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サマナーズ・バトルロワイアル 弐の書

1 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/13(金) 12:19:04 8KkEeKrc0
 
――――を殺して平気なの?

【まとめwiki】ttp://seesaawiki.jp/summoner-br/
【基本ルール】ttp://seesaawiki.jp/summoner-br/d/%b4%f0%cb%dc%a5%eb%a1%bc%a5%eb
【地図】ttp://seesaawiki.jp/summoner-br/d/%c3%cf%bf%de
【現在位置CGI】ttp://r0109.sitemix.jp/summoner/
【前スレ】ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1461553956/


"
"
2 : 名無しさん :2016/05/13(金) 12:19:30 8KkEeKrc0
当企画は現在登場話コンペを開催しています。
期限は「5/21(土) 23:59:59」までです。
【重要】エントリーは「本スレに投下」「Wiki収録」の両方が期日までに完了していることが条件となります。

#よく出た質問
Q.女神転生やったことありません
A.「形状不問のCOMPから悪魔を使役し、共に殺し合いを勝ち抜く」という最低限の知識があれば大丈夫です。

Q.登場話でパートナー悪魔殺してもいい?
A.大丈夫です。

Q.サマナーの縛りは?
A.本編は「同一世界線」で行おうと思っていますので「真・女神転生if...と同一世界になるような現代」のキャラでお願いします。
 現代の住人である描写、注釈がアレば構いません。

その他、前スレで出た質問などは、>>1の基本ルールに掲載しております。

#投票について
5/22(日)00:00:00〜23:59:59まで、下記スレッドにて実施いたします。
投票ルールなどは下記スレをご参照ください。
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/5008/1463108244/
また、投票開始までは作品解説・紹介スレッドを兼ねているので、登場話を投稿された方はぜひご活用ください。


3 : Brightdown ◆aEV7rQk/CY :2016/05/13(金) 21:30:20 r7QEaJu60
投下します。




4 : Brightdown ◆aEV7rQk/CY :2016/05/13(金) 21:30:49 r7QEaJu60
無人の街を三体の悪魔が行く。
3体は一様に逞しい肉体を民族衣装で覆った人型であり、金色の頭髪は手入れされておらず伸び放題になっている。
彼らは兄弟ではない。
ただ同種族の悪魔として学友程度の親しみを互いに抱いており、バトルロワイアルの会場で出会ってから一組になって行動していた。

彼らは駅を探索している時に、駅前の通りを走る小柄な少女を見つけた。
参加者であることを示す首輪が嵌められている事を確認すると、ただちに駅を抜けて少女の後を追う。
幸いにも少女の走る速度は遅く、駅前にあるビルの1階、ディスカウントストアの店舗に入り込んだ事を確認できた彼らは三方から襲撃を掛け、店内で少女を取り囲んだ。

少女はこちらを見て、吸い込むような声を1つ発すると突然身を屈めて嘔吐を始めた。
構わず悪魔たちが少女の命を奪おうとした瞬間、両者の間に人影が形成されていく。
人影はでっぷりと太り、ダブルのスーツとシルクハットに身を包んだ異形の紳士だった。
彼が手に持っていた黒い大剣を振るうと店舗は半壊。3体の悪魔たちはたちどころに上半身を失ってしまった。



――ふざけるな!死にたくない!ふざけるな!死にたくない!

魔神皇への怒りや死の恐怖が、街中を疾走する智子の心中に暴風雨をもたらした。
智子自身『これから、みなさんに殺し合いをしてもらいます』といった妄想を何度かしたことはあった。
しかし実際にやろうとは思わなかったし、自分が参加者の側に立つと臓腑が凍りつくほど恐ろしい。死ぬ覚悟はないが、殺す覚悟もない。
隠れている間に優勝していたらいいな、とすら智子は考えている。

魔神皇に人知を超えた力があるのは無人の街を駆けているうちに智子にも理解できたが、殺し合いを開催する神経は理解できなかった。
それなら異世界に冒険に出るとか、ハーレムを作るとか、一生働かずに暮らすといった他人(わたし)に迷惑のかからない使い方をすればいい。
走っているうちに見覚えのある看板が出てきたので、看板のかかったビルの中へ智子は無我夢中で侵入した。

――とにかく、支給品だ!

1階にある店舗内の奥まったスペースに座り込んだ智子が期待と不安を込めて支給品を広げると、その中に武器らしきものがあった。
それは鉈だった。智子の片手に納まる短い柄、柄の先端には幅広く肉厚の刀身、冷たく光る刃。田舎ならともかく都会で暮らしているとまず見る事の無い品物。
刃先は長方形になっており、突くよりも斬る事に適しているように見える。

――もっといいのくれよ……ロケットランチャーとか、約束された聖剣とか、変身ベルトとかさぁ……。

仮にそれらの支給品を入手しても智子には使いこなせないが、肥大化した自意識がもたらすプライドと極度の緊張、恐怖がそこに目を向けさせない。
状況に恐怖しつつも、そんな益体の無いことを考えていられる余裕があるのは、まだ現実感が伴っていないからだ。
死の実感はなく、ただ追い立てられるような焦りと粘つく怯えが静かに心の内に広がっていく。


5 : Brightdown ◆aEV7rQk/CY :2016/05/13(金) 21:31:07 r7QEaJu60
続いて、智子はタブレット端末に手を伸ばして悪魔召喚プログラムを起動させる。起動を示すメッセージが画面に走り安堵と共に息を吐き出す。
その時に薄暗い店内に破壊音を伴った複数の足音が流れた。支給品をかき集めて逃げ出そうとした智子だったが、すぐに3体の悪魔に囲まれてしまった。
3体の悪魔は見上げるほど大きく、剥き出した歯の間から耳障りな音を立て、蛇のような眼で智子を射竦める。

「―――ッ」
「うっ、お、え、うおおおええうえっ」

智子は嘔吐した。強烈なショックによって胃腸が刺激されてしまい、胃液が勢いよく逆流して喉を通り過ぎる。
たまらず身体を前に折り、胃の中身を吐き始めた智子は自身の生存を諦めた。
足元に消化仕掛けの「何か」が広がっていく中、前兆なく気配が増えたことを智子は知覚した。
突如、暴風が吹き荒れて店舗が半壊する。

「……ケホッ」

胃の内容物を吐き終わった智子が小さな咳と共に顔を上げると、破裂寸前の風船のように丸々とした体型の紳士が独り立っていた。
しかし肌が青白く、耳は漫画に出てくるエルフか悪魔のように先が尖っているあたり人間でないのは智子にも窺える。
紳士は満面の笑みを此方に向けているが、彼のしゃくれというには些か異常な大きさの顎と見事な歯並びは今後、忘れることは出来そうもないな…と智子は思った。
彼は豊満すぎる身体を左右に揺らしながら、智子に近づいてきた。

「ハァ〜イ♡ウフフフ…初めましテ♡御怪我はありませんカ〜♡」
「えぇっ…と、ひゃ」
「怖がらないでくださイ♡吾輩は貴方の味方デス♡」
「あ、あ……」

意味のある言葉を発せていない智子だったが、胸中は歓喜と安堵に満たされていた。
召喚した悪魔は中々強く、こちらに好意的だ。
殺し合いの場に不似合いなほどテンションが高いのは見ていて不安だが、3体の悪魔を一撃で消し飛ばした実力は頼もしい。
とにかく彼について行けば問題あるまい――智子はこの場に招かれた当初に比べると、少しばかり落ち着いた。

「サマナ〜さンのお名前を教えて頂けますカ♡」
「あ、くっくくく、ろき……ともこ」

吃音がひどく、言葉尻に近づくほど声が小さくなっていったが智子は気づかない。
初対面の相手と会話を弾ませることのできる彼女ではないが、それでも不興を買わないように勇気をかき集めて伯爵に名前を告げた。

「黒木、智子さンデスネ♡ 吾輩の事ハ、伯爵と御呼び下さイ♡」
「は、はははく、しゃ…く…」
「ウフフ…これから仲良くしましょォネ♡」


"
"
6 : Brightdown ◆aEV7rQk/CY :2016/05/13(金) 21:31:28 r7QEaJu60
智子に笑いかける伯爵は大剣を一瞬のうちに消し、代わりに顔の形に刳り貫かれたカボチャの飾りがついた日傘を取り出した。
そのとき伯爵は日傘に一瞬目を向けたが、すぐに智子に視線を戻した。

「さァ、出発しましょおカ♡」
「あ、ははは…はい…」

伯爵が身体を揺らしながら出発を告げると、智子は陳列されたタオルで口元を拭った。
周囲を確認すると基本支給品と手に持っていたCOMPは無事だったが、鉈に吐瀉物が掛かってしまっている。
急いで拭おうかと思ったが、触れるのも汚らしいので鉈は放置した。
伯爵は店舗の入り口で智子を待っており、智子は伯爵を見失わないように大急ぎで走っていく。

周囲に目を配らせながら走る少女と踊るように歩く肥満体の二人組は、連れ立ってビルを出た。
外に出た際、伯爵は行く当てがあるか尋ねてきたが放り込まれただけの智子に明確な目的はなかったので伯爵に任せる旨をボディランゲージを交えて伝えた。
それを受けた伯爵は鷹揚に頷き、『では吾輩についてきてくださイ♡』と智子に告げると軽やかな足取りで再び移動を始めた。


伯爵が此方に笑いかけた際に光の加減から丸眼鏡の奥にある眼が見えた。それと一瞬視線を交わしただけの智子だが、自室で拳大の昆虫と睨み合った様な錯覚に陥る。
冷たいものが背筋を過り、地面に縫われたように智子の足は動かなくなったが、しばらく時間が経つと伯爵の影が小さくなったので再び走り始めた。


【?????/1日目/朝】
【黒木智子@私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!】
[状態]:健康
[装備]:タブレット型COMP
[道具]:基本支給品、鉈
[思考・状況]
基本:死にたくない。
※鉈は捨てました。

[COMP]
1:千年伯爵@D.Gray-man
[種族]:魔人
[状態]:健康
※日傘型のゴーレム「レロ」は喋りません。


7 : Brightdown ◆aEV7rQk/CY :2016/05/13(金) 21:32:36 r7QEaJu60
投下終了です。


8 : Brightdown ◆aEV7rQk/CY :2016/05/13(金) 21:43:19 r7QEaJu60
事後報告になりますが、WIKIにて誤字部分を以下のように訂正しました。

伯爵に名前を告げた。

紳士に名前を告げた。


伯爵は行く当てがあるか

伯爵が行く当てがあるか


9 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/13(金) 21:47:49 EDAHmkP60
投下乙です!
コミュ障がヤバいのを引いた……?
何か企んでそうで、恐ろしいぜ……

あと、告知してなくて混乱させてほんとに申し訳ないんですが、
前スレ埋めておきたいので、前スレ埋まるまで以降の投下は前スレでお願いします。
ほんとすいません……


10 : Brightdown ◆aEV7rQk/CY :2016/05/13(金) 21:59:58 r7QEaJu60
>>9
確認致しました。

お手数おかけします。


11 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/16(月) 02:28:01 uEPxVSYc0
新スレ乙です
候補作投下します


12 : 魔女と浦和ァァァァー!! ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/16(月) 02:30:26 uEPxVSYc0

 CIAの準軍工作担当官、通称ヘックスはオフィスビルの片隅で装備を確認していた
 彼女のスタンスはすでに結論がでている
 民間人の保護と、殺し合いに乗った危険人物の排除。そして首謀者である魔神皇の殺害だ
 祖国アメリカのために、正義のために働いている自身を不当に拘束し、首輪を装着。殺し合いをしなければ暗に殺すと言う状況の強制
 もうこの時点であの魔神皇という少年はまごうことなきテロリスト。 
 情報酌量の余地などなく、すでに始末するべき対象にシフトしている。

「武器は……ふふ、良いものが入ってるわぁ。日頃の行いが良いからかしらね」
  
 M16カービン、ヘックスも任務で良く使っていた銃で、当然扱いも心得ている
 予想外の武装入手に上機嫌になったヘックスは、続いてスマートフォンーーCOMPの操作に移った
 悪魔とやらが実在しているのか定かではないが、魔神皇が異能を行使したことをこの目で見た以上、ブラフだと無下にするのは得策ではない。説明書の通りに操作し、「悪魔召喚プログラム」とやらを起動させる

「あらーー随分とキュートな悪魔ねぇ」
  
 簡潔だが的を射た感想だった
 ヘックスの眼前に現れたのは、ベレー帽を被り、迷彩柄の服を着た緑色の熊だった
 どこか気の抜けたような表情で、不安げな視線をヘックスに向けている
液晶にはこの悪魔の名前なのか、『フリッピー』と表示されていた
 あまり戦力の宛にはならなそうだが、とりあえずコンタクトを取ろうと口を開いた
その時だった。
ヘックスのもつM16カービンに、フリッピーが目を止めたのは

ーーーーゾクッ

 その瞬間、凄まじい悪寒がヘックスの背筋を襲う。
 アフガンでの経験や訓練によって培われてきたヘックスの直感が、大音量で警告を発した

 変化は迅速で、それでいて顕著だった
 フリッピーの表情が三段階に変化する
 数えきれないほどの拷問を含めた尋問を行ってきたヘックスは、その様子を見て正確にフリッピーの抱いた感情を理解した

 まず恐怖、続いて猛烈な恐怖、そしてーー
 ここにきてヘックスは幸運だった
 フリッピー以外の人間にとって、非常に芳しくないその変貌は最後まで行かずなかった。
 
 ハッとしたような表情を浮かべ、フリッピーは持ち直した

(この私が……怯えたですって)
 
 自分は知らず知らずのうちに特大の地雷を踏みかけたらしい
 この熊は確かに悪魔だということを、ヘックスは理解した。それも特大に厄介な、一歩間違えれば自分の身が危ないレベルの。

(この子についてはもっと知る必要があるわね)

 確かCOMPには、召喚プログラム以外にも悪魔辞典なるアプリもダウンロードされていた。後で目を通しておく必要があるか

「私はヘックス。貴方の名はフリッピーよね? どうぞよろしくね」

 警戒と疑念、そして如何にこの悪魔を利用するかの打算を巧妙に隠しながら、ヘックス《魔女》は魅力的な笑顔で手を差し出した
 
【?????/1日目/朝】 
【ヘックス@ヨルムンガンド】
[状態]:健康
[装備]:M16カービン(20/30発、予備弾30×3)、COMP(スマホ型)
[道具]:基本支給品、確認済支給品
[思考・状況]
基本:民間人は保護し、殺し合いに乗った危険人物と魔神皇を排除する
フリッピーについて、悪魔辞典などでより詳細を把握しておく
[COMP]
1:フリッピー@Happy Tree Friends
[種族]:妖精
[状態]:健康


13 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/16(月) 02:31:16 uEPxVSYc0
投下終了です


14 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/16(月) 03:13:07 uEPxVSYc0
投下します


15 : 賭博師 ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/16(月) 03:14:27 uEPxVSYc0

「なんて、なんてーー素晴らしい!!」

 殺し合いの最中、蛇腹夢子が抱いた感情。
 それは恐怖でも怒りでもなくーー歓喜
 ギャンブル狂である彼女にとって、この殺し合いはまさに至高の賭博。
 命というたったひとつのチップをかけてまで挑まなければならない禁断のギャンブル

 資本主義の世の中では金は命も同然。命を運否天賦に委ねるなど正気の沙汰ではない
 にもかかわらずカジノに人が集まるのは、命を賭ける狂気に人は快感を覚えるから
 で、あればーーギャンブルは狂っている程、面白いというもの

「でもいただけませんね、ひとりだけ安全圏から高みの見物なんて……」

 蛇腹は絶対に勝つ勝負も、絶対に負ける勝負も嫌いだ。
 それはもはやギャンブルではない
 それを踏まえれば、そもそもがあの魔神皇と名乗った少年は、命を賭けている夢子たちと同じ土俵に上がっていない。それが心底彼女には不愉快だった

「手を貸して頂けますか? 悪魔さん」

 夢子の問いかけに、背後に控えていた目が液晶ディスプレイのようになっている人型の悪魔が答える

「『ルール』はオマエタチガ決メルモノ……
 ワタシはアクマデ『取り立て人』ダ」

 そう、彼はあくまでも取り立て人であり、「賭け」による取り立て以外の行為でサマナーに協力はできないしするつもりもない
 しかし夢子はそれで良いんだ!!と言わんばかりの微笑を浮かべる

「わかっています。貴方はあくまで公正な取り立て人であり、そして私が貴方に求めるのはそれだけです」

 夢子が望むのはあくまでギャンブルであり、殺戮ではない。なればこそ『取り立て人』こそが自分に相応しい悪魔だと断言できる

「さァ…… 賭 け 狂 い ま し ょ う!」

 賭け狂いーー蛇腹夢子のバトル・ロワイアルが始まった


【?????/1日目/朝】 
【蛇腹夢子@賭ケグルイ】
[状態]:健康
[装備]:COMP(携帯型)
[道具]:基本支給品、確認済支給品
[思考・状況]
基本:殺し合いをギャンブルとして楽しみ、ぜひ魔神皇と命を賭けたギャンブルをしたい
[COMP]
1:マリリン・マンソン@ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン
[種族]:スタンド
[状態]:健康


16 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/16(月) 03:15:06 uEPxVSYc0
投下終了です


17 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/16(月) 05:12:10 uEPxVSYc0
投下します


18 : カラ松の受難 ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/16(月) 05:12:53 uEPxVSYc0

 なんで俺はこうも不運なのか
 ナイスガイなロンリーオンリーウルフ、松野カラ松は俺らしからぬ疑念を抱いていた
ここ最近は色々と騒がしかった
 火だるまにされたり、ダヨーンに食べられたり、チビ太に誘拐されたり……etc
 だがまさか、こんな殺し合いに巻き込まれてしまうなんて、俺はなんてホットな男なんだ……っ!!
 とにかく、愛すべきブラザーたちがこの場にいないことを祈ろう。
 ラブ&ピース、平和こそ一番。だが残念ながら素手ではこのカラ松とて、デンジャーな相手と対峙してしまった危ない。なので万全を期して悪魔…デビル、もしくは漆黒のサタンとやらを召還してみることにした
 幸いにも俺のCOMPはダンディーなオーラを醸し出すキーアイテム、すなわちサングラス型だった。目線だけで悪魔召喚プログラムとやらを発動できる優れものだ
 青々としたスカイのしたで俺は悪魔とやらを召喚した
 
 俺は驚きを隠せなかった。
 何故なら、その場に水着姿の美女が現れたからだ
 なんということだ。
 まさかこの俺の魂に応えてか、こうしてカラ松ガールズが召喚されてしまうとは……俺も罪な男だ

「やあーー、君が俺の召喚した悪魔ーー否、天使でありカラ松ガールかな」

「はい、私は絵美里と申します
 ところで…… サマナーさんはエッチな女の子は嫌いですか?」

 その言葉に俺のハートはブレイクされちまった。なんて積極的でビューティーなカラ松ガールなんだ、君は
 普通ならここで野生のBEASTのごとく食らいつくのはマイナスだが、彼女の懇願するような潤んだ瞳を見た瞬間、男なら言うべきときだとカラ松ソウルがアンサーした

「ふっ…… 好きだぜ。自分に素直な女はな」

 決まった。
 俺は彼女が俺に惚れたと確信した。

「本当っ」

 その証拠に、彼女は喜びに目をーー

「エッチはエッチでもHellのほうだがなぁぁぁーっ!」

 ーー見開いた!!

「うおわあ!?」

 ギリギリで異変に気づけた俺は咄嗟にしゃがみこんだ
 俺の頭上数㎝の所を荒ぶるチェーンソーの刃が通過する。カラぶったせいで絵美里は大きく体制を崩した
 
「ひいいいいいい!! な、何をするんだレディー絵美里
 俺は確かに無意識に周りを傷つける痛い男と呼ばれるが、
 そんなデンジャラスな方法でお近づきになろうとするほど血に飢えちゃいないぜ」

 俺は錯乱してしまった彼女に必死にメッセージを送った。一体俺の何が彼女の気に触ってしまったのだろうか?

「うるせーー!! 死ねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーっ!!!」

 しかし彼女は耳を貸さず、チェーンソーを俺のブラッドで染めようと追撃してくる!

「くっ…… これも世界の選択か…… 」

 悲しいことに俺では貴女の心の闇を解きほぐしてやることはできない……
 魂の安息を求めて俺は走った。グッバイ

「三枚に……おろしてやるぜぇぇぇーッ!」

 だがレディー絵美里は熱烈に俺を求めて追ってきた。残念ながらその思いには答えられそうにないぜ
 こうしてカラ松の逃走劇が幕を開けた
 
 因みに召喚した悪魔が制御できないのなら、COMPに戻すという手段もあるにはあるのだが、カラ松がそれに気がつくのはいつの事になるのだろうか……

【?????/1日目/朝】 
【松野カラ松@おそ松さん】
[状態]:健康
[装備]:COMP(サングラス型)
[道具]:基本支給品、確認済支給品
[思考・状況]
基本:殺し合いから脱出する
[COMP]
1:絵美里@エッチな夏休み
[種族]:殺人鬼
[状態]:健康


19 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/16(月) 05:14:24 uEPxVSYc0
投下終了です


20 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/16(月) 09:42:54 yQGO730E0
投下乙です!

>>13
ファンシーな見た目とは裏腹にスーパーやばい奴が来た!
対主催として安定しそうだけど、それ以上に不安要素が……

>>16
命をベットに「賭ける」。マーダーでも対主催でもない、ギャンブラーというスタンス。
なかなか珍しいですね……これは期待です。

>>19
かっこつけてる場合ではないのでは?(マジレス)
最速で殺されそうなんですがそれは……

さて、巷では10連ガチャが流行りらしいので、僕も10連投下します。


21 : 依頼 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/16(月) 09:43:52 yQGO730E0
「みんな殺して欲しいの」

 開口一番、デュランが聞いた言葉はそれだった。
 悪魔としてこの場に呼び出された時、目の前に立っていたのは、一人の女性だった。
 一見すると普通に見える彼女から、よもやそんな言葉が出てくるとは思ってもおらず、デュランは少し面食らっていた。

「……あなた、悪魔なんでしょう? 強いんでしょう? だったら皆、殺してしまってよ」

 まくしたてられる言葉、その裏に潜む僅かな狂気。
 常人では持ち得ないそれを、ひしひしと感じながら、デュランは彼女へと問いかける。

「一つ聞かせろ。何故だ、何故に貴様はそれを望む」
「……疲れたのよ」

 答えは、間を置かずに返された。
 そして、それを切っ掛けに彼女は次々に語りだす。

「どうせ、生きていたってバルデスにいいように使われるだけ。
 待てど暮らせど、あの人はやってこない。ずっとずっと、信じていたけど、もう限界なの。
 でも、魔神皇は願いを叶えてくれるんでしょう? だから――――」

 絶望の海を泳ぐように、濁っていた目が、ふと輝きを取り戻す。
 それは、ギラついた略奪者の目。
 他の全てを犠牲にするだけの、覚悟がある目だった。

「あの人に会いたい。その願いのためなら、他の誰がどうなろうと構わないわ」

 それほどまでに強い意志。
 魔人たるデュランですら、圧倒されてしまいそうになるほどの、純粋な狂気。
 つくづく、人間というものは面白い、そう思わせてくれる。

「……一つ、言う事がある。私が闘うのは、強き者とだけだ。それ以外は、興味はない。
 それでもその命を奪うというのならば、貴様自身でそれを成すことだな」

 最後にひとつだけ忠告し、デュランは歩き出す。
 返事はない、つまらないことを言わせるな、ということなのだろう。
 ただ無言でデュランの後ろを歩く女を見て、デュランはふと笑う。

 互いに目的は一つ、それだけを追い求めて、彼女らは歩く。

【?????/1日目/朝】
【ニーナ@メタルマックスリターンズ】
[状態]:健康
[装備]:COMP(型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:ウルフに会うために、優勝する
[COMP]
1:デュラン@ドラゴンクエスト6
[種族]:魔人
[状態]:健康


22 : 魔王 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/16(月) 09:47:29 yQGO730E0

 東京、それは、教科書でしか知らない街。
 新型爆弾――――もとい、"アキラ"によって破壊された、日本で唯一の都市。
 それから生まれた都市、ネオ東京。
 少年、甲斐はその街に住む……もとい、住んでいた一人だ。
 壊滅状態のネオ東京で「大東京帝国」を謳い、全てに宣戦布告をする男、島鉄雄を止めるべく日々策を練っていた。
 その矢先に、彼はここに呼び寄せられた。

「殺し合い、だってよ……何だって、そんなことしなきゃいけねェんだ」

 頭をかきむしりながら、甲斐は思わず愚痴をこぼす。
 超能力、人知を超えた力、そういうモノに魅入られたものは、こうも"狂って"しまうものなのか。
 先ほどの場所でいとも簡単に、二人の命を殺してみせた少年の目も、やはり狂っていた。
 ともかく、巻き込まれた以上は、この状況をなんとかしなくてはいけない。
 人殺しを積極的に行うつもりはないが、表立って反逆の意志を示すわけにもいかない。
 自分の命を握っている首輪、これへの対処が、何よりも先決だ。
 焦ってはいけない、来るべき時を待つことは、もう慣れきっている。
 そうと決めたところで、甲斐は傍にあった袋を確認し始める。
 せめて、工具の類でもあれば良かったのだが、中に入っていたのは食料と拳銃、それにゴーグルだ。
 はぁ、とため息をついた後、なんとなしにゴーグルを手早く装着してみる。
 その時、それが只のゴーグルではないことが分かった。
 浮かび上がる無数の文字、進んでいく処理、そして放たれる光。
 これはコンピュータだったのか、と甲斐は驚嘆していた。

「お前か?」
「え?」

 すると、突然背後から声をかけられる。
 振り向くと、そこには蛍光色のきついピンクのドレスに身を纏った、怪しい姿の緑髪の女性が立っていた。
 幻か? と思いゴーグルを外し、目を擦ってみるが、女性は幻でも何でも無く、そこにはっきりと立っていた。

「私を呼び出したのは、お前かと聞いている」
「あ、はい。そうです、僕です」

 少し苛立った声で、女性は甲斐へと問いかけ、甲斐もそれに間を置かずに答えていく。
 全身から溢れ出る気品さは、まるで貴族のようであった。
 しかし、甲斐はその裏に隠されている、"何か"を感じ取りつつあった。

「ふん……矮小な人間に呼び出されるとは、な……あの魔神皇とやら、随分とナメた真似をしてくれるじゃないか」
「えっと、あのー……?」
「私の名はアセルス。妖魔の王として、そして何れは全ての王として君臨する者だ」

 明らかに機嫌の悪そうな声で、現れた女性、アセルスはそう名乗った。
 思えば、始めからずっと高圧的な態度で自分のことを見ている。
 ああ、これが"悪魔"という存在なのだろうか。
 どうにも協力は望めそうにないか、と落胆しかけていた時だった。

「おい、人間」
「は、はいッ」
「名を聞かせろ、それくらいは覚えてやる」
「あ、はいッ。俺ッ、甲斐って言います!」

 慌てて名前を答えながら、甲斐はアセルスをじっと見つめる。
 見てくれは人間のそれに近いが、ところどころ人間とは違う箇所が見られる。
 そして、わざわざ"人間"と呼ぶあたり、露骨に"下"に見ているのか感じ取れる。
 こういう高圧的なタイプは疲れるが、上手くいけば"乗せ"やすい。
 あとは、自分が上手くやるだけだ。

「フン、下賤の民らしい名だな……まあいい、このアセルスが全てを蹴散らしてくれよう。お前は私の姿を黙って見ていればいい」

 まずは"間違えない"事。
 それを意識の隅に置きながら、甲斐はアセルスの姿を、じっと見つめていた。

【?????/1日目/朝】
【甲斐@AKIRA】
[状態]:健康
[装備]:COMP(ゴーグル型)、ハンドガン
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:機を待つ、首輪の情報を集める。
[備考]
※3巻以降、金田合流前
[COMP]
1:アセルス@サ・ガ フロンティア
[種族]:妖魔
[状態]:健康


23 : 遭遇 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/16(月) 09:47:47 yQGO730E0
「ここ、は……?」

 澄み切った空、燦々と照りつける太陽、そして立ち並ぶビル。
 自分の知らない景色を目の当たりにし、少年、金田は困惑の表情を浮かべる。
 東京、崩壊したはずの街。それを目の当たりにした、ということもある。
 だが、彼にとってはそれだけではない。
 あの日、あの時、発動してしまった"アキラ"の力。
 それに巻き込まれたはずの自分が、どうして今ここにいるのか。
 それが、不思議でたまらなかったのだ。

「……殺し合いがどうだが、言ってやがったな」

 ひとまず落ち着きを取り戻した金田は、状況を再確認する。
 あの力に飲み込まれたことはひとまず置いておく、そうしないと始まらない。
 まず、自分をここに呼び出したのは他でもない、魔神皇を名乗る同年代のあの少年だ。
 首輪で命を握られていること、殺し合いを"命じられた"こと。
 どうにもナメられているとしか感じなかった金田は、それに怒りを示す。
 ナメられっぱなしでは、性に合わない。
 健康優良不良少年として、魔神皇に屈さず、立ち向かわずにはいられない。
 どの道、この場所からは脱出する、それは決定事項だ。
 となれば、まずはこの忌々しい首輪をなんとかしなくてはいけない。

「メンテの道具がありゃあなァ……」

 淡い期待を胸に、傍の袋を探ってみるが、中から出てきたのは一台の仰々しい火炎放射器。
 万が一には使うことになるかもしれないが、できれば使いたくはないと思いつつ、金田はそれを背負い込む。
 それからもう一つ、袋から出てきたサングラスを手に取る。
 一体これでどうしろと言うのだ、と思いながら、それをかけようと手に触れた時、金田はその異変に気がつく。
 黒いはずのサングラスのレンズ、突然それが真っ白に染まり始めたからだ。
 何だ何だ、と驚く間もなく、サングラスはたちまち光を放っていく。
 思わず放り投げてしまったが、サングラスは止まること無く光を生み出し続ける。
 やがて光は一点に集まり、何かの形を生み出していく。
 そして、金田は驚愕する。
 光が晴れた後、そこから現れた一人の男、それは。

「よォ……金田ァ……」

 彼が最もよく知る男、島鉄雄だった。

【?????/1日目/朝】
【金田@AKIRA】
[状態]:健康
[装備]:COMP(サングラス型)、火炎放射器
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:健康優良不良少年として、魔神皇にナメられないよう立ち向かう。
1:鉄雄……!?
[備考]
※3巻、アキラの能力に巻き込まれた直後
[COMP]
1:島鉄雄@AKIRA
[種族]:超人
[状態]:健康


24 : 自分 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/16(月) 09:48:07 yQGO730E0
 だだっ広い、学校の校庭のど真ん中。
 ピースマークが記された黄色いバンダナを頭に巻いている少年は、そこで何をするわけでもなく、寝そべっている。
 彼の名は、宮本明。通っている軽子坂高校では、名の通った不良少年の一人だ。
 だが、素行に問題のある彼でさえ、今の事態は異常だと感じていた。

「ハザマ……か」

 呟いたのは一人の名前、そう、"魔神皇"の本来の名前。
 転校初日こそ話題になったが、それ以降は根暗で目立たない奴と評判だった男。
 そんな奴がまさか、こんな大きなことをしでかすとは、誰が予想できるだろうか。
 犯罪という範疇を超えたとんでもない悪行には、流石に難色を示さざるを得ない。
 だが、巻き込まれてしまった以上は、これに付き合わなければいけない。
 何処かで隠れて怯えているだけで、助けが来るわけでもない。
 だから、自分の足で歩き、自分の手で道を切り開く。
 そうしなければ、待っているのは"死"だけだ。

「……ともかく、武器が必要だな」

 何にせよ、巻き込まれてしまった殺し合いを生き抜くには、"力"が必要である。
 使えと言わんばかりに置かれていた袋に、有用そうなものが入っていることを祈りつつ、中を確認する。
 しかし、出てきたのは一本のピッケルと、ごちゃごちゃとしたよくわからない一台の機械だった。
 いや、下手に触ったこともない剣や斧なんかが出てくるよりかは、これは扱いやすい武器なのかもしれない。
 ひとまずピッケルを腰に携え、もうひとつの道具、ごちゃごちゃとした機械の方に手を伸ばしていく。
 どうやら、顔の部分にある画面を見ながら、手元のキーボードで操作をするようだ。
 まるでコンピュータのようだと思い、それがハザマの言っていた"COMP"であると頭の中で結びつける。
 ならば、この機械を弄ることで、悪魔とやらが出てくるはずだ。
 吉と出るか凶と出るかはわからないが、しがない高校生が殺し合いを生き抜くには、力が必要だ。
 頼れるものは全て頼っておいたほうがいいだろうと思い、ゆっくりと操作を進めていく。
 いくつかの項目を経た後、最後に出てきたのは「SUMMON OK?」の文字。
 今更ためらっても仕方がない、そう思いながら、一番大きなキーをゆっくりと押し込んだ。
 描かれる魔法陣、溢れだす光、作られていく影。
 ああ、これから悪魔が現れるのか、と思ったその時。
 彼は、言葉を失ってしまう。
 呼び出したのは、人型の存在。
 人の肌と思わしき場所は赤く変色し、半分は獣のような皮で覆い尽くされている。
 まさに悪魔と呼ぶにふさわしい外見の者。
 だが、彼が驚いているのは、それだけではない。
 そう、いかにも"悪魔"として現れた者、それは。

「よう、俺」

 ピースマークが記された黄色いバンダナを頭に巻いている少年。
 そう、彼もまた、"宮本明"だった。

【?????/1日目/朝】
【宮本明(アキラ)@真・女神転生if...】
[状態]:健康
[装備]:COMP(アームターミナル型)、ピッケル
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:ハザマには従わない。
[備考]
※本編開始前
[COMP]
1:宮本明@真・女神転生if...
[種族]:魔人
[状態]:健康
[備考]
※アキラ編クリア後


25 : 正義 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/16(月) 09:48:27 yQGO730E0
「なんとかしなきゃ」

 開口一番、彼女の口から飛び出したのは、そんな言葉だった。
 軽子坂高校2年D組所属、白川由美。
 高校生にしては派手な外見と、見た目に違わぬ強気な性格故に、彼女のことを敬遠するものは少なくはない。
 しかし、彼女によく接する者は、彼女が周りに気配りの出来る、優しい人間であるということを知っている。
 だから、彼女はこの状況においても混乱することはなく、第一にこの状況を打破することを考えていた。
 こんなふざけた場所から、一人でも多く助けられるように。
 そう願いながら、まずは自分の今の状況を再確認し始める。
 最低限の自衛が出来なければ、何をするにしても話にならない。
 出会う人間全てが、自分のように殺し合いを良しとしない人間だとは、限らないのだ。

「バットと……これ、何だろ」

 袋から取り出した道具を並べ、由美はそれらをまじまじと見つめる。
 金色に輝く金属バットはともかく、もう片方の奇妙な機械は、何のためのものなのかがわからない。
 形状的に顔に着ける部分と、腕に着ける部分に分かれているのは分かるのだが。

「キーボードがついてるし、コンピュータなのかもね」

 そんなことを言いながら、ふと彼女は思い出す。
 そう言えば魔神皇――――もといハザマが、COMPがどうのこうのと言っていた。
 恐らく、この奇妙な機械がCOMPなのだろう。
 であれば、この機械の中に悪魔が閉じ込められている。
 正直言って、信じられない。
 悪魔なんておとぎ話の存在であるし、その認識は今も変わらない。
 それを、こんなオモチャみたいな機械で呼び出せるなんて、考えもつかない。

「でも……モノは試し、やってみる価値はあるわよね」

 子供騙しなら、別にそれでいい。
 嘘を付かれてしまった時は、その時だ。
 やってみなければ、後悔も出来ない。
 深呼吸をひとつ挟んで意を決し、操作を進めていく。
 そして、いくつかの選択肢の後、目の前に大きな模様が現れ、そこから一本の光の柱が空へと伸びていった。

「……この揚羽さんを呼ぶのは、どこの誰かな?」

 少し間を置いて聞こえた、男の声。
 振り向けば、そこに立っていたのは"人間"だった。
 だが、その外見は思わず女性と見間違えてしまうほど、美しかった。
 すらっとした長身に、ゆるやかな銀髪、身を包む蒼と、片目を隠す黒の眼帯。
 ああ、とても綺麗だ、と由美は思わず男に見とれてしまっていた。

「……お嬢さん、大丈夫かい?」
「あっ、はい。大丈夫です」

 ふと我に返り、慣れない敬語が口から出る。
 それから順を追って頭を整理し、最初に聞いておきたいことを口に出す。

「あの……貴方が……悪魔?」
「ん、そうだな。その認識で、間違ってないぜ」

 どこからどう見ても人間にしか見えないが、どうやら彼が由美に遣わされた"悪魔"らしい。
 話の通じる相手でよかった、と内心安堵しながら、由美は彼の目をじっと見て、本題を切り込む。

「あの、揚羽さん。力を貸してくれませんか? 私、こんなこと間違ってるって思うんです」

 人にお願いするときは、人の目を見て、はっきりと自分の言葉で伝える。
 白川由美という少女が一度も崩したことのない、ポリシーの一つ。
 それは、相手が悪魔であろうが何であろうが、変わることはない。

「……いい目だ、似ている」
「えっ?」

 じっとその目を見つめていた揚羽は、しばらくしてからふと笑い、そう言った。
 いつかの誰か、同じように自分に協力を願った、彼女と同じ年頃の少女と、重なったからか。
 どこの世界にも、芯の通った強い女性は居るもんだと思いながら、揚羽は言葉を続ける。

「お嬢さん、名前は?」
「あ、由美。白川由美っていいます」
「ユミか……分かった。俺は、お前に賭けるぜ」

 返事はもちろん、了承。
 それを聞いた由美が、嬉しそうに少し跳ねたのを見て、揚羽はにこりと笑う。
 やはり似ているな、と、心の中で、そう思いながら。

【?????/1日目/朝】
【白川由美(ユミ)@真・女神転生if...】
[状態]:健康
[装備]:COMP(アームターミナル型)、金属バット
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:一人でも多く助ける
[備考]
※本編開始前
[COMP]
1:揚羽@BASARA
[種族]:人間
[状態]:健康


26 : 支配 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/16(月) 09:48:51 yQGO730E0



 結局この世は、"力"が全てを支配するんだ。



 金髪の少女、レナ。
 彼女は、とある国の紛争地帯で生まれた。
 生きるために小さな頃から戦いを叩きこまれ、来る日も来る日も銃の雨の中を生きてきた。
 そして、ある日。それは起きた。
 圧倒的武力を持つゲリラ組織"グラップラー"、その一軍と交戦することになった。
 結果は、言うまでもない。
 共に戦線に立った男たちも、親のように自分を育ててくれた女も、死んだ。
 そして自分には、一生消えない火傷の痕が、残された。
 答えは簡単、力が足りなかったからだ。
 強いものが弱いものを蹂躙する、それが世の中の摂理。
 武器が乏しいとか、足が遅いだとか、そんなことは理由にならない。
 弱い、ただそれだけで、罪なのだから。

 そしてレナは、この殺し合いに巻き込まれた。
 更に、この首輪によって、命まで握られていた。
 これ以上ない、敗北。それを齎した者、圧倒的強者――――魔神皇。
 武器を取り、魔神皇に立ち向かうということを考える人間も居るだろう。
 だが、無駄なことだ。
 圧倒的な力に一度敗北している者が、徒党を組んだ所で何も変わらない。
 無残な姿で、無駄に死に晒すだけだろう。
 だから、彼女は選択する。
 圧倒的強者の戯れ、それによって生きることを許されたのなら。



 この世界で、一番強いのは自分だと、証明してみせる。



 迷いは、とうにない。
 今、手にあるのは一丁の拳銃だけだが、他人から奪えば"力"も充実する。
 大方、大多数の人間は「殺し合いなんて間違ってる」なんて甘っちょろいことを考えているのだろう。
 そんな奴らが相手なら、遅れを取ることもない。
 とにかく、出会うやつから殺していけばいい、それだけだ。

「行くぞ」

 心を決めた所で、妙な人形を握りしめた時に現れた女に指示をしながら、少女は前へと歩き出す。
 変に意志のある存在ではなく、自分の言うことを聞いてくれる"操り人形"であったのは、僥倖だった。
 最低でも、肉壁程度にはなる。
 それ以上の働きをしてくれるのならば、願ったり叶ったりだ。

 だが、期待はしない。
 結局信じられるものなど、自分の"力"しか無いのだから。

【?????/1日目/朝】
【レナ@メタルマックス2リローデッド】
[状態]:健康
[装備]:COMP(神輿のフィギュア型)、ハンドガン
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:全てを略奪し、力を示す。
[COMP]
1:ティナ・ブランフォード@FINAL FANTASY6
[種族]:幻人
[状態]:健康
[備考]
※操りの輪が装着されています


27 : 修理 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/16(月) 09:49:06 yQGO730E0
「ったく、ふざけてんよなァ〜〜」

 緑髪に橙のメッシュ、サングラスに作業着というラフな格好の少年。
 名をアクセルという彼は、そんな愚痴を零しながら、東京の街を歩いていた。
 彼は、地方の小さな修理屋の息子なのだが、近所でも評判の悪ガキで、それに頭を煮やした父親に勘当されてしまっていた。
 いくら話しても父親には話が通じないので、ひとまず何でも修理して日銭を稼いで生きるか、と決めた矢先に、この殺し合いに招かれた。
 こんなしがない男を一人招いた所で、一体何がどう変わるというのか。
 全く、魔神皇と名乗るあの少年も物好きなもんだと思う。
 いや、誰でも良かったのか。
 自分は、それに運悪く巻き込まれてしまっただけに過ぎないのかもしれない。
 それに選ばれてしまうとは、まったくツイていない。

「はぁ〜〜〜〜……」

 大きな、ため息をこぼす。
 憂いても嘆いても、状況は変わらない。
 巻き込まれた以上、自分で何とかしなくてはいけないのだ。

「つってもよぉ〜〜、どぉ〜〜〜〜すんだよぉ〜〜〜〜」

 だが、何とかすると言われても全く見当もつかない。
 修理屋の息子にできることなんて、精々限られているのだから。
 とにかく、襲われた時に対処できる手段くらいは用意しておかなくてはいけない。
 仕方なく取り出した袋の中に入っていたのは、少し大きめの工具箱。
 中を確認すれば、ある程度の工具が入っていた。
 使い慣れたモノが手にある感覚は、少しだけ心を落ち着かせてくれる。
 それで安心していたからか、彼は気づかなかった。
 道具を確認している最中、工具箱が淡い光を放っていることに。

「……ん?」

 ひと通りの確認を終えた後、ようやく彼は気がつく。
 ちょうど目の前、そこに一台の奇妙な機械が鎮座していた事に。
 しかし、待てど暮らせどそれが動き出す気配は見えない。

「壊れてんのか?」

 まさか、これが早速役に立つとは。
 そう思いながら、彼は工具を手に取り、未知の機械へと立ち向かっていく。
 電子機器なら、なんとか修理できるだろうという、妙な自信を抱えながら。

【?????/1日目/朝】
【アクセル@メタルマックス2リローデッド】
[状態]:健康
[装備]:COMP(工具箱型)、工具セット
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:どぉ〜〜〜〜すんだよぉ〜〜〜〜
1:奇妙なロボットを修理する。
[COMP]
1:ロボ@クロノトリガー
[種族]:マシン
[状態]:故障中


28 : 否定 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/16(月) 09:49:26 yQGO730E0

 一人の、少女。名は、ミシカ。
 彼女には、フェイという一人の兄が居た。
 兄は強く、どんなに銃弾が降り注ぐ戦場の中も、くぐり抜けてきた。
 そんな兄を、ミシカは誇りに思っていた。

 だが、ある日、それは脆くも崩れ去ることになる。
 圧倒的武力を持つゲリラ組織"グラップラー"と交戦し、兄が命を落としたという訃報を聞いた。
 初めは、信じられなかった。
 嘘だと思いたくて、火に包まれた戦地へと飛び込んだ。
 そして、彼女は知ってしまった。

 それが、嘘ではないことに。

 兄は死んだ。
 あれだけ強く、誇り高く、自分の目標でもあった兄が、死んでいた。
 逃れようのない、残酷な真実だけが、そこにあった。

 そして、絶望に打ちひしがれていた中、彼女はここに呼び寄せられた。
 突然現れた、魔神皇と名乗る人間。どうでもいいと思った。
 不思議な紫の炎で焼き殺される人間。どうでもいいと思った。
 理不尽に首輪を爆発させられて殺される人間。どうでもいいと思った。
 その首輪が自分にも着けられていること。どうでもいいと思った。
 これから殺し合いをしなくてはいけないこと。どうでもいいと思った。
 殺し合いを生き抜いた者には、何でも願いが一つ叶うと言われた。

 どうでも――――良くなかった。

 なんでも一つ、願いが叶う。

 それを聞いた時、虚ろだった彼女の心は固まった。

 誰とも知らない他人を、殺す。
 そんな簡単なことで、何でも願いが叶う。
 そう、"兄が死んだことを無くす"ことだって、叶うのだろう。
 それは眉唾かもしれない、けれど、嘘だと切り捨てる事も出来なかった。
 ほんの少しでも、それが本当かもしれないと、思ってしまったから。

 この手には今、ひと振りの刀がある。
 人を殺すくらいなら、何とかなるだろう。
 生き抜くために鍛えてきた、この体があれば、それは造作もないことだ。

 軽く、刀を振るう。
 まるで、過去を断ち切るように。
 一度、二度、三度と刀を振るう。

 感触は、悪くない。
 余計な力を使わないようにすれば、なんとか生き残っていけるだろう。
 そう思いながら、過去を"修正"する道へと、一歩進んでいこうとした時だった。

「ねえ、お姉ちゃん」

 一人の少女に、呼び止められる。
 それは、修羅の道を進もうとする彼女を迎え入れる、一つの出会いだった。

「アリスと、遊ばない?」

【?????/1日目/朝】
【ミシカ@メタルマックス2リローデッド】
[状態]:健康
[装備]:COMP(刀型)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:優勝し、兄を蘇らせる。
[COMP]
1:アリス@真・女神転生シリーズ
[種族]:魔人
[状態]:健康


29 : 開戦 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/16(月) 09:49:54 yQGO730E0
「げははははは!! この海の魔王グラコげぶぁっ!?」

 名乗り口上も途中に叩きこまれたのは、鉄拳だった。
 顔面への強烈なストレート、それを初めとして、流れるような連撃がグラコスの体に決められる。
 反撃しようとするが、グラコスがいつも使っているお気に入りの槍が無いことに気がつく。
 それに絶望している間にも、拳と蹴りが次々に叩き込まれる。
 じゃあ、どうやって反撃しようか。そんなことを考えている間に、彼の意識は遠のいて行った。

「ったく、素手なんて性に合わないぜ」

 くすんだ色のズボンに上半身裸に赤いロングコート、さらに銀髪というなんとも目立つ男。
 その名も、ダンテ。
 ある"事務所"を開業し、いざこれから、と言った所で、こんなしみったれたパーティに呼ばれてしまった。
 父の形見であるリベリオンも、愛用のエボニー&アイボリーも無い。
 代わりと言わんばかりにプレゼントされたのはクソダサい首輪と、クソダサいギター。
 その上で、あの魔神皇とかいうガキは"殺し合い"をしろだなんて言うのだから、正直、センスと思考回路を疑う。
 気晴らしにギターでも弾こうかと思えば、変なサカナが飛び出してくる始末。
 容赦せずに黙らせておいたので、今は横になっている。
 振り回せば鈍器くらいにはなるだろうか? と思いながら、ひとまずそれを考えるのは後回しにする。

「何にせよ、ムカツクガキには変わりねえな」

 ともかく、今はろくな武器すらない状況に陥っている。
 そうそうヤワな悪魔に遅れを取るつもりはないが、やはりまともな武器は手にしておきたい。
 いずれあのクソガキをぶっ倒す為にも、それは再優先事項だ。

「……ったく、早速お出ましか」

 そう考えている内に、彼を囲うように無数の悪魔が現れていた。
 どうやら、落ち着いて飯を食う時間すら与えてくれないらしい。
 仕方がない、と思いながら、先ほど気絶させたサカナのしっぽを掴みながら、彼は悪魔の海の中へと飛び込んでいく。

「でも、こういうノリは嫌いじゃないぜ!!」

 ひとまず、暴れよう。
 細かいことを考えるのは、それからでもいいのだ。

【?????/1日目/朝】
【ダンテ@Devil May Cry3】
[状態]:健康
[装備]:COMP(エレキギター型)、グラコス
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:魔神皇の討伐
[COMP]
1:グラコス@ドラゴンクエスト6
[種族]:魔獣
[状態]:瀕死


30 : 奇妙 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/16(月) 09:50:11 yQGO730E0



「人間には、負の感情があります。例えば悔恨、嫉妬、怨嗟、憎悪、自棄」



「そして、それらは人によって様々な衝動を引き起こします」



「時にそれは破壊、果てには殺人に結びつくこともあります」



「今夜の奇妙な物語は、そんな負の感情が渦巻く世界に巻き込まれた、住人たちの物語です」



「隣り合わせている負の感情と、死の恐怖。それらに彼らは、どうやって向き合っていくのでしょうか」



「人間とは思っているより脆いものです、たぶん、貴方が思っている以上に」



「……おや、この首輪は」



「ということは、貴方が私の"悪魔"ですか」



「どうやら、今回は私も、奇妙な世界の住人のようです」



【?????/1日目/朝】
【ストーリーテラー@世にも奇妙な物語】
[状態]:健康
[装備]:COMP(サングラス型)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:おやおや……
[COMP]
1:マイケル・ジャクソン@ムーンウォーカー
[種族]:神霊
[状態]:健康


31 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/16(月) 09:50:23 yQGO730E0
投下終了です。


32 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/16(月) 09:57:42 yQGO730E0
>>25
タイトル被ったんで「救助」で


33 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/16(月) 14:07:38 VCpG7pmc0
投下します


34 : KAWAGOEからの来訪者 ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/16(月) 14:11:14 VCpG7pmc0

 2016年、荻窪はOGIKUBOになった
 回復する見込みのない不況に喘ぐ日本政府は、秘密裏に接触してきた地球外勢力に荻窪を売却、宇宙人の植民地と化していることを知っているのは荻窪住民くらいである。
 まぁ、国土をはした金で売却、しかも住民にもろくに知らせずに行ったことがバレたら色々世論がヤバくなるので、平時は対応の遅い日本政府も重い腰をあげて必死に隠蔽しているのだから当然か

 そしてそんなOGIKUBOに住むルル子は、OGIKUBOの治安維持を掲げる宇宙パトロールに所属する父と、指名手配中の宇宙海賊を母にもつ、ごく普通の女子中学生である

「もう……こんなの全然『普通』じゃないよ」

 なぜこうも普通が遠ざかっていくのか嘆くルル子、しかし仕方ないので、心機一転、気持ちを切り替える。

「えーと、まず拉致監禁に、あとその他色々で…… あの男の子、絶対アウトだよね」

 最近父が氷付けになってしまったため、ルル子も宇宙パトロールになった。つまりまだ中学生ではあるが、一応は警察官のようなものだ
 
 というかもう今のこの時点で、十分魔神皇をしょっぴけるだけの理由が盛り沢山だ。というか『普通』に考えて殺し合いに乗るなんて有り得ない。ルル子は魔神皇の打倒を決意する
 ラッキーなことにルル子は宇宙パトロールの制服も支給品として入手できた。
 個人的にこの服はあまり好きになれないが、無いよりはマシだ
 装着してから暫くして、ルル子は制服に「悪魔召喚プログラム」という機能がダウンロードされていることに気がついた
 悪魔…… 宇宙人が居るんだから、悪魔もいるのかもしれない
 多種多様な種族でごった返している荻窪で暮らすルル子は、必ずしもその種族で個人の良し悪しが決まるわけではないことを経験として知っていた。

 良い人が出てきたら、この殺し合いをとめるために協力してもらおう
 できれば怖くなくて話の通じる人(悪魔)が出てきますよーに!

 そう願いながら、悪魔召喚プログラムを起動させた

「どうも、エクソシストのガミジンでーす」

 そうして悪魔が召喚された。  
 ルル子から見たその悪魔の外見は骸骨、というかミイラだ
 思ったよりもフレンドリーな悪魔でホッとするルル子だったが、ちょっと気になることがあるので挨拶もかねて聞いてみる

「え、えっと、ガミジンさん…… は悪魔ですよね? 悪魔が悪魔払いを?」

「てめーら人間だって人間が人間を裁いてるじゃねーか!悪魔だからってナメるとぶっ殺すぞ!」

 しまった。どうやら触れてはいけない話題だったらしい。明らかに機嫌を悪くしたガミジンに慌てるルル子

「ご、ごめんなさいーっ」
「わかればいいんだ」

 意外とすぐ許してくれた。どうやらガミジンは優しい方の悪魔らしい
 これならば協力してもらえそうだと察したルル子は、その胸を伝えようとする。
 その時だった。


35 : KAWAGOEからの来訪者 ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/16(月) 14:12:53 VCpG7pmc0


「「「「俺たちはコボルト!! 1日一人は殺さないと気が狂ってしまうのだ!!貴様らも死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇーっ!!!」」」」

 突然のコボルトたちの襲撃!
 いきなりすぎる状況にルル子もガミジンも反応が遅れる
 その時だった

「あっ、ちょっ、まっ、いきなり……」

 犯罪を察知したルル子の宇宙パトロール制服(というか肉体)が瞬時に変形、巨大な銃になった。
 銃口は……コボルトたちに向いている

 FIGHT FOR ……JUSTICE!

 容赦のない一撃。
 コボルトたちは生命活動を停止……死んだのだ。



「す、 素 晴 ら し い !! なんて素質のある女性なんだ君は!」

 その様子を見ていたガミジンは、感動にうち震えていた。

「え?」
「君なら理想のエクソシストになれるぞ! 学校を卒業したらぜひうちの会社に来てくれ
君のような有望な若者なら社長も喜んで採用してくれるだろう」
「え、あ、はい。ありがとうございます」 

 どうやらガミジンはルル子をとても気に入ったようだった。予期せぬ好評価に思わず赤面するルル子

「で、でも私悪魔払いなんて……」
「簡単だ! パールで殴り、ハンマーで叩き伏せろ!それで悪魔が祓える!」
「えっ……えええええ?」

 それは払っているのではなく殺しているのでは……という疑問は空気を読んで黙っておいた。せっかく機嫌が良くなっているのに水を指すこともないだろう

「さぁ、悪魔払いにレッツ GO GO GO !!」
「ま、まってくださーーいっ!」

 こうして新米宇宙パトロールと川越のエクソシストは行動を開始した

【?????/1日目/朝】 
【ルル子@宇宙パトロールルル子】
[状態]:健康
[装備]:COMP(宇宙パトロール制服型)
[道具]:基本支給品、確認済支給品
[思考・状況]
基本:魔神皇を逮捕して殺し合いをとめる
[COMP]
1:ガミジン@妹が作った痛いRPGシリーズ
[種族]:悪魔
[状態]:健康


36 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/16(月) 14:13:11 VCpG7pmc0
投下終了です


37 : ヘパティカ・レクイエム ◆aEV7rQk/CY :2016/05/16(月) 17:22:06 e02w7nZw0
投下します。


38 : ヘパティカ・レクイエム ◆aEV7rQk/CY :2016/05/16(月) 17:22:38 e02w7nZw0
野咲春花は始まってすぐ、一軒の民家に隠れていた。
リビングでひとり、膝を抱えて座っている春花の表情は冴えない。

春花の視界には、会場に招かれるまでに見た情景が過っている。
半年前に引っ越してきた大津馬村の景色、自分をいじめるクラスメイト達の顔、猛火に包まれた我が家、全身に火傷を負ったしょーちゃん・・・。
そこで春花の視界が霞んだ。

「―――っ」

春花はきつく目を閉じるが瞼の隙間から涙が滲み、やがて頬を伝う。息は荒くなり、徐々に嗚咽が混じる。

「・・・・・・っふ・・・ふぅうう」

流れ落ちる雫は勢いを増していき、嗚咽は慟哭に変わった。

「・・・う゛あ゛あ゛あ゛っ゛――!!」

2か月耐えれば全て終わるはずだった。
春になったら・・・・・・。

「あ゛あ゛あ゛っ゛――!!」

―夢なら覚めて!!

―なんでこうなったんだろう?

―お父さん・・・!お母さん・・・!

様々な思考が浮かんでは消える。悲嘆の濁流の中で春花は悶えていた。




死ぬわけにはいかない。
村には妹と祖父がいる。クラスメイト達に両親を焼き殺された。彼らに復讐するまでは死ねない。
生きて脱出する。
優勝して、家族を取り戻す。

ひとしきり泣いて、冷静な思考が戻った春花は吸い寄せられるようにデイパックに手を伸ばす。
支給品の携帯電話を手に取り、強い悪魔が出る事を祈りながら春花は召喚プログラムを起動させた。


39 : ヘパティカ・レクイエム ◆aEV7rQk/CY :2016/05/16(月) 17:22:57 e02w7nZw0
プログラムを起動させた春花の前に、悪魔が姿を現す。
白いワンピースを着た長髪の少女だ。背格好は春花と変わらない。

「初めまして、サマナー。・・・ってまだ子供じゃない」

悪魔は対面するなり、つまらなそうな表情で言った。
目の前で座り込んだ悪魔と目が合い、春花は思わず顔を逸らしてしまう。
悪魔は不服そうに顔を顰めたが、そのまま会話を続ける。

「一応聞くけど貴方、優勝狙い?」

「うん・・・」

問いに力強く頷く。しかし表情は曇っている。
その答えに一瞬、目を見開くと悪魔は春花との距離を縮め、彼女の顔を覗き込む。
視線が交わると、どこか納得したように悪魔は薄く笑んだ。

「ふぅん・・・いいよ。手伝ってあげる」

悪魔は距離を取り、春花に声をかけた。

「・・・・・・ありがとう」

春花は小さく一礼する。

「じゃ、さっさとここから出ましょ。・・・このへん何もいないみたいだし」

悪魔は立ち上がり、ちらりとあらぬ方向を見た。
春花が荷物を持った事を確認すると、ゆっくりとした足取りでリビングから出ていく。
玄関の引き戸を開けた時、何かに気づいたように悪魔が声を上げた。

「そうだ、名前を聞いてないわね。名前を教えてくれる、サマナー?」

「・・・・・・野咲 春花」

「ハルカ。あたしはリフル、よろしくね」

そういって、リフルは花が咲くように微笑んだ。



【?????/1日目/朝】
【野咲 春花@ミスミソウ】
[状態]:軽度の疲労、強い悲しみと憎悪
[装備]:COMP(携帯電話型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:優勝する。


[COMP]
1:リフル@CLAYMORE
[種族]:妖魔
[状態]:健康


40 : ヘパティカ・レクイエム ◆aEV7rQk/CY :2016/05/16(月) 17:23:29 e02w7nZw0
投下終了です。


41 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/16(月) 18:04:38 yQGO730E0
おふたりとも投下乙です!

>>36
大丈夫だ、レベルを上げて物理で殴ればいい。
有望? な若者が見つかったようで何より……?

>>40
多くは語らない、目的は決まっている。
復讐のために、彼女はその道を進む……

さて、自分も投下します。


42 : 宿敵 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/16(月) 18:04:58 yQGO730E0
 震える手は、止まらない。
 目の前で繰り広げられた、一人の少年による殺戮。
 血の匂いが、かつての記憶を蘇らせる。
 戦いの記憶、死にかけた記憶、辛く苦しかった記憶。
 もう、見ることはないと思っていたはずの光景が、また繰り広げられようとしている。

「……怖いよ」

 思わず呟いたのは、本音だ。
 いくら沢山の死地をくぐり抜けて来たと言っても、彼女の本質は夕城美朱という一人の少女。
 本来ならば戦いの地に立つことなど、一度たりともなかったはずの、普通の少女なのだ。
 そして、彼女の戦いはすでに終わっている。
 けれど、彼女はここに呼び出されてしまった。
 魔神皇という、新たな脅威によって。

「怖い、怖いよ!!」

 震える声は、止まらない。
 今、彼女は殺し合いという場所に、たった一人で放り込まれている。
 共に戦った仲間も、最愛の人も、ここにはいない。
 支えなどどこにもなく、ただ隣り合わせの死の恐怖だけがそこにある。
 それに、押しつぶされそうになっていた時。

 袋の中の、携帯電話。
 ふと気がつけば、それに手を伸ばしていた。
 我を忘れ、無我夢中で番号を押し、どこかへとかけようとする。
 その時、彼女が触れていた携帯電話が、突如として光を放ち始めた。
 どこかで見たことのあるような光に、美朱は思わず携帯を放り投げてしまう。

 そして、言葉を失うことになる。

「……久しぶりだな」

 光とともに現れた、一人の男。
 それは美朱が知っている、いや、忘れるわけもない、一人の男。

「朱雀の巫女よ」

 青龍七星士、心宿だった。

【?????/1日目/朝】
【夕城美朱@ふしぎ遊戯】
[状態]:健康
[装備]:COMP(携帯電話型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:怖い
1:ッ……!!
[備考]
※第二部終了後
[COMP]
1:心宿@ふしぎ遊戯
[種族]:七星士
[状態]:健康


43 : 意思 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/16(月) 18:05:15 yQGO730E0
「全く、不運極まりないというか……」

 ぺしっ、と頭を叩いて憂う、セミロングの少女。
 彼女の名は本郷唯、四つ葉台高校の一年生だ。
 一見、普通の女子高生にしか見えない彼女が、なぜ殺し合いという場に巻き込まれても、平静を保っていられるのか。
 それには、理由がある。

「こういうのに巻き込まれやすいのかな、私」

 そう、かつて彼女は一冊の本の中に吸い込まれ、青龍の巫女として朱雀七星士たちと対立したことがある。
 それだけではない、現実世界に戻ってからも、全てを支配しようとする妙な奴と戦いを繰り広げたことがある。
 だが、流石に突然拉致された上に命を握られ、殺し合いを命じられたのは初めてであった。
 こうも立て続けに突拍子もない事に巻き込まれたせいで、少し感覚も麻痺してきてしまったのだろうか。
 嫌に落ち着いていられるのも、そのせいかもしれない。

 だが、怖い、怖くないで言えば、怖い。
 いつどこで誰に襲われて、命を落とすことになるかなんて、分からない。
 襲われる恐怖、それは時が経った今でも、はっきりと覚えている。
 ふと気がつけば、手には携帯電話を握りしめていた。
 落ち着いているとは思っても、奥底に刻まれた恐怖だけは拭えない。

「"悪魔"、かぁ……」

 だから、その恐怖から逃れるように、携帯電話を触り始めた。
 妖怪の類だって見てきた、今更"悪魔"に驚くこともない。
 何より、戦いは得意ではない自分の力になるのであれば、それに越したことはない。

 そう思いながら、彼女は携帯電話を操作し、生まれゆく光を眺めた。

「あら、随分と可愛いサマナーさんね」

 そんな言葉とともに現れたのは、少しウェーブのかかった黒のロングヘアーの少女。
 ワンポイントとして飾られたリボンは愛らしく、"悪魔"と名乗られるには少し違和感があった。
 少し、驚いた顔をしていると、現れた彼女はふっと微笑み、唯へと手を差し伸べた。

「ブレイク、ブレイク・ベラドンナよ。よろしくね」
「あ、と……唯、本郷唯よ。よろしく」

 名乗りに対し、ワンテンポ遅れながらも名乗り返し、手をにぎる。
 その温もりは、人間と変わらない。
 何気ないことだけれど、今の唯にはそれがありがたかった。

「……どうしたの?」
「ううん、なんだか新鮮だな、って」

 そういえば、誰かと共に何かと戦うのは、初めてかも知れない。
 誰かに利用されるわけでもなく、自分の足で選ぶのだから、なおさらだ。
 そう思いながら、唯は足をすすめる。

 不思議と、もう怖くはなかった。

【?????/1日目/朝】
【本郷唯@ふしぎ遊戯】
[状態]:健康
[装備]:COMP(携帯電話型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない
[備考]
※本編終了後
[COMP]
1:ブレイク・ベラドンナ@RWBY
[種族]:獣人
[状態]:健康


44 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/16(月) 18:05:25 yQGO730E0
投下終了です。


45 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/16(月) 19:06:50 uEPxVSYc0
投下します


46 : ハロウィン ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/16(月) 19:08:07 uEPxVSYc0


 昼下がりの出来事である
 路地裏に、ふたりの人物が佇んでいた
 ひとりは作業つなぎの上にフード付きのコートを着ている大男で、年齢は27歳だが、髪や髭が顔を覆い被す程に伸びており、より老けて見える
 彼は右手に、白塗りのハロウィンマスクを持っていた
 彼の名はマイケル・マイヤーズ。
 17年前、イリノイ州の田舎町である事件が起こる。ハロウィンの夜、マイケルはいつも自分のことを馬鹿にしていた母親の恋人と実姉とその友人を惨殺するという凶行に及んだ。
 その後、彼は精神病院に入院し、人々は彼のことを「悪魔の子」と弾圧、それに絶望したマイケルの母は自殺した
 だが17年後、成長したマイケルは警備員を惨殺し、精神病院を脱走した。
 たったひとりの家族である妹、ローリーと『再会する』ために

 もうひとりの男ーーマイケルの召喚した悪魔は、血濡れの包丁を持ち、マイケルの持っているマスクと同じものを被った大男であった。
 異なる点は、このマイケルは作業つなぎだけで、フード付きのコートは着ていない 
 彼もまた『マイケル・マイヤーズ』である
 6歳の時に実姉ジュディスを肉切り包丁で殺害。以後精神病院に入院していたが、幼少期の殺人からちょうど16年目を迎えた1978年。  21歳になり、マイケルは、ハロウィンの前日に、彼は唯一生き残っていた妹を『殺すため』に、精神病院を脱走。
 それを皮切りに、以後10年間にわたって、ハロウィンの度に彼は殺戮を繰り返してきた

 同じ存在でありながら、決定的に異なる性質を持つふたりの『ブギーマン』
 彼らは吐息すらせず、互いにじっと『自分自身』を見つめあっていた 

【?????/1日目/朝】 
【マイケル・マイヤーズ@ハロウィン(リメイク版)】
[状態]:健康、素顔
[装備]:COMP(ハロウィンマスク型、手で触れて念じるだけで操作できる)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:妹に会いたい。邪魔するものは殺す
[COMP]
1:マイケル・マイヤーズ@ハロウィン
[種族]:ブギーマン
[状態]:健康


47 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/16(月) 19:09:12 uEPxVSYc0
投下終了です


48 : そつぎょう ◆aEV7rQk/CY :2016/05/16(月) 21:06:09 e02w7nZw0
投下します。


49 : そつぎょう ◆aEV7rQk/CY :2016/05/16(月) 21:06:45 e02w7nZw0
「へぇー。ぜんぜんようきをかんじねー」

参加者の一人に襲いかかった悪魔は狼狽している。
3つ数えるうちに爪が届く――という瞬間、巨大な腕に掴まれた。
掴まれたのは、往年の栄華を求めて蘇ったゾンビ・ボディコニアンである。
真紅のボディコンワンピースは彼女の艶美な肉体を衆目に誇示するが、生地から覗く腕や腿は血が通っていない。

「どぉらぁ!」

気合と共に宙を横切る右腕が、ボディコニアンの内臓を京子の前に晒す。
京子が目を向けると、そこに巨人が座っている。
背を丸めているが身長は隣のビルと変わらず、筋肉の鎧を上から甲殻で覆っていた。

「おーい、さまなー。だれもこないぞ」

大きな顔で京子を睨みつける。咎めているが威圧的な印象を受けない。
外見を除けば子供のように感じる、間延びした口調だった。

「・・・ええ、東京も広いですから」

京子は淡々とした様子で、道路の彼方を指差す。
悪魔も指が示した方向に顔を向ける。

「次は向こうに見える赤い看板を目指しましょう」

「わかった」

京子に頷くと、看板を目指して歩き始めた。
一歩ごとに、見かけに違わぬ重量を感じさせる震動音が周囲に響く。
悪魔が起こす地鳴りを聞きながら、さっきの彼女は何も思わなかったのか、京子には疑問だった。
大した関心も無かったので推るのやめ、悪魔の後について歩く。

「・・・・・・!」

途中で中学校の前を通る。校門が視界に入った時、脳裏に京子を取り囲む学生達がフラッシュバックした。
喉にせり上がってきたものを、顔を逸らして飲み下そうとする。





50 : そつぎょう ◆aEV7rQk/CY :2016/05/16(月) 21:07:04 e02w7nZw0
京子は大津馬中学校を卒業できなかった。
一度目は生徒として、ただ卒業証書をもらうだけで終わった。
母校の教師になって、生徒達を「友達」にして卒業式を迎える目前で除雪車に轢かれる・・・時点で彼女は東京に連れてこられた。

何気なく、手が首に嵌められた金属の輪に触れる。

――卒業できるかな?

母の弁当を台無しにされて、卒業アルバムに独りで載って、一緒に帰る相手がいないまま大人になった。
これが私の過去・・・・・・私は何もしていない。

――卒業できるよね?

「今度」こそ友達をたくさん作って、笑顔で卒業式を迎えたい。
そのためには悪魔を集めて優勝する。今度はうまくやる。

「おーい、なんかあったか?」

声に振り向くと、悪魔がそばに来ていた。
校舎の方に目を凝らしていることから見て、自分は立ち止まっていたらしい。
吐き気はもう治まっている。

「・・・・・・いえ、行きましょう」

大きく深呼吸をすると、京子は校門には目を向けずに先を歩く。
悪魔はちょっと首をひねると、また看板を目指して歩き始めた。



【?????/1日目/朝】
【南京子@ミスミソウ】
[状態]:健康
[装備]:COMP(ガントレット型)
[道具]:基本支給品、ベレッタM92(装弾数15)
[思考・状況]
基本:優勝して、中学生時代をやり直す。

[COMP]
1:ダフ@CLAYMORE
[種族]:妖魔
[状態]:健康


51 : そつぎょう ◆aEV7rQk/CY :2016/05/16(月) 21:07:27 e02w7nZw0
投下終了です。


52 : 不幸 ◆mcrZqM13eo :2016/05/16(月) 21:34:33 c6ArLp5.0
投下します


53 : ◆NIKUcB1AGw :2016/05/16(月) 21:34:37 i7iqHf020
投下します


54 : 不幸 ◆mcrZqM13eo :2016/05/16(月) 21:35:07 c6ArLp5.0
「ゆんああああああああああああああああああ!!!」

商店街に響く身も蓋もない絶叫。

「ヲーーーーホッホッホッッホッホッホッホッホッホッホ」

商店街に響く人類のものとは思えぬ笑声。
哀れにも巻き込まれた不幸な人間が悪魔に襲われているのだろうか?

答えは――――

否である。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

雄叫びを上げて上条当麻はひた走る。脇目を振る余裕も、道を変える余裕も無い。
捕まったら――――喰われるか犯されるか。その恐怖に突き動かされてただ走る。

「ヲーーーーホッホッホッッホッホッホッホッホッホッホ」

奇怪な笑声の主はピタリと後をついて来ている。

あの場所から飛ばされた上条は、右肘から先を頑強な籠手で覆われていることに気付いた。
神の奇跡すら打ち消せる“幻想殺し”、このふざけた殺し合いからの脱出に、多いに役立つであろう右手を封じられた上条は、当然籠手を外そうとした。
すると籠手が光だし、悪魔が姿を顕したのだった。

西洋甲冑に身を包んだ巨大な丸い人型。目を合わした上条は、無言で踵を返し走り出した。
人型の眼に宿る性欲とも食欲ともつかぬ光を見て取ったからだ。

それから30分、上条は全力で走っていた。後ろの化け物見た途端、悪魔達が蜘蛛の子散らした様に逃げて行くおかげでスピードを落とさず走り続けられたのは幸いだった。

だが、そんな幸運は、比べ物にならない不幸で幕を閉じる。

「行き止まりぃぃぃぃぃぃいいいい!!!!!」

行き着いた先は三方が壁に囲まれた突き当たり、前と左右に道は無く、後ろには

「ヲーーーーホッホッホッッホッホッホッホッホッホッホ」

「不幸だああああああああああああああああ!!!!!」


【?????/1日目/朝】
【上条当麻@とある魔術の禁書目録
[状態]:健康・救命亜(ジュウミンア)ッッ!
[装備]:COMP:籠手型
[道具]:基本支給品、未確認支給品
[思考・状況]
基本:
1.不幸だああああああああああああああ!!!!!
2.誰か助けてッッ!!!!!
3.右腕は肘から指先までCOMPで覆われています
[COMP]
1:小早川奈津子@創竜伝
[種族]:怪人
[状態]:健康


55 : 不幸 ◆mcrZqM13eo :2016/05/16(月) 21:37:27 c6ArLp5.0
投下を終了します

>>16
俺もやっているんで人のことは言えないんですが蛇腹ではなく蛇喰ですよ


56 : ◆NIKUcB1AGw :2016/05/16(月) 21:42:01 i7iqHf020
宣言被り失礼しました
改めて投下させていただきます


57 : レアな正義の味方 ◆NIKUcB1AGw :2016/05/16(月) 21:42:55 i7iqHf020
「プリキュア」と呼ばれる戦士たちがいる。
彼女達は皆10代の少女であり、超人的な力をもって平和を乱す悪と戦う。
そんなプリキュアの中に、「幻のプリキュア」とでも呼ぶべき存在がいた。
これは、彼女の物語である。


◆ ◆ ◆


坂上あゆみは、殺し合いの中に放り込まれるという今の状況に恐怖していた。
だが同時に、正義感を燃やしていた。
必ずこの状況を打開しなければならないと、決意していた。
もう彼女は、自分の気持ちを他人に伝えられない内気な少女ではない。
実際に戦った時間はわずかとはいえ、彼女は愛と正義の戦士「プリキュア」の一人となったのだ。


「とはいっても……どうしたらいいんだろう」

決意はしたものの、具体的な方法が思い浮かばず、あゆみは途方に暮れていた。
今の彼女の傍らには、パートナーとして絆を結んだ妖精・グレルとエンエンの姿はない。
二人の協力がなくては、変身してプリキュアとしての力を行使するのは不可能だ。

「そうだ! たしか友達になれるかもしれない悪魔がいるとか……」

魔神皇の言葉を思い出したあゆみは、荷物から自分に支給されたCOMPを見つけ出し、操作を始める。

「悪魔の力を借りれば、私もまたプリキュアに変身できるかも……」

我ながら都合のいい考えだと、あゆみは思う。
悪魔という言葉の持つイメージは、あのかわいらしい妖精たちとはほど遠い。
だが、それがどうしたというのだ。
プリキュアの中にはキュアパッションやキュアビートのように、最初は敵としてプリキュアと出会いながらも改心した者たちがいる。
彼女達以外にも、プリキュアと心を通わせることができた敵は決して少なくないと聞く。
何よりあゆみ自身が、悪意の塊だったはずのフュージョンと絆を結ぶことができていた。

「どんな悪魔でも、きっと仲良くなってみせる……。だから……来て!」

決意と共に、あゆみは召喚ボタンを押す。
次の瞬間彼女の前に現れたのは、全身を赤で彩った戦士だった。

「よくぞ私を呼んでくれた、少女よ」

結論から言ってしまえば、あゆみの思いは杞憂であった。
彼女に支給された悪魔は、数十年の間地球を脅かす悪と戦ってきた戦士たちの平和を願う心から生まれたヒーローだったのだから。

「スーパー戦隊! アカレッド!」

あゆみを鼓舞するかのように、その男は力強く名乗りを上げた。


【?????/1日目/朝】
【坂上あゆみ@プリキュアオールスターズNew Stage3】
[状態]:健康
[装備]:スマホ型COMP
[道具]:基本支給品、未確認支給品
[思考・状況]
基本:なんとかして殺し合いを止める
1:キュアエコーに変身する方法を見つける
[COMP]
1:アカレッド@轟轟戦隊ボウケンジャーVSスーパー戦隊
[種族]:超級英雄
[状態]:健康


58 : ◆NIKUcB1AGw :2016/05/16(月) 21:44:03 i7iqHf020
投下終了です


59 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/16(月) 21:51:32 VCpG7pmc0
>>55
あ、間違えたてました、指摘ありがとうございます。修正しておきます
候補作投下します


60 : 最速の二人 ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/16(月) 21:52:32 VCpG7pmc0

「娘、お前はいったい俺に何を望む?」

 そういって悪魔ーー音速のソニックは眼前の金髪幼女に問いかけた
 まさかこんな幼女がサマナー……自身の雇い主だということに驚いたが、依頼に応じた以上はこれでも主。ある程度は護ってやろうか、と一巡するくらいには考えていた
 しかしソニックの思考は斜め上の角度で裏切られることになる

「最速クリア」
「は?」
「このゲームの最速クリア」

 簡潔にTASは言い切った
 この殺し合いにはルールがあり、クリア条件がある。その時点でこれは立派なゲームだ。
 そして、『ゲーム』である以上TASが最速クリアを狙わない訳がない。
 さて、一概に最速クリアをするといっても、その方法はなんなのか?
やはり一番手っ取り早いのは皆殺しにして優勝することだろう
 首輪解除やマーダー攻略などの無意味なイベントに時間をかけるなんて愚の骨頂、1秒でも速くクリアできるならその手段を選ばない筈がない

「ふっーーーふははははははっ!! 『最速』の忍である俺に『速さ』を求めるか!
 良いだろう、気に入ったぞっ!! この音速のソニックがお前に力を貸してやろう」

 『最速』というフレーズが受けたのか、とたんに上機嫌になるソニック。

「行くよ」

 TASは召喚した悪魔に最低限の仲間フラグがたったことを確認すると、矢継ぎ早にディバックから支給品の斧を引っ張り出すと、早速行動を開始。

「御意」

 続いてソニックも気配を消しつつ、それに続く。
 果たして最速の二人はこのゲームを無事にクリアー出来るのだろうか?


【?????/1日目/朝】 
【TASさん@TAS動画シリーズ】
[状態]:健康、金髪幼女
[装備]:斧、COMP(ゲームコントローラー型)
[道具]:基本支給品、確認済支給品
[思考・状況]
基本:このゲームを早速でクリア(優勝)する
[COMP]
1:音速のソニック@ワンパンマン
[種族]:忍者
[状態]:健康


61 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/16(月) 21:53:18 VCpG7pmc0
投下終了です


62 : ◆DGGi/wycYo :2016/05/16(月) 22:36:19 UtMWlw0s0
候補作投下します


63 : Un happy ◆DGGi/wycYo :2016/05/16(月) 22:38:26 UtMWlw0s0
雲雀丘瑠璃は、俗に言う『不幸』な少女だ。
ふとしたキッカケから、決して報われない想いをある人に寄せている、いわゆる『悲恋』の持ち主。
更に本人が面倒見のいい性格をしているためか、何かと災難に巻き込まれることも多い。
此度の災難も最早いつものこと……と言うには、少々事態が深刻過ぎた。
吊り橋ごと落ちそうになったり熊に襲われたり、命の危機に瀕したことは何度かある。
けれど殺し合いなんて。

「先生が関わってる、ってワケじゃなさそうね」

小平先生による授業の一環だったらどれだけ良かったことか。
ルール説明の行われた空間にはなこたちの姿は見えなかったが、もしかしたらひょっこり巻き込まれているかも知れない。
そうであって欲しい、彼女たちとドタバタするいつもの授業であって欲しい……が。

「それに」

鞄の中から、いつも持ち歩いていたパスケースを取り出す。
“あの人”の写真は入っていない。鞄の中に混ざっていないだろうかと持ち物を検めるも、支給されたもの以外見当たらない。

「どうしてこんなことに……」
「大丈夫?」

聞き覚えのない声がかけられたのは、その時だった。
赤を基調としたゴシックロリータ風のワンピースを身に纏い、緑色の髪との対比がよく目立つ。
瑠璃は気づいていなかったが、パスケースがぽうっと淡く光っている。

「私は鍵山雛。あなたが私を呼び出したのよ」

瑠璃は唖然とした。彼女が悪魔?
少しイタい服装であることを除けば可憐な少女のナリをしていて、悪魔――?

「悪魔呼ばわりするだろうから先に言うわ。厄神様だけれど、ちゃんとした神様よ」
「は、はぁ。って、厄神!?」
「そうよ」

目の前でえんがちょを始めた瑠璃に、誤解のないようにと雛は説明した。
厄神様は厄除けの神、人間の厄を吸い取る神であり、疫病神とは相反する存在。
溜め込んだ厄は雛人形に乗せて川に流す、むしろ良い神であると豪語する。
ならば安心かと思いかけ、されど瑠璃は反論した。

「でも、あなたの周りのそれは……」

彼女の周りには溜め込んだ厄がこれでもかというほど漂い、禍々しいオーラを形作っている。

「ええ、私の傍にいるとどのみち不幸になるわ」

雛の一言で場の空気が凍りつく。
この後瑠璃は落ち着くまでひたすらにえんがちょを続けるのだが、彼女の不幸はまだ始まったばかりである。


【?????/1日目/朝】 
【雲雀丘瑠璃@あんハピ♪】
[状態]:健康、不幸
[装備]:COMP(パスケース型、中身は空っぽ)
[道具]:基本支給品、支給品(確認済)
[思考・状況]
基本:帰りたい。
1:えんがちょ

[COMP]
1:鍵山雛
[種族]:厄神
[状態]:健康


64 : ◆DGGi/wycYo :2016/05/16(月) 22:39:08 UtMWlw0s0
投下を終了します


65 : ◆OW5ZCNLz4U :2016/05/16(月) 22:47:37 ONU1onJo0
皆さん、投下お疲れ様です。

それではわたくしも投下します。


66 : 古書堂から始まる冒険譚 ◆OW5ZCNLz4U :2016/05/16(月) 22:48:39 ONU1onJo0
ここは会場のはずれにある、小さな古書堂の中…

そこに、無造作に伸ばした、それでいて美しい黒髪と、その隙間から覗く宝石めいた青い瞳が印象的な少女がいた。

ゆったりとした、大人しいというよりも地味とすら言える服装で、ともすれば目にした者の印象に残らないほどか細い少女。
しかしその内側には、前髪に隠れる瞳の美しさ同様、秘めたる輝きが確かにあった。

そしてその傍らには、男がいた。

羽のついたつば広帽をかぶり、腰にレイピアとピストルを下げた、まるで小説の登場人物のような男だった。

「文香、君は…この会場の中で、何をしたい?」

その男は、彼女に召喚された悪魔だった。

その名は、無幻銃士ダルタンと名乗っていた。


67 : 古書堂から始まる冒険譚 ◆OW5ZCNLz4U :2016/05/16(月) 22:49:04 ONU1onJo0
私は、自分のことを何の物語も生まない人間だと思っていました。何かを与える側になるとは、思いませんでした。
 ですが……私という書を、紐解いてくれた人がいるのです。日の当たらない書庫の奥から、私を見出してくれた人が……」

 鷺沢文香に、人を殺してまで叶えたい望みなどはなかった。
 だから文香に戦う理由はない。戦う意志もない。何も分からず他人を傷つけられる人間ではない。
 それでも、会いたい人がいる。戻りたい場所がある。

「……私は、あの人のところに帰りたい……私の物語を、このようなところで終章にはしたくないのです。
 まだ戦いの実感など、沸いていません。恐怖すら感じていないというのは……きっとそういうことでしょう。
 ですが、ダルタンさん……こんな私を、怯えることすら出来ない私を、どうかあの人のところに帰して……」

文香は、絞り出すような声で懇願する。
 それだけが、ただひとつの切なる願い。生きて帰りたい、そんなつまらない願い。
 そんな彼女の願いをダルタンは静かに聞いていたが、やがて口を開いた。

「それが君の願いか…了解した。ならばオレは君の剣となり、君を必ず生還させる。
  そして、この争いを打倒することを、この剣と誇りに掛けて約束しよう!」

彼はそれ以上は語らなかった。そして文香もそれ以上の言葉を求めたりはしなかった。
ただ、人には人の心を動かす力がある、そのことを、改めて噛み締めていた。

 古書堂の片隅で、ガラスの靴が僅かに煌めいていた。

【鷺沢文香@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:健康
[装備]:小説型COMP
[道具]:基本支給品、確認済み支給品
[思考・状況]
基本:生還して、プロデューサーのもとに帰りたい。
[備考]

[COMP]
1:無幻銃士ダルタン@モンスター列伝 オレカバトル
[種族]:超人
[状態]:健康
[備考]
※ひとりはみんなのために!:高速で動きながら複数の敵に強力な一撃を与える。

※みんなはひとりのために!:1体の敵に対し、自分を含んだ、状態異常にかかっていない
              仲魔全員の攻撃力の合計×2.5のダメージを与える物理技。

※きみはもうここにいられない:1体の敵に対し、自分を含んだ、状態異常にかかっていない
               仲魔全員の攻撃力の合計×3のダメージを与える物理技
 しかし、スライムなどの下位の仲魔は参加できないというデメリットがある。


68 : 古書堂から始まる冒険譚 ◆OW5ZCNLz4U :2016/05/16(月) 22:49:54 ONU1onJo0
投下を終了します

ありがとうございました。


69 : ◆TE.qT1WkJA :2016/05/16(月) 23:16:48 .71ocP4I0
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70 : ゆうながんばる! ◆TE.qT1WkJA :2016/05/16(月) 23:18:04 .71ocP4I0
四国。極東の島国を構成する4つの県が合わさった大地には、世界から隠蔽された幻とも言われる存在があった。
それが『神樹』である。神樹は一説によれば人類にあらゆる恵みを与えるものであると言われている。
あらゆる作物が豊富になる肥沃な大地。決して汚染されることのない空気に水。
たとえ世界中が死のウイルスに犯されようと、世界中の神が人類に牙を向こうと神樹が根を下ろしている四国は絶対安全で、
神樹を知る数少ない者達の間では「四国は人類最後の楽園である」とまでささやかれていた。

しかし、世界から存在を隠蔽されているといっても、何らかの情報ルートを辿って神樹の存在を知るに至った者も四国の外部には数多く存在する。
中には世界征服を掲げる悪の組織も含まれており、神樹を知った彼らは当然ながら、その強大な力を我が物にしようと神樹の力を狙っていた。
これらの脅威に対抗するために、四国には神樹によって選ばれた、神樹の力を持つ少女達がいた。

殺し合いの会場となった場所で自身の召喚した悪魔と相対している結城友奈も、その一人であった。
結城友奈は勇者である。神樹に選ばれた少女達は、勇者と呼ばれていた。

「面白いサモナーに巡り会うたわ。お主の拳には熱き信念が宿っておった。いい拳をしておる」
「あ、ありがとうございました!」

友奈は本来とは違う、桜色をベースにした装束と髪をしており、ある種の神々しさを感じずにはいられない姿だった。
この姿こそが、友奈の勇者としての姿である。
対する悪魔は、悪魔と聞いてすぐに想像される悪魔像とは全く異なった老人であった。
筋肉質な肉体に加え、背中に「無」の文字が入った胴着を着ている。
この老人、剛拳は先ほど友奈と軽く稽古も兼ねて手合わせをしていたのだが、勇者となった友奈と戦ってなお涼しい顔でいることから、
その強さには目を見張るものがあることが窺える。
事実、親から武術を学び、神樹を狙う敵との戦闘もそこそここなしてきた友奈から見ても相当な手練れであることは間違いなかった。
当初、手合わせを求められた時は勇者になって戦うことを躊躇したが、そのまま戦っていたら手も足も出ずに圧倒されたに違いない。

「それで話を戻すが、お主はこの殺し合いを止めたい、と言うておったな?」
「…はい!あの魔神皇って人のために殺し合って、誰かが殺されるなんて…絶対に認められません!!」

問いかけてきた目の前の老人を前に、友奈は力強く返答する。
先ほどの手合わせは友奈の話を聞くことを条件に引き受けたものであったが、約束通りしっかりと聞いてくれているようだ。


71 : ゆうながんばる! ◆TE.qT1WkJA :2016/05/16(月) 23:21:45 .71ocP4I0

「勇者部五箇条その二、なるべく諦めない!助けを求める人がいたら助けます。殺そうとする人がいるならその人を止めます。
誰かが傷ついて、つらい思いをするくらいなら、私がその分頑張ります!!」

友奈は同じ勇者で構成された、勇者部に掲げられた五箇条を挙げて、その覚悟を語る。
「みんなのためになることを勇んで行う」のが勇者部だ。それは日常でも、敵を撃退する時でも、殺し合いの中でも変わらない。
剛拳の目には、友奈の力強い瞳が、友奈の拳と同じ力強さをもって訴えかけていた。

「だから…力を貸してくれませんか?」

それを聞いて剛拳は強く頷き、「うむ!」と声を上げる。

「その心構え、まさに勇者!ワシとしてもお主のこれからが気になるわい」
「じゃあ…!」
「もう弟子に教えることは何もない上に、そもそもここにはおらんしのう。お主の命運に付きおうてみるのも悪くない」

友奈の表情が明るくなり、再度「ありがとうございます!」と剛拳に向かって言う。
剛拳は実の弟子を見るような眼で目の前の少女を見ていた。
実のところ、剛拳は召喚され、「殺し合いを止める」と言われたところで、軽く試合をすることで目の前の少女を試した。
所謂、「拳で語り合う」ことで友奈の覚悟やその心を確かめようとしたのだ。
その結果は先に剛拳の言ったとおりだった。

(この子は己の拳でどこまで進めるのか…見物じゃな)


【?????/1日目/朝】
【結城友奈@結城友奈は勇者である】
[状態]:健康
[装備]:友奈のスマートフォン(アプリ型COMP入り)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止める。
※現代に生息する同姓同名の似たような性格の勇者のため、バーテックスの知識はありません。
※神世紀の人間とも、多少の認識のズレがあるかもしれません。
※現代に生息している(と描写のあった)勇者部員並びに四国民とは面識があるかもしれません。
[COMP]
1:剛拳@ストリートファイターシリーズ
[種族]:超人
[状態]:健康
※COMPは友奈のスマートフォンにアプリとなって勇者システムと一緒に入っています


72 : ◆TE.qT1WkJA :2016/05/16(月) 23:22:11 .71ocP4I0
以上で投下を終了します


73 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/17(火) 01:06:39 6Kmu90YU0
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74 : もう戦争だよー ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/17(火) 01:08:25 6Kmu90YU0
2016年、不況にあえぐ日本政府は荻窪を地球外勢力に売却し、荻窪は銀河指定宇宙移民地区・OGIKUBOへと変貌、多種多様な種族が移住していた
(なお徹底した情報規制と政府主導による隠蔽工作により、その事実はまだ認知されていない)

「バカじゃねーの。あっしはこんなことに付き合ってらんねーよ」

 そんなOGIKUBO(オギクボ)中学に通うイマドキ女子中学生、ミドリ・セイブザワールドはそう悪態をついた

 緑色の肌に頭頂部に付いた第三の目など、亜人的な特徴を持つ彼女は宇宙人とのハーフである。
 髪はグラデーションのかかった紫髪の外巻きボブ。下睫毛の長いタレ目にギザ歯、発育の良い体つきが印象的だ。

 まぁ、彼女も脱法ブラックホールアプリを違法売買して小遣いを稼ぐくらいのことはするが、人殺しなんてまっぴらごめんだ
 でも宇宙人のハーフと言えどもミドリはあくまで女子中学生。暴漢のたぐいが襲ってきても、素手で勝てるとは思えない
 なのでディバックからスマホ型のCOMPを引っ張り出し、悪魔とやらを召喚してみることにした。
 軽く操作してみると、悪魔召喚プログラムというアプリがインストロールされているのを見つけた。
 
「えーと、あ、コレかな。ほいほい、ポチッとな」

 そんなノリで召喚されたのは、二組の男たちだった

「どうも〜、だぶるぼんぼんデス!」

 ふたり組の内、ちょっと異常な量のあばたで顔が穴だらけの男が先に喋った。
 三本線のジャージを着込んだ醜いあばた面は、貧乏な下積み芸人には見えても、悪魔には見えない。

「ボクたちも頑張っていかなゆうてるんですけどねー」

 同じく一緒に笑っている男も三本線のジャージを着込んでいる。痩せすぎだが抜き身の刃物のように鋭利な、鋳型でこしらえたような通り魔のような男だ

「なっ……なんなのさアンタたちは」

 予想外の悪魔の姿に唖然としながらも、とりあえずコンタクトをとろうと話しかけてみる。こう見えて日本語を話しているし、意外と話が通じる相手かもしれない。

「お茶のおともに最適」
「えっ?」

「土産話にもってこい」
「ちょ?」

「「おっ、お年寄りから子供まで、ほっと一息、舌つづみ。どうもどうも〜」」
   
 あっ……駄目だコレ通じないパターンだ。
 サマナーをガン無視して何か始めたふたり組を見てそう察したミドリは、対話から観察へと行動をシフトした
 
「いやほんと、夏は暑いですわ。暑い暑い。暑い。夏は暑いからクーラーつけっぱなしにしますわな」
「なんでやねん!!」
 
 剥き身の刀身のように鋭いツッコミがボケに炸裂する。どうやら漫才のたぐいをやるつもりらしい。
 スマホの液晶に目を落とすと、そこには『まんざい星人』という表記があった
 
「つけっぱなぱな。フルーツの王様パイナップルもぐもぐ」
「なんでやねん!!」
「つけっぱなぱな。フルーツの王様パイナップルもぐもぐ」
「なんでやねん!!」
「つけっぱなぱな。フルーツの王様パイナップルもぐもぐ」
「なんでやねん!!」

 気に入ったのか、同じフレーズをしつこく連呼するボケに、痩せた方がツッコミをいれる
  

「……はァ? なにそれ。マジつまんないんだけど」

 ひとつわかった。
 この悪魔たちの漫才は致命的に面白くない。むしろ耳障りだった


75 : もう戦争だよー ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/17(火) 01:10:17 6Kmu90YU0

「困るのは電気代ですな。クーラーつけっぱなしで電気代かかるから、バイトしまひょバイトしまひょ……
 わお週三。週三で入れるの? 合格!ごうかーく」
「なんでやねん!!」

 ミドリの白けきった視線などどこ吹く風だ。明らかにウケていないのに、えんえんと裏声で持ちネタを繰り返している

「あのー「合格合格、じゃあ僕たちと肩組んで。一緒に歌いまひょ。きッさまとおれーとーはァー、どうきーのさーくらアアー」……チッ」

 いい加減止めようとしたミドリを無視し、なぜかボケが歌い出した。壊れたメトロノームのように体を左右に揺らす

「なんでやねん!!」

 すかさずツッコミが入る。ボケはともかく、あの鋭いツッコミは評価に値するんじゃないかと思えてきた。
 その時だった。複数の視線を感じたミドリは振り返り、驚愕した

「げっ ヤバっ!?」

 人目を気にしない漫才に釣られてやって来たのか、いつのまにかミドリたちは複数の悪魔に囲まれていた。
 その内の一体が、ミドリの首輪に目をとめ、嗤った

「くそがッ!!」

 慌てて逃げ出そうにももう遅い。真っ先に彼女を八つ裂きにしようと悪魔が飛びかかる

「なんでやねん!!」

 悪魔の首が宙を舞う
 いつの間にかミドリの横に移動していたツッコミが、手刀で首を跳ねたのだ

「あ、アンタ、あっしを助けてくれたの?」

「なんでやねん」

 ツッコミは予想通りツッコミで答える
 サマナーであるミドリが死んでしまうと、悪魔はCOMPのなかに戻る。
 そうすると漫才が続けられなくなってしまうから困る……ということくらいは、彼らも理解しているらしい

「じゃあ次いきまひょ、タッチの練習しまひょ」

 一方のボケはというと、悪魔たちの方にネタを広げていた。タッチしてほしいのか、両手を悪魔たちに差し出しているが、当然そんなものに彼らが答えるわけがない。牙や爪で容赦なく攻撃されている。    

「タッチだよタッチ、へいタッチ」

 右肩は抉れ、左腕の肉がごっそりと爪で削げおとされる。

「へいタッチタッチ、よしタッチ」

 しかしどれだけ攻撃されても、芸人根性なのかなんなのか、ひたすらネタを続ける姿は不気味だった

「タッチ……」

 ボケの傷口からは、赤黒い血が垂れ落ちている。

「ちがうよぅ! そうじゃないよぉ!!」

 ボケは逆上したように叫んだ。そして所在なさげな表情を浮かべた。
 しょんぼりと肩を落とし、血まみれの体をまさぐりながら、自分の頭を打ち付け始める
 ボケを取り囲んでいた悪魔たちも腕を止め、訝しげにその奇行を見つめている

「……なんなの?」

 ミドリも面食らっていた

「……なんでやねん」

 必死に頭を打ち付けるボケに答えたのは、寂しそうにツッコミをいれた相方だけだった

「ウウウウウ……っ」

 頭部を打ち付けるのを止めたボケが、ゆっくりと立ち上がった。そのもたげた頭に、異様な変化が起こっていた。
 顔のあばたがブクブクと泡立ち、凹みのひとつひとつが炭酸飲料の泡のように弾け、膨れ、老廃物を垂れ流しながら隣の凹みと合流し、黒ずんだ穴ボコとなり、口の両端と繋がった。
 その顔は元の何倍もの大きさに膨張し、裂けた口が涎の糸を引きながら開け放たれた


76 : もう戦争だよー ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/17(火) 01:12:16 6Kmu90YU0

「ウウウウウウウウーーっ!!!」

 ボケはその巨貌をしならせ、もっとも近くに佇んでいた不運な悪魔に頭から噛みついた

「ギョアァブッ」

 ひと噛みで上半身の4分の1を失った悪魔は、くずれおちるように膝をつき、へな、とその場に正座した

「タッチっ、タッチしてよぉ」

 悪魔の肉片を咀嚼しながら、泣きそうな声でボケは呟いた

 仲間が殺されて怒ったのか、別の悪魔が低いうなり声をあげて飛びかかる
 
「なんでやねん!」

 すかさずツッコミが切りつけた
 切りつけるといっても、ツッコミは武器を手にしてはいない。振るっているのは貫手だ。
 彼はアブドーラ・ザ・ブッチャーでいえば地獄突きのような打撃だけで、悪魔の肉体を切り裂き、骨を貫いていた

 ボケの方がこっぴどくやられたからか、それとも漫才が受けなかった腹いせか、
 ふたりはゲラゲラと笑いながら悪魔たち相手に暴れ始めた
 
「お茶のおともに最適!」
「みやげ話にもってこい!!」

 本気を出した二体の悪魔は協力無比だった。相乗効果でぐいぐいと勢いを増して、悪魔たちを切りつけ、噛みちぎる

 ツッコミの首をはねようとした悪魔が、逆に四肢を切り落とされて転がされている。
肺を貫かれた悪魔が傷口から血の泡を吹きながら倒れる。地面に転がった生首が噴水のように鮮血を吹き出す胴体を「信じられない」といった目で見ている

「すっげー……」

 たがの外れた狂喜乱舞を見て、ミドリは感嘆したように呟いた。あの悪魔たちの漫才のセンスは、どこの星のどの種族にもウケそうにないほど酷いが、少なくとも実力はあることがわかった

 結局、まんざい星人が悪魔たちを殲滅するのに五分とかからなかった
 仲間を見捨てて逃げ出そうとした悪魔が、頭から文字通りボケに丸かじりにされ、絶命したのを最後に、喧騒は終わりを告げる
 残ったのは、かなりの数の悪魔の手足や胴体だけだった。

「ヘイ、タッチタッチ」

 グロテスクな惨状をややドン引きしながら眺めていたミドリに、ボケが話しかける
 何事かと見てみると、ボケはその巨貌に微笑を浮かべて、肉が削げて骨が見え隠れする左手をミドリに突き出した。

「あー……うん、タッチタッチ」

 命を助けられた手前、断るのも気が引けたので、ミドリは照れながらもそれに応じた
 目を見開いたボケは、心底嬉しそうな表情を浮かべた。

「タッチって、なんでやねん!」

 すかさずツッコミをいれる相方も、どこか満足そうな喜色があった。

【?????/1日目/朝】 
【ミドリ・セイブザワールド@宇宙パトロールルル子】
[状態]:健康
[装備]:COMP(スマホ型)
[道具]:基本支給品、確認済支給品
[思考・状況]
基本:脱出する手段を探してとっとと帰る
[COMP]
1:まんざい星人(ボケ&ツッコミ)@GANTZ/EXA
[種族]:星人
[状態]:ボケ(ダメージ中)、ツッコミ(健康、疲労小)


77 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/17(火) 01:12:50 6Kmu90YU0
投下終了です


78 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/17(火) 10:40:39 5jIdVypo0
皆様投下乙です!

>>46
なるほど、リメイク版とで同一人物という発想は新しいですね。
妹に会えれば良いのですが……

>>51
過去に戻る、という悲しい願い。
やり直せるならやり直したいですわな……

>>55
まさかのCOMPで幻想殺し封じw
COMPが壊れたらどうなるんだろう……うーん……強化?

>>58
プリキュアに変身する術は果たして見つかるのか。
ニチアサタッグ、期待が持てますね。

>>61
Tool Assisted Speedrun……伝説の夜……
最速が……始まるのさ……

>>64
厄神引いたけど落ち着くまでえんがちょは草w
溜め込み過ぎたんでしょうなあ……

>>68
帰りたいという希望は、果たしてどれほどの覚悟の上なのか。
相方の騎士は頼れそうですが……果たして。

>>72
剛拳のおっさん!! 公式で実は生きてましたの剛拳のおっさんじゃないか!!
新たな弟子と共に、どこまで行けるのでしょうか。

>>77
これは新しい、漫才ファイト! なかなかに強敵そうで期待ですね。
しかし、それぞれが自律行動できる二人組の悪魔、となると1枠制限に抵触してしまいます。
かといって、片方だけというのもこのお話の魅力を損なってしまいます。
なので、デビルサマナーにおけるデビルバスターズみたいな扱いにしたいと思うので、
下記の制限の「まんざい星人」につけて頂き、それにそって細部を修正していただいてもよろしいでしょうか?

※二人で一組の悪魔なので、合体時などにも一体として扱われます。
※なので、指示をだす際も二人まとめて指示をだすことになります。
※ダメージは二人で共有、片方が死亡した時、両方とも死亡する。

細かい指摘で申し訳ないのですが、よろしくお願い致します。


79 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/17(火) 11:24:47 QOMxSQSY0
>>78
わかりました。まとめの方でもそのように修正しておきます


80 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/17(火) 18:23:32 5jIdVypo0
投下します。


81 : 未来 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/17(火) 18:23:53 5jIdVypo0
「いやー、やっと話の通じる人が来てくれて助かったよ。
 後はこんな状況じゃなきゃ、サイコーだったんだけどね」

 一人の宇宙人と、一人の女剣士。
 傍から見れば、女剣士がサマナーで、宇宙人が悪魔のように思えるが、実際はその逆である。
 赤い体に細く伸びた二本の目、三本の足に二本の手、それに白い帽子を逆に被ったファンキーな宇宙人、トージャム。
 お気に入りのスニーカーとメダルは、今日も一段と輝いている。
 対する一方の"悪魔"である人間の名は、シャルロット。
 かつてフランス革命において、著しい活躍を遂げたとされる女剣士だ。
 時に美しく、時に過激に舞う彼女のレイピア捌きは、当時の資料にもよく残されている。
 それはさておき、彼らが出会ってから今に至るまでの話をざっくりと話させていただこう。

 食う寝るの次に踊りとドライブが大好きなトージャム。
 彼は親友と共にお気に入りの宇宙船で銀河をドライブしつつ、大好きな踊りを満喫していたのだが、不幸にも隕石に激突してしまったのだ。
 船は大きく破損、地球への不時着を余儀なくされ、その時に宇宙船が各部位に大破。
 仕方がなく地球を旅しながら、自分の宇宙船のパーツを集めていた矢先に、この殺し合いに招かれてしまったのだという。
 右も左もわからぬまま、お気に入りのネックレスを握りしめた時、光り輝いたメダルからシャルロットが現れたのだ。

 最初、その姿を見たトージャムは思わず彼女にトマトを投げつけそうになった。
 彼の出会う地球人は例外なくロクデナシで、ショッピングカートや芝刈り機で轢こうとしてきたり、アリもしない虫歯を治療しようとしてきたりと散々だった。
 その上、こんな事にまで巻き込まれたのだから、もう彼のストレスは限界。
 現れたシャルロットが華麗にトマトを斬りながら「待て、話をしよう」と言い出さなければ、今頃発狂していたかもしれない。
 そんなこんなで落ち着きも取り戻したところで、トージャムはシャルロットに身の上を明かし、今に至るのだ。

「しかしだ……嘆かわしいことだな。このような事が起きるのが、未来だとは……」

 そして、シャルロットは嘆いていた。
 フランス革命、あの時の民衆の輝いた目、そして世界で動く強者たち。
 自分の国も、世界も良くなっていくと確信していた。
 けれど現実はどうだ、あのような輩が現れ、あまつさえ過去の英傑たちをこのような事に巻き込んでいるではないか。
 魔神皇、いずれ世界を混乱に陥れる者。
 その存在を、シャルロットは許すことなど、到底できるわけもなかった。

「未来なんて何が起こるか分かんないもんだよ、宇宙船だって墜落するんだしさ。
 それより、大事なのは今だと思うよ」

 怒りに震えるシャルロットの身を案じたのか、トージャムは慰めの言葉を彼女にかける。
 彼なりに気を使ってくれているのだろうと思い、シャルロットは思わず笑みをこぼす。
 そう、彼の言うとおり、大事なのは今なのだ。
 これからの未来を作るのは、自分たち。
 ならば、あの魔神皇をこの手で討つまでのことだ。

「ともかく、トモダチを探したいんだ。できたらここにいないのが一番なんだけど……協力してくれる?」
「ああ、このシャルロット、貴方の剣となり立ち向かうことを誓おう」

 ひとまず、共に歩くことになった奇妙な姿の相棒と握手を交わす。
 これからどうなるかは、分からない。
 分からないからこそ、自分たちで作っていく。

 二人の目は、未来を見つめていた。

【?????/1日目/朝】
【トージャム@トージャム&アール】
[状態]:健康
[装備]:COMP(ネックレス型)、トマト(いっぱい)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:いるかはわからないけれどアールを探す
[COMP]
1:シャルロット=クリスティーヌ=ド=コルデ@サムライスピリッツ
[種族]:人間
[状態]:健康


82 : 放置 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/17(火) 18:24:44 5jIdVypo0
 一方、そのトージャムの親友アールは。

              _    _
        , == ' ´:::::`v´:::::` = -、
       ,イ:::::::::::::,. -‐- ヘ:::::ハ:::::::::::ヽ
        l !::::::::/       Y  `ヽ、::::ヽ
      ノノ::::ノ       i「iY^l!  ハ::::::、
     〈 /イ´ _ , ィ´ / ,ィii|」lハli  、 ハ:::::ハ
  _ .ノノ/ /´ /  /,イ 从!   ll  ヽ ハ::::〉〉
  `Zイi〃,'  /   イ !!lノイi  ハ   !! i!Y/:i   友達───
    ノ从ii , 什ァく 」_リハ i __,,.⊥ ァ li li li::〈
.     彳:ハi il仆!、 __,,.`` ´ 、__ン} ,'ハii仆:ハ
    ノノミVlハ! ` ̄        ̄´イイ1个!i∧    なんと聞こえのいい言葉か───!!
         个ヒ}、     {      ,'〈 〉从ト
       ノイiハヽ、  t ─ァ   イk〈 〉
           ノ1リ「iハ、 `ニ´,. イハ!ハ〈 〉
         「`ー ┴リ、` ニ´ _l__ ノイ{ 〉     ─ァ
           〉、   ヽ `TT´ 7   l( )      ノ  o 。
   ,. -‐ ¨´ \   、 i i 〃  ノ´Y``ー- 、        ゚ ゜

   /:::  :;:;:;:;:/  "'';;:;:,,,.,/::::/::  :::::::/::::::/::::;:|  /    :::  ::::  ,,,
  /:  :;:;:;:;:/:::::   ;:;:;:/"''''':;:;,,,,,,:::: | :;;;|::;; |  /     ::::,.,;:;';';''""
  |:::   ;:;:::::  ;:;:/ ゝヾヽ_/_;;;;''';;;,;;;,|;,,,.|..::::|::::/  ,,,..;:;:;:;''""::::::::ヽ::::
  |::   ;:;:|:::  ::/ ;:;:冫  ヽЧ`フヽ  |::::|::::|`゙゙゙゙`::::::::::::::::::::::::::::::;
  ヽ::::  ;:;:|::::::::;:;:| ;:;:;:;:ヽ  `"''" /  l::::|ヽ丶::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::   “人間”を“悪魔”として扱うのが“友達”だというのですか
   \  ;:;:ヽ::::;:;|  |   ",'''""´::::   ヽ   :,,::::::::,....,,,,.,,,.;;;::::.,.ヾ/
     \;:;:ヽ;:;:丶:::::::|::::|   :::: ::: :::: :   ,;:;\  `゙゙`   .:::::゙゙ ///    もしそうだと言うなら
       \;:ヽ::::\:::|::::|   .:.:.:.:.:   :,;:;:〈::::       .:::::,;;''':::::/
         ヾ::::::::\ヽ:|    .:.:.:.:: : : : : ヽ::::        .::::::::::/
           ` \ヽ       : : :: ::         .::::::::::::/       虫唾が走る!!
                \       _ニ_       /
..                  \     :::::::::::: ’     /
...                    \           /

:::::::::::::/                  / ヽ!⌒i     \
:::::::::ノ                   \   /       \
::/ _, -                   ヽ |        }
//       /   | i      i     | j |/|       .|i
/  /  ,,______/! i|  j  i 、    .|     /  |/ .!       |
. / /  \  |"i、 l!  .{ ヽ    |    ノ  /        / |
/|i |i  i  iヽ l |.|Χヽi |、 |`l   |i  _/ :::: /__       /  |
 | i /l  | .|  !| { ` - 、,_| ヽ  | |  :::::〃/ /i      | i |
 | .| |.|  l  |___>====。=ヽ,,,{____|__|_)ノ/ニノ !l |i  i  ./ |リ  あの……人でなしが!!!
 ヽ| ||  | { -`、,  `-ー'_ノ \ i≡i|〈;;~;;  | / | |  / /  |
、  .! | |  | i    !`''"  ̄,,-''":::\i { !:::  / j /| | /i /ヽ  /
 `''`、! li  |\     :::::     \! \ / .l/ノ/// /  }/
    \ヽ l. ``-,,_       u   `-ノノノ// / /  ノ
     ヽ\ヽ,U            冫 // ノ/ ,,-''
        \ u     ,-----_-''"./\___ノ
         \,,     `_',二 -'"/人从/(__)ヽ
           `>- 、 ' :::::::: / / V ' 、;;;;;;ノヽ
         ,, --'" !`! ` -、__,,,,ノ !  ! ノ !' `! }


83 : 放置 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/17(火) 18:24:54 5jIdVypo0

「おーい、ボクの話も聞いてくれよー」

 会話すらままならない状況であった。

【?????/1日目/朝】
【アール@トージャム&アール】
[状態]:健康
[装備]:COMP(サングラス型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:いるかはわからないけれどトージャムを探す
[COMP]
1:箕条晶@スクライド
[種族]:超人
[状態]:健康


84 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/17(火) 18:25:31 5jIdVypo0
投下終了です。


85 : ◆7PJBZrstcc :2016/05/17(火) 18:47:04 SySZEcnw0
投下します


86 : ◆7PJBZrstcc :2016/05/17(火) 18:48:33 SySZEcnw0
「なかなか面白いゲームに招待してくれるじゃねえか、あの魔神皇って奴も」

 そう呟きながら男、マリク・イシュタールは嗤っていた。
 マリクはこのゲームに乗り気だった。
 何故ならマリクにとって破壊こそが至福であり快楽なのだから。
 そんな彼がゲームに乗るのは必然と言える。
 だが彼がゲームに乗る理由はもう一つある。

「俺を生き返らせてくれたんだ、感謝って奴をしなくっちゃな」

 マリクは一度死んでいる。
 正確に言うなら消滅している。
 バトルシティ決勝戦、遊戯との闇のゲームで彼は敗北し闇へと消えた。
 そのはずだったが、魔神皇の力により彼は復活しこのゲームに参加している。
 それにマリクは感謝している、嘘偽りなく。

「だがこの首輪は気に入らねえな……」

 しかしマリクは主催者に不満を抱いていた。
 殺し合いを強要される事ではなく、突然呼びつけられたことでもなく首輪を付けられることに不満を覚えていた。

 殺し合うのは良い。
 呼びつけられるのも今の場合ならまあいい。
 だけど自身をまるで犬のように扱われることに怒りを覚えない訳がない。
 力で押さえつければ従う様な存在だと侮られていい気はしない。

 別に従っても良かった。
 このデスゲームは面白そうだし、闇から生還させてくれた恩もある。
 少しくらいならあいつの右腕になってやっても良かった。
 だがそんな未来はもうない。

「とりあえず、悪魔とやらを呼び出してみるか」

 そう言ってマリクは支給された荷物を漁る。
 そして出てきた物にマリクは驚愕する。
 何故なら

「こ、これは千年ロッド!?」

 それはマリクにとって一番見覚えのあるアイテムだった。
 闇の力を持つ千年アイテムの一つにして、一度は所有者に選ばれた代物だ。
 主人格が遊戯に渡したと思っていたが……。

「まさかあの魔神皇が持っていたとはな……」

 どんな理由があろうとこれが手元に来れば闇のゲームが行える。
 そうすればあの魔神皇もどうとでもなるだろう。
 そして、同時にマリクはこうも思う。


87 : ◆7PJBZrstcc :2016/05/17(火) 18:49:17 SySZEcnw0

「どこまでも舐めたマネしやがる……」

 千年ロッドをマリクに支給すれば闇のゲームを仕掛ける。
 そう、魔神皇であっても例外なく。
 それをあいつは分かっているはずだ、にも拘わらずこんなものを支給したという事は己が舐められているという事だ。
 マリクが何をしようと魔神皇には敵わない、そうあいつは自信を持っている。

「ケッ」

 とはいえマリクは苛立ちこそすれ怒りはしない。
 そんな事をしている暇がないのだから。
 そして次に取り出したものがCOMPだった。

「これがCOMPか、デュエルディスク型にしてくれるとはな」

 そう言いながらマリクはCOMPを起動し悪魔を召喚する。
 そして呼び出された悪魔を見て、マリクは知らず知らずのうちに。

「フ、フハハハハハハハッ!!」

 笑っていた。
 こんな悪魔が俺の手元に来るとは、これほど相性のいい奴が来るとは。
 こいつと俺を出会わせてくれたことに思わず感謝したくなる、マリクはそう思ってしまうほどに興奮していた。

「お前、名前は?」
「我が名はゾーマ」
 
 ゾーマ。
 まるで闇を身に纏ったかのようなオーラ。
 そして相対するだけで伝わるラーに匹敵、あるいはそれ以上の威圧感。
 ある意味ラーよりも己にふさわしい僕。
 こいつがいれば必ず。

「魔神皇、お前は闇行き決定だ」

【?????/1日目/朝】

【マリク・イシュタール(闇人格)@遊☆戯☆王】
[状態]:健康
[装備]:デュエルディスク型COMP、千年ロッド@遊☆戯☆王
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:デスゲームを楽しんだ後、魔神皇に闇のゲームを仕掛ける
[備考]
※参戦時期はバトルシティ決勝戦で消滅した後です。
※消滅した闇人格に肉体を与えられた状態で参戦しているので、表人格に交代することはありません
[COMP]
1:ゾーマ@ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…
[種族]:大魔王
[状態]:健康


88 : ◆7PJBZrstcc :2016/05/17(火) 18:49:40 SySZEcnw0
投下終了です


89 : 俺は人間をやめるぞ ◆aEV7rQk/CY :2016/05/17(火) 21:29:48 5byn8XJw0
投下します。


90 : 俺は人間をやめるぞ ◆aEV7rQk/CY :2016/05/17(火) 21:30:51 5byn8XJw0
オフィスビルの一角にある事務所。
参加者の一人が、中で支給品の確認に勤しんでいた。

既に四十も半ばに差し掛かっているが、その身体からは男らしさが抜けていない。
仕立ての良いスーツに身を包んだ姿はさながら貴族のようだ。
しかし無遠慮に嵌められた金属の首輪が彼の品格を削ぎ落としている。

「忌々しい男だ」

正志郎は静かに呟く。
悔しさに憤怒が混じり、デイパックを漁る手が止まった。

正志郎は屍鬼の首魁である沙子に仕え、人間社会に敵対する道を進んでいる。
そして彼らのコロニーを建設する計画を実行に移すべく、各所に手を回している時に呼ばれた。
自分抜きでも沙子達はやってのけるだろうが、それでは立つ瀬がない。

大きく息を吐き、再び動かした手に触れたのは牛革のケースだった。
開けてみると、見た事のない形の包丁が入っている。

「・・・・・・」

コの字を描く先端から刃が手元まで延びている。面白い品だと思うが、命を預けるには頼りない。
牛革のケースに包丁を戻して事務机に置く。次に取り出したのは携帯ゲーム機だった。
タッチペンが付属するそれは沙子も度々遊んでいるので正志郎も見覚えがある。
戸惑うことなくプログラムを起動させて、悪魔の出現を待った。





しかし・・・と正志郎は思う。

(魔神皇ほどの力を手に入れれば、誰も私を虐げる事は出来なくなるのではないか?)

正志郎は家庭においては親族に虐げられ、社会においては大衆に虐げられた。
地位と財力を備えた「人でなし」の息子として、秩序に組み伏せられていたのだ。
誰も彼に加害者になる事を許さなかった・・・・・・だからこそ受け継いだ全てを屍鬼に差し出した。
見方を変えれば、今回の催しは僥倖でもある。

―――優勝の褒美を使って、今度こそ人間を辞めよう。

人間とは相容れない摂理で生きるものになろう。彼らの言う善悪から脱して、その狭量さを嘲笑おう。
実に愉快な夢想だった。
正志郎は屍鬼となって復活できる可能性が低いため、人のまま彼らを助ける以外になかったのだ。

――手に入れた力を持って、秩序を破壊する。

かつて自分を指弾した連中を踏み、全体重をかけて左右に躙る光景を思い浮かべた正志郎は顔を綻ばせる。
その時、室内が濃密な気配に包まれた。
出現の時が迫っている事を悟り、正志郎は襟を正してその時を待つ。


91 : 俺は人間をやめるぞ ◆aEV7rQk/CY :2016/05/17(火) 21:31:22 5byn8XJw0
現れたのは、2足で直立するドラゴンに似た怪物であった。
しかし身体の各パーツに統一感が無く、鉄球と鎌になっている両手は特に人工物じみている。
COMPを確認すると、『怪獣:タイラント』と表示されている。

改めてみると両手だけでなく全身に攻撃的な意匠が備わっており、真っ当な生き物とは思えない。
これは戦う事だけを目的とした合成獣らしい、と正志郎は結論づけた。異形のキメラは、正志郎をじっと見据えている。

「さぁ、出発しましょうか」

「Keeee・・・!」

正志郎が背を向けて出口に向かうと、タイラントも追従する。
対面した当初は心中穏やかではなかったが叛意はないらしい。
大人しく付いてくるタイラントの様子に、知らず正志郎の口元は緩む。

かくして、復讐に燃える2匹の怪物が東京に放たれた。


【?????/1日目/朝】
【桐敷正志郎@屍鬼】
[状態]:健康
[装備]:COMP(ニンテンドーDS型)
[道具]:基本支給品、蕎麦切り包丁(牛革製のケース付き)
[思考・状況]
基本:優勝して、人間を辞める。
※外場村侵入前から参戦。

[COMP]
1:タイラント@ウルトラマンシリーズ
[種族]:怪獣
[状態]:健康


92 : 俺は人間をやめるぞ ◆aEV7rQk/CY :2016/05/17(火) 21:31:46 5byn8XJw0
投下終了です。


93 : ◆OW5ZCNLz4U :2016/05/17(火) 22:12:19 faxWJ2NQ0
皆さん、投下お疲れ様です。

それではわたくしも投下します。


94 : 鬼 -ONI- ◆OW5ZCNLz4U :2016/05/17(火) 22:12:58 faxWJ2NQ0
会場のとある場所で、たくさんのゴブリン達が逃げ惑っていた。

---あれは何だ?

彼らは皆、何かにおびえているようであった。

---あいつは人間じゃないのか?

彼らは先ほどまで、酒屋の近くにいた、厳めしい顔をした大男を襲おうとしていた。

しかし、仲間の一人がそいつに襲いかかろうとしたところ、驚くべきことが起こった。

男が、襲い掛かってきたゴブリンの胸倉を掴んで地面にたたきつけた後、手にしていたハンマーで相手の頭をかち割ったのだ。

その光景を見た他のゴブリンたちは少しひるんだものの、「全員で襲い掛かれば大丈夫だ」と言い、複数で襲い掛かった。

しかし、男の持っていたハンマーが光輝いた後、彼の近くに巨大な赤鬼の頭が現れた。

「頭だけの鬼に何ができる」、彼らはそう侮った。

しかし、またも彼らの予想を裏切る事態が起こった。

鬼の頭が突如バラバラになり、大男の鎧、そして一本の巨大な金棒へと変化したのだ。

大男も少し面食らったものの、少しすると襲い掛かってきた者たちをその金棒で吹き飛ばし、辺りに血の雨を降らした。

その光景を見たゴブリンたちは一目散に逃げ出した。

そして今、ゴブリンたちは皆こう思っていた。

---あいつは鬼だ。

-----この場にいるすべての悪魔を鏖殺する、悪鬼だ。

彼らがそう思ったのと、男がその金棒で彼らの頭を吹き飛ばしたのは、ほぼ同時だった。


95 : 鬼 -ONI- ◆OW5ZCNLz4U :2016/05/17(火) 22:15:25 faxWJ2NQ0
-------------------------------------------------------------------------------------------------

会場のとある酒屋の中で、男は怒っていた。

---世の中にはルールってもんがあるんだ!!!

-----そのルールが、あの糞餓鬼に踏みにじられている!!

-------気に入らねぇ!!!

そして、そんな彼のもとに、たくさんの化け物が現れ、その中の一匹が襲い掛かった。

しかし彼は少しもひるむことなく、支給品の中にあったハンマーでその化け物の頭をたたきつぶした。

そうすると、化け物たちが徒党を組んで襲い掛かってきた。

彼は手にしたハンマーで彼らを相手取ろうとすると、突如として強い光が辺りを包み、彼のそばに巨大な鬼の頭が現れた。

また新しい化け物か、彼はそう思ったが、突然鬼の頭がバラバラになったかと思うと

赤鬼を思わせる鎧と、巨大な金棒が彼に装着された。

彼は少し驚いた、しかしあの化け物たちを全員倒せる力が手に入ったことに気づき、

その金棒で化け物たちを吹き飛ばした。

そうすると残った奴らが逃げ出したので、彼は逃げたやつを追いかけ、そしてその頭を吹き飛ばした。

そして返り血に染まった彼は、少しだけ冷静になった頭でこう考えていた。


96 : 鬼 -ONI- ◆OW5ZCNLz4U :2016/05/17(火) 22:16:03 faxWJ2NQ0

---ああいう糞餓鬼は、大人がしっかりと躾けなきゃなんねぇ!!!

-----あの性根の腐った糞餓鬼に報いを受けさせる!!!

そう決心した彼は、酒屋を出て歩き出した。

その姿は、まさしく『赤鬼』だった。


【大川 富雄@屍鬼(藤崎竜版)】
[状態]:健康
[装備]:赤鬼の鎧、金棒、ハンマー型COMP
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:あの糞餓鬼(魔神皇)をぶん殴る。
[備考]
[COMP]
1:赤鬼の鎧@SD頑駄無 武者○伝2
[種族]:造魔
[状態]:健康
[備考]
※災鬼動形態(人間1人を握りつぶせるほどの巨大な右手)になれるかは不明


97 : ◆OW5ZCNLz4U :2016/05/17(火) 22:16:46 faxWJ2NQ0
投下終了です

ありがとうございました。


98 : 俺は人間をやめるぞ ◆aEV7rQk/CY :2016/05/17(火) 22:29:20 5byn8XJw0
拙作において時系列の誤りがありましたので、WIKIにて「屍鬼」とされている箇所を「起き上がり」としておきます。


99 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/17(火) 22:37:49 K1vOlrPA0
投下します


100 : 悪徳弁護士の大冒険 ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/17(火) 22:39:18 K1vOlrPA0


 悪徳弁護士ソウル・グッドマンはオフィスビルの片隅で頭を抱えていた

 なぜ自分がこんな目に?
 殺し合いに巻き込まれたものとしては、至極真っ当な疑念が頭の中を駆け巡っている

 不当な身柄拘束による人権侵害に、首輪による殺人教唆、そして殺人の現行犯。
 魔神皇による悪行を法廷に持ち込めば、軽く10回は有罪にさせられるだろう 

 たが現実にそれは不可能、今や私は囚われの身だ……。

 さて、どうやってやり過ごそうか
 もう諦めて殺し合いに乗る?ーー論外だ!
 正直、検察もこの状況を省みれば、例え一線を越えたとしても無罪になる可能性が高い
 だが私は弁護士だ。クライアントによっては法的に芳しくないこともやって来たが、人としての良心を捨て去った訳じゃない
 何としてでもあの魔神皇の思い通りに事を進めるのだけはゴメンだ

 私と同じような考えを抱く参加者は、まだこの段階では決して少数派ではない筈だ。
 例え善意からではなく、殺人の罪をきせられるかもしれないという懸念によるものだとしても、何割かは確実に存在するだろう
 うまく一致団結すれば、このイカれたゲームを計画を破綻させることも可能かもしれない
 この忌々しい首輪を外せる可能性もゼロではなくなる。なぜなら、必ず物事には抜け道があるからだ
 だがまず何をするにしても、丸腰では危なっかしすぎて駄目だ。なのでディバックに何か身を守れそうなものはないか確認する
 よしんば何か不幸が起こってしまっても、この状況では立派な正当防衛だ。かまうことはない

「悪魔、悪魔かーー。いったい何が飛び出すことやら」

 残念ながら、護身用には心強い類いの支給品は無かったが、かわりに在るものを発見する。
 COMPーー悪魔を召喚するための端末
 正直かなりの眉唾物だったが、物は試しとばかりに悪魔を呼び出してみる


「アンタがあたいを呼んだの?」

 そうグッドマンに問いかけたのは、青い服装に氷の羽根を持つ少女だった
 髪は薄めの水色で、ウェーブがかかったセミショートヘアーに青い瞳、身長は同年代の少女と比較してもかなり低い部類だろう
 ブルッ、と背筋が震えた。心なしか部屋が冷えてきた気がする

「あーー。お嬢ちゃん。君は……何者なんだい?」

 確認の意味も含めた質問に、少女の姿をした悪魔は快く応じた

「あたいはチルノ、よろしくね」

 違う。いや違わないが、今聞きたいのはそういうことではない

「うーん、そうじゃなくて、あー、何て言ったらいいのか……
 チルノちゃんは悪魔なのか?」

「あたいは妖精だよ」

 妖精、妖精ときたか。
 まったく、頭がおかしくなりそうだが、私の目が節穴じゃなきゃこの子の羽は本物だ。
 こうもはっきりとした証拠を突きつけられたら信じざるを得ない 
 常識が若干揺れるグッドマンを尻目に、チルノは不適な笑みを浮かべる

「あんた、最強のあたいを引き当てるなんて、見所があるね!!」

 ビシッと指を指し、自信満々に宣言するチルノ。 

(別に狙って君を召喚した訳じゃ無いんだが……)

 無邪気なチルノに思わず脱力するグッドマンだった

【?????/1日目/朝】 
【ソウル・グッドマン@ブレイキング・バット】
[状態]:健康
[装備]:COMP(スマホ型)
[道具]:基本支給品、確認済支給品
[思考・状況]
基本:他の参加者と交渉し、この殺し合いから脱出する
[COMP]
1:チルノ@東方project
[種族]:妖精
[状態]:健康


101 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/17(火) 22:40:33 K1vOlrPA0
投下終了です


102 : ◆NIKUcB1AGw :2016/05/17(火) 23:12:02 DjoJyQMc0
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103 : 正直は美徳か否か ◆NIKUcB1AGw :2016/05/17(火) 23:12:48 DjoJyQMc0
その男は、焦りを募らせていた。
男の名は、レオーネ・アバッキオ。イタリアのギャング・パッショーネの構成員だ。

(俺としたことが迂闊だったぜ……。あんなわけのわからないスタンド使いに捕まっちまうとは……)

現状を省みて、アバッキオは歯噛みする。

(はたして捕まったのは俺一人なのか、チームの他の連中も一緒なのか……。
 どっちにしろ、やばい状況だぜ。これからが重要だってのによ〜)

アバッキオは信頼する上司・ブチャラティの元、彼を支えるために任務をこなしてきた。
だがようやくブチャラティが幹部に昇進したと思った矢先に、この事件だ。

(今さら人殺しを躊躇はしねえが……。あんな野郎の命令に従うのはごめんだぜ。
 不必要に一般人を殺すのは、ブチャラティもいい顔しねえだろうしな。
 となると、俺が取るべき行動はマジなんとかをぶちのめして帰ることになるわけだが……。
 問題なのは、俺のスタンドは戦闘向きじゃねえってことだ)

アバッキオのスタンド「ムーディー・ブルース」の能力は、情報収集には大いに役立つが戦闘に活かせるようなものではない。
いちおう人型であるため一通りの格闘戦はこなせるが、それでも戦闘に特化したスタンドと比べればかなり分が悪い。

(となれば、戦力になる協力者を作りたいところだな……。
 まあいきなり殺し合いをやれなんて言われたら、反発するやつも一人や二人じゃ……。
 いや、待てよ)

そこで思考をいったん止め、アバッキオは荷物を漁り始める。
「COMPに悪魔を入れておいた」という魔神皇の言葉を思い出したのだ。

(これか……)

アバッキオが手にしたのは、今や懐かしいポケベル型のCOMPだった。

(悪魔か……。たとえば空想した生物を実体化させて、操るスタンドなんてのがあれば作れるか……?
 まあ、情報がほとんどない今の状況じゃ、考えるだけ無駄だ)

覚悟を決め、アバッキオはボタンを押す。
瞬間、周囲が光に包まれた。

「君が……俺のマスターかな……?」

現れた悪魔が、アバッキオに語りかける。

「てめえが悪魔だって言うんなら、そういうことになるんだろうな。
 だがてめえ、本当に悪魔か? どう見てもただの東洋人じゃねえか」

アバッキオがそういうのも、無理はない。
彼の前に現れたのは角もなければ翼もない、ごく平凡な人間だったのだから。

「交差点に……」
「あ?」
「交差点に小銭が落ちているとしよう。俺はそれを、すぐ交番に届ける。
 俺はそーする」
「何をわけのわからねえこと言ってやがる!
 俺はてめえが本当に悪魔かって聞いてるんだよ!」

すごむアバッキオだったが、男はまったく動じない。

「俺はそういう人間のイメージが、形になった存在だ……。
 『正直者』、俺のことはそう呼んでもらおう」
「なんだそりゃ……。本気でわけがわからねえ……」
「まあ、そうカッカするな。ソーセージでも食べながら、ゆっくり話そうじゃないか」

どこからともなく取り出したソーセージを手に、正直者は言う。
アバッキオはもはや、それをあ然と見つめるしかなかった。


【?????/1日目/朝】
【レオーネ・アバッキオ@ジョジョの奇妙な冒険 第5部】
[状態]:健康
[装備]:ポケベル型COMP
[道具]:基本支給品、未確認支給品
[思考・状況]
基本:魔神皇をぶちのめして帰還する
[COMP]
1:正直者@走れ正直者
[種族]:聖人
[状態]:健康


104 : ◆NIKUcB1AGw :2016/05/17(火) 23:13:34 DjoJyQMc0
投下終了です


105 : ◆OW5ZCNLz4U :2016/05/17(火) 23:32:02 faxWJ2NQ0
誠に申し訳ありませんが、>>94についてWiki内にてタイトル名が引っかかってしまうので、少し修正いたしました。


106 : ◆TE.qT1WkJA :2016/05/17(火) 23:49:05 0b8N4PdI0
wiki収録の際、拙作の「ゆうながんばる!」の友奈の状態表に
※以前に共闘したことがある者とは面識があるかもしれません。
の一文を追加しましたのでここにも報告しておきます。


107 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/18(水) 00:29:48 OUV8danQ0
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108 : 美なる偶像 ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/18(水) 00:31:34 OUV8danQ0

 会場の住宅街で、男性参加者が途方にくれていた

「ドイツゥ……」

 なんやかんやで面倒見の良い親友の愛称を口にするが、残念ながら彼は今、此処にはいない。
 彼の名はフェリシアーノ・ヴァルガス
 友人からは『ヘタリア』というあだ名で親しまれる彼だが、こう見えても現役の軍人である。

「あいつ、なんて酷い奴なんだ」

 ヘタリアは普段の私生活からは考えられないくらいに憤っていた。
 陽気で人懐こい典型的ラティアーノであるヘタリアは、争いを好まない。魔神皇に見せしめとして殺されてしまった名も知らぬ少年、少女の死に心を悼めるくらいの良心はある
 あの子達にはきっとこれから素晴らしい人生が待っていた筈なのに……
 
「俺、絶対にあんな奴の言いなりになんてならないぞ」

 そう決意したヘタリアは、何か役に立ちそうなものはないかディバックの中身を確認する
 
「できればパスタとか入ってないかなー」

 まったく役に立ちそうには無いが、もし入っていたらとてもうれしいアイテムだ。

「パスタ無かった……」

 しょげるヘタリア。しかし代わりに取り出したのは、携帯型のCOMPだった。
 殺し合いになんて乗る気はないが、さすがに丸腰なのは不安だった。なのでヘタリアは悪魔を召喚することにした

「えっと…… こんな感じで良いのかな」

 ヘタリアは、同封されていた説明書の指示通りに、「悪魔召喚プログラム」を起動させる
 
 ドンッ!! と鈍い音と衝撃が周囲を迸った。
 よろめくヘタリアの目にまず飛び込んできたのは、巨大な足首だった。その石膏のような肌は生命を感じさせない、なぞるように上を向くと、目があった

「あ…… ああ…… お前は…… 」

 イタリア人である彼は知っている!!その巨人のことを!!

「ダッ……ダダ……ダヴィデだぁーーっ!!」

 そう、ダヴィデだ。
 背中に翼の生えた、身の丈10mはある巨大なダヴィデ像が、直立した姿勢でヴェネチアーノを見下ろしていた

「すっげーーーっ!! カッコいいーーっ!」

 まさかイタリア人なら誰もが知っているであろう、祖国の誇る芸術作品が、しかもこんなでかく頼もしい姿で召喚されたことに興奮を隠しきれない

 対するダヴィデの方は、サマナーの好意になど反応すらしない。
 その石像特有の虚ろな瞳は、何の感情も感じ取れないまま、まっすぐヘタリアに向けられている。

「ーーってうわああ!?」

 突如異変を感じ、振り返ったヘタリアは悲鳴をあげた
 いつの間にか、騒ぎを聞き付けてやって来たのか、大勢の悪魔たちがヘタリアたちを取り囲んでいた。
 知性の低い彼らは、悠々と佇むダヴィデには目もくれず、召喚者である魔神皇に、真っ先に襲うように指示されていた、参加者であるヘタリアに襲いかかった

「ひいいいいーっ!!」

 堪らず悲鳴をあげる。
 絶体絶命のヘタリアに、静観していたダヴィデが動いた

 その巨体としては機敏な動作で、右手を大きく降り下ろす。
 たったそれだけの単純な動作、しかしその腕の一振りだけで、悪魔たちは全滅した。

 より正確に言えば、ダヴィデから発生した強力な衝撃波が、辺りの地面ごと悪魔たちの肉体を粉々に破壊したのだ
 そうなるように調節したのか、衝撃波の中心に居た筈のヘタリアは無傷だった
 しかし他は酷いものだ。まるで爆撃の直後のように、ヘタリアたちを中心とした周囲のコンクリートはべろりと抉れ、
さらにミンチとなった悪魔の血と臓物がべっとりとコーティングされている。

 その惨状を見たヘタリアは顔を青くし、吐き気をこらえるように口を押さえた。そしてーー
 
「う、うわぁーーーーっ!!!」


 ーーひとまず逃走するのだった。


【?????/1日目/朝】 
【フェリシアーノ・ヴァルガス(ヘタリア)@Axis Powers ヘタリア】
[状態]:健康
[装備]:COMP(携帯型)
[道具]:基本支給品、確認済支給品
[思考・状況]
基本:対主催
1:とりあえず逃げる
2:民間人は保護したい
※このヘタリアは、あくまで現代に生息するイタリア男性(現役軍人)です
※現代に生息している(と描写のあった)国とは面識があるかもしれません。
[COMP]
1:ダヴィデ@GANTZ
[種族]:星人
[状態]:健康


109 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/18(水) 00:32:26 OUV8danQ0
投下終了です


110 : ◆TE.qT1WkJA :2016/05/18(水) 04:11:16 RJcwIjvk0
投下します


111 : 正義超人 ◆TE.qT1WkJA :2016/05/18(水) 04:12:17 RJcwIjvk0
プロレスに使うリングの上に、大男が佇んでいた。
腹筋と始めとしたたくましい筋肉に加え、2メートルを超える長身を誇り、頭には勇猛な彼の精神を象徴するかのような赤いグリフォンのマスクを被っている。
上半身には何も身に着けていない半裸だが、不思議と違和感を感じさせない。
なぜなら、男はこの姿で子供たちのヒーローとして尊敬を集めていた、グリフォンマスクなのだから。

「魔神皇…ユーは私達を思い通りにできると思っているだろうが、それは間違いだ」

全国で子供たちのヒーローとしてプロレスのリングで活躍するグリフォンマスクは殺し合いでもその気高き精神を崩さない。
グリフォンマスクの殺し合いは主催者への宣戦布告とともに始まった。

「私はこのマスクに誓ったのだ。私は勇者グリフォン!いかなる相手でも戦う…この胸に闘魂ある限りッ!」

グリフォンマスクの心にあるのはどんな悪にも決して折れぬ正義の心と、自身を応援してくれる子供たちの姿だ。
こんなところで死んでしまっては、グリフォンマスクの試合を今も心待ちにしてくれている子供たちに、熱きハートの籠った勇姿を見せることが叶わなくなる。
一度は謎の男に敗れて自分を見失ったことはあったが、声援を送り続けてくれる子供たちのおかげで今の自分があるのだ。
そんな子供たちのためにも、勇者グリフォンは負けるわけにはいかない。

「とにかく、まずは他の参加者を見つけなければ。無力な者は何としてでも助けたいし、同じ志を持つ者がいれば協力したいところだが…」

そこで、グリフォンは魔神皇の言っていた悪魔の存在を思い出す。
協力できる者といえばCOMPで召喚できる悪魔が頼もしい味方になってくれるだろう。
グリフォンとしては、悪魔を召喚することに抵抗がないわけではなかったが、
たとえ危険な悪魔が出てきても命をかけて戦う覚悟で魔術師のタロットカードの形をしたCOMPで悪魔を召喚する。

「む…!?」

起動した瞬間、リング全体が白い光に包まれ、グリフォンマスクは咄嗟に腕を交差して防御態勢に入り、あまりの眩しさに目をつむってしまう。
瞼の奥で光が止み、グリフォンマスクはおそるおそる目を開けてみる。
リングの向かい側に、グリフォンマスクと同じ形状の頭部をした、燃え盛る巨像が悠然と佇んでいた。


112 : 正義超人 ◆TE.qT1WkJA :2016/05/18(水) 04:13:27 RJcwIjvk0

「ユーが、悪魔か?」

グリフォンの問いかけに対して巨像は、

「YES I AM!」

と力強く答えた。

「私はアヴ――いや、マジシャンズ・レッド。とある人物の精神を具現化したヴィジョン、『スタンド』だ」
「まさかこのような存在が本当にいるとは…失礼、私の名はグリフォンマスク。ヒーローだ」

グリフォンマスクは自己紹介を終えた後、この殺し合いを止めるべく、魔神皇を倒すために動こうとしていることをマジシャンズ・レッドに伝える。
無論、殺し合いに乗っていない人物は極力見捨てずに助けたいこともグリフォンマスクは語った。
守るべきものを守るのもヒーローの務めだ。目の前で誰かが命の危機に晒されているのを見過ごすヒーローの姿など、子供たちには見せたくない。

「――だから、力を貸してほしいのだ。このグリフォンのマスクにかけて、私はユーの熱きハートを信じている。どうか…頼む」
「…いいだろう!私としても、無意味に人が殺されるのは我慢ならない。君のスタンドとして、この力を振るわせてもらおう」

マジシャンズ・レッド。またの名を、モハメド・アヴドゥル。
かつてヴァニラ・アイスの『クリーム』によって消滅したはずの彼の精神は、なんとスタンドとなって元の人格から引き継がれていた。
『クリーム』の先に通じていた異次元では本体無しでもスタンドが活動出来、
アヴドゥルの肉体が粉微塵になった際にアヴドゥルの精神がそのままマジシャンズ・レッドに移ったのだ。
モハメド・アヴドゥルは確かに死んだが、その精神だけはスタンドとなって別世界で生きていた。
それが今回、グリフォンマスクによって再び人の生きる世界に呼び寄せられた。
かつて邪悪の化身に立ち向かった者達の一人は現世に蘇り、似た姿をした勇者のスタンドとなったのだ。


【?????/1日目/朝】
【グリフォンマスク@餓狼 MARK OF THE WOLVES】
[状態]:健康
[装備]:COMP(タロットカード型)、グリフォンのマスク
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:この殺し合いを止め、脱出する
[COMP]
1:マジシャンズ・レッド@ジョジョの奇妙な冒険
[種族]:スタンド
[状態]:健康
※正体は原作通り死亡したモハメド・アヴドゥルその人です。
※この世界のジョジョの奇妙な冒険3部の人間とは、多少の認識のズレがあるかもしれません。


113 : 正義超人 ◆TE.qT1WkJA :2016/05/18(水) 04:14:08 RJcwIjvk0
投下を終了します


114 : 名無しさん :2016/05/18(水) 06:37:12 cIAvElDo0
キングオブダイナソー! キングオブダイナソーじゃないか!


115 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/18(水) 10:07:39 /UiFYwgc0
皆様投下乙です!
また、各種修正対応もありがとうございます。

>>88
裏人格のみのマリクと、闇の魔王ゾーマ。
容赦がなさそうなんで、恐ろしいですね……

>>92
人間をやめるために優勝する、これまた珍しい。
マーダーになる理由は数あれど、力を手にする理由がそれなのはホント珍しいですね。

>>97
装着型悪魔とはまた珍しい! 魔神皇はとにかく気に食わない奴ですよね、ホントw
一発ぶん殴るというのもわかりやすいスタンスですね。

>>101
弁護士として、流石に罪を重ねる立場につくわけには行かないですよね。
相方はさいきょおのあたい、常識じゃ計れないのよ!

>>104
正直者の概念wwwww その発想はなかった。
アバッキオに宛てがわれたのは、何か意図があってのことなんだろうか……

>>109
民間人を保護したいけどやっぱりヘタレ!
ダビデという共通点こそあったけれど、微妙に違うやつだった……w

>>113
ゼツメツハリケーン!! ゼツメツハリケーンじゃないか!!
アヴさんはそうやって生きていた説はなかなかおもしろいですね。鳥鳥コンビ、期待です。


116 : 狩人のススメ ◆aEV7rQk/CY :2016/05/18(水) 17:48:47 bfPg0HAU0
投下します。


117 : 狩人のススメ ◆aEV7rQk/CY :2016/05/18(水) 17:49:18 bfPg0HAU0
静かな水面を視界の端に捉えて、田村玲子は考える。
彼女は警官隊に銃撃されている時点で、この会場に連れてこられた。
あの衆人環視の状況から如何なる手段によって拉致されたのか、未だに答えが見つからない。

逃走経路の多い公園に潜んで、支給品の確認をしていると香ばしい臭いが漂ってきた。
玲子が足を向けると、召喚した悪魔が焚き火の前に座っている。

「おう、サマナー。丁度 飯が出来たぞ」

声を上げたのは、だらしない風体の男。癖毛を伸ばし放題にして、小汚い服装に身を包んだ姿は浮浪者の様だ。
瓶底眼鏡で目元が隠れているが、顔の輪郭は整っている。身ぎれいにすれば見違えるのではないか。

名をティキ・ミックと言い、横では黒豚が無惨な姿をさらしていた。
会場内をこれほど大型の動物が闊歩しているとも思えないので、玲子は魔神皇が放った悪魔だろうと見当をつけた。
串に刺された豚肉が火で炙られており、周囲には煙と臭いが充満している。

「これは?」

玲子はゆっくりと口を開いた。

「・・・豚?そのへんにいたんで捕まえたんだよ」

ティキは首を傾げつつ、大通りの方を指差す。

「・・・・・・お前、この状況で火を使う意味が分かっているのか」

冷えた金属を思わせる声で玲子が聞いた。

「あぁ、だから早いとこ食おうぜ。味は悪くないしさ」

「・・・・・・」

ティキはこんがりと焼けた豚串を手に取り、玲子にも一本差しだす。
蟻を見る目つきで見下ろす玲子だったが、何も言わず豚串を手に取り、焚き火の前に座った。
豚の肉焼きを挟んで、2人は向かい合う。
手に取った豚串を美味そうに頬張るティキをちらと見て、玲子も食事に取りかかる。
これまで食べた豚肉と概ね変わらないが、どこか言い難い風味がした。



「んで、これからどうするサマナー」

満足した様子のティキは一息つく。
彼は串焼きを7本平らげたが、玲子は最初の一本だけで止めた。
火は既に消えている。


118 : 狩人のススメ ◆aEV7rQk/CY :2016/05/18(水) 17:49:49 bfPg0HAU0
「首輪を調べましょう。これを外さない限り、脱出への道は開けないわ」

玲子は指で示して、ティキに応じる。
首輪は寄生部分の動作を制限するらしく、宿主の胴体から分離することが出来なくなっている。
頭部を変形させる事はできたが、顔を変えることが出来なかった。

魔神皇の目的は不明だが、玲子も黙って殺されるつもりはない。
首輪を解析する場合、他の参加者と協力するのが上策だが、正体を明かすリスクを考えるとそれは避けたかった。
人間相手の殺し合いには乗らない参加者でも、パラサイト相手なら参加者も躊躇しないのではないか――という懸念が拭えない。
ティキには初見で看破された為、自身の正体について大まかに話してあった。

「そっか、オレは学が無いんでね。そっちはサマナーに任せる」

肩を竦めたティキは大儀そうに立ち上がる。それを気の無い様子で見ていた玲子は口を開いた。

「任せるって簡単に言うけど。貴方・・・役に立つの?」

「こっちの方は期待してくれて良いぜ?サマナー」

曲げた右腕を軽く叩いたティキが眼鏡を外し、ウェーブヘアーを後ろに撫でつけると同時に肌が灰色に染まった。額には十字架を思わせる聖痕が現れている。
玲子の想像通り、彼は若さに溢れる美しい目鼻立ちをしていた。

相変わらず小汚いシャツを纏っていたが、この端麗な容姿なら野性味として誤認させる事もできよう。
着飾って舞踏会に出れば、幾人もの貴婦人が気を惹こうと試みるはずだ。
とはいえパラサイトである玲子からすればティキの容姿も興味を引くものではなく、デイパックを背負うと、優雅に佇む彼を尻目に探索を開始した。


【?????/1日目/朝】
【田村玲子@寄生獣】
[状態]:健康
[装備]:COMP(携帯電話型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:脱出する。
※擬態能力が制限されています。
※首輪を外さない限り、宿主から分離できません。

[COMP]
1:ティキ・ミック@D.Gray-man
[種族]:魔人
[状態]:健康


119 : 狩人のススメ ◆aEV7rQk/CY :2016/05/18(水) 17:50:13 bfPg0HAU0
投下終了です。


120 : ◆EDO/Ef.X42 :2016/05/18(水) 18:28:13 QsA8GG4E0
投下します。


121 : 光と闇の英雄 ◆EDO/Ef.X42 :2016/05/18(水) 18:29:25 QsA8GG4E0
 オレは高校生探偵、工藤新一。
 幼なじみで同級生の毛利蘭と遊園地に遊びに行って、 黒ずくめの男の怪しげな取り引き現場を目撃した。
 取り引きを見るのに夢中になっていたオレは、背後から近付いて来る、もう一人の仲間に気付かなかった。
 オレはその男に毒薬を飲まされ、目が覚めたら……体が縮んでしまっていた!

 工藤新一が生きていると奴らにバレたら、また命を狙われ、まわりの人間にも危害が及ぶ。
 阿笠博士の助言で正体を隠すことにしたオレは、蘭に名前を聞かれて、とっさに〝江戸川コナン〟と名乗り、奴らの情報を掴むために、父親が探偵をやっている蘭の家に転がり込んだ。
 オレは毛利のおっちゃんを名探偵に仕立てるべく、時計型麻酔銃でおっちゃんを眠らせ、蝶ネクタイ型変声機を使っておっちゃんの声でかわりに事件を解いている。
 この二つのメカは、阿笠博士の発明品だ! 博士は他にも……ターボエンジン付きスケートボードや、犯人追跡メガネ、キック力増強シューズなど次々とユニークなメカを作り出してくれた!

 だが、そうして事件を解決している内に、オレはとんでもないことに巻き込まれてしまったらしい。
 なんとオレは、魔神皇と名乗る学生服の青年によって、いつの間にかオフィス街に飛ばされてしまったのだ!
 更には黒の組織が愛用しているポルシェに似た無人の車が、オレを轢死させようと追いかけてくる始末。
 で、こうなったら仕方がないと覚悟を決めたオレは、支給されていたターボエンジン付きスケートボードを使い、逃亡を始めたというわけだ。
 だがただ逃げるだけじゃ芸が無い。この危険な状況から脱出し、魔神皇の壮大な犯罪を止めるため、オレは頭をフル回転させている。
 待っていろ、魔神皇。オレがかならずお前を連れて行ってやる。監獄という名の墓場へとな!

 小さくなっても頭脳は同じ! 迷宮なしの名探偵! 真実はいつも一つ!





122 : 光と闇の英雄 ◆EDO/Ef.X42 :2016/05/18(水) 18:30:29 QsA8GG4E0
「さて、どうすっかな……」

 そんなわけで、なんとか無人のポルシェをから逃げ続けているオレは、今の状況を確認した。
 どうやらオレの頼れるメカは、さっきまで使っていたスケートボード一個のみらしい。
 そうなるともう頼れるものは〝悪魔〟とやらだけなんだが……正直、なんだか複雑な気分がする。
 だって考えてもみろよ。探偵に対して〝悪魔〟だぜ? ホームズとモリアーティ教授の共闘なんて見たことがあるか?
 少なくともオレは、この悪魔というものをいまいち信用出来ていない。そもそも、今オレを襲っている無人車も、きっと悪魔なんだろうしな。

「とは言え……な」

 しかし、そうやって悪魔を一方的に避けるのもどうかのか、ともう一人のオレが囁くのも事実だった。
 何せ博士のメカがスケートボード一つしかないってことは、オレ自身は戦う手段を全てもぎ取られているというわけなんだからな。
 せめて自衛の手段だけは持っておきたい。ならばその為にはどうするべきか……そう、決まっている。これだ。

「ああっ、くそ! こうなったら賭けるしかねーか! このパンドラの箱によ!」

 オレは蝶ネクタイ型変声期に似た作りのCOMP――名付けるなら蝶ネクタイ型変声期型COMPか――を手に取った。
 そして眠っているであろう悪魔に対し「さっさと出てこいバーロ!」と命じながら、COMPを両手で握り締める。
 すると突如COMPが光り出したかと思うと、真っ黒い装甲のようなものを纏った男が現れ、あろう事かオレと併走しはじめた!
 あり得ねぇ! このスケートボードは、一流のスポーツカーとも戦える代物だってのに! さすがは悪魔ってやつか!?
 オレはこのあり得ない状況を整理して受け入れるため、ひとまず悪魔の名を尋ねることにした。
 すると、

「俺のことは雷電と呼んでくれ」

 という答えが返ってきた。

「〝呼んでくれ〟……?」

 妙だな、とオレは思った。何故この状況下でそんな言葉を口にしたのだろうか? 何か引っかかるぞ。
 それに雷電と言えば、第二次世界大戦末期に日本海軍が運用した局地戦闘機の名だ。
 だというのに、オレと併走している黒い装甲の男の顔立ちと肌の色は、日本人のそれとは全く違っている。間違いなく白人だ。
 ん? 待てよ? 白人で、雷電? なるほど、さては……?

「よろしくな、Jack(ジャック)」
「……何故、俺の本名を知っている?」

 よし、やったぜ。この雷電と名乗る不審な男の本名を、見事に当てることが出来た。
 どうやらオレの脳は、この状況下でも上手く働いてくれているらしい。一安心だ!

