるものか、と。
 あの男が、あれほど執着していることを。
 アーカードを倒すことを。戦争に勝利することを。
 あの男の筋書きを、あの男の50年を台無しにしてやろうじゃないか。
 横っ面を殴りぬけて、せめて悔しがらせてやろうじゃないか。
 でなければ茶番劇のコマにされ、他人の筋書きに踊らされ、舞い上がり、そして哀れに死んだ。
 一人ぼっちで死んだマクスウェルが浮かばれない。
 先生として、アンデルセンとして、あの大ばか者をただの大ばか者で終わらせるわけにはいかない。

「シィィィィィッッツ!!」

 バヨネットを振り斬る。血潮を巻き上げ薙ぎ払われた兵士の果てに、
 愛しき怨敵は立っていた。アーカードは立っていた。

 ほんの一瞬、疲れからか呼気が漏れるとともに気が抜ける。
 口から茹った吐息が頬を伝わり、アンデルセンは再び気を引き締めた。

「さすがはイスカリオテ、さすがはアレクサンド・アンデルセン」

 アーカードが笑う。混じりけのない歓喜の笑みだ。
 そうだろう、お前はやっと。お前の願いはここで適うが、叶わないのだ。
 笑え。
 笑え。

 アンデルセンが腕を振りぬく。隠し持っていた切り札の感触を確かめたその時。
 彼の意識はぷつりと途切れた。


5 : フォーエバー・クライシス/宇宙最後の7日間 ◆Dbja0ebxMY :2017/10/31(火) 19:18:37 FmOfOprI0
 ■


 
「闇にようこそ。愚かな生物たちよ」

 トランクスの視線の先に、光がともった。
 光はあっという間に膨れ上がり、トランクスが遥かに見上げるほど大きな形となった。

 甲虫を思わせる赤い鎧。人工物を思わせる巨大な爪を携え、
 赤いヘルメットから光る両目らしきものがトランクスを見下ろしていた。

「な、なんだおまえは!? ここはどこだ!?」

 自分をこの闇の世界に連れてきたのは、間違いなくこの『何か』だ。
 確信があった。目の前の『何か』はこれまでかつて感じたことのないまがまがしい気を放っている。
 剣に手を伸ばす。ワケは全く分からないが、こいつは敵だ。

「我が名はオンスロート。怒れる神なり」

 オンスロートの声は、トランクスの体を震わせた。
 地平線の果てまでも響きそうな重低音は、オンスロートのおぞましさを助長している。
 オンスロートは、まるでトランクス以外にも話をするように続ける。

「貴様等には今から殺し合いをしてもらう。拒否することはできぬ」
「なっ!?」


 ■


「……どういうことだ?」

 闇の中、バットマンは眼前に揺らぐオンスロートに言った。
 静かな声が闇に溶けていく。物怖じしないのは決して強がりではない。
 バットマンは世界最高の探偵でもある。
 現状を瞬時に分析し、少しでもオンスロートから情報を引き出そうとしているのだった。

「聞き返すとは、らしくないのではないか? 世界最高の探偵よ」

 オンスロートもまた、超越した態度を崩さず答えた。
 おそらくバットマンの意図を把握しているようだった。
 やはり並の相手ではない。手こずりそうだと思った。

「今私は異なる次元ごとに同時に話している。私の選びし戦士たちに、だ。
 私はすべての生物を滅ぼすもの。全能の神である。
 その私が告げる。ミュータントも人類も、全ての生物に生きる価値はない」

 バットマンの脳裏に、アンチモニターと名乗った破壊神が浮かぶ。
 なるほど。オンスロートもまた、その手合い。
 超人類という意味での神ではなく、
 その力――あるいは全能性において、真の意味で神に名を連ねるものという事だろう。


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6 : フォーエバー・クライシス/宇宙最後の7日間 ◆Dbja0ebxMY :2017/10/31(火) 19:18:57 FmOfOprI0
 ■


「神だと……」

 アンデルセンはかつてないほどの憤りを感じていた。
 怨敵との決着。高まっていたモチベーションをフイにされ、
 あげく目の前の『こいつ』は高らかに全能の神を自称している。

 まるで自身を怒り狂わせるためだけに存在しているようなやつだ。
 ここに自分が居合わせることに、主の意図を感じずにはいられない。

 アンデルセンはバヨネットを構えた。
 千切れかけていた腕は、オンスロートの力によるものか元通りである。

 しかし、そこまで。
 体はピクリとも動かず、身震いすらできなかった。

「ぐぉお、おおお……」
「愚かな。私の力を理解できぬかイスカリオテのユダよ」
 
 
 ■


「くそおおおおっ!!」

 トランクスもまた、剣に手をかけたままピクリとも動けずにいた。
 筋肉を動かす動かせないという話ではない。
 超サイヤ人になることさえできないのだ。
 まるで意志以外の全てをオンスロートに握られているようだった。

「無駄な抵抗はよすがいい。今私の前で貴様らが存在できているのが、
 私の単なる気まぐれであることすら分からないのか?」

 オンスロートの言いたいこと、それは自身がトランクスの力の規格を
 はるかに超える力を有しているということだった。
 トランクスは全身に力を込める。
 父ベジータがここにいれば『限界を打ち破ることがサイヤ人だ』と激を飛ばすだろう。
 神を名乗るモノに翻弄されたまま終わっていいのか。
 
「う、うああああああああ!!!」

 少し、ほんの少しだがトランクスの指が動いた。
 得体のしれない力に押さえつけられた肉体がぎりぎりときしむ。
 ヘルメットをしているから、と言うわけではなく、オンスロートの表情はうかがえない。
 淡々と言葉を紡ぐさまを見るに、まるで眼中にないのは確かだが……。

「参加する全生物の名前だけは、貴様らの脳に直接送りつけよう。
 舞台はある宇宙全域だ。貴様等ごときの力ではどうあがても破壊できぬ牢獄を用意した」


 ■


「宇宙だと……」

 バットマンが訪ねた。
 マルチバース<並行宇宙>が存在していることは、
 クライムシンジケートの存在で明確になっている。
 反転世界、アンチモニターに滅ぼされた宇宙。
 オンスロートもまた、一つの宇宙を既に滅ぼしているということか。


7 : フォーエバー・クライシス/宇宙最後の7日間 ◆Dbja0ebxMY :2017/10/31(火) 19:19:19 FmOfOprI0
 ■


「ふざっけんじゃねぇ!!!」


 トランクスの耳に、バットマンの耳に、アンデルセンの耳に、
 闇を引き裂くような怒号が炸裂した。
 バットマンが振り返ると、しかしそこには闇しかない。
 だが、目に見えないが、確かにそこから言葉にできないほど
 膨大なエネルギーがあふれ出してきている。

「てめぇ! オンスロートとか言いやがったな!!
 てめぇもラ=グースの一味……、神の軍団の一人か!!」

 エネルギーの正体を、バットマンは察する。
 これは怒りと憎しみ感情だ。感情がエネルギーとして具現化し、
 声の主からあふれ出しているのだ。

 オンスロートは、自身を貫かんばかりの怒号を受けて、
 初めて笑みを浮かべた……のかもしれない。

「貴様等の力など私に通じぬことがまだわからんのか」

 オンスロートが優雅に爪を振るうと、背後の闇がカーテンのように開かれ、
 オンスロートをはるかに超える巨人が現れた。

 新たなる脅威かとバットマンが身構えたが、すぐに疑問が浮かんだ。
 巨人は、深緑のフードをかぶっていた。ブーメランパンツをはいており、
 体系、骨格こそ人間体だが陶器のように色白の肌は、とても人間のそれではない。
 そしてなによりの疑問がある。巨人は既にボロボロになっていた。顔は力なく項垂れており、
 見上げ果てた先にあるであろう両腕は、何かに縛られて固定されている。

「スペクター!!! は、ハルか!!?」

 またどこからか声が響いた。
 スペクター……、バットマンは考える。
 どこかで聞いた名だ。どこかで見たことがある様な気がする。

「きょ……、脅威が……」

 巨人――スペクターは振り絞るように声をだした。
 それを合図にしたように、オンスロートは初めて明確に笑みを見せた。
 狂気的な、ものを。

「我が力を見るがよい。私に逆らうとどうなるか知るがよい」

 オンスロートがスペクターに手をかざすと、スペクターは苦しみ始めた。
 体の内側から光が溢れだし、そして――――爆発した。

 スペクターを木端微塵にしたオンスロートは笑う。


「さぁ、ゲーム開始だ。我を楽しませるがいい」 


【スペクター@DCコミックス 消滅】

【主催】オンスロート
【クライシス・ロワイヤル:ゲームスタート】


8 : フォーエバー・クライシス/宇宙最後の7日間 ◆Dbja0ebxMY :2017/10/31(火) 19:19:44 FmOfOprI0
【キャラクター簡易解説】
『オンスロート』
 マーベルコミックスに登場。X-MEN創始者プロフェッサーXと宿敵マグニートの
 負の感情と能力が混ざり合って生まれた怪物。
 世界最強のテレパス能力と世界最強の磁気操作能力を有し、
 全ての人類、ミュータントを滅ぼすことを決めた。
 のちにジャガーノートのサイトラックの魔石(持ち主を無敵にする石)、
 現実改変能力=全能のミュータントであるフランクリン・リチャーズ、
 際限のないパワーを持つX-MANのネイト・グレイを取り込み、
 事実上全能の神的存在=コズミック・ビーイングに等しい存在になった。
 『オンスロート』本誌においてマーベルヒーローがほぼ全軍で挑み、
 X-MEN以外のヒーローチーム。ファンタスティック・フォー、アベンジャーズの
 犠牲を払って滅ぼすことができた。 

 当ロワのオンスロートは全能の力は有しているようだが……?

『スペクター』
 DCコミックスに登場する天使。人間を依り代とする復讐の精霊。
 主(プレゼンス)から「そうあれかし」と望まれる範囲まで全能の力を行使できる存在。
 DCコミックス全体でも上位に入る力を持つ存在であり、
 DCにおけるコズミック系の話の際にはよく主役級として登場する。
 普通のヒーローとして扱うにはあまりにも強すぎるためか、
 大型クロスオーバーではしょっちゅう噛ませ犬にされる可哀想な存在でもあるが、
 本領を発揮した場合は少なくとも普通のヒーロー、ヴィラン程度では全く歯が立たないほど強い。
 初代はジム・コリガンという刑事。二代目はハル・ジョーダンだが、
 当ロワのスペクターははたして……?


9 : ◆Dbja0ebxMY :2017/10/31(火) 19:21:17 FmOfOprI0
続いて投下します


10 : ティータイム&M ◆Dbja0ebxMY :2017/10/31(火) 19:21:57 FmOfOprI0

「はぁ〜、マジかよ」

 持参した水筒からカフェオレを注ぎながら、ナックルヴァールは尽きることが無い
 どうしようもなさに頭を抱えていた。
 尸魂界侵攻。まぁOK。霊王宮に攻め込んだ。まぁOK。
 ワイルドリーゼントに追いかけられた。まぁまぁOK。

 だがそこから記憶が、というか意識が途切れて、気付いたら
 オンスロートなるバケモンに殺し合いに参加させられているこの現状。
 全くOKではない。
 なんでこんな面倒なことに自分がまきこまれなければならないのか……。
 とはいえ、ナックルヴァールはその辺のやつに殺される気はさらさらない。
 問題は別にあった。

「なーんで陛下まで参加してるかな〜コレ」

 オンスロートの言ったように、念じると頭に名前がずらずらと並ぶ。
 参加者一覧という事だろうが、その中にユーハバッハの名前があったのだ。
 おまけにグレミィ・トゥミューの名前まである。
 よりによって聖十字騎士団きってのバケモノと、
 自身が絶対敵わないと確信を持って言える人物が同じ舞台に立っているのだ。

「陛下と殺しあう? ムリムリムリ。勝てるわけねーだろオイ」

 もうこの時点でヤル気ゼロである。勝ち残れる気もゼロである。
 もっと恐ろしい事実は、陛下やグレミィですら『参加者側』として
 オンスロートに連れてこられていることだ。

 つまりあのオンスロートはグレミィや陛下を同時に相手取っても
 余裕であしらえるくらい強い可能性があるという事だ。
 ますますもって気落ちする。
 カフェオレが気持ちいつもよりまずい気がする程度に。

 そのほかにも藍染惣右介だの、黒崎一護だの、浦原喜助だの、更木剣八だの、
 特記戦力がほぼ全員そろってるじゃねーかと思わず突っ込みを入れた。


11 : ティータイム&M ◆Dbja0ebxMY :2017/10/31(火) 19:22:20 FmOfOprI0

「あ〜ダメだわコレ。やる気でねーわ」

 カフェオレを飲み終えてごろんと寝ころんだ時、ナックルヴァールを呼ぶ声が響いた。

「おい! 貴様! 何者だ!?」

 しんどそうに眼を開いて相手を見る。
 その人物は空に浮かんで両手を組み、力強い目つきでこちらを見下ろしていた。
 全身紺色のぴっちりタイツ。逆立った黒髪。

「はぁ〜っ。なんだオッサン? 俺に何か用?」 

 変態の類な格好のそいつは、もう普通ではないことは明らかだ。
 見るからに強そうだし、ていうか死神や滅却師みたいに足場作って空を歩くとかじゃなく、
 どうみても空飛んでるし。

「貴様はこのくだらんゲームに参加しているのか」
「…………」
 
 見てわかんねーのかよオッサン。ナックルヴァールは心の中でツッコんだ。
 意気揚々と、殺し合いしよーぜヒャッハー! な奴が
 カフェオレで一息ついて寝っころがろうとするかフツー。

「参加っていうかやる気ねーよ。つかオッサン見てわかんねー? 俺そんなにイケイケな奴に見えてる?」
「だったらこんな目立つところで堂々と寝ころぶな! 
 このゲームには恐ろしいバケモノが参加しているんだぞ!!」
 
 知ってます―。思わずまた心の中でツッコんだ。

「オッサンさぁ」
「ベジータだ! オレはベジータ様だ! オッサンではない!」
「へいへい。名乗られたからには名乗ってやるか。
 俺はアスキン・ナックルヴァール。このゲームとやらは、端っからやる気がわかないってトコロさ」

 ベジータと名乗る男はナックルの正面に降り立つと、フンと鼻を鳴らした。


12 : ティータイム&M ◆Dbja0ebxMY :2017/10/31(火) 19:24:01 FmOfOprI0
「アンタこそ殺し合いにノってるわけじゃないよな?」
「当たり前だ! このベジータ様があんなクソヤローの言うとおりに動いてたまるか!!」

 ベジータって他にいるのかよ……。という突込みは置いといて、
 とりあえずナックルは立ち上がった。髪を整えて、ふぅと息を漏らす。

「それがいいぜ。どうせ陛下には誰も敵わねェんだ」
「陛下? 誰だそれは」
「知らねぇってのは幸せだぜ。ベジータさん」

 ナックルは半ば投げやりに陛下のことを話した。
 『全知全能』のこと、滅却師のこと、死神のこと、今この場にいる知る人物のこと。
 
「とまぁ、こんな感じだ。わかっただろ? 陛下には誰も勝てねぇって」
「そうか?」
「ハァ!?」
 
 あっけらかんと即答したベジータに、ナックルは驚き、飽きれた。
 自分の説明が足りなかったとさえ思った。

「いやいやいや、陛下はなぁ」
「未来を改変するだと? じゃあ今ぶっ殺せばいいだけだろう」
「いや、だから今って時は――」
「そんな奴より、魔人ブウの方が問題だ」

 哲学的な話になりかかる前に、今度はベジータが語り始めた。
 フリーザ、セル、魔人ブウ。どれもこれもナックルの予想を斜め上にぶっ飛んだ話だった。

「星の地上げ屋に、究極生物に、神さまぶっ殺しまくりの魔人……。
 ゴメン。なんつーか確かに陛下にも勝てるかもしれねーなそいつら……」
「フン、だがフリーザとセルのヤロウはオレからすれば大したことはない。問題は魔人ブウだ」
「…………」 

 全ての話をとても信じる気にはなれなかったが、ベジータの口ぶり、
 話からすれば魔人ブウ以外の二名は簡単に倒せるとのことだった。
 ナックルは考える。

「……なぁ、ベジータさん。俺アンタについてってもいいか?」
「なんだと?」
「俺は搦め手ってやつには強いんだけど、単純なパワーの押し付け合いには弱いのよ。
 ましてやその魔人ブウってやつは、星を簡単にぶっ壊す様な奴なんだろ?
 そんなやつら相手にしてたら俺なんかあっという間に殺されちまうぜ」
「……いいだろう。ただしオレについてこれるならな……!」
 
 ベジータが空に浮いた瞬間。しかしナックルは座り込んだ。

「まぁ待ってくれって。もうちょっと話しよーぜ」
「チッ」
 
 舌打ちを鳴らしながらも、ベジータは再びナックルの隣に降りた。

「ん? ちょっと待ってくれ。名簿にゃ魔人ブウなんて名前ねぇけど……?」
「フン、キサマにはわからんだろうがな、オレにはわかるんだよ」


13 : ティータイム&M ◆Dbja0ebxMY :2017/10/31(火) 19:24:22 FmOfOprI0
【尸魂界、改変された霊王宮を再現した惑星/一日目朝】


【アスキン・ナックルヴァール@BLEACH】
[状態]:健康
[装備]:カフェオレ入り水筒
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:やる気なし
1:ベジータについていく。
2:陛下を始め、知っている人物にはなるだけ会いたくない。
3:ベジータの話した奴らとも会いたくない。
[備考]
※参戦時期はグリムジョーに追いかけられていた途中。
※フリーザ、セル、魔人ブウ、孫悟空について知りました。

【ベジータ@DRAGON BALL】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:オンスロートをぶっ殺す
1:フリーザとセルをまず殺す。
2:カカロットを探す
3:魔人ブウと遭遇したなら戦う。
4:陛下とやらも殺す。
[備考]
※参戦時期は原作42巻。生き返った直後です。
 生き返った直後ですが、問題なく全力で戦えます。
※BLEACHの参戦キャラについて知りました。


14 : ◆Dbja0ebxMY :2017/10/31(火) 19:25:24 FmOfOprI0
続いて投下します。本日はここまでです


15 : 天使vs悪魔 ◆Dbja0ebxMY :2017/10/31(火) 19:26:04 FmOfOprI0
 散弾のように放たれたエネルギー弾が地面で炸裂する。
 連鎖的に吹き荒れた爆風を突き抜ける様に、高速で彼女は飛翔する。

 月影ゆり――キュアムーンライト。
 伝説の戦士プリキュアたる彼女は激闘を繰り広げていた。

「ハァッ!」

 左、右と拳を突出し間髪入れずに側筋に回し蹴りを放つ。
 拳速の余波が巻き上げられた土ぼこりを引き裂いて敵に直撃した。

 しかし、敵は微動だにしない。
 ムーンライトはもう片方の足で敵の胸を蹴り飛ばし、距離をとった。

「なんてやつなの……」

 ムーンライトの顔に、険しい表情が浮かぶ。
 金色の逆立てた髪。隆起した筋肉。ファンタジックな装いのズボン。碧眼の目。
 自身の上背より2回りは大きい背。そして目に見えるほどはっきり具現化した金色のオーラ。

 口角を吊り上げ、余裕の笑みを浮かべる悪魔。
 そいつの名はブロリー。

 ブロリーはムーンライトが森を歩いている所を、いきなり攻撃してきたのだった。
 両の手を軽く広げ、緑色の球状のオーラを纏ってゆりの眼前に現れると、
 雄たけびと共に殴り掛かってきたのだった。
 辛うじてその一撃を躱したゆりは、即座にムーンライトに変身した。
 ゆりは、こいつは話し合える相手ではないと、狂喜に歪んだ眼を見て瞬時に理解していた。 

 ムーンライトは再び距離を詰め、速射砲のように連撃を加えた。
 パンチキックに膝や肘を交えた鋭い攻撃は、しかしブロリーの肉体を傷つけるには至らない。
 ならばとボディに連打を打ち込み、ブロリーの意識が下がった所で顎を撃ち抜く様に拳を振り上げる。
 確かな手ごたえと共にわずかにブロリーが揺らいだ。
 手ごたえはあった。確かな一撃だったが、しかしゆっくり顔を下ろすブロリーの表情は笑っていた。


16 : 天使vs悪魔 ◆Dbja0ebxMY :2017/10/31(火) 19:26:26 FmOfOprI0
「!」

 後ろに振り上げたブロリーの掌に、緑色の光球が創られる。
 それが一直線に飛来する前に、ムーンライトは思わず横っ飛びに避けた。
 圧縮されたエネルギーが木々をなぎ倒しながら突き進み、はるか遠くに見えた山の付近で爆発した。
 ドーム状に膨れ上がる破壊エネルギーは、その衝撃だけでムーンライトの立っている地面まで砕き、
 山脈を消し飛ばしてきのこ雲を発生させた。

「くっ……!」

 爆風が体を揺らす。空気が痺れる感触が伝わる。ムーンライトはぞっとした。
 アレが直撃すればただでは済まないのは明白だ。
 しかも、ブロリーの様子を見るに、アレは全く全力ではないのだろう。
 明らかに手加減している。手加減してアレなのだ。

「くははははははははっ!!!」

 ムーンライトの感じた脅威を、嘲るようにブロリーが笑う。
 いったん引くべきだ。アレは一人では倒せない……!

