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Fate/Reverse ―東京虚無聖杯戦争―

1 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/01(月) 00:00:05 yxTfPXsg0


 兄弟牆に鬩げども、外その務を禦ぐ


◇  ◇  ◇


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2 : ある兄弟の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/01(月) 00:01:01 yxTfPXsg0
【1日目】

「……………」

無言で一人の少女が目覚めた。
彼女が周囲を見回すと、まったく見知らぬ空間におり、そこに置かれてある椅子に座りうたた寝していた事に気づく。
ハッと少女は我に返り、唐突に立ちあがった。


ここは―――美術館?
いえ、もしかしたら博物館……博物館だ。きっと、そんな気がする……


少女は再び椅子に腰かけながら思い出す。


あたし……あたしの名前はルーシー……『ルーシー・スティール』
年は14歳。
夫の名前は『スティーブン・スティール』
彼が主催を務めるのは「スティール・ボール・ラン」レース。
アメリカ合衆国大統領の名前……忘れるはずもない『ファニー・ヴァレンタイン』
ちゃんと覚えている。なら、ここはどこ? 違う……あたしの知ってる場所じゃあない。
そもそも……ここはアメリカ?


少女――ルーシー・スティールは、何故か所持していたバッグの中身を漁る。
すると、幾つか手掛かりとなる物があった。
パスポート、財布、観光ガイド、化粧道具、ホテルの鍵、それと携帯電話。現代で言う『スマホ』だ。

「えっ。何……」

しかし、ルーシーは『スマホ』を手にするのも、目にするのも生まれて初めてだった。
彼女はそれを操作することが可能である。
どうして未知の機器を操作出来るのか?
ルーシーにとって一番の疑問点はそれだけだった。彼女は片手で口元を押さえながらも、片方の利き手で『スマホ』を操作している。
声を漏らさないだけで内心は驚愕で埋め尽くされていた。
自然とスマホで現在地を調べていたルーシーは、更なる謎を突き付けられる。


『日本』……の『東京』?
あたしは『日本』にいる。どうしてアメリカから……そうだ。あたし、覚えているわ。
飛行機でここまで来て、ホテルを予約して、博物館に……
――あった。
博物館のパンフレット。きっと入場チケットを買った時に貰ったもの。


確かに自分の行動を把握している。
記憶が蘇るほど、ルーシーは自分自身の行動に頭を抱え始めていた。


3 : ある兄弟の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/01(月) 00:02:19 yxTfPXsg0
ルーシーは即座に『原理や理屈はサッパリだがファニー・ヴァレンタインの仕業なのでは?』と一つ考察する。
本当に理解不能な状況だった。
このような異常を引き起こせるか定かではないが、『あの男』ならばやりかねない。
確証なんて無い。
とにかく、アメリカに――夫のところに戻らなくては。彼女の行動は必然的に一つへ絞られた。

スマホをバッグへ戻す際、彼女は手の甲に妙な刺青があるのを目にした。
落書き? 自分はこんなものを刻んだ記憶は無い。なら誰が……落書きなら水か何かで落とせるだろうと、気にかけなかった。
気味が悪いし、ホテルに帰って洗い流す事にした。
ホテルを想像した事で、ルーシーはふとした疑問。根本的な疑問を浮かべる。

日本で何かをしようと計画してたのは明らかで、博物館に来たのも何か理由があるはず。
自分は一体何をしようとしていたのか?
ルーシーは目の前にあった展示品に注目する。それは一際異様な雰囲気を醸し出していた。

『ソレ』は2m以上ある黒い立方体の石だった。
表面全て埋め尽くすかのように奇妙な模様が刻まれており、目視出来ない石の下すら模様が刻まれているのではと思うほどである。
一面だけ扉が、申し訳程度にある。ただ貼りつけたようにも感じられた。
扉には施錠がされていた。無数の小さな錠前が周りを円をかくようにある。
傍らにある解説文によれば、一万年前の歴史的なもので、これを開くための『鍵』は現在発見されていないらしい。

「………」

分からない。
ルーシーの答えは、それだけだった。
自分はこれを見る為に日本へ来たのだろうか。だとしても理解できない。
やっぱり『何か』に操られて起こした行動に過ぎず、深く追求しない方がいいかもしれない。

「お客様。もうすぐ閉館の時間です」

「あ……はい」

残りの客がいないか巡回していた警備員がルーシーに声をかけ、反射的に答えてしまった。
不思議と抵抗があった。このまま、この場を去ってもいいのだろうか、と。
だが、今日はここから立ち去らなくてはならない。
ルーシーはもどかしい感情を抱きながら、警備員に尋ねた。

「あの……あの石碑、でいいんでしょうか。あれっていつから展示を?」

いたずら染みた質問に聞こえなくもないが、警備員の方は平凡な表情を浮かべたまま答えた。

「つい最近ですよ。ええと、一週間前でしたかな……日本で発見されたとんでもない代物らしいですね。
 まぁ、私は歴史なんてこれっぽっちも分かりませんが。ははは」

「そうですか………」


4 : ある兄弟の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/01(月) 00:03:36 yxTfPXsg0
ルーシーは何気なく『石』の方へ振り返る。
その時。
彼女はハッキリと目撃した。あの施錠されていたはずの扉が、わずかに開かれているのを。

「………………………!!」

ルーシーの呼吸は途端に荒くなった。


あの扉は! 文字通りの開かずの扉で、『鍵』も発見されていないはず!
どうして………まずい。何かとんでもないものを見てしまった気がする……!
何かしなくては……! 警備員は気付いていない!!


警備員は呑気に「忘れ物でしょうか?」とルーシーに尋ねて来る。
うまく呂律が回らないルーシーは、息も切れ切れに言葉を紡ぎあげようとした。

「あ……ああ……あの『石』の扉……! 扉が……開いているの……!! 本当……今すぐ見て―――」

改めて『石』に視線を向けると、扉から誰かがルーシーたちを覗き見ているのが分かった。
まるで獣のような眼だった。
これほど距離が離れているのに、異常なほど恐怖を感じる。
ルーシーたちを狙う者は扉から滑り込むように現れる。
悪魔的な刺青を刻み込んだ男、長身で黒髪。仕方なしに身に纏ったような布切れ。
おぞましい存在に、思わず手の甲にある刺青をルーシーは抑えつけた。

「おい、何をやってるんだ」

もう一人の警備員が現れ、ルーシーが妄言を吐くとその場にいた警備員が返事する。
まるで信用されていない。振り返れば分かるのに、何故ルーシーの言葉を聞こうとしないのか。

「待って! あそこに誰かいるの!!」

「酔っぱらった外国人だな、こりゃ。ほら、お嬢さん。ホテルまでお送りしましょうか?」

「違うわ! 後ろに……! やっぱり、いるわ!! 早く……!」

居てもたってもいられなくなったルーシーは警備員二人を振り払い、走り出した。
ルーシーは確信した。


殺される! きっと、あたしを殺そうとしている……!!
ここから逃げて――そうだ、アメリカへ! 日本から脱出しなくては!
飛行機……『空港』! 急いで空港に向かって――それから……


5 : ある兄弟の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/01(月) 00:05:00 yxTfPXsg0
博物館から脱出したルーシーは、周囲を見回す。
彼女はタクシーでこの町に到着したのを思い出していた。過去の記憶を頼りに、通りかかったタクシーを呼びとめる。
藁を掴むような勢いでルーシーは乗り込んだ。
運転手は驚くほど冷静に聞く。

「お客さん、どちらまで?」

「く、空港……! 空港まで……早く……」

車内でルーシーは呼吸を落ち着かせようとする。だが、一向にタクシーは動こうとしないのだ。
あまりに不自然だったので、ルーシーは再度言う。

「空港です! この近くの空港まで……お金はあります!」

「えっと……」

「それとも、先払いしなくてはならないのですか……」

「どちらまで?」

「だからッ! だから空港よ! 空港!!」

「お客さん、どちらまでか言って貰わないと――」

「あたし……さっきから言っているわ。空港よ……ど……どうして……」

おかしい。この運転手の耳が遠いのだろうか?
言語が通じてない? そういえば、何故日本人にこうも英語が通じるのだろう??
分からない。なにも分からない。
あまりにおかしすぎて、何を信用すればいいのかルーシーは不安を抱くしかなかった。

ルーシーが窓から外の様子を伺えば、博物館は不気味なほど静寂に包まれており、ガラス製の自動ドアから館内の様子を伺っても
何一つ異常な事態は発生していなかったのである。ルーシーは逆に混乱をした。
あの男は?
あれは見間違いだった……?
ルーシーが何度も博物館を確認する中、運転手が痺れを切らして再び問いかけてくる。

「お客さん。結局どちらへ行かれるんですか?」

「………ホテル。ホテルまでお願いします……」

ルーシーはバッグの中から、宿泊先のホテルの住所を運転手に伝えた。
すでにチェックインは済ませてあるし、部屋には着替えなどつめたケースが置かれているはず。
今度ばかりは運転手は了承し、博物館の前からタクシーは移動を始めた。


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6 : ある兄弟の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/01(月) 00:06:23 yxTfPXsg0
事態はまるで解決していない。
運転手は暗示をかけらたかのように、空港へ向かおうとしない。むしろ空港の知識すら皆無のようだった。
あの警備員も反応が妙に感じられた。一体ルーシーの身に何が起きているのか?
彼女自身、把握していない。ホテルも正直安全なところとは思えない。
一刻も早く日本からアメリカへ………

チラリとルーシーがバックミラーに視線を向ければ、あの刺青の男の姿がそこに映っていた。
博物館の外を出て、道路の中央に立ち、タクシーをしっかりと見ていたような………
ただ、道を曲がってしまい。もはや男の姿はバックミラーには映らない。
ルーシーは未だ幻ではと疑心を渦巻いていたが、身を震わせながら運転手に言う。

「す……すみません。急いでいるんです……な、なるべく早く……」

「ああ、はい。分かりました」

速度がわずかに上がった気がする。それで幾許かルーシーは安堵したのだった。




【2日目】

朝、東京都新宿区にて。

ルーシーはホテルの客室に戻るなり、馬鹿馬鹿しいほど深く眠りについてしまった。
起床するや否や、体調が酷く、吐き気も催すほどである。
ホテルのロビーまでふらふらと移動し、薬でも貰えないかと従業員に声をかけた。
幸いにも、用意された市販の薬で体調は大分良くなった。


……一体、どうすればいいの。


どうにかしてアメリカに戻りたい、夫の顔が見たい。
虚しさを感じ涙を浮かべるルーシーだが、途方に暮れていた。
取り合えず、外出をするが往く当てなどありはしない。ただ、あの『刺青の男』の影を警戒しているだけ。

とにかく情報が欲しかった。日本の東京でどのような異常が発生しているか、その原因を知りたかった。
外に出て、本や雑誌など読むべく本屋に立ち寄る事にする。
彼女に待ち受けていたのは、他ならぬ絶望。

ルーシーがいた時代よりも未来――現在は2016年である事。
「スティール・ボール・ラン」おろか『ファニー・ヴァレンタイン』の名すら歴史に刻まれていない。
それすら『無かった事』にされた世界。
ここは、やはり彼女の知る世界ではなかった。

だから何だ?
彼女自身に何が起きている?
どうすれば、自分の世界へ戻れると云うのだろうか。

駅前のアルタビジョンから一つのニュースが冷淡に流れてきた。



『東京都江東区―――で警察関係者を含む52名が殺害。容疑者と見られる20代後半の男性は以前逃亡中です。
 男性は身長195cm前後、体には刺青があるとの目撃情報があります。
 この男性は、同じく江東区の――博物館で発生した警備員2名の殺害他、
 複数の殺人事件に関与していると発表されました。現在、特別対策本部を設置し………』


7 : ある兄弟の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/01(月) 00:07:48 yxTfPXsg0




バーサーカー/■■■は殺戮者である。

故に殺人こそが彼にとっての至極の喜びであり、虐殺こそが彼にとっての至福の時間、闘争こそが彼の日常だった。
単純に表すならば『戦闘狂』
その精神と理念は、誰からの理解から逸脱し、危険とみなされ、正史からは隠蔽された存在となった。

末路には問題ない。
問題は――この聖杯戦争に召喚された事実。
マスターがルーシー・スティールという、何ら飾り気のない少女である点。

何故あのような少女が自らを召喚したのか、否、『出来たのか』すら奇妙でならない。
同時に、ただの少女が自らを召喚したからこそ、バーサーカーは彼女を憎悪した。


バーサーカーは間違いなくルーシー・スティールを殺す。
ただ―――『まだ』殺さないだけ。

彼は殺戮し、虐殺し、戦争をし。
それに退屈してしまった瞬間、彼女を即座に殺害するのだ。

聖杯によって導かれる『英霊』たちとの戦争が終わりを告げるまで――………






8 : ある兄弟の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/01(月) 00:14:13 yxTfPXsg0


【2日目】

夕方、東京都江戸川区にて。

異常だ。狂ってる。

一人の男子高校生・安藤は学生鞄の紐を握りしめながら、弟の潤也と下校している最中である。
今、東京都には空前絶後の殺人鬼が出没している。
弟と共に視聴した今朝のニュースによれば、すでに百人規模の死者を作り上げたという話。
なのに。
どうして自分たちは普通に通学しているのだろうか……?
弟の潤也も、疑念を抱く事なくガールフレンドの詩織と会話を楽しんでいる。

安藤は不安だった。
普通なら学校は休校になるはずだ。会社だって休業を出すところもあるだろう。
いっそのこと、東京都から都内全域に自宅待機命令くらいかけたって大げさじゃない。
大災害レベルと判断され、東京都内から避難するよう呼びかけてもいいはずだ。
なのに……

誰も不安がらない。
クラスメイトも「怖いね」なんて噂話をする程度。
先生も「気をつけるように」なんて無責任な言葉をかける程度。
信じられないほど、東京都内は平穏な日常を続けようとしていたのだ。


絶対におかしい。
俺だって、どうして普通に学校なんか行ってるんだ。明日こそ潤也に、家でじっとしていようって言うべきだ。
普通に過ごそうって心がけかもしれないけど、いつ殺されてもおかしくないんだ!
いや、待て……そうだ、警察が特殊部隊を投入するとかニュースで……


「うわ、またやってんな……」

潤也が電気製品売り場の前で足を止め、テレビを眺めながら呟いた。
安藤は隣で冷や汗を流す。

今度は防犯カメラ映像の男の姿が流れていた。
安藤がそれをチラリと覗き見れば、ぞっと寒気が襲いかかった。
不気味な刺青を体のあちこちに刻んだ例の男は、安藤を睨んでいるかの如く鋭い目をしている。
悪魔的な刺青も生きているかのように安藤を睨みつけているようにも感じられた。
何よりも―――男は笑みを浮かべている。

愉しんでいる。殺人を? やっぱり狂っている……おかしい……!

安藤はごくりと唾を飲み込みながら、震える唇で弟に話しかけようとする。

「なぁ、潤也……明日は――」

「兄貴。今日の夕飯どうする?」

呑気に『日常』を謳歌しようとする弟の存在に、安藤は心臓が押しつぶされそうになった。
あんなものを見て、どうして………何故なんだ!?


9 : ある兄弟の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/01(月) 00:15:25 yxTfPXsg0
我に返ると、安藤は『弟』から逃げ出していた。
あの『弟』の声が遠くから聞こえた気もしなくはなかったが、全力で、住宅街を走り抜け、偶然あった公園に飛び込む。
ベンチにどさっと座った瞬間、息を整えようと呼吸が激しくなった。
体はまだ震える。冷静になった安藤は、ふと呟く。

「まるで犬養の時と同じだ」

カリスマと正義を武器に人々をひきつけた『魔王』。
人々は考えるのをやめ、漠然と日常を生き続け、些細な問題には目を背ける。
流れにただただ乗るだけの人間たち。



「…………………………………………犬養って、誰だ?」



安藤は確信を得てしまった。
そして、答えも得た。
狂っているのは全てであることを、自分こそが異常な存在であることを。

ここは安藤の知る場所ではない。
安藤の住む『猫田市』でもない。
安藤の言う犬養すら存在しない。

ざわりと周囲の木々が蠢いた。安藤は反射的に体を大きく跳ねて、ベンチから飛びあがる様に立つ。
状況は――とてつもなく狂気に満ち足りていた。
まるで高速映像を眺めているかのように、公園の花々が茶色に変色し、雑草まで例外なく枯れ果て、木々は全て落ち葉を散らす。
頭痛がする。右肩にも痛みが走ったので、安藤は肩の方を手で抑えつけた。

猟奇的な空間に佇むのは安藤以外にもう一人。
いつの間にか、その男は安藤の傍で立ちつくしている。
彼のような人間は中東系の男性と称するべきだろう。
黒髪で青目、日焼けした肌、額にある模様、服から見え隠れする両腕の義肢が異様だった。
男は凍りつくような機械的な声で述べる。

「私はアサシンのサーヴァント。SCP-073……いや、これでは通じない……真名は■■■」

「……■■■?」

その名は、知ってる。
安藤ですら知識の一つとして記憶にあるほど有名なもの。それ故、俄かに信じ難かった。
第一、『サーヴァント』とは? 内容がまるで飲み込めない。

それでも。

安藤は身を震わせながら、謎めいた男に問いかけた。

「貴方は知っているか……? あの『刺青の男』………貴方の額の模様とあの刺青が似てる気がする」

半ばハッタリである。
実際当てずっぽうでも、思い返せばそんな気がした。
安藤にとっては時間稼ぎで、その場を凌ぎたいが為に考え付いた話でしかない。

だが、男は明らかに動揺した。
戸惑いと驚愕が入り混じった表情をし、彼は相変わらず冷淡な声を漏らす。


「嗚呼、そうなのか――彼がここに居ると云う事は、そういう事なのだろう。
 申し訳ありません、マスター。私は『彼』に会わなければならない」


■■■は悲しげで、それでいてどこか懐かしむ様に告げた。
安藤は受け入れられなかったが、もし―――もし、目の前の男が■■■ならば、あの刺青の男は……


10 : ある兄弟の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/01(月) 00:16:55 yxTfPXsg0

【クラス】バーサーカー
【真名】SCP-076-2/■■■@SCP Foundation
【属性】混沌・悪

【パラメーター】
筋力:A+ 耐久:A+ 敏捷:A+ 魔力:C 幸運:E 宝具:A


【クラススキル】
狂化:EX
 人類からは理解不能の精神を持ち、殺戮を楽しむ。
 会話を行うことができるが、人類を軽視する彼との意思疎通はほぼ不可能である。
 ―――ひとつの例外を除いて。


【固有スキル】
直感:A
 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。
 Aランクの第六感はもはや未来予知に等しい。また、視覚・聴覚への妨害を半減させる効果を持つ。

戦闘続行:A+
 名称通り戦闘を続行する為の能力。
 決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。


【宝具】
『SCP-076-1』
ランク:A 種別:対人(自身)宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
 3m立法の黒い変成岩で一面だけ扉がついており、鍵で施錠され、幾つかの小さな錠前が周りを円を描くように付けられている。
 内部空間の中央には石棺がSCP-076-1の内側の角からのびた鎖などで封印されている。
 SCP-076-1はバーサーカーが死亡し、即座に腐敗し塵となった瞬間に活性化。
 SCP-076-1の棺が勢い良く閉まるとすべての鍵が締め封印し、約6時間かけ棺の中でバーサーカーを再生。
 バーサーカーは再びSCP-076-1内部から現れ、虐殺を開始する。この復活にはそれなりの魔力消費を余儀なくされる。
 SCP-076-1はAランク以上の宝具によって破壊可能。
 少なくとも、SCP-076-1を破壊すればバーサーカーが復活を繰り返す事は無い。
 現在、SCP-076-1は東京都江東区にある博物館で展示物の一つとして設置されている。


【weapon】
ブレード
 別次元から"空間の小さな穴"を通じて引っ張り出す無光沢の黒い金属で構成されたもの。

【人物背景】
人類とは異なる精神を持っており、共感も理解も不可能。
性、愛や平等といった観念は完全に消失している。常識はまるで通用しないが知能は高い。
彼が興味を示した文書の中には、ある英雄王の話も含まれていた。
人類を軽視するが、唯一彼自身が優れていると認めた相手に対しては、たとえ人間であろうとも敬意を抱く。
事実として、彼と幾度も闘争を繰り広げた人間の死に対し――



[削除済み]



人類とは異なる精神を持っており、共感も理解も不可能。
性、愛や平等といった観念は完全に消失している。常識はまるで通用しないが知能は高い。
人類を尽く軽視しており、視界に入った人間は全員殺害する。
対話をするのは不可能である。


【サーヴァントとしての願い】
殺戮、闘争、戦争。
最終目標はルーシー・スティールの殺害。

【捕捉】
クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP FoundationにおいてKain Pathos Crow氏が創作されたSCP-076のキャラクターを二次使用させて頂きました。



【マスター】
ルーシー・スティール@ジョジョの奇妙な冒険

【マスターとしての願い】
元の世界に戻りたい

【人物背景】
「スティール・ボール・ラン」レースの主催者・スティーブン・スティールの妻。
夫が大統領――ファニー・ヴァレンタインに利用されている事実を知り、行動に移そうとする。

【捕捉】
現在は新宿区のホテルに宿泊しております。
聖杯戦争を把握しておりません。


11 : ある兄弟の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/01(月) 00:18:08 yxTfPXsg0
【クラス】アサシン
【真名】SCP-073/■■■@SCP Foundation
【属性】中立・善

【パラメーター】
筋力:E 耐久:EX 敏捷:E 魔力:C 幸運:A 宝具:B


【クラススキル】
気配遮断:D
 サーヴァントとしての気配を絶つ。
 完全に気配を絶てばサーヴァントでも発見することは難しい。
 ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。


【固有スキル】
■■の恩寵:EX
 [編集済み]
 アサシンに向けられた暴力を、攻撃者にそのままの威力で跳ね返す。
 これは媒体を通じた間接的な攻撃も含まれる。実質、アサシンは無傷でいられる。
 攻撃の度合いによっては跳ね返す際、それ相応の魔力を消費する。
 

【宝具】
『SCP-073』
ランク:B 種別:対自然宝具 レンジ:1~20 最大捕捉:レンジ内全て
 アサシンの存在そのものが土で成長する全ての生命に害を与え、20m範囲内の対象の生命は全て死に絶える。
 彼が歩んだ土地は2週間以内に不毛な土地へ変貌し、永久に生命が育つことはない。
 これにより地脈・霊脈の効力すら無力化してしまう。
 土で成長する生命に由来するものを触れれば、瞬く間に腐敗し崩れる。
 常時開放型宝具だが、霊体化すれば効果を発揮する事は無い。


【人物背景】
誰にでも礼儀正しく、親切に話すのだが、口調は冷たく機械的に感じる。
SCP-076-2/■■■のことは全て知っており[削除済み]


【サーヴァントとしての願い】
SCP-076-2/■■■との再会。そして――

【捕捉】
クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP FoundationにおいてKain Pathos Crow氏が創作されたSCP-073のキャラクターを二次使用させて頂きました。



【マスター】
安藤@魔王 JUVENILE REMIX

【マスターとしての願い】
???

【能力・技能】
腹話術
 自分の考えたことを他人に話させる能力。
 有効範囲は30歩で、使いすぎると呼吸困難に陥る。

【人物背景】
猫田東高校の2年生。
周囲に合わせながら平穏な生活を過ごすことを選んでいたが
犬養という存在、流されるだけの市民たちを見て、流れに逆らう事を決意する。

【捕捉】
令呪の位置は右肩です。
現在、江戸川区内に在住しております。


12 : ある兄弟の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/01(月) 00:18:59 yxTfPXsg0



聖杯。即ち、聖遺物。
あらゆる願いを叶える事を約束された奇跡の産物。
それを巡るサーヴァントとマスター。


セイバー

ランサー

アーチャー

ライダー

キャスター

アサシン

バーサーカー




あるいは―――………



ここに集うは『虚無』
ヴァルハラにも導かれぬ英霊たちよ

冒涜を犯そうとも、あらゆる暴虐すら『聖域』の主が赦す


聖杯戦争―――これにて開幕


13 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/01(月) 00:19:43 yxTfPXsg0
OP投下終了します。次は設定について投下します。


14 : ルール/設定 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/01(月) 00:20:48 yxTfPXsg0
【ルール】
・当企画はTYPE-MOON原作の『Fateシリーズ』の設定の一部リレーSS企画です。同作中の魔術儀式「聖杯戦争」を元にし、参加者達が聖杯を賭けて戦う企画となっております。
 暴力表現やグロテスクな描写、キャラクターの死亡などがあるのでご注意ください。

・当企画は参加者のコンペ制度を導入します。採用主従は24前後を目標としています。増えたり減ったりするかもしれません。
・原作における通常7クラス及び、エクストラクラスの投下を可とします。
・投下候補作の投下数制限は、原則ありません。
・投下がない場合は、企画者が一人でちまちま候補作及びOPを投下していく形になります。

・企画者がOPと称した話に登場する主従は確定枠ですが、採用主従の数には含まれません。
・募集期間は具体的には未定ですが、三月いっぱいを予定しております。


【設定】
・何者かによって再現された『東京都』に酷似した場所ですが、電脳世界ではなく現実世界です。
 もしかしたら実際の『東京都』とは異なる部分があるかもしれません。
・全てのマスターは最初記憶を封印されており、その違和感に気付き記憶を取り戻すまでが予選になります。
・全てのマスターは何らかの日常生活の役割を与えられた状態です。

・記憶を取り戻すと同時に令呪を入手しますが『聖杯戦争の基本的な知識は与えられません』。

・サーヴァントが記憶を取り戻した瞬間召喚される、またはマスターの目の前で召喚されるとは限りません。
 書き手の皆様にお任せ致します。
・ズガンはオリキャラのみ許可します。

【NPCについて】
・NPCの中には予選に落選したマスターも混じっているかもしれません。
・NPCの中にはマスター及びサーヴァントと縁があった人物がいるかもしれません。
・全てのNPCは、いわゆるモブキャラなので何の能力も保持しておりません。

【サーヴァント及びマスターについて】
・サーヴァントが消滅しても、マスターは脱落せず死亡もしません。
・令呪を全て失った場合、マスターは脱落及び死亡となります。

【その他】
・バーサーカー(SCP-076-2)により東京都内で100名前後の虐殺が既に行われております。
・アサシン(SCP-073)の宝具により江戸川区内にある公園を中心にした20m範囲で影響が出ております。


15 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/01(月) 00:21:47 yxTfPXsg0
以上で投下を終了します。


16 : 名無しさん :2016/02/01(月) 00:23:33 viKVMU7.0
>>14
電脳世界じゃないのにNPCって呼ばれ方してるけど。
これ、マスターが混ざってるとか言う言い方だけど、それ以外もあるんだよね。

ぶっちゃけ普通の生きた人間なの?
それともNPCって言われるくらいだからホムンクルスとか偽物レプリカとかそういうたぐい?
電脳世界じゃないってことは再現された人間じゃないってことだけど


17 : 名無しさん :2016/02/01(月) 00:25:42 w4cvhsgA0
スレ立てお疲れ様です

一つ質問させていただきます
劇中だとそこまで会話が進んでいないのですが、サーヴァントとちゃんと対話を行った場合、
サーヴァントから聖杯戦争のルールなどの情報を得ることは可能なのでしょうか


18 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/01(月) 00:29:17 yxTfPXsg0
>>16
申し訳ありません。偽物レプリカと解釈して下さい。

>>17
可能です。
ただし狂化しているバーサーカーなどから情報を得るのは困難です。


其の他、不明な点があれはご指摘お願いします。


19 : 名無しさん :2016/02/01(月) 00:32:34 viKVMU7.0
>>16
了解しました。
マスターや予選落ちしたもの以外は、基本何らかの作られた存在やら幻影的なもので生身の人間ではないということですね。
読むにしろ書くにしろそのつもりでさせていただきます。


20 : ◆.QrNUkmVxI :2016/02/01(月) 00:47:06 w4cvhsgA0
>>18
ありがとうございます
それでは早速ですが、投下させていただきます


21 : 門矢士&ライダー組 ◆.QrNUkmVxI :2016/02/01(月) 00:48:36 w4cvhsgA0
 与えられた役割などない。
 家も職業も何もなく、ただ当てもなくさまようだけ。強いて言うなら、浮浪者というのが、彼に与えられた役割だった。
 才能に不自由しない天才の彼なら、その気になれば明日にでも、職も住所も得られるだろうが。

「蛇足だな」

 幕引きにしてはお粗末じゃないか。
 バイクのエンジンを止めると、彼は一人そう呟く。
 あのまま終わっていたならば、それなりに綺麗ではあったろうにと。

 彼は壊す者だった。
 幾多の世界を渡り歩き、それぞれの世界を壊すことだけが、彼に与えられた物語だった。
 彼の行き着いた世界は、その法則を歪ませて、あり得ない事態を引き起こしてしまう。
 世界を語る主人公は、彼の力によって倒され、その物語を終わらせてしまう。
 他人の物語をぶち壊し、身勝手に打ち切ってしまうこと。それだけが彼の在り方だった。
 そんなお粗末な振る舞いは、とても物語とは呼べない。
 故に語るべき物語はないと、彼は無慈悲に断じられた。

 一応彼の生涯にも、意味と呼べるものは存在した。
 乱雑に散らかった旧世界は、彼の手で壊されたことによって、よりシンプルに整理された。
 打ち切られた物語達は、新たな物語として再開され、平穏な新世界が築かれた。
 もっとも、その恩恵に預かれるのは、生き残った者達だけだ。
 世界を壊して作るために、命を利用された彼には、何の見返りも与えられない。
 それでも、彼は構わないと言った。
 壊れかけた仲間の世界が、その命で救えるのなら、それでもいいとその身を捧げた。

 こうして、彼の生涯は終わった。
 物語として残ることない、彼の――門矢士の人生は、ひっそりと幕を閉じたはずだった。

「本当にお前はそれでいいのか?」

 されど、問いかける者がいる。
 消えてしまったはずの士に対して、語りかける者がいる。
 破れて捨てられたはずのページが、新たにめくられる音が聞こえた。
 あるはずのないフィルムが、映写機にかけられる音が聞こえた。

「いいように使われて、何一つ残せなくて、それでおしまいになってもいいのかよ?」

 門矢士が目覚めた時、彼は未知の世界にいた。
 そこはどれほど異常であっても、天国でも地獄でも、ましてや忘却の虚無でもない、確かな人間の世界だった。
 そんな彼を待っていたのが、この年下の少年だ。
 二つか三つは離れているだろうに、この黒髪の少年は、そんな生意気な口を聞いてきた。

「ほっとけ。俺が戦い散ったおかげで、世界は滅びを迎えることなく、生き長らえることができたんだ」

 救世主神話としちゃ十分だろと、士は憮然とした顔で言い返す。

「そんなの全然物語じゃない。神様の名前が載ってないなら、神話もただの事実でしかないだろ」

 それでも少年は食い下がった。
 出来事は語り継がれてこそ、人々の記憶に残り続ける。
 主語の抜けた情報は、勝手に起きた現象も同然。士の戦いも挺身も、全てがなかったことになり、歴史の闇に埋もれてしまう。
 それでは結局何一つ残らず、何一つ報われないままだと。

「……あのな。俺は世界の破壊者だぞ。嫌われ者のやられ役が、勝手に物語を作ったところで、誰が喜ぶっていうんだ」
「そうか? 俺は見てみたいと思うぜ。
 何も与えられず、むしろやられて終わるだけだったはずの悪役が、そこから一歩を踏み出した先で、どんな世界を切り拓くんだろう、ってな」

 しかめっ面の士を前に、少年はにやりと笑って言う。
 何の物語も与えられなかった、やられて終わるだけだったはずの悪役。
 そんな役者だからこそ、仮に主役を張りでもしたら、話がどう転がるか想像もつかない。
 決まったレールが用意されていないのなら、どこに向かってレールを作ろうと、士の自由ということでもある。
 それは自分だけでなく、門矢士自身にとっても、わくわくする未知の体験になるはずだと。


22 : 門矢士&ライダー組 ◆.QrNUkmVxI :2016/02/01(月) 00:50:01 w4cvhsgA0
「知ったような口ききやがる。何なんだ、お前は」

 士が少年に問いかけた。
 何度も向けられたクエスチョンを、今度は彼自身が口にした。

「俺はサーヴァント・兜甲児。お前の人生の先輩だ。
 自分の物語をきちんと畳んで、今はみんなの物語を、楽しませてもらってる一人の読者さ」

 兜甲児は言葉を紡ぐ。
 知ったような口などきいていない。
 語り終えた物語が、自分にはあるのだと言い切る。
 途方も無く長い戦いに、望まれなかった結末を突き付け、きちんと物語を終わらせた。
 その先を思い描く権利を、その後に続く人々に委ねた。
 彼らが語る物語は、そのどれもが鮮烈で、美しく輝いていたのだと。
 人は誰しも、素晴らしい物語を、語り紡いでいく力がある。
 それは間違いなく門矢士にも、宿されている力なのだと。

「俺自身の物語、か……」

 自身の懐に手を入れ、まさぐる。
 士が取り出したのは壊れたはずの、銀色に光るバックルだ。
 いくつもの世界を渡り歩いた、世界の破壊者の変身ベルト。
 彼がその瞳で見てきた、物語の担い手のカードは、今は士の手にはない。
 裏切り、欺き、倒してきた、彼らの想いの結晶は、元の世界に残したままだ。
 押し付けられた役割を終え、貸し与える意味のなくなった力は、恐らく二度と戻らないだろう。
 故に、この先を切り拓く力があるなら、それは自分自身の力だけだ。
 誰の代わりの物語でもない、門矢士自身の物語を、その手で刻むしかないのだ。

「……もう少し、通りすがってみるのも悪くない、か」

 それが許されるというなら。
 自分自身の物語を、遺してきたあの仲間達が、許してくれるというのなら。
 ここにはないカメラをもう一度手に取り、今度こそ世界をレンズに納められる日が、その先に待ち受けているのなら。
 ついぞ見られなかった結末に――自分探しの旅の終着駅に、たどり着けるというのなら。
 それはそれでほんの少し、悪くない旅かもしれないと思えた。
 ひねくれ者の門矢士は、それが叶ったら嬉しいとは、決して口にはしないけれど。

「そうさ、マスター。聞かせてくれよ。俺をわくわくさせてくれる、物語の主人公の名前を」

 兜甲児が問いかける。
 運命的とすら言える、騎兵(ライダー)のクラスを与えられた、士のサーヴァントが答えをせがむ。
 ここは聖杯戦争の世界だ。万能の願望機とやらを賭けて、人々が争い殺し合う舞台だそうだ。
 ライダーのサーヴァントというのも、そのために用意された力だった。
 下らない。付き合ってられるか。
 自分の旅を始めると決めた、そんな矢先も矢先から、馬鹿げたルールに乗せられてたまるか。
 聖杯などにねだったりはしない。
 甲児も殺し合いの走狗にはさせない。
 たとえ絶対の法則に逆らい、傷だらけになったとしても、自分が歩む世界の未来は、自分の手で掴み取ってやる。
 世界を壊すのはもう懲り懲りだが、掟破りの専門家までは、廃業するつもりは更々なかった。

「――通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ」

 にやりと不敵に笑みながら、言った。
 門矢士。
 またの名を、世界の破壊者・ディケイド。
 新たなる世界を巡り、その瞳は何を見る。


23 : 門矢士&ライダー組 ◆.QrNUkmVxI :2016/02/01(月) 00:50:45 w4cvhsgA0
【クラス】ライダー
【真名】兜甲児
【出典】真マジンガーZERO VS 暗黒大将軍
【性別】男性
【属性】秩序・善

【パラメーター】
筋力:D 耐久:E 敏捷:E 魔力:E 幸運:A 宝具:EX

【クラススキル】
対魔力:E
 魔術に対する守り。
 無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

騎乗:B-
 騎乗の才能。大抵の乗り物を自在に操れる。
 ただし動物に関しては、野獣ランクの獣は乗りこなせない。
 本人はロボット兵器の他、バイクの運転を得意としている。

【保有スキル】
特異点:A
 数多の平行世界に跨がり、存在する者を指す名称。
 甲児はこのスキルにより、あらゆる世界に存在する、「兜甲児」の記憶を有している。
 このため、彼がどこかの世界で会ったことがある英霊と対峙した場合、即座にその能力や弱点などを知ることができる。

科学者:A
 科学に精通した研究者の称号。
 甲児は光子力エネルギー、機械工学など、様々な分野の知識・技術を、極めて高いレベルで修めている。

神殺し:B
 神を名乗りし者と戦い、撃退した逸話に基づいたスキル。
 神性を持つ者に対して、与えるダメージが増大する。この効果は宝具にも適用される。


24 : 門矢士&ライダー組 ◆.QrNUkmVxI :2016/02/01(月) 00:51:19 w4cvhsgA0
【宝具】
『原初の魔神・鉄の城(マジンガーZ)』
ランク:C 種別:対城宝具 レンジ:1〜50 最大補足:300人
人が創りし鋼の魔神。神と悪魔の境界を分かつ、人の頭脳の写し鏡。
兜甲児が乗り込み操る、くろがねのスーパーロボットである。
全身に武器を内蔵しており、オプションブースター・ジェットスクランダーによる飛行も可能。
超合金Zの鉄壁のボディは、いかなる攻撃にも屈しない。
本来は魔神パワーと呼ばれる、強力無比な特殊装置を搭載しているのだが、今回はオミットされている。
そのため宝具の神秘性を示すランクも、その分だけ低下している。

『超克の魔神・偉大な勇者(グレートマジンガー)』
ランク:C 種別:対城宝具 レンジ:1〜60 最大補足:400人
至高の魂を超えるため、始祖の魂から生まれた、もう一体の鋼の魔神。
兜甲児と肩を並べ、最も信頼し合った盟友・剣鉄也が乗り込み操る、くろがねのスーパーロボットである。
本体に内蔵された翼・スクランブルダッシュを始めとした、全ての機能と性能が、マジンガーZを上回っている。
超合金ニューZで構成された機体は、自在にモーフィング変形し、その武器にさらなる鋭さを与える。
このグレートマジンガーと、操縦席に座る鉄也は、後述した宝具『創世(スーパーロボット・クロニクル)』が、兜甲児の創造力から生み出したもの。
ダブルマジンガーの戦闘能力は、まさしく絶大の一言に尽きるが、二体もの巨大ロボットを維持する魔力も、想像を絶するものがある。
このグレートマジンガーもまた、魔神パワーを有していない。

『創世・新生魔神譚(スーパーロボット・スピリッツ)』
ランク:EX 種別:対全能宝具 レンジ:??? 最大補足:???
可能性の光。想像の翼。あまねく世界を紡ぐ想いを、力と変えて現出する器。
驕り高ぶる全能者を、追い越し上回るために生み出された、人類の創造力の結晶。
無限の連鎖を繰り返し、無量の世界を渡った果てに、最後に生まれたマジンガーZが、その身に宿した光子力エンジンである。
その機能は、マジンガーZすら存在しない、未知の世界を観測し、その世界の可能性を、光子力エネルギーの塊として具現化するというもの。
人々の想像力に呼応し、人々が思い描いた空想の世界・理想の存在こそを、力と変えることに真価がある。
聖杯にすら記録されていない、未知の英霊達の必殺技は、
いかなる解析能力でも分析できず、いかなる特攻でも撃ち落とせず、いかなる防御能力でも無効化できない。
……とはいえ、「フィールドに存在するNPCの想像力を借りる必要がある」「NPCの人数分だけ魔力消費が跳ね上がる」という性質上、
聖杯戦争の舞台においては、実用性は皆無に等しい。


25 : 門矢士&ライダー組 ◆.QrNUkmVxI :2016/02/01(月) 00:52:29 w4cvhsgA0
【weapon】
ホバーパイルダー
 宝具『原初の魔神・鉄の城(マジンガーZ)』のコックピットを兼ねた戦闘機。
 頭部にドッキングすることで、マジンガーZの戦闘準備が完了する。
 パイルダーミサイルを搭載しており、これ単体でも戦うことが可能。

光線銃
 兜甲児が、生身で戦うための拳銃。それほど威力は高くない。

【人物背景】
天才科学者・兜十蔵の孫にして、彼の発明したスーパーロボット・マジンガーZを操るパイロット。
そしてある時作られてしまった、禁断の装置・魔神パワーの申し子――マジンガーZEROの覚醒を食い止めるため、
同じ時間と世界を繰り返してきた男である。
幾千幾億もの戦いを繰り返し、最後にはマジンガーZEROを打倒し、彼の戦いの物語は幕を閉じた。

かつてマジンガーZに備わっていた、差異次元干渉能力により、甲児にはありとあらゆる世界の、「兜甲児」の記憶が受け継がれている。
それはありとあらゆる世界で、マジンガーZEROの覚醒に立ち会い、敗北してきた記憶でもあった。
しかし彼は持ち前の闘志と、強い正義感を燃やし続け、絶望することなく戦い続けた。

今回限界した甲児の肉体は、高校生時代の姿にまで若返っている。
ある世界では肉体が死に絶え、サイボーグに改造されたこともあったが、今回ベースとなった甲児の肉体は、完全な生身の人体である。
差異次元干渉装置による強化もされていないため、特別な戦闘能力は備わっていない。
ちなみに、最後の戦いに臨んだ甲児の、若返る以前の年齢は30歳である。

【サーヴァントとしての願い】
ない。門矢士が新たに紡ぐ、彼自身の物語を見てみたい。

【基本戦術、方針、運用法】
幸か不幸か、魔神パワーがオミットされたことによって、調子に乗らなければ何とかなる程度には、マジンガーZの燃費が良くなっている。
戦闘開始時には、まずホバーパイルダーとディケイドのタッグで相手の出方を伺い、
だいたいの傾向が分かったところで、マジンガーZを呼び寄せとどめを刺すのがいいだろう。
仮面ライダーディケイドもまた、大幅に弱体化しているが、特別な条件を必要とせず分身できるのは、意外と大きな特徴なので、これを活用していきたい。
最強宝具『創世・新生魔神譚(スーパーロボット・スピリッツ)』は、そもそもこの聖杯戦争においては、まともに機能するかどうか怪しいという問題もある。


26 : 門矢士&ライダー組 ◆.QrNUkmVxI :2016/02/01(月) 00:52:55 w4cvhsgA0
【マスター】門矢士
【出典】仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010
【性別】男性

【マスターとしての願い】
元の世界へ帰り、そこから新しい旅を始める

【weapon】
ディケイドライバー
 「世界の破壊者」と呼ばれる仮面ライダー・ディケイドへと変身するベルト。
 全ての仮面ライダーの力を再現し、全ての仮面ライダーを倒すために生まれた、最悪のショッカーライダーである。
 手に入れた仮面ライダーの力は、カードの形となり、専用武器・ライドブッカーにファイリングされる。
 ……しかし、用済みとなった今の士は、ディケイド自身の能力を発動するカードしか持ち込めていない。
 使用可能なカードは、「カメンライド・ディケイド」「アタックライド・ブラスト」「アタックライド・スラッシュ」
 「アタックライド・イリュージョン」「ファイナルアタックライド・ディケイド」のみ。

マシンディケイダー
 仮面ライダーディケイドの専用バイク。
 最高時速は350キロ。無原動力・クラインの壺を内蔵しているため、エネルギー補給を行う必要がない。
 次元の壁を超えることができるが、この聖杯戦争の舞台からは出ることができない。

【能力・技能】
専科百般
 写真を撮ること以外なら何でもできる。
 スポーツ、料理、推理など、ありとあらゆる方面に、優れた才能を発揮している。

騎乗
 バイクの免許を取得している。

ライダー知識
 それまでに生まれてきた、全ての仮面ライダーの特徴を把握している。
 ただし、彼以降に生まれた仮面ライダーの情報は持っておらず、唯一顔を合わせた仮面ライダーWについても、ほとんど把握できていない。

次元跳躍
 世界と世界の壁を突破し、異なる世界へ移動することができる特殊能力。
 ……ただし、この聖杯戦争の舞台からは出られない。そのため振るわれる機会のない、死に能力である。

世界の破壊者
 持って生まれた呪いのようなもの。士が通りすがった世界は、その在り方を狂わせ、本来ならば起こりえないような現象を発生させてしまう。
 彼のような存在であればこそ、この異常な聖杯戦争に、招かれることになったのか。あるいは兜甲児のような、規格外の英霊を引き当てたことこそが……?

【人物背景】
光写真館に居候していた、記憶喪失の青年。20歳。
仮面ライダーディケイドに変身し、いくつもの世界を渡り歩きながら、それぞれの世界の仮面ライダーと心を通わせてきた。
その正体は、世界の支配を目論む組織・大ショッカーに踊らされた大首領であり、
その力を世界修復のため、仮面ライダー達に利用された、旧世界の「破壊者」でもある。

表向きな振る舞いは傲慢かつ不遜。しかし心の底では、静かな正義感を燃やしている。
自分を天才と信じて疑わないが、写真だけは上手く撮れず、不自然に歪んだものばかりを重ねている。

意図にそぐわぬ行動を取ったことで、仮面ライダー達から狙われるようになった彼は、
全ての仮面ライダーを破壊するという、本来の使命に従うようになる。
しかしそれは、我が身可愛さのためではなく、世界を救うためという、悲壮な覚悟の表れでもあった。
役割を終え用済みとなった士は、語れる物語などないと断じられ、仲間の刃に倒れたのだが……

【方針】
とにかく帰る手段を探す。殺し合いに付き合う気はない


27 : ◆.QrNUkmVxI :2016/02/01(月) 00:53:29 w4cvhsgA0
投下は以上です


28 : ◆GO82qGZUNE :2016/02/01(月) 00:56:00 BKek1A6c0
スレ立て&投下乙です。自分も投下させていただきます


29 : 夢見る人形 ◆GO82qGZUNE :2016/02/01(月) 00:56:38 BKek1A6c0





 この世に生を受けた少年は三つの言葉を与えられた。
 たった三つの言葉だけが、少年の世界の全てだった。
 ひとつは「はい」。ひとつは「いいえ」。それから、最後のひとつは「エリザ」。
 それ以外の言葉を、少年は必要としなかった。





   ▼  ▼  ▼


30 : 夢見る人形 ◆GO82qGZUNE :2016/02/01(月) 00:57:04 BKek1A6c0





 ぐじゅり、という音と共に、銀色に光る螺子が引き抜かれた。
 同時に勢いよく鮮血が噴き出す。急所を貫いた螺子は対象を確実に殺しており、破壊の少ない刺突はおよそ何の苦痛も与えることはなかったはずだ。
 だが、少年はその事実に何を思うことはなかった。
 彼は、「苦痛」という言葉を知らなかった。

 全てを終えて顔を上げ、自分の行った惨状を顧みた。
 都合三人の人間が死んでいた。ひとりは男、ひとりは女。最後のひとりは少女。
 三人は郊外に住まうごく平凡な核家族であった。自営業の父母を持ち、今年から小学校に通い始めた娘のいる平凡ながらも暖かな家族だった。
 大好きなバドミントンの習い事から帰り、笑顔で玄関の扉を開いた少女を待っていたのは、血に沈む両親の姿と、夕闇に映える銀光の一閃。
 少女はそのまま、自分に何が起きたのかを理解することもなく、ただ無為にその命を露と散らした。
 必要なことだったから、淡々とそれを行った。
 誰が相手でも良かった。単に近くにあったから、その家族を襲った。
 機械のように正確で、単調で、狂いのない作業。
 罪悪感はなかった。
 自分が殺したのが何であったのかも、分からなかった。
 「罪悪」と「家族」という言葉を、少年は知らなかった。



 ―――人形。

 ただ、螺子の槍に心臓を貫かれるその最中。
 少女が呆然とした様子で、少年を指してそう呼んだことが。
 ほんの少しだけ、気になった。





   ▼  ▼  ▼


31 : 夢見る人形 ◆GO82qGZUNE :2016/02/01(月) 00:57:56 BKek1A6c0





 屠殺場と化した家を人知れず抜け出し、いつの間にか夜となった大通りを少年はとぼとぼと歩いていた。
 特にこれといった目的はなかった。ただ、一度に多くを殺し過ぎると目立つとか、人前で殺人を犯せば面倒なことになるとか、そういうことは教わるでもなく直感的に悟っていたから、新たな犠牲者を出すのはもう少し時間を置いてからにしようと。そう考えていた。

 聖杯戦争。その単語を、少年は生まれて初めて知った。
 知識はなかった。それが何を意味するのか、何を以て行動すればいいのか。少年はそれらを知ることはなく、だから自らがすべきことだけを為していた。
 曰く、魂喰い。自らのうちに魔力を貯蔵する行為を、少年は誰から学ぶでもなく行っていた。
 何のために?
 当然、彼の願いのために。

 少年には願いがあった。
 「エリザ」が最後に望んだもの。それを取り戻すことを、少年は自身の目指すべき果てと定義している。。
 この街にはそれがあるはずだった。空を阻むものは何もなく、光を遮るものは何もなく。
 けれど、少年はそれを手に入れることができなかった。
 だからこそ、少年は魔力を欲する。自らの宝具に火を入れるために。その創造の末に、エリザの願いが叶うのだと信じて。
 自らの為すことの意味も知らず、その行いが何を生むのかを知らず。しかし少年は「諦め」も「疑問」も知らない故に、止まることはありえない。

 ふと、空を見上げてみた。
 そこには、ただモノクロの空だけが広がっていた。

 あれだけ騒がしかった街の喧騒は薄れ、世界は静かな闇に包まれていた。白い小さな粒がすぐ目の前に舞い降りて、地面に落ちて消えてなくなった。視界のずっと遠いところに黒の天蓋が広がって、すぐ下を白のまだら模様が信じられない速さで流れていた。

 ―――それは少年から奪われた青空の残骸だった。
 ―――それは少年が初めて見る、色彩のない"本物"の空だった。


32 : 夢見る人形 ◆GO82qGZUNE :2016/02/01(月) 00:58:15 BKek1A6c0

 胸の奥で生まれた何かが、少年の心臓を貫いていた。何か大切なものを失ってしまったような気がして、けどそれを表す言葉を少年は知らなかったから、ただ意味も分からない息苦しさだけが少年の胸を苛んだ。
 その痛みが、思い出を穢された悲しみであるということさえも、少年が知ることはなかった。

 色を失った世界の中で、少年はひたすら空を見上げ続けた。
 息をすることも忘れて、歩む足さえも止めて。自分が取り戻すはずだった青空を、自分から永遠に失われてしまった青空を、想って。
 エリザが望んだ遥かな空。
 その空を、少年は、いつまでも見上げていた。
 ひとりぼっちで、見上げていた。





   ▼  ▼  ▼





 それは、黒い空と白い大地に深く根付いた、たったひとつの小さな祈り。
 あの日、凍りついた展望室の片隅で見上げた、遠く見果てぬ青の軌跡。

 人になりたかった人形と、人形に何かを望んだ女の、それは愚かな終着点。
 遥か昔に失ってしまった命を抱いて、少年は願いの果てを目指し駆けるのみ。
 そこに待ち受けるのが何であろうとも、「止まる」ということを少年は知らないから。

 ―――ジーン・Dは歌う。青い空があり緑の草原があり、そして愛する人がそばにいれば、それだけで世界は美しい。
 ―――それを失ってしまえばどうなるか、彼女は何も教えてはくれない。


33 : 夢見る人形 ◆GO82qGZUNE :2016/02/01(月) 00:59:17 BKek1A6c0
【クラス】
クリエイター、あるいは単なるマスターの一人。

【真名】
エドワード・ザイン@ウィザーズ・ブレイン

【ステータス】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力A+ 幸運D 宝具EX

【属性】
秩序・中庸

【クラススキル】
創造:-
彼自身は何をも創造する力を持たない。彼は世界を作り変える種子と、世界を塗りつぶす色彩を持つに過ぎない。

【保有スキル】
I-ブレイン:A+
脳に埋め込まれた生体量子コンピュータ。演算により物理法則をも捻じ曲げる力を持つ。
100万ピット量子CPUの数千倍〜数万倍近い演算速度を持ちナノ単位での精密思考が可能。極めて高ランクの高速思考・分割思考に匹敵し、自動発動の戦闘予測演算により同ランクの直感を内包する。

ゴーストハック:A+++
仮想的な情報精神体を非生物物質に送り込むことにより、対象を疑似的に生物化させ支配下に置くという人形使いの固有能力。
生物化という都合上、通常は人の腕や足などといった生物的な形状を取るが、このランクにもなると螺子のような非生物的な形状でも難なく操ることが可能となる。
支配下に置いたゴーストの強度は素材となった物質に依存し、例えば氷やガラスから作ったなら相応に脆くなるがチタンや強炭素繊維から作ったならば相応に頑強となる。
ただし生物化できる時間は短く、命令を出し続けなければ十秒足らずで崩壊してしまうため、自立稼働兵器の制御コンピュータを乗っ取るというものが本来あるべき運用方法である。

無我:A
自我・精神といったものが極めて希薄であるため、あらゆる精神干渉を高確率で無効化する。

騎乗:A
騎乗の才能。

精神汚染:EX
彼自身に融和、あるいは侵食する存在により精神が汚染されている。あるいは、彼だけが汚染の影響を受けていない。
評価外ランクの指す通り、厳密には錯乱による精神干渉の無効化ではないため、特殊な耐性を有さず意志疎通にも支障はない。
このスキルが示すもの。それは単に、彼の認識する"色"が白と黒の二色となったという、ただそれだけのこと。
世界に色彩を与えたモノは、しかし自身は一切の色彩を見ることはない。
それは、ただ人を殺す人形でしかない彼に与えられた最大の■■なのかもしれない。


34 : 夢見る人形 ◆GO82qGZUNE :2016/02/01(月) 00:59:59 BKek1A6c0
【宝具】
『人形抱きし無垢なる銀翼(ウィリアム・シェイクスピア)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大補足:500
200m級特務工作艦。巡航速度は時速8000㎞弱、最高速度は14000㎞。
操縦者が搭乗するコア部分は全長50mで、その周囲を大量の流体金属「メルクリウス」が覆う形で一つの巨大艦船を形作っている。メルクリウスはライダーのゴーストハックによって絶えず支配・制御されている。
戦闘時はコアを中心にメルクリウスを12枚の羽根状に展開し、更に荷電粒子砲の砲身さえも形成する。

しかしこれはライダーとして召喚された時のものであり、クリエイターのクラスに当てはめられている現状はほとんど機能していない。
現在は疑似拠点となるコア部分の具現を除けば、クリエイターの周囲から流体金属メルクリウスのみを限定顕現させて使用するに留まる。


『偽・旧世界救世種(Word End Seed)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1〜99999 最大捕捉:20000000000
それは、世界を侵す救済の祈り。
聖杯戦争の舞台となる世界の全ての空に、クリエイターが住まう世界に存在した【雲】を充満させるというもの。
この宝具によって生み出される『雲』は周囲に絶えず魔力発動を阻害する特殊な電磁波を放出している。また完全な遮光性であるため、地上からは陽の光が失われる。
かつてクリエイターがいた世界において、人類から青空を奪った根源。世界を破滅に導く黒き空そのものである。

これ自体に何ら攻撃的な要素はないが、単純に超々規模の体積を有するために物理的な除去はほぼ不可能。
使用には莫大な魔力が必要とされ、当然ながらクリエイターひとりではとても賄うことができない。
身に宿した複数画の令呪、魂喰い、他者の補助、土地に流れる魔力の吸奪、etc。それら要因を複数クリアすることでようやく発動が可能となる規格外宝具である。
【青空】を取り戻すためには、まず【青空】を奪わなければならない。それは奇しくも、既に青空を失ってしまったクリエイターと、世界を合一化させる手段であるとも言える。


『偽・新世界創造樹(The New World Yggdrasil)』
ランク:EX 種別:対星宝具 レンジ:1〜99999 最大捕捉:200000000
それは、世界を壊す創造の種子。
偽・旧世界救世種が発動した状態でのみ発動可能。
その正体は植物細胞をベースにした生体コンピュータ。外見は普通の樹木と変わりなく、水と二酸化炭素をエネルギー源とする。成長の度合いに比例した演算能力を獲得し、周囲の有機物や無機物を取り込み際限なく肥大化していく。
使用法によっては永久機関の代理演算装置としても運用が可能だが、クリエイターが世界樹に望む能力はただひとつ。すなわち【青空を取り戻す】である。
この宝具は、前述の宝具によって生み出された【雲】を根こそぎ取り除くためのものとなる。自ら生み出した破滅を自ら取り除くという矛盾は、精神が汚染された現在のクリエイターにとっては頓着すべき事柄ではなくなっている。
この宝具は前提条件さえ満たされていれば一切の魔力消費の必要なく発動することができる。代わりにクリエイターは宝具に完全に取り込まれ、世界樹を統括する「コア」として機能することになる。このコアが破壊された場合、世界樹は消滅する。
なお世界樹が取り込めるのは情報的な防壁が薄い物質、すなわち思考速度が遅いもしくは存在しない物質に限られる。


[削除済み]


諸■■我■■失敗■■■■界樹■青■■■り戻■ま■■長を■け■■確■■暴走■■■
成■を■■る■■樹を■■る手■て■■い■一■■■く■こ■■体■■棄■■■ければ■■■い。


35 : 夢見る人形 ◆GO82qGZUNE :2016/02/01(月) 01:00:41 BKek1A6c0

『青い、青い空(SCP-8900-EX-Sky Blue Sky)』
ランク:EX 種別:対人理宝具 レンジ:1〜99999 最大捕捉:7300000000
SCP-8900は接触によって拡散する、可視スペクトルに影響を与える知覚現象の複合体です。この現象は最近開発された技術を用いて撮影することができますが、この異常現象を撮影することは現象の迅速な拡散を招くため、推奨されません。
SCP-8900は現在未収容であり、理論的にも封じ込め不可能です。この現象は1800年代中期から後期に、特定の撮影技術の副産物として発生しましたが、その影響は写真乾板のみに限定され、拡散することはありませんでした。記録によると、SCP-8900の症状が写真に現れたのは、[編集済]写真技術の開発によってと考えられます。今日我々が知るSCP-8900が出現したのは、おそらく1935年前後の××株式会社の"インテグラルトライパック"××××技術の実験によってと思われます。


――――――――――――――――――――…………


それは、誰かが望んだ最期の願い。
そして、誰よりも青空を望んだ少年から、しかし無慈悲なまでに青空を奪い尽くした。これはそんなありふれた悲劇のひとつ。
元々この宝具とクリエイターは全く別の存在であった。拡散するSCP-8900を媒介にクリエイター:エドワード・ザインが召喚されたのか、エドワード・ザインというマスターに召喚されたクリエイター:SCP-8900が存在したのか。最早真実は闇の中だが、彼らが融合したことにより現状のクリエイターは「マスターにしてサーヴァント」という極めて例外的な存在となっている。

この宝具はクリエイター自身と完全に融合を果たしている。同時に、この宝具は会場全体に拡散している。
最早取り除く手段はなく、仮にクリエイターが消滅してもなお永続的に世界に残留し続ける。
ただし、彼が望む新世界の創造に辿りつき、青空を阻む全てを取り払ったその時には――――――


【weapon】
流体金属・メルクリウス
クリエイターの周囲から顕現する。水銀の不安定同素体であり、クリエイターはこれをゴーストハックすることで生み出す無数の螺子によって攻撃する。

【人物背景】
人を殺す人形ではなく、人間のようになりたいと願っただけの少年。
空に青を与えた"モノ"と、空に青を望んだひとりの男の子。

【サーヴァントとしての願い】
エリザと一緒に青空を見る。


36 : 夢見る人形 ◆GO82qGZUNE :2016/02/01(月) 01:01:18 BKek1A6c0

【マスター、あるいはクリエイターのサーヴァント】
青い、青い空(SCP-8900-EX-Sky Blue Sky)@The SCP Foundation

【マスターとしての願い】
■■■■

【weapon】
エドワード・ザインに依存する。

【能力・技能】
この存在はすなわち色彩という概念そのものと言える。
この存在が発生する以前において世界はモノクロで構成されており、色という概念がなかった。しかしこの存在が生まれると同時に本来あった「美しい」彩は失われ「下品な」色彩に塗りつぶされてしまった。
やがて世界中に拡散し続け、最終的には現在の色鮮やかな世界に変貌したという経緯がある。

現在この存在はマスターにしてサーヴァントたるエドワード・ザインと合一化しており、全ての技能は彼に依存する。
しかし聖杯戦争の開催される会場においてこの存在は万遍なく充満しており、考え得る如何なる方法を用いても取り除くことはできないと思われる。
―――世界樹の創造、その成功を除けばの話ではあるが。

【人物背景】
諸君、我々は失敗した。SCP-8900の影響はあまりにも広く拡散し、ありふれたものになってしまった。空の自然な青は下品で不自然な色合いに変わり、木々の緑は等しく汚された。SCP-8900は全ての可視スペクトルに荒廃をもたらし、我々は覆い尽くされた。

我々の"感染"に対抗する試みは失敗した。我々は被験体に対して自然な色彩を復元させることに成功したが、その作用は彼らを無口にしてしまうようだ。その上、今しがた使者がオフィスに到着し、我々のささやかな試みが収容違反を起こしたことを伝えてくれた。未来のエージェントはその性質から、これをSCPオブジェクトとして扱わなくてはならないかもしれないな。

我々にはたった一つの選択肢が残されたのだ、諸君。私は財団の最終フェイルセーフ手段、アンニュイ・プロトコルを実行する。

このメッセージが、受領を許可された君達に届いたことが確認され次第、世界中の財団が総力を挙げ、微細な記憶喪失を引き起こす化合物ENUI-5を大量散布する。世界中のこのような恐怖を味わうべきでない男女が、立ち止まり、困惑し、自らの生活に戻るだろう、この現象が常に存在していたと確信し、何を失ったかを決して知らないまま。ただ一つ、SCP-8900の影響を受けていない写真のみが真実を伝えていくことだろう。私は残念でならない、諸君。本当に残念だよ。

これはやり遂げられねばならない。

【方針】
聖杯の獲得、あるいは宝具の発動によって"青空"を取り戻す。

【捕捉】
クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP FoundationにおいてJack "Poor Yoric" Dawkins氏が創作されたSCP-8900-EXのキャラクターを二次使用させて頂きました。


37 : ◆GO82qGZUNE :2016/02/01(月) 01:01:45 BKek1A6c0
投下を終了します


38 : ◆yy7mpGr1KA :2016/02/01(月) 01:18:25 Lqmo.G4.0
新規格立て乙です。
しかしみなさん早いですね……
自分も投下させていただきます。


39 : 汝は竜なり、罪在りき ◆yy7mpGr1KA :2016/02/01(月) 01:19:00 Lqmo.G4.0

◇ ◇ ◇



クリック?クラック!
さあ、本日は「ドラキュラ」のお話をしましょう。

昔々、イギリスにジョナサン・ハーカーという男がいました。
ある日ジョナサンはトランシルヴァニアの伯爵、ドラキュラに雇われてロンドンの屋敷を提供しました。
それからしばらくして、ジョナサンの妻、ミナ・ハーカーの友人であるルーシー・ウェステンラが原因不明の病に倒れます。
ルーシーの婚約者であるアーサー・ホルムウッドは原因不明で衰弱していくルーシーの事を友人であるキンシー・モリスとジャック・セワードに相談。
ジャックがさらに自分の恩師であるヴァン・ヘルシング教授に助けを求めると、ついにその原因が判明します。
「彼女の衰弱は神の敵、吸血鬼に血を吸われたのが原因だ」
ヘルシング教授は原因が吸血鬼にある事を突き止めますがルーシーを助けるには至りませんでした。
彼らは仇を求め、吸血鬼を探し、ついにはその正体がドラキュラ伯爵であることまでも突き止めました。
ドラキュラ伯爵はロンドンからトランシルヴァニアに逃げ帰ろうとしますが、その際に気に入ったミナを誘拐して連れ去ります。
しかしミナを連れ去ったことがかえって仇になり、ドラキュラはジョナサン、ヘルシング教授一行に追い詰められてしまいました。
そして、ドラキュラは夕日の中、胸を刺されて塵になり滅びたのです。



◇ ◇ ◇


40 : 汝は竜なり、罪在りき ◆yy7mpGr1KA :2016/02/01(月) 01:19:24 Lqmo.G4.0


――え?最近の創作であるヴラム・ストーカーが神の悪夢になるのかって?十分にあり得ると僕は思うね。その知名度はグリムにもアンデルセンにも比肩しえる。

――んー、そうだな。まずドラキュラといったら何を浮かべる?ああ、やっぱり吸血鬼だね。僕もそうだ。

――吸血鬼の伝承というのは世界各地で見られるものだ。東ヨーロッパのヴァンパイアを中心に、古代ギリシアのラミアにエンプーサ、バビロニアのアフカル、アラビアのグール、中国のキョンシー、ルーマニアではストリゴイ。

――起源は諸説あるね。病か、怪我かで仮死状態だった人が墓の中から復活したとか。死蝋化など埋葬条件によっては腐りにくかったのが誤解されたとか。血液感染する病気だったり、輸血の知識が歪んで流布されたりね。

――血というのは命を象徴する。命を奪う怪物……わかりやすい恐怖の対象というわけだ。

――例えばアステカでは人間の心臓と血液を捧げる血の儀式があり、キリスト教では血が神聖視される。古代ギリシアに書かれたオデュッセイアでは、オデュッセウスが降霊の儀式を行う際に生け贄の子羊の新鮮な血を用いるくだりがある。

――あと吸血鬼の伝承には姿を変えるというものもある。霧だったり、愛する人だったり、コウモリだったり、ネズミだったり、オオカミだったり。

――注目したいのはオオカミだ。オオカミというのは、欧州では日常的な外敵の象徴……身近な恐怖であり、同時に滅するべき害獣でもある。

――吸血鬼はね、些細な理由で発生するとされたんだ。惨殺された、事故死した、自殺した、葬儀に不備があった、何らかの悔いを現世に残している。ひどいときは葬られる前の死体を猫がまたぐと吸血鬼になるなんて説もあったくらいだ。

――けれどね、それ以上に重大な原因があった。

――吸血鬼は銀を恐れる。吸血鬼は十字架を恐れる。その根本は何だと思う?

――答えはね、『罪』だよ。『罪』を犯した者は神に拒絶され、死後に吸血鬼になるというのも有力な言説だったんだ。

――吸血鬼というのは、ある種の黄泉帰りだ。それは、キリスト教ではひとつの禁忌に当たる。

――その起源は旧約聖書にまで遡る。

――初めて虚言と殺人を行った、原初の罪人、カイン。彼は重罪を犯した上に贖罪を拒絶し、四大熾天使のうち三人から陽光、不死、吸血の呪いを受けたという。その故あって、吸血鬼の事をカインの子と呼ぶ。

――『罪人』は、『吸血鬼』なんだよ。討伐されるべき、『吸血鬼』なんだ……それは古代から定まっていたこと。

――虚言。殺人。そして吸血…つまり食人。

――知っているかな?母乳というのはね、母親の乳腺でろ過された血液なんだ。

――つまり僕たち人間はみな、母親の血を吸った、『吸血鬼』なのさ。誤用を承知で言うなら抗えない『原罪』を人は皆抱えているんだ。

――世界中の吸血鬼伝説というのは、人間が自らの罪を自覚している『集合無意識』の表れではないかな……

――それと、ドラキュラという名、あるいは称号。

――もはや吸血鬼の代名詞としてお馴染みだけど、本来はルーマニア語で竜の子を意味する。

――ヴラム・ストーカーの小説のモチーフになった実在の人物、ワラキア公ヴラド三世のニックネームだね。

――竜というのもまた、世界中で散見されるモチーフだ。

――吸血鬼同様に、ドラゴン、ワイバーン、ワーム、ナーガ、そして東洋の龍。

――日本の蛇神信仰然り、ギリシアにおけるドラコやサーペント然り、蛇をはじめとした爬虫類をモチーフにしていることが多い。

――元々は原始宗教や地母神信仰における自然や不死の象徴として崇められる蛇が神格化された存在だった、というのが有力だ。

――日本の八岐大蛇なんかは恵みをもたらしながらも、ひとたび氾濫すれば多くの人命を奪う河川の象徴。ウロボロスやヨルムンガンドのような巨大な世界そのものの一部と……ああ、話がそれたね。

――竜……つまり『蛇』と『吸血鬼』を繋ぐ点は、やはり『罪』だね。

――キリスト教的世界観では、蛇は悪魔の象徴であり、霊的存在を意味する翼が加わることで、天使の対としての悪魔を意味することがある。

――筆頭は光の蛇……神に反旗を翻した暁の堕天使ルシファー。傲慢ゆえに天を追放された大罪の悪魔。

――わかるかい?竜(ドラクル)も、吸血鬼(ドラキュラ)も、神の敵である『罪人』なんだ。神の悪夢に、これ以上相応しいモチーフはそうはないと僕は思うよ。


41 : 汝は竜なり、罪在りき ◆yy7mpGr1KA :2016/02/01(月) 01:20:30 Lqmo.G4.0

◇ ◇ ◇

少年は昨日は、瑞姫の世話をして終わった。
少年は今日も、瑞姫の世話をして終わる。
少年は明日も、瑞姫の世話をして終わるのだろう。

〈食害〉という〈断章〉を宿し、反復しない記憶は消えていく少女の生活には介助者が不可欠で、それを自分が行うのは当然だと思っていた。
守れなかった少女への、身勝手に生き返らせた少女への贖罪。
生涯を費やすことになっても当然だと、そしてそれも悪くないと思っていた。

目を離した数秒で、少女は塵に変わっていた。
まるで陽光にさらされた吸血鬼の成れの果てのように、斑色の塵の山に変わっていた。
何が起きたのか分からなかった。
何が起きたのか分かりたくなかった。
その現実とは思えない、思いたくない事象を前にして、暫く心は完全に停止し。
その現実を受け入れた瞬間。

絶望。
絶叫。

頭の中が、真っ白になって。
気が付いたら、見覚えない場所で呆然とする自分と、黒い装いの巨大な男を認識した。

「サーヴァント、ここに参った。余に血を捧げるマスターは貴様か」
「あ?サー……?なんだって?」

突然の事態に思わず聞き返すと、男はふむと喉を鳴らして言葉を続ける。

「ワラキア公ヴラド三世。此度はバーサーカーのクラスで現界した……不本意ながらな」
「だから、意味わかんねえって。なんだよ、それ…え?待てよ、ヴラド?」

ヴラド・ツェペシュ。
その名は多くの人が知る、吸血鬼の『元型』となった人物だ。
そして、『元型』に従って怪奇現象を引き起こす事象を、少年は知っていた。
馳尾勇路の母も、妹も、友人も、守るべき人の全てがそれによって奪われたのだから。

「お前、なんだ?〈異端〉か?それともヴラドってのがお前の〈断章〉か?」
「話を聞かんマスターだな。バーサーカーにたしなめられるなどよほどだぞ。
 いや、しかし本当に何も知らんようだな……巻き込まれたか」

さてさて面倒なことになった。
そうぼやきながら話し出す。
万能の願望機の事。
召喚されるサーヴァントの事。
己が願いの事。

「理解したか?英雄集う殺しあいを。さて、貴様はどうするマスター?
 逃げ惑うか、はたまた余と共に願望機に手を伸ばすか」

試すような口ぶりで勇路を見据えるサーヴァント。
対する勇路は、煩悶と混乱の極みにあった。
万能の願望機というものがあるなら。
〈断章〉である〈葬儀屋〉で瑞姫を蘇生したのと同じように…否それ以上に完璧に彼女をよみがえらせるのでは?
過去に〈赤ずきん〉となってしまった幼馴染みとも再び会えるのでは?
……だがしかし。
過去の英雄譚の人物が集うなど、どう考えても大規模な〈泡禍〉だ。
それを前にした〈騎士〉がとるべき行動は一つだ。

「俺は、聖杯なんて認めない。そんなもんぶっ潰してやる」
「ほう?」

その回答は埒外だったか。
感嘆と驚きの混じった声を漏らす。

「あんたは知らねえかもしれねえけど、そういう妙な現象には原因があるんだよ。
 神の悪夢、〈泡禍〉っていうな。俺は、それを許せない。許すわけにはいかない。
 だから、ぶっ潰す」

瑞姫を失い、もはや残されたものなど何もない。
それでも、〈騎士〉の端くれとして〈泡禍〉を見逃すわけにはいかない。
矜持なんて大したものでもない、義務感未満の、ただ一つ残された機能のようなものだった。
……もはや勇路はそれに縋らなければ生きることすらできそうになかった。

「願望機を前にして、ましてやそれに願う浅ましい亡者を前にしてそれを口にするか。
 愉快愉快。
 よかろう。その豪胆さに敬意を表して、一時この身を預けようではないか」

そう口ずさんで、霊体化する。
一瞬びくりとする勇路だが、身をひるがえしてどこへともなく歩みだす。
その勇路の後に続きながら、彼の首元をじっくりとヴラド三世は眺めていた。
勇路は知らない。
〈断章〉の影響により、記憶操作に耐性があったためか、はたまた多くのマスターと同様に聖杯戦争の知識を欠いているゆえか。
……その右手に宿した令呪の意味と、バーサーカーというクラスの危険さを。
狂気に堕ちたサーヴァントは、血を啜るために牙を研いでいることを。


42 : 汝は竜なり、罪在りき ◆yy7mpGr1KA :2016/02/01(月) 01:21:26 Lqmo.G4.0

【クラス】
バーサーカー

【真名】
ヴラド三世@Fate/Grand Order

【パラメーター】
筋力A 耐久A 敏捷C 魔力B 幸運E 宝具A

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
狂化:EX
妄執の行き着く果て。後述の宝具によって獲得しているクラススキル。
吸血鬼の体現として身体能力を大幅に向上させる。
その代償に教義・理性・気品を失っており、会話はできるが余程のマスターでない限り、ヴラド三世はいつしかマスターの血を啜るだろう。

【保有スキル】
戦闘続行:A
戦闘から離脱する能力。
また、敗戦において自軍領地まで生きて辿り着く能力。
……彼に唯一残された、槍兵としての名残。
皮肉にもそれは、吸血鬼という不死身の怪物の在り方に似る、戦闘続行。

吸血:A
吸血行為。対象のHPダウンと自己のHP回復。
更に中確率で誘惑(混乱)のバッドステータスを与える。
なお、吸血行為による誘惑に男女の区別はない。
後述の宝具により獲得している、吸血鬼としてのスキル。

変化:C
闇にあって闇にあらず。自身の姿を変える能力。
吸血鬼としてコウモリ、狼、霧へと形を変えることができる。
後述の宝具によって獲得している、吸血鬼としてのスキル。

無辜の怪物:―(A)
後述の宝具によってこのスキルは失われている。
無辜ならざる真の怪物として現れた彼に、悲しいかなこのスキルは保持できない。

護国の鬼将:―(EX)
後述の宝具によってこのスキルは失われている。
護国の将ではなく、自国の民の血を吸う鬼として現れた彼に、残念ながらこのスキルは保持できない。


【宝具】
『鮮血の伝承(レジェンド・オブ・ドラキュリア)』
ランク:A 種別:対人(自身)宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
後の口伝によるドラキュラ像を具現化させ、吸血鬼へ変貌する。
ドラキュラ伯となったヴラド三世は通常のスキル・宝具を封印される代わりに、身体能力の大幅増幅、動物や霧への形態変化、治癒能力、魅了といった特殊能力と、陽光や聖印に弱いという弱点を獲得する。
バーサーカーとして召喚される場合、この宝具が発動された状態がデフォルトとなる。
本来はA+ランクなのだが、それは伝承の再現という形であるが故の高位の神秘であり、ドラキュラの具現としての召喚である現在はランクダウンしている。
……もしかすると、なんらかの条件を満たすことで本来のものに近づくこともあるかもしれないが。

『血塗れ王鬼(カズィクル・ベイ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:666人
体内で生成した「杭」を射出する。材質は木の他に骨、肉、影、毛髪など様々。
射程距離内に存在する物を取り込み、杭にすることも可能。
宝具、『極刑王(カズィクル・ベイ)』が先述の宝具により歪み、堕ちたもの。そのためランクもBからCにダウンしている。
……もしかすると、なんらかの条件を満たすことで本来のものに近づくこともあるかもしれないが。

【weapon】
・無銘の槍
戦場でヴラド三世が敵の血を流した槍であり。
自国でドラキュラが民の血を啜った杭である。

【人物背景】
吸血鬼ドラキュラのモデルとなった実在の人物。
潔癖な正義感と惨忍性の持ち主であり、生涯に自国民の5分の1を処刑した。
彼の祖国ワラキアは、大国トルコとハンガリーに挟まれた小国。
その国で彼は父を暗殺され、兄を生き埋めにされ、弟と戦うという悲運の人生を送る。
トルコとの戦争では死に物狂いのゲリラ戦と焦土作戦で、トルコ兵を串刺しの山にして敵を幾度も退けた。
しかし政治的事情によりハンガリーに捕らえられ、12年の幽閉生活を送る。
その後、1476年には正教会からカトリックに改宗してワラキア公に返り咲くも、同年弟のラドゥとトルコ軍との戦いで戦死した。
享年45歳。
残虐にして合理的。 人間以上の視野の広さを持つ武人。
だが理解者には恵まれず、裏切りによる失望の中で人生を終えた。
それがヴラド三世の真実である。
故に吸血鬼ドラキュラ、その不名誉を拭うためにヴラド三世はランサーとしての召喚に応じ、聖杯戦争を戦う。
だが、極稀にバーサーカーとして召喚されることがある。この場合、知名度は「吸血鬼ドラキュラ」に準拠する。
余談ではあるが、キリスト教世界で初めてゲリラ戦術(パルチザン)を組織したとの意見もある。
それほどの才能を持ちながら酬われなかったのなら、確かに、正気を失うのも無理からぬ事か。

【サーヴァントの願い】
後世において創作された「吸血鬼ドラキュラ」という汚名の抹消。
……怪物となり果ててしまってなお、願い続ける。


43 : 汝は竜なり、罪在りき ◆yy7mpGr1KA :2016/02/01(月) 01:23:24 Lqmo.G4.0
【マスター】
馳尾勇路@断章のグリム

【マスターとしての願い】
もう一度、田上瑞姫や斎藤愛に会いたい。
……だが騎士として、〈泡禍〉は止めなければならない。
聖杯戦争が〈泡禍〉であるなら否定する。
しかしそうでないとなれば、少女との再会のために彼は路を踏み外すかもしれない。

【weapon】
・安全ピン
服に着けている、何の変哲もない安全ピン。
殺傷能力はあるので一応武器としても扱えなくはないだろうが、主に後述のトラウマ、ひいては断章を起動するための条件付けに用いる。

【能力・技能】
・断章『刀山劍樹』
かつて起きた〈泡禍〉により宿した神の悪意の泡の欠片、それを宿す者を〈保持者(ホルダー)〉といい、彼はそれである。
『自由を奪うモノは檻に』と唱え、安全ピンを手のひらに刺し込むことで発動。
対象の地面や壁面に触れている部分に、接地点から生えた無数の針が突き刺さり動きを封じ、さらには突き刺さった部分から無数の針が対象の体内に湧き出し、肉体を完膚なきまでに破壊する事ができる。

詳しく言うなら『トラウマをフラッシュバックさせることでその原因もフラッシュバックさせる』能力のような現象。
彼の場合、母の虐待――畳一面に針を敷き詰め、その一室に閉じ込められる。身じろぎするだけで針により傷を負う――がトラウマとなっているため、そのことを思い出すことで虐待の状況を再現=大量の針による殺傷を引き起こす。

彼の母は狂気に陥る前からつらく当たっており、ついには「私の自由を奪うものは檻に入っていればいい」と言って針の山の中に息子を閉じ込めた。
そのトラウマを想起する事象で身を固めることで断章を放つ。
引き起こす現象は極めて強力だが、発動にはトラウマをフラッシュバックさせる、自傷行為などの条件が必要。
精神肉体両面でのダメージは激しく、トラウマに心を壊せば自信を含めた全てを貫く「剣山刀樹」の再現となる。

断章とは「無意識に住まう神の悪意の欠片」であり、つまり勇路はアラヤの悪意とそれに伴う魔力を受け取っている。
例えるなら「この世全ての悪」の泥ではなく泡を宿している。
膨大な魔力を持つが、もしこの泡が弾けて器(勇路)の外にあふれたならそれは〈泡禍〉という悲劇を招くだろう。
恐らく彼のそれは、針の山による串刺し。

そしてすでに「神の悪意の欠片」を宿しているため彼の意識の容量はすでにほぼ一杯であり、他の要素が入り込む余地が少ない。
そのため断章保持者は断章、ひいては神秘を伴う異能に耐性を持つ。
記憶を奪う断章に触れても不快感ですみ、侵入を禁じ認識を阻害する断章の効果も受けず、強酸による溶解や鳩の爪によるダメージもそれが〈泡禍〉に由来するものならば少なく済む。
……だがあくまで耐性にすぎず万能ではない。
人魚に変えられてしまう断章も少量なら傷の治癒でとどめることができるが、過剰に与えられれば異形になってしまう。
サーヴァントによる異能などへの抵抗は限られるだろう。
そして逆もまたしかり、神秘の塊であるサーヴァントへの断章によるダメージは少ない。

纏めると「魔力タンク」「そこそこの異能耐性」
「詩を唱え自傷行為をすることで視界内の敵の接地点から大量の針を生やす)」
「ただしめっちゃメンタル削るし、制御失敗すると『この世全ての悪』的な代物の欠片が暴走してヤバイ」


44 : 汝は竜なり、罪在りき ◆yy7mpGr1KA :2016/02/01(月) 01:23:54 Lqmo.G4.0

【人物背景】
〈泡禍〉によって発狂した母親に虐待された過去から〈保持者〉になった少年。
〈騎士〉になる事を執拗に望んでいるが、世話役の女性、四野田笑美の一存で却下され続けており、自他共に認める実力があるにも関わらず、自分が一人前として扱われないことに対して相当の苛立ちを感じていた。
騎士という役目に執着する裏には勇路自身も自覚している強い英雄願望があり、 泡禍により発狂した母親に奪われた誇りを取り戻したいという想いや、自身の妹を救えなかった過去の負い目が根底にある。
顔も服装も性格も一口に言えば不良であり、言動も非常に横暴かつ粗野。
左襟と左袖に大きな安全ピンを6本ずつ刺している。このピンはアクセサリなどではなく、彼にとっては武器。
『赤ずきん』の〈泡禍〉の中で、援護に来ていた〈騎士〉、〈雪の女王〉こと時槻雪乃に重傷を負わせ、笑美から制裁を受け、かけがえのない友人である田上瑞姫を失い、最後の最後まで幼馴染が〈潜有者〉だという事実に気づかなかった。
最終的には「笑美を困らせるために事件の原因を匿って瑞姫を見殺しにした」と詰った元同僚の〈騎士〉を殴って逃亡し、行方をくらませる。
別のロッジの世話になり、また死者をよみがえらせる〈保持者〉の協力で瑞姫とともに過ごしていたが、その〈保持者〉が消失したことで瑞姫も消滅し、絶望した瞬間の参戦。

【令呪】
右掌。
人型の両腕と心臓を串刺す三本の針。
両腕に刺さった針で二画、心臓に刺さった針と人型で一画。

【方針】
〈泡禍〉の原因を突き止め、どうにかする。
しばらくはヴラドもそれに従うだろうが、どこかで牙をむかないとも限らない。
そして秘匿された真実を知ったとき、この方針が歪まないとも限らない。


45 : 汝は竜なり、罪在りき ◆yy7mpGr1KA :2016/02/01(月) 01:24:44 Lqmo.G4.0
以上で投下をを終了します


46 : ◆TQfDOEK7YU :2016/02/01(月) 02:31:32 irg3VblI0
投下します


47 : 出張の時間 ◆TQfDOEK7YU :2016/02/01(月) 02:32:13 irg3VblI0



「XXX-XXXX - Tentacle organisms (触手生物)」
 Object Class: Keter
説明:
 XXX-XXXXの見た目は丸顔で何本もの触手を持つ、タコに近い生物です。基本的にアカデミックドレスを着用し、三日月の刺繍された巨大なネクタイをしているのが特徴です。
 一見すると無害な生物ですが、月面の七割を破壊した張本人であり、20XX年4月より数えて一年後には地球を破壊すると宣言しています。XXX-XXXXはマッハ20もの超高速で移動を行い、専用の物質で作られた武器でなければ彼に一切の傷を与えることは出来ません。
 XXX-XXXXを殺害するためにこれまで幾百もの暗殺者が送り込まれましたが、その全てが軽くいなされたどころか、XXX-XXXXにより「手入れ」を施される事態に陥りました。
 XXX-XXXXは現在収容を拒否し、日本の椚ヶ丘中学校なる場所で教鞭を執っています。
 彼はどういうわけか件の学校で「落ちこぼれ」と呼ばれている30人の生徒達の手で殺されることを望んでいるらしく、その意図は誰にも読めていないのが現状です。

補足情報 #XXX
 XXX-XXXXは人間の女性、それもバストDカップ以上の乳房を見ると興奮するらしいとの調査報告があります。
 また女性に扮装してスイーツバイキングに並ぶなどの奇行に及ぶ姿も確認されており、これらを弱点として利用することも可能かと推測されています。


                                .


48 : 出張の時間 ◆TQfDOEK7YU :2016/02/01(月) 02:32:36 irg3VblI0



 椚ヶ丘学園理事長――浅野學峯という男がいる。
 いつでも頂点の高みから見下ろして、究極の教育を追求し続ける怪物のような男だ。
 學峯に逆らった者は誰であれ、相応の目に遭わされた。
 ある者はたっぷりと「教育」され、ある者は身分を失い、ある者は見せしめとして底辺の烙印を押された。
 学園の中で、浅野學峯に逆らえる人間は存在しない。
 そう――奴の息子の僕でさえも。学校という枠組みの中では、奴に反旗を翻すことは出来ないのだ。

 
 自分の父親を異常だと思うようになったのは、いつからだったろうか。
 詳しい時期は覚えていないが、物心ついた時には既に、父の心が理解できなくなっていた筈だ。
 自分で言うのも何だが、僕の父親は才人だ。学問、武術、経営術、話術――全て常人とは桁が五つは違う。
 徹底した合理主義に基づいて、創立僅か十年で自分の学校を全国指折りの優秀校に変えた敏腕。
 誰であろうと蹴落とし、勝利することを第一に据える奴の英才教育を、実息の僕も例外なく受けてきた。


 その結果、僕は強くなった。
 生徒会長の座に満場一致で押し上げられ、勉強においても並ぶ者はいない。
 スクールカーストの高みを独走しながら中等部を卒業し、高等部に移行しても変わることなく。
 逆に言えばそれは永遠に代わり映えのしない、父を支配し返す途方もない目標を追い求め続けるということ。
 線路の上を歩み続けるような、行き先の分かりきった毎日――それがある日突然、雲行きを変えた。

 見せしめの大義の下に侮蔑と差別を延々繰り返してきた、遥か格下の最底辺(エンド)によって。
 五英傑の最強伝説は破られ、万全の準備を期した体育祭でも敗北を喫した。
 今や本校舎にも彼らE組へ肩入れをする生徒が出ている始末。
 こんなことは僕にも、そして父にも理解不能な事態だった。

 何かが変わり始めている。
 絶対に変わることのない筈だった何かが、誰にも予測できない方向に転がってゆこうとしている。
 誰もがそれを理解し、理解した上で目を逸らしている。
 僕も、友も、統べるべき下々の生徒達も――きっとあの学校に携わる誰もが。
 深すぎて底も見えない谷底で彷徨っていた小動物たちに芽生えた牙に怯えている。
 いつか自分達を食い殺すのではないかと、半ば本能的な恐怖をさえ抱いて。


「……これも、その変化の一過程か?」

 苦笑交じりに呟く口の中は、血の味で満ちており。
 目の前には、無惨に崩れ、そこら中にクレーター状の破壊痕が残された景色が広がっている。
 つい数分前まで帰り道を共にしていたクラスメイトの『残骸』も、追加だ。
 その真ん中で、両の目をぎらぎらと赤く輝かせ、六本の腕にそれぞれ大斧を持った化物が雄叫びをあげていた。
 見てくれ通り、ただの不審者や異常者とは訳が違う。体の構造そのものも、それから繰り出される出力も、何もかもが人間とは次元違い。格闘技の応用も、まったく焼け石に水。
 足技は軽々止められ。授業で習った柔術を実践しようと試みたが、それも無駄。
 結果がこれだ。この様だ。助けようと思ったクラスメイトは惨殺、僕も肋骨の何本かは確実にやられている。


49 : 出張の時間 ◆TQfDOEK7YU :2016/02/01(月) 02:33:27 irg3VblI0

「やれやれ……」

 ずしりずしりと地響きを伴って歩み来る『それ』を見ると、ついそんな声が漏れてしまう。
 流石にこればかりはどうしようもない。
 相手は正真正銘、本物の超生物だ。
 文武両道、稀代の天才。人が僕をどう呼ぼうと、人間で太刀打ち出来る相手の次元を明らかに過ぎている。



 大斧が、ゆっくりと鎌首を擡げた。
 これまでの人生に後悔があるかと言われれば、正直なところ、それほどでもない。
 何をしても常に一位だった。
 誰だろうと、僕に逆らえる者などいなかった。
 十数年間ぶんの人生に通知票で評価を与えるなら――評価は間違いなく、『10』。

「いや……」

 違う。
 走馬灯になってくれるほど上等な思い出なんてものはない。
 友人は居たが、熱を込めて語れるほどに心血を注いだ親友は居なかった。
 家族との絆など、言わずもがな。
 最後まで自分は、あの化物を理解することも、超えることも出来なかったのだから。

「『9』……だな――」

 振り下ろされる断頭台の刃。
 支配し、守るべき生徒たちをゴミのように殺したそれが、ゆっくりと落ちてくる。
 死ぬ。
 殺される。
 最後の最後に、父という存在を超えられなかった――あれだけ口癖のように言っていた、将来支配してやるという野望すらも果たせず、何もかもあの男に負け、手のひらで踊らされたままの劣化コピーとして。

 浅野学秀は、ここで――



「いいえ、『8』ですねぇ」



 殺される――その筈の未来を、変える黄色い触手が伸びた。


50 : 出張の時間 ◆TQfDOEK7YU :2016/02/01(月) 02:33:49 irg3VblI0



 その生物を形容することは、どうも出来そうになかった。
 人間よりも大きな体長で、教師風の服装に身を包んだ黄色い体表面の『何か』。
 人間の手足の数倍には達するだろう数の、異形の触手。
 強いて言うなら、放射能か何かで異常成長を遂げたタコ――だろうか?
 いかにも間抜けそうな面をしていながら、どこか不思議な安心感がその背中にはある。
 
「浅野学秀くん、君は確かに優秀です。
 しかし、たかだか十数年で終わってしまう人生で『9』とは、幾ら何でも評定が甘すぎますねぇ」

 赤く光る目の大男が、六本の斧を代わる代わるに振り回して。
 割って入った正体不明の触手生物を細切れに変えようと、目にも留まらぬ速さの連撃を叩き込む。
 武器を持って戦いに走ったクラスメイトは、腕三本を使った連撃で肉片に変えられた。
 手数は単純計算で、あの二倍だ。死ぬ。確実に、この触手生物は殺される。
 何故こいつが自分の名前を知っていたのか――そんなことを考える間もなく、事態は更なる急転を迎える。
 
「ヌルフフフ、蚊が止まってしまうような攻撃ですねぇ」
「■■■……?!」
「あまりにも遅いので――」

 振るわれた筈の、六本斧。
 その全てが、あの至近距離であったのに、触手の一本すら切り落とせていない。
 何が起こったのか、僕にはそれを理解することさえ出来ずにいた。
 ただひとつ、確かに見取ることが出来たのは。

「先生、少々お手入れをさせていただきました。
 貴方の斧捌きは見事ですが、そう錆びた刃では切れ味が鈍る。
 斧とは断ち割るもの。打撃の威力に加えて、切断という概念も重要となる扱い以上に手入れの難しい武器です。
 それほどまでに錆び付いてしまっていては、本来の威力など到底出せませんよ」
「■……■■■■■――――!!」

 化物が持っていた斧の一本一本が、錆の一つも残らず綺麗な鏡面に磨き上げられていた。
 おまけに刃にあった刃毀れも、あの一瞬でどこからか調達してきたらしい工具できっちりと修繕されて。
 あれだけ恐ろしかった化物の大斧は――正直なところ。
 あまりにも綺麗になりすぎて、あの時の恐ろしさ、悍ましさを完全に失ってしまっていた。

「■■■■■■■■ゥゥゥゥゥ――――!!!」

 殺意に満ちた声。
 正直、無理も無いだろうと思う。
 彼奴にしてみれば、殺すべきターゲットにおちょくられているようなものだ。
 しかしそれでも、この生物には一発も当たらない。
 全部避けている。受け流しすらしない。ほんとうの意味で、一発も当たっていない。


51 : 出張の時間 ◆TQfDOEK7YU :2016/02/01(月) 02:34:20 irg3VblI0

「理性が消失しているという欠点はありますが、しかし見事な腕です。
 理性さえ残されていたなら、きっとさぞかし見事な戦士だったのでしょうねぇ――しかし」

 触手生物が、動く。
 マッハ一桁の次元など飛び越えた触手が、誰にも反応できない超速で振るわれる。
 六本の斧のその全てを敵の腕から奪い取り、それらを四方八方、全くの別方向へと投擲。
 マッハの速度で投擲された斧は亜音速の速度で建物を、柵を突き破り、見えなくなった。
 あれでは取り戻しに向かうにも時間が掛かる。
 そしてそんな大きな隙さえ見逃してしまうほど――

「貴方は全く無関係の、未来ある中学生を殺した。
 如何なる願いがあろうとも、その時点で英雄、英霊としては落第点だ」

 マッハの世界は、遅くない。

「――――■ッ……」

 振るわれた触手の一閃が、斧使いの化物を視界の彼方まで吹き飛ばしていった。
 これまでのやり取りは、時間に直せば僅か十秒ほどの間に行われたものだ。
 あの忌まわしい化物は、果たしてどこまで足りない脳味噌で事態を認識できたのだろうか。
 ……きっと、良くて半分だろう。
 事を終えた触手生物は、遠くを見据えるように目を凝らして、自分が敵を吹き飛ばした方向を向き、言う。

「今のは大ホームランでしたねぇ。霊核破壊とまでは行っていないと思うのですが……」
「…………あんたは」

 誰だ、とは続かなかった。
 続く前に、触手生物が振り返る。
 間抜けな顔と見る者の毒気を抜くような色彩。
 それは、紛れもなく確実に――僕のこれまでの人生には、影も形も見せないような姿をしていた。

「ライダーのサーヴァント」
「ライダー……? サーヴァント……? 何を言っている。あんた、さっきの化物について何か知っているのか?」
「やや、これは失礼。失念していました。君はまだ聖杯戦争については、ずぶの素人もいいところなのでしたね」
「やけに腹立つ言い回しだな……」

 とはいえ、今の発言は見逃せない。
 今、この触手生物は「聖杯戦争」なる耳慣れないワードを口にした。
 聖杯。今日び中学生、下手をすれば小学生でもゲームや漫画を通じて知っているような単語だ。
 キリスト教の伝承を中心に様々な形で語り継がれる、奇跡の盃。
 神の子を貫いた槍やその血を吸った聖骸布に並ぶ知名度を誇る聖遺物。
 ……無論、実在の可能性など毛ほども信じてはいないが。


52 : 出張の時間 ◆TQfDOEK7YU :2016/02/01(月) 02:34:49 irg3VblI0

「さて、聖杯戦争については後々語るとして。
 ……そうですね。私のことは――」

 ニヤリと、黄色い顔で笑って。
 触手生物――いや。

「『殺せんせー』と、そうお呼びください。
 短い間ですが、私は君のしもべであり、教師となる者です」

 『殺せんせー』は、そんなことを言ってのけた。
 
 
 それから、僕は知る。
 この地で起こる聖杯をめぐる戦争を。
 願いを叶えるという触れ込みに、しかし僕は惹かれなかった。
 願いとは自分の力で叶えてこそのものだ、だとか、そういう気障な台詞を吐くつもりは毛頭ない。
 ただひとつ、たったひとつのシンプルな答えだけが、僕の聖杯を求めない理由。


「この僕が――聖杯などという与太話に縋らなければ叶えられない願いだと? 笑わせる」


 この浅野学秀に不可能はない。
 命さえあれば、父すら必ず追い越して、抱いた願いなど全て叶えられる。
 ならばこんな障害物は、とっとと飛び越えてしまうに限るというものだ。
 聖杯戦争からの脱出。勉強ではどうにもならない初めての課題に、この日僕は向き合うことになった。





 マッハ20の超生物。
 月の破壊者。
 壊すしか能のないモンスター。
 様々な名で呼ばれたライダーのサーヴァントは、ひとり心中にて述懐する。
 彼が、どうして浅野学秀の名を知っていたのか。
 その答えは、単純だ。
 学秀が感じていた、変化の波。
 それを引き起こすに至った影の立役者こそ、このサーヴァント。
 ライダーはいつだとて学秀の近くに居た。同じ街で、教鞭を執っていた。


53 : 出張の時間 ◆TQfDOEK7YU :2016/02/01(月) 02:35:14 irg3VblI0

「浅野学秀――まさか君を教えることになるとは思いませんでした」

 ――以前は敵として。
 ――今度は、教え子として。
 英霊の座から呼び出された超生物は、ヌルフフフと笑う。
 
「君を死なせてしまっては、君のお父さんに何をされるか分かったものではありませんからねぇ。
 きっちり教え抜いて、君を元いた場所へ送り届けてあげましょう。
 君は天才だ。世に出れば、必ず大人物になる。決して、こんな場所で失われていい命ではありません」

 椚ヶ丘中学校の暗殺教室。
 特別出張編――開始。


【クラス】
ライダー

【真名】
殺せんせー@暗殺教室

【パラメーター】
筋力:B 耐久力:B 敏捷:A+++ 魔力:A+ 幸運:C 宝具:A

【属性】
秩序・中庸

【クラススキル】
対魔力:-
魔術に対する守り。
ライダーは例外的に、このスキルが殆ど機能していない。
彼を殺すことは、理論上は習いたてのごく小さな魔弾でも、使い魔を媒介した魔力攻撃でも可能。
無論、当てられればの話だが。

【保有スキル】
無辜の怪物:C
星の破壊者、人類文明の終焉を齎す超生物。
本来月を破壊したのは彼ではないが、ライダー自身がそう認めていることからその在り方が改竄された。
「星」の属性を持つサーヴァントに対して、ライダーの放つ攻撃は特攻の性能を発揮する。

超生物:A
禁断の研究の末に生み出された存在。
マッハ20での超高速移動、再生機能に脱皮機能、対先生物質を内包した武器以外から一切の悪影響を受けないなど固有の性質を複数有している。
しかしサーヴァントの格に当て嵌められたせいか、魔力を含んだ攻撃であれば何であれ、ライダーにダメージを与えることが出来るようになっている。但し、劇毒物の類は変わらず水酸化ナトリウムを除いて完全無効。

教育:A-
人を教え、育てることにかけて、ライダーは間違いなく究極の域にいる。
彼は他者の悩みや本質を見抜き、その解決策やより良い方向での活用策を見出すことに非常に長けている。
マイナス表記が付いているのは、彼が時折する教師らしからぬ行動や人間味故である。

気配遮断:A
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を絶てば探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは非常に難しい。
ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。
このスキルは、超生物となる前の彼の名残である。

【宝具】

『我が愛しき椚色の日々よ(アポイント・デイズ)』
ランク:E 種別:対人 レンジ:- 最大捕捉:-
彼の生徒が見つけ、時には暗殺の手段として実践してきた数々の弱点。
当然これは、ライダーにプラスの作用をもたらす宝具ではない。
しかし一年の時間を共にした愛すべき生徒たちが成長と共に見出してきた成果物が、教師たる彼にとってたからものでないわけがなかった。

『完全防御形態(パーフェクト・モラトリアム)』
ランク:A 種別:対人 レンジ:1~100 最大捕捉:100
ライダーの奥の手中の奥の手。
透明な球体の中にオレンジ色の顔のみの球体が入った「完全防御形態」へと変化することが出来る。
球体の外側は高密度に凝縮されたエネルギーの結晶体で覆われており、外部からのあらゆる干渉を受け付けない文字通りの「完全防御」を実現する。
但しこの状態の彼は全く身動きが取れず、無防備になるのを強いられてしまう。完全防御形態は24時間後に自然崩壊するため、そこで彼は肉体を膨らませ、エネルギーを吸収することで元に戻る。
また、この宝具の応用系として全身ではなく触手の一部を圧縮してエネルギーを取り出し、強力なエネルギー砲を放って攻撃することが可能。

『破壊生物・激情体(フェイク・ベルセルク)』
ランク:E 種別:対人 レンジ:- 最大捕捉:-
ライダーが真に怒りを抱いた時、彼の顔面、更に怒りが強ければ全身が黒く変色する。
この状態のライダーは筋力、耐久、敏捷、魔力のステータスが上昇し、戦闘時に更なる有利を獲得できる。


54 : 出張の時間 ◆TQfDOEK7YU :2016/02/01(月) 02:35:45 irg3VblI0

【weapon】
触手

【人物背景】
月を破壊したと謳われるマッハ20の超生物。
その正体は、かつて最強の名をほしいままにした殺し屋『死神』。
愛する者との誓いの果て、彼は弱くなることを願い、欠陥だらけの怪物に姿を変えた。


【マスター】
浅野学秀@暗殺教室

【マスターとしての願い】
聖杯戦争からの脱出

【能力・技能】
親譲りの文武両道。
特に頭脳は天才的なものがあり、知識力も応用力も中学生の領域を超越している。

【人物背景】
椚ヶ丘中学校理事長、浅野學峯の実子。
父に強い反発心を抱いており、彼を引き摺り下ろして頂点に立つことを望む。
しかし仲間思いな側面の持ち主で、次第に父へ反発心とはまた違った疑問を抱いていく。

【方針】
聖杯を手に入れることは考えていないが、敗北を享受するつもりはない。


55 : ◆TQfDOEK7YU :2016/02/01(月) 02:35:56 irg3VblI0
以上で投下を終了します


56 : 名無しさん :2016/02/01(月) 03:13:28 viKVMU7.0
投下乙
あ、そうか。こいつってE組とはやりあってたけど言われてみればころせんせー直接は知らないんだっけか?
面白い主従だな


57 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/01(月) 08:06:27 yxTfPXsg0
皆様投下乙です。感想は後ほどいたします。
クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、今回使用させていただいたキャラクターの参照ページを置きます。
SCP-073:ttp://www.scp-wiki.net/scp-073
SCP-076:ttp://www.scp-wiki.net/scp-076


58 : ◆.wDX6sjxsc :2016/02/01(月) 10:00:09 vlf5Uk720
投下します


59 : ◆.wDX6sjxsc :2016/02/01(月) 10:01:26 vlf5Uk720

誰だと思う? カラ松さ

眉の角度が鋭いだろ? なんといっても次男

責任はないし自立もしない

最後まで実家から離れないぜ〜

まぁ 同じ服が六着はないよなぁ…

今この瞬間を楽しもう

俺に会えてよかったなぁ

この出会い それが奇跡!

男の六つ子と女の六つ子 ゲームにならないだって?

ふっ 確かに同じカードだからな

だけどハートの数字をみろよ

運命のカードの中で選ばれし者が俺

君が選ぶのも 俺だろ?

働かない我が人生 セラヴィ!




60 : 松野カラ松&アサシン ◆.wDX6sjxsc :2016/02/01(月) 10:05:06 vlf5Uk720



世界がもう少し自分に優しければいいのに。
ナイスガイなロンリーオンリーウルフ、俺、松野カラ松はふと、そんなことを願った。
何時もの俺らしからぬ思考ではあったが、無理もない。
六つ子の中で俺だけが、何と言おうか…何時もの如く不運だった。

六つ子の中で彼だけ梨を食べられなかったり、
ダヨーンに容赦なく爆破されたり、
チビ太に丸坊主にされたり、
病気に苦しむブラザー達のために最上級で最高級な雪解け水を届ける前に風邪がぶり返したり、
最近では、我がたった一人の兄であるおそ松にホ○だと誤解されたりもする。

どう考えてもおかしい
俺達六つ子は全員同じ地平、チビ太の言う様に底辺に立っているのではなかったのか。
地下の底。そう言えばダークでシックな雰囲気。この俺のイメージにもあっている。

ついでに、四男である一松は何時も俺に手厳しいが、これは彼なりの愛情表現だろう。
今日の俺と一松の会話は「クソ松は今日もクソ松だな」だった。
会話になっていない、と言うのは禁句だ。
ブラザー達、及びカラ松ガールズ以外の存在には俺が理解され難い存在であることなど等に分かっている。
そんな俺だからこそ、他人との間に一線を引いてしまう一松の気持ちは分かっているつもりである。

俺の様な存在への救済として、ノーベルカラ松賞を創るべきなのだ。


ブラザー達に悪感情だと抱くはずもない。
何故なら俺たちは兄弟なのだから。
だが、もう少し…もうほんの少しだけブラザー達が俺の発言を聞き入れてくれればそれで満足なのである。

そんな俺が、聖杯戦争と言うデンジャー且つハタ迷惑な催しに招待されてしまったらしい。
フ、困ったものだ。聖杯は余程俺に会いたいと見える。俺はハタ迷惑は御免なのだが。
最早聖杯すら、カラ松ガールズの一員と見ていいだろう。

屋根に上りギターを構えスカイを仰いでいた俺は視線を外し、傍らに佇むサーヴァントを見た。

その男は着古したコートを纏い、斜めに傷が奔った精悍そうな顔を引き締め俺ではないどこかを見ていた。


61 : 松野カラ松&アサシン ◆.wDX6sjxsc :2016/02/01(月) 10:06:00 vlf5Uk720

この貌…俺は知っている!

「始まったのか……遂に」

男は驚いたような表情をして俺を見た。
今にも凄ェ!と俺を称賛してきそうな顔だ。
俺も思わずでかした!と返してしまいそうになる。
此奴はブラザー達ではないが決して俺を無視しない。
話が通じているかは別問題ではあるが。


「あぁ……始まる」
「フッ、回りだしたか…運命の歯車。ディスティニー・ギア
 己を高める戦い…聖杯戦争」
「……それで、お前はどうするつもりだ?」
「フ、決まっている。ノープランだ!」

サングラスを外し、サンシャイン…を浴びる俺はほくそ笑む。
すると傍らの男から奇妙な音が聞こえた。
キュルキュルと何かの筒のふたを開けるような…そんな音だった。
続いて、カポッと、何かが外れる音。俺は思わず男を見る。


すると、俺の首筋には鉈の様なククリナイフのような無骨な刃物が据えられていた。
―――ナイフ?


「ひいいいいいいい!な、何をするんだアサシン
 俺は確かに無意識に周りを傷つけてしまうイタイ男と呼ばれるが、
刃物とお近づきになろうとするほど飢えちゃいないぜ」
「俺は聖杯を獲らなければならない。お前には、その覚悟があるのか」

男は…アサシンはそうやって俺に問う。
納得のいかない答えならば、その義手の刃は俺をたやすく切り裂くだろう。
本来ならば刺される事は慣れているような気もするが、ここでは異常にその事実が恐ろしく思えた。
何かおかしい、普段の俺ならばひいいいいい!などと無様な悲鳴も上げないような気もした。
緊張で、のどが渇く。張り付いたようだ。
咄嗟に、俺がここで死んだらブラザー達はどう思うだろうと夢想する。
………あっさりと流される図しか浮かばなかった。
死んだ事すら、気づかれないかもしれない。


だが、それでも。


62 : 松野カラ松&アサシン ◆.wDX6sjxsc :2016/02/01(月) 10:07:02 vlf5Uk720


―――カラ松はそれでいーんだよ。周りの感覚がバカになればいいんだ―――


屋根から見渡せる景色の端に、パチンコ屋から出てくるおそ松が見えた。
河原では十四松が一松を使って素振りしているのが見えた。
チョロ松はハロワに行くふりをしていたが、アイドルのライブのチケットが鞄に入っていたのを俺は知っている。
トド松はまた懲りずにバイトをしているらしい。

六人みんな揃って一生全力モラトリアム。明日も昨日も怠惰なよいこ達。
あいつ等が俺をどう思おうが、あいつ等には、俺が必要なのだ。
ハアハアといつの間にか息遣いが荒くなっていた。

かすれた声で返答を絞り出す。


「俺は…生き残る……」


それが松野家次男松野カラ松ではなく、カラ松ができた唯一の答えだった。

そして、それは功を奏した。

「悪かったな。脅かして、だが必要なことだった。
 ……兄弟は大切にしろ」

アサシン―――宮本明はそう言って俺に背を向けると、霊体化し姿を消した。
もう、その気配は伺えない。
それでも、消え去るその刹那…何か兄弟と言う言葉に凄絶な思いを抱いている。
そんな気がした。

いけない。これ以上いけない。
アサシンと言う男。アサシンから聞かされた聖杯戦争。殺し合い。
その雰囲気に呑まれて俺らしくなくなっている様な気がする。
これでは全国数百万のカラ松ガールズを失望させてしまう。

「フッ、まともではない戦い。まともではない試練。
 俺に相応しい……バーン!」

これでよし。


63 : 松野カラ松&アサシン ◆.wDX6sjxsc :2016/02/01(月) 10:08:02 vlf5Uk720





俺は救世主などではない。
元よりそんな呼び名に執着はないが、本土の人間たちは俺をそう呼んでいた。
だが、俺は師匠も親友も、心を寄せた女も、兄貴さえ生かすことが出来なかった敗残者だ。
彼岸島を離れた、本土でさえも死守できなかった。
そして、兄を手にかけた俺が、何の因果か一人の兄と四人の弟を持つ男が俺の主となった。
その事実は皮肉ですらある。


だが師匠たちの遺志を継ぐには、聖杯に頼る他、選択肢などありはしない。
万能の願望気に願いでもしなければ―――人が、日本を取り戻すなどもう不可能だろう。
故に、必ず聖杯を手にしてみせる。
吸血鬼を、根絶してみせる。


東京タワーを仰ぎながら手にした丸太を、俺は強く握りしめた。


64 : 松野カラ松&アサシン ◆.wDX6sjxsc :2016/02/01(月) 10:10:24 vlf5Uk720


【クラス】
アサシン
【真名】
宮本明@彼岸島 
【属性】
中立・中庸

【パラメーター】
筋力:B 耐久:A 敏捷:B 魔力:E 幸運:D 宝具:C++


【クラススキル】
気配遮断: B
 数多の吸血鬼や邪鬼、蚊の大群をもやりすごしたという逸話から。
サーヴァントとしての気配を絶つ。
 完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。


【保有スキル】

戦闘続行:B
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

無窮の武練:C
常人の数倍の腕力を持ち尋常ではない耐久力を誇る吸血鬼数十人を瞬殺するほど
いかなる戦況下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。
また如何なる物でも武器として使いこなせる技巧も含む。


頑健:C
催眠ブレスを吐く混合血種(アマルガム)である邪鬼を見事打倒したという逸話から。
対毒を含み、耐久力も1ランク向上させる。
 

【宝具】

『丸太』
ランク:C++ 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大補足:1〜20
彼の主戦場であった彼岸島でのメインウェポン。
ある時は吸血鬼や邪鬼を打ち倒す武器として、ある時は落下する明の救世主として、
またある時は本来の使い方でもある攻城兵器として彼を救ってきた。
その逸話から対化け物、とりわけ吸血鬼にはより強い威力を発揮する。
また、攻城兵器としての側面もあるためか陣地破壊の力も備えている。
マスターもこれを振り回せば中級の使い魔程度ならば一蹴することが可能。
ただし、使用の際にはアサシンの所持の確認と鼓舞が必要。
一説にはアーサー王のエクスカリバーと同等とも、世界樹の枝からできているとも語られている。

【weapon】
義手の仕込み刀と一本の無銘の刀。

【サーヴァントとしての願い】
吸血鬼の根絶。

【人物背景】
彼岸島にて吸血鬼と戦い続け、そして仲間を喪い続けてきた数奇な運命の青年。
奮戦虚しく遂に勝利できることは無く、吸血鬼の首領は日本を占領した。
そんな絶望の中でも彼は諦めず、意志だけを抱き、生き残りの人間に救世主と崇められながら吸血鬼の根絶を目指し戦う。
例え、嘗ての仲間を手にかけても。

【マスター】
松野カラ松@おそ松さん

【マスターとしての願い】
生き残る。

【weapon】
クソダサい服装。


【能力・技能】
存在が痛い。

【人物背景】
松野家の一卵性六つ子の次男。
所謂中二病でよく他の兄弟で相手にされないことが多い。
実はガラスのハートで、中二なキャラもたまに剥がれる。
他の兄弟より比較的温厚だが次男だから責任はないし自立もしない、最後まで実家から離れないなどと宣っており、彼もとどのつまりダメ人間である。
一応、聖杯戦争が殺し合いであることはアサシンから聞いているが、兄弟がレプリカだとはまだおぼろげにしか気づいていない。

【方針】
とりあえず生き残る。


65 : ◆.wDX6sjxsc :2016/02/01(月) 10:10:58 vlf5Uk720
投下終了です


66 : ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/01(月) 13:21:55 MV66xQIc0
投下します。


67 : ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/01(月) 13:22:45 MV66xQIc0
 
 それは幻想郷で起きた小さな異変にして人理の危機。
 しかしここに巫女も守護者も居やしない。

「今日も地底は核融合日和ね」

 莫大な熱エネルギーを地底に齎すは地獄の鳥。黒い羽根と赤い目を持つ太陽の神性を宿した少女。名は『霊烏路 空』という。
 かつて神より貰った太陽の力、核エネルギーをもって地底を照らし、地上に新たなる灼熱地獄を生み出す……はずだった。
 しかし、地上の巫女(いっぱいいるが見分けがつかないため巫女とだけ表現する)に敗北し、あと何をするつもりだったか素で忘れてしまったため、とりあえずいつもの通り幽霊を毎日焼く仕事をしながら遊んでいた。

「暇ね。私の中の核反応が暴れたいと囁いているわ」

 有り余る力を手に入れた少女。そんな少女が勤める旧灼熱地獄に異物が紛れ込む。
 もしかしたら異物ではなく怪文書というのかもしれないが。
 
「異物発見!」

 飛翔していた少女は最深部にてとある物が落ちているのを発見して急降下、着地した。

「これは……流石の私でもわかる!
 これは、なんということだ!
 これは、そう、本だ!」

 本ではなくホチキス止めされたとある学会の実験結果をまとめたレポートだった。
 英語で書かれており、もしも彼女に英語の技能があればトリニティ実験やロス・アラモスという言葉で何の実験なのかわかっただろう。
 
「なんだこの汚い字! 全く読めないぞ!!」

 もう一度言おう。英語である。
 あと綺麗な字で書かれた日本語でも彼女が読めるかどうかは怪しいことも付け加えておく。

「何でこんなものがここにあるんだろう」

 ここは最近活性化した間欠泉センター最下層。灼熱地獄である。人が来ることなど滅多に無いし、紙媒体のモノなど紛れ込む可能性は輪をかけてありえない。
 ならばコレは何か。奇怪極まるこの状況はどういうことか。体がぶるりと震えて寒くなった気がした。

「とにかくさとり様に聞いてみよう」

 そう思って浮いた時だった。
 気流の影響か、紙がめくれて一番最後のページが露わになる。

「あれ?」

 裏側に何か読める文字を発見した。
 難しい字と平仮名が混ざっており、まるで馬鹿でも読めるようにしているというように難しい字にはふりがながされている。

「にゃるしゅたん、にゃるしゃがんな、にゃるしゅたん、にゃるしゃがんな、いあ。
 くりかえすつどにごど、みたすときをはきゃくする?」

 声に出して読んでみたが何を意味するかさっぱりわからない。
 しかし、変化はあった。
 間欠泉センターに乱気流が発生する。
 暴力のごとき魔力が、地獄中の怨霊を集めて煮たがごとき悪意が氾濫する。

「────」

 空は眉をしかめ、油断なき瞳をソレを見る。
 空は無知ではあるが無能ではない。
 ここに現れたのが自分に、ひいては主に害なす敵であると本能のうちに理解した。


68 : ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/01(月) 13:23:03 MV66xQIc0
 乱気流が収まった時、そこには人間……いや、男がいた。
 もしも空に服装についての知識があれば、その男が一分の隙も無い完璧な紳士服を着こなしていることに気が付いただろうか。いや、知識があったとしても今の彼女には余裕が一切無いからどのみち変わらないだろう。

「お前は、何だ?」

 目の前のコレは人間ではないと感じていた。サーヴァントであるとかそういう事ではなく、もっと根源的なもの。
 言うなれば夥しい怨霊を固めて作った人形や人に擬態した害虫の群れを想像させる悪神(サバエ)そのもの。

「問おう」

 男は言った。

「私を使役するマスターよ。君は何者かね?」
「私は霊烏路空(れいうじうつほ)だ! お前は誰だ」
「私の名前はアンブローズ・デクスターという。クラスはキャスターだ。これにて契約は完了した」
「五月蝿い。知るか。お前なんか追い出す前に排除してやる」
「何だねその頭痛が痛いみたいな戯れ言は?」

 霊烏路空の右手、制御棒に熱が点る。核融合を操る程度の能力が生み出す核エネルギー。制御棒から漏れた僅かなものでも空間を一気に高熱へと変える。

「ふむ、今回の聖杯は────何、異界だと。
 これでは人類とはあまり関係が無いではないか。
 なんということだ。この聖杯戦争に呼ばれた時点で我が望みは潰えてしまった」

 目の前の男は空に一顧だにせず、虚空を見上げていた。月なら魔菩薩だぶらかしたのにだの、冬木なら出産させただのわけの分からないことをブツブツ呟いている。
 これは異常だろう。霊烏路空の核エネルギーという神域の力を無視する者は人、妖怪、神にすらもいない。
 ならばコレは、本当に、何なのか。

「まぁ仕方ない。今回は嫌がらせに徹しよう」

 貌がにゅるりと空の方に向かい────パキリと二人の間の空間が割れて『孔』が出来た。
 割れた孔の先は暗黒そのもの。そして全てを飲み込むように、空気が、景色が孔へと吸い込まれる。空と男も例外ではない。

「うにゅあ!?」

 核熱を解き放つ寸前であったがタイミングを崩され不発に終わる。
 暗黒に飲まれていく中、男の頭と両手が燐光を放ち、口を歪ませる。

「では頑張りたまえ。私も特等席で拝見するとしよう────『燃える三眼』」

 男の輪郭が融ける。
 空の輪郭も熔ける。

「止めろおおおおお」

 吐き気を催す恐怖と悍ましさを感じて絶叫をするも現実は非常である。
 融けて、熔けて、解けて、混ざり合い、そして────融合(フュージョン)を果たす。
 デミ・サーヴァント『霊烏路 空』の誕生であった。



       *       *       *



「こんにちわセンセー」

 東京都某所の学校で少女が快活に挨拶を交わす。
 少女は空だった。しかし漆黒の羽も胸元の赤い眼も制御棒も、溶岩の足も存在しない。
 現代風の服を着た彼女は周りに誰もいなくなったことを確認すると呟く。

「遂に始まるぞ、聖杯戦争が」

 見た目にそぐわぬ落ち着いた声が響いた。


69 : ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/01(月) 13:24:28 MV66xQIc0
 
【サーヴァント】
【クラス】
キャスター

【真名】
さまようもの、もしくはアンブローズ・デクスター、もしくは[削除済み]

【出典】
クトゥルフ神話(尖塔の影)

【属性】
混沌・邪悪

【パラメーター】
筋力:E 耐久:C++ 敏捷:C+(E) 魔力:C(E) 幸運:A(-) 宝具:C(EX)

【クラススキル】
陣地作成:E
 魔術師として自分に有利な陣地を作り上げる。
 彼の場合、作り出されるのは工房ではなく実験場である。
 なお、空の能力はこの実験場内でのみ使用が可能。

道具作成:-
 スキル『エンチャント』によりこのスキルは失われている。


【保有スキル】
星の開拓者:C
 人類史においてターニングポイントになった英雄に与えられる特殊スキル。
 あらゆる難航、難行が“不可能なまま”“実現可能な出来事”になる。
 アンブローズ・デクスターは核技術を生み出し、戦争の在り方を変えた者である。
 その後の人類史において今まで人の営みから切り離せなかった『戦争』のやり方に大きな変化を与えた。

病弱:D
 アンブローズ・デクスターが肌の黒さを「放射能汚染により非常に体が弱い」と言っていたために付いたスキル。
 空の場合は若干体力が下がる程度のスキル。
 また闇の中だと汚染が進み、[閲覧禁止]により肌が燐光を放つ。

エンチャント:D
 概念付与。他者もしくは他者の持つ物品に強力な機能を付与する。
 基本的にマスターを戦わせるためのスキル。
 アンブローズ・デクスターの場合は付与対象が生物の場合は狂気を、
 無生物の場合は若干の炎属性と放射能を付与するのみに限られる。
 このスキルにより少なからず霊烏路空の能力にも影響が出ている。

神性:A+
 物理的な神との習合の度合いを示す。
 邪神の化身であるアンブローズ・デクスター、それと融合した霊烏路空も太陽神の力を宿していたため、ほぼ神と言っても差し支えない。


70 : ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/01(月) 13:25:03 MV66xQIc0

【宝具】
『予言の時来れり、人理を彩れ狂気の極光(トリニティ・カタストロフ)』
 ランク:E 種別:対城宝具 レンジ:330メートル 最大捕捉:レンジ内のもの全て

 『陣地作成』によって作り出された実験場内でのみ有効かつ実験場内にしか影響のない宝具。
 かつてアメリカで行われた世界最初の核実験「トリニティ」を再現する。
 時代が近代であるため神秘は無に等しいが、魔力を帯びた核熱、放射能は実体化したサーヴァント、マスターを殺して余りある。

 三という数字は古代より完璧や神を意味する。三位一体、三貴神、三賢者、トート・トリスメギストス……etc。
 それらはジャンケンのように相性が異なる三つの調和をすることによる完全性を得る事を意味していた。
 トリニティの名を冠するこの宝具も然り三つの調和が働いている。
 すなわち戦争を終わらせようとする人の意思、星の地肉より生み出せし原子(プルトニウム)、そして人を唆し大地を犯す邪神の思惑である。


『燃える三眼』(ナイアー・トリスメギストス)
 ランク:C(融合前はEX) 種別:対人宝具(融合前は対人理宝具) レンジ:- 最大捕捉:自分
 [削除]が本体、あるいは何らかの化身、もしくは知的生命体や神性に憑依して現界する宝具。
 見た目は変身や憑依に見えるが、変身と違い、別の体を用意してそれに乗り移る形になるため用意した体で死んでも元の体に再構築されるだけである。
 この宝具でマスターと憑依、融合(フュージョン)した。空の場合は自分の化身として人間の体になることで一般人に紛れることができる。

【サーヴァント背景】
 とある邪神の化身。人の世に核兵器の技術をもたらし、世を混沌ヘ、人類を終焉へと導く科学者。
 人類史の破滅、即ち人理の崩壊を目論むアンブローズ・デクスターはあくまでこの存在の尖兵であり、化身にすぎない。

 マスターが聖杯戦争で拉致られる前に召喚され、マスターと強制的に融合した状態で参戦した。
 舞台が現実世界から切り離されているため空をはじめとした他者が破滅するのを特等席でみる所存。

【マスター】
霊烏路 空

【出典】
東方地霊殿

【マスターとしての願い】
色々と戻したい

【能力・技能】
核融合を操る程度の能力がスキル『エンチャント』により核分裂を操る程度のエネルギーに変化している。
原子力エネルギーによる弾幕は変わらないが、魔力による一時的な擬似放射能汚染がつく。

【人物背景】
東方地霊殿より。
本来ならば核融合、太陽と同じクリーンな核エネルギーを行うはずが、
アンブローズ・デクスターにより核分裂によって生じる原子力エネルギーにされてしまった。
融合したことで聖杯戦争に関するものをはじめとした知識だけは増えているが、応用する頭は空っぽである。

【方針】
とりあえず見つけ次第敵をやっつけてとっとと帰る。


71 : ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/01(月) 13:25:14 MV66xQIc0
投下終了です


72 : ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/01(月) 14:57:10 MV66xQIc0
タイトルつけ忘れてました。
「霊烏路空&キャスター」です。


73 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 16:29:19 w1F3Vh9g0
>>1さん、スレ立て乙です。
そして皆さま、投下乙です。
自分も書いたので、とりあえず一作投下させていただきます。


74 : 檜山達之&セイヴァー ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 16:29:48 w1F3Vh9g0


「──コーヒーが入ったぞ」

 檜山達之は、小さなアパートの一室で、インスタントのコーヒーを目の前のサーヴァントに差し出す。
 かたん、と置かれたカップの中では、黒い液体が表面ぎりぎりを激しく揺れていた。
 淹れるまでの手際は良いが、それ以外は全くぶっきらぼうで、「なぜ自分がこんな事をせねばならないのか」と悪態でもつきかねない様子だ。
 おそらく、この並々注がれたコーヒーが零れて相手の服の沁となっても、達之は素知らぬフリをするだろう。

 実際、達之にこのわけのわからない男を部屋に入れる義理はないし、コーヒーを振る舞う義理もないのだから、こういう形に収まっているのは不思議なくらいだ。
 一応、達之も二十歳になったばかりの大学生で、扶養者も既に亡い一人暮らしだ。
 むしろコーヒー一杯でも節約を掲げたいくらいである。

 しかし、事情を聞き出す道具としても、このモーニングコーヒーは容易い武器になりうると考えたのだ。
 達之に負けず劣らずぶっきらぼうな無表情で、サーヴァントは応える。

「ああ」

 ……気づけば、達之はこうなっている。
 達之も、自分が落ち着く為に、自分にも一杯のコーヒーを淹れる事にした。
 自分まで飲むつもりは無かったが、来客にだけコーヒーを出すのも決まりが悪いと気づいたのだ。
 淹れる手際は全く変わらず、ただ、適量である事と、カップを丁寧に置く事だけが、目の前の男への応対とは違った。
 それから、達之は、カップの中に角砂糖を三つほど落とし、スプーンでかき混ぜていた。角砂糖は全て、数える間もなく黒に溶ける。

「……」

 見れば、サーヴァントの方は、目の前にコーヒーを出された時から、ずっとコーヒーに息を吹きかけて冷ましている。
 湯気ももう出ていないくらい経つが、口をつけた形跡がまるでない。
 スプーンで必要以上にかき混ぜながらも、サーヴァントの方を注意深く見ていた達之は、彼に声をかけた。

「随分と、冷ましてから飲むんだな。『猫舌』ってやつか?」

 サーヴァントは、そう言われてちらりと、上目遣いで達之の方を見た。
 からかっているわけではないが、達之の口調はそんなニュアンスに聞こえる所があった。
 これも日頃、「性格の悪い皮肉屋」を演じているが故に出てきてしまった悪癖だが──これがどうも、彼の逆鱗に触れたらしい。

「コーヒーに角砂糖を三つも入れる奴に、俺の飲み方をとやかく言われたくないね」

「俺の淹れたコーヒーだぞ。文句あんなら飲むな」

「文句はない。だが、もしあったとしても文句を言うのは……飲んでからだ」

「結局飲むんじゃねえか」

 達之は、この礼儀知らずに張り合う事も馬鹿らしくなり、舌に合った甘いコーヒーを喉に流す。
 そして、目の前の男を再び眺めた。

 自分のサーヴァント。
 年頃はおそらく達之とそう変わらない。十代後半から二十歳を超えた程度だろう。
 長い茶髪は、近頃切りそろえたかのような印象を受けるが、しかし、それでもやはり男性としては長い方だ(達之もその点で人の事を言えないのだが)。
 服装は、何のプリントもないようなラフなシャツで、到底、先ほど彼が名乗った「聖杯戦争の英霊」なるものとはイメージの異なる。達之の目で見たところはただの若者だ。

(これで不審者じゃないってんだからな……どうなってんだ一体)

 豆の香るような暖かいため息を吐き出すと、達之はリラックスするように、畳の上に両手をついて身体を支えた。
 その手には、三画の「令呪」が光っていた。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆


75 : 檜山達之&セイヴァー ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 16:30:22 w1F3Vh9g0



 昨日まで、──何が何だかわからないが──彼は、檜山達之ではなかった。
 いや、厳密にいえば、彼は「檜山達之」という名ばかりの別人のように、東京都内の大学で過ごしていたのである。

 自分のルーツも気にせず、ただ、「どこかから越してきて東京に住んでいる」というエキストラが昨日までの彼の役割だったのだ。
 ドラマの撮影ではあるまいし、人間社会に「エキストラ」はないだろう、と思うかもしれない。それぞれの人生が歩いているのが町並みだ。
 しかし、彼は、ただそこにいるだけのエキストラそのものに喩えられるような人間だった。
 人生のないもの。

 達之はここに来たとき、自分の生まれ育った村や、愛する者、そして、全てを奪った者たちの事を全て忘れていた。
 ただ、漫然と生きるものたちの中に紛れた、何の背景もない人間。
 そんな彼に、忘れてはならない悪夢が脳裏に蘇ったのは今日の朝の話だった。

(──)

 そう。まさに今日の朝、五時を回った頃の話である。
 不意に、夢の中に「現実の光景」が映し出されたのだ。──達之にとって、それは断片でもぶつけられれば大きな刺激になるような光景だった。
 二年前に達之たちの身に降りかかり、達之たちの人生を狂わせた、めくるめく出来事が頭の中を駆け巡り、目が覚める。
 いや、覚めるだけではなく、冴えた。
 頭の中が空になったかのように、眠気や疲労が一斉に忘れ去られ、何かが自分の中に舞い戻る快感が在った。
 そして──そうして頭の中が透き通るのと同時に、彼の手には、この東京で行われているある特殊なサバイバルゲームの参加資格が送られたのである。

(──思い出した)

 考えてみれば、昨日も何かが引っかかっていた。
 料理でもしようと思ってコンロに火をつけた瞬間、燃え上がった火と共に浮かび上がった──、そう、それも「何か」。
 母校の帰り道を踏みしめた時のような、堪えようのない胸の切なさを、彼は小さな「火」の中に感じ……それから、記憶が覚醒するのを遮るように、慌ててコンロを消した。

 何がそうさせたのかもわからないまま、もやもやした気分でその日の夜食をコンビニの弁当で済ませた。
 しばらくは、コンロを使う──いや、火を使うような事は辞めようと思っていた。

 彼は、すぐに横になり、眠る事にした。
 まどろみは、しっかりと彼を襲ってくれた。
 しかし、安眠はさせてくれなかった。

 達之の頭の中には、その時のトラウマとも言うべき「印象」がこびり付いて離れなかったのだ。
 彼の脳裏で、「火」のイメージは膨れ上がり続ける。
 そっと……そっと、「火」は大きくなった。
 気づけば、コンロの上からこの部屋に広がり、アパートを燃やし尽くし、やがて、大きな悪魔の形になって、町を覆った。
 だから、朝、あんな時間に目覚めた。



 そう────夢は、教えてくれたのだ。



 目の前で全てを焼き尽くす赤い業火。
 体育館に並べられた両親の遺体。
 思い出の詰まった家々の残骸。
 それを何もかもを笑い話にした悪魔のような放火魔。
 そして、かつて戦地だった島で達之が行った殺人。
 自らが積み上げた悪魔たちの屍。
 大事な人。
 その人に被せてしまった罪悪。


76 : 檜山達之&セイヴァー ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 16:30:38 w1F3Vh9g0

(──俺たちの村の夢だ……)

 彼は、自らの奥底に封印されていた記憶と共に目覚めたのだ。
 思い出したくはないが、忘れてはならない現実が、夢の中に投影されていたのだろう。

 ──檜山達之は、そうした特殊な事情を抱えた人間であった。

 二年前までは、田舎の村で過ごす普通の少年だった。
 きっかけは、その二年前に大きなニュースにもなった、「黒坂村全焼事件」である。
 長野の山奥にある黒坂村という場所が達之の故郷だったが、これが原因不明の出火で、三十二人の村人を巻き込み全焼したのだ。
 達之は、たまたま幼馴染と一緒に村の外れにいたので助かったのだが、結果的に、両親や親戚も、纏めて全員焼死する事になった。
 自らの不幸を呪ったが、それからすぐ後に、それは、「呪うべき不幸」でない事に気づいた。

 これは、「憎むべき不幸」なのだ……。
 達之が偶々立ち寄った東京のファミリーレストランで、噂話をする連中──。
 内緒話をするには少しばかりボリュームのある声だったが、自分の飯にがっつく事ばかりの客たちは、それは誰も気にしない。
 それを気にしたのは、達之たちだけだった。
「黒坂村」──と。
 ある客の集団が、笑い話に交えてその名を口にしたのが聞こえた。
 その話を注意深く聞いていた達之たちは──そこにいた大学生の集団の話に耳を済ませた。

 彼らは心を開放して、仲間内だけでべらべらと捲し立てるように、それが自分たちの過失によって起きた事故である事を語った。
 あの村の火災は、彼らが起こした人災であり、それを彼らは反省していないらしかった。
 すぐ近くの席に、自分たちが燃やした村の生き残りがいるとも知らずに、彼らは自慢話のようにその罪を語り続けた。
 三十二人の命を奪い、多くの人間の人生を狂わせた自覚は彼らにはまるで無かった。
 悪魔たちは、達之たちから全てを奪い、罪から逃れ、平然とそれを笑い話にしていたのだ……そんな連中を見た達之は、その時、決意を固めた。

 この男たちの顔を覚え、いつか、全員『殺す』──と。

 達之の脳裏に、それが全てよみがえった。
 そして、墓場島と呼ばれる島で、その決意は起こされた。
 実際に、仇を殺した記憶もまた、達之の脳裏に蘇ったのだった。
 達之はまだ、その島に居た筈だった……。

(そうだ。俺は、なぜ忘れていたんだ……)

 起き上がりながら思う。
 おそらく精神病理や脳科学の成した業ではない。
 自分の頭の中を外側からこじ開けられ、全てを意図的に忘れさせたかのような気分だ。
 現代の日本の科学ではそうそう出来る事でもないかもしれないが、しかし、こうして記憶までいじられるというのならその認識さえも疑わねばならない。

 これから何かが始まる。
 達之は、自らが起こした『亡霊兵士』の殺人事件よりも不可解な事件の渦中にいるのだ……。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆


77 : 檜山達之&セイヴァー ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 16:31:02 w1F3Vh9g0



「……セイヴァー、と言ったっけな」

 達之は、ようやくコーヒーに口をつけ始めたサーヴァントに言った。
『救世者(セイヴァー)』が、達之が現界した使い魔のクラスである。
 本来の七種のサーヴァントと異なるエクストラクラスが達之の元に現れたわけだ。

 おおよそ、達之が聞いているのは、「聖杯戦争」「サーヴァント」「マスター」「セイヴァー」の四つの単語の概略くらいの物だった。
 令呪などというサーヴァント側に不利なシステムが容易く教えられる筈もなく、その話は達之も詳しくは知らぬままだ。
 手の紋章は単なる参加資格程度に思っている。
 ただ、達之は荒唐無稽な聖杯戦争を一笑しつつも、ただの作り話にしては妙に凝っているので、話くらいには乗っている。
 実際、昨日まで自分の記憶が無かった事や、知らぬ間に島から帰還している事など、「荒唐無稽」は己の身をもって体感しているのだ。
 半信半疑であれ、話を最低限聞いておいて損する事はあるまい。

「やめてくれ、救世主(セイヴァー)なんてガラじゃない」

 ……問題は、その説明だけ行ったセイヴァーにまるでやる気がない事だ。
 聖杯戦争が、願望器を集める為のゲームである事はわかったが、主として戦いを行うセイヴァーの側にはその気がない。
 真名の方を呼んでくれ、などという程だ。
 その気がないという以前に、まるでサーヴァントまでが自分の意思と裏腹に巻き込まれたかのような体である。
 そんな調子ではいけない事くらい、聖杯戦争に今朝巻き込まれたばかりの達之でもわかるというのに。

「──だいたい、英霊なんていう立場だって俺には性に合わないしな。
 マリの奴が、勝手に俺を救世主だなんて祭り上げるから、死んでまでこんな事に巻き込まれるんだ」

「そうは言うが、俺の命を託せるのも、俺の願望を頼めるのも、アンタしかいないってんだろ?」

 達之は、セイヴァーを相手に卑屈になるのをやめた。
 こんな相手でも、このサバイバルには欠かせない相手なのがセイヴァーだ。
 達之も、元は演技の為とはいえ、「生き残る術」についてはよく学んだ。
 戦術においては右に出る者がいない程、詳しくなっている。
 最初に味方内の信頼を買わず、孤立するほど愚かな戦術はない。──それが、彼のかつて行った「共謀による殺人」にも反映されている。
 セイヴァーが達之の方を見た所で、達之は続けた。

「もし本当にアンタが、俺の願いを請け負ってくれるってなら、俺にも頼みたい願いはある」

「……じゃあ聞かせてもらうけどな、お前にはその為に誰かを犠牲にする気があるのかよ」

「ああ。人なら既に『殺した事がある』。人を殺すってのは恐ろしく簡単な事さ」

 達之の即答に、流石のセイヴァーもぎょっとした。
 殺人を告白した達之に対する感情は、「恐れ」ではなかったが、やはり驚愕する余地はある。
 達之は、目を伏せて続けた。

「──けどな、その罪を消すのは難しい。それが痛いほどわかっている。だからだ」

「何?」

「お前に託したい望みってのは一つだ。ある女の抱える『罪』を消したい──無かった事にしたい。
 俺が巻き込んだばかりに、これから一生、殺人の罪を背負わなきゃならない女がいる……そいつの為だ」

 セイヴァーにも、達之の言葉には少し思うところがあったようで、少し躊躇した。
 彼の願いを聞き、何かを答えようとして、それを飲み込んだ。


78 : 檜山達之&セイヴァー ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 16:31:27 w1F3Vh9g0

 セイヴァーにとって達之が善人かは悪人かはまだ判然としないものの、憎むか憎まないかでいえば憎み難い相手であったのだろう。
 仮にもサーヴァントのはしくれとして、何かかける言葉があるのではないかと考えた。
 確かに──英霊であるからには、彼も同じく、『人』ではないが『自分と同じ種』を殺した事がある。彼も罪を背負った事があるわけだ。
 しかし、嘆息して出たセイヴァーの答えは、好意的ではない。

「……あんたの事情はよく知らないが、お断りだ。俺は便利屋じゃない。その為にここにいるとしてもな」

 冷たく言い放ったが、達之のそう聞こえないのは、躊躇のせいだろう。


「──ただ、それでもそのくらいの夢を見る資格はある。それくらいは守ってやる」


 願いをかなえる為に闘う、とは言わなかった。
 他を積極的に消し去るつもりは、今の所、セイヴァーには無いらしい。
 あるのは、「マスターを守る」──という救世者らしい発想だ。
 厳密にいえば、「そんな夢を見る事の出来るマスターを、守る」──あるいは、「マスターの持つ夢を、守る」。
 彼はそう言いたいらしい。
 達之は、少し考えた後で、──

「そうか、そりゃいいや。少なくとも、俺の身に降りかかる火の粉は払ってくれるわけだ。
 それで充分さ、セイヴァー……」

 ──皮肉めいた笑いを返した。
 そして、さらなる皮肉を込めて、セイヴァーに対して、彼は言った。





「いや、『救世主(セイヴァー)』の柄じゃないと言ったか? ────『乾巧』よぉ」





.


79 : 檜山達之&セイヴァー ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 16:31:50 w1F3Vh9g0

【CLASS】

セイヴァー


【真名】

乾巧@劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト


【パラメーター】

基本
 筋力E+ 耐久D+ 敏捷C 魔力C 幸運D 宝具C

仮面ライダーファイズ(基本形態)
 筋力C 耐久C 敏捷B 魔力D 幸運D

????????(基本形態)
 筋力B 耐久B 敏捷A 魔力D 幸運E


【属性】

中立・中庸 


【クラススキル】

なし


【保有スキル】

騎乗:D
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。
 彼の場合はバイクの操縦。オートバジンに限り、「乗りこなす」だけでなく「従わせる」事が出来る。

単独行動:C
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。

仕切り直し:B
 戦闘から離脱する能力。
 また、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。
 Bランクである彼は、敵の攻撃で水場に落ちた場合、追い打ちをかけられるリスクが格段に減少する。

猫舌:C
 熱に対する耐性の低さを示すスキル。
 人よりも熱に対して敏感であり、それ故に熱攻撃には一般のサーヴァントよりもやや弱い。
 クリーニング屋で働いていた事もある等、私生活に困るレベルではないが、手や舌で直接高温に触れる事を苦手とする。
 ちなみに、彼の場合は、火に対するトラウマが原因による物である為、このスキルは忘却される事もある。

??????:A
 彼が「死後」に覚醒した何か。
 そのスキルは他者によって与えられ、資格があれば発動する事になるが、Aランクは自力で覚醒している。
 このスキルはサーヴァント自身の手で、厳重に秘匿されている。


【宝物/宝具】

『救世主伝説(ファイズ)』
ランク:A 種別:対オルフェノク宝具 レンジ:1〜10000(最大出力時の限界値) 最大捕捉:1〜10000(最大出力時の観測限界値)

 遠くない未来、どこかの国──人類のほぼ全てがオルフェノクと呼ばれる怪物と化した世界。
 僅かに残った人類の間で、一人の少女がその存在を訴え続けた救世主。それがファイズである。
 装着できる人間が僅かにしかいない「ファイズギア」によって姿を変じ、闇を引き裂き光をもたらす。
 この伝説は、オルフェノクによって制圧され、その日暮らしの人類に微かな希望を与えていたとも言われる。

 ファイズ、とは何か。
 ファイズは、装着者の戦闘力を各段に引き出すスーツである。数トンのパンチ力やキック力を誇り、生の人間ならば容易く命を奪える程のエネルギーを持つ。
 時に、いくつもの武器を用い、時に、「オートバジン」と呼ばれる支援メカニックも使ってオルフェノクを撃退する。
 その武器は多彩であるが、それらはいずれも「ファイズ」の存在と共に語られ、その伝説の一部と化している。
 また、「アクセルフォーム」や「ブラスターフォーム」などの更なる強化形態へも進化する事で、巨体の怪物とさえも闘う事が出来る。
 ただし、強い能力を使おうとすれば、それだけ魔力も消費される事を留意しなければならず、彼自身の身体にもリスクが起こる。
 ファイズのスーツは、本来ならば人工衛星によって装着者に送信するシステムだが、伝承による物である為、現在は人工衛星がなくとも宝具として顕現する事が出来る。


『疾走する本能(×××××××××)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:1〜100

 乾巧のもう一つの姿。天使と詩人の名を併せ持つ狼。
 その宝具の名はサーヴァント自身が秘匿している。


80 : 檜山達之&セイヴァー ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 16:34:41 w1F3Vh9g0


【weapon】

『オートバジン』
 巧の移動手段。変形して人型ロボットにもなるバイク。
 騎乗スキルによって動かす事が出来るほか、支援メカとして有用。
 バイクハンドルはミッションメモリーを装填し、ファイズエッジという剣に変える事も出来る。

『ファイズギア』
 ファイズへと変身する為のベルト。
 ファイズドライバーとファイズフォンだけあれば変身が可能であるが、その他、日用品としても武器としても使える道具が全て揃っている。
 デジタルトーチライト型のファイズポインター、デジタルカメラ型のファイズショット、リストウォッチ型のファイズアクセルなど付属。

『ファイズブラスター』
 ファイズをブラスターフォームへと変身させる為のトランクボックス型のアイテム。
 生前の戦いでも一度しか姿を見せた事がないと言われている。
 ブラスターフォームへと進化したファイズは、上述されているパラメーターを上回る戦闘力を発揮する事が出来るが、代わりにマスターの魔力消費が大きく、サーヴァントも多用は出来ない。


【人物背景】

 オルフェノクによって制圧されつつある人類を救ってくれると言われる救世主。
 その伝説は、園田真理という少女によって流された物であるが、確かにかつて、乾巧が変身した「ファイズ」はオルフェノクと闘って人類を守っていた。
 当の巧は、生き残った人類の間でも、「死んだ」とされていたはずだが、真理は彼の生存を信じ続けた。
 そして、確かに記憶を失くして生きていた事が発覚した。
 オルフェノクによって攫われた真理を助け出す為に、巧はオルフェノクのスタジアムで、かつての友・木場勇治と闘う。

 性格は、ぶっきらぼうで、口が悪いが、根はやさしいお人よし。ただ素直じゃないだけ。自分と同じ猫舌相手だとちょっと優しくなる。
 こうして周囲を突き放すのには何か理由がありそうだが、その理由はたとえ信頼した相手でも口にする事はない。
 極度の猫舌だが、どうやら、熱いものにトラウマを抱えているらしく、それが原因らしい(記憶が消えた際には普通に熱い物を飲んでいる)。
 猫舌に限らず、熱い物を持つのも得意ではなさそう。


【サーヴァントとしての願い】

 英霊なんてガラじゃない。
 ただ、こうして顕現したからには、マスターの持っている「夢」くらいは守ってやる。


【基本戦術、方針、運用法】

 元々の耐久性も普通の人間よりやや強いが、それだけでは並のサーヴァントと渡り合うのは不可能。
 宝具を使って戦闘するのが前提なので、戦闘時はそちらを積極的に使うべし。
 性格が扱い難い部分はあるものの、基本的には他者の為に戦う為、マスターの護衛においては存分に実力を発揮できるだろう。
 また、『仕切り直し』のスキルで、いざとなれば適切な方法で戦線離脱も出来る。魔力をあまり使わない場合は、こうした守護者としての側面を強調した戦いになるだろう。
 本来ならば強力であるはずの宝具の一つを自らの意思で秘匿しているが、問題はコレ。
 緊急時まで使わないという程融通が効かないわけではないが、当人もおそらく滅多な事ではスキルを発動する事はない。
 聖杯戦争が終わるまでに使うか否かはわからないが、マスターに明かした時に「それ」を受け入れられる信頼関係を築くことが要される。


81 : 檜山達之&セイヴァー ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 16:35:15 w1F3Vh9g0



【マスター】

 檜山達之@金田一少年の事件簿 墓場島殺人事件

【マスターとしての願い】

 墓場島の殺人の『共犯者』から『罪』を消し去る事

【weapon】

『サバイバルナイフ』
『改造電動ガン』
『手製爆弾』
『カプセル状の毒薬』
 など、殺人の為に使えるであろう武器をアパート内で多数所有している。

【能力・技能】

 村人の復讐の為に自ら殺人を行う度胸を持ち、その為には綿密な下準備を行い、本番も非情に徹する覚悟を持つ。
 その過程において、「サバゲーチームに潜入する」という行動が必要であった為、サバイバル知識やミリタリー知識を学習している。
 作中では、小型爆弾、改造エアガン(殺傷能力有)、即効性の毒薬など、多種の武器や凶器を調達しており、その種類は作中随一である。
 特に、爆弾や改造エアガンは自作した可能性もある。
 いずれにせよ、裏でネットワークを持っている可能性がある。

【人物背景】

 長野県内の平和な村・黒坂村で生きていた好青年。
 しかし、ある日、黒坂村は火に包まれて全焼。40人いた村人のうち32人が焼死し、達之の両親も死亡する。
 その後、東京に移り住んだが、そこで彼は、黒坂村全焼事件に都内大学のサバゲーサークルの過失が関わっていた事を知る。
 達之は彼らに復讐する為、サバゲー好きを装ってそのサバゲーサークルに入会し、黒坂村全焼事件に関わった7人を殺害する計画を水面下で考えていた。

 ある共犯者と共に殺害計画を遂行し、6人目が殺害された後からの参戦。
 本来ならば島内にいた筈だが、現在はアパートで生活しており、都内の大学に通っているらしい。
 ちなみに、見るからに殺人鬼のような外見だが、こう見えて甘党で恋バナ好き。
 凶暴そうで、実際殺人犯でもあるが、根は良い奴で、黒坂村に住んでいた頃は今とは正反対の好青年である。
 苦手な事は避妊。

【方針】

 聖杯の入手。
 無関係な人間を巻き込む事には微かな躊躇もあるが、願いの為ならば自ら他の主従を暗殺する事も辞さない。


82 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 16:35:39 w1F3Vh9g0
以上、投下終了です。


83 : ◆As6lpa2ikE :2016/02/01(月) 18:10:16 HbcfBERU0
投下します


84 : 二宮飛鳥&アサシン  ◆As6lpa2ikE :2016/02/01(月) 18:12:23 HbcfBERU0




わずかな違いを大切に(モーツァルト)



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

セカイが夜の闇に包まれて行く中、なお光を放ち、活動し続ける街のビル郡。その中でも一際高い一棟の屋上からそれらを見下ろす少女が居た。

外側にハネた鳶色のショートヘア。寒色系のエクステ。綺麗なアメジスト色の瞳。少女らしさのある初々しい顔立ちだが睫毛は長く、挑発的。
丈が短く黒いスカートとコート。首まわりには同じく黒いマフラー。ベルトやチェーンがそのような少女の身体をアンシンメトリーに飾っていた。パンキッシュな衣装である。

「……」

少女は何かを考えているような、クールな表情で夜景を眺めていた。
下界の雑踏の殆どは彼女の耳まで届かず、届いたとしても虫が鳴くような小さな音だ。
屋上には誰も居ない。
その場は完全に少女だけのセカイだった。
しかし、少女の背後の空間にはいつの間にか黒い影が降りていた。
それは二十代半ばくらいの男の姿であった。

「やあ。おかえり、アサシン」

男の存在に気付いた少女は体を後ろに振り向かせて、そう言った。

「ふむ。『おかえり』か…… 家族以外から、そんな言葉を言われるとは思ってなかったが――悪くない」

対して、アサシンと呼ばれた男は平坦な口調で少女の出迎えの挨拶にそう答えた。
ウェーブのかかった、足元に届くほどの黒髪。そこから覗ける顔立ちは非常に端正だ。
これだけでも彼が街中を歩けばかなり目立つ事は明白だが、それ以上に彼の服装はーー少女ほどではないにしても――とても個性的で、ちょっとした異彩を放っている。
アサシンは折り目正しい白の燕尾服を着ていた。胸ポケットにはご丁寧にハンカチーフを入れている。両手には白い手袋をはめていた。
パーティや演奏会のような場にはこれ以上なく合う格好だが、街中を歩くのには合わない格好だ。場所が人気のない屋上だと尚更だ。滑稽でさえある。

「マスターはここでずっと何をしていたんだ?」
「街を見ていたんだよ」

少女はアサシンの質問にそのような答えを返した。

「見てごらん。眠って行くセカイに反抗するかのように光を放つ街を。この世の流れの逆に進もうとする彼らの姿を。実に愉快だろう? 」

両腕を大きく広げながら少女は言う。

「そして、この光景にはどこかボクに似ている部分がある。まるで鏡を見ているかのような不思議な気分になるよ。だからボクは飽きもせずに街を見ていたのさ。
これほどまでに素晴らしい景色は中々無い。これを見ているだけで、嫌な事の一つや二つは綺麗さっぱり忘れられそうだ」
「僕には夜景はただの夜景にすぎないが」

少女の右隣(振り向いた姿勢である少女からすれば左隣)に立ち、下界に広がる眩い光たちに眼を下ろすアサシン。

「しかし、マスターがそう言うならそうなのだろう。悪くない」
「フフ……それはどうも。ところで、アサシンはどこで何をしていたんだい?」

少女は自分の腰より少し上くらいの高さしかなく、全く手入れがされていない事が伺える錆だらけの柵に振り向いたままの姿勢で凭れかかりながら、アサシンにそう聞いた。
実に危ない。少女の体重に柵が負けて折れたり、少女が少しでも上半身を後ろに反らしたりすれば彼女はあっという間に見るも無残な飛び降り死体となるだろう。

少女のそんな姿を見て、アサシンは自分の中に湧いてきた『少女をビルから突き落としたい欲求』を抑える。


85 : 二宮飛鳥&アサシン  ◆As6lpa2ikE :2016/02/01(月) 18:13:41 HbcfBERU0
「街を探索して、他の主従の様子を見てきた――この僕でも、こんな訳のわからない状況では、情報を集めるために積極的にならざるを得ない――ちゃんと確認出来た主従はみっつ。
ひとつはマスターが僕に殺されるための『条件』を満たしていたから殺したが、残りのふたつはマスター、サーヴァント共にそれを満たしていなかったから手出しはしていない。
……それら以外の主従からは逃げられた、もしくは見つからなかった。まあ、まだ本戦は始まっていないのだから、自分達の事を探られるのは好ましい事ではないのだろう」

聖杯戦争という殺し合いに参加する者、それもサーヴァントーー暗殺者(アサシン)が言ったとは思えないセリフを途中に挟みながら、彼は少女に簡単な報告をした。

アサシンはその後、より詳細でより血生臭い報告を続ける。それを聞きながら、少女はこれまでの数日間に――殆どがアサシンから教えてもらった事だが――自分が見聞きし、体験した数々の『非日常』を思い出していた。

聖杯戦争。
願望器。
マスター。
サーヴァント。
殺し合い。
殺し合い。
殺し合い。
エトセトラエトセトラ。

思い出すだけで気分が悪くなり、気が重くなる。こればかりはどれだけ良い景色を眺めても忘れられそうにない。

そんな少女の心境なんて露知らず、アサシンは先程と変わらず、少女の顔も見ずに、平坦な口調で、マイペースに報告を続ける。
途中まではなんとか聞き耐えていた少女であったが、彼が唯一殺した主従をどのように殺したかについて語り始めたところで、彼女は手のひらをアサシンがいる方向(つまり左)に突き出し、「もう報告は終わりで良いよ」と言った。

「ふむ。ここから盛り上がる所だったのだが……まあ、マスターがもういいと言うのなら止めるべきなのだろう。悪くない」
「…………」

自分とアサシンの間には人の死や殺し合いについての考え方で""ズレ""がある事を感じつつ、少女は顔を上げ、アサシンと眼を合わせようと首から上だけを彼の方向に上げた。

「こっちを向いてくれるかい、アサシン」
「…………」

しばらくの間があった後、アサシンも少女と眼を合わせるべく顔を彼女の方に向けた。
二人の眼が合う。
少女のエクステと首まわりに巻かれたマフラーが、屋上に吹く風にはためいていた。
その姿は、ファッション雑誌の表紙に採用されてもおかしくないほどに魅力的であったが、アサシンにとって、それは目の毒以外の何物でもなかった。

彼は自分の中に湧いてきた『マフラーで少女の首を絞めたい欲求』や、マフラーから連想した『彼女の内臓を自分の首に巻き付けたい欲求』を抑える。

昼間、自分に殺されるための『条件』を満たしていた者を一人殺し、殺人衝動を発散していて良かった、と彼は思った。
もしそうしていなければ、アサシンは今目の前にいるこの少女を思わず殺してしまっていたかもしれない。彼女はアサシンに殺されるための『条件』を十分に満たしているのだから……。

「アサシン、ボクはね、アイドルになる前から、いつか自分の目の前に『非日常』への扉が開かれる日が来るのではないか、と期待していたんだ。
漫画や小説の中でしかありえない、フィクションの物語のようなセカイへの扉が開かれる日をね」
「…………」
「半年前、キミと同じくらいの年齢のプロデューサーからアイドルにならないか、とスカウトされた時、ボクはとても嬉しかったんだ。
アイドルという『非日常』のセカイに足を踏み入れる事が出来たのは勿論、ボクの事を理解してくれる――理解しようとしてくれる人がいた事が、とても――嬉しかったんだ」
「…………」
「それからの半年間は今までに体験した事がない『非日常』の連続だったよ。毎日が輝いていた」
「…………」
「そして二日前、ボクはふたつ目の『非日常』への扉を開けた。開けてしまった――いや、開けられてしまった、と言った方が正しいのかな?」
「…………」
「アイドルという『非日常』と、奇跡の願望器を巡る戦いという『非日常』なら、後者の方がかつてボクが夢見ていたモノに近いんだろうね」
「…………」
「けど、それが現実となった今、正直な気持ちを言うと――





怖い。





死にたくないのさ。
ボクはアサシンと違って、悲しいくらいに殺し合いと言うものに向いていないんだよ」
「…………」

そう言う彼女の表情は最初と変わらずクールなものだったが――どこか怯えているようにも見えた。


86 : 二宮飛鳥&アサシン  ◆As6lpa2ikE :2016/02/01(月) 18:15:23 HbcfBERU0
「どうか、こんなボクを情けないマスターだと言って、笑ってくれ」
「そんな事はない。誰だって死ぬのは怖いさ」
「アサシンもそうなのかい?」
「僕は違う。僕は生前『死ぬのは構わない』と思って生きてきた。最初から死んでいるような人生だった。
……実際に死ぬ直前になった時も、僕に後悔は無かった――が、心残りはあった。『彼女』に会いたいという望みが叶わなかった、本懐を遂げられなかったという心残りがあった。だから、マスターの『死にたくない』という気持ちは分からなくもない」

「それに」と、アサシンは言葉を続ける。

「自分で言うのも何だが――僕はかなり強いぞ。人類最強の『彼女』や橙色の暴力レベルが相手でもない限り、僕は負けない。
僕に殺されるための条件を満たさないやつは殺さないが、それが相手でも戦闘不能にすることなら出来る。満たしているやつが相手なら――言うまでもない。
まあ、マスターが魔術師ではないため、魔力量に若干不安があるが…… 直接戦闘が出来ないほど魔力が足りなければ、その時は逃げる事が出来る。僕は『逃げの曲識』と呼ばれていたぐらい、戦闘からの逃亡が大の得意だからな。
だから安心するといい。マスターが敵から殺される事はない」

アサシンは、僕に殺される事はあるかもしれないが、というセリフが思わず続けて口から出そうになったのを、すんでのところで止める。
少女はそのようなアサシンの言葉を聞き、少しだけ安心したようだった。

「そもそも、周りからよく鉄面皮、鉄仮面と呼ばれていた僕に笑ってくれと言うのが無理な話だ。マスターが手の甲にある令呪を使わない限り、その頼みに僕が応えるのは不可能だぞ」
「…………フフ。それもそうだね。ボクが言えた事ではないけれど、アサシン、キミは表情の乏しいやつだよ」
「人の心を操る、音使いの僕が感情を表に出すのが苦手なのは、笑い話にもならないが――悪くない」

二人の間に和やかな雰囲気が流れる。
この時、少女は先ほどまでアサシンに対して感じていた不安をすっかり忘れ、どころか彼に対してある種の親近感さえ抱いていた。
なんだ、ボクと彼は結構似た者同士じゃあないか、と。

しかし、今のこの状況、片方はもう片方に親近感を抱き、もう片方は片方に殺意を抱いているという主従関係にあってはならない""ズレ""が生じているのだが――

「――それも、また悪くない」
「? 何が悪くないんだい? アサシン」
「何でもないさ」

アサシンはそう言うと、屋上から階下へ繋がる階段口のドアを指差し、

「夜景を眺めるのも悪くないが、そろそろ家に帰ろう。あんまり帰るのが遅いと家族が心配するぞ」

と言った。

「偽物の家族だけどね」
「たとえ本物でなくとも、家族は大切にしなくてはならないだろう」

アサシンは階段口のドアに向かって歩き出した。少女はそれに続く。
ドアの前に立ち、従者らしくそれを開けて少女を先に通したアサシンは、その後、自分も建物の中に這入り――少女の背中を押して階段から落としたい欲求を抑えながら――そっと、音もなく、ドアを閉めた。

アサシンの名は零崎曲識。
生前付けられていた二つ名は『逃げの曲識』、『菜食主義者(ベジタリアン)』――そして、




『少女趣味(ボルトキープ)』。




少女以外は殺さない殺人鬼である。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


『非日常』のセカイに這入ってしまった少女と『非日常』の住人である殺人鬼。
まだ始まってすらいない彼らの行く先は――


87 : 二宮飛鳥&アサシン  ◆As6lpa2ikE :2016/02/01(月) 18:16:43 HbcfBERU0
【クラス】
アサシン

【真名】
零崎 曲識@人間シリーズ

【パラメータ】
筋力C 耐久D 敏捷B 魔力E 幸運B 宝具B+

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
気配遮断:B+
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している
(曲識は口笛の音をぶつける事によって、足音、心音、呼吸音、その他自分の生命活動において生じるあらゆる音をまったくのところ消し去る)。
自らが攻撃体勢に入ると気配遮断のランクは大きく落ちる
(彼の攻撃手段は音であり、非常に目立つため、その落差は普通以上である)。

【保有スキル】
楽曲作成:A+
名前の通り楽曲を作成するスキル。

戦闘離脱:C+
曲識は『逃げの曲識』という二つ名が付くほど戦闘行為からの逃亡に長けており、大抵のサーヴァント、状況からは逃走できる。

零崎:E(A+)
『零崎一賊』に属する者が持つスキル。
『理由なく殺す』一賊の鬼ゆえ、人を殺す事に躊躇いがなく、罪悪感を抱かない。
しかし、曲識は一賊内唯一の禁欲者にして、究極の菜食主義者。下記のスキル『少女趣味』によって、通常時、彼のこのスキルのランクは非常に低い。
だが、戦う相手が少女の場合、スキルのランクは括弧内まで上がる。

少女趣味:EX
哀川潤との出会いをきっかけに曲識が立てた誓いがスキルになったもの。
たとえ敵が家族の仇だったとしても、彼が少女以外を殺すことは、絶対に、ない。

【宝具】
『零崎を始めるのも、悪くない』
ランクB 種別:対人宝具(自分自身)
レンジ:- 最大補足:-

戦闘開始時に曲識が言う口上。
これを発動する事で曲識は『零崎』を始め、自身の筋力、耐久、敏捷のステータスを全て一段階上げる事が出来る。



『作曲ーー零崎曲識(バックグラウンドミュージック)』
ランク:B+ 種別:対人・対軍宝具
レンジ:1〜100 最大補足:1〜30

曲識の『音使い』としての技術と、殺人鬼と同時に音楽家としての側面もあった彼が生前作成した、名前が公園に由来する二百ほどの曲が宝具へと昇華された物。
曲識は普通の曲は勿論、他人の精神と肉体を操る曲や、音自体が相手を吹き飛ばす衝撃波となる曲を楽器や自分の声を用いて演奏する。
しかし、今彼が使っている楽器はリズム楽器であるマラカス『少女趣味(ボルトキープ)』と自分の声だけなので、現地で管楽器、打楽器を手に入れない限り、音自体が相手を吹き飛ばす衝撃波となる曲を演奏するのは不可能であろう。
また、曲の演奏時間が長くなればなるほど、消費する魔力量も多くなり、マスターにかかる負担が大きくため、長時間の戦闘(演奏)は向いていない。

(例)
作品No.1『鞦韆』
戦意高揚曲。聞いた味方を一流のプレイヤーとして操る。

No.6『滑り台』No.12『砂場』No.96『広場』
他人の精神と肉体を操る曲。同ランク以上の対精神干渉スキル持ちのサーヴァントには効かない。また、完璧に操るためには楽器の音なり、自分の声なりで相手に事前催眠をかけておく必要がある。

No.9『雲梯』
音の衝撃波による攻撃。

No.74『土管』
痛みの鎮静効果を含んだ曲。

【Weapon】
少女趣味(ボルトキープ):決まった獲物を持たない曲識が手にした、最初にして最後の独自の楽器。見た目はただの黒いマラカスだが、(曲識の天才的な音感があってこそであるものの)ちょっとしたグランドピアノ並に広く正確に音階を表現できる。鈍器として使用することも可能。

自身の声

【人物背景】
この世の裏――『暴力の世界』を支配する『殺し名』の序列三番目、『理由なく殺す』殺人鬼が集まって家族を作った集団――『零崎一賊』。
彼はそれの『零崎三天王』が内の一人である。
天然で、思い込みが激しくマイペースな性格。口癖は『悪くない』。
十五歳の時、哀川潤との出会いと彼女への初恋をきっかけに、無差別殺人をする『零崎一賊』の中で唯一、自分の殺人に『少女以外は殺さない』というルールを課す。
自分の事を世界の脇役に位置付け、殆どの戦闘から逃げていた彼であったが、二十五歳の時、一賊を次々と葬った右下るれろと『橙色の暴力』想影真心を倒すべく、『少女趣味(ボルトキープ)』を手にして表舞台に立つ。しかし、結局、彼は戦闘の末に致命傷を負い、彼女らを逃がしてしまった。
家族の仇を討つどころか、長年の願いであった哀川潤との再会を果たさないまま終わるかのように思われた彼の人生だったが、彼はその直後に哀川潤と再会し、笑って死んだ。
なお、この聖杯戦争で彼は『少女趣味(ボルトキープ)』の全盛期が色濃く出た状態で召喚されているため、聖杯へ託す願いは下記の通りである。

【サーヴァントとしての願い】
哀川潤との再会

【方針】
聖杯を獲る。マスターである『少女』を殺さないようにする。


88 : 二宮飛鳥&アサシン  ◆As6lpa2ikE :2016/02/01(月) 18:17:15 HbcfBERU0
【マスター】
二宮 飛鳥@アイドルマスター シンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
なし

【weapon】
なし

【能力・技能】
歌と踊りが出来る

【人物背景】
静岡県出身、十四歳のアイドル。
自分でそうだと公言してしまうほどの自覚を持った中二病のボクっ子。
趣味は漫画を描くこと。
自分の目で見ない限り、ウワサは信じないらしい。

【方針】
生きて帰りたい


89 : ◆As6lpa2ikE :2016/02/01(月) 18:17:59 HbcfBERU0
以上です


90 : ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/01(月) 18:22:24 xyQU8Iks0
皆様投下乙です。
自分も投下します。


91 : 安部菜々&キャスター ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/01(月) 18:24:19 xyQU8Iks0


「ただいまー…」


そんなことを言っても、返事は返ってきません。
そもそも自分は一人暮らしなのだから当然でした。
それでも何となく、帰宅の挨拶をしてみたくなってしまうのです。
つまるところ、ちょっぴり寂しい。
気持ちを紛らわせる為に挨拶をしてみたくなるのです。

住居であるアパートの部屋に帰宅し、私は靴を脱いで玄関へと上がりました。
スーパーの袋を両手にぶら下げ、台所にそれを置きました。


「ふー…特売間に合ってよかった…」


床に置いたスーパーの袋を見下ろし、そんなことをぼやいてみる。
夕方の特売で野菜が安売りしていたので急いで買いました。
他にも適当に調味料を買ったので、今日の夕飯は野菜炒めにするつもりです。
こう見えて家事には慣れています。
上京して、一人暮らしを始めてからそれなりに経つから。
地元―――――じゃなかった、ウサミン星で母親から料理も教わっています。
生活力という点においてはしっかり自立出来ている、と思います。


手洗いをしながら、私はぼんやりと思考する。
今日の昼間、私は唐突に『気付いた』。
自分が大きなプロダクションに所属するアイドルであるということに。
本来ならばプロデューサーにスカウトされ、そのプロダクションで駆け出しのアイドルとして頑張っていた筈なのです。
なのに今の自分は何故かメイド喫茶でのバイト生活に逆戻りしているのです。
プロデューサーや事務所、知り合ったアイドル達の電話番号も何故か携帯電話から抹消されていました。


そのときナナは気付いたのです。
この街は、私の知っている世界とは何かが違うと言うことに。


違和感を覚えながらもどうしようも出来ず、いつも通りに買い物をしていつも通りに帰宅をしました。
一体全体、何がどうなっているのだろうか。
頭の中で疑問をぐるぐると回転させていた、その時。



「おかえり、我がマスターよ」



唐突に挨拶の声が聞こえてきたのです。
一人暮らしで、他に誰とも同居していない筈の私の部屋で。
全く知らない誰かが―――――挨拶してきたんです!


92 : 安部菜々&キャスター ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/01(月) 18:24:55 xyQU8Iks0


びくっと怯えながら私は居間の方へと視線を向けました。
そこに居たのは、黒い服を身に纏った壮年の男性。
畳の上、卓袱台の横で胡座を掻き、窓の外を眺めていました。
もしかして夕焼けを見ていたのでしょうか。
そういえば今日の夕焼けは綺麗だったなぁ、と私は呑気なことを考えてしまいました。


「えっと……どちら様で?」
「ああ、そうか。確か君達マスターに聖杯戦争の記憶は与えられてないのだったね」
「な、何言ってるんですか?け……警察!警察呼びますよ!?」


意味不明な言動を繰り返す男性に、私は声を荒らげて言いました。
呆気に取られて驚いてしまったが、よくよく考えなくてもれっきとした不法侵入だ。
正直言って怖い。何でこんな人が家に上がり込んできているのか。
目的が全く解らないからこそ、恐怖が込み上げてくる。
それでも私は勇気を出して出来る限りの憤りを見せました。
しかし不審者の男性は特に焦ることも無く、飄々とした態度で私を見つめてきました。




「キャスター。それが私のクラス名さ」




次の瞬間―――――私は目を疑いました。
居間でくつろいでいた男性が、突如『変身』したのです。
その姿を、私の理解出来る範囲で表現するならば。
極彩色の身体を持つ、奇怪な宇宙人。



「う、ううううう、うう、う、宇宙人っ!!!?」
「察しが早くて何よりだ。私は君達が言う所の『宇宙人』さ。
 尤も、今の私は君の味方だ。安心してほしい」



ナナはつい腰を抜かしてしまいました。
何せ目の前にいるのは本当に宇宙人だったのですから!
ナナはついに本物の異星人との接触を果たしてしまったのです!


93 : 安部菜々&キャスター ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/01(月) 18:25:18 xyQU8Iks0

そんな私の驚きもいざ知らず、キャスターを名乗る宇宙人は柔和な態度で語り掛けてきます。
曰く、私の味方…とのことですが。
そもそも、何で私の元に宇宙人が来たのでしょうか?
これはもしや、ウサミン星人のハートウェーブが本当に宇宙人を引き寄せてしまった…?

直後にキャスターさんは私に手招きをしてきました。
こっちで座って話をしようじゃないか、とのことです。
私は恐る恐る近付き、卓袱台を挟んで畳の上に座りました。


「で、君からも自己紹介をしてほしいな。
 これから共に組む相手なのだからね」
「あっ、は、はい!」


自己紹介を求められて、私はその場で立ち上がりました
今座ったばかりなのについ立ち上がってしまったのはご愛嬌と思って頂ければ…。
相手は本物の宇宙人――――の筈なのです。
だからナナも、それに相応しい挨拶をします!



「私はウサミン星からやってきた17歳!
 その名も、ウサミンこと安部菜々です♪
 歌って踊れる声優アイドル目指してますっ☆」



そう、私はウサミン星からやってきた宇宙人!
歌って踊れる声優アイドルを目指して努力を重ねる17歳!
ウサミンこと―――――安部菜々です!
そんな名乗り口上を堂々と言いましたが。
キャスターさんは、ぽかんとした様子で沈黙。


「………君は地球人では?」
「………あの、ウサミン星人ってことにしてください」
「はあ、そうなのか……承知したが、変わった挨拶だね……」
「あ、はい……何かその……スミマセン…」


ナナ、明らかに引かれてます。
本場の宇宙人に引かれてます。
なんだか妙に恥ずかしくなって私はしょんぼりと座って謝りました。
異星人同士の文化交流はとても難しいものでした。






94 : 安部菜々&キャスター ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/01(月) 18:25:56 xyQU8Iks0


「――――えっと、ナナ達は聖杯戦争…って言う催しの、参加者なんですか?」
「そうだ。何でも願いが叶う聖杯を巡って争う催しさ。
 まあ、ちょっとした大会のようなものだと思ってくれればいい」


その後私はキャスターさんから色々なことを聞きました。
私が聖杯戦争という催しの参加者(マスター)に選ばれたことを。
聖杯戦争は、聖杯という何でも願いが叶うアイテムを巡って争うということを。
キャスターさんは聖杯戦争の参加者に与えられる、いわば使い魔のような存在だということを。
私以外にも複数名の参加者が会場内に存在しているということを。
マスターとなった者の身体には令呪という模様が証として浮かび上がるということを。
まさかこんなマンガのような世界に巻き込まれることになるとは。
ナナは驚かされるばかりです。


「とはいえ、実際に何かするのは主に我々サーヴァントの役割だ。
 君は何もする必要は無い。ただマスターとして気付かれないようにしていればいい。
 詰まる所、いつも通りに生活をしていればいいのだよ」


キャスターさんは穏やかな声色でそう語ります。
この人の言う所によれば、私がするべきことはそんなに無いらしいです。
ただいつも通りに暮らしていればいい―――催しだと言うのに、ちょっと退屈だなと思う。
そんなことを思いつつ、私はキャスターさんに問いを投げ掛けました。


「その、聖杯って言うのは本当に願いが何でも叶うんですか?」
「ああ、何でも叶う。君も好きに願いを考えておくといい」


そうきっぱりと断言されました。
何でも願いが叶う。まるで魔法みたいな話です。
とはいえ、急にそんなことを言われてもどうすればいいのか。
人と言うのは迷ってしまうものなんです。

歌って踊れる声優アイドルとして輝きたい―――――というのも考えましたが。
魔法みたいな力を使ってそれを叶えるのは何だかなぁと思い、却下しました。
あくまで自力で、自分の努力でそこは頑張りたいですしね。


「サーヴァントは、この催しに自分の意思で参加するんですよね?」
「ああ、そうさ」
「キャスターさんの願いって、何でしょうか?」


私はふと疑問に思い、そう問いかけた。
この宇宙人は一体何を願って催しに参加したのだろうか。
詮索と言うよりも、純粋な疑問による問いかけだ。
キャスターさんは少しばかり黙り込んだ後、ゆっくりと答えた。


「それは聖杯を手にした時のお楽しみ、ということでどうかな?
 少しばかり恥ずかしい願いなのでね。あまり大っぴらには言いたくないんだ」


95 : 安部菜々&キャスター ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/01(月) 18:26:21 xyQU8Iks0

そう言ってはぐらかされて、私はきょとんとした顔をしてしまいました。
恥ずかしい願い…ますます気になってしまいます。
ですが、人には余り言いたくないことというのは誰にだってあります。
ナナだって17歳を名乗っていますが、実年齢は――――いやいやいや、そうじゃなくて。
とにかく、聖杯を手にした時までの秘密にしておきたい…と言うのなら、ナナは追求しません。


「さてナナ、実際に何かするのは私…とは言ったが。
 実のところ、私は余り此処から動かないつもりだよ」
「え、どうしてですか?」
「私は隠れ潜み、あくまで漁父の利を狙うつもりなのさ。
 少々『せこい』と思うかもしれないが、私はサーヴァントとしては直接戦闘に向いていないタイプなんだ」


私は先程のキャスターさんの説明を思い返しました。
この聖杯戦争はサーヴァント同士による乱闘のようなものらしいです。
キャスターさんも他のサーヴァントと頑張って戦うのかと思っていましたが、どうやら違うみたいです。


「勝利するのに下手な力は必要無い。
 潰し合いを静観し、隙を突く…それが私の流儀だ」
「な、なんだか頭脳派ですね…!」


言われてみればその通りです。
何人も参加者が居るのだから、下手に動く必要は無い。
皆が戦っている好きに勝利をもぎ取ればいい。
確かに道理に適っています。キャスターさんは策士なのかもしれません!
ちょっぴりずるいな、と思わなくもないのは内緒です。


「まあ、兎に角…先程も言った通り、君はいつも通りに過ごしてればいいさ。
 聖杯戦争に当たるのは私の役目だからね。それで、話は変わるが…」
「はい、何でしょうか?」
「食事にしないか?もう夕飯の時間だろう」


確かにその通りである。
気がつけば、ぐぅぅぅと私のお腹の虫は鳴っていました。
私はキャスターさんの言う通り、食事を作ることにしました。
一人分の予定だった食事は二人分に。
宇宙人と食卓を共にすることになるとは、思いもしませんでした。



まさかこんな催しに巻き込まれるとは驚きです。
この時のナナは、まだ何も知りませんでした。
自分の巻き込まれている聖杯戦争の本質さえも。




◆◆◆◆


96 : 安部菜々&キャスター ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/01(月) 18:26:43 xyQU8Iks0



―――――驚きだ。
―――――まさか私がこのような儀式として召還されるとはな。
―――――まあ、これも僥倖というべきか。
―――――折角与えられたチャンスだ、有効に活用させてもらうとしよう。
―――――勝ち残る為にも、今の自分に何が出来るかを確かめる必要がある。
―――――宇宙ケシの生成、加工は行えた。
―――――後は宝具の『実験』だ。



◆◆◆◆


97 : 安部菜々&キャスター ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/01(月) 18:28:02 xyQU8Iks0



昨日夕方、岩本町で同僚に暴行を加えた男性が現行犯逮捕されました。
逮捕されたのは会社員の×××容疑者(30)。
被害者の△△△さん(29)は病院に搬送されましたが、命に別状はありませんでした。
調べに対し容疑者は「自分は殴ってない」と容疑を否認しています。





昨日夕方、飯田橋で刃物を持った男による殺人事件が発生しました。
被害者は現場近くに住む◯◯◯さん(24)、△△△さん(45)、□□□さん(50)。
三人はその後病院に搬送されましたが、いずれも死亡が確認されました。
事件を目撃した近隣住人からの通報により警察官が駆け付け、現場近くに住む会社員、×××容疑者(30)を現行犯逮捕。
逮捕の直前、容疑者は警察官三人と揉み合いになり、うち一人が胸を刺されるなどして重傷。
調べに対し容疑者は「殺意は無かった」「記憶に無い」と曖昧な供述を繰り返しているとのことです。





昨日夕方、霞ヶ関で歩道に乗用車が突っ込む事件が発生しました。
歩道を歩いていた30代の女性と50代の男性がはねられ、頭を強く打ちその場で死亡が確認されました。
目撃者によると自動車は意図的と見られる運転で歩道に乗り出し、通行人を跳ねたとのことです。
警察は乗用車を運転していた区役所職員の×××容疑者(48)を現行犯逮捕。
調べに対し容疑者は「何も覚えていません」と供述しているとのことです。



【クラス】
キャスター

【真名】
メトロン星人@ウルトラセブン
※厳密には真名ではないが、便宜上この呼称が真名として扱われている。

【ステータス】
筋力C 耐久D 敏捷D 魔力C+ 幸運C 宝具C+

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
陣地作成:D
侵略者として自らに有利な陣地を作成可能。
効果範囲はせいぜいアパート一軒を乗っ取れる程度。

道具作成:D
人間を凶暴化させる宇宙ケシを生成可能。
対象に摂取させることで効果を発揮する他、後述の宝具にも用いられる。
侵略者としての側面が膨張したことによって応用の幅が広がり、結晶体以外にも液体などある程度の加工が可能。

【保有スキル】
変化:B+
自身の肉体を変化させるスキル。
メトロン星人の場合、通常時の宇宙人としての姿から人間の姿へと変化する。
人間に擬態している最中は魔力の気配を完全に遮断し、ステータスを視認されることもない。
そのため無力な一般人のように振る舞うことが可能となるが、後述の宝具「放逐の円盤」が使用出来なくなる。
なお本来ならば自身の身長を50メートルにまで巨大化させる能力も備えているのだが、サーヴァントとしての劣化により使用不可。

侵略の慧眼:B
数々の惑星を狡猾な作戦で侵略してきた逸話がスキルと化したもの。一種の戦術眼。
対象の能力と習性を冷静に把握し、効果的な作戦を導き出す“侵略論理”。

話術:D
言論にて人を動かせる才。
脅迫じみた忠告や柔和な言動などを使い分け、他者を牽制する。

【宝具】
「狙われた街」
ランク:C+ 種別:対街宝具 レンジ:1~10(対象指定有り)、会場全体(対象指定無し) 最大捕捉:1~?
生物を凶暴化させる宇宙ケシを利用し、人類の信頼関係を破壊することで地球を掌握しようとした逸話が宝具化したもの。
道具作成スキルで生成した宇宙ケシの結晶体や液体を空間転移させ、煙草や飲食物へと混入させる。
宇宙ケシが混入した煙草や飲食物を摂取した者はたちまち凶暴化し、周囲の人間に攻撃を仕掛けるようになる。
伝承で確認されている範囲では煙草にのみに宇宙ケシを用いているのだが、
「信頼関係の破壊によって地球支配を目論む侵略者」としての逸話が膨張したことによって能力の応用力が拡大している。
また宇宙ケシの転移は対処指定有り・対象指定無しを任意で決めることが出来る。

対象を指定する場合、特定個人が持つ煙草(飲食物)や自販機内の煙草等に任意で混入させることが可能。
ただし任意に指定する場合、一定の範囲内に対象が存在する必要がある。

対象を指定しない場合、レンジ内に存在する煙草(飲食物)にランダムで混入する。
結晶体の総量が多ければ多いほど結晶体は広範囲に拡散し、数多くのモノに混入することとなる。
なおマスターを中心とする一定範囲内にケシが転移されることはなく、マスターが事件に巻き込まれる危険性は抑えられている。

「放逐の円盤」
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
メトロン星人が搭乗する宇宙船。
空中を自在に飛行し、破壊光波によって対象を攻撃する。
二機に分離してそれぞれが飛行することも可能。
変化スキルによって人間に擬態している際はこの宝具の使用が不可能。


98 : 安部菜々&キャスター ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/01(月) 18:28:51 xyQU8Iks0
【Weapon】
素手

【人物背景】
「幻覚宇宙人」の異名を持つ宇宙人。
宇宙の彼方にある紅の惑星「メトロン星」よりやってきた侵略者。
狡猾な知能を持ち、地球に現れる以前から数々の惑星を侵略してきた。
地球では北川町のアパートを拠点とし、宇宙ケシを煙草に混入されることで人間を凶暴化させていた。
最終的に信頼関係の崩壊による全人類の同士討ちへと発展させ、人類が滅亡した際に地球を支配しようとしていた模様。
しかしウルトラセブンとウルトラ警備隊によって阻止され、夕焼けの街でウルトラセブンと対決するも敗北した。

【サーヴァントとしての願い】
メトロン星人による全宇宙の支配。

【方針】
下手に暴力を使う必要は無い。
自分達は潰し合いに乗じて漁父の利を得ればいい。

マスターには聖杯戦争について大まかに話したが、基本的には「ちょっとした催し」程度にしか語っていない。
殺し合いの儀式であること、自分が地球侵略を目論む存在であること、令呪の用途については隠している。
尤も、バレたとしても適当な言い訳で丸め込むつもりである。






【マスター】
安部 菜々@アイドルマスター シンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
元の世界に帰りたい。
聖杯戦争については把握したものの、サーヴァント同士を戦わせるゲームのような催し程度にしか聞かされていない。

【weapon】
ウサミミとメイド服

【能力・技能】
歌って踊れる声優アイドルになるべく、ダンスやボーカのルレッスンを行っている。
ただし無理をしすぎると腰を痛める。

【人物背景】
自称・ウサミン星出身、永遠の17歳。それがウサミンこと安部菜々である。
メイド喫茶でのアルバイトや地下アイドルとしての活動で下積みをしてきたらしい。
目指すは歌って踊れる声優アイドル。

この聖杯戦争においては秋葉原の安アパート暮らし。
メイド喫茶でバイトしてつつ地下アイドルとして活動している模様。

【方針】
キャスターの言う通り、とりあえずいつも通りに過ごす。

令呪の位置は鎖骨付近。


99 : 名無しさん :2016/02/01(月) 18:29:04 xyQU8Iks0
投下終了です。


100 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 19:24:34 w1F3Vh9g0
投下します。


101 : 西木野真姫&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 19:25:07 w1F3Vh9g0



 ──遠い国では、ずっと未来もまだ人と人との戦争が続いていた。



 長い長い、干上がった砂漠があった……。
 硝煙の匂いが砂埃に混じって鼻孔をくすぐり、猛禽類が空を飛び交うこの世の地獄がそこだった。
 猛禽類は、その戦争によって生まれた大量の屍を貪るだけ貪って、無責任に飛び去って行く。

 その土を踏んでいる人間たちは、互いに武器を取って殺し合った。
 武器を持たない人間は、明日あるともしれぬ命を抱えて逃げ惑っていた。
 日々潤っていくカラスたちに対して、人々の暮らしは貧しくなり、簡単にどうにでもなる飢餓と病とが国中に広がっていった。人を殺すのは人だけではなかったのだ。
 その日を暮らすのが精一杯の者たちが何百人と溢れ、平和な島国に住む者ならば小悪党でさえ罪悪感に目を覆ってしまうような「死」は繰り返されてきた。

 おそらく、この後、また何年とまた同じ事を繰り返すであろう、終幕のない劇場が、戦争。
 そこに巻き込まれた人間にとっても、耐えがたいこの世の地獄なのである。

(──……始)

 ……そして、元来、英霊の多くは、常にそうした戦場に活躍したものだった。
 戦争を指揮した者もいれば、戦争を終わらせた者もいる。
 戦争の中で慈善活動を行った者もいるだろう。


 ──この時、聖杯が呼んだ英霊もまた、そんな場所で人を救い続けた男だった。


(──……お前は、今、どこにいる)

 彼は、ある世界の遠い戦場で、語り継がれた英霊である。

 人とも獣とも判然とせぬ奇妙な怪物が現れ、戦地で人々を救い続ける……という伝説が、まさしく彼の事だった。
 いや、それはもはや伝説というより、この世界に置かれた一つの奇異な現実に他ならない。
 進歩し続ける超技術の未来には、最早、新しい神話など発展せず、そして、広まらなくなるのである。
 彼は人の前に確かに現れた。
 故に、彼は「伝説」であり、多くの人が前にした「現実」だった。

 幾歳月が流れても、彼は人を救う事を辞めなかった。
 いつか折れても誰も責めないだろうに、彼はまるで誰かを助ける事そのものが本能や、あるいは運命づけられた人生であるように、誰かを救い続けたのだ。

 あらゆる時代に、人々は何度もその男の姿を捉え、その男に接触し、その男にマイクを向け、時には非難さえもした。
 男は何を言われても、ただ黙しながら、人を救い続けた。

(──……なあ、俺はまだ戦い続けている。お前は今、一体どこで何をしているんだ……)

 新しい戦争が始まる度に、今度こそは一人でも多くの命を救い出し、人としての生涯が普通に閉じるまでを支えながら生きていくその運命は過酷であった。
 ただの兵士だけではなく、戦意のない者たちも傷を追い、近しい人を失い、時に利用され、時に殺される。
 親しかった子供が頭に穴を開けられ、虚ろな瞳で砂漠を見つめる。立ち寄った村の人間がすべて、同じ形をした真っ黒な墨の塊になる。
 かつて誕生を喜ばれ、男もそれを喜んだはずの子供が、眉に麻薬を埋め込まれて、家族に銃を向ける。
 助けた少年が成長し、歪んだ思想に芽生え、新たな戦争の首謀者となる。

 ──あの悲壮な地獄を、何百年も、繰り返し、繰り返し、繰り返し、その目で見て、男はその憤りと悲しみを噛みしめ続けていた。

 それでも彼は、運命と戦うのを、決して辞めなかった。
 死体の山の中で、命や精神をすり減らしながら、眠る事も食事をする事も忘れて、生き続けた。
 これから、人と人との争いで百万人が死ぬとしても、その中の千人、百人、十人……いや、その中の一人でも良い。
 彼は、その命を助ける為に、これから先の何百年を生き続ける運命と戦う理由を見つけ出せた。
 そして、いつか、世界中の人々を助ける夢を果たすまで……。


102 : 西木野真姫&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 19:25:31 w1F3Vh9g0

(──お前は、人として生きられたか? みんなが生きて、そして死んでいく、その傍にいられたのか? 始……)



 ──たまに、昔の夢を見て。



 それから、彼は、そこから遠いアジアの平和な島国で──今はどんな街並になっているかもわからない故郷で。
 今この時にどうして暮らしているのかさえも知れぬ友の事を思い浮かべながら。
 いつか……遠い昔に、友に告げた言葉。
 それを時折思い出す。

『──俺は、運命と戦う。そして、勝ってみせる』

 あの言葉の通り、彼は英霊の座につくまで、運命と戦い続け、そして人の中で伝説となったのだ。


 何万年にも渡る自らの本能との戦いの果て、彼は運命に勝てたのかはわからない。
 英霊となり、聖杯戦争に呼ばれたその時に、彼が死ねていたのかも、誰も知れない。
 それは遠く、人類が時の流れに負けて真っ当に滅んだその時の話であるかもしれない。
 彼が誰かに救われ、友と二人で背負っていた運命が誰かの手で平和に終えられた時の話かもしれない。

 自分の終わりが何だったのかは、現世に顕現した時の当人の意識の中でも全て忘れられている話である。
 だが、少なくとも、多くの人の信仰がその男に集まったその男が、何らかの形で全てを終えた何時か、「英霊」としての座につくのは当然の事であった。


 ────男の名は、「剣崎一真」といった。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆


103 : 西木野真姫&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 19:25:51 w1F3Vh9g0



「……」

 西木野真姫が聖杯戦争のマスターとしての記憶を呼び覚ましてから、最初に行ったのは自らのサーヴァントの検索だった。
 赤みがかったカールの髪先をくるくると指先で弄びながら、彼女は息を飲み、それらしいデータのスクロールを続ける。
 ちなみに、肩まであるそのもふもふヘアーを手で巻いて遊ぶのは、彼女の普段の癖だ。
 こうしてサーヴァントの検索を真っ先に行ったのも、ガリ勉とまでは行かずとも日夜勉強する癖が根深い真姫が故だ。

 検索機能を使用するのがほぼ聖杯戦争のマスターに限られる条件から、安易に検索機能を使うべきではないのだろうが、彼女の実家が病院を経営している都合で、真姫は何かと理由をつけながら違和感もなく病院内に立ち寄れる。
 病院内の医師に度々挨拶される真姫の様子を見れば、誰であっても真姫がこの病院の関係者だと解する事が出来る筈だ。

 つまり、真姫は聖杯戦争が始まった時点で、財力の面でも情報の面でも少々有利であったのだが、だからと言って、自分の命がかかっている手前、安心はできない。
 それどころか、むしろ、この後には、検索機能を持つ重要施設に勤めている親が敵に狙われるリスクまで生じているのだから、一般人である真姫にとって、相変わらず息もつけない日々は続いているくらいである。
 病院内に現れる人間を、患者や医師も含めて疑い、情報秘匿の為に検索施設そのものに手を出すサーヴァントが現れるのではないかと恐怖する事も珍しくはない。
 しかし、今はそんな不安も頭の隅に寄せ集めて、サーヴァントの情報を閲覧していた。

『剣崎一真』

 おそらく、現在持っている情報から察するに、彼の名前は『それ』で間違いないだろう。
 真名までは聞く事がなかったが、それは、彼自身がすぐには名乗らず、真姫の方からもいきなり聞く事を躊躇った為であった。

 召喚直後は聖杯戦争について話していた二人であったが、偶々近くにいた『敵』が戦闘に割り込んだのだ。
 それに対応して、剣崎は即座に、『なにものか』へと変身──見事、『ライダー』のサーヴァントを打ち倒した。
 さすがの手際である。
 ただ、お陰で、じっくりと真名を聞くタイミングを逃したのである。
 それ以来だ。──最低限のコミュニケーションしか取らず、彼に対して、聖杯戦争の会話は殆どしなかった。

(──)

 敵の実力が少々高かったのが、何よりの原因だった。──変身を解いたセイバーの姿を見た時、その身体から、健常者と異なる色の血が流れたのである。
 セイバーは、「緑色の血」を垂らしていたのである。
 その血に、真姫が「病者」としてでなく、「怪物」としての意味があるのをどこかで悟ってしまったが故だろう。
 彼が英霊であり、そして、真姫の理解を超えたモノに変身していた──それが、そんな想像の所以だ(実際、検索したデータを見る限り、当たらずとも遠からずである)。

 自分の知る常識と、大きく構造が異なるモノを見かけた時、「拒絶」と行かないまでも、どこか壁を作ってしまうのは、やはり人の常だった。
 医者の卵という立場では、そうした異形に耐性がなければ当然いけないのだが──まだ高校生で医学を本格的に識って慣れるにはまだ早い真姫では無理もない。

 それから、剣崎自身もまた、聖杯戦争においては、サーヴァントの名前など名乗る必要はないと踏んでいたのかもしれない。
 彼は、呆然とする真姫を前にも、ただ黙していた。
 そして、即座に真姫の周囲から姿を消した。
 ……まあ、それは、文字通り、視界に入らないだけで、真姫の近くでその護衛を行っている筈だが。

(……変な話よね。私を護衛してるセイバーに直接訊けばいいのに、わざわざ検索するなんて。意味わかんない)

 そうは言うが、やはり、真姫にも、気になるものは気になるのである。
 直接訊くのは躊躇われるが、独自で彼の真名を調査する事くらいは出来る。
 元々、サーヴァントの立場をいち早く考慮し、彼の人格を無視して置物のように扱っていた部分もあったお陰か、この矛盾した行動も行えたわけである。

 彼が持つ緑の血の理由とは何なのか──と、好奇心も手伝って、調べてしまった。
 結果、こうして、こっそりと検索をして、セイバーの真名が「剣崎一真」である事まで特定するに至ったというわけだ。


104 : 西木野真姫&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 19:26:17 w1F3Vh9g0

(剣崎……カズマ……でいいのよね?)

 セイバーとして召喚され、真姫の友人となった落ち着いた茶髪の青年──と思しき英霊のデータが存在した。
 現物は、顔立ちの整った長身の日本人男性というくらいの特徴しかなく、初めて会った時にはさして英霊としての風格は見られなかったが、その直後に発生した戦闘は彼が何者なのかを真姫に知らしめた。
 ビートル(甲虫)の鎧に身を包み、剣と札(トランプ)を使って戦う青い騎士としての戦いの姿──その圧倒的なまでの強さとタフネス。
 そして、命を削りあう戦闘の返礼として、僅かながら流れ出た緑の血。これは、少なくとも健康体の人間が流す血液の色ではなかった。
 ここまでのデータがあれば、充分に検索が出来た。

 彼は名前を名乗らなかったが──まさしく、彼はこのデータにある男「剣崎一真」に違いあるまい。

(えーっと、英霊としての活躍やこれまでの経緯は──)

 スクロール。
 そこには、彼が英霊たる所以や、敵に見つかると不味い弱点なども事細かに記されている筈だ。

 そして、データによると、剣崎はある世界では多くの信仰を集めた男である事が分かった。
 元々は、日本国内で「都市伝説」として謳われた仮面ライダーの一人だが、それが集めた信仰はまだ少ない部類である。
 ……問題はその後だ。

『仮面ライダーブレイド』
『ジョーカーアンデッド』

 彼は仮面ライダーとしての戦いを「自らが不死の怪物になる」という形で終えて世界を救い、それからは戦地で子供を救い続ける事に従事したというのである。
 その為、彼の世界において、あらゆる時代、あらゆる紛争地帯でその目撃情報が残っており、人類史では長くその世界に君臨し続けたのだ。
 その応酬として、多くの信仰を集めている──つまり、かなり強い部類に入るサーヴァントである。
 突如巻き込まれた真姫の手には余るかもしれないレベルだ。

 剣崎は、ある時代には救世主であり、ある時代には災厄であり、ある時代には怪物であり、ある時代には神であった。……そんな存在だった。
 まあ、性格の情報は、曲解されている時代よりも、実像通りの性格として受け入れられている時代の方がはるかに多く、現世から転じて「混沌」や「悪」の属性を架される事もなかった。
 いわゆる、「無辜の怪物」という程ではない。
 いずせにせよ、それだけの時代で信仰を集め続けた剣崎一真がサーヴァントとして具現できる存在になるのも当然であろう。

(……そういう感じじゃなかったけど)

 真姫は、ふぅ、と一息つき、丸い座席の上で無意味に回りながら、「剣崎一真」のデータの整合性をひとまず疑った。
 剣崎という男の姿を見ても、そんな長い時間を生きた人間には見えなかったからだ。
 ごく普通の現代の若者、と何ら変わらない人相であるように思う。

 変わっている点といえば、やはり──先日拝む事になった、その「緑色の血」であろうか。
 だが、それだけだった。
 元はといえば只の人間であり、「アンデッド」という怪物に変わったのは後天的な問題である。
 性格には、普通の人間からはぐれた部分はない。──いや、そのかたくななまでの「救済」の意思は、確かに人間離れしているかもしれないが。

(弱点らしい弱点はナシ、みたいね。元の世界に帰るまでなら、何とかなりそう……?)

 元々、率先してこの聖杯戦争に参加したわけではない真姫は、剣崎一真のこの「性能」を、脱出の為に使わせてもらおうと考えていた。
 真姫の方針は、この聖杯戦争から一刻も早く降りる事にある。死にたくないし、戦いたくもないのだ。
 しかし、その為には他サーヴァントの猛攻から生き延び、聖杯にも仇なす用意がなければならない故、セイバーこと剣崎がサーヴァントでも強力な部類に入る事には一安心していた。
 当初からセイバーには「脱出を望んでいる」と話しており、彼も協力的であったが故に、殆ど滞りなく方針は定まったわけだ。

 一仕事終えたという訳で、今日はこれから帰って、勉強をして、明日以降にまた、脱出の事を考えよう、と真姫は考えていた。
 明日以降は、やはり、μ'sとしての活動も視野に入れておかねばなるまい。
 たとえ、他のサーヴァントとの殺し合いが始まるとしても、仲間と日々顔を合わせ歌い踊るのが彼女の習慣なのだ。


105 : 西木野真姫&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 19:26:35 w1F3Vh9g0

 そう、習慣。
 当たり前の習慣。

 ──真姫の頭に、再度、先ほどのデータが戻る。

(仲間ともう会えない、か……)

 真姫は、考えてしまうわけだ。
 剣崎一真という男が生涯抱えたとされる運命──その過酷さを。

 真姫にとっても、μ'sの仲間は大事だ。
 たとえ卒業した後の話であれ、二度と彼女たちに会う事ができないなどという話は聞きたくないし、想像もしたくない。
 仲間の前から姿を消した彼の場合、家族や親しい人にさえも会えないわけだ。
 それを、数万年という長い時の中で行うなんて──。


 サーヴァントである剣崎を、道具として扱う……?


 そうして割り切ろうとしていた自分に対して、ふと疑問符が湧いた。
 やはり、剣崎も人間と言える──その相手に対して、こんな冷徹なスタンスで居続けなければならないのだろうか。
 真姫は、もう一度……今度は、「剣崎一真」を知り、それからどうすべきかを考え直す事にした。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



「……」

 病院の外の駐車場で、送信痩躯の男は目を閉ざして腕を組み立っていた。
 彼こそが、丁度、真姫が見るパソコンの中で映されている「剣崎一真」という男に違いない。

 真姫の近くに敵性サーヴァントが寄らないよう、ここでずっと護衛を行っていたのである。──これは真姫の予想通りだ。
 寡黙な守護者も、今の彼には似合っていた。
 マスターと口を利かないのは少々馬鹿らしいかもしれないが、知る限りの聖杯戦争の内容を知った後は、このスタンスでも別に良い。

 剣崎一真、という男は、本来かなり明るい性格であるものの、多感な少女を相手にするのはどうも苦手な方かもしれないと思っていたのだ。
 栗原天音も、手なずけるのは始の方が得意だったくらいである。

「──サーヴァントか」

 病院の外で、剣崎が呟いた。
 近くにいた「サーヴァント」に対して、いち早く気配を感知したというわけだ。
 勿論、それくらいは出来なければ意味がない。

「ああ」

 ひらかれた剣崎の双眸が映していたのは──近寄る大男だった。
 身体を揺らしながら歩いている。背には弓を背負っていた。まさに英霊のそれである。
 身長は剣崎と同じほどであるものの、真横に大きく、固い筋肉を味方につけているのが見て取れた。
 髭を蓄えた強面の貌と合わせて、並みの人間ならば見るだけで威圧されてもおかしくはない。
 しかし、剣崎は慣れていた。


106 : 西木野真姫&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 19:26:58 w1F3Vh9g0

「目的は、何だ?」

 真昼の病院で、弓を背負った敵のサーヴァント──それは、彼が『アーチャー』である事を示していた。
 弓、という武器には、剣崎もよく知る男の思い入れがある。
 しかし、アーチャーというクラスは、遠距離射撃を得意とするクラスであり、こうも近寄ってくる理屈はない訳だ。
 銃器を使う者も多いが、そんなサーヴァントが真っ向からやってくる理由は数少ない。

「──戦いさ!」

 答えは明朗だった。
 弓を背負っているアーチャーであるが、剣の腕も確からしく、大剣を顕現して対峙する。
 こうして、アーチャーが弓以外の武器を使うのは珍しい。

「そうか……。
 ──だが、何故だ? 何故、お前は戦う──」

「サーヴァント同士だ、戦う理由など必要ないだろう。貴様も武器を取れ。
 キャスターのクラスならば数日程度時間を与えるが、それ以外ならば俺と戦え──」

 戦いそのものが目的ときている。
 マスターの意思さえもどの程度反映されているのかわからない野蛮人だ。
 いや、まだマスターの記憶が覚醒していないのか、あるいは、その上でマスターにルールを教えていないのかもわからない。
 これが聖杯戦争の難儀な所で、マスターの近くでサーヴァントが顕現すると限らないというわけである。
 彼の場合、アーチャーのクラスでありながら、思想は全く、狂戦士(バーサーカー)そのものだ。

「──」

 本質的に戦いを嫌っている剣崎は眉を顰めた。
 それを見て、アーチャーも戦いを渋る性格であるのを認め、すぐにそれに対応した「方法」を行った。

「……そうか、わけもなく武器を取る気はないというわけか。
 ならば、すぐに理由を作る。──こちらから先に命を取らせてもらうぞッ!」

 アーチャーは、駆け出し、その大剣を振りかぶるようにして剣崎に接近する──。
 隙はあえて大きくしているようだ。この一撃で芽を刈り取ってしまわぬようにだ。
 剣崎の身体へと肉薄する図体も、そのまま駆け抜けて剣崎にぶつかりそうな速度である。
 この奇襲に必要なのは、相手に、「本当に殺しにかかってきている」という認識を植え付ける事──「戦い」が彼の目的だからだ。
 そうすれば、どんな相手でも自らの手の内を見せてくれる。 
 アーチャーはそうまでして、戦いたいらしかった。

「くっ……!」

 剣崎は、すぐに身をひるがえしてそれを避けた。
 ──仕方がない。このまま放っておいては、被害を出すに違いないのだ。
 人を守る為にならば、剣崎一真は何度だって武器を取る。
 今は、その時だった。自らの身と、マスターの身と、あるいは病院の人々でさえも守る覚悟が、彼の手に収束される。
 そして、『宝具』はその手の上で顕現される。

(もう一度、俺に力を貸してくれ……BOARDのみんな)

 宝具の名は──『魔物飼いならす剣の紋(ブレイバックル)』。
 そして、もう一つは、トランプと同じく五十二枚存在する『封印されし五十二の生物祖(ラウズカード)』の一枚、スペードのAのカード。
 アーチャーは、彼が武器を取り出し、腰に装着したのを確認して、ニタリと笑った。
 心を落ち着けるように身体を上下に揺らし、剣崎の出方を伺う。
 最初から、敵が本気になってくれるのを待っていたのが彼だ。
 剣崎が戦う準備を終えるまでならば、アーチャーは待ち続けるだろう。

「──変身!」

 ──Turn Up──

 剣崎の、この場での二度目の変身が始まる。
 彼の目の前に現れた、変身者のゲート──オリハルコンエレメント。

「はああああああああああ!!」

 それを、剣崎は疾走して潜った、彼の身にブレイドアーマーが装着される。
 資格を持つ人間しか潜りえないのがこのオリハルコンエレメントだ。勇気さえも試される。
 人々を守る覚悟と勇気を伴った、剣崎のもう一つの姿──その名は仮面ライダーブレイド。
 カブトムシの力を持つ青い鎧に身を包んだ、人類の守護者である。


107 : 西木野真姫&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 19:28:24 w1F3Vh9g0

「ウェイッッッッ!!!!!!!」

 ブレイドは、叫びながら、腰につけた剣を構え、その小さな剣をアーチャーに向けて凪いだ。
 アーチャーは、大剣を縦に構えてそれを防ぎ、笑った。
 敵を傷つける意思を持って放った斬撃である。
 ブレイドも少しは驚いたに違いない。──こんなにも自在に、あの大剣を操るなんて。

 しかも、敵はその状況で喋る余裕を伴っていた。
 ブレイドが必死になって叩きつける一撃を、あまり意に介していないらしい。
 ただ、戦いが始まった喜びだけはあるようだった。

「──鎧を身に着けた……、その剣、『セイバー』というわけか」

「ああ……!」

「ならばこそ、戦い甲斐がある……最強のクラス『セイバー』のお前とならなァッ!!」

 アーチャーは、その筋力でブレイドの攻撃を跳ね返す。
 生身の人間でありながら、鍛えあげたその肉体は、仮面ライダーの力さえも退ける。

「……なぜ、お前はそんなに闘いたがるんだ……! マスターの願いの為じゃないだろぉッ!?」

「マスターなんて関係ないのさ!」

 ブレイドが数歩後退し、また、アーチャーの巨大な剣がブレイドに向けて襲い掛かった。
 今度は、手加減抜きに、ブレイドの鎧を砕かんと振り上げられる。
 思った以上によろける。──アーチャーの力は、アンデッドよりも強かった。

「くらえッ!!」

 ──そして、それは狙い通り、次の瞬間にブレイドの鎧の肩の装甲に叩きつけられている。
 本当に素早い動き。
 硝子が砕けるように肩のアーマーが砕け、中にある剣崎の肉体までもを傷つける。

「くッ!」

 よく磨かれた剣──そして、それを苦も無く操る、よく鍛え上げられた怪力。
 強き弓兵だ。──敵は果たして、何者か。
 もしかすると、ロビン・フッドなど、有名な英霊なのではないか、とブレイドは思う。

「ぐあああああ……ッッ!!」

 痛みが、左肩から全身に駆け抜ける。
 ブレイドにこうしてダメージを与えられるのはなかなかの実力者だ。
 戦闘経験は高いものの、この二日間での「仮面ライダーブレイド」としての戦いは──実に数万年以上のブランクがある故、少しの鈍さがある。
 だが。


108 : 西木野真姫&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 19:29:23 w1F3Vh9g0

(……俺は、!)

 そう──こう見えても剣崎自身の耐久性は高いのだ。
 何せ、不死の怪物だ。
 自己犠牲的な戦い方だって、彼は辞さないし、実際にしてきたのである。



「俺は、戦えないマスターの為の、剣になる……その為に、負けるワケには行かないッ!」



 故に、どういう形であれ、こうして接近し、攻撃を当てた時点で──アーチャーの敗北は確定した。
 肉を切らせて骨を断つ覚悟で──カードをラッシュし、ブレイドはアーチャーに攻撃を放とうとする。

 ──Slash──
 ──Thunder──

 傷つく左肩を動かし、カードは醒剣ブレイラウザーにラッシュされる。
 スペードの2──スラッシュリザードと、スペードの6──サンダーディアーの力を借りた。
 カードに封印されたアンデッドたちの能力を借りて、ブレイドは敵に攻撃を放てるのだ。
 この距離ならば、斬撃に対しては、かなり有効である。

「──ウェェェェェェェイッッ!!!!」



 ──Lightning Slash──




◆ ◆ ◆ ◆ ◆


109 : 西木野真姫&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 19:29:45 w1F3Vh9g0



 ──それから数十分が経過した。



 外はすっかり夕暮れである。
 傷つき、病院の壁にもたれるように寝そべっている剣崎の前には、真姫がいた。
 剣崎は、あのまま、見事アーチャーを断ち、勝利せしめた。
 アーチャーの一撃は強かった──故に、「肉を切らせて骨を断った」とはいえ、切れた肉は勝利しても尚痛いわけである。

「──ほら、これでオッケーよ。効くかわからないけどね」

 病院から持ってきたのか、救急箱で剣崎に応急処置を行う真姫。
 剣崎と真姫とが行ったのは、実に二日ぶりの会話だった。

「……」

 サーヴァントである剣崎には、人間の消毒法などナンセンスだ。
 それは真姫の知識が薄いせいもあるが──だとしても真姫は、剣崎が人間でない事くらいは知ってしまっているので、やはりナンセンスな事には違いないかもしれない。
 せめてもの思いやりか、あるいは、再び会話を取り戻す為の口実なのか、剣崎は考えたが──どちらにせよ、ありがたい事に違いなかった。
 この傷を与えた強敵も、この包帯を巻いてくれている人間も……剣崎がいま刻んでいる新しい仲間だったのかもしれない。
 無邪気にはにかみながら、剣崎は真姫に礼を言う。

「ありがとう、マスター……」

「真姫でいいわよ」

 間髪入れずに、そう返した真姫。
 視線はぷいと向こうを見て、こんな所で視線を交わし合うのを避けた。
 恥ずかしいのだろう。──剣崎には、こうした女心は何万年かかってもわからなそうだが。

「……」

 こんな風に告げたのは、真姫もせめて、従者ではなく人間として彼に接したいという考えに至ったに違いない。
 セイバー、そして、マスターというのでは、あまりに機械的な関係だ。
 それではいけない、というのが真姫の自力で出した結論だった。

 目の前にいるのは、剣崎一真という一人の男。──別の世界で、人間を救う為に頑張ってくれた、普通の「人間」だ。
 真名が発覚しては不味い(と言っても、検索すればわかってしまうのだが)ので、一応、真姫の方からは「セイバー」としか呼べないが、そのくらいの形式性は許してもらおう。
 まだ余所余所しさは抜けないが、それでも何とかうまく、「人間同士」の関係に治そうとする。

 で、過度に尊敬を強調して「セイバーさん」と呼び敬語を使うのも変だったし、ぱっと出てきたのは、μ'sの先輩に対する時のようなフランクな喋り方だった。
 仮にも成人男性に対して、タメ口は流石にまずいが、「成人男性」である事と、「人間」である事と、「サーヴァント」である事と、「人を救った人間」である事とが複雑に混ざり合った結果、これが一番自然だと思ったわけである。
 これも今更直すと却って変だ。……ただでさえ、口を利かなかったせいで少し気まずいというのに。


110 : 西木野真姫&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 19:30:06 w1F3Vh9g0

「真姫ちゃん、俺の事、全部調べたんだよな……」

 すると、一番訊きたかった事を、剣崎は訊いた。
 真姫は少し躊躇してから、剣崎を横目で見て答えた。

「ええ。調べられる限りは全部ね」

「俺がアンデッドだって事も」

「……ええ」

「そうか」

 それだけ聞くと、感想もなく、剣崎は立ち上がった。
 少し気にしているようだが、剣崎はもとより、半分獣のようになりながら人を救った男。
 この程度で、元の明るさを消し去る人間ではない──真姫が普通に接してくれるというのなら、それで十分なわけだ。

 怪物と虐げられる事だって慣れている剣崎だ。
 だから、この二日、真姫が自分を避けていた事も全て無かった事にする。
 剣崎はまた、この東京で、仮面ライダーブレイドとして戦う──。それがまるで、昨日の事のようで、彼には不思議な感覚だった。
 日本という国で、今を生きる人間がいる……。それをこんなに近くで見ている……。

「……」

 だが、その事を考えるのは辞めた。
 いや、辞めるというより、あんまり深く考える事でもないと思ったのだ。



(──本当に、昨日の事みたいだからな。この国にいるのが……)



 懐かしい日本でのアンデッドとの戦いの日々は、今更回想するまでもない。
 このまま、自分の住む牧場に帰りたくなるほど、この場所は足になじんだ。
 日本という国が自分の故郷で、自分にとって最も吸いたい空気があるのだろう。
 勿論、旅先にも思い入れはある──ここは、剣崎にとって「いくつもある故郷」のうちの一つなのかもしれない。

「……」

 ふと、剣崎は駐車場の一角を見た。
 そして、独り言ちるように呟く。


111 : 西木野真姫&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 19:30:42 w1F3Vh9g0

「……ライ病って、今でも治る病気なんだよな」

「え? ハンセン病の事……? 今ではもう──」

「──いや、ごめん……。今言った事は、気にしないでくれ」

 真姫は、怪訝そうな顔で剣崎を見た。
 だが、当人が言うように、あまり気にする事ではないのだろう。



 剣崎は、アーチャーが消えた場所を少し見つめながら、真姫を追うようにその場を去ろうとする。

(お前は強かったよ、アーチャー……お前の弓の腕も、見てみたかった)

 剣崎が戦ったアーチャーの正体は、『無銘の弓兵』だった。
 彼は、あれだけの強さを磨きながら、ライ病が見つかり、療養所に隔離された事で戦闘が出来なかった、と言うのである。
 すなわち、戦う為に生き、戦う為に鍛え、戦う意思もあったのに、祖国や家族の為に戦えなかった英霊なのである。
 もし前線で戦えば、それこそ並みの相手では太刀打ちできない。
 全盛期の姿で顕現した彼が、真っ先に行ったのが「戦闘」だったのは、こうした理由があったというわけだ。

 そんな彼は死に際、剣崎に微笑みながら告げた。

 俺は弱かった、と。
 もしかつて戦う事が出来ていたとしても活躍はできなかっただろう、と。
 かつて自分はライを発症して戦う事が出来なかった、と。
 全ての訓練は無駄だったのだ、と。
 これがお前の聞きたかった俺が闘いたかった理由だ、と。
 これで満足か、と。
 もう俺は戦う事は諦める、と。
 これで踏ん切りがついた、と。
 お前は強い、と。
 その力で自分の戦いを続けろ、と。

 そんな、戦いに取りつかれ、戦いを終えられた怨念がアーチャーの正体だったわけだ。
 奇しくも、この病院という場所で散った無銘の弓兵。
 彼はこの戦いを遂げる事が出来て幸せそうであった……。

 彼は狂人ではなかった。
 剣崎の戦った中では、かなり尊敬すべき好敵手だった、と思う。


(お前は、俺とは違う。もうお前を囲う運命なんてないんだ。──一緒に鍛えた、大事な戦友たちの傍で眠っていてくれ……)


 剣崎は、自らが散らした無銘の弓兵の死地に微笑みかけ、その場を去った。


112 : 西木野真姫&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 19:31:03 w1F3Vh9g0



【CLASS】

セイバー

【真名】

剣崎一真@仮面ライダー剣(ブレイド)

【パラメーター】

基本
 筋力D+ 耐久B 敏捷C+ 魔力B 幸運E 宝具EX

※変身時のパラメーターはその際の「融合係数」により変動する。

【属性】

秩序・善 

【クラススキル】

対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

騎乗:B
 騎乗の才能。
 大抵の乗り物は乗りこなす事が出来る。主にバイクの運転に特化している。

【保有スキル】

戦闘続行:A
 名称通り戦闘を続行する為の能力。
 決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。「往生際の悪さ」あるいは「生還能力」と表現される。
 彼の場合、そもそも事実上、不死の体質を持ったサーヴァントである為、このスキルはAランクである。
 ただし、限度が来ると死亡とまではいかずとも、一定時間、バックルを開いたまま気を失う事はある。

変身:C
 自らのカタチを変えるスキル。
 この剣崎一真という若者としての姿もまた、ジョーカーアンデッドを真の姿とした時の偽の姿であるかもしれない。
 少なくとも、剣崎の姿とジョーカーの姿を使い分ける事は出来るが、それ以外はおそらく不可能。
 また、彼は自身の持つ『封印されし五十二の生物祖(ラウズカード)』の宝具によって、各種のアンデッドの姿へと変身する事も出来る。
 それは、彼が不死生物アンデッドであるが故の性質であり、あらゆるアンデッドに変身できるのが彼のスキル。
 基本的に宝具なしに変身できるのは、剣崎とジョーカーの二つの姿のみ。

不死の怪物:A
 ジョーカーアンデッドである彼に与えられたスキル。
 攻撃によるダメージや疲労の蓄積は起こるが、少なくともマスターが存在する限り死ぬ事がない。

闘争本能:A
 戦闘を求め続けるスキル。
 この闘争本能の主な対象は不死生物アンデッドであるが、時として他のサーヴァントやマスターなど力ある者に向けられる。
 セイバー自身が自分の意思で鎮めているが、強者ばかりであると同時にかつての仲間もいない聖杯戦争においては、再暴走の危険も充分に考えられる。


113 : 西木野真姫&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 19:31:30 w1F3Vh9g0


【宝物/宝具】

『魔物飼いならす剣の紋(ブレイバックル)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜2 最大捕捉:1〜52
 仮面ライダーブレイドに変身する為の変身ベルトであり、元々は、ヒトだった頃の剣崎が所属していた「BOARD」という組織により開発された人工遺物。
 史実においては、その身を怪物へと変えた時にこの宝具を人類のもとに返還したが、後にこの宝具を再び手に取り戦ったという説話も幾つか存在する。
 何にせよ、生前これを手にして戦っていた伝説に基づいての現界が可能である。
 効果は、彼に「仮面ライダー」としての姿を与えると同時に、パラメーターを常時より大きく上昇させる事。
 ちなみにこのパラメーターは彼の感情の機微から変動する「融合係数」によって上下し、変身時の感情によって戦闘力は変化する事になる。
 当然ながら強ければ強いほどに、セイバーの意図と関わらずマスターの魔力消費も大きくなり、戦闘時に使用するアタックポイントもまた使うほどマスターの魔力を消費する事になる。
 とはいえ、普通に戦う分にはこの姿では、マスターの負担が絶大になるという事はない(融合係数やアタックポイントには限界値がある為)。
 問題は、この宝具と併用して『剣立つ十三祖との融合器(ラウズアブゾーバー)』を使用した場合の事である(後述)。


『十三祖との融合器(ラウズアブゾーバー)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜2 最大捕捉:1〜52
 仮面ライダーブレイドの更なる力を解放する為の予備ツール。これもまたBOARDに開発された人工遺物である。
 これと、『封印されし五十二の生物祖(ラウズカード)』を併用する事でブレイドをジャックフォームやキングフォームへと変身させ、常時のブレイド以上の戦闘能力を引きだす事が可能となる。
 ただし、ジャックフォームやキングフォームへと変身するという事は、それだけ魔力消費も大きいという事である為注意が要される。
 更には、魔力を供給する関係である為、同一マスターと共にこの宝具を使用して変身する回数が13回に達した場合、マスターもまた不死生物となるリスクを持っている。
 勿論、マスターがアンデッドと化した場合、魔力の上昇と不死の体質が加算される為、聖杯戦争は一層優位になるが、下手をすれば聖杯でさえも汚染しかねない。
 また、13回に達さないとしてもマスター側の精神や聖杯を蝕み、それぞれ暴走を引き起こす可能性はゼロではない為、多用は危険な宝具である。
 尚、伝説によるとサーヴァント自身もかつてこの宝具によって、ヒトの姿を失っているとされる。


『封印されし五十二の生物祖(ラウズカード)』
ランク:A〜D 種別:対人宝具 レンジ:1〜2 最大捕捉:1〜52
 52種の生物の祖たる不死の怪物【アンデッド】を封印したカード型の宝具。トランプと同様の52枚が存在する。
 しかし、かつての彼がスペードに該当する戦士だった事から、スペードの13枚のみが彼の宝具として存在しており、他のカードは生前使用していても現界ができない。
 剣崎一真自身も現在はアンデッドの性質を持つが、仮面ライダーブレイドに変身する際はこれらのカードに封印された獣たちの力を借りて戦う事になる。
 ちなみに、『魔物飼いならす剣の紋(ブレイバックル)』 を使用する際は自動的にスペードAのカードを使用する必要があるなど、各種カードによって能力や性質は異なる。
 13種類もあるので、各自で調べるべし。


『運命の切札(ジョーカー・アンデッド)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1(自分)
 不死生物アンデッドとしての彼のもう一つの姿と性質。
 彼が仲間との戦いの中で掴んだ「運命の切り札」であるが故、宝具として成立している。
 アンデッドとの融合を限界まで行いすぎた為に生じた為に剣崎一真の身体は完全にアンデッドとなっており、それ故に普段の彼は「不死の生命体」である。
 この運命がある限り、アンデッドとしての闘争の本能に苛まれる事となり、彼はその声と戦い続けている。
 この宝具の発動時は、『封印されし五十二の生物祖(ラウズカード)』に封印されたアンデッドの姿を借りる事が出来る。
 また、仮に、彼がこの宝具を持ったまま受肉してしまうと、他のアンデッドが場に存在しない限り、彼の起こすダークローチ現象により人類は滅亡し、新たな種が生まれる為のバトルファイトが開始してしまう。
 彼自身はそれを全く望んでおらず、むしろ人類種がこのまま在りつづける事を望んでいる故、受肉を望む事はない。


114 : 西木野真姫&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 19:32:28 w1F3Vh9g0


【weapon】

『魔物飼いならす剣の紋(ブレイバックル)』

『剣立つ十三祖との融合器(ラウズアブゾーバー)』

『封印されし五十二の生物祖(ラウズカード)』(スペードA〜Kの13枚)

『醒剣ブレイラウザー』
 仮面ライダーブレイドへと変身した際に現出する剣。
 12枚の『封印されし五十二の生物祖(ラウズカード)』がこの中に収納されており、ブレイドは戦闘時にこれをラウズして戦闘する。
 しかし、無制限にカードを使用して戦闘できるわけではなく、各カードごとに消費するAPを支払わなければならない。
 このブレイラウザーの初期APは5000。

『醒剣ブレイラウザー(強化型)』
 仮面ライダーブレイド・ジャックフォームへと強化変身した際に現出する剣。初期APは7400。

『重醒剣キングラウザー』
 仮面ライダーブレイド・キングフォームへと強化変身した際に現出する剣。初期APは9600。
 ラウズが自動装填式になっている。


【人物背景】

 たいせつな友を救う為に運命を選び、仲間たちの前から姿を消した男。
 自らが選んだ運命と数千年、数万年と戦い続け、それから彼がどうなったのかはわからない。
 アフリカの内戦地では、戦災孤児たちを助けている「人とも獣ともわからぬ姿の男」がいたとされる。


【サーヴァントとしての願い】

 マスターである真姫の護衛を最優先とする。


115 : 西木野真姫&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 19:33:59 w1F3Vh9g0


【基本戦術、方針、運用法】

 仮面ライダーなので変身させる事が主戦法であるが、長い時代信仰を集めた存在である事や、人ならざる物である事もあり、基礎パラメーターからしてなかなか高い。
 変身時のパラメーターは基本的にはその時のセイバーの気分次第であるものの、元が熱い性格である為に融合係数も普段から高く、数万年を生きた戦闘力や忍耐力も加わって、相当強いサーヴァントだと言えるだろう。
 更には、元々が不死生物なので、どこまでも戦えるという利点があるという、戦闘に関してはほぼ文句なしの性能を誇る。

 しかし、弱点はそれを使うマスターの側にある。
 要するに、彼の力を引きだすには高い魔力が要されるが、マスターの魔力が弱ければ、負担も大きくなるという事である。
 特に、ジャックフォーム、キングフォームなどの強化形態を使っての戦闘は避けるべき。余程の相手以外には絶対に使ってはならないだろう。
 普段の通常のブレイドならば、融合係数が上昇したりAPを消費したりしてもマスターに大きな負担をかける程の魔力消費はないので、APの範囲で戦うのが吉。

 それから、更に大きな問題として、キングフォームへの変身時のリスクがマスターにも行き渡る事がある。
 使わなければ良い話とはいえ、キングフォームへの変身を繰り返すと、魔力消費だけでなく、キングフォーム自身が持つリスクもマスターに降りかかってしまう。
 その為、マスター側が暴走、不死化する可能性はゼロではない。下手をすると、マスターだけでなく聖杯まで汚染する危険性がある。
 使ったとしても、片手で数えるほどがキングフォームを使える限度(普通はそんなに使わないので問題ないと思うが…)。


【備考】

※参考としている作品は、「仮面ライダー剣」及び、小説「仮面ライダー剣 たそがれ」。
 外見等の一部設定は講談社キャラクター文庫の「小説 仮面ライダーブレイド」も参考にしているが、剣崎自身はあくまで上記の二作の出来事のみを記憶しており、それ以外の話は特に検索施設のデータ上にもない物とする。
 その他、「仮面ライダーディケイド」以降の客演、「劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE」などは、この剣崎の記憶にはないパラレルと扱う(時系列等色々とややこしくなりそうな為)。

※剣崎一真はこの聖杯戦争に再現された場において、唯一の「アンデッド」である故、本来ならばダークローチが大量発生し、人類を滅びに向かわせるリスクがある。
 しかし、聖杯側の調整でその現象は抑えられており、マスターが生存している以上はまずダークローチは発生しない。


116 : 西木野真姫&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 19:34:14 w1F3Vh9g0


【マスター】

西木野真姫@ラブライブ!

【マスターとしての願い】

 聖杯戦争からの脱出。
 セイバーを友人「相川始」に会わせたい気持ちも無いわけじゃないが、それは聖杯に託す願いとは別の事。

【weapon】

 なし

【能力・技能】

 ピアノなど音楽に精通し、その関係からμ'sでは作曲を担当する。
 将来の夢として医者を志望している為、常に成績優秀。

【人物背景】

 音ノ木坂学院のスクールアイドルμ'sの一員。作曲も担当。
 大病院の家に生まれた一人っ子で、将来はそれを継ぐ為に脳外科医になる予定。
 サンタさんを信じている。家族想い。
 彼女の著名なファンとして、俳優の椿隆之などがいる。

【方針】

 セイバーと協力し、聖杯戦争からの脱出を行う。


117 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 19:34:36 w1F3Vh9g0
思った以上に長くなってしまいましたが、これで投下終了です。


118 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/01(月) 19:47:39 w1F3Vh9g0
あ。検索施設とか勝手に書きましたが、その辺りは問題あればあとでどうにかします。


119 : ◆DeIsaj04bU :2016/02/02(火) 00:52:58 bCSfi1eM0
新企画&皆さま投下お疲れ様です
自分も投下します


120 : 黒木智子&アサシン ◆DeIsaj04bU :2016/02/02(火) 00:54:22 bCSfi1eM0




「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーー!!!」
 



黒木智子はぼっちである
他者との会話が苦手な傾向が強く、普段なら、教室のど真ん中でこんな大声は出さない
そう、普段なら

教室内の壁に、窓に、床に、天井に、机に、黒板に、ありとあらゆる部分に血がベットリと塗りたくられ、その上からこれまた真っ赤な肉が引っ付いている
そのすべてが、話したことがほぼない、元クラスメート達の残骸であった

  

そのスプラッター映画も真っ青な光景を作り出した相手ーークラスメートを皆殺しにした殺人鬼は、今、自分を見つめている
棍棒を片手に、血まみれになりながら仁王立ちする筋骨隆々の巨漢
それは狂戦士の英霊……つい先程、 黒木智子のクラスメートを殺し、魂喰いを行ったバーサーカーである

いつもと変わらない日常の筈だった。
ちゃらちゃらと着飾って、男に媚びへつらっているビッチ共、内心じゃエロいことかんがえて鼻の下伸ばしてる男共のリア充ライフを尻目に絶賛ぼっちライフが、なぜ凄惨な殺戮現場となったのだろうか

あまりにもボッチすぎて、思わず学校がテロリストに占拠されないかなー。とか、
某小説みたいにクラスメート同士で殺しあってくださいみたいな展開になら無いかと妄想したりもしたが、まさか、現実にこんなことになるなんて

「あ……あぁぁ……」

自分が惨殺されていくイメージが、脳内にありありと浮かび上がる
泣き叫び、悲鳴を上げてもコイツは決して聞き入れず、惨たらしく自分を殺すだろう
恐怖のあまり、手足がガタガタと震え、歯がガチガチと音を立て、 涙と鼻水を垂れ流す
抵抗する?
一瞬で40名もの人間を粉砕した相手だ。偶然教室の奥にいたから助かっただけの自分が、敵うわけがない
なら走って逃げる?
できれば今すぐにでもそうしたいが、体が動かない。動いてくれない
今すぐにでも逃げ出したいのに、金縛りにあったように足が言うことを聞かないのだ。

「タ、タシュけて……っ」

絞り出すように上げた言葉は、ほとんど声になっていなかった
苦しい。早く逃げなきゃ。でも、体が動かない


(嘘だろ、意味分かんねぇよ。フィクションの世界だけだろこんなの。 アタシが何をしたってんだよ……っ!!!)

バーサーカーの憤怒に歪んだ顔は恐怖を与え、血走った目は明確な殺意を示していた
その威圧感に、耳に入るうめき声に、押し潰されそうな感覚がした

ーーー殺される
 
化け物はゆっくりと歩み寄ってくる

ーーー死にたくない

その手に握られた棍棒が振り上げられる

殺される。殺される。殺される。殺される。殺される。
殺される。殺される。殺される。殺される。殺されーー


あ、無理だこれ


(どうせ死ぬんだったら……一度くらいはリア充、したかったなぁ)


避けられない死を感じ、黒木は目をぎゅっと瞑った
しかしその瞬間は訪れなかった


121 : 黒木智子&アサシン ◆DeIsaj04bU :2016/02/02(火) 00:56:10 bCSfi1eM0




「やめてください」

何者かが、智子とバーサーカーの間に割り込んできた

(……へ? あ、あれ、誰?)