「なぁに、簡単なことさ。雷電の連合軍側でのコードネームはJack(ジャック)だからな。そこから絞り出したんだよ……〝雷電〟」
「ただの幼い学生にしか見えないが……その推理力……お前も、愛国者達の実験を受けた被験者か?」
「愛国者達? そんなのは知らねーよ。オレは江戸川コナン……探偵さ」
「そちらもそちらで本名とは思えないな……まぁいい。ところで、俺を呼び出したのはどういう意図があってのことだ?」
「簡単だ。あの黒い無人ポルシェ……あれを何とかして欲しい。オメーが本当に悪魔だってんなら、どうにか出来るんだろ?」

 一安心して冷静さを取り戻したオレは、後ろを追うポルシェを親指で差す。
 するとジャック……いや、雷電は「なるほどな」と笑みを浮かべ、突如方向転換をしてポルシェへと向かっていった。
 そして何をするのかと思いきや……なんと奴は背中にある黒い棒から、ギラリと光る刀を取り出した!
 なるほど。背中に背負っていた棒は鞘だったのか。こいつは阿笠博士が見たらワクワクしそうだろうよ。


123 : 光と闇の英雄 ◆EDO/Ef.X42 :2016/05/18(水) 18:31:36 QsA8GG4E0
「頼むぜ、雷電!」

 なんてことを考えていると、雷電は八相からヒントを得たかのような独特の構えを取り、

「ああ。ゲームスタートだ」

 黒いポルシェを、真ん中から一気に切断してしまった!
 なるほど、流石悪魔だ。オレは短く口笛を吹くと、スケートボードを停止させて雷電の帰りを待った。
 すると奴は刀を背の鞘にしまい、ゆっくりとこちらへと近付くと、オレを見下ろして静かに話しだした。

「オレはジャック・ザ・リッパー……リベリアの白い悪魔とも呼ばれたこともある、元少年兵だ」
「……へぇ。それで?」

 そしてゴクリと喉を鳴らすオレに対し、雷電はこう続ける。

「正直に言おう。俺には人斬りの才能がある。技術だけじゃない。精神的な意味でもだ」
「人斬りの、才能?」
「俺は人間を殺害しても嫌悪感を覚えない、そういう人間なんだ。そして俺はそれを受け入れた。そして、法で裁けない人間を斬って裁いてきた」
「……なるほど。つまりはこう言いたいわけだ……〝探偵であるオレとはきっと反りが合わない〟と」
「その通りだ。どうする? それでもお前は、俺という殺人鬼の力を行使するか?」

 オレは一瞬、ほんの一瞬だけ考えた。
 だが、答えは簡単だった。

「バーロ。探偵をなめるなよ。オレは色々な犯人を見てきたけどな……そんな優しい目をした殺人鬼なんざ見たことねーよ」
「優しい、だと?」
「さっきのオメーの自己紹介、随分と自虐的だった。ということはだ、少なくともお前は自分の〝サガ〟ってやつを飼い慣らせてるってことだろ?」

 そして、

「昔のことを後悔して、反省してる奴にオレは石を投げたりはしねーよ。答えは、それだけだ」

 こう、言ってやった。

「じゃ、行くぜ雷電。魔神皇って奴のところによ」
「当てはあるのか?」
「バーロ。それを探すのが、探偵ってもんだろ?」

 そしてオレ達は、再び走り始める。
 ま、安心しろ……雷電。お前が本当に殺人を犯すようなら、意地でも止めてやっからよ。


【?????/1日目/朝】
【江戸川コナン@名探偵コナン】
[状態]:健康
[装備]:蝶ネクタイ型変声期型COMP、ターボエンジン付きスケートボード
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:魔神皇を逮捕する
[COMP]
1:雷電@メタルギアライジング
[種族]:英雄
[状態]:健康


124 : ◆EDO/Ef.X42 :2016/05/18(水) 18:35:10 QsA8GG4E0
失念しておりました。投下終了です。


125 : ◆1eZNmJGbgM :2016/05/18(水) 18:53:40 hmdOzKZs0
投下します。


126 : まったく、駆逐艦は最高だぜ!! ◆1eZNmJGbgM :2016/05/18(水) 18:57:02 hmdOzKZs0
「クソッ、一体何がどうなってやがる!」

そう言いながら彼、アレックス・ホッパー(現役のアメリカ海軍大尉である)は近くの壁を殴る。
その行為に意味があるわけではなく単に現在自分の置かれた状況に対する憂さ晴らしであるが、
柔らかく表現すれば直情的・平たく言えば場当たり的な行動が多いホッパーであっても
この程度で気持ちを落ち着けなければマズいという事は理解している。

「何だあのガキが使っていた紫の炎は……まさか奴も宇宙人だとでもいうのか?日本人のようだがまさかニンジャなのか?」

職業柄彼にも日本人の知り合いはいるし、一人は戦友と呼ぶにふさわしい人物もいるのだが、
思わず映画やコミックなどで見かけるニンジャ(忍者にあらず)が
実際にいるのではと妄想してしまうほど非現実的光景が先程繰り広げられたのだ。

「宇宙人を撃退したら次はニンジャに拉致される……まったくB級映画の主人公にでもなった気分だ」

こうして独り言を呟いている内に頭も冷えてきたようで、改めて現状を把握し直す。

「オーケイ、あのマジンオーと名乗ったガキに俺は拉致された。俺の他にも拉致された人物は多数。
そしてその拉致された人物同士で殺し合いを行い、最後の一人が決まるまで続ける。
生き残った者にはあのガキの片腕として仕える権利と、願いを一つだけ叶えさせて貰える。
奴に逆らうとあの謎の炎で燃やされたり、この首輪が爆発して死ぬ。だから逆らわずに殺し合いをしろと言うわけだ」

そこまで言った所で再び壁を殴り、言い放つ。

「クソ食らえ、だ」

勤務態度に多少難があるものの、彼は優秀なアメリカ海軍士官である。
命令とあらば敵を無力化するのは厭わないがあくまで職務としてである。
そんな彼が自分の命惜しさに無実の人間を殺す事などあり得ない。

「そしてコレがCOMPか……見た目は普通のスマートフォンだが」

そう言いながら支給されたCOMPを操作する。彼に支給されたのは一般的な
スマートフォン型、背中側に林檎のマークが入っているタイプであった。
これが魔神皇の罠である可能性も考慮したが、殺し合いを希望しておきながら
その為のツールにトラップを仕掛けて自滅させるとも考えにくいと考え、説明通りに
COMPを立ち上げ、手慣れた仕草で目当てのアプリを見つけ、起動する。
その結果、まばゆい光と共に彼の眼前に召喚された悪魔の正体は--



「駆逐艦島風です。スピードなら誰にも負けません。速きこと、島風の如し、です!」

そう言いながら現れたのは服装と所持品が非常に特徴的な少女。
ホッパーと島風の死ぬ日は今日なのかそうではないのか、それは孫子の兵法にも書かれていない。


【?????/1日目/朝】

【アレックス・ホッパー@バトルシップ】
[状態]:健康
[装備]:COMP(iPhone型)
[道具]:基本支給品、確認済み支給品
[思考・状況]
基本:魔神皇には従わない
1:なんだこの少女は……?
2:Japanese NavyにそんなDestroyerがいたような……

[COMP]
1:島風@艦隊これくしょん
[種族]:艦娘
[状態]:健康


127 : ◆1eZNmJGbgM :2016/05/18(水) 18:57:39 hmdOzKZs0
以上です。


128 : ◆fd1N1IjRQI :2016/05/18(水) 21:34:49 /6iQR2YE0
投下させていただきます。


129 : ◆fd1N1IjRQI :2016/05/18(水) 21:35:41 /6iQR2YE0
「はぁ・・・はぁ・・・!」

柊つかさは走っていた。
体育祭の時でもこんなに全力疾走したことが無いと言い切れるほどに。脚の筋肉が悲鳴を挙げるほどに。
額から滝のように汗を流しながら、彼女は走っていた。

その顔に浮かんでいるのは、ただ一つ・・・『恐怖』だ。
一瞬でも立ち止まれば、その時点で自身の命は無い・・・本能的にそう察したからこその全力疾走だった。

「ハァ・・・ハァ・・・」

走って走って走って走って走って走って・・・それでも背後からの気配は消えず、距離も縮まらない。
それが一層『恐怖』として彼女に走る力を与えていた。

「ハァ・・・ハァ・・」

少しでも相手を撒こうと、つかさは路地の曲がり角に潜り込んだが・・・

「!?」

そこはコンクリートの塀で行き止まりとなっていた。

「そ・・・そんな・・・」

その絶望的状況に、つかさは膝をついた。
走り続けて彼女の足は限界を迎えてしまい、もはや自身の体を支えることもできなくなっていた。

「・・・ゴクッ」

つかさは唾を飲み込むと、恐る恐る後ろを振り返った。そこには・・・

『ホーホーホー』

魔法使いが被るような先が曲がった尖がり帽子と緑色のマントを身に着けたハロウィンのカボチャのお化けそのままの姿をした悪魔・・・
ジャックランタンが、フワフワと宙に浮かんで笑い声とも歓声ともつかない不気味な声を挙げていた。

「あ、あぁ・・・」

つかさは恐怖で顔を強張らせ、何とかジャックランタンと距離を取ろうと四つん這いで逃げていくが、コンクリートの壁に阻まれてしまう。

『ホーホーホー』

ジャックランタンはそんなつかさをあざ笑うかのように不気味な声を挙げると、目を燃える炎のようにギラギラと輝かせて、つかさに近寄っていく。

「こ、こないで!」

つかさは支給されたバックパックの中の食料や飲料水をジャックランタンに投げつけるが、
ジャックランタンはそんな物を意にも介さずに、つかさに近づいていった。

「あ・・・あぁ・・・」

つかさはタレている眼を涙で潤わせ、最後にバックパックの中に残った電子手帳型COMPを握りしめる。

『ホー・・・ホー・・・ホー!』

つかさの抵抗が終わったことを感じたらしいジャックランタンは、口と眼窩の奥に紅い炎を灯らせ、
今にも吐き出さんと言わんばかりに燃えたぎらせる。
その滑稽的でいて恐ろしい姿に、つかさの恐怖はついに限界を迎えた。

「だ・・・誰かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

つかさは叫んだ。
何処の誰でも良い。悪魔でも天使でもどっちでも構わない。
誰か助けて。そう強く願った。


130 : ◆fd1N1IjRQI :2016/05/18(水) 21:36:19 /6iQR2YE0
その願いを聞き届けたのは神か魔王か。
つかさのCOMPから眩い光が溢れだした。

「きゃっ!!」
『ホー!?』

あまりに眩しい光に、つかさのみならず、ジャックランタンまで怯ませた。

そして光が晴れると・・・つかさの正面に、一人の男が立っていた。

黒い服と赤いマフラーを身に着けたピンク色の短髪の男性・・・。

そんな人物がジャックランタンと向き合う形で、つかさの正面に立っていたのだ。

「「・・・」」

突然の第三者の出現に、つかさもジャックランタンも凍りついたかのように固まっていた。

『・・・ホーホー!!』

先に動いたのはジャックランタンだった。
ジャックランタンは眼窩と口内で赤い炎を燃え上がらせながら、男性に向って突進した。

それに対し、男性は包帯で覆われている左手をジャックランタンに向けた。
すると、男性の左腕から竜のような形の真紅の炎が放たれ、ジャックランタンを包み込んだ。

『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア・・・・・・・』

炎に包まれたジャックランタンは人間の物よりも甲高い苦痛の叫びを響き渡らせながら、灰の山と化していった。

「・・・」

その光景に、つかさはあんぐりと口を開けて呆然としていた。

ジャックランタンが完全に灰と化すと、男性はつかさの方に振り返った。
その男性は整った顔立ちをしていて、ピンク色の前髪で左目が隠れていた。

「・・・」

男性はつかさに近寄ると、つかさに向けて右腕を伸ばした。

「・・・!」

思わずつかさは目をぎゅっと瞑ったのだが・・・

ポフッ

男性はつかさの頭に手を置き、ワシワシと撫でた。

(えっ・・・?)

恐る恐るつかさが目を開けると・・・

「大丈夫だ。俺は・・・」


「俺は味方だ」


その瞳は晴れの日の空のように澄み切っていた。





【???????/一日目/朝】
【柊つかさ@らき☆すた】
[状態]:極度の疲労とストレス
[装備]:電子手帳型COMP
[道具]:基本支給品、未確認支給品
[思考・状況]
基本:死にたくない
備考※周りに支給品が散らばっている。

[COMP]
[人吉璽郎@コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜]
[種族]:超人
[状態]:健康


131 : ◆fd1N1IjRQI :2016/05/18(水) 21:37:16 /6iQR2YE0
投下終了です。
タイトルは「正義の味方はピンチの時に現れる」です。


132 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/18(水) 23:45:11 1UXZ/rpc0
投下します


133 : 嫉妬 ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/18(水) 23:46:39 1UXZ/rpc0

「タダの仕事なんて犬に食わせるですだよ。 私帰る、話早いね」

 鮮やかな刺繍の施されたチャイナドレスを纏った中華系の女性が、そう悪態をついた
 悪徳の街ロアナプラで活動するフリーランサー。シェンホアだ。

 ひとまず彼女はこの殺し合いからの生還を指針とし、ディバックを漁る。愛用している柳葉刀や常備しているクナイなどは根こそぎ没収されていたのだ。

 シェンホアに支給されたなかで武器として扱えそうなのは、ひとふりの鉈だった。 

 軽く振ってみたが、柳葉刀には及ばないまでも、まぁ即席の武器としては及第点といった所だろう。
 そこでふと、魔神皇が悪魔がどうとか言っていたことを思い出す
 悪魔というものがどんなものなのか、単純に興味があるのもあるが、試しに召喚してみることにした

「あいやー……これまた凄いのが出てきたね」

 思わずといった様子でシェンホアはそう呟いた。だがそれも仕方ないだろう。

 彼女の視線の先にいる悪魔は、下半身が欠損した状態の少女だった。その異様な外見とは裏腹に、顔は童顔でかわいらしい笑顔を浮かべている。しかしその眼はどこか虚ろで、暗く濁っていた。
 シェンホアはさりげなく手にした端末に視線を落とすと、液晶には『テケテケ』と表記されていた

「貴女、言葉わかりますか? わかるならこれ話はやいよ」

 まず重要なのは会話が通じるのかどうかだ。 二分の一しか体のない女に何ができるかは分からないが、交流できるならそれに越したことはない。

「ーーねぇ、私の足を知らない?」

 その体勢上、シェンホアを見上げる形でテケテケが訪ねた。彼女は両足のかわりに両手で上半身を支えていた

「貴方足なくしたか? よくないね。でも私知らないですだよ」

 脚がないのはさぞ不便だろう。そんな身も蓋もない感想を抱きつつも、同情はするが、生憎とこの少女の泣き別れした下半身の行方をシェンホアは知らない

「そぅ……」

 テケテケは悲しそうに目を伏せる。

 シェンホアは気づかなかった。
 テクテクの視線が、チャイナドレスから覗くシェンホアの美脚に向けられていることに……

【?????/1日目/朝】 
【シェンホア@ブラックラグーン】
[状態]:健康
[装備]:鉈、COMP(携帯型)
[道具]:基本支給品、確認済支給品
[思考・状況]
基本:生存優先、タダ働きは嫌なので積極的に殺しはしない
1:でも襲ってくる相手は容赦しない
[COMP]
1:テケテケ@都市伝説
[種族]:幽霊
[状態]:健康


134 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/18(水) 23:47:32 1UXZ/rpc0
投下終了です


135 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/19(木) 00:51:02 ruw5gRBY0
投下します


136 : 綺麗な方と汚い方 ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/19(木) 00:51:51 ruw5gRBY0

「こ、こないで……」

 その懇願の言葉は、彼らに届かない
 まどかは会場に到着してすぐに境地に立たされていた。具体的に言うと、棍棒などで武装したゴブリンの集団に取り囲まれたのだ
 このまどかはまだ転校生と出会っていない。ゆえに魔法少女ではなく、ひとりの非力な女子中学生に過ぎない。つまりーー詰みだ

「だ、誰かーー助けて!」

 結論から言うと、まどかは助かった
 無意識のうちに握りしめていた携帯型COMPが起動したのだ。

「あっちゃー、いきなりピンチだねー。お姉さんビックリー」

 まどかの召喚した悪魔は、ビキニアーマーを着た、短いブロンドの髪を持つ20代の女性だった。
 彼女は召喚された直後、すぐさま状況を察したのか、まどかを取り囲んでいたゴブリンたちの始末にかかった。


「もう終わったよー。大丈夫?」

 彼女は強かった。
 ゴブリンたちを瞬殺した悪魔ーークレマンティーヌは、そうにこやかにまどかへと問いかける

「はっ、はい。……あの、貴女は、悪魔……ですか?」

 正直、ゴブリンの返り血で濡れたクレマンティーヌは、まどかにとって十二分に恐怖の対象だったが、命を助けられたのは確かだ。

「うん、そうだよー。 こんな可愛いレディを悪魔呼ばわりなんて酷いよね〜」

 おどけた調子で肩を竦める。それをみたまどかは、少しだけ緊張が抜けた
 もしかしたら、そう悪い人じゃ無いんじゃーー
 残念ながら、違う。

「ンッフフーっ、その泣き顔見ると虐めたくなっちゃうなー。お姉さん」

 血濡れのスティレットの尖端を、軽くまどかの頬に当て、なぞるように動かす

「ひっ……」

 頬の冷たい感触に、体が硬直する

「動かないでよー。ブスって刺さっちゃうからねー」

 狡猾なクレマンティーヌは、サマナーであるまどかが死ねば、COMPへと送還されてしまうことを理解していた。なので、これはただの遊びだ。すくなくとも、今は
 皮膚一枚も切らないように手加減しているが、怖いのだろう。
 小動物のようにプルプルと震えるまどかを見て、自然と口角がつり上がる
 その愛らしくも獰猛な笑みは、猫科の肉食獣を連想させる

「うっふふ、冗談冗談。怖かったー?」

 ひょい、とスティレットを放す。
 一気に気が抜けたのか、まどかは、へなっ、とその場に崩れ落ちてしまった

「うぅ……うぅぅぅ」

 魔法少女ですらない彼女には、もう限界だった。涙と嗚咽が止まらない。

「あのさー……その声で泣かないでよ。殺したくなっちゃうから」

 途端にクレマンティーヌが不機嫌になる。

「ったく、なんでこんなに『声』が似てるのかなー。萎えちゃうよ、もう」

 言葉の端に苛つきが垣間見える
 そう、なぜかクレマンティーヌとまどかの声はとても似ていた。
 まるで自分自身が泣かされているような気分になり、気分が悪くなる

 それ以外にはまったくと言って良いほど共通点のないふたりのバトル・ロワイアルは、幕を開けたばかりだった

【?????/1日目/朝】 
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:健康
[装備]:COMP(携帯型)
[道具]:基本支給品、確認済支給品
[思考・状況]
基本:死にたくない
[COMP]
1:クレマンティーヌ@オーバーロード
[状態]:健康


137 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/19(木) 00:53:00 ruw5gRBY0
投下終了です


138 : ◆yaJDyrluOY :2016/05/19(木) 02:09:25 kfAAPtt20
投下します


139 : 絶望の仮面 ◆yaJDyrluOY :2016/05/19(木) 02:10:06 kfAAPtt20
「絶望した!」

 糸色望は叫んだ。
 叫ばざるを得なかった。
 いきなり殺し合いに巻き込まれ、人を殺して悪魔だ何だとのたまう青年に、見知らぬ土地。
 普段から絶望絶望連呼している彼でなくとも絶望的な状況だ。

「ああ! 私のリストアップした自殺スポットが全部ムダになってしまったじゃないか!」

 もはやこのバトルロワイヤルの会場から逃れ得ることはできない。
 いつか死ぬ時のためにやっておいた準備も全部水の泡とかしてしまったのだ。

「行動が制限され、自由に自殺もできない状況なんて……!」

 嘆きの言葉を口にしながら、望はデイバッグを漁る。
 おあつらえ向きに丁度良い長さのロープが入っていた。

「もう嫌だ! いっそこの場で死んでやるー!」

 慣れた手つきで近くの木に縄をかけると、そのまま輪を作り首を通した。
 ――すると、ロープが光輝き何者かが出現する。
 あまりの現象に驚いた望は、思わずロープから手を離してしまった。

「うぐっ……」

 手が離れた事で、首だけで全体重を支えることになってしまった――つまりは首吊り状態である。
 現れた何者かが何かを言っているが、顔がみるみる土気色に変わっている望には聞き取ることができない。
 もう死ぬかと思われたその時――悪魔によって枝が切り落とされ、望は地面に墜落した。

「……貴方は一体何をし「死んだらどうする!!」」

 悪魔の言葉は望の叫びに遮られてしまった。
 到底自殺する人間が放つ言葉とは思えない叫びであるが、望の自殺は虚言であり死ぬつもりなど端から無いのだ。

「貴方が突然光って出てきたおかげで、驚いて手を離してしまったじゃないですか! 危うく死んでしまうところでしたよ!」

「ご丁寧に輪まで作って木にかけて、死ぬ気では無かったと? すぐにCOMPに戻されては堪らなかったので助けましたが……次はありませんよ?」

 理不尽な望むの言葉に、悪魔は細めていた目をギョロリと見開き警告を促した。
 
「私はカワリーノと申します。以後、よろしくお願い致します」

 カワリーノと名乗った悪魔は、先の出来事など無かったかのように丁寧な自己紹介をし直した。
 偽りの絶望を騙る教師と世を絶望で満たそうとする悪魔は奇妙な出会いを果たした。
 チキンな性格の望は、はたしてこの厄介な悪魔を御しきれるのか。
 絶望の叫びは、当分止むことは無さそうである。



【?????/1日目/朝】
【糸色望@さよなら絶望先生】
[状態]:健康
[装備]:COMP(ロープ型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:絶望した!
[COMP]
1:カワリーノ@Yes!プリキュア5
[種族]:魔族
[状態]:健康


140 : ◆yaJDyrluOY :2016/05/19(木) 02:10:35 kfAAPtt20
投下終了です


141 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/19(木) 02:18:45 ruw5gRBY0
投下します


142 : 私は誰で貴方はどなた? ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/19(木) 02:19:58 ruw5gRBY0

「ーーというわけです。わかりましたか? サマナーさん」

「サマナー? 何故あんたは俺のことをそう呼んでいるんです? そしてここはどこで、どうして俺はここにいるんですか?」
 

「だーかーらー……はぁ、わかりました。もう一回説明しますよ」

 

「あなたは魔神皇という少年の管理下で、殺し合いに参加させられています。
私は貴方がサマナーとして召喚したリッチーで、名前はウィズと申します。
私は貴方をできる限り手助けしたいと思っています」

「殺し合いだって? なんだそれは? どういうことなんだーー」

 途中で男が硬直する

「……サマナーさん?」

 ウィズは「まさか……」と思いつつ、恐る恐る問いかける
 男はウィズの言葉に、はっとしたように目を見開くと、妙なものを見るような視線を彼女に向ける。

「ーーサマナー? 何故あんたは俺のことをそう呼んでいるんです? そしてここはどこで、どうして俺はここにいるんですか?」

 ウィズは頭を抱えた
 もうこのやり取りは4回目だった。

 悪魔として召喚されたことは、まだわかる。だが、いったいこのサマナーは何なのか?

 どうやらこの男性は、何らかの障害を患っているのか、長時間記憶をとどめておくことができないらしい。
 こうやって何度も状況を説明しても、数秒後にはすべて忘れてしまう
 それでも、アンデッドにしては人の良いウィズは、男を見捨てることに気が引けた。   

「……貴方は、その、殺し合いに……」

 もう一度説明するために、重い口を開く。

「殺し合い? どういうーー」

 もう限界だった。

「他のことを試してみましょう。
 貴方、私の言ったことをそれに書き留めてくれますか?」

 ウィズは男の持っている手帳型COMPを指差した。その口調には精神的疲労が滲んでいる

「あ、ああ」

 男は空気を察したのか、慌てて所持していた筆を手に取る

「ーー良いですか? 『あなたは魔神皇という少年の管理下で、殺し合いに参加させられています。
私は貴方がサマナーとして貴方が召喚したリッチーで、名前はウィズと申します』」

 男は言われた通りに、一言一句を聞き逃さずに、手帳に書き込んだ


「……え? あの、あなたは誰ですか?」

 呆けたような声で訪ねたのは、男ではなくウィズの方だった
 
「え? えーっと、俺はあんたを召喚したサマナーだろ? 憶えてないのかよ?」

 男の方はしっかりと覚えているらしい。困惑した様子で答えた

「えっ?」

 ウィズは不安げに周囲を見渡している

「だから、あんた憶えてないのか?」

「いえ……あの、ここはどこなんですか? この場所は何なんですか!?」

 錯乱したように叫び、彼女はへたりこんだ

 ーー思い出せない! 
 ーーここはどこなの?
 ーーあなたはだれ?

「私はーー私は『誰』なの!?」

 その質問に答えるものは、居なかった

【?????/1日目/朝】 
【SCP-909 ミスター・わすれっぽい@SCP Foundation】
[状態]:健康
[装備]:COMP(手帳型)、ポールペン
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:殺し合いに乗る気はない
※魔神皇なる人物によって、殺し合いに巻き込まれていることは理解しました
※ウィズのことも『自身が召喚した悪魔』として理解しています
※SCP-909の特異性の有効範囲はいくらか制限されています
[COMP]
1:ウィズ@この素晴らしい世界に祝福を!
[種族]リッチー
[状態]:混乱、記憶の喪失
[備考]
※『自分の名前』、『種族』、『魔神皇によって殺し合いが開催されている』、『自身がその参加者に悪魔として召喚された』という記憶をすべて喪っています


143 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/19(木) 02:26:57 ruw5gRBY0
投下終了です

クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP Foundationにおいて創作されたSCP-909のキャラクターを二次使用させて頂きました


144 : ◆OW5ZCNLz4U :2016/05/19(木) 07:35:45 6PzcRzgQ0
皆さん、投下お疲れ様です。

それではわたくしも投下します。


145 : 天命に仇なす邪仙たち ◆OW5ZCNLz4U :2016/05/19(木) 07:36:39 6PzcRzgQ0
ここは会場のとある場所、そこには死が広がっていた。

ありとあらゆる悪魔が血まみれになりながら、地べたに転がっていた。

そしてその中心には、奇妙な男がいた。

黒地に金の刺繍が施された着物、顔全体を隠すような巨大なお札…

まるでキョンシーと始皇帝がくっついたような男だった。

「余の糧にもならぬか、下らぬ命だ」

そしてその男の傍らには、女がいた。

水色の髪に櫛を刺した女だった。

その女は彼を召喚した女、名を霍青娥(かく せいが)といった。

「中々面白いことになっていますわね、マオタイ様」

彼女は自分が召喚した悪魔を、まるで自分の主のように呼んだ。

その悪魔の名は、マオタイ。

陰陽の化身たる龍を下し、その血を持って不老不死の霊薬を完成させ、王党楽土を築かんとした皇帝であった。


146 : 天命に仇なす邪仙たち ◆OW5ZCNLz4U :2016/05/19(木) 07:40:01 6PzcRzgQ0

「仙人よ、見世物ではない、ただ自分の体がどのようになっているか確認したまでよ」

「あらあら、たしかCOMPに入れられるに当たり、色々と制限をかけられてしまったのでしたよね?」

そう、彼には様々な制限が掛けられていた。

まず一つに、彼は現在、不老不死の霊薬を所持していない。

そしてもう一つが…

「そうだ、何故か余の体は霊薬を完成させる以前の不完全な体となっておる。
 また、技も以前と比べてキレがなくなっておる。まったく、忌々しいものよ!」

そう、彼の体は不完全な不死の存在である『キョンシー』の状態で召喚されてしまったのだ。

「それでも十分ではありませんか、現にこの惨状を作り出せるのですから」

「主は人を乗せるのが上手いな、いったいどれほどの人間を堕落させたのだ?」

「いやですわね、思ったことを言ったまでですわ。」

そう言いながら彼らはその場を去っていった。

霊薬を完成させられるほどの、強力で純粋な魔力を持った存在を探すために…。

【霍青娥@東方神霊廟】
[状態]:健康
[装備]:櫛型COMP
[道具]:基本支給品、確認済み支給品
[思考・状況]
基本:会場から脱出する。
1.この悪魔(マオタイ)の、霊薬に関する知識を手に入れたい。
[備考]
※現代に生息する同姓同名の別人のため、幻想郷に関する知識はほとんどありません。
※現代に生息している(と描写のあった)東方キャラとは面識があるかもしれません。
※制限により壁抜けが使えません。
[COMP]
1:魔皇マオタイ@モンスター列伝 オレカバトル
[種族]:邪仙
[状態]:健康
[備考]
※無影暗殺拳 :自身の現在の攻撃力×3のダメージを与え、またまれに相手を毒状態にする。
        本来は相手を即死させる技であるが、制限のために効果を変えられている。

※秘宗重拳 :数秒間気を溜めた後、相手に掌底を放つ技。
       その威力は絶大で、下級の悪魔程度なら一撃で死に至らしめる程のダメージを与える。

※必殺七死七殺拳 :回し蹴り、掌底などの7連撃を加え、相手の体を一定時間麻痺させる。
          本来は相手を数分後に死に至らしめる技であるが、制限のために効果を変えられている。

※少なくともこの会場内では、『不老不死の霊薬』は作れません。


147 : ◆OW5ZCNLz4U :2016/05/19(木) 07:40:31 6PzcRzgQ0
投下終了です

ありがとうございました。


148 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/19(木) 10:10:51 pRmrrSWo0
皆様投下乙です!

>>119
田村さんはやっぱり冷静ですねえ。豚……オークかな……?

>>124
いつもよりバーロ増しのコナン君。
魔神皇を逮捕するって方針のキャラが増えてきましたね……

>>127
忍者……間違っちゃいない、のかな?
メンタル的に冷静な軍人に、相方はぜかまし、共通点に気づけるかな……?

>>131
一般人離れした奴が多い中、一般人らしいリアクションは安心できますね。
正義の味方は頼もしい……

>>134
タダ働きwwwww 確かにとらえようにとってはそうだなw
しかしパートナーが不穏な感じ……

>>137
声優つながりとはおもしろい!
一般人まどかさんはまた珍しい気もしますね……

>>140
また絶望しとるw しかし悪魔は助けてくれたけど……ちぐはぐですねえ。

>>143
記憶が逆転してる!? どういう事だってばよ……

>>147
仙人と不老不死……ここに共通する何か……
果たして、どう転がるのやら、ですね。


149 : ◆TE.qT1WkJA :2016/05/19(木) 14:24:53 02Ud0YBM0
申し訳ありません、拙作>>110-113のタイトルが『正義超人』となっていますが、これは実は誤字で、
『正義鳥人』のつもりでしたのでwikiで修正しておきました
今の今まで素で気付いてなかったよ!


150 : ◆ZjW0Ah9nuU :2016/05/19(木) 16:05:00 02Ud0YBM0
投下します


151 : 尻薄 ◆ZjW0Ah9nuU :2016/05/19(木) 16:09:47 02Ud0YBM0
「私は丸腰だ。悪魔と言えど話し合うくらいのことはできるだろう?」
「…話し合いも何も、私はサモナーを傷つける気は毛頭ないのだが」

不幸中の幸いだったのはこの場には男と召喚されたばかりの悪魔しかいなかったことだろうか。
周囲を異様な雰囲気が包んでいた。サモナーの男はオールバックの髪型にキリッとした目つきと太眉が特徴的な男前な顔つきで丁寧に折られたネクタイをつけているが、裸だった。
そう、裸なのだ。元々はピカピカに黒光り海パンをはいているのだが、今はそれをも脱ぎ捨てて、筋骨隆々な裸体を目の前の悪魔に惜しげもなく晒していた。

「そうか。そうとは知らずに、これは失礼した。では、まずは自己紹介からはじめようか。
 
        股間のモッコリ伊達じゃない!
          陸に事件が起きた時
         海パン一つで全て解決!
         特殊刑事課三羽烏の一人
          
            海パン刑事
                   ここに参上!!」

悪魔と相対する変態――もとい海パン刑事は特殊刑事課に所属する刑事だ。
犯人の前で海パンを脱いで全裸になって話し合いを試み、犯人がひどく狼狽するとその隙を狙って取り押さえるのが彼の常套手段となっている。
今こうして全裸なのも、魔神皇より渡された悪魔と裸の心で話し合いをしようとした結果だ。
悪魔である以上、何をしでかすか掴めないために、召喚するなり裸になるという暴挙――本人はそれを暴挙だと認識しているかは疑問だが――に出たのだ。


152 : 尻薄 ◆ZjW0Ah9nuU :2016/05/19(木) 16:12:25 02Ud0YBM0

また、相手の悪魔も他の参加者に召喚される悪魔とは一味変わった外見をしていた。
なぜなら、その姿は濃紺と赤を基調としたセーラー服が意思を持って喋る上に自立歩行をしていたのだから。

「私の名は鮮血。お前から見ればただの服かもしれないが、この通り話すことができる。言わば人間でも服でもない存在だ」

海パン刑事を見た者は「今すぐそこにある服を着るんだ」と変態がセーラー服を着るという大概な結果をも考慮せずに叫ぶであろう。

「血液さえあれば私を着た者は常時とは比べ物にならないパワーを得ることができる。だから戦う時は私を『着て』ほしい、と言いたいところだが――」

そこから先を言いかけて、鮮血はいつの間にか海パンを履きなおしていた海パン刑事の体格を見て、押し黙る。
鮮血は生命を持った戦う繊維である『生命繊維』で編まれており、着用した者に無限のパワーを与える上、
鮮血自身はCOMPで召喚された今は普通に話すことができるため、意思を疎通して着用者の補佐ができるという優れモノだ。
だが、海パン刑事には鮮血を着るには些か問題があった。

「その堂々としている態度からして、服を着ること自体に抵抗があると見える。そのような状態で私を着ても実力を発揮できないどころか生命繊維に呑まれるかもしれない」
「無論だ。人は皆、裸で生まれてきたのだ。この姿こそが人間の真の力を発揮できる姿であり、肉体そのものが相手を打ち倒す最大の武器となる。
私にとって服は拘束具だ。きっと君には、私なんかよりももっと似合う人がいるだろう。私の知る限りでは月光刑事に合いそうだが」

海パン刑事は、鮮血を着るつもりは全くない。
たとえ無理に着用したとしても、それは「着てくれていない」状態であり、本来より燃費・パワー共に大きく弱体化してしまう。
そういう意味では、鮮血は海パン刑事とは非常に相性が悪かった。

「とにかく、ここから動いて他の参加者を見つけよう。刑事として、この前代未聞の殺し合いは一刻も早く解決せねばならん。
そのためにも協力者が必要だ。それに、もしかすれば君のパートナーとなり得る者もいるかもしれないからな」
「ああ。私のかつてのパートナーのように完全に着こなしてくれる人間がいることを願おう」

こうして、一人の変態と一着の服は動き出す。
海パン刑事は、この殺し合いが一筋縄ではいかないことはわかっていた。
恐らく海パン刑事も見たことのない者達が跋扈していることだろう。
だが、海パン刑事は信じている。心を裸にすればみんな分かり合える、と。
裸になって誠意を持って相手と接すれば、必ず手を取り合い、黒幕へ立ち向かえるはずだ。
海パン刑事の瞳は、一糸まとわぬ汚れなき希望に満ち溢れていた。


【?????/1日目/朝】
【海パン刑事@こちら葛飾区亀有公園前発出所(アニメ)】
[状態]:健康
[装備]:海パン(基本支給品とCOMPが入っている)
[道具]:基本支給品、COMP(携帯電話型)
[思考・状況]
基本:殺し合いを解決する
1:裸になって誠意を持って相手と接すれば皆協力できるだろう。
2:他の参加者、特に協力者や鮮血に合いそうな参加者を探す
※支給品はだいたい海パンに入るため、デイパックは支給されていません。
[COMP]
1:鮮血@キルラキル
[種族]:生命戦維
[状態]:健康


153 : 尻薄 ◆ZjW0Ah9nuU :2016/05/19(木) 16:13:00 02Ud0YBM0
以上で投下を終了します


154 : ◆ZjW0Ah9nuU :2016/05/19(木) 16:17:43 02Ud0YBM0
拙作『尻薄』の鮮血の状態表に
※弱点は火炎属性です
の一文を書き忘れたのでwiki収録の際に追加しておきます


155 : ◆fd1N1IjRQI :2016/05/19(木) 20:31:39 R3Go/7I20
投下させていただきます。


156 : ◆fd1N1IjRQI :2016/05/19(木) 20:32:07 R3Go/7I20

世の人は言う

「天使は清き善なる存在であり、悪魔は醜い邪悪な存在である」と

だが、何故そう言い切れる?

天使が「絶対善」だと誰が決めた?
悪魔が「邪悪」だと誰が決めた?

醜い天使もいるかもしれない
優しい悪魔もいるかもしれない

私は天使を見たことが無い
私は悪魔に出会ったことがない

だが、私は言い切れる

人間が善人だけでも悪人だけでもないように

人間に美しい者だけでなく醜い者もいるように

天使や悪魔も同じだと



―フレデリカ・ベルンカステル


◆◆◆◆◆


157 : ◆fd1N1IjRQI :2016/05/19(木) 20:32:40 R3Go/7I20
「くっ!どうして・・・どうしてこんな事に・・・」

古手梨花はアスファルトに拳を叩きつけながら悪態をついていた。


彼女は『昭和58年6月』の呪縛から解放され、分校を卒業し、夢だった成人式にも出られて・・・
後は婿探しでもしようかという時期に、魔神皇によってこの場に呼び出された。

今この場には、100年を共に過ごした羽入も、苦楽を共にした圭一達もいない。
もし、この場で命を落とせば・・・自分はまたあの忌々しい『昭和58年6月』に引きずり戻されることになるだろう・・・。
痛い程それが理解できた。

「・・・いいえ」

梨花は道路から顔を上げる。
その目には赤い決意の炎が燃えていた。
絶対に死ぬものか。二度とあの『6月』に戻ってたまるか。
例え他の参加者を皆殺しにしてでも、自分は生き残ってみせる。
梨花はそう固く誓ったのだった。

(その為にも・・・手駒は多いほうが良いわ)

梨花はバックパックから電子手帳型COMPを取り出した。
あれから肉体的にも大人に成長したとはいえ、自分の非力さは良く理解している。
『悪魔』というのがどんな存在かは良く理解できないが、今は少しでも戦力が欲しいのだ。

梨花は『悪魔召喚プログラム』を起動させる。
画面上には『召喚しますか?』のメッセージと『YES』『NO』の選択肢が浮かび上がる。
梨花は迷わず『YES』を選択した。

続いて眼前で突然軽い爆発が起こり、白煙が立ち昇った。
そして煙が晴れるとそこに・・・

「ボク、ブースカれす!」

全身が明るいオレンジ色の毛皮に覆われ、頭に王冠のような物を乗せ、デべその目立つズングリムックリの体型をした
・・・近頃流行りの『ゆるキャラ』みたいな生き物が元気よく自己紹介していた。

(あっ・・・これ詰んだわ私・・・)

梨花は出現した者に絶望し、瞳からハイライトが消え、その場に膝を落としたのだった・・・。


この時、梨花は気づかなかった。

『ブースカ』という悪魔がハズレなどではなく、『当たり』に分類されるという事に・・・。


【??????/一日目/朝】
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康、軽くショック
[装備]:COMP(電子手帳型)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:死んでたまるか
1:私詰んだ・・・
※『祭囃し編』から十数年後からの参戦。20代後半くらいの年齢になっています。
外見イメージは、『白いワンピースを着た蓬莱山輝夜』です。

[COMP]
1:ブースカ@快獣ブースカ
[種族]:快獣
[状態]:健康


158 : ◆fd1N1IjRQI :2016/05/19(木) 20:33:52 R3Go/7I20
投下終了です。
タイトルは「快獣のなく頃に―悪魔使い編」です。


159 : ◆NIKUcB1AGw :2016/05/19(木) 22:12:18 yuRK9vjs0
2本投下します


160 : 似た者同士でも気が合うとは限らない ◆NIKUcB1AGw :2016/05/19(木) 22:13:19 yuRK9vjs0
「なんでこんなことになってるのぉぉぉぉぉ!!」

平沢唯は、恥も外聞もなく号泣していた。

「憂! 和ちゃん! 澪ちゃん! ムギちゃん! 律ちゃん! あずにゃん!
 誰でもいいから助けてよぉー! この際、さわちゃん先生でもいいからー!」

顧問が聞いたらどつき倒されそうなことを叫びつつ、唯は泣き続ける。
だが、やがて泣き疲れてゆっくりと床に倒れ込んだ。
その拍子に、彼女の腕が傍らの荷物に当たる。

「ん? なんだろう、これ……」

何かに逃避したい思いもあり、唯は荷物を漁り出す。
やがて彼女は、その中からギターを取り出した!

「ギー太! ギー太なの!? い、いや、違う!
 よく見ると微妙に違う! 貴様、偽ギー太だな!」

床に置いたギターをビシッと指さしながら、唯は叫ぶ。
しかし、当然ながらギターはリアクションしてくれない。

「いや、ごめん、偽物とか言っちゃって。
 緊急事態だし、君が私のパートナーになってください」

ギターを拾い上げ、ほおずりをする唯。
その拍子に、ギターのCOMPとしての機能が起動した。

「ふえっ!?」

突然光り輝き始めたギターに、唯は困惑する。
やがて彼女の前に、一人の青年が姿を現した。

「やあやあ、君が僕のサマナーだね」
「な、なんか出た!? あなたはいったい……」
「僕はすけさんだよ。よろしく」
「助さん!? じゃあ格さんは! 格さんはどこに!?」
「いや、そういう名前の人は知らないけど……」
「いないのかあ……」

あからさまに気を落とす唯。
すけさんは何が何やら理解できず、困り顔で頬を掻く。

「よし! それなら私があなたの格さんになるよ!」
「ごめん、意味がわからない」

突然立ち直った唯は力強く宣言したが、やっぱりすけさんには理解できない。

「一緒にがんばって、この状況を切り抜けようってことだよ! さあ、レッツゴー!」

ギターを背負い、唯はすけさんの返事も待たず歩き出す。

「んー……。まあいいか」

困惑しっぱなしのすけさんだったが、あっさり思考を放棄して唯の後をついていくことにする。
手にした「はやぶさの剣」を一振りすると、すけさんは歩き出した。

「何やってるの、すけさん! 置いていくよー」
「待ってよー。一人で行動すると危ないよー?」

物陰に野良悪魔の死体が一つ転がったことに、唯が気づくことはなかった。


【?????/1日目/朝】
【平沢唯@けいおん!】
[状態]:健康
[装備]:ギター型COMP
[道具]:基本支給品、未確認支給品
[思考・状況]
基本:生還する
[COMP]
1:すけさん(サマルトリアの王子)@ドラゴンクエストII 悪霊の神々
[種族]:英雄
[状態]:健康


161 : 人形少女は傷つかない ◆NIKUcB1AGw :2016/05/19(木) 22:14:38 yuRK9vjs0
市松こひなは、自身を人形と称する電波系小学生である。

「人形は殺し合いに巻き込まれても動じません」

このバトルロワイアルの場においても、こひなはいつも通りの無表情であった。

「しょせん人形にとって、命など仮初めのもの。死を恐れる必要はありません。
 それより、今はカップ麺を食べることの方が重要なのです」

普段好物を自由に食べられない鬱憤を晴らすべく、こひなは荷物に入っていたカップ麺にお湯を注ぐ。
それが魔神皇特製、カップ麺型COMPであることに気づかぬまま。
そして3分後、悪魔が召喚された。

「ハッハッハ! UFO仮面ヤキソバン、見参!」
「……懐かしの芸能人になりつつあったところで、プレイボーイキャラで再ブレイクししそうな顔のお兄さんが出てきたのです」
「え、何その具体的なたとえ」
「そもそも、なぜカップラーメンからカップ焼きそばのキャラが出てくるのでせうか」
「いや、携帯電話型のCOMPから必ず電話に関係する悪魔が出てくるわけじゃないし、多少はね?」
「市松はカップ焼きそばも好きです。しかし、食べられぬ焼きそばに用はないのです」
「いろいろひどいな、もう!」

早くも心が折れそうなヤキソバンであった。


【?????/1日目/朝】
【市松こひな@繰繰れ!コックリさん】
[状態]:健康
[装備]:カップ麺型COMP
[道具]:基本支給品、確認済み支給品
[思考・状況]
基本:あい うぉんと かぷめん
[備考]:お湯はCOMPの付属品扱いなので、支給品にはカウントされません
[COMP]
1:ヤキソバン@UFO仮面ヤキソバン
[種族]:超級英雄
[状態]:若干へこんでる


162 : ◆NIKUcB1AGw :2016/05/19(木) 22:15:22 yuRK9vjs0
投下終了です


163 : ◆mcrZqM13eo :2016/05/19(木) 22:17:25 KR/RgFNk0
二作投下します


164 : ジョジョの奇妙な冒険 読心主従 ◆mcrZqM13eo :2016/05/19(木) 22:18:41 KR/RgFNk0



「全く、DIOを倒したら次はこれかい」

帰りの飛行機の中から連れて来られたジョセフ・ジョースターは盛大にため息をついた。

「DIOの配下…ならこんな事をやらせんだろう……う〜む、さっぱりわからん」

しかめっ面をして腕を組むと、いきなり義手が光だした。

「ぬおっ!何じゃこりゃあ!奴め!わしの義手に何か細工をしおったな!!」

いつの間にかCOMPとしての機能を与えられていた義手が起動し、中の悪魔を解き放つ。

「隠者の紫(ハーミットパープル)!!」

何があっても即応出来る様にスタンドの像(ビジョン)を出し、光を注視する。

そして


「こんな子供が悪魔か、ですか。私は妖怪であって悪魔ではありません」

開口一番、自分の考えを言い当てた少女に、ジョセフ・ジョースターは絶句した。

「新手のスタンド使いかッ!ですか。いいえ違います、私は覚(さとり)という妖怪です」

「これはサードアイです。スタンドではありません」

――――ジョセフは思った。言おうとしていることを先んじて言われるのがこんなにストレスだとは思わなかった。今までこの手で機先を制して来た連中にチョッピリ済まないと思うジョセフだった。

「これからは控えよう、ですか。互いにそうするべきでしょうね」

「オー・マイ・ガッ!!」

【?????/1日目/朝】
【ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険 part3 スターダスト・クルセイダーズ
[状態]:健康
[装備]:COMP:義手型
[道具]:基本支給品、未確認支給品
[思考・状況]
基本:
1.脱出する
2.殺し合いに乗った奴を倒す
[COMP]
1:古明地さとり@東方Project
[種族]:地霊
[状態]:健康


165 : リゾットの奇妙な冒険 ステルスは見破れ無い ◆mcrZqM13eo :2016/05/19(木) 22:19:50 KR/RgFNk0
「チッ…ふざけた話だ」

舌打ちして公園のベンチに腰を下ろしている男の名はリゾット・ネエロ。イタリアンマフィア『パッショーネ』の暗殺部隊のリーダーを勤めていた男である。
長年続いた暗殺部隊への冷遇と、ボスの秘密を調べていた部下を惨殺され、死体を送りつけられたことで、チームの誇りを穢されたことに怒り、惨殺された部下の復讐の為に反旗を翻し……ご覧の有様だよ!!!

「こんな処で油売ってる暇はない、さっさと戻ってボスの娘を抑えないとな」

まあ当然こんな舐めたマネしてくれたあのガキにはキッチリ落とし前をつけるが、当然あんなガキの言うことなど聞いてやるつもりは無い。襲って来た奴はキッチリ殺すが、自分から殺して回るつもりは毛頭無い。
しかしあのガキ――――魔神皇の能力は完全に不明である。あの炎といい、此処に自分を飛ばした事といい、明らかに彼の常識では、黒幕は二人以上居なければならないのだが。
まあ奴の能力についてはゆっくり考えるとして。

「それにしても……どこに居る?」

辺りを見回してみてもリゾットのパートナーである悪魔の姿は見当たらない。
帽子被って変な飾り付けたロリとしか思っていなかったが、あの能力は本物だ。
完全に認識出来ない、暗殺者としては最高の能力だろう。

「またペットとやらを物色しているのか」

姉が同じ様なのを飼っていたとか言って、人間の女みたいな猫とカラスを捕まえさせられたのだが、もう勘弁して欲しい。

「ねえねえサマナー」

「…………!?」

いきなり目の前に出て来た悪魔にかなり驚いたが、こんな幼女に驚かされたとあっては沽券に関わるんで、何とか平静を保つ。

「アレ“COMP”に入れて欲しいんだけど」

指差す先はビルの壁面、そこにへばり付いた巨大な蜘蛛。大きさはざっと30m程。

「無理だな」

リゾットはそう言うと立ち上がって、蜘蛛から離れるべく移動を開始する。

「えー。ケチー」

文句を垂れながらも後をついて来る悪魔。リゾットの奇妙な冒険は始まったばかりである。


【?????/1日目/朝】
【リゾット・ネエロ@ジョジョの奇妙な冒険 part5 黄金の旋風
[状態]:健康
[装備]:COMP:スマホ型
[道具]:基本支給品、未確認支給品
[思考・状況]
基本:
1.脱出する
2.魔神皇に落とし前をつける
3.魔獣ネコマタ霊鳥ヤタガラスがCOMPに入れています
[COMP]
1:古明地こいし@東方Project
[種族]:地霊
[状態]:健康

2:ネコマタ
[種族]:魔獣
[状態]:健康

3:ヤタガラス
[種族]:霊鳥
状態]:健康


166 : ◆mcrZqM13eo :2016/05/19(木) 22:20:52 KR/RgFNk0
投下を終了します


167 : Prologue with Ghost ◆856p.gCDjs :2016/05/19(木) 23:21:21 C1zFbA8k0
投下します


168 : Prologue with Ghost ◆856p.gCDjs :2016/05/19(木) 23:22:34 C1zFbA8k0

“──この世は舞台、人はみな役者”




クソ最低な出来事に遭ったな──心の中の悪態を表に出さないことには慣れていた。
衝動のままに動くのなら壁でもシャッターでも思い切り殴りたい心境だ。
けれどあんなこと──殺し合いだなんて提案された今の状況で、変に取り乱すのは馬鹿のやることだろう。
ヘマをしてただ死ぬのだけは心底嫌だ。死ぬわけにいくものか。
彼は銀色の頭を抱えて今までのことを思い出す。

……僕は数時間前に、警報の鳴り響く美術館から脱け出した。
ガラスケースに囚われた呪われし女王、【30ctの赤色金剛石】を見事攫い出して
──まぁセンサーに少し触れて防犯装置が作動してしまったが、上手く警備を撒けたから良しとする──
相棒のローランサンと祝いの葡萄酒を飲み交わしていたところ、突然あの空間に立っていた。

あまりにも不可解で苛立ちが募る。
シャッターを殴りつける代わりに彼は身を隠すよう路地裏に入り、背中を壁に預けると苛立ちをため息に変えて吐き出した。
まずは冷静にならなくてはならない。
とりあえずは自身の状態の把握だ、と彼は手荷物の確認を始める。すると彼は、ベストの左胸ポケットの中に何かが入っていることに気付いた。
「────っは、これがCOMPとかいうやつか」
馬鹿にされている気がしてならない。
入っていたのは数時間前に盗み出した宝石“ディアマン・ルージュ”……おそらくレプリカであろうが、彼女自身と見まごうほど美しく精巧な作りのもの。
首飾りの一パーツであったそれが、金細工に嵌め込まれブローチの形で彼の手の上にある。まるで彼に着けろと言うように。

「このディアマン・ルージュは通称【30ctの殺戮の女王】──レーヌ・ミシェルと呼ばれる『呪われし宝石』だ。
 その名は、彼女が彩った首を一つ残らず刈り取ったことから……今まで彼女を手に入れた12人の誰もが非業の死を遂げたことから名付けられた。
 これを語る意味がわかるか、ムシュウ。主催者はどうやら僕を13人目の所有者に仕立て上げたいらしい」

銀髪の彼が色違いの双眸で見上げると、そこには〈灰色の服の男〉が立っていた。
しかしはたして、立っていたと表現して良いのだろうか。
仔細を話せば──その男は見えない手足を古びたコートに通し、乗馬用のブーツを組んで空中に浮いていた。
血の流れていない蒼い顔。黒く落ち窪んだ眼窩には赤い瞳が浮かんでいる。
どこからどう見ても、誰もがそう認めるであろう“幽霊”。
赤い瞳と目が合うとぞわりと怖気がしたが、銀髪の男はこれも表情に出さず凛と〈灰色の服の男〉を見据えた。
〈灰色の服の男〉は、灰色の髪の中でにぃと唇を釣り上げた嫌な笑みをする。
「つれないねぇ、ミスター」
袖の先に浮く手袋でタバコをふかす。
ドルーリー・レーン劇場に住まう〈灰色の服の男〉。
なぜ貴族の格好をしているのか。劇場内に隠された白骨遺体の亡霊だという噂もあるが、彼について明らかなことはまだ見つかっていない。
ひとつ言えることが、“灰色の服の男が現れた演目は成功する”というジンクス。
恐れられるはずの幽霊が、劇場主催側から出現を願われるというなんとも滑稽な話である。
「不吉のミカエルから吉兆のゴーストを呼び出すなんて、天はどちらを御望みかわからないぜ?」
「天はどちらを御望みか……お前がもたらす吉兆は舞台の盛況だろう?それが喜劇か悲劇かは問われないだろう」
ゴーストの嫌な笑みに、男は皮肉の笑いを返す。
僕は操られるだけの役者だなんてまっぴらだ──とこぼして。
「おや、演劇は嫌いかい?オレと趣味が合わないな」
「いいや物語を読むのは好きだよ。それに──高尚なお嬢さんを口説くのに使える」
「ミスター、顔に違わず色男かい」
「別に女好きなわけじゃない。女はお喋りだから……
 ……ムシュウ、僕の異名を教えてやろう。【白馬に乗らざる王子】だ。
 侍女をすり抜け愛しの宝石に接吻する……それが僕の生きがいだ」


169 : Prologue with Ghost ◆856p.gCDjs :2016/05/19(木) 23:23:20 C1zFbA8k0

ゴーストは冷やかしの口笛を吹いた。犬が寄る、と銀髪の男は顔をしかめる。
口笛を吹いた口元は、今度は笑みをやめて冷ややかに喋る。
「……ひどい裏切り者だな」
「なに、夢を見せているだけさ。それに女はいささか乱暴な方がお好きらしい」
「そうして手に入れた女王もすぐに売るのだろう?愛してると口付けて、まさに虚飾の婚礼だな」
「生憎、生涯を捧げる女性はもう心に決めているんだ」
問答の隙間で耳に飛び込んだ言葉は意外なものであった。
己を閉ざしている冬のような青年からの熱烈な告白。面白いかもしれない、とゴーストは少しだけ調子を取り戻す。
「ふうん?ずいぶん骨抜きにされているんだな」
軽い調子に、銀髪の青年は幾分か顔に影を落とす。期待しているようなことじゃない、と否定した。
「……妹だよ……可愛いノエル。僕の大切な、たった一人の家族だ。彼女を結婚させるために、僕は金が必要で……
 ……葡萄酒の酔いが残ってるかな。無駄なことを言った」
彼は乱暴に言葉を切ったが、〈灰色の服の男〉は真剣な表情を見せる。
無駄なことか、とゴーストは言った。
「無駄なことか……いいや知りたい情報だ。ミスター、オマエの本質に少し共感するよ。家族は大切にするものさ」
唇を釣り上げたあの笑みではなく──ゴーストは先程までと違う寂しい笑みを見せる。
お前にも家族が居たのか、と男が問う。
いいや、手に入れたかったんだ。とゴーストは返した。

「望みが叶うなら、生きて帰って彼女に逢いたい、それだけだ」
男は赤色金剛石を手の中に包む。それなら、とゴーストは口を開く。
「ならばオマエが進む道は?」
「僕は盗賊だよ。ヘマせずこの檻から抜け出してみせればいいんだろう?」
男は不敵に笑み、手の中の赤色金剛石をリボンタイの真ん中へ納めた。ゴーストは生者の両眼をしっかりと捉え、ならば戦おうと宣言した。

──そして彼女が【殺戮の女王】かい?──と〈灰色の服の男〉は心中で問うた。
ゴーストにはそれが見えた──銀髪の男には女が憑いている。
まるで女優のように美しい女だ。
美人に好かれるだなんて羨ましい色男だな──オレは彼女はお断りしたいがな。
≪女優≫は背筋が凍るほど美しいが、関わってはいけないと本能が怯える「何か」があった。
男の肩に──いや首に、腕を巻き付けて宝石のような赤い笑みを浮かべる美しき≪女優≫。
オマエが彼を操ってみせるというのか?≪女優≫好みのシナリオに彼を配置して──

操られるだけの役者だなんてまっぴらだ?ずいぶんな皮肉だな。
≪女優≫の影が憑いているというのに、お前自身の魂は見えていない……お前に魂なんて無いのかもしれない。
役者にぴったりだよ。影に操られるだけの人形のような──あんたは一体どんな劇をオレに見せてくれるのかね?
〈灰色の服の男〉はD列の端の席でそうするように、真っ直ぐに役者を見つめた。
さあ、開演の時間だ。

「オレの名はグレイ……いままでそう呼ばれてるから、これからもそう呼んでくれ」
「わかったよ、ムシュウ・グレイ。僕の名はイヴェール。しばらくの間よろしく頼む」



【?????/1日目/朝】
【イヴェール@Roman】
[状態]:健康
[装備]:赤色金剛石型COMP
[道具]:基本支給品、不明支給品(本人確認済み)
[思考・状況]
基本:殺し合いから脱け出す。
※Roman内には複数のイヴェールがいますが「盗賊」のイヴェールです。


[COMP]
1:グレイ@ゴーストアンドレディ
[種族]:幽霊
[状態]:健康


170 : Prologue with Ghost ◆856p.gCDjs :2016/05/19(木) 23:24:44 C1zFbA8k0
ageましたすみませんでした。
投下終了します。


171 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/20(金) 00:21:20 BoxPazMY0
投下します


172 : 姿無き死骸と影の薄い中学生 ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/20(金) 00:23:19 BoxPazMY0

「これってドッキリっ!……じゃ、ないんだよね」

 赤座あかりは、気がついたらどこかの公園の片隅に居た。
魔神皇に無惨に殺された同年代のふたりの姿が脳裏をちらつく。あれが、作り物だとはとても思えない。なら、この状況もドッキリなんて生易しいものじゃ無いんだろう

「えっと……よくわからないけど、助けてくれる人は多い方が良いよね」

 ディバックに入っていたスマートフォンーーこれがCOMPなのだろう。あかりは付属の説明書通りに悪魔召喚プログラムを起動させる。
 すると液晶に『悪魔を召喚しますか?』のメッセージと『YES』『NO』の選択肢が浮かび上がる。
 仄かな緊張と、若干の好奇心に後押しされる形で、あかりは『YES』を選択した。

「……あれ?」

 しかし、どれだけまっても何も出てこない
 もしかして、COMPの操作を間違えたのかと思い、説明書を読み返すが、不備は見つからなかった。

「うーん、少し期待してたんだけどなぁ……」

 無いものをねだっても仕方ない。やはり悪魔というのはデタラメだったのか
 あかりはCOMPをディバックに放り込み、どこか安全そうな所を探すために立ち去った
 

 
『糞が……やっぱり見えてねぇか』

 キョロキョロと周囲を見渡すサマナーに、忌々しいとばかりに悪態をつく
 結論から言えば、あかりの悪魔はしっかりと召喚されていた

『渇く……渇く……っ!』

 だが、あかりがその悪魔を知覚できることはないだろう

『喰いてぇ……このガキの脳ミソにかぶりついて、渇きを癒してぇっ!!』

 吐息がかかるほどの至近距離に顔を近づけても、あかりは身動きひとつとらない。
 彼女の眼球は、すぐ側にいる男の姿を写していない。それどころか、一欠片の気配すらも、この男には無かった

『だが駄目だ! こいつを殺っちまったらあの機械のなかに戻っちまうっ』

 それはゴメンだとばかりに、透明なゾンビーースポーツ・マックスは、必死に血を求める本能を抑える。

『くそっ…… なんだって俺がこんな目にっ!!』

 その悪態も、誰の耳にも届くことはない
 彼は、あくまで死人なのだから……

【?????/1日目/朝】 
【赤座あかり@ゆるゆり】
[状態]:健康
[装備]:COMP(携帯型)
[道具]:基本支給品、確認済支給品
[思考・状況]
基本:殺し合いなんてしたくないよ
[COMP]
1:スポーツ・マックス@ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン
[種族]:リビングデッド(透明)
[状態]:健康
[備考]:スタンド『リンプ・ビズキット』が使用可能かどうかは不明です


173 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/20(金) 00:24:13 BoxPazMY0
投下終了です


174 : ◆wKs3a28q6Q :2016/05/20(金) 00:27:01 O4O07qvw0
皆さん投下おつです。
私も投下いたします。


175 : 火葬少女を生かそう!の巻  ◆wKs3a28q6Q :2016/05/20(金) 00:28:45 O4O07qvw0

『 た す け て 』

そのたった四文字を、口にすることが出来なかった。
助からないと分かっていたから。
助けを求められた人達が、困ることが分かりきっていたから。

『 し に た く な い 』

誰もが思って当然の言葉すら、口に出すことが出来なかった。
泣き叫んでも、どうにもならないと思ったから。
諦めるしかないと思っていたから。

「あ……」

少女――神楽坂明日菜は、つい先刻、命を落とした。
幼き日に“悪魔”と交わした契約の効果で、15の誕生日を迎えると同時に、その生を静かに終えた。
そして、納棺されたはずだったのだが――――

「生き、てる……」

明日菜は、こうして、立っていた。
息を吸い込む。呼吸が出来た。
手を握ってみる。開いてみる。動いた。きちんと。思い通りに。

「何で……」

口にしてから――気が付いた。
今の自分が置かれた状況に。
決して無条件に喜べるような状況下ではないことに。

「そっか……」

――君たちに、最後の一人になるまで殺し合いをして貰う――

「だから……まだ……」

悪魔と交わした契約のことを、朧げにだが思い出す。
幼き日のこと故に、詳細はうろ覚えだ。それこそ、最近まで忘れてすらいたほどだ。

とにかく、その内容は、大雑把に言うと以下の通り。
『マジックキャンセルの能力を得る代わりに、15になると同時に悪魔に魂を取られる』
てっきり、すぐさま命を奪われるものだとばかり思っていたのだが――どうやらこういう形で命を奪われるらしい。


176 : 火葬少女を生かそう!の巻  ◆wKs3a28q6Q :2016/05/20(金) 00:29:26 O4O07qvw0

「……殺し合い、なんて……」

殺し合いなんて、したくはない。
だが――する以外に、生きて帰れる道があるようには思えない。
何せ、明日菜は、結果的に自らの意思で悪魔と契約したのだから。
その対価として殺し合いをさせられているのだとしたら、逃れられるとは思えない。

そもそも、最後の一人になれば生きて帰れるというのが破格なのだ。
本来いきなり殺されてもおかしくないのに、ここにきて、生きて帰れる可能性が与えられた。
まさに地獄の底に垂らされた蜘蛛の糸だ。
多分明日菜の脳味噌に蜘蛛の糸云々の知識は皆無なんだけど、それはそれとして蜘蛛の糸だ。

「ネギ……」

魔法使いで先生なんていう馬鹿げた存在で、馬鹿な子供で、だけど自分よりよっぽどオトナでしっかりしていた少年の名を呟く。
呟きながら、自然とCOMPに触れていた。
明日菜に支給されたCOMPは、ハリセンの形をしている。
あの日、ネギと口付けを交わし手に入れた“アーティファクト”と同じ形。
彼との信頼の証にして大切な思い出――そんな形をしていた。

「……っ!?」

彼との思い出を振り返るように、ハリセンをゆっくりと指でなぞる。
その結果、COMPが作動したようで、目の前に突如として何者かが現れる。
その“何者か”が“悪魔”であることは、すぐに分かった。
何せ悪魔は、人間ではありえない本数の腕を持ちあわせていたのだから。

「カーッカッカッカ!」

まさに地獄に現れた蜘蛛のようなその悪魔が、不気味な笑みを浮かべる。
しかしながら、その笑顔よりも、その両サイドに更に別の顔がついていることの方が、明日菜の恐怖心を煽った。

3つの顔に6つの腕。
紛れもない、人間ではない悪魔の姿である。

「貴様がわたしのパートナーとやらか」

尻もちをつく明日菜を見下ろし、品定めをするかのように悪魔が目を軽く細める。
悪魔の名はアシュラマン。
いや――正確に言うならば、再生(リボーン)アシュラマン。
魔界のプリンスにして、ジェネラルストーンで全盛期の肉体を取り戻した悪魔超人である。


177 : 火葬少女を生かそう!の巻  ◆wKs3a28q6Q :2016/05/20(金) 00:30:53 O4O07qvw0

「不本意ではあるが、この再生した肉体の準備運動がてら、このバトルロイヤルで勝ち残ってやろうと思ってはいたが――」

それなりに誇りがあり、また正義超人として活動したこともあるアシュラマンにとって、殺し合いなどという下賤で残忍な戦いは、本来忌むべきものだった。
しかしながら、アシュラマンは敢えてこの殺し合いに乗ろうとしている。
忌避する気持ちを押し殺し、心に芽生えていた正義超人としての想いを打ち消して、完全なる悪魔超人に戻るために。

「何だ貴様、その腑抜けたツラは」

だというのに、ルール上重要なパートナーである者は、見るからに弱そうな少女。
ただの少女であろうことは「そういうハンデキャップ・タッグ・マッチなのだ」と受け入れる事ができなくはないが、その表情は別だ。
怯え、戸惑い、恐怖――様々な感情が混ざっているようだが、そのいずれもが敗者のための感情であった。

「あ……う……」

明日菜は、言葉を紡ぐことが出来なかった。
魔法の存在を知り、ある程度の人外生物は見たことがあったが、しかしここまで強大な悪魔を見るのは初めてのことだった。
自らが召喚した悪魔は、その全身に恐ろしいオーラを纏っており、ただの下級悪魔でないことが窺い知れる。
そしてそれは、今置かれた状況が『本当に悪魔が絡んだ殺し合い』であることと、ひいては『悪魔が死の契約を実行するための手段』なのであろうことを意味していた。
少なくとも、明日菜はそう捉えてしまった。

「この魔界のプリンスが力を貸してやろうというのだ、優勝は間違いない」

舌打ちしたい衝動を抑え、アシュラマンは明日菜に言葉を投げかける。
あくまでこれは“人間同士の殺し合い”であり、悪魔はその“タッグパートナー”なのだ。
自分一人で勝ち上がることは、そもそもルール上不可能。
無理矢理屈服させたとしても、COMPの破壊等で妨害される恐れだってある。
かと言ってこのゲームを無視して帰る方法を独自で見つけても、やはりCOMPの操作1つで呼びだされてしまうのだろう。
アシュラマンにとっては、明日菜を何とか立ち上がらせるしかないのだ。

「貴様は何の憂いもなく、ただ堂々とわたしの試合を見ていればいい」

その言葉に――明日菜は、ほんの僅かな安心感を得る。
しかしそれは、彼女の担任ネギ・スプリングフィールドや、彼女の想い人高畑・T・タカミチがもたらした安心感とは程遠く、むしろ真逆の性質のものだ。

――この悪魔に他の全員を殺させれば、自分だけは助かることができる。

そんな、まさに悪魔のような囁き。
あまりに醜いそんな考え、認めたくなんてなかった。

だけど。
けれども。

誰も知ってる人なんていない、自分同様“自業自得”な契約の末にここに落とされた人相手なら。
アシュラマンの言うような、ルールに則った“試合”として、この殺し合いを見るならば。
むしろ最後の一席を賭けて、正々堂々闘うべきなのではないか。
そんな悪魔の誘惑が、明日菜の心に入り込む。


178 : 火葬少女を生かそう!の巻  ◆wKs3a28q6Q :2016/05/20(金) 00:32:09 O4O07qvw0

「さあ、この手を取れ。このバトルロワイアルの頂点から見える景色を見せてやろう」

アシュラマンによって差し出された手。
その手に、ゆっくりと、戸惑いながら、明日菜の手が差し伸べられる。
嫌だが――しかし、醜い部分を曝け出しても、迷惑をかけるような相手はいないのでは、という考えが、明日菜に手を伸ばさせた。

「あ……私、私――――」

震える手が、アシュラマンの手に触れるまで、あと数センチ。
そこにきて、明日菜が僅かに震え始めた。
今から己が選ぼうとしている道のあまりの醜さに。
自分に降りかかっている、自業自得の四文字なんかじゃ片付けられない理不尽に。
震える声で――自然と、言葉が飛び出した。

『 た す け て 』

そのたった四文字は、今回もまた口にすることが出来なかった。
悪魔みずから助けを買って出ているとはいえ、死地に送り込むことになる。
今回もまた、助けを求められた相手が、困ることが分かりきっていたから。
明日菜はまたも、そこまで甘えることが出来なかった。

『 し に た く な い 』

誰もが思って当然の言葉すら、やはりまだ、口に出すことが出来なかった。
そこまで口にしてしまうと、泣き叫んでしまいそうだから。
それに、今から殺し合おうと言う人間が――
死にたくないが故、殺そうとしている張本人が、そんな言葉を口にするのは、おこがましいと思ったから。

「こわいよ……」

だから――言葉として出てきたのは、今の明日菜の複雑な心境を反映した、たった一言だけだった。
死にたくないし、本当は殺したくだってない。
突然思い出した悪魔との契約も、その結果待ってた殺し合いも、全部が全部、怖かった。
理解できないし、嫌だし、怖かったのだ。

「あ、ああ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」

今まで明日菜が溜め込んでいた言葉は、アシュラマンの心を撃ち抜いた。
アシュラマンの表情が、困惑の色に染まる。
明日菜が、今まで溜め込んでいたものを吐き出す姿が、息子の最期の姿と重なって。

「お、怯えるんじゃあない!」

ガシっと、人間よりも多い腕で明日菜の手を、腕を、そして肩を掴む。
別にここからバスターに極めようなんて思っちゃあいない。
ただ――無意識に、彼女に触れてしまっていただけだ。


179 : 火葬少女を生かそう!の巻  ◆wKs3a28q6Q :2016/05/20(金) 00:33:18 O4O07qvw0

「何も恐れることなんてない……何も……」
「……でも……私、こんなこと――――」

こんなこと、したくない。

「シバ――――ッ!」

途中で途切れた明日菜の言葉の続きが、アシュラマンには分かった気がした。
彼女の怯える表情が、愛する息子と重なったから。
きっと命を奪うことが悪いことだと教えられていたのに、奪う道を選んでしまおうとしているから。

「……いいんだ! 殺しても!」

あの時――アシュラマンは、シバの狂気を受け入れることができなかった。
自分は正義超人になったから。
シバもまた、正義超人であるべきだと思っていたから。
だから、かつてのアシュラマンには、シバの殺人衝動を咎めることしかできなかった。

「お前は……清く正しい正義超人なんかじゃあない……」

アシュラマンが頭を垂れる。
アシュラマンには、明日菜の顔を、まともに見ることが出来なかった。
そして、自分の歪んでいる顔も、見せることが出来なかった。

「悲しいが……わたしと同じで、そんなに強い存在ではない……ッ」

アシュラマンが明日菜を見ていないことは、今の明日菜にも分かる。
物理的な意味合いでだけではない。
きっとアシュラマンは、自分以外の誰かに向けて、言葉を吐いているのだと。

「弱い……弱くて、自分のために誰かを傷つけてしまう、そんな生物なんだ……ッ」

だが――そんなアシュラマンの言葉だからこそ、弱り切った明日菜の心に響いた。
自分以外の誰かに向けているからこそ言葉に真実味があったし、アシュラマンという存在への恐怖も大分和らいだ。
アシュラマンが冷酷に目的のため自分を利用する悪魔ではなく、自分と同じ思い悩む存在で、
そして何らかの事情で自分に誰かを重ねているのだと、理解する事ができたから。

「それでも……わたしは……わたしだけは――――」

もう、戻れない。
アシュラマンは、全ての人類のためにその身を捧げる正義超人に。
神楽坂明日菜は、誰にも迷惑をかけずに意地を張って正しさを貫いていた強気少女に。

「――お前のことを、お前の選んだ選択肢を、肯定してやる……ッ!」

2人はもう、戻ることなど出来なかった。



【神楽坂明日菜@魔法先生ネギま!(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:COMP(いいもん貰ったなァおい型ことハリセン型)
[道具]:基本支給品、確認済み支給品
[思考・状況]
基本:死にたくない……助けて……
[備考]
名前は同じ神楽坂明日菜かもしれんが、原作の死ぬ気配のないバトル展開と違い……
アニメ版出典の神楽坂明日菜は……
戦闘力が違う!展開が違う!末路が違う!なんなら誕生日すら違う!
ので、何とか現代の範疇に収まっていると判断しました。把握の際はご注意下さい。
[COMP]
1再生アシュラマン:@キン肉マンⅡ世
[状態]:健康


180 : 火葬少女を生かそう!の巻  ◆wKs3a28q6Q :2016/05/20(金) 00:33:28 O4O07qvw0
投下完了です


181 : ◆wKs3a28q6Q :2016/05/20(金) 16:46:50 O4O07qvw0
投下します


182 : レイニーブルー  ◆wKs3a28q6Q :2016/05/20(金) 16:48:13 O4O07qvw0

「ああ、クソ、クソッタレ!」

長谷川千雨は、頭を掻きむしり吐き捨てた。
理由など無い。
ただ、そうしていないと落ち着かなかったというだけだ。

「何だよコレは……何なんだよ!」

突如始まった殺し合い。
突如示された悪魔の存在。

突拍子もなかった。現実味などまるでなかった。
なのに千雨は、直感的に理解してしまった。
これが夢の類ではないと。

「ふざけんなよ……ンで私が……ッ」

千雨はリアリストだった。
例え学園都市まるごと全部クレイジーだとしても、ただ一人常識人であり続けた。
魔法なんてないさ、子供教師なんてウソさ、そんなの絶対おかしいよ!と言える人物だった。

だが、千雨は、一度足りとも目の前の非日常を“夢”だと断じたことはなかった。
起きていることが異常であると認識しつつも、実際に起きてしまっていることとして受け入れていた。
そして、それ故に、狂った状況をどうにもできないことに、誰もどうにかしてくれないということに、苛立ちを覚え続けていたのだ。

「っざけやがって……」

千雨は、この殺し合いを受け入れた。
誰よりも異常性を理解しているが、しかしそれを否定することはしなかった。
今までのように、ただ心の中で異常性に毒を吐いているだけでは駄目だ。
これまでのように流されていては、命を落とすのが目に見えている。

(仮に殺したとしても、緊急避難ってやつになるよな……)

率直に言って――千雨にとって、他の参加者の命など、“どっちでもよかった”んだ。
人殺しそのものには抵抗があるが、しかしながら誰かが死ぬことそのものにはさほど抵抗を感じていない。
見たこともない人間で、なおかつ自分を殺すかもしれない人間で、更に言うなら最後の一席を賭けたゼロサムゲームの相手だ。
死亡を喜ぶことこそあれど、悲しむ余裕なんてない。

(問題は……この悪魔ってやつだよな……)

直接殺したくはないが、それでも生き残るためならば仕方がない。
何せ千雨は、どこにでもいるただの中学生なのだ。
いや、コンピューターウイルスの作成技術や、コスプレ衣装製作能力、フォトショ加工技術なんかは一流のソレではあるが、そんなものこの場においては何の役にも立たない。
ここに居るのは全てのネットワークを統べる電子の王などではなく、別人になりきれる衣装も己の信者も失くしてしまった哀れな裸の王様だ。

(クソッ、冗談じゃねえ……冗談じゃねえが……呼ぶしかねえ、か)

何の冗談か、支給されたのはアッツアツのおでんだった。
はんぺん、ちくわぶ、こんにゃく……様々な具材が入っている。
勿論食べようなんて気にはならないが、それでも恐る恐る手を伸ばす。
確かに熱いが、しかしこれは、千雨のよく知る精密機器が発するソレと同じものだった。


183 : レイニーブルー  ◆wKs3a28q6Q :2016/05/20(金) 16:50:13 O4O07qvw0

(そうだ、しょうがねえ。こんな状況なんだ。“私”は悪くねェ……!)

現状を受け入れ、そして死にたくない千雨にとって、選べる選択肢など1つしかなかった。
“責任転嫁”
それだけが、己の心を壊さずに済む方法。

(どんな悪魔が出てくるか……それによって、行動を決めるッ……!)

死なないための大事な選択を第三者に投げることで、自責の念から逃れようという愚かな行為。
それでも、そうするより他なかった。
普通だからこそ千雨には絶対的な正義の心などなかったし、普通だからこそ迷わず殺しに走ることすら出来なかった。

(圧倒的な力を持つ悪魔が出たら、この殺し合いに迷わず乗る。
 それが搦手系だとしても、なんとか有効活用して殺し合いに乗る。
 だが――勝てそうにないような奴が出てきたら、殺し合いは諦めて、誰かと徒党を組んでとにかく命を守るッ)

まるでコインでも弾くかのように、熱々おでんに触れる。
ネギ――奇しくも、忌々しい子供教師の名前と同じソレだ――に触れた時、COMPが光を発した。
そして、千雨の命運を決める、悪魔が姿を表した。

「なッ……!?」

現れたのは、スラリとした体型の女性。
禍々しい化物じみた姿でなく、限りなく人間のような姿。

「何っ……!」

しかしながら、彼女は人間でない。人間ということはありえない。
鋭い爪に角といった人間にはない部位が、彼女の非人間性を高める。
それに、そもそも普通の人間が、COMPの操作で召喚されるのはありえない。

故に、目の前の少女は悪魔である。
少なくとも、悪魔に類する、人間外の生物である。
それは分かる。分かってしまう。なのに、どうしても、理解が追い付くことはない。

「おまっ……何、で……」

誰も知ってるヤツなんて居ないと思っていた。
仮に居ても、顔を合わせない内に死んでいくだろうと思っていた。
思い込もうとしていた。

そうでないと、殺し合いをする決意が揺らぐと思ったから。
でも、あの善人どもを盲信出来るほど、自分は強くないから。
きっと彼女達の手を取ることも出来ず、でも振りきれる事もできず、中途半端になってしまうから。
――仮にクラスの連中がいても、自分にとって良い方向には転ばないから。
だから、クラスの連中と会うことだけは、警戒していたというのに。
なのに――

「お前がここに居るんだよ!」

なのに、能面のようなその表情に、千雨は見覚えがあった。
今しがた召喚した、自分の相棒たる悪魔に、見覚えがあったのだ。
こんなこと――想定すら、していなかった。

「ザジィィィ!」

道化師は何も答えず、いつものように、ほんの僅か口元を緩めるだけだった。



【長谷川千雨@魔法先生ネギま!】
[状態]:健康
[装備]:COMP(アッツアツのおでん型)
[道具]:基本支給品、確認済み支給品
[思考・状況]
基本:死にたくねェ……殺すのはしょうがないとは思うが……どうすりゃいいんだ……
[COMP]
1ザジ・レイニーデイ:魔法先生ネギま!
[状態]:健康


184 : レイニーブルー  ◆wKs3a28q6Q :2016/05/20(金) 16:51:50 O4O07qvw0
透華終了です


185 : ◆hJ.1Kil1Og :2016/05/20(金) 17:20:23 HyffbEE60
投下します。


186 : ◆hJ.1Kil1Og :2016/05/20(金) 17:22:38 HyffbEE60
閑静な朝の空気の中。
突如響き渡る不協和音。掻き鳴らされる真紅のエレキギター。
ジャングルジムのてっぺんにふんぞり返り、白衣の男は一際激しく弦を弾く、そのままピックを持った右手を頭上へと高く突き上げて――

「ドクタァァァァァァァ・ウェェェェストォォォォッッッ!!!!!」

――最大限のドヤ顔で叫んだ。
キマった。
恍惚とした表情の男の髪のてっぺんの毛がピョインとハートを形作る。
アホ毛だ。それも、動く部類の。なぜか。

この『超天才ドクター・ウェスト魅惑のスーパーモーニングライブ〜ジャパニーズ・リサイタル編〜』を、ただ一人聞いている(聞かされている)者がいた。

「(どうしてこのような目に……)」

ジャングルジムの上でポーズを決めたまま動かない男を見上げ、またすぐ俯き足元を見、パラケルススは青い顔をしていた。


真名、ヴァン・ホーエンハイム・パラケルスス。
本来ならば聖杯戦争において召喚される存在。
だが、今回の彼が現界して初めて聞いたのは自らを呼ぶ呪文ではなく、爆音で響き渡るギター――このエレキギターが男のCOMPであった――の音色だった。(音色と表現するのもはばかられるほどの酷い不協和音でパラケルススは少しげんなりした)

真名を名乗る暇もなく相手が演奏を再開し、今に至る。
しかしこのままでも困るので、パラケルススは再びジャングルジムを見上げ、自分のマスターに声をかけることにした。

「あの、マ」
「ノォォーーーーーーーーッッ!!!!!我輩の名は超絶大・天・才ドクタァァァ・ウェェェェストッッッ!それ以外の呼び名で呼ぶなど失礼極まりないのである!じゃないと我輩悲しくて困っちゃう、嗚呼なんて可哀想な我輩。悲劇のヒロイン……もといヒーロー。天才であるが故に人に理解されずそれでも吾輩は未来へと進んでいくのだなあ。それが吾輩なんだなあ……みつを。んもう、涙チョチョ切れちゃう」

涙を拭う真似をするウェスト。パラケルススの顔色は更に悪くなった。
そんなパラケルススに向けてウェストはビシィ!と指を突き付けた。

「それに何をしているであるか!?せっかくこの我輩がギターソロライブを魅せてやったのである、普段なら黄色い悲鳴とラブコールの嵐が沸き起こりまくりのこの貴重で素晴らしい我輩の演奏に対して拍手の一つもないとは呆れてものも言えないのである。1(ワン)、2(ツー)、123ッヘイコォォォル!!ド・ク・ターッ・ウェ・ス・トッ!ド・ク・ターッ・ウェ・ス・トッ!」
「……」

パラケルススはぱちぱちと手を叩いた。満足げなウェスト。

「それにしても驚いたのである。どう見たってここはアーカムシティなどではないのである……おまけに我輩の最高傑作のエルザもスーパーウェスト無敵ロボ28號も影も形もないのである……」

ウェストは顎に手を当て、うむむと考え込む素振りを見せる。
パラケルススは嫌な予感がした。


187 : 天才と何とかは紙一重というかむしろ完全に向こう岸、マジで。 ◆hJ.1Kil1Og :2016/05/20(金) 17:23:38 HyffbEE60

「だがしっかーし!!この程度の問題など我輩には痛くも痒くもないのであーる!なぜなら我輩は天才だから!こんな天才が生まれて来てよかったのかしら。吾輩が天才すぎてごめんなさい。(ぺこりとお辞儀をするウェスト)はぁ才能ってコワイ……我輩自分の才能がコ・ワ・イ・わ……♡」

ハイなテンションでまくし立て、にまりと笑いながら自分で自分を抱きしめてくねくねしているウェストをパラケルススは呆然と見ていた。
アベレージ・ワン。エレメンタルの魔術師。彼もまた(ウェストが本当に天才であるとして)天才といわれた存在ではある。……が、目の前の生き物はパラケルススの理解の範疇をはるかに超えていた。

「ないのならば作ればいいのであーーーーる!!我輩天才だもんできないことなんてないもん、なのである!一度発明したものを作り直すなんて朝飯前チョチョイのチョイなのであーる!だって我輩は世紀の大天才ドクタァァァウェェストッッ!!そこで我輩を見上げている貴様、貴様も我輩の作品に加えてやってもいいのであ〜る。まずはそうね、両腕をドリルにするところから初めてみちゃったり」
「お断りします」

嫌な予感は本物だった。
間髪を容れず断ったパラケルススにウェストはショックを受けたようだ、ワナワナと震えている。

「な、な、な、なんとッッ!?貴様……この我輩の天才的な提案を断るであるか!?なんという……なんという愚かな……」
「わ、私はサーヴァント、キャスター。そんなことをせずとも、戦う術は持ちあわせております、マスター」
「ノ〜〜ンノンノン。“うわさの超天才ドクター・ウェスト様”である、ふんっ」
「………………うわさの……」
「ふんっ」
「超、天才……」
「ふんっ」
「……ドクター・ウェスト、様」
「……ま、よかろうなのである」

ウェストが意外にもすんなりと機嫌を直したので、パラケルススはほっとした。

「……そ、それでですね、私は貴方に喚ばれた訳ですが、先程申し上げた通り私はキャスター、名をパラケ――」
「ぬぁにぃぃ??貴様、キャスター――魔術師、魔術師と申すのであるかぁ??これはなんという悲劇!もとい喜劇!プー!魔術など笑止千万!!時代は科学であーる!!我輩の発明を見よ!!(ギュイーーンとギターを鳴らすウェスト)パラとかポラとかなんとか知らないけどダメダメダ〜メ、ムリムリム〜リ〜!なのであーる!」

自らを天才と豪語するウェストだが、その知識は確かに本物、むしろ人並み以上。だから、ウェストもパラケルススの名は必ず知っているに違いないのだが。
ハイになったウェストはパラケルススに自己紹介を完遂させることも許さない。

いよいよ先行きが不安になってきていた。
頭がくらくらするのを感じながら、パラケルススは悲しい顔をした。




【?????/1日目/朝】


【ドクター・ウェスト@デモンベインシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:COMP(エレキギター型)
[道具]:基本支給品、未確認支給品
[思考・状況]
基本:破壊ロボを作成する


[COMP]
1ヴァン・ホーエンハイム・パラケルスス:@Fate/GrandOrder
[状態]:健康


188 : ◆hJ.1Kil1Og :2016/05/20(金) 17:24:10 HyffbEE60
投下終了します。


189 : ◆NIKUcB1AGw :2016/05/20(金) 21:14:22 rrQF57Co0
投下します


190 : 女子高生はかわいい動物が好き ◆NIKUcB1AGw :2016/05/20(金) 21:15:17 rrQF57Co0
ここはとある駅前のバス停。
この地が本物の東京であるなら人でごった返すであろう場所だが、実際に現在ここにいるのは一人の少女だけだ。
少女の名は、多軌透。基本的には、普通の女子高生である。
「基本的には」と断ったのは、彼女は人ならざるものとの接点を持っているからだ。
彼女の祖父は妖怪をこよなく愛する男であり、独学で妖怪を研究していた。
祖父亡き後その資料を読んだ多軌は、そこにあった「妖怪が見える陣」を地面に描いてみた。
その結果本当に妖怪を目撃してしまった彼女は、妖怪による事件に巻き込まれてしまったのだ。

「なんでこんなことになっちゃうかなあ……。
 今度は夏目くんも助けに来てくれないだろうし……」

うっすらと目に涙を浮かべながら、多軌は呟く。
以前妖怪に命を狙われた時は、自分以上に妖怪に関わってきた同級生が勇気を振り絞って助けてくれた。
だが今回は、その時と同じようにはいかないだろう。

「弱音吐いてたって、仕方ないよね……。
 私も夏目くんを見習って、勇気を出さないと……」

涙を拭き、多軌は顔を上げる。
今度は自分が、困っている人たちを助ける番だ。
彼女はそう心に誓った。


◆ ◆ ◆


「で、これがCOMPかあ……」

手にしたタブレットを見つめながら、多軌は呟く。

「んー……。危ないのが出てこないといいんだけど」

何度も妖怪に接触してきた彼女が、今さら悪魔の存在を疑うことはない。
だが、問題はどんな悪魔が自分に支給されているかだ。
悪辣な妖怪にも善良な妖怪にも触れてきた多軌だからこそ、どちらが来るかわからず悩むのである。

「まあ悪魔を使って殺し合いしろってことなんだから、最低限言うこと聞くのが入ってると思うんだよね……。
 こんなことする人の人間性を信じるってのもどうかと思うけど……。
 えーい、やっちゃえ!」

覚悟を決めて、多軌は悪魔の召喚を行う。
その瞬間、彼女の視界は光に覆われた。

「え、何!? どういうこと!?」

状況がわからず、困惑する多軌。
その上空から、声が降り注ぐ。

「ふう、やっと出られたでふ〜。オリジナルより小さくなってるとはいえ、COMPの中は狭っ苦しいでふぅ」

多軌に支給された悪魔。それはとても大きく、とても太った化け猫であった。

「チミがオラっちのマスターでふ? よろしくでふ〜」
「か……」
「か?」
「かわいい〜!!」

目を輝かせて、多軌は悪魔にしがみつく。
そのデブ猫の外見は、多軌の美的センスにどストライクであった。


【?????/1日目/朝】
【多軌透@夏目友人帳】
[状態]:健康
[装備]:タブレット型COMP
[道具]:基本支給品、確認済み支給品
[思考・状況]
基本:殺し合いを望まない人たちを助ける
[COMP]
1:デブニャン@映画妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!
[種族]:魔獣
[状態]:健康
[備考]:全長は3メートルほどに縮小されています


191 : ◆NIKUcB1AGw :2016/05/20(金) 21:16:07 rrQF57Co0
投下終了です


192 : UTSUHO MAY CRY ◆mcrZqM13eo :2016/05/20(金) 23:28:50 ZFZEUupQ0
投下します


193 : UTSUHO MAY CRY ◆mcrZqM13eo :2016/05/20(金) 23:29:50 ZFZEUupQ0
「ぬわあああああああああああああああああ!!!!」

地下鉄の路線に響く絶叫。霊烏路空(以下お空)は全力で自分を召喚したサマナーから逃げていた。

――――なんだあの人間は!?紅白巫女や白黒魔法使いと違って只の人間なのになんであんなに悍ましいんだ。

捕まったら絶対ロクでも無いことになる。そう確信してお空はひたすら走る。走る。


〜回想シーン〜


その人間に呼び出された時お空は元気いっぱい叫んだ。

「地底の太陽 霊烏路空!!能力は核融合を操る程度の能力!!!」

お空の挨拶を聞いた人間の冷たい端正な顔立ちが、悪鬼のそれへと変わった瞬間、お空は悍ましさに耐えきれずに逃げ出した。


紐緒結奈は怒り狂っていた。
今日は卒業日、伝説の樹に向かっている最中にこんな場所に連れて来られたのだ。
有頂天だった紐緒閣下の乙女心は、有頂天な憤怒へ取って変わられた。
魔神皇死すべし、慈悲は無い。

――――とはいえどうしたものかしら。

真・世界征服ロボは昨日彼に破壊されたし。きらめき高校科学部と同じ程度の設備があれば、また作れるが……難点は動力である。強力なエネルギー源が必要だ。

――――悪魔でどうにかなったりして。

紐緒結奈は天才である。天才は眼の前の事象に『有り得ない』などと言う寝言は吐かない。
如何なる事でも事実として受け止めた上で解析し、人智の元にその存在を明らかにするのだ。

「取り合えずは、出してみましょうか」

まずデイバックの中身を確認する。

「これは……」

中に入っていたのは二年の時、文化祭のレーザーアート用に紐緒が製作した兵器にも転用出来るレーザーであった。

「一発きりではあるけど有用な武器が手に入ったわね」

――――次は悪魔。

支給品に有ったノートパソコン型COMPを操作して、悪魔を呼び出す。
レーザーを向けて、襲って来たら即座に射殺する構えだ。

そして――――

出て来た悪魔の名乗りを聞いた時紐緒閣下は確信した。

――――勝てる。

早速コンタクトを取ろうとしたら、悪魔は加工場の一斉駆除に遭遇したゆっくりの如く勢いで逃げ去っていた。


【?????/1日目/朝】
【紐緒結奈@ときめきメモリアル
[状態]:健康・高揚
[装備]:COMP:ノートパソコン型
[道具]:基本支給品、レーザー@ときめきメモリアル
[思考・状況]
基本:
1.魔神皇を制裁する
2.殺し合いなんてくだらないことはやらない
3.この悪魔(霊烏路空)を世界征服ロボの動力源にする。
[COMP]
1:霊烏路空@東方Project
[種族]:妖鳥
[状態]:健康・恐怖


194 : UTSUHO MAY CRY ◆mcrZqM13eo :2016/05/20(金) 23:30:23 ZFZEUupQ0
投下を終了します


195 : ◆u7XsmNgePI :2016/05/21(土) 00:02:50 m6Zwb.B.0
投下しますね。


196 : 完璧悪魔 ◆u7XsmNgePI :2016/05/21(土) 00:03:25 m6Zwb.B.0
 
「彼は言った、殺し合いは必ずしもみんな平等とは限らない。
 彼は言った、殺し合いには絶対勝者と敗者が存在する。

 彼は言った、その参加者の頂点が自分自身。
 そう、Top of the Battle Royale!

 彼が法であり、秩序保たれる。
 すぐさま終息、Summoners Royale!

 時は来た、彼こそ真の支配者。
 彼の前にひざまずくのは敗者。
 すなわちマーダー、恐怖への敗者。
 加えて主催者、スクールカーストの敗者。

 感謝の言葉、彼に乱射。
 召喚者、被召喚者、かけろ拍車

 民ども、崇める準備はいいか?
 自分を高める運気欲しいか?

 さあみんな手を天にかかげ、
 そして今こそ祈れ。

 恐れるな、おののくな。
 吠えろ(hey)声あげろ(ho)
 その血と魂を、いま捧げろ」


 召喚者たるメガネの青年による捲し立てるようなMC。
 マイク型COMPによって増幅されたそれは、召喚された悪魔を媚びへつらうかのように持ち上げた代物だ。

 しかしとうの悪魔はというと恥じらう素振りも見せず、平然とした様子でここまで聞き、満を持してという様子で前に出る。
 その動作は余裕の表れであるかのように緩慢であり、たっぷりと時間をかけてようやく召喚者のすぐ横まで到達する。
 そうして、やはりゆっくりとした動作でマイクを口元まで持って行き、殺し合いに巻き込まれたすべての参加者と悪魔に――宣言をした。


「I'm a perfect daemon」



【???/1日目/朝】
【藤森慎吾@現実】
[状態]:健康
[装備]:マイク型COMP
[道具]:基本支給品、支給品(確認しているかも不明)
[思考・状況]
基本:民ども崇める準備はいいか?
[COMP]
1:中田敦彦@現実
[種族]:PERFECT DAEMON
[状態]:PERFECT
[備考]:しくじった偉人たちの知識が豊富(@しくじり先生より)なので、狭間のしくじった過去をしっています。
    しくじった過去以外の知識があるかは、後続の書き手にお任せします。


197 : ◆u7XsmNgePI :2016/05/21(土) 00:03:41 m6Zwb.B.0
投下終了です。


198 : ◆jOkrd9mmNM :2016/05/21(土) 00:18:52 kVXPb2jw0
投下します


199 : お願い!ピンクだま  ◆jOkrd9mmNM :2016/05/21(土) 00:21:11 kVXPb2jw0
今年のシンデレラガールズは─!!



鳴り止まぬ歓声。
客席を所狭しと踊る、サイリウムの光。
降り積もる紙吹雪が照明を反射して、まるで星々の瞬きのよう。

どこにでも居る普通の女の子の名は、島村卯月。
彼女は今宵、0:00にも解けない魔法にかかった。

「みんな、ありがとうございます!!」

忘れられぬ思い出。
仲間たちの祝福。
抱えきれないプレゼントを胸に、彼女は特別な自分【シンデレラ】になった。
そして。


「……」


路地裏の薄汚れたゴミ捨て場のそば。
震えるシンデレラは声を殺して泣いていた。
舞踏会は終わってしまった。
華やかなドレスは既に無く、身に纏うのは普段通りの学校の制服。
魅力を振りまく、満面の笑顔はとっくに消えている。
何故自分はここにいるのか。
大いなる夢の一つを叶えたのは、一夜の淡い夢だったのだろうか。
様々な考えが巡りにめぐり、止めどない涙へと形を変えて溢れていた。

「パパ、ママぁ……プロデューサーさん……」

「……」

「ちひろさん……凛ちゃん、未央ちゃん……」

「……」

「ぐすっ、うぅ………ひっく…………」


200 : お願い!ピンクだま  ◆jOkrd9mmNM :2016/05/21(土) 00:21:43 kVXPb2jw0

「……ぽよぉ」

「えっ?」

涙目の卯月が顔を上げると、そこには桃色の何がしかが鎮座していた。
ポリバケツを椅子代わりにして、自分の顔を首(ない)をかしげて見つめていたのだ。
一瞬訳もわからないまま、そのピンクの球体と睨めっこをする形となる。

「……あっ、ひょっとして……」

混乱の最中でうろ覚えではあったが、COMPと呼ばれる物が悪魔を呼び出すと説明されていた。
自分は実行した覚えは無いというのに呼び出されるのもおかしな話だが、無理もない。
スマートフォン型のそれを助けを呼ぶのに使えないかと動作させた際、うっかり起動してしまったようだ。
一介の女学生にとって、今の状況はそれほどまでの混乱を呼ぶほどの事態だ。

「え、えと……悪魔、さん……ですよね」

「ぷゎ……」

ピンク色で、息遣いに合せて弾んでいるようにも見える。
その風体はどこか友人が大事にした、ウサギのぬいぐるみを彷彿とさせた。
指先でつついてみる、柔らかく、ほのかに温かい。
ちゃんと体温がある。
どうも生き物で合っているらしい。

「ぬいぐるみ……じゃないんですね」

「ぽーよ」

「あっ」

ピンクの球体は、涙に濡れた卯月の顔にその手のような部分で触れた。
ぷにぷにとした手で、涙を拭ってくれているようだ。
何やら心配そうな表情を彼(彼女かもしれない)は浮かべている。

「……ありがとうございます」


まあるい悪魔は、にっこりと笑って自分を励まそうとしてくれている。
そんなに自分は情けない顔だったのか、とふるふる頭を振って気分を入れ替える。
このままめそめそしているだけで、終わってたまるものか、と。


「ぽぇぇ」

「あっ、私の荷物ですか?」

傍らの荷物から飛び出していた物体を、ピンクだまはしきりに気にしているようだ。
それは、卯月もアイドルを続ける中でよく目にしていた物。

「これは……」

アイドルの自分にできることを、ここでも貫けというのだろうか。
そう誰かに言われている気がした。

「ぽよー、ぽよー」

しかし、こちらは。
大きな口を開けて、物欲しそうにその【マイク】を見つめていた。

【???/1日目/朝】
【島村卯月@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:健康
[装備]:スマートフォン型COMP
[道具]:基本支給品、充電式コードレスマイク
[思考・状況]
精一杯輝く星になる。
[COMP]
1:カービィ@星のカービィ
[種族]:ピンクのあくま
[状態]:健康


201 : ◆jOkrd9mmNM :2016/05/21(土) 00:22:33 kVXPb2jw0
投下終了です。


202 : ◆SZAHMv8OOM :2016/05/21(土) 02:15:39 dZg5oZSQ0
投下します


203 : 屍鬼 ◆SZAHMv8OOM :2016/05/21(土) 02:17:04 dZg5oZSQ0

「いったい何が起こっている……?」

土塊と赤い水で薄汚れた白衣を身に纏った村医者、宮田司郎はぼそりと呟いた。
ただ事の不可解さに眉をひそめてはいたが、困惑や怯えといった様子はさほど見られない。
それは情緒に乏しい、あるいは努めて平静であろうとする彼自身の気質によるものであり、また先ほどまで別の異常事態に直面していたからでもある。

夜間恋人を人気のない山中に埋めている際に、突如として赤い雨の降り注ぐ、時空の歪んだ世界に巻き込まれ。
何度死しても起き上がってくる村人たちの成れの果て――“屍人”を時にやり過ごし、時に殴打したりしながら異界を彷徨い歩いていた。
そうであったはずが、どういうわけか気付いた時にはこうして首輪を嵌められ、見知らぬ場所に移動していた。

宮田は周囲を見渡す。ずらりと並んだ無人の観客席に、緞帳の上がった舞台。
ここは演劇ホールか何かだろうか。一介の小村である羽生蛇村にはあるはずもない立派な施設だ。
壁の時計は6時を指していたが、窓のない遮光されたこの空間からでは、今が朝なのか夜なのかも窺い知ることはできなかった。

大した説明もないままに、否応なく強制的に立たされた舞台。演目は“殺し合い”。
先程まで携行していたはずのネイルハンマーやラチェットスパナなどがなくなっていることを確認し、宮田は冷静に荷物を検め始めた。

「これは……」

突然「殺し合いをしろ」などと言われてもさして動じはしなかった宮田の目が、わずかに揺らぐ。
果たしてデイパックの中から出てきたのは、漢字の「生」の字を逆さまにしたような装飾物に数珠をつなげ、首から提げられるようにしたものであった。
その意匠は宮田の住む村の土着の宗教で「マナ字架」と呼ばれるものであり、しかもこれは、秘教の祭司である求導師に代々受け継がれる特別なものと同じに見えた。
今は双子の兄である牧野慶が携えるものであり、宮田の手に渡るようなことは決してないはずのもの。

――なぜこれが、こんなところに?

内心の動揺を押し殺しながら再度鞄を探り、見つけた説明書きに目を通す。
そしてこれが、白い学生服の少年が言っていたCOMPというものらしいとわかった。

宮田はひとつ息をつく。
まさか求導師に伝わるマナ字架が、実は悪魔を呼び出せるような代物であったなどというわけはあるまい。
つまりこれは、見た目こそよく似ているが別個のもの。
悪趣味だと思いつつも得心のいった宮田であったが、とはいえこれが本物ではないのだとしても“宮田”の首に提げるわけにはいかないだろうと、手に持ったままで操作をする。


――SUMMON


舞台床に魔法陣が浮かびあがり、光が立ちのぼる。
それが消えるのと引き換えに、ひとりの少女が現れた。
歳の頃は12、3といったところか。紫陽花色のワンピースはいかにも軽やかな線を描いている。
陽を嫌うような、蝋のように白い肌。よく手入れのなされた長い髪がさらさらと音を立てるように揺れる。

「お前が“悪魔”なのか?」宮田は訝しげに問うた。

「ええ、そうよ。わたしは屍鬼 沙子(すなこ)。一度死んで、墓穴から起き上がってきた者。
 けれどもゾンビのような単なる死体でなく、ちゃんと精神が宿っていて、人間と等価の存在。
 ……でも生者ではない。ぜんぜん異質な存在。
 屍の鬼と書いて屍鬼――いい響きでしょう? わたし、この言葉は気に入ってるの」

人形のように愛らしい様子で、歌うように少女は答える。
深窓の令嬢。蝶よ花よと育てられた、夢見がちな箱入り娘。単純に見たところの少女の印象はそんなものでしかなかった。
――しかし。


204 : 屍鬼 ◆SZAHMv8OOM :2016/05/21(土) 02:18:09 dZg5oZSQ0

「絶対的な孤独。理不尽に区別された者。神様に見放された痛み。
 ――あなたはなんだかそんな感じね。そういう目をしているわ」

続いた沙子の言葉に、宮田の目がすっと細まった。
じっと睨め付けると、年端のいかぬ少女には相応しくない、人の心の奥底を見透かすような光のない瞳と目があった。

沙子の言葉は、宮田の禁忌の淵をなぞるようなものであった。
27年前、村に起きた未曾有の災害で両親を失い、双子の兄と別々の家に引き取られることとなった時より始まる隔絶。
村中の信仰と敬慕を集める求導師として、光輝の中を過ごす兄。
異常な愛情を注ぐ義母と関心を向けない義父の間で“宮田”の人間として、手を汚し血に塗れることを強いられた己。
異界に巻き込まれる少し前、そのタブーに不用意に踏み込んだ恋人に対しては、抱く想いが愛情から激しい殺意へと転じたばかりだ。

「でも、そうね、神様は何も施してくれたりしないけれど。
 “彼”は言ったのでしょう? なんでも願いを叶えてくれるって。
 あなたはどうするの? みんなを殺してまわるの?」

無邪気に、今日の紅茶の茶葉は何にするかといった気軽さで沙子は言う。
愚問だとばかりに宮田はふんと鼻を鳴らし、固くしていた身をほぐす。そのまま沙子から顔を背けて荷物の確認作業に戻った。
それでもくすくすと、楽しげに沙子は笑い続けている。

いくらか落ち着きを取り戻した心で支給品を選り分けながら、そういえば、と宮田はふと思う。
召喚したはじめから、少女はずっとこんな様子だった。
まるで誰かと話を――つながりができること自体を、喜んでいるかのような。

起き上がった死者。生命の理を外れ、見かけ以上の時を過ごしてきたのだろうか。
人とは隔てられながら、光の当たらぬ闇の中を……孤独に。

宮田がこの少女について知る所など何もないに等しい。
共鳴したようなこの感覚も錯覚で、的外れなものなのかもしれない。
ただそう思い及んだことで、宮田は打ち切るつもりだった会話をもう少し続けてみることにした。

「とりあえず俺はこんなところで無為に死ぬつもりはない。……あんたにも協力してもらうぞ」

沙子はにこりと微笑み、スカートの両裾を摘まんで礼をした。

「ふふふ、そうね。今後ともよろしく、カインさん。――いいえ、それともアベルなのかしら?」


【?????/1日目/朝】
【宮田司郎@SIREN】
[状態]:健康
[装備]:COMP(マナ字架型)
[道具]:基本支給品、確認済み支給品(1)
[思考・状況]
基本:まだ死ぬつもりはない
[COMP]
1:桐敷沙子@屍鬼
[種族]:屍鬼
[状態]:健康
※演劇ホール内の照明は非常電源によるものです。
※沙子本来の夜明けになると強制的に眠りにつく体質などについては次話以降にお任せします。


205 : ◆SZAHMv8OOM :2016/05/21(土) 02:18:39 dZg5oZSQ0
投下終了です


206 : ◆DpgFZhamPE :2016/05/21(土) 02:24:47 Sk9lmLG20
投下します


207 : 空腹  ◆DpgFZhamPE :2016/05/21(土) 02:25:38 Sk9lmLG20
―――生を謳う、花が咲く。
そよ風が吹き、草は青々しく育ち、白い雲は眩しく浮かぶ。
わたしの名前は吸血鬼。
醜い醜い血吸い鬼の、綺麗な綺麗な心象庭園。
夢見る乙女の愉快な世界。
ああ、でも。
ごはんの時間が来てしまった。
当たり前よ、生きているんだもの。
綺麗の終わりがやってきた。
醜い食事の時がきた。

―――命を吸い、花が枯れた。
風は淀み、大地は割れ、吹き荒ぶ砂塵が空を覆う。
わたしの名前は吸血鬼。
血に飢え食欲に塗れた、不様な不様な心象風景。
生きとし生けるものは枯れ、土に還ることなくわたしの中に。
血望む乙女の枯渇庭園。

ああ、でも。
一人だけ、まだ生きているみたい。


「オハヨウ」

黒髪。長身。知らない、男。
わたしの心に忍び寄る。

「食ベタイナラ、食ベレバイイ」

「ホラ」

「食ベテ食べテ食べ尽クシタ先ニ」

「狂ッタ破壊人形ニナッテシマエバイイ」

「我慢ナンテシナクテイイ」
「一緒ニ」
「食ベテ」「殺シテ」「幸セニナッテ」「最後ノ一人ニナッテ」

「オレガ―――ニナル」

最後の一部分だけが、聞こえなくて。
もしかしたら、この全てが幻聴なんじゃないかって、そんな気がして。
空腹を訴えて。
わたしの身体は、動き出した。





◇ ◇ ◇


208 : 空腹  ◆DpgFZhamPE :2016/05/21(土) 02:30:08 Sk9lmLG20
ジメジメと湿気が充満した路地裏にて、身体を起こす。
弓塚さつき―――『死徒』である。
汚れた衣服から砂埃を払い、水溜まり等で濡れてないかを確認する。
顔が寝惚けてないか、パンパンと軽く叩き意識を覚醒させる。
出来ることなら顔を洗いたいが、近くに水道の存在は見当たらない。
仕方ないので、取り敢えずは我慢した。

「もー…運ぶなら運ぶでもっと丁寧に運んでよー…」

殺し合いだの何だのと説明された後、彼女が飛ばされたのはホームレスも柄の悪い男たちでも立ち入らないような路地裏であった。
『魔神皇』とか名乗っていた男の話はしっかりと覚えている。
眠りから眼を覚ますように意識を呼び起こすと、そこには大量の人間。
殺し合い。最後の一人が願いを叶える。友達になれる『悪魔』。どんっと首が飛んだ人たち。
はて。
寝惚けてコスプレイベントにでも参戦してしまったのだろうか。
わたしったらうっかりさん。
最近のコスプレはリアルだなーなんて考えている内に彼女の身体はまるで玩具のようにひゅーんと飛ばされ、しゅんっと移動し、受け身を取る暇もなく頭からずどんっと路地裏に放り投げられた。
割と容赦のないスピードで放り投げられたため暫し気を失っていた。
おかげで変な夢を見た気がする。
ひりひりと傷むデコを撫でながら、現実を再確認する。
正直なところ、殺し合い、なんて言われても実感は沸かない。
それなりに―――というか人並み以上に危険に揉まれて生きてきたが、此処まで危険が高まると最早現実味が薄れてくる。
―――だが、首を締め付ける違和感が緊急事態ということは理解させる。
このままでは人が死ぬ。一人や二人では済まない。
自分は怪物じゃない―――心まで怪物になってしまったら、おしまいだ。
だからこそ、彼女は人を守る。
死徒でありながら人を襲わず。
心だけは人間であるために。

「…とりあえず、シオン探さなきゃ」

そのためにも、他の友達を探さねばならない。
不用意に出歩いて代行者に消されてはそれこそ意味がないが、それはそれこれはこれ。
緊急事態なので、『不用意に出歩くな』というシオンの言い付けは破らせて頂くことにした。
しかし、陽光の下を歩くのも問題がある。

「うーんじゃあ――あれ?」

じゃあどうしようか、と。
頭を悩ませた彼女の懐から、かつん、と何かが落ちる。
折り畳み式の携帯のような、何かだった。

「携帯、じゃないよね…こんなもの、持ってたかな」

恐る恐る拾い上げる。
開いて眺め観察するが、ボタン配置も携帯そのものだ。
こんなもの持ってた覚えないけどなー……と、通話ボタンをつつく。
すると。
それと同時に液晶に表示される英文。
直後に、端末が光を帯びる。

「え?ちょっと待って、わたし変なとこ触っちゃったーーーーっ!?!?」

端末を光源に、眩い光が辺りを包む。
思わず瞳を閉じ、変な操作でもしてしまったかとわたわたと焦り出す彼女を余所に―――光は、暫く経つと収まった。


209 : 空腹  ◆DpgFZhamPE :2016/05/21(土) 02:33:34 Sk9lmLG20
徐々に、路地裏の暗闇に瞳が慣れてきた。
眩い光に一瞬視覚をやられたが、それも大した障害ではない。
携帯も、爆発や破裂などという大きな変化もなく、光を放出する前と何ら変わらなかった。
ただ、一つを除いては。

「……え?」

男だ。
男が立っている。光の中から、男が現れた。
黒服―――軍服だろうか?を身に纏っている、若い男。
なんというファンタジー。驚愕で尻餅をつき腰が抜けそうになったが、その様子に男―――いや、年はそう自分と大差ないように見える―――は苦笑し、右手を差し伸べる。

「アレン・ウォーカーです。今後ともよろしく…いや、今後ともはおかしいのかな?
えっと、よろしくお願いします」

丁寧な、可愛い若者だ。
しかし、差し伸べられた手を握る前に、ある言葉が脳裏を過る。

『―――細やかながらCOMPには君たちの"友"となりうる悪魔を封じ込めておいた』

恐らく、この携帯がそのCOMPというものなのだろう。
ならば。
このCOMPから現れたこの若者は。

「えーと…もしかして君、悪魔…?」
「悪魔……いや多分この状況だと悪魔だと思うんですけど……いや、でもAKUMAではないというか……」

もじもじと言い淀む若者に若干の不安を覚えたが、答えを整理できたのか、はっきりと此方を見据える。
一回咳払いをし、再び笑顔を浮かべる。

「退魔師<エクソシスト>、です!」

…。
……。
………。

「ファンタジーだね……」
「ええっ!?もしかしてその目、信じてません……?」

遠野くん、わたし、頑張れそうにないです。
目の前のファンタジーにそう漠然とした不安を抱きながら。
それにしても、おなかすいたなぁと。
若干の空腹を訴える、さつきであった。











『アクマ、ダッテ』
『丁度イイ舞台ジャアナイカ』


『ネエ、アレン?』

【?????/1日目/朝】

【弓塚さつき@MELTY BLOOD Actress Again】
[状態]:健康、若干の空腹
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、未確認支給品(1)
[思考・状況]
基本:魔神皇を止める(現実味を感じていない)
1:でも日光の下をあるくのは…
[COMP]
1:アレン・ウォーカー@D.Gray-man
[種族]:退魔師
[状態]:健康


210 : 空腹  ◆DpgFZhamPE :2016/05/21(土) 02:33:59 Sk9lmLG20
投下終了です


211 : ◆lb.YEGOV.. :2016/05/21(土) 02:44:46 ghMZyBqU0
二作投下します


212 : ありす・イン・バトルロワイアル ◆lb.YEGOV.. :2016/05/21(土) 02:46:07 ghMZyBqU0
兎を抱えた少女が一人、きょろきょろと怯えた視線で周囲を伺いながら魔境と化した街を歩く。
何故こんなことになってしまったのか、少女・橘ありすには皆目検討もつかない話だった。
ただのアイドルでしかない自分が何故連れてこられたのか?
プロデューサーや他のアイドル仲間は無事なのか?
自分はどうなってしまうのか?
恐怖と混乱に押し潰されそうな心を、タブレットにインストールされていたアプリで召喚した兎を抱き締める事でまぎらわす。
ぷう、と微かに苦しそうな鳴き声を兎があげた。

「あっ、ご、ごめんなさい」

力を込めすぎてしまったのだろう。ありすは慌てて抱き締めていた力を緩め、兎の頭を撫でる。
ほわほわとした柔らかな毛並みが、微かにありすの心を癒してくれた。
悪魔として喚ばれたせいか、兎はありすの一挙手一投足にも無闇に暴れる事もなく大人しくしている。
無人の雑居ビルに逃げ込み、周囲に気配がないことを確かめて人心地つく。

(帰りたい、プロデューサーさん……事務所の皆……)

精神的な疲れから座り込むと、気が緩んだのか目元にじわりと涙が浮かぶ。
12歳の少女に、この環境はあまりにも過酷だ。脳裏には彼女を担当しているプロデューサーや、仲のいいアイドルの仲間が浮かんでは消えていく。

(会いたい……帰りたい……死にたくない……殺したくなんか、ない)

体育座りになり、声を押し殺して涙を流す。
死にたくない。アイドルになって開けた、かつての彼女では到底体験することなど出来なかった新しい世界。もっとその先に行ってみたいから。
だからといって誰かを殺すことなど出来はしない。倫理的な問題などではなく、誰かを殺せば自分はもうあの輝く世界に帰ることが出来なくなると、直感的に理解していたから。
必死になって覚えた歌とダンスも、タブレットで収集した知識も、この場所ではなんの役にも立ちはしない。
無力な少女はただ一人、泣きはらす以外の方法を見出だせない。
悪魔の兎は、そんな少女に黙って寄り添っている。

不意に、物音がなった。
弾かれるようにありすが頭をあげると、涙でぼやけた司会に成人らしき人影がひとつ。彼女の存在を認識したのだろう、1歩1歩ありすへと足を進めていく。
真っ先にありすの中にわきでた感情は恐怖だった。

「だ、誰ですか……?」

震える声で話しかけるも、人影は応える気配がない。
涙を拭い、目をこらす。クリアになった視界に映ったものを見たありすの口から恐怖にひきつった声が漏れた。
そこにいたのは男が一人。
目を真っ赤に充血させ、その手には西洋剣。身にまとうは中世ヨーロッパからタイムスリップしてきたかのような革の鎧。そして、背中から肩に突き刺さった無数の矢。
獲物を前にした人型の悪魔は、まるで獣の様な笑みを浮かべる。

(――あ)

このままでは殺される。
慌ててありすは立ち上がろうとするが体が動かない。
許容量をオーバーした恐怖により腰が抜けてしまったのだ。

「やだ……。や、だぁ……!!」

もがくように体を動かす。
少しでも遠く。
一刻でも早く。
気が逸るばかりで体は満足に動かない。
愛らしい顔は涙に濡れて恐怖に歪む。
その様が悪魔の嗜虐心を煽り舌なめずりをしながら凶相を喜悦に歪ませる。
歯の根が合わずガチガチとぶつかり、絶望が視界を染める。

不意に、白い何かがありすと悪魔の間を遮った。

(兎、さん……?)

涙に濡れたありすの瞳が丸く見開かれる。
彼女を守る様に彼女の召喚した兎が悪魔の前で威嚇の姿勢を取っていた。

「駄目……! 逃げ、て……!」

成人男性相当の悪魔に対するは、小学生のありすでも抱えられる程度の兎。
それはさながら象に立ち向かう蟻の様に絶望的な構図。
それを悪魔も理解しているのだろう。無駄なことをと言わんばかりに兎に対して嘲笑を浮かべる。
満足に動けない体を必死に向けてありすが兎に逃げるように促すも、兎は頑として逃げるそぶりを見せない。
悪魔は厭らしい笑みを浮かべながら抜いた剣を振り上げる。
見せつける気なのだ。たった一人の観客に、少女を守ろうとした健気なナイトが無惨に、残酷に散る様を。

「駄目ーーーーーッ!」

少女の絶叫と、悪魔の哄笑が重なった。


213 : ありす・イン・バトルロワイアル ◆lb.YEGOV.. :2016/05/21(土) 02:46:51 ghMZyBqU0






ボーパルバニーは ラームジュルグに とびかかった
2かい あたり 6の ダメージ

ラームジュルグは くびを はねられた!


214 : ありす・イン・バトルロワイアル ◆lb.YEGOV.. :2016/05/21(土) 02:47:21 ghMZyBqU0

「……え?」

その刹那に起こった光景を見て、ありすは呆けた声をあげる。
剣が振り下ろされるのと、兎が跳躍したのはほぼ同時だった。
剣撃をすり抜けた兎はそのまま悪魔の首筋へと向かう。
兎が口をあける、鋭く尖った前歯が危険な光を放った。
歯が二度閃き、紅が舞う。
ごとり、と音を立てて驚愕に満ちた表情を浮かべた悪魔の頭が落ちて転がった。
頭を失い、切断された首から噴水の様に血が吹き出して周囲を濡らす。
距離があった為か、ありすにかからなかった事は幸いだっただろう。

呆然と眺める事しかできないありすと、振り向いた兎の視線が重なる。
純白の体を朱に染めた兎の、血のように赤い目を見た所で、ありすの脳はこれ以上の精神的負荷を防ぐため、彼女の意識を強制的にシャットダウンさせた。
急に倒れたありすに駆け寄ろうとして兎、狂える魔術師のダンジョンにおいて数多の冒険者の首を切り落としてきた魔獣・ボーパルバニーは動きを止める。
この血に濡れた姿で近寄っても主である心優しき少女には逆効果である事を理解する程度の知能は持っていた。
ひくひくと鼻を動かし、困ったように虚空を見上げる。

アリスを導く時計ウサギというには、それは少々以上に血生臭すぎた。

【?????/1日目/朝】

【橘ありす@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:健康
[装備]:COMP(タブレット型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:死にたくない。殺したくない。帰りたい。
[状態]:気絶
[COMP]
1:ボーパルバニー@wizardry
[種族]:魔獣
[状態]:健康、血塗れ


215 : 運命の車輪(ホイール・オブ・フォーチュン) ◆lb.YEGOV.. :2016/05/21(土) 02:48:50 ghMZyBqU0
約束したんだ。
必ず、いつの日かまた会おうって。

あいつと別れた今でも、あの時の事は鮮明に思い出せる。
人影もないとても静かな街で「世界中で二人だけみたいだね」と笑うあいつ。
閉まる電車の先で、いつかの再会を約束したあいつの震える声。
電車ととも追い付けと精一杯自転車をこいでも結局はぐんぐんと離されて、それでも遠ざかるあいつに見えるように大きく振った手。
今までいつも背中にあった感触がなくなって「世界中に一人だけみたいだなぁ」と小さくこぼした僕。

あいつと僕はまだ会えていない。
あいつとの約束は果たさなければいけない。
だから、僕は生きて帰る。
他の何を犠牲にしたって、帰るんだ。

ドルルルン、とエンジンの音が鳴る。
何故か支給された僕愛用の自転車から現れた車は僕が運転していないのに独りでに進みはじめた。
ああ、やはり車に見えても悪魔なんだな、とどうでもいいことが頭を過る。
なんで僕がこんなところに呼び出されたのかはわからないし、マジンノー? とかいうどこぞのロボットみたいな名前を名乗った学生とは面識だってない。
願いを叶えてくれると言ったときに、あいつと会わせてもらうというのも考えたけど、やっぱりやめた。
あいつにはあいつの事情がある訳で、なのにいきなり会いに行くのは迷惑だろうし、何よりもあいつに会いに行くことを人殺しの理由にはしたくなかった。
あくまで、いつの日かまた会うために。自分が生き残る為に人を殺すんだ。

錆びついてなんかいない車輪は悲鳴をあげる事もなく僕の体を運んでいく。
殺戮の舞台へと。

【ぼく@車輪の唄(BUMP OF CHICKEN)】
[状態]:健康
[装備]:COMP(錆び付いた車輪の自転車型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:優勝し、生きて帰る
[COMP]
1:クリスティーン@クリスティーン
[種族]:外道
[状態]:健康、ハイオク満タン


216 : ◆lb.YEGOV.. :2016/05/21(土) 02:49:29 ghMZyBqU0
以上で投下を終了します


217 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/21(土) 03:32:58 LcWlGUQQ0
皆様投下乙です
自分も投下します


218 : 悪魔のいけにえ レザレクション ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/21(土) 03:33:27 LcWlGUQQ0
 路地裏でチェーンソーを弄くり回しているひとりの女性が居た。
 服装はゴシックパンク。髑髏の指輪やピアスなどの装飾品を数多く身につけている
 彼女の名はソーヤ、犯罪都市ロアナプラでの職業は掃除屋。たまに別の仕事も受ける

「変な…構造だけど…キチンと…使える…みたいね」

 チョーカー型の人工喉頭から、満足そうな声が発せられる。
 液晶やら操作パネルやらが組み込まれたチェーンソー型のCOMPは、概ね彼女が愛用していたものと同程度の働きはこなせそうだ
 使いなれた武器が手元にあるというのは心強い。ある程度手持ちの品の確認を終えたソーヤは、黙々と『作業』に集中している同行者に声をかけた。

「そろそろ…行くわよ」

 その言葉に、野良悪魔の解体に勤しんでいるエプロン姿の悪魔は、作業の手を止め振り返った。
 その悪魔は、何かの皮を継ぎ接ぎして作成したラバーマスクで顔を覆っている。その異相は、コボルトの返り血で赤く染まったエプロンと合わさって異様な迫力を増していた。
 ソーヤはそれが何の材料で作られたのか、ある程度察しているが、黙認している。
 
「熱中…してるのは…よく…わかる…けど…そろそろ…場所を…かえ…ましょう」

 別段、彼を責める訳じゃないが、この路地裏は血の臭いが濃厚過ぎる。
別段悪魔の生態に詳しい訳ではないが、これだと、周辺の野良悪魔たちが引き寄せられてこないとも限らない。
 戦闘になるのは別に構わない。チェーンソーも有るし、戯れに彼が殺した程度の相手なら、むしろ楽だろう。
 だが、騒ぎを大きくして、他の参加者に目をつけられると面倒なことになる。
悪魔よりも生きている人間の方が、ある意味タチが悪いという事を、ソーヤーはよく知っていた

 すると何を思ったのか、悪魔はべっとりと血に濡れた肉切り包丁を側におき、臓物の破片と肉片で汚れた手を差し出した
 何事かと目を向けると、彼は手を開いて握っていたものをソーヤーに見せた
 
 それはふたつの眼球だった

「くれ…るの?」

 彼は首を縦に振って答えた。ぐいっ、と新鮮な悪魔の眼球を突きつける。
 普通なら嫌がらせかと勘ぐるだろうが、ソーヤーから見ても彼から悪意は感じられない。
 どうやら、純粋な行為からそれを贈りたいらしい。

「ありが…とう」

 ソーヤーは素直に受け取った。元々彼女は"こういうの"が好みだったし、突き返して関係を拗らせる理由もない
 受け取った眼球をいそいそとディバックにしまうソーヤーへ、悪魔はどこか嬉しそうな視線を向けていた。どうやら彼は、サマナーのことを気に入っているらしい

「貴方…キュートね」

 返事は返さない。
 彼はそくさくと、作業の合間に脇に置いてあった相棒を持ち上げる。
 それは、使い込まれたチェーンソーだった。
 いったいどれだけの人間の血を吸ったのだろうか、ソーヤーは、丁寧に手入れされたその刃が、赤黒く光っているような錯覚を覚えた。

「じゃあ…行きましょうか」

 奇しくもともに『ソーヤー』の名であるテキサスの殺人鬼と、ロアナプラの掃除屋は、凄惨な屠殺現場と化した路地裏を、一度も振り返らずに立ち去った

 
 
【?????/1日目/朝】 
【ソーヤー@ブラックラグーン】
[状態]:健康
[装備]:COMP(チェーンソー型)
[道具]:基本支給品、確認済支給品、チョーカー型の人工声帯
[思考・状況]
基本:生還優先。脱出する手段を探してとっとと逃げる
1:でも殺るときは殺る
[COMP]
1:レザーフェイス(ババ・ソーヤー)@悪魔のいけにえ
[種族]:殺人鬼
[状態]:健康
[装備]:チェーンソー、肉切り包丁


219 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/21(土) 03:34:52 LcWlGUQQ0
投下終了です


220 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/21(土) 08:50:52 kFysp9CU0
皆様投下乙です!
本日の23:59:59にWiki収録まで完了している作品が対象となります。
駆け込み投下の際は、Wiki収録までご考慮ください。

また、現時点でのWiki未収録は下記作品となります。
・C-153
相棒:大河内春樹(ブラート):◆DoSy6PFyws

・C-289
美なる偶像:フェリシアーノ・ヴァルガス(ヘタリア)(ダヴィデ):◆Cf8AvJZzb2

以上、よろしくお願い致します。

>>153
か、カッコイイだろう!? 海パン万能説、つ↑よいですね。

>>158
ハズレっぽく見える当たり! ひぐらし参戦は久しぶりな感じですが、また珍しい時期から来ましたね。

>>160
すけさんはすけさんでも助さん違いw
助さん唯さんと指示する立場が必要ですね……

>>161
凹むヤキソバン、しかし具体的な指摘が彼を襲うw

>>164
同じ手を使うもの同士の出会いだった!? しかしジョセフは心を読まれてもなんとかしてきた過去が……!
あ、でもあれは承太郎か……

>>165
完全にペットショップ(本来の意味)なんだよなあ……

>>170
これはカッコイイ盗賊! 檻から抜け出すって表現はカッコイイですね。

>>172
なんにも見えない同士だった……いや、片方は見えてるか。
危ない奴がそばにいるんだが……

>>180
奇妙な共通点が二人を結ぶ。重なる幻影は何かを生み出しそうですね。
しかし備考欄よw

>>184
おでん型COMPとは……しかも熱いの……熱暴走してない?
同級生に出会わないことを祈ってたら、まさかの同級生が悪魔とは……

>>188
天才キャラはどいつもこいつもいかれてんな!(褒めてる
魔術を認めてくれないサマナーにどうなることやら……

>>191
確かにちょうどいいサイズだw 良いコンビになれそうで何より!

>>194
イカン人にイカン技術がわたってしまう……逃げてーw

>>197
ネタじゃねーーーーーーーーーーーか!?
PERFECT DAEMON……一体何者なんだ……

>>201
ピンクのアイツがやってきた! ティン……カービィ!
そいつにマイクを持たせてはいけない……!!

>>205
宮田ァ! とにかく死ぬつもりはない、という、単純な方針が恐ろしく思えますね……

>>210
珍しくメルブラ参戦! というか、そっちのほうがいいか。
今はまだ大丈夫だけど……?

>>214
アリスとうさぎ、その組み合わせは数あれど、さすがにきついよね……
くびを はねられた! がどれだけ炸裂するか……

>>215
意外なキャラが乗ってる! 自分のために、どこまでできるのやら……

>>219
危ないコンビだけど、ひとまずは対主催? で大丈夫なのかな?
あと、武器型のCOMPなので支給品はなしでおねがいしますー!


221 : ◆OW5ZCNLz4U :2016/05/21(土) 11:09:23 PN2eHYWY0
皆さん、投下お疲れ様です。

それではわたくしも投下します。


222 : 正義は我らと共に有り ◆OW5ZCNLz4U :2016/05/21(土) 11:10:20 PN2eHYWY0
目が覚めた時、彼女は会場内の教会の中で倒れていた。

彼女、セリュー・ユビキタスは警察官を目指して試験勉強を続ける外国人である。

彼女にとってここは知らない街だった。彼女が住んでいた、見慣れた風景とは、全く違う場所だった。

しかしそんなことは彼女にとってどうでもよかった。

彼女は怒っていた。

他ならぬ魔神皇の非道な行いについて憤っていたのだ。

そんな彼女が支給品の中にあったトンファーを握りしめた時だった。

突如として目の前の空間に、完全な球状をした光の球が現れ始めたのだ。

「な、何……!?」

 いや、理解している。予感ではない、確信だ。まるで太陽のようなその白色の光球は、きっと、おそらく。
この場所に於いて、自分の相棒――悪魔が現れる、予兆なのだ、と。

光球に、ヒビが入り始める。
まるで卵の殻を破り、雛が出てくるようだと、セリューが思ったのもつかの間。ヒビは亀裂になり、亀裂から、球が剥がれてゆく。
光る剥片が、この教会の中を蛍の光のように照らして行く。幾百もの光片の最中に立つ者は、天使だった。


223 : 正義は我らと共に有り ◆OW5ZCNLz4U :2016/05/21(土) 11:11:47 PN2eHYWY0
銀色に輝く鎧に、背中に七色に輝く三対の羽を生やした、荘厳な天使。それが、セリューの引き当てた悪魔である。

「我こそは聖帝エーリュシオン。身体の内に、己が身をも焼き尽くす程の灼熱の魂と強き正義の心を持つ者よ。問おう――そなたが我のサモナーか」

 その天使は、纏う光に相応しい厳かで、高圧的な口調でセリューに語り掛ける。
その淀みのない、闊達な喋り方に、ある種の感動すら、セリューは憶える有様であった。

「そ、そうです!!」


 目の前の存在が放つ森厳たる空気に怯みかけるも、セリューは何とか己が意思を口にする事が出来た。今も冷や汗が止まらない。
この存在が現れた事で、ただの小さな教会がまるで千年以上の歴史を誇る大教会の礼拝堂のような雰囲気に変貌してしまった。

「そなたはこの穢れた地において、何を成す?」

彼はそう問いかけたが、その前に彼女にはどうしても聞きたい事があった。

「あの!!」

「何だ」

「貴方は、一体何者なのですか!?」

目の前の存在が放つ、匂い立つ香気のような、浄化された空気。人には絶対醸し出しえない、混じりけのない神々しさ。
それがなぜ悪魔として召喚されたのか、信じられないのだ。
「そんな事か」、彼は、セリューの疑問に答えるべく、言った。


224 : 正義は我らと共に有り ◆OW5ZCNLz4U :2016/05/21(土) 11:12:29 PN2eHYWY0
「我は果たさなければならない神聖な使命を負っている。我は、この世界を浄化しなければならない」

「その任務とは……?」

「この穢れた世界に蔓延っている、堕落した者らに裁きを与え、浄化し、全てを無に帰すことだ。」

 雷に打たれたような衝撃を覚えるセリュー。瞼は限度一杯まで開かれ、今にもその眼球が零れ落ちんばかりだった。

「我は、この堕落した世界に馳せ参じた、痛ましき霊を滅ぼす許しの代弁者。この世界は――浄化されねばならない」


 確信した。目の前の存在は、自分の正義を愛する魂と、正義の光で世界を照らしたいと言う気持ち。
そして、この世の悪を全て裁きたいと言う自らの願いに導かれてやって来た救世主なのだと!!
不安が、風に吹かれて崩れ去る砂の城のように跡形もなくなるセリュー。
目の前の存在は、彼女にとっては悪魔でもなければ、自分の従者でもない。自らを導いてくれる、『天使』であった。

今の彼女の頭には、感動以外の感情と感覚を、受け入れる事を拒否していた。

「エーリュシオンさん!! 私と一緒に、世界を――!!」

「解っている」

彼の、荘厳なる言葉を紡ぎし口を見つめるセリューを見下ろして、エーリュシオンは言葉を続ける。

「堕落した魂に聖なる怒りを喰らわせるのだ」

 セリューは喜びの涙を流しながら彼に抱き着いた。
漸く、自分の理想を理解してくれる者に出会えた感動と、自分の不安を払拭してくれる存在に対する依存感が爆発した結果の行動であった。


225 : 正義は我らと共に有り ◆OW5ZCNLz4U :2016/05/21(土) 11:13:08 PN2eHYWY0
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


   汝ら、人を裁くな。裁かれざらん為なり


   己が裁く審判(さばき)にて、己も裁かれ、


   己がはかる量(はか)りにて、己も量らるべし


                     ――新約聖書


【セリュー・ユビキタス@アカメが斬る!】
[状態]:健康
[装備]:トンファー型COMP
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:彼とともに『正義』を示し、自らが認識する所の悪全てを消滅させる。
[備考]

[COMP]
1:聖帝エーリュシオン@モンスター列伝 オレカバトル
[種族]:智天使
[状態]:健康
[備考]
※ 羨望の罰:自身より攻撃力が低いモンスターにはダメージが2倍になる魔法攻撃。

※ 強欲の罰:強化系の魔法を使用したモンスターにはダメージが2倍になる魔法攻撃。

※ 憤怒の罰:相手の与えたダメージが合計90以上の時に、攻撃力を二倍にして放つカウンター攻撃。

※ 色欲の罰:複数の悪魔の中で、性別が女性である悪魔の比率が高い時に放つ全体攻撃。
       なお、スライムなどの性別がない悪魔には効果がない。

※新世界創造:ランダムな敵に自分の攻撃力×2のダメージを4回与える魔法攻撃。
        しかし天使に対してはダメージが0になるというデメリットがある。


※本来であれば、残る『傲慢』『怠惰』『暴食』に対応する罰が存在するが、制限により使用できない。


226 : ◆OW5ZCNLz4U :2016/05/21(土) 11:13:50 PN2eHYWY0
投下終了です

ありがとうございました。


227 : 名無しさん :2016/05/21(土) 12:09:21 s2m/ttGk0
◆OW5ZCNLz4U氏へ。
あなたが投下したSSのいくつかに、他企画の他の作者さんのSSと非常に類似した部分が多く見られますが、これらはそちらからの引用なのでしょうか?
「古書堂から始まる冒険譚」→(ttp://www8.atwiki.jp/21silverkeys/pages/18.html)
「正義は我らと共に有り」→(ttp://www8.atwiki.jp/city_blues/pages/52.html)

横から不躾な指摘をしてしまい大変申し訳ありません。


228 : ◆OW5ZCNLz4U :2016/05/21(土) 12:22:16 PN2eHYWY0
>>227

はい、確かにいくつか他作者の引用となっていました。

今にして思えば、かなり失礼なことをしていたと思います。

問題がありましたら、削除をする所存でございます。

皆様、誠に申し訳ございませんでした。


229 : ◆OW5ZCNLz4U :2016/05/21(土) 12:39:04 PN2eHYWY0
上記二作品について、削除いたします。

皆様、大変失礼なことをして、誠に申し訳ございませんでした。


230 : ◆OW5ZCNLz4U :2016/05/21(土) 12:47:35 PN2eHYWY0
済みませんが、削除をお願いできますでしょうか?

何から何まで申し訳ございません。


231 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/21(土) 13:19:11 q2z3CFjY0
対応いたしました。
盗用は非常に無礼な行為となります、以後二度とないよう、よろしくお願い致します。


232 : 名無しさん :2016/05/21(土) 13:24:14 Lh5fi0iA0
無礼を通り越して普通に出禁物の所業なんだよなぁ>盗作


233 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/21(土) 13:49:11 q2z3CFjY0
改めて正式に通知させていただきます。
この度、◆OW5ZCNLz4U氏の上記2作品(>>227)についてですが、
盗作であると認識させていただきました。

当企画に参加したいという意思はありがたいのですが、
みなまで言うまでもなく、盗作がどのような行為なのかはご理解いただけているかと思います。
氏の行為は理解していた上で盗作していたとも取れ、同時に他作品にも盗作の疑いがかかります。
真偽の程は如何ほどかはわかりませんが、こちらからは判断する材料が無いため、
この度は氏の◆OW5ZCNLz4U作品を>>1権限で全破棄とさせていただきます。

大きな措置となりますが、それほどまでの行為だったということを認識していただければ幸いです。
再三警告させていただきますが、今後は二度と無いようにお願い致します。

少々荒い文章で申し訳ありませんが、以上となります。


234 : ◆OW5ZCNLz4U :2016/05/21(土) 13:56:55 PN2eHYWY0
わかりました、誠に申し訳ございませんでした。


235 : ◆TE.qT1WkJA :2016/05/21(土) 14:27:47 xkZifLi20
2連続で投下します


236 : ラメトク ◆TE.qT1WkJA :2016/05/21(土) 14:28:25 xkZifLi20
「あんな身勝手な理由で人を殺すなんて…許せない」

魔神皇から殺し合いを言い渡され、そこで二名の犠牲者がでて会場に転移させられた直後で、犬吠埼樹は主催者に対する義憤を禁じえなかった。
一人は殺し合いに反対するという常人なら誰もが思うであろうことを明確に口にしただけで殺された。もう一人は首輪を他の参加者に見せびらかすためだけに殺された。
そんな簡単に人が殺されていいものか。野望のために他人の命を弄ぶなど、吐き気を催すほどの邪悪に他ならない。
魔神皇も、殺し合いも絶対に認めるわけにはいかない。
犬吠埼樹は勇者である。神樹に選ばれて外部の敵から神樹を、ひいては四国を守るお役目にあった彼女は、魔神皇へ刃向かう意志を固めた。

「みんな…私、がんばってみるね」

もちろん、樹はまだ中学一年生でまだ少女であり、元々の気が弱い臆病な性分もあってその心にはもちろん恐怖もある。
だが、恐怖に怯えたまま何もできなくなるほど樹は弱くない。
恐怖こそあれど、それとは別に勇気も持ち合わせているのが勇者たる所以である。
思い出すのは勇者部五箇条。頼りになる姉に隠れがちで弱かった樹も、勇者部のみんなのおかげで自分に自信を持てるようになったのだ。
それだけではない。神樹を守るために駆り出される先々で、様々な人達に出会い、別れ、時には共闘し、敵対した。
勇者部に入って勇者になってからの記憶は、樹にとってかけがえのない宝物になっていた。

「お姉ちゃんも、友奈さんも…勇者部だけじゃない、今まで会って来た人達も一生懸命生きてるんだから。私も負けてられない」

首輪をかけられ、魔神皇に命を握られているけれども、樹は諦めない。
だがこの状況を一人だけでどうにかする、とも言わない。
これまでの戦いでも勇者、勇者でないに限らず、共に戦ってくれる心強い存在がいた。
仲間。みんなの力を一つにすれば、魔神皇を打ち倒せると、樹は信じている。

「“友”になってくれる悪魔なら、きっと協力してくれるはず…だよね?」

そう言って樹は悪魔の力を借りるべく、自身のスマートフォンにアプリとして追加されていたCOMPを起動する。
魔神皇の言うことは信じたくなかったが、支給された自分のスマートフォンに見たこともないアプリが追加されているとなれば信じざるを得ない。
なせば大抵なんとかなる。不安もあったが、それだけで何もしないよりはマシだ。
樹はその悪魔が協力してくれることを祈りながら、召喚の過程を見守っていた。

「あ――」

悪魔召喚が完了した直後で、樹は声を漏らした。
それは眼前の悪魔があまりにも凶悪だったことによる恐怖ではなく、あまりに神秘的な美しさに見とれてしまい漏れ出た声だった。
その悪魔は人外の姿をしているどころか人間の少女にしか見えず、大きなリボンをして腰に宝刀を携えており、汚れの無い巫女服が少女に清楚な雰囲気を纏わせていた。
悪魔と呼称されるにはあまりにも違和感のある巫女そのものだった。
神樹の力を受けていた樹にはおぼろげながら、目の前の彼女もきっと自分達と同じような存在であることが分かった。
樹がその姿を目にした瞬間、抱いていた不安が心の中で浄化されていく感覚を覚えた。

「この地に凶大な気を感じる。この邪気はきっと自然を傷つけるわ。…あなたが私のサモナーさんですか?」
「は、はい!」
「私はナコルル。ここを支配しているウェンカムイを倒すために、あなたの力が必要なんです!一緒に戦ってくれませんか?」

樹に召喚された悪魔はアイヌの巫女であり、自然の声を受けて世を乱す者を討つ勇者、ナコルルだった。
なんとナコルルは、樹が言う前に願ってもない協力を申し出てきたのだ。


【?????/1日目/朝】
【犬吠埼樹@結城友奈は勇者である】
[状態]:健康
[装備]:樹のスマートフォン(アプリ型COMP入り)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らず、魔神皇を倒す。
※現代に生息する同姓同名の似たような性格の勇者のため、バーテックスの知識はありません。
※神世紀の人間とも、多少の認識のズレがあるかもしれません。
※現代に生息している(と描写のあった)勇者部員並びに四国民とは面識があるかもしれません。
※以前に共闘したことがある者とは面識があるかもしれません。
[COMP]
1:ナコルル@サムライスピリッツ
[種族]:聖霊
[状態]:健康
※COMPは樹のスマートフォンにアプリとなって勇者システムと一緒に入っています


237 : 使徒 ◆TE.qT1WkJA :2016/05/21(土) 14:29:34 xkZifLi20
「不思議なことも、あるものですね」

オロチ八傑集の正装を身に纏った男は、冷静に事を分析する。
その男、ゲーニッツは、彼を知る者の間では既に亡き者である……筈だった。
過去のキング・オブ・ファイターズの会場を強襲し、ゲーニッツら一族の主―――オロチの封印の守り手である神楽ちづるを排除しようとしたが、
ちづる並びにその場にいた格闘家達に返り討ちにあってしまい、ゲーニッツは死んだ。
にも関わらず、ゲーニッツはオロチ一族としての意識を明確に覚醒したままの状態で、この場にいる。

どうやらゲーニッツが死んだあの時からそれなりに時が経っているらしい。
ゲーニッツにはオロチの力が受け継がれているからか、彼の死後どうなったかはある程度理解できた。
その翌年、同じオロチ四天王である社、クリス、シェルミーはKOFを利用して膨大な精神力を手に入れ、オロチが完全に具現化するまであと一歩というところまでこぎつけた。
あとはクシナダの転生した娘を生贄にささげるだけだったが、草薙、八神、神楽ら三種の神器によってそれが阻まれ、オロチは不完全な形で復活せざるを得なくなる。
結果的にオロチは復活したが、三種の神器によって再び倒されてしまい、またもや封印されてしまった。
オロチ一族の悲願は、遂げられることなかった。

「ですが…まだ終幕ではないようです」

そう、オロチが封印された後にはまだ続きがある。
ゲーニッツの肌を撫でるこの感覚…間違いない。オロチの封印はまたしても何者かにより解き放たれていた。
不意に強くなった横殴りの風が、ゲーニッツの服を揺らす。
それは他でもない、オロチの「風」の力によるものだった。

「あの場には並外れた精神力を持つ方々が両手に溢れる程いました。そんな方々が殺意を持って互いに戦えば我が主の覚醒も近づくことでしょう。
さらにあの方の言っていた悪魔までも交えるのであれば――」

強靭な精神を持つ者同士がぶつかり合うことによって生まれる精神力によるエネルギー。
それを最も効率的に集められるこの殺し合いはオロチ復活の場としてはこの上なく最適であった。


238 : 使徒 ◆TE.qT1WkJA :2016/05/21(土) 14:30:24 xkZifLi20

「実に面白い催し物だ…有効に活用させていただきますよ」

そう言ってゲーニッツは携帯電話型のCOMPを操作し、悪魔を召喚する。
精神力エネルギーを集めるとなった以上、積極的に動いて参加者と戦う必要があるだろう。
それが後々障害になり得る者であれば容赦なく葬り、利用できそうであれば最大限に利用する。
全ては主のために。

「ラキ、ラキ、ラキキキ……」

携帯電話から光が奔った後、特徴的な笑い声が聞こえる。
その声の主は、ゲーニッツの前に立っている、妖しい雰囲気を纏う妙齢の女性であった。
日本の巫女服を着ているが、彼女から放つ殺気はまるで邪神を匂わせる。
彼女は邪神アンブロジァの使徒、かつて日本を混沌に陥れたと言われる。その名も『羅将神ミヅキ』。

「感じる…感じるぞ。極上の魂がこの地に集うておるわ!!」

ミヅキはラキラキと笑いながら己がサモナーを睨む。

「そこのお前。お前はアンブロジァ様を如何に思う?」

「どうとも思いません。我が主とは相容れぬものだ」

「なら…そのまま召されるか?」

「私は我が主の意思に従うだけ…あなたとてそうでしょう?この世界へ主を再び降臨させる…そのために私は動いています」

そう言われ、ミヅキは不機嫌そうな顔をしながらゲーニッツに向けていた得物を収める。
周囲が尋常ならぬ殺気で包み込まれる。

「あなたにも、この世に呼び寄せるべき主がいると見える。しかし、そのためには供物が必要だ…違いますか?」
「フン…ご名答じゃ。アンブロジァ様の降臨には、古の勇者の魂…あるいはそれと等しき強き覇気を持つ魂が要る。この地にはそれが揃っておる」
「成程。つまりはその魂を所持する者を狩り取らなければならないわけだ」

ゲーニッツはニヤリと笑みをうかべつつ続ける。

「奇遇なことに、私も我が主へ力を送るために他の参加者と戦う必要があるのです。ここは一時、協力してはいかがです?
あなたの言う邪神とやらへ捧げる魂の選定は、全てあなたに一存します」
「ラキキラキ…よかろう。忌々しいことに私も“こんぷ”がなければ自由に動けぬ。他の下衆な神の者共と慣れ合う気はないが…今はお前の口車に乗ってやろう」

尤も、アンブロジァの力は人類のみならず自然をも傷つけるために、ゲーニッツもミヅキに対して「下衆な神の者共」という認識を抱いていたのだが。
今はまだ、争う時ではない。一番近くにいる敵のことは、来るべき時が来れば考えればいい。

ゲーニッツもミヅキも、崇拝する者へ忠誠を誓う使徒。
神が復活した時、世にもたらされるのは混沌と絶望。
彼らの狙う魂は一体誰の体に宿っているのだろうか?


【?????/1日目/朝】
【ゲーニッツ@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:健康
[装備]:COMP(携帯電話型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:オロチ復活のために殺し合いを利用する
[COMP]
1:羅将神ミヅキ@サムライスピリッツ
[種族]:邪神
[状態]:健康


239 : 使徒 ◆TE.qT1WkJA :2016/05/21(土) 14:30:47 xkZifLi20
以上で投下を終了します


240 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/21(土) 15:21:19 3rLl6N760
投下します


241 : ◆XSQ9eqUYms :2016/05/21(土) 15:22:28 e6lRlFBU0
投下します。、


242 : ◆XSQ9eqUYms :2016/05/21(土) 15:22:40 e6lRlFBU0
投下します。


243 : 鬼畜遊戯 ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/21(土) 15:22:52 3rLl6N760



「全然見つからないわね、参加者…」
「そうね」

 魑魅魍魎、悪魔が徘徊する会場の片隅で、 仲良さそうに会話する2体のピクシーの姿があった。 

「でも……見つからない方が良いかも」
「私たち弱いからね」
「「ねー」」

 魔神皇から首輪をつけたものを襲えと指示を受けてはいたが、彼らは珍しく温厚な悪魔で、あまり乗り気ではなかった。
 というか、サマナーに挑んでも、普通に返り討ちにあいそうだからなのだが。会場を彷徨いている内に、何回か悪魔のものらしい悲鳴も聞こえたし……
 適当にやり過ごしておこうか。というピクシーたちの意見は一致していた
 その時だった

 グサッ!

「ぎゃあああああああああああああああーーーーーーっ!!!」

 何者かに貫かれ、絶叫するピクシー1

「えっ、えっ、嘘!?」

 突然すぎる事態に呆然とするピクシー2。ピクシー1の腹部からは、血に濡れた槍の先端が覗いていた 
 ピクピクと痙攣するピクシー1から槍が引き抜かれる。ぽいっ、とまるでポイ捨てのように捨てられる仲間の姿に、ピクシー2は見ていることしか出来なかった
 そこで初めて、ピクシー2は襲撃者の姿を確認した。
 意外なことに女性だった。
 随分と若い、10代後半といった所か。だ。制服を着ていることから学生らしい
 よく見ると首輪をつけている。参加者だ。
 じっとピクシー2を一別する、その獲物を狙う鷹のような冷酷な瞳に、思わず悲鳴がもれそうになる

(ど、どどどどうしよう!? 首輪もつけてるし、倒さなくちゃ……
 でもなんでこんなに思いきりが良いのよコイツ!!
 ひとり殺ってもケロッとした顔してるし、人間ってみんなこんななの!?)

 絶賛混乱中のピクシー2
 あまりにも好きだらけで、殺るなら絶好の機会だ。
 しかし、彼女はすぐに襲いかからず、槍を構えてこう叫ぶ

「槍マン参上!!」

 ーーと

「ヤリマン?」

 思わず聞き返すピクシー2。その怪訝そうな表情を見るに、どうやら別の方を想像したらしい。

「槍マンだ!!」 

 その事を察したらしい。
 何を想像してる!と顔を真っ赤にして訂正するヤリマンーーもとい林沖美。
 
 しかし、ここで槍ガールではなく、あえてマンにしている時点で何らかの作為を感じてしまうのは致し方ないか。

「と、とりあえず……うわああああ!!」

 しばし悩んだ結果、ピクシー2は逃走を図る。ここで逃げるとは思わなかったのか、呆けたように見送る沖美 

ピクシー1、キミの犠牲は無駄にはしないよ。
 
 その時だった。
 突如飛来した第三者によって、ピクシーは横合いから吹っ飛ばされた

「きゃあああ!?」

 悲鳴をあげるピクシー2。地面に倒れつつ、第三者に視線を向ける
 それは、一見しただけで人間ではないとわかる、赤と白の悪魔だった

「……」

 その黄色に輝く両目は、沈黙をもってピクシー2を見下ろしている
 沖美の召喚した悪魔である彼は、何を思ったのか、がしっ、とピクシー2の髪の毛を掴み、力任せに引き倒す。


244 : 鬼畜遊戯 ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/21(土) 15:25:08 3rLl6N760

「痛い痛い!離して…」

 仰向けに転がされるピクシー2にのし掛かり、マウントポジションをとる
 そしてピクシーの頭部を無造作に掴むと、力任せに地面に叩きつける

「がっ、ぶっ、や、っべっで……」

 その整った顔がズタズタになり、すべての歯が折れ、鼻が砕け、止めない。
 懇願など一切聞き入れない、清々しいまでの鬼畜っぷりであった

「……」

 やがて命乞いすらも出来なくなったのか、動かなくなる
 その時点でようやく殴打を止めると、両手で頭部を掴み、そして……
 ぐしゃ! と長ネギがひしゃげるような音がした。
 止めにピクシーの頸椎をへし折ると、完全に絶命した事を確認し、立ち上がる。
 そして、まるで敬礼のごとく右手を掲げた

「良い殺しっぷりだな」

 その様子をじっと見ていた沖美が、相棒である彼に労いの言葉をかける。
槍マンとして殺し殺される決闘を繰り返してきた彼女から見ても、この赤と白の悪魔の戦い方は唸るものがあった
 
「では行こうかレッドマン!!」

 沖美は槍型COMPを構え、新たな獲物を探しにその場を移動する。
彼女は他のマン達の例にもれず、自分こそが最強の槍マンであることを証明するため、この殺し合いを勝ち抜くことを決めていた。

(魔神皇…… いや、さしずめ悪マンといった所か。 あの男も倒して、槍マンこそ最強ということを証明してやる!)