 脳裏に浮かぶ名簿には、つぼみやえりか、いつきと……ダークプリキュアにサラマンダー男爵の名前があった。
 後者二人にも考えることが様々あるが、今はそんな暇は無い。
 コイツを倒すには、つぼみたちと合流してハートキャッチオーケストラで放つしかないだろう。

 ムーンライトは地面を強く蹴り砕き、土ぼこりを舞い上げた。
 そしてわざと土煙の中に身を投じた。
 ブロリーが笑うのをやめる。ムーンライトはブロリーの姿がすっかり見えなくなると、
 全力で離脱しはじめた。
 木々の間をすり抜け、なるべく見つからないように、音を立てずに。
 幸いスピードには自信がある。ここは引く――……。

「えっ……」

 それはまるでスローモーションのように感じた。目の前の煙が不自然に盛り上がり、
 突き破るようにしてブロリーが現れたのだ。
 先回りされた……!? ムーンライトは愕然とする。まさか、こいつはスピードでさえ……。


17 : 天使vs悪魔 ◆Dbja0ebxMY :2017/10/31(火) 19:26:57 FmOfOprI0
「何処へいくんだぁ……?」

 ブロリーの声にしまった! と思うのと、ムーンライトの腹部にエネルギー弾が直撃したのは同時だった。
 振りぬかれたブロリーの腕に薙ぎ払われ、光球が腹部を押し飛ばす。
 ついで起こる爆発に大きく後方に吹き飛ばされた。
 力ずくで打ち出したビリヤード玉のように地面にはじけ飛ぶムーンライトに、
 ブロリーは追撃すべく容赦なく飛びかかった。

 しかしムーンライトは冷静に、ブロリーの顔の正面にカウンターの蹴りを打ち込む。
 それはダメージを期待するものではなく、ブロリーの動きを一瞬止めるためと、
 ブロリーからさらに距離をとる為の回避行動だった。

 ブロリーは宙空に立ち止まり、蹴られた額を手でなぞる。
 その隙にムーンライトはよろよろと立ちあがった。
 感じるのは、やはり手を抜かれているということ。

「はぁっ……、はあっ、……きなさい! バケモノめ……!」
「俺がバケモノ……?」

 構えと共に見据える目には、まだ決意がともっている。
 ブロリーはさも楽しそうにくいと首を傾けた。

「違う……、俺は悪魔だ」

 言い終わると同時に、ブロリーのオーラが炎のように激しく盛り上がった。
 ノーモーションで無数のエネルギー弾が放たれる。
 狙いをつけていないらしいそれは周囲の環境を手当たり次第に破壊しつくし、
 そのうちの一発がまだ足のおぼつかないムーンライトに襲いかかる。
 両足はまだダメージが抜けていない。体の芯が震えている。この身体では躱せない。


18 : 天使vs悪魔 ◆Dbja0ebxMY :2017/10/31(火) 19:27:15 FmOfOprI0

「はぁあああああっ!!!!」

 一か八か、ムーンライトは両手を思い切り横に薙ぎ払い、なんとかエネルギー弾を弾き飛ばす。
 そして、再び不覚をとった。
 振りぬいた腕を戻すより先に、ブロリーの拳が目の前まで迫っていたのだ。
 出せる力を振り絞り、思わず後ろに跳ぶが、躱せない。
 ブロリーの拳が伸びてくる。これは躱せない。ムーンライトがダメージを覚悟した瞬間。
 ブロリーの横っ面を青いブーツが蹴り飛ばし、ブロリーは横に吹き飛び激しく湖に突っ込んだ。

「……!?」

 跳ね上がる水しぶきと共に、その誰かは舞い降りた。
 ムーンライトがなんとか膝をついて見上げると、そこには男が立っていた。
 山吹色の道着、肘の先まである紺色のインナー。カールした前髪。頬の傷。
 そして、片腕のない青年。

「大丈夫か?」

 沈んだはずのブロリーを一瞥した後、その青年はムーンライトに手を差し伸べた。

「ええ……、助かったわ。ありがとう」

 手を取って立ち上がると、その青年はもう湖の方を睨みつけている。
 厳しい戦士の目だ。鍛えられた戦士だ。所作に一部の隙もない。

「行こう。アイツはオレたちじゃ倒せない」

 青年はムーンライトに肩を貸すと、ムーンライトにも負けないほどの、
 ものすごいスピードで空を翔けた。


19 : 天使vs悪魔 ◆Dbja0ebxMY :2017/10/31(火) 19:27:36 FmOfOprI0

 ■


 
 吹き飛ばされた山脈の面影が見えなくなるほど遠く、小さな村に二人は降り立った。
 村の体をなしているが、人の気配は全くない。 
 にもかかわらず、青年は家に入る時、丁寧にノックをして「おじゃまします」と頭を下げた。
 ベッドにムーンライトを下ろして、その対面に立ち、青年は口を開いた。

「危ない所だったね、オレは孫悟飯。キミは……?」
「私は……、キュアムーンライトよ……」

 よろしく、と手を差し伸べて来たので、ムーンライトはしぶしぶ握りかえした。
 どうやら悪い奴ではないらしい。少し気分が落ち着くと、まず浮かんだ疑念を問う。

「あなた、アイツが何者か知ってるの?」

 悟飯と名乗る戦士は、頭を振った。
 
「アイツが誰かは知らない。だけど、アイツが何かはわかる」
「どういうこと?」
「アイツは超サイヤ人だ。しかも、恐ろしいほどに強い」
「超サイヤ人……?」 

 悟飯は話し始めた。サイヤ人、宇宙最強のフリーザ、伝説の戦士と呼ばれる超サイヤ人。
 おとぎ話か神話のごときスケールの冒険譚を、ムーンライトは噛み締める様に聞きいった。

「つまりアイツは、最悪の敵ってことね……」
「そういうことかな。でも、変な話なんだ。 
 そもそもサイヤ人は、オレの時代にはもうオレとトランクスしかいないはずなのに……」

 父と、ベジータ。幼少期の頃に襲ってきたラディッツ、ナッパ、ターレスを加えても、
 悟飯の知る限りサイヤ人はその残り7人のはずだ。
 トランクスはまだ超サイヤ人には覚醒できていない。
 ラディッツとナッパは死んでいるし、目を閉じたときに見えるリストにそもそも名前がない。
 ターレスは父、孫悟空に瓜二つの外見で、あんな長身ではないし超サイヤ人ではなかった。

 そしてなにより、あの謎の超サイヤ人の気は、フリーザはおろか
 記憶している父、孫悟空の気すらはるかに超える大きさだった。
 というより、悟飯はかつてアレ以上に強い存在には出会ったことはない。 

「……アイツは何者なんだ」

 あれほどの気を誇るサイヤ人がいたというのか。
 考えにふける悟飯に、変身を解いたムーンライトが言った。

「ムーンライト? アレ? なんだか雰囲気が……」
「ツッコむところちょっとずれてないかしら……? まぁいいわ。
 今までの話を整理してみた限り、たぶん私と悟飯さんは、
 違う世界の人間……。ってことになるんでしょうね」
「違う世界だって!?」

 ゆりは、今度はこちらの番と話し始めた。
 砂漠の使徒、デューン、プリキュア、ダークプリキュア、つぼみたち頼りになる後輩たち。
 自身の戦いに引けを取らぬ激闘の話を、悟飯は厳しい顔で聞いていた。


20 : 天使vs悪魔 ◆Dbja0ebxMY :2017/10/31(火) 19:27:58 FmOfOprI0

「なるほど……、確かにオレの世界では地球に砂漠の使徒なんてやつらは現れなかった。
 地球を滅ぼす様な強い奴に、オレや父さんが気付かないはずもないし……」
「オンスロートは『異なる次元ごとに同時に話している』と言ってたわ。
 違う次元、というのが別の世界のことをそのまま示しているなら」
「それぞれの世界から、強い戦士を集めているってことか!」
「おそらくそうでしょうね。そして脳裏に浮かぶ名簿の並びが、それぞれの世界ごとになってると思うわ」
「……なるほど、ムーンライト。キミはすごいな」
 
 どういたしまして、とゆりは答えた。
 
「つじつまが合うんだ。オレの父さんやベジータさんは、オレの世界では……」

 悟飯がくっと言葉を飲み込んだ。

「既に……殺されているし、フリーザは父さんが倒した。
 なのに名簿に載ってる上に、オレとは違う場所にまとめられてる」 
「時間や世界を自由に行き来できるってことね。
 オンスロートの言う自称全能の神ってのも、あながちウソじゃなさそうだわ」

 言い切って、ゆりは頭を押さえた。ダメージがまだ抜けきっていないのだ。
 今はこれ以上考えることは駄目だ。休ませなければと察した悟飯は言った。

「ムーンライトはここで少し休んでてくれ。外でオレが見張ってるから」
「お言葉に甘えさせてもらうわ……。あと、私の本名はゆり。月影ゆりよ……」
 
 ゆりが部屋に入ってベッドに倒れ込む。
 悟飯はドアの前に座り込んで、空を眺めた。

 リストには父と、ベジータ。ヤムチャにクリリン。ブルマ。そしてトランクスの名が有った。
 さらにはフリーザ、ターレスの名前も……。


(みんな……、無事であってくれよ)


 悟飯の想いは青空に吸い込まれていく。
 フォーエバー・クライシスは、まだ始まったばかりなのだ。


21 : 天使vs悪魔 ◆Dbja0ebxMY :2017/10/31(火) 19:28:17 FmOfOprI0
【ナタデ村とその周辺の山林を再現した惑星/一日目朝】


【キュアムーンライト/月影ゆり@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)
[装備]:ココロポット、プリキュアの種
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:つぼみたちを探す
1:体力の回復に努める
2:目覚めたら悟飯と考察を続ける
3:あの謎のサイヤ人には気を付ける
[備考]
※参戦時期は最終回後
※主にDRAGON BALLの世界、参戦キャラについて知りました。

【孫悟飯(未来)@DRAGON BALL Z】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:この戦いを終わらせる
1:月影ゆりが目を覚ますまで見張る。
2:あの謎のサイヤ人や、悟空やトランクスたちと同じカテゴリの知らない人物には気を付ける。
3:悟空、ベジータ、トランクスを探す
[備考]
※原作漫画ではなく、TVSP『絶望への反抗』の世界から、
 人造人間たちに最後の戦いを挑む直前からの参戦。
※ハートキャッチプリキュア!の世界、参戦人物について知りました。


22 : 天使vs悪魔 ◆Dbja0ebxMY :2017/10/31(火) 19:28:38 FmOfOprI0

 湖の中心に波が立つ。
 緑のオーラを纏わせ、ブロリーはゆっくりと浮かび上がった。
 その顔は先程の狂喜とは打って変わって、どこか憂いを思わせる。
 悲しみの表情を浮かべている。

「カカロットォ……」

 敵の名を呼ぶ。己を鼓舞するように。破壊するべき敵の名だ。
 あふれ出す力は筋肉を押し上げ、ブロリーの気を増大させる。

「カカロットォ!!」

 叫びに呼応してオーラがはじけ飛ぶ。
 ブロリーの全身が発光し始め、納まりきれないエネルギーが四方八方にはじけ飛ぶ。

「カカロットォォオオオオーーーー!!!!!!」

 恐るべき破壊を繰り広げながら、ブロリーは恐るべき速さで空へ飛び去った。
 オンスロートなどどうでもいい。その他の人物などどうでもいい。
 オンスロートの計らいで、ブロリーの脳裏に浮かぶ「孫悟空」の名は、
 カカロットに変換されていた。

 カカロットがここにいる。
 今度こそ殺してやる。この手で……。


 悪魔は憎しみをまき散らして空を突き抜け、そして宇宙に出た。
 目的は一つ。やることは単純。星々を手当たり次第に飛び回り、
 カカロットを探しだし、殺す。ベジータもだ。あの二人は殺す。何があっても。
 
 邪悪な決意に目を輝かせ、ブロリーは光速で宙を翔けた。


 ――しかし、悪魔は知らない。


 この宇宙のどこかにいる孫悟空は厳密には自分の知っているカカロットではなく、
 孫悟空の方はブロリーの存在すら全く知らないという事に。



【ブロリー@DRAGON BALL Z】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:カカロットォ!
1:カカロットを殺す
2:ベジータもついでに殺す
3:邪魔する奴は殺す
[備考]
※アニメ版DRAGON BALL Zの世界から参戦。
 映画2作目。『危険な二人、超戦士は眠れない!』の目覚めてすぐの状態。
※当ロワに置いては、原作漫画版とアニメ版のDRAGON BALL Zはあくまでパラレル世界


23 : ◆Dbja0ebxMY :2017/10/31(火) 19:29:07 FmOfOprI0
以上です。ありがとうございました


24 : ◆Dbja0ebxMY :2017/11/01(水) 18:43:22 4pXTYB720
投下します


25 : 神の手を介さず存在する砂時計 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/01(水) 18:44:39 4pXTYB720

 自身の存在意義を求めていた。
 無から有となった自分は何者なのだろう。
 
 サラマンダー男爵はカフェの椅子に腰かけていた。
 自らの終末をすぐそこに感じながら、目を閉じ、ただ静かに。
 クリスタルは集め終わったが、依然として体の崩壊は止まらない。
 しかし、それに悲しみを感じることはない。

 サラマンダー男爵は「こころ」というモノを知りたかった。
 いや、求めていた。と言い換えてもいい。
 それ故に砂漠の使徒から追放された。彼らに憎しみは抱くが、
 彼らを滅ぼすためにはまず元の世界に還らなければならないだろう。

 自身に残された時間も、力も、空に舞う燃えカスのようなものだ。
 風が一凪すれば消えてしまうだろう。

 オンスロートという怪物は、自らを全能の神と名乗った。
 彼の発するオーラを見るに、実際それを名乗るだけの力を有してもいるだろうが、
 彼が行ったことは「殺し合いの開催」という実にくだらないモノだった。

 神でさえ、やはりこんなものなのかという落胆は、サラマンダー男爵の気を落とした。
 彼は自分で勝手に注いだ紅茶に口をつけて、ようやく目を開いた。

「誰かな……、そこにいるのは……?」

 そして飛び込んできた眼前の人物に、思わずずっこけそうにというか、紅茶を吹き出しそうになった。
 そこにいたのは、全身が蒼く発光する、全裸の男だった。
 全裸である。本当に何も着ていない。パンツすらはいていない。
 世界中を旅して奇妙奇天烈なモノはそれなりに見てきたが、
 目の前の男はそれらと比較しても一線を画すエキセントリックさだ。

 にもかかわらず、男の表情や雰囲気はどこか哲学的で、複雑で、神秘的なソレを発している。
 神がかっている。と言えば分りやすいだろうか。

 男が口を開いた。


26 : 神の手を介さず存在する砂時計 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/01(水) 18:45:12 4pXTYB720
「キミは……、何者だ? 私の知らない原子だ……」
 
 男は困惑しているようだった。
 戸惑いのまま、何かをぶつぶつと語りだす。 

「この宇宙は、どうやら私の知る現実宇宙とは大きく異なっているようだ。
 タキオンが充満しているわけではないが、未来をまるで見ることができない。
 まるでこの宇宙そのものが一つの生物であるかのようだ、流動し、常に可変。
 全く持って未知の出来事だ……」
「考え込むのも結構だが、名前くらい名乗りたまえよ」
 
 男は男爵の方に振り返った。

「私はDr.マンハッタン」
「私はサラマンダー男爵だ。さて、ドクター。今の君の言葉はどういう意味かな?」

 マンハッタンはかすかに目を見開いた。
 驚きの感情が出たのだろう。顎に手を当てて、HUMMと考え込んだ。

「やはり私を知らないのか。一見して、ここはパリの街のようだが、
 私の知っているパリとは全く違うという事か。誰かが創造したのか、私以外の誰かが……」
「可能性があるとすれば、あのオンスロートという者ではないかね? 彼は神を自称していた」
「神などいない」

 マンハッタンは言い切った。
 男爵はふっと笑うと、同感だよ。と答えた。

「さて、ところでドクター。君は私を殺すのかね? オンスロートの言うとおり、
 殺しあわねば私たちはどのみちオンスロートの手によって殺されるだろう」
「いや、君を殺す気はない。元々君の原子は全く安定していない。生物的に死にかけているのだろう?」
「……わかるのかね」
「私は地上に存在するあらゆる原子を操れる。原子のサイズで世界を見れるのだ。男爵」
「それは……、素晴らしいな」

 この世の物体は、全て分子の。もっと言えば原子の集まりでできている。
 それをすべて、ありのままに支配できるという事は、全てを創造し、すべてを破壊できるという事だ。
 それをすべて、原子の視点で見れるという事は、世界のすべてを知ることが出来る筈だ。
 男爵は思わず言った。


27 : 神の手を介さず存在する砂時計 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/01(水) 18:45:43 4pXTYB720

「君が神ではないのか?」
「違う。私は神ではない。宇宙を構成するピースが私であり、私を構成するピースが宇宙なだけだ」
「そうかな……? その割には、ドクターは――失礼だが、人間には見えない。 
 ひどく無感動で、不動で、永遠のような『何か』に見えるが?」
「否定はしない。事実私は32分前まではそうだった。だが私は人間の存在価値に気付かされた」
「存在価値……」

 男爵は繰り返して呟いた。
 マンハッタンは気を利かせてか、飲み干した男爵の紅茶を新しく創造して、
 継ぎ足しながら、言った。

「人間は、その存在のすべてが奇跡だ。熱力学的奇跡だ。
 酸素が自然に金に変わる様な、人工的に生み出された超自然的な奇跡だ。
 いや、人だけではない。この地上に存在するすべてのモノが、今ここにあるだけで既に奇跡なんだ」
「……ならば」

 男爵は言葉を止めることができなかった。
 どうしても聞いてみたかった。この神のごとき存在の口から。
 
「私も、価値がある奇跡という事か……?」

 ――自分の存在意義を。

 マンハッタンは少し首をかしげて、掌を上に向けた。
 そこに、小さな地球のような水晶玉を創造して、男爵に見せた。

「君は人間ではないかもしれないが、この宇宙に存在して、私と出会った」

 マンハッタンの声はあくまで平坦だ。しかし、確信めいたものを孕んでいる。
 水晶が過去を映し出す。そこには男爵と、一人の小さな男の子が映っていた。

「十分だ」

 マンハッタンは言い切った。
 男爵は帽子のつばで表情を隠し、そうか、と小さく呟いた。


28 : 神の手を介さず存在する砂時計 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/01(水) 18:46:03 4pXTYB720
 ■




「さて、どうするかね、ドクター?」

 紅茶を飲み終えた男爵は、軽やかに塔に登り、街を見下ろした。
 その口調は憂いを帯びず、むしろ喜びや楽しさを感じているようだった。
 マンハッタンはその時間に先回りしており、同じく街を見下ろした。

「しばらくはこの世界を観察する。私の認識が全く通用しない世界だ。
 私の知らない、未知の存在が溢れている可能性が高い」
「殺し合いはしない、と?」
「こちらに敵意を向けてくるならば殺さざるを得ない」
「なるほど……」

 男爵は目を閉じた。

「ドクターのいう事は、私にも理解できる。
 考えてみればその通りだ。確かにこの世のすべては、ただそれだけで奇跡だろう」

 マンハッタンは男爵を見た。

「だが、知識だけではやはり……、半信半疑でね。
 奇跡だから、と言うのは納得できるが、だからといってそれが
 存在する価値があるかどうかは、また別問題であるような気がするのだよ」
「君の言うとおりだ。人間の存在そのものが奇跡ならば、すべてのモノに価値があるのならば、
 その価値の中でさらに価値の有無が、高低が、生まれるべくして生まれるだろう」
「ままならぬものだね……」

 男爵は呟いた、その顔は、どこか嬉しそうだった。

「だから喜びを感じるのだ」

 マンハッタンもまた、小さく笑みを浮かべていた。


29 : 神の手を介さず存在する砂時計 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/01(水) 18:46:23 4pXTYB720
【地球を模した惑星、パリ/一日目朝】


【サラマンダー男爵@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:崩壊寸前
[装備]:ステッキ
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:生物の価値を見極める
1:マンハッタンと共に世界を観察する
2:とりあえず世界の滅亡は待ってみる
[備考]
※映画『花の都でファッションショー…ですか!?』の冒頭の時期から参戦。

【Dr.マンハッタン@WATCHMEN】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:未知の存在を探し、観察する
1:サラマンダーの原子を調べる
2:オンスロートに興味あり
[備考]
※『最低のジョーク』発動後、火星から地球に移動中の時期に参戦。
※時間軸を認識しての多時間同時認識能力は使えなくなっている。
 簡単に言えば未来と過去が見えない状態。


30 : 神の手を介さず存在する砂時計 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/01(水) 18:46:49 4pXTYB720
【キャラクター簡易解説】
『Dr.マンハッタン』
 本名:ジョン・オスターマン。とある科学事故で原子を操る力を手に入れた神に等しい超人。
 量子力学的ヒーロー。飛行もテレポートも自由自在どころか、
 とうやら時間軸座標そのものを感知して物質世界の事象を『処理』している。
 そのため時間軸から外れているらしく、すべての時間を同時に見る認識能力と、
 世界の理の外側から直接量子の振る舞いに手を加えられるため、事実上全能の存在。
 その能力というかあり方のため、人間性が消失しており常時全裸なのはそのためである。
 しかしウォッチメンの終盤、彼は人間の素晴らしさ、尊さに気づき、生命に対する興味を取り戻した。
 早い話、神というか宇宙法則そのものの擬人化である。
 基本的に制限がない当ロワにおいても、全時間の感知はさすがに強すぎるため封印させてもらっている。


31 : ◆Dbja0ebxMY :2017/11/01(水) 18:47:26 4pXTYB720
投下終了です。続けて投下します。


32 : ヘルシングの奇縁 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/01(水) 18:47:59 4pXTYB720
 インテグラは最初、状況を飲み込めなかった。
 ウォルターを失い、アーカードを失い、少佐を倒し、セラスと共に我が家に帰ったはずだ。
 ロンドンは崩壊したが、最後の大隊は滅ぼした。1944年の亡霊は、
 あの街と、我が従僕と、我が執事と共に、完全に消え去ったはずだ。

 しかし、オンスロートなる化け物は殺し合いの場にインテグラを召還した。
 しかも今ここはロンドンではないか。
 しかもしかもあの決戦の、死都と化したロンドンではないか。
 インテグラの視線の先には堕ちた飛行船「デウス・エクス・マキナ」がそのままある。
 
 あれだけ死体と死人とガレキに塗れた街が、それでも今ガレキを除いて
 きれいさっぱりなのは、アーカードの『大喰い』で喰い尽くされたからなのか。
 あるいはあのオンスロートなる化け物が全く同じ街並みを創りだしたとでも言うのか。

 やりきれない気持ちを胸に、葉巻に手をかける。
 その背後に、気配。

「動くな」

 闇から染み出るような重い声に、しかしインテグラはわれ関せずと葉巻に火をつけた。

「こっちは一仕事終えたばかりでね。一服ぐらいいいだろう?」

 インテグラが存分に煙をふかして顔だけを背後に回すと、そこに妙な男が立っていた。
 建物の影に混じるような場所に立ち、上から下まで真っ黒なスーツを着て、
 地面に届いてなお引きずる長さのマントをはおり、
 顔には漆黒のマスク。目の部分はご丁寧に白く瞳が窺えない。
 それは幼い頃に読んだ、コミックの世界のスーパーヒーローそのものだった。
 思わず気を抜かれかけたインテグラだったが、
 相対する男の声はあまりにも真面目だったので、突き合ってやるかと口を開いた。

「確認したいことがある」
「人にモノを尋ねるなら、名前くらい名乗ったらどうだヒーロー?」

 煙を吐き出して、皮肉めいてインテグラは言う。
 マスクの男は良いだろうと呟き、言葉を続ける。


33 : ヘルシングの奇縁 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/01(水) 18:48:24 4pXTYB720

「私はバットマン。キミは誰だ」
「バットマン……。コウモリ男、ね」

 そのまんまなネーミング。いい歳の男だろうに、ますますコミックヒーロー染みている。
 しかし、コウモリ男か……。  

「私はインテグラ・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング卿だ」
「ヘルシング……?」
「そうだ。ヘルシングだ。吸血鬼狩りの」
「ブラム・ストーカーか?」
「驚いたか?」 
 
 インテグラはしてやったりとでもいうべき笑みを浮かべた。
 バットマンはしばらく悩んだ様子で微動だにせず、インテグラを見ていた。

「ここはロンドンだな。ガレキの山になっているが」
「そうだ、ロンドンだバットマン。私の知る限りつい最近まで死都<ミディアン>となっていたはずのな」
「何があったか知っているのか?」
「知っているも何も、私は当事者だ。この場に居合わせ、私が終わらせた」
「詳しく聞きたい」 
「断る」
 
 即答したインテグラに、バットマンは口をつぐんだ。
 
「顔を隠し名前も明かさない人間を、出会ったばかりのコスプレヒーローを信用しろと?
 ふざけるなよバットマン。仮におまえに情報を提供して、私になんの見返りがある?」
「……君の望むことを叶えよう」
「無理だな」

 はっ、とインテグラは笑った。
 
「言っただろう、一仕事終えたばかりだと。私の宿命はもう終わって……」
「アーカード」

 バットマンが口にした名前は、インテグラの言葉を止めた。
 
「アーカード、アレクサンド・アンデルセン、セラス・ヴィクトリア、少佐。
 この名前の人物たちは、キミの関係者ではないのか?」
「……なぜわかる」
「リストだ。オンスロートが我々の頭に入れ込んだ参加者リストは、
 おそらく一定の法則で区切られている。同じ世界の出身という事だろう」

 インテグラは目を閉じた。頭の中に様々な名前が浮かぶ。その中には自分の名前も、
 そしてバットマンが言った名前も並んでいた。

「バカな……」
「この名前の人物……。そのうちの何人か、あるいは全員がここで死んだのではないか?」
「!!」

 インテグラの目が大きく見開かれた。バットマンの口角が吊り上る。
 しまった。とインテグラは思った。

「やはりそうか。ということはマルチバースから連れてこられた可能性が高いな」
「並行世界だと……」
「ふざけている、か?」
「いや、目の前のスーパーヒーローが、一番ふざけている」

