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魔界都市新宿 ―聖杯血譚― 第3幕

620第一回<新宿>殺人鬼王決定戦 ◇zzpohGTsas ◆zzpohGTsas:2019/01/13(日) 00:37:52 ID:7Sgx76gs0
「あの……モデルマンは、勝てると思いますか……ね……」

 不安そうに、北上が訊ねてくる。

「一度戦った身として言わせて貰うなら、勝率は多分にあるわ。絶対に勝てる、って断じられないのが少し不安かもしれないけれど……それは割り切って」

「……はい」

 北上が不安そうに、スマートフォンをいじくりだす。
実際、モデルマン……アレックスと黒贄が良い勝負をしそうだと鈴仙が口にしたのは、北上向けのリップサービスではない。
相手の能力を探る事について並ならぬ力を持つ鈴仙が真実、そう判断しているのだ。これについては嘘はない。
だが、乱入した正体不明の存在については、正直なところ何とも言えないと言うのが実情だった。理由は簡単で、先ず相手が何者で、どんなスキル・宝具を使うのかも不明。
それだけでなく、波長を操る程度の能力で大まかな強さを調べてみた所、これが並のサーヴァントでは比較にならない位強いのである。
強い事は解るが、姿も能力については一切不明。そんな存在をアレックスが戦って、『勝てる』と断言出来る筈がなかった。

 ……と言うより、そもそも塞も鈴仙も、『アレックス達が繰り広げている戦いに乱入者が現れた事自体を明かしていない』。
そう、北上は今現在も、自分の頼れるサーヴァントは黒贄礼太郎と『だけ』戦っていると信じているのだ。
この事実を北上に対して隠蔽する理由は簡単で、北上がその事実を知れば、北上が計算外の行動に出るかも知れないと言う不安があったからだ。
彼女は、心に不安を抱えたままの、誘導しやすく御しやすい存在で、塞はいて欲しいのである。心の均衡を失い、予想外の行動に出るような駒には、なって欲しくない。
アレックスが不利になっていると言う事を知ろう物なら、どんな行動に出るのか解らない以上、上記の事実は伏せるが吉だ。

 今は、幸運に恵まれている状況だ。
ライドウとダンテと言う桁違いの強さを倒せるかもしれない鬼札の一つを抱え込み、後顧の憂いに育ち得るジョナサンとジョニィの主従の脱落を狙えて。
その上、不確定要素と番狂わせの化身の様な強さを誇る黒贄礼太郎をも葬り去れる可能性が高まるかも知れないのだ。
塞達にとっては、一石二鳥所ではない結果が転がり込み得る要素が、この戦いには内在されている。この戦いは、是が非でも落としたくない。これ以上の不確定要素は、塞も鈴仙も避けたかった。

「――?」

 波長を探る。
その行為は言葉だけで判ずるのであれば、深い集中を要し、一秒たりとも気を緩められぬ精密な作業の風に聞こえるだろうが、実際はそうではない。
波長の探知は鈴仙にとっては朝飯前、自身の能力の応用の中では基礎の基礎の基礎であり、最も簡単な部類なのだ。
しかも黒贄もアレックスも、ジョニィもジョナサンも、乱入して来た三体の存在も、極めて独特かつ特徴的な波長の持ち主の為、探り損なうなど先ずあり得ない。
現に彼らの動きは正確に把握出来ているのだ――が。その鈴仙が、不安定な『揺らぎ』を感じ取った。……いや、ただ不安定なだけじゃない。
意識しなければ、其処にあるのかないのかすらも解らない。実在と、非実在の間を彷徨っているようなその波長。量子力学のそれに似ていると鈴仙は思った。
この極小さい揺らぎは、北上は勿論塞すらも気付いていないらしい。鈴仙だけが、明白に気付けている。
意識してしまえばその存在は明白で、その揺らめきは『糸』状だった。納豆に引いた糸の何万倍も細い糸の形を取っており、それが無数、二〇〜三〇の数で、鈴仙達の下へと近づいて行き――。


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