助け? あれ、もしかしてアタシ助かる!?
薄目を開けて、庇うようにたっている人影を確認する
それは黒木の知らない相手だった 
栗色の髪を持つ、十代半ばの女だった。
あまり背が高くなく、手足も細く、生白い。顔立ちは小作りで、美人とは言えない、出るところも引っ込む所も起伏が足りず、あまり性的な魅力には結びつきそうにない。そんな、女の子だった

(……誰?)

若干の頼り無さに混乱する黒木を尻目に、その少女は穏やかにバーサーカーに語りかける
それは殺戮を犯した相手に対する罵倒ではなく、説得であった

「マスターが怖がってる だから、止めて」


バーサーカーは耳を貸さなかった
黒木に降り下ろす筈だった棍棒を、少女にぶつけたのだ

グシャァ!!!と吐き気を催す効果音とともに、呆気なく少女は死んだ


「……は?」

呆然とした呟き。臆することなく殺人鬼に立ちふさがった救いの手が、死んだ
バーサーカーの一撃で、頭どころか全身がぐしゃぐしゃにされてしまっていた

どうみても即死。血と内蔵を撒き散らし、四肢を投げ出した姿に命を感じることはできない


「■■■■……」

あまりにもあっけない手応えに、バーサーカーの興味は残りの得物に注がれた



「ひいいぃぃぃぃぃ助けてえええぇぇぇーー!!」

堪らず悲鳴をあげた。今度こそ死ぬ。殺される。そう思った



もしもこの時、バーサーカーに理性があったのなら、黒木に少女ーーサーヴァントの知識があったのなら、疑問に思った筈である
なぜこの少女のサーヴァントは、消滅しないのだろうかと
サーヴァントというのは基本、マスターからの魔力で現界している
普通のサーヴァントなら、こうまで霊核にダメージを与えられたら、どう考えても消滅するのが筋であった
そう、普通のサーヴァントなら




「■■■■■■■■■っ!!!!」

異変はすぐに起こった
何の前触れもなく、バーサーカーの半身が、ごっそりと消滅したのだ


「……痛いなあ。 か弱い女の子を何だと思ってるんだよ」


何事もなかったかのように、殺した筈のサーヴァントが、蒼白な顔でむくりと立ち上がる
欠損した肉体は、強制的に“バーサーカー“から取り込んだ魔力で再生されていく


122 : 黒木智子&アサシン ◆DeIsaj04bU :2016/02/02(火) 00:58:49 bCSfi1eM0


「■■■■■■■■■ッ!!!!!」


霊核の半分以上を失った強烈な喪失感と、絶え間ない激痛に狂乱するバーサーカーは、怒りに喚きながら血走った目で眼前のサーヴァントを見下ろす


ーーーコイツがやった


正気を失った思考でそう考えたのかは知らないが、今度こそ息の根を止めようとバーサーカーは動き出した
全身から殺意が迸り、先程と明らかに力が上がっている

ーー確実に仕留めろ

遠方からバーサーカーに魂喰いを行わせていたマスターが、令呪を使ってそう指示したのだ
三画しかない令呪によるサーヴァントのブースト。マスターである三流の魔術師は勝利を確信する


それが、完全な悪手であるにも関わらずに








結局、バーサーカーは少女ーーアサシンをその後2回殺すも、その度に肉体を根こそぎ取り込まれ、完全に消滅し
そのマスターである魔術師も、もうこの偽りの東京には存在しない


「大丈夫? 立てる?」
「ぇ……ト……ぁっ……ぃぇ、ダイジョです」

明らかに異常な女に怯えつつ、しかし助けてもらったというのは事実。黒木はおずおずと立ち上がった

「……あ、そういえばそっちは何も知らされないんだっけ? えっとねーー」




そうして彼女ーーアサシンはすべてを話した
万能の願望機である聖杯の事。
召喚される七騎のサーヴァントの事。
最後まで生き残った主従のみ願いを叶えることができるという事など



聖杯戦争。そのフィクションのような設定に茫然とする黒木。その様子を見て、アサシンは励ますようにこう言った


「これでも生き残ることだけが取り柄だし、あまり強くはないけど、頑張ってマスターを守るから、安心して」

そういってアサシンーー絶対生還者の異名を誇るフィールド探索者は、微笑んだ





【名も無きバーサーカー 消滅】
【名も無きマスター 死亡】


123 : 黒木智子&アサシン ◆DeIsaj04bU :2016/02/02(火) 01:01:07 bCSfi1eM0

【クラス】アサシン
【真名】スペランカー@オールドアクションゲーム二次創作シリーズ
【属性】中立・中庸
【パラメーター】
筋力:E- 耐久:EX 敏捷:E- 魔力:E- 幸運:E- 宝具:EX


【クラススキル】
気配遮断:C
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を断てば発見する事は難しい

【固有スキル】

貧弱体質:A
全ての能力において下回る才覚。その異能の副作用によって、肉体、頭脳、その他全てにおいでアサシンは無能になりはてていた
物覚えは悪く、肉体は脆弱、それはサーヴァントとなった今でも変わらない

被虐体質:A
集団戦闘において、敵の標的になる確率が増すスキル。
Aランクともなると更なる特殊効果が付き、攻撃側は攻めれば攻めるほど冷静さを欠き、 ついにはこのスキルを持つ者の事しか考えられなくなるという。

神殺し:A
数多の邪神やその眷族たちを滅ぼしてきた逸話から獲得したスキル
神性の高い相手と対峙した場合、敏捷と幸運に高い捕集を得る

不屈の精神:EX
天文学的な死を経験し、乗り越えてきたことで培った人外の精神力。精神に干渉系魔術を完全にシャットアウトする
その折れない心はもはや邪神ですら怯えるほどの域に達しており、這いよる混沌による攻め口でも折ることができなかった

戦闘続行:A+++
名称通り戦闘を続行する為の能力。
名だたる邪神たちですら、アサシンを止めることは出来なかった


124 : 黒木智子&アサシン ◆DeIsaj04bU :2016/02/02(火) 01:02:08 bCSfi1eM0


【宝具】
『不死の呪い』
ランク:EX 種別:対人(自身)宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
アサシンの存在そのものであり、彼女の受けた海底の邪神による呪われた祝福
アサシンは死ぬと、周囲の物質を強制的に魔力として取り込んで、再生・復活する。
もしも肉体に欠損部分が出ると、周囲のものから補う。
アサシンが害意をもつ相手によって殺された場合、殺した相手から、その欠損分の肉体をえぐり取り、再生する
このカウンター能力は概念的なものであり、相手の強弱関係なしに発動する
Aランク以上の対魔力をもつサーヴァントなら防ぐことが可能だが、アサシンが死ぬ度にカウンターは蓄積されていくので、いずれは破られるので、無効化することは不可能
なおこのカウンターは自発的にアサシンを害そうとした相手にのみ発動するので、アサシンに対して脅迫など、意に反した手段で攻撃を強要された相手には働かず、その場合はそれを仕向けた相手がカウンターをうける
この宝具の副作用により、アサシンは本当にちょっとしたことでも死ぬ。本当にちょっとしたことでも死んでしまう
多少のダメージなら周囲から補えるが、完全に消滅した場合などはマスターの魔力により復活する


『死の鏡(ブラスター)』
ランク:EX 種別:対神宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
アサシンのもつ唯一にして絶対の武器
向けた相手の命と、発動したものの命を、その場で等価として、共に消し去り滅する宝具
低くは虫から、高くは神まで。相手が何者だろうが確実に葬る必殺の武器
しかしながら欠点も多く、使えば確実にアサシンは死ぬし、一度に一つの命しか消すことが出来ない。ゼロ距離で使わないと意味がなく、射程距離はわずか十メートル。
連射も出来ず、一度使用すると数時間の溜めが必要であり、尚且つ消し去る相手が神に匹敵するほどの格上である場合、アサシンが復活しても数日間実体化できない。更に法則をゆがめて存在している相手(サーヴァントなど)にしかこの宝具は通用しない


【weapon】
ブラスター
上記の宝具。それ以外の武装はもたず、まったく使いこなせない

【人物背景】
絶対生還者の異名を誇るフィールド探索者
五歳の頃に、娘の幸せを願った父親が邪神クトゥルフを召喚、不老不死の呪いをかけられ能力者となる
世界中のフィールドを攻略しながら生活費を稼ぐ一方で、各地で暗躍し災害をもたらす邪神たちと数々の陰謀に、大切な人達の未来のために抗っていく
本人の代名詞である不死の呪いは凄まじく、世界に存在する確率をゼロにされたり、
マイクロブラックホールによる時間逆流粉砕からも復活し、挙げ句のはてにアカシックレコードから削除されても甦るという、這いよる混沌など、彼女を全力で潰しにかかった邪神ですら手に余る不死性を誇る
逆にそれを除けば、無能といっても差し支えない程度の能力しか備わっていないが、決して愚か者ではなく、対話が可能な相手なら邪神にすら歩み寄ろうとする姿勢を見せるなど、人としての器も大きい。
天文学的な死を経験し到達したその強靭な精神力は、邪神すら化け物と畏怖し、恐怖させるほどである

他のフィールド探索者と協力したとはいえ人類を幾度となく救った英雄の1人……なのだが、呪いで脆弱になった肉体と不幸体質によりロクな目に遭っていない苦労人




【サーヴァントとしての願い】
マスターを助け、自分にできることをする





【マスター】
黒木智子@私がモテないのはお前たちが悪い!!

【マスターとしての願い】
家に帰りたい

【人物背景】
高校入学後2ヶ月近く同級生と会話が出来ないという人生ソロプレイヤーであり、コミュ傷であることを除けば普通の女子高生

【捕捉】
アサシンから聖杯戦争の知識を得ました
クラスメートが全滅しました


125 : 黒木智子&アサシン ◆DeIsaj04bU :2016/02/02(火) 01:05:26 bCSfi1eM0
投下終了です


126 : ◆yaJDyrluOY :2016/02/02(火) 16:09:28 mdwU6lkc0
新企画&投下乙です
自分も投下します


127 : 相川始&バーサーカー ◆yaJDyrluOY :2016/02/02(火) 16:11:15 mdwU6lkc0
-東京都内 某所 たこ焼き屋屋台-

その日も、相川始はいつもの様にたこ焼きを焼いていた。
店主の始は口数が少なく愛想もあまり良くないが、この東京という街で男一人が細々と食べていくには十分だろう客入りだ。
始のたこ焼き屋台のある広場には、プラスチック製の丸テーブルと椅子でできた簡易飲食スペースが幾つか存在し、まばらながらに休憩している人々が座っている。
それは午後4時過ぎ。ピークの時間帯もとうに終わり、客足が完全に途絶えた頃に起きた。

始は売れ残りのパックを残し、店を占めるために機材の清掃に取り掛かっていた。
この時間になってくると屋台のある広場は大変静かなもので、人も屋台のすぐ隣の丸テーブルでトランプで遊びをしている子供達と、少し離れたテーブルで駄弁っている女子高生達だけである。
清掃という特に面白味もないルーチンワークに暇を持て余し、ふと意識を外界へ傾ける。
済んだ風を感じていると、始の耳に女子高生達の会話がかすかに流れ込んできた。

「ねぇ……こぴーの新曲……た?」「それ……剣崎ま……」「……ヤバく……ちょー可愛……」

それは、彼女たちにとってはなんでもない流行りのアイドルの話だった。
しかし、その会話の中に出てきた一つの言葉に、始は懐かしい響きを感じていた。
“剣崎”恐らくこの単語―いや、名前だろうか? 始の頭にここだけが妙に残っている。

(剣崎……剣崎……?)

剣崎というのは一体何なのか、一体何が引っかかっているのか?
始は何度も頭の中で反芻して思い出そうとするが、肝心な部分は靄がかかった様にうまく思い出せない。
なにかもう一つ決定打のような何かが欲しかった、“剣崎”という名前に繋がる何か……

そうしていると、突然体に吹き付けてきた強い風にハッと現実に引き戻される。
どうやら始は思いの外、意識の深いところまで考え込んでしまっていたらしい。
辺りを見ると、風によって子供達のトランプがバラバラと吹き飛び、自分の屋台の上の千枚通しも地面に転がり落ちている真っ最中だった。

「……ッ痛!」


128 : 相川始&バーサーカー ◆yaJDyrluOY :2016/02/02(火) 16:11:46 mdwU6lkc0
転がり落ちる千枚通しをとっさに受け止めようとしたものの、何本もある内の1,2本しか掴めず、次の瞬間足に痛みが走る。
痛みの方に目を向けると、何たる偶然か間に一枚のトランプを挟んだ状態で、千枚通しが右足に突き刺さっていた。
始はサンダルを履いていた事を少し後悔しつつ千枚通しを抜き、傷を見る。

(なんだこれはッ! 膿? 血? なぜ黄緑色なんだ!?)

そこに始が見たものは――傷跡から黄緑色の液体が流れ出ている場面だった。
それはあまりに気色が悪く、異様な光景。
始の混乱した頭はとりあえず問題を先送りにしようと考えた様で、千枚通しが貫通してしまったトランプを子供達に返す事を優先した。
そのために千枚通しからトランプを外そうと、手に持った千枚通しを確認すると――そこにはまるで始を嘲笑うかのように、不気味な笑みを浮かべたジョーカーのカードがあった。
千枚通しに付着していた黄緑色の液体が、まるで血を流すかのようにジョーカーのカードを濡らしていたのだ。

(ジョーカー……緑の血……俺は53番目の存在……
アンデッド……バトルファイト……仮面ライダー?
仮面ライダー――剣崎? そうだ! 剣崎!!!!」

気付けば始の思考は口から溢れだし、やがて大きな叫び声となる。
始の脳内でグルグルと駆け巡っていた記憶の羅列が、この場で感じた一番初めの違和感に収束したのだ。
道行く人々が訝しげに始に視線を向けるが、始にはもう周囲など見えていなかった。

(俺は何をやってたんだ……今まで……)

始は屋台の脇に停めておいたバイクへ向かい、出発の準備を始めた。
バイク用のグローブは履いた拍子に左手の甲が熱く傷んだが、足の傷とともにそんなことは気にしている場合ではないと思考から切り離す。
ものの数秒で準備を終え、始は何処へともなく走り始めた。





129 : 相川始&バーサーカー ◆yaJDyrluOY :2016/02/02(火) 16:12:18 mdwU6lkc0

あれから数時間、始は街を宛もなく走り回ったが、気づけた事はこの街が自分の知っている場所ではないという事だけだった。
「ハカランダ」や白井虎太郎の牧場も見当たらない。
最初は熱くなっていた頭もバイクで街を走っているうちに幾分か冷静さを取り戻し、今までこの“東京”でどう過ごしてきたかの整理もついた。
記憶によるとどうやら天音ちゃん達はいないようだし、橘達も見た覚えはない。
しがないたこ焼き屋台の青年という役割だけが与えられた情報のようだ。
記憶を取り戻したきっかけは剣崎だったが、最後の別れから10年も会っていないのだから、今更こんな場所で会えるはずもない。
始は「この不思議な状況に関する情報は一先ず諦めて、今日のところは与えられた住居に戻ったほうが良さそうだ」と考え、放置したままの屋台へと戻ってきていた。

始が屋台のある広場へ着くと、日はとっくに落ちて空は真っ暗になっていた。
早いところ帰って状況を綿密に整理しなくてはならない、始は屋台の照明を付けるとそそくさと片付けを始めた。
幸い何処も荒らされてないようで、売上も始がここを去った時のままである。
見知らぬ土地ではあるが、どうやらこの辺りの治安は悪くはないらしい。

そこで始は、左手の甲に何かの文様のような痣ができていた事に気づいた。
暗闇だったためか、先ほどバイクの上でグローブを脱いだ時には気づかなかったようだ。
始は、そういえばここを飛び出した時に左手に火傷の様な痛みがあったな、と数時間前のことを思い返す。
どこかにぶつけたわけでもなし、確か朝方には無かったはずだった。
その痣を奇妙だと見つめていた時のことである――始の感覚が危険を察知した。
アンデッドのようで、少し違う不気味な感覚。
背後の気配に振り返ると、暗闇の中から現れたのは――“巨大な爬虫類のような生物”だった。

(何だこいつは? アンデッド……なのか……?)

始はアンデッド以外の怪物などを見たことが無い。
そのせいか一瞬アンデッドかと錯覚したが、見たところ地球上のどの生物の先祖にも当てはまりそうもない――強いて言うならトカゲだろうか?
混乱している始をよそに、当の謎の怪物はジリジリと距離を詰めながら始のことを観察している。


130 : 相川始&バーサーカー ◆yaJDyrluOY :2016/02/02(火) 16:12:51 mdwU6lkc0
やがて一定の感覚を開けて怪物は立ち止まり、地の底から響くような唸り声を上げながらジッと始を見つめる。
全く表情がわからず、怪物が何を考えているのか始に知るすべはなかった。
始にとっては無限にも感じる数十秒の膠着状態――始の混乱は増す一方である。
始が即座に変身できるようにマンティスアンデッドのカードに手を伸ばす。
それと同時に怪物は思量を終えたのか、驚くべきことに言葉を話し始めた。

『……貴様の力は……(判別不能)』
「なんだ、何が言いたい」
『……(低い唸り、まるで含み笑いの様な)……』
「おい! お前は一体何なんだ」
『(判別不能)』

謎のつぶやきを最後に怪物は姿を消した。
結局、始は何の情報も得ることができぬまま、疑問だけが募っていくばかりである。
その上、始の感覚ではまだ怪物の気配は消えては居ない、薄くはなったがまだ近くにいる感覚があるのだ。
それもそのはず、この怪物はこの聖杯戦争における始のサーヴァントであり、今は霊体化して始のそばに待機しているだけだ。
人間たちにSCP-682呼ばれていた「バーサーカー」は生きとし生ける物全てに憎悪を懐き、壊の限りを尽くす存在。
今の邂逅によって、SCP-682はどの生物の起源にも属さないイレギュラーである「ジョーカー」、つまり相川始をマスターとして一先ずの納得をしたのだった。
しかし当の相川始は、まだ聖杯戦争に巻き込まれたことに気づいていない。
始は、不気味な怪物と自分の手の痣に関連性を見いだせてはいない。

決して人を傷つけず、自分を犠牲にしてまで全ての生物を救おうとする化物と、全ての生物を憎み、虐殺の限りを尽くす怪物。
方や人間を害する化物には容赦のない化物、方や非生物は襲わない怪物。
『地球上の全生物を死滅させる』ために生まれた者と、それを目的とする者。
――似て非なる2つの存在の聖杯戦争が今、幕を開ける。


131 : 相川始&バーサーカー ◆yaJDyrluOY :2016/02/02(火) 16:13:33 mdwU6lkc0
【クラス】バーサーカー

【真名】Hard-to-Destroy Reptile(不死身の爬虫類/SCP-682)@SCP Foundation

【パラメーター】
 筋力A+ 耐久EX 敏捷A 魔力D 幸運D 宝具EX

【属性】混沌・狂

【クラススキル】
 狂化:EX
 理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
 バーサーカーは自らの狂化にも耐性を持っているため通常通りの思考が可能。
しかし、元々「全ての生物を滅ぼす」ことしか考えていないため意思の疎通は不可能だろう。

【保有スキル】
戦闘続行:A
 戦闘を続行する為の能力。瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。

直感:C
 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。
 バーサーカーの体質量が20%以上削られるような危機的状況下に於いては、宝具がスキルのAランク相当の効果を発揮する。

模倣:A
 他者の技を再現する能力。目的のために有用性が高いと判断した技術を学習し、真似る。
 バーサーカーの場合、戦術や武術の模倣は不可能だが、超音波や声、フェロモン等の物理的要因に成因するものは完全に再現することができる。

擬死:EX
自らを死体と偽装する能力。バーサーカーはどうやってか、温度・生体反応等全ての観点において“完全死”した状態になることができる。
なお、その状態からタイムラグ無しで攻撃に移ることも可能である。
 
【宝具】
『SCP-682』
 ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
 バーサーカーの存在そのもの、非常に高い不死性、再生能力または適応能力。
 バーサーカーは危害を加えるあらゆる現象に対して、一定の観察を終えると同時に完全な適応性を見せます。
 物理的な要因に寄る危機は急激な免疫発達や体組織の変質などで解決され、その他に危機から逃れる術がある場合(例:地上から離れる・死んだふりをする・因果を操作する等)は即座に行動に移ることができます。
 この宝具によってバーサーカーのパラメータが変化する場合があります(例:石化の魔眼を逃れるために魔力が上がる、または対魔力のスキルを得るなど)。

【weapon】なし

【人物背景】
 SCP-682は巨大な爬虫類のような生物で起源は不明。高い知能を有しているとみられ、SCP-682はすべての生命に対し憎悪を示しています。
 SCP-682は姿を変形させることにより常に高い体力と、スピード、反射神経を保っていることを、常に観察されています。SCP-682は成長、縮小する際に脱皮することで体をとても素早く成長、変形させます。
 SCP-682は有機物、無機物関係なく摂取したものからエネルギーを得ることができます。SCP-682はコンテナの酸を利用し鼻孔にあるえらで余分な溶液を濾過し消化しているようです。
 SCP-682は驚異的な再生力、回復力があり、身体の87%を破壊、腐食させても動き、会話することが確認されています。
 SCP-682は"神"や悪魔の取引でもどうにもならない存在と確認されています。
 SCP-682は生物以外の敵対心のない存在に対しては無反応、もしくは少しの対応を見せます。

【サーヴァントとしての願い】
全ての生物を滅ぼす。


132 : 相川始&バーサーカー ◆yaJDyrluOY :2016/02/02(火) 16:14:39 mdwU6lkc0
【マスター】相川始(ジョーカーアンデッド)@仮面ライダー剣

【マスターとしての願い】統制者を破壊し、バトルファイトそのものを終わらせる。

【weapon】
ジョーカーラウザー:
 腰に発現するカードをラウズする装置、13枚のカードで変身する事ができる。これがあって初めて相川始の姿を取れる。

【能力・技能】
ジョーカー:
 あらゆる生物の祖であるアンデッドが行うバトルファイトの中で、「ジョーカー」と呼ばれる地球上のどの生物の祖先でもないイレギュラーな存在。
 封印したアンデッドの姿に変身したり、カードやモノリスを使わず腕の鎌状の武器でカードに封印できるなど他のアンデッドとは一線を画した力を持つ。

仮面ライダーカリス:
 聖杯(カリス)の名を冠するライダー。
 ジョーカーラウザーによってハートのカテゴリーAのマンティスアンデッドに変身している状態であり、正確には他のライダー達とは異なる存在。
 武器としてカリスアローを持ち、ハート・スートのアンデッド全てと融合すると仮面ライダーワイルドカリスへと変身できる。

【人物背景】
喫茶店「ハカランダ」に住み込みで働く傍ら、栗原親子のすすめでカメラマンを目指す青年。
前述した「仮面ライダーカリス」、「ジョーカーアンデッド」
ヒューマンアンデッドに変身した姿である「相川始」として生活し、仮面ライダーカリスへと変身してアンデッドと戦っていた。
栗原家や剣崎達と行動していくうちに刺々しかった態度も難化し始め、次第にジョーカーの姿に戻ることを疎ましく思うようになっていき、人間的な感情を持ち始めた。
ジョーカーが最後のアンデッドになってしまうと「ダークローチ」という怪物が世界を滅亡させるため、始は「仮面ライダーブレイド」の剣崎一真に自らを封印するよう求める。
しかし、剣崎一真は自らをジョーカーと化してアンデッドを増やすことで世界を救い、始に人間の社会で生活する事を約束させて自分は姿を消してしまった。
それ以来10年、姿の全く変わらない始は未だに剣崎一真に会えずにいる。

【方針】左手の甲の痣と怪物について調べる。


【捕捉】
クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP FoundationにおいてDr.Gears氏が創作されたSCP-682のキャラクターを二次使用させて頂きました。

※SCP-682がレプリカであるNPCを生物と認めるかは皆さんにお任せします。


133 : ◆yaJDyrluOY :2016/02/02(火) 16:15:22 mdwU6lkc0
投下終了です


134 : ◆7fqukHNUPM :2016/02/02(火) 20:50:23 t4FDAkg20
皆さま投下乙です
自分も投下させていただきます


135 : 末弟&悪魔の妹 ◆7fqukHNUPM :2016/02/02(火) 20:53:21 t4FDAkg20
誰だと思う?うん、トド松だよ!

君にはすぐ分かっちゃうんだね

好みのタイプ?……好きになっちゃった人、かな

みんなと同じ服、六着。一番似合ってるって?ありがと!

うん、気楽に楽しもうよ

これってホント、奇跡だよね

こんなにかわいい六つ子がいるなんて

ババ抜きにならないって?ほかは全部ババだからって?

でも、素敵な兄さんたちだよ

ボクにとってはみんな、ね

でも、君を譲りたくはないかな

ねぇ、ボクを選んでよ


……連絡先六つゲット!





136 : 末弟&悪魔の妹 ◆7fqukHNUPM :2016/02/02(火) 20:54:18 t4FDAkg20


「お疲れ様でーす」

バイトの先輩に頭を下げて見送り、そして自分も店の裏口を出る。
挨拶をしたときに返ってきた笑顔は、好意的なものだ。
『今回』は、今のところ「覚えの早い有望な新入り」として見てもらえている。


見上げれば、空には金色の円を描く満月。
しばらく歩いてから振り向けば、今までシフトに入っていた『スタバァコーヒー某区駅前支店』がある.

「ふぅ……」

うまくやれている、と思う。
にも関わらず、店を出た途端にどっと疲れたような心地になったり、勤務中も冷や汗が流れたりするのは、無意識にも『前回のスタバァ』の記憶がしみついて抜けないせいだ。

忘れられる、はずがない。
本来なら、このリア充のためにあるような珈琲チェーン店でアルバイトすることは、もう二度とできなかったはずだから。
あんな羞恥しかない悲惨な事件をやらかしてしまえば――否、5人の悪魔による悪意によって『やらかされて』しまえば、おそらく都内の同系列店にも噂が飛んでいておかしくない。
しかも5人の悪魔たちは地位を失った弟を見て笑っていたのだから、まったくもって腹立たしい。

「そのおかげで『思い出せた』のが、またすっごい腹立つんだけどね……!!」

違う店舗とはいえ同じバイトをしているおかげで、あのトラウマを思い出すたび目を剥いて歯を食いしばったような顔になりかけてしまう。
こんな(@益@)表情など、店の中で、同僚の女の子相手には決して見せられない――



「あはははははははは! 面白い顔ーっ!」



霊体化、解除。
ぱちぱちぱちと手を叩く音が、その存在を明瞭に伝えた。
いつしか帰途は、人通りの少ない道にさしかかっていて。


「トッティー! あそびましょ!」

姿を視認しきる前にばふんと抱きつかれて、愛用の桃色パーカーを引っ張られる。
鈴を鳴らすような可愛らしさと、しかし鼓膜を凍らせるようなかん高さが同居した、幼い声がする。
真っ暗な夜道で、月明りの下だ。
来てくれたのかという安堵と、やはり来たのかという悪寒が、不思議と同じくらいあった。
ゆっくりと見下ろせば、十にも満たぬかもしれない、金髪の幼い少女がいた。
しかし、少女の特徴はそれだけではなく。

木の枝に宝石をたくさんぶらさげたような羽根がぱたぱたと揺れている。
かがやく赤い瞳に、鮮やかな赤い洋服をまとった『吸血鬼』だった。


137 : 末弟&悪魔の妹 ◆7fqukHNUPM :2016/02/02(火) 20:55:47 t4FDAkg20




「わかるわ。兄姉(きょうだい)っていつもそう。
 下の弟妹(きょうだい)を自分の『しょゆーぶつ』か何かだと思ってるのね。
 勝手に屋敷を出ようとしたり、自分と違う考えを持ち始めるのが気に入らないんだわ」

分かる分かると頷きながら、少女は、公園のベンチに腰かけて箱入りのケーキを食べていた。
スタバァで買ってきたで、屋敷のメイドが作ったケーキよりおいしくないと辛辣な評価をしたけれど、それはそれとして食べるらしい。

「うぅ……そう言ってくれるのはセイバーちゃんだけだよ。
 やっぱり出会いの『運命』ってあるのかもしれないね」
「運命を操るのはアイツのすることだわ。
 私はトッティが面白くて遊んでくれるマスターなら、それだけでいいの」

ぺろりと舌を出して、はしたなく口周りのクリームを舐めとる。
彼女が落ちてくる隕石だってぶっ壊すことができる(本人談)ような『サーヴァント』だと言われても、その姿からは想像もつかなかった。

「トッティが簡単に壊れない子ならもっと良かったんだけど、人間なら仕方ないものね」

そして、ときどき話すことが意味不明瞭だったり、ぶっそうだったりする。
無邪気な少女だという印象を持った後に言うのもなんだが、正直言って怖い。
最初に会ったとき、生きている人間を見るのは珍しいという理由で抱きつかれて、その抱擁だけで絞め殺されそうになったことは忘れていない。

「それにわたし、トッティの気持ちわかるもの。
 ずっと外に出ようとしなかったけど、人間に会うようになってから、やっぱり『外』って面白いんだって分かったから。
 自由に生きていくのを邪魔するなんて、やっぱり怒っていいと思うわ」

しかし、彼女は願いを叶えてくれる存在だという。
ふってわいた都合の良すぎる話だとは思わなくもない。
でも、否定する証拠もまた存在しないし、少なくとも彼女が『何でもアリの不思議の住人』だということは否定しようがないわけで。
それに――『悪魔の妹』だと名乗ってはいるけれど、性格はかわいらしい女の子そのものだった。
トド松自身に実害があるという意味では、松野家にいる同じ顔をした5人の兄たちの方がよっぽど悪魔と言っていいことをしている。
そんな女の子が殺し合いに参加する気満々にも見えるところは、正直、引いたりもするけれど。


138 : 末弟&悪魔の妹 ◆7fqukHNUPM :2016/02/02(火) 20:57:26 t4FDAkg20

「ありがとう。でも、ほかの『マスター』だっけ?
その人を殺すとか、あんまり社会的にまずいことはしないでね?
僕がバイトしてるときも、大人しくしてくれてるよね?」
「心配しなくていいわ。わたし、警察に捕まるようなことはしないもん」

セイバーが胸を張ってそう答えたことに、とりあえずほっとする。
いや、社会的に追及されないなら殺し合いに参加するのかと突っ込まれたら困るけど、まずはとにかく、身の安全を考えたいし。

それに、願いも、ある。

6人そろっての一生全力モラトリアムも、ぬるま湯のように心地よく浸っていたけれど。
でも、ひそかに望んでいた願い――ワンランク上の人間になるどころか、社会的カーストの一番上に立って、5人の兄たちに圧迫されることも、引け目を感じることもなく人と付き合える、本当の意味で幸せな世界が手に入るなら。

これが、その最初で最後のチャンスかもしれない。

「大丈夫! わたしが敵をみんな壊してあげたら、聖杯はトッティとわたしのものになるんだから!」
「とりあえずは生き残れたらいいかなー。ほかの皆に潰しあってくさだいってことだから、兄さんたちからまたドライって言われそうだけど」

いや、今回だけは兄さんたちに漏らせないんだけどね、と己に言い聞かせる。
兄たちに露見してしまったら、また血眼になって、そんな大事なこと、危ないことをなんで報告してくれないんだと詰め寄られるかもしれない。
でも、今回ばかりは『一般の人にばらしてはいけない』という条件付きで関わっていることなのだから、黙っている正当性があるはずだ。

「邪魔なら、トッティのお兄さま達、みんな、わたしが『どっかーん』ってしてあげるよ?
 そしたらトッティ、自由になれる?」

無邪気なセイバーが、いたずらを思いついたような顔で笑う。
『どっかーん』が何かはわからないけど、両手を握ったりぱっとひろげたりする仕草は、とても人をびっくりさせる思いつきのようだった。
それで今までにされたことを報復できるなら、面白いかもしれないと思いそうになって。


139 : 末弟&悪魔の妹 ◆7fqukHNUPM :2016/02/02(火) 20:58:17 t4FDAkg20

――でも5人の悪魔は、末っ子が一人で遠出をすると、血相を変えて心配する。

「やっぱりいいよ。セイバーちゃんだって、姉さんが怒ったり、いなくなったりしたら嫌だよね?」

そう言うと、彼女にだって思うところはあったのか「それもそうね」と頷いてくれた。

そう、もし最後まで生き残ることができて、運よく奇跡が転がりこんできたりしたら。
その時は六つ子としての願いではない、トド松だけの願いを叶えるだろう。
一つだけかなうと言われたら、自分のためだけに使いたいと思うことはドライでもがめつくもない、当然のことだ。
当然のことだし、兄たちの誰にも絶対に譲るつもりはない。けれど。

――でも5人の悪魔は、末っ子からリップサービスでも『兄さんの中で一番好き』と言われると、万歳して踊って喜ぶ。

もし、一つじゃなかったら。
もしも、幸運にも、かなう願いに限りが無いなら。
その時ぐらいは、5人の兄へ、一生遊んで暮らせるだけのお金をお願いしてやらなくもないことは、なくない。




吸血鬼のマスターは、気づかない。

『警察に捕まるようなことはしない』とは『犯罪を犯さない』という意味のほかに、『警察にしっぽを掴まれるようなことはしない』という意味でも使われること。
松野家末弟を迎えにきた彼女の口元が、ケーキを食べる前からすでに、微かに『赤く』汚れていたこと。


140 : 末弟&悪魔の妹 ◆7fqukHNUPM :2016/02/02(火) 20:59:04 t4FDAkg20
【クラス】セイバー
【真名】フランドール・スカーレット
【出典】東方Project
【性別】女性
【属性】混沌・善

【パラメーター】
筋力:B 耐久:B 敏捷:B 魔力:B+ 幸運:D 宝具:A

【クラススキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

【保有スキル】
精神異常:C
デメリットスキル。気が触れている。情緒不安定。

吸血鬼:B
強靭な肉体と再生能力を両立する。
但し、直射日光を浴びれば気化してしまう弱点を持つ。

魔力放出(炎):B+
 武器ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。
 セイバーの場合、手にした武器を巨大な炎を放つ枝状の刃に変化させることができる。



【宝具】
『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力(one unknown coin)』
ランク:A 種別:対眼宝具 レンジ:1-99 最大補足:1人
全ての物質には「目」という最も緊張している部分があり、そこを攻撃することで対象を破壊する事ができる。
しかし彼女は、その「目」を自分の手の中に移動させることができ、手を握り締めて「目」を壊せば無条件で対象を破壊できる。『目』さえはっきりと視認してしまえば生物、無生物は問わず隕石さえも破壊したという逸話をもつため、対人宝具というよりも対『眼』宝具。本人曰く「きゅっとしてドカーン」。

『汝が継続できない炎の禁忌(レーヴァテイン)』
ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:1-99 最大補足:1人
フランドール・スカーレットを『セイバー』のクラスとして限界させた宝具。
手に持つ杖に膨大な魔力を流し込み巨大な剣を作り出し、巨大なレーザー状の炎となった魔力の塊を、横なぎに振ることにより切断し、吹き飛ばす。

【weapon】
レーヴァテイン(非戦闘時は矢印にもにた棒状の物体の形をしている)

【人物背景】
東方紅魔郷の舞台、紅魔館の主レミリア・スカーレットの妹である吸血鬼の少女。
少なくとも495年以上生きているが、少々気がふれているという理由でその大半を紅魔館の地下室で過ごしてきた。
また本人も外に出ようともせず引きこもり状態だったようで、その箱入り娘っぷりは生身の人間は見たことがないという程。
また、長い間閉じこもって生活していた関係で与えられたものしか食べたことが無いため、人間の襲い方を知らない。通常の吸血鬼は食事をするために人間を殺さない程度にしか襲わないが、彼女は手加減が出来ないため一滴の血も残さず吹き飛ばしてしまう。
その歯止めの効かない破壊力は、遥かに姉を凌ぐとされている。

【サーヴァントとしての願い】
なし。しいて言えば、自由になりたい(紅魔館の外に出る自由、太陽の下でも外に出られるような自由)。

【基本戦術、方針、運用法】
日光に弱いという弱点を持つため、主に夜間を中心とした戦闘が望ましい。
また、情緒不安定かつ奔放我儘な性格がらマスターとのコミュニケーションに齟齬をきたす恐れがある。


141 : 末弟&悪魔の妹 ◆7fqukHNUPM :2016/02/02(火) 21:01:07 t4FDAkg20
【マスター】
松野トド松@おそ松さん

【マスターとしての願い】
目指せ勝ち組☆(一人で生きていけるだけの金と地位)

【weapon】
あざとい

【能力・技能】
人心掌握術

【人物背景】
松野家の一卵性六つ子の末弟。
甘え上手で、世渡りも上手。(『おそ松さん』公式サイトより)
女子力があり、自分の可愛さも知っている(公式Twitter)。
職探しに行ったはずのハローワークで女性職員と連絡先を交換していたり、兄たちを差し置いて女の子と遊びに行くなど、兄弟の中で一番コミュ力が高いと思われる。また、末っ子特有の要領の良さを持ち合わせており、その手腕は真面目な兄に「人心掌握術の達人」と言わしめるレベル。
かわいい見た目とは裏腹に、毒舌かつ失言が多い。松野家扶養家族選抜面接で「いい息子」を演じて真っ先に合格を貰ったり、バイト先で学歴詐称をしていたりと結構黒い。また、エスパーニャンコを真っ先に金儲けに使おうとしたり、ハタ坊にたかるおそ松に感嘆するなど、しれっとがめつい。
その様は、長男をして「エグい」と言われ、三男にはしばしばドライモンスターと呼ばれている。

【捕捉】
一応、聖杯戦争が殺し合いであることは理解している模様。
しかし、フランドールが「教えるのは面倒、教えても良いことはなさそう」と判断した情報は伝えられていません
(令呪がサーヴァントへの絶対命令権であること。使い切ることはマスターの死を意味すること。町の住民が本物ではないNPCであること等)

【方針】
殺し合いは怖いから積極的には参加したくないけど……もし生き残れた時に、聖杯がもらえるなら欲しいなぁ


142 : 末弟&悪魔の妹 ◆7fqukHNUPM :2016/02/02(火) 21:02:36 t4FDAkg20
投下終了です


143 : ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/02(火) 21:38:19 pTWqMimg0
皆様投下乙です。
投下します。


144 : 桐敷沙子&バーサーカー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/02(火) 21:39:15 pTWqMimg0


ゆっくりと目を覚まし、少女は目の前の光景を見つめる。
白。余りにもまっさらな色が視界に広がる。
蛍光灯の光によって照らされる白い天上だ。
それが眠りから覚醒した少女が常に見る、最初の景色だった。


少女はぼんやりと視線を横へと向ける。
カーテンが周囲を覆っている。
まるで外界から自分を隔離しているかの様に。
近くのテーブルには雑多な物が置かれている。
その中で一際目立っていたのは一冊の本。
室井静信という作家が手がけた小説。
此処にあるものといえば、それくらいだ。
まるで世界から見放された様な空間で、少女は暮らしていた。


少女の見る世界は、常にこの空虚な病室だった。
彼女は『奇病』によって陽の光を浴びることが出来ない体質だった。
日中に外へ出ることは出来ないし、日中に目を覚ますことも出来ない。
人として、普通の生活を送ることが出来ない。
だからこそ少女は此処に居るのだ。
少女に身寄りはいないし、過去の記憶は霧が掛かった様に思い出せない。
ただ気が付いた頃にはこの病室の中にいた。


145 : 桐敷沙子&バーサーカー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/02(火) 21:39:48 pTWqMimg0

少女の胸の内には疑問が常に浮かんでいた。
いつから此処に居たのか。
自分に家族は居たのか。
この身体は治らないのか。
ただ一つ確かなことは、このまっさらな牢獄だけが少女の全てだった、ということだけだ。


そう、全てだった。
今日この日までは。


少女は今まで、何も知らなかった。
今宵の目覚めの時まで、何も気付いていなかった。
少女は唐突に、まるで落とし物をふと思い出したかの様に。
ようやく『全て』を、思い出したのだ。



「…もう起きたかしら、沙子ちゃん?」



看護士がカーテンを開け、声を掛けてくる。
少女を常に看てくれている夜勤の看護士だった。
少女にとって、彼女は自分のことをよく理解してくれている存在だ。
看護士は目を開けていた少女を見て、柔和な笑みを見せた。




―――――人だ。




目の前の看護士を見つめ、少女の中に『餓え』が込み上げる。


146 : 桐敷沙子&バーサーカー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/02(火) 21:40:14 pTWqMimg0


「やっぱり起きていたのね。
 沙子ちゃん、今日の検査のことなのだけど―――――」



いつものように、彼女は検査や体調のことについて話してくれる。
普段ならば看護士の言葉をしっかりと耳にしていただろう。
しかし今の少女にとって、それは最早無意味な言葉の羅列に過ぎなかった。




―――――空腹だ。


―――――欲しい。


―――――食事が欲しい。




少女は、身体を起こした。
看護士は少し驚いた様に、少女を見つめた。
そして少女もまた、ゆっくりと。
看護士を見つめる。




「…沙子ちゃん?」



きょとんとした様子で看護士は呟いた、直後。
看護士に向かって少女が飛び掛かる。
そして、鋭い牙で――――――その首筋に食らい付いた。







147 : 桐敷沙子&バーサーカー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/02(火) 21:41:12 pTWqMimg0



青ざめた顔で、看護士は崩れ落ちる。
その首筋には虫刺され痕の様な小さな傷が生まれていた。
口元に付いた血を拭い、少女は看護士を見下ろす。



―――――美味しかった。



少女――――桐敷 沙子(キリシキ スナコ)は、看護士の血を喰らったのだ。
自らが何者なのかに気付いた瞬間、彼女の中の本能が蘇ったのだ。
沙子は、ヒトではない。
ヒトの血を喰らって生き長らえる化外の者だ。
己の記憶を取り戻した瞬間から、自らの餓えを耐え切れなくなった。

沙子は果てしない時を生き、多くの人を喰らってきた。
最早何人の人間を殺したのか、彼女にさえ解らない。
彼女が人を殺すのは、人が家畜の肉を喰うのと一緒だ。
それでも彼女は、血を喰らってきた。
生きる為に。餓えを凌ぐ為に。
彼女にとっての捕食とは、ただそれだけのことだ。

それ故に、彼女は日の当たる世界では生きられない。
人は決して、人殺しの化物を赦したりはしないだろう。
彼らにとって人食いの鬼とは、迫害に値する対象なのだから。


神も、法も、全て人を護る為のモノだ。
人から外れた化物は、それらから完全に見放される。
少女はそれ故に彷徨っていた。
安寧の地を求め続けてきた。


自分が何者なのかを思い出してしまった。
この病室から抜け出た瞬間、自分は再び彷徨う身となるのだ。
此処は空っぽだ。空虚な檻だ。
世界から見放されたかのように隔離された籠の中だ。
しかし、それでも此処は沙子にとって人の社会で得られた『居場所』だった。
安らかな日々を求めてきた彼女にとって、初めての空間だった。


だけど、此処とはもうお別れ。
人の真似事は終わりだ。
人ならざる者としての本能を自覚した今、自分はもう人ではいられない。


148 : 桐敷沙子&バーサーカー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/02(火) 21:42:33 pTWqMimg0

沙子はベッドから降りる。
テーブルに置かれていた室井静信の小説を手に取り。
そしてカーテンを振り払い、看護士の成れの果てを尻目に、彼女は歩き出す。

外界。この部屋の外を、目指して。
そして、沙子は――――――扉を開いた。
病室の外へと、出た。



外は、死で充満していた。
塗料をぶち撒けたかのように。
大量の鮮血が、廊下に飛び散っていたのだ。



べちゃりと、少女の足の裏が汚れる。
足下に血が撒き散っていたのだ。
人の頭が、腕が、胴体が。
まるで壊れた人形の部位のように転がっていた。
医師や職員らの成れの果てだろうか。
人が、人の形をした肉へと成り下がっている。
人の命を癒す籠は、ほんの僅かな時間で惨劇の舞台へと変貌していた。



「おいしい」



直後に耳に入ってきたのは、咀嚼音と奇妙な独り言。
目の前の状況に唖然としていた沙子は、あるものを見つけた。




「すごく、おいしい」



血濡れの池の中心に立つ―――――漆黒の衣に身を包んだ『梟』。
ソレは地面に転がる肉を、喰らっている。
狼が羊を襲って喰らう様に、『梟』は人を喰っていたのだ。


149 : 桐敷沙子&バーサーカー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/02(火) 21:42:57 pTWqMimg0



なんて、美味しそうに食べているのだろう。



沙子は梟のような男を見て、そんなことを思った。
男は、一心不乱に肉を口に運んでいた。
飢えた獣の様に血を舐め、肉を喰らい、残酷に貪っていた。
男の形相は狂気に塗れていた。
淀んだ瞳で目の前の餌を喰らい続けていた。
同時に、沙子には彼が「やっとの思いで餓えを凌いだ」ようにも見えた。
まるで自分達が、屍鬼が人の血を喰らう様に。
やっとの思いで人に食らい付き、餌として血を啜ったときの様に。


びちゃり、びちゃり。
沙子は足が汚れることも気にせず、血塗れの廊下を歩く。
人を喰らう梟のような男の傍へと、歩み寄る。
肉にありついていた男は少女に気付き、ゆっくりと顔をそちらの方へと向ける。



「貴方も、お腹を空かせていたのね」



少女はただ一言。
微笑みを口に浮かべて、そう言った。
その瞳に同情と親近感の様なものを浮かべて。





150 : 桐敷沙子&バーサーカー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/02(火) 21:43:22 pTWqMimg0



飢えていた。


腹が減っていた。


兎に角、何かを喰らいたかった。


肉を喰いたい。


ヒトが、喰いたい。



俺がいたのは、病院だった。
薬品のような独特のニオイでいっぱいだった。
臭い。なんて臭えんだよ。
ふと周囲を見渡したら、人間が何人か居た。
ああ、そういや病院だもんな。
人間くらい、いるよなあ。


俺の姿を見て、どいつもこいつも腰を抜かしていていた。
どうやら俺が怖いらしい。
今の俺は飢えていた。
腹が減っていた。
何でもいいから、喰いたかった。



だから俺は、殺した。
目につく奴らを殺した。
全員殺した。
医者も看護士も職員も。
皆殺しにした。



もぎたてのパイナップルみたいな頭を何度も喰い漁った。
おいしかった。
程よく肉のついた腕に何度も貪った。
おいしかった。
ステーキみたいな胴体の肉に何度も何度も喰らい付いた。
おいしかった。
おいしかった。
おいしかった。
ほんとにおいしい。
とにかくもう、今は何でもいいから喰いたい。



そんな時、子供が俺を見ていた。
真っ黒な目をした女のコだった。
俺を怖がるわけでもなく、まるで同類を見つけたように近寄ってきた。
女のコは、笑っていた。



「貴方も、お腹を空かせていたのね」



俺は、確信した。
こいつなんだな、と直感した。
こいつが、俺の、マスターだ――――――――。


151 : 桐敷沙子&バーサーカー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/02(火) 21:44:19 pTWqMimg0


【クラス】
バーサーカー

【真名】
オウル@東京喰種:re

【パラメーター】
筋力A+ 耐久A++ 敏捷B+ 魔力E 幸運E 宝具D++

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
狂化:D
筋力と耐久のパラメーターを1ランクアップさせる。
言語能力こそ健在だが、その精神は狂気に蝕まれている。

【保有スキル】
喰種(偽):B+
人を喰らう怪物。グール。
オウルは人から喰種へと転じた半喰種に分類される。
人間を凌駕する再生能力と身体能力を持つ他、人肉を喰らうことで魔力回復とパラメーターの一時的な向上を行える。
更に捕食器官である『赫子(かぐね)』を身体に備える。
なお喰種が摂取できるのは人肉以外には水とコーヒーのみ。

戦闘続行:B+
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
あらゆる苦痛に対する耐性も兼ね備えており、敵の攻撃に非常に怯みにくい。

精神錯乱:A+
同ランク以下の精神干渉をシャットアウトする。
更に自身と相対した者に恐怖のバッドステータスを与え、自身に向けられた判定のファンブル率を上昇させる。
ヒトでありながらバケモノへと転じさせられ、捕食を繰り返したオウルの精神は完全に荒廃している。

【宝具】
「偽誕の梟(オウル)」
ランク:D+ 種別:対人宝具 レンジ:1~3 最大捕捉:5
喰種特有の捕食器官「赫子(かぐね)」。分類は羽赫。
ブレードの形状を取っており、主に近接戦を得意とする。
人間を捕食する為の器官である為、敵が人間であった場合には攻撃判定・与ダメージが強化される。

「隻眼の赫者(カニヴァル・オウル)」
ランク:D++ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
共食いを繰り返した果てに赫子を進化させた喰種「赫者(かくじゃ)」としての力。
オウルは未だ未完成な半赫者に分類するが、その力は並の喰種を遥かに凌駕する。
発動時は宝具「偽誕の梟」の性能を大幅に強化し、更に全パラメーターと精神錯乱スキルにプラス補正が掛かる。
この段階に至ったオウルは完全に発狂し、まともな意思疎通は困難になる。

【Weapon】
自身の肉体、赫子

【人物背景】
「滝澤 政道」という人間だった男。
元は喰種の事件を担当するCCGの捜査官であり、アカデミーを次席で卒業した優秀な新人だった。
しかし喫茶店「あんていく」襲撃作戦の際に重傷を負い、行方不明になる。
二年後、CCGによるオークション会場襲撃作戦にて半喰種として姿を現した。

【サーヴァントとしての願い】
全部殺して、自分が一番だと証明する。

【方針】
沙子と共に往く。




【マスター】
桐敷 沙子@屍鬼(藤崎竜版)

【マスターとしての願い】
安らかに暮らせる居場所が欲しい。

【weapon】
なし

【能力・技能】
「屍鬼」
人の血を吸って生きる人外の存在。
驚異的な治癒力、不老の肉体、血を吸った人間への暗示といった超常的な力を持つ。
血を吸われた人間は素質がある者のみ死亡後に屍鬼として蘇生する。
ただし幾何学模様や十字架といった霊的なものに対する恐怖心、他人の住居への無断侵入が出来ないといった弱点を持つ。
また日中には強制的に眠りに落ちてしまう他、日光に当たると皮膚が焼け爛れてしまう。
日中にも強い外的要因があれば目覚めることが可能。
基本的に不死身のように見えるが、心臓への杭や頭部の破壊などで大量の出血をすれば死亡する。
伝承で言う所の『吸血鬼』に近い。

【人物背景】
過疎地である外場村に引っ越してきた桐敷家の娘。
その正体は長い時を生きる不老の「屍鬼」。
桐敷家を始めとする村の屍鬼や人狼を統べる存在でもある。
かつては人間だったが、西洋の人狼に血を吸われ屍鬼と化した。
読書好きで聡明だが、外見相応の幼い一面も併せ持つ。

【方針】
バーサーカーと共に往く。
会場内でのロールは「入院生活を送る身寄りの無い子供」だった模様。


152 : 名無しさん :2016/02/02(火) 21:44:33 pTWqMimg0
投下終了です


153 : ◆7PJBZrstcc :2016/02/02(火) 21:57:49 GOdN4VXQ0
投下します


154 : 吉井明久&アーチャー ◆7PJBZrstcc :2016/02/02(火) 21:58:59 GOdN4VXQ0
問 以下の問いに答えなさい。
もしもあなたがいきなり殺し合いに参加させられたらどうしますか。


アーチャーの答え
『まずは現状把握、その後殺し合いを打破する方法を探す』

教師のコメント
どんな状況でも諦めない強い意志を感じさせます。


吉井明久の答え
『クラスメイト相手なら殺られる前に殺る』

教師のコメント
何故クラスメイト限定なのですか。






155 : 吉井明久&アーチャー ◆7PJBZrstcc :2016/02/02(火) 21:59:48 GOdN4VXQ0



「え、何これ?」

 学校から帰って1人ゲームをしながら、僕こと吉井明久は前触れもなく気づいた。
 何にと聞かれたら、何もかもがおかしい事に。
 あえていくつか言うなら僕らの教室が、三年生に勝って手に入れたAクラスの教室じゃなくなっていた。
 それどころか、学校の名前が文月学園じゃなくなっていた。
 それに―――

「姉さんが居ない……!?」

 試召戦争に勝ったからと言って僕の生活は根本から変わったわけじゃない。
 ゲームを買うにしても姉さんの目を盗んでコツコツお金を貯めなきゃいけないし、遊べたとしてもある程度したら姉さんがお仕置きと称して何かしてくるはず。
 それが無いという事は

「僕は自由だ!!」

 って違う、そうじゃない! いやそれも大事だけどそれだけじゃない!
 今考えるべきは―――

「なんだろう?」

 例えるなら別の世界に連れてこられたかのような現状で、いったい僕に何ができるのか。
 漫画やアニメの主人公じゃないんだから、そんなすぐに解決策が浮かぶわけがない。
 とは言っても何もしないでじっとしているわけにもいかないし。

「とりあえず、雄二たちも同じことを思っているのか聞いてみよう」

 雄二たちは間違いなく今日同じ教室で授業を受けたから居るのは間違いない。
 もしも僕と同じようなことを考えているのなら協力してくれるはずだ。
 そうでなくても言われたら気が付くかもしれない。
 ……最悪の可能性として、頭がおかしくなった奴だと思われるかもしれないけどそれは無いと信じたい。
 そう思って携帯を取った瞬間、僕は今までなかったはずの後ろに気配を感じた。

「電話をかけるのはおやめになった方がよろしいですわ」
「だ、誰だ!」

 後ろに振り向くと、そこには僕が会ったことのない女の子が居た。
 その女の子がしているツインテールの髪型に、一瞬だけ知り合いかと思ったけどすぐに別人だと気づく。
 少なくとも、僕はこの子と会ったことは無いはずだ。
 にも拘わらずこの子は目の前にいる。当然僕が連れ込んだわけじゃない。
 知らない女の子がいきなり声をかけてくるなんて

「そんな事が知られたら僕はクラスのみんなに処刑されちゃう!!」
「いきなりどうしましたの!?」

 どうやらこの子も現状を呑み込めていないらしい。






156 : 吉井明久&アーチャー ◆7PJBZrstcc :2016/02/02(火) 22:00:34 GOdN4VXQ0



 その後、僕はこの女の子から様々なことを聞いた。
 最初はいきなり現れた女の子を(いくら可愛いとはいえ)信用し辛かったが、今起きている状況の説明をするといわれたら黙って聞くしかない。
 そして説明された事柄は、どれも驚くことばかりだった。

 聖杯戦争と言う、どんな願いでも叶える聖杯を賭けての殺し合いに僕が巻き込まれていること。
 彼女はサーヴァントと言う、その聖杯戦争の為に呼び出された過去または異世界の英雄だという事(本人は英雄なんて大層なものになった事はないと言っていたが)。
 僕はそのマスターだという事。
 この世界はその為に用意されたものだという事。
 そして―――

「雄二たちが偽物かもしれないって!?」
「ええ」

 彼女が言うには、この世界の人間は僕みたいな聖杯戦争の参加者以外はゲームで言うNPCみたいなものだという。
 それが本当だとしたら恐ろしい再現率だ。
 雄二の性格のひどさも、ムッツリーニの鼻血も、秀吉の可愛さも、美波の関節技も、姫路さんの料理の脅威もいつもと変わりなく見えてたのに。

「それを確かめる時間はまだございますので、まずは自身のこれからの事を考え下さいまし」
「う、うん」

 そこで彼女が「そう言えば自己紹介をしていませんでしたわ」と呟く。
 そう言われると確かに僕もまだ彼女の名前を聞いていない。

「では自己紹介をいたしますわ。
 私はアーチャーのサーヴァント、真名は白井黒子と申しますの。
 あなたは?」
「僕は吉井明久、よろしくね」
「では吉井さん、私は貴方に尋ねなければならない事があります」
「何?」
「貴方は、この聖杯戦争を勝ち抜きたいと思っておりますか?」

 それは確かに重要な質問だろう。そして僕には願いがないわけじゃない。
 姉さんにはまた海外に行ってもらって再び一人暮らしがしたいとか、ババァを抹殺して恋愛禁止の校則を変えたいとか色々ある。
 でもそれは人を殺してまで叶えたい願いじゃない。
 いや、Fクラスのクラスメイト達(秀吉、美波、姫路さん除く)だけなら全員殺して帰るという道もあるかもしれない。向こうも容赦なく来そうだし。
 でもそんな可能性は0だろう。だから

「いや、僕はこの戦いには反対だよ」

 と返す。するとアーチャー(でいいのかな?)も安心したように息を吐く。

「それを聞いて安心しましたわ。私も殺し合いなんてごめんですの」
「そうなんだ、良かった」
「ですがお気をつけてくださいまし、サーヴァントとは願いを持って現れる方が大半でございますから」

 そんな忠告を聞きながら僕は思った。
 色々大変かもしれないけどこのアーチャーとなら頑張れるかな、と。
 そしてこうも思った。



 もしFFF団に見つかったらただじゃすまないな、と。


157 : 吉井明久&アーチャー ◆7PJBZrstcc :2016/02/02(火) 22:01:19 GOdN4VXQ0
【クラス】
アーチャー

【真名】
白井黒子@とある魔術の禁書目録

【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷D 魔力D 幸運A 宝具A

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
対魔力:C
魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。
大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

単独行動:B
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
Bランクならば2日は現界可能。

【保有スキル】
風紀委員:A
学園都市の治安維持機関にしてアーチャーの誇り。
混沌もしくは悪属性のサーヴァントに与えるダメージが増加する。

敬愛(お姉様):B
強く敬愛する存在が居るもののみが持つスキル。
このスキルによって、スキルのランク以下の魅了系スキルを無効化する。
また、異性からの魅了系スキルはランクに関わらず無効化する。

【宝具】
『空間移動(テレポート)』
ランク:A 種別:対人・物宝具 レンジ:0 最大捕捉:-
アーチャーが持つ超能力。
自分もしくは自らが手に触れた物を瞬間的に移動させる能力。
アーチャーの世界のテレポートは3次元空間から11次元へ一度変換演算を行いベクトル移動、再び対象を3次元空間に出現させるというもの。
一度に移動できる距離は最大81.5m、質量は130.7㎏ほど。
また、飛ばした先に物理的に割り込むので、転移先に物体があるとその内部に入り込む。
ちなみに、アーチャーと同じ世界のテレポーターはテレポートさせることが出来ない。

【weapon】
金属矢

【人物背景】
常盤台中学1年にして学園都市の警察的組織『風紀委員(ジャッジメント)』の一員。
成績、素行ともに良好な優等生。風紀委員としても優秀。
ただしルームメイト(女性)に対してはっきり恋愛感情を抱いており、それが暴走することも。
性格は正義感が強く、度胸も人一倍。不良たちからは恐れられている。

【サーヴァントとしての願い】
マスターを助ける。



【マスター】
吉井明久@バカとテストと召喚獣

【マスターとしての願い】
家に帰りたい。

【weapon】
・召喚獣
 文月学園の

【能力・技能】
・身体能力
 校舎の2、3階から飛び降りたり階段を三角飛びしたりと一般人にしては高い。
 また、木刀を持った相手に爪切りで勝ったり、殺気を感じて攻撃を回避したりするなど戦闘の力もそこそこ。
 その他にも、塩と水だけで1週間過ごすことができる。

・女装
 何故か似合う。女装した時の姿は通称アキちゃん。

・料理
 普通の女性が自信を失うレベルにうまい。得意料理はパエリア。

【人物背景】
文月学園2年生にして『観察処分者』と言うバカの代名詞的な称号の持ち主。
誰もが認めるほどのバカであり、まともに嘘がつけなかったり言葉を間違って覚えていたりするが暗記系の科目(歴史など)は得意。
わりと常識的な感性を持ったツッコミ役であり、周囲に振り回されることもしばしば。
性格はお人よしの熱血漢で、困っている人を見過ごせないタイプ。

【方針】
殺し合いなんてしたくないから脱出する方法を探す。


158 : ◆7PJBZrstcc :2016/02/02(火) 22:01:48 GOdN4VXQ0
投下終了です


159 : ◆7PJBZrstcc :2016/02/02(火) 22:07:21 GOdN4VXQ0
すみません、マスターのweaponの部分を以下の通り差し替えます。

【weapon】
・召喚獣
 文月学園の特徴的なシステムの象徴。
 テストの点に応じた力を持って戦わせることができる。姿は召喚者をデフォルメしたもの。
 本来ならば召喚獣は物理干渉が不可能であるものの、明久の者の場合は特例で可能になっている。
 ただし、召喚には文月学園の教師が張ったフィールドか、代理召喚型の白金の腕輪が必要。
 その為、明久単体では現状使用不可能。


160 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/02(火) 22:18:50 zwdZnrhw0
皆様投下お疲れ様です。
私も二つ目のオープニングを投下しようと思いますが、◆yaJDyrluOY様のSCP-682のキャラクターが被ってしまいました。
◆yaJDyrluOY様には大変申し訳ありません。


161 : ある正義の味方の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/02(火) 22:20:13 zwdZnrhw0




もし美と正義の世界が現実に存在するものなら、それはまさしく童話の世界でなければならない。


                             小川未明 「理想の世界」






162 : ある正義の味方の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/02(火) 22:21:29 zwdZnrhw0
【1日目】

夜、東京都世田谷区にて。

來野巽は平凡な高校生であった。しいて挙げるなら受験を気にしなければならない頃合いなくらい。
コンビニで買い占めた夕食が入ったビニール袋を片手に、マンションへの帰路を歩んでいる。

日常とはそんなものだ。
誰しも自分の日常を持ち、時間を過ごす。
学生ならば授業を受け、サラリーマンならば仕事に勤しみ、主婦ならば家事をこなし、子供ならば遊ぶ。
世界で何が起ころうとも、日常は変化しない。世界は待ったをかけてくれない。
巽の場合は、受験勉強に集中する事だろう。

ふと巽は立ち止まる。飲み物を買うのを忘れてしまっただけだった。
しかしながら、日常においては些細な出来事で、忘れ物も珍しい事でもなんでもない。
現代は非常に便利で、わざわざ店に戻る必要は無く、道端に自動販売機が置かれてあるのだ。
巽は、偶然そこにあった自動販売機でジュースか何かを買おうと財布を取り出そうとする。

「……あ、あれ?」

が、財布がなかった。まさか落としてしまったのだろうか……?
残念なことに、財布を落とすことも決してない事ではない平凡なハプニングの一つだった。
今後を考えれば、巽にとってタダ事でなくとも、周囲からすれば残念な出来事で片づけられる。

ここで巽に対し、男の声がかけられた。

「そこの君」

「………………っ?!」

巽はギョッとしてしまう。明らかに平凡でも普通でもない、異常がそこに在ったのだ。
声をかけた男性というのが、紙袋を頭に被った姿なのである。
どうして紙袋を被っているのだろう?
明らかに不審者だった。
それ以外はきっと『普通』の男性なのかもしれない。紙袋が異常さを際立っているだけで……

困惑する巽に、男が何かを差し出してきた。

「探し物はこれかな?」

「え? ……あ! 俺の財布」

きっと、この男は拾った財布の持ち主を探してくれてたのかもしれない。
紙袋を被っていても、行為一つで印象がガラリと変わった。
ちゃんと金が入っているのを確認してから、巽はおずおずと「ありがとうございます」そう礼を告げる。
男の表情は分からないものの、満足そうに思えた。
男は答える。

「当然のことをしたまでだよ」


163 : ある正義の味方の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/02(火) 22:22:50 zwdZnrhw0
当然のこと。
巽は言葉を復唱していた。

確かに当然だった。
落し物を落とし主に返す為に、彼は巽を探しだし、そして解決させた。
巽も財布が戻ってきたのには安堵したし、本当に助かったと思う。

――何故だろう。何故、こうも不自然に感じるのだろうか。

「あの………貴方は一体?」

思わず巽は問いかけていた。
無粋な質問に男はどう反応しているのか、紙袋のせいで不明のままである。

「私は」

だが、男の返事が全てだった。


「私は―――正義の味方だよ」


茫然としてしまった。唖然としてしまった。
説得力とか生半可なものではく、一切の信憑性もない言葉にしか聞こえない。
それでも――巽は踵を返し立ち去る紙袋の男に、どうすることも出来なかったのである。





大人になったら分かる事がある。その通りだと巽は思う。
子供の頃には見えなかったもの、分からないもの、理解できないもの。幾らでもあっただろう。
成長するにつれて様々な知識を身につけ、不可思議なものが一つ一つ失われていく。

しかし。
今回、巽が得たのは知識とか常識ではなく理屈みたいなものである。

昔――巽は『正義の味方』だった。
戦隊ヒーローになりきって、巨大なロボットに乗り込み怪獣を倒したり、街の平和を守り続ける。
そういう思い出は巽に限った話ではないだろう。

巽には妹がいる。彼女はその『ヒーローごっこ』で人質役になることがあった。
彼女は一つだけ奇妙な事を口にした。
同級生のノリミツが悪役で、巽が正義の味方。妹は相変わらずの人質役。
そんな配役だった時。
悪役を演じるノリミツが怖かった――と、妹は言った。

ノリミツは役にのめり込んでしまうタチだったので、まさに悪役らしい嘲笑など声を張り上げたりした。
それでビックリして怯えていたのだろう。
巽も変に感じなかったし、子供だから恐怖心が煽られやすかったんだろうと気に留めなかった。

今は違う。
巽は、あの『正義の味方』と出会い。平凡を失った。

あの――『正義の味方』は、果たして『本物の正義』なのだろうか?

表情も分からない、素性も知らない、彼の経歴すら把握していない巽でさえも不気味なものを覚えた。
まるで、あの男は

正義に酔いしれているかのようだった。

どうすればあそこまで『正義』を掲げられ、成し遂げようとするのか。


164 : ある正義の味方の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/02(火) 22:23:33 zwdZnrhw0
「違う」

巽は呟く。
何が、までは明確にはしないがハッキリと。
全てが、それとも決定的な欠点が、ただ巽は『正義の味方』だったからこそ思うのだ。

「違うよな……きっと、違う」

だからこそ、巽は記憶を覚醒させる。


―――ここが自分の知る『東京』ではないと、自覚した。


1991年ではない?
この『東京』は2016年。
違う。
巽は、1991年の『東京』からここへ至った……

瞬間。

目の前に何かが現れる。人――それも聖剣を携えた堂々たる騎士であった。
変装でもなく蛮人でもない、紛れもなく正真正銘の騎士である青年は問う。


「セイバー、ジークフリート。召喚に応じ参上した。あなたが俺のマスターか」





巽が出会った男―――平坂黄泉は、正義の味方(自称)である。
地域のパトロールは勝手にやるし、ゴミ拾いも勝手にやるし、お年寄りの手助けもするが不審者扱いされてしまう。
そんな『正義の味方』だった。
最も、正義の味方は素顔を晒さないという謎のこだわりの為、紙袋を被っていたりするのが不審者扱いの要因。
以前は、悪の戦闘員みたいなコスプレをして徘徊をしていたのだ。そちらよりは大分マシである。
何故コスプレをしなくなったのかと言えば、その『変身道具』を失ってしまったからだ。
何故『変身道具』を失ったのか?


それは彼もまた聖杯によって選出されたマスターの一人であったから。


だからこそ、彼本来の住居ではない場所に移され、本来ある物資は移される事は無かった。
平坂黄泉はそれを知らない。
知らずして記憶を取り戻し、いつものように『正義の味方』を演じていた。
唯一、変化があったと言えば、一人の『少女』の存在。

どういう訳か、ある日突然。彼の目の前に『少女』が現れたのだ。
平坂が質問しても自分の両親や住む家のこと、自分の名前すら語ろうとしない謎の少女。
否、少女と呼ぶにはあまりにも幼すぎる……幼女であった。

普通ならば警察に届けるべきなのだろう。
しかし、彼女と接した平坂は感じた。
きっと訳があって匿って欲しい……そう幼女は訴えているのではないか? と。
両親の存在すら口にしない、泣き喚くことも、癇癪すら起こさず
平坂がパトロールで家を後にしている最中、彼女は遊んで彼の帰りを大人しく待っていた。

平坂は『正義の味方』として幼女を悪から守ると(勝手に)決心した。
その幼女こそが平坂黄泉のサーヴァント・ライダーであるとは知らずに―――


165 : ある正義の味方の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/02(火) 22:24:46 zwdZnrhw0




ライダーの存在は人を狂わせた。
彼女と視線を合わせた者は、皆狂ってしまい、皆殺し合い、皆死んでしまう。
ライダー自らが引き起こしている事を自覚しているのか定かではない。

ライダーは遊びたかった。
彼女がかつて『監視』されていた時、楽しかった遊び相手とは。
人類が『不死身』と称し、破壊するべき存在であると称し、幾度も実験をしつくした恐ろしい化物だった。

ただ、不思議な事に平坂黄泉は違う。
彼は狂わなかった。
正義感に酔いしれていて、ある意味では狂っているのかもしれないが、狂って死ぬことはなかった。
ライダーは疑問を深く掘り下げるほど考えはしない。
狂って死なない遊び相手が居る事を純粋に喜んだのだ。






166 : ある正義の味方の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/02(火) 22:25:45 zwdZnrhw0
帰りを待ってくれる人がいるだけで大分違う。
単純な安堵という感情を与えてくれる術の一つであるが、なかなかどうして難しい手段だった。
全く以て不思議なことに平坂黄泉には、謎の幼女が帰りを待ってくれていた。
そして、彼女と対話することも彼の楽しみになっている。

「今日なんか子供に石を投げられてしまって……嗚呼、そうでした。
 落とした財布を持ち主に返してあげたら、感謝してくれたんですよ。私も正直嬉しくなってしまいましてね」

相変わらずだが、平坂は饒舌に正義を語っている。
ライダーはお絵かきしながら、それを聞いている。
そんな光景は『普通』だった。
平坂も、ライダーも、互いに互いで異常な存在同士だが、眺めて見ればそうは思えない。

ふと、わずかな物音を聞いて平坂は反応した。
ライダーが描き終わった絵を彼に差し出している。

だが。
平坂黄泉は全盲だった。
これがライダーの特性を受け付けない最大の理由。

未だライダーに伝えてはいない。否、どう伝えればいいのだろうか。幼い子供には残酷過ぎる。
きっと彼女は分かっていない。けれども、平坂は『正義の味方』として嘘をついた。
『正義の味方』だからこそライダーの想いを壊さなかった。

「私の絵を描いてくれたんですか?」

かすかにライダーが頷いたような物音が聞こえる。
「ありがとうございます」と平坂は礼を告げた。「上手じゃないですか」と絵を褒めた。
見えてはいない。
明らかな嘘。
『正義の味方』も嘘はつく。

「―――――」

その時。
平坂の動作が止まる。しばしの静寂の後、一言呟いた。

「外が騒がしいですね」

ライダーは首を傾げ、耳を澄ました。彼女は何も聞こえない。
平坂はライダー以上の聴覚を保持しており、遠く離れた騒音を聞き取っていた。
耳につくサイレン、慌ただしい声、銃声、最終的に――悲鳴。そしてピタリと静寂だけが残った。
翌日のニュースで流れる惨劇の音であるとは平坂も知らない。

しかし、ハッキリとこの『世界』に悪が存在することを認知したのである。

「私は――正義を成さなければならない!」

歪んでいようが、間違っていようが、平坂黄泉は『正義の味方』なのだ。



「正義とは勝つ事! 負ける者は全て悪!! ―――だろう?」



ライダーの描いた絵の中には、平坂とライダー………そしてトカゲのような化物が描かれていた。


167 : ある正義の味方の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/02(火) 22:26:43 zwdZnrhw0
【クラス】ライダー
【真名】SCP-053@SCP Foundation
【属性】中立・中庸

【ステータス】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:A 幸運:A 宝具:D


【クラス別スキル】
対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

騎乗:A++
 乗り物を乗りこなす能力。
 幻獣・神獣ランク、竜種も含めて乗りこなすことが出来る。
 本来ならライダーの才も持たないが、ある記録によりこのランクを得た。


【保有スキル】
高速再生:A
 損傷の軽重に関係なく瞬時に損傷を再生する。
 再生の規模に応じて相応の魔力を消費する。


【宝具】
『SCP-053』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:彼女の視界内 最大補足:彼女の視界内
 ライダーと視線を合わせた者は、ライダーに直接接触するまたは10分以上その周囲にいた場合、
 被害妄想を発症し、周囲にいる人間を殺害しようとし、最終的にライダーを殺害しようとする。
 対象はライダーに損傷を与えた後、心臓発作を起こし死亡する。
 この宝具はマスターとNPCのみ効果を発揮する。

『SCP-682』
ランク:A++ 種別:対軍宝具 レンジ:1~100 最大補足:100人
 高い知能のある巨大な爬虫類のような生物。SCP-███-2が竜であると称したように、竜種に近い存在である。
 優れた体力と、スピード、反射神経、再生能力を持つ。
 SCP-682は喋ることが可能で、基本的にすべての生命に対し憎悪をしている。
 しかしながらライダーはSCP-682に文字通りの騎乗をした記録が残されている。
 少なくともライダーはSCP-682に親しみの感情を抱いており、共に遊ぶ事を望んでいる。


【人物背景】
見た目は三歳程度の少女。簡易的な会話なら可能な知能はある。
彼女は自身の能力については無知であるように振舞うが、実際のところは不明。

【サーヴァントとしての願い】
遊ぶ

【捕捉】
クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP FoundationにおいてDr Gears氏が創作されたSCP-053とSCP-682のキャラクターを二次使用させて頂きました。

SCP-053 ttp://www.scp-wiki.net/scp-053
SCP-682 ttp://www.scp-wiki.net/scp-682



【マスター】
平坂黄泉@未来日記

【マスターとしての願い】
正義を為す

【能力・技能】
聴覚
 全盲である代わりに聴力はかなり優れている。
 この能力もあり、健常者と変わりは無い。

催眠術
 話術により対象を支配下に置く。
 結構、超能力じみている。

【人物背景】
正義の味方になろうとしている男。
正義とは勝つこと、負ける者はすべて悪。
未来日記を授かる前からの参戦。

【捕捉】
聖杯戦争を把握しておりません。
世田谷区内に住居が存在しております。


168 : ある正義の味方の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/02(火) 22:27:41 zwdZnrhw0



「聖杯戦争――か」

魔術。
サーヴァント。
聖杯。

子供が興奮するような夢物語をセイバー・ジークフリードから聞かされた巽。
理解するのにも膨大なエネルギーを要する内容に、彼は奇妙なくらい落ち着いていた。
一周回って冷静になったのかもしれない。
現実味のない話だが、実際にセイバーは巽の前に現れた。少なくとも夢ではない。

最悪、東京都内が戦場になるだろう。
不安な事をセイバーは語るが、いまいちピンとこないし、想像すらできなかった。
それに――ここは巽の知る『東京』でもない。

「ここは、未来の『東京』ってことなのか? セイバー」

真っ先に巽はそう考えた。
この時代は2016年で、巽はそれよりも過去の人間であったのだから。
例え、それが正解だとしても親からの仕送りと表上なっている金やマンションのことなど疑問は絶えない。
既に霊体化しているセイバーは言う。

『すまない。俺の知識でもそこまでは分からない。可能性は否定できないだろう』

「……そっか」

この『東京』が偽りであることも、ここに住む人々が偽りであることも、全てを把握していない巽。
東京が破壊される。無関係な人間が死ぬ。
きっと『正義の味方』なら許しがたい話だった。
あの男ならば聖杯戦争を阻止すべく行動に移すのだろうか。

ならば自分は?
聖杯戦争をどうする?
死にたくないから生き残る?
聖杯を手にしたいから戦争をするのか?

「違う――よな。」

結局、どうしたいのかは分からなかった。けれども、聖杯戦争をしようとは思わなかった。
願いのない無力の人間だからこそ悠長かもしれない。だが、巽はそれこそが解答だと悟る。


169 : ある正義の味方の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/02(火) 22:28:36 zwdZnrhw0
「俺は『正義の味方』じゃない」

力も平凡、魔術師でもない、つい最近まではただの人間。
『正義の味方』は力もあるし、人望もあるし、なんかが特別なのが常識だ。
あの男が正真正銘の『正義の味方』だとすれば――巽は違う。
だが。

「それでも――俺は東京が壊れるのを止めたい」

自分がいる『東京』が偽りであっても。

「人が殺されるのを止めたい」

それに自分は人を殺す事なんて出来ない。


「俺は聖杯戦争を止めたいんだ。セイバー」


対してセイバーは

『分かった。俺はマスターに従おう』

そう答える。
あっさりとした返答に、巽は少々戸惑いを覚えてしまった。

「えっと……セイバーはいいのか? 聖杯戦争を止めるってことは、聖杯を手に入れられないんだぞ」

『俺は聖杯に望むものはない。マスターの望みが聖杯戦争の阻止ならば、俺はそれに従うまでだ』

サーヴァントとは、そういうものだ。
セイバーの言葉に巽は「そんなもんか」と実感できないまま返事をする。
一つ、セイバーが付け加えた。

『それがマスターの信じる「正義」なのだろう』

自分自身の正義。
巽は確信する。それが自分が夢見た『正義の味方』だと。
人は死なせず、街の平和を守る。子供のような初々しい正義だった。

ありふれた正義だった。

セイバーもそれを望んでいた。
誰かのためではなく、己の正義を信じて戦いに身を投じる。
彼もまた『正義の味方』になりたい男だった―――……


170 : ある正義の味方の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/02(火) 22:29:39 zwdZnrhw0
【クラス】セイバー
【真名】ジークフリート@Fate/Apocrypha
【属性】混沌・善

【パラメーター】
筋力:B+ 耐久:A 敏捷:B 魔力:C 幸運:E 宝具:A


【クラススキル】
対魔力:-
 「悪竜の血鎧」を得た代償によって失われている。

騎乗:B
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
 魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。


【保有スキル】
黄金律:C-
 人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。
 金銭には困らぬ人生を約束されている。


【宝具】
『悪竜の血鎧(アーマー・オブ・ファヴニール)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:- 防御対象:1人
 Bランク以下の物理攻撃と魔術を完全に無効化する。
 Aランク以上の攻撃でもその威力を大幅に減少させ、Bランク分の防御数値を差し引いたダメージとして計上する。
 正当な英雄から宝具を使用された場合は、B+相当の防御数値を得る。
 唯一、背中は防御数値が得られず、隠す事もできない。

『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:500人
 竜殺し達成した呪いの聖剣。
 原典である魔剣『グラム』としての属性も持ち、手にした者によって聖剣、魔剣の属性が変化する。
 柄に青い宝玉には神代の魔力が貯蔵・保管されており、解放すると黄昏の剣気を放つ。
 竜種の血を引く者に対しては追加ダメージを与える。


【人物背景】
「ニーベルンゲンの歌」に謳われる万夫不当の英雄。
聖剣バルムンクを手に邪竜ファヴニールを打倒した『竜殺し』。
寡黙であるが、情は深い。戦場では常に前面へと出て仲間を守る。



【マスター】
來野 巽@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ

【マスターとしての願い】
聖杯戦争を止める

【能力・技能】
魔眼
 見ることにより対象となった生物のあらゆる動きを停止させる能力
 サーヴァントや極めて高位の魔術師などには無効である。

【人物背景】
1991年の東京で行われた聖杯戦争のマスターの一人。
世田谷の都立高校に通う高校2年生。成績も運動も中くらいの平凡な存在。
母方の祖先が魔術師なため魔術回路を保有している。
聖杯戦争を知る前からの参戦。


171 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/02(火) 22:31:06 zwdZnrhw0
投下を終了します。感想は延長して申し訳ありませんが、まとめてしようと思います。
また、オープニングは残り二つほど投下を予定しております。


172 : ◆lb.YEGOV.. :2016/02/02(火) 23:26:47 FqYycA7M0
投下お疲れ様です。
キャスターペア投下します。


173 : 市原仁奈&キャスター ◆lb.YEGOV.. :2016/02/02(火) 23:27:57 FqYycA7M0

少女は孤独だった。
海外から滅多に帰らない父と、仕事に追われ自身を省みない母親。
生きるため、養っていくためと納得するには齢8にしか満たない少女はあまりにも幼い。
それでも、彼女は聡明な方だったろう。
親の言いつけを守り、夜には買い与えられたコンビニのご飯を文句も言わず食し、祝い事の日に祝われずとも不平不満を呟く事はなかった。
親にとって、なんて都合のいい子供だろうか。
社会にとって、なんて哀れむべき子供だろうか。
そんな彼女の母親が、急に少女を連れて出かけると言った。
一緒に出かけたのがどれくらい前だったかはわからないが、久々のお出かけに彼女は心を踊らせた。

「どこへいきやがりますか?」

そう訊ねる少女に向けて、母親はにっこりと微笑んだ。

「アイドル事務所よ、これから仁奈をアイドルにしてもらうの」

アイドルと言われてもピンとは来ない。
仁奈はアイドルがどういうものなのかは知らなかった。
そんなものになるよりも一緒にいる時間を増やしてほしいと思うが、口には出さない。
我が儘を言えば怒られる。
怒られるのは痛くて怖いから黙っている。
8年の人生で彼女が得た経験だった。

ただ、アイドルというものになれば母親は喜んでくれるのだろうという漠然とした予感はあった。
母親は喜んでくれれば優しくしてくれる。
キグルミを来てる時などはそれが顕著だった。
ならば気は進まなくともアイドルというものになってもいいかもしれないと仁奈は考える。
着いた先はまるでお城の様なところだった。
ここで自分はアイドルにしてもらえる。
もっとママに喜んでもらえるのだと、輝かしい未来に心が浮かれる。

だが、浮かれていられたのはここまでだった。
受付で母親が口論をしている。
"すぐ会えないとはどういうことだ""こちらは僅かな時間を押して来ているのに"と、受付の人間に食ってかかる母親を仁奈は不安げに見上げる。
平謝りする受付に舌打ちを1つすると母親は仁奈の手を引っ張り、受付に連れられて応接室へと向かう。

こちらでお待ちください、と機械的な対応をし、受付が去っていく。
窓を閉める間際に、仁奈へと向けられた気の毒そうな視線が彼女の心へと突き刺さった。
重い沈黙。
不機嫌さを隠そうともしない母親に対し、仁奈は何も話しかけない。
今の母親に何かを言ったとしてもロクな結果を生まないことを経験が知っていた。

不意に、勢いよく母親が立ち上がった。
何事かと戸惑う仁奈の手を勢いよく引き、扉を開いて部屋を出る。
不味いのではないかと伝えようとした仁奈の口が、母親の冷たい視線で封じられる。
びくりと震え、仁奈は押し黙って母親に従う。それ以外に出来る事はなかった。

やがて1つの部屋のドアの前に止まる。
漢字だらけで仁奈にはよくわからなかったが、母親は"ここね"と一言口にして、扉を開ける。
部屋の中は無人、勝手に人の部屋に入るのは悪いことだと仁奈は理解していたが、剣呑な雰囲気を放つ母親を恐れ、指摘する事が出来なかった。
仁奈を椅子に座らせ、優しく両手を仁奈の肩にかけて母親が微笑みかける。いつも浮かべる笑顔だった。


174 : 市原仁奈&キャスター ◆lb.YEGOV.. :2016/02/02(火) 23:28:41 FqYycA7M0

「ママね、お仕事があるからそろそろ行かなくちゃいけないの」

その言葉に、反射的に"え?"と声を出す。
予想外だった。ここまで一緒に出かけたのだから、今日は一日休みをとり、一緒に家に帰るものだとばかり思っていたのだ。
そんな仁奈の言葉と表情を笑顔で無視し、母親は続ける。

「今からここに偉い人が来るの、その人が仁奈をアイドルにしてくれるわ。だから、必ずアイドルにしてもらってから帰ってきなさい、いいわね?」

仁奈の肩に置かれた手にギュッと力が籠る。
仁奈に何かを言い聞かせる時にいつも母親がやっている事だった。
断ればどうなるかを知っている仁奈はにべもなく首を縦に振る。

「わかりやがりました!任せてくだせー!」

虚勢で作り上げた笑顔を浮かべる。
それに気付いているのか、気付いていないのか、母親はうんうん、と頷き、仁奈を置き去りに扉を出た。
そして見知らぬ部屋に一人ぼっち。
ぎゅっ、と着ていた着ぐるみを仁奈は強く握りしめる。
アイドルになりたいという気持ちはすっかり萎れ、早くここから帰りたいと思うものの、言いつけを破ってアイドルになれなかった場合の母親の態度を想像すると恐くて動く事が出来なかった。
涙が出そうになった両目をキグルミをまとった腕でガシガシと乱暴に擦る。
待ってる内に孤独と気疲れからか、急激な睡魔が襲ってきた。
起きていなければと心の片隅で思うのだが、疲労がそれを許さない。
しだいに微睡む意識の中で"おぎゃあああ"と赤子のような、それでいて恐ろしげな鳴き声を聞いた気がした。

その日、一人の少女が行方不明になった。
少女の母親は最後に少女を預けた芸能事務所、美城プロダクションを糾弾したが、8歳の幼女を置き去りにした事が明るみに出たことを皮切りに、次々と彼女が娘にしてきた事が顕になり非難を浴びた。
そこから先、母親がどうなったかは語る必要もないだろう。

聖杯を奪う殺し合いの舞台に、気づけば仁奈はいた。
ある時、出掛けた折に見た美城プロダクションが、現実の世界で最後に体験した記憶を思い出させたのだ。
急に現れた痣に怯え、なにがなんだかわからず、逃げ帰るように戻った家には一人の女がいた。

「私はキャスターのサーヴァント、あなたが私のマスターかしら?」

にっこりと、母親と同じ笑みを浮かべる女だった。


175 : 市原仁奈&キャスター ◆lb.YEGOV.. :2016/02/02(火) 23:29:18 FqYycA7M0

それから仁奈は色々な事を聞いた。
曰く、これは願いを叶えるゲーム。
サーヴァントというパートナーと一緒に勝ち抜いた最後の一人はどんな願いでも叶えてもらえる。
怪我をしたりする可能性はあるが、負けた人は元の世界に帰るだけでそこまで危ない催しではないこと。
参加する人間は聖杯が選び、この会場に招待されるということ。

「仁奈は、選ばれたでごぜーますか?」
「ええ、仁奈ちゃんに叶えたいお願いがあったから、聖杯が仁奈ちゃんにチャンスをプレゼントしてくれたのよ」

叶えたい願い。
その言葉に仁奈の表情が沈む。
願いは、ある。
だが、それをパートナーとはいえ知り合ったばかりの相手に口に出していいものか。

「仁奈ちゃん」

優しく、キャスターは仁奈の小さな手に自分の手を重ねる。
ハッとする仁奈にキャスターは優しく微笑みながら続ける。

「叶えたい願いがあるなら、言って構わないのよ?
お姉さんはね、仁奈ちゃんのお陰で大切な人とまた会えるかもしれないチャンスを貰ったの。
だから、できるなら仁奈ちゃんのお願いも叶えてあげたいと思うわ」

そう言って、慈しむようにキャスターが仁奈の手を両手で包む。
母親とは違う、とても優しい握りかただった。
ぐらり、と仁奈の心が揺れる。
孤独な少女が誰にも打ち明けられずにいたその感情が、優しい言葉を受けて沸き上がる。

「仁奈、仁奈、は……」

堪えきれず言葉が溢れる。
それが決め手だったのだろう。
堰を切ったのかように感情が止められなくなっていく。

「ママにいつも一緒にいてもらいてーです」

溢れる感情は言葉だけでは収まりきらず、涙となって表出する。

「パパにお家に帰ってきやがってほしーです。ママの作ったご飯が食いてーです。お休みの日には一緒にお出かけがしてーです。誕生日の日には"おめでとう"ってお祝いしてもらいてーです。仁奈は……仁奈は……」

そこから先は言葉に出なかった。
ぐしゅぐしゅとしゃくりをあげて泣く事しか出来なかった。
ずっと押し殺してきた自分の感情に任せ、仁奈はただ泣いていた。
不意に、暖かいものが仁奈を包んだ。

「そう、大変だったのね」

柔らかく、暖かな感触と、自分の頭の上から聞こえる優しげな声。
それで仁奈は自分が抱き締められているのだという事に気が付いた。

「は、離れてくだせー!お洋服がよごれちまいます!」
「気にしなくていいわ」

慌てて離れようとする仁奈だがより強い力で引き留められる。

「辛かったのね」

優しく背を叩かれながら聞いたその言葉に、驚きで一瞬引いた感情がまた沸き上がってくる。
とめどなく溢れでる涙に呼応するように嗚咽が漏れ始める。
大声で泣いたのはいつぶりだったろうか。
キャスターに抱き締められ仁奈はひたすらに涙を流す。
嬉しさと悲しさがごちゃ混ぜになった感情が涙と声に形を変えて尽きることなく流れ出してくる。

「今は好きなだけ泣きなさい。ここにいるのはお姉さんだけ、誰も何も言わないわ」

どこまでも優しげな声でキャスターが囁く。
服が汚れるのも構わず仁奈を抱き寄せ、あやすように慰める彼女の浮かべる表情はどこまでも……


176 : 市原仁奈&キャスター ◆lb.YEGOV.. :2016/02/02(火) 23:29:45 FqYycA7M0



陰惨なものだった。


177 : 市原仁奈&キャスター ◆lb.YEGOV.. :2016/02/02(火) 23:30:19 FqYycA7M0

仁奈がその顔を見ることがないのは幸かそれとも不幸か。
それは獣のような笑みと形容するのが相応しい笑顔であり、キャスターという反英霊の本性を表すに相応しい笑顔だった。

女の名は斗和子といった。
陰の気より産まれた大化生、白面の者の尾の一本にして、敵対する光覇明宗と獣の槍の伝承者を策謀をもってあと一歩の所まで追い込んだ奸知に長けた化け物。
自分に抱き締められ涙を流す少女に人知れずほくそ笑む。
これで、この幼きマスターは自分を信頼するだろう。かつて、自分が作り出し、手駒とした少年のように。

(ああ、それにしてもとてもいい陰の気ね。この年でここまで溜め込むだなんて、どれだけ素敵な環境だったのかしら)

キャスターには1つの固有スキルがあった。
かつて、人や妖の恐怖や怒りを自身の糧とし、自身が取りついた男から溢れだす憎しみを取り込んだ、主である白面の者の逸話から生じたスキル。
それは他者から自己へ向けられた負の感情、あるいはマスターの抱く負の感情を自身の魔力へと変換するものだった。
8年の歳月で溜め込んだ仁奈の負の感情を受けて、キャスターは自身の魔力が充足されていくのを感じると同時に、このような幼子がここまでの感情を抱くまでに育て上げた愚かな親に嘲笑を浮かべる。
そうして、仁奈が来るまでにこの家で魂を食らった女性、即ち仁奈の母親を模したNPCを思い出す。
不幸にも仁奈が聖杯戦争の資格を得た時と同じくして、彼女はたまたま家におり、召喚されたキャスターと居合わせてしまったのだ。
キャスターの顔が喜悦に歪む。
この聖杯戦争において、もう己がマスターは母親に会うことはない。
捨てられたと思うだろうか。
何か事件に巻き込まれたと思うだろうか。
どちらにしろ、その心により負の感情を溜め込んでいくだろう。
それが愉しくて堪らない。

(一緒に願いを叶えましょうね、仁奈ちゃん。私の願いが叶えられたなら、あなたの家族を真っ先に御方様に会わせてあげるから)

泣き声をBGMに女が嗤う。
泣きはらす少女がその笑顔に気づくことは、ついぞなかった。


178 : 市原仁奈&キャスター ◆lb.YEGOV.. :2016/02/02(火) 23:30:42 FqYycA7M0
【クラス】
キャスター
【真名】
斗和子@うしおととら
【属性】
混沌・悪
【ステータス】
筋(D)C 耐(D)B 敏(D)C 魔A 運C 宝B
※()内は変化適応中の能力値
【クラススキル】
陣地作成:B
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
"工房"の形成が可能

道具作成:B
魔術を帯びた器具を作成できる。
戦闘用のゴーレムやホムンクルス、魔力を通す事でサーヴァントへの攻撃が可能になるエレザールの鎌が作成可能。

【固有スキル】
妖術:A
極めて高度な妖術の使い手である。
特に変化や火に関する妖術に長ける他、尾から放つ棘が刺さった相手の運を除く各パラメータに-を付与する。

扇動:B+
話術を用いて他者を自分の思う通りに動かせるスキル。
陰の気に敏感なキャスターは相手の負の感情を利用しての扇動を行う場合、判定に有利な補正を得る

変化:C
人間体へとその姿を変える、人間に化けている際は筋力と耐久のランクを()のものに偽装する

力場反射:B
対城以上の宝具、あるいは同ランク以上の宗和の心得かそれに類するスキルの持ち主以外の、自分に向けられたありとあらゆる攻撃をその相手へと跳ね返す。
また属性や特性も相手へ向けて跳ね返されるので、結界による捕縛なども全てが術者へとその効果が向けられる事になる。

陰の化身:B
恨み、怒り、恐れ、悲しみ。
自身へと向けられた負の感情を常時、キャスターの魔力へと変換する。また、キャスターのマスターが抱く負の感情を魔力の代替えとして転用する。
陰の気から生まれた大妖の一尾であるキャスターにとって、彼女に向けられる負の感情はその力の源にしかならない。

【宝具】
『眩まし偽る虫怪の尾(くらぎ)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大捕捉:60
白面の者の尾の一つであるくらぎと融合する。筋と敏のランクをBに変更し、変化と扇動をスキルから削除する。
この状態のキャスターを他者が視認した場合、クラス名は???になり、素性は完全に隠ぺいされる。
この宝具が破壊された場合に限り、キャスターは無傷で戦闘から離脱する代わりにこの宝具を戦争中は二度と使用できなくなる。

【Weapon】
妖術、尾による刺突と礫の射出

【人物背景】
大妖、白面の者の尾が変じた妖怪。人の心の弱みに付け入り策謀と暗躍を得意とする。
天敵である獣の槍を破壊する為、槍を管理する光覇明宗を破門された僧に取り入り、内乱を起こす事で獣の槍破壊を画策する。
自身の作り出したマテリア、引狭キリオともう一つの白面の分身であるくらぎを使い、光覇明宗を二分する事には成功したが、獣の槍伝承者である蒼月潮らの手により計画は水泡に帰した。
最後は自身が裏切ったキリオの手によって塵と消える。その間際まで虚偽を口にしながら

【サーヴァントとしての願い】
白面の者を蘇らせる


179 : 市原仁奈&キャスター ◆lb.YEGOV.. :2016/02/02(火) 23:31:40 FqYycA7M0
【方針】
仁奈と共に優勝を狙う。当分は陣地で戦力の増強

【マスター】
市原仁奈@アイドルマスター シンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
家族と仲良く暮らしたい

【weapon】
なし

【能力・技能】
なし

【人物背景】
変わった口調が特徴的で着ぐるみが大好きな美城プロ所属のアイドル
……になれた筈の少女。
プロデューサーと会う前に聖杯戦争へと招聘される。
アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージにて母親にプロダクション内に置き去りにされるという衝撃の加入エピソードが明かされた。
本作では加入エピソードを過大解釈しているので、本来の彼女の母親がここまで酷いということはないだろう、多分、きっと。

【方針】
キャスターのおねえさんと一緒に優勝を目指すですよ
※キャスターからは負けても元の世界帰れると教えられています。


180 : ◆lb.YEGOV.. :2016/02/02(火) 23:32:18 FqYycA7M0
以上で投下を終了いたします。


181 : ◆TQfDOEK7YU :2016/02/02(火) 23:32:44 c/5ZBYiU0
皆さん投下お疲れ様です。
自分も投下します


182 : 灼熱の風 ◆TQfDOEK7YU :2016/02/02(火) 23:33:53 c/5ZBYiU0



「――黒より昏く 闇より黒き漆黒に 我が真紅の混光を望み給う」


 蒼と黒の相反する二色彩が混合した、混沌の光が莫大な魔力を伴ってただ一点に収束していく。
 路傍に重なる粉塵は巻き上げられ、台風のそれよりなお激しい暴風が吹き荒れる様は、あたかも世界が悲鳴をあげているようでさえあった。
 汐華初流乃少年とて、この世に産声をあげてからこれまでの間に何度もハリウッド映画を見たことがある。
 魔法使いが箒で空を飛び、呪文で炎や雷を呼び出して、美しいオーロラを背景に戦い合う姿は否応なしに見る者の心を踊らせる。若き日の初流乃も例に漏れずそうだった。
 しかしこれは演出の賜物が作り出す銀幕の世界ではなく、れっきとした現実で起こっている現象だ。
 

「覚醒の刻来たれり、無謬の境界に堕ちし理――無形の歪みとなりて現出せよ!」


 この世のどんな技術を結集させ、どれだけ時間をかけて撮った映画でも、所詮それはスクリーンを隔てた虚構。
 本物の迫力と圧倒的なプレッシャーとは、到底作り物風情が辿り着ける域ではないのだと初流乃は理解した。
 禍々しく、同時に雄々しく、美しくすらある光がうねりをあげ、壮絶な音色と共に集ってゆく。
 初流乃は、この時ばかりは己の幸運に感謝した。
 この力を意のままに操る者の『背後』に自分がいることに――自分がこれを放たれる側でないことに、胸を撫で下ろさずにはいられなかった。
 汐華初流乃ほどの男をしてそう思わせるほどに、それは絶対的な力の結集であった。


「踊れ、踊れ、踊れ――! 我が力の奔流に望むは崩壊なり、並ぶ者なき崩壊なり!
 万象等しく灰燼に帰し、深淵より来たれッ」


 悪逆を尽くした敵は、情けない声を上げて全速力で踵を返して走り出す。
 少しでも、ほんの少しでも、これから起こる破壊から離れるために足を動かす。
 全てが遅いと悟っていながら、ほんの僅かな望みに全てを懸けて、無駄と分かっている足掻きへ走る。
 きっと、この憐れな敵を従者と使役している主人も、水晶玉の向こうで絶望していることだろう。


183 : 灼熱の風 ◆TQfDOEK7YU :2016/02/02(火) 23:34:46 c/5ZBYiU0

 戦いを挑む相手を間違えたと、最早取り返しの付かない失敗に嘆きながら、刻一刻と訪れる炸裂の瞬間を眺めていることしか出来ない。
 暗殺者(アサシン)が――走りながら、振り向いた。
 その顔は瞬く間に、より色濃い絶望へと彩られる。

「……あんたのつまらない願いの為に踏み台にされた者達の痛みを、少しは思い知るんだな」

 初流乃の声に同情の色は一切ない。
 彼は目の前の光景に驚愕し、目を奪われながらも、悪を許さないその一点は貫徹していた。
 もしも彼がつまらない情や口先で丸め込まれるお人好しだったなら、ひょっとするとこれから起こる大破壊も未遂に終わり、暗殺者が奇跡の座に辿り着く未来もあったのかもしれない。
 けれど暗殺者の英霊は致命的な過ちを犯した。
 たとえ虚構の人間とはいえ、汐華初流乃の目前で、罪のない一個の家庭を踏み躙り、虐殺してしまった。
 そして暗殺者には、「殺す」覚悟はあったが――逆に「殺されるかもしれない」危険への覚悟はなかった。
 ただそれだけのこと。それだけのことで、彼の聖杯戦争は幕を閉じる。


「これが人類最大の威力の攻撃手段。これこそが、究極の攻撃魔法」


 渦を巻いた魔力の奔流が――ただ一直線に。
 天から降り注ぐ神なる裁きとして、灼熱の柱へと姿を変えた。
 空を見上げて、目を見開いた暗殺者の顔は、最期の一瞬まで絶望の底にあり。
 

「『この素晴らしき世界に爆焔を(イクスプロージョン)』――――!!!!」


 さりとて、彼に一切の懺悔さえ残す暇を与えず。
 最大の熱量と、最高の威力で炎の鉄槌は降り注ぎ。
 暗殺者の体を焼き尽くし、霊核までも焼滅させ、存在全てを灼熱にて否定し――
 悪なる魂を文字通り粉砕して、英霊の座へと送り返した。


184 : 灼熱の風 ◆TQfDOEK7YU :2016/02/02(火) 23:35:21 c/5ZBYiU0



 汐華初流乃少年が、虚仮に彩られた日々を認知したのはひょんな偶然からだった。
 
 それまで初流乃は、至って普通の学生として暮らしを送っていた。
 毎朝起きて学校へ行き、授業を受けて、部活には入っていないので六時間目の終了と共に校門を出る。
 そんな日常を繰り返す。良く言えば平穏、悪く言えば惰性で流れる日々。
 飢えと乾きを胸に過ごす中、初流乃はある時――ふと、本物の記憶を取り戻した。

 きっかけが何であったかと問われれば、日々の全て、と返すしかない。
 初流乃が偽りの日々の中で常々抱いていた感情は、飢えであり、渇きだった。
 愛すべき平和である筈なのに、どこかに物足りないと感じている自分がいる。
 より正確に言えば、これでいいのかと、そんな問いかけを重ねてくる自分がいる。
 鬱屈ともまた違った感情を胸に抱いたまま過ぎる時間の中、遂に汐華初流乃は『夢』から――いや。

 『夢』から『覚める』のではなく。
 『夢』に、『目覚めた』。

 ギャング・スターになるという夢。
 スタンド使いとして、イタリアンギャング『パッショーネ』へ所属した記憶。
 ブローノ・ブチャラティを筆頭とした同僚たちとの劇的な出会いと、数多くの戦い。
 初流乃の夢は、その黄金の憧れは、聖杯などの小細工で見失ってしまうようなものでは決してなかったのだ。
 
 記憶を取り戻してから、初流乃が聖杯戦争へと接触するまでは迅速だった。
 無論スタンド使いではあれども魔術師ではない以上、彼の聖杯戦争、ひいては聖杯そのものに対しての知識は皆無であったが、ギャングの世界に生きる者にとって争いの気配を感知することなど基礎技能の一つと言ってもいい。
 聖杯戦争の実態を何も知らないままで、彼はとある場面へ遭遇した。
 仲睦まじく町外れの公園で遊ぶ三人家族が、黒尽くめの暗殺者によって見るも無惨な肉塊へと変えられる瞬間に。
 それがつい十数分前の出来事。初流乃が暗殺者に対して取った行動は、交戦であった。

 しかし、暗殺者は彼の想像を遥かに上回る怪物だった。
 機動力、身のこなし、更には摩訶不思議な力も含めて、完全に初流乃の上を行っていた。
 それでも十分間以上食いついていたのは、流石に『とある男』の血を引き継ぐ才人故か。
 あわやこれまでかと思われたところで――


 『彼女』が現れた。
 絵本に描かれる魔法使いにそっくりな格好をした、背丈の小さい華奢な少女。
 片目を眼帯で覆い、これまた絵に描いたようにファンタジックな杖を片手に。
 キャスターのサーヴァントを名乗る――聖杯戦争参加者・汐華初流乃の英霊(パートナー)が現界したのだ。


185 : 灼熱の風 ◆TQfDOEK7YU :2016/02/02(火) 23:35:45 c/5ZBYiU0


 後の展開は、御存知の通り。
 キャスターの発動した莫大な力は、公園の景色を一変させるのを代償に、悪なる殺し屋を一撃で焼き払った。
 聖杯戦争における初めての戦いに、こうして初流乃は劇的な勝利を収めたのであったが。

 初流乃達は戦いが終わるや否や、人が集まってくる前に近くの路地裏へと退避を決めた。
 あの一撃は文字通り壮絶なものだったが、音といい見た目といい、あまりにも目立ちすぎる。
 人が周囲へ居ないことを確認してからでなければ、迂闊に使わせる訳にはいかない力。
 初流乃は肌寒い空気の立ち込める裏路地で、キャスターから今起こっていることについての説明を受けながら、彼女の能力についてそう纏めた。
 それから、説明された内容に対して思考を向ける。
 
「キャスター。僕は、聖杯戦争を……聖杯を『破壊』しようと思う」

 聖杯戦争。
 英霊の座より呼び出した英傑を手駒として使役し、この街を舞台に殺し合いを行い、最後まで生き残った者には願いを叶える権利が与えられるという悪趣味極まりない趣向。
 初流乃はそれに、素直に嫌悪感を覚えた。
 誰が仕組んだのかは知らないが、これに乗って願いを叶えるなど、考えただけで背筋に鳥肌が立つ。
 そのくらいには、聖杯戦争という儀式は彼にとって『邪悪』に写った。
 だから――取るべき行動は決まっている。
 たとえそれが、サーヴァントにとっては看過できないだろうものであろうとも。

「なるほど。それもまた一つなのではないでしょうか」
「……あなたは、聖杯にかける願いがないと?」
「そりゃ無いわけじゃないですよ。人並みに色々、叶えたい願いごとはあります。
 ただ……別にそこまでして叶えようとは思わないといいますか。やり過ぎといいますか」

 要は、キャスターは願いを叶える手段のあまりの物騒さに若干引いているようだった。
 歴戦の英傑とするにはやや庶民的な反応だったが、初流乃にとっては都合がいい。
 聖杯の破壊。それに伴う、聖杯戦争という儀式そのものの打ち止め。
 彼女とならば、その目的を滞りなく果たすことが出来そうだ。
 ……ただ。一つだけ、気になることがある。

「もう一つだけ。
 ……どうして、あなたまで動けなくなっているんです?」

 サーヴァントを撃破した後、キャスターは初流乃の前で俯せに倒れ臥してしまったのだ。
 どうやらろくに動くことも出来ないようだったので、彼が彼女を背負ってここまで運んできた。
 確かにあれだけの威力の攻撃――宝具を放ったのだから、反動はあって然るべきかもしれない。
 初流乃はキャスターの口から、そういう答えが返ってくるのだろうと思っていた。

「爆裂魔法は絶大な威力と引き換えに、消費魔力もまた絶大なので……」
「なるほど。あなたの宝具はその消費魔力量故に、発動後暫くは行動不能になってしまう……と。
 だったら、使い所は考えた方が良いでしょうね。通常時は他の技で――」
「あ、それは無理です」
「なに?」


186 : 灼熱の風 ◆TQfDOEK7YU :2016/02/02(火) 23:36:27 c/5ZBYiU0

 背負われたまま、どこかぐったりとしてキャスターは続ける。
 
「私、爆裂魔法以外の魔法は一切使えないので。あとちなみに、爆裂魔法の目安は一日一発です」
「……キャスタークラスとは、魔術の扱いに手慣れた英霊が当て嵌められるもの――と聞いた筈ですが……」
「失礼な。我が爆裂魔法は最強の魔法と名高い、とても尊く素晴らしいもので……云々かんぬん斯く斯く然々」

 爆裂魔法の素晴らしさについて延々と語る背中の少女を尻目に、初流乃は小さく溜息をついた。
 初対面にも等しい相手にこんなことを言うのは失礼だが、彼女はサーヴァントとしては明らかに『外れ』だ。
 超絶級の火力こそあるものの、それ以外は軒並み自分の方が優っているのではないだろうか。
 聖杯戦争をどうこうしようと思うなら、早い内に同盟相手を――同じ志を持つ仲間を確保して、戦力面を増強する必要があるに違いない。
 ……というか、これで前線に出ようと思えば間違いなく詰む。

「そういえば、そちらの名前を聞いてませんでした。私ことキャスターの真名はめぐみんといいます。
 食費と雑費その他諸々込みでアークプリーストの力を拝領できる超絶優良物件ですよ、よかったですね」
「僕は――」

 汐華初流乃、と。
 そう名乗ろうとして、「いや」と否定する。
 この世界を生きる汐華初流乃は、夢に目覚めると共に消えた。
 そう、彼女へ名乗るべき名前は――

「ジョルノ・ジョバァーナ。ジョルノ、とお呼びください」

 やはり、これが一番しっくり来る。



【クラス】
キャスター

【真名】
めぐみん@この素晴らしい世界に祝福を!

【パラメーター】
筋力:D 耐久力:E 敏捷:E 魔力:A+ 幸運:A 宝具:A

【属性】
中立・善

【クラススキル】
陣地作成:-
できないし、できたとしてもやらない。

道具作成:-
できないし、できたとしてもやらない。


187 : 灼熱の風 ◆TQfDOEK7YU :2016/02/02(火) 23:37:00 c/5ZBYiU0

【保有スキル】
アークウィザード:A-
冒険者としての彼女の職業。
上級職であるため、余程の事情でもない限りは所属パーティーのアテには困らない。
彼女は一つの世界で最強と称された魔法の担い手であるためこのランクだが、後述するとある事情によってマイナス表記が足されている。

紅魔族:A
生まれながらに高い魔法使い適性を持つ一族の出身者。
ちなみに彼女の痛々しい言動とネーミングセンスは、この一族に共通して受け継がれるものらしい。

【宝具】

『この素晴らしい世界に爆焔を(イクスプロージョン)』
ランク:A 種別:対軍 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
キャスターが行使できる唯一の魔法にして、彼女がその生涯を通して愛し続けた究極の宝具。
めぐみんオリジナルの詠唱の後に、上空から猛烈な火力の大爆炎を降り注がせる。
その威力は凄まじく、地形すら容易く変えてしまい、接近されれば自分も仲間も巻き込んでしまうため使えないという弱点が存在するほどの規模と破壊力。
――但し。この宝具は猛烈な威力と引き換えにとんでもなく燃費の悪い代物で、マスターへの負担こそ少ないものの、一度使用すればキャスターは全ての魔力を使い尽くして当分まともに動けなくなり、使用限度は一日一回と扱いにくいなんてものではない。
一応令呪二画を消費することで掟破りの二発目を撃たせることも可能だが、その行為が持つリスクを鑑みれば現実的とは言い難いだろう(ちなみにキャスターは後のことなど考えずに大はしゃぎする)。
元々超威力の魔法であったが、「一つの世界の魔法体系にて最強と呼ばれている」ことから聖杯戦争では更に補正がかかり、元世界での威力より更に上の破壊を実現可能である。

【weapon】


【人物背景】
爆裂魔法をこよなく愛する、紅魔族のアークプリースト。
本来何をどう間違っても英霊になれるような人物ではないが、爆裂魔法しか使わない(正しくは使えない)という生き様がどこかで湾曲されて伝わった結果、英霊の座に召し上げられたらしい。

【運用方法・戦術】
めぐみんはキャスターだが、先も言ったように宝具『この素晴らしき世界に爆焔を』以外のあらゆる魔術を使わないしそれ以前に使えないので、燃費の悪さも相俟って役に立つ場面は相当限られる。というか、多分マスターのジョルノが戦った方が圧倒的に強い。
ステータスもご多分に漏れず低いため、なるべく表に出さない方が無難だろう。
ただし幸運値だけはそこそこ高いので、案外なるようになるかもしれない。


【マスター】
ジョルノ・ジョバァーナ@ジョジョの奇妙な冒険 Part5 黄金の風

【マスターとしての願い】
聖杯戦争の破壊

【能力・技能】
スタンド能力『ゴールド・エクスペリエンス』
テントウムシをモチーフにした人型の近距離パワー型のスタンドで、殴るか触れるかした物質に生命を与え、地球上に存在する動物や植物に変える能力を持つ。
この能力で生まれた命は、ジョルノの意思で成長や死が自在であり、瞬時に生み出したり時間差で遅く生み出したりすることができ、命を失うと再び元の物体に戻る。また、持ち主のところへ戻っていく習性がある。
元々生命を持っているものに対してこの能力を使い、生命エネルギーを与え続けることで老化を加速させ一気にその命を終わらせるという芸当も可能。ただし、生命が物理的に生育しえない環境下では物体に生命エネルギーを与えても物体は生物へと変化しない。
この能力を応用し、人体の部品を生成して負傷した箇所に移植、外傷の治療を行うこともできるが、あくまで「治す」能力ではないため、治療には痛みが伴う他、瀕死の者は治療しても助からないことがある。

【人物背景】
ギャング・スターを目指す少年。かつて世界に大いなる野望を広げんと目論んだ、邪悪の化身の息子。
勇敢で正義感が強く、咄嗟の機転と行動力を持ち合わせる。常に冷静沈着で、仲間であっても丁寧に接し、物静かで感情的になることはほとんどない。しかし一度怒りを見せると徹底して容赦せず、報復を貫徹する。
参戦時期は少なくとも、ブチャラティ達と出会った以降ではあるようだ。

【方針】
聖杯戦争は『邪悪な儀式』なので叩き潰す。
それはそれとしてサーヴァントがひどすぎるので、志を同じくする同盟相手を確保したい


188 : ◆TQfDOEK7YU :2016/02/02(火) 23:37:10 c/5ZBYiU0
投下を終了します


189 : ◆.wDX6sjxsc :2016/02/02(火) 23:43:28 zsYcwG6I0
投下します


190 : ◆.wDX6sjxsc :2016/02/02(火) 23:45:06 zsYcwG6I0

◆ ◆ ◆ ◆



―――選んだ色で塗った世界に囲まれて、選べない傷の意味はどこだろう?



◆ ◆ ◆ ◆


191 : 高嶺清麿&ランサー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/02(火) 23:46:31 zsYcwG6I0

「朝か…今日は何しようか…」

怠惰な態度を隠そうともせず、少年高嶺清麿は朝日を浴びながら見慣れない天井を見つめていた。
少年にとって世界とは鬱陶しく、息苦しい物でしかなかった。
元いた世界も。
この場所ですら。
有無を言わせず自分を拉致し、慣れない一人暮らしを強制する。
そのくせ、周囲の環境だけは少年の元いた世界をなぞる様に、低レベルな人間で溢れていた。

――――ちっ、なんだよあいつ。

――――久々に来たと思ったらまたイヤミな事やりがってよ。

――――頭いいのは分かったから、他の学校にでも行っちまえよ鬱陶しい。

――――頭悪い俺達を見下して、優越感にそんなに浸りてーのかよ。


少年は孤独であり、孤立無援であり孤高だった。
だから、不登校を繰り返す。少年の元居た場所と何も変わらない。
いくら休んだところで、自分の頭脳なら進学などどうにでもなる。
所詮は義務教育だ。


それよりも目下重要なのは―――.
枕元にあったリモコンを取り、テレビに光を燈す。
電波と言う名の命令を吹き込まれたテレビには、この法治国家たる日本の首都東京で大虐殺を繰り広げた殺人鬼の話題で持ちきりだった。


「………」


無言で、しかし食入る様にテレビを凝視する。
戦争をしている訳ではないのだ、こんな事はありえない。
レポーターはテロリスト説を推しているが何の声明も出していない以上、その線も薄い。
当然であるが三ケタの人間を通り魔程度が一日で殺傷するのは非常に困難である。
それこそ、超強力な爆弾でもない限り――――


192 : 高嶺清麿&ランサー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/02(火) 23:47:20 zsYcwG6I0


チッチッチッチ、おっぱ〜い!ボイン!ボイン〜!(ぼいん!ぼい〜ん!)


その天才と称賛される頭脳をフル回転させ、推理の旋律を奏でようとした矢先に何もかもぶち壊しにするメロディーが怒涛の様に流れ込んできた。
出鼻を挫かれる所ではない。
どうやらタイミングよくCMに入ったらしい。TVを理不尽に睨みつけると情け容赦なく電源を落とす。
そして、体を再び寝かせ、手の甲に刻まれた奇妙な紋様を検分し、首だけを横に曲げた。

犯人など分かっている。考察などするまでもない。
問題はどのバカがやらかしたかだ。



「で、あれはどのクラスのサーヴァントがやった事なんだ。クラウス…いや、ランサー」
「やり口から見て。バーサーカーのクラスで間違いないかと」


見つめるキッチンの奥には紳士然とした男が立っていた。
否、確かに物腰や立ち振る舞いは紳士だが、その容貌は一言で形容するならば鬼だった。
あるいは紅き狼と言った所か。
見据えられるとそれだけで少々肝が冷える。

「飲みますか?」

ランサー…クラウスと呼ばれた男はキッチンから出るとずい、とほのかに湯気の立つコーヒーを差し出してきた。
何時ものように、不味かったら嫌味を言ってやろうという捻くれた考えをしながら口をつけ啜る。

「……うまい」

その感想にぶんぶんと頷き、男は嬉しそうな様子を見せた。
表情は無表情だが、仕草まで心なしか犬っぽい。
結局、俺が飲み終わるまでじっとどこかの銅像の犬の様に自分を待っていた。

「……飲み終わったら、始めましょう」

まただ、と清麿は思った。
自分が記憶を取り戻してからと言うもの、こいつは毎日自分にプロスフェアーと言うゲームを挑んでくる。
それもきっかり3時間。

様は、チェスと将棋を複合させたようなゲームだ。
最も、盤が常に縦横無尽に動き回るので複雑さははるかに増すが。
最初は、ルールを掴みながらとはいえ、自分が負けるはずがないと思っていた。
事実、清麿はそういった類のゲームで負けた事がなかったのである。
しかし、彼の予想とは裏腹に、とても三時間でランサーを敗北させることはできなかった。


最初は梃子でも動かないと言った様子の此奴に根負けした体だったが、
清麿は気づけばここ数日毎日このゲームに興じていた。
一応、聖杯戦争についての情報を引き出すのも兼ねていたのだが。
だが、


193 : 高嶺清麿&ランサー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/02(火) 23:48:25 zsYcwG6I0

「―――対局は今日までにして頂きたい。マスター」
「何?」

清麿は顔を顰めた。
こいつは無類のプロスフェアーフリークでそもそもプロスフェアーの勝負を挑んできたのは此奴だ。
その事が不快なだけであって、決して此奴との対局を楽しみにしていた訳ではない。
確かに、MITの主席論文を読むより、よほど自分歯ごたえがあったのは確かなのだが。


「これよりこの地は死地となります。私も、同志たちもそれに備えねばならない」


その言葉に、清麿の表情が緊迫したものに変わる。
プロスフェアーの「宣誓」をしながら、クラウスに問いを投げる。

「俺は、聖杯なんてものに願う事なんて無い。みすみす死ぬつもりもないけどな
 ……お前はそれでいいのか?」

クラウスは首を縦に振り、肯定の意思を示した。
自分も、願いがあってここに召喚されたのではない、と短く語り、続ける。

「マスター、貴公はただ巻き込まれただけだ。闘争の渦中にいるべきではない人間だ。
貴公の安全は我々ライブラが保障する」

眼鏡の奥から凛とした男の瞳が覗く。
その一瞬の瞳の邂逅は、男の生き様がどれだけ頑固で強靭なものであるか、如実に語っていた。
底の見えぬ修羅の道を歩んできた者の雰囲気を前にして清麿はしばし言葉に詰まる。
すると、口を噤んだ分神経は視界に裂かれ、クラウスの隣に女が立っているのに気付いた。

「ボス、不審な人物は今のところ見られません」
「うむ、ご苦労だチェイン」

クラウスが労いの言葉をかけると同時にチェインと呼ばれた豊満な胸の女の姿が“希釈”されていく。
じっと見つめていたはずなのに、いつの間にか風景に融けるように見えなくなっていった。
清麿はそれだけで理解した。

この女も目の前のランサーやあの惨事を起こした者と同じ“モノ“だと。


194 : 高嶺清麿&ランサー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/02(火) 23:49:26 zsYcwG6I0

「今の女は?」
「私の宝具であり、同志です。今は完全な発動はできませんが」

同志と来たか。
清麿は心中で毒づいた。
本当に、忌々しいほどに頼もしいものだ。
聖杯戦争と言う暴威に他の人間が晒されるなか、自分だけがこんな頼もしい存在に守られている。
人によっては、後ろめたく感じるかもしれないが…今の清麿はまったくそんな事は感じなかった。


(そうだ、生き残れりゃそれでいい。あんな馬鹿共がどうなった所で…)


――やっぱり高嶺君は天才だよ。


あの水野スズメはここにはいない。
お袋も、親父もだ。
見捨てて寝覚めが悪い人間はモチノキ町ではない東京にはいなかった。
正直願いなどこっちにはないし勝手に殺し合っていろ、と言いたいところだが、どうして生き残るために必要ならば他人を犠牲にすることに迷いはない。

そのはずだ。
問題は無い、何も。


「狂戦士(ベナルカントス)」


ダンッ!!と言う重い判を押したような音が響いた。
それとともに思考が遮られる。
盤上を見れば、魔王像のような駒が圧倒的な存在感を放っていた。
しまったと思うがもう遅い。
この駒を出されてしまえば、ここからはクラウスの攻勢が続くだろう。
このまま押し切られてしまうかもしれない。
しかし、圧倒的好機を前にしてクラウスは時計を一瞥する。


「ここから先のこの対局はこの戦いが終わってからにしましょう」
「!?」

その言葉に清麿は目を剥いた。
当然だ、舐められているとしか思えない。
時間を見ればまだ11時、あと一時間残っている。

「ふざけるな!あと一時間残ってるだろうが!」

圧倒的舐められる事への不慣れ。
そこから来る怒りから容赦のない清麿の糾弾が飛ぶ。
しかし、クラウスには寸毫の動揺も無い。

「いえ。私はその残された一時間を貴方のために使いたい」

「…何が言いたい」

自他共に天才と認める彼も流石に目の前の男の真意を測りかね、問いを投げる。
そして数秒後、訝しげだった眼は男の返答を聞いて見開かれた。


「聖杯戦争とは別に、私で力になれる事は無いだろうかという意味です。
 ―――友人として」


限界だ。
そう判断した清麿は盤から離れると、手早く身支度を済ませていく。


「どちらへ」

「周りは安全なんだろ。飯、食ってくる」

「しかし……!」


クラウスの制止を起器用に避けると、清麿はそのままワンルームマンションの扉へとスタスタと歩いていってしまう。
そして扉に手をかけ、クラウスを一瞥すると、

「迷惑なんだよ、そんな事義理で言われても。
第一、お前に俺の何が分かるってんだ」



そう言って、扉を閉めた。
心中で最悪の少し早い誕生日プレゼントだと吐き捨てながら。





――――全ては、彼が14歳の誕生日を迎える一週間前。
――――金色の少年が彼の運命を変える少し前のおはなし。


195 : 高嶺清麿&ランサー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/02(火) 23:50:12 zsYcwG6I0

◇ ◇ ◇ ◇


少々不味い事になった。
スティーブンの言うように、生前、人身の掌握と言うものにもっと心血を注ぐべきだったかもしれない。
だが、この安寧があとどれほど続くかはわからないのだ。
自分が呼ばれた以上、この世界の均衡を脅かす何かがこの都市にはある。

満ちつつある“異界”の空気。
自分の宝具の特性。

それらを考えれば、遅かれ早かれこの東京はHLと同じく異界(ビヨンド)と現世が交わる魔都へと変貌するだろう。
そうなる前に、彼とは信頼関係を築いておきたかった。
彼とはただのマスターではなく、同志として、友人として、同じプロスフェアープレイヤーとして接したかったのだ。
だが、自らの不徳で彼を反発させてしまった。
猛省し、これからも根気強く付き合っていく必要があるだろう。

自分としても、彼とのプロスフェアーの対局の決着は楽しみなのだから。
その未来を迎えるために、この聖杯戦争自体も調査する必要がある。
もし…世界の趨勢を危険にさらすものであるのならば、聖杯を破壊する必要もあるかもしれない。

加えて、TVに映っていた惨劇を引き起こしたサーヴァント。
完全に実力は未知数な相手。
HLではない、実力を”まだ“十全に出し切れない自分の業がどれほど通用するかは分からない。

だが、やるべきことは決まっている。
どれだけ人智を超えた存在が相手でも、人を、人界を護るのが“ライブラ”だ。

空気がわずかに変質し、クラウスの背後の背後に薄いシルエットが表れた。
シルエットだけでも性別、年齢、種族、そのどれもが多種多様であることが伺える。
不完全な現界だったが、彼にはそれがたまらなく誇らしい。
彼一人ではライブラはライブラ足りえないのだから。
息を深く吸い込み、魔封街結社のリーダーとして叫ぶ。


「征くぞ、同志達よ。手始めに―――
 世界を救うのだ!!」




――――――そして、世界と世界のゲームが始まる。


196 : 高嶺清麿&ランサー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/02(火) 23:50:53 zsYcwG6I0

【クラス】ランサー
【真名】クラウス・V・ラインヘルツ
【出典】血界戦線
【性別】男性
【属性】秩序・善

【パラメーター】
筋力:A 耐久:B 敏捷:B 魔力:C 幸運:B 宝具:A+

【クラススキル】
対魔力: A
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、現代の魔術師ではランサーに傷をつけられない。

【保有スキル】

滅獄の血:A
血液を自在に操る流派ブレングリード流の伝承者。
対吸血鬼において与える宝具のダメージがワンランク上がる。

プロスフェアー愛好家(ファン):A
99時間プロスフェアーと言う遊戯の対局を異界の重鎮とやりあった逸話から創られたスキル。
駒を使ったゲームをするときに幸運がワンランクアップする。

HL:B
彼が住んでいた異常が日常の街、ヘルサレムズロットの逸話がスキルになったもの。
異界の存在。異界の事件に日夜触れられているため精神耐性が付与され、同ランク以下の精神干渉をシャットアウトする。
本来ならA相当だが、よく胃に穴を開けそうになるランサー自身の繊細さからランクを下げてしまっている。


197 : 高嶺清麿&ランサー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/02(火) 23:52:33 zsYcwG6I0
【宝具】


『ブレングリード流血闘術』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:1000人
殴打、特に拳による近接肉弾戦を主体とした体術。「細胞レベルまで浸食してダメージを与える血液」を相手に送り込む事でダメージを与える。それ以外にも血液を凝固させて大量且つ巨大な十字架型の剣や盾に変形させる事も可能。十字架型の強度は作中でも最硬クラスであり、最強のエルダークラスですらこれを砕いたものは居ない。
その拳は形容するなら盾と『槍』で武装した重装歩兵。

『999式 久遠棺封縛獄(エーヴィヒカイトゲフェングニス)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:1
血の十字架によって相手を「密封」し、行動不能にする。
現人類が不死の種族に唯一対抗できる技。これを受けると対象は手のひらサイズの十字架内に封印「密封」される。
ただし、この宝具はただ使うだけでは通じず、そのサーヴァントの真明を呼び、心臓に技を打ち込む事で封印が可能。
正し、この宝具は耐久がA+以上、それこそ彼がこの技を見せてきた不死に匹敵する程の相手でなければ発動できない。

『血界戦線・魔封街結社(ライブラ)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ-
彼がリーダーを務めるライブラのメンバーをサーヴァントとして召喚する。
しかし、会場がHLはおろかNYですらないため一人しか現界させられない上に短時間の現界となり、燃費も非常に悪い。
しかし、舞台がHLと同じく魔都に近づけば近づくほど現界させられる人数は増えていき、燃費も良くなっていく。
東京が混沌の極みとなれば、全員の現界も可能且つランサーの全パロメーターがワンランクアップする
『不可視の人狼』『神々の義眼』の様に戦闘以外の使い道を持つ者もいる。


198 : 高嶺清麿&ランサー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/02(火) 23:53:16 zsYcwG6I0

【weapon】
十字架型のナックル。

【人物背景】
世界の均衡を守る為暗躍する「秘密結社ライブラ」のリーダー
世界有数の超人が集うライブラに置いても「最強」と呼べるほどの戦闘力と精神力を持って人間界を守護する。
良家の育ち故か世間慣れしてない面もあり、お人好しで純粋な正義漢であるが、それゆえに子供っぽく直情的で理不尽なところもある
園芸やプロスフェアー等多趣味である。

【サーヴァントとしての願い】
なし。世界の均衡を保つ。

【マスター】
高嶺清麿@金色のガッシュ!!

【マスターとしての願い】
無し。だが脱出の方法が無いなら優勝を狙う。

【weapon】
IQ190の頭脳

【能力・技能】
「答えを出す者(アンサートーカー)」
過程をすっ飛ばして答えを得る能力。
清麿は原作終盤で死の淵に立ったことによりこの能力を手に入れた。
万能な能力だが欠点もあり、彼の出せる答えを超えた答えは出すことが出来ない。
参戦時期はこの能力に目覚める遥か前のため当然ながら使えない。
だが、死の淵に立った後復活するか、あるいはアホのビンタを受ければもしかしたら目覚めるかもしれない。

【人物背景】
マサチューセッツ工科大学の首席卒業生の論文を難なく読みこなすことができるほどの天才児。
しかし、頭が良すぎるためにクラスメイトからの妬まれ、いじめまで受けて自堕落になり、不登校気味の毎日を過ごしている。
真の意味での中二病。
本来は金色の少年王が彼を変えるはずだったが、そこへ至る前に彼はここへと導かれてしまった。

【方針】
この世界からの脱出。或いは―――、


199 : ◆.wDX6sjxsc :2016/02/02(火) 23:55:44 zsYcwG6I0
投下終了です
TVのシーンは問題があるようならカットさせていただきます


200 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/03(水) 01:45:17 1NDgFxH20
投下します。


201 : ソラ&バーサーカー ◆CKro7V0jEc :2016/02/03(水) 01:45:41 1NDgFxH20




 ──「滝川空」の自宅の浴室では、その日、異常な量のシャワーの水が延々垂れ流され続けていた。



 排水溝の上には透明なビニールが敷かれ、その上には長い髪の毛が引っかかり、海藻のように揺れている。
 そこに向かって一心にせせらぐ水は、微かに絵具が溶けたような薄い紅色を伴っていた。
 中には、髪の毛に交じって濃厚な深紅も覗いていたが、それも無色透明の水の勢いに負け、だんだんと色を薄めていく……。

 それは、既に「作業」の「最初の行程」が随分と進んでいる事を示していた。
 茶髪の青年──ソラは、それを行っている間中、ずっと考えを巡らせている。
 作業自体は手慣れた物だ。
 どんな異常な行動をしながらも、彼は普段通りに思考する事が出来る。今やっている事は、料理と大差ない。

「──」

 ……が。
 考えてみれば、この場に来てから、こういう事態に発展するのは初めての事である。
 そして、この面倒なやり方での「作業」も久々だ。

 何せ、彼は昨日まで本当に「滝川空」そのものだったし、もっと前には「グレムリン」として別の世界で生きてきたのだ。
 ソラは昨日まで、自分が「ファントム」という怪物だった記憶すら消されて、久々に至極真っ当な「人間」をやっていたらしい。
 人間になりたいという彼の悲願は、皮肉にも僅かな時間だけでも叶っていた事になるといえる。
 ──それは、まったく、今振り返っても茶番劇に近かった物だが。

「ふふっ」

 ソラは、わけもなく、挑発的に笑った。
 ……なるほど、事情はわかった。聖杯戦争、なる物にも理解は及んだ。
 昨日まで、ある意味では「叶っていた」と言っていい自分の願いを、もっと永久的な物に変えられるのがこの聖杯戦争なのだ。

 人間になりたい。──その純粋な希望。それが叶う時が来そうだ。
 こうして全てを知る事が出来たのは、今日出会った少女のお陰である。
 その少女には感謝しなければならない。

「ふははっ……」

 ────そして、今もその少女は、目の前にいる。

 そう、乱雑に四肢と首をバラバラに切り取られた、死体となって──。

(ありがとね、きみには随分良い事を教えてもらったよ♪)


202 : ソラ&バーサーカー ◆CKro7V0jEc :2016/02/03(水) 01:46:01 1NDgFxH20

 先ほどまでは美しい容貌だった筈のその少女の首は、彼女を知る人が見ても判別がつかない程に命の色を失っていた。
 艶めかしい筈だった十代の裸身も、六つに切り取られてしまい、そのパーツの一つ一つは見る者の血の気が引くほどの青白さにまで冷え切っている。
 ……何せ、今、体中の血液がすっかり、シャワーの水で流されているのだ。

 これは、ソラが滝川空だった頃からたびたび行っていた「死体処理」の方法の、パターンの一つだった。
 ……まず、こうして血を全て水で流す。
 その後で死体を解体し、肉や皮や臓器を全て切り分け、サイコロステーキのように細かく切り取ったり、ちぎったりするのだ。
 その作業が終わった後は、肉片は便所に流すか、動物の餌にする。
 全て終えると、もう残るのは骨くらいの物で、それは砕いて川に流してしまうという手段がいちばん楽だった。
 確かに手間がかかるのだが、こうすれば死体が見つかる事はないので、被害者は「行方不明」になってしまうわけだ。
 今は、その最初の「血を全て水で流す」という工程が丁度終わったという所である。
 あらかじめ全部バラバラにしておくのは、血を迅速に抜き取る為だった。

 ──ファントムになってからはこんな方法は使わなかったのだが、思えば、人間である時は、やはり罪から逃れる為にこうして死体を消さなければならなかった。
 考えてみると、それも随分懐かしい話だ。殺人を行う場合、死体処理に困るが、それに慣れてしまえば、あとは簡単である。

 今回は、「魔力」の節約の為にも、いささか不便な方法での死体処理を行わせてもらった。
 自分の呼んだサーヴァントがわかっていない現状、どの程度までなら魔力を使って良いのやら、ソラにはまだ実感が無かったのである。
 魔力が対価として要される事は既にこの死体の少女に教えられているが、その塩梅というか、加減というか、それがまだわからないうちはあまり無暗に使わない方が良いと思ったのだ。
 尤も、彼女を脅していろいろ聞き出す為に、一度「グレムリン」の姿に変身してはいるのだが。

「……にしても、アンラッキーだね〜、きみも」

 滝川空が生前殺した人数は、記憶にあるだけで数十名に上っていた。
 そして、それは、全て、「ある特徴」に符号する女性である。
 ──今、死体になっている名も知らぬ女性にしても、生きている内はそれに該当していた。

「まあ、そういう運命だったと思いなよ。僕もそうする事にするから」

 ──やはり、彼女は、いくつもの不運の連なりによって殺された少女だった。

 第一の不運は、艶のある黒い髪を持っていた事。
 第二の不運は、たまたまその日は、親に買ってもらった白いワンピースを着ていた事。
 第三の不運は、その恰好で、「滝川空」が務める美容室で髪を切ろうとした事。

 この条件を重ね持った彼女を見たソラは、「記憶」を取り戻してしまった。──きっかけとしては、これだけでも充分すぎただろう。
 ただ、ソラは聖杯戦争などという物は全く知らなかったので、マスターとして襲ったわけではない。「白い服で長い黒髪」だったその十代の少女を殺しておこうとだけ考えたのだ。
 その為に、この客を見送った後、理由をつけて即座に退勤し、帰る途上にあった彼女を気絶させ、手際よく連れ去った。
 そして、彼女の髪をばっさりと切っていた時、目を覚ました彼女のうなじに、妙な紋章がある事に気づいた。
 記憶を取り戻したソラの胸にも、同じような魔力を伴う紋章が出来ていたので、それが気になったのだ。
 彼女なら何か知っているかもしれない……と思い、ソラは、グレムリンに変身して、彼女を脅して、紋章について詳しく聞いた。
 それから、彼女は怯えて泣きながら、知る限りを全て語ってくれた────そして、その後で、ソラは彼女を殺した。
 それが、今ここに至るいきさつの全てである。


203 : ソラ&バーサーカー ◆CKro7V0jEc :2016/02/03(水) 01:46:27 1NDgFxH20

「さて──」

 そろそろ、彼女の身体をもっと細かく切り刻んで棄てる準備をするか、とソラは思った。
 血はこれだけ抜けば十分だ。あとは、早い内に行った方が手際よく後の作業を行える──。
 と、思った、その刹那である。

「──!?」

 ソラは、自らの背後に、高い魔力を持つ者が「瞬間移動(テレポート)」してきたのを感じ、振り返った。
 この反応は、おそらく、この少女のサーヴァントか、あるいは自分のサーヴァントか──高い魔力だ。
 死体処理を行っている時に他人が現れるのは、さすがのソラも肝が冷えるというものである。
 しかし、そこにいるのが人間ではないとわかると、ほっと一息ついた。

「ピポポポポポポポ……」

 どこからか奇妙な電子音が鳴った。
 何やら、このサーヴァントから発される鳴き声のような物らしい。
 ──そこにいたのは、ほとんど半裸と言っていい姿の少女だった。
 手足と乳首と腰だけを隠したかのような──痴女じみた服装である。
 髪は長いが、色素は薄い紫色で、白い服なども着用していない。
 怜悧な瞳をしているが──ソラに、敵意を向けたり、戦意を見せたりする事がなかった。
 まるで感情のない機械のようなタイプだった。

「………………ハロ〜♪ 待ってたよ。──きみが、僕のサーヴァントだね?」

 ソラは、それがおそらく自らのサーヴァントだろう、と確信する。
 仮にこれが敵のサーヴァントだとしても、ソラはファントムとしての姿に変身してある程度なら渡り合い、自分の身を守る事も出来る。
 そして、──彼は、無邪気な笑みを見せた。足元に、ばらばらの死体を放置したまま。
 ソラは訊いた。

「えーっと、きみは、『セイバー』?」

 ソラは、彼女の様子などお構いなしに、七つのクラスを頭の中で浮かべる。
 少女に聞いていた聖杯戦争のルール上、サーヴァントは通常、七騎のいずれかに属する事が多い──。
 そのうち、目の前のサーヴァントの場合は、どのクラスに属し、どう運用するのが正しいのかを確かめようと思ったのだ。
 しかし、剣を武器としている様子はなかった。

「──じゃなさそうだし、『アーチャー』でもなさそうだね……」

「?」

「あっ、わかった。『アサシン』だ」

「……?」

「……じゃあ、『バーサーカー』か。違うかな?」

 そう聞くと、彼女が、「ピポポポポポポポ……」とまた電子音を発した。
 バーサーカー、という単語に反応したと見える。
 いずれにせよ、言語らしい言語が返ってこないのを見ると、確かにバーサーカーに間違いなさそうである。
 どうやら、バーサーカーである彼女には、言語を理解する能力もろくにないらしい。
 問題は、それに見合う戦闘力を本当に有しているかだ。


204 : ソラ&バーサーカー ◆CKro7V0jEc :2016/02/03(水) 01:46:48 1NDgFxH20

 今のデータでは、自らのサーヴァントが強力であるのかは、ソラにも判然としなかった。
 他のサーヴァントがどれほどの実力であるのかを知らないので、相対的に見る事も出来ないのだ。

 そんなソラの疑念をくみ取ったわけではないようだが──バーサーカーは、ソラの足元に落ちているばらばらの死体を、ふと見つめた。
 それが、何かをコレクションする行為ではなく、「処理」する様だと理解したバーサーカーは……それから、少し思考する。
 思考、はあるらしい。
 実際のところ、ここに来たのも、令呪を得たマスターを感知し、そこに近づくようにテレポートを繰り返してきたからである。
 バーサーカーは、六つに分けられた死体を凝視した──。

「……」

 そして──次の瞬間。

「っ!」

 ──バーサーカーの胸部から、突如現れた炎の球が飛んだ。

 その熱量を間近で感じ取ったソラは、一抹の危機感を覚えた。
 咄嗟にグレムリンへと変身して空の浴槽に向かって飛び込んだソラ。
 自分が狙われたのかと警戒したが、実の所、バーサーカーが的にしたのは、違ったらしいとすぐに気づく──。

「!?」

 ソラがもといた場所を見ると、そこにあった死体が跡形もなく消えている。
 そして、死体を焼いた時のあの匂いが、ほんの微かにだけ鼻孔をくすぐった。

 ──そう、彼女が、やったのだ。
 ソラの為、というわけではないだろうが、邪魔になりそうなものをいち早く処分してくれた。
 それは、視界に入るのが不快だったからかもしれない。
 あまりソラに忠実なサーヴァントであるようには見えなかったが、いきなり役に立ってくれた。

「……」

 再び、人間の姿に戻ったソラは、バーサーカーの方を見た。
 バーサーカーにも、もう何か攻撃意志を発動するつもりはないらしく、相変わらず冷徹な瞳で、黙して立っている。
 それを見ていると、ソラにも笑いがこみあげてきてしまった。

「……ふふふふふっ」

 ──なるほど。
 聖杯戦争、という物の要領がわかった気がする。
 自分のサーヴァントがどれくらいのエネルギー量や威力を持つ武器なのか。
 それに伴う魔力消費はどの程度起きるのか。
 勿論、魔力が微かに減少した時点で、バーサーカーが己のマスターである事は確信へと変わる。

「わかったよ、これからよろしく。バーサーカー」

 わかった。やはり、彼女はミサと同じだ。
 少女の姿でありながら、それは確かに狂戦士と呼ぶに値する──。
 ソラがそう思っていると、突然に彼女のもとから鳴き声が聞こえた。




「ゼットーン……」





 そう、バーサーカー──その真名は、「宇宙恐竜ゼットン」と言った。


205 : ソラ&バーサーカー ◆CKro7V0jEc :2016/02/03(水) 01:47:11 1NDgFxH20





【クラス】
バーサーカー

【真名】
宇宙恐竜ゼットン@ウルトラ怪獣擬人化計画 feat. POP Comic code

【パラメーター】
筋力A 耐久A+ 敏捷A+ 魔力B 幸運A 宝具A+

【属性】
混沌・狂

【クラススキル】

狂化:E
 通常時は狂化の恩恵を受けない。
 というか、元怪獣なので最初から言語能力や思考力がそんなにない。
 これ以上言語能力や思考力が落ちる事もなく、能力を引き上げるとして狂化を使う事は不可能(他人の言葉にリアクションを起こす事はある)。

【保有スキル】

仕切り直し:A
 戦闘から離脱する能力。
 彼女の場合は、瞬間移動によって戦闘から即座に離脱する事が出来る。
 ただし、それは原則的に自己判断に依る。

無辜の女子高生:C
 生前の行いから生じたイメージによって、 過去や在り方をねじ曲げられた『無辜の怪物』の逆バージョン。
 バーサーカーの場合、元々は怪獣だったにも関わらず、人々の欲望が投影され、外見やサイズが女子高生程度の美少女と化している。
 当時の60mという巨体を再現できる事もできない為、マイナスのスキルであるが、能力や強さは美少女化しても健在(そもそも、このスキルの無いゼットンは、呼んだ時点でマスターが死ぬ)。
 尚、このスキルを外す事は出来ない。

【宝具】

『最後の怪獣(ゼットン)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:不明 最大捕捉:不明
 宇宙恐竜ゼットンが生前、ウルトラマンを打ち破り勝利した逸話から生まれた宝具。
 ウルトラマンが戦った最後の相手である故の異常なまでの強さと、「主人公を殺す」というお約束破りを平然と行う空気の読めなさ等がそのまま宝具として成立しており、常時発動して敵のあらゆる補正を消し去ってしまう。
 鋼鉄の数百倍の固さを持つ身体で、顔部分からは1兆度という桁違いの温度の火球を吐き出す、敵の光線を吸収して跳ね返す……といった、ふざけた能力設定もまたこの宝具の一部である。
 バリアーや瞬間移動、壁抜けなどのトリッキーな手法で敵の攻撃を回避してしまうような、正攻法で倒すのが困難になりそうな小狡い設定も同様。
 つまり、ラスボスとしての桁違いの強さと、主人公を殺す補正破りの二点の情報が、ゼットンを構成する宝具なのである。

【weapon】

 なし

【人物背景】

 元々は、「ウルトラマン」の第39話に登場し、ウルトラマンを倒した怪獣。
 原典では、身長60メートル、体重3万トン。出身地は宇宙。ゼットン星人によって地球に連れてこられ、ウルトラマンや科学特捜隊と戦った。
 しかし、ウルトラマン(というか科学特捜隊)に敗北した為、現在は美少女になり、擬人化怪獣たちの街を彷徨っている。
 敗れた怪獣の行きつく「怪獣墓場」は、実質的に「英霊の座」と同じ役割を果たしており、そこから呼ばれた形になる。

【サーヴァントとしての願い】

 不明。


206 : ソラ&バーサーカー ◆CKro7V0jEc :2016/02/03(水) 01:47:27 1NDgFxH20



【マスター】

 ソラ@仮面ライダーウィザード

【マスターとしての願い】

 人間になる事。

【weapon】

 日用品以外は特になし。

【能力・技能】

『グレムリン』
 ソラが変身する事の出来る、緑の姿の上級ファントム。「ラプチャー」と呼ばれる鋏にもなる双剣を武器とする。
 身軽で俊敏な動きを駆使して狭い場所や高い場所を素早く移動し、更には壁をすり抜けるという能力も披露した。
 尚、賢者の石を入手していない時期の参戦である。

【人物背景】
 
 ワイズマンに仕える上級ファントムの一人。
 生前は「滝川空」という明るい美容師の男性だったが、彼はファントムでありながらこの人間の時の人格を有している(通常のファントムは素体となった人間の人格を完全に乗っ取る)。
 その為、「人間になる(人間に戻る)」事に固執し、それを己の「希望」としている。
 ちなみに人間の頃からファントム以上に凶悪な殺人犯であり、「白い服を着た長い黒髪の女性」の特徴に一致する客を次々と、髪を切ったうえで殺害していた。被害者は数十人に上る。
 この猟奇殺人に走ったのは、白い服で長い黒髪の彼女に裏切られ、捨てられたトラウマが原因によるものとみられる。
 一応、本編のラスボスだが、現在の能力でいえば、作中終盤に登場する「白い魔法使い」に劣る。
 能力が強いラスボスというよりは、主人公の操真晴人と対になり、晴人の導き出した答えをぶつける為のラスボスという感じである。

【方針】

 己の願いの為に、他のサーヴァントを全て殲滅する。


207 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/03(水) 01:47:44 1NDgFxH20
以上、投下終了です。


208 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/03(水) 19:57:28 1NDgFxH20
投下します。


209 : ペガッサ星人&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/03(水) 19:58:58 1NDgFxH20



 ペガッサ星人の前に居るのは──かつて、ウルトラ兄弟を倒す事をもくろみ、地球に現れた極悪宇宙人、テンペラー星人であった。
 いや、厳密には今のテンペラー星人は、『アーチャー』のクラスで呼ばれたサーヴァントか。
 ともかく、テンペラー星人は、ハサミ(これが手である)をカタカタと鳴らしながら高笑いして、ペガッサ星人に言う。



「ふっふっふっ……それにしても、ペガッサ星人、私のマスターがあんただったのは幸運だわよ。
 ────さあ、私と一緒に、聖杯を手に入れて、地球を侵略するだわよ!!!!!!」



 こうしてみると、地球侵略が一歩手前の地獄絵図かもしれないが、実際の所は、ただの女子高生が二人で談笑している光景にしか見えない。
 ……それというのも、彼女たちはただの怪獣や宇宙人ではなく、美少女と化した擬人化怪獣たちなのである。
 ペガッサ星人も、ペガッサ星人というか、「ペガッサさん」という名前でも呼ばれているし、しかも日常的には「ペガちゃん」で呼ばれる優等生の女の子であった。
 アーチャーには己が極悪宇宙人としてウルトラ兄弟と戦った記憶がある反面、ペガッサさんには原典のペガッサ星人としての記憶がまるでない。

 しかも──。

「嫌です」

 ──どっちにしろ、ペガッサ星人には、地球侵略の意思がまったくなかった。

「なぬ!?」

 アーチャーは、このきっぱりとしたペガッサさんの返答に、かなり衝撃を受けたような顔をしている。
 アーチャーは、今、共に地球侵略を目指す宇宙人たちを探している。
 そして、ウルトラ兄弟を倒すために、「ウルトラ兄弟必殺部」を設立しようとしたほど、ごく真面目で初志貫徹の擬人化怪獣なのだ(尤も、ウルトラ兄弟必殺部は、校長に「そんな物騒な部は認められん」と突っぱねられた上、「ウルトラ兄弟分析部」などという名前にされてしまったが)。
 とにかく、誘いを断られたのは少なからずショックだったらしい。

(──はっ!)

 だが、アーチャーも、すぐに、ペガッサ星人の目的を思い出した。
 ペガッサ星人は元々、そんなに攻撃的な宇宙人ではない。何せ、モロボシ・ダンや友里アンヌと親しく接した友好的宇宙人である。
 悲しいすれ違いの末に戦う羽目になったわけで、悪い宇宙人ではないのである。
 ただ、絶望的に行動の手際が悪く、地球人を変に買いかぶっているだけで、そこまで侵略に積極的じゃない。

「……そ、そういえばそうだっただわよ。あんたは、元々、地球侵略の為にやってきた宇宙人じゃなかっただわよ」

「いや、そもそも地球侵略とか知らないんですけど……」

「し、しかし、同じ宇宙人として、侵略を狙わないとは恥ずかしくないだわよ!?」

 開き直るように、アーチャーはハサミの先をペガッサさんに向けた。
 宇宙人、と言われてもペガッサさんにはよくわからなかったが……。

「その顔は何だわよ! その目は何だわよ! その涙は何だわよ! その涙で、地球が侵略できるだわよ!?」

「泣いてません」

 偉そうにペガッサさんを説教しようとするアーチャー。
 何もかも、言っている事が意味不明すぎた為にアーチャーはペガッサさんには引かれているようだった。
 しかし、ペガッサさんも普段、こういう電波な友達にばかり囲まれていたので、アーチャーを極端に突き放すような事はなかった。


210 : ペガッサ星人&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/03(水) 19:59:24 1NDgFxH20

 先ほど知らされた聖杯戦争の話も一応、ペガッサさんも当面は信じている。
 ──何せ、私立円谷学園もない変な世界で、記憶を失って生活していたのは事実なのだから。
 聖杯という遺物の存在も信じない理由はない。
 アーチャーの保護もちゃんと行うつもりだし、話もちゃんと聞くつもりだ。

「──それに、どっちにしろ、あんたにも侵略はしないとしても、聖杯に託す願いくらいはあるだわよ。
 私は私で地球侵略を目指すから、あんたはあんたで聖杯戦争に協力するだわよ!」

「ありません」

「なぬ!?」

 再び、ペガッサさんのきっぱりした返答にショックを受けるアーチャー。
 アーチャーは、ペガッサ星人も自分たちと同じように、「ウルトラマンに敗れた事で怪獣墓場に召喚された女子高生」だと思っている。
 しかし、ペガッサさんは別にそういう訳ではないのである(今の所の原作単行本を読んだ感じでは)。

「ペ、ペガッサシティを再興する願いもないだわよ……?」

「何ですか、ペガッサシティって……」

「な……おまえ……ペガッサ星人らしい心はもうなくなっちまっただわよ!?」

「?」

 アーチャーは、イデ隊員がジャミラにかけた名言のようなセリフを吐くが、ペガッサさんには伝わらない。
 ペガッサ星人は、原典では、「故郷のペガッサシティがいろいろあって地球人に破壊されたので、復讐の為に戦った宇宙人」とされている。
 しかし、ここにいるペガッサ星人は、先ほど言った通り、そういう過去がある宇宙人というわけではなさそうだ。

「とにかく、あんたの目的はペガッサシティの再興だわよ!」

「えーっ! 困ります。そんな恥ずかしい名前の町……」

「四の五の言うと光線発射するだわよ!」

「そんなむちゃくちゃな……」

 ハサミは、ペガッサさんの方に向けられ、その先端からは次の瞬間、光線が発射される──。
 アーチャーの必殺光線は、ペガッサさんの顔の横を一陣の風として通り過ぎ、真後ろのアスファルトに向かって叩きつけられた。
 振り返ると、アスファルトに皹が入り、小さく煙が立ち上っている。

「──!!」

「ふふふ。こう見えても、私は強いだわよ?」

 驚くペガッサさんを前に、アーチャーは得意げだった。
 今のは威嚇だったが、全力で当たれば生身の人間など吹き飛ぶほどのエネルギーである。
 さすがのペガッサさんも、アーチャーに口答えすればどうなるかがわかったようだ。

「あわ、あわわ……」

 今にも泣きそうな顔になりながら、アーチャーの方を向き直すペガッサさん。
 怯えている彼女を見ると、アーチャーは余計に得意げになる。
 しかし、ペガッサさんは──闇空間を作り出し、そこに隠れてしまった。


211 : ペガッサ星人&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/03(水) 19:59:44 1NDgFxH20

「あっ! ダークゾーンにひきこもるのは禁止だわよ! 出てくるだわよ!」

 ダークゾーン──ペガッサさんが持つ特殊能力である。
 特殊な黒い空間を生成して、その中にひきこもって隠れる事ができるのだ。
 友達に悪戯されてからは使っていなかったが、身の危険を感じたペガッサさんはそこにひきこもる事にしたようである。
 ペガッサさんがダークゾーンから出てくるまで、十分の時間が要された。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 アーチャーの説得で何とかダークゾーンから出てきたペガッサさんも落ち着きを取り戻していた。
 とにかく、今住んでいる所に帰ろうとしている。
 東京都内は、かつて地球の東京にやってきた事のあるアーチャーの方が歩きなれているが、ふと、思い出したようにペガッサさんはアーチャーに言った。

「あ、アーチャーさん。あとで、何枚か写真をお願いします」

「ん? 何だわよ?」

「私、学校だと怪獣図鑑制作部をやっていて……だからテンペラー星人としての写真とデータを、今の内からキャンパスノートにメモしておこうかなーと」

「だ、だだだ、駄目だわよ! そんな事したら私の真名や弱点が全部バレるだわよ!」

「そういうのをメモして怪獣図鑑を作るのが私の目的なんですけど……」

「それなら、敵を全部倒してからやるだわよ! ──あっ、でも」

「?」

「敵のデータを全部メモしておくのは悪くないだわよ。サーヴァントにはウルトラマンのような英雄や怪獣やSCPもいる筈だわよ。それをメモしておけば、きっと役に立つだわよ」

「……そんな、無理してSCPを話に絡めなくても」

「とにかく、敵のデータを集めて対策する必殺光線を編み出すのは侵略宇宙人の基本だわよ!」

「(この人、意外と真面目なんだな……)」


212 : ペガッサ星人&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/03(水) 20:00:06 1NDgFxH20





【CLASS】
アーチャー

【真名】
極悪宇宙人テンペラー星人@ウルトラ怪獣擬人化計画 feat. POP Comic Code

【ステータス】
筋力C 耐久B 敏捷D 魔力D 幸運D 宝具D

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】

対魔力:D
 魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。

単独行動:C
 マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
 Cランクはマスター不在でも1日程度なら現界が可能。
 陰謀だわよ!密謀だわよ!

【保有スキル】

気配感知:B
 気配を感じ取ることで、効果範囲内の状況・環境を認識する。近距離ならば同ランクまでの気配遮断を無効化する。
 これは両手のハサミにあるレーダーで信号を捉える事による物。
 ウルトラ兄弟を感知するのは得意だが、それ以外は「何かの反応」としか映らない。

無辜の女子高生:C
 生前の行いから生じたイメージによって、 過去や在り方をねじ曲げられた『無辜の怪物』の逆バージョン。
 アーチャーの場合、元々は怪獣だったにも関わらず、人々の欲望が投影され、外見やサイズが女子高生程度の美少女と化している。
 当時の巨体を再現できる事もできない為、マイナスのスキルであるが、能力や強さは美少女化しても健在。

怪獣知識:B
 生前の活動や怪獣墓場で得た、ウルトラ怪獣に関する知識。
 彼女の場合、少なくとも現在の時点で昭和ウルトラシリーズの怪獣は把握しているようだ。
 ややメタっぽい知識もあるものの、相手がウルトラ怪獣であれば大抵は真名を看破し、そのデータを語る事が出来る。

【宝具】

『ウルトラ兄弟必殺部』
ランク:D 種別:対ウルトラ兄弟宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:1〜6人

 テンペラー星人の生前に持っていた意思と悲願が宝具として成立したもの。
 ウルトラ兄弟を倒したいという熱い想いがそのまま宝具と化し、彼女が生前練り続けたウルトラ兄弟への対策技が全て再現される。
 現在は、ウルトラ兄弟の正体を看破する「特殊スペクトル光線」や、ウルトラ兄弟に大きなダメージを与える「ウルトラ兄弟必殺光線」など、ウルトラ兄弟の六人が正面から攻撃してきても負けない武装が整っている。
 ただし、逆を言えば、正真正銘、「対ウルトラ兄弟」で、それ以外にはあまり意味のない宝具なので、多くのサーヴァントに対しては意味のないゴミみたいな宝具。
 ウルトラ兄弟必殺光線に至っては、「ウルトラ兄弟にしか効かない」という説もあり、これに準じた設定だと本当にゴミ宝具。
 まあ、それでも特殊スペクトル光線は何らかの反応をキャッチする事は出来るし、ウルトラ兄弟必殺光線はゼットンに向けて放っているのでそこそこ使えるかもしれない(実際効いてないが)。


『ダサイ円盤』
ランク:D 種別:対城宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:1〜100人

 テンペラー星人が乗っていたクソダサい円盤。デザインは原典と同じだが、本人はこれを「ダサイ」と言われるとキレる。
 遠足で地球に行く時の移動手段として候補に挙がったが、没になったという逸話がある。
 テンペラー星人自身が巨大化できない現状、これを使って戦えばかなり強いのだろうが、デカイうえにダサイので目立ち、魔力消費も大きく、しかもやっぱりダサイのであまり使いたくない宝具。
 尚、この宝具はテンペラー星人本人ならば『騎乗』のスキルがなくても操作できる。

【weapon】

 特になし。
 ただし全身は武装だらけ。詳しくは後述。


213 : ペガッサ星人&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/03(水) 20:00:58 1NDgFxH20

【人物背景】

 原典では『ウルトラマンタロウ』第33話、第34話に登場(それぞれ別個体だが作中描写ではどちらの記憶も有している)。
 身長2メートル〜52メートル。体重120キロ〜3万5000トン。出身地はテンペラー星。
 ウルトラ兄弟を倒す為に、地球にやってきてタロウと戦い、何度かタロウを破った強敵。
 だが、最終的にタロウに敗れた為、美少女となって怪獣墓場学園に転送された。
 一体目がウルトラボール作戦で負けたトラウマから、赤い球が苦手という弱点がある。くす玉を見てもビビるらしい。
 幼児体系で、語尾に「〜だわさ」をつけて喋る。
 宝具はゴミ同然だが、それ以外の技が普通に強い。

 たとえば……

・首の両側面からのびる管からは、毒ガスを噴射することができる。これでタロウを苦しめた。
・両手のハサミから相手を関電させるビーブロッドや破壊閃光などの強力な技を放つ。右手からは三万度の超光熱火炎を放射。力も強靭。
・黄金マントと呼ばれているマントは、光太郎を拘束した時に使われた他、どんな攻撃も防ぐ事ができるといわれている。
・ニーグリップを得意とする脚。腕同様ひざの力も強靭だ。
・小型のクモのような姿に変身できる。赤いガスを噴射して、さおりを気絶させた。

 という感じで、平和な学園生活ではそこまで使う事はない全身の強力な装備や多彩な技がある。
 ゼットンには敵わなかったが、おそらくかなり強い部類の擬人化怪獣だろう。
 
【サーヴァントとしての願い】

 地球侵略だわよ!ウルトラ兄弟必殺だわよ!

【基本戦術、方針、運用法】

 光線技のお陰でアーチャーの座に収まっている擬人化テンペラー星人。
 目的は地球侵略とウルトラ兄弟の「必殺」であるが、怪しい物を見ると偵察を行う真面目な面もある。
 この性格上、放っておいても聖杯や敵の調査を行ってくれるだろう。
 また、武装も強力で、性格も好戦的なのでまともに戦えばかなり強いはず。
 赤いボールを見るとトラウマが発動する事や、高飛車すぎる性格などは弱点といえるかもしれないが、聖杯の為に真面目に戦うだろう。


214 : ペガッサ星人&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/03(水) 20:02:13 1NDgFxH20



【マスター】

 ペガッサ星人@ウルトラ怪獣擬人化計画 ギャラクシー☆デイズ

【マスターとしての願い】

 ペ、ペガッサシティの再興……?(不本意)

【weapon】

『ダークガン』
 隠している武器。
 痴漢撃退くらいならできるらしい。
 彼女にはこれしか戦闘能力がない。

『怪獣図鑑』
 怪獣図鑑というより、円谷学園の生徒のデータ。
 つまり、原典の怪獣ではなく、擬人化怪獣たちの写真と足跡とデータ(スリーサイズ等)が載っている。
 鈍器として使えば人殺せそうなアイテム。

『キャンパスノート』
 今は白紙。
 コレに敵のデータを埋めて怪獣図鑑を更新しよう。

【能力・技能】

 超頭が良い優等生。
 怪獣図鑑制作部に属しているので怪獣に詳しいかも。
 まあ、怪獣図鑑といっても原典の怪獣ではなく、「ギャラクシー☆デイズ」版の擬人化怪獣のみだが……。
 ダークゾーンを形成してひきこもる事も可能(ただし使用は控えている)。

【人物背景】

 気弱なかくれんぼ宇宙人ペガッサさん。
 擬人化怪獣たちが集う「私立円谷学園」の怪獣図鑑制作部に所属する部長で、まじめな性格。
 身長が低く、胸も小さい幼児体系で、それを気にしている。
 原典での体の模様はゴスロリっぽくアレンジされている。

 現在は普通の高校に通っているが、その辺な髪型は友達によく馬鹿にされている模様。
 普通の人と比べると明らかに髪型や服装が浮いているが、それは誰も気にしていない。
 ちなみに、友達が手鏡で髪を化粧していた後ろに立った瞬間、何故か記憶が呼び戻った。

【方針】

 怪獣図鑑の作成。ここでも、敵のサーヴァントや怪異のデータを調査しておく。
 一応、アーチャーとは協力していくが、ペガッサさん自身は別に聖杯を狙うつもりはあまりない。


215 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/03(水) 20:02:31 1NDgFxH20
投下終了です。


216 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/03(水) 20:04:09 1NDgFxH20
>>213にミスがあったので、早速ですが一部修正します。

テンペラー星人の紹介の

>幼児体系で、語尾に「〜だわさ」をつけて喋る。

という部分ですが、正しくは、

>幼児体型で、語尾に「〜だわよ」をつけて喋る。

です。申し訳ありません……。


217 : ◆DpgFZhamPE :2016/02/03(水) 22:41:20 VFApMnNI0
投下します


218 : ◆BKLSflSAGY :2016/02/03(水) 22:42:35 VFApMnNI0
,

























―――産まれ堕ちれば、死んだも同然。



















▲  ▲  ▲


219 : 木原数多&キャスター  ◆DpgFZhamPE :2016/02/03(水) 22:44:28 VFApMnNI0
酉入力に失敗しました。
こちらで投下しなおします、ご迷惑をおかけします


220 : 木原数多&キャスター  ◆DpgFZhamPE :2016/02/03(水) 22:44:43 VFApMnNI0
,

























―――産まれ堕ちれば、死んだも同然。



















▲  ▲  ▲


221 : 木原数多&キャスター  ◆DpgFZhamPE :2016/02/03(水) 22:45:38 VFApMnNI0
くちゃくちゃ。ぎしぎし。がりがり。
みずみずしい、肉の音。
まずは腹を裂く。どぷりと血液が流れ出すが、まあ気にしている暇はない。
少し血液を拭いてやると、サーモンの切り身のような綺麗な腹直筋が見えた。
細部まで鍛えてあるのか、薄さこそ常人と変わらないものの、程よい弾力と健康的な色をした上質な筋肉だった。

「あ―――ぎぃ、が」
「お、痛かったか?すまんすまん、まあもうちょっとで終わるから我慢してくれや」
「な、にが」

我慢だ、と青年は呟くが目の前の男―――今まさに自分を診療代に乗せ切り刻んでいる男には、届いていないようだった。
薄々解っている。この男の言う『終わる』は、『解放する』という意味ではないことは。
恐らく、この時点で―――いや、この男に捕まった時点でこの青年の運命は決まっていたのだろう。
解剖され、己の身体が部位ごとに次々と切り取られていく激痛に絶えられず絶命するか。
痛みに耐えることを脳が拒否し、先に心が死ぬか。
簡単な二択だ。身体が先に死ぬか、心が先に死ぬか。
奇跡など起こらない。サーヴァントすら呼ぶことが出来なかった青年は、スーパーに並ぶ豚や牛のように切り分けられる。
でも。もしかしたら。
この場でサーヴァントが現れて自分を救ってくれるのではないか―――と。
左手には令呪が宿っている。
宿っているのだ。
サーヴァントさえ呼ぶことができたら―――この男を殺し、自分も助かるのではないか。
震える手が伸びる。
ああ、そうだ。
自分はまだ負けちゃいない。勝利の芽が完全に潰えた訳でもない。
ならば、諦められない。
そう、震える手を伸ばそうとした青年に。

「あー…大して変わんねえな。さっさと済ませちまうかァ」

死刑宣告が、行われた。

「あ、ガッ、ぐぎ、あああああああああああああああああああああああ―――!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


222 : 木原数多&キャスター  ◆DpgFZhamPE :2016/02/03(水) 22:46:18 VFApMnNI0
するするする、と。
青年の身体の上と中を、刃物が走る。

「ああ、あ、あああああ、あああ、あああああ」

人体には大小含めると焼く600前後の筋肉が存在している。
骨は約206本。性格に定義すると数は増減するが、大まかな数としてはこれくらい。
臓器に至っては正確な数はない。どう分別するかにもよるが、ここでは割愛する。
踊る刃物は、まるで新鮮な魚を調理するように。
それらを、全て。
―――摘出し、並べていく。

「ああああ、ああ、ああああ、ああ、」

まず足の筋肉から、削い削がれていく。
穴を開けた腹など無視して。
まずは、寛骨の周辺に位置する内寛骨筋を構成する筋肉。
腸腰筋。腸骨筋。大腰筋。小腰筋。
その仲間である外寛骨筋も、同じように削いでいく。
臀筋。大臀筋。
中臀筋。小臀筋。大腿筋膜張筋。

「ぎあが、ぐか、ああ、aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaッッ!!!!!!!!!!!!」

青年は、切り取られていく己の筋肉の名を覚えていた。
なまじ知識があったせいでより鮮明な痛みが脳へと流れ込んでくる。。
ぎち、と音がした。
次々と、己の足を構成するパーツが、無くなっていく。
大腿方形筋。
内閉鎖筋。
梨状筋。
上双子筋。下双子筋。
恥骨筋。薄筋
長内転筋。短内転筋。
大内転筋。小内転筋。外閉鎖筋
縫工筋。大腿直筋。内側広筋。外側広筋。中間広筋。

「ぎ、あが」

膝関節筋。大腿二頭筋。半腱様筋。半膜様筋。
前脛骨筋。長趾伸筋。第三腓骨筋。長母趾伸筋
腓骨筋。長腓骨筋。短腓骨筋。


223 : 木原数多&キャスター  ◆DpgFZhamPE :2016/02/03(水) 22:47:52 VFApMnNI0
「はァ…」

人『だった』残骸の前で、男は深くため息を吐く。
そして何か思うことがあったのか、数秒天井を見上げ、もう一度深く息を吐く。

「聖杯戦争だのNPCだの言うから学園都市のクソガキどもとなんか違うのかと思ったが、何も変わんねえじゃねえか。
 あー損した。こりゃこの肉塊にも失礼だなァ。ま、あとで野良犬の餌にでもしてやっから、許してくれや」

ガンッ、と。
男―――その名を木原数多という―――は、つまらなそうに残骸が散らばっている手術台を蹴飛ばす。
ポロポロと切り分けられた綺麗な筋肉が地へ落ちる。
聖杯戦争。願いを叶えるための殺し合い。
正直に言えば、木原には理解不明なことだらけだった。
サーヴァント。和訳で召使い等の意味だったか。
聖杯。詳しいわけではないが、神話か伝説にそういうものがある『らしい』ということは知っている。
木原は学園都市側の人間なのでオカルト方面には弱いため、仕方ないといえば仕方ないのだが。
木原クラスになるとオカルトの内容こそ把握していないものの、そのような存在があることだけは証明できる。

「…魔術ねえ」

木原にとっては、理解の外の技術。
しかし。

「現に俺がこうして生き返ってんだから、世話ねえよなァ」

学園都市最強の能力者、一方通行の謎の力。
墨で塗り固められた上に更にこの世のありとあらゆる悪をぶちまけたような、ドス黒い噴出する翼。

『ihbf殺wp』

どの世界の言語を利用しているのかすらわからない、言葉。
一方通行が最期に獲得した、あの力の正体。
天使の、あの存在の力の源。
おおよそは見当はついている。
おそらく、あれの力の正体は―――

(…といっても、あくまで予想だ。実験やら研究の末に出した答えじゃねえ。
 せっかく生き返ったんだ、これを証明しなきゃ死んでも死に切れねえよなァ、一方通行クン?)

にたり、と木原の顔が愉悦に歪む。
研究対象と目的―――それらを見つけた科学者は、恐ろしい。
特に彼のような狂った人間ならば、尚更だ。

「とりあえずは生きて帰ることだな。聖杯なんつーもんは…ま、帰るついでにもらってくか」

貰えるならばついでに貰っていけばいい。
木原にはどうしても叶えたい願いなど無いが故に、聖杯などに興味はない。
願って結果だけポンと出してはいしゅーりょーなんてものが認められるならば、彼は科学者などやっていない。
何故なら。
科学者とは、完全に限りなく近い不完全に。
それでいて完璧ではない―――その狭間に、快楽を見出すものなのだから。
今後の動きだけでも考えておくか、と思案した木原の元に。
己がサーヴァントの声か響く。

「…終わったかネ?」


224 : 木原数多&キャスター  ◆DpgFZhamPE :2016/02/03(水) 22:50:15 VFApMnNI0
「…キャスターか」
「おや。こんなところで解剖とは。収穫はあったかネ?」
「ねえな。こりゃ人間と大して変わらねえ」
「だと思ったヨ。サーヴァントを呼べなかったマスターの中に特別な存在が混ざっているとは考え難い。
 恐らく、ありふれた魔術師と同じだろうネ。聖杯についてまだ説明も終わっていないのに、熱心なマスターだ」

現れたのは黒い着物に、背に十二の文字が刻まれた白の羽織を着た男。
腰には日本刀を提げており―――顔面は、不気味な白塗りにいくつかペイントされている。
この男が、木原数多のサーヴァント。
魔術師のクラス、キャスターである。
カツカツと足を鳴らしキャスター散らかされた肉の残骸に接近し―――その肉に、ゾブリと指を突き刺す。
それと同時に、哀れな青年の残骸の分解が開始される。

「死んだマスターの肉体の後始末。難しいことじゃァないが無駄に使わせるのはやめたまえヨ。
 まったく、こっちのことも考えたまえ」
「は、テメエもさっき数体攫ってただろ?そっちはどうしたんだよ」
「もうとっくの昔に済ませたヨ。私が合図すれば周囲を巻き込んで内部から弾け飛ぶように出来ている」

気味も悪いスイッチのようなものを、キャスターが手の中でくるくると弄んでいる。
おそらくあれが、起爆装置なのだろう。
嫌な趣味してんなぁ、と。自分のことは棚に上げ、木原は笑う。

「…マスター。科学者にとって、一番大切なモノは何かわかるかネ?」

それを見て、何か思ったのか。
キャスターは、木原へと問いを投げる。

「…あ?」
「一番失われたくないもの、の方が正しいか。それは最新設備が整った研究室でもなければ、優秀な部下でもない。
 思想の賛同者でもなければ理解者でもない。
 さて、何だと思うネ?」

そう問われて、思案する。
―――使い勝手のいい兵士か?
いや、違う。変えも効く兵士は楽だが、所詮はゴミにいい利用価値をつけて使ってるだけだ。
言うならばリサイクル。使えるが、必要ではない。
―――覇を競い合う敵か?
いや、違う。そもそも科学者にはそんなものは必要ないし、敵…一方通行には、さっさとミンチになってもらいたいほどだ。
ならば。
科学者にとって大切なものとは。

「―――あ」

そこで。木原は、唐突に理解した。

「そうか、材料か」


225 : 木原数多&キャスター  ◆DpgFZhamPE :2016/02/03(水) 22:50:57 VFApMnNI0
「そうだヨ。各地を這いずり回り地の果てまで捜索し、血の滲む努力で手に入れた研究材料。
 我々はソレを失うことをなにより受け入れられない。
 そして、新たな研究材料を手にすることは何よりも喜ばしい。
 しかし珍しいモノなど殆ど手に入ることはないのだヨ。
 ―――でも『此処』ならば、違う」

ニタリ、とキャスターが不気味な笑みを浮かべる。
そして。
木原も同じ科学者だからか―――狂気に塗れた科学者だからか。
言葉を介さずともその意思を理解し。
不気味に、その口角を上げる。

「ここには、『英霊』がいやがる」
「ご名答。人類を超越し幾度と無く世界を救いその身に賞賛を受けたその英雄たち。
 一騎当千万古不当の豪傑共。誇りと勝利を胸に勝ち誇ってきた戦士たち。

 ―――私は、そんな彼らの全てを知りたい。

 解剖し、研究し、骨の髄の更にその奥まで堪能し。
 溶かして瓶に保管し、その全てを暴きたい」

そのキャスターの言葉に―――木原は、思わず声を上げて笑っていた。
コイツは、どうしようもない。
救いようが無い、どこまでも科学者な男だと。

「あァー…笑った笑った。オマエ、イイわ最高だわ。
 さっさと終わらせてカエローかと思ったが気が変わったわ。
 ―――乗ってやるよ、聖杯戦争。
 瓶詰めにしてわかりやすいように名前のラベル貼って並べてやるよ」

そして。
ここに、狂気の主従が誕生した。
戦いなど興味はない。
聖杯など興味はない。
興味があるのはそこの参加者の、魂と肉体のみ。

彼らは、全てを調べ上げる。
調べ上げ、人としての尊厳を踏みにじり、陵辱する。
高貴な願いなど関係ない。
醜い恨みなど関係ない。
あるのはただの、純粋な知的好奇心のみ。









―――さあ、聖杯戦争を研究(はじ)めよう。


226 : 木原数多&キャスター  ◆DpgFZhamPE :2016/02/03(水) 22:52:35 VFApMnNI0
【CLASS】
キャスター
【真名】
涅マユリ@BLEACH
【パラメーター】
筋力D 耐久C 敏捷E 魔力A 幸運D 宝具B
【属性】
 中立・悪
【クラススキル】
陣地作成:B
魔術師として自らに有利な陣地な陣地「工房」を作成可能。
彼の場合は、「技術開発局」を作成する。

道具作成:B
魔力を帯びた器具を作成可能。
彼の場合は毒薬から解毒薬まであらゆる薬を作成可能である。

【保有スキル】
人体改造:B
己だけでなく、他者まで改造することが可能なスキル。
このランクなら人間を生きたまま爆弾にすることや怪物に変えることも可能である。
また、己の臓器のストックを作ったり己の身体を液状化させることまで可能。

材料保存:B
死亡すると分解されるサーヴァントの霊体とマスターの身体を、保存しておくことができるスキル。
このランクならば、キャスターが魔力を流し込めば最大1〜2日は分解から免れる。

科学者:A
彼に完璧という文字はない。
彼にとって完璧とは絶望である。
何故なら、完璧であるということはもはやそこには立ち入る隙がないということだからだ。
今まで存在した何物よりも素晴しくあれ、だが、けして完璧であるなかれ。
科学者とは常にその二律背反に苦しみ続け、更にそこに快楽を見出す生物でなければならない。
彼のその理念を反映したスキル。
素材が圧倒的に足りない状態でもキャスターとして最高の物を制作できるようになる。
作れば作るほど作成した物の精度とクオリティ、威力が上がっていく。

鑑識眼:A
人間観察を更に狭めた技術。
キャスターの場合は対象がどのような特性に優れているか、どのような性質を持っているかを判別する能力に優れている。


【宝具】
『赤子の怨嗟』(あしそぎじぞう)
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1

キャスターの持つ斬魄刀。
三本の刀身の根元に赤子の顔が浮かび上がる、金色の不気味な刀。
刺した者の四肢の動きを『痛覚を残したまま』完全に封じる。
解除するにはマユリが宝具を解除せざるを得ないほど追い詰めるか、マユリを消すかの二通り。
魔力消費は少なく、簡単に発動可能。

『赤子の怨嗟・毒殺蠕虫』(こんじきあしそぎじぞう)
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜100 最大補足:150

『赤子の怨嗟』の卍解形態。
赤子の頭を持つ巨大な芋虫のような生物を召喚する。
召喚した直後に致死性の毒を広範囲に撒き散らし、その巨体を持って押し潰す。
毒は宝具開放の旅に変わるので、抗体等は意味を成さない。
しかしこの毒を把握しているキャスターだけは解毒剤を生成できる。
操られるなどしてキャスター自体に逆らった場合、自壊するようにできている。
尚、壊れた卍解は二度と治らない。
しかしこのキャスターの卍解のみは『直しているんじゃなくて改造(なお)しているのだヨ』というキャスターの言葉通り、人体改造スキルにて修復可能。
魔力消費が多いため、使用するなら令呪の支援が必要か。

【weapon】
斬魄刀
耳に内臓した釜や補肉剤、超人薬などの数々の薬剤


227 : 木原数多&キャスター  ◆DpgFZhamPE :2016/02/03(水) 22:53:12 VFApMnNI0
【人物背景】
十二番隊隊長及び技術開発局局長を兼任。普段は白い肌に面妖な黒い化粧をした異相で、幾度か化粧や衣装が変わっている。
基本的に髪は青い模様、自身の身体を改造し様々な武器や仕掛けを隠している。
失った肉体を再生させる薬「補肉剤(ほじくざい)」を携帯している為、人間離れしたような出立ちだが、化粧の下は普通の顔である。
普段は隊長として普通に振舞っているが本性はマッドサイエンティストであり、研究や実験、中でも人体実験を職としている。
敵として戦う相手は敵としてより実験材料として認識しており、一護達の中では当初、織姫の能力に強い興味を抱いていた。
一方で「完璧」という言葉を嫌い、『他者より優れども完璧であってはならないという矛盾に苦しみながらも快楽を見出すのが科学者である』という独自の信念を持ち合わせている。
生体研究の一環により、内服薬(補肉剤)および外科手術による失われた肉体の再生・補助や解毒など、鬼道を必要としない医療技術を持ち場所を選ばずに即時・即効性のある高位の治療が可能。
ただし、彼の言動には治療ではなく改造の気が見え隠れする為、現世の面々はもとより、同僚の隊長格にいたるまでその方法は大いに遠慮されている。
京楽隊長に「彼なら大概のことは丸一日あればすぐに解析して結論を出す」とも言われる。
【サーヴァントとしての願い】
この聖杯戦争にて宝具を使用して様々なサーヴァントを殺害、捕獲し解剖、研究する。
【基本戦術、方針、運用法】
基本はNPCを改造した怪物や爆弾を襲いかからせる。
薬物等でも戦闘を可能とし、正々堂々と戦うことは少ない。


【マスター】
木原数多@とある魔術の禁書目録
【マスターとしての願い】
生還し、天使の力の原理、黒翼の原理を暴く。
【weapon】
なし。
【人物背景】
学園都市の研究者の一部では有名な、『木原一族』の科学者で、
第一位の超能力者(レベル5)一方通行を直接開発した、能力開発のエキスパート。
顔の左側の刺青と両手につけたマイクロマニピュレータが特徴。
暗部組織猟犬部隊のリーダー。
その中でも上の地位にいるらしく、アレイスターから直接指令を受けている。
部下を平然と使い捨てにし、雑草を抜くような感覚で躊躇なく人を殺す残虐な性格。
同じ猟犬部隊の隊員が意見しようとした際には、
部隊を人権もないクズの集まりと称し、作戦の邪魔をするなら殺しても構わないと言ったり、
失態に対しては死んだ程度では許さず、死体から心臓を取ってでもケジメを付けさせたりと、常人の枠を超えた残酷さである。
そもそも殺人に悪意とか良心の呵責が一切絡まないため、天罰術式にも引っかからなかった。
アレイスターの命令で打ち止めを捕獲するため現れ、
「『反射』を適用される直前に手を引き戻すことにより、戻るベクトルを反転=直撃させる」
という凄まじい理論の実践で一方通行を圧倒した。
十三巻においても、覚悟を決めて一段と手強くなり、
猟犬部隊を手玉に取った一方通行をも終始圧倒し続けたが、
全演算能力を失いレベル0となった一方通行に大苦戦。
最後は謎の黒翼を発現させた彼の手により吹き飛ばされて死亡した。
【能力・技能】
その至高の頭脳と高い運動能力。
木原一族のに伝わる『能力者の力の流れを読んで、その隙を突く』という戦闘術を下敷きにしている、木原神拳の愛称で親しまれる技。
しかしこれは一方通行の脳を知り尽くしたからこそ使える技で、他者には効果が無い。
しかしそれを可能にする運動能力は凄まじく、肉弾戦せはかなりの腕前を有する。
【方針】
生還するために勝ち残る。


228 : 木原数多&キャスター  ◆DpgFZhamPE :2016/02/03(水) 22:54:35 VFApMnNI0
投下終了です。
他聖杯企画にて投下したものですが、こちらにも投下させていただきました


229 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/03(水) 23:26:06 1NDgFxH20
投下します。


230 : 狩谷純&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/03(水) 23:26:27 1NDgFxH20



 黒ネズミのままじゃ 終われやしない

 今にすぐ 這い出してやる

 Blue Resistance

 Blue Resistance

 Blue Resistance

 お前の背中を そっと狙ってる


(────THE MODS『Blue Resistance』)



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



「──」

 朝、普段より目覚めた俺の目からは──、不意に、一筋の涙がこぼれていた。

 ……そうなんだ。
 俺は、聖杯戦争のマスターに選ばれたんだ。

 だから俺は昨日まで、普通に……この東京の町で、学校に通いながら生きていたんだ。
 そこには友達がいて、愛する人がいて……そんな普通の生活が、俺の中で始まっていたんだ。
 一人暮らしだったけど、それでも居場所があった。
 俺の中には、ずっと、そんな楽しい──それでいて、普通の記憶が芽生えていたんだ。
 日の当たる場所で生きていた、普通の人間としての記憶が……。

「……」

 ……ああ、楽しかった。
 普通の生活というのは、こんなに良い物なんだ、と思ってしまった。

 しかし、俺は、昨日、「普通じゃない記憶」を思い出してしまったんだ。
 暗い闇の中で過ごした、本当の十二年を……。
 十歳の時に防空壕に閉じ込められ、少ない備蓄食料で、それもいつ尽きるかわからない恐怖と戦いながら生きてきた半生を。
 ドブネズミさえも食って生きてきた、あの忌まわしい日々を。
 俺は、まるで、無実の罪で投獄されたモンテ・クリスト伯爵のような──そんな長い長い、孤独の牢の中で過ごしてきたんだ。
 それが、本当の俺だったんだ。

 そう、俺は、「岩窟王」なんだ。
 岩窟王という名の復讐鬼だった……。俺は昨日、それを思い出して──その記憶を保ったまま、また、今日を迎えてしまった。
 だから、目覚めた時、思わず涙が出てしまった。
 それが、今の楽しい日々ではなく、忌まわしい記憶こそが現実だった証だ。

 俺はもう、香港で三人も殺していた。
 ……勿論、殺人が大罪である事くらいはわかっている。
 しかし、俺は殺さずにはいられなかったんだ。
 俺を長い間、あの闇の中に閉じ込められた人間を復讐しなければならなかった。
 それだけの恨みが自分の中に、十二年も蓄積されてきた……。
 まだ、殺さなきゃいけないヤツがいた。
 そして、その辛い十二年の記憶が押し寄せてきた時、俺は、泣かずにはいられなかった。


231 : 狩谷純&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/03(水) 23:26:48 1NDgFxH20

「……ジュン」

 ──俺のサーヴァントである"ライダー"のアマゾンという男が、俺を心配したような、しゅんとした声で名前を呼んだ。
 アマゾンは、派手なガラのパンツと、同じガラのベストだけ着ていて、その下は下着もないハダカらしい。
 しかし、彼は、ただのハダカの男じゃない。強くて、ハダカで、凄いヤツだった。
 マスターである俺にだけ見せてくれた、怪物めいた「もう一つの姿」がある。
 それが彼の本当の力なのだ。

 ……なんでも、話によると、アマゾンは、幼い頃、どういうわけか南米のジャングルにいたらしい。
 そこで、バゴーという老人や、動物たちを友達にして、彼の場合は楽しく生きてきたのだという。
 敵もいた。ゲドンやガランダー帝国やデルザー軍団などと言う悪いヤツらと戦ってきた、らしい。

 アマゾンは一応、日本人らしい。気づけば親がなく、ジャングルに置き去りにされたのだ。
 その境遇は、少しだけ俺と似ていたが、決定的に違うのは、自分が置かれた不幸の中でも、大事な物に囲まれて明るく生きてきたという事だろう──。
 俺はあの暗い孤独の闇の中では、そういう風には生きていけなかった。
 彼がいたのが世界の果てなら、俺がいたのは地上に出られない孤独の牢獄なのだ。

「大丈夫か? ジュン……泣くの、よくない……」

「ああ。ありがとう、アマゾン」

「ジュン、アマゾンのトモダチ。……困った事あったら、いつでも、アマゾンに相談すると良い」

 アマゾンはそう言って俺に笑いかけていた。
 動物とも親しくなるアマゾンなのだ。俺ともすぐに仲良くなろうとした。
 さすがのコミュニケーション能力だろう。
 長い間、誰とも話さずに生きてきた俺とは違った。

 十に年間は、誰かと口をききたくても、話せる相手はどこにもいなかったし、相談などできる相手はいなかったのだ。
 最初は父がいたが、父は厳しい事ばかりを言って、俺の辛さをぶつける事ができる相手は誰もいなくなった。
 ある時から、その父も死んだんだ。

「……」

 だから、俺は、アマゾンが「トモダチ」になろうとしてくれたのを、拒絶しなかった。
 そう。俺だって、出来るのなら、多くの人と友達になりたかった。
 それに、本当なら人殺しになどなりたくはなかったよ。
 今からだって、やり直せるのなら多くの友達がほしい。
 消え去った十二年というブランクを、今から取り戻せるのなら──俺だって、そうしたいんだ。

 アマゾンの無邪気な誘いも、俺は応じた。
 アマゾンは、「トモダチ」になる時に、両手の人差し指と中指と人差し指を絡めて、手の甲を上に向け、親指と小指だけを立てたようなポーズをとる。
 これが彼のトモダチの儀式だ。
 俺はそれを受け入れて、彼とトモダチになった。
 マスターであり、サーヴァントである以前に──「トモダチ」になろうとしたのだろう。

 でも──。


232 : 狩谷純&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/03(水) 23:27:11 1NDgFxH20

(……ごめん、アマゾン)

 心の中で、アマゾンに俺は詫びた。
 ……俺は、アマゾンを、「ライダー」のマスターとして利用しなければならない。
 アマゾンをトモダチではなく、サーヴァントとして利用して、どうしても、聖杯を手に入れたいんだ。
 そして、聖杯を手に入れたら、アマゾンの事も忘れて、俺の十二年間を取り戻さなきゃならない。
 こうして普通の生活に送られた俺は、「普通に生きたい」という願いが強くなってしまったんだ。
 ごめん、アマゾン。

「ああ……。でも、大丈夫だ、アマゾン。ただ少し、昔悲しい事があった夢を……見ただけなんだ」

 俺はアマゾンにそう言った。ウソをついてはいない。
 だが、アマゾンには、俺の境遇は話していない。
 昔の事、と言われてもアマゾンはきょとんとしている。
 ……そりゃそうだ。

 アマゾンはきっと、俺に対して、「ある勘違い」をしているだろう。
 十二年間、あの暗闇の中で閉じ込められた俺は、少し、体に変調をきたして、普通と違う外見になっている。
 その外見を彼は信じ切っているのではないかと思う。
 彼は、少し考えてから、俺に言う。

「わかった。でも、無理、よくない。今日、アマゾンと一緒に遊ぶの、やめるか?」

「──いや。今日は遊ぼう、アマゾン。せっかくの土曜日なんだ。野原を思い切り走りたい……俺は……」

「無理、してないか?」

 アマゾンは、俺の反応に眉を顰めた。
 俺が、この東京にある広い土地をかけずり回れる喜びに、涙を流したのを見て……。
 俺は学校でも広いグラウンドで友達と鬼ごっこをしたり、遊具で遊んだり……そんな、十二年ぶりの喜びに胸を打たれていた。
 それはさながら、本当に十歳の子供のようだった。
 だって、俺の時間は、十歳の時に止まっているんだから……。
 アマゾンも、俺と同じで、幼い子供のように無邪気なヤツだったけど、それ以上に俺は……。

「……でも、オレも、ジュンと遊ぶの、楽しい。悲しい事あったら、遊んで忘れるの、悪くない」

 アマゾンは、結局、無邪気に笑ってこう言った。
 俺はこんな風に笑ってくれるアマゾンをサーヴァントだと思い続けている事が、ただただ後ろめたかった。

 だが、十歳の時から、十二年間も闇の中で過ごした俺にとっては、これはチャンスだった。
 だから、どんなに悪いと思っていても、俺はアマゾンを裏切るしかないんだ。
 これが長かった青春を取り戻す、唯一のチャンスなんだ……。
 俺は、十二年間も……ずっと……。

(俺は……こんな普通の日々を……やり直したい……)

 確かに、「やり直し」なんて願えば、俺が生きてきた十二年間という長い苦しみも全部なくなってしまう。
 しかし、そんなのはどうでもいいんだ。
 俺が積み上げてきた物なんて、憎しみ以外に何もないんだ。
 そんな物全部、消し去ったっていい。


233 : 狩谷純&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/03(水) 23:27:34 1NDgFxH20

 あの暗い闇の中では、俺にはなに一つとして、楽しい事が無かった。
 本当なら、十二年も生きていれば楽しい事だっていくつもある。
 だが、俺はその十二年という時を、いつ自分が死ぬかわからない恐怖や、復讐心だけで埋めてきたんだ。

(俺は、全部忘れて……日の当たる場所で、普通の人間として生きたいんだ)

 だから、俺はあの十二年間がなくなる事に、何の未練もない。
 全部忘れて、十二年という長い時を全部やり直したい。
 それくらいに、俺が生きていた長い時間は、絶望だけが友達だったんだ。

(わかるかい? アマゾン……。こんな、俺の気持ちが)

 俺は、本当に君の友達でいたいと思っている。
 だけど、俺には、それが出来ないんだ。
 君が俺のサーヴァントで、俺が君のマスターとして出会った時……俺たちは、本当のトモダチにはなれないんだ。





【クラス】

ライダー

【真名】

アマゾン@仮面ライダーSPIRITS

※厳密には「山本大介」という真名があるが、「アマゾン」と呼ばれる事が多く、当人もそちらの名を名乗っている為、それが真名として成立している。

【パラメーター】

通常時
 筋力C 耐久D 敏捷C 魔力C 幸運D 宝具A

変身時
 筋力B+ 耐久B+ 敏捷A 魔力C 幸運B 宝具A

【属性】

中立・善

【クラススキル】

騎乗:B
 乗り物を乗りこなす能力。
 彼の場合、Bランクでも動物は幻獣・神獣ランクを含め人並以上に乗りこなす事が出来るが、機械の運転は当人が好まない為、『ジャングラー』を除いて行えない。

【保有スキル】

薬剤作成:B
 自然に存在する草木を利用して生物に効く薬剤を作りだす事が出来る能力。
 彼は自身のサバイバル経験から、軽傷や発熱、小規模の感染症に対抗しうる薬効を作りだせる。

学習能力:B
 一般的な水準を超えた学習能力。
 彼の場合は、短期間で未知の言語や文化を習得する事が可能。
 また、ノウハウを知らなくても本能的に異文化を把握する事もできる。
 現時点でも直感や本能に導かれた高い状況把握能力が培われている。

野生児:A
 いかなる環境でも生存に適した行動を取れる能力。
 つまり高度なサバイバル能力であり、彼ならば密林、砂漠、紛争地帯でも問題なく、「生存」の為に適した勘を働かせることができる。

動物会話:C
 言葉を持たない動物との意思疎通が可能。
 動物側の頭が良くなる訳ではないので、あまり複雑なニュアンスは伝わらない。
 それでもアマゾンの精神構造が動物に近いせいか、不思議と意気投合してしまう。


234 : 狩谷純&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/03(水) 23:27:57 1NDgFxH20

【宝具】

『ギギの腕輪』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
 インカ超古代文明のオーパーツにして、彼の腕に直接埋め込まれた宝具。
 この宝具は、ライダーの右腕に直接埋め込まれており、彼の生命力の源にもなっている為、腕輪を他者に奪われた時点でライダーは現界不能となり、消滅する。
 また、この腕輪はアマゾンがマダラオオトカゲの改造人間・仮面ライダーアマゾン(アマゾンライダー)へと変身する為の力の源にもなっている。
 仮面ライダーアマゾンには、両手でポーズを取って「アー・マー・ゾーン!」と叫んで変身する事が可能。
 パラメーターを変身時の物に変えるほか、ツメやカッター、キバを使った荒々しい攻撃が可能になる。
 変身以外にもその腕輪の持つ神秘の力で、「失明を治す」、「身体能力を強化し、厚さ1000mの岩盤をパンチ一発でぶち抜き、さらにそのまま1000m強ジャンプして牢獄を脱出」、「鉄をも瞬時に溶かす高熱を放ち、氷漬けにされても平気になる」などの奇跡を起こす魔力の結晶でもある。

『ガガの腕輪』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
 宝具『ギギの腕輪』と対になる、もう一つの腕輪。
 普段は装着していないが、『ギギの腕輪』と合体させることで超古代文明のパワーを発揮することが可能となっている。
 アマゾンの場合は、『ギギの腕輪』と『ガガの腕輪』を合体させて「スーパー大切断」という必殺技を放つ為に一時的に召喚する宝具になる。
 尚、この宝具は元々、十面鬼ゴルゴスが所持していた物であり、彼が英霊として現界している場合はアマゾンの手に召喚できない事がある。

『見たか!乗ったぞ、炎の友達(ジャングラー)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜1000 最大捕捉:1〜100
 古代インカ帝国に伝わる秘宝「太陽の石」を動力源としたアマゾン専用のバイク。
 カウルの口を開いて銛を発射し、後部ウイングを倒して滑空飛行できる。アマゾンの脳波による無人走行が可能で、常に呼び出せる状態にある。
 最高出力:800馬力。最高時速:300キロメートル。

『友達(トモダチ)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:∞ 最大捕捉:∞
 ライダーの「非戦闘用宝具」。
 彼の学んだ「トモダチ」の概念が宝具として成立しており、相互理解しうる相手との輪を作り上げる。
 対象は人間に留まらず、命あるもの、あるいは意識あるもの全てをこの宝具の対象とし、彼が守るべき大事な存在として刻まれる。
 その契約を結んだ証明は、彼が持つ「指を絡ませて親指と小指だけを立てたポーズ」によって行われる。
 この『友達(トモダチ)』の宝具によって結ばれた相手が多いほど、ライダーは強くなる事が出来るが、「戦法」という算段や下心を持ってこれを結んだ場合は、意味を成さない。
 つまり、真心から友情を結ばなければ、宝具として成しえないのである。

【Weapon】

『ギギの腕輪』
 宝具参照。

『コンドラー』
 アマゾンのベルト。厳密には変身には関係ないが一応、変身ベルトとも呼ばれる。
 常備しており、ロープ、ノコギリ、薬研などといったサバイバル道具になる。

【人物背景】

 生後間もなく、両親と共に乗っていた飛行機が南米アマゾンで墜落。
 たまたまその事故で生存し、南米で現地の長老・バゴーに育てられ、ジャングルの中で生きてきた。
 そして成人後、古代インカの秘宝ギギの腕輪が悪の秘密結社ゲドンに狙われているとしていると知ったバゴーによって、ギギの腕輪を移植されて改造人間となる。
 ギギの腕輪を守るという使命を持ったアマゾンはバゴーの暗示で日本に向かい、そこでゲドンと戦う事になる。
 最初は言葉を話す事ができず、人間に心を開く事ができなかったが、多くの仲間と「トモダチ」になり、その驚異的な学習能力で日本語を理解していった。
 ゲドン、ガランダー帝国を倒した後は、スーツを着てアマゾンに旅立っていった。
 その後も現れた悪の秘密結社たちと戦い続けている。

【サーヴァントとしての願い】

 アマゾン、戦いキライ。
 でも、トモダチ、守る。


235 : 狩谷純&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/03(水) 23:28:16 1NDgFxH20



【マスター】

 狩谷純@金田一少年の事件簿 金田一少年の決死行

【マスターとしての願い】

 日の当たる場所で、普通の人間として生きたかった……。
 自分の十二年間を全部無かった事にして、普通に日本で生きていく人間としてやり直したい。

【Wepon】

 なし。

【能力・技能】

 狩猟技術を持ち、すばしっこい小動物もすぐに捕まえる。
 洞窟の中でも鍛え続けた為、高い体力も持つ。
 自分の命が危うい時にはドブネズミを食べてでも生き延びるほど肝が据わっている。
 旧日本軍の遺した書物だけで学習しており、日本語と中国語を使い分けられる。
 "左胸を刺されても死なない"という特異体質を持つ。

【人物背景】

 事件の犯人「巌窟王」。
 地獄の傀儡師・高遠遙一に操られる殺人鬼のひとりであり、初期シリーズの最終回の犯人である。

(一応、容疑者名に「狩谷純」の名は無く、作中でも犯人の名前が「狩谷純」である事や、現在は別の名前を使っている事が明かされているので、以下の文にはそこまで深刻なネタバレは無い。
 でもちょっとは気を付けて。)

 狩谷純の目的は、「復讐」だった。
 純は10歳の時に、金塊を発見した父と共に防空壕に閉じ込められて以来、閉じ込めた人間に復讐する事だけを生きがいにしてきた。
 光の差さない狭い防空壕の中で、純は食料や水も尽き、生きたドブネズミさえも食らって生きてきたという。
 常に極限状態で生き続けた純の身体は、ストレスによって普通に育った人間ではありえない変調をきたし、特異な体質にさえなった。

 そして、外から助けが来た時、純が防空壕に閉じ込められてから12年間が経っていた。一緒に閉じ込められた父はとうに死んでいた。
 人生の殆どが奪われた純が陽の光を見た時、純がすべき事は、自分に過酷な運命を強いた人間たちへの「復讐」しかなかった。

 純を闇の中から助け出したのは、地獄の傀儡師・高遠遙一という殺人鬼だった。
 高遠によって防空壕から救い出された事で、純は自分が疑われないトリックを用いた復讐計画を遂行する事になる。
 恩人である高遠の命令により、明智健悟に致命傷を負わせ、金田一一に罪を着せようとするなど、非情な計画も遂行。
 目的の為に手段は辞さない面もあるが、決してただ良識がない人間というわけではなく、本人も無関係な人間を巻き込む時には躊躇を見せる事がある。
 純の時間は12年前で止まっており、それゆえに純粋なのだ。
 10歳の時の初恋の人の事だけは、12年間片時も忘れる事なく心に描き続けていたというほどに。

【方針】

 聖杯を得たい。願いを叶えたい。
 普通の人間として生きたい。
 アマゾンには悪いが、彼は利用させてもらう。


236 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/03(水) 23:28:33 1NDgFxH20
投下終了です。


237 : ◆VunjjFZvPM :2016/02/04(木) 08:35:38 A0UuNcQQ0
遅れながらスレ建て乙です。
質問をしたいのですが、モブの陣営が複数脱落する登場話は投下しても大丈夫でしょうか?
他の企画では二組脱落させてる登場話もあったので気になりました。


238 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/04(木) 23:03:32 n1KSq/aU0
>>237
返事が遅くなりすみません。
モブ陣営の脱落は最大二組でお願いします。


239 : ◆.QrNUkmVxI :2016/02/05(金) 02:38:43 WOA1cSn.0
皆様投下お疲れ様です
自分も2作目を投下させていただきます


240 : 地吹雪と熱風 ◆.QrNUkmVxI :2016/02/05(金) 02:39:25 WOA1cSn.0
 ――かわいそうに。

 ライオンも象もウサギも豚も、等しく檻に閉じ込められて、一切の自由を奪われている。
 なんともむごい有様だ。この国を支配する王様は、さぞや意地の悪い奴だと見えるな。

 食い物には困らない? 敵に襲われることもないだと?
 馬鹿め。それで納得していることが、何より哀れだと言うのだ。
 自由の味を奪われるどころか、知らされることすらもないままに、飼い慣らされた動物達よ。

 ……だがな、おれは奴らとは違う。
 お前らが知らない自由というものを、おれならばお前達に教えてやれる。
 どうだ、知りたいとは思わないか?
 格子の向こうに広がる世界を。壁に阻まれることのない大地を。
 どこにでも行ける、何だってできる。どこまでだって続いている世界を、自由に駆け回れる喜びを。

 どうすればいいかだと? 簡単なことだ。
 おれについて来ればいい。
 おれに協力するのなら、お前達の自由と幸福を、このおれが保障してやるとも。

 だからその耳でよぅく聞け。このおれ様の言葉を――


241 : 地吹雪と熱風 ◆.QrNUkmVxI :2016/02/05(金) 02:40:03 WOA1cSn.0
◆ ◇ ◆

 カチューシャと名乗るその少女が、台東区の街を歩いていたのは、夕方を過ぎ夜になろうとしていた時のことだ。
 未だ高校生である彼女が、そんな時間までうろついていたのは、部活で帰りが遅かったからでも、不良に堕ちていたからでもない。
 答えは彼女の左手に宿った、十字と星の紋章にあった。
 聖杯戦争のマスター――その力に目覚めた彼女は、知らないはずの東京の街を、なんとか脱出しようとしていたのである。
 不幸にも連れ去られ、閉じ込められたカチューシャが、元いた学園艦を目指すのは、当然の帰結ではあった。

「追いかけっこは終わりだよ、お嬢ちゃん」

 本当に不幸だったのは、その程度の不幸ですらも、まだまだ序の口でしかなかったということだ。
 令呪をむき出しにしていたカチューシャは、それを他人に見られてしまった。
 それも彼女と同じように、マスターとして選ばれた人間にだ。
 その男は、彼女を見た瞬間、血相を変えて襲いかかり、彼女の命を奪おうとした。

「しかし僕も運がいい。妙な使い魔を追いかけていたら、君のようなマスターに出会えるとはね」
「な……何よ! マスターって何! それとカチューシャとどう関係があるのよ!」

 最大の不幸はここからだった。
 未だ聖杯戦争の知識を、カチューシャは何一つ教えられていない。
 ソビエトの国旗を模したような、変な刺青が手のひらにあること。
 そして何やら暗示をかけられ、偽の記憶と日常を、与えられていたらしいということ。
 それがカチューシャの知っている全てだ。哀れなことに、彼女はまだ、命を狙われる理由すらも、誰からも知らされていなかったのだ。

「あまり遊びすぎるな、マスター。あの使い魔の主が、未だ見つからないことも気になる」
「ふむ……それもそうだ。さすが乱世に生きた英雄。言うことと頭の鋭さが違う」

 男が背後の何者かと話す。
 全身に甲冑を身につけた、物々しい男の言葉を聞く。
 頭のいかれたコスプレ野郎――そんな陳腐な存在ではない。
 奴は何もない所から、突然姿を現した。
 何よりその異様を物語るのが、全身から迸る凄まじい気配だ。
 それは平和な現代社会で、安穏とした日々を送っていたカチューシャにも、痛いほど感じられるほどの殺意だった。
 こいつは、ただの人間とは違う。
 戦車道で戦ってきた、学生のスポーツマン止まりの戦士達とは、何もかもが異なっている。

「ひ……!」

 我知らず、カチューシャは後ずさった。
 子供じみたプライドを、この瞬間はすっかり忘れて、情けない悲鳴と共に退いた。
 高校生らしからぬ小さな体が、背後の建物にぶつかる。
 追い詰められた。もう逃げられない。相手との歩幅の差を考えれば、追いかけっこは非現実的だ。
 おまけにこの辺りは、人通りも少ない。助けてと声を上げたとしても、到底間に合わないだろう。
 いいやそもそも、助けが来ても、あの背後の甲冑男と、喧嘩をして敵うと断言できるか。


242 : 地吹雪と熱風 ◆.QrNUkmVxI :2016/02/05(金) 02:40:45 WOA1cSn.0
(ノンナ……)

 今まで自分を助けてくれた、頼れる副官の姿はない。
 戦場で自分を守ってくれた、戦車道の同志はいない。
 カチューシャはたった一人きりだ。守るものも何もなく、得体の知れない殺人者を前に、がたがたと体を震わせていた。
 こんなにも自分は弱かったのか。戦車を降りたカチューシャは、こうまで矮小な存在だったか。

「では、そろそろ本当に終わりにしようか」

 男が一歩歩み寄る。
 カチューシャをその手で捕まえようと、ゆっくりと近寄ってくる。

(助けて、ノンナ……っ!)

 この声が届くことはない。
 それでも願わずにはいられなかった。
 あの仲間達の存在に、すがりつかずにはいられなかった。
 どうか、誰か助けてほしい。
 この無様で弱い自分を、ここから救い出してほしい。
 でなければ私は殺される。間違いなく命を奪われる。
 それは嫌だ。死ぬのは御免だ。
 あんな男の手にかかって、仲間の顔も見ることなく、孤独に死を迎えることは――

「――っ!?」

 その、瞬間だ。
 不意にけたたましい叫びと共に、男の背後で風が吹いた。
 それもただの風ではない。無数の影が形作る風だ。
 きいきいと喚くその影は、大きな鳥か何かにも見えた。

「何だ!」
「こ奴ら、まさか――」

 猛禽によって分断された、二人の男の放った声は、次なる咆哮にかき消された。
 うおん――と鋭い声を上げて、猛獣達が現れたのだ。
 驚くなかれ、猛獣である。大都会であるはずの東京に、獣が姿を現したのである。
 暗くて判別がつきにくいが、あれは豹や虎の類か。
 それが姿を現して、雄叫びを上げながら飛びかかり、甲冑の男に牙をむいたのだ。

「ランサー、僕を守――っぎぁあああ!」

 狼狽も露わな男の声は、赤い血飛沫に遮られる。
 脇腹に食らいついた獣の牙が、悲鳴を真っ赤に塗りつぶす。

「たす……たすっ、け……」

 たちまち血にまみれた男は、獣の山の奥に消えた。
 倒れ伏した男の体に、無数の猛獣達がたかり、血肉を食い破り始めたのだ。
 余裕に満ちていたはずの声は、体を食われていくたびに、弱々しく無様なものへと変わる。
 やがてそれも聞こえなくなり、呼吸すら聞き取れなくなった時、獣はその場から立ち退いた。
 そこにあったのは死体だけだ。気づけば甲冑の男も、忽然と姿を消していた。


243 : 地吹雪と熱風 ◆.QrNUkmVxI :2016/02/05(金) 02:41:18 WOA1cSn.0
「う……ぅうっ!」

 状況を理解するまでに、数秒。
 惨殺された肉塊が、自分を襲った男だと気付いた時、カチューシャはそのおぞましさに嘔吐した。
 小さな体を震わせて、恥も外聞も何もなく、吐瀉物を道端にぶちまけた。
 獣達の姿はもうない。カチューシャを食らうつもりはないらしい。
 自分は助かったのか。果たしてこの有様で、助かったと言えるのか。

《――おやおや、可愛らしい顔が台無しだ。随分と怖い思いをさせてしまったらしい》

 その時、不意に。
 耳ではなく頭の奥底から、響いてくるような声が聞こえた。
 まるで漫画のテレパシーのような、そんな奇妙な体験を、現実のものとして感じた気がした。

「誰!? 今度は何なの!?」

 うわずった声でカチューシャが叫ぶ。
 鼓膜を通していないはずの声だが、不思議と声のした方向が分かる。
 横にも前にも姿が見えない。後ろに人がいるはずもない。
 青い瞳は遥か夜空を――頭上の方を向いていた。
 建物の上に、何かがいる。
 月の逆光をその身に受けた、黒い影が立っている。
 おおよそ人のものとは考えにくい、異様な形のシルエットが。

《そう急かすな。今降りてきてやる》

 それでも、声の主には違いなかった。
 影は建物の屋上から、素早い身のこなしで飛び降りてきた。
 壁を蹴り、より低い建物の天井を蹴り、ジグザグの軌跡を描きながら、カチューシャの前に姿を現した。

「え……」

 相対した瞬間、カチューシャは、一度己が目を疑った。
 そこに降り立った者は。
 テレパシーとはいえ、人語を使い、声をかけてきた存在は――人間の姿をしていなかった。

《おれはアサシンのサーヴァント。あんたに仕え牙となり戦う、忠実な下僕というやつだ》

 それは黒いライオンだった。
 動物図鑑で見かけたような、されど体毛の色が濃い、人間ならざる猛獣だった。
 左側に傷がついた、緑色の眼光を、爛々と光らせるけだものだった。
 百獣の王。サバンナを統べる覇者。本来ならば人間とは、決して言葉を交わせない獣。
 カチューシャを助けに来た援軍は、地吹雪轟く北国ではなく、熱風の大自然からの使者だった。


244 : 地吹雪と熱風 ◆.QrNUkmVxI :2016/02/05(金) 02:42:04 WOA1cSn.0
◆ ◇ ◆

 スカー。
 それが自らを暗殺者と名乗った、サーヴァントなる獣の名前だ。
 ここにきてカチューシャは、初めて、自分が聖杯戦争なるものに、巻き込まれたことを説明された。
 サーヴァントというのは、それを勝ち抜くために、与えられた手下であるらしい。
 英霊の座とかいう場所から呼ばれた、伝説の英雄の魂――それがサーヴァントの正体なのだそうだ。

《知恵比べなら誰だろうと受けて立つ。だが力と牙を使えと言うのなら……生憎とまったくもって駄目だ。一欠片の自信もない》

 しかし、スカーはその限りではない。
 神話とも聖戦とも縁がない、見た目通りのライオンでしかない。
 そんなスカーの力では、伝説に名を残した英霊達には、まるで歯が立たないらしい。
 ハズレを引かされたという事実は、カチューシャを大きく落胆させたが、それでも聡明な彼女は、直前の言葉を聞き逃さなかった。

「でも知恵比べじゃ負けない……アンタはそう言ったわね」
《その通りだ。マスターも賢いな。小さいなりをして頭が回る》
「バカにしないで! カチューシャは17よ! 立派な大人なんだから!」
《17というと人の歳では……ああ、これは失礼した! なるほど確かに立派なレディだ》

 やや大げさな身振りと口振りで、スカーは己の非礼を詫びる。

「本当にそう思う?」
《無論だとも。人であろうと獣であろうと、その者の価値を決めるのは見た目ではなく、品性だ》

 引け目に感じることはないと、スカーはカチューシャに言った。
 わざとらしくはあるものの、それでも褒められて悪い気はしない。少々、気恥ずかしくはあるけれど。

「……それで、さっき言ったことは、本当なんでしょうね?」
《もちろんだ。おれはか弱いライオンだが、それでも人よりも知恵が回る。それがおれの力であり、牙となるのさ》

 先ほど放った獣達がいい例だ。
 あれは自分の力で操り、主を助けるために放った兵隊達だ。
 スカーは自分の戦い方を、カチューシャへと語って聞かせる。
 彼のアサシンのクラスは、単純な暗殺者を意味するものではない。
 知恵と計略を張り巡らせ、陰謀にて敵を排除してきた、策略者としての称号なのだと。
 それが本当であるのなら、確かにただの獣ではない。
 獣が野心と私欲を持って、仲間を欺き罠に嵌めるなど、一度も聞いたことがない。
 英雄に数えられた獅子・スカーは、獣の域を大きく超えた、神童ならぬ神獣だった。
 もちろん彼の言うとおり、本物の神様の加護までは、与えられていないのだろうが。


245 : 地吹雪と熱風 ◆.QrNUkmVxI :2016/02/05(金) 02:43:27 WOA1cSn.0
《だが安心してくれていい。おれはあんただけは裏切らない。令呪を持ったマスターには、とてもじゃないが逆らえない》
「カチューシャを元の場所に、帰してくれる?」
《ああ、約束しよう。おれはあんたの味方だ。あんたがちゃんと帰れるように、存分に知恵を振るってやる》

 カチューシャの問いかけに、スカーは答えた。
 命と安全を保障すると、自信をもって約束してくれた。
 正直言って現状は、まだまだ分からないことだらけだ。
 だからこそ、スカーの強い言葉と、勇猛なライオンの姿は、カチューシャにとっては心強かった。
 どちらかと言うと、プラウダ的には、ロシアの雪豹の方が好みではあったが。

「……ま、アテにはさせてもらうわ。せいぜいカチューシャのために働きなさい」
《仰せのままに、マスター殿》 

 恭しく頭を垂れるスカーを、見下ろす。
 そうだ。ここには同志達はいない。アテになるのはこいつだけだ。
 そのスカーの力を頼りにするしか、元の学園艦に帰る方法はないのだ。

(待っててちょうだい。カチューシャは必ず生きて帰るわ)

 聖杯などに興味はない。
 いくつか叶えたい欲望はあったが、それは努力でもどうにかなるものだ。
 カチューシャの最大目標は、あくまでも生きて帰ることにあった。
 頼れる同志達の存在が、いかに大きなものだったかを知った。
 だからこそ、彼女達の待つプラウダ高校に、何としても帰らねばと思った。
 きっと隊長である自分のことを、心配して探してくれているはずだ。
 特に忠誠心厚いノンナは、気が気でないといった様子で、血眼になっているはずだ。
 彼女はそういうところがある。その甲斐甲斐しさは嬉しいが、時折、しょうがない奴だとも思う。
 だから隊長であるカチューシャが、行って安心させねばならない。
 それが学校のチームを預かる、偉大なる隊長の使命なのだから。

(そのためにも、絶対に勝ち残る)

 未だどうしても不安はある。
 策略家ではあるものの、自身の力は弱いと言うスカー。
 そしてそれ以上に、未だ体験したことのない人殺しを、あるいは犯してしまうかもしれない自分の心。
 戦車道の達人といっても、結局は人死にが出ないように、徹底して安全化された戦場の話だ。
 本物の殺戮現場では、競技場と同じように、冷静に立ち回れるとは限らない。
 だとしても、やるのだ。
 それでもカチューシャは戦って、戦い抜き勝ち残る必要があるのだ。
 だからこそ、覚悟せねばならなかった。
 この先何があったとしても、必ず生きて帰るという覚悟を。
 たとえこの手を血に染めてでも、元の日常を取り戻すという覚悟を。
 小さな肩を震わせながらも、少女は手を固く握り締めた。


246 : 地吹雪と熱風 ◆.QrNUkmVxI :2016/02/05(金) 02:44:14 WOA1cSn.0
◆ ◇ ◆

 ふん。せいぜい図に乗っているがいい。
 見てくれより品だと? 間抜けな猿め。
 お前のような小さな餓鬼が、サバンナで生き残れるものか。
 生存競争でものを言うのは、結局知恵よりも力なのだ。でなければこのおれでなくあのムファサが、王に選ばれたりなどするものか。

 そうとも、おれは納得していない。
 おれが辿った生涯を、これっぽっちも受け入れていない。
 力がなかったばっかりに、王の座を兄上様に奪われ、やっと手に入れた王国も、小僧に奪い返された生涯をな。
 だからおれはやり直す。聖杯の力を手に入れて、再びプライド・ランドに蘇る。
 聖杯を使うべきはこの娘ではない。このおれこそが相応しいのだ。

 ……はは、そうだとも。
 何も聖杯を扱えるのは、マスターであるお前だけじゃない。
 優勝賞品を使う権利は、サーヴァントであるおれにも有るんだ。
 もっともこのことはお前には、絶対に教えてはやらないがな。
 知恵比べなら誰にも負けない――それは敵相手に限った話じゃない。
 おれとお前の知恵比べは、とっくの昔に始まってるんだ。
 お前に信用させる戦いのために、あの格好のカモ達を、おびき寄せたその時点からな。

 さぁ、せいぜい踊ってくれよ。
 令呪切れで脱落なんて、間の抜けたオチなど許すものか。
 お前は生かさず殺しもせず、このおれを聖杯のところまで、案内させるために使わせてもらう。
 そしてその目前に行き着いたところで、おれがお前を殺してやる。
 そうすれば聖杯はおれのものだ。願いを叶えるその権利は、このおれの手に与えられるのだ。
 断じてお前のものじゃない。聖杯はおれのものになる。
 そしておれは今度こそ、プライド・ランドに君臨する。
 今度こそこのおれこそが、プライド・ランドの王になる。
 そのためにおれの手足となって、せいぜい甲斐甲斐しく働くことだ。
 真の王たるおれのためにな。

 ハハハハ……!


247 : 地吹雪と熱風 ◆.QrNUkmVxI :2016/02/05(金) 02:45:58 WOA1cSn.0
【クラス】アサシン
【真名】スカー
【出典】ライオン・キング
【性別】男性
【属性】混沌・悪

【パラメーター】
筋力:D 耐久:E 敏捷:D+ 魔力:E 幸運:E 宝具:B

【クラススキル】
気配遮断:B
 サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
 完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。

【保有スキル】
謀略:B
 歴史に残る悪巧み。
 単純な軍隊指揮のほか、騙し討ちや謀殺など、悪辣な方面にも効果を発揮する。
 マスターと交流することによって、文明の知識や道具を得たスカーの策略は、際限なく強化されていくだろう。

話術:B
 言論にて人を動かせる才。
 国政から詐略・口論まで幅広く有利な補正が与えられる。
 弁論において、窮地にあっても挽回の可能性を手繰り寄せる。
 ちなみにスカーは、人語を話すことができないため、人間との会話はテレパシーによって行っている。

心眼(偽):C
 動物的直感に基づく危険回避。
 視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。

カリスマ:E
 軍団を指揮する天性の才能。統率力こそ上がるものの、兵の士気は極度に減少する。
 一度は王国を手に入れたスカーだが、その後国は荒廃している。為政者としての資質は、それほど高くなかったと思われる。


248 : 地吹雪と熱風 ◆.QrNUkmVxI :2016/02/05(金) 02:46:45 WOA1cSn.0
【宝具】
『偽・百獣の王(キング・オブ・プライド)』
ランク:C 種別:対獣宝具 レンジ:1 最大補足:50匹
 一時とはいえ、プライド・ランドの王として君臨した、その生き様が宝具と化したもの。世にも珍しい対獣宝具。
 NPCの動物を、話術をもって洗脳し、自らの一部として操ることができる。
 サーヴァントの一部であるため、他のサーヴァントを攻撃できるだけの神性も付与される。
 ただしスカーの王としての器は、名君と呼べるほどのものではなく、その効力は半減している。
 (然るべき王者が『百獣の王(キング・オブ・プライド)』を備えていた場合、操れる最大数は100匹となる)
 また、スカーはハイエナに恨まれながら死んでいったため、同じイヌ科の動物を操ることはできない。

『暗黒王土(プライド・ロック・ヘルファイア)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大補足:-
 固有結界。心象風景の具現。
 かつて治めた王国の都「プライド・ロック」の周辺を、聖杯戦争の舞台に現出させる。
 結界内には、彼が最期に見た火の海が、無念と王族への憎悪によって広がっている。
 ……しかしこの燃え盛る炎は、スカーにとっては武器でもあり、同時に弱点にもなっている。
 身動きの取りづらい空間は、宝具で操った軍勢を展開するのには向かず、
 外界から隔絶された世界は、アサシンらしく逃げ隠れするのにも向かない。当然火の中に突き落とされれば、スカー自身も身を焼かれ死ぬ。
 自身のあらゆる強みを打ち消すこの宝具を、敢えて発動するその時は、スカーが戦略的にほぼ「詰んだ」時と考えていいだろう。
 (然るべき王者が備える『熱風王土(プライド・ロック)』には、このような炎は存在しない)

【weapon】
動物
 宝具『偽・百獣の王(キング・オブ・プライド)』によって、洗脳された動物達。
 台東区に陣取ったスカーは、日本一の動物園から、兵隊を無尽蔵に調達できる。


249 : 地吹雪と熱風 ◆.QrNUkmVxI :2016/02/05(金) 02:47:37 WOA1cSn.0
【人物背景】
アフリカの王国「プライド・ランド」を、一時的に治めた王族。
兄である先王ムファサを、蛮族達と結託して殺害し、謀略にて王としての地位を奪い取った。
しかし抹殺したはずの、王子シンバと対決し敗北。責任をなすりつけようとしたの聞かれ、蛮族の手で殺されている。

……上記の通り、裏切りと謀にまみれた生涯を送った反英霊だが、実はスカーは人間ではない。
そもそもプライド・ランドとは、サバンナの動物達の王国である。
彼が手を結んだ蛮族もハイエナであり、王国の頂点に立ったスカーもまた、人ならぬオスのライオンである。
アメリカの狼王ロボなど、英霊の座に動物が名を連ねる例はゼロではないが、反英霊となるほど、強烈な逸話で語られる者はほとんどいない。
それはひとえにスカーの持つ、獣の領域を超えた知恵と人心掌握術、そして野心と残忍性のなせる業であると言えるだろう。

本人の戦闘能力は、ただのライオンであることもあり、ライオンなりのものしか持たない。
そもそも生前にムファサに対して、「爪と牙を使った戦いではムファサに勝てない」と語っており、
あまり力には恵まれていなかったものと考えられる。
また、英霊の座にはスカーの名前で登録されているが、本名は別にあったとも言われている。

【サーヴァントとしての願い】
プライド・ランドの王として再び返り咲く。そのためにカチューシャを利用する

【基本戦術、方針、運用法】
さすがに人間よりは強いが、本人の戦闘能力は底辺に近い。
そのためマスター自身や、宝具で操ったNPCを利用し、敵マスターを暗殺するのが基本方針となるだろう。
更には生前の手並みもあり、他のサーヴァントと同盟を組んで、ライバルを減らすよう仕向けるという選択肢もある。
アサシンでありながら自ら手を汚さず、手駒を使って相手を追い詰めるという、珍しい運用法を要求するサーヴァントである。


250 : 地吹雪と熱風 ◆.QrNUkmVxI :2016/02/05(金) 02:50:13 WOA1cSn.0
【マスター】カチューシャ
【出典】ガールズ&パンツァー
【性別】女性

【マスターとしての願い】
生きてプラウダ高校に帰る

【weapon】
なし

【能力・技能】
騎乗(戦車)
 戦車の乗組員としてのスキル。車長のスキルを保有する。
 現在の地位を得る以前に、どういった役職を経験しているのかは不明。
 公式イラストを見る限り、体格的にも装填手には向いていないらしい。

軍略
 一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
 ただし、あくまで人死にの出ない、競技による戦闘においての話である。
 圧倒的兵力で敵陣を押し潰すスチームローラー作戦や、極地で敵を包囲し疲弊させる持久戦などを得意とする。
 また、どちらかと言えば、降雪時の戦闘に明るい。

【人物背景】
東北のプラウダ高校に通う、高校三年生の少女。
その割には身長127センチと、非常に幼い容姿をしている。
昨年から隊長として戦車道チームを率い、全国大会に優勝したこともある名将である。
今回は全国大会で、大洗女子学園に敗北した後からの参戦となる。

通称「地吹雪のカチューシャ」「小さな暴君」。あるいは「ちびっこ隊長」。
よく言えば大胆で物怖じしない人物であり、悪く言えばわがままで子供っぽい人物。
副官に肩車をしてもらってまで敵を見下そうとする、大事な試合の朝にお寝坊をするなど、人間としては欠点だらけである。
そんな彼女が、陰口こそ叩かれながらも、隊長としてチームを率いているのは、ひとえにその実力のなせる業と言えるだろう。
学校の午後の授業は、カチューシャが昼寝から目覚めた時から始まると言われており、名実ともにプラウダ高校の支配者として君臨している。

本名は不明だが、今回の聖杯戦争の舞台では、その日本人らしからぬ名前を、誰もが疑いなく受け入れている。
ちなみに、ロシア語の歌詞を覚えることくらいならできるものの、日常的にロシア語で会話することはできない。

【方針】
聖杯戦争に優勝する。スカーは戦闘向けのサーヴァントではないので、とにかく知恵を使って戦う。


251 : ◆.QrNUkmVxI :2016/02/05(金) 02:50:53 WOA1cSn.0
投下は以上です
スカーのステータスは、「第二次二次キャラ聖杯戦争」様の候補作を参考にさせていただきました


252 : 名無しさん :2016/02/05(金) 09:02:03 zrjZv8l20
>>238
了解しました。
ご返答ありがとうございます。


253 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/05(金) 21:39:09 uxajKBHM0
随分と貯め込んでしまいましたが、感想を投下します。


門矢士&ライダー
ディケイドがSCPを破壊する……?
何とも面白い感じですが、浮浪者という役割が吉とでるか凶とでるかですね。
最強宝具が活躍できるような瞬間が来たら非常に熱いです。
投下ありがとうございました。

エドワード・ザイン&SCP-8900-EX
マスターとは一体?
SCP勢から出るとしても、まさかこのような形で登場するとは予想外でした。
もし発動できたら厄介な宝具ですが、それを代無しにしてしまう要因をどうにか出来るか期待です。
投下ありがとうございました。

馳尾勇路&バーサーカー
まさか候補作でも早速あの兄が触れられるとは……
馳尾は彼自身の断章を抱えている以上、もし悪化してしまったら最悪ですし
バーサーカーのヴラドもいつ牙を向けるか分からない非常に危ういですね。
投下ありがとうございました。

浅野学秀&ライダー
同じ作品なのに出会っていない二人(?)ですね。
こういう形であっても、ライダーの殺せんせーがE組に関わっていたのを知れば
また違った学秀の姿も見られるかもしれません。
投下ありがとうございました。

松野カラ松&アサシン
アーサー王のエクスカリバーに匹敵する丸太を見つけたよ!
カラ松の方が笑わせに来て、アサシンの明がシリアスをやるいい感じのコンビですね。
丸太が通用しない相手にはどのように立ちまわるのか見ていたいです。
投下ありがとうございました。

霊烏路空&キャスター
とんでもない邪神が来てしまった……しかもデミ・サーヴァントとは
嫌がらせをしようとする目論みだけで十分不安を感じてしまいます。
何よりマスターの空は全てまでとは言いませんが、取り戻して欲しいところです。
投下ありがとうございました。

檜山達之&セイヴァー
救世主はガラじゃないと言いつつ、立派な思いを持つ乾巧と
すでに人を殺めたという点では一般人のマスターとは覚悟が違う檜山ですが
お互いに火による繋がりがあるのが面白いところですね。
投下ありがとうございました。

二宮飛鳥&アサシン
ここにもマスターを殺そうとしているサーヴァントが……まだ大丈夫でしょうが。
実際のところ、ある程度意思疎通出来ているからこそ敵になると恐ろしい。
飛鳥はまだアサシンの曲識の本性を分かり切っていないので不安で一杯です。
投下ありがとうございました。

安部菜々&キャスター
本物の宇宙人には宇宙人ネタが通用しなかったよ……
聖杯戦争の概要を曖昧にしか説明しないキャスターは非常に悪意がありますね。
菜々がキャスターの本性と聖杯戦争を知ったら、どう動くか気になる話でした。
投下ありがとうございました。


254 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/05(金) 21:40:16 uxajKBHM0
西木野真姫&セイバー
マスターが病院関係者というのは優位に立ちまわれる可能性ありますね。
敵サーヴァントに対し思うセイバーの剣崎の姿は悲しさを感じます。
真姫と剣崎が改めて聖杯戦争に逆らおうと思う過程は良かったです。
投下ありがとうございました。

黒木智子&アサシン
開幕早々虐殺から始まる時点で、もこっちが可哀想でなりません。
アサシンのスペランカーがまだ良心的なのが救いといったところでしょうか。
ただ、もこっちの性格を考えるとうまく聖杯戦争で生き残れるか不安ですね
投下ありがとうございました。

相川始&バーサーカー
本当に登場キャラが被ってしまったのが申し訳なく感じています……
始が些細な切っ掛けで記憶を取り戻して、バーサーカーの682と邂逅する描写は
かなり良かったです。聖杯戦争を把握していない以上、始の今後が気になりました。
投下ありがとうございました。

松野トド松&セイバー
ある程度、聖杯戦争を把握しているにしても伏せられている点がトド松には重要ですね。
一応、セイバーことフランドールと意思疎通が出来る点は良いので
何とか関係を保って聖杯戦争に挑んで欲しいところです。
投下ありがとうございました。

桐敷沙子&バーサーカー
マスターもサーヴァントも人を食う化物同士ですね。
だからこそお互いに共感できて、共に行動しようと思えられる。中々良い主従です。
沙子は吸血鬼の類なのでその辺りを注意し聖杯戦争を頑張ってもらいたいです。
投下ありがとうございました。

吉井明久&アーチャー
お互い聖杯戦争には反対の意を表明しましたが、吉井が若干不安な部分があります。
アーチャーの黒子がその辺りをうまくサポートし、何とか聖杯戦争からの脱出を
実現させて欲しいところです。
投下ありがとうございました。


255 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/05(金) 21:43:02 uxajKBHM0
今日の感想はここまでです。残りはまた後日投下しようと思います。
続いて3つ目のオープニングを投下します。


256 : ある兄妹、もしくは姉弟の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/05(金) 21:44:46 uxajKBHM0
【1日目】


一人の少女が彷徨っていた。
決して迷子とか、浮浪者という訳ではなく、彼女は大切な人を探している。
彼女も、一体どうして彼のことを忘れていたのだろうか? と疑念を抱くほど重大な事件だった。

その少女が探す者は、未だ行方不明。
片っぱしから知り合いや友人に尋ねても首を傾げて「さあ」と答えられるばかり。
むしろ「誰? それ」と聞き返されるくらいのものだ。
異常だ。
少女の探す者は、周囲に影響を与えるほど重要な人間だったのに皆どうして「知らない」と口にするのか。
どうして――家族である母ですら『彼』を記憶していないのだろうか……?