 意図としては精一杯の皮肉だろうが、インテグラは燐とした姿勢は崩さない。
 
「私の世界には同じだが違う世界……、並行世界が存在することがわかっている。
 オンスロートはおそらく多次元、多時間に干渉して参加者を連れてきている」
「なるほど、ふざけているな。だが根本的な可能性を見落としているぞ、バットマン」 
「何が言いたいかはだいたいわかる。このリストがはたして本当かどうか、
 このゲームが本当にただの殺し合いか、だろう」
「そうだ」

 インテグラは葉巻を吸い尽くした。
 
「オンスロートという化け物が、こんなふざけた催しを開くのは実に神らしいとして。
 そいつが我々にバカ正直にルールを提示するか、ということだ」
「神は実直で真面目で公正だと思っている者は多いが、それは事実無根だ」
「少し違うぞバットマン。神は公正だ。なぜなら神は、ルールを捻じ曲げて道理を通すからな」

 インテグラの言葉に、バットマンはともすると不気味に見える笑みを見せた。
 インテグラの知性。センス。そしてどこか気品ある振る舞い。
 バットマンにとって、どれもこういう場においては好ましいものだった。

「まぁ、赤い鎧で身を固めたいかめしい神など、私は聞いたこともないがね」

 同感だ。とバットマンはうなずいた。


34 : ヘルシングの奇縁 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/01(水) 18:48:57 4pXTYB720
 ■



「アーカードは吸血鬼か?」
「ほぅ、良くわかったな。……いや、まぁわかるか」
「ドラキュラが真名を隠す際にアナグラムを用いるのは原典でもそうだろう。
 もっとも、エイブラハム・ヴァン・ヘルシングがその後も鹵獲したドラキュラを
 使役しているとは知らなかったがね」
「ああ、多少癖が強いが、役に立つ従僕だ」

 デウス・エクス・マキナの最奥。少佐のいた場所に、二人はいた。
 この中も外に負けず劣らずメチャクチャなありさまである。
 インテグラと情報を交換する中で、ここに来ることを提案したのはバットマンであった。
 彼はあるモノを探しだし、そして直している。

「しかしまぁ、ジャスティス・リーグ・オブ・アメリカとは、驚きを通り越してあきれているぞ。
 もっといい名前は無かったのか? さすがはアメリカのセンスだな」
「誰もが安心できるシンボルは、わかりやすい方がいい」
「おまえは安心と言うより、恐怖を与える側に見えるが?」
「恐怖も同じだ。構造は複雑だが、伝え方はわかりやすい方がいい」

 バットマンが探し当て、整備しているのは、パソコンだ。
 少佐がロンドンを見通すのに使っていたパネル式大画面と、それに連なる巨大コンピュータ一式。
 インテグラは手持無沙汰で、脳裏に浮かぶ名前を眺めていた。

「スーパーマンだとかは、探さなくていいのか? 2人いるが……」
「いずれだ。先に拠点が欲しい。2人いる事の理由も察しはついている。
 それにおそらく、我々にはまだ探せない」
「なぜだ?」
「オンスロートの言葉が真実なら、この殺し合いの舞台になっているのはこの世界……、
 つまり宇宙そのものだ。範囲的に太陽系全域だけだとしても、違う惑星にいられた場合
 星間飛行能力のない我々には手の打ちようがない」
「なるほどな……」

 インテグラは納得する。アーカードと言えど、さすがに宇宙空間を自由に行き来はできないだろう。
 宇宙に放逐したぐらいで死ぬとは思えないが、宇宙で自在に行動できるわけはない。
 もっと環境に適応できるように改造すればよかったか、などと冗談めかして思ったところで、はっとする。

「まて。という事は、ほかの参加者の中には、
 惑星を自由に行き来できるヤツがいるという事か?」
「確実にいるだろう。まずスーパーマンがそうだ。そしてオンスロートが虐殺ではなく殺し合い、
 と宣言している以上。スーパーマンを物理的にか間接的に殺す方法を持つものがいる可能性も高い」
「――……!」

 アーカードが真に殺される絵面は浮かばないが、アーカードは死なないわけではない。
 不死者の中の不死者ともいえるアーカードではあるが、それはあくまで命のストックがあるからだ。
 吸血鬼は心臓を潰されれば物理的には一度死ぬのだ。
 アーカードを物理的に殺すためには数万回、あるいは数百万回殺さねばならない。
 それはインテグラの知る世界ではおおよそ不可能な話である。だからこそ少佐は『毒』で
 アーカードを消したのだし、アンデルセンですら零号解放の隙をついて殺しかけたに過ぎない。

 しかし、バットマンの語るスーパーマンらの話を聞いていると、
 アーカードを物理的に殺せるものが、この世界にいないとは言い切れないのが事実だ。

「そういえば、おまえの能力はなんなんだ?」 
「私は超能力の類は持っていない」
「……は?」

 ちょっと待て。とインテグラは言った。

「じゃあ、いい歳した男が、コウモリのコスプレをしているだけか!?」
「…………」

 バットマンは答えない。背を向けて、黙々と作業を続けている。

「リーグのような、半神存在や超人の集団の中には、私のような者こそ必要なのだ」
「……面白い男だな」

 それはインテグラの本心だった。
 この男は紛れもなく人間だ。我々に近い側の人間だ。

 所々にノイズを走らせながらも、画面は光を帯びた。
 いかにもコンピュータらしい英文がせわしなく流れていき、
 バットマンが手にするリモコンで徐々に操作していく。


35 : ヘルシングの奇縁 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/01(水) 18:49:26 4pXTYB720

「バッテリーが生きていたか」
「ああ。ここを拠点にする。まずオンスロートを倒す仲間を集めなければ」
「その次は、奴の目的を探る、か」

 インテグラが二本目の葉巻に火をつけた。

「そうだ。奴の言動には矛盾が多い。ヤツの多次元にわたって干渉する能力や、
 脳に直接データを送り込むテレパスの能力を見るに、全能の力を持つというのも
 あながちウソではないだろう。だが、それならば何が望みだ……?」
「確かに、人類その他を絶滅させるだけなら、全能の神ならばたやすいはずだ。
 なぜこんな回りくどいことをする……?
 まぁ、神の望みは人間をもてあそぶこと、と考えても納得はいくがね」
「いや、奴にはなにか明確な目的があるはずだ」
「何故そう思う」

 バットマンは、暗黒神と破壊神の戦いを思い出した。

「かつて私の世界に破壊神アンチモニターと名乗る神が降臨した。
 世界を優に滅ぼせる力を持った存在だったが、リーグ全員でやつを止めた」
「ほう」
「アンチモニターの目的は元の姿に戻ることだった。そして私はその時、
 ある方法で過去の知識の垣間見る『神』となっていた」
「……笑うところか?」

 バットマンは構わず続けた。

「私の見た知識の中に、マルチバースの崩壊と、再生があった。
 そして、その知識の中心には私たちの世界に現れたアンチモニターとは、
 おそらく別のアンチモニターが過去に存在していた事実だった。
 過去のアンチモニターは並行世界を破壊し、宇宙を喰らっていたのだ」
「……壮大な話で結構だが、なにが言いたい?」
「宇宙を滅ぼす力を持つ神であっても、前準備が必要だということだ」
「それがこのゲームか」
「おそらくはな」

 インテグラは押し黙った。
 皮肉の一つでも零したいところだが、此度の敵は、化け物は、
 今まで対峙したどの化け物より強大で異質だ。

 だが――、だからこそ。
 インテグラの信念は、一つの言葉を落とす。

「化け物を倒すのはいつだって人間だ」

 突然の言葉だったが、バットマンは真剣な表情で頷いた。

「ああ、その通りだ。だから我々がやる。やらねばならない」
 
 コンピュータがうねりを挙げた。
 二人の、誓いにもにた宣言を見届けて。


36 : ヘルシングの奇縁 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/01(水) 18:49:50 4pXTYB720
【地球を再現した惑星、ロンドン/一日目朝】


【インテグラ・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング@HELLSING】
[状態]:健康
[装備]:葉巻、サーベル、コート
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:化け物を倒す
1:バットマンと共に、仲間を集める
2:アーカードやセラスを探す
3:少佐はこの手で滅ぼす。何度でも
[備考]
※参戦時期は少佐を殺害後、セラスと共に飛翔している最中。
※左目はオンスロートの計らいで元通り、完治しています。
※バットマンと情報交換しました。

【バットマン@BATMAN】
[状態]:健康
[装備]:ワイヤー、音響装置、医療キットを始めとするバットマンの小道具一式。
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:オンスロートを倒す
1:仲間を集める。
2:ジャスティスリーグのメンバーを集める。
3:敵と遭遇したならば戦うが、なるべく戦いは避ける
[備考]
※参戦時期はNew!52版スーパーマンが死亡した後、
つまり『ファイナル・デイズ・オブ・スーパーマン』の後。
※インテグラと情報交換しました。


37 : ヘルシングの奇縁 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/01(水) 18:51:43 4pXTYB720

【キャラクター簡易解説】
『バットマン』
 映画でもお馴染み、ダークナイト。コウモリ男。
 DCコミックスでも最古参のヒーローの一人。初登場は1940年(41年とも)。
 正体はブルース・ウェインというDCユニバースにおける世界一の大富豪。
 バットマンとしては悪徳の街ゴッサムシティの守護者、ブルースとしては慈善事業家として
 街を見張り、救っている。
 超能力の類は持たず、人類最高峰の肉体と知能と武器兵器で戦うスーパーヒーロー。
 当ロワのバットマンは、New!52版の設定である。
 『ダークサイド・ウォー』を終え、『ファイナル・デイズ・オブ・スーパーマン』で
 スーパーマンが殉死した後。バットマン誌に置いては少なくとも『バットマン:エンドゲーム』
 以前の時系列のようだ。


38 : ◆Dbja0ebxMY :2017/11/01(水) 18:52:24 4pXTYB720
本日は以上です。ありがとうございました


39 : 名無しさん :2017/11/03(金) 15:18:19 JEVFgfbA0
楽しみにしてます


40 : ◆Dbja0ebxMY :2017/11/03(金) 23:13:26 VKU/zV8Q0
>>39
ありがとうございます。
本日分、まずセントリー、来海えりかを投下します。


41 : ◆Dbja0ebxMY :2017/11/03(金) 23:14:09 VKU/zV8Q0
失礼。セントリー、来海えりか、ロールシャッハです


42 : 黒い太陽と海の花 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/03(金) 23:15:54 VKU/zV8Q0

 お願い、解放して。

 ――やめろ。妻に近づくな!

 傍にいたくないの、殺して。

 ――ほう、そこまで言われては断れん。
 
 ――だめだ。妻に近寄るな!

 麻薬の代わりにセントリーの力に依存しているだけ。

 ――いやだ。出てくるな……!
 ――例えそうだったとしても……!

 ――セントリーとして成し遂げたことが一つでもあるのか?

 キャプテン・アメリカになれる器じゃない。 

 ――僕は、僕は……。

 その器もないのに、膨大なる力を偶然に得た男の姿……。

 ――ヒーローはおろか、お前は将来に何の夢もなかった。
 

 ――クズだ。


43 : 黒い太陽と海の花 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/03(金) 23:16:20 VKU/zV8Q0
 ■


「はあっ、はあっ……!!」

 ニューヨークの町中。轟音と共に落ちてきた物体により、ビルが無残に崩れ落ちた。
 飛来した物体は圧倒的なパワーとスピードを持って、ビルからビルへと貫き通る。
 後に残るは黄金の軌跡。彼は地上最強のヒーローだったもの。

 その名はセントリー。

 今、彼は苦しんでいた。愛している妻が述べた真実に――。
 自分はヒーローではない。薬物中毒者がたまたま力を得ただけの存在。
 皮肉なことに、その力は彼の暗黒面――ヴォイド――を増大させつづけた。
 いや、そもそも逆だったのだ。ヴォイドこそセントリー=ボブ・レイノルズの本性であり、
 セントリーはその中から生まれた罪悪感と、わずかな正義感に過ぎなかった。

「うわぁあああああああ!!!!!」

 セントリーは打ちのめされていた。
 それでも妻だけは愛していた。本当にヒーローになろうと思っていた。
 だが、混乱の避難から戻ったブルズアイは、妻は自ら戦闘機から身を投げたと、
 自ら死を選んだと言った。
 セントリーに、ヴォイドに耐えられなかったと言った。

 全てが砕けた。

 セントリーは自殺したかった。
 だが、セントリーを殺せるモノは、存在しなかった。
 盟友であり、怒りと共に力を増す、地上最強の力を持つハルク。
 本気で怒りに満ちた彼との戦いでさえ、決着は互角だった。

 太陽に身を晒して消滅しても、分子を操る超人、
 モレキュールマンに分子レベルでバラバラにされても、
 彼は復活した。新たな力を得て、何事もなかったかのように。

 ヴォイドは告げた。どこの惑星にもセントリーを滅ぼす力はない、と。

 彼が絶望の咆哮をあげる度に、発せられるエネルギーが街を破壊していく。
 しかし100万個の太陽の爆発にも匹敵するパワーは、太陽系を丸ごと滅ぼしても尽きることはないだろう。

「うわぁあああああ!!! なんでだ……、なんで……っ!」

 やがて怒りは静まり、休む間もなく押し寄せる悲しみに、彼は膝をついた。
 ニューヨークを模して造られた街は、もはや全体が更地と化してる。

「うっ……、ううっ……!」

 雨が降ってきた。彼のパワーが天候をめちゃくちゃにしてしまったせいだ。
 セントリーは雨は自分にだけ降っていると感じた。
 
「ど、どしたのおじさん! だいじょーぶ!!?」

 雨を掻き消す幼子の声に、セントリーは顔をあげた。
 そこには、水色の髪をした、セントリーの半分くらいの背しかない子供が、
 心配そうにセントリーを見つめていた。


44 : 黒い太陽と海の花 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/03(金) 23:16:48 VKU/zV8Q0
 ■



「わたし、来海えりか! よろしくね〜!!」
「僕は……、僕はセントリー……」
「ねぇ〜っ! おじさんって、もしかしなくても、ヒーロー……?」
「えっ?」
 
 えりかと名乗る少女は、いきなり核心を突いてきた。
 セントリーは思わずくちどもった。ヒーロー……。

「僕が、ヒーローに見えるのかい……?」
「えーっ! だっておじさ……、セントリーさん。
 子供の頃に観たヒーローそのもの! って感じの格好だよ!?」
「…………」

 そうか。とセントリーはうなずく。
 確かに外観だけなら、自分はまっとうなヒーローに見えるだろう。
 だけど、実際は違う。

「そう、だよ……。僕は、ヒーローをやってるんだ」 
「やっぱりー!!」

 罪悪感に塗れながらごちたウソに、えりかは屈託なく笑った。なんの邪念もない。
 尊敬と憧れに満ちた笑みだ。
 セントリーは驚いた。思わず涙が出た。こんな純粋な正義を信じる顔は、
 久しく見ていない。いつも自分の周りにあるものは……。

「やっぱアメリカはすごいなー! 本場! って感じ!!
 しかもセントリーさん、すっごく強いんでしょー!?」
「えっ?」
「だってぇーわたし見てたんだよ! セントリーさんが『うおおー』って雄たけびをあげて、
 そのたびに地震が起きて、ビルが倒れて……。怖かったけど、
 もうおさまったってことは、敵は倒したんだよね!」
「あっ……。その……」
「すごいなー……、ひょっとするとセントリーさん、ムーンライトより強いかも……」

 むむむと顔をしかめるえりかに、セントリーは声をかけられなかった。
 誤解を解かねば、という思いと、純粋にヒーローとしてみられている喜びが 
 心の中で混同していた。

「そうだよ……、街はめちゃくちゃにしちゃったけど。敵は倒したよ」

 結果として、彼は嘘をついた。
 彼女のヒーロー感を、正義感を、
 憧れの気持ちを踏みにじるわけにはいかないと、自分に言い聞かせながら。

「人がいないみたいでよかったよー、ほんと! 
 強すぎても大変だねー! 大いなる力にはなんとやら、だね!」
「ああ、全くだね……」

 無邪気に心に突き刺さる言葉に苦笑しながら、セントリーは相槌を打った。


45 : 黒い太陽と海の花 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/03(金) 23:17:11 VKU/zV8Q0
 
「あのオンスロートってやつ。誰なのか知ってる? あっ! もしかして倒すべき宿命の悪!?」
「さぁ……、でも。聞いたことがあるかもしれない……! そうだ!」
「わっ! いて!」

 セントリーが急に立ち上がったので、えりかは驚いてしりもちをついた。 

「えりか、ちょっとごめんよ!」
「えっ? えっ? なに? どういうこと……!?」
「心当たりがあるんだ! もしかしたらオンスロートが何者か、わかるかもしれない!」
「ほんとーっ!! やったー!!」

 セントリーがえりかをがっしりつかまえて、空を飛んだ。
 セントリーは周囲を見わたし、そして、ボロボロにも拘らず朽ちていない、
 とびきり背の高いタワーを見つけた。

「アベンジャーズタワーになら、オンスロートに関するデータがあるかもしれない」
「うっひょー! ほんとにー!? わたしたちイキナリラスボス突破のカギになっちゃうの!?」

 アベンジャーズタワーに向かって、セントリーは飛び始めた。
 えりかに負担がかからないようにゆっくりと。

 セントリーの表情に、怒りや悲しみは消えていた。
 今は、その表情から希望が見てとれる。
 

 ――――彼女を護ろう。


 事実、セントリーの心には、今度こそヒーローになれる。
 という強い希望が生まれていた。

 気付けば雨は晴れていた。
 雲を掻き分け、青空が露出する。

 セントリーとえりかを祝福するように、日の光は先を照らしていた。


46 : 黒い太陽と海の花 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/03(金) 23:17:31 VKU/zV8Q0
【地球を模した惑星、ニューヨーク/一日目朝】


【セントリー@DARK AVENGERS】
[状態]:精神的に安定。体調は健康
[装備]:セントリーのスーツ
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:今度こそヒーローになる
1:何があってもえりかを守る
2:アベンジャーズタワーでオンスロートのデータを探す
[備考]
※参戦時期は『シージ』の直前。『ダークアベンジャーズ・シージ』における
 ブルズアイによる妻殺害報告の直後。

【来海えりか@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:健康
[装備]:ココロパフューム、プリキュアの種
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:オンスロートを倒す!やるっしゅ!
1:セントリーさんすごい!
2:また世界を救っちゃうかも! なーんてね!
[備考]
※参戦時期は最終決戦後。


47 : 黒い太陽と海の花 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/03(金) 23:17:57 VKU/zV8Q0
 ■


「Humm……」

 ガレキに満ちて、崩壊した影の一角で、ロールシャッハはすべてを見ていた。
 黄金の輝きを持つ謎の男が、ニューヨークの街を破壊する様を。
 ともすればDr.マンハッタンにも匹敵するかもしれない圧倒的な破壊力。

 さらに謎の黄金の男は、少女を連れて飛び去った。

 ロールシャッハの中で、判決は下された。
 黄金の男は、悪だ。

 覆面の模様が怒りに呼応してうごめきだす。
 ロールシャッハは踵を返した。

 リストには、Dr.マンハッタンの名前がある。
 積極的に協力してくれるかは疑問だが、黄金の男を殺せるとしたら、
 マンハッタンくらいだろう。

 ロールシャッハは日記を綴る。

 悪を滅ぼすか、自分が滅ぶその日まで。
 彼が歩みを止めることはない。
 

【ロールシャッハ@ウォッチメン】
[状態]:健康
[装備]:ワイヤーガン、覆面
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)、日記
[思考]
基本:オンスロートを殺す
1:黄金の男は悪だ、殺す
2:マンハッタンを探す。オジマンディアスも一応探す。
[備考]
※参戦時期は原作開始前。


48 : 黒い太陽と海の花 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/03(金) 23:18:19 VKU/zV8Q0

【キャラクター簡易解説】
『セントリー』
 本名:ボブ(ロバート)・レイノルズ。地上最強のヒーロー。マーベル屈指の強キャラ。
 マーベル版スーパーマンとでも言うべき、恐るべき戦闘力を持つヒーロー(?)。
 惑星の破壊程度の攻防力はもちろん。超光速飛行、死からの蘇生、宇宙飛行、
 無から有の創造、分子操作、100万個の太陽の爆発(要は超新星爆破)のエネルギー。
 ぱっと並べるだけでコレだけチートな能力を際限なく使える。はっきりいってデタラメに強い。
 ただし、強いのは戦闘力、身体能力だけであり、心は弱く精神疾患を患っている。
 さらに暗黒面として『ヴォイド』が内面に存在しており、
 こっちはもっとデタラメな強さを誇る。
 アベンジャーズに参加もしていたヒーローではあるが、結果的にヴィランに良い様に利用され、
 『シージ』という大型クロスオーバーにおいて事実上ラスボスとなってしまった。
 当ロワでは暗黒面『ヴォイド』がどう動くかにかかっているだろう。

『ロールシャッハ』
 本名:ウォルター・ジョセフ・コバックス。
 世界一カッコいい童貞覆面ヒーロー。ウォッチメンと言う作品の、一応ヒーロー。
 ウォッチメンはDCコミックスのアメコミだが、厳密にはスーパーマンたちのいる世界とは
 全く別世界の話であり、スーパーマンやバットマンとはかかわらない作品である。
 ……はずだったが最近『スーパーマンvsDr.マンハッタン』なる企画が進んでいるとかなんとか。
 ロールシャッハは同作の狂言回し役であり、中心人物の一人。
 なんの能力も持ってない鍛えた常人だが、その精神力はもはや神の粋にある。妥協はしない。
 ハードボイルドヒーロー。悪人に対しては拷問や殺人は躊躇しない。
 特技は指折り。お前のようなヒーローがいるか。


49 : ◆Dbja0ebxMY :2017/11/03(金) 23:19:26 VKU/zV8Q0
以上です。続いてブルマ、霧隠才蔵、ワンダーウーマン、ソー、投下します


50 : さらば、誇り高き女神 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/03(金) 23:20:08 VKU/zV8Q0

 森の中だった。
 うっそうと生い茂る木々。獣道の隙間に恐る恐る足を延ばす。
 しかし進めど進めど先の風景は変わらず、彼女はいい加減に我慢の限界に達していた。
 感情が爆発して、彼女は思い切り叫んだ。

「いやーっ! もうなんでわたしがこんな目に―っ!!
 早く助けてよー! 孫くんー! ベジーター!!」

 無情にも空に吸い込まれていく叫びに、答えは帰って来ない。
 というか鳥一羽獣一匹で出てきやしない。なんなんだこの森は。
 さびしさや恐怖に押しつぶされて、ブルマはぐずぐずと泣き始めた。
 なんで自分がこんな目に……。やっとセルを倒して世界が平和になったのに。
 
「っていうかオンスロートってやつも、なんでわたしなんかを選んだのよーっ!
 戦士を集めたって、わたしは戦士じゃないって見てわからないの!?」

 コロコロと感情が切り替わり、怒りが湧いてきたのでブルマは怒鳴った。
 ブルマは戦士ではない。あくまで科学者である。
 見るからに戦えそうもない可憐な美女の自分を召還するなんて、
 オンスロートって全能の神じゃなくてバカの神なんじゃないのか。
 というか神なんて言われてもちっともありがたくない。

 目を閉じて浮かぶリストには孫悟空、ベジータ、トランクス、
 孫悟飯、クリリン、ヤムチャの名前があった。
 ほっと一安心はしたが、そのほかにフリーザ、セルと名前があって
 ぎえーってなった。ぎえーって。