 殺る気に充ち溢れた自身のサマナーに、かつて赤い通り魔と恐れられた悪魔は静かに頷くのだった

【?????/1日目/朝】 
【林沖美@あの娘はヤリマン】
[状態]:健康
[装備]:COMP(槍型)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:優勝して悪マン(魔神皇)も倒し、最強のマンになる
[COMP]
1:レッドマン@レッドマン
[種族]:鬼畜
[状態]:健康


245 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/21(土) 15:25:36 3rLl6N760
投下終了です


246 : ◆KV7BL7iLes :2016/05/21(土) 15:27:33 e6lRlFBU0
二重、被り、トリミス失礼しました。
それでは、投下します。


247 : 白鳥は騙られて ◆KV7BL7iLes :2016/05/21(土) 15:31:18 e6lRlFBU0

「ど…どどど、どうすんだよ!?」

白鳥司は、パニックに陥っていた。
それも、当然と言えば当然だ。生命の危機などとはまるで無縁だった女子中学生にとっては、唐突に殺し合いと言われてもまず理解が追いつかない。
して当然の動揺を暫く続けるも、激しく呼吸を繰り返して息が切れるにつれ、徐々に冷静さを取り戻していく。
冷静になった彼女が次に思い当たったのは、魔神皇の残した言葉。
友となってくれる、悪魔─────そんな存在を封じた、COMPなるものが支給されたという。

「これ…かな?」

取り出したのは、何の変哲も無さそうなスマートフォン。
何やらソーシャルゲームのようなアイコンをタップし、画面の指示に従って操作をしていく。
同時に、出てきたのはアンケート。
名前や嗜好、それに交友関係などといった、どちらかというと彼女自身についての質問が続くことに疑問を覚えつつも、全ての項目を埋めて一番下にあった「召喚」ボタンを押す。
─────と同時に、画面が強く輝き始めた。

「うおっ!?」

思わぬ光景にCOMPを放り投げ、腰を抜かしながらもただ光るその画面を覗く。
数秒光を発し続けた後、画面から「何か」が飛び出した。

「ぽんっ!」

飛び出してきたのは、白と黒のツートンカラーで彩られたぬいぐるみのような生物。
鱗粉のようなものを撒き散らしながら、ソレは一頭身にも関わらず頭を下げたとよく分かるような仕草を見せる。

「どうもぽん!電脳妖精のファヴぽん、よろしく頼むぽん!」
「え…あ、おう!よろしく!」

どうやらこの「ぽん」というのが口癖なんだなあ、とかどうでもいい事を考えながらも、一応ちゃんと挨拶をする。
何がお気に召したのか、満足そうに頷くような動作を繰り返すファヴの姿を

「ええっと…悪魔っての、お前なのか?」
「そうぽん、白鳥司。この度晴れて君の相方になったんだぽん」

何処か自慢気に、或いは傲慢に語るファヴに少し気圧されつつも、「お、おう」と頷き返すという形で反応した。

「って、何で私の名前!?」
「そりゃ、さっきアンケート書いてもらったからに決まってるぽん」

ファヴの答えに、なるほど、と答える。
アンケートはその為だったのか─────しかしそれにしてはちょっと関係無い情報も入っていたような気もするけど─────なんて事を思いつつ、しかし、とファヴに視線を向ける。
気になったのは─────悪魔、もとい電脳妖精ファヴの、見るからに弱そうな姿。
実力行使ならば司でも勝てそうな存在。友にならまあなれなくもないだろうが、悪魔という響きから力になってくれるのではないかという期待は裏切られてしまったのだろうか。
しかし、その視線を察したファヴは、自信ありげに目(だと思しき部分)を瞑り

「その目、ファヴを信用していないみたいだけど…それは間違いぽん。
何故なら、ファヴはなんと………君を魔法少女にしてあげられるからだぽん!」
「へ?」

魔法少女。
突如飛び込んできたそんな言葉に、またも面食らう司。
対するファヴはノリノリであり、その身体を右に左にと動かしている。

「では、いくぽん!」
「え、ちょ、ちょっと待っ─────!」

司の叫びも虚しく、あまりに唐突にファヴの身体から光が発せられる。
それを浴びた司もまた、光に包まれ─────




─────何も変わらなかった。

「…ま、そんなバランスブレイカーみたいな事は流石に今は出来ないぽん」
「期待させといてそれかよ!?」

はあ、と肩を落とす司。
それを励ますように「まあまあ」ととりなしながら、改めてファヴは司と正面から向き合う。

「まあ、それはさておき…司はこれから、一体どうするんだぽん?」

─────話題逸らし、というだけでなく、必要な言葉でもあった。、
その言葉に、う、と言葉が詰まる。
そう、必要なのはこの殺し合いでどう動くかを考えること。
こんな言い方ということは、ファヴはそれに協力する、とそう言っているのだろうか。

「私、は…」

考える。
先程目にした、命が失われるその瞬間。
たった今置かれた、この状況。
たったそれだけの判断材料の中で、しかしただの女子中学生に過ぎない白鳥司は考えざるを得ず。

「とりあえず、人を殺したくはない…かな」

そうして、司が思い当たったのは、現代人としては当たり前の倫理観。
彼女が思い当たったその思考から、ゆっくりとさらなる目標が紐解かれる。
そうして、結局彼女が出したのは。


248 : 白鳥は騙られて ◆KV7BL7iLes :2016/05/21(土) 15:34:50 e6lRlFBU0

「頑張って元の…みんなのところに帰りたい、な」

それが、司の結論だった。
両親、弟の昴、そして─────親友二人の下へ。
思い浮かんだそれらの人々のところへと帰る─────ごく単純、そして純粋な考えだった。

「分かったぽん!そうと決まれば、ファヴが協力してやるぽん」
「そうだな、頑張ろう!……って言われても、お前何か出来るのか?」

共に声を掛け合ったところで、しかし司はファヴに対し頼りなさげな視線を送る。
先程のアレしかまだ能力を見せてもらっていないが、しかしこの小さな身体だと直接戦うなど以ての外。
一体全体何かの役に立つのか…という司の疑問に対し、ファヴはやはり何処か偉そうに言い放つ。

「舐めてもらっちゃ困るぽん。ファヴのレーダーなら、周りにいる人間を察知するくらい簡単だぽん。
ちょっと制限こそあるけど、数十メートルくらいならどんな動きをしてるやつがいるか分かるぽん」
「お、おお!」

想像以上に心強い機能を挙げられて、司の不安はすぐに払拭された。
危険人物らしき挙動をしている人間がいれば、ファヴのおかげで認識できる、という事か。

「よ、よし!よろしく頼むぞ、ファヴ!」
「了解だぽん、マスター!」

かくして。
少女と妖精は、ゆっくりと歩き始めた。




☆☆

─────チョロいものぽん。


電脳妖精・ファヴの、心の底からの言葉はそれだった。
何十人、何百人と少女を騙してきたファヴのノウハウを以てすれば、ただの少女、それも特別頭が回るような方でもない司を騙す事などいとも簡単。
この殺し合いの中で唯一頼れる存在として認識されたおかげか、或いは本来の召喚の行程においては存在しない急拵えのアンケートで得た情報のおかげか、いつもより一層取り入りやすくなっていた気すらしてくる。

─────そう、殺し合い。

これは、殺し合いだ。
血で血を洗い、命が命を奪う、醜くて低俗な催しだ。
人間が我が身恋しさに他人の命を奪い、蹴落とす。

(─────にしても、あのマスター以外に殺し合いなんて面白い事をやってのける輩がいるなんて、驚きぽん)

そして、生憎な事に。
重大なバグが紛れ込んだ上で形成されたファヴの精神は、そんな低俗で野蛮でクソみたいな事が大好きだった。

かつて森の音楽家クラムベリーと手を結び、『魔法の国』の試験という体裁だけを上手く繕って良く似た催しを何度も催した。
いや、良く似たどころかそっくりと言っても差し支えはないだろう。
『悪魔/魔法』という力を与え公平さを高めた上で、『殺し合い』という場に放り込む。
そっくりぽん、と心の中で思い、そこで思い当たる事が一つあった。
─────或いは、自らが与えた魔法によってクラムベリーと同じように、あの男も慢心しているかもしれない。
となれば、魔神皇とやらも、或いはオーバースペックな悪魔によって想定外の事が起きるかもしれない。

(─────まあ、そうなるようなら何とかコンタクトを取って、ちょーっとアドバイスくらいはしてもいいかもしれないぽん)

電脳妖精は伊達ではない。
COMPと言えどコンピュータの一種。そして電脳空間ならば、電脳妖精のホームグラウンドだ。
召喚プログラムに介入し、サマナーに呼び出される前に彼女の個人情報を抜き取るよう設定出来た事から、制限もそこまでキツくはない。
無論現状では、魔神皇はおろか他のCOMPとすら接触・干渉は出来なかったが、ゲームが進めばそれらもいずれ機会が来る。


249 : 白鳥は騙られて ◆KV7BL7iLes :2016/05/21(土) 15:35:42 e6lRlFBU0

(ま、それまではひとまず─────こいつで遊ぶ事にするぽん)

レーダーで敵を探すことが出来る、と言ったのは嘘ではない。
電脳妖精であり、かつバグの発生によりズバ抜けた自我を持つファヴにかかれば、如何に制限があれど数十メートル程なら生体反応をサーチする事はお茶の子さいさいだ。
しかし、ご親切にそれを教えてくれる義理は無い。
移動速度、進行方向などを考えた上でぶつかってもおかしくない相手には、適度に会わせてやるとしよう。
それだけではない。
偽の情報交換、精神への揺さぶり、電子情報の改竄、エトセトラエトセトラ─────実際の肉体が無くても、いや無いからこそ出来る事は決して少なくない。
全ては、欲望の赴くままに─────奔放に、貪欲に、快楽を求めて悪逆非道を幾らでも働いてやろう。


(いやはや、こりゃ楽しみぽん)


何処までも捻れたドス黒い妄想を膨らませて、白鳥の目を掻い潜った電脳妖精は小さく嗤った。



【?????/1日目/朝】
【白鳥司@ななしのアステリズム】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、確認済み支給品(1)
[思考・状況]
基本:とりあえず、頑張ってみる。
[COMP]
1:ファヴ@魔法少女育成計画
[状態]:健康


250 : 宝石とのバカンス ◆KV7BL7iLes :2016/05/21(土) 15:41:37 e6lRlFBU0
─────海が、輝く。
例え心なき人間が落としたゴミが落ちていようと、例えその内実が廃水に塗れていようと。
光を反射し、幾つもの瞬きを水面に侍らせる海の美しさは、鈍色へと変化することは無いように思える。
尤も、それはこの東京が偽りであり、そんなところまでは再現していないからかもしれないが。

「都会は、久し振りだな」

そんな、水面を見ながら。
一人の男が、呟いた。
西甲太郎という名の、奇異な左目を持つ青年。
左手に握るCOMP─────貝殻のようなそれを一瞥し、懐にしまい直す。

「いや」

ふと、男は。
くしゃくしゃと髪を掻き毟り、その付け根の奥の味噌にある記憶ごと数本の髪を引き抜こうとする。
何本かはらりと髪が落ち、しかしそれに思い出はついてこなかったようで。

「久し振りというか」
「もしかしたら、初めてだったかも」
「カメラマンなんてしてたら、あんまり都市なんてこないもんな」

そんな微妙な結論を出した甲太郎に対して。
それまで沈黙を保っていた、彼の「悪魔」が。
薄荷色に輝く髪と、黄金色に燦めく両腕を持った、中性的な人の姿をしたそれかが、漸く口を開いた。

「なんだそれ」
「要するに、あんま覚えてないってことだよ」

悪魔の質問は、はぐらかすような甲太郎の言葉でかき消され。
漂う潮騒の匂いの中で、二人の間には何とも言えない静寂があった。
そんな中で、ふとフォスが口を開く。

「にんげんは」
「記憶もかんたんにとんじゃうんだ」

その言葉に。
え?と言わんばかりの表情で、甲太郎が振り向いて。
その数秒後、面白いものを見たような様子で。

「悪魔は」
「…宝石は、忘れないのか?」

いきなり飛び出した、そんな彼の質問に、悪魔─────『宝石』フォスフォフィライトは、少し悩むように目を瞑る。
数秒そうした後、答えを見つけたかのように─────というより、上手く説明する言葉を探しかけてそれを放棄した、といった表情で言葉を紡ぎ出す。

「忘れない」
「わけじゃない。からだの中の微小生物(インクルージョン)が記憶をたくわえてくれてるから、それがいなくなったら─────」

だから、と。
両腕や両足に目を向けながら、フォスは改めて結論を告げる。

「だからつまり」
「割れてなくなったら、忘れちゃう」
「へえ」

珍しいものを見た、そんな声音の甲太郎の反応を、フォスは見返す。
別に気分を害した訳ではない、というか、フォスの側も初めて見る「人間」である甲太郎が気になっているだけ。
しかし、今度はジロジロとこちらを眺め始めた甲太郎には、流石にすこし辟易する。
えっち、と言ってみても特に反応と無くただこっちを見ているものだから、ひとまずその行為を諦め、むしろ色んなポーズをとってやる事にした。
数分。
フォスにも漸く、何やってんだろうな僕、みたいな思考が働いてきた頃に、甲太郎が。

「90点」

ぽつり、と。
静寂を破ったその言葉の意味が分からず、フォスは首を傾げた。

「は?」
「何それ」
「俺の姉ちゃんの真似」
「俺がとってきた変な生き物に、いっつも点数をつけてくる」
「ふうん」

少し興味を持ったように、フォスが呟いた。
彼の脳内を巡ったのは、共に暮らす「きょうだい」たちのこと。

「変わったきょうだいがいるもんだね」
「お前は」
「きょうだい、居ねえの?」
「いるよー」
「きわどいのだと、解剖大好きヤブ医者に戦闘狂に月人マニア」
「うっわ」

まともなのがいない、と零した男にムッとしたのか、フォスは金色に煌めく腕を振り上げて詰め寄る。

「そういうあんたのきょうだいはどうなのさ」
「えっ」
「変なものに点数をつけるなんて、どんな性格してるのかなー」
「なんて」

そんなフォスの言葉に、またも数秒静寂が訪れ。


251 : 宝石とのバカンス ◆KV7BL7iLes :2016/05/21(土) 15:42:59 e6lRlFBU0

「そうだな」

そこで。
甲太郎は、少し顔を下げる。

それは。
綺麗でありながら壊れそうなものを。
砕け散らぬよう、丁寧に愛でる。
そんな、優しげな表情で。

「天才で」
「めちゃくちゃ頭が良くて」
「俺をからかうのが好きで」
「そんでもって」


振り返り。
手すりに寄りかかって。
背後の宝石に、笑いかける。

誇るように。
自慢するように。
自分が持つ何よりの宝物を、見せびらかすように。









「満点のひとだ」









【?????/1日目/朝】
【西甲太郎@25時のバカンス】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、貝殻型COMP、
[思考・状況]
基本:もう少しフォスと話をする。
[COMP]
1:フォスフォフィライト@宝石の国
[種族]:宝石
[状態]:健康
[備考]
※両腕は金に差し替えた後です。


252 : ◆KV7BL7iLes :2016/05/21(土) 15:43:56 e6lRlFBU0
投下を終了します。
収録は夜になると思います。


253 : ◆DGGi/wycYo :2016/05/21(土) 15:47:34 XOoV0sKg0
投下します


254 : 悪魔のような人間二人 ◆DGGi/wycYo :2016/05/21(土) 15:50:31 XOoV0sKg0
「困るねえ……本当に困るんだよねえ」

人気の無い路地裏で、ペラペラと喋る男が一人。
彼の名前は折原臨也。池袋で情報屋を営みながら、趣味の人間観察に没頭する人間。

「バケモノを使役して人間を殺す、俺はまっぴら御免だ。といっても、こう言ったからって帰してくれるほどあの魔神皇ってのは甘くはないだろうねえ」

路地の向こうには、人の形をしていない何かが数体蠢く。少なくとも人間ではない。

「まあでも」

手元のスマートフォン型COMPを弄りながら、彼はすぐ横にいる者の方を向く。

「少なくとも貴方は悪魔じゃない、れっきとした人間だ。そうでしょう?」

臨也の傍に佇む彼はピエロの仮面を被っている。
その手には、血のように紅い薔薇。

「いい加減そのマスクを外してもいいと思いますよ。地獄の傀儡師、高遠遙一さん」
「――やれやれ。私はまだ貴方に名乗った覚えはないのですが」
「そこは企業秘密ってやつですよ。貴方が探偵に暴かれるまで殺害トリックを教えないのと同じでね」

マスクを外し、自嘲気味に笑う高遠。

「私自身、強制される殺しなど好きではないのですが……」

人間を愛し怪物を嫌う人間と、怪物の仕業に見せかけて人間を殺す、或いは殺させる人間。
彼らはこの路地裏で巡り合った。
“人間と悪魔”としてではなく、対等な“人間同士”として。

【?????/1日目/朝】
【折原臨也@デュラララ!!】
[状態]:健康
[装備]:スマートフォン型COMP
[道具]:基本支給品、確認済み支給品
[思考・状況]
基本:さて、どうしようかねえ……
[COMP]
1:高遠遙一@金田一少年の事件簿
[種族]:殺人鬼
[状態]:正常


255 : ◆DGGi/wycYo :2016/05/21(土) 15:50:48 XOoV0sKg0
投下を終了します


256 : ◆fd1N1IjRQI :2016/05/21(土) 16:34:19 OEIr//sw0
投下します


257 : ◆fd1N1IjRQI :2016/05/21(土) 16:35:20 OEIr//sw0
仮想東京。
魔神皇が『殺し合い』の為だけに用意した正真正銘の魑魅魍魎が跋扈する文字通りの魔界都市。

その片隅で・・・


「おねいさ〜ん♪オラとおちゃしな〜い?」
「えっと・・・そういうのはちょっと・・・」

召喚された悪魔が、召喚したサマナーにナンパされていた。

◆◆◆◆◆

「え〜っと・・・とりあえず、お茶するかは保留という事で・・・」
「え〜?」

悪魔―魔女・星野輝子はお茶の誘いをやんわりと断ったのだが、それにサマナー―野原しんのすけは不満そうに頬を膨らましたのだった。
・・・と、ここで輝子は互いにまだ自己紹介をしていない事を思い出し、「・・・コホン」と咳払いをすると、
なるだけ心を落ち着かせてから、自己紹介を始めた。

「改めまして・・・私は魔女の星野輝子。君は?」
「オラ、野原しんのすけ!ふたば幼稚園ひまわり組の5歳児!」

しんのすけは右手を挙げて大きな声で元気よく自己紹介をした。
その子供らしい姿に、輝子は顔を綻ばせる。

「うん。じゃあ今後ともよろしくね!しんのすけ君!」
「・・・」

しかし、しんのすけはまた不満そうな顔をした。

「・・・どうしたの?」
「水臭いぞキッコおねいさん。オラのことは『しんちゃん』って呼んで欲しいぞ」

どうやら「君付け」より『ちゃん付け』の方がお好みらしい。

「えっと・・・しんちゃん?」
「・・・ぬぁ〜にぃ?」

輝子が希望通りちゃん付けで呼んだので、しんのすけは気持ち悪いくらいの笑顔を見せた。
それを見て輝子は顔を引き攣らせたが、すぐに気を取り直し、しんのすけに今後の方針を聞いてみた。

「・・・と、ところで!しんちゃんはこれからどうしたいの?」
「えっ?う〜ん・・・」

しんのすけは腕を組んで少し考えるそぶりを見せると、すぐに答えた。

「オラ、おねいさんとデートしたい!」

いきなりデートしたいと言われて、輝子は思いっきりズッコケてしまった。
何とか起き上がると、顔を引き攣らせながらもう一回質問した。

「そ、そういうんじゃなくって!あの魔神皇の言ってたような事をするのかってこと!」
「う〜ん・・・だってオラ、あのおにいさんの言ってた事よく解んないし・・・」
「あっ・・・」

しんのすけの何気ない言葉に、輝子はごく当たり前の事を失念していたことに気づかされた。
目の前のしんのすけはまだ5歳の幼稚園児。
そんな幼い子供に「殺し合い」などという物が理解できるはずがない。
なのに、しんのすけはこの場に連れて来られた・・・これはつまり、殺し合いに乗った参加者への生贄ということになる。
その考えに至った輝子は悲しげな顔をしたのだが・・・すぐに明るい表情に切り替えた。


258 : ◆fd1N1IjRQI :2016/05/21(土) 16:35:54 OEIr//sw0
「・・・それじゃあ、しんちゃん。お姉さんと空のデートでもしてみる?」
「おぉ〜!お空のおデート!してみたいぞ!」

輝子側からのデートの誘いに、しんのすけは年相応に喜んだ。

「よ〜し!メテオテール!」

輝子が呪文を唱えてステッキを振ると、胸元から起き上がりこぼしのような物が飛び出し、たちまち空飛ぶ絨毯へと姿を変えた。

「おぉ〜!魔法のランタンだぞ!」
「それを言うなら魔法の絨毯でしょ・・・さぁ乗って」
「ほっほぉ〜い!」

輝子に促され、しんのすけは絨毯に飛び乗った。
続いて輝子も乗ると、絨毯は勢いよく空中に飛び上がった。

「おぉ〜!すごいぞ!」
「しっかり捕まってねしんちゃん!」

はしゃぎ上がるしんのすけに、輝子は優しい笑顔を向けた。



この先、どんなに悲惨な結果が待っていたとしても、今だけは楽しい思いをしてほしい。
そんな風に思いながら・・・。


【?????/一日目/朝】
【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康
[装備]:COMP(マラカス型)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:おねいさん(輝子)とデートする
1:ほっほーい!

[備考]:殺し合いについてはよく理解していません。

[COMP]
1:星野輝子@コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜
[種族]:魔女
[状態]:健康、魔女っ娘姿
※サポートキャラのウルは装備品扱いです。


259 : ◆fd1N1IjRQI :2016/05/21(土) 16:37:57 OEIr//sw0
投下終了です。
タイトルは「クレしん×コンレボ 魔法少女天下御免だゾ!」です。


あと、拙作「正義の味方はピンチの時に現れる」に、一部誤字がありましたので、
修正しておきます。


260 : ◆.wDX6sjxsc :2016/05/21(土) 16:47:06 sTZ/tU/E0
投下します


261 : ◆.wDX6sjxsc :2016/05/21(土) 16:48:48 sTZ/tU/E0

「にゃ``あ``あ``ぁあ``ぁあ``あ``あ``!!!」

疾走。
346プロダクションに所属するアイドル、前川みくは彼女が普段演じている『猫』を思わせる敏捷さを見せていた。

「―――■■■■!!!!」

その背後を追うは、見るも醜悪な三体の悪魔。
あの始まりの空間で起きた惨劇に怯え、震えていた矢先に襲われたのだ。
おおよそ友好的とは思えぬ余りにも剣呑な雰囲気、
恐ろしく気持ち悪い容姿、何より指先から生えるナイフのような爪は彼女を恐慌に陥らせるに十分な物だった。

掴まれば殺される。

その予感の元、顔を涙と汗と涎でグチャグチャに彩り、アイドルどころか乙女としての尊厳も色々投げ捨てた様相でみくは走る。
その予感は間違ってはいないと、最初の遭遇で切り裂かれた右腕の切り傷が如実に示していた。

「だ、誰かッ!助けて、パパ、ママ、プロデューサー…!」

泣こうとも誰かを呼ぼうとも誰も来る気配は無く。
彼女の精神は確実に追い詰められていった。
そして、

「痛ッッ!?」

みくはアイドルだ。激しいダンスを踊りきれるように相応のレッスンは積んでいる。
だが、裏を返せばそれだけであり、元よりただの人間よりも体力に秀でる悪魔に勝てる道理は無かった。
引きずり倒され、彼女のトレードマークである猫耳カチューシャが転がっていく。
転んだ際怪我は無かったが、それは見方を変えれば悲劇でしかない。
倒される瞬間に頚動脈を切り裂かれ、絶命していれば、蹂躙される恐怖も、痛苦も感じることはなかっただろう。

「---■■■■」

咆哮をあげ、悪魔が倒れた少女を取り囲む。
完全な詰み(チェックメイト)。
それを悟ったみくは、涙が溢れた瞳で丁度視線の先にあった自分の猫耳を見た。
視界の端では、悪魔たちが嗤っている。

「李衣菜ちゃん……」

最後に脳裏を過ぎったのは、いつも自分とは喧嘩ばかりの少女。
でも、確かに前川みくにとって、多田李衣菜は、相棒だった。

吹き飛ばされた、猫耳のカチューシャはいつも彼女がつけているものとは違っていて。
ここに呼ばれる前日、李衣菜が見繕い、自分にくれた猫耳ヘッドフォン。
正直、ずっとつけているには重たいし、走るときも邪魔になったけれど、
それでも彼女は、ここに至るまでそのヘッドフォンを捨てようとはしなかった。
しかし、もう彼女がそれを付ける事はない。

「------■■■■■!!!」

情け容赦無い鋼爪が迸り――、一閃!


262 : ◆.wDX6sjxsc :2016/05/21(土) 16:49:24 sTZ/tU/E0




「勝ち鬨を挙げるには、まだ早い」



ずるり、
悪魔が一体、崩れ落ちる。
三体が二体になった。


「まだ小物なれど。悲しきかな、成敗されるがその定め」

その言葉とともに、再び悪魔が息絶え、二体が一体になる。
残された悪魔は一瞬の逡巡を見せたが、仲間の敵討ちか、それとも自身の欲望のためか、
『ヘッドフォン』より出でし悪魔に踊りかかる。

相対する悪魔は落ち着き払った様子で抜刀。
そして―――、


―――超・占事略決 巫門御霊会


263 : ◆.wDX6sjxsc :2016/05/21(土) 16:50:09 sTZ/tU/E0




「娘さん。お名前は?」
「えっと…み、みく」
「みくさんですか…ではこれを」

そう言って、少女の目の前の悪魔は、ヘッドフォンを手渡してきた。
みくはそれをおずおずと見つめ、猫耳ヘッドフォンの頭に掛ける箇所ににディスプレイがついていることに気がついた。

「あれ…これ」
「COMP、でしょうな。小生はそこから出てきた故、間違いはないかと」
「それじゃ、アナタが……」
「ええそうです。悪魔ですよ」


ニヤリと、悪戯っぽい笑みを浮かべる悪魔。
まだみくの中で悪魔に対する恐怖はあったが、先ほどの三匹の悪魔と違い、非常に渋く理知的かつ、友好的な印象を与えた。
何より彼女の興味を惹きつけてやまぬその容姿。
二本足で見事に和服を着こなし、頭には大きな耳が二つ、お尻の辺りにはゆらゆら揺れる尻尾が二つ。

「失礼、みくさんが名乗ったのに小生が名乗らぬわけにはいきませぬな」

「小生、麻倉家に仕え千年。ネコマタのマタムネと申すもの」

「好物はマタタビ。今後とも、よろしく」

身にまといし洗練された雰囲気に似合った名乗り。
だが、それとは別のところで、少女の体はプルプルと震える。
しばらくそれをマタムネはどうしたことかと見つめていたが、

「カッワイイにゃぁあぁあああ!!!」


―――どうやら溢れる感情を抑え切れなかったらしい。



【?????/一日目/朝】

【前川みく@アイドルマスターシンデレラガールズ(アニメ)】
[状態]:右腕に軽い切り傷
[装備]:COMP(猫耳ヘッドフォン型)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:生きて李衣菜ちゃんやプロデューサー達の所へ帰る。
1:マタムネをモフる。

[COMP]
1:マタムネ@シャーマンキング
[種族]:精霊
[状態]:健康


264 : ◆.wDX6sjxsc :2016/05/21(土) 16:50:57 sTZ/tU/E0
投下終了です

タイトルは「にゃん・にゃん・にゃん♪」です


265 : ◆mcrZqM13eo :2016/05/21(土) 16:55:41 b.SsAx7E0
三本投下します


266 : 魔術師の黒(マジシャンズ・ブラック) ◆mcrZqM13eo :2016/05/21(土) 16:58:03 b.SsAx7E0
気が付けば東京ドームのグラウンドの真ん中に居た。
時折興行を行う場所なだけに、ここが何処なのかは見当がついたが、過程は完全に不明である。
腰まで伸びる長い黒髪に、紅い瞳と白皙の肌。黒いビキニにの上に紫と緑の道化服の様なコスチュームを身に付けた姿の少女の名は氷室紫月(ひむろしずく)と言った。

「オレンジジュース……鯖缶にカロリーメイト……」

オレンジジュースが入っていたのは僥倖かもしれない。他人と違って、自分には武器として使用できる。

「銃……?」

次に出て来たのは白銀に輝くリヴォルバー、大の男の手にも余るそれを取り敢えず置いておく。

「こんなものが入っているなんて」

取り出すまで重さを全く感じなかった事に驚きつつ更に漁ると、ケースが出て来た。

「これは…」

中に入っていたのはタロットカード、少女の愛用する品と同じ物。早速並べて運命を占ってみる事にする。悠長に見えるがこれが氷室紫月という少女の在り方なのだ。

「今日の札は正位置の『塔』……この事だったのね」

控え室で出番を待っていたらいつの間にかあの体育館に居た。そして今度は国会図書館。およそ常識の枠を越えているが、少女は運命の導きと受け入れる。

「今度もカードは導いてくれる……」

慌てず騒がず、慣れた手つきで鞄からタロットカードを取り出し、机の上に並べて行く。
その行為が新たな運命の出会いを齎すとも知らずに。

「………!?」

輝きを放つタロットカード。その中の一枚が裏返り……。

「我が名はアル・アジフ。世界最強の魔導書なり!!」

魔術師のカードから現れた幼女は傲岸不遜に宣言した。

「汝(なれ)が私のマスターか…魔術師(マギウス)資質は無いか……まあ仕方ない。

「アル・アジフ…?あの…?」

「ほう…妾を知っておるか。闇の気配の無い者にも知れているとは、やはり我は他の魔導書(もの)共とは別格よのう…クックックッ」

邪悪極まりない笑みを浮かべる幼女。折角「美」と頭に付けられる程の容貌が台無しである。

「その姿は?」

「高位の魔導書ともなれば、自我を持ち、人の姿を取ることも可能……まあ、そんな事より、魔性の存在が近づいておるぞ」

「……!?」

周囲を見回してみるが、何もいない。だが、この幼女が嘘を言っていないことだけは理解できた。

「決断せよ。ここで妾と契約するか?それとも死ぬか?」

「運命があなたと私を結びつけた……止まらぬ歯車…それが運命」

「では契約だ」

重ねられる唇。灼ける様な熱さ。身体中に漲る力。チカラ。力。

「あぁ…あああああああ!!」

叫ぶ。その時には『契約』は終わっていた。

均整の取れたボディラインが見て取れる黒いボディスーツに全身を覆われた姿。見る者が見れば、凄まじい魔力が少女の全身を駆け巡っていると解るだろう。

「其処に転がっているのは“イタクァ”か!?拾え小娘。この先心強い力となるぞ」

転がっていた白銀の拳銃を拾うと、少女は走り出した。運命に導かれるままに。


【?????/1日目/朝】
【氷室紫月@レッスルエンジェルス サバイバー
[状態]:健康
[装備]:COMP:タロットカード型
イタクァ(弾数×20)デモンベインシリーズ

[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:
1.脱出
2.殺し合いには乗らない
[COMP]
1:アル・アジフ
[種族]:精霊
[状態]:健康
【備考】オレンジジュースを毒霧(プロレス技)として使用できます


267 : 悪名高き ◆mcrZqM13eo :2016/05/21(土) 16:59:18 b.SsAx7E0
新宿御苑に異変が起きていた。悪魔達が算を乱し逃げてゆくのだ。
その原因は御苑内部の死体に有った。
首と胴が生き別れになったその死体は、魔神皇に首輪の説明の為に殺された少女のもも。
そしてその死体の周囲を徘徊するものは

「YAH!GYAAAAAAAA!!!」

スタンド使いの『死』をトリガーに発動するスタンド『ノトーリアスB・I・G』
動くものを無差別に襲うスタンドは、周囲の悪魔を方端から襲い、殺戮していったのだ。

魔神皇の悪意により、新宿御苑は死の領域と化した。


【?????/1日目/朝】
【アキコ@真・女神転生if…
[状態]:死亡
[装備]:COMP:生徒手帳型
[道具]:基本支給品、未確認支給品
[思考・状況]
基本:
[COMP]
1:ノトーリアスB・I・G
[種族]:スタンド
[状態]:自動操縦


268 : 上院議員は挫けない ◆mcrZqM13eo :2016/05/21(土) 17:00:23 b.SsAx7E0
「な…なんだというのだ」

高級なスーツに身を包んだ男が一人、首都高で車を走らせながらオタついていた。

「あ…あの子供、人を二人も殺しておいてッ!殺し合いをしろだとッ!まだ人死にが見たいのかッ!」

男の名はウィルソン・フィリップス。上院議員である。日暮れも近いエジプトのカイロで車に乗っていたら、日本の東京に居た。それだけは理解できる。

「あ…ありのままいま起こったことを話すぜ!!
わしはカイロで車に乗っていたら日本の東京にいた。
な…何を言っているのかわからないと思うが
わしも 何をされたのか わからなかった…
頭がどうにかなりそうだった… 超スピードとか催眠術とか
そんなチャチなもんじゃあ 断じてない
もっと恐ろしいものの片鱗を 味わったぜ… 」

しかし!!ウィルソン・フィリップスは挫けないッ!彼はきっとこの自体を乗り切り、大統領になるッ!何故なら彼は……。

「大学ではレスリング部のキャプテンを勤め…
社会に出てからも みんなから慕われ 尊敬されたからこそ政治家になれた…
ハワイに1000坪の別荘も持っている…
25歳年下の美人モデルを妻にした…
税金だって他人の50倍は払っている!
どんな敵だろうとわしはぶちのめしてきた…いずれ大統領にもなれる!
わしは…ウィルソン・フィリップス上院議員だぞーーーーッ 」


【?????/1日目/朝】
【ウィルソン・フィリップス上院議員@ジョジョの奇妙な冒険part3 スターダストクルセイダーズ
[状態]:健康・高揚
[装備]:COMP:運命の車輪型
[道具]:基本支給品、
[思考・状況]
基本:
1.事態の解決
2.魔神皇を倒す
3.大統領に、わしはなるッ!
[COMP]
1:運命の車輪(ホイール・オブ・フォーチュン)
[種族]:スタンド
[状態]:健康

【備考】COMPと運命の車輪は融合しています


269 : 上院議員は挫けない ◆mcrZqM13eo :2016/05/21(土) 17:00:54 b.SsAx7E0
とうかをしゅうりょうします


270 : ◆yaJDyrluOY :2016/05/21(土) 17:21:06 T6l6YjKs0
自分も三作投下します


271 : 証拠映像1「プーさんのマジンノウハント」 ◆yaJDyrluOY :2016/05/21(土) 17:22:47 T6l6YjKs0
 現在、宇宙開発局は人類の宇宙進出に向けて新たな企画を立てていた。
 TVクルーの宇宙進出である。
 宇宙飛行士による撮影ではなく、宇宙に関して何の知識もないリポーターやカメラマンを宇宙に連れて行こうというのだ。
 その栄えある一人目のリポーターに選ばれたのは――



 オレンジ色の近未来的な衣装に身を包んだ女性が、ハンディカメラを片手に持ち自分にレンズを向けていた。
 彼女の持つビデオカメラは支給された荷物に入っていた物であり、COMPとしての昨日も内包している。
 さて、この殺伐とした状況で彼女が何をしているかというと――

「皆さんこんにちは。今回のうららリポートショーは、私達が“マジンノウ”を名乗る青年によって拉致され、殺し合いを強制されている事件を撮影していきます」

 バトルロワイヤルの現場リポートだった。
 ビデオカメラがどこかに繋がっている訳でもなく、テープを持ち帰らなくては意味のない行為である。
 しかし、それが自分以外の誰かだとしても、この惨劇を外に伝えて青年を逮捕する証拠になるならそれ越したことはない。
 そう心に決め、うららはリポートを開始したのだった。

「今回の事件のキーワードは、悪魔と呼ばれる存在だと思われます。一体どんな生物なのでしょうか、怪しい気配がぎゅんぎゅんします。現在私が使っているこのカメラにも封印されている様なので、さっそく呼び出してみたいと思います」

 うららはカメラのメニュー画面を開き、『悪魔召喚プログラム』と書かれたボタンを押した。
 カメラのレンズから射出される様に光が溢れ、何者かが地面に降り立った。
 低い姿勢でクモのように足を開いているそれは、真っ赤な全身タイツで身を包んだ男のように見える。

「ヘイ! 引っかかったな! スパイディだと思っただろ? 残念、デッドプールちゃんだよ!
 スパイディは大人気だからこんなところに来られるほど暇じゃあないんだ……
 ――ん? ソレってオレちゃんが暇だと思われてるって事? ワォ!なんてこった、これから映画も始まるのに!?」

 デッドプールと名乗る男は、出てきた途端まくし立てるようにハイテンションで喋り続けている。
 うららはその様子を撮影しつつも、あまりの驚きに言葉を失ってしまっていた。

「オレちゃんばっかり聖杯戦争だの二次創作SSだの引っ張りだこでもう大変よ!
 え、なになに? これも全部ハザマって奴のせいなの!? ファ○ク! ユグドラシルぜってぇ許さねェ!今すぐにでもあの童貞臭い面に鉛弾をぶち込みたいぜ! なぁ、嬢ちゃんもそう思うだろ!?」


272 : 証拠映像1「プーさんのマジンノウハント」 ◆yaJDyrluOY :2016/05/21(土) 17:23:41 T6l6YjKs0

 怒りに燃えるデッドプールはそのまま息をつく暇もなくうららに同意を求めた。
 出始めから第四の壁を壊しまくっている彼の言葉がうららに理解できるはずもなく、うららは混乱の色を刻するばかりである。
 だが、仮にも自分に話を振られたことでうららは平静を取り戻す事ができたのだった。

「えーと、“ハザマ”というのは“マジンノウ”と名乗る青年のことでしょうか?」

「イエス! ちゃんとOPかWiki見ないとダメよ? ご丁寧に主催者【ハザマ@真・女神転生if...】って書いてくれてるんだから! これだったらメガテンの攻略本買ってくれば安心じゃん!
 ……ってあれ? うららちゃん原作とふいんき()違くね? 髪切った?」

 困惑するうららに対して、デッドプールも疑問を生じさせた。
 デッドプールの知る『スペースチャンネル5』に登場するうららとは何かが違うように感じたのだ。
 それもそのはず、このバトルロワイヤルは現代人に重きを置いており、宇宙進出した後の未来人であるうらら達とは少し異なる設定なのだ。

「↑おいおい! それマジ? じゃあモロ星人の話とか出来ないの? 超ショック! うららちゃんがいるのにあのダンスキチ星人居なかったら折角のダンスが見れないじゃん!」

 恐らくこの会場内でデッドプール以外は共感できない悩みだが、本人は結構真剣に悲しんだ。
 しかし、そこで泣き寝入りしないのがデッドプールである。
 うららが踊る相手が居ないなら自分が踊ればいい、ととっさに閃いたのだ。

「うららちゃんはこの後どうするの? 殺し合いに乗るの?」

「まさか、私は殺し合いをさせられている人達を助けながら、この惨状を収めたテープを持ち帰ることが目的よ」

「オーケーオーケー、人助けするのは原作と一緒なわけね。よーし、じゃあ協力するから一緒に踊ろう! オレちゃんの後に合わせて、レッツ・ダンス! Up Down Right Left Chu! Chu! Chu! うわ楽しい!!」

 デッドプール自身は自然な流れで踊りに誘ったつもりだったが、全くもって不自然である。
 うららは自分にカメラのレンズを向け、きちんと写っていることを確認すると再びリポートを開始した。

「捕まった人々を助けるため、私は悪魔と交渉を行いました。悪魔はダンスを求めている様なので、とりあえず踊ってみたいと思います」

 デッドプールとうららは互いに妙にキレキレなダンスを披露し、友情を深めあった。
 こうして、ダンスと射撃が上手いリポーターと不死身の狂ったヒーローは結託して前に進む。
 要救助者を助け、殺し合いに乗る者を挫くために。

「オーケー、出だしは快調だな。この調子でオレちゃんが楽しくバトルロワイヤルを生中継しちゃうぜ! え? ビデオカメラだから生中継じゃないって? お前らに見えてんだろーがッ! 華麗にハザマちゃんの鼻っ柱をなます斬りにしてやるからよく見とけ!」



「おっと、忘れるところだった――チャンネルはそのまま♪」


【?????/1日目/朝】
【うらら@スペースチャンネル5】
[状態]:健康
[装備]:COMP(ハンディカメラ型)
[道具]:基本支給品、銃(詳細は未確認)
[思考・状況]
基本:人を助けつつ、現場をカメラに収め持ち帰る。
[COMP]
1:デッドプール@MARVELコミックス
[種族]:ヒーロー(ミューテイト)
[状態]:健康


273 : 救世主少女(しにがみ)は気付けない ◆yaJDyrluOY :2016/05/21(土) 17:24:48 T6l6YjKs0
 『COPPELION(コッペリオン)』――それは、原子力発電所の事故から人々を救うために作られた人類の救世主。
 彼らは遺伝子操作によって、放射能を無効化させるイオン交換体の体細胞を持っているのだ。
 故に、彼らは、幼少期から人助けのための訓練を行ってきた。
 瓦礫が散乱した場所の迅速な移動法から、意識を失った人への応急処置まで一通り何でもできるように。
 そのうえ遺伝子操作の際に、一人一人に特殊な能力が付加されている。
 そんな人命救助のエリート、それがコッペリオンなのである。



「なんなんや、この状況……」

 コッペリオンの中でも、特に人命救助に優れた者達で結成された部隊――通称『保健係』。
 その保健係のリーダーである成瀬荊は、唐突に巻き込まれた殺し合いに困惑を隠せなかった。
 あまりにも自分の常識とはかけ離れた状況である。

「うちらの助けを待ってる人達がおるのに、殺し合いなんかしてる場合やあらへん」

 復興を待ち望んでいる人々を助けなければならないのに、こんなふざけた事で停滞しなくてはいけないなんて間違っている。
 成瀬は歯痒い気持ちを抑え、まず何をしなくてはならないのかを冷静に判断することにした。

「連れてこられた全員が殺し合いしたがっとるわけはないはずや……あたしみたいなんも少なからずおるやろうし」

 この会場には殺し合いに乗る者、殺し合いを止める者、状況がわかっていない者など様々である。
 当然、か弱い存在は凶悪な存在に淘汰されてしまう危険性がある。
 
「……いや、どんな状況でも、助けを求める人達を助けるんがコッペリオンや」

 原発の被災地ではなくとも、自分以外に手を差し伸べる人々が居るとしても、助けを待っている人を見て見ぬふりをしていい理由にはならない。
 成瀬は決心した。帰りたがっている人達を助けて、みんなで一緒に帰る事を。

「あの男は悪魔がどうとか言うとったな……この荷物に入っとるんか?」

 成瀬は遺伝子操作によって平均的に一般人を超えた身体能力を持っているが、本当に悪魔なんて存在がいるとしたらどこまで通用するかはわからない。
 内心恐々としつつも、判断するためには接触せざるを得なかった。
 荷物を確かめると、腕に巻けるようになっている小型のノートパソコンの様な物が見つかった。
 成瀬は恐らくそれがCOMPなのだろうと推測し、腕に装着する。
 すると、画面が起動して詳細なメニュー画面が出現した。


274 : 救世主少女(しにがみ)は気付けない ◆yaJDyrluOY :2016/05/21(土) 17:25:32 T6l6YjKs0

「悪魔召喚プログラム……これやな」

 一際目につく悪魔の文字。
 このプログラムを起動してしまったら、何かが変わってしまう気がした。
 しかし、もう会場から出ることは叶わないのだ。
 おそらく悪魔は生き残るために重要な存在、押すしかない。

「うりゃ!」

 起動ボタンを押し、身構える。
 溢れる光から視界が晴れると、そこには――何もいなかった。

「は?」

 周囲を見渡しても、それらしき姿は見当たらない。
 てっきり角が生えてバサバサと羽ばたく悪魔が出てくると思っていた成瀬は、上空を見上げる。
 しかし、そこには鳥さえ飛んでいない空虚な空が広がるばかりである。
 すると――ちょこん、と成瀬の足に何かが触れた。
 見下ろすと、明らかに生物ではない革製のテディベアが立っていた。

「なんや?――もしかして、おまえが悪魔なんか?」

 テディベアは喋ることも頷くこともせずじっと立っている。
 成瀬はしゃがんでテディベアに軽く触れるが、一切動く気配はない。
 よく観察しようと、成瀬が抱き上げた――その時

「重っ!!」

 通常のぬいぐるみ感覚で持ち上げようとした成瀬は、思わず転んでしまった。
 それもそのはず、このテディベアは実に9.4キログラムもあるのだ。

「な、なんやお前、機械でも入っとるんか?」

 パンパンとスカートについた汚れを払い、成瀬は再びテディベアを抱え上げる。
 一度重さを知ってしまえば、10キロ以下の重さなど成瀬にとっては軽い物である。

「うーん、ホンマに悪魔なんか? よく出来たロボットにしか見えへんけど……」

 冷たく首にまとわりつく首輪も相まって、最先端の機械だと言われたほうがまだ説得力がある。
 このテディベアだけでは判断がつかないので、成瀬はとりあえず他の参加者を探そうと歩き出した。
 その腕の中にテディベアを抱えたままで。

 成瀬荊は知らない、そのテディベアはとある財団によって管理されている危険な存在であることを。
 成瀬荊は知らない、そのテディベアは一度自分から離れれば致死量の放射線を撒き散らしながら人を殺して周ることを。
 成瀬荊は気付けない、出現した瞬間から周囲が汚染され始めていることを。
 
 人類の救世主である故に。コッペリオンである故に。

 ――成瀬荊は、気づくことが出来ないのだ。
 腕の中にいるそれが、一番の敵だということを。



【?????/1日目/朝】
【成瀬荊@COPPELION】
[状態]:健康
[装備]:COMP(通常型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:助けを求めている人々を救い、生きて脱出する。
[COMP]
1:SCP-1145(ナガサキ・テディ)@SCP Foundation
[種族]:SCP
[状態]:健康

※クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP FoundationにおいてLucavex Ayanami氏が創作されたSCP-1145のキャラクターを二次使用させて頂きました。
ttp://www.scp-wiki.net/scp-1145


275 : パチュリー・ノーレッジと恐怖の王 ◆yaJDyrluOY :2016/05/21(土) 17:26:47 T6l6YjKs0
 世界の何処かにある、紅魔の館。
 その地下には膨大な魔導書の数々があるという。
 それは、たった一人のとある魔女によって管理されている。
 その魔女の名は――パチュリー・ノーレッジといった。



「魔神皇――とか、言ったかしら。私をこんな事に巻き込むなんていい度胸じゃない」

 パチュリーは少し前の出来事を振り返り、怒りを顕にしていた。
 自分は間違いなく世界最高峰の魔法使いだという自負はあるし、紅魔館にだって何重にも結界を張っていた。
 それなのに、自分は拉致された。
 ――それも抵抗するどころか全く気づかない内に、だ。
 その上、未知の首輪にメギドの光。パチュリーをしてまだ彼の実力を測り切れてはいなかった。
 弱い者ほど大層な名を名乗りたがる物だが、『魔神皇』という名を名乗る程の実力はあるのかも知れない。

「COMPねぇ……なら、こっちはどうかしら」
 
 パチュリーは空中に向かって指を振るった。
 何も持っていない筈のパチュリーの指先から魔力の光が溢れ、軌跡を紡ぐ。
 その光は空中で留まり、一瞬の内に同じ動作を数回繰り返すと、あっという間に空中に魔法陣が描かれた。

「小悪魔召喚」

 小さく開かれたパチュリーの口先から短く呪文が紡がれる。
 それは召喚魔法の呪文であった。
 選んだのは小悪魔。
 最も召喚し慣れており、普段は自身が管理する図書館の司書としても使っている悪魔だ。

「……はぁ。まさかとは思ってたけど、やっぱり何かされてるわね」

 結果は――失敗。
 術の発動を妨害されたというよりも、まるで元から”存在しない魔法”を行使した様な感覚だった。
 さも、魔法を覚えたての子供が『こんな魔法があったらいいな』とデタラメに使った魔法とでもいうのか。
 日々の研鑽を否定するかのような制限にパチュリーはさらに怒りを燃やす。

「あくまで自分の用意したシステムしか認めないってわけね」
「……いいわ、乗ってやろうじゃない。そっちの土台で叩き潰してあげるわ」

 パチュリーは魔神皇打倒を決意し、道具袋を開く。
 基本支給品には目もくれず、魔女の直感で一冊の本を取り出した。

「これね」

 グリモワール型COMP。それがパチュリー・ノーレッジに支給された悪魔召喚の道具だった。
 中をパラパラと捲ると、地図や悪魔辞典の欄が目に入ってくる。
 魔術で描かれているのだろうか、ご丁寧に紙面でもリアルタイムに動き続ける時計やコンパスまで載っている。
 そして――目当ての悪魔召喚プログラムのページに行き着いた。

「さて、もしチンケな悪魔だったら納得しないわよ――悪魔召喚!」

 パチュリーはCOMPに描かれた魔法陣に手を当て、悪魔を呼び出した。
 グリモアから眩い光が溢れだし、悪魔の召喚がなされる。

「わたしを呼び出したのは君かい?」

 燃え盛る頭部を持ち、赤と紫黒色の鎧で全身を包んだ長身の悪魔が、フワリと空中に浮いていた。


276 : パチュリー・ノーレッジと恐怖の王 ◆yaJDyrluOY :2016/05/21(土) 17:27:35 T6l6YjKs0
 悪魔然とした外見に関わらず、口調だけはきわめて紳士的である。
 炎の奥では余裕を感じさせる記号的な笑みを浮かべ、表情から思考を読み取ることは難しい。
 遺憾な事にパチュリーにはその力の片鱗さえ推し測ることは敵わず、これまで出会ったいかなる悪魔よりも強大な存在であった。

「そうよ、宛てがわれた悪魔に頼るのは納得いかないけど……あのいけ好かない男をぶちのめすために協力して貰うわ」

「ハハハ、まんぞくに力も使えない身でよく言ったものだね」

 悪魔はパチュリーの魔法が制限されていることを見破り、計画を笑う。
 しかし、その笑いに嘲りの感情はなく、純粋に面白がっている様であった。

「うるさいわね。正直科学に明るくないのは認めるわ……でも、解析さえ済めばこっちのものよ」

「ほう、どうしてだい?」

「まだ測りきれていない部分も多いけど、魔法に関して言えば私に一日の長がある。あいつの使った魔法にも覚えがあるし……魔法使いとしてなら勝てない相手じゃないわ」

 そう、パチュリーには100年生きた経験とその間勉強し続けたことで身についた膨大な知識がある。
 強大な敵にとっさの対応をすることは不得手だが、しっかりと準備を進められれば敵はいないと言えるほどの実力を持っていた。
 魔神皇は機械の首輪を使っている――逆を読めば魔法だけでは自分を縛る実力がないと言っている様なものである。
 そんなパチュリーの推測はあたっているのかいないのか、ともかくその回答に悪魔は満足したようだった。

「分霊の身体でもキミ達を消し飛ばすのは簡単な事だが、少し興味が湧いた。追い詰められた人間がショボい魔法でどう挽回するのか、地球を手に入れる時の参考にさせてもらうよ」

「――はぁ、そんな時が来たら私があんたを退治してやるわ」

 不遜な態度を崩すこと無く、魔神皇までザコだと称する悪魔にパチュリーは呆れるしか無かった。
 しかし、彼の言葉は決して誇張などしておらず、事実別の平行世界では何度か彼に地球を支配されているのだが、パチュリーがそんなことを知るはずもない。
 パチュリーの態度を了承と受け取ったのか、悪魔は機嫌を良くしたようだ。

「ハッハッハッ、じゃあ決まりだね。魔神皇の元までキミを導いてあげよう――このドーマムゥがね!」

 パチュリーは身体が弱いという欠点はあるが、魔法使いとしての実力は高い。
 しかし、ドーマムゥはそれを遥かに上回る、全世界――否、全次元最強の魔術師である。
 種族も考え方もまるで異なる2人の魔術師は、この先理解を深めることが出来るのか。
 早くも疲れ気味のパチュリーに対し、ドーマムゥの笑みが崩れる事は無かった。



【?????/1日目/朝】
【パチュリー・ノーレッジ@東方Project】
[状態]:健康
[装備]:COMP(グリモア型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:魔神皇をぶちのめす。
[COMP]
1:ドーマムゥ@MARVELコミックス
[種族]:ファルティナ
[状態]:健康


277 : ◆yaJDyrluOY :2016/05/21(土) 17:28:06 T6l6YjKs0
投下終了です


278 : ◆mcrZqM13eo :2016/05/21(土) 17:38:47 b.SsAx7E0
>>267
追加します

【備考】ノトーリアスは御苑から出る事が出来ません。10m以上の大きさになることも出来ません


279 : ◆BLAZExujxM :2016/05/21(土) 17:42:46 yGkdwY6.0
投下します


280 : 鰐の王  ◆BLAZExujxM :2016/05/21(土) 17:43:27 yGkdwY6.0

「イライラするんだよ……」

 鯖(型のCOMP)片手に周囲を辺り散しながら歩く男が一人。
 彼に支給されたCOMPは食べられそうで食べられなかった。
 そのことでさらに彼のイライラを加速させた。 

「これ、鯖じゃねぇ……!」

 トカゲだろうと貝の殻だろうと泥だろうと食ってきた。
 しかし、この鯖だけ食えなかった。
 COMPは壊れないから仕方ないね。

 男の名は浅倉威。
 関東拘置所に拘留されていた25歳の凶悪殺人犯だ。

 彼の記憶の限りは……。
 鉄パイプ片手に警官隊に突っ込んでいった所までは覚えていた。
 だが、そこから彼の記憶は曖昧になり……イライラした。 

「……イライラするぜ……」

 浅倉はイライラしながらも今のこの状況を考える。

 【魔神皇】……神崎士郎に当たる存在だろう。
 【COMP(鯖)】……カードデッキに当たる存在だろう。
 【悪魔】……ミラーモンスターに当たる存在だろう。

 ならば、彼がやることは変わらない。
 
「いいねぇ……やってやろうじゃねぇか……」

 にやりと口角を吊り上げて笑う。
 彼は悪魔を召喚する。

 そして、浅倉の前に現れた悪魔。
 それは巨体で緑色の体で……
 王冠と赤いマントを身につけており……
 血走った大きな左目が特徴的な……
 二足歩行をしている…………。
 
「トカゲか……?」
「違う、俺様はワニじゃ!」
「お前……食えるのか?」
「俺様は食用じゃないんじゃ!」

【?????/1日目/朝】
【浅倉威@仮面ライダー龍騎】
[状態]:健康、イライラしている
[装備]:鯖型COMP
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:イライラを晴らすべく戦う
[COMP]
1:キング・クルール@スーパードンキーコングシリーズ
[種族]:ワニ
[状態]:健康


281 : ◆BLAZExujxM :2016/05/21(土) 17:43:49 yGkdwY6.0
投下終了です。


282 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/21(土) 19:41:55 XqqSqKGc0
投下します


283 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/21(土) 19:43:10 XqqSqKGc0

 「財閥」という言葉に聞き覚えはあるだろう。それは、平たく説明すると、凡そ400年前から続く、世界最古の豪商の一族のことを差す。
 表向きは、戦後GHQに解体させられた事になってはいるが、それはブラフである。
 現代も日本経済は、大小の差はあれど、大きく分けて4つの財閥に支配されていた。
 そして、各財閥の代表者同士が、財界での発言権を賭けて闘う、言わば代理戦争が現代でも行われている
それが「牙闘《キリングバイツ》」だ
その時代時代で最強と言われる者達が選ばれ、そして殺し合ってきた
そして近年、「近闘」の参加者は全て、獣人となった

「なんだコレ」

 そう疑問の声をあげる彼女も、その獣人のひとり。
 宇崎瞳、もとい「蜜獾(ラーテル)」の異名を誇る獣闘士は、住宅街の片隅に居た。
 もっとも、まだ「獣化」していないため、外見上は普通の女子高生にしか見えないが、彼女もまた、れっきとした獣闘士である。

「悪魔だとか何だとか…… これが今回の『獣獄刹《デストロイヤル》』なのか?」

 この殺し合いは、本来なら彼女が参加するはずだった決闘形式ではなく、複数の参加者が入り乱れての殲滅戦といった点で、獣獄刹と似通った所もある。ならば、これもそのゲームの延長線上なのではないかと推測できる。

「祠堂さんからは何も聞いてねぇけど……」

 もしくは一参加者である自分には知らされていないだけで、ルールが変わっただけかもしれない。にしても、財閥との連絡役も兼ねた彼から何の連絡もないのはおかしい。
 なら、このゲームは魔神皇とやらが、財閥とは関係なしに独断でやらかしていることなのかもしれない
 
「まぁ良いか」

 瞳はそういった疑問を一切『どうでも良いこと』として放置した。どれだけ考えたところで答えが返ってくるわけでもないし、何ら状況が変化するわけでもない

「ルールがいくら変わろうが、相手が悪魔だろうが、関係ない

 牙の鋭い方が勝つーーそれが『牙闘』だ」

 優勝するのは自分だ。
 暗にそう断言したその思考の根底には、『自分が一番強いから』という、慢心とも自信ともつかないような、傲慢すぎる意思がある

 そもそも獣人とは、人のDNAに含まれるあらゆる生物の遺伝情報から、その人間にもっとも近い「動物の因子」を抽出し、強化するといった「獣化手術」を受けた者達のことである
 つまり、ライオンやヒョウなどの、大型動物の餌場に入り込み、堂々と居座り、堂々と獲物を盗み、しかも、見つかると逆ギレするというギネス級の横暴さを誇るラーテルの因子を、色濃く持った瞳の性格が、生まれつき横暴なのも、自明の理であった。
 
「そう言えば……悪魔を与えるとか言っていたな。あいつ」

 別に自分ひとりでも十分に勝てる。悪魔というものが実在するのかはどうでもいいが、気にはなった。
 ディバックからそれらしい携帯端末を引っ張りだし、確認してみることにした


284 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/21(土) 19:44:45 XqqSqKGc0


 ラーテルは、非常に好奇心の強い動物である。少しでも興味を引くものがあれば、危険を一切顧みず、何処までも追いかけていく
 即ち、ラーテルの傲慢ともとれる恐れ知らずの性質は、どんな状況にも順応、己が利を見出だせるという、柔軟性も含むんでいる
 そうして彼女が召喚することを選択した悪魔が、ひとえに『アタリ』だったのは、何ら作為のない、単に彼女自身の幸運によるものである。

 悪魔召喚プログラムとやらが起動し、そうして現れたのは、トレンチコートを着用した大柄な外国人だった。

「へー…… お前が悪魔なのか?」

「……」

 物珍しそうなサマナー、もとい瞳の言葉に、彼は答えない。かわりにその視線はじっと彼女に向けられていた
 一般的な悪魔のイメージとは異なるが、この男から発せられるオーラは並みのものではない。それだけで、人の範疇には属さない存在だというのは、一目で看破できるだろう

「最初にひとつ言っておく」

 それを感じ取ったのか、やや凶悪な笑みを浮かべた瞳は、眼前に静止する悪魔にこう言いはなった

「私は味方なんていらねえし、どこにも属さねえ」
「だからーー邪魔は、するなよ」

 その好戦的な提案に、しかし、大尉は何も答えない。その心中はわからない。
 ただ、瞳から微かに感じる獣の香りに興味を示していたことは確かだった

 そうして生粋の獣闘士と最後の人狼は会合を果たした



【?????/1日目/朝】 
【宇崎瞳@キリングバイツ】
[状態]:健康
[装備]:COMP(携帯型)
[道具]:基本支給品、確認済支給品
[思考・状況]
基本:優勝狙い。やることはかわらないのでとりあえず闘う
[COMP]
1:大尉@ヘルシング
[種族]:人狼
[状態]:健康


285 : ◆Cf8AvJZzb2 :2016/05/21(土) 19:46:02 XqqSqKGc0
投下終了です
タイトルは「獣闘士」です


286 : ◆TE.qT1WkJA :2016/05/21(土) 19:46:59 xkZifLi20
投下します


287 : パライソからインヘルノへ ◆TE.qT1WkJA :2016/05/21(土) 19:50:00 xkZifLi20
草薙流古武術の継承者「祓う者」、草薙京。
何の因果か、三種の神器の剣を司る家系の血を引く彼もこの殺し合いの地に呼ばれていた。

「なんだ…この血が騒ぐ感覚は…」

京は目の前に佇む悪魔を見て、戸惑いながら言う。
見る者全てを圧倒するような、身体に纏っている覇気。少しサイズのきつそうなぴっちりとしたタキシードにマント。
そして、吊りあがっている口から垣間見える鋭く尖った歯。
悪魔の名はデミトリ・マキシモフ。世界的に有名な吸血鬼であり、かつて魔界でその余りある力を誇示した闇の貴公子とも呼ばれる、魔王だ。
吸血鬼が苦手とされている太陽でさえも、デミトリはその身に纏うオーラによって全て無効化してしまっている。

「ほう、この私を召喚するとはどんな人間かと思ってみれば、他の人間とは一味変わった血が流れているようだ。その感覚は君の血が私に吸われることを望んでいるんだよ。
だが、君のような荒々しい男の血はあまり好かん。この飢えは他の悪魔との闘争で満たすとしよう」
「のっけから随分なこと言ってくれるじゃねぇか」

京は頭一つ分身長の高い、魔神皇に渡されたスマートフォン型のCOMPから出て来た悪魔を睨む。
それに対して、「これは失敬」と言いつつも人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべている。
いけすかない野郎だとか、なんでよりにもよってこんな野郎が俺の悪魔なんだと内心で愚痴りつつも、京は今、この状況に置かれてどういう気分かを率直に言う。

「あの魔神皇って野郎が気に入らねえ」

拉致された経験はあるといえど、誘拐されて目覚めた直後に魔神皇の傲慢な態度を見せられた上に、
胸糞の悪い二人の人間の最期を目にしたせいで京の気分ははっきり言って最悪だった。

「殺し合いだからって何もせずに死ぬ気はねえが、人を虫ケラのように見下した態度を取るあの野郎が俺は一番嫌いなんだ」
「確かに、殺し合いの主催が気に入らんというのは私も同意見だ。この手で絶頂から叩き落してやらないと気が済まないくらいにはね」

京もそうだが、デミトリとしても魔神皇に対して非常に嫌悪していた。
あの自分こそが魔界を統べる王であると言わんばかりの不遜さが特に癪に障る。

「俺は殺し合いに乗る気はねぇが…アンタはどうなんだ?」
「私は闘争が楽しめればそれでいい。AB型の若き女の血があれば最高だがね」
「そうかい。なら、俺達に襲い掛かってくるやつを相手にしな。俺もそういう野郎には容赦しないつもりだ。女は用意できねぇがな」
「結構。この私に挑んでくるくらいの気概がなければ戦いに張り合いがないというものだ」

こうして、一見噛み合わない草薙の血を引くサモナーと闇の貴公子と称された悪魔が動き出した。
しかし、彼らの目には、同じく倒すべき魔神皇の姿が映っていた。


【草薙京@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:健康
[装備]:COMP(スマートフォン型)
[道具]:基本支給品、確認済み支給品
[思考・状況]
基本:魔神皇を倒す。殺し合いには乗らないが、襲い掛かってくるやつには容赦しない。
[備考]
※この話が当選した場合、参戦時期は後続の書き手さんにお任せします
[COMP]
1:デミトリ・マキシモフ@ヴァンパイアシリーズ
[種族]:魔王
[状態]:健康


288 : ◆TE.qT1WkJA :2016/05/21(土) 19:50:34 xkZifLi20
以上で投下を終了します


289 : ◆BLAZExujxM :2016/05/21(土) 19:53:02 yGkdwY6.0
投下します。


290 : 眼鏡  ◆BLAZExujxM :2016/05/21(土) 19:53:45 yGkdwY6.0

「………………」

 眼鏡の青年が適当にCOMPをいじる。
 最初は田舎出身である彼は初めての都会に少々戸惑った。
 しかし、今は大分落ち着いた。

 初めての場所で、初めてのスマホ。
 都会に出るということはこういうことなのだろうか?
 そんなことを考えながらも今の状況を考える。

  【村に帰りたい】 
  
 結論はすぐに出た。
 なら、ここを出よう。

「それで卓君、どうするかは決まったのかい?」

 その悪魔の問いに無言で頷く。 
 その悪魔は空手着を着ており褐色の肌をしている。
 そして、その悪魔も眼鏡を掛けていた。

「僕は空手しか出来ないけど……出来る限りのことはしてみるよ」

 その言葉を聞き、越谷卓は少し心配になった。
 たかが空手で何が出来るのだろうか?
 だがしかし、空手をなめてはいけない。

 空手を極めれば色々出来ることが増える。
 
 極めれば人を殺めることも出来るようになる。
 極めれば拳で柱を殴り折ることが出来るようになる
 極めれば指の動きを見ただけで放たれる銃弾を避けれるようになる。
 極めれば殺気だけで殺人犯を見つけられるようになる。

 それが可能な男。
 それがこの400戦無敗の空手家―――京極真である。 

【?????/1日目/朝】
【越谷卓@のんのんびより】
[状態]:健康
[装備]:COMP(スマートフォン型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:村に帰る
[COMP]
1:京極真@名探偵コナン
[種族]:空手家
[状態]:健康


291 : 眼鏡  ◆BLAZExujxM :2016/05/21(土) 19:54:06 yGkdwY6.0

「………………」

 眼鏡の青年が適当にCOMPをいじる。
 最初は田舎出身である彼は初めての都会に少々戸惑った。
 しかし、今は大分落ち着いた。

 初めての場所で、初めてのスマホ。
 都会に出るということはこういうことなのだろうか?
 そんなことを考えながらも今の状況を考える。

  【村に帰りたい】 
  
 結論はすぐに出た。
 なら、ここを出よう。

「それで卓君、どうするかは決まったのかい?」

 その悪魔の問いに無言で頷く。 
 その悪魔は空手着を着ており褐色の肌をしている。
 そして、その悪魔も眼鏡を掛けていた。

「僕は空手しか出来ないけど……出来る限りのことはしてみるよ」

 その言葉を聞き、越谷卓は少し心配になった。
 たかが空手で何が出来るのだろうか?
 だがしかし、空手をなめてはいけない。

 空手を極めれば色々出来ることが増える。
 
 極めれば人を殺めることも出来るようになる。
 極めれば拳で柱を殴り折ることが出来るようになる
 極めれば指の動きを見ただけで放たれる銃弾を避けれるようになる。
 極めれば殺気だけで殺人犯を見つけられるようになる。

 それが可能な男。
 それがこの400戦無敗の空手家―――京極真である。 

【?????/1日目/朝】
【越谷卓@のんのんびより】
[状態]:健康
[装備]:COMP(スマートフォン型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:村に帰る
[COMP]
1:京極真@名探偵コナン
[種族]:空手家
[状態]:健康


292 : ◆BLAZExujxM :2016/05/21(土) 19:54:41 yGkdwY6.0
二重になってしまいましたが、投下終了です。


293 : ◆QShG8x1JI. :2016/05/21(土) 20:13:17 8fXdKjlE0
投下します


294 : 【死神】は【王】を従える ◆QShG8x1JI. :2016/05/21(土) 20:17:20 8fXdKjlE0





白色の髪に赤い眼の軍服を着た男、エルンスト・フォン・アドラーの内心は激しい怒りと侮蔑の感情で満ち溢れていた。

それは転生の法を行った彼が気付けば爆弾付きの首輪を嵌められ、殺し合いへと強制的に参加させられたから
・・・・・だけではない。

「シャイセ!片腕として使ってやろう?願い事を叶える?ふざけるな魔神皇!!」

己の野心と野望のままに突き進むことが出来る優秀な頭脳を持つ彼にとって、愚かで無知な他人に見下されたまま
でいる現状が非常に腹立たしいのだ。

「途方もない力を持っていながら、やっていることがこんな下らん催し物とはな」

首元を触れば伝わる冷たい感触が、逆に彼を怒りで熱くする。
この忌々しい首輪を外すためにも他の奴らから手に入れて解析する必要がある。
だが、それはまだだ。今はその時ではない。
首輪解除のためにも、魔神皇を殺すためにも力を手に入れる必要がある。

「・・・・・そのためにも、まずはコイツで悪魔を召喚してみるか」

怒りはまだまだ収まらないが、なんとか思考を切り替える。
腕に嵌めたガントレットのような物、悪魔が入っているというCOMPを操作する。
目的を果たすためにも、使える駒は一つでも多い方が、優秀であればなおさらいい。

「それにしても悪魔を従えるか・・・・・面白い」

悪魔を召喚しますか?と表示されている画面を見つめるその顔は、欲しい玩具を手に入れられるかもしれないと期待する
無邪気な子どもの表情ではない。使える駒であることを望む悪意に満ちた支配者の歪んだ笑みだ。
はいを迷いなく選んだ瞬間、辺りに光が満たされる。

「さて、どんな奴がでてくるか―――」

眩しい光がおさまると、何かがそこに存在していた。
人ではないナニカが。

「◆◆◆◆◆ー!!」

数字の0と8のような模様が刻まれている白い仮面を顔に着けたアジアンテイストな衣装の生物は、馬のようないななきを
あげて針のように細く鋭い蹄を鳴らしながら姿を現した。

「ふん、ハズレではなさそうだな」

目の前に現れた存在は、血生臭いこの会場には場違いすぎる容姿の悪魔だった。
堂々とした佇まいと、豪奢だが下品ではない装いから貴族のような気品を感じられるような気がして
おもわず殺し合いより品評会に出場させたほうがいいのではないかと思ってしまう。
悪魔に品評会があるかは知らないが。

それよりも、一つの問題に気付く。
(獣のように鳴いたということは、まさかコイツは人の言葉を話せない?いや、そもそもオレの言うことが
 理解出来るかどうか・・・・・?)

まさかの予想外の問題があるとは思わなかった。
おもわず目を悪魔のほうに向けて見れば、仮面から見える蒼い目は確かな知性を持ってアドラーを見つめている。
とりあえず馬鹿ではなさそうだ。名前に王とついているからにはおそらく普通の獣よりは頭はいいのかもしれない。

(・・・・・試してみるか)

その瞳に値踏みする視線を返しながら、高圧的に話しかける。

「No.8 紋章王ゲノム・ヘリター。名前はコレであっているな?」
『◆◆◆◆◆?』

人の言葉を理解出来るのか?その程度の認識で目の前の悪魔へと問い掛ければ、頭の中に何かが入り込んでくる。
その正体は、人の言葉を話せないゲノム・ヘリターがナンバーズでありサイキック族である自身の力による
テレパシーを使って意思をサマナーへと伝えたもの。

意思疎通の問題について思案していたアドラーにとってこれは嬉しい誤算だった。

脳内に響く返答(あえて言葉にするなら『そうだ、それがどうかしたのか?』といったところだろうか)に、ニヤリッと
底意地の悪さと興味の混じった笑みを浮かべながら言葉を続ける。

「変わった力を持っているようだが、それはまあいい。これから貴様の力がどんなものか実験するために
 悪魔を狩りに行く。ただ従うことだけしか能のない木偶人形ではないことをこのオレに証明してみせろ。
 いいな」

「◆◆◆◆◆ー!!」

死神は遺産(HERITAGE)を手に入れ不敵に笑い、掠奪の王は高らかに声を上げた。


295 : 【死神】は【王】を従える ◆QShG8x1JI. :2016/05/21(土) 20:18:25 8fXdKjlE0



【?????/1日目/朝】
【エルンスト・フォン・アドラー@アカツキ電光戦記】
[状態]:健康
[装備]:COMP(トロンのデュエルディスク型)、電光服
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:シャイセ!片腕として使ってやろう?願い事を叶える?ふざけるな魔神皇!!

1:仲魔の力を他の悪魔で試す
2:COMPの確認と会場の探索
3:首輪の取得と解析(いまは保留)

[COMP]
1:No.8 紋章王ゲノム・ヘリター@遊☆戯☆王ZEXAL
[種族]:神獣
[状態]:健康

【備考】

・ナンバーズとその所持者は時間の停止を受け付けません。

・黄色の長い鬣を操り相手から[名前][力][能力]を奪います。その際、自身の姿を相手に変化させることも可能です。

・怒りを溜め込みレベルを上げることで【No.69 紋章神コート・オブ・アームズ】【Cno.69 紋章死神カオス・オブ・アームズ】
 に進化をすることが出来ます。


296 : ◆QShG8x1JI. :2016/05/21(土) 20:21:13 8fXdKjlE0
投下終了、次を投下します。


297 : ◆9DPBcJuJ5Q :2016/05/21(土) 20:22:19 XQexS95U0
2つ投下します


298 : 誕生!悪魔使い少女!!(前途多難) ◆QShG8x1JI. :2016/05/21(土) 20:22:26 8fXdKjlE0



公園のベンチに暗い雰囲気を纏って座っている一人の金髪の少女がいた。

「・・・・・どうしよう・・・・・」

赤い目は伏せられ、どんよりとした空気を纏いながらポツリと弱音を溢している。



少女は、悪魔を召喚しようとしたその瞬間にどこからか現れた野良悪魔から攻撃を受けた。

「いやぁー!こっちにこないでええぇぇー!!」
「ケケケケケー!・・・・・ッテ足ハエエナオイィ!?」

幸いなことにその攻撃は当たらず、脱兎のごとく逃走したが今度はさらなる不運が起きる。
野良悪魔から逃げ切り疲れた身体を少し休めるために公園のベンチに座ったところで手にCOMPを持って
いないことに気付き、何処かに落としてしまったというとんでもない事実に直面してしまったのだ。

彼女は、元の世界ではカレイドルビーというかなりお喋りなステッキの力で変身して戦う魔法少女だ。
しかし、無理矢理連れてこられたこの世界にルビーはいない。

だから、今ここにいる少女は爆弾付きの首輪を着けられた参加者の一人にしかすぎない。
今は敵に対して何の自衛手段も持たない無力な少女は何が何でも自分の悪魔を召喚しなければ
この先は絶対に生き残れないだろう。

だからこそ考える。どうすればいいのか、自分がすべきは何かを。

(今することはCOMPを拾わないといけない)

だったらすることはただ一つ、行った道を逆に辿ってみることだ。
もしかしたらあの悪魔がいるかもしれない。いやそれだけではなく他の悪魔がいる可能性だってある。
危険だが、今は行ってみるしかない。
無我夢中で走った道を、断片的ではあるが脳内で思いだしてみる。

(必死で逃げてきたから何処をどう走ったかなんてよく覚えていない。けど、何となく記憶に残っている部分はある)




(・・・・・よし。まずは見覚えのある場所を探してみよう)

そう決意を固めた瞬間だった。

「おい」

何者かに突然声を掛けられた。慌てて周囲を見渡す。

「誰っ!?」

周りを確認してみるが誰もいない、人も悪魔の姿も見えない。
だがさっきは確かに若い青年のような声が聞こえた。

「・・・・・あれ?」

(声を掛けてきたってことは襲いかからないと思うけど・・・・・なんで姿を見せないんだろう)

「はっ!?まさか透明人間もとい透明悪魔とか」
「・・・・・お前は何を言っている、馬鹿なことを言ってないでこっちに視線を下げろ」

また聞こえる。低い声色に今度は若干の呆れと苛立ちが混じっている。


「下・・・・・?」


言われたままに確認してみれば、そこには尻尾がおたまじゃくしのようになっていて、頭には長い耳ではなく
角のようなパーツが付いているウサギみたいなロボットがいた。
身体は白いのに手足手足と顔の部分は黒く、目が無い代わりなのか赤い線が光っている。

(生物じゃないメカって予想外すぎるよ。悪魔というよりペットロボットみたい・・・・・ん?)

ふと、後ろ足で立っている悪魔の前足が掴んでいる物に気付いた。
とても見覚えのある携帯電話を持っている。

それこそが少女が覚悟を決めて探そうとしていた目的の物。
この世界での命綱。

「わたしが落としたCOMP!?」
「サマナーがCOMPを落とすということは、デュエリストがデッキを落とすのに等しい愚かな行為。
 死にたくないなら今後はもう二度と落とすな」

そう言って、ベンチに跳んでわたしの隣までくると3本の指で掴んでいるCOMPを手渡される。
喩えはよく分からなかったけど、私を咎めているということだけは分かった。
(見ず知らずのわたしに優しくしてくれて、なんかすごく親切な悪魔さんだな)
(けど何だか睨みつけられているような気がする・・・?)
目が無いのに睨みつけるという表現はおかしいが知覚ではなく感覚がそういっているのだから仕方ない。


299 : 誕生!悪魔使い少女!!(前途多難) ◆QShG8x1JI. :2016/05/21(土) 20:24:00 8fXdKjlE0



「うん、もう絶対にしない。届けてくれてありがとう・・・・・えーと」
「オレは貴様が召喚した悪魔のワイゼルT3、種族はマシンだ」
「え?召喚って言っても・・・・・あっ」

渡されたCOMPを確認してみれば、召喚を完了しましたと画面に表示されている。
どうやら悪魔の襲撃で落としてしまったときに、何らかの偶然でボタンが押されたらしい。
つまり、結果的にそうなってしまったとはいえ友達になりうる悪魔(魔神皇曰く)を置いて逃げてしまったことになる。

あぁそうかだからこのCOMPがわたしのだと分かったんだ。
どうしてこれがわたしの物だと知っているのか不思議に思っていたが謎が解けた。

「ごめんなさい、本当にごめんなさい!悪い偶然が重なっただけなの!ワイゼルさんが召喚されてるとは
 知らなかったんです!!」
「・・・・・」

雰囲気と話し方から年上な感じがして思わずさんを付けて呼んでしまいながら必死になって謝る。
しばらくしてからワイゼルさんは溜め息を一つ吐いた。

「謝罪の気持ちは理解した」

そう言った彼からはもう厳しい視線を感じなかった。
もしかして許してくれたのだろうか。

「うぅ・・・本当にすみません」

「ところでお前はこれからどう行動する虫ケラ」

「・・・・・」

「変な顔をしてどうかしたのか」

おかしい、いま小首を傾げているワイゼルさんから何か確実におかしい言葉が聞こえた。


300 : 誕生!悪魔使い少女!!(前途多難) ◆QShG8x1JI. :2016/05/21(土) 20:25:09 8fXdKjlE0



「ええっと・・・・・そ、そういえばわたしの名前を言ってなかったね。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンって
 名前なんだけど、長いならイリヤって呼んでいいよ。これからよろしくねワイゼルさん」

「謝罪の気持ちは理解したと言った。だが許したとはいってないぞ虫ケラ」

聞き間違いでも気のせいでもなかった。
COMPを拾って届けてくれたことには感謝をしているし、置いて逃げてしまったことには本当に申し訳ない気持ちでいる。
けれど、これとそれとは話が別だ。
この文句だけは言わなくちゃいけない。

「む、む、虫ケラ!?何で、どうして私は虫ケラ呼ばわりされちゃうの!?」

「・・・・・召喚したオレを目の前で置いてきぼりにしてCOMPを落としたあげく迷子になる駄目サマナーなど虫ケラで十分だ」

低い声が更に低くなって謎の威圧感を放っているのを感じる。どうやら怒りはまだまだ収まりそうにないようだ。


「その件については貴方を召喚しようとした瞬間に野良悪魔に攻撃されたという事情があって――――」

「知るか」

「即答!?」



【?????/1日目/朝】
【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@プリズマ☆イリヤ】
[状態]:健康
[装備]:COMP(携帯電話型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:死にたくない、殺し合いには乗らない

1:ごめんない
2:虫ケラじゃないもん

[COMP]
1:ワイゼルT3@遊☆戯☆王5D`s
[種族]:マシン
[状態]:正常、怒り

【備考】
・ワイゼルT3は魔法や罠の発動を無効化し破壊することが出来ます。

・ワイゼルシリーズは全て集めて悪魔合体させると、ワイゼルの能力を全て揃えた【機皇帝ワイゼル∞】になります。

・ワイゼルT3にはプラシドの人格がコピーされています。


301 : ◆9DPBcJuJ5Q :2016/05/21(土) 20:25:13 XQexS95U0
「はぁ……どうしたらいいのよ、これ……」
 突然、連れ去られて、殺し合えと言われて、見知らぬ場所へと放り出された。
 こんな異常な状況下、溜め息や文句の一つが出るのは自然だ。
 だが、不自然な点もある。身形からしてただの女学生である彼女は、この異常事態に対してある程度は適応し、混乱を引き起こしていないということだ。
 その理由は、単純明快。彼女は、異常事態に対して、ある程度の精神的耐性を有しているからだ。
「やっと空の上から帰って来られたと思ったら、殺し合えって……なんなのよ」
 空の上の別世界に迷い込み、ファンタジックな剣と魔法の冒険の日々を、仲間たちと共に掻い潜り、生き延びた。
 コミックやアニメ、ライトノベルで扱われるような展開を、彼女――渋谷凛は身を以て体験していたのだ。
 そのお蔭もあって、この異常事態にもある程度適応し冷静さを失わずに済んでいるが、それでも、いや、だからこそ、落胆は大きい。
 やっと、地上に帰って、今までの日常を取り戻せると思っていたのに、どうして……。
 拳を握り、唇を噛み、悲しさと悔しさを堪えるが、堪えきれず、目の端から一筋の涙が伝った。
 それにすぐ気づくと、凛は袖口で涙を拭い、毅然とした表情を作る。
 帰るんだ。絶対に。みんなと一緒に、みんなが待っている場所に、ファンのみんなが迎えてくれるステージに。
 涙と共に溢れ出た、偽らざる本心。それを決意へと変え、凛は今自分にできることを行動に移す。
 与えられた物資でまず確認すべきは、悪魔を召喚するというCOMPなるもの。
 どれがそれかと荷物を漁ること数分、スマホにインストールされたアプリケーションだと漸く気付く。
 悪魔の召喚だというから、神崎蘭子が好んで衣装の小物に選んでいるような、豪奢な装丁の本を勝手に想像していたのが、とても現代っ子に優しい仕様だった。
 蘭子が知ったら残念がるだろうな、などと考えつつ、暫しの黙考を挟み、意を決して悪魔召喚プログラムを起動する。
 スマホの画面に、呪文のような文章が羅列されたのち、如何にもな魔法陣が現れ――直後、凛の目の前の空間が闇に呑まれた。
 突如として現れた虚無の空間――ワーム・スフィアーは、驚く間もなく消失した。入れ替わるように現れたのは、凛とそう変わらない背格好の少年だった。
「やぁ、こんにちは。俺の名前は、来主操」
「えっ……? 男の子?」
 悪魔を召喚したと思ったら、自分と同じぐらいの歳に見える日本人の少年が、闇の中から現れた。
 訳が分からず、凛はいよいよ混乱する。だが、少年――来主はお構いなしに話してくる。
「ねぇ、君が俺を呼んだサマナーなんだよね?」
「そう、だけど……」
「空が綺麗って、思ったことある?」
 唐突な、何の脈絡も無い、変な質問。
 殺し合いの場で、悪魔との契約に必要とも思えないような、無邪気過ぎる質問。
 それが、却って功を奏した。
 問われるまま空を思い浮かべた凛の心は混乱から解き放たれ、空を、空の上での日々に想いを馳せた。
「あるよ。空の蒼さ……好きだから」
 特に、空の上の世界で見た蒼穹は、格別だった。
 この答えを聞いた来主は、子犬のように無邪気な笑顔を浮かべた。
「やったぁ! よかった、俺もそうなんだ! 同じものを同じように感じられる、俺は君を理解できる!」
「な、なんなのよ……?」
 ただ空を好きと言っただけで、どうしてこんなにも喜ばれるのか。聞いただけでどうしてこんなにはしゃぐのか。
 さっぱり分からない。けど、来主が一般にイメージする悪魔のような、邪なものではないということは、理解できた。
「こんごともよろしくね。えーっと……君の名前は?」
「渋谷凛。凛でいいよ。あんたは……来主? それとも、操がいい?」
「君が好きなように呼んで。一騎と総士は、来主って呼んでたけど」
「じゃあ、来主で。よろしくね」
「うん、凛。……ああ、やっぱり、こうやって言葉で話すのは楽しいよ」
 些細なことで子供のようにはにかむ来主の姿に、凛は飼い犬のハナコを思い出した。
 来主の無邪気な笑顔に、凛は大切な友人の1人、島村卯月を思い出した。
 それに釣られて、凛も自然と笑みを浮かべていた。

【?????/1日目/朝】
【渋谷凛@アイドルマスター シンデレラガールズ】
[状態]:健康
[装備]:スマホ型COMP
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:みんなの待つ場所に帰る
[備考]:空の上の世界から帰って来るところだったようです
[COMP]
1:来主操
[種族]:フェストゥム・スフィンクス型
[状態]:健康


302 : ◆9DPBcJuJ5Q :2016/05/21(土) 20:26:01 XQexS95U0
被り失礼しました!


303 : 誕生!悪魔使い少女!!(前途多難) ◆QShG8x1JI. :2016/05/21(土) 20:26:34 8fXdKjlE0
投下を全部終了しました。


304 : ◆9DPBcJuJ5Q :2016/05/21(土) 20:28:32 XQexS95U0
>>303
確認不足で大変失礼いたしました、申し訳ございません。
では、自分も2つ目を投下します。


305 : 完璧なる主従 ◆9DPBcJuJ5Q :2016/05/21(土) 20:33:09 XQexS95U0
「出でよ、我が下僕となる悪魔よ!」
 会場に飛ばされ早速、黒衣の男は悪魔召喚を実行した。
 悪魔召喚の方法は、左腕に装着された盾――否、決闘者の体の一部とも言うべき決闘盤に、召喚プログラムが内蔵されたカードをセットし、発動すること。
 召喚に応じて現れた悪魔もまた、黒衣。黒い鎧、黒い兜、黒いマントを身に纏い、白い仮面で顔を隠した、鎧武者のような出で立ちの魔人。
「我が名はタクティモン。魔人型デジモンだ。我が剣を捧げるに値する主には、我が泉の湧くが如き智謀にて、完璧(パーフェクト)な勝利を約束しよう」
「完璧(パーフェクト)」……」
 悪魔――タクティモンの名乗りを聞き、黒き決闘者はつい言葉をこぼす。
 完璧(パーフェクト)。かつて自らに冠された称号であり、肩書きであり、誇りであり、自負であり、栄光の象徴だった。
 それが崩れ去り、捨て去った今に、それを標榜するものと邂逅するとは、あの魔神皇とやらも随分アジな真似をしてくれる。
「どうされた?」
 タクティモンに声を掛けられ、男は物思いから抜け出し、自らも名乗りを上げる。
「昔を思い出したまでのこと。タクティモンだったな、俺の名は丸藤亮。サイバー流の表を喰らい、今は裏サイバー流を磨いている」
「サイバー流……? 兵法の流派か?」
「そんなところだ。それで、俺を完璧なる勝利に導く、だったか?」
「然り」
 自信と覇気に満ちた返事に、つい口角が上がる。
「面白い。見せてもらおうか、貴様の“完璧”を。だが、俺は求める勝利の為ならば、汚れることも無様を晒すことも厭わんぞ」
 偽らざる本心を、亮はタクティモンへと伝える。
 完璧など、どれだけの自信や自負があろうと、不意に容易く崩れるものと知っていればこそ。
「何故、そこまで勝利に執着するのだ?」
「鬼にならねば、見えぬ地平がある。その地平の先へと進むには、この地獄を生き抜くためには、勝ち続ける以外に無いというだけの事。故に、人は俺を“ヘルカイザー”と呼ぶ」
 言い切り、地獄の皇帝は目の前に立つ魔人の武人を、牙剥く笑みを浮かべて睨みつける。
「……面白い。我が主、丸藤亮よ。お前のその身に宿した修羅の赴くまま戦い抜くがいい。我が智と剣にて、地獄の地平の彼方までの道筋、切り拓いて見せよう」
 タクティモンは亮と同じく、相手の信念に見届ける価値ありと認めた。
 最初の名乗りは、悪魔としての挨拶のようなものだった。
 不甲斐無い、剣を捧げるに値しない主ならば、真の主たるバグラモンの名誉を穢さぬためにも切り捨てることも考えていた。
 だが、この男に限ってはその必要はない。
 寧ろ、人の身でありながら、敢えて鬼に身を窶し地獄に堕ちてまで、真理を追い求めるその姿勢は、バグラモンと重なるものがある。
 ただの召喚者ではなく、仮初とはいえ主に相応しき男へと、跪き礼を取る。
「頼むぞ、タクティモン」
「今後とも宜しく、我が主よ」
 地獄の皇帝の下に、今、蛇神の剣を携えし魔人が参上した。
 彼らがこれより往くは修羅道、目指すは地獄の果て。
 求めるは勝利、目指すは完璧。
 彼らの心に、尊重・尊敬――『リスペクト』の理念など必要なし。


【?????/1日目/朝】
【丸藤亮@遊戯王デュエルモンスターズGX】
[状態]:健康
[装備]:デュエルディスク型COMP
[道具]:基本支給品、裏サイバー流デッキ@遊戯王デュエルモンスターズGX
[思考・状況]
基本:勝利を求め、地獄の果てまで往く
[備考]:ジェネックス終了後からの参戦です
[COMP]
1:タクティモン@デジモンクロスウォーズ漫画版
[種族]:魔神型デジモン
[状態]:完璧な健康状態


306 : ◆9DPBcJuJ5Q :2016/05/21(土) 20:34:23 XQexS95U0
以上で投下終了です
一つ目の方のタイトルはwiki収録時に修正します……重ねて申し訳ありません


307 : ◆aoofWCVzNM :2016/05/21(土) 20:36:06 QLrx0ES60
皆様投下乙です

自分も投下します


308 : ◆aoofWCVzNM :2016/05/21(土) 20:37:46 QLrx0ES60

魔王。

その二文字は三香織――虹の魔法少女レイン・ポゥにとって色々な意味で特別な意味を持つ。
魔神皇によって捻じ曲げられた因果の中でも、それは変わらない。
何故なら。

「ひゅー、オジイチャンやるぅ」
「うむ、だがやはり…聊か不便さは感じるな。本来の余の数割程の魔力しか出せておらん」

彼女が引いた悪魔は、大魔王だったからだ。
豪奢なローブの裾の先には、ニ十体程の悪魔だった残骸が転がっている。
全て、大魔王の性能テストのための供物となった者たちだ。
その光景を仰ぎ、レイン・ポゥは頼もしさを、大魔王の威厳と言うものを肌で感じていた。
魔法少女たる自分でもこの程度の悪魔なら一蹴できたが、指先一つ動かさず、と言うのは難しいだろう。
これで本来の力の数割と言うのなら、この枯れたジジイの本気は一体どれほどのものとなるのだろうか。

「残念ながら、今の余ではそなたの期待に応える事は出来んな…鬼眼はおろか、真の肉体へと至ることもままならぬのでは」
「てことは、あんまりおおっぴらに暴れるのは不味いって事?」
「真の余ならば、比肩しうる者は竜の騎士を除き存在しない、だがここまで使える力が抑えられているとなると慎重に動く必要がある」


309 : ◆aoofWCVzNM :2016/05/21(土) 20:38:31 QLrx0ES60

レイン・ポゥは一瞬このジジイ使えないかもと思ったが、即座にこの悪魔は十分な力を有していると認識を切り替える。
元より、派手に暴れるよりも、一人一人殺していくほうが慣れているし、自分にもあっているのだ。
問題は無い。

そして、こんな悪魔をポンと渡す魔神皇。
どうみても友達の居ない陰気くさいぼっちだったが、力は本物らしい。
彼ならば、優勝した時魔法の国に自分に手を出さない様働きかけることもできるかもしれない。
まぁ、彼女は腐りきった現実主義者なので、願いがどうたらには期待はしていないが。

(ま、精々、利用できるもんは利用させてもらうだけだよね、トコ)



(…などと思っているのであろうな)

大魔王は自らの主の思惑を早々に看破していた。
本心を隠す事を得意とするレイン・ポゥの魂胆を見抜くのはさすがの大魔王と言った所だろうか。

(だが、まぁ…死神を懐に飼っていたのだから今更暗殺者(アサシン)一人飼うのにどうと言う事もあるまい)

彼女が弱きものとして淘汰されるか、
それとも魔界の神たる自分を見事に御し勝利を収めるか。
見届けるのもまた一興。
この、彼の思想が形作られた様な遊戯、バトルロワイアルで。

「ガンバローね、お爺ちゃん」

その手の魔法の端末型COMPを弄りながらレイン・ポゥは微笑む。
一見すれば美しく邪念無き笑みを此方に向けてくる少女。
そんな少女を見て、大魔王もまた静かに嗤うのだった。

それはまるで、孫娘を見る祖父の様に見えたかもしれない。

B市にて、魔王と謳われた最強の魔法少女を殺すはずだった少女。
魔界の神と謳われし大魔王。

そんな二人の殺し合いは、こうして幕を上げたのだった。

【?????/1日目/朝】
【レイン・ポゥ@魔法少女育成計画Limited】         
[状態]:健康
[装備]:COMP(魔法の端末型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:全ての者を利用し、楽しく生きる。
[COMP]
1:大魔王バーン@ダイの大冒険
[種族]:大魔王
[状態]:健康
※真の肉体、及び鬼眼王になることは現時点では不可能です。


310 : ◆aoofWCVzNM :2016/05/21(土) 20:38:58 QLrx0ES60
投下終了です


311 : ◆mcrZqM13eo :2016/05/21(土) 21:05:40 b.SsAx7E0
三本投下します


312 : 蜘蛛と神獣 ◆mcrZqM13eo :2016/05/21(土) 21:07:29 b.SsAx7E0
「月から招かれるとは思わなんだな」

竹林に佇む一つの影。長烏帽子に平安貴族の衣服を纏った世にも美しい男が其処にいた。
男の名は藤原紅虫(ふじわらのあかむし)、栄華の絶頂にあった藤原氏の一族として生を受けた身でありながら、
“向こう側”の存在と融合して産まれ、その悍ましい所業もあって、如何なる史書からもその名を抹消された男である。

「竹林とはな…嫌な場所だ」

文句を言いながら現状を把握すべく蜘蛛を放とうとし……一匹も居ないことに気付いた。魔神皇とやらの仕業だろう。
次いで糸を伸ばしてみる。50mも伸ばすとそれ以上伸ばせなくなった。

「奴め…我の力を封じたか・?まあ良い、やることは変わらぬ。奴の思惑通りに踊る趣味は無い……この首輪で把握していると言っておったな」

凄絶な笑みを浮かべてCOMPを操作する。

地中に千年封じられていた身だが、地上の事はある程度理解している。スマホ型のCOMPを何とか操作して悪魔を呼び出す。
悪魔を殺す為に、魔神皇への烽火とする為に。

「外の事には詳しく無いが…もうそんな格好をする時代でも無いだろう?」

大抵の妖怪なら泣いて土下座する殺気を向ける平安貴族に、現れた悪魔は平然と挨拶した。

「貴様が悪魔か…」

紅いリボンのついた青い帽子を被った銀髪の少女に紅虫は殺気を緩めず対峙する。

「私は獣人であって悪魔じゃないんだが」

「どちらでも構わん。貴様は此処で死ぬのだからな。我が名は藤原紅虫。地獄でその名を触れて回るが良い。知っている者共が数多く居よう」

「藤原紅虫……?クックック…はははは…私は藤原性の歴史から消された者に縁が有るらしい」

「何を言っている?」

「いやさ、お前は知らないだろうが、お前より二百年ほど前に一人の娘がいてな。輝夜姫を追いかけて不老不死になったんだが……知っているか?」

「月になら先刻まで居たが、何もなかったぞ」

「表側にはな…そうか、何があったのか知らないが解放されたのか」

「……貴様、知っているのか。我の事を」

「ああ…所業も、夜狩省の者達にどう封じられたか……ということも、何もかも。此処にいるだけで腹が立つんじゃないか?」

「貴様…」

「まあ落ち着け。それよりお前の遠い親戚の事を知りたくないか?」

「命乞いか?まあ良い。聞いてやろう」

「だったら場所を変えよう。それにしても竹林ね……フフフ」


【?????/1日目/朝】
【藤原紅虫@退魔針 紅虫魔殺行
[状態]:健康
[装備]:COMP:スマホ型
[道具]:基本支給品・未確認支給品
[思考・状況]
基本:
1.殺し合いには乗らない
2.魔神皇は殺す

[COMP]
1:上白沢慧音@東方Project
[種族]:獣人
[状態]:健康


313 : 634 ◆mcrZqM13eo :2016/05/21(土) 21:08:07 b.SsAx7E0
634mの威容を誇る東京スカイツリー。その地下に在る研究所にその男はいた。

「まさか此処のことまで知っているとは侮れん奴じゃのう…しかし、何故ワシを呼んだのじゃ?勇次郎でも呼べばよかろうに」

男の名は徳川光成。地下闘技場のオーナーにして、金をキロで数える大金持ちである。
今彼がいる場所は、彼がある目的の為に秘密裏に作った施設であった。

「悪魔…悪魔か…これはこれでオモシロイかもしれんッ!!」

倫理と頭のネジを放り投げた金持ちは言うことが違う。

「それでは早速」

かくしてスマホ型COMPを操作する光成、このとき光成には知る由もないが、スカイツリーが発光した。

「我、強き武者を求む」

現れたのはボロボロの袴を履いただけの長髪の男。

「お主…見たところ…人か?」

「我が名は宮本武蔵」

光成は狂喜した。宮本武蔵を現世に蘇らせる為の施設で宮本武蔵と逢えるとは

「武蔵よ…何故に強者を求む?」

「兵法を完成させる為。未知の技、未知の術理を知ることが出来るこの場は格好の機よ」

「それなら早速外に行こうではないか。強い奴らが沢山居るらしいぞッッ!」


【?????/1日目/朝】
【徳川光成@バキシリーズ
[状態]:健康
[装備]:COMP:スカイツリー型(スマホ型の端末を光成が所持)
[道具]:基本支給品・未確認支給品
[思考・状況]
基本:
1.強者達の戦いを見る

[COMP]
1:宮本武蔵@装甲悪鬼村正 魔界編
[種族]:魔人
[状態]:健康・悲嘆


314 : グンバツの相性 ◆mcrZqM13eo :2016/05/21(土) 21:09:08 b.SsAx7E0
高層タワーの屋上にその『存在』は在った

「あの小僧ぉ!魔王たる身に何と言う真似を!!」

憤怒の怒号を上げるその『存在』に近づく悪魔は存在しない。参加者とはいえ魔王たる『存在』に喧嘩を売るバカはいやしない。

「まあ良い…あの小僧の言う“悪魔”とやらを見てみるとしようか」

COMPとやらの悪魔が自分と比較できる対象かどうかチョッピリ興味を持った『存在』は、乗っている戦車の上で蠢いた。

「いつの間に手を加えおった……」

魔神皇とやらの実力を僅かに認める。

そして

「またこの展開ですか〜!!!」

長槍を持ち、黄金に輝く髪の緑の衣装に身を包んだその少女は『存在』見るなりそう叫んだ。



【?????/1日目/朝】
【魔王マーラ@真・女神転生シリーズ
[状態]:健康
[装備]:COMP:戦車型
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:
1.魔神皇に落とし前をつける

[COMP]
1:リース@聖剣伝説3
[種族]:英雄
[状態]:健康・悲嘆


315 : ◆mcrZqM13eo :2016/05/21(土) 21:09:44 b.SsAx7E0
投下を終了します


316 : ◆lb.YEGOV.. :2016/05/21(土) 21:22:38 1r3v9j560
投下します


317 : 「「ロックにいこうぜ!!」」 ◆lb.YEGOV.. :2016/05/21(土) 21:24:16 1r3v9j560
うわあ色んな曲があるねー。

だろ? たまにはだりーも有名な曲も聞いておかないとな。
この前の公録、ヒヤヒヤものだったんだぜ?

う、ごめんって。流石に私も反省してます。

よろしい、じゃあ適当に気になったのもでも選びなよ。

うーん、適当にって言われてもなぁ。
あ、これなんてどう? こう、ビビっと来たんだけど。

……いや、それはやめた方がいいかな

えー、なんでよー? なつきちが適当に選べって言ったんじゃん。

あー、なんていうかな。きっとそれはだりーにゃ合わないよ。

そんなに変な曲なの?

変な曲じゃあないさ。技術だってしっかりしてる。
寧ろかなりハイレベルかな、"ヤングオージーのカリスマ"なんて呼ばれて、今でも熱心なファンがいるくらいだしな。

ヤングオージーのカリスマ!? なんか凄そうじゃん!
でもだったらなんで私には似合わないの?

アイドルが聞くにしちゃあ趣味が悪いんだよ、そいつが色々と問題あったからね。
黒魔術に傾倒して100人のファンをライブ後に殺害。その後に自殺した歌手の曲聞いてます、なんて公共の場で言える度胸があるなら何も言わないけど。

え、なにそれマジ?

マジも大マジ。
今から何十年も前の話だけどさ、まだロックに対する風当たりもキツくて大変だったらしいぜ。

うーん、ロックなのかもしれないけど、そういうのは私の求めるロックじゃないかなー。

そんなロックを求められたら私が困るって。
ほら、こっちなんかいいんじゃないか?
ギターも覚えやすい曲だからいい練習になるよ

◇◆◇◆◇◆


318 : 「「ロックにいこうぜ!!」」 ◆lb.YEGOV.. :2016/05/21(土) 21:25:20 1r3v9j560

バクンバクンと私の心臓のビートが聞こえる。
頬をつねるとちゃんと痛い。
夢じゃないんだ、と自覚する。

私とそこまで年は変わらないと思う男の子に殺し合えって命令されて、逆らった男の子と怯えてた女の子が漫画かゲームみたいに殺されて。
怖い。体がガクガク震えてる。
なんで私がここにいるのかも、なんで私がそんな事をさせられてるのかもわからない。
プロデューサーさんやなつきち、みくちゃんは無事なんだろうかと不安になってくる。

座り込みながら、私のものだと思うデイパックと、その横に立て掛けられていたものを見る。
エレキギター。なんだって殺し合いをするのにこんなのを配ったのか、あのマジンノーとかいう男の子の事は理解できない。これで他の人を殴れとでも言いたいのかな。なんか小梅ちゃんの見ていた映画で、ホッケーマスクを被ったお化けがそんなことをしてた気がする。
なつきちに「絶対真似するなよ」と注意された、ギターを床に振り下ろして壊すパフォーマンスを思い出してしまった。
うん。絶対にそんな事はしない。
私にギターが渡されたっていうのなら、私なりの使い方をする。だって私はロックなアイドルなんだから。

きっとこれはただの空元気。
でも、なにもしないでメソメソするよりかは気が紛れる。
エレキギターとピックを手にして軽く弾く。
手が震えて音が飛ぶ。メロディーにならない。全然ダメ。
なつきちなら、こんな場所でもきっと上手く演奏できるだうけど、私には無理だった。
ああ、こんなことならエアギターの練習なんかしてないで、もっとしっかりと練習しておけばよかったな。
情けなくってギターを弾く前よりも泣きたくなってきた。

「オイオイ、なんだぁその演奏は。折角のギターが泣いてるぜ」
「うるさいなぁ、わかってるってば」

後ろから飛んできた野次に反射的に言葉を返してしまった。
あれ? 野次が飛んできたってことは私の後ろに誰かがいるっていうことで……。
慌てて後ろを振り向くとそこには青白い骸骨みたいな顔をした化け物がいた。

「ヒッ!」

悲鳴をあげて、足がもつれた私は、勢いよくしりもちをついてしまった。
お尻がじんじん痛むけど、そんな事は重要じゃない。
真っ黒な目、胸から露出した助骨、背骨以外の部分がないお腹、髪型はパンクかロック的。それは明らかに人とは違う姿をしていた。
悪魔。あの男の子が言っていた化け物が私の目の前にいる。
怖い。やだ。死にたくない。なんで?。助けて。
色んな言葉がぐるぐると頭を回ってる。
そんな私を悪魔が訝しげに見ていたと思うと。ポン、と手を叩いた。

「あー!サマナーの嬢ちゃんには今の俺サマの姿はちょっとばかりショッキングだったか。ワリーワリー」

陽気な口調で謝罪のジェスチャーをしたかと思うと、一瞬で悪魔が人の姿に変わった。
青白い肌と真っ白な瞳以外はちょっとイケメンなお兄さんという感じだ。

「HEYベイビー、この姿なら怖くはねえだろ? サマナーに呼び出されてなけりゃこんな出血大サービスはしてやらねえんだから感謝しろよ? ま!血なんて殆ど残ってねえけどな!」

ブラックジョークを発しながら悪魔のお兄さんは軽快に笑い飛ばす。
悪くない悪魔がいるのかはわからないけれど、そこまで悪い悪魔じゃない、のかな?
このフレンドリーな悪魔を見て安心したのか、ふぅ、と肩の力が抜けたのが自分でもわかった。
そうして余裕ができたところで、悪魔よお兄さんの顔をよく見ると、どこかで見たことがある気がした。

「お、どうしたお嬢ちゃん、人の顔なんてジーッと見て。もしかして俺サマのクールなフェイスに惚れちまったかい?」
「あ、えっと、そういう訳じゃない……んですけど。どこかでお兄さんの顔を見たことがあるなーって」

どこだったか、結構最近に見た筈だ。
記憶を掘り返す。
たしかなつきちが一緒にいて、買い物していて、そう。一瞬目に留まった何かにこの悪魔のお兄さんの顔が……。


319 : 「「ロックにいこうぜ!!」」 ◆lb.YEGOV.. :2016/05/21(土) 21:26:01 1r3v9j560

あ!!

「ザベル・ザロック? "ヤングオージーのカリスマ"の?」

そう、確かあの時に私がとったCDのアーティストはそんな名前の人だった筈だ。
え? ということは、この人がファンを100人殺したって危険人物の……?

「オーゥ!! 随分と懐かしい呼び名で呼んでくれるじゃねーか、死ぬ前以来だぜーッ! なんだ、お嬢ちゃん俺のファンなのかい?」

ただでさえ高かったテンションを更に高くしながら悪魔、ザベルさんは私に話しかけてくる。
多分、私の顔はひきつっていたと思う。
悪くない悪魔かと思ったらヤバイくらいにイカれた悪魔だと知ってしまったのだから、それも無理はないと思って欲しい。
なつきち、プロデューサーさん、みくちゃん。私、これからどうしよう……?

【?????/1日目/朝】

【多田李衣菜@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:健康
[装備]:COMP(エレキギター型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:帰りたい。
[状態]:健康
[COMP]
1:ザベル・ザロック@ヴァンパイアシリーズ
[種族]:屍鬼
[状態]:健康


320 : ◆lb.YEGOV.. :2016/05/21(土) 21:27:14 1r3v9j560
投下終了します


321 : 名無しさん :2016/05/21(土) 21:48:47 8fXdKjlE0
Wikiを編集したのですが、最近更新したページには小説が掲載されるのに、登場話候補作一覧にはなぜか掲載されません。どうすればいいのでしょうか?


322 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/21(土) 21:49:51 q2z3CFjY0
>>321
一覧のタイトル名の横にある、?から新規ページを作ってください。


323 : ◆yaJDyrluOY :2016/05/21(土) 22:00:53 vPlpmcfg0
投下します


324 : ご立派ですよ、マーラ様。 ◆yaJDyrluOY :2016/05/21(土) 22:01:47 vPlpmcfg0
「いや、ホント、マジで近付かないで下さい。……本当にキモいんで」

 芥辺探偵所は悪魔を使って依頼をこなす事務所である。
 そんな事務所で探偵助手をしている佐隈りん子は、現在最悪の状況に陥っていた。
 そうは言っても、悪魔には慣れているし、人が死ぬのは多少ショッキングだったが周囲の悪魔のお陰で本人のグロ耐性はかなり高い。
 ではなぜ最悪の状況なのかというと、それは呼び出した悪魔に問題があった。

「むっ、ワシのどこがキモいのだ!? ホレ、言ってみろ、ホレホレ!」

 りん子の身体に頭を擦り付け、執拗にナニかを言わせようとしている悪魔。
 それだけなら態度がうざいだけだと思われるかも知れないが、それだけならばりん子が拒絶する理由にはならない。
 では、なぜりん子は強烈な拒否反応を示しているのか。
 ――それは、その悪魔の見た目にあった。
 
 彼は綺羅びやかな荷車の様なものに乗っていて、2メートルを超えるであろうその巨体は全身が緑色に彩られている。
 身体から生えている複数の腕や触手は、悪魔にとって強さの象徴とも呼べるであろう。
 だが、その身体は、どこからどう見ても――チ○コだった。

 陰茎。男性器。ペニス。etc…様々な名称で世に親しまれている男の象徴。
 りん子の召喚した悪魔――名をマーラと言う――は美しいほどにご立派なのだ。

「それ、セクハラですよ。マジでやめて下さい。そろそろ怒りますよ」

「ほう、貴様が怒ったとてワシにナニが出来るのかな? グワッハッハッハッハッハ!」

 りん子の軽い脅しにもマーラは屈することはなかった。
 悔しいことにマーラの言うことは正論である。
 りん子は悪魔召喚に慣れており、悪魔に対して罰を与える呪文なども複数知っている。
 しかし、それは各悪魔の詳細が載っているグリモアを手にして初めて行えることであり、COMPによって召喚した悪魔には罰を与える事は出来ないのだった。

「多少悪魔に慣れとるからって、この大魔王マーラ様には逆らえんわ!」

 それに加えて相手は魔界でも地位の高い魔王である。
 どこぞのフリーター淫奔悪魔とは大違いの凄い悪魔なのだ。
 ベルゼブブ並に偉いとすると、グリモアを持っていたとしても持て余してしまう可能性もあった。

 逆らえないりん子に気を良くしたマーラは、更に増長し声量を上げていく。
 もはやギンギンになったその頭部は、天高くそびえ立ち、神々しささえ感じられる程である。

「イクぞ佐隈りん子よ! 大暴れしまくって、この会場中の悪魔を昇天させるてやるのだ! グワッハッハッハッハッハァー!!」

「もうやだ……アクタベさ〜ん、早く助けに来て下さい〜」

 勝手に道を突き進んでいくマーラに、すっかり意気消沈した佐隈りん子。
 雇い主であるアクタベが救出に来てくれることを望んでいるが、果たして彼は来てくれるのだろうか。
 下手したら魔神皇の少年と知り合いである可能性もあるが、それは誰にもわからないことだった。
 とりあえず、りん子は頼りになるんだか頼りにならないんだかよくわからない魔王の後を追うことにした。
 何も頼れない状況で自分は何の戦力もない一般人なのだから、仕方ないと言い聞かせて。
 いつかグリモアを手にした時に仕返ししてやると心に誓って。

 佐隈りん子はマーラに着いてゆく。
 それが唯一の生き残る道であれば――人間はチ○コにも頼るのだ。



【?????/1日目/朝】
【佐隈りん子@よんでますよ、アザゼルさん。】
[状態]:健康
[装備]:COMP(スマートフォン型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:帰りたい。
[COMP]
1:マーラ@女神転生シリーズ
[種族]:魔王
[状態]:健康


325 : ◆yaJDyrluOY :2016/05/21(土) 22:02:32 vPlpmcfg0
投下終了です


326 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/21(土) 22:06:31 q2z3CFjY0
期限が近くなってまいりました。
一覧更新もかなり立て込む可能性が考慮されますので、一覧更新された際もご一報いただけると幸いです。
また、作品ページの収録が間に合っていれば、一覧ページは日付をまたいでも(多少は)問題ありません


327 : ◆OW5ZCNLz4U :2016/05/21(土) 22:09:17 PN2eHYWY0
こんばんは、当企画内で作者として許されざる、盗用という行為をしでかした者です。

かなり恥知らずな願い事ではありますが、もう一度だけ候補作品を書く許可をいただけないでしょうか。

盗用という行為をしでかした身ですので信用できないとは思いますが、
上記二作品以外の、歴とした私オリジナル、盗用でない作品の一つなのです。


よろしくお願いいただけたら幸いです。


328 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/21(土) 22:12:55 q2z3CFjY0
>>327

>>233の通りです。
それ以上のコメントは差し控えさせていただきます。ご留意ください。


329 : ◆u7XsmNgePI :2016/05/21(土) 22:21:55 m6Zwb.B.0
投下します。


330 : 日本文化 ◆u7XsmNgePI :2016/05/21(土) 22:23:23 m6Zwb.B.0
 
「今日は断然サビに強く切れ味抜群のステンレスチタンスタンドパワーコーティング悪魔のご紹介!

 普通の包丁じゃなかなか刃の入らないカッチカチの冷凍参加者もっ! 一刀両断! 悪魔も骨ごとスッパスパ! 鮮やかでしょ?

 実はこの包丁、歴史で有名なエジプトの国、刀鍛冶の職人が仕上げた精神のヴィジョン! だからこの切れ味!

 刃にはスタンドパワーコーティングを施してあるから丈夫で強く、おまけに切った後の汚れや匂いが付きにくいパーフェクトな妖刀!

 更に! 今ご覧の方はお得だよ! この妖刀にペティナイフをお付けしたステンレスチタンコーティング包丁3本に!

 刃先を軽く研ぐだけで切れ味が蘇るダイヤモンドシャープナーまでつけて! この4点セットを2万円と言いたいとこだが〜?

 なんとっ! その命1つっ! 分割払いで10センチずつ身体切断もオーケーっ! 安いでしょ〜?

 更に! 今回大ヒットを記念して! このCMを見てお申込みの1800名の方だけ特別に!

 少ない量でも美味しく炊ける2合炊きレンジ炊飯器と! いつでも温かい飲み物が飲める卓上魔法瓶! 更にっ! パン切り、キッチンばさみなど!

 便利なキッチン5点セットも特別サービス! これっ! 全部で命1つってわけっ! 信じられないでしょ〜? 今すぐっ! お電話を!」



【?????/1日目/朝】

【オールステンレスチタンコーティング包丁セットのヤツ@株式会社日本文化センター】
[状態]:健康
[装備]:ペティナイフをお付けしたステンレスチタンコーティング包丁型COMP(今ご覧の方はお得なので三本)
[道具]:基本支給品、特別なおまけセット(刃先を軽く研ぐだけで切れ味が蘇るダイヤモンドシャープナー、少ない量でも美味しく炊ける2合炊きレンジ炊飯器、いつでも温かい飲み物が飲める卓上魔法瓶、便利なキッチン5点セット)@現実
[思考・状況]
基本:1800名まで特別にすっぱすぱ!
[状態]:健康
[COMP]
1:アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険
[種族]:神獣アヌビス(神獣とは言っていない)
[状態]:切れ味グンバツ


331 : ◆u7XsmNgePI :2016/05/21(土) 22:23:37 m6Zwb.B.0
投下終了です。


332 : ◆u7XsmNgePI :2016/05/21(土) 22:25:59 m6Zwb.B.0
投下直後に申し訳ありません。

>[道具]:基本支給品、特別なおまけセット(刃先を軽く研ぐだけで切れ味が蘇るダイヤモンドシャープナー、少ない量でも美味しく炊ける2合炊きレンジ炊飯器、いつでも温かい飲み物が飲める卓上魔法瓶、便利なキッチン5点セット)@現実



[道具]:基本支給品、特別なおまけセット(ペティナイフをお付けしたステンレスチタンコーティング包丁3本、刃先を軽く研ぐだけで切れ味が蘇るダイヤモンドシャープナー、少ない量でも美味しく炊ける2合炊きレンジ炊飯器、いつでも温かい飲み物が飲める卓上魔法瓶、便利なキッチン5点セット)@現実

に修正してwikiに収録をします。
このようなミスをしてしまい、申し訳ありません。


333 : ◆WWE.FIHli. :2016/05/21(土) 22:29:48 61gKyzwc0
投下します


334 : ◆WWE.FIHli. :2016/05/21(土) 22:30:19 61gKyzwc0
「みんなおひっさー! デップーさんだよ〜! 二次二次聖杯で俺ちゃんの活躍見てくれているかな?
 二度目のロワ企画参戦で俺ちゃん感激? やっぱり人気者は辛いな!」
『そうだな、超人気のデッドプール様が二次創作にバンバン登場するのも当然の事だな』
「でっしょ〜? でもさあ、ディスクウォーズアベンジャーズもとっくの昔に終わっちゃったし、
 そろそろ俺ちゃんの知名度も下がってきちゃうかも……」
『ふむ…… いやまて、この動画を見てみろ!』
&youtube(ttps://www.youtube.com/watch?v=f6K6OO8f5O4)
【お、wikiに掲載しやすいようになってる】
「え〜なになに? こ、これは! マーヴルコミックで最も超人気のあの、あの、あのデッドプール様の映画予告じゃないか!
 日本では2016年6月1日公開!? 見に行かなきゃ! 絶対に見に行かなきゃ! 今回は目からビームなんてこともあり得ないだろうし!」
『今年最高の映画であることは間違いなさそうだ、これを見ている良い子も悪い子もみんな100回見に行こうな』
【ステマどころかダイレクトな宣伝じゃねえか】
『ところでそのまま俺達だけで済ますのか? 地の文は入らないのか?』
「そろそろ場面転換っぽい記号でも置かれて変わるんじゃない?」
&color(#000000,#0060a2){【地の文が入ったら色もつきそうだな】}
&color(black,orange){『そうそうこんな感じに』}
&color(black,yellow){「でもこれスレに載せる時は結構見づらいよな」}
&color(#000000,#0060a2){【ほっとけ】}

☆ ☆ ☆

 殺し合い。
 思えばデッドプールの人生は常にそれと抱き合ったようなものであった。
 理不尽な目、無理ある話、そんな展開と付き合うのも慣れてきたものだ。
 だがそれでも戦い続けるのであろう、世界に拘束されているように。

&color(black,yellow){「しかし美女拾ってもこの二次創作内だけで終わっちまうんだよなあ、もったいねえなあ」}
&color(black,orange){『バカを言え二次創作が本編に絡むわけ無いだろ』}
&color(#000000,#0060a2){【絡んだ作品大抵碌な目にあってねえ】}
&color(black,yellow){『一理ある』}
&color(#000000,#0060a2){【てかもう場面転換してね? なんかシリアスな雰囲気になってるぞ?】}
&color(black,yellow){「え、まじ? やっべ台本台本…… 地獄からの使者! デッドプール!!」}
&color(black,orange){『それはディスクウォーズアベンジャーズのだ』}
 
 高層ビルの屋上で風に靡かれながらデッドプールは平然といつも通りに思考する。
&color(black,orange){『お、フォローが入った』}
 あの魔神皇をぶっ飛ばす、そのためにはどうするべきか。
 案外あいつの言う通り最後の一人になるまで殺し続けるのも良いかもしれない。
&color(#000000,#0060a2){【不死だし二次創作だしな】}
&color(black,orange){『身も蓋も無い事言うんじゃ有りません』}

 だがそれは虫が好かない。
 まだ何も知らないションベン臭い童貞小僧に言う通りに動くのも癪に障る。

&color(black,yellow){「……ふわ〜〜〜〜…… あ、えーと、俺ちゃんを舐めんじゃねーぞ!」}
&color(black,orange){『完全に油断してたぞ』}
&color(#000000,#0060a2){【前置きとかもうどうでもいいよな】}
&color(black,yellow){「さっさとCOMP使って悪魔召喚したい」}
&color(black,orange){『どうやらこれがそうらしいな』}    デッドプールのCOMP→ [COMP]
&color(black,yellow){「金髪のボインボインの姉ちゃんこい!」}
&color(black,orange){『禿の筋肉が来る前振りかな?』}
&color(#000000,#0060a2){【振りだな】}

 だがそれでも武器を取り上げられてしまった以上今ある物でどうにかしなければならない。
 一先ずCOMPを使い悪魔を呼び出す、願わくば恵まれた体を持つ悪魔を。
&color(black,orange){『ボインボイン』}


335 : ◆WWE.FIHli. :2016/05/21(土) 22:30:42 61gKyzwc0
☆ ☆ ☆

 それは悪魔と言い表すには余りにも強大過ぎた。
 怨念、悔恨、憎悪、悪鬼、破滅……
 この世に存在する全ての否定を纏ったその悪魔は、雄叫びを放つ。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁまぁぁぁぁぁぁぁぁのくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!!!!!!!!!!!!」

 家族よりも濃い絆で結ばれた、亡き友人の名を叫んだ咆哮は、
 彼が佇む高層ビル群の窓ガラスを全て吹き飛ばした。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁまぁぁぁぁぁぁぁぁのくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!!!!!!!!!!!!」
 
 悪魔と化したウド鈴木は、その命燃え尽きるまで天野くんを殺した『それ』を求める。
 それ以外は何もいらなかった。
 


☆ ☆ ☆

───デップーさん最後に一言。

&color(black,yellow){「やべえ」}

【?????/1日目/朝】

【デッドプール@Marvel Comics( &color(black,yellow){「2016年6月1日映画公開予定だからみんな見ろよ!」})】
[状態]:健康
[装備]:[COMP] ←吹き出し型COMP
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本: &color(black,yellow){「やべえ」}

[COMP]
1:ウド鈴木@現実
[状態]:健康
※天野くんが何者かによって殺された世界出身です


336 : ◆WWE.FIHli. :2016/05/21(土) 22:31:02 61gKyzwc0
以上で投下終了です


337 : ◆fd1N1IjRQI :2016/05/21(土) 22:31:49 OEIr//sw0
投下させていただきます


338 : ◆fd1N1IjRQI :2016/05/21(土) 22:32:12 OEIr//sw0
2016年、仮想東京。
俺ことホストの獅子丸ちゃんは・・・

・・・って、こんな説明今さら必要ねぇだろ!
10年も前の深夜ドラマのことなんて覚えてる奴いねぇ〜っての!
毎回毎回丁寧に描写されてんのは新しい人にも分かりやすくっつ〜ホスト故の性だけど
締切間近で新しい人なんて来ないっつうんだよ!
見てる奴決まってんなら、もう説明しねぇ。
ウンコぶりぶり!インキンカイカイ!

てなわけで、今日は獅子丸ちゃんとロリッ子ちゃんとのイチャラブ祭りだじょ〜!!
2ちゃんの実況盛り上がってかぁ!?
立たせて待ちやがれ!
あっ!オープニングが始まっちまった!

風よ〜♪光よ〜♪正義の祈り〜♪(以下略

◆◆◆◆


「・・・おい、何時までブツブツ言っている?」

『画面の向こう』に向ってナレーションしている獅子丸に、キンサチ型COMPから召喚された着物姿の犬耳少女悪魔―
『鐵假面剱士』こと影胡摩が冷めた目と冷徹な声でツッコミを入れた。

「・・・いやさぁ!一応お約束ってモンだからさぁ!どう?胡摩ちゃんも一緒にy・・・」

次の瞬間、胡摩はド素人の獅子丸・・・どころか、獅子丸の知り合いの中で一番の手練れだった虎錠之介でも解らない程の速さで
抜刀し、獅子丸の首筋に刃を当てていた。


339 : ◆WWE.FIHli. :2016/05/21(土) 22:32:13 61gKyzwc0
タイトルは『勝ちに行こうぜデップーさん』です


340 : ◆fd1N1IjRQI :2016/05/21(土) 22:32:46 OEIr//sw0
「・・・馴れ馴れしく『ちゃん』なんて呼ぶな。わかったか?」
「・・・はい」

怒りの籠った声と眼光に獅子丸は内心ビビりまくりながら、何とか声を絞り出した。

「分かれば良い」

獅子丸の返事を聞くと、胡摩はすぐに刀を収めた。
緊張が解けた獅子丸は、糸の切れた人形のようにその場に膝を付、股間を湿らせたのだった。

「・・・それで獅子丸。これからどうするのだ?」

胡摩は先程までの見幕が嘘のように、獅子丸に今後の方針を聞いた。

「えっ?う〜ん・・・とりあえず、ネオ歌舞伎町行くわ。俺、あの街しかしらないしさぁ」
「そうか・・・では行くか」

獅子丸から今後の目的地を聞いた胡摩は、フードを被りなおして、歩き出した。

「ちょ!どこ行くのさ!?」
「決まっている。お前が今言った『ねおかぶきちょう』という街だ。ほら何をしている?さっさと案内しろ」

胡摩に急かされて、獅子丸は渋々ながら歩き始めた。

精神年齢的には真逆だが、共に歩くその姿は年の離れた兄妹か親子のようだった。



【??????/一日目/朝】
【獅子丸@ライオン丸G】
[状態]:健康、ちょっと漏らした
[装備]:COMP(キンサチ型。ちゃんと変身もできる)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない
1:ネオ歌舞伎町に向う
2:胡摩ちゃん怖い・・・
[COMP]
1:影胡摩@コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜(第二期)
[種族]:超人
[状態]:健康


341 : ◆fd1N1IjRQI :2016/05/21(土) 22:35:08 OEIr//sw0
投下終了です。
タイトル「獅子と鐡假面」です。
あと>>339さん、被ってしまい申し訳ありません


342 : ◆9DPBcJuJ5Q :2016/05/21(土) 22:38:31 XQexS95U0
3つ目間に合った! 投下します


343 : 大惨事(未遂) ◆9DPBcJuJ5Q :2016/05/21(土) 22:42:42 XQexS95U0
「はーあー……なんでこないなことになってしもうたんやろうなー……。
覇異武立闘との戦いも終わって、やっと平和になったと思うとったのに……」
「ブオー」
 東京を模した街の一角で、勝ち得た平和の儚さを嘆いているのは、白いゆるキャラのコンビ……ではなく。
 かつて幾度となく、世界の平和を守るために戦った武者頑駄無と、その相棒である牛に似た謎の生物のような鎧であった。
 どこから見ても口が×で背中に翼が生えている牛っぽい生物だが、これでも鎧なのである。本当に。
 武者丸のように、現代日本での平和な日々に現を抜かした結果、武ちゃ丸と化し平和ボケして腑抜けた成れの果てではないのである。
「それに、なんか、ブオーの体に変なモン埋まっとるし……」
「ブオ〜」
 武ちゃ丸はそう言って、ブオーの体に埋め込まれているテレビのような液晶画面を叩いた。どうやらそれに反応したらしく、モニタが点いた。
「ん〜……これがCOMPっちゅうやつやろな。どれ、ぽちっと」
 タッチパネル操作に慣れのない武ちゃ丸だったが、表示画面にはご親切に「ここを押す」など分かり易い表示がされていて、迷うことなく悪魔召喚プログラムの発動に成功した。
「ぶっ……」
「ん?」
 おや? ブオーのようすが……?
 ブオーは小刻みに震えだし、次第に顔色が青褪めていく。
 そして……――
「ぶおおおおお……」
「おぎゃー!? えらいことになってもーたー!!?」
 ――盛大に吐いた。吐瀉物ではなく、悪魔を。
 しかしゆるい外見の牛のような生物っぽい鎧の×の字の口から、人間が吐き出されるように悪魔が召喚される光景は、
 関西人の魂を持つ武者丸をしてツッコミを忘れてしまう惨事となっていた。
「……ふむ」
 しかし、召喚された悪魔は落ち着いたもので、全身が出るとすぐに立ち上がり、全身に異常が無いことを確かめて一つ頷いた。
「おっちゃん、大丈夫かいな!?」
「中々、得難い体験をさせてもらった。君が、召喚者かね?」
 召喚されたのは悪魔……なのだろうが、魔刃頑駄無のような、魔界の住人独特の禍々しいオーラは無く、外見も人間と何ら変わりなかった。
 髪と一体化するほどに蓄えられた顎鬚が熊のような印象を与え、或いは少年少女なら怯えたかもしれないが、
 歴戦の武者である武ちゃ丸は動じず、促されるまま自己紹介を始めた。
「せや。ワイは武者丸、武ちゃ丸ちゃうで。で、こっちのおっちゃんを吐き出したんがブオーや。
ワイの……ま、相棒みたいなもんや」
「ブオッ」
 説明の難しいブオーのことは簡単に紹介するに留める。
 ブオーも落ち着いたようで、前足を掲げて挨拶した。
 対する悪魔は一つ頷くと、片膝をつき、武ちゃ丸と目線の高さを合わせてから自らの身を明かした。
「わしはトゥバン・サノオ。兵法家だ。こんごともよろしく、武者丸殿」
 穏やかな笑みを浮かべ、トゥバンは礼儀正しく挨拶をした。
これに武ちゃ丸は感極まり、大仰に涙目になった。
「うう……何が悪魔や、めっちゃええおっちゃんやんかなぁ……こっちこそ、よろしゅうな」
 武ちゃ丸が手を差し出すと、トゥバンはすぐに手を取り、そこへブオーも前足を重ねた。
 3人は手を取り合い、この殺し合いを打破するために一致団結することを誓い合った。
「ところで、君は人間なのかな?」
「うんにゃ。ワイは武者、武者頑駄無や」
「武者……ガンダム?」
 2人はまだ知らない。
 日本が沈没する運命が変わった世界と、日本が沈没した歴史の上に成り立つ世界。
 お互いの元いた世界の、不思議な接点を。
 そして、武ちゃ丸は知らない。
 トゥバン・サノオがその身に棲まわせる、人ならぬものを。
 そして、トゥバン・サノオも知らない。
 武ちゃ丸が人外の勇者であり、屈指の剣豪でもあるということを。

【??????/一日目/朝】
【武者丸@武者○伝シリーズ】
[状態]:健康、ちょっと漏らした
[装備]:COMP(ブオーに内蔵)
[道具]:基本支給品一式、ブオー@武者○伝シリーズ
[思考・状況]
基本:悪党を成敗する
[COMP]
1:トゥバン・サノオ@海皇紀
[種族]:人間
[状態]:健康


344 : 大惨事(未遂) ◆9DPBcJuJ5Q :2016/05/21(土) 22:43:17 XQexS95U0
以上で投下終了です


345 : ◆WWE.FIHli. :2016/05/21(土) 22:43:49 61gKyzwc0
投下します


346 : アンタチャブル ◆WWE.FIHli. :2016/05/21(土) 22:44:19 61gKyzwc0
 ザキヤマが…………………………


 殺し合いに………………………………


 乗るぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!



☆ ☆ ☆

 ザキヤマがぁ………………………………



 AKUMAに………………………………



 なるぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!




【?????/1日目/朝】
【山崎弘也@アンタッチャブル】
[状態]:健康
[装備]:ザキヤマ人形COMP
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:殺し合いに乗る

[COMP]
1:ザキヤマ@ザキヤマ
[状態]:健康
[種族]:人間


347 : ◆WWE.FIHli. :2016/05/21(土) 22:44:39 61gKyzwc0
以上で投下終了です


348 : ◆jk/F2Ty2Ks :2016/05/21(土) 22:45:00 k19RwroY0
皆様投下乙です
投下します


349 : Terror Heaven's Hole ◆jk/F2Ty2Ks :2016/05/21(土) 22:45:51 k19RwroY0

人生とは上手くいかないものである。
生まれ、成長し、一個の命として世界に根を張るならば、誰しもがこの言葉を脳裏に浮かべずにはいられないだろう。
分を弁えず、己の力量では届かない高みに手を伸ばせば挫折という悪魔に足を刈り取られる。
過不足なく、得て当然のものだけを確保しようとしても、時に偶然という悪魔が首を締め付ける。
そんな平等に残酷で、不平等に混沌な世界においても、間桐桜という少女は絶望の味に慣れるのが早すぎた。

「ぁ……んっ…んぁ…あっ…ぁ…あっんっ…」

「……」

光を失った桜の眼に映る、淫靡な光景。
秘所から体内に侵入する異物。蠢くソレは、左右に振れて奥へ奥へと押し進められる。
遠慮ない責めが、下から押し出すかのように嗚咽と二酸化炭素を喉へ運んでいた。
桜自身も幾度となく味わったその陵辱を眺めながら、靄のかかったように鈍い思考が走る。

甘えたい盛りに親から引き離され、他家へ渡ったのは不幸ではない。
魔術の素養を持ち、新たな血族の秘儀を継ぐ為に肉体を改造するのも不幸ではない。
そういう風に心底から思い込み、幼い自我の崩壊を先延ばしにしていた桜であったが、現状が不幸なのかどうかについては、未だ答えを出せていなかった。

「殺し合い……」

怖ろしい事だ、関わりたくない、と思う。
願いを叶えると言われても、願う事など何もない。
上位者である間桐の翁も近くにはおらず、誰にも指示を受けることができない。

「ムシ蔵に行く時間なのに……」

それどころか、日々の務めとして徹底させられている鍛錬すらできない。
周囲は全く見覚えのない町並みで、家に帰る道など分かるはずもなかった。
温泉帰りに叔父から貰った防犯ブザー代わりのポケットベルを鳴らしてみるが、叔父にもそのサーヴァントにも繋がらない。
直後、困惑する桜を更に戸惑わせるような叫びが周囲に轟いた。


350 : ◆9DPBcJuJ5Q :2016/05/21(土) 22:47:09 XQexS95U0
自分の投下分、全てwiki収録完了しました


351 : Terror Heaven's Hole ◆jk/F2Ty2Ks :2016/05/21(土) 22:47:10 k19RwroY0



「    我   操  (  フ ァ  ッ ク  ) ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! 」




「……ッ」


桜は知る由もないが、その叫びは中国語でちくしょう、とかこんにゃろう、というような意味を持った言葉だった。
叫び声を上げたのは一見普通の成人男性。坊主頭に人の良さそうな顔の好青年、といった風貌。
しかし彼はこの無人の東京を闊歩する悪魔の一柱であり、桜というサマナーを見るや襲いかかってきたのだ。
そのチャツボホヤの精霊(中国の悪魔の一種と思われる)が淫靡な呻きを、そして突然の狂声を上げた元凶。
それこそがサマナーとしてバトル・ロワイアルに参加させられた桜に与えられた、彼女を守る悪魔なのだ。

「じょうっ」

ぐちゃ、とパイナップルが砕けるような音と共にチャツボホヤの精霊の頭が潰された。
凶器は原始的な、しかし強固な棍棒。先ほどまで敵対悪魔の尻にねじ込まれていたそれは、腸液と脳漿と血を吸って妖しく光っている。
ぶん、と棍棒を振って穢れを払う悪魔。その桜よりも闇に近い黒き瞳は、無機質な昆虫の器官である。
悪魔と虫を結ぶならば、余人は蝿……ベルゼブブの端末を思い浮かべるかもしれない。
しかし桜には、目の前の存在が模る"家屋の悪性"たる昆虫の姿だけが悪魔のイメージに重なって見えていた。
あれだけ恐れた蟲蔵の異形よりも、目の前の存在が異端に思えていた。



―――――……現在世界に存在する漫画作品1028万5000本

―――――………そのうち商業作品と認定されている物23万2000本

―――――…………そのうち他漫画作品のスピンオフである物2500本

―――――……………そのうち単刊1冊(タイトルを変えた続編を除く)のみで完結している物145本

―――――………………そのうち2016年5月19日に発売された物 1 本 

―――――…………………そのうち『テラフォーマーズ』のスピンオフであるもの  1  本  




タイトルは『てらほくん』。主人公の名も『てらほくん』。
そしていかなる偶然か、間桐桜が契約した悪魔の名も……『てらほくん』!

「じょ〜〜〜うじ! じじょう!」

「どうしよう……」

初陣を勝利で飾り発奮するてらほくんを前に、桜は封じ込めた感情運動の一つ、『錯乱』を取り戻しはじめていた……。



【?????/1日目/朝】
【間桐桜@とびたて!超時空トラぶる花札大作戦】
[状態]:健康
[装備]:COMP(ポケットベル型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:どうすればいいの?
[備考]
※まだ心臓にアレがいない感じでお願いします。
[COMP]
1:てらほくん@てらほくん
[種族]:星蜚
[状態]:健康


352 : ◆yaJDyrluOY :2016/05/21(土) 22:52:42 vPlpmcfg0
宣言がありませんが投下終了なのでしょうか?


353 : ◆yaJDyrluOY :2016/05/21(土) 22:54:43 vPlpmcfg0
返事がない内で申し訳ないですが、投下します。


354 : 魔竜に寄り添う乙女の作法 ◆yaJDyrluOY :2016/05/21(土) 22:56:12 vPlpmcfg0
 深い森の中――木が生い茂り、周囲の様子が全く把握できない程の大森林。
 僅かに朝日が差し込むばかりの薄暗い空間で、少女は目を覚ました。
 少女の名は――キャロ・ル・ルシエ。
 彼女はかつて機動六課という部隊で活躍していた竜召喚士であった。

「あれは……? 夢……だったのかな?」

 ぼんやりとだけ覚えている広い空間での記憶を、少しずつ辿っていく。
 白ランの少年の事も少女達の死も、どこか現実離れしていた。
 現在は自然保護隊に所属している事も手伝って、彼女には森は馴染みの深い場所である。
 その為かここは現実で、任務中に寝てしまったのかと勘違いしてしまった。

「フリード……は、エリオ君のところだっけ」

 いつも一緒にいた白竜を呼ぶが、機動六課解散後は別の同僚を手伝っている事を思い出す。
 つまり、それはこの場にはキャロ一人しかいないということの証明であった。

「とりあえず、ここがどこだか確認しないと……」

 魔法を使い、上空から調査しようとキャロはその場で立ち上がろうとする。
 するとその時――ズシリと肩に違和感がのしかかった。
 肩を見ると、薄いベージュのショルダーポーチが下がっていた。
 横になっている時は気付かなかったが、立つことによって確かな重量を感じることができたのだ。

「あれ? 私こんなポーチ下げてたっけ?」

 少し疑問を抱いたが、今は荷物の確認よりも現在地の確認を優先したかった。
 そのため、キャロはポーチを特に気に留めずに空を飛ぶ準備を始めた。
 しかし――

「あれ!?」

 いつも待機状態で左手首に巻いてあるはずの、ブーストデバイス『ケリュケイオン』が無くなっていることに気がついた。
 慌てて足元や周囲を探してみても、それらしき物は見当たらない。
 誰かに盗まれたのだろうか――焦燥感がキャロを襲い、いつの間にか大声を上げていた。

「ケリュケイオン! 聞こえてたら返事して!」

『……こです……ター』
 
「ケリュケイオン!?」

 まさかとは思ったが慣れ親しんだブーストデバイスの声は、さっき後回しにしたポーチの中から聞こえてきた。
 とっさにポーチを開き、ケリュケイオンを取り出す。
 すぐさま求めるように両手に履くと、いつもの感覚に少し緊張が和らいでいくのがわかった。

「ケリュケイオン、今の状況ってわかる?」

『はい、マスター。我々は魔神皇によって殺し合いを強制されている立場にあります。また、私自身も彼らによって悪魔を呼び出す機能の付与など、様々な改造が施されています』

「え!?……あれって夢じゃなかったんだ」


355 : 魔竜に寄り添う乙女の作法 ◆yaJDyrluOY :2016/05/21(土) 22:56:47 vPlpmcfg0

 ケリュケイオンが告げたのは、悪夢のような光景が夢ではないことに留まらず、デバイスが改造されているという悲劇だった。
 そうなれば当然機能を追加しただけではなく、魔法や召喚術にも手が加えられていると見ていいだろう。
 上方修正されているなどと思うほどキャロは楽天的ではない、恐らく制限されていると見るべきだろう。
 魔神皇と名乗る青年は、口ぶりから察するに悪魔を使って戦わせたいはずなのだから。

『マスター、悪魔召喚プログラムを起動しますか?』

 キャロの思考を読み取ったかのように、ケリュケイオンが悪魔召喚を促してくる。

「うん、お願い、ケリュケイオン」

 キャロは迷わなかった。
 いざとなれば少しくらいは魔法も使えるだろうし、危ない悪魔ならケリュケイオンが戻してくれるはずだからだ。
 魔法を使用する際のように、キャロの周囲が光り輝く。
 そして、悪魔の召喚は成された。

「私を召喚したのは貴様か、小娘?」

 やはりと言うべきか、キャロが召喚したのはどこからどう見てもドラゴンであった。
 2〜3メートルはあるであろう身体は、キャロが見上げないと顔を見ることすら叶わない。
 しかし、フリードリヒやヴォルテールが完全体になった時よりは大分小さい。
 竜という種族に慣れていることもあってか、キャロは恐れずに話しかけることができた。

「はい、私は竜召喚士のキャロ・ル・ルシエと申します。貴方は?」

 竜の悪魔はキャロを見た瞬間奇妙な感覚を覚えたが、名乗りを聞いて得心がいったようだ。
 竜とともに暮らす民族『ル・ルシエ』の巫女であるキャロは、竜に好かれる類稀なる才能があるのだ。
 その悪魔は竜でありながら竜という種族を超越し、一般に“竜の弱点”とされている物が一切効かない正真正銘の化物だ。
 しかし、キャロの“それ”は竜を打倒するための力ではなく、むしろ好かれるための物である。
 神々さえ恐れ、近づくことがない自分に対して気安く――しかし敬意を持って接するキャロの姿は、悪魔にとって新鮮なものだった。

「ふん、くだらない人間だったら殺してしまおうかと思っていたが……気が変わった」

 故に、悪魔はキャロを認めた。
 自分の名を聞き、一時的ではあるが共に歩む事を許すことにした。

「よく聞け、我の名を。そして畏れ敬え、我が名は――ブラッドヴェイン!!」

 神スルトでさえも耳をふさぐ魔竜『ブラッドヴェイン』の名を、キャロはしっかりと胸に刻みこんだ。
 殺伐とした殺し合いの中で、お互い頼っていく大切な相棒なのだから。
 機動六課の名に泥を塗らぬよう、弱きを助け悪を挫く為に。
 少女は――前に進むのだ。



【?????/1日目/朝】
【キャロ・ル・ルシエ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:健康
[装備]:ケリュケイオン(COMP機能付き)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:生き残り、無事に帰る。
[備考]:機動六課は地球上に存在する魔導師部隊です。
[COMP]
1:ブラッドヴェイン@ヴァルキリープロファイル
[種族]:魔竜
[状態]:健康


356 : ◆yaJDyrluOY :2016/05/21(土) 22:57:18 vPlpmcfg0
投下終了です


357 : ◆ZbV3TMNKJw :2016/05/21(土) 23:08:54 F38Xa4tE0
皆さま投下乙です。
二作投下します。


358 : それは私と雀が言った ◆ZbV3TMNKJw :2016/05/21(土) 23:10:05 F38Xa4tE0


Who killed Cock Robin

誰が殺した?クック・ロビン。


I,said the Sparrow

それは私と雀が言った。


With my bow and arrow

私の弓に矢を番え。


I killed Cock Robin

私が殺したクック・ロビン


359 : それは私と雀が言った ◆ZbV3TMNKJw :2016/05/21(土) 23:10:44 F38Xa4tE0


少女―――濱秋子は、全てを語った。

獄門塾に入塾後、ほどなくして海堂、鯨木、近衛、絵波、霧沢、茂呂井の6人に目を付けられてイジメを受け続け、重なるように家でのトラブルが起き、心身ともにすり減っていたこと。
そんな時、藍野修治に救われたこと。
そして、今度は藍野が6人のターゲットにされたこと。
そして...

「きみは、藍野くんが使用していた命に関わるクスリを、あの6人に覚醒剤だと教えられ、渡された薬をすり替えてしまった...そうですね?」
「...はい」
「彼はさぞや無念だったでしょう。彼にはなんの落ち度もなかった。だが、あの6人にその命を弄ばれてしまった...」
「私...どうすれば...!」
「きみが悪いんじゃない!きみが悪いものか!全ては奴らが...!」

秋子の隣に座る男性―――秋子の通う獄門塾の教師であり、藍野修治の父である氏家貴之は、涙を流す濱を必死に慰める。


だが、それでも。
彼女には救いは訪れない。彼女の胸中には、負の感情しかなかった。
かけがえのない者を喪った深い絶望と悲しみ。
自分を騙し、藍野の薬を覚醒剤だと偽った6人への止めようのない憎しみと怒り。
そして、なにより彼を殺した―――

「あなた方に私の芸術を差し上げます。そして、あの6人を死の輪舞曲(ロンド)へと導くのです」
「...!」
「そのためには下準備が必要となります。それは―――」




「そこで、あなたの意識は途切れ、気が付けばこのバトルロワイアルに巻き込まれていた...というわけね」
「...うん」


濱秋子は全てを語った。
『地獄の傀儡子』を名乗る男から、あの6人への復讐の計画を持ちかけられたこと。
そして、いざ計画を教えられようとしたその時、殺し合いの会場に連れてこられていたことを。

「これが『地獄の傀儡子』が伝えようとしてたことなのかな...」
「状況から言えば、かなり低いと思うわ」

秋子の話を聞いていた黒髪の少女は、現在の主の話を聞き、彼女なりの推測を述べていた。

「そもそも、その6人とこの殺し合いになんら関係性は見当たらない。あなたが見た限りでは、6人の誰もいなかったのでしょう?」
「あ、あんまり自信はないけど...」
「もしも、あなたに6人を殺させるというのが目的なら、その6人の誰か一人でもあなたの目の付く場所にいなければ不自然だわ」
「じゃあ、なんでこんなことを」
「私にはわからないわ。私はただの悪魔。あなたの力になるだけで、他はなにも知らないの。でも...」

困惑する秋子の手を包み込み、少女はそっと握らせる。


360 : それは私と雀が言った ◆ZbV3TMNKJw :2016/05/21(土) 23:11:52 F38Xa4tE0
「もしも、『地獄の傀儡子』があなたを殺し合いに送り込んだのなら...試されているのかもしれないわね」

秋子の手に握り絞められていたのは、ひとつの拳銃だった。

「6人以外は決して殺さない真っ当な復讐者になるか、6人を殺すためには手段を選ばない殺人マシーンになるか」
「ッ...!」
「それとも...なにも選べず、ただ怯え続けるだけか」

渡された拳銃を掴む手は震えている。
もしも、あの6人が、いや、目の前に邪魔を敵が現れた時―――この引き金を、引く?

なんのために。

復讐を果たすため。

なんのために。

殺すため。

なんのために。

藍野修治と同じように、自分が、この手で―――

「わからない...わからないよ...」

不安。怒り。恐怖。殺意。
あらゆる負の感情が胸中に渦巻き、彼女の頬を涙が伝った。

「...そう。まだ答えが出せないのね」

少女は、席を立つと、秋子に背を向けドアへと向かっていく。

「あ、あの...?」
「見張りにいくだけよ。...大丈夫。私は、あなたの味方。どんな道を選ぼうと...ね」

パタン、と扉は閉められ、一人残された秋子は、再び拳銃を握りしめた。

この拳銃で、他者の命を奪いあの6人を殺すために心を失くすのか。
あの6人以外は殺さない復讐者になるのか。
それとも...この拳銃で彼を殺した罪を償うのか。
どれが正しい答えなのか、彼女にはわからない。

「お願い...教えて...」

藍野くん、と呼びかけそうになった言葉をのみこんで。
濱秋子は、己の犯した罪に苛まれ続けた。

救いの手など存在しない。
協力者でもある、思い人の父も。
闇へと誘う地獄の傀儡子も。
彼女に光を与える筈だった探偵少年も。
誰の意思も介入することはできない。
先に進むには、全て自分で決めなければならないから。


361 : それは私と雀が言った ◆ZbV3TMNKJw :2016/05/21(土) 23:12:48 F38Xa4tE0



「......」

少女―――暁美ほむらは、扉を背にして佇んでいた。

暁美ほむらの全ては鹿目まどかのためにある。
それは、如何なる状況においても揺らぐことはなく、いまもそれは変わらない。
だが、ほむらは確かに秋子の味方だと告げた。なぜ?

(いまここにいる私は、ただのコピー...本物の私じゃない)

いまここにいる自分は、ただの電子の海で再構築された、悪魔の名を騙る偽者である。

そして、その証拠に―――ほむらがいま使用できる魔法は、世界が改変された際に失ったはずの時間停止の盾だ。
つまりは、秋子の語っていた魔人皇なる少年が作った都合の良い偽者が、濱秋子に呼び出された暁美ほむらである。
この事実は誰に伝えられたわけではない。
しかし、確かなことは、本物の自分は今も尚"鹿目まどか"を追い求め続けているだろうということだ。
それは、この胸に宿る感覚で解っていた。
そして、いまここにいる偽者は、この殺し合いの間でしか生きられない、即ち消去(デリート)されてしまうだろうということも解っていた。
故に、ほむらは殺し合いに乗ることも叛逆を企てることもせず、サマナーである彼女に判断を委ねることにした。

だが。

それ以上に秋子の味方だと強く断言した理由は。

(彼女と私は―――同じだったから)

かつて、暁美ほむらは鹿目まどかを救うために、何度も同じ時間を繰り返してきた。
彼女が悪魔と契約する度に。彼女を死なせる度に。彼女を殺す度に。
何度も。何度も。何度も。
結局、彼女を救うことなんてできやしなかった。
残ったのは、因果の糸に押し上げられ、鹿目まどかは誰からも忘れ去られてしまったという結果だけ。
彼女を愛し、愛された家族からも。
共に支え合ってきた親友たちからも。
これから関わる者たちからも。
...誰からも彼女との繋がりを断ち切らせ、まどかを永久の孤独に晒してしまった。

彼女自身が望まない選択肢を選べるようにしてしまったのは、他でもない。

「...それは私、か」

秋子が時折呟いていた言葉。

似ていた。

藍野修治という存在に救われた秋子。
鹿目まどかという存在に救われたほむら。

修治を想っての行動が、彼を死に至らしめてしまった秋子。
まどかを想っての行動が、まどかを永久に孤独の片隅に追いやってしまったほむら。

動機や境遇こそ違えど、彼女とほむらは限りなく近しい存在だったのだ。

だからだろう。
ほむらが、秋子の力になりたいと思ったのは。
同情心と既視感からの気の迷いといえばそれまでだ。

だが、それでも、彼女の後悔や苦しみ、絶望も解っているつもりだったし、彼女の復讐心も否定することもしなかった。―――もし、自分が彼女の立場になったら、彼女以上に迷わずその6人を殺しただろうから。

結局のところ、暁美ほむらという少女も、ただ寂しかったのかもしれない。
故に、寂しさを紛らわすために、秋子の力になると決めたのだろう。

ほむらは待つ。
自分と似た少女が、こころを決める時を。
そして、如何なる道を進もうとも、ほむらは彼女を責めないし、裏切りもしない。
例えそれが全てを投げ出す逃避だとしても。地獄への片道切符だとしても。
彼女の最期を見届けるまで、ほむらは決して裏切らないだろう。
もしも、その心を揺らがせる時が来るとしたら。それはきっと...


362 : それは私と雀が言った ◆ZbV3TMNKJw :2016/05/21(土) 23:14:49 F38Xa4tE0



誰が殺した?クック・ロビン。

それは。

それは。

それは―――





【?????/1日目/朝】



【濱秋子@金田一少年の事件簿 獄門塾殺人事件】
[状態]:精神不安定
[装備]:注射器型COMP
[道具]:基本支給品、ベレッタ@現実
[思考・状況]
基本:私は、どうすれば...



[COMP]
1:暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ
[状態]:健康
[種族]:悪魔
MP:200/200

※魔法は時間停止は使えますが、制限により止められる時間は限られています。また、手持ちの武器は現在0です。
※MPが切れると魔法が使えなくなります。魔女化は現状不明です。


363 : 独りぼっちは、寂しいどすなぁ ◆ZbV3TMNKJw :2016/05/21(土) 23:15:51 F38Xa4tE0
あたし、佐倉杏子は困惑していた。

なんだかよくわからない内に悪魔だなんだと決められて。
ここにいるあたしは所謂コピーみたいなものらしくて、本物じゃないことだけはわかってて。
極め付けに、あたしを召還した奴と殺し合いを勝ち残れと命令されて。
これだけでも超の付くほど最低な出来事だ。
けど、それ以上に。

「...っかしーな。確かに呼ばれたはずなんだけど」

あたしを呼び出したサモナーとかいう奴の姿が見当たらない。
呼び出されるまでは召喚されないはずなのに...


「...どす」


ふと、微かに声が聞こえた。
キョロキョロと見まわすと、声の出所は一本の木からだった。
姿を隠してるのか、と思い、念のため気配を殺しつつ、近づいてみる。
そして、こっそり覗いてみると...


「お...おいでやす...あ...アラッシ...のんッ、アラシヤマどす...」


その正体は、一人の男だった。
漫画を描く時にポーズをとらせる木製人形に話しかけ。
更に、とてつもなく荒い息遣いで掌に『人』の文字を何度も何度も書きなぐり、全身を震わせている陰気くさい青年だった。

そんな、見てはいけない様を見てしまったとき、あたしは

「うわぁ」

思わずそんな声を出してしまった。
たぶん、いまのあたしはスゴイ顔してると思う。




び、びっくりしたわぁ。
トージくんを撫でてたら急に人が出てくるさかい、思わず隠れてしもうたわぁ。
どうやら、トージくんが悪魔を召喚するCOMPとかいうのに改良されてたみたいやな。
ということは、あの子が魔人皇とかいうガキが言ってたわての...と、友達...
はうっ!と、友達ができると思うたら、緊張してしもうた!
とりあえずあの子に自己紹介せな。練習や、れんしゅう...

「ぁ、ぁらぁ...」

あ、あかん!緊張で身体の震えが止まらんくなりよった所為で口がうまく動かれへん!

「あ、ラシ...アラッシィ...ちゃう、アラシ...」

男を見せる時や、アラシヤマ!
シンタローはん以来の人間の友達を増やすチャンスや!
いや、もう悪魔とか人間とかどうでもええ!
まずは友情パワーでこのバトルロワイアルを破壊して、参加者みんなと友達になる!
そして、みんなと一緒にシンタローはんのもとへ帰るんや!
そう、友情の名のもとに...!

「わ、わてと、友達になっておくれやすぅ〜」







【?????/1日目/朝】



【アラシヤマ@PAPUWA】
[状態]:健康
[装備]:木製人形(トージくん)型COMP
[道具]:基本支給品、確認済み支給品
[思考・状況]
基本:友情パワーで殺し合いを破壊し、シンタローのもとへと帰る。
0:友達を増やす
1:目の前の悪魔(杏子)と友達になる。


[COMP]
1:佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ
[状態]:健康
0:なんだよこのキモイ男...


364 : ◆ZbV3TMNKJw :2016/05/21(土) 23:16:29 F38Xa4tE0
投下終了です。


365 : ◆KV7BL7iLes :2016/05/21(土) 23:18:24 e6lRlFBU0
投下します。


366 : スバルトオキザリス ◆KV7BL7iLes :2016/05/21(土) 23:20:31 e6lRlFBU0

「ふ…ふふふ。この悪魔ゴールデンウィンドを召喚するとは…良かったな、貴様はツイ」
「あれ、悪魔じゃないの?」

─────初対面一発、悪魔という事で頭を捻って絞り出した渾身のギャグは、特に意に介されることすらなくスルーされた。



☆*


数分後。


「………勇者ぁ?」

ひとまず自己紹介を済ませ
何だかよく分からないが、物凄く微妙な顔をされた。

「いいじゃない勇者。格好良くて」
「うーん…僕はそういうRPGみたいなのより、ヒーローショーとかの方が好きなんだけどなあ」

尚もグチグチとマイペースに苦言を呈するサマナーに、悪魔、もとい勇者、もとい─────犬吠埼風が何処か呆れたような目を向ける。
微妙にコミュニケーション能力が高い、というよりかはのらりくらりと追求をかわしてくる、この自分よりほんの少し年下といった感じの少年。
掴み所が難しいというとあの元先代勇者を思い出すが、しかしこの少年の場合どうやらマイペースというだけでなく協調性もそこまであるようには見えない。


「とりあえず、名前」
「怪しい奴には教えたくない」

…仮にも協力しろとあの魔神皇とやらに言われていたはずなのに、この態度は何なのだろうか。
いやまあ、あいつの言うことを信じるのもシャクだし、悪魔だとかさっきの演技とかで自分がいい印象を受けていないのも分かる。
とりあえず「まあまあ、そこを何とか」というのを数回繰り返して白鳥昴という名前を聞き出す事に成功したものの、このままでは色々と問題があるだろう。

「………で、どうするの?」

それならば、と、風はいきなり核心を突く事とした。
どうする。
これは、決して無視できぬ大きな問題だ。
少なくとも、全く戦わずしてこの殺し合いを切り抜けるというのはどうあっても無理な相談だ。
この場が魔神皇の作った世界の一部である以上、そもそも彼を打ち倒さなければどうしようもないという可能性も少なくない。

「…うーん」

真剣に悩んでいるのかどうかは分からない表情で、しかし塾考するように頭を捻る。
そんな彼の姿を見守りつつ、風は彼の心境を想像する。
勿論、彼とて死ぬのは嫌だろう。
だけど、その為に誰かを殺せと言われても、ハイ殺しますと言えるような一般人はそういないだろう。
だからこそ、彼は悩む。
そして、それならば私はどうするべきか。
彼の選択が罪を背負うそれだった時、自分は如何に対応すべきなのか。

やがて、何となく、といった風に。
何か感じるものがあったのか、支給されたディバックを覗き込み、入っているものを漁り出す。
確か、支給品は確認したと言っていたが─────それならば、それは単に目の前に迫った選択をほんの少し先延ばしにしただけ。
しかし、その程度の時間ならばまだ猶予はある。
少ない時間に焦って結論を急ぐよりも、余程良い事だ。

─────ま、私も、偉そうな事は言えないんだけどね。

そんな自嘲をしている時、
どうやら、ほんの少しで実際変わるものもあったようで。

「…ちょっと待ってて」

何やら荷物を持ち、洗面所の方角へと歩いて行く。
それを見届け、待つ事数分。

そして、少しぼおっとし始めていた頃に。

「ただいまー」

そんな、間延びした変わらない声と共に。





見覚えのない「少女」が、姿を現した。


367 : スバルトオキザリス ◆KV7BL7iLes :2016/05/21(土) 23:23:15 e6lRlFBU0

状況を理解するのに、約五秒。
風の目は、それまでの若干呆れ気味なそれから、良く分からない物を見る目へと変わっていた。

「…何、やってんの?」
「何って、女装」

あまりに当然のように返されて、どうにも返答がし辛くなる。
そういう趣味は個人の勝手でいいとは思うが、しかしいきなり目の前で披露されて対応しろというのは無理がある。
掛ける言葉に迷う風を見つつ、しかしふと遠い所を見るように顔を上げて。

「……人を殺す、ってのは」

─────彼が出した、その結論を。

「やりたく、ないかな」

それなりに強い意志を以て、風に伝えた。

「よろしい」

聞きたかった答えは聞くことが出来た。
満足気な顔を浮かべながら、風は立ち上がる。
それならば、私は喜んで剣を振おう。

─────世界を呪い仇成した、悪魔では無く。
─────世界を守らんとした、勇者として。

悪魔として喚ばれた事を、悩む事など無く。
勇者として振る舞い、皆を救う為に戦おう。
昴の手を引き、無理矢理立ち上がらせる。
うわ、うわわ、と言いながら、困惑したような彼が更に声を上げた。

「それにしたって、僕の女装に何も言わないのは…」

ああ、そんな事、と笑い飛ばす。
流石に少し戸惑ったが、しかし中学生女子の順応性の高さとどんな依頼でも出来る限りを尽くしてきた勇者部の部長としての包容力を舐めてもらっては困る。
…いや、後者はあまり関係無いかもしれないが。

「いや、まあ良く見たら可愛いし?女子力高くていいじゃない」
「何だそれ…」

…女子力の素晴らしさは女装する上で必要だと思うので、後でゆっくり説く事としよう。

「それじゃ、行きましょうか」
「ハイハイ」

☆ *

─────犬吠埼風が見抜けなかった、いや、見抜けるはずもなかった事実が、一つ存在した。
それは、洗面所にて着替えを済ませ、鏡を見た白鳥昴の思考。

映る自分の像は、いつ見ても驚くほどに姉に似通っていて。
彼は、その姿を見ながら想像する。

もしも、白鳥司がここに呼ばれたら。
彼女はどんなスタンスを選択して、どんな行動を起こすだろうか。

彼女が、自らの悪魔と力を合わせて脱出を試みる姿。
彼女が、自らの悪魔に手を汚させ生き残る為戦う姿。

─────うん、違うな。

比較して、やはりと一人頷く。

─────「司」が人を殺すのは、嫌だ。

だから、白鳥昴は殺さない。
彼の思考が導き出したのは、たったそれだけだった。
人を殺してはいけないという倫理観も勿論皆無とは言えないが、それよりももっと。
双子の姉である、白鳥司。
自分にとってのヒーローである彼女に対する、歪んだ思い。
歪な自己と姉の同一視が生み出した、そんな結論。
だから、その何処か後ろ暗さを含む感情の正体は未だ本人しか─────いや、或いは本人すらも気づいていないのかもしれない。


☆*

彼には、姉という名のヒーローがいた。

彼女は、ヒーローという名の姉だった。

片割れを失えど、プレアデスと酢漿草の目指す道は似通ったもの。

─────姉/妹の下に、戻る。


【?????/1日目/朝】
【白鳥昴@ななしのアステリズム】
[状態]:健康、女装
[装備]:白鳥昴の女装キット
[道具]:基本支給品、スマートフォン型COMP
[思考・状況]
基本:殺さない。なんとかして脱出。
[備考]
※白鳥司の姿に女装しています。
[COMP]
1:犬吠埼風@結城友奈は勇者である
[状態]:健康


368 : ◆KV7BL7iLes :2016/05/21(土) 23:23:46 e6lRlFBU0
投下を終了します


369 : 名無しさん :2016/05/21(土) 23:24:01 clPS6dUM0
とうかします


370 : ◆mcrZqM13eo :2016/05/21(土) 23:24:06 b.SsAx7E0
投下します


371 : 女神が生まれた日 ◆B7YMyBDZCU :2016/05/21(土) 23:24:37 clPS6dUM0
■――――――――――――――――――


  

    その日、世界は消滅した。




――――――――――――――――――■



人間界より遥か高く、人智を超越した世界――神々が暮らす天上の楽園。
来るべき決戦《ラグナロク》に備えるべくアース神族の最高神たるオーディンは戦乙女へ命ずる。

人間界に趣き、英雄たる魂を回収せよ。

高貴なる戦士の魂魄――エインフェリアを集めるために人間界へと降り立った戦乙女。
彼女の使命はオーディンの命令通りだ。
神々の決戦を制するべく、尖兵となる駒を集めることこそが、世界を安寧へと導く方程式であった。

数々の魂に触れ、時には人間の感情や業の深さに、己を省みる戦乙女。
その人間の中に、一人だけ異質を放つ男が存在していた。

彼は狂っていた。

戦乙女の美貌に心を奪われた彼は彼女に恋心を、いや、独占欲により上塗られた淡い心は狂気だ。
自分だけの物にするべく彼は――ホムンクルスの肉体として彼女を収めようと考えた。
人体錬成、それも器に入れる魂は人間を超越した神々の、謂わば神体とも呼べる存在であり、本来ならば人間の手には負えない。

けれど、彼は天才だった。

言ってしまえば簡単である。
魔術師と錬金術師を極める彼にとって、失われた文明や、人間には扱えない高度な魔術は関係ない。
何事をも熟し、彼の計画は戦乙女自身に止められるまでは、完璧であった。

一度の敗北を体験しようとも彼は諦めることは無く、そもそも選択肢として存在していたかも怪しい。

多少の経緯があり、戦乙女が肉体を失ったことで彼は動いた。

敵対した身でありつつもエインフェリア――戦乙女が集めた戦士の魂に接触し肉体を提供した。
彼が唯一守り抜いた幼き器《ホムンクルス》に一時的ではあるが、戦乙女の魂を憑着させ、一命を取り留める。

その後、戦乙女の別個体と対峙することになるも、彼が望んだ戦乙女は再び人間界に舞い降りた。

彼女は神々の決戦と仕組まれた全ての因縁や思惑を精算するために神界へ戻る。

ここで彼の役目は終わりを迎えることになった。



本来ならば、彼の物語はここで終わるはずだった。


372 : 女神が生まれた日 ◆B7YMyBDZCU :2016/05/21(土) 23:25:04 clPS6dUM0



戦乙女とヴァン神族の決戦は一度、全ての世界を消滅させ、新たな世界を構築した。


それにより全ての文明と生物が滅び、転生した。


この時に、唯の人間で唯一、生き延びた男――彼は生きていた。


それは賢者の石と呼ばれる錬金術師達が望む至宝であり、全ての知恵が籠められた奇跡を代償に彼は崩壞から免れた。


終末の炎に魂を焦がされなかった彼は、一つの希望を、絶対的な確信を持つこととなる。


実験は成功した――人間でありながら神に支配されない唯一の人間となった彼は過去の世界へ――跳ぶのが本来としての歴史である。


歴史とは常に曖昧であり、物語特有の着色がなされた劇である。


一説――彼が跳んだ先はミッドガルドではなく、東京と呼ばれる東洋の小さな島国であった。


錬金術も魔術も姿を消してしまった科学が基盤を成す都市。


全くの刺激が存在しない世界で彼は、知識だけを取り込んでいた。


いずれ戦乙女を己の物にするために。


世界を跳ぶ前に、より目的を達成するために、準備を進めていた。


そして魔神皇の声が響き――これは彼に纏わる一つの異説である……。







「願いを一つ叶える。
 まるで神の力を得ているような言い振りだが、全く……」


373 : 女神が生まれた日 ◆B7YMyBDZCU :2016/05/21(土) 23:26:08 clPS6dUM0


魔神皇の発言の中で目立つ点が複数ある。全てが奇抜な単語で構成されているがまずは願い。
「あの男に出来るなど誰が信じるのか……それに魔神皇、か。
 人間を超えた力を持っているのは間違いないが、到底神には及ばないだろう」
神々を体感した彼だからこそ、その力を知っており、魔神皇が同格であるとは思えない。

「魔力はミッドガルドの人間と比較しても尋常ではないかもしれない。
 しかしそれは世界が違う故に曖昧な判断でしか無い。基準など世界の枠を超えれば役には立ちません」

「悪魔を使役するようですが……それが魔神皇の力なのでしょう。
 なんとも低級な……いや、悪魔だからこそ人間の力を引き出そうとしているのでしょうか」

「彼の右腕……などになるつもりはありません。そのような茶番に付き合う義理も利用も必要もない。
 この儀式の目的さえ興味もありませんが、大方自分一人の力では覆せない現実に抵抗するための駒として選別するのでしょう」

「そこにはエインフェリアの足元に及ばない……魂に対する一切の礼や感情を感じない」

「首輪など何の意味も持たないでしょう。
 爆発されればこの世界の理に則り私は絶命する。
 ならばその前に解析を行い外せばいい……魔神皇の爪が甘ければの話ですが」




「ここまで話した中で貴方は何を思うのですか……悪魔よ」





悪魔。
彼に支給された賢者の石型COMPCから呼ばれた悪魔を見つめる。
けれど――その幼い悪魔は喋らない。



「おかあ……さ……ん」



「ハハハハハハハハ!!!
 何を言うかと思うとえば母親とは……ホムンクルスが情を求めるなど何の笑い話ですか。
 いや……不完全だからこそ、何かを求めるのかもしれませんね」



ホムンクルスの悪魔は多くを語らない。
幼き姿が求めるは母。そして彼が求めるは女神。

殺し合いの中で、魔術師が――レザード・ヴァレスはただ一人、何かを見据えて嗤っていた。

【?????/1日目/朝】



【レザード・ヴァレス@ヴァルキリープロファイル】
[状態]:健康
[装備]:賢者の石型COMP
[道具]:基本支給品、確認済み支給品
[思考・状況]
基本:魔神皇を倒してヴァルキリーを己のものにする。
0:魔神皇の目的には然程興味は無い。
1:帰る。
※原作終了→誤って現世に転移する(東京)→殺し合いに巻きこれました。

[COMP]
1:ラース@鋼の錬金術師
[状態]:健康
[種族]:ホムンクルス
0:???
※言語が不自由です


374 : 女神が生まれた日 ◆B7YMyBDZCU :2016/05/21(土) 23:26:38 clPS6dUM0
投下終了です


375 : ◆MWFdcUN/3c :2016/05/21(土) 23:26:43 75aQ6wl60
投下します


376 : ◆MWFdcUN/3c :2016/05/21(土) 23:27:48 75aQ6wl60
>>370
すみません、お先にどうぞ。その次に投下します


377 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/21(土) 23:28:20 q2z3CFjY0
駆け込み投下が相次いでいます。
23:59:59までにWiki収録を完了させていただきたいので、先にWikiに収録していただいても構いません。
また、投下作品の番号のチェックが有るため、投票開始を00:30よりとさせていただきます。


378 : 新世紀野球黙示録 ◆mcrZqM13eo :2016/05/21(土) 23:29:33 b.SsAx7E0
>>376
ありがとうございます。ではお先に


199X年、世界は核の炎に包まれ無かった!!海は枯れることなく文明はそのままであり、人類の繁栄は続いていた!!
しかし、そんな時代にも修羅は存在した!!海の向こう、アメリカの地で!!