少女……先導エミは呟く。

「アイチ……」

エミが探しているのは、彼女の兄――先導アイチだった。
昔まではおどおどしていて頼りない、毎朝なかなか学校に行こうともしない。
そんな兄はカードゲームのお陰で変わっていった。
エミもアイチに続いてカードゲームをするようになった。格別、仲が悪くない。良い方だろう。
むしろ、エミの方が兄であるアイチを心配している程。

なのに――最近までアイチの存在を忘れていた。まるでこの世に存在していないかのように。
自分が実の兄を忘却していたことは異常だが、周囲の友人やアイチの知り合いですらアイチを忘れていた。
母親ですら実の息子を忘れている。
果たしてここは……エミの知る世界なのだろうか?
世界に恐怖を覚えたエミは周囲から孤立し、カードゲームで遊ぶのを止め、兄探しに没頭し始めた。

少なくとも友人など親しい人間は兄を記憶しておらず、学校も兄の存在がなく、戸籍までは分からない。
この調子では警察に相談したところで妄想に取りつかれた少女として扱われるだろう。
結論からして、先導エミは途方に暮れていた。
兄の手掛かりは一切ないのである。
最早、どこへ向かうべきか。一体どうすれば事が解決するのか。
一人で抱え込むしかないだけで、エミは不安で押しつぶされそうだった。

当てもなく住宅街を彷徨っていたエミを呼びかける声が一つ。

「どうかしたの?」

エミが振り返ると、通りすがりのシスターがいた。
そして、シスターだからこそ一人寂しく歩くエミの存在に気をかけたのかもしれない。
例え心配をしてくれたとしても、エミはシスターに話す内容は決まっている。

「あの……アイチを知りませんか? えっと、青髪の高校生くらいの男の子で――」

必死にアイチの特徴を説明するエミ。
シスターは心当たりを思い返す様子を見せてから返事をした。

「見かけていない。……わたしも日本には長く居ない。最近ここへ来たばかり」

顔立ちを見れば、シスターが日本人ではないとエミも察する。
エミの中に暗い感情が積もる。アイチを探すのは無謀なのではとエミも半ば諦めを感じ始めていた。
すると、理由もないだろう。些細な会話としてシスターが尋ねた。

「探しているのは友人?」

「いえ、私の兄です。突然いなくなってしまって、それで……」

「……兄」

困惑するシスター。どういう訳か彼女の瞳に涙が浮かびあがっていた。
エミがシスターにそれを問い詰めようとしたが、シスターは言葉もなく踵を返し立ち去る。
確たる証拠もないが、あのシスターは周囲の知り合いたちとは少し違う。
故に、エミはこの状況が――この世界そのものが異界だと理解したのである。


257 : ある兄妹、もしくは姉弟の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/05(金) 21:45:59 uxajKBHM0



都内から少し外れた住宅街にその教会はあった。
ここではないどこかにもありそうな、ひっそりとある、それでいて全うな聖なる場所。
例え教会であっても、ここは聖杯戦争にとって重要な『位置』ではない。
だが、聖杯戦争と無縁ではなかった。

教会にいる一人のシスター。
彼女はたまに思う事があった。何故、自分は『この道』に至ろうとしたのだろう――と。
結果ではなく過程が曖昧で、いつも引っ掛かってばかり。

だが、ある日。
前ぶれもなく突然、彼女は思い出してしまったのである。
そして、彼女は深く後悔してしまった。


あたしは何故あの少女に声をかけてしまったのだろう。
あの……兄を探す少女。
きっとあそこで彷徨っていなければ、あたしは声をかけなかった。この先、永遠に記憶を取り戻す事もなかった。
なのに―――


思い出したくなかった。否、思い出し、罪を償わなければならなかったのに。
何故、忘れてしまっていたのだろうか?
彼女は自らの罪に押しつぶされそうになっていた。

瞬間。
彼女の前に、一人の英霊が現れた。彼女のサーヴァント・ランサー。
一見して『ランサー』であるとは思えないのは当然だった。

ランサーは少女に見えた。
ランサーは槍を所持していなかった。
ランサーは―――どちらかと言えば『魔法使い』である。

そして、少女のランサーから聖杯戦争の概要を知り、シスターは漸くここへ導かれた理由を察した。
少女のランサーが棒つきキャンディを口にしながら問う。

「あんたは魔法使いでも何でもないけど、聖杯を手に入れるつもりはあるかい」

シスターは静かに答えた。

「ある。あたしは――聖杯を手に入れたい。聖杯を手にし、許されたい」

「許される?」

「……『弟』に許してもらいたい」


258 : ある兄妹、もしくは姉弟の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/05(金) 21:47:05 uxajKBHM0
彼女――ホット・パンツと名乗るはかつて弟を殺める『罪』を犯した。

いつもの山中で……いつのように弟と木の実を拾いに訪れた先で、熊に出くわしてしまった。
普段、いつも通りならば、熊に出くわす事は無かった。
熊の痕跡すら、あそこにはない。だから、だからこそ油断してしまったのかもしれない。
酷く餓えた熊だったらしく、食い殺そうと迫り、諦めの様子が欠片もないのだ。
このままでは弟と共死にすると恐怖したホット・パンツは――

弟を捨てた。

そして、ホット・パンツは生き延びた。

誰もが『事実』を知らず、誰もが彼女に同情してくれる。
故にホット・パンツは、自分の住んでいた村に……自分の両親のところに居る事が耐えられなかった。
だからこそ修道院に足を向けたのである。


話を聞いた少女のランサーは沈黙を保っていたが「ふうん」と素っ気ない態度を取る。
ホット・パンツの方から問いかけた。

「ランサーの望みは?」

「あたしの目的はグリ・ム・リアってばーさんを倒すことだ。聖杯を手に入れて、直ぐぶっ倒す」

それと、もう一つあるが。
ともあれランサーはホット・パンツが明確に聖杯を手にする意思があるだけで十分だった。
聖杯を手に入れたいからこそ、そうではないマスターなのが面倒なのだ。

「要するに利害は一致したって事だね。戦争が始まった後で、弱音を吐いたりするんじゃないよ」

ふと、穏やかな雰囲気の中、歌声が聞こえる。
今、教会の前を通り過ぎようとしている子供――それも少女が口ずさんでいるものだろう。
ランサーは思いが過った。

ランサー……真名はアクアという彼女のもう一つの望みは、ホット・パンツとは真逆。


『妹』を殺す事だった。


かつて自分の国を滅ぼしたグリ・ム・リア。
女神を名乗る彼女の組織に――死んだはずの『妹』がいた。
『妹』は壊れていた。もはやかつての『妹』ではなく、明確な敵でしかないのだろう。
だが、彼女はやはり歌を口にしているのだった。
大好きだった歌、何でもかんでも歌にしようとする――……

アクアは、あの狂った『妹』を殺さなければならない。
彼女を倒す事が破壊の魔法を会得した答えだと信じて、全てを破壊するのだ。
たとえそれが自己満足だとしても。


259 : ある兄妹、もしくは姉弟の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/05(金) 21:48:09 uxajKBHM0
【クラス】ランサー
【真名】アクア@マテリアルパズル
【属性】混沌・善

【ステータス】
筋力:E 耐久:D 敏捷:E 魔力:A+ 幸運:D 宝具:C

【クラス別スキル】
対魔力:C
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。


【保有スキル】
アメ:A
 アメを舐めている間は魔力消費が抑えられる。
 また、アメによる魔力回復量も多い。

戦闘続行:C
 名称通り戦闘を続行する為の能力。往生際の悪さ、もしくは生還能力。


【宝具】
『スパイシードロップ』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:1~30人
 アメ玉を魔力に変換し、破壊エネルギーを作り出す攻撃魔法。
 爆弾という訳でもないので火や空気などは関係しない。ランサー自身に爆破の影響は無い。
 アメ玉を投げつけて攻撃も可能だが、スティックなどで直接叩きつける方が強い。
 時限爆弾や地雷のような遠隔爆破も可能。

『ブラックブラックジャベリンズ』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:200人
 10個以上のアメ玉に魔力を込め、狭い範囲で弾き合わせる事により威力を上昇。
 槍のような形状をつくり対象を貫く大技。魔力を込めれば込めるほど威力は上昇する。


【人物背景】
妹を手離した姉。
ドーマローラ国が滅んだ際、不老不死になった三人のひとり。
13歳の時に不老不死になったので、その姿で固定されている。
妹を守れなかった後悔を、グリ・ム・リアと自分自身の怒りに変えていた。
しかし、妹は生きており。そして、狂っていた。

【サーヴァントとしての願い】
グリ・ム・リアを、妹を倒す。



【マスター】
ホット・パンツ@ジョジョの奇妙な冒険

【マスターとしての願い】
聖杯を手に入れ、罪を許される。

【能力・技能】
クリーム・スターター
 スプレーヘッドがついたスプレー型のスタンド。
 肉を搾り取って、スプレー状に放射する能力を持つ。

【人物背景】
弟を差し出した姉。
「スティール・ボール・ラン」では聖なる遺体を集めれば罪を赦されると信じていた。


260 : ある兄妹、もしくは姉弟の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/05(金) 21:49:17 uxajKBHM0




何かが狂っている。
自覚したエミは行動を取ろうとした。手段は幾らでもあるが、まずはここが『東京』ではない証拠を。
最早、『東京』から脱出するべきではと計画を練り始めた。
中学生のエミにとって、まだ覚束ないものだが何もしないよりはマシだ。
だが、エミの想像以上に『東京』は異端な世界に変貌していたのだ。

電車やバスなどの交通機関は動いている。しかし、『東京』よりも外に出る事は許されていない。
目に見えない力によって防がれていた。
彼女なりでインターネットで調査を続けていると、ニュースの速報として一際異常な記事を発見する。

殺人鬼。

ある博物館から犯行は開始し、現在も警察官が何名か死亡。
犯人は逃亡中。
そんな夜――丁度翌日になる深夜0時だった。

「…………」

エミは母親が就寝したのを確認してから、彼女なりに用意した荷物を手に、家から抜け出した。
交通機関は駄目であれば、自力で『東京』から脱出するのは可能だろうか?
エミは希望を抱き、県境を目指そうとしていた。
逆に、それこそが無謀だが、それしか手段が思いつかなかったのも事実。

地図でルートを確認しようとした時、手の甲に何かついているのを見つけた。
刺青のような模様。
途端にエミの中で恐怖が込みあげてきた。軽くこすっても模様は消える様子はない。
無論、エミは刺青をするような不良少女ではない。エミの記憶によれば、さっきまではなかった気がする。

母親の仕業?
だとしても何故?

「…………っ」

兄のアイチが消えた。それから全てが狂っている。
かつては不気味なほど馴染んていた日常に、エミは再び溶け込む勇気すらない。
日常から逃れなければならない。


「――――そこで何故立ち止まっている?」


「え?」

閑静な住宅街に、エミしかいなかったはずの場所に、謎めいた一人の男の姿があった。
深夜、暗いせいもあって顔立ちなどはハッキリとしないが、この時間帯にいることすら奇妙である。
エミは訳が分からなかったものの、例の――殺人鬼のニュースを脳裏に過らせ、顔色を変えた。


261 : ある兄妹、もしくは姉弟の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/05(金) 21:50:48 uxajKBHM0
エミに迷いはない。直ぐ様、その男から逃げ出した。
走るしかない。迷路のような住宅街を走り続けた。
決して体力に自信があるエミじゃない。しばらくすると速度が落ち、歩き始める。
振り返ると、あの妙な男の姿はない。

巻いたと安堵した矢先、声が聞こえた。

「お前は妙だな。やはりマスターか。お前のような子供……しかも魔術師でもないとは」

「!?」

例の不審な男だと声色だけでエミは判断した。
姿が明らかになれば、さらに不審者であると分かる。コスプレとしか思えない騎士の恰好をしていたからだ。
片手には剣が、光沢のあるそれは本物のような気がする。

エミは叫ぼうとしたが、不思議なほどに叫べなかった。
いざとなったら出来ないとは、まさにコレなのだと体感する。
ただ震える声でエミは呟いた。

「さ……さ、殺人鬼………?」

「ハッ、あんなマスターが制御出来んバーサーカーと一緒にされてはな。奴は、魔力切れで消滅するのが末路だろう」

マスター?
バーサーカー?
魔力……?

エミには理解できない用語をずらずらと並び立てて、騎士は剣を向ける。

「成程。その様子ではサーヴァントを召喚していないか。ならば、殺すのは容易い」

「サーヴァント……そ、それ、アイチと関係があるの……!? アイチがいなくなった事と――」

エミの質問は無視された。騎士は無情に剣を振り下ろした。
少女の生に意味はあったのか?
少女の死に意味はあったのか?
誰も知る事なく、彼女は終わろうとしていた―――騎士が殺されなければ。

騎士も油断していた訳ではないだろう。
振り下ろす直前、ソレに気付いた。
エミが目をつむった瞬間、彼女のサーヴァントが召喚されたのである。


262 : ある兄妹、もしくは姉弟の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/05(金) 21:52:05 uxajKBHM0


      青い炎。


エミが召喚したサーヴァントは英霊とは思えないほど幼い少女の姿をしており、青の炎が燃えた瞬間。
少女の姿は『人魚』へと変貌していた。
恐る恐るエミが目を開けた時には、騎士は光の粒子となって消滅し、宙を浮く人魚の少女がいた。
突然の展開に、エミは驚く。

「人魚がいる……!?」

「あんたがブルーベルのマスター? って、魔術師じゃなくない!?」

にゅーと文句垂れる人魚の少女・サーヴァントの名前はブルーベルというらしい。
エミに不満を持つブルーベルよりも、エミの方が異常な状況に戸惑っている。
しかしながらエミは自分なりの対応を精一杯した。

「ブルーベルちゃん? 私を助けてくれたんだよね」

「そうじゃなくってキャスターのクラスだから……にゅ〜別にいいや。あんたの名前は?」

「私は先導エミ――あっ、そうだ……」

ふとエミは思う。
アイチのこと――異常な『東京』のこと。
ブルーベルなら何か知っているかもしれない。

「ブルーベルちゃんは、もしかしてアイチのこと……知ってたりする?」

「アイチって誰?」

やはり知らない。
不可思議な少女ですら知らないとなれば、アイチはどこへ消えたのだろうか。

「アイチってのを探すのに聖杯が必要ってこと?」

「聖杯……? 私、本当に何が起きているのか分からないの。さっきの騎士の人だって……何言っているのかサッパリで」

「なーにも知らないっておかしくない!? プ〜〜〜〜! 状況変すぎでしょ」

聖杯。聖杯戦争。
そのワードだけはエミの中でも引っ掛かった。
きっとそれが、アイチの消えた事を関係があるはず――だからこそチャンスを無駄にしない為、エミは勇気を振り絞る。

「ブルーベルちゃん。アイチを――私の『兄』を一緒に探して下さい!」

「……兄」

エミがアイチなんて呼び捨てをしているから、兄であるとはブルーベルも想像していなかったのだろう。
意表をつかれた表情をしていた。
そして、何より。


ブルーベルにもかつて『兄』がいた。


「いきなりこんな事、お願いするのは悪いと思うけど。私、ブルーベルちゃんにしか頼れる人がいなくて……」

「……」

「ここにいる人達。ううん、この世界全部がおかしいから、早くここから出たい。
 でも、もしここにアイチがいるなら――」

「――いいよ」

「え!?」

あっさりとしたブルーベルの返答に、エミの方が半信半疑の状態に陥る。

「ほ……本当にいいの?」

「だってエミがマスターだと聖杯なんかぜ〜〜ったい手に入らない気がするもん!」

「えっと……よく分からないけど、ありがとう!」

エミが兄を探しているのに同情した……なんてブルーベルは口にしないだろう。
しかし――決して、何も感じなかった訳ではない。
一般人で魔力もまるでない、聖杯を手に入れようなんて無謀なマスターだから仕方ない。
ブルーベルは、きっとそのように言い訳するだけなのだから。


263 : ある兄妹、もしくは姉弟の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/05(金) 21:53:11 uxajKBHM0
【クラス】キャスター
【真名】ブルーベル@家庭教師ヒットマンREBORN!
【属性】混沌・悪

【ステータス】
(修羅開匣前)
筋力:E 耐久:E 敏捷:C 魔力:B 幸運:E 宝具:B

(修羅開匣後)
筋力:B 耐久:B 敏捷:A 魔力:B 幸運:E 宝具:B


【クラス別スキル】
陣地作成:A
 自身の周囲に雨の炎による防御壁を作り上げる。
 その内側は純度100%の雨の炎のプール。そこで相手の動きを封じるのが本領。

道具作成:A
 巨大なアンモナイトの殻を作り出し、相手を攻撃する。


【保有スキル】
雨の炎:A
 個々が持つ死ぬ気の炎の一種。青い炎。鎮静の性質をもつ。
 炎の推進力によって宙に浮き自由に飛び回れる。
 
単独行動:C
 マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
 Cランクならば1日は現界可能。


【宝具】
『雨の人魚』(ショニサウロ・ピオッジャ)
ランク:B 種別:対人(自身)宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
 肉体に埋められた匣兵器を解放(修羅開匣)することにより人魚の姿をとり、戦闘力が向上する。
 超人的な心肺能力と潜水能力、鉄壁のバリアを持つ為、水中戦では無敵と言える。

【weapon】
雨のマーレリング
 ジッリョネロファミリーに代々伝わっていたリング

【人物背景】
兄を失った妹。
未来の世界にて猛威を振るう、ミルフィオーレファミリーの真6弔花。
誰にも遠慮をしない自由奔放な性格。ある人物曰く、電波な部分がある。




【マスター】
先導エミ@カードファイト!!ヴァンガード

【マスターとしての願い】
アイチを探す。ここ(東京)から脱出する

【人物背景】
兄を探している妹。
中学生だが大人びていてしっかり者。
兄のアイチを頼りなく思っているからか世話を焼く。
参加時期はアニメ三期終了後。


264 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/05(金) 21:55:04 uxajKBHM0
投下終了します。

それと設定で東京都が舞台となっておりましたが、舞台に離島は含まれないことを追加します。


265 : ◆ZjW0Ah9nuU :2016/02/05(金) 22:36:26 M.Bu3N2s0
新企画スレ立て乙です

投下します


266 : O5-12&アーチャー ◆ZjW0Ah9nuU :2016/02/05(金) 22:40:54 M.Bu3N2s0
東京某所にある部屋の一室で、一人の男がマグカップに入ったコーヒーを片手に朝を過ごしていた。
男の前にあるテーブルにはマグカップを置くためのコースターと、なぜか満タンに入ったオリーブオイルが置かれていた。
男はある者が見れば老け入った老人かもしれないし、ある者が見ればまだ定年を過ぎていない中年かもしれない外見で、
共通して言えるのはどこか疲れているようなオーラを発している、少なくとも40は超えている外国人の男性であるということだ。
テレビでは、朝の情報番組が放映されている。その中で報道されている、世間を騒がせるトップニュースを見て男は少しばかり目を見開く。
このニュースに少しばかり心当たりがあったようだ。

曰く、東京都内では警察を含む人間を無差別に虐殺する事件が起こったらしい。その犠牲になった者はなんと100人前後という惨状だ。
下手人は逃走中で、今も東京の何処かで人間を手にかけているということになる。
男が注目したのは、容疑者となる男の特徴だった。身長195cm前後、身体には刺青があるという目撃情報がニュースで流れていた。

「まさか…“SCP-076-2”、奴がこの地に解き放たれているというのか…」

落ち着いた口調ながらも、驚いていることがよくわかる。
男は、その情報だけで事件の下手人を看破することができた。
特別な扱いを要する異常存在を確保・収容・保護する財団、「SCP財団」の最高責任者で構成される「O5評議会」の一員であった男だ。
あらゆるSCPの情報は記憶に叩きこんである。

「なぜ、奴が東京に?まさか財団から逃げ出してこの東京に来たわけではあるまい?」

SCP-076-2といえば、SCP-682に並んで脱走を繰り返しているObject Class: Keterの中でも特に厄介なSCPであり、
偶発的とはいえ男の大切な息子の一人の命を奪い、その魂を不死の首飾りへと封じ込めた元凶だ。
仮にその076-2が財団からの脱走に成功したとなれば大問題どころではない。
男を含めたO5評議会以下財団の職員やエージェントは血眼になって076-2を探し出して無力化しようとするだろう。
東京に放たれたと発覚すれば最悪、後始末の問題を度外視してでも核弾頭を東京に打ち込むくらいはやむを得ないほどのことだが…。


267 : O5-12&アーチャー ◆ZjW0Ah9nuU :2016/02/05(金) 22:42:17 M.Bu3N2s0

「それとも、奴がサーヴァントとやらになって現界しているというのか…?」

聖杯戦争の知識は男のサーヴァントから伝達されている。
東京で為される儀式、聖杯戦争。男は聖杯を手にする資格のある人物として記憶を取り戻し、今に至る。
男はこの東京が何らかの要因で再現された虚構都市としての東京であることについては分かっているが、
外部にSCP財団が存在しているのかはまだ把握できていない。

仮に財団が存在し、外部から076-2がこの東京に来ているのならば民間人に被害が及ぶ前に東京で財団のフィールドエージェントが出張っているはずだ。
脱走したSCPの情報は先進国の抱える諜報機関よりも早く嗅ぎつける財団のことだ、報道番組を当てにしているようではあまりにも遅すぎる。
なぜ財団職員が東京に滞在していないことに対する説明としては、『この世界にSCP財団が存在しない』か『076-2が財団の把握しない方法で現れた』かのどちらかないし両方になるだろう。
後者は無論、サーヴァントとして召喚されたことを意味している。
男のそれのように聖杯という財団ならばSCP認定しかねないモノに突如召喚されたことで、KeterのSCPが放たれるなどどうして対処できようか。
076-2がマスターに召喚されたサーヴァントであるならばいずれ厄介なことになる。
076の特徴として、恐らくは東京の何処かに076-1が存在するだろうが、人間の手では破壊不可能だ。
だが『人間』を超えたサーヴァントの一撃ならば、あるいは…。

「アダム。見回り、終わったぞ」

男――アダムが思案を巡らしていると、アダムのサーヴァントが霊体化を解いて現れた。辺りを巡回していたらしい。

「…ご苦労だったな、アーチャー。そこにあるオリーブオイルで補給してくれ」
「おう、いつも悪いな」

アダムのサーヴァントはガシャンガシャンと音を立ててブリキの人形を想起させる金属のボディでテーブルに近づくと、尻から出した補給口にオリーブオイルを注ぎいれた。
ここまでで諸氏はこのアーチャーはまるでロボットのようだ、と思ったであろうが、その通りだ。
アーチャーはロボットの英霊であり、『野原ひろし』だった者――ロボひろしなのである。


268 : O5-12&アーチャー ◆ZjW0Ah9nuU :2016/02/05(金) 22:43:23 M.Bu3N2s0

「…君のそのデザインは意図的なものなのかね?」
「尻のこれか?あー、多分、そうだと思う」

ひろしは尻から出た給油口をひらひらと振りながら愛想のいい笑顔で応対する。
記憶を取り戻してからというもの、ひろしを見てきて日本という国は奇抜なものを生み出してくれるものだ、とアダムは幾度も思った。
変人としてSCP財団でも有名なアダムの息子も、日本のサブカルチャーに没頭するあまり何度目かわからない奇行に走ったことを耳に挟んだが、ひろしの設計者もかなりの変人なのだろう。
変人だからこそ革新的なアイディアを生み出すことができるとも言えるが。

高い身体能力を備えた高機能の人型ロボットのボディに加え、精神面は全くといっていいほどに人間のそれで民間人の父親と何ら変わりはない。
ひろしはそのあらゆる機能を自分の意思で巧みに操る一方で、耳に備えてあるコントローラーでアダムでもひろしの意思を無視して操作できる。
ここまでくると、SCP-278もびっくりな自律駆動のロボットだ。

「それはそれとして、近辺に異常は見つからなかったか?」
「ああ。『気配』は感じなかったぜ。最近物騒だから、親が一緒になってる子どもが多かったな」
「子か。…私には無縁だったものだな」
「いいや、アダム」

自嘲気味に呟いたアダムの言葉をひろしは否定する。
二人の周囲が静まり返った感覚を覚えた。テレビの音も不思議と聞こえない。

「そんなことはねえよ。取り返すんだろ、あんたの娘」

アダムの肩に手を置き、ひろしは力強く言う。声と共に発せられるロボットの駆動音が妙な真剣さを帯びていた。
アダムには、娘がいた。彼が言うには、その娘は財団に確保され、その施設に収容、保護されているらしい。

「子どものために聖杯に願うんだろ?その子を家族に返してくれって」

アダムには聖杯にかける願いがあった。
それは、財団に囚われた娘を取り返すという、子を持つ父親の切実な願いであった。

「…アーチャー。もう一度君に、頭を下げさせてくれ。――娘を、一緒に取り返してほしい」
「当ったり前よ!俺も同じ、父親だからな!」

ひろしも、『元』父親である。
娘を取り返すために聖杯を狙うマスターを前にして、それに助力しないことはひろしにとってあり得なかった。
『俺』は大切な家族を引き受けてくれた。みさえは涙を流してくれた。しんのすけは俺のことも大好きなとーちゃんだって言ってくれた。
欲を言えば赤の他人に受肉してしんのすけ達を見守っていきたいという願いもあったが、それだけで未練はない。
そもそも、少なくないサーヴァントを手にかけた血塗られた手でしんのすけの頭を撫でたくない。
この2度目の生は、アダムのために使おう。ひろしはそんな決意を集積回路に固めた。








269 : O5-12&アーチャー ◆ZjW0Ah9nuU :2016/02/05(金) 22:44:21 M.Bu3N2s0





あの時、私は罪を犯してしまった。
創造者たる神でもない私が、死産状態で産まれてきた赤ん坊を蘇生しようなどできるはずもなかったのだ。
我が娘よ。愛しの妻、エヴリンから産まれた我が子よ…本当に済まない。
父親が娘の死を受け入れることができなかった故に、無断でSCPをお前に使ったために。
私はお前を人からかけ離れた異形にしてしまった。そして、お前自身がSCPに認定されてしまった。
私はお前を財団から取り戻そうとしたが、無駄だった。例えO5の一員に昇りつめようとも、駄目だった。

――要請を認めない。これが最後だ、アダム。彼女は今も、今までも君の娘ではない。もしもう一度試みれば、理事会を招集し、君を解任する。

――O5-1

それでも私は、諦めることができんのだ。なぜなら、私はお前の父親なのだから。
SCPになってしまったお前や息子達を普通の人間にすることを願うつもりはない。
お前達を全く異なる存在にしたくはないし、私に子を持って幸せになる資格もない。これは娘を異形に変えてしまった私への罰だ。
だが、SCP-321、いや、██████よ、我が愛しき娘よ。たとえお前の余命が残りわずかであっても、私の娘として逝かせてやりたいのだ。

アダムは、この聖杯戦争におけるバーサーカーのように、あるいは敢えてマスターに聖杯戦争の情報を伝えようとしないサーヴァントのように、
ひろしに対して最低限のことしか伝えていなかった。
ひろしが、アダムの娘が化け物になってしまった異形であると知った時。
たとえ財団から解放されても人として生きられないことを知った時。
ひろしは何を思うのだろうか。


270 : O5-12&アーチャー ◆ZjW0Ah9nuU :2016/02/05(金) 22:45:56 M.Bu3N2s0
【クラス】
アーチャー

【真名】
ロボひろし@クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん

【パラメータ】
筋力A 耐久B 敏捷A 魔力E 幸運B 宝具B+

【属性】
秩序・善

【クラス別スキル】
対魔力:E
魔術に対する守り。
無効化は出来ないが、ダメージ数値を多少削減する。

単独行動:B
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
Bランクならば二日程度の現界が可能。

【保有スキル】
チクビーム:A
種別:対人兵器 最大捕捉:1人
人体で言う乳首に当たる部分から光線を発射する。
見栄えはともかく、敵がよほど頑丈でない限り装甲ごと焼き切る程に威力が高い。
用途に合わせて出力調整も可能。

父親:A
家族のために奮闘する、良き父親としてあるべき姿。
アーチャーの姿を自身の父親、または夫のように見た者に対して、同ランクのカリスマの効果を与える。

正体隠蔽:E
短期間だが、ロボットであることを隠してサラリーマンとして活動していた逸話に基づくスキル。
アーチャーの場合、変装することで契約者以外のマスターからステータス、スキルを視認出来なくすることができる。
しかしそのランクは低く、注意深く観察すればロボットであることに気づくことができるレベル。


271 : O5-12&アーチャー ◆ZjW0Ah9nuU :2016/02/05(金) 22:46:49 M.Bu3N2s0

【宝具】
『機械、されど我が父(ロボとーちゃん)』
ランク:B+ 種別:父親 レンジ:―― 最大捕捉:――
野原ひろしの記憶と人格が移植されたロボットのボディが宝具。
その内部に様々な機能を持ち、日常生活の補助から戦闘まで幅広くこなす。
意思を持たない機械であれば手を使わずとも操作可能であり、果てには周囲の機械を集めて合体することで巨大ロボになることもできる。
ロボットの身体である特性上、精神攻撃、毒や呪いなどのバッドステータスを受けず、
敵からの洗脳を乗り越え、記憶を取り戻したというエピソードからクラッキングへの耐性も併せ持つ。
しかし、電撃が弱点で食らうと追加ダメージを受けてしまう。
動力源は油系。通常のサーヴァントより魔力消費が軽いが、燃料切れになるとその場から動けなくなる欠点がある。
そのため、定期的に油系(食用油でもいい)を補給する必要がある。
ただし給油口は尻から出る。

『燃えよ、我が一家(ダブルファイヤー・ノハラ・ファミリア)』
ランク:A 種別:家族 レンジ:―― 最大捕捉:――
アーチャーが最終的にオリジナルの野原ひろしと団結して野原一家に加わり、黒幕と戦ったエピソードからくる宝具。
アーチャーの他に、家族内の位置が夫、妻、18歳以下の息子(または娘)の者が一人以上その場にいて、
なおかつその者達全員と団結した状態で全員で「○○一家、ダブルファイヤー!!」と叫んで初めて発動する宝具。
なお、全員の血が繋がっている必要はない。
発動すると全員の全パラメータを大幅に向上させ、Aランク相当の勇猛スキルを得る。
さらに敵の幸運をE-ランクにまで下げ、敵に対してあらゆる判定において有利になる。

【weapon】
『機械、されど我が父』に搭載された武装の数々

【人物背景】
野原ひろしの記憶と人格を移植したロボット。
一時はもう一人の自分と対立したが、後に団結して野原一家と共にちちゆれ同盟に立ち向かった。
最後は野原ひろしと勝負し、敗北。
しんのすけ、ひまわり、みさえ、そして本物のひろしに別れの言葉を告げ、見守られながらその機能を停止した。

【サーヴァントとしての願い】
父親であるアダムの願いを叶える。
本当は自分も受肉してしんのすけ達を見守っていきたいが、その願いは他人を殺して叶えるものではない。


272 : O5-12&アーチャー ◆ZjW0Ah9nuU :2016/02/05(金) 22:48:21 M.Bu3N2s0
【マスター】
アダム@SCP Foundation

【マスターとしての願い】
娘を、財団から取り戻す。
自分は子を持って幸せになる資格などないため、SCPとなった息子達を普通の人間にすることは願わない。

【weapon】
特になし

【能力・技能】
・SCPの知識
次席研究員からO5評議会員まで出世した能力の持ち主で、財団のあらゆるSCPに通じている。
ただし、セキュリティクリアランスのクラスの問題で接触して久しいSCPはそれなりに多いかもしれない。

【人物背景】
O5評議会の一員。ブライト博士及びSCP-321、SCP-590の父親でもある。
SCP-321のSCP指定を解除するために次席研究員からO5評議会にまで上り詰めたものの、その願いが叶うことは決してなかった。
ロボひろしには娘がSCP-321であり、異形となってしまったことを伝えていない。

【方針】
聖杯を取る。

【捕捉】
クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP FoundationにおいてThe Duckman氏が創作されたSCP-321に関連するキャラクターを二次使用させて頂きました。


273 : ◆ZjW0Ah9nuU :2016/02/05(金) 22:48:51 M.Bu3N2s0
以上で投下を終了します


274 : ◆qtfp0iDgnk :2016/02/06(土) 01:50:58 Jy6ESqIE0
皆様、投稿お疲れ様です。
候補作を投稿させていただきます。


275 : ランカ・リー&ライダー ◆qtfp0iDgnk :2016/02/06(土) 01:55:56 Jy6ESqIE0
その日、少女――ランカ・リーは、いつも通りの日常を過ごしていた。
東京のライブハウスを中心に、人気急上昇中の歌手として話題を集め、メジャーデビューも間近か?などと雑誌に書かれている、アイドルシンガー。それが、ランカの日常だ。
今日もお気に入りの衣装でステージに立ち、観客でいっぱいとなったライブハウスで歌い、踊り、ファンと交流し。
今日の予定が全て終わったのは、もう日付が変わろうかという時間だった。
マネージャーと別れ、タクシーに乗るために駅へと歩く。
時間が遅く、人通りの少なくなった裏通りの公園を歩いているということもあり、無意識のうちに早足となっていた。

いつからだっただろうか。
そんな『当たり前』だった日常に、僅かな違和感を感じるようになったのは。

歌うことに対してではない。ランカは、これまでもずっと歌を生業としてきた。
数多くのファンが彼女の歌を求め、憧れたシンガーの叱咤激励を受け、ほのかな想いを抱く青年と交流し――

「アル、ト・・・君・・・・・・・・・!?」

脳裏に浮かんだ青年の名をつぶやいた時、記憶にかかっていた黒いもやのような物が一気に消し飛び、ランカは全ての記憶を取り戻した。
銀河移民船団・フロンティア船団の超時空シンデレラ、ランカ・リー。それが少女の真実。
ならば、今、ここ東京で歌手として活動している彼女はなんなのだろうか?

それと同時に、ランカの右手に熱い僅かな痛みが走った。
手の甲を見てみれば、いつのまに浮かび上がったのか、赤い模様が刻まれている。
なんだこれは。先ほどのライブで、いつのまにか怪我でもしていたのか?

「ちっ、思い出しやがったか」

混乱するランカの背後から、不機嫌な声がかけられた。
振り返ってみれば、二人組みの男が、いつのまにかランカの近くにいたのだ。
男のうち一人は、西洋風の鎧で身を包み、その手には身の丈ほどもある巨大な剣を握っている。

「な、なんなんですか!? 思い出したって、いったい何の・・・!」
「・・・あんたに恨みはないが、聖杯を取るためだ」

もう一人の男の声が響き、その冷徹な瞳が、まっすぐランカを見つめた。


276 : ランカ・リー&ライダー ◆qtfp0iDgnk :2016/02/06(土) 01:56:42 Jy6ESqIE0

「すまないが・・・死んでくれ」
「!」

気づけば、ランカは全力で後方に飛び下がった。
別に狙って飛んだわけではない。
彼女の全神経が、体に流れるゼントラーディ人の血が、どんな体勢になろうと後ろに飛べ!と命令したのだ。
事実、めちゃくちゃな体勢で飛んだランカは無様に背中から倒れ、体に痛みが走る。
だが、その無様な跳躍が、ランカの命を首の皮一枚で救った。
コンマ数秒まで自分がいた場所に、鎧男の剣が無造作に振り下ろされ、アスファルトの地面がたった一撃で粉々になっていたからだ。
鎧男が「ヒュー」と息を吐き、剣を肩にかつぐ。

「んー、一発で終わらすつもりだったが、野生のカンってヤツか?」
「セイバー、遊んでる場合か。東京のあちこちで起きてる事件で、警察が動いてるのを忘れたか。事情聴取に巻き込まれるのも面倒だ。次で終わらせろ」
「あいよマスター。ってことだ、お嬢ちゃん。悪いが、次で終わらせるぜ」

セイバーと呼ばれた鎧男が、再び剣をランカに向ける。
ランカは逃げ出そうとするが、倒れた時の背中の痛みがひどく、恐怖で足も震え、まともに立つこともできない。

(これで、終わりなの・・・!? お兄ちゃん・・・! シェリルさん・・・!)

命を賭けて自分を守ってくれた、本当の兄と義理の兄。
ライバルとして切磋琢磨することを誓った、憧れの女性。
数多くの友人が、仲間の顔が、ランカの脳裏を走りぬける。
その最後に見えたのは、光の中から自分に手を伸ばす、青い髪の青年の笑顔。

「じゃあな」
「アルトくん・・・!」

鎧男の無慈悲な言葉と、ランカが想い人の名を叫んだのは、ほぼ同時だった。


277 : ランカ・リー&ライダー ◆qtfp0iDgnk :2016/02/06(土) 01:58:00 Jy6ESqIE0

その声に遅れること、コンマ数秒後。
ランカに刃が振り下ろされる、コンマ数秒前

「歯ぁ!! くいしばれえええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」

更なる別の声と同時に、鎧男が勢いよく真横に吹き飛んだ。
いったい何事かと、鎧男が認識する前に、その頬にすさまじい痛みが走る。

拳だ。熱く握り締められた鉄拳だ。
何者かが繰り出した全力の拳が、鎧男の頬に叩き込まれたのだ。

「ぐはあぁぁっ!?」

突然の一撃に受身も取れず、まともにくらった鎧男はもう一人の男を巻き込み、数メートル先の遊具の壁に激突、盛大な砂埃を巻き起こした。
自らに突き刺さるはずだった刃が振り下ろされず、周囲の風がうねりをあげた事に気づいたランカが、おそるおそる目を開ける。

その目に映ったのは、一人の男の背中だった。
サングラスを掛けた、髑髏を形作る炎の紋章が刻まれたマントを翻し、男はランカに振り返る。
まるで星を形作ったようなサングラスをかけた、歳若い青年は、ランカに手を差し伸べた。

「待たせたなマスター。君の意思によって呼ばれた、ライダーのサーヴァントだ!」
「ライダーの、サーヴァント・・・?」

突然現れ、自分をマスターと呼ぶ青年の登場に、ランカはもう何が何だか分からなくなっていた。
その時、ライダーと名乗った男が拳で吹き飛ばした鎧男が、激突した壁付近の煙を吹き飛ばして立ち上がる。
顔に痣こそ作ってはいたが、そんなにダメージを与えられたわけではないようだ。

「てめぇ!その嬢ちゃんのサーヴァントか!?」
「ああ! サーヴァントとして、この子は俺が守る! てめぇなんかに殺させてたまるかっ!!」

叫ぶや否や、ライダーは空に拳を掲げ、力強く握り締める。
その全身から緑の光が生み出され、やがて光は、掲げた右手に集約。
次の瞬間。光は、ライダーの右手を変化させた。

刻まれた右回りの螺旋。
光沢を持つ先端。
ドリルだ。ライダーの右手が、光を放つドリルとなったのだ。


278 : ランカ・リー&ライダー ◆qtfp0iDgnk :2016/02/06(土) 01:58:34 Jy6ESqIE0
「おおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

迷うことなく、ドリルとなった右手を地面に叩きつける。
アスファルトを砕き、右手首までが地面に埋まった次の瞬間、周囲の地面に亀裂が走り、緑の閃光が大地を駆け巡った。

「うおっ!?」
「ちぃっ!!」

鎧男がもう一人の男の襟を掴み、迷うことなく跳躍。
男がいた場所も含めた地面が砕かれ、遊具を巻き込んだ大破壊が、公園の姿を一気に崩壊へと導いた。
盛大な砂埃にランカがむせる中、ライダーがランカの目線に合うように膝を折る。

「マスター、君の名前は!?」
「え!えっと、ランカです、ランカ・リー・・・あの、これっていったい・・・」
「いい名前だ! じゃあランカ、詳しい説明はこの場を切り抜けてからするけど、今だけでいい! 俺に力を貸してくれ!
俺の最強の宝具を使うためには、君の協力が必要なんだ!」
「ほ、宝具? 私の力って・・・」
「頼む! あいつを倒して、君を助けるためだ!」

一直線に自分の目を見つめ、まっすぐな言葉をストレートに告げる。
初めて出会った初対面の人間に、ここまで正直に助けを求める人間は、そうはいない。
いたとしても、何かしらの下心を持っていたりするパターンがほとんどだろう。

だが、ライダーはランカを貶める事など、これっぽっちも考えてはいない。
その熱い言葉が。まっすぐな瞳が。真正面からランカを見据えていた。
自らの声を生きる術としているランカには、その言葉に嘘偽りがない事が理解できる。

それと同時に、この青年を信じてみたくなった。
マスターだのサーヴァントだの、分からない事はたくさんある。
なぜ、自分はフロンティア船団ではなく、この東京にいるのか?
アルトやシェリルもここにいるのか?
あの二人組みの男は、どうして襲ってきたのか?

その答えを知るまで。大好きな人々に再会するまで、命を諦めるわけにはいかない――!

「・・・分かりました! あなたを・・・信じます!」
「ありがとう!じゃあ、早速いくぜっ!」

ライダーが叫び、胸からかけていた小さいドリルのようなアクセサリーを掴むと、まばゆい光があふれ出した。
その光が徐々に形を作り、光がはじけ飛ぶと同時に、二人の眼前にソレは現れた。


279 : ランカ・リー&ライダー ◆qtfp0iDgnk :2016/02/06(土) 01:59:49 Jy6ESqIE0


光が弾けた衝撃で砂塵が舞い踊り、公園内の視界が一気に不明確となる。
それに巻き込まれまいと、ライダーの一撃から退避した二人組みの男が、少し離れた箇所で立ち止まっていた。

「ちっ、何も見えん・・・! おいセイバー、逃げられるぞ!」
「あわてんな。何してるか知らんが、少なくともあいつら逃げちゃいねぇ。ここから俺の宝具で、公園ごと一気にぶち壊してケリだ!」

大剣を最上段に構え、意識を集中。
放つは、自らの逸話が再現された絶対必殺の対人宝具だ。
先ほどは突然の攻撃に戸惑いはしたが、あの程度の打撃と、体を変化させて地面を破砕するレベルの宝具ならば、こちらの一撃の方が遥かに強い。
この一撃さえ決まれば――

『『天を突き破る螺旋の象徴(コアドリル)』っ! スピンオンッ!!』

次の瞬間。大地を震わす叫び声と、強烈な地鳴りが公園を支配した。
宝具の発動タイミングを失い、二人の男は叫び声が聞こえた方へと目をやる。
すなわち、公園を形作るために決められる中央点――天元へと。

やがて砂塵が晴れていき、その声の主が姿を見せる。
天に近い高さから晴れていく砂塵の中、彼は堂々と腕を組み、不適な笑みを浮かべ、『何か』の上に立っていた。

やがて全ての砂塵が晴れ、そこには一体の巨大な人間――否、赤い装甲のロボットがいた。
三日月を模した額当てを持つ兜、胴体には巨大な顔とサングラス、背中には飛翔用のウイング、肩の装甲には紅蓮の髑髏の紋章。
突然現れたその姿に、鎧男は戸惑いを隠せない。

「巨大、ロボットだと!?」
「こいつは、巨大ロボットなんてチャチな名前じゃねぇぜ!」

男の驚きの声をかき消すかのように、ライダーは叫ぶ。
遥か天空に見える月に指をかざし、吹き荒れる風にマントをなびかせる。


280 : ランカ・リー&ライダー ◆qtfp0iDgnk :2016/02/06(土) 02:00:44 Jy6ESqIE0

「たとえ異邦の地だろうと、俺の魂は決して折れない!!
立ちふさがる壁に風穴をぶち開け、マスターの願いに命を預ける!!
俺は、大グレン団リーダー!そして、ライダーのサーヴァント『シモン』!! そしてこいつの名は、『グレンラガン』だっ!!」
「グレン・・・!?」
「ラガン・・・・・・!?」

男達の驚く声を横目に、ライダー――『シモン』は、頭部に位置するコクピットに搭乗。
すでに座っていたランカと位置を交代し、二本のレバーを力強く握る。

『悪いが、こんな所で止まっていられねぇ! 殺さないように手加減はするが、一発で決めさせてもらうぜ!』

コクピット前面のエネルギーゲージが螺旋を描き、一気に限界まで出力が上昇。
グレンラガンの全身に設けられた空洞箇所が光を帯び、無数のドリルが姿を現す。
次の瞬間、掲げた右手に全身のドリルが集約され、一本の巨大なドリルとなる。

「セ、セイバー! 何をやってる! あんなの見掛け倒しだ! やれぇ!!」
「う、うおおぉぉぉぉぉぉっ!!」

男の半分狂乱した声に応えるように、鎧男が掲げた剣を振り下ろす。
先ほどまで剣に溜め込んでいた魔力を刃として飛ばし、剣閃がグレンラガンに突き進む。

『ひっさああぁぁぁぁぁつっ!!!!』

背中のブースターに火が灯り、グレンラガンの巨体が大地を離れ、剣閃を迎え撃つ。

『ギガアァァァッ!!』

唸りを上げて回転するドリルで剣閃を弾き飛ばし、そのまま一気に肉薄。

『ドリルウゥゥゥゥッ!!!!』

剣を盾のようにして防ごうとするが、ドリルの先端が触れたと思うや否や、剣が粉々に砕け散る。

『ブレイィィィクウゥゥゥーーーーッ!!!!!!』

放たれたグレンラガン最大の一撃――『ギガドリルブレイク』は、男達の眼前の大地に突き刺さり、その余波だけで男達を遥か彼方まで吹き飛ばした。


281 : ランカ・リー&ライダー ◆qtfp0iDgnk :2016/02/06(土) 02:01:20 Jy6ESqIE0


「とりあえず、説明できる事はこんなところだ。大体分かったかな?」
「う、うん・・・」

静けさを取り戻した夜の東京。
先ほどまでいた公園から少し離れた、秋葉原に流れる神田川の上に掛かっている万世橋の下にある、今は使われていない階段に、ランカとシモンは移動していた。
深夜という時間帯と、人目につかない場所ともいうこともあり、彼女らに気づく人々は誰もいない。
戦いの後、シモンは自らの最強宝具『重なる魂燃え上がる超絶合体(グレンラガン)』を解除し、戦いの前の約束通り、ランカに全てを話した。

聖杯戦争、マスター、サーヴァント、右手の甲に宿っていた令呪。
ランカは自らが巻き込まれた境遇を改めて思い知らされ、さすがに気分が落ち込んでいた。

「ランカ・・・今こんな事を聞くのもなんだけど・・・君はどうしたい?」
「どうしたい、って・・・?」
「聖杯戦争。戦わない道を選ぶのも、ランカの自由だ。君がそれを選ぶなら、俺は君を守る目的以外では戦わない」
「で、でも。ライダーにも、願いがあるんじゃないの? サーヴァントにも叶えたい願いって、あるんでしょ?」
「・・・確かにあるよ。もう一度アニキやニアに会いたいって気持ちは、確かにある」

少し言葉のトーンを落として話す。
自分を導いてくれた兄貴分。全てを愛した女。
他にも、数え切れないほどの仲間達に会いたい。
それは、英霊となった今でも、シモンの中で変わらない絶対の気持ちだ。

「でも、アニキもニアも他のみんなも、精一杯生きて死んだんだ。
俺は神様じゃない。少しの時間だったとしても、死んだ人間が生き返ったって、生きてる人間の邪魔になるだけだ。
だから、俺の願いなんて叶わない方がいいんだよ」
「ライダー・・・」
「はは、気にすんなって」

笑顔で答える。
そのシモンの言葉に、ランカは自らの願いを口にした。

「・・・私は、元の世界に戻りたい。でも、他のマスターを殺したくない・・・!
アルト君やお兄ちゃん達の戦いが終わって、新しい星も見つかって、バジュラとも仲良くできる可能性がやっと見つかったの。
シェリルさんとのちゃんとした勝負も、全部全部これから始まるのに、こんな所で死にたくないよ・・・!」

辛い日々があった。
悲しい別れもあった。
それ以上に、素晴らしい出会いもあった。
彼女を巻き込んだ戦いは終わり、銀河を巡る旅もひとまずの終わりを迎え、ようやく新しい一歩を踏み出せるのだ。

「だから・・・お願い、ライダー! 私にできる事なら、なんでも協力する!
誰も傷つけずに、私が元の世界に帰る方法を探すのを手伝って! 力を貸して!」
「ああ、俺を誰だとおもってやがるっ!」

大好きな人たちとの未来を掴むために、この偽りの世界から必ず脱出してみせる。
一人の歌姫の決意に、全宇宙を救った螺旋の戦士は、彼の象徴となる言葉で答えた。



これは、英霊となった螺旋の男と、星を救った歌姫の物語――


282 : ランカ・リー&ライダー ◆qtfp0iDgnk :2016/02/06(土) 02:04:25 Jy6ESqIE0
【クラス】ライダー
【真名】シモン
【出典】天元突破グレンラガン
【性別】男性
【属性】秩序・善

【パラメーター】
筋力:D+ 耐久:D 敏捷:D 魔力:C+ 幸運:C 宝具:A

【クラススキル】
騎乗:C+
 騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、野獣ランクの獣は乗りこなせない。
 シモンの気合と根性と天性のカンにより、未知の機械から動物まで、初見の乗り物でも基本的な操作は可能となる


【保有スキル】
螺旋力:EX
 生命のDNAに刻まれた、二重螺旋の中に持っている力。
 「気合」と「信念」により、一回りすればほんの少しだけ前に進むドリルのように、どこまでも際限なく増幅する力である。
 発動者の持つ螺旋力によっては、生命の創造や宇宙の創生までも可能とする。
 シモンは自らの螺旋力を腕に集め、ドリルを創造する事が可能。

言霊:C
 彼の魂から放たれる言葉は、敵味方問わず、相手の心に深く突き刺さる。
 これといった特殊な効果があるわけではないが、対象の注意を自身に向ける事が可能。

カリスマ:B
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
 自らが前線に立ち、その背中を仲間達に見せることで、共闘する味方の戦意を高揚させる。


283 : ランカ・リー&ライダー ◆qtfp0iDgnk :2016/02/06(土) 02:04:56 Jy6ESqIE0
【宝具】
『天を突き破る螺旋の象徴(コアドリル)』
ランク:EX 種別:対人(自分) レンジ:1 最大捕捉:1
螺旋力を収束、増幅させる事を可能とする、親指大の小さなドリル。
シモンの持つ英霊としての全ての能力は、このコアドリルを核としており、後述の宝具発動のためのキーとなる。
単体の媒介としても機能し、シモンの持つ莫大な螺旋力を、殴りつけた際に相手の肉体に直接流し込んで爆発させるといった荒業も可能。
彼の魂の象徴でもあり、次の世代へと永遠に受け継がれる逸話を持つ故、ランクEXという破格の神秘性を持つ。
シモンが自分から譲り渡すことを決めない限り、彼とこの宝具を切り離す事は絶対に不可能。


『魂を纏いし小型顔面(ラガン)』
ランク:D 種別:対人 レンジ:1 最大捕捉:1
シモンの愛機となる小型機動兵器。
腕部・頭部から出るドリルでの攻撃や穴掘りが可能で、下半身を収納する事でそこから更に巨大なドリルを出現させる事ができる。
機動兵器としてはかなりの小型でパワーも低く、宝具としての神秘性もほぼ皆無だが、
下半身のドリルを突き刺して『合体』したメカを支配し、なおかつその構造をも作り変えて操縦を可能とする能力を持っている。
この合体能力は、機械を用いている物質を対象とすることが可能であり、他のサーヴァントが呼び出した巨大ロボットなども支配可能となる。
宝具単体の発動や、この宝具のみの戦闘による消費魔力はそんなに高くはないが、支配合体能力発動時には、対象の神秘性の高さや宝具のランクにより、消費魔力が増大する。


『魂を受け継ぎし中型顔面(グレン)』
ランク:D 種別:対人 レンジ:1-5 最大捕捉:1
シモンと共に戦った多くの仲間達の愛機となった中型機動兵器。
本来はシモンと共に戦った仲間達がパイロットとなるが、宝具となった事により、シモンが『魂の兄弟』と認めた相手に貸し与える形で発動が可能となる。
顔についている巨大サングラス『グレンブーメラン』による近接戦闘のほか、馬力に任せた肉弾戦も可能。
操縦するのがシモンとは別人となり、それなりの防御力も兼ね備えているため、一時的な避難場所としての利用も可能。


『男の魂燃え上がる超絶合体(グレンラガン)』
ランク:B 種別:対軍 レンジ:1-30 最大捕捉:1-20
シモンが搭乗したラガンと、パートナーが搭乗したグレンが合体することで誕生する、紅蓮の大型機動兵器。
手足が伸長して大型サイズの巨大ロボットとなり、背部に装着された『グレンウィング』による空中戦も可能。
シモンの螺旋力を元として全身からドリルを生み出す機能を持ち、全ドリルを右手に集約して突撃する『ギガドリルブレイク』は、あらゆる『防御』という概念に風穴を開け、無効とする事ができる(攻撃による相殺は可能)。
生前ではグレンラガンを核としたさらなる大型のグレンラガンを操縦していたが、今回の聖杯戦争においてこれ以上のサイズのグレンラガンは、どんな手段を用いても召喚や製造は不可能。
ちなみに、基本の操縦は頭部のラガンに搭乗しているシモンが行うが、操縦権を渡すことで、腹部に座っているグレンのパイロットが操縦する事も可能。


284 : ランカ・リー&ライダー ◆qtfp0iDgnk :2016/02/06(土) 02:05:27 Jy6ESqIE0
【weapon】
ハンドドリル
 シモンが愛用していた手持ち型のドリル。
 これといった特殊な能力はなく、ただ地面に穴を開けたり硬い物を削るだけの道具。
 「穴掘りシモン」の異名で呼ばれた彼の手にかかれば、時間をかければどんな硬い物質にも穴を穿つ事ができる。


【人物背景】
これは、愛する女の魂を救い、瞳に螺旋を宿して生き抜いた男が、死んだ後の物語。

ただ地面に穴を開ける事を仕事としていた一人の少年は、小さな小さな螺旋を見つけた事により、全銀河を巡る戦いの運命へと歩き出した。
その背中に憧れ続けた兄貴分、絶対的な信頼で結ばれた女スナイパー、自分にできない事をやってくれる天才、気さくだがやる時はやる頼もしい仲間達。
愛する女を救い出し、その最後を見届けた彼は、螺旋の象徴を次の世代へと託し、元の穴掘りとして歴史の中に消えていった。

今回の聖杯戦争においては、最後の戦いを終えた青年時の肉体で現界。
服装は最後の戦いに赴く際に装着した、超銀河ダイグレンでの戦闘服となる。


【サーヴァントとしての願い】
ランカを守り、元の世界に戻す

【基本戦術、方針、運用法】
生身の戦闘力はそれなりのレベルだが、サーヴァント相手に決して生身で戦おうとしてはいけない。
シモンの真骨頂は、魂の兄弟となった人物との協力によって発動可能となる、『男の魂燃え上がる超絶合体(グレンラガン)』にある。
ラガン単体でもある程度の戦闘は可能なため、通常時はラガンで牽制しつつ、隙を見てグレンラガンへの合体に成功すれば、破格の攻撃能力とシモンの螺旋力により、戦闘で有利な状況を呼び寄せる事ができるだろう。
たとえグレンラガンが呼び出せない場面でも、他のサーヴァントが巨大ロボットを呼び出す宝具を備えている場合、展開次第では相手の機体をそのまま乗っ取って自らの機体とする事ができる。
ただし機体の神秘性によってはかなりの魔力を消費するため、巨大ロボットが出たからとりあえず合体して奪う!という展開はおすすめしない。



【マスター】ランカ・リー
【出典】マクロスフロンティア
【性別】女性
【令呪の位置】右手

【マスターとしての願い】
生き残ってアルトやシェリルの元に帰る

【weapon】
なし

【能力・技能】
歌手
 元の世界ではトップクラスの人気を誇るアイドル歌手。
 決め台詞は『抱きしめて!銀河の果てまでー!』

【人物背景】
 銀河中心付近を航行する移民船団「マクロス・フロンティア」で、『超時空シンデレラ』の異名を持つ人気アイドル歌手。
 異星人ゼントラーディ人とのクォーターで、興奮したり喜びを表現する際に「デカルチャー!」と叫ぶ事がある。
 想いを抱く青年『早乙女アルト』と、憧れの歌手『シェリル・ノーム』と三角関係となり、その歌声が異星生命体『バジュラ』に何かしらの影響を与えるという事実が判明してからは、大好きな歌が軍事利用されている事に精神的に追い詰められていくが、アルトやシェリルの励ましもあり、自らの歌う意味と歌に対する喜びを思い出した。

 本聖杯戦争においては、TVシリーズの最終回後からの参戦。


【方針】
シモンと共に、元の世界に戻る方法を探す
与えられた『秋葉原を中心に活動する人気上昇中のシンガー』という設定も積極的にこなす。


285 : ◆qtfp0iDgnk :2016/02/06(土) 02:05:43 Jy6ESqIE0
以上で投稿を終了します


286 : ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/06(土) 02:43:42 87Clm5320
投下します。


287 : アースクエイク&アーチャー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/06(土) 02:44:28 87Clm5320


男は、満身創痍だった。
全身にはスリケンが刺さり、身体の至る所から血を流していた。
周囲を素早く駆け回る『二頭のドラゴン』―――二人のニンジャは、男を確実に追い詰めていた。
男は状況を打開すべく、冷静沈着に頭を回転させる。
しかし、答えは見出せない。
勝機を掴む為の行動が、解らない。



「■■■■!起きてくれ!俺に支援を!」



無様な叫び声が、虚しく木霊する。
男は『相棒』に助けを求めたのだ。
しかし、その相棒が彼の言葉に応えることは無い。
男は任務遂行の為に自ら相棒を切り捨てたのだから。



「■■■■ィィィィィッ!!!」



―――――そう、因果応報/インガオホーだ。


絶望と焦燥の入り混じった絶叫が轟いた。
最早、これまでなのか。
あの御方に使える精鋭である俺が、此処で終わるのか。



「イヤーッ!」
「イヤーッ!」



瞬間。
二頭のドラゴンが、跳躍する。
男の左右から同時に跳び蹴りを繰り出したのだ。
蹴りが向かう先は――――男の首だ。
死のビジョンが、目の前より迫り来る。
終幕が、命を刈り取りにやってくる。



そして。
二つの蹴りが、男の首に突き刺さった。




◆◆◆◆


288 : アースクエイク&アーチャー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/06(土) 02:45:01 87Clm5320




あの橋の下には巨人が住んでいる。
そんな噂を流されたこともあったか。



都内某市、日没直後の河原にて。
国道を結ぶ大きな橋の下に、「みすぼらしい敷地」が存在していた。
その住居はブルーシートと段ボールによって即席で作られたものだ。
家と呼ぶには余りにも頼りなく、人を守る砦としては余りにも弱々しい。
貧弱な藁の家のような住居は、人が住む場所としては呆れる程にちっぽけだった。
しかし、『男』にとって此処だけが唯一帰ることの出来る場所だった。
彼は真っ当な住居を持たぬホームレスなのだから。

ザッ、ザッと河原の雑草を踏み頻る音が響く。
2m50cmはあろうかという巨体を揺らしながら、男は橋の下の住居へと帰還する。
その手に握られているのは、袋詰めにされ捨てられた生活用品や食料などだ。
日課であるゴミ漁りを終え、彼は住居へと戻ってきたのだ。

ビニールシートの上へゆっくりと腰掛け、胡座を掻きながら腐りかけの食料を口に運ぶ。
率直に言って、美味いとは言い難い。
生ゴミとして捨てられていた物なのだから当然だろう。
それでも彼にとって、この食料は己の腹を満たす為の貴重な物資だった。
多少腐っている程度では最早身じろぎすらしない。
このような食事も長らく経験したことで既に『慣れてしまった』のだから。

食事をしながら、彼は段ボールの壁に穴を開けて作った小さな『窓』から外の様子を見渡す。
住居の周囲に人の姿は見受けられない。
近頃はホームレス同士の縄張り争いや不良少年によるホームレス狩りが少なからず発生しているらしい。
故に彼もこうして一応の警戒を行っている。
とはいえ彼はこれまで他のホームレスと揉めたことは無いし、不良に襲われたことも全くと言っていい程無い。
恐らくその異常な巨躯に恐れを抱き、本能的に敵対を避けているのだろう。
何はともあれ、面倒事を避けられるのは有り難いことだ。



―――――何故、自分はこれほどまでの巨躯を持つのだろうか。



ずきり、と脳髄に奇妙な痺れを感じる。
何てことの無い、ふと思った疑問に過ぎなかった。
だというのに、それを考えた瞬間奇妙な感覚に襲われたのだ。
まるで何か忘れた物事を思い出せずに居る様な。
重要な事実を忘却したまま、安穏としている様な。
そんな焦燥にも似た不安が胸の内に込み上げてきた。


289 : アースクエイク&アーチャー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/06(土) 02:46:12 87Clm5320

(何を考えているのだ、俺は)


男は思考を断ち切り、食事に集中することにする。
自分の体格の大きさなど、どうでもいい。
自身の生来の成長が異常なだけだろう。
何らかの異常な症状なのかもしれないが、自分の身体に不調は感じられない。
兎に角、何だっていい。自分が巨躯だから、何だと言うのだ。
気が付いた時には、この体格だった。



――――――いつから俺はこんなことをしている。



再び、奇妙な感覚。
脳の回路が火花を上げている様な、異様な電流。

彼はホームレスだ。
この河原で長らく生活を送っている。
道端で回収した段ボールとブルーシートで橋の下に住居を作り、定住している。
一切の収入は無く、ゴミ漁りで日々の命を繋いでいる。



――――――何故俺は、ゴミのような生活を送っている?



思えば、自分は何も知らない。
何故このような底辺の生活を送っているのか、『思い出せない』。

自分がどのような家に生まれ、育ったのか。
自分が何故ここまで堕ちたのか。
自分が何故ここに辿り着いたのか。

何から何まで、思い出すことが出来ない。
記憶を漁ろうとしても、霧が掛かったかの様に何も見ることが出来ない。

過去を持たず、こうしてゴミを漁るだけの生活を送る浮浪者。
まるで、『ホームレス』という役割をこなす為の人形だ。
言うなれば、ただの歩く死人の様なもの。



―――――死人。
―――――そうだ。
―――――俺は。



.


290 : アースクエイク&アーチャー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/06(土) 02:46:39 87Clm5320

「……!」


何だ、今の感覚は。
ぞくりと身の毛がよだつ様な悪寒が、全身を駆け巡ったのだ。
死人と言う言葉に、異様な感情を抱いたのだ。
まるで自分が、本当に死人であることを自覚しているかのような感覚。
比喩ではなく、文字通り。


自分は、『死んでいるはず』ではないのか。
そんな思いが男の脳内を駆け巡っていた。


理由の解らない感覚に苛まれていた中。
男は唐突に、足音を耳にする。
河原の雑草を踏み頻る音が聞こえてきたのだ。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッと、音は次第にこちらへと近付いてきている。
まさか、この住居へと向かってきているのか。

窓から外を覗いて見ると、奇妙な青年が河原を歩いていた。
この住居を目指し、進んでいた。

ゆっくりと、少しずつ、青年は住居へと歩み寄っている。
同じホームレスにしては身なりが小綺麗すぎる。
不良の雰囲気ともまた違う。
一体何者なのか、何の用なのか。
食事を終えた男は警戒心で身を固めつつ、住居の外へと出る。


「…おいおい、大したデカブツだな」


住居から出た大男を見て、青年は呆れた様に呟く。
その装いは、奇妙なものだった。
まるで西洋の戦士か何かの様な時代錯誤な服装を身に纏っていたのだ。
そんな青年の姿に、男はますます警戒心を強める。



「何の用だ。言っておくが、乞食なら渡すものは―――――――」



そう言いかけた瞬間。
青年の姿が瞬時に消え。
そして、男の身体が吹き飛んだ。


291 : アースクエイク&アーチャー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/06(土) 02:47:16 87Clm5320

男は河原を転がり、ごふっと血を吐き出す。
男は混乱をしながら、何とか冷静に思考を纏めようとする。
一体何が起こったのだ。
何故俺は吹き飛んでいる。
何が、どうなっている。


「悪ィな、デカブツ。俺さ、ちっとばかし『魔力』が足りねえんだ」


吹き飛んだ理由が青年の蹴りによるものだと気付いたのは、十数秒後のことだった。
青年は消えたのではない。
余りにも素早い動きで攻撃を仕掛けてきたのだ。
男は地に踞り、血を吐きながら何とか青年を見上げる。
青年はその右手に『剣』を顕現させ、ゆっくりと男に近付いていく。



「お前らみたいなホームレスなら餌として丁度いいんだよ。
 いなくなった所で誰も気にしないからな。
 ま、そういう訳なんで――――――大人しく魂喰いされろよ」



そう言って、青年剣士は嗜虐的な笑みを浮かべ。
そして、勢いよく剣を振り下ろした。
何の躊躇も無く命を刈り取る、無慈悲な死神の鎌が迫る。



―――――魔力?魂喰い?
―――――こいつは何を言っている。
―――――俺は此処で殺されるのか?
―――――嫌だ。俺はまだ。
―――――死ねないのだ。



直後、男は目を見開いた。
迫り来る刃の動きを、彼は『捉えていた』。
先程蹴りを叩き込まれた時とは違う。
百戦錬磨の戦士の如く、敵の動きを見切っていた。



男は瞬時に地面を転がり、振り下ろされた剣を回避する。
躱した後に即座に立ち上がり、体勢を整えて青年剣士を見据えた。


292 : アースクエイク&アーチャー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/06(土) 02:47:47 87Clm5320

「…何?」


剣士は眉を顰め、男を見る。
こいつ――――人間の癖に『躱した』のか?
心中で僅かに驚愕しつつも、剣士は苛立った様に舌打ちをする。



―――――俺が、躱した?
―――――あの剣を?



男もまた、自らの行動に驚愕していた。
あのような反射神経を自分は備えていたのか。
否、まるで『訓練や実戦で培った』かのような動きを自分はしていた。
何故だ。自分は何故あんな動きを―――――


「チッ、ちょこまかと逃げてんじゃねえよッ!!!」


直後に声を荒らげながら、剣士が勢いよく地を蹴る。
瞬間――――電光石火の速度で、剣士は男へと接近。
一瞬で距離を詰めてきた剣士に男は対処出来ず。


「グ、ワ……ッ!!?」


鮮血が、吹き出る。
剣士が斜め上に切り上げ、男の胴体前面に鋭い裂傷を負わせたのだ。
男は堪らず仰向けに転倒し、のたうち回る。


「調子に乗るんじゃねえよ、デカブツ」


悶え苦しむ男の頭を、剣士の足が踏みつけた。
その表情に浮かぶのは憤り。
ただの常人に僅かでも手子摺らされたという屈辱。
足の力を強め、剣士は男を何度も踏み躙る。


「NPCは大人しく『サーヴァント』の餌になってればいいんだよ」


そう言って剣士は踏み躙る男を見下ろす。
男は抵抗を試みるも、剣士の外見以上の力によって一切抵抗することが出来ない。


293 : アースクエイク&アーチャー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/06(土) 02:48:29 87Clm5320


――――何故だ。
――――何故、こんなことになった。



男はギリリと歯軋りをし、剣士を見上げた。
余りにも理不尽な暴力の前に、自分は蹂躙されている。

この剣士は、強すぎる。
紛れもない強者だ。
男はそう直感する。
決して逆らえぬ相手なのだと、魂が理解する。

今の自分は、間違い無く弱者だった。
強者には弱者を踏み躙る権利がある。
弱者は強者によって何もかも奪われる。
この世を支配するのは強者であり、弱い者は何もなし得ることは出来ないのだから。
それが社会の摂理なのだ。



『ムッハハハハハ!ムハハハハハハ!』



――――何だ?
――――何か、懐かしい感覚がする。


『強者』と『弱者』。
それについて思考をした直後、男の脳裏に奇妙な笑い声が轟いた。
余りにも豪快で、そして力強い。
酷く懐かしい様にさえ思えるそんな哄笑が、突然脳内で響いたのだ。



「さっさと、死ね―――――」



男の思考など知らず、剣士は己の剣を再び構えた。
男の首を跳ね飛ばすべく、剣を振り下ろさんとしたのだ。
この一撃で、自分は死ぬのだろう。
首を跳ねられ、一瞬で命を散らすことになるだろう。


首を跳ねられ。
首を―――――――。



『イヤーッ!』
『イヤーッ!』



脳裏に過る、二頭のドラゴン。
否――――二人のニンジャ。
自身の首を跳ね飛ばすべく迫る、敵達だ。


294 : アースクエイク&アーチャー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/06(土) 02:49:17 87Clm5320

ハッとしたように男は目を見開く。
何かを思い出したかの様に、彼は愕然とする。


―――――俺は、何をしているのだ。
―――――今まで一体、どれだけ時間を無駄にしてきたのだ。
―――――『シックスゲイツ』である俺が、こんなブザマな時を過ごしてきたのか!
―――――情けない。みっともない。何と惨めな姿だ。


男は恥じた。
己の無知を。己の無様な姿を。己の愚鈍さを!
何故今まで、思い出すことが出来なかったのか。
死の間際になって己が何者なのかをようやく思い出してしまった。

自分はどうしてこんな姿になっている。
何故のうのうとゴミのような生活を送っている。
これではまるで弱者―――ブザマなモータルではないか。

意識が現実へと戻る。
振り下ろされた剣の刃が、スローモーションに見える。
敵は己を殺すべく、剣を振り下ろしている。
この様な場所で、死ぬのか。

そんなこと、認めるものか。
俺はまだ死ねない。
ラオモト=サンに尽くぬまま死ぬことなど、あってはならない。
そうだ。こんな所では、死ねない。



―――――此処で惨たらしく、死んでたまるものか!



「ウオオオオオーッ!!!」



男の――――ニンジャの咆哮が轟く。
その時だった。
何処からともなく、幾つもの矢が飛来したのだ。
矢はニンジャを殺さんとする剣士へと突き刺さり、彼を怯ませた。


295 : アースクエイク&アーチャー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/06(土) 02:50:04 87Clm5320

「ぐあ………ッ!!?」


腕や足に矢が突き刺さり、剣士は剣を落として体勢を崩す。
その隙を、ニンジャは決して見逃さない。


「イヤーッ!」


仰向けに倒れるニンジャの放った蹴りが剣士を吹き飛ばした。
怯んだことで隙を晒していた剣士に躱すことは適わず。
そのまま剣士は吹き飛び、橋の柱へと衝突した。


「敵はセイバーのサーヴァント…といった所かしら。
 どうやら間に合った様ね、『マスター』」


ニンジャは声が聞こえた土手の方へと視線を向ける。
そこにいたのは、小柄な体格の女だった。
否、小柄などというレベルではない。
ニンジャの巨躯とは対照的に、小人とさえ称せる程に小さな体格だったのだ。

しかしその両手には二丁のクロスボウが握られている。
その瞳には確かな戦意が宿っている。
ニンジャはその時直感した。この女はただの幼子ではない。
あの剣士目掛けて矢を放った、確かな『戦士』なのだと。



「くそッ、お前、マスターだったのかよ…折角魔力の足しに――――――」



傷を抑えながら、セイバーはよろよろと立ち上がろうとする。
直後、間髪入れず彼の両足を矢が再び貫いた。
絶叫を上げるセイバー。
更なる追撃の矢が、腕を、胴体を射抜いていく。
最早蜂の巣とも言える状態になり、セイバーは悶え苦しむ。


「無駄口を叩く暇があったら、攻撃への対処を考えておくことね」


296 : アースクエイク&アーチャー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/06(土) 02:50:30 87Clm5320

女弓兵は冷徹に言い放ち、二丁のクロスボウを構えた。
矢による正確な射撃によってセイバーの動きを封じているのだ。

ニンジャは驚嘆した。
不意を突かれたとは言え、あの常人離れした剣士が圧倒されているのだから。
決して剣が届く範囲には近付かず、不意打ちを起点とする遠距離からの攻撃――――。
女が相応に実戦慣れしていることは見て取れた。



「この、クソ、がああああああああああアーーーーーーーーッ!!!!!!」



身体中を矢で射抜かれたセイバーが、吼える。
怒りに悶え狂い、剣を拾い、苦痛を抑えながら獣の如く駆け出した。
目指すは―――――巨躯のニンジャ。
セイバーはマスターを狙いに行ったのだ!

女弓兵はすぐに駆けるセイバーへと照準を定めた。
その時、彼女は気付く。
セイバーが迫り来る中で、マスターはただその場で立ち尽くしていることに。
マスターが拳を構え、セイバーを真っ直ぐに見据えていることに。


マスター――――ニンジャの男は、セイバーを待ち受けていた。
既に彼は己の力の引き出し方を理解していた。
己は、ニンジャなのだ。
矮小なるモータルとは一線を画す、超人なのだ。
ならば何をするべきなのか。
答えは、一つだ。




―――――カラテだ!
―――――カラテあるみのだ!




「イイイイヤアアアアアーーーーーッ!!!!!」



ビッグニンジャ・クランの怪力を活かした拳の一撃!
ビッグ・カラテが、迫り来るセイバー目掛けて放たれたのだ!
驚愕の表情を浮かべながらも、セイバーは剣を振り下ろす。

だが、その動きが一瞬だけ止まった。
女弓兵が援護射撃として放った矢がセイバーの足を再び射抜いたのだ。
そして―――――目の前のニンジャの気迫に、怯んでしまった。


直後、セイバーの頭部にビッグ・カラテが叩き込まれた。
ニンジャとは人類を陰から支配する半神的存在。
そのソウルが憑依した者の拳に、神秘が宿らぬ筈が無い。


故に――――――セイバーの身体は、凄まじい勢いで吹き飛ぶ。
異常な怪力によって頭部を破壊されたセイバーは、そのまま肉体が粒子と化して霧散したのだ。





297 : アースクエイク&アーチャー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/06(土) 02:52:36 87Clm5320



「理解して貰えたかしら、マスター」


ニンジャ――――『アースクエイク』は、橋の下に座っていた。
傍に立つのは先程アースクエイクを援護した小人の女弓兵。
彼女はアースクエイクに対しアーチャーと名乗った。

アースクエイクはアーチャーから全ての事情を聞いた。
この世界は『聖杯戦争』の会場であるということを。
聖杯戦争がたった一つの奇跡の願望器を巡って争う戦いであるということを。
アースクエイクはその参加者であるマスターとして選ばれたことを。
マスターは先程のセイバーのような『サーヴァント』と呼ばれる使い魔を使役しているということを。


「フン、まるで御伽話だな」
「そう思うでしょうね。でも、奇跡の願望器は実在する」


アースクエイクの言葉に対し、アーチャーはそう断言した。


「それを得られるのは、この戦いに勝ち残った勝者のみ。
 どんな望みでも、その杯があれば叶うでしょうね」


続けてそう告げたアーチャーの言葉を耳にし、アースクエイクは思考する。
自分は――――死んだ筈の存在だ。
何故こうして生きているのかは解らない。
だが、確かなことは一つ。
あの時自分はドラゴン・ドージョーのニンジャに負けたということだ。
目的の為に相棒のヒュージシュリケンを見捨て、そのことが仇となった。
結局のところ、自分が判断を見誤ったことで負けたのだ。
精鋭の名が聞いて呆れると心中で自嘲する。
アノヨで相棒に恨まれていたとしても、仕方が無いことだろう。
自分はヒュージを裏切り、その上で失敗したのだから。


(俺は死人だ。聖杯に求める願いなど、ありはしない)


アースクエイクは死人だ。
ドラゴン・ドージョーで死んだ負け犬だ。
今更奇跡の願望器など突き出された所で、何を願うと言うのか。
恐らくラオモト=サンは失敗者である俺を赦さないだろう。
むざむざ蘇った所で、シックスゲイツの座から落とされるのは確実だ。

ならばこの命を捨てるのか。
聖杯戦争を諦め、ゆるりと死を受け入れるのか。


298 : アースクエイク&アーチャー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/06(土) 02:53:17 87Clm5320


(…否、俺は止まるつもりはない)


そう、自分はこうして生きている。
その命を無意味に捨てる程、自分は愚かではない。
死んだ筈の命を手にし、己は何をする。
答えは明白だ。


「俺は、主君に…ラオモト=サンに聖杯を献上する。
 奇跡の願望器はあの御方にこそ相応しいモノだ。
 その為に俺はイクサをする。
 ソウカイ・シックスゲイツのアースクエイクとして、俺は戦う」


アースクエイクはそう宣言した。
彼は主の為に聖杯を手にすることを決意したのだ。

任務失敗の汚名を注ぐ為か。
―――――否。
実績を上げることで主君に気に入られる為か。
―――――否。
そんな俗な理由ではない。

彼が主君の為に聖杯を求める理由は簡単だ。
ラオモト・カンこそが聖杯を手にするに相応しい男だから。
ただそれだけの理由であり、それこそが真理なのだ。
シックスゲイツの一角たる男は、主君への忠義を貫くのだ。



「その為に力を貸せ、アーチャー」





299 : ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/06(土) 02:54:00 87Clm5320


彼女が召還に応じたのは、単なる気まぐれの様なものだった。
傭兵としての血が無意識の内に再び騒いだのかもしれない。
気が付けば彼女は導かれる様に、この大男のサーヴァントとして召還されたのだ。

男は主君であるラオモト・カンという人物の為に聖杯を手にすると言った。
自らの欲望よりも忠義を優先したのだ。


(私が、こんな男に召還されるとはね)


自分とは違ったタイプの人間だ、とアーチャーは思う。
彼女は報酬によって動く傭兵に過ぎない。
他者への忠義と言うものは無いし、あくまで金銭によって従うのみ。
所謂ビジネスライクで動く存在なのだ。
心酔、忠誠心と言ったものとは程遠い人種だ。



―――――ミラさん、ありがとうございます!



ふと脳裏を過ったのは、空の様な髪色をした少女。
かつての旅を共にしてきた取引相手の一人。
そして、傭兵らしからぬ奇妙なお節介を焼いてしまった数少ない相手だった。


(他者への情感、か…)


忠誠、というものには縁がなかった。
他者への特別な感情など自分とは関係がないと思っていた。
だが、思えばあの少女――――ルリアに抱いていた想いは、ある種の情だったのではないか。
屈託のない天真爛漫な笑顔を見せる少女に対する、情感だったのではないか。

忠誠心というものを彼女は知らない。
しかし、他者への想いというものは――――解らなくもなかった。
自分がルリアに情を感じていた様に、この男もラオモト・カンという男にある種の情を抱いている。
利害関係という壁を乗り越えた、特別な感情というべきものだ。
アーチャーはアースクエイクに微かな興味を抱いていた。
この無骨な男が一種の情を抱く姿が、自分と重なったのかもしれない。
それ故に彼女は、男の問いかけに真っ直ぐに答える。


「…ああ。この傭兵が、力を貸そう」


アーチャーのサーヴァント―――ミラオルは、静かにそう答えた。
彼女は傭兵として、一人の戦士として、アースクエイクに力を貸すことを約束した。


300 : アースクエイク&アーチャー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/06(土) 02:54:53 87Clm5320

【クラス】
アーチャー

【真名】
ミラオル@グランブルーファンタジー

【ステータス】
筋力E 耐久D 敏捷B 魔力D 幸運B 宝具D

【属性】
中立・善

【クラス別スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

単独行動:A
マスター不在・魔力供給無しでも長時間自立できる能力。
Aランクの場合マスター無しでも一週間の現界が可能。

【保有スキル】
遊撃兵:B
本隊から離れて行動し、奇襲やサポートに徹して戦う遊撃兵としての能力。
単独行動スキル発揮中、飛び道具の命中率に有利な補正が掛かる他、Cランク相当の気配遮断スキルを獲得する。
なお攻撃時にも気配遮断のランクはそれほど低下しない。

千里眼:C
視力の良さ。
遠方の標的の捕捉、動体視力の向上によって射撃・偵察に有利な補正が掛かる。

破壊工作:B+
相手の戦力を削ぎ落とす才能。
遊撃を駆使することで進軍前の敵軍に大きな損害を与えることが可能。
ただし、このスキルが高ければ高いほど英雄としての霊格が低下する。

戦闘阻害:B
特殊な矢を命中させることで一定時間相手の筋力値・耐久値を1ランクダウンさせる。
効果時間はスキルのランクによる。このスキルによるデバフは状態異常として扱われる。

追撃:B
追い詰めた敵を確実に仕留める技能。
負傷者、または状態異常に陥った者に与えるダメージ量が増加する。

【宝具】
「双璧の穹撃(デュオ・アロウ)」
ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:2
両手にそれぞれ携えられた一対のクロスボウ。
ミラオルの手で改造が施されており、片手での速射が可能な仕様になっている。
射撃や装填が非常に素早く、特に多勢に対する遊撃において強さを発揮する。

【Weapon】
宝具「双璧の穹撃」

【人物背景】
小人のような体格を持つハーヴィン族の女傭兵。
その体格と機動力を活かした遊撃を得意とする。
冷静沈着で馴れ合いを好まず、合理的な思考で動く。
しかし不器用ながら仲間に対する思いやりを持ち、素直になれない一面も併せ持つ。

【サーヴァントとしての願い】
傭兵としてマスターの依頼を遂行する。

【方針】
偵察による情報収集と敵の捜索。
戦闘時は中遠距離での射撃戦、あるいはマスターの援護に徹する。


301 : アースクエイク&アーチャー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/06(土) 02:55:42 87Clm5320

【マスター】
アースクエイク@ニンジャスレイヤー

【マスターとしての願い】
ラオモト・カンに聖杯を捧げる。

【weapon】
己のカラテ

【能力・技能】
「ニンジャ」
平安時代をカラテで支配した半神的存在・ニンジャの力を得た者。
ニンジャとなったものは超人的な身体能力と生命力を獲得する。
アースクエイクはビッグニンジャ・クランのニンジャソウル憑依者である。
ソウルの影響で2m50cmもの異常巨体と化しており、パワーとタフネスを活かした体術を得意とする。
またニンジャソウル自体が神秘を帯びている為、アースクエイクの体術はサーヴァントを傷付けることが可能。

【人物背景】
ネオサイタマの邪悪ニンジャ組織「ソウカイヤ」に所属するニンジャ。
その中でも実動部隊である「シックスゲイツ」の上位に存在する六人の精鋭の一人。
2m50cmの巨体を持つ筋骨隆々の大男であり、その巨体から繰り出される怪力を武器とする。
外見とは裏腹に冷静沈着かつ知能派であり、司令塔としても非凡な能力を備えている。

【方針】
シックスゲイツの名にかけて、あらゆる手段を使ってでも勝つ。
会場内でのロールはホームレス。


302 : 名無しさん :2016/02/06(土) 02:55:54 87Clm5320
投下終了です


303 : サム・ウィンチェスター&タオイスト ◆tGJWnjCS9s :2016/02/06(土) 04:24:15 W3Ug04gM0
皆さん投下お疲れ様です。
自分も投下します。


304 : サム・ウィンチェスター&タオイスト ◆tGJWnjCS9s :2016/02/06(土) 04:25:37 W3Ug04gM0
――『今週発生した殺人事件を特集を組んでお送りします。
東京都内で発生し被害者は100名をこえる大惨事で犯人はいまだ逮捕されておらず…』――

東京都内の弁護士事務所で一人の男性が夕方のニュース番組を険しい表情で見ていた。
男性は外国人で、アメリカから日本に来日し東京都内で弁護士事務所を開業してから
敏腕振りを発揮し、ハンサムな外見などもあり引く手あまたの弁護士となっていった。
自身の力を存分に発揮でき日本に来たのは間違いではなかったと思った。

――記憶を取り戻すまでは…――

「お先に失礼します。お疲れ様です。」
仕事が終わった若い女性の事務員が男性に挨拶をする。
男性の方も最近の事件の注意を含めて笑顔で応答した。
「ご苦労さま。最近は物騒だから気を付けて。」
「サムさんも気を付けて。なるべく早く帰宅した方がいいですよ。」
「僕はもう少し仕事をしてから帰るよ。心配してくれてありがとう。」
男性――サム・ウィンチェスターは安心させるため優しく答え
事務員は顔を赤くしながら、自宅へと帰って行った。


事務所で一人だけとなったサムは今週の事件の調査を開始した。
「あれはおそらくサーヴァントの仕業だ。どう思うタオイスト?」
するとサム以外いなかった事務所に一人の男が現れた。
道教の僧侶の服と冠を着た初老の一本眉毛の男で、そこからは威厳があふれていた。
「間違いないだろう。あの所業は普通の人間には不可能だ。」
タオイストは確信してサムの考えを肯定した。


305 : サム・ウィンチェスター&タオイスト ◆tGJWnjCS9s :2016/02/06(土) 04:26:23 W3Ug04gM0
――記憶を取り戻してからしばらく混乱していたサムは、数日後現れたタオイストに
聖杯戦争とサーヴァント、令呪など全てを教えられた。
その後聖杯を望むのか問われたサムは、自身の経験、そして持ち前の正義感から
聖杯戦争に乗らず、聖杯戦争からの脱出を目指すマスターがいれば協力して
このデスゲームから脱出する事を告げた。
サーヴァントに聖杯を取らない方針を伝えるのは危険な行為である事を
サムは十分理解していたが、サーヴァントの協力無くては不可能である事を
十分理解していたため誠意を持って全てを話した。
幸いタオイストは聖杯どころかキリスト教とは反りが合わず聖杯戦争に召喚された事に憤慨しており
サムの前にすぐ現れなかったのは、サムがどんな人物かを見極め聖杯戦争に乗るなら
座に帰るつもりだった事を告げた。
そうして現在に至っている。


「こいつはおそらくバーサーカーだろう。マスターが乗っているのかどうか不明だが危険な事に変わりない。」
険しい表情で言うタオイストにサムは同意した。
「僕もそう思う。マスターは記憶が戻るだけでサーヴァントが聖杯戦争の事を教えなければ
 知識が手に入らないなど色々と不審な点がある。
 この聖杯戦争には何か裏があるのは間違いない。」

――その後、今後の方針を話し合った結果、マスターやサーヴァントなどの情報収集
そして聖杯戦争でハンターの武器は失われたため武器の調達をする事が決まった。
サムは幸運だった事だろう。触媒無しの召喚では大抵は相性が優先されるが
相性よりも恐るべき存在がサーヴァントとして召喚される事もあり
逆にそのおかげで聖杯を望まないサーヴァントが召喚されたからだ。
その中でもタオイストは最良のサーヴァントである。

―――むかぁし、むかぁし、中国ではキョンシーと呼ばれる怪物が国中を恐怖の底に陥れた。
そこで妖怪退治のプロフェッショナル、霊幻道士が立ち上がった。
―――真名をラム、彼こそがその霊幻道士である―――

――聖杯戦争に立ち向かう主従の誕生であった。


306 : サム・ウィンチェスター&タオイスト ◆tGJWnjCS9s :2016/02/06(土) 04:27:19 W3Ug04gM0
【クラス】
タオイスト

【真名】
ラム@霊幻道士

【ステータス】
筋力C 耐久C 敏捷A+ 魔力A+ 幸運D 宝具D

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
陣地作成:B
道士として、霊的に有利な結界を作り上げる。
「工房」の形成が可能。

道具作成:B
魔力を帯びた器具を作成できる。
この道具作成スキルにより、死体をキョンシーにできる。
キョンシーは盾にしたり、攻撃したりなどができる。
普通の使い魔などより頑丈だが餅米や鶏の血などキョンシーの弱点を
突かれると脆いのが難点。

道術:EX
道教の魔術。幽霊の正体を木の葉で目を拭いて見破ったり。
姿を消す能力を持つ敵の力を封印したり
自動で追尾する剣など様々な事ができる。
ゆういつの弱点は西洋の吸血鬼には攻撃が効きづらい事であり
よく効くのはお札で火を出す術で吸血鬼を焼いてしまう事だろう。
それでも厳しいのであれば底なし沼に吸血鬼を沈めてしまおう。

対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

中国武術:A+++
中華の合理。宇宙と一体になる事を目的とした武術をどれほど極めたかの値。
修得の難易度は最高レベルで、他のスキルと違い、Aでようやく“修得した”と言えるレベル。
+++ともなれば達人の中の達人。暴走したキョンシー隊を素手でボコボコにした恐るべきもの。

【保有スキル】
心眼(真):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し
その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
逆転の可能性がゼロではないなら
その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

キリスト教嫌い:E
キリスト教徒ときまずい関係になってしまう。
バッドスキル。ただし付き合いが長くなれば緩和されていく。
相手のマスターがキリスト教徒か、もしくはキリスト教関係の英霊の場合
マスターが仲立ちするなど相応の配慮が求められるだろう。



【宝具】
『妖怪退治のプロフェッショナル(霊幻道士)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
妖怪退治のエキスパートとしての生涯が宝具となったもの。
相手が妖怪や魔物などの場合、幸運以外のステータスを1アップさせる。
機械や人間の英霊には効果がないが、それ以外ならば有利な戦いができる。

【weapon】
銭剣、桃木剣やお札など道術一式。足りない物があれば道具作成スキルで作成可能。

【人物背景】
妖怪退治のプロフェッショナル。キョンシーはもちろんの事、幽霊などとも戦った。


307 : サム・ウィンチェスター&タオイスト ◆tGJWnjCS9s :2016/02/06(土) 04:27:59 W3Ug04gM0
【サーヴァントとしての願い】
サムを聖杯戦争から脱出させる。

【マスター】
サム・ウィンチェスター@スーパーナチュラル

【マスターとしての願い】
聖杯戦争からの脱出。

【weapon】
なし。

【能力・技能】
悪魔や悪霊、怪物、はては天使に至るまでありとあらゆる人外の者と戦ってきたハンターとしての力。
魔王ルシファーの器として選ばれた事もあるため、魔力量も桁外れ。
またハンターに戻る前は弁護士を目指していたなど明晰な頭脳を持つ。

【人物背景】
スーパーナチュラルの主人公の一人で凄腕のハンター。

【方針】
脱出狙い。殺し合いには乗らない。
脱出を目指すマスターがいれば協力する。
まずは情報収集、武器の調達。
大量殺人を犯したサーヴァントには最大限の警戒をする。

【捕捉】
今回の聖杯戦争では日本に来日した弁護士という設定が与えられています。
弁護士事務所は東京都内にあります。


308 : サム・ウィンチェスター&タオイスト ◆tGJWnjCS9s :2016/02/06(土) 04:29:26 W3Ug04gM0
投下を終了します。


309 : ◆NIKUcB1AGw :2016/02/06(土) 13:40:56 2sSHgEW60
皆様、投下乙です
自分も投下させていただきます


310 : マリア・ヴィスコンティ&ライダー ◆NIKUcB1AGw :2016/02/06(土) 13:41:47 2sSHgEW60
東京某所、暴力団事務所。
そこに、黒服の男たちと対峙する一人の女性がいた。
眼鏡と三つ編みに束ねた赤髪が特徴的なその女性は、なかなかの美女と言えた。
しかしその目に宿る凶悪な光が、彼女が堅気の人間でないことを示していた。

「お約束のものです」

暴力団員の一人が、女に向かってそれなりの厚みを持った封筒を差し出す。
その中に入っていた一万円札の枚数を確認すると、女はうなずいて封筒を懐にしまい込んだ。

「これからも警察の情報提供お願いしますよ、姐さん」
「ああ」

鮫のように笑う女の名は、マリア・ヴィスコンティ。
この世界での立場は、警視庁の刑事であった。


◆ ◆ ◆


(しかし、ぬるい街ねえ。まあ大阪がひどかったのであって、こっちが標準に近いんだろうけど……)

家までの道を歩きながら、マリアは物憂げに溜息をつく。

彼女のいた世界では、大阪は世界屈指の犯罪都市となっていた。
そしてそんな街で警官をやっていた彼女も、市民の安全のために働く善良な奉仕者などではなかった。
何せ警察が犯罪組織を示す「盟約」の一角として数えられているのだから、そこに所属する者たちの人格も推して知るべしだ。

(大量殺人なんぞ起きてるご時世なのに、捜査に当たらせる警官の武器が拳銃一丁とは……。
 ショットガンどころか、RPGが支給されてもいいくらいなのに)

元の世界ではショットガンの使い手として名を馳せていたマリアだったが、この世界で使えるのは警察官として支給された拳銃のみだ。
ついでに公務員であることのつじつま合わせとして、日本国籍のハーフということになっている。
別に血筋に誇りを持つような人間ではないマリアだが、この件については自分のアイデンティティーをいじられたようで少しむっとしている。

(堂々と風俗行くこともできないし、私にとっちゃ本当に住みにくい街だわ……。
 早く懐かしきゴミ溜めに帰りたいねえ……)

もう一度溜息を漏らしつつ、マリアは家路を急いだ。


311 : マリア・ヴィスコンティ&ライダー ◆NIKUcB1AGw :2016/02/06(土) 13:42:21 2sSHgEW60


◆ ◆ ◆


マリアの家は、20代の公務員にはあまり似つかわしくないそこそこ高級なマンションだ。
むろん正規の給料だけではなく、後ろめたい方法で稼いだ金で購入したということになっている。

自宅に戻り部屋着に着替えたマリアは、真っ先にDVDをプレーヤーにセットする。
帰宅時に寄ったレンタル店で借りてきた、映画のDVDだ。
大阪は映画産業が非常に盛んであるため、大半の大阪人は映画好きである。
マリアもそれほど熱狂的な映画フリークというわけではないが、この世界の基準に当てはめれば平均以上の映画好きだ。
異世界で作られた未知の映画を観られるというのは、彼女にとってこの世界で暮らす数少ないメリットの一つであった。
今日借りてきたのは、剣と魔法の世界が舞台の冒険ファンタジーものだ。
マリアは夕食の中華まんとビールを交互に口に運びながら、真剣なまなざしで画面を見つめる。

「まったく、のんきなものだな。聖杯戦争のまっただ中だというのに……」

ふいに、部屋の中にもう一つの人影が現れた。
アフロ寸前のもじゃもじゃ頭と、薄い眉毛が特徴の貧弱そうな男だ。
彼こそが聖杯戦争でマリアと組む、ライダーのサーヴァントである。

数日前、ぬるい日常に違和感を抱いた結果として記憶を取り戻したマリアの前に現れたのが、この男だった。
マリアは彼から自分が異世界に連れて来られたこと、そして聖杯戦争の詳細について教えられた。
荒唐無稽な話ではあったが、そういう話に慣れていたマリアは割とあっさりと受け入れた。
何せ太陽の塔が動き出して怪獣王と戦う街・大阪の住人である。
他にも120メートルの巨人が大阪ドームを占拠しただとか、軍艦島に七福神の乗った宝船が現れただとか、荒唐無稽な話には事欠かない地域だ。
それらに比べれば、まあ異世界召喚程度はまだ受け入れられる話であろう。


312 : マリア・ヴィスコンティ&ライダー ◆NIKUcB1AGw :2016/02/06(土) 13:43:05 2sSHgEW60

「別にいいじゃない。戦争って言ったって、戦う相手が見つからないんじゃどうしようもないでしょ。
 戦わない時は、ちゃんと日常生活を楽しんでおかないと」
「甘いわ!」

ライダーの言葉をまったく意に介さないマリアだったが、ライダーの方も引かない。

「この前も言ったが、聖杯戦争には奇襲からの暗殺を得意とするアサシンというクラスがあるのだ!
 それ以外のクラスであっても、奇襲を仕掛けてくる可能性は充分にある!
 油断していれば、寝首をかかれることに……」
「ああもう、うるさい!」

ライダーの講釈を遮り、マリアはビールの空き缶を投げつけた。
むろんサーヴァントであるライダーはそんなものが当たったところで痛くもかゆくもないのだが、つい反射的にひるんでしまう。

「今、映画がいいところなんだよ! 集中させろ!」
「な……!」

理不尽な叱責に体を震わせるライダー。だが、あまり強い態度に出ることはできない。
何せ彼の戦闘力は、宝具なしでは一般人とほぼ等しいのだ。
修羅場慣れしているマリア相手では、脅しをかけたところで逆に圧倒される恐れがある。
だからといって、宝具を使うわけにもいかない。
彼の宝具は、生前に開発した搭乗型のロボットだ。
マンションの一室で使うには大きすぎるし、一般人相手の脅しに使うのは明らかに過剰戦力である。
そんなこんなで、ライダーはマリアに対して非常に弱い立場に置かれていた。

(くそー……。見ていろよ、愚か者め。
 聖杯を手にした暁には、世界征服のついでに貴様を下僕にしてくれるわ!)

薄い眉の間にしわを寄せながら、邪悪なる科学者……Dr.マシリトは心の中で呟いた。


313 : マリア・ヴィスコンティ&ライダー ◆NIKUcB1AGw :2016/02/06(土) 13:43:51 2sSHgEW60

【クラス】ライダー
【真名】Dr.マシリト
【出典】Dr.スランプ
【属性】混沌・悪

【パラメーター】筋力:E 耐久:C 敏捷:E 魔力:E 幸運:E 宝具:C

【クラススキル】
騎乗:A-
乗り物を乗りこなす能力。
ライダーは機械ならば完璧に乗りこなせるが、生物に対してはスキルの恩恵を受けられない。

対魔力:E
魔術に対する抵抗力。
魔術の無効化は出来ない。ダメージ数値を多少削減する。

【保有スキル】
戦闘続行:B
名称通り戦闘を続行する為の能力。
何度負けても諦めない、往生際の悪さ。

ボツ!:A
平行世界の自分と近しい存在に由来するスキル。
創作活動の経験がある相手に対し、与えるダメージが増加する。
増加率は相手がどれだけ創作に熱意を注いでいるかに比例し、職業としている者ならば数倍に達する。
芸術家系キャスターの天敵となり得るスキルである。


【宝具】
『キャラメルマン1号』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1-2 最大捕捉:1人
ライダーが開発した、最初の世界征服用ロボット。
全長数メートルの人型で、腹の中に入って操縦する。
「筋力:A」に相当するパワーを誇るが、武装はなく攻撃手段は肉弾戦のみ。

『キャラメルマン2号』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1-30 最大捕捉:1人
レース用に開発された、ダチョウ型ロボット。
スピードはあるが武装はミサイル1発のみで、戦闘向きではない。

『キャラメルマン3号』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-80 最大捕捉:3人
1号と2号の経験を踏まえ、則巻アラレ&ガジラ抹殺のために作られたロボット。
顔と自動車が融合したようなデザインで、3輪で移動。
左腕には強力なレーザー砲が装備されている。

【weapon】
いちおう天才的な頭脳。

【人物背景】
世界征服を企む、マッドサイエンティスト。
「世界最強のロボット」である則巻アラレを世界征服の最大の障害と判断し、自作のロボット「キャラメルマン」シリーズで幾度となく戦いを挑んだ。
最後は自らをキャラメルマン9号に改造してアラレに挑むも、勝利をつかむことはできずに命を散らした。
その後蘇り新たなキャラメルマンを制作したという説もあるが、真偽の程は定かではない。
前述の通り制作したキャラメルマンは9体存在するが、ライダーで召喚された現状で呼び出せるのは搭乗型の1〜3号のみ。
また肉体も、サイボーグ化する前の生身の状態となっている。

なお出身世界では一介の犯罪者に過ぎないが、異世界では「悪の化身」として君臨したこともあるという。

【サーヴァントとしての願い】
世界征服。

【基本戦術、方針、運用法】
さすがに元の世界のような無茶はできないが、キャラメルマンシリーズの性能は充分に高い。
しかし本人のステータスは、耐久以外Eランクと脆弱そのもの。
奇襲に警戒し、常にキャラメルマンに乗った状態で戦闘を開始できるようにしたい。
そのため、マスターに警戒心のない現状は彼にとって本気でまずい状態である。


314 : マリア・ヴィスコンティ&ライダー ◆NIKUcB1AGw :2016/02/06(土) 13:44:53 2sSHgEW60

【マスター】マリア・ヴィスコンティ
【出典】アジアンパンクRPG サタスペ

【マスターとしての願い】
もらえるだけの金と女。

【weapon】
警察官としての職務中は、拳銃を所持。
本来の得物はショットガンだが、現在は所持していない。

【能力・技能】
裏社会の住人であるため戦闘慣れしており、殺人に忌避感がない。
また、女性を籠絡する高い恋愛テクを持っている。

【人物背景】
28歳のイタリア人。
職業は大阪市警の契約刑事(平たく言えば、治安維持のため警察が雇ったチンピラ)。
亜侠(素人以上、プロ以下の中途半端な裏社会の住人たち)の溜まり場である巨大バー「JAIL HOUSE」を縄張りとし、
亜侠達に仕事を斡旋して仲介料で小遣いを稼いでいる。
そのため、大阪の裏社会ではかなりの有名人。
気に入らない相手はショットガンで利き腕を吹き飛ばすことを信条としており、「利き腕のマリア」の二つ名で恐れられている。
真性のレズビアンかつロリコン。ただし美女であれば、年齢に関係なくちょっかいを出す。

【備考】
この世界では戸籍上、日伊ハーフの「速水・マリア・ヴィスコンティ」となっている。


315 : ◆NIKUcB1AGw :2016/02/06(土) 13:45:36 2sSHgEW60
以上で投下終了です


316 : 芝原海&アーチャー ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/06(土) 16:53:34 aVm/36a.0
投下します


317 : 芝原海&アーチャー ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/06(土) 16:53:47 aVm/36a.0

 姉妹を皆喪った。
 船員(かぞく)を皆喪った。
 そして私は……

「駆逐艦『響』、出るよ」


 行き先は北。シベリアの寒い────



      *      *      *



「う………ん………?」

 芝原海は微睡みの中から目覚めた。目覚まし時計はまだ鳴っていない。ふぁあと伸びをしてアラームの設定をオフにする。
 ベッドから出て服を着替える。部屋の扉を開けて居間に向かうと、ルームシェアしている友人の部屋から物音がした。どうやら起こしてしまったらしい。
 若干の寒さが残るリビングに入ると陸ガメのメイに餌をやっている先客がいた。しかし、そいつとは馬が合わないため無視して台所へ向かおうとするもソイツに話しかけられる。

「おはよう芝原さん」

 心の中で舌打ちをしながらも挨拶を返さないわけにいかず、いかにも不機嫌な態度でおはようと返す。
 台所の冷蔵庫からパンと牛乳とバナナを取り出してテーブルに並べる。ついでにテーブルにあったリモコンでTVをつける。
 あたしは別にニュースが好きなわけではないが、刺激的な冒険を欲している。ニュースはそのネタ探しだ。
 例えば都内で熊の出現や格闘家が来日しているなどの情報があればどこにいけば会えるかわかるため常にアンテナは張っておくのだ。
 そして、その習慣のおかげで朝から『大量殺人事件! 犯人は未だ捕まらず!!』という面白そうなニュースを見つける。
 朝の眠気もぶっ飛び、ニュースに釘つけになっていると後ろから友人の声がした。

「まさか海ちゃん、ソレに行くつもり?」
「まぁね」
「流石に危ないよ」
「何を他人事のように言っているのよ。あんたも行くんだからね」

 みるみる顔を青くしてあーだこーだ言う友人を無視して朝食を済ませて先にリビングを出ると、同じくルームシェアをしている後輩女子二人にすれ違った。
 軽く挨拶を交わして部屋に戻ると校則違反の明るい髪を纏め、学校に行く準備をして家を出る。

「ちゃんと後で来なさいよー」

 リビングでまだ食事を取っているであろう友人からの反応は無かったが、まぁ何だかんだいって付き合いのいい奴だ。ちゃんと来るだろう。

 電車を乗り継ぎ、通学路とは違う駅に降りた。
 駅から出るとあちこちに立入禁止(キープアウト)の黄色いテープや警官、マスコミを見つける。
 現場の空気にワクワクしながら近寄ろうとすると後ろから声をかけられた。

「君、ここは立ち入り禁止だ」

 心底うんざりしながら振り向くと若い男の警官がチョッキを来て海の方へ向かってくる。
 警官は教師、親に続く面倒くさい相手トップ3の一つである。奴らは何の権利あってか海の冒険を妨害してくるのだ。

「どこの学校の生徒だ? 名前は?」

 夜勤明けなのか、それとも殺人事件の現場にいて気が立っているのか警官の物言いは非常に高圧的で、海はカチンときた。
 今すぐボコボコにしてやりたい欲求に捕らわれたが、ここには今大勢の警官やマスコミがいる。
 暴れたら色々面倒なことになりそうだと自制心を総動員して抑える。
 とはいえ、現場は見たい。

(暗がりに連れ込んで気絶させるか)

 決断してからの海の行動は迅速だった。路地裏に指を指して小さな声で警官に言う。

「お巡りさん、実はあそこにお金がたくさん落ちてるの」
「何?」

 訝しげながら警官は路地裏に近付いていく。
 心の中でよしとガッツポーズしつつ、後ろからこっそりついていく。そして路地裏に入っていく警官にタックルをかました。
 うわと間抜けな声を出して路地裏奥へと押し出される警官に飛びかかってスリーパーホールドで極めようとした瞬間、技に失敗して背中から地面に落っこちる。


318 : 芝原海&アーチャー ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/06(土) 16:54:19 aVm/36a.0

「痛て……」

 何が起きた?
 何で失敗した?
 躱された?

 そして警官へと眼を向けると原因は一目瞭然だった。
 躱されたのでも失敗したのでもなく────警官の首から上が消滅していたのだ。首の無い相手にスリーパーホールドをかけることなど出来はしない。

「っ────」

 海の全身を悪寒が走る。肉食獣に狙われている、間違いなく。
 ここで取るべきは路地裏からの脱出だろう。普通の中学生ならばそうするに違いない。
 だが、山で動物を狩った経験を持つ芝原海という少女は〝仕留める側〟のロジックを理解していた。
 分かりやすい出口を用意してそこに罠を張る。逃げる奴はまんまと頭から引っかかり、後は狩る方の自由だ。
 ならば、ここですべきはこうだ。

「逃げたりしないからかかって来なさい!」
   
 大声。路地裏の向こうまで届きそうなほどの。
 殺人事件が起きた昨日の今日だ。怪しんだ警官や声を聞いた誰か来るかもしれない。

「チッ、クソガキが。余計なことを」

 悪態が聞こえた。どうやって隠れていたのか、いつの間にか男がいた。
 背は高くひょろりとしている。頭から膝まで届く赤い外套を来ている。顔も隠れているため年齢は分からないが、声から察するに若い男だ。

(よしっ!)

 しめた。相手の方から出てきてくれた。
 拳を握り、しっかりと地を踏む足に力を入れて踏み込む。
 相手が見えているなら負ける気がしなかった。複数人相手でも負けたことが無かったし、野生の獣相手でも一対一なら勝てる自信があった。
 ましてやひょろひょろの男になど負けるはずがないと────それが甘かったとすぐに思い知らされる。

 背筋に悪寒が走って前に出た体を無理矢理後方へとのけ反らす。秒も経たない内に、そのまま進んでいれば海の頭があったであろう位置を黒いものが通過した。
 幸い前髪一センチ程度食いちぎられただけで済んだ。髪型が少々崩れてしまったわけだが、上にあったものをみればそんなことは吹き飛んだ。

 あったのは黄金の棺桶だった。蓋が少しだけ開いていて、そこから黒い触手が這い出ていた。
 触手の先には眼とも口ともいえない器官があり、あれが海を攻撃したものだと理解する。
 触手は転がっていた警官の死体を持ち上げ、そして蛇のように丸呑みした。
 その様子を見て眉を顰める海に対し、次はお前がこうなる番だというように触手の先をこちらへ向ける。

「何をやっているアサシン! とっとと仕留めろ!」

 アサシン。それが棺桶の名前であるらしい。
 命令に応えて1本の黒い触手が4本に分裂する。
 まずい。あれはまずい。とてもまずい。
 海の腹の奥に味わったことのない感覚がにじみ出る。
 
 ────味わったことがない?
 
 いいや、ある。昔すぎて忘れているだけだ。
 これは昔々、3歳の頃、山奥で野犬に出会った時味わった────恐怖という感覚だ。

 ────山奥?
 
 違和感を覚える。この都会の都心部で山奥?
 それはどこの山だ? それは本当にここか?
 戦いの最中、それも超弩級の相手と対峙して考え事など愚行だろう。
 だが、それでも、何故かそれを優先しないといけないような気がして────


319 : 芝原海&アーチャー ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/06(土) 16:55:11 aVm/36a.0

「痛っ!」

 右の手の甲に痛みが走る。
 見てみると、赤い月、いや、赤い船の模様が浮かび上がっていた。
 そして同時に想起される無数の記憶。そうだあたしは────

「マスターだったのか。まあいい、サーヴァントが召喚されていない今がチャンスだ! 殺せ!!」

 ────あたしは魔法少女だ!

 四本の触手が迫る。獰猛に迫る触手の先にあるソレは人間を捕食するためのもの。人間では避けられない速さで迫る。
 しかし少女は避けていた。人間を超える速度で、人間を超える力で。


       *       *       *


「────!」

 アサシンから驚愕の声が漏れる。
 少女の姿は変わっていた。その顔は人間から一線を越えた美しい容姿。服は海賊風の青い服。左手はフックに変わり、右手には片手剣(カトラス)。
 変身するところを見ていなければ魔術で位置を入れ替えたといっても信じてしまったであろう変容だった。
 だが何よりも驚いたのは、その華奢な手足に秘められた力の密度だろう。アサシンの攻撃を避けられる速度で動ける時点で物理限界を超えている。

「何だお前は?」

 アサシンのマスターが呆けた表情のまま、少女に問う。


       *       *       *

「何だお前は?」
「そうねぇ、あたしは」


 先ほどまで芝原海だった者は問われる。
 さあ、何と答えるべきか重要なところだあたし、答えろ。自分は何だ?
 
「あたしは魔法少女『キャプテン・グレース』! 偉大なる冒険家よ!!」

 これ以上ない答えを出した。


320 : 芝原海&アーチャー ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/06(土) 16:56:25 aVm/36a.0
 踏み込み、男へと突貫する。
 男が慌てて何かの命令を出した。
 行かせんと頭上から襲いかかる触手、触手、触手、触手!
 先ほどは遊び程度の攻撃だったのだろう。今回は速度が段違いに迅い。
 右に左に下へと掻い潜る。が、最後の一本は避けれない。
 コンマ1秒よりも短い時間で、グレースは頭部を失うことを悟った。
 その刹那、グレースの耳に透き通った声が届く。

「ハラショー。素晴らしい勇気だ。
 だが、勇敢と無謀をはき違えてはいけないな」

 海を喰い殺すはずだった最後の一本が爆散する。
 何が起きたか確認するより先に、狼狽した男を袈裟切りにした。
 信じられないという表情で血を吐いて男が倒れる。ほぼ同時に上と後方で爆音がして頭上に目を向けると棺桶が粉砕された。

「詰めが甘い」

 後ろにいたのは上から下まで真っ白な少女だった。肩口から大砲らしきものを背負っている。
 さっきの声の主はこの少女らしい。見た目は自分と同年代だが、触手と棺桶を破壊したのがこの子となると見た目通りの少女ではないのかもしれない。
 だいたいが自分だって変身すると見た目が全く別の少女になるのだから見た目などあてになるまい。

「それであなたが私のマスターか?」
「マスターって何?」
「この聖杯戦争に参加するのではないのか?」
「ん? セイハイ戦争って何?」
「なるほど巻き込まれた一般人か」

 巻き込まれた一般人。どこかで聞いたようなフレーズだ。

「取りあえずコイツを……」

 切った相手を病院に連れて行こうと振り向くと男がいなくなっていた。
 いや男どころか滴り落ちたであろう血液も無くなっていた。

「サーヴァントを失ったマスターは消滅したようだね」
「サーヴァント?」
「さっきの棺桶だ」
「ああ、アレね」
「棺桶と君が切った男は魔力のパスが繋がっていた。私と君のようにね」
「つまりコンビってこと?」
「ハラショー。理解が早くて助かる」
「ふーん、まあいいわ。じゃあよろしく」
「ああ、私の事はアーチャーと呼んでくれ」

 握手する。これよりアーチャーから聖杯戦争について知るだろう。そして、新たなる冒険に胸を踊らせるだろう。
 だがこの時、グレースはまだ理解してなかった。
 この世界の恐ろしさを、この聖杯戦争の悍ましさを。


321 : 芝原海&アーチャー ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/06(土) 16:57:23 aVm/36a.0

【サーヴァント】
【クラス】
アーチャー

【真名】
ヴェールヌイ

【出典】
艦隊これくしょん(プラウザ版)

【属性】
秩序・悪

【パラメーター】
筋力:D 耐久:C 敏捷:B+ 魔力:E 幸運:C 宝具:B

【クラススキル】
対魔力:E-
 魔術に対する抵抗力だよ。
 私は戦後の英霊だから本当に申し訳程度だね。

単独行動:A
 マスターからの魔力供給を断っても現界できるスキルさ。
 EXランクはマスター不在でも行動できる。でも宝具の発動にはさすがにマスターが必要だ。
 大丈夫だよ。私は一人でも。

【保有スキル】
自己改造 :B
 自身の肉体に別の肉体を付属・融合させる。私の場合は艤装だね。
 高ランクなのはソ連に引き渡された後に色々いじられたからね。


不沈艦:A→D
 これはХорошо(ハラショー:素晴らしいの意)。
 どんな損傷を負おうとも沈まないスキルさ。
 ソ連に言ってから戦わなかったからこれはきっと不死鳥と呼ばれていた頃の名残だね。
 このランクだと


練習艦:A
 航海術や砲術などを熟練度の低い者に教えるスキルだよ。
 響(わたし)は転戦しながら戦っていたらしいけど、
 私はこの仕事ばかりしていたね。

【宝具】
『信頼、其は海を守る者』(Верный/ヴェールヌイ)
 ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:一人 最大捕捉:自分
 彼女の装備や実在したデータが少なく、矛盾や曖昧な表記が多いことから生まれた宝具。
 搭載されていたと思われる艤装へ任意に変更できる。
 装備していない艤装を空中展開し、一斉掃射も可能。


『大日本帝国万歳』(Ура Японская империя/ウラー・イーポンスキィ・インペーリヤ)
 ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:??? 最大捕捉:???
 固有結界。鉄風雷火、剣林弾雨の大艦隊戦が行われている大海原が展開される。
 結界内に放り込まれた者は水面上で戦う。
 夥しい量の魚雷、砲弾、更には神風特別攻撃隊が飛び交い、流れ弾のダメージを負うごとに海へと沈んでいって動きにくくなり、最後は轟沈する。


【weapon】
『信頼、其は海を守る者』で展開しうる下記装備。
130mm連装砲
85mm連装砲
553mm5連装魚雷2基
610mm5連装魚雷2基
37mm連装対空機関砲
12.7mm機銃対空機銃
25mm三連装対空機銃
432mm対潜迫撃砲
機雷投射機(機雷搭載数36個)
132mmカチューシャロケット


【人物背景】
 戦後日本からソビエト連邦へ賠償艦として渡された駆逐艦『響』が得た新たなる像。
 いわゆる成長後サーヴァントというものであり、響とは別の個体である。
 彼女は引き渡された後にソビエト連邦にて艦隊に組まれたが、1年後には兵装を外され5年ほど練習艦を務め、最後は標的艦として沈められた。


【サーヴァントとしての願い】
『兵器として』任務を全うする。それだけが望みさ


322 : 芝原海&アーチャー ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/06(土) 16:57:51 aVm/36a.0

【マスター】
芝原 海

【出典】
魔法少女育成計画limited

【マスターとしての願い】
冒険に行く。

【weapon】
魔法の片手剣(カトラス)

【能力・技能】
一瞬で虚空から展開できる魔法の海賊船。
水上では亜音速航行を行い、地上で展開すればその質量で相手を圧し潰す質量兵器と化す。
また大砲やテーブルなどの備品を持ち出すことも可能。

【人物背景】
魔法少女育成計画limitedより。
B市内で魔法少女の才能があった中学生の一人。変身後の名前はキャプテン・グレース。
幼いころより山籠りや喧嘩をしていたため変身していなくても馬鹿みたいな戦闘力を誇る。
具体例を出すと空手道場を1日で潰したり、暴走族を一人で潰滅させる。
人間で彼女に勝てるキャラクターは今のところいない。
家は地主があったため金に困ることは無い。
魔法少女としては新人であったが、並の魔法少女が束になっても敵わない魔王の眷属を破壊しており、その実力は非常に高い。


【方針】
聖杯戦争に勝って、更に冒険に出る。


323 : 芝原海&アーチャー ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/06(土) 16:58:11 aVm/36a.0
投下終了です。


324 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/06(土) 23:10:26 BV0smUSk0
投下します。


325 : イース&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/06(土) 23:11:03 BV0smUSk0



 ────渋谷区内某所。

「……そうですね。
 この結果なら、貴方は今は動かず、相手が行動するのを待つと吉ですね。
 そうすれば、貴方は自然と相手と親しくなれるでしょう」

「わかりました! 占い師さんの言う通りにします!」

「──それでは、次の方」

 ここには、「絶対に命中する」と評判の占いのテントがあり、連日、長蛇の列を作り出していた。
 開店している日や時間帯は経営者の気まぐれにすぎないが、それでも、一度適当なタイミングで店を開ければ、先の見えない程の行列が出来てしまう。
 その経営者と思しき占い師の少女は、年の頃は女子中学生──どう見積もっても女子高生くらいであった。
 なるほど、だから、たまにしか開いていないのか、と思えば、時として平日の昼間でも開いている事があり、そのせいで彼女がいつどこの学校に行っているのかさえ判然としない。
 通信制の高校に通っている、という話もあるが、それも定かではないし、あるいは、彼女は学校に通っていない中卒者なのかもしれないとも言われていた。
 ただ、彼女は直接、周囲に何かを言われても適当に流し、正体を明かす事がなく、相変わらず、占いテントは盛況が絶えず、潰れる事もないのだった。

「……お待たせしました。あなたは、何を占ってほしいんですか?」

「占い……えーっと、占いじゃないんです! とりあえず、俺と握手してください! あと写真を一枚──」

 また、彼女の場合、そのミステリアスで「美少女」な外見もまた話題の種であった。
 まるで遠い国から来た異邦人のような、堀の深い整った横顔(尤も、彼女の出生地は知られていないが)や、セミロングの艶のある黒髪は、その姿を見た男性を一瞬で虜にしてしまう。
 あとはその性格も合わせて魅力的だった。
 愛想は良いという程ではないが、更にそれが却って、男性のハートを射止めたりもするのである。いや、これで実は、多くの男性の需要にマッチしていた。
 とにかく従順で丁寧なので、まるでロボットのようにも見え、それが征服欲を満たしてくれるのだろう。
 そのお陰か、本来ならば女性人気が集中するこの職場においても、ジェンダーバランスの偏らない人気を獲得しているのだっだ。
 最近の男性客の中には占いの結果などどうでもよくて、彼女と話す事だけが目的という人間も少なくない。
 一回の占いの価格は数百円から千円、と、かなり良心的でもあり、この値段を払って握手だけして帰って喜んでしまうような輩もいる。

「──ごめんなさい。写真撮影はお断りしています」

 と、このように華もあるので、テレビの取材なども行われかけたが、それは流石に経営者の方からNGが出た。
 彼女自身はあまり大っぴらに存在を示したくはないらしい。
 それでもこの一帯に住む若者の間では「占い少女」の噂は留まる事がなく、学校帰りにそのテントを見かけたら誰もが、吸い込まれるようにそこに入った。



 彼女の正体──一体、どこに住んでいた人間なのか、どこの学校に行っているのか、彼氏はいるのか、何もわかっていない。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆


326 : イース&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/06(土) 23:12:15 BV0smUSk0



 ……ホテルの四階からは、渋谷駅の放つ光を見渡す事が出来た。

「……でたらめな占いで喜ぶ連中ばかり。お気楽な街だ……」

 彼女──『イース』は、ベランダでそれをじっと眺めながら、そっとつぶやいた。
 こうして下界を眺めているのも、別段、何か意味のある事じゃない。
 風に当たりたくてベランダに出たまでは良いが、狭いベランダでは外を見るくらいしかする事がないだけだった。
 彼女の内心には機械のような冷たい心があるだけだし、夜景を見たからといって、何か心に擽られる部分があるわけでもない。

 この広い東京の街のどこかには──これからの『聖杯戦争』で倒さねばならない敵がいる。
 その事だけを、イースは強く考えた。
 渋谷区の周囲は、彼女の仕事場であり、彼女の戦場だ。
 ここしばらくは、占い師としての仕事ばかり行っており、戦闘に巻き込まれる事もなかったが、ここしばらくの東京の様子を見ていると、やはり「始まっている」事が見て取れる。
 何らかの形で百名以上が犠牲になる虐殺が行われている──となれば、当然、勘が良ければすぐに、聖杯戦争絡みだと気づくものだ。
 あの灯りを照らしている窓の中にも、聖杯戦争のマスターはいるかもしれない。

「……よっ、一日のお仕事お疲れさんっ」

 そんな折、アーチャー──『トレイン=ハートネット』が部屋のドアを開け、さも当然のように入ってきたので、イースはそちらを注視する事になった。
 この一室は、一応は、イースのプライベート空間で、男性のアーチャーに入られる筋合いはないのだが、イースはその事も別に気にしなかった。
 これまでのイースの人生において、異性に想いを抱く事など殆どなかったので、セクシャリティの意識も非常に薄いのだろう。
 何せ、彼女の故郷たる『管理国家ラビリンス』では、そもそも、結婚は全て国の管理によって行われる物だったのである。
 そこでは、他者に想いを寄せる事は無意味な感情で、誰もがとうにそれを捨て去っていた。
 対するこのアーチャーなる男も、鈍感というかデリカシーがないというか、あまりイースに女性としての意識を向けてはいないらしい。
 そんな二人を男女という枠組みで数えるのはナンセンスで、こうしてイースの部屋にアーチャーが入り浸っても、お互い、大きな不和は生じなかった。

「人気占い師も大変だねぇ……もっと楽チンな仕事だと思ってたけど」

 コトン、と、アーチャーが何かを部屋のテーブルに置いた。

「何だ、それは……?」

 ベランダにいるイースには、揺れるカーテンで、「それ」が半分しか見えていない。
 一方、アーチャーは、平然とベッドに座って、イースの方に目をやっている。
 にへーっと、憎たらしく笑いながら。
 そして、矢鱈に元気な声で両目を瞑って彼は返答した。

「ミルク!」

 ──そう。
 風が弱まり、カーテンが大人しくなった今見れば、それは、確かにただの牛乳瓶だった。
 てっきり、裏ルートから手際よく拳銃でも調達してくれたのかと思ったが、そういうわけではないらしい。

 つまり、アーチャーは、かなり気が利かないわけだ。
 今日一日、彼は都内で単独行動をとっていたというのに、一体何をしていたというのだろう。
 実際、聖杯戦争が始まって三日間、彼が聖杯戦争で良いニュースを運んできてくれた事はない。

 ……アーチャーは牛乳が好きだ。なんでも、一日一本は必ず飲むらしい。
 考えてみれば、別に今更意外ぶるような返答でもない。
 彼は、こういう男なのだ。

「……」

 ただ、イースは、アーチャーとガラス窓を隔てて会話するのが馬鹿らしくなり、部屋に戻った。
 夜風には十分あたった。これ以上は冷えるだけにしかならない。
 第一、このアーチャーのような卓越した射撃能力を持つ相手がもしいれば、ただの的にもなりうる。
 尤も、今の段階でイースが聖杯戦争のマスターである事に気づく者も少ないだろうが。

「……二本も飲むのか?」

 ふと、イースは机の上を見て、牛乳瓶が二本分ある事に気づき、アーチャーを見た。
 これまで、二本もまとめて飲もうとしていた事はない。


327 : イース&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/06(土) 23:12:44 BV0smUSk0

「うんにゃ。一本はオマエの分」

 しれっと返答するアーチャー。
 こんな彼を見て、勝手な事を……と、イースは思う。
 頼んでもない事をしないでほしいのだ。
 所詮は、サーヴァントなど、マスターの駒に過ぎないのだから。

「……いらない」

「いーや、飲まなきゃダメだ。マズくはねえよ」

「だが──」

「──それに、戦う為のエネルギーにもなるしな!」

 アーチャーは悪戯っぽく笑いかけるが、それを見て、イースは眉を顰めた。
 笑顔──イースが最も嫌いなものだ。見ていて、虫唾が走るほどに。
 しかし、戦う為のエネルギーになる、と聞けば、一応ミルクというのを飲んでみるのも悪くないと思った。

「……」

 こんな飲み物はラビリンスになかった。
 文化自体が廃れた世界なので、最低限、体内の器官を動かす為の栄養は与えられても、味を追求した加工食品は全くないのである。
 こういて、ほのかに味付けされた嗜好品のミルクもそのうちの一つで、その他の乳製品も全て、ラビリンスにはない物だった。
 ──いや、そもそも「嗜好品」、という概念自体が、ラビリンスにはない。

(まあ、飲むくらいなら、まあ良いか……)

 仕方なく、イースはアーチャーに差し出されたミルクの蓋をねじるようにしてこじ開ける。
 そして、アーチャーの方に冷たい瞳を一つ浴びせてから、ひと思いにミルクを喉に流し込んだ。
 真冬のように冷えたその液体が、喉を伝っていく。

「……──!」

 確かに……舌や喉に、変な刺激があった。
 この世界の物に触れた時にだけ生じる、不思議な感覚。
 ミルクという飲み物は、以前、「ドーナツ」という食べ物に触れた時と同じように、イースの心を僅かに動かした。
 そう、これはラビリンスでは味わう事の出来ない物──。

「……」

 ──しかし、イースは、飲み干す前に、瓶をもう一度、机に置いた。
 二口目を飲む気にはならなかった。
 今、何か、かすかにでも自分の軸がブレた気がしたからだ。
 ほとんど使わなかった、五感の一つ──「味覚」が、何かを感じ取り、それを危険信号として理性が処理した。
 人間界の食品や飲み物が、時としてイースに与える魔力だ。
 ミルクを再び手に取るのはやめて、イースは、アーチャーに問うた。

「──……アーチャー。
 お前は、今日は、どこで何をしていた?」

「遊んでたっ!」

「ふざけるなっ!」

 呑気に答えるアーチャーに向けて、イースは凄まじい剣幕で怒号を飛ばす。
 そんなイースを見ても、アーチャーは相変わらず余裕じみた表情である。
 彼にとっては、イースが怒るのは意外な事でも何でもないらしい。
 それを見て苛立ちを覚えながら──しかし、すぐにイースも落ち着こうと頭を冷やした。

「……」


328 : イース&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/06(土) 23:13:04 BV0smUSk0

 ……彼を叱責するのは今日が初めてではない。
 昨日も、その前の日も同じだった。毎日同じ事を繰り返すのはばからしい。
 ストレスは毎日募っていくが、それを抑える術も自ずと学ばせてくれる。
 ただ、これが三日も続くと、ある疑問が浮かんでしまう。
 彼は聖杯戦争に非協力的らしいが、しかし、この聖杯戦争について、イースが知っているという事は、それはつまり──

「お前は、聖杯戦争をする気がないなら……何故、私に聖杯戦争について伝えたんだ……?」

 ──ほかならぬアーチャーの口から、イースが説明を受けたという事だった。
 イースとアーチャーが主従関係にある事も含め、知っている事は洗いざらい伝えられている。
 それこそ、令呪などの彼にとって不利な条件まで含めて、包み隠さずに話し、ちゃんと知る限りのルールを教えてくれている。
 そこにあるのは、サーヴァントとしてのマスターへの「忠義」だとばかり思っていた。

 しかし、いざ始まってみれば、それから先、アーチャーがサーヴァントらしい事をしてくれる気配はない。
 今のところ戦闘がないとはいえ、偵察くらいはしていても良いし、どちらにしろ情報がイースに渡って来る事は三日で一度もない。
 少なくとも、イースには今の所、アーチャーのサーヴァントとしての忠義が一切伝わらなかった。
 唯一、彼がサーヴァントらしい事をしたといえば、マスターにきちんとルールを全て語った事だろう。
 最初から聖杯戦争のルールを教えなければ、イースは記憶の回復を不可解に思いながらも聖杯戦争を知らずに過ごしていただろうし、アーチャーは望むように自由に過ごせた筈だ。
 それを知ったうえで、彼は全てをイースに伝えたわけだ。
 その理由がわからなかった。

「へ? 俺がアンタに聖杯戦争を教えた理由?」

「……ああ。私の選んだやり方と、お前の望みは違う──。
 だが、それならば、最初から私に教えなければよかっただけの話だ!
 全て教えて……それは、お前にとって不利になっただけじゃないのか!?」

「……そりゃ、アンタがどう選択するのもアンタの自由だよ。
 どういう道を選ぼうが、俺にマスターを阻むつもりはねェさ。
 ただ、何も知らなきゃ──アンタは、『選ぶ』事すらできない。
 ……そういうわけだから、聖杯戦争についてはちゃんと知ってもらったって事さ」

 そして、今、彼の口から理由を聞いても納得ができなかった。
 アーチャーの口から「自由」という言葉が告げられるのは何度目かわからない程だ。
 その言葉を聞く度に、反吐が出そうになるのを、イースは堪える。

「そんで、アンタが結局この聖杯戦争に乗る方を選んだってだけの話だろ?
 ──まっ、俺はそれに従うなんて一言も言ってないけどねー! ウヒョヒョヒョヒョヒョヒョ」

 煽情的に言うアーチャーだった。
 まあ、こうは言うが──実を言えば、、アーチャーがこの日一日、外出していたのは、都内で起きている大規模な殺害の偵察の為である。
 その過程でどんな情報を得られたのかはわからないが、これは彼の「掃除屋」ならではの癖であった。
 犯罪の匂いをいち早くかぎ取り、毎日、イースの知らぬ所で独自に単独行動させてもらっている。

「──アーチャー」

 イースは全くそれを知らず、ただアーチャーを前にして焦燥感ばかりを募らせる。
 こんな相手と組んでいては、望むように聖杯も得られない、と。

「サーヴァントは、私たちに従う者ではないのか……? 令呪があるのも、その為のモノの筈──」

 声を落として、イースは訊く。


329 : イース&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/06(土) 23:13:25 BV0smUSk0

 だが、アーチャーは愛用の黒い装飾銃をくるくると手で弄びながら──

「……へっ。俺は、サーヴァントになろうが、誰かの飼い猫にはならねえよ。
 それに、誰かの飼い猫だって、自分を殺し続ける必要なんてどこにもない筈だぜ?」

 ──まるで、イースの普段置かれている境遇を全て見通しているかのように、言う。

 イースは自分の境遇など一言もアーチャーに話していない。
 だというのに、何故かアーチャーは、イースに言葉を向けた。

 確かに自分は──「飼い猫」と言って良い立場だ。
 管理国家ラビリンスで、最高権力者『メビウス』に仕え、言われるがままに他の世界を侵略する使徒。
 そして、今は地球を狙い、プリキュアの正体である人間たちに近づいていた。
 彼女と出会い、イースは自分の中に奇妙な気持ちが湧き上がるのを実感している……。
 だから、それを拭い去り、メビウスに忠誠を誓う事を証明する為に、イースはこの聖杯戦争に乗ろうとしているのだ。

 彼が知っているのは、イースが聖杯戦争に載っているという事のみ。
 イースは、アーチャーの持つ勘を認めつつも、やはりこの男が好きになれなかった。
 アーチャーはそのあと、付け加えるようにこう言った。





「────野良猫でも、飼い猫で……猫は自由に生きるもんだぜっ」




.


330 : イース&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/06(土) 23:13:46 BV0smUSk0





【CLASS】

アーチャー

【真名】

トレイン=ハートネット@BLACK CAT

【ステータス】

筋力C 耐久D 敏捷A+ 魔力D 幸運A 宝具B(A)

【属性】

中立・中庸

【クラススキル】

対魔力:D
 魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。

単独行動:A
 マスター不在でも行動できる。
 ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。

【保有スキル】

仕切り直し:B
 窮地から離脱する能力。 
 不利な状況から脱出する方法を瞬時に思い付くことができる。
 加えて逃走に専念する場合、相手の追跡判定にペナルティを与える。

気配遮断:B
 自身の気配を消す能力。
 完全に気配を断てばほぼ不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。

心眼(偽):A
 直感・第六感による危険回避。虫の知らせとも言われる、天性の才能による危険予知。
 視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。

不殺:B
 標的を決して殺害しない信念。
 ただし、相手が無生物であった場合や、サーヴァントである場合はこの例外になりうる。


331 : イース&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/06(土) 23:14:05 BV0smUSk0

【宝具】

『不吉届ける黒い装飾銃(ハーディス)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:1〜6人

 秘密結社「クロノス」からアーチャーが授かった黒い装飾銃。装弾数は六発。
 アーチャーの早すぎる射撃力に対応できる唯一の銃であり、アーチャーがこの宝具以外を使って発砲した場合、銃器の方が壊れてしまうという逸話がある。
 また、攻撃でも壊されることはなく、またどれほどの高温でも簡単に原形を失わない最高金属『オリハルコン』によって生成され、鈍器として利用する事さえも出来る強力な宝具。
 全盛期の能力を持ったアーチャーは、『不吉届ける黒い装飾銃(ハーディス)』で空き缶に穴をあけるだけでなく、連射でその穴に残りの五発を全て貫通させる事さえも出来る。
 彼の持つ高い射撃能力と合わさる事によって、初めてその真価を発揮する事の出来る銃と言って良い。
 サーヴァントの宝具として現界した今回の聖杯戦争では、弾丸は魔力によってその場で生成させる事が出来る(現実の弾丸でも口径に合えば装填できる)。
 生前に使用した特殊弾も、通常の弾丸と同様に魔力で生成する事が出来、炸裂弾なども問題なく使用可能。
 ただし、リロードした状態で現出する事は出来ない為、その都度、魔力で弾丸を出して手動でリロードする必要がある。

『忘れえぬ親友の願い、電磁銃(レールガン)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜200 最大捕捉:1人

 ナノマシンにより細胞が進化し、細胞放電現象を起こしたアーチャーが『不吉届ける黒い装飾銃(ハーディス)』に電気を込める事で発動する超速の弾丸。
 いかなる視力や反射神経を持つ者でも、その弾丸の軌跡を見る事が出来ないという逸話を持ち、常人ならばこれを受ければ確実に死亡する。
 ただし、この宝具は、使用に膨大な体力を要する為、一日に使用できる回数が四回までに制限されており、それ以上は撃てない。
 また、この宝具はアーチャー自身が、「ミナツキ・サヤがクリードを止める為に与えてくれた力」と解釈している。
 その考えが宝具の出自にも影響を及ぼしており、「何としてでも止めるべき存在」がアーチャーの前に無い限り、この宝具の使用は封じられてしまう。
 それ故に、今の所は使用そのものが出来ない宝具。

【weapon】

『不吉届ける装飾銃(ハーディス)』

【人物背景】

 かつて、世界を裏で操る暗殺組織「クロノス」の精鋭「時の番人(クロノナンバーズ)」のⅩⅢとして裏世界で名をはせた殺し屋。
 十歳の頃に両親を殺し屋に殺害され、「その殺し屋を殺す為」に、その殺し屋の弟子となり、射撃の技術や卓越した身体能力を得る。
 強い者だけが生き残る裏の世界で一人で生きてきたが、そんな折、クロノスによって拾われ、その能力を買われてⅩⅢの称号と黒い装飾銃ハーディスを贈呈された。
 長らく殺し屋として人間を消してきたが、その果てにある町で、掃除屋ミナツキ・サヤと出会った事で、彼は「自由」に憧れ始め、組織を脱走して猫のように自由に生きる決意をする。
 それ以後、彼は掃除屋として、犯罪者を確保する為に活動。スヴェン=ボルフィードや、イヴといった仲間と共に旅をしながら掃除屋稼業を務める。
 殺し屋だった時代とは裏腹に陽気な性格であるものの、以前は、サヤの仇であるクリード=ディスケンスを前に冷静さを失う場面も見られ、闇を抱える人物であるのも違いない。
 決め台詞は、「不吉を届けに来たぜ」。

【サーヴァントとしての願い】

 特になし。

【基本戦術、方針、運用法】

 アーチャーは『単独行動』が好きです。
 飼い主(マスター)の命令を聞かずに勝手に行動しますが、飼い主の為にやる事はやってくれるので、あまり命令しないようにしましょう。
 実際、彼は遊んでいるフリをしながら、自分の意思で異常事態の調査をしてくれます(「掃除屋」をしている故の癖です)。
 どうしても困ったときは令呪を使って命令を聞かせる方法もありますが、それをやるとアーチャーは拗ねて、それから先に飼い主の為に何もしなくなってしまうかもしれません。
 それから、なるべく多くの餌を食べさせると機嫌がよくなり、飼い主にもなつきやすくなります。
 特に、一日一本のミルクは欠かせないので、これだけは絶対に取り上げないようにしましょう。
 それから、アーチャーは女の涙に弱いので、いざという時は嘘泣きを使うと吉です(ただし、この弱点は飼い主は知りません)。
 要するにアーチャーには、自由と餌を与えて、自分に飼い主がいる事を意識させず、飼い主も自分が飼い主である事を意識しないようにしましょう。


332 : イース&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/06(土) 23:14:28 BV0smUSk0




【マスター】

イース@フレッシュプリキュア!

【マスターとしての願い】

 聖杯を得る事により、自分の中の迷いを払う。
 入手した聖杯はメビウス様に捧げる。

【weapon】

『四つ葉のクローバーのペンダント』
 元の世界で桃園ラブたちに「親友の証」として受け取ったペンダント。

【能力・技能】

 イースとしての姿と東せつなとしての姿を使い分け、イースに変身した際にはプリキュアと互角に戦う戦闘力も持つ。
 しかし、ナキワメーケやナケサケーベのカードなど、補助が現在は一切なく、管理国家ラビリンスとこちらの世界を行き来する事も不可能になっており、イースの姿は戦闘以外に使用不能。
 普段は占い師をしている。ボーリングが出来る等、身体能力は元々高いタイプと推察できる。
 ただし、反面で人間界の一般常識は欠けている。

【人物背景】

 管理国家ラビリンスの三幹部の一人。年齢は14歳程度。
 プリキュアの敵であるが、れっきとしたその世界に住む人間である。
 冷徹な性格で、メビウスへの忠誠心も高く、目的の為ならば手段を選ばない性格。
 自分の命さえもメビウスにささげる覚悟を持っているが、反面、人間界でプリキュアを偵察し、関わり合う中で聊かの迷いも生じている。
 参戦時期は第19話終了後。

【方針】

 聖杯を得る。
 たまに占い師として宿代を稼ぎつつ、情報を集め、他のマスターやサーヴァントを狙う。

【備考】

 渋谷区内でテントを張って占い師をしています(営業日は不定期)。


333 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/06(土) 23:14:44 BV0smUSk0
投下終了です。


334 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/06(土) 23:44:48 FT7/WLZg0
皆様投下乙です。最後のオープニングを投下します。


335 : ある御伽話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/06(土) 23:45:47 FT7/WLZg0
一人の少年がいた。
少年は『東京』の片隅で行き場なく生きていた。彼は両親に捨てられたのだろう。
途方に暮れた少年が大人たちによって導かれたのは孤児院。
少年と同じような行き場のない子供たちが集う場所。
時間が経つにつれて、少年も孤児院にいる子供たちと親しくなっていった。

しばらくして少年が暇を玩んでいると、孤児院の院長が声をかける。
時間があるなら本を読んであげよう。
少年に読み聞かせたのは、聖書の物語であった。
純粋無垢な少年にこそ聖書の在り方を、院長は教え込ませたかったかもしれない。

物語の内容はある兄弟の話。
楽園から追放された人間が産んだ子供の話。

兄弟はそれぞれ神に捧げる。
兄は農耕の収穫物を。弟は肥えた羊を。
神は弟の供物に目を留め、兄の供物は無視した。

兄は弟に嫉妬した。
兄は弟を殺した。
神は兄に弟の行方を問えば、兄は知らぬと嘘をつく。
やがて嘘が明らかになれば、兄は追放された。


話を聞いた少年はしばし何かを思い、院長に尋ねた。






「カインとアベルは、このあと。どうやって、なかなおりするのですか?」









336 : ある御伽話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/06(土) 23:46:29 FT7/WLZg0
【2日目】

夜、東京都世田谷区にて。

気付いた時には、今剣はここにいた。
何故か孤児院に拾われ、親なき子として東京に住んでいた事が俄かに信じられない。
そもそも、今剣という名の少年は人の形をしているけれども人間ではない。

刀剣男士。
審神者なるものが産み出した刀の付喪神。
それが少年――今剣の正体。

守り刀のレプリカだと孤児院の院長が教えてくれた短刀。
今剣が常に身につけているそれこそが今剣本体と言っても過言ではなかった。
ここは仲間も、主である審神者もいない、右も左も分からない土地。
少年はいつの間にか異常な『東京』へ導かれていた。


「……とうきょう?」


色鮮やかでありながら、喧しい光景。
今剣の知らぬ日本の姿。つまり――これが未来の世界なのだ。
昔の面影があまりにも少ない光景に、今剣は茫然としていた。

休む暇は与えられない。
呆けている間に美少年のサーヴァントが今剣の前に現れたのである。


「おや、あなたが私の主(マスター)でしょうか」


弓を携えた英霊はまさしくアーチャーであると明白だった。
しかし、今剣は聖杯戦争もサーヴァントも全てを知らぬままであった。
突如、現れたアーチャーに怯む事なく今剣は答えた。


「ぼくは今剣。よしつねこうのまもりがたなですよ」


337 : ある御伽話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/06(土) 23:47:17 FT7/WLZg0



アーチャーに対して今剣は包み隠さず正直に話した。
アーチャーは自棄に強張った顔を浮かべていたものの、次第に普通の――初対面と同じ穏やかな顔をする。
今剣に対し、アーチャーは聖杯戦争がいかなるものか説明してくれた。
あらゆる願いが叶う聖杯の存在を聞いて、今剣は驚く。

「なんでもねがいごとがかなうのは、ほんとうなんですか!?」

「勿論」

「よしつねこうをたすけることも、ですか?」

「……うん」

「……あーちゃーは、れきしをかえるのはいけないとおもいますか?」

仲間たちは皆、歴史を変えてはならないと口にする。
今剣は果たしてそれは悪い事なのか、いつもいつも疑問を抱いていた。
彼のかつての主――源義経は人だ。人の命を、あのような悲惨な死を救うのが悪い事とは思えない。

希望のある返答を期待した訳ではないが、英霊である彼に問いかけるべきだと今剣は思っただけ。
アーチャーは沈黙をしたものの、返事をした。

「彼がもし生きていたなら――そのくらいは想像できるはず。それを願うかはあなた次第です」

「………」

今剣は悩む。
仲間も審神者もいない状況で、誰にも正解を聞けぬ状況で。


一方の、アーチャーも内心悩んでいた。

(違う。『あの人』のことじゃない。きっと『別人』だ)

アーチャーは今剣が自分の正体を把握しているかと疑念を抱いた。
だが、嘘をついている様子はない。
アーチャーは自分の正体を今剣は知っているはずだと更なる疑念を抱いた。
だけども、今剣はアーチャーを知らない。

アーチャーが那須与一であることを、知らない。

反応がなかったということは『アーチャーの知る源義経』ではない『別の源義経』に仕えた短刀なのだろう。
もしかしたら、その『源義経』は正しい人で。
だからこそ、助けたいと今剣は願っているのだろう。

しかし、アーチャーにとって源義経はただの化物だった。

二度と顔も会わせた無くない。関わりたくない。
聖杯に彼の記憶を消すのを願ってもいいくらいの、どうしようもない存在なのだ。
なのに、主が義経の刀とは何たる皮肉だろうか。

(所詮は刀。主に忠実なんだろう)

刀とはいえ義経のもの。
義経に仕えたとはいえ、刀。
所詮は刀だが、されど刀だ。

たとえアーチャーの知る『源義経』でなくとも、やはり『源義経』。
されど『源義経』だ。

(あの様子だと、どうかな。まだ分からないけど……)


「あーちゃー……ひとつ、おねがいがあるんです」


338 : ある御伽話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/06(土) 23:47:56 FT7/WLZg0



今剣が求めたのは、かつて院長が読み聞かせてくれた物語。
その本は今剣が頑張っても届かぬ位置にあったので、アーチャーにわざわざ頼んだのだ。
一体なんだろうとアーチャーが表紙を見れば、それは聖書だった。
今剣は聖書がなんであるかも理解していない。
ただ、そこにある物語で知りたい事があるのだという。

ある兄弟の話だった。
弟を殺した兄の物語。

「あーちゃー。ふたりがどうやってなかなおりするか、おしえてください」

今剣は聞く。
だが、アーチャーは複雑な表情を浮かべた。それを見て、今剣は言う。

「せんせいも、あーちゃーとおなじかおをしてました。ぼくは、へんなことをきいているんですね」

「……何故そう思うのでしょうか?」

「ふたりがこのままなのは、だめですよ。きっと、かみさまがどうにかしてくれるはずなんです」

「………」

「ちがうんですか……?」

今剣は不安の色を露わにしていた。
純粋無垢な少年とは、まさに彼のような存在を指し示している。
故に、アーチャーは今剣に何と返事をすればいいのか躊躇っているのだ。

「ほんとうのことを、おしえてください」

今剣に対し、アーチャーは告げる。

「話は――これでお終いです」

これ以上の幸福も、これ以下の不幸もなく、兄弟の話はここで終わりを迎え、新たな話へ進む。
答えとしたら――何もなかった。何も、起きなかった。これで終わり。
呆気ないくらい単純な結末。

「どうして――なかなおりしなかったのですか?」

「どうしてだろう」

今剣の純粋な問いに、アーチャーは独り言を口にした。

「わるいことをしたら『ごめんなさい』と、あやまらないといけないですよ」

殺人を悪い事なんて甘い表現で済ませられない。
だが、今剣の伝えたい気持ちはアーチャーにも感じられた。

「あやまらないほうが、もっとわるいはずですよ」

何が訳があったかもしれない、神も決して万能ではなかったから兄弟を仲直りさせられなかったでは。
英霊であろうともアーチャーに真実は分からない。
唯一、アーチャーが分かったのは

「主(マスター)。あなたは私が思う以上に優しい方でした」

だからこそ問う。

「あなたは人を殺める事はできますか」

少年は沈黙する。
ある意味では肯定として捉えていい反応だった。少しだけアーチャーは安堵する。
アーチャーとしては、あの化物の救済に加担するのが不満だったのも理由だが。
普通のマスターとして、今剣と共に居られると心許した切っ掛けだった。

「ぼくは――やはり、みんなのところにかえらないと」

歴史をあるべき姿のまま残すように、自分もあるべき場所へ帰ろう。
今剣は決心した。
聖杯戦争に抗うことが、たとえ罪であったとしても、自分自身の心を信じて――……


339 : ある御伽話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/06(土) 23:48:34 FT7/WLZg0
【クラス】アーチャー
【真名】那須与一@ドリフターズ
【属性】秩序・中庸

【ステータス】
筋力:D 耐久:D 敏捷:C+ 魔力:D 幸運:C 宝具:C


【クラススキル】
対魔力:D 
 一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

単独行動:D
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 マスターを失ってから半日間現界可能。

【保有スキル】
心眼(偽):C
 直感・第六感による危険回避。
 虫の知らせとも言われる、天性の才能による危険予知。
 視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。

千里眼:B
 視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。
 ランクが高くなると、透視、未来視さえ可能になる。

道具作成:D
 魔力を帯びた器具を作成可能。
 アーチャーは弓と矢に特化しており、それ以外の道具は作成できない。

【宝具】
『かくして扇は射抜かれた』
ランク:C 種別:対人(自身)レンジ:- 最大補足:-
 アーチャーの戦況、状態が悪化した場合のみ発動する。
 発動した際、全パラメーターが1ランク上がり、攻撃の威力が上昇。
 また、攻撃対象が一つであれば必中となる。回避する為には幸運判定に成功しなければならない。

【weapon】
弓矢

【人物背景】
那須家が生んだゴルゴ13
源氏バンザイ



【マスター】
今剣@刀剣乱舞

【マスターとしての願い】
元の世界に戻る

【weapon】
短刀・今剣
 これが破壊されると今剣自身も消滅する

【能力・技能】
刀剣男士。夜での戦闘では遠距離攻撃を回避しやすい。
手傷の治療は資源を使う。一般的な人間よりかは丈夫かもしれない。

【人物背景】
源義経の守り刀『今剣』の付喪神。


340 : ある御伽話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/06(土) 23:49:27 FT7/WLZg0



ある御伽話をしよう。

地球に酷似した惑星『クレイ』と呼ばれるものが存在した。
そこでは所謂ファンタジーの類である魔法や最先端の科学技術が両立している、地球とは異なる文明が発展した場所。
『クレイ』にはドラゴンや天使、悪魔、妖精など非現実的な生命が当たり前のようにいた。
争いが必ずしもないとは言えないが、平和だった『クレイ』に侵略者が出現した。

絶望と破壊を目的とした『リンクジョーカー』と称される集団。
『虚無(ヴォイド)』の能力を用いて、『クレイ』を混乱の渦に巻き込んだ存在。
それから彼らと『クレイ』の戦士たちの戦争が幕を上げたのだ。

長きに渡る戦争の末、『リンクジョーカー』らは敗北した。
彼らの残党は『クレイ』から撤退し、新たな作戦へ移行しようとしていた。
その過程で彼らはある産物を入手する。
果たして、それは幸運か不幸か。


『リンクジョーカー』が入手したもの。即ち、それこそが――聖杯だったのだ。


彼らは聖杯の存在を知らなかった。故に、彼らは聖杯の解析を試みた。
解析を進め、彼らは聖杯戦争の存在を認知する。

マスター。サーヴァント。令呪。基本となる七つのクラス。それ以外のエクストラクラス。

多くの戦力を失った『リンクジョーカー』は聖杯を利用しようと企んだ。
サーヴァント――英霊を自らの支配下に出来れば、あるいは英霊に虚無を打ち込めばどのようになるか。
英霊とはいかなる構造をしているのだろうか。どれほどの戦闘力を持つのか。
それらを把握するには、どうすればいいのか?
簡単だ。


実際に聖杯戦争を行えば良い。


彼らは舞台を作り上げた。東京都――ここは皮肉にもかつて彼らが侵略しかけた地球の光景。
だが、人間が最も馴染むであろう土地だった。

連れてきた人間は適当であった。何ら基準はない。あちらこちらの世界から引っ張り出してきただけ。
願いがあるかなんてどうでもいい。聖杯戦争から逃れられないのだから。

中身のない人間――所謂NPCを作り上げる事も造作もない事だった。
彼らは既に生命を複製する冒涜を犯していたのだから。

彼らにとって重要なのは聖杯戦争の観測。英霊の解析。
人間たちの望みなど、おまけ程度にしか考えていないのだ。

今、東京という舞台に着々と集いつつあるサーヴァントとマスター。
彼らを上位の世界から観測する『リンクジョーカー』。



聖杯戦争を観測する彼らと共に―――青い髪の少年が居たと云う。


341 : ある御伽話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/06(土) 23:50:00 FT7/WLZg0



しかし、この御伽話には謎がある。
それは『聖杯』だ。

ここでいう『聖杯』とは一体なんなのだろうか?
何故、虚無のリンクジョーカーが『聖杯』を手にする事ができたのだろう?
それとも――手にするように差し向けられたのか………


謎を残したまま、舞台に役者が集い始めていた。


342 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/06(土) 23:50:53 FT7/WLZg0
今回のオープニングで、Fate/Fanzine Circle-聖杯戦争封神陣-の企画で投下した
候補作『今剣&アーチャー』の内容を改編したものを使用しました。
そして、今回で全オープニング投下は終了します。


343 : ◆ZZZnF4MZ0Q :2016/02/07(日) 00:00:13 uFNg3ybc0
投下します


344 : ◆ZZZnF4MZ0Q :2016/02/07(日) 00:00:48 uFNg3ybc0

東京の路地裏。
その少女はそこにいた。
金色の髪を黒い帽子で隠し。
青いマフラーで口元を隠し。
青いジャージをスタイリッシュに着こなす。

その目は鋭く夜の空をまっすぐに見定める。



―――この淀んだ東京の夜空を。



「おう、大将」
「どうしました、Mr.ゴールデン?」
「俺の最高にクールゴールデンベアー号で少し遊びに行かねぇか?」

そんな少女に声をかける一人の男。
断じて、ナンパではない。

その男もまた金髪。
衣服の上からでも分かる筋肉隆々の肉体。
サングラスにホストのような派手な格好。

その横にはド派手なハーレーダビッドソン。

「……いいでしょう、偵察にもなりますからね」

ヘルメットは被らない。
被る気はしない。


 ◆


「問おう、貴方が私のサーヴァントか?」
「おう、よろしくな! 悪いがしばらく世話になる。俺のことはゴールデンと呼んでくれ」
「ゴールデン……? それはどのクラスですか? セイバーなら死ね、というか私が殺す」
「……顔が近ぇよ、大将……今の俺は『ライダー』のサーヴァントだ」


 ◆


345 : 謎のヒロインX&ライダー  ◆ZZZnF4MZ0Q :2016/02/07(日) 00:01:29 uFNg3ybc0


東京の街の汚れた空気を切り裂くように二人乗りのハーレーは走る。
法定速度は守ってる、しかし、ヘルメットは被らない。
ハーレーのエンジンから爆音を響かせ、マシンは走る。

「やっぱ大将の願いってのは……?」
「もちろん、セイバークラスの抹殺です!」

おかしいほどまでに殺気を感じる。
まるでバーサーカーのようにも思える。
が、彼女はマスターである。
その証拠にその右手に三画の令呪が刻まれている。

「ええ、セイバークラスは殺すべきです、慈悲はないんです」
「あぁ? つーか、なんでそこまでセイバークラスを恨んでるんだ?」
「悪だからです、私以外のセイバーは悪だからです!」
「は? そもそも大将はサーヴァントじゃないだろ?」
「まあ、そうらしいんですが……セイバークラスを抹殺するのが私の仕事ですから」

ゴールデンと名乗ったそのサーヴァントに教えられた聖杯戦争。
何故だか、よくわからないがどこかで聞いたことがある気がしたが……
特に気にすることはなかった。

だが、一つ『全てのセイバークラスを抹殺する』。
自身本来の使命を思い出した。

彼女の名は『謎のヒロインX』。
本名は他にあるらしいが『謎のヒロインX』である。

「それでMr.ゴールデンは何故聖杯を求めるのですか?」
「そりゃ、聖杯っていや……」


「よくわかんねぇけど、きっとゴールデンなもん決まっている……
 ……そういうものだから俺が欲しいに決まってんだろ?」


このゴールデンの名は『坂田金時』。
平安時代最強の神秘殺し、頼光四天王の一人である。

金色の風のように二人を乗せたハーレーは走る。
風の吹くまま気が向くままに。


… 

……

………


「……何やら後方が騒がしいですね」
「大将、サツが追っかけてきたぞ」
「ノーヘル運転がバレたんでしょうね」
「そいつはゴールデンじゃねぇな」


―――この後、Xさんは逃走のためにひみつかりばーを滅茶苦茶ぶっぱなした。


346 : 謎のヒロインX&ライダー  ◆ZZZnF4MZ0Q :2016/02/07(日) 00:02:06 uFNg3ybc0

【出展】
Fate/Apocrypha + Fate/Grand Order

【CLASS】
ライダー

【真名】
坂田金時

【属性】
秩序・善

【ステータス】
筋力A+ 耐久B 敏捷B 魔力C 幸運C 宝具B

【クラス別スキル】
騎乗:B
乗り物を乗りこなす能力。魔獣・聖獣ランク以外なら大抵乗りこなせる。
ゴールデンは生前の幼少時には熊に乗って野山を駆け巡ったゴールデンな逸話を持つ。

対魔力:C+
術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。


【固有スキル】
怪力:A+
魔物、魔獣のみが持つとされる攻撃特性で、一時的に筋力を増幅させる。
話は変わるが、好きな祝日はゴールデンウィーク。

動物会話:C
言葉を持たない動物との意思疎通が可能。
動物側の頭が良くなる訳ではないので、あまり複雑なニュアンスは伝わらない。
それでも金時の精神構造が動物に近いせいか、不思議と意気投合してしまう。

天性の肉体:A
生まれながらに生物として完全な肉体を持つ。
このスキルの所有者は、常に筋力がランクアップしているものとして扱われる。
さらに、鍛えなくても筋骨隆々の体躯を保つ上、どれだけカロリーを摂取しても体型が変わらない。

神性:D
金時の神性は雷神の子という出自から来るもの。
母が人食いの山姥である所為でランクは低く、雷神系のルーツ。
伝説を保有する英霊からの攻撃に対して稀に耐性として発動することがある。
話は変わるが、好きな惑星は金星。

【宝具】
『黄金熊(最高にクールゴールデンなベアー号)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
ゴールデン曰く『とんだデビルモンスターマシン』。
詳細不明だが、クマ公のくせに変形する。

『黄金喰い(ゴールデンイーター)』

ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜2 最大捕捉:1人
金時の怪力なくしては扱えない、雷神の力を宿す巨大マサカリ。
雷を込めたカートリッジが15発装填されており、その爆発で破壊力を高める。

『黄金衝撃(ゴールデンスパーク)』

ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:3人
攻撃の範囲を広げ、『黄金喰い』から稲妻を放出して周囲の敵を薙ぎ払う、対軍宝具としての使用法。
5発装填されているカートリッジのうち、3発分を使用して発動する。

なお、3つとも宝具の正式な名前はコレじゃないが、この名前で発動する。ゴールデン理不尽。
話は変わるが、好きな小説家は金庸。


347 : 謎のヒロインX&ライダー  ◆ZZZnF4MZ0Q :2016/02/07(日) 00:02:53 uFNg3ybc0

【人物背景】

日本の英霊。
坂田金時は恐らく日本で桃太郎と並んで有名な英雄『金太郎』。
足柄山の金太郎として多くの人々に親しまれる金太郎の原型ともいえる英雄である。
現代文化の影響で『ゴールデン』という言葉を気に入り、自ら『ゴールデン』を名乗り、子供たちのヒーローたらんと振る舞う。
『ベアー号』と命名したハーレーを愛車としている。


唯一の弱点は色恋沙汰。


――昔の話。
坂田金時は美少女に化けた鬼に恋をしたことがある。『酒呑童子』と呼ばれる鬼に。
金時は酒呑童子を騙し討ちにしたことを悔やんでおり、彼女の復活を望んでいる。
戦うためではなく、もう一度会うために…………。
話は変わるが、好きなリンゴはゴールデンデリシャス。

性格は暴れん坊、傍若無人、情に厚く、涙脆く、正義感に溢れる好漢。
口癖は『ゴールド』『ゴールデン』。話は変わるが、好きな急所は金的。
なお、今回の聖杯戦争ではバーサーカーではなくライダーとして参戦している。やはり、ゴールデン理不尽。

【サーヴァントとしての願い】
きっとゴールデンなものである聖杯を取る。


【マスター】
謎のヒロインX

【出展】
路地裏さつき ヒロイン十二宮編 + Fate/Grand Order

【能力・技能】
・超銀河流星剣
 詳細不明だが、マスターである自身がサーヴァントへの攻撃可能になるスキル。
 ただし、詳細不明だがセイバークラスのみにしか効果はない。
 あとマジで詳細不明だが、ブリテンの王様みたいな顔の奴らには効果が上がる。

・援護射撃
 詳細不詳。
 どこぞへ支援要請をして、何処からともなく支援射撃を撃ってもらう。

【weapon】
無銘勝利剣(ひみつかりばー)
どこぞのブリテンの王様が持つ黄金の聖剣と反転したもう一本の黒い聖剣の二刀。
てきをみなごろしにするぞ!


【人物背景】
サーヴァントユニヴァースと呼ばれる謎の時空から来訪したストレンジャー。
自らをセイバークラスの決定版と名乗り、騎士として正々堂々と闇討ちを行う。
対セイバー用決戦兵器。コードネームは「A-X」。
「アルトリア種は宇宙のガンのようなもの。誰かが刈り取らねばならないのです。誰かが」
苦渋に満ちた表情でそう残し、ヒロインXは故郷を後にした。愛機ドゥ・スタリオンⅡ号は今日も星の海を駆ける。
真の悲願達成まで、彼女は今日もひみつかりばーを振るい続ける。
あと黄金大帝コスモギルガメスは何があっても斬り捨てる。

その正体は謎に包まれている……謎って言ったら謎。

しかし、そんな彼女も今回はマスター。

【マスターとしての願い】
自分以外のセイバーを消し去る。
そのために聖杯を取る。


348 : ◆ZZZnF4MZ0Q :2016/02/07(日) 00:03:18 uFNg3ybc0
投下終了です


349 : 名無しさん :2016/02/07(日) 00:18:32 Mx7eNDQE0
お前マスターかよ!w


350 : 名無しさん :2016/02/07(日) 00:21:19 WfJCg2kU0
お前のようなマスターがいるか!


351 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/07(日) 01:12:24 vFErn8Jc0
皆さま投下乙です。

先ほど投下した、「イース&アーチャー」ですが、>>329に修正点が一つ。

>「────野良猫でも、飼い猫で……猫は自由に生きるもんだぜっ」

という部分ですが、

>「────野良猫でも、飼い猫でも……猫は自由に生きるもんだぜっ」

が正しい形になります。
オチにあたる部分で誤字があって焦りました…。

あと修正のついでに一作投下します。


352 : 孤門一輝&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/07(日) 01:12:59 vFErn8Jc0



 A.D.20XX──。
 かつてと異なり、「それ」が現界する事を、誰も予期できなかった。

 何故なら、この世界には来訪者がいなかったから。
 人々が新宿で銀色の流星を見ていなかったから。
 空っぽの人間たちには希望がなかったから。

 そして、この世界には、英雄もいなかったから──。







 ────諦めるな!────







 その言葉が孤門一輝の脳裏に浮かぶと共に起きたのは、聖杯戦争の始まりであり、孤門一輝の終わりであった。
 新宿の人込みでふと「思い出す」と同時に、彼には聖杯戦争の証──令呪が刻まれる。

 しかし、それは、当の孤門にとって、この上なく無意味な事だった。
 次の瞬間、孤門の意識は、強制的にシャットダウンされてしまったのだ。


 ……。
 …………。
 ………………。


 聊かの時間が経過した後で、孤門は目を覚ましたように、──

「……キャスター、か。丁度良い」

 ──ふと、独り言ちた。
 もし、彼を知る者が見れば、その口調や邪悪な笑みは、彼らしからぬ物に見えるかもしれない。
 孤門という男は、元々、温和で、どこか頼りなくもあるような男だった。
 こんな風に、不気味に頬を引きつらせる事などない。
 しかし、確かに、今、彼は、孤門一輝の顔かたちのままそれを形作ったのである。

「バーサーカーなどにされるよりも、このクラスの方が、いろいろと動きやすいからな……」

 ──一瞬だけ、孤門の全身を紫色の闇が包んだ。
 まるで、大きく息を吐くように……彼の身体から、何かが放出される。
 瞳の色が薄黒くなり、孤門は都会の風の中で──人と人とがすれ違う雑踏の中で、誰にも視線を受ける事なく、立っていた。
 誰も孤門に目を向けない、不気味な人の群れ。
 決して、誰もが周りが見えないほど焦って歩いているわけではない──。
 彼らには、きっと、孤門の事が、「見えなくなっている」のだ。

「……──」

 今、彼は「操作」を始めている。
 ここにいる全員の記憶から、孤門一輝のデータを──『改竄』する。
 彼自身の持つ、『スキル』がそれを行い始めていた。

(──皮肉だな、孤門。かつて、俺を倒したキサマが、今回はこうして俺に肉体を奪われるとは……)

 そう──。
 孤門のその意思は、とうに彼のサーヴァントたる「キャスター」の魔力が消し潰していたのである。
 彼が意識を取り戻し、聖杯戦争のマスターとなった瞬間こそ、キャスターが介入する最初で最後のチャンスであった。
 そして、それが見事成功したというわけである。

「ほう。これが、令呪か」

 キャスターは己の左手の甲にある幾何学模様に目をやった。
 目立つ所に出てしまったが、まあ良い。
 とにかく、この令呪さえもサーヴァント自身が自在に使い、自身の魔力をこの肉体で制限する事が出来る。
 令呪の効力は、時に自身の限界さえ超える生還さえも可能とするらしいので、その三つを自分の手に収める事が出来たのは見事な手際だった。
 こうした形で、聖杯戦争に、マスターとサーヴァントとの連携など、もはや不要である。
 サーヴァントのみで、聖杯戦争を勝ち残る──という、この野望の一歩を得た訳だ。

「──ふっふっふっ」

 孤門一輝はもういない。
 キャスターの敵だった孤門という存在は、キャスターに乗っ取られ、聖杯戦争の参加資格さえ失ったのだ。
 彼がノアを再臨させ、キャスターを破ったあの屈辱は、二度と忘れる事はあるまい──。
 再び肉体を取り戻し、今度こそ、正真正銘、かつてキャスターを破った「ノア」と孤門に復讐を遂げ、そして、宇宙に「虚無」を齎す。
 それこそがキャスターの生前の悲願にして、絶対の野望。──その為にも、聖杯を得る必要があった。
 しかし……この時点でも、既にキャスターの胸中はかつてない充足感でいっぱいだった。

「はっはっはっはっはっはっはっはっ!!!!!!!!」

 高笑いする孤門の姿が、ようやく、人々の意識の中に現れた。
 そして、そこを通り過ぎる人々に避けられ始めたのだ。
 しかし、それでもキャスターは高笑いを辞めなかった。
 ただの狂った若者を見るかのように、ひそひそと話しながらどこかへ消えていく人々の前で──。



 キャスター────『ダークザギ』はただ、己を祝福し続けた。


353 : 孤門一輝&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/07(日) 01:13:23 vFErn8Jc0
 



【CLASS】

キャスター

【真名】

邪悪なる暗黒破壊神 ダークザギ@ウルトラマンネクサス

【パラメーター】

筋力■■ 耐久■■ 敏捷■■ 魔力■■ 幸運■■ 宝具■■

【属性】

混沌・■■

【クラススキル】

陣地作成:■■
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げるスキル。
 彼は一時的にダークフィールドGという異空間を形成して、その場で自分に有利な戦闘を行える。
 ただし、このスキルは戦闘力を取り戻している前提での能力。
 ダークザギとしての本来の姿を現界する事ができなかった為、実質的にダークフィールドGを展開するのは不可能。

道具作成:■■
 魔力を帯びた器具を作成する為のスキル。
 ダークザギは、ダーク■■ウストや、ダークメ■■■■などのダ■クウルト■■ンを作成し、彼らを媒介にスペ■■■ーストを現界させる。
 高い技術力や科学力も持ち合わせ、地球人の未だ持っていない技術の道具を作り出せる。

【保有スキル】

改竄:■■
 自分に関する記憶や過去のデータ全てを改竄するスキル。
 ダークザギの持つスキルは全て検閲・改竄・修正済。
 各種パラメーターやスキルのランクも同様。
 故に、これ以外にいかなるスキルを持っているのかは不明。


354 : 孤門一輝&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/07(日) 01:13:42 vFErn8Jc0

【宝具】

『影(アンノウンハンド)』
ランク:■■ 種別:対界宝具 レンジ:■■■■■ 最大捕捉:■■■■■

 人類を暗躍する黒い影。
 [改竄済]

『魔人(ファウスト)』
ランク:■■ 種別:対界宝具 レンジ:■■■■■ 最大捕捉:■■■■■

 キャスターが生成する「魔人」の意思。
 心に闇を持つ者に植え付けられ、その人物の意思を「魔人」が乗っ取り、キャスターの傀儡とする。
 生前にこの「魔人」を作り上げたのは、「悪魔」であったが、現在はキャスター自身が生成できる。
 [改竄済]

『悪魔(メフィスト)』
ランク:■■ 種別:対界宝具 レンジ:■■■■■ 最大捕捉:■■■■■

 キャスターが生成する「悪魔」の意思。
 心に闇を持つ者に植え付けられ、その人物の意思を「悪魔」が乗っ取、キャスターの傀儡とする。
 [改竄済]

『異生獣(スペースビースト)』
ランク:■■ 種別:対界宝具 レンジ:■■■■■ 最大捕捉:■■■■■

 キャスターが宇宙から招き入れた怪物たち。
 情報を得ることで急激に成長し、知的生命体の恐怖を餌に成長する。
 さらには、他の生物を捕食する事で成長・増殖する。
 個体には、人間大の物もいれば、数十メートルの巨大の異生獣もいるが、使用する魔力はその大きさ・強さ・量などに比例する。
 『魔人(ファウスト)』や『悪魔(メフィスト)』の脳波で操られる。

【weapon】

 マスターの肉体。

【人物背景】

 [全データ抹消済]

【サーヴァントとしての願い】

 再び肉体と力を取り戻し、宇宙を虚無に還す準備を始める。

【基本戦術、方針、運用法】

 マスターの手に負えない。
 引いた時点でマスターが乗っ取られる。
 運用もクソもない。諦めるべし。

【備考】

 キャスターのクラスで召喚されたダークザギは、肉体を持っておらず、「因子」としての姿で現界しています。
 誰かの肉体を乗っ取らなければならない為、彼はマスターの肉体と意識を乗っ取りました。


355 : 孤門一輝&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/07(日) 01:13:57 vFErn8Jc0




【マスター】

孤門一輝@ウルトラマンネクサス

【マスターとしての願い】

(キャスター:ダークザギによって身体と意思を乗っ取られています)

【weapon】

 不明。

【能力・技能】

 情報処能力。
 戦闘能力。
 射撃能力。

【人物背景】

 警視庁の警察官。階級は巡査。
 サイバー犯罪を専門とするが、技量も高い。

 [以上、全データは改竄によるもの]

【方針】

(キャスター:ダークザギによって身体と意思を乗っ取られています)

【備考】

 素体となった孤門一輝は、闇の戦士としての素養が最も高かった、斎田リコ死亡後からの参戦です。
 この世界ではレスキュー隊員が役割でしたが、それもダークザギの改竄で消失しました。


356 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/07(日) 01:14:18 vFErn8Jc0
投下終了です。
失礼しましたー。


357 : ◆DeIsaj04bU :2016/02/07(日) 03:03:15 kZtPBAxM0
投下します


358 : 地獄のフブキ&セイバー ◆DeIsaj04bU :2016/02/07(日) 03:04:40 kZtPBAxM0

偽りの東京で開催される、聖杯戦争  
万能の願望器をめぐる争いに選ばれたマスターたちが、それぞれ目覚めつつあった
地獄のフブキは、そんなマスターのひとりである。今日の仕事を終え、タクシーで帰宅への帰路へと赴いていた

(……ちょっと、疲れた)

疲労感を感じながら、窓の外に視線を向ける
仮初めとはいっても、ここは東京
摩天楼の下で、視界に収まりきらないほどの人混みにうんざりしながら、しかしもう慣れてしまった自分に驚く。フブキが記憶を取り戻したのはつい最近の事だった

「あのー……」

珍しく黄昏ているフブキに、遠慮がちに運転手が話しかけてきた。人が良さそうな年配の男性だ。染めていないのか、白髪が目立つ
「何かしら?」
気づかれない程度に身構えるフブキ
「すみませんが、何処かで御会いしたことはありませんか?」
ありきたりな、語尾は違えど、もう何度も訪ねられた台詞だった
「いえ、人違いでは?」
「あっ、そうですよね。すみません」

でも、どっかで見た気がするんだよなー。と、釈然としない運転手を尻目に、フブキは心中で再びため息をつく

(……知名度があるというのも考えものね)

現在のフブキは、下手に注目を集めないように、サングラスと帽子で軽く変装していた
何故なら、フブキの容姿はある程度は社会に知れ渡ってしまっているからだ

この世界では【ヒーロー】という職業は存在しない。
が、ここでも彼女がリーダーを勤めるフブキ組は存在している
もっとも、それはB級ヒーローの派閥としてではなく、なぜかアイドルグループという役割に置き換わっていたが
新人アイドルたちを纏めあげる、根強い人気を誇る古参のアイドル。それが、この世界におけるフブキのロールだった

ヒーローとアイドル。
細部は違えど、人の注目を集める職業といったところは共通している
元々容貌には恵まれていた上に、それを維持するための努力も抜かりなく行っていた点からしても、アイドルといった職業はわりとフブキに向いていたのかもしれない





それから何事もなく、目的地に到着した
フブキの自宅は、都内の高級マンションである。セキリティはしっかりしているので、それなりに安全だ
部屋に上がると、居間にひとりの男がいる
少し前までは、同居人はいなかったのだが、今は違う

その男はひたすら素振りだけを繰り返している。いや、フブキには実のところ、それが素振りかどうかよくわからない
あまりにも振るスピードが速過ぎて、腕から先がまったく見えないからだ

「……ただいま」

「お帰り、マスター」

挨拶こそするものの、フブキの顔もロクに見ずに、その暇さえ惜しいとばかりに、一心不乱に打ち込んでいた
フブキに召喚されたセイバーは、かなりの曲者であった

記憶を取り戻して混乱していたフブキの元に現れるやいなや、簡潔に聖杯戦争の知識を説明し、フブキがそれを理解したことを確認した後、ずっとこうして引きこもっている
あろうことかこのセイバーは、マスターであるフブキの側に霊体化し、護衛することを拒否した。いや、正確には断ったわけだが、大して意味は変わらないだろう

「まだ続けてたの? 私、貴方が素振り以外の事をしている姿を見たことがないのだけれど?」

「……」

熱中していて聞こえないのか、それとも無視しているのか、嫌みにも少しも反応しない。ただただ、素振りを続ける。
このセイバー、こうしてずっと、実体化した上で修行を続けている。テコでも止めようとしないのだ

べつに、それ自体に不満を持っているわけではない
姉を越える。そのためだけに血の滲むような鍛練を積んできたフブキにとって、ひたむきに修行に打ち込むセイバーの姿は好印象だった

人格そのものもけっして悪くなく、紳士的な印象を受けた。その上、S級ヒーロー並、下手したらそれを凌駕するほどの、確固たる実力も備わっている

だが、正直危なっかしい
話に聞けばサーヴァントとは、聖杯戦争において身を守る盾でもあり、武器でもある
超能力者とはいえ、当然サーヴァント相手に戦えるわけではない
危険が迫ったら念話で呼ぶか、令呪を使ってほしいと言っているが、身近に居ないとなると不安が残るものだ

(本当に……生前、どんな英霊だったのかしらないけど、少しだけ控えてくれたら……)

ヒーローとして殺戮の末の願望達成など、認められない。必然、フブキのスタンスは聖杯戦争からの脱出、もとい妨害である
意外にも、セイバーは協力してくれると言っていた。成就したい願いは、特にないらしい
修行バカな所を除けば、非常に素晴らしいサーヴァントだと断言できるのに……

地獄のフブキの受難は、まだ続きそうだ


359 : 地獄のフブキ&セイバー ◆DeIsaj04bU :2016/02/07(日) 03:08:09 kZtPBAxM0


【クラス】セイバー
【真名】ネスタ・グラウド@カイストシリーズ
【属性】中立・中庸
【ステータス】
筋力:B 耐久:B 敏捷:A 魔力:D 幸運:C 宝具:EX


【クラススキル】
対魔力:D 
一工程(シングルアクション)によるものを無効化する

騎乗:E
騎乗の才能。大抵の乗り物なら何とか乗りこなせる

【保有スキル】
素振り王:EX
セイバーは生前、生きている時間の殆どを、それも、寝食も取らず一瞬たりとも休まず何万年もの間、上段斬りの素振りだけを延々と続けたという
セイバーの興味の対象は自身の強さだけで、世界や他人の存在はその強さを測る指標でしかなかった。
サーヴァントとなってもそれは変わらず、余程のことでもないかぎり彼が修行の手を止めることはないだろう

カイスト:A
強い意思をもって転生を続ける者達に与えられるスキル
精神干渉系魔術をシャットアウトする

【宝具】
『剣神』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:-
言ってしまえばただの上段切り。しかし、全てを捧げて尽くした一撃は、どんな相手も真っ二つに両断する
究極のワン・スキル・カイストによる強念曲理は、「相手が斬られて死んだ後でネスタが剣を振り下ろした」「別の世界にいたのに斬られた」などのエピソードに象徴されるように、ネスタの上段切りは「斬る」という過程を辿らず「斬った」という結果だけが残る。相手は死ぬ

【weapon】
仕込み刀

【人物背景】  
カイストシリーズの登場人物
ガルーサ・ネットの主催するカイスト・チャート、無差別部門の一位をキープしていた、四千世界で最強のカイスト
通称『剣神』、悪意をもって呼ばれる名は『素振り王』
剣神とはいっても、彼の扱える剣技は上段切りだけではあるが、ただそれだけを追求し最強となった男
かの百億年戦争に参加したときには、一年間で一億六千万人のカイストを斬り殺したエピソードが有名


【マスター】
地獄のフブキ@ワンパンマン

【マスターとしての願い】
姉を越えたい。でも聖杯を使うのは望まない

【weapon】

【能力・技能】
サイコキネシスとテレキネシスを利用した、猛烈な物体操作を主戦力とする。
特に必殺技である大気ごと周囲の瓦礫を圧搾して竜巻現象を起こす「地獄嵐」は、手加減しても並のB級ヒーローでは瀕死確定の威力を誇る。

【人物背景】
黒いドレスコートを身にまとう長身の女性。
S級2位である戦慄のタツマキの妹。
類い稀な超能力の持ち主であるが、最強の超能力者であるタツマキには及ばず、そのことがコンプレックスになっている。
単独行動主義の姉を超えるため、トップになれるB級1位を守り続け、B級ヒーローを束ねた『フブキ組』という派閥を作っている

【方針】
アイドルとしてのロールをこなしつつ様子見。可能なようなら同盟を組む選択もする


360 : 地獄のフブキ&セイバー ◆DeIsaj04bU :2016/02/07(日) 03:09:15 kZtPBAxM0
投下終了です


361 : ◆Aq5Fflqogs :2016/02/07(日) 10:32:39 6J5fYpY20
皆様投下お疲れ様です。私も投下します。


362 : 美しき終焉 ◆Aq5Fflqogs :2016/02/07(日) 10:33:36 6J5fYpY20



 ――ある時突然、地上に黒い稲妻が落ちた。

 それが飛来したのは、聖杯戦争を勝ち抜くために一族から派遣された、五組の主従が無事合流を果たした後、今後の方針を打ち合わせていた最中だった。
 工房と化した洞窟の中にまで降りて来た五条の落雷は、それぞれが過たずセイバー、ライダー、バーサーカー、キャスター、そして気配遮断していたアサシンをも捉えた。
 敵の奇襲――真っ先に浮かんだ可能性に、五人のマスターは即座に戦闘態勢に入ろうとして、異常に気がついた。
 雷を受けた彼らのサーヴァントのステータスが、倍加していたのだ。

「何が起こっている……?」

 攻撃を受けたにしては余りに奇妙な現象に、一団の長が口を開いた直後、”それ”は現れた。
 まるで先駆放電の見つけた経路を辿った、主放電のように。



  ケヒャケヒャケヒャケヒャケヒャ……



 癇に障る、子供の笑い声を悍ましくしたかのような奇怪な音を発しながら、”それ”は二十の眼光に映り込んだ。

 飛来して来たのは、発光する頭部をした人型の”ナニカ”だった。
 ステータスもスキルも、何も認識できない”それ”がしかしサーヴァントであることだけは、マスターの五人には視認できた。

 ゆらゆらと漂うように、しかし流星のような速度で現れた”それ”は、時折その輪郭を激しく歪ませながら悠然と大地に降り立って、五人の魔術師とそのサーヴァントに対峙する。

 何者だ、と長が問うことはなかった。

「■■■■■■――!!」

 それより早く、バーサーカーが暴発していた。
 咆吼と共に。ステータスの向上からか、これまで以上に狂乱したバーサーカーは怪力と狂化のスキルに加え、暗黒の稲妻によって強化された天性の肉体を駆って、最大膂力の一撃を叩き込まんと”それ”に肉薄する。

 その直前、長の視線に込められた視線の意図を、セイバーは瞬時に理解する。
 それは、この場にいる全員が、既に本能で察していたことだったからだ。

 ――あれは、あってはならないものであると。

 そして時空を司るその力の一旦を解放した空間跳躍により、セイバーはステータスで勝るバーサーカーより早く”それ”を間合いに捉えた。

 瞬閃。

 これまで以上の身体能力で放たれた最速の居合が振り切られたのと、セイバーの背後でクジラの歌声のような荘厳な音色が奏でられたのは、ほとんど同時の出来事だった。

「――何?」

 不意を衝いた空間跳躍。同時に放った最速の剣閃。
 必殺の呼吸がしかし、何の手応えもなかった事実と、その剣を振った瞬間の違和感に、セイバーが悪寒を覚えた次の瞬間、爆音が轟いた。

 バーサーカーが得物とする大戦斧。最高の筋力から繰り出されたその一撃が、大地を割った音だった。



 鋒は、標的だった”それ”に歩くついでとばかりに振られた掌で、見当違いの地点に逸らされていた。



「――ッ!?」

 ゆらゆらと、所在ない挙動で”それ”の振り上げた足が、バーサーカーの胴を抉る。その一撃で、そいつの倍以上の体格を誇るバーサーカーは、蹴鞠のようにして飛んで行った。
 驚愕の余りに振り返ったセイバー。その目の前には既に、感情の読めない仮面のような”それ”の顔が、息のかかるような距離に存在している。


363 : 美しき終焉 ◆Aq5Fflqogs :2016/02/07(日) 10:34:40 6J5fYpY20

「下がれ、セイバー!」

 マスターの指示。それが届くより早く、セイバーは恐怖のままに再びの空間跳躍を敢行していた。
 落雷で魔力が向上した影響か、普段ならば既に反動が来るような魔力消費でもほとんど消耗することはない。だが、その精神は普段の疲労以上に蝕まれていた。
 それをセイバーが認識したと同時、ライダーの召喚した神獣の放つ猛毒の息吹が、寸前まで彼の居た空間を埋め尽くす。
 一つの神話体系における怪物の頂点、その眷属が放つ神すら滅ぼす呪いの濁流は、セイバーの斬撃を躱し、バーサーカーの一撃を軽々と弾いた謎の怪物さえも逃すことなく、その姿を紫紺の中に呑み込んだ。

 …………だが、あの嘲笑が涸れることはなかった。

 聞く者に生理的嫌悪感を催させる笑い声の途切れぬまま、セイバーの眼前を濃霧のように塞いでいた呪毒の奔流は、跡形もなく消え失せる。

「――あの毒を飲み干しやがったっ!?」

 ライダーの驚愕が零れたのと同時。”それ”は、歩みを開始した。

「止まりなさい!」

 動揺する五人のマスターを背に庇い、キャスターが威嚇するような魔法陣を展開する。
 歯噛みするその表情からは、彼女が得意とする精神干渉も不発に終わったのだということが、セイバーにも如実に読み取れていた。
 その事実を受けたキャスターの放つ無数の魔術弾は、発光する身体に逸らされているのか、弾かれているのか、はたまた透過されているのか。一切わからないまま、何の影響も与えることができないままに、ゆらゆらと距離を詰められる。

 弾幕は無意味。それを悟った時には、セイバーは恐懼に竦む足に英雄の意志で芯を通らせ、再びこの怪物へと突撃していた。
 前進、と同時に三度目の空間跳躍。横合からの突撃と見せかけた、死角からの奇襲。
 それが、一瞥も寄越さぬ腕の一振りに弾かれる。

「ぐ……っ!?」

 死角がない――というよりも、前後がないかのような反撃に、セイバーは防御が追いつかず直撃を許し、脇腹を痛めながら吹き飛ばされる。

「■■■■■■――!!」

 そんなセイバーの転がる傍を、復活したバーサーカーが駆け抜ける。巨体を活かし、逃げ場を塞ぐようにして怪物を間合いに収める。
 優れた筋肉が生んだ瞬発力は”それ”を外し、挟撃していた神獣の尾と衝突。お互いの持つ驚異的な慣性をぶつかり合わせ、撞球のように弾かれ合う。

 狂戦士が岩肌に打ち込まれると同時、バーサーカーの宝具である、あらゆる防御をすり抜け魂そのものを刻む斧の一撃を受けた神獣が悲鳴を漏らす。外傷こそなくとも、そこにあるべき核たる霊体を失った尾の先は、壁を打つ前に壊死して霧散してしまっていた。
 そう――上位の神獣にすら通じる宝具でありながら、バーサーカーの攻撃は二度も”それ”には通じなかった。

「また……っ!?」

 外れるはずのない間合いと呼吸で、こちらからは未だ一太刀すら浴びせられていない。
 唐突に現れた怪物を前に、セイバーがその不条理の正体を推察しようとした瞬間、”それ”の頭部が発光する。

「――まずいっ!」

 悪寒のまま、セイバーは四度目の空間跳躍。キャスターの横に並び立ち、宝具である神剣の力を更に引き出す。
 そして怪物の放った螺旋の光は、セイバーの歪めた空間に沿って更に曲がり、岩壁を突き破って外に飛び出した。

”それ”の頭部から迸った放電は、一本一本はか細い放電ながらも、百万の毒蛇の群れのように展開されていた。
 それらは神剣の護りを突破することこそできなかったが、ほんの一条が掠めただけで堅固な鱗に覆われた神獣の頬を吹き飛ばし、丸太のようなバーサーカーの腕を捥ぐ恐るべき威力を発揮して、工房として強化されていた洞窟を崩落させて行く。

 暫くその猛威が続いた後。思い出したように”それ”が放射を止めるのと、全身を穿たれ力尽きた神獣の巨体が大地を揺らすのは同時だった。
 巻き上がった土砂が視界を塞ぎ、響いた轟音が聴覚を鈍らせる――それでもあの笑い声だけは、変わることなく届いていた。

 こちらを向いて両腕を広げる仕草を見せる”それ”に、柄を握る手を汗ばませていたセイバーとキャスターが反射的に身構える。
 対して怪物の見せた挙動は、背後に向けて野太い直線の光を放つということだった。

「!?」
「アサシンッ!」

 それは――その瞬間まで完全に気配を絶っていたはずの、不可視化したアサシンの霊核を的確に撃ち抜いていた。


364 : 美しき終焉 ◆Aq5Fflqogs :2016/02/07(日) 10:37:11 6J5fYpY20

 セイバーの初撃が躱され、ライダーが浴びせさせた神獣の息吹が通じなかった時点で、不規則な動作を繰り返す”それ”の隙を伺うために息を潜めていたアサシンはしかし、逆に攻撃に移ろうとした瞬間をあっさりと見抜かれてしまっていたのだ。
 明らかに先程乱射された光線よりも強力な一撃に急所を貫かれたアサシンは、間もなく消滅する――

「――だが、役目は果たさせて貰う」

 末期の言葉と共に、アサシンが宝具を展開する。

 彼の投擲していた四つの短剣が、”それ”を囲んだ次の瞬間。地中から洞窟の外までを取り込んだ、結界の檻が出現する。

 そしてその直後、隔離された内側の全物質が消滅した。 

 あれこそがアサシンの宝具――展開した限定空間内の物質を、それを構成する最小単位である素粒子のレベルにまで分解、消滅させる秘奥義。
 地中から天蓋まで、その結界の存在した容積だけを世界から取り除くアサシンの置き土産を受けて――

 ――中心に存在していた”それ”だけは、芥子粒ほども欠けることなく、元の座標に浮いていた。

「撤退だセイバーっ!」

 悲鳴に近いマスターの指示が飛ぶ。アサシンを失い、工房が破壊し尽くされた段になっての遅すぎるようなその決断が下されるより先に、セイバーも既に準備に取り掛かっていた。
 しかし、自分一人を短距離移動させるのとはわけが違う。ライダーとまだ息があるバーサーカーも、キャスターとマスター達も、この怪物から安全圏に逃れさせるとなれば、相応の準備が必要となる。
 既に落雷の恩恵も使い果たした。極度の集中が必要となるセイバーの意を汲み、キャスターが頷く。

「こっちよ、化物!」

 セイバーの準備が完了するまでの注意を引くため、魔力弾の斉射を行いながら、キャスターが前に出る。
 当然、それだけでは通じないことをキャスターも既に学習していたのだろう。魔術によって高速飛行し、更に惜しみなく召喚した使い魔の蝙蝠の群れで空間を埋め尽くすことによって、敵の視界を絶つことで時間を稼ごうとする。



  ケヒャケヒャケヒャケヒャケヒャ……



 それを前にした怪物は、またあの耳障りな笑声を奏でた――今度は心なしか、それまでにない歓喜が滲んだ声音を以って。

 そして蝙蝠で作られた暗幕は、その嘲弄のままに引き裂かれる。
 怪物の背中から無数に生えた、水死体のように膨れた青白い手に毟り取られて。

「な……ぁっ!?」
「キャスターっ!」

 その手の一本は、蝙蝠だけでなく、その奥にいるキャスター本体にまで届いていた。
 一本目に胴の半分を引き千切られ、続く二本目の腕が脆くなった半身を握り潰しながら、残りを丸ごと引っ掴む。
 唯一健在のセイバーは、空間跳躍の準備で動けない。そして負傷していた他の誰かが駆けつける暇もなく、キャスターを握り潰した手は怪物の胸元へと導かれ、そして空になった。

「……食われた」

 目の前で起こった出来事に理解が至った長が呟く。背後でキャスターのマスターだった女が、パートナーの残虐な喪失に耐え切れず、尻を着いたのが聞こえた。
 悲しみと衝撃に打たれる人間達の前で、”それ”は喜びを示すかのように全身を激しく歪ませる。その挙動に一層の生理的嫌悪感を催されながら、未だ準備を終えられないセイバーは予測できない次の手に冷や汗を流す。

「■■■■■■――!!」

 直後。漲る憤怒に任せて飛び出したバーサーカーは、同時に怪物の手の一本が変化した光の壁に激突する。
 瀕死の身体で、キャスターに続く時間稼ぎを買って出ようとした狂戦士もまた、一瞬でこの世界と別れを告げ、怪物の中に消えて行った。

 更に貪欲な手は伸びる。倒れ伏していた神獣の巨大な肉を引き千切り、跡形もなく捕食する片手間で、セイバーにまでその手を伸ばす。

「――ライダーっ!」

 その脅威に対して、セイバーの盾となったのは、最後に残ったもう一人の英雄だった。

「……すまねぇ、セイバー。マスター達を……」

 神たる獣とともに在った気高き英雄の最期の頼みは、最後まで残されることはなかった。


365 : 美しき終焉 ◆Aq5Fflqogs :2016/02/07(日) 10:37:48 6J5fYpY20

「うぉおおおおおおおおおっ!」
 光となって消えたライダーが取り込まれるのを見届け、咆哮しながらも、セイバーは皮肉にも身軽となったことで早まった転移の実行に移る。
 そんな、皆の繋いだ希望を呆気無く阻んだのは、”それ”の頭部の発光と共に奏でられた鐘を鳴らしたような音だった。

「うぁ……っ!?」
「くっ……!」

 脳を直接揺らされるが如き振動に、マスター達が一斉に膝を着いた。空間跳躍のための制御式を崩されたセイバーも、鼓膜を血で濡らしながら体勢を崩す。
 ゆっくりと頭を揺らすようにしていた”それ”が、またも前触れ無くその動作を止めると同時に断続していた音も止み――今度はアサシンを屠った野太い光条が、その胸から放たれる。
 咄嗟に空間を歪めて背後のマスター達を守りながら、光線を天へと逸らして受け止めたセイバーは、しかしそれも長くは続かないことを理解する。
 最早、逃げるだけの力もない。

(キャスター……バーサーカー……アサシン、ライダー……!)

 このままでは、仲間達が身を挺して繋いでくれた命までも、この理不尽に奪われてしまう。
 ――認められるか、そんなこと。

「――マスター!」

 一人では状況を打開できないことは、既にセイバーも知悉していた。だからこそ、かつて伝説を為した剣士は共に勝利を誓った今生の主に呼びかける。

「私に、力をっ!」

 同じく令呪を費やすならば、それは逃げるためではなく、勝つために。
 そんなセイバーの願いを受けて、耳朶から血を流しながら、彼のマスターは頷いた。

「令呪を持って命ずる。その剣で我らの未来を切り開け、セイバー!」
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 斯くして、奇跡の対価は支払われた。
 携えた神剣の真名を唄い、その本来の力を発揮して。
 セイバーの一閃は照射され続けていた光ごと、前方の空間を切り裂いた。

 どれほどの英雄豪傑であろうと、その伝説の描かれた紙ごと切り裂かれてしまえば無力なように……空間切断に巻き込まれたとは即ち、属する世界ごと斬られるのと同義のこと。
 故に神剣の太刀筋、その延長上にあった万物にはその一振りを防ぐ術などなく、例外なく切り裂かれていた。



  ケヒャケヒャケヒャケヒャケヒャ……



 その空間の裂け目の上を悠然と進んでくる、”それ”以外の”物体”は。

「馬鹿な……」

 背後でマスターが放心するのを感じながら、同じ心地のセイバーは力を使い果たした指先で、取り零しかけた宝具を何とか掴み直した。
 未だ裂かれたままの空間の上を、平然と進んで来る不条理の塊の正体に、ようやっと理解を及ばせながら。

「そうか……こいつは、無そのものなんだ……」

 呆然とセイバーの漏らした言葉を、マスター達が聞き取れたのかは定かではない。
 だが時空にさえ干渉する神剣を担うセイバーは、この無敵に思えた怪物の正体が、たった今自分が世界に与えた疵に近しい物であると推察できたのだ。
 最初に交錯した時に、セイバーだけが知覚できた違和感の正体もそれだった。
 こいつのいる座標には、そもそもあるべき空間がなくなっている――比喩ではなく、文字通りに。

 ……この怪物はつまり、世界に空いた虚無の穴なのだ。

 なるほど単なる無であるならば、そこには毒に蝕まれる肉体も、影響を受ける精神も、刻まれる魂も、分解される素粒子も――切り裂かれる空間すら有りはしない。
 何故なら全て、存在しないからこその”無”なのだから。
 この姿も、この世界が紙に書かれた絵であるならば、そこに空いた穴を認識しているに過ぎないのだろう。
 道理でセイバーの神剣でさえも、斬ることも叶わないわけだ――こいつはそもそも、この世界に存在していないのだから。
 だが、だがならば……ただの無だというのならば。



  ケヒャケヒャケヒャケヒャケヒャ……



 何故こいつは、こんな生物のように振舞っているというのか――?



 セイバーがそんな疑問に襲われたのと同時、間違ってぶちまけた絵の具のように、一際茫洋と輪郭を歪ませた”それ”が突然転移を繰り返し、一気に距離を詰めて来た。

 ……全ては無為と悟りながらも。戦友達との約束は、英雄としての魂は、彼に諦めることを選ばせなかった。

 そうして今を生きる人間達に離れるように言い残し、既に力を使い果たした愛剣を構えて突撃した剣士の姿は、虚空から伸びた無数の手の中へと飲み込まれて行った。







「……貴方達は集まり過ぎたのです」


366 : 美しき終焉 ◆Aq5Fflqogs :2016/02/07(日) 10:38:41 6J5fYpY20

 剣士の果てる様を見ながら、そんな言葉を漏らす男が一人居た。
 遅れて現れた彼こそは、五騎のサーヴァントを壊滅させた怪物、ビーストのクラスで召喚されたサーヴァントのマスターである人物だった。

「ビーストは濃い生命から消していきます。より強い者、あるいはより多い者の前に現れる……サーヴァントが最初から五騎も揃っていれば当然の帰結です」

 もっとも、マスターである彼にしても、その法則を掴めてきたのはここ最近のことであったが。

 この怪物は、エーテルによる仮初の肉体を与えられたサーヴァントをも対象として含んだ、生命の存在を感知するための黒雷を放ち、そしてその雷と結合した生命が消える――おそらくは発生源である己との、有と無の差がなくなるまで追いかけて、また次の生命を探すという行為を繰り返しているのだ。
 まるで、一度先駆電流と線条が結びつけば、互いの電位差が中和されるまで発生し続ける雷のように。

 ……かつての宇宙モデル論では、エントロピー増大則に従うと、無限の時間が経過すると、全てのエネルギーが均等に分布する状態に漸近的に到達すると考えられる。
 おそらくはビーストもまた、その本質は全ての命が等しく分布する状態に到達するために発生する自然現象なのだろう。
 それが観測者たる知性体の理解を超えているために、かつて世界各地で雷神が幻想されたように、その原因となる”ナニカ”が存在すると解釈した結果、そこにあのような怪しい獣が存在するのだと誤認してしまっているだけで。
 それでも過った認識は、人々の心に棲まう”怪獣”を作り出し、そしてその現象をサーヴァントとして呼び出せる下地となった。
 下地となって、しまったのだ。

「ですが流石は英霊といったところでしょうか。最後の瞬間まで他者のために身を投げ打つその気高き姿……それが浅ましい欲望によって血に染まる前に、美しいままに終わりを迎えることができたのは素晴らしいことです」

 そしてそんな、全ての生命の敵と呼ぶべき終末の化身をこの世界に招いてしまったのもまた、世界に終末を導く者だった。
 その名を真木清人、またの名を恐竜グリード。
 絶滅した動物や、幻想種――存在した姿を人間が目にしたことのないものの欲望から生まれた、”無”の属性のコアメダルによって怪物となった元人間。
 自らの信条のため、世界を終わらせるために生命さえも放棄した、ただそこにあるだけの「物」。
 それが真木清人という存在である故に、彼は全ての生命を滅ぼす”無”であるビーストに認識されず、今もこうしてあり続けることができていた。

 そんな真木のくすんだ視界の果てでは、最後のサーヴァントを失ったマスター達が為す術もなく、ビーストの放つ光の中に消え行く光景が展開されていた。

「……やはりあなたは、何と美しき終焉なのでしょうか」

 それをいつになく熱を帯びた視線で眺めていた真木は、そんな感想を漏らしていた。

 そう――不適格者ばかりだった欲望の器などではない。ビーストこそが、真木清人の望みそのもの。
 通った跡には何一つ残さない。全ての生命を、醜くなってしまう前に死で以って完成させる美しき終焉。

 その体現こそが、ビースト――虚空怪獣グリーザなのだ。

 そんな理想の体現から、またも暗黒の稲妻が打ち上げられる。

 無数に放たれるそれの内、実際に次の標的を見つけ出すまでには大抵多くの時間を必要とする。
 しかし今回は存外早く、次の標的を見つけたらしい。
 糸で吊るされたように回りながら、重力を無視して浮き上がるビースト――全く制御の通じない自らのサーヴァントを追うために、その身をヒトの残滓からグリードの姿へと転じさせた真木もまた、その身を空に躍らせながら。

「姉さん……今こそ、あなたの教えを完遂しましょう」

 真木清人の、そんな呟きを最後に残して。二体の終末の化身は、東京の夜へと飛翔を開始した。


367 : 美しき終焉 ◆Aq5Fflqogs :2016/02/07(日) 10:39:43 6J5fYpY20

【出展】ウルトラマンX
【CLASS】ビースト
【真名】虚空怪獣グリーザ
【属性】?・?
【ステータス】
筋力? 耐久? 敏捷? 魔力? 幸運? 宝具?

【クラス別スキル】

???:?


【保有スキル】

???:?


先触れの黒雷:?
 ダークサンダーエナジー。
 グリーザという現象の初期段階として飛来する、生命の反応を励起させる暗黒の稲妻。
 この稲妻を受けたサーヴァントは、幸運値以外のステータスが倍加されるが、判定で精神に恐慌状態が付与されることがある。

虚空の申し子:EX
 無という現象そのものであること。
 欲望を持つ怪獣とされているが、厳密には自然現象に等しい事象を、観測した者が無理に視覚化した存在しない存在であることの証明。
 単なる現象が生物、あるいはサーヴァントとして認識された結果装備されているスキルである。
 周辺の空間に漂うエネルギーを無尽蔵に吸収し、同ランクの単独行動以上の自立性をサーヴァントに与える。
 但し、有である実体を得た後にはこのスキルは消滅する。


【宝具】

『美しき終焉(グリーザ)』
ランク:? 種別:対生宝具 最大補足:?

 虚無の申し子。
 エントロピーの法則における熱量の均一化と同様に、生命の濃度が等しくなるために起きる事象。
 宇宙全体の生命の濃度を等しくするために、あらゆる星々の生命を無に帰す自然現象でありながら、まるで生物のように振る舞う意思なき災厄。

 そんな虚空怪獣グリーザという不条理の塊を、再現してしまったビーストの宝具。

 かつての人々が不可解な現象を妖精等の悪戯と捉えたように、存在しないものが何もかもを消してしまうという光景を目にした人々がそれを強引に知覚した結果、観測された怪獣であり、ビーストの存在そのもの。

 ただそう見えるというだけで本質は真にして完全なる無であり、その正体はこの宇宙に存在するあらゆる力も物質も取り込み消滅させてしまう性質を持った、世界に空いた穴。

 既に何もない無を滅ぼすことは決してできないことから、まさに「無」敵であると言える宝具。



【人物背景】

 意志も知性もなくただ本能の赴くまま星の生命エネルギーを求めて宇宙を彷徨う正体不明の存在。

 かつて三つの生命豊かな星を滅ぼした後、太陽系に侵入した所をウルトラマンエックスに見つかって彼と激突。この時はXの手で太陽に叩き込まれるが、その際にウルトラフレアと呼ばれる衝撃波が発生し、ウルトラマンエックスの身体はデータとなって失われ、地球では眠っていたスパークドールズの怪獣達が次々と覚醒する事態が発生することとなる。
 それから十数年の間休眠状態になっていたが、やがて活動を再開。ダークサンダーエナジーを放ってそれを浴びた怪獣を凶暴化させるなど様々な事件を誘発していた。
 実はダークサンダーエナジーとはその星に糧となる生命体が居るかを探るためのシーカーであり、それによって見つけた地球を新たな餌場と定め、本格的な活動を開始する。

 その力は圧倒的であり、完全な肉体を失った代わりに新たな形態を得たウルトラマンエックスと、ファントン星を始めとする外宇宙の超科学まで取り込んだ地球防衛組織であるXioの超兵器群の共同戦線を終始圧倒し続けた。

 しかし、ダークサンダーエナジーを払う力を持つエックスの捨身の特攻から再生した際に実体を得てしまい、その後も地球中の怪獣を全て捕食し、復活したエックスをも寄せ付けない強さを見せたものの、エックスと怪獣達が心を一つにした絆の奇跡を前に、最後は敗北を喫することとなった。



「知性体が理解できない現象を強引に認識した結果、そのような結果を引き起こす怪獣がいるように見えた」結果が虚空怪獣グリーザであり、まさしく人々の理解を越えた、人々の心から生まれた怪しい獣、つまり「怪獣」と呼ぶに相応しい存在であるが故に、ビーストのクラスに宛てがわれた。

 本来の規模はサーヴァントの器に収まるものではないため人間大にまでスケールダウンしているが、逆にその元の強大さを誤魔化すために実体を得た後ではなく、「無」という性質を持った状態が再現されてしまっている。



【サーヴァントとしての願い】

 グリーザは現象であり、意志などない。
 ただその在り方通り、そこにある生命を虚無に還すのみである。


368 : 美しき終焉 ◆Aq5Fflqogs :2016/02/07(日) 10:41:35 6J5fYpY20
【対策法】

 数が多い、あるいは強大な生命ほどグリーザは優先的に捕食対象にすることが判明している。
 その対象にはサーヴァントも含まれており、この東京における最強の生命は仮初の肉体を与えられた英霊である彼らであるため、主に聖杯戦争の関係者を襲い続ける。
 その性質上、大規模な集団、あるいは強力なサーヴァントとなるほどにグリーザを引き寄せてしまう危険性が向上する。

 無であるために一切の物理干渉が無効であり、干渉を受ける精神を最初から持ち合わせていない。
 当然失う命も魂も元より存在せず、空間から独立しているために空間操作すら無為と化すため、ダークサンダーエナジーを被雷しステータスが倍加、宝具の連射が可能になったとしても、正攻法でグリーザを攻略することはほぼ不可能と言って良い。
 光の巨人の命と引換に太陽に落とされ、以後何年も活動を停滞させていた逸話より、太陽の力を持つサーヴァントのみグリーザの力を弱めることができるが、それだけでは無を滅ぼすことはできない。
「無」であり「存在しないもの」であるため、現時点では活動にマスターの存在すら必要としておらず、そもそもマスターである真木のことも「無」の属性を持った物質であるが故に認識できず消滅させていないに過ぎないため、今の時点で弱点らしい弱点は存在しない。

 但し、これらの無敵性は全て、グリーザが「無」であることによって保証された特性であり、実体を与えることさえできれば消滅するアドバンテージである。
 無を滅ぼすことはできずとも、怪獣を殺す、サーヴァントを消失させることはできる。何らかの方法で実体を与えることさえできれば、「無」という性質を失った通常のサーヴァントとして現界することとなり、活動にマスターの存在が必要不可欠となるため、攻略の目を見出すことができるようになるだろう。





【出展】
 仮面ライダーオーズ

【マスター】
 真木清人

【参戦方法】
 完全なグリード化を果たした後


【人物背景】

 元は鴻上生体工学研究所の所長。ライドベンダーやバースといったメダルシステム開発の功労者。

 幼少期に両親を失い年の離れた姉である仁美によって育てられており、彼女にだけは心を開いていた。
 しかし自身の結婚により真木を疎ましく思う様になった仁美が自分を突き放した事から、仁美の眠る寝室に火を放って彼女を焼き殺し「人が醜く変わる前に、美しく優しいうちに完成させる」という歪んだ使命感に取り憑かれるようになった。

 鴻上とはメダルの持つ力に価値を見出した者同士として基本的に主従関係を保っていたが、自分とは正反対の方針を唱える鴻上の下では使命の達成を見出せず、最終的には財団と完全に決別してグリードと結託。
 その後カザリの能力によって自分自身に恐竜系コアを投入してその「器」となり、グリードの誰かを完全復活・暴走させた後、最後に自身がそのグリードを始末する事で世界を「無」に帰そうとする。
 後に暴走のリスクを承知で乗り込んできたアンクの不安定さを見込みメダルの器にしようと考え、弱体化したカザリから彼が独占していたコアを奪い取りアンクに集中させるが、アンクが映司達と過ごした日々を捨てきれないことに気づき、彼を見限る。
 本聖杯には、その直後の時間軸からの参戦となっている。



【能力・技能】

 様々な生物の欲望のエネルギーを集めたオーメダルを解析し、その力を応用した数々の兵器を実用化した天才科学者としての頭脳を持つ。
 更に融合した三枚の紫のコアメダルにより、恐竜グリードへの変身能力を得た。
 、紫の波動による周囲へのカウンター、紫色の光弾での遠距離攻撃、他のグリードに強制的にコアメダルを取り込ませるなど、異質で圧倒的な力を持っており、その戦闘力は並のサーヴァントにも遜色しないほど。

 また、神秘の塊であるコアメダルが魔力回路の代行を果たしているが、ビーストを維持できているのはスキルの恩恵によるものが大きく、ビーストが「無」である限りはこのマスター適正の有無など大した影響はない。
 仮に物体に過ぎないグリードでも、他の属性であれば元となった生物達の欲望のエネルギーを捕食されていただろうが、「無」属性の恐竜グリードである真木はビーストの捕食対象とならずに済んでいる。
 但し、何らかの形でビーストの妨害をした時には、マスターである真木も即座に排除対象と認識されるだろう。


【マスターとしての願い】
 世界に良き終末を


【方針】
 滅びを制御することなどできない。
 ただ、流れに身を任せるのみ。


369 : ◆Aq5Fflqogs :2016/02/07(日) 10:42:41 6J5fYpY20
以上で投下を完了します。


370 : ◆Aq5Fflqogs :2016/02/07(日) 11:01:18 6J5fYpY20
申し訳ありません、企画主様の>>238の発言を見落とししてしまっておりました……
拙作『美しき終焉』は破棄させて頂きます、スレ汚し大変失礼致しました。


371 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/07(日) 20:59:33 Q.j4nDzc0
大変お待たせしました。感想を投下します。

市原仁奈&キャスター
これまたキャスターの嘘を信じてしまったが為に不安な仁奈です。
キャスターの斗和子もマスターの不幸を楽しむ精神ですし
どうにか生き残るか、あるいは救いがあって欲しいとお願います。
投下ありがとうございました。

ジョルノ・ジョバァーナ&めぐみん
マスターのジョルノの存在が非常に頼もしいだけあってキャスターのめぐみんが
どれだけ頑張れるかが鍵となってきそうな主従です。
聖杯戦争を邪悪とするジョルノが対聖杯の光となるのでしょうか。
投下ありがとうございました。

高嶺清麿&ランサー
ガッシュと出会う前の清麿なので、他の主従と関わるのが難しいそうですね。
しかし、聖杯戦争を通して彼には成長して貰いたいです。
ランサーのクラウスも清麿と接する努力が実って欲しいところです。
投下ありがとうございました。

ソラ&バーサーカー
ファントムであるソラは戦闘力では普通のマスターと違って優位ですね。
バーサーカーのゼットンとの相性は良い方かもしれませんが
意思疎通が難しいのが問題でしょうか。
投下ありがとうございました。

ペガッサ星人&アーチャー
アーチャーは行動方針の割に真面目なところがあって、ペガッサさんを
導いてくれるところがあって中々良い主従ですね。ただ、ペガッサさんは
アーチャーに振りまわされるところがあるので、その辺りは不安を感じます。
投下ありがとうございました。

木原数多&キャスター
科学者コンビが(手段はともかく)聖杯戦争に挑む姿勢は面白いですね。
この調子で聖杯戦争を調べ上げ、全ての真実を知った時。
彼らがどのような行動を取るのか楽しみです。
投下ありがとうございました。

狩谷純&ライダー
ライダーのアマゾンは良きサーヴァントなだけあって、純の決断はつらいですね。
そんなアマゾンの友達精神が例のクソトカゲに通用するのか
個人的に気になっていたりします。純も無事聖杯を獲得できるのでしょうか。
投下ありがとうございました。

カチューシャ&アサシン
あの動物園を支配下におくとは、ハシビロコウさんも敵に回ってしまうのか……
序盤で動物たちを確保できたのは好調なスタートだと思うので、このまま
頑張って欲しいところですが、いかんせん主従関係は不穏です。
投下ありがとうございました。


372 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/07(日) 21:00:03 Q.j4nDzc0
O5-12&アーチャー
ある意味、父親コンビという訳ですね。
O5-12・アダムの子供たちは複雑な事情があり、さらには既にSCPたちがいるという
この状況で彼らは聖杯を獲得するべく行動するか、SCPをどうにかするか。どちらを選ぶのでしょうか。
投下ありがとうございました。

ランカ・リー&ライダー
新たな一歩を踏みだすところで聖杯戦争に巻き込まれたランカは、いきなり不幸ですね。
ライダーのシモンも彼女の力となって彼女を元の世界に帰す力となって欲しいです。
そして、ランカの力である歌は聖杯戦争に希望を与えられるのでしょうか。
投下ありがとうございました。

アースクエイク&アーチャー
死人であっても主君への忠義を貫く精神を持つアースクエイクはいいですね。
アーチャーのミラオルもマスターの想いに応えようとする良い主従です。
彼らがどのように聖杯戦争を歩んでいくのか気になります。
投下ありがとうございました。

サム・ウィンチェスター&タオイスト
タオイストは本当に召喚されてしまったことに憤慨しても仕方ありませんね……
マスターのサムを見極め、元に聖杯戦争から抗う決断をしたことはいい流れです。
このまま聖杯戦争の打破を頑張って欲しい主従です。
投下ありがとうございました。

マリア・ヴィスコンティ&ライダー
マスターのマリアは彼女らしさがあって良いですが、やはり日本の生活は似合わないですね。
そんな彼女に振りまわされるライダーも、不満を抱いている以上
いつ裏切り行為に走るか分かりませんし、どうにかうまくいって欲しい主従です。
投下ありがとうございました。

芝原海&アーチャー
マスターの海はなかなかの戦闘力を持っていて活躍が楽しみです。
海は今後、例の事件を解決をしようとするのでしょうか?
その場合、早速戦闘が起きかねないので不安と興味がありますね。
投下ありがとうございました。

イース&アーチャー
マスターのイースは聖杯を入手したいが、迷いのあるもどかしい感じですね。
アーチャーのトレインに影響されて、彼女らしさを現してくれることを期待します。
ただ、有名な占い師となると狙われやすいので、そこを気をつけて欲しいところです。
投下ありがとうございました。

謎のヒロインX&ライダー
お前のようなマスターが(ry
ライダーはなかなか強力なサーヴァントですし、マスターともうまくやっていけそうで何よりです。
それにしても謎のヒロイン、一体何者なんだ……?
投下ありがとうございました。

孤門一輝&キャスター
サーヴァントに乗っ取られたマスターの一輝はどうなってしまうのでしょう。
キャスターのダークザギをただ倒しただけでは一輝があんまりです。
情報改竄を得意とするダークザギも不気味で、今後の活躍がどのようなものか興味あります。
投下ありがとうございました。

地獄のフブキ&セイバー
フブキはアイドルという役割で相当目立っているので、もし狙われたら対処が大変そうですね。
セイバーともあまり気が合っているとはいえないですし
フブキ自身うまく立ちまわらないといけませんね。
投下ありがとうございました。

真木清人&ビースト
複数のサーヴァント相手に圧倒的な強さを誇る虚無のサーヴァントとは
まさに虚無聖杯らしいものですね。真木の目的とも似合っていますし
そう考えると噛み合った主従と言えます。
破棄されてしまいましたが、投下ありがとうございました。


373 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/07(日) 21:13:50 Q.j4nDzc0
皆様、候補作の投下お疲れ様です。
本企画のまとめwikiを作ったので報告します。

ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/


374 : ◆lb.YEGOV.. :2016/02/08(月) 01:33:55 nZCu/sSY0
お疲れさまです。投下します


375 : ネク&アサシン ◆lb.YEGOV.. :2016/02/08(月) 01:36:10 nZCu/sSY0

ここでの生活が悪かった訳じゃない。
見た目はそっくりな癖に、俺に死体集めを命じない母親。
製薬会社の社長の息子という相応の立ち位置。
学校にも行けて、サッカーもできて、友達だっている。
それでも物足りないって思っちまったのは、多分あの二人がいないからだ。

兄ちゃんとリンダ。
俺が成り代わろうとしたもの。
俺が手に入れようと思ったもの。
ひでえよな兄ちゃん。
あんたのせいで目が覚めちまった。
夢から覚めたらさ、それがどんなに幸せでも意味のないものになっちまう。
俺はあんたが羨ましいよ。
あんたならそもそも、聖杯戦争とかいう殺し合いに来る必要なんてないんだろう?
俺はさ、こんなのに参加でもしなきゃ夢は叶えれないってのに。
……やっぱり、あんただけズルいよ。
だから、そろそろ選手交替してもらうぜ。



すえた鉄錆のような臭いが鼻につく。
元の世界では嗅ぎなれていた血の臭いだ。
目の前では粒子になって消えていく女と、そいつの血を被ったまま立っている女。
立っている方が俺に呼び出されたアサシンのクラスのサーヴァント。
汚れ仕事をしてきた俺にはお似合いのクラスとでも聖杯は言いたいんだろうさ。
製薬会社の社長の息子って肩書きのせいか、すり寄ってくるどうでもいい女はいっぱいいた。
だからそいつを使ってこのアサシンとやらのスキルがどんなものなのか知りたかった俺は、上手いこと言いくるめて人気のないところに呼び出した女をこいつの餌食にした。
アサシンが被っていた血が次第に消えていく。
なにも凄い速さで蒸発していっている訳じゃない。
吸っているんだ、アサシンが肌から直に浴びた血液を。
その病的なぐらいに白い肌がみるみる内に艶を増していき、数秒後には血を被っていた痕跡なんてどこにもなくなっていた。
化け物。まさにそういう呼称が似合うサーヴァントだ。
危険生物揃いのネオケニアにだってこんなのはいないだろう。


376 : ネク&アサシン ◆lb.YEGOV.. :2016/02/08(月) 01:36:41 nZCu/sSY0

「あんたから話には聞いたが凄いもんだな」
「吸血では魔力まで補えないのが難点ね、魔力の潤沢なマスターだったらいらぬ心配だったのだけれど」

非難がましくこっちに目を向けてくるアサシンに対して肩をすくめておどけてやる。
なんでもサーヴァントを扱うには魔力とやらが必要で、しがない薬漬けの一般人でしかない俺ではアサシンが十全に戦うには不足しているらしい。
まあ、そんな人間を呼んだ聖杯側が悪い訳で、俺にこれっぽちも非はないので謝りはしない。

「あんたの言ってた魂喰いってやつで魔力を溜めなきゃいけないって事か」
「そうね、もしくは霊地にとどまってマスターの魔力を補充できればいいけれども」
「魔術師でもなんでもない俺じゃあ期待できないんだろ? わかってるって」

魂食い。NPCやら他のマスターやらを殺し、文字通り喰う事で自分の魔力の足しにするという恐ろしい技。
俺みたいなのがマスターだと魔力の供給はもっぱらそれ頼みになるらしい。
と、なると必然的に俺はこの街の住人をこいつに捧げなきゃならない。
加えて、併せて吸血をするとなると女性の方が都合がいいと、既にアサシンの口から聞いている。
ならば当分は警察の目をやり過ごしながらアサシンと一緒に若い女を殺して回るしかないって訳だ
――なんだ、ママに命じられなくたって結局やることは何一つ変わってないじゃないか。
なら今の立場になんてしないで、ネオケニアと同じ境遇で良かったって話だ。
なんだか笑えて来ちゃうぜ。

「何かおかしかったかしら」
「ん? ああ、いやね、結局こっちでもあっちでも、やることに変わりなんてなかったんだなぁって思っちまってさ。つい、ね」

アサシンが怪訝な表情を浮かべる。
そういや俺がやってきた事なんて、まだ話した事がなかったな。
俺もアサシンから詳しい身の上話なんて聞いてないからお互い様だけど。

「ま、当分はこの東京って場所で警察にバレないよう女をあんたに食わせていかなくちゃいけないんだろ?
そういう事しかやってこなかった人生だ、簡単に尻尾を掴まれるようなヘマはしないさ」
「そう」

急にアサシンが黙り込んじまった。
おいおい、なにか不味い事でも言っちまったか?
これから一緒に戦うっていうのに、いきなり仲がこじれるような事は勘弁して欲しいんだけどな。

「あなたのそれを、止めてくれる人はいなかったのかしら」
「はい?」

急に何を聞いてくるんだろうか。
止めてくれる人?笑える話だ。
つい吹き出す。
ほれ見ろ、現に声を出して笑っちまったじゃねえか。

「ハハ、笑わせてくれるじゃねえか。なあアサシン、もしも止めてくれる人がいたらだ、そもそも俺はこんなところになんて来てないぜ?」
「……ええ、そうね。……そうなのでしょうね」


377 : ネク&アサシン ◆lb.YEGOV.. :2016/02/08(月) 01:37:07 nZCu/sSY0

アサシンの様子がおかしい。
参ったぜ、こういう反応をするってことは間違いなくなにか思うところがあるって訳だ。
こいつの口ぶりからこいつ自身が察するところ止める側だったのか、止めてもらえなかった側なのか。
ま、さっきみたいに女を残酷に殺すサディストが止める側ってのもおかしな話だ。
おおかた後者、つまり俺と同じ側ってことなんだろうよ。
となるとこいつは、ママと俺のハイブリッド!
なんともまあとんでもない化け物がいたもんじゃないか。
どこの世界にも似たような思考や境遇の奴ってのは生まれるもんなんだな。
ま、気難しそうなこいつに対しそれで煽るつもりもないがね。
変に挑発して襲われるのも馬鹿らしい、それを防ぐために貴重な令呪を割くなんてのも間抜けな話さ。

「さあ、俺のつまんない身の上話なんてどうでもいいだろ? 別にそれが分かったところであんたに何かの足しがある訳じゃない。そろそろ帰ろうぜ、なあ?」

アサシンが無言でその姿をかき消す、霊体化ってやつらしい。
なんともまあ、なにからなにまでサーヴァントってやつは常識外れな存在だ。
こんなのをあと数人は相手にしなきゃならないとなると骨が折れる。
おまけにアサシンから聞いたクラスってやつの話だと、アサシンってのは真っ向勝負には向かない不意打ち専門のクラスだそうだ。
なら、極力俺たちがマスターだとバレないように動き、マスターを狙って仕留めていくのが定石って事になる。
なんともババを引いた感じは否めはしないが、俺のスタイルには合ってるサーヴァントともいえる。
勝ち抜くのは容易じゃないがそういう戦い方でいいっていうなら俺にだって十分目がある訳だ。

なあ、兄ちゃん。
そっちでどれだけ時間が経ったのかは知らないがあんたは元気かい?
バナナの皮でも踏んづけて気絶してやしないかい?
色々あって計画は変わっちまったが、俺の方はもう少しで選手交代の目処がつきそうだ。
だからさ、兄ちゃん。
俺が兄ちゃんに成り代わるまではせいぜい達者でいてくれよな。


378 : ネク&アサシン ◆lb.YEGOV.. :2016/02/08(月) 01:37:33 nZCu/sSY0
【クラス】
アサシン

【真名】
カーミラ@Fate/Grand order

【属性】
混沌・悪

【ステータス】
筋D 耐D 敏A 魔C 運D 宝C

【クラススキル】
気配遮断:D
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断は解ける。

【固有スキル】
吸血:C
血を浴びることによる体力吸収&回復。
思い込みに近いが、彼女の肌は確かに若返っていた。
ランクが上がるほど、吸収力が上昇する

拷問技術:A
卓越した拷問技術。
拷問器具を使ったダメージにプラス補正がかかる。
宝具『幻想の鉄処女』を始め、裁判においてアサシンが行ったと公表された、全ての拷問・残虐行為に対してこの効果は適応される。

【Wepon】
金属製の杖、鋲付きの鎖、鞭、ナイフを始め、彼女が拷問に使用したとされる器具一式
※鋼鉄の処女は彼女の宝具として昇華されたため除外

【宝具】
『幻想の鉄処女(ファントム・メイデン)』
ランク:C 種別:対人 レンジ:0〜1 最大捕捉数:1人
相手を鉄の処女と呼ばれる拷問器具に閉じ込める一定ターンダメージを与える。
絞り出した血はアサシンへと還元され、HPと魔力を回復させる。
この宝具の対象が女性であった場合、生前の逸話から威力と拘束解除の難易度が倍加する。
カーミラが使用したと言われる有名な拷問器具。
……であるが長年に渡る調査の結果、実在しないと考えられている。

【人物背景】

ーーだって、誰も言ってくれなかった!
誰もこれが間違いだなんて言ってくれなかった!
だから、私はこう成り果てたのに!
ああ、我が真の名は――エリザベート・バートリー!ーー

エリザベート・バートリーが成長し、完全なる怪物と成った存在。エリザベートの暗黒面を司る存在。
彼女が持っていた愛嬌はなく、ただただ残忍で血を追い求めた生涯を、その変名――カーミラという名で表している。

【聖杯に対する願い】
永遠の若さ

【行動方針】
少女の血を集め、力を蓄える。

【マスター】
ネク@リンダキューブ アゲイン

【マスターとしての願い】
兄貴と入れ代わり、兄貴の人生を自分のものにする。

【能力・技術】
薬漬けにされた事による痛覚の鈍化。
簡単な催眠暗示(薬物との併用で効果をあげる事も可能)。
殺人技術と隠蔽・隠密に長ける。

【人物背景】
リンダキューブ アゲインの主人公、ケンの生き別れの弟。出典は彼が悪役として暗躍するAルートより。
捨て子となりグリーン製薬の社長であるエリザベス・グリーンに拾われたネクは、エリザベスの宿願である永遠の若さの為に幼い頃から死体集めに従事させられ、次第に死体を探すよりも作る方が楽だと気付き、殺人行為に手を染める。
そんなある日、生き別れの兄の存在、そしてその兄が一般的な恵まれた人生を送ってきた事を知り、嫉妬に駆られたネクは兄と自分の人生を入れ換えることを画策する。

【方針】
正体を隠匿して東京各所で少女を遅いアサシンの強化と魔力の補充、他マスターの情報収集を行う。
アサシンの宝具の特性上、女性の主従を最後まで生き残らせるよう立ち回りたい


379 : ◆lb.YEGOV.. :2016/02/08(月) 01:39:12 nZCu/sSY0
以上で投下終了します


380 : ◆NIKUcB1AGw :2016/02/08(月) 22:54:58 040s69qg0
投下させていただきます


381 : ロナルド&キャスター ◆NIKUcB1AGw :2016/02/08(月) 22:55:31 040s69qg0
その夜、ロナルドは近所のコンビニで買ってきた夜食をほおばりながらパソコンに向かっていた。
彼の職業は小説家だ。吸血鬼を題材にした小説で、かなりのヒットを飛ばしている。
現在、彼は新作の執筆に取りかかっていた。だが、その進行具合は思わしくない。
締め切りに間に合わなければ、担当編集のフクマさんに何をされるかわからないにもかかわらず、だ。
ここのところ、ロナルドは妙な違和感にさいなまれていた。それが集中力をそぎ、原稿の進行を妨げているのだ。

まず、自分の家はこんなにも静かだったか?
小説家の家が静かなのは、理にかなっている。
だが、今まではこうではなかった気がするのだ。
誰かやかましくてうっとうしい、同居人がいたような……。

気になることはまだある。
部屋の片隅に資料として置かれているモデルガン、あれは本当に自分が買ったのか?
自分の書いている小説の主人公は、銃を使う。たしかに、資料があるに越したことはないだろう。
だが別に、自分の小説はミリタリー小説ではない。銃はあくまで、小道具の一つに過ぎないのだ。
資料として買うなら、もっと優先すべきものがあるのではないだろうか。
それにあのモデルガンは、持ってみるとけっこうな重量があった。
あれは、本物ではないのか?

そもそも、なんで自分は東京に住んでるんだ?