「おや、お嬢さん。何を泣いているのかな?」

 優しげな声に、ブルマは顔を挙げた。木々の向こうから影が近づいてくる。
 風になびく長髪。女性にも見える美しく整った顔。
 全身にマントを羽織って体は見えないが、やっと会えた人間に喜んだブルマは、
 にべもなく飛びだした。

「ああ〜ん! やっとまともに人に出会えたわー!!」
「ふふふ。私もやっと人に出会えた……」

 男の手前でブルマは立ち止まった。様子がおかしい。
 嫌な予感がしたのだ。
 男は誘うように手を仰いだ。

「ふふ、どうした女。私が守ってやろうぞ……」

 ただし、と男が続ける。

「貴様の体を食わせてくれたらなぁ〜っ!!!!」
「ぎえーっ!!! やっぱり!!!!」


51 : さらば、誇り高き女神 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/03(金) 23:20:31 VKU/zV8Q0

 男の体から魔物が噴き出した。
 ブルマは急いで引き換えし、力の限り逃げた。
 化け物染みた男は直接追ってこない、ただし、
 その体からうごめく奇怪な化け物が次々に飛び出していた。
 
「ぐはははははっ!! どこに逃げようと無駄だ!!
 既にこの山はドグラの、私のモノなのだぞ!!!!」

 ブルマを囲い込むように地面が盛り上がり、グチャグチャとドグラがあふれ出した。
 逃げ場を失い、ブルマは尻もちをついた。

「い、いや〜っ!! 誰か助けてーっ!!!」
「ふはははは!!!! いけドグラよ! 大したエネルギーにもならんだろうが、
 せっかくの人間の女だ。食い尽くせ!!」
 
 男の――霧隠才蔵が合図すると、ドグラは一斉に襲いかかった。
 ブルマが観念したと言わんばかりに体を丸めて泣き叫ぶ。

「助けてーっ!!!!!!!!!!」

 その時、両者の間に空から何かが降り注ぎ、迫りくるドグラを弾き飛ばした。

「なにいっ!?」
「えっ? えっ!? 何があったの……?」

 驚く才蔵。呆けるブルマ。その間に堕ちてきた人物は、ゆっくりと立ち上がった。
 それは円形の銀色の盾を構え、剣を片手に携え、腰に黄金の縄を下げ、赤と銀に輝く鎧に身を包んだ戦士。

「魔物め。私が相手よ!」

 それはワンダーウーマン。アマゾンの女神にして最強の戦士。


52 : さらば、誇り高き女神 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/03(金) 23:21:20 VKU/zV8Q0
 ■





「貴様ぁ〜何者だぁ!!」

 四方八方から襲い来るドグラを、ワンダーウーマンは恐るべき速度で斬りおとしていく。
 時に盾で弾き飛ばし、時に手甲で受け止め弾き、徐々に霧隠才蔵に近づいていく。

「す、すっご〜!」
「早く避難しなさい!」

 思わず見とれていたブルマに激を飛ばし、
 絡みついてくるドグラを斬り落とした。
 ブルマははっとする。良く見ればワンダーウーマンはドグラを斬り倒し、道を造ってくれていた。
 ブルマは抜けた腰を必死で奮い立たせ、わたわたと這いずって離れていく。
 同時に、ワンダーウーマンはとうとう才蔵の前に立った。

「くくくっ、やるではないか」 
「この手の化け物とは闘い慣れてるわ」

 言い終わると、ワンダーウーマンは剣を振りぬいた。
 剛速の剣線に才蔵の体が真っ二つに斬り裂かれ、しかし、才蔵は笑っていた。

「なに!?」
「くくく、ははははははっ!! 無駄だ女。私は無敵なのだ! 見ろ!!」

 自ら剣を抜くと、ばっ、と才蔵がマントを広げてみせた。
 切断面から噴き出る瘴気と、その体を埋めつくす暗黒物質。
 醜悪な光景に、ワンダーウーマンですら、うっと顔をしかめた。

「私の体が一つの宇宙なのだ! 霧隠才蔵の宇宙なのだ!!!」

 才蔵の体がぴたりとくっつき、元通りとなった。

「この中では私の思いのまま。私は神だ!!!!」

 才蔵が叫ぶとともに、山が、森が、唸り始めた。
 木々を食いつぶしながら、そこかしこからドグラが噴き出してくる。

「神……?」
「おまえたちはどうあがいても私には勝てんぞ!! ドグラは既にこの森を、
 山を食い尽くしている!!! いずれはこの星そのものを食い尽くしてくれよう!!」

 地激しい鳴り。構わず意気揚々と邪悪に笑う才蔵を前に、
 ワンダーウーマンとっさに飛びのいて、はいずっていくブルマを抱えて森を飛びのいた。
 間一髪だった。地面から溢れたドグラが二人のいた場所を飲み込み、空を跳ぶ二人をドグラが追い立てる。
 高台に降りた二人は、そこから自分たちがいた場所を見た。
 ドグラがひしめきうごめくその有様は、さながら地獄の様相を示していた。

 地面から吹き出したドグラがその規模を広げつつ、また再び地中に潜っていく。
 まるで蟻が獲物に群がって、その体をむさぼるように。

「あ、あわわわわわ」
「まずいわ」

 ワンダーウーマンが言った。ブルマが「なんで」と言い、
 早く逃げましょう。と続けた。
 しかしワンダーウーマンは頭を振った。

「ダメよ。あの邪神は、この星の地殻を喰らおうとしているのよ。
 地殻そのものを取り込もうとしているのね」
「えっ? ど、どういうことなの? それ……」
「ヤツが、この星そのものになろうとしてるってことよ」

 そうなったら逃げ場はなくなる。いくらワンダーウーマンとて手の打ちようがない。
 言うや素早く、ワンダーウーマンはブルマを置いて、再びドグラの中に飛び込んだ。
 ブルマの待って!! という声を振り切って、あっという間にドグラの海に沈む。

 盾を正面に構え、ドグラを蹴散らして沈んでいく。
 やがて空域の温度が上昇し、地殻に近い場所空洞に降り立った。


53 : さらば、誇り高き女神 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/03(金) 23:21:47 VKU/zV8Q0

 地面を這うドグラがずるりと盛り上がる。
 それは待ち構えていた才蔵となって笑った。

「来たか、女。ひとつ聞きたい。おまえはなんなのだ……」

 才蔵には疑問があった。
 ドグラは、生物に接触すると生物の体に穴を造る。
 その穴自体がドグラであり、ドグラの通り道であり、穴を広げて生物を支配する。
 しかしワンダーウーマンはあれだけドグラにさらされていながら、
 穴ができる様子が無い。
 
「私はワンダーウーマン。アマゾン族の女神であり、戦士よ」
「女神……、神だと!?」

 なるほど、と才蔵は笑った。

「この私の相手に、神とはおあつらえ向きだ」
 
 オンスロートというやつの、何と気の利いていることか!
 この私の相手に神を使わすとは!
 才蔵は夢想する。このゲームの参加者には夢幻弥勒に真田幸村がいる。
 才蔵は、あの二人を殺すためには、至高の神になるには
 更なる力が必要だと思っていたところだった。 

「神たる貴様を取り込めば、この私も更なる力を得ることができるやもしれん!!!」
「残念ね。私はおまえのような奴に食われるつもりはないわ。貴様はここで討つ!!」
「くくくっ! では、やってみるがいい!!!」

 その言葉を皮切りに、ワンダーウーマンが飛びかかった。
 才蔵は周囲の岩をドグラと化し、ワンダーウーマンを撃ち落さんがために襲わせる。
 ワンダーウーマンは盾でドグラの第一波を弾き飛ばし、第二波を剣で斬り伏せた。
 着地したワンダーウーマンは隙なく剣を地面に突き刺し、
 顔の前で腕をクロスして、両手の腕輪を重ねた。
 迫りくるドグラをまっすぐ睨む。

「はぁぁーっ!!!」

 おおよそ女性とは思えないほどの覇気を帯びた雄たけびが、衝撃波が、
 地殻を揺るがした。ワンダーウーマンの神通力が炸裂したのだ。
 周囲のドグラをまとめて消し飛ばし、才蔵の体をも弾き飛ばした。

「ぐぅ、やるな!」
「どういたしまして」

 皮肉を述べ、素早く剣を掴むと、腰の縄を飛ばし才蔵を拘束した。
 才蔵が身じろぎするが、身動きが取れないようで、それを確認するなり一直線に斬りかかった。
 才蔵はにたりと怪しげに笑い、受けるそぶりなく刃を受け入れる。無防備な体に剣が食い込むが、
 ワンダーウーマンは顔をしかめた。斬った感触が無かった。

「言ったはずだ。私の体は一つの宇宙だと!!」

 才蔵が刀身をつかみ、剣をさらに体に食い込ませる。
 ワンダーウーマンは思わず剣を手放し飛びのいた。
 投げ縄と剣は才蔵の体に取り込まれて、沈んでいった。

「なんてこと……!!」
「どうやら貴様は私が知る神とは、違った神であるようだな。ならば貴様では私を倒せん! 
 貴様が如何な力を持とうと、私の支配する領域では私は倒せん!!」

 才蔵が両手を広げると、周囲の空間が歪み、地殻だったものが一瞬でドグラに変貌した。
 ワンダーウーマンは盾で弾き飛ばすためドグラに振りかぶるが、先ほどとは違って逆に弾き飛ばされてしまう。  
 さっきとはパワーが違っている。桁違いだ。


54 : さらば、誇り高き女神 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/03(金) 23:22:15 VKU/zV8Q0

「さぁ、私に食われるがいい!!」

 両腕両足をドグラに縛られ、ワンダーウーマンはつるされた。
 無数のドグラの口が、チキ……、チキ……、とワンダーウーマンをにらんだ。
 不思議なことに、振りほどこうと力を入れようにも、痺れたようにピクリともしない。
 これは投げ縄の力……! 取り込んだのか? これがあの男の能力か! ワンダーウーマンは歯を食いしばる。
 まんまとしてやられた!
 神を屈辱たらしめた才蔵は、満悦して手を振りかざし、そしてドグラが襲いかからんとした。
 正にその時、地殻には到底似つかわしくない――――というか想像もできない雷鳴がとどろいた。
 天井をぶち抜いてドグラを貫く雷は、ついでと言わんばかりにワンダーウーマンの拘束をも破壊する。

「ぐぬぅぅっ!!! なんだ!?」

 雷鳴がやみ、ドグラを蹴散らして、その男は現れた。

「自然を蹂躙し邪神よ、我が力の前におののくがいい!! マイティ・ソーはかく語りき!!」

 雷神はここにあり。
 ソーはハンマーをひと撫ですると、発生した雷光でドグラを消し飛ばし、
 支配領域を展開していたはずの才蔵の横っ面を殴り飛ばした。

「なにっ!? バカなっ……!! この私がダメージを……っ!!?」
「貴様が例えその身に宙(そら)を治めておろうと、我がムジョルニアの前に意味はない!」 

 ソーはハンマー=ムジョルニアを振り回し、パワーをチャージする。
 回転が増すほどに吹き荒れるエネルギーが激しく地殻を揺るがした。
 ワンダーウーマンは盾を拾い、ソーの隣に並んだ。

「雷神よ、礼を言う」
「造作もないこと。貴公はアマゾンの戦士であろう、共に奴を倒そうぞ」

 チャージを終えたソーが、まさに電光のごとき勢いで飛び出し、
 ムジョルニアの一撃を才蔵の腹に打ち出す。
 苦悶にのたうつ才蔵が宙に浮いたところを、間髪入れずにワンダーウーマンが衝撃波で追撃する。

「ぐぅぅぅぅう……!!!」

 べちゃり。ヘドロのようにぐちゃぐちゃになった才蔵の体が人間体から、
 ドグラがまとわりついた異形へと変質していく。

「私は負けぬ!! ドグラは無限の空間だ!! きさまらがどれほどの神かは知れぬが!!
 わたしの意識が支配するドグラは絶対に負けぬ!!!」

 もはやなりふり構わないのか。周辺の宙域そのものをドグラと化し、
 二柱の神に才蔵は襲いかかる。

「きさま等もドグラに取り込んでくれる!!」

 ワンダーウーマンとソーは顔を見合わせた。
 そして、ソーはムジョルニアの最大の一撃をドグラの塊に打ち込み、
 ワンダーウーマンは最大の神通力を爆発させた。

「ぐ、ぐあああああああああああ!!! ば、バカな〜っ!!!!!」

 その衝撃は星そのものを激しく揺るがし、
 はちきれたパワーは地表に吹き出して宇宙にまでおよんだ。
 ブルマは、二柱の神が飛び込んだ穴から、穴のサイズをはるかに超える、
 かめはめ波のようなパワーが空に吹き飛んだのを見た。
 自分は吹き飛ばされないように木々にしがみついていた。


55 : さらば、誇り高き女神 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/03(金) 23:22:39 VKU/zV8Q0


「ふぅー、ふぅー……っ!」

 もはやゲル状の欠片になった才蔵は、それでもなお生きていた。
 ソーとどめを刺すためにゆっくりと近づいた。

「とどめだ、邪神よ。地獄に還るがいい」
「ああ……。確かに負けだ……」

 だが、と才蔵は続けた。

「きさまらのな!!」

 才蔵の叫びと共に、ドン!! と衝撃が襲った。
 星そのものが大きく揺れ始め、地殻に大きな亀裂がはいる。
 
「何をしたの!?」
「ふはははは! ドグラは無限の空間と言っただろう!
 きさま等と戦っている間に、別のドグラに星を食わせていたのよ!!
 この星はもうすぐ滅び、ドグラそのものとなる!!! そうなれば生き残れるのは、
 ドグラを支配するこの私だけよ!!!!!!」
「あがきをッ!!」

 亀裂からあふれてくるドグラを吹き飛ばしながら、ソーは唸った。
 チャージしたムジョルニアの全パワーは解放してしまった。
 今の自分に、周辺のドグラをまとめて吹き飛ばすパワーはない。
 仮にそのパワーがあったとしても、星そのものを吹き飛ばしてしまわねばならない。

 それでも自分と、ワンダーウーマンは無事だろうが、
 それでは外で震えていたブルマと言う女性が死んでしまう。

「悪鬼め……!!」
「ふはははははは!!!!!」

 才蔵の魔笑がこだまする中で、ワンダーウーマンがドグラを弾き飛ばしながら、
 才蔵の残りカスに近づいた。
 そして、ひざを折り、その眼前で腕をクロスする。

「何をする気だ……!?」 
「雷神ソー、外の女性を頼むわ」

 ソーは、鍛えられた戦神の直感で、ワンダーウーマンが何をするか察した。
 神妙な面持ちでムジョルニアを掲げて、言った。

「貴公の勇気と力に敬意を示そう。共に戦えて光栄だった」

 ワンダーウーマンは微笑んだ。
 ソーはそれを見届けると、天井を突き破り地上へと飛び去った。

 崩落の進む星。マグマとドグラが地面から吹き出し、あたりを埋め尽くす。
 ドグラが触れた部分、ワンダーウーマンの体に小さく穴ができる。
 才蔵は悟った。
 そして、叫んだ。

「きさまっ! まさかっ! まさかっ! この星ごと……っ!!
 くそっ!! させんぞ〜っ!!! その前にきさまを喰いつくしてくれる!!!」
 
 ドグラが最後の抵抗とばかりにワンダーウーマンの体に集まる。 
 最後の力を振り絞っているせいか、さすがのワンダーウーマンの体にも大穴が開き始める。
 だがどんなに穴が開こうが、穴のドグラが暴れようが、彼女は目を閉じて姿勢を崩さない。
 額の穴から湧き出たドグラが、彼女の象徴たるティアラをはじき飛ばした。

 ティアラが地面におちた瞬間。
 ワンダーウーマンは目を見開き、すべてのパワーを解放した。

「や、やめろおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」

 才蔵の悲痛な叫びを飲み込む大爆発が巻き起こり、そして……。





 そして一つの星がその命を終えた。


56 : さらば、誇り高き女神 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/03(金) 23:23:56 VKU/zV8Q0
 ■




 宇宙。

 ソーのマントに全身を包まれて、ブルマは星の崩壊を見守っていた。
 
「……!」
「彼女は戦士として、戦場で身罷れたのだ。悔いはない。
 人を護って、戦い果てたのだ。素晴らしき女神よ。誇り高き戦士よ」

 ソーの賛辞は、慰めである。ブルマは涙を浮かべていた。
 ソーはそれをぬぐうことをせず、すぐさまほかの星に行くべく飛び去った。

 

【ワンダーウーマン@JUSTICE LEAGUE 死亡】

【太陽系を模した宇宙/一日目朝】


【ソー@AVENGERS】
[状態]:健康
[装備]:ムジョルニア、鎧
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:オンスロートを再び地獄へ送り返す
1:ブルマを護る
2:アベンジャーたちを探す
3:戦士よ、安らかに
[備考]
※参戦時期は『シージ』の前。
 ラグナロクから帰還し、アベンジャーズとの合流前です。

【ブルマ@DRAGON BALL】
[状態]:健康、不安
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:いやー!
1:孫くんとベジータ、トランクスでもクリリンでもヤムチャでもいいから探す
2:フリーザとかセルとかいやー!
3:女神さま……!
[備考]
※参戦時期はセル編終了後。


57 : さらば、誇り高き女神 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/03(金) 23:24:23 VKU/zV8Q0


「ぐぐぐっ……」

 宇宙空間を、ドグラの欠片が漂う。
 霧隠才蔵は生きていた。
 ワンダーウーマンがパワーを解放する寸前、才蔵は
 全てのドグラを自身の防御に回し、生存に徹していた。
 才蔵の内面に浮かぶドグラ宇宙が、本当に無限の空間であり、
 その空間に内側に入ることで自身の支配領域に守られていたことも生存に繋がった。

「おのれ……、おのれ許さんぞ……!!」 
 
 ドグラは物質がある限り無限に増殖できる。
 しかし、依り代が無ければこの次元に湧き出ることはできない。

 才蔵は怒りと、憎しみと、悔しさを噛み締めた。

「おのれ……必ず、必ずきさまらを喰らい、この霧隠才蔵が神となってやる……!!」

 憎しみは宇宙を漂う。
 獲物を求めて。

 
【霧隠才蔵@虚無戦記】
[状態]:わずかなドグラ
[装備]:ドグラ宇宙
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:私が真の神となる!
1:夢幻弥勒と真田幸村は殺してやる
2:マイティ・ソーとかいう神は喰らってやる
[備考]
※参戦時期はドグラと融合した直後。


58 : さらば、誇り高き女神 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/03(金) 23:24:54 VKU/zV8Q0
【キャラクター簡易解説】
『ワンダーウーマン』
DCコミックス出身のスーパーヒーロー。スーパーヒロイン。
DCどころかアメコミ全体を代表する女性のスーパーヒーローである。
アマゾン族の王女にして戦士、つまり神の一柱である。
戦士として育てられたため、基本的にはものすごく勝ち気でスパルタな性格をしている。
何分スーパーヒーロー兼女性なので、世界線によってはスーパーマンの恋人だったり
バットマンといい感じになってたりする。
当ロワのワンダーウーマンは、どうやら『フラッシュポイント』以前の、
つまりNew!52以前のワンダーウーマンであったようだ。

『マイティ・ソー』
マーベルコミック出身のスーパーヒーロー。
北欧神話の雷神「トール」その人であり、世界最強のヒーローの一人である。
マーベルコミックスで強いヒーローは? という質問の時、
大体ソーかゴーストライダー上げとけば問題ないレベルで強い。
その傲慢さゆえにアスガルドから地球に落とされた神。
初期はドナルド・ブレイクという足の悪い医者の人間を依り代のようにして
変身ヒーロー的な要素を持っていたが、設定リセットやらなんやらで
今は無かったこととなっている。
当ロワのソーは、どうやら『ラグナロク』から帰還した後の時系列のようだ。

……ちなみに武器のハンマーは当ロワでは『ムジョルニア』と表記しているが、
これは実は誤字であるらしい。一応初期の翻訳作品(オンスロート等)ではムジョルニア表記である。
当ロワは懐かしさも交えて、あえて『ムジョルニア』表記で行かせていただく。


59 : ◆Dbja0ebxMY :2017/11/03(金) 23:25:50 VKU/zV8Q0
本日はここまでです。ありがとうございました


60 : 名無しさん :2017/11/04(土) 08:48:47 HvlnvQ3Y0
投下乙
セントリーの不安定さがどう転ぶか…
ここがロワである以上挫ける要素の方が圧倒的に多いが嘘を真にしてこそのヒーローだ


61 : ◆Dbja0ebxMY :2017/11/07(火) 17:48:43 sE3llZAA0
>>60感想ありがとうございます。
日番谷冬獅郎、井上織姫、アレクサンド・アンデルセン。投下します。


62 : 理不尽な戦力差 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/07(火) 17:49:39 sE3llZAA0
「どういうことだ……これは」

 オンスロートとの邂逅以前。その最後に記憶しているのは、
 ジェラルド・ヴァルキリーなる滅却師の巨人に名乗られ、その返事を返したところ。
 日番谷冬獅郎は今、何処までも広がる荒野の中に、ぽつんと立っていた。

 全能の神、オンスロート。
 赤い甲冑を着込んだ怪物はそう言った。
 並々ならぬ威圧感。霊圧の類こそ感じなかったが、アレは間違いなく只者ではなかろう。
 霊圧を感じなかった――。……考えたくはないが、ヤツはかつて藍染が目指していたという、
 死神や虚を越えた存在。

「『超越者』なのか……?」

 すっと目を閉じ、綴られる名前に目を通す。
 黒崎一護、井上織姫、藍染惣右介、浦原喜助、更木剣八、ユーハバッハ。
 藍染やユーハバッハの名前があることに、日番谷はまず驚いた。
 本当に奴らがここにいるのだろうか? 霊圧を感知してみても、近場にやつらの反応はない。
 
 ――嘘か? 
 日番谷は考える。
 
 オンスロートなる怪物が、もし本当に藍染とユーハバッハを連れてきて、
 強制的に殺し合いに参加させているのならば、オンスロートの持つ力は
 両者を同時に敵に回してもなお上回るということか、
 あるいは敵に回しても問題ない自信があるということだ。
 浦原喜助、こいつがいることも恐ろしいことだ。
 涅マユリが唯一(本人は絶対認めないだろうが)恐れている、あるいは敵わない知恵者。
 そいつがまんまと連れてこられている、ということだ。
 最悪のパターンは、オンスロートがユーハバッハか藍染の協力者である可能性もあるか。
 
「くそっ、考えがまとまら――!」

 言葉を言い切る前に、日番谷は氷輪丸を抜き放った。
 背後、考えに夢中だったせいか、何者かの接近を許している。
 不覚をとったと舌打ちしながら、氷輪丸を振りかぶった。

「わ、わ! わわわあっ!!」

 氷輪丸の圧に押されて、どてん、と何者かはどんくさく倒れ込んだ。
 いたた、と尻をさするその相手は、日番谷の良く見知った女性だった。

「あー! やっぱり冬獅郎くん! 冬獅郎くんだよね!!」
「おまえは……、井上?」

 出会えた歓喜に目を大きくするその女性は、人間にして特異な力を持つ者。
 いつぞや世話になった女性――井上織姫だった。


63 : 理不尽な戦力差 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/07(火) 17:49:58 sE3llZAA0

 ■


「やーよかったー! 冬獅郎くんいつもの死神の格好じゃなかったから!
 ひょっとすると他人の空似!? お兄さん!? って思って声かけづらくって」
「格好のことは言うな」

 日番谷の現在の格好は、聖十字騎士団のそれである。
 プライド的に、まさか敵にまんまと操られていた時に、
 無理やり着せられてたなどとは口が裂けても言えなかった。

 しかし、と日番谷は思う。
 どうやらあの名簿は、まんざら嘘ではないらしい。
 井上織姫は名前があった。そしてここにいる。自分もここにいる。
 となると、名簿は本物で、藍染やユーハバッハがこの世界のどこかにいる可能性は俄然高いということだ。