中野ブロードウェイにあるゲームセンター、中野TRFで睨み合う二人の巨漢。

一人はラオウ。世紀末荒野に覇を唱えんとした拳王。
一人はヴァルディス・カーン。ドラゴン・リーグにおいて鬼神と呼ばれた最強の打者。

「…………」
「…………」

クソ狭い中野TRF内のスペースを圧迫するデカ物二人の放つ圧力は、周囲の空間を歪め、壁を床を天井を軋ませていく。

「ウヌが我を呼んだサマナーとやらか」

世紀末の覇者が遠雷の轟を思わせる声で問う。

メジャーの鬼神が鋼の如き声で答える。

「如何にも。我はこの様な事に興じるつもりも暇も無い。死合ねばならぬ相手がいるのだ。あの様な小童など知らぬ」

「殺し合いには乗らぬのか」

「ウヌはやれと言われて、分かりましたと応じるのか」

鬼神の言葉に拳王は愉快そうに笑った。

「確かに。しかしウヌは我が応じると言えばどうするつもりだったのだ」

「ウヌを屠り、殺し合いに乗った輩共を屠り、あの小童を屠る」

「出来るかな」

「試すか」

生じた爆発音。互いの拳が互いの顔に入り、押し出された空気が音速を越えて荒れ狂った。

「「ぬうぅぅおおおおおおおおお!!!」」

放たれる“闘気”が壁を床を天井を押し、遂には中野TRFのあるフロア自体が崩壊した。


「「クククク…フハハハハハハ……ハーハッハッハッハッハッハ!!!」」

瓦礫の中から聞こえる二つの笑声。どうやら意気投合した様だった



【?????/1日目/朝】
【ヴァルディス・カーン@サムライリーガーズ
[状態]:健康
[装備]:COMP:ジェノサイドカノン(重さ120kgの金属バット)型
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:
1.殺し合いには乗らない
2.魔神皇は殺す

[COMP]
1:ラオウ@北斗の拳
[種族]:超人
[状態]:健康


379 : 新世紀野球黙示録 ◆mcrZqM13eo :2016/05/21(土) 23:30:09 b.SsAx7E0
投下を終了します


380 : ◆MWFdcUN/3c :2016/05/21(土) 23:30:22 75aQ6wl60
改めて、投下します


381 : ◆MWFdcUN/3c :2016/05/21(土) 23:31:20 75aQ6wl60

 ニンジャとは、平安時代の日本をカラテによって支配した半神的存在である。
 しかし彼らはキンカク・テンプルで謎のハラキリ儀式を行い、歴史から姿を消した。
 歴史は改竄され、隠蔽され、ニンジャの真実は忘れ去られる。

 しかし! ここに一人のニンジャがいる。名はバンディット。
 暗黒ニンジャ組織「ソウカイ・シンジケート」の一員にして、同シンジケートの最精鋭ニンジャ集団たる「シックスゲイツ」に名を連ねるニンジャだ。
 茶色の忍者装束をまとい、背に刀を差したバンディットは、常人の三倍近い脚力を誇るニンジャである。
 そのバンディットの前には、一人の人間――モータルが佇んでいた。

「ドーモ、バンディットです」

 深々とオジギするバンディット。イクサの前に礼儀を示す行為だ。
 例えこれから殺す相手であっても、アイサツを欠かしてはならない。古事記にもそう書かれている。
 相手はニンジャではない。だが、バンディットにとってただのモータルでもない。
 このモータルは、バンディットを召喚したサマナー……つまり、今のバンディットはニンジャでありながら悪魔なのだ。

「どうした、アイサツもできんのか! 所詮はただのモータルか」

 バンディットは素早く三回側転を打ち、カタナを抜いてサマナーに突きつける。
 サマナーは薄く細めた目でバンディットを見据えるのみで、答えようとも逃げようともしない。
 バンディットはいらただしげに毒づく。ニンジャである自分がただのモータルに使役されるなど、到底許せる話ではない。
 ここは一発、ガツンと力関係を示してやるつもりだった。ニンジャである自分が上位であり、モータルであるサマナーが下なのだと。
 どうやらサマナーはNRS(訳注・ニンジャリアリティショック。非ニンジャの一般人が、伝説上の存在だと思っていたニンジャと接触する事によって発症する精神錯乱。)を発症したらしい。

「恐れで声も出ないか。だが俺は容赦せグワーッ!?」
「時田」
「な、な……何? 今何と言ったんだ?」
「名前を聞いたのではないのですか。だから名乗ったまでです」

 脅しのつもりでずいとカタナを突き出した瞬間、バンディットの顔面に強烈なパンチが叩き込まれる!
 反撃など予想していなかったバンディットにガードできるはずもなくたたらを踏んだ。
 そしてサマナーは名乗った。アイサツ前のアンブッシュは一度だけ許されている。
 であればこの攻撃は決して卑怯なものではなく、避けられなかったバンディットに非があった。

 バンディットはここでようやくサマナーをまじまじと見据えた。
 やや長く伸ばした髪、ノースリーブシャツから覗くしなやかに引き締まった二の腕。その腕には、まるで猛獣の爪で引き裂かれたような痛々しい傷痕が縦に走っている。
 時田伸之助。現役高校生、兼ストリートファイター。通称ランカー狩り。
 ストリートファイターたちのランキングに突如現れ、破竹の勢いでランカーを薙ぎ倒した謎のハンター。それが、バンディットを召喚したサマナーだった。


382 : ◆MWFdcUN/3c :2016/05/21(土) 23:31:51 75aQ6wl60

「と……トキタだと。貴様、モータルの分際でこの俺に!」
「あなたは僕の悪魔、なのでしょう。なら僕に従うのが道理では」
「モータルごときに頭を下げられるものか! イヤーッ!」

 カタナを振り回すバンディット。サマナー――時田は、ふらふらと酔っているかのように身体をよろめかせる。
 腕の一本でも切り落とせば自分が誰を敵に回したか思い知るだろう。そう考えたバンディットの思惑は、一瞬の後に容易く打ち砕かれた。
 空気を裂いて奔る鋼鉄の刃は、風に揺れる木の葉のような時田の体捌きを捉えることはない。そして気がつけば懐に入られていた。

「イヤ……グワーッ! グワーッ! グワーッ! グワーッ! グワーッ! グワーッ! グワーッ!アバーッ!?」

 腹に膝が突き刺さる。顎を拳が打ち抜く。頬に肘、腹に蹴り、側頭部に裏拳、爪先を踏まれ、脇腹に手刀、再び腹に蹴り。
 繰り出したカタナの連撃全てにカウンターを叩き込まれ、バンディットは大きく吹き飛んだ。

「あ……アバッ……な、なんだ、貴様は……ただのモータルではないのか……?」
「あなたを召喚したサマナーです」

 淡々と述べる時田はまったく息を乱してはおらず、ブザマに地面に転がるバンディットを見下ろしている。
 バンディットの背筋に寒気が走る。今の僅かな交錯ではっきりわかってしまった。
 このモータルは、カラテにおいてバンディットの遥か上を行っている……!
 一発一発はさほど重くないパンチだったが、バンディットの攻撃全てに同時にカウンターを合わせることで、巨大な一発のパンチを見舞ったようなものだった。

 これこそが、時田がインドでの修行の果てに開眼した闘技、同撃酔拳。
 既存のセオリーに囚われない創造的な格闘センスと圧倒的な散打を以って、敵の攻撃に対して同時に複数のカウンターを叩き込む絶技であった。
 ダメージで立ち上がれないバンディットに対し、時田は無造作に踏み込んだ。

「ま、待てグワーッ!」

 軽く助走をつけ、空中で一回転し遠心力を乗せた蹴りがバンディットを襲う!
 鼻の骨を文字通り粉微塵に粉砕され、バンディットはいよいよ血反吐を撒き散らしてのたうち回る。
 とどめを刺さんと近づいてくる時田に向かってバンディットは必死に両手を突き出し、止まるようにドゲザする。

「待て! なぜ俺を攻撃する!? 俺はお前の悪魔だ、敵ではない!」
「先に攻撃してきたのはそっちですよ」
「うグッ……あ、あれは違う! 手違い、そうミステイクだ! 俺はお前に逆らうつもりはない!」

 宣告までの尊大な態度から一転、バンディットは血を頭にこすりつけて時田に恭順の意を示した。
 そもそもバンディットは斥候ニンジャだ。カラテに優れているわけでもなく、こうして追い詰められればプライドなど瞬きの間に失せてしまう。

「誓う! 俺はお前の悪魔として全力で働く! だから許してくれ!」
「……よくわかりませんが、戦う気がないのならもういいです」

 時田は怒りや侮蔑、あらゆる感情を見せることなくバンディットから視線を切った。もはや思考する価値など無いというように。
 その無関心に屈辱を覚えるバンディットだが、カラテで上回る相手に不満を述べるわけにも行かない。
 時田の機嫌を損ねないよう、彼に取り入るように卑屈に言葉を選んだ。


383 : ◆MWFdcUN/3c :2016/05/21(土) 23:32:20 75aQ6wl60

「さ、サマナーよ。これからどうするのだ?」
「……まずは誰か探しましょうか。出会った人を全員倒していけば、あの魔神皇という男に辿り着くでしょう」
「アイエッ!? 全員倒すだと!?」

 やはり淡々と恐るべき方針を述べる時田。
 出会ったものを全員倒すということは、彼の従者たるバンディットもまた、熾烈なイクサへ突き進むを意味している。
 これではまったく助かっていない。暗澹たる心持ちでバンディットは主に問う。

「な、何故そんな困難な真似を?」
「何故……?」

 ここに来てようやく、ともすれば眠たげに細められていた時田の瞳が鋭く絞られる。
 まるで目の前の宿敵を睨みつけているように。

「こんなことをしている暇なんてないんです。僕はマキさんを壊さないとならない……」

 ぼそりと呟かれた言葉、後半部分はバンディットの耳には届かない。
 魔神皇の言葉になど一切興味が無い。ただ、己の道を邪魔された苛立ちだけがある。
 敵意でも殺意でもない虚無。暗く冷たい執着こそが、時田を突き動かすただ一つの想い。
 生死の狭間で見出した一つの真理。


 人を愛さず死すもまた一局。それもまた人間の世の勝者なり。


 かつて憧れた女の影を求め、時田伸之助は闘争の渦に身を投じる。
 望み得た力と意志で、愛した者を壊すために。


【?????/1日目/朝】

【時田伸之助@エアマスター】
[状態]:健康
[装備]:ガラケー型COMP
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:相川摩季=エアマスターを探し、壊す。いないのなら速やかに殺し合いから脱出する。
[状態]:健康
[COMP]
1:バンディット@ニンジャスレイヤー
[種族]:ニンジャ
[状態]:爆発四散寸前


384 : ◆MWFdcUN/3c :2016/05/21(土) 23:32:39 75aQ6wl60
投下終了です


385 : ◆NLIMDCA4Nk :2016/05/21(土) 23:33:16 ZoxUTgGY0
投下します


386 : ◆Mti19lYchg :2016/05/21(土) 23:33:25 WhpiXF9c0
投下します。


387 : ◆NLIMDCA4Nk :2016/05/21(土) 23:33:33 ZoxUTgGY0
 何処までも続く都会のビルの谷間、一歩を踏み出すほどに言い知れぬ居心地の悪さが沸き起こるのを、ケンシロウは感じた。
 踏みしめたアスファルトには、亀裂一つ見当たらない。ビルの窓ガラスはどれも手入れが行き届いて、眩しいくらいに陽の光を反射している。
 記憶の中に確かに残る、まだ世界が平和だった頃の街中を。とうに荒廃してしまった大地に生きる、全身に戦いの臭いをこびりつかせた大男が歩く。
 かつてはこの街の中を歩くこともあった筈だ。だけれども、そう何十年も前の記憶ではない筈のそれは、思い出そうとしても遥か忘却の彼方にあるように思う。
 率直に言って――今となっては、まるで異世界に来てしまったかのような場違いさをケンシロウは感じていた。
 現に、たった一枚、ケンシロウの皮膚を包むのはぴったりと筋肉に張り付いた皮のジャケットのみ。肩には鋼鉄のパッド、腕には特に意味もない包帯まで巻いてしまっているのだ。あの時代、平和な街並みの何処を探しても、こんな剣呑な大男は居なかった。

 ひとしきり歩いて、ケンシロウは理解した。理解せざるを得なかった。
 此処は、確かにケンシロウの見知った世界だ。核の炎に包まれてしまう前に暮らしていた、平和だった頃の東京の街か、もしくはそれに限りなく近い何処かの街だ。
 ひょっとすると、ケンシロウの知らぬどこかの街では、復興がすすんでこんなふうに平和な街の様相を取り戻しているのかもしれない。
 ともあれ、それについてこれ以上考えることは無意味だ。
 この場所が何処であれ、自分がいつの間にか魔神皇と名乗った男に連れさらわれ、この場所に連れて来られてしまった事に違いはない。

 ケンシロウは、罪のない命を奪う悪事を、決して許さない。
 あの魔神皇がやった行為は、人の道に反した、外道の所業だ。これ以上、罪のない命を散らせる訳にはいかない。
 この場における北斗神拳とは、力なき者を守り、命を奪おうとする者を倒すための武器である。己の欲望のために他社の血肉を啜ろうとする悪鬼は、この拳で砕くのみ。
 決意を新たに、拳をぐ、と握り込んだ時――ケンシロウの拳を包むグローブが、眩い輝きを放った。

「ム!」

 溢れ出した光が、ケンシロウの視界を埋め尽くす。思わず目を背けるケンシロウであったが、その輝きの中にあってなお、咄嗟に構えた拳法の構えに隙はない。
 次の瞬間、光の中に人影を見た。人影は既に随分とケンシロウのそばにまで接近している。
 寸止めでいい。牽制の意味も込めて、覚束ない視界の中、それでも確かに感じる気配に向かってケンシロウは拳を突き出した。

「コォォォォォォォォォ――」
「……!」

 ケンシロウの拳を包んだのは、僅かな痺れとともに感じる、奇妙な温かさ。
 何処か陽光を連想させるその温かな熱は、ケンシロウに反撃をするでもなく、ただそっと、ケンシロウの拳を包み、受け止めていた。
 完全に光が晴れた時、そこにいたのは――

「……きみが、ぼくを召喚したんだね」

 穏やかな声。
 ケンシロウよりは些か身長は低いものの、常人と比べれば十分巨漢の中に入るであろう。その鍛えぬかれた肉体は、ケンシロウに勝るとも劣らない。
 黒い髪に、太く雄々しい眉毛は、むしろケンシロウとよく似ているとすら思われた。いや、顔どころか、身に纏った闘争の空気までもが、ケンシロウとよく似ている。

「お前が、俺の悪魔とやらか」
「ああ……悪魔というには少し想像と違っていたかもしれないけどね」

 男は、一歩身を引いて寸前までケンシロウの拳を受け止めていたその掌を差し伸べた。敵意は感じられなかった。
 故にこそ、ケンシロウは男の思いに応えるべく、その手を取った。

「ぼくの名前は……ジョナサン・ジョースターッ! 波紋使いさ」

 互いにグローブ越しの握手ではあるが、僅かな熱を感じる。悪意のない、優しい熱だ。
 元斗皇拳のファルコが放つそれと何処か似ているその感覚こそが、ケンシロウが初めて経験する波紋の熱だった。

 
【ケンシロウ@北斗の拳】
[状態]:健康
[装備]:アインの形見のグローブ型COMP
[道具]:基本支給品、確認済み支給品
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない。

[COMP]
1:ジョナサン・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険Part1 ファントムブラッド
[種族]:波紋使い
[状態]:健康


388 : ◆Mti19lYchg :2016/05/21(土) 23:33:40 WhpiXF9c0
お先にどうぞ。


389 : ◆NLIMDCA4Nk :2016/05/21(土) 23:33:51 ZoxUTgGY0
投下終了です


390 : ◆NLIMDCA4Nk :2016/05/21(土) 23:34:58 ZoxUTgGY0
>>388
ありがとうございました。投下終了しましたので、次どうぞ!


391 : ◆Mti19lYchg :2016/05/21(土) 23:36:11 WhpiXF9c0
では投下します。


392 : ◆Mti19lYchg :2016/05/21(土) 23:36:49 WhpiXF9c0
 土方護が周囲を見渡すと、そこは公園らしき場所だった。
 らしき、というのは彼の目に映る光景は、黒の背景に白いワイヤーフレームで構成された世界だからだ。
 闇夜にサングラスをかけ、さらに頬まで残る傷痕から彼が盲目であることは明白だが、護が健常者のように『見える』のはかけているサングラスに秘密がある。
 このサングラス型のデバイスは、サングラスから発する超音波の反響を解析し、3Dのワイヤーフレーム映像にして網膜に直接投射する最新鋭の視覚障碍者用補助システムなのだ。

「井川……聞こえるか。聞こえるなら応答しろ」
 護はサングラスの調整を担当する、仕事のパートナーである井川に通信を試みたが返答はなく、三度続けたがやはり返事は無かった。
『通信は制限されてるか。当然だな』
 これからどうすべきか。考え始めた瞬間、護は背後に殺気を感じ、前方に飛びのいた。
 突然振り下ろされたゴズキの斧を躱したのは、護の並々ならぬ剣の修練の成果だ。
 だが、続けざまに襲い掛かってきたガルムの体当たりはかわせず、衝突の寸前背後に飛んだ勢いもあり10m近く吹き飛ばされ、木にぶち当たる。
 肺から空気が一気に押し出され、護はうめき声をあげた。
「カハッ……ハァ、ハァ、こいつらが悪魔ってやつか……」
 地面に尻を付けた護を、悪魔たちは遠巻きにして囲い込んだ。辺りに忍び笑いの声が響く。
『なぶり殺しにする気か……流石悪魔だ、趣味が悪いぜ』
 護は背の痛みと悪魔の嘲笑で渋面になった。
『死ぬのは常に覚悟しているが、くたばる前に戦うための獲物が欲しいな……。贅沢は言わんから、鉈でも棒でもいい……』
 そう思いながら悪魔たちを確認していると、視界の隅に見慣れぬアプリの表示があった。
『悪魔召喚プログラム……?』
 それを見て護はこの場に呼び出された時、初めに遭った男の言葉を思い出した。『君たちの"友"となりうる悪魔を封じ込めておいた』という事を。
 瞬時に護は悪魔を召喚することを決めた。
 この場で悪魔になぶり殺しにされるも、召喚した悪魔に殺されようとも同じ事だ。

「悪魔召喚プログラム、実行」
 護の音声入力に反応し、続いて画面に『悪魔を召喚しますか?』『YES』『NO』の選択肢が表示された。
「yes」
 躊躇いなく選択する。鈍色の光が輝いた後、護の手には剣が握られていた。
 拵えはまるで中東の曲刀の様な姿。鞘から推し量れる刀身はまるで日本刀のような長さと反りだ。
「何故刀が召喚されたのか分からんが、ありがたいぜ」
 護は立ち上がり刀を抜き放った。

『……俺を召喚したサマナーよ……お前の名は何という?』
 どこからともなく護の耳、否、脳や精神に直接響くかの様な声が聞こえてきた。
「……俺は土方――土方護だ」
 響く声に、思わず頭を押さえうつむきながら、護は答える。
『俺の名は『アヌビス神』。冥府の神、墓地の守護神を暗示するカードのスタンド!
 お前は私を抜いた。
 お前が本体だ。
 お前は達人になった。
 お前は誰よりも強い。
 ――わたしを使って殺すのだ!』

 首を上げた護は、悪魔も一瞬たじろぐほど殺気に満ちた笑みを浮かべていた。


393 : ◆Mti19lYchg :2016/05/21(土) 23:37:28 WhpiXF9c0
 空中から襲い掛かるスパルナに5mという人間の限界を超えた跳躍で接近し、左切上げで両断。
 落下を待ち受けていたガルムを着地の寸前、袈裟掛けに切り裂いた。

――タイ捨流 逆握――

 続いてオーガに向かい、剣を振るう。 
 オーガが鉈で受け止めた瞬間、オーガの視界から護が消えた。
 護はオーガの死角となる右脇の下を潜り抜け、右手で顔の涎を拭く様な動きをしながら斬撃を放ち、オーガの左肩から右わきまでを切断。

――駒川改心流 涎賺――

 ゴズキ、メズキが左右から襲い掛かるが、護は右側のゴズキに対し刀を振るい牽制。
 右足を右前に踏み出し、左から振るわれたメズキの剣を交わしつつ眉間に刀を突き刺し。
 そのままの足踏みで右に旋回。刀を振りおろし、ゴズキの頭をかち割った。

――夢想神伝流 連達――

 ケットシーが真っ向から放った斬り下ろしを、遅れて上段からの打ち降ろし。
 剣と剣が交差する瞬間、ケットシーの剣が弾かれ、護に当たるはずの軌道が逸れる。
 逆に護の刀はそのままケットシーの頭蓋に叩きこまれた。

――真壁派一刀流 太刀削ぎ――

 その他バジリスク、バフォメット等十数体の悪魔を屠り、周囲に悪魔の気配が消えた事を感じた護は剣を鞘に納める。
 残心で呼吸を整える護の背後より、半人半犬の姿をしたヴィジョンが現れた。

「フフフ……いいぞ、土方護。流石は元より剣の達人、我が力を引き出すのにお前は最高の器だ」
 悪霊「アヌビス神」は、護に向かい、笑いかける。
「お前の剣技に俺の力が加われば何者だろうと敵ではない! 悪魔を殺せ! サマナーをブッた斬れ! 魔神皇を真っ二つにしろ! お前は誰よりも強い、何でも斬れる!」
 興奮した声で語りかけるアヌビス神に対し、護は首だけを振り向き、アヌビス神に対し冷たく言葉を投げかけた。
「俺が振るわなければ自力で動けないくせに喧しいぞ。鎖で縛って東京湾に沈めてやろうか?」
 一瞬単なる脅しかと思いアヌビス神はタカをくくったが、護の声色が本気である事に気づき、身体が震えた。
「ヒ、ヒィッ! やめてくれ! もう水の中で錆びるのを待つのは嫌だ!
 だ、大体俺が力を貸さないとお前は悪魔とは戦えないんだぞ!? いいのかよ!?」
「別に。元々俺は武器に頼るタチじゃない。死力を尽くして敗れるなら俺の技が届かなかっただけの話だ。
 お前に言われずとも俺は襲い掛かる悪魔やサマナーには容赦しないし、最後には魔神皇とか名乗る餓鬼を斬る。そして忘れるなよ、お前がその力を存分に使えるのは現状俺しかいない事をな」
 そう言って護は前を向き歩き出した。
「わ、分かった。しかし……何でお前は俺に操られていないんだ?」
「そんな事、俺が知るか」

 両者とも知らない事であるが、分霊による精神支配の弱体化、COMPを使用した間接的な召喚、そして何より土方護の剣に対する異常な執着心が彼の自我を保つ要因となっていた。
 この両者の関係は、人間に悪魔が憑依する『ガーディアン』と呼ばれる形態に酷似していた。


394 : ◆Mti19lYchg :2016/05/21(土) 23:37:45 WhpiXF9c0
「俺はお前の精神を支配しようとしたんだが……本当に何の影響もないのか?」
「いや、割と影響はあるぜ。お前の能力の使い方は分かるし、好戦的になっている自分を感じる」
 護はアヌビス神と会話しながら、地面に落ちていたデイバックを拾い上げた。
「あの魔神皇とかいう餓鬼に手前勝手に呼び出され殺しあえというのは腹が立つが、そんな事は割とどうでもいい事と思えてくる。
 元々俺が求めているのは俺の修めた剣技を使える『戦場』と『理由』だからな」
「俺が言うのもなんだが随分と身勝手な奴だ」
「自ら望んだ道だ。恨みを買い途中でくたばる程度の覚悟は必要だろう。俺は『手段』のためなら『目的』は選ばんからな」
「まあ、お前が殺る気なら問題ない。お前が俺を操れば絶対に絶対に絶対に絶っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜対に!!」
「うるせえ」
「マゲェッ!?」
 護は刀の柄でアヌビス神の鼻をこづいた。

【土方護@死が二人を分かつまで)】
[状態]:健康
[装備]:サングラス型COMP、アヌビス神
[道具]:基本支給品、未確認支給品
[思考・状況]
基本思考:この『戦場』と『戦う理由』が存在するなら戦うだけだ。
1:最終的には首輪を外し、魔神皇とやらを斬る。
2:戦う覚悟も術もない餓鬼に興味は無い。悪魔を仕掛けてくるなら話は別だが。
[備考]元々かけていた視覚障害者用サングラス型デバイスのメモリに、COMPのアプリがインストールされています。
[COMP]
1:アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険
[種族]:悪霊
[状態]:健康
[備考]:刀の状態で召喚されます。スタンドのヴィジョンはアヌビス神自身が出現しようとしない限り見えません。
※使い手の精神を乗っ取る能力が弱体化しています。相性の良い人間の場合、使い手の自我は保たれます。


395 : ◆Mti19lYchg :2016/05/21(土) 23:37:56 WhpiXF9c0
投下終了です。


396 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/21(土) 23:38:56 q2z3CFjY0
皆様投下乙です。
一覧更新も大事ですが、予想外の駆け込みラッシュなので、
先に作品ページだけ作っておいてください。
一覧はこちらで最終的に調整します。
作品ページが23:59:59までに作成されたページを対象とします。

私も13作陶家します。


397 : 逆境 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/21(土) 23:39:14 q2z3CFjY0
 弁護士、成歩堂龍一。
 そのまま審理すれば有罪が確定といった冤罪事件を、いくつも"逆転"してきた、敏腕弁護士である。
 証拠収集能力もさながら、いざといった時の発想の逆転は、弁護士界隈でも有名であった。
 しかし、今回彼が立たされたのは、法廷ではない。
 人と人が殺し合うという、信じられないような惨劇の舞台であった。
 不運なことに巻き込まれるのは慣れっこだと思っていたが、さすがにこのスケールは予想外だった。
 はあ、とため息をもらしつつ、落ち込んでいても仕方がないと、考えられる事を考え始める。
 この行為が"犯罪"であることは言わずもがなだ。
 しかし、魔神皇の行動にある"矛盾"が、彼はどうしても気になっていた。
 これだけ大人数を一度に誘拐しておきながら、その目的が身代金ではないこと。
 人一人を簡単に殺せるだけの力を持っているのに、わざわざ誘拐した人間に殺し合いを命じたこと。
 そして、この首輪。
 まるで、これを解除して刃向かってこいと言わんばかりのモノ。
 要求と言動、かみ合うようでかみ合わないそれに、違和感を拭いきることができない。

「う〜〜ん、それを考えるには、今は証拠が足りなさすぎるか……」

 だが、手元にある"証拠"はゼロに等しい。
 証拠がなければ、矛盾だという事も証明できない。
 生き抜くことは当然のことだが、証拠を集めることも重要だ。
 犯罪を犯罪として、そして"矛盾"を解明するために。

「でも、どうする……」

 やるべきことは決まった。
 しかし、一介の人間にしか過ぎない自分に、何ができるのだろうか。
 戦えるわけでもない、超能力があるわけでもない、突然襲われてぽっくり死んでしまうかもしれない。
 不安なことはいくらでも思いつくし、キリがない。
 けれど、そんな絶体絶命のピンチだからこそ。

「弁護士は、ふてぶてしく笑う」

 気がつけば出ていた言葉と共に、成歩堂は笑う。
 そして、決意とともに弁護士バッヂをぎゅっと握りしめた、その時だ。

「あれ? お兄さんが、"さまなあ"?」

 ふと聞こえた声の方へ振り向けば、そこには民族衣装に身を纏った、一人の少女が立っていた。
 年は……真宵ちゃんと変わらないくらいだろうか。
 そんな幼さが残る彼女は、満面の笑みで、手を差し出してきた。

「えへへ、私。リムルルだよ。この子はコンル。よろしくね!」

 彼女が、自分に遣わされた"悪魔"だと、成歩堂が理解するのは、少し後のことである。

【?????/1日目/朝】
【成歩堂龍一@逆転裁判シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:COMP(型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:"逆転"する。
[備考]

[COMP]
1:リムルル@サムライスピリッツ
[種族]:人間
[状態]:健康


398 : 挨拶 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/21(土) 23:39:28 q2z3CFjY0
「よもや、こんなコトに巻き込まれるとは……」

 予想外にも、程がある。
 男、御剣怜侍の正直な感想は、それだった。
 目覚めてみればどこともわからない場所に連れてこられ、殺し合いを命じられた。
 更にそれだけでは飽きたらず、目の前で少年少女をあっさりと殺して見せた。
 躊躇いなど微塵も見られない、外道の所業。

「検事として……見過ごすわけにはイカンが……」

 もちろん、それを見過ごす訳にはいかない。
 正義の警察官ではないが、犯した罪は然るべき手段で償ってもらわなくてはならない。
 だが、この場にいる限りは、検挙どころの話ではない。
 まずは、この状況から抜け出すことが何よりも大事だ。
 ふと、そこで袋から何かを取り出す。
 それは、チェスの駒。そのうちの一つ、キング。
 今、自分の身を守るものは何もない。
 この身ひとつ、そう、チェスで言えばそれこそキング一つで、相手をチェックしなければいけない。
 だが、チェスと違うのは「これから仲間を集える」というコト。
 この殺し合いを良しとしない人間は、自分以外にもいるはずだ。
 同じ志の人間を集めて力を合わせれば、対抗策は見つかるはずだ。

「……逆転、か」

 呟いた言葉と共に思い出すのは、親友の姿。
 どれだけの苦難を味わっても、決して諦めることなく、不死鳥のように蘇り続けた、あの男の姿。
 自分も、あの男のように逆転できるだろうか?

「ん……?」

 そんなことを思っていた時、御剣は一つの違和感に気がつく。
 足元の辺りでちょこちょこと走り回っている、小さな影。
 ふと、気になったそれへと、視線を落とす。

「はむはー!」

 そこにいたのは、一匹のハムスターだった。

【?????/1日目/朝】
【御剣怜侍@逆転裁判シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:COMP(チェスのキング型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:検察としてこの状況に対応する
[COMP]
1:ハム太郎@とっとこハム太郎
[種族]:魔獣
[状態]:健康


399 : 完璧 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/21(土) 23:39:47 q2z3CFjY0
「それで、君は本気で魔神皇を捕まえようと思ってるの?」

 都会の道路の上、一人の男が語りかける。
 彼の名は浅葱、青の王として名を馳せた、一人の男だ。
 今は、隣を歩く女、狩魔冥に呼び出された"悪魔"としてこの場に呼び出されている。
 彼女は浅葱を呼びだすやいなや、魔神皇への怒りと、その志を彼にこんこんと語りだした。
 初めは冗談かと思っていたが、話を聞くうちに冗談ではないと思ったところで、浅葱の方から問いかけなおしていく。

「当然よ、このような犯罪行為、見過ごすわけにはいかないわ」

 返事は即答。その目に曇りはなく、まっすぐに浅葱を見つめている。

「狩魔の人間は完璧を以って良しとする……この場においても、それは変わらないわ。
 だから私は、あの少年の犯罪を完璧に立証し、法の下で裁く。それだけよ」

 自分の中にある、明確な心。
 守るべきことと貫くべきことは、分かっている。
 後はそれを成すのみである、それだけだ。

「ふぅん……まあ、志が高いことはいいことだけど」

 一筋縄では折れそうにないその姿に、似ても似つかない姿を重ねながら、浅葱は老婆心からか、一つ忠告をする。

「一度こうやって拉致されて、あまつさえ命まで握られてる相手が、そうおとなしくしてくれると思う?」

 そう、狩魔冥は一度"敗北"しているのだ。
 見てくれこそ少年だが、その身にはとても人間とは思えない力が宿されている。
 そして、自分は今、その存在に生命を握られている。
 そんな存在に歯向かうということがどういうことなのかは、重々分かっている。

「分かっている……分かっているからこそ、私がやるのよ」

 だからといって、引くわけにはいかない。
 二度の敗北など、許されるわけもない。
 何より、掴んでいる真実を手から離すわけにもいかない。

「そ、甘いこと言うのは自由だけど。一応忠告はしたからね?」

 全く無鉄砲な人間だ、と浅葱はそう思う。
 そういうところまでよく似ているな、と思ってしまうのは、なぜなのだろうか。
 口調も、見た目も、まるで似ていないはずなのに。

「ま、精々僕は僕なりに働かせてもらうよ」

 そんな可能性をそこそこに切り上げて、浅葱は刀を構えつつ、冥へと語る。
 しばらく前線に立つのは、自分だ。
 精々彼女の願いを叶えるために、頑張るとしよう。

【?????/1日目/朝】
【狩魔冥@逆転裁判シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:COMP(型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:魔神皇を完璧に検挙する
[COMP]
1:浅葱@BASARA
[種族]:人間
[状態]:健康


400 : 片腕 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/21(土) 23:40:01 q2z3CFjY0
「殺し合い、か……」

 丸いサングラスを掛けた、一人の男は、空を見上げてため息を付く。
 それから、ゆっくりと視線を下に落とし、にやり、と笑う。
 男の名は、ワイルド・ドッグ。世界的に有名な、凶悪犯罪者だ。
 そんな彼もまた、今は魔神皇の手によって殺し合いを命じられたうちの一人だ。
 だが、彼は笑みを崩さない。
 なぜなら、これは願ってもないチャンスだからだ。
 これだけのことを成し遂げられる強力な力を持っている人間が、まさか向こうから「手下にする」という条件を出してくれた。
 その上、彼は願いを一つ叶えてくれるといった。
 あの忌まわしきVSSEも、彼の手にかかればひとたまりもないだろう。
 そして、自分はその右腕として働く。

「完璧だな……」

 まるで、自分のためだけに用意されたと言っても過言ではない。
 その舞台の上で、自分はただ踊り狂うように人を殺し、最後の一人になる。
 いつもどおりの、造作もないことをする、それだけでいいのだ。

「行くぞ」

 そして彼は、ゆっくりと歩き出す。
 彼が呼び出した、一台の戦車と共に。
 彼の野望と、悲願を叶えるための道へと。

【?????/1日目/朝】
【ワイルド・ドッグ@タイムクライシスシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:COMP(型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:優勝し、魔神皇に仕える
[COMP]
1:ダイダロス@メタルマックス2リローデット
[種族]:戦車
[状態]:健康


401 : 機巧 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/21(土) 23:40:16 q2z3CFjY0
「ふむ……これはまた、奇妙なことに巻き込まれたな……」

 顔を布で隠した、一風変わった装束の男、トキオ。
 戦乱の世から続く、忍者の末裔の一人だ。
 とはいえ、現代ともなれば忍者として表に出ることは少なく、彼がそうであるということを知る人間は少ない。
 というのに、この場に呼び出された彼は、わざわざ「仕事着」で呼び出された。
 一体、魔神皇というあの少年は何を狙っているのだろうか。

「ともかく、人殺しか……」

 目的はどうあれ、魔神皇は殺し合いを自分たちに命じた。
 自分一人で殺戮を繰り広げられる力があるにもかかわらず、だ。
 その意図は、今になっても全く読めない。
 いや、意図が読めていたとしても、それを請け負う理由はない。
 罪もない人を殺すことなど、できるはずも無いからだ。

「とは言え、例外はあるな……」

 だが、そうも言っていられない状況というのは、確実に存在する。
 例えば、自分、ないし誰かを襲ってくる人間がいれば、自分の身を守らざるを得ない。
 そう、最低限の防衛は心がけておくべきだ。
 幸い、手には一本の刀がある。
 万が一の事になっても、なんとか対応することはできるだろう。

「……フンッ!!」

 準備運動を兼ねて、軽めに刀を振るう。
 先代から受け継がれてきた技術、一度の攻撃で、二度刀を振るう。
 まるで分身しているかのように繰り出されるそれは、今日も鋭さを誇っている。
 その手応えを確かめ、ひとまず呼吸を落ち着けようとした、その時だ。

「やはやは、天晴天晴、見事な太刀筋でおちゃった」

 聞き慣れない声に後ろを振り向いてみると、そこにいたのは一台の機巧。
 人の姿は見えない、となれば目の前の機巧が喋っている他ならない。
 トキオは警戒心を強めながら、刀を握る力を込め、一歩後ろに下がる。

「まてまて、まろは機巧おちゃ麻呂、そなたの"あくま"ちゃ」

 警戒されていることを察した機巧は、攻撃されてはかなわないと、自らその正体を明かしていく。
 悪魔、そういえばそんなことを言っていた、とトキオは魔神皇の言葉を思い出す。
 どうやら、この刀がCOMPと呼ばれるものらしい。
 すっ、と刀を引き、トキオは機巧に一礼をする。

「ふむ、わかってくれればよいのちゃ。しかしそちの太刀筋、まろは知っておるぞ。
 よもや、また相見えることになろうとは、思ってもいなかったのちゃ」

 それから飛び出したのは、少しだけ予想外の言葉だった。
 見てくれをみれば、おそらく戦国、初代の頃の話だろう。
 ともかく、自分の流派を知っている人間ならば、話が早い。

「俺はトキオだ、よろしく頼む」
「ほほほ、こちらこそ、よろしく頼むぞ〜」

 挨拶を経て、二人は動き出す。
 悪しきものを、払うために。

【?????/1日目/朝】
【トキオ@ミスティックアーク】
[状態]:健康
[装備]:COMP(刀型)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない
[COMP]
1:機巧おちゃ麻呂@サムライスピリッツシリーズ
[種族]:マシン
[状態]:健康


402 : 占術 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/21(土) 23:40:30 q2z3CFjY0
「まさか、こんなことに招かれるなんてね」

 ふう、と溜息をつきながら、テラスに腰掛ける一人の女声。
 黒のドレスに褐色の肌の彼女の名は、ミレーネ。
 ある国の中心地で、占いで生計を立てている占い師だ。
 彼女がため息を付いているのは、他でもない。
 あの魔神皇という少年によって開かれた、この殺し合いについてだ。
 不運の言葉で片付けてしまえば、それまでだ。
 だが、それだけではない、もっと別の"何か"を、彼女は感じ取っていた。
 それがなんなのかは、分からない。
 だから、彼女は本業である占いで、その正体を探ることにした。

 テーブルの中央に置くのは、カードの束。
 一つ心に念じながら、そのカードを無心で混ぜていく。
 そして、しばらくした後、それを一つ束に戻し、目を瞑りながら、一番上のカードを裏返す。
 その時、カードの束から光が放たれ、何かが呼び出されていいくのが分かった。
 これが、魔神皇の言っていた"悪魔"か、と思いながら、彼女はその光をじっくりと見つめた。

「ククク、私を呼び出したのは貴様か」

 程なくして、聞こえたのは男の声。

「さあ、破壊神様を呼び出すための贄を狩りつくそうではないか!!」

 光とともに現れたのは、法衣に身を包んだ、人のようで人ではない、一人の男。
 それは、ある世界を破滅に巻き込もうとした、破壊神を信ずる狂徒の長たる男だった。
 その姿を見て、ミレーネは大きく溜息をつく。

「カードに偽りなし、か……」

 めくった一枚のカード、そこに描かれていたのは。

 正位置の、塔のカードだった。

【?????/1日目/朝】
【ミレーネ@ミスティックアーク】
[状態]:健康
[装備]:COMP(タロットカード型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:最悪……
[COMP]
1:ハーゴン@ドラゴンクエスト2
[種族]:魔神
[状態]:健康


403 : 混乱 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/21(土) 23:40:49 q2z3CFjY0
 横暴だ。
 正直な感想は、それだった。
 何人もの人を集め、そのうちの二人の命を奪い、そして殺し合いを命じる。
 これは、どんな理由があったにしても許されることではない。
 当然、誰かを殺すつもりなんて、これっぽちもなかった。

 ふと、そこで考える。
 ならば、自分はこの場所で一体"何"をする為に生きているのか。
 魔神皇を止める? 人殺しをする人を止める? 傷ついた人々を癒やす?
 それは、何のために?
 一体、誰のため?

 昔のことを、思い出す。
 彼女のもともとの生まれは、古くから魔術の研究で名を馳せていた名家の生まれ。
 しかし、その魔術研究は、目先の"名誉"の為に行われていた。
 人を救うとか、世の中を良くするとかではなく、ただ、いい顔をするためだけに、魔術研究は行われていたのだ。
 それを知ってしまった彼女は、家を捨て、世界へと飛び出していった。

 そこで、自分に問う。
 自分は、ここで何をして、どう動くのか。
 はっきりとはわからない、けれど。
 自分のためだけに生きていくことだけは、しないと誓える。
 自分が捨てたはずのことを、自分で拾う訳にはいかないから。

「……神よ、どうかご加護を」

 十字架を握り、神へと祈りを捧げる。
 今から進む道には、厳しい試練が待ち受けているだろう。
 せめて、その姿を神に暖かく見守ってほしい。

 そう思って、祈りを捧げていた。

「のわぁーーーーっ!!」

 その時だった。
 声とともに、どこからともなく一人の男が現れた。
 がしゃんと大きな音を立てつつ、派手に木製の椅子を壊した後に、頭をさすりながらゆっくりと起き上がっていく。

「いっててて……」
「あ、あの……」

 隠し切れない驚きを抱えながら、彼女は現れた男へと話しかける。
 はねた金髪と、少し派手目の衣装を身にまとった青年は、声をかけられたことに驚きながらも、彼女の顔をじっと見つめる。

「大丈夫、ですか?」
「えっ、あ、ああ、大丈夫、だよ……」

 互いにしどろもどろになり、あれじゃないこれじゃないと身振り手振りで何かを伝えようとする。
 それが更に混乱を招き、動きを余計に広げ、更に混乱を招く。
 無限とも思えるループを繰り返していたが、ふとしたきっかけに落ち着きを取り戻していく。
 それから二人は、微妙な距離感を保ちつつ、何から話したもんかと悩んでいた。

「俺、ティーダ。えっと……悪魔、になんのかな」
「あっ、そうですか……私は、メイファといいます」

 先に口を開いたのは少年、ティーダの方だった。
 それに合わせて、少女、メイファも自己紹介を行う。
 そして、沈黙。再び、何から話したものかと、沈黙が続く。

「えと、悪魔、ということは……?」
「あー、その、ほら、どこから喋ったもんかな……」

 ようやく見つけた会話の種、それはそもそもの疑問。
 なぜ、人間にしか見えない者が、悪魔と呼ばれているのか。
 それを説明するのは、とても時間がかかりそうだった。

 少なくとも、彼の口から説明するには、おそらく半日はかかりそうだろう。

【?????/1日目/朝】
【メイファ@ミスティックアーク】
[状態]:健康
[装備]:COMP(十字架型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:
[COMP]
1:ティーダ@FINAL FANTASY10
[種族]:幻人
[状態]:健康


404 : 黒子 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/21(土) 23:41:02 q2z3CFjY0
「あー!! もう!! 何よあのモヤシ太郎!」

 東京の街の中、元気よく怒りを叫ぶ、辮髪のひとりの少女。
 ある国の草原の民の族長の娘、リーシャインだ。
 怒っているのはもはや言うまでもない、魔神皇に対してだ。
 自由奔放に生きることを何よりも大事にしている彼女は、縛られることを何よりも嫌う。
 ましてや、誰かに命令されることなんて、もってのほかだ。

 首に手を伸ばし、そこに付けられた冷たい金属に触れる。
 自由になりたい、好き勝手に生きていきたい。
 たったそれだけの願いを阻む、忌々しいモノ。
 自分の命を握り、自由を奪っているモノ。
 その存在が、何よりも許せなかった。

「これ、早く何とかしないと」

 何よりも先に、それをどうにかしたかった。
 何かないか、と傍にあった袋を探してみる。
 だが、首輪をどうにか出来そうな道具はなく、そもそもあったとしても、それを使うだけの知識は自分にはない。
 どうしたものか、と思いながら、ひとまず取り出した腕輪をじっと眺めていた、その時だった。

「やあやあこれはお嬢さん、どうにもこうにもはじめまして」

 全く気配を表すことなく、一人の人間が彼女の真横に立っていた。
 驚きながらも瞬時に飛び退き、戦いの構えを取っていく。
 殺し合い、その場において"人間"がどう動くのかは、考えるまでもない。

「いやいや、お待ち下さい。私は敵ではありません。というより、貴方の味方に近いです」

 現れた男も、それを分かっているのか、慌てて両手を振って抵抗の意志が無いことを示す。
 沈黙。じっと重い空気が、続く。
 まだファイティングポーズを解かないリーシャインと、それをじっと見つめている、黒尽くめの男。
 時が、少し経つ。

「ホントに?」
「ええ、ホントです。私、貴方に呼び出されました、悪魔ですから」

 疑いの一言に、男は怖じることもなく答えていく。
 その表情は、黒に遮られて伺うことは出来ない。
 だが、男が嘘をついていないのは、なんとなくわかった。
 それを察したリーシャインは、ゆっくりと手を下げる。

「えと、悪……魔さん?」
「ええ、面倒ですし、黒子とお呼びください」

 初めの会話はそれまで。
 それからゆっくりと、少女と男の会話は、少しずつ進み始めた。

【?????/1日目/朝】
【リーシャイン@ミスティックアーク】
[状態]:健康
[装備]:COMP(腕輪型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:
[COMP]
1:黒子@サムライスピリッツシリーズ
[種族]:
[状態]:健康


405 : 猛毒 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/21(土) 23:41:16 q2z3CFjY0
「これから殺し合いをしてもらう」

 ぽつり、と呟いた言葉。
 それは、つい先程告げられた言葉。
 この場にいる人間全てを殺し、ただ一人残った人間のみが、生き延びることを許される、地獄。
 幾つもの命と引き換えに得られるのは、望みを一つ叶えるという話。
 あまりにも都合が良すぎる幻想だと、誰もか言うだろう。

「でも……」

 けれど、彼女にとっては、それは僅かな希望であった。
 なんでも願いが叶う、それがもし本当ならば。
 父と兄は、殺しあわずに済むのかもしれない。
 それを考えると、幻想だと捨てきれなくなってしまう。
 叶わないと思った、願い。
 それが叶うのならば、それよりも嬉しいことはない。

 そうか、と気がつく。
 この身に刻んだ毒は、この日のために刻み込んだのかもしれない。
 彼女に触れる全ては、人間を殺す猛毒と化す。
 皮膚はもちろん、吐息も、涙も、何もかも。
 人に触れることすら叶わなくなった代わりに、叶うことのない願いを手にできるのだとしたら。

「……兄上、父上、私の罪を、お許し下さい」

 一つ、涙をこぼす。
 それは、決意と決別の涙。
 これから罪もない人を殺すという、意志の現れ。
 その涙に呼応して、彼女が握りしめていた勾玉が光り輝く。

「これは……」

 それと共に現れたのは、一体の巨獣。
 彼女の毒を受けてもなお、そこに立ち続けていられるそれは、低い声でゆっくりと語りだした。

「我が名はアルテマ……太古に作られし最高の力なり……。
 我は力であり、生命にあらず……弱き生命体を、消し去る!!」

【?????/1日目/朝】
【笑龍(シャオロン)@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:健康
[装備]:COMP(勾玉型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:父と兄を止めるため、全てを滅ぼす。
[備考]
※致死の猛毒が弱まっていますが、彼女はそれに気づいていません。
[COMP]
1:アルテマウェポン@FINAL FANTASY6
[種族]:魔神
[状態]:健康


406 : 最速 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/21(土) 23:41:31 q2z3CFjY0
「オ〜〜〜〜ブストラクション!!」

 最速の男、ストレイト・クーガー。
 彼は何よりも速さを重視する男だ。
 移動、戦闘、行動。食事とトイレ以外には何もかも、最速を求めている。
 そんな世界を縮め続けていた男が、
 彼は今、信じられない光景を目にしていた。

「ヨガ〜〜〜〜」

 彼が呼び出してしまった悪魔、ダルシム。
 それが、ぶっちぎりに早かったからだ。
 いや、ただ早いだけなら、クーガーも負けてはいなかっただろう。
 しかし、彼はただ早いわけではなかった。
 そう、彼は"歩き"が早かったのだ。

「ヨガ〜〜〜〜」

 なんだったら、スライディングも早い。
 いくら最速を誇る彼でも、その歩きとスライディングの速さは、未知の領域だった。

「いや、しかし、この俺は敗北を認めたわけではない! 行くぞ! うぉおおおおおお!!」

 こうして、彼の"歩く"最速への挑戦は、始まった。

【?????/1日目/朝】
【ストレイト・クーガー@スクライド】
[状態]:健康
[装備]:COMP(サングラス型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:最速で解決する
1:オ〜〜〜〜ブストラクション!!
[COMP]
1:ダルシム@ストリートファイター2’レインボー
[種族]:超人
[状態]:健康


407 : 幻視 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/21(土) 23:41:45 q2z3CFjY0
「あらあら……これは、事件の香りがしますね……」

 登る朝日、立ち並ぶビル、都会の冷たさ。
 これがいつも運んでくるのは、事件の香り。
 そして、それは今回も例外ではない。

「魔神皇くん、でしたか。この私を出し抜いてくるとは、なかなかやりますね」

 割烹着にエプロンの、少し淡い赤の髪の少女、琥珀はそう言いながら笑う。
 色んな怪事件に巻き込まれてきたが、流石にこのパターンは初めてだ。
 タタリではないとしても、あの少年が持つ力は異常だ。

「しっかぁ〜〜し! 魔法少女マジカルアンバーにかかればこの程度のコトなど!!」

 だが、彼女は屈しない。
 科学、魔術、医術。その全てを駆使した技術がアレば、このような事件でもちょちょいのちょい。
 そう意気込んだところで、勢い良く懐に――――

「ってあらぁ!? 何もかもが奪われているじゃありませんか!!」

 差し込んだ手は、何も掴まない。掴めない。
 何故なら、そこにあるはずのものは、綺麗サッパリと無くなっていたからだ。
 慌てて所々を探ってみるが、何もない。
 傍にあった袋も探ってみるが、中に入っていたのは食料と一本の箒。
 しかし、その箒はただの箒ではなく、彼女のよく知る箒であった。

「はぁ、そんなことなら没収せずに持たせてくれればよかったのに」

 そんな愚痴をこぼしながら、いつもの様に箒を握り、手触りを確かめる。
 そして、箒には相応しくない持ち方をして、"それ"を一気に振りぬいた。
 そう、その箒はただの箒ではなく、中に刀が仕込まれている、仕込み箒だったのだ。
 しゃきん、と金属音とともに、太刀筋が光る。
 その時、彼女は一つの"違和感"に気がついた。

「んんんんん〜〜〜〜!!! 私の箒を勝手に改造しおって!!! 許るさ〜〜〜〜ん!!!」

 そう、太刀筋など本来は光るわけがない。
 それが、光っているということは、愛用のこの箒に、何かが仕組まれているということ。
 差し詰め、彼が言っていた"COMP"とやらに改造されていたのだろう。
 私物を改造されていることを知った怒りを少し覚えつつ、琥珀はその光を見つめ続けていた。

「……誰?」

 現れたのは、白いポニーテールの褐色の少女だった。
 あまり肌を隠さない白の装束に身を包み、そばには大きな弓を構えている。
 その瞳には、光がない。

「おやおや、これは可愛らしいお嬢さん。安心してください、私は――――」

 現れた少女に対し、琥珀は優しく手を伸ばそうとする。

「近寄らないで」

 だが、少女はそれを拒絶する。
 一本の矢、即座に放たれたそれは、その意志を明確に示していた。
 頬の横をかすめた矢は、琥珀の頬を傷つける。
 ぱっくりと開いた傷口から、つつ、と血が流れる。
 琥珀はそれを、ゆっくりと腕で拭ってから。

「何がおかしいの」

 彼女に向けて、くつくつと笑った。

「いえ、その目を見たら、思い出したんです」

 変わらない、笑顔。
 けれどそれは、先ほどとは違う、もう一つの仮面。

「私の、ことを」

 それは、いつかの自分と似て非なる姿。

【?????/1日目/朝】
【琥珀@MELTY BLOOD Actress Again】
[状態]:健康
[装備]:COMP(仕込み箒型)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:魔神皇くんのオイタを止めるぞ☆
[COMP]
1:真鏡名ミナ@サムライスピリッツシリーズ
[種族]:人間
[状態]:健康


408 : 撮影 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/21(土) 23:42:01 q2z3CFjY0
「殺し合いだって」

 都会の一角、カフェの一席。
 椅子にもたれかかり、片足を浮かせたり着いたりさせながら、ゆらゆらとくつろいでいる、一人の少女。
 彼女の名は、宮本フレデリカ。346プロダクションに所属する、一人のアイドルだ。
 特殊能力があるわけでもない、他人と渡り合えるだけの力があるわけでもない。
 にも関わらず、彼女がこんなにも落ち着いていられるのには、理由があった。

「最近のCG技術は凄いね〜、ホント、本物っぽかったもん。ドッキリ突発にしては、凝った演出だね〜〜」

 そう、彼女はこの殺し合いを、"撮影"だと認識していたのだ。
 突如として知らない場所に連れてこられたのは、ドッキリの一種。
 少年から放たれた炎も、燃え上がる死体も、首を飛ばされた死体も、それらは良く出来たCG。
 都合のいい解釈とも取れるが、彼女は"逃げ"でそこにたどり着いたわけではなく、初めからそう認識していた。
 初めからそう思っていたから、疑うことなどするわけもなく。
 ただ、起こっていたことをそのままに受け入れていた。

「そう考えるとさ、やっぱり目立ったほうが良いのかな? アドリブ力が求められる感じ?」

 撮影、と認識したのならば、アイドルとしてやることは一つ。
 他人よりも目立ち、活躍する。
 自分はまだまだ駆け出しのアイドル、売れるチャンスを作っておく越したことはない。
 せっかくプロデューサーが持ってきてくれた"仕事"なのだ、無碍にするわけにはいかない。

「ま、何はともあれっと」

 そうと決まったところで、彼女は椅子から立ち上がり、傍にあった袋をあさり始める。
 着の身着のままで連れてこられてしまったため、今の自分はファッション的には全く"イケ"てない。
 せめて何かこう、"キマ"る衣装に身をまとって、テレビ映りを良くしておいたほうが良い。
 だが、中から出てきたのは、あんまりイケてないコートに、赤縁のメガネ。
 うーん、と少し悩むが、考えていても仕方がない、とそのコートを躊躇わずに羽織っていく。

「お、意外とイケてる?」

 着ていた服とのカラーリングのおかげか、思っていたより見てくれはしっかりと決まっている。
 いや、イケてない服でもキメれるのは、自分のセンスのおかげなのだろうか。
 ともあれ、思っていたよりキマったのは嬉しい誤算だ。
 ここに合わせるように、メガネを掛ければ、ひとまずの見てくれは完成だろう。
 そう思いながら、フレデリカはメガネに手を伸ばし、ゆっくりと目へと運んでいく。
 そして、彼女がメガネを掛けた瞬間。

「おおおおっ、すごいすごーい!!」

 彼女がかけたメガネから、無数の光が溢れだしたのだ。
 カラフルな光に包まれる視界に興奮しながらも、フレデリカはその光の行先を見つめていく。
 やがて光は一点へと伸び、ある姿を作り出していく。

 現れたのは、一人の人間。
 赤い鉢巻と赤のマント、それに鎧を着込んだ、いかにも"勇者"という風貌の少年だった。
 現れた彼は、訝しむような目で彼女を見つめて、問いかけた。

「……君は?」

 その問いかけに、彼女は怖じることなく答えていく。

「アタシ? アタシ、宮本フレデリカ。こう見えてもアイドルやってまーす」

 あくまで、アイドルとして。

【?????/1日目/朝】
【宮本フレデリカ@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:健康
[装備]:COMP(赤縁のメガネ型)、あんまイケてないコート
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:目立つよ〜〜♪
1:イケてる服探し
[COMP]
1:アーク・エダ・リコルヌ@アーク・ザ・ラッド
[種族]:勇者
[状態]:健康


409 : 精神 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/21(土) 23:42:17 q2z3CFjY0
「ここ、は……」

 少年は一人、空を見上げる。
 純白の制服に、少し不健康そうな肌の色と、無造作な髪。
 彼の名は――――

「僕は、イデオ」

 ――――偉出夫。
 そう、この殺し合いを開いた、狭間偉出夫その人だ。
 その姿も、その力も、寸分違わず、本人だ。

「あの子は、僕」

 そして、彼もそれを自覚している。
 彼は自分、自分は彼、同一の存在、それは分かっている。
 けれど、決定的に違うことが、一つある。

「でも、僕は……僕じゃない」

 それは、彼が"精神体"であるということ。
 狭間偉出夫という、力を手にした一人の少年の心の闇。
 その中で生まれた、狭間偉出夫というもう一人の自分。
 狭間偉出夫が誰にも見せることはなかった、本来の彼の姿。
 それが今、狭間偉出夫から分離し、姿を持っていた。

 理由は、分からない。
 しかも、精神体である彼にも、この場にいる全ての人間に嵌められた首輪と、道具が配られている。
 狭間偉出夫は、魔神皇は、精神体である"彼"がここにいるのを知っているのか。
 いや、それとも彼が自ら、"彼"をここに送り込んだのか。

 謎は、謎を生む。考えこんでも、分からない。

 気がつけば、袋から一台の機械を取り出していた。
 それは、世界を救うものの象徴、英雄を英雄たらしめる"悪魔"の機械、アームターミナル。
 それにとりつかれたかのように、彼は端末の操作を進める。
 少しの操作の後、やわらかな光とともに、一つの人影が現れていった。

「君は……?」

 狭間は、怯えながらも現れた少女へと語りかける。

「私は、"イフ"」

 その少女は、制服を纏っていた。
 その少女は、一本の剣を携えていた。
 その少女は、神器に見を包んでいた。
 その少女は、笑っていた。
 その少女は、"守護"されるものであった。

 そう、彼女は。

「"もし"を、生み出すものよ」

 魔神皇を、滅ぼした少女。

【?????/1日目/朝】
【狭間偉出夫@真・女神転生if...】
[状態]:健康
[装備]:COMP(アームターミナル型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:??????
[備考]
※狭間の精神世界における狭間の精神体が、何らかの形で具現化しています。
[COMP]
1:イフ(女主人公)@真・女神転生if...
[種族]:魔人
[状態]:健康


410 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/21(土) 23:42:47 q2z3CFjY0
投下終了です。
おかげさまで登場話が100本書けました。
これもひとえに皆さんのおかげです、ありがとうございました。


411 : ◆uiAEn7XS/. :2016/05/21(土) 23:47:52 ugR2RQ6M0
100投下本当にお疲れ様です。ぎりぎりですが自分も一本投下させてもらいます。


412 : ヴィランアカデミア ◆uiAEn7XS/. :2016/05/21(土) 23:49:50 ugR2RQ6M0
「何なんだコリャ一体よォ!!」
「だァから、バトルロワイアルだッつーの。戦って戦って戦い抜いてラスイチになるまで殺し合いだよアンダスタン?」
「うるせェ!! いきなりスマホから出てきやがって、オメー何なんだよ!!」
「アクマだよ、アクマ。オマエの使い魔。だからワザワザこうやってチュートリアルしてやってんだろォ」

何の変哲もないジュースの自販機の前で、二人の少年が口論している。
金髪ツンツン頭が騒々しく詰め寄り、もう片方の細身で白髪の少年は、それを聞き流しながら缶コーヒー片手にため息をつく。
ギターでも背負っていれば、学校帰りのバンド少年が駄弁っているだけのようにも見えた。

「そもそも何だ、あのマジンノーとかいうクソナードはよォ! ナメやがってクソが!」

悪態をつく金髪ツンツン少年の名は爆豪勝己。
生まれながらに爆発の異能を授かり、ヒーロー候補生としてトップを目指す、野望多き若者である。
ヒーロー候補生――である。
チンピラではない、決して。
そんな彼に向けて、白髪の少年は首をかしげながら問う。

「あれェ、じゃあオマエ従わないの? 殺し合いしねェの?」
「あんなクソの言いなりなんぞ誰がやるかボケ! 逆にアイツをブッ殺して……」
「……ヘエェ。できンの? 首輪つけられてギャンギャン鳴くしか能がねェ犬ッコロのクセによォ」

白髪の少年が嘲笑った。
その瞬間、だった。


「……ァ?」


爆豪少年の血走った眼の奥に、ドス黒い奔流が発生する。
バチバチとスパークする右手を白髪の少年に向けてかざす。
頭の片隅で『問い詰めれば何か知ってるかもしれないが、魔神皇の手先ならば裏切るかもしれないしブッ潰す』と多少は計算しつつ、
必殺の一撃を仮にも人間の姿をとった者に対して放つことに躊躇はなかった。


「……死ね、クソモヤシ野郎」


 Kabooooooooom!!


大爆発。
原型を留めるはずもなく、まるでスクラップのようにグシャグシャになって吹き飛んだ。
――爆豪の背後の自動販売機が。

「……ハ!?」
「アブネェな。何てことしがるよ、仮にもオマエの現状唯一の味方に対してよォ」

白髪の少年は薄笑いを浮かべて、こともなげに笑う。
何をしやがったと掴みかかろうとした爆豪の言葉に被せるように、彼は種明かしをはじめた。

「俺の能力は簡単に話せば全物理反射、全魔法反射だ。今の攻撃も反射してやったが、オマエの顔面にぶつけンのは特別に勘弁してやった。
 なンせ、オマエは俺のご主人サマだからなァ、へへへ」
「反射、だとォ……!」
「まァ、貫通スキルやメギド系くらったらイチコロなんで、そこはうまく使ってくれや。
 今はスマホで寝てるから、何かあったら呼びな。そのクソみてェなアタマ下げたら助けてやるからよォ」
「……!」

言葉が出なかった。
呆然と立ちすくむ爆豪のポケットから白髪の少年はスマホを取り出す。
そこで最後に何かを思い出したかのように口を開いた。


「あァ、そうだ。自己紹介まだだったなァ。俺は外道 一方通行《アクセラレータ》。コンゴトモヨロシクゥ――」




【?????/1日目/朝】
【爆豪勝己@僕のヒーローアカデミア】
[状態]:健康
[装備]:COMP(スマートフォン型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:どいつもこいつもナメやがって!
[COMP]
1:一方通行@とある魔術の禁書目録
[種族]:外道
[状態]:健康


413 : ヴィランアカデミア ◆uiAEn7XS/. :2016/05/21(土) 23:50:09 ugR2RQ6M0
投下終了です。


414 : ◆WRYYYsmO4Y :2016/05/21(土) 23:50:25 zScpX.zw0
以前別所に投下したものを改変したものとなりますが、自分も投下させてもらいます。


415 : なまえをよんで ◆WRYYYsmO4Y :2016/05/21(土) 23:50:47 zScpX.zw0


 少年には、名前が無かった。
 持つべき名前を失った、名無しの戦士だった。

 少年もかつては、ごく一般的な人間として生きていた。
 愛犬の世話をし、友人と他愛もない会話を行い、母親の手料理を平らげる。
 そんな普通の生活を営み、そしてそんな生活をこよなく愛した男だった。

 だが、その平穏はある日を境に激変する。
 「悪魔召喚プログラム」と呼ばれるパンドラの箱が、少年の全てを変えてしまった。

 母親は悪魔に喰い殺された。
 故郷はICBMで廃墟と化した。
 幼馴染はゾンビとなっていた。
 道を違えた友人達は憎み合っていた。

 何もかもが、変わってしまった。
 目の前に広がるのは、悪魔が闊歩する地獄の様な世界だけ。
 少年が愛した平穏は、一片の欠片も残さず消滅していた。

 だが、地獄を目の当たりにしてもなお。
 戦いの果てに平穏が掴める筈だと、少年は信じ続けていた。
 神や悪魔の支配を受けない、人間が生み出す平穏な世界を夢見ていた。

 故に、少年は戦い続けた。
 人間の平穏は人間の手で掴むべきだ、と。
 その信条の元、人外達を容赦なく殺し尽くした。

 混沌を正義とする悪魔を殺した。
 スルトの四肢を捥いだ。
 アスタロトの頭を吹き飛ばした。
 アリオクの臓物を抉った。

 秩序を絶対とする天使を殺した。
 ウリエルの首を刎ねた
 ラファエルの心臓を穿った。
 ガブリエルの胴を断った。

 理想を追い求めて、ただひたすらに。
 斬って、撃って、殴って、殺し続けた。

 されど、運命の歯車は少年を嘲笑う。
 人々は彼の意に反し、神々の統治を望んだのだ。
 少年が思うほど人は強くなく、故に彼等は超常の指導者を望む。
 天より来たる神々を迎え入れ、出現するのはミレニアム。
 人類は天使への隷属を誓い、虚偽の繁栄を貪り始めたのだった。

 少年の戦いは、全て無駄に終わった。
 走り続けた先にあったのは、理想とは程遠いディストピア。
 流した血も、絶った絆も、奪った命も、何もかもが無意味だった。

 それでも、少年は剣を捨てなかった。
 戦場がコロシアムに、相手が人間に変わっても、彼は戦い続ける。
 さながら修羅の如く闘争を続け、挑みかかる人間をひたすらに殺していく。

 もう、少年には何も残っていなかった。
 故郷も、肉親も、親友も、恋人も、仲魔も、名前さえも。
 一つ残らず失った彼には、戦う理由など何処にもありはしない。
 しかし、全てを失った彼には、戦う以外の選択肢が残っていなかった。

 そんな少年を目にした人間達は、彼に一つの称号を託した。
 天使と悪魔を同時に相手取り、今も戦いを止めない悪鬼の様な男。
 それでも、彼が天使と敵対する悪魔を滅ぼした事に変わりは無い。
 世界革変の切っ掛けとなった少年には、まさに"英雄"の名が相応しい。

 "英雄(ザ・ヒーロー)"。
 それが、敗北者たる少年に与えられた称号だった。


416 : なまえをよんで ◆WRYYYsmO4Y :2016/05/21(土) 23:51:08 zScpX.zw0

□ ■ □


「僕は今までずっと戦ってきた」

 真夜中の公園のベンチに、ザ・ヒーローは腰かける。
 そして、誰に言われるまでも無く、自身が呼んだ悪魔向けてに語りだした。

 ザ・ヒーローが引き当てたのは、甲冑を身に纏った一人の戦士。
 赤く刺々しいその外観は、さながら竜を思わせる。
 兜で顔をすっぽり覆っているせいで、表情はまるで読み取れない。

「戦って、戦って、戦って……何の理由も無いのに、戦ってきたんだ。
 狭間偉出雄、だっけ。"優勝者には願いを叶えていい"なんて言ってたけど……僕には願いさえ分からないんだ」

 笑っちゃうだろと付け加え、ヒーローは自嘲する。
 戦い始めた理由なら、たしかにあった筈なのだ。
 だが、何時の間にか理由を何処かに置いてきてしまった。

 この殺し合いが願いの為の戦いならば、自分の抱える願いとは果たして何なのか。
 碌な理由もないまま闘争に身を委ねるのは、許されざる行為の様に思えてならなかった。

「……君にも何か、願いがあったのかな」

 悪魔として召喚しているが、戦士も元は一人の人間だ。
 他の人間達と同様に、彼もまた願いを抱いていた筈である。
 だから、そう考えたからこそ、ヒーローは一つの決断を下す。

「教えてくれないか、君が何者だったのかを」

 自分には願いが分からない。無いと言ってもいい。
 だが、目の前の寡黙な戦士には、何かしらの望みがあるに違いない。
 もしかしたら、彼の言葉が自分の願いを思い出すヒントになるかもしれない。

 戦士の剥き出しの威圧感が身を潜めていく。
 それは即ち、彼が会話に応じる気になったという事だ。

 顔を覆う兜の奥から、男の声が流れ出る。
 彼が語るのは、己の根源(ルーツ)であった。


417 : なまえをよんで ◆WRYYYsmO4Y :2016/05/21(土) 23:51:36 zScpX.zw0
□ ■ □


 戦士には、名前が無かった。
 持つべき真名を持たない、名無しの英雄だった。

 かろうじて、「ハンター」という肩書きなら持っている。
 依頼された場所に向かい、そこで屯する怪物を討伐する者達。
 戦士は、そんな狩猟者の一人として戦い続けてきた。

 その中でも、戦士は飛び抜けて優秀だった。
 手にした大剣は龍の翼を引き裂き、獣の角を切断する。
 無数の屍の山を築いた彼の戦いは、多くの同業者に広まっていった。

 曰く、まさしく狩りをする為に生まれた男。
 曰く、数十年に一人現れるかどうかの天才。
 曰く、龍との闘争を至上の喜びとする悪魔。

 良くも悪くも、戦士の逸話は周知のものとなっていく。
 だが、そんな事には目も暮れずに、彼は狩猟を続けていた。
 まるで戦わなければ死ぬと言わんばかりに、戦いに明け暮れていた。

 イャンクックの脚を断った。
 リオレウスの右眼を抉った。
 フルフルの翼を切り裂いた。
 ティガレックスの胴を両断した。

 やがて、戦士は強大な力を持つ古龍さえ打倒する。
 誰一人として倒せなかったその敵に、たった独りで勝利してしまった。
 それは紛れも無く偉業であり、その瞬間、彼は英雄の肩書きを得たのであった。

 英雄である彼の物語は形を変え、偉業として祀り上げられる。
 「あるハンターの伝説」として、戦士の逸話は歴史に刻まれた。

 歴史に刻まれたのは、逸話"だけ"だった。
 誰一人として、戦士の名前を歴史に刻めなかったからだ。

 ひどく寡黙なそのハンターの素性を、誰も知ろうとしなかったから。
 人々の記憶にあるのは、「名無しのハンター」の逸話だけとなる。
 英雄の名前を知る者は、世界にはもう一人として残されてはいなかった。

 そして戦士もまた、自分の名前を忘れてしまった。
 歴史からさえ名前が抹殺された今、彼が持つのは武器と技術のみ。

 もし、自分の願いを叶えられるとしたのなら。
 名無しのハンターが求めるのは、自分の名前だ。
 生まれて最初に授かった、自らの真名を取り戻したい。
 たったそれだけが、彼の願いだった。


418 : なまえをよんで ◆WRYYYsmO4Y :2016/05/21(土) 23:51:55 zScpX.zw0
□ ■ □


「そうだ」

 名も無い戦士の話を聞き終えた少年は、思い出したかの様に呟いた。
 いや、事実思い出したのだ――自分にもたしかに願いがあった事を。
 無意識の内に抱き、しかし闘争の最中に放り投げてしまった願いが。

「僕にも名前があったんだ。ヒーローなんて肩書きじゃない、母さんがくれた名前が」

 人間が生まれてから、最初に受け取る愛の形。
 それこそが"名前"であり、その人がその人たる証だ。
 奇しくも、彼等は二人とも自分の名を忘れていた。

「名前……僕は名前が欲しかったんだ」

 ヒーローにはもう、何も残ってない。
 かつて手にしたものを取り戻す事も、ましてや思い出す事さえ出来ない。
 だが、せめて最初に受け取った自分の"名前"だけは。
 時間が奪い取ってしまったその一つだけは、自分の手で奪い返したかった。

「ありがとう。これで、また戦える」

 黙したままの戦士に、言葉が届いたかは分からない。
 しかし、それでもヒーローは感謝を示さずにはいられなかった。
 彼がいなければ、自分は蹲ったままだったかもしれないのだから。

 これから、自分は幾つもの修羅場を通り抜けるのだろう。
 自分と同じ願いを持つ者と戦い、勝利し、そして殺していく。
 召喚された悪魔と共に、全ての願いに死を齎すのだ。
 止まる気はない。止まれたのなら、当の昔に止まれている。

 やる事は結局、元いた場所となんら変わりないのだ。
 賞品が願いの成就となっただけで、他にはほとんど同じに過ぎない。

 ただ、今のヒーローには隣に相棒がついている。
 それが数少ない違いの一つで、最も大きな違いだった。
 彼がこうして誰かと共に戦う事など、本当に久しぶりなのだから。

 名無しの戦士が――自分の仲間が隣にいる。
 ただそれだけで、何故だか酷く懐かしさを覚えてしまって。
 頬に一筋の涙が伝うのを、ヒーローは止められなかった。



【?????/1日目/朝】
【????(ザ・ヒーロー)@真・女神転生】
[状態]:健康
[装備]:COMP(かつて使用していた物と同一)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:自分の名前を取り戻す。
[備考]
※無し。
[COMP]
1:無銘(ハンター)@モンスターハンターシリーズ
[種族]:"英雄"
[状態]:健康
[備考]
※リオレウス装備。


419 : なまえをよんで ◆WRYYYsmO4Y :2016/05/21(土) 23:52:09 zScpX.zw0
投下終了となります。


420 : ◆KV7BL7iLes :2016/05/21(土) 23:54:20 e6lRlFBU0
ttp://seesaawiki.jp/summoner-br/d/%a5%b9%a5%d0%a5%eb%a4%c8%a5%aa%a5%ad%a5%b6%a5%ea%a5%b9

申し訳ありません、上記のページをタイトルを誤って作成してしまいましたので、お手数ですが削除をお願いしてもよろしいでしょうか?


421 : ◆wKs3a28q6Q :2016/05/21(土) 23:54:43 VQGvLv1.0
滑り込み投下します


422 : ◆aoofWCVzNM :2016/05/21(土) 23:54:53 QLrx0ES60
投下します


423 : もしも君が亡くならば ◆wKs3a28q6Q :2016/05/21(土) 23:55:23 VQGvLv1.0

「明日菜さん……」

ネギ・スプリングフィールドは、どこまでも真っ直ぐな少年だった。
純粋で、真面目で、誰より一生懸命だった。
大切な人の死の責任を転嫁することも、全ての責務を放り出して悲しみにくれることも、齢十歳にも関わらず出来ない程に。

「おかしいよ……」

ネギ・スプリングフィールドは、誰よりも強い心を持っていた。
我慢強く、誠実で、誰かのために行動できる少年だった。
あまりにも強すぎて、弱味を見せられない程に。

「この鈴……音がしないよ……」

ネギ・スプリングフィールドは、とうとう壊れてしまった。
しなることすら出来ないくらいに真っ直ぐすぎて。
あまりにたくさん悲しみを抱え込めるほど強すぎて。
限界を迎えた心は、とうとう壊れてしまった。

「ネギ先生にはあくまでも――――」

断固として真っ直ぐだからこそ、折れたときは粉々になる。
多くのものを溜め込めるほどに強かったからこそ、壊れたときに吹き出すものは多くなる。

「悪魔……それです、それですよ夕映さん!」

ネギ・スプリングフィールドは、誰よりも真っ直ぐで、誰よりも強かったが故――自ら、悪魔と契約することを決めた。






 ☆  ★  ☆  ★  ☆


424 : すみません2作連続でいきます  ◆wKs3a28q6Q :2016/05/21(土) 23:56:09 VQGvLv1.0

「明日菜さん……」

気が付くと、殺し合いをさせられていた。
友人である高畑・T・タカミチに気絶させられてからの記憶がないが、どうやら悪魔召喚の儀式に成功していたらしい。
支給されたCOMPを――あの日、火葬されて焼け焦げた、神楽坂明日菜の髪留めの鈴を握り締める。
目の前に、改めて悪魔が召喚された。

「あァ!? なんだァ、ガキ」

召喚されるは、大きな金色の悪魔。
隈取の施された表情は、億劫そうに歪んでいる。

「あ、貴方が、僕の悪魔なんですよね!?」

しかし、ネギは物怖じしない。
ネギは魔法使いとして、すでに魔の者と相対したことがある。
今は杖を没収されただの子供と化してはいるが、その経験はネギから悪魔への恐怖を奪い去っていた。
それに、明日菜を失ったこと以上の恐怖など、今のネギには存在しなかった。

「明日菜さんを……明日菜さんを生き返らせてください!」
「だぁあ〜〜〜〜っ、なんだよオイ!」

必死の形相でしがみつかれ、さすがの悪魔も驚きの色を隠さない。
コミカルな画風で、どたばたと引き剥がしにかかる。

「あーもうっ、なんか面倒くせーことになってんのに潮の馬鹿はいねーしよー! どーなってんだ」

何とかネギをひっぺがし、悪魔が悪態をつく。
誰より自由奔放なその悪魔に、大人しく従者をするつもりなんて更々なかった。

「あのっ、な、何でもしますからっ……!」
「あのな、ガキ。ニンゲンってのは、死んだらそれまでなのよ。生き返らねーの!」

化物ならともかく、人間がそうホイホイ復活してたまるか。
それは、かつてネギがヴァンパイアであるエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルにも言われたことである。
だが――ネギは、それでも諦める事ができず、ここに居るのだ。
その程度の言葉で、引き下がるわけがない。

「お願いします! 僕の……僕の命なら、いくらでもあげますから!!」

その切な願いに、悪魔がピクリと反応する。

「ほう……じゃあ、何か、その明日菜ってーのが生き返ったら、オメェはワシに食われるのかよ」

悪魔は、人を食う化物であった。
しかし、もうずっと、人間を口にしていない。
忌々しい獣の槍とその使い手によって、食事を阻まれ続けているのだ。

「はい……それでも……それでも構いませんから!」

にんまりと、化物の顔がコミカルに歪む。
嫌がる人間を無理矢理食うなんて、蒼月潮が絶対に許さない。
しかし、自ら食われると言っている少年ならばどうだろうか?

「ほー、ふーん、へーーーー! なるほど、オメーはワシに食われるのかよ!」

それも、ちゃんと少年の願いを叶えた後でなら、怒られる義理はない。
悪魔は満面の笑みを浮かべた。

「よ〜し決まりだ! オメーはまだ食えそうだからな! ワシが何とかしてやる!」

ネギは、別段香水をつけているわけではない。
悪魔にとって、好みとまでは言えないが、それでも十分食べられる餌だった。


425 : すみません2作連続でいきます  ◆wKs3a28q6Q :2016/05/21(土) 23:56:19 VQGvLv1.0

「とりあえずは、このふざけた催し物の首謀者をふんじばって、どうにかできないか聞くか」
「えっ……」
「仕方ねーだろ、ワシ自身にそーいう能力はないんだからよ。
 こんなタワケた蠱毒を行うようなやつなら、知ってるかもしれないからな」

悪魔は、本気で、明日菜を蘇生できたらネギを喰う気でいる。
だが――悪魔は、死んだ人間の蘇生なんて出来ないことも、知っていた。
それでも。

「お前はワシの大事な前菜よ。そう簡単に死なせはしないからな!」
「あ、ありがとうございます。えっと……悪魔さん?」

悪魔、という呼称に、隈取の化物が顔を歪める。
性格に言うと“妖怪”であり、悪魔などと呼ばれて気持ちがいいものではない。

「あのな、ワシは妖怪じゃねぇ。ワシは――――」

その名を名乗ると、一生ネギを食べることが出来ないような気がする。
だが、それでも。

「ワシは、とらだ」

妖怪は、不敵な笑みと共に名乗った。
悪しき化物のみを討つ、心優しき金色の化物の名を。



【ネギ・スプリングフィールド@魔法先生ネギま!(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:COMP(明日菜さんこの鈴音がしないよ型)
[道具]:基本支給品、確認済み支給品
[思考・状況]
基本:明日菜さんを生き返らせる
[COMP]
1:とら@うしおととら
[状態]:健康


426 : baby baby -抱きしめてくれ-  ◆wKs3a28q6Q :2016/05/21(土) 23:56:47 VQGvLv1.0

我の名は、白面にあらじ……

我の、我の呼ばれたき名は――――――――






                            /   俺だろ?wwwwww
 --                 , -'"  ̄ ` 丶、  /     
 ─--            /         \|      白が赤になれるかよw
              /            |
 ───           i   _ _     _ _   ヽ_   紅白ってグループ分けで  
  ̄ ̄         | /二`     "二ヽ、 |  〉 
             _|  _,ィiュミ   r_,ィiュミ  レ-|    よく争ってるの知らねえのかw
 二二二         ヾ!   - ' r  `ヽ  ̄´  | ∧   
 ── ___      ゙!  〃  ^ ^  ヽ   l-/  〉
  ま             i   { ='"三二T冫  /´_ノ/\__
  さ  二ニ    _,ィヘ  ヽ ヾ== 彳   /:::/`ー- 、
  に     _, ィ´:::::/ l\ ト、 ー一 / /::/      \
  外     /  |::::::::: ̄ ̄ ̄::`ー=彳_∠ _      ヽ
  道   /   |::::::::::::::::::::::::::::(‥):::〈_      \       l
     r'"`丶、 |:::::::::/:::/::::´:::::::::::::::::(_      ト、      |
 _/ / `ー 、 \|::::/:::::/:::::::::::::::::::::::::::(_      \    \


427 : baby baby -抱きしめてくれ-  ◆wKs3a28q6Q :2016/05/21(土) 23:57:07 VQGvLv1.0

白面は――赤ちゃんになりたかった。

妬まれるでなく、恨まれるでなく、ただ、愛される赤ん坊に。


                            /  
 --                 , -'"  ̄ ` 丶、  /     
 ─--            /         \|      赤ちゃんになりたい?
              /            |
 ───           i   _ _     _ _   ヽ_   まあそうだよな  
  ̄ ̄         | /二`     "二ヽ、 |  〉 
             _|  _,ィiュミ   r_,ィiュミ  レ-|    毎日おっぱい吸い放題だし!!
 二二二         ヾ!   - ' r  `ヽ  ̄´  | ∧   
 ── ___      ゙!  〃  ^ ^  ヽ   l-/  〉
  ま             i   { ='"三二T冫  /´_ノ/\__
  さ  二ニ    _,ィヘ  ヽ ヾ== 彳   /:::/`ー- 、
  に     _, ィ´:::::/ l\ ト、 ー一 / /::/      \
  リ     /  |::::::::: ̄ ̄ ̄::`ー=彳_∠ _      ヽ
  ビ   /   |::::::::::::::::::::::::::::(‥):::〈_      \       l
  道 r'"`丶、 |:::::::::/:::/::::´:::::::::::::::::(_      ト、      |
 _/ / `ー 、 \|::::/:::::/:::::::::::::::::::::::::::(_      \    \




【外道ベイビー@2ちゃんねる】
[状態]:健康
[装備]:COMP(スマホ型) ← まさに王道
[道具]:基本支給品、確認済み支給品
[思考・状況]
基本:
                            /  
 --                 , -'"  ̄ ` 丶、  /     
 ─--            /         \|      基本行動方針?
              /            |
 ───           i   _ _     _ _   ヽ_   必死こいて考えるんだよ  
  ̄ ̄         | /二`     "二ヽ、 |  〉 
             _|  _,ィiュミ   r_,ィiュミ  レ-|    俺に票入れて通したヤツがな!!
 二二二         ヾ!   - ' r  `ヽ  ̄´  | ∧   
 ── ___      ゙!  〃  ^ ^  ヽ   l-/  〉
  ま             i   { ='"三二T冫  /´_ノ/\__
  さ  二ニ    _,ィヘ  ヽ ヾ== 彳   /:::/`ー- 、
  に     _, ィ´:::::/ l\ ト、 ー一 / /::/      \
  外     /  |::::::::: ̄ ̄ ̄::`ー=彳_∠ _      ヽ
  道   /   |::::::::::::::::::::::::::::(‥):::〈_      \       l
     r'"`丶、 |:::::::::/:::/::::´:::::::::::::::::(_      ト、      |
 _/ / `ー 、 \|::::/:::::/:::::::::::::::::::::::::::(_      \    \

[COMP]
1:白面の者@うしおととら
[状態]:赤ちゃんになりたい


428 : baby baby -抱きしめてくれ-  ◆wKs3a28q6Q :2016/05/21(土) 23:57:19 VQGvLv1.0
投下完了です


429 : ◆aoofWCVzNM :2016/05/21(土) 23:57:29 QLrx0ES60

「ったく、訳分からないことになったわ」

誰も居ない無人の神社で巫女、博麗霊夢は嘆息した。
いきなりこんな場所に連れ来られて殺し合い?馬鹿げている。
そんな馬鹿げた事態に陥ってなお、冷静さを一切欠けない所が彼女の精神性を表していると言えるが。

「紫が噛んでる線は薄そうよね」

千年を生き、境界を操る大妖怪の姿を思い浮かべるが、彼女が自分をこんな殺し合いに放り込む可能性は低いと霊夢は踏んだ。
幻想郷の安寧こそを第一とする彼女が、幻想郷を維持する結界の管理者の一翼を担う自分を殺してしまっては元も子も無いだろう。
厄介な話だ。
あの紫がみすみす自分の拉致を許す相手とは、魔神皇とは、一体どれだけの実力者と言うのか。

とは言え、自分のやる事は変わらない。

「この異変は解決する。必ず」

彼女の宣言に世界が呼応するように、博麗の巫女に一陣の風が吹き抜けた。
それと同時に背後に気配が現出する。

「……で、アンタは私に協力するのかしら」

振り返った霊夢の視線の先に居たのは、鮮やかな赤のジャケットを纏った男。
左右で色の違う男の瞳は、言葉にしがたい表情で夜空を見上げていたが、やがてゆっくりと霊夢の方に向き直る。

「あぁ、正直優勝なんて目指せって言われても実力的にも性分的にも、NOとしか言えなかったからな」
「よろしい。名前は?」
「……ヴァーミリオン・CD・ヘイズ。精々今後ともヨロシク、だ。サマナーさんよ」

とりあえず方針につては一致したようで霊夢は息を吐き、支給されたお祓い棒型COMPを握りなおす。
そんな霊夢にヘイズは懐から一枚の紙を取りだし、手渡した。
受け取った霊夢は、訝しげにそれを見つめると、問う。

「………何これ?」
「借用書。コキ使わせられるんなら貰うもんは貰っとかないとな」
「そう…」

渡された借用書を握り、ワナワナと震える霊夢。
喰うに困らぬ生活ではあったが、書かれている金額は彼女が到底払える金額ではない。
ならばどうするか。


一秒後、彼女は借用書の撤回を求め、目の前の悪魔に飛びかかった。
まこと、金に縁のない赤い者たちである。

【?????/1日目/朝】
【博麗霊夢@東方project】
[状態]:健康
[装備]:COMP(お祓い棒型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:異変を解決する。
[COMP]
1:ヴァーミリオン・CD・ヘイズ@ウィザーズ・ブレイン
[種族]:魔法士
[状態]:健康


430 : ◆aoofWCVzNM :2016/05/21(土) 23:57:45 QLrx0ES60
投下終了です


431 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/22(日) 00:00:15 Tu5ZXvnY0
締め切りです。
これより番号確認を行いますので、少々お待ちくださいませ。
現時点でWikiのページが作られていない作品は対象外となります。
(作成日付が22日以降の作品)


432 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/22(日) 00:17:19 Tu5ZXvnY0
番号チェック、投稿チェック完了いたしました。
収録が確認できなかった下記一作を除きまして、全作通過とさせていただきます。
C-150
相棒:大河内春樹(ブラート):◆DoSy6PFyws

投票は予告通り00:30から開始としますが、
一部作品削除に伴い、作品番号が大きく変更されています。
既に投票を手元で記入された方も、今一度番号の確認をお願い致します。


433 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/22(日) 00:19:56 Tu5ZXvnY0
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/5008/1463108244/
投票所はこちらになります。
投票ルールを熟読の上、ご参加ください。


434 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/22(日) 00:21:48 Tu5ZXvnY0
また、投稿作品は再三チェックしていますが、万が一、一覧に漏れがあった場合は、
ご連絡ください(特に終盤の作品は可能性高いです。)


435 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/22(日) 00:56:17 Tu5ZXvnY0
投票番号C-238が二作ありました(僕のミスです)ので、
下記のように変更いたしました。


C-238:生贄:ロウヒーロー(オルステッド)
C-238:渇望:カオスヒーロー(ピサロ)
C-239:解析:いじる(キューブ)


C-238:生贄:ロウヒーロー(オルステッド)
C-239:渇望:カオスヒーロー(ピサロ)
C-375:解析:いじる(キューブ)


436 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/22(日) 02:08:57 Tu5ZXvnY0
サマナー作品別候補作一覧、悪魔作品別候補作一覧を作成しました。
投票のご参考にどうぞ。

サマナー
ttp://seesaawiki.jp/summoner-br/d/%c5%d0%be%ec%cf%c3%b8%f5%ca%e4%ba%ee%b0%ec%cd%f7%28%a5%b5%a5%de%a5%ca%a1%bc%ba%ee%c9%ca%ca%cc%29

悪魔
ttp://seesaawiki.jp/summoner-br/d/%c5%d0%be%ec%cf%c3%b8%f5%ca%e4%ba%ee%b0%ec%cd%f7%28%b0%ad%cb%e2%ba%ee%c9%ca%ca%cc%29


437 : 名無しさん :2016/05/22(日) 13:17:14 /RIJjZxo0
凄い量だ…


438 : 名無しさん :2016/05/22(日) 13:52:15 8c0Hneww0
調整中って何なんだ……(哲学)


439 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/22(日) 15:30:57 sqyW68eE0
改めまして皆さん投下乙です!
総勢375作、うち自作100作なので、275作を皆さんに投稿していだきました!
多数の投稿、本当に有難うございます!

>>236
アイヌの巫女、アイヌの巫女じゃないか!!
悪魔側から協力を申し出てくるのは珍しいパターンですね。

>>238
呼ばれた以上はそれを利用する。神への贄を捧げるために……
原作KOFと同じことをしようとしてますね。

>>244
これが本当のMan with a missionですね!
種族鬼畜というのはちょっと笑ったw

>>249
ええ子や……からのなんかドグサレがいますね……
魔法少女にできるできないは、フラグにしか……w

>>251
宝石、とはまた珍しい種族だ……変な生き物に点数をつけるのも、なかなかおもしろいですね。

>>254
外道王! 外道王じゃないか! あくまで人間として、二人でどう動くのか……

>>259
マイペースなしんのすけ、ほんでもってまずはデートってのも彼らしい!
一時の休息、それが終わった時は……

>>264
助けてもらった相手に容赦なく跳びかかっていくみくさん。
まずはモフモフからですね!

>>266
オレンジジュースを武器にできるっていうのがどうしても笑うw
しかし精霊と契約を結ぶタイプのキャラは珍しいですね。

>>267
ノトーリアスwwwwwww まさかの見せしめ参加wwwwwwwwww
ジョーカーとしても意地悪すぎるwwwwwwww

>>268
その、なんだ、おっさん、がんばれ。

>>272
プーさんはプーさんでもプーさん違いwwwwwwwwwwwwwwwwwww
メタ視点ほんまやめろやwwwwwwwwwwwwww

>>274
なるほど、放射能を無効化するが故に、それにきづけない……
いるだけで脅威になりうるのは、やばいですね。

>>276
コj……ドマムゥさん! ドマムさんじゃないか!
魔術師としてかなり興味を持ってるみたいですね……

>>280
鯖型COMPwwwwwwww そりゃ食べれないわwwwwwwww
んで種族ワニwwwwwwww せめて魔獣とかwwwwwwwww

>>285
シンプル・イズ・ベスト。優勝狙い。
ぶん殴って行きましょう、エーザイ。

>>288
熱いコンビが生まれたぜ、これはSNK vs CAPCOMですわ。

>>292
お前悪魔側かよ! 差し詰めMr.Karateといったところかな?

>>296
アドラーくん! アドラーくんじゃないか!
やっぱり野心は健在、再びパロロワ参戦できるか……?

>>300
イリヤちゃんが誤ってるんだからワイゼルくんは許してあげるべきだと思います(学級裁判並感想
魔法少女にはなれないけど、どうなっていくんでしょうか。

>>301
親方!! 空の上の女の子が!!
空がきれいから始まる話、裏に何かを感じるのは……

>>305
鬼になって進む、求める先の世界へ。
パーフェクトにすすめるか、期待ですね。

>>310
志村! 見ぬかれてる、そば、そば!!
バーン様は全部知ってる、はっきりわかんだね。


440 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/22(日) 15:31:11 sqyW68eE0
>>312
なるほど藤原姓、そして月という共通点。
煽ってるけど大丈夫なのかな……

>>313
一番つええやつの戦いが見たいんだ!! おっさん、がんばれ!

>>314
絶妙なメタ展開、きらいじゃないわ!
まさかのマーラ様がサマナーってのも、面白いすねw

>>319
ロックな共通点だぜ! ザベルもイケメンを発揮したいところだけど……?

>>325
そしてこっちは悪魔がマーラさま! 全員昇天させてくれりゃーー!! で安心しましたw

>>330
もうどこから突っ込めば良いのか分かんねえよ……

>>336
メタ視点のプーさんでも「やべえ」しか言えないやつだ……w
あと、出展は現実より、都市伝説のほうがいいかと思いますw

>>341
このメタ視点野郎どもめwwwwwww しかし相方はちゃんとした人? で何より?

>>344
なんかのんびりしてるコンビだけど、スペックは十分!
これからが楽しみなコンビですね!!

>>347
ザキヤマがぁ……パロロワに……出るぅ〜〜〜〜〜〜〜!!!

>>351
なんか凄い出展から来たぞぉwwwwwwwww のっけから"ト"ばしてるし、大変ですね……w

>>356
ブラッドヴェインさん! ブラッドヴェインさんじゃないか!
しっかりと前を見れる姿勢が、彼に響いたようですね。

>>362
悪魔だと、分霊だと自覚しているからこその視点。
それぞれに、どう選ぶのでしょうか……

>>363
杏子ちゃん、優しくしてあげて、彼は……ほら、アレだよ!
ね? 優しくしてあげてね!

>>368
おねえちゃんはそうしないだろうから、おねえちゃんのように動く。
そして妹と姉や、意味の深いワード……気になりますね。

>>374
変態! ミスって現世にやってきちゃった変態じゃないか!
愛しのヴァルキュリアはここにいるかどうかはわかんないんだけど……

>>379
あ、後ろ拳王通りまーす
崩壊してしまった、かなしいね

>>384
相方死にかけてるんですけど大丈夫なんですかね……
ともあれ、お求めの方はいないので、どう"脱出"に切り替わるのか……

>>387
なかなかアツイジャンプコンビ! ジョナサンもカッコイイですね。
あと、北斗の拳だと「世界が崩壊している」設定になってしまうので、
他の北斗の拳出展サマナー作品のように、「世界が崩壊していない描写」の追加をお願い致します。

>>395
うるせえで一掃されるアヌビスw 錆びるのがトラウマになってるみたいですね……

>>412
アクセラさんだ! 外道だ! 全反射だ!! やばい!!
万能食らうと死にますからね……

>>419
名前を失う者達。英雄という記号付。
同じ考えの人がいてちょっとうれしいです……w

>>425
明日菜さんをよみがえらせるために、ネギ君はどうするんでしょうか。
それとCOMPwwww やめてwwwwwww

>>427
赤さん、どうやって動くんですかね……

>>430
異変解決するぜ、霊夢さん。
借金なんてクソくらえ! 返上していきたいですね。


441 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/22(日) 15:31:37 sqyW68eE0
数点の指摘をさせていただいております。
該当作の作者さんは、Wikiで修正しておいてください!


442 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/23(月) 00:05:55 BKVWp54I0
後で集計結果のエクセルファイルもアップロードします。

19
C-180:[[母親]]:吉良吉影(ジャック・ザ・リッパー):◆Y8r6fKIiFI

18
C-011:[[最弱の魔物が、一体出た!]]:高嶺清麿(スラリン):◆.wDX6sjxsc
C-116:[[皇都にて魔女達は燃ゆ]]:那須島隆志(ジャンヌ・オルタ):◆GOn9rNo1ts

17
C-020:[[killy killy JOKER]]:桐山和雄(桐山和雄):◆wKs3a28q6Q
C-318:[[悪魔のような人間二人]]:折原臨也(高遠遙一):◆DGGi/wycYo

15
C-030:[[記号]]:ザ・ヒーロー(勇者ロト):◆jBbT8DDI4U
C-143:[[にんげんっていいな]]:市原仁奈(神獣キマイラ):◆TAEv0TJMEI
C-249:[[隠し子発見!!]]:インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング(レミリア・スカーレット):◆mcrZqM13eo
C-279:[[必然のダークサイド]]:マリク・イシュタール(ゾーマ):◆7PJBZrstcc
C-307:[[お願い!ピンクだま]]:島村卯月(カービィ):◆jOkrd9mmNM

14
C-059:[[宿命]]:海馬瀬人(巴マミ):◆Vj6e1anjAc
C-065:[[吸血鬼の従者と従者の吸血鬼]]:ヴァニラ・アイス(アーカード):◆7PJBZrstcc
C-066:[[漆黒の狙撃手]]:ジン(マンハッタン・トランスファー):◆EDO/Ef.X42
C-173:[[迫る鋼鉄の殺戮者たち]]:T-1000(キラーマジンガ):◆.wDX6sjxsc
C-238:[[生贄]]:ロウヒーロー(オルステッド):◆jBbT8DDI4U
C-286:[[光と闇の英雄]]:江戸川コナン(雷電):◆EDO/Ef.X42
C-320:[[にゃん・にゃん・にゃん♪]]:前川みく(マタムネ):◆.wDX6sjxsc

13
C-005:[[ふたりぼっち]]:丈槍由紀(佐倉慈):◆LCh27RSp5E
C-335:[[キル×バーン]]:レイン・ポゥ(バーン):◆aoofWCVzNM
C-372:[[もしも君が亡くならば]]:ネギ・スプリングフィールド(とら):◆wKs3a28q6Q

--ここまでで20人--

12
C-009:[[消えることのない怒りの業火]]:海馬瀬人(青眼の白龍):◆7PJBZrstcc
C-010:[[覚醒 -Again-]]:アカツキ(暁):◆TE.qT1WkJA
C-021:[[プラチナスターズ]]:千川ちひろ(スタープラチナ):◆BLAZExujxM
C-061:[[Domesticate]]:バクラ(関銀屏):◆EDO/Ef.X42
C-067:[[悪魔たちの禊]]:斑目貘(ジオット・セヴェルス):◆fpjLzaFwzY
C-124:[[異邦人の時]]:J・P・ポルナレフ(セルティ):◆S8pgx99zVs
C-218:[[A&P―宇宙の彼方から来るもの―]]:プレデター(エイリアン・ウォーリアー):◆lb.YEGOV..
C-319:[[クレしん×コンレボ 魔法少女天下御免だゾ!]]:野原しんのすけ(星野輝子):◆fd1N1IjRQI
C-369:[[精神]]:狭間偉出夫(イフ(女主人公)):◆jBbT8DDI4U

11
C-007:[[紀田正臣 主観]]:紀田正臣(市丸ギン):◆b2iYqpIDTI
C-149:[[Are you an angel?]]:レヴィ(アナーキー・パンティー):◆Cf8AvJZzb2
C-177:[[HERO〜希望の歌〜]]:緑谷出久(スパイダーマン):◆jOkrd9mmNM
C-215:[[「今から悪魔超人チェックメイトを名乗るがいい」「それ麻雀じゃなくてチェスな」]]:愛宕洋榎(サンシャイン):◆wKs3a28q6Q
C-309:[[空腹]]:弓塚さつき(アレン・ウォーカー):◆DpgFZhamPE
C-339:[[「「ロックにいこうぜ!!」」]]:多田李衣菜(ザベル・ザロック):◆lb.YEGOV..

--ここまでで35人--

10
C-014:[[Night Mare]]:日野貞夫(フレディ(フレッド・クルーガー)):◆lb.YEGOV..
C-088:[[魔獣咆哮!契りの対価]]:工藤仁(ドランゴ):◆TPKO6O3QOM
C-168:[[凹凸]]:マリベル(テリー):◆jBbT8DDI4U
C-176:[[エンジョイ勢]]:片桐安十郎(ワイアルド):◆Cf8AvJZzb2
C-205:[[セクシー・アドベンチャー]]:峰不二子(モリガン・アーンスランド):◆jOkrd9mmNM
C-239:[[渇望]]:カオスヒーロー(ピサロ):◆jBbT8DDI4U
C-250:[[この淫獣めっ!(褒め言葉)]]:ユーノ・スクライア(玉藻の前):◆fd1N1IjRQ
C-297:[[ジョジョの奇妙な冒険 読心主従]]:ジョセフ・ジョースター(古明地さとり):◆mcrZqM13eo
C-301:[[火葬少女を生かそう!の巻]]:神楽坂明日菜(再生アシュラマン):◆wKs3a28q6Q
C-350:[[スバルトオキザリス]]:白鳥昴(犬吠埼風):◆KV7BL7iLes
C-374:[[お金に縁無き赤いの達]]:博麗霊夢(ヴァーミリオン・CD・ヘイズ):◆aoofWCVzNM


443 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/23(月) 00:06:36 BKVWp54I0
ここからアンケートの結果を加味して、後日名簿を本スレに貼ります。
その時に追加ルールも発表しますので、よろしくお願い致します。


444 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/23(月) 00:21:23 BKVWp54I0
A:6
B:28
C:32
D:11
E:3

1:46
2:23
3:9
4:2

アンケの結果を踏まえて30〜40の追加枠なしで行きます。
名簿は早いうちに決めようと思ってるので、お待ち下さい。


445 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/23(月) 00:32:21 BKVWp54I0
ttp://fast-uploader.com/file/7019486656056/
エクセルファイルアップしました。
得票詳細はこちらでお願いします。


446 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/23(月) 10:32:44 Dq1m.mXs0
すみません、投票所の方にもう一点だけ皆さんに質問をさせていただきました。
よければ、ご回答いただけるとありがたいです。


447 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/23(月) 12:57:41 Dq1m.mXs0
名簿確定させました。
原作バトルロワイアルに倣い、全42人とさせていただきました。
11票までのメンバー+下記追加メンバーにて進行させていただきます。
なお、現在投票スレで受け付けている質問は夜まで待つ感じですが、
投票スレの質問に該当する上記三作は、こちらのスレで扱うことに致します。

C-239:[[渇望]]:カオスヒーロー(ピサロ):◆jBbT8DDI4U
C-370:[[ヴィランアカデミア]]:爆豪勝己(一方通行)):◆uiAEn7XS/.
C-013:[[No Brake Devils]]:泉井蘭(ティガレックス):◆GOn9rNo1ts
C-169:[[幻影]]:音無小鳥(レラ):◆jBbT8DDI4U
C-041:[[MERMEID HARP]]:琴岡みかげ(Oktavia von Seckendorff):◆KV7BL7iLes
C-015:[[絶対絶望傭兵 ―1999からもう17年―]]:『スコール=レオンハート』(エノシマジュンコ):◆lPwuvrl9Hg
C-148:[[腹を空かせた一匹の蜘蛛へ]]:ラフ・メイカー(ハングリースパイダー):◆qvvXwosbJA

自作も入っており大変恐縮なのですが、以上七作となります、よろしくお願い致します。


448 : 参加者名簿 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/23(月) 12:58:02 Dq1m.mXs0
【アイドルマスターシリーズ】
○市原仁奈/○島村卯月/○前川みく/○千川ちひろ/○多田李衣菜/○音無小鳥

【デュラララ!!】
○那須島隆志/○紀田正臣/○折原臨也/○泉井蘭

【遊☆戯☆王】
○海馬瀬人/○海馬瀬人/○マリク・イシュタール/○バクラ

【真・女神転生if...】
○ザ・ヒーロー/○ロウヒーロー/○狭間偉出夫/○カオスヒーロー

【ジョジョの奇妙な冒険】
○吉良吉影/○ヴァニラ・アイス/○J・P・ポルナレフ

【名探偵コナン】
○ジン/○江戸川コナン

【僕のヒーローアカデミア】
○緑谷出久/○爆豪勝己

【金色のガッシュ!】
○高嶺清麿

【バトル・ロワイアル(映画版)】
○桐山和雄

【HELLSING】
○インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング

【ターミネーター2】
○T-1000

【がっこうぐらし!】
○丈槍由紀

【魔法少女育成計画Limited】
○レイン・ポゥ

【魔法先生ネギま!(アニメ版)】
○ネギ・スプリングフィールド

【アカツキ電光戦記】
○アカツキ

【嘘喰い】
○斑目貘

【プレデター】
○プレデター

【クレヨンしんちゃん】
○野原しんのすけ

【BLACK LAGOON】
○レヴィ

【咲-Saki-】
○愛宕洋榎

【MELTY BLOOD Actress Again】
○弓塚さつき

【ななしのアステリズム】
○琴岡みかげ

【FINAL FANTASY8】
○スコール=レオンハート

【楽曲出展】
○ラフ・メイカー


449 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/23(月) 13:17:25 Dq1m.mXs0
あ、海馬についてなんですが、前々から告知していたとおり、二人で行きます。
ペルソナとかでも「もうひとりの自分」とかいるので、本編での描写を重視しながら、行きたいな、と。
便宜上、状態表に(A)(B)をつけようと思います。(エネミーコントローラみたいっすね)


450 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/23(月) 13:20:34 Dq1m.mXs0
予約解禁日については、追々公表します。
また、基本ルールについても少々変更されていますので、よろしくお願い致します。
それと、下記ルールを追加しております。

・魔人について
会場内にて、まれに悪魔より強力な"魔人"が出現します。
この魔人に関しては、女神転生シリーズ以外の出展を許可します。
ただし、いかなる手段を用いても仲間にすることは許可しません。
状態表の明記も禁止します。
扱い的には、通り魔的にふらっと現れて、ふらっと去っていく(もしくは討伐する、される)という感じでお願いします。


451 : 名無しさん :2016/05/23(月) 13:22:14 pgvnSztE0
名簿見るとまるでジンニキが主役みたいで草


452 : 名無しさん :2016/05/23(月) 14:39:32 yMzkWXwQ0
ライバル勢ぞろいで重複して出てる奴もいんのに遊戯不参加は流石に草


453 : 名無しさん :2016/05/23(月) 14:39:36 8WpcUtl.O
本編開始にあたり一つ質問なのですが、マッカを支払うことによる追加召喚、及び野良悪魔については、やはり女神転生シリーズの悪魔限定でしょうか?
もし他に追加召喚可能な悪魔などありましたらそちらも教えてもらえると嬉しいです


454 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/23(月) 14:49:01 Dq1m.mXs0
>>453
その認識でお願いします。
ただし、他サマナーから譲渡、ルートした悪魔に関してはその限りではありません(要マッカ)


455 : 名無しさん :2016/05/23(月) 14:51:01 /eRCnU.60
出来ればでいいですけど、把握資料一覧が欲しいです。
正直結構知らない作品あるので


456 : 名無しさん :2016/05/23(月) 15:59:13 DhEhOStU0
>>455
今日どうする?


457 : 名無しさん :2016/05/23(月) 16:02:18 9/u84ddM0
魔人の出展はフリーなんですかね?参加作品以外から持ってくるのは無し?


458 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/23(月) 16:08:06 Dq1m.mXs0
>>457
悪魔合体と同じで、女神転生キャラなら基本的にOK、
他出展作品の場合、出来る限り理由付けをお願い致します。(参戦作品内でも)


459 : 名無しさん :2016/05/23(月) 16:42:53 9/u84ddM0
了解しました


460 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/23(月) 19:58:40 Dq1m.mXs0
当選作品の通過者の書き手さんにお願いがあります。
Wikiの参加者名簿に、個人ページを作れるようにリンクを貼っておきました。
自作の登場キャラの解説などをそこに追記していただけると幸いです。
サンプルとして、以前自ロワで使っていた「アカツキ」の項目を転記しておきました。


461 : ◆TE.qT1WkJA :2016/05/23(月) 20:15:46 Zf97mGs.0
>>1
wiki編集、投票集計等本当にお疲れ様です。

そして拙作『覚醒 -Again-』に投票してくださった皆さま、本当にありがとうございます。
『覚醒 -Again-』内でアカツキの支給品に不明支給品が含まれていたのですが、既に電光機関及び電光被服というれっきとした武装が装備済みですので、
アカツキの状態表にあった不明支給品をこちらで削除しておきましたことを報告しておきます。


462 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/23(月) 21:40:34 Dq1m.mXs0
Wiki各種整備、および現在地ツールの編集を済ませておきました。

また、落ち着くまでは本スレではなく、予約スレで予約に対応しておきたいと思います。
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/5008/1464007053/

解禁日は5/28(土) 00:00:00です。よろしくお願い致します。


463 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/23(月) 21:43:21 Dq1m.mXs0
あ、あと初期悪魔の解説ですが、サマナーのページに纏めておいていただけるとありがたいです。


464 : 名無しさん :2016/05/23(月) 21:51:59 Gvlmvu0M0
海馬二人で押し通すのきらいじゃないわw


465 : 名無しさん :2016/05/23(月) 22:59:04 OSFAxsDk0
本命のアテムがいないのもなんか海馬っぽいな


466 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/23(月) 23:04:17 BMTzUJj.0
一応こちらにも。
惜しくも落選となってしまった8〜10票の作品で名簿を作って別スレを建てました。

サマナーズ・バトルロワイアルif...
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1464009860/

こちらのスレも含め、両スレ共々よろしくお願いいたします。


467 : ◆i9L4GKxxpw :2016/05/28(土) 00:00:05 UibkzVpQ0
丈槍由紀、斑目貘 予約します。


468 : ◆i9L4GKxxpw :2016/05/28(土) 00:01:17 UibkzVpQ0
すみません、場所を間違えました


469 : ◆wKs3a28q6Q :2016/05/28(土) 01:48:29 2yHxZ.D20
投下させて頂きます


470 : カイバー&ドラゴン  ◆wKs3a28q6Q :2016/05/28(土) 01:49:50 2yHxZ.D20

「ほう……なかなか面白いことをしてくれるじゃないか」

ふうん、と尊大に鼻を鳴らして、海馬瀬人が向かい合う男に一瞥をくれた。
相対するは海馬瀬人。
何を言っているのだか分からないだろうが、海馬瀬人は、海馬瀬人と向き合っていた。

「感じるぞ……貴様は間違いなく“海馬瀬人”だ」

相対する海馬瀬人も、尊大に鼻を鳴らす。
海馬瀬人の持つ圧倒的カリスマ性や利益の大きさを掠め取ろうと、今まで数多のナンチャッテ海馬瀬人が現れてきた。
その度に、あまりにチープなその偽物を蔑みながら処分してきた海馬瀬人にだからこそ分かる。

目の前に居るのは、間違いなく自分と同じく海馬瀬人だ、と。

少なくとも、どこぞの馬の骨の変装の類ではない。
そのことを、海馬瀬人も海馬瀬人も言葉ではなく心で理解していた。
ちなみに上の一文は誤字ではなく、『AもBも理解していたと』いう意味での、『海馬瀬人も海馬瀬人も言葉ではなく心で理解していた』である。

「だが、オレこそが海馬瀬人であるということは、他ならぬこのオレ自身がよく分かっている」

そりゃあ勿論そうである。
どれだけ自分と同じ存在が目の前に現れたとしても、「うわちゃー、目の前の本物っぽいし、ってことはオレが偽物ってことですやんこれ」なんて思う奴はいない。
例え目の前にいる海馬瀬人がどれほど海馬瀬人だとしても、目の前にいないむしろ目の方と言ってもいい海馬瀬人が海馬瀬人ではないということにはならない。
一体何を言っているのか分かりにくい人は、上記の一文は見なかったことにしてもいい。

「貴様の正体は、分かっている」
「ふん、当然だな」

にやりと海馬瀬人が笑う。
それに呼応するように、海馬瀬人も笑みを作った。
そして、二人同時に声を張り上げる。

「「貴様は――――もう“一人のオレ”だッ!」」

そりゃそうだろう、と思う読者もいるかも知れない。
しかし、海馬瀬人にとっては、『もう一人のオレ』とは単なるドッペルゲンガーを指す言葉ではないのだ。
『もう一人のボク』と言えば、勘のいい読者ならば、何が言いたいのか分かって頂けるかもしれない。

「よもや実体化した状態でいきなり現れるとはな」

海馬瀬人は知っている。海馬瀬人も知っている。
“もう一人の自分”が存在するという前例を。
“もう一人の自分”と対話をしていた人物を。
海馬瀬人と海馬瀬人が全てを賭けて倒そうとしている男こそ、その“もう一人の自分”なのだから。

「遊戯のように人格までは変わらない、か」

武藤遊戯。
海馬瀬人にとって、何物にも代えがたい宿敵の名。
いや――正確には、その宿敵をその身に宿していた“器”、言うならば表人格の名前。
宿敵・アテムは、武藤遊戯の“もう一人の自分”として、常に遊戯の中に居た。
彼らが入れ替わった時には誰もが違和感を覚えるくらい、その人格には隔たりがある。
しかし――どうやらこの海馬瀬人と海馬瀬人のケースにおいては、人格はまるっきり同じであるらしい。


471 : カイバー&ドラゴン  ◆wKs3a28q6Q :2016/05/28(土) 01:53:16 2yHxZ.D20

「当然。オレはオレだ。例えそれがもう一人の自分であろうと、海馬瀬人の人格がオレ以外であるはずがない」
「分かっているじゃないか、もう一人のオレよ。いや、遊戯に倣うなら、闇海馬とでも言うべきか」

海馬瀬人の言葉に、海馬瀬人の眉間に皺が寄る。
海馬瀬人ならそうするであろうと、言った張本人である海馬瀬人にも分かっていた。
それでもなお言ったのは、海馬瀬人としてのプライド故であろう。

「ほう、裏人格のオレはジョークの才に恵まれているようだな。このオレの方が裏人格などと戯けたことを」

当然、こうなる。
プライドの塊のような男が2人いるのだ。そりゃあこうなる。
こうなると分かっていようが分かっていまいが、海馬瀬人と海馬瀬人が出会ったらそりゃこうなるのだ。

「貴様こそ、自惚れの才能だけはこのオレを凌駕しているらしい。よもや貴様、自分が表人格のつもりではないだろうな」

一見ふざけているようだが、海馬瀬人も海馬瀬人も大真面目である。
何せコイツら、引くということを知らない。
王将のくせして全速前進しか知らない男なのだ。
実質歩やんけってくらい、愚直なほどに全速前進野郎なのだ。

「これを見ても、同じ台詞を吐けるか、もう一人のオレよ!」

互いに譲らぬ『表はオレだ』論争(正直クソほどどうでもいいし、どっちだろうとロワには何の影響もない。勿論)は、ヒートアップしていく。
負けず嫌いの海馬瀬人は、て早々に切り札を切った。
海馬瀬人に対し、自分の圧倒的海馬瀬人具合を見せつけるために。
俺の力を誇示するように、満面の笑みで、愛する妻を自慢するかのようにして、己の悪魔を召喚する。

「ぶ……青眼の白龍ッ!」

召喚した海馬瀬人よりも大きな声を、見せつけられた海馬瀬人が上げることになる。
その目は驚愕に染まっている。
そして、見る見る内に、怒りの色に染まっていった。

「あの男! どれだけ俺を愚弄すれば(この先の台詞は全部登場話でやったので省略させて頂きます)」
「全く巫山戯た話だ。青眼の白龍をこんな巫山戯たことに用いるなど、絶対に許してはならない」

数刻前の自分と同じキレ方をする海馬瀬人を見ながら、海馬瀬人が吐き捨てるように言葉を続ける。

「あの男には、然るべき報いを受けさせる必要がある」

青眼の白龍が殺し合いの駒になることに対しては、本当に心底怒りを感じている。
それはもうキレまくっている。
USA For Africaでも「いや、お前が同じチルドレンなわけがねえし、仮にお前が同じチルドレンな世界なら滅んでいいわ」とUSA For Americaに鞍替えして核ミサイルの発射ボタンで16連射試みるレベルのキレ具合である。

「そのためなら――オレは青眼の白龍を悪魔として使役するだろう」

しかし、それはそれとして、海馬瀬人は青眼の白龍を使役する。
駒とされることに憤りは感じているが、それが目的達成のために必要とあらば、海馬瀬人はやるのだ。
かつて武藤双六の青眼の白龍を破り捨てたように。
かつて銃撃を逃れるため、青眼の白龍のカードに傷をつけたように。
完全勝利のためならば、海馬瀬人は手段を選ばない。

「そしてこの殺し合いを破壊し、奴の技術を奪い――――オレは“ヤツ”と決着を付けるッ!」

そう言って、海馬瀬人は天を高々と指差した。
海馬瀬人の言う“ヤツ”が誰を指しているのか、海馬瀬人に分からぬはずがなかった。
“ヤツ”と決着がついていないと思っているのは海馬瀬人だけなのだが、それはそれとして分からぬはずがなかった。


472 : カイバー&ドラゴン  ◆wKs3a28q6Q :2016/05/28(土) 01:57:39 2yHxZ.D20

「やはり考えることは同じのようだな、もう一人のオレよッ!」

そう言うと、今度は海馬瀬人がCOMPへと手を伸ばす。
海馬瀬人のターン、ドロー! 悪魔を守備表示で召喚!
……勿論、ここで召喚した海馬瀬人とは青眼の白龍を召喚していない方の海馬瀬人だし、召喚されたのは巴マミである。
ターン制カードバトルなんですから、相手のターンで召喚するなんてありえませんよ、初期海馬瀬人じゃないんだから。

「これがオレのモンスター、巴マミだ」
「ふぅん、時の魔術師で老化させればイチコロだな」
「ま、魔法少女は永遠の少女なんだけど……というか、どういう状況なのかしら、これは」

青眼の白龍を召喚した海馬瀬人は、青眼の白龍を従える自分こそ、海馬瀬人の表人格だと思っている。
当然だ、何せ青眼の白龍と言えば海馬瀬人、海馬瀬人と言えば青眼の白龍という程である。
とても他人から強奪したとは思えないほどの絆で結ばれており、青眼の白龍を従えられるのは海馬瀬人以外にありえない。
よって、青眼の白龍を従えていることこそ、自分が表人格であるという証明になるのだ。

「頂点に立つ者ならば、多少女を侍らせている必要はあるかもしれん。だが――どんな女とて、青眼の白龍の美しさには敵うまい」
「呼びだされて早々、何か散々な言われ方なのだけど……」
「そこはオレも否定しようがない。今、青眼の白龍を従えている貴様は、どんな美女を侍らす男よりも勝利者だ」
「少しくらい、フォローという名のコミュニケーションをしてもバチは当たらないと思うのだけれど」

歯噛みして、巴マミを召喚した海馬瀬人が青眼の白龍を見上げる。
認めるしかあるまい。
今の時点で、青眼の白龍が認めし“海馬瀬人”は、自分ではないと。

「さすがはもう一人のオレ、闇人格とでも言うべきか。よもやオレ以上に青眼の白龍を従えるとはな……」

しかし――だからこそ、巴マミを召喚した海馬瀬人は考える。
青眼の白龍に現在選ばれていない自分こそ、海馬瀬人の表人格だと。

「元よりゲームの才がある表遊戯を遥かに凌ぐ存在として、闇遊戯は現れた……
 このオレを凌ぐ青眼の白龍使いとして、貴様が現れたようにッ!」

裏人格だからこそ、突如現れた“もう一人の自分”だからこそ、現時点で優れていて当然なのだ。
そうでなくては、わざわざもう一人の自分が存在する意味が無い。
奴は、自分が乗り越えるための壁として存在する、今の自分よりちょっとだけ優れた海馬瀬人なのだ。

「ほう、青眼の白龍に見放されてなお、己を表人格だと言い張るのか」
「貴様こそ、後から生み出された乗り越えられるべき壁の分際で表人格を名乗るとはな」

海馬瀬人は、目の前にいる海馬瀬人を認めている。
目の前の海馬瀬人がきちんと海馬瀬人であるが故に、その手腕は間違いないだろうと思っている。
勿論、最終的に優れているのは自分の方だと確信しているが、それでも相手のことを認めてはいた。
だからこそ――2人の胸には、狂気めいた喜びの感情があった。

「「クク……ククク……ハーーーッハッハッハ!!」」

そして――2人の海馬瀬人は、同時に笑い声を上げる。
傲慢で、そして心底楽しそうな高笑いを。

「「それでこそ、それでこそオレの最後の壁に相応しいッ!」」

海馬瀬人は知っている。
武藤遊戯が、闇遊戯を通じて成長し、最後にはアテムに匹敵するデュエリストになったことを。

海馬瀬人は知っている。
闇の人格が、表人格を大いに成長させたケースを。

「ヤツとの決着――そのための前哨戦に相応しい相手だッ」
「感謝するぞッ! 今のオレは、ヤツに負ける気すらしなかったからなッ」

海馬瀬人は思っていた。
今の自分なら、武藤遊戯に遅れを取ることはないと。
今の自分に勝てる者が入るとすれば――それは自分自身に他ならないと。

「「オレはここで、オレを越えるッッ!!」」

そして――実現したのだ。
自分に勝てる可能性がある自分と、真っ向から勝負することが出来る場が。
限界まで強くなったと思われていた自分自身を、更に高みへ押し上げることが出来る可能性が大いにある。
自分を真っ向から叩き潰して成長できる――そんなチャンスが、宿命の対決の前に転がり込んできたのだ。
それだけで、海馬瀬人の胸は嫌でも高鳴ってくる。


473 : カイバー&ドラゴン  ◆wKs3a28q6Q :2016/05/28(土) 02:01:57 2yHxZ.D20

「見ているがいい。この“闇のゲーム”をうち破るオレの姿をッ!」
「ふぅん。貴様こそ、このオレのプレイングの前にひれ伏すがいい」

生憎ここに、デュエルモンスターズは無い。
あったとしても、まるで同じ“海馬瀬人”同士が戦っても、決着など付くまい。

だからこそ、バトルロワイアル。
だからこそ、殺し合いという闇のゲーム。

海馬瀬人がゲームの破壊を目論んでいることくらい、言われずとも海馬瀬人には理解できる。
だからこそ――海馬瀬人と海馬瀬人の勝負も成立するのだ。

「「この殺し合いを止めるのはオレだッ」」

どちらが、殺し合いを止めるのか。
そんな闇のゲームで、海馬瀬人と海馬瀬人は激突する。

例え同じ人物であっても、向かう先が異なって、なおかつ従える悪魔が違えば、必ず結果も異なる。
どちらがゲーマーとして優れているか、またどちらが頂点に立つに相応しいのか、それで全てが分かるのだ。

「行くぞ、青眼。この殺し合いを粉砕するッ」
「オレに屈するまでの間、精々青眼を愛でているがいい。行くぞッ」
「ちょ、待っ……!」

真逆の方向を向いて、海馬瀬人と海馬瀬人は歩き出す。
彼らの辞書に、引き返すという言葉はない。
ただ全速前進あるのみ。

(クビを洗って待っていろ、闇海馬。そして、遊戯――――ッ!)

海馬瀬人には知る由もないことだが――
表遊戯が闇遊戯を通じて成長したように、闇遊戯もまた、多くの人間と関わり成長してきた。
海馬瀬人もまた、多くの人間と関わることで、成長する可能性を秘めている。
何ももう一人の自分だけが成長促進剤ではない。
最後の戦いを前に己を高めようとし、真剣に“ゲーム”に挑む姿は、何らかの影響をもたらすであろう。

(勝つのは――オレだッ!)

同じ人物である海馬瀬人は、これまで丸っきり同じであった。
しかし――ここから先は、そうはならない。
海馬瀬人は、それぞれ異なる従者を伴う。
ここから先、出会う人間は変わってくる。

従者が、出会いが、海馬瀬人を少しづつ変えていく。
そうして2人の同じ海馬瀬人は、別の海馬瀬人となるのだ。
彼らはもう、決して同じ海馬瀬人には戻れない。
何せ彼らは、絶対に引き返すことをしない、全速前進馬鹿だから。
一度軌道がズレ始めたら、そこからはもう勝手に己の道を行くだけだ。

――こうして、同じ人物である『海馬瀬人と海馬瀬人』は、『海馬瀬人Aと海馬瀬人B』という別人への道を歩み出した。
闇のゲームを破壊しもう一人の自分に勝利して、宿命のライバルと決着をつけるために。



【新宿・都庁前/1日目/朝】
【海馬瀬人(A)@遊戯王(原作漫画版)】
[状態]:健康
[装備]:COMP(腕部装着型コンピューター。デザインは劇場版「THE DARK SIDE OF DIMENTIONS」のものに似る)
[道具]:基本支給品、確認済み支給品(1)
[所持マッカ]:25000
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない。もう一人の自分より先に魔神皇を倒し、死者蘇生の秘法を奪い取る
[COMP]
1:巴マミ@魔法少女まどか☆マギカ
[種族]:魔女
[状態]:健康


【海馬瀬人(B)@遊☆戯☆王】
[状態]:健康
[装備]:携帯電話型COMP
[道具]:基本支給品、確認済み支給品
[所持マッカ]:25000
[思考・状況]
基本:もう一人の自分より先に魔神皇を倒し、殺し合いを粉砕する
[COMP]
1:青眼の白龍@遊☆戯☆王
[種族]:聖獣
[状態]:健康



※海馬瀬人が勝手に盛り上がっているだけで、別に海馬瀬人の闇人格が千年アイテム云々で分裂したとは決まっていません


474 : カイバー&ドラゴン  ◆wKs3a28q6Q :2016/05/28(土) 02:02:07 2yHxZ.D20
透華終了です


475 : 名無しさん :2016/05/28(土) 02:21:59 ntMsWN/Y0
投下乙です。

二人揃って勝手に盛り上がるのやめーや
W社長の声が脳内再生余裕なのも相まってもう笑うしかねぇw
話についていけず一人置いてきぼりなマミさんカワイイ


476 : ◆TAEv0TJMEI :2016/05/28(土) 02:30:48 9ElQP7160
投下おつー

海馬瀬人 という文字がゲシュタルト崩壊していて地の文読むだけで笑ったw
なるほど、海馬たちはそういうふうに解釈したかw>表闇
王様にこだわってる海馬だからこその発想に納得すると同時に自分が表だと譲らない我の強さがらしい
ブルーアイズを前にしてまで自分がブルーアイズを従えていないからこそ表だと言えるのも一周回ってすげえ

そんな海馬瀬人(A)を予約します。
ルールを見たところ即リレー予約禁止とは書いていなかったのですがよろしいでしょうか?


477 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/28(土) 02:33:22 YwObpEL20
投下乙です!
うーんこの元気なパペットマペット、どこまでも盲目だし、突き進むなあ。
もう一人の自分というものによく触れている、海馬ならではの話ですね。
マミさんのストレスが少し心配……w

>>476
即予約は大丈夫なのですが、暫くの間予約は予約スレでお願いします。


478 : ◆TAEv0TJMEI :2016/05/28(土) 02:39:29 9ElQP7160
>>477
申し訳ありません。
感想と一緒にこちらに書いてしまいました。
改めて向こうで予約しなおしておきます。


479 : 名無しさん :2016/05/28(土) 03:47:18 jWdpmmsU0
投下乙です
しょっぱなから勝手に盛り上がる社長は面白すぎる
マミさんは不憫(確信)


480 : ◆i9L4GKxxpw :2016/05/28(土) 12:56:24 UibkzVpQ0
投下お疲れ様です。
うーんこの自分論争、不毛過ぎる……w
いちいち地の文で笑わせに来るのは本当に卑怯だと思います。
マミさんがアウェーすぎて笑う。

自分も投下します。


481 : コンクリート・ジャングルに嵐を呼べ ◆i9L4GKxxpw :2016/05/28(土) 12:57:08 UibkzVpQ0



 『げんそう』





482 : コンクリート・ジャングルに嵐を呼べ ◆i9L4GKxxpw :2016/05/28(土) 12:57:40 UibkzVpQ0

  永遠などというものは、この世にない。
  産声をあげて生まれてきた者は、等しくいつか死ぬ。
  人も、犬も、夢も、日々も。
  ずっと続くと思っていた景色は、音もなく崩れて消え去った。
  がっこうは、もうない。少なくとも、ゆきの周りには、ない。

  目の前に広がっている景色は、茫漠と広がるコンクリート・ジャングルであった。
  ゆきの街、巡ヶ丘市は決して田舎ではなかったが、それでも、これほど栄えちゃいなかった。
  
 「なんだか寂しいね、めぐねえ」

  開発による発展の甲斐あって、きっと普段はさぞかし賑やかな顔をした街だったのだろう。
  しかしどんな未来都市も、結局は人間ありきのものだ。
  そこに住まう者を一人残らず取り除いたなら、残るのはただ無味乾燥とした、巨大な人工物の並ぶ林でしかない。
  コンクリート・ジャングルとは、まさに言い得て妙の表現だった。
  もしもあんなことが起きずに学生生活を続けていたのなら、ゆきも、ひょっとすると修学旅行なり何なりの行事で此処を訪れていたかもしれない。
  あったかもしれない、しかしもうあり得ない可能性のひとつ。
  その可能性を辿ったゆきはきっと、寂しいなんて感情は抱かず、めいっぱい首都の発展を満喫していたのだろうと思うと、彼女の悪魔は心が痛む思いになった。
  
  雲間から差し込む光は温かいのにどこか空寒い。
  これを「虚ろ」と表現するだけの語彙力は、どうやらゆきにはなかったようだ。
  彼女の後ろを、まさに引率の先生らしく付いて歩く悪魔。
  幻想・めぐねえは胸中にてその言葉を思い浮かべたが、口に出して教授しようとはしなかった。
  佐倉慈は現代国文の教師だった。
  うら若い新任とはいえ、国語を教える身として、人並より幾らか上程度の表現力は備えている。
  けれど、此処はがっこうではない。更に言うなら、此処に居るのは、佐倉慈でもない。
  ゆきが見る彼女は、過去の幻想、最後の先生。――つまり、「めぐねえ」なのだ。


483 : コンクリート・ジャングルに嵐を呼べ ◆i9L4GKxxpw :2016/05/28(土) 12:58:34 UibkzVpQ0

  佐倉先生と呼びなさいと、訂正する機会はもうないだろう。
  今のゆきに必要なのは、眠たい授業と苦手な勉強を強いる佐倉慈ではない。
  彼女を一人にしない、不安な時に抱き締めてあげられる、学園生活部の一人だった。
  奪い取られた日常の最後の一ピース。
  彼女が大好きだったがっこうの風景(ふれんど)。
  そういう意味では、丈槍ゆきの願いと、佐倉慈の優しさから生まれた「幻想」は、この会場に存在する全ての悪魔の中でも、一際特異な存在と言っていいだろう。
  もっとも、その真の特異性を――ゆきが知ることだけは、決してない。

 「走っちゃダメよ、ゆきちゃん。危ない人が出てきたらどうするの」
 「あう」
 「まずは……そうね。どこか、建物の中にでも入るのがいいと思うわ」
 「建物? でも、いっぱいあるよ?」
 
  「めぐねえ」の判断はごくごく真っ当なもので、悪く言えば凡庸なものでもあった。
  外での接敵を危惧して、屋根と壁に囲まれた室内へ逃げ込もうとする者は多分、少なくない。
  そうなってくると当初の人と会わないという目的が破綻するのは避けられないが、しかし室内であれば、隠れる場所ややり過ごす手段が幾らでも出てくるのは確かだ。
  ましてゆきは体格があまり大きくない。隠れる気になれば、色々な所に身を潜められるだろう。
  本当に彼女の精神状態を考慮するなら、学校があってくれればよかったのだが。

 「ゆきちゃんの好きなところでいいわよ。デパートでも、電気屋さんでも、どこでもね」
 
  そう言って「めぐねえ」がゆきの頭を帽子越しに少し撫でると、彼女は仔猫がそうするように、こそばゆそうに目を細めてみせた。
  なまじ髪の色が似ているものだから、見ようによっては姉妹、下手をすれば親子にも見える。
  
 「誰もいない電気屋さんって、どんな風なんだろ?」
 「さあ、どうかしらね」
 「気になる……あ、でもデパートも捨てがたい……」


  ううむ……なんて、頭を抱えて悩む姿はとても殺し合いの中の一幕には見えない。
  それから三分ほどたっぷり悩んだ後、結局ゆきが目指すことにした先はデパートだった。
  何とかして通行人の目を引こうと飾り立てられた外装を見るに、オープンして間もないらしい。
  無論殺し合いには関係のないことだが、やはりオープンしたての店に入るのはわくわくする。
  ゆきだけでなく、「めぐねえ」もそれは同じだった。
  場違いにも程がある庶民的感情が、悪魔になっても消えていないことが何だかおかしくて、「めぐねえ」は一人でくすりと笑う。
  其れを見たゆきも、にぱっと華が咲くように笑った。


484 : コンクリート・ジャングルに嵐を呼べ ◆i9L4GKxxpw :2016/05/28(土) 13:00:09 UibkzVpQ0



 
 「わー、すごい! 立派だね!!」

  中は、見事なものだった。
  店内も派手に装飾され、一つのパーティー会場のような様相を呈している。
  買い物客を出迎える軽快な音色はなかったが、それでも十分に賑やかで明るい場所だ。本物の東京にもこの建物があるのだとしたら、今頃はきっと大賑わいでてんやわんやとしていることだろう。
  「めぐねえ」がまずは生活用品や各種道具を補充しておくべきだと進言しようとした頃には、ゆきは既に一目散にお菓子コーナーへと走って行ってしまっていた。
  
 「あっ、ちょっ、待ちなさいゆきちゃん!!」
 「うわ〜〜、すごい! いっぱいあるよ、がっこうの売店よりずっとたくさん!!」

  お菓子や玩具といった、子供が喜ぶようなものにゆきはとにかく目がない。
  彼女が暮らしていたがっこうにも売店はあり、今思えば明らかに過剰な――何かが起こることを見越していたかのような――品揃えの豊富さを誇っていたが、やはりデパートはレベルが違う。
  普段は滅多にお目にかかれないようなちょっとお高いお菓子から、おなじみの駄菓子まで。
  所狭しと並んだ空間は、お菓子好きの彼女にしてみればまさに夢の様な場所だった。
  片っ端から持って行こうとするゆきを窘めて、「めぐねえ」が買い物袋を持ってくる。
  ……いよいよ本当に、休日の買い物らしくなってきた。

 「わ、うんまい棒だ! これ、くるみちゃんやみーくんも好きなんだよ!」

  くるみちゃんとみーくんとは、ゆきが所属している部活、学園生活部の部員だ。
  幸運にもこの会場には呼ばれていない、ゆきと「めぐねえ」の大切な仲間である。
  「めぐねえ」は本来、ゆきが言うところのみーくんとは直接会ったことはない。
  しかし悪魔として呼び出された彼女は、ゆきが描いた幻想の「めぐねえ」の要素も含んでいる。
  だから、知らないはずのことも知っているのだ。
  ゆきとある程度までの記憶を共有しているといえば、きっと分かりやすいだろう。

 「もう……いい、ゆきちゃん? これはね、学園生活部の活動と同じなのよ?」
 「ふえ?」
 「節操なくたくさん物を持って帰ろうとしたら、若狭さんに怒られるでしょ? それとおんなじ」
 「う……」

  思い当たる節があったのか、ゆきは渋々戻すお菓子の選別作業に入った。
  どれも捨てがたいようだが、涙を呑んでいくつかを戻していく。
  そう、これは学園生活部が普段臨んでいる状況と、何も変わらない。
  夜に不必要に出歩いてはいけない。生活に必要な物は、節度を守って利用する。
  一人での行動はなるべく避ける。だから部員はみんな、一人じゃない。


485 : コンクリート・ジャングルに嵐を呼べ ◆i9L4GKxxpw :2016/05/28(土) 13:01:15 UibkzVpQ0
  
 「エレベーターは……多分動いてないわね、この様子だと。
  デパートっていうんだからフードコートくらいあるだろうし、もう少し一回を探索したら、そこでひとまず休みましょうか」
 「フードコート!?」
 「言っておくけど、ゆきちゃんが期待してるようなものは出てこないわよ」
 「あぅ」

  期待していたのは、大方ハンバーグあたりだろうか。
  その期待をばっさり切り捨てると、ゆきはがっくりと項垂れた。
  ……のも束の間。彼女の視線は、あるお菓子を前に釘付けになる。

 「――あ、見て見て、めぐねえ! チョコビ!」
 「チョコビ……?」

  「めぐねえ」は聞いたことのないお菓子の名前だったが、ゆきの様子を見るに、それなりに知名度のあるお菓子ではあるようだった。
  それも彼女は、そのチョコビとやらが結構な好物らしい。
  見ると、なんてことはない、どこにでもありそうなお菓子だ。
  緑色を基調としたパッケージにショッキングピンクの体色をしたコミカルな怪獣が載っている。
  成程確かに、子供が好きそうな見た目をしていた。
  ……高校三年生のゆきがはしゃぐのは、ちょっとどうかと思わないでもなかったが。

 「がっこうには置いてなかったから、なんだか久しぶりに見るなぁ。えへへ、持ってこ」
 「もう……」

  そう言って二個、三個と手に取るゆき。
  「めぐねえ」は苦笑交じりに、そんな彼女の様子を見つめていた。
  今ひとつ危機感がないのはどうも戴けないが、それでも、消沈されるよりはずっといい。
  彼女はそこにいるだけで、皆を元気にすることが出来る生徒だった。
  学園生活部が発足する前はクラスでも浮き気味だったその個性が、あの極限状況の中で、一寸先も分からないような暗闇の中に瞬く安らぎの光へと姿を変えたのを、「めぐねえ」は知っている。
  いわば彼女は、まさしく太陽のような少女なのだ。
  優しく明るく暖かく――暗い所に居るべきではない、光の中で生きるべき少女。

 「めぐねえ? どしたの?」
 「ううん、なんでもないわ」
 
  彼女だけは、絶対に守ろう。
  絶対に、この悪夢のようなところから生きて帰そう。
  「めぐねえ」は儚い、都合のいい幻想でしかないが、その想いだけは確たる重さを孕んでいた。
  彼女が生きてこの殺し合いを出られるなら、あの笑顔のある日々に戻れるなら。
  それだけでいい。
  他には何も望まない。
  それが、この悪魔の、幻の全てだった。
  希望でも絶望でもない、切望。
  切に願うのだ、幸福を。
  太陽の、幸福を。
  ゆきが不思議そうに小首を傾げて、それから「めぐねえ」に何かを言おうとした。
  それが何だったのか分かる前に、騒がしい声が、その場に立ち込めていた雰囲気を吹き飛ばす。


486 : コンクリート・ジャングルに嵐を呼べ ◆i9L4GKxxpw :2016/05/28(土) 13:02:08 UibkzVpQ0




 「うおおおおおっ!! チョコビはっけ――――」


  小さな子供だった。
  上が赤で、下が黄色の分かりやすい服。
  身長はとても小さく、おそらくまだ幼稚園すら出てはいないだろう。
  底抜けの明るさが滲み出たまん丸の目は、期待に輝いていた。
  チョコビと口にしていたことから、彼の目当ても、ゆきと同じだったに違いない。
  

 「…………ん…………」

 
  その目が、訝しむように細められた。
  それから、時間が止まったように、少年はその場で動かなくなる。
  死んだわけでは勿論ない。
  生きているが、彼は汗を流していた。冷たい汗だ。
  まるでおかしなものを見るかのように、ゆきを――いや、違う。
  ゆきの後ろを見て、固まっていた。
  その様子に気付いたゆきが、静かに振り向く。
  
 「めぐねえ?」

  そこでは、「めぐねえ」が微笑んでいた。
  でもその顔は、今までに彼女が見せたものとはどこか違う表情だった。
  寂しそうな、悲しそうな――何かを諦めてしまったような、彼女らしくもない表情。
  ゆきは何がなんだか解らなくなって、少年の方へ振り返る。
  少年は、何かを言おうとしていた。
  その口が、「お」とまで、動く。

  ――お? 

  ゆきはやっぱり何がなんだか解らなかったので、彼に直接質問してみることにした。
 
 「ねえ、君。めぐねえがどうかした?」

  別に威圧する風でも、怒った風でもなく、ただ普通にゆきは質問する。
  その時、途中まで何かを言いかけていた少年は、また時が止まったように静止した。
  今度は、「めぐねえ」に対してではなく、ゆきに対して、少年は驚きの目を向けていた。
  やがて。
  少年は沈黙を切り裂いて、大声で叫ぶ。
  フロア一帯に響くような、大声でだ。


487 : コンクリート・ジャングルに嵐を呼べ ◆i9L4GKxxpw :2016/05/28(土) 13:02:48 UibkzVpQ0



 「…………お。大人買いは、よくないゾーーーーー!! チョコビはみんなのものなんだゾ!!」

  視線はゆきから、彼女が抱えているチョコビへと移されていた。
  へ? と呆気に取られるゆきだったが、すぐにその表情はにへらと緩み、「なんだあ」と呟く。
  それから彼女は目線を少年の位置にまで合わせると、チョコビを一箱差し出した。
  
 「チョコビ美味しいよね、私も好きなんだ〜〜」
 「ほ――ほほう。おねいさん、さては気が合いますな?」
 「お、おねいさん……!? 素敵な響き……!!」

  ゆきは、子供っぽい少女だ。
  それでもこれだけ年が離れた相手を前にすると、やはり彼女もまるっきりただの子供ではないのだということが分かる。
  ただ、どこか波長の通ずるものがあるのか、早くも意気投合しかけている辺り、やはり子供っぽいところ自体は変わっていないようだったが。
  ゆきと少年の邂逅から十秒ほど遅れて、慌ただしく駆け込んできた者がいる。
  少年の悪魔。ゆきで言うところの、「めぐねえ」にあたる存在だ。

 「も、もう、しんちゃん! 一人で走って行っちゃダメだってあれほど」

  言ったよね、と言おうとしたところで、やっぱりその表情が固まった。
  「めぐねえ」とゆきを交互に見て、理解できない、といったような顔をしている。
  どうしたんだろう。何か、めぐねえと私の顔に変なものでも付いてるのかな?
  ゆきがもう一度「めぐねえ」を見ると、彼女はやっぱり寂しそうにしていた。
  どうしてそんな顔をするんだろう。せっかく、仲間になれるかもしれない人達に会えたのに。
 
  丈槍由紀だけが、その答えを持っていなかった。
  見せかけの永遠を、彼女だけが抱いていた。
  彼女はまだ、幻想の世界の住人だった。


488 : コンクリート・ジャングルに嵐を呼べ ◆i9L4GKxxpw :2016/05/28(土) 13:03:08 UibkzVpQ0



 『しんじつ』





489 : コンクリート・ジャングルに嵐を呼べ ◆i9L4GKxxpw :2016/05/28(土) 13:04:48 UibkzVpQ0

  
  少年の名前は、野原しんのすけといった。その悪魔は、星野輝子。
  丈槍由紀は自分の悪魔である「めぐねえ」――佐倉慈の紹介を行い、それから由紀は「めぐねえ」の提案ということで、フードコートに行こうと二人を誘った。
  エレベーターはやはり機能しておらず、階段で移動するのを余儀なくされる。
  そうして辿り着いたフードコートでは、「めぐねえ」が由紀に釘を差した通り、上等な食事なんてものはどこにも用意されていなかった。
  あるのは本当に、腰を下ろして休憩できる場所くらいのものだ。
  しかしここは微妙に奥まった場所にあり、周囲から視認されにくいということは、予想外の利点であると言えた。 
  由紀の正面にしんのすけが座り、その隣には輝子。
  慈は、すぐに厨房の方へと行ってしまった。由紀曰く、「何か使えそうなものがないか探してくる」とのことであった。

 「えぇっと、ゆきちゃん……でしたよね」

  意を決したように切り出したのは、輝子だ。
  チョコビを早速開けて食べている由紀は、そうだよ! と元気よく応答する。
  此処に来るまでの間に少しだけ話したが、彼女が高校三年生と聞いた時は驚いた。
  体格の問題もあるが、その幼い言動から、高く見積もっても中学生くらいだろうと思っていた。
  だがそれは、いい。それよりも、輝子は彼女に聞かなければならないことがあった。

 「ゆきちゃんは……その、「めぐねえ」さんの言ってることが分かるんですか?」
 「?」

  質問の意味が分かりかねる、といった風に、由紀は首を傾げた。
  
 「うーんとね、ゆきちゃん。実は私達にはね、「めぐねえ」さんの言葉がよくわからないんです」
 「えっ!? そうなの!?」
 「うん、そうなんです。だからゆきちゃんは、「めぐねえ」さんの言うことがわかるのかなって」
 「私はちゃんと分かるよ。きーちゃん達と会うまでにも、沢山お話してたし」

  きーちゃん、というのは由紀が決めた輝子の愛称だった。
  しんのすけがしんちゃんなのだから、きっこはきーちゃんだね! と、そんな安直さで決められたあだ名である。
  
 「そうなんだ……じゃあ、そういうこと……なのかな」

  輝子は由紀の答えを聞いて、考え込むように口元へ手を当てる。
  
  輝子が最初に由紀の悪魔「佐倉慈」を見た時、咄嗟に感じたのは危険だ。
  これはまずいと、本能的にそう直感した。
  彼女に早まった判断をさせなかったのは、やはり由紀の存在である。
  由紀は視界に入っているだろう慈のことをごく普通に受け入れている様子で、先に彼女を見ていたはずのしんのすけは、由紀に"合わせて"いた。
  子どもとは、時に大人よりずっと聡い判断をする不思議な生き物だ。
  この場はおろか、この会場でも最も幼いしんのすけは、きっとすぐに分かったのだ。
  「めぐねえ」は、きっと怖いものではないということが、分かったのだと輝子は思う。


490 : コンクリート・ジャングルに嵐を呼べ ◆i9L4GKxxpw :2016/05/28(土) 13:05:38 UibkzVpQ0

  輝子が考えるに、佐倉慈と、めぐねえという二つの顔を持つ由紀の悪魔は、悪ではない。
  進んで他人に害を与えるようなことは由紀の様子を見るにしないのだろうし、仮にそういう場面があるとしたら、それは由紀が脅かされている場面に限られるだろう。
  まさに、彼女のための悪魔(まぼろし)。丈槍由紀だけに視える、幻影(あくま)。

 「……ゆきちゃんはさ、めぐねえさんのこと、好き?」
 「え? うん、好きだよ。だってめぐねえは、わたしたち学園生活部の顧問なんだもん」

  学園生活部。
  聞き慣れない言葉が出てきたが、きっと言葉の通りの意味なのだろうと輝子は解釈する。
  学園で、暮らす部活。一体どんな活動なのか想像もつかないが、由紀はそこに所属していて、佐倉慈はかつてそこの顧問だった。
  いや――ある意味では、今も、なのか。

 「そっか。……なら、いいや」

  佐倉慈は、悪いものではない。
  由紀を守る、幻影だ。
  彼女というサマナーに呼ばれた、悪魔だ。
  そして、もしも彼女達の中に悪いものがあるとすれば。

  それはきっと、…………。

 「あ、めぐねえが戻ってきた! おーい、こっちだよ、めぐねえ!!」

  由紀が手を振ると、慈はゆらゆらとした足取りでこちらへ近付いてくる。
  不思議と、もう怖いとは感じない。
  隣を見ると、しんのすけも同じのようだった。
  
 「慈おねいさん、おつかれさマンボ〜〜!」

  陽気に片手を挙げて、彼は「慈おねいさん」と呼んだ。
  野原しんのすけは美女に弱い。
  「めぐねえ」が見えていたなら、彼はきっと飛びついていただろう。
  しかししんのすけに見えるのは、「佐倉慈」だ。
  人の面影など捨て去って、足取りはまさに幽鬼のようで、言葉すらろくに発しない、■■だ。
  それでも、彼は慈を人だと認めたかのように、おねいさんと呼んだ。
  それを見て少し頬を緩め、輝子も、「お疲れ様です、慈先生」と言った。

  慈は、答えない。
  幻を見られないしんのすけと輝子には、彼女の言葉を理解できない。
  だから、由紀だけがそれを聞いていた。

 「……ありがとう、しんちゃん、星野さん」

  嬉しそうにはにかんで、新しい仲間にお礼を言う、「めぐねえ」の声を。


491 : コンクリート・ジャングルに嵐を呼べ ◆i9L4GKxxpw :2016/05/28(土) 13:06:33 UibkzVpQ0



  ……あの日。某県、巡ヶ丘市にて発生したパンデミック騒動は、隠蔽されなかった。
  死力を尽くして街の外への拡大だけは防がれていたが、街一個が事実上滅亡したほどの大事態を丸ごと隠蔽するなど、この情報化社会では不可能だったのだ。
  マスコミはこぞって話題に取り上げ、ワイドショーでは散々語り尽くされた。
  この会場に呼ばれている参加者たちも、しんのすけほど幼いか、もしくはよほど世間に対して無頓着でない限りは、巡ヶ丘市の名を聞いただけでピンと来るに違いない。
  ――丈槍由紀は、隔絶された永遠の住人だった。巡ヶ丘市という世界の、巡ヶ丘学院高等学校という国で暮らす、永遠の住人だった。
  けれど永遠は破られ、時計の針は進む。
  どれだけ楽しい学校生活も、永遠には続かない。いつか必ず、卒業がやって来る。

  丈槍由紀の止まったままの時計も、いつかは動き出さなければならない。
  夢の終わりは、やって来なければならない。
  佐倉慈という存在の生涯が、未完であってはならない。
  恩師と別れる時も、遠くはない。
  
  幻想は想う。
  幻想は願う。  

  彼女がこうなったのは、私の罪だ。
  丈槍由紀の時間は、あの日から止まってしまった。
  だけど私は無力だから、もうあの子を引きずり出してあげることは出来ない。
  ただ寄り添って、一人じゃないよと言ってあげることしか出来ない。
  私にできることは、あまりに少ない。
  でも、もし、幻想ではなく現実の誰かが、あの子の世界に現れてくれるなら――

  ……嵐を呼んでほしい。
  どうか、あの子の全てを吹き飛ばしてほしい。
  そしてあの子がこの殺し合いを出て、あの学校をいつか皆と笑顔で出られるのなら。
  そのためなら、私はどうなってもいい。
  

  私は、そのために生きている。



【渋谷・デパート(三階・フードコート)/1日目/朝】
 
【丈槍由紀@がっこうぐらし!】
[状態]:健康、
[装備]:COMP(スマートフォン型)
[道具]:基本支給品、確認済み支給品、お菓子(デパートで調達)
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:ひとりはいや、帰りたい
1:しんちゃんと、きーちゃんと頑張りたい
[COMP]
1:佐倉慈(めぐねえ)@がっこうぐらし!
[種族]:幻想
[状態]:健康

【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康
[装備]:COMP(マラカス型)
[道具]:支給品一式
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:おねいさん(輝子)とデートする
1:賑やかになってきたゾ!
[備考]:殺し合いについてはよく理解していません。
[COMP]
1:星野輝子@コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜
[種族]:魔女
[状態]:健康、魔女っ娘姿
※サポートキャラのウルは装備品扱いです。


492 : ◆i9L4GKxxpw :2016/05/28(土) 13:07:08 UibkzVpQ0
以上で投下を終了します。
何かあればお願いします。


493 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/28(土) 13:16:43 QXmt9Hnk0
投下乙です!