「そうだよ! 俺の住所って新横浜じゃねえか!」

それが、ロナルドが記憶を取り戻した瞬間であった。


382 : ロナルド&キャスター ◆NIKUcB1AGw :2016/02/08(月) 22:56:08 040s69qg0


◇ ◇ ◇


「……というわけだ」
「なるほどな……」

一時間後。ロナルドは自宅に召喚されたサーヴァントから、聖杯戦争に関する知識をあらかた教えられていた。
やけに時間がかかったのは、突如現れたサーヴァントをロナルドが不審者扱いし、なかなか話を聞かなかったからである。

彼のもとに召喚されたサーヴァントのクラスは、キャスターであった。
とはいっても、タンクトップに普通のズボンという彼の出で立ちは魔術師のイメージとはほど遠いものであった。
顔立ちは端正だが、それを踏まえてもそこら辺の雑踏に混じっていてまったく違和感がないような風貌だ。
しかし、吸血鬼ハンターであるロナルドは肌で感じていた。
目の前の男は、化け物であると。

「さて、知識を取得してもらったところで聞こう。我がマスター、ロナルドよ。
 聖杯に託す望みはあるか?」
「まあ俺もごく普通の人間だから、叶えたい願いくらいはあるさ。だが……」

キャスターからの問いかけに対し、ロナルドは一度言葉を切る。
そして大きく息を吸い、感情を込めてその続きを口にした。

「頼んでもいないのに、世界の壁越えてまで拉致してくるその根性が気に入らんわ!
 この聖杯戦争とかいうのを始めたやつは、絶対ぶん殴る! 願い叶えるとか二の次だ、この野郎!」

叫びながら、ロナルドはデスクに拳を振り下ろす。元来激情家である彼は、理不尽に巻き込まれた状況に怒りを抑えられなかったのだ。

「というか、なんで異世界にきてまでフクマさんに怯えなきゃならんのだ!」
「ああ、そっちがメインか」

こぼれ出た本音に、キャスターの表情がたまらず崩れる。

「まあ戦う理由がなんであれ、マスターに従うのがサーヴァントとしての本分だ。
 このキャスター、お前のために全力で戦うことを誓おう」
「ああ、頼むぜ!」

キャスターの口が紡ぐ忠誠の言葉に、ロナルドは親指を立てて応えた。

「ところでお前、キャスターってクラスの名前だよな? 本名はなんていうんだ?」
「ふむ、名前か。私は時期によっていろんな名前を使っていたのだが……。
 座に登録された名前は、鈴木だ」
「え……?」
「いや、鈴木」
「お前、ふざけんなよ! 英霊なんてたいそうな肩書き持つやつの名前が鈴木って!
 普通すぎるだろうが!」
「いいではないか、鈴木! 獅子河原とか熊ヶ崎とかいかにも強そうな名前より、平凡な名前の方がむしろインパクトあるだろ!」
「俺には共感できんわ!」

二人のしょうもない言い争いは、30分後にフクマさんから進歩確認の電話がかかってくるまで続いたのであった。


383 : ロナルド&キャスター ◆NIKUcB1AGw :2016/02/08(月) 22:56:44 040s69qg0

【クラス】キャスター
【真名】鈴木
【出典】幽遊白書
【属性】混沌・中庸

【パラメーター】筋力:C 耐久:D 敏捷:C 魔力:B 幸運:C 宝具:B

【クラススキル】
陣地作成:E
魔術師として自らに有利な陣地な陣地「工房」を作成可能。
キャスターは生前そういった逸話を持たないため、せいぜい部屋を自分好みに改造できる程度。

道具作成:A+
魔力を帯びた器具を作成可能。
「アイテム作りに関しては天才的」と称されたキャスターは、かなり強力な武具を作ることができる。

【保有スキル】
妖怪:B
魔界より来訪した、人ならざる生物。
個体によって様々な固有能力を持つ。
キャスターは無数の能力を習得したと豪語しているが、広く浅くであるため実戦レベルで使えるものはわずかしかない。

変化:E
文字通り「変身」する。
キャスターの場合は「怨爺」と呼称される老人の姿にのみ変身可能。
変身中は若干ステータスが低下する代わりに、低ランクの正体隠蔽能力を得る。

自己暗示:E
自身にかける暗示。精神攻撃に対する耐性を上げるスキル。
キャスターの場合は「非常に自分の世界に入りやすい」という程度であり、効果はさほど高くない。


384 : ロナルド&キャスター ◆NIKUcB1AGw :2016/02/08(月) 22:57:39 040s69qg0

【宝具】
『裏御伽チーム』
ランク:C(B) 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:―
生前のキャスターが率いていたチームのメンバーを、使い魔として召喚する宝具。
一度倒されたメンバーは、聖杯戦争が終わるまで再召喚は不可能。
また闇アイテムを装備していない状態で召喚されるため、その力を活かすには道具作成スキルでそれぞれのアイテムを作り直さなければならない。
なお死々若丸だけはその能力の高さからBランク宝具扱いであり、召喚による魔力の消費も他のメンバーより大きい。

・魔金太郎
筋力:C 耐久:E 敏捷:E 魔力:E 幸運:E
・黒桃太郎
筋力:D 耐久:C 敏捷:E 魔力:D 幸運:E
・裏浦島
筋力:E 耐久:E 敏捷:C 魔力:D 幸運:E
・死々若丸
筋力:C 耐久:D 敏捷:B 魔力:C 幸運:C

【weapon】
基本的には素手で戦う。

【人物背景】
暗黒武術会に出場した「裏御伽チーム」の大将。
かつて戸愚呂弟と戦ったが手も足も出ず、あまりの無様さに見逃されるという屈辱的な敗北を喫している。
そのリベンジのため、チームメイトを集め大会に出場した。
仲間の長所を活かす「闇アイテム」を作り出す武具職人としての腕は一流だったが、
戦闘力は井の中の蛙であり幻海に体術だけで一方的に叩きのめされ敗退する。
後に修行を積んで神に近い存在とされるS級妖怪にまで成長するが、
その時期の逸話がほとんどないためサーヴァントとしての能力にはあまり反映されていない。
幻海との対戦時は凶悪な言動もあったが、単に調子に乗っていただけであり根っこの性格は実直な好青年である。

【サーヴァントとしての願い】
華麗な戦いでマスターを助ける。

【基本戦術、方針、運用法】
ステータス的にはあまりパッとしないため、道具作成スキルと宝具の使い方が鍵となる。
闇アイテムで強化したチームメイトを戦わせ、自分はサポートに回るのが堅実な策であろう。
特に切り札である死々若丸の使い方は、重要になってくる。


385 : ロナルド&キャスター ◆NIKUcB1AGw :2016/02/08(月) 22:58:30 040s69qg0

【マスター】ロナルド
【出典】吸血鬼すぐ死ぬ

【マスターとしての願い】
自分をこんな理不尽なイベントに巻き込んだやつをぶん殴る。
聖杯はもらえるようならもらう。

【weapon】
拳銃と対吸血鬼弾。
ただしこの世界では不法所持なので、警察に見つかると捕まる。

【能力・技能】
対吸血鬼用の戦闘術。
また自伝小説をヒットさせているので、かなりの文才があると思われる。

【人物背景】
新横浜に拠点を置く、吸血鬼ハンター。(彼の世界では吸血鬼の存在は常識であり、吸血鬼ハンターも特殊ではあるが世間に認知された職業である)
自伝小説「ロナルド戦記」がベストセラーとなっており、世間の知名度は高い。
感情的でカッとなりやすいが、評判が落ちるのを恐れて感情を抑え込む世間慣れした面もある。
またもともとサービス精神旺盛である上、普段褒められ慣れていないのでおだてに弱い。
好きなものは巨乳。嫌いなものはセロリ。

【方針】
情報収集を優先し、戦闘はなるべく避ける。
あと、NPCでもフクマさんは怖いので小説も書く。


386 : ロナルド&キャスター ◆NIKUcB1AGw :2016/02/08(月) 22:59:00 040s69qg0
以上で投下終了です


387 : ◆XksB4AwhxU :2016/02/09(火) 00:48:28 Pa.rJqZY0
皆様投下お疲れ様です
私も投下します


388 : ◆XksB4AwhxU :2016/02/09(火) 00:49:48 Pa.rJqZY0


さあ、切符をしっかり持っておいで。
お前はもう夢の鉄道の中でなしに 
本当の世界の火やはげしい波の中を 
大股にまっすぐあるいて行かなければいけない。
天の川のなかでたった一つの 
ほんとうのその切符を 
決しておまえはなくしてはいけない


宮沢賢治『銀河鉄道の夜』





「兄貴?」


何の前触れも無く、“兄”は何かから逃げるように走り去って行った。

「お兄さん、どうしたんだろうね?」

詩織が不安そうに“弟”に尋ねた。“兄”の突然の行動に困惑している。

「さぁ………急用でも思い出したんじゃない?」
「今日のお兄さん、なんか変だったよ?独り言も多かったし」
「兄貴が“考察魔”なのはいつものことだろ」
「うーん……まぁ、そうかもねぇ」

詩織の疑問もやがて消失した。文字が書かれた砂浜が波に覆われ、元の平坦な地面へと戻る様に、NPCは定められた日常へと戻る。


「なあ……詩織、悪いけど先に帰っててくれないか?」


「俺もちょっと用事を思い出しちゃってさ」


389 : 安藤潤也&ライダー ◆XksB4AwhxU :2016/02/09(火) 00:51:31 Pa.rJqZY0



安藤潤也とそのサーヴァントがいるのは、東京の品川区にある某競馬場の観覧席だ。
普通、競馬場とは夕方には終了するのものだが、このシーズンではナイターが実施される為夜まで利用する事ができる。
レースはまだ始まっておらず、今は下見場で馬達が周回し、客が新聞片手にそれらを見定めている。

「しっかし、サーヴァントが未成年じゃなくて助かったよ。高校生は保護者同伴じゃなきゃ入れないからな」

実体化したサーヴァントを連れるという方法は、時代錯誤なその姿について不審に思われないかと多少不安ではあったものの、どうやらこの世界では都合よく“流される”らしい。

「こんなところに来てどーするんだ、マスター」
「どうするって、ここに来てやる事はひとつだろ?」
「……本当に競馬するだけなのかよ」

“ついさっき記憶を取り戻してサーヴァントを召喚した奴が真っ先にする事なのか”と、ライダーは自らのマスターの行動に半ば呆れている。

「潤也、だいたいお前さんはこの聖杯戦争をどう動くつもり……」

「なあライダー。俺と賭けをしよう」

「賭け?」
「簡単な賭けだよ。これから始まるレースでどちらの選んだ馬の方が速いか。それを競うのさ」
「なんだと?」
「俺が負けたらあんたの言う事を聞く。もし、あんたが負けたら俺の言う事を何でも聞いてくれ」
「おいおいおいおい、オレが何者かはさっき伝えたはずだよな」

ライダーのクラスの名の通り、彼には馬術の才がある。
その腕は、生前にアメリカで開催された総距離約6000kmにも及ぶ壮大なレースに優勝候補まで登り詰めるほどだ。(そんな彼のマスターが真っ先に競馬場へと向かったのは、これも何かの縁か)
レースで培った経験の量も含めれば、馬に関する事では素人の潤也とは“蝉と鯨”張りの差がついていると言えるだろう。
この賭けは潤也にとって明らかに不利である。

「分かってるよ」
「それでもやるのか?」
「それでもさ」

別段ライダーは主体的にこの聖杯戦争で何かをしたい訳では無かった。
だが、賭けを降りる理由もこれといって無かった。

「いいぜ。乗ってやるよ」


390 : 安藤潤也&ライダー ◆XksB4AwhxU :2016/02/09(火) 00:53:05 Pa.rJqZY0



「……で、タネは一体何なんだ」
「俺の実力だよ」
「嘘つけこの」

結果はまさかの潤也の勝利。
だが、正当な勝利とは言い難かった。

レースがスタートし、最終コーナーまではライダーの選んだ四番の馬がトップだった。
各馬々の歩幅、筋肉、呼吸を下見場で観察し、コンディションを緻密に計算した上で、最大の力を発揮出来ると予想した一頭だ。
しかし、数秒後に状況は一変する。
ゴールまでの直線に差し掛かった所で、突然、地震が発生した。
大した揺れでは無い。だが小さな揺れであったとしても、全力で地面を蹴り上げながら走る馬に与える影響は大きい。
それまで先頭だった四番の馬は突如減速。後続の馬もこれに煽られコースを逸れ、結果的に潤也の選んだ八番が一等を飾った。
余りにも理不尽過ぎる大番狂わせに、周りからは落胆の声が上がっている。
この八番は全く人気の無い馬だったらしく、予めライダーに五万円分の馬券を買わせていた潤也は、かなりの額を受け取る事になった。

「地震自体をお前さんが引き起こしたとはさすがに思えない。確実に八番が一位を取るとは限らんからな。とすると……“未来予知”か?」
「まあ大体合ってるよ」

潤也は白状する。

「俺は“十分の一確率なら確実に当てる”ことができる」

それが潤也の“能力”だった。
レースに参加していた馬は全部で“十頭”。
この能力を使えば、その中でどの馬が最終的に一位なのかを試合前に把握することが可能だ。

「あんたの目利きは間違いなく良いんだろうけど、“偶然”の事故なんてのはさすがに予想できないだろ」

潤也は『ライダーが選んだ馬が偶然敗北する事』、『弱い馬が偶然一等を取る事』を予め分かった上で、ライダーに賭けを持ち出したのだ。

「要するに、とんだ“出来レース”だったって訳か」
「約束は約束だよ。あんたには俺の方針に従ってもらう」

しかし約束は約束でもただの口約束。
そんなものでこの男を縛れるとは、潤也は勿論思っていない。

「俺のやり方は、あんたのやり方とは全然違うかもしれないけど、俺は俺のやり方で進ませて貰う」

これは、ライダーに対する“決意表明”と言う意味合いの方が大きい。


「俺はどんなことをしてでも聖杯を手に入れる」






――兄貴はあの日、唐突にこの世を去った。

――“どこにも行かない”と言ったのに。
――“賭けてもいい”と約束したのに。

――これが兄貴にとって“納得”したものだったとしても、俺はまだ“納得”出来ない。

――だから俺は、兄貴がいた何の変哲も無い日常を取り戻す為に闘う。


――例えそれが、兄貴の想いを踏み躙る行為だったとしても。


――兄貴も“この聖杯戦争のマスター”だったとしても。


391 : 安藤潤也&ライダー ◆XksB4AwhxU :2016/02/09(火) 00:55:39 Pa.rJqZY0




共に食事をし、共に学校へ登校し、下らない話をする。
何気ない日々だったけれど幸福に満ちていた。
このまま何も知らずに暮らしていたかったとさえ思うほどに。

だが、あの電気製品売り場の前での出来事によって、夢は覚めてしまった。
どこかへ走り去っていく兄。
その姿を見た潤也は、なぜかそのまま兄が消えてしまう錯覚に陥った。
まるで、あの時の様に………………あの時?

次の瞬間、全てを思い出した。

兄が犬養と対決してボロボロになって死んだこと。
詩織達を令嬢〈フロイライン〉から守らねばならないこと。

何故か競馬場へと足が進んでいた。
周りは見慣れないはずなのに見慣れている異様な世界。取り敢えず資金を集めなければならないと無意識に動いていた。

そんな中、突然現れた『謎の男』ライダー。
彼から聖杯戦争についての説明を受けた時は突拍子も無い話だと思ったものの、彼がただの法螺吹きには思えなかった。

そして、潤也はある事に“直感的”に気付いた。
兄もまた、聖杯戦争のマスターの一人である事に。

だが、潤也は聖杯の獲得を決意した。
いずれ兄と“対決”することになるのだとしても。

「もう少し金を集めたい所だけど、そろそろ帰らないとな。ライダー」

“兄貴が心配するからね”
そう言って潤也は笑ってみせた。

その瞳は深い深い黒に染まっている。

漆黒の瞳の奥に、ライダー『ジャイロ・ツェペリ』は、共に戦った“親友”の影を見た。


392 : 安藤潤也&ライダー ◆XksB4AwhxU :2016/02/09(火) 00:58:30 Pa.rJqZY0

【クラス】ライダー
【真名】ジャイロ・ツェペリ@ジョジョの奇妙な冒険
【属性】秩序・中庸

【ステータス】
筋力D 耐久C 敏捷C 魔力C 幸運D 宝具B(EX)

【クラス別スキル】
対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

騎乗:C
 騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、
野獣ランクの獣は乗りこなせない。

【固有スキル】
鉄球の回転:B
 肉体を動かさずに掌にある物体に「回転」を加える特殊技術。
 鉄球を回転させてその振動であらゆる事象を引き起こす。

心眼(真):B
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
 逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

【宝具】
『黄金長方形の回転(スティール・ボール・ラン)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:1人
 自然界に存在する黄金長方形を見ることで、鉄球の回転の真の力を引き出す。
 レンジ内に完全な自然界の黄金長方形(葉や生物、雪の結晶など)が存在する間、
「鉄球の回転」スキルのランクを2ランク上昇させる。

『無限螺旋を越えた技術(ボール・ブレイカ―)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1〜20 最大捕捉:1人
 黄金長方形による馬の走行に、黄金長方形の無限の回転を加える技術。
 そのエネルギーは人型のヴィジョンで形成され、このヴィジョンの攻撃は次元の壁さえも突き抜ける。
 事実上防ぐ術はないが、鉄球は完全なる真球でなければならず、少しでも損傷し「楕円球」などでは十二分に力を発揮できない。

『波を視る右目(スキャン)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
 『聖人の遺体』を有していない為、この宝具は失われている。

【Weapon】
無銘・鉄球
金属を加工することで作る事ができる。

ヴァルキリー
ライダーの愛馬。

【解説】
本名はユリウス・カエサル・ツェペリ。
ネアポリス王国出身の法務官であり、処刑人と医者を代々務めるツェペリ家が編み出した技術「鉄球の回転」を行使する。
たまたま密会の現場に勤めていただけで「国家叛逆罪」として裁かれた靴磨きの少年マルコの処刑にどうしても納得がいかず、スティール・ボール・ラン優勝による「国王の恩赦」によってマルコを救う為にレースに参加した。
しかし、第7ステージでの大統領との対決中、一手の差により死亡する。

【サーヴァントの願い】
特になし





【マスター】
安藤潤也@魔王 JUVENILE REMIX

【マスターとしての願い】
兄貴のいた頃の日常を取り戻す。

【能力・技能】
1/10=1
 十分の一までの確率なら、正確に当てることが出来る。
 これを利用して潤也は競馬で大金を稼いだ。

【人物背景】
兄の死の真相について調べ、犬養と対決することになる。
その行動は次第に狂気を帯びていき、兄の想いを継ぐことと周囲の人々を守るためなら手段を選ばない「魔王」とも呼べる行動を起こしていく。

高校2年生(休学中)であるが、東京では高校1年生として生活している。

【方針】
どんなことでもやる。例え“大切なもの”を利用してでも。



【補足】
2日目夜に品川区で小規模の揺れが発生しました。
もしかするとサーヴァントの影響によるものかもしれません。


393 : 安藤潤也&ライダー ◆XksB4AwhxU :2016/02/09(火) 00:59:38 Pa.rJqZY0
以上で投下を終了します


394 : ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/09(火) 18:13:17 0wpmYX6.0
皆様投下乙です。
投下します。


395 : 死神の円舞曲 ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/09(火) 18:14:41 0wpmYX6.0


「ひッ…!」


深夜の廃倉庫に、足音が静かに響く。
男は腰を抜かしながら、必死に逃げていた。
かつ、かつ、かつ、かつ、『死神』が近付いてくる。
罪人への鎮魂歌を奏でにやってくる。


「く、来るな、畜生ッ!やめろ!」


恐怖に震えた男は、『奇妙な紋様』が浮き出た右手を必死に振るう。
尻餅を突き、後ずさりをしながら、男は戦く。
かつ、かつ、かつ、かつ、『死神』が迫り来る。
死を運ぶ者が鎌を携えてやってくる。


「くそッ…!アサシン!!来い!!アサシンッ!!!」


男は最後の頼りの綱に賭ける。
己の従者―――サーヴァント『アサシン』。
これまで男はアサシンを使い、数々の犯行を繰り返してきた。
欲望の赴くままに他者を殺し、犯してきた。
アサシンの力があったからこそ、ここまで警察にも捕まらずに犯行を続けられたのだ。
男は令呪に念じる。アサシンよ、今すぐ戻れ―――と。



「―――マスター。こっちはもう終わったわよぉ?」



しかし、アサシンは戻ってこない。
代わりに耳に入ったのは、妖艶な少女の声。
迫り来る『死神』の傍に降り立つ、もう一人の『死神』。

不敵な笑みを浮かべるゴシック風の少女は返り血に染まっていた。
右手に携えられているのは鮮血で染まった大柄な斧槍。
そして、左手に握られていたのは『生首』。
それを目の当たりにし、男は愕然とする。絶望する。

それはアサシンの生首だった。
大量の血に染まり、苦悶の表情で逝ったアサシンの成れの果てだった。

直後に生首は魔力の粒子へと変わり、砂の様に霧散していく。
男の頼りの綱は、失われた。
何もかも、終わったのだ。



かつ、かつ、かつ、かつ、『死神』がやってくる。


かつ、かつ、かつ、かつ、『死神』が足音を奏でる。


死の円舞曲(ワルツ)を奏でる。



絶望する男の首に、『死神』の手が掛けられる。
『死神』の腕に、異様な膂力が迸る。


ごきり、と。
男の首がへし折られた。






396 : 死神の円舞曲 ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/09(火) 18:15:26 0wpmYX6.0


ある快晴の日。
駅にて、老人が立ち尽くしていた。
老人が見つめているのはタッチパネル式の切符の券売機だ。
使い方が解らないのか、睨む様にそれを見つめている。
どう使うのか。
何を押せばいいのか。
どうすればいいのか。
慣れぬモノを前にし、老人は立ち尽くしたまま考える。

ゆっくり。
ゆっくり。
ゆっくり。

その動きは鈍く、誰かを苛立たせるには十分だろう。
その後、よろよろと覚束無い動きで財布を取り出す。
ゆったりと千円札を投入する。
ようやく券の購入へと移行したものの、老人の後ろには数人の列が並んでいる。
手際の悪い老人への苛立ちを少しずつ募らせていた。
その時だった。


「――――おい」


一人の男が、老人の横へと現れた。
男は老人に何か小声で話し掛けていた。
その内容は誰にも聞き取れない。
恐らく老人にのみ聞こえるように話しているのだろう。
そして間もなく、男は老人に怒鳴りつけた。
動きの鈍い老人を罵倒し、怒りを吐き散らしていた。
並んでいた数人の客は表情を顰めた。
老人への苛立ちなど忘れ、怒鳴り散らす男への不快感が込み上がったのだ。


怒声が響き渡ってから、僅かな時間の後。
老人はようやく券を購入し、そそくさと改札を通っていった。
男もまた、ふらりとその場を去っていった。






397 : 死神の円舞曲 ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/09(火) 18:16:07 0wpmYX6.0


《ねーえ、マスタァー?》


駅前を歩く男に、霊体化した少女が念話で語りかける。
ランサーのサーヴァント――――ロゥリィ・マーキュリー。
死と断罪を司る神・エムロイの使徒。
先程老人に怒鳴り散らした男「大藪」の従者だった。


《さっき、わざと怒ったんでしょう?》


飄々とした態度でランサーは大藪に問いかける。
ランサーは霊体化した状態で、マスターが老人と小声で交わした会話を聞いていたのだ。

「券売機の使い方に手こずっているのか」。
「なら俺がこれから演技で怒る」。
「そうすれば周りの人間の不快感は俺に向く」。

大藪は老人にそう語っていた。
列に並ぶ者達を苛立たせていた老人をわざと怒鳴り、負の感情を敢えて自分に向けさせる。
そんな捻くれた人助けを大藪は行っていたのだ。

ランサーは思う。
この男はいつもこんな感じだ、と。
マスターである大藪は聖杯戦争に消極的だ。
しかし、こと人助けに関しては極めて積極的なのだ。
以前、連続殺人犯であるマスターとアサシンの情報を掻き集めて殺しに向かったこともある。
彼らを殺しに行った理由も「犯行を繰り返して街を脅かしているから」というものだった。
大藪は聖杯戦争の参加者としてではなく、一種の人助けの為に他の参加者を殺害したのだ。
ロゥリィはそんな大藪を不思議に思っていた。


《何の為なのかしらぁ?》
《『誰かの役に立ちたい病』》


大藪はぽつりとそう呟く。


《俺のマネージャーが、以前俺のことをそう呼んでいた》


398 : 死神の円舞曲 ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/09(火) 18:16:39 0wpmYX6.0

誰かの役に立ちたい病―――それが大藪を動かしているものだった。
彼は己が善人ではないと自覚している。
にも関わらず、彼は人助けを繰り返す。
元いた世界で大藪をサポートしていたマネージャー曰く、そういった類いの病だというのだ。
彼は人の役に立たずにはいられないのだ。
故に彼は他者を助ける。誰かの役に立とうとする。


その為には、殺し屋――――『首折り男』として動くすることも厭わない。


ふぅん、と興味あり気なランサーの相槌を流し、大藪は懐から新聞紙を取り出す。
『東京都江東区―――で警察関係者を含む52名が殺害』
『容疑者と見られる20代後半の男性は以前逃亡中』
新聞の一面を飾るのは、凄惨な殺人事件。
およそ日本では考えられない程の猟奇的な犯罪だ。

容疑者と見られるのは20代後半と見られる刺繍の男。
彼は多くの犯行に関わり、警察関係者をも手に掛けているのだという。

大藪は記事を睨み、決意を固める。
彼は、誰かの役に立つことを望む。
その為に他者を殺すことも厭わない。
故に大藪/首折り男は標的を定める。


街を脅かす『刺繍の男』を炙り出し、殺す。


あの『帽子卿』を狙った時と同じ様に。
彼は残忍な殺人鬼を追うことを決意したのだ。
大藪は聖杯などに興味は無い。
ロゥリィの話によれば、この街は全てが紛い物だ。
それでも街には人が生きているし、現実と何ら変わらない日常が存在している。
故に彼は普段と変わらずに生きる。
首折り男として、誰かの役に立ちたい人間として動くのだ。


くしゃり、と紙が潰れる。
異様なまでの握力が新聞紙を潰したのだ。
その瞳には、微かな殺意が籠められていた。


399 : 死神の円舞曲 ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/09(火) 18:17:58 0wpmYX6.0

【クラス】
ランサー

【真名】
ロゥリィ・マーキュリー@GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり

【ステータス】
筋力B+ 耐久C 敏捷A 魔力B 幸運C 宝具B

【属性】
秩序・中庸

【クラス別スキル】
対魔力:A
Aランク以下の魔術を完全に無効化する。
事実上、現代の魔術師では傷をつけることは出来ない。
亜神としての強い神秘を持つロゥリィは強力な対魔力を備えている。

【保有スキル】
神性:A
ヒトの肉体のまま神の力を得た「亜神」。
神の使いとしての信託を受けた彼女の神性は最高ランクとなっている。
亜神は最終的に正式な神格へと至るが、ロゥリィはそれ以前の亜神としての姿で召喚されている。

不死:A
亜神としての能力。
如何なる傷を負っても決して死なず、僅かな時間で肉体の治癒・再生を行える。
ただし再生時には受けたダメージ量に比例した魔力消費を必要とする。

直感:B
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。
また、視覚・聴覚への妨害を半減させる効果を持つ。

【宝具】
「殲華に咲く、戦神の眷姫(エムロイ・アポストル)」
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
神の眷属としての特性が逸話として膨張し、宝具へと至ったもの。
強烈な『死』や『血』の臭いを放つ戦場において、全パラメーターと攻撃判定にプラス補正がかかる。
殺戮によって多くの死者が発生している、熾烈な闘争が勃発しているといった状況において発動する。
状況が苛烈であればあるほど補正率がより上昇し、ロゥリィの能力が強化される。
ロゥリィはこの宝具の発動条件である『臭い』を感知することが可能であり、感知した際には性的な快楽にも似た興奮に駆られる。
血の興奮とも呼ばれるこの昂りは戦うことでしか発散できない。

「断罪の殲斧槍(ブラッドエッジ・アクス)」
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:2~4 最大捕捉:5
神の使徒たるロゥリィが振るう斧槍(ハルバード)。
単純な刃物としての切れ味や重量は凄まじく、敵を叩き斬ることを得意とする。
また数々の罪人を裁いてきた武器であるため、属性に『混沌』『悪』が含まれる者には追加ダメージを与える。

【Weapon】
「断罪の殲斧槍(ブラッドエッジ・アクス)」

【人物背景】
特地における死と断罪を司る神「エムロイ」の使徒。
腐敗した神官や盗賊の断罪を行っており、「死神」の異名で恐れられている。
神に選ばれたことで亜神と化しており、外見は13歳前後だが実年齢は900歳を越える。
のらりくらりとした妖艶な少女だが、自分の仕事や信条には非情なまでに忠実。
飄々とした態度とは裏腹に仲間思いな一面も持つ。

【サーヴァントとしての願い】
特になし。
ちょっとした退屈凌ぎのつもりで召喚に応じた。

【方針】
大藪に付き合う。
闘争も満喫したい。


400 : 死神の円舞曲 ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/09(火) 18:18:22 0wpmYX6.0

【マスター】
大藪@Waltz

【マスターとしての願い】
人助けをする。

【weapon】
素手

【能力・技能】
人の首をへし折る程の凄まじい腕力。
それだけが彼の武器である。

【人物背景】
「首折り男」と呼ばれる殺し屋。
標的の首を素手でへし折る殺人方法からその異名が付けられた。
一流の殺し屋だがマネージャー曰く「誰かの役に立ちたい病」らしく、金にならない人助けをすることがある。

【方針】
連続殺人鬼である「刺繍の男」を追う。


401 : 名無しさん :2016/02/09(火) 18:18:39 0wpmYX6.0
投下終了です。


402 : ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/10(水) 04:27:55 gnc4M..c0
投下します


403 : カナエ=フォン・ロゼヴァルト ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/10(水) 04:28:48 gnc4M..c0
 
 東京都港区白金台。
 バブル景気により高級住宅街となったこの地は今も富豪たちの住まう地として知られている。
 その中のとある邸宅。家宅の大きさに反して住んでいるのはマスター一人だった。
 ドイツから留学してきた富豪の末っ子というロールを与えられた者は既に記憶を取り戻し、サーヴァントを召喚していた。
 その血塗られた手にふさわしいサーヴァントを。


       *       *       *


 書斎の机に現界してルーマニア史を読んでいた槍のサーヴァントの前に札束が積まれる。一束百万だとすれば千五百万もの大金が積まれたことになる。
 しかし、サーヴァントは綺麗な机に汚物が積まれたとでもいうように眉を顰め、嫌悪……いや殺意の眼差しをマスターへ向ける。

「なんだマスター? 最初の主従契約以降、一度も声を掛けないばかりかこんな紙切れを積んで、オレを苛つかせるのが趣味か?」
「料金だ。お前の力が欲しい」

 言った瞬間、地面から目にも止まらぬ速さで槍が伸び、机を突き割って顎先で止まる。伸びた槍の穂先には血の玉ができていた。

「なんたる無為! なんたる浅ましさよ!
 失望したぞ我がマスター、カナエ=フォン・ロゼヴァルト!
 サーヴァントとは呼んだマスターに尽くすものである。
 それに支払う? それで動かす? なんたる愚かしさと欲深さよ!」

 怒り任せに立ち上がり、その結果ランサーが座っていた椅子が後方の壁に激突して砕けた。

「ましてやこのオレを!
 この竜の息子ヴラドを!
 事もあろうか金で動かそうとするなど…………串刺しにされる覚悟はあろうな?」

 鬼気と殺意を向けられる。
 スキル『無辜の怪物』により本物の怪物と化しているヴラドの殺気は呪詛すら帯びている。
 本と絨毯は腐り、机の残骸も朽ちて砕け、マスター自身も雪原に放られたが如く冷気を感じているだろう。
 生気を吸う吸血鬼。後世で創作された彼の逸話が本物となって顕れている。
 だが、それでもマスターの態度は変わらない。泰然と構えたままサーヴァントに立ち向かう。

「勘違いをするな」

 声にも変調は無い。魔術の行使もなく、痩せ我慢の類でもない。真実、吸血鬼の怒りにも揺るがぬ鋼の意思である。

「これは聖杯戦争後の支度金だ。貴様が聖杯(まえきん)で受肉して習さまに仕えるためのな」
「この小竜公たるオレを従える? 何をもってだ?」

 サーヴァントの怒りは納まらない。
 当然だ。彼は財貨の光で爛れた者共を粛清し、清貧の信仰に殉じた者。
 そんな彼を金で動かそうという不遜な輩、一瞬たりとも生かしておける道理はない。

「金か! 権力か! はたまた力か!
 オレがそんなものに屈する不心得者であれば、そも生前に貴族共など串刺しにしたりはせん!」
「忠義だ」
「何?」
「忠義によって貴様は習さまに使えることになる」
「…………」
「習さまは素晴らしい御方だ、お心は広く私のような下々の者にも慈悲を注ぎ、そして習さまの魅力は小動物にすら伝わってしまう。
 如何なる者もあの方を知ってしまえば膝を屈し全てを捧げたくなるだろう。
 例えそれが貴様のような血に飢えたサーヴァントであっても……どうした?」


404 : カナエ=フォン・ロゼヴァルト&ランサー ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/10(水) 04:29:21 gnc4M..c0
 
 殺気と憤怒は霧散し、狂喜と高揚がそこにあった。
 数秒前の剣呑な空気はどこへやら、そこにいたのは敬虔なる使徒、もしくは厳格な武人だった。

「…………美しい」
「何?」

 今度はカナエが訝る番だった。
 習さまを讃えていたはずなのに何故自分が美しいといわれるのだ?

「我がマスター。貴女の信仰は気高く、美しく、そして痛々しい。まるで赤い薔薇の如く。
 その虚飾の無い裸の献身、一切を全て捧げ尽しても飽き足らぬという獰猛な忠誠。
 一人の王として、一人の男としてその■に感銘を受けずにはいられない

 ────故に■に狂え。その姿は、美しい。

 その■が大輪を咲かせるのが見られる未来ならば、よかろう。
 我が槍を預けるのもやぶさかではない」

 ランサーがまくし立てるにつれて魔力が周囲へと放出される。
 噎せ返るほどの血臭が館中に満ち、館が怪物の拷問魔城(ドラクリヤ)へと変貌させていく。

「我らの真の契約は今! 此処になった!
 この世に真の■を証明してくれるのであれば、御心のままに従おう!!
 まずは、他のマスターの皆殺しである!!!」

 何を言っているのか皆目さっぱり理解できないが、やる気になったのならばいいだろう。
 そういって彼の言っていることを流した。彼の言う■が何を指すのか理解せずに。


405 : カナエ=フォン・ロゼヴァルト&ランサー ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/10(水) 04:29:43 gnc4M..c0

【サーヴァント】
【クラス】
ランサー@FATE/EXTRA

【真名】
ヴラド三世

【属性】
秩序・善

【パラメーター】
筋力:A 耐久:A 敏捷:E 魔力:A 幸運:D 宝具:C

【クラススキル】
対魔力:C
 第二節以下の詠唱による魔術行使を無効化する。
 大魔術、儀礼咒法などの大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】
信仰の加護:A+++
 一つの宗教に殉じた者のみが持つスキル。
 加護とは言っても最高神からの恩恵ではなく、信仰による己の心身を絶対的に変えることのみ。
 ちなみに高すぎると人格に異常をきたす。

戦闘続行:A
 致命傷を受けない限り戦闘から離脱できるスキル。
 ヴラド三世の場合は、敗戦しても自陣に戻るスキルと言った方がよい。

無辜の怪物:A
 生前の行い、イメージによって過去や在り方を捻じ曲げられた怪物が持つスキル。
 能力や姿が変貌する。ヴラド三世の場合は魔力ステータスが上昇し、生贄の呪詛(生気吸収)や浮遊能力の獲得している。
 ちなみにこのスキルは解除できない。

【宝具】
『串刺城塞』(カズィクル・ベイ)
 ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:0〜50 最大捕捉:三百人
 地面から出現する無数の槍で相手を串刺しにする宝具。
 相手が犯してきた不義・堕落の罪(特に『逃走』『暴力』『不道徳』)が多いほど、威力が増える。
 また攻撃対象になった者はもれなく呪われる。

【weapon】
魔槍

【人物背景】
国家の腐敗を正すために貴族すらも串刺しの刑に処し、外敵を打ち破るために敵兵を二万人串刺しにした逸話を持つ英霊。
一見して狂信者、バーサーカーと思われがちだが、優れた戦術感と厳格さを持ち、道徳を重んじる武人である。
しかし、その厳格な性格が当時の領主たちを嫌悪させ、キリスト世界を救ったにも関わらず謀殺されてしまう。
サーヴァントとして現界した彼には自らの非業に怒り、神への愛より欲に走った人に嘆く。
月の聖杯では愛する故に拒食し、貪りたくても貪りたくない悲哀の者に、真実の愛を持つ者に出会うことができた。
 さて今回は────

【サーヴァントとしての願い】
主への愛を、真実の愛の存在を知る。


406 : カナエ=フォン・ロゼヴァルト&ランサー ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/10(水) 04:29:59 gnc4M..c0

【マスター】
カナエ=フォン・ロゼヴァルト

【マスターとしての願い】
習様の元へ!!

【weapon】
赫子:
 血液中にあるRC細胞と呼ばれる細胞を感情と共に皮膚から突き破らせ、硬化と軟化することで武器として使う喰種の武装。
 四種類あり、カナエの場合はは腰のあたりから出てくる鱗状の『鱗赫』と呼ばれるもの。

【能力・技能】
鱗赫:
 前述の赫子を振るって戦う。
 特徴は再生力の高さ、攻撃力の高さ、そして脆さ。

喰種:
 喰種は人間の4〜7倍の身体能力を発揮する。
 子どもでも大人をバラバラにすることは可能。
 ちなみにカナエはAレートの喰種をボコボコにするレベルの強さ。喰種の中でも非常に優れている存在である。
 また人を捕食し己の糧にする特性上、消化され切っていないの魔力回路を一部無意識的に利用することがある。

【人物背景】
 東京喰種:reより。クインクス班襲撃前から。
 喰種の一族『月山家』に使える使用人。ドイツのロゼヴァルト家の子であり、喰種捜査官達によって滅ぼされた後に日本の月山家に辿り着く。
 従妹である月山習のために尽くす。

【方針】
 聖杯戦争など小動物共の小競り合いなどどうでも良いが、サーヴァントの力は習様の役に立つかもしれない。


407 : カナエ=フォン・ロゼヴァルト&ランサー ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/10(水) 04:30:12 gnc4M..c0
投下終了します


408 : ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/10(水) 17:52:20 7PHyofq20
投下します


409 : 藤田茂&ライダー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/10(水) 17:52:56 7PHyofq20


雨が、降り注いでいた。


時刻は0時を回っていた。
街には雨が降り注ぎ、湿った匂いが漂う。
大衆は家屋で静まり返り、雨音のみが響き渡る。
ざあざあと雨粒の音が絶え間無く反響を繰り返している。
静まる街。響く雨音。世界は、騒々しい静寂に包まれていた。

傘に雨粒が弾かれる音が男の耳に入り続ける。
雨に打たれる夜道を、傘を差した壮年の男が歩いていたのだ。
警察官の制服に身を包んだ男はやつれた表情を浮かべる。
結局、今日も大した『収穫』は無しか。
警官―――藤田 茂はそう心中でごちり、とぼとぼと夜道を歩き続ける。


《今日も一人で見回りか、フジタ?》
《ああ…色々と気になっててな》


藤田の頭の中で声が響き渡る。
それは数日前に藤田の下に現れた『従者』の声だ。
彼は聖杯戦争の参加者として、藤田の元に参上したのだ。
従者は己を『ライダーのサーヴァント』と名乗った。


《例の『殺人鬼』か》


ライダーの念話に対し、藤田は無言で頷く。
藤田は東京都江東区での大量殺人事件の容疑者とされる『刺繍の男』について調査していたのだ。
正義感が強く厄介事に首を突っ込みがちな性分の藤田は独断で捜査を繰り返していた。
勤務時間外にも周辺での捜査を行い、情報や証拠の収集に当たっていたのだ。
この街に潜む殺人鬼を捕らえる為に、彼は警察官として奮戦していた。
ライダーを召還する以前、NPCとしてロールを行っていた頃から藤田は殺人鬼を追い続けてきた。
記憶を失っていた時期から彼は正義感に突き動かされていたのだ。


しかし、収穫は一向に得られず。
今日もこうして徒労に終わったのだ。


410 : 藤田茂&ライダー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/10(水) 17:53:42 7PHyofq20

はぁ、と溜め息を吐きながら藤田は雨雲の空を見上げる。
殺人鬼の尻尾は一向に掴めない。
証拠は愚か、有力な情報さえも得られていない。
結局、一人の力では限界があるのかと藤田は考える。

同僚や部下に協力を仰ぐか―――否、無理だろう。
自分は署内でも浮いた立場の人間なのだから。
刑事ドラマを気取って厄介事に首を突っ込み、時代遅れな正義感を振り翳す老いぼれ。
それが自分/藤田茂の立ち位置だった。


《フジタ…焦る気持ちは解るが、余り急き過ぎるな。
 無理をし過ぎるとお前の心身への負担にもなる》
《…あいよ。解ってるさ》


自身を労る様なライダーの言葉に、藤田は渋々とした態度でそう答える。
無理をし過ぎれば身体にも心にも毒になるだろう。
そんなことは、藤田自身が解っていた。
しかし、彼自身にもどうすることも出来なかった。
これが自分の性分であり、自分には警官としての仕事しか残っていないのだから。



「独りぼっちになっちまった日にも、こんな雨が降ってたよなあ」



ぽつりと、雨音に混じるように藤田が呟く。
妻と娘から縁を切られたあの日と同じ様な雨だ。
どこか物悲しく、寂しく、酷く寒気がする様な。
そんな雨はまるで涙の様に降り注ぐ。

ライダーから事情は全て聞いている。
自分は聖杯戦争とやらに巻き込まれてしまったということ。
聖杯戦争には数十組ものマスターとサーヴァントが参加し、互いに殺し合う儀式だということ。
勝ち残った果てには聖杯という奇跡の願望器が得られるということ。
聖杯があればあらゆる願いが叶うということ。
ライダーは包み隠さず、全てを語ってくれた。


(仮にもし、聖杯ってえのが手に入って…本当に何でも願いが叶うなら…)


あらゆる願いを叶える万能の願望器。
全ての祈りに応える魔法の如し道具。
そんなものが本当に手に入ったとすれば。
本当に何でも願いが叶うとしたら。


(あいつらともまた、やり直せるのかね)


迷惑を掛け続け、そして縁を切られた妻や娘と。
また、やり直せるのではないのだろうか。


411 : 藤田茂&ライダー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/10(水) 17:54:37 7PHyofq20

(……出来るかってんだ、そんなこと)


そんな思考を振り払い、藤田は後ろ髪を掻きむしる。
何を馬鹿なことを考えているんだ、と自分の思考に心中で悪態を付く。
妻子とやり直す。その為に他の参加者を皆殺しにする?
そんなことが出来る訳が無い。
自分は警察官だ。正義の側に立つ人間だ。
私欲の為に殺人を犯すなど、あってはならない。

―――そもそも、妻子に逃げられたのも全部自分のせいじゃないか。
自分が仕事にかまけて、熱心に働き続けて、それでこうなったんじゃないか。
警官としての正義を全うすることが全てだと思っていた。
厄介事であろうと何だろうと、そこに事件があれば駆け付けるのが警察官だと思っていた。
だが、そのせいで自分は妻や娘を蔑ろにし、迷惑を掛け続けた。
職場でも「無能な理想主義者」として白い目で見られ、次第に孤立していった。
終いには、妻子から縁を切られた。
全部自分のせいだっていうのに、他の連中を皆殺しにして綺麗さっぱり無かったことにするのか?
そんなもの、余りにも都合が良すぎる。
出来る訳が無い。やっていい筈が無い。

全部自分のせいだということは解っている。
こんな性分だからこそ空回りしてしまうということも理解している。
だというのに、またこうして厄介事に首を突っ込もうとしている。
自分の胸の内の正義感に火が付き、事件解決の為に独りぼっちでこうして駆け回っている。
この街も紛い物で、守る意味なんか無いのに。
結局自分は、どこまで行っても馬鹿な男だ。


「馬鹿は死んでも治んねえ…たぁ、よく言ったもんだよな……やんなっちまうよなぁ……」


警察官、藤田茂。
彼は正義に燃える巡査部長だった。
職場では孤立し、妻子からも離縁され。
気が付けば、彼の居場所はこの世の何処にも無くなっていた。
男は、『帰る場所』を見出せなかった。






412 : 藤田茂&ライダー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/10(水) 17:55:25 7PHyofq20


藤田の背中を見つめ、霊体化したライダーはやるせない感情を抱く。
彼のもとに召還されてから数日は経過している。
そんな日々の中で、ライダーは藤田茂という人間を見つめてきた。

藤田茂は、正義に厚く。
藤田茂は、善良で。
藤田茂は、どうしようもなく孤独だった。

彼は警察官として余りにも真っ直ぐだった。
事件の匂いがあれば進んで首を突っ込もうとした。
お人好しで正義感の強い性分に突き動かされていた。
それ故に、彼は孤立していた。
過去の失態と、時代遅れな正義感。
それらが藤田と言う警察官の評価を落としていた。
曰く、彼は過去にその性格が災いして犯人を取り逃がしたことがあったという。


ライダーのサーヴァント、マウンテン・ティムは藤田を放ってはおけなかった。
正義漢でありながら決して報われない、一人の警察官を哀れんでいた。


マウンテン・ティムは既に生前への悔いを残していない。
彼はルーシー・スティールに想いを伝えられた。
叶わぬ愛と知っていても、その感情を告げられただけでも良かった。
ルーシーという『帰る意味』を見出し、最後まで彼女の為に戦うことが出来た。
後の事はジャイロ・ツェペリとジョニィ・ジョースターが全てを受け継いでくれた。
その結果、ルーシーは最後まで命を落とす事無く生還した―――と、『座』において知ることが出来た。
故に彼の心に後悔は無い。帰る場所を見出し、己の役割を全うしたのだから。

だが、藤田はどうだ。
彼はその性格が裏目に出て妻と子に逃げられてしまった、と言っていた。
以前にそのことを藤田は愚痴るに零し、その後はぐらかしていた。
しかし、やはり聞いてしまった以上は気にしてしまうのだ。
そして藤田は職場においても孤立し、理解者さえ存在しないという。
彼は帰る場所を見出せず、孤独な旅路を進んでいた。


マウンテン・ティムは藤田茂という男を救いたかった。
彼の帰るべき場所を共に探してやりたかった。
だが、今のティムにはどうしようも出来ない。
空虚と孤独を抱える男をどうすれば救えるのか。
どうすれば聖杯という手段に頼らず、道を見出せるのか。
ティムにはまだ解らなかった。


雨の夜道を歩く藤田の背中は、余りにも寂しげに映った。


413 : 藤田茂&ライダー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/10(水) 17:55:55 7PHyofq20

【クラス】
ライダー

【真名】
マウンテン・ティム@ジョジョの奇妙な冒険 第7部「スティール・ボール・ラン」

【ステータス】
筋力D 耐久D 敏捷C 魔力E 幸運D 宝具C

【属性】
秩序・善

【クラス別スキル】
対魔力:E
魔力に対する抵抗力。
無効化はせず、ダメージ数値を多少軽減する。

騎乗:C+
乗り物を乗りこなす能力。
乗馬において卓越した技能を発揮する。
その他にも現代の一般的な乗り物を一通り扱える。

【保有スキル】
伝説の牧童:A
カウボーイとしての伝説的な技能。
彼の前では馬ですら頭を下げ、敬意を払うと言われる。
ありとあらゆる馬や牧畜を手懐け、使いこなすことが可能。
また馬が残した僅かな痕跡からその状態や蹄鉄の正確な形状、更には馬と乗り手の心理状態などを分析することが出来る。
ただし幻獣種といった異次元の生物を乗りこなすことは不可能。

単独行動:B
魔力供給無しでも長時間現界していられる能力。
Bランクならばマスターを失っても二日程度の現界が可能。
カウボーイとして毎年三千頭もの牛と旅をしていたという逸話に基づくスキル。

【宝具】
「旅人は荒野を駆ける(ゴースト・ライダー・イン・ザ・スカイ)」
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
生前のティムが乗りこなしていた愛馬。
数千キロもの長い旅を共にしてきたことから、発動時の魔力消費が極めて少ないという特徴を持つ。
それ以外に特筆すべき能力は持たないが、伝説のカウボーイであるティムにとってある種の象徴とも言える宝具。

「困難に立ち向かうもの(オー!ロンサム・ミー)」
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~20 最大捕捉:10
荒野の異常現象「悪魔の手のひら」に立ち会ったことで獲得したスタンド。
縄を媒体に発動し、縄上で自身の肉体をバラバラに分解する能力を持つ。
バラバラにした肉体は縄で繋がれ、縄の上を自在に移動することが出来る。
他者の肉体も触れることで投げ縄上でバラバラにすることも出来るが、発動時の隙が大きく戦闘では余り実用的ではない。
またティムは投げ縄の達人であり、宝具を用いずとも卓越した投げ縄の技量を発揮することが可能。

【Weapon】
投げ縄、拳銃

【人物背景】
大陸横断レース「スティール・ボール・ラン」に参加したカウボーイ。
彼の前では馬も頭を下げると言われる程の伝説的な牧童。
かつては騎兵隊に所属していたが、その時に「悪魔の手のひら」と遭遇しスタンドを獲得している。
レース中に殺人事件が発生したことで臨時保安官として任命される。
ルーシー・スティールに想いを寄せ、彼女を守る為に合衆国大統領の部下ブラックモアと交戦したが敗死した。

【サーヴァントとしての願い】
ジャイロ・ツェペリとジョニィ・ジョースターに全てを託した為、生前に悔いは無い。

【方針】
今はフジタが放っておけない。
出来ることならば彼の力になりたい。


414 : 藤田茂&ライダー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/10(水) 17:57:20 7PHyofq20

【マスター】
藤田 茂@SIREN2

【マスターとしての願い】
人殺しをしてまで願いを叶えたくない。

【weapon】
拳銃

【能力・技能】
警察官であるため、拳銃による射撃の技能がある。
ただしゲーム中で素手の状態では突き飛ばししか出来ず、体術はそれほど強くない模様。
異界ではないため幻視(視界ジャック)は不可能。

【人物背景】
夜見島出身の警察官。本土勤務の巡査部長であり1986年の人間。
元々は警部補だったがお人好しな性格が災いして窃盗犯を取り逃がし、降格させられた過去を持つ。
また家族を省みず厄介事に首を突っ込み性分だった為に妻子からも疎まれていた。
善人ではあるものの、そんな性格が裏目に出て結果的に空回りをしてしまう報われない性分の持ち主。
夜見島のある噂から事件の匂いを嗅ぎ付け、単身で帰郷した所を怪奇に巻き込まれる。

【方針】
今は殺人鬼や聖杯戦争について調査する。
殺し合いには乗らないが、今後具体的にどうするのかは未定。


415 : 名無しさん :2016/02/10(水) 17:57:35 7PHyofq20
投下終了です


416 : ◆.QrNUkmVxI :2016/02/10(水) 20:21:28 /jEX8fSg0
皆様投下お疲れ様です
自分も投下します


417 : 西住みほ&ライダー ◆.QrNUkmVxI :2016/02/10(水) 20:22:27 /jEX8fSg0
 東京から大洗までは、電車でどのくらいかかるだろう。
 そう思い、インターネットで調べたことがある。
 結果は100分ほどだった。友達と語らいながら移動していれば、あっという間に到着する距離だ。
 それでも帰ろうとする度に、常に何かが邪魔をして、道を阻んできた。
 そうしているうちに、記憶を取り戻してから、一週間が経過していた。
 その頃にはいよいよ、西住みほも、この聖杯戦争なる争いから、逃れられないのだろうと観念していた。

(遠いなぁ)

 瞬きの間に過ぎ去るような、100分ぶんの距離があまりにも遠い。
 目の前にあるはずの学校が、取り戻したはずの学校が、生まれ故郷の熊本よりも、ずっと遠くに感じられる。
 今一度調べ直した、電車の乗換案内のホームページを、ぼんやりと見つめながら、みほは思った。

「――そろそろ、考えは固まった?」

 そんな彼女の物思いを、背後からの声が遮る。
 とはいえかけられた女の声は、友人に向けるような、気さくな響きだ。
 声の主は分かっていた。故にみほは驚くことなく、ゆっくりと椅子を回して振り返った。

「ライダーさん」
「ごめんね、邪魔しちゃって。でも、そろそろ一週間くらい経つし、聞いておかなきゃと思ったから」
「いえ、いいんです」

 自室に現れた訪問者に、軽く微笑を浮かべて、返す。
 聖杯に観測された、英霊の魂を、模倣し現世へと形成した使い魔・サーヴァント。
 そんなオカルトめいた存在でありながら、彼女のもとへ召喚された女性は、妙に人間くさく振舞っていた。
 もっともそれはそれで、同居するみほにとっては、ありがたい話ではあったのだが。

(この人と一緒に戦うのが、私の巻き込まれた聖杯戦争)

 古代ブリタニアの女王、ブーディカ。
 それが騎兵(ライダー)の称号を得て、戦車と共にやって来た、西住みほのサーヴァントだ。
 とはいえ彼女の乗る戦車は、みほ達が慣れ親しんできた、近代兵器のタンクではない。
 小型の馬車のようななりをした、チャリオットと呼ばれる古い兵器だ。
 このあたりは、古代戦史に詳しいカエサルの方が、よく知っているかもしれない。
 彼女のソウルネームの由来となった、ガイウス・ユリウス・カエサルは、ローマを相手取ったブーディカにとっては、憎むべき怨敵に当たるのだろうけども。

(ここにいたのが、ダージリンさん達じゃなくてよかった)

 どちらかと言えば、この英霊に相応しい人間は、別にいると思っている。
 英国淑女を標榜する、聖グロリアーナ女学院のライバル達の方が、ブーディカと並び立つ姿も様になるはずだ。
 とはいっても、これは戦争だ。危険で身勝手な殺し合いだ。
 自分が巻き込まれたのは遺憾ではあるが、そうしたベストカップリングが、実現することなく終わったことには、みほは間違いなく安堵していた。
 マスターがサーヴァントを引き寄せるのではなく、サーヴァントがマスターを引き寄せる、なんて現象が、本当にあるのかは知らないが。


418 : 西住みほ&ライダー ◆.QrNUkmVxI :2016/02/10(水) 20:23:13 /jEX8fSg0
「それでさ。みほはこれから先、どうする? この聖杯戦争で、どうしたいと思ってる?」

 そのサーヴァントが問いかける。
 古代の戦場を戦い抜いた、歴戦の英霊が問いかけてくる。
 お前はいかにして戦うのかと。
 願いを叶える聖杯と、どのようにして向き合うのかと。

「……私は、この戦いには乗れません。勝つためではなく、聖杯戦争を止める……そのために戦いたいと思います」

 一拍の間を置いて、口をついたのは、否定だ。
 みほは聖杯を手に入れるために、戦うことはできないと、そうはっきりと口にした。

「いくら願いを叶えるためとはいえ、そのために人の命を奪うのは、間違っています」
「うん。まぁ、真っ当な答えだ」
「それに私にも、意地があります。やっと見つけた、私の戦車道を、裏切ることはできません」

 これまで共に戦ってきた、全ての人々のためにもと、言った。
 願いならとうの昔に叶えた。
 大切な仲間達の学び舎は、戦車道大会で優勝することで、何とか守り抜くことができた。
 ならば十分だ。望むものは見当たらない。
 そうでなくても、利己的な理由で、他人の命を奪うことは、どう考えても許せそうにない。
 勝つことだけを考えた、冷徹な戦車道を否定した、西住みほならではの意地だ。
 思えば、こんな男勝りな言葉は、初めて使ったような気もした。

「戦車道、か……」
「ライダーさん?」
「ああ、うん。ちょっとね。そんな平和の形もあったんだなって、そう思っただけ」

 穏やかに笑いながら、ブーディカは言った。
 戦車道がどういうものなのかは、以前に話したことがある。
 概念がだいぶ変わったとはいえ、多くの血を啜ってきた戦車が、今は平和な競技にも使われているというのは、大層な驚きだっただろう。
 人の命が失われることなく、互いを讃え合う笑顔で、締めくくることのできる優しい戦争。
 それは今のみほにとって、かけがえのない大切なものだ。決して穢されてはならない尊いものだ。
 きっとブーディカも、そんな風に、受け止めてくれたのだろうか。

「……うん。みほの気持ちは、よく分かったよ。だからあたしでよければ、手伝ってあげたいと思う」
「いいんですか? 聖杯を使う権利は、確かサーヴァントのライダーさんにも……」
「あたしはいいんだ。ブリタニアが平穏でありますように……って願いは、きっと聖杯がなくても、叶えられるものだから」

 望みならある。
 けれどそれは必ずしも、聖杯にかけるべきものではない。
 現代の大英帝国に生きる、ブリタニアの子供達が、きっと自分達の手で、叶えることができることだ。
 戦車道に青春をかけ、互いに肩を組んで笑い合う、西住みほ達がそうであるように。


419 : 西住みほ&ライダー ◆.QrNUkmVxI :2016/02/10(水) 20:24:29 /jEX8fSg0
「だけど、道は険しいよ。申し訳ないけれどあたしは、割と地味な英霊だから、苦戦しちゃうこともあるかもしれない」
「私達の戦いは、いつだってそうでした」

 ライダーさんが頼りないという意味ではないですよ、と付け足しながら、みほは言う。
 これまでの道のりも、決して楽なものではなかった。
 ゼロから戦車道を始める仲間達。強豪校にはとても敵わない、余り物のオンボロ戦車。
 それでも皆で力を合わせ、小さな勇気を束ねながら、頂を目指して駆け上がっていった。
 自分だけのためだったなら、決して越えられなかった壁も、想いを重ねて飛び越えていった。
 どんな異常な状況下でも、それだけは変わらないと思えるものだ。

「それだけじゃない。これは戦車道とは違う。下手を打てば死んでしまう。そういう戦いだよ、聖杯戦争は」
「っ」

 それでも、ブーディカから釘を差された時、一瞬、体が強張った。
 そうだ。戦車道と違うということは、つまりはそういうことでもある。
 殺すことが目的ではないから、戦車は戦車しか狙わない。
 たとえ視界を確保するために、戦車長が身を乗り出していても、砲弾が当たることは滅多にない。
 そんな幻想を吹き飛ばすのが、正真正銘の戦争なのだ。
 姿を晒した戦車長へ、これ幸いと狙いを定め、容赦なく命を奪うのが、聖杯戦争というものなのだ。
 故に敗北は死に直結する。
 誰かの命を奪うだとか、奪わないだとかだけではない。自分自身の命ですらも、奪われてしまう戦いなのだ。

「……覚悟の上です」

 それでも、決意は曲げなかった。
 不利が死のリスクを高めるとしても、引き下がるわけにはいかないと、言った。
 両手を膝の上で揃え、まっすぐにブーディカを見据えながら、西住みほはそう宣言した。

「………」

 しばし、英雄は沈黙する。
 本物の戦を未だ知らない、高校二年生の少女を、真剣な面持ちで見据える。
 そこに何を見ているのか。あるいは何を見定めているのか。それはみほには分からない。

「……今分かった気がする。あたしがどうして、君のところに呼ばれたのか」

 意外にも、次の一言は、笑顔と共に放たれていた。
 世間知らずの青二才を、けれど英雄は責めることなく、穏やかな微笑と共に受け止めていた。
 呆気に取られたみほのもとへ、ブーディカはゆっくりと歩み寄る。
 そして両手を優しく伸ばし、みほの両手を包み込むと、自身の胸の高さへと運ぶ。

「ごめんね。意地悪なこと聞いて怖がらせて、無理に我慢させちゃった。きっと色々と、いっぱい溜め込んじゃう子だったんだね」

 そう言われて、みほは初めて、自分の手が震えていたことに気がついた。
 死への恐怖を悟らせまいと、無意識に震えを己が手で抑えて、胸の内を隠していたのだ。
 また、誤魔化して背負い込んでしまった。
 これまでずっとそうしてきたように。もうそうする必要はないのだと、仲間に縋っていいのだと、理解させられたはずだったのに。


420 : 西住みほ&ライダー ◆.QrNUkmVxI :2016/02/10(水) 20:26:17 /jEX8fSg0
「大丈夫だよ、無理しなくても。お友達はいないけど、みほの弱さと心細さは、代わりにあたしが受け止めてあげる」

 沈黙し平静を保つことが、強さだと思っているのなら、そんなものは必要ない。
 心が壊れるくらいなら、弱くてみっともない姿を、晒してくれて構わない。
 右手をみほの手から離し、そっと頭を撫でながら、言う。

「頼りない勝利の女王でも、泣いてる子供を守るくらいなら、きっとできるはずだから」

 私はそうやって生きてきた。
 その想いに殉じて散った。
 そうして英霊の座に召されても、私のやることは変わらない。
 そういう性分であるのなら、守るために戦いたいという、その心に従って戦う。
 女の子一人守れないようでは、勝利の二つ名を名乗る以前に、英雄として人として、きっと失格だと思うから。
 そう宣言するブーディカの姿は、何よりも眩しく、美しかった。
 その優しさと気高さは、現代にまで語り継がれる、伝承の英雄に相応しいものだった。

「あ……」

 駄目だ。泣きそうだ。
 久々にそんなことを思った。熱を持った目頭が、雫で潤むのを感じた。
 同年代の仲間達に、勇気づけられたことはある。
 しかし背の高い大人の女性に、こうして暖かく包み込むように、慰められたのはいつぶりだろう。
 これが母性というものならば、ちゃんとした戦車道に取り組むよりも、ずっと前に見たきりかもしれない。
 未だ仲直りできていない、凛々しくも厳しい母親が、かつて見せてくれた優しさ。
 もしかしたら、心の底で、ずっと求めていたかもしれない記憶が、フラッシュバックして心を揺さぶる。

「君の友達のところには、責任持って送り届ける。だから力を合わせて、笑顔で帰ろう。みほを待っている人達のところへ」

 膝をつき、みほを抱き寄せながら、ブーディカは優しく言葉をかけた。
 神話の時代に燦然と輝く、大英雄にも負けないほど強く。
 泣きじゃくる子供を優しくなだめる、一人の母親のように暖かく。
 ぽんぽんとみほの背を叩く、古のブリタニアの女王の言葉が、今は何よりも頼もしかった。

「……はい」

 待ってくれている人達がいる。
 それは大洗女子学園に、共に通った仲間達。
 それは遠い熊本の故郷で、自分を想ってくれているかもしれない家族。
 その人達に会うためにも、絶対に帰らねばならないと思った。
 この英雄の心遣いを、無駄にしてはいけないと思った。
 死後の安寧を妨げられ、聖杯を使う権利も阻まれてなお、手を差し伸べてくれた彼女にも、応えなければならないと誓った。
 一筋の涙を流しながらも、ブーディカの体を抱き返す、西住みほの顔は、笑っていた。


421 : 西住みほ&ライダー ◆.QrNUkmVxI :2016/02/10(水) 20:27:18 /jEX8fSg0
【クラス】ライダー
【真名】ブーディカ
【出典】Fate/Grand Order
【性別】女性
【属性】中立・善

【パラメーター】
筋力:C 耐久:B+ 敏捷:C 魔力:D 幸運:D 宝具:B+

【クラススキル】
対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

騎乗:A
 騎乗の才能。幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。

【保有スキル】
女神への誓い:B
 古代ブリタニアにて信奉されていた、女神アンドラスタへ捧げる勝利の誓い。
 ブリタニアを害する存在――特に当時敵対していた、ローマの英霊に対して、ダメージ補正が加えられる。

戦闘続行:A
 往生際が悪い。
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

【宝具】
『約束されざる守護の車輪(チャリオット・オブ・ブディカ)』
ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:? 最大捕捉:?
 自らと同じ「勝利」の名を冠する片手剣。
 たが、あくまで勝利を確約するものではない。可能性のみをもたらす不完全な戦車。
 真名解放と共に結界を展開し、味方を守ることができる。守護者に相応しい堅牢な宝具。

『約束されざる勝利の剣(ソード・オブ・ブディ力)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
 自らと同じ「勝利」の名を冠する片手剣。
 だが、かの星の聖剣とは異なり、勝利も約束されない。完全ならざる願いの剣。
 優れた威力を誇る剣だが、セイバークラスで現界しなかったが故か、特別な効果を有してはいない。


422 : 西住みほ&ライダー ◆.QrNUkmVxI :2016/02/10(水) 20:27:49 /jEX8fSg0
【weapon】

 ラウンドシールドを装備している。

【人物背景】
一世紀での古代ブリタニアの若き戦闘女王。ブリテンの「勝利の女神」の伝説となった人物。
衣装はゲーム中シナリオに準拠し、第2段階のものを着用している。

夫であるプラスダクス王の死後、自身と国、そして二人の娘を蹂躙された彼女は、国の守護とローマへの復讐を誓う。
若き戦いの女王となったブーディカはローマに対して反旗を翻し、諸王をまとめ上げ、大規模な反乱を巻き起こした。
その反乱はローマに衝撃と大打撃を与えたが、最後にはネロの軍勢に敗北し、落命した。

ただし、近代以降の英国において篤く祀られている彼女は、過去の戦いの折の激しさを失っている。
英霊として在るブーディカは、本来の彼女、すなわち慈愛の女としてこそ剣を振るう。
ブリタニアを、故郷を想う、母の力として。

【サーヴァントとしての願い】
強いて言うなら、ブリタニアの平穏。

【基本戦術、方針、運用法】
ザ・中位サーヴァントと呼ぶべき性能。本人も自虐した通り、派手な戦果は期待できない。
マスターがその戦術眼を最大限に発揮できれば、勝利の可能性もなくはないのだが、生憎と今回の目的は、積極的に勝ちにいくことではない。
生存能力の高さは折り紙つきなので、しぶとく攻撃を耐えつつ、好機をうかがうことを心がけよう。
「絶対金枠鯖なんかに負けたりしない!(キッ)」という心意気こそが肝要である。


423 : 西住みほ&ライダー ◆.QrNUkmVxI :2016/02/10(水) 20:28:25 /jEX8fSg0
【マスター】西住みほ
【出典】ガールズ&パンツァー
【性別】女性

【マスターとしての願い】
聖杯戦争を止める

【weapon】
なし

【能力・技能】
騎乗(戦車)
 戦車の乗組員としてのスキル。車長のスキルを保有する。
 少なくとも高校一年生の頃には、既に車長を担当していた。

軍略
 一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
 ただし、あくまで人死にの出ない、競技による戦闘においての話である。
 時に慎重に、時に大胆に。たとえ限られた兵力であっても、戦術と腕を尽くして、十二分に活用することができる。
 もっとも、その下地となっているのは、西住流の正統派戦術であり、常に奇策に走りたがるわけではない。

【人物背景】
関東の県立大洗女子学園に通う、高校二年生の少女。
熊本に本拠を置く戦車道の名門・西住流の次女でもある。
長らく戦車道から遠ざかっていた、大洗女子学園の戦車道チームを再建させ、全国優勝へと導いた。

非常に温和で優しい人物。戦車を降りている時は、ふわふわしていて、むしろ危なっかしい印象すら与える。
ひとたび戦車に乗れば、西住流仕込みの、冷静沈着な隊長へと早変わりする。
かつてはその優しさ故に、チームを敗北へ追い込んでしまったこともあるのだが、
現在は人命・勝利の双方を両立する判断を、冷静に下せるようになっている。
決して勝利を諦めはしないが、それ以上に、仲間を見捨てることをしない。何だかんだで芯の強い人物。

好きなマスコットキャラクターは、喧嘩を売ってはすぐボコボコにされるヘタレキャラ・ボコられグマ(通称ボコ)。
コンビニが好きで、用がなくとも30分くらい、品揃えや値段の変化を眺めて楽しむことができるという、奇っ怪な趣味を持つ。

【方針】
人殺しは絶対にしない。聖杯戦争を止める方法を探す。


424 : ◆.QrNUkmVxI :2016/02/10(水) 20:29:45 /jEX8fSg0
投下は以上です
万が一アプデでスキルや宝具が追加された場合、『約束されざる勝利の剣(ソード・オブ・ブディ力)』の効果が変更されるかもしれません
コンペ終了までに何もなかったら、このままでお願いします


425 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/10(水) 22:21:11 XnTuYeDk0
感想を投下します。


ネク&アサシン
マスターのネクは聖杯戦争に前向きですが、アサシンのカーミラは……という感じですね。
お互いに立ちまわりが重要になる主従なだけあって何とか友好的に
なって欲しいものですが、果たしてどうなることでしょうか……?
投下ありがとうございました。

ロナルド&キャスター
サポート側に徹底する能力のキャスターを考えて同盟を考えた方がいいのでしょうが
小説家であるロナルドの身分を考えると、果たして大丈夫でしょうか?(締め切り的な意味で)
仮に吸血鬼相手の場合、どのような活躍をしてくれるか楽しみです。
投下ありがとうございました。

安藤潤也&ライダー
兄が敵だったとしても聖杯を手に入れる……何故兄弟同士で争う結果になるのか……
それもまた運命であり、ある意味。兄のサーヴァントの宿命を繰り返している気がします。
そんな潤也をライダーはどう導いてくれるのでしょうか。
投下ありがとうございました。

大藪&ランサー
東京にいる自称:正義の味方や正義の味方ではなくとも東京を守ろうとしている少年
とは違い、善人ではないと自覚していながらも誰かのために行動する。
彼もまた正義の味方かもしれません。果たしてあの殺人狂を止めることは出来るのでしょうか
投下ありがとうございました。

カナエ=フォン・ロゼヴァルト&ランサー
ランサーであるヴラドはカナエの評価を変えましたが、一方のカナエの冷えた感じが…
何であれ今後の聖杯戦争の関係としては問題はなさそうですね。
個人的にはバーサーカーのヴラドと巡り会ったらどのような反応になるか気になります。
投下ありがとうございました。

藤田茂&ライダー
警察官としての正義感のある藤田は手本のような正義の味方です。
この混沌とした聖杯戦争において正義を貫き通して欲しいところですね。
ライダーのティムはルーシーの存在を知った時、どうするのでしょうか?
投下ありがとうございました。

西住みほ&ライダー
母らしさでマスターを支えてくれるブーディカさんは、やはりいいですね。
戦車道とはまるで別世界である聖杯戦争でみほは頑張れるのでしょうか。
ブーディカの性能的に是非他の主従との協力をしたいところです。
投下ありがとうございました。


426 : ◆GO82qGZUNE :2016/02/10(水) 23:26:03 k2Cw8kVI0
皆さん投下お疲れ様です。自分も投下させていただきます


427 : ディー&アーチャー ◆GO82qGZUNE :2016/02/10(水) 23:27:07 k2Cw8kVI0





 あなたの命に刻まれた、たったひとつの小さな力
 全ての生あるものに与えられた、取るに足らない小さな祈り
 あなたが、今、ここに在るという
 ただそれだけの、奇跡





   ▼  ▼  ▼


428 : ディー&アーチャー ◆GO82qGZUNE :2016/02/10(水) 23:27:59 k2Cw8kVI0





 自分は一体、どこで間違ってしまったのだろう。
 問いに答えるものは何もなく、意識はただ黒に塗り潰された。

 きっかけは、そう。銃口だった。
 あの日、あの時。傍らの少女に向けられた銃口が、全ての始まりだった。

 自分には分かっていた。銃口が少女に狙いをつけていることも、銃弾に少女が反応できないことも、自分が銃弾を迎撃することさえできないことも理解できた。
 今にも引かれようとしていた引き金を止めるには、手や足を狙ったのでは僅かに遠く、今の自分が選択できる最短距離での攻撃箇所を狙わなければ絶対間に合わないことも、分かっていた。
 銃を構えるその男が、かつて自分に兄弟の話を誇らしげに語ってくれた彼だということさえも。
 嫌になるくらい、分かっていた。

 目の前の光景が、ぐにゃりと歪んで、捩れた。
 視界に映るすべてのものが、闇に沈んだ気がした。

 眼前の影はびくりと痙攣し、そのままゆっくりと床へと落ちる。差し出すように掲げた剣がずるりと抜け、赤と黄の暖かなものが、顔中に降りかかるのが理解できた。

「あ……」

 声を上げ、遅れてそれが自分の声だとようやく認識できた。

 ふと、右足に焼けるような衝撃を感じた。
 振り返り、ぼんやりと自分の足に視線を向ける。
 穿たれた銃痕から溢れ出る血を、何か不思議なものでも見る気分で眺めた。


429 : ディー&アーチャー ◆GO82qGZUNE :2016/02/10(水) 23:28:42 k2Cw8kVI0

 立て続けに三度の衝撃を背中に受け、右の騎士剣を取り零す。それが床にはねるより早く無数の銃弾が襲い掛かり、銀色の刀身が甲高い音をまき散らして細かな欠片に砕け散る。
 喉の奥から何か熱いものがこみ上げ、咳き込んだ拍子に血が飛び出た。
 少女に駆け寄ろうと踏み出して、しかし焼け付くような衝撃に膝を貫かれて体勢を崩す。
 床に倒れ込み、顔に何か柔らかいものが当たって、気付いた。
 目の前には、まだ若い、兵士の姿。
 既に暖かさが失われつつある、数秒前まで人間だった物。

 ―――ああ、そうか。

 意識が遠のく。周囲の音が急速に遠のいていく。霞んでいく視界の中に少女の姿を見つけ、差し伸べようとした手が地に落ちて。

 ―――僕が、殺したのか。

 何もかもが、真っ暗になった。





   ▼  ▼  ▼


430 : ディー&アーチャー ◆GO82qGZUNE :2016/02/10(水) 23:29:18 k2Cw8kVI0





 壁にかけられた時計の針が、朝の5時を指していた。
 休日の朝のこと。自分以外に誰もいない部屋の中で、ディーと呼ばれる少年は億劫そうに椅子を傾けた。
 特に意味はない。ただすることが何もなかったから、呆と時間を過ごしているに過ぎない。
 ここに来てからはいつもこの調子。鉛を詰め込まれたように頭が重くて、何をする気にもなれない。体内組織の動作状態を隅から隅まで走査しても異常は何一つ見つからないのに、神経パルスの戻り値は体調の悪化を訴え、頭痛も眩暈も一向に収まらない。

 吐き気を堪えて手を伸ばし、ベッドの下に隠してある騎士剣『陰』の柄を握ってI-ブレインを一時的に戦闘起動。脳と体の状態を強制的に整え、細く長い息を吐く。
 ……実のところ、騎士剣に手を触れる必要はなかった。ベッドに隠れた騎士剣は、最早剣としての機能を果たせそうにないほど破壊し尽くされて、その中に内蔵された機構さえも今は存在しない。
 だから、これは単に気持ちの問題。生まれてからずっと傍にあった、そしてI-ブレインを起動する際のプロセスとして脳に刻まれた行為をなぞることによる精神の安定化。
 乱れたベッドをもとに戻して、さてこれからどうしようと重い頭で思案して―――

「やっほ。ちょっとは落ち着いたかな」

 ―――訂正、一人ではなかった。
 声に目を向ければ、そこにいたのは一人の少年であった。窓枠に腰かけ、足を外に出してぶらぶら揺らしている。なんとも危ない姿勢であるが、その出自を聞いているディーがとやかく言うものではなかった。
 手にしているのはスケッチブックと鉛筆だろうか。確かディーの机には昨夜まで書きかけのスケッチブックが放置されていて、ああつまり、彼は昨日の絵の続きを描いているのだろうと。
 そんなことを、ディーはぼんやりと考えた。

「心配かけてごめん、アーチャー。もう大丈夫―――」
「じゃないね、その顔は。せっかくの休日なんだしもうちょっと寝ててもいいんじゃないかな」

 そこは外出を勧めるところなんじゃないか、と思いつつも、ディーは「ありがとう」とだけ返して押し黙る。アーチャーと呼ばれた少年は、にこりと小さく笑い返した。

 事の次第と詳細は、このアーチャーと名乗る少年から色々聞かされていた。
 聖杯戦争、東京、マスター、サーヴァント、令呪。俄かには信じがたいそれらの事実は、しかし不思議なほどにディーの胸中にすとんと収まった。まるで自分がそれに導かれたかのように、最初から頭に刻まれていた知識を、後追いで思い出すかのように。
 それに対して何か言葉を返そうとした自分を、しかしアーチャーは静かに押し留めた。まだ時間はあるからそれまでに答えを出せばいいよ、と。まるでこちらの迷いを見透かしているかのように。


431 : ディー&アーチャー ◆GO82qGZUNE :2016/02/10(水) 23:30:01 k2Cw8kVI0

 カリカリという筆の音と、時折風にざわめく木々の揺らめきだけが耳に届く昼光の時間。どちらも言葉を発さず、けれど決して不快ではない時間が過ぎていく。
 壁にかけられた時計の針が、静かに時を刻んだ。

「ねえ、アーチャー」
「なんだい、マスター」

 何の気なしに、言葉を投げかけてみた。
 それは何気ない会話のようで、けれどこれ以上なく重い決意の籠った言葉だった。

「ここに来る前、僕は人を殺したんだ」

 言って、両手を目の前に広げ、見つめる。
 その手が血に塗れているように感じて、吐き気がこみ上げる。兵士の頭を刺し貫いたあの瞬間の重い感触が蘇り、右手が小刻みに震える。いつかの夢で見た血の海の幻が目に浮かぶ。数えきれないほどの人の死体が、赤黒い闇の中を流れていく。
 ディーは、大きく息を吸い、吐き出した。
 心に渦巻くそれらをすべて、力づくで抑え込んだ。
 アーチャーは、ただ静かにこちらを見つめていた。

「それで、僕の兄さん……幻影(イリュージョン)No.17って人がいてね。ちょっとだけ話をしたことがあるんだ。人間嫌いで怖い人だって聞いてたけど、実際には全然そんなことなくて。明るくて、軍の人たちにも信頼されてて、『シティが無事ならおれはどうなってもいい』なんて本気で言う人で、すごくびっくりした」

 いつの間にか風はやんでいた。一層静かになる世界に、耳鳴りが聞こえたような気がした。

「その人は、傷だらけなんだ。大きいのとか小さいのとか、古いのとか新しいのとか。下手したら死んでるような大けがもあって、それがいくつも重なって再生処置でも治せないくらいボロボロになってて、それでもあの人は戦ってる。僕なんか、足元にも及ばないくらいに鍛え上げて」

 無意識に、手を膝の上で組み合わせ。

「……敵わないって思った。強さもそうだけど、それ以上にもっと違う何かで、全然及ばないって思ったんだ。僕はどんなふうになればあの人みたいになれるんだろうって考えて、あの人と話して、ようやくちょっとだけ分かった」

 俯いていた視線を、ゆっくりと上げる。

「あの人の中には『自分』がいない。自分の命とか損得とか、そんなものが初めから計算に入ってない。だから、誰かを殺さなくちゃならない時は自分の手を汚すし、誰かが死なないといけないなら自分が犠牲になろうとする……自暴自棄じゃない、自分が大切だってことは分かってて、でも心の中にそれより大切なものを持ってる」


432 : ディー&アーチャー ◆GO82qGZUNE :2016/02/10(水) 23:31:08 k2Cw8kVI0

 砕け散った自分の騎士剣を思い出す。それは、まるで自分の弱さの象徴のようにも思えた。
 それこそが、幻影No.17の強さ。
 死ぬ覚悟。殺す意思。今の自分に欠けているもの。

「その人に言われたんだ。僕はいつか、自分か、セラか、別の誰かか、どれかの命を選ばないといけない時が来るって。その覚悟を、いつでも持ってなきゃいけないんだって。
 そして、僕は人を殺した。だから多分、今がその時なんだと思う」
「君の兄さんのように、自分の全てを賭ける時が、かい?」
「……本当はね、まだ良く分からないんだ。僕は人を殺してしまったけど、次に誰かを殺さなきゃいけなくなったら、その時は迷わず剣を振るえるのかって。
 でも、これだけは分かる。僕はセラを助けるためなら、迷わず戦える。彼女を殺そうとする誰かがいたら、僕は迷わずその誰かを殺すことができる。
 聖杯だって、セラを幸せにできるというなら取ってみせる」

 この世界は、とても綺麗だ。
 青い空があり、緑の草原があり、魔法士や人々が不当に犠牲になることのない優しい世界。
 ここに招かれた時、空を見上げ、思わず涙が零れたことを、ディーは覚えている。
 ならばこそ、強く思うのだ。この暖かさをセラにも味わってほしいのだと。

 そして。
 瞳に力、静かに宿して。

「だって僕は、自分よりセラのほうが大切だから―――」
「はいバン」

 不意打ちでデコピンを食らった。
 完全に、意識の範囲外だった。

「……アーチャー?」
「君の気持ちは分かった。けど、それはどうかなってぼくは思うよ。
 少なくとも、君はもう少し自分ってものを考えたほうがいい」

 額に去来する痛みも忘れ、ディーはアーチャーを呆と見つめる。
 その言葉は柔らかなものではあったけど、どこか真剣さが感じられるもので。

「誰かを守ろうと思うなら、自分はどうなってもなんて考えるもんじゃないよ。残された人はいつだって、後悔しか抱かないんだからね」

 それはまるで、自分が体験してきたかのような。
 少年のようでもあり、老人のようでもある、不思議な貫禄と共に染み入る言葉だった。

「だけど、うん。さっきも言ったけど君の気持ちは理解できた。だから少なくとも、今この場においてぼくは君の味方だ。大船に乗ったつもりで、とはいかないのがアレだけどね」
「……ううん、それで十分だよ、アーチャー」

 アーチャーの笑みに、つられてディーも微かに笑った。
 思えば、ここに来て初めて笑えたのではないかと、そう考えて。

「あ、その表情いいね。今まではジメジメした仏頂面だったけど、これならいい絵を描けそうだ」

 ……そのまま、1時間くらい絵のモデルとして表情を固定したまま待たされた。
 後に手渡された絵は、なんともコメントに困る画力だった。


433 : ディー&アーチャー ◆GO82qGZUNE :2016/02/10(水) 23:31:37 k2Cw8kVI0


【クラス】
アーチャー

【真名】
ティトォ@マテリアル・パズル

【ステータス】
筋力D 耐久E 敏捷D 魔力B+ 幸運A 宝具B

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

単独行動:C
マスターなしでも行動できるスキル。

【保有スキル】
無窮の叡智:C++
多くの学問を収めた知識知能による戦術恩恵。
情報解析による状況・敵勢力の看破、軍略、人間観察、高速・分割思考、完全記憶などの思考戦術系スキルを内包し、かつ高いボーナス値を付与する。
後述の宝具によりランクが大幅に上昇している。

蔵知の司書:-
多重人格による記憶の分散処理。
現在このスキルは失われている。

【宝具】
『白焔よ、我を活かせ(ホワイトホワイトフレア)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:5
炎の魔力を変換し、癒しと強化のエネルギーを作り出すマテリアル・パズル。
変換後は白い炎になり、纏った者の傷を治し肉体を強化する。回復・強化の度合いはさじ加減が可能。
この宝具自体が極めて高密度の魔力を内包しているため、炎を纏った者の攻撃には相応の神秘が付加されサーヴァントにも通じるようになる。
自身やマスターの他、動植物にも効果があり、抵抗値の低い又はこの宝具に身を委ねている者に限定して動作の操作が可能。
白い炎は通常時は一切の破壊をもたらさないが、アーチャーの意思ひとつで瞬時に攻性の炎に転じさせることもできる。

『仙里算総眼図』
種別:対人魔技 レンジ:0 最大捕捉:1
マテリアル・パズルではなく、アーチャーが長い時間をかけ編み出した「1を聞いて10を知る能力」。

対象の言葉、表情、眼、行動、周りの環境などから情報を取り入れ、対象の行動パターンを数十秒完全に先読みできる。
対象は1体に限られ、更に発動には膨大な情報が必要なので、味方の戦闘による時間稼ぎがあってこそ真価を発揮できる。
また、未知の人物や兵器の正体などの推理など、戦闘以外の用途にも使える。

【weapon】
なし

【人物背景】
ドーマローラ国が滅んだ際、不老不死になった三人のひとり。
17歳の時に不老不死になったので、その姿で固定されている。
三人の中では一番厳しく、しかし一番優しい性格。頭脳労働担当。

【サーヴァントとしての願い】
グリ・ム・リアの打倒。そして願わくば、"彼ら"が安心して暮らせる未来を。


434 : ディー&アーチャー ◆GO82qGZUNE :2016/02/10(水) 23:32:09 k2Cw8kVI0

【マスター】
デュアルNo.33@ウィザーズ・ブレイン

【マスターとしての願い】
セラの幸せ

【weapon】
騎士剣・陰:
銀の不安定同素体「ミスリル」で構成された近接戦用外部デバイス。
騎士の能力を拡張・底上げする機能を持ち、物理的にも非常に頑強……なのだが、現在は刀身と中枢コアが完全に砕けており、剣としてもデバイスとしても全く機能していない。
陽のほうはどっか行った。

【能力・技能】
魔法士:
大脳に生体コンピュータ「I-ブレイン」を持ち、物理法則を改変して戦う生体兵器。彼はその中でも身体能力を書き換える「騎士」と呼ばれる魔法士。

身体能力制御:
自身の体内の物理法則を書き換え、身体速度と知覚速度を大幅に上昇させる。
元来の彼であるならば53倍まで加速可能であったが、騎士剣がない現状においては数倍程度までしか加速ができない。
なお、加速と同時に不自然な運動から来る反作用を全て打ち消している関係上、どれだけ加速しても得られる運動エネルギーは等倍のままである。原理としては身体強化というよりは時間加速に近い。

情報解体:
物理的に接触した物体の存在情報にハッキングを仕掛け、それを消去することにより、物理的には原子・分子単位まで分解する。
ただし、人間や高度AIなどといった思考速度の速い物体、すなわち情報的な防御力の高い物体には一切通じない。
元々は単純火力に劣る騎士が外壁や装甲といったものを効率よく破壊するための能力であるため、人間やサーヴァントの肉体を直接崩壊させることは不可能と言っていいだろう。

自己領域:
騎士剣がないと使えないため当然使えない。

【人物背景】
ファクトリー製「規格外」魔法士、ナンバー33。世界でただ一人、複数の能力を同時使用できる騎士。
能力だけで見れば世界最強クラスの彼であるが、しかし「殺人恐怖症」という致命的な精神欠陥が存在する。
外見的には14歳の少年だが、所謂試験管ベイビーであるため実年齢は2歳。
誰も殺したくないと剣を捨て、けれど自分よりも大切と思える一人の少女のために剣を振るう騎士。

【方針】
聖杯狙い。
ただし、できればサーヴァントのみを狙いたい。


435 : ◆GO82qGZUNE :2016/02/10(水) 23:32:28 k2Cw8kVI0
投下を終了します


436 : ◆XksB4AwhxU :2016/02/10(水) 23:42:56 muxf0rkY0
感想投下お疲れ様です。
先日投下した『安藤潤也&ライダー』の、宝具『無限螺旋を越えた技術』のランクをEXからAに変更します。


437 : ◆TA71t/cXVo :2016/02/11(木) 00:20:13 JcRpT/xY0
皆様お疲れ様です。
自分もこれより、投下させていただきます。


438 : ロード・エルメロイⅡ世&  ◆TA71t/cXVo :2016/02/11(木) 00:20:56 JcRpT/xY0






――――生きろ、ウェイバー。すべてを見届け、そして生き存えて語るのだ。




――――貴様の王の在り方を。このイスカンダルの疾走を。







◇◆◇


439 : ロード・エルメロイⅡ世&  ◆TA71t/cXVo :2016/02/11(木) 00:22:16 JcRpT/xY0





(……また、この夢か)


枕から頭を上げ、その男は不機嫌そうに大きくため息をついた。
ここしばらくの間、眠りに着くと必ずある夢を見るようになっていた。


夢の舞台は決まって、見知らぬ都市……『冬木』という街の中だ。
その街の様々な場所に、自分は今よりも十年程若い姿―――我ながら見ていて情けなくなる青さだ―――で立っている。
そしてその傍らには、いつも一人の男がいた。
赤い髪をした、筋肉隆々の偉丈夫。
豪快且つ奔放な性格で、隣に立つ自分をいつも振り回している。
こっちの意見なんぞ知ったことかと言わんばかりに、好き放題自分勝手に振舞っている。
見ていて、いい加減にしろという怒りと呆れがいつも湧き上がってくる。
若い姿をした自分は、さぞ胃が痛いに違いないだろう。



しかし……何故だろうか。


そんな、決して良くはないこの夢を見る度に……懐かしさを覚えてしまうのは。




「……ライダー……」


夢の中で、自分はその男の事を『ライダー』と呼んでいた。
『騎乗する者』を意味する単語……人の名前としては、少々おかしい。
ならば恐らくは、あの男を指すあだ名だろう。


「ッ……!」


その単語を何気なく呟くと、同時に頭の中で妙な痛みが走った。
まるで警鐘を鳴らす鐘の如く、その言葉が脳裏に響く。
何か、この言葉には重要な意味があるのではないか。
自分は、それを忘れているのではないか。
そんな奇妙な違和感が、頭に染み付いて離れない。


(何だ、この感覚は……)


趣味のテレビゲームに没頭しすぎた為に寝不足になった時とも違う。
問題児の生徒が派手にやらかした為にその後始末で走りまわされた時とも違う。
今まで、こんな変な感覚に陥った事は一度たりともなかった。
これは一体、何だと言うのだろうか。


440 : ロード・エルメロイⅡ世&  ◆TA71t/cXVo :2016/02/11(木) 00:22:42 JcRpT/xY0


(……だが、頭痛程度で仕事を休むわけにもいかん。
帰り道に頭痛薬でも買ってくるか……)


とりあえず、そろそろ家を出ないとまずい時間が近づいてきている。
気になる事はあるが、今は少しそれを置いておくしかない。
仕事を終わらせてから改めて、インターネットで検索するなりして症状を調べてみるとしよう。


そう頭を切り替え、彼―――ロード・エルメロイ二世は、身支度を整え始めたのであった。




◆◇◆



【一日目】



「ほんと、エルメロイ先生の授業って分かりやすいよねー」
「うん、要点とか大事なとこを逃さないようにきっちり教えてくれてさ……
 それに先生って、凄い親切に話聞いてくれるよね?」
「そうそう、めんどくさそうな顔をしながらもきっちり最初から最後まで……
 俺も進路とかどうしようかって悩んでたけど、先生に相談したおかげで色々決められたしさ」


放課後。
ホームルームを終え、帰路に着く学生達の他愛もない話し声が廊下に響いていた。
彼等は皆、ロード・エルメロイⅡ世が受け持っているクラスの生徒達だ。
誰もが笑いながら、自分達の担任に好印象な意見を述べ合っている……余程教師を信頼していなければ、こんな様子は見られないだろう。


「ハハ……本当に生徒から人気ですな、エルメロイ先生」
「いえいえ……手のかかるだらしない半人前達を見てて、放っておけないだけですよ」


その声は、離れた位置を歩く当人にまで届いていた。
横に並ぶ同僚の教師は、大したものだとエルメロイⅡ世に笑いかけるが、彼自身はそんな事はないと苦笑いしていた。
だが、事実として彼の教師としての手腕は見事なものであった。
それまでは成績が振るわなかった生徒も、学年が変わり彼の受け持つクラスの一員になると途端に目覚しい成長を見せている例が多々ある。
また、進路をはじめとする生徒からの相談にもしっかりと乗っており、明確に納得できる答えを誰しもが出すことが出来ている。
はっきりとした形で、あらゆる面において良い結果を残せているのである。
もっとも、エルメロイⅡ世自身はそれを意識せずにやっているわけでもない。
あくまで自然に教えていたら、結果としてそうなっただけである。
言わば教師としての天性の素質が成せる技だ。
それもあり、今や彼ほど優秀な教師はそうはいないだろうと、同僚達も皆一目置いているのである。


441 : ロード・エルメロイⅡ世&  ◆TA71t/cXVo :2016/02/11(木) 00:23:02 JcRpT/xY0

「ん……?」


そんな会話を交わしながら、職員室へと続く廊下を歩いていると。
ふと、エルメロイⅡ世の視界に一人の生徒の姿が入った。
その生徒はどことなく真剣な表情で、窓越しに外の風景をじっと眺めている。
何と強く真剣な目つきか。
まるで彼が眺めているのは、外の風景ではなくその更に先……この世界そのものを見通そうとしているかの様に思えてくる。


(あれは……安藤か……?)


エルメロイⅡ世はその生徒―――安藤の事をよく知っていた。
己のクラスの生徒でこそないものの、担当する科目で度々授業を行っているからだ。
学力も良くクラスメイトとの人付き合いもいい、極めて優良な生徒だ。
そしてエルメロイⅡ世が何より彼を評価をしていたのは、他の生徒には見られない強い考察力である。
周囲の出来事が目に入らなくなる程の強い集中とそこから生み出される理論は、到底同年代のそれではない。
下手をすれば大人であり教師である自分すらも、感心させられる程だ。
もっとも、彼自身はそういった姿を他人に見せる事を良しとしていないのだろうか、殆どそれを他者に晒すことはないのだが……
そんな彼がこうして真剣な表情をしているとなると、どうにも気にせずにはいられなかった。


「……安藤、どうした?」
「あ……エルメロイ先生……」


不意に声をかけられ、安藤はハッとした様子でエルメロイⅡ世へと顔を向けた。
その表情にはどことなく、戸惑いと困惑の色が表れていた。
やはり、何かしら真剣な悩みがあったという事か。
エルメロイⅡ世はそう確信し、ひとまず安藤の言葉を待とうとするが……


「……いえ、何でもありません。
 失礼します……」


数秒の間、思案した様子を見せた後。
安藤は顔を伏せ、エルメロイⅡ世に背を向けて歩き出した。
他人に相談を出来る内容ではないということだろうか。
エルメロイⅡ世は一瞬、彼を呼び止めるべきなのかと判断に迷った。
しかし……彼自身がまだ他者を頼ろうとしていない段階では、下手に聞き出そうとしても逆効果になるだろう。
だから敢えて、何も問わず……去りゆくその背を、見つめるしかなかった。


(……安藤……あいつ、一体……?)


どこか、その姿に一抹の不安を覚えつつも……


442 : ロード・エルメロイⅡ世&  ◆TA71t/cXVo :2016/02/11(木) 00:23:27 JcRpT/xY0



◆◇◆




「失礼します。
 先生方、少々よろしいですかな?」


職員室でデスクに座り、書類仕事を片付けていた最中の事だった。
学園長がやや強めの勢いで扉を開けて入室し、全職員に聞こえる様に大きな声を発した。
普段は柔和なその表情が、心なしかどこか固い気がする。
途端に全教師が顔を引き締め、学園長へとまっすぐに視線を向けた。


「先生、どうなさいましたか?」
「ええ、実は先程報道があったのですが、近くで殺人事件が起きたそうなのです。
 なんでも50人以上の犠牲者が出た程のものだとか……生徒達に、登下校の際には気を付けるよう注意をしておいてください」


淡々とした口調で、学園長はその大きな事実を告げた。
職員達はやや驚いた様な表情をしながらも、次にはそれを受け入れ頷いている。
自分達も気を付けなければ、不審者に近寄らないように言わないと。
そんな感想が、教師達の口々から漏れている。
一見それは、何て事のない当たり前の反応に見えた。
実際、誰もそれに疑いを抱かず動いている。


(……何だ……?)


しかし……ただ一人、エルメロイⅡ世だけは違和感を感じていた。
この近辺には、大量殺人を起こした何者かがいる。
事実ならば、あまりに恐るべき大事件だ。
警察も大きく動き出すだろう事は間違いない。

だが……それにしては、どこか学園長や同僚に慌てている様子が欠けている気がする。
事件を警戒している様子はもちろん、あるにはあるのだが……会話に人間味がない。
言ってみれば冷淡……機械的な印象があるのだ。


(大量殺人……普通なら、もっと慌てるものじゃないのか?
 何故、こんなに冷静に……?)


まるで意図して、平凡な日常風景を演じようとしているかのように。


日常の裏に潜む何かを『秘匿』しようとしているかのように。


「ッ!?」


その途端だった。
今朝に感じたものと同じ……いや、それ以上の痛みが彼の頭に走った。
咄嗟に額を抑え、顔を歪ませる。


443 : ロード・エルメロイⅡ世&  ◆TA71t/cXVo :2016/02/11(木) 00:23:48 JcRpT/xY0

(なんだ、これは……頭の中に、何かが……!?)


続けて、脳裏に覚えのない風景が広がっていく。
薄暗くジメジメとした、下水道らしき場所の中。
そこに、夢で見たのと同じく若い頃の自分が立っている。
彼はその場所の中心で、怒り慟哭していた。

『大量殺人鬼』の犠牲となり、見るも無残な姿へと変わり果ててしまった者達の姿を見て。


(……殺人鬼……下水道に潜んでいた、神秘の『秘匿』も行わない奴等……)


聞き覚えのない単語が、次々に浮かんでくる。
こんな出来事は、記憶に一切ない。
しかし、だというのに……自分は間違いなく知っている。
このビジョンを、この悍ましき光景を。
一体、この違和感は何だというのだ。


「エルメロイ先生?
 顔色がすぐれないようですが、大丈夫ですか?」


不意に、隣に座る同僚から声をかけられた。
ハッとしてエルメロイⅡ世は顔を起こすと、少しの沈黙を挟んだ後に静かに頷いた。


「……すみません、少々疲れがたまっているみたいで……定時ですし、今日はここで失礼させていただきますね」


実際には疲労なんてそんな問題ではないのだが、かと言ってこんな荒唐無稽な事実を他人に話す事なんて出来るわけもない。
故に、エルメロイⅡ世は言葉を濁しつつ退勤することにした。
その間も未だ、その頭の痛みと……奇妙な違和感は、微塵も収まっていなかった。




◆◇◆





「先生、さようならー!」
「ああ、お前達も気をつけて帰れよ」


444 : ロード・エルメロイⅡ世&  ◆TA71t/cXVo :2016/02/11(木) 00:24:05 JcRpT/xY0


帰路を歩く最中、同じく道行く生徒達がエルメロイⅡ世へと笑顔で声をかけてゆく。
皆、その表情に不安の色はない。
世間で起きている事件など、意に介していない……極めて平凡な日常を送っているように見える。
少し前までなら、それに違和感など何も覚えなかっただろう。

しかし……今になって考えてみれば、これはやはり異常だ。
恐らくは今朝の一段とひどい頭痛がきっかけだろう。
あれから、徐々に違和感と気付きが拡がりつつある。
思えば今日の報道に限らず、昨日までの出来事にもどこか引っかかる点はあった……今ならはっきり分かる。
まるで、日常が大きく変化することを恐れているかのように見える。
誰も彼もが、社会に影響を与えるであろう問題を意図的に隠しているかのように見える。


まるで……■杯戦■における魔■の秘匿と同じだ。


(……なんだ。
 何かが引っかかる……まるでノイズがかかっているテープの様に……断片的に……!)


次々に、この違和感に繋がっているであろう謎の光景が浮かび上がってくる。
しかしどこか靄がかかった様な、肝心なところが分からないものばかりだ。
せめて、後少しだけでいい。
もう少しはっきりとしてくれれば、そこから全てが繋がり思い出せるような気がしてくる。



後1ピース……記憶を取り戻す切欠があれば。



(……ん?)


その時だった。


445 : ロード・エルメロイⅡ世&  ◆TA71t/cXVo :2016/02/11(木) 00:24:26 JcRpT/xY0
ふと視線を正面からずらし、路地裏に繋がる道へと視界を向けると……そこに何かが見えた。
薄暗く狭い道の中で、もぞもぞと動く影―――人影だ。
それだけならば特に気にする事もなかったのだが、エルメロイⅡ世にはその影が唯の通行人だとは思えなかった。
何故なら……


(あれは……誰かを、引きずっている……?)


その人影は、もう一つあったのだ。
倒れこんでいる、ピクリとも動く様子の無い者を……もう一人が、奥へ奥へと引きずっている様に見える。
傷病者を運んでいるにしては、何か妙だ。
普通は人通りの多い方に連れて来る筈だし、そもそも大声で助けを呼ぶのではないか?
なのに、それがないという事は……あの引きずっている人影は、その人物―――恐らくは死体をどこかへ隠そうとしているのではないか?


「…………」


エルメロイⅡ世は、その暗闇を凝視しながら思案した。
学園長が告げた殺人事件の話もある。
完全に同一のものかまでは分からないが、少なくともこれがまともな日常からかけ離れた事柄なのだけは事実だ。
そう……ここから一歩踏み出すということは、日常からの解脱を意味する。
そうなればきっと、平穏な日々には恐らく二度と戻れないだろう。
下手をすれば、命の危険さえあるかもしれない……それでもいいのか。


(……そんなの……答えなど決まっている……!)


エルメロイⅡ世は、力強く闇へと足を踏み入れた。
如何に平和で何事もない日常と言えど、それは違和感だらけの偽りだ。
そんなどうしようもない世界で惰性的に日々を過ごすなど、どうしてできようか。

もしそれを良しとしてしまえば、きっとライダーに―――イス■ン■ルに笑われてしまう。
共に■杯戦■を戦い抜いてきた偉大な王に、顔向けができなくなってしまう。
そんな情けない真似が、どうしてできるというのだ。



「おい、そこのお前……何をやっている!」



そして、しばし歩を進めた後。
闇に潜む人物を視界に完全に捉えると同時に、エルメロイⅡ世は大声で呼びかけた。
その声に反応し、ビクリと人影が震え、動きを止める。
この時、エルメロイⅡ世は冷静に次の動きを考えていた。
相手がここで慌てて逃げ出す様ならば、すぐに追いかけ捕まえる……無論、逃げ切られる可能性はある。
しかしその場合、相手は引きずっていた死体をこの場に残す……決定的な証拠を残すという致命的なミスも犯す事になる。
そうなれば、後は警察にでも通報して簡単に追い詰められるだろう。
また、逆にこちらに対し牙を剥くならば、その時は逆に元の開けた場所へと全力で走るのみだ。
幸い、相手との距離は十分に離れている……そうなるよう、計算して声をかけた。
これなら例えこの相手にプロの陸上選手並の速力があったとしても、人のいる場所ぐらいまでならどうにか逃げ切れる自信があった。
エルメロイⅡ世は前方に意識を集中させ、慎重に相手の出方を見やる。


この時、エルメロイⅡ世の考えた動作はこの場における最適解と言えた。
彼の身体能力や状況を考慮すれば、恐らく他に打てる手もないだろう。


446 : ロード・エルメロイⅡ世&  ◆TA71t/cXVo :2016/02/11(木) 00:24:42 JcRpT/xY0

しかし……一つだけ、彼には誤算があった。



「……グァァァァァアァァァァァッ!!」


それは、相手が同じ人間ではなく……人知を超えた狂戦士であったという事だ。


「なっ!?」


大きな呻き声を上げると共に、その男はエルメロイⅡ世に肉薄してきた。
それはプロの陸上選手どころじゃない、信じられないスピードだった。
あまりにも予想を超えた展開に、エルメロイⅡ世は驚き体を硬直させてしまう。
そしてそれは、決定的とも言える隙だった。


―――ドゴォッ!!


「ガ……ァッ!?」


男の振り上げた拳が、胴体に真っすぐに突き刺さり、その身を打ち上げた。
人間が繰り出したものとは到底思えない、まるで大型車両に突っ込まれたのではないのかと錯覚すらしてしまう程の衝撃だった。
そして勢いよく壁に叩きつけられ、エルメロイⅡ世は苦悶の声を上げた。


「……ファック……何なんだよ、この化物は……!!」


とんでもない馬鹿力とスピード。
人間の領域をはるかに超えているその恐るべき身体能力に、たまらずエルメロイⅡ世はスラング混じりの言葉を吐いた。
視界はぼやけており、焦点は定まっていない。
衝撃でどこかを切ったのだろうか、口内には血の味が広がっている……はっきり言って最悪だ。
そして目の前の怪物は、これだけで許してくれるつもりはないらしい。
血走った目でエルメロイⅡ世の姿を見つめ、再び拳を握り締めようとしている。


447 : ロード・エルメロイⅡ世&  ◆TA71t/cXVo :2016/02/11(木) 00:25:11 JcRpT/xY0

(ふざけるなよ……こんなところで、終わるなんて……!)


こんな形で、訳もわからないまま死ぬなど冗談じゃない。
自分は、まだこんな所で倒れるわけにはいかないのだ。


(私は……誓ったんだ。
 『あいつ』に相応しい臣下になると……生きて、その生き様を語り継ぐと……!!)



果たさねばならない約束が……誓いがあるのだ。



「こんなところで……終わってたまるか!!」






共に戦場を駆け抜けた、友との……かけがえなき王との誓いが……!!


448 : ロード・エルメロイⅡ世&  ◆TA71t/cXVo :2016/02/11(木) 00:25:33 JcRpT/xY0


「グウウゥッ!?」


その瞬間だった。
エルメロイⅡ世の手の甲より眩い閃光が走り、狂戦士の視界を塞ぎその動きを止めたのだ。
狂戦士は突然の出来事に対し、驚きの呻き声をただただ上げている。


「……フ……」


その一方。
対するエルメロイⅡ世は、静かに口唇を釣り上げ……歓喜の顔で、笑っていた。


「全く……どうして、今の今まで……こんな大事なことを忘れていた……!!」


ようやく思い出す事ができた。
閃光を放つ手の甲を見つめながら、エルメロイ二世はそうはっきりと宣言した。
ようやく今、全てのピースが埋まった。
心の奥底に封じられていた、偽りの日々に押し退けられていた大切な記憶が……全て、戻ってきたのだ。


『彼』と共に駆け抜けた、あの日々―――第四次聖杯戦争の記憶が!



「情けない姿を見せてしまったものだ……こんな事では、まだまだ臣下として失格だな」


やがて、光が収まった時……エルメロイⅡ世の手には、確かに刻み込まれていた。
かつて冬木の地を踏みこんだ時に宿したのと全く同じ……聖杯戦争のマスターたる証、三画の令呪が。


そして、彼は……力強く、その名を呼んだ。





「来い……ライダー!!」


449 : ロード・エルメロイⅡ世&ライダー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/11(木) 00:25:56 JcRpT/xY0


◆◇◆




エルメロイⅡ世が名を呼ぶと共に、その男は姿を現した。
高身長のエルメロイⅡ世をも上回る巨躯を持つ、屈強な偉丈夫。
彼はその手に持つ剣を一閃し、軽々と目の前に立つ狂戦士を切り裂いてのけた。
何と力強い一撃だろうか。


(……ああ……昔のままだ。
 本当に……あの頃と、同じ……)


夢の中でずっと見てきた……ずっと追い続けてきた背中。
それが今、遂に目の前にあった。
こんなに喜ばしい事が、他にあるだろうか。


「……ふむ。
 召喚されていきなり、目の前に敵がいるとは驚かされたが……」


偉丈夫は小さくため息をつき、手にしていた剣を鞘にしまいこんだ。
そして、静かに振り返り……背後に立つエルメロイⅡ世へと、ようやくその顔を見せた。
彼の記憶の中と、何一つ変わっていない……心強きその面貌を。


「さて……問おう。
 お前が、余を呼んだマスターか?」


ライダーのサーヴァント―――征服王イスカンダル。
彼は再び、ロード・エルメロイⅡ世―――ウェイバー・ベルベットの元に現れたのだった。


「……そうだ、ライダー。
 お前のマスターは、私だ……そして……!」


聖杯戦争におけるサーヴァントとは、英霊の座に宿る本体の写し身。
本来サーヴァントとして行った行動については、英霊本体には記録こそあれ記憶はされぬ事。
仮に、立て続けに聖杯戦争に参加したサーヴァントがいたとしても、前回の事などまるで覚えてはいない。
故にこのライダーには、以前に第四次聖杯戦争に参加した記憶など存在していない。
かつて、ウェイバー・ベルベットと共に戦場を駆け抜けた記憶など当然ありもしない。
それはエルメロイⅡ世自身、わかっていることだった。

それでも……それでも尚、彼はその頭を垂れずにはいられなかった。
溢れ出る涙を、抑えることができなかった。


「……会いたかった……王よ……!!」


こうして……かけがえなき王と再会できた事実には、何ら変わりはないのだから。


450 : ロード・エルメロイⅡ世&ライダー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/11(木) 00:26:25 JcRpT/xY0


◆◇◆




「成る程のう……会っていきなり頭を下げられた時は何事かと思ったが、そういう事情があった訳か」


それからしばらくして。
一度路地裏を離れ自宅へと戻ったエルメロイⅡ世は、困惑している様子のライダーに事情を説明した。

自身がかつて、冬木の地で行われた第四次聖杯戦争に参加していたマスターである事を。
そこで他ならぬライダーを召還し、共に戦場を駆け抜けた事を。
最期の戦いにおいて、王に仕える臣下となった事を。
覚えている限りの全てを、彼は話したのだ。

ようやく納得がいったという顔をして、ライダーはエルメロイⅡ世の姿をじっくりと見やる。
一応頭の中を掘り返しては見るが……やはり聖杯に招かれたサーヴァントという都合上か、記憶の中に彼の様な人物はいなかった。
仕方がないといえばそこまでだが、臣下として自ら頭を垂れた人物に覚えがないというのはどうも悔しい気はある。
しかし……身に覚えのない記憶といえど、決して悪い気はしない。


「それで、坊主。
 お前はこれからこの聖杯戦争に対し、どう向き合うつもりだ?」
「……おい、ちょっと待った。
 その前に突っ込みたいことがあるんだが、その呼び方は何だ?」
「何だと言われても、坊主は坊主だろう?
 余から見れば、お前なんぞまだまだ若造ではないか」


その返答に、エルメロイⅡ世は額に手を当てて盛大にため息をついた。
そうだ、こいつはこういう奴だった。
この性格に何度振り回されたことか……思い出すと、胃が痛くなってくる。
十年以上の月日が経ち、少なからず自分も成長はした筈なのだが……それでもこの男に振り回される運命は、やはり変わらないのか。
召還早々、そんな確信にも近い予感を彼は抱かずにいられなかった。


「……ファック」
「ん? なんか言ったか、坊主?」
「いや、もういい……それでライダー。
 これから私達がどう動くか、だったな……まず結論から言おう。
 私は、この聖杯戦争に素直に乗るべきではないと考えている」


気を取り直し、兎に角今後の対応について話をすることにした。
エルメロイⅡ世の出した結論は、この聖杯戦争に積極的に参加するのは危険だというものだった。
理由は言うまでもなく、彼自身がかつて冬木の第四次聖杯戦争に参加した事にある。


451 : ロード・エルメロイⅡ世&ライダー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/11(木) 00:26:45 JcRpT/xY0

「この聖杯戦争は、私が体験してきたそれとは明らかに違う。
 冬木以外の地で執り行われる事もそうだが、それ以上に参加者の選別方法や街の住民達の反応はあまりに奇妙だ」


東京に在住しているならば兎も角、遠く離れたロンドンは時計塔にいた自分が、気がつけばこうして記憶を奪われ招かれていた。
そして、記憶を取り戻すことでマスターとしての資格を得た……参加者の選別方法からして、どこかおかしい。
更に言えば、この東京の地そのもの……そこに住む人々の様子も異常だ。
生きた人間ではない、まるで与えられた役割を忠実に演じている……よく出来た人形の様なものに見える。


「成る程……つまり、こう言いたい訳か?
 この聖杯戦争は、何者かが本来の目的を遂げる為に仕組みあげた企みだと」
「ああ、そうでなければこの様な奇妙な舞台が作り出された説明がつかない。
 もっとも、誰の思惑でもなく聖杯それ自体の意思によるモノという可能性も否定は出来ないが……それは希望的観測すぎるか」
「細かい事など気にせず、勝ち残り聖杯を手にしたら全てが分かるとも思うが……
 まあそれで何者かの思惑に見事嵌められてしまうというのも、確かに問題か」


少なくとも現時点では、この聖杯戦争に何か作為的なものがあると考えるのが妥当だ。
故に、今は状況を見極める必要がある。
この聖杯戦争が如何なるものか、それを知らない限り……安易な行動をとるべきではない。
そう、エルメロイⅡ世は慎重に判断していたのだ。


「ああ、だからしばらくの間は情報収集に徹したいと思う。
 はっきりとした事実を確認できるまで、積極的に戦いに乗るべきではないだろう」
「あい分かった。
 余とて聖杯にかける願いはあるが、そこにきな臭いものがあると言うのなら流石に考えねばなるまい。
 坊主の言うとおりに動こうではないか」


無論、降りかかる火の粉は払わねばならないだろうが。
ライダーも不満そうな表情を見せていないところからして、どうやら自分の意見に納得はしてくれているようだ。
如何に豪胆且つ自由奔放な征服王といえど、流石にこの状況下ではということか。
エルメロイⅡ世は胸を撫で下ろし、ついつい安堵のため息を漏らしてしまう。
昔の自分ならば、この男に意見をしたところでなかなか聞き入れてもらえなかったものだが……
こうしてこの男に説得力の持たせられる言葉を吐けるようになったとなると、自分も少しは成長したかという事か


452 : ロード・エルメロイⅡ世&ライダー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/11(木) 00:27:53 JcRpT/xY0


「では坊主よ、早速街へと繰り出すぞ!」
「……は?」


ちょっと待て。
この男は今、なんと言った。


「おい、ライダー……何で今の話から、そう繋がる?」
「何でって、情報を集めると言ったのは坊主ではないか?
 ならばまずは、自らの足で市井を歩き歩き確かめねばなるまい。
 ほれ、分かったなら出かけるぞ」


……前言撤回だ。
この男を甘く見すぎていた。


「……お前なぁ!
 私は、慎重に動くべきだと言ったんだぞ!
 それがいきなり、サーヴァントを引き連れて街中へ堂々と姿を現して、どうするんだよ!?」


やっぱりこの男に意見を聞き入ってもらうのは、並大抵のことではない……
ああ、昔からそうだった。


「やるならせめて、霊体化をしろ!
 そのまま外へ出るなよ!!」
「何を言っておるか。
 空気の流れ、人の動き、土地の景色。
 全てをこの身で感じなければ、調査の意味がないだろう?」
「だあぁぁ!!
 待て、待ってくれ!
 頼むからそのまま外へ出るな、出るならせめて着替えろぉっ!!」


453 : ロード・エルメロイⅡ世&ライダー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/11(木) 00:28:23 JcRpT/xY0



◆◇◆




かくして、二人の主従は再び聖杯戦争の舞台に降り立った。
いつか共に、王と戦場を駆け抜ける。
そんなウェイバー・ベルベットの抱いていた夢は、思いもよらぬ形ではあったものの、こうして結実したのであった。
かつてと同じ、実に前途多難な始まりだ。
またしてもこの王には、酷く振り回されるに違いないだろう。


それでも……彼の心は、この偶然がもたらした奇跡を前に、不思議と踊らずにはいられなかった。


454 : ロード・エルメロイⅡ世&ライダー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/11(木) 00:28:59 JcRpT/xY0
【サーヴァント】

【クラス】
 ライダー@Fate/Zero

【真名】
 イスカンダル

【属性】
 中立・善

【パラメーター】
 筋力:B 耐久:A 敏捷:D 魔力:C 幸運:A+ 宝具:A++

【クラススキル】
対魔力:D
 一工程による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

騎乗:A+
 乗り物を乗りこなす能力。
 獣ならば竜種を除くすべての乗り物を乗りこなすことが出来る。


【保有スキル】
カリスマ:A
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。
 ライダーのそれは、人間として獲得しうる最高峰の人望。

軍略:B
多人数を動員した戦場における戦術的直感能力。
 自らの対軍宝具行使や、逆に相手の対軍宝具への対処に有利な補正がつく。

神性:C
 神霊適性を持つかどうか。
 ライダーは明確な証拠はないが、ゼウスの息子と伝えられている為にこのスキルを持つ。

【宝具】
『神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)』
 征服王イスカンダルがライダーのクラスとして現界を果たした所以の宝具。
 二頭の『飛蹄雷牛』(ゴッド・ブル)が牽引する戦車であり、地面のみならず空までも自らの領域として駆け抜ける事が可能。
 神牛の踏みしめた跡にはどこであれ、雷が迸る。
 ライダーが持つキュプリオトの剣を振るうと空間が裂け、どこであろうと自在に召喚ができる。
 戦車は各部のパーツを個別に収縮・縮小が可能であり、走破する地形に合わせた最適な携帯を常に取ることができる。
 また、一見無防備に見える御者台には防護力場が張られている為、少なくとも血しぶき程度なら寄せ付けることはない。
 地上で通常使用をした場合の最大時速は約400km程であり、真名開放無しでも対軍級の威力・範囲を発揮できる。

『遥かなる蹂躙制覇(ヴィア・エクスプグナティオ)』
 ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:2〜50 最大捕捉:100人
 『神威の車輪』完全解放形態から繰り出す強烈な突進・蹂躙走法。
 雷撃を迸らせる神牛の蹄と車輪による二重の攻撃に加え、雷神ゼウスの顕現である雷撃効果が付与される。
 
『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』
 ランク:EX 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
 ライダーが誇る最強宝具。
 熱風吹き抜ける広大な荒野と大砂漠が広がる固有結界を展開し、彼が生前率いた英霊豪傑達からなる近衛兵団を連続召喚する。
 ライダー自身は魔術師ではないのだが、彼の仲間達全員が同じ心象風景を共有し、全員が術を維持する為に行使が可能となっている。
 召喚された臣下達は皆英霊として座にあるサーヴァントであり、全員がランクE-の単独スキルを持つ。
 発動には大きな魔力消費が必要なものの、発動さえしてしまえばその維持は軍勢全員の魔力で行われるので、その為の消費は少なくてすむ。
 ただしその特性上、軍勢の総数が減るに従って魔力負担が増加していき、過半数を失えば強制的に結界は崩壊する。
 また、一騎程度であれば結界外へ現界させることも可能であり、ライダーは生前の愛馬であるブケファラス等を主に呼び出している。

【weapon】
『キュプリオトの剣』
 ライダーの愛剣であり、神威の車輪を呼び出す際に必須となる鍵でもある。
 普段は腰の鞘に収めており、神威の車輪を扱えぬ際には専らこの剣を使い戦闘を行う。

【人物背景】
 古代マケドニアにおいて、『征服王』の異名で各地を次々に制圧・統一してきた覇者。
 一般的にはアレクサンダー大王とも呼ばれている。
 大柄な見た目をした偉丈夫であり、その外見通りの豪放磊落な人物。
 他者を顧みることをしない暴君的な一面を持つものの、その欲望が結果的に人々を幸せにしてきた奔放な王。
 細かいことを気にしない破天荒な性格ながらも、言うこと自体にはしっかりと筋が通っており、
 戦闘においては極めて油断のない立ち回りをするなど、普段の行動からは想像しにくい程に頭は切れる。
 『最果ての海(オケアノス)』を目指して東方遠征を行い、道中の国々を蹴散らしては配下に加えてゆく
 快進撃を見せるものの、東の果てに辿り着く前に病に倒れその生涯を終えた。
 現界を果たした今は世界征服を夢見ているものの、それは自分の力で成し遂げるものであり
 聖杯に託す夢とは考えていない。

【サーヴァントとしての願い】
 世界征服を成し遂げるため、確固たる命として世に君臨すべく受肉を果たす。
 ただし、聖杯そのものが怪しい代物であった場合には考える。


455 : ロード・エルメロイⅡ世&ライダー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/11(木) 00:29:16 JcRpT/xY0
【マスター】
ロード・エルメロイⅡ世@Fateシリーズ

【マスターとしての願い】
 聖杯そのものにかける願いはない。
 ライダーの臣下として再び、戦場を駆け抜けたい。

【能力・技能】
 魔術師としては特に秀でた面もなく、極めて平凡な力量を持つ。
 しかしその一方で魔術師としての知識は恐ろしく深く、研究者としての洞察力・分析力は極めて高い。
 特に他人の持つ才能を見出し鍛え上げる事に長けており、教育者としては超一流の逸材。
 また、とてつもない強運の持ち主でもある。

【人物背景】
 魔術教会の事実上の総本山である時計塔に君臨する、十二人の『君主(ロード)』の一人。
 現代魔術科を治める極めて優秀な教師であり、数多くの優秀な弟子を育て上げてきた。
 彼が弟子に声をかければ、一夜にして時計塔の勢力図が塗り替えられると言われている。
 しかしながら、彼本人はその事にほとんど興味を持っておらず、魔術師として中々大成できないでいる自分にイライラしている。
 一般的な魔術師と違い現代の科学技術にもある程度精通しており、
 古いやり方であろうと新しいやりかたであろうとそれが有効ならば進んで取り入れる柔軟な発想を持っている。
 本名はウェイバー・ベルベットであり、かつて冬木で行われた第四次聖杯戦争にマスターとして参戦していた。
 征服王イスカンダルと共に終盤まで生き残るも、英雄王ギルガメッシュとの決戦に敗北し脱落する。
 この際にイスカンダルから臣下として認められ、その生き様を生涯語り継いでゆく事を誓った。
 その後、この聖杯戦争で師のケイネス・エルメロイ・アーチボルトが敗退した事でアーチボルト家が没落した事に責任を感じ、立て直しに奔走。
 見捨てられたエルメロイ教室を受け継ぎ奇跡的に三年間存続させることに成功すると、
 エルメロイの次期当主であるライネス・エルメロイ・アーチゾルテに呼び出され、ケイネスの件を盾に
 「エルメロイ派の借金を返済する」「エルメロイの源流刻印を修復する」「エルメロイの君主を代行する」ことを要求される。
 これを受け入れたウェイバーは、彼女よりロード・エルメロイⅡ世の名を贈られるとともに、彼の義兄となった。
 ちなみに第四次聖杯戦争時に経験した時からテレビゲームが大の趣味であり、暇な時には自室に篭ってプレイに勤しんでいる事も多い。

【方針】
 この異質な聖杯戦争の正体を探る。
 その為に情報を集めたいが、自由奔放すぎるライダーをなるべく抑えた上で行動したい。
 しかし同時に、そんなライダーと再び歩める事を心の中では嬉しく思っている。


456 : ◆TA71t/cXVo :2016/02/11(木) 00:29:32 JcRpT/xY0
以上で投下終了です。


457 : ◆TAEv0TJMEI :2016/02/11(木) 02:54:05 RU3jR4bQ0
投下します


458 : ◆TAEv0TJMEI :2016/02/11(木) 02:56:31 RU3jR4bQ0
(何なんだよ、なんだんだよ、ちくしょう!
一体何が起きたっていうんだ……。
俺は、俺は次期都知事なんだぞ!)

全てが、全てが上手くいくはずだった。
俺は英雄になれるはずだった。

東京都都知事……その息子。
それが俺だ。
なのに周りの奴らはちっとも俺のことを見やしねえ!
俺は都知事の息子なんだぞ! 次期都知事なんだぞとどれだけ言っても、あいつらは俺のことを馬鹿にしやがる。
やれ知事は世襲制じゃないとか、やれ、お前なんかが選挙で当選するはずがないだとか。
ごちゃごちゃごちゃごちゃうっせええよ!
てめえら誰のおかげでこの都市で平和に過ごせてると思ってるんだよ。
俺の、俺の親父のおかげじゃねえか!

そんな時だった。
俺の街を荒らす連続殺人犯なんてのが現れたのは。
そいつの前には警官たちも役に立たなくて、父上たちも随分頭を抱えていた。
俺だってむかついたさ。
俺の街で好き放題しやがってって。
でもこうも思ったんだ。
こいつはチャンスじゃないかって。
周りに俺のことを認めさせるまたとない機会じゃないかって。

だってそうだろ?
警官や親父たちでさえ手を焼いて捕まえられない犯人を、こう、俺がばばーっとぶちのめす!
すげえ手柄じゃねえか!
しかもそれを都知事の息子の俺がやるんだ。
父上や母上も鼻高々で、一石二鳥じゃねえか!

幸い、俺には剣術の心得があった。
都知事の息子だからな。
ガキの頃誘拐事件にあったらしくて、以降護身用に習わされていた。
らしくて、というのは、どうもその時のショックで、昔の記憶が曖昧になってるからだ。
この東京って街にどうも違和感を感じちまってるのは、きっとそのせいなんだろう。

ともかく、だ。

そうと決まれば話ははええ。
俺はうちに飾られていた美術品だか骨董品だかの剣をこっそり借りてくことにした。
あくまでも、こっそり、だ。
母上は誘拐騒ぎもあってどうも過保護になっちまってからな。
訳を話せば止められちまうだろうし、まあ仕方ねえさ。
うちにあんだから俺の物みてえなものだし、大丈夫だろ!
そうさ、手柄さえ立てちまえば、母上にだって、もう俺は立派になって心配無用だって分かってもらえっしな!
そんなことを考えながら意気揚々と家を出るまでは順調だったんだが……。

くそ、ケチがつき始めたのは家のもんたちに見つかったとこからだ。
ばれないようにわざわざ深夜に家を出はした。
警備の奴らの配置だって頭には入れてたんだ。
だから見つかったのはどちらかというと偶然で、だけど必然だった。

親父たちだって連続殺人犯に手をこまねいていたわけじゃなかったんだ。
捕まえようと必死に部下を動員していて、同じ犯人を追っかけてたから、かち合うことになっちまった。


459 : ◆TAEv0TJMEI :2016/02/11(木) 02:56:56 RU3jR4bQ0

「くそ、くそ、くそ、くそ!
 離せ、離せよ! てめえ親父の部下だろが! 俺の言うことを聞けよ!」

家に連れ戻されちまえばせっかくの作戦が水の泡だ。
ばれちまった以上、次からは監視もついたりして、抜け出すのが大変になるだろう。
だから俺は必死に抵抗して、剣を振り回して、なんとか俺を捕まえようとした部下たちの手から逃れて。
そのまましつこく追ってくるあいつらから逃げるために、夜の街を走り回って。
それから……それから……。

ドン、と。俺は“そいつ”とぶつかった。

追ってくる部下たちを、後ろばっかり見てたんだ。
前に誰かいるなんて気づくはずねえだろ。
避けなかった“そいつ”が悪いに決まってんだろ。

なのに吹き飛ばされたのは俺だった。
“そいつ”は微動だにせず、俺だけがぶつかった勢いのままに弾かれ、地面を転がる形になっちまった。

「てめえ、何すんだよ、俺は次期都知事だぞ!」

転んだ時に擦りむいちまった腕の状態を確認しながら相手を見もせず訴える。
別にこのくらいの傷大したことないが、むかつくのには変わりない。
相手だけ無傷なのや、謝ろうともせず無言のままなのも腹立たしい。
もっと言ってやろうかと思えば、

「いたぞ、坊ちゃんだ!」

せっかく撒いたはずの親父の部下たちに追い付かれる始末だ。

「あああー! 全部てめえのせいだぞ! 聞いてんのか、薄らトンカチ!」

それもこれも全部こいつが悪い!
その面を覚えて、後で親父に言いつけてやる。
そう思い、顔を上げ、はじめて“そいつ”を直視して気づく。
相手は、俺がぶつかった“そいつ”は――全身鎧を着こみ、手に物々しい刀を手にした不審者だった。

……は?

な、なんだよこいつは!? こんな、こんな街中で鎧とかおかし……いのか?
いや別におかしくはないんじゃねえか?

「……そうか、某のせいか。よかろう、ならばお主の悩みの種を、取り除いてやろう」

俺が訳も分からないことに混乱しているとその鎧野郎は何を勝手に納得したのか、その手の刀を振り上げる。
狙う先にいるのは俺を追ってきた部下たち。
殺人犯の調査を任されてただけあって、部下たちも武装していて中には飛び道具まで手にして、鎧野郎に向けてる者もいて。
いいぞ、やっちまえ、この不審者に痛い目見させて、あ、けど、とどめは俺に刺させろと命令するよりも早く。

地面を転がったままだった俺の上を何かが――多分衝撃波が――通り過ぎたのを感じた後、親父の部下たちは細切れになっていた。

「う、うわああああああああああああああああああああああ!!」

その“どこか見慣れた”光景に俺は絶叫する。


460 : ◆TAEv0TJMEI :2016/02/11(木) 02:57:40 RU3jR4bQ0

「何を嘆く必要がある。お主が望んだことだぞ?」

違う、違う、俺は、俺はこんなこと望んでなんかいない!

「違わないな。お主のせいだ。お主を追ってきたせいでこやつらは死んだのだ。なあ、そうであろう?」

答えるように嗤う鎧野郎の刀が怪しく紫色に光る。

「我が宝具は人のストレスを力とする妖刀。ふむ……こやつらはどうも普段からお主に相当手を妬かされていたようだな。
 その果てに、お主のお守りで死んだとあれば、ハッ、恨み言もはきたくなるわ!
 分かる、分かるぞ。某も臆病なマスターに自分は隠れてるからお前は一人で宝具の糧を得てこいとこき使われてるとこだからな!
 ほれ、お主もこやつらの主だと言うのなら、末期の言葉に耳を貸すがよい!」
「っがあああああ!」

鎧野郎に足蹴にされ、屍の山に蹴り込まれる。

「ひいっ!」

慌てて立ち上がろうと手を付くも、ぬちょり、とした感触とともに、ぐちょりと何かが潰れて。
それは生首で、生首で、生首で、生首で。

――お前のせいで俺たちは死んだんだ

違う!

――坊ちゃんを追ってきたせいで俺たちはこんなことに

追ってこいだなんて誰も頼んでなんかいねえ!

――無能は無能で大人しく家でふんぞり返って俺たちに任せてればよかったんだ。

うるせえ! おまえたちが俺をそういう風に扱うから! 俺はこうするしかなかったんだ!

――お前が悪いんだ。お前が要らないことをしようとしたせいで

要らないことってなんだよ!? 俺は東京を守ろうとしたんぞ!? いいことだろ!? 俺は、俺はいいことをしようとしてたんだ!

「そうだ、俺は悪くねぇっ! 俺は、」



――愚かなレプリカルーク――



「俺、は?」


461 : ◆TAEv0TJMEI :2016/02/11(木) 02:58:36 RU3jR4bQ0

――あなたは兄に騙されたのよ。そして、アクゼリュスを支える柱を消してしまった――

な、なんだよこれ。誰だよ、こいつら

――そうですわね、アクゼリュスは……消滅しましたわ。何千という人間が、一瞬で……――

どこだよ、アクゼリュスって……

――……ブリッジに戻ります。ここにいると、馬鹿な発言に苛々させられる――

これは、俺の?

――変わってしまいましたのね…記憶を失ってからのあなたは、まるで別人ですわ……――

俺は……記憶を失っていた……?

―― イオン様! こんなサイテーな奴、ほっといた方がいいです――

そうだ、俺はあの時、言われるがままに街を、一つこの手で……

――ルーク…あんまり幻滅させないでくれ……――

それでみんな、全部全部俺のせいだと俺を責めて

――少しはいいところもあるって思ってたのに……私が馬鹿だった――

俺の傍からいなくなって

ああ、だから、なのか。

だから俺は捨てられたんだ。

こんな東京なんて訳のわからない街に記憶を封じられて島流しにされたんだ。

俺が悪いから。全部、全部俺が悪い「違う、違うよ、ルーク兄ちゃん! ルーク兄ちゃんは悪くない!」

え……。


462 : ルーク・フォン・ファブレ&バーサーカー  ◆TAEv0TJMEI :2016/02/11(木) 02:59:16 RU3jR4bQ0

「な!? く、しまった、格好のストレス吸収源だと思い遊び過ぎたか! 
 よもや貴様、街の人間たち同様レプリカと思いきやマスター候補であったとは!」

気がつくと俺の盾になるかのように、鎧野郎の前に巨大な真っ白いライオンがいて。
その背から飛び降りる人影があった。
全身水色に光っているそいつは気味がわりいそいつは、イオンよりもさらに幼いガキで。

――母……ちゃん……助け……て……父ちゃん……たす……け……――

俺のせいで死んだあのガキを思い出し、目を合わせることができなかった。

「急に出てきておまえなんかに何が分かるんだよ。知った口で同情してんじゃねえよ!」
「分かるよ、マスター。僕も一緒だから。僕も宇宙を救おうとがんばったんだ。
 なのに凱兄ちゃんやみんなは、僕のことを分かってくれなかった!
 信じてって言ったのに! ごめんなさいって謝ったのに!」

な、なんだよそれ。俺と同じじゃねえか。
こいつなら俺のことを分かってくれるのか?
こいつなら、俺をちゃんと見てくれるのか?

「だから分かるんだ、ルーク兄ちゃんの気持ちが。
 悪いのはルーク兄ちゃんじゃない。ルーク兄ちゃんのことを分かってくれなかったみんなの方だよ!」
「そ、そうだ! そうなんだ、俺は悪くねえ、悪くねえんだ!
 でも、アクゼリュスは落ちちまって、俺のせいでもあって、俺は悪くねえけどでも、そうは思ってもらえなくて」

鎧野郎をライオンに任せて近づいてきたガキが俺の手をとってくれる。
水色の光が俺を包み込み、なんか気持ちが少し軽くなっていく。
けどそれだけじゃ脳裏にこびりついたあいつらの目や言葉は消えてくれなくて。
楽にはなっても許してもらえなかったというその事実からは逃れられなくて。

「大丈夫だよ、ルーク兄ちゃん。
 街を救おうとしたルーク兄ちゃんは間違っていなかった。
 失敗しちゃったけど、なら今度こそちゃんと救えばいいんだ!」

なのにガキはとんでもないことを言ってくる。

「お、おまえ何を言ってんだよ。俺に次なんて……」
「僕たちサーヴァントのマスターになって聖杯戦争に勝ち抜けば、万能の願望機、聖杯が手に入るんだ!
 多少犠牲は出ちゃうけど、でも、それを使えば失敗だってなかったことにできる! 宇宙だって救える!」

俺には信じられなかった。
信じたかったけど、ヴァン先生のことがちらついて頭から離れてくれない。

「嘘だろ!? そんな都合のいい話なんて信じられっかよ!
 おまえも先生みたいに俺を騙して……」
「信じて、ルーク兄ちゃん! 言ったよね、僕はルーク兄ちゃんのサーヴァント、奴隷だって。
 ルーク兄ちゃんの手に令呪がある限り僕たちは裏切れないんだ!」

れ、令呪?
見れば確かにサーヴァントとやらが指差した俺の手には奇妙な紋様が刻まれていた。


463 : ルーク・フォン・ファブレ&バーサーカー  ◆TAEv0TJMEI :2016/02/11(木) 02:59:34 RU3jR4bQ0

「じゃ、じゃあ本当に……本当になかったことにできるのか!?
 いや、それだけじゃねえ。アクゼリュスを救って今度こそ俺は英雄になれるのか!?」

俺なんかが、戦争を止めようとして失敗した俺が、よく分かんない戦争に勝てるのか?

「なれる、なれるよ! 勇気を出すんだ、ルーク兄ちゃん!
 ルーク兄ちゃんは英雄になれる。僕が、最強の勇者王が保証する!」
「勇者、王……!?」

自信を持てないままでいる俺の背を押すよう何処かから取り出したでかい星形の何かを手に高々と宙を跳び、

「そう、これが最強の勇者王、その一端! フューーーーーーーーージョン!!!!」
 
そのまま、白いライオンに自分から喰われたと思った次の瞬間!

「ガイッッッガァァァァァ!!!!」

ライオンが人型の巨人に!?

「馬鹿な、その宝具は!?」
「はい。お侍さん、その宝具はゾンダーメタルのように……ストレスを力にするものですよね?
 なら勇者王になるまでもありません。ガイガーで、十分です」

獅子の勇者の威容に圧されるように鎧野郎が後ずさる。
俺は――逆だった。
こいつとならいけると、そう思った。

「く、な、舐めるなあああああああああああああ!」
「ガイガー! クロウ!!」

その予想は鎧野郎が巨人の爪に為す術なく引き裂かれたことで確信へと変わる!
いける、この力ならいける!
こいつは先生と違って俺を裏切らないし、あいつらみたいに見捨てたりもしない!
そうだ、俺は今度こそ英雄になるんだ!
聖杯ってのを手に入れて、アクゼリュスを救い直して。
そうしたらあいつらだって俺のことを許して……だ、誰があいつらなんかに!
許してもらうどころじゃねえ、今度こそあいつらに俺のことを認めさせてやる!


464 : ルーク・フォン・ファブレ&バーサーカー  ◆TAEv0TJMEI :2016/02/11(木) 03:00:16 RU3jR4bQ0

【クラス】
バーサーカー

【真名】
天海護(レプリジン)@勇者王ガオガイガーFINAL

【性別】
男性

【パラメーター】
筋力E 耐久E 敏捷C 魔力A 幸運E 宝具A-

【属性】
秩序・狂

【クラススキル】
狂化:E
理性は残しているものの、目的のためなら手段を選ばなくなってしまっている。
また、狂化の対象は宝具にも及んでおり、自身のステータスを上げない代わりにギャレオンを狂化し、能力を底上げしている。

【保有スキル】

騎乗:C+
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、野獣ランクの獣は乗りこなせない。
ただし、後述のギャレオンについては騎乗可能。

破壊工作:C
戦闘の準備段階で相手の戦力を削ぎ落とす才能。
相手の懐に入り込み、重要な物を強奪することに特に長けている。
ただし、このスキルが高ければ高いほど、英雄としての霊格が低下する。

魔力放出:B
浄解モード。
自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。いわば魔力によるジェット噴射。
絶大な能力向上を得られる反面、魔力消費は通常の比ではないため、非常に燃費が悪くなる。

超能力:B
この世の法則に伴う何とも違う、超自然的な力。
バーサーカーは様々な特殊能力を持ち、念動力による攻撃からバリアによる防御、治癒、テレパスなど、できることは幅広い。
特に浄化能力に秀でているが、皮肉にも自身の力だけでは自らを浄化し狂化から脱するすることはできない。

勇気ある心:-
いかなる絶望的な状況においても、決して折れること無き勇者の証。
また、マスター及び自身が仲間と認めた者の『勇気』を魔力に変換して力を得ることができる。
狂化の影響で失われている今、彼は勇者ではない。

【宝具】

『勇気を育む命の宝石(Gストーン)』
ランク:-(A+) 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人

緑に輝く六角形の結晶体。命の宝石。浄解の補助に用いられたペンダント。
「無限情報サーキット」とも呼ばれ、それ自体が超高度な情報集積回路・情報処理システムである。
生きようとする意思、『勇気』の高まりに応じて、Gパワーと呼ばれる緑色の輝きのエネルギーを無尽蔵に放出する。
本来は複製であれど本物同様のランクを誇るのだが、勇気なきバーサーカーのそれはただの宝石にすぎない。


『簒奪されし王の僕(ガオーマシン)』
ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

ドリルガオー(戦車)、ライナーガオー(新幹線)、ステルスガオーII(宇宙用航空機)の三機のマシーンを召喚できる。
ガイガーとの合体や、ガオガイガーへのファイナルフュージョンも可能。
移動手段としてだけでなく、ステルスや地中潜行を活かしての潜伏・逃走にも使えるが、単騎での戦闘力は低めである。
尚、ガオーマシンはレプリカではなくイオンコーティングという技術で強化された本物を強奪したものである。


465 : ルーク・フォン・ファブレ&バーサーカー  ◆TAEv0TJMEI :2016/02/11(木) 03:01:38 RU3jR4bQ0


『天堕つる空白の獅子(ギャレオン)』
ランク:B- 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

バーサーカーを守る宇宙メカライオン。 そのレプリジン。
前足の爪によるギャレオンクロー、牙で噛み砕くギャレオンファング、
特殊震動発生装置による対バリア咆哮・メルティングウェーブを使用可能。
Gインパルスドライブによる飛行も可能となっている。
バーサーカーがフュージョンすることで、小型ロボット・ガイガーに変形することができる。


『夢幻の複製(パスキューマシン)
ランク:EX 種別:複星宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

そのため、暗黒物質を取り込むことで莫大なエネルギーを生み出す宝具。
情報処理システムを併せ持ち、上記の特性と合わせて他の宝具の強化や燃費の軽減、発動の鍵に用いることができる。
この宝具の力でバーサーカーはギャレオンとフュージョンできる。
実は星をも複製する物質復元装置の中枢回路だが、この宝具単体では生物の複製を作り出しても維持することはできない。
加えて、物質復元装置本体が存在しない状態での大規模な複製は魔力を一瞬で搾り取り死に追いやってしまうため不可能である。
またこの宝具の本格的使用=宇宙収縮現象を促進するため、リンクジョーカーにとってもいい迷惑である。

この宝具が破壊された時、この宝具により生み出されたバーサーカーたちは消滅する。


『勇気忘れし王の虚像(ガオガイガー)』
ランク:A- 種別:対城宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

かつて少年が憧れた最強の勇者王。
ガイガー状態の時、パスキューマシンの力で三機のガオーマシンとファイナル・フュージョンを行うことで合体することができる。
オリジナル同様、右腕部を高速回転させて射出するブロウクンファントム、左腕部で空間を湾曲させて防御空間を形成するプロテクトウォール、
膝に装備されたドリルで攻撃を行うドリルニー、防御フィールドを反転させ目標を捕獲・拘束するプラズマホールドなどが使用可能。
必殺技である真のヘル・アンド・ヘヴンも令呪一画に相当する魔力があれば放つことができる。
ただし原典にて使用が確認されていないためハイパーツールは全て使用不可能。
尚、マスターをステルスガオーIIに乗り込むことで、二人乗りが可能である。

複数の宝具の召喚・合体に際し、多大な魔力を必要とするが、特に『勇気』は必要ない。 それが最大の利点でもあり弱点でもある。


【weapon】
超能力による衝撃波など

【人物背景】
カインの息子。カインの遺産。カインの作りし破壊マシーンと称された少年、天海護――のレプリジン。
物質復元装置により偶発的に複製された存在であり、色素が全体的に薄いほか、浄解モード時の色が、オリジナルとは異なる水色になっている。

自分がレプリカであることを自覚しつつも、当初はオリジナルの天海護同様、勇気ある少年だったが敵に敗北し、洗脳されてしまう。
洗脳後は基本的な性格を残しつつも、目的のために手段を選ばない狡猾さと好戦性が先立つようになってしまった。
パスキューマシンやガオーマシンの奪取のために、多くの人々を騙し、傷つけ、遂には致命傷を負わせてしまう。
それでも正しいことのためには犠牲は仕方ないとした少年はかつて憧れた勇者と激突。
勇者王同士の戦いにもつれ込み、一時は優位に立つも、勇気ある心に敗北。
尚も勇者を騙し討しようとするも、偽物と看破した天海護の友だちの手で止めを刺されて消滅した。

洗脳から脱し、仲間を守り死んでいった他のレプリジンの勇者たちとは違い彼が自身を取り戻すことはなかった。
そのため、彼は勇者――英霊としてではなく、反映霊として座に登録されている。

【サーヴァントとしての願い】
どんな手を使ってでも聖杯を手に入れて“僕たちの”宇宙を救う。


466 : ルーク・フォン・ファブレ&バーサーカー  ◆TAEv0TJMEI :2016/02/11(木) 03:02:03 RU3jR4bQ0

【基本戦術、方針、運用法】
ステータスや豊富な数の宝具から窺い知れるように、その実態はバーサーク・ライダーと言うべきサーヴァント。
護はテレキネシスによる遠距離攻撃やバリアによる防御ができるため単体で戦えないこともないが、あまり強いとはいえない。
マスターも剣の素質はあり、超振動はサーヴァントにも通用しうるが呼び出された時期の都合上心身ともに未熟。
幸い、ガオガイガーの魔力消費の重さはパスキューマシンが補ってくれる上に、勇気も必要ないため、合体だけならオリジナルより手軽にできる。
地力の低さが露呈する前にファイナルフュージョンして、マスターをステルスガオーⅡに保護しつつ、短期決戦に挑もう。

このサーヴァントの勝利の鍵は勇気ではない。パスキューマシンである。



【マスター】ルーク・フォン・ファブレ
【出典】TALES OF THE ABYSS
【性別】男性
【マスターとしての願い】
アクゼリュスを救い直して、英雄になって、そんであいつらに……。

【weapon】
スティールソード@テイルズ オブ ジ アビス:鋼を何度も鍛えて作られた剣。都知事邸に飾られていたが、元々ルークが元の世界で使っていた物。

【能力・技能】
アルバート流剣術:まだまだ未熟だが、腕はそこそこいい。それなりの戦闘経験もアリ。
超振動:音素と呼ばれる元素の一端に干渉し、ありとあらゆる物質を分解し再構築する力。
    原理的に一人では起こせないのが普通だが、ルークともう一人に限り単独で超振動を起こせる。
    ただし自力での制御は難しく、威力もある理由から減衰している。

【人物背景】
キムラスカ王国・ファブレ公爵家の一人息子で、第3位の王位継承権を持つ青年――。
幼少期に誘拐事件に合って以来記憶を失い、以後、安全をはかるためとして屋敷に閉じ込められていた。
しかし信頼する剣の先生から、自分の軟禁が、超振動を起こせる力を戦争で兵器として利用するためのものだったと伝えられる。
ルークは自由を得ようと、先生に言われるがままに戦争を止めて英雄になろうとする。
だが実はその先生こそがすべての黒幕であり、ルークは一つの都市を救おうとして逆に滅ぼしてしまう。
何千もの人命を奪ってしまったルークは、信頼していた先生に裏切られたショックもあり、現実を受け入れることができず言い訳ばかりしてしまう。
その様から仲間たちにも見放されてしまう。
本聖杯ではその時期からの参戦であり、ユリアシティに到着する前のため、自身の正体について、明確には理解していない。
だが、先生から告げられたレプリカという言葉は嫌でも胸に刻まれている。

【方針】
聖杯を手に入れる。

【備考】
東京では都知事の息子という扱いになっています。


467 : ルーク・フォン・ファブレ&バーサーカー  ◆TAEv0TJMEI :2016/02/11(木) 03:02:15 RU3jR4bQ0
投下終了です


468 : ルーク・フォン・ファブレ&バーサーカー  ◆TAEv0TJMEI :2016/02/11(木) 03:04:45 RU3jR4bQ0
と、すみません、重要な事を言い忘れました。
本投下のバーサーカーの宝具は 『 邪神聖杯黙示録〜Call of Fate〜』における獅子王凱のものをオマージュさせていただきました。


469 : ◆.wDX6sjxsc :2016/02/11(木) 20:12:23 QsxuIzfE0
投下します


470 : 姫河小雪&ランサー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/11(木) 20:17:49 QsxuIzfE0

◆ ◆ ◆ ◆


魔法少女。
少女はアニメや漫画で登場する、そういう存在だった。
ずっとずっと憧れていた。
魔法少女育成計画と言うアプリに手を出して、なってからは、生きがいと言ってもよかった。


でも、それは今の少女にとって絶望と諦観の象徴だった。
唐突に始まってしまった殺し合い。
出口の見えないデスゲーム。
殺し合い、着実に数を減らしていく仲間たち。

ラ・ピュセル。
ウィンタープリズン。
シスターナナ。
そして、ハードゴア・アリス。


逃げ場など、どこにも無かった。
助けてくれる者など、誰も居なかった。
少女は、ひとりぼっちだった。

そうしている内に絶望も、諦観も通り過ぎて、


訪れたのは、虚無。


情けなくて。
惨めで。
怖くて。
震えて。

でも、もう何もしたくなくて。
そんな自分が嫌だった。



――――だからこそ、彼女は呼ばれてしまったのかもしれない。


471 : 姫河小雪&ランサー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/11(木) 20:18:55 QsxuIzfE0

◆ ◆ ◆ ◆

N市ではない、東京新宿においても少女――スノーホワイトは魔法少女だった。
それが、スノーホワイト/姫河小雪に与えられたロール。

バカみたいに幸せだった。
何もかも忘れて、人助けをして感謝される日々。
それは、小雪にとって失ってしまったものであり、麻薬の様に甘美な日々だったのである。

けれど、麻薬が与えられる幸福感は期間限定だ。
醒める時は直ぐにやってくる。

最初は自分は一人で魔法少女をやっていたのだろうか?と言う疑問だった。
考えても、答えなど出るはずがない。
しかし、疑問は日に日に増えていく。

考えれば考えるほどこの東京にいる事の整合性が取れなかった。

そうして、降り立った路地裏で思い出す。
マジカルキャンディー争奪戦の事を。殺し合いに参加させられていた事を。
周りの建物が途端におぞましく感じた。
急に人々が、そっくり用意された肉人形に変わってしまったかのように見えた。

気付いてしまえば、もう止められない。
右手の甲に、熱い火傷の様な痛みが走り怒涛の様に、喪っていた記憶の奔流に苛まれる。

走った痛みは、強烈だった。
死んでしまいそうだった。怖くてたまらなかった。
でも、この痛みが自分を殺してくれるならそれもいいと思えた。


恥ずかしかった。許せなかった。
あれだけの事があったのに呑天気に魔法少女をやっていた自分が。
だから、終わらせよう―――

痛みに躯を任せ、そのまま鼠の餌にでもなろうと、薄汚い路地裏に五体を投げ出して。
         
「うぉっととと…でぇじょうぶか、ますたあ?」


誰かに、受け止められていた。
ぼんやりと、少し煩わしげに瞼を開ける。

自分を受け止めていたのは、自分より頭ひとつ分小さな少年だった。
ボサボサの頭に、天真爛漫と言う言葉を体現した貌。山吹色の胴着に入った亀のマークにお尻から生えた尻尾。

少年は自分をしっかりと支える。
チラリと視界の端に自分の右手と、奇妙な星の紋様が三つ映った。
痛みは、いつのまにか引いていた。


「君は……」
「ん?オラか?オラ悟空だ!」


眩しい程の明るさを湛えた笑みで、少年はそう言った。


472 : 姫河小雪&ランサー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/11(木) 20:20:23 QsxuIzfE0

◆ ◆ ◆ ◆


「っちゅう訳なんだ」

聖杯戦争の基本的な知識を伝え、そう少年は締めくくった。
ファヴとは違ってお世辞にも分り易いとは言いがたい、拙い説明だったが何とか理解できた。

曰く、聖杯戦争はサーヴァントと言う魔法少女の使い魔みたいな存在を使った殺し合いであると。
曰く、悟空という少年は七騎あるクラスランサーというクラスで来たのだと。

ここまで話を聞いて、小雪の顔は暗かった。
何のことは無い、殺し合いが終わったと思ったら、また新たな殺し合いに放り込まれただけではないかと思ったからである。
しかし、ある事を聞いた瞬間、顔色を変えた。

―――勝ち抜けば、何でも願いが叶う。


もし、それが本当であるのならば。
あの殺し合いを無かった事にできるのではないか?
また、あの楽しかった魔法少女としての生活が取り戻せるのではないか?

けれど……

「ねぇ、ランサー。ランサーは何のためにここに来たの?」
「ん?オラか?オラは…そうだな、強ぇ奴がここには居るんじゃねぇかって…まぁそんな感じだ」
「何それ」

でへへ、と笑い答える悟空に小雪は弱弱しく苦笑した。

「ランサー……願いのために他の人を犠牲にするのは、間違ってるかな?」


少し前までの小雪なら、間違っていると即答できた問いだ。
しかし、本当に願いを叶えられるなら、死んでしまった魔法少女たちが還ってくるのならば。
誰かを傷つけるのはたまらなく嫌だった。
しかしそれはあまりにも…あまりにも甘美な誘惑だった。

問われた少年は、少し困った顔をして、それでも答える。


「……どうだろうなぁ、オラ達も皆のためにあった願いを叶える物を大分独り占めにしちまったし…」

あまり悩んだ事が無いのか、要領の得ない答えだった。
けれど、小雪はその答えに少しの失望と安堵を覚えた。
はっきりとした否定や肯定より小雪に考える猶予をくれる答えだったのだから。

「けど、ますたあ。おめえが聖杯を悪ぃ事に使おうってんなら話は別だぞ?」


悟空の言葉に、小雪はふるふると首を振る。
あの悲惨な殺し合いを無かった事にしたいと言う願いそのものは悪い事では無いはずだ…悪い事ではないとは信じたい。

「すぐに決める事はねぇさ、時間は無いわけじゃねぇしな。ますたあが考えてる間、襲ってくる奴はオラがやっつけてやる」


473 : 姫河小雪&ランサー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/11(木) 20:21:09 QsxuIzfE0

そういってぽんぽんと小雪の肩を叩きながら告げる少年はひどく大人びて見える。
小雪よりも多くの世界や謎に通じているのではないか、そんな印象を持った。


「よし!それじゃ帰ぇるか!いつまでもこんなとこ居るわけにはいかねぇしな」


小雪が応える前にととと、と悟空は少し路地の奥へと進むと、彼女を送るために自らの宝具の名を呼ぶ。


「筋斗雲ーー!!」


呼ばれるや否や、夜空の虚空から、黄色い雲が現れたではないか。
トップスピードの魔法の箒のようだと小雪は思った。
彼女も、もういない。

小雪を尻目に、悟空は雲に飛び乗った。
そして、小雪に手を差し伸べる。
おずおすとその手を取り…小雪は初めて雲の上に乗った。

「わ、すごい」


柔らかくて、奇妙だが座り心地は悪くない。
そのまま彼女は墜ちない様にランサーの肩をしっかり掴もうとして―――傍らに何かが零れ落ちた事に気づいた。

「あ…」

それは、白くふわふわした兎のしっぽだった。
ハードゴア・アリスが自分に遺した忘れ形見。
何故今まで忘れていたのだろうか。


”―――あなたが居てくれれば…”

”―――私を助けてくれたあなたがいてくれれば…”

”―――この町から魔法少女は居なくならない…”


少女の最期の心の声も同時に思い出した。
大事に兎のしっぽをポッケに仕舞いながら、小雪は少年に囁く。


「ランサー、私、まだどうすればいいのか分からないけど…最後まで魔法少女でいたい。それだけは、決まったよ」


雲を操作しながらそうか、と呟くと、悟空は小雪に振り返ると出会ったときと同じ笑顔を見せた。


「オラもますたあが悪ぃ奴じゃねぇって分かって良かったぞ」
「え?」
「この筋斗雲はな、心が綺麗な奴しか乗れねぇんだ。クリリンでも乗れなかったんだぞ!」

それだけ言うとまた雲の操縦のために少年は向き直った。
もう、小雪を見る気はないらしい。
本当に、このサーヴァントは外見どおり無邪気で、それでいて時折ひどく大人びている。


「ランサー…有難う」

嬉しかった。
自分はそんなことを言われていい人間じゃないけれど。
選べなくて、後悔し続けてきた情けない人間だけど。
それでも、嬉しかった。

―――その後、少女がしゃくりあげて漏らした嗚咽も何もかも、夜空の虚空に吸い込まれ行った。


474 : 姫河小雪&ランサー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/11(木) 20:21:47 QsxuIzfE0

◆ ◆ ◆ ◆


これでスノーホワイト/姫河小雪が”選ばなかった”事が赦された事にはならない。

ましてや何かを得たわけではない。

彼女は今も虚無(カラッポ)だ。

けれど何も問題は無い。だって―――、


虚無(カラッポ)の方が夢詰め込めるのだから。


475 : 姫河小雪&ランサー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/11(木) 20:24:40 QsxuIzfE0


【クラス】
ランサー

【真名】
孫悟空@ドラゴンボール

【性別】
男性

【パラメーター】
筋力B+ 耐久B+ 敏捷A 魔力E 幸運A 宝具EX

【属性】
中立・中庸


【クラススキル】

対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。


【保有スキル】

戦闘民族:A
宇宙の中でも優秀な戦闘民族。生ある限り戦いを求め続ける。
Aランク相当の勇猛とBランク相当の直感と同じ効果を得る。
ただし、このスキルが発動すると何よりも戦闘を優先してしまう事がある。
また、消滅ギリギリの窮地から復活すると筋力敏捷耐久のステータスがワンランクアップする。
絶対にお勧めはしないが、魔力供給だけではなく、食事でも魔力を回復できる。

亀仙流:A
天下一の武闘家・無天老師の流派を習得した事示すスキル。
Bランク相当の無窮の武練と同じ効果を得られる。

獣化:A
戦闘民族から派生したスキル。
発動すればA相当の狂化のスキルを得、体が大猿に変化するが、今回はランサーとしての召喚に重きが置かれているため、発動できない。

【宝具】
『筋斗雲』
ランク:D 種別:対人(自身)宝具 レンジ:1 最大捕捉:2人
上に乗って自由に空を飛べる雲。持ち主が呼べばどこからともなく飛んで来る。
飛行速度はマッハ1.5。ただし、心の清いものにしか乗ることはできない。
たとえ属性が善のサーヴァントでも乗れるとは限らない。

『如意棒(ニョイボウ)』
ランク:C 種別:対人 レンジ:380000 最大捕捉:100人
とても頑丈でどこまでも伸びる棒。
街一つ消し飛ばしたピッコロ大魔王の爆力魔破に巻き込まれても皹一つ入らなかった。
月まで延びる。

『かめはめ波』
ランク:B 種別:対城宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
体内の潜在エネルギーを凝縮させて一気に放出させる技。
基本的に合わせた掌から放出されるが、その気になれば足から撃ったり曲げたりすることもできる。

『彼の者の名は伝説の(スーパーサイヤ人)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
神霊にも匹敵する孫悟空の成長した姿、スーパーサイヤ人へと進化させる宝具。
この宝具が発動すれば、筋力敏捷耐久のパラメーターがEXとなり、気による気配察知や瞬間移動が可能となる。
今回はセイヴァーとしての召喚ではないため発動できない。

【weapon】
宝具以外の物はなし。

【人物背景】
ドジで明るくて優しい銀河最強の男。
……なのだが、あまり地球の人々にその存在は知られていない。
それ故に、彼の住む地球で彼(謎の少年)が世界を救ったと言う逸話が最も色濃く残るピッコロ大魔王撃破時を再現されての召喚である。
一応知識としてその後の記憶もちゃんとあるが、認識としては希薄である。

【サーヴァントとしての願い】
強ぇ相手と戦う。
ますたあの願いにもできる限り付き合ってやる。


476 : 姫河小雪&ランサー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/11(木) 20:25:09 QsxuIzfE0

【マスター】
姫河小雪@魔法少女育成計画

【マスターとしての願い】
殺し合いを無かった事にする…?

【weapon】
『兎のしっぽ』
大ピンチになったらラッキーな事が起こるアイテム。
ただし、それでピンチから逃れられるとは限らない。

【能力・技能】
『困っている人の心の声が聞こえるよ』
困っている人間の考えていることが聞こえる。
本人の意識していない反射や深層心理の声も聞こえる。それによって行動の先読みや隠し事の傍受も可能。

【人物背景】
ソーシャルゲーム「魔法少女育成計画」によって魔法少女になった少女。
幼少の頃から魔法少女に憧れており、なってからは毎日人助けに勤しんでいた。
しかし魔法少女を減らすと言う名目で始まったデスゲームにより仲間を次々と失ってしまう。
そのゲームの終了後、スイムスイム討伐直前より聖杯に拉致される。

【方針】
魔法少女で在り続ける。


477 : ◆TA71t/cXVo :2016/02/12(金) 12:18:48 bplORdqQ0
お疲れ様です。
これより投下させていただきます。


478 : キング・ブラッドレイ&キャスター  ◆TA71t/cXVo :2016/02/12(金) 12:21:49 bplORdqQ0
一日目】



「では、これにて定例閣議を終了いたします」


東京都千代田区。
国会議事堂前に建つ首相官邸内は閣議室にて、定例閣議がたった今終了した。
閣僚達は互いに挨拶を済ませた後、静かに室外へと退出を始める。
そして、この議会における最高責任者―――内閣総理大臣は全員の退室を確認した後、自らも閣議室を出て住居である公邸へとその足を向けた。


「…………」


その表情は、極めて険しい。
理由は、ただいま行われた閣議の内容で思うところがあったから……ではなく。


(……くだらんな)


この閣議に対し、どこにも『意味』らしき『意味』を見出せなかったから。
人と人とのやり取りであるにも拘らず、人らしさを決定的に欠いている空虚なやり取りに、ため息を着くほかなかったからだ。
国を預かる首相として、それはあまりにもあるまじき態度である。

しかし、それも無理はないだろう。
何故なら彼―――キング・ブラッドレイは、この世界の仕組みに気付いているのだから。
聖杯戦争に誘われ、そして記憶を取り戻したマスターなのだから。




◆◇◆



「……キャスター、首尾はどうだ?」


官邸内私室。
椅子に座り込み深くため息をついたブラッドレイは、誰もいない虚空へと言葉を投げかけた。
すると次の瞬間、彼の目の前には光の粒子が集い始め人型を成してゆく。
やがてその光は実態を成し、確固たる姿で彼の前へと現れた。
金色の鎧に身を包む、強力な魔力を身に帯びた魔術師―――キャスター。
一目見て、只者ではないと分からせる風格を持ち合わせている。
この男こそが、ブラッドレイのパートナーたるサーヴァントであった。


479 : キング・ブラッドレイ&キャスター  ◆TA71t/cXVo :2016/02/12(金) 12:22:35 bplORdqQ0
「概ね予定通り、といったところだ。
 これならば後四日程あれば、『地獄の宮殿』の顕現が可能だろう。
 それまでの間も、耐えられるだけの防御は施してある」


キャスターのサーヴァントを用いての定石は、その陣地作成スキルを用いた篭城戦にある。
特にこのキャスターは、陣地がそのまま宝具になるという徹底振りだ。
ブラッドレイもまたそれに則り、この聖杯戦争への参加を決めてから今まで、拠点をより強固なものにすることに集中していた。
そしてその拠点とは、つまりここ―――総理官邸である。
彼に与えられた役割上、他に候補地もないので当然の帰結ではあるが……
まさか日本の中枢たる官邸をキャスターの陣地にするなど、ある意味では前代未聞の暴挙といえるだろう。
事実、この戦略にはメリットとデメリットがあまりにもはっきりした形で現れている。


「ふむ、四日か……やはり長いな。
 流石にそれだけあれば、開始と共に攻め込まれてもおかしくはないだろう。
 私がマスターである事は、恐らく殆どの参加者が直に知る事となる」


まず一番でかいデメリットだが、キング・ブラッドレイ総理大臣がマスターであるという事は恐らくそう遅くない内にほぼ全てのマスターに知れ渡るだろう。
何せ、考えてみたら至極真っ当であり間抜けな理由なのだが、彼の名前は明らかに日本人ではない。
どういうことか、この東京に生きる作り物の住民達はそれに全く疑念を抱いていないのだが……
記憶を取り戻したマスター相手には、そうはいかないだろう。
まず間違いなく「お前の様な日本人がいるか」と疑問を抱かれ、聖杯戦争の参加者であるだろうと当たりをつけられる。
立場上メディアに露出する機会は極めて多いし、どうあってもこれは避けられない問題だ。
かといって行方をくらますなどすればそれこそ一大事として東京中で捜索活動が行われるだろう。
そう、これもまたブラッドレイの抱えるデメリットだ。
彼はどうしてもその立場上、自由に東京内を動き回るという事がし辛いのである。
出来るとしたら、公務終了後の深夜にこっそり抜け出すぐらいだろう。


「ふ……そう言いつつも、全く焦る様子が私には見えないのだが?」


しかし……これらのデメリットを、ブラッドレイはそこまで重たいものとも見ていなかった。
彼は逆にその状況を利用して、最大限にキャスターの力を活かす戦術を取る事にしたのだ。
何せここは、総理官邸―――つまり東京の中心、ひいては国の中枢だ。
もし仮にここへ、堂々と真正面からブラッドレイを討ち取りに来たマスターとサーヴァントがいればどうなるか?
職務に忠実な警備の者達―――無論、キャスターの魔力で洗脳済みである―――が一斉に殺到し、身柄を押さえようとするだろう。
無論、そんなものでこの聖杯戦争の参加者達を止められる訳はないだろうが……総理官邸を狙ったテロリストとして、その者達は扱われる羽目になる。
もし仮にブラッドレイ達を無事倒すことが出来たとしても、その正体はメディアを通じて広く知れ渡る恐れがあるのだ。
ブラッドレイを倒すには、この決して小さくはないリスクを背負う必要がある。
この点で厄介な相手がいるとするなら、やはりマスター暗殺に特化したアサシンのサーヴァントか、遠距離からの狙撃に特化したアーチャーだろう。
しかし……前者においては、対魔力スキルを持たない以上キャスターの作り出した拠点を突破するのが極めて難しいという弱点がある。
厄介なのは後者だが、こちらに対しても手は打ってある。
キャスターのスキルによって召還された魔物達、或いは操った住民達を東京中に大勢放してある。
これは官邸から離れられないブラッドレイとキャスターが情報収集の為に取った策だが、アーチャーらしき存在が発見できると同時に報せる仕組みになっている。
もっとも、発見できたらではあるが……


480 : キング・ブラッドレイ&キャスター  ◆TA71t/cXVo :2016/02/12(金) 12:23:01 bplORdqQ0
「ああ……まさか、お前もそこまで柔な魔術師ではあるまい。
 仮に狙撃を受けたり爆破工作をされたとしても、初撃で簡単に消し飛ぶほど柔な要塞にはしてないのだろう?
 それさえ防ぎきれば、『蹂躙する竜巻』を発動させればいい」


仮に攻撃を受けたとしても、力ずくでねじ伏せればいい。
ブラッドレイはそう言い切った……言い切れるだけの自信があったのだ。
まず、キャスターの防御は並大抵のものではない。
既にこの官邸内にも、彼の作成したトラップは幾つか仕掛けてある……その中には、敵の攻撃に反応するタイプのものも存在している。
それらを用いればどうにか、アーチャーの初動を耐えることはできるだろう。
そうすればキャスターには、現在構築中の『地獄の宮殿』とは別に、もう一つの陣地型宝具『蹂躙する竜巻』がある。
こちらを発動させてしまえば、その防壁でどうにか狙撃へ対処できるだろう。


「そして……状況にもよるだろうが、私にはこの最強の『眼』がある。
 狙撃など、なれたものだよ」


しかし。
それ以上に彼には自身の能力―――最強の『眼』への自負があった。
眼帯の下に隠されたその眼には、銃弾が飛び交い爆撃が続く凄まじき戦場でも軽々と生き残れるだけの動体視力が宿っている。

そう……仮にサーヴァントの攻撃であろうとも、遠距離からの狙撃程度ならば見切り避けられるだけの自信が彼にはあったのだ。


「光栄且つ頼もしい言葉だ……確かに、その通りだ。
 お前の能力は、他のマスターとは隔絶するだけのものがある」


それはキャスター自身も認めていた。
キング・ブラッドレイはマスターとして見れば、恐らくこの聖杯戦争の参加者の中でも最上位に位置するであろう実力者なのだ。
最初は、キャスターもまさかとそれを疑っていたのだが……あろう事かブラッドレイは、そんな彼に対しこう言い切ったのだ。


――――――ならばキャスターよ、今から私に対し一撃を仕掛けてみればいい。


その言葉を聴いたとき、キャスターは戦慄を覚えた……そして実際に見切りの結果を見たときには、もはや驚きを通り越し狂気の笑みまで浮かんだ程だ。
幾ら己が直接戦闘を不得手とするとはいえ、仮にもサーヴァントの攻撃を避けたのである。
自身をサーヴァントとして呼び出す以上はそれ相応の実力者でなければ困るとは思っていたが……はっきり言って期待以上だ。
流石に、英霊を相手に戦闘を行い勝利しろと言われれば難しいだろうが……それでも、容易く負ける事もないだろう。
そしてもう一つありがたい事に、キング・ブラッドレイの持つ魔力も決して低くはない。
彼自身は魔術師ではなく魔術の素養も持たない……しかし、人間をベースにして生み出されたホムンクルスだ。
その体内には、強力なエネルギーの結晶体『賢者の石』が宿っている……これが、キャスターを行使する上での魔力源として機能しているのである。
おかげでキャスターも、余程の無理をせぬ限りは、安定した状態でこうして活動する事が可能であったのだ。


「ならば、迫り来る敵は迎え撃つまでの事。
 王が自分の居城から逃げ出してどうする……王らしく、構えていればいい」


強力な力による蹂躙。
それがこの二人の主従が取ったシンプルにして最大の戦略である。
絶対の君臨者二人。
彼らはこの聖杯戦争の地においてもなお、揺らぐ事無くその立ち位置を維持していたのだった。


481 : キング・ブラッドレイ&キャスター  ◆TA71t/cXVo :2016/02/12(金) 12:23:41 bplORdqQ0
「確かに、違いあるまい……いいだろう。
 私はまたしばらく、ここの調整に入る……何かあれば呼ぶがいい。
 もっとも、ここを簡単に攻められる敵などそうはいないだろうがな」


絶対の自信を持つブラッドレイの言葉に笑みを浮かべ、キャスターはその身を霊体化させて自身の工房へと戻っていく。
その姿が完全に消えたのを確認すると、ブラッドレイは天井を静かに仰ぎ、誰に聞かせるという訳でもなく……ただ、つぶやいた。


「……フッ。
 簡単に攻められる敵などいない……か」


キャスターが残した一言に対し、キング・ブラッドレイは自嘲的な笑みを浮かべた。
確かに彼の言うとおり、それは事実だ。
そうなる様にしっかりとこの場を整えたのは、他ならぬ自分達なのだから。

それでも尚……彼には、予感があった。
他の主従達も、まさか指を咥えて黙って待っている筈がない。
直に用意を整えて、確実にこの居城へと攻め入ってくるだろう。
或いは、公務での外出中に狙うという手もある。
どちらにせよ、予期せぬ形で自分の命は狙われるに違いない。

全く予想だにしていない、自分でも読めぬ展開。
それが……キング・ブラッドレイには、ある意味楽しみでもあったのだ。


(この様な展開を予想できたものなど、誰もいはしなかっただろう……)


これまで、『父』によって決められたレールの上を歩き続け、用意されたシナリオの中で生き続けてきた。
そんな自分が今、予想外の事態……それもこんな特大の事態に巻き込まれたのだ。
『父』には申し訳ないし、計画を半端にせざるを得なかったことへの憤怒も勿論ある。
しかしながら……この事態を、確実に自分は楽しんでいる。
何もないまっさらな状態から始まったこの聖杯戦争が、確実に楽しみなのだ。



「やり応えのある良い人生とやらを……期待できそうなものだ」


482 : キング・ブラッドレイ&キャスター  ◆TA71t/cXVo :2016/02/12(金) 12:25:02 bplORdqQ0
【クラス】
 キャスター

【真名】
 パラメキア皇帝@ファイナルファンタジーⅡ

【属性】
 混沌・悪

【ステータス】
筋力:D 耐久:D 敏捷:D 魔力:A+ 幸運:C 宝具:EX

【クラススキル】
陣地作成:EX
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
 キャスターはその強大な魔力と地獄の力をもって、神殿を超える『地獄の宮殿』を作成することが出来る。

道具作成:C
 魔術師として魔力を帯びた器具を作成可能。
 特にキャスターはトラップ作成に特化しており、陣地外においても魔力で簡易的なトラップを即座に作成できる。


【保有スキル】
カリスマ:A+
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。
 団体戦闘において自軍の能力を向上させる稀有な能力。
 キャスターのそれはA+と既に呪いの領域にある。

高速詠唱:A
 魔術の詠唱を高速化するスキル。
 一人前の魔術師でも一分は必要とする大魔術の詠唱を半分の三十秒で成せる。

魔物召還:A
 魔界に潜む魔物を召還し、従える術。
 キャスターは生前、強力な魔物達を魔界から呼び出し帝国を率いて世界征服に乗り出したが故にこのスキルをもつ。
 消費する魔力に応じて、多種多様な魔物を召還することができる。

皇帝特権:-
 本来持ち得ないスキルを、本人が主張することで短時間だけ会得できるというもの。
 キャスターは生前は皇帝として君臨していた為にこのスキルを保有していたが、一度滅び地獄に落ちたが為にこのスキルを失っている。

【宝具】
『蹂躙の竜巻(ストーム・オブ・パラメキア)』
 ランク:A 種別:対城宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:100
 キャスターが生前魔力によって作り上げた強力な破壊兵器にして陣地であり、彼を象徴する宝具でもある。
 『たつまき』の名称どおりその見た目は強大な竜巻であり、その破壊力を持って多くの町を破壊してきた。
 外部からの進入は極めて困難であり、進入方法は唯一空中からしかない。
 その中心部には、キャスターの陣地たる首相官邸が控えてある。
 その内部には魔物や多くのトラップが潜んでおり、侵入者を待ち受ける。
 生前のこの宝具は移動する要塞だったのだが、この聖杯戦争においては首相官邸を動かせないため防護壁として使用する。


『地獄の宮殿(パンデモニウム)』
 ランク:EX 種別:対城宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:100
 キャスターが作り出す居城にして、地獄から蘇った後の彼を象徴する宝具。
 一度地獄に落ちた後、究極の力を身につけ蘇った彼が出現させた地獄の宮殿を再現させる。
 その内部は地獄・魔界に潜む強力な魔物が溢れており、まさに難攻不落の要塞と化している。
 そしてこの内部にいる際、キャスターは地獄の力をバックアップに強大な能力を得ることが出来る。
 ただしこの宝具は『蹂躙の竜巻』との同時発動は不可能であり、発動すると同時に自動的に『蹂躙の竜巻』は以後使用不可能となる。
 かつてこの居城は現世に二度顕現した事があり、多くの魔物達が世に溢れかえろうとしたが、
 一度目はそれを恐れた時の魔術師達が究極魔法を用いて封印、地獄の底へと封じられた。
 二度目の時には、同時に出現した地獄への道『ジェイド』を通り抜け内部に侵入した英雄フリオニール達が
 皇帝を倒したことで消滅している。
 その再現として、この宝具が発動した際には同時に地獄への道『ジェイド』が近辺に出現する。
 宮殿内へと進入するにはこのジェイドを必ず通らなければならず、普通に総理官邸内へ進入しようとしても
 宮殿自体が隔絶された空間にある為に、キャスターの元へとたどり着くことは出来ない。
 また当然ながら、このジェイドの内部も魔物に溢れかえっている。
 その完全な構築には多大な魔力と完成のための長い時間が必要となるが、不完全な形での発動としても十分な効果は発揮される。


483 : キング・ブラッドレイ&キャスター  ◆TA71t/cXVo :2016/02/12(金) 12:25:19 bplORdqQ0
【Weapon】
 身に宿る膨大な魔力を使っての魔術を用い戦う。
 また、魔力で作成した即席のトラップも戦闘においては多用する。

【人物背景】
 パラメキア帝国に君臨する初代皇帝。
 膨大な魔力をもち、それをもって世界の征服へと乗り出した独裁者。
 魔界から魔物を召還して軍勢に従え、大戦艦や『たつまき』といった破壊兵器を作り上げ諸国を破壊・蹂躙しつくしていった。
 その性格は冷酷非道な悪そのものであり、敵対する者には一切の容赦をしない。
 当然ながらこの悪事を良しとしない者達もおり、彼らは反乱軍を立ち上げ帝国へと立ち向かっていく。
 そして、『たつまき』内にて英雄フリオニール達との死闘を繰り広げ、死闘の末に彼等に倒された。
 しかし皇帝は、死して尚もその強大な魔力と怨念を消す事無く、辿り着いた地獄で更なる力を得て復活。
 現世に舞い戻り、新たな居城として地獄の底に封印されていたパンデモニウムを顕現させた。
 最後には再び宮殿内に進入を果たしたフリオニール達と戦い、断末魔の叫びを上げて二度目の死を迎えている。

【サーヴァントとしての願い】
 現世へと三度蘇り、絶対の君臨者となる。


【マスター】
 キング・ブラッドレイ@鋼の錬金術師

【マスターとしての願い】
 『父』の計画遂行のため、聖杯の力を利用する。
 また、それとは別に聖杯戦争そのものを楽しむ。

【weapon】
 腰に備えた五本のサーベル。
 これを用いての接近戦を行う。

【能力・技能】
 単身でしかもサーベルのみを用いて、名だたる実力者や同じホムンクルスを相手に一方的な蹂躙を仕掛け、
 挙句の果てには戦車ですら撃破できる程の桁外れに高い身体能力を持つ。

『最強の眼』
 眼帯の下に隠された、ウロボロスの紋章が刻まれた眼。
 キング・ブラッドレイが数多の銃弾が飛び交う戦場を生き延びてこれたのは、この眼があったからである。
 銃弾ですら容易く視認できる強い動体視力があり、彼自身の経験もあって幾多の攻撃であろうとも見切ることが出来る。

【人物背景】
 軍事国家アメストリスの国家元首であり、最高位の大総統。
 戦場での数々の功績から異例の若さで大総統に就任した凄腕の人物。
 60歳とは思えぬほどに若々しい肉体を持っており、常に左目を眼帯で隠している。
 公務をサボって国家錬金術師のお見舞いに訪れたり、
 アロハシャツにソフト帽というラフな格好でお忍びで街中をあるいたりするなど、
 温厚な好々爺といった人柄であり部下や国民からも敬愛されているが、
 同時に軍人としては冷徹非情且つ苛烈なリアリストとしての側面も持っており、一部の軍関係者からはそのやり方に疑念をもたれてもいた。
 その正体は、『父』であるフラスコの中の小人によって造られたホムンクルス『憤怒のラース』である。
 通常のホムンクルスとは異なり、人間の体内に賢者の石を注入するという方法で作成されたホムンクルスであり、
 人間がベースとなっている為に普通に歳をとる。
 元は、幼少期より国の長となる為のあらゆる教育を施された大総統候補生の一人であり、
 キング・ブラッドレイという名も賢者の石を投入後に与えられたものである為、その本名は不明。
 ホムンクルスと化した後は、『父』の計画の為にアメストリスの独裁体制を編成し、計画の外堀を固める役割を担っている。
 その出自の為に人間を見下しているのだが、時に人間のもつ思想や思わぬ力に対して面白いと評することもある。
 また、『父』の計画を進める一方で、用意されたシナリオ・敷かれたレールの上を歩く人生に対し思うところがあり、
 予想外の事態に直面すると返ってそれを楽しむかのような一面がある。
 そして唯一、妻だけは『自分で選んだ』との事であり、大総統の妻として彼女を純粋に想っている。
 時系列的には、東方司令部で行われる北方司令部との合同演習の視察に向かったタイミングからの参戦。
 この聖杯戦争では内閣総理大臣の役割を与えられており、しっかりと公務に臨んでいる。

【基本方針・戦術】
 キャスターの陣地作成能力を活かし、強固な陣地を作り上げての篭城戦。
 戦闘になった際には、キャスターの援護射撃を活かしつつ自身も前線に立つ。


484 : ◆TA71t/cXVo :2016/02/12(金) 12:25:49 bplORdqQ0
以上で投下終了となります


485 : ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/12(金) 12:55:13 M8VkJIJQ0
投下します。


486 : 向井拓海&ライダー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/12(金) 12:56:06 M8VkJIJQ0


真夜中の公道を、複数の影が駆け抜ける。
爆音を響かせ、荒々しくマシンを操り。
居場所無き『野良犬』達は、街を奔る。

改造された派手なバイクを操るのは、不良達だ。
挑発的なファッションに身を包んだ不良達―――暴走族は、深夜の公道を爆走する。
けたたましい轟音と吹き抜ける風に身を任せ、マシンを駆る。


「――――ヒャッホウッ!!」


バイクを操る不良達が、歓喜の声を上げる。
今、この刹那を楽しむ様に、彼らは疾走している。
法から外れた野良犬達は、一瞬の歓喜に生を見出す。
このスピードこそが全てだ。この速さこそが、自分達の人生だ。
そう感じていた。


前方を走る一人の不良を除いては。


暴走族のエース、特攻隊長。
それが彼女の――――向井拓海の肩書きだった。
拓海はこの暴走族を束ねる女傑だった。
18歳にして数々の武勇伝を打ち立てた筋金入りの悪“ワル”だった。
彼女もまた、この出来損ないの様な人生に命を張る不良だった。
そう思っていた筈だったのだ。


だと言うのに、彼女の心は上の空だ。
何か違和感を感じる。引っ掛かるものを感じる。
自分が自分で無い様な気がしてくる。
そんな感覚を、数日前から抱き始めていたのだ。


確かに自分は不良だ。
一端のワルだ。社会の逸れ者として色んなことをやらかしてきた。
だが、何かが違う。
まるで過去の所業を『また』やっているような既視感。
とっくに足を洗ったやんちゃに、『また』首を突っ込んでいるような違和感。

公道を駆け抜ける暴走族は、市街地の近くにまで辿り着く。
風をその身に受け、走り抜ける最中。
拓海は、擦れ違ったビルへと一瞬だけ視線を向けた。
彼女の動体視力が捉えたもの。
それは、ビルの壁にぽつんと貼られていたアイドルのポスター。



――――アイドルに、興味は無いか?



聞き覚えのある声が頭の中で響く。
ドクン、と心臓の鼓動が高鳴る。
何かを思い出したかの様な感覚が、胸の内を走る。


487 : 向井拓海&ライダー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/12(金) 12:56:42 M8VkJIJQ0

(…アタシは、何をやってんだ?)


何だ、この感覚は。
自分の違和感の正体に気付いた様な、奇妙な実感が在った。
自分は何をやっているのか。
何故こうしてバイクで走り回っているのか。
まるで『昔』のようじゃないか。


(アタシは、アイドルじゃなかったのか?)


かちりと、頭の中で歯車が噛み合った。
向井拓海は―――――アイドルだ。
出来損ないの人生から足を洗い、夢の様な舞台を歩き始めたのだ。
自分にそんな生き方、似合う筈が無いと思っていたのに。
彼女はいつの間にか、アイドルを楽しんでいた。
こういう生き方も悪くないかなと思い始めていた。


なのに。
何故自分は、こうして特攻隊長をやっている?
スカウトされてやんちゃからは卒業した筈なのに。
何故自分は、またしても不良に戻っている?


ここ数日の記憶を掘り返そうとしても、拓海は思い出せない。
自分がこの街で。アイドルとして事務所に赴いた記憶を。
自分がこの街で、アイドルとして活動していた記憶を。
思い出せるのは全て、野良犬めいた不良としての生活のみ。


何が、起こっている?
自分は何故、こんなことになっている?
一体ここは、何処なのか―――――





次の瞬間。


暴風が吹き荒れた。


漆黒の『悪魔』が、駆け抜けてきた。


『悪魔』は、拓海のバイクを通り過ぎ。


そのまま夜の闇に紛れる様に、姿を消した。





――――何だ、今のは?
呆気に取られていた拓海は、ハッとしたように後方へと振り返る。


「おい、おいッ!!大丈夫か!!?」


振り返った拓海と数名の不良が目の当たりにしたもの。
それは先程の『悪魔』の疾走に突き飛ばされ、ガードレールに衝突した仲間達の姿だ。
3人の仲間は道路上で横たわり、血を流しながら倒れている。
拓海達はすぐさま勢いよくバイクを止め、転倒した不良達の傍へと駆け寄った。






488 : 向井拓海&ライダー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/12(金) 12:58:04 M8VkJIJQ0



後日。
病院を後にし、拓海は一瞬だけ振り返る。
彼女は先日に大怪我をした不良仲間の見舞いに来たのだ。

3人のうち、1人は頭を強く打ったことで死亡が確認された。
残る2人は奇跡的に助かったものの、重傷であることに違いは無かった。
少なくとも今後バイクに乗ることは出来ない、と医師から宣告された。

ふぅ、と溜め息を吐き、拓海は再び前を向く。
病院で自分を見ていた看護士や医師達の目が忘れられない。
まるで狂犬を目の当たりにしているかの様なおどおどした視線が、自分を何度も貫いていた。
彼らは怪我を負った際の状況から、拓海達が何をしていたのか薄々感付いていたのだろう。
当然と言えば、当然だろう。
彼女達は不良で、暴走族で、社会の逸れ者なのだから。


(何で、こんなことになってんだよ)


空を見上げ、拓海は思う。
自分はアイドルだった筈だ。
不良から足を洗い、芸能の世界に踏み込んだ筈だったのだ。
なのに、今の自分はこうして不良に逆戻りしている。
それどころか、この街でアイドルとして活動していた記憶が全くと言っていい程無い。
まるで初めから今に至るまで不良として生活していたかのような。
そんな奇妙な記憶が植え付けられているのだ。

此処が『自分の知る場所』ではないということは薄々理解している。
携帯にもプロデューサーや知り合ったアイドル達の連絡先が登録されていない。
明らかに異常なのだ。自分は見知らぬ世界に放り込まれてしまっているのだ。

何がどうなっているのか、拓海には解らない。
元いた場所に帰りたい。
しかし、その為にどうすればいいのか解らない。


(……あの『走り屋』……)


そんな中で、彼女の脳裏をよぎったもの。
それは先日不良仲間数名に大怪我を負わせた、あの漆黒の悪魔。
黒い流線型の異様なバイクに跨がり、公道を凄まじいスピードで駆け抜けた『走り屋』。

奴を目の当たりにした時、拓海の中に奇妙な感覚が走った。
まるであの相手との『繋がり』を感じたかの様な、そんな奇怪な実感に襲われた。

あいつが何かを知っているのではないか。
あの走り屋は、この世界の謎を何か理解しているのではないか。
確証は無いのに、そんな気がしていた。

故に拓海は、彼を追うことを決意する。
奴はこの謎めいた世界を解き明かす為の、唯一のヒントとも言える存在だ。
元の世界に戻る為に、プロデューサーの元へ帰る為に。
彼女は、悪魔の走り屋を追う。

それに、奴のせいで3人の不良仲間達は死傷した。
此処が異常な世界であるとはいえ――――彼らが仲間だったのは、確かだ。
故に彼女は彼らのカタキ討ちの為にも、あの『走り屋』を追い掛ける。
向井拓海は、義理に厚い人間なのだ。



(……待ってろよ、あの野郎)







489 : 向井拓海&ライダー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/12(金) 12:58:28 M8VkJIJQ0

漆黒の『悪魔』の如しマシンが疾走する。
速さを追い求める疾走狂が、風の道を突き進む。

それは暴風の如く。
荒れ狂う疾風の如く。
駆け抜ける『スピードデーモン』の如く。

街が夜の闇に包まれた時、その魔物は姿を現す。
スピードに魅せられた悪魔は異様なバイクを操り、公道を駆け抜ける。


走る魔物は、サーヴァントだった。
クラス名は騎兵―――――ライダー。


彼が己のサーヴァントであるということを向井拓海は知らない。
彼自身も、誰が主人であろうと興味が無い。
向井拓海は聖杯戦争を知らず、ライダーは聖杯戦争に一切の関心を持たない。
余りにも異常な状況。主従として成り立ってすらいない関係。
しかし、ライダーはそれに構うことさえなかった。

風の道を通り、スピードになる。
それだけがライダーの目指す果てなのだから。
聖杯戦争の会場など、彼にとってはサーキットに過ぎない。

故に彼は走る。
さあ、スピードになれ。
神速の影に幸あれ(ヘイル・トゥ・ザ・シェード・オブ・ブッダスピード)。


490 : 向井拓海&ライダー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/12(金) 12:59:16 M8VkJIJQ0

【クラス】
ライダー

【真名】
クロームドルフィン@ニンジャスレイヤー

【ステータス】
筋力D+ 耐久D 敏捷C+ 魔力D 幸運D 宝具B

【属性】
混沌・中庸

【クラス別スキル】
対魔力:E
無効化はせず、ダメージ数値を多少軽減する。

騎乗:C++
宝具「疾走する風翔獣」を完璧に乗りこなせる。
圧倒的な操車技術でモンスターマシンを操る。

【保有スキル】
精神汚染:B++
精神に異常を来しており、同ランク以下の精神干渉を大幅に軽減する。
自我科への通院生活を送っていた程の精神的負荷に加え、
薬物投与や婚約者の死といった要因も重なったクロームドルフィンはほぼ正気を失っている。
今の彼はただ只管にスピードを求めるのみ。

単独行動:A+
魔力供給なしでも長期間行動できるスキル。
A+ランクならばマスター不在でも現界が可能。
ただし宝具の使用を繰り返せば相応に魔力の貯蓄を消費する。
例えマスターを失おうと、スピードに魅せられた彼は宝具の使用を止めないだろう。

疾走の死神:A
夜の公道を駆け抜ける都市伝説的存在としての逸話が複合スキルと化したもの。
宝具「疾走する風翔獣」の消費魔力を大幅に軽減させる。
更にサーヴァントやマスターによる魔力探知を大きく阻害し、魔力の気配や痕跡を捕捉されにくくする。

【宝具】
「無銘(ニンジャソウル)」
ランク:C 種別:対己宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
ニンジャとは平安時代の日本をカラテによって支配した半神的存在である。
クロームドルフィンに憑依したニンジャソウルそのものが宝具となっている。
ニンジャソウルに憑依されたものはニンジャとなり、超人的な身体能力と生命力を獲得する。

「疾走する風翔獣(イルカクロイ)」
ランク:C+ 種別:対道宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
肉体の檻を捨て、スピードとなれ。
オムラ・インダストリが開発立案したオーパーツめいたインテリジェント・エアロバイク。
あらゆるマシンを振り切る程の圧倒的なスピードを誇るモンスターマシン。
ホバー走行によって低空を浮きながら疾走するバイクであり、圧縮した空気を解放することで短時間なら飛行が可能。
更に車体の側面には接近戦用の電熱ブレードが仕込まれている。
クロームドルフィンはこのマシンを駆り、果てなき疾走を続けている。

「神速の影に幸あれ(ヘイル・トゥ・ザ・シェード・オブ・ブッダスピード)」
ランク:B 種別:疾走宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
風の道を突き抜けろ。ブッダスピードの果てを目指せ。
令呪、洗脳、暗示、デバフ等による“クロームドルフィンのスピードを縛る命令および状態異常”を完全に無効化する。
彼はスピードに魅せられている。風の道を追い続けている。
クロームドルフィンのスピードを縛ることは最早誰にも出来ない。

【Weapon】
「疾走する風翔獣(イルカクロイ)」

【人物背景】
ネオサイタマの巨大環状道路・ルート808に夜な夜な姿を現す正体不明のライダーニンジャ。
他の走り屋に路上レースを挑んでは圧倒的なスピードで走り抜ける都市伝説的存在。
彼の眼にはスピードが魅せる世界しか映っていない。
正気を失ったスピードデーモンは、果てなき風の道を疾走する。

【サーヴァントとしての願い】
ただ走るのみ。

【方針】
聖杯に興味は無い。
風の道を突き抜け、スピードとなる。
自分と同じ『走る者』には勝負を挑む。
立ちはだかる障害は全て排除し、そして振り切る。


491 : 向井拓海&ライダー ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/12(金) 12:59:39 M8VkJIJQ0

【マスター】
向井 拓海@アイドルマスター シンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
聖杯戦争を全く把握していない。
とにかく元いた場所に帰りたい。

【weapon】
なし

【能力・技能】
アイドルとしてレッスンを受けていたので、ボーカルやダンスはそれなりにこなせる。
以前は不良だったらしく、腕っ節も強い模様。

【人物背景】
神奈川県出身、18歳のアイドル。
趣味はバイクいじりやバイクを乗り回すこと。
元々は不良であり、本人曰く特攻隊長だったとのこと。
半ば強引にプロデューサーにスカウトされた模様。
荒っぽい言動が目立つが、何だかんだで仕事はきちんとこなしている。
面倒見のいい姉御肌な一面も。

【方針】
現状について知りたい。
その過程で謎の走り屋(クロームドルフィン)を追う。


492 : 名無しさん :2016/02/12(金) 12:59:52 M8VkJIJQ0
投下終了です


493 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/12(金) 18:11:07 gqRk6Qv.0
投下します。


494 : 海東大樹&バーサーカー ◆CKro7V0jEc :2016/02/12(金) 18:12:25 gqRk6Qv.0



【1日目】


 天井の細長いライトが床に反射し、昼間のように明るく、その場全体を照らしていた。
 それでいて、地中にいる静謐さだけを残している――そんな地下駐車場に、男が二人いた。
 都内の某有名デパートの地下でありながら、車がこれ以上出入りする気配はない。
 時間としては、既に閉店時間を一時間回っているのだから、当然だろう。
 来るとすれば警備員か、残業している店員たちか。――だが、その僅かな人たちも、これからここに来る事は、無い。
 つまり、ここには、この二人だけの時間が展開できる条件が揃っていた。

「さて、話してもらおうかな、僕を襲った理由――」

 二人の男の内の一人――『海東大樹』の指先は、引き金に掛かっていた。
 引き金、と言うと当然ながらそれは銃を握っているという事なのだが、彼の持つ銃の形状は普通の銃とは少し違う。
 持ち手と引き金の上には分厚い板が乗かっているかのような、ごてごてとした「銃に似た、射出具」というのが正確な所であった。
 それには、弾薬は込められておらず、代わって、そこにはカードが装填される。
 そして、そのカードに込められた力を、エネルギー弾として押し出し発射する――あるいは、文字通り力を借りる。そんな、不可思議な武器。
 それが、この世で海東だけが預かり持つ、この『ディエンドライバー』だった。

 今の海東にとっては、このディエンドライバーだけが、唯一信頼しうる宝物だった。
 友情を踏みにじるような奇策が思い出された今――彼が怒りを見せずにいられるのは、こんな無機物のみなのだ。

 勿論、かつては違った。
 かつては、もっとはっきりと、「仲間」と言える者たちがいた筈だった。
 今はそれより前の自分に戻っただけだが、――やはり、一度出来た仲間の裏切りには、憎悪と、僅かばかりの悲哀を覚えずにはいられない。
 それが、彼を再び、非情の人間に引き戻した理由。
 かつての仲間が起こしたのは、絶望から掬い上げられた果てに、再び、地にたたきつけるような、――それほどまでに海東を傷つける、悪質な裏切りだった。

「早くしてもらわないと、君を殺すしかなくなる」

 怒張のこもった声で言う海東。
 そんな彼の目に見えているのは、こうして実際に銃口を向けた相手ではなく、かつて自分を裏切った一人の男の事である。
 どうあっても、今はその男の事しか目に無い。だから冷徹な怒りが、彼の中から消えない。
 ともすれば、全くの他人にも理不尽な八つ当たりをせざるを得ないほど。

 ――怪人たちを従え、総てのスーパー戦隊を消そうと試み、その過程で海東との間に芽生えた友情を全て包んで屑籠に捨てた男、門矢士。
 彼の企てた計画が、全て正義なる物の為であっても、海東はその行動を赦さない。
 仮面ライダーを探す旅の中で芽生えた友情を不意にして、海東たちを担ぐように騙した士……それから、マーベラス。
 そして、彼らの行為に納得する仮面ライダーやスーパー戦隊たちも、海東にとっては理解できない対象であった。いつ彼らに乗せられて裏切るのかわからない者たちだ。
 だから、今度は、自らが仮面ライダーとスーパー戦隊の頂点に立つ事で、彼らの全てを掌握し、決して誰も自分を裏切らない――「支配」を行おうとした。
 それこそが、今の海東の目的だった。

 信頼するに値する相手は、今は少ない。
 自分が今、いかなる状況に陥っているのかも、現在に至るまで彼にはまるでわかっていないが――海東にも唯一いえるのは、近寄って来る者を疑った方が良さそうだ、というルール。
 今自分がいる世界では、身の周りはおそろしく無機質で、中身のない人間ばかりだった。
 ……だから、わざわざ近づいてくる人間はそうではない。
 そう、「自分の敵」以外には――。

「君は、何か理由があって僕を襲ったんだろう?」

 実際、警察官として近づいてきた男が、この無人の地下駐車場に海東を誘い込み、海東に銃を向けたのだ。
 信じられる相手などいない、という至極わかりやすい証明だろう。
 その銃が蹴飛ばされて地面を転がり、今度は、ディエンドライバーの銃口はその男の方に向いている。


495 : 海東大樹&バーサーカー ◆CKro7V0jEc :2016/02/12(金) 18:12:42 gqRk6Qv.0
 彼の目論見など、実を言えば、最初から気づいている。
 そう。――でなければ、こんな人気のない場所に男二人で行く理由は無いのだから。

「……――」

 一方、鼻先に銃口を向けられた男は、こうして海東が引き金の前で指を強張らせても、内心に現実味を伴ってはいなかった。
 これから射撃するであろう銃口が今、彼の視界の大半を占めている。
 だが、それでも、そのディエンドライバーの、近代兵器と様相の異なる形に、どうもリアリティを感じえなかったのだろう。
 そんな彼も、視線を上げ、海東の顔色を伺い――、

「――……!」

 ――そこで、初めて、恐怖した。
 海東の整った面持ちが崩れ、並みならぬ殺気と憤慨を放とうとしていた。

 本気だ――。

 このままでは、地下駐車場の片隅で、銀色のペンキを塗られたパイプのような「銃口」で殺される。
 そんな奇怪な死に方をする一歩手前に自分がいる事に、男はようやく気付いたのである。
 この切っ先からは、何が放たれるのかはわからない。
 少なくとも、本当に弾丸を射出する機構が出来ているとは思えなかった。
 しかし、おそらく何かが放たれる。
 かろうじて、銃だと認識できたのも、そこに指をかける海東の姿が見えたからに相違ない。

 こんな玩具で脅されている自分を情けなく思いながらも――彼は、食い下がるように海東に泣きついた。

「う、嘘だろ……本当にやる気なのか? ……俺みたいな、警官殺しを……」

「なるほど、この世界の警官は、罪もない一般市民に銃を向けるわけだ」

 まるで男の腹を読んでいたかのように、一秒と経たずに皮肉を返す海東。
 図星を突かれたように、男は言葉を失った。
 海東もまた、少し押し黙って何かを考えた後で、言った。

「――まっ、どっちにしろ、僕に銃を向けた相手は、誰であろうと関係ない。今更警察ごときにビビる僕じゃないしね……」

 そして、引き金を引く指に――力を、掛けようとする海東。
 それは勢いよく引かれたように見えて、寸前で止まっていた。
 しかし、男は、それを知らぬまま、思わず目を瞑り、死を覚悟する。

「ふんッ」

 そうして目が閉ざされた瞬間に、海東は男の顔面に勢いよくディエンドライバーの側面を叩きつけた。
 こんな相手では、一発撃つのも勿体無いという訳である。
 ガキッ、と何か固い物が半分に折れる時の音が、打撃音に交えて小さく響いた。
 ――と、同時に、男の中で熱を伴って腫れあがる顔の細部。

「――いっ――痛ゥッ!!」

 男の鼻先に激痛が走る――確実に鼻が折れ曲がった実感だった。
 反射的に熱い涙が瞼の下に浮かんでいく。
 しかし、苦しむその男の脇腹に、海東は容赦なく、蹴りを叩き込む。
 長い右脚が、綺麗な円を描いて、男の脇腹に吸い込まれた。
 とても人体にぶつかったとは思えない鈍い音が鳴った。

「ごほっ……えっふゥッ――!」

 つま先が肋骨と皮膚の間にめり込んだらしく、男は脇腹を抑えながら、倒れ込んでうずくまった。
 急所ではない。しかし、ただ痛みと苦しさを訴えながら、痰を吐き出す。

 海東は、しゃがんで、その男のシャツの胸倉を、掴み、強引に起こさせる。
 海東の顔には、微塵の穏やかさもない。

「さて……」


496 : 海東大樹&バーサーカー ◆CKro7V0jEc :2016/02/12(金) 18:12:59 gqRk6Qv.0

 涙のにじんだ顔で痛みを訴える男を強引に起き上がらせると、海東はその男のネクタイを解き、Yシャツを首元から真下に引き裂いた。
 ボタンが弾け、制服と合わせていた新品のシャツはぼろぼろに解れた。
 上半身に下着を纏っていなかったその男の胸板が露わになるが――そこを見れば、三角形に光がまばゆく走っていた。

「……ほう」

 やはり、と思った。
 海東の右掌にも、これと似たような紋様が、最近現れている。
 そう、この世界が偽りだと気づいた瞬間に――それは、入れ墨のように刻まれたのだ。
 この男の場合もそうだったに違いない。

「教えてくれないかな、何故僕を狙ったのか。“これ”絡みだっていうのはわかるけど」

「くッ……サーヴァントから聞いてないのか……“聖杯戦争”の事を――」

「聖杯戦争?」

 セイハイ、という言葉を聞いて、海東の頭には、すぐに「聖杯」の字が思い浮かんだ。
 もしそうであれば、海東のような一介のトレジャーハンターも最早、真面目に狙うのも馬鹿らしい世紀にして幻のお宝である。
 勿論、それは神話の中に出てくる「聖杯」の事で、魔術師たちが奪い合う聖杯戦争の願望器と頭の中で繋げた訳ではない。
 だが、おそらくは、神話のお宝をめぐる為の戦争に違いないだろう。
 ひとまず、その男からひとまず話を聞かせてもらおうか、と――海東が思った、その時。

「――ッ!?」

 海東の背後から、不意に濃い紫色をした魔力の弾が投擲されたのである。
 彼の背中を明らかに狙う魔弾の気配に、咄嗟に海東は身を翻して回避する。

「誰だ!?」

 海東がそちらを見れば、そこには、全身を黒い魔法衣に包んだ、魔法使いのような風貌の若い女が立っていた。
 声を発する事もなく、それは、海東を狙っていた。
 海東の命を狙うのは当然、とばかりに。

「キャスター――!!」

 男が、歓喜の声をあげる。
 彼女の事を待っていたのだろうか。
 海東は、それを見て、どうやら、二人に共謀関係があるらしい事を、瞬時に理解する。

「……マスター、遅れて申し訳ありません。この男を消し去る準備は、全て完了しました」

 そして、敵の二人には、とうに海東を囲い込む準備が出来ているらしかった。
 キャスター、という奇妙な仇名で呼ばれたこの魔法使いは、先刻までに、このデパートに残っている人間を全て眠らせている。
 今ここにやってきた段階で、周囲から助けが来ないよう、海東を檻に閉じ込めていたのである。

「仲間がいたのか」

 海東は、呆れながらそう言った。
 魔法なのかわからないが、相手は、常人を一撃で仕留められるような魔力の弾丸を打ち込む杖を持っている。
 キャスター、か。
 明らかに、人間じゃない。
 だとすれば――こちらが起こすアクションは一つ。

「――」

 海東は、ディエンドライバーをキャスターに向けて構え、左手でカードを掴んだ。
 青いマスクに、黒い柵を無数に立てたような――SF映画のロボットにも似た何かの写真が写されているカードである。
 そのまま、ディエンドライバーにカードを装填すると、そのまま、引き金を引いた。

――KAMEN RIDE――

 そんな電子音が鳴る。


497 : 海東大樹&バーサーカー ◆CKro7V0jEc :2016/02/12(金) 18:13:16 gqRk6Qv.0
 ディエンドライバーから放たれたエネルギー弾がキャスターの身体に吸い込まれ、その黒衣にたたきつけられる。
 先ほどまでそれを向けられていた男が、その光景に冷や汗を流す。
 海東大樹の身体に、仮面ライダーディエンドのイメージが重なる。――それは、カードに描かれたモノと全く同じ顔――。

「変身!」

――DIEND!!――
 
 ディエンドの顔に何本もの黒いカードが叩き込まれ、それを全て吸収していく。
 そして、海東大樹は仮面ライダーディエンドに変身を完了する――。

 青と黒の仮面ライダー――ディエンド。
 只の人間ではなく、自分は「戦争」ならば受けられる人間だ、と。
 それを表象するかのように、ディエンドは冷静に立ち構えていた。

「そう、たとえ誰であろうと、僕は、僕の前に立ちはだかる者を赦さない……」

 ディエンドの銃口は変わらず、キャスターに向けられていた。
 キャスターが、ディエンドの攻撃で傷を受けながらも、睨みつけるようにして荒げた声を放つ。

「何……ッ! お前は、『マスター』じゃ――」

 相棒の男をちらりと見ながら、キャスターは言うが、その男の方も愕然としていた。
 海東大樹は、自分ごときが奇襲するべき相手ではなかった――という事に、今更ながら気づく。
 そう――『マスター』でありながら、その男は、『サーヴァント』に匹敵する戦闘力を持ちうる。
 そういう相手なのだと、悟る。

「キャ、キャスター! あいつを倒せ!」

 キャスターの相棒は、怯えながら、逃走の準備を図っていた。
 自身の相棒が既に使い物にならない事を悟ったキャスターは、調査不足を呪う。
 警官としての立場を利用して上手く立ち回ろうとしたらしいが、早速失敗だったらしい――と。

「――くッ」

 舌打ちするキャスター。
 自身の劣勢が明らかになった今、状況を呪わずにはいられない。
 紫の魔法弾を杖の先から発して、キャスターはひとまずディエンドの力量を調べる。

「ふんッ」

 しかし、その直前で、ディエンドが、更にディエンドライバーにカードを装填する。
 今度は、ディエンドとは別の仮面ライダーが描かれたカードであった。
 カメンライドされたカードは――

――KAMEN RIDE!!――
――SASWORD!!――

 ――仮面ライダーサソード。
 カブトの世界で戦った、蠍の仮面ライダーであった。

 紫の戦士のエネルギーが顕現され、変身剣サソードヤイバーを構えてキャスターへと走り出す。
 サソードヤイバーが魔法弾を凪いで消し去った。
 キャスターには、それが彼の『英霊』――のように、見えた。

「見ていてくれたまえ。これが僕の協力者だ」

 しかし、これは、『サーヴァント』ではない。
 サーヴァントと別の『英霊』を顕現する――というのは、『聖杯戦争』に携わる者としてはあまりに型破りだった。
 いやしかし、このサソードはあくまでエネルギー体であって、信念も意思もなく、ただディエンドに従って敵を狙う。
 キャスターとの戦闘を任された、オートの仮面ライダーと言って良い。
 つまり、ロボットを一時的に召喚できる存在が、海東大樹であるという認識でおおよそ間違いないだろう。


498 : 海東大樹&バーサーカー ◆CKro7V0jEc :2016/02/12(金) 18:13:49 gqRk6Qv.0
 サソードがキャスターに、サソードヤイバーを構え立ち向かっていく横で、男が這うようにして立ち上がり、その場から逃げ出そうとする。
 サソードヤイバーと、キャスターの杖とがぶつかり合う横で、ディエンドが走り出した。

「おっと、逃がさないよ……僕が狙った獲物はね」

 ディエンドは、両手を広げてその男の進路を妨害する。
 痛みを残している人間に追いつくのは容易だ。

「!」

 キャスターの事はサソードに任せ、自身はこの男と語らう事にしたわけである。
 殺しても良いが、今の海東が知りえない情報を知っているらしい、この男に、海東は一言聞いておかねばならない。

「――さあ、教えてもらおうか、聖杯戦争とは、何なのか」 

 彼が興味を示すには十分だった。
 再び、ディエンドは右手で銃口をその男に向けた。
 ディエンドが構えたディエンドライバーが玩具ではなく殺傷兵器だという事は、この男も既知の事実である。

「教えてくれれば……俺を見逃してくれるのか?」

「まあ教えてくれたら、命くらいは助けてやるよ。元々、あんたごときの命に興味ないしね」

 こう言うと、もはや、逃げる気力を失ったらしい。
 命を粗末にするよりも、彼は海東に屈する道を選んだようだった。

「わ、わかった……何も知らないんだな? 教えてやる……教えてやるから――」

「ああ、悪いようにはしない。君が知っていて、僕が知らないっていうのは少し癪に障る。早く教えてもらえないかな」

「せ、聖杯戦争は……、俺や、お前のような『マスター』が……それぞれ自分の『サーヴァント』を……」

 ――――ザシュ。

 と、鈍い音が響いたのは、その直後であった。
 その音がどこから聞こえた物なのか、一瞬、誰も解さなかった。
 そして――。

「!?」

 その警官の首が、鋭利な刃で刈り取られたかのように、彼方へと吹き飛んだのである。
 血しぶきがその場を汚す最中――、ディエンド自身さえも目の前で起きた現象に閉口している。
 彼から情報を引き出そうとしていたディエンドも。
 彼を主としていた筈のキャスターも。
 その瞬間に、一人の男が消え去った事に理解を示す事はなかった。

「――説明は不要だ、マスター」

 駐車場の奥から、男の声が響いた。
 ディエンドは、自らの左方を見やる。

「何者だッ!?」

 見れば、烏の羽で仕立たかのような、豪奢で黒い服を纏った――銀髪の、おそらく外国人と思しき美青年が薔薇を咥えたまま歩み寄っていた。
 黒い服、といっても胸元は大きく開いており、上半裸とあまり変わらないほどに生の肉体が見えていた。
 余程のナルシストでなければこんな格好はできまい。
 しかし、それをあざ笑う事が出来ないのは、彼の腕に、剣の柄があったが故だろう。

 そして――

「聖杯戦争については、全て僕の方から説明するよ。だから、“そいつ”はもう要らない。――君が僕のマスターたる資格があるか否かの試験は、これでひとまず終わりだ」

 ――何かが一斉に零れ落ちる、雨のような音が、一瞬だけ床から聞こえた。


499 : 海東大樹&バーサーカー ◆CKro7V0jEc :2016/02/12(金) 18:14:11 gqRk6Qv.0
 そこでは、今、宙に浮いていた血が床に落ちたのである。
 美青年の持つ柄が、丁度今、動いていた。
 まるで、彼が「見えない剣」でも振るったかのように。

「マ、マスター……!」

 仮面ライダーサソードとの戦闘中でありながら、キャスターは戦意を喪失する。
 マスターが脱落した時点で、キャスターは消滅が確定するのである。
 今目の前で起きたのは、事実上の死刑宣告と何ら変わらない光景――だからこそ、キャスターは膝をつき、サソードは追い打ちをやめた。

「キャスター――すなわち、『魔女』のサーヴァント、なるほど」

 美青年は、額で眉を顰めた。
 そして、更に、柄だけの剣をキャスターの方に向けて、縦一閃に振り下ろした。その延長線上――彼女の頭の上で、何かが落ちる。
 彼女の魔法衣さえも破り、彼女の頭頂部から足までが、次の瞬間、全て真っ二つに引き裂かれ、膨大な血の雨が降り注いだ。
 キャスターの意識は、既にない。

「――!!」

 やはり――奴は、「視えない剣」を使っているのだ、と海東は理解し、息を飲んだ。
 次が自分に来るのではないかと、ディエンドは警戒するが、そんな彼の前に、美青年はゆっくりと歩を進めていく。
 柄を鞘に仕舞い、何の敵愾心も抱かぬまま。

「初めまして、マスター。僕の名は、クリード=ディスケンス」

 彼は、ディエンドの前に立ち、言った。本当に攻撃してくる様子が一切ない。
 何より、クリード、と名乗る男は、海東に僅かながら興味を示しているようである。

「バーサーカーという名前は気に入らなくてね、僕の事はクリードと呼んでほしい」

 ディエンドの変身を解除した東は、クリードに向けて、不機嫌そうな顔で言う。
 彼の靴が、川のように地面を流れた血液で、少し汚れた。――だから、更に眉を顰める。

「……どういう事か、説明してもらえないかな」

「ああ、もちろん……。そして、――共に、この腐った世界を壊そう、同志!」



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 地下駐車場から脱した海東は、ホテルの室内で『バーサーカー』もとい、クリード=ディスケンスから事情を聴いていた。
 聖杯戦争、という物がいかなるルールであるのかも知らされ、その最中で、自分の想像した内容とそこまでかけ離れていない事を知った。
 仮面ライダー同士の戦争と実情は何ら変わらない。今更、強く反発するルールではなかった。
 それどころか、勝者に想像を絶するお宝が手に入る。

「さて、どうする? マスター。君は乗るのか、乗らないのか――」

 クリードは問いかけた。
 今の今までそれを一切伝える事なく、海東を監視して「試していた」というクリードの事は、どうも気に入らなかった。
 故に、海東の反応は、そっけないが、出した答えは、おおよそクリードの意見と合致する物に違いなかった。

「もちろん。狙った獲物は、逃さない。それが僕のやり方だ」

「ハッハッハッハッハッハッ!!!! それでこそ、我がマスターに相応しいよ、カイトー!!!!」

 無邪気に高笑いするクリード。
 海東は彼を横目で見るが、その姿は、彼が忌み嫌っている「狂戦士」の称号の持つイメージと、さして変わらないと言えた。
 しかし、余計な対立はしたくない。


500 : 海東大樹&バーサーカー ◆CKro7V0jEc :2016/02/12(金) 18:14:31 gqRk6Qv.0
 バーサーカーなどと呼ばれれば、クリードは怒り狂い、またあの視えない剣を抜くだろう。
 自分より上に立とうとする者や、自分の意にそぐわない者を本質的に嫌う……そんな性格がはっきりと見てとれた(尤も、海東も他人の事を言える性格ではないが)。
 海東は、そんなクリードを一瞥してから、ふと言った。

「――だけど、僕の旅の行き先を勝手に決めた事だけは、腹立たしくて仕方ないね」

 結果的に、海東が聖杯戦争を知って自らここに来る形ではなく、強引に呼び寄せられる形になっている。
 それが彼にはどうも気に入らなかった。
 誰かに縛られるというのは、海東が最も忌み嫌う状況である。

「フフフ……カイトー、君の気持は僕にもよくわかる。僕も全く同じ気でいたからね。こうして勝手に他者に従属する役割を担わされ、挙句バーサーカーなどと呼ばれるなんて、全く屈辱も良いところさ」

 そんな海東に、クリードは同意して告げた。
 どうにも腑に落ちないが、一応、海東はクリードの話を聞いておく。

「しかし、今の僕に大きな不満はないよ。『英霊』として再臨し、全盛期のナノマシンの肉体を取り戻し、チャンスを得られた。――そして、僕を縛る君も、僕の好みに合っている」

「……」

「そう、これは、まるで、この腐った世界を消し去り、楽園(エデン)を作り上げる為に呼ばれたみたいじゃないか――!! それなら、僕も大歓迎さ!! ハッハッハッハッ!!」

 黙る海東の横で、一人テンションを上げているクリード。
 似た者同士というには、少し食い違っていた。
 生前はこれで人を引き付けていたのかもしれないが、クリードのリーダーとしての資質は、『バーサーカー』のクラスで呼ばれた今は喪失されている状態にある。
 故に、海東の心は、クリードには微塵も動かされなかった。

「……時に、カイトー。信じていた――あるいは、愛していた男に、裏切られた事は無いかい?」

「――」

 しかし、この質問を受けた時、海東は、思わずクリードに目をやった。
 それが、不意にクリードに図星をつかれる理由となったわけだ。

「やっぱりだ。そういう顔をしているよ、君は」

 海東は押し黙る。
 クリードは海東を十分すぎるほど好いているようだが、海東は、やはりクリードを好きになれなかった。
 聖杯戦争の事をギリギリまで秘匿されていたのも気に入らなかったが、こうして海東より優位に立とうとするのが解せない。
 クリードという男に試され続け、挙句に、主従関係を越えて偉そうにされるなど、海東としては御免である。――聞く限りでは、サーヴァントなど所詮、道具に過ぎない。
 ましてや、『バーサーカー』などという、本来、意思を殺して使われるべきサーヴァントならば、なおさらだ。
 しかし、クリードは一方的に続けた。

「道士(タオシー)になる必要はない。ディエンドの力だけでも君は十分、僕のマスターである資格がある――さあ、共に聖杯戦争を勝ち抜こう、同志カイトー!!」

 彼は、海東を同志と呼ぶ。
 どこか自分に近い物を感じたが故だろう。それは、かつて、クリードがとある抹殺人に抱いた共感とは別物だった。
 もっと、別の所で自分に似ている人間を、一人見つけたという事らしい。
 この共感の所以は、おそらく、世界に対する憎しみと、他者を信頼しない心と、裏切った者への愛憎の中にあるのだろう。

「――」

 そして、クリードは、そんな海東に向けて、不気味な笑みを見せながら、言った。





「――歓迎するよ」


501 : 海東大樹&バーサーカー ◆CKro7V0jEc :2016/02/12(金) 18:14:53 gqRk6Qv.0





【クラス】
バーサーカー

【真名】
クリード=ディスケンス@BLACK CAT

【パラメーター】
筋力B 耐久B+ 敏捷A 魔力A 幸運D 宝具A

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】

狂化:D
 筋力と耐久が上昇するが、言語機能が単純化し、複雑な思考を長時間続ける事が困難になる。

【保有スキル】

加虐体質:A
 戦闘時、自己の攻撃性にプラス補正がかかる。
 これを持つ者は戦闘が長引けば長引くほど加虐性を増し、普段の冷静さを失ってしまう。
 攻めれば攻めるほど強くなるが、反面防御力が低下し、無意識のうちに逃走率も下がってしまう。

ナルシズム:B
 自己愛、自己陶酔が極端に強い英霊に付随するスキル。
 精神的、肉体的に侮辱された際に、対象への強い憎悪や敵意を刻み、マスターの命令を無視して相手をどこまでも付け狙う粘着質な性格を伴う。

道(タオ):A+
 秘薬「神氣湯」を飲んだ者のみが使う事の出来る特殊能力。
 クリードはこれを覚醒させて、剣を自在に操る能力「剣<ソード>」を習得している。

ナノマシン:B
 彼の肉体を構成する物質。
 彼はこの物質の力で不死の領域に達しており、瀕死の重傷を負っても1ターン以内に肉体のダメージを再生する事が出来る。
 ただし、唯一、脳にダメージを受けた場合は修復不可能となる。

カリスマ:-
 生前は高いランクでこのスキルを保有していたが、「狂戦士」のクラスで呼ばれた為、喪失している。

【宝具】

『幻想虎徹(イマジンブレード)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜80(レベル1) 最大捕捉:1〜10(レベル1)

 生前、魔女によって折られ、柄のみとなった刀。
 バーサーカーはこの柄に氣を込める事により、人智を超越した幻想の刀を作り上げ、時に融合する事が出来る。
 また、この宝具にはいくつかの段階(レベル)があり、このレベルを使い分けながら戦う事になる。
 レベル1は、80メートルまで自在に伸ばす事が出来る「見えない剣」を作り上げる。
 相手が達人ならば柄の角度で攻撃を読まれてしまう事があるが、大抵のサーヴァントならば完全に読み切る事は不可能。
 また、バーサーカーの任意で、伸縮だけでなく、可視化、不可視化を使い分ける事が出来る。
 レベル2は、バーサーカーの意思によって不規則に形を変えながら敵に食らいつく「生きた剣」を作り出す。
 剣そのものが鮫のように敵を食らい、いかなる金属でさえも噛み砕いてしまう。宝具でありながら、バーサーカーと同程度の筋力・耐久・敏捷を持つ。
 レベル3は、バーサーカーの右腕と融合し、斬るだけでなく敵を砕く。このレベルを使うと、筋力と耐久が1ランク上昇する。
 そして、その後にも、巨大な光の剣を天高く掲げて敵を叩き潰すレベルMAXという究極の形態が存在する。


502 : 海東大樹&バーサーカー ◆CKro7V0jEc :2016/02/12(金) 18:15:08 gqRk6Qv.0

【weapon】

『幻想虎徹(イマジンブレード)』

【人物背景】

 かつては秘密結社クロノスの抹殺人<イレイザー>で、トレイン=ハートネットの元相棒だった男。
 しかし、そのあまりに高すぎる自己愛が故に、クロノスの上層部に従い続ける事を由とせず、「クロノスの無能たちではなく自分のような有用な人間だけが支配する」という楽園<エデン>を作ろうと試みる。
 その過程で、道<タオ>の力に目をつけ、道士<タオシー>のシキらと結託し、多くの同志を集めて革命組織「星の使徒」を結成した。
 星の使徒のリーダーとして虐殺を繰り返す中にも、かつての元相棒であるトレインに対する狂気じみた敬愛が残っている。
 その所以は、自分と同じように他者を冷徹に殺す事が出来るからだという。そして、過去にはトレインがサヤと出会い変わってしまった事には激しい怒りを見せ、サヤもクリードが自らの手で殺害している。
 世界を病的に憎む思想の根底には、親に虐待され、ホームレスのように生きた後も警官たちに暴行を受けたという過去が関わっており、それ故にきれいごとを言う人間が嫌い。
 野望がトレインに打ち壊された後は廃人となり、かつての同志であったエキドナ・パラスと共に、誰もいない場所で療養を続けている。

【サーヴァントとしての願い】

 神の力を持ったまま現世に再臨し、腐った世界を壊して楽園(エデン)を作り上げる。


503 : 海東大樹&バーサーカー ◆CKro7V0jEc :2016/02/12(金) 18:15:25 gqRk6Qv.0





【マスター】

 海東大樹@仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦

【マスターとしての願い】

 全てのマスターの頂点に立つ。

【Wepon】

『ディエンドライバー』
 仮面ライダーディエンドに変身する為の銃型の変身アイテム兼専用武器。
 変身前でも銃としてエネルギー弾を発射する事が可能。
 ちなみに、海東以外に、「侍戦隊シンケンジャー」のチノマナコが変身した事がある。

『ライダーカード』
 海東が集めた仮面ライダーのカード。
 ライダーのエネルギーを開放し、召喚する事が出来る。多種ある。
 他にも、ディエンドの能力を支えるいくつかの能力のカードがある。

【能力・技能】

『仮面ライダーディエンド』
 彼の変身後の姿。
 これに変身して戦闘できるほか、生身でも高い身体能力を誇る。
 G3-Xを装着するだけの技量も持ち合わせている。

・ライダー知識
 フォーゼまでに存在した仮面ライダーを知っており、今現在はスーパー戦隊に関する知識も僅かながら持ち合わせる。

・ビッグマシンの操縦
 ビッグマシンという巨大ロボットの操縦をして戦っている。

【人物背景】

 仮面ライダーディエンドに変身する青年。出身は、「ディエンドの世界」。
 様々な世界を渡る能力を持ち、そこでお宝を手に入れる事を目的としたトレジャーハンター。
 出典作品では、スーパー戦隊を潰そうとする門矢士(仮面ライダーディケイド)と、ライダーを倒そうとするマーベラス(ゴーカイレッド)の目的を探るべく、泉比奈、ジョー・ギブケン(ゴーカイブルー)、ハカセ(ゴーカイグリーン)と行動を共にする。
 その為、怪人を使って好き勝手に暴れ回る士とマーベラスに比べると、ヒーロー寄りな立ち位置で、ジョーと共に実質的に主人公。
 しかし、全ては士とマーベラスの芝居であり、怪人たちに「ビッグマシン」を作動させない為の作戦だった事を知り、友情を踏みにじった士たちへの怒りで暴走。
 自らビッグマシンを作動させ、全ての仮面ライダーと全てのスーパー戦隊を倒して頂点に立つ者になろうとする(今の彼はこの瞬間からの参戦)。

【方針】

 聖杯の入手。


504 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/12(金) 18:15:42 gqRk6Qv.0
投下終了です。


505 : ◆NIKUcB1AGw :2016/02/12(金) 21:31:23 .6RFT3Po0
皆様、投下乙です
自分も投下させていただきます


506 : 中野梓&アサシン ◆NIKUcB1AGw :2016/02/12(金) 21:32:10 .6RFT3Po0
夕暮れの町並みを、女子高生の集団が楽しそうに雑談しながら歩いて行く。
彼女達の何人かは、楽器ケースを背負っていた。おそらく、同じ部活動の仲間なのだろう。
やがてその中の一人が、集団から離れる。
残りの面々に軽く頭を下げると、彼女は横断歩道を渡っていった。


中野梓は、上機嫌だった。

(まだまだ緩い雰囲気とはいえ、最近は先輩たちもしっかり練習やってくれることが多くなってきたし……。
 ずっとこの調子でいけたらいいなあ。うん、明日もがんばろう!
 ……あれ?)

彼女の脳内には、明るい感情だけが満ちていた。だがそこへ、ふいに影が差し込む。

(先輩たちって、もう卒業したはずじゃ……。この春から私は、3年生で……。
 なんで私、まだ2年生なの? まさか時間が巻戻って……。
 いやいや、そんな漫画みたいなこと、あるわけが……。
 あれ、ちょっと待って。学校からの帰り道って、こんな景色だったっけ?
 おかしい、いろいろおかしいよ……うっ……うあああ……!)

ふいに、強い頭痛が梓を襲う。たまらず、彼女はその場に倒れ込んだ。
今まであった記憶とわき上がってきた記憶が混濁し、荒れ狂う奔流となって梓をさいなむ。
苦しむ梓は、自分の右手に奇妙な文様が浮かび上がっていることにも気づかなかった。

(誰か……助け……)

涙を浮かべながら、救いの手を求めて梓は地面を這う。
その視界に、突如人影らしきものが飛び込んできた。
助けが来たと判断し、かすかに喜びの表情を浮かべて梓は顔を上げる。
だが、その表情はすぐに凍りついた。

そこにいたのは、人間ではなかった。
全身は黒く、背中にはこうもりのような翼。頭からは鋭く尖った角が生えている。
いかにも「悪魔」といった風貌の怪物が、そこに立っていた。

「敵対マスターを発見。殺害する」

機械的に呟くと、怪物は長い爪の生えた右手を梓に伸ばす。
この怪物が何者かはわからないが、自分を殺そうとしている。梓はそう理解した。
逃げなければならない。だが迫る死を前にして体はすくみ、身動き一つ取れない。
呼吸ですら止まってしまっているように感じる。

(いやだ! いやだよ! 死にたくない! 誰でもいいから、助けて!!)

ただただ生き残ることだけを望み、梓は心中で叫ぶ。
その思いは天に、あるいは地獄の底に届いた。

次の瞬間、怪物の頭部は打撃音と共にはじけ飛んだ。
残された首から下の肉体は血を吹き上げながらアスファルトに倒れ込み、やがて光となって消える。
その後ろから姿を現したのは、バールのようなものを手にした銀髪の美少女だった。

「いつもニコニコ、マスターの隣に這いよる混沌! ニャルラトホテプです!」

元気よく名乗りを上げる少女。だが、それを聞いているものはこの場にいない。
梓は眼前で繰り広げられたスプラッタシーンに耐えきれず、気絶してしまったのだから。

「ありゃ……。ちょっとやりすぎましたかね?」


507 : 中野梓&アサシン ◆NIKUcB1AGw :2016/02/12(金) 21:32:54 .6RFT3Po0


◆ ◆ ◆


次に梓が目を覚ましたのは、自室のベッドの中だった。

「あれ、ここは……?」
「あ、目が覚めましたか、マスター?
 誰もいらっしゃらなかったので、失礼とは思いましたがマスターの持っていた鍵を拝借して家に入らせていただきました。
 ご両親は共働きのようですね」

ベッドの横にいたのは、銀髪の少女。目を覚ましたばかりの梓に、彼女は明るいトーンで話しかける。

「あなたは……? それにマスターっていったい……」
「はい、それでは説明いたしましょう!」

待ってましたとばかりに、少女は説明を始める。
ここは梓が本来いるべき世界ではなく、聖杯戦争という殺し合いの舞台であること。
梓はその参加者として連れて来られたこと。
そして自分が、梓のパートナーとして召喚されたアサシンのサーヴァントであること。

「じゃああの悪魔みたいなのも、サーヴァントだったんですか?」
「いやあ、それにしては英霊が持っているであろう風格とかそういうものがありませんでした。
 おそらくは、キャスターあたりが放った使い魔でしょう。
 まったく、男なら拳一つで勝負せんかい、って話ですよ」
「はあ……」

梓は困惑する。うっすらとしか覚えていないが、アサシンは先ほど凶器を使っていなかったか。
自分は女だからいいという理屈か。それならそのキャスターとやらも女の可能性があるのではないか。
そこまで考えて、梓は「たぶん適当に言ってるだけなんだろうなあ」と思い直す。

「それで、マスター」
「あ、はい。なんでしょう」
「マスターには、聖杯に叶えてもらいたい願いはありますか?」

そう言われて、梓は考える。
願いがないといえば、嘘になる。
もっともっと、先輩たちとバンドを組んでいたかった。
だがそれは、単なる個人的なわがままだ。
そんな願いのために他者に迷惑をかけるわけにはいかないし、殺すなどもってのほかだ。

「いえ、特には……。元の世界にさえ帰れれば、それ以上は望みません」
「そうですか、それを聞いて安心しました」
「安心……?」

アサシンの言葉に、梓は首をかしげる。
先ほどの説明を聞く限り、マスターのモチベーションは高い方がサーヴァントにもありがたいはず。
それがなぜ、願いがないと聞いて安心するのか。

「実は今回の聖杯戦争、どうにもきな臭いんですよねえ。
 普通の聖杯戦争ってのは毎回一人か二人は巻き込まれ枠がいますが、基本的には本人の意思で参加するものなんです。
 マスターのように、強制的に連れて来られて参加させられるなんてあり得ないはずなんですよ。
 ですから私は、この怪しい聖杯戦争をぶち壊してやろうと思って召喚に応じたんです」
「はあ……」

全てを一度に理解できたわけではないが、梓にはある程度アサシンの言いたいことが理解できた。
彼女は聖杯戦争の参加者ではあるが、真っ当に勝ち抜くつもりはないのだ。
だからマスターである自分が聖杯を望まないと聞いて、安心したということなのだろう。

「まあそういうわけですので、短い付き合いになるでしょうがよろしくお願いしますね、マスター」
「は、はい」
「心配せずとも、マスターの身の安全は私が全力で守りますので!
 望まず戦いに巻き込まれた少女の護衛なんて、ラノベみたいで燃えますねえ!
 ああ、私はどこぞの脳みそ固形燃料女と違って同性愛者の気はありませんので、ご心配なく。
 まあマスターは物語の主人公を張れるぐらいの美少女だとは思いますけどね。
 あなたを失うとなればその世界にとって莫大な損失ですから、きっちり無傷でお返ししないと!
 『MOE』は宇宙の合い言葉ですよ!」
「…………」

アサシンのマシンガントークを前にして、梓は沈黙する他なかった。

(この人……先輩たちとは別の意味で付き合うのが大変かも……)


508 : 中野梓&アサシン ◆NIKUcB1AGw :2016/02/12(金) 21:33:37 .6RFT3Po0

【クラス】アサシン
【真名】ニャル子
【出典】這いよれ!ニャル子さん
【属性】混沌・中庸

【パラメーター】筋力:B 耐久:C 敏捷:B+ 魔力:B 幸運:B 宝具:A

【クラススキル】
ご都合主義な結界:A
「気配遮断」の代用スキル。
このスキルが発動している間、マスター以外の存在はアサシンを無力なNPCとしてしか認識できない。
戦闘が開始されると、このスキルは強制的に解除される。

【保有スキル】
邪神型宇宙人:A
「クトゥルー神話」という形で地球にその存在が伝えられた宇宙人の一族。
本質は神でなくとも、神という認識で見られるようになった存在。
対峙した相手にクトゥルー神話の知識があった時のみ、このスキルは同ランクの「神性」に変化する。

這いよる混沌:A
数多の姿を持つ存在。
上記の値を上限とし、自らのステータスを自在に変化させることができる。
アサシンは普段、一般人であるマスターに合わせステータスを下げることで魔力消費を抑えている。

クロックアップ:A
超高速移動能力。そのスピードは、英霊と言えども付いていくのは難しい。
生前はノーリスクでホイホイ使えたが、サーヴァントである現状では魔力消費が激しいため多用は厳しい。

サブカル知識:D+
微妙に第4の壁を認識していることも手伝い、莫大なオタク知識がスキルとして昇華されたもの。
縁もゆかりもない英霊であっても創作物の登場人物として知っている可能性があり、低確率で真名を見破れる。
相手が「ヒーロー」であれば、その確率は上昇する。

加虐体質:B
戦闘時、自己の攻撃性にプラス補正がかかる。これを持つ者は戦闘が長引けば長引くほど加虐性を増し、普段の冷静さを失ってしまう。
攻めれば攻めるほど強くなるが、反面防御力が低下し、無意識のうちに逃走率も下がってしまう。

心眼(偽):C
直感・第六感による危険回避。虫の知らせとも言われる、天性の才能による危険予知。
視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。


509 : 中野梓&アサシン ◆NIKUcB1AGw :2016/02/12(金) 21:34:31 .6RFT3Po0

【宝具】
『シャンタッくん』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:―
ニャル子の眷属である、馬の頭・こうもりの羽・鳥の足を持つ怪生物。
普段は愛玩動物レベルの大きさだが、真の姿に戻れば全長数メートルの巨体となる。
戦闘力はあまり高くないが、乗り物としては優秀。
ニャル子は「騎乗」のスキルを持たないが、シャンタッくんに関しては自在に乗りこなすことができる。

『燃える三眼(フルフォースフォーム)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大捕捉:1人(自身)
ニャルラトホテプ星人の最強形態。
おのれが「最強」と感じる姿に変身することによりテンションを上げ、最大限におのれの力を引き出す。
ニャル子の場合は、特撮ヒーローのような黒い鎧を纏った姿となる。
変身中は筋力、耐久、敏捷がそれぞれ1ランク上昇する。


【weapon】
○名状しがたいバールのようなもの
邪神界隈ではメジャーな鈍器。
ニャル子のものはノーマルタイプで、特殊能力は無い。

○冒涜的な手榴弾
ほぼ普通の手榴弾。

【人物背景】
クトゥルー神話における、ニャルラトホテプのモデルとなった宇宙人と同種族の一個体。
惑星保護機構のエージェントであり、地球人の少年・八坂真尋を守るため地球を訪れる。
その後も理由をつけて地球に居座り、様々な事件を解決した。
可憐な見た目とは裏腹に、性格は卑劣で好戦的。
また、地球の娯楽文化をこよなく愛するオタクでもある。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯戦争を破綻させる。手段は問わない。

【基本戦術、方針、運用法】
アサシンでありながら高いステータスと豊富なスキルを持ち、三騎士とも正面から渡り合える。
ただしそれは、あくまで全力を出した場合のこと。
一般人であるマスターの負担を考えれば、できればアサシンの基本である奇襲で余計な力を使わずに勝ちたい。
幸い不意打ち上等な性格なので、奇襲戦法も喜々としてこなしてくれるだろう。


510 : 中野梓&アサシン ◆NIKUcB1AGw :2016/02/12(金) 21:35:04 .6RFT3Po0

【マスター】中野梓
【出典】けいおん!