「井上、おまえは――」 
「いやーそれにしてもびっくりしたなー。オンスロート……さん?
 神さまだから、さま、かな……? にいきなり連れてこられたんだもん!
 ……ってそうだ黒崎くん!!」

 コロコロと表情を変えていく織姫は、思い出したようにその名を呼んだ。
 
「日番谷くんどうしよう! 黒崎くん、ユーハバッハに負けちゃったの!!」
「――!! なん……だと……!?」

 織姫は話し始めた。黒崎一護と自分は、ユーハバッハと戦っていたと。
 その中で、ユーハバッハの能力『全知全能』の真の力を見たと。
 黒崎一護の卍解、天鎖斬月も、六花による拒絶も、『全知全能』の前には通じなかったと。

「なんてことだ……!」

 未来を改変する力。日番谷の知る限り、それはどんな能力より強大な力ではないか。
 こちらがどんなに回避行動をとっても、奴の剣は「あたる」し、
 こちらがどんなに攻撃を当てようとしても、奴は「躱す」ことができるのだ。
 『全知全能』の名に恥じぬ恐ろしさだ。

「はやく、はやく黒崎くんを助けないと――!」
「落ち着け! 井上!!」

 焦り狂う織姫を、日番谷は一括した。
 びくりと身を震わせて静止する織姫を見て、言う。

「大丈夫だ。黒崎一護はそんなことで諦める奴じゃねぇだろ。
 あいつもこの世界のどっかにはいるんだ。つまり死んじゃいねぇ。
 それに、奴の能力を俺が知れたことは大きい」
「日番谷くん……!」

 織姫はくっと唇を噛んで、両の手で頬を張った。
 ぱちーんとはじける良い音がして、いつもの、太陽のような笑顔を見せた。

「そうだね! 黒崎くんも、浦原さんも、ちょっと怖いけど
 更木さんもいるんだもんね! 私も頑張らないと!」
 
 よーしやるぞーと意気をあげる織姫を見て、
 なんだか日番谷はなんだか気の抜ける思いだった。
 そして、背後の岩陰に視線をやる。

「ところで、そろそろ出てきたらどうだ?」

 織姫がほえ? と日番谷の視線を追う。
 その先の岩陰からぬうっ、と、長身の男が這い出てきた。


64 : 理不尽な戦力差 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/07(火) 17:50:21 sE3llZAA0

 ■


「何者だ、答えろ」

 氷輪丸をかざす日番谷を、その男は眼鏡の奥からじっと見ていた。
 紺色の、流れるような神父服。首から垂らすロザリオ。
 聖十字騎士団ではないだろう。いわゆる現世の聖職者か。と日番谷は思う。

 男はゆっくりと口を開いた。

「少年。私の名はアレクサンド・アンデルセン。神父だ。
 二人にひとつ、尋ねたい。……先ほどの話は本当か?」

 視線を落とすアンデルセン。日番谷は氷輪丸をいつでも解放できるように、
 万全の態勢で話に臨む。

「そうだ。俺は護廷十三隊十番隊隊長、日番谷冬獅郎。死神だ」
「私は――」
「死神ィ……?」

 陽炎のごとくゆらりと動くアンデルセンに、日番谷は強い目を向け続ける。
 アンデルセン。名簿にあった名前だ。
 織姫は神父と聞いてほっと安心したのだが、
 アンデルセンの雰囲気の変化に戸惑った。 

「だ、大丈夫だよ日番谷くん! 神父さまだって! 神父さま、私たちは――」
「まて! 井上!!」
 
 叫ぶや否や、日番谷は織姫の前にかけだし、そして氷輪丸をかざす。
 戦闘態勢に入っている日番谷に、織姫は焦った。

「ちょっ……! 日番谷くん!」
「血のにおいがするぜ」

 神父の口から「シィィッ」と吐息が漏れた。

「アンタ……、血の臭いがするぜ。それも二人や三人斬ったなんてもんじゃねぇ。
 何人も何年も斬り殺し続けて、血が取れなくなった、殺人者の臭いがな」

 神父――アレクサンド・アンデルセンは、日番谷のセリフを聞き終わると、
 どこからともなく二本のバヨネットを取り出した。
 そして、両腕を十字架を表すように大きく交差する。

「我らは神の代理人。神罰の地上代行者」

 ギギギギギギ、とアンデルセンは歯を噛み締める。

「我らが使命は我が神に逆らう愚者を――、その肉の一片までも絶滅すること」

 空気が張りつめる。

「AEMN」


65 : 理不尽な戦力差 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/07(火) 17:50:49 sE3llZAA0
 ■


 アンデルセンと日番谷が剣を撃ち合わせる。
 アンデルセンはバヨネットの二刀流。日番谷は氷輪丸の一刀。 
 弾き弾かれ、二人はその中心を円状に流れ、回る。

 アンデルセンは怒っていた。
 オンスロートにももちろんそうだが、目の前のこの少年にもだ。
 死神。死の神である。
 目の前の少年はあろうことか、自分のことを死神だと名乗った。
 普段なら、子供のいたずらなら、アンデルセンも拳骨の一つでも落として終わるところだ。
 だが、先の話。「ユーハバッハ」、「全知全能」、「聖十字騎士団」。

 それはすべて、アンデルセンには神への侮辱に他ならなかった。
 異教の神、違う神を語るなら、ただの異教徒の類で終わりだ。
 だが、よりにもよって、Y-H-V-H<ユーハバッハ>だと……。

「シィィィィィッ!!!」

 何合かの撃ちあいの果てに距離が開く。
 この子供は、子供ながら長剣を使いこなしている。 
 身体能力も恐るべきものがある。その辺の吸血鬼よりよっぽど強く、速い。

 その子供――日番谷冬獅郎は、恐るべきことを口走った。

「弱いな、アンタ」
「!?」

 アンデルセンは驚愕する。
 日番谷は肩透かしだったとでも言いたげな表情だった。

「この俺が……、弱いだと」
「弱いね、力も速さも大したことねぇ」
「オオォォォオオオォオオ!!!」

 アンデルセンが渾身を力で斬りかかる。
 日番谷は落ち着いた様子で一息つき、

「――――!!」

 アンデルセンを体ごと、あっさりと斬り捨てた。
 

 左肩から右わきまで袈裟切りされたアンデルセンは、糸の切れる様にばたりと倒れる。
 その様子をみて、日番谷は氷輪丸をおさめた。

「日番谷くん! 殺してー……」
「ねぇよ。殺すまでもねぇ」

 駆け寄った織姫に視線と答えを投げる。
 アンデルセンに背を向けて、日番谷は立ち去ろうとした。

「あ、えとー」

 織姫がおろおろしていると、背後でゆらり、と音もなくアンデルセンが立ち上がる。
 アンデルセンは「再生者」。この程度の傷は難なくふさがり、元通りである。
 再びバヨネットを構え、攻撃の為に二人を視線に収めた。

「やっぱ、なんかあったか」
「!?」

 その瞬間、背後から日番谷の声が聞こえた。 

 アンデルセンが振り返ると、そこには氷輪丸を抜いた日番谷が立っている。
 反射的にバヨネットを投げようとするが、アンデルセンはそこで腕が動かないことに気付いた。


66 : 理不尽な戦力差 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/07(火) 17:51:09 sE3llZAA0

「な……に……!?」

 アンデルセンの両腕は凍り付いていた。
 地面から延びた氷が、楔のようにアンデルセンの動きを止めている。
 しかし、並の氷ならばアンデルセンの怪力を持ってすれば破壊できる。
 つまり、これはただの氷ではない。

「俺の氷輪丸は氷雪系最強。言ってもわかんねぇかもしれねぇが、
 お前程度を凍られるくらいなんてことはねぇさ」
「ぐ、ぐぅぅぅぅぅ!!!?」
「どうやら再生能力を持ってたみたいだな」
 
 日番谷はガチャ、と氷輪丸を水平に掲げた。 
 するとアンデルセンの身体全体が徐々に凍り始める。

「貴様……、法術師か……!」 
「死神だ」

 アンデルセンを這う氷が、その顔まで差し掛かった時、
 織姫が叫んだ。

「まって! 日番谷くん!!」

 氷の浸食がおさまる。日番谷は織姫に視線をやった。

「殺しちゃだめだよ! その人、死神でも虚でもないよ!」
「じゃあ滅却師かもな。実際十字架下げてやがるし」
「弓を使ってないよ!」
「…………おいおい」

 アンデルセンそっちのけで、日番谷と織姫は口論し始めた。
 殺さないでだの殺すだの、助けなきゃだの、と。

 アンデルセンはかつてない屈辱の中にいた。
 異教徒に軽くあしらわれ、大したことないと言われ、
 生殺与奪を握られ、挙句蚊帳の外である。

 アンデルセンは今すぐこの二人を殺してやりたかった。
 身体に力を入れる。かつてない怒りはかつてない力を引き起こす。

「ぐ……、ぬ、あ、あ、あ、ああ!!」

 ぶるぶると氷ごと体が揺れ始め、そして肉が裂ける音がした。
 氷の内側に血が流れていく。
 凄まじい氷結、凄まじい強度。「再生者」とはいえ、
 完全に喪失した部分は再生できない。
 この氷を力ずくで破壊すれば、間違いなく肉体はずたずたになるだろう。
 だがアンデルセンに迷いはなかった。

「ぐうぉ、ぉああああああああ!!!!!!」

 氷を引き裂き、破壊し、アンデルセンは飛び出した。
 肉体がつぶれ、引き裂かれ、血飛沫を巻き上げながら。
 織姫がうっと顔を抑えた。
 日番谷すら、さすがに顔をしかめた。

「何やってんだおまえ……!」
「我が使命は、我が神に逆らう愚者を……」
 
 視界の端に氷角が見えた。
 そこまでで、アンデルセンの意識は途絶えた。


67 : 理不尽な戦力差 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/07(火) 17:51:32 sE3llZAA0
 ■
 

 次にアンデルセンが目覚めたとき、それは不可思議な膜の中だった。
 目線を下げると、少女が膜に手を翳している。少女の術式のようだった。

「あ、目が覚めたんですね!」 

 少女、井上織姫が笑顔を浮かべた。
 アンデルセンはっとして、思わずとびかかった。
 が、少女に斬りかかることはかなわなかった。膜に弾かれたのだ。

「ダメですよ。まだ治ってないんですから」
「な、に……?」

 アンデルセンが体を見ると、ボロボロだった体が、元通りになっていた。
 裂けて崩れていた肉も、露出した骨も、何事もなかったかのように元通りである。
 それどころか服すら直っている。

「井上に礼を言うんだな」

 織姫の背後、岩陰に背をゆだねていた日番谷が言った。

「女、これはいったい何の秘術だ……」
「え? ええとこれは双天帰盾と言って、内部の事象? を拒絶して……」

 織姫の説明を受けて、アンデルセンは怒りを通り越して、飽きれてしまった。
 事象の拒絶。それはつまり、起こってしまったことを「無かったこと」にする
 ということだろう。
 神の領域に踏み込む御業だ。奇跡だ。罪深い。

「少女よ」
「井上織姫です!」
「……井上織姫。キミは自分の力がどういうモノかわかっているのか?」
「はい! みんなを護れると思ってます!」
「……」

 あっけらかんとした返事に、アンデルセンは言葉を失った。


 ■


68 : 理不尽な戦力差 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/07(火) 17:52:05 sE3llZAA0


 双天帰盾によって再生したアンデルセンは、
 日番谷監視の元、織姫と話し合い、少なくとも今はもう日番谷を斬らないことを誓った。

「どうした、俺を斬るんじゃなかったのか」
「おまえはいずれ殺す。必ず塵芥にしてやる。だが、恩人の願いを軽々と無視はできん」

 アンデルセンがちら、と一瞥すると、織姫はVサインと笑顔で迎えた。
 そう、アンデルセンが斬らないと誓ったのは、織姫がアンデルセンに提案し、願ったからだった。
 さらには、自分たちと共に行動しようとも。織姫は言った。

「言っておくが、俺はアンタに気を許したわけじゃない」
「俺もそうだ。むしろ今すぐに貴様は斬りきざんでやりたい。だが、それをするには力が足りん」

 アンデルセンは、先ほどの戦いと、聞いたばかりの織姫の話を照らし合わせる。
 死神、虚、滅却師。そして滅却師の、まさに神のごとき力の持ち主、ユーハバッハ。

 悔しいことだが、今の自分では到底及ばない。
 自身の長所である再生術にしても、双天帰盾のようなものを見たあとなのだ。
 霞んでしまっている。

「じゃあ三人だしトリオですね! そうだ! せっかくだし、トリオ名つけようよ!!」
「「却下」」

 織姫のトボけた提案を一蹴すると、日番谷とアンデルセンは話し出す。

「まずは何処へ行く、死神」
「さぁな、見た感じどこまでも荒野だ。しばらく歩かなきゃ始まらねぇさ」
「それもそうだな」
「あっ、待ってよー速いよー!」

 そういって三人は歩き出した。



【界王神界を模した小惑星/一日目朝】


【井上織姫@BLEACH】
[状態]:健康
[装備]:盾舜六花
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:オンスロート様?と戦わなきゃ!
1:黒崎くんたちどこだろう?
2:ユーハバッハや藍染さんには気をつけなきゃ……
3:アンデルセンさんって、意外と優しいんじゃないかな?
[備考]
※参戦時期は74巻にて一護が一度ユーハバッハに敗北した直後。
 

【日番谷冬獅郎@BLEACH】
[状態]:健康
[装備]:氷輪丸、聖十字騎士団の制服
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:オンスロートを倒す
1:黒崎たちを探すか
2:ユーハバッハ、藍染は出会ったら倒す
3:アンデルセン、気の抜けない奴だ
[備考]
※参戦時期は74巻、ジェラルドと交戦開始直後です。


【アレクサンド・アンデルセン@HELLSING】
[状態]:健康
[装備]:バヨネット、エレナの聖釘
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:オンスロートを滅ぼす
1:アーカードを滅ぼす
2:ユーハバッハも滅ぼす
3:死神たちも最終的には滅ぼす
[備考]
※参戦時期は8巻、エレナの聖釘を使用する前です。


69 : ◆Dbja0ebxMY :2017/11/07(火) 17:52:28 sE3llZAA0
投下終了です。ありがとうございました


70 : ◆Dbja0ebxMY :2017/11/18(土) 18:42:40 z3LSwcVI0
グリーンアロー、ウルヴァリン、藍染惣右介、孫悟空で投下します。


71 : 笑えよ、超越者 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/18(土) 18:43:30 z3LSwcVI0


 その男に近づくだけで、物も肉も塵と化していく。

 グリーンアローはガレキのスキマからスキマへと飛び移り、
 目標を定まらせないように動き回る。まるでジャングルの野生動物のように
 しなやかに、時にワイルドに。

 一瞬後、グリーンアローを補足した敵が剣を一つ払うと、
 ボッ! という炸裂音と共に、アローが先程足場にしていた
 ガレキの山は蒸発したように消えて失せた。すかさず技後硬直を狙い、アローの弓が飛ぶ。
 しかし、まっすぐに狙い定めたはずの弓は、敵を目前に宙で塵と消える。

「ちぃっ! なんてぇ野郎だ!! 反則だぜ……!」

 悪態をつきつつ足は止めることはない。足を止めたら即座に殺されるだろう。
 攻撃を躱しながら大きく移動し、彼は舌打ちする。敵の剣の一凪ごとに、
 消しゴムをかけたようにがれきの山は跡形もなく消えていく。
 せめてものあがきとでもいうように、アローはそれでもかまわず弓矢をうち続けた。
 
 迫りくる矢はまっすぐに、正確に心臓部へと放たれている。
 しかし、敵――藍染惣右介――は、余裕の笑みを崩さない。
 その脳裏には、今一つ疑問がある。

 目の前の人間の老人は、攻撃、反応、そして対応、複合して手慣れた動きを見るに、
 おそらく相当の場数を踏んでいる。
 おおよそ人間でありながら、おぼつかない足場をここまで縦横無尽に、かつ、しなやかに
 駆け廻り戦闘をこなすこの男は、パワーやスピードに偏って技巧に劣りがちな死神や破面に比べると、
 驚くほどしたたかでやり手である。
 おそらく相当に頭も回るはずだ。それがなぜ、効かないとわかっている攻撃を繰り返すのか。

 藍染の疑問は正しい。
 グリーンアローは自身の攻撃が通用しないことは百も承知である。
 その上で攻撃を重ねて注意を引く――、そう。注意を引いているのだ。

 藍染が歩みを進める。誘いがあるならばノってやろう。
 超越者たるその身に宿す自信と余裕は崩れない。
 その道の端に、ガレキの中で、藍染を見通す存在がいた。
 彼は藍染が通りすがったのを見計らい、ガレキを跳ね上げて一気に飛びかかった。

 塵になるガレキを俯瞰して、藍染は笑っている。

 狙い澄ましたのは自分だと言わんばかりに振り返ると、
 その飛びかかった何者かに手をかざした。とたん、強烈な霊圧で宙域が歪む。
 他ならぬ藍染の発する異常なまでの霊圧によって歪められた空間は、
 接触する物体を粉砕し――、男の体が藍染に触れる前に爆散させた。

「ローガン!!」

 グリーンアローは思わず叫んだ。
 ローガンと呼ばれた男の肉片が飛び散っていく。
 作戦は失敗だ。アローは青ざめた。唯一の勝機が、今消えたのだった。
 アローの絶望を見越して、藍染惣右介はまだ笑っている。

「キミは囮、彼が攻撃。シンプルだが効果的な作戦だ。……だが、相手が悪かったね」

 藍染がグリーンアローを見る。
 絶望したものの、彼はまだ完全に戦意を失ってはいない。見事である。
 藍染の心は自身の力のもたらす事象に満ち満ちていた。
 アローは状況判断ができないほどバカではないだろう。
 だからこそ自分からは逃げられないのだと悟っているのだろう。
 必死で弓を構えるアローを見て、諭すように、藍染は言う。

「ココで殺すには少々惜しい気もするが、まぁ仕方ない。死んでくれたまえ」

 藍染が剣を掲げた。その時だった。

「『残心』って奴がないぜ、坊主」

 背後から静かに響く声。
 藍染が一瞬驚愕し、振り向いた瞬間。

 男の――、ローガンの爪が、藍染の胸を貫いた。


72 : 笑えよ、超越者 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/18(土) 18:43:50 z3LSwcVI0

「ローガン!!」

 アローが叫ぶ。藍染が吐血する。反応を確かめてから、
 ローガンは間髪入れず振りかぶった右爪で袈裟に切り裂いた。 

 藍染が血を巻き上げて倒れ伏す。
 地面と空に挟まれた彼の目が捉えたモノは、自身の霊圧による肉体の『破壊』を、
 圧倒的に上回る速度で自己再生するローガンの姿だった。

 ――ああ、なるほど。

 ごちるのと倒れるのは同時だった。
 大の字の藍染がピクリとも動かなくなったのを確認してから、
 アローはローガンに駆け寄った。

「やったな、オイ! やりやがったな、オイ!!」
「騒ぐな。俺にとっちゃあ、このくらい屁でもねぇさ」
「強がりを言いやがるぜ」

 皮肉めいているが、満身創痍である。
 アローはローガンの能力『ヒーリングファクター』について先に聞いていた。
 しかし、あの藍染の、ほとんど物質を消滅させるほどの破壊、歪みに耐えられるか、
 アローには不安があった。
 しかし大丈夫と太鼓判を押して、この作戦を提案したのはローガンだった。
 自分の再生能力なら、奴の破壊に抗って、とどめを刺せる。と。
 
「しかし、やべぇ奴だった。こんなバケモノを召還するたァ、
 オンスロートって奴はマジでやばい奴みてぇだな」
「言っただろうオリー。ヤツの言う『全能の神』ってのは、あながち間違いじゃねぇ。
 歪んじゃいるが、アイツは間違いなく世界最強のミュータントなんだ……!!」

 ローガンが言葉を止めたので、グリーンアロー=オリバー・クィーンは尋ねた。

「どうした? ローガン」
「……クソったれが」

 オリバーが振り返った視線の先。そこには切り裂かれ貫かれ、
 死んだはずの藍染が何事もなかったかのように立ち上がっていた。

「な、なん……だと……!?」
「俺と同じかよ……!」
「再生とは違うな……、不死だよ」

 再び爪を構えたローガンに、藍染は言った。

「諸君らには残念な事実だが、私は死を超越している。少なくともこの程度では私は倒せない。
 とはいえ私に一撃を入れたその行動力、その再生力。自身が崩れていく過程にひるまない勇猛さ。
 ……素晴らしいと褒めておこうか」
「クソッタレ! 上から目線でモノ語りやがって……!」
 
 アローが悪態をつく。
 二人にとっては最悪の展開、最悪の相手だ。
 近づけば物理的に破壊してしまう。攻撃が通っても相手は不死身。
 正直打つ手がない。

 かといって逃げられるような相手ではないことも、百戦錬磨の二人は理解している。
 見越したように、藍染が歩を進める。
 アローとローガンは決死の想いだった。

「オリ―、てめぇは逃げろ!」
「何言ってんだ! 尻尾撒くわけにゃいかねぇだろ!!」
「俺はヒーリングファクターで再生できるが、おめぇさんは死んじまうだろーが!!」
「くっ……!」

 すまん、とこぼしてアローが振り返った。
 その先に、藍染は先回りした。


73 : 笑えよ、超越者 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/18(土) 18:44:17 z3LSwcVI0
 
「!!」
「すまないが、ネズミ取りにはもう飽きている」

 アローの反射的に放った矢を破壊して、藍染が刀を振り上げる。 
 アローはくっと身をすくめ、ローガンが鼻を鳴らした。

「なんだ……、この臭いは……?」

 ローガンの感じ取った異変を、藍染もまた感じ取っていた。
 彼はアローにとどめを刺すのをやめ、空を見る。朝焼けの空は美しい。
 その景色を、雲を切り裂いて、男は現れた。

 山吹色の道着、紺色のインナーとベルト。横広がりの独特の黒髪。

「おめぇたちに聞きたいことがある」

 その男は孫悟空。ここに立つ。


74 : 笑えよ、超越者 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/18(土) 18:44:36 z3LSwcVI0
 ■



 そもそもの始まりは、グリーンアローとローガン=ウルヴァリンの出会いから始まった。
 ガレキに塗れた街。激戦か、虐殺か、あるいは戦争でも起こったような街で、二人は出会った。
 そのふざけた(いい意味で)格好から、一目でお互いにスーパーヒーローの類だと気づいた両者は、
 すぐさまオンスロートを倒すべく情報を通わせた。

「オンスロートは俺たちが一度倒している」 

 ローガンの言葉に、アローは驚愕した。
 どういうことかと詰め寄ったら、ローガンはオンスロート事件の子細を話した。
 そのために、まず「自分たちのアメリカ」について話すことになった。

「俺はあの見せしめにされたやつを知っていいる」

 アローの言葉は、ローガンを驚愕させた。
 あの半裸の巨人はスペクターといい、全能の力を持った復讐の精霊だと言った。
 ”復讐の精霊”と言う言葉にローガンはゴーストライダーを思い浮かべた。
 ライダーの特徴を話すと、アローは「だいたいそんなもんだ」と言った。

 「似たような」ヤツがいるもんだな。
 ローガンはニヒルに笑った。

「とにかく」
 
 ローガンが続ける。

「俺はX-MENの仲間たち……、とアベンジャーズを集めなきゃならねぇ。
 あいつらとならオンスロートも倒せる……、いや。今度こそ地獄に送ってやれる」
「俺はジャスティスリーグのメンツを集めるぜ。なぁに、スーパーマンやバッツにかかりゃ、
 あんなやつ大したことねェさ」