おおう、もう……なんていうか、出会ったのがしんちゃんで良かった……
子供だから、という視点には驚かされました。
しんちゃんはゆきちゃんの嵐になれるんでしょうか……

あと、投下して頂いてる皆さんにお願いばかりで申し訳ないのですが、
投下完了時に現在地だけでも編集していただけると助かります〜
地図ページにCGIの編集方法は載せてます
(基本的にキャラの名前をドラッグして移動させて、現在位置を保存、ってするだけです。)

さて、自分も書き上がりましたので投下いたします。


494 : 願望:教唆 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/28(土) 13:17:15 QXmt9Hnk0
 バイオリンが、音色を奏でる。
 二度、三度ではない、終わらないアンコール。
 同じ何かを秘めているけれど、少し何かが違う曲を、琴岡は一人、席に腰掛けて聞いていた。
 結局、何をどうするかなんて決められなくて、動くわけにもいかなくて。
 決まるまでは、ここでじっとしていようと、そう思っていた。

 ここで行われているのは、殺し合い。
 隣り合わせの死、いつどこで誰が死んでもおかしくはない、今の状況。
 だからこそ、だろうか。
 嘗て死の病に怯えた人類が、芸術に"死"を見出したかのように。
 彼女もまた、悪魔の演奏に"死"を見出しているのかもしれない。

 その"死"は自分か、それとも。

「隣、いいかな?」

 ふと聞こえたのは、一人の男の声。
 すっかり演奏に聞き入ってしまっていたせいで、辺りの警戒を怠っていた。
 手を伸ばせば届く距離、そこに男は立っている。
 状況を整理しようにも、頭はそれどころではない。
 どくん、どくんと大きくなる鼓動。短くなる呼吸。
 頭からどうしても拭い切れないのは、一つの言葉。

 "死ぬかもしれない"という、こと。

「ああ、ごめんごめん、驚かせちゃったね……大丈夫、俺にそのつもりは無いよ。ほら、丸腰丸腰」

 それを察したのか、現れた男は申し訳無さそうに両手を上げ、武器を持っていないことをアピールする。
 ひらひらと踊る手、自信たっぷりに笑う顔、そして何より、今の段階になっても襲いかかってこない事。
 パニックに陥りつつあった琴岡の頭でも、それだけ揃えばなんとなくは理解できる。

「ほん……と……?」
「ああ、本当に本当さ。なんだったら、確かめてみるかい?」

 用心深く問い返した言葉にも怖じることなく、男は微笑みながら琴岡へと答えた。
 突然のこととはいえ、流石に警戒しすぎているかもしれない。
 いつまでも拒み続けていても、何も始まらない。
 そう思い、琴岡は体の震えを抑えながら、男の方へと向き直る。
 男はもう一度笑い直し、上げていた両手をゆっくりと下げて、口を開く。

「俺は折原臨也、よろしくね――――」

 挨拶と、差し出された手と。


495 : 願望:教唆 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/28(土) 13:17:39 QXmt9Hnk0
 
「――――琴岡みかげさん」

 自分の、名前。
 まだ名乗ってもいないどころか、今の今まで知らなかった男が、なぜそれを知っているのか。
 理解できないことに直面し、再び頭の中が真っ白になる。

「なんで、っていう言葉には、ちょっと答えられないなぁ……企業秘密、って奴だからね」

 知らずのうちに溢れていた言葉に、男、臨也は落ち着いて答える。
 それから、琴岡から一つ離れた席に腰を掛ける。
 ちらり、と横を向くが、見開かれた琴岡の目は、臨也を微妙に捉えているようで、捉えていない。

「さて、余計な話より、本題に入ろうか」

 足を組み、膝の上に組んだ手を置き、琴岡と目を合わせることなく、臨也は独り言のように語りかける。

「これは殺し合いさ、誰も彼もが生き残るために、平然と人を殺す、そんな場所なんだよ。
 ま、俺みたいな例外も少なくはない……かな。誰も彼もが命令に従う人間じゃない、ってことさ。
 君もそうだろう? 俺を見るや否や襲いかからなかったってことは、そうじゃないってことは分かってる」

 順を追って、一から説明をし直していく。
 今、自分たちが置かれている状況を再確認した上でなければ、この話は続けられない。
 殺し合いを命じられた、それを良しとせず、人を殺すことに抵抗を示している。
 少なくとも今すぐに誰かを殺すつもりはない、それを確認した上で。

「……でもさ、君はそれで良いのかい?」

 臨也はゆっくりと琴岡の方を向き、今までとは明らかに違う笑みを浮かべて、そう言った。
 その怪しげな笑みと目を合わせてしまった琴岡は、思わず息を呑む。
 目を背けようと思っても、まるで縫い付けられたかのように、目をそらすことが出来ない。
 目の前にいるのは、悪魔でも、怪物でもなんでもない、ただの人間なのに。
 今この瞬間の琴岡にとっては、"彼"がたまらなく怖かった。

「"人間"の力なんて、ちっぽけなもんさ。出来ることより出来ないことの方が多い。
 だから、諦めなきゃいけないことだって沢山ある」

 そんな恐怖を抱いていることを知ってか知らずか、臨也は話を続ける。
 人間は弱く、出来ることは限られている。それは臨也も"人間"であるからこそ、よく知っている。

「けど、アイツ、魔神皇は別さ。"人間"を軽く超えた力を持ってる。
 そんな奴なら、人間にはどうしようもないことでも、叶えられるかもしれない」

 そんな人間の範疇を超えた異能を操る存在、魔神皇……いや、"化物"。
 正直、人間である臨也からすれば、忌み嫌うべき最たる存在だ。
 だが彼は今、魔神皇に少しだけ感謝している。何故なら。


496 : 願望:教唆 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/28(土) 13:18:05 QXmt9Hnk0
 
「そう、例えば"絶対に結ばれない人と結ばれる"、とかね」

 一人の"人間"の、"人間"たる側面を、垣間見れるかもしれないから。
 人を超えた超常的な力、誰もが考える夢物語。
 それを叶えるだけの力を持つ存在が居てくれたからこそ、彼女の"本質"を覗くことができるから。
 沈黙が、続く。
 笑う臨也と、固まる琴岡。
 時が凍りついたかのように、遅い。
 一向に動く気配を見せない琴岡に対し、臨也はふうとため息をついてから、ゆっくりと手を動かす。

「アレは君の"悪魔"だろう?」

 指差したのは、壇上の"化物"。
 影のような奏者の中心に立つ、見るもおぞましい存在。
 それが彼女の悪魔であるということは、臨也からすれば容易に考えられることだ。
 答えはないが、それでいい。
 ここで沈黙するということは、肯定に等しいのだから。
 化物をじっと見つめながら、臨也は言葉を続ける。

「つまりさ、アレは君の力なわけだ。人間を狩る、願いを手にするための力が君の手にはある」

 そして、それが意味する事実を示して。

「死にたくない、元の世界に戻りたい、誰もが抱く当たり前の願い。
 それに加えて、もう一つ"叶えたい事"があるのだとすれば――――」

 彼女の様子から察した情報を加えて。

「――――君がやることは、一つじゃないかな」

 "答え"を、突きつける。

 その瞬間、風が生まれた。
 気がつけば、そこに臨也の姿はなく、あるのは一つの車輪だけ。
 そして、壇上を見れば、先程まで楽しそうにサーベルを振っていた悪魔が、はっきりとこちらを睨んでいた。

「チッ……化物がッ……」

 すんでのところで避けた臨也は、忌々しげにそう吐き捨てる。
 そう言っているうちにも車輪が襲いかかり、悪魔は自分へと向かってきている。
 素早く状況を判断し、臨也はそこから逃げ出すことを決めた。

「じゃあね〜、琴岡さん。生きてたら――――」

 去り際に、一言。

「――――また、会おうか」

 糸を引くように、残しながら。



「ふう……ここまで逃げれば大丈夫、かな」

 ホールから少し離れた場所、そこで待たせていた高遠と合流し、臨也は一息つく。
 人の気配を察した臨也が「一人で行きたい」と言った為、高遠はそこで待っていた。
 何かを壊す音が度々聞こえたが、戻ってきた臨也に怪我はなく、涼しい顔をしている。
 むしろ、楽しそうにも思えるのは、きっと気のせいではないのだろう。

「……君も、物好きだね」

 危険に身を晒してでも、それを得ようとする。
 つくづく、この男は不思議な男だと思いながら、臨也にそう言い放った。

「そんなことはありませんよ、俺はただ」

 それに対し、臨也は。

「人間が、好きなだけですから」

 笑って、そう答えた。


497 : 願望:教唆 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/28(土) 13:18:34 QXmt9Hnk0
 


 所々に車輪が埋まり、無残な姿となった客席。
 壇上に演者の姿はなく、そこいるのは怒っているかのような、人魚の姿だけ。
 車輪が飛んできたタイミング、そして自分は無傷だったこと。

「助けてくれたの……?」

 ふと、そう思ったことを、口に出す。
 感情は読み取れないし、何を考えているのかわからない。
 だが、さっきの叫びといい、今の行動といい、自分は人魚に庇われているような気がするのだ。
 真意の程はわからない、たまたまそう見えただけなのかもしれない。
 けれど、それは琴岡にとって、悪魔である人魚を信頼できる、小さなきっかけであった。

 頭のなかに渦巻くのは、臨也の言葉。
 人間を簡単に殺せるであろう力、目の前で見たそれを、疑うことは無い。
 その気になれば、誰かを殺すことは容易な事だろう。
 だが、それで良いのだろうか?
 他人を殺すことは、他人の夢を奪うこと。
 そして何より、自分の願いを叶えるということは。
 あの子の願いを、奪うということ。

 横暴な略奪、その先にある自分の夢。
 叶うわけがないそれを叶えるためなら、見ず知らずの他人を蹴落とせるだろうか。
 そして、二人の少女の夢を、奪い去ることが出来るだろうか。

 頭では分かっている、理屈も理解している、後は決意するだけ。
 死にたくはない、そんなことは分かっている。
 けれど、けれど。

 まだ、答えは出ない。

【渋谷区・コンサートホール/1日目/朝】
【琴岡みかげ@ななしのアステリズム】
[状態]:困惑
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、未確認支給品、キーホルダー型COMP
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:生き残って帰りたい
1:私は……
[COMP]
1:Oktavia von Seckendorff@魔法少女まどか☆マギカ
[状態]:健康
[備考]:キーホルダー型COMPのデザインは『ななしのアステリズム』本編7話で登場したものです。

【渋谷区・コンサートホール側/1日目/朝】
【折原臨也@デュラララ!!】
[状態]:健康
[装備]:スマートフォン型COMP
[道具]:基本支給品、確認済み支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:さて、どうしようかねえ……
1:ひとまず撤退
[COMP]
1:高遠遙一@金田一少年の事件簿
[種族]:殺人鬼
[状態]:正常


498 : 願望:教唆 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/28(土) 13:19:19 QXmt9Hnk0
以上で投下終了です。
重ね重ねで申し訳ないのですが、投下終了時に本文だけでもWikiに収録していただけるとすげー助かります……


499 : ◆i9L4GKxxpw :2016/05/28(土) 13:28:35 UibkzVpQ0
投下お疲れ様です。
先程言い忘れていたのですが、元◆LCh27RSp5Eです。
トリップキーを忘れてしまったので、今後はこちらのトリップを使用します


500 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/28(土) 13:34:39 QXmt9Hnk0
>>499
了解しました


501 : ◆BLAZExujxM :2016/05/28(土) 18:28:03 CQzifobM0
皆さん投下乙です。
自分も投下します。


502 : 太陽と黒い○○○  ◆BLAZExujxM :2016/05/28(土) 18:28:43 CQzifobM0

「なあ?」
「なんだ?」
「さっきからなんで公園の砂を集めてんねん?」
「少しばかり、ここの砂を調べていた」

 豊島区内のサンシャインビル近くの公園の砂場。
 そこにD.M.P(デーモンマージャンペア)の二人はいた。
 公園の砂場だからと言ってここでただ遊んでいたわけではない。

「ふーん、で、なんか分かったんか?」
「どうやらこの砂は様々な国のものをブレンドしているようだ」
「どこの国のものでもないって?」
「もしかしたらここが日本じゃないかもしれんな」
「なるほどな〜」

 サンシャインは砂の超人である。
 故にその砂の匂いを嗅いだだけでその砂の産地を当てる事も出来る。
 超人レスラーとして戦うリング(会場)にどんなギミックが仕掛けられているくらいは知っておくべきである。
 
「洋榎、戦いというのはすでに始まっている。
 尤もこういう地道なことは普段はニンジャがすべきことなんだが」
「ほーん」
 
 洋榎はそんなサンシャインをCOMPに戻さなかった。
 再召喚には金がかかる。
 関西人としては無駄な出費を抑える。
 当然な判断であった。

(しかし、ほんまにこいつデカイな)

 サンシャインを見上げる洋榎。
 なんせ3mある巨体じゃその存在感は抜群にある。
 近くにいる自分がものすごく小さく見える。
 宮守女子の大将もデカかったが、それ以上にデカイ。
 
「で、これからどうする?」
「せやな、ウチかて大阪出身やし、東京の地理にはあんま詳しくないで?
 そこはアンタだって似たようなもんやろうし」
「確かに俺の知っている東京では東京ドームなどいう立派なプロレス会場はなかったからな」
「野球場な!」

 一先ず、人が集まりそうな場所を目指す。
 となると行くべき所は東京の名所。
 東京ドーム、都庁、東京タワー、東京スカイツリー、浅草寺……。
 洋榎が思いついただけでもこれだけはあった。

 とりあえず、移動する。
 地図アプリを起動させようと思ったが、なんせ彼女のCOMPは串カツ型。
 見ているだけで腹が空く、串かつが食べたくなる。
 そこで彼女はわざわざしないでもいい我慢をして、近くの道路標識等を見て移動することにした。


503 : 太陽と黒い○○○  ◆BLAZExujxM :2016/05/28(土) 18:29:26 CQzifobM0


 その時である。


 アスファルトに響く二つの足音。
 一つは普通の靴を履いていることはわかった。
 足音がなる方を覗いてみる。
 一人は女性だった。
 そして……

 
 その女性の近くにその黒色の生物が近くにいたッ!


 やさぐれたような目つきをしたその着ぐるみのような生物ッ!
 あれはなんだッ!
 ネコかッ!
 化け物かッ!
 いや、あれはッ!

「あれはぴにゃこら太君やないか! 色違いやけども!」
「何ィ!? 知っているのか、洋榎!」
「なんかのCMでナカイ君と一緒に踊ってるのを見たことがある!
 間違いあらへん!」
 
 鋭いつり目ッ!
 目元には特徴的なしわッ!
 頭頂部は髪の毛がはねておりッ!
 胸元にはネクタイのような模様ッ!
 それは黒色の生物もといぴにゃこら太(色違い)。
 洋榎の記憶ではとあるアイドルが好きなキャラクターだったはずだ。
 近くにいる緑色の事務員風の女性がそのサマナーだろうと考えるのは妥当であろう。

「……ぴにゃ?」

 そのぴにゃこら太に気付かれた。
 低い鳴き声とも取れる声がぴにゃこら太君から放たれた。
 ぴにゃこら太に眼光鋭く、威圧感全開で睨まれた。

「「……ッ!?」」

 洋榎とサンシャインは反射的に隠れてしまった。
 幸いまだサマナーの女性の方には気づかれてない。   


  ━┓“   ━┓“  ━┓“   ━┓“  ━┓“  ━┓“   ━┓“
  ━┛   ━┛   ━┛   ━┛   ━┛   ━┛   ━┛
 
 と、オーラのような凄みがそのぴにゃこら太君から放たれているようだった。
 ここまでの威圧感を放つのは上位の悪魔超人や全国クラスの雀士くらいである。

「……ここはベタオリやな」
「戦略的撤退か?」
「せやな」
「いいだろう」

 素早くザ・ニンジャの姿に変身するサンシャイン。
 そして、音もなく洋榎抱え上げてその場からダッシュした。
 体重が1000㎏あるサンシャインでもザ・ニンジャの姿になれば高速移動が出来るのだ、

 移動しながらD.M.Pの二人は会話する。

「しっかし、あんな威圧感あるぴにゃこら太君見たことあらへん……」
「そうか……奴はオーバーボディを纏っていたということか!」
「なんやて! オーバーボディやと!? ってオーバーボディってなんやねん!?」

 オーバーボディとは、オーバーボディである。
 つまり、サンシャインはあのぴにゃこら太君の中に何かしらの超人……もとい悪魔が入っていると推測した。
 
「しかし、あのプレッシャーは悪魔六騎士のアシュラマンにも勝るとも劣らないものだった……
 恐らくはあの中にはアシュラマンクラスの超人が入っているに違いない。
 そして、オーバーボディなぞ使うのは超人界でも完璧超人しかいない……!
 つまり、あの緑の服の女は完璧超人をも完全に支配していたということだ〜〜〜〜っ!」
「な、なんやて〜〜〜〜!!!」

 勝手に二人は盛り上がる。
 が、彼女たちは色々ミスをしていた。
 凡ミスすぎた、とりあえず愛宕ネキは自身に支給された串かつ型COMPを確認するべきであった。


504 : 太陽と黒い○○○  ◆BLAZExujxM :2016/05/28(土) 18:29:49 CQzifobM0

【豊島区道中/1日目/朝】
【愛宕洋榎@咲-Saki-】
[状態]:健康
[装備]:串かつ型COMP(食べられないうえ、壊れるのでソースの二度漬けは禁止です)
[道具]:基本支給品、確認済み支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:生きて帰る
1:黒いぴにゃこら太君から離れる
[COMP]
1:サンシャイン@キン肉マン
[状態]:健康


 一方、その頃……

「確かにここに誰かいたんですか?」
「ぴにゃ〜」
「そうですね……。
 それになんだか輝子ちゃんの声がしたような……でも、喋り方が笑美ちゃんみたいだったような……
 名簿には輝子ちゃんも笑美ちゃんの名前もなかったんですがね……?」
「ぴにゃ」

 緑色の服の事務員、ちひろさんは黒いぴにゃこら太君……。
 もとい、黒いぴにゃこら太君の着ぐるみを着た『スタープラチナ』に話しかける。
 
 騒がしい声がした方に来てみたものの、そこにはすでに誰もいなかった。
 元々、何か声がしていた方に移動してきたちひろさんたちであったが、これでは少々の無駄足になったかもしれない。

「移動したんでしょうかね?」
「ぴにゃ〜」

 一先ず、ちひろさんたちは再び悩んだ。
 その声の主たちを探すか、それとも当初の目的通り人が集まりそうな所を目指すか。
 彼女たちの前の道はいくつにも分岐していた。

 ……

 …………

 ………………

 さて、何故スタープラチナがこのような格好をしているのか?

 それはちひろさんがランダム支給品を使ったからだ。
 ちひろに支給されたのは『黒いぴにゃこら太君のきぐるみ(ぴにゃ語翻訳機付き)』であった。
 サイズはちひろさんが着るにはかなり大き目であったので……いくらコスプレ好きのちひろさんでも着ることを断念した。

 しかし、スタープラチナが着るにはちょうどよかった。
 ぴにゃこら太君ほどの人気キャラなら相手の警戒も少しは薄くなるだろう、
 それに黒いぴにゃこら太君ならば『あの人』に似ているから。
 
 とりあえず、ちひろさんはスタープラチナに着せた。
 スタープラチナもちひろさんに言われるがままにとりあえず、着た。

 スタープラチナが着て動いてみると機能性は悪くはなかった。
 いつもどおりの動きが出来る程度の機能性であった。

(この目つき……やっぱり似てますね)

 その姿を見てちひろは思い出す。
 あのプロデューサーさんのことを。
 背の高さ的にも何か親近感を覚えた。

 しかし、彼は違う、『彼はあの人ではない』
 そう、ちひろは何度も心の中で言い聞かせる。

 だが、まあそんなわけで……
 【破壊力-A/スピード-A/射程距離-C/持続力-A/精密動作性-A/成長性-A】
 そんなぴにゃこら太君が出来てしまったッ! なんてこったいッ!


【豊島区公園/1日目/朝】
【千川ちひろ@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:健康
[装備]:COMP(タブレット型)
[道具]:基本支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:あの人の所に帰りたい
[COMP]
1:スタープラチナ@ジョジョの奇妙な冒険
[状態]:健康、ぴにゃこら太の着ぐるみ(黒)を装備


505 : ◆BLAZExujxM :2016/05/28(土) 18:30:18 CQzifobM0
投下終了です。


506 : 名無しさん :2016/05/28(土) 23:36:17 K8qjfQ5g0
投下乙です
まさかのぴにゃープラチナ誕生とはw


507 : 名無しさん :2016/05/29(日) 07:00:03 vVH.uvF.O
投下乙です

妖怪オラオラだけでも


508 : ◆7PJBZrstcc :2016/05/29(日) 15:38:58 ZIu.8wz.0
皆様投下乙です
自分も投下します


509 : 蜘蛛は少しだけ満たされたような気がした ◆7PJBZrstcc :2016/05/29(日) 15:39:53 ZIu.8wz.0
 移動しよう。ラフ・メイカーはそう言った。
 ハングリースパイダーは特に反論せずそれに従った。


 ラフ・メイカーが移動を提案したのは自身が張った巣が目立つからだとハングリースパイダーは思っている。
 自分が張った巣は、悪魔であっても捉えるだろう。
 だが、悪魔をとらえるという事は恨みを買い多くの野良悪魔を呼び寄せる事になるかもしれない。
 それでは長生きできない。
 俺はみんなに笑ってほしい、そう言った自分の召喚者もまずは己の身を守るだろう。
 生きていなきゃ何もできない。みんなを笑わせるなんて出来やしない。
 今でこそ人型の蜘蛛の姿をした妖虫の悪魔だけど、元はただの蜘蛛だから。
 今でこそ一匹の美しい蝶に恋をして、巣に掛かる愛だけを食べていこうと誓った蜘蛛だけど、元は腹を減らせば餌を食べるただの蜘蛛だからそう思った。


 一方のラフ・メイカーはそんな大したことは考えていなかった。
 ラフ・メイカーがこの場から移動しようと言ったのは自らの悪魔が張った蜘蛛の巣を見てられなかったからだ。
 露ひとつ付いていない立派な巣。
 だがラフ・メイカーには涙の露が巣に付いているのが見えた。
 お腹を空かせた蜘蛛の涙が見えた。
 そしてそれを見ているハングリースパイダーも泣いていた。
 たとえ涙を流していなくても、泣き顔だ。
 ラフ・メイカーにはそれが分かる。
 とはいえラフ・メイカーに分かるのはそこまで。
 泣きそうなのは分かっても、何故そうなのかは分からない。
 何故ならハングリースパイダーに会ってまだすぐだから。
 たとえ魔神皇から支給されたCOMPを使ってアナライズをしても、分かるのは表面的なデータだけ。
 だからこの場から離れる事にした。
 まるで逃げるような気分でラフ・メイカーは歩き出そうとした。

 グゥ

 歩き出そうとした所で、間の抜けた音が鳴った。
 悪魔がうごめく殺し合いの場にはそぐわない、腹の音が聞こえた。

「とりあえず、コンビニでも行くか……」

 そう言いながらラフ・メイカーは自身の従者である悪魔を見る。
 悪魔の表情は変わらなかった。
 なったのは俺の腹か、と主人は苦笑いした。
 ラフ・メイカーが苦笑いなんて笑い話にもならないなと思いながら。






510 : 蜘蛛は少しだけ満たされたような気がした ◆7PJBZrstcc :2016/05/29(日) 15:40:24 ZIu.8wz.0



 コンビニについたラフ・メイカーは、陳列棚に置いてある適当な弁当を2つ取り清算もせずにそれを開ける。
 弁当の内1つをハングリースパイダーの前に置き、イートインスペースで食べ始める。
 食べながら、彼は手鏡の形をしたCOMPを起動し悪魔を呼び出したときには見なかった情報を見る。

「俺を含めて42人……」

 それは参加者の名簿だった。
 自分を含めて42人、この悪魔がうごめく狂気の殺し合いに放り込まれた被害者達。
 あの魔神皇のせいで涙が生まれるかもしれない人々。

 そして悪魔。
 1人1体与えられた、人と変わらず涙を流すそんな存在。
 人と同じくあの魔神皇のせいで涙が生まれるかもしれない。

 どうしてそんな事をするのか俺には分からない。
 だけどそんな人々と悪魔を俺は笑顔にする、とラフ・メイカーは心に誓う。

「それにしても」

 有名人もいるんだな、とラフ・メイカーは名簿を見ながら思う。
 テレビで見た事のあるアイドルに大企業の社長、普段ならお目にかかる事のない存在だ。
 何故か社長の名前が二つあるが、多分片方は同じ名前の一般人だろう。ひょっとしたら両方かもしれないが。

 そんな事を考えながら、ラフ・メイカーはふとハングリースパイダーの方を見る。
 すると、彼の前にある弁当は何一つ手つかずのままだった。

 食欲がないのか?
 これが嫌いなものなのか?
 それとも箸が使えないのか?
 色々な可能性を考慮しながらラフ・メイカーはハングリースパイダーに何故食べないのかを尋ねる。
 返ってきた答えはこうだった。

「ぼくは、蜘蛛だから……」

 その答えに完全に盲点だった、とラフ・メイカーは思った。
 蜘蛛が食べるのは主に虫、それはこのハングリースパイダーも例外ではない。
 ラフ・メイカーは、悪魔だから人間と同じものを食べるだろうと思い込んでいた自分を恥じた。
 そんな思いは知らずに、ハングリースパイダーは続ける。

「ぼくは蜘蛛だから、巣を張って罠にかかった獲物を食べるんだ」
「でもあんたはそれを嫌がっているように見えるぜ」

 ラフ・メイカーの言葉に思わず驚くハングリースパイダー。
 それを尻目にラフ・メイカーの言葉は続く。

「何で巣に獲物がかかって欲しくないのか今は聞かない。だけど」

 そこでラフ・メイカーはしっかりと己の悪魔の目を見てハッキリ言った。

「俺はあんたを泣き顔にするようなことをしろとは言わない」

 巣なんて張らなくてもいい。
 獲物なんて狩らなくていい。
 
 その言葉が蜘蛛には嬉しかった。

「それにいざとなったら巣を張らずに獲物を狩ればいい」

 それはちょっと無理があるんじゃないか、と蜘蛛は思った.。


【品川区・コンビニ店内/1日目/朝】

【ラフ・メイカー@ラフ・メイカー(BUMP OF CHICKEN)】
[状態]:健康
[装備]:鉄パイプ
[道具]:基本支給品、手鏡型COMP
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:「それだけが生き甲斐なんだ、笑わせないと帰れない」
[備考]
※いわゆる有名人な一部の参加者の顔と名前を把握しています。現時点以外の情報を知っているかどうかは次の人にお任せします。
(現時点で知っている人物:アイドルマスターシリーズのアイドル(市原仁奈、島村卯月、前川みく、多田李衣菜)、海馬瀬人)
※海馬瀬人のAもしくはBは海馬コーポレーションの社長ではなく、同姓同名の一般人だと思っています。
[COMP]
1:ハングリースパイダー@Hungry Spider(槇原敬之)
[種族]:妖虫
[状態]:健康
※ハングリースパイダーの外見はPV内の紙芝居に登場する人型の蜘蛛の姿です。

※品川区の何処かのビルの間に、立派な蜘蛛の巣が張ってあります。


511 : ◆7PJBZrstcc :2016/05/29(日) 15:40:52 ZIu.8wz.0
投下終了です


512 : 名無しさん :2016/05/29(日) 16:31:34 kdDR/yfc0
投下乙です!

>>505
意外! それはスタンド! 今までのロワで一番プリティーなスタープラチナ!
ちゃんと正体を見抜いていたサンシャイン、有能なのか無能なのか……?

>>511
泣き顔だから、見ていられない。彼らしい解釈ですね。
確かに彼は蜘蛛だから、ご飯はそうなりますわね……
しかしこのラフ・メイカー、イケメンである。


513 : ◆jBbT8DDI4U :2016/05/29(日) 23:27:28 kLfAMw360
投下します


514 : 仮初:空虚 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/29(日) 23:28:17 kLfAMw360
「とにかく……まずはこの首輪か」
「あ、ひっど〜い。放置から放置のコンボ? おねーさん傷ついちゃうな。永久コンボはウチのシマじゃノーカンだから」

 真面目に名乗ったと思ったらこれだ。スルー検定一級のスルースキルで華麗にスルーされてしまった。
 ひどい、しどいわ、バラムガーデンでは人とのコミュニケーションを教育してくれないのかしら。
 けれど涙を流してみても、超高校級の冷血スコールくんは冷ややかにスルー。
 どうやら諸々の確認をしているようです、って、この状況で確認することなんて一つよね。
 そう、名簿。この殺し合いに招かれちゃった悲しい人々の名前の一覧。それぐらいしかこの端末にある情報はない。
 個人情報の塊を垂れ流しにするなんてプライバシー保護ってもんが無いのかしら、頭いいやつはこれだから……。

「一ついいことを教えてあげよっか、キスティスせんせーは、ここには居ませんっ!
 というか、あのマジンノーちゃんが嘘ついてない限り、スコール君の知ってる人間はここには誰一人居ないのだ!!
 う〜ん、見知らぬ地でひとりぼっちだなんて、絶望的ですわね」

 名簿にアクセスしようとする前に、優しく教えてあげたにも関わらず、スコール君は冷ややかな顔で名簿を確認します。
 せっかくの人の好意を踏みにじるなんて、どこまでサディスティックなんでしょう、あー ぜつぼうてきよ。
 流石のFINAL FANTASY屈指の絶望ヒロインでもここまで絶望的じゃないわ。

「誰か協力できる人間を探すか……」
「おやおや、さすが傭兵さん。こんな絶望的な状況でも冷静ね〜、お母さん感心するわ〜」

 もはや何を喋っても相手にしてもらえない。いっそ捨ててもらったほうがマシかもしれない。
 バッドコミュニケーションからのバッドコミュニケーション、もうゲームオーバーも近い。
 あーあー、どこで間違っちゃったのかな、アタシたち……次はうまくやれるといいね……。

「あんたみたいな母親を持った覚えは無いんだが」
「ジョーダンよジョーダン、全く絶望的にジョークの通じないユーモア欠落症患者さんで困っちゃう〜〜」

 あ、構ってくれた。完全放置ってわけではなかったみたい。ちょっと嬉しい。な、泣いてないもん。
 今度は慎重に、間違えないよーに言葉を選んでいきましょ。
 ねえスコール、私達……やり直せるよね。

「……母親、か」

 あら、図らずも重要な所を突いてしまったようです。
 スコール=レオンハート、その人となりがしっかりと再現されているということ。
 ならば、幼少期の記憶がほぼほぼ欠落しているはずです。
 つまり、母親についての記憶なんて、残っているわけがないのです。
 私様ったらうっかりしてました、そんな大事なことを忘れていました。
 折角の話のチャンスを棒に振ってしまうなんて……。

「えっ……」

 そんなことを反省していたら、スコール君ではない別の声がふっと聞こえてきました。
 ふんわりとした、いかにも超高校級の天然を醸し出しているような、古き時代に置き忘れて来た遺産と言うか……。
 兎にも角にも、接触です。THE・コミュ障・オブ・ジ・イヤー1999受賞した、しかも"ゲーム開始時点"のキング・オブ・コミュ症、いわば超高校級のコミュ症の時点の彼がどう人と接するのか。
 見ものですね、観察しますよ……するする。


515 : 仮初:空虚 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/29(日) 23:28:52 kLfAMw360

「す、スコール=レオンハート……?」

 っと、初手は相手方の彼女。しかもいきなり"本名"を踏み込んできました。

「……あんた、なんで俺の名前を」

 当然、スコール君のリアクションはそうですし。

「えっ、なんでってそりゃ、だって……え、でも、えっ?」

 彼女のリアクションも、当然そうなりますよね。
 無理もありません、だって目の前に立っているのは"スコール=レオンハート"なんですから。
 もっと詳しく言えば、日本を圧巻した大作RPG「FINAL FANTASY8」の主人公、"スコール=レオンハート"その人が目の前に立っているんですから。
 普通は困惑するでしょう、目の前に"ゲームの世界"の人間が現れたら。
 そして、一般人が真っ先に結びつけるのは――――

「……コスプレの方ですよね?」
「は?」

 そう、その答えですね。
 普通の人なら"よく出来たコスプレイヤー"だと思うでしょう、実際最近のコスプレは凄いです。
 まあ、確かに"コスプレ"というのは間違っていないのかもしれません。少なくとも、この"スコール"君を指して言うならば。

「悪いが、俺はスコール=レオンハートだ。それ以上でも、それ以下でもない」

 しかし、彼は紛れも無く"スコール=レオンハート"、いやこれから"スコール=レオンハート"になる存在なのです。
 ゲームを再現する道楽のために作られた存在――――一般人の彼女には到底理解できないでしょう。
 ほら、彼女の目が少しずつ、"イタイ人"を見る目に変わってきたじゃないですか。
 ああ、殺し合いという場所に放り込まれたが故に現実から逃げたくなったのね可哀想に、みたいな。
 しかしこれ以上、外の文化のワードを出されて混乱させられるのも困ります。
 どれ、ここはいっちょ私様が前に出ますか……。

「フッフッフッフ……迷える若人よ、君の疑問は私が答えよう……」

 今出せる一番低い声を作りながら、如何にも私が黒幕ですといった空気で私様は喋り始めます。
 声に反応し、察してくれたのかスコール君も彼女の方に私様入りCOMPの画面を向けてくれました、気が利くじゃない。
 困惑しながら画面を覗き込んだ彼女の顔が、とたんに明るくなります。

「あれ? 江ノ島盾子ちゃんじゃないですか?」

 お、流石に顔が知れ渡っているだけあって、話が早いですね。

「そうよん、このエノシマジュンコちゃんが、貴方の疑問を解決するわ。音無小鳥さん♪ アハッ☆」

 面倒な話に発展する前に、相手の興味をこちらに奪います。
 予想通り、びくりと跳ね上がった後に、訝しみながらこちらの顔を見てきました。

「どうして、私の名前を」
「ggった、今やなんでもggr様に掛かれば何でもちょちょいのちょいのパッパラピーのパラッパラッパータマネギ先生よ」

 ほらね。
 自分の名前、それを知らない相手に一発で言い当てられれば、誰だって困惑するものです。
 さっき自分がやったことだというのに、ホント呆れちゃいますね。
 どれ、ちょっと驚かしてあげることにしましょう。


516 : 仮初:空虚 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/29(日) 23:29:07 kLfAMw360

「音無小鳥、765プロダクションのアイドルプロデュース部、第1課所属。159cm45kg、9月9日生まれAB型のにじゅう――――」
「わー!! わわわっ!!」

 ふふふふーのふー、これくらいの情報なら鼻くそほじりながらトリプルアクセル決めても調べられるぜ。
 しかし、そこで止めに入るってことは、絶望的に知られたくないんでしょうか。
 普通にばらまいてあげてもいいんですが、メンドーなのでやりません!!

「あんまり惑わせないでくれるかしら?」

 そんなところでもう一人、現れたのは小さな子供、いや、スコール君と同年代くらいでしょうか。
 民族衣装、狼、暗めの色……なるほど、アイヌの巫女の"写し身"と呼ぶべき彼女ですか。
 つまり、小鳥さんの悪魔は彼女――――レラちゃん、ということでしょうね。

「小鳥、あれは彼の"悪魔"よ」
「え? でも」
「実体化しない悪魔もいる、そういうことよ」

 そんなことを言っている間に、彼女がホイホイと説明してくれました。
 いやー、楽ですね。理解が早い人がいるのはホント助かります。
 ご褒美に私様から直々に褒めてあげましょう。

「さすがアイヌの巫女の写し身、こんな時でも冷静ね」

 お、如何にも"嫌そうな"顔をしてくれますね、いいですね。
 何せ貴方は空想の存在……悪魔としてしか、生きていられないのですからね。

「……話が見えないが」
「あっ、ごっめ〜〜ん。年を取ると無駄話長くなっちゃうわ〜〜、やぁね〜〜〜〜」

 突っ込んだ話に入りかけたところで、スコールくんが止めてくれました。
 いけないいけない、変な話を繰り広げて余計な方向に進めてしまうのは、悪い癖ですね。
 今回は反省しましょ、は〜んせい☆

「とにかく、話をしよう。俺もあんたに聞きたいことがある」

 ともあれ、話を逸らすことには成功しました。
 仮にも傭兵、情報収集も仕事のうちの彼が後はなんとかしてくれるでしょう。
 私様はひとまずここで一度黙るとしましょう……。



 ふう、疲れました。
 まじめちゃんのふりをするのはしんどいですね。
 さてここからは画面の前のオマエタチに向けての話です。
 そう、話を逸らした理由は一つです。
 「スコール=レオンハート」に「スコール=レオンハート」を察されないためです。
 恐らくも何も、小鳥さんはFINAL FANTASY8をプレイしています。
 もしあのまま話が続いていれば、「FINAL FANTASY8」についてベラベラ喋られてしまっていたでしょう。
 それでは、いけないのです。
 もし、自分の人生が「作られたもの」だと知らされてしまったら?
 そこで「絶望」するのは、当然のことでしょう。
 けれど、ダメなのです。
 今はまだ、その時ではないのです。
 もっともっと、彼がこの場所で「人間」として成長してからでないと。
 そうでなければ、極上の「絶望」にありつけないのですから。

 というわけで、しばらくスコールくんは「スコール=レオンハート」として泳がせておきましょう。
 そして彼がいい感じに「スコール=レオンハート」として育った後。
 彼から「スコール=レオンハート」を奪ったらどうなるか……見てみたいと思いませんか?
 どこに行っても見られない、ここだけのショー、楽しみでしょう?
 ああ、早くその「絶望」を味わいたい……けれど、焦ってはいけません。

 メインディッシュは最後の最後。それまではあのアイヌの巫女に絶望を突きつけて遊ぶことにしましょうか……。


517 : 仮初:空虚 ◆jBbT8DDI4U :2016/05/29(日) 23:30:16 kLfAMw360
【荒川区/1日目/朝】
【『スコール=レオンハート』@FF8】
[状態]:健康
[装備]:COMP(スマホ型)、
[道具]:基本支給品、不明支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:早く帰りたい(真顔)
1:ひとまず話をする
2:コスプレ……? 何を言ってるんだ?
[備考]
※FF8の同名キャラを再現している(させられている)現代人です。
※上記の理由によりラフディバイド・エンドオブハートなどの特殊技(フィニッシュブロー)は使えません。物理的に無理。
※そう、今はね……
[COMP]
1:電霊エノシマジュンコ@ダンガンロンパ
[状態]:健康
※参加者達の世界とは異なる平行世界(=本家ダンガンロンパ世界)の江ノ島盾子をベースとした電霊です。
※電霊的な手段で、参加者及び悪魔の基礎データ(ライブラや悪魔全書で見れる程度の設定文含む)をアナライズできます。
 会話とアナライズ以外に何が出来るかは不明です。
※ggれます。アナライズと組み合わせてね! まあ素敵。

【音無小鳥@アイドルマスター】
[状態]:健康
[装備]:COMP(インカム型)
[道具]:基本支給品、包丁
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:怖い、どうすべきかは、わからない。
1:ひとまず話をする
2:ヨクデキタコスプレダナー
[COMP]
1:レラ@サムライスピリッツ
[種族]:幻魔
[状態]:健康
[備考]
※シクルゥもセットです(女神転生のヴァルキリーの馬みたいなもん)

----
以上で投下終了です。


518 : ◆i9L4GKxxpw :2016/05/31(火) 23:42:35 MzW0ITJU0
投下お疲れ様です!
江ノ島は悪魔化しても相変わらずの悪辣さだ……
スコールは設定もあってまさに地雷。今後次第では相当酷いことになりそうだなあ。

自分も投下します。


519 : カタストロフの音色へ ◆i9L4GKxxpw :2016/05/31(火) 23:44:12 MzW0ITJU0


 (さて……)

  思考するのは、獏良了少年。
  正しくは、その体を借りている邪悪なる存在。
  千年リングに宿りし古の邪悪――大邪神ゾーク・ネクロファデスの魂の一部。
  温和な獏良の人格とは似ても似つかない凶悪な眼光を覗かせ、彼は高層マンションの屋上で、腕組みしながら眼下の街を見下ろしていた。
  彼が、殺し合いに乗っているということは言うまでもないだろう。
  バクラは魔神皇の提示したルールに則って、全ての参加者を殺し尽くす算段でいる。
  それを悪いことだとは、当然思わない。
  殺し合いを悪しきと思う心がもし彼に欠片でもあったなら、古代エジプトの戦争は、あれほど凄絶を極めるものにはならなかった筈だ。

 (天下の東京を丸々ゲーム盤にするたぁ、随分と派手好きなことだな)

  如何に魔神皇といえど、まさか実際に全ての住人を殺して会場を用意したわけではあるまい。
  そう、これはゲーム盤――奴の考えたゲームを皆にプレイさせる為にわざわざ用意した、レプリカの東京二十三区。
  一際強めの風が吹いて前髪がそよぎ、バクラは苛立たしげに顔を顰める。
  
 (……だが、どうやら力のデカさは本物らしい。魔神皇なんて大それた名前を名乗るだけはあるようだぜ)

  これだけの広大な空間を用意する力、それにあの場で彼が見せた圧倒的なまでの武力。
  バクラは盗賊らしい粗暴な性格の持ち主だが、彼我の実力差を見誤るような間抜けではない。
  彼は冷静に魔神皇の力を分析し、自分が殺し合いを勝ち抜いた後のことについて思案していた。
  そう、殺し合いをして生き残った者の願いを叶えるという部分だけに目が行きがちだが、魔神皇はあの時こうも言っていた。
  「生き残った者には、この魔神皇の片腕として働く権利と、願いを一つなんでも叶えてやることにしよう」と。
  言うまでもなく、バクラにとってそんなものは願い下げだ。
  彼にとって他人への隷属は唾棄すべきものであり、たとえ協力や同盟の一環だったとしても、盗賊王の矜持がそれを許さない。
  
  しかし現実問題として、バクラに魔神皇を倒すだけの力はない。
  千年アイテムに宿った闇の人格は、アイテムを介して特殊な力を使用することが確かに出来る。
  だがそれも、あんな怪物じみた相手には殆ど無意味と言っていい。
  殺し合いを勝ち抜き、願いを叶える力とやらを奪った後で殺しにかかったとして、勝率は間違いなく一パーセントぽっちもないだろう。
  武藤遊戯や海馬瀬人、マリク・イシュタールの持つ『神のカード』があったのならいざ知らず、丸腰に等しいバクラでは勝負にすらなるまい。

 「ククク……」

  その屈辱的な事実に、バクラは怒りも沈みもせず、ただ――笑う。
  深く、静かに、しかしそれは絶望して自棄になった者のそれとは決定的に一線を画した、勝負師の顔……!!

 「魔神皇ちゃんよ……! 確かにてめえは強えんだろうよ……が、たかだか『魔』の神程度が粋がるには、オレ様はちと手強い相手だぜ……!!」


520 : カタストロフの音色へ ◆i9L4GKxxpw :2016/05/31(火) 23:45:07 MzW0ITJU0

  バクラは魔神皇に匹敵するような力は持たない。
  ただしそれは、彼が魔神皇という存在に対し、絶対に勝利できないというわけではない。
  一つだけ、ある。
  どんなに圧倒的な力の差であろうと覆して、高らかに嗤う魔神皇を奈落の底に突き落とすことの出来る手段がある。

 「なんたってオレ様は、腐っても『大邪神』でね……!」

  闇のゲーム。
  ゲームの発祥は古代エジプトにまで歴史を遡るが、これは世間一般に連想される、互いに楽しみながらプレイするゲームとは訳が違う。
  闇のゲームで敗れた者は罰を受ける。
  罰に軽重はあるが、しかしそこはバクラという男。そんな生易しい報いで済もう筈もない。
  彼は、魔神皇の魂を奪うつもりであった。
  ゲームのルールを犯した場合、こと闇のゲームにおいては、謝罪や金では解決できない。
  問答無用で不正プレイヤーの敗北が確定し、敗者の烙印を押される……つまり、どれだけ相手の力が強大だろうと、ゲーム盤の中では関係がない。
  相手も、自分も。ただ一人のプレイヤーとして、勝敗を争わねばならないのだ。
  これこそがバクラの考える、魔神皇の打倒方法であった。
  驚くなかれこの男は、魔神皇――ハザマにゲームを挑み、彼を闇の底に叩き落とす腹積もりでいる。
  魔神皇の力も魂も全て奪い、完全なる勝利を収めるつもりだ。

 (今は精々束の間の優越感に酔ってな……オレ様がゲームを勝ち抜いててめえの前に現れたその時が、てめえの最期だぜ……!)

  べろりと獰猛に舌舐めずりして、バクラは自分の最終到達点を決定した。
  まずは全員を皆殺しにし、このゲーム盤を脱出する。
  それから魔神皇を蹴落として力を奪い、自分の野望を果たすために使う。
  常に虎視眈々と機を窺い、利用できるものは全て利用してきた彼らしい、貪欲な行動指針だ。

  それを少し離れた場所から見つめ、憂いげな溜息を零すのは、彼というサマナーに召喚された悪魔。英傑・関銀屏だった。
  なんたる屈辱、そしてなんたる情けなさだろう。
  銀屏は瞳に涙すら浮かべながら、自分の不運を呪っていた。
  何故、こんな悪魔のような男に召喚されてしまったのか。
  本来なら銀屏は、殺し合いを打破するために動きたかった。
  しかしその願望は、この冷酷にして狡猾なる男によって踏み砕かれてしまった。
  恐怖に屈した銀屏に、彼に従って無辜の人々を殺す以外の選択肢は、もう残されていない。

 「……あ」

  その時だ。
  銀屏の耳が、小さな音を捉えた。
  階段を誰かが登ってくる音。
  それは段々とこの屋上へ近付いてきており、その『誰か』が此処に踏み入るまで、然程時間はないように思われた。
  銀屏はこの事をサマナー、バクラに伝えるか迷ったが、結局彼女は自分に殺戮を強いる彼にそれを教えるべく口を開く。
 
 「ば、バクラさん……」
 「どうした?」
 「誰か来ます、此処に」
 「ほぉ……」


521 : カタストロフの音色へ ◆i9L4GKxxpw :2016/05/31(火) 23:45:46 MzW0ITJU0

  バクラが浮かべた表情は、銀屏の想像通りの邪悪な笑み。
  ああ、と彼女は嘆く。
  やはり彼は、殺す気なのだ。
  もとい、殺させる気なのだ。
  自分に、他人を。
  罪もない人々を、殺させるつもりなのだ。
  バクラの目が、告げている。
  分かっているな、と。
  それに対し銀屏は、ただ俯いて小さく頷くしか出来なかった。

  双頭錘を握り締め、ぎゅっと力を込める。
  そうして見据えた先、屋上に出る扉が音を立てて引かれると同時、銀屏は「ごめんなさい」と小さく呟いてから一歩を踏み出した。
  その扉の隙間から、目に悪いほどの華美な衣装に身を包んだ少女の姿が見え。
  更にその後ろに、老いて枯れた肌と大きな兜が見えて――銀屏がもう一歩踏み出した時、バクラが「待て!」と声を飛ばす。

 「……ありゃ、先客?」

  華美を極めた、サイバーチック風の衣装の少女が呟く。
  その顔は、どう控えめに言っても美少女、としか形容できないほど整った可憐さであった。
  コスプレイヤーじみた格好が気にならなくなるくらいの、現実離れした端麗ぶり。
  だがバクラが問題視したのは、少女の方ではない。
  彼女の後ろに控えている、枯れ果てた老人の姿をした――恐らくは悪魔であろう――兜の男だ。
  視線が交差する。するとバクラは「行くぞ」と銀屏へ促し、当惑する彼女に先んじて屋上を後にし始めたではないか。
  何が何なのか分からない銀屏。

 「良いのか?」 

  言葉を投げたのは、兜の老人だ。

 「今やり合うには、ちぃとばかし分が悪いんでね」

  クク、と笑いながら答えるのは、銀髪の盗賊だ。

 「賢明だ」

  ――返答に対し不敵な微笑で答えれば、その悪魔がバクラ達の背を刺そうとすることはついぞなかった。
  サマナーと、敵の悪魔だけの間に成立するやり取りがあった。


522 : カタストロフの音色へ ◆i9L4GKxxpw :2016/05/31(火) 23:46:21 MzW0ITJU0


  
 「逃がしてよかったの?」

  問うのは、虹の美少女。
  もとい、魔法少女。
  レイン・ポゥと呼ばれる彼女が、兜の老人へ問うていた。

 「良い。あの男は、解き放っておくのが最も我らにとって有益だ」
 「ふーん。じゃああっちの方が悪魔だったんだ」
 「いや、悪魔は女の方だろう」
  
  訝しむように、レイン・ポゥは眉を顰める。
  確かに、攻撃しようとしていたのは少女の方だ。
  だが少年の方はあまりにも堂々としており……レイン・ポゥは、そこから人間味というものを感じ取ることが出来なかった。
  悪魔――大魔王バーンに対して見せた、あの笑い声。
  あれは悪意と自信に満ち溢れた、まさしく悪魔のようなものだった。

 「だが、警戒すべきはサマナーだ。余の推測が正しければ、奴は……もとい、奴の中に眠るモノは、余の同族だろう」
 「……は? 魔王ってこと?」
 「恐らくはな。――いや……」

  バーンは顎に手を当て、眼下に広がる街を見下ろす。
  マンションを出、何処かへと向かう彼ら二人の姿が見えた。
  一度だけサマナーの少年が振り返り、屋上に立つ魔王と再びその視線が交錯した。
  それで確信したように、バーンは笑みを深める。
  
 「『大魔王』ではない。『大邪神』と、言うべきであろうな」

  邪神の魂を内に秘める、人の皮を被った『闇』。
  大魔王たるバーンには確信があった。
  あの男は捨て置けば捨て置くだけ、参加者の数を減らす暗躍をしてくれる。
  かと言って懐で飼うのはバーンをしてリスクが高すぎると言わざるを得ない、そういう人物だ。
  
 「期待しているぞ、邪なる者よ……」


【江戸川区・マンション(屋上)/1日目/朝】
【レイン・ポゥ@魔法少女育成計画Limited】         
[状態]:健康
[装備]:COMP(魔法の端末型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:全ての者を利用し、楽しく生きる。
1;邪神ねぇ……
[COMP]
1:大魔王バーン@ダイの大冒険
[種族]:大魔王
[状態]:健康
※真の肉体、及び鬼眼王になることは現時点では不可能です。


523 : カタストロフの音色へ ◆i9L4GKxxpw :2016/05/31(火) 23:46:49 MzW0ITJU0



 「よ、良かったんですか……?」

  恐る恐る、銀瓶はバクラに確認する。
  銀瓶は当然、誰かを殺したいとは思っていない。
  あんな幼くて可愛らしい少女であれば、尚更のことだ。
  殺さずに済んでよかったと、そう思っていないと言えば嘘になる。
  だが逆に、銀瓶は殺さずに済んだということに、不気味な違和感を覚えてもいた。
  あれほど皆殺しと息巻いていたバクラが、何故見逃すという選択肢を選んだのか。
  
 「良いも悪いもねえ。あの場で攻撃してりゃ、殺されてたのはてめえの方だったろうな」

  見逃した、のではない。
  あの場に限っては、見逃されたのだ。
  もしも虹の少女の悪魔であろう、兜付きの老人が殺る気だったなら、間違いなく殺されていた。
  バクラは銀瓶を見捨ててでも逃げようとしただろうから、彼女はまさに命拾いした、といえる。

 (だが、次に会ったらああは行かないはず……)

  どうにかして、それまでに手を打つ必要がある。
  手持ちの戦力を強めるなり何なりして、あれに対抗するだけの手札を揃えなければ、次はない。
  出来るなら、適当に消耗して這々の体でいてくれるか、別な悪魔に打ち倒されてくれているといいのだが。
  
 (……いずれにせよ、てめえもオレ様の踏み台として蹴落とさせてもらうぜ。お仲間さんよ」

  大邪神と、大魔王。
  似て非なる邪悪は静かに邂逅を終え、未だ静寂は保たれている。
  しかしバクラの危惧する通り、次はこうは行かないだろう。
  それまでに、手を打つ必要がある。
  闇は、蠢いている。
  魔神皇の力すらも狙う貪欲な盗賊が、作り物の街を闊歩していた。


【江戸川区・マンション周辺/1日目/朝】
【バクラ@遊☆戯☆王】
[状態]:健康
[装備]:ダイス型COMP
[道具]:基本支給品、未確認支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:全員を皆殺しにして脱出する。
1:最終的には魔神皇に闇のゲームを挑み、魂とその力を全て奪い取る
2:強力な悪魔に与する手段を模索する
[COMP]
1:関銀屏@真・三國無双7シリーズ
[種族]:英傑
[状態]:恐怖、不本意


524 : ◆i9L4GKxxpw :2016/05/31(火) 23:47:10 MzW0ITJU0
投下を終了します。
何かあればお願いします。


525 : 名無しさん :2016/06/01(水) 00:17:04 zshj6k3Q0
投下乙です
わずかな接触でお互いの本質を見抜くバクラとバーンさまが大物感あってグッドですね


526 : ◆.wDX6sjxsc :2016/06/01(水) 09:43:28 alqIYwQA0
投下乙です

バーン様の迸る威厳、相手の中に眠る物の正体を一瞬で見抜くのはさすがと言わざるを得ません
バクラも負けず劣らず豪胆、そして怯える銀屏ちゃん可愛いですね

自分も投下します


527 : Judgment Day ◆.wDX6sjxsc :2016/06/01(水) 09:46:21 alqIYwQA0

往時ならば多くの人間で溢れかえっているであろう東京。
房総半島の南西部に位置するモチノキ町をホームとする清麿も、十数年と言う短い生涯のなかで幾度となく来たことがあった。
だからこそ、言いようのない不気味さと違和感を肌で感じていた。

「やっぱ、この首輪が嵌められてる人間とアクマ以外は居ないと思った方が良いか」

赤い塗装が成されたバイクの座席を一撫でして呟く。
今いる渋谷の名もなきガソリンスタンドにも当然ながら人の気配はない。
完璧なゴーストタウン。

「市原仁奈に前川みく、多田李衣菜に島村卯月か。フォルゴレや恵さんが居ないのは良かったけど、アイドルまでこんなとこにいるのかよ」

彼女たち346プロダクションのアイドルたちとは前に会った事があった。
あれは確か…人気アイドルの大海恵とイタリアが誇る大スターパルコ・フォルゴレ、そして346プロダクションのコラボツアーの楽屋でだっただろうか?
最も、向こうはライブ会場に来ていた一般人の事など憶えてはいないだろうが。
そこまで考えたのち、思考を切り替え、脱出に繋がる考察へと意識を向ける。

「…まずは、外がどうなってるか調べないと」

無論魔神皇が何の対策も施していないと思うほど清麿は楽天家ではない。
最低でも脱出しようとすれば、首輪が爆発するようになっているだろう。
問題は、首輪の課題をクリアすればこの魔都と化した東京から出られるか、だ。

脱出しようとしたらより強力な悪魔が襲いかかってくるかもしれない。
この東京から出られない仕掛けがあるかもしれない。
そもそもこの会場は自分の住んでいたモチノキ町に繋がっているのか、
繋がっているとするのならば、この東京に居た人々はどうなったのか。

脱出を目指すならば、遅かれ早かれ調べる必要があるだろう。
そのための足の確保にこのガソリンスタンドまでやってきたのだ。
正直な所期待はしていなかったが、一台だけバイクが手つかずで置いてあったのは僥倖だった。


528 : Judgment Day ◆.wDX6sjxsc :2016/06/01(水) 09:46:50 alqIYwQA0

「とりあえず…一番近いエリアの端でも目指してみるか」

本来なら人が集まりそうな場所を目指すべきなのだろうし、実際彼も足が見つからなければそうするつもりだったが、見つかったのだから良いだろう。
そう結論付け、バイクに跨ろうとしたその時。
バイクの磨かれたボディに、人影が映っていた。

スマートな白人の姿。
外国人だろうか。
清麿が振り向くと、アメリカの警官の恰好をしたその男が、静かに口を開いた。
その手には、この状況では余りにも浮いている花束が握られていた。


「………君は、」
「名乗る前に、アンタの名前と、このゲームに乗っているかどうか聞きたい」

そう言うと男は花束から手を放すと、手を顎にやり少し考える風な素振りをして、

「T-1000だ。この殺し合いには乗っていない」
「……高嶺清麿。同じく殺し合いには乗ってません」

T-1000?
渾名か、ファミリーネームか何かか?
それに、どこかで聞いたことがある様な…
兎に角、殺し合いに乗っていないと言う目の前の男。
だが、清麿は警戒の念を禁じ得なかった。
名前もそうだし、余りにも落ち着きすぎている。
気のせいと断じればそれまでだが、魔界の王を決める戦いで出会った魔物の子に、目の前の男似た目をした奴がいた気がする。
あれは、そう。


「君は、誰かに会ったかね」
「……いえ、俺が会ったのは貴方が初めてです」

そうか、とT-1000は呟き、少し俯く。
その際清麿と視線が一瞬交わり―――そして、清麿は思い出した。
あれは、一切の情を抱かずに相手を消せる者の目だ。
相手が消えるのが当然と思っている者の目だ。
歴史を終わらせるものの目だ。

ガッシュと共に、魔界の趨勢を賭け戦った破滅の子。
クリア・ノート。

「スラリンッ!!!」


529 : Judgment Day ◆.wDX6sjxsc :2016/06/01(水) 09:47:23 alqIYwQA0

清麿が自らの悪魔の名を呼ぶのと、鋭い衝撃が走ったのは同時だった。
気持ちの悪い浮遊感と共に、体が数メートル吹き飛ばされる。

「ッッ!?」

肺の中の空気が根こそぎ出ていき、意識が僅かに混濁する。
ぼやけた視界に映ったのは、あのジョン・コナーを名乗った男。
服装や首輪、能面の様な無表情は先ほどの物と同一である。
だが、明らかに違う一点が存在した。


ジョンの右腕に握られていたのは花束が積められた紙袋では無く、大ぶりのショットガン。
スラリンが飛び出していなければ、その銃弾の餌食になっていただろう。

「ぐ…お前……!」

よろめきながらも鋭い視線で清麿は目の前のショットガン男を睨みつける。
だが、当の男の表情は冷ややかなものだった。
よくも防御が間に合った物だ、と言わんばかりの。

そのままT-1000は二射、三射目発砲の発砲に移行しようとする。
だが、二手目は此方の方が早い。

スラリンが砲弾のようなスピードで男に肉薄し、その腹部に強烈な体当たりを見舞った。
スライムと言う種族は例え研鑽を積み、鍛え上げたとしても、膂力や耐久力は他の種族よりも遥かに劣る。
だが素早しっこさに限り、大魔王の様な規格外を除く他の種族のトップクラスに匹敵するのだ。
ただの体当たりが、スラ・ストライクと言われる必殺技に昇華されるまでに。

そんなスライムの最高速度の一撃を受け、先ほどの清麿の如く男はもんどりうって吹き飛ぶ。
ショットガンと花束の入っていた紙袋も一緒に弾き飛ばされ、花びらと予備弾倉のケースが踊る様に舞い、地に墜ちて音を立てた。

「早く!清麿!!」

スラリンがそう叫んだ頃には清麿は既に動きだし、ショットガンに向けて疾走していた。
銃身と予備弾倉を引っ掴み、素早く銃を向ける。

男もその頃には立ち上がり、清麿達と睨みあう。
男の様子を見て、清麿は目を剥いた。
その腹には、小さなクレーターができていたのだ。

「お前は……悪魔なのか?」

緊張が漂う。
男には自分と同じ首輪が嵌められていたが、どう見ても人間とは思えない。
腹部にダメージを折って肋骨等を損傷することはあるかもしれない。
だが、あのように抉れた様なクレーター、それも金属の光沢が出来る人間など存在しないだろう。
清麿の問いに男は……T-1000は相変わらずの無表情で。

「違うな」

短く否定すると、手の中のCOMPからもう一人の殺戮機械を出現させた。

「ッッッ!スラリン、右に走れ!!」

ぶぅん。
空気を裂く音と共に鉄槌が振り下ろされる。
振り下ろされし槌はコンクリートをプラスチックの様に破砕して見せた。


530 : Judgment Day ◆.wDX6sjxsc :2016/06/01(水) 09:47:45 alqIYwQA0

「まだだ、下れ!!」

清麿の指示に従い、猛スピードで後退する。
その一秒後、スラリンと清麿の丁度中間に鋭い弓矢が飛んできた。
礫で全身を打ちつけるが、清麿もスラリンも何とか態勢を立て直す。

(前もってスクルトを重ねがけしておいて正解だった…!)

もし自分とスラリンかけておくまでにあの男と出会っていたらショットガンの初撃で終わっていただろう。
刺すような視線を向け、目の前の敵を見据える。
重量のありそうな剣と槌。尾には弓矢を備えた巨大な機械兵。
同じロボットでもかつて戦ったコーラルQにはない威圧感があった。

あれは不味い。まともに戦えば勝ち目は薄いだろう。

「スラリン、前を向け!」

指を敵方へ向け、清麿は呪文を叫ぶ。
まず奪うべきはあの堅牢さ。

「「ルカナン!」」

スラリンもこういった手合いと戦う術は心得ている様で、ほとんど詠唱は指示が出されるのと同時だった。
相手の耐久値を下げる青白い閃光は機械兵を包み込む。

しかし、

「!? 跳ね返してきやがった!!」

包み込まれる寸前で透明の障壁がそれを遮り、逆に清麿達の方へお返しと言わんばかりにはねのけてきた。
何とか身を翻し回避するが、呪文が一切聞かない以上相手の危険度は跳ね上がっただけだ。


(どうする!スラリンだけじゃ呪文が封じられたら良くて相打ちだ。
逃げるのも厳しい……いや、まて)

魔法が反射されるとするならば、ここならば。
ガソリンスタンドの端へと向け、駆ける。

(よし!)

いきなり危ない橋を渡ることになるが、どの道このままでは殺される。
あれならば、魔法と違って反射される心配も無い。
清麿は覚悟を決めてスラリンに指示を出そうとしたその時、

肩に焼けるような痛みが走った。

「心臓まで纏めて貫通させるつもりだったが」

背後を見れば、あの男が、T-1000が、指を自分の左肩に伸ばし、突き刺していた。

「ッ、ぐ、ゥ……ァアアアアアアアア!!!」

苦悶の叫びを上げながら右手のショットガンを背後に向け、一息に引き金を引ききる。
ドンッ!!という轟音と共に、反動で刃と化した指が抜けた。
T-1000は大きく衝撃を受け、たたらを踏んだが、それでも尚殺戮機械は止まらない。
清麿の襟を掴むとそのまま放り投げる。

二度、三度、バウンドして立てられかけたバイクにぶつかった所でようやく清麿は止まることができた。

「ピギィ!!」

その直後、スラリンが鋼鉄兵に斬り飛ばされ潰れたゼリーの様になって隣に転がってきた。
息はあるが、戦える状態ではない。

「グ……くそ、アンタ、何でこんな事」

清麿はショットガンとガソリンスタンドの端に立てかけられたバイクを支えにヨロヨロと立ち上がった。
そして、スラリンを庇う様に、その背に隠すようにガソリンスタンドの端へと下がり、ショットガンを向けて儚い牽制をしながら問う。
だが、T-1000は死刑執行人の様に無言でそれを見つめるだけだった。


531 : Judgment Day ◆.wDX6sjxsc :2016/06/01(水) 09:48:15 alqIYwQA0

「………」


無言の返答を受け、人間は観念したのかこうべを垂れ、動きを止める。
人は容易に諦観の念に支配される。
機械は、ターミネーターは諦めない、例え下半身をもがれようとも任務を達成するまで行動し続ける。
故に、破滅の未来で選ばれたのはヒトではなく機械だった。
そして、ここでもきっとそうなる。

「ではいくぞ」

もう一体の鋼鉄兵が死刑執行を告げた。
T-1000もそれを見て、殺戮を開始するべく動く。
哀れなる罪人の心臓を一突きにするため、腕を変形させる。
一歩、二歩と踏み出し、十五メートル程の彼我の距離を一瞬で縮めるべく、隣の悪魔と共に疾走を開始しようとしたところで、


高嶺清麿と目が合った。
その目には、諦観の色はなかった。


「―――SET」


ボロボロだったはずのスライムが傷一つない状態で、彼が刺した指の先にスラリンは飛び出していた。
突然の復活のタネは『めいそう』。
その効果は高嶺清麿の知るダニーと呼ばれた魔物が使う『ジオルク』と同じ、超再生能力。

当然そんな事知る由もないT-1000は僅かに眉を顰め、キラーマジンガはお構いなしに敵へと向け駆ける。
だが、タッチの差でスラリン達の方が早い。

口を限界まで開いたスラリンから放たれしは灼熱。
大魔王と言う規格外を除けば竜種でも研鑽を積まない限り、放てぬ爆炎。
魔法を用いぬ純粋な大火炎は、魔法反射をもつキラーマジンガの装甲でも看過できるものではない。

閃光にも似た炎は、一瞬でガソリンスタンドを包み込む。
同時に、バイクが発進する音が轟き―――、



その十秒後、炎がガソリンに引火した。


532 : Judgment Day ◆.wDX6sjxsc :2016/06/01(水) 09:48:46 alqIYwQA0




「くそったれ、何だアイツ!」

清麿はバイクを運転しながら思わず毒づいた。
アクセル全開で発進したが、少し爆風を浴びてしまった様で、白いベストは焦げ、背の軽い火傷がじくじく痛む。

一歩間違えば全身炭同然になっていた事は間違いない。

だが、そこまで危険を冒して戦った相手は、あれ位で死ぬとは到底思えなかった。
『答えを出す者(アンサートーカー)』の力を使わずとも分かる。
あれはある意味悪魔以上の怪物だ。いや、兵器と言うべきか。
派手にやってしまったし、とりあえずはあの怪物から逆方向に逃げねばならない。

それにしても、T-1000という名前がどこか引っかかる。
どこかで、聞いたことがあるような……
ゆっくりと、記憶の糸を手繰り寄せていく。


―――俺の、アンサートーカーの力は主に兵器の開発に利用されていた。
具体的には、液体金属の軍事転用方や、サイボーグの効率的な運用方法何かにだな。


「ターミネーター……」

別にその名前を彼は知っていた訳ではない。
ただ浮かんだ名前をそのまま口にしただけだ。

脳裏を過ぎったのは、クリア・ノートとの闘いの前、修行中に自分と同じ
アンサートーカーの持ち主であるデュフォーが、一度だけ語っていた話。
幼い彼を骨の髄まで利用して得た知識を使った、流体の機械兵の計画。
だが、あれはまだ実用化できる程進んでいないと、あと数十年はかかるとデュフォー自身が言っていたはずだ。

だとすれば、あの化け物は一体どこから連れてこられたのだ。
未来から来たとでも言うのか?

答えが、出せない。

「清麿……大丈夫?」

険しい顔で考え込んでいたが、後部座席に座っていたスラリンに語りかけられたことで我に返った。
心配そうな顔を体全体で表現して此方を見つめてくるスラリンに彼は笑い返した。

そうだ、あの怪物たちが何者であろうとも、とどのつまり魔神皇までの通過点でしかない。
壁は大きく、未来へと続く道は闇に閉ざされている。
ならば、その壁を乗り越えられるぐらい大きくなることを目指すしかない。
大きく、大きく、いつか世界すら救えるまでに。金色の王様を驚かせられるほどに。

「大丈夫だ。例えアイツが、アイツを此処に連れてきた魔神皇が何であれ、俺達が勝ってみせる」

彼は、その時まで強がる事を止めない。
それが、大人になれない子どもの強がりなのだとしても。


誰も居ないハイウェイを、一台のバイクがひた走る。

【豊島区/1日目/朝】
【高嶺清麿@金色のガッシュ!】         
[状態]:疲労(小)、背中に軽い火傷、左肩に刺突傷(処置済み)
[装備]:COMP(携帯型)
[道具]:基本支給品、バルカン300@金色のガッシュ!、ジョン・コナーのバイク@ターミネーター2、
ウィンチェスターM1887(2/5)&予備弾倉×4@ターミネーター2
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:魔神皇を打倒する。
1:T-1000からの逃走。その後殺し合いの打破に動く
[COMP]
1:スラリン(スライム)@ドラゴンクエストⅤ
[種族]:妖精
[状態]:健康

※アイドルともしかしたら面識があるかもしれません。
※ガソリンスタンドからバイクを入手しました。他にも駐車場等を探せばあるかもしれません。
※アンサートーカーは制限中です。
※豊島区のガソリンスタンドが爆発し、周囲に爆発音が響きました。


533 : Judgment Day ◆.wDX6sjxsc :2016/06/01(水) 09:49:29 alqIYwQA0



人間風に言えば、してやられたと言うべきだろうか。
悪魔と言う異存在のサポートがあったとはいえ、ショットガンをかすめ取られ、あまつさえ取り逃がすとは。
だが、あの高嶺清麿と言う少年にあって自分になかったものがあったのも確かである。
それは、経験。
あの少年の観察眼や状況判断は“生産“されたばかりの自身より相当場数を踏んでいる事が伺えた。
自身のCPUには同胞達であるターミネーターと人類抵抗軍との戦闘記録がインプットされている。
だが、あの少年はそれを上回って見せた。
危険だ。あのまま高嶺清麿を生かしておけばジョン・コナーと同じく神の英知を抹消する者(ウイルス)となりかねない。

恐らく、ここはそう言う人間が集められているのだろう。
スカイネットにカタストロフを及ぼしかねない危険なウイルス達が。
ならばそれを排除するのは自分の役目である。

炎の中からT-1000がゆっくりと現れる。
その体には火傷一つ無い。
だがその姿は先ほどまでのすらりとした端正な顔立ちの白人では無かった。
黒髪に東洋人の顔立ち、白いシャツに黒のスラックス。意志の強そうな瞳。
高嶺清麿の姿をしたT-1000がそこにいた。

これが、『人類の歴史を終わらせる(terminate)者』が、重要人物を抹殺するべく与えられた能力。
その力は人間に潜み、際限なく混乱と殺戮をもたらすだろう。


T-1000は炎の中から現れたもう一体の殺戮機械(キラーマジンガ)を仰ぐ。
そして、ダメージのスキャニング。結果は直ぐに出た。



――――――損傷は軽微。任務続行。


【豊島区/1日目/朝】
【T-1000@ターミネーター2】         
[状態]:健康
[装備]:COMP(携帯型)
[道具]:基本支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:皆殺し
1:高嶺清麿を追跡。
[COMP]
1:キラーマジンガ@ドラゴンクエストⅥ
[種族]:マシン
[状態]:ダメージ(小)

※豊島区のガソリンスタンドが爆発し、周囲に爆発音が響きました。


534 : ◆.wDX6sjxsc :2016/06/01(水) 09:49:54 alqIYwQA0
投下終了です


535 : ◆hyh1lxR0Ss :2016/06/01(水) 16:59:53 .LJwVbC60
投下します


536 : 暴と智のクロスポイント ◆hyh1lxR0Ss :2016/06/01(水) 17:00:47 .LJwVbC60



半ばから炎上する腕を見て悲鳴を上げる幽鬼:グール。その隙を見逃さず、腐った頭を胴体から蹴り落とす。
空気をミキサーして焦げた臭いを発する足に絡み付こうと迫る邪鬼:グレムリン。中空に跳ね飛ぶ影を目で追う暇も与えず、回した逆脚で地面に首を叩きつけた。
濁った血が噴出するのを尻目に、動揺する妖獣:ヌエの元に走る。凶声を放とうとした口に右手を突き入れ、ヌエの思考より早く呪殺の魔法を放つ。
パニック・ボイスと共振する形で、強烈な干渉衝撃波が発生する。脳を揺さぶられ、顔面の穴という穴から体液を垂れ流し、妖獣は絶命した。
亡骸から転がり落ちた宝石(ターコイズ)を拾い上げながら背後に意識をやると、Lawの悪魔たちが断末魔の叫びを上げている。
振り返ると、自分が片付けた十数体の悪魔に倍する天使・精霊を無慈悲に八つ裂きにする魔王:ピサロの姿があった。
最後に残った聖獣:ユニコーンが逃走の構えに入る事も許さず、魔王は地を蹴って処女の聖域である一角獣の背に腰を下ろす。
振り落とそうと身体を揺するユニコーンの抵抗は、猛烈な膂力で角と顎を掴まれての捻転と共に止んだ。

「終わったぞ」

汗一つかいていないピサロに流石は魔王だな、と感心しながら、サマナー……カオスヒーローは、数多の悪魔の死骸を検分しはじめた。
無人の世田谷区を賑わす悪魔の数は、たった二人の魔人によって減少の一途を辿っていた。





やはり、何かがおかしい。
六度目の交戦を終えたカオスヒーローは、宝石を詰め込んだ袋を弄びながら首を傾げた。
悪魔との戦いには何の忌避感もないが、連中はあれほど統率の取れた存在だっただろうか。
知性の高い上位悪魔が陣頭に立っているならともかく、遭遇するのは最下級のものばかり。
先ほど戦いの舞台となったのも、周囲をそれなりに高い建物に囲まれ、ピサロとカオスヒーローを分断できる程度に広い所だった。
建物の窓からは武器を装備できるタイプの人型悪魔が狙撃を試み、遠・近それぞれの攻撃を得意とする悪魔は完璧に役割分担を果たしていた。
流石にLaw・Chaosの悪魔間に連携はなかったし、そもそも弱い悪魔しかいないので大した意味はなかったが。

「マッカも落とさないときた」

本来なら、最高級のガンが買えるくらいは稼げたのではないか。魔人となる前の厳しい台所事情を思い出して、ふと頬が緩む。
力だけを求め、渇き餓えたあの頃からすれば、随分と余裕ができたものだ。
ピサロは主の感傷に頓着せず、無表情に己の所見を語る。


537 : 暴と智のクロスポイント ◆hyh1lxR0Ss :2016/06/01(水) 17:01:24 .LJwVbC60

「最初と二度目は、異なる属性同士で反目している修羅場に突っ込んだ。だがそれ以降は、我々を待ち伏せて襲ってきているようにも見えるな」

「力の差が歴然なんだ。無鉄砲な奴等が俺達を優先して狙ってきてもおかしくはないが……」

本能で動いているにしては、引っ掛かる点が多い悪魔の襲撃。
何らかの感情に突き動かされているとすれば、それは憎悪か使命感か、判別がつかなかった。
魔王でありながら一人の女性を救う為に勇者に加担したというピサロを連れ歩いていたのがまずかったのか。
それともサマナーとして、悪魔の楽園に踏み込んだのがいけなかったのか。
考えるカオスヒーローに、ピサロは事も無げに言い放つ。

「あの足止めも果たせん雑魚共の親玉を見つければ、全て分かることだ」

「それはそうなんだがな」

いくら障害にならないとはいえ、連戦すれば消耗は避けられない。
襲ってきた悪魔たちは、MoonがFullなのか、と思うほど話にならない連中ばかりだった。
魔人皇も、わざわざ参加者を集めて殺し合いをさせているのだから、街に放った悪魔に「ニンゲンを目の仇にするな」とでも含みを入れても良さそうなものだが。
もっとも自分は今も、魔人になる前も人間ではなかったな……と由無し事を考えながら、カオスヒーローは万屋の暖簾をくぐった。喧騒が鼓膜を震わせる。

「ねーねー、コレ買ってよー。マッカがいるんだよー」

「へいへい、毎度ーよっ。……いらっしゃい! サマナーの人は大歓迎よー」

「宝石を買い取ってくれ」

万屋は3つほど見つけたが、どの店の店員も違う顔、違う態度だ。
それでいて喋る内容は同じで、どこか機械的で薄気味が悪い。
他の参加者の妨害になるかと思い、試しに店に火を点けようとしてみたが、一向に燃え上がる様子はなし。
施設を破壊するのは不可能ということはわかった。ターミナルや回復の泉も同様だろう。
この店の中にも悪魔がいて買い物をしているが、列に並び、すれ違っても襲ってくる気配はない。
何かを売っていた、ターバンのような装具や包帯を全身に巻いた悪魔はこちらを気にする様子もなく、店を後にした。中立地帯のようなものか。
となれば、素直に利用する他ない。宝石数個を代価に渡されるマッカの真贋をしっかり確かめる。
30000という支給金額以上には貯蓄する事ができない為、いくらか余分な宝石が余った。


538 : 暴と智のクロスポイント ◆hyh1lxR0Ss :2016/06/01(水) 17:02:09 .LJwVbC60

「毎度〜。お買い上げもお願いしますよ、ダンナ」

「品揃えをもっとよくしてから言うんだな……ん?」

全ての店舗で共通しているという品書きに目を通す。
便利な日用品から、各種武器がランダムで出る籤引(松竹梅の3ランクに分けられ、高いくじほど強力な武器が当たり易い)まで様々なものが販売されている。
そんな商品リストの中に、先ほどまでなかったはずの、見慣れないものがあった。

『参加者情報:斑目獏 等級C 5000マッカ』

「これはなんだ?」

「あー見つけちゃったねーハッハッハ」

間の抜けた声で笑う店主。
カオスヒーローがこの世界について質問してもこの笑いをするばかりで有益な情報は得られなかったのだが、流石に売り物については説明してくれた。
参加者は万屋に手持ちのアイテムを売る事が出来るが、法の存在しない世界だけに個人情報も売買が可能らしい。
売られた情報は全ての地区のショップで取り扱われ、一品限定早い者勝ちの商品として扱われる。

「こちらからは提示しない隠し機能……いわば一人一能力って言っておいて指が伸びるし時も止めるみたいなヤツね!」

「……とりあえず、売り切れる前に買おう。おまけでもう少し詳しく売買について教えてくれ」

もしかしたら既に誰かの目に触れ、購入は避けられたが情報売買ができると知られている可能性はある。
それでも、アドバンテージを得る為に商品リストからこれを消しておくことは無意味ではないだろう。
カオスヒーローはリストを見て初めて「そういうこともできるのか」と思い至ったが、この斑目という売り手はゼロからその発想に辿りつき、実行している。
駆け引きに長けた男なのだろうな、と思いながら、カオスヒーローは店主から情報売買のルールを聞く。

①買い取れる情報は、売却時点で事実であるものに限る。
②参加者一人が売れる情報は一つのみ。COMPが禁止エリア・死亡者を受信する毎に、制限はリセットされる。
③更新が容易である情報(拠点・手持ちの悪魔数等)ほど安く、その逆(サマナーの固有能力等)ほど高い。A〜Cの等級で示される。
④売却者自身に関する情報しか売る事は出来ず、売却者の名前が商品リストに明記される。
⑤購入者を選ぶことは出来ない。一度売れた情報は消滅し、売却制限がリセットされても同じ内容のものを再度売る事はできない。

渡された紙を開くと、『現在拠点にしている場所』という情報が記載されていた。
ピサロには白紙にしか見えないという。購入者にしか内容は読み取れないようだ。
カオスヒーローは「その場所」を頭に入れ、考える。
売却者―――斑目獏にとって、この情報を自分が買ったのが、思わぬ誤算であったのだろうか、と。


539 : 暴と智のクロスポイント ◆hyh1lxR0Ss :2016/06/01(水) 17:02:56 .LJwVbC60




世田谷の一角にある廃ビル―――その一室に、二人のサマナーが揃っていた。
互いの名は斑目獏とカオスヒーロー。斑目の拠点に、カオスヒーローが殴りこんだ形になる。
殺し合いを強制された者同士、という緊迫感は薄い。むしろ、カオスヒーローの方は困惑している。

「ああやって自分の居場所を晒すのは、罠を仕掛けているか腕に覚えがあるかのどちらかだと思ったんだがな。
 ……なんだ、お前? 俺と同じサマナーには見えないな……。」

「情報買ったんだ。そしてここに直行かー。いいねっ迷いがなくて」

カオスヒーローから見た斑目の力量は、話にならないレベルで低い。おそらくはレベル1の悪魔にも及ばないだろう。
廃ビルの外見からすればかなり整った内装の部屋の高級そうな椅子に座り、机の向こうからこちらを見据えてくる。
斑目の傍らで安楽椅子に座る悪魔も、同じようにこちらを観察している。それほど強力な力は感じない。問題なく抹殺できるだろう。
警告なしでアギ系魔法を放とうとするカオスヒーローの機先を制するように、斑目が動いた。
マホガニーの机に二脚が乗せられ、武骨な軽機関銃の口が鋼を吐き出さんとカオスヒーローを照準する。
ピサロは見慣れない武器の登場に一瞬戸惑った。即時発砲されていれば、カオスヒーローだけで対応しなくてはならなかったが、そうはならなかった。
銃を構えたままで、斑目は平静に語りかける。

「おっと。魔人になったサマナーと殺し合いをするつもりはないよ、俺は君と友好な関係を築きたいって思ってるんだけど」

「相手が魔人とはいえ、M249ミニミを向けて言うセリフじゃないな」

「抑止力って奴だよ。話せばわかると評判の俺と話そうとしない奴が多くてね」

眼帯に手をやりながら嘯く斑目が、カオスヒーローの勘気に触れる。
彼は自分を抑え付ける者に対しては無条件の殺意を覚え、行動に移す男だ。
魔人になる以前からそうであり、二重の意味で人を超越した現在となっては、その感性は己の力への自負もあってより苛烈に磨かれていた。

「一つだけ聞いてやる」

「なんだい?」

「その程度の脅しをしていい相手に見えたか?」


540 : 暴と智のクロスポイント ◆hyh1lxR0Ss :2016/06/01(水) 17:03:51 .LJwVbC60

憚ることなく殺気を叩きつける。
0.1秒後に間違いなく訪れる死―――その現実と、己の愚を知らしめさせてから殺す。
そんなカオスヒーローの決定は、彼に斑目の表情の移り変わりを注視させた。
鼻白み、狼狽する……そんな予想を、目の前の男の浅薄な笑みに重ねながら……。

「……!?」

「じゃあ、どの程度の脅しならいいのかな」

並みの悪魔ならそれだけで発狂死しかねない暴風のような殺気を浴びせられて、斑目は表情を変えた。
カオスヒーローの予測とは異なる、満面の喜悦―――命を脅かされる"チャンス"に感謝するかのような魔貌へと。
天魔・アスラ王にまで記憶を遡らせても見た覚えのない、異常な気質を前にして、カオスヒーローに一瞬の空白が生まれる。
その間隙を襲ったのはけたたましい銃声ではなかった。リーン……と、奇妙に響きのいい鈴の音が室内に広がっていく。
斑目の悪魔が、冒涜的な意匠の金剛鈴を振っている。その行動に疑問を覚えるより早く、廃ビルを揺らさんばかりの怒号が走る。

「外か」

ピサロが窓から眼下8階ほどの地上を見下ろし、呟く。
そこには、属性問わず集まった、百にも届かんばかりの悪魔が犇めいていた。
斑目の悪魔の行動に呼応しているのは明らかだった。
カオスヒーローの背中に、戦慄が走る。ここ世田谷で悪魔の活動が活性化していたのは偶然ではなかったのか。
目の前にいる何の力も持たない男が、悪魔を動かしていたとでもいうのか。
鈴を鳴らした悪魔が扇動の類の魔法を使えるというなら簡単だろうが、今に至るまで魔力はまったく感じられていない。
悪魔と身を重ねた自分に、同じ事が出来るか? ……この東京に来てから、2〜3時間で。不可能だ。カオスヒーローは結論する。

「ガイア教とメシア教だっけ? 終末に責任を擦り付け合うあの団体は、この街にはないみたいだけどさ。
 ああいう連中とは違って、俺と君は相容れないってほどでもないんじゃないかなぁ。賭郎を呼んで首を賭けたっていいよ」

「何故、そう思う」

「それは……ギャンブラーの勘。……いや、俺自身の経験則かな。人相分析学とかそういう……」

「嘘っぽいぞ、斑目獏。……だが、勘というなら、まあ同感か」


541 : 暴と智のクロスポイント ◆hyh1lxR0Ss :2016/06/01(水) 17:04:25 .LJwVbC60

カオスヒーローも、斑目獏という男に興味を抱き始めていた。
彼が信じ、求めて、得た力の果ては己の力を上回る力による破滅だった。
良い夢を見たような心地良さを覚えながらも、次があるならば、破滅も喪失もしない為にどうすればいいのか、という疑問が頭の隅にあった。
その答えを得る。力の先に待つものを。それがカオスヒーローの目的で、目の前の男は自分とは違う何かを持っていた。
この男が、バトル・ロワイアルで生き残れるのならば、その果てを見てみたい。陳腐だが今殺すには惜しい、という奴だ。

「俺の呼称は魔人・カオスヒーロー。名前はもうないから、もし呼ぶ機会があればこう呼ぶといい」

「知ってると思うけど、俺は斑目獏。嘘喰いって呼ばれてる」

「嘘喰い……か」

よろしく、と続けようとした斑目の言葉を遮って、カオスヒーローは身を翻す。
無言で窓まで歩み寄ると、割れんばかりの力でこじ開けてから、振り向かずに呟く。

「悪いが馴れ合うつもりはない。嘘吐きとはな……俺は品川に用があるんでな。邪魔するぜ」

「引き揚げか。簡単に殺せるがな……」

カオスヒーローは返事を待たず、ピサロを伴って窓から飛び降りた。
常人なら即死の衝撃を慮ることもなく、着地したカオスヒーローとピサロに周辺の悪魔が殺到する。
血肉のスープを作りながら悠然と歩くカオスヒーローに、容赦はない。
手駒にしたであろう悪魔が減って困る程度の男なら、嘘喰いに興味などないと言わんばかりに、進路を塞ごうとする悪魔を蹴散らし続ける。
やがて近寄ってくる悪魔もいなくなり、遠巻きに様子を窺う者だけを残して全滅した。
悪魔の亡骸を踏みつけながら歩くカオスヒーローが、ふと飛び降りた窓を見上げる。
見送るように窓の前に立つ嘘喰いが、口に何かを挟み、引き裂いている。カオスヒーローの視力が、裂かれて地面に落ちるパッケージを捉えた。

「……『かり梅』?」

瞬間、嘘喰いが口に出していた『賭郎』という単語について、古い記憶を思い出す。
転生後の世界ではとんと聞かなかったが、まだ人間だった頃、夢で"彼ら"と出会う前。
会員制ギャンブル倶楽部の最高峰として、そんな名前の組織の噂を聞いたことがあった。
そして、そこに君臨した最強のギャンブラーの異名が、確か……。

「面白いところに呼ばれたもんだ」

「お前の方針に口を挟む気はないが、カテドラルとやらを探しにいくんじゃないのか」

「ああ。もしあるならば、だが。あの建物を目指す奴がいるだろうからな……」

カオス・ヒーローは感慨を振り切り、天魔界の橋頭堡を目指して歩き出した。


【世田谷区/1日目/朝】
【カオスヒーロー@真・女神転生if...】
[状態]:疲労(小) 魔力消費(小)
[装備]:COMP(アームターミナル型)
[道具]:基本支給品、不明支給品、宝石数個
[所持マッカ]:二万五千
[思考・状況]
基本:"力"の先にあるものを探す
1:東京湾方面に向かい、カテドラルを探す
2:知り合いと会ってみる
3:斑目獏@嘘喰いに興味
[備考]
※真・女神転生if...における魔人カオスヒーローが何かしらの手段で呼び出されています
[COMP]
1:ピサロ@ドラゴンクエスト4
[種族]:魔人
[状態]:疲労(小) 魔力消費(小)


542 : 暴と智のクロスポイント ◆hyh1lxR0Ss :2016/06/01(水) 17:05:05 .LJwVbC60




「……斑目様の言葉は正しかったようじゃのう。我々Lawは貴方に協力させてもらうとしよう」

「セタガヤに住むChaosの者共にも、この私から先ほど聞いた事を周知しておく」

「どーも。今後ともヨロシクっ」

カオスヒーローが去った廃ビルの一室に、二体の悪魔が新たに訪れていた。
女神・クシナダヒメと妖鬼・モムノフ。
世田谷のLaw・Chaos両陣営を取りまとめていた悪魔が一堂に会しているのは、斑目の交渉の賜物だった。
彼はカオスヒーローが考えていたように、世田谷区の悪魔を完全に支配下に置いていたわけではない。
ただ、『サマナーとして殺し合いに参加させられている』『会場となる東京には人間ではなく、悪魔が住んでいる』という点を利用した。
悪魔と幾度か交渉するうちに、彼等も独自の文化や伝承を持って生きているということが分かった。
加えて悪魔という物は人間以上に噂に敏感な傾向があることも知った。そこで、彼は一つの噂を流し、両陣営のトップにまで辿りついたのだ。

「俺も驚いたよ。魔人皇を名乗るハザマが……"新しい魔人を造る為にサマナーに殺し合いをさせている"と悟った時にはね」

「魔人は、時折東京に現れては悪魔に甚大な被害をもたらす災害のような生き物です! あの男は自らそう名乗った!」

「あのカオスヒーローこそ、強力なサマナーがいずれ魔人になるという証拠よのう。そんなモノを東京に持ち込まれて、黙っているワレワレ悪魔だと思うか!クシナダヒメと思うかぁ!」

「俺みたいな一般人は魔人にはなれないんだろうけどさ。なりたくもないし……殺し合いなんてまっぴらだからね。サマナーとしてじゃなく、反逆者として君達と共に戦おうと思うよ」

心から本音を語る斑目を他所にヒートアップし、ハザマへの悪口雑言を並べる悪魔たち。
苦笑するジオットが、"鈴"と"悪魔の臭いが染み込んだ包帯とターバン"を二体の悪魔へ返却する。
自ら危険を冒してカオスヒーローが立ち寄るであろう万屋に潜入し、見事カオスヒーローを誘き出してサマナーに関する噂の裏付けを取った斑目。
突如現れ、しかもいつものようにすぐに消えない魔人に戦き始めていた悪魔たちは、ひとまずの主として認める程度には、彼へ信頼を寄せていた。
しかし――――。


543 : 暴と智のクロスポイント ◆hyh1lxR0Ss :2016/06/01(水) 17:05:56 .LJwVbC60

「斑目様と我々とChaosの者ども……力を併せ、魔人皇ハザマの企みを挫き彼奴を覆滅させようぞ!」

(嘘だ。クシナダさんは魔人の脅威さえなくなればハザマの事はどうでもいいと思っているし、俺やChaos属性の悪魔と本気で協力する気もない)

「貴公の献身には心を打たれた。愚かな殺し合いから無事生還できるよう、こちらとしても全力でサポートしたい」

(これも嘘。モムノフが俺と手を組んでいる理由は"サマナーかつ、魔人になりそうもない"という一点のみ。状況が許せば即座に殺しにくるだろう。
 悪魔とはいえ、あの男みたいな完全な鉄面皮は持っちゃいない、か……。裏切らなさそうな悪魔なんて見つかるのかね?)


斑目の顔が、カオスヒーローの殺気を受けた瞬間と同じように歪む。
不安定な場で、命を賭けていると実感できる時……。それを己の知略で克服できると信じる時……。
ギャンブラー嘘喰いは、己の性(さが)の希なるところを強く自覚する。
だが、カオスヒーローが嘘喰いに己にない物を見出し戸惑ったように、嘘喰いもまたカオスヒーローに対し戸惑いを覚えていた。
ギャンブルに勝つ為に己が失った者。ギャンブルに勝つ為に己が側に置いていた者。
万屋ですれ違う前に見た、悪魔を蹴散らすカオスヒーローの姿を知己のそれと重ねていた。
何よりも強く、強烈な自我で勝ち続ける道を歩んだ鬼神。強弱の天秤を心に持ち、迷い駆ける純粋な戦士。
斑目の魂を惹きつけるその二人に、カオスヒーローはどこか似ている、と思ったのだ。本人には、照れくさくて言えなかったが。

「おかげで、決め台詞を言い損ねちゃったよ」

かり梅を噛む勢いも、いつもより弱い。
だが斑目の顔は、奇妙な清々しさを感じさせるのであった。


【世田谷区/廃ビルの一室/1日目/朝】
【斑目貘@嘘喰い】
[状態]:健康
[装備]:COMP(眼帯型)
[道具]:かり梅、基本支給品、M249ミニミ(銃弾なし)
[所持マッカ]:二万
[思考・状況]
基本:謀略にて魔神皇を倒す。
1:悪魔の手駒を増やす。
[備考]
※M249ミニミは万屋の武器くじ(松・一万マッカ)で入手。弾は別売りです。
※世田谷に住む悪魔に対し、ある程度の影響力を得ました。
※世田谷のLaw・Chaos属性を仕切る女神・クシナダヒメと妖鬼・モムノフと協力関係にあります。
[COMP]
1:ジオット・セヴェルス@パワプロクンポケット14
[状態]:健康


544 : ◆hyh1lxR0Ss :2016/06/01(水) 17:06:36 .LJwVbC60
以上で投下終了です


545 : ◆TE.qT1WkJA :2016/06/01(水) 18:54:18 BuIcBz7w0
皆様投下お疲れ様です
私も予約分を投下します


546 : 響きが足りない ◆TE.qT1WkJA :2016/06/01(水) 18:56:17 BuIcBz7w0
殺し合いの会場となった仮想の東京。
東京湾が内陸を覗く都市圏の車道の真ん中を、アカツキが長距離を跳躍しつつ進む。

「…時代も、変わったものだな」

周囲を見回しつつ、交差点の真ん中で足を止めるアカツキ。
黒いアスファルトで舗装された道路。あちこちにそびえ立つ、それぞれが電線で繋がり合っている電柱。
交差点には点灯していない信号が眠りこけたように立ち尽くしている。
そして、所狭しと歩道・車道問わずに並ぶ見慣れない標識群。信号の隣にある青い標識には町の名前が道沿いに指し示されている。

「それにしても、見事なまでに人がおらんな」

当然ながら、参加者以外にこの街を歩く人間はいない。
これではこの時代に生きる人であってもさぞ奇妙に感じることであろう。
車道を堂々と歩こうが車に轢かれる心配をする必要はほとんどないのだから。

いずれも、アカツキにとっては見たこともない光景だ。
日本国内に入ってすぐに正体不明の能力を使う者達と遭遇した時もそうだが、半世紀だけでここまで文明は進化するものかと技官であるアカツキをしても驚かざるを得なかった。
帝都ともベルリンとも違う、数世代先を行った母国の首都。
そして、大戦前に交流のあった人物も時の流れとともに姿を変えてしまったようだ。
例えば、日本国内・陸軍研究所跡のある富士で再会した不律は、やはり老いていた。
同盟国にいた頃に知り合い、石仮面なる遺産の研究の責任者であったルドル・フォン・シュトロハイムも、聞いたところによればスターリングラードで戦死したらしい。
あの頃より世界が塗り替えられてしまった感覚を、アカツキは肌に感じた。

「ちょっとおおおーーー!!待ちなさいってばああーーーっ!!」

アカツキの背後から、パタパタと暁の小さな影が必死に走ってくる。
何とかアカツキの元にたどり着いたが、息が上がっている。
それなりに無理をしつつアカツキを追っていたらしい。
重そうな艤装を背負いつつ速く走れと言う方が無理なことか。

「もうっ、司令官ってば速すぎよ!レディーを一人置いていくなんて、殿方として恥ずかしくないの!?」

電光機関は、電光被服を介して身体能力を爆発的に上げる効果がある。
それによる超人的な脚力は下手なスポーツカーなど楽々と追い抜いてしまうスピードを誇り、
暁自体、艦娘の中でお世辞にも強い部類ではないとはいえ、後を追って追いつけるものではなかった。


547 : 響きが足りない ◆TE.qT1WkJA :2016/06/01(水) 18:57:02 BuIcBz7w0

「む…少しばかり配慮が足りなかったか」
「今度は気をつけてよね!無線さえ通じれば司令官に声をかけられたのに」
「…電光機関の影響か」
「そうよ。その司令官の『でんこうきかん』って武装のせいで直接じゃないと連絡取れないんだから」

悪魔はサマナーから極端に距離を離せない。
先ほどのように暁を置いて一人で突っ走れば、そのルールに抵触してしまう危険性があったのだ。
本来、艦娘として召喚された暁は、しかるべきデバイスを通信先の人物が持ってさえいればそれに対応する機器がなくとも遠隔通話ができるらしい。
それを利用して遠方からアカツキに声をかけることもできただろうが、電光機関から発されている電磁波により電子機器は全て使い物にならなくなり、無線が使えないのだ。
一応、アカツキも近くのビルの警備室から拝借してきた小型無線機を持っているとはいえ、遠隔通話は非戦闘時に限られるだろう。

「……あの」
「何だ?」

不意に、暁がもじもじとしながら上目遣いでアカツキに尋ねる。

「本当に、司令官の名前って暁と同じなの?」

当然ながら、暁は目の前の男が自身と同じ名であることに未だに驚きの余韻から抜けられない。
アカツキの名を聞いた時は目が点になった後に可愛らしい叫び声と共に十数歩ほど後ずさってしまった。

「本名というわけではないが、『アカツキ』と名乗った方が此方としても都合がいいのでな」

アカツキという名は、あくまでコードネームに過ぎない。
戦時では「アカツキ試製一號」の名で通っており、不律を始めとして当時の人間からは「試製一號」と呼ばれている。
だが、現代に帰還し任務を独断で遂行している今、アカツキとしては任務のことを知られるのは好ましいことではない。
極力それを隠し通すため、彼は「アカツキ試製一號」から試製一號を抜き、カモフラージュしやすい「アカツキ」を名乗っているのだ。
事実、「あかつき」という語句は古来より使われているだけあってそれを名前に冠するものが多く、パートナーとなった暁がその最たる例である。

「男の人と同じ名前なんて―――え?」
「どうした?」
「あれって……」

暁が指さした方向へアカツキも向く。
都会の車道の先の先、白いもやに包まれつつある辛うじて見える地平線の如き境界線上に、陽炎にでも揺られているような小さな黒い影が振えていた。
目を凝らしてみると、少なくともそれは自然現象ではなく、ここから真っ直ぐ行けば直に遭遇することがわかる。
それどころか黒い影のシルエットはこちらに向かって駆けているようで――。

(まさか、電光機関!?)

電気を纏っているのが辛うじて見て取れた。

「――!!」
「あ、ちょ――」

厳しい形相になり、影に向かって駆けだしたアカツキに暁が気づく頃には、既に信号3基分ほど離れていた。

「――んもうっ!!言ってる傍から置いてけぼりだしぃ!!レディーに走らせるなんてー!!」

なぜ、艦娘である自分が陸上を全力疾走する羽目になるのか。
その事実を暁は理不尽に思わざるを得なかった。


548 : 響きが足りない ◆TE.qT1WkJA :2016/06/01(水) 18:57:52 BuIcBz7w0




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



← CAAL



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




『聞こえるか、雷電?』
『問題ない、聞こえている』

雷電は、自身に送られてくる無線通信に応じる。
雷電の視界の向こうには、手頃なビルの警備室から勝手に持ち出した小型無線機を手に取る江戸川コナンが立っていた。

コナンと雷電は、距離を開いて無線通信を試みていた。
雷電は種族が英雄とはいえ、身体は戦闘に特化した義体を持つサイボーグだ。
それゆえか、悪魔のくせに機械関係にはめっぽう強いらしく、コナンの想像以上に多芸だった。
無線通信の能力も数ある内の一つで、悪魔はサモナーから長距離を離れることはできないので意味のない機能と思われるかもしれないが、
距離を問わず意思疎通ができることは戦略に幅を持たせることのできる有用な能力だ。問題なく使えるか試しておいて損はない。

『……』
『何か思いつめているのか?』
『へっ、さすがサイボーグだな。この距離で俺の表情がわかるなんてよ』
『オーグメントモードで確認したが、周囲に悪魔はいない。今はまだ、焦らなくていい』
『悪いな』

雷電の言った通り、コナンは神妙な面持ちで雷電の方へ歩を進めていた。
発端は、参加者の名前が記載されていた名簿だ。
海馬コーポレーションの社長の名が二人分あることやファンを今も魅了し続けている346プロのアイドル達などの顔ぶれも気になるが、
何よりもコナンの名の近くにあったジンが気がかりだ。
流石の黒の組織もご丁寧にこんなだだっ広い会場まで用意して、動機もわからないような殺し合いなんてことを開催するような奴等ではないことはわかっていたが、
ここにあのジンまで参加させられているとなると、何とも皮肉だが黒の組織は完全に白となるだろう。

『ジンという奴のことか』
『ああ。オメーとは違う、"残酷な"殺人鬼だ。間違いなくこのゲームに乗るだろうな』


549 : 響きが足りない ◆TE.qT1WkJA :2016/06/01(水) 18:58:14 BuIcBz7w0

コナンは雷電の方へ歩み寄りながら、無線通話を続ける。
黒の組織の仕業でないとすると、魔神皇の単独犯、あるいはそれを操る黒幕がいる可能性も浮上する。
あの魔神皇以外にこんな大それた魔法みたいなことをやってのける奴がいるかとなると、コナン、もとい工藤新一の記憶には噂レベルだが思い当たる存在がいくつかある。
黒の組織について調べる時に偶然耳にした情報だが、歴史の裏で暗躍してきた魔女が統括する教団や、
古代王国の宝物が現代に紛れ込んだり、それに伴い古代の魂が現代に転生している――といった話だ。
正直、あまりに突飛しているため頭の片隅に留める程度の情報だったが、この状況となると無視できなくなってくる。

(イヤ、それ以前に魔神皇の行動には不自然すぎるところがある!)

『なあ雷電、なぜ魔神皇はオメーら悪魔を俺達参加者に支給したと思う?』

魔神皇のもっとも不可解な点は、なぜ参加者に対して"友"を贈ったかということだ。
実際、召喚された雷電は心に一物を抱えつつもコナンに協力的だ。それもサマナーの気遣いができる程に。
これは、魔神皇がこの狂ったゲームを開いた理由にも繋がってくる部分だ。

『悪魔と悪魔を戦わせること…とかか?』
『確かに、それもあるかもしれねー。だが、悪魔を支給するならオメーみたいな知性を持つ悪魔でなくてもよかったはずだ。
リアルなポケモンやマジック&ウィザーズをやらせるだけならオメーみたいな人――出てこない』
『なら、この殺し合いを通じてサマナーを育てることが目的じゃ――か?お前の話から察するに、ここには多種多様な人間が集――れているらしいからな』
『俺もその線が濃い――――かと思ってる。魔神皇は《この魔神皇の片腕―――働く権利と、願いを一つ――――叶えてやることにしよう》と言―――。
つまり、魔――はこの殺し合いを通――悪魔使い……差し詰めデビルマサナーって――か。それを育てようとして――てのが今んとこ―――推理だ』
『蠱毒のように最後に残ったデビ―――ナーを部下にして力をつけ――というわけか。性質の――い話だ』
『まっ――だぜ…おい』

「おい!!!!!」

無線通話で話していて、コナンはついに違和感に耐えきれず大声を上げて雷電に直接声で伝える。

「近づいてるのに、妙に無線のノイズが多くなってねーか!!??」

それを聞いて、雷電はすぐさまオーグメントモードを起動、周囲の索敵に当たる。
1分程した後に、道沿いの500メートル以上先に原因となる人物の影が特定できた。
雷電のモンターめいた視界には、出現した2つの影を指して『SUMMONER』『DEVIL』の文字が浮き出ていた。

『――――――――』
「雷電!!」

雷電は何かを言ったつもりだっただろうが、もはや完全に無線通信は無力化されており、かすかにしか聞こえなかった。

「バーロ……!早速やらかすつもりかよ!」

人間を遥かに超越するスピードで走り出した雷電の後を、コナンは数秒遅れてターボエンジン付きスケートボードを駆って追う。
無線からは聞こえなかったが、唇の動きとかすかに聞こえた声で雷電が『――それに、この電波妨害の大元が気になる』と言っていたことだけはわかった。







550 : 響きが足りない ◆TE.qT1WkJA :2016/06/01(水) 18:58:46 BuIcBz7w0





無人の街で、電光と雷電が火花を散らす。

(その目……相当人を斬ってきたようだな)

アカツキは自身へ向かってくる悪魔の目に、自分を見失っていないながらも、人を斬る快楽を見た。
それと同時に、油断をすれば即、死に繋がる悪寒に近い武者震えがアカツキの身体に生じた。

道路を駆けつつ、アカツキは電光機関の電気を纏った拳を、雷電は高周波ブレードを前面に突き出した。
アカツキは高周波ブレードを認めるや否や態勢を変更。低く潜り込んでアッパーカットを繰り出す。
それに反応できない雷電ではなく、身体を横に逸らして回避。そして、すれ違いざまに振り向きつつ袈裟斬りを見舞う。

「来いッ!」

これを読んでいたのか、アカツキは電光機関から電磁波の障壁を発する。
障壁は雷電の斬撃とかち合うと、白光と共にアカツキへのダメージを完全に無効化し、それどころか、斬撃の衝撃を雷電へ押し返してしまう。
それで雷電が衝撃に怯んだ僅かな隙に、アカツキの刺し込まれた拳が雷電の義体を空に浮かせる。
押し返された衝撃の波が雷電の義体全体に降りかかったため、単なる正拳突きでも敵の身体を簡単に地から引き剥がしてしまうのだ。
アカツキは、そのまま強靭な装甲をも砕きかねない回し蹴りを空中の雷電に叩き込む。
雷電はしばらく宙を舞うもすぐさま受け身を取り態勢を立て直す。

(こいつもシノギを使うのか…?)

実際は、アカツキの電磁波の障壁はシノギではなく攻性防禦と呼ばれるものだ。
一般には流布されていないが、相手の力を利用して反撃する、攻守一体の構え。
だが、『相手の力を利用して反撃する』ことさえ押さえていればそれは攻性防禦と呼ばれるように、使い手によって攻性防禦の形式は千差万別。
アカツキは先ほどのように電光機関を利用して攻性防禦を取ったが、
体内の気を練って障壁を張ったり、ある者は敵の勢いを殺さずにいなすなど、決して電光機関無しではできないものではない。

アカツキの攻撃に、まだまだ戦闘続行可能ではあるが確かなダメージを感じつつ、雷電はアカツキを睨む。
体を咄嗟に捻ったために、回し蹴りの胴体への直撃は免れたが、脇腹からは白い血が義体を伝っていた。


551 : 響きが足りない ◆TE.qT1WkJA :2016/06/01(水) 18:59:22 BuIcBz7w0

(白い血、だと…!?)

アカツキは雷電の血を見て驚愕を隠せなかった。
戦時、ドイツの新兵器輸送に携わっていたように当時の第三帝国の技術研究にはかなり詳しいアカツキだが、まさかこの男はその産物では、という思いが脳裏をよぎる。

(こいつはまさか、ゲゼルシャフトの「超人兵士計画」、あるいは「ミレニアム」の産物か…?)
「……!!」

アカツキが再び戦闘に意識を戻した時には、既に雷電は動き出していた。
攻性防禦では対応しきれず、雷電から立て続けに振るわれる高周波ブレードを、
縦斬りには身体を重心ごと横にずらし、横薙ぎには膝から上をブリッジの態勢で体躯を倒し、
踏み込んでがら空きの胴体を狙う一撃には、そのまま高周波ブレードを握る手に蹴りを入れて剣の軌道をずらしつつ、宙返りして間合いを取り、守勢からの立て直しを図った。
だが、雷電もこのまま簡単に攻勢を崩すはずもなく、コンマ1秒を待たずに肉薄、未だ完全に態勢の整っていないアカツキの脳天に高周波ブレードを振り下ろした。

「南無八幡!!」

そのブレードをアカツキは、真剣白羽取りで受け止める。

「うおおおおおおおおおおっ!」
「なかなかだな…!」

高周波ブレードに加えられる雷電の力を、強化した腕で何とか抑え込もうとするアカツキ。
高周波ブレードに纏う雷電とアカツキのグローブに送られる電光がしのぎを削り合い、火花がまき散らされる。
この静かな街を、チェーンソーが鉄を切り刻むような轟音が暴れたりないと言わんばかりに縦横無尽に駆け巡った。

「ぐっ…!」

必死に押しのけようと奮闘するアカツキであったが、この力比べでは雷電に軍配が上がったようで、アカツキは高周波ブレードを自身に通してしまう。
咄嗟に限界を悟り、身体を引いたことでつけられたのは肩口の小さな傷だけだが、それでも赤い血が流れ出して白い軍服を汚していた。

しかし、これしきの傷だけでアカツキは止まらない。
肩の傷を意に介さず、高周波ブレードを振り下ろしたばかりの雷電に間を置くことなく攻め入ることで一転して攻勢に出ることに成功した。
澄んだ蒼き電光を纏った2連の正拳突き、アッパーに加え、飛び蹴り、蹴り上げからの踵落としと雷電に対して猛攻を加えるが、雷電の高周波ブレードに弾かれてしまう。

「必中!」

このままでは防禦を崩せないと判断したのか、アカツキは踵落としを弾かれた時に高周波ブレードを足場にして高空に飛び、
電光機関由来の超高圧な電気の弾――電光弾を多数、雷電に浴びせた。
電光弾は容赦なく雷電に殺到する。電光弾は文字通り形のない電気の弾なので、シノギでは捌けないだろう。
だが、雷電はニヤリと笑みを浮かべ、避けるどころか自分から飛び上がり、電光弾の群れへ突っ込んでいったのだ!


552 : 響きが足りない ◆TE.qT1WkJA :2016/06/01(水) 18:59:58 BuIcBz7w0




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





              斬





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




(バカな――)

アカツキは、眼前の光景をにわかに信じることができなかった。

(電気を『斬った』…!?)

刀を振った音は、既に電光弾が霧散してからアカツキの耳に届いた。
その答えは単純で、単に雷電の剣速が音速をゆうに超えていたからだ。
それはアカツキをしても到底見切れるものではなく、電光弾は雷電が刀を一振りした(ように見えた)後に跡形もなく消え去っていた。
斬撃モード――雷電は電力を多く消費することを代償に疑似的に周囲の時間の流れを遅くすることで剣の振りと威力を引き上げ、どんな敵の装甲をもバラバラに引き裂いてきた。
この状態の雷電にかかれば、電気を斬ることも不可能ではない。

「くっ!」

雷電は空中での勢いのまま、アカツキに対し高周波ブレードを振うべく構えるが、アカツキも黙ってはおらず、これを迎撃せんと拳を突きあげて跳ぶ。
結果、両者の剣と拳がかち合い、互いに弾き返されて一定の距離を保って着地、そのまま様子見の緊張状態に入る。

(俺の力が、落ちている…?)

雷電は目の前の生身の男を見据えながら、記憶にある通りの身体能力を十全に発揮できないことに少なからず戸惑っていた。
相対している電波妨害の原因と思われるこの男も1級の実力を持つものの、サイボーグのパワーとスピードには及ばない筈だ。
生身でサイボーグと渡り合う者といえばサムのことを思い出すが…先の白羽取りされてからの力比べも、本気でそのまま叩き斬るつもりで力を込めていた。
結果はこちらの優勢となったが、あそこまで拮抗するとは雷電自身も予想外だったのだ。
その理由は、自分が悪魔として召喚されたことから推測できる。

(俺は、『本物』じゃないんだな)

所詮COMPから召喚される悪魔は分霊――本物よりも格が落ちている。
この義体も仮初の義体に過ぎないのだ。

「お前は何者だ…?その力、電光機関や夜の住人達とは何か違う」
「サマナー、しかも生身でありながらその身体能力にその『電光機関』とやら…お前こそ何者だ」
「ただの一兵卒だが」
「嘘を吐け」

朝日が照らす街中、雷電とアカツキは睨み合う。
数瞬の静寂の後、両者は互いに逆方向に走り出し、驚異的な身体能力でビルの壁を駆けあがる。
そして、ビルの壁を蹴って互いを打ち倒さんと、雷電と電光が交錯しようとした――その時。

「いい加減にしやがれバーロォ!!!」

雷電とアカツキに戦闘の終わりを告げる少年の声が響いてきた。







553 : 響きが足りない ◆TE.qT1WkJA :2016/06/01(水) 19:00:44 BuIcBz7w0




コナンが静止したことで、何とかアカツキと雷電は休戦し、ヘトヘトになりながらも少し遅れてたどり着いた暁も交えて話し合いの場を持つことができた。
小さいものの肩に傷を負っているアカツキを見て驚いた暁だが、コナンが近場のコンビニから借りてきた医療用具のおかげで応急処置を施すことができた。
雷電の傷に関しては、他の悪魔から生体マグネタイトを「斬奪」することで簡単に回復できるため、この程度は問題の内には入らないようだ。

「どうやら、自分のせいでいらぬ誤解を生んでしまったようだな…申し訳ないことをした。
お前の悪魔と戦っておいて信じてくれとは言わんが、自分は殺し合いには乗っていない」

アカツキはコナンと向かい合い、自身も脱出を目指す参加者であることを伝える。
誤解が解けた今、目的を共にするならば一緒に行動してもいいと考えていた。
雷電という悪魔も、心に何かを抱えているとはいえ、味方にいれば心強い戦力となってくれるだろう。
電光機関の電磁波による影響が結果的に要らぬ闘争を生んだことに反省し、今は電光機関の出力は切っている。

「……」
「…?」
「…!」

暁はアカツキの背後に隠れるようにしてコナンの後ろに腕を組んで立つ雷電を怯え半分、緊張半分の表情で凝視していた。
たまに雷電と視線が合うと、慌てて目を逸らす。互いに誤解があったとはいえ、自分のサマナーを傷つけたのだから警戒するのも仕方ないといえば仕方ない。

「ううん、アカツキさんが謝る必要はないよ。ボクの悪魔もちょっと先走っちゃったみたいだし」
(この軍服に電子機器の無力化…このアカツキって男、ただのコスプレイヤーってわけじゃなさそうだな)

コナンはただの子供を演じつつ、アカツキの様子を窺う。
最初はその恰好や雷電と渡り合うほどの強さから悪魔かと疑ったが、まさかサマナーだと雷電に聞かされたときはお前のような人間がいるかと言いたくなったものだ。
雷電によれば、軍服の内側、胸のあたりに電光機関という兵器を仕込んでいるらしい。

(まさか、1ヵ月前にあったニュースと関連があるのか…?)

1ヵ月程前に、北極海で大戦時に沈んだはずの潜水艦『U-23型』が浮上し、各国の調査隊が派遣されるというニュースが世界中で報じられていた。
たとえ沈んだ潜水艦自体に損傷はなくても、一度沈んだ潜水艦が浮上するには操縦する人の手が必要不可欠である。
コナンは、万が一その潜水艦に当時の乗員が何らかの方法で生き永らえていればあるいは、と考えていたが、その人間こそがアカツキではないかとあたりをつけていた。
もしそうなら、アカツキが軍服を着用していることにも説明がつく。

「しかし、お前のような小童まで参加させられているとはな…。怖くはないか?」
「うん!ボクは大丈夫だよ。でも、このジンって人は気をつけた方がいいって雷電さんが言ってたよ」

ジンを知っていることにされ、雷電は若干面食らうが、それに構わずコナンは自分の導き出した推理をアカツキと暁に伝えていく。

(この小童…。そこの悪魔と同じで裡に鬼を飼っているようだな。目的は自分と同じのようだが)

アカツキも、コナンがただの子供でないことに勘付いていた。

「随分と、聡いんだな」
「ボクは少年探偵団に入ってるから、こういうの得意なんだ」

見るからに暁より外見の年齢が下にも関わらずに冷静な判断力と鋭い推理。時々子供のそれから入れ替わる、自身を射抜く鋭い視線。
そして、ぶつかり合っていたアカツキと雷電を止めた鶴の一声もこの少年のものであった。
身体はともかく、精神年齢は少なくとも暁よりかは上だと見ていた。


554 : 響きが足りない ◆TE.qT1WkJA :2016/06/01(水) 19:01:15 BuIcBz7w0

「魔神皇を捕まえるためにさ、アカツキさんもボク達一緒に行かない?雷電さんもいいって言ってるし」
「自分は構わんが…お前はいいのか?」
「――へ?あ、暁は司令官がいいならそれでいいわ」

アカツキは未だに背後で雷電を見つめていた暁の方へ向き、確認を取る。
急に話を振られ、動揺する暁。

(これ、どう見てもサマナーと悪魔の関係逆だよな)

暁の様子を見て、コナンは半目になって苦笑いを浮かべながらツッコむ。
サマナーと悪魔の名前が同じだが、背中に重そうな装備を背負っていることを差し引いても現代にいそうなのは暁の方だ。
また、暁の名を冠するものは昨今でも少なくないとはいえ、こうも外見の違う男女が同じ名前をしているとなると何ともミスマッチだ。

(この殺し合いに巻き込まれてからやけに軍の関係者に遭遇するな)

本人もそう名乗っていた通り日本海軍の駆逐艦なんだろうが、今流行りの擬人化をするとこうなるのか。
見た目からして、小学1年生の自分よりも3歳から4歳年上くらいか、とコナンが考えていると、不意に暁と目が合った。
すると、コナンを見て何か思うところがあったのか、暁はアカツキの背後からコナンの前に出る。

「どうした?」
「どうしたって、この子はまだ子供よ?明るく振る舞ってるけれど、きっと本心では怖がってるに違いないわ。
ここは不器用な司令官に代わって暁がしっかりしないと!」
(俺からすりゃオメーの方が子供だけどな)

急に前に出てきたことを疑問に思うアカツキに、暁は答える。
この場で暁だけはコナンのことを年相応の子供だと見ているようだ。

「コナン君、だったわよね?探偵だからって、油断しちゃダメよ?これは殺し合いなんだから」

暁はコナンの視線に合わせるように、膝を折り曲げながら話しかける。
まるで年下の男の子の相手をするお姉さんのような口調だ。

「けれど、大丈夫!コナン君だって怖いと思うけど、暁お姉ちゃんが守ってあげるから。何たって、暁は一人前のレディーですもの!」
「わ、わーい!暁姉ちゃんは頼りになるなー!」
(レディーの何がオメーの自信に繋がってるんだよ)

暁は腰に手を当てて自分を誇示しようとするが、どう見ても背伸びしているようにしか見えない。
コナンは、苦笑いをにじませながらあくまでも子供を演じていた。

「…無理しなくてもいいんだぞ」
「アハ、アハハハ…!」

途中、雷電が暁に聞こえぬよう耳打ちしてきたが、コナンは構わず乾いた苦笑いを上げ続けるのであった。


【江東区・路上/1日目/朝】
【江戸川コナン@名探偵コナン】
[状態]:健康
[装備]:蝶ネクタイ型変声期型COMP、ターボエンジン付きスケートボード
[道具]:基本支給品、小型無線機(現地調達)
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:魔神皇を逮捕する
0:暁姉ちゃんは頼りになるなー(棒)
1:ジンを警戒
2:アカツキと同行する
3:アカツキは北極海の潜水艦の件と何か関わりがある…?
[COMP]
1:雷電@メタルギアライジング
[種族]:英雄
[状態]:ダメージ(小)、脇腹に損傷
※電力の概念があるかどうかは後続の書き手さんにお任せします

【?????/1日目/朝】
【アカツキ@アカツキ電光戦記】
[状態]:ダメージ(小)、肩に小さな裂傷(処置済み)
[装備]:試作型電光機関、電光被服
[道具]:基本支給品、電光機関型COMP、小型無線機(現地調達)
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:魔神皇を倒し、この殺し合いから脱出して任務に戻る。
1:コナンと同行する
2:この少年(コナン)はただの子供ではない
3:ジンを警戒
4:雷電は自分の知る技術とは関連がない…?
[COMP]
1:暁@艦隊これくしょん
[種族]:艦娘
[状態]:疲労(小)


555 : ◆TE.qT1WkJA :2016/06/01(水) 19:01:35 BuIcBz7w0
以上で投下を終了します


556 : ◆lb.YEGOV.. :2016/06/01(水) 23:57:17 szM7WAjY0
皆さま投下お疲れ様です。
投下いたします。


557 : SVP ◆lb.YEGOV.. :2016/06/01(水) 23:59:28 szM7WAjY0

 疑似東京は池袋、天高くそびえる都内有数の高層建築ビル・サンシャイン60が見下ろす池袋東口近辺の繁華街。
 人っ子一人いない往来を代わりに我が物顔で闊歩する異形の悪魔達の姿がある。
 本能の赴くままに暴れられると血気逸る悪魔達の内の一人が薄暗い路地に入ったとき、それは現れた。
 見るからに人間とは思えない姿に、オニと呼ばれる妖鬼が高圧的な口調で何者かと因縁をつけに詰め寄り、はたと気付く。
 異形の首に鈍く光を放つ金属製の首輪。
 それは紛れもなく、この殺し合いの場に呼び出された参加者の証だ。
 "獲物がやってきた"と周りに叫ぼうとするよりも早くオニに黒い影が躍りかかる。
 不意をうたれ、事態を把握できないながらもオニは反抗を試みるが、ロクな抵抗をする暇も与えられず、頭部に衝撃が走ったのを最後にその意識を闇へと閉ざした。

 人影の正体、プレデターは殺害されたオニが落とした金棒を手にする。
 かなりの重量ではあるが、彼の膂力を持ってすれば振り回すことなど造作もない。
 先程オニに奇襲をしかけ、インナーマウスを赤黒い血で濡らす彼の悪魔、エイリアンに指示を飛ばし、物陰を移動しながら次の獲物を探す。
 目標はここにいる悪魔達を狩り尽くすこと。

 ――カリノ、ジカンダ

 合成音声めいた呟きが、不気味に響いた。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「いや、凄いねこれ。見れば見るほどテレビで見たトーキョーの街だっていうのに、全部が全部作り物ときた。ミステリオやハリウッドはもちろん、トニーの所だってこんな大掛かりなセットは作れないよ」

 歩道を歩く二つの影、その内の赤と青の全身スーツを来た男、スパイダーマンが興味深そうに周囲を見渡しながら能天気な声をあげる。
 と、同時に左手を後方に向け手首から糸を射出する。後方で叫び声があがると同時に糸で雁字搦めにされた有翼の魔物が地面へと落下していた。
 周囲を見回せば縛られているのはその悪魔だけではない。
 ある悪魔は壁に糸で縛り付けられ、またある悪魔はぐるぐる巻きにされたうえで電灯に吊るされている。
 彼らに襲い掛かろうとした悪魔は全てスパイダーマンによって無力化されてしまっていた。

(凄い、襲って来ようとした悪魔を先読みしてスパイダーウェブで無力化してる。個性の中に危険感知ができるスパイダーセンスって力があるって聞いてたけど初めて見た!)
「あ、あの建物がサンシャインかな? 日本に来たらトーキョータワーやスカイツリーと合わせて登ってみたかったんだよね。エンパイアステートビルには及ばないけどあれもかなり高いねえ! で、イズク、駅はこっちであっているのかい?」
「は、はいっ! もう少しで池袋駅の東口に着く筈です!」

 国の違いからか実際に会うことはないと思っていたヒーローとチームを組んでいる緊張から、若干声を上ずらせながら出久が答える。
 二人が目指していたのは池袋駅。もしも電車が動いていれば移動手段として、動いていない様であれば襲撃される危険の少ない拠点、または移動ルートとして確保をする腹積もりである。
 サンシャインと池袋駅東口の通りが次第に近づいてきた時、不意に彼らは足を止めた。


558 : SVP ◆lb.YEGOV.. :2016/06/02(木) 00:00:59 d3CG/VZ.0

「これは……!?」

 出久とスパイダーマンの視界に清算な光景が広がっている。
 大通りの至るところに飛び散った赤。
 店のウインドウが割られ、瓦礫も散乱した路地。
 そして体をありえない形に変形させられたか、体の一部が欠損し息絶えている無数の悪魔。

「酷いねこれは、僕と同じで彼らは悪魔みたいだけど……」

 先ほどまでの気楽な雰囲気が微塵も感じられない堅い口調で、スパイダーマンが一番近くに倒れ伏していた悪魔へと近づき状態を確認する。
 その悪魔は喉笛を何かに貫かれてこと切れていた。
 一方の出久もこの惨状に顔を青くしている。
 生き物の死を間近で見たのはこれで二度目ではあるが、狭間によって殺害された生徒の目の当たりにした時以上に、今目の前に広がるものにはリアリティがあった。
 飛び散った肉片や錆の様な臭いが感覚を通して嫌悪感と恐怖、そして吐き気を呼び起こす。
 気付けば、両足がガクガクと震えていた。

「イズク、大丈夫かい?」
「スパイディ……」

 心配そうに自分を覗きこむスパイダーマンに気付き、出久はハッと我に帰る。

「殺された悪魔の死因は大体2つに分けられるから、恐らく彼らを殺して回った何かは二人組で僕たちみたいに連れてこられた人の可能性が高い。悪魔達は殺されてからまだ時間も経ってないからそう遠くない場所にいると僕は思う」

 状況分析を行うスパイダーマンの言葉を聞く内に、出久の顔が引き締まったものへと変わっていく。
 憧れのヒーローに会えて舞い上がっていた気持ちが、この場が殺し合いの舞台であるということを再認識できた事でみるみる内に萎縮していくのが本人にも分かった。

「会うにしろ、会わないにしろ決めるのは君だ。僕はあくまで君の相棒〈サイドキック〉だからね。イズク、君はどうしたい?」
「僕は……」

 視線が無惨に転がっている悪魔だったもの達へと向けられる。
 この会場にいる悪魔は魔神皇にそう指示をされているのか、参加者を見れば襲いかかってきた。故にこの惨状は正当防衛から発展した可能性もある。
 であるならば、同じ巻き込まれた者として共闘関係を組めるかもしれない。
 そんな思考を浮かべていた出久の視界に一組の死体が目に留まり、彼は息を呑んだ。
 ふらりと足が死体へと向かう。スパイダーマンはその死体を認識していたのだろうか、出久の動きを視線で追うだけで話しかける事はしない。

「……」

 死体の前で出久は立ち止まる。
 折り重なる様に倒れていた悪魔は2体。羽の生えた小さな少女とそれを守る様に多い被さった少年の姿をしていた。
 守った少年ごと貫かれたのであろう。二人の腹部に空いた穴を起点に彼らの体は紅に染まり、その目は虚に地を眺めていた。
 出久は確信を得る。この惨状は正当防衛などではない。参加者か、悪魔かはわからないが自ら進んで虐殺を行ったのだと。
 ならばどうするか。危険人物とわかった以上、態々接触する様な真似は得策ではない。
 そう、普通の人間であるなら考えるだろう。
 出久はかがみこむと、死んだ悪魔二人の目を閉じる。はじめて触れた死体はまだ完全に熱が消えていない筈なのに背筋が震えるほどに冷たく感じられた。

「行こう、スパイディ」

 すっくと立ち上がり迷いのない声で、出久が告げる。
 その瞳は気弱な少年のものでも、憧れの人物に出会えて受かれる子供のものでもない。
 義憤と決意と意志の炎が灯った、一人のヒーローのものだった。


559 : SVP ◆lb.YEGOV.. :2016/06/02(木) 00:02:08 d3CG/VZ.0

「倒せると思うかい?」

 スパイダーマンが出久の後ろから声をかける。
 "誰を"とは言わない。既に分かりきっているから。

「わからない。スパイディは強いけど僕が足手まといなるかもしれない」

 頭を振りながら、でも、と出久が続ける。
 スパイダーマンに対して振り返った少年の顔は何かを堪えるように苦しげで、それ以上に雄々しかった。

「だからって、放ってなんかおけないよ。ここにはオールマイトもキャップもいない。それでも誰かが止めなくちゃいけないんだ。だったら……」
「OKだイズク」

 ポン、とスパイダーマンが出久の肩に手を置く。
 マスク越しにも関わらず、出久には自分を見る彼の視線が暖かく、そして力強く感じられた。

「ちょっと暑苦しいけど、そういうガッツは嫌いじゃないぜ。
大丈夫!君には親愛なる隣人がついてるんだ。1つ日米共同の悪党〈ヴィラン〉退治と行こうじゃないか」
「スパイディ……」
「さて、そうと決まれば善は急げ、タイム・イズ・マネーさ! しっかり捕まってなよ! 落ちそうになったら糸で宙ぶらりんだ!」
「え!? うわっひゃあっ!」

 スパイダーマンの腕にあるウェブ・シューターから糸が射出されたかと思うと、グン、と衝撃が出久が襲った。
 スパイダーマンの見た目よりも筋肉質な片腕抱き上げられ、共に池袋の空を舞う。
 出久の悲鳴をBGMに次から次へと糸を射出し、スパイダーマンはビルの谷間をターザンの様に飛び交い何処かへと向かっていった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 雑居ビルの中をぴょこぴょこと可愛げな足音を立てて走る悪魔が一人。
 雪だるまの様な姿をした彼は妖精と呼ばれる種族の悪魔、ジャックフロスト。池袋東口の虐殺を生き延びた悪魔だ。
 親しかった悪魔は全員が殺された。異形の襲撃者は彼らのいた池袋の大通りに姿を現すやいなや、参加者を襲う気の有無に関わらず、その場にいる悪魔を殺して回ったのだ。
 一室に逃げ込み、肩で息をつく。
 もう大丈夫かと振り向いたのと、足音を鳴らして人影が部屋の入り口に立ったのは同時だった。
 金属製のマスクや鎧の一部を朱に染めた怪人・プレデターと、それに付き従うエイリアンの姿を目にしたジャックフロストはとっさに自身の前に氷塊を複数出現させる。

「ひ、ヒホっ……!」

 そのままそれを入り口に向けて乱射する。
 轟音と共に急激な冷気による蹂躙を受け冷気と塵の混ざった靄がもうもうと立ち込めていく。
 倒したか、と安堵の溜め息をつくジャックフロストを嘲笑うかの様に、靄の中から黒い影が二つ浮き上がった。
 靄が晴れるとそこには金棒を盾がわりにしたプレデターと、各所に傷こそ見受けられるが健在なエイリアンが変わらずに立っていた。

「ひ、ひええっ、誰か助けてくれホー!」

 悲鳴とも哀願ともつかない叫び声に応える者は誰もいない。
 プレデターとエイリアンが哀れな犠牲者に手をかけるべく一歩踏み出す。

 不意に、窓ガラスが割れて二つの影が躍り込んだ。

「お取り込み中に窓から失礼、修繕費はマジンノー君によろしく。うっわスパイダーセンスがビンビンに反応してる」

 現れたのは青と赤のツートンカラーのスーツに身を包んだ男と、制服姿の少年だった。
 ツートンカラーの男、スパイダーマンが軽口を叩きながら。状況を確認する。
 池袋の街を跳び跳ねながら件の下手人の姿を探していた彼の耳に衝撃音――先程、ジャックフロストが魔法による攻撃で立てた音――が偶然にも聞こえ、その方向へと糸を飛ばし急行したのだ。
 次第に危機を訴えるスパイダーセンスの反応が強まる事に確信を得、そして助けを求める叫び声の聞こえたこの部屋と乱入した次第である。
 スパイダーマンの顔がジャックフロストとエイリアン、そしてプレデターへと向けられる。


560 : SVP ◆lb.YEGOV.. :2016/06/02(木) 00:03:32 d3CG/VZ.0

「えーとごめん。どっちが悪い悪魔?」

 その声を合図にするかの様に咆哮を上げながらエイリアンが飛びかかる。
 が、次の瞬間には何かに衝突したかのように弾かれたエイリアンは近くの壁に叩きつけられた。
 気づけば無数の蜘蛛の糸がエイリアンと壁とを接着している。

「分かりやすい返答どうも。それはお礼ね。イズク、そっちのスノーマン君を」

 「守ってもらえるかい?」と言うつもりで振り返ると、出久は既にジャックフロストを背にして守るように立っている。
 先程まで悲鳴を挙げて半ばグロッキーだったのが嘘だったかのような迅速な対応だ。

「優秀な相棒がいると楽でいいね。さて」

 スパイダーマンがプレデターへと向き直り、出久と揃って対峙する。
 動揺するでもなく、逸るでもなく、ただ無言のまま微かに首を動かして品定めをするかのように自分達を眺めているプレデターに出久は言い様のない悪寒を覚えた。
 プレデターが無言で金棒を構えた。

「オレサマ、オマエ、マルカジリ」
「なるほど、見境なしってこと」

 スパイダーマンとプレデターが同時に動く。
 スパイダーマンの左手が動くのに合わせるように、プレデターが手近にあった椅子を掴み放り投げる。
 金棒を持った腕に狙いを定めて射出された蜘蛛の糸は射線を遮るように投げつけられた椅子に貼り付き、本来の目的を果たせずに終わる。
 左手での捕縛が失敗したと見るや、スパイダーマンは続けざまに右手からも糸を射出する。が、またしても投擲された椅子がそれを阻む。
 両腕の糸が封じられたのを確認し、ガリガリと金棒を床に擦らせながらプレデターが駆け出した。

「両手を封じたつもり? それはちょっと甘いんじゃないかな」

 スパイダーマンが両手を大きく後ろへ振ると腕に繋がった蜘蛛糸がつられて後方へと走る。そしてその糸がついた椅子がそれぞれ宙を舞いながら糸の軌跡に追従する。
 そのまま大きく両腕をぐるりと旋回させてプレデターの方へと向ければ、糸と椅子で作られた即席のフレイルが大きく弧を描きながら反転し、駆けるプレデターへと吸い込まれる様に衝突。
 盛大な破砕音を部屋中に響かせながら、衝突の刹那に振り上げられた金棒によって打ち砕かれた椅子の破片が宙を舞う。
 降り注ぐ破片の中を2つの白い流星が駆ける。
 武器を振り上げた事で隙を晒したプレデターの胴体にスパイダーマンの両腕から伸びる、再射出された糸がべったりと付着した。

「せー、のっ!」

 プレデターがアクションを起こすよりも速く、スパイダーマンが力を込めて両腕を横へと振り抜くと、それに合わせてプレデターの巨体が横っ飛びに吹き飛び、壁に激突する。
 追撃のウェッブがプレデター目掛け放たれるが、それを黒い一閃が遮った。
 高速の刺突を受けたウェッブが散り散りになって部屋の中を舞う。

「おいおい、どんなマジックさ? しっかり捕まえてたっていうのに」

 スパイダーマンの視線の先には先程確かに張り付けにしていたエイリアンの姿があった。
 無理矢理傷つけたのだろうか、その体には複数の傷とそこから漏れる体液、そしてボロボロになった蜘蛛糸がこびりついている。
 スパイダーマンの糸を貫いた鋭い尾の一撃。それがあの少年と少女の悪魔を殺害した武器なのだと、出久とスパイダーマンは理解した。

「まあ逃げたところでまた捕まえればいいだけだけどねっ!」

 そう言うと同時に放たれた蜘蛛糸をエイリアンは避けることなく傷ついた腕で受け止めた。
 着弾した蜘蛛糸を軸にプレデターと同様に投げ飛ばそうとしてスパイダーマンが違和感に気づく。
 彼の放った糸が煙をあげてボロボロと崩れる。
 驚愕する間もなく糸の拘束が解けたエイリアンがスパイダーマンへと突撃を仕掛けた。

「なんだよそれ! ズルでもしてるんじゃないの?」

 牽制に何度か糸を放つものの、彼の糸は傷だらけのエイリアンの体に着弾するや時間をおかずにボロボロになり、有効打を与えられない。
 マスクの裏で苦い顔を浮かべるスパイダーマンの脳裏に不意に悪寒が走った。


561 : SVP ◆lb.YEGOV.. :2016/06/02(木) 00:04:16 d3CG/VZ.0

「スパイディ!」

出久が叫ぶのと、スパイダーセンスの命じるままに生成した蜘蛛の糸を盾の様に展開したのはほぼ同時。
その直後に大質量の金属塊がスパイダーマンを襲った。
ネット状に展開した糸が衝撃と質量に耐えきれずぷちぷちと裂け、僅かに衝撃を殺すことに成功しながらも健闘むなしく金属塊がスパイダーマンを直撃し彼は後方へと弾かれる。
スパイダーマンのマスク越しの視界には彼に衝突した勢いでくるくると宙を舞う金棒と、投擲の体勢を解くプレデターの姿。
エイリアンによって時間を稼がれ、まんまとプレデターが回復する時間を与えてしまった事にスパイダーマンは歯噛みする。

(あ、まず……)

 胸を強打されたショックで思考が歪む。
 朦朧とした視界には跳躍し、鋭い牙のついた口をあけてこちらへ飛んでくるエイリアンの姿。
 まともに腕一本すら動かせない万事休すの状態で、スパイダーマンはエイリアンに向けて躍りかかる一人の少年の姿を見た。
 エイリアンの横っ面に拳が刺さり、黒い影を残して吹き飛ばされた。

 突入する直前の会話を出久は思い出していた。

『イズク、突入前に一つ。戦闘は僕が担当する。だから君にはさっき悲鳴を上げてた子を助けて欲しい』
『えっ……』
『何も君が足手まといとか、そういうんじゃない。僕は君に召喚されてここにいる身だ。君がいなくなったら僕は何もできないし、助けた子を今後守る事だってできない。だから僕がオフェンスで君がディフェンス。それだけは心がけて欲しい。いいかい?』
『うん、そういうことなら……』

 スパイダーマンの危機に、出久の体は約束を忘れて勝手に動いていた。
 5%、出久がかろうじて制御できるワン・フォー・オールの力を脚部加えて跳躍。続けて右腕へと集中させてエイリアンを殴り飛ばす。

「痛ぅッ!」

 エイリアンを殴り飛ばした拳から焼けるような痛みが走る。
 殴った拍子に付着したエイリアンの体液が出久の拳を焼き、意識がそちらへと逸れた。
 それは一瞬だが致命的な隙。
 ハッと出久が気付いた時には、プレデターが回収した金棒を片手に飛びあがったところだった。
 避けるには間に合わず。受けるには重過ぎる。
 迫りくる死の象徴に上ずった声があがろうかという瞬間。
 浮遊感と体が後ろへ引っ張られる感覚と同時に、前方から轟音が響いた。

「……」

 ビルの床を盛大に破壊した金棒を持ち上げながら、プレデターは顔を上げた。
 彼の持つ金棒が振り下ろされた場所にいた少年はその姿を消している。
 少年だけではない。全身スーツの蜘蛛男も、雪だるもその姿はない。
 プレデターの視界が窓の外、こちらから遠ざかる熱源を捉える。少年らしき熱源と雪だるまと思しきものも一緒だ。
 金棒が少年へと振り下ろされた一瞬、少年が白い何かに勢いよく引っ張られるのをプレデターは捉えていた。
 まんまと逃げおおせられてしまったことに無念と思う気持ちがある反面、そうでなくては面白くないという気持ちも彼の中に湧き上がっている。
 つかつかと、少年に殴られたエイリアンが吹き飛ばされて咆哮へと歩いていく。
 ぴくぴくと痙攣をしているが生きてはいる。頑健さで言えばこの生命体が高い水準にあることは彼がよく理解している。
 だからこそ、ただの少年がこの生物を文字通りにぶっ飛ばした事に彼は驚愕を覚えたのだった。彼の種族レベルの身体能力があるならばまだしも、この星の平均以上の成人男性のレベルでも、この生物との格闘戦でダメージを与える事は不可能に近い。
 だというのに先ほどの少年はその常識を覆して見せたのだ。
 自分を前後不覚にまで追い込んだ蜘蛛のような男も含めて、やはり人間こそが最上の獲物であることを再認識した。
 そういえばと、記憶の奥底に眠っていた知識を掘り起こす。
 何人めかの同族が地球に向かい敗北した際、彼らのような特異な人間と遭遇した記録があったのだ。
 バル・ベルデ、違う
 ロスアンゼルス、違う
 ゴッサムシティ、そうだ、確かそんな名前の街の戦闘記録だったと彼は思い起こしていく。
 蜘蛛ではなく、蝙蝠のスーツを纏った人間に敗れた同族の記録。
 その中に注釈としてその蝙蝠人間のような人種の人間がなんと呼ばれているかが書かれていた。


562 : SVP ◆lb.YEGOV.. :2016/06/02(木) 00:04:50 d3CG/VZ.0

「ヒー、ロー」

 その言葉を口に出す。人間達の言葉で英雄、誇り高き戦士の名称。
 この狩りにおいてなんと望ましい相手だろうかと彼は奮い立つ。
 ヒーローという称号と共に、あの二人の人間の姿を脳裏に強く焼き付ける。
 あの二人こそ、真に自身が狩らなくてはならぬ戦士。あれを倒すのに比べればここで倒してきた悪魔などとるに足らない存在だ。
 エイリアンをCOMPに戻し、プレデターは雑居ビルを後にする事にした。
 暴れ回り流石に疲労が溜まっていた、拠点に戻り体を休める必要がある。

 新たな獲物を見定め、闘志に燃える瞳が仮面越しにギラリと光った。

【豊島区 池袋駅東口近辺/1日目/朝】

【プレデター@プレデター】
[状態]:軽度の打撲、疲労(中)
[装備]:COMP(プレデターアーマー型)
※光学迷彩機能および各種武装は外されているか機能不可能になっています。
[道具]:基本支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:全て狩猟する。
1:拠点に戻って体を休める。
2:ヒーロー(スパイダーマン、緑谷出久)を倒す。
[COMP]
1:エイリアン・ウォーリアー@ALIEN
[種族]:妖虫
[状態]:全身に切り傷、右頬に打撲


563 : SVP ◆lb.YEGOV.. :2016/06/02(木) 00:05:18 d3CG/VZ.0

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「ゲホッ、やあ、皆生きてる……?」
「な、なんとか……」
「ひ、ヒホー」

 先ほどの戦闘がおこったビルから離れた建物の屋上に出久達3人はいた。
 出久が飛びかかった事で作られた一瞬の猶予。
 その一瞬でなんとか逃げるだけの体勢を整える事ができたスパイダーマンが、金棒に頭を割られる寸前だった出久に糸は放ち高速で引き寄せ、そのまま続けてジャックフロストも糸で引き寄せ窓から逃げ遂せたのだった。

「その、ごめんスパイディ。僕、君との約束を……」
「結果オーライさイズク。君があそこで飛び出さなきゃ僕があそこでやられてた。ありがとう」
「そ、そんな……」

 憧れのヒーローに感謝され嬉しさと照れから出久の顔が赤く染まる。
 が、その顔はすぐに引き締まった顔へと変わった。

「あいつら、そのままにしてきちゃったけど」
「どうにかしたいのはやまやまだけど、まさかウェッブが効かない相手とはね。タネさえ分かればやりようはありそうだけど」
「それなんだけど、多分酸じゃないかな」

 焼けただれた拳を見せながら、スパイダーマンの疑問に出久が答える。
 その脳裏には酸を操る学友の戦闘の光景が浮かんでいた。

「多分だけど、体液が強酸性なんじゃないかな? 酸を使う個性の子が知り合いにいるんだけど、スパイディみたいな拘束系の技を使われた時に似た事をして対書してた記憶があるんだ」
「なるほど、そういえば貼りつけになる前よりも傷だらけだったし、多分、自分を傷つけて出した体液で僕の糸から抜け出したんだな。恐ろしいよまったく」

 タネは分かった。そして次はどうあの悪魔と怪人を止めるべきか、それを話合おうとした時だった。

「な、なあ人間」

 おずおずとした声が響き、出久とスパイダーマンが揃って声の主、ジャックフロストへと顔を向ける。

「ああ、君は……」
「なんでオイラを助けたんだホ? オイラ達、サンカシャっていう首輪つけた人間は襲っていいって魔神皇から命令されてたホ。なのに、どうしてホ?」

 心底わからないと言った表情でジャックフロストが質問に、出久とスパイダーマンが顔を見合わせる。
 フッと互いが互いに笑う。
 彼らの中には共通の答えがあった。
 とても、とてもシンプルな答えが。

「「助けてって、言っただろ?」」
「ヒホ?」

 二人の声が重なる、その顔には迷いも後悔も欺瞞もない。
 彼らにとって助ける理由なんていうものはそれだけで十分だったのだ。

「そんな、それだけの為に、あんな危ない目にあってまでオイラを助けてくれたのかホ?」
「はは、体がさ、勝手に動いちゃうんだよね」
「そうそう、これはもう性分ってやつさ」
「ヒホー……」

 苦笑を浮かべる出久とスパイダーマンをジャックフロストは呆けたように見つめた後、何か考えるような素振りを見せる。
 どうかしたのかと尋ねようとした矢先、ジャックフロストは顔を上げた。


564 : SVP ◆lb.YEGOV.. :2016/06/02(木) 00:05:53 d3CG/VZ.0

「決めたホ。人間、オイラが仲間になってやるホ」
「へ?」

 突然の申し出に、出久が間の抜けた声をあげる。

「オイラ、命を助けられたのになーんにもお返しできるものがないホ。だからオイラが仲魔になって人間に協力してあげるんだホ」
「え、いや、別にそんなつもりで助けた訳じゃないんだけど……」
「そんなつもりもどんなつもりもないホ、オイラがやりたいからやるんだホ。黙って受け入れるホ」
「そんな無茶苦茶な……」
「まあまあいいじゃないか」

 突然の提案に困惑する出久と強引なジャックフロストのやりとりを見かねたスパイダーマンが助け船を出す。

「スパイディ」
「正直、さっきの戦いで負傷したのもあるしね、少し僕も休みたいし仲魔は大いに越したことはないっていうのが僕の意見」
「あ……」

 スパイダーマンの提案を受けて出久はハッと気づく。
 胸に受けた金棒の一撃は決して軽くはない。表向きは平然そうに見えてもかなり厳しいのだろう、スパイダーマンには休息が必要だ。
 ならば、その間は出久と協力してもらう悪魔が必要になる。となればジャックフロストの提案は渡りに船と言える状況だった。

「あー、うん、その」
「ヒホ?」
「僕達がやろうとしてる事ってかなり大変な事なんだ。苦労はするだろうし、痛い思いだってする。それでも協力してくれるかい?」
「もちろん、悪魔に二言はないホー」

 おずおずと一言ずつ確認するように尋ねてくる出久の言葉に対し、あっけらかんとした口調でジャックフロストが返し、手を差し出した。

「握手ってこと?」
「そうだホ。オイラ妖精のジャックフロストだホ。コンゴトモヨロシク、だホ」

 にっこりと笑うジャックフロスト。
 それに毒気を抜かれたのか出久の顔にも次第に笑みが浮かんだ。

「僕は緑谷出久、こっちはスパイダーマン。よろしくね、ジャックフロスト」

 差し出された手を出久が掴み、握手を交わす。
 ひんやりと冷たい筈の氷精の手は、どこか暖かった。

【緑谷出久@僕のヒーローアカデミア】
[状態]:健康、右拳に軽度の炎症
[装備]:COMP(ペッツディスペンサー(スパイディ)型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:ヒーローになるために、助けを求めている人を救う
[COMP]
1:スパイダーマン@MARVEL
[種族]:超人
[状態]:胸部強打、疲労(小)
2:ジャックフロスト@真・女神転生シリーズ
[種族]:妖精
[状態]:魔力消費(小)


565 : ◆DpgFZhamPE :2016/06/02(木) 00:23:52 B.yJ25K.0
皆様投下お疲れ様です
投下します


566 : 名無しさん :2016/06/02(木) 00:24:03 xkkTCgjE0
投下乙
デクとスパイディのヒーロー魂に、胸が熱くなったぜ
そういや芦戸さん、エイリアンをリスペクトしてたっけw


567 : 暗剣、破裂の元に   ◆DpgFZhamPE :2016/06/02(木) 00:28:26 B.yJ25K.0
「悪魔」
「うん」
「切り裂きジャック」
「うん。わたしたちがジャックだよ」
「……」

大小様々な建物の隙間から、涼やかな風が流れ込む。
コンクリートで固められた地面は硬く、風に乗せられて匂うのは土や穏やかな自然の香りではなく、まったくの無臭。
男、吉良吉影は己が住んでいた杜王町より都会的に発展したこの地を眺めながら、大きく息を吐く。

(なんだ『これ』は)

参加者に割り振られているという、COMP。
その物体から呼び出される『悪魔』。
どんな魑魅魍魎が呼び出されるのか。
ひょっとしたらあの『ゴジラ』とか『バルタン星人』みたいな、会話することすら出来ないような怪獣が出てくるんじゃあないか?
もしくは『バイオハザード』のような見るからに恐ろしい人喰いゾンビでもでてくるんじゃあないか―――そんな吉良の思考は見事に外れ、現れたのはジャック・ザ・リッパーと名乗る子供。
まだ幼さが抜けきっていないどころか溢れんばかりの幼さを秘めているその顔に反して、服装は露出が多い。
へそと太股を隠す布は存在せず、まるで際どい水着を着ているかのよう。

(わたしが小さい子供に欲情するような、頭のおかしいロリコン野郎だったら危ないところだったぞ…『魔神皇』とかいう男は何を考えている)

「……おかあさん?」

少し思考に集中し無反応だった吉良を怪訝に思ったのか、ジャックがそろそろと顔を覗き込む。
その行動は10歳前後の少女そのものだ。
あの悪名高き殺人鬼―――1888年、霧の都ロンドンを恐怖に陥れた連続切り裂き魔とは思えない。
だが。
『悪魔』と呼ばれ、このCOMPから殺し合いの道具として喚ばれた以上。
殺し合いの何かには役に立つのだろう―――と、その純粋な瞳を見て、吉良は思う。

「ねえ君…一つ聞きたいんだけど…いいかな…?」
「? うん、いいよ」
「ジャックっていったね…。君はこの状況で『何が出来る』んだい…?」

あくまで、その問いは直接的なものではなく。
遠回しに、殺し合いにおいて何が出来るのかと問う。
殺し殺されの環境に馴れていないような、戸惑いの雰囲気を演出して。

「ああ、済まないね。別に君に何か働かせよーだとか犯罪をさせよーだとかそういうことを考えている訳じゃあないんだ…私はごく普通のサラリーマ」
「殺せるよ」
「……?」

そして、返ってきたのは吉良の予想以上の返答だった。

「今、何と?」
「殺せるよ。気づかれず、覚えられず、思う存分解体できるよ。
だって、それがわたしたちだもん。それが、『ジャック・ザ・リッパー』だから」

すっ、と。
ジャックがこちらにゆっくりと掌を差し伸べる。
特に特徴もなく、意思も感じられないゆっくりとした動作。
だが―――いつの間にか。
吉良が気づいた頃には―――その刃は、『吉良の首筋に当てられていた』。

「……ッ!!」

吉良の喉が、一瞬にして干上がる。
驚愕によって潤いを失い渇きを得た口内で、吉良の戸惑いが蠢く。

(何だ今のは…ッ!?
注目をずらすだとかおそろしく速い手捌きだとか、そんなレベルじゃない……『全く気配を感じさせなかった』ッ!?)


568 : 暗剣、破裂の元に   ◆DpgFZhamPE :2016/06/02(木) 00:30:16 B.yJ25K.0
吉良の驚愕を他所に、刃は喉筋を切り裂くことはなく。
ゆっくりと下げられ、あるべき場所に戻される。
ジャックとしては、ただ己の腕を見せるためだけの、お試しのような行為だったのだろう。

「わたしたちなら、バレずに殺せる」
「わたしたちなら、覚えられずに殺せる」
「だから―――思う存分、解体しちゃおう。おかあさん」

数多もの人間を屠ってきた吉良ですら背筋を凍らせるほどの、純粋な殺意。
幼い子供が故の残酷さではない。
残酷さしか知らない、幼い子供。
親から得るであろう愛や情緒を知らない子供。
ああ、と。
この子供は、男女関係なく他人に母親としての愛を求めているのか、と。
そこまで理解し―――吉良は、心の中でニヤリと笑った。

「そうか…残念だけどね、わたしは君のおかあさんじゃあないんだ」
「?」
「だから―――わたしが君のおかあさんを探してあげるよ。
わたしの言うことをいいこにちゃーんと聞けば…きっと見つかるよ…」

ころころとした瞳は、まっすぐに吉良を見据える。

「ほんと?」
「ああ、本当さ…」
「じゃあ、わたしたちも―――」

そこから先の、肯定の言葉が紡がれることはなかった。
―――破裂音。いや、爆発音か。
吉良より少し離れた場所より、響き渡った音があった。
一般人であれば爆発音と区別すらできないであろう、小さな音。
キラークイーン……『触ったものを爆弾に変えるスタンド』を持つ吉良だからこそ、聞き取れた微かな音だった。
見渡す限り、周囲は無人だ。
参加者以外は存在しない町なのだろう。
つまり。

(参加者か)

参加者である以上、接触しない訳にはいかない。
危険人物ならその場から離れるか。始末できそうな弱者なら、早々に始末する。
使えそうな人間ならば、協力するのも手だろう。
幸い悪魔は殺しに使える上、見た目は少女。
協力関係を申し込むならば、化け物を連れているより少女の方が交渉は有利になるだろう。

「何か、人の気配がするね。わたしは言ってみようと思うんだが……どうする?」
「…うん。じゃあ、わたしたちもいくよ」

危険人物の可能性も考えて、ゆっくりと。
物音を立てないように―――吉良は、少しずつ歩き出した。



◇  ◇  ◇


569 : 暗剣、破裂の元に   ◆DpgFZhamPE :2016/06/02(木) 00:31:45 B.yJ25K.0
掌が、炸裂する。

「ムカツクなぁ」

硬いビル群の中。
コンクリートの世界の真ん中で。
花火のように、炸裂する。

「舐めてんじゃねえぞォ…!」

やがてそれは、連鎖して。

「クソナードが…クソ白モヤシが…ッ!!
誰だか知らねえがよ…」

魔神皇の首輪に繋がれ、支配下に置かれている。
そして。
いきなり現れた白髪の男には、完全に舐められている。
それだけでも脳髄が爆裂しそうなほど腹立たしいというのに。
―――己の『個性』が、白髪の『反射』を前にして全くの相手にならなかった。
爆豪は自尊心が高く、酷く短絡的かつ攻撃的な精神面を象徴するように、『爆破』という個性を持っている。
掌の汗腺から、ニトロのような成分の汗を分泌し、爆破させる個性。
しかし。
そのような攻撃的な側面はあれど―――彼は馬鹿ではない。
だからこそ。
先程の白髪の一撃で、気づいてしまった。

『アブネェな。何てことしがるよ、仮にもオマエの現状唯一の味方に対してよォ』

苛立ちの隅で、彼の冷静な頭脳が言葉の意味一つ一つを、読み取っていく。

『俺の能力は簡単に話せば全物理反射、全魔法反射だ。今の攻撃も反射してやったが―――』

魔法だ何だと聞き馴れない言葉はあったが。
重要なのはその後だ。

『―――今オマエの顔面にぶつけンのは特別に勘弁してやった』

要するに。
舐められ、見下され。
その気になれば俺より弱いクソザコのオマエ程度一撃でノックアウトしてやったがカワイソォだからやめておいた、と。
遥か高みの上から目線で、そう告げられたのだ(爆豪的感覚)。
掌の爆破が、一際大きく煌めく。
そして。

「虚仮にするのも大概にしろや死ねゴラァッ!!」

BooooooooM!!!!!

と、振り抜いた掌と共に―――二度目の爆破を正面から受けた自動販売機が破裂する。
肥大化した自尊心が、見知らぬ人間に二度も見下された現実に逆立っている。
だが、我を見失っている訳ではない。
魔神皇―――新手の『敵(ヴィラン)』の可能性もある―――の言う通りに殺し合いに乗ってやる義理もない。
だからと言って、魔神皇と名乗った男を見逃す義理もない。
ならば、爆豪の道はただ一つ。

(殺し合いなんぞ知ったこっちゃねえ。向かってくるヤツは全員真正面からブッ潰す。あのクソ白モヤシもいつか越える)

向かってくる全員を、叩きのめすこと。
そうと決まれば、まずは行動だ。
白髪は最初のやり取り以来、スマートフォンの中に吸い込まれるように消えていったまま出てこない。
用が無ければ出てこないつもりのようだが、爆豪とて己から呼び出す気はない。
まだ苛立ちは収まらないが、此処で立ち往生しても進展しないことは己自身もよく分かっている。


570 : 暗剣、破裂の元に   ◆DpgFZhamPE :2016/06/02(木) 00:32:26 B.yJ25K.0
(………………)

しかし。
爆豪にとってこの場、この殺し合いの会場は未知の領域なのだ。
特に目的もなく歩き続ける訳にもいかない。
何か大きな建物でも目印にするべきか―――大小様々な建物を見渡し、更に遠くを見据える。
大きなタワーや巨大なビルでもあれば、其処に向かって歩き始めればいい。

(……あ?)