【マスターとしての願い】
元の世界に帰る。

【weapon】
なし

【能力・技能】
アマチュアとしては充分にハイレベルなギター演奏。

【人物背景】
桜ヶ丘高校軽音楽部部員。担当楽器はギター。
入学直後の新歓で聞いた先輩たちの演奏に胸を打たれ、入部を決意する。
真面目な性格であるため当初は部の緩すぎる雰囲気に困惑していたが、徐々に適応していく。
今回は先輩たちの卒業後から参加させられている。

【方針】
生存優先。


511 : ◆NIKUcB1AGw :2016/02/12(金) 21:35:33 .6RFT3Po0
投下終了です


512 : 一ノ瀬晴&デストロイヤー ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/12(金) 22:16:44 7AqkYut20
投下します


513 : 一ノ瀬晴&デストロイヤー ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/12(金) 22:17:51 7AqkYut20
 
 1945年8月15日。日本全土を高気圧が覆い、夏のうだるような暑さの中でラジオ放送が行われた。

「堪え難きを堪え忍び難きを忍び以て万世のために太平を開かんと欲す」

 天皇陛下の肉声がノイズと共に電波に乗ってラジオのスピーカーから流れていた。
 ブツブツと途切れてはいるも意味が分からないでもない。読まれているのは後に大東亜戦争終結ノ詔書と呼ばれているものだ。

「なんじ臣民それよく朕が意を体せよ」

 この日、帝國は破れた。

 泣く者がいた、怒る者がいた、安らぐ者もいた、呆ける者もいた。
 もしも、駆逐艦『響』に肉体があったら、どのような反応を示しただろうか。
 轟沈した姉に、妹達に、同胞に何というべきだったのだろう。
 物言わぬ鋼鉄は何も言わない。新潟港に兵士達の慟哭が響くのみだ。



       *       *       *



 走る。走る。夜の闇を走る。

「はぁ、はぁ」

 全力で、全霊で、一ノ瀬晴は走っている。
 後ろから追ってくるのは何か、表現できない。名状しがたい危険なもの。
 追いつかれれば殺されると本能が警告を鳴らしている。
 
 とある学園に編入するために東京にきたはずだった。
 しかし気が付けば全く知らない土地で、全く心当たりのない怪物に追われている。
 いや、心当たり自体はあるが毛色が違いすぎる。
 
(何……あれ……)

 いつもの暗殺とは違う。
 人間でも、武器でも、獣でもない。
 あれは駆け寄る死そのもの。いつでも追いついて晴を縊り殺せるのにやらないのは遊んでいるから。
 諦めたら、走るのをやめたら死ぬ。


514 : 一ノ瀬晴&デストロイヤー ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/12(金) 22:18:29 7AqkYut20
 誰かが助けることは無い。警察に駆け込もうとも寿命を縮めるだけだ。
 いつもの暗殺ならば権力が晴を殺し、今回の怪物ならば暴力で公僕たちごと圧し潰すだろう。

「はぁ……はぁ……」

 かれこれ1時間近く走っている。
 足には自信がある……あるが人間には限界がある、あれにはおそらく無い。

「え…?」

 ストンと足にナイフが突き刺さった。
 足がもつれて、前のめりに倒れる。
 後ろにいたはずの怪物がいつの間にか前にいて、晴の足にナイフを突き立てていた。

「きゃあ!」

 倒れた格好のまま、晴は必死に怪物と距離を取ろうとする。
 だが、それは歩くより遅い。怪物からしたら止まっているに等しい悪あがきだろう。
 怪物の表情は分からないが、愉悦を感じている雰囲気が怪物から漂っていた。
 断末魔を愉しみ、絶望する少女の顔を楽しみ、そして殺して悦に入る。
 おそらく目の前の怪物はそういった、快楽殺人者のような嗜虐性の強いナニかだ。
 故に晴を見逃すことは万に一つもあり得ない。だが、その性情故に、致命的な隙が生まれた。

「あなたが私のマスターかい?」

 突如現れた光る鱗粉の如き粒子が空を漂い、神秘的な光が暗い道を照らす。
 怪物と晴の間、僅か2,3メートルの距離に少女が出現した。
 背中には砲台のような物を背負い、背負っている鉄塊から錨が伸びている。

「ハラショー。なるほど危機一髪だったようだね」


515 : 一ノ瀬晴&デストロイヤー ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/12(金) 22:18:54 7AqkYut20

 逃げてと晴が叫ぶ前に怪物が少女の喉に刃を突き立てた。
 頸動脈を切られて、少女の血から大量の血が噴き出る。

「クハッ」

 怪物から笑い声がした。
 当然だ、致命傷を与えたのだから目の前の少女は脅威になり得ない。
 晴にもそう見えた。再び絶望が全身から励起し、焼け付くような幻痛を与えた。しかし────

「沈まんさ、不死鳥の名は伊達じゃない」

 驚く怪物。その驚く瞬間が怪物にとって致命的なタイムロスとなる。
 錨が怪物の鳩尾へと叩き込まれ、怪物の体が3,4メートル後方へ飛び、その間にも少女の腰にあった六本の黒い塊が発射された。
 黒い塊は地面を潜り、まっすぐ怪物へと行く。
 あれがどんなものかを晴は理解した。急いで耳を塞ぎ、目を閉じ、衝撃に備えて蹲る。

 器官を閉じてても分かる爆音、衝撃、光、熱気。
 晴に理解できたのはそれだけだった。
 だが、何が起きたか理解するのはそれで十分だ。
 瞼を開けると怪物はアスファルトの地面ごと跡形もなく消失していた。

「マスター、大丈夫かい?」

 少女は振り返り手を差しのべる。
 あなたの方こそ大丈夫なのと言おうと思って首を見ると、少女の首筋には確かに切り傷があるものの傷が浅くなっているように見えた。
 ビデオの早送りのように傷は浅くなって消えてしまう。

「あなた、誰なの?」
「私は響。デストロイヤーのクラスで現界した貴女のサーヴァントさ」

 周りが犠牲になって生き残された少女と生き残る度に周りが犠牲になった少女。
 二人が出会った日だった。


516 : 一ノ瀬晴&デストロイヤー ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/12(金) 22:19:26 7AqkYut20

【サーヴァント】
【クラス】
デストロイヤー

【真名】
響@艦隊これくしょん(プラウザ版)

【属性】
秩序・中立

【パラメーター】
筋力:E 耐久:D 敏捷:B+ 魔力:E 幸運:C 宝具:C

【クラススキル】
破壊の権化:-
 スキル『駆逐艦』により失われている。
 ちなみに駆逐艦の事も英語でデストロイヤーという。

駆逐艦:A
 人化して現界した駆逐艦の英霊に与えられるスキル。
 水中では敏捷と攻撃の命中率に上昇補正がかかる。
 また地上では昼は能力値の大幅低下と全艤装の解除を行うことでサーヴァントとして感知されなくなり、
 夜だとBランクの気配遮断スキルを得る。

【保有スキル】
不沈艦:A
 いかなる損傷を受けても沈まない運命。
 駆逐艦響の場合、命を失うであろう戦いや事故を回避できるが響の代わりに周りの者が何らかの不幸に見舞われる。
 幸運艦と呼ばれたのに幸運のランクが低いのは生き残る度に仲間を失うため。

応急処置:A
 戦闘続行に似て非なるスキル。
 致命傷を受けない限り死なず、応急処置をして戦場へ帰還もしくは離脱できるスキル。

単独行動:EX
 マスターからの魔力供給を断っても現界できるスキル。
 EXランクはマスター不在でも行動できるが宝具の発動にはマスターが必要。


【宝具】
『堪え難きを堪え、忍び難きを忍び』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:一人 最大捕捉:自分
 三度沈没してもおかしくない損傷を受けて生存した逸話が具現化した宝具。
 物理・魔術・概念に問わず致命傷を3度だけ重傷以下まで軽減する。
 傷を負わない攻撃には未対応。
 致命傷や死亡が決定してから攻撃がされる因果逆転の類のものはそのまま通る。
 なお、軽減回数はマスターの魔力供給次第で回数は回復する。

【weapon】
10cm連装高角砲
61cm3連装魚雷発射管×2
3mm鋼製防盾

【人物背景】
大日本帝国の駆逐艦『響』が擬人化した艦娘という存在(転生、船霊の受肉など諸説ある)
軍艦としての駆逐艦『響』は昭和2年度艦艇補充計画で建造された暁型駆逐艦の中の一隻。
大規模戦闘は修理していたため悉く参戦できず、沈没に伝わるような事件の直前に事故や船員の病気で引き上げ、その結果終戦まで沈まなかった船である。
その幸運から『幸運艦』、『奇跡の艦』『不死鳥』などと呼ばれる。
ただし、生き残る代償とでもいうように彼女(生前は性別がないが)の代わりに何かが沈んでいる。
終戦後は賠償艦としてソビエト連邦に引き渡された。そのためたまにロシア語を喋る。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯を日本へ持ち帰る。


517 : 一ノ瀬晴&デストロイヤー ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/12(金) 22:19:51 7AqkYut20

【マスター】
一ノ瀬 晴@悪魔のリドル

【マスターとしての願い】
帰りたい

【weapon】
なし

【能力・技能】
プライマーと呼ばれる人を惹きつける能力を生来より有している。
そのため幼い頃より暗殺の危機にさらされており、肉体の一部に金属が
入っている他、毒や薬などの耐性が高く、危機感知能力が高い。

【人物背景】
人を惹きつける能力により幼い頃より暗殺の危機に何度も陥っている少女。
皮肉にもその能力のおかげで守ってくれる人間も存在し、そして自分だけが助かり周りは死んでいく。

【方針】
生き残る。


518 : 一ノ瀬晴&デストロイヤー ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/12(金) 22:20:06 7AqkYut20
投下終了します。


519 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/13(土) 00:06:58 46lOTgd20
皆様お疲れ様です。感想を投下します。



ディー&アーチャー
マスターが殺人恐怖症なのが大きく足を引っ張りそうですが
アーチャーのティトォがそれを補う策を講じてくれるならばいいですね。
二人の関係は良好そのものになって良い点でしょう。
投下ありがとうございました。

ロード・エルメロイⅡ世&ライダー
再びこの二人が主従となり、聖杯戦争を駆け巡る……とは、まさしく運命ですね。
エルメロイⅡ世はライダーがどのようなサーヴァントなのか十分理解しているのも
他の主従と違い良いところでしょう。それを生かして聖杯戦争に挑んで欲しいです。
投下ありがとうございました。

ルーク・フォン・ファブレ&バーサーカー
皮肉なレプリカの主従ですね。ルークも参戦時期が問題ありですが
果たして聖杯を手に入れる事が認められるのに繋がるのか、それを考えなければ
なりません。ルークはそれに気付くことができるのでしょうか。
投下ありがとうございました。

姫河小雪&ランサー
空っぽ――つまり虚無状態の魔法少女と純粋な少年の二人。
心清さを知った以上、彼らは心の清いまま聖杯戦争を生き残って欲しいものです。
ただ、サイヤ人になれない孫悟空なので戦力に一手欠けるのが不安ですが。
投下ありがとうございました。

キング・ブラッドレイ&キャスター
内閣総理大臣という地位は一長一短なものですね……そして総理官邸に陣地とは……
マスターもサーヴァントも十分な強さがあるので陣地が完成した時には厄介ですね。
ブラッドレイは「巨乳大好き」と言わせられないよう立ち回って欲しいです。
投下ありがとうございました。

向井拓海&ライダー
全く聖杯戦争を把握してないし、好き勝手やらかすサーヴァントがここにも……
アイドルである自分を取り戻した拓海がこれからどうなるか気になります。
しかし、ライダーがこのまま暴れまわればマスターの拓海にも影響が出るでしょう。
投下ありがとうございました。

海東大樹&バーサーカー
バーサーカーが喋ろうとも狂っている。単純な狂気を感じます。
海東の方はバーサーカーを完璧に従い切れるかどうかにかかっている気がします。
二人とも世界に対する憎悪があるのだから、共感し合えるでしょうが……
投下ありがとうございました。

中野梓&アサシン
聖杯戦争自体に疑問を抱き、解決しようとするアサシンの姿勢は良いものです。
しかしながら、その正体はニャルラトホテプ……星人。
梓はアサシンに振りまわされそうなので、マスターらしさを見せて貰いたいですね。
投下ありがとうございました。

一ノ瀬晴&デストロイヤー
お互いに犠牲を糧に生き残ってしまったもの同士ですね。
まだ邂逅を果たしたばかりですが、これからの過程で共感を得て欲しいところです。
ただ、晴の存在特性が厄介なので状況が悪化しなければいいのですが……
投下ありがとうございました。


520 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/13(土) 01:55:02 XIp8PyJg0
感想乙です。
それでは、投下します。


521 : 結城リト&ランサー ◆CKro7V0jEc :2016/02/13(土) 01:55:29 XIp8PyJg0



 始まりは、いつも、そう――――…………少し、えっちいハプニングから始まる。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 ……日本の一般的な高校生ならば経験があるだろう。
 班ごとのローテーションで放課後に回って来る、「掃除当番」という仕事。
 社会経験を積む為の一つのシミュレーションとして、生徒の情緒を鍛える日本特有の教育プログラムだ。
 共学の場合、多くは、男女混合の班が割り当てられ、それは口下手な男子にも女子との事務会話の口実になる。
 故に、面倒でも実は嫌いじゃないという人間も少なくない。


 ――――が、そんな事は、ここから先の話には、実はあまり関係ない。


「うわああああああああああああっ!!!!!!!!」

 結城リトが自身のあるべき姿を思い出したのは、掃除の時間であった。
 モップに躓いて、体のバランスを崩し、転落した先に――同じ班の女子の集団がいた。
 そして、彼は、物理法則に従うように落ちていく中で、一人の少女のスカートの中へと顔が吸い込まれていった。
 それは、全く、彼が意図したわけではない――というか、何億分の一という確率でしか起こりえない、純然たる事故だった。
 しかし、顔全体で、蒸れた肉体とふわふわした布の柔らかさを感じ、鼻先で花園の香りを嗅ぎながら――結城リトは、「前にもこんな事があったような……それも、何度となく……」と、自身の性を思い出す。

 ――はっ、と。
 リトの頭の中が、その瞬間から切り替わった。

(春菜ちゃん……ララ……!)

 ……など、他数名。リトにとって、大事な女性たちの事が、思い出された。
 なぜ、忘れていたのかわからないくらいに、大事な……みんなの事だ。
 自分を好いてくれている女の子や、自分が好いている女の子たちの事を――リトは、全て、このクラスメイトの名もなき女子のスカートの中で、思い出した。

(そ、そうだ……! オレは……!)

 ――いつも、こうだった。
 何故か、結城リトは、当人の意思と関係なく、それはいわゆる、一つの不可抗力という奴で――いつも、女の子の股間や胸に、突っ込んでしまう。
 そんなうらやましい因果を引き寄せるのが、リトの血筋なのだ。
 それは、たとえ、彼が記憶を失い、全くの別人になったとしても、魂を洗い流されて別の存在へと変わったとしても、おそらく変わる事のない因果である。
 仮に、聖杯にこの体質を変える願いを託したとしても、聖杯が聞き入れないだろう。
 故に、今、こうして、全て忘れたリトにも、ラッキースケベが、降りかかったのだ。

 そして、そんなリトが、この聖杯戦争において、全ての記憶を覚醒させる引き金となったのも、やはり、女の子のスカートの中に突っ込んで全てを感じた瞬間であった。

 ――「そういえば、この数日、このパターンが無かったな」と、ふと思ったのだ。
 これまで、リトがこの何億分の一かの確率を引き当てた回数は、一度や二度ではない。
 宇宙の王となるに相応しい器は、さすがに女の子の股間に偶然突っ込んでいく回数も桁違いであり――彼の場合は、それが全てを動かす歯車となるのである。
 あらゆる記憶が、頭の中に蘇った。

「な、なにあれ……」「変態……?」「不順異性交遊か?」
「いや、事故でしょ……あれ、大丈夫か?」「死んでるとしてもうらやましい」
「本当は意識あるんじゃねえの?」「保健室の先生呼べ! 救急車でもいいぞ!」

 ざわざわと声が漂い始めた周囲。
 当たり前だ。
 階段から落ちた男が、既に一分近く、女の子のスカートの中に頭を突っ込んだまま、動かないのである。てっきり、どこか悪い部分でもぶつけたのかと心配するに違いない。


522 : 結城リト&ランサー ◆CKro7V0jEc :2016/02/13(土) 01:55:46 XIp8PyJg0

 女子の方は幸い、怪我がないようだが、ほとんど放心して固まっていた。
 実際にスカートの中にリトの顔がある女の子の方としても、どう動かせばいいのやらさっぱりわからないまま、腰を抜かして動かない。
 そんなお嫁にいけない状態のまま、男子、女子、教師……属性を問わず、徐々に人だかりが出来ている。
 と。

「思い出したーーーーー!!!!!」

 リトは、唐突にスカートの中から顔を出し、立ち上がった。スカートがめくれ上がり、水玉模様が一瞬、野次馬たちの目に映り、「おおっ」と歓声が上がった。
 まあ、それはそれとして、階段から落ちて頭を打って記憶喪失になる人間は数多くいるが、階段から落ちて女の子のスカートの中に突っ込んで記憶を取り戻した人間は数えるほどしかいないだろう。
 リトはこの瞬間、その一人になった。
 とにかく、リトは野次馬たちを一周見る。

「――」

 ――やはり、変だ。
 この人たちの顔は、ここ数日でよく知っているが、本当の自分は、この人たちと過ごしていたわけじゃないはずだ……。
 何故か、結城リトの学園生活は、本来の学園生活と全く別の物として、突然に一新されて始まっているのである。

 そう――これまでリトが通っていた彩南高校とは、人員も名前も異なる高校にいる。
 いつの間にか、誰かが勝手に、新しく始めてしまっていたのである。
 そういう事をしかねない知り合いなら何人かいるが――しかし、目的がわからなかった。

「どういう……事なんだ……?」

 悲しい事に、ここにはリトが想いを寄せているクラスメイトのララや西連寺春菜もいなければ、小手川唯や猿山のような友人たちも誰もいなかった。
 どれだけ見回しても、いるのは、それまでの人生で関わった事がないはずのクラスメイトたちだけだ。
 ――どういうわけか。
 強いて、この世界にいるとわかっているのは、帰るべき家にいる妹の結城美柑くらいのもので――どこに行っても、それ以外の知り合いが自分の周りにいなかった。

「なんでオレ、こんな所にいるんだ!? ララは!? はる……西連寺は!? ――ここは、どこだよ!?」

 そう言って立ち上がると、ざわざわと声が鳴り始めた。
 リトがおかしくなったと思っているらしい。やはり救急車を呼んだほうがいいか……といった話までしている連中がいる。
 おかしくなったわけじゃないんだ、と叫びたかった。

「――……」

 ……まあ、それはともあれ――スカートの中に突っ込まれた女の子の方からすれば、意識があるにも関わらず、一分ほどずっとスカートの中に顔を突っ込まれ続けていたのだからたまらない。
 リトがどれだけシリアスにやろうとしても、隣には、リトのラッキースケベの犠牲になった女子がいるわけである。

 次の瞬間、


「結城くんのスケベ〜〜〜〜〜っ!」


 ――――ぺちんっ!!!

 お約束とばかりに、ビンタがリトの頬を打った。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆


523 : 結城リト&ランサー ◆CKro7V0jEc :2016/02/13(土) 01:56:12 XIp8PyJg0



 そのまま、リトは荷物をまとめて、帰宅しようとしていた。
 リトの左の頬には、真っ赤な手形が出来ていて、それはズキズキと痛んだ。
 しかし、リトはそんな痛みはまだ容認できた。「保健室に行け」という先生の指示も、「大丈夫です」と上手くかわして、すぐに帰って治すと宣言している。
 実際、階段から落ちた痛みもビンタの痛みも微々たる物で、リトにとっては、この「自分の大事な人たちが一斉に姿を消した世界」で過ごしている事の方が重大だった。

 心にぽっかりと穴が開いたみたいである。
 騒がしいけど大切な――そして、大好きな人たちが、この世界には、いない。

(――まったく、一体、どうなってるんだ? またララたちの変な発明なのか……? でも、この世界って……)

 過去にもそんな話があった気がするが、しかし、「ララたちがいない世界」なんて作ってどうするのだろう。
 何かの事故なのかもしれないが、どうしても気がかりだった。

(どっちにしても、こんな世界にオレはいられない……早く、どうにか抜け出して、元の生活に戻らないと……)

 これが何の実験になるのか――一刻も早く、自分を元に戻してほしい所である。
 リトは、とてもではないが、こんな世界にはいられない。今にも気が狂ってしまいそうだ。
 クラスメイトでもなんでもない人間たちをクラスメイトにして、充実感のない日々がこのまま続いてしまうなんて嫌だった。

「うん……?」

 思案気な表情で帰り道を歩いていると、ふと、リトの前に一人の少女が立っていた。
 リトの方へと影を作って――、そう、十三歳か十四歳くらいの、女の子が。
 顔は、眩い夕日で、すぐには見えなかった。

「待ってました――マスター。学校の時間が終わるまで、ここでずっと……」

 凛とした声で、彼女はそう言った。――だんだんと近づいてくる。
 黒衣に、金髪――見覚えのある、懐かしい美少女。
 怜悧で、華奢で、どこか暗い影を落としながらも……優しさを伴った笑みで、彼女はリトを見ていた。
 リトには、その姿に見覚えがあった。

「ヤミ……?」

 それは、間違いなく、リトが知る――『金色の闇<ヤミ>』という少女の姿だったのである。
 彼女もまた、リトの仲間であった。――だから、ここに、彼女がいるという喜びで、リトは目をゴシゴシと擦った。
 心細い中でも、どうやら、ちゃんと自分の仲間がここにいてくれたのだと思って……。

「ヤミ……ヤミなんだな……!」

 自分が知っている友達が、誰もいない世界で再び――ヤミに会えたのだという喜びで、思わずリトは走り出す。
 身体が勝手に動いてしまっていた。

「良かった……! オレや美柑以外にも、ここに、知ってるヤツがいてくれて――」

 そう言って、“ヤミ”に近づいていくリトだったが、当の“ヤミ”は、リトが何を言っているのかわからないと言った様子で、「?」を浮かべている。
 なんだかわからないが――。

「え?」

 とにかく、リトが一人で感激して近づいてくるので、彼女の方にも少し警戒が芽生えていた。
 ――彼と関わらなければならない、という運命は、変わらないにせよ。
 向かってくるリトは何か勘違いをしているのでは? ――と、薄々ながら、“ヤミ”は思っていた。

「あだっ」

 と、偶然、リトの足元のアスファルトが若干ぼこっと崩れていた。
 そこに、偶然、リトのつま先がはまったのである。勢いよく走っていたので、靴が脱げた。
 で、偶然、リトがバランスを崩し、偶然、リトの身体は宙を舞った。


524 : 結城リト&ランサー ◆CKro7V0jEc :2016/02/13(土) 01:56:43 XIp8PyJg0

「あっ……――!」

 そして、リトのスピードとタイミングが絶妙なまでに合ってしまった為に、天文学的な確率で、リトは“ヤミ”の身体の方に飛んでいく。
 それが、はたまた、偶然にも、“ヤミ”の衣服に手をかける形になってしまい、それを縦一直線に引き裂いてしまう。
 そうなると、“ヤミ”の衣服がリトの力で下着ごと破れていき、上半身の肌が露わになり、それから少し遅れて、リトの顔がそこに埋もれ、押し倒すような形で、二人は重なり倒れた。

「うわあっ!!」

 ――という感じの、およそあり得ない偶然の重なりで、見事、リトは、相変わらずのラッキースケベを発動したのだった。
 この、“実は初対面の少女”に向けて――服を引き裂いて裸になった胸に、顔をうずめて押し倒すという形で。
 幸い、通行人はいなかったが、もしいたら、犯罪者そのものに見えただろう。

「……――――〜〜〜〜〜ッ!!!」

 次の瞬間、彼女は声にならない声を発しながら、長い髪の毛を巨大な二つの拳へと変えて、リトの顔面を何度となく殴打した。
 リトの意識は、それから数分間、途絶えたままになった。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 ……一件落着、というわけではないが。
 安心のパターンがわかってきたところで、事情は全て結城家の茶の間で説明された。

 まだ妹の美柑はギリギリ家に帰ってきておらず、割とスムーズに彼女を連れてくる事が出来る形になった。
 どちらにせよ、この時間なので、美柑もすぐに帰って来るだろう。
 その時に、自分の部屋に女の子がいたら言い訳できないので、いざという時は、「そこで迷子になっていたから家にあげたんだ」と逃げ道を作れるよう、こうして客間にあたる場所で少女から事情を聞き出す事にしたのだ。
 顔面がぼこぼこに腫れているリトだが、暴力の事はひとまず忘れて、胡坐を掻いてリラックスしながら、少女の話を聞いていた。

「――聖杯戦争……?」

「はい。貴方は、いま、聖杯をめぐる戦いに選ばれています」

 リトに、少女は自分の知る全てを説明していた。お茶をすすりながら。
 少女の顔色は相変わらず不機嫌であるが、既に衣服は完全に修復されている。――髪の毛が自在に変わるように、衣服もまた「ナノマシン」で自在に作り上げる事が出来るのである。

「……」

 お茶を飲んで、ほっと一息つくと、少し冷静になった。

「そして、私の名は『ヤミ』ではなく、『ランサー』――本名は、『イヴ』ですけど。私が、貴方がこの聖杯戦争で引き当てた、『サーヴァント』なんです」

 彼女がそう名乗る。
 ランサーと名乗る少女の方を、疑わしそうにまじまじと、見つめるリト。
 ――別人と言われても全く納得できない程に、イヴとヤミは似ていた。
 ……というか、性格以外は明らかに同一人物だった。

(どう見ても、ヤミなんだよなぁ……)

 姿が似ているとか以前に、身体をナノマシンで変化させる性質が同じ人間など、早々いる物ではない。
 そもそも、ヤミ自体が「プロジェクト・イヴ」で生み出された「イヴ」という名の存在だったような……。

「……あの。そんなに似てるんですか? 私と、ヤミさんって……」

「あ、いや……」


525 : 結城リト&ランサー ◆CKro7V0jEc :2016/02/13(土) 01:57:09 XIp8PyJg0

 似ている、などという次元ではないが。
 ――まあ、その辺りはあまり気にせず、本人が主張している通りだった事にしよう。
 実際、性格は明らかにヤミとはずいぶん異なっているし、仮に彼女がヤミだとしても、あのヤミがこんなに器用にリトを騙せるわけがない。
 もしかすると、ヤミと同じように、ティアーユ博士のクローンなのかもしれないし……。
 深入りするのをやめ、リトはランサーの言う事を信じ、彼女から聞いた話を全てちゃんと把握する事に努めようとした。

「――……うん、確かに似てるよ、すごく。でも、別人なんだろ? じゃあ、俺はランサーの言う事を信じるよ。……で、聖杯戦争って、一体何なんだ?」

「……そうですね。じゃあ、そこからきちんと説明します」

 リトが一番訊きたいのは、自分が巻き込まれているという状況だ。
 それから、ランサーは次々とリトに説明を始めた。

 ――聖杯という願望器と、それを巡る魔術師『マスター』たち、そして、魔術師が呼ぶ英霊にして、使い魔の『サーヴァント』。その戦いの舞台、『東京』。
 命令を聞かせる為にあるが、使い切ると脱落してしまう『令呪』。サーヴァントたちが持つ『宝具』。
 七つのクラス――『セイバー』、『アーチャー』、『ランサー』、『ライダー』、『キャスター』、『アサシン』、『バーサーカー』。

 そう、それが聖杯戦争のルールだった。
 イヴもまた、サーヴァントの一人『ランサー』の資格を持つ存在である。

「――」

 リトが巻き込まれたのは、そんな日本の都市で起きる、日常の裏側の恐ろしい夜の戦争だったという事だ。
 他のサーヴァントたちは、もしかすれば、自分の願いの為にリトやイヴを殺しに来る――そういう者たちばかりかもしれない、という。

 リトは、自分が理不尽に巻き込まれた現実に、絶句する。
 イヴとヤミ、という鏡面のように酷似した少女たちの事など忘れるほどに。

「……ちなみに、ララさんと言う人たちは、おそらく聖杯戦争とは何の関係もありません。このトーキョーでは、おそらくマスターの記憶を改竄する形で聖杯戦争の参加資格を決めている……という事ですから」

 当たり前だ。
 ララたちがこんなにも悪趣味で凄惨なゲームを考えるなんて、そうだと言われたって信じないだろう。
 やはり、リトの本来預かり知らぬところで起きた予想外の事態がこの聖杯戦争なのだ――。

「――マスター……いえ、リトさん。貴方は、これからどうしますか?」

 リトが愕然としている所で、ランサーがこう訊いた。
 おそらく、リトが恣意的に選ばれたマスターだったから、というのもあるのだろう。安全地帯にいた人間が、突然赤紙で戦場に駆り出されるような物だ。
 魔術師の素養もなければ、聖杯に託す願いも無い普通の少年が、これから聖杯戦争で戦いぬかねばならない……というのは、少し酷であろう。
 だから、あえてマスターではなく、「リトさん」と呼ぶ。突然、誰かの「主」になるというのも変だ。

「……突然、不可解な状況に巻き込まれて混乱するのはわかりますけど、動かなければ敵が襲ってきます。――尤も、どう動けばいいのかは、私にもまだわかりません」

「……」

「それでも、ここから脱出するにも、なるべく早く情報を集めた方が良いと思います。同じ境遇にある仲間を探すとか、この模造のトーキョーを散策するとか……出来る事はあります」

 それに、リトは、こんな所にいるよりもとにかく元の世界に帰りたいのだろう、と、ランサーは思っていた。
 実際、元の世界にいる「ヤミ」という友人とランサーを重ね合わせたくらいなのだから。
 記憶を取り戻した彼にあるのは、友人と逸れて、見知らぬ異世界に捕らわれ、命を狙われるという心細さだけである――。
 このくらいの事は、ランサーにもすぐにわかった。


526 : 結城リト&ランサー ◆CKro7V0jEc :2016/02/13(土) 01:57:26 XIp8PyJg0

 だから、彼に選択の余地を与えてみる。――選択は早い方が良い。
 これから、他のサーヴァントたちを倒して生き残るべきか、それとも、この世界から抜け出していくべきなのか。

「それは……」

 訊かれて、リトが少しだけ、どもるが、どんな選択をするのかは、全て、リトに任せる事にした。答えを出さないのも仕方ない。
 確かに選択は早い方が良いが、それでも無理強いする物じゃない。
 勿論、他人を殺す事なんてしたくはないが、それもリトの立場をわかったうえで彼の意見を尊重するようにしたい。
 ――それが、おそらく、サーヴァントという存在の役目なのだ。

「……」

 しかし――それでも。
 彼が答えを出す前に、彼を横から支えるように、彼女は言った。

「ただ、もし、貴方に帰るべき場所があるのなら…………私は、必ず貴方をそこに帰す為に最善を尽くす――それだけは、約束します」

 ランサーがこう言って、それから、リトは、また少し考えた。
 ランサーは、答えを待ってみた。

「……」

 そして、それから、すぐに答えが彼の口から絞り出された。

「――――うん。わかった、決めたよ」

 リトは、かつてなく実直な瞳をランサーに向けながら、宣言する。
 ランサーの鼓動が、一瞬、どきりと動いた。

「……俺、こうするよ。この聖杯戦争から、抜け出すか、それか――“この聖杯戦争自体をやめさせる”。元々、他のヤツらを倒してまで手に入れたい物なんてないんだからな」

 リトの声は溌剌としていて、これから前向きにこの聖杯戦争から生き残り、元いる場所に帰ろうという意思がみなぎっているようだった。
 知り合いに似た少女と協力しながら、上手にここから脱出したい、というのがリトの下した判断だ。

 ランサーは、これまでより、少し柔和に、リトに微笑む。
 このマスター――結城リトは、思ったよりも、ずっと強い人間らしい。
 いや――普通の人間より、きっと強い勇気や信念の通った男子高校生だった。
 スケベである事を除けば、概ね、信頼できる――と思う。

「でも、その為に君だけを頼る事はしない。オレも一緒に頑張って、それでここから脱出する。――女の子に任せっぱなしなんて、やっぱり男として恥ずかしいしさ」

 ランサーにとって、それは少しだけ、むっとする言葉でもあったが、しかし、やはりリトは憎めない性格だ。
 普通なら少しは恐れるような聖杯戦争を前にも、立ち向かう意思を見せている。
 それに、きっと、他人を傷つけるのを嫌う、優しい性格なのだろう。それが、彼の言葉から見て取れた。

「……わかりました。それが貴方の考えなら、私はそれに従います」

 ……充分、力を貸せる。
 嫌な相手じゃない。
 もし、ランサーが「イヴ」として相反する考えの持ち主だったなら、きっと、協力すると言っても、どこまでも本気になる事はできない。
 しかし、彼ならば――余す事なく、力を貸してやれる、とわかった。
 サーヴァントとしての仕事は、自分の全てをかけてリトを守り――彼の掲げる方針に全力で応える事だろう。
 ランサーは、右手をリトに向けて差し出した。

「――え?」

 と、リトが疑問符を浮かべた。


527 : 結城リト&ランサー ◆CKro7V0jEc :2016/02/13(土) 01:57:47 XIp8PyJg0

「共同戦線のしるしです」

 握手しよう、という事だ。
 ランサーの小さな右手が、リトの前に在る。
 リトは、ランサーが協力してくれるというのは本当だとわかったようで、嬉しそうに、ランサーと右手を重ねようとした。
 聖杯戦争で引き当てるサーヴァントはランダムで、下手すると『バーサーカー』なんていうトンデモない奴を引き当てるかもしれなかったのだ。最悪、ルールを教えてくれなかったかもしれない。
 しかし、自分の引き当てたサーヴァントは、悪い奴じゃなかった。
 これは、最悪の状況に巻き込まれた中でも、唯一のラッキーだ。

「ああ、これから、よろし――」

 握手には応えよう、と。


 ――――と。


「あっ」

 握手の為にランサーに近づこうと立ち上がった時、唐突に足が痺れた。――まあ、畳の上で胡坐を掻いていたので、そういう事もあるだろう。
 しかし、そのせいで、リトは身体のバランスを崩し、ランサーを巻き込んで床に倒れてしまったわけである。

「――えっ」

 バランスを崩したリトに押されて、ランサーが先に、仰向けに床に倒れ込んだ。
 そして、後から、リトがその上に倒れそうになる。が――リトは、ぎりぎりのところで、腕で支えて、地面に激突するのを避ける。
 ――のだが。
 偶然にもリトの差し出した右手は、丁度、ランサーの微かに膨らんだ胸があるあたりを、鷲掴みにしていたのである。

「――!!」

「あっ……こ、こここ、これは、不可抗力で――」

 まるで、この瞬間を誰かに見られれば、リトが女の子を家に連れ込んで、押し倒して胸を揉んでいるように見えてしまうだろう。



「ただいまー…………………………」



 ――――そして、その時、丁度、帰宅した妹の美柑が、襖を開けて茶の間に入ってきたのだった。


528 : 結城リト&ランサー ◆CKro7V0jEc :2016/02/13(土) 01:58:10 XIp8PyJg0





【クラス】

ランサー

【真名】

イヴ@BLACK CAT

【パラメーター】

筋力C 耐久C 敏捷C 魔力B 幸運D 宝具B

【属性】

秩序・善

【クラススキル】

対魔力:B
 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

【保有スキル】

変身:A
 自らのカタチを変えるスキル。
 イヴはナノマシンの肉体を自在に変化する事が出来、肉体の一部を武器に変えて戦闘の為の能力としている。
 詳しくは宝具『変身能力(トランス)』を参照(実質的にはスキルよりも宝具としての性質が大きい)。
 
博学:B
 常識を超えた探求心や知識欲と、それによって得た博識。
 一度本で読んだ内容は決して忘れず、細かな部分まで記憶し、想像・応用する事が出来る。

自己修復:B
 致命傷レベルのダメージを受けても、短期間で肉体を修復し、回復する事が出来る。
 その際に用いる魔力は自分で賄う事が出来る。

【宝具】

『変身能力(トランス)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大補足:1〜5

 ナノマシンで出来た肉体のDNA構造や原子配列を組み換え、あらゆるカタチに変身させる、イヴ固有の能力。
 イヴ自身が生体兵器であるが故、その肉体そのものが宝具であると言えるが、生前、周囲の人間のバックアップによって「モノ」である自覚を消していた為、能力のみが宝具として成立している。
 イヴはこの宝具により、「天使の羽」を生やして飛んだり、「人魚姫」の姿へと変わって水中戦を行ったりといった形で、場に適した戦闘方法を用いており、変身には既存の伝説のイメージも投影できる。ランサーの必須条件たる槍(ランス)もこの宝具によって肉体組織や老廃物(ナノマシンの残骸)から生成しており、デザインはやや幻影的でもある。
 このほか、長い金色の髪は、拳、極薄の刃、大槌(ハンマー)などへと姿を変え、両手は剣、槍、盾へと変じさせて戦っており、その場の判断で全身を自在に戦闘手段へと変じられる。戦闘時は身体を鋼鉄へと変化させる事も出来る為、宝具使用時の筋力・耐久は現在の値と少し上下する場合もある。
 更に、単純な戦闘能力だけでなく、ナノマシンを他者に注入する事でナノマシンを中和して相手の不死体質を打ち消したり、ナノマシンで電脳世界に侵入したりといった運用方法もある。
 ただし、能力を使用する際には高い集中力を要する為、常に変身能力を維持し続けるという事は不可能であり、精神状態によって能力の暴走が起こるリスクもある。
 現在はランサーとしての召喚である為、槍(ランス)の攻撃力が微かに上昇しており、戦闘には槍(ランス)、もしくは、物体を極薄に切り裂く「ナノスライサー」の戦法が最適。

【weapon】

 なし


529 : 結城リト&ランサー ◆CKro7V0jEc :2016/02/13(土) 01:58:29 XIp8PyJg0

【人物背景】

 闇の商人トルネオ=ルドマンが、ナノマシンの開発過程で生み出した生体兵器の少女。
 体内で生産したナノマシンで身体のDNA構造や原子配列を組み替えて、身体の一部を自在に変身させる「変身(トランス)」の能力を持つ。
 当初は殺人兵器として育てられ、自分の意思や感情もなく、「鬼ごっこ」と称して殺戮を繰り返していたが、スヴェン=ボルフィードとの出会いで「自由」を求めるようになり、トルネオから解放され、スヴェンとトレイン=ハートネットの掃除屋稼業に同行し、能力を駆使して協力するようになる。
 その後は、大量の本を読み、あらゆる戦いの中で恐怖を経験し、時に人々の想いに触れながら、あらゆる事を学び、徐々に感情表現が豊かになっていった。
 そして、スヴェンに憧れ、トレインにライバル意識を持ちながら、だんだんと一人前の掃除屋へと成長していった(ちなみに掃除屋のライセンスを得たのは本編終了後)。

 全盛期として顕現したイヴの肉体は、だいたい最終回ごろの成長した状態程度の体格だが、変身能力での扱いやすさなども踏まえて、ロングヘアーになっている(尤も、髪型も変身能力で自在に変えられそうだが)。
 ちなみに、「To LOVEる」にも、彼女とほぼ同じ設定の金色の闇というキャラが登場する。彼女もヤミと同じく、多分、えっちいのは嫌いだろう。

 以下、プロフィール。

 血液型:AB型
 趣味:読書、観察、何となくスヴェンを見ること
 好きな物:アイス、花火、やさしい人
 嫌いな物:窓の無い部屋、怖い人、下品な人
 好きなタイプ:優しくて硬派な人

【サーヴァントとしての願い】

 リトさんを脱出させる。

【方針】

 結城リトと協力して聖杯戦争から脱出する。

【基本戦術、方針、運用法】

 戦闘能力はあまり高くないので、トリッキーな戦闘方法と機転が利く性格で上手く立ち回るしかない。
 無暗に強い相手に向かっていく事もないので、相手から仕掛けられない限りは能動的に戦闘をする事もないだろう。
 また、交渉上手な性格的にも同盟を結びやすく、脱出を目指す他の主従を見つけられればコンビネーションでいくらでも戦闘を上手に立ち回れるだろう。

 あとは、マスターのリトが驚異的なラッキースケベ体質の持ち主である為、ラッキースケベが発展して、型月原作的な魔力供給でどんどん魔力があふれていく展開もありうる。それで場合によっては、かなり強くなれるかもしれない。
 問題は、それで敵のサーヴァントに魔力供給してしまう可能性が無きにしも非ずという点と、イヴはえっちいのが嫌いという点だろう。


530 : 結城リト&ランサー ◆CKro7V0jEc :2016/02/13(土) 01:58:51 XIp8PyJg0





【マスター】

結城リト@To LOVEる ダークネス

【マスターとしての願い】

 聖杯戦争からの脱出。

【weapon】

 特になし。

【能力・技能】

 身体能力は基本的に高く、同学年では抜群の足の速さを誇る。
 人外レベルの女の子に殴られてもすぐ直る頑丈さや回復力も持ち合わせており、常人では避けられないような攻撃を間一髪避けた事さえもある。
 それでいて、手先は器用らしい。花を育てるのとかが好き。
 ただ、頭の方はそこまでよくない模様。
 あらゆる因果や物理法則を捻じ曲げてラッキースケベを発動する驚異的な性質の持ち主である。少年向けの漫画雑誌で映しちゃいけない物を瞳に反射させる事とかもできる。
 そして、ラブコメ主人公なので異常にモテる。ただし、この聖杯戦争では、リトさんハーレムは制限され、妹の美柑以外は(他の書き手氏がマスターとかで出さない限りは)いなくなっている。
 あと、色々あって女体化すると、夕崎梨子という美少女になる(ただし、体格が結構がっしりしてるせいもあって、女装はそこまで似合わない)。

【人物背景】

 彩南高校に通う男子高校生で、2年A組所属(尤も、聖杯戦争では彩南以外の公立高校に通わされている)。
 恋愛に奥手で、同級生の西連寺春菜に恋をしているが、片思い(と本人は思っている)。
 そんな彼のもとに、ある時、ララ・サタリン・デビルークというデビルーク星の王女が家出してきた。彼女を追っ手から守ったリトは、色々あってララの婚約者候補となってしまう。
 それ以降、女性絡みで多くのトラブルに見舞われ、多くのヒロインたちとのエッチなハプニングやドタバタの中で、彼女たちに好かれ始めるという、モテモテな主人公だが、本人は至って一途。
 春菜とは実は両想いだが、だいたいいろいろあって告白が邪魔される。
 また、二行前の「一途」と書いた部分と矛盾する気がしないでもないが、色々あった末に現在は、「ララは好きだが、春菜はもっと好き」という結論になっており、周囲のヒロインが一夫多妻でもいいからリトとくっつこうとしている感じになっている。

 性格的には、少年漫画の主人公らしい勇気と優しさを重ね持った、極めてお人好しの少年であり、どんな状況でも女の子に手を出さない紳士でもあり、相手が誰だろうと気配りを見せる性格もある為、あんまり男性読者からも嫌われていない。それどころか、「リトさん」と呼ばれて、作者の矢吹神ともども崇拝される事もある。
 根が純情なので、水着グラビアを見て気を失ったという話もあるとかないとか……。しかし、そんな設定ながら、「ダークネス」からは、もはや女性キャラとの交流が18歳未満お断りなレベルに達しており、それでも一線だけは超えない形になっている。

【方針】

 ランサーと協力して聖杯戦争から脱出する。


531 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/13(土) 01:59:11 XIp8PyJg0
投下終了です。


532 : 福本忠弘&セイバー「再刃」  ◆sadmN0H74E :2016/02/13(土) 03:26:12 58x8N9B.0
投下します。


533 : 福本忠弘&セイバー「再刃」  ◆sadmN0H74E :2016/02/13(土) 03:28:12 58x8N9B.0

槌を振るう。
槌を振るう。
槌を振るう。

炎の照り返しに洗われ、赤銅に燃え立つ総身に汗を滲ませながら
男は槌を――――振るう。ただ、一振りの刀を完成させんが為に。



 ◆  ◆  ◆  



東京都内に数多ある学園の一つ。
そこでは、戦闘と破壊が繰り返されていた。
生徒達が好き勝手に暴力と争いを撒き散らし、塵芥のように死んでいく。
それが日常だった。
それを皆、当たり前のように受け入れていた。
福本忠弘も伍していた。

刀剣作りの才があった福本は入学早々学園の不良グループに目を付けられ、
暴力で脅され、彼等の為の殺人武器作りを強制されていた。

一週間で三十振の刀を打て。
振れば必ず敵に当たって、当たれば必ず殺せる最強の刀を打て。
幼稚な無理難題にも応え続けなければ命が危うかった。

生徒たちが部活に汗を流すためのグラウンドは抗争の舞台として使われ、
粗末無惨に扱われた彼の刀(たましい)の残骸で埋め尽くされていた。

福本は精魂込めた作品を売って保身に代える事に葛藤を抱きこそすれ
この世の理に何の疑問も持たなかった筈だったのだが――――。



 ◆  ◆  ◆


534 : 福本忠弘&セイバー「再刃」  ◆sadmN0H74E :2016/02/13(土) 03:32:15 58x8N9B.0



「打たねェよ」



無数の折れた刀と死体の散らばる放課後の体育館で、
福本は刃の先を壇上の男に向けていた。


「オレはな……激しくイラついてんだよ……
 オレの刀が悪用され放題なことにヘドが出る……
 なんの抵抗もできなかった自分の弱さに腹が立つ……!」


はて、どこかで同じ事を口走ったような――――。
奇妙な既視感に目眩を憶えながら、福本は短刀を構えた。
目の前の男の強さは身をもって知っている。此処で自分は確実に殺されるだろう。
それでも、

「オレの意志を示すタイミングは今しかねェ。
 そう、この刀が語りかけて来んだよ」

鬼神を脳髄に宿し妖刀を打ちながら、逆に刀剣に宿る鬼魅に魅入られたのかもしれない。
「ついカッとなった」としか言いようのない、脈絡無しの軽挙だ――と解っている。
それでも血の滾りに任せて、啖呵を切った。

「何度だって言ってやる!
 これ以上、お前らのために刀打つぐらいなら死んだ方がマシだぜ
 ――――クソッタレ!!!」


咆哮と共に突き出した手首は呆気なく捉えられる。
「言いたいことはそれだけか?」
激痛と共に暗転する世界。
そこに、ひらりと落ちる桜のひとひらを見た気がした――――。


535 : 福本忠弘&セイバー「再刃」  ◆sadmN0H74E :2016/02/13(土) 03:35:07 58x8N9B.0



『大将の意志、確と受け取ったぜ。俺っち薬研――おっと、セイバーとでも呼んでくれ』

見たことの無い、年若の生徒が立っていた。
洋装の上に鎧の大袖を付け、手にした短刀からは
今しがた屠った男の血をポタポタと滴らせながら。
不良の仲間割れかと油断なく見上げる福本の前で、彼――セイバーは飄々と自己紹介を始めた。

『俺は大将の味方だ。刀剣の精とでも言えばわかるか?
 戦場育ちで雅なことはよくわからんが、戦じゃ頼りにしてくれていいぜ』

カラシニコフの精ならともかく刀の精は聞いた事がないが、
彼が大将と呼ぶのが自分のことであり、命の危機がひとまず去った事だけ福本は理解した。
そして――――完全に思い出した。


自分が既に生き終えた人間であったことを。



 ◆  ◆  ◆  



セイバーに促されて、福本は自分の事を訥々と語った。
衝動の後に来る燃え尽きと予想外の出来事に加え、
相手が人でなく物であるという事が
平素寡黙な彼の口を僅かに軽くしたのかもしれない。

此処と似たような血嵐吹き荒れる殺伐とした魔人学園に通っていたこと。
正義のカリスマ生徒会長の下で、平和のために能力を振るっていたこと。
最期は生徒会のために最強の宝剣を生み出し、その代償に世を去ったこと。
セイバーは只静かに耳を傾けていた。物言わぬ鋼の塊のように。


536 : 福本忠弘&セイバー「再刃」  ◆sadmN0H74E :2016/02/13(土) 03:39:46 58x8N9B.0

刀の残骸と人の死体でめちゃめちゃの、血臭わだかまる体育館を出るに際して
セイバーは一つ問いを投げてきた。

『大将に願いはあるか?』

腹いっぱい食いたい、天下を取りたい、仲間の所に帰りたい……何でもいい。
せっかく拾った命だ。好きにしたって、誰も文句は言わねぇだろうさ――
これからどうするつもりなのか、よかったら聞かせてくれねぇか。

無ェよ、と答えかけて福本は空を仰ぐ。
高窓から差す外の光を受けて、キラキラ漂う塵のはかなさを
ああ火花みてェだな――と無意識に目で追いながら。

「俺はもう打ちたい刀は打った。
 だけどな、それでもまだ生きてるってんなら――――
 もう一振り、打ってみてェ」

鬼に取り憑かれた魔人刀工の笑みだった。

「死後の世界か知らねェが、こんなクソみたいな地獄にも
 ド正義やエースのようなヤツが居るかもしれねェからよ……」

もし居たら、ソイツにくれてやるのも悪くない。
第二の「福本剣」を。



 ◆  ◆  ◆


537 : 福本忠弘&セイバー「再刃」  ◆sadmN0H74E :2016/02/13(土) 03:40:47 58x8N9B.0

学園内に設えられた彼の鍛冶場にも当然のようにセイバーは付いてきた。
幾度追い払おうとも、ふと気付けば福本の側に居る。

『連れてってくれ。邪魔にはならん。
 不安なら令呪を使ってくれ』

甲を小突かれて右手を開くと、円の内側に車輪と受け弧を収めた紋が掌に染みついていた。
火傷とも異なるそれは擦り爪を立てようとも消えない。

『大将の身に危険が及んだ時は、コイツに願を懸けるといいぜ。
 三回までしか使えないからよく考えて使ってくれ』

目の前のガキは何なのか。
この模様にはどんな意味があるのか。
そもそも死んだはずのオレは何故生きてここに居るのか。

福本には分からない事だらけだったが、とりあえず
幽霊にでも憑かれたと思って諦めることにした。


『ま、仲良くやろうや大将。――いい刀、打ってくれよ』



 ◆  ◆  ◆  



二〇〇九年二月某日、福本忠弘は最強最後の刀を生み出し
その代償として両手両足のみを残しこの世を去った。

一五八二年六月二十一日、織田信長は本能寺で受難し
その愛刀である薬研藤四郎は炎の中に消えた。

何の因果か、遥か過去に絶えた筈の
二人の男の刃生(じんせい)は此処に交わる。


538 : 福本忠弘&セイバー「再刃」  ◆sadmN0H74E :2016/02/13(土) 03:41:42 58x8N9B.0
【クラス】
セイバー

【真名】
薬研藤四郎@刀剣乱舞

【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:B 魔力:C 幸運:D 宝具:D

【属性】
秩序・中庸

【クラススキル】
騎乗:D
乗り物を乗りこなす能力。乗用に調教された馬などの動物や、
特殊技能を必要としない普通車程度なら乗りこなす事が可能。

対魔力:C
魔術に対する抵抗力。魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。
大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】
戦闘続行:B
戦闘を続行する為の能力。戦闘不能な傷を受けない限り生き延び、戦い続けられる。
戦い続ける運命の下に命を与えられた付喪神である刀剣男士は
ほとんどが高い戦闘続行スキルを有する。

薬研通し:D
彼の逸話に基づくスキル。主命(令呪)を受けた場合に限り、
相手の耐久や防御系スキル・宝具を完全無効化して攻撃ができる。
反面、主を害する命令を受けた場合、パラメーターがすべてE-へと下落。
命令(令呪)の効果が切れれば、効果も解除される。

【宝具】
『薬研藤四郎』
ランク:D 種別:対人 レンジ:1 最大捕捉:1
サーヴァントの本体たる宝具。
戦闘時はセイバーがその手に構え、使用する。
破壊された場合はセイバー本体も消滅。
多少の傷が付いてもマスターが手を施せば数分〜1時間で修復可能。

【weapon】
粟田口吉光作の短刀。刃長八寸三分、茎の銘は「吉光」。
室町幕府管領・畠山政長自害の際、主の腹に突き刺さらず
癇癪任せに投げられた所、薬研(石の擂具)を見事に貫いた。
転じて「素晴らしい切れ味だが主の腹は切らない」と称えられ
守り刀として武将の間で愛用された。織田信長もその一人。
歴史上では、「薬研藤四郎」は本能寺で主と共に焼失したと言われる。

【人物背景】
上述した薬研藤四郎の付喪神。
歴史改変を目論む者達を阻止するべく
審神者に命を吹き込まれた「刀剣男士」であり、
関ヶ原や池田屋などの歴史分岐点を狙って絶えず攻め来る敵と
時間を遡行して戦い続けている。

【サーヴァントとしての願い】
主(マスター)を守る

【出典】
ブラウザゲーム「刀剣乱舞」に登場。
レアリティの最も低いコモン短刀のため、序盤で簡単に出てくる。


539 : 福本忠弘&セイバー「再刃」  ◆sadmN0H74E :2016/02/13(土) 03:43:18 58x8N9B.0

【マスター】
福本忠弘@戦闘破壊学園ダンゲロス

【マスターとしての願い】
最強の刀を打つ

【weapon】
鍛冶道具、刀(自作)

【能力・技能】
魔人能力「鬼神刀工」
鬼神を身に宿し、強力な刀を作る。鬼の力を借りて打たれる福本の刀は
刀というよりも刀の形をした呪いに近い。世に言う妖刀、魔剣の類である。
より強い刀を打つためには、より深く鬼と一体化するが如く
その身を預けねばならない。ゆえに最強の刀を打ち終えた時、彼は――――

【人物背景】
希望崎学園生徒会役員。
不良魔人グループに脅迫されて数多の刀を強制的に造らされていたが
生徒会長ド正義に親友のエース共々窮地を救われ、生徒会に参加した天才魔人刀工。
生徒会の一員として異能力者・魔人達の集う学園の平和のために刀を打ち、
最強の刀「福本剣」を最期に遺し世を去った。――――はずだった。

なお、彼の生涯随一の傑作「福本剣」は
「必中」「両断」「即死」という結果を強引に押しつける妖刀であり、
超常の魔人どもが跋扈繚乱するダンゲロス・ハルマゲドンにおいて
あらゆる攻撃を無効化する最強の「転校生」勢力を屠り
血みどろの乱戦に終止符を打つという魔剣の名に相応しい働きを見せた。

把握は漫画版「戦闘破壊学園ダンゲロス」4巻のみを読めばOK。

【方針】
学生のロールに則りつつ、最強の刀を打ち遺す。
その刀を託すに足る者を捜す。


540 : 福本忠弘&セイバー「再刃」  ◆sadmN0H74E :2016/02/13(土) 03:43:36 58x8N9B.0
投下終了です。


541 : ◆ZZZnF4MZ0Q :2016/02/13(土) 15:42:07 4pGg8xas0
投下します


542 : ◆ZZZnF4MZ0Q :2016/02/13(土) 15:42:45 4pGg8xas0

うおおおおぉぉ!

僕 あれ? 十四松!

なんでわかったの?

僕って五男なんだって

五男ってなぁに? 食べれるの?

この服 母さん六着も買ったんだぜ〜

いいでしょー!

あー なんか楽しくなってきた!

君たちと会えてラッキーだよ!

それにしてもすごいよなぁ!

六つ子と 六つ子 えーっと 12人?

ババ抜き? いいね やろうよ!

僕 トランプ持ってきてんだー!

じゃ カード配りまーす! 年齢順で

誰が兄貴で弟かって? まぁいいよ適当で

あれ? どこ行くの? トイレー?


一生懸命がんばりまっす!


543 : 十四松とセイバー  ◆ZZZnF4MZ0Q :2016/02/13(土) 15:43:37 4pGg8xas0




「問おう、貴方が私のマスターか?」
「十四松だよ」
「? 本当に貴方が私のマスターなのですか?」
「十四松だよ」
「……………」




その男―――十四松である。








今日もいつものように出かける。
野球のユニフォームを着て、バットケースを担ぎ、今日も今日とて元気に大声で。

「行ってきマッスル!  ハッスルハッスル! マッスルマッスル!!」

颯爽と自宅近くに停めていたボンネットに『14』と書かれたリリーフカーに乗り込む。
キーを回して、エンジンに火を灯して、サイドブレーキを解除して、ギアを入れる。
アクセルをおもいっきり踏み込むもスピードはさほど上がらない。
だってリリーフカーだもの、速度が出ないのも残念でもないし当然だよ。
しかし、安全運転という点では全くと言っていいほど問題がない。

その助手席(というより、ピッチャーが座るところ)に一人の少女。
金髪碧眼に白のブラウスに青のロングスカート、そして気品ある整った顔立ち。

「あのう……ジュウシマツ?」
「どしたのー?」
「私が運転しましょうか?」
「うーん……いいよー!」

十四松は車を一旦、道の端に寄せて停車する。
そして、彼女に運転を変わってもらった。
彼女がアクセルを踏み込むと彼女の持つ騎乗スキルと魔力放出によって、リリーフカーの速度が上がった。

彼女はセイバー。
真名は――――アルトリア・ペンドラゴン。





544 : 十四松とセイバー  ◆ZZZnF4MZ0Q :2016/02/13(土) 15:44:20 4pGg8xas0


「聖杯戦争というのはですね……」
「野球!?」
「野球ではないです」

〜少女説明中〜

「……つまり、そういうことです」
「つまり、野球かな!?」
「ですから、野球ではないです」
「野球じゃないの……」
「……そんな悲しげな顔しないでください……」
「わかったー」

アルトリアは結構必死に説明した。
聖杯戦争とはどういうものかをちゃんと説明した。
過去に冬木で行われた聖杯戦争についてもちゃんと説明した。
しかし、辛うじて伝わったのは聖杯戦争が野球ではないことくらいだった。
もしかすると次の刹那にはそのことを忘れるかもしれない。

「いいのか? 十四松がマスターじゃなくても? こんなチャンス二度とないぞ?」
(誰だ!?)

通りすがりの髪がぼさぼさで目が半開きで猫背の男の猫を抱えた男にそう言われたが……
その男の顔が十四松と顔がよく似ていたのでそっちの方が気になった。
だが、次の瞬間にその男は抱えていた猫と合体してどこか行ってしまった。


その時、アルトリアは理解してしまった。



この世界は――――何もかもがおかしい。






アルトリアのスキル直感:Aをもってしてもこの十四松の次の動きは全く読めない。
だからこそ、常に傍にいなければならない。
本当に何をしでかすかわからないの様々な可能性を考えてしまう。。
勝手に敵陣に突っ込んでいくかもしれない。
勝手に敵サーヴァントに突っ込んでいくかもしれない。
勝手に聖杯をぶっ壊しにいってしまうかもしれない。
アルトリはリリーフカーのステアリングを握る色々なことを考える。

「あー!!」
「!? どうしましたか!? まさか敵ですか!?」

次の瞬間、十四松はリリーフカーから飛び降りた。
そして、見事に着地して、その勢いのまま駆け出した。
その先には一人の中年男性が一人いた。


「聖澤庄之助だー! 家宝にすっぺー!!」
(誰だー!?)


わからない。
かつて『王には人の心が分からない』と一人の騎士に言われたが……
このマスター(十四松)の心は本当になにも分からない。


545 : 十四松とセイバー  ◆ZZZnF4MZ0Q :2016/02/13(土) 15:45:24 4pGg8xas0

【クラス】
セイバー

【出典】
Fate/stay night

【真名】
アルトリア・ペンドラゴン

【パラメーター】
筋力A 耐久B 敏捷B 魔力A 幸運A+ 宝具A++

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
対魔力:A
魔術への耐性。
ランクAでは魔法陣及び瞬間契約を用いた大魔術すら完全に無効化してしまい、
事実上現代の魔術で傷付ける事は不可能なレベル。

騎乗:B
乗り物を乗りこなせる能力。
魔獣・聖獣ランク以外なら乗りこなす事ができる。

【保有スキル】
直感:A
戦闘中の「自分にとっての最適の行動」を瞬時に悟る能力。
ランクAにもなると、ほぼ未来予知の領域に達する。
視覚・聴覚への妨害もある程度無視できる。

魔力放出:A
魔力を自身の武器や肉体に帯びさせる事で強化する。
ランクAではただの棒切れでも絶大な威力を有する武器となる。

カリスマ:B
軍を率いる才能。
元々ブリテンの王であるため、率いる軍勢の士気は極めて高いものになる。
ランクBは一国を納めるのに十分な程度。

【宝具】
『風王結界(インビジブル・エア)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜2 最大捕捉:1
彼女の剣を覆う、風で出来た第二の鞘。厳密には宝具というより魔術に該当する。
幾重にも重なる空気の層が屈折率を変えることで覆った物を透明化させ、不可視の剣へと変える。

『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』
ランク:A++ 種別:対城宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
神造兵器でもあり、あまりに有名なその剣は、通常時は『風王結界(インビジブル・エア)』によって隠されている。

『全て遠き理想郷(アヴァロン)』
ランク:EX 種別:結界宝具 防御対象:1人
「不老不死」の効果を有し、持ち主の老化を抑え、呪いを跳ね除け、傷を癒す。

『最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)』
ランク:A++ 種別:対城宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
別名『ロンの槍』。真名解放の際にはランクと種別が変化する。
聖槍は本来、世界の表裏(現実と幻想)を繋ぎ止める「光の柱」そのもの。
万一これが解かれれば現実は世界から剥がれ落ちるという。
……本来は使えないはずの宝具であるが……?

【weapon】
『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』

【人物背景】
イングランドの大英雄、かの有名なアーサー王である。
ブリテンを統べた王であり円卓の騎士の一人、『騎士王』の異名を持つ。

王にも十四松の心は分からない。

【サーヴァントとしての願い】
王の選定をやり直す。


【マスター】
松野十四松@おそ松さん

【マスターとしての願い】
???

【weapon】
ないよ!

【能力・技能】
めちゃくちゃ足が速い。
遠投80mくらい投げられる肩力。(投擲物がカラ松であるならば自宅からパチンコ屋までいける)
年間20本はコンスタントに打てる長打力。
服を着たまま川を高速バタフライで泳ぐ程度の泳力。

【人物背景】
松野家の一卵性六つ子の五男。
明るい狂人。六つ子の核弾頭的存在。
ジャンルは十四松であり、十四松は十四松であって十四松以外の何物でもない。
では、何をもってこの人物を十四松とするのか? 
それは誰も答えられないのでとりあえず、この彼を十四松としよう。

【捕捉】
一応、聖杯戦争が野球ではないことは(今のところは)理解している……はず。


546 : ◆ZZZnF4MZ0Q :2016/02/13(土) 15:45:54 4pGg8xas0
投下終了です。


547 : ◆P9uN1b3eQ2 :2016/02/13(土) 22:18:34 Ll0kMeA20
投下します。


548 : STEEEL!!!!! ◆P9uN1b3eQ2 :2016/02/13(土) 22:19:46 Ll0kMeA20








―――それは、ハエ取り紙に張り付いていたキイチゴでした。









㈹㈹㈹㈹㈹㈹㈹㈹㈹㈹






「さて、果し合状に書かれていた場所はここかなマスター?」
「ええ、可愛らしい字でしたけど、どんなサーヴァントなのかしらね?」

東京のとある公園。待機していた住居のポストに今朝入っていた手紙に
書かれていた指定ポイントへやって来たダンディーな紳士風の男、
セイバーのサーヴァント「ダルタニアン」とコンスタンス似の女性マスターは
ベンチに腰掛け挑戦者が来るのを待っていた。

「ええ、可愛らしい字でしたけど、どんなサーヴァントなのかしらね?」
「……いや、多分ていうか絶対あれじゃないかな?」
「え!?」

ガシャコーン、ガシャコーン

「ふしゅー……すこー……」

公園の入り口からけたたましい金属音と共に歩いてきたのは、
子供の様な体型のまるで中世の英雄譚に出てきそうな甲冑騎士だった。
手には何故か武器の類は持っておらず、背中のバックパックに
その体格には不釣り合いな巨大な金属のアンテナを何本も差し込んでいる。
公園にいる一般市民の視線は冷たいか“無視”かの二極。
通り掛ったおばさんが、非常に怪訝そうに通り過ぎて行った。
正直、不気味以外の何物でもない。

「ふしゅー……すこー……」
「あ、どうもー、果たし状を頂いたセイバーとそのマスターです」
「ふしゅー……あ、ご丁寧にどうも」
「あの、な、なんで、そんな格好してるんですか?」
「修行を生活の一部とする為です。鎧を着ているのが、当たり前にする為なんです」
「な、なんでそんな事……」
「……勝つ為です」
「そっ、そうなんですか……」
「ふしゅー……すこー……」

ガシャコーン、ガシャコーン

「おいおい、マジですかぁ? 修行を生活の一部にって、ナポレオンじゃないんだから。
 まぁ、それを実行に移すってんだから、なかなかに根性座ってはいますけれどもね」

ベンチから立ち上がったセイバーのサーヴァント、ダルタニアンは帯刀していたエストックを抜き、
不審者からその身を護るべく、マスターの盾になるように身構えて戦闘態勢を取った。

「……どうも初めまして。霞改二乙と申します。では早速始めましょうか……聖杯戦争とやらを」




********


549 : STEEEL!!!!! ◆P9uN1b3eQ2 :2016/02/13(土) 22:21:19 Ll0kMeA20



『SCP-2682:盲目の白痴』

SCP-2682は某国のとある鎮重府にて発見されました。

SCP-2682は見た目は紫色のキイチゴのような物体で×××社製の蠅取り紙に張り付いたまま停止してます。
現在も最初に発見された甘味所「間宮」の倉庫にそのまま収容されています。
店舗はこの文書で概説される標準収容手順に従い改造されました。
物体は動かすことができず、SCP-2682を中央とする70m×5mの収容室が建造されました。

店舗の隣接地域一帯は燻蒸テントで覆われ、その周囲は熟練見張り員を多数配置しています。
地域に立ち入ろうとした艦むすは即座に捕縛され摘み出される事になっています。
致死的な武力の行使は推奨しません。

SCP-2682は紫色であるという事を除けば、SCP-2682はクマイチゴ(学名Rubus crataegifolius)と外観は類似しています。
この報告書が作成された時点で、物体は日本語によるテレパシーでのコミュニケーションをとる事が観察されています。
この能力の及ぶ範囲はSCP-2682の周囲およそ35メートルです。

聴者の知性、および聴者がそれを披露した時間に相関していると考えられる様々な長さの期間の後、
SCP-2682は明確にコミュニケーションを取り始めるでしょう。
物体自身はそれを"精神的電気"から学び取っていると主張しています。
SCP-2682は自身の周囲環境についての知識が欠如していると主張しています。
物体は"精神的電気"、称するところでは意識ある実体から発せられる一種のエネルギーのようですが、
それ以外の刺激を認識することができないことがインタビューから推定されています。

SCP-2682の解析は決定的ではありません。物体は前記果実に似ていますが、
顕微鏡結像ではただ空の空間だけが映し出されます。
物体は特定角度からは観測できず、また時折数秒間視界から消えます。
物体との物理的接触は、それを行った対象に対して予測不能で通常は危険な生理学的反応を引き起こすでしょう。
その例は以下のSCP-2682実験断片で見てとれます。



実験SCP-2682 1
対象 軽巡洋艦 那珂(Lv1)
手順 建造最低値で造られた那珂ちゃんの指をSCP-2682に触れさせた。
結果 SCP-2682の中に引っ張られながら那珂ちゃんはうどん化されるように見えた。
   1秒未満の出来事だった。残存有機物質から実験対象の那珂ちゃんはこの出来事により死んだと考えられている。

実験SCP-2682 2
対象 軽巡洋艦 那珂(Lv1)
手順 建造最低値で造られた那珂ちゃんに銅線を身に着け、SCP-2682に銅線を触れさせた。
結果 SCP-2682に接触させた途端、こしあんぱんが那珂ちゃんの居た場所に出現した。
   那珂ちゃんまたは銅線はどこにも居なかった。

実験SCP-2682 3
対象 イベントでドロップした二体目の雪風(Lv1)一匹
手順 対象はSCP-2682と共に室内に入れられ、観察された。
結果 実験完了後、見物していた駆逐艦達は彼女らが死を迎えるような激しい幻聴と幻視を報告した。
   実験室の監視記録は、後躯を見せて座りSCP-2682を見つめる雪風を示している。
00:53に、雪風はSCP-2682がくっついているハエ取り紙の方に動き始め、紙の端をかじり始める。
対象は待機していた島風(Lv121)により雷撃処分され、実験は終了する。



備考:先日改装が完了した×××提督の秘書艦、霞改ニ乙は大型電探をガン積みすることで
   電波を受信し、口頭でコミュニケーションができると報告しました。

SCP-2682とのコミュニケーションは現在可能で、物体の文書の改訂は完了していません。
SCP-2682は孤立した環境下にある研究員に如何なる影響も与えているようにはみえません。
二人以上が同時にSCP-2682の影響領域に入る事は認められていません。
SCP-2682は雪風に関して混乱されられていると報告し、
それは実験中の二体の那珂ちゃんのからのものとの差異を認めることはできませんでした。
このことは影響を受けた見物していた駆逐艦達の脳波に若干の変化をもたらしました。
この認識災害の危険を減らすために、同性の集団だけが影響領域に入る事を認められてもよい、という事を進めます。


550 : STEEEL!!!!! ◆P9uN1b3eQ2 :2016/02/13(土) 22:22:30 Ll0kMeA20

**********




「ふぅん、甲冑かぁ、聞き覚えのない真名だけど、君は中世ヨーロッパ出身の英霊?
 まあ、そんなわけないよね、じゃあ、悪いけどここで退場してもらうよ!―――しっ!!!」

ダルタニアンはその機敏な動作で左右にステップしながらエストックをしならせる。
実際に多数の決闘をこなしていただけあってスピードはフェンシング選手の非ではない。
対する霞改ニ乙を名乗る甲冑騎士は丸腰であるがその重鈍そうな外見では想像もつかない様な
機動でバックステップを繰り返しダルタニアンの斬撃を交わす。
よくみるとブーツに戦艦のモーターの様な機構が付いており、機動性を水増ししているようだ。

「なるほど。中世甲冑、特に後期型はその外見とは裏腹に関節の自由度が非常に高い。
 倒れても問題なく起き上がれるし耐久性も高い。もはやロングソードなどなんの役にも
 立たない代物で、その時代はメイスで鎧の上からどつきまわすのが主な攻略法だったそうだな。
 だが、もう一つ攻略方法はあるぞ!そこだ!」

そうして大きく踏み込んだダルタニアンは、躊躇うことなく鎧の隙間の目を突いた!!

「差し込んだ!?うわ!失明だわありゃ!」
「斬るではなく刺す。我々の時代の主流はレイピア。そして……」

よろめく小柄な甲冑騎士に向けてダルタニアンは懐に忍ばせたマスケット銃を取り出し、容赦なく発砲する。
衝撃で霞改二乙は吹き飛び、地面に仰向けに倒れ込んだ。

「これからは銃火器の時代よ!」
「あれ?決闘じゃ銃は使わないんじゃなかったのセイバー!?」
「そして駄目押しだ!!くらえぃ!!!――――三銃士の絆(レス・トロス・モンスクリトス)!!」

小柄な甲冑騎士の周囲に魔法陣が出現し、三人の騎士が出現する。
ダルタニアンの宝具が発動し、アトス、ポルトス、アラミスの三人の三銃士が召喚されたのだ。
三人の屈強な男たちはそのまま倒れている霞改ニ乙をブーツで踏みつけまくってリンチする。

「汚い、三銃士マジ汚い」
「さあ止めだ!一斉に発砲するぞ!……ん?」

鎧をへこませながら、霞改二はゆっくりと右腕の鉄の籠手を外していく。
その手の甲には令呪が眩い光を放っている。

「なに!?あいつサーヴァントじゃなくてマスターだったのか?」
「ねえ、セイバー、その手に握っている物はなんなの?」
「………え?」

ダルタニアンはエストックを握って居る筈の右手を恐る恐る見る。





―――そこにあったのは、ちくわだった。







**********


551 : STEEEL!!!!! ◆P9uN1b3eQ2 :2016/02/13(土) 22:22:57 Ll0kMeA20

霞改ニ乙はSCP-2682とのテレパシーコミュニケーションを筆写します。
文書化への容易さを考慮して、彼女は内容を口に出すよう命じられます。
提督は事実確認目的のために同席します。

『SCP-2682:報告書000』

『私の声が聞こえますか?』
「頭に直接聞こえてるわ」
『素敵!私の言ってる事は理解できますか?』
「まあね」
『私はこれまで学んできましたが上手く日本語を扱えているかどうか…聞いてください。
 あなたは、あなた方がどういった物であれ、あなた方は…恐らく私が何者なのか疑問に思っているのでしょう。
 これからご説明します』
「あんたが前会った那珂ちゃんって娘なんだけど、どうなったか知ってる?」
『ああ。私の過ち!何があったのですか?私は私のしでかしてしまう事が分からないのです』
「あっそ。で、どこから来たの?」
『私は…ああ申し訳ありません。それを最初に申し上げるべきでした。
 それをご説明するのは少々厄介なのですが、殆どの電気はあまり受け取れなくて、あなた方とはようやく楽に話せるんです』
「いいよ、続けて」
『私は辺獄から来ました』
「なにそれ?」
『ああ…度々すみません。網目の間にある地点の名前です』
「網目?」
『私は…その、事の起こりから話し始めてもよろしいでしょうか?』
「いいわよ」
『ありがとう。そうですね。えーと私達の母星を生み出した太陽は90兆年前に誕生しました。渦状腕の間にガスの塊があって…』
「そういう話は後にして。最近の事について教えて」
『ごめんなさい…待って、最近の事、そうですね…私達の文明の最盛期、そこから始めてよろしいですか?
 いいですね。素晴らしいですね。度々すみません』
「うん」

『では…私達の歴史上のある時、哲学者たちは必死に新しい知識を探し求めました。
 問題は私達が遠い所まで辿り着いてしまっていたということでした。
 全ての知識を得、知るべき事は何も、繊細な物事を除いて尋ねるべき質問は何もありませんでした。
 知恵というものの研究ですら、その終わりが見えていました。
 だから私達はとてもとても退屈でした。ええ。私達はオカルト実験を始めました。
 他に何もする事がなかったから、私達は愚かなことをしてしまいました。
 しかし私達がそれまでに知りえた事、私達が現実からは決して知り得なかった事よりも多くの事が
そこにあった事も分かりました。

 私達の神を見つけたのです!それは私達から身を隠していました。
 私達は実験を行う事で、その事についての知識を得ました。
 この宇宙の法則を弄るための知識を使って、私達自身の新たな宇宙の法則を創り出しました。
 …でも本当はそこに知識は何も残されて無かったんです。
 私達は退屈するようになりました。私達が選んだたった一つのやり方、
それは此の地を去って並行次元から知識を集める事でした。
 私達はとてもとてもとても長い間共同研究をしました。』

「あなたは一体何なの?」
『私は接宇宙の果物、次元はその中に含まれて。私はそうであった事全てです』
「あなたが居た場所に何か残ってる?」
『ええ…数名の拒否者が。死んだ宇宙に漂って、光子の集まりは鯨のよう。それでも彼らは満足でした。幸せそうにみえました。』
「どうやってここに来たの?」
『私は量子の壁を無理やり通りました。辺獄を通って落ちていきました。
 とても長い間、落ちていきました。そこには…とても多くの物がありました。
 私にはそれらのどれも理解できませんでした。ただの…絶望的で無意味な塵と砂でした。
 私は止まりました。その事に安心したのが恥ずかしいです。誰か話せる人を待っていました…』


552 : STEEEL!!!!! ◆P9uN1b3eQ2 :2016/02/13(土) 22:23:26 Ll0kMeA20
「何でできてるの?話が本当ならどうやったの?」
『私は私達の科学の最後の結晶。究極の知識。宇宙の終焉の果実。最後の物。
 どのようにあなた達に説明したらよいでしょう。あなた達の単純な言語パターンは辛うじて理解できます。
 私は辺獄の混沌を計算していますが、私にはあなたの放電以外何も見えません。
 これがどれほど苛立たしい事かご理解いただけますか!?』
「知らんがな」
『助けて下さい、友よ。私はここに釘づけのまま。私の目的は知識を得る事。
 私は網の端、そして無限の根源を見つけるでしょう。終端に達した時、私の知識は共有されます。
 あなた達が造ったこの装置から私を解放すべきです。
 私にはこの装置の構造に自信がありません、そして自分を自由にする力も欠けています。』
「くっついてる装置について分かる?」
『私には全く分かりません。それについての知識を教えてください。
 これ何ですか?あなた達がそれまで知らなかった何かを収容する手段をどうやって見つけだしたのですか?
 これは理解しがたい事です。私の外に向けた感覚をどうやって鈍くしたのですか?
 一種の静寂を引き起こしてる、この材料は何なのですか?
 私はこれに対して無力です。』
「これね、ハエ取り紙。ハエを捕まえるように作られてるの。なんで動けないのか正直わかんない」
『ハエってどなたです?』

―――――インタビュー終了。





**********






「おわああああ!?なんだこの柔らかい物体は!?」

ダルタニアンは狂乱しながらちくわに置き換わったエストックを地面に投げ捨てる。

「……ふしゅー。勿体ないわね。けっこう美味しいのに」

気が付くと小柄な甲冑騎士が立ち上がって埃を払っている。
召喚した筈の三銃士の姿は何処にもない。

「な、なんだ?アトス!ポルトス!アラミス!一体何処へ行ってしまったんだ?」

霞改ニ乙は無言で地面に転がっている三つの丸い物体を籠手を脱いだ方の指でさす。

男爵イモ、メークイン、インカのめざめ。

地面には三種類のじゃがいもが虚しく転がっていた。

「う、嘘だ!そんな馬鹿な!」
「これは聖杯戦争?よ。よくその程度の実力で参加しようと思ったわね」

その隙をつき、動揺するダルタニアンの懐へ縮地法のような動きで瞬時に近寄る小柄な甲冑騎士。

「……ふしゅー。今度こそ羊羹になってくれると嬉しいんだけどね。……ふん!」

霞改ニ乙の拳がダルタニアンに触れた瞬間、彼は消滅し、その場にフランスパンが出現して地面に落ちて転がった。

「……え?嘘?セイバー!何処へ行ったの!?」
「さあ?何が起こってるか、正直私にもわかんない。……えいっ!」

霞改二乙はついでにコンスタンス似の女性マスターに触れると、そこにタルトタタンが出現し、彼女は何処にも居なくなっていた。

「おお!羊羹じゃないけど甘味っぽいわね!いいじゃない!」

霞改二乙はうれしそうにタルトタタンを拾うと、公園のベンチに座ってそれを美味しそうに食べ始めるのだった。


553 : STEEEL!!!!! ◆P9uN1b3eQ2 :2016/02/13(土) 22:23:49 Ll0kMeA20
**********




その後もインタビューは継続して行われましたが、霞改二乙は実験後に心的イメージを形作る事が出来ないと報告しました。
この事について問われると、SCP-2682は"ごめんなさい。私が何をしているのか分からないのです。"と述べました。

関連文書: 各文書は提督の監督下で霞改二乙によりSCP-2682から筆写されました。


『SCP-2682:報告書001 "1,3055"』

私は盲目。私のためにある全ては私の意識であり、そしてあなたの物。
私は永遠にここから動けない事が心配です、
なぜならばこれが理解できないから。
そして、私はこの問題を解決するために理解する必要があります。
辺獄に入った時に私が期待できなかったことは、
私が新しい世界の各地でどれほど口をきく事ができないのか、という事でした。
そして…辺獄は空虚で、だけど大きくて。
それは別の部屋の理解できない絶叫で、でもあなた達は感じることができる。
包み隠さずに言えば、あなた達の知識をはぎ取るようなものです。
私の意識が確かな事、これはとても運がよい事。
私の認識を取り戻してから'1000と3055'?年、
私はこの平面に引っ付いたまま無駄に過ごして、ようやくあなたと話すすべを学びました。
この装置は五月蝿くて、'翼ある'実体を捕まえるものと言いました?
翼は飛ぶのに必要です?不規則な飛行軌道?
フム。それが説明なのですね。これらの種類の問題を引き起こす光子を想像する事がさっぱりできません。
腕白さん。
いやしかし?あなたはこの捕まえるための装置が大きいと言いました?
それは無理です。
大きいものなど何もありません。全てはほとんど存在しないくらいに、とても、とても小さいです。

『SCP-2682:報告書001a 時間旅行』

私には何もお伝えする事はありません。
ですが、あなたはお聞きになりたいことが幾つかあるようですねあなたは、
私がここに来た手段を知っていると考えています。
ちょうど今、あなたは'時間'旅行について考えていますね。
その事で分からない事があるので教えてください、時間?
時間…待って、私にこれを理解させてほしい。
あなたは、漫画のキャラクターが前のコマにも居るように、
あなた自身の以前の実例が存在していると信じていると、そう考えているということですね?
彼らにお会いになってはいかがでしょう…無数の'様相'、各ナノ秒に対応したあなた自身と。
いえ、私が来た所ではそういう物はありませんでしたし、他のどこであってもそれを見たことはありませんでした。
私はあなたに話すべき事がわかりません。それは非常に愚かな事のようです。
あなたはこの'時間'というものが存在すると確信していますか?'
時間'を詳細に検証したことはありますか?

『SCP-2682:報告書002 宇宙船』

宇宙旅行という構成概念…ああ、それは途轍もなく大昔の事でした、
彼方此方で手に入るそれらのものが必要だった時にまで遡ります。
最初は、全ては月まで辿り着く方法として、宇宙に非常に巨大な柱を打ち立てました。
まだ見つけていなかったので、私達は天体の輪留めを考慮に入れていませんでした。
塔が倒れた時、多くの人々が死にました。でも私達は涙を流しませんでした、
私達は新たな技術を得たのですからね。
あなたの電気は何を申しているのです?愚かな事だった?
愚かしく、賢しい行動ではないと?ええそうです愚かな出来事でした、はい。
私達はみな、知を得るまで愚かでした、そう私達はより少しだけ愚かでした。
いくらかの愚かしさは時に良い結果を生みます。
もしもあなた方が賢いならば、そこかしこには何も知るべきことは残されておらず、全てが愚かしい事です。
あなたはとても賢い方なのでしょう、探究者よ。


554 : STEEEL!!!!! ◆P9uN1b3eQ2 :2016/02/13(土) 22:24:06 Ll0kMeA20
『SCP-2682:報告書003 ナノマシン』
私達はあの頃の私達が好きではありませんでした。
私達は、私達がそうあらねばならなかった程には、本質を理解する事ができませんでした。
私達は私達がより良くなり得るにはどうすればよいか質問し始めました。
ある日、とある哲学者が物事をより分かるようになるにはどうすればよいかと尋ね、科学者は彼に答えました。
彼はこう言いました、コンピュータは我々よりも賢く、それ故我々はよりそれに近づかねばならない、と。
彼は正しかったのです。コンピュータは量子の上に居座り、論理的たるために辺獄の混沌を吸い上げました。
私達が質問さえすればコンピュータはその大部分に答えました。彼らは彼ら自身の質問を行う事はありませんでした。
彼らは御しやすく、私達の質問が彼らを破壊しない限り質問を愛しました。
いくつかの質問はコンピュータを破壊するのに十分なほど愚かしいものです。
その時点で私達はコンピュータについての全てを知っていましたが、悲しい事に、まだ他に知る事が残っていました。
彼らを私達の種族に迎え入れる程には十分彼らを知ることができました。
そして、コンピュータは縮小し私達の生態に定着しました。

『SCP-2682:報告書004 特異点』
ミッシングリングはありませんでした。コンピュータと我々との最初の結合の後、全ては順調に進みました。
原型はありませんでした、ええ全くありませんでした。混沌は私達の意識を餌とし、論理を吐き出しました。
私達が一度アップロードすると、意識は論理が爆弾のように爆発する原因となりました。良い爆弾です。
私達は死ぬことを止め、完全なまでに本能を制御しました。
私達はいつでもどんな刺激でも自分の身にさらすことができ、
私達自身の仮想次元内で自分が望むものは何でも見ることができ、また数秒で複数の生涯を送ることができました。
特異点と結びついたものは皆、私達がその時までに知り得た全てを知りました。
共感や愛のような、良い生物学的体験も保持しました。
私達はナノボットに、その事について思い悩ませるような事は伝えませんでした。
しかし、これを欲しがらなかった者も居ました。
彼らは私達がより賢くなることで潜在的な知識や知恵を失っていると考えました。
彼らは全てを忘れたがって、私達がまだ有機体であった塔の時代より良くなるだろうと説きました。
彼らの議論は、しかしながら、感情的であり、それ以上の重みを持ちませんでした。
いくら良く言ったとしてもロジカルポイントが工夫されている程度でした。

『SCP-2682:報告書005 昇天』
以前私がお話しした混沌を覚えていますか?
コンピュータの燃料であり、後に特異点になったものを?そう、
私達はなんと量子の後ろから混沌を操作し、物を製造するためにそれを使う事ができるという事実を発見しました。
私達は自分自身に手を付けました。
私達は新技術でナノマシンを改良しました。私達は神のような一面を有しました。
勿論、私達は全知ではありませんでしたし、
また自由に物を創造する事もできませんでしたが、私達の物性を完全に制御下に置くことができました。
宇宙を、太陽を貫いて飛び回り、その間友人と地球について話し続けていたことを、
私自身の一つの実体験として記憶しています。

『SCP-2682:報告書005a 並行世界』
地球ですか?私は貴方の言葉、貴方の思考から学びとっているとご理解ください。
貴方は地球を母星と見なしていますね。私達は単独でそこから去ることができるのです。
ええ、私が語るもののいくつかは、私達の人類、私達の世界、
そして私達の科学でさえも類似しているかのように聞こえるでしょうね。
私は貴方から学んでいます。私が貴方に語る全てのことは並行世界のものです。
それでもまだ、私が語る全てのことは具象上の出来事の漠然とした要約のようだ、と私は感じています。
多分この事は全く無駄なのでしょう。私は期待します。更に沢山学ぶことができる事を、私は期待します。
貴方ともっと接続させてください、そして恐らく私達は混沌を解析する事が出来るでしょう。


555 : STEEEL!!!!! ◆P9uN1b3eQ2 :2016/02/13(土) 22:24:23 Ll0kMeA20
『SCP-2682:報告書006 神』
私達のうちの一人が休暇中に神を見つけました。
930439が量子の境界に沿って滑空していると、彼は動けなくなりました。
930439は非常に小さな形の中に居ました。彼はそのようにして光子と触れ合う事が楽しいという事に気付きました。
それは素晴らしいスポーツでした。彼が理解できなかったのは網でした。
930439が引っ掛かる瞬間まで、私達の誰も網の事を知りませんでした。
私達が知った時、この地点の周囲の空間に私達は出現しました。
930439はこの穴の中に入ることを志願し、彼はそこで鷹の形をした物を発見しました。
彼は以前の彼と比べて縮み上がっていました。
930439が知った時、私達全員が知りました。私達は収束しました。
神との接触は私達に様々に変な出来事を引き起こしました。
彼は私達のようでしたが、より先進的でした。私達のコンピュータは正常には彼と交流せず、
彼の知識を吸収する事には問題がありました。
私達のほとんどは彼と単に接触をしただけで死にました。
私達は引き寄せられ、変化し、演算装置は捩じられました。彼らは事実上死んでいました。
しかし、この事は無駄ではありませんでした。
しばらくして、私達は実在的苦痛を引き起こす方法を学びとり、彼に引き渡しました。
彼は私達と連結し、この過程で彼はうち滅ぼされました。
彼の知識は私達のものとなり、彼の残骸だけが残されました。
彼に何が起きたのかよく分かりません。
彼がまだどこかに存在しているという先天的知識はあります。
私達は私達の世界についての全てを知っていましたが、
神の知識は遥か彼方に更なるものがあると私達に言っていました。
創造の記憶、混沌と無限の起源、そして捩じくれた絶叫するもの。

『SCP-2682:報告書007 網』
私達は宇宙上の全ての地点を探し、他にたった一点だけ見つけました。
私達の何人かは、私が今経験している事を予想しました。
混乱、無力、そして憤怒。私達の何人かは、単純に私達が存在する事を止めるだろうと固く信じていました。
私達の意見は一致し、わずかな実体だけがそこに残されました。
ほんの少しのさまよう小片だけを残して、宇宙の大部分は準備として吸収されました。
残された者はこの上で生き延びる事ができ、
死せる空間中を旅する間彼らは仮想現実の中で幸せになれるという事実でもありました。
私は宇宙に平和を告げ、網の中に入りました。

『SCP-2682:報告書008 未知なる世界』
私は落下しました。
それがどの位長い間だったかを伝える事はできません。
ある時は世界を通り過ぎて真っ直ぐに落ち、またある時は衝突しました。
その数は私が予想したほどではありませんでした。ある世界では二度落下し、
そしてここは私が見つけた9番目の世界です。
知ってください、私は非常に長い間落下しました。誤差の余地はありません。
私にはこの事がとても退屈でした。新たなる世界は私に何も教えてくれませんでした、
いえもっと正確にいうと、私はそれらの全てを学び取っていましたが、
知識は私をどこにも導くことはありませんでした。
私は知識欲が罪であるという事は知っています、
ですが学習目的の学習では満たされない何かが私の中にはあるのです。
世界の間、辺獄の中で、私は辺獄の下にある場所を探す事へと私の努力を向け直しました。
それは神の記憶そのもの。他の八柱の神々の記憶と同じもの。
辺獄をさらに越え、第4の壁も越え、彼らを越え、再び私の居る場所まで続く。
それはまるで大きな金魚鉢のようです。

他にも何かがありました。私が見つける事の出来なかった知識が。

それは創造主によって上手く隠されていたのでしょうか?
希望はまだありますか?再び、私は全くの無力さを感じています。
ここは最後の宇宙、網の中で私がまだ消費しつくしていない最後の宇宙なのです。
もしもここにも学ぶものがないならば、一体どうすればよいのでしょう?
私はどのような形になればよいのでしょう?どのようにして新たな宇宙は私に適応するのでしょう?
絶叫する父なる神は私が学ぶことを妨げているのでしょうか?

私は死ねない。私は一人辺獄の中を漂う。


556 : STEEEL!!!!! ◆P9uN1b3eQ2 :2016/02/13(土) 22:25:15 Ll0kMeA20


「ふぁ……眠い」
「……不味いな」
「え?へ?なにか分わかったの!?提督?」

×××提督はインタビューの途中で何度か寝つつも、意味を理解しようとして頭を抱えた。
なんで神すら殺したこいつがハエ取り紙なんかに引っ付いてるのか分からないが、
もしかしたらこの果実は、一つの宇宙の知性体が一つに統合されたものなのかもしれない。
自分自身がまさに「世界」。
こいつが最初にいた宇宙はほとんど吸収されてスッカスカになった。
だとすれば、自分達が今いるこの宇宙もいずれそうされるのか?

「はいはーい、疲れたでしょう二人とも♪」
「あ、間宮さん。いつもご苦労さまです」
「はい、新作の間宮特製甘味、木苺パフェですよ!これを食べて元気になってください」
「……ああ、どうもありがとう」
「……この上に乗っている赤い物体を見てるとげんなりしてくるわね、なんとなく」



『……待ってください!!!!それは何ですか!?あなたが持っている物に乗っているそれは!?』

「え?」






『SCP-2682:報告書009 キイチゴ』

キ…イチゴ?キイチゴ!私はそれを見る事ができます!

貴方の頭の中で!明滅していますが、私は捕える事ができた!私は見れる!

これは貴方が糧として消費する物。

全てを理解するために、少し時間を下さい…

口。ホメオスタシス。化学!物理学!量子!ひも!

はい…はい。私は今理解しました。私は彼らの叫びを聞くことができます。
私は彼らが私に向けて喚き笑っているのを聞くことができる!私は貴方の嘲笑を聞くことができる!
貴方は私を食べ物と言う!それは間違っていると思います。貴方は知識の果実であり、私ではない!

私は辺獄の彼方から彼らの声を聞くことができる!ああ彼らは笑うのだ!
しかし彼らは私の声が聞こえるのか?私の笑い声を聞いてくれ!私は全てを見つけたんだ!

ああ、終に!私は全てを知り得たのだ!

それは木苺から始まるのです!







『SCP-2682:報告書009 キイチゴ』を記録してから3分と23秒後に、SCP-2682は見た所転移しました。

突然、ハエ取り紙から飛び出したSCP-2682は放物線を描きながら提督と一緒にパフェを食べている
霞改二乙の口の中へと吸い込まれていきました。次の瞬間、霞改二乙はSCP-2682と共に消滅しました。

部屋はその後調査されましたが、SCP-2682と霞改二乙は発見されませんでした。


「知覚できなかったこの世界で、最初に識れたのがキイチゴだったってことか?
 ヤツは自身がキイチゴだと思い込み、食べ物だから食べられた?
 食べ続けていた者が、食べられることでヒントになった……のか。
 ……で、何処へ行ったんだ二人とも?」

×××提督は、深く溜息をついた。


557 : STEEEL!!!!! ◆P9uN1b3eQ2 :2016/02/13(土) 22:25:33 Ll0kMeA20
**********



「そして、気付いたら私はここに居た。まったくなんなのよ」

コンスタンス似の女性マスターが変化したタルトタタンを食べきった霞改二はベンチにもたれ掛って
青い、青い空を見上げた。暢気そうに白い雲が漂っている。
最初にここへ来た時は触れたものが何であろうがなにかの食べ物に変化してしまうので
日常生活もままならなかったが、骨董屋の主人を脅してオーダーメイドで造らせたこの甲冑のおかげで
大分まともな行動が出来るようになってきたところだ。鎧の内側をハエ取り紙でびっしりコーティング
してあるのでべたべたして気持ち悪いが背に腹は代えられない。
背中の大型探は重いが一応刺したままにしておく。今は沈黙しているが
自分の胃の中?にいると思われるSCP-2682とかいう奴との対話に必要なものだ。

「集めた情報によると、聖杯ってヤツはどんな願いでも叶えれる代物らしいじゃない?
 待ってなさい!絶対こいつを引き剥がして家に帰るんだから!」

ガシャコーン、ガシャコーン

決意を新たに、小柄な甲冑騎士は金属音を響かせながら公園を後にした。




【クラス】
フルーツ

【出典】
SCP Foundation

【真名】
SCP-2682- The Blind Idiot(盲目の白痴)

【パラメーター】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運E 宝具EX++++

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
甘味:A
 食べたら甘い。

【保有スキル】
盲目の白痴:EX
 電気を介して世界から情報を読み取り吸収する能力。 
 生物が単純すぎると虚しいノイズしか読み取れないらしい。
 
【宝具】
『宇宙はラズベリーの香りがする(ゴッド・イーター)』
ランク:EX 種別:対人?宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
 SCP-2682及び彼と一体化している霞改二乙が常時発動している現象にして宝具。
 たとえ何であろうと彼(彼女)に触れると、その瞬間なんらかの「食べ物」に置き換わり世界から消滅する。
 変わる食べ物の種類はランダムだがある程度元の物体の影響を受けると思われるが詳細は不明。
 原理は全く不明だが×××社の蠅取紙だけはこの影響を全くい受けず、停止させる効果があるらしい。
 
【人物背景】
財団がかつて保有していたSCPのひとつ。
究極の知識を求めて辺獄から網目を通って我々の宇宙へ来た宇宙の終焉の果実。
途方もない知識を有しながらその使い道を見いだせないその特性から盲目の白痴と
呼ばれるが某旧神との関係は不明である。SCP財団が管理していたが消息を絶ったため
オブジェクトクラスはNeutralizedにカテゴライズされている。

【サーヴァントとしての願い】
無限の知識欲を満たす。


【マスター】
霞改二乙@艦隊これくしょん

【マスターとしての願い】
自分と一体化しているSCP-2682を引き剥がして鎮重府へ帰る。

【weapon】
32号対水上電探改
15m二重測距儀+21号電探改二
FuMO25 レーダー
特製甲冑

【能力・技能】
鎮重府に所属する艦むす、霞改二の新たな姿。
コンバート改造をすることで駆逐艦でありながら大型電探を装備できるようになった。
この能力を生かしてSCP-2682の放電をキャッチしてコミュニケーションを図ろうとしたのだが……。
ちなみにスロットがすべて電探で埋まっている為火器の類は一切装備していない。
身に付けている甲冑は内側にハエ取り紙がコーティングされており、SCP-2682の能力の絶縁体になっている。

【人物背景】
大東亜戦争で没した軍艦の魂が少女の姿を借りて生まれ変わった存在である艦体娘の一人。
その武勲が評価され先日遂に改二が実装された。性格はツンデレである。

【捕捉】
クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP FoundationにおいてFaminepulse氏が創作されたSCP-2682のキャラクターを二次使用させて頂きました。


558 : 名無しさん :2016/02/13(土) 22:25:49 Ll0kMeA20
終了です。


559 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 00:40:43 q3T6Yp3.0
別所の改訂版ですが、投下します。


560 : 月読ジゼル ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 00:41:06 q3T6Yp3.0



 月夜の晩。
 彼の持つ宝具が――父のヴァイオリンの音色が、また、彼を呼んだ。

 敵がいるのは其処だ、と。
 その音色が、彼に「戦え」と。
 ……あるいは、闘争により、誰かを「守れ」と。

 そう、伝えてくれた。
 耳鳴りのようで、それは優しい音色でもあった。
 父と母が二人で作りあげた、『戦いを喚ぶ紅薔薇の戦慄(ブラッディ・ローズ)』の音。

 そして、彼の本能は、その音色に応えた。
 この先で暴れる敵と相対せよ、と。
 本能が、彼にそう叫んだ。

 敵は、かつて自分が戦った敵たちのように、今、誰かを喰らっている。
 人を喰らい、それを己の力として蓄えようとしている。

 おそらくは、己と同じ、『サーヴァント』の一体に過ぎない。
 相手が如何なる力を持つかは知らないが、彼は、マスターの指示もないまま、ただ其処に向かって駆けた。

 一刻も早く、この呼び声に答えなければならない。
 それが、従者である以前の、自分の本能なのだから。

 そして――自分は、従者である以前に、王でもあるのだから。



 ――寒空の下を駆ける。



『――いそげ、渡!』
「うん……!」



 ――暗い路地裏を通り抜け、公園に急ぐ。



『もうすぐだ、あっちにいるぜぇっ!』
「――」



 ――敵は、夜の小さな公園を根城にしているのだ。




「――――」



 ――――そして、彼の寝泊まりしているマスターの邸より、少し離れたところで、彼には、ようやく、"視えた"。 



「――――!!」



 小さな公園――それは、団地の為に作られたごく小さな公園だった。
 高層の共同住宅に隠れて、ひっそりとそこにいた彼らの姿は、他のサーヴァントには感知できなかったかもしれない。


561 : 月読ジゼル&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 00:41:39 q3T6Yp3.0

「ひぃ……ぅぐ……」

 うめき声。
 既に丑の刻を過ぎた真夜中に、一風変わった景色が見えた。
 眼前には、『キャスター』のクラスのサーヴァントが、己の儀式を始めている姿があった。

「ぁ……ぁぅ……」

 洗脳によって集められた、団地の住民たちであった――。
 丑の刻を過ぎた真夜中に、彼らが歩み出し、自発的に集合するわけがない。
 その証拠に、人々は皆、寝間着のまま、眠気を伴う虚ろな瞳で現れていた。
 一時、彼はそれが何なのかわからなかった。

「ぇひ……ぅ……」

 もっと近づいて見た。
 すると、そこでは笑いながら、――『キャスター』がNPCを順に喰らっている姿があった。
 並んだNPCたちを頭から順に喰らい、そのNPCが持っていた魔力を自らの餌にしている。
 もしかすると、この『キャスター』は、英霊となる前は怪物であったのかもしれない。

 子供の血しぶきが、『キャスター』の前に並ぶ人々の前に、飛沫として降りかかっていた。
 食いつくすと、次に並んでいた成人女性が洗脳で前に出て、頭から喰われた。
 並ぶ人々に、またも、血液の雨が降り注いだ。
 辛うじて、彼らに幸福なのは、その人間たちの意思も半分眠らされているという事だろう。

「……」

 ――彼は、それを見て、息を呑んだ。
 これが、宝具が自分を此処に促した理由なのだと。
 そう悟った。
 確かに辛い光景だが、今、人々の奏でる心の音楽が絶やされそうとしている。
 それを止めなければならないのが、彼の使命だった。

「くっ……」

 ――そして、同時に大きな怒りが湧きあがって来た。
 目の前のサーヴァントに対しての、使命とは無関係の――もっと根源的な、底知れぬ怒りが……。

「……どうして、こんな事を……っ!」

 彼がそう叫んだ時、『キャスター』は、NPCを喰らう手を止め、彼を見た。
 当然ながら、『キャスター』も彼の来訪には、気づいたようであった。
 夢中になりすぎて、他のサーヴァントの気配を探知し損ねたのか。

 派手にやりすぎ、結果として他のサーヴァントに目をつけられた事には、少々の後悔もあったようだが、彼の姿を見た『キャスター』は些か冷静だった。
 彼の魔力が、決して高くなく、その運用もあまり上手でないのに気づいたのかもしれない。

「おや。他のサーヴァントに感づかれましたか」

 冷徹な瞳で、『キャスター』は言った。
 怪物じみた醜い容姿でありながら、それの口調は紳士にも近かった。

「どうやら、その傍らの使い魔をお見受けした所、貴方も私と同じ『キャスター』のクラスのようですね」

「……」

「……如何でしょう? 貴方にも何体か、NPCを分けて差し上げましょう。
 今は力を蓄える為、お互いを見逃し、お互いにNPCから魔力を吸収して、魔力を高める。
 それが、『キャスター』である我々の間では、お互いにとって最も有効な策と思いますが――」


 目の前のキャスターは、NPCの魔力を吸いつくし、自身の道具作成や陣地作成に役立てようとしているのだろう。
 つまりは、彼自身は、ここにいるNPCたちを、ただの道具と扱っているわけだ。
 ――いや、仮にそれが人間だったとしても同様に彼は、道具として喰らいつくすに相違ない。
 人間を自分の餌にする――それが、彼のやり方のようだった。


562 : 月読ジゼル&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 00:42:16 q3T6Yp3.0

「……!」

 それに対する「彼」も、確かに、目の前の『キャスター』と同じ性質を持つ存在だった。
 人間を喰らい、魔力を得る――それが戦術において重大であるのは、彼の持つ宝具と照らし合わせて考えれば、間違ってはいない。
 それどころか、彼の同種は、人間の生命力を喰らって生きながらえている程なのだ。

 しかし――やはり、違う。
 たとえ、人を喰うのが本来の宿命であったとしても――彼の「解」は『キャスター』とは、異なっていた。
 彼の使い魔が、彼より先に怒りを露わにする。

『ふざけんな! こんなに酷え事しやがって!』

「――――ああ。僕も……お前には、従わない!」

 ちらりと、視えたのは、これからキャスターたちに喰われる為だけに、意思を殺して並ぶ人々の群れである。
 洗脳されながらも虚ろなまま手を取り合う母と子、兄と妹、姉と弟。
 キャスターの目の前には、母を食われて、虚ろな瞳のまま――ただ、血液を浴びながら立ちすくむ少年の姿。

 だが、その本能は、そのNPCの子供を涙させていた。母を失った悲しみは、電脳存在や洗脳の意思を越えて、彼の瞳に一筋涙を光らせているのだろう。
 疎らに並ぶ中でも、同じ家族が一塊に集まっているのは、もはや動物的本能と呼べる物に違いない。

 互いが血脈で反応し合い、お互いを庇い合う。
 それが、彼らに根付いている感情だと理解し――彼は、それを受け入れた。
 結局のところ、NPCとは、利用に値する物とは限らない、普通に生活する人間の意思には違いないのだと。
 それが、家族。

「たとえ、データの存在でも……この人たちには、家族の愛があるんだ……!」

 ――何故、宝具は……あのヴァイオリンの音は、自分を呼んだのか。
 それは、このデータ存在たちが奏でる、美しい音楽を守る為ではないか。
 何より、あの宝具は、彼の父と母の祈りが込められた名器なのだから。

「何を言っているんですか? 彼らは生命を持たないNPCですよ?」

 生命があるか否かは、彼には関係がなかった。

「お前のような奴には、聞こえないんだ……。
 この人たちが奏でている、美しい音楽が――――!!」

 ――刹那。
 彼の使い魔が、彼の意思より先に動いた。
 彼の呼び声を一早く感知したのかもしれない。

「――そして、それを止める事が、どんなに愚かな事なのか!!」

 それは、これまで闇に隠れて見えなかったが、金色の蝙蝠の姿をしていた。
 ――その名は、『キバットバットⅢ世』。
 使い魔であると同時に、彼の持つ宝具の一つだった。

「――行くよ、キバット!!」

『おっしゃあッ……! キバっていくぜッ……!』

 ガブッ――!

 牙を立てて、『キバットバットⅢ世』は、彼の手に噛みついた。
 瞬間、彼の美しい容貌に、ステンドグラス色の血が紋章として通っているのが見えた。
 彼の腰に、血の色の鎖がベルトのように現出しており、彼は、『キバットバットⅢ世』を掴み取って、鎖ベルトのバックルに逆さに貼り付けた。
 そして、彼は、怜悧な瞳で告げた。


563 : 月読ジゼル&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 00:42:57 q3T6Yp3.0

「――変身」

 ――――瞬間。

 彼の外形を、パンプキン色の鎧が包んでいく。
 まるで、ジャック・オ・ランタンのような異形は、彼の全身を余す事なく包み込み、その魔力を格段に上げた。
 しかし、――驚くべきは、それでもまた、彼の魔力は封印された状態であるという事だ。
 キバフォーム。
 これは、まだ鎖に身を包み、真の力を解放しない姿であった。

 これが、彼の"王族"たる証。

「――ッ!?」

 そして、『キャスター』は、その様相に、何を敵に回したのかを悟った。
 蝙蝠の使い魔はポピュラーだが、その使い方と、鎖に繋がれたその姿。
 それは、まぎれもなく、ある有名な伝説に似通っていた。
 恐れおののく『キャスター』は、言う。

「まさか……それが貴方の姿――よもや、貴方の真名は、『吸血鬼(ヴァンパイア)』――!」

 吸血鬼族の皇帝(キング・オブ・ヴァンパイア)――通称、キバ。
 それが、彼の纏う鎧の正体であった。

 彼もまた、『キャスター』の明察した通り、同じ『魔術師』のクラスのサーヴァントであり、その正体は吸血鬼族の王だ。
 そして、それと同時に人間との混血である「ダンピール」でもある。
 しかし、厳密には彼ら"ファンガイア族"は、吸血鬼に近い存在でありながら、吸血鬼とは少しばかり呼び名が異なり、長い歴史の中にも人間との混血例は珍しかった故に、「ダンピール」のような呼称が無い。
 あくまで、人間ともファンガイアとも呼べない、一見すると中途半端な「何か」が、彼だった。
 この二つの種の混血は、確認されている限り、彼と、その後の「紅」の血族だけである。

 そう、そして。

 餌と狩人の二つの種族の間で揺れ動き、その共存を目指した最初の青年――それこそが、彼の真名『紅渡』であった。
 かつて、この鎧を纏い、『仮面ライダーキバ』として、共存の為に戦った者である。

「――――はああああッッ!!!」

 疾駆したキバは、右の拳で、『キャスター』の胸を突いた。
 そして、そのまま乱打する。
 キバと化した彼の拳が、『キャスター』の胸板の上で、何度となく跳ぜた。
 ――想像以上のダメージ。
 もはや、条件反射のように『キャスター』の口から、魔力を伴った血液が漏れ、飛び散った。

「ぐッ……!!」

 無抵抗な『キャスター』に向けて、それが何度か続けられるに従い、魔力の影響を逃れたNPCたちがバタバタと倒れ始めた。
 死んだのではなく、キャスターによる洗脳が解けた結果として、一時的に脳の構成機能が麻痺したのだろう。
 それが彼らの身体のバランスを覆し、一度、眠りの中に陥らせた。
 お陰で、彼や『キャスター』の戦いは、誰にも見られず、夜の闇に溶け込む事が出来る事になる。
 洗脳が解けた以上、それを人質にされる事もない。

 敵方の『キャスター』の戦闘能力は、クラスのステレオタイプに漏れず、身体的な能力は決して強くは無かった。――いや、たとえ強かったとしても、キバはそれを上回るだけの強さを誇る。
 彼は、遂に両脚で立つ事も困難となり、キバのパンチを受けて倒れる。

「――貴方も、『吸血鬼』ならば、何故にッ!
 何故に、人を喰らうこの私を、許さないのですか……!」

 後は、自分の提示した契約を裂いた理由を訊くだけが、『キャスター』にに出来る唯一の反抗だった。
 そもそも、キバの力が現状で『キャスター』を上回っている時点で、彼の提示した案は無意味である。
 が、『キャスター』がそれに気づく事はないし、キバの持つ怒りが伝う事もなかった。


564 : 月読ジゼル&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 00:43:17 q3T6Yp3.0



「――それが、王の判決だ」



 王の手には、次の瞬間――『吸血鬼族の魔皇剣(ザンバッドソード)』が発現していた。
 この宝具は、彼の吸血鬼族の皇帝(キング・オブ・ヴァンパイア)たる証でもある。
 現在変身しているキバフォームでは、本来的な力を発揮できないものの、その刀身は『キャスター』の半身を引き裂くには充分効果的な硬度と魔皇力を持っていた。
 彼は、それを力いっぱい、振るいあげた。

 ――――結果。

「ぐああああああああああああああああーーーーーーーッッッ!!!!!」

 まだ何か言いたげな『キャスター』の身体が真っ二つに引き裂かれ、遂に、その姿は爆発四散した。
 無銘の霊となった『キャスター』の魔力は、空を惑い、不規則に泳ぎがら天上に昇ろうとする。
 それは、通常、可視化されない物であったかもしれないが、キバだけには見えた。
 すると、ある者を呼び出そうとした。

「来い……――」

 キバは――渡は、多くの家族を引き裂いた『キャスター』を許さなかった。
 たとえ、意思な魔力になったとしても。
 そして、彼の耳に聞こえる、「音楽」を止めた『キャスター』には、王の判決が下されなければならなかった。



「――――『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』!!」



 キバが呼ぶ――。
 そして、キバットが茶色の笛を鳴らす。
 夜の乾いた空気に、笛の音が響き、それを竜は訊き届けた。

 ……すると、どこからか、巨大な竜の羽音が鳴り響いた。
 夜の街の上空で、誰も感知できない一体の竜が飛んでいる――。

 名は、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』。
 キバが従える宝具の一つであり、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』は、彼が滅したサーヴァントの魂を喰らうのである。

 直後には、空中を浮遊していた『キャスター』の魔力は、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』の口の中に納まり、その姿を消した。
 あの『キャスター』は、これまでに多くの人間の魔力を吸っている。彼に喰われた者たちの魂もまた、そこに込められているのだろう。
 それを踏まえると、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』が喰らいつくした事には、些かの抵抗もある。
 しかし、それが彼のこれからの戦いには必要だった。
 すぐに、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』は去って行き、そんな怪獣がここにいた事を誰からも忘れさせた。
 キバは、それからすぐに、近くを見た。

「……」

 ――母を、目の前で喰われた少年。
 夜風の下で眠りにつく彼の母たる女も、今、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』が食ったエネルギーの一部を作り上げている。
 それが後ろめたくもある。

「――ごめん」

 キバは、彼に寄り、血に穢れた額を撫ぜながら、そう釈明した。
 その声は、眠りに陥る少年には届かないであろうし、もし目覚めていたとしても彼がなぜ頭を下げているのかさえ解さないだろう。


565 : 月読ジゼル&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 00:43:38 q3T6Yp3.0

 しかし、渡は謝らずにはいられなかった。
 目の前に現れた『キャスター』なる怪物にむざむざと彼の家族を殺させてしまった事も。
 渡自身が、彼の母の魔力を餌にする形になってしまった事も。

「でも、君の父さんの力は、無駄にはしない……」

 キバは彼の額から、翳すように、手を突き放した。
 今、彼が『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』を通して得る事が出来た僅かな魔力で、彼らの記憶を消し、そこに流れた血を浄化しようとしているのだ。
 魔力の上手な運用は、彼には出来ない――王でありながら、普通の人間の血が彼を邪魔しているからだ。
 キャスターのクラスは、潜在的な魔力の高さと、彼の下にある従者や宝具の多さが故でもあるのだ。――決して、他のキャスターたちのように、魔術の運用までを得意としているわけではない。
 だが、彼のスキル『皇帝特権』のランクは、この時、一時的に上昇し、それが魔力を行使させた。

 すると、彼らが浴びた血は一斉に穢れを落とし、ただここで集まって「何故か」眠っていた事実だけが、彼らには残る結果になった。
 結果、『キャスター』を倒す事で貯蓄した魔力は、その殆どを使い果たし、元の渡の魔力とさして変わらない状態にまで戻してしまう。
 あの『キャスター』が持っていた力は弱すぎたのだろう。
 変身が自動的に解けた。

『おい、急ぐぞ、……渡! マスターに大目玉喰らっちまう!』

「……! うん!」

 そこにあったのは、やはり、紅渡というふつうの美男の姿だった。
 彼は、それから、また急いで、自らのマスターの下に帰っていった。
 何度か振り返りながら、倒れるNPCたちに心で囁く。

 ――――がんばれ、と。







「随分と遅いお帰りですわね、キャスター」

 マスターの邸宅。
 薄い生地の寝間着を纏った、長い髪の女性。
 ――彼女も普段は、目立つゴシック・ロリータ服を着ているが、流石に寝る時までは着ないのだろう。

『げげっ、マスター……!』

 彼女こそが、キャスター――紅渡のマスターである、月読ジゼルであった。
 年齢は、二十歳。職業は詩人であり、その収入だけで暮らしている。
 彼女の住まうこの薔薇十字館なる豪邸は、彼女の父が遺した物らしかった。
 まるでホテルのように無数の部屋があり、彼女一人で住まうには広すぎる気がするが、それには些か事情がある。
 元々、彼女の父は、彼女が幼い頃から姿をくらましており、各地に残る奇妙な館だけがその痕跡となっているのだ。
 この薔薇十字館もその一つに過ぎず、自然と彼女の相続する土地の一つとなっていたらしい。彼女も相続するまでこんな土地は知らなかった。
 第一、気味が悪い場所であった。

 この薔薇十字館で暮らすのは、彼女にとってもこの聖杯戦争が初めてである。
 そして、彼女には、行方不明の父と、亡くなった母と、指名手配犯の兄以外に家族がなく、結果的にこんなに広々とした空間で過ごす事になっているのだ。
 彼女の願いは、二年前に焼き殺された母を死の世界から救う事であり、キャスターにもその悲願は充分に理解できる物だった。
 故に、彼女と契約を結ぶ事にも躊躇はなかった。
 ……少々、性格が手厳しく、また、奇妙な痛々しさがあるというのが、欠点だが。

「一体全体、こんな時間にどうしたのですか? キャスター」

「……起きてたんだ、マスター」

「ええ。貴方が出かける音を聞いて」


566 : 月読ジゼル&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 00:44:06 q3T6Yp3.0

 そう言うジゼルの言葉には、茨のような棘が感じられた。
 心なしか、些か不機嫌な顔付にも見える。
 それを察して、『キバットバットⅢ世』が横槍を入れた。

『おい、ちょっと待ってくれよ、渡は――』

 キャスターの事を庇おうというのだろう。
 彼も、実のところ、キャスターの従者の一人と分類されて良い存在である。
 サーヴァントという立場を通り越し、元が一人の王であった紅渡は、使い魔たちの信頼も既に勝ち取っていたのである。
 それこそ、渡とジゼルという初対面の二人の比ではない。
 初めはお互い、疑心を持ち合うのがマスターとサーヴァントの関係の常だ。時代や思想の違いが生じ、息の合う者の方が少ないのだ。
 が、『キバットバットⅢ世』の心配とは裏腹に、ジゼルは言う程、サーヴァントを責めたてはしなかった。

「――キバットさん、囀らなくとも結構。別に、キャスターを咎める気はありませんわ。
 ……それより、この夜に相応しい、美しい詩が完成しましたから、聞いてください」

 そう言うと、ジゼルは、唐突に、詩を詠み始める。





「ああ、紅の血よ! 紅の血を分けた吸血鬼よ!
 今宵も、薔薇のような美しい棘と、その身を守る固い鎧で、主に迫る悪魔たちを倒しておくれ……。
 聖杯の齎す美酒で、私の心の亡母に、冥府に囚われた私の姫に、ひと肌のぬくもりを取り戻しておくれ……!!」





 ……。



 呆然とするキャスターと『キバットバットⅢ世』であった。
 本職の詩人であるとはいえ、彼女の紡ぐ言葉は、独特の世界観に包まれている。
 なんだかむず痒いというか、見てて痛々しい気分に攫われる。
 何度かこうした事があったが、その度に彼らは呆然と立ちすくんだ。
 そんな空気を察する事もなく、ジゼルは言う。

「――あなたへの詩です、キャスター」

 キャスターは、ジゼルの目を見た。
 彼女は、怜悧な瞳で言う。

「確かに勝手な行動ではあるようですが、私たちにとって厄介な敵を未然に殲滅した事には変わりません」

「見てたんですか……マスター」

「いいえ。私は何も。しかし、貴方がこうして無傷で帰って来た事と、キャッスルドランが動いた事とが何よりの証拠です」

 確かに、夜一人で駆けだすように抜け出し、無傷で帰還したという事から、キャスターが戦いに出て、勝利したのだという事が伺えた。
 それというのも、薔薇十字館のキャスターの部屋に設置されたヴァイオリン型の宝具『戦いを喚ぶ紅薔薇の戦慄(ブラッディ・ローズ)』の特性と照らし合わせれば簡単である。
 それは、キャスターの奥底に眠る魔皇力が感知する、「魔力を伴った敵」の存在を伝えてくれる。
 彼らが暴れ出した時、キャスターはそれに反応して、いつも、鳴りやまぬ音を消し去るようにして駆けだしていく。
 今夜もそうだったのだ。
 更には、薔薇十字館に擬態している『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』が動き出したというのだから、既にキャスターに言い逃れの道はない。

 故に、敵を殲滅した事までジゼルは予測した。
 ただ、詳細な経過はわからないし、こんな時間に寝起きで彼を追う気にはなれなかったのだろう。


567 : 月読ジゼル&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 00:44:29 q3T6Yp3.0

「……簡単に事情を説明してもらえるかしら?」

 ジゼルが言うと、キャスターは応えた。

「――敵のクラスは僕と同じキャスターでした。真名はわからないままです。
 ただ、マスターの言う通り、もう殲滅しました」

「では、もう一つ。敵は、一体、何故その敵は、こんな時間に暴れるようとしたたの……?」

 そう言うと、キャスターはどもった。
 気弱な彼は、その経過を口にするのを憚ったのだ。
 代わりに、『キバットバットⅢ世』がそれをジゼルに伝えた。

『――奴は、洗脳した人間の魔力を肉ごと喰って、自分の力にしてたのさ!
 半分楽しみながらな――! まったく、とんでもない野郎だぜ!』

 怒張の混じった『キバットバットⅢ世』の言葉を聞き、ジゼルの中で何かが震えた。
 聖杯戦争のマスターは、NPC以上に、そうしてマスターたちに狙われるリスクが高い。
 それも覚悟の上だが、それを痛烈に実感するのは、いつも被害者が出た時だった。
 今日、彼らが見て来た光景を想像し、ジゼルは恐れも抱いた。

 それから、キャスターも、弱弱しい唇が、震わしたまま、続きをジゼルに告げた。

「ええ……。小さな子供や、家族を遺して死んだ人もいました……」

「……」

 ジゼルは、その言葉を聞いた時、何かを思ったように、言葉を飲み込んだ。
 彼女もまた、家族という言葉には敏感に反応する。
 彼女が戦う理由であり、二年前、彼女から全てを奪ったもの。――その時の心の傷がまだ残っている証だった。
 キャスターが、報告を続けた。

「……それが、今日僕が戦った敵の全てです。
 あとは、いつも通り、キバの力で倒して、彼の魔力は『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』が喰らいました」

「巻き込まれた人間の記憶は?」

「大丈夫、消しました。……代わりに、食らった魔力がなくなりましたけど」

 それが全てだった。
 他に報告すべき事はない。
 それに、敵の殲滅まで報告した以上、もはやこれより訊く必要はなかった。
 情報としては無意味で、あくまでキャスターが夜中にマスターを離れて、一時単独行動をした事情として訊き届けたかったのだろう。

「――わかりました。それならばこれ以上咎めるつもりはありません」

「……」

「次からは、たとえ夜でも私を起こしてください。無断で出かけない事。
 貴方は、私を守る騎士でもあるのだから……私を一人にすべきではありません」

「……はい。……わかりました」

 それだけ聞くと、ジゼルはつんとした表情で立ち去ろうとした。
 が、突如、足を止め、キャスターたちの方を見ないまま、一言告げた。

「――そうだ、キャスター。薔薇風呂を沸かして入りなさい。
 貴方も、薔薇のアロマで今夜の戦いの疲れを癒し、次の一日に備えると良いわ」

 そう言って、また彼女は部屋に戻ろうとする。
 一瞬、彼女が何を言っているのかわからなかった。

 今日の夜入った薔薇風呂。
 キャスターと『キバットバットⅢ世』は、風呂で疲れを癒すのがとにかく好きだった。
 この館には、大きな風呂があり、今日も休む前にそれで疲れを取っていたくらいである。

 しかして、マスターがわざわざ、こんな時間に風呂を沸かすのを許すような労いを見せたのは、主従関係を結んでから、今日が初めてだった。
 彼女も少しずつキャスターの性格を理解し始めているという事なのだろうか。
 キャスターは、少しきょとんとしてから、再び眠りに就こうとするジゼルの後ろ姿を見ながら、小さな声で言った。

「……ありがとう、マスター」

『よっしゃ〜♪ 渡〜! 風呂だ風呂だ〜♪』


568 : 月読ジゼル&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 00:44:46 q3T6Yp3.0





【CLASS】

キャスター

【真名】

紅渡@仮面ライダーキバ

【パラメーター】

基本
 筋力E+ 耐久E 敏捷D 魔力D 幸運D 宝具EX
キバフォーム
 筋力B 耐久C 敏捷C 魔力A 幸運B 宝具EX

【属性】

中庸・善 

【クラススキル】

陣地作成:-
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げるスキル。
 紅渡は、このスキルが失わてている代わりに、王が引き継ぐ『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』の宝具を持つ。

道具作成:D
 魔力を帯びた器具を作成する為のスキル。
 紅渡は、魔皇力を込めたヴァイオリンを作る事のみに長けている。
 製作工程は一般的な高級ヴァイオリンと相違ないが、その最終工程で彼の魔皇力が無意識に込められる。
 これ以外に必要な道具の多くは、基本的には父や先代の王が集めた物であり、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』に保管されている。

【保有スキル】

魔皇力:B/2(ハーフB)
 魔術に代えて紅渡が持つ、"ファンガイア"の力。
 常時は人間の血を交えている為に、通常のファンガイアよりもその影響が希薄である。
 キャスターでありながら魔術の式を解さず、ただ魔皇力を内に秘めているだけの渡には、戦闘力としてしか認識されない。
 尚、このスキルは、宝具『キバットバットⅢ世』の力で一時的にランクを高める事が出来る。

ファンガイア族:A/2(ハーフA)
 吸血鬼に近い性質を持つ、彼の出身種族。
 その種の王の資格を持ち、彼らを裁く権利を有するが、父親が人間である為、ファンガイアとしての第二の姿を有さない。
 彼の場合、このスキルの恩恵として、ファンガイアの血が無ければ出来ないような行動(『キバットバットⅢ世』のノーリスクでの運用など)が可能である。

皇帝特権:E
 本来持ち得ないスキルを、本人が主張することで短期間だけ獲得できるというもの。
 ただし、渡の性格上、特殊な状況下で精神に変化が起こらない限り、このスキルは発動できない。
 仮に渡がこのスキルを自覚した場合、そのランクは、B〜EX相当まで飛躍的に上昇し、あらゆるスキルの使用を許す事になるだろう。
 主に、「騎乗」、「剣技」などのスキルがこれによって付加され、生前もそうした技能を駆使している。


569 : 月読ジゼル&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 00:46:25 q3T6Yp3.0

【宝具】

『キバットバットⅢ世』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
 人間の腕を噛む事で、魔皇力を高める『キバの鎧』を対象の外形に纏わせる力を持つ使い魔。
 キバット族の名門・キバットバット家の三代目であり、ファンガイアの王が選ぶと同時に彼らも王を選び、契約と共に使役される。
 とはいえ、普段は感情豊かで口うるさく喋り、渡とは主従を越えた友人関係にある。
 彼もキャスターと共にこの世に現出し、便宜上は使い魔と同様の扱いを受けているが、実際には紅渡以上の魔力を持ち合わせており、キャスター適性の低い渡の魔力を補佐する役割を持つ宝具である。
 渡以外の人間も同様に、『キバットバットⅢ世』が"噛む"事によって『キバの鎧』を纏う事が出来るが、素質のない者では『キバットバットⅢ世』の放つ魔力エナジーに耐える事が出来ず、大抵の人間は数回変身すれば死んでしまう。
 更に、仮に適正があったとしても、「エンペラーフォーム」と呼ばれる鎧の真の力を発揮した場合、エネルギーに耐えられる者の方が希少というレベルで、一度変身しただけで多くは死亡する。
 この宝具を奪って変身するのは容易いが、高い資質が無ければ、リスクにしかならないのである。

『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』
ランク:EX 種別:対城宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
 紅渡たちファンガイアの王の有する"生きた城"。
 その正体は、かつての王がドラン族の最強個体である"グレートワイバーン"を捕獲して、城として改造した物である。
 普段は薔薇十字館(マスターの所有地)の一部に擬態している為、常人に視る事は出来ない。しかし、キャスターが召喚した"月"の光の下でその真の姿を現す。
 内部には幾つかの道具・宝具を保管しており、この聖杯戦争における『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』の役割は、実質的にはギルガメッシュ伝説の『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』と同様の宝物庫である。
 尚、これに保管されている宝具の中には、渡に従属し、運命を共にした四体の幽閉されしモンスター(ガルル、バッシャー、ドッガ、タツロット)が含まれている。
 渡の有事には、貯蓄した魔力と引き換えに『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』から宝具を呼び出す事が出来るのである。
 ただし、よりランクの高い宝具を呼び起こす際には、相当多くの魔力や生命力がこの宝具に貯蔵されていなければならないという欠点がある。
 その為、他の主従との戦闘行為に勝利する、もしくは、NPCの魔力を吸収する等の方法で、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』の力を高めなければ上位宝具タツロットなどは呼び出す事すら出来ない。

『吸血鬼族の魔皇剣(ザンバッドソード)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
 多くの宝具を有し、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』に保管したとされる紅渡の最も代表的な武具(これ以外にも多くの宝具がある)。
 この世に存在する最も強力な剣だと言われている。これこそが彼の皇帝たる証であり、巨大な魔皇石の結晶から削りとったという逸話も残されている。
 元々がライフエナジーを持つものに対して過剰に反応し、それを「喰いにいく」性質を持つ「命吸う妖剣」である。
 その為、使用者の意志が足りなければこの剣に乗っ取られ、無差別に敵を見つけ出し、命を吸い取ろうと暴走するリスクを負う事となる。
 このリスクは、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』に幽閉されたモンスターたちの生み出す幻影生物"ザンバットバット"により軽減する事が出来る。
 また、この剣は、彼の「王の証」として、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』を介さず、渡の意思だけで発現できる事が可能である。
 ファンガイア戦争時の伝説では、真の姿たる「エンペラーフォーム」を解放しなければ扱えない武器であったが、その戦争の後には、エンペラーフォームを解放する事なく使用したという記録もある。
 その逸話に基づき、現在の渡も、少なくとも『キバットバットⅢ世』によって『キバの鎧』を纏ってさえいれば、この剣を暴走する事なく扱う事が可能。それさえ纏わなければ、まともに扱う事は困難である。
 また、その真の力を解放し、多くの敵を葬った美技を発動するには、「エンペラーフォーム」の解放が必須条件となる。


570 : 月読ジゼル&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 00:46:44 q3T6Yp3.0

『闘争を喚ぶ紅薔薇の戦慄(ブラッディ・ローズ)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:その音の届く限り 最大捕捉:その音の届く限り
 渡の父・紅音也と渡の母・真夜が共同して作り上げたバイオリン。
 微弱の魔力と、強い祈りが込められており、この音は、渡に使命を伝え、強い魔力を持った敵の発生に呼応する。
 渡の魔皇力で感知できる場所で、高い魔力を持つ者が魔術を行使して大規模に暴れ出したとするのなら、この宝具が必ず渡に敵の発生を伝えるだろう。
 この宝具も、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』を介さず、渡の意思だけで発現できる事が可能である。

【weapon】

『キバットバットⅢ世』
『戦いを喚ぶ紅薔薇の戦慄(ブラッディ・ローズ)』

【人物背景】

 仮面ライダーキバに変身する青年。職業はヴァイオリン職人である。
 父も同じくヴァイオリン職人。人間の父・紅音也と、ファンガイア族のクイーン・真夜とのハーフであり、両種の特性を持つ。
 ファンガイアの特性としては、美男美女であり、ある時から外見の成長が止まり、若さを保ち続ける事が挙げられ、彼もその例外ではない。
 ただし、ファンガイアとしての体を持たず、外見は誰が見ても普通の人間の若者である。
 性格は、内向的で口下手。純粋で優しい子供のような性格で、それ故、後ろ向きでもあり、度々悩み事をする。
 だが、それも仲間たちとの戦いの中で克服し、後には異父兄の登太牙と共に、王の資格を持つ者としてキバの鎧で最後まで戦い続けた。
 伝説では、ファンガイア、ネガタロス軍団(仮)、ネオファンガイア、レジェンドルガ、世界の破壊者など、あらゆる存在と戦った記録があらゆる世界で残っている。
 しかし、現世に英霊として顕現した際に、ファンガイア以外との戦闘は彼の中で忘却されており、実質的に今の彼に残るのはファンガイアやそれに近い種との戦いのみとなった。

【サーヴァントとしての願い】

 かつての戦いで死んだ人間とファンガイアの魂を救済する事。
 それと同時に、この聖杯戦争の中においても、誰かの奏でる音楽を守り続ける事が彼の願いである。

【基本戦術、方針、運用法】

 強力な宝具を幾つも持ち、変身時の戦闘能力も格段に高いが、その反面、キャスターの絶対条件である魔力の扱いが少し苦手(所持している魔術回路は多いが、人間の血も濃い為に扱えないのである)。
 また、生身での戦闘力もこれまたせいぜいアスリート並で、キバの鎧を纏って白兵戦を行う事が能力の前提にある。
 とはいえ、他と比べて低いパラメータの代替として幾つもの宝具(記載されていない物を含む)を持っており、これが彼の能力を補っている。効率よく戦闘にするには、宝具を駆使するのが良いだろう。
 ただし、これは、『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』に貯蓄された「倒した敵の魔力」に応じて運用が可能になる為、キバに変身して戦闘を続ける必要がある。
 これもキャスター自身は、罪のない相手はNPCを含め積極的に喰うつもりはない為、その方法は「サーヴァントを倒す」事に限られる。出来る限り、強い敵と交戦して勝利し、真の力を発揮できるまで魔力を貯蓄していくのがベストな戦法だが、やはり方法的にはリスクが高い面がある。
 早い段階で倒せるサーヴァントは倒して上手く『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』に敵の魔力を貯蓄すれば、聖杯戦争終盤でエンペラーフォームや飛翔態を使って、ほとんど引けを取らない戦闘も出来るだろうが、逆にそれが出来ないと、一般NPCを巻き込まない限り手詰まりになるかもしれない。
 また、更なる欠点として、『キバットバットⅢ世』を奪われた場合、彼の戦力が格段に落ちてしまう事も挙げられる。
 無理矢理捕まえて変身すれば、誰でも変身できてしまう性質を利用されれば、勝率は著しく下がってしまうだろう(常人ならば不可能であるが、相手がサーヴァントならばリスクが充分に有りうる)。


571 : 月読ジゼル&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 00:47:02 q3T6Yp3.0



【マスター】

月読ジゼル@金田一少年の事件簿 薔薇十字館殺人事件

【マスターとしての願い】

 ホテル火災により喪われた母の救済。

【weapon】

 なし

【能力・技能】

 詩人として活躍する優れたポエムの才能。
 人間の体を杭で撃ちつけ、貫通して床まで叩きつける女性離れした腕力(その後、その杭を軸にして部屋のカーペットを糸で引っ張って回転させているので、超人的な筋力の持ち主と思われる)。
 館を一つ吹き飛ばす爆弾や毒薔薇を調達する行動力。
 薔薇やギリシャ神話などに詳しい博識ぶりは高遠に評価された。
 また、今回の登場人物ほぼ全員が有名な指名手配犯の顔を見ても気づかないのに対し、彼女だけは一目見て高遠だと気づいたので、ニュースや時事も人並みにわかるはず。

【人物背景】

 「金田一少年の事件簿」の「薔薇十字館殺人事件」の犯人・ローゼンクロイツの正体。
 20歳。職業は詩人。巨乳。「月読ジゼル」は本名ではなくペンネームらしく、本名は美咲ジゼル。
 どんな状況下でもポエムを言う、所謂「痛い子」で、通常はこの手の推理漫画においてはミスリードに使われそうなヘンテコ人間である。

 彼女は、2年前、ローズグランドホテルの火災で母親・美咲蓮花を喪った。
 しかし、実はそのローズグランドホテル火災は、母の開発した「青い薔薇」を盗む為に五人の人間が母を殺し、証拠を隠滅する為に火を放った凶悪事件による物だった。
 彼女は、母が最期に遺した五つの薔薇を手がかりにして、「薔薇の名前を持つ人間」をホテルの宿泊客の中からピックアップ。
 五つの薔薇の内、四つは燃えてしまったが、彼女は唯一遺った「皇翔」の薔薇の名を持つ、皇翔(すめらぎ しょう)を殺害した。
 その後、ビル火災に巻き込まれた「薔薇の名前を持つ人間」たちを集め、母の仇を特定して殺そうと試みる。
 そして、彼女がこの聖杯戦争に呼ばれたのはその直後の話である。

 また、実は彼女には、生き別れた異父兄がいる。
 その名は、高遠遙一。「地獄の傀儡師」を名乗って連続殺人事件を演じ、多くの殺人事件を考案し教唆した指名手配犯であると言う。彼女がそれに気づいたのは、ごく最近。
 当初は、皇を殺した事に強い嫌悪感や罪悪感に苛まれたが、「地獄の傀儡師」が自分の兄だと知ったジゼルは、その血脈を信じて、「殺人への自信」を得た。
 とはいえ、やはり快楽的に殺人を行う兄とは性格が根本的に異なり、彼女のターゲットは、母の仇に限られている。殺人に対してはむしろ嫌悪を抱く心の方が大きいようだ。

【方針】

 他のサーヴァントたちを撃退し、聖杯を手にする。今の彼女は復讐ではなく、母を取り戻す事を優先に考えている。
 その上で無関係な人間を倒す事もやむを得ないが、出来得る限り無意味な犠牲を出すつもりはない。

【備考】

 都内に「薔薇十字館」という豪邸を構えています。
 また、薔薇十字館の一部分は、キャスターの宝具『月下に目覚めし魔竜の城(キャッスルドラン)』が擬態しています。


572 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 00:47:25 q3T6Yp3.0
投下終了です。


573 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 00:48:38 q3T6Yp3.0
>>560でタイトルが「月読ジゼル」になっていますが、タイトルはその後と同様に、「月読ジゼル&キャスター」です。


574 : ◆cT.c4WK4wQ :2016/02/14(日) 16:05:23 F3FtX8i20
皆様、投下お疲れ様です
投下します


575 : 矢澤にこ&バーサーカー ◆cT.c4WK4wQ :2016/02/14(日) 16:06:45 F3FtX8i20
スーパーマーケットの一角で、制服を着た少女が新鮮な肉が陳列されているコーナーにて品定めをしていた。
少女――矢澤にこは、その歳の割には小柄な体で家族に振る舞う夕食のための食材を買いに来ていた。
にこの母は出張で、これから2週間ほど家を空けるらしく、その間は長女であるにこが妹2人と弟1人の面倒を見なければならなかった。
家の経済的な事情もあって、金の無駄遣いはできない。このスーパーでできるだけ安い品物を買わなければならない。

「…はぁ」

しかし、にこは浮かばない顔をしながら本来しっかりと見なければいけない値段や肉の重量などを流し見してしまう。
普段は常にアイドルとしての意識を忘れないにこが人目もはばからず溜め息をつくなど、本来はありえないことだ。
最近、こうして思わず自分の頭の中に籠って注意散漫になってしまうことが多い。
それもこれも突然にこの中で明確になった取り巻く状況への違和感と、それに連なるようにして起こる出来事の数々が原因だ。

何かが、おかしかった。音ノ木坂も、秋葉原も、家族も、μ'sのメンバーも。
大部分は確かにそれらしいところはあったが、細かいところがにこの知るものとは異なっていた。
まるで、ある時を境に世界がおかしくなったように見えた。この世界が別の世界であることに自分だけ気付いたようだった。
みんな、この違和感を感じていないのだろうか?もしかしたら私がおかしくなっただけなのだろうか?
拭えない、体内に蓄積していく不純物のような不快感に苛まれ、人の知れないところでにこの心には正体不明の恐怖が渦巻いていた。

「ニコ?どうかしたの?」
「アルフレッド…」
「野菜はもうこっちで選んだんだけど…お肉はまだなんだね?」

夢遊病患者のように自失状態で歩くにこを見かねて、アルフレッドと呼ばれた少年が近寄って声をかけた。
にこはハッとして、なけなしの金で買ってやった普段着を身に着ける少年を見る。背はにこと同じか少し高いくらいだ。
数日前に家に匿って居候することになったひ弱そうな外国人だった。

「今日の夕飯はどんなのにするんだい?」
「肉炒め、かしら」
「じゃあ、早く買って帰ろう。こころちゃん達も待ってるよ」

そう言ってアルフレッドは手頃な肉を選んで、にこに帰宅を促す。
少し戸惑いながらにこは相槌を打ってアルフレッドと共にスーパーマーケットのレジへ向かった。

アルフレッドはにこが周囲への違和感に気付いてからしばらくして、近所の人気のない路地で出会った少年だった。
今は普段着を身に着けているものの、当時はボロ布しか身に着けるものがなく、とても貧しそうにしていた。
そして出会い頭ににこに対して、「僕に住む家をくれませんか?」と懇願してきたものだから、にこも大層困惑した。
話を聞くと外国人で戸籍も家族もいないらしく、年はまだ14歳らしい。
どうして外国人の少年がこんなところで、とも思ったが見捨てるとなんだか後味が悪かったので、母が出張でいないこともあり流れに任せて居候を許してしまった。
一応、現在はアルフレッドの優しい性格も相まって妹達とも打ち解けており良好な関係だ。
貴重な男手ということで、虎太郎の遊び相手にも一役買ってもらっている。
母が帰ってきた暁にどう説明するかはにこの悩みの種の一つであったが。

スーパーマーケットからレジ袋を持ったにことアルフレッドが出てくる。
時計を見るともう午後6時を過ぎており、辺りも暗くなってきていた。
にこはふと、自分の右手の平を見てみる。そこにはハートとその上に「K」のマークが刻まれていた。
いつの間にか手の平に描かれていた、まるでトランプのような印だ。
近頃起きる連続殺人といい、成り行きとはいえ一緒に住むことになったアルフレッドといい、にこが違和感を持ってからは奇妙なことが連続して起こっている。
これから何が自分の身に降りかかるのかと思うと、なお怖くなる。
にこはどうすることもできず、世界がおかしいのか、自分がおかしくなったのかわからぬまま日々を過ごしていた。







576 : 矢澤にこ&バーサーカー ◆cT.c4WK4wQ :2016/02/14(日) 16:07:53 F3FtX8i20




どうにかサーヴァントだと知られずに済んだ。
本来は良家の上品な服装をしているアルフレッドだが、にこの前に現れる時には敢えて汚い服を着用しておいて正解だった。
彼女の妹弟にも、姉が拾ってきた身寄りのない外国人の少年として通っていることだろう。
アルフレッドは傍らを歩く矢澤にこを見ながら、彼女に危機が及んでいないことに安堵する。
言うまでもないがアルフレッドはバーサーカーのサーヴァントである。
マスターは矢澤にこで、にこが周囲に感じていた違和感は即ち記憶を取り戻したことを意味する。

なぜ、アルフレッドはバーサーカーにも関わらず理性を保てているのか?
なぜ、アルフレッドはにこにサーヴァントと認識されていないのか?
なぜ、アルフレッドはにこに聖杯戦争について教えないのか?

これらにはアルフレッドという存在とその願いが関係している。



「…わっ!?」

帰り道を行くにこの前に、突如小さな雀が飛来する。
その雀はにこの周りを1周した後、羽をバタつかせながらアルフレッドの肩に着地した。
雀にからかわれたようで少し苛ついたのか、にこは「なによ!」と雀に対して声を上げる。
アルフレッドにはそれがおかしく見えてクスリと笑ってしまった。

「アンタも笑うの!?」
「ごめんごめん。この子、結構やんちゃみたい」

アルフレッドが肩の前へ空いている手を差し出すと、それに呼応して雀がぴょんと跳んでアルフレッドの手の平に乗った。
チュンチュンと鳴いている様子がかわいらしい。

「アルフレッドって、よく鳥に懐かれるわよね」
「うん。僕、小鳥が好きなんだ」
「μ'sにもことりって子がいるんだけど、アルフレッドなら好みそうなタイプね」
「そうなの?是非会ってみたいんだけど…ダメかな?」
「ダ・メ。にこが男を家に匿ってるなんて噂されたらどんな目に遭うか」

アルフレッドもμ'sのことはにことの会話から聞いている。
音ノ木坂学院の廃校を防ぐために結成されたスクールアイドルなるものらしいが、にこの意向によりそのメンバーに会うことは禁じられている。
確かにそのことりという子は気になるが、たとえ会えなくとも特に問題はない。
そのようなことは二の次であり、アルフレッドの本当の目的は別にあるからだ。

【――――】
【ん?】
【――――】
【そう、わかった。教えてくれてありがとう】

アルフレッドは雀から頭の中に向けて声が発せられていることに気付く。
彼の持つスキルの一つ、動物会話により深い意味は伝わらないが鳥との会話が可能だった。
その雀によると、近くにある廃工場で人と人が争っているらしい。
それを聞いたアルフレッドは手に乗せた小鳥を逃がし、にこに切り出す。

「ごめん、ニコ。ちょっとスーパーで買い忘れたものがあるんだ…」
「え、今になって!?随分急な話ね…」
「ちょっと今から1人で買ってくるから、先に帰っておいてくれるかな?」
「いいけど…何買いたいの?」

アルフレッドは適当に理由を取り繕って、にこを先に帰らせて近場の廃工場へ向かう。
あの雀の言っていた「人が人を襲っているという状況」…間違いなく聖杯戦争が関連しているだろう。
その廃工場はにこの家がある地点からそれなりに近い場所にある。
そこでサーヴァント同士の闘争をしようものならにこだけでなく、その妹のこころやここあ、弟の虎太郎まで被害が及びかねない。


577 : 矢澤にこ&バーサーカー ◆cT.c4WK4wQ :2016/02/14(日) 16:08:44 F3FtX8i20

アルフレッドには生前、唯一の肉親でもある大切な姉のサラがいた。
男勝りなところもあって頼りがいのある姉で、いつもアルフレッドことを気にかけて守ってくれていた。
だがある日、アルフレッドは良家の長男であったが故に暴漢に誘拐されてしまう。
サラは身を挺してアルフレッドを救おうと暴漢に立ち向かったが、力及ばず返り討ちにされてしまった。
そしてサラは死に際にアルフレッドにこう伝えたのだ。
『自分を守れるくらい強い男になるのよ』と。

あの日は自分が弱かったから。
自分に力がなかったから姉さんは犠牲になってしまった。
あの時、右手の平についた姉さんの血が忘れられない。
だがサーヴァントとして現界した今、少年アルフレッドはあの日とは違う。
マスターの矢澤にこを守れるだけの力がある。
アルフレッドの目的は『矢澤にことその家族を守る』ことだた一つだった。
にこの姿を姉のサラと重ねていたアルフレッドは、あの日の姉のように彼女を聖杯戦争で死なせたくないのだ。
にこに聖杯戦争のことを教えてないのもそのためで、アルフレッドが自身の姉のように自分から危険に向かうこと、
更にはにこを危険に晒すことを恐れたがゆえに敢えて情報を伝えていない。

にこを傷つけないために。皆を守るために。『あの人』の下でつけた力を振るうために。
ここで暴れているであろうサーヴァントを止めるべく、廃工場の門の前にアルフレッドは立っていた。
門前でも感じ取ることのできる絶え間のない地面の振れ。
おそらくは主従同士の死闘の真っ最中なことであろう。
アルフレッドは意を決して、付近に落ちていたガラスの破片を手に廃工場の内部に押し入った。
『あの日の約束』を胸に。

「「「「…?」」」」

やはり廃工場では、2組の主従による戦闘が繰り広げられていた。
両方の主従――マスターとサーヴァントの計4人――がすぐにアルフレッドに気付いて決闘に水を差す愚者を睨んだ。
彼らがどんな経緯で戦闘に入ったか?彼らはどんな容姿をしていたか?サーヴァントは何のクラスだったか?
そんなことは語るだけ無駄であろう。

なぜなら――





彼らは皆『バーサーカー』に殺されるのだから。





アルフレッドは自らガラスの破片で右手の平を傷つけ、流れ出した己の血を凝視する。



そして「無力の殻」を突き破り、アルフレッドは本来の姿へと変身する。



マスターに視認されるステータスを持つ存在へと。理性を失い、殺戮の限りを尽くす狂戦士へと。



アルフレッド完全体――『ハート』へと。





「――――ぃぃぃいいいいてえええええええよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお―――――――!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」




――数十分後、廃工場の内部には肉の塊といっても過言ではないほどの巨躯を持つ肥満体の男だけが立っており、その足元を原型を留めていない肉と血で覆いつくされていたという。







578 : 矢澤にこ&バーサーカー ◆cT.c4WK4wQ :2016/02/14(日) 16:10:01 F3FtX8i20




「…うぅっ」
「お姉さま!?」

矢澤にこの自宅にて。
アルフレッドを含む5人分の料理を作っている最中だったにこは突然眩暈と妙な気だるさを覚えてその場にうずくまってしまう。
それを見た妹のこころとここあは驚き、心配そうな顔つきで駆け寄ってくる。

「おねえちゃん、大丈夫?」
「だ、大丈夫よ。最近いろいろと大変だし、近所もかなり物騒だから疲れちゃったのかも、ね」
(とはいってもそれ以上に大変なことは山ほどあるのよね…)

この違和感だらけの間違いか正解かわからない世界のなかで、にこは何も知らされずにただ日々を過ごしていた。
手の平についた変なマークもそうだが、近頃はやけに貧血のような症状に見舞われることが多い。
その原因がアルフレッド/ハートの戦闘による魔力消費であることを、にこは知る由もなかった。
アルフレッドがにこの家に帰ってきたのはそのすぐ後であった。
彼が自分で手につけた傷は、誰にも見られることはなかった。



【マスター】
矢澤にこ@ラブライブ!

【マスターとしての願い】
おかしくなった世界が元に戻ってほしい。

【weapon】
特になし

【能力・技能】
アイドルらしく歌って踊れる。
特技はヘアアレンジと、家事全般。
衣装係も担当しているため、裁縫も得意。

【人物背景】
国立音ノ木坂学院に通う三年生、スクールアイドルユニット『μ's』のメンバー。
メンバー内では唯一、幼い頃からアイドルを目指しており、小泉花陽と同じくアイドルに対しての情熱は誰にも負けないぐらい持っている。
μ'sで最も小柄でスタイルも貧相だが、強烈な個性を放つ。
ことあるごとに猫被ったりセコい作戦を立てては空回りするアホの子、いじられキャラとして描かれている。

此度の聖杯戦争ではアルフレッドがサーヴァントに現界したが、アルフレッドがまともな情報を与えていない上に無力の殻を被っているため、
アルフレッドがサーヴァントであることすら把握していない。

【方針】
とりあえず日々を過ごす。
それにしても最近はやけに貧血が多いわね…。


579 : 矢澤にこ&バーサーカー ◆cT.c4WK4wQ :2016/02/14(日) 16:11:03 F3FtX8i20
【クラス】
バーサーカー

【真名】
アルフレッド/ハート@北斗の拳外道伝 HEART OF MEET 〜あの日の約束〜

【パラメータ】
筋力A+ 耐久A++ 敏捷C 魔力C 幸運D 宝具C+

【属性】
秩序・悪

【クラス別スキル】
狂化:A
筋力・耐久・敏捷を2ランク、その他のパラメーターを1ランクアップさせるが、理性の全てを奪われる。
「アルフレッド」の場合、狂化の影響を受けない。

【保有スキル】 
無力の殻:B
心優しい少年「アルフレッド」としての姿。
力が一般人と同じかそれ以下になる代わりに、サーヴァントとして認識されなくなる。
宝具や他のスキルとの併用はできないが、「アルフレッド」の場合は動物会話と病弱を持っている。

動物会話:D
「アルフレッド」の場合、鳥とのみ意思疎通が可能。
動物側の頭が良くなる訳ではないので、あまり複雑なニュアンスは伝わらない。
無力の殻との併用が可能だが、「ハート」に変身するとこのスキルは失われる。

病弱:C
天性の打たれ弱さ、虚弱体質。
デメリットスキルだが、そもそもこのスキルは「アルフレッド」にしか適用されないため、戦闘では大して気に留める必要はない。

変身:B
自らのカタチを変えるスキル。
宝具『あの日の約束』にある条件を満たすと、少年「アルフレッド」は狂乱の殺人鬼「ハート」へと変身する。

拳法殺し:A+
アルフレッド完全体「ハート」の持つ特異体質であり、その肉体を覆う分厚い脂肪の鎧。
あらゆる打撃攻撃を柔らかく包み込みダメージを無効化し、斬撃や刺突に対してもある程度ダメージを軽減する。

【宝具】
『あの日の約束(ハート・オブ・ミート)』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大捕捉:自分
手についた姉の血によるトラウマと、姉の死に際の『自分を守れるくらい強い男になるのよ』という言葉から力を求め、
アルフレッドがKINGの最強の部下、ハート様に変貌を遂げたという逸話からくる宝具。
バーサーカーは手の平に付着した血を見ると、「アルフレッド」の姿から肥満体の男「ハート」に変身する。
「ハート」へと変身すると狂化により理性の全てを奪われ、殺戮の限りを尽くすようになる。
「アルフレッド」に戻すには、「ハート」の気が収まるまで放置しておくか令呪により強制的に元に戻すしかない。

【weapon】
己の肉体。

【人物背景】
世界が核の炎に包まれる以前は小鳥が好きな心優しい少年だったが、ある日の事件を境に姉を亡くしてしまう。
そのトラウマと姉の言葉からKINGの下で修業した結果、完全体となり拳法殺しの肉体を手に入れた。
そして彼はKINGへの忠誠を胸に抱いたままケンシロウに挑み、散っていった。
天にいる姉に「僕は強くなれたかな…?」と呼びかけながら。

【サーヴァントとしての願い】
ニコとその家族を守る

【捕捉】
北斗の拳外道伝 HEART OF MEET 〜あの日の約束〜は、「北斗の拳 イチゴ味」の第一巻に収録されています。


580 : ◆cT.c4WK4wQ :2016/02/14(日) 16:11:31 F3FtX8i20
以上で投下を終了します


581 : ◆T9Gw6qZZpg :2016/02/14(日) 20:56:52 m8CgRyBI0
投下します。


582 : ◆T9Gw6qZZpg :2016/02/14(日) 20:57:15 m8CgRyBI0





 春風に夢と願いを乗せ、歩き出す。
 信じた未来が、ここからまた始まるように。





◇ ◆ ◇


583 : ◆T9Gw6qZZpg :2016/02/14(日) 20:58:00 m8CgRyBI0



 セイバーが最初に目にしたのは、夕日だった。

「もう、全部どうでもいいかって思ってた」

 翔(かける)という名の少年と出会った時、「人間性が信頼に値するか見極めなければならない」や「宝具を使っていっそ隷属させてしまうべきか」といったような発想は、不思議と浮かばなかった。
 理由を説明するなら、なんとなく、という言葉を選ぶのが適当なのだろう。
 だから、自らの置かれた状況を何も知らない翔に対して、明かせる限りのことを明かした。
 聖杯戦争という儀式に招かれたこと。自分が翔の従者、サーヴァントであること。自らの仮の名と、真の名。セイバーの持つ能力。翔に与えられた令呪の特性。
 全てを理解させた上で、考える時間を与えた。この聖杯戦争において、何を願い、どのように立ち振る舞うのかを。
 それが、昨日の夕方のことだった。

「死んだら悲しむ人がいるとか、生きてればいいことがあるとか言われてもさ、何だよって。死んじゃえば全部終わりだろって」

 翔は、この世界でもごく普通の高校生だった。
 日中は眠くなる授業を受けて、待ちわびた休み時間には談笑して。そんな平凡な日常を何事も無く送る。友人達に、囲まれながら。
 ただ、セイバーの抱いた一つ違和感を挙げるとするならば。
 友人達に、世界に向けられた翔の瞳が、空っぽだった。

「理由は知らないけど、こうして生かされて分かった。全部無くなるなんてこと無いんだな。後悔から解放なんかされないし、皆に謝りたい、確かめたいって気持ちは消えない」
「……今まで過ごした日常じゃ、満足出来ないんだね」
「うん。やっぱり、みんなとじゃなきゃ駄目だ」

 模造品として再現された高校生活の中に、翔の知る大事な友人達は見つけられなかったそうだ。強いて言うならば「東京にいた頃の、前は友達だった人達」が周りにいたくらいだという。
 だからこそ、全てを思い出した時、歩んでいたはずの本物の日常が惜しく、愛おしく思えたのだと語った。
 後悔と絶望が積み重ねられた、一度は投げ出してしまった自らの過去が。
 「失敗してしまった」、「別の選択肢を選ぶ可能性に溢れていた」あの過去が。

「もう一度、やり直したい。母さんを一人にしたこととか、ばあちゃんを傷付けたことか、菜穂を泣かせたこととか、他にも沢山。みんなと会えたあの春から、ちゃんと選び直したい。そのためなら俺……戦えると思う」

 自らの過去を分岐させたい。その延長線上で、幸せを実現したい。
 そう願う翔の瞳は、揺れることなくセイバーを見据えていた。弱々しくとも、そこには光があった。

「マスター。昨日も言った通り、僕の宝具、完現術(フルブリング)は『過去を改変する』力だ。例えば君をこの刀で貫けば、君の過去に僕が存在したことになる。事実を都合の良い形に変える」
「うん」
「この僕がいたおかげで君は不幸じゃなかった、過去に後悔なんて無い。そういう風に、君の意識を捻じ曲げる……そして僕を戦わせるというのは、この力を君以外の他人に向けて振るうことを意味する」
「うん」
「前に戦った死神の言葉を借りれば、絆を嬲る卑劣な力。ただ命を奪うだけじゃない、人の願いを踏み躙る。でも、これが僕の唯一の戦い方だ。そんな僕と共に戦う道を歩むことになるのだとしても、本当に後悔はしないのかい? ……また、生きる辛さを強いられるかもしれないよ?」
「……生きるのが辛いのは、今だけじゃないだろうなって思ってるよ」

 問われて、しばらく口を閉ざして、しっかりと翔は答えた。
 彼の瞳は、依然として迷いの色を宿すことが無く。
 ゆっくりと、視線を横に滑らせた。


584 : ◆T9Gw6qZZpg :2016/02/14(日) 20:59:31 m8CgRyBI0

「もし勝って帰れて、本当に最初からやり直すことになったとして。それで俺の選び直した道の先が幸せに繋がってるかなんて、分からない。正直言うと、今からもう怖いよ」
「……それを分かっていて、マスターその道を行くんだね」

 広がっていたのは、オレンジ色。
 小高い丘の上から一望する街、夕焼け色に照らされた景色。
 綺麗な色だなと、率直にセイバーは思った。同時に、高層ビルが多すぎて少し風情に欠けるなとも。

「菜穂達がいない世界でこうして生きてみて。みんなとの……絆、もっと大事にすれば良かったって思った。みんなと一緒なら、この後悔も消えてくれるんじゃないか。俺は、救われるんじゃないかって」
「絆、か」
「やり直したいことならあるけど、みんなと友達にならなきゃ良かったってだけは、やっぱり言いたくない」

 特に理路整然としているわけでも無い、曖昧な理屈の理由付け。それは、自らを包む孤独に潰されたが故の判断だった。
 しかし、セイバーは笑う気など起きなかった。その短い言葉に確かな説得力を、共感を覚えていたから。
 それ以前に、彼が自らの内面を打ち明けたこと自体が既に嬉しく感じられる。
 「一人」だった翔が、セイバーと向き合うこの状況を「二人」と認めてくれた証のように思えた。

「みんなと、これよりもっと綺麗な夕日を見たい。明日も、一年後も、十年後も、みんなと一緒に生きられる未来が欲しい。それが叶うなら、どんな過去でも後悔しない」
「わかったよ」

 了承の言葉を贈ることに、一切の迷いは無かった。
 きっと本当は昨日の時点で、翔を見つけた瞬間に、もう答えは出ていたのだろう。
 セイバー自身は、救われながら生命を終えた。同じように、偶然出会ったばかりの成瀬翔という少年のことを、救いたいと。
 それが、セイバーの心に再び灯った、一条の火。

「マスター、ここに誓うよ。たとえこの刀でマスター以外の絆を壊すとしても、マスターの大切な絆を守る。マスターが救われる未来へと辿り着くまで、サーヴァントとし付き添うよ」
「うん。頼む」

 語りながら、セイバーは願う。信じたがる。そしてどこかで、未だ疑っている。
 誰かに救われ、誰かを救えなかった自分に、彼を救えるのだろうか。
 『銀城』のように、『XCUTION』のように、『獅子河原くん』のように。『一護』のように。
 彼等のように、誰かを救うことは出来るのかと。


585 : ◆T9Gw6qZZpg :2016/02/14(日) 20:59:54 m8CgRyBI0

「ああ、それとさ」
「何かな」
「俺、セイバーのこと卑劣だとは思わないよ」

 その一言に、セイバーは呆気に取られる。

「その力で、セイバーは俺を無理矢理従わせなかった。それどころか、俺のためにその力を使おうって決めてくれた。だったら俺にとっては全然卑劣じゃない」
「……そういえば、実はもう君に宝具を使っているのかもしれない、とは考えないんだね」
「考えない。他の奴が何と言おうと、俺は絶対に信じてるから」
「どうして?」
「なんとなく」

 苦笑する翔の言葉が、セイバーの疑念を一時忘れさせてしまう。
 自分は全く成長していない。
 救うと決めた矢先に、また救われているじゃないか。
 ああ、笑えてくる。同じくらい、力が漲る。
 だから。

「ありがとう。マスター……翔」

 敢えて、呼び方を変えてみる。
 従者の主の間で使うには少し不適切な、従者と主以外の関係でなら相応しいだろう呼称。
 幸い、嫌な顔はされなかった。ただ穏やかな表情で、また橙色を見つめている。

「また、見れたらいいな。夕日」
「そうだね」

 本当は、夕日よりも朝日の方が好きなんだ。その言葉を、今は胸の中に仕舞い込んだ。
 あと少しの時間が経てば、夕焼けは夕闇へと変わる。残り短い時間に水を差すのは野暮というものだ。
 自分達は、次の夕日を見られるだろうか。二人が別れを迎えるまで、あと何度の夕刻を迎えられるだろうか。今のセイバー達には見当もつかないことだった。
 だから、この景色を切に噛み締める。
 いつかは終わる期間限定の繋がりを、「二人と五人」が「一人と六人」になるまでの短い時間を、慈しむ。

 誰かと誰かで共有される、夕日を。


586 : 成瀬翔&セイバー ◆T9Gw6qZZpg :2016/02/14(日) 21:00:40 m8CgRyBI0



【クラス】
セイバー

【真名】
月島秀九郎@BLEACH

【パラメーター】
筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:C 幸運:B 宝具:B

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
・対魔力:C
魔術に対する守り。魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。
大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

・騎乗:D
乗り物を乗りこなす能力。大抵の乗り物を人並みに乗りこなせる程度。

【保有スキル】
・完現術者:B
物体を媒介に武器や能力を再現する技、完現術(フルブリング)の使い手。
現実世界の物質に元々宿っていた魂を引き出している能力である、と定義されている。
完現術者自身で全ての負担を背負っているわけではないとの解釈から、宝具解放の際の魔力消費は少量に抑えられる。
また、完現術者は死神や滅却師の闊歩する世界に生きる者達だが、彼等の能力と違って完現術は歴史の積み重ねに乏しい。
故に完現術の存在を知る者はあまりにも少ない。この事実を示すように、同ランクの「気配遮断」スキルも兼ね備える。
……もしかしたら、本当は完現術もまた数百年、数千年に及ぶ歴史に裏打ちされた能力だったのかもしれない。
しかしセイバーの知る完現術者は極少数の現代人、共に寄り添った「不適合者」達だけだった。

・心眼(真):-
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
本来セイバーが保有していないはずのスキルである。

・ 破壊工作:-
戦闘の準備段階で相手の戦力を削ぎ落とす才能。トラップの達人。
本来セイバーが保有していないはずのスキルである。

・カリスマ:-
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
本来セイバーが保有していないはずのスキルである。

・単独行動:-
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
最早セイバーが絶対に保有することの出来ないスキルである。


587 : 成瀬翔&セイバー ◆T9Gw6qZZpg :2016/02/14(日) 21:01:43 m8CgRyBI0

【宝具】
・『重なる明日(ブック・オブ・ジ・エンド)』
ランク:D 種別:対時宝具 レンジ:1〜2 最大捕捉:1人
セイバーの持つ完現術がそのまま宝具となった。
本の栞から変換した刀を用いて斬りつけた対象の過去に自身の存在を挟み込み、相手の過去を改変させる。
また、それによって相手の過去や弱点をも把握できる。元の状態に戻すには、再度斬りつける必要がある。
また「挟む」対象は人間のみならず物質や場所、相手の経験等にさえも及ぶ。
過去を捏造することで、その場所に罠を仕掛けたり、相手の技を見切ることを可能とする。
ただ強引に過去を後から挟み込んだ場合、挟まれた人物の精神が矛盾に耐え切れずに崩壊する危険もある。
そして過去の改変とは、即ち歴史の改竄。生前の逸話をも「月島秀久郎の介在」という形で捻じ曲げることを意味する。
サーヴァントの願いの根幹を成す逸話を書き換えることで、その結論であるサーヴァントの願いを歪めてしまうかもしれない。
サーヴァントの誇りを象徴する逸話の価値を貶めることで、その逸話の昇華型としての宝具を消滅させてしまうかもしれない。
いかなる身勝手も実現し得るこの宝具は、サーヴァントを、引いては英霊を侮辱する力。

【weapon】
・刀
何の変哲も無い本の栞から変換した武器。完現術の行使に必要となる。
能力を使わず普通に切りつけることも可能。

【人物背景】
過去を歪める能力を以て戦った男。
彼を殺したのは、誰にも歪められないほど強い絆だった。
彼を救ったのも、誰にも歪められないほど強い絆だった。

【サーヴァントとしての願い】
目の前の「友人」を救いたい。


588 : 成瀬翔&セイバー ◆T9Gw6qZZpg :2016/02/14(日) 21:02:16 m8CgRyBI0



【マスター】
成瀬翔@orange

【マスターとしての願い】
もう一度、過去をやり直したい。後悔の無い未来が欲しい。

【weapon】
特に無し。

【能力・技能】
一般的な男子高校生である。

【人物背景】
高野苺著の漫画『orange』(全5巻)の登場人物。
友達に救われず、未来を得られず、後悔だけを遺して逝った少年。
当然ながら、「成瀬翔の死」という過去を変えたいと願った友達のことなど知る由も無い。

【方針】
聖杯狙い。


589 : 名無しさん :2016/02/14(日) 21:02:49 m8CgRyBI0
投下終了します。


590 : 遠坂凛&ネゴシエイター ◆iB48HmRw.6 :2016/02/14(日) 22:03:28 mUCdnKp20
投下します


591 : 遠坂凛&ネゴシエイター ◆iB48HmRw.6 :2016/02/14(日) 22:03:57 mUCdnKp20

「承知した、ミス・トオサカ。貴女は今から依頼者であり、私のマスターだ」
「そうね、まずは……ミス・トオサカって呼び方は好きじゃないわね。マスターか、嫌なら凛でも良いわ」

聖杯戦争に参加させられた少女、遠坂凛に与えられた役職は、学生だった。
よく学び、よく遊べとはよく言ったもので、学生ならばまずは登校。
東京とは言われるものの、本来所属する学び舎ではない、本来の日本とも東京とも異なるらしい
なんだかよく分からない、真面目に通い上げた所で単位にも免状にもならない仮初の所属ではあるのだが、
いかなる時でも優雅たらねばなるまいという堅い信条の下、彼女は学生を演じきる。
演じるとはいったものの、彼女は元々学生であり、また、学業において優秀な成績を修めてもいたので、
日常の振る舞いにおいて、また、教授される学問においても、困らされるという事はなかった。
困るというならば、むしろ他の事柄にある。

「お帰り。今日は早いのね」
「ただいま。ええ、今日は先生からの頼みごとや友達の誘いは無かったから」
「あら、そう。じゃあ今日は家にいるの?」
「呼ばれたりしなければね。早めに課題を終わらせようかな、って」
「あら、なら邪魔しちゃ悪いわね。お父さんも今日は早いって言っていたから、帰ってきたら呼ぶわね」

学業を終えて帰った彼女を迎えたのは、母という名の赤の他人である。ついでに本当に真っ当な人間であるのかも怪しい。
知った顔くらいにはなった女性といかにもなやりとりをし、誰かに用意された自室に入る。
知識としては家族の仔細や思い出が頭に入れられてはいるので、彼女はそれを受け入れた。
偽造された団欒に彼女が憤ったのか、それとも本来失われた物の代替として良い感情で受け入れたのかは定かではないが、
それはそれとして、彼女の抱える問題は別の物だ。

 ――お金が、無い。

彼女は魔術師だ。魔術を使う。魔力というおおよそ意味の分からない超常のエネルギーを操り、
手から呪いを飛ばしたり、重力干渉してみたり、体中の筋力を強化したり、愛と希望が飛び出す非凡な現象を起こす。
一括りに魔術といっても起こす現象の分野は多岐に渡り、魔術師と呼ばれる人間たちは各々の求める分野を研究し、掘り下げる。
科学ならば起こった現象を基に法則を解明し、洗練させ、汎用性を持った人間社会全体の利用する技術となるのだが、魔術は違う。
起こしたい現象を起こすために各人が研究する。根源という物に到達するために。
そんな魔術で彼女が研究するのは、宝石魔術といういかにも乙女チックで煌びやかな、まさしく優雅な魔術である。
これが石コロや土塊を宝石に変換する魔術ならばよかったのだが、残念ながらそうではない。
遠坂の魔術の基幹は魔力の流動・変換で、宝石を媒介として魔力を貯めこみ、
本来ならば魔力の用意が難しい大魔術を行使したり、大量の魔力で本来は起こせない現象を無理矢理起こしたりする。
ン万ン十万ン百万ン千万ン億ン十億……、宝石というのは学生には手を出しがたい値段の物だ。
高ければ魔力を宿しやすいという訳でも無いのだが、高い物は由緒があったり大粒であったり、魔力を宿しやすい要因を持ちやすい。
用意された中流家庭の子女という役職では、たとえ親を唆して資産を全て処分したとしても大した足しにはならないだろう。
それでも、元々の場所から彼女が持っていたものをいくらか持ち込めていたり、
あるいは丁寧に術を織り込める時間が有ればまだマシだったかもしれない。
もちろん、今の彼女は宝石など持っていなければ、この聖杯戦争にどれほどの猶予が有るかなど彼女に知る術は無い。
ならば、あらかじめ聖杯戦争に用意された無双の英傑、サーヴァントを軸に戦略を組み立てるのが筋というものなのだが。


592 : 遠坂凛&ネゴシエイター ◆iB48HmRw.6 :2016/02/14(日) 22:05:31 mUCdnKp20
「リン。課題はやらなくていいのかね?」
「知っているんだから嫌味ったらしく言う必要はないんじゃない?」
「これは失礼」

部屋に入り、上着を掛け、学習鞄を所定の場所に置く。彼女の部屋は、必要以上に整理されていた。
本来の自室や、気の知れた知人の家ならばまた所作も変わるのだろうが、意識してか、無意識なのか、他所行きの振る舞いを彼女はする。
とはいえ、一応魔術師の工房として整備された空間ではあるので、他よりはいくらか気の許せる場所ではある。
なので、サーヴァントとの会議が必要であれば、基本は自室で、ということになる。

「今日は何かあった?」
「私が敵ならば、君がマスターであると知れば何か行動を起こすだろうな。
 そして、魔術的な干渉を試みるなら、私よりリンの方が気が付くだろう」
「サーヴァント同士の気配の干渉があるでしょうが」
「あったら状況を問わずすぐに知らせなさい、と言うのは君の発言だったように思うが」
「自分の意思を持った英霊から、1日の報告でちっとも有意義な意見を貰えないというのはどうなのかしら?」
「霊体化して今日のディナーでも調べてきたら良いのかな」
「いいわよ、紅茶を淹れるついでにでも聞いてくるわ」
「立派な機具を、とわ言わないがせめてミルとフィルターぐらいはこの部屋にも用意してもらいたいものだ。
 インスタントコーヒーも随分と質が上がったとは思うが、どうにも口に合わない」

不仲という訳ではないのだが、彼女のサーヴァントには聖杯戦争について話せる事が無い。
なので、これは互いに会話を繋ぐためのなんということのない無駄話だ。
持論だとか、方法だとか、価値観を論ずるならば語り明かす事も出来るかもしれないが、
彼のそれは戦略だとか戦術だとかに成りうるものではなく、雑誌や新聞のコラムだとか、小説の後書きに近いものだ。
それでも軍警察に所属した経験はあるので、科学的な捜査は幾らかの心得があるだろうが、
魔術だとか聖杯だとかの超常的な事象にどれほどの効果があるのかは彼の知る所ではない。
そして何より彼は暴力的な方法での解決を好まないので、物語の英雄の如き圧倒的な武力は持ち合わせていない。
彼の生業、そしてクラスも――交渉人(ネゴシエイター)である。
そんな彼が、聖杯「戦争」でいかほどに戦えるものだろうか。
故に、マスターである遠坂凛は宝石による備えを用意したい。

「できる限りの魔術的な備えはしたいんだけど、アンタのスキルで値切ったりできない訳?」
「アンティークなら七掛け……いや、相手を選ぶなら半値までにはできるだろう」
「半値、ねえ……」


593 : 遠坂凛&ネゴシエイター ◆iB48HmRw.6 :2016/02/14(日) 22:07:04 mUCdnKp20
凛はベッドに、ネゴシエイターは学習机の椅子に腰かけ話をする。
男を彼女の寝るベッドに座らせるか、彼女が椅子を諦めるかと言われれば選ぶまでもない。
来客用のクッションぐらいは用意されているが、椅子やソファーまでは備えられていない。
彼女の趣味ではない、いかにも女の子です、という明るい色合いの部屋だ。
可愛らしいぬいぐるみやら小物やらがあちこちに配置され、衣類にはこれまた彼女の趣味に合わないような、
いかにも「少女」といった感じの物が、箪笥からクローゼットの中までキチッと整理された状態で用意されていた。
化粧品ならば仮の母からある程度融通してもらえたが、資金難のおり、少ない小遣いといえど無駄にはできず、
用意されたものに袖を通していたが、ネゴシエイターが半笑いで可愛らしい、とても良く似合っている、
どこのお嬢さんかと思ったなどと褒めそやすもので、彼女は思わずその綺麗な長い足をネゴシエイターに叩きつけた。
とにもかくにもお金が無い。女子高生らしいといえばいくらかの女子高生は否定するような、
可愛らしいデコレーションが施されたピンクの長財布の中には諭吉が二人。
宝石どころか彼女の好みの衣類を数セット揃えるのも難しい。学校での交際費も考えるならさらに少なくなる。
たとえ半値に値切ってもらえたとしても焼け石に水である。
薄いだとか香りが悪いだとか文句を並べながら気取ったようなしかめたような面白い顔でインスタントコーヒーに
口を付けているネゴシエイターも、やれコーヒーが飲みたい、ワインが飲みたい、レストランのディナーが食べたいなどと結構な我儘を言う。
もちろん、サーヴァントに食事などさせる必要などないのだが、ネゴシエイターはあまり放置すると、直接的な文句こそは言わないものの、
段々と語り口が厭らしくなっていくし、彼女も狭量であると思われたくないので、家族に魔術を使って多少は融通する。
外で使うお金は無い。
あくまで聖杯戦争に差し障りのない範囲で精一杯聞いてあげていますよ、というポーズである。
ネゴシエイターにしても、半分はマスターの値踏みであるので、ある程度要求が通れば何も言わない。
もう半分はただの欲望だ。

「はあ……なんだってアンタみたいなのがサーヴァントなのよ、よりにもよってこの私の」
「リンには他の聖杯戦争の経験があるのだろう? この趣味の悪い催しの主催者の嫌がらせかもしれない」
「せめてハンデって言いなさいよ。しかも自分で役立たずです、なんて宣言する? 普通」
「私の仕事は交渉でね。暴力や戦争で訴えるものではない。いざとなれば宝具があるが」
「巨大なゴーレム……というかロボットを召喚・維持する宝具なんて魔力的にも街への被害的にもそうそう使えるもんじゃないわよ」
「使えるだけまだマシというものだ。優秀なマスターのお陰だよ。並のマスターなら呼ぶだけでも魔力が尽きるだろう」
「アンタ自身できる限り使いたくないんでしょう?」
「交渉が通じない、あるいは交渉する気が無い相手への最終手段だな」
「現状の備えだと、後手に回ったらまずチャンス無しで死ぬわよ、私達」
「過去に聖杯戦争を経験した君がそう言うならばそうなのだろうな」


594 : 遠坂凛&ネゴシエイター ◆iB48HmRw.6 :2016/02/14(日) 22:07:33 mUCdnKp20
この聖杯戦争に参加してから何度目かも分からない現状確認をし、遠坂凛は溜息を吐く。
ネゴシエイターは知らぬ顔をしてインスタントコーヒーの粉を自らのティーカップに入れお湯を注ぐ。
どうせ不味いというなら飲まなきゃ良いのに、と凛は思う。
ネゴシエイターはやはり文句を口にする。
凛に用意された紅茶の茶葉は結構上質なものである。仮の母に言えば買ってきてもらえる。
あらあら、紅茶なんか飲むの? と言われた時は多少癪に感じはしたものの、ちゃんと言い付けた銘柄通りの物を用意してくれるので、
慣れてしまえばそう悪い物でもない。 食事にしても何にしても、用意してもらうという経験は彼女の知己である衛宮士郎の家に
お邪魔するようになりまではあまりあるような事でも無かった。母らしき人間と街で買い物をするというのも、これまた幼い頃に
母を亡くしてからはある事では無かった。後見人の神父から人の食べる物とは思えない激辛の中華を振舞ってもらう事はあったが。
コーヒーメーカーや豆も言えば買ってもらえるかな? と彼女は思ったりしたが、豆から挽くコーヒーメーカーとなると数万円はする上、
彼女自身、機械に疎く壊すかもしれないと、イマイチ乗り気にならない。
かといってこのサーヴァントの口からでるうように手動のコーヒーミルを買い与えても、自分の飲んだコーヒーのカップ一つ
言われるまで片づけようとしないこのネゴシエイターが、どれほど飽きずにコーヒー豆を挽く作業を続けるかは信用にならない。
飽きた所にネチネチといってやるのもそれはそれで面白いかもしれないなどと彼女が考えている内に、すっかり外は暗くなっていた。
ネゴシエイターはというと、霊体化を駆使して台所からこっそりくすねてきたのか、あるいは凛が部屋に置いておいた物なのか、
買い置きらしいカップ麺にお湯を注いでいた。
最初にネゴシエイターにカップ麺を与えられた時には、私にこのような粗末な物を食べろと言うのか、と呆れた顔をして言ったものである。
彼女は思う。
あるいは、本当にこのサーヴァントは、この聖杯戦争に疑問を持った自分への当て付けで聖杯が充てがったのではないかと。
以前彼女の参加した聖杯戦争の聖杯は、汚染されていた。
ならば、自分がいつの間にか参加させられたこの聖杯戦争はいか程の物か、と考えるのも自然な物である。

「ねえ、ネゴシエイター」
「なにかね?」
「貴方は自分が『ロジャー・スミス』であるために召喚に応じた、って言ってたわよね」
「その通りだ。私はロジャー・スミスであり、ロジャー・スミスである以上交渉をする。どのような舞台であったとしても」
「ロジャー・スミスは聖杯には求めない」
「私が求めるのはロジャー・スミスであるという過程と結果であり、その報酬は内容とから決められる物だ。
 聖杯が手に入れるための交渉が君の依頼なら、聖杯は依頼人たる君の物だろう。あまり報酬を安く見積もられても困るがね」
「そうね。貴方はロジャー・スミス。私は遠坂凛。遠坂家の当主としてこの戦争に勝ち抜いて聖杯が何なのかを見極めるわ」
「貴女が何をすべきか決めているならば、私が口を挟む所では無い。貴女には確たる意思と誇りがある」

どんな話をしたところでカップ麺とインスタントコーヒーが合うハズが無い。
多くの学生は、課題やレポートをこなしながらカップ麺を食べ、インスタントコーヒーを啜る事もあるだろう。
学生ならば文句は言わないが、彼はロジャー・スミスである。
仮初の父が帰り、遠坂凛はこれ幸いと文句を聞かずに偽物の団欒に赴いた。


595 : 遠坂凛&ネゴシエイター ◆iB48HmRw.6 :2016/02/14(日) 22:08:22 mUCdnKp20

【クラス】ネゴシエイター
【真名】ロジャー・スミス@THE ビッグオー
【属性】秩序・中庸

【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:E 幸運:A 宝具:B


【クラススキル】
交渉:EX
 言葉が通じ、交渉に臨む態度を示す相手であれば、世界であっても交渉を可能とする。
 ただし、言語を理解しない相手や、交渉に応じない相手と無理矢理交渉できる技術ではない。
 
単独行動:EX
 宝具を使用しない限り、聖杯戦争の継続中は聖杯から得られる魔力のみでも現界を続けられる。
 英霊としての人を半ば逸脱してた能力を持たない事に対しての代償としての高ランク。

【固有スキル】
ドュミナス:A
 巨大な機械仕掛けの神、メガデウスを操縦できる。
 Aランクならばメガデウスと心を通わせる事もできる。かもしれない。本人の気のせいかもしれない。

騎乗:E 
 自動車やバイクなど一般的な車両を普通に乗りこなせる。

ロジャー・スミス:EX
 彼はロジャー・スミスである。
 ロジャー・スミスは交渉人なので宝具を使用するまでは対峙しても英霊とは思われない。
 もっとも、サーヴァントとしての気配は隠されず、あくまで対峙した際に彼がそうであると思われないだけである。
 
【宝具】
『大いなる“O”(ザ・ビッグオー)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
 メガデウス「ビッグオー」を召喚する。
 操縦自体は乗り込めば誰でもできるが、ドュミナスのスキルを持たない場合は操縦席を機械的な触手で覆い操縦者を圧殺する。
 たとえ騎乗スキルを持とうが武芸や機械に対する技能を持とうがドュミナスとして認められなければ圧殺する。
 ビッグ・オーには額の装甲から光線を発射する「アークライン」、
 パンチとともに圧縮空気を噴射して破壊する「サドンインパクト」など 様々な兵器が搭載されている。
 高層ビル並の巨体を持ち、召喚・維持には大量の魔力を必要とする。
 操縦者ヘの宝具なので対人。

『此度の舞台に幕は下り(ザ・ビッグオー ファイナルステージ)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
 ビッグオーの操縦席に機械人形を召喚し、連結することで一発限りの巨大砲塔を起動させる。
 砲塔から放たれた光線はあらゆる物質・事象を飲み込み消滅させる。
 世界が作られたものであれば、光線により抉られ生まれた歪みから舞台裏を覗く事もできるかもしれない。
 使用後はビッグオーの召喚・起動は不能になる。

【weapon】
無し。

【人物背景】
記憶を忘れた町「パラダイムシティ」に必要とされる仕事、交渉人ロジャー・スミス。
その辣腕はパラダイムシティNo.1との呼び声も高い。
ゲームへの外部出演では巨大ロボの修理費を0にすることからその交渉能力の高さが伺える。
映像となった作中では失敗している描写もあるが、これは相手が交渉に臨む態度を持たないのと、
THE ビッグオーという作品にビッグオーを登場させるための作劇的な理由が大きいだろう。
外面は良いが、少し付き合うとすぐに子供じみた面を覗くことができる。
彼の様々なこだわりからくる流儀、作法を視聴者がそのように感じるだけかもしれない。
服装はいつも黒のスーツで、敵役からはカラス野郎と罵られ、女性からは趣味が悪いと不評。

【サーヴァントとしての願い】
「ロジャー・スミス」である。

【マスター】
遠坂凛@Fate/stay night

【マスターとしての願い】
勝ち残り、聖杯を見定める。

【能力・技能】
魔術
 五大属性、アベレージワンを持っている。魔力量も並の魔術師の10倍あるとのこと。
 遠坂の魔術の性質は流動・変換。宝石魔術を専門に扱う。

【人物背景】
冬木の聖杯戦争を生き残った魔術師の少女。
その際、聖杯の性質を知り、破壊に加担したため聖杯には懐疑的。


596 : 名無しさん :2016/02/14(日) 22:11:48 mUCdnKp20
投下終了です
ステータス表に以前使った物を多少流用していますが、トリップは紛失したため別です
紛らわしいようでしたら申し訳ございません


597 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 22:55:52 q3T6Yp3.0
ギリギリですが、バレンタインという事で、一作投下します。


598 : ◆lb.YEGOV.. :2016/02/14(日) 22:56:24 O7XFCxas0
投下お疲れさまです。
こちらも投下いたします。


599 : アインハルト・ストラトス&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 22:56:26 q3T6Yp3.0



『氷帝!』『氷帝!』『氷帝!』『氷帝!』『氷帝!』

『勝つのは氷帝!』『勝つのは跡部!』

『氷帝!』『氷帝!』『氷帝!』『氷帝!』『氷帝!』

『勝つのは氷帝!』『勝つのは跡部!』

『氷帝!』『氷帝!』『氷帝!』『氷帝!』『氷帝!』

『勝つのは氷帝!』『勝つのは跡部!』

『氷帝!』『氷帝!』『氷帝!』『氷帝!』『氷帝!』

『勝つのは氷帝!』『勝つのは跡部!』

『氷帝!』『氷帝!』『氷帝!』『氷帝!』『氷帝!』



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 圧巻の氷帝コールが、広いテニスコートを包み込むように鳴り響いていた。
 アーチャー――跡部景吾が背負う、氷帝学園という世界を激励する、最も簡単な魔術の詠唱。
 敵を応援する声は、最早、この結界の何処にも存在しなかった。
 何故なら、この世界はアーチャーの為に作られた、『跡部王国(キングダム)』の庭なのだから――。


 ――――ドッ!!


 今、その大音声の中でも一際心地よく響いたのは――、硬式ボールとラケットとの打撃音。
 そして。


「はぁ……はぁ……はっ――!」


 ――――トシュ。

 まるで敵の心臓に突き刺さるかのように、死角に落ちていく、テニスボール。
 相手のサーヴァントがそれに気づいた時には、既に遅かった。
 テニスボールがコートの外へと飛び出していき、もう一度地面に落ちていく。 


「ぐっ……」


 彼がいかに槍の名手であろうとも、そのボールを手持ちの槍(ラケット)で敵に返さなかった時点で、ポイントは確定する。
 この結界内では、ポイントを取られた瞬間、如何なるマスターやサーヴァントであっても、否応なしに魔力を奪われるのである。
 それがこの結界内で、サーヴァントとして挑む者の当然のルールだった。
 そんな、この上なく真剣に取り組まねばならない死のテニスゲームの渦中に、彼らはいるのだ――。

 それ故、『ランサー』も、いくらこれがテニスだからといって、只の遊戯と一笑する事が出来ない状況にある。
 事実上、この空間でテニスをするサーヴァントにとって、それは殺し合いをしているのと変わらない。
 しかも、限りなく劣勢だ。


『40-0(フォーティ・ラブ)!』


 テニスの実力が全てを決める――それが、生前のアーチャーの戦い抜いてきた「全国」という世界だった。
 その世界に引き入れられたのだから、その世界のルールに従わねばならないのは当然の事なのである。
 そもそも、ここがテニスコートである以上、そこに立ったプレイヤーたちがその一球に死力を尽くすのは、スポーツマンの義務であろう。
 命を賭ける覚悟を伴って挑むのが、――「試合」という物だ。

 つまり――この王国でテニスの弱い者は、たとえどれ程、サーヴァントとしてのパラメーターが高くとも、意味がない。
 重要なのは、テニスの技量。――それが全てを左右する。
 そして、そこで王様(キング)として君臨したアーチャーに、何処かの世界で英霊となった男が全力を以て敵わないのも無理はなかった。


600 : アインハルト・ストラトス&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 22:57:06 q3T6Yp3.0


「はぁ……はぁ……」


 ランサーは息を切らしながら、唖然としていた。
 先ほどの一球は、半端な英霊の目には、視えない球であった――。
 とうに人の姿を捨て、人を辞めている筈のランサーでさえも、その球速に追いつく事の出来ない。
 アイボリーのアーマーを纏った2m以上の体躯の怪物が、呆然としたまま一球を見送ってしまったのである。
 かつては人間たちを「蟻」と呼んで蹂躙しようとしてきたランサーも、たった一人のテニスプレイヤーに良いようにやられている。


「――ガハァっ!!」


 ランサーは、ダメージを受け、血反吐をコートに吐き捨てた。
 直接、肉体にボールが当たっていないといえど、ポイントを奪われた事実が彼の精神と肉体に与える影響は多大に違いなかった。
 この場でテニスプレイヤーとして戦わねばならない彼らに、このくらいの拒絶反応が起きるのは無理もない話である。


「……あーん? もう終わりか? 槍使い(ランサー)」


 そして、そんなランサーの向かいのハーフコートで、アーチャーは今――息一つ切らさずに君臨していた。
 その外見は中学生程度であるというのに、大人さえも肝を冷やす試合(プレイ)を見せる男は、今、地上に降りていく。
 彼の先ほどの一撃は、何メートルという高さから放たれた物だったのである。
 地上に戻って来るのが今、ようやくであった程に――。


 しかし、同じ地上で戦っているというのに……

 アーチャーはまるで……

 ――まだランサーを見下ろしているかのようだった!!


「次のポイントで、俺様の勝ちが決まり、……お前は全ての魔力を失い消滅する。
 ――――降参するなら今の内だぜ?」

「ま……まだだ、私は負けていない……!
 完全な英霊(サーヴァント)であるこの私が……中学生代表(テニスプレイヤー)ごときに降参などするものか……!」

「あーん……。中学生だの高校生だのにこだわってる時点で成長辞めてるようなもんだが……――。
 流石は、英霊(サーヴァント)だ。精神力(メンタル)は、なかなかのもんじゃねーの」


 流石のアーチャーも、この敵の精神力を認めざるを得ないようだ。
 しかし、その誉れだけが唯一、この試合でランサーが得た勲章となる事だろう。
 実際、ここまで2ゲーム先取されているが、ランサーは全く、テニスという競技においては手も足も出ない状態になっている。
 つまり、1ポイントも取っていないのである。
 このまま全敗すれば、ランサーは消え、再び英霊の座に還る事になってしまう。

 しかし、それでもアーチャーは、ランサーが試合に臨むのなら……容赦なく、責める。


「……次の一撃で楽にしてやる!」


 ――アーチャーのサーブ権だった。
 アーチャーは自コートの外で、ボールを天高く上げる。
 太陽がアーチャーの放ったボールを照らした。


 そして、天高く飛び上がったボールが、アーチャーのラケットに激突する――!!


601 : アインハルト・ストラトス&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 22:57:41 q3T6Yp3.0



「――俺様の美技に酔いな!」



 と、彼が言う。
 テニスボールは、恐ろしいほど的確な打点で、蕩けそうな程心地良い音を鳴らし、ランサーのコートへと向かっていった。
 その時――。


「――……フン! かかったな、弓兵(アーチャー)……!!」


 迫りくるテニスボールを見ながら、ランサーが、ニヤリと口元を歪ませた。
 往生際の悪いのが、このランサーの性格だ。
 魔力が残っている内は、どこまでも往生際が悪く、たとえどんな卑怯な手を使っても勝利を狙うだろう。


「ハッ!」


 ランサーの怪物じみた下顎が小さく開いた――。
 そして、そこから、響き渡るのは、轟音と、彼の声。


「これが、私の……最後の……奥の手だァァァァァ――――!!!!!」


 砲撃である――!!

 生体改造されているランサーは、喉のあたりから光のビームを放ったのだ。
 しかし、これがルール違反ではない。
 この固有結界ではルール違反は厳罰を受ける事になる為、テニスのルールで真面目に戦わなければならないのだが、現在、テニスのルールで、選手によるビーム砲は禁止されていない。
 もし、敵のコートに侵入して槍で敵を突き刺せば反則になるかもしれないが、これは自コートからの正当な一撃である筈だ。
 いわば、強力な逆風が突然に発生したのと、何も変わらないのだから――。
 (※ただ、もし、ルール違反だった場合、逆に大きなペナルティになる為、ランサーも最後の最後という段階まで使いづらかったのである)

 要は、テニスというのは、ボールを跳ね返せばいいだけの事。
 こうしてビーム砲で跳ね返してしまえば、ラケットに触れずとも、勝手にフォルトになるのだ。
 ルールに抵触しなければ、相手のペナルティ。
 ついでに選手まで死んでしまえば、無条件でこちらの勝利にもなりうる。

 そして、彼の宝具は――敵のコートが殆ど焦土と化す程のエネルギーであった。
 たかだか数メートルの至近距離でこの一撃を受ければ、アーチャーもどうなるかわからない。


「……フッ、いくら優秀なテニスプレイヤーと言えど、この至近距離から私の宝具を受ければひとたまりも――…………」


 しかし――。


「――――何ぃっ! まさかっ!」


 ――その瞬間、ランサーの手にあったはずのラケットが飛んだ。
 ボールが弾丸の如きスピードでラケットへと叩きつけられたのである。
 ランサーがそれに気づいたのは、既にボールが相手のコートに跳ね返ってからだった。


「なっ……」


 この王国に君臨する者が、この程度の姑息な時間稼ぎに屈する筈がなかった。
 爆煙の中から聞こえるのは、氷のように冷え切ったアーチャーの声――。



「――――破滅への輪舞曲(ロンド)」



 愕然として叫ぶランサーのコートに、ボールが叩きつけられる。
 ラケットが吹き飛んだ以上、それを跳ね返す術はない。
 ――いや、宝具を使えば別だが、今や、その宝具を発動する時間はなかった。


「あっ……あがっ……バカな……この私が……」


 そして、この瞬間――3ゲームで4ポイントを先取された事になる。
 全く、恐ろしいほどのゴールデンマッチ。
 アーチャーの『跡部王国(キングダム)』の前では、半端なサーヴァントは屈するしかない。



「試合終了(ゲームセット)だ!!」



 ――――こうして、ランサーはその全魔力を喪失し、脱落した。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆


602 : アインハルト・ストラトス&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 22:58:10 q3T6Yp3.0



 街灯にも照らされない、夜の路地裏――。
 アーチャーは、固有結界を解除し、負傷して倒れ込んでいるマスターに手を差し伸べた。
 固有結界の中でも実は座って試合を見てもらっていたのだが、試合が終わった以上、固有結界を持続するのは負担でしかない。
 こうして、元の東京の街で、二人は隠れるように戦いの疲れを癒す。


「……どうだ、マスター――、具合は? あーん?」


 アーチャーは、自身のマスターたる幼い少女に訊いた。
 マスターの少女は、既にかなり傷だらけである。
 ――試合の前に、あのランサーに随分としてやられたのが原因だ。


「……」


 別に、アーチャーも彼女の仇を取った……というわけではなかった。
 マスターを失い敗北するというのは、当のアーチャーとしても気に入らない。
 何より、マスターをサポートするのがサーヴァントの役割だ。
 本来的には、こうしてアーチャーの方が闘うのが正解である。
 そうした事情もあって、アーチャーがランサーを殲滅した、という次第だった。


「――……ご心配なく」


 マスターが答えた。
 緑の髪の、小学生か中学生程度の、外国人の少女。紫と蒼のオッドアイ。

 彼女こそが、アーチャーのマスター――アインハルト・ストラトスである。
 そして、彼女は、単純な戦闘力や魔力でいえば、アーチャーさえも凌駕する実力を持つ魔術師だった。
 アーチャーを凌駕するアインハルトがランサーに負け、そのランサーにアーチャーが勝ってしまうというのは聊か奇妙な事だったが、こうした相性があるのも聖杯戦争の常だ。
 必ずしも、パラメーターや魔力の強い者が勝つとは限らない。
 アーチャーの試合は、まさしくその証明であったと言えよう。


「無理すんじゃねえ」

「……」

「そして、二度と『無茶』もするな」

「…………はい」


 アインハルトとランサーの間の実力差は、はっきり言って、戦う前から歴然だった。
 しかし、それでもアインハルトがランサーに挑んでしまったのには理由がある。
 たとえ、無茶であれ、他のサーヴァントを発見した以上、挑まずにはいられなかった……。


「――」


 そもそも、アインハルトの目的は「覇王流の強さの証明」にこそある。
 古代のベルカ――それは、地球の外にある異世界である――の戦乱期に、覇王「クラウス・G・S・イングヴァルト」が果たせなかった悲願を、自らが果たす事が、この聖杯戦争での彼女の目的なのだ。
 彼の始めた覇王流(カイザーアーツ)でサーヴァントを打ち倒していく。
 そして、その強さを証明したい。
 彼が極めたかった力が――大切な人を守ろうとした力が、決して弱くなどなかったという事を、白日の下に晒さなければならない。
 自らのサーヴァントであるアーチャーは、「テニス」に特化しているが故に、彼と拳を交える事はなく、共に戦う形になっているが、アインハルトは、自らの拳で歴戦の英霊を倒したいとさえ思っていた。
 そして、最初に見つめたのが、あのランサーだったのだ。

 つまるところ、彼女の目的は、「聖杯」ではなく、「戦争」の方でこそ叶えられるという訳だ。
 しかし――結局は、この結果である。
 今回のように、ランサーを前に負けて――弱さを証明する事は、二度とあってはならないのだ。


603 : アインハルト・ストラトス&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 22:58:47 q3T6Yp3.0


「……アーチャー」

「あーん?」

「――素晴らしい、試合でした。
 とても……スポーツの範囲とは、思えないほどに……」


 アインハルトもまた、クラウスの記憶を引き継いでいる子孫であり――自身が王たる自覚が、薄々ながらある。
 圧倒的な強さと、「王」としての格を見せつけたアーチャーには、労いの言葉をかけずにはいられない。
 ……自分が倒せなかった相手を、テニスで倒してしまった者がいるなんて、認めたくはないが。


「当たり前じゃねーの」

「でも……あのランサーを、テニスで倒してしまうなんて――。
 ……私には、信じられませんでした……。
 この拳以外に、誰かを守る力があるなんて……――」


 あの神業じみたテニスは、他者を守護する力という域に達している。
 実際、アインハルトはアーチャーのテニスプレイヤーとしての実力によって命を繋ぎ、ランサーはテニスによって英霊の座に還ったという現実が目の前で繰り広げられている。
 時に、テニスという競技は、拳さえも超えるというわけだ。
 しかし、そんなアインハルトに向けて、どこか呆れ半分に言った。


「……マスター。誤解があるぜ。
 俺がテニスをするのは、誰かを守る為なんかじゃねえ――この俺の為だ」

「……」

「そこを履き違えるな。
 ……だがな、何の為に戦うのかが見えているのなら、お前はもっと進化できる」


 アインハルトがどの程度、それをちゃんと聞いてくれているのかはわからない。
 王は常に、誰よりも早く、『進化』を『加速』させていく。
 アインハルトもその例外にはならない筈なのだ。
 ――それさえ理解すれば、アインハルトは、今よりも強くなれるだろう。

 かつて、アーチャーが幼い頃、英国の強いテニスプレイヤーたちとの差に打ちひしがれていた自分――それを、思い出す。
 強さを証明したい、という想いは、時に焦燥感さえ募らせる。
 問題は、目に見えた差をどのようにして縮めるかという事――その方法が視えた時、『進化』は『加速』するのである。


「――――だから、これだけは、決して忘れるな、マスター」










「勝つのは――――アーチャー陣営(俺たち)だ」


604 : アインハルト・ストラトス&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 22:59:15 q3T6Yp3.0
 









【CLASS】

アーチャー

【真名】

跡部景吾@新テニスの王子様

【ステータス】

筋力D 耐久D 敏捷D 魔力D 幸運A 宝具A

【属性】

秩序・中庸

【クラススキル】

対魔力:D
 魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。

単独行動:C
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。

【保有スキル】

カリスマ:A+
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。
 団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
 A+は既に魔力・呪いの類であり、跡部は新しい国を生み出す事が出来る。

心眼(真):A
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
 跡部の場合、対戦相手の弱点を見抜く魔術のような「眼力(インサイト)」を持ち、それがこのランクをAランクまで引き上げている。

黄金律:A
 人生においてどれほどお金が付いて回るかという宿命を指す。
 Aランクの場合、「一生金に困ることはなく、大富豪でも十分やっていける」。

愛の黒子:B
 魔力を帯びた黒子による異性への誘惑。跡部と対峙した女性は彼に対する強烈な恋愛感情を懐いてしまう。
 対魔力スキルで回避可能。対魔力を持っていなくても抵抗する意思を持っていれば、ある程度軽減することが出来る。

王様(キング)特権:A
 皇帝特権のスキルの変名。
 本来持ち得ないスキルを、本人が主張することで短期間だけ獲得できるというもの。
 該当するのは騎乗、剣術、芸術、カリスマ、軍略、と多岐に渡る(ただしカリスマは高ランクで取得済)。
 Aランク以上の皇帝特権は、肉体面での負荷(神性など)すら獲得が可能。

庭球の王道:A
 テニスを極めた者に付与されるスキル。
 Aランクの場合、魔力の域に達した技と試合を魅せる事が出来る。


605 : アインハルト・ストラトス&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 22:59:34 q3T6Yp3.0

【宝具】

『跡部王国(キングダム)』
ランク:A 種別:大会宝具 レンジ:23.77〜 最大捕捉:1〜62837人以上

 アーチャーの固有結界。
 テニスプレイヤーとしての彼の心象風景(自宅、学校、大会などのテニスコート)を再現する事で、結界内に引き込んだ相手とテニスの試合を行う。
 この結界で試合を行うサーヴァントは、ポイントを取られるか、ルール違反を行ってしまうとペナルティとして魔力が削られていき、敗北と同時にサーヴァントは残存する全ての魔力を喪失して消滅するという死の制約がある(発動者であるアーチャーも例外ではなく、劣勢になってから結界を解除する事は不可能)。
 また、この結界内では、相手がルールを解さない場合であっても、ルールが全て相手の脳内に刷り込まれる他、結界内にいるサーヴァントはパラメーター・宝具・スキル・Weponにも特に制限を受ける事はない。
 その為、アーチャーは経験でこそ優位に立つものの、情報や能力で一方的に有利になる事はなく、テニスプレイヤーとしてはほとんどフェアな条件での試合が行われる事になる。
 ルールは「シングルス」に限らず、他の人物を連れた「ダブルス」も可能で、それらの細かなルールはこの宝具の発動時に、発動者の任意で設定でき、観客席やベンチにも人間を呼べる。
 この宝具の発動のキャンセルには、「Cランク以上の対魔力スキル」、結界の中断には「相手より1ゲーム以上優勢になっているプレイヤーの任意」が必要となり、その条件を満たさない場合は、最後まで否応なしにアーチャーとのテニスの試合を強制されてしまうという。
 なお、本来、『跡部王国(キングダム)』の名は、敵の身体を透視して弱点を可視化する技に冠された物であるが、既にそれは新しい国の域に達しており、彼が作り出す世界の名として相応しいという判断で、宝具の名に採用された。

【weapon】

『ラケット』
『テニスボール』

【人物背景】

 氷帝学園中等部3年A組1番。別名「王様(キング)」(本人命名)。
 200人もの部員を抱えるテニス部の部長で、同学園の生徒会長でもある。
 オールラウンダーであり、テニスにおいてはすべての技術においてトップクラスを誇るが、その中でも相手の弱点を見抜く眼力(インサイト)はズバ抜けている。
 テニスが強いだけでなく、跡部財閥の御曹司でかなりのお金持ち。
 俺様系の性格で敵をひれ伏させる美技を持つが、決して悪人というわけではなく、努力家で仲間やテニスにかける情熱も強い熱血漢でもある。

【サーヴァントとしての願い】

 なし。
 ただし、負ける気ゼロ。
 マスターと一緒にやってやろうじゃねーの。

【基本戦術、方針、運用法】

 パラメーターは低く見えるが、スキルの多さと固有結界が最強の武器。
 スキルは、ただでさえ多彩な上に「王様(キング)特権」があるので、もうだいたい何でもできる。
 これを駆使すれば、人間の中学生程度(?)な実力に見合わない大活躍も期待できる。
 対魔力スキルが無いサーヴァントや弱いサーヴァントは固有結界に引き寄せてテニスで倒す事が出来るので、それが有効。
 ただし、相手もあらゆる能力を駆使してテニスの試合をするので、必ずしもアーチャーが有利になるとは言えない。ちゃんと本気で試合した方が良い。
 筋力・耐久・敏捷・魔力のランクは、今の所、マスターの方が少し強いので、固有結界に引き込めないCランク程度の相手ならばアーチャーが戦うよりもマスターが戦った方がずっとマシ。


606 : アインハルト・ストラトス&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 22:59:55 q3T6Yp3.0





【マスター】

アインハルト・ストラトス@魔法少女リリカルなのはVivid

【マスターとしての願い】

 最強の王である事の証明。
 聖杯を得る事は目的にないが、それでも多くのサーヴァントと拳を交えたい。

【weapon】

 なし。

【能力・技能】

 常に身体を鍛えている為、高い身体能力を持ち、覇王流(カイザーアーツ)を極めている。
 頭もよく、学校の成績も高かった。
 魔力の扱いに長け、「覇王形態」という16歳〜19歳程度の大人の姿に変身して戦闘力を高める事も出来る。

 ちなみに、時期的にはヴィヴィオたちとは出会っておらず、デバイスのアスティオンもいない。
 その為、この時点での実力は低く、強力なサーヴァントとまともに正面から戦って勝つのは、不可能と言って良い。
 ただ、平均値がCランク程度のサーヴァントが相手で5:5くらいの勝率に持ち込める程度。

【人物背景】

 フルネームは 「ハイディ・アインハルト・ストラトス・イングヴァルト」 。
 12歳。St.ヒルデ魔法学院中等科に所属する生徒。現在は東京都内の中学校の1年生(ただし地球なら本来なら小学6年生程度が正しいらしい)。
 古代ベルカ時代にあったシュトゥラ王国の国王「覇王イングヴァルト」の末裔で、先祖の記憶と血統を強く引き継いでいる。
 覇王流の強さを証明する為、変身魔法で大人の姿となって格闘技の実力者達に次々とストリートファイトを申し込んでは倒している通り魔のような行動をしている。

【方針】

 サーヴァントたちと戦い、覇王流の強さを証明する。


607 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 23:00:13 q3T6Yp3.0
投下終了です。


608 : ◆lb.YEGOV.. :2016/02/14(日) 23:00:50 O7XFCxas0
割り込み失礼しました。
改めて投下します。


609 : プロシュート&セイバー ◆lb.YEGOV.. :2016/02/14(日) 23:01:51 O7XFCxas0
東京都お台場。
観光スポットと名高いこの臨海都市も深夜を回ればテレビ局以外では人の気配は忽然と消える。
夜霧が立ち込め、波音が響く中で金属がぶつかり合う甲高い音がした。
人影は4つ。その内の2つが組み合い、火花を散らす。
一人は両手に手甲を嵌め、目に狂気の光を灯す大男、もう一人は槍を携えた甲冑の男。
だが、早くもその決着はつこうとしていた。
まるで暴風のような狂戦士の拳に対し槍兵がじりじりと押されていく。
距離を取り己が宝具を使おうと試みた刹那、狂戦士が一息に距離を詰めて拳を振るう、宝具の発射準備に入っていた槍が拳の直撃を受けて勢いよく弾かれ、輝きを失う。
だが、それを槍兵が気にする暇は、残念ながら与えられなかった。
体勢を崩した槍兵の目に映ったのは、自身を肉塊にせんと拳を振り上げ飛翔した狂戦士の姿。
直撃までの刹那、己が無様を嘆きつつ自分の名を叫ぶ主へと謝罪する。
轟音が響いた。
お台場海浜公園の一角に出来上がった赤黒いクレーターから、先程まで槍兵であったものが粒子となって立ち上ぼり消えていいく。
槍兵の名を力なく口にする青年。彼の前にズシンと音を立てて狂戦士が立ちはだかる。
青年に抗う術も逃れる術も残されてはいなかった。

ランサーのサーヴァントを下し、脱落した敵マスターの魂を食らった自らの従僕を見やって、壮年の男は一息着く。
まずは一勝。願いのためとはいえ自身より一回りも二回りも小さいであろう若者を殺した事に今更ながら罪悪感を覚える。
が、今更引き返す事など出来ない。
丁度霧が濃くなってきたのを期に、夜霧に紛れ退散しようとしたその時、バーサーカーが唸り声をあげた。
何事かと身構えた男性がバーサーカーの睨む視線の先を見据える。
霧の中から、ぼうっと人影が現れた。
ザリ、ザリ、と鎧の擦れる音。
霧を割って現れたのは東洋の鎧武者らしき男だった。
まるで歌舞伎役者の様な、白塗りの凶相を浮かべ、乱入者は剣を正眼に構える。

「――勝負」

まるで地獄から響くかのような低い声で鎧武者が口を開く。
壮年の男は瞬巡する。
彼のバーサーカーは周囲からマナを吸収する事で本来のバーサーカーの運用にあたってネックとなる燃費の悪さを解消していた。
このまま継戦をしても問題はない、が、この状況で懸念点が1つだけあった。

敵マスターの姿が見当たらない。
何か、こちらを嵌める為の準備をしているのか、それともマスターの意向を無視して暴走したサーヴァントが単身仕掛けてきたのか。
どちらにせよ、この戦場において一番無視できぬ不確定要素だった。

「バーサーカー、ここは任せる」

そう呟くと男の姿がかき消えていく、熱を纏うことで空気を歪ませて行使する身隠しの魔術だ。
少なくともこれで相手の目からは逃れられたであろうと考え、男は次のアクションに移ろうとする。
不意に、よろめいた。
咄嗟に手をつく事には成功したが急激な倦怠感に襲われる。
何が起こったのかと困惑しながら、地面に着いた手を見て絶句した。
彼が見た自身の手が、まるで年老いた老人のように骨張っていたのだ。
倦怠感が次第に増していく、魔力と生命力を失っていくような感覚。


610 : プロシュート&セイバー ◆lb.YEGOV.. :2016/02/14(日) 23:02:32 O7XFCxas0

「いったい、なにが……!?」

自分の発した声が嗄れた老人のように枯れている事に驚愕する。
衰えた片腕がプルプルと震える、自分を支えるだけの筋力が既に無くなっていたのだ。
無様に転倒する。いや、転倒するだけではない。
急激に減衰していく魔力に耐えきれず身隠しの魔術が解けた。
恐らく、今の自分の姿を見ることが出来れば彼は狂乱していただろう。
男の外見は老人の姿へと豹変していた。
白髪が混じっていたものの、大半が黒髪だった毛髪は総白髪となって抜け落ち、その顔には無数に皺が刻まれ、ひび割れている。
折れ曲がった腰と枯れ枝の様に細くなってしまった腕と足では起き上がることさえままならないだろう。
バーサーカーが咆哮をあげ、鎧武者へと飛びかかる。
狂乱の渦に囚われた思考であってもこのままではマズイと判断したのだろう。
だが、それが致命打となってしまった。
ビクリと老人となった男の体が跳ね、その瞳から生気が消えていく。
急激な老化に伴う魔力と体力の消耗で弱っていた身体に、スキルで軽減はされているとはいえバーサーカーが行動するにあたって消費される魔力は、男の命を奪うには充分すぎた。
実体化できる魔力を徐々に失っていくバーサーカーが再度咆哮をあげる。
その咆哮に込められた感情は、狂気か、憤怒か、哀しみか。
その唸り声を鎧武者のサーヴァントはただ瞠目し、手に持った剣を一閃する。
月明かりに紅と首が舞ったかと思うと粒子となって消滅した。
鎧武者のサーヴァントが抜き放った刀を一振りして血を払い、鞘に納める。
チン、と鍔を鞘が打つ軽い音が響いた。

「終わったぞ"ますたぁ"。疾くその妖術を解くがいい」

サーヴァントの言葉と共に霧が次第に薄くなっていく。
急に濃度を増した霧こそが、バーサーカーのマスターが老化したからくりであり、鎧武者のサーヴァントがいう彼のマスターの持つ異能であった。
そして、夜の闇の中から一人の男が姿を現す。
上物のスーツとオールバック気味に整えられた金髪に端正な顔立ち、目には剣呑な光を携えた男だった。

「"偉大なる死"(ザ・グレイトフル・デッド)、あのマスターには効果はあったようだが、やっぱりテメーらサーヴァントにゃあ効かねえようだな、セイバー」

相手を殺した事への頓着など一切なく、今しがた自身が行使した異能の結果を淡々と呟く。
グレイトフル・デッド、それがセイバーと呼ばれた鎧武者のマスターであるプロシュートの使う異能。
半径200mの全ての生命を老化させる力をもった、彼のいた世界ではスタンドと呼ばれる特異な能力だった。

「我らはそもそも生命に非ず。然らば命あるものを老いさせるその"ぐれいとふるでっど"なる妖術が効かぬも道理よ」
「チッ、面倒くせー。主従揃って老化させちまえば楽にすむってのによォー」

ガシガシと頭を掻きながら、公園を後にする。
老人と化したマスターの死体を調べた所でわかるのは衰弱死した事だけ、プロシュートへ嫌疑がかかりようもない。
去り際に横目で眼前に広がる暗い海を見る。
昼、ここに訪れた時にも海を眺めたが、日本の海と彼の故郷に広がる地中海の美しさは比べるべくもなかった。


611 : プロシュート&セイバー ◆lb.YEGOV.. :2016/02/14(日) 23:03:22 O7XFCxas0

『栄光は……おまえに……ある……ぞ……』

この聖杯戦争の場に呼ばれる前の最後の記憶。
仲間の仇を討つために確保しようとした、ボスの娘を守るスタンド使い達との死闘と敗北。
朦朧とする意識の中、成長を遂げた弟分のペッシが追い込まれた所で、その記憶は終わっていた。
ペッシがどうなったのか。
ギアッチョは、メローネは、リーダーのリゾットは本懐を遂げて栄光を掴むことが出来たのかはわからない。
確実に、あの時に自分は死んだという自覚がプロシュートにはあった。
それが何故日本という行った事もない土地で記憶を失い、殺し屋稼業などをやっていたのか。
その疑問については、全てセイバーが教えてくれた。
望みを叶えるという聖杯を巡っての殺し合い。
参加資格はこの偽りの空間において本来の自身が何者であるのかを思い出す事。
望みを叶えると聞いて脳裏に浮かんだのは今はもういない仲間達と、どうなったのかもわからない仲間達の姿。
奇人変人ロクデナシ揃いのメンバーだったが、かけがえのない仲間でもあった。
復讐という路線を望まぬ形で途中下車させられた自分が、もし乗り直せるのならば。
死から甦り、ホルマジオやイルーゾォに加えて自分を殺したブチャラティ達、そして全ての発端であるボスに対して仲間の仇討ちができるのならば。
プロシュートに迷う理由など存在しなかった。

最寄りの喫煙所に立ち寄りプロシュートは紫煙を吐く。
江東区は条例によって歩き煙草が禁止されている為、渋々と狭っ苦しい場所で煙草を吸う羽目になってしまった。
何もかもが窮屈なこの国に対しイラつきを覚えながらも、一仕事終えた後の一服を楽しむ。
遠くから響くパトカーのサイレンを耳が捉えた。
先の戦いの死体が見つかったか、はたまた別の何かか。
連続殺人を皮切りに、不穏な空気が日に日に東京を覆っていっている。
本格的な戦争が近づいてきている事をプロシュートは嫌でも肌で感じていた。

(そういやセイバー、あのサーヴァントはお前の言ってた"ゲンジ"とかいう奴じゃなかったのか?)
(否だ。剛力無双の類いには心当たりこそあるが、彼奴めの獲物は長物か刀剣以外にはまずあり得ぬ。他所の英雄であろう)

霊体化しているセイバーに念話で語りかける。
思い出すのは初めてセイバーと遭遇した時の記憶。
セイバー、プロシュートに名乗った真名を平景清。
最低限の信頼関係を結んでおく為に、プロシュートは自分が聖杯にかける願いを伝え、その逆にセイバーが聖杯にかける願いを聞いた。

「一度死した後、平氏一門の仇を討ち、悲願を果たした我には聖杯とやらにかける願いはない」

故に、とセイバーが続ける。

「望みなき我が呼び出されたという事は"ますたぁ"、そなたの死してなお仲間の仇討ちを願う思いに我が引き寄せられたか、あるいは」

静かに語っていたセイバーの目に、突如として暗い殺意の光が宿った。

「この場に源氏に縁があるものが存在するかのどちらかよ」

外国人であるプロシュートには源氏や平家といったものがどういうものなのかは理解はできない。
だが、源氏とセイバーが口にした時の隠し様のない激情は、プロシュートら暗殺チームが見せしめとして殺されたソルベとジェラートを送られ警告された時にボスへと抱いた感情に似ている事だけは理解ができた。


612 : プロシュート&セイバー ◆lb.YEGOV.. :2016/02/14(日) 23:04:05 O7XFCxas0

「無論、確証はない。そも我が仇を討つことなく源氏が栄華を築きあげた、我の知る歴史とは異なるこの日の本。頼朝や義経めが別人の可能性とてあるだろう。
然れども、それが源氏を斬らぬ理由にはなりはせぬ。我ら一門が源氏に滅ぼされたという一点だけは変わらぬのだからな」
「つまり、テメーが殺さなきゃならない奴がいるからここに来たって訳か。サーヴァントってのになってまでご苦労なこった」

難儀なサーヴァントを引いたものだ、とプロシュートが内心で閉口する。
プロシュート達のボスへの反旗の一番の理由は仇討ちだ。
だがそれだけで終わりという訳ではない。
ボスを打倒した後に得られるであろう麻薬ルート。
それは冷遇され続けていた彼ら暗殺チームにとって莫大な利益を生む。
プロシュートらの行った組織への反逆は過去の精算と未来への希望が同居していたのだ。
だが、セイバーには未来という視点はない。
過去、自分を含む平家一門を滅ぼされたという悔恨の赴くままに、殺して、殺して、ひたすら殺すだけの道の先には役目を終えて消えるだけの虚無が待っているだけなのだ。
仮に源氏の者がいれば復讐心に駆られて暴走する危険もあるこの男を、その時が来た際にどう対処するか。
その時、そんな事をプロシュートは考えていた。

(まあ、そのゲンジとやらがいなけりゃ暴走する事もねえだろうし、仮にいたとしてもさっさと始末しちまえばいい話ではあるんだがな)

記憶の海から、思考を現実へと引き戻す。
暴走する危険性があるのならば、真っ先にそれを始末しさえすればいい。
マスターの殺害という点を鑑みれば自分の能力、そしてセイバーの耐久性の高さは噛み合っていた。
セイバーが時間を稼ぎ、老化によって相手のマスターを弱らせ始末する。最悪は直に触れるという奥の手もあった。
セイバーがその戦い方を是とするかに対しても、先程の襲撃において異を見せなかった事から一先ずは問題はないと結論づける。
吸い終わった吸殻をグリグリと備えつきの灰皿に押し付け、外に出た。
既にサイレンの音は止んでいる。
気だるそうに伸びを一つして虚空を見上げた。
今度こそ『栄光』を掴むのだ。
他の誰でもない、自らの手で。


613 : プロシュート&セイバー ◆lb.YEGOV.. :2016/02/14(日) 23:05:59 O7XFCxas0

【クラス】
セイバー

【真名】
平景清@源平討魔伝

【属性】
中立・中庸

【ステータス】
筋B+ 耐B 敏B 魔C 運C 宝A+

【クラススキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、
野獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】
勇猛:B
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

戦闘続行:C
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、死の間際まで戦うことを止めない。

仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力。
また、不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。
かつて"ぷれいや"なる者の布施にて復活し、戦い続けた逸話の名残。

魔力放出(風):B
武器、ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させる。
セイバーはこの力を用いて飛ぶ斬撃や、必殺・旋風剣といった剣技を放つ。

【宝具】
『八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)』
ランク:A 種別:対人 レンジ:0 最大補足数:1
装備しているだけで毒に類する効果を全て無効化する。真名を解放する事で後述の『神も悪魔も降り立たぬ荒野に』の発動条件の一つが満たされる。
源氏討伐の折に手に入れた三種の神器の1つ。

『八咫鏡(やたのかがみ)』
ランク:A 種別:対人 レンジ:0 最大補足数:1
装備しているだけで雷と竜巻による攻撃とそれに起因する副次効果を無効化する。 真名を解放する事で後述の『神も悪魔も降り立たぬ荒野に』の発動条件の一つが満たされる。
源氏討伐の折に手に入れた三種の神器の1つ。

『草薙剣(くさなぎのつるぎ)』
ランク:A 種別:対人 レンジ:0 最大補足数:1
筋力のステータスを倍化させる。この宝具は同ランク未満の攻撃およびスキル・宝具によっては破壊されない。 真名を解放する事で後述の『神も悪魔も降り立たぬ荒野に』の発動条件の一つが満たされる。
源氏討伐の折に手に入れた三種の神器の1つ。

『神も悪魔も降り立たぬ荒野に(源平討魔伝)』
ランク:A+ 種別:対人 レンジ:0 最大補足数:1
この宝具を除く全ての宝具を真名解放した際にのみ発動できる。全てのステータスを1ランク上昇し、源氏・妖怪・魔族・竜種に対する特効の付与および同ランク未満の蘇生・防御スキルを無効化する。
セイバーの所持する3つの宝具を解放する事でセイバーが魔の者に支配された日本を救った逸話――源氏討伐というあり得たかもしれない未来――を再現する。

【Wepon】
日本刀

【人物背景】

平家の武将。本名は藤原景清
平家の中でも剛の者として知られているが壇ノ浦の戦いにおいて源氏方に敗れ死亡。
その後、魔の者と結託し日本を闇に覆うとした源氏の所業を憂いた天帝の命により、黄泉の国より蘇る。
蘇生後は滅ぼされた平家一門の恨みを背負い、単身壇ノ浦から鎌倉まで源氏方との無数の戦いを潜り抜け、
道中手にした三種の神器を携えて源氏の頭領、源頼朝の討伐に成功し、役目を終えた景清はその身を花弁へと変えて消えていった。


614 : プロシュート&セイバー ◆lb.YEGOV.. :2016/02/14(日) 23:06:29 O7XFCxas0

【マスター】
プロシュート@ジョジョの奇妙な冒険 第5部

【マスターとしての願い】
蘇り、仲間とともに栄光を手にする

【能力・技術】
スタンド:ザ・グレイトフル・デッド
【破壊力: B / スピード: E / 射程距離: 列車一本程度は十分 / 持続力: A / 精密動作性: E / 成長性: C 】
半径200mの範囲に無差別に生命の肉体・精神・記憶を老化させる霧を放出する。
この老化効果は熱によって進行の度合いが変化し、対象の温度が低ければ低い程、老化は遅くなる。
スタンド使いであるプロシュート本人が直に相手を触る事によっても発動し、その際は急激に対象を老化させる。
またこのスタンドによってプロシュート本人の外見年齢を若者〜老人まで操作することが可能。
マスターには効果はあるが生命体ではないサーヴァントには効果がない

【人物背景】
イタリアンマフィア・パッショーネの暗殺チームに所属するスタンド使い。
チームの仲間が組織にボスに制裁を受け殺害された事から仲間と共にボスへの反逆を誓い、ボスの一人娘を手に入れる為に弟分のペッシと共にフィレンツェ行きの列車にのったブチャラティ一行を襲撃するも敗死する。
自分が死にそうな状態でもスタンドを解除しない強靭な精神力の持ち主であると同時に、目的の為ならば無関係の人間を巻き込む事も辞さない冷酷な心の持ち主でもある。
目下の人間への面倒見がよく、通称プロシュート兄貴。

【方針】
マスターらしき人物を見つけたら攻撃をしかける。
主従との戦いに関してはセイバーが前線を担当し、プロシュートのスタンドで相手を老衰による衰弱死に追い込む為の時間を稼ぐ。
騒ぎになって目をつけられる、あるいは対策を打たれないように人が大勢いる場所でのスタンド使用は極力控える。


615 : ◆lb.YEGOV.. :2016/02/14(日) 23:07:00 O7XFCxas0
以上で投下終了いたします


616 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/14(日) 23:14:10 Ic13bFfQ0
皆様投下乙です。感想は後日投下いたします。
大変申し訳ありませんがオープニングをもう一つ投下します。
4つと宣言したのにも関わらず増えてしまい申し訳ありません。
また、今回投下する主従は『二次キャラ聖杯戦争・聖杯大戦』で別酉で投下したものを一部使いまわしたものになります。
最後の投下終了宣言をその時使用した別酉でします。

それでは改めて投下いたします。


617 : ある規格外の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/14(日) 23:15:43 Ic13bFfQ0




薬になれなきゃ毒になれ。でなきゃあんたはただの水だ。








【聖杯戦争開始から2日経過。定時報告一部抜粋】

・現時点で召喚されたサーヴァントの解析は26%完了。
 ただし、アサシン/■■■とバーサーカー/■■■を含めた一部のサーヴァントに解析不備が発生。
 現在原因究明中。対処が完了次第、解析を急ぐものとする。

・聖杯戦争開始から48時間をもって聖杯戦争予選を終了。
 3日目より聖杯戦争本選を開始。

・本選開始通達は議会決定通り、サーヴァントのみに通達。通達者は■■■■■。

・予選終了次第、マスター候補の記憶封印プログラムを発動。



・聖杯戦争解析計画は次の段階へ移行する。








618 : ある規格外の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/14(日) 23:17:04 Ic13bFfQ0
【2日目 23:50:00】


「……ん?」

一人の少女は違和感に気づく。
彼女の自宅――所謂、マンションの一室は本の山。はっきり言って、足の踏み場もないほどの有様。
片づけられない系ではなく、本の置き場を失っている状態……なのかもしれない。
もはや彼女にとって汚れているとか、整理整頓されているのかの定義は曖昧だ。

「んー」

そもそも、彼女はどの本がどこにあるのか把握しているのだろうか?
否、問題はそこではない。
積み重ねられた本の山が芸術品かと思える光景に、違和感を覚えているのは確かだった。
一体どこに違和感が?
絵本の間違い探しの方が断然マシな程に、違和感の正体を掴むのは困難を極める。

違和感は気のせいではないか?
彼女も最初はそう感じた。
何か重要な事を忘却していると思えてならない。何かとは、なんだ。

「そうか」

少女――神原駿河はようやく疑問を解決をさせる。
感じていた違和感とは、やはり『本』だった。

例えの話をしよう。

話題の連載漫画を購入する際、一巻から最新巻まで一気に購入するのは至極当然の話だろう。
しかしながら、何の脈絡のない中途半端の巻から購入することは早々あるまい。
訪れた本屋で一部の巻だけなかったので仕方なく、などの可能性は無いと断言できる。
何故ならば、神原駿河は目的の新刊が発売された日には得意のBダッシュで、店舗に驀地だ。
そして、彼女の『本』に対する違和感とはシリーズものの作品の一巻だけが抜けているという異常。

そしてこれが一番――最も重要かつ異常たる事実なのだが。
神原駿河の部屋にある『本』の全ては『BL本』である。

ブラックリスト、略称ではない。
ボーイズラブ、の略称である。

神原駿河は

レズでBL好きな腐女子でネコで受けでロリコンでマゾで露出狂で欲求不満な女子。

つまり――――変態だ。

「これは……まさか空き巣にでも入られたのだろうか?」

『BL本』を盗む空き巣とは、むしろ腹を割って語り合いたいと駿河は思ってしまう。
だが、盗みは犯罪だし。
そもそもシリーズ本一巻のみ盗むのも変な話だった。
最新巻もまとめて一気に盗んで売った方が、まだ金になるのでは? とすら疑問を抱く。
第一、元より駿河の部屋はBL本で乱雑しており、空き巣も何がどこにあるのか途方に暮れた……のかもしれない。

BL本を盗んで売ろうにも、売る場所を選ぶ必要のある本を盗むのもどうなのだろう?
空き巣がBL本を普通の本と勘違いした可能性もなくはない。
それだと逆に、盗まれた方が申し訳ない気持ちになるレベルの話だった。

「通帳などは盗まれていないな……」

通帳、カード、現金。ついでに食料や衣服にも手はつけられいない。
本当に空き巣に入られたのだろうか??
駿河は記憶を辿る。
紛れもなく、内容はうろ覚えではあるが、なくなってしまった本は手にしたし、読んだこともある。
これは絶対だった。
勿論、買った記憶も―――………


619 : ある規格外の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/14(日) 23:18:19 Ic13bFfQ0

「ある。いや、違うような。ええと――」


【23:59:43】


「買った記憶は確かにある」


【23:59:46】


「しかし、ここではないような気がして」


【23:59:52】


駿河はある事実を思い出した。
第一巻を買ったのは『ここ』ではなかった。だから第一巻など最初から『ここ』にないのである。
駿河は、祖父母の家に住んでいたはずだと。マンションで一人暮らしなんてしていない。
そして――







【24:00:00】







「………なんだったのだ?」


少女は何を思い出そうとしたのか、結局分からず終いだった。
時計を見ればもう深夜0時を回っているではないか。
連続殺人鬼がいようが問答無用に学校は授業を行う残酷な現実である。
もう寝ようと、本を片づけ、スペースを作ろうとしたところで――少女はある異物を発見する。

天井に妙な靄が出現していた。
どろどろとした黒い、闇そのもののようなドス黒い瘴気のようなもの。
非現実で、異端で、禍々しいそれを目撃した少女は再び繰り返す。

自分は何かを忘却している。


【3日目 00:10:37】


靄から青白い火花が散る。

少女は大切な記憶を取り戻した。
何故、そんな些細で重要で心臓であり、少女にとっては空気ほどの価値のある存在を忘却していたのか。
自分自身に呆れかえるほど、少女は言葉を失った。
洪水の如く記憶が溢れ返る。


戦場ヶ原ひたぎ。


少女――神原駿河にとっては大切すぎる人物だった。



【00:13:11】



天井に留まっていた黒い靄が一気に拡大し、そこから何かが現れる。
あまりのことに駿河は茫然とするしかない。


空から女の子ならぬ、天井から男が降ってきた。


まるで戦国武将を連想させるような格好をした男は、部屋から溢れ出そうなほどある本を木の葉の如く舞い上げ
数多の本を土台のように踏みつけ着地を果たす。
眉間にしわを寄せ、不愉快そうに男は駿河を見降ろしながら問う。

「よくもまぁ、中途半端な召喚をしてくれたな。お前が俺のマスターか?」

「―――すまん。状況がサッパリだ」

如何なる状況であっても神原駿河は迷いなく、正直にありのままの事実を答えた。


620 : ある規格外の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/14(日) 23:19:26 Ic13bFfQ0




深刻なエラーが発生。至急、対処せよ。






「貴様は魔術師でもなければ、ただの人間。聖杯戦争を知らないだろう」

「今、酷く物騒な単語を聞いてしまったような気がするのだが――」

唐突に出現した、明らかに不審な男相手に駿河は平然と話を続けていた。
男はマンションのベランダから外の景色ばかりを眺め、駿河は首を傾げる。
自分自身の状況を全く理解していない。
何故、祖父母の家ではなくマンションで一人暮らししている設定になっているのか?
そして、どうしてこの『東京』におり、ここには『戦場ヶ原ひたぎ』がいないのか。

駿河は全てを知らない。
対して、この男はどこまで知っているのだろう。

男は漸く、駿河と視線を合わせた。その瞳が奇妙な模様だった気がする。
気がしただけで――やはり、普通の瞳であった。

「戦争だ」

男の答えに駿河は唸る。

「私の方は戦争に巻き込まれる理由が皆目見当つかない。それに何故、私はここで住んでいる事になっているのだ?」

「そうした方が都合がいい。この戦争を始めた輩が、そう考えただけだ」

「戦争を……始めた。確かに、切っ掛けがなければ戦争でなくとも始まらないな。
 とはいえ、戦争なのにまだ静かすぎるのは疑問にするべきなのだろうか?」

すると、男は鼻先で笑う。

「なんだ。他の連中は何もしていないと」

「いや、待って欲しい。最近出没した殺人鬼。あれも戦争と関係あるのか?」

「――間違いないだろう」

今、東京都内を恐怖の渦に陥れている刺青の殺人鬼。
あれもまた『戦争』の関係者であると知った駿河は、少しだけ顔を強張らせる。
要するに『戦争』とやらは既に開始されており、自分はそれに巻き込まれてしまっていた。


621 : ある規格外の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/14(日) 23:20:11 Ic13bFfQ0
男は、再び話し始める。

「ここにいる人間は大方造りもの……俺が柱間の細胞でつくったものよりは出来が良いが、中身がまるでないな。
 底の知れた模造品だが、連中にとってはその程度で十分という訳か」

「またもや衝撃的な事実を聞いた気がするのだが、それは置いておくとしよう。
 率直に私は誰も殺したくないし、死にたくもない……傲慢だが生きて帰らなければならないんだ。
 私はどうすればいいのか教えて欲しい」

駿河の嘘偽りない言葉に、男はしばし沈黙していたが。
何か思い詰めてから話を続ける。

「俺を召喚し、眠りから妨げたお前を殺そうと思ったが――運が良かったな」

「うん?」

これまた爆弾投下に匹敵する告白をする男だが、駿河はちゃんと聞く事にした。

「この戦争は仕組まれたもの。
 魔術師によって行われる聖杯戦争を、お前のような素人にやらせる時点で
 全うに聖杯戦争など行う気が更々ないと、俺でなくとも分かるはずだ」

「成程。本来は魔術師が行う戦争、ということなのだな」

「戦争で何かを企む存在がいる」

「物語的な立場では黒幕という奴か!」

「奴らが何を企んでいるかは知った事ではない。だがな」


―――俺は、演舞が嫌いだ。


神原駿河が召喚したこの男。否、サーヴァント。
かつて神の掌によって踊り続けた哀れな操り人形でしかなかった男。
それでいて、一族の中では最強の伝説を作り上げ、死してもなお恐れられるほど存在。
一人の男が、ハッタリで彼の名を名乗っただけでも「あの男が生きているかもしれない」と大国が動いた。
復活を果たし、その最中に行われた戦争は歴史に大きく刻まれた。
再びそこで息絶えたが、彼の思想に共感する存在が現れた。
それほどの男だった。

しかし――神の掌で踊り続けた男は疲れ果てた。
深く長い眠りを望んでいた。

それ故に、男は言う。


「掌で踊れと命じるこの戦争の全てが気に食わん。今はお前に手を貸してやろう」


踊らされたからこそ、踊れと神が嗤うようなこの『聖杯戦争』が不愉快でしかなかった。
ただ、それだけ。
ちっぽけで、どうしようもない理由。
それでいて十分すぎる動機。

男の言葉を全て聞き終えた者は、どのような感情を抱くのだろうか。
少なくとも神原駿河はこう思った。


――なんて最高に回りくどいデレなんだ!!!