 二人は握手を交わし、互いの脳裏に浮かぶ名前の中で
 気を付けるべき相手と、信頼できる相手の名を交換した。
 
 そして二人は別れる直前。
 藍染惣右介に襲撃にあったのだった。


75 : 笑えよ、超越者 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/18(土) 18:45:11 z3LSwcVI0




 突如として空から現れた来訪者に、藍染は目を細めた。
 威風堂々と立つこの男は、間違いなく強い。霊圧は感じないが、藍染にはわかった。

 しかし、自分に並びはしない。

「聞きたいこと……。何かな? その前に、まず人にモノを尋ねる前に、
 自身の名を出すべきだという定型文を言わねばならないかな?」
「オラは孫悟空だ。聞きたいことは、おめぇらがこの殺し合いにのってるか、ってことだ」

 力強い声に、ほぅ、と藍染は思う。
 この男は、自分の力を分かっていないらしい。
 いや、仕方のないことだ。死神も虚も超越した存在となった自身の力は、
 もはや格下のモノには推し量ることすらできない。
 人に海の広さを正確に図ることができないように、強くなり過ぎた自分に比肩する者はない。
 たとえユーハバッハであろうと、更木剣八であろうと、今の自分を殺すことはできないだろう。

「のっている、と言えば。キミはどうするのかな……?」
「おめぇたちを止める。こんなくだらねぇゲームにのっちまうヤツは、
 見逃しておけねぇかんな」
「ほぅ……。大した正義感だ。だが知りたまえ。力なきものが語る正義ほどの……」

 藍染は悟空に歩み寄る。

「虚無はないのだと!!」

 藍染は恐るべきスピードで悟空に襲いかかる。
 それは普段から超人種――ヒーローを見慣れているアローとローガンの二人にも
 辛うじてしか動きが追えないほど速い。
 しかし以外にも悟空はあっさりと身を躱した。藍染が勢いそのままに剣を振りぬくと、
 悟空の背後に鎮座していた潰れかけのビルが消し飛んだ。

「ひゃ〜、おめぇすげぇな」
「驚いたようだね。刀の一振りで地形が変わる。それが今の私の力だよ」

 得意げに語る藍染をよそに、悟空はあっけらかんとしていた。
 藍染が眉間にしわを寄せる。
 今の斬撃で力量を把握できないのか。強いのかと思っていたが、
 見込み違いだったか。
 藍染は笑みを取り戻す。まぁいい、と。
 それならただ殺すだけだ。 

 藍染の剣閃が花のように開いて輝く。
 ローガンとアローが叫ぶ。確実に悟空を殺すために振りぬかれた一撃は、
 しかしながらあっさりと悟空に受け止められた。


76 : 笑えよ、超越者 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/18(土) 18:45:29 z3LSwcVI0

「……馬鹿な!?」
「それでおしめぇか?」
 
 藍染は愕然とした。刀が動かない。ものすごい力で止められている。
 悟空は変わらずあっけらかんとしているにも関わらず。 
 まるで刀を止めたこと自体、何の不思議でもないかのように。

 藍染は飛びのいて体制を整える。
 
 今のは偶然だ。
 いや、偶然でもあり得ないことだが、止められたのは事実だ。
 藍染は考える。
 こいつは霊圧の類は持っていないが、膂力において格別な力を持っているのかもしれない。
 すくなくとも今程度の一振りは簡単に受け止めるほどの強さ。

 ならば――。

 藍染が天を指す。

「どうやら膂力に自信があるらしい。
 だが自惚れるなよ……、私の力はこんなものではない。
 だが万が一もある。奇跡は起きぬぞ孫悟空! 私の鬼道で葬ってやろう!!」

 藍染が口ずさむ。

「滲みだす混濁の紋章。不遜なる狂気の器。
 湧き上がり・否定し・痺れ・瞬き・眠りを妨げ……!!」 

 ズン! と乗用車の激突のごとく鈍い音。
 藍染が一時の間ののちに、腹をクの字に曲げて倒れ行く。
 悟空が藍染の腹に体ごと飛び込んだひじ打ちを喰らわせたのだ。

「わりぃわりぃ、隙だらけだったもんだから、つい……」

 呼吸に苦しむ藍染に、悟空が申し訳なさそうに言った。
 ローガンも、アローも、すっかり驚き果てている。
 なんてむちゃくちゃなやつだ……。無茶苦茶な強さだ。

 まるでハルクのようなやつだ、とローガンは思い、
 まるでスーパーマンみてぇなやつだ、とアローは思った。

 藍染がふらついた足で立ち上がる。
 悟空はちょっとだけ驚いて見せた。

「おめぇまだ立てるんか。思ってたよりずっとタフだな」

 感心してさえいるようなその言葉、口調。
 藍染は屈辱と混乱に溺れていた。

「莫……迦……な……!」


77 : 笑えよ、超越者 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/18(土) 18:45:52 z3LSwcVI0
 ありえない。崩玉を取り込み、不死者となり、超越者となった自分が、
 人間一人に手も足もでない現実。

「思い……上がるな……!」

 藍染は怒りで立ち上がった。そして叫んだ。

「思い上がるなよ人間が!!!」 

 悟空の周囲に黒い幕が現れる。さながら棺のように彼を囲んだ重力の奔流は、
 先ほど放とうとした黒棺の詠唱破棄した姿だ。
 悟空が棺に閉じ込められると、藍染は鬼道を撃ちこむ。

「破道の七十三『双蓮蒼火墜』! 破道の九十一『千手皎天汰炮』!」
 
 黒棺が時空事ごと歪むのと同時に、二種の鬼道が炸裂した。
 藍染は端から黒棺は足止めのためとして使用した。
 正直孫悟空に対し、詠唱破棄した黒棺がどれほどダメージにつながるかわからない。
 ならば一瞬動きを止めればそれでよし。

 爆炎に包まれる悟空に、スキマなくさらに追撃を加えた。

「破道の九十九『五龍転滅』!」

 地を砕いて現れた、霊力で造られた巨大な龍が悟空をかみ砕かんと迫った。
 さすがにまずいとアローが弓を引くが、ローガンがそれを止めた。

「なぜだローガン! 何で止める」
「効いちゃいねぇ……!」
「!?」
 
 アローは驚きに口を鎖す。

「あいつ……、なにもんだ」

 ローガンの呟きに最も同意したのは、あるいは藍染かもしれない。
 煙が晴れたその先にいる悟空は、全くの無傷であった。
 しかも、先ほどとは全く様子が変わっていた。

 今の悟空の姿は、横広がりの黒髪は逆立った金色の髪へ。黒目は碧く、
 その体から輝く黄金のオーラを纏わせている。
 筋肉はオーラのリズムに呼応するように隆起し、一回り彼を大きく見せる。

 藍染やローガン達が知る筈も無いが、それは超サイヤ人だった。

「今のはちょっとおでれぇたぞ……」
「なん……だと……!?」
「じゃあ今度はオラの番だな」

 柄にもなく狼狽える藍染をしり目に、悟空が腰溜めに構える。
 何かをつつむように球状に作った掌に、碧いオーラが集まっていく。
 
「な……!!」

 藍染は不覚にも恐怖した。
 それは霊圧ではない。たしかにそうだ。だが、それを喰らってはまずいと、
 ほかでもない、崩玉が告げているような気がした。

 思えば、なぜたがたが人間に上をいかれることを崩玉が黙っているのだ。
 なぜ反応しないのだ。なぜ……。

 そこで藍染は、あり得ない結論にたどりつく。


 ――まさか、崩玉が最初からあきらめているのか……。この男には勝てないと。


「か、め、は、め……」
「く……! 縛道の八十一『断空』!」 
「波ぁーっ!!!!」

 放たれたエネルギー波は藍染との間に現れた『断空』をあっさりと粉砕して、
 彼ごとエネルギーに包み込み、彼方まで吹き飛ばしたのだった。

「うあああああああああ!!!!!!!」
「ふぅーっ」

 藍染が空に消えると、一息と共に悟空は元に戻った。
 ローガンとアローもソレを確認すると、悟空に話しかけた。


78 : 笑えよ、超越者 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/18(土) 18:46:12 z3LSwcVI0
 ■


「いや、オラもビックリしてんだ。魔人ブウと戦いにこの世に戻ったら、
 いきなり殺し合いしろって言われてさぁ」

 悟空の経緯はこうだ。
 ゴテンクスまでも吸収し、魔人ブウに劣勢の息子悟飯を助けるために、
 界王神から命をもらって現世に向かったところをオンスロートに拉致された。

 戦うのは好きだが、殺し合いを強要されるのはなにか違う気がするし、
 オンスロートはぶっとばしたほうがいいだろうと思い行動している。

「少なくとも敵じゃなくて安心したぜ……」

 アローはほっと息をついた。本心である。さっきの奴にあれだけてこずったというのに、
 そいつをも軽くひねれる、こんなスーパーマンみたいなやつが殺し合いにのっているなら、
 とてもじゃないがオンスロートにまでたどり着ける気がしない。
 殺し合いにのってないことに関しては、ローガンも嘘をついている臭いではない、
 と太鼓判を押したのも安心を後押しした。

「んじゃあローガンとアローは、別行動でいいんだな?」
「いや、気が変わった。しばらくはおまえと一緒に行動する」
「どうしてだ?」

 悟空の問いに、ローガンが答える。

「さっきのおまえの話を聞くに、どうやらオンスロートは
 とんでもねぇ化け物どもをかき集めているらしいからな。
 殺されるつもりはねぇが、おまえの言うセルやフリーザに出くわしたら
 さすがの俺もどうなるかわからんからな。爪を出すしか能のない年寄りにゃきついぜ、全く」
「いや、それなんだけどな。なんか魔人ブウもいそうなんだよ」
「なに?」

 アローは目を閉じた。リストを眺めるが、魔人ブウの名はない。

「のってねぇぞ。そんな名前」
「いや、オラ気を感じるんだ。絶対あいつはこの世界のどっかにいるぞ!」
「オンスロートはあの性格だ。何でもかんでもバカ正直に俺たちに提示してるとは限らねぇ。
 リストが嘘の可能性もある。まぁなんにしても、ヤバい奴らだらけなのは間違いなさそうだが」

 同じようにまぁなんにせよ。とアローは言った。

「おまえみたいなのが仲間だと助かるぜ。改めて自己紹介するが、
 オレはグリーンアロー。そしてお前を仲間だと信じて名を明かすが、
 本名はオリバーだ。オリバー・クィーン」 
「俺はローガン。名簿にゃウルヴァリンってのってるが、そいつが俺だ」
「オス! オラは孫悟空。よろしくな! オリバー、ローガン!」
「………」

 できればヒーロー名で呼んでほしいグリーンアローであった。


79 : 笑えよ、超越者 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/18(土) 18:46:38 z3LSwcVI0


【崩壊した西の都を再現した惑星/一日目朝】

【ウルヴァリン@X-MEN】
[状態]:健康
[装備]:ヒーロースーツ
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:オンスロートを倒す
1:X-MEN、アベンジャーズ、リードと合流する
2:セル、フリーザとかはヤベェな
3:悟空は信頼できそうだ
[備考]
※参戦時期は『ハウス・オブ・M』の後のようです。


【グリーンアロー@JUSTICE LEAGUE】
[状態]:健康
[装備]:弓矢
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:オンスロートを滅ぼす
1:スーパーマンたちと合流。なぜスープスが2人……?
2:悟空ばっか頼りにゃしねぇぞ
[備考]
※『フラッシュポイント』以前のグリーンアローです。


【孫悟空@DRAGON BALL】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:オンスロートを倒す
1:ベジータに悟飯! それにトランクスにブルマもいんのか!?
2:セルにフリーザか、一応気をつけっか!
[備考]
※原作四十二巻、悟飯を助けに瞬間移動で戻す途中の時期から参戦です。


80 : 笑えよ、超越者 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/18(土) 18:46:58 z3LSwcVI0


「ぐぅぅ……!! ああっ!!!」

 遥か果ての果て、かめはめ波からようやく逃れることができた藍染は、
 宇宙へ飛んでいくそれを見届けながら、怒りと屈辱に、そして新たなる歓喜に歪んでいた。

 崩玉のもちうる超越者など、大したことはなかった。
 死神も虚も、大したことはなかった。
 
 想定外の出来事とは、予想以上の結果でもある。
 自身は敗北した。疑いようのなく、一片の疑念なく。完膚なき敗北を味わった。
 しかしそれは、自身の想像を越えた『強さ』が、確かにこの世界に存在していると同義である。

 天の座を狙うべき自分は、最も強くあらねばならない。
 ここで生き延びたことは大変意義がある。

 上を目指さねばならない。

「孫悟空……!!」

 藍染は笑っている。
 そこには感謝がある。新しいおもちゃを見つけた子供のように、歓喜があった。



【藍染惣右介@BLEACH】
[状態]:ダメージ(中)
[装備]:崩玉、斬魄刀
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:さらに上の存在へと進化する
1:黒崎一護たちなど、もはやどうでもいい
2:孫悟空について早急に調べなければ
3:不死でよかった
[備考]
※参戦時期は47巻。断界から出た直後から参戦。
 崩玉の力で不死です。


81 : 笑えよ、超越者 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/18(土) 18:47:35 z3LSwcVI0
【キャラクター簡易解説】

『グリーン・アロー』
本名:オリバー・クィーン。DCコミックスのヒーロー。
中々オリジンが安定しないヒーローの一人だが、大まかには
「元々大金持ちのボンボンが、海難事故で遭難にあい、弓矢を使って生き延びた」
であっているだろう。最近ではドラマ版「ARROW」のおかげで
日本でもそこそこの知名度を持つようになった。
超能力は持たず、弓矢を用いて戦ういわゆる【鍛えた常人粋】。
しかし弓矢の技量は間違いなく世界最高であり、バットマンやスーパーマンをして
世界最高、史上最高と言わしめるほど。
元大富豪と言うことで、バットマンとは比較的仲が良く、
またグリーンランタンのハル・ジョーダンと仲がいい。
当ロワのアローは【フラッシュ・ポイント】以前のグリーンアローである。

『ウルヴァリン』
本名:ジェームス・ハウレット。またはローガン。
彼に関しては色々情報量が多すぎるので能力を簡潔に書く。
マーベルコミックスのヒーローにして、マーベルを代表するスーパーヒーロー。
『ヒーリングファクター』という驚異的な自己治癒能力を持ち、ほとんど不死身と言っていい。
また骨格に『アダマンチウム』という、マーベル世界において世界最高の金属を使用されており、
前述のヒーリングファクターと相まって物理的に死ぬことはないんじゃないの?ってくらいタフである。
能力は手の甲から三本の爪が伸びる。この骨は当然アダマンチウムでおおわれているため
非常に頑丈でものすごい切れ味を誇る。
皮肉屋で斜めに構えている感じのあるハードボイルドヒーローだが、
それにしちゃちょっと抜けてたりする。
当ロワのウルヴァリンは『ハウス・オブ・M』〜『ニュー・アベンジャーズ』時代からの参戦。
当然オンスロートの記憶も持っているため、鍵になるかもしれない。


82 : 笑えよ、超越者 ◆Dbja0ebxMY :2017/11/18(土) 18:48:07 z3LSwcVI0
以上で投下を終了します。
ありがとうございました


83 : 名無しさん :2017/11/18(土) 20:59:12 TYxCWzss0
投下乙です

悟空さが対主催者とは心強い。ウルヴァリン達は早速頼もしい仲間ができたな
ヨン様は負けたけど、むしろ俄然やる気になったか


84 : 名無しさん :2017/11/19(日) 02:45:54 0jxxTleM0
投下お疲れ様です
やっぱ悟空さはこうだよなあ


85 : ◆Dbja0ebxMY :2018/01/12(金) 20:20:58 4X9n22Gc0
おひさしぶりです。クリリン、ヤムチャ、フリーザ、霧隠才蔵で投下します


86 : 転生せずともヤムチャは最強だった件 ◆Dbja0ebxMY :2018/01/12(金) 20:23:31 4X9n22Gc0

「まいったな〜。なんでこんなことになったんだ……」

 近未来的なビルが立ち並び、おおよそ目にしたこともないような
 良くわからない機械装飾に塗れた街の中で、
 クリリンは今いる状況をいまいち飲み込めずにいた。

 セルゲームが終わり、トランクスは未来に帰った。世界は平和を取り戻した。
 クリリンはうすうす、自分の武道家としての道はここで潮時だと思って、
 髪を剃るのをやめて悠々自適に生活しようと考えていたところだった。

 なにせ、幼いころから苦楽を共にし、目標であり、憧れであった男。
 孫悟空が死んでしまった。今回ばっかりはドラゴンボールでも生き返れず、
 世界を隔てて別れの挨拶までかわした。
 武天老子――亀仙人の下で修業を続けられたのも、自分ではとうに敵うはずもないセルゲームに、
 行く末を見届けるためとはいえ赴いたのも、すべては悟空がいたからだった。

 しかし悟空が死に、それぞれがそれぞれの道を歩み始めた。

 とにもかくにも、クリリンにとっても今回の戦いは一つの区切りとなった。

 その直後に、この殺し合いである。

 オンスロートと名乗る怪物は、殺し合いを強要し、自分をここに召喚した。
 悟空、ベジータ、悟飯、トランクス、……そしてフリーザやセルのいるらしい、この場に。

「勝てるわきゃないだろ〜、オレがさ〜……」

 クリリンはひたすら落ち込んでいた。
 オンスロートは殺し合い、と言ったくせに、フリーザやセルを召還しているらしい。
 悟空やベジータや悟飯やトランクスらサイヤ人はともかく、自分は地球人である。
 言ってしまえば、戦闘の最前線からは置いていかれた人間である。
 
 今までだって、格上との無謀ともいえる戦いは何度も経験したが、
 クリリンはその中で二度ほど本当に死んでいるのだ。
 二度ともドラゴンボールのおかげで生き返った。そう、二度も生き返ってしまっている。
 例えば、無茶苦茶な理論ではあるが、これが初めて殺されるのであれば、
 自分は殺されても、勝ち抜いた悟空たちがドラゴンボールで蘇生してくれるかもしれない。
 しかし、地球のドラゴンボールは死からの復活は一度きりであるし、
 そこに制限のないナメック星のドラゴンボールは、そもそもナメック星がどこにあるのか
 しっているのはデンデを迎えに行った悟空だけである。

 今度死んでしまえば、二度と生き返ることはできないだろう。
 と、ここまで考えて、ふと気づく。
 悟空が本当に死んでしまった事実と、このゲームに悟空が参加させられている事実に。

 どういうことだ。クリリンは悩んだ。
 別れの時、悟空はあの世で肉体をもらって生きる……というか、死の生活を送っているということだが、
 その悟空を、オンスロートは無理やり現世に呼び戻したという事だろうか。
 考えてみればセルやフリーザだって、完全に死んだはずなのに。

「……だ、だめだ。遠すぎるのか……、気をつかめない」

 クリリンは試しにと神経を集中し気を探ってみた。
 周辺からはセルの気もフリーザの気も感じない。が。

「……! あれ、この気は……!」

 すぐそばで、良く見知った気を感じた。
 そう、この気は……。

「ヤムチャさんだ! ははっ! ヤムチャさんがいるぞ!!」


87 : 転生せずともヤムチャは最強だった件 ◆Dbja0ebxMY :2018/01/12(金) 20:23:55 4X9n22Gc0

 ■



「しかし、とんでもないことになっちまったな」

 気さくに、しかし気難しそうな表情のヤムチャの問いに、クリリンはそうですね、と返した。

 気を探った先に、クリリンはお目当ての人物を見つけていた。
 ヤムチャもまた、クリリンの気を探り当てていたらしく、出会った二人は
 思わず抱きしめあったほど喜んでいた。

 クリリンは少しだけホッとしていた。
 ヤムチャさん。同じ地球人戦士で、頼りになる人だ。
 なんというか戦闘面ではなく、いると安心するというか、その人当たりの良さは
 こういう場でこそ落ち着きを与えてくれている。

 ただ、一つ。
 先にヤムチャと話し合った内容が気になっている。

「ヤムチャさんは、つまりその……魔人ブウってやつに殺されたんですよね」
「ああそうだ。でも驚いたんだぜ、クリリン。なんだってまた頭を丸めてるのかと思ったさ。
 まさか本当にセルゲームの終わった後のクリリンなんだよな……」

 ヤムチャの語る、セルゲームのその後。
 7年後、天下一武道会、魔人ブウ。
 聞いているだけでげっそりしてくる言葉のオンパレードに、クリリンはぞっとする思いだった。

「どうやらオンスロートってやつは、未来のトランクス的な……なんていうか、
 時間の違う世界から俺たちをつれてきてるみたいだな」
「そ、そりゃ〜ないっすよ〜……」

 クリリンは最悪のイメージを思い浮かべていた。
 それは、脳裏に浮かぶ名簿の悟空やベジータが、自分たちより過去の時間から
 連れてこられている可能性だ。
 いくら悟空とはいえ、ピッコロ大魔王やラディッツと戦っていた頃では、
 正直言って話にならない。それならまだ自分たちの方が強いくらいだ。

「ま、まぁそう落ち込むなよクリリン! だ、大丈夫だって……!」
「そ、そうすかねー……はは……」

 はずまない話に沈黙を招き入れ、一時、そういえばとクリリンがある疑問を口にした。

「そういや、ヤムチャさん。なんかめちゃくちゃ気が多くないっすか?」
「はは、よせやいクリリン。地球人としてもオレは大したことないさ、
 そりゃあ今でもオレは武道家の端くれではあるけどさ……」

「「!!」」

 ヤムチャの言葉はぴたりと止まった。
 クリリンが同時に息をのんだ。

 二人の視線がゆっくりと、目の前に現れたそれに集まっていく。


「ホホ……、アナタもここに飛ばされていたんですねぇ、地球人」

 
 それはクリリンにとってまさにトラウマそのもの。
 悪の帝王、フリーザの姿があった。


88 : 転生せずともヤムチャは最強だった件 ◆Dbja0ebxMY :2018/01/12(金) 20:25:14 4X9n22Gc0

 ■


 フリーザは目を覚ました時、途方もない怒りに震えていた。
 超サイヤ人と化した孫悟空、ナメック星での最後の死闘。そして、自身の策に切断された身体。
 最も怒りを覚えたのは、その後に孫悟空が自身に気を分け与えたこと。

 宇宙一だったプライドは粉々に打ち砕かれ、
 決死の一撃を放とうとした瞬間。次に現れたのは自称『神』、オンスロート。
 昔父、コルド大王から絶対に手を出してはならない存在として、
 魔人ブウと破壊神ビルスがいた。
 さらに、超サイヤ人の神である、超サイヤ人ゴッドなる存在も、うわさに聞いたことがある。

 神……。

 普段なら、対処に手順を踏むところだが、フリーザにとってそれはもはや、
 怒りを呼び起こす単語以外の何物でもなかった。

「ゆ、ゆるさんぞ……! 宇宙最強はこの、フリーザ様だーっ!!!」

 空に浮かび、激号した。そして、その視界の端に、見覚えのある人物が映ったのだった。


89 : 転生せずともヤムチャは最強だった件 ◆Dbja0ebxMY :2018/01/12(金) 20:25:42 4X9n22Gc0

 ■


 ヤムチャとクリリンを前にしたフリーザの望み、それは二人の虐殺だった。
 片方の、背の低い方は、孫悟空の超サイヤ人化のきっかけでもあるが、ここに孫悟空はいない。
 思えばコイツを殺した事がターニングポイントだったのかもしれない。
 こいつさえいなければ、自分は孫悟空を殺して、それで終わっていた。