しかし。
空は灰色に染まり―――爆豪の十メートル先すら、見えなかった。
もやもやと。
何かが、視界を塞いでいる。
水蒸気―――いや、霧か。

(目が…ッ!?)

そう認識した瞬間。
焼け爛れるような痛みが眼球に奔る。
無理矢理にでも目を抉じ開けた時には、もう遅い。
先程までクリアだった視界は、一面霧に覆われ。
大小様々な建物が囲んでいた周囲はもはや、其処に何があるのかすらもわからないほど不明瞭に。
そして。

ヒュッ、と。
風を斬る刃の、音がした。






○  ○  ○






「虚仮にするのも大概にしろや死ねゴラァ!!」

吉良が目撃したのは、正にその瞬間だった。
大きな建物の壁に隠れ、爆音の発信源にまで辿り着いた瞬間。
まるで爆発したかのような髪型を持つ金髪の少年の掌が、爆発と共に自動販売機を破壊したのだ。

(まさかスタンド使いなのか…しかも『同じタイプのスタンド』…ッ!?)

―――『キラークイーン』。
スタンドと呼ばれる精神エネルギーの具現化である存在。
その吉良のスタンドが、キラークイーンである。
触れたものを爆発させる能力。
熱源を探知して追跡し、起爆する『シアー・ハート・アタック』。
吉良が弱点はない、無敵と信じて疑わないスタンドである。

(あんな如何にも短気そうなガキがわたしと同じ能力を)

自動販売機を素手で起爆させる。
そんな能力、スタンド以外ではあり得ないだろう。
しかし、爆破させるその瞬間―――スタンドの姿は、見えなかった。

(奇妙だ。しかしそういうタイプのスタンドあり得る…か…?)


571 : 暗剣、破裂の元に   ◆DpgFZhamPE :2016/06/02(木) 00:34:06 B.yJ25K.0
直後に響いたのは、爆音。
目を封じられたと同時に、爆豪は己の足元を強く爆破させた。
その衝撃で己の身体は高く浮き―――ほんの一瞬だが、霧が晴れた。
それ故、爆豪の首を切り落とすはずだった刃は虚しく空を切る。
爆豪とてその刃に気づいた訳ではない。
『この霧は誰かの個性による攻撃だ』。
そう判断し、ただこの場は危険だと回避行動を取っただけ。
その一瞬の行動が、爆豪の首筋を救った。

「あ、よけられちゃった」
「あ…あァ!?」

少し離れた場所に着地する爆豪が見たのは、際どい姿の少女が刃を携え此方を見つめている様子。
そして、次の瞬間。

「何だテメエッ!!」

誰だかはわからない。
何の個性かも理解できていない。
ただ、こいつは敵だ、と爆豪は理解した。
ならば。
死なない程度に、叩き潰す。
爆豪が一瞬で間を詰める。
繰り出すのは右の大振り。
打撃と爆破を織り混ぜた、暴力の塊。
『襲ってきたからには敵だ』
『ブッ潰してから、それからだ』
その二つの思考を瞬時に行い、怒りながら、あくまで冷静に拳を叩きつける。
しかし。
それは、当たらない。
霧に溶けるように消えた少女がいた場所を爆破するだけ。
既に消えた少女への手応えは、ない。

「…クソがッ」

爆風で散らされた霧が、再び爆豪を覆う。
これではキリがない―――何処にいるかもわからない以上、手当たり次第に爆破するか。

(いや、駄目だ。隙を狙われちゃ意味がねえ…。
取り合えずこのクソ霧を払ってから)
「腕」
「…!?」

ボソリ、と。
己の背後。耳元で囁かれた言葉に反応し、即座に振り返り起爆。
だが、既に姿をその場に人影はなく

「貰うね」

視界に入ったのは―――己の左肩にめり込んでいく、刃。
このままじゃ、左腕ごと持っていかれる。
爆破で逃れようとも、もう遅い。

「化け、モンが…ッ!?」

そして。
スパン、と爆豪の身体が宙を舞う。
暴風にでも叩きつけられたように、爆豪の身体は勢いよく撥ね飛ばされる。
地面の上で二転三転し、ようやく体勢を立て直し、見据えた先には。

「……だれ?」

襲撃者である、黒の少女と。

「オーオー派手にやられちゃってェ。速いとこ喚べばきてやったのによォ」

それに対照的な、白の少年。

「よォこそおいでくださいましたァー。
地獄のデリバリーでございまァす。
せっかく持ってきてやったンだから―――有り難く貰ってけや」

反射の男。数多の能力者のトップ、レベル5。
外道。
一方通行の、降臨だった。


572 : 暗剣、破裂の元に   ◆DpgFZhamPE :2016/06/02(木) 00:34:49 B.yJ25K.0
「あァ!?俺は呼んでねえだろうが!!」
「あンなクソみてェな消化試合見せられて出てくンなってのが無理だろォよ。
それともアレか、あのまま細切れにされてパック入り198円で売り出されるのが目的だったか?」
「あァ!?!?!?」

実際、一方通行が出現したのはただの気分だ。
爆豪が爆破の勢いで跳ね回り、ポケットのスマートフォン型COMPが誤差動した。
ただそれだけの理由である。
何もせずにCOMPに戻り惰眠を貪るのも考慮したが―――目の前を包む、霧。
クソを下水で煮込んだような、人殺しの匂い。
そして。
それに狩られようとしている、一般人の爆豪。

それを見せられてしまえば、一方通行も黙っているつもりはない。
チンピラで短気でガキだが一般人な主人を助け。
血の匂いが染み込んだ人殺しを潰すのが、『外道』の役目だろう。
風のベクトルを操り、突風と化した一撃が、爆豪の腕が切り落とされる前に吹き飛ばしたのだ。

「さァーて、覚悟はいいかクソガキ。今なら出血大サービスだ、地獄の門までタクシー飛ばしてやるよ」
「うん。うん。痛いことしようとするんだね―――じゃあ、わたしたちもあなたを殺してあげる」

ドンッ!と。
ジャックはその言葉を皮切りに、再び姿を消した。
霧に紛れ。霧に溶け。その中で解体するのが、ジャックである。
気配を消し、速やかに首を刈る。
何度も何度も繰り返しやってきた、殺しの技術。
だが、しかし。
ジャックの刃は―――一方通行の肌に触れる直前に停止した。

「……どォした。ヤル気がねェなら、飛び散っとけ」

コツン、と。
二度も爆豪の爆破を受け、大地に中身を撒いた自動販売機の、缶ジュース。
それを撫でるように、優しく蹴り上げる。
その、瞬間。

轟ッ!!!!と。
まるでライフル銃のような速度で、有り得ない軌道を描きながら、缶はジャックに猛進する。
しかし、ジャックとて弱者ではない。
ひらりと上体を反らし、脳髄をブチ抜くはずだった缶を避ける。
そのままバックステップで、距離をとる。

(……)

切り裂きジャック―――この場における『ジャック』は、産まれることすら許されなかった膨大な子供の怨念。
故に。敵意、殺意といったものには敏感なのだ。
刃を止めた理由もそれによるもの。
このまま攻撃しては己の腕が死ぬ―――そう『攻撃を受けること』に対しての一方通行の並々ならぬ殺意を直感染みた感覚で受けて、回避したのだ。

「駄目だね。今のわたしたちじゃあ、殺せない」

そして。ジャックは、この場での敗北を理解した。
別に、このまま戦闘を続けていれば勝てる見込みも十分にある。
だが。
あくまでそれは己の生を天秤に掛けた状態での勝負で。
『おかあさんに会わせてあげる』。
そう言ったあの人と死に別れ、母親に会えない可能性があるのなら。
ジャックは、撤退と言う手段を取る。

「じゃあね。つぎ会うときは―――思う存分、解体させてね」

霧が、ジャックを包む。
姿が、消えていく。

「逃がすと思ったかァ!」

一方通行の右手が唸る。
いくら最強の能力者である一方通行と言えど、呼吸は必要だ。
そうなると酸性の霧は、彼にとって何よりも邪魔な存在となる。
風の流れを―――ベクトルを変え、そよ風が吹き荒れる暴風となる。
暴風は辺り一体を蹂躙し、霧を巻き込み、全ての霧を消し去った。

「……チッ」

しかし。既にその場には、ジャックの姿はない。
霧で現れ、霧に消える。
ジャック・ザ・リッパー。
霧の都ロンドンの、切り裂き魔。
まるで、その事件を、再現したかのようだった。




○ ○ ○


573 : 暗剣、破裂の元に   ◆DpgFZhamPE :2016/06/02(木) 00:35:44 B.yJ25K.0
「帰ってきたよ」

ストン、と。
焦燥しきった吉良の前に可愛らしく着地した、ジャック。
吉良にとって、この勝負は得られるものもあったが、デメリットの方が大きい。
何せ、己の悪魔が知られたのだ。
『黒い少女の悪魔は殺し合いに乗っている』。
あのチンピラのような子供がそう喋り回れば、吉良のたち位置はあっという間に崖っぷちだ。
何故そんなことをしたのかと。
そのことをジャックに伝えると―――ジャックから帰った来た返事は、簡単なものだった。

「大丈夫だよ。わたしたちと戦った人は、みーんなわたしたちのこと忘れちゃうから」

と、けろっとした表情で、言い放った。
言うならば、『情報抹消』と言ったところか。
戦闘終了後、自分の情報を相手から忘れ去れる能力―――らしい。
それが本当ならば、吉良にとっては最上この上ない能力。
危険人物はジャックに影ながら始末させ―――手が綺麗な女ならば、自分が下す。
使えそうな人間ならば、無力を装って協力するのも手だ。

(やはり、わたしに『運』は向いている…。
この殺し合いの中で、『平穏に生きろ』と『運』が導いてくれている…ッ!)

そそくさとその場を離れながら、吉良は己の『運』を実感する。

……だが。

(この『ジャック』とかいう悪魔をきちんと言うことを聞くようにしなければな…全く。
このわたしが子育ての真似事をすることになるとはね…)

再度、同じ事をされても困る。
あのチンピラの少年の悪魔は白髪…どうやら見た限り『風を操る能力』らしい。
ジャックの『霧』では相性が悪い。
二度目の戦闘となれば、正体がバレないとはいえ。
今度こそ吉良の身に火の粉が降りかかる可能性がある。

(…まあ、降りかかる火の粉は払うだけだがね)

歩く吉良。
その後をてくてくと追うジャック。
平穏を望む人殺しは―――母親ではなく、あくまで母親を探す付き人として。
今後の教育を模索しつつ、旅立った。

【渋谷区/1日目/朝】
【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、確認済み支給品(1)
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:この場から『脱出』し、魔神皇を始末する。
1:参加者とは協力できそうなら協力するが、危険な相手や秘密を知られた相手、手の綺麗な女性は殺す。
2:ジャックが命令をきちんと聴くように教えなければならない。
※参戦時期は少なくとも川尻浩作になる前です
[COMP]
1:ジャック・ザ・リッパー@Fate/Apoclypha
[種別]亡霊
[状態]平常


574 : 暗剣、破裂の元に   ◆DpgFZhamPE :2016/06/02(木) 00:37:22 B.yJ25K.0
「誰が助けてくれっつッたよ…!!」
「テメェが勝手に死にかけてたから仕方なく手ェ貸してやったンだろ?
其処は助けてくれてアリガトウゴザイマスだろォ?」

血管が引き千切れるのではないかと疑うほどに噴火している爆豪と、対称的に薄くへらへらと嘲笑的な笑顔を浮かべいる一方通行。
その態度が、ますます爆豪を苛つかせる。

「いいか!俺はオマエになんぞに助けられてねえ…!助けを求めてもねえッ!!一人で倒せたんだ…!!
力見せつけられて満足か…ッ!?」

肥大化した自尊心が、『助けられた』という現実を受け入れない。
爆豪は奇襲者の情報を全く覚えていないという違和感にこそ気づいていたが、それを上回るほどの怒りが己を支配している。
一方通行も、その違和感をしっかりと捉えていた。

(『心理掌握』…五位みてェな精神に関するモンじゃねェ。
『戦闘した相手から自分の情報だけを消し去る能力』…ってとこかァ。
めンどくせェ手品しやがって)
「聞いてんのかコラァ!!」

冷静に思考を回す一方通行に、爆豪が食いかかる。
また爆破して反射されては気に食わない。
一方通行の顔面の、ほぼ間近で。
まるで鬼のような形相で、一方通行を睨み付けている。

(凄ェ顔してンな)

それこそ、社会の闇を見続けた一方通行ですらドン引きするほどの、鬼の形相。
阿修羅と比較しても遜色ないほどの、爆発的みみっちさを秘めた爆豪フェイスだった。

(…ダメだなコイツ。
このクソ凝り固まった自尊心が邪魔やがる)

力を振り撒くだけでは、最強にはなれない。
形だけの最強にはなれても―――上からまた別の強い力で潰されるだけ。
己だけを求めた力は、酷く不安定だ。

「そォか。じゃ、また用があれば呼べや」

やがて、付き合い切れなくなったのか。
再び吸い込まれるように、一方通行はCOMPの中に戻っていく。

「―――クソ白モヤシがッ!!」

言いたいことは言い終わったのか。
それともまだ、言い切れていない文句が溜まっているのか。
爆豪は、ぎゅるんっ、と勢いよくターンして歩き出す。
襲撃者。
何故かいきなり襲われたことしか覚えていないが、それが襲撃者の『個性』なのだろう。

(何だっていい)

ギリリ、と奥歯が砕けるかと思うほどに噛み締める。

(次に会ったら、必ずブッ殺す)

殺意ではなく、敵意で。
爆豪勝己はとりあえずより大きなビル群が立ち並ぶ方角へ進むのであった。

【渋谷区/1日目/朝】
【爆豪勝己@僕のヒーローアカデミア】
[状態]:瞳にダメージ(小:視界には問題なし)
[装備]:COMP(スマートフォン型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:どいつもこいつもナメやがって!
1:次に敵(ジャック)に会ったらブッ殺す。クソ白モヤシもいつかブッ殺す。
2:大きな建物が見える方(新宿)に向かう。
[COMP]
1:一方通行@とある魔術の禁書目録
[種族]:外道
[状態]:健康

※スキル『情報抹消』により一連のジャックの戦闘内容を覚えていません。


575 : 暗剣、破裂の元に   ◆DpgFZhamPE :2016/06/02(木) 00:37:52 B.yJ25K.0
投下終了です。


576 : ◆DpgFZhamPE :2016/06/02(木) 00:51:47 B.yJ25K.0
場面の区切りなど、数箇所欠落していた箇所を発見いたしましたので、WIKI収録時に修正させていただきます
失礼します


577 : 名無しさん :2016/06/02(木) 00:54:34 xkkTCgjE0
投下乙です
かっちゃん、ストレスたまりっぱなしだなあ
吉良が一方通行の能力を誤認したのは、今後どう響くか


578 : ◆jBbT8DDI4U :2016/06/02(木) 01:00:12 i6Kniyhc0
皆様投下乙です!
基本ルールに載せてた、放送ごとの悪魔の出現レベル制限ですが、
後乗せのルールですし面倒なことにナリそうなので取っ払っちゃいました。

>>524
一瞬の邂逅で全てを察する悪しき者達……いいですね。
どちらも蹴落とす気満々なのが、彼ららしいですが。

>>534
スラリンやるじゃん! 清麿も発想の転換でうまく切り抜けましたね。
T-1000は相変わらずの殺戮マシンっぷり。容赦は無いけど舐めプが……w

>>544
すごい攻めこまれた! 万屋の表記とか、バッチリですわ。
まさかの個人情報を売る貘さん、悪魔すらも束ねてしまうとは……
そしてカオスヒーローは、彼に心あたりがあるようで、どうなるやら……

>>555
電光機関と聞けば黙っていられないのはわかるけどもうちょっと周りを見よ???
レディはまさか子供に舐められてるとは思うまい……w

>>564
ロワでは珍しい洋画対決! ひとまず出久くんの活躍もあって、なんとか引き分けに。
プレデターさんはまだまだやる気、引くつもりは無いみたい。
バルベルデとか細かいネタにもにやりとしちゃいますね。

>>575
一であり全、全であり一。
そんな集合体としての少女は、戦いにおいても恐ろしい勘を持ってますね。
当たりを引いた吉良が、嬉しそうなのがまた腹たちますねw
一方の爆豪くんと一方さんはなんだかんだでいいコンビ? ツンデレ炸裂ゥ!
あと、誤動作でも悪魔の再召喚には5000マッカが消費されるので、Wiki収録の際に修正お願いします。

さて、自分も投下します。


579 : 銃撃:返上 ◆jBbT8DDI4U :2016/06/02(木) 01:01:45 i6Kniyhc0
 響く足音は、二つ。
 相も変わらず、人の気配は欠片も感じない。
 その静けさは、世界有数の大都市である東京だとは、とても思えない。
 いや、ここは東京であって、東京で無い街。
 魔神皇によって作られた、空虚。
 そんな街を、レヴィとパンティの二人は歩き続けていた。
 特に会話もなく、ただ、黙々と歩き続けるだけ。

「あーもう! いい男の一人や二人くらい、用意しとけっての!!」

 そんな退屈な時間に、先に音を上げてしまったのはパンティだ。
 折角呼び出されたのだから、いい男を引っ掛けて楽しみたい。
 そう思っていても、人に出会えなければ何も始まらないのだ。

「おいおい、あんまりギャーギャー喚くなよ。目立つだろうが」

 そんなパンティを、レヴィは冷静に窘める。
 まさか、その一言がきっかけになるとは、予想もしていなかったのだが。

「つってもねぇ……人っ子一人見当たらねえ、こんな所で目立った所でって話だろ?」
「はっ、アバズレは脳味噌までガバガバってか。これだから命のやり取りをしたことがねぇ甘ちゃんは困るぜ」

 売り言葉に買い言葉、始まる言い合いは止まる所を知らない。

「常日頃から命のやり取りなんてしてるほうがどうかしてると思うけどな」
「黙ってろよ素人、人の気配なんざねぇ方が普通なんだよ。ここは殺しの場だ、気配を出す奴は脳が天気か、死にたいやつだろうな」

 拭い切れない嫌悪感が、言葉として互いの口から吐き出され続ける。

「ふぅーん、今のアンタは十分煩いと思うけど?」

 そして、原点に戻った一言をパンティがレヴィに向けた時。

「やっぱり殺されてェか」

 レヴィの怒りが再び臨界点を超え、パンティへと銃を素早く向ける。

「生憎、こっちも黙って死ぬほど暇じゃないね」

 それとほぼ同時に、パンティもレヴィへと銃を向ける。
 互いの銃口は、互いの脳天を捉えている。
 あとは引き金を引いてしまえば、相手の生命を奪うことが出来るだろう。
 突きつけられた銃口越しに睨むのは、互いの顔。
 そこに笑みはなく、ただ、無表情で相手を見つめるだけ。
 そして少し時間を置いて鳴り響いたのは、二発の銃声。
 二つの銃口の向き先は――――同じ向き。
 彼女たちの真横、そこに立つ男たちに向けてだ。
 見ず知らずの人間の気配、それを察するや否や発砲した理由は、たったひとつ。
 察した気配が他でもなく、殺意だったからだ。
 しかし、二発の銃弾が奏でたのは、二発分の小気味の良い金属音。
 白の法衣に身を包んだ男の前に素早く躍り出た、金髪の男が手に持っていた盾によって弾かれたからだ。
 ちっ、と舌打ちをした後、レヴィは二人組の男を睨む。

「お望み通りのいい男じゃねえか、良かったな」
「うーん、ちょっと細いわね。あとファッションセンスがダメ、壊滅的」

 銃口は下げずに相手の姿を見据えたまま、軽いジョークを飛ばしあう。
 だが、そんなジョークに笑うこともなく、二人組の男たちはレヴィ達へと向かってくる。
 殺意は、緩められることはない。


580 : 銃撃:返上 ◆jBbT8DDI4U :2016/06/02(木) 01:02:07 i6Kniyhc0

「どうやら、向こうから願い下げのようだぜ」
「好都合、こっちもノーサンキューよ」
「ほう、そうかい。なら――――」

 そして、最後に一つ、そんな会話のやり取りを交わして。

「暴れさせてもらうぜ!!」

 レヴィは、躊躇うことなく引き金を引く。
 ばんっ、と軽い音が響いたと同時に、引き金をもう一度引く。
 一発一発、その狙いを僅かにずらし、金髪の男の守りを散らす。
 男が持つ盾だけでは防ぎきれず、鎧でも守り切れない生身の部分に、銃弾が突き刺さる。
 く、と小さな声と共に、男は表情を曇らせ、そして盾越しにレヴィを睨む。

「おお怖い。ぶっ殺したくて仕方ねえ、って顔か」

 弾切れの僅かな一瞬、その隙間にレヴィは思わずそう呟く。
 男の目には、怒り、恨み、憎しみ、絶望、そんなドス黒さが秘められている。
 レヴィが日常の中で見慣れている、人殺しの目だ。

「ちょっと」
「あぁ?」

 にやりと笑ったままマガジンを変え終えたレヴィを、パンティが呼び止める。
 ちらと横を向くと、パンティは銃を打ちながら、空いた片手で鼻をつまんでいた。

「あんまり近くで撃つなよ、火薬の匂いが移るだろ」
「ならテメエが前に出て盾にでもなりやがれ」

 パンティの苦情を聞き入れることなく、レヴィは冷たく即答する。

「あっそ、じゃあチキンさんを置いてアタシは前に出るかね!」

 そう言われることを待っていたのか、パンティはその場で銃を打ち続けるレヴィを尻目に、前へと駆け出していく。
 絶え間なく撃ち続けられるレヴィの銃は、金髪の男の足を縫い止めている。
 その軌道上をあえて突き進んでいくことで、パンティは男たちへと一気に距離を詰めていく。
 レヴィの銃の軌道を全て読んでいるかのような彼女の動きは、一種の芸術と呼んでも差し支えなかった。
 そのまま、金髪の男の懐へと潜りこむが、金髪の男もそれを察していたのか、守りを固めながら剣を振るう。
 しかし、パンティの狙いは、初めから金髪の男ではなかった。

「さっきから見下してきて、ムカつくんだよ!!」

 そう、金髪の男の後ろで、涼しい顔をして銃撃戦を眺めていた、白衣の男の方だった。
 あと一歩踏み込めば手が届く、そんな距離でパンティは銃を構え、にやりと笑う。


581 : 銃撃:返上 ◆jBbT8DDI4U :2016/06/02(木) 01:02:22 i6Kniyhc0

 "サマナー"
「お山の大将さんよ! 悔い改めな!!」

 そして、その一言と共に、引き金を引こうとする。

「"悔い改める"、ですか」

 その瞬間、ぼそりと呟かれた言葉と、掲げられた手。
 そこから発せられた見えない衝撃波が、銃弾ごと彼女を飲み込んでいった。

「……どれだけ悔い改めたところで、人間が愚かしいことには変わりません」

 繰り広げられる銃撃の音を背に、男は小さく呟き、吹き飛ばされたパンティは素早く体制を立て直す。

「神にでもなったつもりか?」
「いえ、人間に価値など無いと言っているだけです」

 軽い問いかけと、感情を伴わない答え。
 ちっ、と唾を吐き捨ててから、パンティは再び問いかける。

「アンタも人間だろうが」
「そうですね、私も人間でした。そして人間と天使の都合のいいように、祀られた」
「はぁ? 天使がテメェみたいなサイコを祀ってるだぁ? お偉方もヤキが回りすぎたか」

 心底呆れた声を出して、パンティは笑う。
 対して男は、今まで動かしていなかった表情を動かし一つだけパンティへと問いかける。

「貴方が、天使だとでも?」
「そうさ、目ん玉ひん剥いてよく見やがれ。そんでそのまま――――」

 その問いかけと同時に、パンティは再び男へと駆け出して行く。

「ならば、借りを返しましょう」

 対して男は、詰め寄るパンティに対し、初めて。

「"僕"を、救世主にした借りを」

 怒りの表情を、見せた。
 手から放たれたのは、先ほどよりも強い衝撃波。
 それが一つだけならば、まだ避けられたかもしれない。
 だが、何重にも重ねられたそれは、パンティに逃げ場を与えることはなく。
 防御すら許さず、彼女の体を瞬時に吹き飛ばしていった。
 詰めた距離は無に帰し、パンティは地を擦りながらレヴィの元へと舞い戻っていく。
 目立った外傷は無いが、衝撃波による内蔵へのダメージは大きい。
 少しふらつきながら立ち上がるパンティに、レヴィは背中越しに語りかける。

「おいおい、なんてザマだい」
「はっ、そっちこそいつまで遊んでんのさ」
「ぶっ飛ばされてるような奴に言われたかねえな」

 軽口を飛ばしながら、レヴィはマガジンを嵌め直す。
 銃弾の消費こそ多くなってしまったが、じわじわと金髪の男に傷を与えることには成功している。
 あとは、動きを封じ、確実な止めを刺すだけだ。

「手伝えよ、まずはアレを崩すぞ」
「言われなくとも」

 ようやく立ち上がったパンティと共に、レヴィは金髪の男へと銃を向ける。
 まずは一人、その生命を奪う。
 立ちはだかる以上は、悪魔かどうかなど、関係ない。

 そして後ろで眺めていた男も、これ以上眺めていればまずいと判断したのか、片手をレヴィ達へと差し出していく。
 だが、それを止めたのは他の誰でもない、金髪の男だった。
 その意図を図りかねながらも、白衣の男はゆっくりと手を引いた。
 間もなくして降り注ぐ、銃弾の雨。
 その中で金髪の男は、盾だけで守れる最低限の防御を張りながら、剣を握る力を強めていった。
 押しきれる、と踏んだレヴィたちは、そのまま銃の引き金を引き続けた。


582 : 銃撃:返上 ◆jBbT8DDI4U :2016/06/02(木) 01:03:30 i6Kniyhc0

 もし、この時少しでも違和感を感じ取っていれば、結末は変わっていたのかもしれない。

 マガジンの装填、銃弾の雨が弱まる僅かな隙間。
 その一瞬を待ち構えていたかのように、金髪の男が叫ぶ。
 空間が凍りつき、全てが止まったかのような錯覚を受ける。
 その中で、唯一動いたのは、赤。
 人とは思えない、いや、悪魔だとしても持ち得ない憎しみを秘めた赤い目が、レヴィたちを捉えていた。
 ぞくり、と何かが背筋を走ったのと同時に、男の剣が振り下ろされた。
 人間と天使に刻まれる、漆黒と光り輝く紋章。
 たった一瞬、それだけのことで。
 二人の体には、袈裟懸けに切り抜かれたかのような傷が、刻まれていた。
 激痛を認識すると同時に、二人の体が大きく傾く。
 反撃を、と思考するが、手は動かない。
 いや、手など動かせるわけがなかった。
 その頃の二人の目の前には、既に金髪の男が立っていたのだから。

 びゅううと、風が吹く。
 そこに横たわっているのは、二人分の死体。
 一人は悪霊を討つ天使の、一人はならず者の街に生きる女の。
 だが、死んでしまえば、誰だったかなんて、どうでもいい。
 興味はないと言わんばかりに、オルステッドはロウヒーローの元へと戻る。

「今の技は」

 ふと、口を開く。

「勇者が、魔王を討った技だ」

 それは、別に言わなくてもいいこと。
 誰かを殺す。それさえできれば手段や過程など、どうでもいい。
 けれど、彼はそれをわざわざ口に出した。

「そういう、事ですか」

 その意図を、ロウヒーローは難なく察する。
 勇者、それは魔王を討つ為の生け贄。
 選ばれし者の技を、人殺しに使うという覚悟。
 オルステッドが伝えたかったであろうそれを、彼はしっかりと受け止めた。

「行きましょう」

 そして、彼は再び歩き出す。
 目指すは品川――――「カテドラル」が建てられた地。
 彼らも、きっと同じことを考えているのだろう。
 そんなことをふと考えて、ロウヒーローは初めて、少しだけ笑った。

【レヴィ@BLACK LAGOON 死亡】
【アナーキー・パンティー@パンティ&ストッキングWITHガーターベルト 死亡】
【残り 41人】

【大田区/1日目/朝】
【ロウヒーロー@真・女神転生if...】
[状態]:MP7/10
[装備]:COMP(アームターミナル型)、ベレッタm92f
[道具]:基本支給品、不明支給品
[所持マッカ]:六万
[思考・状況]
基本:全ての殲滅
[備考]
※真・女神転生if...における魔人ロウヒーローが何かしらの手段で呼び出されています
[COMP]
1:オディオ(オルステッド)@LIVE A LIVE
[種族]:魔王
[状態]:HP1/2
[備考]
※中世編クリア直後より参戦


583 : ◆DpgFZhamPE :2016/06/02(木) 01:23:35 B.yJ25K.0
>>578

了解です。
Wiki収録時に修正します!


584 : ◆jBbT8DDI4U :2016/06/02(木) 01:25:32 i6Kniyhc0
ワスレてました、投下終了です。


585 : 名無しさん :2016/06/02(木) 20:42:48 xkkTCgjE0
投下乙です
早くも死者が出たか……
さしものレヴィも、RPG強豪コンビが相手では分が悪かったのかな

それと質問というか確認なのですが、ランダム支給品は悪魔のみ参戦している作品から出しても大丈夫でしょうか


586 : ◆jBbT8DDI4U :2016/06/02(木) 21:02:59 i6Kniyhc0
>>585
武器防具レベルなら基本的には大丈夫ですが、
それ単品で把握が必要なレベルの物は極力お控えください。
また、自律稼働可能なものに関しては、一律禁止とさせてください。


587 : 名無しさん :2016/06/02(木) 21:10:18 xkkTCgjE0
了解しました
ありがとうございます


588 : 手を繋がぬ魔人  ◆TAEv0TJMEI :2016/06/02(木) 23:14:10 /isVuA/60
遅れてしまい申し訳ありません。投下します


589 : 手を繋がぬ魔人  ◆TAEv0TJMEI :2016/06/02(木) 23:14:34 /isVuA/60
渋谷に足を踏み入れていこう、海馬瀬人は悪魔たちから度重なる襲撃を受けていた。
悪魔たちの言葉から推測するに彼らは何者かに扇動され、魔人皇が目論む“魔人”なるものの誕生を防ごうとしているらしい。
悪魔たちとのTALKを試みたわけでもない海馬には其れ以上のことは分からなかったが、しかし、心あたりがないわけではない。
次元上昇だ。
失われた王の魂を呼び戻す策の一つとして、海馬は人々の意識を束ね高次元へとアクセスしようとした。
その実験自体は成果こそあれども、中断する形となってしまったが、常人の意識領域の限界を超えた魔の世界へと片足を踏み入れたのは確かだ。
今の海馬の魂は、高次の霊的存在である悪魔たちからすれば、“魔人”とやらに近しい物に感じられるのかもしれない。

(魔人、それに魔女、か……)

あくまでも推測にすぎない“魔人“についての考察を切り上げ、喚び出したままの自らの悪魔へと視線を移す。
巴マミ。
今もまた難なく悪魔を撃退したこのモンスターは海馬の趣味でこそないが、中々に強力だ。
攻撃力こそ青眼の白龍に劣るが、最大火力は低い方ではない。
むしろ高いほうだろう。
加えて重要なのは彼女の持つ魔法の汎用性だ。
巴マミの操るリボンは、敵を拘束・切断するに留まらず、マスケット銃など様々なものを精製できる。
所詮はただの小娘であったマミにはあまり複雑なものは作れないようだが、そこに海馬の手が加わればどうか?
魔人皇の手により汚された決闘者の誇りであるデュエルディスク――その新型を模したCOMP。
コンピューターである以上、悪魔を召喚する以外の機能も使いこなせてこその海馬瀬人だ。
悪魔のライブラリ機能などをリアルソリッドビジョンで培ってきた技術で応用。
近代兵器などという海馬も憎むものではなく、魔法で再現できそうな“魔法カード”、“罠カード”の構造をマミへと叩きこんだ。
多種多様な魔法と罠を駆使する魔法少女(マジシャンガール)の厄介さを、海馬は我が身を以って知っている。
そう、巴マミは海馬よりもむしろ、海馬が追い求める宿敵、“武藤遊戯”の好みに合致するモンスターなのだ。


590 : 手を繋がぬ魔人  ◆TAEv0TJMEI :2016/06/02(木) 23:18:05 /isVuA/60

(このオレにマジシャンガールを支給し、もう一人のオレに青眼を支給するとはッ!
 魔人皇め、つくずく貴様はオレを怒らせるのが得意と見た……)

だが、魔人皇にどのような意図があろうと関係ない。
もとより、“海馬瀬人”を超えるのなら、“青眼の白龍を従えた海馬瀬人”を超えてこそなのだ。
そういう意味ではマジシャンガールはおあつらえ向きだ。
かつて“武藤遊戯”はブラック・マジシャンやブラック・マジシャン・ガールを用いて、海馬瀬人に屈辱を舐めさせた。
奴にできたことが海馬瀬人にできないわけがない!

(過去の亡霊たる“武藤遊戯”を、今の限界である“海馬瀬人”を超え、オレは未来へと至るッ!
 待っていろ、“遊戯”! 待っていろ、もう一人のオレ!
 フハハハハハハハハハハハ……ハ……? いや、待て……)

いやがおうにも高まり続けていた胸がふと冷水を浴びせられたかのように鼓動を止める。
引っかかったのは一つの光景。
追い求め続けた王との戦いでもなければ、対峙したばかりの自らという壁でもない。
もう一人の自分と共に思い浮かべた青眼の姿だ。
確かにあれは青眼だった。
悪魔として殺し合いの駒に堕とされていようとも青眼の白龍に他ならなかった。
そこは間違いない。魂で理解できる。
だが、だがしかし。
寸分違わぬもうひとりの自分とは違い、あの青眼は――

(あの青眼は美しくはあれども攻撃力3000――止まりのように感じられた……)

青眼の白龍。
攻撃力3000――それは昔の話だ。
海馬瀬人が従えたならその攻撃力は19900に達するはずだ。

「巴マミ、一つ聞かせろ。貴様達悪魔の力は貴様達が悪魔として呼び出される以前と比べてどうなっている?」
「……察しの通り、私たち悪魔は分霊――言わば力の分身に過ぎないわ。
 本来に比べればかなり力は落ちてしまっているの」
「分霊ということは、分かたれたものを合わせれば戻るのだな?」
「そうかもしれないし、そうではないかもしれない。
 悪魔は悪魔合体という方法で強化できるのだけど。
 元となった悪魔の派生になることよりも、全く別の悪魔になることの方が多いみたい」
「ふぅん。青眼を二体融合させた所で、凡百の決闘者ではツイン・バーストではなくワイアームが限度といったところか。
 くくく……魔人皇の底も知れたというものだ。
 奴が悪魔などという自らをも脅かしうる“力”を支給したのはなんということもない。
 恐らく奴の悪魔、或いは奴自身は分霊などというものではなく、万全の力を振るえるが故の自信だと見た」


591 : 手を繋がぬ魔人  ◆TAEv0TJMEI :2016/06/02(木) 23:18:30 /isVuA/60

得心が言ったとばかりに頷く海馬。
普段の彼なら青眼を弱体化させ汚すなど激高する案件だ。
しかし今この時ばかりは話は別だ。
海馬瀬人が表と裏の二人に分かたれた以上、青眼もまた分かたれて当然なのだ。
表と裏、二人の遊戯がいい例だ。
ブラック・マジシャンを始めとした王の従僕たちは、王だけではなく器にも力を貸していた。
現時点では闇海馬の方が僅かながらも青眼使いとして優れているかもしれないが、だからといって青眼が海馬瀬戸を見限るはずがないのだ。
主だった力は闇海馬の下僕として。分かたれた力は他ならぬこの海馬瀬人のものとして。この身に宿っていたのだ。

(共にあったことに今の今まで気づけなかったこのオレを許せ、青眼)

語りかけるも返事はない。
メインを闇海馬が従えている以上、海馬の手元に残っているのは実体化できないほどの僅かな分身に過ぎないのだろう。
今はそれでいい。
誰よりも早くこの闇のゲームを打ち破り、裏人格に勝利した時、海馬瀬人は更なる領域へと踏み入れ、青眼は真の輝きを取り戻すのだ。
揺るがぬ未来である以上、焦る必要もあるまい。

――青眼に限るならば。

「……もうひとつ聞かせろ。悪魔という存在は貴様のような人間も含まれているのだったな?」
「ええ。私たち魔法少女は魔女という側面もあって悪魔としてカテゴライズされているのだけども。
 過去の英雄や偉人なら一通り含まれているんじゃないかしら」
「そうか……。過去の英雄か。決まりだな」

海馬瀬人が思い描きしは失われし宿敵の姿。
名も無きファラオ。アテム。
かつて王として邪神を封印し、現世に蘇ってからも決闘王として君臨した奴はまさに英雄と言えるだろう。
魔法少女が悪魔として召喚されているのだ。
最高クラスの魔法使いをも使役した奴が悪魔として喚ばれないはずがない。
だからこそ海馬瀬人は憤慨する。
もしも奴が自分やもう一人の海馬などではない、どこぞの誰かに召喚・融合召喚されていたとしたら――。
その上分霊として無様な姿を晒していたとしたら――。
あろうことかその不完全な武藤遊戯を倒し、“武藤遊戯”に勝ったと思い上がる者がいるとすれば――。

許せるはずがあるかあああああ!

「やはりオレは一刻も早く、この闇のゲームを叩き壊し、完全な武藤遊戯を引きずり出さねばならぬらしいッ!!」

更なる理由が生じたことで、海馬瀬人はより強く歩を進める。
襲撃回数の激化から見るに、このまま新宿を突き進めば、或いは世田谷区にでも行き着けば、悪魔をけしかけている者の所へ辿り着けるはずだ。
“魔人”とやらの件といい、魔人皇について何らかの情報を持っていればそれでよし。
持っていなかったとしても海馬瀬人に悪魔をけしかけた以上、目にもの見せてやらねばなるまい。

「行くぞ!! 全速前進だ!!」


592 : 手を繋がぬ魔人  ◆TAEv0TJMEI :2016/06/02(木) 23:19:38 /isVuA/60

【渋谷区/1日目/午前】
【海馬瀬人(A)@遊戯王(原作漫画版)】
[状態]:健康
[装備]:COMP(腕部装着型コンピューター。デザインは劇場版「THE DARK SIDE OF DIMENTIONS」のものに似る)
[道具]:基本支給品、確認済み支給品(1)
[所持マッカ]:25000
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない。もう一人の自分より先に魔神皇を倒し、死者蘇生の秘法を奪い取る。
   分霊(悪魔)では意味が無い。求めるのは完璧な“武藤遊戯”のみ。
  1.“魔人”とやらを餌に悪魔を扇動している者と接触する。
[COMP]
1:巴マミ@魔法少女まどか☆マギカ
[種族]:魔女
[状態]:健康

※もう一人の自分同様、青眼についての考察もあくまでも推測に過ぎませんが、海馬にとっては確信です。


593 : 手を繋がぬ魔人  ◆TAEv0TJMEI :2016/06/02(木) 23:19:49 /isVuA/60
投下終了


594 : ◆wKs3a28q6Q :2016/06/03(金) 04:11:13 B0dY9ypc0
大変遅くなりましたが、書き上がりましたので投下させて頂きます


595 : Power of s(mile)ing!  ◆wKs3a28q6Q :2016/06/03(金) 04:14:32 B0dY9ypc0

やめておけばよかった――
前向きな島村卯月がそう思うことなど、早々ない。
しかし今、心の底から、卯月はそう思っていた。

「う、っぷ……」

タパタパと音を立て、胃袋の中身が汚い路地裏にぶちまけられる。
最初は堪らえようとしたが、収まる気配のない頭痛がソレを許してくれなかった。
初めてレッスンを受けた時でも、もう少し堪えられたように記憶している。

それほどまでに、自らが召喚した悪魔の持つ歌唱力は、凶悪で破壊的だった。

「うう……頭がぐわんぐわんする……」

よくよく考えれば、悪魔と呼ばれる生物なのだ、こうなることは予想できた。
だが、見た目の愛くるしさも手伝って、卯月はついついマイクを渡してしまったのだ。

「……どこかで、横になれないかな……」

ふらつく足で、大通りに出る。
どこまでも凡庸な卯月では、薬局に行ったとしても、何を飲めばいいか分からない。
結局の所、卯月に出来る回復法など、横になってゆっくりする他ないのだ。

「ホテルかどこか……」

勿論、この場合のホテルとは、ビジネスホテルを指している。
他のホテルなんて発想はありませんよ、エロ同人出典じゃあないんですから。

(どこかでゆっくり横になったら、悪魔さんともちゃんと話合わないと……)

あまりの破壊的歌唱力に、思わずCOMPに戻してしまった。
正直まだ少し怖いが――逃げ続けるわけにもいくまい。
怖いイメージを乗り越えて、一歩踏み出してこそ、灰かぶりはお姫様になれるのだ。

「……あ、マイク……」

そういえば、マイクを拾うのを忘れていた。
もう悪魔に渡したくはないし、使う予定もないのだが、それでも自分に与えられたものだ。
拾っておいた方がいいだろう。
吐瀉物がかかってなければいいのだけど――――

(あの時、悪魔さんが消える時に落としたままだったよね……)

そんなことを思い路地裏に引き返した所で、卯月はリズミカルな音を聞いた。
単調すぎて『デレステでレッツリズム♪』とはいかないタイプの音。
卯月の語彙では、その音を例える言葉が浮かばないが、その音を例えるのなら――

――それは、タイプライターのような音だった。


596 : Power of s(mile)ing!  ◆wKs3a28q6Q :2016/06/03(金) 04:17:22 B0dY9ypc0

「――――――っ!」

卯月の体が、つんのめるように倒れる。
練習のしすぎで力が入らず思わず倒れた日を思い出した。
その時の経験が活きたのか、咄嗟に腕を差し込むことで顔面の強打は避けられた。
アイドルとして、顔に傷を受けるわけにはいかない。

「痛っ……」

捻挫でもしたのだろうか。
そう思い、視線を足へと向ける。
真っ白でハリのある太腿から、何か生えているのが見えた(脛毛ではない)

「えっ――?」

鈍い光を放つ釘。
それが、卯月の足から生えていた。
勿論、自然に釘が生えてくるわけがないし、気合を入れてもそんなことは起こりえない。
となると、勿論その釘は外部から植林されたということになる。
誰も植林の許可など出していないのに、こんな立派な釘が生えているなんて。
そりゃあ痛いし、血だって流れる。

「っああ……!」

涙だって出るし、表情も歪む。
ここは路地裏、華やかなステージではない。
卯月を無理矢理笑顔にしてくれるファンの皆も、大好きなプロデューサーも、支えてくれる仲間達もいない。
“シンデレラ”でなく“ただの少女”である卯月に、この痛みを耐える力などなかった。

「痛い、痛い痛いぃっ……なんで……!」

決して命に別状があるような深さではない。
しかしながら、慣れない痛みが『立ち上がる』という行動を阻害していた。

足を抑えて身悶える卯月の耳に、靴音が飛び込んでくる。
弾かれたように顔をあげると、学ランを着た2人の少年が佇んでいた。

「……」

無表情なオールバックの少年と、僅かばかり唇を歪めたパーマの少年。
その2人が、まるで足をもいだ昆虫でも見るかのように、卯月をじろじろ眺めていた。

「――――っ!」

今までに味わったことがない寒気が卯月の中を駆け抜ける。
アイドルである以上、卑猥な視線を幾度と無く向けられてきた。
お人好しの卯月をして「気持ち悪い」と言わせるような視線も受けたこともある。
しかし、今感じる寒気は、そんな程度ではなかった。


597 : Power of s(mile)ing!  ◆wKs3a28q6Q :2016/06/03(金) 04:17:51 B0dY9ypc0

「…………」

無言で、パーマの少年が手にした釘打ち機を向ける。
先程卯月を襲った釘も、ソレから発射されたものだった。
本来、日本の釘打ち機は、自己防止のため先端部分を“当てて”いなくては発射出来ないようになっている。
しかしながら、2人の少年――桐山和雄と桐山和雄にとっては、その程度のセーフティは何の意味も持たない。
オールバック桐山の知識と、パーマ桐山の加虐に対するワクワク好奇心。
その2つが合わされば、セーフティを解除してアメリカ製ばりに釘を飛ばすなど造作もないことである。

再び引き金が引かれ、大量の釘が吐き出された。
釘は、釘打ち機の改造に使った工具とともに、近くの工務店で手に入れた。
従ってパーマ桐山に、残弾数を気にする必要はない。
気の向くままに、目の前の獲物をハリネズミにするだけだ。

「…………?」

しかし――卯月に突き刺さるはずであった数多の釘は、突如現れたピンクの球体へと飲み込まれる。
咄嗟に卯月が召喚した、カービィの口に。

「えっ……!?」

召喚した卯月にとっても、カービィが飛んできた釘を飲み込んだことは意外であった。
そして、自分を庇うよう前方に向けて飛び出したカービィが、そのまま2人の桐山に突っ込んでいったことも、意外ではあった。
しかし一番意外だったのは――ピンクの球体であったカービィが、鋭い棘を生やしたピンクのウニのようになったことである。

“コピー能力・ニードル”

飲み込んだ物の特性を得る、カービィのコピー能力。
その一つであるニードルは、カービィを棘だらけにし、触れるもの全てを傷つける凶器と化す。
勢いよく回りながら突っ込むだけで防御のしようはなくなり、相手は避けるしかなくなる。
そうしてバランスを崩した所を追撃出来るのだ。

「…………」

それが、普通の人間ならば――だ。
無表情の悪魔、オールバック桐山にとって、この程度の飛来物どうということはなかった。
彼は、すでに“杉村弘樹”の到達した“真理”を得ている。
それに、合気道というものも、本で読んで知っていた。
回転する棘の塊であろうと、自分にダメージを負わぬよう力を受け流し、遠くに弾き飛ばすことが可能。
弾き飛ばされたカービィは、遠くの建物に突っ込み、相手に当てる筈だった衝撃を一身に受けることとなる。


598 : Power of s(mile)ing!  ◆wKs3a28q6Q :2016/06/03(金) 04:18:20 B0dY9ypc0

「あ、悪魔さん!」

悲鳴にも似た声が上がる。
卯月にとって、己の足の痛み以上に、自分が召喚したせいでカービィが傷つくことが辛かった。

しかし――カービィに駆け寄ることなどできない。
カービィが飛ばされたのは桐山達の向こう側、それもかなり距離のある建物だ。
この足で、2人の桐山を振り切り駆け寄ることなどできない。

ニタリと嗤い、パーマ桐山が再度釘打ち機を向ける。
卯月の足から頭まで、ゆっくりとその銃口を動かした。
勿論その行為に意味など無い。
獲物を狩る喜びのために時折非効率的な行動を取る、それがパーマ桐山の悪い癖だった。

「――――ッ!?」

その悪癖のせいで、パーマ桐山は引き金を引き損ねる。
背中に走る激痛。
何が起きたか視界に捉えるより早く、パーマ桐山もショーウインドウのガラスに突っ込み意識を手放した。

その光景を、僅かに興味深そうに、オールバック桐山が見ていた。
淡々と、死体の山を築くのみで、協調性など微塵もない。
守れと命令もされていないし、助けようと言う発想がない。
それが、オールバック桐山の短所。
彼らには、連携という概念などない。

「やっ!」

ただし、それ故に、オールバック桐山和雄に、隙が生じることはない。
例えサマナーがどんな目に遭おうとも、何も感じないのだから。
背後からカービィに襲撃されても、何の問題もなくいなせる。
再度オールバック桐山にいなされ、カービィが卯月の前に着地する。
卯月を庇うように立つカービィの額には、鉢巻が巻かれていた。

「……」

その鉢巻を、オールバック桐山は興味深そうに眺める。
カービィの無事に安堵するだけの卯月では気付けなかったが、今のカービィは先程までのカービィとは異なっている。
もう全身を針のようには出来ないが、しかし先程までと違い多彩な技を繰り出せた。

“コピー能力・ファイター”

カービィは、コピー能力に応じて出来ることもファイトスタイルもガラリと変わる。
先程までのニードルは、卯月を守るため、パーマ桐山に向けて“吐き出して”しまった。
星形の吐瀉物はパーマ桐山に直撃した直後に霧散、もうニードルには当分なれない。

それでも――運はカービィに、引いては卯月に向いていた。
卯月は普通の少女であり、幸運でもなければ不運でもない。
早々に桐山和雄に出会った不運の分だけ、幸運な出会いがくる。
カービィが、野良悪魔に出会ったのが、まさにソレだった。

野良悪魔を吸い込んで、新たにファイターをコピーする。
取れる手数が圧倒的に増えるファイターは、今のカービィにとって願ったり叶ったりだった。
先程のスピンキックのように、ファイターならば様々な距離で柔軟に対応することが可能。
ボス敵の殲滅という点では、非常に有用な能力である。


599 : Power of s(mile)ing!  ◆wKs3a28q6Q :2016/06/03(金) 04:19:20 B0dY9ypc0

「……っ!」

しかし――それでいてなお、カービィは攻めることを放棄した。
そもそもカービィは、悪を倒そうという強い正義の心を持っているわけではない。
自衛や食料のために戦うことはあれど、それ以外では基本のほほんと食べて寝てを繰り返す生物だ。

そんなカービィにとって、オールバック桐山と戦う理由など皆無。
勝てそうならともかく、すでに守らねばならない卯月は怪我を負っている。
まずは逃げて、マキシムトマトを食べねばならないような状況だ。

それに――今までの比較的ワイワイとした悪役との戦いとは違う、もっとどす黒く不気味な悪の存在を前にして、カービィの本能が警鐘を鳴らしていた。
それはもう太鼓の達人おにレベルくらいの速度で警鐘がドドドドドンカカカカドドドドドンくらい激しく鳴っていた。

カービィの体から、ファイターの技能が抜けていく。
それと同時に、実態を伴った悪魔――否、“ヘルパー”であるナックルジョーが現れる。
コピーした能力を放棄することでその能力を使うヘルパーを召喚する、カービィの切り札だった。

「えっ、ええっ!?」

事態を把握できず目を丸くする卯月に、カービィが駆け寄る。
武器を持たないオールバック桐山は後を追うが、ナックルジョーのムーンサルトキックに阻まれる。
オールバック桐山に反撃の隙を与えぬよう、ナックルジョーの嵐のようだジャブの連打――バルカンジャブが炸裂した。
その光景を尻目に、カービィが卯月を軽く吸い込む。

「ふええええええ!?」

圧倒的吸引力により宙に浮いた卯月の体は、カービィへと吸い寄せられた。
卯月の細くて軽い体などあっという間にカービィの胃袋に入れるが、しかしカービィが口をすぼめてソレを阻止。
その吸引力を使って卯月の体を口元に固定すると、カービィは一心不乱に走り出した。

「待って、今の男の子は……!」

卯月は、どこまでも普通の娘だった。
それでいて、普通の娘よりもお人好しで善人だった。
故に、残してきたナックルジョーを気にかける。

「…………!」

そんな卯月を、カービィは真っ直ぐに見つめた。
ピンク色の球体に、細かいコミュニケーション能力はない。
ふわっとした言語なら喋れるのだが、細かい言葉までは喋れない。
出来ることはボディランゲージが主になるのだが、それすらも逃走行為と卯月を口に固定する行為のために行う事ができない。

唯一出来るのは、つぶらな瞳によるアイコンタクト。
はっきり言って、分かりにくいことこのうえない。
ましてや卯月とカービィは初めて出会ったばかりの2人。
正直、これで意思を汲み取れと言う方が無茶である。
だが――

「……わかりましたっ!」

“アイドル”とは、“誰より一番輝こうとする少女”である。
しかしながら、目に映る全てを敵視すればいいというものではない。
時には別のアイドルを立たせ、そのための引き立て役を行うことで、自分の魅力が増すことも多い。
アイドル業界は、競争社会でありながらも、協調が絶対必須の世界なのだ。
特にバラエティという舞台においては、初めて同じ現場になった共演者相手に、言葉に出さず連携を取る必要がある。
勿論、圧倒的な美貌や、他の追随を許さないエンターテイメント性があれば別であろう。

だが、しかし――島村卯月は、どこにでもいる極々普通の女の子である。
笑顔がちょっぴり素敵なこと以外、取り立てて長所のないアイドル。
それでもシンデレラになれたのは、どんな仕事も一生懸命やってきたから。
売れないアイドルとして出演したバラエティ番組でも、精一杯やってきたから。
誰よりも気を配り、自分も周りも笑顔になるよう動いてきたから。

そんな卯月にとって、カービィの考えを読み取るくらい造作もないことだった。
無論、詳細までは分からない。
だが――この目が、仲間を切り捨て諦めようとする目でないことは、はっきりと断言できた。
これは、後に挽回するために、必死に気持ちを押し殺して堪えている目。
苦境に立つ仲間を信じて、最終的にハッピーエンドになるために、自分に出来る精一杯をやろうとする目。
あの輝かしくも厳しい世界で、何度も目にしてきた力強く信頼できる目であった。


600 : Power of s(mile)ing!  ◆wKs3a28q6Q :2016/06/03(金) 04:19:55 B0dY9ypc0

「そこの角を、左に!」

そんな“普通の女の子”である卯月にとって、ここは――渋谷は、庭のようなものであった。
クラスの全員が友人認定するような娘であり、遊びには度々誘ってもらっていた。
クラスの友人だけでなく、事務所の仲間とだって、何度もここに遊びに来ている。
特別仲のいい友人が、よくこの駅に降り立って「しぶりんに到着!」なんて言っては、もう一人の特別仲のいい友人に呆れられていたものだ。

「そこの階段を上がって下さい!」

渋谷を出る必要などない。
要は、姿を眩ませればいいのだ。
慣れ親しんだ渋谷の地理を活かし、身を隠す。
この広大で建物だらけの渋谷エリアで、一度見失った相手を探すことは容易ではない。
常に持ち歩いているハンカチで傷口を抑え、血の跡さえ残さねば、逃走は可能なのだ。

「ここに隠れていれば……」

複雑な駅構内に身を隠す。
釘を抜くべきかしばし考え――やめておいた。
今のままだととても痛いし、抜きたかったが、抜いて血が出たらハンカチでは抑えきれないかもしれない。
それに、下手な抜き方をして、後遺症を残したくなかった。
島村卯月はアイドルである。踊れなくなるわけにはいかない。

「……ぺぽ」

視線を足の傷から正面へと移すと、カービィがどこか遠くを見つめていた。
置いてきたナックルジョーの心配をしているのだと、直感的に卯月は悟る。
何か声をかけようとして――何かが飛来するのが見えた。

「わっ!?」

朝っぱらの流れ星。
それが、一直線にこちらへと向かっていた。

しかし、カービィは特に構える様子が見受けられない。
そういえば、先程卯月を救ったのも、飛来した星であったことを思い出した。

「――え?」

カービィの真横に着弾した星が、ナックルジョーへと姿を変える。
ヘルパーは距離を取り過ぎると、星となってカービィの元に帰ってくるのだ。
なので、ここまでは全て、カービィの想定内。

「だ、大丈夫ですか!?」

ナックルジョーが傷だらけなのも、一応はカービィの想定内。
想定外なのは、全身発光したナックルジョーが身悶えていること。

慌ててスッピンビームをしようとするが――距離がある。間に合わない。
下手を打てば、卯月がナックルジョーの“最期”に巻き込まれかねない。

HPが尽きたヘルパーがどうなるのか、カービィはよく知っていた。
ひょいひょいヘルパーを変え、時に人間爆弾にしていただけあって、割り切るべきタイミングはよく分かっている。
カービィは卯月に向かって駆け出すと、彼女を庇うように飛び上がった。

「きゃ――――!?」

ナックルジョーの体が、小規模の爆発を起こす。
ヘルパーになった悪魔は、最期弾けて消えるのだ。
爆発の後には、何とか直撃を避けた卯月とカービィだけが残された。
ナックルジョーの肉片や血液は残らないのが救いと言えた。

カービィの心に、珍しく焦りの気持ちが生まれてくる。
あの短時間でナックルジョーの体力を削り切るなんて、並のラスボスではない。
スッピンの状態で真正面からやりあうべきではないだろう。

最悪なことに、ナックルジョーが死に際に爆発音を出してしまった。
その音を聞いて、こちらに来ないとも限らない。
早急に卯月を口元に吸い寄せ、移動しなくては。


601 : Power of s(mile)ing!  ◆wKs3a28q6Q :2016/06/03(金) 04:20:40 B0dY9ypc0

「あっ……」

そう思った矢先だった。
卯月の顔が驚愕に染まり、背後から靴音を聞いたのは。

「うそ……っ!」

振り返ったカービィが見たもの。
それは、仄暗い目をこちらに向ける、オールバック桐山だった。

この場所まで、普通そこまで早く辿り着く事はできない。
にも関わらず、オールバック桐山は、もうこの場所に現れた。
カービィにも卯月にも、何がなんだか分からない。
こんなことは、想定していなかった。

「…………」

淡々と歩くオールバック桐山にとっては、こうなることは想定の範囲内だった。
相対するナックルジョーがもしも撤退し合流する算段を持っているのなら、それをそのまま使用する。
その予定通り、星となったナックルジョーに捕まって来ただけのこと。
駅に突っ込む直前、高速でコンクリートに突っ込むことを避けるべく、一旦着地してしまったため多少の遅れは生じたが――
しかし、問題はなかった。

道具として狩るべき者は、今、きちんと目の前にいる。

「に、逃げましょう!」

異常な桐山の空気が、そして先程のナックルジョーの死に様が、卯月の心に恐怖をもたらす。
たまらずカービィの腕を取って駆け出して――そしてすぐに、傷ついた足の痛みで、その場に蹲ることとなった。
そんな卯月を前に、特に何の感情も抱かず、オールバック桐山が距離を詰める。

「ぺぽ!」

このままただ逃げ切るのは難しい。
ボス戦という場において、カービィは概ね正しい判断を取ることができる。
適切な方法でボスを倒せるし、有効な選択肢に気がつく程度の機転は持ち合わせている。
そんなカービィの脳味噌が、走って逃げても無駄だという判断を下した。
傍にあったコインロッカーを吸い込み、星に変換しオールバック桐山へと吐き出す。

特に意に介すこともなく、オールバック桐山は当然のようにこれを回避。
僅かに体を捻っただけで、大した減速にもなっていない。

「すぅ〜〜〜〜……」

こうなると有効打は飲み込むことになるのだが、失敗すると自ら相手を呼び寄せるだけになってしまう。
故に、カービィは空気だけを吸い込んだ。
自分の体を風船のようにして、その下方にちょこんとついた2つの足で、卯月の体をちょんちょんと突く。
戸惑いながらも卯月が捕まるのを確認し、カービィがぷかぷかと飛び上がった。

「わ、わわっ……」

片手で足を掴みながら、卯月が自らのスカートを抑える。
そんな場合ではないのだが、アイドルとして、スカートの中身を安売りは出来ない。
ぷかぷかと、カービィと共に空へ向けて飛んで行く。

「すごい……」

オールバック桐山に遠距離攻撃はない。
先程使ってこなかったのだから、そうに違いない。
故に空への逃走。
これならば、ある程度の高さにいれば、攻撃を受ける心配はない。
もっとも視界から逃れるのが難しいため急場しのぎに他ならないし、高い建物の中に逃げこむなどを繰り返し、見失ってもらわねばならないのだが――


602 : Power of s(mile)ing!  ◆wKs3a28q6Q :2016/06/03(金) 04:21:06 B0dY9ypc0

「えっ!?」

しかし、今後どうやって振り切るかを考える必要などなかった。
オールバック桐山の右腕から発射された空気の拳によって、カービィの体がへこみ、その反動で空気が吐き出されたのだから。

「あぐっ……!」

卯月の全身に激痛が走る。
そこまで高く上昇していなかったとはいえ、3階ほどの高さから落下したのだ。
如何にカービィが柔らかく多少のクッションになったとしても、そのダメージは決して軽いものではない。
何せ卯月はどこにでもいる女の子、頑丈さが取り柄でもなければ回復能力に長けたわけでもない。
どうしたらいいのか考えても、何も思い浮かばない。
卯月には、特殊なことなど、何も出来ないのだから。

「い、たい……」

多芸なカービィとて、今の状況で打てる手段などほとんどない。
吸い込みが通じるとはとても思えず、にも関わらずコピー能力を持っていない。
加えて、相手は吐き出した星すら簡単にいなしてしまう。
通常の手段では、もうどうしようもないであろうと、カービィは察してしまっていた。

「……悪魔さん?」

カービィが、大きく手をあげる。
何かをしようとしているようだが、何をしようとしているかなど、卯月には知る由もない。
その結果を見れば分かるのかもしれないが、しかし――

「あ、悪魔さん!」

再度飛来した空気の拳によって、カービィの体が吹き飛ばされた。
卯月には知る由もないが、オールバック桐山がナックルジョーから“コピー”したファイターの技である。
コピー悪魔は、決してカービィだけではない。

(どうしよう……)

再度立ち上がり、カービィが何かをしようとする。
しかしやはり、オールバック桐山のスマッシュパンチが飛んで来て、カービィの動作を阻害した。

(どうしたら……)

カービィが何をしようとしても、おそらくオールバック桐山は見逃さない。
カービィの動作にきちんと反応するために、卯月のことを放置しているくらいだ。
オールバック桐山に油断はない。
ただ淡々と、確実にこちらを殺すことだけを考えている。


603 : Power of s(mile)ing!  ◆wKs3a28q6Q :2016/06/03(金) 04:21:36 B0dY9ypc0

(凛ちゃん……未央ちゃん……)

迫りくる死がそうさせたのだろうか。
自然と、大切な友へ思いを馳せる。
渋谷凛。本田未央。小日向美穂。五十嵐響子。神谷奈緒――
アイドルという夢を通じて知り合えた、たくさんの友人達。
彼女達ともう会えなくなると思うだけで、体のどこよりも心が激しく傷んだ。

(プロデューサーさん……ッ!)

そして――どこにでもいる普通の女の子である卯月を、シンデレラにしてくれたプロデューサー。
誰よりも尊敬し、信頼し、ついていこうと決めた人。
どんな時でも諦めず、道を示してくれた人。
その人は、ここには居ない。もう、自分を導いてくれはしない。
それでも――

(私は……まだ……)

それでも、プロデューサーに貰ったモノは、全部心に刻みつけてある。
夢に向かって突き進む姿勢も、何もかも、全部。

「諦めたく、ない……っ!」

心が折れそうになった日が、卯月にだって無いわけではない。
それでも、プロデューサーと友人達に支えられ、ここまで歯を食いしばってきたのだ。
今更、こんな理不尽になんて屈したくない。
ようやく掴んだシンデレラの座を、こんなことで失いたくない。

島村卯月は、どこにでもいる普通の女の子だった。
シンデレラに憧れるような、どこにでもいる女の子。
そして、ようやく手にした宝物だけは、何があっても手放したくない――そんな、極々普通の欲求を持った女の子。

「悪魔さん!」

島村卯月は、どこにでもいる普通の女の子なのだ。
優れた歌唱力もない。目を引く美貌も持っていない。プロポーションも平均的だ。
インパクトのあるエピソードも持っていなければ、強烈なキャラもしていない。
それでも――それでも、シンデレラの座を掴んだのだ。

島村卯月は、どこにでもいる普通の女の子だけど、それでも決してどこにでもいる普通なだけの女の子では決してない。
どれだけ辛い状況でも、どれほど絶望的な時でも、例え挫けてしまった時でも――
最後には、立ち上がって笑顔を作れる。
そんな、誰よりも強い心を持つ、唯一無二のアイドル――“シンデレラガール”なのだ。

「歌って下さいッ!!」

投げ渡されたマイクを手にキョトンとしていたカービィも、その言葉で卯月の意図を理解する。
先程は己の歌声が原因で卯月が悶え苦しんだのであろうと、なんとなく予想はしていた。
今まで散々雑魚を歌声で殺したのだから予想どころかきちんと理解していろ馬鹿と思うかもしれないが、そこはピンクの球体のやることだ、どうか許してやってほしい。

とにかく――カービィは理解していた。
卯月や桐山のようなタイプの生物には、自分の歌声は武器になると。

「大丈夫っ……!」

だからこそ、カービィは躊躇した。
己の歌声は、卯月を傷つけてしまうと分かっていたから。
だけど――

「信じて……っ!」

卯月の目を見て――カービィは、理解した。
もう卯月は、守られるだけの少女ではない。
その表情は、怯えるだけのか弱き庇護者のそれではない。
今の卯月は、夢のため、信念のため、そして守りたいモノのため、苦境に立ち向かう強きアイドルであった。

「カービィのピンボォォォーーール♪ 舞っ台っはっゲームボーーーイ♪」

卯月を信じ、カービィが熱唱を始める。
突然流暢に喋り出した気がするが、歌の時は別腹ならぬ別声帯である。
兎にも角にも、あたり一面に不協和音が響き始めた。


604 : Power of s(mile)ing!  ◆wKs3a28q6Q :2016/06/03(金) 04:22:48 B0dY9ypc0

「…………!」

オールバック桐山の表情に、僅かに驚愕の色が浮かぶ。
更には、本当に僅かながら、苦痛の色も混じっていた。

さすがの桐山和雄とて、鼓膜を鍛えることはできない。
カービィの歌を防ぐことなど出来はしない。
ましてやオールバック桐山は、神に祝福されたかのように五感全てが秀でている。
聴覚とて例外ではなく、その優秀さ故、オールバック桐山は卯月以上のダメージを負うこととなる。

「…………」

それでも――オールバック桐山は立っていた。
脳味噌を揺さぶられるような音痴によって、視界は歪みかけている。
にも関わらず、オールバック桐山は地に伏せることもなく、ゆっくりとだが、カービィへと歩み寄っていた。

「させ、ませんっ……!」

そして――卯月もまた、立ち上がっていた。

「ライブ、バトル……私が……相手、ですっ……!」

歯を食いしばる。
歪む視界で、しっかりと桐山を睨みつける。
カービィとオールバック桐山との間に入り、そして――戦うことを、宣言する。
相対するオールバック桐山に。守るべきカービィに。そして、震える自分自身に対して、戦うと宣言した。

「島村、卯月……」

もう逃げ場はない。
奮い立て。頑張れ。頑張って――勝つんだ。絶対。

「頑張りますっ……!」

島村卯月のアドバンテージ。
それは、“慣れ”である。

脳味噌を揺さぶる爆音に、卯月は慣れていた。
地鳴りのような歓声と、耳が壊れるくらいの爆音の中、何時間も踊り倒していたくらいだ。
それに、不快な音にも、脂汗が出るくらい足が痛くなることにも、辛さを押して動くことにも慣れている。
完璧超人が故に、このような苦境と縁がなかったオールバック桐山とは、そこが違う。

島村卯月は、どこにでもいる普通の女の子にして、普通ではないシンデレラガールである。
それ故に――この状況下においてなら、オールバック桐山との実力差を、多少は埋める事ができる。


605 : Power of s(mile)ing!  ◆wKs3a28q6Q :2016/06/03(金) 04:23:39 B0dY9ypc0

(大丈夫……出来る……)

破裂しそうになる心臓を、無理矢理に落ち着かせる。
緊張なら、もっといっぱいしてきたはずだ。
命がかかった今よりも、皆と積み重ねた日々の全てが問われたあのライブの方が怖かった。
破壊的音痴を前に無理して立ち上がる悪魔の虚ろな瞳より、つまらなさそうにライブを見るお客さんの虚ろな目の方が怖かった。

(いつも通り……私に、できることをっ……!)

足だって痛い。
でも、卯月は知っている。
全身痛くなるような、地獄のようなダンスレッスンを。
足を捻って、なおも笑顔で踊り続けたアイドルを。
どんな時でも、笑顔で踊りきってきた、たくさんの仲間達を。

(私だって……アイドルだからっ……!)

だから、絶対に、屈しない。
どんな相手にも、笑顔をもって立ち向かう。
それが、アイドル。
笑顔しかない卯月の信ずる、シンデレラとしての信念ッ!

(お願い、シンデレラ……)

卯月の体がステップを刻む。
ボクサーや格闘ゲームのキャラクターがするものと比べ幾分動作が大きいが、それでもステップを刻み続ける。
踊り慣れたステップは、卯月に安心感を与えた。
そして、その安心感は、疲労や痛みを忘れさせる。

(夢は、夢で、終われない……)

しかし卯月は、攻めこまない。
不用意に攻めることは出来ない。
何せこちらは素人。
簡単にいなされて、脇を抜かれたら目も当てられない。

(輝く日のために……っ!)

待つのは慣れている。
チャンスが来るまで、辛い気持ちを押し殺し、前を向くのには慣れている。
カービィが、当初狙っていた何らかの案を成功させるまで、いつまでだってこうして睨み合う覚悟があるッ!

(ピンチもサバイバルもクールに……)

全身を包む騒音が、ふと途切れる。
しかし、カービィの方を向いている時間はなかった。

(きたっ!)

音が途切れると同時に、オールバック桐山が迫ってくる。
当然、まだ本調子とは程遠い。
それでも、的確に卯月の顔面へ拳を繰り出してきた。

(リアルなスキル……巡るミラクル……)

それでも卯月は焦らない。
天才ではない卯月にとって、使えるスキルなど積み重ねた日々で得たものしかないのだ。
出来ることなど、焦らず今まで積み重ねてきた練習の成果を見せるだけ。
そうしたら、あとは――ミラクルにでも、期待するしか無い。

「信じてるッ!」

何度も何度も、歌って踊ってきた楽曲。
その動きは、体が自然と覚えている。
どんな状況であろうと、確実に出せるくらい、それは卯月の血肉となっていた。

“お願い! シンデレラ”

卯月の所属するプロダクションにおいて、最もメジャーで最初に通る楽曲。
そのサビ直前のダンスを、迫り来るオールバック桐山の拳に向けて繰り出す。
素早く円形に回された両の腕の動きは、まさしく――

『ここの振り、少し、回し受けに似てますね』

中野有香が口にしていた、空手における絶対防御・回し受けッ!
卯月には筋肉がない。空手の心得だってない。
卯月がもしも“見様見真似の”“廻し受けを”出していたら、オールバック桐山に容易く突破されていただろう。
だがしかし――“偶発的に回し受けになった”“何度も反復練習してきた振り付け”に関しては、尋常ならぬ完成度を誇っているッ!
まさに努力の結晶タルその動きは、空手家の本家廻し受けにも匹敵していたッ!


606 : Power of s(mile)ing!  ◆wKs3a28q6Q :2016/06/03(金) 04:24:10 B0dY9ypc0

「…………!」

オールバック桐山の目が僅かにだが見開かれる。
卯月の繰り出した回し受けは、確かにオールバック桐山の予想を超えたものであった。

だがしかし、それでもあくまで『少しビックリした』程度のことでしかない。
もしもオールバック桐山に感情があれば、油断していた所で思わぬ反撃を受けた驚愕から、大きな隙が生まれていたかもしれない。
もしもオールバック桐山が殺しを楽しむ性格であれば、隙を突かれて少年マンガで言う見開き全部使って一撃を叩きこまれ、KO負けしていたかも知れない。
だが、現実は、多少怯んだ程度である。
それが、感情を持たない冷酷なキリングマシーンであるがゆえの強みであった。

「わああああああっ!」

それでもなお、卯月は攻勢に出る。
大した隙など出来ていないが、関係ない。
むしろ、不意打ちの回し受けを持ってしても大した隙が出来なかったから、今攻めるより他ないのだ。

おそらくもう、廻し受けが決まることはないだろう。
今後は容易く攻略されるのが目に見えている。
だからこそ、廻し受けで僅かながら隙が出来た今なのだ。
行くべきは、今なのだ。

『うーん、いつ見ても惚れ惚れする正拳突きだねぇ〜〜』
『ダンスに取り入れられたらいいんですけど……』
『私達もやってみる? しぶりん』

ぶっ放す技は、決まっている。
かつて親友の一人が、空手をアイドルに取り入れた少女と話していた時のことを、卯月は思い出していた。

『私に振らないでよ……』
『しまむーは、どう思う? やるだけやってみようよ〜』

卯月は、友達が多い。そして、付き合いが良い。
親友の未央ほど能動的ではないにしろ、未央が作った交流の切っ掛けには基本的に乗っかっていた。
誰かが教えてくれたことは全部真面目に調べるし、本気で楽しみ、その人と仲良くなろうとしてきた。
それが卯月の魅力であり、人徳の所以。

『お、思った以上にキツいですねぇ……』
『空手ナメてたぁ〜〜! 痩せるよこれ!』
『これ以上汗かいたら、痩せるより早く死んじゃうて……』

その辛さを体験してからも、卯月はソレに触れ続けた。
有香との会話の切っ掛けとして。そして交流の手段として。
有香に尋ね、何度も何度も一緒に繰り出してきた。

「お願い、シンデレラッ!」

正拳突き。
中野有香直伝のソレを、狙いを定めてぶっ放す。


607 : Power of s(mile)ing!  ◆wKs3a28q6Q :2016/06/03(金) 04:25:23 B0dY9ypc0

「…………」

しかし――その程度では、オールバック桐山には届かない。
何度か反復練習した程度の技術では、オールバック桐山にはダメージ一つ通せない。
手首を捕まれ、一転してピンチを迎えることとなる。

『いい、痴漢とかにあったら、こう――』

だが、卯月とて、ただ黙ってピンチに屈することはない。
かつて元婦警の片桐早苗に教わった通り、護身術でオールバック桐山の大勢を崩しにかかる。

所詮はこれも付け焼き刃。
当然、オールバック桐山には届かない。
致命的なダメージを貰うことは避けられたが、それでもオールバック桐山を追い込むことすら出来ていない。

『おい、オレとサッカーしようぜ! 大丈夫大丈夫、蹴り方教えるからさー』

それでも卯月は攻めることを止めはしない。
立ち止まったらたちまちやられてしまうことを、本能で理解している。
アイドルの時と同じだ。
凡人の自分は、常に走り続けなければ、あっという間に天才に抜き去られる。

それが嫌で、少しでも成長したくて、常にひたむきに頑張ってきた。
いつでも笑顔で、いろんな人と仲良くなって、色々なことを吸収してきた。
サッカー由来のローキックもその一つだ。

『一気にラッシュかけてくよ!』

ライブで、トークで、様々な所で戦ってきた経験を、血肉として、卯月は立ち向かう。
敗れ膝をついた経験が、そこから再び立ち上がるために努力をしてきた日々が、卯月に歯を食いしばらせる。
かつて自分をノした桐野アヤに、次戦う際負けぬようにと、色々と聞いた日々を思い出す。
その動きを持ってして、かろうじて桐山に反撃されることを阻止した。

『ほんと、よく頑張るよね、しまむー』
『そ、そうですか?』
『そうだよ。誰より頑張ってるんじゃない』

島村卯月は、どこにでもいる普通の女の子で、取り立てて才能のない凡人であった。
オールバック桐山のように一目見ただけで動きをコピーすることも、カービィのように吸い込むだけで能力をコピーすることも出来ない。
愚直なまでに何度も何度も反復練習をして、ようやく何かを身につけられる。
コピーする才能すらも、卯月には欠如していた。

どれを何回反復しても、人より優れて出来るものなんてなかったし、どんどんと器用貧乏になっていく。
唯一の特技である『笑顔』だって、言ってしまえば誰にでも出来る特技であった。

卯月には、普通ではないアイドルたらしめる、非凡なものなど、何もなかった。
彼女はどこまでいっても、普通の女の子であった。

『うんうん、あれだけ頑張って満面の笑みを浮かべられるの、しまむーくらいだよ』
『だよね。何っていうか……卯月の笑顔を見てると、こっちまで笑顔になるっていうか……こっちまで疲れを忘れるもん』

カタログスペックだけを見れば、質の低いコピーロボット。
オリジナルの武器を持たず、教えこまれたことを時間をかけて吸収する、取り立てて褒める所のない存在。

なのに。
笑顔を絶やさず、絶対に諦めなかっただけなのに。
それくらいなら、誰にでも出来るはずなのに。

『おめでとう、卯月……』
『すごいじゃん、しまむー! シンデレラガールだよ、シンデレラ!』

卯月は、シンデレラになった。
生まれながらのお姫様にはなれなかった灰かぶりが、笑顔を絶やさず、諦めず、ひたむきに困難と戦った末に、お姫様になったのだ。

理屈じゃあない。
アイドル・島村卯月の強さは、書き記されたデータからは推し量れない。

誰にでも出来ることしか出来ないはずなのに。
極々普通のはずなのに。
卯月の歩んできた道は、唯一無二の彼女だけのシンデレラロードとなっている。
誰にも馬鹿にすることなど出来はしない、栄光の道となっているッ!


608 : Power of s(mile)ing!  ◆wKs3a28q6Q :2016/06/03(金) 04:25:39 B0dY9ypc0

「ごめんなさい……っ!」

オールバックの桐山和雄は、見たものをそのまま真似出来る。
カービィは、吸い込んだ相手を取り込めるし、好きに吐き出す事ができる。

卯月には、そんな器用な真似はできない。
でも、だからこそ――卯月の“コピー”は、反復を伴い脳と体に刻みつけられた“模倣”は、卯月の血肉となっている。
それは、オールバック桐山のコピーともカービィのコピーとも違う、卯月のコピーだけの強み。
積み重ねた日々が、思い出が、そのままアイドルを高みへ導くブーストとなるッ!

「届いてっ……!」

目潰し。
およそアイドルの取る行動ではないのだが、それでも殺さず相手の動きを封じるにはソレが一番だと思った。
物騒なことに、変質者撃退法として目潰しをアドバイスしてきたアイドルもいるくらい、目潰しには多大な効果が期待できる。
ちなみにそのアイドルの名誉のために、名前は伏せさせて頂きたいと思う。

「うっ……!」

伸ばした手。伸ばした指。
しかしそれは、桐山の整った睫毛を掠めるに留まる。

積み重ねた日々と思い出を持ってしても、桐山には届かない。
島村卯月の“アイドル”は、まだ“悪魔”には届かない。


609 : Power of s(mile)ing!  ◆wKs3a28q6Q :2016/06/03(金) 04:26:15 B0dY9ypc0

――そう、“まだ”、届かない。

「……悪魔さんっ!」

卯月の背後から、カービィが現れる。
その身を、精一杯輝く星に乗せながら。

ワープスター。

本来ボス戦後に現れるその移動手段を、悪魔であるカービィは呼び寄せることが出来る。
とはいえボスを倒した状態でないと使えない程度には、召喚に時間がかかるのだが――そこは、卯月が補った。
島村卯月の日々は卯月を“アイドル”にし、そして卯月の“アイドル”は“スーパースター”へと成ったのだッ!

「ぺぽ!」

卯月一人では、オールバックの桐山には届かなかった。
けれども、カービィと2人なら。
1人なら届かない星にも、仲間となら手が届く。
仲間がいるから、ファンがいるから、アイドルはどこまででも高みに行ける。
それが卯月のアイドル道。それが、卯月の見たアイドルの星。

「私は……アイドルは……」

カービィの手を、卯月が掴む。
ワープスターの定員2名に、これで達した。
もうこれ以上は乗り込めない。
これ以上ワープスターに触れようものなら――ワープスターに轢殺されるのみである。

「こんな程度じゃ、負けません……っ!」

殺し合いという舞台に、島村卯月は宣戦布告する。
皆を笑顔にするアイドルとして、ここで屈するわけにはいかない。
ワープスターで桐山に突っ込んで、そして、勝利し、この殺し合いも中止に追い込む。
それが、卯月の思い描く未来。

「また皆で笑顔になれるように――」

その未来は、きっととても遠いだろう。
おそらく卯月1人では、何も出来ない。

けれども、仲間がいれば。
これまでのように。今度のように。
きっと、何とかなるだろう。

仲間と共に笑顔になれる。
そんな『パワー・オブ・スマイル』の体現者たる卯月だからこそ、あのオールバック桐山に届こうとしている。
笑顔などなく、ただ淡々と戦うが故の強さは確かに存在していた。
しかし――笑顔のもたらす強さの前に、その強さは今、屈指用としている。

「島村卯月、がんばりますっ!」

卯月だけでは届かぬ分は、仲間達が背を押してくれる。
卯月だけでは出来いことは、ファンの皆が助けてくれる。
1人じゃないということが、卯月のパワー・オブ・スマイルに力をもたらしていた。

誰もが立てるわけじゃないステージで戦い続けた体に、託されたものを宿して。
仲間の想いを乗せて、夢を乗せて。夜を超えて、時空を超えて。
島村卯月の――否、島村卯月と彼女を取り巻く全ての“アイドル”が今、桐山和雄へと届く――!


610 : Power of s(mile)ing!  ◆wKs3a28q6Q :2016/06/03(金) 04:27:07 B0dY9ypc0

「…………っ!」

超人的反応で、オールバック桐山が咄嗟に傍にあった自動販売機を、体とワープスターの間に挟み込む。
それでもワープスターの持つ並々ならぬ質量に、自動販売機が切断されていく。
落下して逃れようにも、その圧倒的エネルギーは、桐山を逃がさない。まさに流れ星キセキ。

「がっ……」

ワープスターで低空飛行を続けながら――オールバック桐山を轢殺すべくワープスターは加速する。
ちょうど新宿に差し掛かった頃、一際大きなビルに突っ込み、ワープスターが停止する。
どうやら遠くまでワープは出来ない仕様にされているらしく、役目を終えたらしいワープスターは消滅していた。
崩れたコンクリートの破片が舞う中、周囲を警戒しオールバック桐山へと視線を向ける。

「え…………?」

そこに、オールバック桐山の姿は無かった。
重傷の姿は勿論、無傷の姿すら見えない。

卯月は思った。
ビルに突っ込む直前、オールバック桐山の姿が消し飛んだように見えたのだが、気のせいなどではなかったのだ。

卯月は思った。
死んだのだ、あの悪魔は。
自分が――殺してしまったのだ。

「そ、っか……私が……」

例え悪魔と言えど、殺すつもりなどなかった。
卯月の笑顔に、影が落ちる。
あまり敵に容赦がないカービィだが、しかし卯月が桐山を殺したことで傷ついていることくらいは分かった。

「ぺぽ! ぺぽ!」

必死のジェスチャーで、カービィが場を和ませようとする。
大げさな動きで、大きなトマトと、口移しを表現した。

「……え?」

何が何だか分からずに、卯月はきょとんとしているが、カービィはお構い無しだ。
任せておけと言わんばかりに、自身の胸(ほとんど顔のくせに、胸とかあるんかコイツ)をドンと叩いた。
食べ物で傷が治らぬ卯月には理解が及ばぬジェスチャーが含まれていた(口移しだ、勿論)が、
しかしそれでもカービィが自分を励まそうとしていることと、何かしようとしていることは理解が出来る。
ほんの僅かに、卯月の口元に笑顔が戻った。

「じゃあ……お願いして、いいですか?」

そう言うと、ゆっくりと腰を下ろす。
同時に、足に激痛が走った。
全て終わった今、体中の痛みを思い出す余裕が生まれてしまった。
特に足の状態は悪く、釘を刺したまま全力で重心をかけ、あまつさえ蹴りを放ったせいで、釘は深く刺さりどす黒く変色している。

「ちょっと、動くの厳しいし……薬とか、あったら、持ってきて貰えたらなって」

頷いたカービィに、薬代として多めに10000マッカを渡す。
とてとてとカービィが走り去ったのを見送り、大きく溜め息を吐いた。
命を奪ってしまったということへの精神的疲労は大きく、また体の痛みもどんどん深刻なものとなっていた。

「……プロデューサーさん……」


611 : Power of s(mile)ing!  ◆wKs3a28q6Q :2016/06/03(金) 04:28:50 B0dY9ypc0

思わず弱音を吐いているが――卯月には、1つ認識の誤りがある。
オールバックの桐山和雄は確かにどこかに消え去った。
しかしそれは、ワープスターに轢殺されたからではない。

悪魔とサマナーは、一定距離を取っての単独行動が出来ない。

そのルールに引っかかる方が、ワープスターに轢殺されるより早かった。
よって強制的にリターンされただけである。
確かに卯月はオールバック桐山に勝利を収めたが、しかし――仕留めたわけではないのだ。

「あ、おかえりなさ――――」

そして、それに絡むことなのだが――卯月は、一定距離を取っての単独行動を禁止されることに認識が及んでいない。
故に、単独行動をしたカービィが、目の届かぬ場所で強制リターンしていることなど気が付きもしない。

そのせいで、戻りが早いと思いながらも、足音に対して言葉を投げかけてしまった。
人を殺したかもしれないという摩耗が、ステージを降りたという油断が、卯月の緊張の糸を断ち切ってしまっていた。

「――――――えっ」

ぱらららら、とタイプライターのような音を立て、無数の釘が卯月の体に突き刺さる。
驚愕で見開かれた眼は、桐山和雄を――にたりと嗤う、パーマの方の桐山和雄を映していた。

「なん、で……」

パーマ桐山は、意識をとうに取り戻していた。
全身の痛みに加え、すぐ傍に悪魔がいない状態。
普通の者なら――それこそ、合理的判断で殺しを繰り返すだけのオールバック桐山でも、ここは撤退し大勢を立て直すところだ。
傷を押してまで、出来るかどうか分からぬ追撃を行う理由などない。

そう、ないのだ、本来は。
しかしパーマ桐山はソレをする。
パーマ桐山は、殺しを楽しむからこそ、合理性より快楽を優先させる。
例えば、リスクを高めてでも、拡声器で断末魔を放送して遊ぶように。
目を潰されても殺しを優先するように。
鎌で切られた直後に、すぐさま反撃をせずに無傷ですアピールで相手を煽ってみるように。

「あ……くま、さ……」

パーマ桐山もまた、邪悪な笑顔の力で、勝利を手に入れた。
普通の者なら撤退していたあの場面で、殺しという娯楽の誘惑に負けて、追いかけることを選択したから。
自分自身の笑顔のために、こうしてここに立っているのだ。

そう、そんなパーマ桐山こそ、大きな穴が“一箇所だけ”開いているビルを見つける事ができた。
だからこそ、『貫通せず飛び込んできた何かが残っているかもしれない』『外に向けて撃ったのなら、そいつがまだ居るかもしれない』という不確定な情報のため、痛みを押してやってこられた。

「に……げ…………」

その結果が、今の状況。
その結果が、プログラムに志願してまで焦がれた“殺人”を行えるという、至福の時間をもたらした。
まさにパワー・オブ・スマイル。
笑顔を力に変える卯月では、笑顔無き桐山和雄は倒せても、嗤う桐山和雄を倒す術はない。


612 : Power of s(mile)ing!  ◆wKs3a28q6Q :2016/06/03(金) 04:29:27 B0dY9ypc0

「っあああああああああああ!!」

釘をグリグリと押し込まれ、卯月が絶叫を上げる。
その声が、カービィの置いていったマイクを通して新宿中に広がる。
くくっ、と楽しげにパーマ桐山が笑んだ。

(じ、かん……かせがなきゃ……)

卯月の脳裏に浮かぶのは、たくさんの仲間達。
その中には、先程背中を預けたカービィも含まれている。

卯月にとって、カービィは仲間だった。
故に、悪魔としてでなく、友人として心配をしてしまっている。
助けに来て欲しいではなく、リターンしようでもなく、純粋に、逃がさないとと思ってしまう。

(ごめ、なさ……プロデュー、サー……さん)

再度、釘が打ち込まれる。
たまらず悲鳴を上げてしまうが――それでも、意識は手放さない。
少しでもカービィを助けるため。
また、悪い人間が有利にならなくするために、今できることを考える。

辛いのに、投げ出すことすら出来ずに、最後まで苦境に立ち向かう。
島村卯月は、死を覚悟したその時ですら、その性質を変えられなかった。

(かえ、れ……そうに……)

釘打ち機の音に紛れさせ、COMPは瓦礫の中に滑りこませておいた。
マッカについても、ワープスターが空けた穴から放り投げてある。
これで、少なくともパーマ桐山が有利になる可能性は下がるだろう。
あとは――あとは、自分の酷い悲鳴を聞いて、少しでも多くの人達が、ここから離れてくれることを祈る。

(まだ……がんばり……たかっ…………)

10センチの背伸びを、プロデューサーの魔法でガラスの靴に変えてもらって。
周りのお姫様達から多くのことを学び取り、彼女達を背負うことで、シンデレラになった。
彼女の魔法は、無情にも解けた。
誰も見てぬ場で、あまりにも無残に。

それでも、その口元だけは、誰もが愛した島村卯月のいつもの笑みを形作っていた。



【島村卯月@アイドルマスターシンデレラガールズ  死亡】



【新宿区、上層階に穴の空いたビル/1日目/朝】

【桐山和雄@バトル・ロワイアル(映画版)】
[状態]:背中が痛いし、頭痛も激しいし、決して軽傷ではないが、それでもなお、せーのっ、殺し合い、さいこー!(満面の笑み)
[装備]:COMP(いいもん貰ったなァおい型ことハリセン型)
[道具]:基本支給品×2、改造釘打ち機、簡易な工具セット、充電式コードレスマイク
[所持マッカ]3万
[思考・状況]
基本:殺し合いエンジョイ勢
[COMP]
1:桐山和雄@バトル・ロワイアル(漫画版)
[状態]:ファイターの能力@星のカービィを学習、お願いシンデレラの振り付けの一部を学習


※カービィが入ったCOMPが卯月の死体傍の瓦礫の中に隠されてます
※卯月が投げ捨てた15000マッカが、島村卯月の死体がある建物の傍に落ちています
※卯月がカービィに持たせた10000マッカが、カービィがCOMPに戻された地点に落ちています
※渋谷区で発生した音痴音声やナックルジョーの爆発音は、
 渋谷にいた連中が別で爆音出していたり、コンサートしていたり、デパートではしゃいだりしてたので、普通に皆聞き逃してる可能性が高いです」


613 : Power of s(mile)ing!  ◆wKs3a28q6Q :2016/06/03(金) 04:29:42 B0dY9ypc0
投下終了です
問題点等ございましたら、お気軽にご指摘願います


614 : Power of s(mile)ing!  ◆wKs3a28q6Q :2016/06/03(金) 04:45:44 B0dY9ypc0
状態表に

※新宿区に卯月の断末魔がマイクで放送されました

の一文が抜けておりました
申し訳ございません


615 : 名無しさん :2016/06/03(金) 12:02:29 F5nyYins0
うおお……なんということだなんということだ
ここまで来てこんな形で終わってしまうとはツラい…
最期の最期まで他を想い、アイドルを演じ切った卯月に敬礼するしかない。
カービィしか知らんかったけど、バトルの応酬も、場違いな少女のひた向きな姿も、ノリの良い地の文も楽しめた、良い作品だ…!


616 : 名無しさん :2016/06/03(金) 13:48:09 JwhYDgzA0
投下お疲れさまです。
模倣の名手対コピー能力者、そして皆との絆を技量に変えて絶望的な相手に立ち向かうしまむー!
最後の最後に運に見放されてしまったけれども、彼女達は勝っていたと言っても過言じゃないと思います。COMPの仕様とかわからんよなぁ……


617 : 名無しさん :2016/06/03(金) 14:07:31 vpeESixU0
本文から察するに、5代目シンデレラガールズ任命後か…これは辛すぎる。
途中からサマナー桐山が出てこなくなったからなんとなく嫌な予感はしてたけど、
卯月Pにはきっつい展開ですな。
毎回ロワで桐山は底が知れないキャラに描かれてますが、人格的にも能力的にも
もっと性質の悪いのがいる中、どこまで粘れるのかも気になりますね。
今回は相手が卯月だったから始終優勢っぽかったですが、果たしてどうなるやら…


618 : ◆NIKUcB1AGw :2016/06/03(金) 22:53:16 iOIda6w.0
投下乙です
しまむー……
全力を尽くした結果がこれは切ないなあ
せめて安らかに眠ってくれ

では、自分も投下させていただきます


619 : にゃんデレラの冒険 ◆NIKUcB1AGw :2016/06/03(金) 22:53:58 iOIda6w.0
自らのパートナーとなったマタムネをモフり続けることで、精神の安定を取り戻した前川みく。
しかしCOMPの中に収められた名簿を確認したとたん、彼女は再び激しく動揺してしまった。

無二の親友である多田李衣菜の名前が、そこにあったのだ。
それだけではない。名簿にはみくの知る名前が、さらに記されていた。
島村卯月。シンデレラプロジェクトで一緒にがんばった仲間。決して打たれ強くはないのに、無茶しちゃう心配な子。
市原仁奈。あまり交流はなかったが、同じ346プロのアイドル。こんな殺し合いに耐えられるはずのない、まだ幼い子。
千川ちひろ。プロデューサーと一緒にシンデレラプロジェクトを支えてくれた、優しい事務員さん。

(何これ……。なんでうちのプロダクションの関係者がこんなに……。
 あの魔神皇って人、346プロに恨みでもあるの……?)

顔面蒼白で、小刻みに震え出すみく。そんな彼女の手に、ポンと肉球が添えられる。

「マタムネ……さん」
「呼び捨てでけっこう。今の小生は、みくさんにお仕えする身ですので。
 それはさておき、その様子を見ればだいたいの事情は察せます。
 まずは深呼吸を。落ち着けといっても無理でしょうが、多少は楽になるはずです」
「うん……」

多くを聞いてこないマタムネに感謝しつつ、みくは彼の言葉に従い深呼吸を行う。

「ありがとう、少し落ち着いたにゃ……」
「それは何より」

にっこりと笑うマタムネ。その表情がまた、みくの心を平静に近づける。

「ねえ……マタムネって強いんだよね?」
「ええ。自分で言うのもおこがましいですが、腕に自信はあります」
「みくの大事な人たちが、いっぱいここに連れて来られてるにゃ。
 お願い、みんなを守って」
「かしこまりました」

静かな、されど力のこもった声で、マタムネはみくに答えた。


620 : にゃんデレラの冒険 ◆NIKUcB1AGw :2016/06/03(金) 22:54:58 iOIda6w.0


◇ ◇ ◇


「ところでみくさん、荷物にこんなものが入っていたのですが」
「うわー、綺麗! まるでステージ衣装だにゃ!」

マタムネが差し出したものに、みくは嬌声を上げる。
それは、ウェディングドレスを思わせる純白のドレスだった。

「付属していた説明書によると、プリンセスローブという服だそうです。
 込められた魔力により生半可な鎧より高い防御性能を持ち、さらに炎と吹雪による攻撃に強いとか……」
「おお、それが本当ならすごいアイテムだにゃ!」
「見たところみくさんは、荒事と縁の無いお方。
 強力な武器を支給されていても、付け焼き刃にしかなりますまい。
 ならば生存確率を上げる防具の方が、当たりと言えるでしょう。
 攻撃は小生に任せればいいのですし」
「むう、なんて冷静で的確な判断力だにゃ……」

マタムネの説明に、みくは感心しきりといった表情でうなずく。

「というわけで、その服はぜひ身につけるべきだと思うのですが……」
「え? ここで?」

二人の現在地は、とある裏路地である。

「人気が無いとはいえ、屋外で着替えるのは年頃の乙女としてさすがに……」
「……ですよね」


621 : にゃんデレラの冒険 ◆NIKUcB1AGw :2016/06/03(金) 22:55:48 iOIda6w.0


◇ ◇ ◇


その後みくたちは、近くにあったデパートに移動。
洋服売り場の試着室で着替えることにした。

「どうかにゃ?」

着替えを終えたみくは試着室のカーテンを開け、すぐ側で待機していたマタムネに尋ねる。

「これはこれは。たいへんよくお似合いです」
「でしょ? 伊達にアイドルやってないにゃ♪」

マタムネの返答に気をよくしたみくは、かわいらしくポーズを取ってみせる。
事実、生来のスタイルのよさも相まってプリンセスローブは実にみくに似合っていた。

「って、こんなことやってる場合じゃなかったにゃ!
 こうしてる間にも、みんながピンチになってるかもしれないにゃ!
 早く捜しに行かないと!」
「ですな」

我に返ったみくは、マタムネを促し移動を開始しようとする。
しかし、そこに突如として横やりが入った。

「ちょっと待ったー!」
「何やつ!」

マタムネとみくは、すぐさま声のした方向に視線を向ける。
そこにいたのは、ハロウィンでおなじみのカボチャ頭がトレードマークの悪魔。
ジャックランタンである。

「野良悪魔……!」
「不覚……。入り口からここまで見かけなかったので、屋内には野良悪魔がいないものと思い込んでおりました」

おびえを見せるみくを背に、マタムネは構えを取る。

「おっと、猫の旦那。勘違いしないでほしいホー。
 おいらに敵対の意志はないホー。むしろ逆だホー」
「逆?」
「そっちのネコミミ姉ちゃん、めっちゃかわいいホー! おいら、一目見てビビッと来たホー!
 どうか、おいらを仲魔にしてほしいホー!」
「なんと!?」

ジャックランタンの思わぬ言葉に、思わずコミカルな反応をしてしまうみく。

「んー、みくとしてはファンを大事にしたいけど……。マタムネはどう思う?」
「問題ないかと。態度から察するに、嘘をついている可能性はほぼなさそうですので」
「そっか。それなら歓迎するにゃ。よろしく頼むにゃ!」
「ヒーホー! おいらはジャックランタン! コンゴトモヨロシク、プリンセス!」


ネズミの御者の代わりに、猫の従者。
カボチャの馬車の代わりに、カボチャの悪魔。
ドレスをくれたのは魔法使いのおばあさんではなく、悪の魔神皇。
物語通りにはいかないけど、シンデレラはがんばります。


【目黒区・デパート内/一日目/朝】

【前川みく@アイドルマスターシンデレラガールズ(アニメ)】
[状態]:右腕に軽い切り傷
[装備]:COMP(猫耳ヘッドフォン型)、プリンセスローブ@ドラゴンクエストⅥ
[道具]:支給品一式
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:みんなで生きてプロデューサー達の所へ帰る。
1:346プロのみんなを探して、合流。
[COMP]
1:マタムネ@シャーマンキング
[種族]:精霊
[状態]:健康
2:ジャックランタン@真・女神転生シリーズ
[種族]:妖精
[状態]:健康


622 : ◆NIKUcB1AGw :2016/06/03(金) 22:56:27 iOIda6w.0
投下終了です


623 : ◆jBbT8DDI4U :2016/06/04(土) 00:27:22 Uxb82o820
皆様投下乙です!

>>593
察しが良い社長。それもこれも全て自分への試練へと変換し、乗り越えて立ち向かうのは、カッコイイですね。
一応遊戯はこの場に居ないことが、救いでしょうか……

>>613
ああっ、卯月……狂気そのものと表現してもいい桐山に、ここまで健闘したことは、凄い。
最後の最後までみんなのために「がんばる」のが、なんとも彼女らしいですね。
果たしてカービィは誰の手に渡るのか……

>>622
対してこちらはマイペースなみくにゃん。ローブを着込んで仲間もゲットだぜ。
しかし、その願いは既に……そしてその位置は……

さて、自分も投下します。


624 : 酷似:境遇 ◆jBbT8DDI4U :2016/06/04(土) 00:28:30 Uxb82o820
 どれくらい、泣いたでしょうか。
 すっかり腫れてしまった目を擦りながら、少女はわんちゃんと一緒に東京を歩きます。
 東京、それは少女にとっても慣れ親しんだ街です。
 プロデューサーさんや仲間たちと、色んな所を歩いてきました。
 どこに行っても、誰と歩いても、人がたくさんいる。
 少女にとって東京都は、そんな街でした。
 だから、今彼女が歩いている街は、少女にとっては"東京"では無いのかもしれません。
 だって、ここには誰ひとりとして、"人"が居ないのですから。
 いくら足を進めても、誰も彼女の元に現れません。

「ニナチャン、ニナチャン」
「フフフフフ」
「サア、オイデ、コッチニオイデ」
「アソビマショウ?」
「タノシイヨ、ハヤクオイデヨ」

 当てもなく歩く少女の耳に、人のようで、人ではない声が木霊し続けます。
 どこから聞こえるのかはわかりませんが、その声は確かに少女へと向けられていました。
 もう一度周りを確かめてみますが、やっぱり誰も居ません。
 誰かがいるなら、早く会いに来てほしい。そんなことを思った、その時でした。
 一つの影が、こちらに近づいてくるのが分かりました。
 自分より一回りも二回りも大きい、人のような影。
 やった、ようやう誰かに会える。
 もう、寂しい気持ちを抱かなくて済む。
 そう思ってかけ出した足が、ふと止まってしまいます。
 いや、止まっただけではなく、震えて動けなくなってしまいました。
 だって、少女の目の前に現れた人影の正体、それは。

 いつか小梅ちゃんと一緒に見た映画に出てきたような、"ゾンビ"だったのですから。

 それも、一人ではありません。
 二人、三人、四人、五人と、見渡せば見渡すほど沢山のゾンビが少女を囲んでいました。
 少女に呼びかけていたのは他の誰でもない、彼らだったのです。
 そう、少女を自分たちの"仲間"にするために。
 じりじりと近寄ってくるゾンビを目前に、少女は一歩も動くことが出来ません。
 いや、動いた所でどうしようもない、というほうが正しいでしょうか。
 既に少女は、映画のように無数のゾンビに囲まれていたのですから。



 怖い。

 その感情を胸に抱いたと同時に、ぽろりと一粒の涙が零れました。



 ごうっ、と猛る炎が、一匹のゾンビを包みました。
 一体何が、と思って振り向くと、そこには一人の女の子が立っていました。
 346プロのお姉ちゃん達のような制服に、所々散りばめられた金の装飾。
 そしてメラメラと燃え上がる、黒い刀身の一本の剣を持っていました。
 まるで、ヒーローのように現れた彼女は、ふと少女の方を向き、にこりと笑いました。
 何が何だかわからないけれど、自分は助けられたんだ。
 それを理解した時、限界に差し掛かっていた少女は、ふっと後ろに倒れこんでしまいそうになります。
 けれどその小さな体が地面に付く前に、とすんと何かに受け止められます。
 わんちゃんでしょうか? いえ、わんちゃんは少女の傍でキイキイと鳴いているだけです。
 じゃあ、一体誰が? そう思った時でした。


625 : 酷似:境遇 ◆jBbT8DDI4U :2016/06/04(土) 00:29:11 Uxb82o820
 
「大丈夫かい?」

 優しいけれど、どこか影のある男の人の声が聞こえました。
 ゆっくりと目を開けると、そこには一人のお兄さんが、少女を抱きかかえていました。
 その顔を見て、少女は目を見開きます。
 だって、少女を抱きかかえてくれた、そのお兄さんは。

 少女をここに連れてきた、"魔神皇"だったのですから。

 頭のなかが、真っ白になります。
 何も考えられずただ怖くて、少女は抱きしめられた手を振り払って逃げ出しました。
 当然、お兄さんはそれを止めようとします。

「ま、待って」

 その声に、少女は足を止めます。
 恐怖で足が動けなくなったから? 違います。
 少女を呼び止めたその声に、少女は違和感を覚えたからです。

「ぼくは……違うんだ」

 続く弱々しい声は、少女の違和感を確信に変えます。
 慌てることなく落ち着いて、ゆっくりと振り向きます。
 そこに立っていたのは、紛れも無く、魔神皇その人でした。
 けれど、違うのです。
 少女と同じ首輪をつけていることもそうですが、何よりもその悲しそうな目が魔神皇とは違うと、少女は思ったのです。

「……誰でごぜーますか」

 訝しむような目を向けながら、少女は魔神皇、いや、お兄さんに問いかけます。
 えっと、と声を詰まらせてから、お兄さんは少女に答えました。

「僕の名前は偉出夫、狭間偉出夫って言うんだ」
「イデオ、でごぜーますか……?」
「うん、そうだよ」

 イデオ、それがお兄さんの名前。
 それをゆっくりと飲み込んだ後、少女は気になっていたことを問いかけます。


626 : 酷似:境遇 ◆jBbT8DDI4U :2016/06/04(土) 00:29:29 Uxb82o820

「イデオは、寂しいのでいやがりますか?」

 お兄さんが魔神皇ではないということを感じていた時から、ずっと思っていました。
 お兄さんの気持ちになって考えるまでもありません。
 だってお兄さんは、寂しくて堪らなかったさっきまでの自分と、同じ顔をしていたのですから。

「……そうだね。僕はきっと、寂しかったんだと思う」

 少女の予想通り、お兄さんはそう答えました。

「ずっと、一人だったから」

 だから、続く言葉も分かっていました。
 もう、少女の顔に戸惑いの表情はありません。

「じゃあ、それは今日で終わりでごぜーます」

 むしろ、少女は笑っていました。

「仁奈が、一緒にいやがりますから」

 少女にとっても、それは嬉しいことでしたから。
 一人じゃない、そう思うだけで、心がすっと晴れていくような気がしました。

「ほら、ニナも喜んでいやがります」

 キイキイ、と声を上げて、わんちゃんも喜びます。
 こうして、少女は予想もしていなかったお友達を作ることが出来ました。

「ありがとう、仁奈ちゃん」

 ふふっ、とお兄さんが笑います。
 釣られて、少女もふふっと笑います。
 そこに戻ってきたお姉さんも、二人を見てふふっと笑いました。

 しばらく、寂しい気持ちにはならなくてすみそうでした。

 これから始まるのは、もしの話。
 とある一人ぼっちが、一人ではなくなった話なのです。

【足立区/1日目/朝】
【市原仁奈@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:健康
[装備]:COMP(スマートフォン型)、服はもふもふうぃんたー特訓前=犬のきぐるみ
[道具]:基本支給品、未確認支給品(1)
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:かえりてーでごぜーます。かえったら、迎えてほしいでごぜーます
1:イデオと一緒にいるです
[COMP]
1:キメラ@鋼の錬金術師
[種族]:“神”の摂理に背きし“獣” キマイラ
[状態]:健康

【狭間偉出夫@真・女神転生if...】
[状態]:健康
[装備]:COMP(アームターミナル型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:わからない
1:今は、仁奈と共にいる
[備考]
※狭間の精神世界における狭間の精神体が、何らかの形で具現化しています。
[COMP]
1:イフ(女主人公)@真・女神転生if...
[種族]:魔人
[状態]:健康


627 : ◆jBbT8DDI4U :2016/06/04(土) 00:29:41 Uxb82o820
投下終了です。


628 : 名無しさん :2016/06/04(土) 00:45:34 g4.0hbmg0
仁奈ちゃんぐう聖すぎィ!狭間の心の傷がどんどん癒されていきますよ(予知)


629 : 名無しさん :2016/06/04(土) 17:23:23 wUEkZOdE0
高校生が誰もいない東京で首輪をつけた幼女を連れまわす…これは事案ですよ、事案!!


630 : 名無しさん :2016/06/04(土) 19:48:50 eijAFP1A0
投下乙です。女神転生の主人公であるナカジマにもしユミコがいなかったら…の存在である狭間だからこそ、
彼にとってのもしもが悪魔ではない、人間のパートナーの存在なんですよね。果たして仁奈ちゃんはパートナー足り得るのか…


631 : ◆7PJBZrstcc :2016/06/12(日) 15:31:17 Rj46os7c0
投下します


632 : 《光の中に/闇の中に》完結した筈なのに ◆7PJBZrstcc :2016/06/12(日) 15:32:20 Rj46os7c0
 ”勇者”と”英雄”の会話は、主に自分が経験した冒険談だった。
 二人とも運命に英雄であることを望まれた者同士、とにかく話は合った。
 勿論何もかもが同じなわけではない。

 ロトが16歳の誕生日に旅に出る事はずっと前から決まっていた。
 その事に関して彼女がどんなふうに思っていたかは、最早本人でさえ思い出せない。
 ただ一つ言える事は、彼女にとって戦いはある日突然に始まったものではない。
 魔物と戦う事も、魔王に挑むこともずっと前から分かっていた話だった。

 対してザ・ヒーローの戦いは突然だった。
 悪魔召喚プログラムがスティーブンから届いた時、あるいはその直前に夢を見た時からが彼の始まりだった。
 COMPを用いて襲ってきた悪魔を仲魔にし、魔法を用いる友人と共に戦い、そして別れる英雄譚。
 そんな物が覚悟もなく始まるというのは余りにも辛い。

「その辺りに関しては私の方がマシかもしれないわね」
「だろうね」

 そんな話を聞いて、ロトはザ・ヒーローが自分より不幸だと結論付けた。
 そもそもロトは余り自分の事を不幸だと思っていない。
 確かに、己の名もどんな仲間と共に旅をしたかも覚えていないが、すべてを忘れた訳では無い。
 少なくとも商人と一時的とはいえ一緒に居た事は覚えているし、どんなところに行ったかも覚えている。
 そして強敵との戦いも忘れていない。
 カンダタ、やまたのおろち、ボストロール、バラモス、キングヒドラ、バラモスブロス、バラモスゾンビ、そしてゾーマ。
 顔も名前も強さも、何もかもを覚えている。

 対して、ザ・ヒーローが覚えていることは少ない。
 倒した敵も、冒険が始まる前に何をしていたのかも覚えていない。
 覚えているのは仲間だった神に捧げられる魂のロウヒーローと力を求める乾いた魂のカオスヒーロー、そしてどんな道であろうとも共にいてくれた少女。
 それだって、本当の名前は記憶から消えてしまっている。
 後は大破壊前と後の東京。
 最後に、悪魔に殺された己の母親。
 覚えていることはこれくらいだった。

「……」
「……」

 そんな話の内容に、二人はどちらともなく黙ってしまった。
 そもそも、こうして話をしていること自体が傷の舐め合いに近い。

 同じように英雄となり、同じように称号だけになってもそれ以外は何もかもが違う。
 考えてみれば当たり前の事実に二人は行きつき、どうしたものかと思ってしまう。
 そんな時、ザ・ヒーローはふと気づく。

「さっきから、悪魔が全然いない……?」

 確かこの東京には野良悪魔が居るはずだ。
 しかし、このゲームが始まりロトとずっと話していたのに一回も悪魔の姿を見ていない。
 そんな疑問に、ロトはあっさり答える。

「ああそれ? 予めトヘロス、魔物除けの呪文を唱えて置いたのよ。
 自分より弱い相手にしか効かないけどね」
「なんか、そんな感じのアイテムを知ってるような気がするよ」
「奇遇ね、私もよ。ともかく、しばらくは持つから――」

 ロトがトヘロスについて説明していると、いきなり黙って公園の入口の方を睨みはじめる。
 その理由はすぐにザ・ヒーローも理解する。
 気配だ。
 こちらに近づいてくる何かが居るのだ。
 殺し合いの参加者か、それとも勇者の呪文をものともしないほどの強大な悪魔かは分からないが警戒をする二人。
 やがて気配の主が現れた時、ロトは驚愕する。

 気配の主の片方は人間の男だった。黒のマントと逆立った髪が特徴的だが普通の人間だ。
 そしてもう片方はロトにとって忘れる事の出来ない存在

「ゾーマ……」

 アレフガルドを侵略し、精霊ルビスを石化させた大魔王がそこに居た。





633 : 《光の中に/闇の中に》完結した筈なのに ◆7PJBZrstcc :2016/06/12(日) 15:32:49 Rj46os7c0


「久しいな」
「本当、久しぶりね大魔王」

 それがこの殺し合いにおける勇者と大魔王、決して相容れる事の無い物同士の最初の会話だった。
 言葉こそ懐かしがっているように聞こえるが、実際には張りつめた空気が漂っている。
 そんな空気を知ってか知らずか、ゾーマのマスターであるマリクがゾーマに話しかける。

「何だぁ、この女は?」
「我を倒した勇者よ」
「……それはそれは、御大層なことで」

 己が従えている大魔王を倒すほどの存在と聞いて、少なからず驚くマリク。
 だがすぐにマリクは納得した。
 これはデスゲーム。
 例えどれだけ強力な駒が己に与えられていようとも、倒せる方法はあって当たり前だ。
 それにマリクは知っている。絶対無敵のはずのラーを、格下のオシリスとオベリスクで倒した決闘者の存在を。

「それで、リターンマッチでも挑むのか?」
「それも一興」
「なら好きにしな。いずれにしても全員ぶっ殺すのは確定事項だからよ」

 マリクはそう言いがらも、千年ロッドを構える。
 彼は大魔王と勇者の戦いに入るつもりは無かったが、何もしないつもりもなかった。
 悪魔は悪魔同士、なら人間は人間同士と考えた。
 そんな考えを読んだゾーマはマリクに一言こう告げる。

「やめておけ」
「何?」
「見たところ勇者の主も勇者と同じ英雄だ。そなたがどう頑張ったとて奴には敵わん」
「怖い怖い。ならオレは後ろに引っ込んでおくとするか」

 そう言ってマリクはゾーマの後ろへと下がる。
 正直不満がないわけではない。
 だがマリクは精神こそ途方無く邪悪であるけども、肉体は常人だ。
 なので、せっかくの忠告にここでは素直に従っておくことにした。


 一方、勇者と英雄側は。

「……戦うのかい?」
「ええ」

 ここでザ・ヒーローはゾーマを見る。
 闇を身に纏ったかのオーラ、凄まじいまでの威圧感。
 自分もこんな敵と戦ったのだろうか、戦ったとして勝てたのだろうかという思いがザ・ヒーローの中で渦巻く。

「…………」
「貴方に手伝えとは言わないわ。あれは私の宿敵だから」
「いや、一緒に行くよ」
「……そう」

 それだけ行ってロトはザ・ヒーローと共にゾーマに相対する。

「二人掛かりで行かせてもらうわ」
「構わぬ」
「……行くよ」
「今度こそ、我が腕の中で息絶えるが良い」

 このゾーマの言葉と共に戦いは始まった。





634 : 《光の中に/闇の中に》完結した筈なのに ◆7PJBZrstcc :2016/06/12(日) 15:34:07 Rj46os7c0


「はっ!」

 戦いの初めを飾ったのはザ・ヒーローの直接攻撃。
 魔法が使えない彼が攻撃するにはこうするしかない。
 とはいえそこは英雄。例え持っている武器がアタックナイフだったとしても並みの悪魔ならば一溜まりもないだろう。

「ふん、弱いな」

 だが彼が挑むのは一つの世界を征服した大魔王。
 武器が整っていれば結果は変わったかもしれないが、少なくともアタックナイフでは無理だった。
 ザ・ヒーローが与えた小さな手傷もすぐに消えていく。
 それに動揺することもなく彼はすぐに距離を取る。
 だが

「マヒャド」

 ゾーマの呪文が逃避を無に変えてダメージを与える。
 それを後ろで見ていたマリクは一瞬驚愕する。
 何故ならば、彼が戦ってきたのはカードゲームという全く違う戦場。
 この場に二人居るオベリスクに選ばれた決闘者とは違い、闇のゲームというオカルトに抵抗はないが魔法は未知だ。
 不死鳥で人を焼いたことはあるが、それだって神のカードと闇のゲームがあっての事。
 道具なしだと彼の肉体は普通の人間にすぎない。
 それはいい、悪魔なのだから魔法の一つも使うだろう。最初に魔神皇も使っていた。
 問題はここからだ。

 一方で、大魔王に相対する二人に動揺は一切ない。
 大魔王の宿敵である勇者だけでなく、その主人である一見するとただの少年も。
 何故ならば、彼らにとってそれは驚くべきことではないから。
 例え記憶に残っていなくとも、戦ってきた足跡には確かにある事実だから。

(成程、こりゃ確かに今のオレじゃ無理か……)

 ゾーマの言っていた意味が分かる。
 オレが今まで戦って相手とあいつらは根本から違う。
 例えオレがあの勇者の主人に闇のゲームを仕掛けたとしても、あいつは動揺一つしないだろう。

「気に入らねえ……」

 そしてそれが気に入らない、この場ではお前は弱者だと言われているようで。
 だが戦場はそんなマリクの苛立ちなど無視して進み続ける。

「ギガデイン!!」

 マリクがその声の方を向くと、そこには雷を撃ちだすロトの姿があった。
 それを見たゾーマは一言

「今の我に光は困るな」


635 : 《光の中に/闇の中に》完結した筈なのに ◆7PJBZrstcc :2016/06/12(日) 15:35:53 Rj46os7c0

 そう言ってゾーマは巨体に見合わぬ俊敏さでロトへ向かっていく。
 その最中で雷をかわし、ゾーマはロトに打撃を加える。

「かはっ!」

 そしてロトはノーバウンドでジャングルジムまで吹き飛ばされ、打ちつけられる。
 一方ゾーマは、打撃を加えた手を見て

「躱すことに念を入れすぎたか……」

 と呟いた。 

「ロト!」

 そして吹き飛ばされるロトを見たザ・ヒーローは思わず名を叫ぶ。
 やられるとは思っていないが、打ち所が悪いかもしれないという思いがあった。
 だがそんな心配は杞憂だった。ロトは何の問題もなく立ち上がる。

「……大丈夫?」
「大丈夫よ、問題ないわ」

 無事を確認し、再びゾーマと相対するもゾーマの雰囲気が変わっていた。
 さっきまでは戦う気概があった。迸るほどの殺気を感じていた。
 だが今のゾーマからはそれが消えている。
 それどころか、気勢が削がれたかのような雰囲気を出している。

「おいおいどうした? 因縁の相手じゃなかったのか?」

 そしてそれは勿論マスターであるマリクにも伝わる。
 だからこそゾーマに問いかけるが、当のゾーマには聞こえていないのかその問いに返答せず、絞り出すかのような声でこう言った。

「ロト、だと……!?」
「そうよ、今の私は勇者"ロト"」
「愚かな。それはアレフガルドに伝わるまことの勇者にのみ与えられる称号のはずだ」
「……よく知ってるわね」
「称号しか残らなかったというのか……」
「そう、よ。私も、そして私のマスターも」

 それを聞いたゾーマは次の瞬間信じられない行動をとる。
 なんと、ロトとザ・ヒーローの方に背を向けマリクの元へ歩きだしたのだ。

「……どういうつもり」
「今のそなたは倒すに値せぬ」

 ゾーマの発言に反論も忘れて呆然とするロト。
 そんなロトを尻目にゾーマは続ける。


636 : 《光の中に/闇の中に》完結した筈なのに ◆7PJBZrstcc :2016/06/12(日) 15:36:23 Rj46os7c0

「我を倒したときには気概があった。正義か怒りか、それとも他の何かかは知らぬがな。
 だが今のそなたには何もない。意思無き伽藍堂では我は倒せぬ」
「……」
「故にここは引く。仲間を集め戦う理由を手に入れたときもう一度向かってくるがいい」
「……見逃すのか」
「そうだ"ロト"の主よ。とはいえ何もなしではつまらぬから一つ褒賞を用意しよう」
「褒賞?」

 そこでゾーマは顔をロトに向け、言い放った。

「我はそなたの名前を覚えておる」
「なっ……!?」
「少しはやる気がでたか? ではさらばだ」

 それだけ言ってゾーマは再び前を向きマリクを見る。
 そしてマリクに「構わないな、マスター」と確認を取った。
 マリクは内心で、今更だろ思いながらも返答する。

「構わねえよ。どのみちこいつらみたいな奴の為に闇のゲームの内容を考えなきゃならねえからな。
 それにてめえなら、あの女以外の相手に腑抜けた真似をする心配もねえしな」

 そう答えてマリクはゾーマと共に歩きだし公園を出ていった。
 再び相見える時を愉しみにしながら。


 そして公園に残された英雄と勇者。
 二人はどうすればいいのか分からなかった。
 大魔王の言うとおりにするのか、それとも無視するのか。
 そんな事すら、今の二人には簡単に決められない。


【中野区・公園側/1日目/朝】

【マリク・イシュタール(闇人格)@遊☆戯☆王】
[状態]:健康
[装備]:デュエルディスク型COMP、千年ロッド@遊☆戯☆王
[道具]:基本支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:デスゲームを楽しんだ後、魔神皇に闇のゲームを仕掛ける
1:次あいつら(ザ・ヒーローと"ロト")に会うまでに闇のゲームの内容を考える
[備考]
※参戦時期はバトルシティ決勝戦で消滅した後です。
※消滅した闇人格に肉体を与えられた状態で参戦しているので、表人格に交代することはありません
[COMP]
1:ゾーマ@ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…
[種族]:大魔王
[状態]:魔力消費(極小)
[備考]
※"ロト"(女勇者)の本名を覚えています


【中野区・公園/1日目/朝】

【ザ・ヒーロー@真・女神転生】
[状態]:ダメージ(小)、トヘロス
[装備]:COMP(アームターミナル型)、アタックナイフ
[道具]:基本支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:"勇者"と共に、どうする……?
1:とりあえずダメージ回復したい
2:仲間、か……
[備考]
※真・女神転生if...における魔人 ザ・ヒーローが、何らかの手段によって人間として参戦しています。
[COMP]
1:"ロト"(女勇者)@ドラゴンクエスト3
[種族]:勇者
[状態]:ダメージ(小)、魔力消費(小)、トヘロス


637 : ◆7PJBZrstcc :2016/06/12(日) 15:36:51 Rj46os7c0
投下終了です


638 : 名無しさん :2016/06/12(日) 22:48:14 8uzBMBNg0
投下乙
初っぱなから宿敵同士のバトルかと思ったら、意外な結末になったなあ
ゾーマにも宿敵の末路に思うところがあったか


639 : 名無しさん :2016/06/12(日) 22:52:55 gPNJ1h4g0
おぉ…ニ対一でまだ余裕がある立ち回りを見せるとは流石ゾーマ様
蚊帳の外でイライラするマリクには笑ったが、まぁフツオ相手じゃ分が悪い
そして救世主となった事で名前を喪った者たち、かぁ…これは深い
ゾーマ様が感じ入るのもうなづけますね


640 : 名無しさん :2016/06/12(日) 22:58:20 J2lfXIaQ0
投下乙です!
いきなりの衝突、二大ヒーローに優位に立ちまわるゾーマ様は流石。
ロトと叫ばれたことに動揺するのは、他ならぬゾーマだったのは意外でした。
ひとまずこの場は大丈夫だったけど、ヒーローの今後も含めて気になりますね。


641 : ◆NIKUcB1AGw :2016/06/15(水) 23:33:58 a2ejtJac0
投下します


642 : そして集いしスターライト ◆NIKUcB1AGw :2016/06/15(水) 23:34:44 a2ejtJac0
ポルナレフは、無人の街をひたすら歩き続けていた。
まだ状況を完全には受け入れられていないポルナレフであったが、とりあえず魔神皇に逆らうことだけは決めた。
元来彼は、殺戮ゲームに乗るような男ではない。
たとえ一刻も早く帰らなければならない状況でも、それは変わらない。
反逆に必要なものは、情報と仲間だ。
それを求めて、ポルナレフは移動を開始したのである。

「しかし、本当に誰もいねえな……」

ここまで、ポルナレフは他の参加者と遭遇していない。
野良悪魔とは何度か遭遇したが、いずれもさほど戦意の高くない連中で、「銀の戦車」で軽く脅してやるだけで逃げていった。

「そもそも、行動出来る範囲が広すぎるんじゃねえかなあ。
 トーキョーって言えば、日本を代表する都市だろ?
 40人ちょっとでイベントやるのに、そこ全部を会場にするのは大げさだぜ」

愚痴を続けるポルナレフ。それに対し、相棒のセルティがリアクションを返す。

『やっぱり、私のバイクで移動しましょうか?
 移動時間がだいぶ短縮出来ると思いますが』
「いや、その気持ちはありがたいんだけどよお。
 やっぱりそのバイクに乗るのはちょっと抵抗がな……。
 別にセルティ、お前を疑ってるわけじゃねえ。そこは誤解しないでほしい。
 ある程度コミュニケーションを取って、おそらくおまえさんは悪人じゃないってことはわかったからな。
 けどおまえさんのバイクは、ちょっと不気味すぎる。
 命がかかったこの状況で乗るのは、やっぱり遠慮させてもらいたいぜ」
『そうですか。別に危険はないんですが……。
 まあ不安があるのなら、無理にとは言いません』
「悪いな、気をつかってもらったのに」

セルティに軽く謝ってから、ポルナレフは彼女に聞こえないように呟く。

「乗り物使うと、ろくなことがねえからなあ……。
 バイクだって、油断は出来ねえ……」


643 : そして集いしスターライト ◆NIKUcB1AGw :2016/06/15(水) 23:35:27 a2ejtJac0


◇ ◇ ◇


それから数分。なおも歩き続けたポルナレフは、ついに他の参加者を発見した。
しかしその参加者は、今まさに野良悪魔との戦闘に突入しようとしているところであった。
野良悪魔はサルに似た魔獣、カクエン。口からよだれをたらし、かなりの興奮状態であることがうかがえる。
対峙するのは、緑の事務服を着た妙齢の女性。
そして傍らに控えるパートナーと思わしき悪魔は、黒い体毛に覆われた丸っこい生物だった。

「なんだありゃあ? あのふざけた外見のやつも悪魔なのか?」
『あれはたしか、ぴにゃこら太くん! 一部の女子中高生の間でマニアックな人気が出ているというマスコットキャラです!』
「おいおい、そんなのまで悪魔になってるのかよ。なんでもありだな」
『あ、動きますよ!』

セルティの言うとおり、二人の目の前で状況は動いた。
耳障りな雄叫びを上げ、カクエンが突進する。
それを受け、ぴにゃこら太が主人を守るように前へ出る。
両者の距離が、格闘戦の間合いにまで縮まる。
カクエンが、爪で切り裂こうと腕を振り上げる。
だがその腕が振り下ろされるより早く、ぴにゃこら太の拳がカクエンの顔面に叩き込まれた。

「ぴにゃぴにゃぴにゃぴにゃぴにゃぴにゃぴにゃぴにゃぴにゃぴにゃぴにゃぴにゃ!!
 ぴにゃー!!」

そこからさらに、ラッシュが始まる。
常人には視認出来ないほどのスピードで、次々と拳がカクエンを襲う。

「おっぱあああああ!!」

断末魔の叫び声を上げながら、カクエンの体が吹き飛ぶ。
地面に叩きつけられたカクエンは何度かけいれんすると、光になって消滅した。

『なんて凄まじい攻撃……。マスコットらしからぬ強さですね』

素直な感想を漏らすセルティだったが、ポルナレフはそれを見てはいなかった。

「バカな……! あれは……あれは……!」
『ちょっと、ポルナレフさん?』

もはやセルティの存在を気にも止めず、ポルナレフはただならぬ様子で歩き出した。


◇ ◇ ◇


(ふう……助かりました……)

敵意むき出しで襲いかかってきた野良悪魔を撃退出来たことに、ちひろは心底安堵していた。
これも、パートナーに強力な悪魔を引き当てられたおかげである。

「守ってくれて、ありがとうございます」
「…………」
「あ、あの?」

ちひろに礼を言われても、ぴにゃこら太は反応を示さない。
彼の視線は、自分たちに近づいてくる一人の男に注がれていた。
ちひろもすぐに、その存在に気づく。

「あなたは……悪魔じゃないですよね……?
 あなたもここに連れて来られた人ですか?」

男の鬼気迫る表情にたじろぎつつも、勇気を振り絞ってちひろは尋ねる。

「ああ、そうだ。ところで姉ちゃん、一つ聞きたいことがある」
「え? な、なんでしょうか」

男……ポルナレフの態度は、有無を言わせぬ高圧的なものだった。
だがしがない事務員に過ぎないちひろは、その迫力に逆らえない。

「その黒い珍獣、あんたの悪魔だよなあ……?
 今の戦い見させてもらったが、そいつの動きは俺のダチにそっくりだった!
 あんたもそいつをただあてがわれただけなんだろうが……どういうわけか何か心当たりはねえか?」
「い、いや、そんなこと言われても……」


644 : そして集いしスターライト ◆NIKUcB1AGw :2016/06/15(水) 23:36:09 a2ejtJac0

実際、ちひろには何もわからないのだ。
詰問されても、狼狽する他ない。
その時、ちひろに助け船を出すかのようにぴにゃこら太が動いた。

「なんだあ? お前、いったい何を……」

ポルナレフの前で、ぴにゃこら太は自らの背中に手を伸ばす。
その手は、ギリギリでジッパーに届いた。

「なっ!? お前は! お前はぁぁぁぁ!!」

ジッパーが下ろされ、ぴにゃこら太の中身があらわになる。
それを見たポルナレフの表情は、驚愕に塗りつぶされた。
そこにいたのは、スタープラチナ。紛れもなく、ポルナレフの親友が傍らに立たせていたスタンドだった。

「てめえ、これはどういうことだ! なんでスタープラチナをてめえが操ってやがる!」
「で、ですから! そんなこと言われてもぉぉぉぉぉ!!」

動揺したポルナレフは、ちひろの胸ぐらをつかんで叫ぶ。
ちひろは、半泣きになって首を横に振ることしかできない。
見かねたセルティが止めに入ろうとしたその時、彼女より先にスタープラチナが動いた。

「っ!?」

スタープラチナに腕を掴まれ、ポルナレフは反射的に視線を彼に向ける。
スタープラチナは無言で、視線を返した。

「落ち着けと……。俺にそう言っているのか、スタープラチナ」
「…………」

スタープラチナは、無言で頷く。

今は悪魔と化し、独立した存在になっていようとも、スタープラチナは空条承太郎の半身である!
そしてポルナレフは、承太郎と共に幾多の死地をくぐり抜けてきた戦友である!
わずか数週間の付き合いであろうとも、その密度は十数年に匹敵する!
彼らの絆は、常識では計り知れないほどに強固であった!
ゆえにポルナレフは、スタープラチナの言わんとすることを「言葉」ではなく「心」で理解できたのだ!
(ナレーション:大川透)

「そうか……。この姉ちゃんは何も知らないってことか。
 全ては魔神皇とやらがやらかしたことなんだな?」
「…………」
「なるほど、お前は彼女を助けてやりたいのか。
 ああ、もちろんお前の意見は尊重する」
『私が言うのもなんですが、シュールな光景ですね……』

無言のスタープラチナと会話を成立させるポルナレフを見て、セルティはそう言わずにはいられなかった。
しかし、ポルナレフにはスルーされた。

「さて、姉ちゃん……。いや、ここは丁重にマドモアゼルと呼ぶべきか。
 先ほどまでの無礼な振る舞い、謝罪させていただく。つい我を忘れてしまってな。
 我が名はポルナレフ。ジャン・ピエール・ポルナレフ。
 よければ、そちらも名前をお聞かせ願いたい」
「あ、はい……。千川ちひろです」
「オーケー、ミスちひろ。こちらに敵対の意志はない。
 まずはお互いの状況を確認し、可能ならば協力体制を築きたいのだが」
「ええ、こちらとしてもそうしていただけるとありがたいです……」

こうして、ようやくまともな会話が始まったのだった。


645 : そして集いしスターライト ◆NIKUcB1AGw :2016/06/15(水) 23:36:55 a2ejtJac0


【豊島区/1日目/朝】
【千川ちひろ@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:健康
[装備]:COMP(タブレット型)
[道具]:基本支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:あの人の所に帰りたい
1:ポルナレフと手を組む?
[COMP]
1:スタープラチナ@ジョジョの奇妙な冒険
[状態]:健康、ぴにゃこら太の着ぐるみ(黒)を所持


【J・P・ポルナレフ@ジョジョの奇妙な冒険(3部)】
[状態]:健康
[装備]:亀のCOMP
[道具]:基本支給品、不明支給品x1
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:この場からの脱出
1:ちひろと手を組む?
[COMP]
1:セルティ・ストゥルルソン@デュラララ!!
[種族]:異邦人
[状態]:健康
 ※セルティは「首なしライダー」として召喚されています。


646 : ◆NIKUcB1AGw :2016/06/15(水) 23:37:32 a2ejtJac0
投下終了です


647 : ◆jBbT8DDI4U :2016/06/16(木) 00:25:21 p02RKMro0
投下乙です!
そりゃポルナレフからすればビビるよなw
ちひろさんに強力対主催が来てくれたようで一安心、できるのかな……?

さて、自分も投下します。


648 : 呪術:応酬 ◆jBbT8DDI4U :2016/06/16(木) 00:25:53 p02RKMro0
「貴方は、ヴラド・ツェペシュを知っているの?」

 長く続いていた沈黙を破ったのは吸血鬼の少女、レミリアだ。
 その口から飛び出したのは、奇妙な質問であった。
 あっけにとられた顔をしながら、インテグラはレミリアに問い返す。

「どういうことだ? 幼き末裔、それを名乗るということは彼奴を知っているのではないのか?」
「彼の名前を出すのは、言わば儀礼の一つ。吸血鬼の始祖として、敬意を払ってそう呼んでいるだけ。
 彼が居なければ、私達のような存在は居なかったのかもしれないのだから、ね」
「つまり……?」
「私も単なる一人の吸血鬼に過ぎない、ということよ」

 なんだそういう事か、とインテグラは納得する。
 直接的に"アイツ"の子孫、という訳ではないらしい。
 変な想像をしてしまったが、杞憂だったということだ。
 ああ、よかったと胸を撫で下ろすが、本当に安心していいのかどうかは、少し悩んでしまう。

「それはともかく、吸血鬼を殲滅するのではなかったのかしら」

 そんな一息をついた時に、レミリアが再びインテグラに問いかける。
 確かに、自分は名乗りを上げた時にそう語った。
 それに嘘偽りはないが、インテグラは銃を構え直さない。

「それは無闇矢鱈に罪なき人を食い散らかす、誇りなど無い"化物"だった時だ。
 お嬢さんには、彼奴の末裔を語るだけの確固たる誇りがある。ならば、私はその誇りに賭けよう」

 理由は、簡単だ。
 目の前の少女は吸血鬼であっても"化物"ではない、それだけのこと。
 ふっ、と笑みを浮かべながらそう答えるインテグラに、レミリアも笑みを返す。

「見る目のある人間は、嫌いじゃないわ」
「お褒めに預かり至極恐悦、宜しく頼まれてくれるか、レミリア嬢」
「そうね、宜しく頼まれてあげるわ、ヘルシング卿」

 軽い一礼を交わし合い、二人は互いを見つめなおし、再び笑う。
 それ以上、言葉は必要なかった。
 インテグラの思考も、レミリアの答えも、共に理解しているのだから。

 そうして、二人は豪邸――――もとい、皇居を後にし、反逆への一歩を踏み始める。


649 : 呪術:応酬 ◆jBbT8DDI4U :2016/06/16(木) 00:26:06 p02RKMro0
 


 所変わって、千代田区。
 肩を並べて歩く一人の少年、ネギと一匹の妖怪、とら。
 いや、どちらかと言えば、ネギがとらに合わせて歩いている、と言うべきか。

「あの」
「あァン?」

 何かを問いかけようとネギが声をかけるが、とらの返事に思わず竦み上がってしまう。
 いちいち忙しいやつだな、と思いながら、とらはネギの言葉を待つ。

「その、どうやって、魔神皇を……?」

 半分くらいは予想していた続きが、ものの見事に的中する。
 何かが吹き飛んでしまいそうなくらいの大きなため息をついてから、とらはネギへと言葉を返す。

「だーーーーからよ! ワシがそこまで分かってる訳がねぇだろっ!!」

 とらの大声に、ネギは目を見開き、 再びビクリと跳ね上がる。
 そんなネギを指差しながら、隙を与えないように、とらはまくし立てるように喋る。

「つーかよ、それを考えんのも、オメーの役目じゃねえのか?
 そりゃここにいんのはオメーだけじゃない、どっかの誰かがいるさ。
 だったらよ、オメーはニンゲンなんだから、ニンゲンと話すのはオメーの方が向いてるはずだ、違うか?」
「それは、そう、ですけど……」

 ようやく分かったかと、とらは一息つこうとする。

「何を聞けばいいんでしょうか……?」
「だーーーーっ!! もうっ!!」 いちいちワシが言わなきゃいけねーのかっ!! ちったぁ自分で考えやがれ!!」

 しかし、その安堵は脆くも崩れ去り、再び頭を抱えるハメになる。
 こんなことになるのならば、軽率に魔神皇を捕えるだとか言わなければよかった、と少し後悔し始めた時。
 ふと、近くに何かの気配を感じ取り、そちらをの方へと意識を向ける。
 やがて、その気配の正体を大まかにつかみとった所で、とらはネギの肩を軽く叩く。

「ホラ、丁度いいとこにニンゲンが来たじゃねぇか。オメーの本領発揮だ、しゃんとしなよ」


650 : 呪術:応酬 ◆jBbT8DDI4U :2016/06/16(木) 00:26:32 p02RKMro0
 


 びゅうう、と人と人を分けるように、風が吹く。
 人と人、怪と怪、互いが互いの顔をじっと見つめたまま、動かない。
 沈黙が、静かに続く。

「首輪……」

 先に口を開いたのは、インテグラ。
 ネギの首、そして自分の首にも課せられている、命を握る枷に気がついたからだ。
 となれば、隣の"化物"が、彼の"悪魔"と言ったところだろうか。
 相手の表情、そして場に流れる空気から、少年に敵意が無いことを確認しつつ、インテグラは次の一手を思考する。

「あ、あのっ!! 魔神皇について、何か知りませんか!?」

 次に口を開いたのは、ネギ。
 少し怯えながら、それでもまっすぐにインテグラの目を見つめて、彼は問いかける。

「……私も、それをこれから調べるところだ」

 インテグラの答えは、あっさりとしたものだ。
 だが、それ以上に答えることも出来ないし、ひねった答えを用意することも出来ない。
 だから、ありのままにそれを告げるだけのこと。

「わかりました、ありがとうございます」

 すると、その答えを聞いたネギはそう言い残し、くるりと踵を返してどこかへと立ち去ろうとする。
 突然の行動にネギの悪魔、とらも驚きを隠せない様子だ。
 インテグラもちらりとレミリアの顔を見るが、彼女も僅かに肩を竦めるだけだ。

「どこへ行く?」

 今にもどこかへ走り去って行きそうなネギを、背中越しに呼び止める。
 ぴたり、と足を止め、ネギは振り向いてインテグラへと答える。

「行かなきゃいけないんです、魔神皇のことを知ってる人のところに」
「ならば、共に行こう。私もあの魔神皇を討とうと志す者だ。私も、魔神皇について情報を集めておきたい」

 ネギの答えに、インテグラは即座に提案を返す。
 いずれ魔神皇を討つ身として、敵の情報を掴んでおきたいのはインテグラも同じだ。
 ならば、共に行動することは決して悪くは無いはず。
 しかし、ネギは首を横に振り、その提案を拒否する。

「……ダメ、ダメなんです。急がなきゃ……急がなきゃダメなんです」

 何故だ、と問い返そうとするインテグラの口を遮るように。
 溢れ出してくる言葉を、ネギは吐き続ける。

「だって、早く明日菜さんを蘇らせないと、僕は――――」
「待て」


651 : 呪術:応酬 ◆jBbT8DDI4U :2016/06/16(木) 00:26:50 p02RKMro0
 
 ネギの言葉を割って入る、冷たい声。
 ぞくり、と背筋に寒気が走り、ネギはもう一度インテグラの顔を見る。
 そこにあったのは、先ほどと全く違う、悪魔のような恐ろしさを秘めた顔。
 それを見たネギは、ひっと小さな声が漏らし、とらも警戒を彼女へと切り替えていく。

「蘇らせるとは、どういうことだ」

 続く声は、やはり冷たい。
 自分の返答次第で、ここからどう転がるかは変わっていくだろう。
 だが、ネギは決めたのだ。
 何がどう起ころうと、それを成し遂げてみせると。
 そのために自分は悪魔と契約したのだ、立ち止まっている暇など無い。
 ゆっくりと息を吸い込んだ後、しっかりとインテグラの顔を見て、ネギは彼女の問いに答える。

「こんなコトが出来る存在なら、人を蘇らせる方法を持っているかもしれない。
 僕は、その方法を、その事をなんとしてでも聞き出さないと――――」

 その途中で、ネギは口を噤んでしまう。
 目の前に居る"人間"の、その気迫に押し潰されそうになってしまったから。
 顔を背けようと思ったが、彼女はそれを良しとしてくれない。
 ひゅううと、冷たい風が吹き抜けた後、インテグラはゆっくりと口を開く。

「……自分が、何を言っているのか分かっているのか?」

 一段と鋭さを増した声が、ネギの耳を突き抜ける。
 人間相手に、これほどまでに恐怖を感じるのは初めてかも知れない。
 けれど、ここで引き下がる訳にはいかない。
 一つ、ゆっくりと深呼吸をしてから、ネギは口を開く。

「分かってます、分かってますよ、僕は魔神皇に会わなきゃいけないんです」

 そして、目をしっかりとインテグラに合わせて、ネギは言葉を続ける。

「明日菜さんの――――」

 その途中、響いたのは一発の銃声。
 間もなくして、ふわりとネギの体が浮く。
 続いて、もう一発の銃声。
 再び、音がネギの体を貫き。
 彼は、血を吐き出して、その場に倒れ伏した。


652 : 呪術:応酬 ◆jBbT8DDI4U :2016/06/16(木) 00:27:36 p02RKMro0
 
 ネギへと駆け寄る悪魔を尻目に、インテグラはひとまず身近な物陰へと逃げこんでいく。
 銃弾が貫いた場所をしっかりと見ていたインテグラは、ネギが助からないことを察していた。
 もはや死人にも等しい存在に、かまけている時間は無い。
 冷静に状況を判断しながら、インテグラは次の一手を考える。
 銃声が聞こえてきた方向は、同じ方向だ。
 音の遠さから推察しても、狙撃銃の類であるのは間違いないだろう。
 だが、問題はネギが撃ちぬかれた"方向"だ。
 一発目はネギの背後から正面に向けてだったが、二発目はその逆であった。
 同じ方向から銃声が聞こえているのだとすれば、銃弾の向きも同じでなければいけないはずだ。
 それが違うということは、単なる狙撃では無いということ。
 では、どうやってそれを可能にしたのか。

「あれは……?」

 その時、高い場所で浮いている、何かの姿を見つけた。
 それが何なのかは分からないが、先ほどの狙撃に噛んでいる可能性は大きい。

「レミリア、あれを捕らえられるか」
「そうね、準備運動にはなるかしら」

 ふわふわと浮かぶそれを見て、レミリアはにやりと笑う。
 あくびが出るほど低速で動いている物を捕えることなど、造作も無いことだ。

「狙撃銃による狙撃に気をつけろよ」
「人間に撃ち落とされるほど、落ちぶれては居ないわ」

 念押しのインテグラの忠告を聞き流しながら、レミリアはたんっと地面を蹴り上げ、それへと向かっていく。
 後は爪で切り裂くだけ、あっけない決着だと、思っていた。
 ふわふわと浮かぶ"何か"が、超速のレミリアの一撃を、ゆらりと避けるまでは。

「あら、思ったよりも楽しめそうじゃない」

 どうやら一筋縄では行かないようだと、レミリアは笑う。
 その笑みは、まさに「鬼」の笑みであった。

「……さて、どうするか」

 そんな姿を横目に、インテグラは再び思考する。
 銃弾が二箇所から放たれたトリックの正体が、今レミリアがおっているアレだとすれば、自ずと道は開けてくる。
 銃声のした方向、そこにそびえ立っている高いビルへと向かえば良いだけだ。
 だが、そこに向かうとなれば自分の姿を曝け出すという危険を伴ってしまう。
 狙撃銃相手に身を晒すことは、あまりにも愚策だ。
 しかし、いつまでもここに潜んでいるわけにも行かない。
 どうすべきか、と考えこみそうになった時。
 ふとインテグラは、少年の方へと目をやった。
 そし――――そこに居たはずの"悪魔"が居ないことに気がついた。


653 : 呪術:応酬 ◆jBbT8DDI4U :2016/06/16(木) 00:28:08 p02RKMro0
 


 少し離れたビルの屋上から街を見下ろす、一人の黒尽くめの男、ジン。
 先ほどの狙撃を行った、張本人だ。
 インテグラの予想通り、一発目の狙撃は直接ネギの姿を狙っていた。
 そして、インテグラが疑問に思っていた二発目は、今レミリアが追い回している「マンハッタン・トランスファー」による中継射撃だ。
 わざわざそんな事をしたのは、気まぐれだ。
 元より、マンハッタン・トランスファーに頼り切るつもりなど無い。
 自分だけの力で、狙撃を行うことだって出来る。
 もし、マンハッタン・トランスファーの力を使うとすれば、それは「普通なら届かない場所」を撃つときくらいだろう。
 その時の為に、もう一度マンハッタン・トランスファーの力を試したに過ぎないのだ。

「さあ、次だ……」

 ふっ、と笑い、再び銃を構える。
 銃声が響いたというのに、ジンは逃げる素振りすら見せない。
 それもその筈だ、もう一人の老女が逃げ込んだ物陰は、あくまで急拵えの壁。
 そこから少しでも動けば、身を晒すことになる。
 こういう時にこそ、マンハッタン・トランスファーを使うべきなのだろうが、マンハッタン・トランスファーは今、何かに追われている。
 だが、問題はない。
 自分の手で、老女を撃ち抜けばいいだけなのだから。

「姿を現した時が、テメェの最後だぜ……」

 スコープを覗き、ジンはただ笑う。
 追い詰めた獲物が、観念してその場から出てくるのを、じっと待ちながら。


654 : 呪術:応酬 ◆jBbT8DDI4U :2016/06/16(木) 00:28:18 p02RKMro0
 


「――――おい、おい!!」

 遠く、声が聞こえる。
 自分の悪魔、とらが自分に呼びかけてくれているのがわかる。
 けれど、声は少し遠くて、覗き込んでいる顔も、少し霞んでいる。
 そうだ、自分は撃たれたのだ。
 どこから、どうやって、どうして、わからないことは沢山ある。
 だが、撃たれたという事実は、決して覆らない。
 肺を貫かれているのか、息をしようにも上手く行かない。

「オメーはよ! こんな所でくたばってる場合じゃねえだろ!!」

 とらが、自分に一生懸命語りかけてくれる。
 まだ出会って間もないのに、そんなに律儀に向き合ってくれるのが、少し嬉しくて。
 悪魔として出会っていなかったら、友達になれただろうか、なんて考えたりして。

「明日菜ってのを蘇らせるんじゃねーのか! おい!!」

 ああ、きっとこれは罰なのだろう。
 人を蘇らせる為に、悪魔と契約した自分への。
 だったら、この罰は甘んじて受けよう。
 だから、ネギは呼び出した悪魔、とらへと願う。

「明日、菜……さん、を」

 この生命と引き換えになったとしても、叶えたい願いを口にする。

「よろ……しく」

 僕を、食べてもいいから。
 そんな続きの言葉は、口に出来なかった。
 死にたくないという、純粋な気持ちが溢れだす。
 だが、それに反するように、ネギの体からは力が徐々に抜けていく。
 ふと、ネギは考える。
 あの時、明日菜さんもこんな風に苦しんでいたのだろうか、と。

 それを、最後に。
 ネギは、ゆっくりと目を閉じていった。

【ネギ・スプリングフィールド@魔法先生ネギま!(アニメ版) 死亡】
【残り 39人】
※遺体傍のデイパックに基本支給品、とら@うしおととら入りCOMP(明日菜さんこの鈴音がしないよ型)、三万マッカが入ったままです

【千代田区・丸ビル付近/1日目/午前】
【インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング@Hellsing】
[状態]:健康
[装備]:COMP:聖書型
[道具]:基本支給品、454カスールオート(弾数×60)@Hellsing
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:魔神皇を必滅する、殺し合いに乗った奴も必滅する
1:狙撃者への対処
【参戦時期】最終話直前辺り
[COMP]
1:レミリア・スカーレット@東方Project
[種族]:夜魔
[状態]:健康

【千代田区・丸ビル/1日目/午前】
【ジン@名探偵コナン】
[状態]:健康
[装備]:ドラグノフ式狙撃銃
[道具]:基本支給品、漫画本(ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン)型COMP
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:魔神皇込みで皆殺しにする。
1:老女(インテグラ)の抹殺
[COMP]
1:マンハッタン・トランスファー@ジョジョの奇妙な冒険
[種族]:スタンド
[状態]:健康


655 : ◆jBbT8DDI4U :2016/06/16(木) 00:28:32 p02RKMro0
投下終了です。


656 : 名無しさん :2016/06/16(木) 18:24:40 6FS7rjPo0
ジンニキまさかの2話目にしてキルスコアを稼ぐ


657 : 名無しさん :2016/06/16(木) 18:41:45 9a78cwvw0
これはきっとジンニキのドッペルゲンガー


658 : 名無しさん :2016/06/16(木) 18:45:38 935dMPUo0
お前らww


659 : 名無しさん :2016/06/16(木) 18:47:25 OH0j0aKE0
ジンニキに対する圧倒的な信頼感


660 : 名無しさん :2016/06/16(木) 23:38:13 G3Ed6ZI60
このジンニキは本編ジンニキのシャドウに違いない(暴論)


661 : 名無しさん :2016/06/17(金) 00:12:10 BTmeT3E.O
ジンニキだってコナン本編で殺した相手はいるだろ!いい加減にしろ!


662 : 名無しさん :2016/06/17(金) 22:49:46 vRhiG1Ds0
流石兄貴ですぜ


663 : ◆lb.YEGOV.. :2016/06/19(日) 22:58:40 2V5EjUNM0
申し訳ありません。予約期間内に間に合いそうにありませんので多田李衣菜の予約をキャンセルいたします


664 : 笑顔:選択 ◆jBbT8DDI4U :2016/06/21(火) 01:30:24 /71lj.820
 一言で言ってしまえば、最も嫌なタイプの笑みだった。
 最も出会いたくない男の顔が、呼び出した男の顔とどうしても被ってしまう。
 ああいう笑顔を浮かべるタイプの人間は、何かを隠しているか、ろくでもないかの二択だ。
 少ない人生経験の中でも、それは外れたことはない。
 だから正臣は、無意識の内に警戒レベルを極限まで引き上げていく。

「おや、嫌やわあ。そない怖い顔せんとってよ。ボク、君の味方やからさ」

 対する男も、必要以上に警戒されている事を察したのか、肩を竦めながら微笑み直す。
 だが、その自然を装った笑みこそが、正臣にとっては一番警戒すべき笑みだった。
 心を許してはいけない、と本能が警鐘を鳴らし続ける。
 しかし、目の前の男は自分の"悪魔"だ。
 何かコミュニケーションしておいた方がいいかもしれないとは思うが、口が縫い付けられたかのように動かない。

「ま、無理にとはよーいわんわ。好きにしたらええし、気が向いたらなんでも言うて」

 そんな正臣の様子を見て、男は少し残念そうな顔をしながら、後ろへと振り返る。
 隙だけは見せてはいけないと気を張りつつ、正臣はCOMPの他の機能を確認していく。
 地図を見る限り、ここは東京……いや、東京を模した世界だということだ。
 悪魔辞典というアプリには、目の前の悪魔についてのデータが記載されていた。
 ひとまずそれは後回しにし、肝心の名簿に目を通し始める。

「おいおい、嘘だろ!?」

 思わず、声が出てしまう。
 どう見てもハンドルネームとしか思えない名前の中に交じる、錚々たる人間の名前。
 テレビなどで幅広く活躍するアイドル、有名な大企業の社長。

「――――ッ!!」

 そして、よりにもよってこんな所では目にしたくなかった名前。
 那須島隆志……は、どうでもいいとして、折原臨也と泉井蘭。
 まさか、この二人の名前を見かけることになるとは、神はどうやら自分にハードモードをご所望のようだ。
 前者は他人に悪意をぶつけることを平然と行う人間であるし、後者は野放しにしておいては危険だ。
 誰かが彼らに接触する前に、止めておきたいのが本音だ。
 だが、自分一人で折原臨也を止めるなど、可能なのだろうか?

「ともあれ、こんな端っこにいても何も始まらない、か……」

 少し考えて、正臣は小さく呟く。
 辺りの景色から察するに、ここは練馬区のあたりだろうか。
 そこで、考える。
 大抵の人間は、ここを東京だと捉えて動くだろう。
 その上で、人を求めてどこかに動くのだとすれば。
 特に、"あの二人"が人を求めて動くのだとすれば。
 こんな所に来るわけがないし、おそらくは"池袋"に向かうだろう。
 それは、火を見るよりも明らかだ。
 幸い、練馬からならまだ池袋は近い方だ。
 少し時間はかかってしまうが仕方がない、とゆっくり歩き出そうとした時だった。
 正臣は、ある違和感を感じ取る。

 それは、道のど真ん中にそびえ立つ、一台の「パソコン」。
 いや、パソコンというよりは、ディスプレイだけが堂々と鎮座している。
 明らかに浮いているそれに警戒しながらも、正臣は接触を試みようとする。


665 : 笑顔:選択 ◆jBbT8DDI4U :2016/06/21(火) 01:30:37 /71lj.820

「ネリマ ターミナルへようこそ」

 そんな声が聞こえたのは、あと数歩で端末に触れられる、といった時だった。
 ターミナル、そういえば先ほど目を通したCOMPの中にも記載があった。
 都市と都市を繋ぐ窓口。マッカという聞いたこともない通貨が必要らしいが、一瞬で別の区に移動することが出来るらしい。
 ならば早速と正臣はターミナルに触れようとするが、そこでふと止まる。
 何もマッカという通貨をケチっているわけではない。
 COMPには「どうやって」転移させるかという「手段」が一切記載されていなかったのだ。
 車や電車が呼び出される? 突然空を飛ぶ? あるいは瞬間移動?
 今まで生きてきた中でパソコンに触れることは多くあったが、そんな技術に心当たりはない。
 一体何が起こるのだろうか、と少し不安になっていた時。

「ああっ、もうっ!! 止まらないって決まったろ!!」

 わざとらしく大声を上げて、自分を奮いたたせる。
 そうだ、もう止まらない、見てるだけでもない、そして、逃げない。
 やると決めた以上、こんな所で迷っている時間はないのだ。
 ふと隣を向く、そこに立っている男は、相変わらず笑顔だったが、ただ一度だけゆっくりと頷いて答えた。
 好きにしろ、ということだろうか。
 ならば、やってやるまでだ。
 こうしている間にも、時は進んでいくし、未来は自分の元へとやって来る。
 だから、無駄にできないのだ。

「ええい!! ままよ!!」

 そして、正臣はターミナルの操作を進める。
 
 ぴっ、ぴっ、ぴっ、と手際よく選択肢を進めた後。
 
 練馬区に、一つの絶叫が響き渡ることとなった。



――――おいおい、聞いてねえよ!!


          ・・・・・
    パソコンに、吸い込まれるなんてよ――――



【練馬区→豊島区へ/1日目/朝】
【紀田正臣@デュラララ!!】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品、携帯電話型COMP
[所持マッカ]:2万5千
[思考・状況]
基本:取り敢えず前へ進む。誰かを殺すつもりはない。
[備考]
映画撮影なのか本当の殺し合いなのか揺れています。
[COMP]
1:市丸ギン@BLEACH
[状態]:健康


666 : ◆jBbT8DDI4U :2016/06/21(火) 01:30:48 /71lj.820
投下終了です


667 : 名無しさん :2016/06/25(土) 09:18:17 Rdwlth4k0
投下乙です
正臣ー!そいつ確かに臨也とも似てるけど境遇的に君にも似てるから―!