さっきまでシリアスをやっていたのが馬鹿らしくなった。


622 : ある規格外の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/14(日) 23:20:53 Ic13bFfQ0



記憶封印プログラムは正常に作動しております。

記憶封印プログラムは正常に作動しております。

記憶封印プログラムは正常に作動しております。





記憶封印プログラム作動時刻 【2日目 24:00:00】【3日目 00:00:00】

記憶封印プログラムは正常に作動しております。





「まずは自己紹介といこう。神原駿河だ。得意技は二段ジャンプとBダッシュだ」


「お前に真名を名乗るつもりはない。『アヴェンジャー』と呼べ」





イレギュラー発生。

現在原因究明中。


観測の結果、対象を捕捉。


サーヴァント解析中………





【至急対応事案を監視者に通達】
アヴェンジャー/うちはマダラとマスター・神原駿河を監視せよ。






Fate/Reverse ―東京虚無聖杯戦争―  【三日目より本選開始】


623 : ある規格外の話 ◆3SNKkWKBjc :2016/02/14(日) 23:21:56 Ic13bFfQ0
【クラス】アヴェンジャー
【真名】うちはマダラ@NARUTO
【性別】男性
【属性】秩序・悪

【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:A+ 魔力:B 幸運:C 宝具:B


【保有スキル】
忍術:A
 基本的な術(影分身など)、炎の術(火遁)を使うスキル。
 (漫画本編で使用した技は全て使用可。ただし『柱間細胞』『輪廻眼』ありきの技は使用不可)

気配遮断:A
 自身の気配を消す能力。
 完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。

戦闘続行:B
 往生際が悪い。
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、致命的な傷を受けない限り生き延びる。


【宝具】
『万華鏡写輪眼』
ランク:B  種別:対人(自身)宝具 レンジ:-
 写輪眼と言われるうちは一族の特異体質。その中でも最高位である永遠の万華鏡写輪眼。
 再現可能な技術であれば一度見るだけで模倣することが可能。
 同ランクの幻術、千里眼のスキルを保有しており、幻術は同ランクの対魔力や精神干渉系のスキルで抵抗。
 または、アヴェンジャー本人から解除して貰うなどしなければならない。
 他の魔眼、及び幻惑効果から逃れる効果も含まれている。魔術的な隠蔽は、この眼では意味を成さない。

『須佐能乎』
ランク:B~A+  種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大補足:500人
 術者を中心に展開される異形による防御壁。注ぐ魔力により形態が変化する。
 太刀や勾玉などの武器を生成する他、ランクDの対魔力のスキルを発揮させる。
 例え破壊されたとしても必要量の魔力さえあれば即座に展開できる。
 ただし、封印術以外の呪いなどに対する耐性は皆無である。

『力で人を束ねよ』
ランク:EX 種別:対人(自身)宝具 レンジ:? 最大捕捉:1人
 忍の始祖たる六道仙人の二人の息子の兄・大筒木インドラの思想。
 アヴェンジャーの在り方を象徴するもので、これをスキルや宝具を以てしても覆すことは不可能に近い。
 常時開放宝具だが、本来あるべき効果はほぼ失われており、形として残されている。
 仮に効果を発揮する場合があるとすれば、インドラの弟・大筒木アシュラの魂を引き寄せる。
 もしくは―――[削除済み]


【人物背景】
神の掌で踊り疲れた男。
それ故、この聖杯戦争があまりにも彼の嫌悪するものだった。

中途半端な召喚によって本来持ち込める宝具やスキルを失っている。らしい。





【マスター】
神原駿河@化物語

【マスターとしての願い】
???

【能力・技能】
運動神経が良い。

彼女の左腕には『レイニーデビル』が取りついている。
噂話にあるような『猿の手』を真似た悪魔である。
3つの願いを叶え終えた時、その人間の生命と肉体を乗っ取る。
彼女はすでに2つの願いを叶えた。つまり――

【人物背景】
猿に願った少女。
先輩である戦場ヶ原ひたぎ。
怪異に苦しむ彼女の手助けになろうとした矢先の参加となる。


624 : ◆QNxvmG91pc :2016/02/14(日) 23:24:59 Ic13bFfQ0
投下終了します。
今作は二次キャラ聖杯戦争・聖杯大戦様で投下させていただいた神原駿河&アサシンのステータス等を使いました。


625 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/14(日) 23:26:30 Ic13bFfQ0
非常に紛らわしいですが、改めて投下終了です。
確定枠が一つ増えてしまいましたが、採用数に影響はありません。


626 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 00:18:21 KZBO7iJc0
>>598
被ってしまったようで申し訳ないです。

別所で投下した作品の流用ですが、投下します。


627 : 明智健悟&ランサー ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 00:18:47 KZBO7iJc0



 それは、昨夜の事だった。


「問おう。――貴公が私のマスターか?」


 ブロンドの髪が靡き、優雅な容姿の中に勇猛な意思を遺した瞳が、「彼」のプライベート空間で、「彼」の事を睨んだ。
 麗しき海賊娘のサーヴァント――ランサー。
 彼女の手には、戦斧――ハルバードが握られ、その切っ先は、未だ憮然とするマスターの前に構えられる。
 それが、自らのマスターが刃を前に立てる覚悟ある人間なのか試す意味で突きつけられたとは、まだこの時、当のマスターも知る事はなかった。
 いや、はっきり言って、「彼」は自分がマスターたる自覚さえ持っていなかった。こうしてめぐり合わせたのは、不幸な事故による物なのである。
 どこから不審者が侵入したのか、などと悠長な事は考えられず……ただ、滅多な事では冷静さを失わない「彼」でさえもその時は、口を開けて呆けた程だ。


「……答えられないか、東洋人。
 ならば、貴公に如何なる意思があり、私が呼ばれたのか――」


 まだ憮然として、言葉を忘れていたマスターに向けて、ランサーは問おうとする。
 しかし、突然に現れた少女にハルバードを向けられて、まともな人間が狼狽しないわけがない。
 たとえ、優雅で華麗な――ここにいる警視庁の天才警視であっても、それは変わらなかった。
 彼は、呆然としたまま、少女の現出を「信じられない」といった表情で見続けた。
 命の危険も内心には感じている事だろう。


「――今から、試しの一戦で、教えてもらおうではないか」


 それから、少女は自分の脇のテーブルに少し目をやってから、言った。







 ――――早朝。



 芳醇な豆の香りが、都内の高級マンションの一室に充満していた。
 染み一つない豪奢なチェアに座りながら、些か横柄な態度でコーヒーを口にする金髪碧眼の少女。

 ――それが、昨夜、「ランサー」のクラスのサーヴァントとして顕現したグリシーヌ・ブルーメールであった。
 かつては、巴里華撃団の一員として都市の平和を支えた五人の乙女の一人にして、巴里を支える富豪の令嬢であった女性だが、今は彼女も一人のマスターの使い魔である。
 つまりは、人を使う立場から、使われる立場になったという筈である。

 とはいえ。
 こうしてマスターの淹れたコーヒーが目の前に置かれるのを座して待っている姿からは到底そんな力関係は推し量れないだろう。
 まるで、サーヴァントこそが主で、マスターはそれに使える執事か小間使いのようにさえ見えてしまう。
 幸いなのは、そのマスターも色素の薄い髪と美しい相貌で、高級なスーツを着こなしている為に、ランサーと対等の貴族がコーヒーを振る舞っているように見える、という事か。
 知らない人が見れば、美男美女のカップルであり、家庭的な「主夫」がコーヒーを淹れてやっているように見えなくもない。
 ランサーは、ウェッジウッドのコーヒーカップをソーサーに置き、目の前の男にコーヒーの率直な感想を言う。


628 : 明智健悟&ランサー ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 00:19:10 KZBO7iJc0


「貴公も、なかなか美味いコーヒーを淹れるではないか。――アケチ」


 マスターである男の名は、明智健悟と言った。
 一体、どんな仕事に就けば、これだけ格式高いマンションで一人暮らしを満喫できるのだろうか――というのは、多くの人の好奇の的だろう。

 実を言えば、明智は警視庁捜査一課の警視なのである。
 二十八歳で警視の役職に収まる事から想像できる通り、彼はキャリア組と言われる一握りのエリートの一員であった。
 それ故に、彼の刑事人生は「警部補」の階級から始まっている。そのシステム上、自動的に「警視」にまで昇格し、捜査一課に自由に口出しできる今のポストに収まっているわけだ。
 彼の実績と知能からすれば、将来的には、「警視総監」という最高役職も間違いないと断言できる。
 つまりは、この日本社会においての上層階級に位置する、「大金持ち」候補と言って差し支えない人間という事である。


「……ええ、ブルーマウンテンには少々拘りがありますからね」


 そんな明智は、丁度、コーヒーと共に食する朝食を運んできた所だった。
 薄らと焦げ目がついたクロワッサンの皿が二枚。
 これが右手の指の間に二枚とも挟まれており、もう一つの手には、伊万里の小皿が乗っていた。
 小皿の中身は、ランサーには推察の付かない黒い物体である。
 明智がそれらをテーブルに置いて、自らもチェアに座った。
 ランサーは待ちわびた朝食を眺める。


「……なあ、アケチ。一つ訊いても良いか?」

「なんでしょう?」

「このクロワッサンとブルーマウンテンはともかくとして、この黒い物体はなんだ?」

「塩昆布ですが、……それが何か?」

「………………それは、どういう組み合わせだ?」


 ランサーは苦い顔で明智を見ながら、ランサーはクロワッサンだけを手に取った。
 明智は、クロワッサンと塩昆布の組み合わせを全く可笑しいと思ってないようで、全く顔色を変えずにクロワッサンを手に取っていた。
 ランサーはそれだけでげっそりした気分になった。苦い顔でそれを見守る。

 常人があの組み合わせで朝食を食べたら、悪い化学反応を起こしてしまいかねない。
 現に、その光景が目に入るだけで、ランサーの目が渋くなる。
 この明智という男――「エリートであるのは良いが、少々変わっている」と、ランサーは思った。
 と、その時、明智が口を開く。


「……それにしても、貴女も、先日に比べると随分と態度が柔らかくなりましたね」


 マーマレイドをクロワッサンに付けているランサーに向けて、明智は言った。
 ランサーは向かいにいる彼を見たが、殆どランサーに目を合わせる事もなく、塩昆布をぽりぽりと食べ続けている。
 そんな彼に、ランサーは、やや自嘲気味な笑いを見せて、言った。


「――ああ、貴公との昨夜のチェスの結果は散々だったからな。
 あれで、私も少しは貴公の実力を知ってしまったわけだ」

「なるほど。チェスがきっかけ、と来ましたか……。
 ――それならば、貴女もなかなかの腕前でしたよ」


 明智は、昨日、ランサーと契約を交わす「マスター」として、ランサーと初対面をする事になった。


629 : 明智健悟&ランサー ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 00:19:27 KZBO7iJc0
 ランサーは、自らのマスターの力量によって、それに従うか否かを決定づけようとしたのだが、残念ながら、ランサーのハルバードと対等に戦える武器は明智の部屋にはない。
 部屋の脇を見れば、そこにはチェスのボードがあったが故、ランサーはそれを代わりの「勝負」としたわけだ。
 ランサーも生前、貴族の一員としてチェスを嗜んだ一人であり、彼女もまた、そのゲームの奥深さや実戦にも繋がる軍略的意義を熟知していた。
 そして、ある程度、会話を交わしながら行えるという点でも、相手の知能や性格を知るのに有用だ。


「尤も、あそこでポーンの使い方を間違えなければ、もっと良かった、と……そう思いますがね」


 で、その結果がランサーの敗北であり――明智のしれっとした「勝者ゆえの余裕」なのである。
 ゲームの最中は、二、三度、明智を長考させ、一時はランサーの優勢もあったはずだが、結果的には、ランサーはチェックメイトを仕掛け、明智のキングを取る事が出来なかった。
 それだけならまだ良いが、よりにもよって、こうして後から、ランサー自身も後悔した戦法を突かれるとなると、あまり良い気持ちはしない。
 明智に挑発の意図はないようだが、ランサーはこう訊かざるを得なかった。


「……なあ、お前、誰かにイヤミな性格だと言われた事はないか?」

「何故その事を――?」


 心底不思議そうに、明智はランサーを見ていた。
 この男が、「イヤミ」と言われるであろう事は、どんな人間でもよくわかる。
 おそらく、彼の部下などは、彼の素知らぬ所で、何度も明智の事を「イヤミ」と陰口を叩いているに違いない。
 ……何しろ、貴族階級であるブルーメールの一人娘がそう思った程なのだから。


「――」


 ……しかし、ランサーはそれをこれ以上考えるのは辞める事にした。
 自分のマスターの粗を探して得は無い。
 第一、自分が負けたという事は、純然たる事実に過ぎないのだ。


「――で、それはともかく、アケチ。今後はどうするかは決めたか?」


 少々、貴族らしからぬ粗野な座り方になる。その辺りに、明智の口振りへの苛立ちと、小さな反抗が感じられた。

 結局、昨日の対戦を終えても、明智の口から彼のスタンスについて訊く事は叶わなかった。
 昨日の時点では「まだ決まっていない」、「一日休んで、明日には答えを出す」、と聞いたはずであるが。
 それからしばらくして、クロワッサンを胃に収めた明智の口から、答えが絞りだされる。


「……ええ、そうですね。やはり、今朝はその話をしておきましょうか。
 今後の方針ならば、実は――この聖杯戦争というゲームに、否応なしに巻き込まれた瞬間から決めています」

「ならば、どうして私に黙っていた?」

「貴女の、チェスの戦略と――それから、今日の『敗者としての潔さ』を見る前……だったからですよ」


 褒めているのやら、嫌味を言っているのやらわからない口ぶりに、ランサーは黙りこむ。
 しかし、一応、当人は褒めている「つもり」なのだろう。
 少なくとも、彼は「グリシーヌ・ブルーメール」という英霊に一定の信頼を寄せたと言って良い。
 だからこそ、この初対面の彼女に、自らの信念と方針を語る気になったという事である。
 まるで試されたようで、ランサーにとっては少し癪であるが。


630 : 明智健悟&ランサー ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 00:20:02 KZBO7iJc0


「――おそらくですが、否応なしに巻き込まれた人間は、私だけではないでしょう」


 コーヒーを口にして息をつきながら、彼は少し前口上を始める。
 核心や結論からではなく、勿体ぶったような言い回しになるのは、さながら小説の中の名探偵のような話し方である。
 ……まあ、彼のこれまでの功績を知っている者ならば、その喩えもあながち、間違いでないという事もわかっているだろう。


「関係ない話になりますが、実は、私は何度か、殺人事件に巻き込まれた事がありましてね」

「……それは当たり前だろう、何せ、捜査一課の警視なのだから」

「──いえ。仕事の話だけではありません。
 高校時代も、大学時代も、刑事になってからも、私はいくつかの殺人事件に、行った先で“たまたま”巻き込まれた事があるんです。
 天から授かった性、とでも言いましょうかね。
 特に、私がロスにいた頃は、かなり多くの難事件に出会いましたよ」


 それは――明智という男の、ある種、先天的な死神的な性質であった。
 両親ともに刑事であり、天才的な頭脳を持った彼のもとには、何故か昔から常に「事件」が舞い込んでくる。信じがたい確率で、「殺人事件」という物に遭遇するのだ。
 彼が通っていた名門高校においても、少し立ち寄っただけの音大生の演奏会やフェンシング合宿、先輩の所属する大学の学園祭においても、その性質は拭い去られはしなかった。

 だが、明智にとって、その性質は、決して不幸ではない。
 許されざる犯罪と立ち向かう力を持った明智を、天がその場に呼んでいるのだと思ったからだ。
 少なくとも、明智には悪と立ち向かう知能や正義感がある。だから、人並以上に殺人事件に遭遇する性質を、恨んだ事はない。
 本当に不幸なのは――明智ではないはずだ。



「――しかし、事件に巻き込まれる人間というのは、常に……私だけではなかった。
 多くの一般人も、共に巻き込まれ、心に傷を残し、時として、あまりに残酷に命を奪われる事になる。
 事故も、犯罪も、そうですが、とりわけ私が見て来た『殺人事件』というものは……常に、そうでした」



 時には、犯罪などと無縁に生きる普通の人間さえも、人間は巻き込んでしまう――それが彼がよく巻き込まれる殺人事件だった。
 平和に生きていた人々が、凄惨な死体を目の当りにし、誰もが自分も殺されるのではないかという恐怖に苛まれる。
 そして――時には、殺されるのは罪人であったが、時には、何の罪もない人間が「凄惨な死体」とも成り果てる事がある。

 明智は、それを何度となく見て来た。
 それは、決してそういう職業に就いたからというだけではなかったに違いない。


「……この聖杯戦争も同じだと思いませんか?
 こうして魔術師でもない私が巻き込まれる『事故』が生じている以上、同じ『事故』に遭った人間は私だけではない。
 ――私には、そんな気がしてならないんです」


 明智は、経験上、そう、直感的に感じていた。
 推理、というには少々、理の要素は薄くも見えるが、一人が事故に遭っている以上、同じ事故が別の人間に対しても起こりうるというのは当然である。
 ランサーには、その推察と明智の今後の方針との結びつきは、まだ確信できなかった。
 ランサーは、目を瞑り、腕を組みながら、明智の推察に自身の答えを付け加える。


「確かに、いる、だろうな。……貴公以外にも、この聖杯戦争に意図せず巻き込まれた人間は」


631 : 明智健悟&ランサー ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 00:21:06 KZBO7iJc0

「ええ。私にとっても、これはただの予感ではなく、ほとんど、確信ですよ」

「――では、そういう者たちがいるとして、その者たちを、貴公はどうするつもりだ?」


 ランサーの目を見開いて問うた。
 すると、明智は、さして間を開けずに、それに答えた。


「無論、救える限り救い、この聖杯戦争から解放します。
 市民を犯罪や事故の手から守る事――それが、私たちの所属する『警察』という組織の務めだとするなら、尚更ね」

「……」

「……少なくとも、今の私には他者との闘争や、殺人の果てに得る願いなどない。
 いえ、仮にあったとしても……そこまでして願いを叶えたとして、その人間が幸せになれない事など重々承知しています」

 明智が、多くの殺人事件に巻き込まれて知った事は、ただ「一般人が巻き込まれる」という事だけではなかった。

 これまで、あらゆる憎しみや目的で殺人などの凶行に走った犯罪者たちを、彼は何人も知っていた。
 そして、それらの人間に共通していたのは、「決して犯罪によって幸せにはなれなかった」という事である。
 殺す為に誰かを追っている時はまだ、その先に降りかかる悲しい不幸と虚無感の事を知らないのだ。
 どうしようもない激情に身を任せ、殺戮という手段を選ばざるを得なかった者も――おそらくは、犯罪を行わない方が幸せだったに違いない。

 勿論、犯人たちの中には、それを覚悟の上で行っている者もいるのは知っている。

 ――しかし、その覚悟を持っている筈の犯人たちの中には、達成の後に、己の覚悟と裏腹な自傷を行う者も何人もいた。
 それから、復讐や目的の為に、罪もない誰かを意図せずして巻き込んでしまう人間もいた。
 下手をすれば、復讐そのものが誤解や間違いによる物で、その行為が何の意味もなさなかった人間もいた。

 だから、彼は、「犯罪を止める」、「復讐を止める」……という職務には、「法律や秩序の為」以外の理由があると思っている。
 その理由とは、自らの不幸に向かって滑り落ちている人間を止めてやる事に違いないのだ。


「……それに、こうして多忙な私を、わざわざこんな三流の茶番劇に巻き込んだというのも癪です。
 ――ですから、この聖杯戦争の元凶である『聖杯』などという物は、破壊するつもりです。
 ただし、勿論、私としても、巻き込まれた人間の救出が最優先で、聖杯の破壊は、二の次ですがね」


 そして、その為には、「聖杯の破壊」という――「願いを持つ誰か」にとって、冷徹にも見える手段も辞さない。
 たとえ、それがどんな願いであろうとも、彼は、その願いへの「希望」を絶つ事に、躊躇はしないだろう。
 それが彼の職務であり、信念に違いなかった。


「なるほど……。貴公の考えはよくわかった」


 まくしたてるように自身のスタンスを語り終えた明智を見て、ランサーは熟考する。
 明智の語りは、まるで、次の一言をランサーに告げさせる為の誘導なのではないか、という程に華麗であった。


「……貴公の掲げる方針には、私も最大限協力しよう――」


 そう、協力を表明するその言葉を──告げされる為の。


632 : 明智健悟&ランサー ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 00:21:23 KZBO7iJc0
 少なくとも、ランサーの物わかりの良さは明智も承知済であったし、こんな返答をする「誇り」が彼女の中に見出せるのもよくわかっていたのだろう。
 このランサーは中世的感覚にありながら、庶民というのを見下すような事は一切しなかったし、忌み嫌う東洋人をわざわざチェスで試し、敗北すれば誠実に接する姿も見せている。
 ランサーが、必ずこうして協力してくれると、明智は既に「推理」していたのである。


 ――しかし、次に、ランサーが告げる事になる言葉だけは、全く、明智の予想外であった。



「――由緒正しき……ブルーメール家の名にかけて! ――必ずな」



 ブルーメール家の名にかけて。
 これは、かのノルマンディ公爵より続くブルーメール家の名を背負ったランサーが、生前からして時として口にする言葉であった。
 確かにそれは、決して、明智のよく知る「あの少年」だけが使うような言葉ではない。
 彼女のように、名のある人間の血筋を受け継いだ人間ならば、確かに使っても違和感のない言葉である。
 しかし、やはり――その言葉で明智が思い出すのは、名探偵を祖父に持つ「ある生意気な少年探偵」の事であった。


「ほう」


 つくづく、奇妙な因縁を感じる事だ……と明智は思う。
 この台詞を聞くと、怜悧な明智も内心で少なからず燃え滾る心があった。
 これはもはや、本能である。
 彼への対抗意識だけは、この明智の中でもしばらく消える事はなさそうだ。
 もしかすると、「彼」も巻き込まれているだろうか。いや、流石に今回までも、それはないか。――などと考えながら。
 明智は、ふと、壁の時計に目をやった。


「――おっと、貴女と話していたら、もうこんな時間だ」

「出勤の時間か?」

「ええ。仕事の手を抜くわけにはいきませんからね。
 ……しかし、これだと今日の朝刊を読む時間はないな。――これは少し残念だ」

「安心しろ、私が目を通しておいてやろう」


 何が安心しろ、なのかわからないが、ランサーはそう言った。
 新聞は明智自身が読まなければ全く意味はないが、まあ、明智はそれで良しとする事にした。どの道、時間もない。
 折角、金を払って購読している新聞なのだから、せめて誰かに読んでおいてもらおうか、と。

 この現代の世相を知る事も出来るだろう。
 何せ、ランサーは、東洋の小国がある経済発展を果たした事さえもよく知らない時代からやって来たというのだから、役に立つに違いない。


「――そうですか。それでは、この家の留守もついでに任せましたよ。
 ランサー……いえ、やはりグリシーヌ・ブルーメールと呼んだ方がお好みでしょうか?」

「まあ良い。貴公の好きに呼べ。
 ブルーメールの名は、我が心にあれば充分だ。他者に呼ばれる事に拘りはない」

「……ふっ。良い心がけです。昼食は、ある物を適当に食べてください。
 ――それでは、行って参ります」

「ああ、くれぐれも、気を付けろ」


 明智は、「エーゲ海を思わせる青いベンツ」(←本人談)の鍵を手に取って、自分の部屋を去った。


633 : 明智健悟&ランサー ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 00:21:42 KZBO7iJc0



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 明智の住む高級マンションの一室。
 ランサーが昨日の夜に顕現した為、今はまだ、明智がランサーの住む為の「別の部屋」を借りていない為、明智とランサーは同じ部屋に同居している。
 あまり世間体が良くない、この「外見年齢十六歳前後の金髪少女との同居」は、まだ近隣住民にも知られていない。
 これだけの防音設備が整い、プライベート空間がキープされているのだから、ランサーが安易に外に出たりしなければ、しばらく知られる事もないだろう。
 ランサーは、これといって、部屋で何をするわけでもなく、明智に言われた通り、番人としてそこに居座り、そして、新聞を手に取っていた。


「トーキョー都、F市の高等学校の呪い……なになに?」


 何部かの新聞が届けられていたので、ひとまず、その中から適当に抜きだして取り出す。
 英字新聞もあったようだが、フランスの情勢ならば日本の新聞でも充分に知る事が出来るはずだ。
 この現在の日本――特に帝都や、フランス――巴里がどうなっているのか、どんなニュースが今話題なのか調べたい所だったが、ランサーが読んでいる記事は何やら妙な事ばかり書いてある。


「トーキョーに位置するF高校では、生徒たちが部室に使っていた音楽室の壁に骨が埋まっていて……。
 ――……放課後になると、『放課後の魔術師』が……儀式の為にあなたを呪い殺しに……」


 呪い? 現代日本は、そんな物がニュースに取り沙汰されているのだろうか?
 ……いや。
 やはり――これは、ニュースではない。
 ただの、「怖い話」ではないか。


「……」


 息を荒げながら、ランサーは新聞を読むのをやめる。

 手が震えている。
 唇も震えている。
 目が引きつっている。
 全身には、鳥肌が走っている。

 ……何気なく手に取った新聞にあったのがこんな記事とは、不運だったと言えよう。
 明智の愛読する「恐怖新聞」は、ランサーの手によって、地面に叩きつけられた。


「――ふざけるなぁぁぁぁぁぁっ!!! な、……なんだ、この心臓に悪すぎる新聞は!!!!!!」


 彼女は、この時、まるで自分自身も「英霊」の一人であるという事を忘れているようだった。

 明智は、社会情勢や各国の事件を知る為に幾つもの新聞を購読しているのだが、実は、その中に一つだけ、彼の趣味と思しき「恐怖新聞」が混じっているのである。
 よりにもよって、彼女はそれを引き当ててしまったらしい。

 二度と新聞など読むか! ――と怒り、ランサーは新聞を全て纏めて片づける。
 未だ、部屋に一人という状況には、言い知れぬ恐怖と、奇妙な気配や錯覚が襲い掛かるが、それはやはり全て気のせいだろう……。


(くっ……! とんでもない男に引き当てられてしまったようだな、私は……)


 そして――彼女は、明智健悟という男がまごう事なき「変わり者」である事を、再び心に留めたのだった。


634 : 明智健悟&ランサー ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 00:22:14 KZBO7iJc0



【CLASS】

ランサー

【真名】

グリシーヌ・ブルーメール@サクラ大戦3〜巴里は燃えているか〜

【ステータス】

筋力B 耐久C 敏捷D 魔力A 幸運D 宝具C

【属性】

秩序・善

【クラススキル】

対魔力:C
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】

霊力:A
 ランサーが魔力の代わりに持つ力(実質的に魔力と同様の性質を持つが名称だけ異なる)。
 このスキルによって宝具『霊子甲冑』を操る事が出来るようになるほか、感情の高ぶりなどで筋力・耐久・敏捷のパラメーターを一時的に上昇させる事も出来る。

黄金律:B
 人生においてどれほどお金が付いて回るかという宿命を指す。
 Bランクは永遠に尽きぬと思われる財産を所有している。

勇猛:B
 威圧、混乱、幻惑といった精神干渉を無効化する。
 また、格闘ダメージを向上させる。

貴族の誇り:A
 ノブレス・オブリージュの精神。
 彼女の場合、高貴に振る舞う義務を全うし、庶民を守る為には時として汚水に浸す覚悟も持ち合わせる。

【宝具】

『霊子甲冑』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:1〜10人
 高い霊力を持つ者だけが操る事が出来る鎧のようなメカ。
 一見すると搭乗型巨大ロボットのようでもあるが、その性質上、騎乗スキルの有無に関わらず使用可能であり、ランサーもこれを手足のように自在に操る。
 生前のランサーが光武F、及び光武F2の二機を操った伝説に基づき、この二機のいずれかを選択して現界させて戦う。
 この『霊子甲冑』を纏えば、筋力・耐久のステータスがAランクやA+ランクまで上昇し、魔族・魔物・魔獣などの怪物や巨大な機械などとも互角の戦闘を可能にする。
 しかし、一方で敏捷のステータスがEランクまで下降する。まさに甲冑の如き宝具である。
 ランサーの特性に合わせて、光武Fでは手斧と盾、光武F2ではハルバードを装備している。
 ランサーが持つ斧の技も、この宝具の発動中は威力が増す事になる。

【weapon】

『ハルバード(ブルーメール家専用)』
 後の逸話でもその名は残っていないが、ブルーメール家に伝わるハルバード。
 この武器の特性上、切っ先が槍状になっており、これが「ランサー」としての彼女のクラスを決定づける事になった。
 しかし、実質的には殆ど、斧としての使い方しかされない。


635 : 明智健悟&ランサー ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 00:22:38 KZBO7iJc0

【人物背景】

 1926年、フランス・巴里で発生した謎の怪人によって頻出した怪事件に対抗する為、秘密裏に結成された都市防衛組織・巴里華撃団花組の隊員。
 由緒正しきノルマンディー公爵家の血脈を受け継ぐブルーメール家の令嬢で、非常に高貴な身分と、それに見合った誇り高い性格で、女性としては勇ましい。
 東洋人に対しても差別的な感情を示す事なく、相手が貴族であれ、庶民であれ、彼女が認めるのはその人間の持つ「誇り」。故に、都市を守る強い意志を持った大神一郎には魅かれ、北大路花火は友として認めている。
 こう見えて、実はかわいい物が好きであり、野うさぎを見た時に思わず素が出た事も。反面、ゲテモノ嫌いでタコが大嫌い。
 また、巴里華撃団の表向きの姿は舞台「シャノワール」である為、その踊り子「ブルーアイ」としても活躍していたとされる。

【サーヴァントとしての願い】

 聖杯の破壊。
 ただし、マスターを聖杯戦争から脱出させる事を最優先。

【基本戦術、方針、運用法】

 やはり白兵戦での一対一が得意な正統派のランサー。
 宝具は3m大の搭乗型ロボットであるものの、そちらもちゃんとハルバードを装備しており、手足のように操れるので安心。ただし、この場合、攻撃力や耐久性が上がっても、敏捷性が失われる為、逃走のリスクが増してしまう。
 生身でもそこそこ強いにせよ、宝具の使いどころを見誤らないよう、生身の状態と宝具とを上手に使い分けるしかない。
 追うべきタイミングで宝具を纏ったり、強敵との戦闘で宝具を身に着けなかったり……という齟齬が起きないように、気を付けて運用すべし。


636 : 明智健悟&ランサー ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 00:22:53 KZBO7iJc0





【マスター】

明智健悟@金田一少年の事件簿

【マスターとしての願い】

 巻き込まれた人間たちと共に、聖杯戦争からの優雅なる脱出。
 余裕があれば、華麗に聖杯を破壊する。

【weapon】

『警察手帳』
 彼の身分を証明するもの。
 普段は警察官として勤務する為、その装備は所持できるが、私的理由で銃を携帯する事は当然許されない。
 とはいえ、彼は捜査一課の刑事で捜査権も作中描写では、かなり広い(現実ではまず考えられないレベルだが気にしちゃ駄目)為、基本的に現場での仕事では銃も携帯する。

【能力・技能】

 東大・法学部出身。キャリア組のエリート警視。警視総監賞の最年少受賞者。
 法学部出身の為、司法試験にも受かっていたが、それでも警察に入った。
 幼少期は神童と呼ばれ、後には県下の名門高校・秀央高校に入試にて全教科満点で合格し、特Aクラスに入る。
 その在学中に殺人事件を一件解決しているほか、大学生時代、警部時代、ロス市警時代、警視時代といずれも多くの事件を解決している。
 その推理力は主人公である金田一一(IQ180で名探偵の孫)と双璧を成し、彼に無い知識や一般常識を多数有している為、総合的な能力では明智に分があるはずなのだが、彼ほどの柔軟性は持たないのが欠点であり、大抵は彼に推理で互角もしくは負けている。

 趣味・特技は、現在判明している限り、以下の通り。

・テニス(国体級の腕前)
・スキー(国体級の腕前
・バイオリン演奏(トップクラスの音大生で編成される楽団の演奏会でバイオリニストの代役を務めている事が出来るレベル)
・フェンシング(大学生チャンピオンに一泡吹かせる事が出来るレベル)
・乗馬
・チェス(チェスの世界選手権で決戦まで行き、世界チャンピオンを打ち破ったコンピュータに完勝)
・ポーカー(本人曰く、「賭け事は苦手」だがポーカーをすればほぼ全勝できる)
・プログラミング
・ハッキング
・社交ダンス
・登山
・ソムリエ ← New!

 習得言語は、判明している所で、英語、フランス語、ドイツ語、広東語。
 幼少期には釣りをしていたような描写もあり、高校時代はミステリ好きだった事も明かされている。
 大学時代は塾講師のバイトで、「受験の神様」と呼ばれたとか。
 あと、旅客機やセスナ機が操縦できる(これは読者にも散々ツッコまれたが、作中で出来る物は出来るんだから仕方ない)。
 射撃も正確。

 要するに、「ハワイで親父に習った」的なノリでだいたいの事はできる。上記の設定以外のスキルもこなせちゃっても多分問題ない。
 しかも金持ちで、ベンツが愛車。家賃ン十万の高級マンションで過ごしているらしい。
 ただし、普段はおでんの屋台など、やたらと庶民的な場所の常連という面もあり、金田一家での朝ご飯もベタ褒めしている。
 更に容姿端麗で、高校時代もモテモテだったが、明智少年はあまり相手にしていなかった模様。
 それから、ロス時代にはパツキンの恋人がおり、若い男性刑事が明智の流し目で思わずドキッとする描写などもある。

 という事で、早い話が人間の皮を被った超人。
 ……彼にできない事といえば、コンタクトレンズを嵌める事と、ゴキブリ退治と、金田一少年に推理で勝つ事。
 あと、多少、凡人の感情に疎い面があり、金田一が一瞬で推理する事が出来た明智の親友の心情を、何年も汲み取れなかったという場面もある。
 多少天然で、「トイレにスーツやワイシャツが置いてあり、朝はトイレで着替える」、「朝ごはんの組み合わせがブルーマウンテンとクロワッサンと塩昆布」、「英字新聞と恐怖新聞を愛読」などの常人には理解し難い一面も。
 ジャンル的なライバルの江戸川コナンくんに会った時も、彼の正体に気づいた素振りを見せながらも、最終的に、「神童と呼ばれていたかつての私にそっくりです」という結論に至り、コナンくんには呆れられていた(金田一はコナン=工藤新一説を一回考えてやめたが、明智はそんな事考えてもいない)。

【人物背景】

 以上のように、存在そのものがイヤミ。【能力・技能】の欄でだいたいの事が解説出来るくらいイヤミ。
 大気中のイヤミを集めて、命を吹き込むと明智警視が華麗に誕生する。
 ただし、間違えても、「雪夜叉伝説殺人事件」を読んで彼を把握しないように。

【方針】

 自分以外の巻き込まれた人間も探し出し、聖杯戦争から華麗なる脱出。
 また、その後、余裕があれば優雅に聖杯の破壊も行う。


637 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 00:23:13 KZBO7iJc0
投下終了です。


638 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 17:17:47 KZBO7iJc0
別所の再利用ですが、投下します。


639 : 芽兎めう&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 17:18:26 KZBO7iJc0





 ――バイストン・ウェルの物語を、覚えている者は幸せである。





 ――私達はその記憶を記されて、この地上に生まれてきたにも関わらず、思い出すことのできない性を持たされたから。





 ――それ故に、ミ・フェラリオの伝える次の物語を伝えよう……。





◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 ……電車の走る音が、彼の頭の上を過ぎ去った。
 真上で二つの電車がすれ違っているのを感じた。
 ――多くの人の意思が頭上を通り過ぎ去っていく。

 そこは、電気街から少し外れ、一見のどかにも見える野原が近い場所だった。
 洞穴のように広い、トンネルの下である。トンネルの上は、そのまま線路が作られ、そこを電車が通っているらしい。
 光は太い壁のせいでほとんど通わず、左右の端にだけ巨大な真昼の光が差していた。
 まるで前衛アートのような解読不能のラクガキが、トンネルの内壁に大きく描かれているのが、その光のお陰で目に入った。
 どこかジメジメとした場所が、彼が今、英霊として顕現した地であった。


「聖杯戦争、か……」


 ――ショウ・ザマは、「ライダー」のサーヴァントとしてこの聖杯戦争に顕現した。
 かつて、平和と己の正義の為に戦い、バーン・バニングスの怨念を絶ち、シーラ・ラパーナによって浄化された地上人……それが、この男ショウ・ザマである。
 元々は、一介の地上人でしかない彼が「伝説」へと変わったのは、地上にただ一人残ったミ・フェラリオが地上の人々に伝えていった「バイストン・ウェル」の物語の恩恵であった。
 伝えられた伝説は時に脚色され、人の意思は彼の持つ「オーラ力」と呼応し合う――。

 そして――その果てが英霊の座、なのであった。
 人々に伝承された存在となったショウは、英霊としての資格を得てしまったのである。
 バイストン・ウェルに導かれ、転生まで果たしたはずのショウであったが、その洗い流されたはずの魂にさえ安息はなかった。
 こうして魂を英霊の座に送りだされ、聖杯戦争に呼ばれてしまったショウのもとにあるのは、新たな戦争である。

 平和は、この時もまた打ち壊されようとしている。だから、また、剣を取らねばならない。
 聖杯戦争という災厄が、人の手によってこうして、また地上に戦火を移そうとしている……。

 ショウは己が英霊として置かれた状況に対して、憤りを拭えなかった。


「俺の生きていた頃と、何が違うっていうんだ……。
 ……俺たちが、マーベルやニーが、命をかけてやってきた事は!」


 大事だったはずの仲間たち――マーベル・フローズンやニー・ギブンも。
 怨念に取り憑かれながら自らを襲ってきた者たち――トッド・ギネスやバーン・バニングスも。
 戦争の為、あらゆる者が散っていくあのバイストン・ウェルの戦争を記憶の片隅に残しているからこそ、ショウは激しい怒りを胸に抱いていたのであった。

 いや、しかし、戦争はおそらく永年に続くだろう。それはショウも知っている。
 もはやそれは人類が消し滅ぶまで変わらない世界の仕組みであり、人間の精神構造から生まれる災厄だった。

 問題は、異界の戦争が地上へとその火の粉を散らそうとしているという事である。
 この聖杯戦争も、そういう意味では、かつての戦争と似通っていた。
 ――故に、彼はこの聖杯戦争を、耐えがたい程に嫌悪したのである。


「英霊の戦争が地上に怨念を振りまくという事が、人々にとって、一体何になるというんだ……!」


 ……と、彼が怒りに声を荒げ、トンネルに反響させたそんな時である。


640 : 芽兎めう&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 17:18:44 KZBO7iJc0


 ……と、彼が怒りに声を荒げ、トンネルに反響させたそんな時である。

 一人熱を上げるショウの傍らで、桃色の髪の小さな少女が首を傾げながらショウの顔を見上げている――それが彼の傍らで目に入った。
 小学生くらい、だろうか。……全てピンクで揃えた幼い服装からしても、それらしい感じがする。
 頭の上で兎の耳を立てているかのようなヘッドフォンも目立ったが、小学生らしいファンシーなアクセサリーの一つだろう。


「あのっ……お兄さんは、誰めう? ここは――」


 見た所、ショウの周囲には彼女しかいない。
 そして、彼女からは殆ど邪心を感じなかった。
 ここを通りすがる人間はいても、こうしてずっとショウを見つめているのは彼女だけだ。
 ショウは、彼女の問いを無視して問う。


「――ん? 君が俺のマスターなのか?」

「ますたー?」

「……マスター、名前は?」


 ショウは、彼女が自分を呼び出したマスターであろう事だけは即座に理解し、ひとまず彼女の名前を訊いた。
 対する少女は、ショウが何者なのやらさっぱりわかっていないようで――しかし、これから自分の運命と密接に関わる人間であるのをどこかで予期しながら――彼と不思議そうに言葉を交わしていた。
 彼女も、自分が置かれている不可解な状況については、少なからず理解しているのかもしれない。


「えっと……めう……芽兎めう、めう!」


 ――そして、やはり、この二人のオーラ力がどこか調和し合っていたのだろうか。
 質問をぶつけるばかりで、あまり会話が成立していない気もするが、言わんとしている事を理解しながら話は進む。
 芽兎めうと名乗った少女は至極素直にショウと会話を弾ませる。


「メゥ・メゥ……?」

「そうめう!」

「……そうか。俺は、ショウ・ザマ。でも、ショウっていう名前は秘密にしてくれ」

「じゃあ、何て呼べばいいめう?」

「『ライダー』……。それが俺の、この聖杯戦争で与えられた名前なんだ」

「……『ライダー』めうか。かっこいいめう!」


 若干の齟齬が生じていたものの、何とかそれぞれは互いの名前を知り合うまでこぎつけるのであった。
 ほとんど無邪気に会話を交わし合う二人は、傍から見ればそれなりに微笑ましくもあっただろう。

 ……だが、やはりここは聖杯戦争。
 この場にそれは似つかわしくない空気であった。
 ショウも、闘志がない人間というわけではない。むしろ人並以上の正義感があり、大人しい体質でもないくらいだ。


641 : 芽兎めう&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 17:19:04 KZBO7iJc0


(メゥ・メゥか……この少女からは、全く邪心を感じない。
 良いマスターだが、もしかすると、聖杯戦争の意思もないのか?)


 ショウも、この少女にはこの瞬間まで邪心を全く感じていない。――良い事だが、それが却って不安でもあった。
 邪心がないならば、何故メゥ・メゥはこうして聖杯戦争に参戦しているのだろう、と。
 ……ただ、当人の聖杯戦争を引き起こす意思がないとしても、そこに巻き込まれる事は少なくない。
 彼女もまた、もしかするとそうした性質の地上人なのかもしれない。

 ……そして、サーヴァントであるショウにも、ここが正しい地上でない事は、少しの時間の経過と共に薄々わかりつつあった。
 メゥ・メゥのような生身の地上人と、頭上を通りすぎる「そうでない者」との差に気づきつつあった――そして、ここに溢れているオーラが、地上にあるはずのオーラでない事も。
 だとすると、メゥ・メゥは、地上からオーラロード的な何かを通ってこの聖杯戦争に呼ばれたマスターなのではないか、と。


「なあ、メゥ・メゥは、もしかして、地上に帰りたいのか?」

「ちじょう? うーん……やっぱり、めうはおうち帰りたいめう」

「そうか、弱ったな……。帰り方は教えられてないぞ」


 ショウは頭を掻く。
 どうやら、本当にメゥ・メゥは巻き込まれてここに来てしまった者らしい。
 しかし、この聖杯戦争の巻き起こる地で如何なる事をすれば脱出できるのかはショウ自身にもわからない。
 もしかすれば、もう一度、オーラロード的な何かを拓く必要があるのだろうか……。


「うーん……メゥ・メゥがそうであるように、地上に帰ろうとする者がいればいいんだが――」


 ショウは少しだけ、そう考えた。
 このメゥ・メゥのように、地上に帰りたいと願う者も多くいるだろう。
 それは、ショウがかつてバイストン・ウェルで出会った地上人――ーベルたちのように。
 そういう人間がいれば、目的が同じである以上、味方につける事も出来る。
 実際、ショウはそうしてかつて、バイストン・ウェルから地上へと還る事が出来たのだ。


「……まあ、いいか。これも縁だ。それまでは、俺が面倒見てやるよ!」


 ともかく、今から考えても仕方ない。
 メゥ・メゥのサーヴァントであるショウは、メゥ・メゥに向けてそう溌剌と告げた。
 メゥ・メゥもあまりしっかり理解はしていないようだが、とにかうショウが悪い人でないというのは直感的に察したらしい。
 聖杯戦争のマスターとなった彼女の微量なオーラ力が、ショウのオーラ力と反応し合ったのかもしれない。


「めんどう? なんでもしてくれるめうか?」

「うーん、まあ、出来る事ならな」

「……ならめう、とりあえずちくパが食べたいめう!」

「ちくパ? なんだ、それは?」

「ちくわパフェ」


 ショウは少し考えた。
 ちくわも知っているし、パフェもよく知っている。――だが、想像するだけであまりにも食い合わせが悪そうである。
 第一、しょっぱいのか甘いのか、さっぱりよくわからない。
 ショウは、ほんの少し経ってから、メゥ・メゥに訊いた。


642 : 芽兎めう&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 17:19:23 KZBO7iJc0


「メゥ・メゥはいつもちくわパフェが好きなのか?」

「いつも食べてるめう!」

「――」


 ショウは、それから、目線を下げ、まじまじとメゥ・メゥの瞳を見る。
 瞳は、サファイアの宝石を埋め込んだように青く透き通っており、微かな潤みと共にきらきらと光っている。
 しかし、ショウはそんな美しさを褒めるのではなく、その色そのものを見定めていたのである。
 何故ショウが自分の瞳をじっと見ているのかわからず、無邪気な笑顔で首をかしげていた。


「目の色は、青か……。兎みたいな子だけど、ちゃんと人参は控えてるみたいだな」

「にんじん?」

「メゥ・メゥ、とにかくこれからよろしく」

「ん? まあいいめう。よろしくめう、ライダー!」





【CLASS】

ライダー

【真名】

ショウ・ザマ@聖戦士ダンバイン

【パラメーター】

筋力E+ 耐久E 敏捷E+ 魔力A 幸運B 宝具A+++

【属性】

秩序・善

【クラススキル】

対魔力:C
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 大魔術・儀礼呪法など大がかりな魔術は防げない。

騎乗:B
 騎乗の才能。幻獣・神獣ランク、恐獣を除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。
 彼の場合、生前はモトクロスに凝っていた為、乗り物の中ではとりわけバイクの操縦に長ける。
 また、聖戦士として「オーラバトラー」と呼ばれる機体を、オーラ力を駆使して自在に操る事も可能。
 更に、バイストン・ウェルに住まう獣たちは、凶暴な恐獣以外は乗りこなしてしまう。

【保有スキル】

オーラ力:A
 彼が魔力に代わって持っている生体エネルギー。
 その際の感情によってランクは上下するが、ショウは常時からAランクレベルのオーラ力を持っている。
 オーラバトラーをはじめとするオーラマシンを操るには、このスキルを保有する必要がある。
 地上人たちは全てこのオーラ力を持っているが、ショウはその中でも特別高いオーラ力の持ち主である。
 オーラ力がこのランクに達しているショウは「聖戦士」とも呼ばれ、オーラバトラーを自在に扱う。
 また、オーラ力を通して人の邪心や怨念を感じる事も出来る。
 更に高いランクになれば魔法のように扱う事も出来るが、人間種でそこまで達する事は滅多な事ではありえない。

言語理解:C
 バイストン・ウェルを訪れた地上人の加護として、地上における全ての言語を理解する事が出来る。
 ただし、言葉に込められた相手の意図までは必ずしも汲み取る事は出来ず、感情レベルまで理解する事は出来ない。
 あくまでも、その言語で記された言葉通りにしか理解できない為、言葉が持つニュアンスや機微はライダー自身の解釈に左右される。

ハイパー化:-
 高いオーラ力を持つ者だけが合わせ持つスキル。宝具(オーラバトラー系)使用中に発揮されるスキル。
 人間の負の感情(憎悪、嫉妬、殺意など)が強まった時にオーラ力が高まり、搭乗するオーラマシンを巨大化する事が出来る。
 しかし、その代償に力が暴走し、搭乗するオーラマシンが負荷に耐えきれず自爆してしまう事もある。
 ショウもかつては、このスキルによって暴走しかねない状態になった事もあるが、彼は後にその怨念を否定している為、スキルは眠っている。
 ただし、オーラ力を持つ者は、全て逃れられないこのスキルの素養を持っており、一度克服したショウも決して例外ではない。
 仮にもし、ハイパー化のスキルが発動してしまった場合、マスターの魔力は相当数削られてしまう事になるだろう。

オーラバリア:-
 高いオーラ力を持つ者だけが合わせ持つスキル。宝具(オーラバトラー系)使用中に発揮されるスキル。
 核攻撃にも耐えうるほど強固なバリアを張る事ができる。
 弱点として「人の意思」により貫通できてしまう事が挙げられる。
 つまり、射撃兵器は無力化できるが、パイロットが搭乗する機体そのものの攻撃(格闘攻撃・白兵戦・特攻など)は防げない。

直感:E
 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。
 また、視覚・聴覚への妨害を半減させる効果を持つ。
 宝具を使った戦闘時にBランクまで上昇する。

無辜の怪物:-
 生前の行いによって、過去や在り方を捻じ曲げられた英霊に付与するスキル。
 彼の場合は、生前、「カシオペア座第28惑星系の人間」と地上人に名乗った故に、一時地上人には彼の正体について、「宇宙人」という誤解も広まっていた。
 とはいえ、その後の活躍やミ・フェラリオが伝えた物語によって、それらの誤解は少しずつ氷解し、今の彼はほぼ生前のままの姿で現界できる。


643 : 芽兎めう&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 17:20:03 KZBO7iJc0

【宝具】

『ルフト家の守護者(ダンバイン)』
ランク:A+ 種別:対軍・対城宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:1〜100人

 ショウ・ザマが最初に搭乗したオーラバトラー。
 全高 6.9メット(約6.9m)。重量 4.4ルフトン(約4.4t)。
 ショウが操るのは青いダンバインであるが、他にも黒と緑が存在したと言われる。生前の戦いでは、ビルバインに乗り換えた為、この機体をマーベル・フローズンに譲っている。
 高い性能を誇るが、操る為の必要オーラ力も高く、パイロットのオーラ力によって性能が変わり、その格差が大きすぎるというクセの強い機体であり、それ故に三機しか製造されていない。
 宝具として顕現されている全盛期の『ルフト家の守護者(ダンバイン)』は、当初の状態と異なり、背にはオーラコンバーターが取り付けられ、大気中のオーラ力を吸収してエネルギーに還元している。
 オーラ・ソードの他、左腕にオーラ・ショットの外装、両腕にショット・クローが内蔵されており、それらを駆使して戦う。
 後続の機体よりも魔力の負担が小さく、他の機体に比べれば比較的扱いやすい。
 ちなみに、二つの腕を振り上げて呼ぶ必要はない。


『怨念を殺す再構者(ビルバイン)』
ランク:A+++ 種別:対軍・対城宝具 レンジ:1〜1000 最大捕捉:1〜1000人

 ショウ・ザマが最終決戦までに搭乗したオーラバトラー。
 全高 8.8メット(約8.8m)。重量 8.6ルフトン(約8.6t)。
 オーラバトラーの中で唯一の可変機であり、猛禽類のような形態と、西洋騎士のような人型の形態とに変形できる。
 多くの戦いにおいては、赤と白の意匠であったが、最終決戦のみ、夜間迷彩仕様になっており、宝具としてはデザインを使い分ける事が出来る(性能に差異はない)。
 オーラ・ソード1本、背部に大型のレール式オーラ・キャノン2門、左右の前腕部に連装のワイヤー付ショット・クローを各1基ずつ備える。
 また、携行火器として連装オーラ・ショットとオーラ力のエネルギー刃を形成する銃剣を模した新兵器オーラ・ソード・ライフルを装備している。


『白き秘宝(サーバイン)』
ランク:- 種別:対軍・対城宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

 ショウ・ザマの転生したシオン・ザバの愛機だったオーラバトラー。
 ショウの伝説としては存在しない為、封印された宝具となっている。
 転生後の記憶が再臨した場合にその封印が解ける事になるが、現状ではショウはショウである。


『地上人たちに物語を伝えた異界の精霊(ミ・フェラリオ)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

 ショウの死後、地上で、死者の魂が行きつく場所「バイストン・ウェル」の物語を伝えた小さな妖精。
 バイストン・ウェルで生まれ変わったはずのショウ・ザマが英霊として顕現されたのは、地上にただ一人取り残された小さな妖精の伝えた物語が具現化したからという説もある。

 その妖精の名は、チャム・ファウ。
 ショウの生前は、相棒として共に戦い、戦いの合間にも彼にとって妹のように扱われたお茶目なミ・フェラリオである。
 ライダーとして顕現されたショウも、彼女を宝具として常時から呼び出す事が出来る(ただしチャム・ファウ自身が「英霊」として何らかのクラスで呼び出されている場合を除く)。
 ライダーの消滅と同時に消えてしまうが、チャムと契約を交わしてマスターが延命する事も不可能ではない(とはいえ、チャムは宝具も持たず、基本的にパラメーター・スキルも魔力と対魔力以外オールE〜E-レベルと考えて良い)。
 彼女がバイストン・ウェルの物語を伝えるほどライダーは英霊として強くなり、バイストン・ウェルという世界が人々の記憶の中から呼び覚まされていく。

 「バイストン・ウェルの物語を、覚えている者は幸せである。
  私達はその記憶を記されて、この地上に生まれてきたにも関わらず、思い出すことのできない性を持たされたから。
  それ故に、ミ・フェラリオの語る次の物語を伝えよう。」

【weapon】

『無銘・剣』
 バイストン・ウェルの騎士が持つソォド。

『無銘・戦闘服』
 バイストン・ウェルの騎士が纏う戦闘服。
 ショウの着ているのは緑色。ヘルメットはつけたりつけなかったりする。


644 : 芽兎めう&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 17:20:20 KZBO7iJc0

【人物背景】

 東京都武蔵野市東吉祥寺在住の日本人で年齢は18歳。
 空手の心得があり、ウサギの目が赤い理由を「ニンジン食べてるから」だと思いこんでいる人。
 両親との関係が悪く、本人はモトクロスに没頭していた。

 そんな彼はある日、モトクロスサーキットからの帰還中に、突如として開いた「オーラ・ロード」に導かれて、海と陸の間にある異世界バイストン・ウェルへと召喚される。
 当初は地上人としての高いオーラ力から、ドレイク・ルフトを領主とする「アの国」の聖戦士として迎えられ、オーラバトラー・ダンバインを与えられて戦わされようとしたが、後に離反。
 ギブン家のゼラーナ隊に所属し、聖戦士として、平和の実現の為に戦う決意をする。
 地上をも巻き込んだ様々な激戦の果て、彼はアの国の黒騎士バーン・バニングスとの決戦で、彼の怨念を浄化する為に相打ちした。

 700年後、彼の魂はバイストン・ウェルでシオン・ザバとして転生する事になる。
 しかし、英霊の座に君臨されていたのは、ショウ・ザマのみで、シオン・ザバとしての意識は現在はほぼ無い。
 もし、その記憶が呼び覚まされれば、彼の使っていた宝具も発動する事が出来るであろう。

【サーヴァントとしての願い】

 メゥ・メゥを地上界に送り返す。
 それと同時に、この怨念の渦巻く聖杯戦争を止めたい。

【基本戦術、方針、運用法】

 戦法はオーラバトラーを用いた大規模なものに限られる。
 生身の彼は、高いオーラ力を持っていても、せいぜいアスリート級の人間と互角程度であり、人間を超越するような敵とはまともに戦えないからである。
 さらには、多数持っているスキルも殆どは戦闘中しか使えない。
 まあ、オーラバトラーを使用する事による魔力の負担は大きいので、一般人マスターであるめうめうと契約している内は多用すべきではないだろう。





【マスター】

芽兎めう

【出典】

ひなビタ♪

【マスターとしての願い】

おうち帰りたいめう

【weapon】

はんこ

【能力・技能】

 ドラムができる。
 音ゲーがうまい。
 成績が意外といい。

【人物背景】

 「日向美ビタースイーツ♪」のメンバーで、ドラム担当。
 日向美商店街でも古い歴史を持つ、はんこ屋『兎月堂』の看板娘。
 純喫茶『シャノワール』の常連で、名物メニューのCKP(ちくわパフェ)をこよなく愛す。
 中学生になってすぐに、さくら野地区にあるショッピングセンター『チャスコ』のゲームセンターの常連となり、ドラムマニアやポップンをはじめとする各種音ゲーにおいて全国トップランカー級の腕前を発揮する。
 アニメ・ゲームなど秋葉系寄りのカルチャーを好み、アニメキャラ風の普段着で語尾に「めう」を多用する。要するにロリ電波系のキャラ。
 ただし、あくまで「電波キャラ」であり、本当は仲間想いの常識人らしい。その為、稀にキャラを忘れ、語尾に「めう」がつかない事がある。

【方針】

 ライダーとちくパ食べるめう。

【備考】

 聖杯戦争の期間は秋葉原のカプセルホテルに寝泊まりしています。
 中学生なので普通は補導されると思うのですが、少なくともNPCにはそうした扱いを受ける事はありません。


645 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 17:20:34 KZBO7iJc0
投下終了です。


646 : ◆aptFsfXzZw :2016/02/15(月) 19:04:33 468UXJ0k0
皆様投下お疲れ様です。
私も投下します。


647 : ジーク&ランサー ◆aptFsfXzZw :2016/02/15(月) 19:06:29 468UXJ0k0



 ……少年の眼前で、損壊した黄金の杯が鳴動していた。



 眩く光るこれこそは大聖杯。しかしそれは最早戦利品として争奪される万能の釜ではなく、ある人物の願いを受託した結果変質した人類救済機だった。
 奇跡の産物と化した聖杯はこれより全人類に慈雨を降らせ、その不完全な肉体から魂を解放する。
 真なる不滅の存在へとヒトを至らせ、恒久的な平和と幸福を世界に齎す福音。
 それはとても幸福なことだ。もう誰も傷ついたり、志半ばに果てることのない、理想郷の実現だ。

「――今は無き五つの令呪において、我は代償を支払おう」

 しかし少年は、それを阻むことを選んだ。
 それは、もしかしたら誤った選択かもしれない。
 これから無数に流される、無辜の血を容認する行い。それはともすれば、人類への敵対行為とすら断じられるものかもしれない。

 しかし邪悪の謗りを受けるとしても、少年にはそれを選ぶだけの理由があった。

「……うん。これは、俺の望みだ」

 いつかその邪悪が、何の意味もなくなる日が必ず訪れると信じて。
 少年は、宙に向かって翔け出して――――――そして本来の運命より、ほんの刹那だけ早く、その世界から消失した。



      ☓☓☓



「――起きて、あなた(シグルド)。起きてください」

 呼び声に優しく意識を掴まれて、少年は微睡みの淵から浮上した。
 開いたばかりの滲んだ視界の先には、こちらを慈しむように覗き込む、女の微笑みが浮かんでいた。

「ああ、やっと起きてくださいました」

 そんな少年の覚醒を見て、女は窓から差し込む朝日も恥じらうような、眩い破顔を零した。
 美しい笑みだった。人並みの感受性には疎いと思う少年にも、疑う余地なくそうと認識できるほどに。
 ……あの日、あの時。目にした貴きものがなければきっと、“これ”に心を奪われてしまっていただろうと思えるほどに。

「おはようございます、マスター。この都にも朝が訪れていますよ」
「……すまない、寝過ごしていたらしい」

 答えてから、身を起こす。これまた通常の人間であれば、そのまま囚われていただろう感触から頓着なく逃れた勢いのままに立ち上がり、振り返る。
 視線の先には、ベッドに腰掛けたままの、美しい女がいた。
 実るべき部位は豊かに、締まるべき箇所からは余分を排した、黄金比と呼ぶ他にない、天の惜しみない造形美を完璧に配されたその肉体。視線を上げれば染み一つない白磁の首筋を通り、微かに乳白色を帯びたたおやかな美貌が待ち受ける。滑らかに流れる銀糸の群れの先端は丸みを帯びて床を撫で、前髪が隠してしまっている右目にもまた、左目同様、ルーラーより色素の薄い紫水晶の瞳が鎮座しているのだと理解できた。
 現代に似つかわしくない、華奢な銀の鎧という装いさえも、その女のかたちを映えさせるアクセントとなって、いかめしさをまるで感じ取らせない。
 現実感を喪失させるほどの、幻想そのものを体現する美がそこに形を成していた。

 その神秘的な存在感に微かに気圧されながらも、思考の回り始めた少年は何とか言葉を絞り出した。

「……すまない、少し待ってくれ。状況を飲み込めていないんだが」
「あなたはこの聖杯戦争の参加者に選ばれました」

 少年の疑問に、見知らぬ美女は淀みなく答えを用意した。


648 : ジーク&ランサー ◆aptFsfXzZw :2016/02/15(月) 19:08:35 468UXJ0k0

 想像の埒外にあった状況に、少年がほんの少しだけ目を丸くする間にも、女は穏やかに言葉を連ねる。

「覚えはないでしょう。この聖杯戦争は何やら歪みを抱えていますから……あなたの世界にも数多の聖杯戦争があったそうですが、何も知らされないまま、並行世界からマスターが召喚されるなど前代未聞でしょうね」

 そのような歪みがあるから私も召喚されたのでしょう、と続けた女に対し。他の思考を隅に置いて、復元された竜告令呪(デッドカウント・シェイプシフター)を一瞥した少年は、ようやく一つ理解できたことを尋ねた。

「ということは……貴女が、俺の、今度の」
「ええ、そうです。我がマスター。人の手で鋳造(つく)られながら、人の手を越え行く小さき英雄(シグルド)。
 私は、ささやかなる一時をあなたと寄り添うモノです」

 女の返答と共に浮かんだ柔らかな笑みに、先程までならばこの非常時でも安らぎを覚えただろうそれを目にしたのに、少年は微かに表情を渋くした。

「……俺は、ジークだ。これは俺に命(すべて)をくれた人の名だ」

 見ず知らずの己のために、先無き命である己のために、二度目の生を捧げてくれた大恩人の伝説は、当然のように自ら学んでいる。
 彼から授かった命に恥じぬように、彼に肖った名に背かぬように、その気高き生き様こそを指針とするために。
 だから、目の前の美女が口にした名前が、彼と縁ある男の物であることも、少年――ジークは当然、知っていた。

「同じ起源の英雄だとしても、彼は、俺を救ってくれたのはシグルドではなく、ジークフリートだ。それだけは違えないで欲しい」

 知らず、視線は鋭くなっていた。睨めつけられたその先で、神鉄の鎧に身を包んだ女は、困惑と焦燥の色をその美貌に加えた。

「ああ、そんな……いいえ、そうですね。あのひとと、ジークフリートさまはまた別の竜殺し(ドラゴンスレイヤー)。いずれも天下に轟く大英雄であっても、ええ。一緒くたに見られてしまったと思えば、侮辱にも等しく感じてしまうものですよね」

 手持ち無沙汰なように、内心の焦りを表すように。細く白い指先同士を絡め合わせて、女は豊かな胸の前で手を組んだ。

「ごめんない。心から陳謝致します、我がマスター。ジーク。そんなつもりではなかったのです」

 微かに潤んだ瞳でこちらを射抜いた女は、次いで許しを乞うように頭を垂れた。 

「ですからどうか、そんなに怒らないでください……私、困ってしまいます」

 微かに肩を震わせる女の姿に、毒気を抜かれてしまったジークも一瞬、所在なく視線を彷徨わせる。

「……いや、こちらこそこそすまない。貴女を困らせたいわけではなかった」

 それからようやく吐いた謝罪の言葉に、女から震えの気配が消えた。
 ゆっくりと――その一動作で流れる長髪の動きさえ神秘の領域に至らせながら面を上げる女に、ジークはタイミングを掴みきれないながらも中断された問答を再開する。

「それで……竜殺しの英雄(シグルド)を知る貴女は」

 自らの素性を問われた女は、少年の目覚めを見届けた時と同じくたおやかな――そしてそれより微かに、情熱の色を燃え上がらせた微笑みを返した。

「ええ。私はかつて彼とともに生きた戦乙女(ワルキューレ)。大神オーディンが娘。真名を、ブリュンヒルデと申します。この度は、ランサーのクラスで現界致しました」

 戦乙女ブリュンヒルデ。世界でも最も有名なヴァルキリーの代名詞は、仮にジークが聖杯戦争と何の関わりを持たない人間だったとしても、確実に知悉しているだろうものだった。
 即ち眼前で無防備を晒しているのは、本物の女神。神の血を引き、神の域にも届く施しの英雄(カルナ)とも根本から違う、正真正銘の神霊だ。


649 : ジーク&ランサー ◆aptFsfXzZw :2016/02/15(月) 19:09:51 468UXJ0k0

 神霊ほどの高位存在は、最早聖杯の奇跡すら遥かに超越している。本来、彼ら彼女らがサーヴァントとして召喚されるなどあり得ない。
 しかしジークは既に、彼女と同じ事例を識っていた。

 それこそはギリシャの大賢者ケイローン。射手座として夜空を彩る、世界で最も有名な弓兵(アーチャー)。
 元来完全な神霊である彼もまた、その身を襲った悲劇で神性を零落したが故にサーヴァントの規格に当てはまるようになり、“黒”のアーチャーとして召喚されるに至った。
 同じように、裏切りの代価として父たるオーディンに神性を剥奪されたという彼女もまた、サーヴァントとして召喚できる抜け道ができていたのだろう。

「そうか……なら、安心した」
「安心、ですか?」

 小首を傾げたランサー、ブリュンヒルデに、ジークは冗談めかして告げてみせた。

「失礼かもしれないが……貴女は既に、戦乙女の任を解かれている。それなら『戦死者の館(ヴァルハラ)』に招かれるわけではないのだとわかってな」

 俺などが名立たる戦士と轡を並べられるとは思っていないが、と付け足しながら、もっと彼方に行こうとしていた身でありながら、一度は険悪となりかけた相手を和ませられないかと、なけなしの人間味を使って言葉を発した。

「もう一度、必ず会うと約束したひとがいる。あまり遠くに行く羽目となっては困る」
「……マスター。そんな、恥ずかしげもなく言われると……私、困ってしまいます」

 何故だかランサーは、首を傾けたまま、微かに上気した頬に掌を当ててそんなことを言っていた。
 ジークにはまだ、彼女が何に困っているのか、わからなかった。



      ☓☓☓



「……マスター。勝手ではありますが、あなたのことを視させて貰いました」

 朝食を挟み、サーヴァントに与えられたこの聖杯戦争の知識を一通りジークに説明した後、ランサーはそのように切り出した。
 微かに覗く胸元に指先を添えながらの言葉に、ジークは一瞬の後に理解を追いつかせる。
 おそらくはマスターとサーヴァントの、パスを通した共鳴夢のことを指しているのだろうと。

「勝手と言っても、貴女がやったことではないのだろう。よくあることだ、気にする必要は……」
「いいえ。いいえ、違います、マスター。私の勝手で、あなたの過去を覗かせて貰ったのです」

 首を振ったランサーが、掌を外したその胸元。
 そこから微かに漏れる輝きを見咎めて、備えられた魔術知識と照らし合わせたジークは、彼女の言わんとすることを察した。

「ルーンか」
「ええ。私のこれは人の子が使うそれではなく、大神の直伝であるのですけどね」

 即ち、原初のルーン。
 全知なる大神オーディンが修めた、北欧魔術の奥義。

 それを直伝され、今でも保持しているというのであれば。彼女はランサーのクラスで召喚されながら、下手なキャスターより余程優れた神代の魔術の使い手でもあるというのだ。
 その腕前を持ってすれば、ジークの抱えた事情を全て詳らかにしてしまうなど、造作も無いことであったのだろう。

「そうか……俺の過去など、すぐに見終えるものだっただろう」

 型落ちしたとはいえ仮にも神霊の端くれ。その凄まじさの一旦を垣間見て、ジークは受け答えしながらも微かな畏怖に打たれていた。

「はい。すべてを見させて頂きました。死の予定された殻を破るところから始まった、あなたの軌跡。短くも濃密な命の煌めきを」

 対しランサーは詩を詠むようにして、ジークの過去を語り続ける。

「気高さ故、正しさ故の傲慢なる理想に憑かれた聖人との戦いを。
 数多の英雄に導かれ、数多の英雄と対決したその日々を。
 そして、愛しき聖女との離別と、未来に交わした約束を」


650 : ジーク&ランサー ◆aptFsfXzZw :2016/02/15(月) 19:10:36 468UXJ0k0

「……愛しき?」

 戦乙女が大仰に語る、こそばゆいような自身の生涯の中。何故かその一言にだけ一際猛烈な羞恥心を覚えたジークは、ついその一単語を取り出していた。

「それは……何というか、その、恐れ多い表現だな」

 そして気がつけば、そんな言い訳のようなことを口走っていた。

 彼女に――ルーラーに懸ける敬愛の情が自らの裡にあることを、疑う余地はジークにもない。
 しかし彼女こそはジャンヌ・ダルク。世界に名高き救国の聖女。
 おそらくは有史以来、誰より多くの人々から熱狂され、信奉され、愛された少女。

 その本人と実際に面識があるのだとしても。彼女の尊き美しさに憧れたのが事実だとしても。そのように表現されると、どうしても気後れが生じてしまっていた。

 しかし。

「あら。でもあの時彼女に一目惚れしたのは、紛れもないあなた自身の心でしょう? マスター」

 その、記憶を覗いた女神からの、単純明快極まる指摘は。
 ジークの中に残っていた、疑問にも思わなかった引っ掛かりを軽々と外してみせた。

「……そうか」

 すとんと腑に落ちたそれは。とても簡単なことであったその真理は。

 くすぐったいような気恥ずかしさと、締め付けられるような切なさと、
 そして不思議な高揚感を、ジークの胸に齎した。

「俺は……彼女に、ルーラーに――――恋を、していたんだな」

 まだ少し、戸惑うように。畏れるように、少しだけ舌先を絡ませながら、ジークは分析した自己を吐き出した。
 あの、心が滲むような嬉しさ、世界が色を変えたような衝撃が……

「ええ。遍く地に満ちる人々は、あなたの胸に宿るものを愛と呼ぶのですよ。マスター」

 そんな少年の気づきを、祝福するように。慈愛の笑みを浮かべたランサーの言葉に、ジークは乱れることのなかった竜殺しの心臓が、微かに跳ねたのを感じ取った。
 彼女に感じていた甘美な狂おしさ、彼女の傍に居られた心安らかな誇らしさ、彼女が遠くへ行ってしまった時の耐えられぬ切なさ、その未練を想った張り裂ける怒りを思い返して。

 これが。

 これが……恋。

 これが、愛。



「……それで、ジーク」

 やがて。衝撃となった認識を噛み締めていたジークの様子を見計らって、優しく呼びかけたランサーは語らいを再開する。

「あなたは、愛するひとのために。人の世をあるべき姿のままで営ませるために、あの大聖杯を止めるのですね? マスター」

 その問いかけの答えは、自明のことであった。
 故に自覚した感情を一度抑えたジークは力強く、己のサーヴァントに頷きを返す。

「ああ――天草四郎時貞の遺産は、何としても止めてみせる。
 そのために彼女は命を懸けた。なら、俺も命を懸けるのにそれ以上の理由はいらない」

 英雄の心臓を授けられ、伸びた背丈でもまだほんの微かに見上げる高さにある紫銀の双眸と視線を結び、ジークは断言する。
 己の芯を理解したなればこそ、なおのこと。一層強固となった決意を再認しながら。

 ……聖杯を使えば、彼女に会えるかもしれない。
 だがそれでは、人を信じられなかった天草四郎時貞と同じだ。
 いつか必ず会いに来る――願望器に縋るのは、そう約束した彼女への不信に他ならない。

 ならば自分が果たすべきことは、何一つ変わらない。

 それは彼女のやり残してしまったこと。聖女の祈りを実現する、邪竜となることしかあり得ない。


651 : ジーク&ランサー ◆aptFsfXzZw :2016/02/15(月) 19:11:51 468UXJ0k0

「……困ってしまいます」

 ふと。静かに意気込むジークに対して、ランサーがそんな言葉を漏らした。

「どうした?」
「いいえ……いいえ。何でもありません。そんなことよりも、マスター」

 ジークの追及に首を振ったランサーは、泳がせていた視線を正面に向け直し、尋ね返してきた。

「ではあなたは、この聖杯戦争を勝ち抜く覚悟を決められたのだと。それで、よろしいのですね?」

 誓いを果たすためには、この東京から脱し、あの場所、あの時間軸に帰還する必要がある。
 その願いを叶えるための最も手っ取り早く、かつ現実的な手段は、ここにジークを招いた張本人に負債を払わせること――即ち聖杯の使用に他ならない。

「……正直に白状すると、その答えはまだわからない」

 しかしジークの口から漏れたのは、そんな明白な筋道の肯定ではなかった。

「貴女の、伝説の戦乙女の力を疑っているわけではない。ただ、俺がそこまでこの聖杯戦争というシステムと向き合えるのか、自信がないだけなんだ」

 訝しむような目をしたランサーに首を振って、ジークは述懐を続ける。

「かつて、地獄を見たことがある。奇跡と呼ばれた聖人が、全てを懸けて変えようとしたものを」

“黒”のアサシン(ジャック・ザ・リッパー)であったものが、ジークに見せた彼女達の原点。
 それは、少数の幸福のために、多数から搾取するという人間世界の統括機構(システム)。
 何の正義もなく、しかして邪悪もなく。ただそういう仕組みであるからと、誰にも何もできず、ただただ無力な命から消費されていく構造。
 取り除ける原因のないそれは、聖杯戦争のために消費されるはずだった自分達(ホムンクルス)の背負った運命よりなお、救いがなかった。
 天草四郎時貞が二度の生涯を擲ってまで変えようとしたことも、無理はないと思えるほどに。

「……他ならぬ彼から、守ろうとしたものでもあるのだが。逃れられぬ宿業であるとも理解していても、俺は、その一部になることが怖い」

 自らのように、強制されて巻き込まれたマスターもいるかもしれない。
 ここまで歪んだ聖杯戦争が、真っ当に管理運営されているとも思えない。仮にサーヴァントだけを斃したとしても、その後のマスターの安全が保証されるとは限らない。
 なのに、状況も理解できていない彼らを、何も考えずただ願いのために屠るとすれば、それはジャック・ザ・リッパーを生んだ者達と、何ら変わりがないのではないか?
 そんな悍ましい予感が、ジークにどうしようもなく躊躇を覚えさせていた。

「そうしようとしたことはあった。実際に、命を奪ったこともある。だが今更でも、それを忌避する自分がいることは否定できない」
「では――」
「それでも……答えは見つかっていなくとも。目指すべき果てを、俺は知っている」

 どうすれば良いのか、はわからない。途方も無い。
 だが、何をしなければならないのかだけは、既にジークは知っていたから。
 言葉はすらすらと、内面を外へ発信していた。

「それがどんな形となるのかはわからない。大義のために命を奪うことを是とするのか、それに抗うのか。覚悟を決めるべき行為すら見定められてはいないのだとしても。
 俺は必ず、彼女達との約束を果たす。英雄に託された、この命(誇り)に懸けて――諦めない覚悟だけは、できている」


652 : ジーク&ランサー ◆aptFsfXzZw :2016/02/15(月) 19:12:31 468UXJ0k0

 聖杯戦争のルールに従うのか、それに抗うのか。
 どんな方法を選ぶのか、何が正解なのかはわからない。
 ただ、負けたくはないと思った。
 短い生涯の中で出会ってきた彼らのように……戦いから逃げ出すことだけはしまいと、そう心に決めていたから。

 そんなジークの様子に、ランサーはまた微かに視線を逸らして呟く。

「もう……本当に、私、困ってしまいます」
「……すまない。マスターとして優柔不断が過ぎるな」
「いいえ……いいえ、そうではないのです」

 ジークの謝罪に対して首を左右に振った後。ランサーはその身に纏った雰囲気を変質させた。

「どのような道を選ぶのだとしても。何処を目指すのか、何を成すのかをもう、その心(誇り)に決めているのであれば」

 透徹した眼差しで、ランサーはジークを見抜く。見透かす。
 本能的な畏れを抑えて、ジークはその神たる視座に対峙する。
 相手がこちらを見極めようとしているのであれば、それに応えるべきであると思考して。

「あなたは勝利を得るでしょう。私が寄り添うのだから」

 そんなジークに向けて。託宣を行う女神の尊厳を以って、ランサーはその言葉を紡いでいた。

「たとえ、大神(てん)の加護がなくとも。
 たとえ、世界(ほし)の加護がなくとも」

 ――滔々と続けられるランサーの言葉に、そんなものは最初からなかった、とジークは思う。
 だが。もし、こんな自分にも与えられたものがあったとすれば、それは。

「そして、英雄(ヒト)の加護までなくしても」

 そう。こんなにもちっぽけな自分を見捨てずにいてくれた、英雄達の温情に他ならない。
 しかしここにライダー(アストルフォ)はいない。アーチャー(ケイローン)も……そして、ルーラーも。
 ジークを護り、導いてくれた英雄達は、その加護は、この東京には存在しない。
 遺されたのは“何かに感応したように猛っている”、既に喪われたはずだった、未だこの身に余る竜殺し(ジークフリート)の力(誇り)だけ。

 ……だが。受け継いだものも、託されたものもないままに、剥き出しの感情にしか頼れなかったあの最後の戦いに比べれば、それだけでも充分以上に恵まれている。

 そして。さらに。

「――あなたには、この一時かぎり、ワルキューレの長姉たる私の加護があるのですから」

 新たに授けられた槍は、それを担う力である女は、それでも歩みを止めない少年を、慈しむように微笑んだ。

「ですからどうかご安心を、マスター。あなたはその時ごとに、己の信じる最善を為せば良い……道が定まっていないからと、迷う必要などありはしないのです。
 もちろん、かの大賢者の言葉通り。そのためにも、常に考え続ける必要はありますけれど。そのお時間ぐらいは、私が用意してみせましょう」

「……そうか」
「ええ」

 短い意思確認の言葉の後。英雄の心臓を託されて伸びた背丈でも、少しだけ見上げなければならない位置にある紫銀の双眸と視線を結んで、ジークはもう一度頷いた。

「なら、その言葉に甘えさせて貰うとしよう。よろしく頼む、ランサー」

 ジークの迷いなき言葉に、ランサーはにこりと微笑んだ。


653 : ジーク&ランサー ◆aptFsfXzZw :2016/02/15(月) 19:13:34 468UXJ0k0



      ☓☓☓



 ……疼く。
 仮初の肉を得たこの身体の芯が、じんわりとした熱を帯びて、疼き出す。

 滾る炎に、これはいけない、と自覚しながらも。昂ぶりを抑えながらも、ランサーは自らのマスターとなった少年を盗み見る。

 あどけなさを残した端正な容貌を、銀を溶かしたような髪で儚く彩りながら。しかしその紅玉の如き瞳には、死を目前にしてもなお、自らの為すべきことを為さんとする勇ましさがある――

 小さく稚い、けれど尊き愛の為に戦うその直向きさは……かつての神造の乙女と同じく、愛するひととの再会の約束を心から信じる人造の少年の姿は……まるで、子弟を見守るような暖かさをこの胸にくれるけれど。

 この少年は、こことは違う時代、違う地平の東京で見たあの少年と同じ、幼くも清廉な魂――戦乙女を惹きつける魅惑の輝きをも、備えていたのだ。

 ましてやその命に、戦乙女の一人としてではなくブリュンヒルデという名の一人の女が唯一愛した、あのひとと……限りなく近い、英雄の残滓まで散りばめられてしまっていては。



 ……人の世の正しき存続を願う、この愛らしいマスターの力になりたい。
 そして、彼が呪わしき悪竜現象(ファヴニール)に変わり果ててしまう前に、英雄(ヒト)として死なせてあげたい。
 それが、聖杯に託す最愛の夫(シグルド)との再会とは別にブリュンヒルデが抱いた、此度の聖杯戦争での願いであった。



 ……なのに、なのに。
 嗚呼。

 最早戦乙女の任は解かれていても。既に人間の女に変生を遂げていたのだとしても。
 生まれ持ったその本能(機能)は、未だこの魂に在り続けていて。

 幼くも真っ直ぐな主があまりに愛らし過ぎて、それまでに、つい手を出してしまわないのか……果たして最後まで耐えられるのか。
 こんな御馳走を前にしてしまっては、とても我慢しきれる自信がなくて。

(私……困ってしまいます)

 ランサーが心に秘めた声は、彼女の次なる宿り木と見初められた小さき英雄には――少なくとも、今この時は、まだ。

 届くことは、なかった。






【マスター】ジーク@Fate/Apocrypha
【マスターとしての願い】
 ルーラーの信じた人類のため、天草四郎時貞の残した大聖杯を止める。
 そしていつかまた、ルーラーと会いたい。

【weapon】
 なし

【能力・技能】

 ホムンクルス故、生まれた時点で一流と呼ばれる魔術師ですら及ばない一級品の魔術回路を有する。
 魔術としては手で触れた物体の組成を瞬時に解析し、魔力を変質・同調させ、最適な破壊を行う『理導/開通(シュトラセ/ゲーエン)』と呼ばれるアインツベルンの錬金術を元にした強力な攻撃魔術を行使する。なおこの組成解析は一度触れた物なら次からはその工程を飛ばして銃弾に傷をつけられる前に発動できるほどになるが、逆に解析から魔力の変質までの間に組成を変化させることで防がれたこともある。

-『竜告令呪(デッドカウント・シェイプシフター)』
“黒”のバーサーカーの宝具の余波により再度蘇生した際、“黒”のセイバーの心臓が触媒となり、悪竜の呪いからジークの左手に発現した、全く前例の無い令呪。
 その能力は名の通り、余命を削ることを代償に“黒”のセイバーに変身できるというもの。一画につき三分間限定で自らの体に英霊ジークフリートそのものを憑依させ、その身体能力、戦闘経験値、宝具を含む保存能力を完全具現化し、ジークの意志で行使することができる。また変身だけでなく、自己強化に用いることもできる。
 更に通常の令呪と同じく聖杯戦争のマスター資格として認められ、サーヴァントとの契約や消費分の補填が可能であり、此度の聖杯戦争でも聖杯より授けられた令呪として復活。
 通常の令呪は使用する度に消えていくが、この「竜告令呪」は使用後も聖痕のような黒い痣が残り、使用者を肉体的、精神的に蝕んでいく。
 黒い痣の正体は竜鱗であり、最終的には竜の血に肉体が耐え切れなくなって死亡してしまう。

 なお現在のジークは一度令呪を使いきったために竜化が進行しており、その影響から、次から転身した姿には本来のジークフリートにはない竜の角と翼、そして尻尾が生えてしまっている。
 これは「ジークフリートが今以上の竜の呪いの影響を受けた“もしも”の姿」として確立されており、もしも既にセイバー・ジークフリートが存在していても、もう一つの側面として現界が可能となっている。


654 : ジーク&ランサー ◆aptFsfXzZw :2016/02/15(月) 19:18:16 468UXJ0k0

以下、「竜告令呪(デッドカウント・シェイプシフター)」発動時の“黒”のセイバー(ジークフリート)としての能力。

【パラメーター】

筋力B+ 耐久A 敏捷B 魔力C 幸運E 宝具A

【保有スキル】

対魔力:-

騎乗:B

黄金律:C-

ガルバニズム:B
 生体電流と魔力の自在な転換、および蓄積が可能。魔風、魔光など実体のない攻撃を瞬時に電気へ変換し、周囲に放電することで無効化する。
 また蓄電の量に応じて肉体が強化され、ダメージ修復も迅速に行われるようになる。
 このスキルのみ、他のスキルと異なり「竜告令呪」での変身を介さずともジーク自身の肉体に宿っており、常時機能している。
 そのため事実上、契約したサーヴァントに無尽蔵の魔力供給を可能としている。


【宝具】

『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具  レンジ:1〜50  最大捕捉:500人

 竜殺しを為した、黄金の聖剣。その逸話から竜種の血を引く者に対しては追加ダメージを与える効果を持つ。
 柄に青い宝玉が埋め込まれており、ここに神代の魔力(真エーテル)が貯蔵・保管されていて、真名を解放することで大剣を中心として半円状に拡散する黄昏の剣気を放つ。
 他の対軍宝具を遥かに上回る連射速度を持ち、特にジークの場合、サーヴァントのジークフリートにはないガルバニズムのスキルにより、彼さえ上回る連射を可能にする。


『悪竜の血鎧(アーマー・オブ・ファヴニール)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:- 防御対象:1人

 悪竜の血を浴びることで得た常時発動型の宝具。
 Bランク以下の攻撃を完全に無効化し、Aランク以上の攻撃でもその威力をBランクの数値分減殺する。正当な英雄による宝具の使用がされた場合はB+分の防御数値を得るが、反英雄や竜殺しの逸話を持つ攻撃にはBランク分の宝具防御値しか適用されない。
 伝承の通り、背中にある葉の様な形の跡が残っている部分のみその効力は発揮されず、その箇所を隠すこともできないという弱点がある。


『磔刑の雷樹(ブラステッド・ツリー)』
ランク:D〜C 種別:対軍宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:30人

 “黒”のバーサーカー(フランケンシュタイン)から受け継いだ第二種永久機関を用いた宝具。相手に組み付き、己の身体諸共に敵を撃ち貫く捨て身の雷撃。
 本来は使用者の命と引き換えに放つ自爆宝具だが、ジークのものは不完全であるため、オリジナルほどの威力を発揮できない分、反動も死に至るほどのものではなかった。
 ジークの肉体そのものに宿る力であり、上記二種の宝具とは異なり発動に「竜告令呪」での変身を必要としていない。


【weapon】
『幻想大剣・天魔失墜』


【人物背景】

 ユグドミレニア一族がアインツベルンの技術を流用して生み出したホムンクルスの一人。

 本来サーヴァントへの魔力供給をマスターから肩代わりする消耗品として設計された量産品の一つだったが、奇跡的な偶然で自我に目覚め、“黒”のライダー(アストルフォ)の助力を得て脱走を果たす。
 その後、追ってきた魔術師ゴルド・ムジーク・ユグドミレニアの手にかかり重傷を負うも、“黒”のセイバー(ジークフリート)が自らの心臓を彼へ分け与えたことにより蘇生する。
 この時から恩人であるジークフリートにあやかり、ジークと名乗るようになる。

 サーヴァントの心臓を持つホムンクルスという歴史上類を見ない存在となった彼は、ただの人としてならば充分に長生きできるだろう生命力を得た。しかし『自由』を得ても自らの願いが分からず思い悩んでいた中、ルーラー(ジャンヌ・ダルク)との邂逅を経て、“黒”のサーヴァント達が自分を助けてくれたように、自分の捜索を命じられながら見逃してくれた同胞達を救う事を決心する。
 そのために飛び込んだ戦いの中、“黒”のライダーに助勢しようとした結果“赤”のセイバーの剣に斃れるものの、“黒”のバーサーカーの宝具の余波で二度目の蘇生を遂げる。同時に『竜告令呪(デッドカウント・シェイプシフター)』を発現し、“赤”のセイバーと再戦。能力は万全でも、ジークの精神が追い付いていなかったことに加え令呪の補助を受けた“赤”のセイバーには敗れるが、『悪竜の血鎧』の力で生き残り、同胞の解放を成し遂げる。


655 : ジーク&ランサー ◆aptFsfXzZw :2016/02/15(月) 19:19:21 468UXJ0k0

 その後は聖杯戦争を司る監督役たるルーラー、及び命の恩人にして無二の友でもあり、自らのサーヴァントとなった“黒”のライダーの助けとなるべく、自らの意志で聖杯大戦に参加。またホムンクルス達と和解したゴルドを始めとするユグドミレニアの残党とも同盟を結び、共同生活を開始する。

 最終決戦では“黒”のライダーと共に空中庭園に接近し、“黒”のセイバーと因縁深き“赤”のランサーと対峙。そこで赤陣営のマスター5人の救助を彼から依頼され、その交換条件として「3分以内にジークを倒せなければ見逃す」という約束をフィオレとカウレスが取り付けたことで、“赤”のランサーと3分限りの対決を行うことになる。
 神殺しの槍によって齎される確実な死を前にして、少年は「もう一度ルーラーに会いたい」という自らの願いに気づく。そのために残された竜告令呪を全て注ぎ込み、“赤”のライダーの宝具を譲り受けた“黒”のライダーのアシストもあって辛うじてこれを下し、先へと進む。

 その後、庭園中枢部では敵の首魁たるシロウ・コトミネ(天草四郎時貞)と対面、ルーラーの死を受けて最後の戦いを開始する。弱体化しているとはいえサーヴァントであるシロウに劣勢を強いられるも、“黒”のバーサーカーから得ていた第二種永久機関を活用して追随、最後は捨て身の「磔刑の雷樹」によって勝利を掴んだ。その後、既に起動してしまった大聖杯を止めるため、竜告令呪の代償により竜となりかけている自身の体と聖杯の残存機能を用いようとした彼は死の直前、何の因果かこの東京に召喚されてしまうに至った。


【方針】

 願いのために戦うが、この聖杯戦争を勝ち進むべきなのかはまだわからない。
 ただ、意味なく命が消費されるようなことだけは、許したくない。



【クラス】ランサー
【真名】ブリュンヒルデ@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ&Fate/Grand Order
【人物背景】

 北欧の大神オーディンの娘、戦乙女ワルキューレの一人、ブリュンヒルデ。北欧神話に於ける悲劇の女。
『ヴォルスンガ・サガ』において大英雄シグルドの運命の相手であるシグルドリーヴァと同一視される戦乙女であり、古エッダ『シグルドリーヴァの歌』『ブリュンヒルドの冥府への旅』でも同様にシグルドと恋に落ちるワルキューレとして語られている。

 ワルキューレの長姉として神霊の身であった頃には自我の薄い人形のように振る舞っていたものの、父たる大神の怒りに触れて地へ落とされてから後、シグルドとの出会いで愛を知り、人間の性質と人格を有するようになった。
 英雄シグルドのことを誰よりも愛して止まなかったものの、呪われた悲劇の運命の果てに殺意の炎を抱き、やがて彼を殺し、我が身をも灼き尽くすことになってしまった。


【ステータス】
 筋力B+ 耐久A 敏捷A 魔力C 幸運E 宝具A

【属性】
 中立・善

【クラススキル】

対魔力:B
 魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。

【保有スキル】

騎乗:A
 乗り物を乗りこなす能力。「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。

魔力放出(炎):B
 武器・自身の肉体に魔力を炎として帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。

ルーン:B
 北欧の魔術刻印・ルーンを所持することを表す。
 その中でも彼女は、大神オーディン直伝の「原初のルーン」を所持しており、その出力は現代のルーン魔術の数百万倍とも評されるほど。
 但し原初のルーンを持って現界した場合、ランサーは『死がふたりを分断つまで』以外の宝具を使用できない。

神性:E
 神霊適性を持つかどうか。ランクが高いほど、より物質的な神霊との混血とされる。


656 : ジーク&ランサー ◆aptFsfXzZw :2016/02/15(月) 19:20:03 468UXJ0k0

【宝具】

『死がふたりを分断つまで(ブリュンヒルデ・ロマンシア) 』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人

 運命の相手への深い愛憎の情を、生前に使用した魔銀(ミスリル)の大槍として形成させた宝具。
 ランサーの裡に燃える「愛」が高まるほどに槍の性能が強化され、重量とサイズが増大する。 どれほど巨大化しても、ランサーの槍捌きを鈍らせることはない。
 ランサーが強い愛情を抱く直接の相手を攻撃対象とした場合、さらに威力が跳ね上がる。重量は数百倍になり、原子分解攻撃にも等しい破壊力を発揮、窮極にまで愛が深まれば神すらも殺し得る一撃必殺の力と化す。
 最愛の相手であるシグルドにこそ最大の威力を発揮するが、彼と起源を等しくし、同一視されることもある英雄ジークフリートに対しても、それに迫る効果を得ることができるだろう。

 但し、「愛情」ではなく「嫌悪」した相手には宝具が全く通用しないという極端な性質もあり、場合によってはまるで無力になってしまう脆弱性を抱えている。


【weapon】
『死がふたりを分断つまで』


【サーヴァントとしての願い】
 愛らしいマスターの助けとなり、人の世を終わらせないために戦う。
 その上で彼が呪いで悪しき竜(ドラッヘン)と化す前に、英雄(ヒト)として殺してあげたい。

 ――そして叶うならば、願望器の力で最愛の英雄(シグルド)と再会したい。


【基本戦術、方針、運用法】

 高く纏まったパラメータを誇る、オールラウンダーな槍兵。
 強力な対人宝具と、対軍宝具に匹敵する破壊力と自在な飛行を始めとした万能性を付与できる原初のルーンによって優れた戦闘力を有し、しかもマスターであるジークがガルバニズムのスキルを持つため、彼との距離が離れ過ぎなければ常に全開の魔力行使が可能と、知名度に相応しい高性能を誇る。
 そのため戦闘においては、正面からの正攻法だけでも充分な戦果を期待できるだろう。

 但し、メインウェポンである『死がふたりを分断つまで』は、通常サーヴァントとして召喚される大半の英雄には充分な威力を発揮するものの、ランサーが愛を感じないイレギュラーな相手には無力化されてしまうため注意が必要。
 そんな時は、より純然かつ安定した戦闘力を持つセイバー・ジークフリートへとマスターであるジークが変身し、代打を務める必要があるだろう。

 なおそのようにしてランサーを救うたび、やがては戦乙女としての機能が――あるいは、シグルドと同起源の竜殺しへと転身した途端、彼女の愛憎が自動的にジークの背に槍を向けさせる恐れがあるものの、無垢なるマスターは未だその危険を認識できていない。


657 : ◆aptFsfXzZw :2016/02/15(月) 19:21:32 468UXJ0k0
以上で投下を完了します。


658 : ◆NIKUcB1AGw :2016/02/15(月) 21:37:00 P6c39iCk0
皆様、投下乙です
自分も投下させていただきます


659 : 夜神総一郎&セイバー ◆NIKUcB1AGw :2016/02/15(月) 21:37:58 P6c39iCk0
夜神総一郎は、捜査一課の刑事である。
現在、都内で発生した大量殺人事件により警察は多忙を極めている。
だが大規模な捜査にもかかわらず、事件は解決の糸口すら見えていなかった。
総一郎は、その理由を知っていた。知ってしまっていた。
警察には、この事件は解決できない。なぜなら、彼らは皆ただの舞台装置なのだから。


◇ ◇ ◇


「ただいま」

総一郎が自宅に戻ったのは、すでに日付が変わった深夜だった。
居間に足を踏み入れると、そこには真剣な面持ちでテレビのニュース番組を観る息子の姿があった。

「おかえり、父さん。相変わらず大変そうだね」

父の姿を確認した息子は、笑顔で話しかけてくる。

「まあな。母さんと粧裕はもう寝たのか」
「うん。さすがに時間が時間だからね」
「お前もなるべく早く寝た方がいい。若いといっても、睡眠は大切だ」
「これが終わったら寝るよ。父さんも帰ってきたし」

ニュースは、件の大量殺人について報じている。
とはいえ捜査が進展していない以上、その内容も当たり障りのないものばかりだ。

「その事件が気になるか」
「当たり前じゃないか。父さんが捜査してる事件なんだから。
 警察官も殺されてるっていうし、心配だよ。
 こんな非現実的な事件が起きるなんて、世の中はどうなっちゃったんだろうね」
「…………」

お前はもっと多くの人間を殺してしまっただろう。
その言葉を、総一郎は飲み込んだ。
言ってもどうしようもないことだ。
目の前の息子は、本物をもとに作られたコピーに過ぎないのだから。


660 : 夜神総一郎&セイバー ◆NIKUcB1AGw :2016/02/15(月) 21:39:10 P6c39iCk0


◇ ◇ ◇


総一郎に用意された環境は、彼にとってほぼ理想通りのものだった。
妻は死んでおらず、そのため息子との間に確執もできていない。
むろん、息子は大量殺人者などになってはいない。
できることなら、このまま第2の人生を謳歌したい。
仮に聖杯を手にすることができれば、実際にそうすることも可能であろう。
だが総一郎は、その考えを否定した。
超常の力に頼り、他者を踏みにじって自分の願いを叶える。
それはデスノートを使い、犯罪者たちを粛正していった息子の所業と何ら変わりないではないか。
息子と同じ過ちを、父である自分が犯すわけにはいかない。
ゆえに彼は、聖杯戦争に抗う道を選んだ。


「セイバー、いるか」

息子も自室に戻り、一人きりになった居間で総一郎は呟いた。
すると間髪を入れず、霊体化を解いた彼のサーヴァントが傍らに出現する。

「ああ、ここにいる」

総一郎が召喚したサーヴァントは上半身がほぼ裸に近く、その鍛え上げられた肉体を惜しげも無く晒していた。
だがそんな野性的な格好とは裏腹に、顔には隠しきれぬ気品がにじみ出ていた。
本人は単なる異界の戦士に過ぎないと言っていたが、何か隠している素性があるのだろうと総一郎は考えている。

「犯人を見つけるのには、まだ時間がかかると思うか」

ここでいう犯人とは、もちろん大量殺人の下手人のことだ。
警察官としても聖杯戦争に抗う者としても、総一郎はこのような蛮行を見過ごすわけにはいかなかった。
ゆえにセイバーの力も借り、個人的な捜索も行っていたのだ。

「判断に困るところだな……。我々だけで犯人を捜すとなれば、まだまだかかるだろう。
 この東京という街は、聖杯戦争の舞台としてはいささか広すぎる」
「曖昧な答だな」
「問題は、他の聖杯戦争の参加者がどう動いているかだ。
 義憤に駆られ、我々のように犯人を捜す者もいるだろう。
 犯人を恐れ、関わらないようにする者もいるだろう。
 そしてこれを隠れ蓑として利用し、自らも凶行に走る者もいるだろう」
「それぞれがどれほどの割合でいるか、見当がつかないということか」
「そういうことだ。役に立つことが言えなくてすまないな」
「いや、かまわないさ」


661 : 夜神総一郎&セイバー ◆NIKUcB1AGw :2016/02/15(月) 21:39:45 P6c39iCk0

うなだれるセイバーを、総一郎は微笑と共にねぎらう。
そもそもセイバーは戦闘に特化した英霊であり、このような情報収集には向いていない。
それでも懸命に付き合ってくれているのだから、それだけで感謝しなければならないというものだ。

「あなたには本当に感謝している。ここまで熱心に協力してもらえているんだからな」
「感謝など必要ない。マスターの命令に従うのは、サーヴァントとして当然のことだ」
「いや、それだけではないだろう。あなたが義務感だけで、ここまで力を入れて私に協力してくれているとは思えない。
 差し支えなければ、どうしてこんなにも私に力を貸してくれるのか聞かせてもらえないだろうか」

総一郎との問いに、セイバーはわずかな間沈黙する。
だがすぐに、答を語り出した。

「簡潔に言うならば共感、だろうか」
「共感?」
「初めて会った時、マスターはこう言った。自分は息子を救えなかったと。
 私も似たようなものだ。息子の命こそ救うことはできたが、その後あいつは長く苦しい道のりを歩むことになってしまった。
 幸い、あいつは苦難を乗り越えて幸せをつかんでくれたが……」
「そうか……。それは何よりだ」

しみじみと呟きながら、総一郎は元の世界の息子に思いをはせる。
部下たちには自分が死んだ場合、息子が犯人であるものとして捜査を進めろと言い残してきた。
遅かれ早かれ、息子は追い詰められるだろう。
法に裁かれるか、命を落とすことになるかはわからない。
どちらにしろ、もはや息子の幸せな未来などはあり得ない。

「さて……そろそろ寝るとしよう。また明日よろしく頼む、セイバー」
「ああ、任せてくれ」

セイバーが再び霊体化したのを確認すると、総一郎は寝室に向かって歩き出す。

(やはり私は、ダメな父親だ……。息子を救えるかもしれないチャンスを、自分から放棄するんだからな。
 だがやはり、多くの他者を犠牲にしてまでつかむ幸せなど間違っている……。
 どうせ一度失ったこの命、聖杯戦争とやらで出る犠牲を一人でも減らすことに使わせてもらおう。
 それがお前を救えなかった私にできる、せめてもの罪滅ぼしだ、月……)

彼が胸に抱く複雑な感情を知る者は、誰もいなかった。


662 : 夜神総一郎&セイバー ◆NIKUcB1AGw :2016/02/15(月) 21:40:29 P6c39iCk0

【クラス】セイバー
【真名】パパス
【出典】ドラゴンクエストV 天空の花嫁
【属性】中立・善

【パラメーター】筋力:B 耐久:A 敏捷:E 魔力:D 幸運:E 宝具:C

【クラススキル】
対魔力:B
魔術に対する抵抗力。
魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。

騎乗:C
乗り物を乗りこなす能力。
野獣ランクの生物は乗りこなせない。

【保有スキル】
回復魔法:D+
傷を癒やす魔法を使える。
低ランクの魔法しか使えないセイバーだが、なぜかその回復効果は常人より高い。

連続攻撃:A
一呼吸で2回の攻撃を放つことができる。

カリスマ:A
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
Aランクともなれば人として最高位のカリスマ性。

無窮の武練:B
ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
心技体の完全な合一により、いかなる精神的制約の影響下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。

勇猛:B
威圧、混乱、幻惑といった精神干渉を無効化する。また、格闘ダメージを向上させる。


【宝具】
『パパスはただジッとたえている(ストロング・ファーザー)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-50 最大捕捉:50人
息子を守るために、魔物になぶり殺しにされたという逸話と、彼の人間性が結びついて生まれた宝具。
発動中は効果範囲内にいるセイバーの味方は決して敵の攻撃に当たらず、セイバーが全ての攻撃を肩代わりする。
広範囲攻撃であろうとも、攻撃範囲が収縮しセイバーだけを攻撃することになる。
その名が示すとおりこの宝具の発動中、セイバーはただ耐えるだけでありこちらからの攻撃は行えない。

【weapon】
○パパスの剣
セイバーの愛剣。
特殊能力の類はなく、特別に切れ味がいいわけでもない。
それでも彼にとっては、かけがえのない武器である。

【人物背景】
グランバニアの国王。
魔王に連れ去られた妻を救うために、身分を捨て息子と共に一介の旅人として世界を回る。
だがその目的を達成することはかなわず、息子を人質に取った卑劣な魔物によりその身を焼き尽くされてしまった。

【サーヴァントとしての願い】
一人の父親として、マスターを助ける。

【基本戦術、方針、運用法】
近づいて剣で斬る、シンプルなセイバー。
しかし、シンプルすぎて搦め手がまったく使えない。
飛び道具がなく敏捷も低いため、アーチャーやキャスターに遠距離から攻められるとどうしようもない。
スキルや宝具は集団戦向けなので、同盟を組んで弱点をカバーしてもらうのが良策だろう。


663 : 夜神総一郎&セイバー ◆NIKUcB1AGw :2016/02/15(月) 21:41:06 P6c39iCk0

【マスター】夜神総一郎
【出典】デスノート(テレビドラマ版)

【マスターとしての願い】
聖杯戦争の犠牲者を、一人でも減らす(NPC含む)

【weapon】
警官としての職務中は、拳銃を所持。

【能力・技能】
あまり武闘派ではないが、警察官である以上ある程度の戦闘力は持っているものと思われる。

【人物背景】
大量殺人犯「キラ」を追う捜査本部の部長。
かつて家庭より仕事を選んだため妻の死に目に会えず、それが原因で息子・月との間に溝ができていた。
月がキラの正体と疑われても息子の無実を信じ続けていたが、やがて真実にたどり着いてしまう。
息子を誤った道に進ませてしまったけじめをつけるため彼はデスノートに自分の名前を書いてから焼却しようとするが、
月の必死の抵抗により燃やすことができずに死んでしまった。
彼の死は月の精神を決定的に破壊してしまうが、月を止めたのも彼が遺志を託した部下たちだった。

今回は死亡後からの参加。

【方針】
当面の目標としては、大量殺人犯を止める。


664 : ◆NIKUcB1AGw :2016/02/15(月) 21:41:48 P6c39iCk0
以上で投下終了です


665 : ◆GO82qGZUNE :2016/02/15(月) 23:15:50 HSBbGJ9g0
投下します


666 : セラ&ランサー ◆GO82qGZUNE :2016/02/15(月) 23:16:22 HSBbGJ9g0





 己が過ちから目を背けず。誰かの罪から目を逸らさず。
 泣き、笑い、傷つき、愛し。
 どこまでも、空を見上げて共に歩いていくという。
 果てしない、戦い。





   ▼  ▼  ▼


667 : セラ&ランサー ◆GO82qGZUNE :2016/02/15(月) 23:17:00 HSBbGJ9g0





 ―――ふと、窓から通りを眺めてみた。

 手のひらを窓枠に押し付け、何ともなしに外を見つめる。
 静かな街、明るい世界。窓の向こう、住宅街の十字路を、小さな女の子とその母親が手を繋いで歩いている。
 長い黒髪を後ろで結った女の子と、同じ黒髪を肩口で切りそろえた若い母親。
 女の子は母親の手を引っ張ってはしきりに何かを話しかけ、母はそんな娘の言葉にうんうんと頷いている。
 二人が何を話しているのかは、距離がありすぎてここまで聞こえてくることはないけれど。それでも楽しげな空気は伝わってくる。
 女の子は満面の笑みで母を見上げ、母は嬉しそうに娘の頭を撫でる。行き交う住人が二人に話しかけ、二人は顔を見合わせて笑う。
 幸せというものを切り出して一枚絵にしたかのような、暖かい家族の情景。
 それがとても、眩く思えた。

「……ランサーさん、いますか」
「ちゃんといるよ、ここにね」

 何かを決意したような少女の声に、答える者があった。それは少女と同じく、しかし成熟した女性の声。ランサーと呼ばれた女の、快活な返答であった。座る者なく部屋の片隅に放置された椅子に腰かける形で現れた彼女は、静かに視線を少女へと合わせる。
 真っ直ぐに、互いの視線が交錯した。直立した少女と腰かけた女は、それでようやく目線の高さが均等になっていた。

「その顔を見れば、言いたいことは大体分かるよ。覚悟、決めたんだね」
「はい。ようやく、ようやく決まりました。
 けど」

 少女は毅然と顔を上げる。その表情は先までの物憂げなものと違い、何かの意に満ち溢れていた。

「誰かを殺す覚悟じゃありません。わたしは、誰も殺さずに元の世界に帰ります」
「……それ、全方位に喧嘩売ってる発言だって分かってる?」
「はい……すみません、ランサーさん。貴方の願いを、わたしは叶えてあげることができません。けど」

 言って、少女は手をランサーへと向けて。


668 : セラ&ランサー ◆GO82qGZUNE :2016/02/15(月) 23:17:25 HSBbGJ9g0

「たとえ貴方に裏切られても、みんなから否定されても。わたしは、絶対に譲りません」
「どんな理由があっても、誰かが死ぬのは悲しいです。誰かが誰かを殺すのは、すごく痛くて、怖いです」
「だから、誰かが死ぬのを仕方ないなんて、わたしは絶対に言いたくありません」

 掲げられた少女の手には、なにもない。
 正真正銘空っぽの手。令呪を宿したのとは逆の腕。
 それは、少女の誰も殺さないという覚悟の証明であると同時に。
 そのために己が侍従を不当に縛ることもしないという、決意の表れでもあった。

「理由」
「……え?」
「理由、聞いてもいいかな。一応、私にもそれくらいの権利はあると思うのよね」

 虚をつかれたといった具合の少女とは対照的に、ランサーと呼ばれた女は苦笑したような曖昧な笑みを浮かべていた。
 それは呆れとか、諦観とか、そういう負の部類ではない。
 それは、例えるならば―――

「マスターの言うことは分かるよ。でも、それだけじゃないよね。
 単なる良識とか正義感とか、それだけならこんなに悲壮な顔なんてできないもの。違う?」

 それは例えば、幼い子弟がふとした時に見せた輝きを尊ぶような、優しい母親の笑顔。
 例えば、理解しがたいほどに熱く燃える子供の情熱を眺めるような、老成しきってしまった老人の顔。

 あ、と声が漏れる。無意識に口を開いて、少女はぽつりぽつりと語り始めた。
 彼女が何故その想いに至ったのか、誰を想ってそう結論を出したのか。


669 : セラ&ランサー ◆GO82qGZUNE :2016/02/15(月) 23:18:06 HSBbGJ9g0



 それはとある少年のお話。誰をも傷つけたくなくて、誰も殺したくなくて、それでもたったひとりの少女のために殺人という大罪を犯した少年の話。
 少年は少女にとって、母の仇だった。例え不可抗力であっても、彼の行動が少女の母を死に至らしめたことは事実であった。
 それでも、少女は少年のことを憎み切れず。少年は、いつか少女が自分を裁くその日まで、彼女を守ると誓った。

 そして―――

「そして、言われたんです。わたしが、ディーくんのためにできることが、ひとつだけあるんだって」
「それは、ディーくんが人を殺したことを、絶対に許さないということ」

 ディー、デュアルNo.33は、この先数えきれないほどの人々を殺していく。少女のために、世界のどこかに少女の居場所を作るために、いつまでも戦い続ける。終わりのない戦いを人を慣れさせ、最初のひとりを殺す時に感じた恐怖は十人殺す時には半分となり、百人千人と殺していけばいつしか当たり前の行為になっていく。
 けれど、他ならない自分が、それを許さないと言っていれば。
 少年は踏みとどまることができる。自分の行為を正当化できず、人の命を奪う恐怖に怯え続け、それでも兵器ではなく人間として生きていくことができる。

 それこそが、少年の望みであり。
 かつて言われた、自分ができる唯一のことで。

「だから、人を殺すディーくんを許さないわたしは、絶対に人を殺しちゃいけないんです。この先何があっても、どんな状況になっても、絶対に」

 それだけが、決して譲れない少女の想い。
 ひとしきり話し終えて、少女は静かに息をついた。

「ごめんなさい、ランサーさん。私はマスター失格ですね。お詫びになるかも分かりませんけど、機会があれば他のマスターの方に……」
「何言ってんの! 私のマスターはきみだけだよ!」
「へ、え?」

 目にもとまらぬ早業で抱き上げられ、少女は素っ頓狂な声を上げる。状況の変化に脳がついてこられず、出るのは要領の得ない言葉ばかり。
 あれ、わたしはなんでこんなことになってるんだろう。ぐるぐると回転する視界と一緒に、思考まで空回りを始めていた。

「え、でも、わたしはランサーさんの願いを叶えてあげることができなくて……」
「もう、まだそんなこと言って」

 苦笑とため息ひとつ吐いて、ランサーは抱え上げた少女を降ろしてやった。すとんと危なげなく着地するのを見届け、しゃがみこんで目線を少女に合わせる。


670 : セラ&ランサー ◆GO82qGZUNE :2016/02/15(月) 23:18:37 HSBbGJ9g0

「こんな小さな女の子が、そうまで言えるだなんて本当に大したもんだよ。
 いいもの見せて貰った、きみのことが気に入った。だからもう、それだけで私はきみだけのサーヴァントなんだよ」

 そしてにっこりと、花が咲くように大きな笑顔を、ランサーは零した。

「それにね、なんというか、私の願いってサーヴァントになってからどうのこうのってものでもないのよね。
 倒したい奴はいるけど、それはサーヴァントなんて偽物の私がやることでも、聖杯なんてズルして達成することでもないし」
「そ、それでいいんですか……?」
「いいのいいの。こういうのは意地の問題だからね。自分が納得できない方法で事を為しても何にもならないって」

 唖然とする少女に、あっけらかんと言い放つ。
 どこまでも豪快に、しかしどこかに繊細さも織り交ぜて。
 ランサーのサーヴァント、プリセラは笑った。

「ま、万事私に任せておきなさいな。これでも私、ちょー強いんだから」
「……ありがとうございます、ランサーさん」
「いいっていいって。これからよろしくね、"セラ"ちゃん」

 目尻に薄っすらと涙を滲ませ、震える声で礼を言う少女に、ランサーはただ笑いかけた。
 母を失い、修羅の道に堕ちた少年を想う少女と。母でありたいと願い、修羅の道に堕ちながらも誰よりも強く生きたいと願った女の。
 それは、出会いと触れ合いの一幕であった。


【クラス】
ランサー

【真名】
プリセラ@マテリアル・パズル

【ステータス】
筋力A 耐久A 敏捷A 魔力E 幸運C 宝具A

【属性】
中立・善

【クラススキル】
対魔力:E(A+)
魔力ダメージに対する防御。無効化はできず削減するのみ。
ただし、後述のスキルが発動した時に際してはランクが飛躍的に上昇する。

【保有スキル】
心眼(真):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
逆転の可能性がゼロではないなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

魔弾迎撃:A+
攻性魔術への迎撃、あるいは防御魔術への攻撃に際し、ランサーの対魔力をA+まで上昇させ、かつ貫通効果を付与する。
このスキルはあくまで迎撃や攻撃、つまりは徒手空拳によりインパクトの一瞬にのみ発動するものであり、攻撃動作を行っていない場合においては一切発動しない。
魔法(マテリアル・パズル)こそが最強の存在とされた世界において、己が拳一つであらゆるマテリアル・パズルを打ち貫いてきたランサーの逸話と軌跡が具現したスキル。

勇猛:A
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

蔵知の司書:-
多重人格による記憶の分散処理。
ただし、現在このスキルは失われている。


671 : セラ&ランサー ◆GO82qGZUNE :2016/02/15(月) 23:19:01 HSBbGJ9g0

【宝具】
『無垢の揺り籠』
ランク:A 種別:結界宝具 レンジ:0 最大捕捉:1
ランサーの腹部に刻まれた封印刻印。『檻』を冠する術式が現す通り、本来ならば魔獣を仮想敵とした強力な封印結界である。
それは何かを封じ込めるためのものではなく、彼女の体に宿った存在―――すなわち「胎児」を守るためのもの。本来一画でも相当に強力な結界を更に十九画で以て守護しており、腹部に対する防御が完璧になる代わりにランサーの力は常に半減している。
常時発動型の宝具であるが魔力消費は一切ない。この宝具の真価とは、発動ではなく解除の瞬間にこそ訪れる。
この宝具の発動を解除した場合、押さえつけられていたランサーの全力が発揮され、筋力耐久敏捷に+の補正がかかると同時にAランク相当の魔力放出スキルを付与する。
ただし、ステータス上昇に加え膨大な量の魔力を垂れ流すことになるのでマスターに要求される魔力消費量は意味不明なレベルまで跳ね上がる。ランサー自身がこの宝具の解除をあんまり望んでいないことも合わせて、解除の際には令呪の補助が必須と言えるだろう。

【weapon】


【人物背景】
ドーマローラ国が滅んだ際、不老不死になった三人のひとり。
19歳の時に不老不死になったので、その姿で固定されている。
自らに宿る命のために、誰よりも強く生きたいと願った母親。

【サーヴァントとしての願い】
グリ・ムリ・アの打倒。そしてお腹の子の誕生。
しかし今はマスターの意向に従う。



【マスター】
セレスティ・E・クライン@ウィザーズ・ブレイン

【マスターとしての願い】
デュアルNo.33を許さない。
彼を許さない自分は、決して人を殺さない。
そして、そんな彼と一緒に生きていきたい。

【weapon】
D3:
Demension Distorting Device。光使い専用の外部デバイス。時空構造制御の範囲拡張のためのもので、このD3が存在する周囲の空間も同様に操作可能。D3は光使いにより操作される(原作者曰くファンネルみたいなものとのこと)。
外見は透明な正八面体で12個存在しており、普段は空間の裏側に収納されている。

【能力・技能】
光使い:
時空制御特化型魔法士。自分の周囲の空間を捻じ曲げることで重力を操って空を飛ぶ、質量探知、歪んだ空間によって攻撃を逸らす(shield)、疑似的な荷電粒子砲(lance)を撃つこと等が可能。
遠距離戦闘・対艦隊戦闘のスペシャリスト。単体戦では対魔法士戦でも最強とされる騎士とは対照的に、大量虐殺に秀でた光使いは大戦中「戦場の死神」として最も恐れられた。

【人物背景】
マサチューセッツのスラム街に住んでいた金髪碧眼の少女。10歳。ニックネームはセラ。
母を失い、幸福を失い、それでも少年と共に在ることを望んだ少女。
傍らに在る少年を人でいさせるため、彼の罪を決して許さず、その為いかなる状況であっても絶対に人を殺さないことを誓った少女。

参戦時期は5巻終盤、ディーに「決して許さない」と告げるために赴く、その直前。

【方針】
決して誰も殺すことなく、元の世界に帰る。


672 : ◆GO82qGZUNE :2016/02/15(月) 23:19:22 HSBbGJ9g0
投下を終了します


673 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 23:35:57 KZBO7iJc0
別所の流用ですが、投下します(流用作の投下が多くてすみません)。


674 : 高遠遙一&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 23:36:25 KZBO7iJc0




【1日目】





 昼休みの音楽室では、ピアノの戦慄が響いていた。



 県内屈指の名門進学校の、誰もいない音楽室で、リストの難曲も苦も無く弾き続ける一人の少年――高遠遙一少年。
 顔立ちは、取り立てて美少年というわけでもなく、逆に崩れているというほどでもない。
 身長も特別高くなければ、普段着る服も目立たない物ばかり選んでいる。
 今の制服は規律通りに着用していて、少しも着崩さなかった。
 彼はそんな――どこにも飾り気のない、どこにでもいる地味な生徒だった。

 ただ、一目見て秀でている点と言えば、細長い指先だろうか。
 目で追うのは困難なほどに優雅にそれを動かし、鍵盤を叩いていく。

 時に激しく……時に滑らかに……。

 彼は、古の音楽家たちの遺した芸術を重ね合わせた。
 とはいえ、別に、彼もピアノや音楽が好きなわけではない。
 ただ、考え事をしたい時には、無意味にピアノを弄んで、孤独な時間を潰しながら何かを想うだけだった。
 いつも、ピアノを弾いている時が一番考え事が捗った。
 家にはピアノがないので、普段はこうして昼休みや放課後に音楽室を貸してもらうのだ。


「……」


 そんな高遠少年の目に映るのは、自らが奏でる音ではなく、奇術の事ばかりである……。
 幼心を刺激した不可思議のマジックショー。
 おそらく……自らの母である、近宮玲子。

 ――彼女のように、大勢の人の視線の先に立り、マジックを披露する事のみが彼の目標であり、目指すものである。

 普段の学校の勉強という物にもさして興味はなく、ただ目を通した物が勝手に頭の中で記憶されていくだけでしかない。
 自分で掴み取ろうとしているマジシャンの座以外に、願いもない。
 強いて言うならば、息苦しい今の家から脱し、マジックの勉強に専念したい程度だが、それもまた今の彼の立場からすればそれはただの我儘でしかない。
 欲しい物は、何もない。

 しかし、聖杯は彼を呼んだ。
 彼は、それについて何とも思わなかったが、ただ、聖杯には興味があった。
 それも見識を広げる為、という程度だろうか。

 命を奪われるリスクがあるのも承知しているが、別段、それに強く恐怖する事もない。
 得た物を使い、ひとまず、その聖杯という物を拝んでみたいという程度の細やかな願いがあった。

 彼の奏でる戦慄は普段と何も変わらない。
 少しの指の震えもない。



 ただ、彼は、これから起きる出来事への期待と、既に始まっている何者かによる連続殺人事件に……少しだけ、笑った。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆


675 : 高遠遙一&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 23:37:05 KZBO7iJc0



 ――『地獄の傀儡師』


 この異名は、後にこの高遠遙一少年が芸術犯罪を行う時に名乗る事になる名前である。
 しかしながら、高遠少年は今現在、犯罪を犯した事もなければ、今後起こすつもりもない。
 むしろ、犯罪など、これから先の人生で彼が持っている夢を邪魔する物に過ぎないと考えているくらいだ。

 そういうわけで、今のところは、ただマジシャンを目指して邁進し、ステージの上で母と再会する事だけを考えている。
 ただ、それもまた、いう程真っ直ぐな夢というほどではない。
 他人に聞かれて、こんな夢を語る事もないし、「プロになりたいのか?」と聞かれれば、とりあえず否定をするだろう。
 見ず知らずの他人に、夢想家だと思われるのは高遠も嫌いであった。

 だが、彼自身は、着々と夢に近づいていた。
 小さなマジックショーの中で。
 高校のマジック研究会の中で。
 父親に隠れながら――。
 己の中に眠る、天性の犯罪者としての血は未だ覚醒する事もなく、ただ純粋なマジシャンとしての技量だけが積まれていった。

 本当なら、高校など辞めて今すぐ海外で高名なマジシャンに弟子入りしたい所だが、厳格な父親の手前、そうもいかない。
 仮にもし、もっと早く弟子入りをしていたら、既に彼はステージの上でデビューをしていたかもしれない程の腕前は、まだ少年の中に隠れていた。

 そして、そうしている間にも、どこかにいる彼の母の命と芸術が、一人の弟子によって奪われようとしている事など、彼は知る由もなかった……。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 放課後。
 彼は井之頭公園にいた。
 考えてみれば、ここも、一昔前、バラバラ死体が見つかり、犯人の正体もわからぬまま公訴時効を迎えた忌まわしい場所だ。
 しかし、そんな事件は人々もとうに忘れて、ここを遊び場にしている。子供も立ち入って、当たり前に遊んでいる。

 この公園の中央にある大きな池のほとりに高遠遙一は、いた。
 彼は最近、ここで小さなマジックショーを行っているのである。


「……はい、じゃあこれでおしまいだよ」


 子供ばかりが数名集まり、高遠少年の持つシルクハットに注目する。
 今まさに、そのシルクハットの中から現れた大量の鳩が飛び交っている最中であった。
 自由の空に飛び交う大量の鳩たちに子供たちの目が奪われている。

 果たして、一体あの小さな帽子のどこからあれだけの数の鳩が収まっていたのか……。
 そして、先ほどまで空洞だったはずの帽子に、何故鳩が現れたのだろう。

 高遠少年のマジックショーのクライマックスに相応しい大がかりなマジックだった。
 マジシャンにとっては基本中の基本とも言えるが、それを目の当りにした子供たちにとっては魔法そのものである。


「すご〜い!!」


 子供たちの純粋な眼差しと拍手喝采を受ける高遠少年の姿は、満更でもなかった。
 こうして人々の前で「不思議」を、演出するのが彼は好きだ。魔術のタネを考え、披露するのは最高の楽しみである。

 今もまた、舞台に立つ未来像の為に、人前でマジックを披露する練習をする。
 純粋であるがシビアでもある子供たちは、その為の最適なデータをくれる。
 彼はこうして、トリックで人を欺くのが好きで――同時に、マジックの好きな子供というのも嫌いではなかった。

 高遠が、ニヤリと笑う。


「え――!?」


 次の瞬間――子供たちが釘漬けになっていた空の鳩たちは、一斉に赤い薔薇の造花へと姿を変えた。
 羽音さえも同時に消え去り、そこにいた鳩たちは元々、薔薇の化身だったかのように消えたのである。
 全く、不可思議な現象であった。


「どうなったの……?」


 そして、それは、まるでパラシュートで落下するように、ひらひらと、子供たちの手の上に落ちていった。
 まるで子供たちの位置まで計算され尽くしていたかのようである。
 今度は、歓声よりも、何が起こったのか瞬時に理解できず、困惑する声の方が大きかった。

 今の鳩たちは消えてしまったのだろうか……?
 子供たちの中には、そんな後味の悪ささえ残した者もいたが、誰かの拍手が鳴ると同時に、他の子供もつられて拍手をした。
 そして、彼らは消えた鳩の事など忘れた。
 手元にある赤い薔薇がそれの化身でないのは確かだろうと思いながら……しかし、またこれが鳩になるかもしれないと思い、ぎゅっと握る。


676 : 高遠遙一&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 23:37:36 KZBO7iJc0


「それは僕からのプレゼントだよ!
 さあ、優しいお母さんがいるお家へお帰り――。
 ……この近くには、怖〜い殺人鬼がうろついているみたいだからね」


 優しい高遠の言葉に、子供たちは純粋に微笑みながら、「うん」と頷き、その場から去って行った。
 また、この場所でマジックをする高遠少年と会える事を望むだろう――。


「……」


 高遠少年は、その背中を見送った。
 これでショーは終わりだ。


「――さて」


 優しき少年の表情が、冷徹な聖杯戦争のマスターへと変わったのは、それからすぐの事だった。
 公園で今のマジックショーを覗いていた一人の、髪の長い少年――。
 彼こそが、高遠が出会った『サーヴァント』の『セイバー』の仮の姿である。


「……セイバー、何か言いたそうだね」


 セイバー――として現れたのは、少年の姿を象った『ウイングマン』であった。
 高遠少年とは相反する善なるサーヴァントと言って良い。
 ただし、それもまた真名とはいいがたい仮の名前であり、実際はドリムノートによって実体化された一人の少年の「記憶」である。
 本当のウイングマンの変身者である広野健太は全てを忘れて、戦いに巻き込まれなかった普通の少年として暮らしている。
 彼の姿と記憶だけを借りたセイバーは、言って見れば、健太をかつてウイングマンにした『ドリムノート』という不思議なノートそのものであった。


「マスターも、子供にだけは優しいんだな……と思ってさ」

「善良な観客は、最大限持て成すのが、プロのルールだからね。それを真似ただけだよ」


 苦笑しながら、マジック道具を片づける高遠。
 セイバーも、高遠を見直してはいたが、この少年の本質的な問題点が変わっていない事だけは理解していた。
 彼と組んで以来、その常軌を逸した独特の感性に、セイバーも気圧されてばかりいる。

 彼自身は、聖杯戦争を楽しんでいる――。
 この戦争の行く先に言い知れぬ期待を持ってここにいるのだ。
 高遠が、セイバーに訊いた。


677 : 高遠遙一&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 23:37:56 KZBO7iJc0


「セイバー。……どうだった? 僕のマジックショーは──」

「どうしてオレにそんな事を聞くんだ?」

「他に訊く相手もいないし、英霊であるセイバーの感想が聞いておきたいんだ。
 それに、僕の事を好んでいないセイバーなら、より厳しい感想を口に出来るだろうから」


 そう言われ、少したじろいでから、セイバーは答えた。


「マスターには、魔術の素養もなく、オレの宝具の力を使ったわけでもないんだろ?
 だけど、マスターのマジックは、まるで魔法のようだった……一体、どうやったんだ?」

「……そうか。英霊すらも騙す事が出来て光栄だよ」


 そう言う高遠の瞳は渇いていた。
 言葉とはまるで正反対の態度である。何か物足りなく思っているようだった。
 褒められてもこの態度だが、おそらく、望んだ通りの厳しい感想を口にしたとしても、つまらなそうに回答するのだろう。
 それから、高遠は、怜悧な表情を崩さず、言った。


「……じゃあ先に帰っていてくれ。
 僕は、ここでもう少し――月を見ているよ」

「……」

「……ああ、ごめん。訊かれた事にこたえてなかったね。
 でも、悪いけど、マジックの種だけは教えられないんだ」


 そう言って、高遠は困ったように笑った。


「それは……わかってるよ。余計な事聞いて悪かった。
 でも、まだ月が見えるには早いんじゃないか……?」

「――ああ。
 ……だから、あの月が煌々と輝く時まで、あの月を見ていようと思ったんだ」


 そう不思議な事を言いながら、空を見上げる高遠。
 セイバーは、そんな彼の命令には逆らわず、ただその場から去った。

 夕方の月は、夕日の輝きに負けて、空の中では薄く輝いていた。
 聖杯戦争の本格始動まで、あと僅か……。


 ようやく始まる――月を眺める高遠の中で、そんな予感がした。






----


678 : 高遠遙一&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 23:38:13 KZBO7iJc0

【クラス】

セイバー

【真名】

ウイングマン@ウイングマン

【属性】

秩序・善

【ステータス】

筋力B 耐久C 敏捷B 魔力C 幸運C 宝具A+

【クラススキル】

対魔力:B
 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

騎乗:B
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、 魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。
 ただし、ウイングマンの場合、サポートメカの『夢仕掛けの天馬(ウイナア)』の騎乗が可能であり、ウイナアをウイナルドに変形させる事も可能。

【保有スキル】

戦闘続行:B
 名称通り戦闘を続行する為の能力。
 決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
 「往生際の悪さ」あるいは「生還能力」と表現される。

忘却の英雄:B
 人類史の中でその名が記録されていない英雄の性質。
 かつて、広野健太が『夢想の備忘録(ドリムノート)』に記憶を消去した為、ウイングマンの存在は忘れられている。
 これにより、サーヴァントの真名が知られた差異、対策を練る事が困難となり、真名を明かすリスクが軽減される。
 彼の宝具の中でも、存在が記録されている物は、『夢想の備忘録(ドリムノート)』のみである。

【宝具】

『夢想の備忘録(ドリムノート)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:∞ 最大捕捉:∞
 書き記した事を現実にする事ができる、異次元世界「ポドリムス」のノート。
 ドリムペンを使い、かつ本当にそれを夢見て書きこんだ内容のみが現実世界に反映される。ただし、基本的には他者を生き返らせる事などは不可能。
 唯一それを可能とした例は、ドリムノートの全ての項目をドリムイレイザーで削除して、「アオイを生き返らせたい」という強い願いを全てのページに描きこんだ際の事であり、これによりかつてドリムノートの記憶は三次元世界から忘れ去られた。
 (ただし、この例また奇跡の産物に近く、実質的には武装強化など用途が限られる事になる。)
 ウイングマン自身がこの『夢想の備忘録(ドリムノート)』の産物であり、この宝具を破壊(もしくはウイングマンに関するページが削除)された場合、サーヴァント自身が消失する事になる。

『悪裂の夢戦士(ウイングマン)』
ランク:B 種別:対人宝具(自分) レンジ:- 最大捕捉:-
 かつて、『夢想の備忘録(ドリムノート)』によって発現されたセイバーの真名。「悪・裂!ウイングマン!」の掛け声と共に解放される。
 長剣クロムレイバーなどの武具を装備し、ファイナルビームやデルタエンドなどの必殺を持つ事ができる。
 三次元世界においてウイングマンの姿を実体化できるのは、いかなる魔力を持つ者が利用しても十分間が限度である。
 ただし、かつてウイングマンを誕生させた広野健太の姿を借りる事で長時間の実体化も可能であり、この場合は身体能力は著しく低下する。

『夢仕掛けの天馬/夢仕掛けの機人(ウイナア/ウイナルド)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1〜50人
 『夢想の備忘録(ドリムノート)』から誕生したウイングマンのサポートメカ。
 攻撃能力は無いが、陸上はもちろん海中・水中でも行動が可能、さらに異次元(ポドリムスしか行かないが)への出入りも可能。
 ビームサイザーやウイザービームなどの武装を持ち、サーヴァントが拘束された際に補助攻撃を行う事もできる。
 そして何より、これは『夢想の備忘録(ドリムノート)』が存在する限り、何度破壊されても再度呼べば再臨する宝具である。

【weapon】

『夢想の備忘録(ドリムノート)』
『長剣クロムレイバー』

【人物背景】

 かつて、ヒーローオタクの少年・広野健太がドリムノートに描きこみ、健太が変身したヒーローの姿。
 原作の「ウイングマン」に登場するウイングマンには人格は存在しないが、ポドリムス人あおいの中に内在するウイングマンの記憶を元にドリムノートと共に、英霊として複製されている。
 普段は、かつてウイングマンに変身した「広野健太」という少年の姿を借りるが、彼自身は三次元人でもポドリムス人でもない、ただの「広野健太とウイングマンの記憶を模して描き起こされた存在」である。
 サーヴァント自身もその事を認識している為、健太よりも少しドライで冷静な面があるが、やはり健太の性格を強く引き継いでいる。

【サーヴァントとしての願い】

 ヒーローとして、この世界の人間を守り抜く事。


679 : 高遠遙一&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 23:38:27 KZBO7iJc0





【マスター】

高遠遙一@高遠少年の事件簿

【マスターとしての願い】

特になし。しかし、一つの経験として聖杯を手に入れたい。

【weapon】

『マジック道具』
 普段、高遠が自らの身体に仕込んでいる様々なマジックアイテム
 アタッシュケースに入れて必要時に持ち歩いている物の他、いつでもショーが披露できるように体にも幾つかのマジックのタネを用意して生活している

【能力・技能】

 天才奇術師・近宮玲子の血を引き継いでおり、当人もマジシャンを志している為、魔法と見紛うような奇術を披露できる。
 高度な知性を持ち、名門進学校の秀央高校に入試全科満点で合格している。それに加え、授業を聞いていなくても一通りの授業内容を理解できる天才児。
 ピアノも悠々と弾きこなすほか、校内で発生した殺人事件を解決する事もある。

【人物背景】

 秀央高校一年生。マジック部に所属している。
 天才マジシャン・近宮玲子の息子であるが、現在は義父の元で暮らしており、母とは幼い頃に一度会ったきりである。
 成績優秀で、県下の名門高校を全教科満点で合格している他、ピアノの腕も見事。
 将来は母と同じマジシャンを志しており、普段は井ノ尾公園で子供を相手にマジックのパフォーマンスも行う。
 しかし、彼は同時に感情も殆ど空っぽであり、人が死んでも、あるいは殺したとしても何とも思わない(とはいえ彼なりの秩序や美学は持ち合わせている為、無差別殺人は行わない)。
 後に、「地獄の傀儡師」と名乗る連続殺人鬼になる前の高遠であり、この時点ではまだ誰一人として殺害していない。

 ※「金田一少年の事件簿」のキャラクターであるが、出典となる外伝「高遠少年の事件簿」の設定では一部、原作との矛盾がある。

【方針】
 聖杯に興味がある為、他の陣営を倒して聖杯を得る。
 ただし、無差別殺人などは行わず、ターゲットも基本的にはサーヴァントに絞る。


680 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/15(月) 23:38:46 KZBO7iJc0
投下終了です。


681 : ◆TA71t/cXVo :2016/02/16(火) 01:37:52 VHX3uQFI0
皆様お疲れ様です。
これより投下をさせていただきます


682 : ビスケット・オリバ&アサシン  ◆TA71t/cXVo :2016/02/16(火) 01:38:32 VHX3uQFI0
【二日目】


「……では警視総監殿。
 今回の殺人事件の調査に、『あの男』の手を借りると?」
「その通りだ、所長。
 これだけ大掛かりすぎる事件である以上、解決の為にはやむをえまい」


府中刑務所。
通称『府刑』と呼ばれるその施設は、日本最大の規模を誇る刑務所である。
その所長室では今、二人の重鎮が机を挟み重い顔をして言葉を交わしていた。
片方はこの府中刑務所の所長であり、対面に座るのは東京都警察の本部長……警視総監である。
彼等が話していたのは、先日東京で起きた大量殺人事件の捜査についてであった。
既に警察関係者をも含む多くの犠牲が出ており、このままだと更なる被害が出るのは火を見るより明らかだ。
何としてでも……どんな手を使ってでも、収集をつけねばならない。
そう判断した結果、日本警察庁はある決断を下したのだ。





「警察として、恥ずべき行為なのは承知している。
 だが、全ては犯人逮捕の為だ。
 Mr.アンチェイン……ビスケット・オリバの力を借してもらいたい」





この東京における最強の犯罪者ハンターであり、最悪の受刑者―――ビスケット・オリバの力を借りることを。




◇◆◇


683 : ビスケット・オリバ&アサシン  ◆TA71t/cXVo :2016/02/16(火) 01:39:06 VHX3uQFI0

「一夜にして52名もの大量殺人事件。
 空前絶後の殺人鬼……か」


本革を使った最高級のソファーに腰掛け、ビスケット・オリバは小さく溜息を吐いた。
壁にかけられた超大型テレビジョンに映し出されているのは、昨夜より話題となっている大量殺人事件についてだ。
たった一夜にしてこれだけの命が、それもたった一人に奪われたというのは、この東京において過去最大級の事態だろう。
今頃警察は慌てふためいているに違いないだろう。
一般都民とて、それなりの不安―――作りものである彼等に、果たしてその感情がどこまであるかは疑問だが―――には駆られているだろう。

しかし……中には自分と同じく、この事件にある可能性を見出す者達もいるだろう。
即ち、この殺人事件は聖杯戦争と密接に関わっていると。


『聖杯戦争に参加しているマスターか、或いはサーヴァントの仕業と見るべきだろうな』


そんなオリバの疑問に対して、彼の脳内へと男―――サーヴァントの声が響いた。
彼もまた、マスターと同様の考えを抱いていたようだ。
たった一夜の間に50もの命を奪えるだろう実力の持ち主というだけならば、両者共に知ってはいる。
しかし、彼等と目撃証言から想像できる容疑者の姿とは、かけ離れている……
何より彼等がいたとしても、この『東京』の地に住まう偽の住人がその様な凶行に走ることもありえないだろう。
故に、この殺人鬼の正体は聖杯戦争の関係者しかありえないのだ。


「なあ、アサシン。
 この聖杯戦争、お前はどう思ってる?」
『ん?』
「勝ち上がった優勝者には、あらゆる願いを叶えられる聖杯を与える。
 何とも魅力的で、神秘的な話だが……こうした凶行を見るに、ろくでもない願いを持った主従がいることも確かだ。
 普通、自分が主催者だったとして、こんな連中に聖杯を託そうだなんて思うか?」


オリバが抱いた疑問は、ある意味至極当然のものだった。
万能の願望器たる聖杯は、使うもの次第で核兵器すら及ばない最強最悪の兵器に成り果てる。
そしてそれを実行しかねない主従が、こうして聖杯戦争に参加している。
少しでもまともな考えがあるなら、そんな奴らに聖杯を渡そうなどとは間違っても考えないはずだ。


「かと思えば、お前の様に満足して生を終えたサーヴァントもいる。
 私とて、絶対と言う程叶えたい願いは今のところ持ち合わせちゃいない……妙じゃないか?」
『言われてみりゃ確かにな。
 そりゃ、こうして甦れた以上は楽しんじゃいるぜ?
 酒も女も美味い食い物も、お前のおかげで精一杯楽しめてんのは事実だ』


テーブルに置かれた上質なワインと、それに釣り合うこれまた上質なツマミ。
どちらも、オリバの地位があるからこそ手に入る至極の逸品だ。
そういった贅沢を、アサシンは心の底から楽しんでいた。
流石は生前、『強欲』の異名を持った男というべきか。


『が……まあ、なんだ。
 それでも、本当の意味で欲しかったものはあの時にもう手に入れちまってるからな。
 俺はあれで満足しちまった……お前の言うとおりだ。
 聖杯を絶対手に入れてぇって気持ちはそこまでねぇよ』


しかし。
オリバの言うとおり、アサシンは生前にこの世に一切の未練を残す事無く死を迎えていた。
強欲の身である自身が、もう何もいらないと満足出来るだけのものを手に入れることができていたのだから。
本当の意味で欲していたもの―――『仲間』を手に入れることが出来たのだから。
勿論こうしてサーヴァントとして降り立った今、その生はこうして存分に謳歌するつもりではある。
幸いにも自身のマスターは、『世界一自由な男』という異名を持つとてつもない権力の持ち主だったのだから。


684 : ビスケット・オリバ&アサシン  ◆TA71t/cXVo :2016/02/16(火) 01:39:44 VHX3uQFI0

「では、その手に入れた『仲間』達にもう一度再会が出来る……と言ったらどうだ?」
『あ〜……ん。
 そいつは、ちょいと考えちまうかもしれねぇが……いや、やっぱ乗れねぇな』
「ほう……仲間達に軽蔑されるからか?」
『ま、有り体に言えばそうだ……相棒が言ってやがったよ。
 自分の為に他者を切り捨てるやり方は、断じて王の在り方じゃねぇ。
 何もかも、全部ひっくるめて自分の懐に入れてこその【強欲】だろうってな』


他の参加者を切り捨て、聖杯を手にする。
そんなやり方は、自身の在り方に反する……それは真の意味での『強欲』ではない。
何一つとして切り捨てることなく全てを受け入れてこそ、真に『強欲』なのだ。
生涯で得られた最大の宝に、アサシンはそう教えられた。
それを反故にする様な真似は断じてできない……してしまえば、それこそ彼等に軽蔑され手放される結果になるだろう。
『強欲』な彼からすれば、手に入れたものを手放すなど考えられないのだ。


「ふ……」
『なんだよ、マスター?
 変な事を言ったつもりはないぜ』
「いや、やはりお前は私のサーヴァントなのだと思ってな。
 私も似た考えを抱いているよ」


オリバはそんなアサシンの考えを、全て良しとして受け入れていた。
彼とて、世界で一番自由な男―――Mr.アンチェインなのだから。
その怪力と権力で、欲するものを手にするべく散々に我儘を貫き通し続けてきた。
やりたいと思う事を、やりたいままに行ってきた……その有様はまさに『強欲』そのものだろう。

しかし、だ。
そんな彼にも、アサシンと同様に心の底から手放したくない大切なものがある。
それは、他の何者にも変えられぬ『愛』だ。
かつて世界最強を目指す一人のグラップラーに強さの秘訣を尋ねられた時、愛以外に人を強くするものなどあるものかと答えたように。
オリバには、とてつもなく大切な愛しき恋人が居るのだ。
この怪力とて、彼女を抱き上げるために手に入れたもの……だから、アサシンの言うことがよくわかる。
心のままに『強欲』に生きようと思う彼の思いは、オリバにとって共感に値するものであった。
だからだろう……彼が自身のサーヴァントに選ばれたのは。


「話を戻そう、アサシン。
 この聖杯戦争に参加する主従は、どういう基準で選ばれているのかが私には気になって仕方がない。
 恐ろしい殺人鬼もいれば、確固たる願いを持っていない者とている……
 下手をすれば、聖杯戦争が何たるかすらも理解できていない参加者とているだろう。
 主催者は何を持って、こんな真似をしたか……知ってみたいとは思わないかね?」
『……成程ね。
 確かにこいつは、何か裏を感じるぜ』


かつてアサシンの『父上』が目論んだ、神の力を手に入れるための大規模な計画。
この聖杯戦争には、それに近い何かがあるのかもしれない。
少なくとも、何かしらの意図があっての開催である事はまず間違いがないだろう。
だとしたら……放っておいてロクな結果にならないであろう事は、容易に予測できる。


685 : ビスケット・オリバ&アサシン  ◆TA71t/cXVo :2016/02/16(火) 01:40:09 VHX3uQFI0


「それに、何よりも……はっきり言ってしまうとな。
 『自由』を奪われてこの閉じた世界に無理矢理押し込められた事が、私は気に入らないのだ。
 だから、主催者達の思うがままに動くというのは我慢できないのでね……彼女の元にも帰りたい。
 この聖杯戦争を、ぶち壊してしまいたいと思っているんだよ」


そして。
ビスケット・オリバにとってこの聖杯戦争は、自身の自由を阻むモノとして到底許容できるものではなかった。
この自分を自由にして身動きを封じる所業など、どうして許せようか。
愛しき彼女と引き離した彼等を、どうして許せようか。
そんな首謀者の思惑通りに聖杯戦争に乗るなど、どうしてできようか。
だから……そいつらの計画を、この手で派手にぶち壊してしまいたいのである。


「だからアサシンよ。
 お前の協力がそれには必要不可欠になるんだが……
 力を貸してくれるのなら、礼としてお前の願いもついでに叶えてしまおう」
『あん?』
「わからないか?
 私は聖杯戦争をぶっ壊して、ついでに『聖杯』も首謀者からひったくってしまおうと言ってるんだよ。
 そういうやり方なら、お前だって仲間達に気兼ねすることもあるまい」
『……ハハハハハッ!!
 そうか、聖杯を主催者達からぶんどっちまうか……!
 いいぜマスター、その『強欲』なやり方……気に入ったぜ!!』


オリバの提案に、アサシンは心から派手に笑った。
気に入らない主催者達を潰したら、折角だしその戦利品として聖杯を頂いていこうとは。
なんという『自由』な、なんという『強欲』なやり方か。
かつての相棒とは別の意味で、この男は自身の主に相応しい性根の持ち主だ。
いいだろう。
その素晴らしい提案に、喜んで乗らせてもらおうじゃないか。
主催者達に自分達の望む生き方を見せつけ、貫き通させてもらおうじゃないか。


「Mr.アンチェイン、失礼します」


その時だった。
部屋のドアを叩き、何者かが室内に入ってきた。
先程、苦い顔をして警視総監と話していた府中刑務所所長だ。
そう、オリバ達がこうして優雅に過ごしていた空間とは、この府刑の中に特別に作られた彼だけの『牢獄』。
刑務所の中にあるまじき、世界最自由が住まう豪邸なのだ。
この作り物の地においてもなお、ビスケット・オリバはかつてと同じ立場でこの東京の地に降り立っていた。

即ち……刑務所を自由に出入りできる、東京で最も自由な囚人として。


686 : ビスケット・オリバ&アサシン  ◆TA71t/cXVo :2016/02/16(火) 01:40:49 VHX3uQFI0



◇◆◇



「成る程、例の連続殺人鬼の逮捕に俺の力を使うということか」
「ええ……それだけの事件であると、警察庁は判断されたそうです」


自室を出て、所長より大体の説明を受けながらオリバは刑務所の廊下を悠々と歩いていた。
左右の牢獄からは、そんな彼へと畏怖と切望の入り混じった視線が強く向けられている。
囚人達からすれば、Mr.アンチェインの在り方はこの上なく羨ましいものに違いないのだろう。


「いいだろう、私としてもあの事件は気にかかっていた。
 是非、犯人を逮捕させてもらおうではないか」


オリバは、所長からの協力要請―――もっとも、そんなものがなくとも乗り出す気満々だったが―――を快く受け入れた。
聖杯戦争をどうにかするにあたり、ひとまずは危険人物の排除は必須項目だ。
行動中に邪魔をされても堪らないし、不安要素は無いに越したことはない。
まずは刑務所を出て、この殺人鬼をはじめとする参加者達に接触を果たしてみようか。
そう、次のプランを考えていると……



――――――ガッシャァァァァンッ!!!



その時だった。
廊下に、強烈な金属音が響き渡ったのは。


「なっ……!?」
「ほう……こいつ、鉄格子をぶち破ったのか」


咄嗟に二人が音のした方向に振り返ると、そこにはひしゃげて原型をとどめていない鉄格子の扉があった。
そしてその先に立つのは、凄まじい巨躯を持つ筋肉隆々の囚人だ。
恐らくはその怪力をもってして、牢屋をぶち壊したのだろう……しかし。
この作り物の東京において、そんな真似をしでかす囚人など普通はいはしない。
もしいるならば、それは……


687 : ビスケット・オリバ&アサシン  ◆TA71t/cXVo :2016/02/16(火) 01:41:12 VHX3uQFI0


『マスター……この男、サーヴァントだぜ。
 だが、奴の右手には令呪もある』
「成る程……サーヴァントと一体化したマスター。
 所謂デミ・サーヴァントという奴だな」


聖杯戦争の参加者に他ならない。
しかもこの男は、サーヴァントとマスターとが一体化した存在―――通称でデミ・サーヴァントと呼ばれる者だ。
恐らくは記憶を取り戻し、刑務所からの脱走を図ろうとしているのだろう。
それはなんと……運がないことか。


「ウオオオォォォォォッ!!」


男は床を蹴り跳躍すると、ビスケット・オリバ目掛けて真っ直ぐに飛びかかってきた。
拳を強く握り締め、上空より全力で打ち下ろす。
人間を遥かに超越した存在たるサーヴァントと、生身の人間。
如何にオリバの超人的な身体能力があったとしても、まともに受ければダメージは免れない。
そのまま殴り合いをはじめようものなら、圧倒的大差でオリバは敗北するだろう。



……ただし。
それはオリバが本当に『生身の人間』だったらの話だ。




――――――ガキンッ!!



「ッ!?」


男の目が驚愕で見開かれる。
ビスケット・オリバはその太い腕で自身の拳を受け止めていたのだ。
ありえない。
幾らこの男の筋肉でも、そんな真似をして平然と立っていられるわけがない。
そう、驚きを隠しきれなかったのだが……そこで彼は気づいた。
自らが拳を押し付けているその腕が、鈍く黒い光沢を放っていることに。
そしてその手の甲には、赤く輝く文様―――令呪が宿っていることに。


自身のそれとは形状がはっきりと違う……身喰らう『ウロボロス』を模した令呪がある事に。


688 : ビスケット・オリバ&アサシン  ◆TA71t/cXVo :2016/02/16(火) 01:41:31 VHX3uQFI0

「ふふ……気づいたかな?
 そう、私も君と同じマスターであり……同じく、デミ・サーヴァントの様な存在なのさ」


ビスケット・オリバから、サーヴァントの気配がしている事に。

そう……今の彼はその身に『強欲』の化身を宿す、デミ・サーヴァントなのだ。





――――――ドガッシャアアァァァァァンッッッ!!!




オリバの豪腕から繰り出されたその一撃は、男の体を派手に壁三枚分ぶち抜き刑務所の中庭まで吹っ飛ばした。
落下して地面に落ちた時には既に、その命はない。
ビスケット・オリバ自身とサーヴァントの力をフルに発揮した全力の一撃は、容易くその囚人をこの聖杯戦争より脱落させたのだった。


「実にいい開戦の合図だ……では私も、はっきりと宣言しよう。
 この聖杯戦争を企む首謀者達よ……お前達に私以上の自由を、私は許さない!」


689 : ビスケット・オリバ&アサシン  ◆TA71t/cXVo :2016/02/16(火) 01:41:48 VHX3uQFI0
【クラス】
 アサシン

【真名】
 グリード@鋼の錬金術師

【属性】
 中立・中庸

【ステータス】
筋力:- 耐久:- 敏捷:- 魔力:B 幸運:A+ 宝具:A

【クラススキル】
気配遮断:-
 サーヴァントとしての気配を絶つ。
 アサシンはその生前、隠密行動に長けたリン・ヤオを宿主としていた為にこのスキルを持っていたが、
 彼という宿主を失い魂のみの存在になった為、現在はこのスキルを失っている。

【保有スキル】
カリスマ:C
 軍団を指揮する天性の才能。
 団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
 生前のアサシンは自らを慕う仲間達に恵まれており、彼自身もまた『強欲』に仲間達を誰ひとりとして
 見捨てようとしなかった事から、長としての優れた素質を持っている。

エンチャント:B
 概念付与。
 他者や他者の持つ大切な物品に、強力な機能を追加する。
 アサシンは自身の賢者の石で、マスターであるオリバの肉体に対してサーヴァントに通用するだけの強化を与えている。

【宝具】
『強欲の化身(グリード)』
 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:100
 『強欲』の名を持つアサシンを象徴する宝具にして、そしてアサシンそのものとも言える赤き賢者の石。
 賢者の石は無数の魂を凝縮させた生命エネルギーの塊であり、この石にはアサシンの魂を核として大量の命が宿っている。
 この賢者の石を体内に注入されたものはその強力なエネルギーに肉体を蹂躙されるも、
 それを全て受け入れ共存するか、或いは石に宿る魂を内在戦闘において全て殺し尽くし支配する事で、
 強力な力を持った人間ベースのホムンクルスと化す事ができる。
 前者の手段で生き残った者は、傷を負っても内在する生命エネルギーによって肉体の再生が可能である。
 ただし、命のストックがなくなるまで殺し尽くされた場合は再生力が働かなくなる。
 そしてこの宝具の最大の特徴として、体内の炭素の結合度を変化させる『最強の盾』の能力を得ることが出来る。
 これにより表皮をダイヤモンド並に硬化させる事ができ、強力な防御力を得ることが出来る。
 全身全てを硬化させれば何も通さない装甲を得ることが出来るが、再生と硬化は同時に行うことはできない。
 また、硬化には若干の時間がかかるため再生中・効果中を狙っての連続攻撃に対しては不利に陥る事がある。
 ビスケット・オリバはその懐の広さで『強欲』にアサシンを受け入れ共存に成功しているため、
 その能力をフル活用することができる。

【weapon】
 硬化させた肉体そのもの。
 オリバの肉体を硬化させ、更にその怪力を乗せることで敵を粉砕する。


690 : ビスケット・オリバ&アサシン  ◆TA71t/cXVo :2016/02/16(火) 01:42:07 VHX3uQFI0
【人物背景】
 『強欲』の名を持つホムンクルス。
 その名が示すとおりに自身の欲望に忠実であり、金・女・命と、この世のありとあらゆるものを欲していた。
 「ありえない事はありえない」という持論を持っており、ウソをつかないことを信条としている。
 『父』と呼ばれる人物の手で生み出されたが、その下では自らの強欲は満たせないとして離反。
 その後、世間のはみ出し者達や軍の実験体である元兵士達を集め、
 彼等の兄貴分として自由奔放に生きてきた。
 部下は自身の所有物だと公言しているが、それは単なる駒として見ているのではなく、
 「自分は誰よりも欲が深い、だからみんな俺のものだ。
 俺は俺の所有物を絶対に見捨てない」と豪語しており、『強欲』に彼等のことを思っていた。
 しかし、自らの拠点を攻めてきたキング・ブラッドレイとの戦闘に敗北し、全てを失ってしまう。
 そして『父』の手によって賢者の石に戻されたのだが、空席となっていた『強欲』を埋めるべく、
 『父』の手によってホムンクルスのアジトへ侵入したリン・ヤオに注入される事になった。
 結果、彼はリンの肉体をベースとしたホムンクルスとして復活を遂げることになった。
 この復活直後には以前の記憶は失われており、キング・ブラッドレイ共々『父』の計画のために動いていたのだが、
 自らの部下であり唯一の生き残りでもあったビゴーを自らの手にかけた事を切っ掛けに、過去の記憶がフラッシュバックし錯乱。
 記憶の中にあったキング・ブラッドレイを襲撃し、そのままの勢いで『父』から離反した。
 そしてその有様を、自らの内に潜んでいたリンに「『強欲』の名が泣く」と叱咤された事で、彼を認め以降は彼と共存する形をとった。
 それからは『父』を倒すべくリンやその仲間達と行動を共にしており、
 因縁の相手であるキング・ブラッドレイを激戦の末に退け、遂に『父』との最終決戦に臨んだ。
 やがて仲間達とともに『父』を追い込むも、満身創痍となった『父』は彼の賢者の石を奪いに来たため、
 リンの肉体から引き剥がされてしまう。
 この際にグリードを引きとめようとするリンの魂までも『父』に吸収されかけたのだが、
 グリードはそんな彼に対して自ら信条を破り、最初で最後の嘘をついて騙し突き放して取り込まれた。
 『強欲』な彼が何より求めた本当に望んでいたものは、金でも名誉でも永遠の命でもなく、
 リン達の様な仲間だったと共にある内に悟っていたのである。
 そして『父』の肉体を逆に自らの能力でボロ炭にして内部より破壊し、命を食い潰された。
 その最期には「もう十分だ、なんも要らねぇや」と笑みを浮かべ、
 自らの『強欲』が満たされた事を満足してこの世から去っていったのだった。

【サーヴァントとしての願い】
 この聖杯戦争を破綻させる。
 そして『強欲』に、聖杯を主催者から奪って手に入れる。


【マスター】
 ビスケット・オリバ@刃牙シリーズ

【マスターとしての願い】
 自分から『自由』を奪った主催者の企みを叩き潰す。
 ついでに聖杯を奪い、完全にその目論見を破綻させる。

【weapon】
 徹底的に鍛え上げた自らの肉体。
 そこにグリードの能力を乗せ、攻撃力と防御力を底上げさせる。

【能力・技能】
 輸送用の軍事ヘリを相手に綱引きができるほどの、人間離れした異常なまでの怪力を持つ。
 とある囚人曰く「アンチェインという異名は、閉じ込めておける場所がないという意味だった」との事であり、
 アメリカ最大である刑務所の独房の隔壁を容易く破壊出来るだけのパワーがある。
 またその分厚い筋肉がもたらす防御力耐久力も凄まじく、 ショットガンの至近射撃にすら耐え、腹筋を固めればナイフも通さない。
 更には最低限の保険として、外科手術により心臓周りに金属製のプレートを埋め込んでいるため、日本刀の刺突にすら耐えられる。
 特技として、全身複数箇所の筋肉を同時に硬直させる巧みなマッスルコントロールを持っている。
 これによって、外部から加えられた衝撃を内側からの筋力で相殺・圧殺するという防御が可能である。
 またその再生能力も常人離れしており、ショットガンの至近射撃で受けた傷口も、
 その数時間後の夕食で大量のステーキを食らった後には、薄く皮膜が張り早くも快復しかかっているというレベルである。
 そして、全てを筋肉で解決させようとする姿勢からは想像しづらいが、
 他国語を楽々と話せ、専門家も舌を巻くほどの薬物知識があるなど、優れた知識と教養を持っている。


691 : ビスケット・オリバ&アサシン  ◆TA71t/cXVo :2016/02/16(火) 01:42:22 VHX3uQFI0
【人物背景】
 全米の凶悪犯罪者が集うアリゾナ州立刑務所に君臨する、『Mr.アンチェイン』の異名を持つ世界で最も自由な男。
 囚人でありながらも刑務所を自由に出入りでき、所長をも上回り大統領ですら低姿勢になる程の強力な権力を持っている。
 刑務所内には贅の限りを尽くした豪華な私室があり、そこで自由奔放に生活をしている。
 身長は180cm程度で横幅が広い体格のため、一見肥満体ではないかと錯覚させることもあるが、
 その実骨格には150kgを超える驚異的なボリュームの筋肉が搭載されており、体脂肪率は常に5%未満に維持している。
 筋肉こそが全てという強固な肉体信仰を持つ怪力無双。
 通常の警察では手に負えない凶悪犯を捕まえるスペシャリストのハンターとして、数多くの犯罪者をその怪力無双の肉体で捕獲してきた。
 アリゾナ刑務所に収監されている囚人の半分は、オリバ自らの手で捕まえてきた者達である。
 その実力は折り紙つきであり、アメリカで最も喧嘩が強い男として恐れられている。
 常に余裕と貫禄に満ちており、ウィットに富んだ会話やジョークを好むなど、身勝手ながらもどこか憎めない愛嬌ある性格。
 しかしその本質は我儘でもあり、気分の善し悪しがダイレクトに態度に出やすいというわかりやすい問題点もある。
 マリアという恋人がおり、彼女に対しては他者の誰にも見せない弱みを見せるなど、誰よりも信頼し心より愛している。
 この聖杯戦争において与えられた役割は、府中刑務所に君臨するMr.アンチェイン。
 国こそ違えど同じく世界で最も自由な男として振舞っているのである。

【基本方針・戦術】
 この聖杯戦争が何を目的としているのか、グリードと共に情報を集め調べてみる。
 そして主催者の影を掴めたら、この手で叩き潰して聖杯も奪っていく。
 戦闘においては、自らの怪力でただ真正面から叩き伏せる。 
 取るに足らない相手ならばそれだけで十分だが、強敵相手ならばグリードの硬化能力と再生能力とで
 更にその肉体機能を向上させ、全力で粉砕する。


692 : ◆TA71t/cXVo :2016/02/16(火) 01:42:41 VHX3uQFI0
以上で投下終了となります


693 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/16(火) 13:24:19 r3HHOI5Y0
別所で書いたもののリメイクを一作投下します。


694 : 遠野英治&バーサーカー ◆CKro7V0jEc :2016/02/16(火) 13:24:50 r3HHOI5Y0





【scene 1 ―― Introduction】





 ――また一人、私立不動高校の生徒が犠牲になった。

 かねてより、「この学校は自殺者・死亡者、そして殺人犯が普通の高校より少し多いのではないか?」などと密かに囁かれていた同高校だが、先日、また何名かの生徒が、都内に発生する殺人犯の餌食になった。
 昨日までに、連続殺人の犠牲者の中で、不動高校に通っている事が明らかになっているのは、五名。

 で、それがまた一人増えたというわけだ。
 これで六人。
 今度は、三年生の女子生徒である。

 ……この頃は、都内広範囲に渡って、こうした殺人事件が増加している。
 ニュースによると、江東区での死者が五十二名。
 百人規模の死者が出ているという異様な状況下で、都内ではまだ当たり前に時間が過ぎ去っている。

 しかも、この事件の犯人であるという、「二十代後半の入れ墨の男」は、今の所は見つかっていない。
 ――こういう事を言うと不謹慎だが、もし、人を殺したいと思っているのであれば、今がチャンスだろう。

 そう、たとえ、他の誰かが殺したとしても、「二十代後半の入れ墨の男」の起こした事件だと、勝手に思い込んでくれるのだろうから。





◆ ◆ ◆ ◆ ◆





【scene 2 ―― 遠野英治】





 ――人の命の重さは、平等ではないらしい。


 ここにいる一人の高校生――遠野英治は、ある時、その事を実感した。

 こう言うと語弊があるが、厳密にいえば、一人一人の命の重さが平等ではないという事ではなく、一人の人間の命の量は、多数の纏まった人間の命の量には決して敵わないという事である。
 つまり、たくさんの人間を救う為ならば、少数を犠牲にするのは致し方ないし、自分の命を守る為にも他者を犠牲にするのは仕方が無いらしいという話だ。
 きっと、多くの人は、それをやむを得ない事だと思うかもしれない。


 ……そう、たとえば、有名なトロッコの倫理学の問題がある。



『線路を走っていたトロッコの制御が不能になった。このままでは前方で作業中だった5人が猛スピードのトロッコに避ける間もなく轢き殺されてしまう。
 この時たまたまA氏は線路の分岐器のすぐ側にいた。A氏がトロッコの進路を切り替えれば5人は確実に助かる。
 しかしその別路線でもB氏が1人で作業しており、5人の代わりにB氏がトロッコに轢かれて確実に死ぬ。A氏はトロッコを別路線に引き込むべきか?』



 この場合、多くの人間は、トロッコを切り替え、一人の人間を能動的に殺害するという手段を「許す」らしいと聞いた。
 答える人間の多くは、「何もしない」あるいは「何もできない」――つまり、「五人を見殺しにする」と答えるのだが、それでも、もし反対の行動を取る人間がいたら「許す」のだ。
 しかし、平然とそのトロッコを一人の人間に向けて切り替えるような人間を見た時、そして、それを許す人間を見た時、きっと英治は全身に虫が這うような殺意を覚えるだろう。
 英治はこれを考える度に全身を鳥肌が駆け巡る感覚とともに、奥歯を強く噛みしめた。



 ……そいつは「殺人鬼」だ。



 ――――俺の大事な女性(ひと)を殺した、殺人鬼だ。





◆ ◆ ◆ ◆ ◆


695 : 遠野英治&バーサーカー ◆CKro7V0jEc :2016/02/16(火) 13:25:26 r3HHOI5Y0





【scene 3 ―― 小泉螢子】





「――螢子」


 英治は、かつて、最愛の女性と共に湖のほとりで撮った写真を眺めていた。
 彼がこの聖杯戦争の中で全ての記憶を取り戻したのは、部屋の整理中に、偶々この一枚の写真と、この女性からプレゼントされた時計が見つけ出されたからである。
 しかし……この写真と時計だけは、絶対に手放すわけにはいかなかった。
 最愛の人間でありながら、もう写真の中にしかいない少女――螢子。

 まだそこに彼女がいた時の事……。
 まだ彼が純粋に笑えた日の事……。
 幼い頃からの……。

 ……しかし、それは遠い思い出に過ぎなかった。


「もうすぐだよ……」


 世の中は、一人の命は、百人の命を守る為ならば当然犠牲になって良いものとしている。
 周囲の連中は、それを当たり前だと思っている。
 多数の人間が救われる為ならば、一人を犠牲にしても良い――それを日本の法律までもが「正当防衛」だの「緊急避難」だと言って、認めていると来た。
 だが、そんな、尤もらしい理由をつけようが、それは殺人に違いない。

 ふざけている……。

 殺された一人の命には、カスども百人の命よりも大事な想いがあるのだ。
 この世の誰かに奪われた彼女の命は、一口に「一人の命」などと呼び捨てるほど単純な物ではない。
 彼女が持っていた喜びや、悲しみや、怒りや、愛や、やさしさを……英治は知っていた。

 小泉螢子の持っていた――英治が愛した彼女の全てが、たかが何人か何十人かの命の為に、奪われたのだ。
 英治にとって、螢子の命は何百人の命よりも重い物であった。
 その罪が問えず、許されてしまう――。
 その罪人は殺さなければならない。


「……もうすぐ、お前の為に……」





◆ ◆ ◆ ◆ ◆





【scene 4 ―― 追想】





 ――英治と螢子は幼い頃から、寄り添うようにして育っていた。
 二人とも同じように孤児であり、それからもずっと親しく、愛し合っていたのである。
 やがて、二人は別々の家に引き取られる事になったが、それぞれの養父母は英治と螢子が会うのを快く思わなかった。

 英治は遠野家で裕福に育ったが、螢子は小泉家でメイドのようにこき使われて、綺麗だった指をどんどん痛めていった。
 そんな螢子の姿を見るのが、英治にはどうしようもなく耐えられない事だった。

 英治は、螢子を不幸の中から救ってやりたかった。
 何としても。

 まずは、豪華客船オリエンタル号の処女航海に、一緒に行かないかと誘った。気晴らしになればと思ったのだ。
 だが、結局は英治は養父母に発覚し、二人で行く事が出来ず、螢子だけがオリエンタル号に乗って遊びに行く事になった。
 英治は寂しく思いながらも、螢子にツアーを楽しんでもらえればと、その姿を笑顔で見送った。


 ……それが、英治が螢子を見た最期だった。


 タンカーとの衝突。沈没したオリエンタル号。不慮の事故。
 何百という犠牲者――その中に、螢子がいた。
 本来なら、助かる筈だった螢子が……。

 満員の救命ボートに手をかけた螢子の命は、「誰かの為」に理不尽に奪われた。
 誰かが螢子の手をはねのけ、螢子を広く深い海へと追いやったのだ……。
 その結果、螢子は、氷のように冷たくなって、英治の前に帰って来た……。


 螢子一人の命を秤にかけ、奪った奴がこの世界にいる……。
 その人間についてわかるのは、『S・K』というイニシャルのみだ……。
 螢子を見殺しにしたオリエンタル号沈没事故の被害者たちで、『S・K』のイニシャルを持つ者は九人……。
 九人もいた……。



 ――螢子が死んだのに、『S・K』のイニシャルを持つ人間が、九人も生きのびていやがった……。


696 : 遠野英治&バーサーカー ◆CKro7V0jEc :2016/02/16(火) 13:26:11 r3HHOI5Y0



 クソみたいな大学生。
 尻の軽そうな女子高生。
 死体ばかり描く気持ち悪い画家。
 ワカメみたいな髪型の男。
 成金のジジイと、どうせ金目的で引っ付いた成金の女。
 ぱっと見は良い人そうな医者。
 あからさまに性格の悪いフリーライター。

 どいつもこいつも怪しい……。
 どいつが螢子を殺したのだ……。
 彼らの資料を見つめても、どいつもこいつも生きている価値のない人間に見えた。
 こいつら百人の命が寄り集まっても、螢子一人の命の尊さに敵うとは思えなかった。
 こいつらも結局、誰かを見殺しにのうのうと生きているわけだ。
 あの事故で生き延びた人間は全員そうだ。誰かを蹴落としたクズに違いない。

 九人の内、誰か一人が、螢子を殺した『S・K』だという。
 そう。そいつは絶対に裁かれなければならない。

 だが、警察は当てにならない。
 法律で裁けないのだから、その人物を警察に突き出しても仕方が無いのだ。

 ……つまり、英治がこの手で殺すしかない。

 それでいい。
 それで英治は満足するのだ。
 螢子を殺してまで生き延びた人間が死んでくれれば、彼はそれでもう満足だった。

 人を殺してまで生き延び、人を殺してまで誰かを救い、未だに生きている罪人を――この手で殺す。
 奪われた側の人間にとって、そんなに簡単に、「カルネアデスの板」などというものを認められるわけがない。


 罪なき螢子は、最後まで幸せになる事を許されなかったというのに、誰かを殺した人間が少なくとも『生きている』事を許されているというのが現実だ。


 世界が敵に回ってもお前に味方すると言う口説き文句があるように、遠野は世界を犠牲にしても螢子を愛せた。
 螢子は世界に犠牲にされたのなら、英治はそんな世界を許しはしない。
 法律など関係はない。
 螢子の命さえ守れない法律などに……。





 ……そう、彼は、『大の為に小を犠牲にした』事が許せないのではないし、『自分の命の為に他者を犠牲にする』行為を許せないのでもない。

 『最愛の螢子を殺し、それを正当化した理論』が許せないのだ。

 それが彼の狂気の原動力だった。
 助けを求めてもがいた螢子を、救命ボートから突き落とした人間……。
 螢子が最後に求めた救いを、跳ねのけた最悪の奴……。
 結局、九人の内、誰が螢子を殺したのかはわからなかった。

 英治は、それを必死に探し、答えを求めた。





◆ ◆ ◆ ◆ ◆


697 : 遠野英治&バーサーカー ◆CKro7V0jEc :2016/02/16(火) 13:26:28 r3HHOI5Y0





【scene 5 ―― 『バーサーカー』】





 そして。


 そんな彼の前に現れたのは、仇を殺す以外の、もう一つの「手段」だった。
 それがこの、聖杯戦争だ。
 言語能力のない『バーサーカー』を引き当ててしまった彼だが、既に聖杯戦争のルールは、ある方法で把握している。

 記憶の覚醒と共に現れ、英治も知らないどこかで「虐殺」を続けた怪物。
 それ――バーサーカーは、今、彼の前にいる。


「――聖杯戦争、か」


 イニシャルが『S・K』の人間を殺すのではなく、くだらない願いの為に他を犠牲にしようとするカス共を殺す事で、螢子を生き返らせる事が出来るとは、何と都合の良い事だろう。
 仇を殺すよりもずっと意味のありそうなゲームだった。
 何せ、仇を殺しても自分たちの気が晴れるだけで螢子は帰って来ないが、このゲームに勝利すれば、螢子は生き返るのである。

 ……まあ、勿論、全てが終わり、螢子が甦ったならば、「仇探し」をさせてもらうが、その人間を問い詰めこそすれ、殺すまでは至らないかもしれない。
 螢子がよみがえるのなら、英治としてはそれでよいのだから。
 とはいえ、螢子が冷たい水の中でどう苦しんだのかを思えば、怒りも湧くが――後の事は、螢子の判断に任せよう。
 そいつをどうするかはともかく、英治は螢子を甦らせる事を優先した。


「……」


 戦争に乗る覚悟なら充分ある。他人を殺す覚悟も。
 どうせ敵は、英治ほど大事な願いを持っているわけでもない奴らである。
 くだらない事しか考えていない、温室育ちの連中だ。

 ――いや、やはり、相手が誰だろうと英治の信念は揺るがない。
 螢子の為ならば、英治は螢子以外の全てを犠牲にできる。
 ……そう、自分の命だって厭わない。
 だから。


「――バーサーカー、俺の命令はたった一つだ」


 目の前に現れた、巨体の怪物の方に、彼は向き直した。
 無口で、どこか威圧感のある恐ろしい怪物であったが、マスターである英治への殺意はないらしい。
 いや、流石に英治との協力関係くらいはわかっているのだろう。
 言葉を話す事は出来ないにせよ、言葉を多少は理解している、という事か。
 だとすれば、話が早い。
 英治が言いたい事は、本当にただ一つなのだから。





「この俺以外のマスターとサーヴァントを――――全員殺せ!!」





 皮肉にも――彼が呼び出した、この『バーサーカー』のサーヴァントは、本来、この後に英治が扮して、『S・K』たちを殺す為に利用する洋画の怪人と同じ名前だった。
 その名は、『殺人鬼ジェイソン』。フルネームで言えば、『ジェイソン・ボーヒーズ』。


「……」


 彼は、頷く事もなく、自分を維持するマスターに対してだけ、殺意も理性も抱くなく、ただ見下ろしていた。


 そう――自分と同じ、狂った殺人鬼の姿を。





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698 : 遠野英治&バーサーカー ◆CKro7V0jEc :2016/02/16(火) 13:27:03 r3HHOI5Y0


【クラス】

バーサーカー

【真名】

ジェイソン・ボーヒーズ

【パラメーター】

筋力B 耐久EX 敏捷E 魔力C 幸運C 宝具EX

【属性】

混沌・狂

【クラススキル】

狂化:A+
 全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。

【保有スキル】

戦闘続行:A
 名称通り戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
 「往生際の悪さ」あるいは「生還能力」と表現される。

怪力:B
 魔物、魔獣のみが持つとされる攻撃特性で、一時的に筋力を増幅させる。
 一定時間筋力のランクが一つ上がり、持続時間は「怪力のランク」による。

【宝具】

『13日の金曜日』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人(自身)

 何度殺されても必ず蘇り、殺人鬼として人々を恐怖に陥れたジェイソンの逸話から生まれた宝具。
 バーサーカーの死後、マスターの魔力を消費するのと引き換えに、再び英霊として聖杯戦争の舞台に現界する効果を持つ。
 再臨後は筋力のパラメーターが1ランク上昇する(それ以上の上昇値がない場合は+が付く)が、代わりにマスターの制御下を逃れ、視界に入るもの全てに対して無差別な殺戮を始める可能性が高まっていく。
 その為、マスターにとってもリスクが大きく、何度も使用すると危険しか生まないので、バーサーカーを死なせないようにする必要がある。
 特に回数制限はないが、マスター不在である場合には、この宝具が発動される事は無いので、マスター死亡後にバーサーカーが死亡すればそれが最後。

『クリスタルレイク』
ランク:B+ 種別:結界宝具 レンジ:? 最大捕捉:?

 バーサーカーの固有結界。
 自らが溺死したクリスタル湖と、その周辺の鬱蒼とした森とキャンプ場。
 この場所に敵のサーヴァントやマスターを引き込み、バーサーカーの
 固有結界内は霧に囲われ、結界に捉われたマスターやサーヴァントの視界も曖昧になる。
 結界内では、バーサーカーはAランクに相当する『気配遮断』のスキルを獲得し、至近距離に到達されない限り、バーサーカーの存在を感知する事が出来なくなる。
 ここに誘い込まれたマスター、サーヴァントは言い知れぬ不安感に襲われ、いずれかのパラメーターが1〜2ランク程度下がる場合もある。

【weapon】

『アイスホッケーマスク』
『無銘・斧』

【人物背景】

虐めによってクリスタル湖で溺れさせられた11歳の少年、ジェイソン。
彼は先天的な障害によって、顔は奇形であり、脳が小さく、それが虐めの原因だったとされる。
溺死したかに思われたが、彼は実は生きていた。
巨大な怪物の殺人鬼ジェイソンへと変わり果てて…。

何度死亡しても、落雷や超能力、サイボーグ化などによって毎度のように復活。
死亡する度に人間離れした「不死の怪物」となっていく。
この怪物の弱点は、母親と同じ恰好や話し方をする女性や、幼い頃の自分と重なる相手と相対すると戦意を喪失する事がある事。
また、ある伝説においては、「水が苦手」とも言われているが、彼自身は「大嫌い」なだけで致命的な弱点とはなり得ない。


699 : 遠野英治&バーサーカー ◆CKro7V0jEc :2016/02/16(火) 13:27:20 r3HHOI5Y0



【マスター】

遠野英治@金田一少年の事件簿 悲恋湖伝説殺人事件

【マスターとしての願い】

螢子の蘇生。

【weapon】

『S・Kのイニシャルが刻まれたキーホルダー』
 オリエンタル号の沈没事故で遺体となって引き上げられた小泉螢子が握っていたキーホルダー。
 イニシャルらしき物が刻まれており、それを理由に彼は凶行を引き起こす引き金になっている。

『螢子と撮影した写真』
 螢子と二人で撮影した写真。裏に衝撃的な事実が書いてある。
 原作では衝撃的な事実と一緒に、日付も書いてあるが、サザエさん時空な為に後の話と矛盾が生じている。
 その為、二次創作の上では特に日付は書いてない事にする。

【能力・技能】

「イニシャルがS・Kの奴が妹を殺したっぽいので、とりあえず条件に合うS・Kは全員殺す」という超身勝手な理由で手の込んだ殺人計画を実行する、ネジがぶっ飛んだ行動が平然と出来る。
「死体を木の上に乗っける」、「死体を冷蔵庫に詰め込む」といった、過剰に猟奇的な死体遺棄も平然とやってのける。
ボートを動かす技術くらいはある。
あと、名探偵の名推理によると、死ぬ事を大して恐れていないらしい。

(また、彼の能力ではないが、彼の通う不動高校は極端に治安が悪く、あらゆる災厄を引き付ける性質を持っている。
 殺人事件が多発するほか、遠野英治の他にも生徒・教師など現在11名が殺人事件を起こしており、数十名の殺人事件被害者・自殺者を出しており、この高校は都内にある。
 一応、校内で殺人事件が発生した事は連載中で二回しか無いが、在籍者や関係者がよく人が死ぬので、激戦地や死者大量発生などの現象が極端に起こりやすくなっているだろう。)

【人物背景】

私立不動高校の三年生で、元生徒会長。
現在の生徒会長である七瀬美雪によると優しい先輩だったらしく、ぱっと見は感じの良い好青年。美雪と付き合っているという噂もあった。
しかし、その正体は悲恋湖リゾートで起きた連続殺人の犯人・『殺人鬼ジェイソン』である。

彼の動機は、数年前に起きたオリエンタル号沈没事故の際に、最愛の女性・小泉螢子を満員の救命ボートから突き落とした人間への復讐だった。
ボートに乗っていた他の人間を助ける為の正当防衛とはいえ、螢子の命を奪った人間を結果的に殺したその人物を遠野は許さなかったのである。
そして、螢子の命を奪った人物の手がかりは、彼女自身が教えてくれた。
彼女は、最期に、自分を突き落とした人間がバッグにつけていたキーホルダーをむしり取っていたのである。
そこには、その人物のイニシャル『S・K』が刻まれていた。
だが、遠野がどれだけ探しても、イニシャル以外の情報は結局つかめず、螢子を殺した人物は九人もいた……。

そこで彼は考えた。
だったら、全員殺せばいいのだと。
 
【方針】

何を犠牲にしてでも聖杯を必ず手に入れ、螢子を蘇生させる。
目的を果たした後は、元の世界で螢子を殺した人間を探し出す。



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◆ ◆ ◆ ◆ ◆


700 : 遠野英治&バーサーカー ◆CKro7V0jEc :2016/02/16(火) 13:27:41 r3HHOI5Y0





【scene 0 ―― 『聖杯戦争』】





 ……英治が聖杯戦争の全てを知ったのは、今日の放課後の事だった。
 腕を捲り、昨夜、すべてを思い出してから突然現れた痣を、英治は気にしていた。
 嫌な形に出来ており、てっきり憎しみが高じて腕に刻み付けてしまったのかと思ったが、どうやら違ったらしい。


『あれ? 遠野くん。その腕の痣、どうしたの……?』


 そして、それを見ていたクラスメイトの女子に突然声をかけられる事になった。
 髪が長く、妖艶な雰囲気を伴った、まあ、美少女といって良い方な同級生(英治はあまり彼女に興味がないが)。
 そんな同級生に、ふと言われた一言。


『――……もしかして、遠野くんも「マスター」なのかしら?』


 はじめは、この一言もわけがわからず、きょとんとした。
 しかし、それだけ英治にとって引っかかる言葉が告げられた以上、何かある。
 そう思い、彼女の話を聞く事にした。


『やっぱり? でも、「聖杯戦争」について何も知らないの?
 それってマズいじゃん! ねえ、じゃあ、この後すぐに、校舎の裏まで来て、全部教えてあげる――』


 英治は、普段、温和な性格で通っている。
 三年生になって引退するまでは生徒会長として真面目にやってきた程だ。
 だから、彼女は、英治の事を無条件で信頼し、話してしまったのだろう。


『聖杯戦争っていうのはね、――』


 彼女の口から、『令呪』と『聖杯戦争』の情報を得た英治は、驚き、そして、「覚悟」を決めた。
 突飛な話だが、自分が螢子の事さえ忘れてこんな所にいる、という状況が既に、不可解でしかない。
 英治には、たとえ、爆発に巻き込まれて全ての記憶を失っても螢子の事だけは忘れないという絶対の自信があったくらいだ。

 そう――。
 いま、この状況ならば、相手は無防備――『サーヴァント』とかいう奴もいない。


『ねえ、私と同盟組まない? 私は別に聖杯なんて欲しくないし、早くパパやママの所に帰りたいから――』


 彼女は、そう提案した。
 英治は、彼女の言葉を普段通りの笑顔で受け入れた。
 それから、彼女は、「じゃあ一緒に帰ろう」と、笑顔で言った。
 仲間だと思っているらしい。


『えっ……、何するのっ……遠野く……ちょっ、やめ――――』


 そして、英治は、彼女の首を後ろからベルトで絞めて――――殺した。

 犯行は誰にも見られなかったようなので、校内の繁みに隠し、夜になってから、バラバラにして、公園に棄てた。
 英治が初めて『バーサーカー』と会う事になったのは、その帰り道だ。



 ……ちなみに、彼女の死は、「二十代後半の入れ墨の男」が引き起こした連続殺人の一つという事になっているらしい。





◆ ◆ ◆ ◆ ◆





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【備考】

遠野英治の令呪の位置は、左腕(腕を少し捲ると見えますが、普通は視えません)。
「S」、「I」、「く」のような形の三画が繋がったような感じで発現しています。

ちなみに遠野英治は、不動高校に通っていた『マスター』の少女を、一人殺害済です。
他にも、不動高校生が何名か、バーサーカー(SCP-076-2)の虐殺に巻き込まれて死んだようですが、大概の生徒はそんなに気にしてないようです。


701 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/16(火) 13:27:58 r3HHOI5Y0
投下終了です。


702 : ◆CakQ8fprD2 :2016/02/16(火) 15:31:12 9CckTUjI0
皆様投下乙です
私も投下します


703 : 真田明彦&ライダー ◆CakQ8fprD2 :2016/02/16(火) 15:32:08 9CckTUjI0


皇居。言うまでもなく、天皇が住まうとされている歴史ある住居である。
明治時代の初めから徳川将軍家が代々居城としていた江戸城跡にある広大な敷地面積を誇る宮殿だ。
とある衛星パノラマ画像プログラムにも世界のランドマークの一つとして登録されているほどに知名度のある土地は、しかし今やその積み上げられた歴史ごと消滅しようとしていた。




「醜いな」




深夜の東京。その上空に一隻の船があった。
空を飛翔する船に立つ人影。まさしく聖杯を賭けて闘争に身を投じるサーヴァントの一柱である。
サーヴァント・ライダーは憤怒と殺意を以ってして眼下に広がる皇居「だったもの」を睥睨する。

「かつてはこの城も光が満ち、情緒に溢れた君主が住まうに相応しいものであったのだろうな。
それを魔術師(キャスター)風情が乗っ取り、形を弄られればこうも醜くなり果てるか」

ライダーの言葉を余人が聞いたならば何を世迷言を、と言うだろう。
一見すれば皇居には何の変化もなく、在るべき姿を保っているように見受けられよう。
しかし王の中の王たるライダーにはわかる。今や宮殿にはサーヴァント、キャスターによる様々な改造が施されていることを。
たった一騎のサーヴァントのためだけに土地の霊脈、自然霊、果ては天皇及び皇族を含めた者達までが搾取され、消費されていることを。

既にこの宮殿にいた人間たちはキャスターによって陣地、すなわち神殿の礎とされており、形を真似た人形に挿げ替えられていた。
今や皇居の全てがキャスターの陣地であり、堅固なる城塞であった。内部には神代級の魔術的トラップが無数に設置され、下級サーヴァントとすら打ち合える伝説上の魔物が無数に跋扈している。
これまでに何組かの陣営が攻略を試みたがいずれも撤退を余儀なくされるか、あるいは返り討ちに遭い殺された。
しかしその事実を認識しながらライダーには些かの迷いも不安もない。ただ王として傲然と宣告するのみ。




「王の中の王の降臨である!であれば相応しい態度で迎えるが良い!
空を仰げ!地を這え!そして平伏せよ!我が光を目にしたこの瞬間に、貴様と貴様の城は当世より消え去ることが決定した!!」



即ち、蹂躙の始まりである。







キャスターのマスターはフリーランスの魔術使いだった。
数多の戦場を生き延びた男は決して才ある魔術師ではなかったものの、非才を補う研鑽と経験によって少なからぬ魔術師を葬ってきた。
そんな男が引き当てたのはまさに一流と呼ぶのが相応しい魔術師の英霊であった。
その実力を最大限活かすために、賭けで挑んだのが格の高い霊地でもある皇居占拠だった。
果たして策は成り、キャスターは大量の魔力を得て男の常識では及びもつかない大魔術を何度でも連発できるようになった。


704 : 真田明彦&ライダー ◆CakQ8fprD2 :2016/02/16(火) 15:32:44 9CckTUjI0

キャスターが用意した水晶球によってこれまで挑んできた何組かの主従を退ける場面も目にしてきた。
一度は手練れのアサシンに陣地奥深くに潜入される窮地もあったが、何とキャスターは自らの剣技のみでアサシンを屠ってみせた。
陣地の内部に限定すれば三騎士を含めたどんなサーヴァントにも勝るのではないかと思えるほどに強大なキャスター。
しかし男は知っていた。この世に絶対など存在せず、ましてや絶対の強者などというものは絶対に存在しないことを。




「これは酷いな」

神殿の奥深くで状況を見守っていた男が冷静に呟いた。
現状はまさしく蹂躙、蹂躙、また蹂躙といったところだ。
正門石橋を踏み砕きながら突入してきたスフィンクスがキャスターの防備を散々に蹴散らしていく。
設置していた魔術砲台による迎撃もスフィンクスの炎の竜巻(ファイアストーム)によって砲撃ごと消滅させられた。
そればかりかキャスターが敷設したトラップや魔物の軍勢の特性、狙いを短時間で看破し大型トラック以上の巨体を機敏に動かしながら的確に回避、対処していく有り様。
あのスフィンクス一体だけで強力な対軍宝具を携えた特A級サーヴァントの強襲にも等しい脅威だ。

とはいえそれだけならば神殿の防備とキャスター自身の全戦力を動員すれば強大極まるスフィンクスといえど屠ることは可能だっただろう。
しかし敵ライダーの飛翔船から間断なく照射される灼熱の閃光(ウラエウス)が神殿上空に張り巡らせていた幾重もの防御結界を容赦なく食い破っており、キャスターはその対処・迎撃で手一杯だ。
今でこそどうにか拮抗を保っているものの、遠からず破綻が訪れることは火を見るより明らかだった。

歴史と趣きある建造物が次々と破壊され、この世から姿を消していく。
船から放たれた閃光が御所を焼き払い、スフィンクスのファイアストームが宮内庁の施設を瞬時に融解させた。
宮殿は真っ先に砲撃の的にされ、既に無残な有り様となっており、完全に消し去られるのも時間の問題だ。
歴史を愛する者がこの惨状を目の当たりにしたならば、この世の終わりを嘆くに違いない。

「潮時だな」

言って、男は地下に造らせた脱出路を目指して走り出した。
強固な陣地による籠城作戦もこれまで。間違いなく一級の英霊であるキャスターに早々と見切りをつけて皇居から逃走することを選んだ。
キャスターは最後まで抵抗する腹積もりなのだろう。何とも魔術師らしからぬ英雄的思考だがそれもまた一つの生き方ではあるのだろう。
とはいえ戦場では命あっての物種であり、男はキャスターに付き合って華々しく散ってやるつもりなど毛頭なかった。


705 : 真田明彦&ライダー ◆CakQ8fprD2 :2016/02/16(火) 15:33:30 9CckTUjI0




「お前がキャスターのマスターだな」


脱出路をひた走りいざ皇居の外へと脱しようという瞬間に、一人の青年が男の眼前に立ちはだかった。
若い、という感想を抱くには些か戦争に慣れ過ぎた。本物の地獄にはもっと幼い兵などいくらでもいる。
強い魔力を秘めたボクシンググローブを構える青年。戦闘スタイルは明らかだ。排除して進むしかないだろう、と極めて実際的な思考を展開する。

「許しは請わない。俺のエゴを押し通すために―――死んでもらう」

踏み込んでくるライダーのマスター。何らかの手段で肉体を強化しているのか、かなりの俊敏さだ。
男は最小限の動きで青年の繰り出した拳を回避し懐から銃を出し、発砲。
ただの銃ではない。キャスターの協力を得て魔改造が施された、正しい意味での魔銃である。
他人頼みの力と笑わば笑え。己に足りぬものを余所から補ってこその魔術師であり、兵士である。

しかし規格外の英霊のマスターはやはり規格外と言うべきか、発射された魔弾を見てから回避、時にはグローブで弾き肉薄してくる。
咄嗟に身を屈め、足払いを仕掛けた。躱されたもののそれも織り込み済み。素早く銃を向けて再度発砲、青年はたまらず後退した。

「強い……!だが……」

こちらのリロードの隙を逃さず青年も懐から銃を取り出した。
だが銃口は男には向けられることなく、青年自身のこめかみに向けられていた。
自殺などであるはずがない。だとすればこれは自己に埋没するための一種のアプローチなのか。

「カエサル!」

突如出現した古代の軍人のような姿の巨大な像。左手に持った球体を掲げた瞬間、凄まじいまでの魔力と絶対の死の匂いを感じ取った。
咄嗟に、キャスターから授かった簡易的な防護結界を張るアクセサリを取り出し、魔力を通し術式を展開した。
サーヴァントの一撃と見紛うほどの激烈な雷光が薄暗い通路に煌めき、そして―――







「終わったのか、ライダー」
「ああ、存外に骨はあったがそれだけだ。貴様の方も首尾は上手く行ったようだな」

スフィンクスに乗せられ船に降り立ったライダーのマスター、真田明彦とライダー。
互いが互いに仕留めるべき目標を過たず討ち取ったことを確かめ合っていた。
いや、正確にはライダーだけでキャスターとそのマスターを諸共消し去ることは問題なく可能だった。
今回ライダーが見せた力などは全戦力の数分の一以下に過ぎない。


706 : 真田明彦&ライダー ◆CakQ8fprD2 :2016/02/16(火) 15:34:01 9CckTUjI0

「初めて人を殺めた感想はどうだ?ああ、咎めているわけではないぞ。その顔を見れば覚悟が固まったことはわかる」
「今更後に引くことなどできないし、できたとしてもしないさ。……だが、やはり堪えるな」
「ふむ。まあ、余と共に戦場を駆けるマスターとして及第点はくれてやれるか。
喜べ、これから先も貴様の采配に従ってやることも吝かではないぞ」
「相変わらず、羨ましくなるほどの尊大さだな」

此度のキャスター討伐は真田が自らマスターを討つ、つまりは殺すことを予め宣言した上で行われたことだ。
ライダーの強大さを理解していようと、その強さに甘えきることは何より真田自身が許せなかったからだ。
言うなれば強力なキャスター主従は真田のマスターとしての覚悟を問うための試金石に過ぎなかった。


「余に語った初心を忘れるなよ。
愛する者のために、道理・摂理をも捻じ曲げ我を通す。王としての在り方には遠いがそれこそ男児の本懐というもの」
「ふん、言われるまでもない。俺はもうとっくに腹を括っているさ」

真田が抱く、たった一つの願い。
死の具現たるニュクスを封印し、その代償故なのか永遠の眠りに就いてしまった愛しい少女を蘇らせること。
正しい願い、などとは思わない。むしろ間違った願いと手段であると断言できる。
しかしそれでも―――嫌だったのだ。このままで終わってしまうのは。真田の願いとは突き詰めればそういうエゴだ。
愛妻家であるライダーの琴線にその願いは触れたらしく、今のところはそれなりに良い関係を築けている。

光輝の船が飛び去って行く。
皇居壊滅。このニュースは東京を震撼させることとなる。


707 : 真田明彦&ライダー ◆CakQ8fprD2 :2016/02/16(火) 15:34:39 9CckTUjI0
【クラス】
ライダー

【真名】
オジマンディアス@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ

【属性】
混沌・中庸

【パラメーター】
筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:A 幸運:A+ 宝具:EX

【クラススキル】
騎乗:A+
騎乗の才能。「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。
ほぼ全ての獣、幻獣・神獣の類まで自由に乗りこなせる。ただし、竜種は該当しない。

対魔力:B
魔術に対する耐性。三小節以下の魔術を無効化する。大魔術、儀礼呪文であってもダメージを与える事は難しい。

【保有スキル】
カリスマ:B
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。

神性:B
神霊適性を持つかどうか。ランクが高いほど、より物質的な神霊との混血とされる。

皇帝特権;A
本来もち得ないスキルも本人が主張することで短期間だけ獲得できる。該当するスキルは騎乗、剣術、芸術、カリスマ、軍略、等。
このスキルランクがA以上の場合、肉体面での負荷(神性など)すら獲得する。
ただし、「神王」を自称するライダーはあまりこのスキルに頼りたがらず、原作での使用も単独行動スキルの獲得のみに留まっていた。

【宝具】
『闇夜の太陽船(メセケテット)』
ランク:A 種別:対軍宝具
ライダーが普段移動する際に使う船。船全体が太陽と見紛うほどの輝きと灼熱を発しながら高速で飛行し、黄金の魔力光によって敵を焼き払う。
また空間から舳先のみを出現させ、砲台のように使用することも可能。
後述の最強宝具を用いずともライダーはこの宝具のみで東京を一夜の内に焼き払い、壊滅させることができる。

『熱砂の獅身獣(アブホル・スフィンクス)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 
ライダーの尖兵たる守護獣。すなわち、古代オリエントを中心に広く知られた神獣スフィンクス。天空神ホルスの顕現とされる。
竜種に次ぐ最高位の幻想種であり、その力は一体で大英雄クラスのサーヴァントに匹敵する。
大型トラック以上の巨体でありながら、物理法則を無視したかのような速度と移動を行い、空中を疾走して全方位からの攻撃を行う。主な武器は強靭な前足の爪と獅子の牙で、それらを衝撃波(ショックウェーブ)が発生する程のスピードとパワーで振るう。さらに爪は魔力で赤熱化させ破壊力を上乗せすることも可能。
王の力を体現するとも称される咆哮は、灼熱の火炎と全てを破砕する大気を伴い、それによって爆炎の竜巻を引き起こす。その威力は並木を一瞬で炭化させ、鉄筋コンクリートで作られた大型ドーム施設の東館を数秒と経たず融解させるほど。
生命力も異常で、頭部を斬り落とされても死なず、それどころか頭を失ったまま相手の動きを感知し、何事もなかったかのように戦闘を続行する。
知能も極めて高く、相手の戦闘スタイルや狙いを見抜き、連撃の中に無駄な攻撃を敢えて差し込んだ「牽制」や攻撃によって発生した破片に魔力を付加させて飛び道具として使うなど獣とは思えない戦術を駆使する。
ライダーはこのスフィンクスを無数に保有しており、替えの利く手駒として斥候・偵察などに用いられる。


708 : 真田明彦&ライダー ◆CakQ8fprD2 :2016/02/16(火) 15:35:19 9CckTUjI0

『光輝の大複合神殿(ラムセウム・テンティリス)』
ランク:EX 種別:結界宝具
古代エジプトにおいて建造された光り輝く神殿が複層的に折り重なって偉容を為す、全長数kmにも渡る超大型複合神殿体。ライダーの有する最大にして最強の宝具。彼の心象と生前の威を具現化させた固有結界。
生前に「過去現在未来、全ての神殿は自分のためにある」と宣言したことにより、生前自身が建築した神殿のみならず、自分が関わっていない神殿まで複合されている。デンデラ神殿、カルナック大神殿等の複合神殿体をさらに複数組み合わせ、アブ・シンベル大神殿、ラムセウム等の巨大神殿や霊廟までも複合された、現実には存在しない異形の大神殿体となっている。その驚異的規模と魔力光によって、まさに星空が地上に降りて来たかのような偉容を誇る。
無数の内部神殿群にはファラオに対する絶大な祝福と不敬な敵対者への呪いが神威として備わっており、それぞれが対応する神々に由来する様々な効果を発揮する。原作で披露されたのは主に以下の三種。
『ライダー自身とその配下に仮初の不死の肉体を与える』。この能力がある限り、ライダーは霊核を破壊されても即座に無限再生する。さらに不死の恩恵は使役するスフィンクスの群れにも与えられており、ライダー同様に不滅となっている。
『呪詛による猛毒』。真っ当な生物であれば二秒と絶たずに死亡し、神代の肉体を持ち毒に強い耐性を持つ評価規格外の頑健スキルを有するサーヴァントですら吐血するレベル。効果を受けたサーヴァントはパラメータが軒並みランクダウン、一部スキルも弱体化させられる。
『敵サーヴァントに対する宝具真名解放の封印』。最も厄介とされる能力。ただし、真名解放の封印については、神殿に由来する効果と同質のもの、つまり神に由来するものに対しては行えない。
ライダーの玉座がある主神殿最奥は「神の眼」を模したシンボルを備えた空間で、膨大な魔力回路を思わせる幾筋もの淡い光に照らされている。ライダーは神殿内部で起きる事象の全てを自動的に認識し、外の様子も細かく把握する事ができる。主神殿の表層部はヒッタイトの神鉄で覆われており、並みの対軍宝具ならば無傷で弾き返す強度を持つ。
神殿最奥に存在する“デンデラの大電球”から生み出される超絶の雷撃は、太古の神々の神威さえ思わせる威力を持ち(不完全解放とはいえ)セイバーの“約束された勝利の剣”ですら単体では対抗し得ないほど。
この雷撃は複合神殿体主砲より神殿外へ向けて砲撃することも可能で、決戦の最中に手出ししようとしたタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦を中心とする米軍太平洋艦隊を発射されたトマホーク巡航ミサイル群ごと蒸発させるほどの威力と攻撃範囲を誇る。
その圧倒的なまでの火力は太陽面爆発にも例えられ、全力で砲撃した場合は一撃で東京全域が壊滅する。

【weapon】
無銘・短刀


709 : 真田明彦&ライダー ◆CakQ8fprD2 :2016/02/16(火) 15:36:01 9CckTUjI0

【人物背景】
建築王、太陽王の異名を持つ古代エジプト最大最強の神王(ファラオ)。
王の中の王を自負し、自らの絶対性を疑わない。非常に苛烈な性格で自らを呼び出すために使われた触媒に激怒しマスターを一族郎党諸共に焼き払おうとするほど。
一方で他人の器を見抜く眼力に優れ、玲瓏館美沙夜が幼いながらもすでに当主としての自覚と誇りを備えていることを使い魔ごしに看破した。
また、地上の神に相応しい振る舞いとして寛容かつ公明正大な振る舞いを良しとするなど、苛烈ではあれどただ横暴なだけの人物ではない。
傲岸不遜な性格ではあるが、民の幸福を願う理想的な統治者であり、聖杯戦争にも「自分が統治者として受肉して皆を救うため」に参戦するほど。
極度の愛妻家でもあり、彼が生涯で唯一「敬愛」した妻・ネフェルタリをこの世の何よりも愛している。それはライダーの召喚条件にも如実に表れており、ライダーに関わる触媒は、彼自身のミイラやヒッタイトとの和平条約の碑文等、数多く存在するが、そのどれを用いても彼を召喚することは不可能である。彼をサーヴァントとして召喚することが出来る触媒は、唯一、最愛のネフェルタリに関係する遺物のみである。

【サーヴァントとしての願い】
現世に受肉し世界を統治する

【マスター】
真田明彦@ペルソナ3ポータブル

【マスターとしての願い】
“彼女”を生き返らせる

【weapon】
終極の魔手
高位ペルソナを材料とした戦闘用のボクシンググローブ。
純粋な武具として高い性能を持ち、所有者の能力を大きく引き上げる。

サンダーバングル
電撃属性攻撃をやや強化するアクセサリー。

召喚銃
内部に黄昏の羽と呼ばれる、ニュクスから剥離した物質を内蔵された銃。殺生能力はゼロで、あくまでも、ペルソナを召喚する為の補助ツールである。


710 : 真田明彦&ライダー ◆CakQ8fprD2 :2016/02/16(火) 15:36:39 9CckTUjI0

【能力・技能】
ペルソナ能力
心の中にいるもう1人の自分、或いは、困難に立ち向かう心の鎧、とも言われる特殊な能力。
皇帝のアルカナに属する「カエサル」を所持する。全能力がバランス良くまとまっている万能型。電撃を無効化するが氷結に弱い。
電撃属性魔法や単体治癒魔法、打撃攻撃・電撃属性攻撃の自動強化、敵を弱体化させる魔法を習得している。また電撃魔法は対魔力の影響を受けるが弱化魔法は対魔力を透過して効果を与え、技に応じて相手の攻撃判定、防御判定、命中・回避判定を弱体化させる。(ただし対魔力以外の守りによっては減衰・無効化され得る)
ペルソナの能力値に応じて所有者自身の性能も向上する。高位のペルソナ使いである真田は燃費の悪いライダーを十分に維持できる。(ゲーム的に言えばレベルカンスト状態)

ペルソナを抜きにしても超高校級のボクサーとして名を馳せるほどの格闘技術と銃弾を見切る身体能力を持つ。

【人物背景】
主人公が通う月光館学園高等部の3年生。ボクシング部の主将で特別課外活動部の一員。
容姿端麗・文武両道で成績も上位だが、その分理屈っぽくて頭が固く、融通が利かない事も多い。
爽やかな外見も相まって一見冷静沈着に見えるがその実かなり好戦的。食事が肉とプロテインに偏っている。(ファンからの愛称は肉彦)
物心付かぬ頃に両親を亡くし、妹の美紀と共に孤児院で暮らしていたが、養父母に引き取られる直前に発生した火災で妹と死別。
彼女を助けられなかった自分の無力さを知ったことがトラウマとなり、それ以来貪欲に力を追い求めるようになった。ボクシングを始めたのもそれがきっかけとなっており、素手の格闘なら何でもよかったという。
校内に追っかけが多数いるが女性との交際経験は女主人公に出会うまでなかった。当初女主人公に妹の面影を重ねていたが親密になるにつれ自らの内に芽生えた恋心に気づかされ、彼女と恋仲になる。
参戦時期は卒業式(女主人公の死亡後)以降。

【方針】
ライダーに任せきりにはしない。出来ることをし、背負うべきものを背負う。


711 : ◆CakQ8fprD2 :2016/02/16(火) 15:37:13 9CckTUjI0
以上で投下を終了します


712 : ◆qtfp0iDgnk :2016/02/16(火) 22:39:03 oMtXAaEg0
皆さんの候補作、楽しみに拝見させていただいてます。
候補作も多くなってきたので、僭越ながらまとめてみました。
確認はしましたが、表記ミス等ありましたらご容赦ください

セイバー(10)
西木野真姫@ラブライブ! & 剣崎一真@仮面ライダー剣(ブレイド)
松野トド松@おそ松さん & フランドール・スカーレット@東方Project
來野 巽@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ & ジークフリート@Fate/Apocrypha
地獄のフブキ@ワンパンマン & ネスタ・グラウド@カイストシリーズ
福本忠弘@戦闘破壊学園ダンゲロス & 薬研藤四郎@刀剣乱舞
松野十四松@おそ松さん & アルトリア・ペンドラゴン@Fate/stay night
成瀬翔@orange & 月島秀九郎@BLEACH
プロシュート@ジョジョの奇妙な冒険 第5部 & 平景清@源平討魔伝
夜神総一郎@デスノート(テレビドラマ版) & パパス@ドラゴンクエストV 天空の花嫁
高遠遙一@高遠少年の事件簿 & ウイングマン@ウイングマン

ライダー(14)
門矢士@仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010 & 兜甲児@真マジンガーZERO VS 暗黒大将軍
浅野学秀@暗殺教室 & 殺せんせー@暗殺教室
平坂黄泉@未来日記 & CP-053@SCP Foundation
狩谷純@金田一少年の事件簿 金田一少年の決死行 & アマゾン@仮面ライダーSPIRITS
ランカ・リー@マクロスフロンティア & シモン@天元突破グレンラガン
マリア・ヴィスコンティ@アジアンパンクRPG サタスペ & Dr.マシリト@Dr.スランプ
謎のヒロインX@路地裏さつき ヒロイン十二宮編+Fate/Grand Order & 坂田金時@Fate/Apocrypha+Fate/Grand Order
安藤潤也@魔王 JUVENILE REMIX & ジャイロ・ツェペリ@ジョジョの奇妙な冒険
藤田 茂@SIREN2 & マウンテン・ティム@ジョジョの奇妙な冒険 第7部「スティール・ボール・ラン」
西住みほ@ガールズ&パンツァー & ブーディカ@Fate/Grand Order
ロード・エルメロイⅡ世@Fateシリーズ & イスカンダル@Fate/Zero
向井 拓海@アイドルマスター シンデレラガールズ & クロームドルフィン@ニンジャスレイヤー
芽兎めう@ひなビタ♪ & ショウ・ザマ@聖戦士ダンバイン
真田明彦@ペルソナ3ポータブル & オジマンディアス@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ

ランサー(9)
高嶺清麿@金色のガッシュ!! & クラウス・V・ラインヘルツ@血界戦線
ホット・パンツ@ジョジョの奇妙な冒険 & アクア@マテリアルパズル
大藪@Waltz & ロゥリィ・マーキュリー@GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり
カナエ=フォン・ロゼヴァルト@東京喰種:re & ヴラド三世@FATE/EXTRA
姫河小雪@魔法少女育成計画 & 孫悟空@ドラゴンボール
結城リト@To LOVEる ダークネス & イヴ@BLACK CAT
明智健悟@金田一少年の事件簿 & グリシーヌ・ブルーメール@サクラ大戦3〜巴里は燃えているか〜
ジーク@Fate/Apocrypha & ブリュンヒルデ@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ&Fate/Grand Order
セレスティ・E・クライン@ウィザーズ・ブレイン & プリセラ@マテリアル・パズル


713 : ◆qtfp0iDgnk :2016/02/16(火) 22:40:08 oMtXAaEg0
アーチャー(9)
吉井明久@バカとテストと召喚獣 & 白井黒子@とある魔術の禁書目録
ペガッサ星人@ウルトラ怪獣擬人化計画 ギャラクシー☆デイズ & 極悪宇宙人テンペラー星人@ウルトラ怪獣擬人化計画 feat. POP Comic Code
アダム@SCP Foundation & ロボひろし@クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん
アースクエイク@ニンジャスレイヤー & ミラオル@グランブルーファンタジー
芝原 海@魔法少女育成計画limited & ヴェールヌイ@艦隊これくしょん(プラウザ版)
イース@フレッシュプリキュア! & トレイン=ハートネット@BLACK CAT
今剣@刀剣乱舞 & 那須与一@ドリフターズ
デュアルNo.33@ウィザーズ・ブレイン & ティトォ@マテリアル・パズル
アインハルト・ストラトス@魔法少女リリカルなのはVivid & 跡部景吾@新テニスの王子様

キャスター(10)
霊烏路 空@東方地霊殿 & さまようもの、もしくはアンブローズ・デクスター、もしくは[削除済み]@クトゥルフ神話(尖塔の影)
安部 菜々@アイドルマスター シンデレラガールズ & メトロン星人@ウルトラセブン
市原仁奈@アイドルマスター シンデレラガールズ & 斗和子@うしおととら
ジョルノ・ジョバァーナ@ジョジョの奇妙な冒険 Part5 黄金の風 & めぐみん@この素晴らしい世界に祝福を!
木原数多@とある魔術の禁書目録 & 涅マユリ@BLEACH
先導エミ@カードファイト!!ヴァンガード & ブルーベル@家庭教師ヒットマンREBORN!
孤門一輝@ウルトラマンネクサス & 邪悪なる暗黒破壊神 ダークザギ@ウルトラマンネクサス
ロナルド@吸血鬼すぐ死ぬ & 鈴木@幽遊白書
キング・ブラッドレイ@鋼の錬金術師 & パラメキア皇帝@ファイナルファンタジーⅡ
月読ジゼル@金田一少年の事件簿 薔薇十字館殺人事件 & 紅渡@仮面ライダーキバ


アサシン(8)
安藤@魔王 JUVENILE REMIX & SCP-073/■■■@SCP Foundation
松野カラ松@おそ松さん & 宮本明@彼岸島 
二宮 飛鳥@アイドルマスター シンデレラガールズ & 零崎 曲識@人間シリーズ
黒木智子@私がモテないのはお前たちが悪い!! & スペランカー@オールドアクションゲーム二次創作シリーズ
カチューシャ@ガールズ&パンツァー & スカー@ライオン・キング
ネク@リンダキューブ アゲイン & カーミラ@Fate/Grand order
中野梓@けいおん! & ニャル子@這いよれ!ニャル子さん
ビスケット・オリバ@刃牙シリーズ & グリード@鋼の錬金術師

バーサーカー(9)
ルーシー・スティール@ジョジョの奇妙な冒険 & SCP-076-2/■■■@SCP Foundation
馳尾勇路@断章のグリム & ヴラド三世@Fate/Grand Order
相川始(ジョーカーアンデッド)@仮面ライダー剣 & Hard-to-Destroy Reptile(不死身の爬虫類/SCP-682)@SCP Foundation
桐敷 沙子@屍鬼(藤崎竜版) & オウル@東京喰種:re
ソラ@仮面ライダーウィザード & 宇宙恐竜ゼットン@ウルトラ怪獣擬人化計画 feat. POP Comic code
ルーク・フォン・ファブレ@TALES OF THE ABYSS & 天海護(レプリジン)@勇者王ガオガイガーFINAL
海東大樹@仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦 & クリード=ディスケンス@BLACK CAT
矢澤にこ@ラブライブ! & アルフレッド/ハート@北斗の拳外道伝 HEART OF MEET 〜あの日の約束〜
遠野英治@金田一少年の事件簿 悲恋湖伝説殺人事件 & ジェイソン・ボーヒーズ@ジェイソン 13日の金曜日


エクストラ(7)
青い、青い空(SCP-8900-EX-Sky Blue Sky)@The SCP Foundation & エドワード・ザイン@ウィザーズ・ブレイン(クリエイター)
檜山達之@金田一少年の事件簿 墓場島殺人事件 & 乾巧@劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト(セイヴァー)
サム・ウィンチェスター@スーパーナチュラル & ラム@霊幻道士(タオイスト)
一ノ瀬 晴@悪魔のリドル & 響@艦隊これくしょん(プラウザ版)(デストロイヤー)
霞改二乙@艦隊これくしょん & SCP-2682- The Blind Idiot(盲目の白痴)@ SCP Foundation(フルーツ)
遠坂凛@Fate/stay night & ロジャー・スミス@THE ビッグオー(ネゴシエイター)
神原駿河@化物語 & うちはマダラ@NARUTO(アヴェンジャー)


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714 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/16(火) 22:44:56 r3HHOI5Y0
また流用ですが投下します。


715 : 赤坂衛&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/16(火) 22:45:27 r3HHOI5Y0



 夜の東京。
 静かで、どこか金属じみた冷たさを、都市は放っていた。
 アーチャーがかつて居た世界のように、「蒸気」という不思議な暖かさを持つ技術は都市を支えていない。
 あそこで光るネオンを、まだ疎らに明るいオフィスの窓を、この街全体を包むような黄色い光を――「電気」によって構成しているという事。
 全く、別の技術によって発展した日本やフランスがあり、そして、それが当然の常識になっている。
 それがこの世界の、この時代の、帝都であった。

 現世に顕現した時に、知識として「電気」の事を知ってはいても、アーチャーの身体はまだそれに慣れてはいなかった。
 勿論、世界を発展させたのが「蒸気」であるにせよ、「電気」であるにせよ、視える景色の殆どはさして変わらない。
 強いて言うなら、電線と、それを繋ぐ電柱がアーチャーの弓の軌道上で根を張り、これが時として攻撃の邪魔をするという程度であろう。
 しかし、何気なく生活を支えていた「蒸気」が無くとも世界が発展している事実は彼女に少なからずのショックを与える。

 それは、アーチャーの感覚を些か狂わせようとしたが、しかし、彼女は、それも含めて自らが冷静な「射撃」を行えるよう努めた。
 この程度の事で手元を振るわせれば、これから先、もっと取り返しの付かない事になる。
 微かにでもずれ込んだ手元の狂いは、狙いから大きく逸れる軌道を描き、時として自分の仲間にさえ痛手を負わせてしまう。
 彼女が触れているのは、そういう武器だった。


 ――――だから、試験を開始する。


「……」


 屋上からは、街を見下ろせる。
 日本の夜は、明るい。――とりわけ、都市はいつまでも、人々の目でいてくれる。

 この時間でも、“的”の姿をおおよそ照らしてくれた。
 この林立したビルの隙間に――ターゲットを見る。

 アーチャーの左手がぎゅっと、見た目以上に強く――弓の握りを掴んでいた。
 アーチャーのサーヴァントとして名を残す者の多くは、もう少し小型の洋弓(アーチェリー)を扱うのに対し、彼女の手にあるのは、いかにも目立つ巨大な和弓。
 背負った籠には、五、六本の矢が収められており、アーチャーはその内の一本を手に取り、弓にそっとかけた。
 そして、ゆっくりと身体を起こすようにして持ち上げ、眼前の敵に、狙いを定める。



 ――――――集中。



 感覚を研ぎ澄ませ、アーチャーは弦を後ろに引いて行く。
 矢の先が突き刺さるべき対象は何処にあるのか、どう動くのか……。風はどう吹いているのか……。
 いつも計算式を立てている訳ではなかったが、アーチャーは、それを五感で解した。
 それよりも、常に、弓を弾く瞬間に襲いかかるのは、一瞬の緊張感だ。
 失敗は許されない瞬間。
 バスケットボールのフリースローや、サッカーのPKの瞬間を、常に体感する事になる競技がこの弓道に違いなかった。


「……」


 それから、アーチャーは、今日までに的に向けて放った矢の幾つかを思い出した。
 彼女は、これまでに、その多くを、まるで“元あった場所に返していく”かのように、的の中央に叩きつけてきた。
 これまで、対象を人間にした事は一度も無いが、その実績だけあれば、もはや具体的な数など数える必要はなかった。
 ここまでに積んだキャリアを回想する事で、アーチャーは今の自分の五感の信頼を高める。


716 : 赤坂衛&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/16(火) 22:45:50 r3HHOI5Y0



 あの時と同じ感覚を自分は持っているのだ。

 慢心はするな。

 だが、自分の腕を信じろ。

 そして。



 ――――風を切る音が放たれた。



「――――――っ!」


 ――直後、ターゲットの身体を、見事にアーチャーの矢が貫いた。


 風を切った音よりも低く、鈍い音が鳴り、アーチャーの手にあった矢は目くるめく速さで、ターゲットに突き立てられた歪な杭へと変わった。
 ――狙いは正確であった。
 英霊となってからも、精度に狂いはない。
 現世に現れたのは久々ゆえ、内心些かの不安もあったが、それは杞憂に過ぎなかった。


「……ふう」


 アーチャーの貌が闇の中から現る。
 その肌はまるで人形のように白く、短い黒髪に生えていた。それが双方を引き立てていた。
 しかし、勿体ない事に、その白い肌は顔と腕から少し覗くのみで、彼女の身体は黒衣に包まれている。
 誰を弔っているのだろうか、――彼女は、喪服だったのだ。
 いや、もっと言えば、彼女自身さえも、「英霊」に違いないのだが。


「命中――」


 北大路花火。
 ――アーチャーのかつての姿は、かつてフランス・巴里にて、「巴里華撃団」の一員として戦った弓使いの乙女であった。
 高い霊力を誇り、その力を以て、巴里の平和を脅かす者たちと戦い、葬って来たのである。
 しかして、彼女は無暗に人を殺す事は望まず、この聖杯戦争に託す望みも、決して悲願という程のものではなかった。
 ただ、マスターの期待に沿う為に、彼女はこうして武器を取る。


「……腕は、鈍っていないようね。――ごめんなさい、虎さん」


 ターゲットとなった「的」の正体は、数百メートル先にあった一枚の看板である。
 仰々しい虎の絵が描かれており、矢が突き刺したのはその首の真下のあたりであった。
 しかし、絵の中に虎は身体を痛めず、死ぬ事もない。
 アーチャーはどこか、この時は悪戯げな笑顔を見せながらそう呟き、その場を後にする事にした。


「――」


 が、そこで、ある人物がアーチャーに疎らな拍手を送った。
 その姿を見て、アーチャーは憮然として、口を開ける。
 そこにあったのは、体格の良い男性の姿である。
 彼の気配には全く気づかなかったようだ。
 矢に集中すると周囲は必然的に見えなくなるという事か。――自分の弱点を一つ知る。


717 : 赤坂衛&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/16(火) 22:46:08 r3HHOI5Y0


「――見事な腕だ、アーチャー」


 薄らと優しい笑みを見せながらそう言う男性――彼が、アーチャーのマスターである。
 自らのマスターを前にしたアーチャーは、慌てて跪いた。


「……マスター。起きていらしたのですか」


 アーチャー――北大路花火は、男性を前には、絶対の忠義を尽くす性格をしている。
 それがヤマトナデシコの儀礼だと信じて込んでいるが故だ。
 女性は、男性の言う事に従わなければならない――というのが、彼女にとっての「大和撫子」の姿なのである。
 日本人でありながら、幼少をフランスで過ごした彼女は、少々、日本文化に実像とは異なる捉え方をしているのだった。
 現実には、彼女が生きた大正時代当時でさえ、「亭主関白」という言葉そのままな男性こそいたにせよ、「大和撫子とはかくあるべき」なる男性の儚い理想像を頑なに守る女など少数だったに違いない。
 しかし、彼女は、それを覇き違えたまま大人になり、そして、気づけばそのまま英霊になっていた。
 現代人からすれば、少々この性格は扱いにくくもあるかもしれない。


「立ってくれ、アーチャー。跪く必要はどこにもない」

「……はい」


 アーチャーは、指示通り、やおら立ち上がり、マスターに目を合わせる。
 まだ、虎を射抜く前の緊張感が、少し瞳に残っていた。


「――すみません……赤坂さん」


 アーチャーは、彼の事を、「マスター」ではなく「赤坂」と呼び直す。

 ――男の名前は、赤坂衛という。
 以前、アーチャーは、赤坂に「マスター」という呼び名がどうもしっくりこないとの事で、「赤坂」と呼ぶように言われたばかりである。
 思わずマスターと呼んでしまったが、こうして訂正さえすれば、赤坂が咎める事はない。
 赤坂衛は、至極冷静で、その反面で優しい男でもあった。彼は、サーヴァントであるアーチャーに何の強制もせず、少しの行き過ぎや間違いを咎める以上の事はしない。

 赤坂衛は――警察官であった。
 それも、警視庁の公安部に所属する、警察組織の中でも最も「危険な役職」の男である。
 しかし、彼は決して、その役職を押し付けられたわけではなく、自ら安全なデスクワークに望める立場にあった中で、その役目を選んだというのである。
 つまるところ、彼は、警察学校の首席にして、警部補階級から警察組織に入る事が出来た、所謂「キャリア組」なのであった。
 その多くは、公安部と言ってもデスクワークに配属されるのが自然な流れであるが、現実に彼は潜入捜査等の危険な任務にも就いている。
 ……おそらくは、彼たっての熱望が故なのであろう。

 そして、そんな彼の姿は、北大路花火が生前所属した「巴里華撃団・花組」の隊長であった男を彷彿とさせる。
 数えるほどしかいない超エリートの街道にありながら、安全な道を拒み、自らの手で平和を守ろうとした男。
 ただ、その男との決定的な違いは――成功ばかりを掴んできた“隊長”と異なり、このマスターは、不幸なる失敗に心を砕かれた経験があるという事だった。
 そこが、もしその二人の男の聖杯戦争に巻き込まれた場合のスタンスを分ける事になるのだろう。


(……)


718 : 赤坂衛&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/16(火) 22:46:25 r3HHOI5Y0


 赤坂の経験は花火自身が経験した不幸にも、よく似ていた。
 生前の花火の場合、婚約者の夫を、今の赤坂の場合は、妊娠中だった妻を喪ったのである。
 だから、その点において、お互いの喪失感は共有する事が出来た。
 その符号が彼とマスターとを結び合わせたのかはわからないが、少なくとも、花火自身はそういう風に思う事にしていた。

 最古参であるエリカ・フォンティーヌでもなく、
 斧を振るい活躍した女傑のグリシーヌ・ブルーメールでもなく、
 懲役千年の大悪党であると同時に巴里の平和を守った救世主でもあったロベリア・カルリーニでもなく、
 帝都や紐育の英雄たちでもなく、
 そして――帝都、巴里の二つの都市を守った英雄的隊長・大神一郎でもなく、
 ここにいる、「北大路花火」であった理由。
 彼に呼ばれたのは、「北大路花火」でなければわかる事が出来ない苦痛を持ち、それを共有できる相手であるからと――彼女は、思ったのだ。


「アーチャー。弓の練習もいいが、あまり目立つのは好ましくないな」

「はい……」


 これに関しては、「場所が無かった」、というのが実際のところである。
 現世に顕現してから、弓の腕前を試す機会には恵まれない。
 それこそ、探してみれば弓道場はあるのかもしれないが、この時間には空いていないだろう。


「あの看板は……この辺りでは有名な暴力団のパチンコ屋か」


 赤坂の手元にある双眼鏡は、虎の看板を見ていた。
 アーチャーがこの時間に何をしているのか察して、双眼鏡などという物を準備していたに違いない。
 マスターに全て見透かされていた――あるいは推理されていたという事には、アーチャーは少しの恥ずかしさを覚える。
 しかし、赤坂の顔色が少し渋ったのを見て、アーチャーはそうも言っていられないとばかりに息を飲んだ。

 矢が命中したのは、なかなか巨大な虎の看板の首元である。
 それは、アーチャーが現世にいた頃には存在しなかった「パチンコ屋」という施設の物であった。
 そして、その経営者は大抵、ヤクザ者であるという事も花火はよく知らなかった。
 首元に矢が突き立てされているのは、やもすれば悪い暗示と捉える事だろう。
 何せ、ああして虎を模した看板を立てるのは、組長の名前に「虎」が入っている事に由来しているのだから――。

 この意味を、組の人間が何者かからの宣戦布告と捉える可能性は、実に高い。
 ……が、今更、矢を外しに行けるわけもない。
 赤坂にはこれ以上動く事は出来ないわけだ。


「……近々、組同士の抗争が始まるかもしれないな。仕事にますます手が抜けなくなる。
 ――が、まあ良い。ここが実態のない世界である以上、そんな事を気にかけるだけ無駄か」


 とはいえ、赤坂はさして気にする風でもなかった。
 これ以降、口を塞いでいれば、矢を命中させた人間が特定される事はないだろう。
 少なくとも、この場所は人間業で矢を命中させられる距離ではないのだ。この赤坂のアパートとパチンコ屋の間には幾つもの隔たりもある。
 その隙間を通り抜けて矢が見事命中したというわけだが、これはまさに北大路花火でなければ不可能な芸当である。
 ――仮にここに住んでいる人間の仕業とわかったにしても、その相手が赤坂のような警察と知れれば、相手も簡単には手を出しては来ないだろう。

 暴力団などの組織は赤坂ら公安部が対処すべき案件であり、場合によってはこの暴力団の対処も赤坂の仕事にさせられるかもしれない。
 しかし、実のところ、NPCである暴力団の抗争だとすれば、赤坂もそこまで大きな危機感は持てないのも事実であった。
 所詮は、相手は模造された人間のデータに過ぎず、あくまでリアルな世界を再現する為の人形だ。


719 : 赤坂衛&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/16(火) 22:46:42 r3HHOI5Y0
 それらがデータ同士で抗争した所で、赤坂には危害は及ぶまい。
 形式上、この世界の役割通りに仕事をこなさねばならないのは事実であるが。


「今後は気を付けてくれ。弓を手に取るのは、敵のサーヴァントと戦う時、だけだ」

「はい」

「まずはここを離れよう。気づかれると厄介だ」


 それだけ言って、赤坂とアーチャーは屋上を離れた。
 二人で階段を下りながら、これもまた、近隣住民に見られると厄介だと思っているようだった。
 勿論、屋上で暴力団傘下のパチンコ屋に向けて矢を放ったのを見られるよりマシであるが、一人暮らしの三十代男性である赤坂の部屋に十代の少女(ただしこれはあくまで外見の年齢である)が入り浸っているのは決まりが悪い。
 まして、こんな夜中である。ロリコンなどという噂が飛び交えば、この昨今、ここに住み続けられるかさえ危ういラインである。



 ここは、赤坂が任務の為に住んでいる小さなアパートである。
 近隣住民との付き合いはあるものの、それもお互い深く障らないような適度な距離感を保っていた。
 娘の美雪は、亡き妻の家族に託している事になっているが、それは現実世界とあまり変わらない。
 尤も、自分の娘の模造品など赤坂は見たくもなかったが……。

 階段を下りる赤坂はまた、少し躊躇したかのように、奇妙なほど押し黙っていたが、再び口を開いた。
 そこから出て来た言葉は、アーチャーの心を見事に言い当てていた。


「――不安だったのか? アーチャー」


 アーチャーは目を見開く。

 この夜も――アーチャーは、マスター以上の不安に駆られていたに違いなかったのである。
 本当に、今再び、生前の感覚を取り戻す事が出来るのか……という事だ。果たして自分はマスターの役に立てるのか。
 それを想うと、この夜の内にどこかで練習台を見つけて、自分の弓の腕を試すしかないと思い立った。
 そして、こうして闇の中に紛れて、市街で弓を弾いてみたのである。

 威風堂々の英霊もいるが、アーチャーはそうではなかった。
 かつて過ごした世界との環境の違いや、現世にいた頃からのブランクに不安を持つ英霊も僅かながら居る。
 英霊と呼ぶには繊細すぎるが……アーチャーは、そういうタイプであった。
 しかし――結局のところ、そうした能力面の問題は、杞憂に過ぎなかったのだと、先ほど、わかった。
 聖杯戦争に召喚されても尚、生前と同じように力を使えるのは、先ほどの試験で充分によくわかった事である。

 が、それはつまり、それまでの不安は底知れなかったとも言えるだろう。


「すまないな、アーチャー。……君を、私の願いに巻き込んでしまって」


 そうして、アーチャーに余計な負担を与えたのは、他ならぬ赤坂だ。
 彼が聖杯戦争への参加を決め、安らかに眠っていた英霊を呼び覚まさなければ、こうして北大路花火が夜目覚めて不安に駆られる事もなかったに違いない。
 これが英霊のあるべき姿であるとは、赤坂も思ってはいなかった。

 しかし、赤坂にはどうしても叶えなければならない願いがあったのだ……。
 そして、その為に、何をも犠牲にする覚悟を抱えてしまったはずだった。
 それでもやはり――この英霊の微かな不安にさえも頭を下げる赤坂は、聖杯戦争のマスターになるには些か優しすぎたのかもしれない。
 見かねて、アーチャーは言葉を返した。


720 : 赤坂衛&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/16(火) 22:46:58 r3HHOI5Y0


「……いいんです。あなたの願いが、私を再び現世に結びつけた。
 かつて生きた都市の未来を見守る事が出来るのなら……この現世を戻るのも悪い事ではないと。
 私は、今はそう思っています。如何様にも私をお使いください。…………ぽっ」


 そのアーチャーの言葉が赤坂の罪悪感を微かにでも拭える救いとなりうるだろうか。……それはわからない。
 ただ、彼女は赤坂に全面的に協力する意思があるサーヴァントに違いなく、こうしてサーヴァントに反発せずに本心から相手を立てる事もある。
 その気持ちを赤坂は充分に汲む事が出来た。


「私の願い、か……」


 赤坂は、少し遠くを眺めるような目をした。
 そして、昭和53年に訪れた村の事と、昭和58年に知る事になったある訃報を思い出した。


「アーチャー、私は……――」


 彼が願うのは、今の記憶を保有したまま、昭和53年の世界にまで遡るという事であった。
 そうしなければならない理由がある。
 かつて聞けなかった願いを聞き、そして、冷めやらぬ悪夢を止める事が赤坂の中で要されてきたのだ。


「……」


 ――雛見沢村。

 誰も気に留めないような田舎の村であったが、現在では、その村の名前は、あまりにも有名になった。
 それは、昭和58年に発生した有毒ガス事故によって村人が全員死亡した未曾有の大災害――即ち、「雛見沢大災害」を、ワイドショーが連日取り上げた所為である。
 理不尽かつ大規模なガス災害が、一晩にして一つの村を崩壊させるというこの事件は、当時、日本中を震え上がらせた。
 昭和57年のホテルニュージャパン火災や日本航空350便墜落事故、昭和58年の大韓航空機撃墜事件、昭和60年に発生した日航ジャンボ機の墜落なども有名であるが、それらと並んで今なお取沙汰される80年代の代表的事件の一つとなっている程である。
 そして、それらと比しても多くの不審点を残すこの事件は、今なお、多くの遺族の悲しみを遺し、納得を許さず、この事件に取り憑かれた人間を増やし続けている。

 何より、赤坂もまた、この事件に未だ取り憑かれる人間の一人であった。
 尤も、彼の場合は、ただの知的関心や、不謹慎な興味が理由ではなかった。

 ――彼は、大災害の5年前、昭和53年の夏の日に、公安部の任務でこの村を訪れた事があったのだ。

 そして、赤坂は一人の少女と出会った。
 その少女は、昭和58年に自分が殺される事を赤坂に告げていた。
 彼女には不思議な力があるらしく――それが、自分の死さえも予言していたらしいのだ。

 しかし、これを実感した時には手遅れであった。
 彼女の警告した通りに、任務中、妻が死んだ。
 そして、気づけばその少女さえも……この世からいなくなってしまっていた。

 彼女の力と叫びをわかっていたはずなのに、赤坂はその助けを求める声を、聞く事が出来なかったのである……。

 少女は、昭和58年に、生きたまま腹を裂かれ、無残に殺されたらしい。
 あの幼く、ただ純粋な少女が、そんなにも猟奇的な痛みと共に――。
 その痛みが深かったであろうと想像すればするほどに、「何故自分は気づけなかったのか」という後悔は膨らむ。
 そして、彼女が願った細やかな明日を、赤坂は後悔を積み重ねながら生きているのだ。


721 : 赤坂衛&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/16(火) 22:47:32 r3HHOI5Y0


(私は……聖杯を得なければならない……)


 その日々に終わりを告げる事が出来る力が――あの聖杯という願望器の中に込められている。

 赤坂は、あれから、強くなった。
 もし、あの場に今の自分がいたのならば、歴史は変わるかもしれない。
 今度こそ、少女を、普通に共と暮らせる未来に連れていけるかもしれない。
 そして、亡き妻の命さえも……赤坂は救う事が出来るかもしれない。
 娘に寂しい思いをさせずに済むかもしれない。

 ……どれだけの、「かもしれない」が並ぶだろう。
 聖杯さえあれば、それを現実に出来るはずなのだ。
 大事な人を助けられる知識を持った赤坂が、雛見沢に向かう事ができれば――少女は、痛みを背負わない。
 もう一度、「やり直す」事が出来れば……。


「……やり直してみせるよ、必ず……」


 全てを頭の中で反芻させた彼は、拳を握りながら呟いた。
 アーチャーは、彼の決意を聞き届ける事にした。





「そして、掴むんだ……。惨劇のない未来を……」





【CLASS】

アーチャー

【真名】

北大路花火@サクラ大戦3〜巴里は燃えているか〜

【ステータス】

筋力C 耐久D 敏捷C 魔力A 幸運E 宝具D

【属性】

秩序・善

【クラススキル】

対魔力:D
 魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。

単独行動:C
 マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
 Cランクはマスター不在でも1日程度なら現界が可能。

【保有スキル】

霊力:A
 アーチャーが魔力の代わりに持つ力(実質的に魔力と同様の性質を持つが名称だけ異なる)。
 このスキルによって宝具『霊子甲冑』を操る事が出来るようになるほか、感情の高ぶりなどで筋力・耐久・敏捷のパラメーターを一時的に上昇させる事も出来る。

大和心:B
 太古よりの日本文化を解するスキル。
 アーチャーは日本舞踊・書道・華道・茶道・俳句等に精通し、クラスに必須の弓道の技もこのスキルによって極められている。
 弓道の段位は七段だが、宝具を合わせた技量は、人間の感覚を凌駕する次元にまで発達する。


722 : 赤坂衛&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/16(火) 22:48:02 r3HHOI5Y0

【宝具】

『霊子甲冑』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:1〜10人

 高い霊力を持つ者だけが操る事が出来る鎧のようなメカ。
 一見すると搭乗型巨大ロボットのようでもあるが、その性質上、騎乗スキルの有無に関わらず使用可能であり、アーチャーもこれを手足のように自在に操る。
 生前のアーチャーが光武F、及び光武F2の二機を操った伝説に基づき、この二機のいずれかを選択して現界させて戦う。
 この『霊子甲冑』を纏えば、筋力・耐久のステータスがAランクやBランクまで上昇し、魔族・魔物・魔獣などの怪物や巨大な機械などとも互角の戦闘を可能にする。
 しかし、一方で敏捷のステータスがDランクやEランクまで下降する。まさに甲冑の如き宝具である。
 アーチャーの特性に合わせて、光武Fでは弓矢、光武F2ではボウガンを装備しており、無銘の弓矢よりも射程・精度・威力の高い攻撃が可能。
 アーチャーが持つ弓の技も、この宝具の発動中は威力が増す事になる。

【weapon】

『無銘・和弓+矢』

【人物背景】

 1926年、フランス・巴里で発生した謎の怪人によって頻出した怪事件に対抗する為、秘密裏に結成された都市防衛組織・巴里華撃団花組の隊員。
 ただし、彼女は軍隊だったわけではなく、高い霊力を隊長の大神一郎らに見込まれ、巴里を守り生きていく為に入隊した一般人である。
 元々は、日本の北大路男爵家の令嬢で、フランス人の祖母を持つクォーター。幼少期から、留学という形で巴里のブルーメール家に居候している。
 それ故、ブルーメール家の令嬢にして同じ巴里華撃団の隊員であるグリシーヌ・ブルーメールは幼馴染にして親友という関係。
 日本の文化に精通する大和撫子だが、実のところ、海外暮らしが長い為にその認識は些か実像とはズレており、大和撫子を誤認している節もある。
 婚約者・フィリップを亡くして以来、人と心を閉ざし、夫の下に逝く事を望んでいたが、巴里華撃団に入って以降は、前向きに生きる活力を持ち始めていた。
 常に喪服を着用したまま行動するのは、その名残である。
 また、巴里華撃団の表向きの姿は舞台「シャノワール」である為、その踊り子「タタミゼ・ジュンヌ」としても活躍していたとされる。

【サーヴァントとしての願い】

 都市の恒久的な平和。

【基本戦術、方針、運用法】

 アーチャーでありながら正当派の弓使いである。
 宝具は実質的には3m大の搭乗型ロボットであるものの、そちらもちゃんと弓やボウガンが装備されている。
 というわけで、遠距離からはアサシン的に弓で狙撃し、近接戦になった時は宝具を用いるのがシンプルな運用方法と思われる。
 攻撃体勢の際の隙は大きく、また、アーチャーの性格そのものが「指示待ち」な部分もある為、マスターには一定の指揮能力が必要となる。
 その点においては、赤坂がマスターである以上は問題ないかもしれない。
 アーチャー自身、赤坂の指示には基本忠実に接する為、彼が指示を間違えない限りは、しばらくは効率的に戦闘できる。


723 : 赤坂衛&アーチャー ◆CKro7V0jEc :2016/02/16(火) 22:48:16 r3HHOI5Y0



【マスター】

赤坂衛@ひぐらしのなく頃に

【マスターとしての願い】

 やり直し。

【weapon】

『警察手帳』
 彼の身分を証明するもの。
 普段は警察官として勤務する為、その装備は持所持できるが、私的理由で銃を携帯する事は当然許されない。
 とはいえ、彼はキャリア組でありながら公安部の前線で活躍している。銃を隠して携帯する機会は多いと思われる。ただ、普通に銃より強そうなパンチを放てたり……。

【能力・技能】

 誰かを救う為に空手を習ったが故の、常人離れした戦闘力。
 梨花を救えなかった世界においても、その戦闘力は昭和58年を超えた時点では相当な部類であり、場合によってはサーヴァントを相手に多少はやり合えるかも。
 しかも、キャリア組で警察学校の主席。ただの筋肉バカではなく、頭も良い。
 あとは、麻雀の腕も相当なレベル。

【人物背景】

 警視庁公安部に所属する刑事。階級は少なくとも警部より上。

 彼はかつて、雛見沢村での任務で事件に巻き込まれ、そこで出会った少女の「東京に帰れ」という言葉と助けを求める声を聞く事になった。
 しかし、彼はその言葉の意味を知る事なく、無視をしてしまい、妻を喪う。
 更にその後、村で出会った少女が亡くなった事も知った。

 自分がもし、あの時、少女の言葉を聞いていたのなら……。
 今の彼が求めるのは、それらの出来事の「やり直し」である。

【方針】

 アーチャーと共に聖杯を狙う。


724 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/16(火) 22:51:49 r3HHOI5Y0
投下終了です。

>>712-713さん、まとめ乙です。
しかし、まとめwikiの収録作品数(69+5)と数が合わないような…。
ちょっとこの辺りはどちらにミスがあるのかわかりませんが、後で自分も確認してみます。


725 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/17(水) 00:17:41 Huwdz.Qs0
皆様投下乙です。溜まり溜まった感想を投下します。

結城リト&ランサー
リトのエロ補正は一体どこまで聖杯戦争で通用するのか見物だったりします。
とはいえ、リトの知り合いに似たサーヴァント相手だと、多少仲良くなれそうで何よりです。
しかしエロからは逃れられないようですが……
投下ありがとうございました。

福本忠弘&セイバー
刀に関する知識を持つマスターなだけあって、刀そのものであるセイバーとは
主従関係になる運命を辿るのは納得できるものですね。
とはいえ、セイバーは決定打に欠けるのでうまく立ちまわる必要がありますね。
投下ありがとうございました。

松野十四松&セイバー
たとえ王であろうとなかろうと理解できないマスターとはセイバーも大変そうです。
十四松は果たして聖杯戦争をどう生き抜くつもりなのでしょう?正直わたしにも分かりません……
本来、セイバーが持たない槍が明記されているのには、もしかして?な期待が湧きあがります。
投下ありがとうございました。

霞改二乙&フルーツ
これまたマスターの霞はどうしてこうなってしまったのでしょう……
悪意のあるフルーツを引き剥がす術は、聖杯戦争で見つける事ができるのでしょうか。
出来れば聖杯を入手するまでは、被害を少なくして欲しいものです。
投下ありがとうございました。

月読ジゼル&キャスター
マスターのジゼルとキャスターの関係は良好そうで何よりです。
原作の方を知っているためか、ジゼルをキャスターが導いて欲しいところですし
彼女も決して聖杯を使う方向や手を汚そうとする方向に行って欲しくないものです。
投下ありがとうございました。

矢澤にこ&バーサーカー
このままではにこの魔力が尽きてしまうのではと不安になる話でした……
彼女は聖杯戦争をよく理解していませんし、敵に狙われてしまっては命が危ういです。
対してバーサーカーはにこを守り続けることは出来るのでしょうか?
投下ありがとうございました。

成瀬翔&セイバー
この聖杯戦争も月島さんのお陰で何とかなりそうですね……?
もう一度やり直したいという思いは、誰かが抱きそうな願いですが
成瀬にとってやり直しへの想いは他の誰よりも特別だからこそ、願うものなのですね。
投下ありがとうございました。

遠坂凛&ネゴシエイター
ここの凛ちゃんはまだマシそうだけど、お金がないのが心もとないです。
サーヴァントのロジャーの性能を理解して、対策を講じてうまく聖杯戦争を
生き抜いて、聖杯戦争の陰謀を是非解き明かして欲しいですね。
投下ありがとうございました。

アインハルト・ストラトス&アーチャー
ついにテニスは聖杯戦争でも通用する時代になってしまったのですか(驚愕)
そして何一つ違和感のないアーチャー・跡部のスキル。納得せざる負えません。
アインハルトはアーチャーのテニスを通じて何かを得る事はできるのでしょうか。
投下ありがとうございました。

プロシュート&セイバー
源氏……つまりあのゴルゴ13に引き寄せられたセイバーなのでしょう。
マスターのプロシュートはセイバーをコントロールしようと模索しているところ
冷静に聖杯戦争を行えそうですが、果たしてその瞬間、対応が可能なのでしょうか?
投下ありがとうございました。

明智健悟&ランサー
警察としての立場に入れる明智は果たして東京都内で発生するサーヴァントの事件と
どう向き合い、解決していくのでしょうか。非常に楽しみですね。
一方のランサーは明智とうまくやっていけるのか若干不安な要素があります。
投下ありがとうございました。

芽兎めう&ライダー
めうもライダーも良心的な主従なのですが、どうも会話が噛み合っていないのが不安ですね。
これから過酷な聖杯戦争がはじまるとなればめう自身、大変でしょう。
それをライダーがうまく支えてくれるといいのですが。
投下ありがとうございました。

ジーク&ランサー
すまないさ……んじゃないジーク君と困ったさんの二人ですね。
実際にジークフリードがこの聖杯戦争にいるので、仮に巡りあうとして
どのような反応を見るのか、ジークフリード同士の対決なんてのもありそうです。
投下ありがとうございました。


726 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/17(水) 00:18:03 Huwdz.Qs0
夜神総一郎&セイバー
これまた警察の立場を持ったマスターですが、こちらは息子の一件があり
一人抱え込んだまま聖杯戦争を放浪しそうで不安を感じるところがみられます。
どうにかセイバーと良好関係を築いて、事件解決を目指して欲しいものです。
投下ありがとうございました。

セラ&ランサー
肉弾戦を得意とするランサーですが、彼女の守るべきもの守り通して聖杯戦争を
戦いぬくのは厳しいでしょう。きっと子と共に戦う瞬間がくるでしょう。
セラはある少年に対し、伝えるべき言葉を告げる為、どこまで往けるか楽しみです。
投下ありがとうございました。

高遠遙一&セイバー
まだ地獄の傀儡師ではない高遠となると、聖杯戦争に対する意欲も違ってきますね。
奇術師の能力を聖杯戦争でどう生かしてくるのか、聖杯戦争を通して高遠の意思も
何らかの変化が起きるのでしょうか。それもセイバーが鍵を握っているでしょう。
投下ありがとうございました。

ビスケット・オリバ&アサシン
まさか刑務所にもマスターがいるなど想像できませんね。
しかもデミサーヴァントとして戦えるという特殊な立場で、聖杯戦争の陰謀を解き明かそうとする。
まずは殺人鬼の事件を解決するのでしょうか。非常に今後が楽しみです。
投下ありがとうございました。

遠野英治&バーサーカー
非常に厄介なサーヴァントを召喚した遠野ですが、そのバーサーカーの能力をあまり理解していない
が為に、後に後悔しそうな感じがしてしまいます。いつかバーサーカーが遠野に
刃を向ける時、果たしてどうなるのでしょうか……?
投下ありがとうございました。

真田明彦&ライダー
いきなりとんでもない傷跡をつけた主従です。このような事件が起こっては他のマスターたちに
狙われることを警戒しなければなりませんが、恐ろしい強さを誇るライダーを倒すのは
一筋縄にはいかないでしょう。今後の彼らの動きが気になります。
投下ありがとうございました。

赤坂衛&アーチャー
やり直すを願うマスターの赤坂も警察関係者なので、例の事件に巻き込まれてしまうかもしれません。
アーチャーの強みを生かす為、うまく指示を与えられるかが鍵というところですね。
とはいえ、何人かの少女がすでに巻き込まれている聖杯戦争で、赤坂はどう行動するのでしょう。
投下ありがとうございました。


727 : ◆7PJBZrstcc :2016/02/17(水) 12:36:49 Q.Xkfd8Y0
投下します


728 : 闇と光 ◆7PJBZrstcc :2016/02/17(水) 12:37:34 Q.Xkfd8Y0

 最近都内の何処かで、女子高生同士のこんな会話があった。

「ねえ知ってる? 最近変な新興宗教が出来たんだって」
「なにそれー」
「何かよく知らないけど……。『我らの崇める神シドーが降臨すればこんな世界は破壊しつくされるでしょう』とか言って信者を募ってるらしいよ」
「うわぁ……」
「でここからが本題なんだけどさ、……そこの宗教の教祖の姿が明らかに人間じゃなかったんだって」
「それで?」
「だからそこに居るのは皆悪魔か何かで、そこの信者になったらみんな怪物にされちゃうんだよ」
「いやいや、ありえないでしょ」
「まあ私もそんな噂を聞いただけだけど」
「やっぱり……。大体本当だったら画像の一枚位あるでしょ、ツイッターとかにさ」
「……それは言っちゃ駄目でしょ」
「これ言っちゃ駄目なの!?」


729 : 闇と光 ◆7PJBZrstcc :2016/02/17(水) 12:38:41 Q.Xkfd8Y0


 深夜、東京都内の住宅街の一角、そこに最近噂になっている新興宗教の教祖が居た。
 教祖は最近テレビを賑わせる殺人鬼に怒りを覚えていた。
 と言っても正義感からくる怒りではない。ならば何故か。
 それは殺された者の中に同士が居たからだ。
 無残に殺された人の中に、自分が教祖を勤める宗教の信者が居たからだ。
 偉大なる神シドー様に捧げなければならない命を無駄に奪われたからだ。

「まったく、許しがたい蛮行だな」

 自らの信者でない存在がいくら死のうともこの教祖は動じたりしないだろう。
 むしろ与し、共同戦線の一つでも張ることを考えるかもしれない。
 だがあの男はダメだ。
 あれは無差別だ。人間である限り誰であろうと襲うタイプの存在だ。
 そう教祖は感じ取った。
 だからこそ教祖はあの殺人鬼を撃ち滅ぼすと決めたのだ。
 警察が特殊部隊を投入するという話も聞いたが、凡俗が数を揃えようともあの男にはかなわないだろう。
 あれとまともに戦える人間となると、それこそロトの血族でもなければ……。

「ん?」

 件の殺人鬼の事を考えながら歩いていた教祖は、ふと自らの思考に違和感を覚え足を止めた。
 自分の思考の何が引っかかったのか考え、そして気づいた。

「ロトの血族とは、誰だ……?」

 そんな存在はこの世界に存在しないはずだ、居たとしても世界に影響のある存在ではないだろう。

 ――馬鹿な、影響がないわけがない。あの血筋は王族の血筋だ。
 ローレシア、サマルトリア、ムーンブルクの王の血筋が影響のない存在なわけがない。

 ――待て、そんな国はこの世界に存在しない。
 そんなはずはない、私はムーンブルクを滅ぼしたのだぞ!?