 ……要は八つ当たりなのだが、フリーザにとって目の前の地球人が忌むべきなのは変わりない。

 小さい地球人は、やはり殺された記憶が想起するのか、
 大口を開けてがくがくと情けなく震えだしている。

 もう一人の地球人は、こっちはこっちで今の状態が把握できていないのか、
 ぼーっとこちらを見ているだけ。

 二人の様子に少しだけ満足したフリーザは、ふふっと笑った。

「アナタもこの会場に呼ばれていたのですね。ホホ、奇遇ですねぇ〜。
 オンスロートとかいうやつも、中々気が利いているじゃあありませんか」
「あ、あ……ヤバい! ヤムチャさん逃げよう!!」
「ああ、良いんですよ。逃げてくださっても。特にそっちの地球人には
 わたしは用はありませんからね、アナタだけは、ま。特別に逃がしてあげましょう」

 気分よく喋っているフリーザを前に、もう一人の地球人――ヤムチャは言った。

「なぁ、クリリン。フリーザってのは、あんまり大したことなさそうだな」

「えっ!?」
「なにいっ!?」


 ■


「や、ヤムチャさん何言ってんすか!!?」
「え、クリリンこそ何言ってんだよ」
「こ、このわたしが大したことが無い……?」

 わなわなとふるえるフリーザが、カッと気合を入れると、
 周囲の高層ビルが地響きとともに崩れていく。
 クリリンはもはや動けないとでもいうべきか、腰を抜かして倒れ込んだ。

「ほぅ……このわたしがどう大したことないんですか……?」
「まぁいいさ。やってみりゃわかるぞ」
「……いいでしょう」

 全く物おじせず、意気揚々と構えたヤムチャに、
 とうとう堪忍袋がブチ切れたフリーザは、怒号と共に飛びかかった。


「後悔しやがれーーーーっ!!!!」


 飛び込みと同時に右回し蹴りでヤムチャの側頭部を蹴りぬいた。
 どすんと鈍い音がして、空気が炸裂する。
 が、衝撃をうけたのはヤムチャではなく、フリーザだった。

「な、なにいっ!?」

 フリーザの足は、やすやすと挟み込まれたヤムチャの腕に
 あっさりと止められ、逆に弾かれてしまっていた。

「ぎっ!」

 フリーザは体をひねって左拳を突出す。しかしそれも簡単にヤムチャの掌に吸い込まれた。
 続いて撃ち込まれる右足の蹴りの連打、ヤムチャなんなく躱す。
 地面に足がつくと同時に顎に向かっての打ち上げの蹴り。しかしヤムチャは半歩下がって、
 紙一重でその一撃を躱す。

「キエェェーッ!!!」

 尻尾を振りかぶり首を絞めようとしたが、尻尾が触れた瞬間にヤムチャの姿は其処にはなく、
 驚きに顔を振るフリーザの背中を、ヤムチャはどんと蹴り飛ばした。

「がふぅうっ!!?」

 クリリンからすれば軽く当てたようにしか見えないその蹴りで、しかしフリーザは
 傾いた高層ビルに頭から突っ込んで吹き飛んだ。

「あ、え? え? あれぇぇぇぇ?」
「やっぱり大したことないな、それともオレが強くなり過ぎちゃったのかな?」

 がれきを気合で吹き飛ばし、息を荒げるフリーザは遠巻きに見てもはっきりわかるほど歯噛みしていた。

「な、なぜだ……!? なんであんな地球人ごときにぃ……!」


90 : 転生せずともヤムチャは最強だった件 ◆Dbja0ebxMY :2018/01/12(金) 20:26:01 4X9n22Gc0

 ■



 ここで、なぜこのヤムチャがこんなに強いのか、説明させていただく。

 当ロワを見ている方にはお分かりかもしれないが、まず、このヤムチャは
 原作漫画『DRAGON BALL』からの出場ではなく、あくまでアニメ版『DRAGON BALL Z』からの出場である。
 そして、当ロワに置いてこの二つは明確なパラレルワールドとして扱っている。

 つまり、コミック版世界とアニメ版世界とは、別世界の話なのだ。

 そして、ここにアニメ版ヤムチャの驚くべき活躍の一部を書き記す。
 まずアニメ版のヤムチャは、ナメック星編の時すでにギニュー特選隊の、ギニュー以外より強いのだ。
 それは第92話に置いて、界王星に現れたギニュー以外の特選隊の面々を、
 当時界王星で死んでいたヤムチャ、天津飯、餃子は圧倒している。
 ……どう考えてもこの時点での融合前のピッコロやクリリンどころか
 ブチ切れた悟飯やベジータより強いけど気にするな!

 さらにセルジュニア戦に置いて、セル直々に「ベジータやトランクスでやっと互角」と評された
 セルジュニア相手に、天津飯とのコンビだったとはいえかなり善戦を見せている。
 なおベジータはファイナルフラッシュを楽勝で蹴り返されていた……。

 さらにさらに決定的なものが、ヤムチャは魔人ブウに殺された後、大界王星で
 オリブーとキドモを二対一(当然ヤムチャが一)で圧倒している。
 
 それだけ聞くと、別にふーんて感じだが、このオリブーと言うのが相当なモノで、
 簡単に書くと「セル&フリーザをワンパンで瞬殺できるパイクーハン相手に善戦できる」という
 ものすごい強さを誇るアニメオリジナルキャラクターなのだ。

 もうお分かりだろうが、そのオリブーを、二対一にもかかわらず、
 『DRAGON BALL Z』のヤムチャは圧倒できるのだ。
 なおそのあとクリリンはヤムチャと互角に組手を行っている。


 つまり、『DRAGON BALL Z』の魔人ブウ編のヤムチャとクリリンは、
 少なく見積もってもセル級の実力があると言える。
 漫画版のフリーザではどう頑張っても勝ち目がないのは明白なのだ。


91 : 転生せずともヤムチャは最強だった件 ◆Dbja0ebxMY :2018/01/12(金) 20:26:22 4X9n22Gc0

 ■


「す、すげぇ……ヤムチャさんすごいですよ!!」
「いったろクリリン、大したことないって」
「ぐ、ぐ……くっそぉーーー!!!」

 フリーザは心の底からの怒りに喚いた。
 なんでこんな……! こんなことが……っ!!

「あっ! ヤムチャさんまずい!! フリーザの奴……この星を……!!」

 フリーザが頭上にエネルギー弾を収束するのを見て、
 クリリンはすぐにフリーザのやろうとしてることを察した。
 この星を破壊しようとしているのだ。

「この星ごと、死ね……っ!?」

 振り下ろす腕が途中で止められた。
 フリーザが恐る恐る振り返ると、そこにはフリーザの腕をしっかりを握るヤムチャがいた。

「おっと、そうはさせねぇぜ」
「ぎぃっ!!」

 ヤムチャはフリーザを空に蹴り上げた。
 口から血潮を噴き上げて、フリーザの体が重力に逆らって高く高く舞い上がる。
 
 天にあるフリーザを、手の中に収める様にかざした後、ヤムチャが腰に手をためる。

「クリリン!! 同時に行くぞ!!」
「あっ、はい!!」

 慌てたのち、クリリンも同様に腰だめに構えた。
 二人の掌の中に、青い光が収束していく。

「「か、め、は、め〜」」
「ぎ、ぎいっ……! こ、この地球人ごときが……」
「「波ぁーーーーーっ!!!!!」」

 二人の放ったかめはめ波は、フリーザを包み込んで空空へと消えて行った。




【クリリン@DRAGON BALL】
[状態]:健康、少しびびった
[装備]:道着
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:どーしたらいいんだよ〜
1:ヤムチャさんつ、つええ……
[備考]
※参戦時期はセルゲーム後。 

【ヤムチャ@DRAGON BALL Z】
[状態]:健康
[装備]:道着
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:悟空たちを探そう
1:クリリンなんか弱くなってないか?
2:なんだ、フリーザって大したことないな
[備考]
※参戦時期は魔人ブウに殺された後。


92 : 転生せずともヤムチャは最強だった件 ◆Dbja0ebxMY :2018/01/12(金) 20:26:50 4X9n22Gc0

 ■



「……ん?」

 宇宙を彷徨うヘドロ状の物体――ドグラ、霧隠才蔵は、
 彼方の星から何かが漂ってくるのを感じた。

 怪光線に包まれて宇宙を飛来していくその存在は、
 今にも死にそうでありながら、才蔵の目から見ても
 並々ならぬエネルギーを秘めていることがわかった。

 才蔵の口角が釣りあがる。

「いただくぞ、その体……っ!」




【フリーザ@DRAGON BALL】
[状態]:重症、瀕死、ドグラと融合
[装備]:ドグラ(才蔵)
[道具]:消滅
[思考]
基本:気絶
[備考]
※参戦時期は悟空に最後の不意打ちをうつ前。 
※ドグラと融合しました。まだ意識は乗っ取られていません。



【霧隠才蔵@虚無戦記】
[装備]:ドグラ宇宙、フリーザ
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:私が真の神となる!
1:夢幻弥勒と真田幸村は殺してやる
2:マイティ・ソーとかいう神は喰らってやる
3:ふははははは!!! すばらしい身体だ!! 力がみなぎってくるぞ!!
[備考]
※参戦時期はドグラと融合した直後。
※フリーザと融合しました。ドグラの弱りっぷりから意識を乗っ取れていません。


93 : 転生せずともヤムチャは最強だった件 ◆Dbja0ebxMY :2018/01/12(金) 20:27:20 4X9n22Gc0
投下終了します。ありがとうございました


94 : 名無しさん :2018/01/13(土) 03:45:56 EgPyUCYE0
投下乙です
フリーザを一方的に叩きのめすなんてヤムチャ様流石です!


95 : 名無しさん :2018/01/13(土) 12:27:53 HkxJ71ag0
投下乙です
一瞬読んでるロワを間違えたのかと思いましたが、考えてみればヤムチャ様が最強なのは例のロワじゃなくても当然の摂理でしたね


96 : ◆Dbja0ebxMY :2018/02/16(金) 17:13:06 /ZQXQvIs0
お久しぶりです。
モレキュールマン、グレミィ・トゥミュー、天国に到達したDIOで投下します。


97 : すごーい!きみは現実をもてあそぶフレンズなんだね! ◆Dbja0ebxMY :2018/02/16(金) 17:13:48 /ZQXQvIs0


 二人の囚人が鉄格子の窓から外を眺めたとさ、

 一人は泥を見た。一人は星を見た。

  ――フレディック・ラングブリッジ『不滅の詩』


98 : すごーい!きみは現実をもてあそぶフレンズなんだね! ◆Dbja0ebxMY :2018/02/16(金) 17:14:06 /ZQXQvIs0


 異界と言うほかない場所であった。
 赤々とした空気と熱気。灰色の大地の上に髑髏が絨毯のように敷き詰められ、
 あるところでは無造作に積み重なり、その上を大蛇が這い回り、
 その奥では龍のような怪物が目をみなぎらせて徘徊している。

 その世界の、まさに中心にある玉座において、その男はいた。


 モレキュールマン。オーウェン・リースは考える――。


 オンスロート。その名前を知っている。その存在は知っていた。
 プロフェッサーXとマグニートー。
 二人のミュータントの悪の心と力が交わり生まれた超存在。
 後に異界のX-MANと、かのリード・リチャーズの息子を吸収し、
 全能者となった人もミュータントも越えた存在。
 アベンジャーズ、ファンタスティック・フォーを全滅に追い込み、
 宇宙の在り方さえも変えてしまった男。

 しかし、とモレキュールマンは考える。
 オンスロートは倒された。ハウス・オブ・Mと呼ばれる災害ののちに、
 再度復活したものの、今度はあっけなさすぎるほどに容易く倒された。

 モレキュールマンは戯れに、先程目にしたオンスロートの再現を目の前に創りだしてみて、
 自分の知る今のオンスロートと、先のオンスロート、その違いに目をやった。

『さぁ、ゲーム開始だ。我を楽しませるがいい』

 神々さえ震えさせるような低く重い声。威圧的な姿。不敵な笑み。
 間違いない。確信する。このオンスロートは、どうやらかつての全能者で間違いない。
 アベンジャーズビッグ3やセントリー、挙句自分すら手駒としているこの状況から見ても、
 やはりヤツは全盛期の力を有しているとみて間違いないであろう。

 オンスロートを消し、モレキュールマンは思考し、問いかける。
 ヤツは何処にいる、と。 
 しかし答えはない。何も起こらない。

 モレキュールマンは分子を操ることができる。というより、支配できる。
 実験の事故でコズミック・キューブの力をいくばくか授かったこの男は、
 思考するだけでこの世に存在する分子を自在に操り、
 物質も事象も思うがままにコントロールできるのだ。
 いわゆる現実改変能力である。
 この異界としか言えない世界も、モレキュールマンがこの世界に飛ばされてから
 分子を操作して作り上げた世界そのものであった。

 そのモレキュールマンの思考が、その通りの現実として現れない。
 これが何を意味するか、答えは一つ。
 オンスロートの全能性が、モレキュールマンの全能性を上回っているのだ。 

 されどモレキュールマンは、さほど慌てることはしなかった。
 おそらく能力にかせられている条件があるのだろうが、
 異界を創造し生物も創りだせた。ということは、それはオンスロートにかかわることだけであろう。
 あの愚か者は、あろうことかアベンジャーズのビッグ3、リード・リチャーズらも
 ここに呼び寄せている。
 自ら手を下さずとも、オンスロートを倒すことを彼らが成し遂げるであろうことは
 想像するまでもないことだろう。
 いや、なんなら彼らがオンスロートを追い詰めたその時に、
 横からおいしい所をかっさらってやってもいい。

 オンスロートの敗北を目の前に映しだしたモレキュールマンはその様に笑う。
 と、不意に気配を感じた。
 あり得ない気配を。

「おじさんは、誰なのかな?」

 モレキュールマンの眼下に、一人の少年が立っていた。

 そう、モレキュールマンが創りだし、彼の許可なしでは入ることもできない世界の、その中心に。


99 : すごーい!きみは現実をもてあそぶフレンズなんだね! ◆Dbja0ebxMY :2018/02/16(金) 17:14:31 /ZQXQvIs0

 ■


 グレミィ・トゥミューは考える。

 勝ちたかった。本当に勝ちたかった。
 望んだものはすべて、想像するだけで成してきた。
 求めたものはすべて、想像するだけで手に入れてきた。

 聖十字騎士団<ジュテルンリッター>『V』
 ――『夢想家』<ザ・ヴィジョナリィ>、グレミィ・トゥミュー。
 その自分が、本当に欲しかったものが手に入らないという皮肉。

 それは勝利。
 更木剣八に勝つという現実。

 消えゆく自分を、オンスロートという神は拾い上げた。
 元通りの体、どこかわからない場所。知らない世界へと連れてきた。

 頭の中に思い描く名簿の中に、陛下の名前があった。
 更木剣八の名前があった。ついでに黒崎一護の名前もあった。

 あのオンスロートという神は、これだけのメンツを本当に連れてきたのだろうか。
 だとするなら、彼らに――自分も含めて――このゲームを強制するだけの力を、
 オンスロートは持っているという事だろうか。
 オンスロートの力を『想像する』に、おそらく事実なのだろう。
 想像力で構成された自身の肉体を、こうも見事に再生? 再創造? している力。
 
 グレミィは考える。

 そして、ふと、違和感を感じた。
 空虚をグレミィは見つめていた。だが、グレミィにはそこが空虚には見えなかった。
 なにかがある。確信があった。
 そしてグレミィは想像した。『そこ』にたどり着く自分を――――。


100 : すごーい!きみは現実をもてあそぶフレンズなんだね! ◆Dbja0ebxMY :2018/02/16(金) 17:14:58 /ZQXQvIs0
 ■


 そしてグレミィはたどり着いた。
 他ならぬモレキュールマンの世界に。
 グレミィの見上げた先に座る、奇抜な恰好の男がこちらを驚きの表情で迎えている。

「おじさんは、誰?」

 再度のグレミィの問いかけに、モレキュールマンは答えた。

「な、なんだおまえは……? グレミィ? クインシー? 何者だ……?」

 モレキュールマンは表情の通りに驚愕していた。
 目の前にある『それ』は、全く未知の分子だった。
 構成要素は極めて生物の分子に近いが、全く違う世界のものに見える。
 モレキュールマンはグレミィの存在のすべてを問いかけ、そして答えを得た。

「おまえ……、おまえも、俺と同じ能力を持っているのか……!?」
「? なんのこと?」

 とぼけた様子のグレミィに、モレキュールマンは事情を説明した。

「……つまり、おじさん――モレキュールマンも、現実を想像するだけで変えちゃうんだ」
「ああ、そうだ。最も俺は分子を支配して現実を変えているわけだから……、
 お前とは厳密には違う原理だとは思うがな」

 グレミィとモレキュールマンは椅子を対に並べて座り、話をしていた。
 椅子はグレミィが創りだし、装飾はモレキュールマンが創造した。

「……正直驚いている。いや、分子をコントロールして現実をある程度操れるものは数名知っているが、
 おまえはどうやらそういったものを介せずに、直接現実をゆがめているようだ」
「そうだよ。僕は想像するだけさ。それだけで全部想像通りにできるからね」
「…………」
 
 聞くところによるグレミィの力は、モレキュールマンの力とは似て非なるモノであるようだった。
 現実を改変すると言う結果は同じであるが、その過程があまりにも違いすぎる。
 グレミィの話を聞いているモレキュールマンは、少しだけ楽しくなっていた。
 
「だが、その更木剣八とやらには、敗北したと」
「そうさ。あいつの力が、あいつの体に耐えられなくて、想像力の限界を越えちゃったんだ」

 この話は特に驚きを誘った。
 モレキュールマンも、これだけの力を有しながら、すべてを本当に思い通りにしてきたわけではない。
 特にファンタスティック・フォーやDr,ドゥームには、何度もしてやられている。
 しかしそれでも、単純なパワーを相手に敗北したことはほとんどない。

「更木剣八か……、面白い奴だな」

 そして、危険な奴だ。
 顎に手を当ててふむと息をつくモレキュールマンと、グレミィ。
 ふと、モレキュールマンが言った。 

「友達にならないか?」


101 : すごーい!きみは現実をもてあそぶフレンズなんだね! ◆Dbja0ebxMY :2018/02/16(金) 17:15:24 /ZQXQvIs0

 ■


 モレキュールマンとグレミィの会話を、この世界に訪れていたもう一人の来訪者は聞いていた。
 常人――人間よりはるかに鋭敏な感覚で、超人的な聴力で。

 その男の名はDIO。

 天国に到達した吸血鬼である。
 DIOもまた、世界の違和感を感じ、オーバーヘヴンの力を用いてこの世界にやってきていた。
 
 驚きだ。

 DIOは感心したように顎を撫でる。
 自身を、承太郎をこの世界に連れてきたオンスロートと言う神。
 目の前の二人をして同じく連れてこられ、ゲームの参加者を強いているというならば、
 その神性――――全能性は、おそらくホンモノであろう。

 ジョースターを始末し、天国に到達し、オーバーヘヴンを獲得し、
 ならぶもの無きDIOの世界を創造できると確信していたDIOにとって、
 オンスロートと目の前の二人の存在は極めて異質で、驚愕そのもので、そして目障りだった。

 オーバーヘヴンがもたらす現実改変は、あくまでスタンドの拳が接地したものに限る。
 しかも現実を改変するたびに多くの『魂の力』を必要とするため乱用はできない。
 屈辱的な現実だが、目の前の二人はなんのリスクもなく現実を改変し、もてあそべるという。

 歯噛みしたくなるような能力差。しかし、DIOは慌てない。

 『スタンドの矢』の真の力は生物の魂の支配である。重力は時間を破壊し、超越する。
 人の出会いは『引力』である。なれば、ここでDIOがこの二人と出会ったことは、
 『引力』であり、『運命』である。DIOに『さらに先に進む』べき道しるべととることもできる。
 それはつまり天国に到達したスタンドパワーが、通過点であり、
 このDIOはその先に行くことができる可能性が高い。とも言えるのだ。
 
 そのためには、二人のことをもっと知らねばならないだろう。
 DIOは脚を踏み出した。
 その意志は何処までも前向きである。DIOの世界を造らんがために。


102 : すごーい!きみは現実をもてあそぶフレンズなんだね! ◆Dbja0ebxMY :2018/02/16(金) 17:15:45 /ZQXQvIs0
 ■



「DIO、ディオ・ブランド―。なるほど吸血鬼。スタンドパワー。
 やはり、俺の知らない力を持つものが、この世界にはいるということか……」

 モレキュールマンたちとDIOの接触は、意外なほどおだやかに行われた。
 モレキュールマンが機嫌がよかった上に、グレミィもそれほど好戦的になっていなかったため、
 DIOの話術が二人にするすると取り入ったのだった。

「そういうことだ、モレキュールマン。いや、リース、とよんでもいいかな……」
「かまわん。友よ」

 モレキュールマンはすっかり上機嫌だった。
 いくら現実を改変しても手に入れることができなかった、孤独を分け合える友人が、
 いきなり二人も手に入ったのだから、とてもとてもご機嫌だった。

「DIOの話は面白いね。時を止める能力か。ちょっと想像できなかったよ」
「ああ、グレミィ。キミやリースの力は、確かにとてつもない。
 だがそれは時間のある世界で、思考できるという条件が必要なのだろう……?
 空条丈太郎と言う男は、私が知る限りかつての私と同じ力――『時を止める能力』を
 有しているはずだ。そしてそれ以上に頭のキレるやつでね。とてもアブナイヤツだ」

 グレミィは承太郎の話にものすごく食いついた。
 『時を止める』という力。DIOからしてみれば、グレミィは力はあるが、
 その程度の発想もできない奴なのかと少し嘲笑したが。

「私の力はキミたちと同じ結果を生めるが、あくまで拳の接触は範囲だけだ。
 とてもとても及ばない。だが、キミたちと共にいれば、私もそのステージまで上がれるような気がしてね……」

 DIOは、とにかく自分がいかに二人とともにいたいかを静かに、しかし熱烈に語った。
 モレキュールマンはDIOの言葉に聞きほれていたし、グレミィは特に何も言わない。
 様子を見て、DIOは艶めかしく笑った。

「いいだろう。おまえが望むなら、オンスロートをだとすることに協力してやろう」
「僕もいいよ。強い奴を倒すなら、望むところさ」

 DIOは笑う。

 


 二人の囚人が鉄格子の窓から外を眺めたとさ、

 一人は泥を見た。一人は星を見た。


 この言葉は、DIOには詭弁だ。
 オリの中にいるならば、二人とも端から救いようのないクズだ。   
 要は能天気なクズと、悲観的なクズ、それだけの話だ。

 DIOは考える。

 自分はオリの中になど入らない。
 自分はオリを造り、人を、生物を入れる側にまわる。

 そのためにはすべてを利用しよう。

 目の前の二人も、オンスロートも、運命も、神も――――。


103 : すごーい!きみは現実をもてあそぶフレンズなんだね! ◆Dbja0ebxMY :2018/02/16(金) 17:16:09 /ZQXQvIs0


【モレキュールマンの創造した世界/一日目朝】


【モレキュールマン@FANTASTIC FOUR】
[状態]:健康、上機嫌
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:友達の望みなら、オンスロートを倒そう
1:孤独が癒される……
2:リードたちには気を付ける
3:セントリーがちょっと気になる
[備考]
※ファントム・ゾーンから出て、自らの世界に引きこもっている時期から参戦です。
 要はダーク・アべンジャーズ時代です。

【グレミィ・トゥミュー@BLEACH】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:俺より、強い奴に、会いに行く
1:更木剣八には優先的に会いたい、戦いたい
2:陛下は割とどうでもいい
[備考]
※参戦時期は剣八に敗北後です。