668 : 現実:恐怖 ◆jBbT8DDI4U :2016/06/25(土) 10:07:18 HiRTPDgc0
 かつ、かつ、かつ、と靴音を響かせながら歩く、二つの人影。
 漆黒の鎧を纏った少女は、一見は可憐に見えるその外見に似つかぬ笑みを浮かべ。
 くたびれたスーツが似合う男は、なんとも不安げな表情を浮かべたまま、少女の隣を歩いている。
 いや、実際には不安で一杯だった。
 お世辞にも鍛えているとは言えないが、一人の成人男性を軽く捻るだけの力を見せた。
 手から放たれた魔法は、ゴミ箱を灰になるまで燃やし尽くした。
 少女の力は本物だ、自ら悪魔を名乗るだけはある。
 だからこそ、だからこそ不安なのだ。
 魔神皇は初めの場で、この場に招かれた人間全てに悪魔を用意したと言っていた。
 先ほど軽く目を通した名簿には、見知った人間や有名人の名前を含め、42人ほどの人間の名前が載っていた。
 つまり、悪魔の数もそれと同じなのだ。
 不安の種は、ここにある。
 もし、残りの41体の悪魔の内、彼女を上回る力を持つ悪魔が居たら。
 もし、彼女を上回る悪魔が自分たちに襲いかかってきたら。
 もし、その危害が"自分に及ぶ"のだとしたら。
 そんな考えが、那須島の思考を支配していた。
 こんな場所なら、何が起こってもおかしくはない。
 だから、まだ安心しきる事など、できるはずも無かった。

「どうしました? 具合でも悪いのですか?」

 隠しきれない、いや、隠すつもりすらない不安な表情を浮かべる那須島に、ジャンヌは声色を変えずに問いかける。

「あ、ああ、いや……大丈夫さ、ちょっとまだ驚いているだけさ」
「なるほど……私の力が疑わしいと言うのですね」

 そして、急拵えの嘘を即座に見破り、ジャンヌは言い捨てる。
 那須島は何故分かった、というような顔をしているが、あんな顔を見てそれに気づけない頓珍漢がいるのだとすれば、お目にかかりたい程だった。
 無表情のジャンヌに対し、那須島は脂汗を滝のように流している。
 那須島は考える。彼女の機嫌を損ねてしまったのだろうか、彼女は怒っているのだろうか。
 そして、どうにかして切り抜けられないか、と。
 そんな那須島をからかうように、ジャンヌはふと笑う。

「まあ、いいでしょう。いずれ、時は来ます」

 その言葉とともにジャンヌが前を向くと、那須島は露骨に安堵の表情を浮かべる。
 だが、ジャンヌが手を出さなかったのには理由がある。
 くだらないことで召喚士を失うわけにはいかない。
 どれだけ人間としてクズだったとしても、召喚士である以上は"   "なのだから。
 そんなことも知らずに、那須島は助かったと思いながら、ぎこちない笑みを浮かべてジャンヌの後を歩いていた。


669 : 現実:恐怖 ◆jBbT8DDI4U :2016/06/25(土) 10:07:32 HiRTPDgc0



 唐揚げ、ポテト、サラダ、春巻き、枝豆。
 つい先ほど作ったかのように並べられている、美味しそうな惣菜の数々。
 それを前に興奮せずにいられるだろうか、いや、無理だ。
 特に彼女、丈槍由紀にとっては。
 きらきらと輝く目を浮かべながら、惣菜を右から左へと集めていた。
 なぜ、そんな事をしているかというと、今後の方針のためだ。
 しんのすけ、由紀、慈。彼らはお世辞にもいざという時に戦えるとは言えない。
 そして輝子には、三人を守りながら戦える自信は無かった。
 だから、下手に街へと躍り出て、不特定多数の人間の目に晒されるよりも、デパートを拠点とした方が良いと彼女は判断した。
 ここに残っていても安全である保障はないが、常に人の目を気にして動くよりは、見える世界を絞り、最低限の警戒で過ごす方が何倍も良い。
 そう決めたところで、それぞれ散開し、デパートの中の有用な物資をかき集めているのであった。
 そして由紀は、食料を集める係。
 買い物かごには、彼女の好みが十二分に反映された食料がぎっしりと詰まっていた。
 あとは、屋上に戻るだけ。
 そう思いながら、とてとてと階段を駆け上ろうとした時。
 彼女は、一人の男と目があった。

「……おじさん、誰?」

 しんのすけでも、輝子でも、慈でもない、初めて見る第三者の姿。
 それに少し困惑しながらも、由紀は男へと話しかけた。

「お、おじさ……良くないなあ、君。初対面の人には失礼の無いようにって、学校で習わなかったかい?」

 男は顔をひきつらせつつ、笑いながら由紀の言葉を咎めていく。
 いや、彼の年齢は十分に"おじさん"であるはずなのだが、彼の小さなプライドはそれを許さない。

「あ……ごめんなさい」
「い、いや、いいんだ……分かってくれれば。こんな状況だし……気が動転してしまうのも、仕方がない」

 だが、由紀は"素直"だった。
 ダメだと言われれば謝るし、自分の気持ちを正直に伝えられる子供であった。
 そんな彼女の素直さが生み出した気まずさを受け止めながら、那須島はへらへらと笑って返す。

「ところで、君は一人かい?」

 そして、本題の問いかけ。
 由紀の外見は幼くは見えるが、彼女は歴とした高校生だ。
 そういう事には鋭い那須島は、それをしっかりと見抜いていた。
 だからこそ、彼はそれを問いかけた。
 へらへらとした笑みが、下衆さを増していく。

「ううん、違うよ」

 だが、その笑みは彼女の答えによってふと消えることになる。
 まあ、当然といえば当然だ。ここで"ひとり"であることの方が、珍しいのだから。
 そんなことも考えられていなかった那須島は、露骨に落胆の表情を浮かべていたが、由紀はそれを無視するかのように、そっぽを向く。


670 : 現実:恐怖 ◆jBbT8DDI4U :2016/06/25(土) 10:07:51 HiRTPDgc0

「あっ! 居た居た、めぐねぇ〜〜! こっちだよ〜〜!!」

 そして、由紀は手を振るう。
 彼女の目線の先にいるのは、一人の"せんせい"。
 那須島と教科まで同じである、同業者だ。
 無論、那須島がそんなことを知る由はないし、きっと気づくこともない。
 "彼女"を見た那須島に、そんな余裕など、あるわけもなかったのだから。

「ば、ばば、ばばばば……」

 口をぱくぱくと開閉しながら、彼は"それ"を見る。
 脂汗を大量に浮かべ、喉を振るわせて、それを指さして。

「化け物!!」

 彼は腹の底からの大声で、"しんじつ"を口に出した。

 それを聞いた由紀は、右、左、後ろと素早く辺りを確認する。
 だが、どこにも化け物の姿など見えることはない。
 だって、彼女の視界には"めぐねえ"しかいないのだから。

 それが、那須島にとっては恐ろしすぎた。
 "化け物"を傍に置いた上で、平然と振る舞う由紀の姿が。
 おびえることもなく、けろっとした表情を浮かべる由紀の顔が。
 何よりも、恐ろしく見えたのだ。

「ほら、言ったとおり」

 怯える那須島を見て、笑みを浮かべながら一人の女が現れる。
 そして、じろじろとなめ回すように慈を見つめた後、那須島に向けて笑みを浮かべ直す。

「何でもいい、早くあのバケモノを何とかしてくれ!!」

 自分も"バケモノ"を連れていることなど棚に上げ、すっかり気が動転していた那須島は、指を指しながら女、ジャンヌへと指示を出す。
 彼の指さした方角の先、そこに立っているのは、那須島にとっての"バケモノ"。
 しかし、由紀にとっては違う。
 彼女は"めぐねえ"であり、"バケモノ"ではないのだ。
 それを訂正しようと口を開いたとき、離れていたはずの女が目の前に迫っていた。
 疑念を抱く暇など、あるわけもなかった。
 高速で振り抜かれる剣の太刀筋を、ただぼうっと見つめ。
 そして、少量の赤をまき散らしながら倒れ込む"めぐねえ"を見ていた。

 それは、"げんじつ"だった。

 呼吸が荒くなり、目の焦点がずれ、世界が崩れていく。
 何故、と考える間もなく、ただただ、真っ白に思考が塗りつぶされていく。
 他の全てが色を失い、彼女の世界には動かない"めぐねえ"だけが残されて。
 差し迫る剣など気にもかけず、ただ、めぐねえの姿を見つめ続けていた。
 そして、"めぐねえ"も由紀の姿をじっと見つめたまま。
 何かを呟いて、ふっと彼女の目の前から消えていった。
             RETURN
 それは、自分の意志による"帰還"。
 COMPの中にいれば、傷が進むことはない。
 だから、彼女は死ぬ前にそれを選んだ。
 それが、由紀を傷つけることになることは分かっていたが、仕方がなかった。
 結局は何も出来ない、無力な自分。
 それを呪いながら、ゆっくりとCOMPへ戻っていった。

 そして、一本の剣が振り下ろされようとする。


671 : 現実:恐怖 ◆jBbT8DDI4U :2016/06/25(土) 10:08:06 HiRTPDgc0

「ダメだぞーーーーっ!!」

 そこに割って入る、一人の幼い声。
 その方へ向いてみれば、声と違わぬ一人の少年が、由紀達の方へまっすぐ向かっていた。
 そして、何のためらいもなくジャンヌと由紀の間に立ち、少年、野原しんのすけはジャンヌへと問いかける。

「おねぃさん! どうしてそんなことするんだゾ!? めぐみおねぃさんも、ゆきちゃんも、何も悪いことしてないゾ!!」

 その問いかけに、ジャンヌは不適な笑みを返す。
 良い悪い、善悪、そんなものが何だというのだ。
 良いことをしていれば、善であればいいのか。
 悪いことをしていれば、悪であるのはいけないのか。
 果たしてそれは誰が決めるのか、一つの善は一つの悪でもある。
 少なくとも少年にとっては、自分は悪なのだろう。
 ああ、どうでもいい、そんな物差しでしか動けないからこそ、人間は愚かしいのだ。
 自分に危害が及ぶとわかれば、すぐにそれを"悪"だと決めつけて、排除しようとする。
 何時の世も忌々しいものだ、と思いながら、ジャンヌはためらうことなく剣を振るおうとする。

「メテオテーーーールッ!!」

 その刃は、すんでのところで"さんま"に変わる。
 さらに現れた第三者、星野輝子の魔法によって、剣とすり替えられたからだ。
 自分の持っていた剣が"すりかえられた"事に気づいたジャンヌは、辺りを素早く探し、それを探し始める。

「しんちゃん」

 その間に、輝子はしんのすけへと告げる。

「さっき教えたとおりにマラカスを振ってから、全力で逃げて」
「えっ、でも」

 その言葉にしんのすけは戸惑う。
 無理もない、自分に逃げろと言う事は、彼女はここに残るという事なのだから。
 幼い五才児でも、それが意味することは何となくわかる。
 けれど、輝子はにっこりと微笑んで、しんのすけへと語る。

「由紀ちゃんも居るでしょ? こんなところに居たら危ないわ。
 大丈夫よ、すぐにやっつけて、しんちゃんの所に戻るから」

 その微笑みの奥に秘められたものを、しんのすけは静かに感じ取る。
 出来れば離れたくはないけれど、ここに残ることを彼女は望んでいない。
 だから、彼女が望むとおりに、しんのすけは動くと決めた。

「……約束だゾ!」
「ええ、約束よ」

 そう言って、しんのすけは事前に輝子に教えられたとおりにマラカスを振る。
 それから、座り込んでいた由紀の手をしっかりとつかむ。

「ゆきちゃん、行こう!!」

 そして、しんのすけはデパートから逃げ出すように、駆けだしていく。
 由紀はうつろな目をしたまま、しんのすけに手を引かれるままに体を動かす。
 その二人が逃げ出していくのを見送りながら、輝子は剣を取り戻した女を睨む。

「くだらない、どうせ死に行くというのに」

 顔から笑みを消し、ジャンヌは輝子へと吐き捨てる。
 輝子の行動が気にくわないわけではない、その行動の意図と、隠された事実に気がついたから、不快なのだ。
 だから、ジャンヌは笑うこともなく、剣を構えなおす。

「ここで貴方を倒せば、そうはならないわ」

 そんなジャンヌを前にして輝子は、わざとおどけて笑った。


672 : 現実:恐怖 ◆jBbT8DDI4U :2016/06/25(土) 10:08:25 HiRTPDgc0



 駆ける、駆ける、駆ける。
 由紀の手を引きながら、しんのすけは東京の街を駆ける。
 少しだけ遠くへ、少しでも遠くへ、逃げ出すために。

「しんちゃん」

 そんなしんのすけに手を引かれていた由紀が、ふと口を開く。

「めぐねえが、めぐねえがいないの」

 虚ろな目は、何も見据えず。
 ただ、由紀は口を開き、弱々しい声でつぶやき続けた。

「どこにいっちゃったのかな、さっきまでいっしょにいたんだよ?」
「ゆきちゃ――――」

 異常だ、とはっきり感じ取ったところで、しんのすけは口を開こうとし、固まる。
 由紀に視線を合わせた先、そこに居た大きな影。
 思わず目線を合わせてしまったが故に、しんのすけはただ恐怖することしかできなかった。
 口を開くも声が出ない、足はふるえて動かなくなるし、ただ、へたり込むことしかできなかった。

「チッ、ガキ二人か、まあいい。俺は虫の居所が悪いンだよ……」

 そう、そこに立っていたのは、世界を支配する大魔王の姿だった。



「が、あ……は……」

 ぎりぎり、と輝子の首を絞めながら、ジャンヌは彼女の眼前に剣を向ける。
 涼しい顔のジャンヌに比べ、輝子の体には無数の生傷が刻まれていた。
 元より、近接戦闘においてはジャンヌに分があったのかもしれない。
 だが、こうなるに至った理由が、もう一つある。

「言ったでしょう、契約を破棄して、一人で戦うのは無謀なことだと」

 そう、輝子が緊急時用にしんのすけに教えていたマラカスの動き。
               LEAVE
 それは、悪魔が自由の身となる" 離 脱 "の命令だった。
 それが行われれば、契約は破棄され、悪魔は晴れて自由の身になる。
 だが、契約を破棄すると言うことは、一つの大きすぎるリスクを背負うことになる。
 それは、生体マグネタイトの供給が断たれる、ということ。
 この世界にいるサマナーの大半は気づいていないが、本来、悪魔が姿を維持するには生体マグネタイトが必要だ。
 しかし、この世界ではCOMPを通じて送り込まれる生体マグネタイトがある限り、それに困ることはない。
 だが、それは悪魔がサマナーと"契約"しているときの話だ。
 契約を打ち切ってしまえば、COMPとの繋がりもなくなる。
 故に、生体マグネタイトの供給も打ち切られる。
 生体マグネタイトの供給がなくなれば、どうなるか。
 足りなくなった箇所から、じわりじわりと体が崩壊していくのみである。
 無論、COMP以外にも生体マグネタイトは存在する、だがそれはCOMPから供給される量の数分の一にも満たない。
 そんなごく少量のマグネタイトでは、悪魔の体を構築することは出来ないのだ。
 そんな危険を冒してまで、輝子がそれを選んだ理由は、一つ。
 元よりジャンヌとの戦闘力の差は感じ取っていた、だからこそそれを選んだ。
 戦いの余波にしんのすけたちを巻き込まないためと、彼らが少しでも長く、逃げれる時間を作るためだ。
 後悔はない、欲を言えばジャンヌは倒したかったが、じわじわと崩れゆく体では、そんなこと出来るはずもなかった。
 そして今、最後の最後の瞬間を迎えようとしている。


673 : 現実:恐怖 ◆jBbT8DDI4U :2016/06/25(土) 10:08:35 HiRTPDgc0

「終わりにしてあげましょう」

 にやり、と長らく笑っていなかったジャンヌが、笑う。
 そして、剣がまっすぐに押し込まれ、輝子の体を貫こうとしたとき。

「どっせーーーーーーーーいっ!!」

 叫び声と共に、大きな衝撃波が産まれる。
 吹き飛ばされるジャンヌ、巻き起こる砂煙。
 何事か、と思ったとき、彼女は現れた。

「大丈夫!?」

 栗色のツインテールが特徴的な、一人の女子高生、弓塚さつき。
 そして遅れてやってきた、白い髪の少年、アレン・ウォーカー。
 輝子は知る由も無いが、このデパートは地下通路へとつながっている。
 日光を避けて移動していたさつき達は地下通路を通じて、このデパートへやってきていた。
 そして、輝子にとっては彼女たちが一体何者なのかはわからない、わからないが。
 あの状況を救った上で、その言葉が出てくるのならば、敵ではないのだろう。

「……して」
「え?」

 そう判断した上で、輝子は口を開くが、掻き消えてしまいそうな声は彼女には届かない。
 もうそこまで体の崩壊は始まっているのか、と苦しみながらも、最後の力を振り絞って叫ぶ。

「契約して!!」
「えっ、あっ、へっ!? う、うん、いいよ!」

 彼女の言葉の意味を深く理解する間もなく、現れた少女は輝子の言葉を了承する。
 その時、何かがつながる感覚が走り、輝子の体が少し軽くなる。
 ダメージこそ残ったままだが、身が崩れていく突き刺すような痛みは消えていた。
 どうやら、契約は成功したらしい。
 もっとも、サマナーである少女はそれを認識していないようだが。

 その時、がらりと瓦礫をはねのける音と共に、吹き飛ばされた女が立ち上がる。
 心配そうにその姿を見つめていた那須島の顔を一瞥した後、彼女は立ちはだかる者の姿を見つめる。

「数が増えましたか……まあ、いいでしょう。全ては滅び行く運命、それが少し早くなるだけのこと」

 一対三、状況としては限りなく悪い。
 だが、記憶に刻まれた戦地に比べれば、随分とましだ。
 何より、敵が強大になったと言うことは、先ほどから震える事しか脳のないこの男に、自分の力を示せるチャンスでもあるのだ。
 ジャンヌは笑い、剣を握る。
 そして、敗北の二文字など知らないと言わんばかりに、自信たっぷりに駆けだしていった。


674 : 現実:恐怖 ◆jBbT8DDI4U :2016/06/25(土) 10:08:49 HiRTPDgc0



 魔王ゾーマが幼い命を奪わんとその手を伸ばしたとき、一つの爆発音が響きわたった。
 それも一回ではなく、立て続けに数回鳴り響いたのだ。
 予想外の事態にゾーマは手を引き、その召喚者、マリクは辺りを見回す。
 そしてマリクは、一人の少年の姿を見つける。
 それとほぼ同時、少年が腕を振るった瞬間、再び爆発音が鳴り響いた。
 魔王ゾーマがマリクを庇うように腕を伸ばしたが故に無事だったものの、その攻撃にマリクは目を見開いていた。

「てめェ、ナニモンだ」
「うるせェ。ガキをぶっ殺そうとするクソナードには、名前を名乗るのも勿体ねえ」

 問いかけには答えない。
 現れた少年はマリクに鋭い眼光と殺気を突き刺しながら、一歩ずつ前に進んでいく。
 ためらいも無く、一歩、一歩と確実に前に進む。

「俺は今イラついてんだよ……だから、俺の前に立つなら、ぶっ飛ばすだけだ」
「はっ! そりゃいい、俺もムカついてんだよ!! お望み通りぶっ潰してやるぜ」

 その言葉を最後に、現れた少年、爆豪勝巳は駆け出し、戦いの火蓋が切って落とされた。
 戦いの理由など、星の数ほどある。
 だがこの戦いには、高尚な理由などない。
 ただそこにあるのは「ムカつく」という、シンプルな感情だけだった。

 そして、始まった戦いを見つめながら、しんのすけはただ震えていた。
 逃げ出したくても逃げ出せない、足がぴくりとも動かない。
 その理由を彼は知らないし、知っているわけもない。
 そう、大魔王からは"逃げられない"のだ。
 魔王が逃げ出すことはあっても、魔王から逃げることは出来ない。
 それを可能にする重圧、気迫は、五才児を恐怖で包み込むのに十分すぎるものだった。
 どうするべきか、どうするのがいいのか。
 今にも押しつぶされそうなプレッシャーを抱えながら、しんのすけは小さな頭を働かせ続けていた。

 だから、気づけなかった。
 傍にいる由紀が、ゾーマを見上げながら、小さく何かを呟いていたいたことなど。
 その目がわずかに、色を取り戻していたことなど。

【渋谷区・デパート/1日目/午前】
【那須島隆志@デュラララ!!】
[状態]:右腕負傷
[装備]:COMP(携帯電話型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:死にたくない。死にたくないから……魔女に殺させる。俺は悪くない。
1:見守る
[COMP]
1:ジャンヌ・オルタ@ Fate/Grand Order
[種族]:魔女
[状態]:健康

【弓塚さつき@MELTY BLOOD Actress Again】
[状態]:健康、若干の空腹
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、未確認支給品(1)
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:魔神皇を止める(現実味を感じていない)
1:ジャンヌへの対処
2:でも日光の下をあるくのは…
[COMP]
1:アレン・ウォーカー@D.Gray-man
[種族]:退魔師
[状態]:健康
2:星野輝子@コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜
[種族]:魔女
[状態]:瀕死、魔女っ娘姿
※サポートキャラのウルは装備品扱いです。


675 : 現実:恐怖 ◆jBbT8DDI4U :2016/06/25(土) 10:09:12 HiRTPDgc0

【渋谷区/1日目/午前】 
【丈槍由紀@がっこうぐらし!】
[状態]:健康、
[装備]:COMP(スマートフォン型)
[道具]:基本支給品、確認済み支給品、お菓子(デパートで調達)
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:ひとりはいや、帰りたい
1:――――
[COMP]
1:佐倉慈(めぐねえ)@がっこうぐらし!
[種族]:幻想
[状態]:瀕死、COMP

【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康
[装備]:COMP(マラカス型)
[道具]:支給品一式
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:おねいさん(輝子)とデートする
1:どうする……?
[備考]:殺し合いについてはよく理解していません。
[COMP]
EMPTY

【マリク・イシュタール(闇人格)@遊☆戯☆王】
[状態]:健康
[装備]:デュエルディスク型COMP、千年ロッド@遊☆戯☆王
[道具]:基本支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:デスゲームを楽しんだ後、魔神皇に闇のゲームを仕掛ける
1:クソガキ(爆豪)への対処。他のガキはその後。
2:次あいつら(ザ・ヒーローと"ロト")に会うまでに闇のゲームの内容を考える
[備考]
※参戦時期はバトルシティ決勝戦で消滅した後です。
※消滅した闇人格に肉体を与えられた状態で参戦しているので、表人格に交代することはありません
[COMP]
1:ゾーマ@ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…
[種族]:大魔王
[状態]:魔力消費(極小)
[備考]
※"ロト"(女勇者)の本名を覚えています

【爆豪勝己@僕のヒーローアカデミア】
[状態]:瞳にダメージ(小:視界には問題なし)
[装備]:COMP(スマートフォン型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[所持マッカ]:二万五千
[思考・状況]
基本:どいつもこいつもナメやがって!
1:クソナード(マリク)をぶっ潰す
2:次に敵(ジャック)に会ったらブッ殺す。クソ白モヤシもいつかブッ殺す。
3:大きな建物が見える方(新宿)に向かう。
[COMP]
1:一方通行@とある魔術の禁書目録
[種族]:外道
[状態]:健康

※スキル『情報抹消』により一連のジャックの戦闘内容を覚えていません。


676 : 現実:恐怖 ◆jBbT8DDI4U :2016/06/25(土) 10:09:27 HiRTPDgc0
投下終了です


677 : 名無しさん :2016/06/25(土) 14:56:59 rkVI.kOY0
投下乙
しんちゃん、立て続けに襲撃を受けるとは難儀な……
かっちゃんは大魔王相手にどんな戦いを見せるのか

>魔王が逃げ出すことはあっても
恐ろしいものを見たハーゴンさんかな?


678 : 名無しさん :2016/06/27(月) 16:58:17 RZTSZlLA0
投下乙、参加者集合盛り上がってきたぜ
>>677
破壊神だって怖いもん見たら裸足で逃げ出すからしゃーない。尚HP全快で再戦する鬼畜仕様。


679 : 再現:憑依 ◆jBbT8DDI4U :2016/07/02(土) 03:49:42 9DvhdwdQ0
 情報交換はスムーズに完了した。
 いや、スムーズに完了したと言うよりかは、小鳥が割りきったと言う方が正しいか。
 何せ、スコールの開口一番のセリフがセリフだったからだ。

「俺の名前はスコール=レオンハート。バラムガーデンのSeeD候補生だ」

 なんて言葉を口にする顔は真面目で、目はまっすぐと小鳥を見つめていた。
 人が死んでしまった光景を見たが故に、おかしくなってしまったのか。
 それとも、根っからの熱狂的ファンで、自らをそれに落とし込んでいるのか。
 はたまた、"本当"にスコール=レオンハートなのか。
 どれも十分に考えられる。
 何せ、つい先程までは触れることも知ることもなかった、悪魔という存在が自分の傍に居るのだから。
 異次元からの来訪者、そんなファンタジーめいた話が繰り広げられたとしても、おかしくはないだろう。
 真実はどうあれ、彼は「スコール=レオンハート」だと割り切ることが、今は余計な混乱を招かずに済むのだろう。
 それなら、アイドルや世界的企業の社長はおろか、東京ないし日本の話が通じないのも納得できる。
 だから、小鳥はそうする事にしたのだ。

「そういえば、どんなゲームだったかな……」

 話が一段落した所で、小鳥はふと呟く。
 「FINAL FANTASY8」は、日本でも有数のゲーム会社がリリースしたシリーズの、8作目に当たるゲームだ。
 小鳥も当時はプレイした記憶があるが、そこまでやりこんでいた訳ではないので、細部はほとんど覚えていなかった。
 精々覚えていることは、それこそスコールという主人公が現れる事くらいだ。
 尤も、それを明確に覚えていて、かつ彼にそれを問い詰めようものなら、大変なことになっていただろう。
 今、小鳥が五体満足でこの場に立っていられるのは、なまじ"覚えていなかったから"である。
 そんなことを知る由もなく、小鳥はスコールを引き連れて、東京の街を歩いていた。
 目指すのは人が集まるであろう中心地。
 スコールのように、現状をどうにかしようとする人間に、一人でも多く出会うためであった。

「そういえば聞き忘れていたが、武器のような物は持っていないか? 俺はSeeD候補生だ、一般人のアンタを守るくらいの力はある」

 歩き始めてからしばらくして、ふとスコールが口を開く。
 スコールには、立派な武器である一丁の拳銃が支給されていた。
 だが、それは彼の得物ではなく、戦闘において不慣れな武器を使うリスクは重々承知している。
 何より、"彼"の獲物が剣であることを思い出した小鳥は、特に渋ることもなく支給されていた包丁をスコールに渡す。
 包丁、と一言に言っても、ただの包丁ではない。
 刀のようにすらっと長い刀身を持つそれは、主にマグロを解体するのに使われるものだ。
 剣と呼ぶには少し心もとないが、ないよりはマシだ。

「贅沢は言っていられないが、しばらくはこれを武器にするしか無いだろう」

 受け取ったそれを軽く振るいながら、スコールは一人呟く。
 持っていた拳銃を包丁に括りつけることも考えたが、実行するには至らなかった。
 そして、沈黙。
 妙な気まずさが漂う中、二人と一人は黙々と足を進め続ける。
 やっぱり何か話題を振ったほうが良いのだろうか、それともこのまま黙っておいたほうが良いのだろうか。
 いや、しばらく行動を共にするのだからちゃんとコミュニケーションを取っておいたほうがいいだろう。
 こんな時、プロデューサーさんならどうするんだろうか?
 ふと、そんなことを考えた時、ぴたりとレラの足が止まる。
 何事か、と問い詰めようとした時、すっと小鳥の前を遮るように、片腕が差し出された。

「……来る」

 たった、一言。
 それだけで、空気ががらりと変わった。
 異様な空気を察することは、簡単だった。
 簡単だったからこそ、理解してしまった。
 突き刺さる殺気、圧倒される気迫、身に迫る危険。
 それら全てが頭を駆け巡り、吹き飛んでいく。
 両目に映ったそれは、まさに竜と呼ぶに相応しく。
 頭が真っ白になったと同時に、響いた咆哮が全てを揺るがした。


680 : 再現:憑依 ◆jBbT8DDI4U :2016/07/02(土) 03:50:00 9DvhdwdQ0

「小鳥ッ!!」

 戦いの勘から、レラとスコールはすんでの所で足を踏ん張り、防御することが出来た。
 だが、戦いに関しては素人そのものである小鳥がそれを防げるわけもなく。
 ビルを揺らしてガラスを叩き割る咆哮に飲み込まれ、ふわりと後ろへ吹き飛ばされて行った。
 受け身もへったくれもない姿勢で地面へと落ち、背中を打った衝撃で空気を吐き出していく。
 ぐるり、と視界が白み、そのまま意識を手放していく。
 無防備そのものであった彼女を救わんと、素早く動いていたスコールが小鳥を抱きかかえ、ガラスの舞う道から遠ざけていく。
 そして近くの屋根がある所に小鳥を寝かせた所で、スコールは包丁を構えて現れた恐竜を睨む。
 訓練所に居る恐竜とは違うが、あれと同じ……あるいは、それ以上か。
 ガーディアンフォースのジャンクションもない状況で、果たして渡り合えるのだろうか。

「行くわよ、シクルゥ」

 スコールが戦況を分析している間に、レラはシクルゥに跨がり、竜と相対する。
 体格差は数倍どころの話ではない。
 竜が口をあんぐりと開ければ、少女が跨っている狼諸共飲み込まれてしまいそうなほどだ。
 それでも、少女は怯むことなく、竜の姿をじっと睨む。
 再度、響き渡る咆哮。揺れ動く、すべて。
 それに吹き飛ばされないように、レラはしっかりとシクルゥの体を掴み、シクルゥは地に足を縛り付ける。
 そして、咆哮が途切れた瞬間、シクルゥは竜へと向かっていく。
 吹きすさぶ一陣の風となり、風は刃となり、竜を傷つけんと迫る。
 だが、響き渡ったのは甲高い金属音。
 それに手応えを感じなかったレラの顔は、渋い。
 予想通り、竜には傷一つついていなかった。
 そして、竜はそれを"宣戦布告"と受け取っていた。
 頭部を僅かに反らせ、そのまま高速でレラへと振りぬいていく。
 なんてことはない、ただの頭突き。
 けれど、それを脅威に変えうるほどの体格差は、埋められない。
 シクルゥと素早く分離することで、互いに直撃は免れた。
 しかし、その代償として、無防備な状態を生み出してしまった。
 ほんの一瞬、けれどその一瞬が、それを招いた。
 なんとか姿勢を整えて地面に着地したとほぼ同時に、どすんと重い衝撃がレラの体に走る。
 その正体は、探るまでもない。
 敵対していた、竜によるものだ。
 執拗にレラを追っていたその瞳は、決してレラを逃すことはなく。
 彼女が頭突きから逃れたとほぼ同時に、彼女が逃れた方角へと走りだしていたのだ。
 そして、彼女の着地に合わせるように、超速の頭突きが叩き込まれる。
 防御の姿勢すら間に合わず、その小さな体に叩き込まれる衝撃が、彼女の全身を軋ませる。
 肺に溜め込んでいた空気を、胃液混じりに吐き出しながら、レラは一直線に何処かへと吹き飛ばされていく。
 たった一撃、それだけで状況はここまで悪化した。
 圧倒的な力の差、それをまじまじと見せつけられながらも、レラは血を吐きながら立ち上がる。
 小刀を構え、しっかりと竜の姿を見据えたまま、両足で立ち上がる、が。

「よそ見してんじゃねェ!!」

 意識の外から繰り出されたゴムハンマーが、レラの腹部に深々と突き刺さっていく。
 もう一度絞り出された空気に混じっていたのは、真っ赤な血液。
 見開かれた目は焦点を失い、竜の姿を捉えられなくなる。

「レラッ!!」

 慌ててシクルゥとスコールが駆け寄ろうとするが、竜はそれを良しとしない。
 響き渡る咆哮が、スコール達の足をその場に縫い付けていく。
 それで足が止まったのを確認してから、竜は再び頭を大きく振るう。
 とっさの防御は間に合ったが、それでも竜の巨体から繰り出された一撃は、スコールたちを吹き飛ばすには、十分すぎる威力を持っていた。
 どうん、と壁にスコールが叩きつけられると同時に、倒れ伏しているレラにゴムハンマーが振り下ろされる。
 もはや貯めこんだ空気など残っておらず、吐き出されるのは混じりけのない血だけ。
 それを浴びながら、ハンマーを振り下ろす男は、笑う。


681 : 再現:憑依 ◆jBbT8DDI4U :2016/07/02(土) 03:50:22 9DvhdwdQ0

「キヒヒヒ……よく見りゃ、いい"女"じゃねえか」

 べろり、と頬に付いた血を舐めてから、レラの体へと手を這わせる。
 明確な悪意を持って向けられているそれが、何を目的としているかは、すぐに解った。
 だから、レラは反射的に体を翻し、飛び上がりながら男の腕を斬りつけていく。

「生憎、趣味じゃないの」

 吐き捨てた言葉とは裏腹に、全身はまだ痛む。
 正直、小刀を構えて立ち上がっているのがやっとだ。
 それでも、引くわけには行かなかった。
 おそらく竜の"召喚士"であるこの男をここで野放しにすれば、どうなるかは考えるまでもない。
 ましてや、小鳥の元にたどり着いてしまえば、男が何をしでかすかは、手に取るようにわかる。
 だから、ここで自分が止めなくてはいけないのだ。
 所詮自分は影の存在、そこに居て、そこに居ることを許されない、そんな存在だ。
 ならば、この体が傷つこうと、犯されようとも構わない。
 それは全て、虚無へと帰るのだから。
 この身が傷つくことで、彼女が助かるのならば、それでいいのだ。
 だから、この場は引けない、引く訳にはいかない。

「チッ……言わせておきゃ調子に乗りやがって!!」

 男が舌打ちをしてから、ゴムハンマーを構え直す。
 その構えからして、素人なのは目に見えている。
 傷ついた体とはいえ、それならまだこちらに分がある。
 とにかく、この男をここで止める。
 せめて、小鳥が目を覚ますまでの時間を稼ぐ。
 そのために、レラは小刀を握り、目の前の"敵"を睨んだ。



「う……」

 がらり、と瓦礫を落としながら、スコールはゆっくりと目を覚ます。
 ほんのすこしの間、気を失っていたようだ。
 だが、気を失っている場合ではないことを思い出したスコールは、即座に立ち上がろうとする。

「お待たせ、愛しのスコールッ(はあと」

 そんな彼を呼び止めるように、彼のCOMPから声が響く。
 先程までとはまた違う声色を使うジュンコに辟易としながらも、スコールは返事をする。

「今まで何をしてたんだ……」
「ちょっとggrのに時間が掛かってたのよ〜、電子の海を彷徨う私はWarrior〜〜」

 相変わらず理解不能な言葉を並べながら、彼女はスコールへと語る。
 一体何を企んでいるのだろうか、本当にその心は読めない。
 だが、この状況で語りかけてくるということは、ある程度は予想がつく。

「ねえスコール」
「何だ」

 そう心に思いながら、スコールは続くジュンコの言葉を待った。


682 : 再現:憑依 ◆jBbT8DDI4U :2016/07/02(土) 03:50:34 9DvhdwdQ0

「私をジャンクションして」

 そして、聞こえたのは衝撃的な言葉だった。
 よもや、彼女がガーディアン・フォースだとでも言うのだろうか。
 少し衝撃的な発言に、スコールは少しだけ取り乱しながら、ジュンコへと問いなおす。

「……出来るのか?」
「この天才に出来ないことなんて何もないのよ、ウフフ」

 怪しげな笑みを浮かべるジュンコに対し、スコールは不安の色を隠し切れない。
 無理もない、授業では"人の形をしたガーディアンフォース"なんて存在、聞いたことが無かったからだ。

「ほら、悩んでる時間はないよ。まっすぐ手をかざして、"習ったとおり"にやってみて」

 そんなスコールを押し切るように、ジュンコはスコールへとそう語る。
 まだ信じきれていないスコールだったが、"ジャンクション"によって得られる力と、今の状況を鑑みた上で、彼女を信じることにした。
 そして、ゆっくりと端末へと手を伸ばしたスコールを見て、ジュンコはにやりと笑う。

 その瞬間、ぶつりと何かが繋がる感触が走った。

 間違いない、ガーディアンフォースが脳へと繋がる時と同じ、そう、ジャンクションの感覚だ。

「終わったらそのまま召喚してちょうだい、このジュンコちゃんの力を見せてあげるんだから。
 だから、あのデカ竜の相手は、よろしくね。それとついでに……」

 そして、ジャンクションの感覚を掴んでいる最中のスコールに、ジュンコはあることをスコールに耳打ちし、端末から"きれいさっぱり"居なくなった。



 金持ちの道楽が企画した、一本のゲームの再現。
 しかしその金持ちは、裏世界にも精通していた。
 故に、ゲームの再現に一切の妥協を許していなかった。
 ガーディアン・フォース。ファンタジーの技術であるそれさえも、可能にしてしまっていた。
 軽子坂高校で起きた事件の真相、全世界に無差別的にばら撒かれた悪魔召喚プログラム、そしてある一家に伝えられる、悪魔……ないし、神をその身に降ろす技法。
 それをプログラムに落としこむ事によって、ガーディアン・フォースは実現されていた。
 そして、ジュンコはそのガーディアン・フォースプログラムを、検索とハッキングだけで掘り当ててみせたのだ。
 電霊という姿も、まあ悪くは無いのかもしれない。
 こうして一人の若者に力を与え、そして共に戦い、いずれ――――



 ――――絶望に狂う姿を、最前線で見届けられるのだから。



 瓦礫を払ってからかけ出したスコールは、懐から拳銃を取り出し、竜へと向けて数発発砲する。
 攻撃を目的としたものではなく、注意を自分に向けることが目的である。
 予想通り、竜は意識をレラからこちらに向け直し、まずは足封じの為に、全てを揺るがす咆哮を放つ。
 先ほどと同じように、少しでも動けば吹き飛ばされてしまいそうな圧が、スコールを襲う。
 だが、それでいい、寧ろ、それこそが狙いだったのだ。
 足を止めたままでも行える、攻めの手段。
 先程までは手段になかったそれを、スコールは練り上げていき、そして。

「行けッ――――エノシマジュンコ!!」

 咆哮が止まったのと同時に、それを放った。


683 : 再現:憑依 ◆jBbT8DDI4U :2016/07/02(土) 03:50:46 9DvhdwdQ0



「おうおう、まだ立つのかよォ? 壊されたりない、って感じだな」

 ゴムハンマーを持つ男の前には、見るも痛々しい姿の少女。
 一度砕かれた腕からは、白い骨が少し見えている。
 それでも彼女はそんな腕で小刀を持ち、それを男へと向けて、笑う。

「生憎だけど、元より形なんて無い。だから、壊れることなんて無いの」

 そう、本来は彼女に"姿"など無い。
 レラであり、レラではない、"彼女"の心の弱さが生み出したのが、レラだ。
 だから、壊れることなんて無いと言い捨てて、彼女は笑う。
 そんな彼女の姿が気に食わなかったのか、男は唾を吐き捨ててレラへと向かう。
 彼女だけは徹底的に壊す、そう心に決めた一撃を叩き込むために、ハンマーを振り上げ、すぐさま振り下ろした、その時だ。

「ぱんぱかぱーん!!」

 その時だ、そんな声が響いたのは。
 そしてほぼ同時に、男のハンマーと割りこむように、如何にも"ギャル"と言った格好の少女が現れていた。
 にやりと笑う少女と反するように、男は不満気な顔をして、その場から飛び退く。

「テメェ、どっから来やがった」
「ふふーん、それは禁則事項です☆」

 男の問いかけには答えないように、少女はぺろっと舌を出してごまかしていく。
 少しだけ沈黙が続いた後、男はにやりと笑い直し、ハンマーを構える。

「まァいい、ぶっ殺すのが一人増えたぐらい、どうって事はねえ」
「へぇ〜〜、このジュンコちゃんを前にぶっ殺すとは、いい度胸だねぇ〜〜」

 だが、ハンマーを構え直す男に対し、少女は余裕を持ったまま、言葉を続ける。

「私、エノシマジュンコは絶望を司る存在。全ての絶望は私の手にあるのよ」

 ぞくり、と何かが走る。
 その言葉だけはやけに重く、冷たい"何か"があったからだ。

「そんな私から、泉井蘭くんへプレゼントがあります」

 しかし、それを払拭するように、彼女は即座に笑い直し、あるものを手に掲げる。

「これ、な〜〜〜〜んだ???」

 それは、一つのオイルライター。
 近くのコンビニにありそうな、なんの変哲も無いライターだ。
 それが一体何を意味するのか、それを理解しようとした時。
 どうん、と大きな音が響き、何かが吹き上がる音が聞こえ始めた。
 ゆっくりと後ろを振り向くと、そこには建物に突っ込んでいる竜の姿があった。
 いや、突っ込んでいたのは、ただの建物ではない。
 竜が一目散に走り抜けたがゆえに、半壊を巻き起こした建物の名、それは。

 ガソリンスタンド。

 それを理解した時、少女はにやりと笑い直し、ライターを"そこに向かって"投げ飛ばした。

 間もなくして、火柱と呼ぶに相応しい炎が、巻き起こった。


684 : 再現:憑依 ◆jBbT8DDI4U :2016/07/02(土) 03:51:09 9DvhdwdQ0
「ふふーん、今回は私とスコールの愛の作戦で上手く行きましたね。
 やったねたえちゃん! 経験値が増えるよ!」

 嬉しそうにCOMPから語るジュンコに対し、スコールは無言のまま東京を駆けていた。
 その背には、まだ目を覚まさない小鳥の姿がある。
 結果としては上手くいったが、近くにあるガソリンスタンドに竜を突っ込ませろ、とジュンコが言った時はどうなることかと思っていた。
 しかし、予想以上の勢いを持つ炎は、次々に建物を飲み込んでいる。
 一面が火の海になるのは、時間の問題かもしれない。
 ひとまず今は、一歩でも遠くに逃げ出したほうが良さそうだ。
 ジュンコが言うには、小鳥の悪魔、レラは自らCOMPへと戻って行ったということだ。
 ならば、懸念することはないはずなのだが、何かが引っかかる。
 それが何なのか、スコールは頭のなかで探しながら、スコールはただ只管に足を進め続けた。



「チッ……いい所で邪魔しやがって」

 同じく、炎を背に悪態をつくのは、襲撃者、泉井蘭だ。
 燃え盛る炎は、彼にとってもいい思い出が無い。
 竜の力で無理やり追跡しても良かったが、どうやら竜も炎が苦手らしい。
 肝心な所で使えないやつだ、と思いながら、蘭は竜の背に乗り、火事から逃げ出していた。
 その時に思っていたのは、一人の女のことだ。
 あの少女を壊す寸前で現れた、謎の少女。
 そういえばテレビに良く写っていた"江ノ島盾子"によく似ていた気がするが、問題はそこではない。
 彼女が"自分の名前を知っていたこと"と、"自分に当てつけるかのように炎を生み出したこと"が、問題だ。
 まるで、自分の事ならなんでも知っていると言わんばかりの動き。
 それは、彼がこの世で嫌う人間のうちの一人と、良く似た動きでもあった。

「絶対に壊してやる……連れの女も、男も含めて、絶対にだ……」

 だから彼は、その言葉とともに決意する。
 次にあの女に会ったならば、どんな手を使ってでも、全力で壊す。
 サングラスの奥の目に、その強い意志を宿らせながら、彼も東京の街を駆けていた。

【文京区/1日目/午前】
【『スコール=レオンハート』@FF8】
[状態]:ダメージ(中)
[装備]:COMP(スマホ型)、
[道具]:基本支給品、不明支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:早く帰りたい(真顔)
1:火事から逃げる
[備考]
※FF8の同名キャラを再現している(させられている)現代人です。
※上記の理由によりラフディバイド・エンドオブハートなどの特殊技(フィニッシュブロー)は使えません。物理的に無理。
※そう、今はね……
[COMP]
1:エノシマジュンコ@ダンガンロンパ
[種族]:電霊
[状態]:健康
※参加者達の世界とは異なる平行世界(=本家ダンガンロンパ世界)の江ノ島盾子をベースとした電霊です。
※電霊的な手段で、参加者及び悪魔の基礎データ(ライブラや悪魔全書で見れる程度の設定文含む)をアナライズできます。
 会話とアナライズ以外に何が出来るかは不明です。
※ggれます。アナライズと組み合わせてね! まあ素敵。
※上記スキルの派生で、ガーディアン・フォースプログラムをインストールし、自身をジャンクション出来るようになりました。
 スコール以外がジャンクションできるかどうかは、不明です。

【音無小鳥@アイドルマスター】
[状態]:気絶
[装備]:COMP(インカム型)
[道具]:基本支給品、包丁
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:怖い、どうすべきかは、わからない。
1:――――
[COMP]
1:レラ@サムライスピリッツ
[種族]:幻魔
[状態]:瀕死、COMPの中
[備考]
※シクルゥもセットです(女神転生のヴァルキリーの馬みたいなもん)

【文京区/1日目/午前】
【泉井蘭@デュラララ!!】
[状態]:健康
[装備]:硬質ゴムハンマー
[道具]:基本支給品, 携帯電話型COMP
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:糞雑魚どもを皆殺し。女は殺す前に『楽しむ』のも良い。
1:火事から逃げる
2:少女(エノシマジュンコ)は次に見かけたら徹底的に壊す。
[COMP]
1:轟竜 ティガレックス@モンスターハンターシリーズ
[状態]:健康


685 : ◆jBbT8DDI4U :2016/07/02(土) 03:51:22 9DvhdwdQ0
投下終了です。


686 : 名無しさん :2016/07/03(日) 20:15:03 38IVY/mc0
江ノ島がジャンクションか…金持ちスゲー


687 : ◆lb.YEGOV.. :2016/07/05(火) 23:51:12 8oLaIgyM0
多田李衣菜、ヴァニラ・アイス投下します。


688 : 隣人たちは静かに笑う ◆lb.YEGOV.. :2016/07/05(火) 23:54:27 8oLaIgyM0

「駄目だ、電車通ってないみたい」

下北沢駅の改札の手前、完全に機能を停止した電工掲示板と自動改札を前に、多田李衣菜が失望の声をあげる。
目的地は渋谷にある美城プロダクションの本社。
名簿にプロダクションの友人達や面識のある所属アイドル達が載っているのを見つけた彼女は、知り合いが参加させられていると知った彼女たちならば、皆と合流する為にプロダクションへ集まると考えたのだった。
徒歩で向かえなくはない距離だったが、悪魔がうろつく道を進むよりかは安全ではないかという考えの元、下北沢駅まで足を運んだ訳だが、電車は完全にその機能を停止しており無駄足となってしまった。

「ここから徒歩で渋谷までかぁ、しかもエレキギター背負って」

げんなりとした表情を浮かべる彼女の肩に背負ったエレキギター型COMPの重みがずっしりと伝わる。
アイドルのレッスンで相応の持久力や筋力を身に付けてこそいるが、それなりの重量の荷物を背負いながら下北沢から渋谷までの距離を歩くとなれば相応の消耗は免れない
眉間に皺を寄せながら、彼女はデイパックから地図を取り出し、一応の経路を確認する事にした。

「このまま井の頭線の線路沿いを伝って行くのが一番わかりやすいよね。渋谷駅まで行かなくても新泉から道玄坂の方に出れれば……」
「ほー、やっぱり現地人だとそういうルートもよく分かるもんだな」

突然背後から聞こえた声と彼女の横から地図を除きこむように現れた男の顔に、「ひゃっ!?」という声とともに李衣菜の肩が反射的に跳ねた。
声の主は彼女が召喚した悪魔、ザベル・ザロック。
初対面の際、ザベルが危険人物であることを認知していた李衣菜は、どうにかしてCOMPに彼を戻せないものかと考えたが、街中に蠢く悪魔達の姿を見て諦めざるをえなかった。
殺し合いなどという非日常に免疫も経験もない彼女ではデイパックに入っていた銃器も満足に扱えない。
必然的に悪魔に襲われた場合はザベルに頼る以外に道はなかったのだ。
幸いにも相手が陽気で話しやすい性格だった為、コミュニケーションを取るのに苦労はしないが、それでも生前の凶行から李衣菜の中の警戒心を払拭するまでにはまだ至ってなかった。

「まあ、ここからそう遠くねえ場所だったのは幸いだったな。それ担ぎながら徒歩で大移動なんてする羽目になったら嬢ちゃんだって困ってたろ?」
「あ、あははは。そうですね」

エレキギターを指差すザベルに対し、李衣菜は苦い笑顔で応える。
もしも渋谷から遠い場所に彼女が飛ばされていたのだとしたら、渋谷に向かうこと事態を断念せねばならなかっただろう。

「それじゃあとっととシブヤとやらに行くか、悪魔に見つからねえように……」

会話の途中でザベルが自動改札の先、ホームへと向かう階段を凝視しながら黙り混んだ。
何があったのかと李衣菜が視線を向けた先にはコツコツという足音を響かせ、階段を登ってくる紫のレオタードのような服の上に黒いジャケットを羽織り、何故か棺桶を背負った奇抜なスタイルの男。
男の首にはキラリと輝く金属、李衣菜につけられているものと同じ首輪が見受けられた。


689 : 隣人たちは静かに笑う ◆lb.YEGOV.. :2016/07/05(火) 23:55:07 8oLaIgyM0

「……女と使役している悪魔か」
「なんだテメエ、葬儀屋の世話になるには俺サマは遅すぎるしそっちの嬢ちゃんは早すぎるぜ?」

男達も李衣菜達の存在に気づいたのであろう。階段を登りきったところで男が口を開き、ザベルが軽口で応対した。
男はザベルの軽口を無視しながら、サマナーである李衣菜へと視線を向ける。
奇抜な見た目と裏腹に暗く淀んだ冷ややかな男の瞳が李衣菜を射抜く。
凶相、とまではいかないが強面の類いである男の視線を受け、李衣菜は思わずたじろぐ。

(ど、どうしよう、なんか怖そうな人だけど……。首輪つけてるってこの凄い格好の人も私と同じ巻き込まれた人だよね?)

ある意味では非常にロックとも取れる男の服装と背負った棺桶の不気味さが李衣菜の警戒心を助長する。
取れる選択肢は逃げるか話しかけてみるかの二択。
チラリ、と不安げな瞳でどうすべきかザベルへと視線を向ける。
彼の目に眼前の男がどう写っているのかは定かではないが、その表情には警戒の感情を色濃く表れており、李衣菜の判断を悩ませる結果にしかならなかった。
被我の距離、そして自動改札という物理的な障害物を考えれば逃げる事も容易だ。
しかし、人を見かけだけで判断していいものかという状況に不似合いな良識が李衣菜の行動を鈍らせる。

そんな李衣菜の煩悶を知ってか知らずか、男が口を開いた。

「娘、お前に対して危害を加えるつもりは私にはない」

低い、それでいてよく通る声が響いたのとほぼ同時に男が背負った棺桶とデイパックを降ろし、その後ろへと移動する。

「これは私の『誠意』だ。お前が初対面の私に警戒しているのは理解ができる。棺桶などという不気味なものも背負っているしな。
故に害意はないと『誠意』をもって証明する為、私は私に支給されたこの棺桶の形をしたCOMPにもデイパックにも触れないし、このCOMPより一歩も前には進まない。
もしそれを破ったのであればお前は即座に逃げ出しても、その悪魔を使役して攻撃をしかけても構わない」

それは常軌を逸した真似だと言えた。
そもそもCOMPの形が常軌を逸しているとか、それを律儀に担いで駅の階段を登ってやってくること自体が常軌を逸しているという話は横においておき、男は自身の武器とも呼べるものを放り出す事で、殺し合いに乗っているかも定かではない自身に敵対の意思を持たないと証明しようと試みたのだ。

「名が知りたいというのであれば名乗りもしよう。その代わり、私の話を聞いて欲しい。
この殺し合いに私同様に呼ばれた"ジャン・ピエール・ポルナレフ"という危険な男の話を」
「危険な男、ですか?」

李衣菜が男の言葉に食いついく。
男の言った"ジャン・ピエール・ポルルナレフ"という人名が名簿に載っていた事は確認している。
どういう人物なのかはわからないが、"危険な男"と言われれば無視する訳にもいかなかった。


690 : 隣人たちは静かに笑う ◆lb.YEGOV.. :2016/07/05(火) 23:55:51 8oLaIgyM0

「その反応は私の話を聞くつもりである、と判断していいのか?」
「え、えっと、その位置で話してくれるんでしたら大丈夫です。危険な人って事は私も注意しなきゃいけないでしょうし」

李衣菜の返事と提案に承服したのか男はヴァニラ・アイスという自らの名を名乗り、自身がある男性に仕えている事、そしてその男の命を狙う一味の一人であるポルナレフを倒さなくてはならない事を告げる。
早速、ヴァニラ・アイスの口からポルナレフという男の見た目とどの様な危険人物であるのかを李衣菜は聞かされる事になった。
曰く、女と見れば軟派な口調と陽気な態度で口説きにかかり、油断したところを手にかける外道。
曰く、騎士道を是とするポーズを見せながら卑劣な真似をとることも辞さない冷血漢。
曰く、一般人には見えない悪霊を使役する悪霊使い。
曰く、多くの仲間がこの男と一味により志半ばで倒されたこと。
自分は主の為にもこの悪辣な男をここで倒さなければならない、と説明するヴァニラ・アイスの言葉と表情に李衣菜は真に迫るものを感じた。

「娘、できれば多くの参加者にこの男を信用するなと伝えて欲しい。恐らくこの男は本性を隠し、お前のようなか弱い女性の参加者を盾として囲おうと考えているに違いない」
「か弱い女性……」

頭を過るのはアイドルの仲間達や事務員の千川ちひろの姿。
もし、彼女達がその男の毒牙にかかったら。
李衣菜の顔が自然と青ざめていく。

「……知り合いでもいるのか?」
「え!?」

ヴァニラ・アイスの指摘に李衣菜は頭に浮かんでいた悪い予想が表情に出ていた事を悟る。
知り合いが参加させられている事を伝えるべきか、そこまで信用していいものか。
李衣菜の悩みは中空をさ迷う目線となって露わになる。
そしてその視線がヴァニラ・アイスの放り出した棺桶とデイパックへと留まった。
自分に危険人物の情報を伝えるため、『誠意』として武器となるものを放り出したヴァニラ・アイスの行為。
コク、と李衣菜は自分の決意を示すように首を縦に振る。ここまで出来る人間であるならば信用できる、そう結論づけたのだった。

「あの、私、多田李衣菜って名前で、その、美城ってプロダクションのアイドルをやっているんですけど、そこのアイドル仲間と事務員さんがここに呼ばれてて」
「そうだったのか」
「私、ヴァニラさんの言う事を信じようって思います。それで、これから仲間がいないか渋谷にある美城プロダクションに行こうと思うんですけど良ければヴァニラさんも……」
「悪いがそれはできん」

李衣菜のから同行の要請はヴァニラの即答によって断られる。

「私はなによりもまずあの男を倒さねばならん、油断ならん強敵だ。だからこそ戦うこともできないお前を連れていくという選択は取れん」

足手まといを連れていくつもりはない。暗にそう言われているのだということは李衣菜にも理解ができた。
信用のできそうな人物とどうにか行動をともにできないかと頭を回転させるが、いい考えは浮かばない。


691 : 隣人たちは静かに笑う ◆lb.YEGOV.. :2016/07/05(火) 23:56:32 8oLaIgyM0

「渋谷という事はお前は東に行くのだろう? なら私は西に向かいあの男に対する忠告と捜索を続けるつもりだ。お前はお前の本懐を果たすといい」

それだけを告げると、もう用はない、と言わんばかりにヴァニラ・アイスは棺桶とデイパックに手を伸ばし、踵を返して自らが登ってきた階段へと戻っていく。
それは自分とは同行しないという何よりの意志表示に思え、李衣菜は呼び止める事を躊躇ってしまう。
不意に、ヴァニラ・アイスが足を止めた。

「……お前の仲間の身体的な特徴はあるか」
「え?」
「お前の仲間とやらに会う事もあるかもしれん。その時にお前が向かった先を伝えておけば何かと助かるだろう」
「あっ」

顔だけを振り向かせてヴァニラ・アイスが李衣菜に問いかける。
その言葉に李衣菜の顔が微かに明るさを取り戻す。
これがヴァニラ・アイスからの最大限の譲歩なのだろうと考えた李衣菜は、わかるだけの特徴と名前をヴァニラ・アイスへと伝えた。

「島村卯月、前川みく、市原仁奈、千川ちひろか。この4人らしき人物を見つけたら確かに伝えてやろう」
「あ、ありがとうございます!」

ぺこりとお辞儀した李衣菜を尻目に、ヴァニラ・アイスは階段を降りていく。
コツコツという足音が次第に遠ざかっていき、次第に静寂が訪れた。
再び駅前にいる人影が自分とザベルだけになったと確認した李衣菜から、ふう、と一際大きなため息が漏れる。
緊張が切れたのだろう、軽い虚脱感が彼女の体を襲っていた。

「よーう、お疲れさん!まさか初めての交渉が悪魔じゃなくて他の人間になるとはなー」

パチパチと拍手を響かせながら事態を静観していたザベルが口を開き、李衣菜をねぎらう。
彼女を襲っていた緊張などどこ吹く風といった調子の声に李衣菜が半目でザベルを見やった。
もっとも非難めいた眼差しもザベルにとってはなんら効果を見せる事はなかったが。

「で、嬢ちゃんはあの野郎の言う事は信じるのかい」
「信じるってさっき言ったじゃないですか」
「いや、ほらよ。この場だけ合わせるって手もあったろ」
「そんな事しませんよ。わざわざ私に忠告してくれる為だけに武器を置いてくれたいい人ですし」
「武器を置いてくれた、ねえ」
「なんですか、その物言い」
「いーや、なんでもねえさ、嬢ちゃんがそう考えてるんなら俺サマもそれを尊重しようじゃねーの」

ヴァニラ・アイスの言い分を信じるかとの問いに李衣菜はさも当然だとばかりに信用すると答え、ザベルが僅かに眉間に皺を寄せる。
含みのあるザベルの言い方に少々ムッとした調子で李衣菜が尋ね返すものの、ザベルはまともに取り合うこともなく手をひらひらと振りながら駅の外へと歩いていく。話を終わりにし、渋谷へ向かおうと言いたいのだろう。
そんなザベルの態度に釈然としないものを感じつつもあわてて李衣菜が後を追う。
その内心でみく達を始め、仲間達に何事もないようにと祈りながら渋谷への一歩を踏み出した。


692 : 隣人たちは静かに笑う ◆lb.YEGOV.. :2016/07/05(火) 23:57:06 8oLaIgyM0

(まったく、おめでたい小娘だ)

背後についてくる李衣菜の気配を感じながら、ザベルは心の中で苦い顔を浮かべる。
ヴァニラ・アイスを名乗る参加者に関して、結論から言えばザベルは微塵も信用をおいていなかった。
誠意を見せるなどと言ってCOMPとデイパックを投げ捨てていたが、事前に悪魔を召喚しておいたり、武器を懐に忍ばせておけば、なんら意味の無い行為である。
そしてそんな人間が告げる危険人物の情報なぞどこまで信憑性があるのか分かったものではない。
そこまで理解してなお、それを李衣菜とヴァニラ・アイスが会話しているタイミングで指摘しなかった理由は、サマナーである李衣菜の安全を優先したからだ。
武器や悪魔を忍ばせている危険性のある男の目の前で、行為や言動の矛盾点をつき論破すればどうなるか。
自分にとって都合の悪い事実を知ってしまった存在の消去。つまり李衣菜の殺害である。
一般人に毛が生えた程度の彼女にあの危険な雰囲気を纏った男と戦わせるか。それとも李衣菜には騙されてもらい何事もなく切り抜けるか。ザベルが取った選択は自分の負担も少ない後者だった。

そのせいで被害の及ぶ参加者はいるであろうがそこまでは知ったことではない。
ザベルにとって重要な事はあの場で李衣菜が死亡し、自身が入っていたCOMPが破壊されない事だったのだから。

(最後まで生き残って魔神皇のガキの力を手にする為とはいえ、こいつは先が思いやられるぜ)

悪魔として召喚されたザベルには一つの野望があった。
オリジナルのザベルが帝王オゾムや冥王ジェダの力を我が物とする為に動いていたように、このザベルは魔神皇の持つ強大な魔力を我が物にせんと狙っていたのだ。
その為には悪魔合体も死亡も削除もされる事なく、ザベル・ザロックとして殺し合いの最終局面まで残らねばならない。
その手始めとしてサマナーとなった李衣菜の不興を買わないように気のいい悪魔を演じている訳である。
今ここでザベルはヴァニラ・アイスの行為の矛盾点をつき、李衣菜を説得する事も考えたが、彼を信じきっていた彼女の様子を見てそれを諦める。
魔神皇の元に辿り着く為には善きにしろ悪きにしろ殺し合いを進展させていかねばならない。
故にこの信憑性の薄い危険人物の情報を殺し合いを進展させる為の火種として、騙された李衣菜を介して利用しようと割りきったのだ。

(そりゃあオトモダチの事まで気にかけてくれる相手に気を許しちまうのは仕方ねーかもしれねーが、ちょいとばっかり人が良すぎるぜ)

李衣菜がヴァニラ・アイスをここまで信用した理由は十中八九、李衣菜の知り合いに彼女の事と向かう場所を伝えると約束した事だ。
李衣菜の目からヴァニラ・アイスは、やらなければいけない事を抱えているというのに、自分達を気にかけてくれたいい人、と映っていることだろう。
信用できる人物に仲間を助けて貰える事に李衣菜は望みをかけたのだろうが、ザベルから見ればロクに知らない怪しい人間に仲間の情報をバラしてしまった迂闊な行為だ。

(危ねえ奴に名前と姿が割れちまった嬢ちゃんのオトモダチと、悪評振り撒かれる事になったポルナレフって野郎にゃ気の毒だが、そこまで気にする義理は俺サマにはねーしな)

だがそれらの考えも全て胸の中に仕舞い込む。
歪めた口許を隠す様に、ジーンズのポケットに入れていた煙草を取りだしくわえる。
ここからどう立ち回るか、美城プロダクションに到着した後はどのように動くか。
今回の一件で判明した自身のサマナーの"人が良い"という致命的な弱点も鑑みて練っていかなければならない。
腐っても狡猾な脳みそを回転させながら、野望への道程をザベルは組み立てていく。


693 : 隣人たちは静かに笑う ◆lb.YEGOV.. :2016/07/05(火) 23:57:31 8oLaIgyM0

【世田谷区 下北沢駅前/1日目/朝】

【多田李衣菜@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:健康
[装備]:COMP(エレキギター型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:帰りたい。
[状態]:健康
1:渋谷の美城プロの本社を目指す
2:みくちゃん・卯月ちゃん・仁奈ちゃん・ちひろさんと合流したい
3:ポルナレフが危険人物である事を皆に知らせる
4:ヴァニラ・アイスを信用
[COMP]
1:ザベル・ザロック@ヴァンパイアシリーズ
[種族]:屍鬼
[状態]:健康
[思考・状況]
基本:最終的に魔神皇の力を手にしたい


694 : 隣人たちは静かに笑う ◆lb.YEGOV.. :2016/07/05(火) 23:58:29 8oLaIgyM0

「あれで良かったのか? あの程度なら労なく殺せただろうに」
「いや、あれで構わん」

下北沢駅のホームを歩く2つの影。
影の主の名はヴァニラ・アイスとアーカード。
アーカードの問いかけにヴァニラ・アイスは口角を微かにつり上げながら答える。
当初は手当たり次第に参加者を殺そうと考えていたヴァニラ・アイスが方針を変更したのは一つの理由があったからだ。
それは同じく参加者として呼び出された、宿敵ジョースター一行の一人ジャン・ピエール・ポルナレフの存在。
DIOの館から自分と同じ様に拉致されたのであろうが、この男は確実に始末せねばならない、とヴァニラ・アイスは決意した。
が、そこで懸念点が浮かび上がる。
ポルナレフの性格から考えればこの殺し合いに従わず、同志を見つけて主催者に反逆する事は容易に想像できた。
そしてポルナレフの元に集まった仲間はそのまま自身の敵となりうる。
無論、ヴァニラ・アイスのスタンド『クリーム』を用いれば有象無象などまとめて始末はできるが、参加者一人につき一体支給されている悪魔という不確定存在は無視するにはあまりにも存在が大きい。
故にヴァニラ・アイスはポルナレフが悪人だという情報を流し、他の参加者がポルナレフに積極的に接触しない、あるいはポルナレフとその仲間達に対して別の集団を衝突させようと目論んだのだ。
そうして最初に出会ったのが先程の李衣菜だった。
不馴れな対人交渉ではあったが話を聞いた李衣菜が人の良い部類であり、ヴァニラ・アイスの行為から信頼をしてくれた事はお互いにとって幸運だっただろう。
もし逃げられてしまったり攻撃を仕掛けられる事があれば、自身に不都合な存在だとしてヴァニラ・アイスは即座にクリームによって、彼女を亜空間にバラまくつもりであった。
だがその様な次善の手をとる事もなく、それどころか他の参加者の情報まで提供してくれたのだ。少なくとも名前を聞いた四人に対しては"多田李衣菜から名前は聞いている"と伝えれば最低限の信頼は得られるだろう。
もしも首尾よく群れてくれたのであれば、ポルナレフを殺害した後にまとめて殺す事も出来、手間が省けるというものだ。

「人一人を殺すのに随分とまだるっこしい真似をするものだ」
「私はこの殺し合いの場でどこにいるかもわからんポルナレフだけは確実に始末せねばならん。使えるものはなんでも使う、不服か?」
「退屈ではある。が、不服とは言わんさ。結局のところ貴様の行き着く先は闘争だ、ここを抜け出す方法をお前はお前以外の全てを殺す事以外に見出だせない。ならば後は事が起こるのが早いか遅いかの違いだ。私はその時が来るまで待てばいい」
「フン、破滅願望持ちの戦闘狂が」

蔑む様な眼差しで吐き出すように呟いたヴァニラ・アイスの言葉を聞き、アーカードが凶笑を浮かべる。

「お前の享楽の巻き添えになるつもりはない、それだけは肝に命じておけ」
「ああ、理解しているとも召喚士」


695 : 隣人たちは静かに笑う ◆lb.YEGOV.. :2016/07/05(火) 23:59:14 8oLaIgyM0

会話を止め、一人前を歩くヴァニラ・アイスを見てアーカードはサングラスの奥の目を細める。
危険な男だ。ただ一つの信ずるものの為に全てを投げ出せる男だ。
その果てに神の力となった男の様に。
その果てに串刺しの化け物となった男の様に。

(インテグラ、懐かしき我が主。お前はこの男を前にどう戦う? この男の走狗となった私を見てどう思う)

ヴァニラ・アイスが名簿を確認していた時、アーカードは参加者の中に忘れよう筈もない人物の名前を見つけた。
インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング。
それはかつての主の名だ。
よもやこの地で敵と味方として相見える事になろうとはインテグラ、そしてアーカード自身も夢にも思わない事だった。

(今の私はお前の敵だ。あの男の様に、あの夜明けの時の様に、今度は私がお前に立ちふさがる)

脳裏に浮かぶのは自らの宿願の為に主を裏切り矜持を捨てた一人の裏切り者の小僧の姿。
運命とは皮肉なものだと内心で苦笑する。

(お前の先祖の様に私の心臓に白木の杭を立ててみろ。インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング)

来るべき闘争に備え、吸血鬼は内なる闘志を滾らせていく。
その果てにかつての主と対峙する未来を夢想しながら浮かべた表情は暗闇に紛れ、誰の目にも映る事はなかった。

【世田谷区 下北沢駅構内/1日目/朝】

【ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、確認済み支給品、棺桶型COMP
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:魔神皇を含め皆殺し
1:ポルナレフはこの場で確実に殺す
2:ポルナレフの悪評を流し、潰し合わせて疲弊させる
3:邪魔な存在、自分にとって不都合な存在は優先的に殺す
4:多田李衣菜の知り合いに出会ったら彼女の行き先を教える
[備考]
※参戦時期は「お受け取りください!」と言って自ら首を刎ねようとする直前
[COMP]
1:アーカード@HELLSING
[種族]:吸血鬼
[状態]:健康
※参加者の中にインテグラがいることを確認しました


696 : ◆lb.YEGOV.. :2016/07/05(火) 23:59:54 8oLaIgyM0
以上で投下を終了いたします


697 : 名無しさん :2016/07/06(水) 00:20:13 aIBMntz20
投下乙
ヴァニラがステルスとはちょっと意外
りーなちゃんは前途多難だなー


698 : 名無しさん :2016/07/06(水) 21:48:04 Oycn32Zg0
ちひろさんがスタプラ引いてなかったらポルポル大分ヤバかったな


699 : 名無しさん :2016/07/07(木) 20:26:32 A7IU6aM20
予約の時点であっ…(察し)だったけど、事なきで済んだか。相方のザベルも一筋縄じゃなさそうだし、りーなチャンがんばれ


700 : ◆7PJBZrstcc :2016/07/11(月) 18:23:54 r7FE49uA0
投下します


701 : ◆7PJBZrstcc :2016/07/11(月) 18:24:41 r7FE49uA0
 もう一人の自分と別れた海馬は、北に向かって進んでいた。
 何故北なのかと言うと、単にもう一人の海馬が渋谷のある南に向かったのでその逆を歩いているだけなのだが。
 海馬は歩きながら考える、これからどう動くべきか。

 殺し合いを粉砕するために必要な要素は大きく分けて2つ。
 首輪の解除と、会場の脱出だ。

 1つ目の首輪の解除、これは殺し合いに反目するのなら誰もが考える事だろう。
 幸いにも海馬は機械工学に優れているので解除する方法を見つけ出す事は難しくないだろう。
 もちろん魔法など未知の力を使われている可能性もあるが、その辺りも首輪のサンプルを手に入れれば分かるはずだ。
 首輪のサンプルさえあれば。

「つくづく俺を怒らせるのがうまい男だ、魔神皇め……!」

 そう、首輪を手に入れるという事は参加者の最低誰か1人の首を切り落とすという事になる。
 つまりどうあっても確実に手を汚すことになるのだ。
 勿論人殺しを拒否するというのなら、すでに死んでいる参加者の首輪を手に入れるという手段もある。
 だがそんな行いを海馬は己の手を汚すことより拒絶する。
 人の屍を貪るような行いは、海馬瀬人の誇りがさせない。

「ふん。ならば殺し合いに乗ったものを正面から打ち倒し、首輪を手に入れてやる」

 ならば殺してやる、ただし魔神皇の意に沿わぬ形で。
 そもそも海馬は人を殺せない人間ではない。
 現代兵器を嫌悪しているが、銃を人に向ける事も撃つ事も出来る人間だ。
 決してそれを望みはしないし、それに喜びを覚える事もないが。

「それより次だ」

 そんな思いを横にどけ、海馬の思考は次に進む。
 2つ目は会場の脱出。だが海馬は忌々しいが今の自分には手におえないと考えていた。
 理由は簡単、この会場からの脱出を阻んでいる物の正体が分からないからだ。
 科学的なものであれば海馬は理解できるだろう、だがそれは恐らく科学ではない。
 勿論、いずれは魔法という未知も海馬コーポレーションの科学力で解析できるだろう。だが少なくとも今の海馬には無理だ。
 となれば

「やはり他の参加者との接触は必須か」

 呟いた所で海馬は思わず足を止め、ある事に気づく。
 そう言えば参加者名簿を確認していなかったという事実に。
 ブルーアイズを貶められた怒りと、もう一人の自分という存在に少なからず驚愕したからだろうか。
 海馬はCOMPを起動し、参加者名簿を確認する。

 海馬が最初に目を惹かれたのは、かつて自身が主催した大会の参加者だった。
 マリク・イシュタール、かつてレアカード窃盗団グールズの首領だった男。
 バトルシティ決勝戦で”ヤツ”と戦い、改心した様子を見せていたが海馬にとってはあまり良い印象のない男だ。
 流石にこんな状況だから、諍いを起こすつもりはないが積極的に関わりたい存在でもない。

 もう一人はバクラ、確か遊戯のお友達の一人だったか。こっちに至っては印象が薄い。
 バトルシティの本選では、ウィジャ盤コンボというなかなかえげつない戦い方を見せていた程度の印象だ。

「だが何故バクラと表記されている? 奴の本名は獏良了だったはずだが……」

 海馬が考えていると、そういえば奴も遊戯と同じく千年アイテムとかいうオカルトクッズを持っていたはずだという事を思い出す。
 そして獏良了が持つ千年アイテムにも、闇の人格が宿っていたような記憶がある。
 海馬からすればあまり興味がなかったのでうろ覚えだが、一応警戒しておく事にした。

 なお千年アイテムについては、魔神皇がエジプトから掘り起こしてきたのだろうと推測している。
 何故掘り起こしたかについては、流石に想像できないが。


702 : ◆7PJBZrstcc :2016/07/11(月) 18:26:51 r7FE49uA0

「さて次は……、島村卯月か……」

 その次に目を惹かれたのは、意外なことに346プロダクションのアイドルだった。
 海馬が何故知っているかというと、346プロのアイドルが海馬コーポレーションのCMに出演経験があるからだ。
 海馬コーポレーションでは企業スパイを警戒して、経歴調査を欠かさない。
 勿論CMに出るだけのアイドルに念密な調査をするわけではなく、他の企業と黒いつながりがあるかどうかの確認位のものだが。
 そしてCMに出る事になったのが島村卯月だったのだ。
 そこで、海馬は気づく。

「346プロのアイドルが4人……?」

 海馬はアイドルに興味など無いが、ゲームアミューズメント企業の社長という立場として様々なジャンルにアンテナを張り情報を集めている。
 その中にはアイドルも含まれていて、346プロについても多少の知識を有していた。
 だからこそ海馬は疑問に思う。

「何故4人だけなのだ?」

 そう、海馬は4人しか居ない事が疑問だった。
 普通なら、1つのアイドルプロダクションから4人も殺し合いに参加させられたらそのプロダクションに恨みがあると考えるのが妥当だろう。
 だが海馬は逆にこう思った、恨みがあるならもっと多くのアイドルを参加させるのではないかと。
 346プロはかなりの大所帯だ、この殺し合いに参加している人数を優に上回るほどに。
 なのに何故この4人なのか。全ては魔神皇の気まぐれなのか。
 ならば今度は別の疑問が浮上する。

「何故俺が二人いる?」

 そうなると今度は海馬瀬人がこの殺し合いに二人いる事が疑問点になる。
 あいつが何らかの方法で具現化したもう一人の俺だとしても、具現化させたのはおそらく魔神皇の力によるもののはずだ。
 もしも殺し合いに参加させる人間を適当に選んだとするなら、同じ人間を二人選ぶような真似はしないだろう。

「ん?」

 だがここで海馬の思考はいったん中断されることになる。
 何故ならば、目の前に一匹の悪魔が現れたからだ。
 その悪魔は少女と称しても問題なかった、両腕の部分が羽根となっていなければ。
 海馬はこの悪魔に似たカードを知っている、こいつは

「ハーピィ、か……」
「惜しいわ、ハーピーよ」

 文字にしなければ分からないような微妙な訂正をするハーピー。
 それを気にせず海馬は問う。

「俺に何の用だ?」
「悪魔らしくあなたに襲いかかろうかと思ったのよ、後ろのドラゴンを見てやめたけど」
「そうか」

 ハーピーは、実は海馬の3歩(人間基準)後ろにずっといたブルーアイズに恐れをなした。
 3歩後ろとかお前は大和撫子か、とハーピーはツッコミを入れたかった。入れなかったが。


703 : ◆7PJBZrstcc :2016/07/11(月) 18:27:16 r7FE49uA0

「ならばいくつか質問をさせて貰おうか」
「いいわよ」
「まず最初に、お前はこの殺し合いについて何か知っているか?」
「何も知らないわ。私たちが魔神皇に言われたのはここにいる参加者という存在を好きにしていいって事だけ」
「まるで放し飼いだな」
「まあ、概ねあってるわね」

 皮肉を込めた海馬の言葉を肯定するハーピー。
 そんなハーピーに目もくれず海馬は質問を続ける。

「次に、他の参加者に会わなかったか?」
「1人、……いえ1匹見たわ」
「1匹?」
「ええ、人型だけど人間とは明らかに違う何か。悪魔でも人間でもない何かだったわ」
「ほう、それでそいつは何処だ?」

 ハーピーの話を聞き、その存在に少なからず興味を示す海馬。
 そんな海馬にハーピーは嗜めるようにこう言った。

「そいつに襲いかかった妖獣ガルムが容赦なく返り討ちに遭ったみたいだから、あまり会うのはお勧めしないわ。
 私は距離を取って逃げたし」
「下らん、死の神の番犬ごときが俺のブルーアイズを上回る訳がない」
「いや私は貴方の心配を……、まあいいわ。そいつは北の、豊島区の方で見たわよ」
「そうか」

 それだけ言って海馬は去っていく。
 去っていく海馬をを見たハーピーは思わず呼び止める。
 それに海馬は煩わしそうに返事をした。

「何だ?」
「ねえ、私を仲魔にしてくれないかしら」
「お前に何のメリットがある。俺はお前が危険だとほざく参加者に会いに行くつもりだぞ」
「少なくとも他にもいるかも知らない危険な参加者に合う可能性を考えたら、誰かしらサモナーについた方が安全なのよ。いざとなればCOMPの中に逃げればいいし」
「中々のしたたかさだ。いいだろう、着いてくるがいい。ただしだ」
「?」

 着いてくることを1つの条件を付けて了承した海馬。
 その条件はハーピーにとっては拍子抜けするものだった。

「この俺に悪魔や魔法についての知識を寄越せ」
「了解したわマスター。コンゴトモヨロシク」


【新宿区/1日目/午前】

【海馬瀬人(B)@遊☆戯☆王】
[状態]:健康
[装備]:携帯電話型COMP
[道具]:基本支給品、確認済み支給品
[所持マッカ]:25000
[思考・状況]
基本:もう一人の自分より先に魔神皇を倒し、殺し合いを粉砕する
1:北に向かいハーピーのいう参加者に会う
2:ハーピーから魔法や悪魔の知識を手に入れる
3:殺し合いに乗っている参加者が居たら打倒し、首輪を手に入れる
4:参加者の選出基準に疑問
[COMP]
1:青眼の白龍@遊☆戯☆王
[種族]:聖獣
[状態]:健康
2:ハーピー@真・女神転生シリーズ
[種族]:妖鳥
[状態]:健康

※ハーピーが語った参加者はプレデター@プレデター の事です。


704 : ◆7PJBZrstcc :2016/07/11(月) 18:27:57 r7FE49uA0
投下終了です。
タイトルは「Bの海馬/殺戮遊戯への思考」です。


705 : 名無しさん :2016/07/11(月) 21:15:06 a.ZO8ei60
投下乙
さすがは海馬という感じの思考だなあ


706 : 名無しさん :2016/07/11(月) 21:21:08 YCfFKs9o0
プレデターvs青眼か


707 : 名無しさん :2016/07/12(火) 01:27:35 nikZ9mhI0
投下乙です!
冷静に参加者を考察し、引っかかった疑念から何かを見つけられるのか。
にしてもプレデターとぶつかる事になりそうですね、自信が裏目に出なければいいけれど……


708 : 名無しさん :2016/07/15(金) 00:40:17 Mr5A4D1k0
月報集計お疲れ様です。

サマナー  67話(+67) 39/42 (-3) 92.9 (-7.1) ※登場話候補作42作を含む

聖杯スレに形式を合わせる場合は+25となります。


709 : ◆jBbT8DDI4U :2016/07/16(土) 02:02:31 YoR8EiH.0
投下します。


710 : 迷路:決断 ◆jBbT8DDI4U :2016/07/16(土) 02:02:47 YoR8EiH.0
「しかし、どういう意図なんだ?」

 ひらひらと片手で二匹の悪魔を見送る貘に、ジオットは静かに語りかける。
 二匹の悪魔に貘が依頼したのは、世田谷区に踏み入れた人間には極力攻撃しないようにして欲しい、という事。
 更に、攻撃してこない人間には自分の位置を押してやってほしい、という事だ。
 その依頼は、ジオットにとっては不可解極まりなかった。
 控えめに言っても戦力とは言い切れない自分、そして弾がないハリボテの機銃。
 そんな現状での戦力は、従えた悪魔のみだというのに。
 彼はそれを自ら手放した上で、人を招き入れると言っているのだ。
 流石に意図を図りかねる、という表情のジオットに、貘はにやりと微笑む。

「ジオットさん、ここでは力のある奴が勝つ。刀でも銃でも、なんでもいい。
 けれど、今の俺には"北斗神拳"ぐらいしか無い。まともに殴りあってりゃ、秒でお陀仏さ」

 ここは人が人を殺す舞台、人を殺せる人間が生き残る。
 そして、斑目貘という一人の人間には、人を殺せるだけの力も技術もない。
 そういう場面に立たされれば、彼が生き残れる可能性はほぼゼロに等しいだろう。

「けど、これからを生き抜くのに一番大切なものは、そうじゃないんだ。
 俺はそれを知ってる。だから賭けられるのさ」

 しかし、貘はそうではないと踏んでいる。
 それ以上のものがあると確信しているから、大事な"それ"を賭けることが出来る。
 ニヤリ、と貘はもう一度怪しく笑顔を作りなおして、くるくると椅子を回しながらジオットへと語りかける。

「まだ舞台は始まったばかり、賽は転がり始めた途中だよ。
 焦っちゃいけない、今はまだその時じゃないからね」

 貘にとって必要なのは、全てを貫く矛でもなく、全てを防ぐ盾でもない。
 はっきりと分かっているのは、それを持っているのは貘ではないということ。
 だから、貘はそれを手に入れるために全てを"賭け"ることにしたのだ。

「さてさて、鬼が出るか蛇が出るか……」

 くるくると椅子を回しながら、貘はにやりと笑い、訪れるであろう誰かを待った。


711 : 迷路:決断 ◆jBbT8DDI4U :2016/07/16(土) 02:03:04 YoR8EiH.0
 


 世田谷区をふらつく二人の男に対し、一匹の悪魔が我先にと襲いかかったのが全て始まりだ。
 溜息をつく男と、ニヤリと口元を歪める男。
 司令など必要なく、一発の銃声が全ての幕開けとして訪れた。
 銃声、悲鳴、銃声、悲鳴、銃声、悲鳴。
 繰り広げられたのは光景を言い表すならば、阿鼻叫喚という四文字がぴったりだ。

「どうした……始めの威勢は、もう終わりか……?」

 逃げ惑う悪魔たちに対して、男、アーカードは銃を突きつけながら問いかける。
 銃をつきつけられた悪魔は、半ばヤケクソでアーカードへと襲いかかるが、その時既に頭が吹き飛んでいた。
 悪魔というのは、言ってしまえば総じて化物だ。
 それだけだ、それだけでいい、アーカードという男は、たったそれだけの理由で、ここまでも残酷になれる。
 闘争に飢えていたというのを差し引いても、今のアーカードには"狂気"の色が滲んでいた。

「……待て」

 そんな暴走機関車たる彼を釘刺すように、ヴァニラの声が低く響き渡る。
 ちらり、とヴァニラの方を見てから、アーカードは悪魔たちへの攻撃の手を止める。
 ほっ、と安堵した空気が立ち込める中、ヴァニラはじろじろと舐め回すように辺りの悪魔を見つめる。

「おい、貴様」

 その中の一匹に手を伸ばし、近くへと引き寄せる。
 肩を掴まれた悪魔は、伝えようとしていた何かを飲み込んで、ヴァニラを見る。
 かけられた力もさながら、ぎろりとした目は一匹の悪魔を恐怖に包み込むには十分すぎた。
 そして、すっかり震え上がった悪魔に対し、ヴァニラは口を開く。

「今、何を語っていた」



「……どうしたんだい?」

 中野区を抜け、渋谷区を経由して世田谷区に足を踏み入れた時、ふとザ・ヒーローは口を開く。
 というのも、世田谷区に足を踏み入れてから、勇者ロトの様子が少しおかしかったのだ。
 普通の人間なら気がつくことはないであろう変化を察せたのは、彼が悪魔を使役し続けた存在、ザ・ヒーローであるからか。

「おかしいの。トヘロスはもう切れたはずなのに、悪魔が襲いかかってこない」

 そう、世田谷に差し掛かった辺りで、トヘロスの効能は切れていた。
 再度唱えれば済む話だったが、その時に彼女は異変に気がついた。
 辺りに無数の悪魔の気配を感じ取っているが、そのどれもが襲い掛かってくる気配がないのだ。
 いや、襲いかかってこないというよりは、何かに押さえつけられているというべきか。

「僕を……恐れている? いや、それだけじゃない……?」

 ロトの言葉で、ザ・ヒーローも違和感を察した。
 悪魔の気配、その奥に隠されている別の"何か"。
 それを感じ取りながら、彼らは足を進めていた。


712 : 迷路:決断 ◆jBbT8DDI4U :2016/07/16(土) 02:03:33 YoR8EiH.0



 結局、考え続けた所で何もわからなかった。
 正しいこと、やるべきこと、自分の気持ち。
 全てをかなえられるほど、強欲であればどれだけ良かっただろうか。
 けれど、それは叶わない、叶えられない夢物語。
 だから、その中の夢を一つだけ選ばなければいけないけれど。
 ちっぽけな彼女には、選べるわけもなくて。
 気がつけば、逃げ出していた。
 ホールから、人間から、現実から、全てから。
 どこに向かうでもなく、走って、走って、走り続けて。
 そして、彼女はそこにたどり着いた。
 上がる息、ずっしりと襲いかかる疲労感、霞みそうになる意識。
 それを手放すまいと、必死に抗っていた時、彼女はふと気がついた。

「誰もいない……?」

 そう、誰もいない。
 人間は愚か、悪魔の一匹も見当たらないのだ。
 渋谷に居た時には、そこそこ居たはずなのに、なぜここには居ないのか。
 そんな事を、ふと考えた時だった。

「そこのお嬢さん」
「ひっ!?」

 突然の声にびくりと跳ね上がりながら、琴岡は声の方へと向く。
 そこに立っていたのは、古風な鎧に身を包んだ、人間に近い姿の悪魔だった。
 ごくりと息を飲み込みながらその姿を見つめていると、悪魔はぽとりと武器を落とし、彼女に手を差し伸べた。

「怯えさせてすまない、この一帯を取り仕切っている者だ」



 今にも崩壊しそうな廃ビルに響く、靴音。
 来訪者を告げるのに、インターホンなど必要ない。
 徐々に近づいてくるその音さえあれば、誰かがやってくることは察することが出来るのだから。
 しばらく音が響き続けた後、靴音が途切れる。
 それと同時にニヤリと笑いながら、ガチャリと音を立てて開かれるドアを見つめて。

「ようこそ、俺は斑目貘。アンタは?」

 貘は、先手を打つように名乗り出た。
 現れたのは、二人組の男。
 首輪から判断するに、奇抜な格好をしている男のほうが召喚士であろう。
 なれば、側にいる赤い服の男が悪魔か。
 まあ、貘にとってはそれはどちらでもいい。
 どちらが本気を出しても、死んでしまうことには変わりないのだから。
 むしろ、その二人が放つ"圧"だけで死んでしまいそうだとも言える。
 実際、ジオットはその"圧"に圧倒され、ただ男たちを見つめることしか出来ずにいた。
 しかし貘は、その"圧"を受けながら、怪しい笑顔で男たちを見つめていた。

「……何を企んでいる?」

 しばらく睨み合い、机に乗せられたままの軽機関銃を一瞥してから、ヴァニラがゆっくりと口を開く。
 余計な話は要らない、と言ったところだろうか。
 おっ、と声を漏らしてから、貘はふふんと笑い直す。

「いきなり踏み込んでくるねえ、いいよ、嫌いじゃない」

 足を組み直して不敵に笑う貘に対し、ヴァニラは視線を動かさない。
 少しでも不穏な動きを見せれば、貘の命は失われてしまうだろう。
 そんな空気を背負いながらも、貘はさも自分に主導権があるかのように語る。


713 : 迷路:決断 ◆jBbT8DDI4U :2016/07/16(土) 02:04:02 YoR8EiH.0
 
「でも、何も考えてないって言ったらアンタはどうする?」

 あからさまな挑発、しかしそれは貘の本心だ。
 人を呼ぶのは目的だが、別にそれでどうこうしようと言うわけではない。
 ただ話がしたい、それだけが理由だ。
 ヴァニラはそれに対し、ふん、と鼻を鳴らして貘を睨み続ける。
 答えるまでもない、という事だろうか。
 その反応に満足できなかったのか、貘は更に質問を投げかける。

「ところでさ、ここの事はどうやって知ったの?」
「たまたま、だ。人の流れを感じる場所があった、それだけのことだ」

 即答。
 問答に時間をかける暇はないと判断したのか、ヴァニラは少し苛立ちながら貘へと答えていく。

「へぇ」

 その答えに、貘はより一層邪悪な笑みを浮かべる。

「バレバレの嘘をわざとつくって事は、そういう事なのかな?」

 ぞくり、と何かが走り、一瞬にして場の空気が変わる。
 数々の修羅場をくぐり抜けてきたものですら、違和感を抱かざる得ない得体のしれなさ。
 それを纏ったまま、貘は怪しく笑いながらヴァニラを見つめ続ける。

「ま、それはいいや」

 そこに何かを感じ取ったのか、貘は一人で満足して普通の"笑顔"に戻していく。
 初めて出会う類の得体のしれなさに舌を巻きながら、ヴァニラは貘への警戒を怠らない。

「ところでアンタ、実は滅茶苦茶強いだろ? "北斗神拳"の使い手の俺でも分かっちゃうくらいには、ね」

 警戒されていることを理解した上で、貘はわざわざ"わかりきった事"を口に出す。
 そう、貘は自分が咎めた相手の行動と同じことを繰り返したのだ。
 一見すれば、これ以上ない挑発はない。
 しかし、それを挑発だと見抜いているのか、ヴァニラは平静を保ったまま、貘を見つめ続けている。

「探し人かい?」

 だが、その平静は続いた貘の一言で、いとも簡単に崩されてしまう。
 何故、といった表情で貘を見つめるヴァニラに、貘は大きなため息をこぼす。

「分かり易すぎるよ、吹っかけ甲斐がありゃしない」

 心底がっかりした声を出す貘は、侮蔑を交えた落胆の表情でヴァニラを見つめる。
 流石に観念したのか、それとも付き合いきれないと踏んだのか、ヴァニラはゆっくりと口を開く。

「ポルナレフ、という男を知っているか」

 そう、ヴァニラ・アイスの目的は、それ一つ。
 何としてでもポルナレフの居場所を突き止めておかなくてはならないのだ。
 変な問答をすることもなく、ただ問いかければよかった、それだけだったのだが。


714 : 迷路:決断 ◆jBbT8DDI4U :2016/07/16(土) 02:04:24 YoR8EiH.0

「一万マッカ」
「は?」

 貘の口から飛び出した言葉は、ヴァニラの予想を遥かに上回る言葉だった。
 思わず驚愕の表情を浮かべてしまうヴァニラに、貘はもう一度大きなため息をつく。

「まさか、ただで教えてもらえるとでも思った? 情報を聞くなら"対価"は必要さ」

 確かに、正論だ。
 小さなことでも情報には価値が有る。
 それを手にするには、相応の対価が必要なのだ。
 無論、力に言わせればそれを聞き出すことも出来るだろう。
 しかし、悪魔を従えるだけの力を持つ男に喧嘩を売れば、自分の悪評は瞬く間に広まるだろう。
 それでは、先ほどの少女に言伝を頼んだ意味がなくなってしまう。
 召喚程度にしか使わない、謎の通貨。
 それを渋ることによるリスクを考えれば、安全なのは大人しく従うことだ。
 そう判断したヴァニラは、そそくさと通貨をとりだし、貘の手に握らせていく。

「毎度あり、じゃあサクっと言っちゃうと、この世田谷区には俺ぐらいしか居ないよ」
「なッ……貴様ッ!!」

 それを受け取ると同時に飛び出したのは、予想外の言葉だった。
 思わず激昂してしまったヴァニラは、貘の襟元に掴みかかっていく。
 しかし、貘の顔は涼しい。それどころか、勝ち誇った笑みを浮かべている。

「いや、ポルナレフって男の人をを知ってるかって言われて、知らないって答えるのは普通だと思うけど?
 しかもさ、東京23区の中でも広い方の世田谷区、そこに居ないっていう情報だけでも、十分だとは思うんだけどなぁ〜〜」

 続いた言葉も、これまた正論。
 男は一言もポルナレフを知っているとは言っていないし、それを勝手に勘違いしたのはヴァニラの方だ。
 ついカッとなって手が出たが、冷静になれば非は全てこちらにある。
 ゆっくりと貘の体を離し、一歩引き下がる。
 それに対し、貘はさっさとスーツの埃を払ってから、話を続ける。

「さっき入ってきた情報を出血大サービスしちゃうと、世田谷区にはあと三人いる。
 品川に向かった一人はそんな名前じゃなかったね。
 あとは二人くらいここに向かっているようだけど、一人は女の子。
 もう一人は……日本人らしき男、って話だね。
 ソースはこの世田谷区をうろついているすべての悪魔。
 ここにたどり着いたアンタなら、今の言葉がどういう意味か、分かってくれると思うけど」

 語られたのは、貘の知っている全てだった。
 貘自身も、通貨の価値は分かっている。
 一万マッカを差し出されたのだから、それに相応しい情報は、きちんと提供する。
 貘なりの筋の通し方なのだろうが、それがどことなくヴァニラには不気味に思えたのだ。
 用は終わった、これ以上話すこともない。
 故に、ヴァニラは身を翻し、その部屋を去ろうとする。

「あ、どこか行くならさ、この階の下にあるターミナル使ったほうがいいよ〜。
 ここから他の区に行くのは、骨が折れるだろうしさ。
 あと、誰かに会ったら、俺のことをどんどん教えてくれないかな〜、お願いばっかりで悪いけど、さ」

 そんなヴァニラに、貘は背中越しにアドバイスを送りつつ、一つの依頼を投げる。
 しかし返事はなく、ヴァニラは黙って部屋を後にしていった。
 その時、彼が連れていた赤い男……もとい悪魔が、怪しい笑みを浮かべて貘を見つめていたのを、貘はしっかりと見ていた。
 だから、満面の笑みを返しつつ、その後姿を見送った。

「短気は損気、無愛想も損をする……ってね」

 にこりと笑ったまま、貘は再び椅子をくるくると回す。
 重圧から開放されたジオットは、安堵の溜息を一つ漏らし、貘の傍に腰掛けた。
 これから、こんな感じに続くのだろうか。
 そんな少しの不安を抱えながら、ジオットは僅かな休息を一時を過ごしていた。


715 : 迷路:決断 ◆jBbT8DDI4U :2016/07/16(土) 02:04:58 YoR8EiH.0
 


 大きな口を開け、くぁ、と声を漏らしながら貘があくびをする。
 目的のためとはいえ、一箇所でじっとしているのは退屈なものだ。
 こんな時はプーヤンで時間をつぶすに限るのだが、あいにくと手元にはプーヤンがない。
 全く、参ったものだと苦笑いをした、その時だ。
 こんこん、とドアをノックする音が響き渡った。

「どうぞ、空いてますよ」

 銃は設置したまま、余裕たっぷりに貘は来客を迎え入れる。
 がちゃり、とドアノブが音をたて、ぎいいと音を立てながらゆっくりと開く。
 現れたのは一人の青年と、いかにもな格好の少女の二人組。

「おっ、待ってたよ」

 貘は、そんな二人組を見て笑いながら。

「"ザ・ヒーロー"さん」

 先ほどとは打って変わって、初手で名前を口にした。
 どうしてその名前を知っている、と、ザ・ヒーローは困惑している。
 その顔を見て、主導権を完全に握りしめた事を確信した貘が、一人で話を進めていく。

「ま、勿体ぶってもしょうがないし、さっさと話しちゃうとさ。会ったんだ、"カオスヒーロー"君にね。
 彼なら品川の方に向かったみたいだよ、何が目的かは知らないけどね」

 淡々と喋ることだけ喋って、さっさと追い払おうとする。
 聞くことなど何もないという事か、ここで足を止めていて欲しくないという事か。
 ザ・ヒーローも喋ることが特別あったわけではないが、カオスヒーローという嘗ての仲間の名を聞いてしまった。
 しかも、品川に向かっているという情報を聞いた以上、立ち止まってもいられなかった。
 特に言葉を交わすこともなく、ザ・ヒーローはその部屋を後にしようとする。

「あ、そーだ。もしさ、ポルナレフって人を見かけたら、ここに来るように言ってくれない?
 そうじゃなくても人に会ったら、余力があったら世田谷に来て欲しいって言ってほしいな」

 その背を見送りながら、貘はヴァニラと同様に"お願い"をしていく。
 先ほどのヴァニラとは違い、ザ・ヒーローはくるりと振り向いてこくりと頷く。
 反応があったことに少し嬉しさを感じながら、貘はひらひらと手を降って見送った。



 再び、あくび。
 人が居なければ退屈だ、と言わんばかりに大きく口を広げていく。
 そろそろ一休みをするか、と思ったその時。
 ぎいい、と音を立てながら、ドアがゆっくりと開いた。

「おや、いらっしゃい」

 そういえば後一人居たな、と思いながら貘は最後の来客に対応していく。
 ゆっくりと開いた扉から現れたのは、一人の少女だった。
 首輪で召喚士だと判断すると同時に、側にいるおぞましい悪魔を見て、少し驚きながら、貘は笑顔を浮かべる。

「俺、斑目貘。お嬢さんは?」

 貘は少女を怯えさせないように、出来る限り柔和な笑顔を浮かべて、対応しようとする。
 そんな貘の努力の甲斐あってか、少女は少しの困惑の後、ゆっくりと口を開いた。

「みかげ……琴岡、みかげ」

 そうか、と笑顔で答えながら、貘は腰を落とし、琴岡と名乗る少女に目線を合わせていく。
 どきり、としたのか、琴岡は自分をじっと見つめている貘から、目線を外すことが出来なかった。

「何か悩みあり、って顔をしてるね」

 その言葉に、琴岡はどうして、という反応をする。
 それが予想通りだったのか、貘は笑い直してから話を続ける。

「教えてくれよ、俺も力になれるかもしれない」

 先の二人とは違う声のトーン、優しい目つきで、貘は琴岡に語りかける。
 初めは困惑していた琴岡も、貘の目を見て意を決したのか、ゆっくりと口を開き始めた。


716 : 迷路:決断 ◆jBbT8DDI4U :2016/07/16(土) 02:05:23 YoR8EiH.0
 
 それから、琴岡は全てを包み隠さず喋った。
 この場所にきてから起こったこと、折原臨也という男に言われたこと。
 自分が悩んだこと、取るべき選択肢。
 そして、自分の夢と、他人の夢と、少女の夢。
 他人に喋ったことのない秘密まで一欠片も残さず、全て喋り尽くした。
 どうせ知らない人だし、構わないだろうと思っていたところもあった。
 けれど、それだけではない。
 そう、彼女はずっと喋りたかったのだ。
 客観的な立場に立てる人間に対して、一人の少女の心を丸裸にして。
 琴岡みかげという人間を、見て欲しかったのだ。
 だから、彼女は喋った。
 喋って喋って、喋り尽くした。
 そして、ゆっくりと口を閉ざした時。

「は、はは、ははは」

 貘は、静かに笑い出して。

「みかげちゃん」

 にやり、と笑って彼女の名前を言って。

「あんた、嘘つきだね」

 彼女を見下ろすように立ち上がって、そう言い放った。
 ずぎゅん、と何かが撃ちぬかれたかのような感覚が、琴岡を襲う。
 その一言は、琴岡の心を少しだけ救っていた。
 待っていたのは、その言葉だったのかもしれない。
 すっかり放心している琴岡の姿を見つつ、貘は少し気まずそうに笑う。

「しかし参ったな……俺に喰えない嘘があるなんてね」

 そう、琴岡の言葉には嘘が含まれていた。
 彼女の気持ち、彼女の願い、彼女の考え、その全てに嘘が含まれていることを、貘は見抜いていた。
 だからこそ、彼は困惑していたのだ。
 暴いた所で真実に繋げられない嘘。それは、彼の人生ではほとんど出くわさなかった嘘で。

「でも面白い、面白いよ。だから、俺は君の嘘を必ず喰ってみせる」

 だからこそ、彼は面白いと思った。
 だからこそ、彼はその嘘を暴きたいと思った。
 だからこそ、その瞬間が楽しみで仕方がなかった。

「答えを出すのは、その時でいいだろ?」

 しかし、今の貘では彼女の嘘を暴けない。
 必要な物が、まだ足りないと思っているから。
 だから、貘は時を待つ。

「しばらくここに居なよ、好きに悩み続ければいい」

 そう判断した所で、貘は琴岡に提案する。
 どうせ貘は暫くここにいるのだ、下手に出歩くよりはここにいるほうが安全であるのは間違いない。
 何より、貘の傍から琴岡を離してしまい、その間に琴岡の命が失われてしまうことだけは、なんとしても避けたかった。
 そうすれば、琴岡の嘘を食うことなど、未来永劫できなくなってしまうのだから。
 そんな意図を察してか、琴岡もゆっくりと頷いた後、ドア一枚を挟んだ別室へと足を進めていった。


717 : 迷路:決断 ◆jBbT8DDI4U :2016/07/16(土) 02:05:36 YoR8EiH.0
 


 全ての来客に対応して流石に疲れたのか、貘は少し深めに椅子へと腰掛ける。
 そんな彼の横にすっと立ち、ジオットはゆっくりと話しかける。

「……全く、どういう意図だい?」

 そう、貘の行動はジオットからすれば不可解な点が多すぎた。
 ヴァニラに対しては煽りに煽った上に金まで巻き上げたというのに、友好そうに見えたザ・ヒーローは早々に追い払い、何を思ったのか戦力にならなさそうな琴岡を傍に置いたのだ。
 謎の人選、謎の行動、ジオットからしてみれば、一欠片も理解できない行動であった。
 そんな疑問を抱えるジオットに、貘は天井を見上げながら、ジオットへと答える。

「今は、焦る時じゃない」

 そして、ジオットは唾を飲み込む。

「場を、転がす必要があるのさ」

 その邪悪な声に、飲み込まれそうになったから。
 一体何を考えているのか、そこに何を見据えているのか。
 そんなジオットの恐怖など気にも留めず、貘は一人笑う。

 彼だけが把握している、彼だけの未来を見据えながら。
 不敵に、不敵に。

【世田谷区→????/廃ビルの一室→????/1日目/午前】
【ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、確認済み支給品、棺桶型COMP
[所持マッカ]:二万
[思考・状況]
基本:魔神皇を含め皆殺し
1:ポルナレフはこの場で確実に殺す
2:ポルナレフの悪評を流し、潰し合わせて疲弊させる
3:邪魔な存在、自分にとって不都合な存在は優先的に殺す
4:多田李衣菜の知り合いに出会ったら彼女の行き先を教える
[備考]
※参戦時期は「お受け取りください!」と言って自ら首を刎ねようとする直前
[COMP]
1:アーカード@HELLSING
[種族]:吸血鬼
[状態]:健康
※参加者の中にインテグラがいることを確認しました

※ヴァニラがターミナルを使ったかどうかは後続にお任せします

【世田谷区→品川区に向けて移動/1日目/午前】
【ザ・ヒーロー@真・女神転生】
[状態]:ダメージ(小)、トヘロス
[装備]:COMP(アームターミナル型)、アタックナイフ
[道具]:基本支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:"勇者"と共に、どうする……?
1:嘗ての仲間、カオスヒーローを追って品川に向かう
[備考]
※真・女神転生if...における魔人 ザ・ヒーローが、何らかの手段によって人間として参戦しています。
[COMP]
1:"ロト"(女勇者)@ドラゴンクエスト3
[種族]:勇者
[状態]:ダメージ(小)、魔力消費(小)、トヘロス

【世田谷区/廃ビルの一室/1日目/午前】
【斑目貘@嘘喰い】
[状態]:健康
[装備]:COMP(眼帯型)
[道具]:かり梅、基本支給品、M249ミニミ(銃弾なし)
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:謀略にて魔神皇を倒す。
1:悪魔の手駒を増やす。(暫くは世田谷の悪魔たちにお任せ、状況を見て勢力拡大?)
2:琴岡みかげの"嘘"に興味、いつかは"喰う"
[備考]
※M249ミニミは万屋の武器くじ(松・一万マッカ)で入手。弾は別売りです。
※世田谷に住む悪魔に対し、ある程度の影響力を得ました。
※世田谷のLaw・Chaos属性を仕切る女神・クシナダヒメと妖鬼・モムノフと協力関係にあります。
[COMP]
1:ジオット・セヴェルス@パワプロクンポケット14
[状態]:健康

【琴岡みかげ@ななしのアステリズム】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、未確認支給品、キーホルダー型COMP
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:生き残って帰りたい
1:悩む
[COMP]
1:Oktavia von Seckendorff@魔法少女まどか☆マギカ
[状態]:健康
[備考]:キーホルダー型COMPのデザインは『ななしのアステリズム』本編7話で登場したものです。


718 : ◆jBbT8DDI4U :2016/07/16(土) 02:05:52 YoR8EiH.0
以上で投下終了です


719 : 名無しさん :2016/07/16(土) 13:53:18 Bd5RvM8E0
投下乙。
参加者の情報をかき集めてるのか、貘さんは何考えてるのやら分からんな
それと最後の台詞カッコいいけど、場を転がすって微妙にメタいw


720 : 名無しさん :2016/07/16(土) 14:31:30 O1x.p9wA0
投下乙
誰も彼もを煙に巻く嘘喰いが不気味だなあ


721 : 待機:提案 ◆jBbT8DDI4U :2016/07/21(木) 00:50:33 cviGmixw0
投下します


722 : 待機:提案 ◆jBbT8DDI4U :2016/07/21(木) 00:50:54 cviGmixw0
 結論から言うと、ラフ・メイカー達は品川から動かなかった。
 というより、動けなかったというのが正しいだろうか。

「ぼくは、蜘蛛だから……」

 数刻前、ハングリースパイダーはそう言った。
 だからラフ・メイカーは、ひとまず彼が食べられる食料を探すことにしたのだ。
 だから、彼はコンビニを離れ、ホームセンターないしペットショップを探し始めたのだ。
 幸い、友好的な悪魔に多く出会い、道に迷うことはなかった。
 悪魔という字面から得られるイメージとは裏腹に、随分と話しやすかった。
 コミュニケーションも取りやすく、彼らを笑顔にすることもそう難しくはなかった。
 だからこそ、彼はその悪魔から笑顔を奪うことなど出来るわけがなかった。
 そう、ハングリースパイダーの食料、それに悪魔が含まれる事は察していた。
 しかし、ラフ・メイカーは生きる全てを笑顔にしたいという、言ってしまえばエゴの固まりのような男だ。
 一つの笑顔のために一つの笑顔を奪うことなんて、彼に出来るわけがなかった。
 それに、そんなことをしなくても、蜘蛛の食料は手に入る。
 ホームセンターはほぼ目の前、そこに行けば昆虫用の食料もある。
 だから、大丈夫。
 そう思っていた時、ふと空気が変わったのを感じる。
 横を向けば、先程まで笑顔であった悪魔が、怯えている表情に変わっている。
 何事か、と思い悪魔の視線の方に目を向ける。
 すると、そこには白のローブを纏った不思議な男と、いかにもな鎧を纏った男の二人組が立っていた。
 その片方、白のローブの男の首に、自分と同じ首輪が填められていることから、彼も召喚士なのだと察する。
 そしてほぼ同時に、彼は察する。
 彼らの衣服に付いた一面の赤、それが人の血であるということを。

「がッ……!」

 やばい、と思った時には既に遅く。
 バットでフルスイングを受けたかのような衝撃を腹部に受け、大きく吹き飛ばされる。
 受け身をとる暇などある訳もなく、そのまま壁に叩きつけられる。
 かはっという軽い声とともに、肺の中の空気が全て絞り出され、視界が白みそうになる。
 その途中、突然の事に全く動けずにいる蜘蛛と目が合う。
 マズイなと思った時、鎧を着込んだ男がこちらに向かって駆け出していた。
 明確に迫る、死。
 避けられないし、変えられない。
 けれどラフ・メイカーは、心の何処かでそれを分かっていた。
 だから、ふと考えたのだ。
 彼らは、自分を殺せば笑顔になってくれるのだろうか、と。

 そして、剣が振り下ろされて。
 きぃん、と甲高い金属音が聞こえた。

 遠のきそうになる意識をなんとかつなぎ留めて、ラフ・メイカーは視界を取り戻す。
 すると、そこには鎧の男の剣を受け止めている、一人の黒の男の姿があった。
 助けられたのだろうか、と思ったその時だった。

「おいおい、やっぱり魔人になっても弱い者虐めか?」

 ふと聞こえた、新たな声。
 その方へ向くと、赤の鎧に身を纏った一人の男がそこに立っていた。
 その首には、首輪。
 彼もまた、この殺し合いに招かれた一人なのだろう。
 そんな事を思っている内に、ラフ・メイカーはゆっくりと地面へ降り立った。


723 : 待機:提案 ◆jBbT8DDI4U :2016/07/21(木) 00:51:33 cviGmixw0

「悪い癖は抜けないもんだな」

 軽い口調で白の男を挑発する、赤の男。
 その後ろでは、金髪の鎧の男と、漆黒を纏う銀髪の男が目にも留まらぬ速さで剣戟を繰り返している。
 実力は、ほぼ互角。
 戦いに関しては素人のラフ・メイカーですら、そう感じ取れる中、白の男がゆっくりと口を開く。

「どの面を下げて、僕の前に現れたのですか」
「まあ、そう言うな」

 瞬間、両者から放たれる、凄まじい殺気。
 いつでも首を刎ねられると言わんばかりの威圧は、剣戟を繰り返す二人にも引けをとらない。
 暫く、時が凍りついたかのように両者が止まる。
 ごくり、とラフ・メイカーが唾を飲み込んだ時、両者がほぼ同時に自分の悪魔へ引けという司令を出した。
 互いに互いを理解している、理解しすぎているからこそ、手駒を手元においておく。
 万が一の可能性を考えれば、互いに無事ではいられないと、分かっているから。

「しかしだ、カテドラルは無くとも、ここでこうやってお前に出会うとは、な」

 互いの悪魔が互いの元に戻った所で、赤の男は笑う。
 カテドラル、という単語に白の男が反応したように思えたが、ラフ・メイカーには生憎とそれが何なのかは理解できない。
 だが、その一言で緊迫感が増したことは、理解できた。
 そんなラフ・メイカーなど気にも留めず、赤の男は白の男へ語りかける。

「お前がどう思うかはさておき、俺は一つ、お前に提案がある」

 提案? と聞き返す白の男に、ああ、と赤の男は短く答え、話を続ける。

「ここで暫く待たないか」
「は?」

 思わず、といった感じの声だった。
 緊迫感を保ちながらも、白の男の表情は驚愕に満ち溢れていた。
 その反応を待ち構えていたかのように、ニヤリと笑う。

「……感じるんだよ。いや、確信に近い」

 その先の言葉は、聞かなくてもわかる。
 そう言わんばかりに、白の男の表情が変わる中、赤の男は口を開く。

「アイツが、ここに来る」

 アイツ、と呼んだ誰か。
 当然、それが誰なのかはラフ・メイカーには分からない。
 だが、それを理解している二人の間には、また違った重い空気を放ち始める。

「オレもお前も、どうせ全員ぶっ殺すのは変わらないんだ。だったらアイツの答えを聞いてからでも、遅くはねぇだろ」

 アイツ。ここには居ない、第三者。
 全てを殺す、と平然と言い放った男が気に掛ける存在。
 一体何者なのだろうか、とラフ・メイカーが思った時、腕を組んでいた白の男がゆっくりと口を開く。


724 : 待機:提案 ◆jBbT8DDI4U :2016/07/21(木) 00:51:46 cviGmixw0

「なるほど、一理ありますね……彼は強い。彼の答え次第では、君と手を組むことも吝かではありませんね」

 あれだけ放たれていた殺意が、一瞬にして引いていく。
 赤の男の話を受け入れた、ということなのだろう。
 軽くなった空気を吸って、ラフ・メイカーはほっと一息をつく。

「で、だ。こいつは逃がす、いいな?」

 その時、赤の男がラフ・メイカーを指差して、白の男に問いかける。
 突然の事に、ラフ・メイカーは驚いた顔で固まったまま、赤の男の言葉の続きを待つ。

「どうせ俺たちは全員ぶっ殺す立場だ、なら――――」

 そこで、わざとらしく言葉を切り、ニヤリと笑う。

「ここに居る人間どもが、俺達へと向かってきたほうが手間が省けるだろ」

 絶対的な、自信。
 それが言葉の端々と表情から、ひしひしと感じられた。
 そして、赤の男はそのままラフ・メイカーへと"依頼"をする。

「つー訳で、お前さんはとっととどっかに消えな、そして誰かに出会ったらこう言うのさ。
 品川で、魔人が人間に戦争を仕掛けようとしてる、ってな」

 それは、宣戦布告。
 シンプルで、単純で、わかりやすい。
 全てを殺すという、はっきりとした意志を受け、ラフ・メイカーは再び唾を飲み込む。

「……それで、アンタ達は笑えるのかい?」

 ふと飛び出したのは、そんな問いかけだった。
 ラフ・メイカーは笑顔を齎す者だ。
 生きるものであれば、どんな人間でも笑顔にする。
 そうしないと、帰れないのだから。
 だからどんなに悪人だったとしても、笑顔にする。
 ニヤリと笑って返すのなら、それでいいのだ。

「分かったよ、なら構わないさ」

 この場において、尤も笑顔を齎す行動。
 それは彼らを止めるのではなく、彼らの言うことを聞くこと。
 だから、ラフ・メイカーはこの場を去る。
 その途中、ふと考える。
 それは、彼らと戦うことになるであろう時の事。
 その時、その場に自分がいるかどうかはわからない。
 けれど、彼は考える。
 そうなってしまった時、どうすれば皆が"笑顔"になれるのか、を。


725 : 待機:提案 ◆jBbT8DDI4U :2016/07/21(木) 00:51:58 cviGmixw0



「話は聞かせてもらいましたよ、お二方」

 男を見送って一段落ついた時、二人のヒーローの頭上から声がする。
 どこから、と声の正体を探り始めたと同時に、すとん、という音が鳴り、二人の目の前に一人の男が現れた。
 その男を形成していたのは、黒。
 それだけを認識したと同時に、二人は黒に向けて魔法を放つ。
 衝撃波と炎、休む間もなく叩き込まれる斬撃。
 並の人間なら耐えられるわけがない攻撃が、一瞬にして叩きこまれた。

「うわお、いきなりですか。高遠さんにマジックを仕込んでもらっていなければ、即死でしたよ」

 しかし、男はへらへらと笑いながらヒーローたちの背後から話しかける。
 その傍には、無数のバルーンを持った仮面の男。
 ふと振り向けば、攻撃を加えたはずの場所に無数のバルーンが舞っていた。
 そういうことか、と再び攻撃を加えようとする二人に、黒の男、折原臨也が笑いながら語りかける。

「いや、俺は貴方達を止めに来たわけじゃないんですよ。寧ろ、興味がある」

 その身に極上の殺意を浴びながらも、臨也は笑う。
 歴戦を潜り抜け、魔人となった二人が一歩引くほどの笑顔。
 邪悪と呼ぶにふさわしいそれを浮かべながら、語るように呟く。。

「戦争と、ザ・ヒーローに」

【品川区・中心部/1日目/午前】
【ラフ・メイカー@ラフ・メイカー(BUMP OF CHICKEN)】
[状態]:ダメージ(中)
[装備]:鉄パイプ
[道具]:基本支給品、手鏡型COMP
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:「それだけが生き甲斐なんだ、笑わせないと帰れない」
1:人の多い場所に向かい、二人のヒーローが戦争を仕掛けようとしていることを伝える
[備考]
※いわゆる有名人な一部の参加者の顔と名前を把握しています。現時点以外の情報を知っているかどうかは次の人にお任せします。
(現時点で知っている人物:アイドルマスターシリーズのアイドル(市原仁奈、島村卯月、前川みく、多田李衣菜)、海馬瀬人)
※海馬瀬人のAもしくはBは海馬コーポレーションの社長ではなく、同姓同名の一般人だと思っています。
[COMP]
1:ハングリースパイダー@Hungry Spider(槇原敬之)
[種族]:妖虫
[状態]:健康
※ハングリースパイダーの外見はPV内の紙芝居に登場する人型の蜘蛛の姿です。

【折原臨也@デュラララ!!】
[状態]:健康
[装備]:スマートフォン型COMP
[道具]:基本支給品、確認済み支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:さて、どうしようかねえ……
1:二人のヒーローが目論んでいる「戦争」について聞き出す
2:ザ・ヒーローと会話
[COMP]
1:高遠遙一@金田一少年の事件簿
[種族]:殺人鬼
[状態]:正常

【カオスヒーロー@真・女神転生if...】
[状態]:疲労(小) 魔力消費(小)
[装備]:COMP(アームターミナル型)
[道具]:基本支給品、不明支給品、宝石数個
[所持マッカ]:二万五千
[思考・状況]
基本:"力"の先にあるものを探す
1:臨也と会話
2:ザ・ヒーローを待つ
3:いずれ人間に"戦争"を仕掛ける
4:斑目貘@嘘喰いに興味
[備考]
※真・女神転生if...における魔人カオスヒーローが何かしらの手段で呼び出されています
[COMP]
1:ピサロ@ドラゴンクエスト4
[種族]:魔人
[状態]:疲労(小) 魔力消費(小)

【ロウヒーロー@真・女神転生if...】
[状態]:MP7/10
[装備]:COMP(アームターミナル型)、ベレッタm92f
[道具]:基本支給品、不明支給品
[所持マッカ]:六万
[思考・状況]
基本:全ての殲滅
1:臨也と会話?
2:ザ・ヒーローを待つ
[備考]
※真・女神転生if...における魔人ロウヒーローが何かしらの手段で呼び出されています
[COMP]
1:オディオ(オルステッド)@LIVE A LIVE
[種族]:魔王
[状態]:HP1/2
[備考]
※中世編クリア直後より参戦


726 : ◆jBbT8DDI4U :2016/07/21(木) 00:52:13 cviGmixw0
投下終了です。


727 : ◆NIKUcB1AGw :2016/08/01(月) 21:49:32 1yXhuKCs0
投下します


728 : 明日へ続く非常階段の途中で ◆NIKUcB1AGw :2016/08/01(月) 21:50:31 1yXhuKCs0
プレデターたちとの激闘からしばしの時が過ぎ、出久の姿は池袋駅の構内にあった。

あの恐るべき敵を放置しておくつもりはない。
だが、今すぐ再戦というわけにはいかない。
先の戦いでスパイダーマンが受けたダメージは、決して小さくないのだ。
彼の力なくして、強大な力を持つヴィランに勝つことは難しい。
自然回復だけで完全にダメージが抜けるとは思えないが、それでも休息は取った方がいい。
ゆえに出久はスパイダーマンを一度COMPに戻し、ジャックフロストを連れて当初の目的である電車運行の確認を行っていた。
スパイダーマンが回復するまでの時間を、無駄に過ごすわけにはいかないと考えての行動である。

「うーん……」

出久は渋い顔を作っていた。
ホームで10分ほど待ってみたが、電車が来る気配は全くない。
単に電車の運行間隔が長いだけかもしれないが、やはり運行していないのだろうと出久は考えた。
それは駅に、まったく機能している気配がなかったからだ。
仮に電車が運行しているなら、それを管理する魔神皇の手下なり悪魔なりが駅にいてもいいはずだ。
だが駅の中は、人も悪魔もまったく見当たらなかった。
魔神皇は電車の運営をする気がない、と考えるのが妥当だろう。

(まあもともと、電車が走ってる確率は半々くらいだと思ってたから別にがっかりすることでもないんだけど……。
 やっぱり期待してたものがないと、少しへこむな……)

小さく溜息を漏らす出久。それに傍らのジャックフロストが反応する。

「大丈夫かホ? 少し休むかホ?」
「ああ、心配かけてごめん。別に疲れたわけじゃないんだ。
 じゃあ、念のためもう少し駅の中を調べてみようか」
「了解だホー!」

フォローする出久に、力強く返すジャックフロスト。
その左手が、固く握られていることに出久は気づいた。

「……それ、そんなに気に入った?」
「もちろんだホ! 超かっこいいホ!」
「悪魔のセンスって独特なんだなあ……」

ジャックフロストの手に握られているのは、出久の支給品。
名を「ちいさなメダル」という。
これを見つけた当初はわざわざこの場で支給するからには特別な代物かと考えた出久であったが、いじり回しても何かが起こるわけでもない。
COMPに収録されていた解説を見ても、「世界のあちこちに隠されているメダル」という当たり障りのないことが書かれているだけ。
仕方なく荷物の中にしまいっぱなしにしていた出久であったが、悪魔なら使い道を知っているかもしれないと思いジャックフロストが仲魔になったときに見せてみた。
メダルについては何も知らなかったジャックフロストだったがそのデザインをいたく気に入ったため、10枚セットのうち1枚を彼にプレゼントしたのである。

「まあ、喜んでくれるなら僕も嬉しいよ」
「そりゃあもう、気分は上々だホ! ……ん?」

上機嫌だったジャックフロストの表情が、不意に固まる。

「どうしたの?」
「外で妙な音がするホ。たしかこれは……。人間が使う、車とかバイクの音だホ」
「なんだって!? ということは、誰かが近づいてきてるのか……」

顎に手を当て、出久は素早く思考を巡らす。
近づいてくる人間が友好的にしろ敵対的にしろ、放置するわけにはいかない。
だが相手の方針がわからない以上、迂闊に姿をさらすのも考え物だ。

「よし、外に様子を見に行こう。ただ、相手が敵か味方かわからないから接触は慎重にね」
「わかったホ! ヒーホー!」


729 : 明日へ続く非常階段の途中で ◆NIKUcB1AGw :2016/08/01(月) 21:51:25 1yXhuKCs0


◆ ◆ ◆


エンジン音を響かせながら、一台のバイクが都市部を疾走する。
それを駆るのはバイクのデザインとは不釣り合いな、真面目そうな印象の少年。
若き天才、高嶺清麿である。

(困ったな……。もうすぐガス欠だ)

メーターを見ながら、清麿は眉間にしわを寄せる。

(まさかガソリンスタンドがあそこだけってことはないだろうし、探せばどこかにはあるんだろうが……。
 ここに来るまでに見つけられなかったのは運が悪かったな。
 まあ別にこのバイクにこだわる必要はないわけだし、最悪の場合はこれを乗り捨てて別の乗り物を……)

これからの対応に考えを巡らせる清麿。そこにわずかな隙が生まれていることに、彼は気づいていなかった。

「清麿!」
「!!」

先に気配に気づいたのは、清麿の懐に入っていたスラリンだった。
彼のあげた声で、清麿も気づく。
上空から、自分たちに敵意が向けられていることを。
凶鳥・イツマデと呼ばれるその悪魔は、いつの間にか清麿の頭上に張り付いていた。

清麿たちに発見されたことに気づいたのか、イツマデは急降下して彼らに襲いかかる。
回避のために、大きくハンドルを切る清麿。
しかし焦りと不慣れから、加減を誤ってしまう。
バランスを崩し、バイクは転倒。清麿とスラリンは、アスファルトの上に放り出されてしまう。

「ぐっ……。すまん、スラリン! 大丈夫か!」
「僕は大丈夫! そっちこそ大丈夫?」
「問題ない! かすり傷だ!」

頬の擦り傷からしたたる血をぬぐいながら、清麿は啖呵を切る。
だがその威勢も、イツマデを止めることはない。
体勢を立て直し、イツマデは再び清麿に突っ込んでくる。
スラリンがそれを止めようと攻撃態勢に入った、その時。

「ヒーホー! ブフ!」

それよりも早くその場に響いたのは、氷結呪文を唱える声。
イツマデの皮膚が凍てつき、勢いがそがれる。

「うああああああ!!」

続いて、絶叫と共に大きめの石が飛んできた。
石はイツマデの翼に命中し、あらぬ方向へとへし折る。

「今だ! いけ、スラリン!」
「りょ、了解!」

状況を冷静に見守っていた清麿が、驚き戸惑っていたスラリンに指示を出す。
それを受けて気持ちを立て直したスラリンは、勢いよく地面を叩き跳躍。
イツマデの顔面に思い切り激突した。
この一撃が致命傷となり、イツマデは地面に転がった後に光と消えた。

「いやー、なんとかなったね」
「たいした敵じゃなかったんだが、油断を突かれたな……。
 これからはよりいっそう、気持ちを引き締めないと……」

おのれを律する清麿。だがその思考は、すぐに切り替わる。

「まあ、反省するのは後にして……。今はお前らの話を聞かせてもらおうか」

清麿の視線の先には、癖毛の少年と雪だるまのような悪魔がいた。


730 : 明日へ続く非常階段の途中で ◆NIKUcB1AGw :2016/08/01(月) 21:52:53 1yXhuKCs0


◆ ◆ ◆


最初は予定通り、物陰から様子を見るつもりだった。
だが悪魔に襲われているのを見ては、放っておくわけにはいかなかった。
ジャックフロストの魔法で牽制させ、安全な範囲内で「ワンフォーオール」を使用した投石で攻撃。
後は向こうの悪魔がとどめを刺してくれた。
そこまではいい。
しかしその結果、未知の参加者の前に無策で姿をさらすことになってしまった。

(ど、どうしよう……。助太刀に入ったのはいいけど、こっちに協力してくれるような人かどうかはまだわからないし……。
 ていうか、にらんでるし! こっちすごいにらんでるし!)

顔を青ざめさせ、狼狽する出久。
その様子を見た清麿は、一つ咳払いをすると表情を緩めた。

「あー、そう警戒しないでくれ。助けてくれた相手に危害を加えるようなことはしないよ」
「え、あ、そうですか。こっちとしても平和的に話し合いたいんで、そう言ってもらえると助かります」

清麿の友好的な言動に、緊張が緩む出久。もっとも、それでも低姿勢のままなのだが。

「あの、怪我とか大丈夫ですか?」
「ああ、たいした怪我じゃない。そっちこそ腕を怪我してるみたいだが、大丈夫か?」
「はい、痛みはありますけどなんとか……」
「そうか」
「…………」
「…………」
「会話続けろよ!」
「ひぃっ!」

一喝され、再び顔面蒼白になる出久であった。


◆ ◆ ◆


「とりあえず、自己紹介だ。俺は高嶺清麿。高校1年生だ」
「僕は緑谷出久。僕も高1です」
「なんだ、同い年か。じゃあ、敬語使わなくていいぜ」
「そう? じゃあ、お言葉に甘えて……」
「次は悪魔の紹介しておくか。俺の悪魔はこいつ。スライムのスラリンだ」
「よろしく!」
「よろしくだホー! おいらは出久の仲魔の、ジャックフロストだホ!」
「あと、今は怪我してCOMPで休んでるけど、もう一人仲魔がいて……。
 スパイダーマンっていうんだけど」
「はあああああ!?」

出久の口から飛び出したまさかの名前に、清麿の端整な顔立ちが奇天烈に歪む。

「え、スパイダーマンってあのスパイダーマン? アメリカのスパイディ?」
「うん、そのスパイダーマン」
「嘘だろ、そんなメジャーヒーローが? ものすごい戦力じゃないか……」
「そうなんだけどね……。そんなすごいヒーローが味方してくれても、勝てなかった相手がいた……」
「なんだと!?」

出久はゆっくりと、先ほどのプレデターとの戦いを清麿に語って聞かせた。

「なんてことだ……。あのロボットだけじゃなく、そんな怪物まで参加者の中にいるとは……」
「え? まさか高嶺君も、強いヴィランに襲われたの?」
「ああ……」

今度は、清麿がこの場での戦いを語る番だった。
彼の話す殺人マシーンとの戦いを聞き、出久の表情は険しさを増していく。

「どうやらこの殺し合いには、けっこうな数の危険な存在が参加させられてるみたいだね……」
「そうだな。俺やお前の悪魔も、決して弱いわけじゃない。
 それでも、苦戦を強いられた。個人で動いてたんじゃ、いずれは命を落としてしまうだろう」
「つまり、仲間を集めよう……ってことだね?」

出久の言葉に、清麿は力強くうなずく。

「繰り返しになるが、俺たちの戦力は決して弱くない。
 数さえ集めれば、お前が戦った怪物や俺が戦ったロボットにも勝てるだろう」
「そしてゆくゆくは、魔神皇を倒す!」
「ああ、そういうことだ」

二人の口調は、熱を帯びてゆく。だがここで、ふいに清麿のトーンが落ちた。


731 : 明日へ続く非常階段の途中で ◆NIKUcB1AGw :2016/08/01(月) 21:53:47 1yXhuKCs0

「というか今さらだが……。俺はお前に信用されてるのか?」
「え、どういうこと?」
「いや、俺はお前に助けられている。だから信用してるわけだ。
 だがお前は、俺に何かされたわけじゃないだろう。それでも信用するのか?
 俺がお前をだまして、利用しようとしている可能性だってあるだろう」
「本当に今さらだねえ」

清麿の言葉に対し、出久は微笑を浮かべる。

「少し話せば、高嶺君がいい人だってわかるよ。
 高嶺君は頭がいいし、ちょっと怖いところもあるけど、他人をだまして利用するような人じゃない。
 僕のクラスの委員長に、ちょっと似てるかな」
「そ、そうか」
「それに、君だって僕を疑うことはできたはずだ。
 君を助けたことだって、善人だと信じさせて利用するためかもしれないんだからね。
 すぐに信じてくれたってことは、やっぱり高嶺君はいい人だよ」
「いやいや、お前はどう見たって人を罠にはめられるような顔じゃないだろ」
「顔なの!?」
「たしかに、出久の顔は人畜無害を形にしたような感じだホ」
「フロスト君にも言われた!? なに? これは喜ぶべきところなの!?」


◆ ◆ ◆


「さて、何か話がそれたが……。本題に戻そう」
「そうだね……」
「緑谷は、この場に協力してくれそうな人間はいるか?
 俺の方は、一度顔を合わせたことがある程度の相手だけでな」
「いちおうかっちゃん……爆豪勝己がいるけど……。
 幼なじみでクラスメイトなんだ」
「おお、それなら間違いなく協力してくれるだろ!」
「いや、それが……」

心底言いにくそうに、出久は言葉を続ける。

「かっちゃんはいろいろあって、僕のことをあんまりよく思ってないんだよね……。
 しかも、性格悪くて協調性に欠けるし……。
 強いしなんでもできる才能の塊みたいな人だし、協力さえしてくれればすごく頼りになるんだけど……」
「そうか……。よし、そいつの話はここまでにしよう。
 いちおう覚えておく」
「どうしたの、高嶺君。そんなに汗かいて」
「なんでもない……。そう、なんでもないんだ……」

微妙に昔の自分を思い出し自己嫌悪に陥る清麿だったが、そんなことを知るよしもない出久は戸惑うばかりである。

「さて、それじゃあそろそろ行動に移ろうかと思う。
 殺し合いに消極的な参加者を探し、仲間に引き込むんだ」
「うん!」
「だが、この場所はどうやら原寸大の東京23区のようだ。回るにしても、時間がかかりすぎる。
 俺は二手に分かれることを提案する」
「別行動を取るってことか……。たしかに短時間で広範囲を調査することはできるけど、戦力の分散は不安要素になるね」
「大丈夫だホ! 出久にはおいらがついてるし、スパイディもいるホ!
 それに出久みたいないいやつなら、仲魔になってくれる悪魔がきっとおいら以外にもいるホ!」
「フロスト君……。ありがとう」

友からの激励に、出久は表情を緩める。

「よし、それでいこう」
「話が早くて助かるぜ。合流は……6時間後にするか。
 待ち合わせ場所はそこの駅で」
「わかったよ。……ああ、そうだ」
「どうした?」

怪訝な表情を浮かべる清麿の前で、出久は荷物の中から何かを取り出した。


732 : 明日へ続く非常階段の途中で ◆NIKUcB1AGw :2016/08/01(月) 21:54:36 1yXhuKCs0

「あっ! それ、ちいさなメダルだね!」

出久の手のひらに乗せられたものを見て、反応を見せたのはスラリンだった。

「君、これを知ってるの?」
「それは僕の世界のアイテムだよ!
 メダルそのものには特に使い道は無いけど、メダル王っていう人のところに持っていくと貴重なアイテムと交換してもらえるんだ!」
「ああ、やっぱり使い道ないんだ、これ……」
「だが他の物と交換してくれる人間がいるということは、何らかの価値はあるということだろう。
 戦闘とかには使えなくても、交渉やなんかで使えるかもしれないぜ。
 ……で、それを何に使おうと思ってたんだ?」
「え、ああ、そうだね」

清麿に促され、出久は本題に入る。

「これを、仲間の証にしようと思ったんだ。
 協力関係を築けた人と、今回みたいに別行動することになるかもしれない。
 その時にこれを渡しておけば、面識がなくても仲間だってわかる」
「なるほど。使い道のない代物だからこそ、身分証明に使えるか。
 なかなかいいアイディアだと思うぜ」
「ありがとう。それじゃあ高嶺君には、5枚渡しておくね」
「おう」

小さな金属音と共に、5枚のメダルが清麿の手に移される。

「なんかこういうのやりとりしてると、普通の友達みたいだな」
「はは、そうかもね」
「おいらも友達だホ! ソウルブラザーだホ!」
「僕も忘れないでよ!」


交わされるのは放課後の教室のような、爽やかな会話。
されど、ここが地獄であることに変わりはなく。
カサブタだらけの少年たちの、明日はどっちだ。


【豊島区 池袋駅東口近辺/1日目/午前】

【緑谷出久@僕のヒーローアカデミア】
[状態]:健康、右拳に軽度の炎症
[装備]:COMP(ペッツディスペンサー(スパイディ)型)
[道具]:基本支給品、ちいさなメダル×5@ドラゴンクエストV(うち1枚をジャックフロストが所持)
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:ヒーローになるために、助けを求めている人を救う
1:ヴィラン(プレデター、エイリアン、T-1000、キラーマジンガ)を止めたい
2:仲間を集める
[COMP]
1:スパイダーマン@MARVEL
[種族]:超人
[状態]:胸部強打、疲労(小)、COMP内で待機
2:ジャックフロスト@真・女神転生シリーズ
[種族]:妖精
[状態]:魔力消費(小)


【高嶺清麿@金色のガッシュ!】
[状態]:疲労(小)、背中に軽い火傷、左肩に刺突傷(処置済み)、全身数カ所に擦過傷
[装備]:COMP(携帯型)
[道具]:基本支給品、バルカン300@金色のガッシュ!、ジョン・コナーのバイク(ガス欠寸前)@ターミネーター2、
ウィンチェスターM1887(2/5)&予備弾倉×4@ターミネーター2
ちいさなメダル×5@ドラゴンクエストV
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:魔神皇を打倒する。
1:仲間を集める
[COMP]
1:スラリン(スライム)@ドラゴンクエストⅤ
[種族]:妖精
[状態]:健康


733 : ◆NIKUcB1AGw :2016/08/01(月) 21:55:20 1yXhuKCs0
投下終了です


734 : 名無しさん :2016/08/01(月) 22:17:54 O44VRHw60
投下乙です

この二人は親和性高いなぁ、少年漫画の王道主人公同士として
しかしデクくん、止めようとしてる軒並み話通じない相手ばっかりだがどうするか…?
この二人でこのタイトルは良いですね


735 : 名無しさん :2016/08/02(火) 00:50:26 B0EDoy620
投下乙です。

少年マンガ主人公だけあって親和性が高いですね。
信頼できる人間にメダルを渡すというのはなかなか新しい。
しかしここらはヤバい奴ばっかり……w


736 : 名無しさん :2016/08/02(火) 17:09:22 8kNZA7nwO
投下乙です

元ぼっちとは思えないくらいコミュ力高いなこいつら
どっちも頭使って戦うタイプだし、戦闘でも相性良さそう


737 : 名無しさん :2016/08/03(水) 05:23:42 CsMRMEmg0
これヴィラン止めるには殺すしかないやんけ……


738 : 名無しさん :2016/08/03(水) 08:51:13 TSj.10nk0
話が通じるとかそう言う相手じゃ無いもんなぁw


739 : 名無しさん :2016/08/03(水) 13:24:14 lyKfBbZ60
悪役というより、人類の敵レベルだと思うんですけど。


740 : ◆EPyDv9DKJs :2016/11/09(水) 03:22:03 7UGJAQk.0
投下させていただきます


741 : とっておきの――― ◆EPyDv9DKJs :2016/11/09(水) 03:30:40 7UGJAQk.0
 結論から言えば、ちひろとポルナレフは協力することにした。
 ちひろにとって悪魔以外で戦える手段は持ち合わせてないのと、
 出会った時、ポルナレフの性格を見て警戒心が薄れたのも大きい。
 彼女の連れてる悪魔、スター・プラチナが諭した相手だからもあるだろう。
 ポルナレフは見ず知らずの相手であろうと、この場で放って置く事は出来ない性格だ。(特に女性は)
 二人は情報交換をするが、互いに他の参加者と出会ってない現状、この場においての情報は殆どなく、
 ちひろが働くプロダクションに所属しているアイドルの数名とポルナレフの敵、ヴァニラ・アイスのことぐらいだ。
 その為すぐに情報交換が終わり、別の話題へと移っていた―――

「つまり、物理的な攻撃しか出来ないんですか?」

「ああ。スター・プラチナは確かに強いが、言い換えると単純になる。
 数少ない弱点が射程距離・・・・・・は、此処だと悪魔だから関係ないのか?」

『悪魔は一定距離を離れると強制的にCOMPに戻る仕様がある。
 範囲はサマナーが認識できる範囲まで、余り遠くは無理だな。
 下手をすると、曲がり角を曲がった瞬間に戻される可能性もある。』

「つまり目で見える範囲なら安心・・・・・・か。
 それなら、寧ろ射程は伸びているから問題ないな。
 次に言っておくべき弱点は、飛び道具を持っていないって所だな。」

 普段のノリなら最初の紳士のようにか、ナンパな性格でちひろを口説くであろうポルナレフは、
 彼女の悪魔であるスター・プラチナの特徴や能力、スタンドについて教えていた。
 流石にこの状況では普段のノリのままでいるわけにもいかず、今は戦いに身を投じてる時の状態だ。
 悪魔はCOMPに搭載されている機能『悪魔辞典』で調べられるので必要ないのだが、
 本来の持ち主も気づかぬ弱点にも気づける可能性があると、彼女は彼から聞くことにした。
 スター・プラチナは強い。それは操られたとは言え、戦ったポルナレフは特に理解している。
 だが弱点がない完全無敵のスタンドというわけではなく、承太郎も苦戦を強いられた敵も多い。
 スタンドではなく悪魔なので、ちひろの意志どおりに動くわけではないのだが、
 知っておけば工夫は出来るであろう、弱点を重点的に説明していた。

「後は、触ったらまずいタイプも苦手になるな。
 射程距離は伸びてるとして、問題は残りの三つだ。
 物理的な攻撃が通じない、例えば液体とか霧とかになる奴も苦戦しやすい。
 飛び道具がなく、触ったら危険なタイプは何か適当に投げるのも手だ。
 多分、銃の弾丸も弾いて飛ばせば、銃並の威力は発揮できると俺は思っている。」

『お前のスタンド、だったか。それも弾丸を弾いて飛ばせるのか?』

「いや、俺のチャリオッツはスピードについては自信があるが、、
 本質は剣で斬る、突くといったタイプだ。純粋なパワーだと人並に―――」

 会話の最中、聞こえてくる爆発音。
 そう遠くはない位置から煙が上がってるのが見え、
 戦いが既に始まっているという、狼煙を髣髴とさせる。


742 : とっておきの――― ◆EPyDv9DKJs :2016/11/09(水) 03:58:57 7UGJAQk.0
『どうやら戦いが始まってるようだ。行くか?』

「行くべきとは思うが、ちひろさんの意見次第だな。
 敵だけがいるか、あるいは俺が確認しにいく間に入れ違いもありうる。
 俺一人の判断でちひろさんを危険な場所に連れて行くわけにもいかない。」

『との事だが。』

 セルティとポルナレフに視線を向けられ、ちひろは顎に手を当てる
 (セルティは首から上はないので、向けれる視線はないのだが。)

「えっと・・・・・・私は―――向かうなら同行します。
 もしかしたら知り合いがいるか、或いは来るかもしれないので。」

 内心では行きたいかといわれると、彼女は行きたくなかった。
 ポルナレフと違いただの一般人なのだから、当然と言えば当然だ。
 行った所で自分が役に立てる場面があるかなど、ないに等しい。
 行くと決めた理由は、スター・プラチナのことを考えてのことだ。
 即席のチームで打ち合わせなしに連携が取れるわけがない。
 その点を考えると、スター・プラチナはポルナレフをよく知っている。
 彼のそばで戦わせた方が、ポルナレフにとっても利があると思って同行を決めた。

「分かった・・・・・・だが、ちひろさん。行く前に一つだけ約束して欲しい。
 『やばいと感じたらすぐに逃げてくれ』、これを絶対守ってくれないか?
 俺がどんな目にあっていても、助けようと考えず、自分の身を第一に考えて欲しい。」

 ポルナレフは『約束』の部分を強調するようにちひろに言う。
 助けないと『約束』して、自分を庇ってこの世を去った彼の仲間がいた。
 再び、それも本来守るべき彼女に庇われては、騎士として恥でもあるからだ。

「―――分かりました。ですが、私からも『約束』してください。
 『私が逃げた後、必ず追いつくこと』、これを守ってください。」

 ポルナレフの真剣な表情から、彼にとって約束は人並み以上に重い、
 そう思えたちひろは、自分からもポルナレフと約束を取り付ける。
 約束をしなければ、彼は無理をしてでも一人で戦ってしまうかもしれない。
 会ってほんの少しの会話だけであり、ちひろは彼のことを殆ど知らない。
 これはなんとなく程度にしか思ってないが、そんな風に感じ取れた。

「・・・・・・分かった。『約束』する。」

 ◇ ◇ ◇

 煙が上がる場所までそう遠くはないが、二人と二匹の悪魔はその道の途中で立ち止まった。
 視線の先には白いシャツに黒のスラックスの、高校生ぐらいの青年が一人で走っている。
 ポルナレフが警戒を促し、ちひろはスター・プラチナの背後へ隠れるように身を隠す。
 そしてそのスター・プラチナの隣にポルナレフが立ち、セルティちひろの隣で影から鎌を作り上げ、構える。
 相手も存在にに気づき立ち止まると、

「俺の名前はジャン・ピエール・ポルナレフ!
 お前は殺し合いをしているか、していないかを聞きたい!」

 距離があるため、ポルナレフから大声で問いかけ、

「俺は乗っていません! 高嶺清麿って言います!」

 相手も大声で返し、そのまま二人で会話を続ける。

「さっきの爆発音だが、お前はそれに駆けつけた奴か? それとも、その爆発を起こした奴か?」

「起こした、といえばそうなります。アイツ相手にはああでもしないと・・・・・・」

「アイツ、か。そいつについても聞かせてもらいたい。」

 立ち止まっていたポルナレフたちが歩き始め、
 清麿も歩き出し、互いに歩を進めて近付く。

 ―――十メートル。

 何事もなく、近付く。
 ただ、静かに歩むだけ。

 ―――九メートル。

(あいつの瞳―――)

 ―――八メートル。

 歩む中、ポルナレフは清麿を見続ける。
 無害な人間を装っていた相手が実は敵だった、
 と言うのは経験しており、今はちひろもいる。
 頼れるスター・プラチナもおり、セルティも戦える身。
 彼女を守れる立場は多いが、警戒することに越したことはないが......

 ―――七メートル。

(意志の強い瞳をしている。あいつはこの戦いに抗う、俺達のような―――)

 ―――六メートル。

 彼の眼差しは嘘偽りはないであろう、屈強な心を持っている。
 DIOのような邪悪さを全く感じさせない。
 例えるなら、ジョースターの血筋の男達のような黄金の―――

 ―――五メートル。

(魔神皇に立ち向かう―――)


743 : とっておきの――― ◆EPyDv9DKJs :2016/11/09(水) 04:05:00 7UGJAQk.0





「ぴにゃぁ!!」

 清麿との距離、残り五メートル。
 気の抜けるような猫のような鳴き声がこだまする。
 ポルナレフが通る道の脇の路地から振り下ろされた刃を、
 スター・プラチナが白刃取りの要領で受け止める。
 受け止めた刃を持つのは、錆びたような色をする、赤黒い眼差しを向ける機械。
 
 ちひろは突然の出来事で何が起きたか分からなかったが、
 経験の多いポルナレフとセルティはすぐに察した。

 この男、清麿は―――敵だと。



 ◇ ◇ ◇



 T-1000の擬態は完璧だった。
 人の姿に擬態する場合は声帯、感情のパターンすらも再現可能であり、初見で見抜くのは極めて困難だ。
 事実、騎士として鍛えられた五感を持つポルナレフでさえも警戒した上で信用に値すると認識できるほどであり、
 暗闇から蝿を視認でき、それを正確にスケッチできる視力を持つスター・プラチナにも、擬態については気づいてない。
 唯一の誤算とするなら機敏な動きで刃を受けとめ、キラーマジンガと拮抗するスター・プラチナの存在だろう。
 スター・プラチナに対応されなければ、たとえ結果が悪くても腕の一本は持っていくことが可能だったのだから。
 とは言え、自身が強力な悪魔を従えているのだから、相手もそれ相応の悪魔がいてもおかしくはなく、
 ポルナレフ達は一瞬の隙を突かれ動きを止めるが、彼は殺戮機械。驚嘆することは一切ない。
 走りながら手を刃に変えて、ポルナレフに突き刺すように伸ばす。

「チャリオッツ!!」

 ポルナレフとて、遅れを取る男ではない。
 すぐさま己の精神をビジョンとするスタンド、銀の戦車(シルバー・チャリオッツ)を出す。
 スター・プラチナと同等のスピードを有しており、加えて鎧を解除すれば更に上がる。
 出てくると同時に鎧を弾き飛ばすように解除。素早い身のこなしでチャリオッツが行き、
 刃となっている手首から先を切り落とすが―――

「な―――!?」

 切り落とすと、切断面から銀色の液体が流れて手の形になり、瞬く間に戻ってしまう。
 修復を優先する都合、動きは一瞬止まってしまうが、その止まってしまった一瞬の隙は、
 ポルナレフが驚嘆して止まったので妨害されることなく、動き出すと再び手を伸ばし突き刺しにかかる。

「! すまない、ちひろさん!」

「イタッ―――!」

 当たるすんでの所でポルナレフが我に返り、背後のちひろを突き飛ばしながら、
 自身も倒れる形で攻撃を回避するが、僅かな差で刃はポルナレフの肩の皮を裂き
 周囲に血を撒き散らす。

「グッ・・・・・・!」

 血が軽く舞うが、避けなかった場合のダメージよりはずっと軽微なものだ。
 あのままだったら、間違いなく肩の肉を貫いて、致命傷になっていたはず。
 何度も死に瀕した事のあるポルナレフには、呻き声は出すが動きは止まらない。
 そのまま受身を取り、シルバー・チャリオッツは射程距離内にいるT-1000を何度も突き刺し、
 お互いに距離を取りながら、清麿とポルナレフは向かい合い、ちひろは立ち上がってすぐに後ろへ下がる。
 T-1000の身体には無数の風穴こそ開くが、穴は銀色の液体が流れ、風穴は次々と塞がっていく。
 二度目の攻撃で確信を持つ。この敵は―――チャリオッツと相性が最悪に等しいと。

「てめーのスタンド、自分を鉄の液体に変化させる能力か・・・・・・って、魔神皇は何か俺に恨みでもあんのか!?」

 『悪魔』と協力する、『願いを叶える』目的のための殺し合い、そして出会った敵は『鉄』の変化。
 苦戦か、手が出せなかった敵の特徴ばかりが彼の周りに付きまとい、ポルナレフは嘆かずにはいられない。
 これは敵だけに限らず『影』を操り、バイクの『車体を変形させる』事が可能なセルティも該当する。

 ついでに言うと、セルティの基本武器の『鎌』やT-1000の『無害な人間を装って攻撃する』と言う点も、
 彼には覚えがあるが、前者は記憶の欠如、後者は擬態してると気づいてないので該当されない。

「スタンド? 今、お前が出したのは悪魔じゃないのか?」

 感情も完全に擬態しているT-1000は、
 敵と認識されてもなお、清麿の口調、声帯のままでポルナレフへと問う。


744 : とっておきの――― ◆EPyDv9DKJs :2016/11/09(水) 04:10:21 7UGJAQk.0
「な、てめえはスタンド使いじゃあないのか!?
 いや、ならスタンドが見えるはずが・・・・・・! まさか―――」

 情報交換の際にスタンドを出した時、ちひろには見えていたが、
 これはちひろがスター・プラチナを召喚した事で影響を受けたものだと推測した。
 だが、対峙する相手はスタンドという単語に覚えがなければ、その上悪魔と勘違いしている。
 何かと一体化するようなタイプのスタンドでなければ、スタンド使い以外には視認することが出来ない。
 旅の途中で出会った船のスタンド、車のスタンドは何かを媒介に形を作り上げて攻撃してきおり、
 勿論シルバー・チャリオッツはそういうタイプではなく、相手がスタンド使いでないならば、
 スタンドの攻撃は何一つとして見えず、圧倒的優位に立ち回ることが可能だろう。
 『見えない攻撃』が優位に立てることは、この舞台に呼ばれたあの男で嫌というほど痛感している。
 それを考えれば、スタンドについていくらか制限をされたとしても、おかしくはなく、
 今思いついた疑問は、おおよその予想がついた。

「どっちにしろ、てめーが『乗っている敵』には変わりはねえ! セルティ!」

『なんだ?』

 この状況でもセルティは影と指を用いて、素早くPDAをタイピングして画面をポルナレフへ見せる。

「さっき、バイクを変形させることも出来るって言ってたな、どう変えられるんだ?」

『変形とは違うな。バイクを馬や馬車のようにすることが出来る。
 というより、私のバイクは元は馬で、馬をバイクにしているが適切だ。』

 セルティの見せた画面に表記された文字を見ると、

「―――なら、一つ策がある!」

 自信たっぷりの表情で、ポルナレフは言ってのける。

「本当ですか!?」

 明らかに人を超えた存在とも言える相手に、
 倒す手段があると危機、ちひろは驚嘆する。
 先ほどのポルナレフの話と、液体に近い敵の身体。
 スター・プラチナの不利とする、物理攻撃が通じにくい相手だ。
 それに策があるのだから、ちひろは期待の念を抱く。

「その為にはセルティのバイクを馬車にする必要がある。
 セルティ、形を変えるのにどれくらいいるか分かるか?」

『悪魔として制限されてる可能性がある。多分、長くて二、三分だろう。』

「セルティはちひろさんと一緒に下がって道路に馬車を頼む。
 その間にあいつらを俺とスター・プラチナで時間を稼ぐ!」

『分かった。すぐに用意しよう。』

「えっと、戦えない身で言うのもなんですが・・・・・・無理はしないでください。」

「ああ、分かっている!」

 セルティがちひろをつれてリターンしないよう、認識できる範囲まで後退し、
 同時にスター・プラチナがキラーマジンガを突き飛ばしながら離れ、スター・プラチナと並ぶ。

「隣に並ぶのが承太郎じゃあないってのは、
 なんか新鮮だな・・・・・・しかも着ぐるみに、よくわからねえ翻訳機までつくか。」

 本来、隣に立つのは仏頂面で高校生らしからぬ逞しい学生服の男だ。
 今はその男の精神のビジョンが猫のような着ぐるみに猫のような掛け声。
 本来の持ち主の時ならありえないであろう、シュールきわまりない光景。
 もし承太郎がこの場にいたらどう思うか、などと苦笑してしまう。
 だが、精神のビジョンだけとしても共に旅をしてきた仲間であることにかわりはない。
 味方にいることがこれほど頼もしいのは、恐らく彼にとってはいないだろう。

「行くぜ、スター・プラチナ!」

 きぐるみごしで、ポルナレフの言葉に静かにスター・プラチナはうなずく。

「ぴにゃあっ!」

 スター・プラチナの右ストレートが、キラーマジンガへと叩き込む。
 成長すれば光速を通り越して、僅かに世界を止めるにまでいたる星の白金。
 普通の人間なら防ぐ間も与えず、骨を砕くような一撃になりうる。
 しかし、キラーマジンガは機械。対応する速度も人を遥かに超えており、
 もう片方の手に構える鎚がスター・プラチナの拳とぶつかり合う。
 互いの重い一撃は周囲に軽く地響きを起こすほどで、互いに怯む。

 並外れたパワーを持つが―――勝っているのはキラーマジンガだ。
 キラーマジンガの鎚は触れれば打撲だけではすまないであろうスパイクがあり、
 随所にあるわけではないが、素手で殴るスター・プラチナでは少々分が悪い。
 もっとも、肉を斬らせて骨を絶つのか、スパイクも同時にへし折られていた。
 悪魔というスタンドとは違う扱いの都合上、ちひろにダメージがないものの、
 キラーマジンガはスター・プラチナの攻撃を受け止められるパワーがある、と言うことだ。
 シルバー・チャリオッツはある程度硬いものは問題ないが、直接的な破壊力は強くなく、
 ただ闇雲に加勢したとして、戦力になりえるかどうかは、はっきり言って怪しい。


745 : とっておきの――― ◆EPyDv9DKJs :2016/11/09(水) 04:17:50 7UGJAQk.0
(こいつはスター・プラチナが抑える。俺がやるべきは―――キヨマロの足止めだ!)

 悪魔同士の戦いを一瞥すると、すぐにポルナレフはT-1000に向かって走り出す。
 相性は身体が金属の液体になり、物理攻撃が殆ど通用しないとは理解はしている。
 だとしても、スター・プラチナに全てを任せるわけにはいかない。
 少しでも攻撃を自分に誘導させるべく、チャリオッツと共に前進する。

 チャリオッツの射程距離の限界である約一メートル半に入ると、
 同時にT-1000へ無数の突きのラッシュを繰り出す。
 スピードのあるラッシュは、いかにT-800を上回る能力を持つ彼でも、
 初見で全てを避けきれるほどではなく、腕をクロスさせ後ろへ下がりながら身体中が切り刻まれていく。

(―――どういうことだ?)

 ポルナレフは、避けるT-1000の行動に疑問を抱いた。
 自身の身体を液状に出来るなら、物理攻撃を無視してでも攻撃できると予想していたが、
 今は、なぜか避ける必要がないはずの攻撃を避けている。

(まさか、俺は奴の能力を勘違いしているのか?)