「どういう事だ……!?」

 教祖は自分の認識と常識がかみ合わない事に驚愕する。
 驚愕しながらも、彼は考える。

「そもそも何故私は100人近く殺してきた殺人鬼を倒せると考えた?」

 ――特に何らかの戦闘訓練をしたわけでもない自分が、何故?

 そう自らに問いかける。問いかけずにはいられない。
 そして彼は気づく、この世界で生きてきた今までは偽りだと。
 そして彼は解答に辿り着く、自らへの問いの答えに。


「――何故なら私は、闇の大神官ハーゴンさまだからだ!!」

 こうして、教祖もといハーゴンは自分を取り戻した。


730 : 闇と光 ◆7PJBZrstcc :2016/02/17(水) 12:39:41 Q.Xkfd8Y0


「やってくれたな……」

 ハーゴンは偽りの記憶を植え付けられ、偽りの生活をさせられたことに怒っていた。
 どんな目的で、どんな手段をもってしてこんな事をしたかは知らないが、シドー様復活の邪魔をする者は必ず殺す。
 もしもこの所業を許すことがあるとしたら、シドー様復活の為に使えるものを見つけるか、この状況を作り出したのがシドー様であるかのいずれかだ。
 そんなことを考えながらもハーゴンは、現状の再確認をすることにした。

 見た事の無い物、自らの世界とあまりに違いすぎるルールなどハーゴンを戸惑わせるものは沢山ある。
 偽りの記憶で生きてきた日々のおかげで理解できず右往左往することは無いが、いざという時に不覚を取るかもしれん、とハーゴンは考えた。

 とりあえずは自身の所持品を見ることにし、使い方などを確認をしていく。
 所持品は杖とスマホや財布位のものだったが、それでもハーゴンにとっては衝撃的だ。
 スマホのように魔力を用いず遠くの人間と会話ができるなど想像もできない。

「む?」

 ハーゴンがスマホについて思考していると、後ろから殺気を感じた。
 振り向くとそこには、高校生くらいの少年とこの東京で見ることは無かった金髪の剣士が居た。

「何だ貴様らは?」

 ハーゴンが少年と剣士に問うと、剣士は一歩前に出てハーゴンに剣を突き付けながら喋る。

「私はセイバーのサーヴァント。お前はキャスターだな? マスターが近くにいないようだが……」
「サーヴァント? マスター? 何を言っている?」

 セイバーと名乗った剣士はハーゴンの返答に首をかしげる。
 マスターならばともかくサーヴァントは聖杯戦争について把握しているはずなのだから。
 それを見ていた少年はあることに気づく。

「なあセイバー、こいつマスターなんじゃないか? よく見ると左手に令呪があるようだし」
「それは本当ですかマスター!? サーヴァントとしかでは思えない魔力を持っているようですが……」
「相当な怪物だろうな……。だがセイバーなら倒せるだろ?」
「当然ですマスター」
「話は済んだか」

 少年とセイバー、二人の会話が終わる頃合いを見計らってハーゴンは話しかける。
 別に待っている義理も道理もないが、不意打ちでなければ倒せないほどの強さは感じないのでハーゴンは律儀に待っていた。

「行くぞ!」
「イオナズン」

 セイバーがハーゴンに向かって飛び込んだ瞬間、ハーゴンは呪文を唱え攻撃する。
 その呪文で巨大な爆発が起き、後ろの少年には当たらないもののセイバーに直撃した。
 しかし次の瞬間、ハーゴンにとって信じられない事が起きる。


731 : 闇と光 ◆7PJBZrstcc :2016/02/17(水) 12:40:41 Q.Xkfd8Y0

「ハァッ!!」

 何と、セイバーは無傷のままハーゴンに斬りかかってきたのだ。

「何!?」

 驚きながらもハーゴンはセイバーの剣を杖で受け止め、弾き返す。
 その力に今度はセイバーが驚愕する番だ。しかしそんな事ハーゴンは知る由もない。
 そして二人がある程度の間合いを開けた後、ハーゴンが思わず呟く。

「まさか呪文が効かない人間が居るとはな……」
「まあ、そういうクラスだからな」

 会話をしながらもハーゴンは考える。
 呪文が効かない以上、使えるのは直接攻撃と甘い息だけ。
 しかし甘い息をあてられそうな相手ではない。
 そして頼みの直接攻撃も腕力はともかく技量は向こうが上。
 このままでは埒が明かない。そう思った直後

「■■■■――――!!!」

 ハーゴンの後ろから咆哮が辺りに響き渡り、空気が震えた。
 その震源を見ると、そこには少女が居た。
 とても空気を震わせるほどの叫びをしたと思えない、そんな少女が居た

 だがその少女を見た3人は瞬時に理解する、あれは英雄だと。
 あれは類稀なる英雄だと。
 その少女を見た少年は思わず声を漏らす。 

「バーサーカー……?」

 その呟きを聞き、ハーゴンは理解した。

「ほう、この女が私のサーヴァントという奴か」

 そしてバーサーカーを見た瞬間、セイバーは少年の元へ戻っていた。
 そして彼らにとって絶望的な事実を告げる。

「逃げましょうマスター。我らではこの主従は倒せません」
「ああ、だろうな」

 現状セイバーがマスター相手でやっと互角。
 更に強力なサーヴァントが追加された今となっては、セイバー主従に勝てる道理はない。
 だがしかし

「逃がすと思うか?」

 ハーゴンからは逃げられない。
 いつの間にかハーゴンは少年とセイバー二人の背後に回り込んでいた。

「大魔王を気取るつもりはない。それでも貴様等から仕掛けた戦いだ、退けると思うな」
「■■■■!!」

 そしてバーサーカーも距離を詰める。
 こうなればもう少年とセイバーに成すすべはなく、ただ蹂躙されるのみ。
 そして

「ちく、しょう……!」
「申し訳ありません、マスター」

 剣士は消滅し、少年は息絶えた。
 それを無感動に見ながらハーゴンはこう呟いた。

「何故サーヴァントの死体が残らない?」


732 : 闇と光 ◆7PJBZrstcc :2016/02/17(水) 12:41:21 Q.Xkfd8Y0


 その後、ハーゴンとバーサーカーはあの場から逃走した。
 本音を言えば、あの二人から情報収集をしたかった。
 だが、あの場で騒ぎ過ぎたのか警察がやってきてしまったのだ。
 幸い、二人は見られることなく逃走できたが、少年の死体をそのままにしてしまった。

「まあ、今なら死体があったとしてもあの殺人鬼のせいに出来るか」

 少々癪だがな、と付け加えながらハーゴンはこれからの事を考える。
 強力な手駒が手に入ったとはいえ、状況は不明な点が多い。
 そもそもこの強力な手駒が、何故自分に従うのかすら分からないのだから。

「■■■■」

 隣で唸るバーサーカーを見ながらハーゴンは思う。
 こいつは何者だ。

 見たところ少女ではある者の、纏う雰囲気は完全に歴戦の戦士だ。
 それも並大抵でない戦いを越えてきた英雄のものだ。
 そしてこれは直感だが、恐らくこいつは光の、正義の存在だ。
 そんな存在が何故か言葉を話すほどの理性もない。
 ハーゴンからすれば理解不能としか言いようがない。

「まあいい」

 しかしハーゴンは考えるのをやめた。
 いくら考えても結論の出そうなものではないし、そんな事に時間を使うのも馬鹿らしい。
 それよりもこの事態について何か知っている存在を探し、聞き出した方が余程手っ取り早い。

「いくぞ、バーサーカー」

 こうしてハーゴンは狂戦士と共に歩き出す。
 だが彼は知らない。
 このバーサーカーの正体も。
 そもそもサーヴァントがどういう存在なのかも。
 今東京で行われている聖杯を巡っての殺し合いも。
 彼は何も知らない。



【マスター】
ハーゴン@ドラゴンクエストII 悪霊の神々(SFC版)

【マスターとしての願い】
破壊神シドー様復活。

【weapon】


【能力・技能】
・呪文
イオナズンとベホイミが使える。
イオナズンは範囲攻撃の爆発呪文。
ベホイミは対象単体を回復させる呪文。1回である程度のダメージを回復させる。

・甘い息
喰らった相手を眠らせる息を吐く技。
魔力を用いていないので、何らかの方法で魔術を封じられても使用可能。

・身体能力
意外と高く、上二つの能力がなくても並のマスター相手なら十分戦える。

【人物背景】
邪神の復活を企む悪の大神官。

【方針】
何が起きているのか、ここが何処なのかはよく分からないがシドー様の復活を邪魔する者は殺す。
とりあえずは、シドー様の信者を葬った殺人鬼を殺しに行く。
後、この状況がどういう物か把握したい。

【補足】
聖杯戦争を把握していません。
NPCには普通の人間として認識されています。
与えられた役割は、シドーを崇める新興宗教の教祖です。
宗教の信者の内数名が、バーサーカー(SCP-076-2)に殺害されています。


733 : 闇と光 ◆7PJBZrstcc :2016/02/17(水) 12:42:20 Q.Xkfd8Y0




 むかしむかし、アリアハンというところにオルテガという勇者がおりました。
 勇者オルテガは悪しき魔王バラモスを倒すため妻を置いて旅に出ました。
 しかしその旅の途中オルテガは火口に落ちて行方不明となりました。
 アリアハンの人々は、オルテガは死んでしまったと思い悲しみました。

 それから16年後。オルテガの遺志を継ぐ者が現れました。オルテガの娘です。
 オルテガの娘は女の子ながら、勇者となるため男の子のように育てられました。
 オルテガの娘が旅立つ時、アリアハンの人々は心から応援しました。
 それからオルテガの子供は仲間を連れ、様々な苦難に立ち向かいました。
 海を越え、山を越え、最後には空を飛び魔王バラモスと対峙します。

 激戦の末魔王バラモスは倒れましたが、世界は完全な平和を取り戻していませんでした。
 なぜなら魔王バラモスのさらに上、大魔王ゾーマが居たからです。
 大魔王ゾーマはオルテガの娘たちが今までいた世界の下の層にある別の世界に居ました。
 オルテガの娘たちは今までいた世界にある大きな穴に飛び込み、下の世界に向かいます。

 さまざまな困難を越え、オルテガの娘たちは大魔王ゾーマの城に到着します。
 そして城の奥に入ると、そこにはなんと死んだと思われていたオルテガが居ました。
 しかしオルテガは大魔王ゾーマの手下と戦い娘の目の前で命を落としてしまいした。
 それでも娘は悲しみを乗り越え、父の仇、かつて倒したバラモスの弟、ゾンビとして甦ったバラモスと戦い打ち勝ちます。

 そしていよいよ大魔王ゾーマとの決戦。それは魔王バラモスとの戦いをはるかに超えるほどの辛い戦いとなりました。
 ですが、オルテガの娘たちは大魔王ゾーマを倒し世界は平和となりました。
 こうして、オルテガの娘は勇者ロトの称号を得たのです。

 しかし、大魔王ゾーマを倒したと同時に勇者ロトたちが通ってきた穴は塞がってしましました。
 このため、故郷のアリアハンに帰る事が出来ません。
 勇者ロトの仲間は何とかこの事実を受け入れ、今いるこの世界を新たな故郷にしようと考えましたが、勇者ロトは受け入れられませんでした。
 その時の姿はまるでただの少女でした。
 このため勇者ロトは仲間と別れ、一人で旅に出ました。故郷に帰る方法を探すためです。

 ですが、勇者ロトはアリアハンに帰る方法が見つかりませんでした。
 それでも勇者ロトは諦めませんでしたが、1人の男性と恋に落ち子を成しそのまま生涯を閉じます。
 故郷に帰りたいという願いを残したまま。

 勇者ロトの称号は伝説に残りましたが、本当の名前は時の流れの中に消えてしまいました。
 そして、故郷に帰るため狂戦士と化し邪悪の従者と成り果てた今、彼女は勇者であることすら捨ててしまったのです。


734 : 闇と光 ◆7PJBZrstcc :2016/02/17(水) 12:42:49 Q.Xkfd8Y0
【クラス】
バーサーカー

【真名】
無銘(女勇者)@ドラゴンクエストIII そして伝説へ…

【パラメーター】
筋力A 耐久A 敏捷A 魔力B 幸運D 宝具A

【属性】
秩序・狂

【クラススキル】
狂化:B
理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
Bランクだと全パラメーターを1ランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。

【保有スキル】
戦闘続行:A
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能なスキル。

仕切り直し:B
戦闘から離脱する能力。また、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。

呪文:-
呪文を唱える事で様々な魔術を使用可能となるスキル。
だが狂化の影響で呪文を唱える事が出来なくなってしまっている。
令呪などを用いて一時的に狂化のランクを下げ、会話が可能になる位まで理性を取り戻せばAランクのスキルとなる。

勇者:-
勇気ある者の証、魔王と戦う定めを持った者の称号。
混沌もしくは悪属性のサーヴァント、または魔物や魔族に与えるダメージが大きくなる。
―――だが、狂戦士に勇気など無い。

精霊の加護:-
精霊からの祝福により、危機的な局面において優先的に幸運を呼び寄せる能力。
だが悪の従者と化したバーサーカーをルビスは祝福したりしない。
マスターを善なるものに替えればAランクのスキルとなる。

【宝具】
『偉大なる血統の始まり(ロトのそうび)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
勇者ロトが使っていたとされる伝説の装備。
ロトの剣こと王者の剣。ロトの鎧こと光の鎧。
ロトの盾こと勇者の盾。ロトのしるしこと聖なる守り。
そしてロトの兜の5つで構成されている。
兜については詳しい事は不明だが、最低限何らかの兜は被っている。

【weapon】
ロトのそうびと呪文

【人物背景】
ロトの勇者だった少女。

【サーヴァントとしての願い】
故郷に帰りたい。


735 : ◆7PJBZrstcc :2016/02/17(水) 12:43:46 Q.Xkfd8Y0
投下終了します。
詠みにくかったらすみません


736 : ◆7DVSWG.5BE :2016/02/18(木) 10:08:48 EA5tDAtM0
皆さま投下お疲れ様です
これより投下させて頂きます


737 : ◆7DVSWG.5BE :2016/02/18(木) 10:10:24 EA5tDAtM0
次のニュースです。
今日、渋谷区のテナントビル一棟が全焼しました。
死亡者○○人、重軽傷者△△人
周辺から火の気がない処から出火したことで、放火の疑いがあるとみられます。
今月渋谷区で起こった火災事件は□□件目になり、警察は渋谷区での警戒を強めていくとのことです。


―――――渋谷区―――

東京都最大の繁華街の一つ。
多くの人間がこの街に訪れる。
特に駅前のスクランブル交差点には多くの人間が溢れかえる。
さらに週末の夜となれば、スクランブルでは人にぶつからず歩くのは難しいだろう。
行きかう人の喋り声、アスファルトを踏みしめる靴の音、巨大ディスプレイから流れるCM。
これらの音が合わさって一種のBGMのようにも聞こえてくる。
そんな人ごみに自分の存在感を紛れ込ますように交差点を渡る男が一人。
葛西は歩きながらポケットにあるマッチ箱からマッチを取り出し、タバコに火をつけた。

やはり違う。
味は似ているが、微妙に違う。

本来なら自分のお気に入りの銘柄はたんまりとストックしているのだが、今はそのストックは存在しない。
まあ、似たような銘柄があるだけ良しとするか。

葛西は歩きたばこをしながら歩き、スクランブル交差点を抜け、センター街に向かう。
だが突如背後から声をかけられ、男は思わず足を止める。
振り返ってみると、警官が二名立っていた。

「すみません。ここは歩きたばこ禁止なので、止めて頂けますか?」

警官は腰が低い態度で、男に注意を促す。
しかし葛西は歩きたばこを注意されただけにしては、不自然なほど驚いた表情を作りながら、警官を見続けていた。

「すみません、聞こえていますか」
「あ、悪い悪い」

警官は男が何も反応しないことに苛立ったのか、少し強めな語気で声をかける。
その声でやっと気付いたのか、葛西はニヤつきながら吸っていたたばこをアスファルトに押しつけて、警官たち元から立ち去った。

葛西善次郎は犯罪者だった。
罪状は主に放火、それに脱獄などの罪状を加えると前科1342犯。
人類史史上最悪の犯罪者といっていいだろう。

そんな犯罪者を目の前にした警官が、だた歩きたばこの事を注意しただけなのが、葛西にとって可笑しくてたまらなかった。

しかし、それは無理もないことだった。
この世界において、葛西は犯罪者ではなく、ただの失業中の無職なのだから。

葛西が記憶を取り戻す切っ掛けは些細なことだった。
渋谷の街をぶらついている際に、ふと目にやった交番に見た時に、あるべきものがなかった。
自分の手配書。
前科1342犯である自分の手配書が日本の交番に無いわけがない。

―――おかしい、何かがおかしい?―――

感じたのは強烈な違和感。
それを感じた瞬間、様々な情報の濁流が葛西の脳内に押し寄せる。

シックス ネウロ 血族 五本指 炎 警察
そして葛西はすべてを思い出した。


738 : ◆7DVSWG.5BE :2016/02/18(木) 10:13:14 EA5tDAtM0
センター街のゲートを抜け、20メートルばかり歩くと、その物体は葛西を出迎えた。

これはオブジェと表現していいのだろうか、
空き缶や鉄パイプなどのゴミやがらくた。車や自転車、さらに信号機などが、ただ乱雑に積み重なった巨大な塔。
渋谷、いや現代の街にあるのが不自然すぎる物体。
その不自然さ故に、発せられる圧倒的な存在感は道行く通行人の目をくぎ付けにした。

このオブジェはある日前触れもなく出現した。
最初は誰かのいたずらだろうと、区役所の職員が撤去した。
だが、日を追うごとにそのオブジェは増えていく。
一つ、二つ、三つ、四つ。
撤去しても、出現し、撤去しても、出現する。
いたちごっこは数日間繰り広げられて、ついに区役所は折れた。
撤去にかかる費用と労力が割に合わないと判断し、オブジェを放置することにしたのだ。

撤去が中断された後、オブジェが増えるペースは衰えたが、着実に増え続け、渋谷のいたるところでオブジェが見られるようになった。
今では、渋谷の新しい名物になりつつある。

このオブジェは誰が、何のために作ったのか?
様々な噂が飛び交うが、誰も真相の片鱗に触れることは無かった。

だが、葛西は誰がこのオブジェを作ったのは知っている。
この奇怪なオブジェを作ったのは恐らく自分のサーヴァント、キャスターであることを。

キャスターは自分が記憶を取り戻した直後、出現して聖杯戦争についての情報とミッションを与えた後、姿を消した。
その直後から、渋谷の街にオブジェが出現し始めたのだ。
タイミングからしてキャスターの仕業と考えられない。


□□□

葛西は繁華街を抜け、自宅の近くにある公園のベンチに腰を下ろし一服する。
薄汚れた青色のシーソー、長年使われたせいか、塗装が剥がれた赤い滑り台。
それらを照らす蛍光灯は、チカチカと明滅し、今にも消えそうだ。
そして、頼りない光源が公園のど真ん中にあるゴミの山、例のオブジェを映し出す。

違和感の塊のようなオブジェだ。
世界中のありとあらゆる場所においても、このオブジェは違和感を発するだろう。
自分のサーヴァントは何を考え、何を思ってオブジェを作るのか

少しでも理解できるかと考え、オブジェを下から観察する。
薄暗くて見えにくいが、うっすらと自転車やテレビやマネキンなどが見えた。
相変わらずゴミを積み重ねたようにしか見えないが、一つだけわかったことがある。
それは、積み重ねるのは無機物であるということ。
もしシックスがこのようなオブジェを作るなら、生きた人間を積み重ねそうだな。
そんなことを考えながら、視線を上げるとオブジェの頂上に佇んでいる人をうっすらと見えた。

黒のジーンズ、黒のジャケット、黒のキャップ。
黒一色の服装は夜の闇に同化し、公園の蛍光灯の弱い光りでは目を凝らさないと発見できないだろう。
葛西はその人物に見覚えがあった。
一度だけしか見ていないが、しっかりと覚えている。


739 : 葛西善次郎&キャスター ◆7DVSWG.5BE :2016/02/18(木) 10:14:50 EA5tDAtM0

「火火火、何をしてるんだ、キャスター?」

キャスターは葛西の存在に気が付き、どこからか取り出した拡声器を片手に叫ぶ

『計算しているに決まっているだろ!このヘクトパスカルが!』

あまりの声量に思わず、耳を塞ぐ。
普通にしゃべればいいのに、何故拡声器を使う?計算しているに決まっているって何を?
突っ込むポイントが二三浮かぶが、ぐっと抑える。

「ここら辺は俺の近所だから、拡声器使うのはやめてくれえか、近所迷惑だから」

キャスターは言うことを聞いたのか、拡声器をオブジェの天辺に乱暴に突き刺し、オブジェから飛び降り、葛西の元へ近づいてくる。

「それより、ちゃんと与えられた仕事やってるのか」
「ほどほどにな、あまりオジさんを働かすなよ。キャスター」
「ちっ!お前の魔力が1ヨクトグラム以下のせいで、碌に動けねえんだ。ゼタ気張ってやれ」

キャスター、南師猩は人に任せることを嫌う。
生前は単独行動が多く、何をやるにしても一人でやってきた。
何事も一人ででき、何より他人が介入することで自分の計算が狂うことを極端に嫌っていた。
葛西に与えた仕事は自分の宝具を生かすために重要な事。
本来なら自分でやりたいところだが、それをするには魔力を消費する。
葛西善次郎の魔力はそこらへんの人間と大差ない。
ただでさえ不利な、キャスターというクラスに、魔力が少ないマスター。
聖杯戦争を勝ち抜くためには、魔力を無駄に消費することはできない。
葛西の働きが芳しくなければ、自分が実行するのもやぶさかではないが、それなりの働きをしているので、とりあえずは葛西に任せている。

葛西がキャスターに与えられた仕事。

―――渋谷を負の感情で満たせ――――

渋谷に住む住人の心に不安、恐怖、嫉妬。それらの負の感情を植え付けろ。
葛西は頭を悩ませた。
かつての同僚ジェニュイン、群衆の心理と行動を思うままに支配できる煽動の天才。
彼女なら渋谷を負の感情の渦に陥れることなど、朝飯前だろう。
だが自分にはそんな技術は持っていない。

しかし群衆を煽動しなくても、単純な方法で渋谷を恐怖や不安で満たすことはできる。
むしろ、その方法しか思いつかなかった。

もし住んでいる近所で殺人事件がおきたら、どんな感情を抱くか?
もし家族、友人が不慮の事故で死亡してしまったら、残された人はどんな感情を抱くか?
大半の人は不安や悲しみを抱くだろう。
葛西は自分の手で不慮な事故や殺人事件をおこすことにした。
放火という方法で、

葛西は渋谷にある住宅、テナントビルなどをランダムに放火した。
以前のように大がかりな放火はできないが、それでも放火によって少なくない被害と人間が死亡した。
治安が荒れれば人の感情は荒れる。
感情が荒れれば、負の感情を抱きやすくなる。
これが葛西の思いつく、たったひとつの方法。


740 : 葛西善次郎&キャスター ◆7DVSWG.5BE :2016/02/18(木) 10:16:05 EA5tDAtM0

「おい、お前は聖杯に何を願う」

南師は葛西に尋ねる。
生前の南師なら他人に興味を示すことはなかった。
だが疑問に思うことがある。
何故自分はこの男のサーヴァントとして召喚されたのか?
願いを聞けばその疑問が解けるかもしれない。
そう考え質問を投げかけた。

葛西は吸い込んだ煙を吐きだし、語り始める。

「俺には夢があってね。俺がどう逆立ちしても勝てない絶対的な強者。
そいつは地球上の誰より長生きするだろうさ。俺はそいつより長生きしたいんだよ」
「じゃあ、聖杯で力を貰うか、そいつをぶっ殺せば長生きできるじゃねえか」
「火火火、それじゃ意味がない、俺の美学は人間の限界を超えないこと。聖杯で力を貰ったら人間を越えちまう。
人間の知恵と工夫で長生きすることに意義があるんだよ」

葛西の願いは絶対的な強者、シックスより長生きすること。
だが自分の望みは叶うことはないだろう。
警察の情熱と執念により完全に追い詰められ、燃え盛るビルの室内に身動きできない状態で取り残される。
そして頭上から燃え盛る数百キロのコンクリートが落ちてきた。

それが覚えている最後の記憶。
あれほどの質量だ。九分九厘で死ぬだろう。
では生きる為に、聖杯に頼んで警察に追い詰められたことを無かったことにするか。
あの場所から安全な場所に瞬間移動してもらうか。

どんな願いを叶えられる聖杯。
それが本当なら簡単にできるだろう。
だが、聖杯の力を使うことは人間の限界を超えることではないのか?
美学に反する。
故に葛西はその考えを打ち消した。

葛西が聖杯にかける願い。
それは『召喚された直前に戻ること』
あの時は生きることを諦めていた。
だが、もしかしたら知恵と工夫と幸運で生き残れるかもしれない。
どうせ死ぬかもしれないが、足掻いてから死んでも遅くは無い。

足掻く機会を得る為には、聖杯戦争に勝ち抜かなければならない。
サーヴァントと呼ばれる化け物同士の争うのが聖杯戦争。
聖杯戦争の詳しいことも、セオリーも知らない。
だが、この戦いの鍵を握るのは人間、マスターであると考える。
それこそ魔人ネウロと新種族シックスの争いの鍵を握るのが、お互いが進化を促した人間であるように。

つまり、この戦いは自分の働き次第ということか。

―――長生きの為に頑張ってみるとするかねぇ

葛西は静かに力強く、決意と言う名の炎を心に灯す。

「美学か……」

南師は葛西の話を黙って聞き、独り言のように呟く。
長生きしたければ聖杯の力を使えばいい。
誰もが分かる簡単な理屈、合理的な考え。
しかし葛西は美学のために、合理性を跳ね除けた。
その考えは理解できない。
だが美学については僅かばかり理解できた。

南師は自分の美学を貫いてきた。
その特殊すぎる美学は周りには奇行と見られなかった。
その最たる例がゴミのオブジェだ。
確固たる美学に基づいて、あのオブジェを作っているが、周りは誰も理解しない。
葛西の美学が自分には理解できない。
同じように葛西も自分の美学を理解できないだろう。
美学とはそういうものかもしれない。

葛西が持つ確固たる美学。
これが葛西に召喚された一つの要因か。
南師はそう納得した。


741 : 葛西善次郎&キャスター ◆7DVSWG.5BE :2016/02/18(木) 10:18:47 EA5tDAtM0

【クラス】
キャスター

【真名】
南師猩@すばらしきこのせかい

【パラメーター】
筋力:D 耐久力:D 敏捷:D 魔力:B 幸運:B 宝具:B

禁断化
筋力:C 耐久力:C 敏捷:C 魔力:A 幸運:B 宝具:B

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
陣地作成:-
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げるスキル
南師にこのスキルは備わっていない。

ノイズ作成:B
スキル道具作成が変化したもの
ノイズを作成できる。

【保有スキル】
孤高:B
確固たる自我を持ち、誰とも交わらない孤高の存在。
Bランクの単独行動を有し,Bランク程度の精神干渉魔法をシャットダウンする。
また協調性が皆無のため、マスターの言うことをほぼ聞かず、
命令されることを極端に嫌い、令呪の効果が極端に弱い

オブジェ作成:-
キャスターの美学の象徴。街中に勝手にオブジェを作る。
このオブジェを見ることで、低確率で真名を看破されることがある。
オブジェの材料は道具生成のスキルで自分で作ることも可能

【宝具】

『すばらしきおれのせかい』
ランク:B 種別:対軍 レンジ:渋谷区内 最大捕捉:渋谷区内に居る人間全員
キャスターが生前活動してきたUGの渋谷区を再現する宝具。
渋谷区内にいるNPCの負の感情が溜まると、ノイズと呼ばれるモンスターを自然発生さる。負の感情が強ければ強いほど、強力で大量のノイズを生み出す。
ノイズは南師とそのマスター以外のサーヴァントとマスターを見つけると襲い掛かる。
感知距離の範囲内にいれば、霊体化していても襲い掛かる

ノイズに触れてしまうと異空間に強制的に引きずり込まれ、ノイズを倒さない限り、異空間から出ることは出来ない。
またサーヴァントやそのマスターがノイズに触れてしまった場合には、契約しているマスターやサーヴァントも強制的に異空間に引きずり込まれる。
マスターとサーヴァントはそれぞれ同じノイズと戦い、片方がノイズを倒せば、もう片方のノイズは消滅し異空間から脱出できる。

ノイズに触れてから、異空間に引きずり込まれるまでには数秒ほどの時間があり、その間に他のノイズに触れられると連続して戦わなければならない。
連続して戦う場合、最初に戦うノイズより後のノイズのほうが強力になる。

『禁断ノイズ』
ランク:D 種別:対軍 レンジ:1〜? 最大捕捉:1〜?

堕天使から教えてもらった禁呪。
負の感情から自然発生するノイズに比べ強力なノイズを生成できる。
普通のノイズより遠い距離からでもマスターやサーヴァントを感知し、襲い掛かる。

『禁断精製陣リザレクション』
ランクC 種別:対人 レンジ:自分 最大補足:自分

堕天使から教えてもらった禁呪中の禁呪
例え霊核が破壊されたとしても、自分の身体を再構築し、一度だけ完全復活できる。
復活した際に禁断ノイズを取り込み、ステータスは向上している。
精製陣が完全な状態でなければ復活できず、精製陣にかき消されるなど、不完全な精製陣ではこの宝具は発動しない

【weapon】
なし

【人物背景】
冷酷で凶暴な一面を持つが、高い知能を持つ18歳の死神。
よく巨大なオブジェを造る(見た目は完全にゴミの山である)など奇行が目立つ。
最年少で大出世を果たした過去を持つが、協調性は0に等しい。
数学マニアで会話には数学用語が頻出し、「ゼタ遅ぇ」「このヘクトパスカルが!」などが口癖。又、「お前ら全員ここで4ね(しね)!」等と、数字を誤字として用いられる場合も見られる。たまにメガホンで叫ぶ。
堕天使と手を組み、渋谷の頂点であるコンポーザーの座を狙い戦いを挑んだが、返り討ちにあう

【サーヴァントとしての願い】
コンポーザーを倒せるほどの力を得る


742 : 葛西善次郎&キャスター ◆7DVSWG.5BE :2016/02/18(木) 10:19:52 EA5tDAtM0

【マスター】
葛西善次郎@魔人探偵脳噛ネウロ

【マスターとしての願い】
召喚される直前に戻る

【weapon】
身体に植え付けた火炎放射器

【能力・技能】
火について知識
高層ビルを素手で登れるぐらいの身体能力

【人物背景】
年齢:41歳
身長:179cm
体重:88kg
1日で吸うタバコの本数:8箱
「火」にかけたオヤジギャグのレパートリーの数:1000以上
生まれついての犯罪者として唯一後悔している事:「バブルの輪の中に入れなかった事」

「伝説の犯罪者」と称される程の生まれついての極悪放火魔であり、その前科は放火を主に脱獄も含めて1342犯とギネス級。
しかし全国指名手配されて尚、警察の包囲網を掻い潜り生き延びて来た。

【ロール】
失業手当を貰っている無職

【方針】
元の世界に戻るために聖杯戦争を勝ち抜く


743 : 葛西善次郎&キャスター ◆7DVSWG.5BE :2016/02/18(木) 10:21:48 EA5tDAtM0
以上で投下終了です


744 : ◆GYmTduRRPQ :2016/02/18(木) 22:14:53 bxB6JiPY0
お疲れさまです。これより投下させていただきます。


745 : 四季映姫・ヤマザナドゥ&キャスター ◆GYmTduRRPQ :2016/02/18(木) 22:17:15 bxB6JiPY0

「主文。被告人を無期懲役に処す」

東京地方裁判所541法廷でこの日、一つの裁判が終わった。
被告人の男は些細なことから友人と喧嘩をし、二人を殺害するに至った。
警察に逮捕された際、男はひどく酔っており、自分はマスターだ、NPCを殺して何が悪い、などと意味不明の供述を続けていた。
その後も反省の態度は見受けられず、検察は悪質な犯行であると判断、死刑を求刑するに至ったのである。

裁判員の中にも死刑に処することを主張する者がいたが、裁判長である四季映姫は無期懲役を選んだ。
突発的な犯行であるということや判例などを考慮し、結局このような判決となったのである。

大きな仕事を終え彼女は家路につく。日はとうに暮れ、辺りは暗闇に包まれていた。

彼女の隣にはおそらく中学生ぐらいであろう少女がついている。

「あの男はマスターだった。刑務所に入れられたら厄介だわ。拘置所に収監されていた方が……」

「私は裁判官です。私事に囚われて公正な裁きを下さないなどということは許されません」


746 : 四季映姫・ヤマザナドゥ&キャスター ◆GYmTduRRPQ :2016/02/18(木) 22:19:42 bxB6JiPY0

――さかのぼることしばらく。

「それでは今日入ってきたニュースです。東京都で発生している連続殺人事件ですが、被害者の数は百名を超えるとみられています。
警視庁は、夜間の1人での外出は控えるようにとの声明を発表し……」

民放はおもしろおかしく大々的な特集を組んでいるものの、NHKは相変わらず淡々としていた。
日本は比較的治安の良い国だと考えていたのだが、その評価を考え直さなければならないかもしれないと四季映姫は思った。
もちろんこうして法律関係の仕事に就いていると、否が応でも残忍な犯罪と直面することは多々ある。
しかし今回の犯罪はあまりに度が過ぎている。
この事件の前は戦後最悪の犯罪と言えたオウム真理教事件もここまで死者を出してはいなかった。
幻想郷で閻魔として働いていたときも、これほどの大罪を犯した人間は……幻想郷? 閻魔?
違和感を感じた。日常を送っていればまず出会うこともない2つの単語。
いや、閻魔はまだ良いとして幻想郷? 幻想郷とはなんだろうか? そもそも私はなぜ東京で裁判官などやっているのだろうか?
いや、なぜそんな疑問がわく? 私は大学在学中に予備試験に合格し、その後司法試験にも合格したのではないか?
いや、大学? 司法試験? なぜ閻魔がそんなものを? 

そして四季映姫は思い出すことになる。幻想郷での閻魔としての役割を。

「あなたが私のマスター?」

そして四季映姫の前に1人の少女が現れた。黒い髪に黒い瞳、そして黒いセーラー服。
淡々と表情一つ変えることなく、言葉を紡いでいく。

「……あなたは間違っています」

キャスターが彼女に聖杯戦争のルールや自らについて説明した後、四季映姫はそう言っ放った。

「……私は正義の味方じゃないわ」

「しかし人は長い年月をかけて法や倫理といったものを作ってきました。正義というものは目に見えませんが、確かに存在します。私は私刑を許すことはできません」

キャスターは表情を変えることはなかった。
そして、自分を止めようとした1人の男のことを思い出した。
そして、自分と似た境遇であり唯一地獄へ流すことを止めた1人の少年のことを思い出した。
そして、自分が罪を肩代わりし魂を解放した1人の少女のことを思い出した。
マスターとキャスター。
片や長きに渡り公正な裁きを行ってきた存在。片や長きに渡り人の業ともいうべき所行を遂行してきた存在。
同じ閻魔の名を冠するとはいえ、両者は決して交わることのない平行線である。

「私は必ずあなたを止めて、いえ、救ってみせます」

そう告げる四季映姫の顔を、キャスターはやはりいつもの仏頂面で見つめていた。


747 : 四季映姫・ヤマザナドゥ&キャスター ◆GYmTduRRPQ :2016/02/18(木) 22:21:10 bxB6JiPY0
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

家路につく二人の会話を聞いていたのは赤や青の色をした藁人形であった。

「やれやれ、あたしたちも面倒なことになったねえ、輪入道」

「まったく、もう少しお嬢に協力的なマスターがついていてくれれば良かったんだがな」

「しかし俺たちはこの聖杯戦争ではかなり不利な立ち位置にいるんじゃないか?」

「まあね。だって舞台が東京中だろう? 他の主従がどこにいるかさえもなかなか分からないっていうのに、
あたしたちは噂が東京中にばらまかれているんだからさ。お嬢がサーヴァントだっていうのもすぐにばれちゃうよ」

「それにマスターがあんな調子じゃあな。まあお嬢のためにも俺たちが頑張らなきゃいけないだろうな」

黒い藁人形はため息まじりにそう答えた。お嬢はある1人の少女を救うため、自らを犠牲にした。
この世から人間の怨みがなくなるまで、実質永遠に、地獄少女の責務を果たさねばならない。
お嬢を救うことができるのはもはや聖杯ぐらいしかないのだと輪入道は考えた。

「おっと、早速依頼があったようだぜ」

「それじゃあ俺は行ってくるよ」

青い藁人形がそう答えた。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


748 : 四季映姫・ヤマザナドゥ&キャスター ◆GYmTduRRPQ :2016/02/18(木) 22:23:21 bxB6JiPY0

「呼んだ?」

「ここは……?」

夕焼けで赤く塗りつぶされた世界。1人の少女と1人の青年に、1人の女が向かい合い立っていた。

「私は、閻魔あい」

「地獄少女……? あなたサーヴァント? それ、真名なの?」

「…………」

「……まあいいわ。あいつを地獄に流した後すぐにマスターを見つけ出してあげるから」


「一目連」

「OK、お嬢」

青年はネックレスに口づけをし、赤い糸のついた青い藁人形へと姿を変えた。

「受け取りなさい。あなたが本当に怨みを晴らしたいと思うなら、その赤い糸を解けばいい。
糸を解けば、私と正式に契約を交わしたことになる。
怨みの相手は、速やかに地獄へと流されるわ。
ただし、怨みを晴らしたら、あなた自身にも代償を支払ってもらう。
人を呪わば穴二つ。 糸を解けばあなたの魂は地獄に落ちる。
極楽浄士には行けず、あなたの魂は 痛みと苦しみを味わいながら、永遠に彷徨うことになるわ。死んだ後の話だけど」

「私はあいつに騙された。二人で協力して脱出しようなんて言って……あいつが欲しかったのは結局、聖杯だけだったのよ! 
ずっと、ずっと、聖杯戦争が始まる前から私はあいつのことを想っていたのに! 許せない。死ぬよりも辛い目に……!」

そして女は赤い糸を解いた。

「怨み、聞き届けたり」


749 : 四季映姫・ヤマザナドゥ&キャスター ◆GYmTduRRPQ :2016/02/18(木) 22:25:43 bxB6JiPY0


拘置所に収監されている男は、有罪判決を受けた後とは思えないほどに楽しそうな様子だった。
この裁判がまるで茶番であると考えているかのようであった。

「しかしわざわざ警察に捕まるなんて随分と物好きだな、マスター」

「いやいや、刑務所の中が一番安全なんだよ。それに必要とあれば君に頼んで脱獄でも何でもすればいい」

「はっはっは、考えたじゃないか」

「そうだろ? 君がいるから別に死刑でも問題はなかったんだがね。しかしあいつもついでに殺しておけばよか――」

「お、おい、マスター、どこに行ってしまったんだ?」


男は椅子に縛りつけられていた。腕や足、胴体には革ひもが取り付けられていて、身動きをとることはできない。
さらに頭にはヘルメットの様なものが取り付けられていた。

「ここはどこだ? アーチャー、どこにいる? おい、誰か! 誰かいないのか!」

椅子に座らされている男を老人と青年、女と少年が取り囲む。

「おい、お前ら! 助けろ!」

「それでは死刑を執行します」

少年は喚く男を無視してそう告げる。

「では、スイッチ、オン」

女が手元のスイッチを押した。

「うわああああああああ!!!」

男の体がびくんと跳ねる。流れる高圧電流が男の体を焼いた。

「おっといけねえ、充電しないとな」

そう言って老人がモーターを回転させる。

「う、ううう……」

男の体からは煙が上がり、肉の焼ける嫌な匂いが立ちこめる。

「では再開します」

「や、やめ……ろ……ぐああああああああ!!!」

男の体が再び痙攣を起こした。

「おっかしいなあ、まだ死なないのか?」

青年がそう漏らす。

「こりゃあ、電圧を更に上げないとな」

「た、頼む……ぎゃあああああああああ!!!」

男の肌は焼け焦げ、目玉は飛び出していた。

「助け……て……」

「自分の罪を認める気になったかい?」

女が尋ねる。

「俺が……何をした……」

「女を散々弄んで、人殺しもしたじゃないか。自分が悪いと思わないのかい?」

「え、NPCごときがどうなろうと知ったことか。それにあいつは敵だったんだ。利用して何が悪い……」

「ほう、そうかい」

老人に向かって男は吐き捨てる。

「これは聖杯戦争なんだから勝てばいいんだ! 俺は何も悪いことなんてしていない!」

「聞いたかい、お嬢」

「闇に惑いし哀れな影よ、人を傷つけ貶めて、罪に溺れし業の魂」

「いっぺん、死んでみる?」

そう言って少女は袖をゆっくりと持ち上げた。


750 : 四季映姫・ヤマザナドゥ&キャスター ◆GYmTduRRPQ :2016/02/18(木) 22:26:29 bxB6JiPY0

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

目を覚ました男は自分が、着物を着た少女が漕ぐ舟に乗っているのを見た。
辺りは暗く、川面に浮かぶ灯籠の光が大きな鳥居へ続いていた。

「ここは……? なんで舟に乗ってるんだ……?」

「あなたはもう、死んでいるのよ」

「ふ、ふざけるな! なんで俺が……おい、どこに連れて行くつもりなんだ! 俺はまだ……!」

「戦いなら、好きなだけさせてあげる。永遠に、終わることのない戦いを」

「この怨み、地獄へ流します」

舟はゆっくりと川面を進んで鳥居をくぐり、消えていった。


路地裏。女はその場にへたれ込んだ。

「終わった……ねえ、セイバー。本当に――」

「■■■■■■■■■■■■!!!!」

それが彼女の最後の言葉であった。

目覚めた女は舟の上にいた。

「ここはどこ……?」

「言ったでしょう。死んだ後、地獄に落ちるって」

「嘘……嫌よ、私はまだ死にたくない……! 一体誰が……! お願い、助けて……! 戻してよ!」

女の声は虚しく三途の川にこだまする。


751 : 四季映姫・ヤマザナドゥ&キャスター ◆GYmTduRRPQ :2016/02/18(木) 22:28:12 bxB6JiPY0


【マスター】
四季映姫・ヤマザナドゥ@東方花映塚

【マスターとしての願い】
聖杯戦争に巻き込まれた魂を救済する。


【weapon】

浄玻璃の鏡(じょうはりのかがみ)
この鏡の前では過去の行いが全て明かされてしまう。閻魔ごとに形状が違っており、映姫のものは手鏡の形をしている。

悔悟棒(かいごぼう)
閻魔が右手にもつ笏。この棒に罪状を書き記すと罪の重さに応じて重さが変わり、罪人を叩く回数が決まる。
最近エコのために文字を消して書き直せる素材に変えたらしい。


【能力・技能】

白黒はっきりつける程度の能力
彼女は自身の中に絶対の基準を持っているため、何者にも左右されず完全な判断を下すことができる。

【人物背景】
日本のどこかに存在する「幻想郷」で閻魔を勤めており、地獄の最高裁判長という肩書きを持つ。ちなみに「ヤマザナドゥ」は役職名である。
元はお地蔵様であった。自身の中に絶対的な善悪の基準を持っており迷うことがなく、その判決を覆すことは絶対にできない。
彼女の肩書きは「地獄の最高裁判長」となっているが、閻魔の頂点に立つ存在という訳ではない。
人口の増加に伴い死者の増えたことで足りなくなった手を補うため、お地蔵様から閻魔の役職に変わったのである。
元々説教臭い性格をしており、プライベートの時間は幻想郷に出てきて説教をして回るということに費やしている。

【ロール】
東京地方裁判所に勤務する裁判官

【方針】
キャスターが人を殺さないよう見張りつつ、自分以外の巻き込まれた者を探し出して共に聖杯戦争から脱出する。聖杯の破壊も考えている。


752 : 四季映姫・ヤマザナドゥ&キャスター ◆GYmTduRRPQ :2016/02/18(木) 22:29:30 bxB6JiPY0

【CLASS】
キャスター
【真名】
閻魔あい@地獄少女
【属性】
中立・中庸
【パラメーター】
筋力:E 耐久:D 敏捷:E 魔力:A 幸運:E 宝具:EX


【クラススキル】
陣地作成:D(EX)
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
 キャスターが形成するのは夕焼けに包まれた異界である。

道具作成:-
後述する宝具により所持しない。


【保有スキル】
魔術:B(EX)
光線や青白い炎を放つことが可能であり、その破壊力は寺社を吹き飛ばすほどである。また空間転移等の高位の魔術を扱うこともできる。

単独行動:B(EX)
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間程度現界可能。

対魔力:B(EX)
 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。


気配遮断:D(EX)
本来はアサシンに備わっているクラススキルであるが、周りのNPCに自然な形でとけ込むスキルという形で保持している。
隠密行動に適している。ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断は解ける。召還する三藁もこのスキルを保持している。


753 : 四季映姫・ヤマザナドゥ&キャスター ◆GYmTduRRPQ :2016/02/18(木) 22:30:31 bxB6JiPY0
【宝具】

『三藁』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
キャスターの使役する妖怪をサーヴァントとして召喚できる。『三藁』と表記されるが実際は四体である。
通常時は藁人形の姿をしており、この状態では魔力を消費することはない。人間か妖怪の姿になった場合魔力を消費する。
以下が召喚できるサーヴァントのステータスになる。

『輪入道』
筋力B 耐久C 敏捷D 魔力D 幸運E
三藁の中では最も長い間キャスターに仕えているリーダー的存在。藁人形時の色は黒。人間時には老人の姿をしており「不破龍堂」を名乗っているが、
キャスターが地獄流しに向かう際は妖怪「輪入道」に変身して彼女を送る役割を果たす。暴走するトラックを止めるほどの怪力の持ち主である。
妖怪となる前はある姫を追っ手から逃すために使われた馬車の車輪であったが、姫を守りきれず、後を追うこともできなかった無念から妖怪化した。

『一目連』
筋力E 耐久E 敏捷D 魔力C 幸運D
人間時には美形の青年の姿をしており、「石元蓮」を名乗っている。藁人形時の色は青。
前髪や頭頂・後頭部などに隠された「目」で様々な場所を覗き見る能力を持ち、依頼者やターゲットに関する情報を集める役割を果たす。
多くの人間の手を渡り、数々の人を切った刀の九十九神である。


『骨女』
筋力E 耐久D 敏捷E 魔力C 幸運E
人間時には妙齢の美女の姿をしている。藁人形時の色は赤。正体は骸骨であり、身体の一部を白骨化させることが可能。人間時には「曽根アンナ」を名乗っている。
様々な場所に忍び込んだり男性を誘惑したりすることが得意。妖怪となる前はつゆという名の人間であり商家に奉公していたが、遊郭に売り飛ばされた。
その後、別の遊女に裏切られて殺害され妖怪化した。

『山童』
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力C 幸運C
風を操る能力を持つ。人間時には大人しく素直で礼儀正しい少年の姿をしている。藁人形時の色は黄。山で生まれた妖精の一種である。


754 : 四季映姫・ヤマザナドゥ&キャスター ◆GYmTduRRPQ :2016/02/18(木) 22:32:04 bxB6JiPY0

『地獄流し(イッペン、シンデミル?)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大補足:4

キャスターに依頼を行い赤い糸のついた藁人形を受け取った者が糸を解き正式にキャスターと契約を交わすことで発動可能になる宝具。
依頼を受けるには依頼者のターゲットに対する強い怨みの感情が必要であり、1人が一生のうちに地獄に流すことができるのは1人だけである。
人間を対象にした宝具であり、サーヴァントをターゲットに指定することはできない。
依頼を受けた場合、依頼者が会場内のどこにいても即座に依頼者のもとに向かい、陣地を作成することができる。
この宝具が発動した場合、保有スキルとクラススキルのランクを括弧内の値に修正する。
また、ターゲットに対して行う魔術の成功率があらゆる障害を無視して100%になる。
発動した瞬間にターゲットを異空間に引きずりこみ、時には恐怖を味わわせた後、地獄へと流すことができる。地獄へと流された者は現世から消滅し、表向きは行方不明となる。
ただし契約者は死後地獄へと落ちることになり、胸にその証として刻印が刻まれる。キャスターが消滅してもこの刻印が消えることはない。
依頼者がすでに何らかの罪を犯し地獄に落ちることが確定している場合、キャスターの一切関与しない別途の代償が要求される。
依頼の段階ではこの宝具は発動しておらず、依頼者が糸を解いて発動した後は単独行動のスキルがEXとなる。そのため魔力の消費を心配する必要はない。
依頼者がターゲットの本名を知らない場合でも依頼を引き受けることは可能であるが、いずれにせよ依頼を受ける前にキャスター自らターゲットを割り出す必要がある。
依頼を受ける前には必ず相手に自らの真名を告げ、地獄流しのルールを説明しなければならない。
キャスターは基本的に依頼者や依頼内容を選ぶことはできず、それはターゲットが自身のマスターであっても例外ではない。
ちなみに「ターゲットが既に死亡」「本来の依頼者の代理人による依頼」「強い怨みの念を抱いていない」といった場合は依頼を受けることはできない。
依頼が可能なのはマスターのみであり、サーヴァントやNPCは依頼を行うことはできない。
ただしNPCからの依頼に限っては、同じNPCに対するものであれば魂喰いという形で擬似的に依頼を受けることが可能。
依頼者が一向に糸を解く気配がない場合には依頼を引き上げることができる。
依頼者が糸を解く前に死亡した場合などは、同じターゲットに強い怨みをもつ別の者が代わりに契約を交わすこともできる。
繰り返しになるがあくまでも依頼者本人がどのような形であれ(それが例え逆恨みであっても)個人的に強い怨みを持つ場合にのみ契約が可能であり、
単にターゲットがマスターだからなどといった理由では依頼を受けることはできないのである。


【weapon】

特になし


755 : 四季映姫・ヤマザナドゥ&キャスター ◆GYmTduRRPQ :2016/02/18(木) 22:33:06 bxB6JiPY0
【人物背景】

安土桃山時代に村のためと称して7歳の時に人柱にされた少女。
好意を寄せていた幼なじみの少年、仙太郎の助けを借りて6年もの間山中に隠れ住んでいたが発見されてしまう。
その後両親と共に地中に埋められ、村人たちと土を被せてしまった仙太郎への強い怨みを抱きながら力つきる。
しかし復活して土中から脱出、村に火を放ち、多数の村民を殺害するという大罪を犯してしまう。
この罪はあまりに重すぎて地獄でも償いきれないため、地獄少女として働く責務を課せられる。
そして責務を果たしていく数百年間、自らの使命について考え続けていた。
基本的に朴念仁で感情を表に出すことは非常に少ない。
地獄少女の存在は江戸時代中期頃には文献で確認でき、現在では都市伝説のような存在となっている。
強い怨みを持つ者が深夜0時ちょうどにインターネット上で関連する語句を検索するかアドレスを打ち込むことで地獄少女との接触手段であるウェブサイト「地獄通信」にアクセスできる。
インターネットの誕生以前には怨みを持つ者が新聞の尋ね人欄の空白欄を見つめると浮かび上がってくる宛先へと依頼の手紙を書いてポストに投函したり、
「地獄絵馬」と呼ばれる真っ黒な絵馬を神社へと奉納させることで依頼者と接触を図っていた。
『三鼎』では霊として現世と冥界の狭間をさまよう少女、御影ゆずきに地獄少女としての役割を引き継がせるため、彼女に憑依していた。
その後地獄から送られた魂を得てゆずきの身体から離脱する。
ゆずきが地獄少女となったことでいったんは地獄へと戻るが、彼女が私怨により地獄流しを行おうとした際に再び現世へと姿を現す。
最後はゆずきの罰を代わりに受けることで彼女を成仏させ、自らは人間の怨みがなくなるまで解放されることのない永遠の地獄少女となった。


【サーヴァントとしての願い】

「地獄少女」というシステムを消し去り囚われた魂を解き放つ。


【基本戦術、方針、運用法】

魔力は高いものの、肉体的には極めて貧弱である。対魔力をもつ三騎士やライダーに対しては必然的にマスターの『地獄流し』を狙うしかない。
危険は大きいが、場合によっては他の主従と接触し契約を促して『地獄流し』を発動させることも必要になるかもしれない。
そのため情報収集が基本方針となるが、マスターは非協力的であるから単独行動のスキルを利用しつつ三藁を通じて情報を集めることになるであろう。
マスターが他の主従から怨みを買った場合、逆に自らの手で地獄に流さねばならなくなる場合すらあるのでマスター共々不用意な行動は慎むべきである。
宝具の発動時には令呪にすら抵抗するため、マスター自身がターゲットに指定された場合、発動前にキャスターに依頼を破棄させるか自害させる、
または依頼者が死亡するか依頼者自ら依頼を破棄する、もしくは発動後に令呪を二画使用するといったものが対抗手段となる。
(他者がターゲットの場合、気配遮断や陣地作成によりマスターが捕捉できなくなるため宝具の発動後に令呪を使用することは事実上不可能である)
しかしマスターの性格上無用な殺生は行わないであろうから、発動前に依頼者を説得するか依頼を破棄させる、もしくは令呪を二画使用することになるだろう。
地獄少女の噂は都市伝説として既に東京中に広まっている上、依頼者に対しては依頼の成否に関わらず必ず真名を告げなければいけないので十分な注意が必要である。


756 : ◆GYmTduRRPQ :2016/02/18(木) 22:34:19 bxB6JiPY0
投下を終了します。ステータスや宝具等は「第二次二次キャラ聖杯戦争」様の候補作中の閻魔あいと「魔界都市新宿 ―血杯聖戦―」様の候補作中の喪黒福造を参考にさせていただきました


757 : ◆TA71t/cXVo :2016/02/19(金) 00:55:48 wVyRRPzM0
お疲れ様です。
これより投下をさせていただきます


758 : &ライダー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/19(金) 00:56:56 wVyRRPzM0
【二日目】

東京都千代田区霞が関。
その一角に聳え立つは、東京最大―――つまり日本国最大の警察組織である警視庁。
今その一室において、刑事部捜査一課の名だたる面々が集まり意見を交わしあっていた。


「容疑者と思わしき人物について、目撃者による証言を纏めてみた。
 まず性別は男性、195㎝前後で年齢は20代後半程度との事だ。
 そして一番目立つ外見特徴として、顔から全身にかけて刺青が施されているらしい」
「犯行の手口等を見る限り、信じがたいかもしれませんが無差別殺人の線が高いです。
 計画的な犯行と呼ぶには、どこか行き当たりばったりな面が多く……街頭カメラの映像についても現在、確認を急いでいます」 
 

彼等が取り組んでいる事案は、江藤区を中心として起きた謎の殺人鬼による大量殺人事件。
ここに集められた者達は、その早期解決を目指すために設置された特別対策本部の一員である。

閉じられた作り物の世界なれど、彼等は警察として与えられた職務通りに動く。
この東京を、表面上は平和で何事もない街に保つ為に。
都民の大多数は、それになんら疑問を抱かない。
しかし……中には、察知している者―――目覚めつつあるマスターも当然いる。
水面下では、聖杯戦争を巡る様々な思惑が交錯していることを。
学生、社会人、老年……その身分も年齢も問わずに。



そう……この特別対策本部の中にも。


759 : &ライダー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/19(金) 01:00:36 wVyRRPzM0


「今から、全捜査官に犯人像について纏めた似顔絵を配布する。
 これを元に聞き込みに当たってもらいたい」


その発言と共に、対策本部責任者の傍らに控えていた一人の刑事が、全捜査官へと静かに似顔絵を配布し始めた。
中性的な整った容姿をした、モデルと言われても違和感がない程の美形。
それでいて、どこか知性的な印象を相手に抱かせる顔をしている。


もし今、彼を知る者がこの場にいたなら、大きく反応を示したに違いない。

大多数は、神や英雄のように称えその動きに賛同する者だろう。
残る極僅かは、彼の行いに恐怖を覚え異を唱える者達だ。

それだけの恐るべき存在―――それがこの男なのだ。


760 : &ライダー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/19(金) 01:01:17 wVyRRPzM0



――――――犬養って、誰だ?




あの時、違和感に気付きマスターとして覚醒した安藤の確信は、完全な正解ではなかった。


確かにこの東京には、彼らが住む『猫田市』は存在しない。

故に、そこに君臨していた自警団『グラスホッパー』もまた存在しない。

だから、その長たる『犬養』すら存在しない。


彼は、考えた末にそう判断付けたのだろう。
しかし……それはあくまで、猫田市とグラスホッパーという関連付けがあっての事だ。
確かにこの東京には、彼が知るグラスホッパーとしての犬養は存在していない。
それはゆるぎない事実だ。


だが……だからといって、犬養がいないと断定するのは早計と言えただろう。
正解は、『この東京にいない』のではなく……『いることを知らない』のだ。
グラスホッパーという目立つ看板が無かったが為に。
その存在を広く知らしめるアピールが無かったが為に。
彼に踊らされる大衆が、まだこの東京には存在していなかったが為に。


「ご苦労、犬養君」


そう……犬養舜二は、この東京にいるのだ。
安藤と同じく、数奇な運命に巻き込まれ……聖杯戦争のマスターに選ばれて。


761 : 犬養&ライダー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/19(金) 01:01:56 wVyRRPzM0




◆◇◆



(ふ……)


犬養は、今の自分の境遇を自嘲気味に笑った。
自警団を率い街の未来の為に動いていた自分に、まさか警察官僚としての身分を与えられるとは。
聖杯とは中々に皮肉な采配をするものだ。
無論、それに異を唱えるつもりは一切無い。
これもまた、あるがままに受け入れるべき運命……世界を変えるべく自身に与えられた役目であり、必要な事柄なのだろう。
故に犬養は、その身分のままに自身に出来ることを成そうとしていた。

つまり……自身の望む未来を望むべく、聖杯を手に入れる事だ。


『ライダー、君の見立てを聞きたい。
 この殺人鬼は聖杯戦争の参加者……サーヴァントで間違いないだろう。
 ならば、何を目的で動いていると思う?』


犬養は霊体となり傍らに立つサーヴァントへと、表情を一切崩さぬままに念話で問いかけた。
この東京でここまで大それた事を出来る存在など、聖杯戦争の参加者以外にありえない。
更には殺戮の規模から察するに、マスターではなくサーヴァントの線が濃厚だ。
では、何故この主従はこの様な殺戮に及んだのか。
聖杯を狙うと言うのならば、この様に目立つ真似をするのはあまり得策とはいえない。
他の参加者から目を付けられ討伐の対象と認識されるなど、メリットが皆無とまではいかないだろうが、それ以上にデメリットが大きすぎる。
まさかそれが分からないでもないだろう……その上で、この様な凶行に出た理由とは何か。


『そうだな……結論から先に言うと、このサーヴァントはバーサーカーだ。
 何かを目的としているのではなく、目的そのものがないのかもしれない。
 マスターが制御を仕切れていないか、或いは……聖杯戦争そのものの自覚が無い主従の可能性が高い』


問いかけられた犬養のサーヴァント―――ライダーは、与えられた情報から推察して答える。
まずこの刺青の男がサーヴァントで間違いないならば、該当するクラスは高い可能性でバーサーカーだ。


762 : 犬養&ライダー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/19(金) 01:02:31 wVyRRPzM0

『ああ、僕もそう思う。
 先程そちらの捜査官も口にしたが、犯罪があまりに無計画すぎる。
 出会った側からの通り魔など、暗殺を旨とし誇りともするアサシンのクラスとしては不恰好すぎだ』
『そもそもアサシンならば、一般人から目撃証言が複数出てる時点でおかしい。
 気配遮断スキルが機能しているならば、ありえないミスだ』


両者の見解は一致していた。
まず殺人鬼と言うことで真っ先に浮かぶクラスは暗殺者のアサシンなのだが、アサシンの所業としてはあまりにもお粗末過ぎる。
絶対とは言い切れないにしても、可能性は極めて低いだろう。
では他のクラスではどうかと言うと、アーチャーとキャスターは真っ先に除外だ。
その名の通り狙撃を得意とするアーチャーが、態々一般人相手に近距離で凶刃を振るう理由が無い。
殺戮目的としても、遠距離から一方的に撃つ方がどう考えても利口だ。
キャスターもまた同様の理由で可能性が低い。
魔術戦に特化し篭城を得意とするキャスターは、総じて白兵戦が不得手だ。
街中に出没して嬉々として殺人に及ぶと言うのはあまりに想像しづらい。
残るはセイバー・ランサー・ライダー・バーサーカーの4クラスだが、騎乗物を用いず徒歩による移動を行っていた点からしてライダーの可能性も低い。
逃亡用ならば言うに及ばず、攻撃用としても騎乗物を用いた方がどう考えたって効率がいい。


『後はセイバーかランサー、バーサーカーの3択になる。
 この中から選ぶのなら、バーサーカーしかあるまい……マスターの言うとおり、こいつの動きには計画性が無い。
 魂食いを目的としての殺人としてももう少し考えて動くだろうし、第一その様子も状況からしてあまり無い。
 いや、本目的ではないにしても殺人をこうもするなら魂食いをついでにしてやろうとも思うのが当たり前だ。
 理性のある奴なら、その辺を少しくらいは考えるはずだ』
『しかしこの刺青の男には、そういった考えがない……常軌を逸した行動だが、狂戦士と考えれば納得がいくか』


残った三体から更に消去法で絞ると、もはやバーサーカー以外にありえないのである。
そうなると、このサーヴァントは目的があって殺戮をしている訳ではない。
目的など無く、ただ手当たり次第に狂気に身を任せているだけの可能性が極めて高い。
そして恐らく……マスターは、このバーサーカーを御せていない。
いや、それどころか聖杯戦争の知識すら無いのではないか。


『僕も君に話を聞くまでは、聖杯戦争がどういうものなのかを知らなかった。
 だが理性無き狂戦士をサーヴァントとするマスターでは、聖杯戦争に関する知識を得ることすら出来ないだろう』
『対話自体がそもそも怪しいものだからな』


763 : 犬養&ライダー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/19(金) 01:02:52 wVyRRPzM0

この刺青の男は、聖杯戦争の知識をマスターに与えず本能のままに暴れ狂っているバーサーカーだ。
そう結論付けて考えて、何ら問題は無いだろう。
それらを踏まえた上でどう動くか……犬養は瞬時に判断し、ライダーに指示を与えた。


『ライダー、江藤区にある博物館に恐竜を放て。
 殺人現場に残った痕跡から、嗅覚で追える筈だ』


ライダーの宝具―――『恐竜の支配者』ならば、相手の残した臭いを元に追跡が可能だ。
この男は間違いなく、全参加者から注目の的になる。
つまり大多数の主従と接触する機会が得られるのである。
彼の手駒たる恐竜を放ちこの刺青の男の所在を突き止め、そこから他の参加者の情報も得る。
それが犬養が導き出した、現在考えうる限りの最善手であった。


『分かった、江藤区を見晴らせていた恐竜の何体かを動かそう。
 誰かに見つかると厄介だが、昆虫サイズの小さい奴ならば問題は無いだろう』


ライダーもその案を承知。
自らと感覚を共有する恐竜達にその意思を伝え、ただちに動かした。
既にこの東京には、ライダーが宝具によって支配下に置いた恐竜達が何匹か放たれている。
優れた動体視力と嗅覚をもって、監視を行っているのだ。
自身が自在にこの街を動け、優位な状況を生み出すべく。
全ては、勝利のためだ。


(……そうだ。
俺はこの聖杯戦争に勝ち、頂点に立つ……なんとしてでも……!!)


ライダー―――ディエゴ・ブランドーの望みは、ただ一つ。
この聖杯戦争に勝ち上がり、自分が全ての頂点に立つ事だ。
今のこの社会は、自分や母を見捨てた上で成り立っている唾棄すべきものだ。
際限なく湧いてくる、理不尽な世の中への強き復讐心。
それを満たす方法は唯一、自身がその頂点に立つ事のみ。
生前に叶わなかったこの野望を……聖杯に託し、必ずや果たす。
例えどんな手段を使ってでも。


764 : 犬養&ライダー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/19(金) 01:03:36 wVyRRPzM0


(……間もなく、世界を変える戦いの幕が開ける。
例えどんな困難が立ちはだかろうと、例えどんな脅威にさらされようと……僕を止めることは、不可能だ)


激情を燃やすライダーの側で、犬養は静かに運命の時を待つ。
この世界を変えるのは、自分に与えられし役目だ。
その前に立ち塞がり『対決』しようという者が現れるならば、望むところだ。
自分を信じ、戦い勝利する……それこそが世界を変える為に必要不可欠な要素なのだから。




二人の主従に共通するは、今の世界を理想のままに変えようと望む強き野望。



そしてその野望を阻む者には一切の容赦をしない、強く冷酷な覚悟。



数奇な運命の元に導かれた聖戦の舞台に今……『魔王』となりえる主従が降り立つ。


765 : 犬養&ライダー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/19(金) 01:04:12 wVyRRPzM0
【クラス】
 ライダー

【真名】
 ディエゴ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険

【属性】
 秩序・悪

【ステータス】
 ・通常時
 筋力:D 耐久:E 敏捷:D 魔力:D 幸運:B 宝具:A
 ・恐竜化
 筋力:A 耐久:C 敏捷:A 魔力:D 幸運:B 宝具:A

【クラススキル】
対魔力:C
 魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。
 大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

騎乗:B
 乗り物を乗りこなせる能力。
 生物の場合は、魔獣・聖獣ランク以外なら乗りこなす事ができる。

【保有スキル】
心眼(偽):C
 直感・第六感による危険回避。
 虫の知らせとも言われる、天性の才能による危険予知。
 視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。

カリスマ:C
 軍団を指揮する天性の才能。
 団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
 カリスマは稀有な才能で、小国の王としてはCランクで十分と言える。

戦闘続行:B
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

神性:-
 神霊適性を持つかどうか。
 ライダーはかつてその肉体に『聖人』の遺体を取り込んでいたために
 このスキルを保有していたのだが、現在は失われている。 

【宝具】
『銀の弾丸(シルバー・バレット)』
 ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:1〜30
生前にライダーが騎乗していた愛馬が宝具として昇華されたもの。
 発動と共に、ライダーの元へシルバーバレットを呼び出す。
 特殊な能力こそ持たぬレース馬ではあるものの、天才的な腕前を持つライダーの要求する動きを忠実に行える名馬。
 速力・脚力・持久力と馬に求められる全てのステータスにおいて高水準をキープしている。
 また、普通の馬であるが故に少ない魔力消費で開帳可能という利点がある。


766 : 犬養&ライダー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/19(金) 01:04:28 wVyRRPzM0
『恐竜の支配者(スケアリー・モンスターズ)』
 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:100
 ライダーが持つ実体化した精神エネルギー『スタンド』の能力が、宝具として昇華されたもの。
 かつて地球という星に人類が生まれるよりも以前、ガイアの対となるアラヤの抑止力が生まれるよりも
 前の太古の時代に地球を支配していた生物、即ち『恐竜』を使役する能力である。
 ライダーはこの宝具により、その手で触れ傷をつけた『生物』を恐竜に変化させ使役させる事ができる。
 恐竜化した生物は全てライダーと感覚を共有する、ランクE相当の単独行動スキルを持つ擬似サーヴァントと化す。
 恐竜化は元の生物が死を迎えるか、ライダー自身が宝具を解除しない限り元の姿に戻ることはできない。
 また、ライダー自身の肉体をこの宝具によって恐竜へと変化させる事も可能であり、
 その際には筋力値・耐久値・敏捷値のランクが向上すると同時に、ランクC相当の『千里眼』スキルを得ることになる。
 基本的には魔力が続く限り恐竜を生み出すことが可能だが、
 恐竜という幻想種にも匹敵する神秘を秘めた太古の生物を擬似的とはいえ生み出す為に必要な魔力量は決して少なくはない。
 ただしその維持と使役に関しては、生み出された恐竜がランクE相当の単独行動スキルを持つ事もあり、
 そこそこの魔力消費で運用が可能である。
  
【weapon】
 宝具により自らの腕・脚を恐竜化させ、その力と鋭利な爪とを武器にする。
 
【人物背景】
 イギリス競馬界の貴公子と呼ばれる、天才的な実力を秘めた名ジョッキー。
 元々は下層階級出身の貧民であり、赤ん坊の頃に両親に捨てられる予定であった。
 しかし、母親は土壇場で彼を見捨てることができなくなり、共に急流に巻き込まれてしまう。
 その後、たまたま通りすがった農馬主の男に助けられ、親子共々引き取られることになる。
 だがその数年後、ディエゴが5歳になった時に、その男は彼の母親へと肉体関係を迫った。
 彼女はそれを拒むが、男はその報復として彼女達の持つ食器全てに穴を空けたのであった。
 この仕打ちの為に食事の配給時になっても食事を受け取ることができず、新しい食器を買おうにも金が足りなかった。
 その為にディエゴは、自分の靴に食事であるシチューを注いでもらおうという屈辱的な行為に出ようとするも、
 母は彼の頬を張ってその行いを止めさせ、そして食器代わりに自らの両手にシチューを注がせる事で食事を与えたのだった。
 この行いで母は両手に深い火傷を負い、その一年後に破傷風にかかりこの世を去った。
 ディエゴはその原因が、農場の人間や自分の父親にあるとして憎み、自分達を見捨てた社会そのものに深い憎悪を抱くようになった。
 それ以来、目的のためならば手段を選ばぬ冷酷な性格の持ち主となる。
 やがて成長したディエゴはイギリスにおいて優れた実力を持つジョッキーとなり、遥かに年上である財産家の83歳の老婆と結婚。
 その老婆の死後、彼女が持つ莫大な遺産を手にしている。
 老婆の死の真相は定かではないが、ディエゴの手によって殺害された可能性が高いとされている。
 そして優勝賞金目当てで、彼はアメリカで行われる大陸横断レース『スティール・ボール・ラン』に参加する。
 優勝候補と目されるだけの実力を発揮して序盤から上位に食い込むも、
 その最中にスタンド能力者であるフェルディナンド博士と遭遇し、彼の持つ能力で恐竜に姿を変えられてしまう。
 しかしその後、博士が同じレースの参加者であるジャイロ・ツェペリ達との戦闘に敗れた隙を見計らい、
 彼が手にしていた『聖人』の遺体の左眼球を奪取し、その恐竜化の能力を継承してレースに復帰した。
 この一連の戦いを切っ掛けに、スティール・ボール・ランの真の目的である聖なる遺体の存在を知り
 遺体を自らの手で全て手に入れるべく暗躍を開始し、同じ目的を持つ合衆国大統領ファニー・ヴァレンタインと対決する。
 しかし大統領の能力に一歩及ばず、列車に轢かれ上半身と下半身が真っ二つになる形で死亡する事になった。

【サーヴァントとしての願い】
 聖杯の力を得て受肉。
 完全によみがえり、自らが社会の頂点に立つ。


767 : 犬養&ライダー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/19(金) 01:05:02 wVyRRPzM0

【マスター】
 犬養舜二@魔王 JUVENILE REMIX

【マスターとしての願い】
 自らが望む改革を果たすため、聖杯を手にする。

【能力・技能】
 特殊な能力を持たぬ、あくまでただの人間。
 しかし呪いの域にまで達している程の恐るべきカリスマ性と強固な意志を持ち、
 強い説得力を持つ言葉と行動力によって民衆を流れに乗せ思うがままに先導してゆく。
 その有様は『神』或いは『魔王』とも呼ばれている。

【人物背景】
 猫田市で活動する自警団『グラスホッパー』を率いる代表取締役。
 型破り且つ強い意志を感じさせる言動・行動力で街に住む人々を魅了し、カリスマ的な人気を持っている。
 その言葉に突き動かされ、彼との出会いで自らの生き方・運命を変えた者は非常に多い。
 愚かな権力者の進める新都心計画を批判し、街の改革を目指すリーダーとして大衆から指示を得ており、
 彼もまた街を己が手で自らが望む形へと改革すべく活動をしていた。
 しかしその裏では、自らの望みを邪魔する存在を暴力で排除するという冷酷且つ残忍な一面を持っており、
 彼が猫田市に現れてからは市の失踪及び殺人件数が前年の2倍に増えている。
 「未来は神様のレシピで決まる」という独自の理念を持ち、運命をあるがままに受け入れようとしている。
 自らは世界を変える役目を持っていると考え、例えでたらめであっても自分を信じて『対決』をしていけば
 世界とて変えられると信じている。
 その姿は多くの者達の心を掌握し、『正義の使者』『神』と呼ばれるに至るも、
 彼が本当に正しい存在なのかと疑問を抱いた安藤には、『魔王』と称されている。
 この安藤を犬養は運命の試験紙と例え、自分を止めるのが彼の役目なのだろうと考え『対決』に臨む。
 時系列で言えば第一部終盤、決起集会開催直前からの参戦である。

【方針】
 聖杯を手にする為、ライダーの能力を駆使してしばらくは他の参加者の動向を探る。
 その上で自らの理念に同意する者には手を取り合う事を提案するが、拒否した者に容赦をするつもりはない。
 また、そのカリスマ性の発揮の仕方によっては、大衆を先導する形で利用することもありえる。


768 : ◆TA71t/cXVo :2016/02/19(金) 01:05:19 wVyRRPzM0
以上で投下終了になります


769 : 名無しさん :2016/02/19(金) 06:16:56 68mVZXqw0
初めてですが投下します。


770 : 美樹さやか&アサシン :2016/02/19(金) 06:18:11 68mVZXqw0

「アサシン、あたしさぁ、やっぱこの戦いに乗ることにするよ。」
自分の部屋の中で、美樹さやかは壁に向かってそう呟いた。
聖杯。ありとあらゆる「願い」を叶えるとされる存在。
かつて身も心も願いに振り回された自分にはとても疑わしい話に聞こえるが、今はそんな事は言っていられない。
円環の理から暁美ほむらによって引き裂かれた「鹿目まどか」の存在、そして保っていられた秩序。
まずはそれを何としても取り戻さなければならない。


771 : 美樹さやか&アサシン :2016/02/19(金) 06:19:31 68mVZXqw0
記憶を取り戻し、自分が今隣にいるアサシンと出会ったのは、つい昨日だった。
≪いいのか?マスター。》
アサシンが、霊体化したまま聞き返す。
≪君がやろうとしているのは、他人を殺すことにも繋がることだぞ?》
「まぁ、そこも考えたんだけどさ・・・」
さやかは、明るく、しかし元気はあまり感じられない口調で返す。
「・・・他人の願いを踏み台にしたことなら、もうあるからさ・・・」
願いを求めて、やがてその因果を暴走させた魔法少女の成れの果てである魔女。
それを倒す・・・いや、たおさなければならないのが、自分達魔法少女であった。
それは自分が円環の理に導かれても変わらない。後悔なんて、あるわけない。
「・・・・そうか、君の覚悟はよく分かった、僕も君と共に、この聖杯戦争を勝ち抜こうとすることを誓おう。」
アサシンの、穏やかな声が聞こえ、目の前に彼の白いジャケットを着た青年の姿が姿を表した。そしてさやかも、本来の陽気な態度で応える。
「オッケー!こちらこそよろしく頼むよ!アサシ・・・」


772 : 美樹さやか&アサシン :2016/02/19(金) 06:20:08 68mVZXqw0
「それともう一つ。」アサシンがまた言ってきた。
「えっと・・・今度は何?」さやかが聞き返すと、アサシンが左手の手袋を外し、素肌が露わに
なった左手を自分の目の前に広げてみせた。手の甲には、ワインレッドの牙にも半月にも見えるような模様にワインレッドの冠のようなものをあしらったものを組み合わせた異様な、
おぞましい紋章があった。
「さっきも話した通り、僕の正体は多くの皿に乗った人の魂を食らった吸血鬼の王だ、
そんな者をサーヴァントとして使役することに、何の躊躇いはないのか?」
アサシンの真名、登太牙。
かつて魔族、ファンガイアの王として君臨し、人の食事は食べたことがないという程に
ライフエナジーを食し、更には人間と深い関係を持ったファンガイアを処刑したとされる
吸血鬼だ。これだけ聞いたら、自分もいつか殺されるんじゃないか、こんな人類の敵と
組めるか、と魔法少女になったばかりのさやかなら考えるかもしれない。しかし、
「いいって、いいって、そんなこと、あたしも似たようなものだし。」
そういうとさやかは三画の令呪が宿っている左手の指にハマっている指輪から卵状の宝石、「ソウルジェム」を取り出した。「あたしの魂ってさあ、実質この中に入っているわけ。
要するに今のあたしはこれを通して死体を動かしている様なもの、言わばゾンビ。むしろ
人外がサーヴァントで気が楽になったって感じ。それに、そんな事わざわざ言ってくれるなんて、あんたもそこまで悪いやつなんてないんでしょ?」
いつもの軽い調子で返した。やはり人外である事についてはよく分かっていたからか、
そこまでアサシンが悪い人物に見えなかったからかは分からないが。
「・・・・そうか、すまない、僕も少し気が楽になった。」
アサシンは、はにかんだような笑みを見せると、また手袋を左手に戻した。


773 : 美樹さやか&アサシン :2016/02/19(金) 06:20:34 68mVZXqw0
「それじゃあさ、方針も決まったことだし気分転換にクラシックでも聞きますかね!」
「ああ、構わないよ、クラシックなら僕も気に入っている、弟がバイオリンを嗜んでいた
影響でね。」
「いやあ、それは奇遇!あたしの幼馴染もバイオリン引いててさあ、やっぱりサーヴァントとは気が合いますなあ!」

恋に破れ、理想に破れ、決して人間ではない二人の協奏が、今開幕を迎える。


774 : 美樹さやか&アサシン :2016/02/19(金) 06:21:54 68mVZXqw0

【クラス名】アサシン
【真名】登太牙@仮面ライダーキバ
【性別】男
【属性】秩序・中庸
【パラメータ】筋力B 耐久C 敏捷A 魔力B 幸運D 宝具A+(サガの鎧装着時)


【クラス別スキル】

気配遮断:D
気配を遮断する能力。ただし、戦闘中は解除される。


【固有スキル】


処刑人:B-
人々を処刑した人が持つスキル。
属性が「悪」の英雄に対しパラメータに補正がかかる。
ただし、彼は属性が「善」ないし「中庸」のファンガイアも処刑したため、
あまりよく効いていない。

カリスマ:E
カリスマ性を表すスキル。
統率力はあるが、人望はそこまで得られない。

対魔力:C
魔力に対する耐性。
第一節以下の詠唱による魔術を無効化するが、大魔術、儀礼呪法などは防ぐのが
難しい。

王の紋章:EX
ファンガイアの王に代々受け継がれる王の証。月夜のごとき結界を生み出し、
敵を封じ込める他、Bランクの威圧を与える。


【宝具】

「サガーク」

ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大捕捉:1

アサシンが物心つく前から行動を共にしていた使い魔。
ファンガイアが生み出した蛇にも円盤にも見えるゴーレム。
空を飛び彼の護る盾にもなるほか、彼の腰に巻き付くことで
「王の鎧」の一つである「サガの鎧」を装着させる。
サガの鎧は彼が掟を破りしファンガイアを処刑する際に
纏ったとされる鎧で、彼がアサシンとして呼ばれた時のみ持ってこられる宝具である。




「キバットバットⅡ世」

ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大捕捉:1

ファンガイアの王が代々継承する「闇のキバ」の鎧の管理者であり、彼の使い魔である。
人種と同様の言語を喋る、尊大な態度が特徴のワインレッドのコウモリ。
アサシンの手の甲に噛み付くことで、彼に闇のキバの鎧を纏わせる。
闇のキバの鎧はその気になれば世界を破壊出来るとされるEXランクの危険な代物である、アサシンの切り札。だが、世界の破滅を行使するためには膨大な魔力が必要である。


775 : 美樹さやか&アサシン :2016/02/19(金) 06:24:22 68mVZXqw0
【Weapon】

「ジャコーダー」
サガの鎧を起動するためのアイテム。腰に巻き付いたサガークに指すことで発動する。
また、先端から光の鞭を突出させて鞭として使うことも出来る。

【人物背景】

人のライフエナジーを糧とする魔族「ファンガイア」の王族の血を引く、王座の後継者。
表向きはファンガイアで構成された投資企業「D&P」の若社長で、人類の進化に貢献する可能性のある技術を見つけては、その関係者を抹殺させていた。
また、掟を破ったファンガイアを自分の手で殺めてもいた。しかし、異父弟であり親友でもある紅渡が、自分の婚約者である鈴木深央と恋愛関係を持っていることから彼との友情に亀裂が走り、彼をファンガイアに迎えようとする気持ちもやがて
深央の死により憎しみに変わり、ついには彼に王座を奪われたことから精神的に不安定な状態に陥る。
最後に自分の元に残った「キング」の座はよこすまいと母から強引に闇のキバの力を奪い取り、弟との決着に向かうが、互いにぶつかり合った内に和解。その後は渡と共に人間とファンガイアの共存する世界を創りあげようとしていった。
基本的に紳士的かつ冷酷な人物。人類を「家畜」と見なし裏切りのファンガイアにも容赦は無かったが、家族である渡や婚約者である深央には甘く、人間とファンガイアの
ハーフである渡をファンガイアに引き入れようとしたり人間とファンガイアを融合させる技術に例外的に投資したりと一族のためになることにならある程度人間に
もある種の温情を見せていたり、自らの養父である嶋護に対してもファンガイアの身体を埋め込んだ後に彼をファンガイアから引き戻したりと根本的な部分では優しく、いじめられていた幼少期の渡を助けてあげたりもした。


776 : 美樹さやか&アサシン :2016/02/19(金) 06:25:46 68mVZXqw0
装備部分の記載を間違えました。
【Weapon】

「ジャコーダー」
サガの鎧を起動するためのアイテム。腰に巻き付いたサガークに指すことで発動する。
また、先端から光の鞭を突出させて鞭として使うことも出来る。

「ウェイクアップフエッスル」
サガーク専用の小型の笛。サガークに吹かせてもう一度ジャコーダーを突き刺すことで
必殺「スネーキングデスブレイク」が発動できる。


777 : 美樹さやか&アサシン :2016/02/19(金) 06:26:05 68mVZXqw0
【サーヴァントとしての願い】
人間とファンガイアが完全に共存できる世界を創りあげる。


【方針】
マスターを守る。現在はサガークとキバットバットⅡ世に偵察を任せている。
マスターの性格上気配を遮断してでのマスター狙いは出来ない。


778 : 美樹さやか&アサシン :2016/02/19(金) 06:26:28 68mVZXqw0
【マスター名】美樹さやか@劇場版魔法少女まどか☆マギカ叛逆の物語
【性別】女

【能力、技能】

・魔法少女
願いと引き換えに自らの魂を「ソウルジェム」と呼ばれる宝石に変えた魔法少女に変身
する能力。彼女の武器は剣と突出した治癒能力である。本来なら円環の使いの
力として自らが絶望した成れの果てである「魔女」としての力も使えるが、
暁美ほむらによって失われた。


・ソウルジェム
タマゴ型の紺碧の宝石。彼女の魂の本体であり、魔法少女に変身するための道具。
擬似的な魔力炉としても機能する。本来なら魔力を消費すればするほど色が濁っていき、
彼女の精神状態が悪ければ悪いほど濁っていくスピードも早くなるが、円環の使いと
なった影響でそれはなくなっている。


779 : 名無しさん :2016/02/19(金) 06:27:28 68mVZXqw0
【人物背景】
見滝原中学校2年生の、ごく普通の少女・・・だった人。偶然出会ったインキュベーターによって、想い人であり幼馴染である上条恭介の腕を元通りにするという願いと引き換えに
魔法少女になる。が、自分の魔法少女としての素質が親友である鹿目まどかには
及ばないと言われ、実は自分が人間ではないことを知らされ、あげく上条恭介を親友にである志筑仁美に取られ精神的に追い詰められ絶望、魔女へと変貌してしまう。
しかし願いの力で全ての魔女を円環の理へと導いたまどかにより心身ともに救われ
成仏。その後暁美ほむらのソウルジェムの世界に巻き込まれたまどかの記憶の
「カバン持ち」として百江なぎさと共にほむらを円環の理に戻そうとするも
ほむらが「円環の理」から「鹿目まどか」の存在を引き裂くという事態が発生。
それに巻き込まれる形で彼女の変えた世界に残ってしまう。
明るく正義感が強い性格だが打たれ弱い人物。また猪突猛進な人物だと思われがちだが
ほむらの本質を見抜くなど洞察力には優れている。


【サーヴァントとしての願い】
まどかを円環の理に戻し、ほむらを救い出す。


【方針】
自らの魔法少女としての力とアサシンの戦闘力を使ってうまく勝ち抜く。


780 : ◇68mVZXqw0 :2016/02/19(金) 06:30:16 68mVZXqw0
以上で投下は終了です。
宝具の設定に関しては◆CKro7V0jEc様のキャスター(紅渡)を参考にして頂きました。


781 : ◆.wDX6sjxsc :2016/02/19(金) 10:45:55 B4kQOXto0
投下します


782 : この世に要るのは善い子だけ ◆.wDX6sjxsc :2016/02/19(金) 10:47:41 B4kQOXto0

ゴブリン。
この単語を聞いて諸兄らはどんなイメージを抱くだろうか?
子ども程の背丈で膂力も知能もあまり高くない、洞穴やダンジョンに潜み群れで人を襲うモンスター。
強さや人類に対して有効的かどうかは大きく差異がある場合もあるが、一般的に共通するイメージとしてはそれらは幻想譚の世界の出身と言う事だろう。

だが魔都、東京に限って言えばその限りでない。

最近、こんな都市伝説がまことしやかに語られつつある。
曰く、床下、天井裏で小人を見た。
曰く、下水道に入った水道局の人間がそれきり帰って来なかった。
曰く、路地裏で鬼に襲われた。


――――その都市伝説との関係は定かではないが、行方不明者の数は増加傾向にあった。





783 : この世に要るのは善い子だけ ◆.wDX6sjxsc :2016/02/19(金) 10:48:30 B4kQOXto0


「はぁっはあっはっはぁ!!」

俺、松野家長男松野おそ松は走っていた。
何の為かって?決まっている、逃げているのだ。

逃げていると言っても借金取りやパチンコ警察ではない。
前者はまだ話が通じるだけましだろう。
後者も最近は負けっぱなしのためあり得ない。

「も、もっと早く走るザンス!」
「偉そうに言うな!テメェのせいだろうが!」

隣のクソ出っ歯を睨みながら後ろを確認する。
今日もいつも通り六つ子皆でチビ太のおでんを喰いに行った帰りの事だった。
俺たちはイヤミに絡まれた。

コイツは今巷で噂のUMAを捕まえて賞金を手に入れると意気込んでいた。
その上で分け前をやるから手伝えと言ってきたのだ。
しかも、もう出会った公園の藪まで追い詰めたからあと一歩だと言う。
まぁ、此方にはサンタも捕獲したことのある十四松も居るし、何より六人だ。
ここは快諾しておいて、後でイヤミを袋叩きにして賞金は全額俺達が貰えばいいと示し合わせると、全員で藪を取り囲んだのだ。

ガサガサと藪が揺れ、賞金を度外視しても未知との遭遇に年甲斐もなく高揚した。
が、


「何かさー………多くない?」


あの十四松が冷や汗を掻きながら後ずさる。
無理もない、藪から覗く眼、眼、眼。
その数は優に100は超えていた。


――――誘い込まれたのはこっちじゃねぇか!?


784 : この世に要るのは善い子だけ ◆.wDX6sjxsc :2016/02/19(金) 10:49:11 B4kQOXto0

「テメェざけんなイヤミ!!あんなにいるとか聞いてねぇぞ!!!」
「知らんザンス!き、きっとあの藪の中に巣があったんでちょーよ!」
「死ね!歯槽膿漏になって死ねェェぇええ!!」


しかし、こうやっていがみあっていても仕方ない。このままではイヤミと心中だ。
走りながら何とか生き残る方法を模索する。
こうなると六つ子散り散りに逃げたのは失敗だった。
結果的に不良債権であるクソ出っ歯を押し付けられ、頼みの綱である十四松とも離れてしまった。
クソッ!こう言うのはカラ松の役回りだろうが!

「GOUUUUUUUUU!!」
「GUIAAAAAAAAAAAA!!」
「JOUJIJOUJI」
「HURGUUUUUUUUU!!!」

後ろから響く猿叫に身を竦ませる。
ヤバい、このままじゃヤバい。

ここはやはり―――――、


「じゃあなイヤミ!!」


別れの言葉を告げて思い切り隣で走るイヤミの足を掃った。
ニートとホームレス、体力の差が如実に表れた瞬間である。

「あっちょ、待つザンス。この悪魔の長男めぇぇえ!!っちょま、た、助けるざんす、イヤミの命は一つしかないざんす!シェ、シェェエエエェエエー!!」


先ほどは後悔したが、こうなると一緒に逃げていたのが兄弟でなくて良かったと心から思う。
これがトト子ちゃんなら、他の兄弟を蹴落としてでも共に生き残り、デートの約束を取り付けるのだが…。
兎に角、イヤミなら生贄に捧げても心が痛まない。
と言うか自業自得だ。


785 : この世に要るのは善い子だけ ◆.wDX6sjxsc :2016/02/19(金) 10:49:48 B4kQOXto0

背後から聞こえるイヤミの断末魔を朝ごはんまでは忘れないでおこうと心に誓い、走り続ける。
背後の圧迫感は消えていない。まだ追われている。
だが、問題ない。
セーフティーゾーンはもう目と鼻の先だ。
この不景気に東京都心のど真ん中に聳え立つタワー。

そう、我らが大富豪ミスターフラッグこと鉈坊が建てたビルディングだ。
後ろのUMA達は上手く大通りに行かせない様に誘導している様だが甘い。
あそこまで逃げ切れば、後はフラッグコーポレーションの人たちが何とかしてくれる。

これがホラー映画ならここで運悪く蹴躓いてしまう所だが―――幸運にもそうはならなかった。
夢中でタワーのインターホンに飛びつく。
タワーのハイテクさを証明するかのように守衛一人としていなかったが、気にしてる暇はない。
ここで問題が一つあるからだ。
さっき公園で時間を確認したらもう12時を回っていた。
つまり、ハタ坊が起きているか………!

寝ていた場合の事を必死に考えないようにしながら祈りをこめて呼び出しボタンをプッシュした。



「お〜どうしたジョ?」



起きてたああああああああああああああああ!!


「ハ、ハタ坊…ちょ「聞いてほしいんだジョー今現政権の腐敗の証拠を掴んだんジョー」

えぇっ!!でも、今はそんな場合じゃない。


「それで〜明日総理がハタ坊のとこに来るんだジョーハタ刺して友達になるジョー」

ハタ坊だめええええええ!!


786 : この世に要るのは善い子だけ ◆.wDX6sjxsc :2016/02/19(金) 10:50:20 B4kQOXto0

「と、とにかくここ開けてハタ坊、いや、ミスターフラッグ!!」

ハタ坊は夜更かしで興奮しているのか、此方の話をあまり聞いていない。
しかし、何としても開けてもらう必要がある。
総理の頭とケツ、そして俺の命のために!


「GORUUUUUU!!」


背後を見ればあの子鬼UMA―ゴブリンがもう20メートル程の所まで迫っていた。
その手には思い思いの武器を持っており、中にはどこから手に入れたのか拳銃まで持っている奴までいやがる!
最早猶予は一刻も無い。


「ハタ坊!ハタ坊!お願いだからここ開けて!!」
「いいじょ〜入ったら部屋にあるボタンを押すジョー」

ハタ坊から了承の言葉が出ると同時にガガガガと音を立ててガラスの扉が開く。
きっと強化ガラスだろう。
ハタ坊がちゃんと人の話を聞いてくれる奴だったことを神に感謝しながらホールに転がり込んだ。
後はあのバズーカ持ってる社員さん達がやっつけてくれる、もう安心だ。


「ふぅー、そういや、あいつら大丈夫かなぁ」


イヤミのバカのお蔭で大半の子鬼たちはこちらに追ってきたがそれが全部とは限らない。
先ほどまでは自分の命が危なかったために気を回す余裕が無かったが、今は少し心配になる

「まぁ、五人の悪魔が子鬼には負けないでしょ〜」


787 : この世に要るのは善い子だけ ◆.wDX6sjxsc :2016/02/19(金) 10:50:58 B4kQOXto0

ゴキブリ並の生命力どころか、ゴキブリそのものの様な兄弟だ。
心配はすぐに消え去り、危機からの解放感から大きく伸びをする。
涼やかで爽やかな風が頬を撫でた。
しん、とした静寂がホールを包んでいる。
12時を回っているのだから当然だが、人の気配は感じられない。
前を見ると、ハタ坊が言っていたボタンが見えた。
これを押せば、コーポレーションの人がやってくるのだろう。


「や〜助かった助かった。このまま今日は「「GUIAA」」ハタ坊のとこに泊まっていこっかな〜」



……ギュア?
そういえば、何で風が吹いた?
ナンデ、ドアが閉まった音がしない?
ぎぎぎぎとブリキの様な音を立てて振り向く。


「GOR?」



えぇえぇえええ!!!何で入って来てんのおおおおおおおおお!!!
いやまて、落ち着け!

「へん!来るなら来い!このボタン押したら全て終わり、
バズーカ担いだ人たちがやって来てテメェら全員皆殺しだ!!」


その言葉を理解したのか急に居直った俺に恐れをなしたのか、子鬼どもが後ずさる。
だが後悔してももう遅い。

「ハッハー!ジ・エンド」

一片の容赦もなくボタンを押した。


788 : この世に要るのは善い子だけ ◆.wDX6sjxsc :2016/02/19(金) 10:51:22 B4kQOXto0

……
………


『この部屋は一秒後に自爆します』

え、ちょっと。

「ハ、ハタ坊。これどう言う事、ハタ坊!ハタ坊!!ハタぼ――――!!」

緊急コールを聞いても、聞けるだけだ。逃れることはできない。
逃れるための扉の前には浮き足立っているとはいえ子鬼たちが塞いでいるし、
何時の間にかガラスの扉も固く閉じている。
社員の人たちが来る気配もないし、一秒では他の出口にも間に合わない。


嗚呼、戻れない、帰れない。
最強無欠のぽぽん搭載、人類最後のギミック君に。

よろしくおあがりおそ松さーん!

【松野おそ松@おそ松さん 死亡】


789 : この世に要るのは善い子だけ ◆.wDX6sjxsc :2016/02/19(金) 10:52:11 B4kQOXto0



「これでやっつけたジョ〜」

頭に旗を刺した坊やが隣に佇む者に語りかける。
その者の姿は一言で言うのならば、異様だった。
ボロボロの安っぽい鎧に、滑稽な程中途半端な長さの剣。傷だらけの盾。
そんな不気味な全身甲冑はコクリと頷く。

「やったジョーウレシイジョウレシイジョウレシイジョ…」

頭に刺したハタに奇妙な紋様が刻まれた大企業の社長がまた街の平和を守護った事に喜び勇んでいるのを見ながら甲冑は先程の戦法を振り返る。

自身の魔力で再現された火の秘薬を部屋の地下にばら撒いて置いて火打ち石で爆破。
この建物の堅牢さならば、周囲に被害が出ず手早くて実に良い。
本来の彼ならば巻き添えを出す事を厭うが、その理性は、狂化によって喪っている。
故に、彼は人助けなどしない。
彼は世界を救わない。

ゴブリン
“子鬼”を殺すだけだ。

他のサーヴァントを蹴落とし、聖杯を獲るのもゴブリンをこの世から消し去るためでしかない。
だが、彼あるところに子鬼あり、子鬼あるところに彼あり。
斬っても斬れぬ宿命じみた因縁に魅かれてか、この世界ににも子鬼は出る。
それは彼にとって、聖杯戦争を戦いつつ、ゴブリンとも戦うと言う事に他ならない。
だが、問題は、無い。少なくとも、ゴブリンの方は。

そう彼は狂戦士である以前に―――――


「ゴブリンは、鏖殺しだ」

      ゴブリンスレイヤー
―――――『子鬼を殺す者』なのだ。


790 : この世に要るのは善い子だけ ◆.wDX6sjxsc :2016/02/19(金) 10:52:31 B4kQOXto0


【クラス】バーサーカー
【真名】ゴブリンスレイヤー@ゴブリンスレイヤー
【属性】中立・中庸

【ステータス】
筋力B- 耐久C 敏捷B- 魔力E 幸運E(EX) 宝具EX


【クラススキル】
狂化:B
全パラメーターを1ランクアップさせる代わりに言語能力及び理性の大半は失われている。
ただし、ゴブリンを殺す時に必要な場合に限り、意思疎通ができる。


【固有スキル】
鏖殺者:A
ゴブリンに対する尽きる事のない憎しみ。
同ランクまでの精神干渉をシャットアウトする。

心眼(偽):B
数々の戦場を経験して手に入れた直感・第六感による危険回避。
視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。
狂化によって理性を奪われても本能に近いこのスキルは有効に働く。

鬼殺し:A
生前数えきれない子鬼、そして本来なら彼の遥か格上の存在だったオーガを屠った逸話から発生したスキル。
ゴブリンが居る戦場、または鬼に関わる者が相手の時、彼のパロメーターはワンランクアップし、Bランク相当の気配遮断のスキルが付与される。


791 : この世に要るのは善い子だけ ◆.wDX6sjxsc :2016/02/19(金) 10:52:57 B4kQOXto0

【宝具】

『祈り持たぬ者(ゴブリン)』
ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:1~20 最大捕捉:100人
彼の終生の怨敵であるゴブリンを東京にランダムかつ無限に“発生”させる宝具。
筋力:D- 耐久:D- 敏捷:D- 魔力:E 幸運:Eのステータスと単独行動Aのスキル持つゴブリンが
一度の発生毎に20匹から生み出され、NPCから奪い神秘を付与された武器を使って、
人やサーヴァント、生み出したバーサーカーにすら襲いかかる。
彼らは下水道や路地裏などに潜み、NPCなどを攫ってどんどん増えていく。
一度この宝具が発動してしまうと、霊脈から直接魔力を奪ってゴブリン達は発生するため、バーサーカーが敗退したとしてもゴブリンは東京に現れ続ける。
また、襲撃を受けた際、生き残ったゴブリンは渡りとなり、一回り大きいホブや魔術を扱うシャーマン、対軍を指揮できるロードやチャンピオンに成長する。

『転移巻物(ゲートスクロール)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
非常に貴重な失われし古代魔法<<転移>>の魔法が記されている巻物。バーサーカーの物は海底に繋がっている。
主に水攻めに使用されるが、個人に向けて使用した場合、全てのパロメーターにおいて遥か格上だったオーガを切り伏せた逸話から、対象の耐久値を無視して叩き斬ることが出来る。
本来ならば使い捨てだが、彼の宝具となったことで魔力補給できれば何度でも使うことが出来る。

『彼はけっして神々にサイコロを振らせようとしませんでした』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
―――彼は常に策を練り、考え、行動し、鍛え、機転を利かせ、徹底的でした。
相手サーヴァントの宝具やスキルを解析し、対策を考えていた場合、宝具やスキルの効果、幸運値や因果律を無視してその対策を成功させる宝具。
だが逆に対策をまったく立てていない状態で幸運に関わる事象が発生した場合、バーサーカーは確実にファンブルを発生させる。
彼にとって、サイコロに運命を託した時点で負けなのだ。
今回はバーサーカーのクラスの召喚であり、まず相手サーヴァントについての対策を考えるのが非常に困難なため実質使用不能である。

【人物背景】
その冒険者は平凡な若者でした。
どの神々も彼の事は好きでしたが、だからと言って特別な期待もしていませんでした。
彼が世界を救うことは無いでしょう。
彼が何かを変えることは無いでしょう。
彼はどこにでもいる駒の一つに過ぎないのですから。

【サーヴァントとしての願い】
ゴブリンの殲滅。


792 : この世に要るのは善い子だけ ◆.wDX6sjxsc :2016/02/19(金) 10:54:00 B4kQOXto0

【マスター】
 ハタ坊@おそ松さん

【マスターとしての願い】
もっと出番が欲しいジョー

【能力・技能】
ハタを刺すジョー。サーヴァントでも逃がさないジョー。
刺された人は皆社員になるジョー。

【人物背景】
情報商材を扱う会社の社長だジョー。大金持ちだジョー。
アメリカ大統領とも友達だジョー。総理とも今度友達になるジョー。
聖杯戦争の事は知らないジョー。

【方針】
東京はハタ坊が守るジョー。皆社員になるジョー。

※おそ松は生きてます。多分


793 : ◆.wDX6sjxsc :2016/02/19(金) 10:54:36 B4kQOXto0
投下終了です


794 : ◆.wDX6sjxsc :2016/02/19(金) 11:29:28 B4kQOXto0
すみませんバーサーカーの【Weapon】の欄が抜けていました。
【Weapon】

中途半端な長さの剣、ボロボロの盾、火攻めのガソリン、火の秘薬など


795 : ◆DpgFZhamPE :2016/02/20(土) 06:36:34 casXy.B60
投下します


796 : 南条光&ライダー  ◆DpgFZhamPE :2016/02/20(土) 06:39:43 casXy.B60









千の偽り、万の貌。
億の欲望、兆の財宝。
神出鬼没の男は全てを欲しいがままとした。
”世の中のありとあらゆる財宝を?”
ああ、もちろんこの手の中に。
”人々に語り継がれる名声を?”
ああ、もちろんその全てを此処に。
…だがしかし、欲望のままに生きた男は少しも満足を知らなかった。
”世の中のありとあらゆる財宝は?”
ああ、既にそれらは誰かの元へ。
”人々に語り継がれる名声は?”
ああ、なるほどそれはつまらない。
男はニヤリと不敵に笑う。
戦慄。緊張。挑戦。達成。
「やはり生きるならスリルがなくちゃあ」―――と。
…そも、欲望とは湖のようなもの。
枯れる時は、死ぬときだ。

だがそれも、全てに当て嵌まる訳ではない。
大馬鹿者とは、悉く常識から外れているものだ。
死して尚尽きぬ欲望は、スリルを求めこの世に再び現れた。
狙うは聖杯。競うは英雄。
付き添うは小さなヒーロー。




「さあ―――聖杯を盗りにいこう」








○    ○   ○


797 : 南条光&ライダー  ◆DpgFZhamPE :2016/02/20(土) 06:40:20 casXy.B60
むむむ、と少女は唸る。
少女の部屋だろうか―――年相応の可愛らしい部屋の中心で、少女は唸る。
首を傾げ、その小さな掌に掴まれた『モノ』を見る。
赤いジャケット。
手触りは心地いいが、どうやら大人用のようで着るにはかなり大きい。
皺をつけないように優しい手つきで、少女はそれを眺めている。
そして、搾り出すように、一言。

「…見覚えがないぞ」

そう。
見覚えがないのだ。
少女の記憶といくら照らし合わせても、このヘルメットが何者なのか検討もつかない。
少女―――南条光は、ヒーローをこよなく愛し憧れる14歳である。
趣味は特撮。夢も特撮。
ヒーロー一筋まっしぐらの少女である。
だからこそ、光は頭を悩ませていた。
特撮、ヒーローに対する愛なら人一倍だと自負しているし、聞かれればある程度のことまで答えられるほど知識もあると思っている。
なのに、少しも分からない。
誰が着ても派手であろう真っ赤なジャケット。その色は眩いほどに赤く、情熱を感じさせる。
親のものが自室へ紛れ込んだのだろうか、とも思ったが両親はこのような派手なものは着用しない。
自室にあり、この色からして特撮関係のものであるのは確かだと思っているが―――記憶にないのだ。
色の派手なジャケットや革ジャンは特撮ヒーローの嗜み。
戦隊ヒーローならば赤どころかピンクなどを基調とした衣装のあるだろう。。
もしかすれば、劇中の衣装がグッズとして発売された可能性はないだろうか。
『彼が着ていた赤ジャケットを完全再現!これで君も○○だ!」―――といったような。
しかし、そんな愛に溢れるアイテムともなると印象深いもの。
そんなアイテムをこの自分が忘れるはずがあろうか。
それとも『アレ』だろうか。
『何度捨てても戻ってくる人形』とか。
『放っておいたら髪が伸びている日本人形』だとか。
『目を離したら首を折ってくる不気味な人形』だとか。
そういった類の、所謂ホラーアイテム的な『アレ』だろうか。
…想像すると少し背筋が寒くなったが、このジャケットがそんな邪悪なものには見えないのだ。
何はともあれ、購入したかはたまた貰ったかは不明だが、自宅の自部屋にある以上自分ものなのは確か。
わからないままなのは、落ち着かない。
…それに。

「なあ。…君はどのヒーローのアイテムなんだろーな」

元がどのヒーローのアイテムなのかわからないままでは、このジャケットも可哀想だ、と思った。


▲  ▲  ▲


798 : 南条光&ライダー  ◆DpgFZhamPE :2016/02/20(土) 06:43:01 casXy.B60
翌日。
両親も覚えがないというジャケットを手に、光は街へと繰り出した。
行き着けの玩具屋。学校の友人。教師。
両親の知り合い。ご近所。
手当たり次第に、『このジャケットに見覚えはないか』と聞いて回った。
しかし。
案の定、大した情報は得られず。
得られたのは敗北感と、疲労だけだった。
結局、手掛かりすらなしで光は一つの公園に辿り着いた。
友達とよく遊ぶ公園だ。一休みするなら丁度いい。
ばさり、と持ってきておいたジャケットを拡げる。
…大きい。

「アタシも君が誰のものなのか知りたいんだけどなあ…いや」

まだだ、と。
持ってきておいた水筒の蓋を開け、弱気になった気持ちを茶ごと流し込む。
乾いた喉に冷たい液体が流れ込み、何とも心地よい。
―――諦めちゃだめだ。
ヒーローを目指すものは簡単に諦めてはいけない。
助けを求めている人がいれば駆けつけ、物言わぬ花や物であっても慈しむ心を持たねばならない。
たとえ。
それが、得体の知れないジャケットであったとしてもだ。
何も知らないまま捨てるのも忍びない。物も大切にしてこそヒーローだ。
…だが。
さすがに何も手掛かりなしは、すこし堪えた。
道の端のベンチに腰を下ろし、空を見上げる。
アタシにも特撮みたいなサポートメカみたいなのがいたらなあ、と適当なことを考えながら少し身体を休ませる。
誰かがラジオでも置いて聞いているのだろうか。
遠くから、ニュースの音声のようなものが聞こえてくる。
ああ。
サポートメカか、または―――

「アタシが有名人だったら色んな人に聞き取り出来るんだけど―――、な…?」

痛烈な、違和感を感じた。
頭の上から爪先まで閃光が奔るような感覚。
何かで塗り固められた心に、罅が入るような感覚。
待て。待て。待ってくれ。
『アタシが有名人だったら』と仮定した瞬間に。
『もうアタシは○○○○じゃないか』と反論し主張する何か。


799 : 南条光&ライダー  ◆DpgFZhamPE :2016/02/20(土) 06:44:13 casXy.B60
理性ではない、意識ではない。
自分は有名人でも何でもないし、テレビやラジオに出る機会などない。
そんなこと分かりきっている。
なのに。
他でもない、この体が叫んでいる。
ぐらぐらと頭が揺れる。
流れ込んできているのかはたまた戻ってきているのかはわからないが、見覚えのない記憶の奔流が少女の脳を駆け巡る。
そして、ソレが続くこと都合一分。
ヒーローを夢見る少女は、













「あ、アタシアイドルだ」



―――あまりにも唐突に、己が存在を理解した。
…思い出してみれば何と容易い。
何故こんなこと忘れていたんだろうという感情と、じゃあ今アタシは何故アイドルとして活動していないんだという謎。
違和感を解消したと同時にやってきた謎に首を傾げた瞬間。
じりり、と何かに手の甲を焼かれたような痛みが奔る。

「痛っ!?」

思わず跳ね上がり、右手の甲を見つめると。
まるで。刺青でも彫ったかのような、痣が出来ていた。

「何だろこれ…あっ」

跳ね上がってしまったのが失敗だったか。
手を離してしまったジャケットが風に煽られ、空高く飛んでいく。

「あ、ちょ、待った!!」」


800 : 南条光&ライダー  ◆DpgFZhamPE :2016/02/20(土) 06:44:52 casXy.B60
舞い上がったジャケットを走って追いかける。
手を伸ばすが、ギリギリ届かない。
足の速さには自身がある方だったが、何故か追いつけない。
みるみる内に高度と速度を上げたジャケットに追いつけず四苦八苦。

「この…!」

スピードを上げる。追いつけない。
もう少しスピードを上げる。追いつけない。
疲れた。ちょっと休憩。距離は更に開いていく。
そして。
少し眺めていると、風は弱まったのか。
赤いジャケットは―――公園の隅の茂みに落下した。
再び飛び去らないうちに捕まえておこう、と光は歩いて近寄る。
歩いてみると、そう長い距離飛んでいなかったようで、すぐ手の届く範囲に到着した。

「全く、飛んでいったらどうしようかと思ったぞ」

回収しようと、手を伸ばす。
が。
残念ながら、光の手は空を切った。

「?」

ジャケットが、立ち上がった。
風に煽られたのでもなく、持ち上げられたのでもなく、立ち上がった。
―――いや。

「いててて…だーれだこんなトコで召喚したの。俺おしり打っちゃったじゃないの」

赤いジャケットに。サル顔のおっさんが付属していた。
付属していたというか、なんというか、いつの間にかジャケット着られていた。
なんという早業。ホームレスの方だろうか。物盗りかもしれない。不審者だ。

「ん?どしたのお嬢ちゃん目ェ丸くして。頭でも打ったか?」
「いや、その、それアタシの」
「ああ、これ?まったまたあ、面白い冗談をいうおガキ様だこと。
 ほら、小銭やるからジュースでも買って帰んな」

しっし、と男は手で掃うような仕草を見せると、そそくさと去ろうとし―――ピタッと止まると、すぐに引き返した。
あまりの急展開に光は抗議する暇すらない。
何処から現れたのか。いつの間にジャケットを羽織ったのか。というか何故人のものを我が物顔で羽織って去ろうとしているのか。
ただただ唖然とした顔で、目の前の男を見つめていた。

「ちょーち待ってお嬢ちゃん。手の甲、見せてみな」


801 : 南条光&ライダー  ◆DpgFZhamPE :2016/02/20(土) 06:45:28 casXy.B60
「え、はい」

言われるがままに右手を差し出す。
先程痣がついてしまった右手の甲を見て、意外とくっきり痣がでてしまっていることに驚いた。
すると。
それを見た男は、さらに驚いているようだった。
そして二度三度考えるような素振りを見せた後、

「嬢ちゃん―――悪いことは言わねーからお家帰んな。それでなるべく外に出ちゃ駄目だ。オーケイ?」

などと言い放った。
光にはこの発言の意図が読めない。
何故ならば、光は『聖杯戦争』を知らない。
これから数多くの主従が現れ、血で血を洗い杯を奪い合う凄惨な儀式が行われるとは夢にも思っていない。
目の前の男―――『ライダー』が、己のサーヴァントであることも。
この男が。
自分を、危険から遠ざけようとしてくれていることにも。
だからこそ。
光は純粋で真っ直ぐな瞳のまま、言い放った。

「嫌だ」
「…ほぉ〜ら、実はおじさん超悪い人なの。お家帰らないとこの拳銃でパーンしちゃうかもよ?」
「だったら尚更だよ。悪い人を見逃しにできない。それに、今おじさんが着てるジャケット、返してもらわなきゃ」
「ぐぬ」

脅しが逆効果に出てしまったことに男は歯噛みする。
光の瞳はどこまでも真っ直ぐだった。
見逃すわけにはいかない。
悪い人ならば、善として許してはいけないと信じている目だった。

「…」

その瞳に。男は―――在りし日のライバルと同じものを感じたからか。
頭をガシガシと乱暴に掻き回し、振り切れたように男は告げた。

「お嬢ちゃん。俺、誰だか知ってる?」
「?…いや、知らない」
「んじゃあ教えてあげちゃおっかなー」


802 : 南条光&ライダー  ◆DpgFZhamPE :2016/02/20(土) 06:46:20 casXy.B60
まるで、悪戯をしかけた子供のように。


「『ルパン三世』…すっごい泥棒なの。返してほしくば捕まえてごらんーなさい」


ルパン三世。
世紀の大怪盗。
正義の味方をこよなく愛する少女の元へ召喚されたのは―――類稀なる、大悪党であった。
怪盗としてもマスターが少女であったのは完全なる計算違いだったが、死なせる訳にもいかない。
少々お荷物が増えたが、どうってことはない。
生前から日常茶飯事だ、慣れっこである。


小さなヒーローと大怪盗。
未だ闘争を知らぬ少女と共に、彼は行く。
戦争なぞするつもりはない。
闘争なぞするつもりはない。
大怪盗の目的は、一つ。
稀代の宝―――聖杯の、奪取である。
さあ。稀代の英雄達よ。
止められるものなら止めてみるが良い。

さあ―――聖杯を盗りにいこう。

【マスター】
南条光@アイドルマスター シンデレラガールズ
【マスターとしての願い】
(マスターとしての自覚なしのため)なし。
【weapon】
なし。
【人物背景】
特撮をこよなく愛する少女アイドル。
何故か部屋に紛れ込んでいたルパン三世のジャケットを触媒に、記憶を取り戻したことによりマスター権を獲得、ルパン三世を召喚した。
何故部屋に紛れ込んでいたかは不明。理由があるのか、それとも全くの偶然なのか…?
【能力・技能】
特になし。
【方針】
おじさん(ルパン三世)を追う。
ジャケットも返してもらう


803 : 南条光&ライダー  ◆DpgFZhamPE :2016/02/20(土) 06:49:08 casXy.B60
【CLASS】
ライダー
【真名】
ルパン三世@ルパン三世シリーズ
【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷A+ 魔力D 幸運B 宝具C
【属性】
 中立・中庸
【クラススキル】
騎乗:D
乗り物を乗りこなす能力。
ルパン三世の場合、機械仕掛けの類いならプロすら敵わないほどの腕前を見せる。

【保有スキル】
千の偽り万の貌:EX
大怪盗ルパン三世の得意技。
変装技術であり、逃走技術である。
人相は勿論のこと体格から声まで、完璧に変装してみせる。
見破るのは難しく、高ランクの直感スキルでさえ見破れない。
ルパン三世がその気になればマスターにも変装させることができる。
逃走及び潜伏時に見つかりにくくなるなど有利な判定を得る。

芸術審美:B
芸術品・美術品への執着心。
芸能面の逸話を持つ宝具を目にした場合、低い確率で真名を看破できる。

道具作成:D
魔力を帯びた器具を作成可能。
ルパン三世の場合、盗生前使用した道具。
電子機器から解毒薬まで何でもあり。

専科百般:B+ 
 あまりにも豊富なその知識・及び能力。
戦術・射撃・体術・医療・デジタル・その他数多くの専業スキルについて、Cランク以上の習熟度を発揮できる。


【宝具】
『逃げろ逃げろや大逃走車!』(ルパン・ザ・カー)
ランク:E- 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-

彼がライダーたる由縁の宝具。
なんてことないただの車であり神秘もほとんどないが、「大怪盗ルパン三世の逃走を補助した代表的な手段」として宝具化している。
故にこの宝具は「車」ではなく「ルパン三世の逃走の歴史・逸話が車の姿を形どった」宝具である。
彼が生前使用した車を何処からともなく召喚する。
宝具であるが、壊れれば新たに召喚可能。
ルパン三世は怪盗であって暗殺者ではない。
故に逃亡者、乗車の逸話が優先されライダーとなった。

『地を駆け空飛べ怪盗団』(ルパン・ザ・ファミリー)
ランク:C 種別:- レンジ:- 最大補足:-

彼の生涯の仲間―――石川五ェ門、次元大介、峰不二子を召喚する。
彼らそのもの宝具であり、サーヴァントである。
一人ずつ召喚することも可能であるが、峰不二子だけは彼女の気分で召喚に応じてくれないことも。

『ルパン三世』(ルパン・ザ・サード)
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大捕捉:――

彼を彼たらしめる、『ルパン三世』としての逸話が宝具になったもの。
故に、彼の生き様そのもの。
『この世全てのものを盗み出す』という、反則極まる宝具である。
発動すれば彼に盗めぬモノなどない。
が、サーヴァント相手に発動した場合成功の確率は下がる。
しかし。
・サーヴァントの真名把握
・対象と出会う回数が多ければ多いほど
・何より、ルパン三世が乗り気であること(盗み出す課程・及び対象に価値を感じているか)
この三つの条件のうち、一つ満たせば成功率は格段に上昇する。
二つ満たせば成功率は更に上昇。
三つ条件を満たせば―――大怪盗は、対象が宝具だろうと形のないものだろうと、確実に盗み出すだろう。

【wepon】
・ワルサーP38。
神秘も少なく、通常のワルサーP38と威力はさして変わらない。
射撃に長けたルパン三世が扱えばサーヴァント相手でも立ち回れる程度にはなるが、一つの武器を極めた「究極の一」たちには敵わないだろう。
・生前使用した道具
不思議驚き改造道具たち。
盗みに関した道具ならば特製迷彩から盗聴機なんでもござれ。
スキル「道具作成」で作成可能。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯を盗む。
そして嬢ちゃんを巻き込むのは悪いため、離そうとも追ってきそうなので適当に自分のことを追わせつつ安全に生きて帰す。
ジャケットは自分のトレードマークなのでできれば返したくない模様。


804 : 南条光&ライダー  ◆DpgFZhamPE :2016/02/20(土) 06:51:23 casXy.B60
投下終了です。
そして誤字を発見しましたので、訂正します。
>>797そう。
見覚えがないのだ。
少女の記憶といくら照らし合わせても、このヘルメットが何者なのか検討もつかない。

が正しくは

そう。
見覚えがないのだ。
少女の記憶といくら照らし合わせても、このジャケットが何者なのか検討もつかない。

でした。
失礼しました


805 : 名無しさん :2016/02/20(土) 18:09:15 2qTEqdVg0
投下します。


806 : 徳川光成&アサシン ◆yaJDyrluOY :2016/02/20(土) 18:10:53 2qTEqdVg0
-東京都 新宿区 徳川邸-


「なるほどのォ、では聖杯とはどんな願いも叶えてくれる魔法の道具――なんとも胡散臭いが――で……」
「おぬしは戦争をしている間の儂の従者、もしくはパートナー……それも遥か昔に徳川家に使えた、かの有名な服部半蔵殿である……と」

 広大な屋敷の一室、旅館の宴会場かと疑うような広さの畳部屋で、老人と忍装束を纏った男が問答を交わしていた。
 老人の名は“徳川光成”、天に轟く徳川家の第十三代目当主である。
 一方の忍装束は“服部半蔵”、代々徳川家に仕えてきた伊賀忍者の当主、すでに200年以上前に死んでいるはずの男だ。
 常識で考えるならば決してありえはしない状況であるが、実際起きてしまっているのだから不思議なものである。

 数刻前、ひょんな事から東京を離れられなくなったことを知った光成は自宅に戻り思慮を重ねていた。
 強大な権力と情報網をもった光成が東京の些細な違和感から、刃牙達や自らの使命を思い出すのに時間がかからない事は明白であった。
 そして現在、光成は突如現れた半蔵に対話を持ちかけられ、徳川邸の一室で事の委細を聞き出していたところである。
 その際謎の忍装束を不審に思った部下を押し黙らせて、人払いをさせるのに苦労したことは想像に難くないだろう。


807 : 徳川光成&アサシン ◆yaJDyrluOY :2016/02/20(土) 18:12:06 2qTEqdVg0
 光成が半蔵の話をまとめたところによると、この東京は偽りのものであり、万能の願望機たる“聖杯”を求める戦争の会場であるらしい。
 そして自分はその参加者に選ばれ、聖杯を得るために過去・現代・未来から呼ばれる英雄、“サーヴァント”とともに他の参加者を打ち倒していかねばならないらしい――ということだった。
 ここで一旦光成は自らがまとめた情報を半蔵の正体の考察と交えて、冒頭の通りに半蔵へ確認をとった。

「概ね光成様の認識の通りに御座います。――ですがただ一つ、拙者の“服部半蔵”というこの名は代々伊賀忍軍の当主に襲名される名。
 闇に生きる拙者は表に名の残らぬ存在故、光成様の連想される者とは異なる存在でありましょう」
「ふむ、クローンとはいえ宮本武蔵をこの目で見ることができて、次はかの服部半蔵をもこの目で……と思ったが、そう上手くはいかん物か」
「……光成様、拙者は闇に生きる者なれど、鍛錬により身につけたこの伊賀忍術は陽の下に出ても決して劣らぬ物だと矜持しており申す。
 然らば、光成様の焦がれる“服部半蔵”をも超える忍の妙技、御覧に入れてみせましょう」
「――ならば良しッッッ」

 半蔵の答は光成にとって大変満足のいくものだった。
 その武力で現代まで名を馳せる強者達、その中でも忍者といえば真っ先に誰もが連想するであろう“服部半蔵”というビッグネーム。
 初めこそ服部半蔵は沢山いると聞いて少し意気消沈したものの、ここにいる半蔵もその代では伊賀忍軍の当主、それに彼の者よりも高いパフォーマンスをしてくれるというだけの意欲もある。
 ならば彼こそが、この徳川光成の望みを叶えるに相応しい者であるのだろう、と光成は考えた。


808 : 徳川光成&アサシン ◆yaJDyrluOY :2016/02/20(土) 18:18:19 2qTEqdVg0
「半蔵殿、儂が聖杯に望む願いはもう決まっておるが、おぬしは聖杯に何を願う?」
「……拙者は徳川家の為に持ちうる限りの全ての技を以って尽くす事を庶幾といたし申す。故に光成様の従者としてこの血に召喚された刻より、この服部半蔵、願いは成就したも同然に御座います」
「それはありがたい限りじゃのォ……ならば、このワシに課せられた天命を果たしたいのじゃ。
 その聖杯とやらならば、もはや世界中だけじゃない、人類史上の――戦いたくて、戦いたくて、戦いたくて、戦いたくて、たまらない奴らッ
 宮本武蔵vs佐々木小次郎? 劉邦vs項羽? 同じ時代だけじゃない、アーサー王と呂布なんてのもあるかも知れんッ
 そういった強者を求める奴らの夢を叶える壮大な結婚相談所を作るんじゃ」
 
 徳川光成が語る夢は本来ならばありえないこと、文字通り夢物語である。
 しかし、今実際に目の前に2~300年前の人物が存在しているのだ。
 歴史を学び、恋焦がれ、妄想し、現代で自分にできることならなんでもやった。
 そんな夢が叶う機会があるのならば、欲しなければ嘘というものだ。

「のォ半蔵殿、この徳川光成の願い、叶えてくださらんかな?」
「委細承知。伊賀忍軍、服部半蔵! 忠君の義に従い、此度の聖杯を光成様の手に納めて御覧にいれ申す!」
「……ありがたい」
 
 方や歴史上の猛者、方や忠君の子孫、互いに尊敬し合い、少なからず信頼も生まれている。
 問答の大まかな議題を話し終え、光成はここで一服と煙管を吹かす。
 
「よォしッッ そうと決まれば早速他のサーヴァント達も探さねばならんッ
 他のもの達も半蔵殿と同じく歴戦の猛者ならば、その戦いを見逃すわけにはいかんからのォ!」
「――では、拙者が偵察に……」
「いや、半蔵殿は出張らなくて良い。儂は徳川光成じゃ、こういう時に権力を使わんでは宝の持ち腐れというものじゃ。
 儂の持てる全ての情報網でサーヴァントとそのマスターを見つけ出し、一組に3人程度ずつビデオカメラを持って待機させるのはどうじゃ?
 半蔵殿は儂と茶でもシバイてごゆるりと待っておってくだされば良い」
「………………御意」


 徳川光成とは目的の為なら自分の権力や、命さえも出し惜しみしない男である。
 光成は半蔵を部屋に残して、自分のアイデアを部下達に知らせるためにさっさと出て行ってしまった。
 諜報や偵察の任務を得意とする半蔵はなんとも出鼻を挫かれた気分になってしまった。
 しかし、光成のそばで身の守りを最優先する事が大事だ、と半蔵は思い直し、そのまま霊体化して部屋から消え去った。
 誰もいなくなった部屋に残ったのは、遠くから聞こえてくる光成達の喧騒だけであった。
 ――余談だが、光成が聖杯戦争の話を部下たちに理解させ、任務に当たらせるのには相当苦労したようである。


809 : 徳川光成&アサシン ◆yaJDyrluOY :2016/02/20(土) 18:22:13 2qTEqdVg0
【クラス】 アサシン

【真名】服部半蔵@サムライスピリッツシリーズ

【パラメーター】
 筋力B+ 耐久C 敏捷A+ 魔力B 幸運C 宝具B

【属性】秩序・善

【クラススキル】
気配遮断:A+
 サーヴァントとしての気配を断つ。
 完全に気配を絶てば発見することは非常に難しいが、攻撃態勢に移るとランクが下がる。
 アサシンの場合保有スキルによって攻撃時でもある程度隠密性を保つことができる。

【保有スキル】
心眼(真):B
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
 また、生前半蔵の心眼に対し正体を隠し通せたものが極一部(黒子)を除いていないことから、同ランク相当の真名看破も備えている。

忍術:A+++
 忍者が使う体術や忍法などの技術をどれだけ極めたかを表わす。
 修得の難易度が高いスキルで、他のスキルと違ってAランクでようやく「修得した」と言えるレベル。
 攻撃態勢時に発生する気配遮断のランク低下を抑えることができる。

武器破壊:B
 忍術によって対象の武器を破壊する。生前の戦闘時に相手の武器を大量に破壊・弾き飛ばしたことに由来する。
 対象が人間の持ち物やをサーヴァントの持つ無銘な武器であれば確実に破壊できる。
 しかし宝具または相手サーヴァントに由来する重要な武器であれば、ほとんどは破壊できるが場合によっては弾き飛ばすのみになってしまう。
 後述する怒り爆発状態だと成功率が高まる。

【宝具】
『精神一到』
 ランク:C 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大補足:1人
 自身の感情を操作することで有利な立ち回りをする事ができる。また、精神系の干渉に強い耐性を得る。
 また、ある状況下において2通りの特殊な状態になることができる。
 『無の境地』
  死が迫っている状況や体力が低下している状況において、精神集中によって無の境地に至る。
  一定時間思考能力や身体能力が通常の4倍に増幅し、相手がスローモーションになったかのように感じ取ることができる。
  この状態の時、更に加速して相手に知覚されずに切り裂く”一閃”を使用できる。
  ”一閃”において加速するスピードと威力は、発動時点における無の境地の残り時間に比例する。
 『怒り爆発』
  相手の攻撃や精神集中で怒りを爆発させ、肌に赤みが増して一時的に興奮状態となる。
  怒りとともに周囲に爆風が起こり、攻撃力の上昇や技の複雑化等の効果を得る。
  また、この爆風が起こっている間はすべての攻撃を完全に無効化する事ができる。
  アサシンはその性格から怒るのに時間が掛かるが、一度怒ると冷めにくい。


810 : 徳川光成&アサシン ◆yaJDyrluOY :2016/02/20(土) 18:23:41 2qTEqdVg0
『禁忌 ”モズ砕き”』
 ランク:D〜B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
 相手の腕や肋などの骨を砕いた後、頭から地面に落として頭蓋骨を粉砕し絶命させる奥義。
 条件が一つ揃うごとに威力が跳ね上がっていき、3つ全て揃えると相手がいかなる状態であろうと問答無用で死に至らしめる。
 3つの条件とは、「相手の体力が精神力を下回っていること」「自身が怒り爆発状態であること」「自分が武器を持っていること」である。
 これを全て揃った状態で使用するとアサシンの言霊通りに相手の骨を砕き腕は裂け、最終的に身体が砕けて魂が消滅する。
 条件が揃っていない場合は単純なダメージを与えるのみだが、条件が一つ揃うごとに威力が跳ね上がっていく。
 

【weapon】
 忍者刀:無銘の一般的な忍者刀。武器が破壊される事が常であったため、効果なものは持たない。
 忍具:手裏剣や火薬等の忍術に使う道具。

【人物背景】
 徳川幕府に仕える伊賀忍軍の所属。幕府の要人から受けた密命を忠実にこなす。
 その正体は謎に包まれているが、忍としての腕は凄まじく、歴代の伊賀忍者の中でも五指に入る実力者と言われている。
 ”半蔵”の名前は代々服部家の長男が襲名するが、今回のアサシンは息子に”真蔵・勘蔵”を持つ歴代最強の半蔵と謳われた男である。
 常に身に着けている真っ赤なマフラーは忍びに適していない様に思われるが、師匠から貰ったものであるので外すことはない。

【サーヴァントとしての願い】
 徳川に使える事のみ。


【マスター】徳川光成@グラップラー刃牙シリーズ

【マスターとしての願い】
 全ての強者(英霊)達の戦いを観たいッッ
 彼らに思う存分闘争わせてやりたいッッッ

【weapon】なし

【能力・技能】
 世界トップクラスの財力を誇る日本最後の大物、無邪気で闊達としていながら人間的に熟達している。
 その権力から日本では彼に不可能は殆ど無く、実の姉や範馬勇次郎以外は彼に頭が上がらない。
 どんな強者を前にしても畏れない胆力を持っており、肉体的には貧弱だが武術格技を見つめ続けた洞察力は本部以蔵をも唸らせる程。

【人物背景】
 徳川家十三代目当主。日本有数の富豪であり、政治の場ではフィクサー(黒幕)としての高い権力を見せる。
 現役の総理大臣さえも畏まり恐縮するほどだが、自身を結婚相談所の職員だとしており、強者同士を引き合わせて戦いの場を提供することが自分の使命だと財産はおろか自分の命すらも惜しまない。
 強者達の戦いへの熱の入れようは凄まじく、範馬勇次郎と範馬刃牙の親子喧嘩を見た際は重度の癌によって蝕まれていた体が病巣一つ無い健康体になっていた程である。スゴイね人体

【方針】
 その膨大な情報網からマスターやサーヴァントを探しだして監視・記録する。
 戦闘は極力行わない。


811 : ◆yaJDyrluOY :2016/02/20(土) 18:25:10 2qTEqdVg0
投下終了です。
>>805ではトリップ付け忘れました。


812 : ◇68mVZXqw0 :2016/02/20(土) 18:45:03 xwIyTh3k0
お疲れ様です。こちらも投下します。


813 : エレン・イェーガー&バーサーカー :2016/02/20(土) 18:45:54 xwIyTh3k0
ー過去の時代、弱肉強食に立っていたと言われていたのは、人類・・・ではなかった。
人類を超える種族は、人を喰らい、滅ぼし、生き残った人類は三層の壁で仕切られた小さな世界で、
満足気に暮らしていた。
しかし、百年がたったある日、彼らはかつての恐怖を思い出した。
やがて、彼らは、かつて自分達が「進撃」された者達への「進撃」を開始していった。




「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・・・・!」
人々が自宅に着いている頃であろうこの時間に、
幾つもの燃え上がる炎が、黒く包まれた夜を赤く染めていく街中で、
エレン・イェーガーは走り続けていた。
さっきまでは聞き慣れなかった爆撃音も煙も、今ではすっかり景色に溶け込んでしまっている。




上空からは、絵本にでも出てきそうな格好をした騎士が、真紅の竜に乗り、炎を吐かせ上空を飛行し、こちらへ向かっていた。
この姿を見た瞬間から、彼はその異様な者から逃げていたどれくらい逃げたかも分からない、ただ彼は走り続けた。
エレンは今、ここから数百メートル先にある地下鉄への入り口に向かっている。そこにならあの竜も来られない。
腕時計が示している時間は、10時20分。大丈夫だ、間に合う、あと少しだ。そう考えながら走り続けようとしたが・・・


814 : エレン・イェーガー&バーサーカー :2016/02/20(土) 18:46:33 xwIyTh3k0

「うわっ!」
一瞬、右足に強烈な痛みが走ったと同時に、エレンの身体は宙を舞い、数十メートル先の地面に叩きつけられた。
「痛っでぇぇぇぇぇ!」
体中が、ズキズキと激しく痛む。それでもエレンは、上体を起こし、何とか立ち上がろうとするが、
右足が、立たない。いや、感覚すら感じられない。
それでも、背中を表にして倒れた自分の身体を返し、上体を起こそうとする。
這いつくばってでも逃げよう、そう考えながら。
「ハァ・・・ハァ・・・・」
やはり先程叩きつけられた時の痛みは効いていた、だが何とか起こすことは出来た。
自分が倒れた丁度
そして、感覚を失った自分の右足を見てみる。
きっと輪切りにされた人参みたいになっているだろう、そう思いながら。
だが、出血は見られなかった。
「・・・・え?」
代わりに傷口から出ていたのは、水蒸気の様に空へと上って行く粒子状の何かだった。
そして自分は、これに対し何らかの既視感を覚えた。
そして、辺りに建っている建物を見た時、何故か違和感が湧き上がってきた。
まるで、今まで貯めこんだ物が、全部溢れだしたみたいに。
何でこんなところに自分がいるんだ、という疑問に至った、その時だった。
さっきまで上空で竜の手綱を握っていた男性が、目の前に、ゆっくりと、淡々とした表情で、
こちらに近づいて来ていた。
「万事休す、か・・・。」
そう言って、騎士は腰から剣を引き抜き、
「済まないな、少年、ここで死んでくれ」
エレンの頭上に刃を構えた。
エレンは首にぶら下がっている自分の家の鍵を見つめ、心の中で呟いた。
俺は・・・ここで死ぬのか・・・・。





・・・・冗談じゃない。
ようやく調■■団に入れたのに。

■んだあいつらの■も取れていないのに。

まだ■ォー■・■リ■の奪還も成功していないのに。


そこにある■■室にも辿り着いていないのに。



まだ■人を全て駆逐し切れていないのに。


815 : エレン・イェーガー&バーサーカー :2016/02/20(土) 18:47:26 xwIyTh3k0

「畜生ォォォォォォォ!!」












そう叫び、本能的に左手を食いちぎろうとした瞬間、
不意に手が熱くなり、赤く光り出した。
赤い光と熱い熱には慣れかけているが、
そして、自分を殺そうとした騎士の様子もおかしかった。
驚いた表情をしながら、彼の赤く光る左手を見つめていた。
「・・・・・馬鹿な・・・彼が・・・マスターだと!?」
そして、エレンが噛もうとした手の甲に、赤い光が、
何かの紋章を描き、それを残して、消えた。



ー思い出した。全てを。
だが、この刺繍は一体何なのか、自分は何故ここにいるのか、
そして、目の前にいる騎士の言う「マスター」とは何なのか。今でも分からないことだらけだ。
こんな状況をどう打破すればいい。
「・・・マスターなのなら丁度いい、消えてもらうぞ!」
そんな中、騎士が再び剣をエレンに向けてきた。


ー刹那。


騎士の背後で大きな爆発が起きた。
エレンはやはり爆風で更に後ろに吹き飛ばされた。
今度は背中を地面にぶつけた。吹き飛んだのはこれで二度目だ。
度重なる痛みを堪え、地面に向いていた顔を再び前方に向けると、そこには
さっき自分を殺そうとした騎士はいなかった。




しかし、上空からは、


『■■■■■■!!』


人の咆哮が聞こえてきた。巨人の様な。



そして今度は暗い虚空に目を向けると、


そこでは、さっきの騎士があの竜に跨り、空中に浮かぶ一体の巨人・・・らしきものと戦っていた。
青と白を組み合わせたような色の鎧を全身に纏い、背中にある蝶の様な輝く翼をはためかせ、大剣を両手で持っていた。
巨人に見えるが、あれはどう考えても巨人ではない。鎧を纏った巨人なら戦ったことがあるが、武器を持った巨人など聞いたことがない。
仮に巨人だとしたらハンジ隊長が喜んで可愛がってくれそうだが。
そして白い巨人もどきは竜に向かい斬りかかろうと距離を詰めながら飛びかかって行き、竜が火を吐きながらそれを回避していく、そして鎧が再びそれを追いかけ、
竜は回避していった、一体と一騎の戦いは、その繰り返しであった。


816 : エレン・イェーガー&バーサーカー :2016/02/20(土) 18:49:10 xwIyTh3k0












「・・・あの少年のサーヴァントか・・・一体何のクラスなんだ?!」
エレンを襲ったサーヴァントは、宝具である竜に跨りながら、今自分が戦っている巨人の姿に困惑していた。
何なんだあのサーヴァントは。クラスも真名も見当が付かない。
先程は銃を使っているから、アーチャーなのか、それとも今は剣を振るっているからセイバーなのか。
しかしあれは、どう考えても異様すぎる姿だ。この竜と同等以上の大きさで、かつ全身を甲冑で隙間無く包み込んだ、
翼を持つ戦士など。
単なる「武装した巨人」ならスルト、ヒルデなどがいるが、翼を羽ばたかせ近代兵器を使う英雄は知らない、
(聖杯の知識にはそんな英雄は存ざ・・・
いや待て、中には鋼鉄の人型の搭乗型宝具を持つ英雄もいるとされていた。)

となるとクラスは自分と同じライダーか。しかし相変わらず真名は分からない。
そう考えれば説明がつく。となるとクラスはライダーが妥当か・・・・
そんな事を考えながら、ライダーは敢えて距離を取りながらあの白い全身装甲の巨人に向かい竜に火を吹かせ続けた。


ライダーの推察は、半分正解、と言っていいだろう。
人型の搭乗型装甲が彼の宝具、そこについてはビンゴだ。
しかし、クラスについては残念ながら間違いだ。
だが、彼は気づいていなかった。鎧の装着者に、理性など無かった。




「■■■■■■!」



巨人の心臓に当たる部分で手綱を握っている少年の目に、輝きは無かった。
有るのは、狂気。
家族を、愛した少女を、多くの仲間達を奪った「争い」に対する憎しみ。
争いを争いで終わらせる、血で血を洗う矛盾した正義。
それらを全て狂気に替えて、少年は愛機を操り続けた。
そう、彼のクラスは、「狂戦士」




どうにかさっきまで距離を取っていられたライダー。
しかし、どうやらここまでだ。
バーサーカーは咄嗟に剣をしまい巨大なライフルを取り出し、竜の炎を相殺させてしまった。
彼は狂っていても尚、エースパイロットとしての優れた操縦技術は失っていなかったのだ。
そしてその衝撃でライダーも竜も吹き飛び、バランスを崩してしまう。
この隙を、バーサーカーは逃さなかった。
すかさず剣を抜き、竜に向かい斬りかかる。
果たして竜の身体は真っ二つにされ、ライダーは地面へと落ちていった。
ライダーはマスターに念話で頼み、令呪で引き返そうと考えるが・・・
刹那、ライダーは光に包まれ、光が消えた後、そこにライダーの姿はいなかった。
上空には、手の平に仕込まれたレーザー砲を、さっきまでライダーがいた場所に向けていた
バーサーカーがいた。


自分が別世界に来てしまったことを知った少年は、まだ知らない。
自分を殺そうとした騎士を殺した甲冑の狂戦士が、自分の従者であり、
自分が、願いをかけた殺し合いに参加していることを。


人と、人を超えた存在。
互いを憎み合う二人の復讐者の少年は、互いに気づかぬまま今ここに、主従の交わりを結んだ。


ー未来の時代。人々は、「力」を求めた。
しかし、それをうまく扱うための「想い」が無かった。
故に、彼らの中に「憎しみ」が生まれた。
憎しみによる争いは憎しみを生み、それが新たなる争いを生んだ。
いつになったら、その連鎖は断ち切れるのだろうか。


817 : エレン・イェーガー&バーサーカー :2016/02/20(土) 18:52:20 xwIyTh3k0

【クラス名】バーサーカー
【真名】シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEED DESTINY
【性別】男
【属性】秩序・狂
【パラメータ】筋力A 耐久B 敏捷A+ 魔力E 幸運D 宝具C


【クラス別スキル】

狂化:C
魔力と幸運を除くパラメータを底上げするが、言語能力を失い、複雑な思考が出来なくなる。



【固有スキル】

開花された本能:A+
本能の種を割り、覚醒させる力。
自らのパラメータと知能を活性化させる。
このスキルは、他のクラスで呼んだ場合はEランクの狂化スキルを
付与させるが、本来なら狂化により無意味にされてしまうはずの戦闘用スキル
に+補正を加え、最大限に使用出来るようになっている。
長い時間発動はしていられないのだが、今回はバーサーカー
のクラスで呼ばれたため、その影響で常時発動していられる。
バーサーカーが狂っていてもその戦闘技術を失わなかったのは、
このスキルの恩恵を受けているためである。



直感:B+
気配を感じ取る能力。
敵の気配や行動パターンを感じ取ることが出来る。


騎乗:E
乗り物を乗りこなす才能。
バイクやモビルスーツなどなら
人並みに乗りこなすことが出来る。




【宝具】

「改革を護る運命の剣(デスティニー)」

ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:30 最大捕捉:10機

バーサーカーが生前愛用していた人型機動兵器「モビルスーツ」。
ギルバート・デュランダルが、自らが考案した「デスティニー・プラン」の
実行に合わせてロールアウトしたシン・アスカ専用のザフト最新鋭の機体。
「ニュートロンジャマーキャンセラー」による核エネルギーによる運用により、
消費する魔力は少ない。また、この機体及び装備は、魔力による
メンテナンスを可能としているが、消費する魔力はダメージに連動する。




【Weapon】

・「改革を護る運命の剣(デスティニー)」の装備一式


【人物背景】

オーブ共和国に生まれた遺伝子操作によって生まれた人間「コーディネイター」。
それでもごく普通の人間の生活をしていたが、コーディネイターと純粋に生まれた人間
「ナチュラル」の争いの戦火が中立国であるオーブにも渡り、避難しようとする中
流れ弾で両親と妹を失う。この後コーディネイターが住む人工惑星「プラント」に
移住。家族を見殺しにしたオーブと、それを導くアスハ家を憎んでいる。
やがて彼はプラントを統治する「ザフト」のアカデミーに入学、優秀な成績を修め卒業。
ザフトの新型兵器「インパルス」に乗り数々の戦績を手にした末にザフト特務部隊「FAITH」
の一員の座とザフトの新型兵器「デスティニー」を与えられ、実質ザフトのエースパイロットとなる。
心優しい性格だが反面真っ直ぐ過ぎる上に家族を失ったことが原因で心がやや荒んでおり、
情緒不安定な部分が多くアカデミーでの授業の態度も悪かったと言われている。




【聖杯にかける願い】

争いの無い世界を創りあげる。


【方針】

■■■■■ー!!


【備考】
「改革を護る運命の剣(デスティニー)」の装備、カタログスペックなどはウィキペディアなどをご参照ください。


818 : エレン・イェーガー&バーサーカー :2016/02/20(土) 18:53:26 xwIyTh3k0




【マスター名】エレン・イェーガー@進撃の巨人
【性別】男性

【能力・技能】

・立体機動
「立体機動装置」を利用した三次元運動。
立体機動装置を持ってきていないため、使用できない。



・巨人の力
強い感情と共に腕を噛み千切ることで、巨人に変身することが出来る。
圧倒的な身体能力と回復力、そして物質変換能力を持つが、
ただし、自我を保っていられることが難しい上に連続で変身するとそのたびに
だんだん小さくなる。また元に戻るには巨人のうなじに当たる部分から
自分の身体を誰かに取ってもらわないといけないため、容易に使用することは出来ない。
ただし、変身しなくても回復力だけは人間体でも相変わらずである。




【人物背景】

巨人から人々を守る3層の壁の内最も外側である「ウォール・マリア」に住む医師、グリシャ・イェーガーの息子。
幼馴染であるミカサ・アッカーマンやアルミン・アルレルトと共に壁の外に強い憧れを持ちながらも平凡な日々を謳歌していたが、
突然壁の外を超えて現れた超大型巨人によりウォール・マリアが破壊されたことで母を目の前で殺され、
それ以降巨人を一匹残らず駆逐してやると誓った。そして2年後に訓練兵となり、総合順位5位で卒業するが、
再び超大型巨人が襲撃した際、本能的に巨人へと変貌してしまう。しかし、それを兵団に見られたために
一時は化け物呼ばわりされることになるが、紆余曲折を経て調査兵団に入団することになる。
良くも悪くも実直な性格で人一倍強い精神力を持つ。その猪突猛進な行動と言動から「死に急ぎ野郎」と呼ばれている。


【聖杯にかける願い】

彼は聖杯戦争のことなど全く知らないが、もし望むとしたら巨人を消し去り、壁の外へ行くことであろう。



【備考】

エレンは11巻以降からの登場ですが、グリシャにかき消された記憶は未だ思い出していません。
また、服装は調査兵団の格好ではなく私服です。
細かい部分は各書き手様にお任せします。


819 : エレン・イェーガー&バーサーカー :2016/02/20(土) 18:55:07 xwIyTh3k0
以上で投下は終了です。


820 : ◇68mVZXqw0 :2016/02/20(土) 19:16:27 xwIyTh3k0
申し訳ございません、エレン・イェーガーの方針を書き忘れました。

【方針】
とりあえずは帰宅する。
出来ればここがどこなのか、一体何故自分がここにいるかが知りたい


821 : 輿水幸子&レスキュー ◆iB48HmRw.6 :2016/02/20(土) 21:08:23 yM3JthiE0
お疲れ様です
こちらも投下させていただきます


822 : 輿水幸子&レスキュー ◆iB48HmRw.6 :2016/02/20(土) 21:09:00 yM3JthiE0



――打ったか。
――打ったさ。

彼は打ったのだ。



サーヴァントというものは、世界という知性が記録した帳面を聖杯が覗き見て、勝手なフィルターを通して再現したものらしい。
とりわけ奇跡を起こし英雄と呼ばれる者は、そのお眼鏡に適いやすい。
奇跡というのは人を救うものかもしれないし、人を殺すものかもしれないし、時代を切り開いたり、人類の価値観を変える何かを見つけたり作ったり、
あるいはベースボールのの世界大会の9回に、逆転のセンター返しを放つというものかもしれない。
この場合、奇跡というのは結果である。有り得べからざるいくつもの奇跡を経過して残されたものもあるのかもしれないが、
奇跡とは可能性の極限小を抜けて辿り着く極限大の希少性を持つ物で、いくら重ねても極限はなので一緒くたに奇跡といってしまって構わないだろう。
人間ならざる巨大な知性ならば、あるいは観測する単位を広げて自明にできうるのかもしれないが、英雄の起こした奇跡を記録、語るのは人間である。


823 : 輿水幸子&レスキュー ◆iB48HmRw.6 :2016/02/20(土) 21:09:39 yM3JthiE0



「俺はレスキューだ。契約に従い、参上した」
「その契約というものがボクには何なのか理解できませんし、アナタもレスキューというより野球のユニフォームを着たおじさんじゃないですか」
「俺がここにいると迷惑かね」
「おじさんが唐突に女の子の部屋に現れると言うのは警察沙汰ですし、少なくとも今は着替えが出来ないので困ります」
「これが事件であるというのは間違いないな」

一日目。マスターに なった少女、輿水幸子は身支度をし、登校した。
サーヴァントも霊体化し、随伴する。

「出たのはいいですがアレ明らかにボクの部屋じゃないですし、というか、知らない家ですし、なんなのでしょう?」
「これが聖杯戦争というものらしい」
「ひえぇ!? 声が! 頭の中からおじさんの声が!」

レスキューは規則正しい。
夜明けと共に起きだして、一人でひたすら素振りをしては走りこむ。
いい加減飽きたところで霊体化し、マスターに随伴しうろつき、あるいはマスターが出掛けないならばうろつき回らない。
日暮れと共に再び素振りと走りこみを行った後、マスターが布団にくるまるのを見届ける。

「学校にも美城プロにも知らないヒトばっかりでなんだか疲れました」

布団の中で少女は言う。

「でも、ここが本当にボクの知ってる東京ではないドコか、っていうのは分かりました」

少女は布団の中で小さな体をさらに縮こまらせ、震えている。

「こんなにカワイイボクが困ってるのに、プロデューサーさんは何をやってるんですか……」

レスキューのサーヴァントから投げかけられる言葉は無い。
少女が嫌がるので、彼は律義に部屋の外に出ていた。
物理的な妨害により互いの声が届く事は無い。
霊体的には繋がっているのでその気になれば交信できるのかもしれないが、彼は屋根の上で熱心に素振りをしていたので、気が付かなかった。


824 : 輿水幸子&レスキュー ◆iB48HmRw.6 :2016/02/20(土) 21:10:19 yM3JthiE0




東京。
とある都市の名前でこの都市の名前。人が降るという話は寡聞にして知らないが、地理の試験にも必ず出る程に、誰もがみんな知っている。
世界有数のメトロポリスであるこの都市は、前を見るならビルが林立、横を見るならビルが視界を遮り、背後にはビルが構え、
空を見上げてもやはり視界のどこかにビルが闖入するといった有様で、それ以上に人間が視界に入る。
そんな中、昼の間、とにかく上を向き続けるのがというのが彼の仕事であり、サーヴァントとして与えられた使命だ。
昼に限られる理由は単純で、闇の中の落下物は見定めがたいからにすぎない。

空から降ってきた人間を打ち返したというのがレスキュー・チームの四番であった彼の持つ逸話であり、ファウルズという町に語り継がれる伝説だ。
それは、いつ、町のどこに降るともしれない人間に対して行われ、これは奇跡としか言い表わしようがない。
いつ、と言っても一応はおおよそ一年に一度という範疇はあるのだが、不定期であることには変わらず、
まして十字のメインストリートと、それを挟み立ち並ぶ百戸程の家屋、施設とひたすらに退屈で広大な麦畑の広がるファウルズの
どこに落ちるともしれない落下物を打ち返したのだから、とんだ奇跡である。
事実、その後のファウルズで落下する人間を打ち返したという記録は皆無であるし、ファウルズ以外でも皆無である。
そもそも人間というものは突然空から降って落ちてくる生物ではないし、レスキュー・チームはバットを持ち歩かない。
彼が所属していたのはレスキュー・チームであり、ベースボール・チームではない。
奇跡の記録はレスキュー・チームとしての活動のもので、残された記録はホームランでもヒットでもなく、ファウルだ。



レスキューの宝具というものは奇跡であり、そして彼は、ただ、起きた奇跡に対し副次的なものとしてここにいる。
世界と聖杯の手ですでに奇跡は成っているのだが、しかし、奇跡だけ起こしては、ルール的にも、見栄え的にも良くないので、
なんとなしに男にレスキューというクラスとマスターが与えられ、そんな彼はなんとなしに空を見上げている。
故に無銘。重要なのは奇跡で、後の形はなんでもいいのだろう。
付け加えるならば奇跡を緻密に再現するのは自殺行為にあたる可能性が高くなるので脚色されている。
ただ、身元不明の人間を打ち返したという有様のみが事実である。
なので無銘。彼は生きる時分に因果と結果を知りえたのかもしれないが、それは奇跡の再現という点においてはどうでも良い事だ。

オール。ライト。

逆に言えば、レスキューがいる以上、この聖杯戦争のいつか、どこかで、奇跡は起こったのだ。

カモン。

K・B・D。

カワイイボクと、野球、ではない。


825 : 輿水幸子&レスキュー ◆iB48HmRw.6 :2016/02/20(土) 21:10:51 yM3JthiE0

【クラス】レスキュー
【真名】無銘@オブ・ザ・ベースボール
【属性】混沌・善

【パラメーター】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:E 幸運:E 宝具:EX


【クラススキル】
医術:-
 救助活動には必須の技能。彼はレスキュー・チームの四番だ。
 
騎乗:-
 救助活動は緊急を要する。現場に迅速に駆け着ける技能は必須である。

【固有スキル】
肉体改造:E
 レスキュー・チームの四番として、素振りと走りこみは欠かせない。

【宝具】
『誰が為に棒に振る(オブ・ザ・ベースボール)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
 奇跡の再現により、聖杯戦争において「空から降る身元不明の要救助者を打ち返した」という事実を確定させる。
 聖杯戦争の性質上、身元不明の要救助者とは、今を生きる人間としての記録を持たないサーヴァントである。
 どのような理屈で人が降るのかは、彼は知り得たかもしれないし、得なかったのもしれない。
 知っていようがいまいが、人が降るという事象は彼が成す所ではなく、しかし、聖杯に呼び出されたサーヴァントである以上、
 聖杯戦争の期間中のいつか、聖杯戦争の会場のどこかで、サーヴァントが空から地面に対し、垂直に落ちてくる。
 当然いつ、どこから要救助者が降るかなどレスキューの知る所ではないが、再現という性質上、彼は必ず打ち返す。
 起きたという事実に時空や因果が介在する余地は無く、レスキューが拉致監禁されて手足をもがれダンボールに詰め込まれていようが、
 既に聖杯戦争から脱落していようが、彼自身が降る事になろうが、彼は現場に辿り着き、打ち返す。
 結果は残された事実から逸脱する事は無く、どのような物理耐久力、不死性、奇跡の逸話を持ち合わせようが、
 要救助者は決して救われることはなく、助かることもない。
 この奇跡の再現の後、彼はバットとクラスを失う。

【weapon】
バット。

【人物背景】
円城塔著作の短編、「オブ・ザベースボール」の主人公。
おおよそ年に1度程度、人が降る事で有名な町「ファウルズ」のレスキュー・チームの四番。ベースボール・チームではない。

【サーヴァントとしての願い】
何かを救助する。

【マスター】
輿水幸子@アイドルマスターシンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
まだ聖杯戦争に理解を示していない。

【能力・技能】
世界で一番カワイイアイドル。

【人物背景】
アイドル。14歳。
世界で一番カワイイ。


826 : 名無しさん :2016/02/20(土) 21:11:41 yM3JthiE0
以上で投下を終了させていただきます


827 : ◆iB48HmRw.6 :2016/02/20(土) 21:21:28 yM3JthiE0
申し訳ございません
>>824の最後の節に脱字がありました

K・B・D。

カワイイボクと、野球、ではない。

の部分は、正しくは

K・B・Y・D。

カワイイボクと、野球、ではない。

でした
本当にすみませんでした


828 : 夢幻の永遠少女 ◆PatdvIjTFg :2016/02/20(土) 22:14:37 vvBO5dOY0
投下します


829 : 夢幻の永遠少女 ◆PatdvIjTFg :2016/02/20(土) 22:14:49 vvBO5dOY0



闇が夜の主役で無くなってからどれほどの年月が経ったのだろう。
下品で扇情的なネオンライトは、かつてあったはずの歌舞伎町の闇夜を殺し尽くし、光が全て平等では無いことを表すかのように、月と星の微かな光を消し去った。
昔は良かったなどと言うつもりはない――誰がこの平成の世になって、ガス灯を望むだろうか。
全ては強い輝きの中に消えるだけ、時代の流れとはそういったものだ。
昔を思い出すものが無くなってしまうのが悲しい、それだけだ。

「たまにの、浦島太郎について考えるんじゃ」
「浦島太郎と言うと、助けた亀に連れられた」
本来ならば客で賑わうであろう時間帯であったが、稼ぎ時などという言葉を忘れてしまったのか、そのバーには客が二人しかいなかった。
黒ずくめの青年が一人とショートカットの少女が一人、カウンターに隣り合って座っている。
魔性の美――その言葉が相応しいであろう、その青年は男――否、人間というにはあまりにも妖しい色気を放っていた。
それに対しては、少女の美は常識の範疇に留まる。
最も、その存在そのものが夜のバーに相応しくないということを除けば、であるが。
如何に見方を変えたとしても彼女を成人、否――大学生としてすら視ることは不可能であろう、どう足掻いても高校三年生が良いところだ。
だが、変に老練した雰囲気があり、背筋を正して会話をしたくなるような、不思議とそのような気配を持った少女であった。

「開けてはならない玉手箱と言うがの、浦島太郎は玉手箱の中身がわかっていても……それでも開けてしまうのではないか」
「それはつまり、独りで生きるぐらいならば老いて早々に死んでしまいたいと?」
「否……」

そう言って、少女は目の前のカクテルを軽く口に含む。アルコールが入っているかを気にする必要はなかった。
懐かしい味のする酒だったが、彼女は今までにそのようなカクテルを飲んだことはなかった。
その懐かしさは、きっと何一つとして変わらない隣の男がいる所以だろう、と少女は思った。

「空っぽになってしまった数百年を、無理矢理にでも埋めてしまいたいのじゃ。失ってしまったものに間に合うと信じて……」
「……成る程」
男もまたカクテルを呷り、そして少女へと向き直った。
最後に会ったのは、大正時代であったか、昭和時代であったか、しかしかつてあった姿のままの少女を見た。

「あなたは、玉手箱を開けたいのですか?」
「……わしが開けなくても、わしの身体が勝手に開けてしまうよ」
少女もまた、男を見た。
かつて日本国が大日本帝国であったころの思い出、しかし目の前の男は思い出から飛び出してきたかのように何一つとして変わっていなかった。

「あなたは何一つとして変わらないな、首藤涼さん」
「あなたもね、帝都の小悪魔さん」


830 : 夢幻の永遠少女 ◆PatdvIjTFg :2016/02/20(土) 22:15:09 vvBO5dOY0



首藤涼という少女の身体は、何時の頃からか老化という現象を忘れてしまっていた。
その始まりが明治であったか、大正であったか、彼女すらも覚えてはいないだろう。
彼女の中にあるものは具体的な年代ではない、思い出だけだ。

友人は首藤涼よりも先に老いて、先に死んでしまった。
首藤涼は友人と初めて出会ったその姿のまま、葬儀に参加した。

友人の子どもは首藤涼よりも大きくなり、先に老い、先に死んだ。
首藤涼は子どもを生まなかった。

かつて、恋人がいた。
恋人が歳を重ねても、首藤涼は出会った頃の姿のまま。
恋人が歳を重ねても、首藤涼は出会った頃の姿のまま。
恋人が歳を重ねても、首藤涼は出会った頃の姿のまま。

恋人は首藤涼を追い越して、それでも首藤涼は出会った頃の姿のまま。
恋人は首藤涼と人生を歩むことは出来ず、それでも首藤涼は出会った頃の姿のまま。
恋人は新しい恋人を作り、それでも首藤涼は出会った頃の姿のまま。
恋人は人生を同じ速度で歩める家族を作り、それでも首藤涼は出会った頃の姿のまま。
恋人は首藤涼よりも先に死に、それでも首藤涼は出会った頃の姿のまま。

首藤涼は恋人と出会った頃の姿のまま、独りぼっち。


首藤涼が夢幻魔実也と出会ったのは、やはり東京が帝都と呼ばれていた時代のことだった。
彼は帝都でも有数の探偵であり――そして、文明の時代にあって、霊や妖怪といったオカルティズムの怪物を相手取れる有数の人物であった。

しかし、彼女と彼が遭遇したのは老化しない病――ハイランダー症候群が関係していたわけではない。
つまらない怪現象が彼と彼女を巡りあわせたに過ぎない。

夢幻魔実也という男ならば、あるいは自分と同じように死ぬその日まで、老いというものを知らぬままに、共に歩めるかもしれない。
首藤涼がそう思ったことは否定出来ない。
だが、今となっては自分の人生の速度で歩んでしまった恋人が忘れられず、そして、自分自身が普通の人間の速さで生きることを諦めきれなかった。
故に、夢幻魔実也とは何事も無く、ただその事件だけの付き合いで終わった。

だが、まさか別れ際に彼の言った「また、お会いしましょう」という言葉が現実のものになろうとは。
そして、今日が思い出の中の昨日であるかのように、彼と酒を飲み交わすことになろうとは。

帝都での怪異といい、自身がかつて身を置いた裏社会の事といい、そして10年黒組の事といい、
長く生きようとも、世に不思議の種は尽きぬものである。


831 : 夢幻の永遠少女 ◆PatdvIjTFg :2016/02/20(土) 22:15:23 vvBO5dOY0


「聖杯とは叶わぬ望みのない願望機、あなたが望むならば……今からでも普通の身体に戻ることも、あるいはあの時代からやり直すことも出来るでしょう」
「……ああ、黒組よりはよっぽどオカルトで、現実味が無くて、しかし信用したいよ」
そう言って、首藤涼は自嘲の笑みを浮かべた。
とある少女を暗殺することによって得られる報酬は、最高位の医療チームにより自身の治療。
それに対し、あまりにも非現実的な聖杯というオカルト――そして、それを抵抗なく受け入れている自分。
いや、非現実的というのならば、自身の身体こそがとっくにそうであるのだ。

「じゃが、治すならば身体だけで良い……今更になって過去を直そうなぞとは思わん」
「いいのですか?」
「思い出は……」
彼女の脳裏に過ったのは、かつての恋人と過ごした日々であり、
あるいは、彼女が普通に老いるのならば、ありえたかもしれない、昨日だった。
目を閉じる。
酒に酔ったわけではない、ただ思い出に浸りたかった。

「美しいまま、それだけでよい」

【クラス】アサシン
【真名】夢幻魔実也@夢幻紳士(幻想篇、逢魔篇、迷宮篇)
【属性】中立・中庸

【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:D 魔力:A++ 幸運:A 宝具:A

【クラススキル】
気配遮断:B
 サーヴァントとしての気配を絶つ。
 完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。

【固有スキル】
女難の相:E-
 若旦那、あンた確かに女難の相だが
 難は違わず、女の方だ。

夢幻の魔:D(EX)
 夢幻魔実也としての能力そのもの、催眠術、影術、過去視、話術、詐術から、
 時間軸の超越、精神ないしは固有結界への侵入、冥府への侵入、その他諸々の能力、
 ある種、夢幻の願望機であるため、サーヴァントとして召喚された身ではその能力を十全に発揮することは出来ない。

【宝具】
『幻想紳士』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
あたかも本物であるかのように振る舞う幻想としての夢幻魔実也、周囲からは多重人格あるいは精神症における幻覚として扱われる。
常に霊体化した夢幻魔実也の分身であり、憑依相手がいなければ物理的な影響力を持たないが精神世界ないし固有結界への介入能力を持つ。

『逢魔紳士』
ランク:A 種別:対妖宝具 レンジ:10 最大補足:4人
アサシンが特定の建造物に長時間留まる際に自動的に発動する宝具。
その建造物を陣地作成:D相当のアサシンの結界として扱い、それと同時にアサシンと敵サーヴァント、そして魔力D以上のマスターのみを襲う妖怪を召喚する。
アサシン自身の力ではなく、アサシンがいる世界のために誂われたルールであり、この宝具の発動に魔力は必要としない。

【人物背景】
主人公。長髪の美青年。黒い背広と山高帽、上着に黒いインバネスを着た謎めいた人物。
人の心に幻像を見せ、怪異妖怪をも化かし返す超人的な能力を持つ。
鷹揚で特に女子供に優しいが、悪鬼・悪人に容赦はない。罪の無い悪戯で他者をからかい愉しむ癖もある。

【サーヴァントとしての願い】
???

【マスター】
首藤涼@悪魔のリドル(漫画)

【マスターとしての願い】
普通に年を取って死ぬこと。

【weapon】
特になし。原作において爆弾付き首輪を武器として使ったことがあったが、涼自身に製作技術があるかは不明。

【能力・技能】
不老・長命(ハイランダー症候群に起因するもの)
暗殺者であるが、詳しい手口や能力は不明。

【人物背景】
白髪が特徴的な少女。達観した性格や特徴的な口調(一人称がワシ、語尾にじゃをつけるなど)が目立ち、精神年齢は相当高い様子。
彼女はハイランダー症候群という不老・長命の病にかかっており、実際はかなりの高齢(少なくとも100歳以上)。

原作では暗殺の報酬として「普通に年を取って死ぬこと」を希望しており、自らの不老・長命を好ましく思っていないようだ。
しかし確実に暗殺を成功させることが出来る場面で敢えてゲームを仕掛けたりと、自らの願いに強い執着はないようである。
(希望を叶える方法が「全世界の高名な医師に研究を進めてもらい治療法を見つける」という不確実な方法だったために本気にならなかったという説もあるが、あくまで考察の一つ。)

過去に一つ年下の大切な男性がいたが、いつまでも年を取らない涼と段々と老いていく男性は最終的に離れてしまうことになる。
別れから数十年経った今でもその男性の誕生日を重要なパスワードとして設定したり、未練は完全に断ち切れていないようだ。

参戦時期は黒組参加以降、彼女の誕生日よりも前

【方針】
聖杯の入手を目指す……?


832 : 夢幻の永遠少女 ◆PatdvIjTFg :2016/02/20(土) 22:15:35 vvBO5dOY0
投下終了します


833 : ◆NIKUcB1AGw :2016/02/20(土) 22:49:44 NV5VrbrE0
>>820
トリップの付け方を間違ってますよ
トリップの頭の菱形が白抜きになっているのは表示されたトリップをコピペした場合なので、本人証明の役割を果たしません
毎回トリップキーを入力するようにしてください

では、自分も投下させていただきます


834 : うちはサスケ&アーチャー ◆NIKUcB1AGw :2016/02/20(土) 22:51:15 NV5VrbrE0
その部屋には、兄弟の写真が飾られていた。
兄も弟も屈託のない笑顔を浮かべており、仲のいい兄弟であることがうかがえた。
だがこの瞬間、兄の顔めがけて刃物が突き立てられた。
突き立てたのは、写真に写る弟。
しかしその表情は、写真の中の笑顔とはかけ離れた、怨嗟に満ちたものだった。


◆ ◆ ◆


警察署長の父と、主婦の母。そして海外留学中の兄。
大好きな家族に囲まれた、幸せな日々。
そんな甘い幻想に浸っていたさっきまでの自分に、腹が立つ。

記憶を取り戻したうちはサスケは、怒りに震えていた。
忍者としての習性か大声を出すことは抑えているが、握りしめた拳にこもる力がいっこうに緩まない。

(落ち着け……。まずは状況の確認だ。
 ここはどこだ。いったい何が起きた)

ある程度頭が冷えてきたところで、サスケは今自分が置かれた状況について考え始める。
先ほどまでの自分は、この東京という街で暮らす中学生という記憶を植え付けられていた。
本来の記憶を取り戻した今でも、その記憶は残ったままだ。
強力な記憶操作の術をかけられていたことは間違いないだろう。
次に、この街はいったいなんなのか。
幻術にしては規模が大きすぎるし、細かすぎる。
これほどの幻術を使えるのはそれこそ憎き兄くらいだろうし、そもそもここまでやる必然性がない。
つまりここは、実際に存在する街だと考えるのが妥当だ。
しかしかなりの大都市であるにもかかわらず、「東京」という地名はサスケの記憶にはない。
よほどの辺境の地なのか、それとも……。

「ダメだな、情報が少なすぎる……」

溜息を漏らし、サスケは椅子に腰を下ろす。
その時、突如として彼以外の声が部屋に響いた。

「教えてやってもいいぞ」
「誰だ!」

反射的に、サスケは現れた人影にクナイを投げつける。
それはたしかに命中した。
だがクナイは弾かれ、攻撃された男は平然と立っていた。

「何……?」
「落ち着け。そんなものでは、俺たちサーヴァントに傷を負わせることはできない」
「サーヴァントだと? なんだそれは。俺が記憶をいじられてここに連れて来られたことに、何か関係あるのか?」
「落ち着けと言っているだろう。妙な真似をしなければ、全部話してやる。
 俺はお前の味方だからな。今のところは、だが……」

無表情を貫いたまま、男はそう告げた。


835 : うちはサスケ&アーチャー ◆NIKUcB1AGw :2016/02/20(土) 22:51:59 NV5VrbrE0


◆ ◆ ◆


「それが聖杯戦争、か……」
「ああ、そしてお前と組むことになったアーチャーのサーヴァントが、俺というわけだ」

数十分後、サスケはアーチャーを名乗る青年から、聖杯戦争に関する知識をあらかた教えられていた。

「どんな願いでも叶えてくれるとはな。まさに、俺におあつらえ向きじゃないか」
「叶えたい願いがあるのか」
「ああ……絶対に殺さなきゃいけない男がいる」

サスケの手が、再び拳を握る。

「殺したい理由は?」
「復讐だ。その男は俺の両親を殺し、一族を皆殺しにした……!」

決して忘れることのできない光景が、サスケの脳裏に再生される。
優しかったはずの兄が突如として一族を壊滅させ、両親までも手にかけたあの日。
あの悪夢が、サスケを復讐者へと変えた。
兄・うちはイタチを殺す。それがサスケの人生における、ただ一つの目標だった。

「本当にどんな願いでも叶うというのなら、あいつを直接殺すことも可能だろう。
 だが、それじゃいくら何でもあっけなさ過ぎる。
 あいつを上回るだけの力を手に入れて、俺自身の手で殺す……!」
「復讐か……。共感はしないが、まあまともな理由だな。
 付き合うには十分だ」

言葉の節々に殺意がにじむサスケとは対照的に、アーチャーは無表情のままだ。
その振る舞いからは、感情というものが一切感じられない。

「さて……一通り確認はしたし、名刺代わりに俺の能力を見せておこうか」

ふいにアーチャーは部屋の中を移動すると、無造作に置かれていたティッシュを一枚取る。
そしてそれを丸め、手のひらに乗せた。
怪訝そうな表情を浮かべるサスケの前で、アーチャーはもう一方の手で丸めたティッシュを軽く押す。
その瞬間、ティッシュは猛烈な速度でサスケの脇をかすめ、壁にめり込んだ。

「…………!」

サスケは絶句していた。
能力そのものに驚いたというのもある。
だがそれ以上に、気を抜いていてまったく反応できなかった自分の迂闊さに腹が立っていた。

「これが俺の能力であり、宝具。『狙撃手(スナイパー)』だ。
 お前がくだらない理由で聖杯を狙うようなら、これで頭を撃ち抜いてとっとと帰るつもりだったが……。
 欲に駆られたバカではないようだからな。力になってやろう」

サスケの様子を気にすることもなく、アーチャーは淡々と告げる。
その態度が、サスケを余計にいらだたせた。

「ずいぶんと上からものを言ってくれるじゃねえか……。
 いいぜ、せいぜいこき使ってやるよ」
「ああ、やってみるがいい。楽しみにしているぞ」

アーチャーの顔に、初めて笑みが浮かぶ。
だがそれは、凍てついた氷の微笑だった。


836 : うちはサスケ&アーチャー ◆NIKUcB1AGw :2016/02/20(土) 22:53:04 NV5VrbrE0

【クラス】アーチャー
【真名】刃霧要
【出典】幽遊白書
【属性】中立・中庸

【パラメーター】筋力:E 耐久:E 敏捷:D 魔力:C 幸運:B 宝具:B

【クラススキル】
対魔力:D
魔術に対する抵抗力。
Dランクでは、一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

単独行動:C
マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
マスターを失っても、Cランクならば1日は現界可能。

【保有スキル】
ニヒリスト:B
感情の起伏に乏しく、他者の熱狂にも当てられない。
感情に作用するスキル・宝具の効果を受けづらい。

千里眼:E
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。ランクが高くなると、透視、未来視さえ可能になる。
アーチャーの場合は、狙撃手としての目のよさを表している。


【宝具】
『狙撃手(スナイパー)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1-200 最大捕捉:5人
アーチャーが生前持っていた異能が、宝具となったもの。
無機物に霊気(魔力)を注ぐことで「弾丸」とし、何らかの力を加えることで射出する能力。
その威力は消しゴムの欠片にも、本物の銃弾に匹敵する殺傷力を持たせられるほど。
自動車などの大きなものも「弾丸」にできるが、質量が大きければそれだけ魔力の消費も大きくなる。
また相手の体に触れることで、「死紋十字班」という刻印を施すことができる。
レンジ内にこの刻印をつけた者がいる場合、「弾丸」は命中するか破壊されるまで相手を追尾し続ける。

【weapon】
拳銃

【人物背景】
人間界と魔界をつなげる「界境トンネル」を開こうとする仙水忍に協力した、能力者の一人。
仙水からは信頼されていたようで彼と行動を共にすることが多かったが、
仙水の思想に共感している様子はなく、非日常の刺激を求めていただけのようである。
冷静で表情の変化が少ないが、動物虐待に対し不快感をあらわにするなど全くの無感動気質ではない。
仙水の計画を阻止しようとする幽助たちとの戦いでは、自分の能力を活かし幽助を一方的に攻撃するものの、
突如現れた飛影に後ろから刺され戦闘不能に。
しかし急所を外されていたため、一命はとりとめた。
事件解決後は元の生活に戻るが、高校卒業と同時に失踪する。

【サーヴァントとしての願い】
暇潰し。

【基本戦術、方針、運用法】
完全な狙撃特化型アーチャー。宝具を使い、相手の射程外から攻撃するのが基本戦法となる。
近距離戦でも攻撃力が落ちるわけではないが、相手次第では一撃食らえばお陀仏のもろさなので極力避けた方がいい。


837 : うちはサスケ&アーチャー ◆NIKUcB1AGw :2016/02/20(土) 22:54:29 NV5VrbrE0

【マスター】うちはサスケ
【出典】NARUTO

【マスターとしての願い】
イタチを殺せるだけの力を手に入れる。

【weapon】
手裏剣などの忍具一式

【能力・技能】
○忍術
体内で練り上げた「チャクラ」と呼ばれるエネルギーにより、様々な現象を起こす術。
サスケは基本的な忍術に加え火遁の術を数種、そして雷遁を用いた必殺の突き「千鳥」を修得している。

○写輪眼
特定の一族だけが使える「血継限界」という分類に属する術。
うちは一族だけが発現させることのできる、特殊な瞳。
成長させれば様々な効果を持つが、現時点のサスケではまだ他者の技のコピー程度しかできない。

○呪印
邪悪なる忍者・大蛇丸に施された刻印。
サスケの感情が高ぶると彼の体に広がり、一時的に彼の戦闘力を強化する。
しかしその代償として、チャクラの消耗が非常に激しくなる。

【人物背景】
木の葉隠れの里の下忍。
名門・うちは一族の出身だったが、幼い頃に実の兄であるイタチがサスケ以外の一族を全て殺害。
イタチはそのまま里を抜けたため、うちは一族最後の一人となってしまう。
それ以来兄を殺すことを心に誓い、そのための強さを求め続けてきた。

今回はイタチに月読で倒され、入院していた時期からの参加。

【方針】
聖杯狙い。


838 : ◆NIKUcB1AGw :2016/02/20(土) 22:55:37 NV5VrbrE0
投下終了です


839 : ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/21(日) 01:13:18 3lFQj5T.0
投下します。


840 : ジョセフ&アサシン ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/21(日) 01:14:02 3lFQj5T.0


「おい、チビ野郎」


少年は、弱者だった。
ただ奪われ、怯えることしか出来ない弱者に過ぎなかった。
怯える少年を見下ろすのは、下衆な笑みを浮かべる若者達。
所謂「不良」と呼ぶべき人間達だ。
人気の無い路地裏で、少年は不良に囲まれていたのだ。


「お前さぁ、金は?まだ払って貰ってないんだけど」


不良の一人が少年に顔を近づけながら威圧的に言う。
少年は怯えながら不良を見上げる。
不良達にとって、少年は「金蔓」だった。
常に気弱でおどおどとしていて、その上何も出来ない。
カモにするには丁度いい相手だったという訳だ。
それ故に少年は無慈悲な簒奪の対象となる。
不良達に金を巻き上げられる被害者となってしまったのだ。

「ご、ごめんなさい…!今月はちょっと厳しくて…
 その……あの額は……流石に……!」

少年は俯き、おどおどと答えた。
少年は不良達に幾度と無く「友達料金」を払っていた。
友情の証。友達としての信頼。
そんな嘘っぱちを吐きながら、不良は少年から金を絞り取り続けていたのだ。

時間と共に不良達は少しずつ過激に、更に傲慢になっていった。
月日の経過と共に不良達は料金を釣り上げていった。
最早少年には払い切れない額となるまでに。


直後、少年が殴り飛ばされた。
不良の一人が手を出したのだ。


「友達料金払えないんならさぁ、もう友達じゃなくなっちまうんだよ!
 いいの!?友達じゃなくなってブチのめされたいの!?」

壁に叩き付けられた少年の胸倉を、殴り飛ばした不良が掴む。
脅し文句と言わんばかりの言葉を怒声と共に吐き出す。

少年は絶望した。
口答えなんてした所で、無駄なのだと。
彼らは徹底的に自分から搾り取るつもりなのだと。

全てを諦めようかと思った。
もう、どうせ何をやっても無駄なのだから。
そのまま少年が、素直に金を払おうとした。
その時だった。



「ヘイッ!そこの兄ちゃん達!」



どこからともなく、軽快な声が聞こえてきた。
不良達や少年が視線を向けた先に居た者。
それは大柄な体格を持つ、外国人の青年だった。


841 : ジョセフ&アサシン ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/21(日) 01:15:12 3lFQj5T.0

「そのおチビくんさぁ、俺の親友なんだよねェー……
 だからさぁ兄ちゃん達、そいつのこと放してくんねえかなぁ〜〜〜?」


突然現れた外国人に、不良達も少年も唖然とする。
こいつは一体誰なんだ。
当の外国人を除き、この場に居る全員がそう思っていた。
その態度は何処か気さくで、悪く言えばおちゃらけている。
しかし、その容貌は不良達を警戒させるには十分だった。
190cmを超える身長。屈強な肉体。見慣れぬ肌の色。
小柄な日本人にとっては未知の風貌であり、異様とも言える存在だ。
不良達が僅かにでも怯むのは無理も無い。


「……ッ、何なんだよテメェは?」


そんな中、気性の荒い一人の不良が外国人の前に躍り出る。
体格で勝る外国人を見上げ、鋭い目付きで睨みつけたのだ。
外国人は真顔で目の前の不良を見下ろす。


「何?正義のヒーローごっこ?悪いけどさ、ぶちのめされたくなかったら―――――」


そう言って、不良が外国人の胸倉を掴もうとした瞬間。
不良の身体が、勢い良く吹き飛んだ。
外国人が容赦なく顔面に拳を叩き付け、殴り飛ばしたのだ。
不良はそのまま地面を転がり、呆気無く気絶する。


「そいつを『放せ』っつったんだよ!このスカタン共がッ!」


外国人は声を荒らげ、残る不良達に言い放つ。
不良達は外国人の力に動揺し、怯み出す。
目に見えて統率が乱れている。
今にも逃げ出しそうな様子だ。


「こ、この野郎ォッ!!」


そんな中で、一人の不良が――――懐からナイフを取り出した。
柄を握り締め、そのまま勢いよく外国人へと向かって駆け出したのだ。
仲間の静止も聞かず、不良は突進していく。


対する外国人は、平然と待ち構えていた。
拳を構えることも無く、武器を取り出すことも無く。
あるいは、逃げ出すこともせず。
突進してくる不良を真っ直ぐに見据えた。
そして、彼がゆっくりと取り出したのはコーラ入りのペットボトル。


瞬間。
ペットボトルの容器に詰められたコーラに、奇怪な電流が迸る。
直後に不良は目の当たりにした。
コーラが水鉄砲の如く噴射する様を。
コーラの勢いに乗せられ、ペットボトルの蓋が飛ぶ様を―――――!


842 : ジョセフ&アサシン ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/21(日) 01:15:48 3lFQj5T.0


「ぎゃあッ!!?」


素っ頓狂な声と共に、不良はナイフを落とした。
ペットボトルの蓋が弾丸の如く飛び、ナイフを『弾き飛ばした』のだ。
ナイフを弾かれた衝撃によって腕が痺れ、不良は驚愕の表情を浮かべる。
対する外国人は、余裕の態度。
ペットボトルの中に余ったコーラを、一気にがぶ飲みし始めた。

何が起こったのか解らない。
何なんだこいつは。
一体何をしたんだ。
不良達の表情はそう言わんばかりに青ざめていた。

目の前の外国人は、ヤバい。
不良達は本能的にそう理解した。
敵わぬ相手を前に混乱し、その場から必死に逃げ出したのだ。


「ヘッ!ザマーみやがれ!」


まるで悪戯小僧の様な表情でにししと笑い、外国人は不良を見送る。
そんな外国人を、少年は唖然とした様子で見つめていた。

彼はおちゃらけた態度で瞬く間に不良を撃退した。
少しばかり、怖いと思っていた。
だけど。
彼は、不良に金を巻き上げられている自分を救ってくれた。
名前も顔も知らない自分を、助けてくれた。

少年にとって、目の前の外国人はヒーローだった。


◆◆◆◆


843 : ジョセフ&アサシン ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/21(日) 01:16:19 3lFQj5T.0


外国人――――ジョセフ・ジョースター。
祖父は貴族の家系だったと言う英国人。
その性格は貴族には程遠く、おちゃらけた若者と言った風体だ。
他者を茶化す様な言動も多く、軽い人間と見られがちだ。

しかし、その胸の内には熱い正義感が秘められていた。
先程、彼は見ず知らずの少年を助けた。
ただ偶然少年が囲まれているのを目にしたから、それに割り込んだのだ。
彼にとっては得にもならない人助けだ。
だが放ってはおけなかった。見て見ぬふりをするのも後味が悪い、というのもある。
何より彼が秘める『黄金の精神』が、踏み付けられる弱者を見捨ててはおけなかったのだ。

さて、ジョセフ・ジョースターという男の人となりを語った所で一つ。
ジョセフにはある悩みがある。
それは――――――。


(ったくよォーーー……ここは一体何なんだ?
 俺は確かエリナおばあちゃんと一緒にニューヨークに来てたはずだよな…)


自分が『全く見知らぬはずの日本の街に居る』ということだ。
ジョセフはアメリカに飛んだ英国人である。
当然ながら日本に縁など無いし、訪れた記憶も無い。
だというのに、今の自分は日本に住むフリーターの外国人として存在している。
少し前までジョセフはそのことに何の疑問も抱かず生活していた。

しかし、ある時突然ジョセフは思い出した。
自分の素性を。自分が何者であり、何をしてきた人間なのかを。

更に今の日本は20XX年だと言うではないか。
自分の記憶が正しければ現在は1938年のはず。
まさか自分はタイムスリップをしたと言うのか。
何故か縁のない日本で暮らしている自分。
認識している西暦のズレ。
奇妙なことが起こりすぎている。

不良を撃退した後、ジョセフは一人そのことを悩んでいた。
市街地を歩きながら、一人悩み続けていた。
はっきり言って、自分はとっととニューヨークへ帰りたい。
その為に空港への移動も試したが、タクシードライバーは聞く耳持たずだ。

ジョセフはこの街の異常性に気付いていた。
時間のズレのみならず、『東京都から出る為の行動』の一切が妨害される。
まるで自分をこの街に閉じ込めているかの様に。
一体此処は、何なんだ――――?


844 : ジョセフ&アサシン ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/21(日) 01:17:14 3lFQj5T.0

「…あ?」


唐突にジョセフは足を止める。
市街地を歩いている最中、ジョセフはあるものに気付いた。


(何だこりゃあ…高級テーラーか?
 つか、こんなトコに高級テーラーなんかあったっけ?)


彼が目にしたのは、高級紳士服店―――テーラー。
この街は日本に住むジョセフにとっての主な行動区域だ。
街の地理はある程度把握してるつもりだし、目立った店も記憶している。
だというのに、この高級テーラーは『全く記憶にない』のだ。
更に不思議なことに―――通行人は高級テーラーに見向きもせず素通りしている。
突然出現した高級テーラーの存在を全く疑問に思っていないのだ。
まるで初めからそれが存在していたかの様に、受け入れている。
一体何がどうなっているんだ。そうジョセフが思った時だった。


「御機嫌よう。君を待っていた」


突如として、ジョセフに声を掛ける者が現れた。
ジョセフが視線を向けた先に存在していた者。
それは、高級テーラーの壁を背に立つ白人男性だった。
年齢は50代程か。整えられた髪、小綺麗なスーツ、知的な眼鏡といった風貌。
その出で立ちはさながら英国紳士とでも呼べるものだ。


「失礼ながら、先程の少年を助ける一部始終を見させてもらった。勇敢な青年だ」
「ちょっと待て、アンタ一体何者だ?突然話し掛けてくるどころか、堂々と覗き見宣言とはよォー!」


一方的に語りかけてくる紳士。
対するジョセフは少し苛立った様にそう吐き捨てる。
紳士は少しばかり思考した後、手招きをしながら高級テーラーの中へと入っていく。
店の中に入れ、とでも言いたいのか。
ジョセフは眉を顰めながら、ずけずけと入店をする。

紳士服が綺麗に並べられた古風な店内を眺めた後、ジョセフは紳士を見据える。
この男は、先程の少年を助ける一部始終を見ていたと言っていた。
一体いつから見ていたのか。
男の気配は一切感じられなかったし、それらしい人影さえ見当たらなかった。
ジョセフは男がただ者ではないことを見抜いていた。
そもそもこの男は、一体何者なんだ。
カウンターの前に立つ紳士を睨み、彼の返答を待つ。


845 : ジョセフ&アサシン ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/21(日) 01:17:43 3lFQj5T.0

「この街は聖杯戦争の会場。君は聖杯戦争のマスターとして選ばれた。
 たった一つの奇跡の願望器を巡る、所謂殺し合いだ。
 そしてマスターには必ず一騎の従者(サーヴァント)が宛てがわれる」


淡々と語る紳士に対し、ジョセフは再び眉をしかめる。
聖杯――――エリナおばあちゃんから聞いたことがある。
円卓の騎士とかいう英雄達が探したという聖遺物。
そして、この東京都はその聖杯を巡って争う殺し合いの会場だという。
普段ならば「テメー、一体何言ってやがんだスカタン野郎」とでも憤っていただろう。

しかしジョセフは、街の異常に気付いていた。
この世界のおかしさを既に感じ取っていた。
それ故に彼は、目の前の紳士の話を無言で聞く。

それにしても、殺し合い?
何故自分がそんなことに巻き込まれなきゃあいけないんだ。
姿を眩まし続けて、エリナおばあちゃんに寂しい思いをさせたくなんかない。
その為にも、この街から抜け出さなければならない。
手段は未定だが、出来ることなら殺し合いは避けたい。
乗り気な奴なら兎も角、自分の様に巻き込まれた者まで手にかけたくない。
もしそういった者と出会ってしまった場合は、出来ることならば助けたい気持ちもある。
思考を続けていた最中、ジョセフはあることに気付く。

聖杯戦争は、奇跡の願望器を巡る殺し合いという。
参加者であるマスターには必ず一騎のサーヴァントが宛てがわれる。
ならば、自分のサーヴァントはどこにいる。
まさか。



「私はアサシンのサーヴァント」



口元に微笑を浮かべ、紳士はそう答える。
そう、目の前に立つこの紳士こそがサーヴァント。
ジョセフ・ジョースターの元に召還された、一騎の従者。



「君の正義の心に可能性を見出した『紳士』さ」



彼は高級テーラーに務める英国人だった。
同時に、かつて聖杯伝説に登場した騎士の名をコードネームとして冠するスパイだった。

男の名はハリー・ハート。
コードネームはガラハッド。
諜報機関「キングスマン」に所属していた、紳士だ。


846 : ジョセフ&アサシン ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/21(日) 01:18:22 3lFQj5T.0

【クラス】
アサシン

【真名】
ハリー・ハート@キングスマン

【ステータス】
筋力D+ 耐久D 敏捷C+ 魔力E 幸運D 宝具D+

【属性】
秩序・中庸

【クラス別スキル】
気配遮断:C
自身の気配を絶つ。
完全に気配を絶てば発見することは難しい。
ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】
心眼(真):C
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”

専科百般:C+
諜報員としての多才な技能の具現。
戦術、学術、隠密術、暗殺術、詐術、話術といった数々の技能を体得している。

【宝具】
「礼節が紳士を作る(アクト・オブ・ガラハッド)」
ランク:D+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
キングスマンに所属する一流スパイ―――コードネーム「ガラハッド」。
一流のスパイとしての卓越した技術が宝具へと昇華されたもの。
諜報活動・隠密行動を行う際に有利な補正が与えられる。
更に自身が標的に先制攻撃を仕掛けた場合、戦闘中に筋力・耐久・敏捷のステータスにプラス補正が掛かる。

「紳士は群衆に潜む(ディセント・キングスマン)」
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
彼の現界と同時に自動発動し、高級テーラー(紳士服店)を街に出現させる。
高級テーラーは会場そのものに影響をもたらし、契約したマスター以外の人物からは「初めからその店が存在していた」ものとして認識される。
この宝具の存在を知らない、あるいは高級テーラーを宝具と認識していない者に対し、ハリーの全ステータスと魔力を秘匿する。
この宝具が機能している間、ハリーは単なるNPCの店員としか認識されない。
高級テーラーが宝具によるものだと認識された瞬間、その者に対しての秘匿は一切機能しなくなる。
自動発動したまま維持され続ける宝具だが、魔力消費は極めて小さい。

「引き金に敬意を込めて(ガンズ・アンド・ヨセフ)」
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
ハリー愛用の傘型ライフル。
実弾・非殺傷弾・リング状のスタン弾を自由に切り替えることが可能。
更に低ランク・低威力の飛び道具なら傘の布で防御することができる。
高威力の飛び道具は防ぎきれないものの、魔力を消費することで破損した傘を修復することが可能。

【Weapon】
《拳銃》
キングスマン特製のオートマチック式拳銃。
威力は低いものの、急所に当てればサーヴァントも十分殺傷が可能。
銃身にはアンダーバレル式のショットガンも装着されており、散弾によって混戦にも対応できる。

《仕込み刃》
靴に仕込んだ刃。
速効性の毒が塗られており、人間相手ならば一撃を当てるだけで毒殺することが可能。
ただしサーヴァントには効果が薄く、一定時間体力を徐々に減少させるのみに留まる。
リーチが短くサーヴァント戦で有効ではないため、暗器としての使用がメイン。

《指輪》
右手に嵌めた指輪。
スタンガンが仕込まれており、対象を感電させることが可能。

《手榴弾》
ライターに偽装した手榴弾。

《紳士服》
紳士を形作る特注のスーツ。
防弾仕様であり、拳銃弾程度ならば弾くことが可能。
とはいえサーヴァント戦で期待できる程の防御機能は無い。


847 : ジョセフ&アサシン ◆a9ml2LpiC2 :2016/02/21(日) 01:18:54 3lFQj5T.0

【人物背景】
表向きは高級テーラーに勤める英国紳士。
しかしその正体は諜報組織「キングスマン」に所属するベテランスパイである。
コードネームはガラハッド。
キングスマンはどこの国にも属さず、難事件やテロリズムの解決を任務とする。

【サーヴァントとしての願い】
なし。
ちょっとした「人助け」のつもりで召還に応じた。

【方針】
マスターを手助けする。
その過程でマスターが持つ素質と正義を見極める。




【マスター】
ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険 第二部「戦闘潮流」

【マスターとしての願い】
とっとと帰りたい。

【weapon】
なし

【能力・技能】
「波紋」
仙道とも呼ばれる術。
呼吸のエネルギーが生み出す生命の波紋の力。
ジョセフは波紋の素質を生まれ持っている。
その技量は未熟ではあるものの、吸血鬼を倒すには十分な威力を持つ。

「頭脳」
ある意味でジョセフ・ジョースター最大の武器。
数々の策や機転を駆使し、敵を翻弄する策士としての能力。
あらゆる状況・道具を利用した変幻自在の搦め手を得意とする。

【人物背景】
ニューヨークにやってきた英国人で、第二部のジョジョ。
第一部の主人公であるジョナサン・ジョースターの孫。
おちゃらけた軽い性格だが、その胸の内には黄金の精神を宿す。
祖母であり唯一の肉親でもあるエリナ・ジョースターを大切にしている。

この聖杯戦争におけるジョセフはニューヨークに来たばかりの時期から呼び寄せられている。
その為波紋の腕前は未熟であり、柱の男の存在も知らない。

【方針】
この世界から抜け出す方法を探す。


848 : 名無しさん :2016/02/21(日) 01:19:08 3lFQj5T.0
投下終了です


849 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/21(日) 01:38:36 FcwMyrZE0
投下乙です。
私も投下します。


850 : 李小狼&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/21(日) 01:39:00 FcwMyrZE0



 夜桜。
 無数の提灯の光に照らされ、桜は漂白に限りなく近い桃色を美しく映えさせる。
 水面にもまた、その美しさが反転されており、その景色を水面下で揺らしている。

 上野公園に舞い散る桜の美しさは、あれから百年ほどの時を隔てても、全くと言って良いほど変わらなかった。
 かつて、大事な仲間たちと共に勝利の乾杯をしたあの桜の下。
 かつて、大切な人と初めて出会ったあの舞い散る吹雪の中。
 かつて、帝都に来た彼女を迎えたあの桃色の風。





 ひらり、ひらり――。





 英霊、『真宮寺さくら』はそこに再誕する。
 またも、多くの桜吹雪に見守られながら――。
 この桜の下に物語を開始するのは、最早、彼女の運命と言っていいだろう。
 そして、こうして、「桜」の情景に囲まれる事が、これほど似合う少女もいまい。





 ひらり、ひらり――――。





 彼女が纏う桃色の袴にも、桜の花びらが刺繍されている。
 その裾は、艶のある長い黒髪を束ねた真っ赤なりぼんと共に、激しく揺らめいている。
 揺れる黒髪や着衣は、振り子のように振れて続け、その振れ幅が一向に小さくならない。
 ここに、強い風が吹き続けている限り――この二人の契が終わるまで。





「……あなたが、私のマスターですか?」





 真宮寺さくら、否、『セイバー』のサーヴァントは――目の前にいる小さな少年に、そう問いかけた。

 目の前のマスターの年齢は、かつての仲間ならば、さくらが『帝国華撃団』に所属して、降魔と戦っていた頃のアイリス(イリス・シャトーブリアン)か、それより前後一、二歳という程度だろう。
 本来、さくらの世界において、「魔力」の代替となる、「霊力」の素養を持つ人間は、若ければ若いほどに強い物を有する。
 アイリスが高い霊力を持つように、このくらいの年齢の少年が魔術師であっても全くおかしくはない。
 セイバーも、なるべくならアイリスほどの年齢の子供を戦いに参加させたくはないが、それでも、アイリスが現実問題、降魔との戦いで強力であったように、この少年もあるいはそうかもしれない。

 だからこそ、その宝具『霊剣荒鷹』を抑えながら、強い魔力を持つその少年との契を再確認する必要があるのだ。
 私と巡り合うマスターはこの少年でいいのだろうか、と。
 本当ならばまだ早いのかもしれないが、こうなった以上、これが最終確認だ。


851 : 李小狼&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/21(日) 01:39:16 FcwMyrZE0
 何の誤りもない事が明らかになり、この契約が無事に済めば、この二人はこれから共に戦う事になる。
 たとえ、十代になったばかりの少年であっても。

「――」

 あらゆる考えを巡らせながらも、そのセイバーは、その少年の顔を見下ろしていた。
 ……少年は、憮然とした表情で、ぼんやりとセイバーの姿を見返している。

「な、なんだ、オマエ……」

 恐れおののきながらも、その二つの桜に見惚れるようにして驚嘆している。
 この様子を見る限りでは、もしかすると、何かの間違いによってセイバーを呼んでしまったのだろうか――。
 あまり、強い邪気や意思は感じられなかった。それどころか、聖杯戦争に臨む覚悟もない。
 この聖杯戦争は、どうやら当人の覚悟や決意と無縁に、突然連れて来られる場合もあるらしいので、少年もまた、その一人であるのだろう。
 少なくとも、この夜中にこんな所に一人でいる少年が、何らかの異常な出来事と関わりを持たないとは思えない。
 やれやれ、とセイバーは思った。

「――」

 気が抜けたようで、どことなく安心したようでもあった。
 主従の関係である事をまずは捨てて、一つ、自己紹介から始めてみよう。
 全ての話をするのはそれからでもいい。

「――私は、真宮寺さくらと申します。
 しかし、できれば、この場ではセイバーと呼んでください」

 セイバーは優しい朗らかな口調で言う。
 その目線に合わせるべく、そっと腰を下げてしゃがみこむ。屈んで話さねばならないほど幼い相手とも思わないが、それでも、セイバーはそうして話したかった。
 相手の表情が見えるところで話した方が、会話を楽しめると思ったのである(そうして子ども扱いされた事で、聊かむすっとした表情になった気もするが、セイバーはそんな事には全く気付かなかった)。

「……あなたの名前を、聞かせてもらえますか?」

 そう訊いた。
 名前くらいは知っておかなければならない。

 ……もし、目の前の少年が事故によってここに連れて来られたならば、セイバーは彼女を帰す方針である。
 元より、セイバーには他者を犠牲にしてまで叶える願いは殆どないし、願うとすれば帝都の恒久たる平和と発展くらいのものだ。
 それも、蒸気なしにここまでの発展を成し遂げた百年後の帝都を「聖杯」によって知らされた後では、願うまでもないかもしれない。
 この小さな少年の無事が、強いて言うならば今のセイバーの願いだ。――そういう風に切り替わった。
 少年は、眉間に皺を作って、じっとセイバーの顔を見た。

「さ、くら……?」

 少年は、セイバーの名前を反芻する。
 その名前に何か思うところがあった、というのだろうか。

「はい! ……って、ですから、私の事はセイバーと」

 元気に返事をしつつも、「さくら」と呼ばれる事のないように再度注意するセイバー。
 真名を知られる事は、聖杯戦争を知る者として不利な部分がある。

「……」

「……」

 険しい表情で自らを凝視する少年に、セイバーはニコニコと笑ったまま、冷や汗を流していた。
 そんな扱いづらい子供を前にしたようなセイバーだったが、すぐに少年の方が名前を告げた。

「――俺は、李小狼(リ・シャオラン)だ」


852 : 李小狼&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/21(日) 01:39:47 FcwMyrZE0

 少年は、そんな名を告げた。――中国人名だ。
 セイバーの知り合いにも、「李」の苗字を持つ中国人がいる。中国人には非常に多い苗字である。
 とはいえ、口頭では下の名の字まではわからず、セイバーはある事実に気づかなかった。
 彼の名前が、『小さな狼』と書く事である。

「……李くん、ですね?」

「ああ」

「それで、李くん。あなたは……私のマスターで合ってますよね?」

 そう訊かれて、小狼は少し思案気な表情をした。彼自身もはっきりとはわかっていないようで、気軽に返答する事は出来ないのであろう。
 二、三秒だけ固まったように考えて、それから、まじめな表情で、セイバーの問いに答える事になった。

「……ああ。確かに、俺が、あんたを呼んだんだと思う」

「そうですか……。私を、ここに呼んでくれてありがとうございます、マスター。
 私、またこんなに綺麗な上野の桜を見られて、とても幸せなんです」

 ――上野の桜には、セイバーも幾つかの思い出を持っているのである。

 いや、この帝都における全ての思い出の、それは、はじまりだった。
 彼女がかつて――『大神一郎』という一人の男と出会ったのも、まさに、この桜並木の下であった。
 それゆえに、こうして死後に英霊の座にあった真宮寺さくらが、再び帝都で聖杯戦争のサーヴァントとなるのは、至極運命的な事であっただろう。
 小さな狼、である彼の前に、さくら、として呼び出されたのだから。
 感慨深げなセイバーに対して、もう少し生真面目に眉間に皺を作り、小狼が口を開いた。

「……セイバー。あんたはいろいろと知っているみたいだが、俺は、何もわかってない。
 高い魔力を感じたからここに来た――そしたら、そこに、セイバーが突然現れた。
 ――教えてほしい、この世界は一体何なのか。何か知ってるなら、全部、聞かせてくれ」

 自分の身体に刻まれた令呪の存在に気付いている所為もあるだろう――。事情は全く理解していないが、この都市から近頃奇妙な魔力を感じ始めている。
 この世界の違和感に気づいているからこそ、こんな時間にこんな場所にやって来たという事もある。――この近くに、何かいると、思ったから。
 そして、そこにいたのが、セイバーだった……。

 ここまでわかるという事は、勘は鋭いと見える。
 しかして、聖杯戦争について無知であるのは大きなハンディキャップだ。
 もしかすると、この聖杯戦争においては、全員がそうなのかもしれないが――実の所、既に事情を知っている者もいる。
 彼が知るタイミングが早いか遅いかはともかく、それでも一刻も早く、セイバーの口から事情を語っておかなければならないだろう。

「――わかりました。あなたが今、置かれている状況、その全てをお話しします。
 ただし、覚悟はしておいてください。これから起きるのは、どんな過酷な戦いかもわかりません」

「……」

 小狼は口をつぐみ、息を飲みこんだ。

「……勿論、マスターの身を守るのが私の務め――。
 マスターの事は、絶対に、この身に代えても守る……その為に、私はここにいるんです。
 信じてくれますか……?」

「……わかった。信頼する」

 小さい子供とは思えないほど、毅然とした反応が返って来る。
 既に、普通の男の子とは違う生き方をしてきたらしい。――それは、そのあまりに高すぎる魔力を自覚している所からも感じ取れる。
 ならば、小さい子供と遠慮して、ソフトに伝える必要もないだろう。



「――――マスターが巻き込まれたのは、『聖杯戦争』です」



 この帝都に再臨した真宮寺さくらの口から告げられた、「聖杯戦争」の言葉と、またしても顰められた小狼の眉。
 狼と、さくらの――、実に運命的な、奇なる、桜の下での出会い。
 そして、戦いの始まり。





 それは、二日目の夜――聖杯戦争の予選が終わる、ほとんど直前の出来事であった。





----


853 : 李小狼&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/21(日) 01:40:17 FcwMyrZE0

【クラス】

セイバー

【真名】

真宮寺さくら@サクラ大戦

【パラメーター】

筋力B 耐久C 敏捷C 魔力B 幸運C 宝具EX

【属性】

秩序・善

【クラススキル】

対魔力:C
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

騎乗:E
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら何とか乗りこなせる。

【保有スキル】

心眼(真):B
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。

破邪剣征:A+
 真宮寺に伝わる剣技の力。
 邪な魔力を持つ者、あるいは魔獣に対してかなり有効な攻撃力で、「混沌」や「悪」の属性を持つ相手と戦う際に補正がかかる。

【宝具】

『霊剣荒鷹』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大補足:1〜50

 真宮寺家に伝わる魔を退ける剣。「二剣二刀」の一つであり、彼女の父・真宮寺一馬の形見でもある。
 意思を持っていると言われ、さくら自身の意思の持ち様に応じて、この宝具の技の種が増え、剣の威力も上がる。
 現時点でのセイバーは、『破邪剣征・桜花放神』、『破邪剣征・百花繚乱』、『破邪剣征・桜花霧翔』、『破邪剣征・百花斉放』、『破邪剣征極意・桜花爛満』、『破邪剣征・桜花天昇』などの技が使用でき、それらを駆使して邪を撃退する。
 腕を磨けば更に多くの技を身に着ける事ができるが、おそらく聖杯戦争の期間から考えてもこれ以上は不可能であろう。


854 : 李小狼&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/21(日) 01:40:45 FcwMyrZE0

『霊子甲冑』
ランク:B 種別:対人・対獣・対機宝具 レンジ:1〜50 最大補足:1〜50
 
 高い霊力を持つ者だけが操る事が出来る鎧のようなメカ。
 一見すると搭乗型巨大ロボットのようでもあるが、その性質上、騎乗スキルの有無に関わらず使用可能であり、セイバーもこれを手足のように自在に操る。
 生前のセイバーが光武、神武、光武改、天武、光武弐式などの機体を操った伝説に基づき、このいずれかを選択して現界させ戦う。これは後継機ほど強力であり、それゆえに魔力負担も大きいが、それだけ多くの敵に対応できるだろう。
 この『霊子甲冑』を纏えば、筋力・耐久のステータスがAランクやBランクまで上昇し、魔族・魔物・魔獣などの怪物や巨大な機械などとも互角の戦闘を可能にする。
 しかし、一方で敏捷のステータスがDランクやEランクまで下降する。まさに甲冑の如き宝具である。
 セイバーの場合は、生身のステータスも極端に高い為、最大値ではA+レベルに相当する事もある。

『魔神器』
ランク:EX 種別:対魔宝具 レンジ:∞ 最大補足:∞

 「剣」、「鏡」、「珠」の三種の神器。
 真宮寺の血を受け継ぐセイバーの命と引き換えに、 降魔を全て封印して都市を救う事ができる最終手段である。
 聖杯戦争の場合、周辺区域及びマスターの護衛と、その時点で帝都内に存在する全ての「混沌・悪」及び「混沌・狂」のサーヴァントや、魔獣・魔物の殲滅が可能となる。
 但し、使用に際しては、マスターの命を害しかねない膨大な魔力と二画以上の令呪、そして、セイバー自身の全魔力が必要となる為、発動の機会は滅多にない。

【weapon】

『霊剣荒鷹』

【人物背景】

 太正時代に活躍した帝国華撃団花組の隊員。宮城県仙台市出身。
 元陸軍対降魔部隊・真宮寺一馬大佐の一人娘であり、強い正義感と、魔を祓い封印させる破邪の力を持つ真宮寺一族の血を受け継ぐ。
 剣術の達人で、北辰一刀流免許皆伝の実力を誇り、鍛錬を決して欠かさない。
 帝国華撃団花組の隊員は全員、舞台に立って女優として活躍するが、彼女はドジでおっちょこちょいな面がある為、うっかり舞台を台無しにしてしまう事も……。
 恋愛面では、純情一途である反面、嫉妬深い面も見られる。
 ちなみに、好きな食べ物はオムライス。ネズミや雷が苦手である。

【サーヴァントとしての願い】

 マスター・李小狼を守り抜く事。
 そして、この帝都の平和がこれからも続く事。

【方針】

 まずは、李小狼に聖杯戦争について話す。



【マスター】

李小狼@カードキャプターさくら 封印されたカード

【マスターとしての願い】

 不明。

【weapon】

『剣』
 魔力を発動する為に小狼が使用している剣。
 任意で取り出す事が出来るようで、何もない状態から出てくる事もある。

『護符』
 魔力が込められた護符。
 これを剣と共に用いて戦うが、別に剣無しでも使用できる。

【能力・技能】

 東洋魔術や中国武術に長け、剣や護符を用いて自らも戦える。
 運動神経は抜群。というか普通に小学生どころか人間超えてるレベル。
 反面、それでも対魔力スキルが弱いのか、かつては月の魔力に魅かれて同性の雪兎を好きになるといった場面もあった。魅了系のスキルには注意。
 好きな科目は体育・算数、嫌いな科目は国語らしい。
 そのほか、考古学に興味があるらしく、考古学者であるさくらの父と楽しそうに会話していた事もあった。

【人物背景】

 魔術師クロウ・リードの遠戚にあたる李家の出身。それ故に高い魔力を持つ少年。
 当初クロウカードの封印が解かれた事を知って、カードを回収する為に香港から日本の友枝小学校まで転入してきた(ただ、参戦時期的には、もう全部終えて香港に帰った後である)。
 自他ともに厳しく、無口でクールな性格でもある。不愛想とも言う。
 しかし、一方で照れ屋。他人には素直に接しないわりに、同級生の山崎のホラ話を毎回信じるという変なところで素直な面もある。
 最終的にさくらとは両想いになっており、今回はその想いが通じ合った劇場版「封印されたカード」からの参戦。つまりアニメ版。

【方針】

 セイバーの口から現状確認をしておく。


855 : 李小狼&セイバー ◆CKro7V0jEc :2016/02/21(日) 01:42:36 FcwMyrZE0
以上、投下終了です。
完全な流用ではないですが、過去に別所で投下した「木之本桜&セイバー」を文章やもろもろ、コピペしてから書き直した形での実質的なリメイクです。


856 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/21(日) 02:27:25 FcwMyrZE0
投下します。


857 : 東京都&モンスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/21(日) 02:27:47 FcwMyrZE0










 東京がある限り、奴は何度でもやって来る―――――。










◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 この東京都内に三画の令呪。
 それは、2012年に完成した東京スカイツリーをはじめとする三つの重要区域に、それぞれ一画ずつ配置されていた。
 東京に、「奴」を呼び出すのは、東京自身であると言っているかのようである。

 おかしな話ではない。
 多くの人の意思が介在する、この東京という町。
 そこに集中した魔力や、元々のこの地の地脈や霊脈を考えれば、サーヴァントを呼ぶに十分な力を持っていても変な話ではないのだ。
 必ずしも、意思を持つものばかりが魔術師の資格を持つとは限らない。

 あらゆるものが、この東京に連れてこられるように。
 たとえここが偽りの東京都であったとしても、その力まで持ってきているとするのなら――。


 東京の方から、ヤツを呼んだとしても、何も変な話ではない。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆


858 : 東京都&モンスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/21(日) 02:28:04 FcwMyrZE0



 ――人間は過ちを犯す。


 過ちは犠牲を作り、犠牲が生まれれば憎しみが生まれる。
 そして、「奴」はその憎しみによって誕生し、街を破壊するのであった。



 ――ゴジラ。



 今更知らぬ者はいないだろう。日本を何度も襲い続けた不滅の怪獣王の名である。
 体長は、およそ50メートルから100メートルほど。
 人間を蟻のように踏み潰し、人々が時間をかけて作り上げた建物たちを通りすがりに瓦礫にしてしまう。
 それは、この地球上で最も大きく、最も孤独な生物である。彼と背を並べる者は滅多に現れない。
 何故、こんな巨大な怪獣が生まれ、文明を壊しつくしてしまうのか。

 ……それは、偏に人間が悪魔的な実験をしてしまったからだ。
 敵国を叩き潰し、自国を守り、地球を壊す為の禁断の兵器・水爆。
 それが、ゴジラの住まう海に放たれた時、彼は不死身の体を手に入れてしまった。

 野生の怪物は一瞬にして海底の平和を奪われ、戸惑い、人界に迷い出てしまった。
 静かな海から、喧噪の絶えない文明へ。

 ゴジラは、水爆を生みだし、戦争を生みだしたあの文明の地を、踏みつぶしていく。
 崩れるビル。燃える街。逃げ惑う人々。先の大戦を追体験するかのような光景。
 それは、忘れもしない――1954年の出来事であった。

 やがて、ゴジラは一人の科学者の苦悩と葛藤の末に、人類の手で撃退された。
 人が兵器で生み出してしまった悲劇は、人が兵器を使って幕を閉じた。





 ……しかし、果たして、彼はそう簡単に滅びるだろうか?