 
【天国に到達したDIO@ジョジョの奇妙な冒険―アイズ・オブ・ヘヴン―】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:全てを超越し、このDIOが頂点に立つ
1:承太郎はなるべく優先して殺す
2:オーバーヘヴンのその先を目指す
[備考]
※オーバーヘヴンストーリーモード開始前の時間から。
 だいたい大統領を利用しはじめた時期から。




【キャラクター簡易解説】
『モレキュールマン』
本名:オーウェン・リース。マーベルコミックス出身のスーパーヴィラン。
作中で書いたように、分子(媒体によっては原子)を操る力を得た男。
分子を操ると一言で言っても、この男はその力の大元がコズミック存在であるため、
力の範囲も規模も膨大で、マーベル公式でエネルギー投射のパラメーターが『7』である。
(マーベルの公式パラメーターは最大7であり、7と言うことはそのジャンルに置いては最強である。
 例えば知性が7だとそのキャラは基本的に全知であったりする。)
事象どころか空間や次元規模にまで力が作用する上に、魔法的な物質も操作できるため
ぶっちゃけ『分子操作』だけでは到底説明のつかないこともやってのけている。

マーベルコミックスの、いわゆる強さランキングにおいては、
設定改変前はユニバース全体を指しても上から数えたほうが速い位置にいる。
ぶっちゃけ当ロワ主催のオンスロートよりこいつのほうがよっぽどヤバい。
当ロワのモレキュールマンはさすがにトップヒーローやヴィランならなんとかなる程度ではある。
(それでもセントリーとかソーとかドゥームとか本当に一部のトップだけだけど……)。

元々は屈折した小心者、といった性格で、現実を改変できる力を持つが
人間関係はことごとくうまくいかず、情緒不安定な性格である。


104 : ◆Dbja0ebxMY :2018/02/16(金) 17:16:59 /ZQXQvIs0
以上で投下終了です。ありがとうございました。


105 : ワールド・ウォー・ハルク・リボーンズ ◆Dbja0ebxMY :2018/08/01(水) 20:12:58 VR3QwEn.0
お久しぶりです。ハルク、クウラ、更木剣八、トランクス、ケーブル、虎、出で投稿します。


106 : ワールド・ウォー・ハルク・リボーンズ ◆Dbja0ebxMY :2018/08/01(水) 20:13:36 VR3QwEn.0


 剣閃煌き、大地は砕け、風は炸裂し、原子が轟く。

 丸太と形容していいほど分厚く、大きく、そして重い拳が射抜かれた。
 空気を引き裂きながら目標を破壊せんとするそれは、男の腹に鈍い音と共に
 破壊の力を、衝撃をさく裂させた。

 男が口から泥のような血液を吐きちらし、しかし一息つく間もなくその手を振り下ろす。
 肉を切らせて骨を絶つ――しかし、握られた鉈のような刀は、肉にぶつかりはじけ飛んだ。
 男は刀が肉に食い込まないのを悟ると、緑の男の胸を蹴り飛ばして距離をとった。

「死ねぇ!!」

 異形の怪物が空を舞う。
 体勢をややくずした隙を狙うように、間髪入れずと異形の怪物は吠えた。
 手のひらから肥大化させたエネルギーを球状に集め撃ち放つ。
 太陽を思わせるエネルギーー弾は緑の大男に直撃し、山脈を消し飛ばすほどの大爆発を引き起こした。

 幾多の山々を越えてなお轟く爆発。星の振動ともなった大爆発。



 その様子を青年――トランクスは、ほんのすぐそばで見ていた。


107 : ワールド・ウォー・ハルク・リボーンズ ◆Dbja0ebxMY :2018/08/01(水) 20:13:59 VR3QwEn.0



 今爆炎を搔き分けて出てきた緑色の大男と、どこかフリーザに似た気を持つ異星人と、
 長髪をなびかせて鬼のごとき形相で笑みを浮かべる、死神めいた男の三つ巴を。

「なんだこれは……」

 一体誰がどう、何と戦っているのか。

 一見してみて分かったのは、死神のような大男と、フリーザのような異星人は
 緑色の大男にしか攻撃を向けていない。
 つまりこの二人にとっての共通の敵は緑色の大男であろう。
 なるほど二人の熾烈な攻撃を受けても緑の大男はぴんぴんしている。
 恐るべき耐久力だ。恐るべき敵なのだろう。

 しかし二人が協力しているそぶりは全くなく、個々が勝手に戦っている様子だ。

 誰が悪か。誰が敵か。全員敵なのか……?

 トランクスは軽く混乱していた。
 ものすごく強い気のぶつかり合いを感じて現場に飛んでみたらこの様だ。
 見るからに好戦的な三人のぶつかり合いに気おされてしまった。
 声をかけようにもかけられない、そんな感じだ。

「……まいったな。こりゃあとんでもない場所に出くわしちまったようだ」

 不意に、背後から聞こえた声。
 目の前の光景に意識がいき過ぎていて注意を怠っていた。
 トランクスが振り返ると、そこには片腕が金属でおおわれた、白髪の男。
 年齢はトランクスよりだいぶ上だろう、やはり大男が立っていた。

「あなたは……」
「なるほど、ハルクはオンスロート側ってわけか。まぁらしいっちゃらしい、か」

 大男は目の前の光景に対し、どこかで見たことがあるかのような、
 味わったことがあるかのような懐かしさを添えて言った。
 白髪の大男は爆風を手で流し、トランクスに目をやった。

「俺はケーブルだ。ここにいるってことは、お前も参加者だろう?」
「オレはトランクスです……」
 
 手短に、と言うよりついでに、と言った感じで二人は自己紹介を済ませた。
 一拍ほどの緩んだ空気を、次の爆発に合わせる様に二人は引き締める。

「あの、ケーブルさん」
「ん?」

 トランクスは違和感を話した。

「ケーブルさんは、オンスロートのことを知ってるんですか……?」
「知っている。かつて、倒したこともある」
「!!」

 ケーブルの自嘲めいた笑みを見て、トランクスは驚いた。

「そ、それじゃあ……!」
「倒し方を知ってるかも? か。残念だがそう簡単にはいかない。なにより……」

 何度目かの地響き。
 それより、とケーブル。

「まずアイツらを止めるか、逃げるかしねぇとな。このまんまじゃ
 あいつにここら一体を吹き飛ばされかねん」
「そ、そうですね……。わかりました!」


108 : ワールド・ウォー・ハルク・リボーンズ ◆Dbja0ebxMY :2018/08/01(水) 20:14:31 VR3QwEn.0

 ■


「ハルク!!」

 吹き飛んだばかりの緑の大男――ハルクの前に、ケーブルは空から降りて立ちふさがった。
 まるでダメージを受けていないのか、クッションにもならない折れた大木を軽々と搔き分けて、
 ハルクは立ち上がり、ぎょろりと目をやって、ケーブルを見た。
 その瞳は怒りと、憎しみに燃えていた。とてもヒーローとは思えない目だった。

「またオンスロートに操られてるのか! 相変わらずだな」
「ヤツに操られてる……?」

 ハルクは流用に言葉を綴った。
 ケーブルは違和感を覚えた。その言葉から、その眼から、その雰囲気からは果てしない怒りを、憎しみを感じる。
 しかし、ハルクの動きはしなやかだった。
 邪魔なガレキを押しのけるその振る舞いは、冷静そのものだったからだ。

「バカを言うな……、オレは操られてなんかいねぇ。
 オンスロートは約束した。お前たちを皆殺しにすれば……」


「オレの居場所を返してやると」
「居場所だと!?」
「そうだ……」

 ハルクは息を飲み込んでいた。吐き出す言葉は一つ一つが熱を持っていた。
 それはハルクの怒りがそのまま吐き出たような、炎だった。

「あいつらはカイエラを殺した……だから」

 ケーブルは身構えた。その手には、彼になじみのある銃器は残念ながらない。
 彼を象徴する金属の腕はそのままだが、テクノ・オーガニック・ウイルスが
 その『表面的な部分』だけとはいえ、彼の中から取り除かれているのは、この場合最大の幸運と言えた。

 本気のハルクを相手にするならば、自身の全能力をもってしても勝てるかどうか怪しいからだ。


109 : ワールド・ウォー・ハルク・リボーンズ ◆Dbja0ebxMY :2018/08/01(水) 20:14:53 VR3QwEn.0
 ■



「大丈夫ですか!」

 トランクスは死神風の男のそばに駆け寄った。
 ハルクの相手をケーブルがかって出たため、フリーザ似の異星人か死神のどちらかに
 コンタクトをとることにしたのだが、フリーザ似の方は
 あからさまに嫌な予感がしたので死神の男の方に来たのだった。

「あん、なんだてめぇは……」

 死神の男はさぞ憎々しそうに、ともすれば邪魔そうに言った。
 口から血を垂れ流し、おそらく内臓を相当やられているはずだが、
 その口調からは全くそんなことは感じ取れない。
 それどころか戦いに水を差されて不機嫌になってさえいるようだった。

「どけ! 俺はまだアイツとやりあってんだよ」
「ま、まってください……! あいつを……。ハルクを倒すには、オレたちも協力しないと……」
「ハルクって言うのか、アイツは……」

 死神の男は口を拭った。
 名を知れたことが嬉しいのか、その表情に新しい笑みが浮かぶ。
 すく、と立ち上がると、鉈のような大刀を肩に担ぎ、ざり、と一歩踏み出す。

「ま、まってください! 話を聞いて……」
「てめぇが一緒にやりてぇなら勝手にしろ。……あいつみてぇにな」

 くい、と顎で指した空には、フリーザに似ている異星人がいた。
 そっちもこちらに気付いたのか、そして何か気づきがあったのか、
 静止したままで、ヘルメットのような表情から少しの驚きが伝わってくる。

「あいつはあいつで、なんなんだ……?」
「さァな。俺とハルクがやりあってたら、横から割り込んできやがったんだよ」

 死神の男はさも興味なく言うと、ハルクに向かって駆け出した。
 
「あっ! ま、まってください」

 トランクスも体に気を纏い、そのあとを追った。


110 : ワールド・ウォー・ハルク・リボーンズ ◆Dbja0ebxMY :2018/08/01(水) 20:15:15 VR3QwEn.0
 ■


「アレは……サイヤ人か」

 クウラはハルクから意識を外し、その視線はトランクスの動きを追っていた。
 弟のフリーザがサイヤ人に倒された。
 という話を聞いたのはつい先日のこと。このクウラがいながら、愚かにも宇宙一を自称した我が弟。
 しかし、フリーザが倒された事を知ったクウラの反応は、少しの驚きと
 心底呆れた、という思い。そしてフリーザを倒したサイヤ人は生かしてはおけないという、
 自身のプライドに直結する危機感だった。 

 伝説の超サイヤ人など伝説にすぎない。などフリーザは言っていたが、
 クウラからしてみればそもそもそんなレッテルはどうでもいい。
 必要なのは誰が相手であろうと、宇宙最強はクウラ。己のみという事実。ただそれだけだ。

 青髪のサイヤ人など聞いたことも見たこともないが、
 フリーザを倒したサイヤ人ともなれば、突然変異と考えるのが妥当だろう。

「……………」 

 クウラは少し頭をひねり、トランクスの――もとい、死神男の元へと降り立った。

「まて」

 死神の男――名を更木剣八という――と、トランクスの前に立ったクウラ。
 二人は脚を止めた。
 トランクスは剣に手をかけた。

「そこのおまえ……サイヤ人だな?」
「……そうだ。おまえはなんだ……。フリーザの仲間か」
「ほぅ、やはりフリーザを知っているか。ならばお前がフリーザを倒したサイヤ人か」
「! ……だったらなんだっていうんだ!」
「オレはフリーザの兄だ」
「!?」

 トランクスは驚いた。フリーザのことはそれなりに知っている。
 だが兄がいることは知らなかった。
 フリーザの血族は父であるコルド大王だけだと思っていたのだ。

「か、かたき討ちのつもりか……?」
「かたき討ち? フン。舐めるなよ。
 フリーザが死んだのは、フリーザがお前より弱かったからだ。ただそれだけのこと……」
「じ、じゃあなんだってんだ!」
「フリーザのことなどどうでもいいが、宇宙最強はこのオレだ!
 オレでなくてはならない。フリーザを倒したほどの男を、無視できるはずがなかろう」 
「…………!」
「だが、今は邪魔が多い。殺さずにおいてやる」
 
 クウラの呟きのあと、地面が大きく揺れた。
 ケーブルがハルクの一撃を受けて大きくはじけ飛び、ハルクの拳が大地を打ち付けたからだった。

「ケーブルさん! そうだ、お前なんかに関わっている暇はないんだ!」
「そういうことだ。癪だが、まず先にあの怪物を殺す」
「……てめぇら人を置いて話を進めやがって……。要は共闘か。ケッ、勝手にしろ」


111 : ワールド・ウォー・ハルク・リボーンズ ◆Dbja0ebxMY :2018/08/01(水) 20:15:37 VR3QwEn.0
 ■
 

 幾重に張り巡らせたサイキックシールドが、たった一撃で粉砕される。
 動きを止めるべくまとわりつかせた念動力は、その純粋な腕力だけで
 いとも簡単に振りほどかれた。

 ――――強い。

 ケーブルの感想はシンプルだった。強い。このハルクは、かつてないほどに。
 しかし不思議ではない。ハルクは怒りに飲まれた時、オンスロートと正面から殴りあえた唯一のヒーローだ。
 オンスロートの物理攻撃を無効化するアーマーを、腕力だけで破壊した男だ。
 だがそれは、ハルクが本当に理性を飛ばし、怒りに満ちた時だった。
 問題は、このハルクは確かに理性を保っているということ。
 攻撃は力任せの乱暴だが、的を撃ちぬくためにまっすぐに飛んでくる。
 きちんとこちらを認識して攻撃してくるのだ。

 ――どういうことだ……これは。

 考えられるのは、オンスロートの小細工。
 オンスロートは世界最強のテレパス能力を持っている。
 あの力を駆使すれば、ハルクの理性を保たせたまま、怒りのリミットを振り切れた状態にする。
 という一見矛盾した感情と理性を同居させることもできるだろう。

 かつてハルクがオンスロートに操られた時にはできていなかったことだが、
 これはオンスロートがその後、なんらかのパワーアップを遂げた結果かもしれない。

「最悪の重ね掛け、ってヤツか」

 悪態をつくが、身体は腰が砕けそうになるのを支えるのがやっとだ。
 ハルクのパワーが想像をはるかに超えすぎている。
 これ以上はハルクのパワーをうけとめられない。

「ケーブル。てめぇもおねんねしな」

 影がケーブルを覆った。見上げた先に、ハルクの拳が降り注ぐ。
 防御が間に合わないその一撃を、交差した一刀が受け止めた。
 空気が爆発する。およそ拳の一撃とは思えない轟音。
 やはり受け止めきれずに、刀の主は大きく後ずさりさせられた。

「大丈夫ですか! ケーブルさん!」
「けっ」

 腰をつくケーブルにトランクスが駆け寄った。
 ハルクは苦虫を潰したように顔をゆがめ、次の一撃をお見舞いするべく拳を振り上げた。

 と、空気を切り裂く音。

 ハルクと剣八の間に、一瞬でクウラが現れた。
 さすがにあっけにとられたハルクの顎に、クウラの膝が突き刺さる。
 会心の一撃だったが、ハルクはちょっとだけのけぞっただけだった。
 すかざずクウラのがハルクの顔面に右フックをたたき込む。顔はさすがに効くのか、
 さっきよりは大きく揺らいだ。
 次いで額に撃ち込まれた肘と、左フック。ハルクが顔をぬぐった。
 クウラはハルクの行動の一歩先を行き、ハルクの腹に光弾を押し当てた。

 ダメージにつながるかは怪しいモノだが、その一撃はハルクを後方へ吹き飛ばし、
 トランクスたちにわずかなインターバルを与えてくれた。

「な、なんてやつだ……」

 吹き飛んだ先を見ながら、一人、気の大きさでハルクのダメージが分かるトランクスだけが言った。
 ハルクの気は全く減っていない。まるでダメージを受けていない。
 
「フン。頑丈な奴だ……」

 何事もなかったかのようにゆっくりと立ち上がるハルクを見て、クウラが言った。
 トランクスは確信する。このハルクと言ういう怪物は強い。
 倒すにはここにいる全員が協力するしかない、と。

 ハルクに息をつかせるまもなく、更木剣八が斬り込んだ。
 上段から思い切り振り下ろした斬魄刀――『野晒』が、ハルクの右腕に食い込み、
 薄皮一枚を辛うじて斬り付ける。
 剣八がちっと舌打ちし、ハルクは蠅でも払うかのように右腕を凪いで剣八を弾き飛ばした。

「ハァッ!!」

 トランクスが気を込めて変身する。
 黄金のオーラに隆起した筋肉。それだけではない。オーラをさらに覆うように稲妻がはじける。
 超サイヤ人2。トランクスのできる、最強の変身だった。

「ほぅ……」

 背後のトランクスを見て、クウラは感心したように息を漏らした。
 思っていた通り、ただのサイヤ人ではないらしい。クウラに『気』を感じることはできないが、
 超サイヤ人2の力、鍛え上げられたトランクスの力を素晴らしいモノだと、
 恐ろしい力だと認識した。

(こいつは……生かしておくには危険かもしれんな……)

 内心そう思いつつ、クウラはハルクに目をやった。

「聞け、サイヤ人。あの怪物は、どうやら物理的な攻撃にはかなり強いらしい。
 かと言って気功波の類も効きが薄い……ならばどうする?」
「徹底的に攻撃するしかないだろう!」

 即答したトランクスの力強い言葉に、クウラはそのマスクの下で笑った。

「そうだ。こちらの持てる力を徹底的に叩き込むのだ!!!」


112 : ワールド・ウォー・ハルク・リボーンズ ◆Dbja0ebxMY :2018/08/01(水) 20:16:03 VR3QwEn.0

 ■


 まさに大戦争と言っていい光景だった。
 クウラと更木剣八が間髪入れずに拳を、剣をたたき込み、トランクスがその後ろから
 二人の邪魔にならないタイミングで気功波を撃つ。
 クウラと剣八は勝手に動いているが、彼らの防御のスキマをケーブルがサイキック・フィールドでカバーする。
 むろんそんなフィールドはハルクのパンチ一発で簡単に破壊されるのだが、
 更木剣八とクウラと言う百戦錬磨の二人には一瞬間があれば回避は可能であった。
 むしろ二人は防御を捨てている。すべての力を攻撃にのみ注いでいた。

 強力なエネルギーが密集し、大気が爆発し、大地はその形を失っていく。
 しかし驚くべきはハルクの脅威のタフネスだった。

「ちぃっ……!!」

 回避が間に合わず、クウラの横腹をハルクが殴り飛ばす。
 クウラはピッチャーが投げるボールのように、真横に綺麗にぶっ飛んだ。
 ぐぐもった息を吐き出して遠ざかるクウラと交差するように更木剣八が突進する。 

 振り下ろされた野晒がハルクの腕に食い込む。わずかに出血した腕が、
 次の瞬間に剣八の腹に打ち込まれた。

「ぐっ! ……はぁーっ!!!」

 しかし、剣八はクウラと違い、踏みとどまった。
 ハルクが少し驚いた。先ほどまでとは、手ごたえが違っている。

「さ、最高だ……」

 剣八の体から霊圧が噴き出す。それは周囲の空間も歪めるほど強烈なモノだった。

 更木剣八の力は、本来無制限である。
 幼き頃、既に護廷十三隊最強と名高い卯ノ花八千流すら上回っていたその戦闘力は、
 大人になるにつれて彼自身の無意識によって封印されてきた。
 彼はこの会場に送られるほんの少し前、誰であろう卯ノ花八千流自身によって
 その封印を解かれたばかりだった。
 そして、彼の前に今いるは、加減するどころか自身の全力をもってしても
 かすり傷しか与えられないほどに『強い者』。

 更木剣八の心は、体は、かつてないほどに高揚し、
 そしてその霊圧は研ぎ澄まされていった。

 つまり、彼は闘えば戦うほど、相手が強ければ強いほど強くなるのだ。
 それはちょうど、怒れば怒るほど強くなるハルクの性質と似ている。

 ここで大事なのは、ハルクは既に、オンスロートの洗脳と、自身の最愛の伴侶、
 自身の治める民たちを殺されたことによって、かつてないほど怒りきっている事だろう。

 そして、その怒りがさらなる怒りをもった存在を呼び寄せる。

 トランクスたちの戦いを、高台から見ている者がいた。
 鋭い目をしたものだった。怒りに満ちた目をしたものだった。

 半身を機械で紡がれている男だった。

 その男――――名を『虎』といった。


113 : ワールド・ウォー・ハルク・リボーンズ ◆Dbja0ebxMY :2018/08/01(水) 20:16:24 VR3QwEn.0

【九龍の里の樹海を再現した場所/一日目朝】


【更木剣八@BLECAH】
[状態]:ダメージ(大)、疲労:感じていないが大。
[装備]:野晒
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:ハルクをとの戦いを楽しむ
1:他の奴なんざしるか!
2:オンスロートなんざ今はどうでもいい
[備考]
※参戦時期はグレミィ戦前
※戦闘力が際限なく上がって行っています

【クウラ@DRAGON BALL Z】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:誰が相手だろうと、この俺が宇宙最強だ。それをオンスロートにもわからせねばな
1:それをオンスロートにもわからせねばな
2:このサイヤ人は危険かもしれんな
3:それはそうと、こいつ(ハルク)はしつこいやつだ
[備考]
※参戦時期は『とびっきりの最強対最強』で地球に来る前。
※超サイヤ人のことを危険に感じています。


【トランクス@DRAGON BALL 超】
[状態]:健康、正常
[装備]:未来の剣
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:オンスロートを倒し、未来へ帰る
1:まずはこのハルクを倒さないと……!
2:ケーブルさんは信用できそうだ
3:この死神の男とクウラは信用できないかもしれない
[備考]
※参戦時期はザマス戦終了。別の未来へ帰るところから。

【ケーブル@X-MEN】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:オンスロートを止めなきゃな
1:まずハルクをとめなならんか
2:トランクスは信用できそうだ。こいつにはシンパシーを感じるぜ
3:死神男と異星人は後だ、あと!
[備考]
※特に指定はないが、『メサイヤ・コンプレックス』の前
※出会いがしらトランクスの脳内をテレパスしています。
 ドラゴンボールの世界、参加者、トランクスの境遇について知りました。


【ハルク@AVENGERS】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:皆殺し
[備考]
※『ワールド・ウォー・ハルク』の直前から参戦。
※オンスロートにより「参加者を皆殺しにして優勝したら、元の生活を返す」と約束された
 その上で洗脳されている状態。

【虎@虚無戦記】
[状態]:健康、正常
[装備]:なし。しいていうなら元々持ってる機械部品(左腕の義手など)。
[道具]:基本支給品(七日分の食料入りホイポイカプセル)
[思考]
基本:オンスロートを殺す
1:目の前の状況を眺めている
2:オンスロートはラ=グースの一味なのか……?
[備考]
※ゴールド・ランにより本来の目的を取り戻した時期から参戦。


114 : ワールド・ウォー・ハルク・リボーンズ ◆Dbja0ebxMY :2018/08/01(水) 20:19:03 VR3QwEn.0
以上で投下終了です。
それと謝罪を。

たびたび書いていました簡易キャラ紹介ですが、
情報を集めているうちに事実とだいぶ違ったことを書いていることが多々ありました。
申し訳ございません。
誤字脱字や参加者の状態表の抜けも多く、本当にすみません。
これからはなるべく間違いが無いように努めていきます。
申し訳ありませんでした。


115 : 名無しさん :2018/08/01(水) 20:51:45 dfTmWYAo0
投下乙です

サイヤ人、死神、ミュータント、クウラの4人がかりでも歯が立たないとかハルク強過ぎィ!
果たして洗脳は解けるのか…


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