 『思い込みとは何よりも恐ろしい』とは、誰かが言った言葉だ。
 万が一勘違いしてるのなら、思い込んでしまうのは危険と言うもの。
 思い込みとは、物事の考え方を阻めてしまう危険な壁である。
 同時に、その理由が奴の攻略の糸口が見つかるかもしれない。
 『避けなければならない何か』、それが今の攻撃にはあった可能性がある、
 そう思うと、ポルナレフは突きを終えてすぐに距離を取り、注意深く観察して行動する。
 離れると、T-1000に刻まれた傷は次々と修復され、服までもが戻っていく。
 戻ると同時に再び右手が剣の形になってポルナレフへとその右手を振るう。
 ポルナレフは屈みながら転がることで回避し、T-1000の攻撃は空振りに終わり、ポルナレフの横を通り過ぎる。

 そう、彼にとっては。

「!」

 攻撃は続けて、キラーマジンガの一振りを避けたスター・プラチナへと向かっていた。
 すぐにスター・プラチナは避ける行動を取るが、着ぐるみを貫通し右手の甲を貫く。

「スター・プラチナ―――!?」

 既に手遅れだが、ポルナレフは手を切断。
 切断された部分はスター・プラチナは振り払うと、手から抜け落ちる。
 拳を基本とするスター・プラチナで、手の怪我はかなりまずい。
 このまま戦えば致死量の攻撃を受けるのも時間の問題になる。
 かといって、相対するT-1000も放置できる相手ではない。

 考える暇を与えないかのように、今度はT-1000の両腕が剣へと変化し、ポルナレフへと振るう。
 剣を使うスタンドである以上、剣で遅れは取ることはなく、チャリオッツも剣にて応戦。
 剣戟が始まるが、T-1000も多くの戦闘データをインプットされた殺戮機械であり、
 シルバー・チャリオッツのパワーは射程の短さに対して高いわけではなく、次第に押されていく。



 スター・プラチナの右手へのダメージは大きいが、
 承太郎の精神のヴィジョンゆえに、冷静な判断力や洞察力はあり、
 相殺、或いは受け止める形で防いでいた攻撃は出来るだけ避け、
 攻撃の隙をついて叩き込む消極的な戦術に切り替えた。
 キラーマジンガの剣を避けきり、

「オラオラオラオラオラオラァ!!」

 戦いの最中に翻訳機が壊れ、本来の威圧感溢れる声と共に左手の拳のラッシュで反撃する。
 叩き込まれる寸前に、鎚でガードし攻撃を受け止めるも、スター・プラチナの破壊力はA。
 鉄格子をひん曲げたり、学校中の窓ガラスを同時にぶち破ったり、ダイヤモンドを砕いたり、
 パワーに関する快挙を上げればきりがないほどであり、片手だけでも十分な威力がある。
 鎚のスパイクの殆どは砕かれ、キラーマジンガも衝撃で軽く後退するほどだ。
 スター・プラチナはまだ拮抗しているが、それでも両手のラッシュが使えないのは大きい。
 ダメージは蓄積できても、消耗に対しては余り見合っていない。

 そして、ポルナレフにいたっては既に劣勢だ。
 二刀流の攻撃を裁ききることが出来ず、次々と身体に赤い線が刻まれている。

(クソッ、このままだと―――)


746 : とっておきの――― ◆EPyDv9DKJs :2016/11/09(水) 04:21:30 7UGJAQk.0



「ポルナレフさん! 準備出来ました!」

 ちひろが大声で叫び、ポルナレフは僅かに視界の隅に入れる程度に振り向く。
 フランス人であるポルナレフにとっては、何度か見覚えのある西洋の馬車が路上に佇む。
 セルティのスーツやバイクと同じで漆黒の色で、その馬車に繋がれているのは
 首から影のようなもやを出し続けている、首のない漆黒の馬。
 形以外はかなり奇怪であり、都市伝説にでも出そうな不気味さを感じさせる。
 (実際、彼女は首なしライダーとして都市伝説になっているのだが。)
 ちひろは既に中に入っており、扉を開けてそこから姿を見せており、
 セルティはその首のない馬へと跨リ、既に待機していた。

「よし、スター・プラチナ! あれに乗り込むぞ!」


 一旦距離を取ることで剣を空振りに終わらせ、
 その一瞬の隙にポルナレフは相手の瞳を潰すように正確に剣で突き、全力で馬車へ走り出す。
 スター・プラチナも遅れて(浮遊しているので走ると言うのもおかしいが)走り出し、
 次にキラーマジンガが追跡し、最後にT-1000は修復を優先する都合、遅れて追跡する。
 だが、遅れをものともしない脚力でキラーマジンガを追い越し、二人との距離が縮めていく。

「うおおおおおおおおおおお―――!!」

 視界の隅にT-1000を捉え、ポルナレフは全力疾走するが、距離は縮まる一方だ。
 このままでは馬車に乗る前に追いつかれてしまえば全てが無駄になる。
 仮に乗れたとしても、ほぼ同時に襲撃にあうだろう。

(間に合え、間に合え、間に合えッ!!)

 走りながらそう念じるが、念じたところで速度が上がるわけではない。
 だが―――

「・・・・・・え?」

 不意にスター・プラチナが先行し、ポルナレフの前で振り返り、
 立ちはだかるように待ち構える。

「な、何をやってんだおめぇは〜〜〜!?」

 スタンドではなく悪魔なので、スタンドと違ってすり抜けることは不可能だ。
 このままでは衝突してしまうのは明らかである。
 ブレーキする余裕もなければ、方向転換する間もない。
 そんなことをしていたら、間違いなく死ぬ。
 ポルナレフはスター・プラチナへ衝突―――




「オラァ!!」

「ぬおおおおおおお!?」

 する寸前、スター・プラチナが巴投げの要領で、思いっきり投げ飛ばされる。
 投げ飛ばす威力は大の大人でありながら凄まじい勢いで、走るよりも遥かに速い速度で飛んでいく。

 巴投げをしながらスター・プラチナはその勢いで受身を取り、T-1000へ左手の拳の乱打。
 身体のいたるところにクレーターが出来上がり、軽く吹き飛ばされる。

 投げ飛ばされたポルナレフは近くの街路樹にチャリオッツの剣を突き刺し、急停止。

「セルティは馬車を出せ! ちひろさんはすぐにCOMPって奴にあるリターンだ!」

 すぐ近くにあるセルティの馬車へと乗り込み、指示を促す。

「は、はい!」

『わかった。』

 二人はうなずくと(セルティには首がない上に声はないので伝わらないが)、
 ちひろがCOMPを操作する間、馬車が走り出す。
 スター・プラチナはT-1000達の前から消失し、
 作戦の準備は一先ず成功といったところだろう。

「それで、どうするんですか?」

 馬車があればなんとか出来る手段があると彼は言い、

「これは俺の仲間曰く、とっておきの方法だ。
 今回のケースはその仲間とは考え方が違うが、
 この戦い方をやって、負けた戦いは一度もない!」

「そ、それは?」

 これほどまでに豪語するポルナレフに、
 ちひろは期待するが―――

「それは―――逃げる!」


747 : とっておきの――― ◆EPyDv9DKJs :2016/11/09(水) 04:27:57 7UGJAQk.0
『ん?』

「え?」

 自信満々に、威風堂々ともいえる彼から出た言葉は、まさかの逃走。
 セルティも声が出ないので人知れず困惑し、ちひろは更に困惑せざるをえない。

「話は後だ! 奴の脚力は完全に人じゃあねえ!
 速度を出して逃げ切れた時に理由を話すから待ってくれ!」

 そういいつつ、ポルナレフは後ろの窓から様子を伺う。
 背後を見ると、T-1000が全力疾走で追跡しており、
 動き始めて速度が出てないせいで、追いつきそうなほどだ。

「クッソォ〜〜〜・・・・・・やりたくはねえが、これしかねえ。」

 扉を開け、そこからポルナレフは落ちない程度に身を出す。
 出始めてるとは言えそれなりの速度は出ており、相応の強風が吹く。
 下手をすれば路上に転がって・・・・・・その先のこと想像する必要はないだろう。

「これでもくらっておきやがれ!!」

 そう言い放つと同時に、シルバー・チャリオッツの剣先が射出。
 追跡していたT-1000の脳天へと突き刺さり、その反動で転倒する。
 転倒した後すぐに起き上がるが、その時既に馬車は速度を上げており、
 いくらT-1000の脚力でも、追いつける速度ではなかった。

「い、今何をしたんですか?」

「これはとっておきだから説明はしてなかったが、
 チャリオッツは剣先を飛ばす事が出来る。唯一の飛び道具だ。
 だから敵に知られるわけにもいかない。悪いがこれだけは黙っていた。
 加えて、剣先がなくなるから、回収しないと攻撃が出来なくなっちまう。」

「・・・・・・それって、凄くまずくないですか。」

 その剣先は今しがたT-1000が抜いて捨てていたのは見えたが、
 この場に戻らなければならない事には変わりはない。

「まずいどころじゃあねんだよなぁ〜〜〜・・・・・・チャリオッツは剣がねえと、
 戦うことが殆ど出来ねえ。回収できるならしたいが、奴を相手にするのはヘビィーだぜ・・・・・・」

 やるしかなかったとは言え、自身の武器を犠牲にしたことを嘆かずにはいられない。
 頭をかいたり抱えたり、ポルナレフは悩む。

「えっと、それで逃げる理由って何ですか?
 勝てる見込みが薄い、とはなんとなく察しましたけど。」

 頭を抱えてうなだれているところだが、
 先ほどの理由を聞くために、ちひろは問いかける。
 彼女に訊かれたことで、ポルナレフは落ち着いてから、質問に答えた。

「・・・・・・奴はダメージを与えても液体が流れてすぐに傷を塞ぐ。
 物理攻撃が通じず、今の俺達は物理攻撃しか手段を持ち合わせてない。
 本来、放棄はしないのが仲間がやってきた本来の戦い方なんだが、
 あのまま戦っても、将棋やチェスで言うチェックメイトになっちまう。」

「それって、逃げるしかないってことですか?」

「いいや、それだとこの殺し合いが破綻しちまう。
 そいつが優勝するのが魔神皇の望みなら分かるが、
 悪魔って不確定要素を与える奴がするとは思えない。
 だから必ず、攻略法ってのがあるはずだ。その推測なんだが、
 奴は自分を液状にできることから、気化させるほどの高熱か、
 逆に凍らせる程の低温にさせれば、もしかしたらの可能性がある。
 俺のスタンドや、キヨマロの能力のようにそれらを使える奴が、
 参加者か、或いは悪魔として参加してる可能性があるかもしれない。
 今はそいつか、或いはその環境を探さないと、勝ち目は間違いなくゼロだ。」

「さっき言った、ヴァニラ・アイスという人ではダメですか?」

 全てを暗黒空間へと飲み込もうとする、凶悪極まりないスタンド。
 あの男なら再生する部分も全てを消し飛ばす事が出来るのではないか。
 敵の敵は味方、という理論を用いてちひろは訊いてみる。

「仮に出来ても、アイツが俺に協力するってのは絶対ありえない。
 というか、そうでも俺が絶対認めないぜ、あの野郎は・・・・・・だが、
 もし奴が追って、この先にヴァニラ・アイスがいたなら押し付けて・・・・・・ん?」

「どうかしました・・・・・・まさか、何か対策が―――」

「いや、この状態だと、セルティと話せない気がしてな。」


748 : とっておきの――― ◆EPyDv9DKJs :2016/11/09(水) 04:34:13 7UGJAQk.0
 彼女は外の馬に乗ってるため、この場にはいない。
 セルティはPDAでしか会話することが出来ないので、
 そのPDAが見えない場所では、彼女と会話が出来なかった。

「・・・・・・そういえば、そうでしたね。スタンドで画面は見れないんですか?」

「いや、俺のチャリオッツは俺の目が見えないものは見えない。
 だからチャリオッツだけを馬車から出しても、読み取ることができねえ。」

「うーん、セルティさんが入力して、それをスタンドで受け渡しがいいでしょうか。」

「面倒だが、それしかねーか・・・・・・」

 敵が追ってこないのを再三確認すると、
 ポルナレフはやっと気を緩めて、座席にもたれる。

(それにしても、今思えば奴の行動はいくつかおかしいところがある。
 最初の攻撃の時、何故止まった? 次のラッシュも、最後のとっておきも怯んだ。
 意味がないと思った目潰しも通じたといえば通じた・・・・・・やはり、奴には何かあるのか?)

 町並みをを眺めながら、ポルナレフは考察する。
 こういう考察は、彼の仲間の頭の回る老人の方が適任だろう。
 長年培ってきた経験と、トリックスターとも言える老獪な戦いをするあの男が。
 しかし、此処には旅の仲間は参加してなく、今いるのは悪魔として呼ばれた彼だけだ。
 旅の仲間には頼れない。自分か、あるいはこの場で共に往く仲間を探すしかないだろう。

 辛うじて危機を脱した、ポルナレフとちひろ。
 まだ朝ではあるが、早くもこのまま眠りにつきたい気分だ。
 朝日の照らす東京の舗装された道路を、漆黒の馬車が駆け抜ける―――

【豊島区/1日目/朝】
【千川ちひろ@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:突き飛ばされた時の軽い打撲(支障はない)、清麿(T-1000)への恐怖(中)
[装備]:タブレット型COMP
[道具]:基本支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:あの人の所に帰りたい
1:ポルナレフと行動をする
2:清麿(T-1000)の対策を探す
3:彼(スター・プラチナ)の回復も考えたい

[COMP]
1:スタープラチナ@ジョジョの奇妙な冒険
[状態]:疲労(中)、右手にスパイクの傷、右手に風穴、ぴにゃこら太の着ぐるみ(黒)(右手に風穴、翻訳機故障)、COMPの中

【J・P・ポルナレフ@ジョジョの奇妙な冒険(3部)】
[状態]:左肩の皮が軽くスライス(行動に支障なし・止血済み)、いたるところに切り傷(止血済み)、疲労(中)
[装備]:亀のCOMP
[道具]:基本支給品、不明支給品×1
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:この場からの脱出
1:ちひろと共に脱出手段を探しつつ、彼女の知り合いを探す
2:清麿(T-1000)の対策を探す
3:ヴァニラアイスに清麿(T-1000)を押し付けるべきか
4:剣は回収したい。だがアイツを相手にするのは絶対避けたい
※スタンドが一般人にも目視可能なことを知りました
 他の参加してるスタンド使いがそうかどうかは、書く方にお任せします
 もしかしたら、他にも何か制限されているかもしれません
※現在、シルバー・チャリオッツの剣先がありません。落ちてる場所は豊島区の路上です
※不明支給品を確認してないか、現状把握してる内容でT-1000に対抗できない支給品かは次の方に委ねます

[COMP]
1:セルティ・ストゥルルソン@デュラララ!!
[種族]:異邦人
[状態]:疲労(小)
※セルティは「首なしライダー」として召喚されています
※バイクを馬、馬車、逆にそれらをバイクにするには時間がかかります(少なくとも即座は無理)
※現在の馬車の形態は席がオープンカーのように『出てない方』です

※互いに知り合い、およびヴァニラ・アイスについての情報を得ました
※T-1000が清麿に擬態してる事には全員気づいていません
 清麿を身体を金属の液体にし、それを硬質化させたり溶解する能力と思っています
 ポルナレフだけは怯んだことを、疑問に思っています
※キラーマジンガにマホカンタ(魔法反射)があることを全員知りません
※二人はポルナレフのとっておきを知りました
※現在馬車で移動してます。どの方向に逃げたかは次の書き手さんにお任せします


749 : とっておきの――― ◆EPyDv9DKJs :2016/11/09(水) 04:36:38 7UGJAQk.0
 またしても、敵の強さを判断し、逃亡するという『経験』から来るものによって逃げられた。
 辺りに散らばった自分の部位を回収しながら、T-1000は思う。
 ポルナレフもまた、インプットされた数多くの戦闘データを上回った。
 とは言え、逃げられた一番の原因は『移動手段の存在』。これに尽きるだろう。
 清麿はバイクを用いて、ポルナレフ達は馬車によって逃走に成功している。
 脚力は常人を遥かに凌駕しているが、速度の出たものを追うことは出来ない。
 逃がさないように行動しても、悪魔が移動手段を持ち合わせている可能性も出た現状、
 何かしらの移動手段を確保しなければ、また逃げられる可能性もある。
 優先すべきは自分以上に動ける足と武器の確保。それからポルナレフか、清麿を追跡。
 方針を決めて、再び静かになった街中を二人の殺戮機械が走り出す。



 T-1000は損した部位を瞬時に修復することで成り立っている。
 だが、ダメージを受けたそばから修復を優先するせいで、隙が生じてしまう。
 その修復中に強いダメージを受け続けると、一時的だが完全に無防備になる弱点がある。
 ポルナレフとの戦いで回避行動を取ったのは、それとは別の理由があった。
 理由は単純、清麿の感情も再現しているので、彼ならどう動いたかを考えただけのことだ。
 しかし、あまりに再現した結果、隙が生じると気づかれる可能性を増やしていることを彼は知らない。
 ポルナレフがそれに気づいて、有利に立ち回れるかどうかもまた、今は分からない。

【豊島区/1日目/朝】
【T-1000@ターミネーター2】
[状態]:健康、高嶺清麿の姿
[装備]:COMP(携帯型)
[道具]:基本支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:皆殺し
1:移動手段と武器の確保。最悪移動手段だけでも確保し、どちらかを追跡する
2:ポルナレフ達を追跡
3:高嶺清麿を追跡
※ポルナレフに触れているので、ポルナレフ擬態することが可能です
 (チャリオッツやスター・プラチナになれるかどうかは次の方に委ねますが、多分出来ないと思います)
※このまま清麿の姿でいるか、元に戻るか、或いはポルナレフになるかは次の方に委ねます
※どちらを優先して追いかけるのかは次の方に委ねます

[COMP]
1:キラーマジンガ@ドラゴンクエストⅥ
[種族]:マシン
[状態]:マホカンタ、ダメージ(小)
※武器である鎚のスパイクが全部根元から折れてます

※ポルナレフのとっておきを知りました

※豊島区の路上にシルバー・チャリオッツの剣先が落ちています
※豊島区にてセルティが馬車で走ってます。もしかしたら音が聞こえるかも?


750 : ◆EPyDv9DKJs :2016/11/09(水) 04:37:22 7UGJAQk.0
以上で、投下を終了させていただきます


751 : 名無しさん :2016/11/09(水) 06:47:48 VuowyE960
投下乙
ポルナレフ一蹴するとはやはりT-1000は強いわ


752 : 名無しさん :2016/11/09(水) 14:01:14 7uxMvtz20
投下乙です

チャリオッツやスタプラは不定形苦手だけど、T-1000も連続攻撃苦手なのよな


753 : 名無しさん :2016/11/09(水) 16:28:39 d21hgTpE0
投下乙です
T-1000はやはり強いな、スタプラとチャリオッツの二体でも互角とは


754 : 急降下爆撃 ◆T3rvSA.jcs :2016/11/14(月) 13:32:56 0VdXQe0A0
投下します


755 : 急降下爆撃 ◆T3rvSA.jcs :2016/11/14(月) 13:33:48 0VdXQe0A0
無数の弾丸が乱舞し、紅い閃光が路面をビル壁を鮮やかな阿嘉に染め上げる。
丸ビルの周辺は戦場の様相を呈していた。
誰が想像できるだろうか、この惨状を齎したのが、宙に浮く一人の幼女/妖女の仕業だということを。
レミリアは最初は宙に浮遊する物体、マンハッタン・トランスファーを追い回していたのだが、繰り出す攻撃が尽く空を斬る。
レミリアの繰り出す剛速の爪撃は、ミレニアムの吸血鬼共一個小隊を30秒もあれば殺し尽くせそうな程だったが、マンハッタン・トランスファーは風に吹かれる羽毛の様に回避し続けていた。
あまりにもラチが明かず、遂に焦れたレミリアが弾幕を用いて手数に訴え、周辺被害を全く気にすること無くマンハッタン・トランスファーに攻撃を行い出したのだった。

瞬時に原型を留めぬ程に、無数の弾幕に穴を穿たれた車が燃え上がり、真紅の光条がビルを複数貫通して虚空に消える。
それでも物陰から様子を伺うインテグラに弾も光条 も飛んでこないのは、レミリアが気を遣っているからだろう。
インテグラの眼にはレミリアが無数の沸き立つ血泡に包まれている様に見えた。レミリアが放つ弾幕と光条で、レミリアから先が殆ど見えない。恐るべき密度の弾幕だった。
にも関わらずレミリアが矛を収めないのは、あの浮遊物がこの攻撃を回避し続けているからだろう。


─────このままではラチが明かない。

このままでは街が破壊されていくだけで、殺し合いに乗った敵を仕留めることはおろか、此処から動くことも叶わない。
インテグラは状況を整理しこの事態を打開する術を考えた。



「レミリア」!!」

インテグラがマンハッタン・トランスファーを追い回すレミリアに、インテグラが呼びかける。
全く以って状況は好転しない。如雨露で大火に水を撒く様なものだ。このままではラチが明かない、ならば力尽くでラチを明ける。

「今から私が奴に狙撃をさせるから、奴の居場所に直接攻撃しろ」

この敵は過去に処理した化物(フリークス)同じ状況。空母イーグルを制圧し、アーカードを誘引した魔弾の射手と同じ状況。ならば対処する術もあの時と同じ。
陣取っている場所さえ判明すれば、レミリアならどうとでもするだろう。


「…チッ」

小さく、本当に小さくレミリアは舌打ちをした。まさか“フィットフルナイトメア”を回避し切るとは思わなかった。非常に癪に障るが此れは殺し合い、弾幕ごっこの様な遊びでは無い。
使い魔を撃ち落とせないなら、使役している者を潰せば済む話。

─────仕方ないわね。

胸中に呟いてレミリアはインテグラの言を受け入れる。
狙撃手が居ると思しき方角を睨み、右掌に紅い魔力弾を出現させ、左手の五指を真っ直ぐ伸ばす。。
インテグラの取る行動は読めている。自らを囮にするつもりなのだろう。ならば自分はインテグラに向かって放たれる凶弾を撃ち落とす。


756 : 急降下爆撃 ◆T3rvSA.jcs :2016/11/14(月) 13:34:36 0VdXQe0A0
─────なんだってんだあのガキ。


凄まじい勢いで街並みを破壊していくレミリアの弾幕を見ながら、ジンはビルの屋上で不満を漏らしていた。
弾丸の軌道を変えるだけの己の悪魔とは比べものにならないあの狂威。まさしく悪魔としか呼び様が無いあのガキを見て、ジンは悪魔がどういうものか漸く理解した。
あんな代物と何の事前知識も無く戦えば、たちどころに肉片すら残らず殺されただろう。
まあそれも今となってはどうでも良い。悪魔の力を知ることが出来たのだから、次からの立ち回りに活かせば良い。
ジンはさっさとあの老女を殺して、次の標的なり、手駒に出来そうな悪魔なりを探しに行きたかった。
最初に仕留めたガキの悪魔が消えるのを見ていたジンは、おそらく参加者が死ねば悪魔が消えるのだろうと推測していた。
悪魔はいわば参加者に与えられた武器。持つ者が居なくなれば消えるのは道理かも知れない。
あの老女の息の根を止めればあの弾幕撃ってるガキも多分消えるだろう。あのガキと戦う必要など無い。後で自分のCOMPに移せば自分の武器として使うことも出来るだろう。

だが─────。

─────狙いがつけられねえ。

あまりにも濃密な弾幕は、正に真紅の幕が宙に張られている様なもの。ジンにはレミリアの向こう側が殆ど見えない。いかにジンが優れた射手といえど、狙いがつけられぬのでは狙撃の仕様が無い。
その時、流石にへばったのか、レミリアが弾幕を弱め、鎖を無数に射出するのが見えた。只撃つだけではマンハッタン・トランスファーを捉えられぬと踏んで、動きを制限するつもりらしかった。


だが─────。

弾幕の影に隠れてこの場を逃げるつもりだったのだろう、老女の背をジンの眼が捉えた。
待ちに待った好機にジンは思わず引鉄を引く。マンハッタン・トランスファーはレミリアの攻撃に未だ晒されていて使えない。弾幕による乱流が老女の辺りに吹き荒れているだろう。
だが構わない。この一撃で仕留めて見せる。
殺意が不動の直線を引き、その直線を弾丸が必殺の具現となって飛翔する。


しかし─────。


757 : 急降下爆撃 ◆T3rvSA.jcs :2016/11/14(月) 13:35:08 0VdXQe0A0
「一発ずつ、真っ直ぐ飛ばすしかできないのなら、もっと速く飛ばさないと意味が無い」

ジンの放った弾丸の軌道を捉えたレミリアが腕を振るい、銃弾を打ち砕く。
そして─────。
弾丸の飛来した方を見据えて唇の両端を吊り上げる。

「見ぃつけた」

触れただけで皮膚が裂けて血が噴き出しそうな鋭い牙を剥き出して、レミリアは笑い。嗤う。その笑顔は正しく『血を吸う鬼』と呼ぶに相応しい。
その笑顔をインテグラが見れば、『ツェペシュの末裔』というレミリアの名乗りに偽り無しと確信しただろう。
スコープ越しにレミリアの鮮やかな血の色の瞳と目が合ったジンが戦慄したその一瞬。レミリアが新幹線の様な速度で垂直に上昇し、丸ビルの屋上に陣取るジンを視界に収めた。
そして上昇時よりも速くジン目掛けて突撃する。

「シャアアアアアアアアッッ!!!」

ワザワザ叫喚して突っ込むのは弾幕ごっこのノリが抜けてないのか。
咄嗟にジンがドラグノフを持ち上げ、レミリア目掛けて引鉄を引く。
音を超える速度で飛来する弾丸をレミリアは突撃しながら回避、右掌に握り込んだ紅玉をジン目掛けて思い切り投擲する。


神槍“スピア・ザ・グングニル”


吸血鬼の剛力で投げられた魔力弾は加えられた巨大な速度に変形し、長大な槍となってジン目掛けて襲い掛かる。

「ウオォォォオオオオオオオ!!!」

運命を悟ったジンの絶叫。

Z U N

響く轟音。屋上から中層まで貫いた真紅の槍が、丸ビル全体を激震させ、屋上から上層にかけてのフロアを崩壊させる。ビル全体を揺るがす震動で割れた硝子が周囲に雨の様に降り注いだ。
ジンの姿は崩れる瓦礫に呑まれ、見えなくなった


758 : 急降下爆撃 ◆T3rvSA.jcs :2016/11/14(月) 13:35:25 0VdXQe0A0
「終わったか」

浮遊物が消えているのを確認し、インテグラは漸く息を付くことが出来た。
少年の悪魔が、少年の死と共に消えた事と併せて考えると、悪魔は参加者の死と共に消えるのだろう。
当面の脅威が去った事で、インテグラは今後の事を考える。
狙撃銃を持つ者と最初に出逢えたのは幸運(ラッキー)だった。知らなければ大通りをノコノコ歩いて殺されていたかも知れない。
だが同時にこの情報はインテグラの動きを大きく制限することになる。狙撃を恐れて建物内や地下を移動するだけでは他の参加者との遭遇率が減る。
殺し合いに乗った輩共を必滅する為にも、他者との接触は必要不可欠だ。
まあ其れは後で考えるとして、今はあの少年の悪魔と交渉してみよう。
戦力は多い程良いし、頭数が多ければ周囲の警戒もしやすい。
取り敢えず少年の遺体と荷物を回収して、適当な建物の中に入ろう。
インテグラの見上げる先には、微妙にドヤ顏したレミリアが此方に向かって来ていた。



【インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング@Hellsing】
[状態]:健康
[装備]:COMP:聖書型
[道具]:基本支給品、454カスールオート(弾数×60)@Hellsing
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:魔神皇を必滅する、殺し合いに乗った奴も必滅する
1:少年(ネギ)pの悪魔と交渉する
2:狙撃への対処と移動方法を考える。
[備考]
※参戦時期は最終話直前辺り
[COMP]
1:レミリア・スカーレット@東方Project
[種族]:夜魔
[状態]:健康・魔力消費(中)




※丸ビルの周囲に甚大な破壊跡が発生しました。
※丸ビルの窓ガラスが全部割れて周囲の路面に散乱しています。
※丸ビルの屋上から中層にかけて“スピア・ザ・グングニル”が貫通し、屋上から上層にかけてのフロアが崩壊しました。


759 : 急降下爆撃 ◆T3rvSA.jcs :2016/11/14(月) 13:36:05 0VdXQe0A0
「グ…オオオ!!」

崩壊した瓦礫の中からジンは漸く這い出した。
ドラグノフは壊れてしまった上に瓦礫の下。こうなれば本格的にマンハッタン・トランスファーは役立たずだ。

「悪魔に差がありすぎるだろうがっっ!!」

あのガキに負けないくらいの悪魔を手駒にしないと、勝ち残ることはおろか奴等に報復する事さえ出来はしないだろう。

「グハッッ」!?

興奮して叫んだ所為で全身が痛む。どうやら肋骨数本折れているらしい。全身を探ってみると、左腕の骨にヒビが入っている様だった。後は細かい擦過傷。
支給品の飲み物が“ウォッカ”だったのを思い出し、ハンカチに染み込ませて傷を拭く。
改めて周囲を観察すると、まるで爆撃でも受けたかの様な破壊跡。
この程度で済んだのは幸運(ラッキー)と言うべきだろう。

─────さすがジンのアニキですぜ。

ウォッカをラッパ飲みしているとそんな声が聞こえた気がした。




【千代田区・丸ビル内/1日目/午前】
【ジン@名探偵コナン】
[状態]:肋骨を数本骨折。左腕の骨にヒビ。全身に擦り傷。
[装備]:ドラグノフ式狙撃銃ビル崩壊により破損)
[道具]:基本支給品、漫画本(ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン)型COMP
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:魔神皇込みで皆殺しにする。
1:老女(インテグラ)の抹殺
2:使える悪魔を手駒にする。少なくともあのガキ(レミリア)に負けないくらいのを
[COMP]
1:マンハッタン・トランスファー@ジョジョの奇妙な冒険
[種族]:スタンド
[状態]:健康


760 : 急降下爆撃 ◆T3rvSA.jcs :2016/11/14(月) 13:36:43 0VdXQe0A0
投下を終了します


761 : 名無しさん :2016/11/14(月) 21:20:33 x14f9Fm60
投下乙です
ビルの崩壊からも生き延びるとは、さすがジンの兄貴ですぜ


762 : 名無しさん :2016/11/14(月) 21:59:27 fLrcqn0c0
投下乙です。

>とっておきの――
ポルナレフとスタプラを以てしても防戦。T-1000とキラーマジンガの脅威を改めて知る話でした。
追い詰められて逃走を選べるポルナレフは、柔軟な思考ができている感じがしていいですね。紳士だし。

>急降下爆撃
吸血鬼に狙いをつけられて生き残るなんて、さすがジンの兄貴ですぜ。
それはそうと、子供っぽくも確かな強さを持つレミリアのドヤ顔を想像すると可愛いですね。


763 : ◆5/xkzIw9lE :2016/11/16(水) 09:20:02 X7fklOak0
投下します


764 : ◆5/xkzIw9lE :2016/11/16(水) 09:20:35 X7fklOak0

―――――――!!!

静謐な新宿の朝を裂くように響く、悲鳴。
形容するなら、そんな推理小説の事件の幕開けのような文で、もう一人のシンデレラの物語は進む。


765 : ◆5/xkzIw9lE :2016/11/16(水) 09:21:02 X7fklOak0




「……卯月ちゃん?」

近くで、まだ会えていない友達の一人、島村卯月の声が聞こえた気がした。

「?」
「どうしたかホ、プリンセス?」

ここから新宿区は目と鼻の先と言っても、電車で言えば大体一駅分の距離がある。
だから傍らの、みくに協力してくれる悪魔たちは気づいていないのだろうか。

「今、何か聞こえなかった?こう、悲鳴みたいな」
「そうかホ?野良悪魔の唸り声かなんかじゃないかホー?」
「小生の耳にもハッキリとは…」

そうかもしれない。
でも、あの声は確かに聞き覚えがあった。
平凡なはずなのに、妙に心惹かれるようなそんな澄んだ声。

「……マタムネ達、ちょっと新宿区まで行かない?」

気づけば、自然とその言葉が口に出ていた。
当然、悪魔たちは怪訝な顔を見合わせる。
このデパートの中は一応野良悪魔も、殺し合いに乗った不届き者も来る様子はない。安全な場所である。
主の知己を探さなければならないのは重々承知しているが、せめて協力者が一人でもできてから大きく動きたいというのが、彼らの本音だった。

「どうするかホ?猫の旦那」
「みくさんが行きたいと言うのなら、まぁ邪険にするわけには行きませんが
もし道中何かあった場合は、小生の意見を優先して貰いたいですな」
「うん分かってる。頼りにしてるにゃ」

快活に頷き、朗らかにはにかむ。
彼女だって態々危ない橋を渡るつもりはない。
でも友人がいるかもしれないなら捨ておくわけにもいかない。
ただそれだけの話だった。

「ここから新宿まで行くなら歩いたほうが早いホー
でもその服で大丈夫かホー?」

メチャカワだけど…と下心を見せつつも身を案じてくるジャックランタンにみくは苦笑する。
そしてほんの短い間フマジメな猫のようないたずらっぽい表情でくるりと回る。
ふわ。純白のスカートが花の蕾の様に広がり、えも言えぬ麗しさがそこにあった。

「大丈夫、これ滅茶苦茶動きやすいから。
何か複雑だけど、みくが今まで買ったどの服よりもいいかもしれないにゃ」

事実、みくが跳ねても飛んでもスカートは柔軟な動きを見せている。
正真正銘の鉄壁スカート、どれだけ動いても絶対領域は完璧に守り切るだろう。
半重力スカートなど、ユニクロでも導入してないであろう事は言うまでもない。
この衣装とはもっと別の出会い方をしたかったと、みくは思わずにはいられなかった。

「ともかく、そういう事だから準備して出発するにゃ!」

二つの握りこぶしを豊かな胸の前で作り、意気込むみく。
それをみた従者たる悪魔二人はもう一度顔を見合わせ、頷きあうのだった。





766 : ◆5/xkzIw9lE :2016/11/16(水) 09:21:26 X7fklOak0

五体を投げ出し、回復に努める。
あの後痛む体を押して動き、斃した女のCOMPからマッカを根こそぎを奪った。
どうやら基本的に持てるマッカは三万までの様だが、既に死亡した参加者から奪うことで増やすことは可能らしい。

恐らく、そうやって強奪戦も発生させることで魔神皇はゲームの激化を狙っているのだろう。

―――人生はゲームです。
皆が精いっぱい戦って、生き残る。価値ある大人になりましょう!!

不意に、ここに来る前日に言われた中学の担任の言葉が蘇った。
黒板の前に立ち、短く刈り上げた髪を掻いた後、強面をさらに強調するような大声で。
あれは何時言ったのだったか……まぁ、いい。

しかしあの女も小賢しいマネをする。幾ら隠そうが倒した相手のCOMPを探さないはずがない。
時間稼ぎ以外に何の意味があると、あの女は思っていたのか。
仮に自分と同じ支給額なら、三万マッカのうち半分がどうしても見つからなかったのは解せないが。
まぁ、無いならないでもいい。
それよりも、横たわる耳に響く戦闘音。この近くで戦闘が行われているのだろうか。
彼は自分がその場にいないことが何よりも気に入らなかった。
だが今は後々の祭りの事を考えて体を休めるべきだ。その為に自分が今いる万屋周囲の野良悪魔を自分の悪魔に皆殺しにさせたのだから。
全く面倒な物だ。サマナーが視認できない距離まで悪魔が行ってしまうと自動的に悪魔がCOMPに戻るとは。
だからこうして態々ここまで来なくてはならなかった。

コツコツと頭上で足音がする。
不思議と野良悪魔でない事は分かる。獲物でもない事も。
不思議なものだ。
今寝転がる自分の頭上にいる悪魔は何故か他人の様な気がしない。
事実、悪魔図書館には自分と全く同じ名前でこの悪魔は載っていた。
髪型や雰囲気はまるで違うがやはり同姓同名の別人であるとは思わなかった。
とは言え結局はどうでもいい、殺し合いに重要な事では決してないし。

「用意した」

ガシャ、そんな金属が擦れる音と共に、冷徹な瞳をした男、
――オールバック桐山がパーマ桐山の隣にデイパックを落とす。
パーマ桐山は冷ややかな床から身を起こし、中身を検める。
オールバック桐山への命令(オーダー)は"楽しめる"物を。
中にあったのは暴力的なまでの存在感を放つ機関銃。数発の手榴弾。
しめて手榴弾はオマケで五千マッカなり、との事だった。セール中らしい。
パーマ桐山は少し考えて、MP5短機関銃をオールバック桐山に投げる。
釘撃ち銃は彼にとって初めてこの殺し合いで勝利を収めた神聖な武器…と言うわけではなく、単に悪魔に銃を渡したほうが戦力の増強になるからに他ならない。
更に多くのマッカが手に入ればもっといい銃に持ち変える。
それよりも、彼の関心は五発の手榴弾にあった。
これを如何に使うか…ひとしきり考えた後、パーマ桐山はニヤリと笑む。


さて、そうと決まれば一端戻るとしよう。


767 : ◆5/xkzIw9lE :2016/11/16(水) 09:22:03 X7fklOak0



純白のスカートを揺らしながら、前川みくは朝の街を行く。
その姿は、見ようによっては、朝になっても魔法がかかったままのシンデレラのように映るかもしれない。
登りつつある朝日を澄んだドレスに反射させ、煌めかせながらただ声が聞こえた…気がするほうへ。

「うーん、確かに聞こえた方はこっちだと思うんだけど……」
「今の所誰もいないホー」

二十分程かけて新宿区まで渡り、さらにしばしの時間をかけて島村卯月を探したが、未だ見つからない。
空耳だったのだろうか、とみくは思う。
次いで、魔人皇に対する怒りがふつふつと沸いてきた。

「あーもう!広すぎ!!あのマジンノーって人、何考えて東京を舞台にしたんだにゃ」

だだッ広い東京でアテにできるかどうかわからない声を頼りに、人ひとり探すなど素人にできるはずがないじゃないか。
そんな苛立ちと同時に、東京にいた大勢の、一千万人位の人たちはどうなったんだろうとふと疑問に思った。
名簿に載っていない346プロの仲間は?学校の友達は?プロデューサーは?
何だかうすら寒い想像をしてしまいそうなので、やめる。縁起でもない。
幾らなんでも、あの魔神皇が東京に居た人々丸ごと消したなんて馬鹿げた考えだ。

「大丈夫ですか、みくさん?」
「え…」
「先ほどから顔がコロコロ変わる上に、あまり具合が良くないようですので」

いささか心配そうな表情と声色でマタムネが見上げている。
ジャックランタンも心配して…否、怒った顔もめっちゃカワイイホーとか言っていた。

(……休憩、いったん休憩しよう)

そんな可愛い二体の従僕の様子を見て、みくの頭も冷静になっていく。
街路樹の隣にあったベンチにいそいそと腰掛け、一息ついた。
右にマタムネ、左にジャックランタンと、悪魔たちも並んで腰かける。

「疲れてはいませんかな」
「ん、大丈夫にゃ。これでも毎日のレッスンで体力には自信あるの」

口ではそう言うが、実は今すぐにでも大きな大きな溜息を吐きたい所であった。
疲れていると言えば疲れている。主に精神的に。
冷静になった事で馬鹿な考えは頭の隅に追いやることができたが、状況は何も好転しない。冷静になったからこそ、先の展望が見えない事に辟易するのだ。
もし卯月を見つけたとして、二人で協力して李衣菜とちひろ、仁奈を探して、それで。

(…………それで、どうするの?)

幾ら頭の隅に追いやっても手を変え品を変え、悪い考えは次から次へと思い浮かんでくる。

そうだ、何をしなくとも72時間経過すれば、この冷たい首輪は爆発してしまう。
それまでこの空間から逃げ出す方法を考えなければ―――


768 : ◆5/xkzIw9lE :2016/11/16(水) 09:22:51 X7fklOak0

「みくさん、少しよろしいですか?」
「ん…何?」
「なに、差し障り無いようなら小生みくさんが今探している卯月さんと言う方を知りたくなりましてな」

キセルを燻らせ、大きな瞳でマタムネはみくじっと見つめる。
そうすると不思議と彼女はそれまでの閉塞した考えを打ち切り、島村卯月の姿を思い浮かべた。
それは、一種の逃避でもあったのかもしれない。

ともあれ、前川みくと島村卯月の関係は浅くは無いが、もっと深い所にいる人物は大勢いる。
彼女の両親は勿論、プロデューサーやユニット・ニュージェネレーションズで傍から見ても中の睦まじかった渋谷凛や本田未央。
彼女たちが苦楽を共にした時間や、島村卯月について知っている事は、前川みくは及ぶべくもない。
それでも、彼女は同じシンデレラプロジェクトの仲間だった。
同じく魔法をかけて貰い、厳しいレッスンを切磋琢磨し、醒めない夢を見た。
朧げだが、無限の蒼穹の下で、大冒険を繰り広げた様な記憶さえある。

何より前川みくは、いや、シンデレラガールズのメンバー全員が、
島村卯月の笑顔が、大好きだった。

新春の今まさに開花しようとしている桜の様な、登ろうとしている朝日の様な、心を融かす彼女の笑顔。
そんな笑顔を磨き続けたからこそ彼女はあの日遂に【選ばれた】のだろう。

「卯月ちゃんはね、お姫様なの。長い間努力して、やっと選ばれた…」

最初は容姿や彼女の性格の事を話していたが、話の方向性は徐々にあの日、島村卯月がシンデレラガールに選ばれた日の事にシフトしていく。

光り輝くステージ。色とりどりのサイリウムと、空間が割れんばかりの歓声と熱狂。
共に舞い、踊り、歌い、見るものにも当人達にも幸福を撒き散らす舞踏会。
幸福をもたらされたのはきっと会場にいた者だけではない。
大きなテレビ局の力で全国、全世界へと発信されたのだから。
そこに至るまで苦難は幾度となくあった、衝突も生まれたし、シンデレラプロジェクトその物が消え去りそうな事だってあった。
それでも彼女たちはともに乗り越え、ガラスの靴を履いて到達したのだ。その場所へ。

そして、その最後、零時丁度に島村卯月はシンデレラガールになった。
みくは語る、あの時の卯月の表情は今も鮮明に覚えていると。

「正直、悔しい気持ちもあったけど、あんな笑い方されたら敵わないってりーなチャンと言ってたにゃぁ……」

温かな涙を眼尻に一杯浮かべて彼女は笑っていたという。
アイドルとしてではない、島村卯月と言う一人の少女としての飛び切りの笑顔を。
その笑顔を見てみくも思った、何時か必ず、あの場所に立ちたいと。
何時もはロックロックうるさいにわかロック馬鹿の李衣菜でさえも卯月をキラキラしていると賞賛し、何時か必ずと、呟いていた。
きっとあの場所にいた346のプロの皆の思いは一つだったに違いない。双葉杏は微妙かもしれないが。
あんなお姫様になりたい、と。

「……とまぁ、こんなとこかにゃ」

ひとしきり話し終えたみくが二体の悪魔の様子をチラと片目で伺うと
マタムネは大きな瞳を細めて笑顔で頷き、
ジャックランタンの方は、号泣していた。
火を出す精霊のくせに号泣とか恥ずかしくは無いのであろうか?


769 : ◆5/xkzIw9lE :2016/11/16(水) 09:23:23 X7fklOak0

「その時のプリンセス達を観たかったホー。きっと酒池肉林なカンジで」
「なんでやねん」

思ったより低俗な方向に想像力を働かせていたカボチャ頭に出身地仕込みの突っ込みをかます。
その後、何だか殺し合いをしている感覚が薄くなって、少しだけ、笑った。
主のそんな様子を見て、マタムネも又、口を開く。

「話を聞く限り、卯月さんは大事な友人だということは解りました」
「うん、でもちひろさんも仁奈ちゃんも大事にゃ」
「ええ、ですが話の中では、李衣菜さんの名前が一番出てきていた様に思いましたがね」
「に”ゃ!?」

言われた途端、良く知りもしない癖に一丁前にロックの何たるかを語る李衣菜の顔が浮かぶ。
くすくすと鼻を鳴らすマタムネ、みくはこれでもかと言うくらい狼狽してみせる。
そんな事は無いとかんばせを赤らめながら答えるも、ジャックランタンにすらめっちゃ分かりやすいホーなどと言われるのだから堪らない。

「もー!二人ともからかわないで!!」
「これは失敬。では、全員無事に見つけるためにそろそろ行きましょうか」

マタムネは変わらずにこやかな表情で、苦も無くあしらわれる。
伊達に千年生きていないという事だろうか。
みくはもごもごと口を動かした後「分かった」とだけ呟いた。
けれどどこかバツの悪い感じがして、ぷいとそっぽを向く。

「……え?」

そして、目と鼻の先の角にある、異様な破壊を受けたビルに気づいた。
ぞ、と脊髄を駆けるような寒気。
何だか、とても嫌な予感がした。
やおら立ち上がると、堪らず駆け出す。
背後でマタムネとジャックランタンの声が聞こえたが、気にしない。
彼らの速度ならすぐに追いつくだろうから。

きっと大丈夫、根拠はないけど、今まで自分が大丈夫だったんだから。
ゲームや漫画じゃあるまいし、早々人が死ぬわけがない。

走る。走る。走る。
根拠のない自信を確信に変えるため。
息が上がっても構わない、いない事さえ確認できたらそれでいいのだから。
尤も、こんな所で日々のレッスンが役に立つとは思わなかったが。
しかし、このドレスは優秀だ。全力疾走にもまるで学校の体育の時に履いていたブルマの様にしっかりと対応してくる。
そんな場違いな考えをよぎらせながら角を曲がる。

大丈夫、完成された偶像(シンデレラ)が、こんな所で――――、


770 : ◆5/xkzIw9lE :2016/11/16(水) 09:23:54 X7fklOak0






そして、見る。
血の海に横たわる、首から上を失くした、茶色の制服を。



「みくさん……」
「プリンセス……」

追いついてきたマタムネ達が、最悪の想定の通りの現実に、かける言葉を失う。
一目見ただけで分かった、あれはもう、だめだと。
どれだけ射抜くような力で見つめたとしても、もう一度彼女が起き上がる事は無い。

「何で…」

よろよろと、死体のほうへと歩く。
近づけば、卯月の全身には夥しい量の釘が柔らかな肌に突き刺さっているのが分かった。
殺されたのだ。彼女は。
理由がまるで分らない。笑える程に、現実味も無い。
突然大地が抜け落ちた様な、そんな心持だった。

一体誰が、こんな事を。
頭の中がグルグルして考えが纏まらない。だから、気づかない。
ビルの瓦礫の角に隠れた、黒光りする銃口に。

「みくさんッ!!」

マタムネが叫ぶのと同じ瞬間。

―――ぱららら、とタイプライターを叩くような音が響いた。

「……がっ、あっ、な、何…?」

高速で飛来した物体をまともに受け、みくはもんどりうって崩れ落ちた。
そう、数十分前の島村卯月のリプレイの様に。
しかしハッキリと違う点が一つある。彼女に釘は刺さっていない。一本として、だ。
プリンセスローブ、女性が着られる程に軽く、その防御力は鋼鉄製のプレートアーマーさえ凌ぐ最高級の一品。
たとえ現代工学の力によって作られたとしても、釘撃ち銃から発射された釘程度に貫徹できるはずがない。
柔肌を貫く事叶わず、辺りに散らばった釘は、折れ曲がってる物さえあった。
だが、釘その物に脅威は無くとも運動エネルギーも一緒に消えてなくなるわけではない。
例え鋼鉄製の扉をブチ抜く斬撃を鉢金でガードしても、現実は首の骨がへし折れるのだ。

「大丈夫ですかみくさん!」
「しっかりするホ、プリンセス!」

と、もがくみくと釘が飛んできた方向を挟んで、マタムネが小さな体躯で守るように立ち塞がった。

「マ、タムネ……」
「襲撃です。気を確かに」

刀を現出させながら言うマタムネのその言葉にようやくみくの意識が虚空より戻る。
そして、マタムネの数十メートル先に立つ。オールバックの少年の姿を捉えた。
漆黒の学ランを肩掛けに纏った、昆虫の様に無機質な瞳をした少年。
言うまでも無く、悪魔・桐山和雄である。
その眼を見てマタムネは悟った、目の前の男は危険だ。自分の主とは決して相容れない並行線上にいる悪魔だと。
間違いなく、島村卯月の下手人もこの男だろう。

ここで倒しておかなければならない。

と、奇襲が失敗したのを確信すると、オールバック桐山は踵を返し、退く。
退いたと言っても逃げた訳ではない。此方が安堵して緊張状態を解けば、即座にその手の銃で撃ちぬいてくるだろう。
野放しにしておくのは余りにも危険だ。
しかし幸いにも、此方には手札がもう一枚ある。


771 : ◆5/xkzIw9lE :2016/11/16(水) 09:25:25 X7fklOak0

「みくさん、小生はあの不届きものを何とかしてきましょう。その間―――」
「任せるホー、オイラが単なる恋多き悪魔じゃない事を教えてやるホー、猫の旦那」

自信たっぷりに言うジャックランタンに思わず苦笑が漏れる。
その言葉を信用し、マタムネはできるだけ狙撃を受けにくい瓦礫の間のポイントへの移動を指示すると、再び飛んできた釘を払落し、O.S(オーバーソウル)鬼殺しの展開に力を注ぐ。
ディフェンダーであるジャックランタンが守り、マタムネが敵を攻める。
彼らが立てたのは、そういう作戦だった。

より強くなった刀を見て凄い…と言うみくのどこか現状に置いて行かれた発言を背に受けながら、マタムネは駆けだした。

オールバック桐山はそれを相変わらずの鉄仮面で見つめ、間合いを計りながらけん制する。
かくして、虚無の悪魔今日二度目の戦端が開かれた。







追う。追う。追い詰める。
二つの尾を揺らして、さながら肉食獣の様に。確実に距離を詰める。
反撃は無い。逃げる事だけに相手は終始しているからだ。
しかしこの追跡劇ももう直ぐ終わる。マタムネか、あの襲撃者かが契約した悪魔としての限界行動範囲に入るからである。
止まれば、ここで討つ。もしあの手合いが野良悪魔で、行動に限界範囲が無いとすれば…またその時はその時考える。

と、ここで襲撃者の少年がここで方向転換、植えられた街路樹のを突っ切り、二階建てのハンバーガーチェーンに飛び込む。
地の利を活かし、長物を振るうには向かない場所で戦うつもりか。冷静な敵だ。
一山いくらの悪霊や鬼よりも危険度は下手すれば高いかもしれない。
分析をしつつ、自身も街路樹を抜け、店に踏み込もうとした所で――地が爆ぜた。
飛来してくる破片を冷や汗をかきながらとっさの反射で捌く。
爆発物。察するに見通しの悪い街路樹の陰に通り抜けるときに置いたのだろう。マタムネが通過するタイミングを計算に入れて。

(いやはや、やはりそこらの鬼より余程危険な輩か)

戦闘能力はこちらのほうが上だろう。闘って勝てない相手ではない。
だが、それでも敵の計算高さには舌を巻かざるを得ない。
足元を掬われないよう、何か仕掛けられていないか注意深く探りつつ、彼もまたハンバーガーチェーンに飛び込んだ。

直後、飛来するテーブル。
マタムネの丁度頭に命中するような正確な狙い。
だが、かつて麻倉葉王の持ち霊だった彼が、この程度の攻撃に対応できないはずは無く。
両断。ラミネートされ、張り付けられていたバイトの青年の広告ごとテーブルは真っ二つになる。

「…………」

開かれた視界の先に、短機関銃を撃発可能な状態で構えた少年の姿があった。
O.S(オーバーソウル)であった時とは違い、悪魔に身を落とした今ではガンもマタムネにとって脅威になり得る。
だが、接近戦ではあのオールバックの少年よりマタムネが勝る。
双方、正念場だ。


「南無三!」

裂迫の気合と共に、マタムネが両足に力を籠め、横に飛ぶ。
同時に引き金が絞られ、ぱららららと九ミリパラベラム弾が発射された。

(釘では、無い!?)


772 : ◆5/xkzIw9lE :2016/11/16(水) 09:25:53 X7fklOak0

その弾痕を見てマタムネは驚愕に目を見開いた。
先程、みくを撃った時の弾は釘であったはず。
しかし、今発射されているのは紛れもなく実弾だ。
と言うことは、あの時釘撃ち銃を撃っていたのはこの少年ではなく―――

「……ッ!?」

そこまで考えた瞬間、足を取られる。
床には、飲料用と思われる水と、氷がぶちまけられていたのだ。
偶然とは思えない。恐らく、この店に突入する直前のあの爆発の一瞬にあの少年が用意したのだろう。

「グ……ッ!」

回避が甘くなった所に飛来してくる銃弾。
先ほどまでと同じように刀で打ち払い、或いは斬って捨てるが、遂に何発かの鋼鉄の刺客がマタムネの矮躯を食い破った。
よろめくマタムネ。しかし、それでも刀を振るうのをやめない。やめるわけにはいかない。
武器が銃、それも弾の消費が激しいマシンガンである以上攻撃が途切れる瞬間はあと十数秒でやってくるはずだから。

(そう…後数秒凌げば、小生の見立てでは『何とかなる』)

大切な友人の言葉が蘇り、マタムネに力を与える。
負けるわけにはいかない。負ければ、この少年はきっと主たちを殺めに行くだろう。
故にただ耐える。ぱらららと言う死の福音が途切れるまで。
どこかの大泥棒の一味の剣豪の様に、銃弾めがけて鬼殺しを振るい続ける。
マタムネにとっては何十倍にも感じる数秒間の後、その時はやってきた。

カチカチ、と空回りするような音が響く。―――弾が切れたのだ。

「……好機!」

乾坤一擲。無人ハンバーガーチェーンの冷ややかな空気を裂くような敏捷さで、
マタムネはオールバック桐山に迫る。
しかし、迫りくるマタムネに桐山は不気味な程に動じない。
一言も喋らず、機械的に何かを計る様な瞳で。懐から何かを出す。
関係ない。次に彼が何かするまでに確実に切り伏せられるとマタムネは思う。
と、桐山が後方に飛んだ。それでも自分の斬撃を躱すには圧倒的に足りない距離。
階段を一段も昇るまでも無い、鬼殺しを巨大化させ左右の壁ごと、斬る。
刃が、届く!!




―――しかして一秒後、マタムネの鬼殺しが切り裂いたのは虚空のみ。


「何…!」

悪魔・桐山和雄は天才である。
4歳の時点で一流コックの料理技術を完璧なまでに再現するほどに。
殺し合いの最中に置いて、功夫の真理に至った杉村弘樹の技術を一瞬で再現するほどに。
加えて、先ほど行ったピンク玉との戦闘ではコピー能力・ファイターの技術を一度体験しただけで盗んで見せた。
これだけでも恐るべき学習能力ではあるが、彼がピンク玉との戦闘で学習したのはそれだけではない。
桐山和雄が先の戦いにおいて学習したもう一つ。それはサマナーからどれほど離れればCOMPの中に戻れるか―――即ちRETRUNするかの正確な距離であった。
デメリットになりやすい殺し合いにおける制約も正確に学習すれば、桐山和雄にとっては戦略の一つになりうるのだ。
こうして、接近戦に置いて格上であるマタムネから見事逃げおおせたように。

カンッ!


桐山和雄が消えた数瞬後、彼が落とした何かが音を立てる。
それをマタムネは知っていた。店を入る前にも見舞われた少年の置き土産。


「不覚…ッ!」




その数秒後、再び爆発音が轟いた。


773 : ◆5/xkzIw9lE :2016/11/16(水) 09:26:47 X7fklOak0




「マタムネ…」
「大丈夫だホー、プリンセス。猫の旦那は強いホー
きっと、直ぐに戻ってくるホー」

膝を抱えて座り込むみくをかぼちゃ頭・ジャックランタンが懸命に励ます。
怯える顔もメチャカワだと内心思っていたのだが、それを今言うほどジャックランタンは空気の読めない悪魔でなかった事は、彼女にとって幸運だったと言えるだろう。
そのお陰で、彼女はそう遠くない場所で爆発音を聞いてもこの瞬間まで平静を保っていられたのだから。
そう、この瞬間まで。

瓦礫の向こう側で足音が響く。
それに気づいた瞬間ハッとみくは顔を上げ、ジャックランタンが静止する暇もなく飛び出した。

「マ!タム、ネ……?」

「…………」

足音の主はマタムネではなく、薄ら笑いを浮かべるパーマの少年。
即ち、サマナーの方の桐山和雄だった。
パーマ桐山は右手に釘撃ち銃を、左手に何かを肩掛けに下げ、靴底で足元に何故か落ちてあるマイクを弄ぶ。
そんな異常な雰囲気を醸し出す少年を前にして、みくの視線はマイクも釘撃ち銃さえ映しておらず、ただ一転に注がれていた。
少年の左手に担がれた何か。担がれているといっても鞄のような紐があるわけではない。
そう、細い、まるで髪の毛のような―――

「ね、ねぇ。何持ってるのそれ……」

冷汗が止まらない。喉がカラカラだ。
それでも、少年に問わずにはいられない。
問われた少年は笑みを深め、さぁ何でしょうねと言わんばかりに肩を竦める。
その時ちらと見えた、茶がかった長髪。あれは。あれは……

「下がるホ、プリンセス………」

緊張が漂う二人の間に、ジャックランタンが入り込む。

「ヒーホー。
お前、血の匂いがするホー。言っておくけどプリンセスに手を出したらただじゃおかないホー
オイラの炎でケツ穴をバーベキューされたくなかったらさっさとどっか行くホー」
「…………」

何時でも呪文を唱えられるよう照準をつけ、目の前のパーマ小僧に言い放つ。
もし、あのパーマ小僧が銃を撃とうとしても、銃口は未だ下がったままだ。
向こうはこちらに向ける、狙いをつける、引き金を絞るとスリーアクションかかる。
対する此方は詠唱のワンアクションで済む。
『抜きな!どっちが素早いか試してみようぜ!』という事態になってもこの距離なら負けはしない。

「……………………」

少し考えたようなそぶりを見せる少年。
みくが尋ねた時と同じく、やはり何も答えようとはしない。



―――だが、

――――返答代わりのように、その銃口は跳ね上がり――――


(やっぱりかホー!)

それならば此方も容赦はしない。
かつてない程に滑らかな詠唱を、ジャックランタンは紡いだ。

「アギラオ!!」


火炎放射器の様に火球が発射される。
まだ奴は銃口を上げた状態、計算通り引き金を絞る前に倒せる。
ジャックランタンがそう確信した時、偶然パーマ桐山と目が合う。
―――その顔はやはり嗤っていた。

「ホ!?」

確かに倒せただろう、パーマ桐山が本当に無策であったならば。
釘撃ち銃を警戒するあまり、ジャックランタンは銃口だけを注視しすぎていた。
そのため、銃口を上げると同時にパーマ桐山がマイクを弄んでいた方の足を振り上げていたのに気付かなかったのだ。
火球着弾まで後二秒という時に、何かを踏み壊すような音が空間を揺さぶる。
そして、

「ぽよっ!」

パーマ桐山とジャックランタンの間に突如として現れ、間の抜けた声を上げながら炎に飲まれるピンク玉、島村卯月の悪魔カービィ。
パーマ桐山はマッカを抜き取る過程で交渉に応じなかったこの悪魔を早々に切り捨てる腹積もりだった。
本来COMPは悪魔やマッカのトレード以外は支給された本人のものしか操作できない。
しかし、こうやってCOMPを破壊すれば本人でなくとも悪魔を強制的に召喚できるのだ。
無論、誰とも契約できていない悪魔は大幅に戦力が低下しているが、無傷で切り抜けるというここでのパーマ桐山の目論見は見事に成功したと言えよう。
ぱらららッ。大雑把な射撃と共にカービィごとジャックランタンが釘に打ち抜かれる。

「ぺ、ぽぉ……」


契約が切れた所に連続してダメージを受け、消えていくカービィ。それを気にも留めず桐山は左手に持っていた物を放り投げる。


774 : ◆5/xkzIw9lE :2016/11/16(水) 09:27:53 X7fklOak0

「あ……」

スローモーションな視界で、みくは、投げられた物を見てしまう。
それは、口に何かを詰め込まれた―――島村卯月の首だった。

「―――――――!!!!!」

声なき絶叫。
同時に卯月の口の中の物が光る。

「プリンセス、危ないホー!」

絶叫を上げている所をジャックランタンに突き飛ばされる。
瞬間、爆発。一瞬意識を失う。記憶中枢に衝撃、何が起こっているのか分らない。分らない。分からない――――



気がついたとき、残ったのは前川みくと桐山和雄だけだった。


「…………どうして?」


呆然と、卯月の血で顔やローブを赤く染めたみくが問う。
その語尾から、既に猫キャラは消え失せていた。


「何で、こんな事するの?」

「………………」

「みく達、貴方に何もしてないのに」

「………………」

「卯月ちゃんだって、殺されなきゃいけないような事はしてないでしょう?」

「………………」

「ねぇ、答えてよ!!」

幾ら前川みくが憤ろうとも、答えが返ってくることはない。
桐山和雄はただ『あー今日も良い天気だなぁ』と釘をリロードしながらみくを嗤うだけ。
ゲームのルールが気に入らないと駄々をこねる子供を見るように。
彼の返答はすでに決まっている。
釘撃ち銃を構える。
あのローブはそこらの防弾チョッキより優秀そうだが、頭を撃てば事足りるだろう。
みくは動けない。さながら大型トラックが迫ってくるのに気付いた幼子の様に。
銃口が向けられ、情け容赦ない死が放たれようとしたその時、背後で三度目の爆発音。
バッと振り返る桐山。煙の中を駆ける影を一つ、視界にとらえる。
飛び出してきたのは、二つの尾。間違いなく少女の悪魔。そのスピードは予想を遥かに超えていた。
このままでは危険だと、いいもん貰ったなァ、オイ型COMPをスパァンと打ち付け、オールバック桐山を出す。
少女を殺してもその時には自分が斬られていました、ではお話にならないから。
マシンガンを構えつつ、オールバック桐山はパーマ桐山の襟元を掴み後ろに飛ぶ。
ばらまれる銃撃を切り抜けるマタムネ、鬼殺しを存分に振るえる場所なら造作も無い事。


775 : ◆5/xkzIw9lE :2016/11/16(水) 09:29:13 X7fklOak0

「マタムネ!」
「みくさん、少しの失礼をご容赦ください」

帰ってきた自身の悪魔に、安堵の声を上げるみくだったがマタムネの返答に「へ?」と声を上げる。
疑問符にこたえる暇は無いとマタムネは霊魂化し、そのままみくの手のひらに収まった。
彼の悪魔としての権能、憑依合体である。
同時にみくの纏う雰囲気が一気に豹変する。
どこからともなく現れた長大な日本刀を構える少女。そしてそのまま二人の桐山から放たれる銃撃をすべていなし、駆け出す。
背を見せる相手に容赦ない銃弾と釘の追撃が飛ぶが、悪魔としての身体能力とプリンセスローブの防御力に守られた少女をしとめるには至らず。
このまま逃がしてなるものかと追跡しようとした所で、オールバック桐山が火球に吹き飛ばされる。
見れば、あのドテカボチャ頭の悪魔が最後に残っていた力を振り絞って此方に火炎を撃ってきたらしい。

「ざ、ざまあ見ろだ、ホー」

ぱららららッ!
釘撃ち銃で今度こそ息の根を止めた時には、少女の姿は、もうどこにもない。
短く嘆息した後、オールバック桐山が行動に支障のでるダメージを負っていないのを確認すると、視線だけで少女らを追い、殺すと告げるのだった。



相手が選ばれたシンデレラだろうが関係は無い。
全ては、彼自身のイカれた快楽のために。


【目黒区/一日目/午前】

【桐山和雄@バトル・ロワイアル(映画版)】
[状態]:前川みくを逃がしておこ。 背中痛し。
[装備]:COMP(いいもん貰ったなァおい型ことハリセン型)
[道具]:基本支給品×2、改造釘打ち機、簡易な工具セット、手榴弾×2
[所持マッカ]3万
[思考・状況]
基本:殺し合いエンジョイ勢
[COMP]
1:桐山和雄@バトル・ロワイアル(漫画版)
[装備]:イングラムM10サブマシンガン
[状態]:COMPの中、ファイターの能力@星のカービィを学習、お願いシンデレラの振り付けの一部を学習

完全に不覚と言わざるを得なかった。
島村卯月の死体を見つけた時、直ぐに待ち伏せされている可能性に気付くべきだったのだ。
自分があの少年悪魔を討つ事を優先した結果、主の輝きに魅かれ仲魔になったジャックランタンは殺された。
幾ら悔やんでも悔やみきれない。

(済みません、みくさん)

憑依が解除された際に気を失ってしまった少女の頬を、肉球で撫でる。
憑依・O.S(オーバーソウル)は憑依対象の精神的なコンディションに大きく左右されるのだ、
茫然自失状態から、同意なしに強引に安全を確保するために憑依してしまえばこうなるのは自明の理。
下手をすれば彼女の精神が崩壊していたかもしれない。
己の不肖さを、彼はただ眠る少女に詫びつづけた。

【目黒区/一日目/午前】

【前川みく@アイドルマスターシンデレラガールズ(アニメ)】
[状態]:右腕に軽い切り傷、精神疲労(大)、全身に軽い痛み、気絶
[装備]:COMP(猫耳ヘッドフォン型)、プリンセスローブ@ドラゴンクエストⅥ
[道具]:支給品一式
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:みんなで生きてプロデューサー達の所へ帰る。
1:…………
[COMP]
1:マタムネ@シャーマンキング
[種族]:精霊
[状態]:疲労(中)、ダメージ(小)

【カービィ@星のカービィ 消滅】
【ジャックランタン@真・女神転生 消滅】


776 : ◆5/xkzIw9lE :2016/11/16(水) 09:29:51 X7fklOak0
投下終了です
タイトルは『イカれた快楽のために』です


777 : 名無しさん :2016/11/16(水) 20:01:31 u9mn3I/M0
投下乙です!
アイドルからすれば非日常、でもパーマからすれば日常の延長なんだよな
あと、死亡者COMPって破壊しなくても仲魔抜き取れませんでしたっけ?
抜き取ろうとしたらカービィが嫌がったから無理矢理壊して呼んだとかなのかな


778 : 名無しさん :2016/11/16(水) 21:16:02 uSjW/SXg0
投下乙です
相変わらずえぐい戦法取ってくるなあ、桐山は
ランタンとカービィには合掌……


779 : ◆5/xkzIw9lE :2016/11/16(水) 21:38:17 X7fklOak0
感想ありがとうございます
指摘については、問題がある用であれば瓦礫から抜き出す時に悪魔を抜き出す操作をできる場所が破損していたとでも修正しようと思います


780 : 名無しさん :2016/11/16(水) 22:25:03 nCNYlViY0
抜き取れてもカービィが従わなきゃどっちみち意味ないし。


781 : 名無しさん :2016/11/16(水) 22:30:40 UNyVKYOM0
p


782 : 名無しさん :2016/11/16(水) 22:32:23 UNyVKYOM0
パーマ桐山はTALK出来ないだろうしねぇw


783 : ◆v1W2ZBJUFE :2016/11/23(水) 19:04:01 Qy.oZoNk0
投下します


784 : ◆v1W2ZBJUFE :2016/11/23(水) 19:04:59 Qy.oZoNk0
多田李衣菜はようやく渋谷区に辿り着いた。だが、前途は再現無く多難である。
悪魔か参加者かは知らないが派手な爆発音が断続的に聞こえてきたのだ。
先刻出逢ったヴァニラ・アイスとかいう人の様に平和的な人達ばかりじゃ無い。という事実を確証は無いが物理的に認識した李衣菜は、怯えた表情で爆発音の方に向かっていた。
結果として、目的地には近寄れない状況が続いているが、そのうち収まるだろう。収まって欲しい。収まってください。

「おうおう、派手にやってやがるなあ」

ザベル・ザ・ロックの陽気さに李衣菜は本の心持ち救われた気がした。

「皆…巻き込まれて無ければ良いけど」

李衣菜が戦闘地に近づくのは、みくや卯月が巻き込まれていないか心配だからだ。
誰も知り合いがいなければ、寧ろ遠ざかっている事を選択しただろう。
ザベルとしては勝手に殺しあって全滅して欲しいのだが、面倒臭い奴や自分の知り合いが居たら、ドサクサに紛れて殺すチャンスなので、こうして付き合って居るのだった。




吉良吉影は闘争の気配に向かって近づいて行った。
別段に止めようだとか参加しようだとか思っていない。
そんなことよりもジャックが自分の言うこと聞くようにする方で忙しい。
ファイトクラブに興じて居る野蛮人共が全員共倒れになってくれてば万々歳だ。
野蛮人共に混ざる気の無い吉良は当然スルーを決め込む予定だったが、折角減らしあってくれているのだ。協力しない手は無いと、ファイトクラブ目掛けてシアーハートアタックを放ったのだった。


「おかあさん……?」

唐突にジャックが呟いて、吉良はジャックの視線の方をみる。

─────ほう。

そこに居たのは高校生位の少女。側にはどう見ても腐乱死体としか思えない代物が一匹。
アレの方がよっぽど悪魔というに相応しい。
そして、あの少女の手は中々綺麗だ。多少若いが容姿も良い。それにあの悪魔─────。
思考に耽っていると、再度ジャックの姿が消えていた。


785 : ROCK YOU!! ◆v1W2ZBJUFE :2016/11/23(水) 19:06:16 Qy.oZoNk0
「おかあさん……」

「ハイ!?」

唐突に呼び掛かられて李衣菜はビックリして飛び上がる。
吉良吉影の努力の成果は多少は身を結んでいなければ、李衣菜は今頃死体になっていたのだがそんな事には気付かない。

「え…えーと?迷子」

「んなわきゃねえだろ」

右脚の膝から先を長大なチェーンソーに変えたザベルが、ジャック目掛けて強烈なサイドキックを放つがあっさり躱され、ジャックは5mも一息に飛びすさってザベルを見る。

─────またヤバいのと。

ザベルの眼にはジャックは外見相応の幼女になど全く見えない。
これは怪物だ。ダークストーカーズと同類の化物だ。
そう認識したは良いが、この悪魔を殺すとなると李衣菜の不興を買うは必至。どうにも困った状況だった。

「ああ…すまない。私は吉良吉影という。ただの平凡なサラリーマンだ。その娘は私に充てがわれた悪魔なんだが…・どうやら母親を探しているらしい」

一触即発の殺気に満ちた空間にアッサリ入り込んできたのは、吉良吉影に他ならない。さも巻き込まれた哀れな一般人を装って李衣菜に話し掛ける姿を見て、ザベルは笑い出しそうになった。

─────つくづくツイてねえな。嬢チャンはこの手の連中を引き寄せる星の元にでも産まれてるのかね。

ザベルから見た吉良吉影という男はトンデモ無いタマだった。狂人と同じように理解できる存在では無く。しかしその精神は理性の元に有る。
此れもまた怪物と言えた。
そんなザベルを余所に、二人は会話を進めて行き、如何やら同行することになったらしい。勘弁して欲しかった。

─────アイツ絶対にロクなこと考えてねぇ。

だとしても李衣菜に説明して納得させるのは困難だろう。最悪COMPに戻されて、何身出来ないまま事態が推移する可能性も有る。
ここは黙って奴等を監視し、即応出来るようにするべきだった。
ザベルは盛大にため息をついた。



─────ツイている。

吉良吉影はそう思う。窮地の時ほどチャンスが巡ってきたものだが、ここでもそれは健在らしい。
綺麗な手の少女。そして如何にもな外見のゾンビ。
まだ躾が完全では無いジャックの暴走をおッ被せるにはこのゾンビは最上の手合いだ。ジャックの能力で襲撃者の詳細は記憶に残らないが、襲撃された事実は残る。
そこでこのゾンビの存在が活きてくる。
吉良吉影・多田李衣菜・ザベル・ザ・ロック・ジャック・ザ・リッパー。この四人の前に死体が有れば、まず疑われるのはザベルだろう。
これからのジャックの行為を精々被って貰おう。
最初にジャックが勝手に動いた時は焦ったが、如何やらジャックは殺意の無い相手には自分から攻撃しない程度には分別をつけたらしかった。

─────全て私の思い通りに進むッ!このまま魔神皇とやらを殺し、『彼女』を連れ帰るのだッ!


吉良吉影は上機嫌だった。今の所は。


【渋谷区/1日目/朝】
【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康・上機嫌
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、確認済み支給品(1)
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:この場から『脱出』し、魔神皇を始末する。
1:参加者とは協力できそうなら協力するが、危険な相手や秘密を知られた相手、手の綺麗な女性は殺す。
2:ジャックが命令をきちんと聴くように教えなければならない。
3:多田李衣菜を『手の綺麗な女性』認識しました。
4:ザベルにジャックの殺人の罪をおッ被せる。
※参戦時期は少なくとも川尻浩作になる前です
✴︎渋谷で乱戦が行われているデパート目掛けてシアーハートアタックを射出しました。結果は後続の書き手様にお任せします
[COMP]
1:ジャック・ザ・リッパー@Fate/Apoclypha
[種別]亡霊
[状態]平常
✴︎殺意の無い相手には自分から襲いかからない程度には分別が付きました。




【多田李衣菜@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:健康
[装備]:COMP(エレキギター型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:帰りたい。
[状態]:健康
1:渋谷の美城プロの本社を目指す
2:みくちゃん・卯月ちゃん・仁奈ちゃん・ちひろさんと合流したい
3:ポルナレフが危険人物である事を皆に知らせる
4:ヴァニラ・アイスを信用
5:吉良吉影と同行することにしました。
[COMP]
1:ザベル・ザロック@ヴァンパイアシリーズ
[種族]:屍鬼
[状態]:健康
[思考・状況]
基本:最終的に魔神皇の力を手にしたい
1:コイツラ(吉良吉影&ジャック・ザ・リッパー)どうにかしないと


786 : ROCK YOU!! ◆v1W2ZBJUFE :2016/11/23(水) 19:06:48 Qy.oZoNk0
ターミナルを使ったヴァニラ・アイスは目黒区と新宿区の間付近に居た。

「早速始めた奴が居るのか」

ヴァニラの見下ろして居るのは死体である。最初に出逢った多田李衣菜とかいう名の娘と同じ位の年恰好の娘の様だった。
様だった。というのは、この死体の首が何処にも無い為判別出来ない為である。

「状況からするに殺してから首を落としているな」

首を切断した割には、死体の周囲を赤く染める血の量は大分少ない。となるとこの死体を作った奴はワザワザ首を持ち去ったということになる。

「どうする?この娘を殺した奴を追うか?」

アーカードが血の色をした瞳でヴァニラを真っ直見つめて聞いてきた。生粋の闘争狂のアーカードとしては、殺し合いに乗った奴との邂逅は楽しくて堪らないのだ。

「何でワザワザ他の奴らを減らしてくれている奴と戦わねばならんのだ」

ヴァニラの返答は正論。皆殺しが方針のヴァニラにとってこの娘を殺した者は協力者に等しい。出会えば殺すが、それまで精々他の奴等を殺し回っていてくれとしか思わない。

「フン…判ってはいたが残念だ」

アーカードにしてもヴァニラの答えを予測して聞いてきたらしかった。

「第一、この娘を殺した奴の顔も判らんだろうが」

「判るぞ」

「ナニィッ!?」

ヴァニラは少し驚いた。死体から情報を引き出せるのは地味に有用だ。殺した奴の『殺し方』を知ることが出来るのだから。
殺し合いに乗ったか、乗った奴を返り討ちにしたかはともかく、相応の戦闘能力を持った手合いの手の内は知っておいて損は無い。

「血とは魂の通貨、命の貨幣。命の取引の媒介物に過ぎない。血を吸う事は命の全存在を自らのものとする事だ」

「何を言っているのか判らんが、出来るならさっさとやれ」

「了解した」

言うなりアーカードは卯月の首なし死体に覆い被さり、右肩に牙を突き立てると血を吸い始めた。

─────ほう。

血と共に流れ込んでくる卯月の記憶。厳しいレッスンに耐え、ステージに上がり、スポットライトを浴びて、誰からも愛される偶像(アイドル)となり、祝福されて─────。
そしてこんな処に連れて来られて、最初に出逢った殺人者に惨殺される。
そんな急転直下。有頂天から無限奈落に落とされる様な状況下で、絶望を正面から見据えて心折れず、最後の一瞬まで抗い続けたその在り様は、アーカードの心を確かに打った。

─────出来ることなら生きている間に出逢いたかったよ。お嬢さん。

ミナ・ハーカーにも、インテグラにも劣らぬ佳人と生きている間に出会えなかったことへの名残を惜しみながら、卯月の命と首を奪った相手の姿形と戦い方を脳裏に刻み込む。
そして得た知識をヴァニラに伝えるべく身を起こした。

─────まあ、良いさ。この娘の仲間がまだ残っている。少しは期待しても良いだろう。ジョナサン・ハーカーの仲間達の様に。

先刻出逢った多田李衣菜という娘の顔を卯月の記憶と合わせてハッキリと脳裏に刻む。

あの華奢な身体でどんな舞闘を見せてくれるのか。
あの可憐な口でどんな人間賛歌を歌ってくれるのか。

─────次に会うまで生きていて欲しいものだ。

アーカードは李衣菜との次の邂逅を思い目を細めた。



【ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、確認済み支給品、棺桶型COMP
[所持マッカ]:二万
[思考・状況]
基本:魔神皇を含め皆殺し
1:ポルナレフはこの場で確実に殺す
2:ポルナレフの悪評を流し、潰し合わせて疲弊させる
3:邪魔な存在、自分にとって不都合な存在は優先的に殺す
4:多田李衣菜の知り合いに出会ったら彼女の行き先を教える
5:島村卯月の死亡を確認
[備考]
※参戦時期は「お受け取りください!」と言って自ら首を刎ねようとする直前
COMP
1:アーカード@HELLSING
[種族]:吸血鬼
[状態]:健康
1:島村卯月の死亡を確認
2:多田李衣菜に僅かに期待
※参加者の中にインテグラがいることを確認しました


787 : ROCK YOU!! ◆v1W2ZBJUFE :2016/11/23(水) 19:07:15 Qy.oZoNk0
投下を終了します


788 : 名無しさん :2016/11/24(木) 01:26:47 C6N7KVYU0
シアーハートアタック丸投げで放置はさすがにマズくない?


789 : 名無しさん :2016/11/24(木) 01:27:52 C6N7KVYU0
ごめん途中送信、参戦時期的にも使えない筈だからそこは修正いると思います。


790 : 名無しさん :2016/11/24(木) 02:50:59 OPa2ndNM0
いやシアーハートアタックは使えるんじゃ?
川尻になった後だとアウトかもしれんがここの吉良は違うし


791 : 名無しさん :2016/11/24(木) 09:32:47 MhBflBu.0
投下乙です

吉良に眼をつけられただりーなはツイていないですなぁ、でもジャックちゃんとだりーの絡みはカワイイのでもっと欲しい
一番心労が募るポジションにいるザベル、頑張ってくれ
アーカードは島村さんの記憶を得たのか、そこからだりーに繋げる構成が巧いですね


792 : ROCK YOU!! ◆v1W2ZBJUFE :2016/11/24(木) 21:47:37 VMbpAHKM0
感想有難うございます

指摘の有った所を変更します。
具体的には李衣菜→デパートに様子見に行く。
吉良→李衣菜に付き合ってデパートに行く。当分渋谷(346プロ)で時間潰す事になるだろうから機会があったらシアーハートアタックを使う。


793 : ◆EPyDv9DKJs :2017/02/26(日) 20:42:37 KB9s9tSk0
投下します


794 : ◆EPyDv9DKJs :2017/02/26(日) 20:43:21 KB9s9tSk0
 全ての参加者を闇へ葬るため? 違う。
 打倒魔神皇を目指すため? それでもない。
 ヒーローだから・・・・・・なんてものはまずない。
 彼等が戦うのに、そんな理由は必要なかった。
 『ただ苛立つ相手が目の前にいる』、たったそれだけだ。
 それがあればいいのだ。今、この場にいるこの二人に限って言えば。

 今回も相手は人知を超えた能力を持つ存在。今となっては世界中に存在している『個性』と呼ばれるもの。
 もっとも、幼い頃のマリクは外界の情報に乏しく、グールズの首領として活動していた時もファラオへの復讐を考えており、
 個性の事は余り理解しておらず、闇人格の彼もその辺に詳しく追求したわけではなく、彼にとってはこれも魔法の類だ。
 加えて言うなら、彼が消滅してからそれなりに時が経ってる。個性への理解は確実に参加者の中でもワーストになるだろう。

 結局、マリクはあくまで常人なので、実際に戦うのはゾーマ。彼は傍観者だ。
 モンスターの背を眺めるのはある意味、デュエリストらしいといえばらしいのだが。
 今は壮絶なバトルフェイズに入っている、とでも言うべき状況か。

 魔王を相手にしても、爆豪はいつもどおりの力を発揮させる。
 襲い掛かる氷を自信の個性『爆破』で次々と跳ね除け、熱風と衝撃でダメージを与えていく。
 そのダメージも意に介さず、ゾーマが巨体に見合わぬ速度で攻撃をするが、
 両手を後ろへ向けながら、爆破の個性を使うことで高速移動を行える、
 自称『爆速ターボ』によって、ゾーマの速度に上回る動きで対応をする。
 そして刹那ほどの隙を突き、顔面めがけ拳を当てると同時に爆破。
 耳を劈くかのような爆音と爆風が周囲に広がっていき、周囲に衝撃の余波が響く。
 流石のゾーマ程の巨躯といえども、爆破を至近距離で受ければ吹き飛ばされるものだ。
 普通の人間でなくとも致命傷に至る一撃を受け、魔王がアスファルトの上を転がる、珍しい場面。
 しかし―――

「我に一人で立ち向かってくるを称えよう、若人よ。」

 体勢を整えれば、ゾーマの身体の傷は殆どが消えている。
 残った傷も次第に消えていき、あるのは爆破の都合で焼失した服の一部のみだ。
 ゾーマにこの程度の攻撃は大したものではなく、闇の衣の存在が傷を戻してしまう。
 光の魔法などを与えると消滅するが、その事実を知っているはずもなく、知ってても彼は光の魔法などない。
 だからといって、彼の戦いが無駄になっている、というわけでもなかった。

 爆豪勝己は高校生になるまでは、ろくに挫折を知らなかった男―――即ち天才にある。
 一方通行ほどの演算能力があるわけではないが、それに劣らぬ分析能力は性格とは裏腹に非常に高い。
 マリクのことを僅かな邂逅で一般人か、或いはいくらか優れた程度の人間だと判断していた。
 自分自身がその苛立ちが募ってる状況で、自分で発散させないのは無駄に苛立つだけだ。
 自分でこそ鬱憤を晴らすべきストレスを発散しないのであれば、理由は基本的に二つ。
 ストレスを発散してはいけない理由があるのか、ストレスを発散するのが不可能な理由になる。
 個性は様々であり、『ストレスを媒介に発動する個性』、そんなものがあってもおかしくはないが、
 その場合だと個性を度外視して、二人に手をかけようとしていたと言うことにもなる。
 どちらかと言えば発散できない理由、つまり『戦う術が現状存在してない』可能性が高い。
 となれば、悪魔よりもサマナーを狙うのがセオリーとも言うべきだが、少々厄介なことがある。
 こればかりはどうしようもない。何故なら―――

「さっさとくたばりやがれ、このクソ悪魔がぁ!!」

 本人の膨れ上がった自尊心がそれをさせず、ゾーマを真正面から潰す気でいるのだから。
 そうでなければ自分の自尊心が納得できない。爆豪勝己とはそういう男だ。
 高校生になってからは多少なりとも押さえ込めるようだが、根元は簡単には変わらない。
 無論、一方通行に頼る気は欠片もない。助けられることを見下されてると感じる彼が、
 助けを求めることは万が一、否、億に一つとしてもありはしないだろう。

 彼は既に勝ち目のない戦いに挑んでしまっていて、それをやめるつもりはない。
 結論を言ってしまえば―――爆豪は此処で終わると言うことになる。


795 : ◆EPyDv9DKJs :2017/02/26(日) 20:49:36 KB9s9tSk0
「コッチヲ見ロォッ!」

 更なる乱入者がいなければの話、だが。

 何度目か分からない、爆速ダッシュで肉薄し個性を使う寸前。
 二人の戦いに割って入ろうとする輩―――否、小物が一つ。
 髑髏の顔がついた、手で持つことが出来そうなぐらいの、小さな戦車。
 小さな、それも戦車が―――その足のキャタピラは飾りかのごとく
 空を飛ぶように、二人の間へと突っ込んできたのだ。
 互いがそれに何かを感じ、互いに後方へ下がって距離を取る。
 サマナーの姿がないことから野良悪魔・・・・・・にしては姿が機械的で、悪魔と言う印象が感じられない。
 野良にしてもサマナーの悪魔にしても、第三者の登場。二人は一時休戦―――

「邪魔だクソ玩具ッ!!」

 などになるはずもなく、寧ろまとめて吹っ飛ばすつもりで先に爆豪が攻撃を仕掛ける。



 ―――自分の個性が、仇になることなど知ることもなく―――



 戦車が攻撃を仕掛ける前に彼へと突進し、突如爆発。
 その爆発を受け、衝撃で近くのビルへ窓ガラスを破りながら突っ込む。
 爆発が終わり、戦車は銃から落ちた薬莢のように音を立てながら転がり、
 爆発が響き続けていた戦場は、唐突に静寂が訪れる。
 何が起きたか一瞬、マリクは理解できなかったが、
 我に返れば『こいつは自爆したのだと』すんなり理解できた。

「文字通りの自爆特攻か・・・・・・よくある話だな。」

 自爆してまで相手を倒そうとする戦車の思考。マリクは理解できないわけではなかった。
 本人も、バトルシティ決勝戦の対戦相手を決める戦いで、似たようなことをしているのだから。

「少し予想外だが、まあいい。」

 誰の差し金かは知らない上に、得物を横取りされてしまったが、多少は気分が晴れた。
 特に後ろの二人と違って相手は腹が立つ相手だっただけに、影響は大きい。
 残る鬱憤は後ろの二人で晴らせばいいと、後ろへと振り返る。
 しんのすけはいまだそこから由紀を連れて逃げることが出来ず、
 腰を抜かしたようにその場にいるだけだ。手間など何処にもない。
 再び魔王の手が、二人へと迫る―――





「コッチヲ見ロ・・・・・・ッテ言ッテルンダゼ・・・・・・」

 聞き覚えのある声が背後から、目を見開きながら、言葉どおりに振り向いてしまう。
 振り返れば、自爆して転がっていた戦車が起き上がって、マリクの方へと走り出していた。
 人を吹き飛ばすほどの爆発を、自らが起こしながらその動きは何も変わっていない。
 ゾーマがいてつくはどうの冷風によって飛ばさなければ、今頃衝突は免れなかっただろう。

(チッ、ニュードリュアとリバイバルスライムを足して割らないような奴だな。)

 戦闘で破壊したモンスターを道連れにする効果を持つニュードリュア。
 不死身の再生能力を誇るリバイバルスライム。どちらも彼が使用したモンスターだ。
 採用する以上それなりの利便性があるカードであり、後者は武藤遊戯の心を一度は折ったコンボの要。
 故に、それを足して割らないようなスペックを持っている戦車が面倒な奴だと理解するのに時間はかからない。
 無論ゾーマが見ているはずもなく、戦車へと攻撃を開始する。





(爆発音に聞き覚えがあるとは思っていたが、やはりあの小僧か。)。


796 : ◆EPyDv9DKJs :2017/02/26(日) 20:51:54 KB9s9tSk0
 その一部始終をビルの陰から眺めるのは、吉良達の四人組だ。
 デパートに向かう途中音が激しく、吉良が『巻き添えにならないよう確認するべき』と提案し、
 李衣菜はそれに応じ、ビルの陰からマリクの横顔を眺められる位置に隠れていた。
 もっとも、確認したかったのは事実としても、本当は吉良は事を起こすためでもあったのだが。
 爆豪を襲ったほんの数十秒の悲劇。それを起こしたのは、ほかならぬこの吉良吉影であった。
 彼女達が見てない僅かな隙に彼はあの戦車―――キラー・クィーンの左手から放たれる第二の爆弾、
 『シアー・ハート・アタック』をこの渋谷へと解き放ち、危険人物の始末に当たらせていた。

(爆発の都合、『熱』を伴うのが仇になったようだな・・・・・・)

 シアー・ハート・アタックは視覚聴覚に頼らず、温度によって敵を探し、攻撃する特性を持つ。
 その為、吉良の状態に関わらず使うことが出来るが、一方で勝手に決めるので狙って欲しい相手を狙えない。
 熱さによる汗を媒介として能力を行使する都合爆豪を狙っただけで、特に深い意図はなく、あっても何も出来ない。
 あくまで意図がないだけで、陰で聞いた彼の言動とジャックの件もあり、協力が見込めないという理由はあるが。
 なんにしても、彼にとっては危険な人物を一人始末できた。それだけでもありがたいというものだ。
 近くにいる、横顔から善人とは思えない形相の相手もまた、彼からすれば協力できる人物とはいえないだろう。
 爆豪の爆破による熱風を、後ろの二人の風除けにもなって浴びていたのが原因で、そのまま狙いを定めたのも幸運だ。
 残る二人の素性は分からない以上、脱出の手がかりになるかもしれない人物を標的にされないのも、また幸運である。
 しかし、何でもかんでも幸運ばかりが舞い込んでくるというわけではない。

 残る二人に接触する為、一人を始末するのはいい。しかし、シアー・ハート・アタックは狙った標的は必ずしとめる。
 仕留めるまで何が何でも追跡する。だからこそ、吉良が不在でも安心して邪魔者を始末できるが、今の場合は別だ。
 もしもシアー・ハート・アタックが素性が分からない二人を危険人物と認識してしまえば、余りよろしくない。
 故に、演技が必要だ。平穏を目指す彼らしくない、目立つが、しかしそれは平穏を目指すための一歩として。
 下手をすればこの惨劇の下手人と露呈してしまうが、彼に不安はない。単純な理由だ、いつもしてきていることだから。
 同僚からも『特徴のない、影の薄い男さ』と評される程に、彼は自分の能力や趣味を十五年間も隠し、演じ続けた。
 何時ものように、自分が無害な人間を装うことに不安を感じる理由は、本来はプライドの高い彼にあるはずがない。
 思わず笑みを浮かべそうになるが、近くに二人がいるので、あくまで無害な人間らしく、不安そうな顔を装う。

(本当の、殺し合い・・・・・・)

 李衣菜は表情の通り、心身共に不安に満たされていた
 別に、異能や超能力と完全に無縁と言うわけではない。
 ヒーローやヴィランを筆頭にそういった存在は知っていて、
 カードゲームの準決勝の中継中、液晶が原因不明の爆発を起こしたり、
 東京には首なしライダーがいるという都市伝説などは、彼女にとっても身近だ。
 とはいえ、身近なだけで他人事。彼女自身はアイドルだが、普通の女の子でしかない。
 演技でも撮影でもない、本当の殺し合いを前に、アイドルである自分に何か出来るはずがなく、
 吉良やヴァニラなどの、殺し合いを是としない人と出会ったことで和らいだ不安が押し寄せてくる。
 自分は生き残れるのだろうか、同じプロダクションの仲間は無事なのだろうか。
 この不安を押し寄せるようなことをした相手が、すぐ側にいることにも気づかず。

(次から次へと、見るだけならやめられねえなこりゃ。)

 李衣菜はどうしてまともな連中と出会わないのか。
 横顔など見なくても分かる。あの男、マリクもこっち側の人間だと。
 三度目ではあるが、傍観する身としてザベルは楽しんでいた。
 あくまで傍観する身としての話だ。巻き込まれるのはゴメンではある。
 特に、この戦いに巻き込まれるのだけは絶対にお断りだ。
 僅かな戦いを見ただけでゾーマは『やばい』と彼は確信を持っていた。
 彼が知る強大な存在、ジェダ・ドーマに負けず劣らずの力を持っている。
 匹敵するかどうかはもっと見なければ分からないが、戦うつもりなどない。
 勝てる見込みは少なく、運良く勝てたとしても、まだ小型の戦車が残っている。
 しかも面倒な連中がそばにいる状況。万全の状態でないというのは考えたくないことだ。


797 : ◆EPyDv9DKJs :2017/02/26(日) 20:54:46 KB9s9tSk0
「こりゃ遠回りしねえときついんじゃねーの?」

 故に彼が取る行動は逃走。百害あって一理なしの戦闘に手を出す理由はない。
 被害がなく、吹き飛んで遭遇しました、なんてことも考えればほんの少しの遠回りでは危険だ。
 安全に、自分が消滅する道を歩まぬようにゾンビは考える。

「・・・・・・」

 ジャックは特に行動せず、思うことはなかった。
 精神汚染のスキルのせいか、李衣菜のように不安になることはない。
 ザベルのように撤退を考えない。吉良のように策を張り巡らせない。
 吉良が手を繋いでるのもあってか、今までのように勝手に動くこともなく。
 ただ、人がぼーっと空を眺めるように、ゾーマの戦いを眺めるだけだ。





(―――闇の衣と似たようなものか。)

 ゾーマは苦戦はしていない。突進以外の行動を取らない相手に遅れを取っては魔王は勤まらない。
 しかし、苦戦はしてないだけで楽勝ではない。マヒャドを使おうとも、氷漬けにしても、魔王の腕力を用いても、

「コッチヲ見ロォ〜!」

 シアー・ハート・アタックは無防備に受けては何度もやられたり吹き飛んでも、その度に同じ言葉を繰り返し突進する。
 『何かをしなければ倒すことが出来ない、あるいは難しい』。ゾーマはそう受け取り、さながら、闇の衣の存在に近い。
 自身は傷を修復することで戦い続けられる。相手もダメージが全く通ってないのか、戦いを続けてくる。
 これでは永遠に戦いを続けるしかなくなってしまう。しかも、互いに勝つことがありえない戦いだ。
 その強固さを解除するか、この悪魔を使役するものを探すしか方法がなく、ゾーマは不快になっていた。
 意外と慎重な面もあるので、プライドは決して高いとはいえないが、だからといってないわけではない。
 勇者を邪魔をする側である魔王が勇者の立場に、それも相手は偉大な勇者でも歴戦の戦士でもなく、
 スライムとそんな変わらなさそうなサイズの小物相手に、戦術的であれ敗走しなければならないなど、
 いくら分霊という扱いで魔王としての力が抑えられているとしても、納得できるものではなかった。




 爆豪が突っ込んだビルの中。
 人気のないオフィスにはガラスが撒き散らされ、書類といった小物が散乱している。
 そして多量の血痕という道しるべの先の壁にもたれている、爆豪の姿。
 爆発をモロに受けながらも、その意識、生命はいまだ手放してはいない。
 だからといって、出血多量のまま放っておけば、六時間毎の放送で呼ばれかねない。
 無論、死んだ身になっては自分の名前を聞くことなどないのだが。

「クソ、が・・・・・・!!」

 敗北はしていない。生きている以上は負けたとは思っていない。
 これは当然だが、勝ったとも思ってはいない。敵に何一つ傷を与えていないのだから。
 再度戦場へ赴きたいところだが、ダメージは思っているよりもずっと大きく、激痛の嵐だ。
 近くのコピー機に手をかけなければ、たちあがる事もままならない。

 彼のいるオフィスの扉を開く音が、静かに響く。
 マリクなら、ぶち破った窓から入れば短時間で無駄がない。
 律儀に入ってくるのは、先の戦いを見ていない存在になるだろう。
 なんとか立ち上がったはいいが、今個性を使えば傷が悪化して死ぬ可能性も出てくる。

「意識は目覚めたみてーだな、『元』ご主人様。」

 扉を開けたのは、彼に支給された悪魔、一方通行だ。

「クソナードが、何また出てきてやがんだ・・・・・・!」

「テメェが受けた攻撃でCOMPがぶっ壊れて、こちとら野良悪魔になったんだよ。」

 一方通行に言われ、しまっておいたCOMPを確認する。
 スマートフォンがたのCOMPが、ひしゃげて画面に亀裂が入っており、
 どう考えてもスマートフォンとしてみても、壊れてるとしかいえない。
 これのお陰で爆発のダメージが抑えられたようではあったが。

「とは言え、だ。曲がりなりにも俺の『元』ご主人様だ。最後ぐらいは手を貸してやりに来たわけだ。」

 『元』の部分に妙に強調しながら、爆豪の前で姿勢を低くしながら見る一方通行。
 端から見れば、一方通行が下手人で爆豪が被害者に見えかねない程に彼が悪党に見える。

「助けなんざいらねえっ! 求めても、いねぇ―――!」

 傷が響き、膝を折る爆豪。
 その姿は痛々しいが、一方通行は手を貸さない。


798 : ◆EPyDv9DKJs :2017/02/26(日) 20:56:51 KB9s9tSk0
「あーあー、死にかけた分際でよく言うなァ。
 こっちは生体マグネタイトでしんどいっつー中、
 態々『元』ご主人様の為に崩壊する身体を使って、
 人探しに励んだってのに、労いの言葉もねえってかァ?」

 そういいながら、一方通行は手のひらを軽く眺める。
 生体マグネタイトの供給が殆どない野良悪魔になった彼は、
 僅か数分の活動だけで手の皮膚はいくつも裂けて、手のひらを赤く染めている。

「んなこと俺、が―――」

 反論しようとする寸前、爆豪が意識を手放し、倒れる。
 そのまま倒れると破片に刺さり余計傷を負いかねないので、
 一方通行が受け止めて、ゆっくりとおろす。
 何処か適当に、テーブルの上にでもおきたいところだが、
 能力がいかんせん強すぎることが災いし、運動能力はからっきしである。
 移動こそベクトル操作で度外視できるが、能力が必要ないか通じない状況ではこれである。
 高校生一人、持ち上げることはおろか連れて行くことも叶わないほどに。

「・・・・・・これほどめんどくせぇ野郎は初めてだ。
 もっとも、俺の人生に近付く奴自体が少なかったが。」

「なんというか、凄く仲が悪いのね・・・・・・」

 声質が極めて似ている二人以外の、別の声が扉の向こうからかけられる。
 いかにも、苦笑を浮かべていそうな少女の声だ。

「こーいう奴だが、曲がりなりにも俺の『元』ご主人様で魔神皇へ反抗する奴だ。よろしくやってくれ。」





(まずいな。)

 表情には出さないが、吉良は内心焦っていた。
 ゾーマは基本的に氷の魔法で対処してることで、シアー・ハート・アタックが爆発できないのだ。
 人肌程度の体温で作動し、多少の距離でも壮絶な威力を誇る爆発も、爆発できなければただの戦車に過ぎない。
 ダメージに関しては問題ない。スタンドが受けるダメージは本来、本体にもフィードバックされるが、
 シアー・ハート・アタックのような、所謂自動操縦型スタンドはそのルールが殆ど当てはまらない。
 仮にダメージが通ったとしても、フィードバックは左手だけで、誤魔化せるレベルの傷だ。
 しかし、あくまで物理的な傷を殆ど負わないだけであり、何かしらの影響は受けてしまう。
 ゾーマの無数の低温の攻撃を受けた事で、彼の左手は既に冷え切っており、凍傷していた。
 このままでは最終的に血液が通わなくなり、最悪手が腐ってしまう可能性だって出てきてしまう。
 二人を始末するのを諦めるにしても、シアー・ハート・アタックは対象を始末するまで帰る行動は絶対に取らない。
 必然的にマリクを始末する前に、彼の前へと自分の姿を晒さなければならなかった。
 自分の力は強いと自負しているし、キラー・クィーンで始末できる自信はある。しかし、彼は敵を作らない主義だ。
 一般人と告げた以上、李衣菜からは隠していたことへの疑念が生まれる可能性は高い。かといって『恋人』にするにもまだ早い。
 敵を作らないためには知り合いがいることが好ましい。李衣菜の知り合いは四人と結構な人数が存在しているのだから、
 信頼を得るためには彼女と共にいた方がいいだろう。加えて、ザベルにジャックの殺人を被せることも考えてる以上、
 今此処でキラー・クィーンで応戦するのは好ましくない。故に―――



 ゾーマが投げ飛ばす。戦車が転がって起き上がる。
 ゾーマがマヒャドを放つ。戦車が転がって起き上がる。
 ゾーマがいてつくはどうを放つ。戦車が転がって起き上がる。
 苦戦してるわけではないのだが、同じ行動を続けているだけの展開だ。
 格闘技であれ、カードゲームであれ、何であれ、何時までも同じでは見てる側も飽きるというもの。
 たとえ。ゾーマが自分の代わりに戦ってると分かっていても、マリクは退屈であくびが出そうだった。

(コントローラーでも探しておくか。)

 あれほど執拗に自分を狙おうと突進している。
 となれば、あれは野良悪魔ではなく参加者の悪魔か何かしらの力だ。
 そして、この戦車を操る者が自分達を見ている可能性は高い。
 悪魔はサマナーの認識できない範囲にいるのがこの殺し合いにおけるルールだ。
 (これがスタンドという、例外の存在であることには当然気づくはずもなく)
 軽くだが、周囲を見渡して持ち主を探そうとあたりを見渡し―――即座に人を見つけた。

「な―――」

 見つけた、というより見つかって当然だ。
 しんのすけと由紀の背後に、普通に彼女がいたのだから。


799 : ◆EPyDv9DKJs :2017/02/26(日) 20:59:50 KB9s9tSk0
 そして―――ナイフを構えて既に攻撃の体勢に入っている。










 マリクは、幸運に恵まれている方だ。
 死んだ身でありながら、この舞台にサマナーとして招かれたこと。
 これだけでもありがたいことだ。しかも千年ロッドまで支給してくれている。
 召喚できた悪魔は強力な力を持ち、勇者も退けるほどの魔王を従えたこと。
 中にはサマナーの方が強いと言わしめる人物も存在している中、ゾーマは彼自身も初対面であたりと認識した。
 消滅する危険があるとは言え、自動回復を有しているというのも決して小さくない利点であるだろう。
 そして―――支給品が、ナイフを防ぐぐらいは容易な硬さを持つ、千年ロッドであったということ。

 咄嗟に振るった千年ロッドが、ナイフとぶつかり合い甲高い音が路上に響く。
 ゾーマも気づかないはずがなく、一瞬ではあるがそちらを視線を向ける。
 視線を向ければ、マリクは少女に襲撃され、先ほどはいなかった男が姿を見せて、
 由紀としんのすけを連れて走り出している光景が映った。

「むぅ・・・・・・!」

 吉良の乱入と同時に、ジャックに襲われるマリク。迫る爆弾戦車も迫る。
 いくら素早く、魔王でもそれなりに距離の置いた問題を同時に対処は極めて困難だ。
 一番にすべきは当然―――サマナーの保護。シアー・ハート・アタックを吹き飛ばしてから、
 魔法は距離が近すぎてマリクにも当たる可能性があり、肉薄。
 マリクを気遣いながらも、それでいて鋭敏な動きでその手を伸ばすが―――

「―――消えたか。」

 ジャックは当てる寸前に消える。
 そういう能力でも、支給品でもない。ただサマナーと離れすぎて、強制的に戻されただけだ。
 となれば、と二人して辺りを見渡せば、三人の姿は見失いこそしたが、道は分かっている。
 しんのすけと由紀、吉良が別々の別の曲がり道に入っていることも。
 まだ遠くへ行ってない。探せば案外すぐみつかるだろう。
 戦車もいつの間にか消えており、マリク達は走り出す。
 狙うは当然、当初の目的どおりしんのすけと由紀である。
 マリクの体力で三人を追えない、ということはないだろう。




 類は友を呼ぶ。人は、自分に似た人間を引き寄せる意味を持つことわざ。
 吉良のスタンドは爆発させる能力。爆豪もまた、個性は爆破である。
 人を殺した経験を持ち、人を殺める事に関して躊躇いのない吉良とマリク。
 マリクと爆豪は共に、先の出来事で苛立ちを持っていた。

「此処で出会うとはな。」

 だからか、彼は引き寄せたのかもしれない。
 この戦いに、二人となって参加している奇妙な知り合いが。
 振り返れば、男は王者の風格をもって、仁王立ちしていた。

 同じ神に選ばれた男と邂逅するのは、ある意味必然というべきか。
 とどめを刺されたモンスターと同じ、魔法使いと邂逅するのは、ある意味必然というべきか。
 彼が倒したと思っている人物に支給された悪魔と邂逅するのは、ある意味必然というべきか。


800 : ◆EPyDv9DKJs :2017/02/26(日) 21:01:51 KB9s9tSk0
「久しぶりだな、海馬ァ・・・・・・」





 時は僅かにさかのぼる。

 吉良の手は冷えきって、そろそろ痛みが感じなくなるほどに麻痺してきていた。
 誰かが来た隙をついて動こうと思っていたが、これ以上は待つのは危険と判断した吉良は、
 二人を救出することを李衣菜に伝え、いたってシンプルな作戦を立てて行動に出た。
 ジャックがマリクを狙う間に二人を誘導し、何かあったらザベルにサポートしてもらう。
 李衣菜は長距離離れられると悪魔がリターンしかねないので、そのまま待機。
 二人を連れ出すことが出来たら共に走り出し、その場を離脱する。
 作戦と呼ぶにも甚だしい行為。だが普通なのは想像、行動、実行。どれもしやすい利点がある。
 また、ジャックには気配遮断のスキルがあり、文字通り気配を感知される事なく動くことが可能だ。
 今はサーヴァントではなく、悪魔ゆえにスキルは弱体化し、攻撃すると簡単に解除されるが、意表は突ける。
 ジャックにマリクだけの相手をするように念を押して、ジャックが先に行って接近を試みる。
 先の李衣菜との邂逅で多少は教育が実っている。少年少女には攻撃はしないはず。
 その予想通りの展開を迎え、マリクが動いた瞬間、吉良はダッシュして走り出す。
 マリクが驚嘆し、ゾーマが動きを止める。僅かではあるが、同時にチャンスである。

「君達、すぐに走るぞ!」

 吉良はさながら、子供を保護するのは当然という大人のような振舞い方で二人に促す。
 魔王からは逃げられない。そうかもしれないが、今は本来の力を発揮出来ない分霊のような存在。
 抜け穴ぐらい一つや二つある。唐突に魔王と出会えば、普通にしんのすけのようになるのは当然だ。
 だが、存在を認識した状態で意に介さず目的を果たそうとすれば。それなら出来なくはなかった。
 無論、これを吉良が知ってて実践してるわけではなく、ただの直感での行動でしかない。

 返事はなかったか、或いは返答したくても魔王の恐怖が影響しているのか。
 呻き声に近い返事をしながら、しんのすけは由紀の手を引いて、吉良と共に走り出す。
 二人に走るよう誘導するのは、手をひいて走る方より当然効率がいいと言う名目もあるが、
 手を引くとなれば、片手で二人は無理だ。確実に冷え切った左手を使わなければならない。
 このまま握れば確実に怪しまれる。直接的なつながりを指摘される場面はないにしても、
 人肌以下の温度を持つ人間が、目立たないはずがない。既に目立ってるのに、これ以上はお断りだ。
 そして何より―――

「コッチヲ見ロォ〜〜〜!」

 彼の真の目的は、今此方へと向かっている、シアー・ハート・アタックの回収にある。
 何故、マリクを放置して二人へ向かってきてるのか。これもまた、作戦以上に単純な話だ。
 走っている間に、吉良は右手の親指を人差し指の側面にひたすらこすり続けているからだ。
 一般的なランニングのフォームの中、親指を擦ってると認識できる動体視力を持つ人間はそうはなく、
 非常に効率の悪い摩擦による熱だとしても、多少人並みの温度は上回ることは可能。
 つまり、二人を追ってきているわけではなく、温度の高い吉良を誤認しているだけにすぎない。

「すぐそこのビルを曲がった先の人に、さっきであった場所で待ってると伝えてくれ!」

 さながら、自分が囮になるかのように。
 李衣菜のいるビルとは別の道へと走っていき、戦車もその背を追いかける

「あ、あのおじさん、さっきおねーさんと会った場所で待ってるって・・・・・・」

「吉良さん・・・・・・!」

 李衣菜にしんのすけが彼に言われた言葉を伝える。
 『作戦が成功したら逃走』。吉良に言われたとおり、二人を先導しながら走り出す。
 生きてるかは分からない。けれど、生きていて欲しい。そう願いながら彼女は先ほどの場所へと向かう。


801 : ◆EPyDv9DKJs :2017/02/26(日) 21:02:54 KB9s9tSk0



【渋谷区/1日目/午前】

【多田李衣菜@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:健康
[装備]:COMP(エレキギター型)
[道具]:基本支給品、不明支給品
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:帰りたい。
 1:渋谷の美城プロの本社を目指す。ついでにデパートに様子見に行く
 2:みくちゃん・卯月ちゃん・仁奈ちゃん・ちひろさんと合流したい
 3:ポルナレフが危険人物である事を皆に知らせる
 4:吉良さんと出会った場所へ向かって合流する。吉良さん、大丈夫かな・・・・・・

※吉良吉影と同行することにしました
※吉良吉影とヴァニラ・アイスを殺し合いを是としない相手と認識し、信用しています

[COMP]
1:ザベル・ザロック@ヴァンパイアシリーズ
[種族]:屍鬼
[状態]:健康
[思考・状況]
基本:最終的に魔神皇の力を手にしたい
1:あいつら(吉良吉影&ジャック・ザ・リッパー)どうにかしねえとな

※吉良吉影とヴァニラ・アイスが本当は危険人物と察しています

【丈槍由紀@がっこうぐらし!】
[状態]:健康、
[装備]:COMP(スマートフォン型)
[道具]:基本支給品、確認済み支給品、お菓子(デパートで調達)
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:ひとりはいや、帰りたい
 1:――――

[COMP]
1:佐倉慈(めぐねえ)@がっこうぐらし!
[種族]:幻想
[状態]:瀕死、COMPの中

【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康
[装備]:COMP(マラカス型)
[道具]:支給品一式
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:おねいさん(輝子)とデートする
 1:今はこの人(李衣菜)についていく

※殺し合いについてはよく理解していません。

[COMP]
EMPTY

※三人はシアー・ハート・アタックを悪魔だと思っています




 しんのすけたちと別れて、吉良は入り組んだ道を走り続け途中で立ち止まった。
 背後から自分を標的だと誤認するシアー・ハート・アタックを回収し、笑みを浮かべる。
 上手くいった、とでも言わんばかりのしたり顔で。

(この吉良吉影、自分で常に思うんだが強運で守られてるような気がする。
 そして細やかな気配りと大胆な行動力で対処すれば、きっとこの殺し合いも脱出できるだろう。)

 何時もの運はここでも健在だ。此処にいること自体が不運こそあるが、こういう時こそ冷静に動いて、チャンスをものにする。
 吉良のは昔からそうして生きてきた。殺人鬼はCOMPにジャックがいることを確認しながら、
 まだマリクに追われているかもしれないので足早に李衣菜と出会った場所へと向かう。

 実はもう一つ。彼が知らない幸運がある。
 あの作戦のままでは、普通に李衣菜達にゾーマが追いつかれていた可能性のほうが高かったこと。
 だが、彼にとって無視できない存在と出会った事で、難を逃れたということを。


802 : ◆EPyDv9DKJs :2017/02/26(日) 21:05:09 KB9s9tSk0

【渋谷区/1日目/朝】

【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:左手が凍傷(感覚がほぼない)、上機嫌
[装備]:COMP
[道具]:基本支給品、確認済み支給品(1)
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:この場から『脱出』し、魔神皇を始末する。
 1:参加者とは協力できそうなら協力するが、危険な相手や秘密を知られた相手、手の綺麗な女性は始末する
 2:ジャックが命令をきちんと聴くように教えなければならない。
 3:ザベルにジャックの殺人の罪をおッ被せる。
 4:李衣菜に付き合ってデパートに行く。その後346プロへと向かう
 5:状況に余裕が出来たら彼女(李衣菜)を『恋人』にしたいが、せめて知人と出会ってから
 6:シアー・ハート・アタックは信用できないかもしれない。使う相手を見極めるべきか
 7:左手は早く温めておこう。それまで人に触れないよう気を遣わねば・・・・・・
 8:あの男(マリク)から逃げる
※参戦時期は少なくとも川尻浩作になる前です
※多田李衣菜を『手の綺麗な女性』認識しました
※スタンドが可視可能となっていて、それを認識しています
 他にも何らかの制限を受けているかもしれません
 他のスタンド使いも制限を受けているかは他の書き手にお任せします

[COMP]
1:ジャック・ザ・リッパー@Fate/Apoclypha
[種別]亡霊
[状態]平常・COMPの中

※殺意の無い相手には自分から襲いかからない程度には分別が付きました。


 相対するのは戦うことはなかったが、彼の渡したカードが遊戯を救い、
 結果的に言えば後の敗北へと繋がる遠因となった男、海馬瀬人。
 隣にはファンシーな姿をした、魔法少女と肌が白い、病弱そうな少年。
 しかし、少年の目つきは病弱な人間の眼とは思えないほどに鋭い。
 人を殺した、といっても余り違和感がなさそうだ。

 一方通行は野良悪魔になったあと、出会ったのは海馬とマミである。
 体を維持するために契約し、その後爆豪の下へと戻って治療に当たらせた。
 もっとも、マミは彼女の知り合いほど傷を治す魔法に長けているわけではなく、
 彼女のリボンで傷口を縛って、一先ず止血して社内の仮眠室に寝かせている。

「名簿にいたが、まさか闇人格の方だったか。
 闇のゲームで消滅した貴様が何故生きてるかなど、
 今置かれている状況下から考えれば、些細な問題か。」

 アテムが蘇っている可能性もありうるのだから、
 今更死人が(人格だが)一人蘇ったところで驚く海馬ではない。
 本人だって、死者の蘇生を試みている存在である。

「テメエの知り合いかぁ? いかにも悪党面だが。」

「それ、貴方が言うのね・・・・・・」

「そうなるが、殺し合いに乗ると見て間違いない男だ。」

 元々マリクは事情があるとは言え、レアカードを強奪する集団『グールズ』の首領。
 余りいい印象ではなかったが、闇人格であれば問答の必要はない。確実に乗る人間だ。
 別に悪を捌く正義の味方になるつもりはなく、寧ろ海馬も過去を顧みれば十分悪党である。
 (もっとも、彼にとって過去は振り返るつもりは全くないので本人に自覚があるかどうかは怪しいのだが。)
 あくまでこの男は障害となりうる、だからその芽を摘む。己の利益からこの場で戦うつもりにある。

「デュエルで決着を付けたいところだが、俺はデッキもなければ、
 今のルールも分からないもんでねぇ。この舞台なりのデュエルで決着といこうか。」

 お互いにデュエルディスクを構えるその光景は、彼等決闘者にとってはありふれたものだ。
 もっとも、此処ではデュエルディスクに類似した機能のCOMPであって、デュエルディスクではない。
 ソリッドビジョンなんてものはなければ、互いにあるべき部分にデッキがセットされていない。
 今から行うのは文字通り、命を賭けた決闘・・・・・・まあ、彼等は魂を何度も賭けた戦いをしてるが。

「ふぅん、いいだろう。貴様を倒せば、俺は奴等を乗り越える一歩となるだろう。」

 奴というのは、マリクを倒した遊戯だけではない。
 何処かへ向かった、もう一人の海馬瀬人を乗り越える第一歩としては、お誂え向きの相手だ。

 海馬は想定していたが、実現することのなかったバトルシティ決勝戦。
 ルールは完全に別物だが、今此処でその戦いは実現する―――


803 : ◆EPyDv9DKJs :2017/02/26(日) 21:06:31 KB9s9tSk0
【渋谷区/1日目/午前】

【爆豪勝己@僕のヒーローアカデミア】
[状態]:瞳にダメージ(小:視界には問題なし)、多量の出血、爆破のダメージ(重傷・止血済み)、衝突の際の打撲、多数の裂傷、苛立ち、気絶
[装備]:[COMP](スマートフォン型)※損傷が酷すぎて完全に使い物になりません
[道具]:基本支給品、不明支給品
[所持マッカ]:0
[思考・状況]
基本:どいつもこいつもナメやがって!
1:クソナード(マリク)をぶっ潰す
2:次に敵(ジャック)に会ったらブッ殺す。クソ白モヤシもいつかブッ殺す。
3:大きな建物が見える方(新宿)に向かう。
4:―――
※スキル『情報抹消』により一連のジャックの戦闘内容を覚えていません。
※海馬達が戦っている近くのビルの仮眠室でマミの魔法のリボンで止血した状態で眠っています
 マミが離れすぎたり、死亡したらリボンが消えるかもしれません
 すぐに目覚めるか、目覚めて動けるか、そのまま死亡するのかは後続にお任せします



【マリク・イシュタール(闇人格)@遊☆戯☆王】
[状態]:健康
[装備]:デュエルディスク型COMP、千年ロッド@遊☆戯☆王
[道具]:基本支給品
[所持マッカ]:30000
[思考・状況]
基本:デスゲームを楽しんだ後、魔神皇に闇のゲームを仕掛ける
  1:次にあいつら(ザ・ヒーローと"ロト")に会うまでに闇のゲームの内容を考える
  2:海馬とデュエル

※参戦時期はバトルシティ決勝戦で消滅した後です。
※消滅した闇人格に肉体を与えられた状態で参戦しているので、表人格に交代することはありません

[COMP]
1:ゾーマ@ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…
[種族]:大魔王
[状態]:魔力消費(極小)、僅かながらの苛立ち
[備考]
1:あの戦車は一体・・・・・・

※"ロト"(女勇者)の本名を覚えています

※シアー・ハート・アタックを悪魔だと思っています
※爆豪は死亡したものだと思っています


【海馬瀬人(A)@遊戯王(原作漫画版)】
[状態]:健康
[装備]:COMP(腕部装着型コンピューター。デザインは劇場版「THE DARK SIDE OF DIMENTIONS」のものに似る)
[道具]:基本支給品、確認済み支給品(1)
[所持マッカ]:25000
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない。もう一人の自分より先に魔神皇を倒し、死者蘇生の秘法を奪い取る。
   分霊(悪魔)では意味が無い。求めるのは完璧な“武藤遊戯”のみ。
 1:“魔人”とやらを餌に悪魔を扇動している者と接触する。
 2:マリクとデュエル

※もう一人の自分同様、青眼についての考察もあくまでも推測に過ぎませんが、海馬にとっては確信です。

[COMP]
1:巴マミ@魔法少女まどか☆マギカ
[種族]:魔女
[状態]:健康

※海馬のアドバイスのお陰で、魔法で再現できそうな魔法カード、罠カードを武器として使用が可能です

2:一方通行@とある魔術の禁書目録
[種族]:外道
[状態]:疲労、出血、裂傷(いずれも生体マグネタイトの供給なしの行動によるもの)

※スキル『情報抹消』により一連のジャックの戦闘内容を覚えていません
※一時的に野良悪魔になったことで身体が他にも損傷しているかもしれません


804 : ◆EPyDv9DKJs :2017/02/26(日) 21:07:50 KB9s9tSk0
以上で投下終了です
何人か状態表で気になった部分を修正していますが、問題がありましたらお願いします
(半角の「COMP」を「COMP」と全角に統一、思考にあったものを備考に変更など)
後、質問なのですが、破壊されたCOMPのマッカってどうなりますか?


805 : ◆EPyDv9DKJs :2017/02/26(日) 21:13:26 KB9s9tSk0
あ、タイトル忘れてました
タイトルは『群雄割拠』です


806 : 名無しさん :2017/02/26(日) 22:53:37 6RYsf4jU0
投下乙です!
かっちゃん、お陀仏かと思ったらギリギリセーフか
とはいえ悪魔も失い、本人も重症では生き残ってもこの先きつそうだなあ
そして海馬とマリクの対決は注目カードだが……ゾーマの相手はきついか?


807 : 名無しさん :2017/02/26(日) 23:31:59 YYHi141Y0
投下乙です

大人数の戦闘を見事に纏めていて感嘆の一言
かっちゃん生き残ったが満身創痍だなぁ、一通さんはらしい最期だった
吉良の狡猾だけど危なっかしいロールは原作通りだなwそれでも切り抜けるけど
そして社長これはピンチか?


808 : 名無しさん :2017/02/27(月) 17:48:50 Q4Liybyk0
投下乙です
シアハでも効果薄くてゾーマ様やっぱり強ぇ
吉良とだりーは社長が来てラッキーだったな


809 : ◆EPyDv9DKJs :2017/03/05(日) 01:48:55 5I6v6NKY0
多数の感想、ありがとうございます
WIKIに収録の際に、『群雄割拠』をいくらか修正させていただきました
基本的に脱字か誤字の修正なので、大して変わりはないですが・・・・・・


810 : ◆EPyDv9DKJs :2017/06/07(水) 18:41:03 P4YxV2420
投下します


811 : ◆EPyDv9DKJs :2017/06/07(水) 18:43:05 P4YxV2420
 レミリアの弾幕によって、無残な街並みとなった周辺は静かなものへと変わった。
 多少、先ほど思いっきりフロアをぶち抜いたビルの破片がパラパラと落ちるが、些細な問題だ。
 インテグラはネギの悪魔、とらと交渉の前に彼のCOMPから悪魔辞典でとらのことを調べる。
 COMPの複数所持はルール上禁止されているが、所持せずその場で見るのには問題はないらしい。
 もっとも、ルールにおける悪魔の吸い出しのことを考えれば、それぐらいは許容でなければ困るのだが。
 先ほど襲ってこなかったのは、サマナーであるネギがいたからかもしれないので、事は慎重に進める。
 化け物との戦いを終えた老女の自覚はある。衰えた肉体で出来ることが限られるだろう。
 なおのこと、交渉に関しては慎重にいかなければならない。

「ふむ・・・・・・」

 悪魔辞典を見ると、インテグラはどこかアーカードと似ている存在だと感じた。
 蒼月潮と言う人間とともに、現代で様々な敵と共闘していったとされる大妖怪。
 形は違えど、かつて狂信者と戦っていた自身とアーカードと、どこか似ている。
 戦闘経験は豊富、多彩な能力を有する、頭も回る。味方にすれば彼並に心強いが、
 問題は人を喰らう存在。潮と言う人物によって人を喰うことは禁止されているようだが、
 あくまで禁止されているからしていないだけで、気の向くままに人を喰らってたともされている。
 この場に潮がおらず、参加者名簿にも彼の名前は載ってない以上、此処では潮と言う制約は通じない。
 もっとも、インテグラが出会う前、開始から間もない時のネギとのやりとりから守ってはいるようだが、
 悪魔辞典に今の思考まで書かれてはないので、とらと会話しないことには分からない。
 普通ならばこの手の怪物(フリークス)はサーチ&デストロイだが、とらは言うなればグレー。
 話は出来る、交渉も出来る、しかし人を喰う。怪物でありながら怪物らしくない事に彼女は軽く悩む。
 一先ず交渉を始めようと思うも、インテグラは立ち上がり、北へ視線を向ける。
 とらとの交渉のためではなく・・・・・・いや、それどころではない。

「来るわね。それも飛びっきりの大物。」

 老いたインテグラでも気づける以上、レミリアが気づかないはずがない。
 否、寧ろこれは五感が機能しているのであれば、誰だろうと気づくだろう。
 揺れる大地と共に重量感溢れる足音。先ほどの浮遊物とは比べるまでもない大物だ。
 レミリアによって崩れかけていた近隣の建物を倒壊させながら、轟竜は咆哮と共に姿を現した。





「ッ・・・・・・」

 ジンは傷を押さえながら、階段を下りていた。
 相手が死体の確認の為に此処へ来るかもしれない。
 ならば急いで、かつ気づかれず降りることが先決だ。
 幸い出血はあれど血痕を残すことはない。生きていると思われる可能性は減るだろう。
 痛みに堪えながらもなんとか半分、有利になるために利用したビルとはいえ、今は中々に辛い。
 エレベーターを使いたくとも、使って下に敵がいたら生きてることを知らせているようなものだ。
 丸腰で狭いエレベーターの中で悪魔を率いた参加者と出会えばどうなるかなど、言うまでもない。

 次の階段を下りようとすると、地鳴りによって歩みを止める。
 さっきの悪魔がこのビルを倒壊させようとしたから破壊しているのか、
 尚のこと悪魔の差に苛立ちが顔に出るも、そうではない事はすぐに理解する。
 轟く咆哮。距離はそう遠くない場所であり、ほぼ真下から聞こえた。
 先の衝撃で全壊した窓割から眺めれば、巨大な生物が近くに存在することが確認できる。

「ああいうもいるのか・・・・・・」

 マンハッタン・トランスファーは決して悪いものではないのだが、
 いかんせん、先ほどレミリアに近付かれて結構なダメージを受けたのだ。
 『近付かれたら終わり』と理解したジンにとっては外れにしか感じなかった。
 その上で蹂躙できるであろう巨大な生物。明らかに優劣の差を感じさせられる。
 早いところ戦力になる悪魔を探して、対抗する手段を手にしないと勝負にならない。
 此方に気づいてる様子もないので、ジンはすぐに階段を下りるの再開した。


812 : ◆EPyDv9DKJs :2017/06/07(水) 18:44:02 P4YxV2420
「楽しめそうにないな。」

 泉井蘭が二人を目にした時、そんな感想が出てきた。
 片方は幼女、片方は老女。そういう趣味があれば別だが、
 彼にそういった趣味はないので、どちらも『楽しみ』の対象外となる。
 とは言え、それは気にせず殺しても問題がないと言うことでもある。
 死体を愛好する趣味もないので、原形をとどめず破壊されても問題はない。
 轟竜は人と出会うと咆哮で威嚇すると言う習性があることは先の戦いで確認済みだ。
 なので目にした瞬間、即座にティガレックスから飛び降りて、更に耳を塞ぎながら距離を取る。
 そういった対処はあれど、轟竜の名は伊達ではない。塞ごうと耳を劈く咆哮は動きを止めざるを得ない。
 うるせえ、なんて咆哮にまぎれて自身でさえ聞き取れやしない感想を呟くが、
 やかましいのは敵も同じだろうから、さほど不快には感じなかった。

「無理があるな、あれは。」

 あれは手に負えない。嘗て化け物じみたアンデルセンの攻撃を防いだインテグラでも、
 今回の化け物は相手にするとか、どうこう以前の問題だとすぐに理解できる。
 アンデルセンの場合は、防ぐ部分さえ理解していれば防ぐことは可能だ。
 だが、これはアンデルセンとは比にならないほど体格が違う、面積と言う物量には勝てない。
 何より、防いだのもあくま昔の話だ。今となってはあれから随分衰えた老人であり、
 経験から来る行動は健在だが、それでも老いにはかてない。

「怪物には怪物よ。」

 化け物を殺すのは何時だって人間とはアーカードの言葉だが、
 化け物の首を取った人間は、決まって対策を用意している。
 いくらアーカードが愛用した銃でも、アレを相手するには流石に無理があった。
 素直にレミリアに任せ、インテグラは自分ができることを優先する。

 レミリアはインテグラの邪魔にならぬよう左へと飛びながら注意をひきつけつつ、
 その右手に紅い閃光の槍、スピア・ザ・グングニルではなくハートブレイクを投擲。
 今度は当たらない敵ではないだろうが、先の戦いで無駄に魔力を使った以上、
 相手がどういったものかも理解せず大技を使うのは、少々躊躇ってしまう。
 スピア・ザ・グングニルを使って『弾かれました』では魔力の無駄遣いにしかならない。
 一先ず小手調べとして、類似しながらもコストの軽いハートブレイクを使用する。

 結果は―――轟竜の右手に、刺さったと言えば刺さっている。
 しかし、どう見ても浅い。先端が多少食い込んで出血させてるぐらいだ。
 ひとたび手を振るえば、その槍は抜け落ちるぐらいにぐらついている。

「天人並に堅いか。機嫌が悪くなる相手ばかりね。」

 小手調べと言っても、ハートブレイクはスペルカードにするぐらいには強い。
 ただばら撒くだけの弾幕とはわけが違うものを、掠り傷相当の扱いである。
 もっとも、ダメージを与えることではなく敵に注目されることが彼女の目的であり、
 轟竜はその思惑通りにレミリアのほうに視線を向けて、彼女の方へと向き、飛び掛る。
 特に動きが鈍る要因があるわけでもなく、レミリアは華麗にその一撃を避けて、背後へ回り込む。
 背後へ回り込み、無防備に置かれている尾へとその爪を走らせる。
 比較的柔らかいのか、スペルカードを使わずとも皮膚が裂け、裂傷を刻み込む。
 視線を変えてくる前に別方向へと動き、インテグラに視線を合わせないように戦う。

 注意が彼女へ向いているのを確認すると、インテグラはとらの眠るCOMPを躊躇うことなく撃つ。
 鈴は半壊し、COMPの機能を失ったことでとらが強引に外へと出される。


813 : ◆EPyDv9DKJs :2017/06/07(水) 18:46:16 P4YxV2420
「おいババア、いきなり何しやがる!!」

 いきなり住処のような存在を銃撃されて、憤らない者はそういないだろう。
 怒り狂う、と言うほどではないにしても、今のとらはかなり機嫌が悪い。
 憤った姿はまさに妖怪であり、普通の人間では恐怖に言葉が出なくてもおかしくはないが、

「一つ聞こう。貴様はどうするつもりだ?」

 とら以上に面倒な連中を何人も相手にしてきたインテグラには、
 この程度では一切動じることもなく、聞く耳を持たないかのように話を進める。

「あぁ?」

「この場に貴様が共にした潮と言う少年は参加していない。
 ならば、人を喰わないという約束を守る必要もないだろう。
 加えて貴様を召喚した少年は見ての通りだ。貴様はこれからどうするか、それを聞こう。」

 物言わなくなったネギの亡骸を一瞥し、再びとらを見る。
 無論、返答の内容によってはこの場で貴様を必滅させるつもりだ。
 などと言えば相手は大抵嘘を吐くにきまってるので、絶対口にしないが。
 本来ならもう少しちゃんとした場を設けるべきではあるが、状況が状況だ。
 悠長に抜き取って会話をしてからの交渉をせず、COMPを破壊したことから、
 彼女とて余裕がないことが伺える。

「潮といりゃ退屈してなかったのを、わけわからん奴に勝手に連れてこられてこの扱いだ。
 ついでに明日菜って奴を生き返らせたら喰っても良いっつー約束も、今となっちゃ意味もねえしな。」

「悪いが時間がない。今、協力する気はあるかないかで答えてもらう。」

 広々とした場所で遮蔽物も何もない。
 先ほどの狙撃銃と近くでは轟竜。会話をする余裕がある場所ではないだろう。

「てめえの行く先が退屈しなけりゃ協力してやるよ。」

「その言葉の意図にもよるが、一先ず受けるということでいいのか?」

「飽きねえか腹が膨れりゃな。」

「―――『契約完了』だな。早速だがオーダーっだ。
 オーダーはあの怪物(フリークス)の処理、或いは時間稼ぎ。私は召喚士を狙う。」

「人使い、いや妖怪使いの荒いババアととであったもんだな。」

 インテグラは銃を構え、レミリアとが飛んだ方角と反対の方へ走り、轟竜から距離を取っていく。
 とらはティガレックスへとむかい、轟竜の隙間を高速でかいくぐり、その爪て斬りかかる。
 レミリアの投擲による槍で僅かにしか刺さらない以上期待は出来ず、
 腕ほど堅くはないので軽い傷は与えたが、大したものではない。
 すぐに振り返って続けざまの一撃を放とうと走り出す。


814 : ◆EPyDv9DKJs :2017/06/07(水) 18:47:37 P4YxV2420
「あら、さっきの妖怪じゃない。手伝ってくれるの?」

 かなり素早い速度で走るとらへ、飛行しながら追いつくレミリア。
 互いに軽く車であればスピード違反になるレベルの速さだ。

「退屈しなさそうだからな。てめえも似たようなもんだろ?」

「そうね、人間と言うのは退屈しないと言うのもあるわね。
 加えて、私は彼女の態度に敬意もあると言った違いはあるけど。」

 これほどの速度の中で会話をするのは容易なものではない。
 それをなせるからこそ、悪魔として招かれているのだが。

「それで、この怪物を貴方はどう対処するつもり? 結構堅いわよ。
 ああ、尻尾は多少柔らかいみたいだけど、あれは致命傷にはならないかも。」

「一筋縄でいかねえ相手の戦い方なんぞ、
 昔から決まってるだろうが。てめえが陽の光が苦手なようにな。」

「気づいてたの?」

「日傘をさしてた時よりも顔色がよくねえからな。」

「吸血鬼は昔から苦手なのよ。といっても私達は分霊、
 本来の能力が出せないけど、同時に本来のよりも遠い存在。
 吸血鬼としての要素も薄くなったお陰で、言うほど酷くはないわよ。
 しかし、ほんの数回顔をあわせた程度で気づくか。中々やるわね。」

「こちとら二千年は生きてる大妖怪だ。気づけなきゃただの老害だろうが。」

「幻想郷では子供みたいなものよ、まあ私は僅か・・・・・・っと、
 雑談は後かしら。じゃあ、色々試すからアンタも気をつけなさいよ。」

「誰に言ってやがる! テメエこそ巻き込まれてもしらねえからな!」

 レミリアは上空へ舞い上がり、とらは背後へ回り込むように動き出す。
 ティガレックスの視線が追うのは、無論とらだ。飛竜種と呼ばれる存在ではあるが、
 環境によって変化し、飛行能力は衰えている。どちらかと言えば滑空すると言うのが相応しい。
 故に上空に飛んだところで、レミリアの方が自由に動けて有利になる。
 だが、それでも飛ぶべきだったのだろう。

 運命「ミゼラブルフェイト」

 レミリアを中心に無数の鎖が飛び交い、それがティガレックスを縛りつつ肌へ突き刺さる。
 刺さりは浅いが、どちらかと言えば拘束が主だ。鎖は生物の如く動き、雁字搦めにしていく。

「これでもくらっておきなぁっ!!」

 動きを止めた轟竜に倒壊しかけた電信柱をそのまま、思いっきり鎚のように振るう。
 ハンマーのように振るわれた一撃は見事に脳天に直撃し、その衝撃で柱が粉々に砕かれる。


815 : ◆EPyDv9DKJs :2017/06/07(水) 18:48:12 P4YxV2420
 ジンはひたすら、いざと言うときに走れる余力を残しながら音から距離を置く。
 悪魔もなければ、武器もない。今出来るのはそれらの確保の為の批難だ。

「ん?」

 そんな中、何かの気配を感じた。近くの店に何かがいる。
 此処では常人の部類だが、組織の幹部の一人だ。それぐらいは察知できる。
 人ではないだろう。ビルから町を眺め、人はいないのは確認済みだ。
 となれば悪魔かと思われたが、何処か雰囲気が違う。
 悪魔なら襲うなり何かをしてくるはずだが、何もない。
 気づいてないだけか? いや、それは考えられなかった。
 ジンは卓越した能力はあれども、人間を超えた存在ではない。
 人間が気づけてるものを、悪魔が気づかないとは思えない。
 ふと、その異常さに興味を持ったジンは、その店へと入ってみる。

「・・・・・・なるほど、こいつはいいな。」

 店に入って、その内容を知ったジンは何時ものように邪悪な笑みを浮かべた。



 電柱を叩きつけられたティガレックスは、衝撃のあまり身動きが取れないでいる。
 とらの怪力で叩きつけられてこれと思うべきか、とらの怪力だからこれと思うべきか。

「頭はそんなに頑丈じゃあねえようだな。」

 身動きが取れないでいるティガレックスに、とらが爪で切り刻む。
 狙うは言うまでもない、その頭部だ。
 それほど堅いわけではなく、無数の裂傷が此方にも刻まれる。

「なら、決まりね。」

 レミリアがとらの背後へと降り、拳を高く振り上げた状態で構える。

「妖怪、そこをどきなさい!!」

 その手に紅く、怪しい光が集うと、叫ぶ。

「ああ? 何で―――」

 悪魔「レミリアストレッチ」

 怪訝そうな顔でとらが振り向くと同時に、振り下ろされる拳。

「あぁ!?」

 咄嗟に側転して回避しなければ、間違いなくとらに直撃したであろう一撃は、
 綺麗にティガレックスの頭へと叩き込まれる。
 地面にクレーターを作り、大地を揺らすその攻撃は最早災害の類だ。

「おいこらぁ! わしごと殺す気か!!」

 それで死ぬかは分からなかったにしても、
 いきなりあんなことをされればとらは憤るのは当然である。
 潮のような信頼関係を持つ間柄ならまだしも、彼女とはほぼ初対面だ。

「これぐらい避けれて当然でしょ。
 避けれなかったらその程度ってこと。
 それに、避けれたから別にいいじゃない。」

 当のレミリアは、当たっても当たらなくても構わない結果を望んだ。
 レミリアストレッチは威力だけなら相当なものだが、根本的な問題として、溜めるまでが遅すぎる。
 ティガレックスが頭を売って動けなかったからこそ、成功したといってもいいもの。
 そんなスペルカードですら避けれないのでは、生き残っていてもただの戦力外だ。
 後、最早ついでに近い感覚で、レミリアは彼の実力を試したと言ったところである。

「それよりも、まだ生きてるみたいだから、気を―――」

 問答は後にして、動き出したティガレックスへと構えるレミリアととら。
 動き出すと同時に、皮膚に浮かぶ血管が、紅く全身を駆け巡るように光りだし―――

「!?」

 轟く咆哮。鼓膜を突き破るような音量の凄まじさだけではない。
 最早質量があると言ってもよく、間近で受けた二人は吹き飛ばされる。
 咆哮がやかましいのは最初から気づいていたが、吹き飛ぶほどとは二人は思わなかった。
 そしてティガレックスが動き出し、一人のほうへと牙を向ける。
 狙うのは―――


816 : ◆EPyDv9DKJs :2017/06/07(水) 18:50:35 P4YxV2420
 泉井はひたすら逃げている。
 理由は単純、散々卑劣な手で戦ってきた男だ。銃の強みも、当然理解している。
 加えて、そこいらのチンピラのような連中とはわけが違う、洗練された動き。
 平和島静雄のようなぶっ飛んだスペックではないのは、
 愚直に攻め入ってこないところから察してはいるが、銃が問題だ。
 ゴムハンマーだけで対抗できない。ゆえに取る行動は、逃げるの一つしかない。
 一方で、年の差と言うのは案外大きいものだ。彼女も銃を確実に当てられる状況に出来ない。
 それでも泉井がひたすら逃げ続けてる、つまりインテグラはまだ見失ってはないのだから、
 鉄の女は伊達ではないことが伺えるだろう。

(アレは・・・・・・)

 泉井が逃げ込むのは、先ほど狙撃手がいたとされる丸ビル。
 レミリアが思いっきり半壊させたに等しいものの、途中までの階層は(窓以外は)比較的無事だ。
 撒く事を想定しても、奇襲を想定しても有利と言える高層ビルだ。
 銃撃をしてこないことからその類を所持してない可能性は高いものの、
 狙撃手の銃を運良く拾って反撃に出る可能性がある以上、早急に倒さなければならない。
 ・・・・・・その人物の銃は壊れている上に、壊れた銃はおろか、その本人もいないのだが。

 エスカレーターを駆け足で二人は上っていく。
 二階、三階......軽く足止めもかねて数発程撃つも、
 よくて掠り傷。動きを鈍らせるほどのものではない。
 ―――しかし、泉井の行進は四階で終わりを告げる。
 丸ビルはかなり複雑な構造をしており、多数の階段、エスカレーターが存在している。
 彼等が使ったエスカレーターは、四階までしかないのだ。
 別の階段を探せば問題ではないが、別にこの丸ビルに彼は詳しいわけではない。
 何処に階段があるかのあてを探せる勘任せに動いて、回り込まれれば終わりとなる。
 階段がない事に足を少し止めてしまい、エスカレーターの下からインテグラが再び放つ。
 すぐに我に返ったお陰で気づいて走り出したことに再び掠り傷程度で済ませるも、距離は大分縮んだ。
 インテグラが正確に頭を撃ちぬくのも時間の問題だろう。



 だが、それでも彼は良い。
 別に四階でも彼は構いはしなかった。

(これぐらいなら問題ねえよなぁ。)

 四階から見えた外の景色を一瞥した後、泉井は走りながら携帯電話を取り出す。
 誰かに電話する為・・・・・・などというものではなく、彼のCOMPだ。
 彼にはあって、彼女にはなかったもの。それは―――時間の余裕だろう。

 インテグラはレミリアとの会話、ネギと邂逅、ジンと交戦と、立て続けの出来事だ。
 しかし、泉井の方は違う。彼は意思の疎通が必要ない悪魔であり、火から逃れる際も、
 轟竜の背に乗って逃げると言う手段で逃げたが故に、時間に余裕があった。
 だから、彼は知っている―――










 この殺し合いで誰もが支給されたCOMPに、リターンと言うものがあることを。


817 : ◆EPyDv9DKJs :2017/06/07(水) 18:51:28 P4YxV2420
「!?」

 インテグラはエスカレーターを昇りきると、驚愕の表情に染まる。
 先ほど、レミリアが交戦していたはずの悪魔が、そこにいるのだから。
 床にミシリ、と嫌な音を立てている。床が崩落するのは間もない。

「クッ―――!!」

 ティガレックスが飛び掛るようにインテグラを襲う。
 インテグラは階段付近にいたことが幸いし、すぐに階段を飛び降りるように逃げる。
 化物と相対していたインテグラらしい、最良の判断ではあるものの、やはり彼女は老体だ。
 背を掠めるように刃よりも鋭い爪が一閃し、彼女の背に紅い筋を描く。
 深手と言うわけではなく、軽傷ではない。一方で、背中であることをありがたくも思えた。
 人は傷を負ったとき、無意識に抑えようと身体が反応し、手で触れてしまうと言うものだ。
 それが軽傷、重傷問わずに。しかし、背中では咄嗟に抑える事が出来ない。
 昔なら間違いなくそんなことはしないだろうが、老いた今ではしてしまう可能性もあった。
 そう考えれば背中の傷はまだマシともいえるだろう。事実、銃も落とさず姿勢も崩してない。
 問題は山積みだ。すぐにインテグラはエスカレーターを降りず、別の階段を探し走り出す。
 理由は単純だ。今さっき飛び掛ったティガレックスの重量に、床が耐えられるはずがないのだ。
 既に三階、二階、一階と一気に床を崩している。とっくに来た道は崩落している。
 エスカレーターは基本隣接しているので、多少の無茶をすれば降りられなくもないのだが、
 相手の悪魔がいると分かってる下に降りる理由などない。それよりも、COMPを確認する。
 リターンの概念、強制リターンなどの、細かい説明が記載されている。
 単純な殺し合いと見せかけながらも、弱者にもチャンスがあるこのシステム。
 今気づけてよかったと思うべきか、気づかなかったからこうなっていると言うべきか。
 早急に此方もリターンさせて応戦するべくCOMPを操作しながら階段へと向かう。
 幸いな事に視界に別のエスカレーターはある。逃げるのは問題ないとして、
 まずはレミリアを呼び戻すが......

「レミリア、その傷は・・・・・・」

 再度召喚したインテグラはレミリアの姿に動揺の色が隠せない。
 先ほどまで五体満足であったはずの彼女の左腕が、肩まで消えている。
 表情は苦痛に歪み、洋服も血やら何やらで汚れており、威厳ある風格は何処にもない。

「ちょっと、あいつに持ってかれたわ......まあ、あいつが消えたお陰で左腕だけで済んだし、
 結果的にはましな方かしら? それに、どうせ後で治るし・・・・・・で、此処はどこで、今どうなってるわけ?」

 レミリアと別れてからの数分程度の内容を、とらも呼び戻して簡潔に説明する。
 説明を聞き終えて、一先ず階段を下りようと思うも、二人の傷は余り無視できない。
 レミリアは仮にも再生中だが止血しておくに越したことはなく、インテグラに至っては人間だ。
 出血しすぎれば命に関わる問題であり、まだ血は流れていて、応急処置ぐらいは必要になる。
 すぐ側に近くの洋服店があったので、それらをレミリアととらが切る事で伸ばし、包帯の代わりとする。
 かなり不恰好だが、何処に薬品店や包帯があるかわからない現状、これが最善だ。
 一先ず時間を食ったものの、今のところ敵が事を起こしている様子はない。
 応急処置を終えて、静かにインテグラ達は階段を下りる。
 相手の悪魔が嗅覚に優れてるかは不明ではあるものの、やるに越した事はない。
 化物を相手してきただけあって、インテグラの動きは洗練されたものだ。
 レミリアととらは浮いてるので足音はあるはずがないが、インテグラは小走りでも音を立てない。
 手馴れた動きに、レミリアの『敬意を払いたくなる』と言う人物を、とらはなんとなく納得できた。
 この殺し合いの中で自分を見失う事はなく、傷を受けながらも顔には殆ど出ていない。
 潮とは逆で『静』の印象が見受けられるが、それでいて彼と似て状況を打破する力強さを感じる。
 『これなら退屈はしなさそうだ』、そんな風にとらは思っていた。





 二階へと降りてから、インテグラは違和感に気づく。
 いくらなんでも、下が静か過ぎる。敵の悪魔が隠密行動に長けてないのは理解している。
 隠密行動に長けた能力があれば、最初からしておけばいいだけのはなしだ。
 正面から倒したい嗜好、あるいは考えなしに行動していたのかもしれないが、
 リターンして再召喚と言う考えられた不意の一撃をする相手だ。頭は回る方だろう。


818 : ◆EPyDv9DKJs :2017/06/07(水) 18:52:34 P4YxV2420
 何故静かなのかインテグラは推測する。
 上からの奇襲を狙って、またCOMPに戻したのかとは思うも、それはない。
 再召喚は一回につき五千マッカ。一人相手に何度も使えばすぐにマッカが尽きる可能性がある。
 相手は頭が回らない奴ではない。加えて、このビルはかなり崩落してきている。
 何時崩れるかも分からないのに、さらに崩して自爆するという間抜けでもないだろう。
 逃げるのもありえない。確実に此方は相手よりも結構な負傷を負っている。
 逃げる理由が何処にもなければ、逃げるなら悪魔に乗る方が早く逃げられる。静かに逃げる理由もない。

(待ち伏せか。)

 最終的な判断はそれに落ち着き、インテグラは慎重になりながら一階へと降りる。



「・・・・・・そういうことか。」

 一階へ降りる途中、インテグラは静かな理由を察した。
 これなら静かであるのにも納得がいく、その理由がそこにある。










 あの悪魔の主である男―――泉井蘭が、頭から血を撒き散らし死んでいるのだから。

【泉井蘭@デュラララ!! 死亡】
【残り 38人】



(さっさと降りておくか。)

 インテグラの推測は正しかった。
 これほどビルを損壊させて、崩れないと思わない人間はそうはいないだろう。
 レミリアへの説明や応急処置でインテグラが降りてこないと言う運のよさを味方につけ、彼は先に一階へと降りた。
 一階は全体的に広々としており、余り遮蔽物がない。隠れる場所は限られてくる。
 一先ずどの階段、エスカレーターからでも死角になれる場所を探し、走り出す。



 彼は頭は回るのだが、、時折警戒心が皆無に近い。
 この舞台に招かれる前、火傷の傷の報復の為に遊馬崎を襲ったものの、
 こうすると踏んでいた遊馬崎に反撃されて、危うくまたも燃やされかけたりしたこともある。

 そして、此処でもそれは変わらず。千代田区には、殆どの参加者がいない中で派手な戦闘音。
 彼よりずっと腕が立つであろうインテグラでさえ動きを制限する存在を、彼は気にしていない。
 この広々とした中を隠れるつもりのない足音、動き・・・・・・例えるならこの一言しかない。

 ―――鴨がネギを背負っている、と。



 パシュン



 そんな静かな、乾いた音が一回のフロアへ響く。
 泉井蘭は聞き取れない。額に風穴が開いているのだから。
 あの物騒極まりない町で生きてきた彼でも、結局は人間である。
 セルティのように、首がなくても活動できるような存在ではない。
 平和島静雄のような、いかれた耐久力は持ち合わせていない。
 ・・・・・・もっとも、どちらも決して死なないというわけではないのだが。
 どちらにせよ、人間である彼が、眉間に風穴が開いて生きているわけはなかった。
 痛みも、何も思う事はないほどに彼は即死した。頭から血をぶちまけながら倒れる。
 それらの音はビルに響いたと言えば響いた。しかし、その音はインテグラには聞こえない。
 丁度そのとき、レミリア達が包帯の代わりとして、服を切る音でかき消されたからだ。
 人ではないレミリア達には聞こえたかもしれないが、此処は見ての通り崩落している。
 崩落によって何かが崩れ落ちたりした倒れた音だとも思っていて、気に留めていない。
 倒れた遺体へ、静かに、それでいて素早い動きで近付く男が一人。


819 : ◆EPyDv9DKJs :2017/06/07(水) 18:53:10 P4YxV2420
(単純な奴もいるなら、今後もやれそうだな。)

 黒ずくめの男、ジンだ。
 ジンは再びこのビルへ戻った。
 インテグラへのリベンジか? 間違ってはないが、あってもない。
 確かにインテグラを倒すために戻ってきた。しかし、今はそのときではない。
 戻ってきたのは、単純に戦力となる悪魔の確保をしたかったからだ。
 強い悪魔を手駒にするならどうするか、それを彼は考えれば答えはすぐに出た。
 支給された悪魔は、一長一短と言う特徴があれども、基本戦闘に長けた者が多い。
 レミリア、ティガレックスは勿論、マンハッタン・トランスファーも特殊だが戦闘に向いている。
 つまり、参加者の支給された悪魔こそ、ジンが欲する戦力となる手駒がありうると言うこと。
 それでも、悪魔を従えた参加者を相手に、丸腰で挑めるわけがない。
 実際、ジンも途中までは丸腰だったので逃走の選択肢しかなかった。

 彼が方針を変えたのは、偶然立ち寄った店―――主催者が用意した万屋だ。
 マンハッタン・トランスファーに必要な銃器もそこで確保する事ができた。
 再召喚の為のマッカを残し、ありったけの武器を手にし、ジンは再びこのビルへと戻る。

 戻った後は見つけた参加者を狙って撃つだけの仕事だ。
 頭を撃ちぬいた以上死は確定しているが、それでも急がなければならない。
 彼はド派手な戦闘音を聞いているのだ、先ほど殺しにかかった悪魔の姿を思い出す。
 銃弾を飛ばし、真紅の槍を構えた少女。彼にとってはトラウマのようでもあり、
 同時に越えてやると言う、一種の目標のような存在でもあった。

 マッカの吸出し、悪魔も抜き取り、早急にジンは去っていく。
 戦力が整ったとはいいがたく、まだリベンジには早い。
 後数体、レミリアを確実にしとめる為の戦力を整える事を考えていた。
 石橋を叩きすぎるような考えではあるが、彼が仕える組織のボスも、石橋を叩きすぎる性分だ。
 だからこれが臆病とは思わないし、レミリアに怯えて逃げているとも思わない、戦略的撤退。
 ついでに、もしかしたら支給品に何かあるかもしれないとも踏んでいた。
 サングラスの男が誰とも出会ってなく、支給品を奪わなかったとも限らない。
 戦利品を確認し、戦術を組み立て、さらに戦力を増やしていく。
 今やるべき事は多く、ジンは朝の光射す道を避けて、狭い路地などを進んでいく。
 何時も闇に潜む、黒の組織の男らしく。

【千代田区/1日目/午前】

【ジン@名探偵コナン】
[状態]:肋骨を数本骨折、左腕の骨にヒビ、全身に擦り傷、ガキ(レミリア)への対抗心
[装備]:サイレンサーつきの銃・他万屋で購入した武器、硬質ゴムハンマー
[道具]:基本支給品、泉井蘭のデイバッグ、および基本支給品、漫画本(ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン)型COMP
[所持マッカ]:三万
[思考・状況]
基本:魔神皇込みで皆殺しにする。
1:使える悪魔を手駒にする。少なくともあのガキ(レミリア)に負けないくらいのを
2:戦利品の確認をしたい
3:戦力が整い次第、老女(インテグラ)とガキ(レミリア)へリベンジ
※サイレンサーつきの銃の種類や、他に購入した武器は後続の方にお任せします。購入の際使用したマッカは二万五千

[COMP]

1:マンハッタン・トランスファー@ジョジョの奇妙な冒険
[種族]:スタンド
[状態]:健康 、COMPの中

2:轟竜 ティガレックス@モンスターハンターシリーズ
[種族]:轟竜
[状態]:顔面に強烈な打撲、全身に裂傷(行動に支障なし)、怒り状態、それに伴い肉質が軟化、COMPの中


820 : ◆EPyDv9DKJs :2017/06/07(水) 18:54:57 P4YxV2420
「・・・・・・」

 インテグラ泉井蘭の死体を遠目から眺める。
 近付くつもりはない。まだ近く狙撃手がいるかもしれないからだ

 誰が下手人かは分からないが、一つだけ思うことはあった。
 『少年を殺害したあの男、生きているのではないか?』と。
 彼女は死体を見たわけでも、心臓が止まったのを確認したわけでもない。
 別に崩落する建物から生還したと言う話も別におかしくはない。
 あくまで推測の域なので、思い込むとまではいかなかったが、
 考えておいた方が良いだろう。

「おいどうした? いかねえのか?」

 何時までも物陰に潜んで考えている状況。
 とらにとっては退屈であり、あくびが出るほどだ。
 レミリアも口にはしないが、暇であることが伺える。

「そうだったな、考えていただけで、まだ話してなかったか。」

 銃の狙撃について、インテグラは二人についてはなす。
 別にいつまでもこうしているつもりはないが、もしかしたら二人のどちらかに、
 それらの状況を容易に打開できる可能性もあり、二人に相談してみる。

「それなら一つ、試してみるか?」

 そう言って、とらは自分の毛を一本引き抜く。

「わしの毛皮を身につけた奴ぁ、姿が見えなくなるからな、持っとけ。」

 とらの毛は、持つだけでステルス迷彩となる。
 監視カメラなどの電子機器にすら映らなくなるほどの性能を持つ。
 持っただけでハマー機関の基地内へ麻子は潜入できたのだから、
 性能は十分に高いだろう。

「貴方の類でしょ? それ、何処まで効果あるのかしら。」

 もっともそれは此処にくる前の話だ。
 分霊によって力を失ってる以上、
 いったとおりの効果を発揮するとは限らない。

「だったら今のうちにやっときゃいいだろーが。」

「試しておく価値はありだ、やっておこう。」

 どちらにせよ有益になりえる可能性のものだ。
 これの効力を試した後、次の目的を変更する。
 ステルスが成功したなら、死体のCOMPの確認した後、狙撃手の追跡を目指す。
 乗った人間を放って置けば被害は拡大する。多少は無茶をしてでも仕留めておきたい。
 それが出来ない、或いは道中にあった場合、COMPの地図にあった回復の泉とやらに寄りたかった。
 主催者が特別に用意した施設だからか、簡潔ながら回復の泉などの施設には説明が書かれている。
 レミリアは回復していると言うが、それでも左腕の欠損は支障が出ない状態、とはいえない。
 回復させるだけのマッカはないのだが、他の参加者も寄る可能性が高く、主催者が用意した施設だ。
 何かしら手がかりがあるかもしれないので、よっておきたい場所である。

 次の方針を考えつつ、インテグラはとらの毛皮を手に取り、その効果を試してみた。 

【千代田区 丸ビル1F/1日目/午前】

【インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング@Hellsing】
[状態]:背中に真一文字の傷(処置済み)、
[装備]:454カスールオート(弾数×55)@Hellsing
[道具]:基本支給品、聖書型COMP
[所持マッカ]:二万
[思考・状況]
基本:魔神皇を必滅する、殺し合いに乗った奴も必滅する
1:狙撃への対処と移動方法として、とらの言うものを試す
2:1が成功したならば、この男(泉井)を殺した男を追跡するべきか?
3:レミリアの傷を治せる施設とやらを行ってみたい
4:もしかしたら、あの男(ジン)は生きているか?
[備考]
※参戦時期は最終話直前辺り
※ジンが生きてる可能性を考慮しました
 但し、確証を持てる要素がありません
[COMP]
1:レミリア・スカーレット@東方Project
[種族]:夜魔
[状態]:魔力消費(大) 左手〜左肩欠損(止血済み。回復中だが、時間は相当かかる)

2:とら
[種族]:妖怪
[状態]:疲労(小〜中程度)
※毛のステルス機能がどれほど衰えてるかは次の書き手にお任せします

※丸ビルの周囲に甚大な破壊跡が発生しました。
※丸ビルの窓ガラスが全部割れて周囲の路面に散乱しています。
※丸ビルの屋上から中層にかけて“スピア・ザ・グングニル”が貫通し、屋上から上層にかけてのフロアが崩壊しました
※丸ビルがさらに崩壊しています。
 もしかしたら倒壊するかもしれません。


821 : ◆EPyDv9DKJs :2017/06/07(水) 18:55:40 P4YxV2420
これにて投下を終了します


822 : ◆EPyDv9DKJs :2017/06/07(水) 19:01:55 P4YxV2420
あ、タイトル忘れてました。『闇からの奇襲』です


823 : 名無しさん :2017/06/07(水) 21:29:44 YgQSDsmw0
投下乙です
絶体絶命の状況からキルスコアを稼ぐとは、さすがはジンの兄貴ですぜ


824 : 名無しさん :2017/06/07(水) 22:00:27 yp/0Fw260
投下乙

転んだのにパワーアップして立ち上がるとはさすがはジンの兄貴ですぜ


825 : 管理人★ :2018/07/05(木) 23:57:43 ???0
本スレッドは作品投下が長期間途絶えているため、一時削除対象とさせていただきます。
尚、この措置は企画再開に伴う新スレッドの設立を妨げるものではありません。


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