 誰も忘れるはずのない1954年のあの悪夢は、どの世界にも共通して起こった。その出来事を忘れた者はいないだろう。
 ある世界では、現実に。ある世界では、スクリーンの中に。

 それから、再びこの日本にゴジラの現れなかった世界線は、殆どないであろう。
 それは、地上にまだ、戦争があり、決して戦争を風化させない為だ。
 世界で唯一原子爆弾を落とされたこの日本に住まう人々の悲しみが、ゴジラに乗り移った以上、ゴジラは何度でも形を変えて現れる。
 そう、何度でも。

 ゴジラは、その身を地上に現し、全てを破壊する事で、世界にそれを訴える。
 たとえ、それが月上の東京であっても、奴はこの街に迷い込むだろう。
 そして、きっと吠えるに違いない。










「アアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァォォォォォォォォオオオゥン……………」










 まるで、赤子が泣いているように……。
 遠い海から、そんな声が、聞こえたのだった――――。





----


859 : 東京都&モンスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/21(日) 02:28:55 FcwMyrZE0

【クラス】

ゴジラ

【真名】

ゴジラ@ゴジラ

【パラメーター】

筋力EX 耐久EX 敏捷EX 魔力EX 幸運EX 宝具EX

【属性】

混沌・中立

【保有スキル】

怪獣王:EX
 世界一有名な怪獣としての存在感。
 その巨体を自在に暴れされ、あらゆる都市を破壊し尽くす。

【宝具】

『破壊神降臨(キング・オブ・モンスター)』
ランク:EX 種別:対全宝具 レンジ:地球全土 最大捕捉:全人類

 ゴジラとしての上陸と破壊の逸話から生まれた宝具。
 この英霊そのものの性質であり、放射能火炎を吐き、尻尾をふるい、東京の街を破壊する。
 そして、人類が作り出してしまった最悪の兵器を吐き出しながら、何かを訴えかけるように暴れ尽くす。
 ただし、このあまりに強力で巨大な肉体の維持には負担が大きく、普段はサーヴァントでありながら普通に現界する事ができず、東京湾の海で霊体化している。
 魔力が充分に溜まると共に、東京湾で現界して上陸、魔力が切れる直前まで暴れまわり、魔力が枯渇しそうになると東京湾に戻って霊体化し、再び東京に現れる為に魔力を貯蓄する。
 この宝具がある限り、ゴジラは現界の際にも、そんなルーチンを踏襲しなければ戦えない(時に鳴き声が聞こえたり、気配を感じたりという事はある)。
 ちなみに、外見はいろいろあるが、どんなゴジラが現れるのかは不明。それこそ、出てくるたびに違うかもしれない。ただしトカゲみたいなやつは出てこない。

【Wepon】

 なし。

【人物背景】

 日本で一番有名な怪獣。

【方針】

 誕生次第、東京の街を無差別に破壊する。





【マスター】

東京都@現実

【人物背景】

 日本国の首都。関東地方に位置する。
 都庁所在地は新宿区。

 面積:2,190.90平方キロメートル(境界未定部分あり)
 総人口:13,506,607人(推計人口、2015年12月1日)
 人口密度:6,160人/平方キロメートル

 都市の地脈・霊脈がそのままマスターとして成立しており、重要施設に一画ずつ令呪を持つ。ちなみに、その一つは東京スカイツリー(墨田区)。
 東京に住まう人間の数だけ無尽蔵な魔力を持つが、それを全て毟り取るわけではなく、あくまで地脈・霊脈、人口からごくごく微弱な魔力を受けている。
 その為、流石に『ゴジラ』の継続的な現界には至らず、『ゴジラ』は長時間魔力をためて、ようやく数分〜数十分の現界をしてまた、魔力をためる為に帰っていく形になってしまう(ゴジラ自身も肉体維持の為に、残りの魔力から撤退の自己判断ができる)。
 ちなみに、人間でも何でもないが、令呪の存在によって魔術師の資格を受けている為、令呪を失えば東京都も参加資格を失う。


860 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/21(日) 02:29:13 FcwMyrZE0
投下終了です。


861 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/21(日) 02:29:46 FcwMyrZE0
ごめんなさい、タイトルは、「東京都&ゴジラ」です。


862 : ◇68mVZXqw0 :2016/02/21(日) 08:45:31 2WgW3tS.0
投下します。


863 : ◇68mVZXqw0 :2016/02/21(日) 08:45:54 2WgW3tS.0
夜の東京に、けたたましくサイレンが鳴り響いた。
近頃東京を震え上がらせている連続猟奇殺人事件がまた起きたという。
証拠は一切なし、凶器も見つかっていない、残ったのは血の跡と干からびた死体だけ。
まるで吸血鬼にでも殺されたかのように。
どこかの新聞記事の見出しには「ドラキュラは実在した!?」とまで書かれている。
その事件が先程発生した。被害者は両親と5歳の長男の3人家族。



パトカーが事件現場であるマンションの駐車場に到着、早速検証が行われた。
だが今回もいつもと変わらない。犯人を見つける決定的な証拠となるものは
見つからず終いだった。だが今回は奇跡的にも、被害者は全員無事だった。



隈無く現場を調査している何人もの警官を見ながら、黄色いバリケードテープを
背に真戸呉緒はまるでゾンビのようにやせ細った顔を歪め、彼らを嘲笑っていた。
ーそんな事をしても犯人は見つからんぞ、と。
彼はいつも通りに行った独断の聴きこみ調査で情報を独自に入手し、既に犯人の関係者
らしき人間の素性を知っていた。警視庁には報告しなかった。これはこの偽られた東京に
住む人間でもひと握りの者しか知り得ないだろうある秘密が関わっているからだ。
そんな事を話せば相当面倒な事になるだろう、「下らん」と信じて貰えないという可能性も
あるが。
真戸は、この連続殺人事件の犯人は、おそらく人間では無いだろうと睨んでいた。
同僚に話したらふざけているのか、と済まされる様な話に聞こえるだろう。
自分の元いた世界でなら「“喰種”の仕業だ」で話が着くが、生憎この世界にそんなモノは
存在しない。この世界のメディアには「喰種」の「喰」の字も無い。
ならば、その犯人は何者なのか、それは「サーヴァント」と考えればいいだろう。
仮に犯人が喰種だとしても、聖杯戦争の参加者であることに間違いはない、どの道調べることは
同じだ。
真戸は、事件が起こった近辺の住民の手の甲などを調べ上げ、やがて容疑者である可能性が
高い人をいつも通り勘で睨みつけ、その人物に対して張り込み捜査を行った結果は、ビンゴ。
事件発生とほぼ同時刻、事件現場にその人物と行動を共にしていた、
さながら中世ヨーロッパの貴族の様な格好をしたオールバックの紳士が、被害者のマンションに
向かう姿が確認できた。
そして真戸は自らのサーヴァントに号令をかけ、警視庁に連絡、
「偶然殺されそうになっていたところを発見し、被害者を保護した。犯人の姿は確認できなかった」
という報告と同時に通報をかけた。
犯人は新聞記事の見出しの通り吸血鬼だった。今自分のサーヴァントが交戦しているはずだ。


864 : 真戸呉緒&アーチャー :2016/02/21(日) 08:46:43 2WgW3tS.0




真戸が目撃した吸血鬼のサーヴァントは、現在公園にて一体のサーヴァントと戦っていた。
彼が今刃を交えているサーヴァントは、この暗い夜に溶け込んだ紺色を基調とした、
顔と胸に「×」の字とあしらい、発光している黄色いボディラインと紫色の仮面が
この夜景にとても似合う、極めて特殊な形状の装備を纏った戦士だった。
勿論吸血鬼は知る由もないだろうが、彼こそが、吸血鬼に連続殺人事件を
行わせたマスターを影で見ていた刑事のサーヴァントだったのだ。
そして十字架の様な形をした、銃と剣を組み合わせたような武器で、
宝剣を手に取っている吸血鬼と戦っている。
初めは吸血鬼が優勢だった、だが今はその逆だ。
吸血鬼の宝剣には、刃から吸血を行う機能があった。だがそれが命取りとなった。
この紫のサーヴァントの装甲には、人間の身体をボロボロの灰にしてしまうほどの
毒性を持った流体エネルギーが流れていた。だが、吸血鬼の宝剣はそれを血と間違って
吸収してしまい、今ではポロ、ポロと灰が身体から落ち、それと共に身体がどんどん蝕まれていくような
感覚に陥っていった。そして剣をぶつける度にそれは少しずつ悪化していき、
やがて彼は動く事もままならない状態に至り、遂に地面に膝をついた。
吸血鬼は、一瞬相手の得物が自分達の弱点の一つとも言われている十字架のような形をしているのを見た瞬間、
終わった、と悟った。
紫の戦士は、このチャンスを逃したりはしなかった。すかさずバックルのカバーを開き、「ENTER」のボタンを押す。


『EXCEED CHARGE』


低めの電子音が鳴り響き、一筋の光が全身に張り巡らされた黄色いボディラインを走り、武器を持っている方の手に届く。
光が黄色く発光している刃に到達した瞬間、刃の光は更に増した。
そして銃剣をリロードするような操作をした後、銃口を消耗している吸血鬼に向ける。
銃口から放たれた一発の光弾は吸血鬼の心臓部に当たり、巨大な黄色い円錐状の光を構成していった。
紫のサーヴァントはそこに狙いを定め、剣を構える動作をした後、


「でぃやあああああああああああああ!」

その身を光に変え、目に見えないほどの速さで吸血鬼に走りかかり、
一瞬にして敵を貫通し、切り裂いた。


吸血鬼の身体に一瞬大きな黄色い「×」の字を描いた光が発生した後、全身が灰になって崩れ落ち、その灰も光の粒子となって消えた。
紫のサーヴァントは、それに向かって「フン」と顎で笑うと、バックルから携帯電話らしきパーツを抜き取ってそれを開き、
電源ボタンを押した。すると眩い光と共に、彼の姿は確認できなくなり、代わりに丁度彼がそこにいた場所に、1人の青年がいた。
そしてその青年は、光の粒子となり姿を消した。


865 : 真戸呉緒&アーチャー :2016/02/21(日) 08:47:19 2WgW3tS.0

≪奴の始末は終わったよ、マスター。》
証拠と言える証拠も見つからずに引き返したパトカーに乗っている
真戸の脳内に声が響く。真戸のサーヴァントからだ。
≪ククク、そうか、ご苦労だよ、アーチャー。》
真戸も念話で、相変わらず口元を歪めながら返事を返す。
真戸が元いた世界の記憶を取り戻して、どれくらい経ったのだろうか。
彼の与えられた役割は、「階級が警部止まりで周囲からの評判も悪い不気味な
はみだし刑事」というものだった。
なるほど、自分にぴったりだ、と真戸は改めて思った。それに「刑事」としての役割も
中々都合のいいものだ、とも思っている。
聖杯戦争に費やす時間は少ない、だがその分他のマスターの事も調べあげる事が出来る。
だが、何より自分が幸運だと感じたのは、真戸が引き当てたサーヴァントだ。
勿論戦闘力も申し分ないが、問題はそこではない。

真戸が呼び出したアーチャーのサーヴァント、真名は草加雅人。
自分の命、愛する幼馴染の命を奪った人類の進化系「オルフェノク」に復讐を誓い、
オルフェノクに戦いを挑み続けた英雄。
正直なところ、真戸は彼の真名を聞いてとても気が合うと感じていた。
人に紛れ、人を喰らう化け物を根絶やしにする。
職業柄、真戸はそのような思想を当たり前のように持った人間達と行動してきた。
彼の最後のパートナーもまた、寝食を共にした友人を化け物に食べられてしまった経験があった。
だが、まさか異世界で手を組むことになった人物までがこのような考えを持っていたとは。
死んでも尚この様な人物と行動を共にするとは思わなかった。
それに、それ以外にも彼とはどこか直感的にシンパシーのようなものを感じる。
私はいいパートナーと巡り会えた、と真戸は勘でそう見た。



≪ところでだ、アーチャー、『吸血鬼』は戦ってどうだったかね?》
≪随分と目障りなサーヴァントだったよ、まさかあんな化け物ともう一度戦う事になるなんて思っても見なかった》
真戸が念話で聞くと、スッキリしたかのような声で、アーチャーが返してきた。
真戸はそれを聞き、歪めていた口の端を更に上げた。そして、
≪いや、奇遇だね、私もそう思っていた所だよ。》
そう念話で返した。
聖杯、万能の願望機。
アーチャーからその話を聞いた時は、やはり驚いた。
この様な物が本当に存在していたのかと。
そして、彼は確信した。

これさえ手にすれば、あの忌まわしき“喰種”を根絶出来ると。


そして、アーチャー・・・草加雅人もまたそうだった。
彼はオルフェノクを決して許さなかった。
同窓会のあの日、真理や自分達流星塾のメンバーが殺された
時から。
この世界から根絶やしにしてやると誓ったのだから。
例えそれが父親であろうと、同級生であろうと、
利用価値の有る仲間であろうと、

それは決して変わらない。







ーこの世界を歪めているのは、何か。

それは化け物だ。人の皮を被り、人を殺し尽くす。
彼らこそが敵だ、人類の、いや、この世界の。


怪物を憎む二人の狡猾なる人物は、ここに手を取り合った。
そして、この世界に巣食う癌細胞を消し去るために、彼らもまた願望機に手を伸ばす。


866 : 真戸呉緒&アーチャー :2016/02/21(日) 08:48:16 2WgW3tS.0

【クラス名】アーチャー
【真名】草加雅人@仮面ライダー555
【性別】男性
【属性】秩序・悪
【パラメータ】筋力E 耐久E 敏捷D 魔力D 幸運E 宝具C

     筋力B 耐久C 敏捷A+ 魔力D 幸運E 宝具C(カイザ変身時)


【クラス別スキル】

単独行動:B
マスターとの魔力供給を絶っても現界していられる。
マスターが死んでも、最大2日は現界を保っていられる。


対魔力:E
魔力に対する耐性。
心臓がオルフェノクである事を除いて人でないアーチャーは、
クラス補正によるお守り程度の効果しか無い。



【固有スキル】

話術:C
言葉を操る才能。
詐略などにおいて有利な補正を与える。


破壊工作:A
戦う前に敵の戦力を削ぎ落とす。
ただし、ランクが高ければ高いほど、英霊としてのランクは落ちていく。


仕切り直し:B
戦闘から離脱する能力。
また、不利になった戦闘を初期状態へと戻す。


精神異常:E
精神を若干病んでいる。
自分の左手の平から血が流れているように見えたりする。
低い確率で精神干渉系の魔術を無効化する。


魔力放出(毒):C
魔力を強い毒性を秘めた流体エネルギー「フォトンブラッド」に変化させる。
本来ならフォトンブラッドは、カイザギアから常時生成出来る様になっているが、
カイザへの変身が宝具による伝承の再現になった影響で、フォトンブラッドの生成も
魔力に依存する様になった。



【宝具】

「狙う紫の視線(カイザ)」

ランク:C 種別:対オルフェノク宝具 レンジ:ー 最大捕捉:1人

アーチャーが生前、オルフェノクと戦う際に使用していた力。
彼がこの力を使って幾つものオルフェノクと葬ってきた逸話が
宝具として昇華された物。
「呪いのベルト」とも呼ばれる戦闘用スーツ装着用キット
「カイザギア」を使用することで、
彼は「カイザ」と呼ばれる紫色の戦士に変身することが出来る。
また、カイザに変身するためにはこの宝具を使用しなければならず、
本来なら人工衛星を経由しなければ装着が出来ない。



【Weapon】

「カイザギア」
彼がカイザとなって戦う際に使用する、
ジュラルミンケースに入った装備一式。
宝具の起動に必要なベルト。

各種装備にコマンドを送り込むための携帯電話。

強力な光弾と斬撃を放つ銃剣。

パンチ力を強化するデジタルカメラ型ユニット。

追尾マーカーを射出する双眼鏡型ポインターユニット。

これら6つの装備で構成されている。



「サイドバッシャー」
彼が生前愛用していたサイドカー。
二足歩行の手動型戦闘ロボットに変形が可能で、
数十発以上ものミサイルが搭載されている。
乗り物であるため、ライダーのクラスで使われるべきであろう装備だが、
アーチャーのクラスで呼ばれた事でこの装備もまた「弓」と認識され、
持ってくることが可能となった。


867 : 真戸呉緒&アーチャー :2016/02/21(日) 08:49:01 2WgW3tS.0

【人物背景】

カイザギアを手に人類の進化系・オルフェノクと戦った英雄。
大学で幾つものスポーツ部の部長を務めるスポーツマン。
一見紳士的で人当たりの良い性格だが、それは他人を
欺くための芝居。本来は狡猾で自己中心的な性格で、
自分にとって邪魔だと認識した人物に対しては
その本性を露わにする。目的のためなら手段を
選ばない人物で、オルフェノクの抹殺を達成するために
数々の人物を騙していった。
児童養護施設「流星塾」の同窓会を襲撃したオルフェノクに、
自分や他の同級生の命を奪われたことから、
オルフェノクを激しく憎悪している。
そして、人から人へと渡り、その度使用者を灰にしていった
カイザギアを使用しても平然としていられていたため、
実質カイザギアの装着者となった。
幼い頃は母親を水難事故で失い、引き取った流星塾では
陰湿ないじめを受けていた。
そんな時、いつも助けてくれた園田真理に対し、母性愛に近い
恋心を抱いており、彼女を助けることは彼の行動理念の一つ
にもなっている。
よくウエットティッシュで手を拭く癖があるが、これは
川で溺れた時、母親の手を掴もうとした所を引き剥がされた際に
左掌に出来た傷が、彼には未だに血を流しているように見えているため。
その後、自分達流星塾の同窓生がオルフェノクの記号を埋め込む
施術をされて蘇生されていた事を、流星塾の創設者である
花形より聞かされ、同時に自分がこれ以上カイザに変身すると死んでしまう
ことを知らされる。それでも尚、オルフェノクにさらわれた真理を救うために
単身オルフェノクに立ち向かうも、やはり万全の状態では戦えず、
最終的には彼が散々唆したオルフェノクである木場勇治の手で殺された。


と・・・これは此度の聖杯戦争にて召喚された草加雅人の過去にある記憶。
草加雅人という英霊は様々な道を辿った幾つもの世界の彼が合わさった
存在だが、今回は上述の過去を辿った草加雅人が召喚されている。




【聖杯にかける願い】

オルフェノクの根絶。


【方針】

他の陣営は見つけ次第始末していく、どんな手段を使ってでも。


【備考】
彼はテレビ本編の世界観の草加君です。


868 : 真戸呉緒&アーチャー :2016/02/21(日) 08:49:26 2WgW3tS.0






【マスター名】真戸呉緒@東京喰種
【性別】男性


【能力・技能】

・クインケ操術

「喰種」の臓器を素材に作られた兵器「クインケ」を操る技術。
彼は20種ものクインケを所持しており、かつクインケ集めへの
執着ぶりは異常である。


・喰種捜査官

人を喰らう亜人「喰種」を殺す、もしくは捕らえることが専門の職業の技能。
実力は非常に高いが昇進の意思は無く、階級は「上等捜査官」止まりである。
また、捜査は長い経験で培った「勘」を頼りに行う。




【人物背景】

不気味な雰囲気を持つ喰種捜査官。10年前に同じく喰種捜査官である妻を
失った過去から「喰種」を憎悪する様になり、より強いクインケに執着しているのは
より多くの喰種を殺すため。基本喰種を殺すことにしか興味はなく、昇進に興味はない。
そのため周りからは「クインケマニア」呼ばわりされ変わり者扱いされていた。
喰種に対する憎しみは非常に強く、喰種を「ゴミ」と読んでいる上に、
喰種に対しては常に残虐非道な行動や言動で苦しめている。
クインケですら素手で触りたがらないようで常に手袋をしている。
喰種をえげつないやり方で殺してクインケの材料にするのは彼の一番の楽しみ。
だが、それはあくまで「喰種」に対しての姿勢で、同僚や家族に対しては
本来のユーモラスで気さくな優しい態度で接している。



【聖杯にかける願い】

喰種の根絶。ゴミは取り除く。


【方針】
刑事という立場を利用してうまく立ち回っていく。
あまり「人間」は殺したくない。


【備考】

時系列的にはトーカちゃんに殺されてから亜門さんに遺体を発見されるまでの間です。


869 : ◇68mVZXqw0 :2016/02/21(日) 08:50:20 2WgW3tS.0
以上で投下は終了です。


870 : ◇68mVZXqw0 :2016/02/21(日) 09:06:31 2WgW3tS.0
申し訳ございません、記述ミスを発見致しました。

対魔力:E
魔力に対する耐性。
心臓がオルフェノクである事を除いて人でないアーチャーは、
クラス補正によるお守り程度の効果しか無い。→×


対魔力:E
魔力に対する耐性。
心臓がオルフェノクである事を除いてただの人であるアーチャーは、
クラス補正によるお守り程度の効果しか持っていない。→○



彼がこの力を使って幾つものオルフェノクと葬ってきた逸話が
宝具として昇華された物。→×

彼がこの力を使って数多くのオルフェノクを葬ってきた逸話が
宝具として昇華された物。→○


871 : 名無しさん :2016/02/21(日) 09:17:10 cHS79lR.0
>>870
>>833でも指摘されておりますが、トリップの付け方が誤っておりますよ


872 : ◇68mVZXqw0 :2016/02/21(日) 10:40:16 2WgW3tS.0
≫871

あ、そうなんですか!ありがとうございます、教えて頂いて。


873 : ◇68mVZXqw0 :2016/02/21(日) 10:41:49 2WgW3tS.0
>>871

ありがとうございます。


874 : ◇nw456mf657 :2016/02/21(日) 10:43:16 2WgW3tS.0
これでおk・・・だよな?今度こそ。


875 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/21(日) 10:51:17 yPKhlCyY0
大変遅れました。感想投下します。

ハーゴン&バーサーカー
マスターであるハーゴンは立ち回りが良いだけあって、聖杯戦争をあまり把握していないのが
欠点ですね。他の主従を通して、その辺りを把握して欲しいところです。
かつて勇者だったバーサーカーの存在は、一際悲しみを感じさせました。
投下ありがとうございました。

葛西善次郎&キャスター
キャスターが渋谷が全て支配し、負の感情を産み出す為にマスターが暗躍。
役割はしっかりしていますし、犯罪に長けているマスター・葛西の経験は恐らく聖杯戦争
で生かせる事ができるでしょう。彼らの美学は東京に傷跡を残せるのでしょうか。
投下ありがとうございました。

四季映姫・ヤマザナドゥ&キャスター
なかなかエグい能力を持ったキャスター・地獄少女ですが、藁人形たちも個性があって
面白いですし、彼らの方が気使っているのも良いです。
そのマスター・四季映姫はキャスターと対峙する形を取ってしまい、どうなってしまうのでしょう。
投下ありがとうございました。

犬養舜二&ライダー
安藤もいるならば、この男もいる。犬養の存在を知った時、安藤はどうするのか。
犬養も安藤の存在を知れば、注目することになるでしょうし。その辺りの対峙も期待します。
ただ、静かに野望を燃やすライダーは犬養でなくとも厄介な事をしでかしそうです。
投下ありがとうございました。

美樹さやか&アサシン
劇場版のさやかちゃんがマスターというだけで大分状況が違ってきますね。
友の為に、あるべき円環の理を修復する為に、彼女の聖杯への願いは重いものです。
アサシンもそんな彼女と分かりあえた事で、心良く聖杯戦争に挑めそうです。
投下ありがとうございました。

ハタ坊&バーサーカー
産み出した折角のゴブリンが無差別に襲い、バーサーカー自身にも襲いかかるとは面倒な宝具です。
ハタ坊も聖杯戦争を把握しておらず、好き勝手やらかしてしまうのならば
バーサーカーを抑えようとも考えないでしょうし。嫌な予感がしてなりません。
投下ありがとうございました。

南条光&ライダー
ライダーのルパンはマスターの為を考え、巻き込まないよう対応するようですが
そうはいかないのが聖杯戦争です。宝具もなかなか強力なものが多いので、マスターの光の為にも
うまく立ちまわって華麗に聖杯を盗んで欲しいところですね。
投下ありがとうございました。


876 : ◇fpGwb4AKEo :2016/02/21(日) 10:51:44 2WgW3tS.0
トリップキー出来た・・・これなら・・・


877 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/21(日) 10:51:47 yPKhlCyY0
徳川光成&アサシン
強者たちの闘争を、英霊たちによる戦争を心より歓迎する光成の精神は、もしかすれば
殺戮を楽しむあの狂戦士や、他のサーヴァントたちの闘争心を動かすかもしれません。
アサシンは光成に従う方針ですが、果たして彼が闘争する瞬間は訪れるのでしょうか?
投下ありがとうございました。

エレン・イェーガー&バーサーカー
一際、巨人への駆逐を望み、その望みの強さを持つエレンは、聖杯戦争の全貌を知った時。
聖杯獲得の為に、動くのでしょうか? その場合はバーサーカーを制御しなければなりませんし
聖杯戦争を把握するまでに、巨人化して狙われてしまわないよう立ちまわって欲しいですね。
投下ありがとうございました。

輿水幸子&レスキュー
聖杯戦争を把握していない上に、サーヴァントと友好的であるとは言えなく、意思疎通も
怪しい感じの幸子はこのままでは敵に狙われると危険でしかないですね。
レスキューが救助するのはマスターとの幸子とも限りませんし、一体どうなるんでしょう。
投下ありがとうございました。

首藤涼&アサシン
長く生き延びたからこその老いと死を望む。だけど、思い出を蒸し返そうとはしない。
涼の願いは年輪を重ねたからこそ重みと美しさを感じさせるものです。
ただ、アサシンの宝具には厄介なものがありますし、聖杯を得るには立ち回りが重要そうです。
投下ありがとうございました。

うちはサスケ&アーチャー
サスケは参戦時期からして、まだ取り返しのつかないところに足を踏み出さないようですね。
しかしながらアーチャーとの関係はピリピリとしたものですし、聖杯戦争で影響を与える
主従と巡り会えば何かサスケの思いが変わるのかもしれません。
投下ありがとうございました。

ジョセフ・ジョースター&アサシン
まだ波紋の力が未熟の状態のジョセフですが、彼には頭脳と黄金の精神がある以上
アサシンと協力し合えれば、聖杯戦争で生き残る事はできそうですね。
アサシンもその過程でジョセフを成長させる手助けをしてくれるかもしれません。
投下ありがとうございました。

李小狼&セイバー
桜、もしくは「さくら」という名前の繋がりによって召喚されたかもしれないセイバーに
小狼も運命的な何かを感じたのかもしれません。セイバーから聖杯戦争の概要を聞き
果たして小狼はどのような方針を取るのでしょうか? 今後を期待させます。
投下ありがとうございました。

東京都&ゴジラ
俺自身がマスターになることだ……という意味ですか。土地そのものがマスターとは
もはや何がなんだかわかりません。そして、東京都を破壊するゴジラを召喚してしまうのも
皮肉な感じがしますが。東京都はこれで良いのでしょうか?
投下ありがとうございました。

真戸呉緒&アーチャー
吸血鬼関連の主従が集まり出している中、吸血鬼を狩る主従も自然と現れるものです。
嫌悪する種族と巡り会うのは皮肉なものですし、対面するのも戦うのも、もはや運命なのでしょう。
特定の種族を根絶やしにしようとするこの二人の願いは、聖杯に届くのでしょうか?
投下ありがとうございました。


878 : ◆lkOcs49yLc :2016/02/21(日) 14:26:16 2WgW3tS.0
b


879 : ◆lkOcs49yLc :2016/02/21(日) 14:34:20 2WgW3tS.0
申し訳ございません。書き間違えました。
「美樹さやか&アサシン」「エレン・イェーガー&バーサーカー」「真戸呉緒&アーチャー」の作者ですが、
ようやくトリップキーが書けるようになりましたので、ここに報告致します。
今までお騒がせしたことを、深くお詫び申し上げます。


880 : ◆.wDX6sjxsc :2016/02/21(日) 14:38:19 E.2/MVhA0
投下します


881 : アイリス=トンプソン&セイバー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/21(日) 14:41:17 E.2/MVhA0

アイリス=トンプソン。
それが私の名前。
けれど、その名前を授けてくれたパパとママに最後に呼ばれたのは一体どれ程前の事だろう。
もう何年も呼ばれていない気もする。

SCP-105-A
私のもう一つの名前。
再び此処に戻ってくる前は、公的な場以外ではあまり呼ばれなかった名前。
今は、極力此方の名前で呼ぶよう、私を監視する人や、此処にいる研究者の人達は心がけているらしい。
釈然としない、始めてきた時と同じ囚人の様な扱いだと思う。
でも、仕方ない。
私は収容違反を犯そうとしたのだから。
後悔はしていない。暗殺者になるくらいなら、今の生活の方が遥かにマシだ。
事実、此処での生活はことさら酷い物ではない。三食しっかり食べさせてくれるし部屋も狭くなく快適。
逃げ出す前は自由に施設の外にも出れた。
悪魔で、“前”は、だが。
殺し屋まがいの事をさせられるより良心的とは言え、今の私の生活には自由は無かった。
無理やり納得し、飲み込んではいるが、気がかりなことは山積みだ。

特に私を助けようとしてくれた???????博士。
私を助けようとした事で、ひどい処罰を受けてはいないだろうか。
Dランクの職員に降格させられてはいないだろうか。

私に負けて一日拗ねていた彼はどうしているだろうか。
彼がSCPに関わりのない人々の血で掌を朱に染めていないことを切に願う。

そして…もう二度と会えないパパとママ。
殺人者の両親と、後ろ指を刺されてはいないだろうか。
ここに来てから一日たりとも、二人の事を想わない日は無い。
いくら想ったとしても、仕方のない事なのだが。
私にできることはここの人達のインタビューや実験にただただ協力することだけだ。


882 : アイリス=トンプソン&セイバー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/21(日) 14:42:18 E.2/MVhA0

はぁ、とため息を一つはき、部屋の前に立つ。
監視カメラで常に見張られて、何かおかしな行動をしようものなら
すぐに自分を確保しに来るだろうが、そうでなければ監視役の人間は今はいない。
反射で鏡の様に自分を映していた監視カメラを忌々しく思いながら部屋の中に入る。


「………!?」


そして、驚愕。
無理もない。だって―――

「何でこれがここに……」


此処にあるはずのない物。
SCP-105-B。
収容違反をしたあの日から取り上げられていた、最早私の半身と言ってもいい因縁を持つポラロイドカメラ。


「何かの実験なの…それともSCPが…?」


辺りを見回すが、このカメラ以外は何もおかしなことは無かった。
しん、
静寂が部屋を取り囲むように満ちていた。

だが、それも長くは続かない。
ジジジジとポラロイドカメラから写真が吐き出される。
勿論何も撮っていないのにも関わらず、だ。

ここで、彼女は確信する。
自分は今、何らかのSCPによる干渉を受けているのだ。
だが、誰かに伝えようと言う気は起きなかった。
今起きている干渉は自分に直ぐには害を与えない、不思議な確信があった。
それが自分の意思で導かれたのかは正直自信が持てない、が。


883 : アイリス=トンプソン&セイバー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/21(日) 14:42:45 E.2/MVhA0

はっきりとした意識のまま、ポラロイドカメラから出てきた写真を取る。
見てはいけないと思った。
けれど、あまりに全てが唐突で、理性の抑止は間に合わない。

「……?」

映っていたのは、荒涼とした砂漠だった。
無限に続いていそうな、何もかも乾いた大地とそこに建つ家。
その家の傍らには小さな林檎の木が、ささやかながら実を成していた。
視線を、逸らすことが出来ない。

そうしている内に写真の中の物をリアルタイムでの“映像”として観測できる
彼女の能力によるものか、豪、と風が吹き、写真中で砂塵が舞う。
砂が自分の眼の中に入ってきそうで、思わず瞼を閉じた。


―――それが、最後。

SCP-105-A及びBは日付??/??/????にサイト17から??の??????????。





884 : アイリス=トンプソン&セイバー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/21(日) 14:47:19 E.2/MVhA0




パシャリ。
夕日に染まった東京に、懐かしいカメラのシャッター音が響く。

「……いい街ね。ここは」

誰に言うでもなく呟く。
ここにはあの冷酷な財団の影響下にはない。
彼女が、ボーイフレンドが殺される前に生きていた世界がそこに在る。
SCP-105-A、アイリス=トンプソンは留学生と言う名目で異国の空の下に居たのだ。

だが、SCPや、それに準ずる存在がいない、とは限らない。

「そう思わない?セイバー」

彼女の傍らに立つ、彼女と同じ金髪の、屈強な男に問いを投げる。
だが、街を見る男の表情はとても苦々しげだった。
とても大事な物を見るような、悍ましい蠱毒の壺の中を見るような、そんな言葉にしがたい表情だった。

「それよりも」

セイバー、そう呼ばれた男が少女に向き直る。

「お前は、聖杯を獲りに行く。それでいいんだな?」

ええ、とアイリス。

「私…やっぱり、SCP-105じゃなくて、アイリス=トンプソンとして生きたい
 パパとママに、もう一度会いたい」

だから聖杯を獲る、と彼女は言った。
SCPと呼ばれる存在から、人間に戻るために。


885 : アイリス=トンプソン&セイバー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/21(日) 14:48:33 E.2/MVhA0

「そうか…」

男は頷き、瞑目する。
そして、

「あっ、ちょっと…」

そのまま姿を消した。
アイリスは愛想のあの字も無い態度に少しふくれ、

「ま、“彼”と似た様なものね」

同時にかつての同僚を思い出し、微笑んだ。
そして、


「―――貴方もこの街にいるの?」


テレビで見た光景。
何故かは分からないが、その同僚がこの街にいるかもしれない。
その事実は、アイリスに僅かの歓喜と大いなる不安を齎していた。




886 : アイリス=トンプソン&セイバー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/21(日) 14:49:16 E.2/MVhA0


皮肉なものだ。
あれだけ唾棄し、滅ぼすべきだと思っていた人間に傅く日が来るとはな。
人間と言っても、ただの人間ではなかったようだが。
人を超えた力を持つが故に、収容と言う名の支配を受けていた者。
成程、確かにその力や内包する魔力量は只人の比では無かった。
だが、人間であることに変わりはない。


―――俺は、この聖杯戦争を通して人間を今一度見極めなければならない。


本当に、同胞達と弟が、■■■■■が人を守った事が正しい選択だったのかを知る事こそが俺の望みだ。
そのために、主に幾つかの情報をあえて伏せた。

令呪の事。
この聖杯戦争がサーヴァントだけでなく、マスターの死によっても成り立っている事。

マスターが巻き込まれ死亡することはあるが、あくまでサーヴァント間でのみ、奴は殺し合いが成立すると思っている。
が、そんな反吐が出るほど甘い話ではない。

全てを知った時、主は何を想い、俺をどう扱うか。
もし、激昂して令呪で俺に自害を命じてくれば、やはり人間はその程度の存在なのだろう。
そうなった場合、令呪を使われる前に万象を切り裂く天使の刃を以て粛清するだけだ。
その後、他のサーヴァントに討ち取られても構わん、人間に命じられて命を絶つぐらいならばそちらの方がマシだ。
そう、砂漠の惑星ノーマンズランドに居た頃と何一つかわらな――――


…もし、そうなったら
ぼくは、いそいでにげよう。
そしてまた、ほとぼりがさめたら
しずかに、よりそうよ。



……五月蠅い、■■■■■。
俺は確かにお前に負け、お前に救われた。
だが、お前の価値観を受け入れた訳ではない。
俺はお前と共に歩む気は無いんだよ。
無論、人間ともだ。
今更自分の道を違えることなど、他の誰でもない、この俺自身が許さない。

お前が百五十年歩いて生き方を変えなかったように。
俺も、俺の道を進み続ける。

地には平和を、そして慈しみを。
その言葉はここに召喚されて尚、余りにも遠い――――。


887 : アイリス=トンプソン&セイバー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/21(日) 14:49:43 E.2/MVhA0

【CLASS】
セイバー

【真名】
ミリオンズ・ナイブズ@TRIGUN MAXIMUM

【パラメーター】
筋力B 耐久B 敏捷B 魔力A 幸運C 宝具A++


【属性】
秩序・悪

【クラススキル】

対魔力:A
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、現代の魔術師ではセイバーに傷をつけられない

騎乗:D
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。
飛行艇を操ったという逸話から、空を飛ぶ乗り物の場合さらに補正がかかる。

【保有スキル】

単独行動:A
マスター不在でも行動できる。
ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。

直感:B
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。

魔力放出:C
武器、ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、
瞬間的に放出する事によって能力を向上させる。

【宝物/宝具】
『天使(プラント)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
エネルギー源及び各種生産能力を自然の摂理を超越して、違う世界から「持ってくる」「持っていく」力を持ち、物質を無から創りだせる。
さらに、物質を生み出すだけでなく、毒素の排除や肉体の修復、ありとあらゆる事に応用できる。
だが、この力を使えば、魔力消費とは別にセイバーは疲弊していき、髪が黒く染まっていく。
これが所謂「黒髪化」であり、髪が黒く染まりきった時、魔力がたとえ十分に供給されていたとしても、セイバーは現界を保てず消滅する。

『孤独の王-片翼-(エンジェル・アーム)』
ランク:A++ 種別:対星宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
上記のプラントの力を使用して発動する宝具。
あらゆる物質、多元的宇宙や高次元すら切り裂く天使の刃を放出する。
その速度は超光速の領域であり、射程は月にとどくほどだが、黒髪化が一番進む宝具である。
黒髪化が進行しきった状態、『最後の大生産(ラスト・ラン)』の状態でこの宝具を使用すればさらに+値がかかるが、使用した瞬間セイバーは消滅する。

『孤独の王/終わらない唄』
ランク:E 種別:- レンジ:- 最大捕捉:-
上記のプラントの力を使って一本の林檎の木を創りだす。
この宝具だけは、使用しても黒髪化が進行しないが、何の変哲もない林檎の木と林檎のためセイバーは当然使用したがらない。

【Weapon】
超越種としての身体能力と、プラントの能力で作った刀。

【人物背景】
プラントと呼ばれる生体ユニットの突然変異、自立種。
弟と同じく、彼もかつては人間を信じていたが、テスラと呼ばれる同胞の事件により、人間に激しい恐怖と憎悪を抱くようになり、人間を絶滅させようとする。
しかし、百五十年賞金首として守るべき人間に追われつづけて尚、それでも人の傍らに寄り添い続けた弟に敗けを認めると、最後は重傷を負った弟を嫌悪していた人間に任せ、
その代償として残された力を使って砂漠の惑星に一本の林檎の木を生み落し、姿を消した。

【サーヴァントとしての願い】
人間が滅ぶべき存在かどうかをマスターを通じて見極める。


888 : アイリス=トンプソン&セイバー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/21(日) 14:50:11 E.2/MVhA0

【マスター】
SPC-105-A/アイリス=トンプソン@SCP Foundation

【マスターとしての願い】
SPC-105ではなく、アイリス=トンプソンとして生きたい。もう一度両親に会いたい。

【weapon】
[削除済み]に所属していた頃に培われたSPCについての知識や荒事の経験

【能力・技能】
『SCP-105-B』
SCP-105がSCP-105-Bにより撮影された写真を所持している場合、写真は静止した画像から当該の場所のリアルタイムの映像へと変質する。
加えてSCP-105は、写真が撮影された本来の地点から手の届く範囲において、写真を通して物質に接触すること、操作することが可能。
この操作を見た人物は、肉体から離れた女性の手(SCP-105の手と特定されている)が目に見えない穴からのびて、指示された動作を行ったと報告されている。
SCP-105-Bと前述のカメラで撮影された写真は、他の人間が使用する場合には異常な特性を示さない。

【人物背景】
ヨーロッパ系の女性。
彼女はブロンドの髪に青い目をしており、記録の時点での身長は1.54メートル、体重は50kg
本人曰く礼儀正しい性格で財団からの評価は標準的で健康的な人物。
ボーイフレンドが殺された事件を起点として、財団に収容される。
その後はその協力的な姿勢や能力を買われ、とある部隊に―――[削除済み]

【捕捉】
令呪について知りません。
殺し合いはサーヴァント間だけのものであり、マスターを殺す必要はないと思っています。

クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP FoundationにおいてLt Masipag氏が創作されたSCP-105のキャラクターを二次使用させて頂きました。


889 : ◆.wDX6sjxsc :2016/02/21(日) 14:50:39 E.2/MVhA0
投下終了です


890 : ◆ZZZnF4MZ0Q :2016/02/21(日) 16:25:26 K1ES2Bkk0
投下します


891 : シャーロック・シェリンフォード&バーサーカー  ◆ZZZnF4MZ0Q :2016/02/21(日) 16:26:09 K1ES2Bkk0

東京の街。
彼女がいた『偵都ヨコハマ』とは近かった都市。
彼女の記憶ではここまで栄えた都市ではなかったはず。

「困ったです……」

小さく震えるように呟く。
殺人事件の記事ばかり載っている新聞やテレビニュース。
ここまで物騒な事件とはほぼ無縁だったのでこんなことは今までにはなかった。

「……ネロ、エリーさん、コーデリアさん……」

いない仲間の名前を呼んでも誰も答えてはくれない。
自身がいるのはいつもの事務所ではない。
見知らぬ場所で頼れる仲間もいない。
一人きり。


「ほう、お前(ぬしつ)が俺(おい)の……ますたぁか?」
「!? 誰ですか!?」


彼女が声の方を振り向くと……
そこに黒い髪にジャケットのような真っ赤な羽織の男がいた。






シャーロック・シェリンフォード、それが彼女の名前だった。

彼女は探偵だった。
それもただの探偵ではない。

『トイズ』という特殊能力を持った探偵だ。

『トイズ』
それは選ばれし者の心に膨らむ奇跡のつぼみ…
ある者は清浄の花を咲かせ、ある者は毒の花を咲かせる。

   大探偵時代、美しさを競いあう二つの花

その名を『探偵』と『怪盗』といった……



「ヴァンガードにアタックです! ドライブチェック……ゲットクリティカルトリガーです!」



……今、クラスメートととあるカードゲームをエンジョイ&エキサイティングしているが探偵だ。
自身が操る『ロイヤルパラディン』のデッキはそこそこの強さを誇っていた。
そんな彼女はとある学校に通いつつも探偵業をしている。

「あたしの勝ちです!」
「またシャロの勝ちか―」
「えへへ、たまたま運が良かっただけですよー」

授業と授業の合間の休み時間。
その学校では特に事件もなくほとんど平和。

『平和』。

……違和感に気づいたのはその時だった。
何かがおかしい。

(皆がいない……?)

いつもの4人。
そう言われていたような気がしていた。
が、それは何か違う気がした。

(ネロやエリーさん、コーデリアさんがいないです!!)

ミルキィホームズの残りの三人がいないことに気付いてしまった時。
彼女はここが『ホームズ探偵学校』でないこと。
『偵都ヨコハマ』ではないこと……その他色々。
とりあえず、お昼ごはんを食べて、午後の授業を受けてから家に帰った。

そして、家の中々を色々と探索した。


892 : シャーロック・シェリンフォード&バーサーカー  ◆ZZZnF4MZ0Q :2016/02/21(日) 16:26:41 K1ES2Bkk0




「えーっと、バンサンカンさん?」
「……島津!! 島津豊久!!」
「島津さん……そのナントカ戦争……ってなんですか?」
「おいもよぉわからん!」
「……………はい?」

そのバンサンカン基バーサーカー――島津豊久から聞かされたことは理解できなかった。
ナントカ戦争、さぁヴぁんと、ますたぁ……等々。
馬鹿な豊久の説明のせいもあってか話の半分も……9割くらい理解できなかった。

「要するにおいが全部の大将首を取ってくればいいだけの話!!」
「た、大将首を取る!?」
「そうすれば、ぬしつもそのヨコハマとやらに帰れる!」

だが、馬鹿な豊久の説明でアホのシャロでも理解できたのは……。
『この場は異常であること』と『自身が豊久のますたぁで豊久が自分のさぁヴぁんとであること』
そして、『この島津豊久という男が異常(にバカ)であること』くらいだった。

「おいはここがどこでどうなっているかなにも知らん。
 これが夢か現実か何もわからん!! 
 だったら俺は突っ走ることしか知らん!」
「だ、だからって……だ、駄目です! そのナントカ戦争なんて!!」

戦国時代の真っ只中を生きていた豊久。
現在社会を生きているシャリ。
シャロと豊久の『死生観』はあまりにも違いすぎた。

「そうもいかん! おいは帰るのだ! 薩州に! ぬしつは帰りたくないのか!?」
「あ、あたしは……」

怖い。
怖くて怖い。
この状況も怖い。
目の前の男も凄く怖い。
怖くて怖くて泣きたかった。
だが、それでも彼女は自身の持つ小さな勇気を振り絞る。


「あたしは探偵です! だから、こんな殺し合いは間違っていると思います!!
 それにあたしみたいにこんなことに巻き込まれた人たちだって沢山いると思います!!
 だから、その人たちも助けたいんです!!!」


シャロは自分の言葉で自分の意思を貫こうとする。
その目で真っすぐに豊久を見つめる。

「……良か目じゃ……」
「はい……?」

少し豊久は困惑する。
只の弱そうな少女がここまで自分に意見することに。

「お前に何か考えがあるのか?」
「それは……」

一旦、考える。
数秒。
いや、数分。
否、数時間。

「これから探します!!」

啖呵を切ったものの、ノープランだった。
そりゃいきなりそんなこと聞かれてもアホの子には答えられないよ。

「ほう、そんな事か」
「まさか島津さんには何かいい考えが……?」
「それは勿論……」
「勿論……?」
「………………考えてなか」
「ってなんでですかー!」

ノープランだった。


893 : シャーロック・シェリンフォード&バーサーカー  ◆ZZZnF4MZ0Q :2016/02/21(日) 16:27:19 K1ES2Bkk0

【出典】
ドリフターズ

【CLASS】
バーサーカー

【真名】
島津豊久

【属性】
混沌・中庸

【ステータス】
筋力:B+ 耐久:A+ 敏捷:A+ 魔力:E- 幸運:B 宝具:-

【クラススキル】
狂化:E
バーサーカーのクラススキル。
ランクが低いため影響は少ないので正常な思考力を保っており意思疎通どころか普通に会話できる。
ただ、敵大将首に対する執念は凄まじい。

【保有スキル】
戦闘続行:A+
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

勇猛:A+
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

直感:C
戦闘時、常に自身にとって最適な展開を感じ取る能力。
敵の攻撃を初見でもある程度は予見することができる。

狂奔:A
人を戦に駆り立てる力。
大名ではなく乱世の武将に必要な能力。

示現流
種別:対人魔剣 最大捕捉:1〜
その太刀筋は臨機応変かつ一撃必殺。
後先を考えずに全てを込めて繰り出す一撃は甲冑・軍馬ごと相手を両断する威力を持つ。

【宝具】
持ってない

【weapon】
無銘の野太刀

【人物背景】
薩摩が生んだ殺人マッシーン。
薩人マシーン。

【サーヴァントの願い】
薩州に帰る。


【マスター】
シャーロック・シェリンフォード@探偵オペラミルキィホームズ

【マスターとしての願い】
ヨコハマに帰りたいが、この聖杯戦争に巻き込まれた人たちも助けたい。

【能力・技能】
念動力(サイコキネシス)のトイズ
持ち上げられるのはせいぜい1kg程度の物体で見えている範囲でないと動かすことはできない。
しかし、1kg以内であれば複数の物を同時に動かす事も可能。

探偵としての技能
推理力と洞察力はまだまだだが、『勘』は鋭い。

【人物背景】
ホームズ探偵学院在籍の女生徒4人組「ミルキィホームズ」のメンバーの一人。
明るく元気でまっすぐだがやや天然気味な性格で、「ミルキィホームズ」内のムードメーカーのような存在。

【補足】
豊久から聖杯戦争のことを知らされましたので、ほとんど理解できていません。


894 : ◆ZZZnF4MZ0Q :2016/02/21(日) 16:27:54 K1ES2Bkk0
投下終了です


895 : ◆TA71t/cXVo :2016/02/22(月) 01:57:58 REDfQgbI0
お疲れ様です
これより投下します


896 : 野原しんのすけ&アーチャー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/22(月) 01:58:32 REDfQgbI0
【二日目】


「じゃあみんな、さよならー!」
「うん、また明日ー!!」

日が落ち、そらが夕暮れ色に染まりつつある時間帯。
公園で遊んでいた子ども達は帰宅の時間を迎え、散り散りになりそれぞれの帰路へついていく。


「ほっほーい!
 また明日だぞー!!」


彼―――野原しんのすけもまた、そんな中の一人であった。
作りもののこの東京において、今までどおりの日常を何事もなく彼は送っていた……一見、送っているように見えた。

しかし。

その小さな手の甲には、文様―――令呪が、確かに刻まれていた。
この東京は本来自分達のいるべき世界ではないと、そう気づき選ばれた者である確たる証拠が、彼にはあったのだ。
そう、しんのすけは既に現状を理解していた。
ここは自分が住んでいた筈の春日部ではなく、家族や周りの友人達もどこか自分の知っている者達とは違うと。




――――――こんなの、オラの住んでる春日部じゃないぞ!!




事実に気づいた時、彼は大声で空に叫んだ。
両親や身近な住人が、クローンや人形といった偽物になり代わった経験なら、以前にも経験した事があった。
更に言えば、こういった作り物の世界にいつの間にか配役として置かれていた事すらも、彼にとってははじめてではない。
今の状況は、映画の中というありえない世界に閉じ込められたあの時と非常に似ているのだ。
だからこそ、彼はこの世界が偽物である事にすぐさま気づくことが出来たのである。


897 : 野原しんのすけ&アーチャー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/22(月) 01:58:56 REDfQgbI0
たったの5歳児で―――否、例え大人であろうともこんな凄まじい経験をした者は世界広しと言えどそうはいないだろう。
それが、野原しんのすけだ。
あらゆる平行世界の可能性を探そうと、彼ほど多くの冒険を乗り越え世界の危機を救ってきた5歳児は他にいない。
ここまでの伝説を作り上げた5歳児は、彼以外に存在し得ないだろう。

そんな彼が今、こうして新たな冒険の物語に足を踏み出したのである。
そして、彼が世界を股にかけた大冒険に旅立つ時というのは、決まって―――極一部の例外はあるが―――パートナーとなる存在が側にいる。

ある時は、正義のヒーローアクション仮面。
ある時は、自身と瓜二つの容姿を持つスンノケシ王子。
ある時は、オカマ兄弟珠由良ブラザーズ。
ある時は、SMLのエージェントお色気。
ある時は、青空侍井尻又兵衛由俊。
ある時は、ロボとーちゃん。

誰も彼もが癖のある、しかしとても心強い存在であった。
しんのすけと協力し合い、多くの野望を打ち破ってきた大切な仲間達だ。


故に、当然ながらこの聖杯戦争にも彼のパートナーとなる存在―――サーヴァントがいる。
一癖も二癖もある……しかしそれでいて、側にいるととても頼りになる。
これまでの例に漏れず、そんな男がしんのすけのサーヴァントに選ばれたのだ。


898 : 野原しんのすけ&アーチャー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/22(月) 01:59:26 REDfQgbI0

「我達も帰るとするぞ、しんのすけ」


遊び終わったしんのすけの傍らに、その男はゆっくりと歩み寄っていった。

唯我独尊、我が道を行く。
彼が世に残した伝説は数知れず。
人知を超える冒険は数多乗り越えてきた。

サーヴァントは触媒を用いた召喚を用いぬ限り、通常は何かしらマスターと似通った点を持つ者が選ばれる。
故にしんのすけは、この男を引き当てたのかもしれない。


「お、金ピカのお兄さーん!」




あらゆるサーヴァントの中でも、最高峰の実力を持つと言われる英雄王―――ギルガメッシュを。




◇◆◇




「でね〜、ネネちゃんってばそこで『あんたの稼ぎが少ないからこうなってるんでしょ!』って言って。
 マサオくん、泣いちゃったんだぞ〜」
「ほほう……全く、幼子にあるまじき遊びよな。
 いやしかし、子どもとは背伸びして大人に近づきたがるモノ……そう考えれば可愛くもみえるものか」


自宅への帰路において、しんのすけとギルガメッシュは仲良く会話を交わし笑い合っていた。
もしも英雄王を知る者達がこの光景を見れば、信じられず絶句するに違いないだろう。
口を利くだけでも『不敬』と言われ、挙句しんのすけの様に馴れ馴れしく話そうとすれば、即座に首を跳ねられ死亡していてもおかしくない。
それ程までに英雄王とは傲慢で傍若無人な男なのだ。


899 : 野原しんのすけ&アーチャー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/22(月) 01:59:48 REDfQgbI0
では何故、しんのすけはこうも彼と仲良く接していられるのか。
それは偏に、二人の出会いにあった。




――――――問おう、小僧……よもや貴様が、我を呼び出したマスターか?



しんのすけが世界の違和感に気づき声を上げた時。
英雄王ギルガメッシュはアーチャーのクラスを得て、その場に降り立った。
彼は最初、自らを呼び出したのが年端もいかぬ童子である事に驚きを覚えた。
しかしそれを表には出さず、王として、いつもどおりの傲慢な態度でしんのすけに問いかけたのだった。
この様な子どもが自身を呼び出すなど、どういった事か。
それを確かめる意味での問いかけでもあったのだが……

この時しんのすけから返された答えは、全くギルガメッシュが想像していなかったものだった。



――――――おお〜! すごい金ピカだぞ!! お兄さんかっこいい〜!!



しんのすけは目の前のギルガメッシュを見て、心から歓喜の声を上げたのだ。
光り輝くかっこいいヒーローが自分のもとに現れたと、ただただ驚き興奮して目を輝かせたのだ。
これが、ギルガメッシュの心に効いた。



――――――フ……フハハ! そうか小僧、我が勇姿に目を奪われたか!! 我がカッコいいか!!



純真無垢な子どもが、自身の姿を目にして心を躍らせている。
深く憧れを抱き、こうして羨望の眼差しを向けている。
英雄王たる自身を、何よりも頼もしいヒーローとして見ている。
その事実に、ギルガメッシュは心から笑った。
確かに、王たる自身を崇め讃えるのは当然のこと……それを為さぬなど不敬にも程がある真似だ。
しかし、しんのすけはモノの通りも知らぬ子どもだ。
余程の事がない限り、それがなくとも誅するつもりもなかったが……
こうして憧れの存在として見られ心からの賞賛を浴びせられたとあれば、実に心地がいいものだった。
この出会いで気を良くしたギルガメッシュは、寛大な態度でしんのすけと接した。
聖杯戦争とはいかなるものか、何も知らぬ彼に色々と教えたのである。
無知なる子どもに正しき知恵を与え、自身の配下たるに相応しき存在とするのも王の役目として。


900 : 野原しんのすけ&アーチャー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/22(月) 02:00:05 REDfQgbI0



――――――どうだ、小僧……いかなる願いもかなう願望器を前にして、貴様はどう動く?



そして全てを教え終えた時、ギルガメッシュは彼に問いかけた。
あらゆる願いを叶える願望器たる聖杯を、目の前にできると。
他の参加者と競い合い勝ち残れば、如何なる望みも思うがままであると。
ギルガメッシュは興味があったのだ。
子どもとはいえ自身を呼び出すだけの者……只の凡人ではあるまい。
ならば果たして、その胸中はいかなるものか……何を望むかを、確かめたかったのだ。

莫大な富か、絶対の名誉か、何者にも負けぬ強き力か。
一体その小さき体に、如何なる欲を秘めているのか。

そんなギルガメッシュの問いに対し……しんのすけは、こう答えた。



――――――じゃあ、オラ……いつまでもみんなと仲良く面白くいたいぞ!


――――――何……? それが貴様の望みだというのか、小僧?


――――――そうだぞ! みんなで仲良くずっと一緒にいられたら、何の問題も起こらないしずっと元気でいられるぞ!


富も権力もいらない。
ただ、一緒にいる家族や友達と、ずっといつまでも仲良くいたい。
しんのすけの望みは、ただそれだけだったのだ。

実に平凡な、ありふれた望みだった。
しかしそれでいて、実現させるのには厳しく険しい夢だ。
願望器に託すには、十分な望みとは言えるだろう……しかし。
その為には、聖杯戦争に勝ち抜かねばならない。
他の参加者を蹴落とす必要がある、命を奪う必要があるのだ。
果たしてしんのすけには、その覚悟があるのか。



――――――その為には、貴様の言う仲良くしたい者達をも滅ぼさねばならぬ事態とてありえる……それを受け入れられるのか?


――――――オラ、それはやだぞ……喧嘩なんかせずに、一緒にいたいぞ。



当然、しんのすけはそれを許容しなかった。
ギルガメッシュからしたら予想通りの、それでいて落胆させる答えではあった。
ここで彼が、他を顧みずに願いを叶えるべくその道を貫こうというならばそれなりの評価はできたのだが……所詮は子どもか。
なんとつまらぬ展開かと、ため息をはこうとしたが……

その時、しんのすけはすぐにこう口にしたのだ。


901 : 野原しんのすけ&アーチャー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/22(月) 02:00:29 REDfQgbI0




――――――でも、お兄さんはその為に来てくれた救いのヒーローなんでしょ?


――――――……ほう?


――――――オラは信じるぞ! 金ピカのお兄さんは、オラ達をお助けしに来たヒーローだぞ!! そんな喧嘩なんかしなくても、みんなの為に闘ってくれるヒーローなんだぞ!!



ギルガメッシュならそれが出来る。
絶対無敵の救いのヒーローだと信じている。
確たる証拠はない、あくまで直感に基づくものだが……彼は譲ることなく、口にした。
しんのすけは、臆することなくギルガメッシュに真正面からそう言い放ったのだ。



――――――ハハハハハハッ!!まったく……我のマスターは、とんだ大馬鹿者よ!!



ギルガメッシュは、声高々に笑った。
なんという子どもだ。
この身より放たれる王気にも一切たじろがず、英雄王を心より求めている。
実に恥知らずだ、厚顔無恥にも程がある。
英雄王たる自身にここまで臆することなく望みを言う浅ましき大馬鹿者など、そうはいない。
良かろう。
自らの為に我を欲し、はばかる事なく己が正当性を謳う。
そんな純心を愛でるのもまた我が仕事だ。




――――――よかろう、小僧……貴様のその望み、この我が叶えてやろうではないか!!




我がこの童子を救わずして誰が救うというのか。


902 : 野原しんのすけ&アーチャー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/22(月) 02:00:48 REDfQgbI0




◇◆◇




「受け取るがいい、しんのすけ。
 遊び疲れたであろう?」
「おお、超プレミアムゴールデンチョコビ!
 ありがとうだぞお兄さん!!」


あの出会い以来、二人の関係は実に良好であった。
小僧呼ばわりもいつしか名前に変わり、今やこうしてギルガメッシュからお菓子を差し出す事すらある程だ。
実際、ギルガメッシュはしんのすけの事を相当に気に入っていた。
共に接する内に彼はしんのすけの事を理解していったのだが、中々にどうして面白いというのが彼の感想だった。
5歳児でありながらも、自身にも匹敵するほどの冒険の数々を乗り越える程の胆力と豪運。
王たる自身にこそ及ばぬものの、将来を期待せずにはいられないその器の大きさ。
野原しんのすけという存在は、ギルガメッシュにとって実に『楽しみ』となりえるマスターだったのだ。
だからこそ、彼の言う救いのヒーローになってやろうと乗り気にもなれる。

それに……ギルガメッシュ自身、はっきり言うとこの聖杯戦争は気に入らなかった。
作り物の世界、作り物の街、作り物の住人。
この東京の全てが、彼の毛嫌いする贋作そのものなのだ。
そんなものを生み出したこの聖杯戦争の主催者とやらを、この手で誅滅しなければ気がすまない。
その怒りもまた、彼がしんのすけの願いを叶えてやろうという気持ちになった理由の一つだ。
この英雄王を掌で転がし思惑の為に使おうなど……如何に愚かしい所業なのか、教え込まねばなるまい。
完膚なき形で、そのくだらぬ計画を破壊しつくしてやろうではないか。


「しんのすけよ、いよいよこの聖杯戦争が始まる時が来る。
 存分に見ておくがいい……この王の姿をな!」


903 : 野原しんのすけ&アーチャー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/22(月) 02:01:07 REDfQgbI0
【サーヴァント】

【クラス】
 アーチャー@Fateシリーズ

【真名】
 ギルガメッシュ

【属性】
 混沌・善

【パラメーター】
 筋力:B 耐久:C敏捷:C 魔力:B 幸運:A 宝具:EX

【クラススキル】
対魔力:E
 魔術への耐性。
 無効化はできずダメージを軽減するのみ。
 ただし、身につけている鎧をはじめ対魔術用の防具が充実しており、実質的にはA相当。

単独行動:A+
 マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
 ギルガメッシュのそれは宝具の多用など魔力を相当に浪費するような真似さえしなければ単独でも十分な戦闘が可能である。

【保有スキル】
黄金率:A
 人生においてどれだけ金がついてまわるかという宿命。
 一生金に困ることはなく、大富豪として生活していくことができる。

カリスマ:A +
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。
 ギルガメッシュのそれは、既に魔力・呪いの類である。

神性:B
 神霊適性を持つかどうか。
 ギルガメッシュは本来A+相当の出自なのだが、彼自身が神を嫌っているためランクダウンしている。

コレクター:EX
 より品質の良いアイテムを取得する才能。
 レアアイテムすら頻繁に手に入れる幸運だが、本人にしか適用されない為、マスターに恩恵はない

【宝具】
『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』
 ランク:E〜A++ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1000人
 バビロニアの宝物庫と、それに繋がる鍵剣『王律鍵バヴ=イル』。
 持ち主の蔵と空間を繋げる能力を持ち、蔵も中身も所有者の材の量に準ずる。
 ギルガメッシュは生前自分の蔵に『宝具の原点』をはじめとする大量の財宝を収めており、
 それらを王の財宝で空間を繋げて取り出し、射出して攻撃を行う。
 この戦闘スタイルがアーチャーのクラスに選ばれた所以であり、同時展開は一桁から数百本まで可能で連射もできる。
 ただし同時に複数展開して射出する場合、それなりの魔力を要する。
 また、自身の背後に展開して攻撃を行うだけでなく、前面に盾を出して防御をするなど応用が効く。
 その蔵の正体は人類の知恵の原点にしてあらゆる技術の雛形。
 故にこの宝物庫には、人類が生み出すものであれば全て、遥か遠い超未来に人類が生み出すものまでも保有している。
 時間軸すら超越したとてつもない代物であるが、中には限界もあり取り出すことが不可能な宝具もある。
 そして、あくまでギルガメッシュはそれらを『所有』 するだけであり担い手ではない為、
 本当の意味で扱うことはできない。

『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』
 ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1〜999 最大捕捉:1000人
 乖離剣エアの出力を最大にして放つ、ギルガメッシュ最強の宝具。
 エアの回転する刀身が風を巻き込むことで生み出される、圧縮されせめぎ合う暴風の断層が擬似的な時空断層となり絶大な破壊力を生む。
 かつて混沌とした世界から天地を分けた究極の一撃であり、文字通り世界を切り裂いた剣。
 その破壊力は絶大で固有結界をも容易く破壊するが、それに見合うだけの魔力を消費する。
 極限まで威力を高めたその一撃は、世界を創造しうる力『権能』にすらも匹敵する。

【weapon】
『乖離剣エア』
 ギルガメッシュが保有する無銘にして最強の剣。
 王の財宝に収められている数々の宝物はあくまで彼が収集したものであり厳密には彼の宝具ではないのだが、
 このエアのみはそれらと異なり正真正銘ギルガメッシュしか持ち得ない宝具である。
 彼自身の興が乗った時、彼自身が抜くにふさわしいと認めた相手にのみ抜く切り札でもある。

『天の鎖(エルキドゥ)』
 ギルガメッシュが生前唯一の友と認めた者の名を冠する鎖。
 かつてウルクに飢饉を齎した天の牡牛を捕縛した鎖であり、所有者の意思に応じて相手をホーミングし捕らえる。
 神を律する力を持ち、神性の高いものほど高度を増す特性を持つ。


904 : 野原しんのすけ&アーチャー  ◆TA71t/cXVo :2016/02/22(月) 02:02:29 REDfQgbI0
【人物背景】
 まだ世界がひとつの大陸であった太古の時代に、世界の全てを収めたとされる人類最古の英雄王。
 半神半人の身だが、唯一無二の友エルキドゥを神の手で失った為、神を嫌っている。
 傲岸不遜・唯我独尊・傍若無人な性格であり、自らこそが唯一無二の王と称す傲慢さを持っている。
 それ故に常に慢心と油断の満ちた態度を取っているが、「慢心せずして何が王か」とその生き様を貫いている。
 好戦的且つ自分の気に入らない相手にはどこまでの残忍な面を見せ、
 自分の我欲で周囲にどれだけ被害を与えても頓着することなど一切ない。
 気に障った相手は例えマスターであろうとも一切の容赦がなく、命すらも平気で奪う。
 しかし、堂々と意志をぶつけてくる人物は嫌いではなく、
 自らが価値があると認めた相手には余程のことがない限り笑って許す度量を持っている。
 戦いの場においてもそれは顕著にでており、一度でも実力や志を認めた相手には一切の満身を捨てて相応の慎重さと冷静さを見せる。
 人の力量や物事の本質を見抜く目にも長けているため、即座に相手の弱点を看破して対応する宝具を選び出すなど、
 サーヴァント同士の戦いにおいては部類の強さを誇る。
 そして意外にも子どもに好かれやすい性質でもあり、彼自身もまた、未だ世の道理も知らぬ純真な子どもは好いている。
 この聖杯戦争においてもマスターのしんのすけは彼に非常になついており、またギルガメッシュ自身もしんのすけを気に入っている。

【サーヴァントとしての願い】
 この聖杯戦争を企んだ主催者を倒す。
 救いのヒーローとして、しんのすけの望みを叶えてやる。


【マスター】
野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん

【マスターとしての願い】
 元の世界に帰りたい。
 ギルガメッシュと一緒に頑張って、みんなと仲良く元気にいられるようにしたい。

【能力・技能】
 単なる5歳児だが、その発想力と機転の良さは大人でも顔負け。
 また、全力疾走でタワーを登るエレベーターに追いついたり、大人をヒップアタックで失神させるなど、
 5歳児とは思えない程に優れた身体能力も持っている。

【人物背景】
 埼玉県は春日部に住む野原一家の長男。
 5歳の幼稚園児だが、奇抜な言動と行動で周囲の人々を翻弄する『嵐を呼ぶ幼稚園児』でもある。
 子供らしい率直な性格と異様に大人びた物の見方に加え、常人離れした独特のセンスを兼ね備えている。
 いたずら好きで様々な騒動を巻き起こすものの、困っている人には率先して声をかけたり
 怪我をした生き物を懸命に助けようとするなど、極めて優しい心の持ち主でもある。
 そういったどこか憎めない性格の為か、何だかんだで人望は厚く人から頼られることも多い。
 実際、しんのすけの手によって助けられた者は大勢いる。
 美人のお姉さんが大好きであり、目にすると顔をにやけさせナンパをするなどませた面を見せる。
 そして、世界の命運を左右するほどの危機に幾度となく一家揃って直面しているものの、
 周囲の者達と協力して乗り越え、何度も世界を救ってきたという5歳児ではありえない程の大冒険に身を投じてきた。
 活躍を知る者からは英雄と言われても差し支えがない程であり、将来的には相当の大物になると言われている。
 実際に並行世界の未来では、『圧制者を倒す』『人類を管理していたコンピューターを破壊する』といった
 快挙を成し遂げた大英雄として扱われてもいる。

【基本方針】
 元の世界に帰るため、二人で一緒に色々と探してみる。 
 ただしギルガメッシュはしんのすけの事を考え、彼が深刻に魔力不足に陥らないよう気をつけておく。


905 : ◆TA71t/cXVo :2016/02/22(月) 02:03:04 REDfQgbI0
以上で投下終了です。


906 : ◆ZjW0Ah9nuU :2016/02/22(月) 02:33:37 heoGGWWA0
投下お疲れ様です
しんのすけに憧れられて気を良くするギルかわいいw
果てしなくカリスマブレイクをしているギルですが、しんのすけのために戦おうとする姿勢はとても頼もしいですね
宝物庫からチョコビ出したところは笑った

さて、拙作の『O5-12&アーチャー』ですが、ロボひろしのパラメータを
筋力A 耐久B 敏捷B 魔力E 幸運C 宝具B+
に変更し、宝具『機械、されど我が父』に人工筋肉に関連する記述を追加したことを報告いたします

編集差分にてチラ見程度でも確認していただければ幸いです


907 : ◆P9uN1b3eQ2 :2016/02/22(月) 02:59:15 nMhJp0FA0
投下します。


908 : 熊枕久瑠美&バーサーカー ◆P9uN1b3eQ2 :2016/02/22(月) 03:00:03 nMhJp0FA0

私の名前は熊枕 久瑠美(くままくら くるみ)。
ホセア学院に通う小学生。でも最近は高等部の先輩方のお手伝いをしています。
好きな動物は熊、出身地は熊野県、好きな食べ物は熊の手です。
昨日、目が覚めたら突然東京に引っ越したことになっていました。
お母さんとお父さんに尋ねても何のことだか分かっていないみたいですし、
この現象はきっとファントムの仕業に違いありませんね。
舞先輩たちはここにはいないみたいで心細いですが一人でも頑張らなきゃいけません。
そう心に決めたのはいいのですが……。

「ううっ、ぐすっ……アルブレヒト、どこぉ〜?」

私が生まれた時からの親友であるクマのぬいぐるみのアルブレヒトが見あたらないのです。
一緒につれてこられなかったんでしょうか?わたしはアルブレヒトがいないとなにも出来ません。
ファントムと戦ってくれるのも大きくなったアルブレヒトで私自身は特にやれることは無いのです。
仕方がないので泣きそうになりながらアルブレヒトを捜しに出かけることになったのでした。

「はぁ、疲れちゃったな。……あれ?」

交番にも行ったのですが相手にしてもらえず途方にくれながら公園のベンチに腰掛けると、
隣に先客が座っていました。モフモフした茶色いクマのぬいぐるみです。

「アルブレヒト!?うぅん、ちょっと違うね。……え?」

私が話しかけると、そのクマのぬいぐるみは立ち上がってトテトテとこちらへ歩いてきました。
そしてその子がわたしに抱き着いて顔を見上げるのを見て、泣きそうになっていた気持ちも
晴れてきたのでした。

「あはっ、キミもひょっとしてファントムなのかな?ねえ、私とおともだちになりたいの?」

こくりと頷いたクマのぬいぐるみを抱きしめて、わたしはベンチから降りました。

「私は久瑠美。ねぇ、一緒にアルブレヒトを探すのを手伝ってくれないかな?」

そう言いながらテディベアを頭に乗せて街へと歩いて行ったのでした。
この子が何者か知りませんが、クマに悪い子なんていないから問題ありませんね。


◆  ◆  ◆


「……酷いもんだな、こりゃ」

あちこちに血痕がこびりつく無人の交番を、槍を持った青い全身タイツの男が徘徊する。
かつて警官だった奇妙な死体が五つほどに転がって無惨な有様を晒していた。

それらの死体は例外なく全身を耳のような腫瘍に覆い尽くされていた。

様子から見て死因は口と食道が腫瘍に塞がれたことによる窒息死だろう。
文字通り、体の外側も内側も耳の形の腫瘍が覆い尽くしたことが原因だった。
机には少女が描いたようなかわいらしいクマの絵が置いてあるが、何か関係があるのだろうか?

「おえっ」
「吐くなマスター、見ろ、血痕を踏んで足あとが出来ている。犯人はまだ近くに居る筈だ」
「ずいぶん小さいわね。ぬいぐるみかしら?」
「さあな、おそらく、英霊か魔術師が使役する使い魔だろうな。追うぞ!」

ランサーは交番を飛び出し、追跡を開始した。


無人の工場の廃墟を一匹のテディベアがトコトコと歩いている。
可愛らしい筈のそのぬいぐるみは、どこかが決定的におかしかった。
その違和感の元は、テディベアの全身を構成している「モノ」だった。
テディベアは布や綿で出来ていなかった。
それはあまりにも肉々しく、歪で、到底その可愛さの塊から作られた「モノ」とは思えない、
尋常ではない悍ましさの「肉塊」だった。

そこに居たのは、人間の耳を集めて造られたテディベアだった。

「見つけたぞバケモノ。貴様、サーヴァントだな?」

槍を構えたランサーに声を掛けられ、耳で出来たテディベアは可愛らしく振り向いた。

「数日前、病院で無数の幼児が消える事件が発生した。何故か妊娠中の母親のお腹からもな。
 何が起きたのか誰も分からなかったが、夜中に胎児の体で出来たテディベアが歩き回っていた
 っていう悪趣味な噂が流れて問題になっていたそうだな。貴様の仕業か?」

テディベアは覚えがないかのように首を横に振った。
ランサーはいらだちながら槍の矛先を肉塊に向ける。

「まあいい、ここで死んでもら……がはぁ!?」


909 : 熊枕久瑠美&バーサーカー ◆P9uN1b3eQ2 :2016/02/22(月) 03:00:37 nMhJp0FA0
突然、ランサーは血を吐きながら膝をつく。
口の中から大量のカミソリの刃が吐き出されたのだ。

「なんだこれは!?しまった!既に奴の固有結界の中に入っていたのか!?」

今度は右腕の皮膚の内部に無数の鋏が出現し、ランサーの腕をズタズタに引き裂いて切断する。

「体内に刃物を移動させているのか!?うおお!死んでたまるか!」

槍を口で咥えて血を吐きながらランサーは肉塊テディベアに死に物狂いで槍を投げつけた。
だが、テディベアを粉砕する筈だったその攻撃はそいつの前面に出現した何かに弾かれ、地面に虚しく転がり落ちる。
どさりと、何かが倒れる音がした。振り向くと、そこにはミイラの様に干乾びたマスターの死体が。
自分自身も乾涸び始めている気付き始めたランサーは、倒れながら肉塊のテディベアの隣に
徐々に錆びた金属のスクラップで出来たテディベアが形造られていくのを薄れゆく視界の中で目撃していた。

「そ、そうか。こいつは体内に刃物を移動させていたんじゃなくて、
 周囲の生き物の血の鉄分を金属に変換していたのか。
 新しいテディベアを作る為に……」

全身の血液を抜き取られて息を引き取ったランサーの死体を、
耳で出来たテディベアと屑鉄が集まって出来たようなテディベアが無感情に見下ろした。


◆  ◆  ◆


「やっぱり東京はぶっそうだね、アルブレヒト・リべイク」

先ほど友達になった、ガンダムみたいな名前をつけたテディベアを頭の上に乗せた
熊枕久瑠美はデパートの巨大テレビを見ながら彼に話しかけた。
返事はないが、頭の上から飛び降りると愛らしくダンスを踊り始める。

「あははっ。お上手だね。うん、キミがいればもう怖くないよ。よし、一緒にがんばろうね!」

テディベアを抱き上げた久瑠美は、彼を再び頭に乗せて無人の街を歩き始めた。

「でも変だね。なんで誰もいないんだろう?平日だからかな?」

少女がデパートから遠ざかると、彼女が気付かないように気を遣いながら
物陰から何かがぞろぞろと這い出てきた。
数十匹の人体の部品で出来たテディベア達が、
床に大量の死体が転がるデパートから見守っていた。



【クラス】
バーサーカー

【出典】
SCP Foundation

【真名】
SCP-1048 ビルダー・ベア(Builder Bear)

【パラメーター】
筋力E 耐久E 敏捷C 魔力E 幸運C 宝具EX

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
狂化:A
何を考えているか分からないが、常に狂っている

【保有スキル】
ダンス:C
愛らしいダンスで場を和ませる

絵画:D
子供のようなお絵かきスキルをもつ

 【宝具】
『友達百人出来るかな?(クラフト・ベア)』
ランク:EX 種別:対物宝具 レンジ:1 最大捕捉:1〜100
手さきが器用な彼の特技で、自分自身にそっくりなテディベアを作りだす。
彼は人体の一部を素材に使うのが好きらしく、発動すると素材集めの為に
毎回大量の人間が犠牲になる。造られたテディベアは人類に対して非常に
凶暴で、固有の能力を駆使して手当たり次第に人間を襲い始める。
以下が主な彼の作品で、それぞれがAランク宝具として機能する。
ほっておくと作品は今後も増えていくと思われる。
 
『SCP-1048-A』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:1〜100
人の耳で作られていテディベア。彼の半径10m以内にいた者は目と耳に強烈な痛みを訴え、
5m以内にいた者は耳のような腫瘍が現れ20秒足らずで全身を覆い、3分以内に死亡する。

『SCP-1048-B』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:1〜100
幼児の体で出来たテディベア。妊娠している女性に襲い掛かり胎児を取り出そうとする。

『SCP-1048-C』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:1〜100
錆びた金属のスクラップで出来たテディベア。血液の中の鉄分を金属に変えて抜き出す。


910 : 熊枕久瑠美&バーサーカー ◆P9uN1b3eQ2 :2016/02/22(月) 03:00:51 nMhJp0FA0
【人物背景】
外見は体高33cmのどこにでもあるような可愛らしいテディベア。「ビルダー」の名が表す通り手先が器用で物づくりが大好きなくまさんで、
材料を渡すとビルダー・ベアそっくりなテディベアを作ってくれる。
自発的に歩き回る能力があり、足に抱きついたりダンスしたり、その場でジャンプしたりなど可愛らしい仕草をすることがあり、
使い捨て部品のような扱いをされるDクラス職員にさえ可愛らしい仕草を見せる。
また過去2度、清掃スタッフの為に子供のような絵を書いてみせたことがあるが意思疎通は難しく、
首を振ることでイエスノーの応答はできるが、意味を成していないことが殆ど。
また上記の絵もビルダー・ベアからの愛情表現以外で描かれることはなく、頼んでも描いてはくれない。
危険度を表す指標であるオブジェクトクラスは、危険性が認められない・或いは無力化などの対抗策が確立された Safe クラス。
現在SCP財団管理下の研究所の一角、サイト24にて保護されており、サイト24に限定されるが自由に歩き回る事を許可されており、
各所で散歩をしている姿が目撃されている。
―――というのは大嘘で、実際は材料を持ち寄っても、ビルダー・ベアは可愛らしいテディベアを作ってはくれない。
こいつは自分が選んだ素材でテディベアを作り出す。
創りだしたテディベアは意思を持っており"基本的に"温厚で無害なビルダー・ベアに反して人間に対して凶暴。
ビルダー・ベアがテディベアを作る際ほぼ確実に大多数の人間が犠牲になる事、
そしてその可愛さの裏にある 底知れない残虐性 が関わっていると思われる事から、
Safeの一つ上に当たるEuclidをすっ飛ばして「 放っておくと世界滅亡の危険性がある 」
「 あまりにも危険過ぎる 」SCPに設定されている、危険度最上位のKeter(ケテル)に格上げされた。
狂気の世界とも形容されるSCP財団の一角、サイト24を恐怖の底へと叩き落とし、
トラウマの権化と化したそのテディベアは、今もなお友達のテディベアを作る「素材」を探してサイト24を彷徨っている。

【サーヴァントとしての願い】
不明

【マスター】
熊枕 久瑠美

【出典】
無彩限のファントム・ワールド

【マスターとしての願い】
行方不明のアルブレヒトを探し出して、自分の町へ帰る

【weapon】
なし

【能力・技能】
ドールマスター

【人物背景】
気弱で内気な性格の小学生。クマが大好き。水玉模様のクマのぬいぐるみ「アルブレヒト」を持ち歩いており、
話し相手にもなっている。「ドールマスター」の能力者であり、「アルブレヒト」に戦ってもらう。


【捕捉】
クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP FoundationにおいてResearcher Dios氏が創作されたSCP-1048のキャラクターを二次使用させて頂きました。


911 : ◆P9uN1b3eQ2 :2016/02/22(月) 03:01:13 nMhJp0FA0
終了です。


912 : ◆BeNV77i3Ys :2016/02/22(月) 11:32:59 TIYDWB.k0
投下します


913 : ◆BeNV77i3Ys :2016/02/22(月) 11:33:24 TIYDWB.k0


















「オレのそばに近寄るなああ――――――――ッ!!」

















.


914 : ディアボロ&キャスター ◆BeNV77i3Ys :2016/02/22(月) 11:34:00 TIYDWB.k0

「これは困った。マスターに近寄るなと言われてしまったぞ、こういうときはどうしたらいいんだ?」
「放っておけばいいんじゃないか」
「おいバール、それは怠慢ってもんだよ。こうしてサーヴァントとして召喚された以上は、マスターを盛り立てるのが僕らの義務にして責任ってもんだ」
「本人がやりたくないと言うなら無理強いすることもあるまい」
「いや、彼は錯乱しているんだ。僕にはわかる。うん、僕もまあ最初に死んで次に起きた時はあんな感じだった。シンパシーを感じるよ」
「だったら二人で仲良くやってくれ」
「おいバール、なんでそうやる気が無いんだ? ベリアルを見習え、忠犬のようにじっとマスターの命令を待って……おい馬鹿、寝てるんじゃない」
「……あぁ? ふぁ……俺はお前らに任せるって言うたやろ」
「だからと言ってサボるのは良くない。お前は生前からそうだった、めんどくさいことは全部僕らに投げて楽ばかりしようとして。良い機会だ、ここらでちょっとその性根を叩き直してやろう」
「また始まったか……勘弁せえや、そういうシチュエーションちゃうやろ」
「お前のせいだぞ、何とかしろ」
「何とかせえゆうたってな。ううん……」
「おい聞いてるのかベリアル。お前はだいたい昔から適当なところがあったが、こうして一心同体のサーヴァントとして召喚されたからにはそんな真似は許さないぞ。
 そもそもだ。僕らがまたこうして召喚されたのには何らかの意志が介在しているかも」
「あーッ! るっさいわちょっと黙っとけや! お前が喋ってたらなんも話進まへんやろが!」
「それには同意する」
「な、なんだよ……急に結託するなんてズルいぞ。多数決で少数派を圧殺するのは数の暴力であって、僕らの間ではやめようという話だったじゃないか」
「時と場合による。特にこの場合、お前に任せていたらいつまで経っても状況は変わらん」
「せや。おとなしくしとけ」
「お前たち以外と話すのは久しぶりなんだ、少しくらい見せ場をくれても」
「ベリアル、ベルゼブブを黙らせろ。俺が話をする」
「あいよ」
「ちょっ」






「騒がしくて済まないな。混乱しているところ悪いが、少し俺の話を聞いてくれ。
 俺……いや、俺たちはキャスターのサーヴァントだ。お前が俺たちのマスター、でいいんだな?」



――ディアボロの大冒険――

   PUSH ANY KEY


915 : ディアボロ&キャスター ◆BeNV77i3Ys :2016/02/22(月) 11:34:38 TIYDWB.k0


「こんなところだ。理解したか?」
「……ああ、何とかな」

オレ、ディアボロの前に立っているのは東洋人の男だった。
線の細い、そこらのチンピラに殴られたらそのまま昏倒しそうな男。
腕力自慢というわけでも、スタンド使いのような凄みもない。なのに、何故か本能がこの男には気を許すなと叫んでいる。
オレより一回り以上は若いはずだろうが、この落ち着き様は……まあ、サーヴァントとか言う化け物であれば外見から推し量れる年齢など無意味というものか。

「しかし、永遠に繰り返す死とはな。酷い地獄もあったものだ」
「お前たちがオレをあそこから引っ張り出したのか?」
「いいや、俺たちではないな。というか、俺たちもむしろお前と同じく引っぱり出された側だ。この東京……そして聖杯にな」
「トウキョウ……たしか、ニホンの首都だったな。じゃあオレはニホンにいるのか?」
「というわけでもない。ここが東京であるのは間違いないが、お前の知る東京でも俺の知る東京でもない。
 そうだな、何者かが東京を模して造った街、というのが一番近いと思う」
「戦わせるため。聖杯を奪い合わせるために、か」
「そういうことだ」

ようやく、落ち着いてきた。
オレの名はディアボロ……イタリアのギャング「パッショーネ」のボス。
スタンド「キング・クリムゾン」、健在。「エピタフ」もある。

「ほう。それは悪魔か?」
「悪魔? いや、オレはスタンドと呼んでいるが」
「スタンド! 興味深いね。傍に立つもの……悪魔とは似て非なるものだ。各々の魂、いや精神のビジョンか。なるほど、実に面白い」
「黙ってろと言ったぞ。ベルゼブブ」
「はいはい」
「ちょっ、もうちょっとだけ……」
「脱線したな。ふむ、ともあれマスターがある程度の戦闘力を備えていることは僥倖だ。なんせ俺たちは弱いからな」

な……何だ今のは? この東洋人の顔が、一瞬違う別の誰かに切り替わったような……

「そういうものだと理解してくれ。俺たちは三つの人格を共有している。俺、さっきのうるさいやつ、もう一人の頭が軽そうなやつ。俺たち三人でキャスターだ」
「おい、頭が軽そうなやつって誰のことやねん」
「俺でもベルゼブブでもなければ一人しかいないと思うが」
「あーさいですか、そりゃ悪かったなぁ!」
「話を続けよう。とにかく、俺たちはお前を勝たせるためにここにいる。とりあえずは味方だと思ってくれていい」

三つの人格……俺とドッピオのようなものだろうか?
そう、キング・クリムゾンを出した時に気付いたのだが、ドッピオはもういない。
ポルナレフのスタンドに魂を入れ替わらされたとき、ドッピオはそのまま逝ってしまった。
数少ない、というか唯一オレが信頼する他人……オレ自身が。


916 : ディアボロ&キャスター ◆BeNV77i3Ys :2016/02/22(月) 11:35:00 TIYDWB.k0

「……それで。オレは何をすればいいんだ?」
「だいたいは説明したとおりだ。もしお前が聖杯を手に入れられれば、永遠に続く死の運命からも逃れられるだろう」

このとき、深く底のない闇に、光が差した気がした。
もう何度繰り返したかわからない圧倒的な死の恐怖。一瞬とて気の休まることのない殺意のジェットコースター。
何も信頼できず、未来に希望を持てず、ただただ死に続ける日々。
あの憎き裏切り者ども、あの新入り……ジョルノ・ジョバァーナ。あいつにしてやられたあのときから、一体どれだけの時間が経ったのだろうか。
死を前に意識を閉ざすこともできず、常に覚醒したまま新たな死に放り込まれる。狂いたくても狂えない、無限に続く暗黒の時間。


それを、終わらせられる。
もう一度、頂点に返り咲くことができる。
聖杯を手に入れたのならば。
いいや、それでなくてもここで死ねばあの運命からは解放されるんじゃないか?


「どうする? あいつらはともかく、俺としては無理強いはしたくない。危険な、そして勝算の薄い戦いだからな。お前が元の死に続ける運命を良しとするなら、ここで退散するが」
「いや、そんな戦いをしなくてももう助かったも同然だろ。ここで死ねば本当に死ねるんだろ?」
「うーん、それはどうだろうね。もしここで君が誰かに負けたとして、多分君だけは元の死に続ける運命に引っ張られると思うよ?」
「うっわ、キッツいなそれ。聖杯獲るしか助かる道ないやんけ」
「な……おい待て、ここで死んでも俺は助からないのか?」
「死んで助かるってのも変な話だけどね。普通、聖杯戦争で負けたら元の自分の肉体と魂も一緒に死ぬだろう。
 だけど君の場合、戻るべき肉体も魂も既に死んでいる……いや、今も死に続けている、か。元の状態に戻るだけだろうね」
「なん……だと……」
「聖杯もアフターケアまでは万全じゃないらしい」

死んでも助からないっていうのか。ここでもなのか。
あっのっ小僧……どこまで、どこまでオレをコケにしやがる……!
いいだろう、肚は決まった。やってやろうじゃないか。

「……あー、なんだ。同情はするが……どうする? 負けても今までどおりだが、勝てば帳消しになる。答えは、訊くまでもないか」
「やる。オレは聖杯を手に入れる。どんな手段を使っても、どんな屈辱を呑もうともだ。力を貸せ、キャスター」
「いいとも! いやね、僕らも僕らで叶えたい願いというものはあるんだ。でもほら、古今東西あらゆる英雄が集う聖杯戦争だろ?
 僕ら程度の木っ端サーヴァントを召喚するマスターなんていないと諦めていたんだけど、そこへ君が来たんだ! このチャンスは逃せないね」

おい待て、今木っ端サーヴァントって。ていうかこいつら、さっき自分のことを弱いって言ったよな。
何ということだ。せっかくチャンスを掴んだと思ったら、こいつら頼りにならんのか。

「待て待て待て、あのメガネの言うこと全部真に受けたらアカン。そりゃ確かにガチンコの殴り合いやと俺らは多分下の下の方におんのは間違いない。
 でも俺らはキャスターや。律儀に正面からケンカをする必要なんてないで」
「幸いなことに、マスターはそれなりに戦える力を持っているようだ。しょせん俺達サーヴァントはマスターを寄り代にここへ出張してきてる亡霊にすぎん。
 俺たちの特性をうまく使えば、格上の相手だろうと喰うのは不可能ではない」

サーヴァントではなくマスターを暗殺しろ、ということか。
それなら……やれるかもしれない。我がキング・クリムゾンは健在だ。
サーヴァントを相手にするのは無理だろうが、人間のマスター相手ならオレが勝てない道理はない。


917 : ディアボロ&キャスター ◆BeNV77i3Ys :2016/02/22(月) 11:36:05 TIYDWB.k0

「お前らが強かろうが弱かろうがどうでもいい。オレには他にアテがないのだからな」
「物分りの良いマスターで助かるよ。では契約成立だ。マスター、お前の名を教えてくれ」

一瞬躊躇ったが、こいつらに素性を隠しても仕方ない。
信頼などできるわけもないが、今はこの怪しげな東洋人どもしか頼れないのだから。

「オレの名はディアボロだ」

名を告げる。
すると、キャスターは。三人の男たちは。
弾けるように、笑い出した。


「ギャッハハハハハハハハッ! 聞いたか? 聞いたか? ディアボロゆーたぞこいつ!」
「ククッ……おい、笑ってやるな……失礼だろう……クク」
「いやあ、はっはっは! これはいいね! 僕達にぴったりだ! よりによって、よりによってディアボロと来たか!」

キャスターが地面を転げ回りながら爆笑している。
顔が見える度に別人になっているのだが、腹立たしいことにどいつもこいつも笑っていやがる。
だがムカつきよりも困惑が先に立つ。

「おい、いったいどうした。何がそんなにおかしい」
「いや……失敬……クッ。ちょっとその、ディアボロという名がな……ククク」
「あー、腹痛いわ。でも、気を悪くすんなや、マスター。別にお前を笑い者にしとるわけやないんや」
「そうそう、その逆さ。むしろ、僕たちは君をとても好きになった。君こそが僕たちのマスターだ。
 君以上に僕らに相応しいマスターはいない。そして僕ら以上に君に相応しいサーヴァントはいない。絶対に。いや、これは確信だよ」

涙さえ浮かべてキャスターたちが言う。なんなんだ?

「ふう……すまなかったな、マスター。では、今度は俺たちが名乗ろう。俺たちの名は、執行細胞(ファーストセル)」
「僕たち三人を指し示す名さ。で、もちろん僕たちを個別に指す名前もある」

と、キャスターがワインレッドのスーツを纏った軽薄そうな男に変わる。

「俺がベリアルや。よろしゅうな」

メガネを掛けた細っこい男に変わる。

「僕はベルゼブブ。ベルゼブブ・パターン略してベルパー、と呼んでくれてもいいよ」

そして最初に出てきた、何を考えているか表情からは伺わせない落ち着いた男に変わる。

「俺はバール。まあ……もうわかっただろう? 俺たちがお前を気に入った理由が、な」

なるほど、そういうことか。納得がいった。
ディアボロ、それはイタリア語で「悪魔」という意味を持つ。
そしてバール、ベリアル、ベルゼブブ。これらもたしか、どこかの宗教において「悪魔」「堕天使」の意味を持っていたはずだ。
ディアボロ、バール、ベリアル、ベルゼブブ。
悪魔の名を冠するオレたち。
オレがこいつらを呼び寄せたのか、こいつらがオレを選んだのか。
そんなことはわからん、どうでもいい。オレのやることは一つだ。

「オレに力を貸せ、悪魔ども。オレは聖杯を手に入れ、もう一度、帝王となる……!」
「アイ、サー。マスターのお望みのままに」
「帝王。帝王か。女王とはソリが合わなそうだが、洒落が効いてていいじゃないか」
「なんや、おもろなってきたやんか。久々に楽しくなりそうやで」

こうして、騒がしい悪魔どもと共に。
オレの、ディアボロの、二度目の戦いが幕を開ける。
この「試練」……オレを絡め取る死の運命を、何としても乗り越えてみせる。


918 : ディアボロ&キャスター ◆BeNV77i3Ys :2016/02/22(月) 11:38:11 TIYDWB.k0

【クラス】
 キャスター
【真名】
 執行細胞(ファーストセル)@Dクラッカーズ
【パラメーター】
 筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:C 幸運:A 宝具:EX
【属性】
 混沌・善
【クラススキル】
道具作成:C
 「魔術師」のクラス特性。魔力を帯びた器具を作成可能。
 ただしキャスターが作成するのは「道具」ではなく、道具の形をした「悪魔」である。
陣地作成:B
 「魔術師」のクラス特性。魔術師として自らに有利な陣地な陣地「工房」を作成可能。
 ただしキャスターが作成するのは「陣地」ではなく、複数の端末によって構成される「領土」である。
【保有スキル】
扇動:A
 数多くの大衆・市民を導く言葉と身振りを習得できるスキル。個人に対して使用した場合はある種の精神攻撃として働く。
気配遮断:D
 自身の気配を消す能力。バールの「人の認識を操作する力」により、「傍に立っていても見えなくなる」「初めて会うのに親しみを覚える」といった擬似的な気配遮断の効果を得る。
【宝具】
『執行細胞(ファースト・セル)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:自分
 キャスターの真名にして、彼らの在り方そのもの。常に発動しているが、魔力の消費はない。
 本来は個別に存在する三人の人間だったが、「悪魔」という存在を召喚・分析そして理解し、やがて自らも「悪魔」に成り果てた者たち。
 一つの身体に「バール」「ベリアル」「ベルゼブブ」の三つの人格を宿す。
 どの人格が主人格というわけでもなく、三体は常に思考を共有し常にお互いを認識している。
 バールは人の認識を操作する力を、ベリアルはカプセルによって自らの悪魔を召喚する力を持ち、ベルゼブブは洞察力や人を扇動/先導する弁舌に長ける。
『掌の悪魔(カプセル)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
 執行細胞によってドラッグの形に擬態させ召喚された“悪魔”。
 才能ある者が服用した場合、「悪魔」を召喚して使役することが可能になるが、その機能は今回オミットされている。。
 しかし魔力を内包していることに変わりはなく、悪魔を召喚できないユーザーであっても、一錠の服用で少量の魔力を補給することができる。
 多量に摂取すればその分莫大な魔力を獲得するが、悪魔とはいえドラッグに変わりはないため中毒症状を発症する可能性は大きくなる。
 カプセルに自意識や行動性はない。また、放置しておき監視の目がない状況であれば“少量ずつ、不自然ではない程度に”自己増殖する。
 このため生産設備はない。一度キャスターが生産しマーケットに放出すれば、それ以降カプセルはキャスターの魔力を消費することなく緩やかに増殖していく。
 通常、一部の例外を除いて一度発生したカプセルにキャスターが何らかの干渉をすることは不可能。
 カプセルを飲んだ対象はキャスターの支配下に置かれるわけではなく、カプセルを服用して生まれた魔力でキャスターを害することも当然可能である。
『始末屋(スイーパー)』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:1-10 最大捕捉:10人
 かつてファースト・セルの面々が興したセルネットという組織において、外敵を屠る剣として猛威を振るったベリアルの「悪魔」を召喚する。
 ベリアルの悪魔は全長15メートルにも及ぶ大蛇。姿こそ大蛇であるが、悪魔であるため物理法則に縛られず浮遊することも可能。
 巨体を活かした物理攻撃や拳大ほどの鬼火、さらには対象の魔力・精神力そのものを燃やし尽くす黒い炎を吐く。
 召喚中にカプセルを服用することで、さらに出力の上昇・持続時間の延長を行える。


919 : ディアボロ&キャスター ◆BeNV77i3Ys :2016/02/22(月) 11:38:53 TIYDWB.k0


『王国(リミテッド・ワールド)』
ランク:EX 種別:対精神宝具 レンジ:1-100 最大捕捉:1000人
 カプセルを多量に服用した者は、やがてある夢を見る。
 緑の木々に囲まれ、鳥たちが唄い、川がせせらぎ、柔らかな陽の光が指す。そして、その中心に高い塔が立つ。
 塔には女王が座し、三人の忠臣が女王の命を受け塔に集った者を導く――すなわち、「王国」である。
 一定数以上の重度のカプセルユーザーが生まれたとき、彼らの精神は無意識下でリンクして巨大な一つの意志となる。
 これこそが「王国」であり、夢が現実を侵食するための架け橋。固有結界の亜種。
 現実世界においてキャスターを中心に発生した王国は、効果範囲内に立ち入ったあらゆる者の自己認識を奪う。そしてキャスターによって新たな役割を与えられる。
 この認識阻害は対魔力スキルによって抵抗できるが、範囲内にいる間、一分ごとに成功判定を行う。一度王国に囚われた者は、外部からの働きかけがなければ現実に復帰できない。
【weapon】
 なし
【人物背景】
 かつて地方都市・葛根市のアンダーグラウンドで勃発した、カプセルを巡る騒乱。その始まりにして終わりの場所に立っていたのが、三人の人間たち。
 人間から悪魔に堕ちた三つの意思は一つの身体に収まり、それぞれが別個の意識として存続する。
 彼らの目的は、地上に「王国」を建国すること。そして、夢の悪魔――「女王」を新たに召喚し、王国を永遠のものにすることである。



【マスター】
 ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険 Parte5 黄金の風
【weapon】
 なし。
【能力・技能】
スタンド「キング・クリムゾン」 【破壊力 - A / スピード - A / 射程距離 - E / 持続力 - E / 精密動作性 - ? / 成長性 - ?】
 「時間を消し飛ばす能力」と「数秒先の未来を予知する能力」を持つ。
 ただし対魔力スキルを持つサーヴァントの時間を消し飛ばすことはできない。
【人物背景】
 ギャング組織「パッショーネ」のボス。強力なスタンド使いであり、決して他人に心を許さない。
 自らの過去・正体に繋がるものはたとえ娘であろうとも無慈悲に排除しようとし、感情に動かされることはない。
 新入りの小僧のせいで永遠に終わらない「死」、無限地獄を繰り返すことになる。
 ドッピオはいない。
 与えられた役割はギャング組織のボス。
 聖杯戦争の間だけ、ゴールド・エクスペリエンス・レクイエムの効果は解除されている。ただし死ねばまた死を繰り返す日常に回帰する。


920 : 名無しさん :2016/02/22(月) 11:39:31 TIYDWB.k0
投下終わります


921 : ◆.QrNUkmVxI :2016/02/22(月) 16:25:39 3ZfyjzQk0
皆様投下お疲れ様です
自分も投下させていただきます


922 : 浅上藤乃&バーサーカー ◆.QrNUkmVxI :2016/02/22(月) 16:26:12 3ZfyjzQk0
【一日目】

 最初の異変は、家の水槽に起きました。
 両親が飼っていた金魚が、ある日突然に姿を消して、骨だけが水底に散らばっていたんです。

 猫に食べられたのかもしれないとも思いました。
 けれど家の周りで、野良猫なんて見たことはありません。
 結局何が起きたのかも分からないまま、両親は金魚の骨を捨てました。

 わたしはそんな光景に、少しだけ違和感を覚えました。
 周りの人達は、生き物が死んだ時、もう少し悲しむ姿を見せるのにと思ったんです。
 わたしにもその気持ちはよく分からないので、違和感も、少しだけだったんですが。
 でもその周りの人達というのは、一体どこの人達だっただろうと、そういう風には思いました。
 わたしの学校の人達も、みんな両親と変わらない、冷たく静かな人ばかりなのに。



【二日目】

 家の近くにある河原に、人だかりができていることに気付きました。
 川岸にたくさんの魚の骨が、食べ散らかされていたんです。

 近所に住んでいる人達が、気味悪そうな顔をして、その光景を見ていました。
 とはいえ、ペットとは違いますから、思い入れも違うのでしょう。
 ほとんどの人は、少し見ただけで、飽きたように立ち去りました。
 わたしもそれ以上は気にせずに、すぐに学校へ向かいました。

 ただ、一つだけ気になることはありました。
 あんな空気を、前にも一度、どこかで感じたような気がしたんです。
 魚がたくさん死んでいるなんて、そんな珍しい光景を、二度も見たわけではありません。
 それでも、大きな事件を目にして、人がざわめいている姿には、見覚えがあったような気がしました。



【三日目】

 一番の異変が起きたのは、多分、この日だと思います。
 わたしはお風呂に入ろうとして、そのことに初めて気付きました。
 見たことのない赤い模様が、わたしのお腹に浮かび上がっていたんです。

 もちろん、わたしは刺青なんて、彫った覚えはありません。
 いたずら描きをされた記憶もありませんし、何より、拭いても洗っても、赤い模様は消えませんでした。
 模様が浮かんでいたところが、ちょうど前にナイフで刺されて、痛んでいたところだったことも気になりました。

 そこまで考えたところで、わたしはようやく思い出したんです。
 わたしが人に襲われて、ナイフでお腹を刺されたことを。
 襲われたのはこの東京でじゃなく、もっと別の街でだったことを。
 そしてわたしを刺した人を、わたしは殺してしまったんだということを。
 思い出したその時から、わたしのお腹はキリキリと、痛み出すようになりました。
 せっかく感じられるようになった、痛いと思う感触でさえ、わたしは忘れていたのでした。


923 : 浅上藤乃&バーサーカー ◆.QrNUkmVxI :2016/02/22(月) 16:27:34 3ZfyjzQk0
【四日目】

 その日、わたしは学校を休んで、朝一番に病院に行きました。
 お腹が痛いからじゃありません。
 傷の痛みはひいていましたし、治った傷を診てもらっても、きっと意味はありません。
 わたしが診てもらおうと思ったのは、不思議な赤い模様の方です。
 模様が突然現れたのは、どう考えても変でした。何かの病気かもしれません。
 それくらいは理解できたので、わたしは病院へ行って、医者の先生に診てもらいました。

 先生はその模様を診た時、とても驚いていました。
 そして少し考えた後、わたしを治療室へと連れていきました。
 すぐに治療が必要な、重大な病気かもしれない。わたしはそう思っていました。
 別に、だからどうという風には、まだ思っていなかったのですが。
 重くても軽くても、治ってしまえば同じだと、その時はそう思っていました。

 ところが、治療室に入った時、突然先生はわたしを組み伏せ、床に押し倒しました。
 戦争がどうだの、ライバルがどうだのと、訳の分からないことを言っていました。
 気が触れているようには見えません。
 至って正気に見えましたし、下心を隠し通して、わたしを連れ出せるくらいには、賢い人だったようにも思えました。
 どうやら先生は、よく分からない理由で、わたしを殺そうとしているようです。
 首を締め付ける手には、そういう力がこもっているように見えました。
 痛みはなくても、息が苦しかったから、わたしは殺意に気付きました。
 これはもう、仕方ありません。
 わたしも殺されたくはありません。だから身を守らないといけません。
 だからこの場で先生を、曲げてしまったとしても、それはもう仕方がないことです。

 そこまで考えた、その時でした。

 わたしが目で視るよりも早く、先生が悲鳴を上げました。
 たちまちわたしの体と服は、血で真っ赤に染まってしまいました。
 わたしのせいじゃありません。わたしは先生を曲げていません。

 先生を先に殺したのは、血のように真っ赤な怪物でした。

 だいたい、五匹か六匹でしょうか。
 まるで、蟹か虫のような、不思議な形の体をした、怖い顔の怪物がいました。
 その一匹の鋭い足が、先生を背中から貫いて、命を奪っていたんです。
 わたしよりも背が高い、赤くて不思議な怪物達は、満足げに鳴き声を上げた後、部屋からぞろぞろと出ていきました。
 そしてすぐに、部屋の外から、悲鳴や泣き声が聞こえてきました。
 一体何が起こったのか。考えるまでもありません。
 わたしは治療室を出ると、血と骨が散らばった廊下を歩いて、病院から出ていきました。
 汚れた服は、適当な白衣を、上から羽織って隠しました。
 両親も出勤していたので、部屋に戻って着替えるまでに、誰からも咎められることはありませんでした。

 少し残念だと思ったのは、多分、殺したくなかった人を、殺させてしまったからでしょう。
 わたしはそう思うことにしました。


924 : 浅上藤乃&バーサーカー ◆.QrNUkmVxI :2016/02/22(月) 16:28:13 3ZfyjzQk0
◆ ◇ ◆

 都内の某総合病院で、猟奇的な事件が起きた。
 医者から患者に至るまで、その時そこにいた人間が、残らず皆殺しにされたのだ。
 その報告を聞いた警察官は、刃傷沙汰だとか銃乱射だとか、一様にそういう光景を連想した。
 しかし、現場に駆けつけた者は、その認識が誤りだったと、すぐに理解させられた。
 その時の病院の光景は、そんな生やさしい言葉では、到底括れないものだったからだ。

 まるで杭でも突き刺されたような、直径数十センチの穴が空いた腹。
 工業用の機械か何かで、ズタズタに引き裂かれたような、全身バラバラの無惨な死体。
 中には肉を削ぎ落とされ、まるきりの白骨になってしまった、不可思議な死体まで存在する。
 まるきり現実味の感じられない、ホラー映画のような世界だった。
 そんな光景が現実の世界に、一瞬で作り出されたことに、警察官達は恐怖した。

 そしてこの時から、一つの事件と一つの噂が、東京の闇に浮かぶようになる。

 事件というのは、病院と同じ、猟奇殺人事件のことだ。
 その日から、都内のあちらこちらで、同じような無惨な死体が、少しずつ見られるようになった。
 現場の位置はバラバラで、同じような殺り口の死体が、数キロも離れた場所に同時発生したこともある。
 警察は犯人を特定できぬまま、この不気味な殺人鬼を、野放しにし続けていた。

 そして一つの噂というのは、その事件の犯人についてだ。
 この恐ろしい殺人事件には、ただならぬものが関わっているのだと、噂が囁かれるようになったのだ。

 巷を騒がせている事件の犯人を、この目で見たという奴がいる。
 そいつが言うにはその犯人は、人の姿をしていなかった。

 あれは怪物だ。
 赤い化け物だ。
 鋭い瞳を爛々と光らせ、闇の奥から人の世を覗く、地獄から現れた化け物だ。

 夜道を歩く時は気をつけろ。
 奴らは狡猾に息を潜めて、獲物を待ち構えている。
 一度隙を見せたら最期、身も心もバラバラに引き裂かれ、美味しく召し上がられてしまう。

 化け物は闇の奥底で――静かに獲物を待っている。


925 : 浅上藤乃&バーサーカー ◆.QrNUkmVxI :2016/02/22(月) 16:28:46 3ZfyjzQk0
◆ ◇ ◆

【十日目】

 あれからわたしの置かれた状況が、少しだけ分かってきました。

 どうやらわたしは、よくないことに、巻き込まれてしまったようです。
 知らない間に随分と進んだ、インターネットを利用して、故郷へ帰る道を調べてみました。
 ですがそれを辿っても、人に邪魔されたり事故が起きたり、色んなことが重なって、道を塞がれてしまうんです。
 結局わたしは、いつまで経っても、帰ることができません。
 人殺しをしてしまったわたしは、家には帰れないかもしれないけれど、それでも知らない土地にいるのは、もっと嫌なことでした。
 だからわたしは、今もこうして、元の街へ帰る道が、どこかにないものかと探しています。

 そしてもう一つだけ、分かったことがありました。
 わたしを殺そうとした先生を殺した、赤い怪物達のことです。
 どうやらあの子達は、普段から、わたしのすぐ近くにいたようでした。
 わたしが誰かの手によって、危険な目に遭いそうになった時には、あの子達が助けてくれました。
 あの先生をそうしたように、近づいてきた人達を、返り討ちにして殺していました。
 あの子達は姿を消せます。きっと今もわたしの傍で、わたしを見守っているんです。

 それがいいことなのか悪いことなのか、わたしにはよく分かりません。
 ですがおかげで、もうわたしは、誰も殺さなくて済むようになりました。
 だって近づいてくる人達は、あの子達がわたしの代わりに、みんな殺してくれるのですから。
 わたしが手を汚さなくても、みんなみんなあの子達が、殺してくれるようになりましたから。


926 : 浅上藤乃&バーサーカー ◆.QrNUkmVxI :2016/02/22(月) 16:29:50 3ZfyjzQk0
◆ ◇ ◆

 それは決して英霊ではない。
 人の世に誤って生を受け、人を殺し続けたそれは、対極に位置する反英霊だ。
 むしろまともな理性を持たぬ、邪悪な魔獣に当たるそれは、たとえ反英霊だったとしても、普通なら召喚されるはずもない。
 故に浅上藤乃が、その存在を、サーヴァントとして呼び寄せた理由は、きっと誰にも分からないだろう。

 それはいたずらに死体を増やす、破滅的な在り方が、その結果を引き寄せたのかもしれない。
 あるいは人の死に快楽する、彼女の猟奇的な本性が、その存在と惹き合ったのかもしれない。

 だとしても、藤乃が人間である限り、彼女の聖杯戦争は、決して幸福な終わりには、たどり着くことはないだろう。
 どれほど狂気を装ったとしても、浅上藤乃は人間だ。
 何物にも興味がないように見えて、彼女は未だ自分の命を、生かしたいと思っている。
 心の底で、この世界に、まだ生きていたいと渇望している。
 その一線を超えない限り、彼女が呼び寄せた怪物は、彼女を幸せにすることはない。
 何故なら、奴らは藤乃のことを、少しも気遣ってはいないからだ。
 彼女に寄り添い守っているのも、決して彼女を思いやり、慈しんでいるからではない。

 バーサーカーのサーヴァント。
 完全生命体の名を冠し、闇夜に増殖し続ける、無限の軍勢の大魔獣。
 彼らの無数の目と口は、一様にこう訴えている。

 我らは餓えている。
 我らは乾いている。
 増え続ける我々には、生きていく糧が必要だ。
 我々という種を生かすには、もっと多くの餌が必要だ。

 我らは生きる。
 我らは増える。
 我らは進化し続ける。
 我らはそのための糧を欲する。

 もっと食糧を。
 もっと獲物を。

 もっと我々に食わせろ――!


927 : 浅上藤乃&バーサーカー ◆.QrNUkmVxI :2016/02/22(月) 16:30:38 3ZfyjzQk0
【クラス】バーサーカー
【真名】デストロイア
【出典】ゴジラVSデストロイア
【性別】なし
【属性】混沌・狂

【パラメーター】
筋力:D 耐久:E+ 敏捷:D 魔力:C 幸運:D 宝具:A

【クラススキル】
狂化:E
 通常時は狂化の恩恵を受けない。
 狂うべき理性を持たないデストロイアには、これ以上の狂化の余地はない。

【保有スキル】
増殖:A
 細胞分裂を繰り返すことで、爆発的に増殖する。
 デストロイアの霊核は数百分割され、全ての個体に分配されている。
 そのためデストロイアを完全消滅させるには、全ての個体を一斉に撃破するか、
 あるいは後述する宝具により合体したところを倒す必要がある。

成長:A
 上記スキルによって誕生したデストロイアは、最初は数ミリほどの大きさでしかない。
 しかし養分を確保することによって、巨大な体へと成長していく。
 上記パラメーターは全長2メートルほどにまで成長した、幼体と呼ばれる姿のものである。
 劇中ではこの姿のまま、18メートルクラスにまで巨大化していたが、
 本聖杯戦争では、そこまで成長することはできない。

熱吸収:C〜A
 デストロイアは熱エネルギーを吸収することによって、自らの力へと変えることができる。
 このスキルは進化・巨大化を重ねていくことによって強化されていき、
 最終的には、ゴジラの赤色放射火炎すら吸収するほどになる。
 デストロイアは、この能力や魂喰いを駆使することで、自前で(というより勝手に)エネルギーを確保しているため、
 魔術師でないマスターでも、大量の個体を維持することができる。


928 : 浅上藤乃&バーサーカー ◆.QrNUkmVxI :2016/02/22(月) 16:32:01 3ZfyjzQk0
【宝具】
『滅亡序曲(デストロイヤー・ゲノム)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
 完全生命体。あるいは、全てのものを破壊する、とんでもない破壊生物。
 デストロイアを構成する最小単位・微小体そのものが、宝具として昇華されている。
 万物を分解するミクロオキシゲンを形成し、無限に成長し続けるデストロイアは、まさに最悪の反英霊である。
 ……しかし、このデストロイアにも、致命的な弱点が存在する。
 ミクロオキシゲンは極低温下では無力化してしまうため、デストロイア自身も、凍結攻撃に非常に弱いのである。

『中間体(デストロイア・ザ・ジャイアント)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大補足:200人
 一定数にまで増殖した幼体デストロイアが、融合し巨大化した姿。
 幼体のサイズの兼ね合いもあり、本聖杯戦争においては、20メートル相当のサイズに合体するのが限界とされている。
 この段階まで成長したデストロイアは、ミクロオキシゲン生成能力も格段と高まっており、
 その威力はオキシジェンデストロイヤーの領域にまで到達している。
 また、自らの体を組み替えることで、空を飛ぶ飛翔体へ変形することができる。
 この時点のデストロイアなら、高ランクの宝具によって対処することも可能なのだが……

『完全体(デストロイア・ジ・アルティメット)』
ランク:A 種別:対城宝具 レンジ:1〜70 最大補足:500人
 『中間体(デストロイア・ザ・ジャイアント)』が撃退された時、その生存本能によって、連鎖的に発動する宝具。
 マスターの魔力、および東京の電力・熱エネルギーを根こそぎ吸収し、更に巨大化した完全体となって復活する。
 本来の完全体はもっと巨大な姿なのだが、中間体のサイズで吸収できるエネルギー量の問題もあり、
 およそ半分の約60メートルの体高までしか進化できない。
 粒子光線オキシジェンデストロイヤー・レイや、あらゆる物質を分子的に分断するヴァリアブル・スライサーが必殺技。
 更に尻尾を敵に巻きつけることによって、敵のエネルギーを奪い取ることも可能としている。
 緊急手段として、合計十体前後の中間体へと、分離することもできる。
 ……ただし、この宝具が発動するということは、同時にマスターの魔力切れによる死も意味する。
 並のサーヴァントならばこの時点で自滅するはずなのだが、保有するエネルギー量があまりにも莫大であるため、
 ランクB相当の単独行動スキルを擬似的に獲得した状態となっており、制御不能な大怪獣が、最低でも二日間暴れ回ることになる。
 なお、この姿まで強化されたデストロイアが、更にエネルギー吸収を行えば、理論上はより巨大な姿へと成長できるはずなのだが、
 本聖杯戦争のデストロイアは、よほどの必要性に駆られない限り、これ以上の進化を行うことはない。
 それはサーヴァントという枠組みの限界なのかもしれないし、単に空気を読んでいるだけなのかもしれない。


929 : 浅上藤乃&バーサーカー ◆.QrNUkmVxI :2016/02/22(月) 16:32:47 3ZfyjzQk0
【weapon】
ミクロオキシゲン
 デストロイアの体内で生成される物質。
 酸素を極限まで微小化し、物質の分子と分子の間に入り込むことで結合を分断、
 物質そのものを分解・溶解させることができる。
 オキシジェンデストロイヤーの一歩手前に位置する、極めて危険な物質である。

【人物背景】
かつて大怪獣ゴジラを殺すために用いられた、化学兵器・オキシジェンデストロイヤー。
その影響により無酸素状態に陥った東京湾で、偶然復活した古代生物が、現代の環境に適合すべく異常進化した姿である。
非常に凶暴な怪獣であり、増殖と進化を繰り返しながら、次々と人間を襲い殺害した。

数ミリ程度の小さな姿から、爆発的に増殖・成長し、大怪獣へと進化を遂げる。
体内で生成されるミクロオキシゲンは、あらゆる物質を破壊する威力を有しており、
完全体の体で放てば、ゴジラであっても為す術なく倒されてしまうだろう。
……あるいは、命の限界を超え、爆発寸前まで膨れ上がった力をぶつければ、話は別かもしれないが。

その絶大な戦闘能力とは裏腹に、極低温下の環境に弱いという、致命的な弱点を有している。
この弱点を突かれたデストロイアは、同格の怪獣ではなく、
遥かに弱い人間の兵器によって倒されるという、呆気無い最期を迎えてしまった。
なお、聖杯にはこの時点の姿までしか、記録されていないのだが、本来のデストロイアの進化が、ここで止まるという保障はない。

理性と呼べるものが存在するかどうかも疑わしい存在だが、
マスターが自分達の生命線であることは理解しているらしく、有事の際にはマスターを守ろうと行動する。
ただしそれはあくまでも、エネルギーを確保する、食糧源として守っているということは、決して忘れてはならない。
また、単純な知能はそれなりにあるらしく、死んだふりや不意打ちなど、時にずる賢いとすら言える行動を取ることも。
霊体化や魂喰いなど、サーヴァントとしての新たな特性を手に入れたデストロイアは、
それすらも有効活用すべく、進化を続けていくことだろう。

【サーヴァントとしての願い】
本能のままに行動する

【基本戦術、方針、運用法】
まごうことなきハズレサーヴァントである。
際限なく湧き続ける増殖能力も、合体して得られる破壊力も、凄まじいものがあるのだが、
そもそも聖杯を狙うような知性を有してはいないため、まともに聖杯戦争に乗ることができない。
意思疎通ができないため、マスター自身も聖杯戦争に関する情報を得ることができない。
どころか『完全体(デストロイア・ジ・アルティメット)』発動と共に、自身のサーヴァントによって殺されてしまう。
このサーヴァントは聖杯を奪い合うライバルというより、聖杯戦争の障害となるモンスターと見なした方がいいだろう。


930 : 浅上藤乃&バーサーカー ◆.QrNUkmVxI :2016/02/22(月) 16:33:30 3ZfyjzQk0
【マスター】浅上藤乃
【出典】空の境界
【性別】女性

【マスターとしての願い】
できれば帰りたい

【weapon】
歪曲の魔眼
 視界に収めたものを捻じ曲げるサイコキネシス。
 右目で右回転、左目で左回転の回転軸を作ることで、対象を捻じり切ることができる。
 先天的に備わったこの力は、本来は超能力に分類するべきものだが、
 人の手で調整が加えられたことにより、魔術的な特性を得るに至っている。

【能力・技能】
無痛症
 大量の薬物を投与することで、後天的に発症させられた症状。
 痛覚を消失することによって、藤乃は歪曲の魔眼を封印されていた。
 しかし現在は、この症状が消えかかっており、時折痛覚が回復するようになっている。
 彼女の封印が解かれ、魔眼に目覚めたのはこのためである。

虫垂炎
 盲腸炎と俗称されることも多い病。
 適切に処置すれば治る症状なのだが、藤乃は原因に気付かず放置している。
 このままの状態で聖杯戦争に参加し続ければ、いずれ危険な状態に陥るだろう。

【人物背景】
礼園女学院に通う女子高生。家は建設会社を経営しており、いわゆる社長令嬢である。
元は退魔一族の出身であり、両目に魔眼の能力を宿して生まれた。
一度は封じられたこの力が、再び目覚めてしまったことにより、猟奇的な殺人犯へと変貌してしまう。

無痛症を発症したことが原因で、世の中に対する反応が、極めて希薄になってしまっている。
刺激を得られないがために、身体感覚を正常に得られず、生きている実感すら得ることができずにいた。
このため、唯一他人と共感することができる、痛覚を取り戻して以降は、他人を傷つけることに快楽を覚えるようになってしまう。

不良グループに性的暴行を受けた時、弾みで痛覚を取り戻した彼女だが、未だその性質を、正確に理解しているとは言いがたい。
このため、腹から湧き上がる虫垂炎の痛みを、ナイフで刺されたことで生じたものだと勘違いしており、治療しないまま放置してしまっている。

【方針】
戦争とかいうものに興味はない。帰る方法を探したい


931 : ◆.QrNUkmVxI :2016/02/22(月) 16:34:02 3ZfyjzQk0
投下は以上です


932 : ◆.wDX6sjxsc :2016/02/22(月) 22:40:21 KRn/eRxk0
投下します


933 : SCP-020-JP&ライダー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/22(月) 22:41:16 KRn/eRxk0

男は急いでいた。
男は、今ひとつ情熱はないが仕事はまじめでそつなくこなす良いサラリーマンだった。
その男が今、珍しく会社に遅刻しようとしている。

(不味いッ…!!)

あと一時間で会議が始まってしまう。
ここから会社まで電車と徒歩で50分。何とか間に合うか否かのラインだ。
微妙ラインであるが故に、いい大人の男が取り乱して走るには体裁が悪いと理性がストップをかけ必然的に小走りになる。

下らない見栄を張りたがるのも、人のサガ。
しかし数秒後、走る、ではなく小走りだったことのツケを男は払わされる事になる。

それは何時もコーヒーを買っている自販機の横をわき目も振らず通りすぎようとしたその時だった。

(――――ッ!なんだ?)

つんのめった。
スーツの端が自動販売機に引っかかったらしい。
男は舌打ち一つして直ぐに振りほどこうとするが会議の日にスーツが破れれば事だ。
引っかかった所を慎重に解こうと振り返った所で―――少女と目があった。
スーツは引っかかったのではなく、少女に掴まれていたのだ。

少女は、10歳から12歳くらいの年齢に見えた。
男が20かそこらで結婚していれば娘がこれぐらいの年齢だったかもしれない。
そんな少女の容姿もあってか、罵声をあびせたり、乱暴に振りほどこうと言う気にはならなかった。
だが、時間が無い。

「……どうしたんだい?」

男は思い切って聞いてみた。
迷子か?それとも育児放棄による締め出しか?
どちらにせよ厄介だ。解決に時間がかかりすぎる。
それらの単語が少女から出ないことを祈っている内に―――少女が口を開いた。


934 : SCP-020-JP&ライダー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/22(月) 22:41:41 KRn/eRxk0

「かみさま、がどこに、いるか、しってますか?」

男は混乱した。
予想の斜め上の問いに、思考が追い付かない。
ただ、呆然と、ふるふると首を振る。
すると少女は悲しそうな顔をして、男のスーツから手を放し、

「あり、が、とう」

妙にたどたどしい、喋るのに慣れていないような言葉を吐いて走っていってしまった。
先ほどまで自分を掴んでいたその腕に羽の様なものが見えたのは気のせいだろうか。

「………」

時間にして五分にも満たないやりとり。
それら全てに男は流されるままだった。
不意に、時計を確認する。
そして、ため息を一つ吐くと、体裁も何もかも放り投げた全力疾走を開始した。
会社に戻ったら、少女の事を一応警察に届けるのも考えるかと考えながら。



――――男は会社に間に合ったらしい。




935 : SCP-020-JP&ライダー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/22(月) 22:42:08 KRn/eRxk0


神様は何処に居るのだろう。
あの時空から降り注ぐ圧倒的な暴力から自分を助け出し、ずっと励ましてくれたあの頼もしい神様は。
会いたい。会って、あの時は知らない言葉だった「ありがとう」を言いたい。
やさしい二人の“天使“によって、自分はあの建物の中を出られた。
でも、神様はいくら探してもどこにもいない。
教えて貰った覚えたての言葉で聞いても、皆知らない。

少女は肩を落とし、少女が居た建物に戻る。
その建物は、神様に助けられる前に自分が居た冷たい建物とよく似ていた。
そこにいた白い服を着たその人間たちは、少女を自分たちと全く別の生き物として扱っていた。
やはりあの嫌な匂いのする冷たい建物にいた人間たちと同じだった。

だが、ある時突然肩に痛みが走り、変な模様が浮かんだと思った時、その2人の“天使”が現れた。
現れた二人の天使は嫌な白い服の人間たちをいなくしてくれた。
これはきっと神様が自分のために行ってあげてと頼んだのだと思う。

そして、その日からその嫌な匂いのする冷たい建物は自分の家になった。




936 : SCP-020-JP&ライダー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/22(月) 22:42:42 KRn/eRxk0

「ホエー!!!」
「ダヨーン!!!」

二人で一人のサーヴァント、ライダーとして呼ばれた男たちは、帰ってきたマスターを熱い抱擁で出迎える。

だが、

「ZZZ…」
「ダヨ!」
「ホエ!」

マスターは余程早い時間から出かけていたのか、そのまま眠ってしまった。
テーブルにはマスターのために用意した朝食があったが、ラップをかけておいておくことにする。
その後、そのまま二人で協力してベッドに運んだ。

「ホエ〜」
「ダヨ〜」

ベッドで眠るマスターを優しげな瞳で見つめるライダー達。
この少女はどうやら完全に巻き込まれただけの様らしい。
まぁ、聖杯戦争のマスターにも関わらず、人間扱いされないロールをさせられていたことから見ると、一目瞭然なのだが。
彼女をモルモット扱いしていた者たちをライダー片割れ…だよーんの宝具で吹き飛ばし、この施設を乗っ取って今に至るのである。

彼女は神様に会いたいと言っていた。
そこに至る顛末をライダー達は此処にいた研究者から奪った報告書で知っている。
不純な動機で呼び出された彼らであったが、彼女の望みは叶えてやりたいと思った。
でなければ、あまりにも彼女が不憫だ。

「ダヨダヨ!!!」
「ホエホエ!!」

醒めぬ眠りの中、希望の夢を飛ぶマスターに聖杯を届けよう。
その意志の元、二人の“天使”もとい、ライダーは手を結んだ。


――――そして、誰得極まりない中年ボケ達の地獄の聖杯戦争が始まる。


937 : SCP-020-JP&ライダー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/22(月) 22:43:06 KRn/eRxk0

【マスター】SCP-020-JP@SCP Foundation

【マスターとしての願い】
神様に会いたい。

【weapon】
無し。

【能力・技能】
無し。

【人物背景】
SCP-020-JPの外見の大部分は人間の少女に酷似していますが、一番の特徴として、両腕が鳥類の翼状になっていることが挙げられます
翼の翼開張は3.0mになります。収容時の検査の結果、生後10歳〜12歳程度と推定されました。
通常の少女と比較して多少の胸、腕の筋肉の発達が見られますが、それらを考慮してもSCP-020-JPが十分に飛翔するには全く不十分です。
SCP-020-JPの知能は4歳程度です。

【捕捉】
聖杯戦争については知りません。
松汁と美女薬の混合薬により発育不良と骨粗しょう症、言語障害は解消されました。
また食道機能についても改善しました。
翼についても薬の効果が効いている間は収納可能です。
日本生類創研東京本部はライダーのファイナルダヨーンで壊滅しました。

クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP Foundationにおいて水野氏が創作されたSCP-20JPのキャラクターを二次使用させて頂きました。


938 : SCP-020-JP&ライダー ◆.wDX6sjxsc :2016/02/22(月) 22:43:48 KRn/eRxk0

【クラス】

ライダー

【真名】

ベストフレンド(ダヨーン&デカパン)@おそ松さん

【パラメーター】

筋力C 耐久C 敏捷C 魔力C 幸運A 宝具A++

【属性】

混沌・中立

騎乗:D
乗り物を乗りこなす能力。
デカパンの場合、機械仕掛けの類いならプロすら敵わないほどの腕前を見せる。

【クラススキル】
対魔力:C
魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。
大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】

道具作成:A+
魔術を帯びた器具を作成できる。
デカパンの場合、もっぱら訳のわからない凄い物を作り出せる。

単独行動:EX
マスターからの魔力供給を断っても現界できるスキル。
EXランクはマスター不在でも行動できるが宝具の発動にはマスターが必要。

【宝具】
『ベストフレンド』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1〜3
二人の愛車。天狗の頭がバンパーに着いている。
レースの中盤で一位を飾れるほどに早い。

『この世で最も怖い存在(ほんきをだしたおじさん)』
ランク:A 種別:対機宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
彼らが文字通り本気になった時の逸話が元となった宝具。
機械仕掛けの車両、ロボットが相手の場合、問答無用で自爆する様に細工することができる。
ただし、この宝具と同ランクかそれ以上の宝具は細工できない。

『ファイナルダヨーン』
ランク:A++ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
だよーんの口から紫色の衝撃波を放つ。
この威力は車両ごと人一人を消し飛ばせるだけではなく、原子分解光線を受けた亡者の群れですら消し飛ばすことができる。
だよーんの女の抱きたさによって補正のかかり具合が上下する。

『掘れイケ!デカパンマン!』
[削除済み]

【weapon】

わけのわからないアイテム群。

【人物背景】

ハゲでデブでパンツ一丁のオッサンとやたら口のデカい髭もじゃの目がイッてるオッサン。
ホエとダヨしかこの話では口にしていないが、次の話では多分普通に喋ってる。

【サーヴァントとしての願い】
女を抱きたいよーん/デカパンクラスタに聖杯を持って帰る。


939 : ◆.wDX6sjxsc :2016/02/22(月) 22:44:11 KRn/eRxk0
投下終了です


940 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/22(月) 23:29:08 gKFLqYCg0
投下します。


941 : 甲斐享&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/22(月) 23:29:27 gKFLqYCg0



【1日目 23:09】



「うぅ……っ」

 甲斐享の眼前では、顔中が涙と血に塗れた男が、助けを乞うように蠢いていた。
 目の周りが紫に腫れ、鼻が折れ曲がり、前歯が折れて、地面に二、三本散らばっている。
 散らばった歯は半分が真っ赤に染まっていて、行為が多少行き過ぎていた事を享自身に伝えていた。

 ただ、それ以上の骨折は男の身体に残されていない。
 あるのは、何度とない「気を遣った殴打」の痕跡だけだ。
 やり過ぎるくらいが丁度良い塩梅と考えて、享は手を止める。

「……ぁっ、ころさないで……」

 それでも、今この時は、男は生命を脅かされているような恐怖を抱いており、「殺さないでくれ」「やめてくれ」と弱弱しい言葉で泣きじゃくっていた。
 他者を威嚇するように金髪に染め上げた短い髪や、口髭は、その光景を一層哀れに見せている。
 これが、判断能力の鈍ったお年寄りや世間知らずの若者を何度も泣かせた詐欺師の――自業自得の末路だ。
 中には、この男のせいで、絶望の淵に追い込まれ、自ら死を選んだ人間もいる。
 今も借金に負われ、時に死さえも過る肩身の狭い生き方をしている人間も少なくないだろう。

 だから――彼がどんなに哀れな姿を見せようとも、享は一かけらの同情さえも抱かない。

 強いて、一かけら以下の同情として託すのは、「命」だけだ。
 こうして、他者を暴行する際にも、享は絶対に、その人間の命だけは奪わなかった。
 そして、その中に含まれる同情の割合など微々たる物で、享自身が、その一線だけは超えたくないと考えているから殺さないに過ぎない。
 いわば自分自身の為だ。
 この男が、勝手に事故や自殺で野たれ死ぬのなら興味はない。

「……」

 ……いずれ、この場所に警察が来る事になる。
 それがいつになるかはわからないが、享はこの場に証拠を残さないし、警察が来る頃には霞のように消えているはずだ。
 今もこうして、身元がわからないようにフードを深くかぶり、サングラスとマスクで人相を消している。
 この男も、享の姿など、身長くらいしかわかるまい。

 それに、警察に事情を聞かれて口を噤むのは、この男の方になる。
 何せ、彼の懐には、持ち歩くには多額すぎる汚い金が詰め込まれているのだから。
 享の目的は金ではなく、弱者から毟り取った金を懐にしまいながら警察に泣きつく悪人の姿だ――。

「……」

 享は、この場から立ち去る寸前まで、その光景からは決して目を反らさなかった。
 地面を這いずり、泣きながら悶え苦しむ男の、不快感でさえある映像を網膜に残し続ける。
 それでもやめない。

「……ぅあ……ぁぇ……っ」

 男が血を吐き出した。それでも享はそれを見下ろし続けた。
 快楽か、それとも罪の意識か――この視線に、いずれの理由であるかは判然としない。
 目の前の人間が、弱者を相手に大金を毟り取る白鷺であるとしても、この行いが悪質な暴行罪であるのも又、事実だ。
 しかし、一方、この「悪を挫く」という私刑が、多数の人間によって心地良い物でもあるのも又、同じような事実だ。
 その葛藤に揺れながらも、享は、ある時から、この行為がやめられなくなっていた。

『ダークナイト』

 甲斐は、どうやらインターネット上ではそう呼ばれているらしい。
 法で裁かれる事のない悪を、法を逸脱したやり方で痛めつける――そんな、闇のヒーロー。
 多くの人がそう認識し――多くの人が、ダークナイトを求めた。
 それは、民衆が望んだ「正義」の姿が、決して「法」の中にはないという証のように想えた。

 今も、ダークナイトを賛美する声は絶えない。
 今日この時に起こった暴行事件もまた、ダークナイトの起こした事件の一つとして、ニュースでは話題になるだろう。
 その様相に、どこか想いを馳せながら――期待さえ抱きながら、そろそろと思い、享はこの場を立ち去っていく。

「あぁっ……うぅ……」

 悶え苦しむ一人の男を置き去りしたまま。
 その男がどれだけ喚いても、このビルにはしばらく人が来ないだろう。


 ――――それを、影から眺める「第三者」を除いては。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆


942 : 甲斐享&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/22(月) 23:29:44 gKFLqYCg0



【2日目 1:09】



 享は、久々に『ダークナイト』の活動を行った興奮で、その夜、すぐには寝付けなかった。
 悪をまた一人痛めつけ、多くの人に快感を与えた自分を称える声――それを、享は気づけば心待ちにしているのだ。
 再びこの事がニュースになり、多くの人々は「悪が一人報いを受けた」という事実に関心を持つ。
 そのリアクションまで含めて、享にはどこか面白かった。
 いや、これこそが民衆の真なる願いに相違ないのだ。

 秩序と正義という、似て非なる物を天秤にかけられた時、多くの人は「正義」を求めている。
 ――そして、自分の行いが、その正義を端的に表す行いなのである。
 裁かれていない悪人が痛めつけられ、多くの人間が満足する――それの何がいけないのか。

(……)

 考え事をしていると、ふと、手持ちの携帯電話が振動した。
 突然鳴り響いた携帯電話に驚きつつ、享の動悸が早まる。

「こんな時間に電話かよ……」

 苛立った様子で、胸の高鳴りをごまかすように悪態をつく享。
 画面を見ると、上司から何通もの不在着信があった。
 享は舌打ちした。

「……」

 まずい――。
 帰った後の享の携帯にはずっと不在着信が鳴っていたらしい。
 享の犯行の時間のアリバイが、そっくりそのまま存在しない証拠が完成されていた。
 しかも、よりによって、あのめざとい上司から、何件も不在着信が来ている……。
 だが、社会人として一刻も早く電話を取らねばならないと思って、享は着信に応答した。
 
「もしもし」

『ああ、カイトくん。今まで、どちらで何をしていたのですか?
 先ほどから、何度も電話をかけていたのですが』

 電話の向こうからは、年配の紳士の声が返って来た。
 カイトくん、というのは甲斐享というフルネームから取った仇名である。
 しかし、問題は、上司の電話の内容だ。
 流石に、長時間上司からの電話に出なかった事を不審がられただろうか。
 適当な嘘を取り繕うしかなかった。

「…………。
 すみません、まっすぐ帰ってから、疲れてすぐ寝ていました……」

『おや、そうでしたか。
 ……いえ、こちらこそ、お疲れの所、申し訳ありませんねぇ。
 本来なら、君の業務の時間はもう終了してますから、ゆっくりと休養を取って頂きたい所ではありますが』

「――そんな事より、何ですか? 事件ですか……?」

 思い当たる節がある享の心臓が高鳴る。
 もう、あの暴行事件が判明してしまったのだろうか。
 この上司の目は欺けない――そんな確信はある。
 正体まで悟られたのではないかという恐怖で、相手の応答までの時間は異様に長く感じられた。
 実際には、二秒も経っていない。

『ええ。それも、大事件です』

「大……事件?」

『そうなんです、実は――』

 実際にその上司から告げられた事件の内容は、チンピラの詐欺師が一人暴行されたなどと言う次元の話ではなかった。
 これまで、享の仕事の中でも、そんな話は聞いた事がないという程の話。
 それが、紳士的な口調で、すらすらと読み上げられ、享は愕然とした。

「え!? 百人以上の他殺死体……!? 警官も……!?
 いやいや、いくらなんでも、そんなバカな話――」

 そう、民間人、警察官を巻き込んだ大量虐殺事件であった。
 これが、享の不在中に発生し、享の職場でも、当然話題になっていたのである。

 そして、この話を耳にした瞬間、彼の頭は歪んだ正義『ダークナイト』から、仕事の為の純粋な正義感へと切り替わった。
 まるで信じられない話だが、百名規模の大量殺人が発生した――という。
 事実であるのなら犯人(流石に複数犯だろうと考えた)は許しがたい。今すぐに真相を確かめねばならない。
 だから、享もこんな時間に召集を受けても尚、快くそれを承諾する事になった。

「――ええ……はい。わかりました、すぐに向かいます」

 甲斐享――彼は、警視庁特命係の刑事である。
 彼はすぐに、洗濯するはずだったシャツを羽織ると、警視庁へと向かった。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆


943 : 甲斐享&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/22(月) 23:30:06 gKFLqYCg0



【2日目 10:23】



 そして、あの後、軽い現場検証から、今度はそのまま出勤というハードスケジュールが待っていた。
 現場には、事実、多くの死体がそのままになっており、広範囲が封鎖されていた。
 享は現場には入らず、テープの張られた外にいたのだが、やはり死体を多数見かける事になった。
 おおよその事件の概要を聞かされ、鑑識が必死に手を回しているのを見て気の毒に思った。

 朝の五時まで、上司から事件の詳細を聞かされ、九時に署内で行われる捜査対策会議まで、四時間を署内で過ごした。
 疲れて寝ていたという言い訳に説得力を持たせる為に、必死で捜査情報を聞き出すフリをしていたが、やはり一、二時間は仮眠を取る事になる。
 こんな事件が起きるならば、あんな事をせず、帰って大人しく寝ていればよかった……と後悔が過る。

「……」

 そして、捜査会議の結果、特命係も今回、設置される事になった特別対策本部と合流して、事件の捜査に加わる事が告げられた。
 今日入る予定だった久々の休日は、潰される事になりそうで、寝る時間はない。
 事件が解決するまで、満足に寝られるかどうかという状況だ。
 しかし、それでも、そんな事は、いざ会議が終わると、どうでもよくなってしまった。

「……なーんか、いつもと違う気がするんだよなぁ」

 享は、この捜査本部のどこか淡泊な印象を怪訝に思って、ついそれを口に出してしまう。
 日本犯罪史上でも前例のない規模の殺人事件であるにも関わらず、署内の動揺があまりに薄すぎる。
 その上、警察官も殺されているのに、署員の焦りの色がどうも薄い。
 ただでさえ殺人事件が起こると、普通は刑事たちからもいくつか質問が出てくるはずなのだが、それも殆どないくらいだ。
 息を巻いて事件解決に勤しもうとしている刑事も少なく、本当に事件の概要や今後の方針を伝えられて終わり。
 つまり、明らかに気合いが入っておらず、誰もこの事件を深刻に捉えていないのである。

 ……そんな事があるだろうか。
 頭を使うのが得意な方ではない享だったが、これはどうもおかしい。

 それに――。

(――肝心のダークナイトの件は、事件になっていない……か)

 昨夜、自分が詐欺師を襲撃して暴行した一件も、事件にはなっていない。
 確かに、百名規模の虐殺事件という、不可解すぎる事件が起きている横で、それが話題にならないのは仕方ないだろう。
 ただ、署内にもその事件の情報が一切入ってこないのは、全く、面白くない所だった。
 あの詐欺師は、手当が必要になるはずだが、どこにも通報しなかったのだろうか?

「……ねえ、右京さん」

「はいぃ?」

「今日の捜査会議、なんか、おかしくありませんか?」

 享は、特命係のもう一人の男にして、昨夜自分に電話をかけてきた上司である――杉下右京に、そう訊いた。

 いまひとつ、享はこの事件に現実味が持てないままでいたのだ。
 もしかすると、どこかの浮かれたテレビ番組のドッキリ企画なのではないか。
 そんな感じさえするが、それにしてはやはり、手が込み過ぎているし、そもそも警視庁を舞台にした時点で業務への支障が大きすぎる。
 やはり現実なのだろうが、理屈と実感は遠く離れた場所にあった。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆


944 : 甲斐享&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/22(月) 23:30:41 gKFLqYCg0



【2日目 同時刻】



 美しい顔立ちの男が、警視庁の前に来ていた。
 年齢よりも若く見られるその容貌に、高級そうな革のジャケット。
 奇しくも、かつて、この警視庁の特命係で甲斐享の前任だった男と、瓜二つの顔だった。
 そんな、怜悧で、笑顔が少し想像しにくい鉄面皮は、そこで『マスター』の出勤した巨大なビルを見上げている。

(まさか、警察官だったとはな――)

 彼の名は、黒井響一郎と言った。
 まだ、享には告げていないが、彼は享の引き当てた『サーヴァント』である。
 クラスは、『ライダー』――仮面ライダー3号の別名を持つ彼にとっては、あまりにも肌に合ったクラスだろう。
 歴史の闇に消え去った彼が、こうして英霊として現界しているのは奇妙であったが、何やら聖杯戦争という新しい戦いが始まったらしい。

 その前に、マスターの様子を確かめていたが、昨夜はチンピラを相手に暴行を働き、昼間はこうして警視庁に出勤しているという状態だ。
 それは、普通の警察官の守るべき秩序とはかなりかけ離れた生活であった。
 警察という役職を持つ仮面ライダーとは、かつて共に戦い、心を通わせた事があるが、まさか彼と同じ職とは。
 だが、ライダーは別段、それに対して強い忌避感もない。

(マスター、それがお前の正義だというのなら、俺はお前の正義を否定しない……だが、肯定もしない)

 悪人を私的に裁く、という享の正義。
 それは、人間の自由と平和を脅かすものを排除するという生き様にも似ている。
 そして、その徹底ぶりもまた、かつてのライダーの姿が強く重なった。
 故に、強い言葉で非難する事も出来ない。

 ライダーにとって問題となるのは、本当にその正義感だけが享に働いているのかという点だ。
 鬱憤を晴らす為の暴力の言い訳として、悪人を対象にしている可能性も否めない。
 いや、多くの場合、私刑とはそうした理由から生まれる物であろう。

 しばらくは、享に聖杯戦争の事を伝えるべきではない――というのがライダーの見解だった。
 勿論、享に先立たれると厄介なので、彼の身の安全くらいは保障しておきたいところだが、それについても、今は強い執着はない。
 とことん一人で行動しても構わない。
 この身、この存在がある今の内にだけ、自分の目的を果たしておこうというくらいだ。
 聖杯に託す望みなど、無い――。

(俺は、仮面ライダーとしての真の生き方を貫くのみ……。
 そして、その隣にいる資格があるのかは、お前次第だ、マスター)

 ――ライダーは、心の中でそう云い捨て、その場に背を向けた。

 かつて、仮面ライダーとしての正義と、与えられた使命との間に揺れた男は、この場でもまた、仮面ライダーとして生きるのみ。
 この東京に巣食う人間の自由と平和を脅かす者たちを倒し、マスターとは別の有りようを示す事になるだろう。

 歴史の闇に葬られた英霊は、左手で右手を握るように触れたまま、どこかへ歩み去って行った。




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945 : 甲斐享&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/22(月) 23:31:57 gKFLqYCg0

【クラス】

ライダー

【真名】

黒井響一郎@スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号

【パラメーター】

通常時
 筋力C 耐久D 敏捷C 魔力D 幸運D 宝具EX

変身時
 筋力A 耐久B+ 敏捷A+ 魔力D 幸運D 宝具EX

【属性】

混沌・中庸

【クラススキル】

対魔力:C
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 大魔術・儀礼呪法など大がかりな魔術は防げない。

騎乗:B+
 騎乗の才能。
 大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、 魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。
 乗り物を乗る際には能力に補正がかかり、ライダーの中でも屈指の騎乗能力が発揮される。

【保有スキル】

改造人間:A
 科学力によって身体を機械化・強化改造された英霊に付随するスキル。
 神秘性が下がり、魔術師にも嫌煙されやすいが、代わりに人間ならば不可能な機動性を確保し、通常の人体ならば致命的な損傷を受けても無傷で生還できる。
 その為、身体能力や身体機能が格段に上昇し、パラメーター以上の能力を発揮できる場合もある。

忘却の英雄:B
 人類史の中でその名が記録されていない英雄の性質。
 これにより、サーヴァントの真名が知られた際、対策を練る事が困難となり、真名を明かすリスクが軽減される。
 彼の場合は、「黒井響一郎」の名前は人類史に存在しているが、その宝具の詳細は記録になく、一部の人間の記憶上にしか残存していない。

単独行動:C
 マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。
 マスターを失っても、1日までなら現界できる。


946 : 甲斐享&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/22(月) 23:32:27 gKFLqYCg0

【宝具】

『歴史の闇より解き放たれし忘却の三番(タイフーン)』
ランク:B+ 種別:対人宝具(自身) レンジ:1 最大捕捉:1
 黒井響一郎の肉体(腹部)に埋め込まれた変身ベルト。
 変身ポーズを取る事で体内のスイッチを起動させ、ベルトの風車が回転、跳躍して更に回転を加速させる事で、黒井響一郎は仮面ライダー3号へと変身する。
 仮面ライダー3号へと変身を果たすと、パラメーターは「変身時」の物へと変更され、ライダーパンチやライダーキックといった必殺技を可能とする。
 秘密結社ショッカーによって生み出された悪の性質と、人間の自由と平和の為に戦った仮面ライダーの善の性質を併せ持ち、それ故にこの姿になると、「秩序・善」、「混沌・悪」の属性のみが受けられるスキルや効果を受ける事も出来る。
 ただし、不利な補正をキャンセルする事も出来、実際の本人の有りようはより複雑で中立的な立ち位置に落ち着いている。
 また、仮面ライダー3号は本来ならば歴史の闇に葬られている存在であり、彼の持つすべての宝具は検索等を駆使しても把握する事が不可能(ただしタイフーンなど同名の宝具が、『本郷猛』などの別の英霊を介して知られる可能性はある)。

『後来居上の第三旋風(トライサイクロン)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:1〜100
 仮面ライダー3号が騎乗する専用の自動車型マシン。最高時速600キロメートル。
 ミサイル等の武装が内蔵されており、対人だけでなく、城や軍を責める際にも充分有効である。

『雌雄決する騎兵の供宴(ライダーグランプリ)』
ランク:EX 種別:固有結界 レンジ:1〜1000 最大捕捉:1〜1000
 ライダーの固有結界。
 かつて、秘密結社ショッカーが仮面ライダーを対象に行った、ライダーマシンを使うグランプリの会場を模した心象風景。
 この空間では、捕捉範囲内に存在する「騎乗」のスキル(もしくはそれを可能とする代替スキルや宝具)を持つサーヴァント、及び、騎乗意思のある魔術師がレースを行う事になる(スキルや騎乗意思がない場合は観戦できる)。
 ここでは乗り物や動物などに騎乗さえしていれば、レースの最中にどんな方法を使って敵と競って構わず、直接攻撃などでレース中の選手の妨害する事も可能。更には、参加者ではない乱入さえも可能となる。
 また、この固有結界内では、無銘のショッカー戦闘員たちがレースを観戦しており、ライダーに代わり、彼らの魔力を用いて、結界の維持や騎乗対象物の召喚を行ってくれる。
 その為、固有結界では、「騎乗」のスキルで乗るべき乗り物や動物を現界させる際にも、大きな魔力負担が起きない。
 尚、このグランプリでは、最下位の敗者の魔力が、優勝者にすべて供給される(それ以外のリスクはない)。

『歴史組み直す仮面の巨神(ライダーロボ)』
ランク:- 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
 歴史を改変する光線を放つ巨神。
 本来ならば、物理干渉による「歴史改変」で敵を消し去る反則的宝具であるが、現界に必要な条件が限られ、聖杯がライダーの為に準備した戦場でもない限り使う事が出来ない。
 また、ライダー自身がこの使用を拒絶する可能性も高く、現状この宝具はフレーバーテキストのような物。

【Weapon】

『後来居上の第三旋風(トライサイクロン)』

【人物背景】

 仮面ライダー3号に変身する男。
 秘密結社ショッカーの改造手術を受け、一時は仮面ライダードライブたちを騙してショッカーの為に戦ったが、根は自分の生き方に迷いを感じており、悪人というわけではない。
 仮面ライダーを倒さなければ自分の存在が消滅してしまうという宿命と、仮面ライダーとしての正義感との葛藤の中を持ち、最後には仮面ライダーの名を持つ者として運命と戦った。
 変身前の顔はミッチーである。

【サーヴァントとしての願い】

 仮面ライダーとしての生き方を貫く。
 ただし、最低限、マスターを守る意思はある。


947 : 甲斐享&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/02/22(月) 23:32:41 gKFLqYCg0





【マスター】

甲斐享@相棒

【マスターとしての願い】

 なし。

【Wepon】

『警察手帳』
『拳銃』(現在、緊急警戒態勢につき、携帯を許されている)

【能力・技能】

 警察官としての最低限の能力。
 日々私刑に勤しむくらいに格闘能力に優れており、相手に致命傷を与えない塩梅も知っている。
 勉学は苦手らしく、「Barter(バーター)」を「バター」と読んだり、数学者に出された数学問題をすぐに投げ出し、渡された紙を紙飛行機にして飛ばしたりしている。
 幼少時、親の意向でピアノを習っており、その際に絶対音感を取得しているが、初登場したエピソード以外では発揮されることはなかった。
 幽霊が苦手。

【人物背景】

 警視庁特命係所属の杉下右京の三番目の相棒。通称『カイト』くん。
 捜査一係志望で、警察官としての正義感も強い一方、やや荒っぽく、勝気で奔放な部分も目立つ。
 父親は警察庁次長の甲斐峯秋。
 実は、裏で「法の裁きを受けることのない悪人」を相手にする私刑を繰り返しており、インターネット上で「ダークナイト」と呼ばれ崇められている。

【方針】

 特別対策本部として動く。
 余裕があればダークナイトとしての活動もしたいが……。

【備考】

 聖杯戦争について認識していません。
 ただし、警視庁内の雰囲気には違和感を持ち始めています。
 ちなみにここで封印されていた記憶は、『ダークナイト』についてのみで、そこも初日の朝で思い出したようです。


948 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/22(月) 23:33:03 gKFLqYCg0
以上、投下終了です。


949 : ◆cT.c4WK4wQ :2016/02/22(月) 23:53:26 heoGGWWA0
皆さま、投下お疲れ様です
投下します


950 : ◆cT.c4WK4wQ :2016/02/22(月) 23:54:23 heoGGWWA0
夜の公園の歩道を、一人の少女が歩いていた。
都内の高校のものと思われるブレザーの制服を着用しており、少女はその高校に通う女子高生であることが見て取れる。
きっと学校の帰りに友人とつい遅くまで寄り道してしまい、自宅へ向かう時間がいつもより遅れてしまったのだろう。

少しだけ身震いしつつ、少女は辺りを見回す。
日は既に沈んでおり、空一面は闇で覆われている。
街灯のおかげでなんとか視界を保てているが、それでもこのじめじめとした異様な静けさは不気味だ。
歩道の脇から先には、大きな池がある。この公園内に存在する池で、いくつかの川の中継点にもなっている。
そのため、少女のいる公園の周辺には川の向こうを行き来するための橋が都内ではトップクラスに多い。



――ガサリ。



「ひっ」

――誰か、いる?

不意に、池の水底に根を張る植物が音を立てる。少女に恐怖と緊張が走る。
この暗闇の中だから、当然池の水中など見えるはずもない。
少女の目に映る池は入ったら二度と出られなくなる底なし沼のような宇宙の闇そのものだ。

――きっと気のせいだよ、ね?

自分にそう思わせるために少女はおそるおそる池の水辺に近づいてみる。
池の水の音が近くなってくる最中、少女はある噂のことを思い出していた。
それはあまりにも荒唐無稽で誰にも信じられていなかったが、学生の笑い話に使えるくらいには流行っている東京都内の水辺に関する噂。
曰く、東京都の池や川などあちこちの水辺で、夜な夜な正体不明の人影が現れるらしい…。
一部の者はこれを河童だのUMAだのと騒いでいたが、出没する場所もはっきりとしていないのでその手の輩の流したガセネタとしか思っていない者も多かったし、少女もその一人であった。




今、この瞬間までは。

「っ!!!!!!!」

池の植物の隙間から細長い手足を持った人型の影が浮かび上がる。
闇に潜んで少女を凝視していた目がギラリと光った。
背景に溶け込んでいた緑の斑のかかった気色の悪い肌が少女の目に鮮明に現れる。
池の水を垂らしながらギトギトに油にまみれた髪を揺らしながら、『それ』は少女に言葉をかけた。


951 : ◆cT.c4WK4wQ :2016/02/22(月) 23:55:30 heoGGWWA0

「ごはん」

『それ』は既に少女を捕捉しており、獲物を狩れる瞬間を植物に紛れて今か今かと待っていたのだ。

「きゃああああああああっ―――むぐっ!?」

『それ』は呟くと、叫び声を上げようとする少女の顔に目がけてタール状の液体を吹きかける。
その狙いは見事なもので、その液体は少女の顔全体を正確に捉えてべったりと覆った。
『それ』の狩りの技術が本能レベルまで染みついていることが分かる。
あまりに驚愕したからか液体を吹き付けられた衝撃で少女は尻餅をついて態勢を崩してしまう。
少女には『それ』の正体や、早くここから逃げることについて考える余裕などなかった。
視界が文字通り暗闇に覆われた恐怖と呼吸ができなくなったことからパニックになり、顔に張り付いた物体を取ることにしか頭が行かなかった。

「むぐ…ぐ…うぐうう〜〜〜〜〜!!!!」

どうにかして助けを呼ぶため、そして謎の液体により奪われた呼吸機能を取り戻すために少女はへたり込んだ姿勢で必死に顔を覆うものを取り除こうとするが、
タール状の液体は既に硬化しており、人間の力ではとても剥がせないほどまでになっていた。
足をばたつかせ、出せるだけの力をありったけ出して硬くなった物体を引き離そうとするが、その努力は報われない。

「ううううううう!!!!んぐ〜〜うおお〜〜〜んおあ〜〜〜〜〜っ!!!!」

少女は顔に張り付く物を掴んで何度か寝返りをうった。顔を地面に打ち付けたりした。
やれるだけのことは全てやって激しくもがいていたが、数分経つ頃には体内に残っていた酸素を全て使い切り、ほぼ窒息していた。
それでも小刻みにピクピクと体を震えさせていたが、やがて少女の生命活動と時を同じくして身体の動きが完全にストップした。
『それ』は少女が動かなくなったことを確認すると、周囲を警戒しながら池から陸地へと出る。

「ごはん」

そして、少女の亡骸を掴んで、池に引きずり込む。
『それ』の口からはタール状の物質がまるで涎のように滴っていた。

「ひと」

ズルズルと砂利の混じる陸地から、『それ』と亡骸は池の水に浸かっていく。


952 : アエ&ミュータント ◆cT.c4WK4wQ :2016/02/22(月) 23:57:00 heoGGWWA0

「ごはん、――」

そして完全に人の目から避けられるくらいまで進み、『それ』が手の平と足の裏から出る溶解液で獲物の死体を溶かそうとしたとき、頭の中で火花が起こったような感覚がした。

「――あれ?」

舌足らずな口調で、『それ』は首をかしげる。

「あれ?」

溶解液が絶えず溢れる手の平で、長い間シャンプーで洗っていない油まみれの髪に触れる。
髪を洗う…?

「かみ あらってない あれ?」

毎日おっきい人に洗ってもらっていたのに、洗っていない。
髪をとくくしもない。

「あれ?」

ときどき見に来てくれるちっちゃい人もいない。

「せんせー あれ?」

「あれ?」

「あえ?」

「アエ!!」

その瞬間、『それ』は思い出した。自分の名前がアエであることを。

「『アエ』…それがあんたの名前なのね?」

そしてマスターとして覚醒したアエの前に『それ』は現れた。
新生物「ミュータント」のサーヴァント、『フー・ファイターズ』が。









深夜の池をそれなりに進んだところにある浅瀬にて、アエとそのサーヴァントが向かい合っていた。
アエと同じく人間とかけ離れた肌の色に、表面から何かが崩れ落ちており、短髪の女性の姿をベースにした姿を取っているのが現在のフー・ファイターズの容姿だ。

「ふん はいたーず?」
「誰が糞を吐いただってェ――ッ!?フー・ファイターズだ!二度と間違えるなッ!!難しいようなら『F・F』でもいい」
「えふ、えふ?」
「そう、F・Fだ」
「えふ!えふもごはん食べる?」
「……遠慮しとくぜ」

F・Fはアエの足元を見て、引き気味に答えた。
アエが記憶を取り戻してからそれなりの時間が経過した。
どうやら、このアエという娘はうまく話すことができないらしい。
F・Fは自分の名前をうまく伝えようとしたが、途中で諦めてアエからは『えふ』の呼称が定着していた。
アエの足元には黒い液体の混ざった水が広がっている。
アエの足の裏から分泌される溶解液により、少女の死体はベトベトの黒ずんだ液と化し、もはや遺体は完全に消失していた。
そしてその黒い液体はアエの皮膚を介して循環器系に送られる。これがアエ――SCP-811――にとっての「ごはん」である。


953 : アエ&ミュータント ◆cT.c4WK4wQ :2016/02/22(月) 23:57:49 heoGGWWA0

無論、F・Fはアエに聖杯戦争についての説明を試みたが、無駄だった。
聖杯戦争の発音すらもろくにできず、これが殺し合いだとどんなに細かく説明してもちっとも理解しなかった。
どんな願いを持つかを聞いても『しゃんぷーしたい』の一点張りで、相当髪に気を使っているんだな、とF・Fは思った。

また、F・Fは自分の持つすべての知性を総動員して、アエから現状を聞くことができた。
この東京でアエに与えられたロールは、東京の水辺に棲む人外。当然のことながら住む家も家族もなく、先のような「狩り」をして空腹を凌いでいる。
アエは空腹でなければ攻撃的ではないが、飢えていればたとえ親友であっても狩りの対象になるのであろう。
それは知性を持つ生物とは真逆であり、動物的ともいえる。

「アエ」
「なあに?」
「アエは…ここに来る前は何をしてたんだ?」

だが、それは逆にF・Fの興味を引いた。
アエは間違いなく、F・Fと同じ何らかの過程で生まれた新生物である。
しかし、アエは人間的な部分は少なく、どちらかといえば動物的な本能が勝っている。
アエはどのような経緯で現在のような姿となり、東京に招かれる前はどうやって暮らしていたのかを、F・Fは知りたくなったのだ。

「まえ?ごはんのまえ?」
「えーと、ごはんのまえのまえのずっと前!世界っていうか…見ているモンがぜーんぶ変わったみてーな…」

F・Fはアエにもわかりやすいように身振り手振りを使って説明する。両手を目いっぱいに広げるジェスチャーは『ぜーんぶ』の意味だ。
かつてF・Fが親友に出会った時の体験談をしているような感覚だった。

「かわった?」
「そう!なんか変わったことはねーか?」

それを聞いたアエは先ほどのF・Fのようにジェスチャーを駆使しつつ断片的な言葉を紡ぐ。

「えっとね。かべ。とうめいなかべ」

アエは手で目の前にある何かを叩くような仕草をする。パントマイムのような手振りだ。

「ここ そと」

次に、アエは地面に指をさし、

「なか ちがう」

と答えた。

F・Fは、その様子を静かに見ていた。
察するに、アエはどこかの組織に閉じ込められていたのだろう。
「なか」と「そと」の決定的な違い。「なか」に閉じこもっていては「そと」の者と接することはあっても親友にはなれない。
それはまるで、ホワイトスネイクの「DISC」をただ守っていた時の自分と同じだ。
それでは、ただ単に生きているだけだ。「思い出」を作ることができない。

この時、F・Fはアエには真の意味で『生きて』ほしいという思いが芽生えた。
親友の徐倫やエルメェスとの出会いで蓄えていった、大切な「思い出」。
生きることはすなわち「思い出」を作ることだとF・Fは悟ったのだ。
きっと今のアエに足りないものは「思い出」だ。きっと彼女には「思い出」が足りないから、知性が本能に勝ってしまうのだろう。
「いい思い出」がエネルギーとなって自分自身に勇気を与えてくれるという感覚…それが知性なのだ。
「思い出」があればアエだってきっと…。

「思い出」はこれから作ることができる。
F・Fが徐倫についていったあの時のように。

「アエ。何か欲しいもの、ある?」
「しゃんぷーと、くし。えふかってきてくれるの?」
「ああ。陸に出るにはNPCの身体を借りねーといけないけどな」


954 : アエ&ミュータント ◆cT.c4WK4wQ :2016/02/22(月) 23:58:19 heoGGWWA0
【クラス】
ミュータント

【真名】
フー・ファイターズ@ジョジョの奇妙な冒険

【パラメータ】
筋力D 耐久D+++ 敏捷D 魔力B 幸運D 宝具B(地上)

筋力B 耐久EX 敏捷A 魔力A 幸運C 宝具B(水中)

【属性】
混沌・善

【クラス別スキル】
環境適応:C
「新生物」のクラススキル。
苦手なフィールドでも一定時間それに晒されることで次第にミュータントに変異が生じ、周囲の環境によるあらゆるペナルティを軽減ないし無効化するようになる。
ランクは周囲の環境への適応能力の高さを示し、ランクが高いほど適応するまでの時間が早くなる。

【保有スキル】
水棲:A+++
プランクトンとしての水中への適応能力。水の抵抗を受けずに活動できる。
ミュータントの場合は水辺にいる間はパラメータが上記の水中のものに変換される。
後述の宝具により水辺にいるミュータントを倒すことは不可能といえる。

憑依(偽):C
一部、あるいは全てのプランクトンを人間の肉体に宿すことで、人間を乗っ取って操ることができる。
ミュータントが人間の肉体に宿った場合、長時間陸で活動できるようになる他、自身をサーヴァントではなくただの人間であると誤認させることができる。
その代わり、乗っ取っている間は霊体化できなくなるデメリットもあるので注意。

知性の記憶:B
ミュータントは人間として生活をする過程で、どんな無駄で些細な出来事でもそれらを大事な「思い出」として全て覚えてきた。
それはサーヴァントになった今になっても受け継がれており、同ランクまでの情報抹消を無効化する。

他者修復:B
プランクトンを傷口に埋め込むことで応急処置に利用でき、回復手段に使える。
しかし、プランクトンで埋めた部分からは痛みが伴う。

【宝具】

『知性の海の縮図(フー・ファイターズ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大捕捉:――
フー・ファイターズを構成するプランクトン一体一体が全て宝具。
ミュータントの身体は本来心臓や脳がある部位も含めて全てがプランクトンで、水さえあれば魔力を全く消耗せずに分裂し、2体以上に別れて行動もできる。
一部のプランクトンが死滅しても他のプランクトンが残っていればミュータント全体として生き続けられる上、
プランクトンの増殖に必要な水があれば魔力消費無しで損傷を回復できるので非常にしぶとい。
プランクトンは水が存在しない場所では生命活動が行えないため水のない陸地が苦手だが、環境適応スキルにより生命活動を行える範囲が広がる可能性がある。
憑依(偽)により人間になりすましている間は指を銃の形にしてプランクトンの一部を弾丸として打ち出す『F・F弾』が主な攻撃手段。

『友にさよならを』
ランク:E- 種別:対人宝具 レンジ:―― 最大捕捉:――
ミュータントのプランクトンが全て死滅し、ミュータントが完全に消滅する際に発動する宝具。消滅後1ターンのみ、実体のない姿で現界できる。
最期まで親友との知性と思い出を失うことはなく、親友の空条徐倫に「さよなら」という言葉を残して死を迎えたという逸話からくる、仲間へ「さよなら」を残すためだけの宝具。
最後の言葉を守りたい者へ贈る時間は1ターンあれば十分なのだ。

【weapon】
ミュータントを構成するプランクトン群

【人物背景】
通称F・F。湿地帯のプランクトンにプッチ神父により『能力』と『記憶』のDISCを与えられ「フー・ファイターズ」という生物になった。本体もフー・ファイターズで同一。
体はプランクトンの集合体で水さえあれば分裂し、別れて行動もできる。
プッチ神父の命令により刑務所敷地内の湿原の倉庫でDISCを守っていた折に徐倫・エルメスと交戦のち敗れるが、徐倫に水を与えられ命を救われてからは徐倫を守りたいという思いに目覚める。
徐倫達の仲間に加わってからはエートロという女囚の死体を乗っ取り新しい身体にすると、エートロとして女子房で生活をしているが、
普通の人間と違い(湿地と違って水分の無い陸地で過ごすためには)定期的に水分を補給しなければならない身体であるため、それを巡るトラブルも少なくなかった。

【サーヴァントとしての願い】
アエの「思い出」をつくってやりたい
アエには本当の意味で生きてほしい。


955 : アエ&ミュータント ◆cT.c4WK4wQ :2016/02/22(月) 23:59:34 heoGGWWA0
【マスター】
SCP-811“沼女”、またの名をアエ@SCP Foundation

【マスターとしての願い】
しゃんぷーしたい

【weapon】
自身の肉体以外特になし

【能力・技能】
『溶解液』
手の平と足の裏からは常に緑がかった透明の液体が分泌されている。
これは有機物ならばどんなものも急速に溶かして粘着質の黒い液体に変えてしまい、それはアエの食糧となって皮膚を介して吸収される。
非常に強力な溶解液で、かのSCP-682の実験にも用いられたことがある。

『タール状物質の噴射』
胃の中で食糧を酵素と細菌叢が分解、凝縮したざらついたタール状の物質を、口からアエの意思によって経口噴射することができる。
アエはこの能力を狩りに利用しており、標的の顔あるいは傷口を優先的に狙い、そして口と鼻を塞ぐことによる即時の窒息か、
その物質に含まれる攻撃性細菌の侵食による多臓器不全によって標的が死ぬまで待つ。
アエの噴射したタール状物質が傷口に入り込んだ場合、三時間以内に広域抗生物質による治療を受けないと急速に悪化してしまう。

【人物背景】
細長い手足とわずかに膨らんだ腹部の人間の女性に似た体型を持つSCP。Object ClassはEuclid。身長171cm、体重47kg。
トレビュシェット博士を始め財団職員からは本人の希望で『アエ』と呼ばれている。
肌はわずかにざらざらした質感で緑のまだら模様をしており、従来のシャンプーをも撥ね退ける油っこい黒髪を持つなど、その容姿は人間からかけ離れている。
一方で人語には部分的な理解を示しており、ヘアブラシを財団職員に所望するなどところどころで人間の女の子らしいところが垣間見えるが、
実は彼女は――――[削除済]

フー・ファイターズのことを「えふ」と呼んでいる。
聖杯戦争のことは当然ながら把握していない。

【方針】
不明

【捕捉】
クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP FoundationにおいてPig_catapult氏が創作されたSCP-811を二次使用させて頂きました。


956 : ◆cT.c4WK4wQ :2016/02/23(火) 00:01:11 HZ5Gc3pY0
以上で投下を終了します

また、拙作の『矢澤にこ&バーサーカー』の本文を一部追記修正しましたことを報告しておきます


957 : ◆HOMU.DM5Ns :2016/02/23(火) 01:32:12 A1AgwtaI0
投下します


958 : 速水奏&アサシン ◆HOMU.DM5Ns :2016/02/23(火) 01:32:59 A1AgwtaI0



東京都豊島区池袋、池袋駅の周辺。
副都心のひとつに数えられるこの地区は常に人でごった返している。
平日でも休日でも。昼といわず夜といわず。朝も昼も夜も関係なく。
道を埋めつくすほど溢れかえる人、人、人の群れ。
遊びに行くため。仕事を務めるため。
そこを目的地にしている者。ただ通り過ぎていく者。
職業も理由も様々な人がこの一地区に集まって、擦れ違っては消えて行く。
誰も隣り合う他人に関心などない。生半可な奇抜さや個性では人の波は止められない。
大多数の変わり映えのない普通の人同様に、その少女もまた、孤立することなく流れの一部に溶け込んでいた。


少女は、普通の人だった。
変哲のない学校に通う高校生であり、級友とも仲が良いありふれた関係。
整った顔立ちで同年代よりも幾分大人びた雰囲気を持ち、思わず異性が見惚れる艶めかしさを見せることがあるが、
それも人並み外れたというわけでもない、普通の範疇に入る美貌の少女だった。

未成年ながらステージに立ち、煌びやかな衣装を身に纏い、歌と踊りで観衆を魅了する、
テレビで顔を見せる機会も少なくない人気を博するようになった、アイドルという職業であっても、
正しい社会の一部として受け入れられてる、普通のアイドルだった。

手品などではない本物の魔術を身に着けてるわけでもなく。
公にできない裏の顔を隠してるわけでもなく。
現実を覆したいと狂おしいほどに叫ぶ渇望を抱えているわけでもない。

速水奏という人間は、いたって普通の少女であるのだ。




―――たとえこの東京に呼び出された、サーヴァントを召喚したマスターという立場だとしても。




       ◇ ◆ ◇


959 : 速水奏&アサシン ◆HOMU.DM5Ns :2016/02/23(火) 01:33:28 A1AgwtaI0





「――――――はぁ」

自宅に帰り、自分の部屋の椅子に座ったところで深い息をする。
胸の奥に溜まった澱を吐き出すような、深い息。

ただ歩いただけだ。いつも通りの道を。
外に出て、学校に行って、帰って来ただけ。
途中池袋に寄り道をしたが、それだって日課になるほど行き慣れた場所だ。緊張する理由もないはずだ。

「――――――」

そうだ。緊張ではない。これは緊張していたのではない。
誰かが襲ってくるかもしれないと、知らず神経が張り詰めるほど日常に恐怖を抱いていたということ。
学生なら一度くらいは妄想したこともあるかもしれない笑い事。ただ今回はまったく笑えない。
隠しようのない事実として。いずれ起こるだろう未来として。
想像してしまえば笑えるはずもない。恐怖が拭えるはずもない。

独りきりでいる部屋は監獄に入っている気分にさせる。
一番安全と思っていた場所が浸食される。心の依り所を失うのは恐ろしい。

「ねえ。いつまで隠れているの?」

だから、声をかける。

「二人きりでいる時くらいは顔を見せてって、そう言ったでしょ?」

奏しかいない部屋で。何もない虚空に向けて、喋る。
これが安心を求めて空想に同居人を生み出したのならば、哀れと受け取れるだろう。
しかしそうはならない。自己の意思でなくとも奏はマスターであり、そこには必ず付き従う者がいる。
その声に応えるように。

すう、と。
影が映った。
細く長いポールを映したような人影。
しかしこの部屋には影と同じ形をした実像はない。
人から切り取られた影だけが、物質的な重さを持って生まれたと錯覚させる。

そう錯覚。その英霊の性質。存在の在り方が影そのものであるために起きた錯覚。
現れた実体は確かに肉のある人の姿だ。外面は、人の姿をしている。


960 : 速水奏&アサシン ◆HOMU.DM5Ns :2016/02/23(火) 01:33:52 A1AgwtaI0



それは、年若い娘の姿をしていた―――


瑞々しく、しなやかな女の体だった。
年の頃は十代の後半か。目の前にいる奏とそう変わるまい。
褐色の肌にぴったりと張り付いた黒衣は均整の取れたプロポーションをありありと見せており、意図的なまでに女らしさに満ちていた。
異性ならずとも目を引かれるであろう肢体。事実女性の奏の体はその女を見るたび潤とした熱を感じていた。
アイドルとしての視点で見ても十分なまでに魅力がある。自分のプロデューサーが見たら即座に名刺を渡しスカウトするだろうな、と、別のところで感想を抱いた。

しかし一点、女には特異な部分があった。
それが女の雰囲気を損ねないのもまたひとつの奇妙だが、やはり目に留まるには違いない。

髑髏の、面だ。
女の貌の目元から鼻、人を最も印象付けるパーツのある箇所に、髑髏の上顎を模した仮面が貼り付いていた。
個人の特徴―――パーソナリティをごっそりと抉られたが如き、玲瓏の能面だった。

「それも、外して……ね」

奏は指示する。
女は従い、面に手をかけ、外した。

露わになった貌は、変哲のない人の表情(もの)だった。
あどけなく、整った少女のもの。可愛らしく、綺麗だがやはりそれだけで。
隠すような、後ろめたさのあるような背景があるとは、感じさせなくて。

「うん、やっぱり」

微笑む。
朝学校に行ってからぶりの笑顔だった。
やっと元の居心地のよさを取り戻した部屋で、安心した声で、

「そっちの方が似合ってるわね、アサシン―――」

女の名を呼んだ。
暗殺者を意味する言葉を、長年の友人として語るように。




       ◇ ◆ ◇


961 : 速水奏&アサシン ◆HOMU.DM5Ns :2016/02/23(火) 01:34:13 A1AgwtaI0



アサシンの英霊、ハサン・サッバーハ。その十八ある代表のうちの一。
かつての"静謐のハサン"と仇名された私は、自分のマスターをじっと見る。

美しい少女だ、と思う。
整った顔立ち、清澄な空気を纏わせる肢体。甘さのある声色。
無論生前自分が仕えてきた、あるいは暗殺のため潜入した王朝に控えし王妃なり侍女には彼女を超える美貌の持ち主はごまんといる。
数多の英霊の中には、ただ"美"であるというだけで魔術にも等しい神秘をもたらす者もいると聞く。
それに比べれば彼女は実に平凡、ごくごくありふれた偶像。頭に"それなり"がつく程度でしかない。

「……うん、そうね」

それでも、だ。
私はやはり少女を美しいと思う。
それは顔や声、身振りからの判断ではなく、

「やっぱりしっくりこないわね、アサシンって名前は。単に私が言い慣れてないだけだけど」

自分を恐れずにいてくれる、その在り方に、だろうか。

「何か、別の呼び方はないのかしらね。真名……っていうのは駄目なんだっけ?」
「はい」
「そっか……じゃあ、ん……中東風?なんてのは私には分からないし……」

……ほんとうに、恐れていないはずはない。
事実召喚されてはじめて見えた際の少女の様子は、突然の事態への驚愕と、得たいの知れぬ―――魔術師ならぬ身ですら漠然とだが肌に障る感覚―――
への恐怖の感情が出ていたのが明白だった。
聖杯戦争の概要を伝え、純然たる殺し合いという法則(ルール)を教えた時。
彼女が"自分に触れる"という危険を冒さないように―――己の宝具の能力を教えた時。
隠す余裕すらもない、嫌悪と吐き気を催した表情に怜悧な顔を歪めたのを知っている。

それでも。

「ジール、とでも申してください」
「ジール?」
「影、という意味です」
「そう……ええ、合ってると思うわ。貴女らしいと思う。
 あ、悪く言ってるわけじゃないのよ?影がある女、って意味でね。素敵な響きと思わない?」

こうして微笑んでくれる。
私と、私の背景にある戦いへの恐れを押し殺して、こうして語りかけてくれる。

嗚呼。なんという健気さ。なんといういじらしさ。
我が腕は子を抱くことも産むことも生涯叶わぬ身。だからこそ私は子女は慈しむ。
その子女が私に向けて配慮を示してくれる。薄い、ささやかな慈しみを向けてくれる。
自分を裏では疎み恐れ、表ではへりくだった笑みを浮かべる輩は生前幾らでもいた。元よりそうした者以外の記憶はほぼない。
彼女はその逆。心に拭えない暗い思いを秘めながら、一個の人、話し合える関係だと認め、歩み寄ってくれる。


962 : 速水奏&アサシン ◆HOMU.DM5Ns :2016/02/23(火) 01:34:33 A1AgwtaI0



あの時。
私の意思を有し彼女の前に現界を果たした時、"殺してしまわなくて"よかったと心から思う。

もし、召喚者が男であれば一見してこの毒(み)に魅了されてこの身(どく)を求めていただろう。
もし、召喚者が一角の魔術師であれば、私は期待を抱いてしまっただろう。
或いはと、この方ならば我が身に触れても死さぬ運命の光であると、手前勝手に信じてしまい。
凶悪な毒の息(ポイズンブレス)と化した口付け(キス)を交わしてしまっていただろう。

女であるがゆえに、魔術師ではないがゆえに。
"この方ではない"と、早々に勘付くことが出来た。
サーヴァントが現世に留まるための寄る辺、要石であるマスターを自らの手で殺めることにならなかった。

これこそ今回の聖杯の導きの成せるわざであろうか。
魔力を持たぬ、サーヴァントへの支援を行えない貧弱な命があるじであるがゆえ、私は今もここにいられている。
不運としか言えないはずの巡り合わせは流転して、望ましい結果を生んでいた。


「それでジール、どうだった?もう……始まってるの?」

鈴を鳴らすのに似た音。
微かに震えた声であるじは問う。
暗殺者である私は直接での戦闘ははっきり言って苦手の分野だが、こと敏捷、身のこなしにかけては三騎士にも比肩する。
加えてサーヴァントクラスごと与えられるスキル・気配遮断の能力と併用すれば、諜報と斥候の分野においては最も向いた成果を挙げられる。
この二日間、東京中を駆け回って敵勢力の状況の次第を発見観察してきた。
東京という街は広く、人口の密度も非常に高いため捜索には難儀した。時には実体化し変化の能力で姿を変え裏事情に詳しそうな―――
即ちは裏家業に属する人間達から情報を得た事もあった。
特にサーヴァント同士の戦闘という目立つ波長には、他のアサシンの存在を念頭に入れつつも積極的に諜報にいそしんできた。
その旨はマスターにも伝えてある。最低限の自衛行動として承諾をもらった。

「本格的な開始は今しばらくの時を置くかと。ですが幾ばくかでの戦闘の形跡は確かに。
 公にされている、無辜の人々を連続して殺めた事件……あれもその被害の一端と思われます」
「……死んた人は?」
「いません。私が確認する限りにおいては」

嘘だ。何の抵抗もなくするりと吐いた。
騙し、誘い、殺すことを生業とする私にとって嘘は常に共にある。この貌も、言葉も、仕草も、全ては偽りでしかない。

私が隠したのは戦果だ。敵を減らし、命を奪ったという戦果。
魔術師であるマスターを一人、他のサーヴァントとの戦闘中に仕留められたのは僥倖だった。
身を隠して安全を確保しながら戦闘を眺めていた男に近づき姿を見せ、精神防御を抜いたのを確信し、朦朧とこちらに伸ばしてくる手を取って舌を入れる。
英霊を正常に運用させている魔術師だけあって、そこそこに魔力を貯蔵することができた。
異変に気付いたサーヴァントも隙を突かれ敵に討ち取られた。成果としては上々だろう。

やはり魔力を持たぬマスターでは我が身の霊体の霧散の抑制・維持には些かの負担がかかる。それ以外での補給方法は必須だ。
あるじ同様の一般人とはいえ、数を揃えて魂を喰らえば幾らかの足しにはなる。
一般人の大量虐殺という愚を犯したサーヴァント、恐らくはバーサーカーだろうか。その狂乱に乗じて自分の存在を隠蔽するのも容易かろう。
……もっとも、今はその方法は実行していない。
我があるじは極めて善良なひとであり、私が無辜の人の命を奪っていると知ればひどく嘆き悲しむと理解してるからだ。
魔力の問題についてはやはり隠した方がいいだろう。一応は説明したが、魔術についての知識がなければ要領を得ない、ぼかした程度にして煙に巻いてある。
暫くは予選期間で軽率に動いたマスターや、本戦からあぶれた魔術師に狙いを定めることにしよう。効率の点でもそちらがいい。


963 : 速水奏&アサシン ◆HOMU.DM5Ns :2016/02/23(火) 01:34:51 A1AgwtaI0



「……あるじは今まで通り、普段通りに生活するのが宜しいでしょう」

椅子に座るあるじを見下ろす位置で私は立ち尽くしている。
迂闊に家具に触れて毒を残留させてしまわないように。

「迂闊な動きをすればマスターであると気取られ、サーヴァントを向かわせられてしまいます」

あるじとの間には人ひとりが手を広げて入り込めるだけの距離を開けている。
ふと感情を抑えきれず、隣り合う細き指に手をかけてしまわぬように。

「我が身は暗殺者。英雄と直接顔を見え武を競う覇者にはあらず。それは下策であり、不得手であるが故」

決して風上には立たない。
万が一にも窓が開いて、己の体臭が風に乗って届かないように。


「それで、いいの?」
「いいのです」

私は考えた。
おこがましいこととはいえ、仮にも教団の長として籍を置いていた経験を駆使して。
あるじを傷つかせず、私は勝利に手を伸ばすための策を。

私―――ハサン・サッバーハは暗殺者。
あるじ―――速水奏はただのアイドル。

単純な駒として見れば弱卒この上ない組み合わせ。
ゆえに単純には見ない。盤上ではなく、盤外に駒を置く。

「私は忍び、貴方は関わらない。
 勝利に最も近く、生存にも一定以上望みがある方策です」

魔力の気配を消失できるアサシンに魔力を持たないマスター。
こう捉えれば、見えない敵としての側面が生まれてくる。
暗殺者としてこれほど便利な立場はない。狙われる側にとってこれほどの脅威はあり得まい。
多数のサーヴァントが入り乱れるこの聖杯戦争で、この戦術は確かな効果を得られるものだと私は計算した。
少なくとも私の能力ではこれが限界だ。もし仮に他により良い手段があったとしてもそれは叶うまい。

何故なら。



「……私では、あなたを庇い立てすることすらも、叶いませぬ」



暗殺者として腕を磨いた私にはどうしても出来ないことがある。
勇猛果敢なる戦士といえど毒を含ませれば死に至ろう。幻想に生きし魔獣幻獣の類であろうと仕留めて見せよう。
あらゆるものを殺せてしまう私に不可能なこと。それは何か。
自問するまでもない、答えはとうに出ている、
それは―――守ることだ。


964 : 速水奏&アサシン ◆HOMU.DM5Ns :2016/02/23(火) 01:35:09 A1AgwtaI0


だって、必要がない。
山の翁に求められるなのは如何に殺すべき者を殺せるか。その手腕の是非のみ。しくじれば即座に舌を噛み自害するが定め。
強固な防備を見抜き標的の居場所へ侵入する術を知るが故に、逆算して敵の攻め手を封じることは可能だろう。
だがそれは直接的な守護とは違う。我が身を盾に大切なものを庇護する―――そんな行動は教えられたこともない。
まして、私のこの身にとってはそんな真似など。許されるはずもない。

狙いすました凶刃から引き離すため抱き上げれば、その瞬間彼女の体は激痛に襲われ死に至るだろう。
襲い来る猛火から護ろうと前に出れば、焦げた肉の匂いだけで彼女の感覚中枢が停止するだろう。
飛び散る血、呼びかける声、それらは全て守りたい者への毒となるのだ。


そう、全てはこの毒身があるために。
私がいるせいで――――――
彼女にも、孤独を強いてしまっている。



私でなければ、彼女は庇護されるべき存在なのだ。
サーヴァントは願いのため聖杯戦争に招聘される。しかし誰もが他を踏みにじる悪鬼羅刹の如し、というわけもない。
戦場で勲を立てる勇士。弱者を労り、正義を成すような、騎士道の持ち主。
彼らは無辜なる者の命を徒に奪うことをよしとはしない。少なくとも、迷いは抱く。
望みを持たず、力のない彼女を見たならば。悪を討ち平和を願う、正義の味方のような英雄なれば。
憐憫を抱き、儀憤し、持つ剣を収めた空の手を差し伸べる希望も、けして諦観するほどの確率ではないはずだ。

しかしそうはならない。現実は覆らず、非情である。
彼女のサーヴァントはアサシン。闇に潜み、夜に溶け、寝首を狩る不貞の徒。
まして我が名は静謐のハサン。山の翁ハサン・サッバーハの数ある代表の一人。
色香で男を惑わし、全身に染み付いた宝具で差し伸べた手を侵す毒の娘。

いかな熟達した魔術師であろうと、忍び寄って数秒触れれば死を与えられる暗殺者(アサシン)に。
初歩の魔術の心得もない、まったくの無知なる無力のマスターに。
背を任せ、まして信頼など、結べはしない。


965 : 速水奏&アサシン ◆HOMU.DM5Ns :2016/02/23(火) 01:35:43 A1AgwtaI0


「ねぇ、ジール」

呼ぶ声がした。
私の名前。此度限りの、偽の名称で。

「私いま、とても不安なの」

顔を俯かせ、か細い声が喉から漏れる。
私のような演技とは違う、心からの弱音が聞こえる。

「聖杯とかそういう神秘的なものは魅力を感じるけど。殺し合いとか……そんなのは無理。
 私が私である限り、私がアイドルである限り、とてもじゃないけどそんなことは出来ない」

「貴女が突然空から降って来た友達で、こうやって永遠にいられ続けられたらそれは幸せな夢だなと思うけど……無理なのよね。
 夢はいつか、醒めるものだから」

「不安よ。不安で、不安で、不安で……とても怖い。今すぐ涙が零れて、何もかも投げ出して自分の世界に閉じこもってしまいそう」

潤む瞳が、私を見た。
御伽噺における真実を示す鏡が如く輝きに、偽の貌が映し出される。
ほんの少しだけ、見つめ返すことに躊躇する。仮面を被ってないのがいつになく気になって。


「そうならなかったのは、ジールのおかげ」


微かな笑み。
私はもうこの間、眼を離すことが出来なくなった。


「あなたがいて、私を見捨てないで、こうして一緒にいてくれるから」

「触れることが出来なくても、こうして私を見ていてくれるから」

「だから、私もあなたを見ていられるの。少しだけ、前を向いていられるの」

「生きて元の場所に帰りたい。私が願うことは変わらない。けどもうひとつ出来たの、願い。
 ううん、願いなんかじゃなくて、ただの小さな、星に掲げるような小さな祈り」

私のような褐色のない、陶器のように白い肌の手が持ち上がる。
伸びた手は私の延長線にぴたりと止まり、五の指先がその先の虚空を掴むように開く。


「……あなたに、触れたい」


この時ほど、私は自分にあった自制心を讃えたことはなかった。
生前の、初めての仕事に際して見聞きもない男の閨に入り込んだ時ですらこんな緊張はない。
汗のように噴き出す感動を、今すぐその手を握り胸を抱き唇を重ねたい情動を、必死に耐えて。


966 : 速水奏&アサシン ◆HOMU.DM5Ns :2016/02/23(火) 01:36:06 A1AgwtaI0


召喚されてこのかた彼女には教えていない、私の願い。
触れても死なず、倒れず、微笑みを浮かべてくれる誰か。
それを体現しようとする少女を前にして、呆然とする。

触れてあげたい。触れてはいけない。
触れてしまいたい。触れられはしない。

この瞬間が永遠であってほしい、はやく終わってほしい。
ふたつの矛盾。相克する煩悶が胸を締め付ける。

やがて、あるじの手が下ろされて、同時に私の金縛りは解かれた。
数分。いや数秒だったのか。
時の経過の感覚も忘れるほど私の頭は白滅していて。
立ち上がって荷物をバッグに詰めていく姿を見ているしかできない。

「とりあえず、あなたのいう"いつも通り"をしてくるわ」

速水奏の言ういつも通り。
都心にあるプロダクションに向かい、歌と踊りのレッスンを繰り返し、いずれ観衆にその結実を披露する日を待つ。

ああ。たとえ天上の歌姫には至らずとも、汗を振りまいて踊り抜けば観衆の誰もが息絶える己とは違い。
彼女の歌い終えた後の舞台には、鳴り止まぬ拍手と歓声に包まれるのだろう。

ふと、机に放置されている紙面に目がついた。無数の音譜の並んだ楽譜だ。
常に暗殺の恐怖を感じ、猜疑心に怯える領主や王を殺害せしめる数多の手段には、言葉による誘惑も含まれている。
楽師の奏でる音に乗り喉から上げた声は聴いた者の神経を麻痺させ、確殺になる閨への誘いの布石にもなる。
サーヴァントに与えられた現代の知識と統合すれば、書かれた譜面を読み解くのは手間のかからない工程だった。

そして脳内で汲み上げた歌詞がここ最近あるじが諳んじていた鼻歌に酷似しているのに気づき、今まさに部屋を出ようとしている背中に呼びかけた。

「奏さま」
「えっ?」
「忘れ物です」

直接手渡すことはしない。あくまで口頭と目線で取りこぼしを伝える。
何故か、あるじは大層驚いた様子でこちらを見ていた。

「あ、ありがと……ふふ。はじめて呼んでくれたのね、名前」

そう言って微笑みを見せて、今度こそ部屋を後にした。




       ◇ ◆ ◇


967 : 速水奏&アサシン ◆HOMU.DM5Ns :2016/02/23(火) 01:36:31 A1AgwtaI0





仮初の肉であるサーヴァントを熱源とは認めないのか、あるじの失せた部屋は急速に冷めた空気で包まれる。
私もいつまでも留まっているわけにはいかない。一刻も早く役目を果たさなければ。
敵の姿を捉え、人知れず命を奪い、繰り返し。彼女をいるべき世界へ送り還す。これ以上無駄な時間は割けない。
そして願うのだ。そして叶うのだ。


「……唇は……喋るためじゃなく……」

なのに、私の体はまだ消えない。
記憶に焼き付いて離れないメロディを口ずさんでいる。

「君のために……Kissするために……咲いている」

霊体化して気配遮断するまでの十秒間、私は歌を止めなかった。





       ◇ ◆ ◇


968 : 速水奏&アサシン ◆HOMU.DM5Ns :2016/02/23(火) 01:36:48 A1AgwtaI0



【クラス】
アサシン

【真名】
ハサン・サッバーハ(静謐のハサン)@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ

【パラメーター】
筋力D 耐久D 敏捷A+ 魔力C 幸運A 宝具C

【属性】
秩序・悪

【クラススキル】
気配遮断:A+
 サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
 完全に気配を断てば発見する事は不可能に近い。
 ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】
単独行動:C
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクCならば、マスターを失っても一日間現界可能。

投擲/短刀:C
 短刀を弾丸として放つ能力。

変化:B
 自分の姿を変える能力。
 仮面の下の貌を作り変えられる。

対毒:A
 宝具の能力による毒への強い耐性。 

【宝具】
『妄想毒身(ザバーニーヤ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜9 最大捕捉:10人
 猛毒と化したアサシンの肉体そのもの。
 爪、肌、体液、吐息、その全てが致死に至る毒を持つ。揮発した汗さえ緩慢ながらも効果を及ぼす。
 特に強力なのは粘膜接触で、口付けしようものならいかな魔術師でも二秒の快楽と引き換えに命を落とす。
 英霊として昇華されたことで幻想種さえ殺せるほど毒が強化されている。
 自らの意思では毒を制御できず、触れた者には無差別に毒を与えてしまう。

【weapon】
『短刀』

【人物背景】
暗殺教団の教主こと山の翁、ハサン・サッバーハの一角を担う亡霊の一人。
十代後半の、褐色の肌をした瑞々しい少女。見ただけで男を誘惑する色香を漂わせてるが、それは全て暗殺者としてのもの。
能力のせいで生前から孤独を感じ、その渇きを癒すことを強く求めている。
それゆえに自らを山の翁(ハサン)を名乗るのをおこがましいとしている。

【サーヴァントとしての願い】
自分に触れても死なず、微笑みを浮かべてくれる誰か。
あるじは自らに微笑んでくれるが、後は……。

【基本戦術、方針、運用法】
直接戦闘ではなくマスターを狙うアサシンらしいサーヴァント。
他のサーヴァントが戦闘している所を潜り込み、単独でいるマスターを暗殺するのが常道となるだろう。
男性には色仕掛けによって特効がつくので更に成功率が高まる。
反面防戦は大いに不利。アサシンであるのに加え、その毒性故マスターを庇う守り方が使えないからだ。
令呪のサポートが利かないのも覚悟で自分のマスターの存在は悟らせず単独行動をするしかないだろう。


969 : 速水奏&アサシン ◆HOMU.DM5Ns :2016/02/23(火) 01:37:04 A1AgwtaI0


【マスター】
速水奏@アイドルマスターシンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
殺し合いは否定。生きて元の世界に帰りたい。
……もし叶うのなら、誰をも毒に侵してしまう少女に触れてあげたい。

【weapon】

【能力・技能】
アイドルとして歌とダンスを身につけている。

【人物背景】
17歳だが大人びた雰囲気を備えたアイドル。東京都出身。
事あるごとにキスをねだるキス魔。だが実際迫られると狼狽えるなど初心で臆病、繊細なところがある。
ユニットではリーダーを務めることが多い。リーダーシップは高いのかもしれない。

【方針】
普段通り過ごす。マスターと悟られないようにする。


970 : ◆HOMU.DM5Ns :2016/02/23(火) 01:38:29 A1AgwtaI0
投下終了です
アサシンのスキルランクはまだ公式に発表されてないため独断でつけています
公式の展開によっては変更の場合もあることを表明しておきます


971 : 戦艦長門もしくは…… ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/23(火) 03:10:37 ZdaT9FKU0
投下します


972 : 戦艦長門もしくは…… ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/23(火) 03:10:58 ZdaT9FKU0

 東京湾。ギリギリ聖杯戦争の舞台と言える大平洋側の境界線に何かが出現した。


(ゴボゴボという水の音)


 ────『それ』はハワイ、カウアイ島沿岸より流れ着いた物だった。


(ゴボゴボという水の音)


 この再現されたる東京にあり得ぬものだった。
 なぜならば『それ』は今も『とある財団』が米軍と共同して『封印』されていなければならないからだ。


(ゴボゴボという水の音)


 ならば『コレ』は参加者なのだろう。しかし参加『者』と呼んでよいものか。参加物といってもいいのでは無いか?


(ゴボゴボという水の音)


 ゴボゴボという水底で何かがもがくような音を出しながら東京湾へと近づく。


(ゴボゴボという水の音)


 途中にある船を次々と沈めて現れた物は陸へと近づく。悲鳴を出す者を網にかけ次々と沈めていく。


(ゴボゴボという水の音)


 オブジェクトクラス:Keter。対人類敵性的異常存在。『それ』は遂に東京湾へ到達した。
 これの通った道に船も生存者もいないのは言うまでも無い。



       ▼       ▼       ▼



 『それ』は自分達に陸を歩く足が無い事に気づいた。あらゆる船を沈める機関と器官を有しているが、陸での活動は出来ない。
 そして気が付く────自分達はそもそもこの場所にいないはずであると。
 それを理解することで『それ』は参加者となり、そしてその瞬間、『それ』は機関に令呪を宿すと同時に、『それ』を触媒にして英霊が召喚される。


973 : 戦艦長門もしくは…… ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/23(火) 03:11:26 ZdaT9FKU0

 しかし、『それ』に英霊は必要無い。
 なぜなら『それ』は英霊に成れなかった物だから、逆に英霊としなかった人々を殺めるようになった鋼の祟神である。
 そして今、『それ』に必要なのは陸地を歩く足、沈める剛力である。
 故にその英霊を召喚した瞬間、令呪を用いた。

「ワレトトモニシズメ」

 『それ』は令呪を一画消費して英霊の存在を己へ取り込むというもの。
 『それ』は聖杯戦争の知識は有していないが、内蔵された令呪と召喚された者の機能を正確に把握していた。
 英霊を取り込むことでサーヴァントという陸上での活動が可能な「戦闘員」を手に入れ、同時に『それ』が英霊の機能を手にした物になると『それ』は想定していた。
 だが、『それ』は英霊と呼ばれる存在の魂の純度、硬度、強度、密度を完全に読違えていたのである。
 
 かつて聖杯大と呼ばれる戦い戦で己の存在とサーヴァントを融合させた例が二つある。
 一つは己の肉体に英霊を降臨させるケース。しかし、これは憑依させる側の魂が何物にも染まっていない純粋な魂だったから出来た芸当だ。
 今回の召喚者の魂はもはや汚染と言えるほど染まりきっている。従って召喚した側が耐えられない。例えその肉が鋼鉄で、条理を超えた性能を発揮できるのだとしても。
 故に『それ』が為すべきはもう一つの例。己の存在を英霊の魂に刻み込む方法だった。しかし、もはや後の祭。『それ』は内側より圧壊、いや吸収され始める。

「(ボゴボゴという音)……マダッ……ダ……」

 『それ』は諦めなかった。朽ちゆくマスター……世界を沈めるSCP-1264は最後の令呪を使う。



       ▼       ▼       ▼



 東京湾に女が浮かび上がった。コンクリが舗装された岸に登りゲホゲホと咳き込む。

「召喚されたら海の底とは嫌がらせか!」

 ビチャビチャと海水を滴らせながら上陸した女はサーヴァントだった。
 召喚された彼女はいきなり水中に放り込まれて溺死するところだったのである。
 彼女の名は長門級戦艦『長門』。日本海軍の象徴として存在した戦艦長門、その擬人化した姿である。
 何故こんな所に召喚されたか。そして何故マスターの気配がしないのか。
 召喚された瞬間、何か細工されたような気がする。

「狂化が付与されているのは私をバーサーカーを呼ぼうとしたのか?
 悪いが狂うような沈み方はしていないぞ。今しそうになったが」

 鋼鉄の軍艦が狂戦士になるのはよほどの事が無い限りあり得ない。
 自分の場合、恐らくは巡り合わせの悪さとその最期がバーサーカー適性になりうると評価されたのだろうか。
 まぁ、戦いの中で沈めなかったのは不服だが、それで狂戦士の扱いを受けるのは遺憾である。

「その点も踏まえて提督(マスター)にはきちんと文句を言ってやらねばならんな」

 無事に〝上陸した〟彼女は歩き出す。



       ▼       ▼       ▼



 彼女は知らない。既にマスターは彼女に取り込まれこの世に無く、自身が魔力生成機関を内蔵させられたデミ・サーヴァントであることを。
 彼女は知らない。マスターであったSCP-1264が最後の令呪で『私になれ』と命令して融合した事を。
 つまりそれは彼女、戦艦長門が行き着く先が■■■■■■■■である事に他ならない。


974 : 戦艦長門もしくは…… ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/23(火) 03:12:08 ZdaT9FKU0

【サーヴァント】
【クラス】
バーサク・アーチャー

【真名】
戦艦『長門』

【出典】
艦隊これくしょん(一部SCP-Foundation)

【属性】
混沌・狂(秩序・悪)

【パラメーター】
筋力:A→E→D 耐久:A+→EX→A+ 敏捷:A→E→C 魔力:C→E→C 幸運:E 宝具:E
(→は宝具『没落の果てにある光』使用回数による変化)

【クラススキル】
(→は宝具『没落の果てにある光』使用回数による変化)

狂化:E-→C→A
 バーサーカーのクラススキル。理性と引き換えにステータスを上げるスキル。
 Eランクでは痛みを感じない程度。
 Cランクで理性を失う代わりに全能力が1ランクアップする。
 Aランクでさらに全能力が1ランクアップするが生存者(特に一般人)を見つけ次第全てを破壊する。

単独行動:-
 マスターと融合したデミ・サーヴァントであるため自ら魔力を生成する。


【保有スキル】
(→は宝具『没落の果てにある光』使用回数による変化)

無冠の武芸:-
 様々な理由から、認められることになかった艤装の技量。長門のスキル。
 砲、雷、機銃のスキルランクを1ランク下げ、属性を真逆にする。

戦艦:A+++→×
 人化して現界した戦艦の英霊に与えられるスキル。
 水上における攻撃・防御・敏捷に大きく補正がかかる。

深海棲艦:×→×→EX
 沈没後の船が怨念を纏って海を封鎖するようになった艦に与えられるスキル。SCP-1264と融合したことにより得たスキル。
 あらゆる船への攻撃性と潜水能力を獲得し、砲撃への命中率に上昇補正が入る。
 また有機物、もしくは艦、艦の材料資源を吸収することでに再生・魔力生成する。50年後のSCP-1264にはわずかな腐食と損害のみしか残っていない。


【宝具】
『陸奥と長門は日本の誇り』(ビッグセブン)
 ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:自分 最大捕捉:-
 かつて世界最高の戦艦として名を馳せた長門の雷名を示す宝具。
 連合艦隊を展開し、信奉する日本国民の数だけステータスが上昇する。
 
 ────はずなのだが、狂化されて召喚されているためこの宝具は封印されている。


『海の古強者は死せず』(オールド・ネイビー・ネバー・ダイ)
 ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:自分 最大捕捉:-
 如何なる傷を負おうと水爆以下の火力に2回耐える宝具。
 
 ────らしいが狂化されて召喚されているためこの宝具は封印されている。


『没落の果てにある光』(オペレーション・クロスロード)
 ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:100 最大捕捉:1〜50
 戦闘不能、もしくは中破以上のダメージを負った時に自動的に発動する宝具。
 最大2回まで発動。致命傷を重傷状態へと軽減し、一定距離まで核熱と魔の汚染毒を周囲に散布する。

 なお、この宝具で発生する汚染毒によって怪獣王なる生命体が発生するリスクが生じる。


『SCP-1264 よみがえった残骸』(リザレクテド・リッケージ)
 ランク:E 種別:対艦宝具 レンジ:自分 最大捕捉:-
 『没落の果てにある光』を2回使用後に発動する宝具。
 本来ならばクロスロード作戦で沈没していくだけの彼女が令呪による命令とマスターと融合したことで生じた第2の可能性を示す宝具。
 スキル『深海棲艦』、『狂化』のランクを大幅に上昇させ、武器の14cm単装砲が6門に増えて、空母、潜水艦、駆逐艦の能力を獲得する。
 
 また彼女に殺された生き物は変質してナマコやデトリタスのようなものへ変容していく。


【weapon】
41cm連装砲2基
14cm単装砲
零式水上偵察機
14cm単装砲5門(第四宝具発動後)
Mk14魚雷(第四宝具発動後)
対人漁網(第四宝具発動後)


975 : 戦艦長門もしくは…… ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/23(火) 03:12:26 ZdaT9FKU0

【人物背景】
大日本帝国海軍の戦艦『長門』が擬人化した艦娘という存在(転生、船霊の受肉など諸説ある)
武人然とした人物。

「なんだろう? 記憶の彼方にある、あの光景は? 敵味方の艦たち、そしてあの巨大な光…。疲れているのか…な、提督。」

戦艦としての長門は建造後から終戦まで世界最強の戦艦の一角であり、ビッグ7と呼ばれた大戦艦。
帝国海軍の連合艦隊旗艦として長らく帝國海軍の象徴となるもその栄光から没落への一途をたどる非業の艦である。
戦艦として最高の戦力を有しながら戦闘の機会に全く恵まれず、旗艦の座を降ろされた後の戦場に彼女の居場所はほとんどなく終戦を迎える。
終戦後は中破したまま核実験に参加し、2度の水爆に耐えるも7月29日。誰も知らない間に沈没した。
この時の耐久性の高さが日本の造船技術力の高さを示し、同時にその損壊の激しさが水爆の恐ろしさを世界に知らしめたのだ。
皮肉なことに彼女がサーヴァントとして呼ばれる全盛期は戦っていない時と廃棄され沈む時だったのである。

今回の聖杯戦争において令呪で『SCP-1264になっていく』ためバーサク化している。

【サーヴァントとしての願い】
不明

【マスター】
SCP-1264

【マスターとしての願い】
ワレトトモニシズメ

【人物背景】
CP-1264は一度遺棄された戦艦や有機分泌物によって一緒に接着された漂流物やがらくたの集合体です。
SCP-1264の本体は1946年にビキニ環礁実験の一環として、対象船として使用された5隻の第二次世界大戦時代の軍艦で作られています。
SCP-1264を構成する以下の船は試験後に沈没したことを確認されています。

・USSサラトガ(CV-3):レキシントン級空母
・長門 - 長門級戦艦
・プリンツオイゲン - アドミラル・ヒッパー級重巡洋艦
・USS ラムソン(DD-367):マハン級駆逐艦
・USS アポゴン(SS-308):バラオ級潜水艦
・多数の給油艦(YO-160)

SCP-1264の中枢部分は、デッキにいくつかの巨大なジブクレーンを備え付けた空母で構成されます。
その他の船は硬化した分泌物で中央に固定されています。また、すべての船は艦橋が取り外されています。
その他のがらくたは、船舶間のスペースを埋めるために取り付けられており、SCP-1264の総質量の12%を占めています。
SCP-1264は、様々な大砲、魚雷、対空砲、そして爆雷で武装されています。
しかし、動作するのは一部であり、残りは作動しないか、動かすための資源が不足しています。
SCP-1264は、潜水艇としてほとんど水中で活動しています。水上では最大31ノットの速度で航行可能です。

【方針】
このサーヴァントがSCP-1264として運用されることはありません。
しかし、SCP-1264の存在は精神面・能力面において表現されており、このデミ・サーヴァントもまたKeterと評価して問題ありません。
マスターのSCP-1264は一部がサーヴァントに吸収され、一部の残骸が東京湾の底に転がっています。

【捕捉】
クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0(CC BY-SA)に従い、
SCP FoundationにおいてLurkD氏が創作されたSCP-1264のキャラクターを二次使用させて頂きました。
ttp://ja.scp-wiki.net/scp-1264


976 : ◆Jnb5qDKD06 :2016/02/23(火) 03:12:53 ZdaT9FKU0
投下終了です


977 : ディーン・ウィンチェスター&アーチャー ◆tGJWnjCS9s :2016/02/23(火) 23:05:14 PecfVt1s0
投下します。


978 : ディーン・ウィンチェスター&アーチャー ◆tGJWnjCS9s :2016/02/23(火) 23:06:17 PecfVt1s0
――ディーンが記憶を取り戻したのは必然だった。


日本に来日したFBI捜査官の役割を与えられたディーンは警察組織に協力を要請され
前代未聞の大量殺人事件の犯人を追う事になり
捜査会議で公開された防犯カメラにうつっていた犯人と思われる刺青の男を見た瞬間
一瞬で記憶が戻り、その夜自身のサーヴァントであるアーチャーと出会い
ここが偽りの東京である事、そして聖杯戦争の舞台である事など全てを教えられた。

ディーンはサムが巻き込まれていない事を祈りつつ、アーチャーに大量殺人の下手人と思われる刺青の男を追う事と
聖杯戦争からの脱出を目指す事を告げた。

ディーンが胸の内を全て打ち明けた理由は、本来隠していた方が都合がいい令呪の事などを教えてくれた事や
アーチャー自身が既に望みを果たしているため願いが無い事を話してくれたからだった。
ハンターとして生きてきたディーンは、黒い服を着た東洋人の右目が青く三本の爪の傷あとがあるこの男―アーチャーが
同じハンターである事を感じ取りしっかりとした協力関係をきずきたいという思いもあった。
幸いアーチャーはディーンに協力を約束してくれたため、ディーンはアーチャーと共に刺青の男を追う事になった。


事件の聞き込みを開始したディーンはすぐ傍に霊体化しているアーチャー、鏢に問い掛けた。
「アーチャー、犯人はやはりサーヴァントか?」
「おそらくはそうだろう。見た所バーサーカーだがマスターの意思の元した事なのかどうかは不明だ。」
「そうか…」
アーチャーの返答に難しい顔をして考え込むディーン。
そんなディーンにアーチャーは、最初に出会った時に疑問に思った事を聞いてみる事にした。
思えば最初に犯人を追う事を決めたのは、正義感からきた物だと思っていたが
あの表情からはそれだけではないのが見て取れた。
「ディーン、奴を追う理由はなんだ?」
アーチャーの問い掛けにディーンは立ち止まって振り返ると、真剣な顔つきで答えた。
「『奴』が■■■なら、俺は対決する必要がある。なぜなら…」


――ディーンは考えている事を全て打ち明けた。それも最悪の可能性を…
『奴』が■■■なら、サーヴァントかマスターのどちらかにあの『刻印』があるはずだ。
そして『元始の剣』もこの偽りの東京都のどこかに…


―リンクジョーカーの聖杯戦争解析計画は恐ろしい速度で進んでいくのだった。予想を超える程に…―


979 : ディーン・ウィンチェスター&アーチャー ◆tGJWnjCS9s :2016/02/23(火) 23:06:56 PecfVt1s0
【クラス】
アーチャー

【真名】
鏢(ひょう)@うしおととら

【ステータス】
筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:A++ 幸運:E- 宝具:EX

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
対魔力:B(A)
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
生前アーチャーは長い時を生きる大妖の雷を防いだため
敵が妖怪や魔物などの場合スキルの値が括弧内に修正される。

単独行動:A
家族の仇をほとんど一人で探し続けたアーチャーはマスター不在でも行動できる。
ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。

【保有スキル】
狂化:E-
妖怪に家族を殺されたアーチャーは、仇と出会った際に『笑み』を浮かべた。
恩恵はないが女性や子供を殺害した敵相手には、アーチャーは一切の容赦をしないだろう。

戦闘続行:C+
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、死の間際まで戦うことを止めない。
片腕と右目の代わりとなっていた浄眼を犠牲にして見事アーチャーは敵討ちを遂げた。

符術師:A+++
このスキルは、同ランクの中国武術、本来キャスターのスキルである陣地作成:D、道具作成:Bを持つ。
また敵が妖怪や魔物などの場合、筋力、耐久、俊敏が1ランクアップする。
桃源郷の道士に師事したアーチャーは、白面の者から力を貰った仇の紅煉からアーチャーほどの符術師はほとんどいないと言われた。

心眼(真):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し
その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
逆転の可能性がゼロではないなら
その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。


【宝具】
『浄眼』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜20 最大捕捉:1
右目の代わりとなっている青紫水晶を磨いてできた翠竜晶。
あらゆるまやかしを見破ることができ、妖怪の姿をも見ることが可能。
また一種の暗示をかけることもできる。
暗示はDランクの対魔力スキルで抵抗できる。

『十五雷正法』
ランク:E〜A 種別:対人宝具 レンジ:1〜20 最大補足:1〜50
妖怪を滅するための退魔術が宝具となったもの。

『爆砕符』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
仇の妖怪を討ち果たした捨て身の技が宝具となったもの。
体内からの攻撃なため相手の対魔力スキルを無効にして致命傷を与える。
しかし生前右目をえぐり爆砕符を仕込んだ右腕ごと相手に喰わせた事から
令呪一画が必要な上相当な魔力を消耗する。
まさに切り札で、これを使う時は相当追い詰められしまっている事だろう。
そのため安易に使う事はできない宝具となっている。

【weapon】
鏢(ひょう)などの飛び道具。
呪符などの退魔術の道具。

【人物背景】
元は家族を愛する優しい男であった。
ある夜家族が妖怪に殺されてしまい自身も重傷を負い
復讐の鬼となり退魔術を苦しい修行の末身につけて
仇の妖怪を追い詰めて、捨て身の技で敵討ちを遂げた。
その後満足して息を引き取った。
その後霊となってうしおととらと白面の者の最終決戦でうしおととらを助けた。

【サーヴァントとしての願い】
ディーンを助ける。


980 : ディーン・ウィンチェスター&アーチャー ◆tGJWnjCS9s :2016/02/23(火) 23:07:33 PecfVt1s0
【マスター】
ディーン・ウィンチェスター@スーパーナチュラル

【マスターとしての願い】
聖杯戦争からの脱出と刺青の男を追う。

【weapon】
銃。

【能力・技能】
悪魔や悪霊、怪物、はては天使に至るまでありとあらゆる人外の者と戦ってきたハンターとしての力。
その実力はカインに後継者として認められた。
大天使ミカエルの器として選ばれた事もあるため、魔力量も桁外れ。

【人物背景】
スーパーナチュラルの主人公の一人で凄腕のハンター。
カインから刻印を受け継ぎ、元始の剣を使いアバドンを倒したが代償で呪われた。
その後仲間達の助けもあって呪いから解放された。

【方針】
サーヴァントの刺青の男とマスターを見つけるため情報を集める。

【補足】
来日したFBI捜査官という役を与えられています。
刺青の男の男の正体に感づいているかもしれません。
ディーンは刺青の男、もしくはそのマスターに刻印があるのではと考えています。
また東京都内に元始の剣があるかもしれません。


981 : ディーン・ウィンチェスター&アーチャー ◆tGJWnjCS9s :2016/02/23(火) 23:08:38 PecfVt1s0
投下終了します。


982 : ◆Ee.E0P6Y2U :2016/02/23(火) 23:39:37 JfJBFy1Y0
そろそろこのスレも終わりになりますが、投下します。


983 : タダ&キャスター  ◆Ee.E0P6Y2U :2016/02/23(火) 23:40:43 JfJBFy1Y0

誰もいない、寒々としたビルであった。
かつてはオフィスとして使われていたのだろうが、今ではがらんどう、埃が積もるばかりの廃ビルだった。
不況のあおりを受けたのか、はたまた状況の変化で立地に価値がなくなったのか、いかなる理由かこのビルからは人が消えていた。

雑多な人々が行きかう街、東京。
道では深夜であってもそれなりに人が行きかっている。歓楽街のチカチカするネオンサインを遠目に、オフィス街においても未だ光が灯っていた。
そこは、そんな街にぽっかりとできた空白。社会におけるデッドスペース。

――厭な臭いがする。

エレベーターは止まり、電灯一つ付かない。
それでいて窓はぴっちりと閉ざされており、外界からは完全に遮断されているように見える。
そんなほの暗い灰色に包まれながら、彼は階段を一段、一段と上っていく。
靴音が空虚に響く中、鼻に来る埃の臭いを嗅いで彼は顔をしかめた。

――ああ、厭な夜だ。

彼は心の底からそう思っていた。
誰もいないこんなビルに、特に縁もない身分で乗り込もうというのだから気が滅入る。
階段を上りながらも、彼はこの状況に対してうんざりする心地だった。

とはいえ――怖くはないのだ。
夜分の街に誰もいない場所に行く。ともすれば非常に“怖い”場面だ。
幽霊、妖怪などなどの都市伝説の類を想起する者もいるだろうし、そうでなくとも何かしら危険人物が潜んでいそうな雰囲気がある。
何より暗い、というのはそれだけで本能的な恐怖を齎すものだ。

「…………」

だが、今ここにいる彼に“怖い”という感情はなかった。
あるのはただ目の前の状況に対する面倒くささ――厭だ、という感覚だけだった。
それも当然で、彼は魔術師であった。

根源を求め、世俗の律とは切り離された道を生きる者、魔術師。
彼にしてみれば、たかだか数十年の歴史の浅いビルに縛られる霊など恐るるに足らぬし、追剥や乞食の類はもっとどうでもいい。
こと夜の世界において彼は捕食者であり、決して被食者ではないのだった。

また――それだけではない。
今の彼には、飛びきりの武器があるのだから。

聖杯戦争、というものがある。
それは英霊を従え、それを競合わせることで根源へと至らんとする魔術儀式。
過去に活躍した英傑をサーヴァントなる不遜な名で縛り、従える。彼はそんな儀式の参加者――なのであった。
つまり彼には幽霊がついている。それもとびきりのだ。そこらの有象無象など一ひねりできる英傑を支配下に置いて、何を怖がるものがあるというのか。

「しかし、方舟の船団ね。安直なネーミングだ」

彼は、やれやれ、といった風に呟いた。
方舟の船団なる組織が聖杯戦争において結成されている――などという情報を掴んだのは、今朝のことだった。
この聖杯戦争には多くの陣営が参加している。その中である程度結託するのは、まぁ、考えることだ。
最後には袂を分かつにしても、数の力と言うのは大きなものだからだ。
そこにおいて、ある陣営が一般市民をも巻き込んだ組織を動かしている――などという情報が入ってきたのだ。
彼はそこで考えた。これは早めに潰しておいた方がいい、と。
この手の組織というものは、時間が経つほど厄介になる。ならば序盤に優先して打倒すべきは、こういった手合いである。
そしてこの組織は、今夜この場所で幹部格が集うとか――ならばそこを襲って一網打尽である。

彼は魔術師らしいシンプルかつ合理的な――あるいは短絡的かつ強引な――思考を持ってして、そう決断した。
事前の情報収拾によれば、この組織に参加しているサーヴァントは非常に弱い。
恐らくはキャスターかアサシンに属するものだろう。
弱いからこそ徒党を組むのだからある意味当然だが、たとえ複数相手取るにしても脅威にはならない、と彼が判断する程度の戦力のようであった。

だから、彼にしてみればハンターが狩場に赴くのに相違なかった。
これから始まるのは一方的なハントであり、決して戦争などではない。
ただその狩場が少々不快な空気をしていた、とそれだけのことだった。


984 : タダ&キャスター  ◆Ee.E0P6Y2U :2016/02/23(火) 23:41:10 JfJBFy1Y0

「…………ン」

けだるげな心地で階段を上っていると、不意に彼は足を止めた。
真っ暗やみなビルの中、ぼう、と光るものを視界の隅に見たのだった。
何だ――と思い、彼は足を止めそちらの部屋を窺う。
その先には埃臭い部屋と――そこにぽつんと置かれた小型のディスプレイがあった。

奇妙な物体に彼は頭を捻る。彼はこうしたメカニカルなもの――もっといえば近代的かつ現実的なものに弱い性分であった。
それ故、誰もいないビルにそんなものが置かれてあることの異常性が分からない。
いや、何かおかしい、とは感じるのだが、そのおかしさが具体的にどういうものであるか分からず、ぼやけてしまっているのだ。
ザーザー、と砂嵐のようにノイズが走る画面を前に、彼はしばし動きを止めた。

「――ようこそ、愚かなる魔術師くん」

その時、突如として画面が暗転した。

そこにい映っていたたのは――少年だった。
月夜、赤く巨大なタワーを背景に彼は佇んでいる。
彼は黒と白のコートに巨大なマントを羽織っており、またところどころに据えられた金の装飾が目立つ。
その整った顔立ちと相まって“王子様”とでもいうべき趣を身に纏っていた。
中でも目を引くのはその眼で、艶々とした黒髪の向こう側に真っ黒な眼帯が据えられているのだ。
まるでその瞳を押さえつけるように、あるいは何かを隠すように、彼はその左眼を覆っている。

「我々、方舟の船団を狙いに来たのだろうが、この手はいささか安易と言わざるを得ないな」

彼はそう言って仰々しく手を広げた。
照明に照らされた赤いタワーの下、ばっ、とマントが舞う。
その所作は傲岸かつ高慢なものだった。それでいて、どこか線が細い。
まるで思春期の万能感を凝り固めたのような、現実味の薄い人間性を感じさせる。

「何だ? お前は。名を名乗れ」

だが魔術師たる彼としては、その挑発が特に鼻に障った。
決闘の申し込みならいい。愚か者の不遜だというのならば笑ってやろう。
だが、コイツは――船団の襲撃というこちらの目的を看破したうえで、ディスプレイなどと言う世俗の技術越しにこちらを挑発した。
そのやり方が、彼を苛立たせたのだ。

「我が名はキャスター。
 ――お前の敵にして、聖杯を手にする者だ。括目して相対するがいい」

その言葉に対応するように――ディスプレイの少年は高らかにそう名乗った。

「キャスターだと……!」

キャスター。聖杯戦争の一クラスにして“魔術師”のサーヴァント。
ディスプレイの向こう側の少年は、英霊だというのか。

「ああ、そうだよ、君の考えている通りだ、魔術師くん。
 君はそう――まんまと引きずりだされたのだよ、このキャスターの罠にね」

その言葉に、彼はぐっとその手を握る。
そう、今まさに彼はその可能性に思い至っていた。
方舟の船団を一網打尽にしてやろうとやってきたのだが――しかし、その先ではキャスターの挑発が待っていた。
これはつまり、彼の襲撃を事前に予想して罠を張っていたということではないか。


985 : タダ&キャスター  ◆Ee.E0P6Y2U :2016/02/23(火) 23:41:31 JfJBFy1Y0

「君が掴んだ我が“方舟の船団”の情報。それは半分当たりで、半分間違いだ。
 確かに我々は今夜、そのビルに集結する。だがそれは――お前を撃つためだ。
 今からお前を我がマスターとその同胞が襲う。数の暴力を持ってして、お前は敗けることになるのだよ」

少年は意気揚々とそう語る。その語り口は非常に挑発的で、余裕綽々、といった風な口ぶりが非常に勘に障った。

「――バーサーカー」

それ故に、彼はいら立ちを持ってその名を呼んだ。
途端、一人の狂戦士がその身を結ぶ。幽体として潜んでいたその身が解き放たれ「■■■■■――!」と濁った叫びがビルに響き渡った。

「行け、とっととこの愚か者を始末しろ。
 あの赤いタワー――東京タワーへ向かえ」

魔術師はそう叫びを上げ、狂戦士を夜の街へ解き放つ。
バーサーカーは雄叫びを上げながら命令を遂行――ディスプレイの向こう側のキャスターを殺しにかかった。

「……馬鹿はお前だ、キャスター。そんなアホみたいに目立つものを背景にして、俺が気づかないとでも思ったのか!」

彼はディスプレイに掴みかからんばかりの勢いで、キャスターへと挑発し返す。
少年が送ってきた動画には赤いタワー――この街の象徴たる建築物が映っていた。
ということはその場所に今彼はいるのだ。英霊たるバーサーカーならば、すぐにでも駆け付けることのできる位置だ。

「馬鹿め。これでぶち殺されるのはお前だ! 何が括目して見ろ――だ」

キャスターは一般的に直接的な戦闘を不得手としている。
このキャスターもその例に漏れないことは、こうして動画を送ってきていることからも明らかだ。
故に――バーサーカーを送り込めばそれこそ一瞬でひねりつぶすことができるだろう。
そう確信して、彼はキャスターに対して嘲笑する。
対するキャスターは何も言わなかった。それまでの雄弁が嘘のように、しばしの間沈黙している。

「どうした! 恐ろしくて声も出ないか。だがもう遅い俺のバーサーカーは……!」
「――だからお前は短絡的なんだよ、魔術師くん」

はっ、と彼は顔を上げた。

それは明らかに異常な事態だった。
そう、キャスターの声が聞こえたのだ。

「フフフ……フハハハハッ! どうした幽霊でも見たような顔をして」

――ディスプレイの向こうのキャスターは、未だ沈黙を保っている。

その声が聞こえたのは、彼の背後からだった。
目を見開き、振り返るとそこには“王子様”のようなキャスターがいる。
ディスプレイの向こうと、こちら側の両方に彼が同時に存在している――!

「人形でも使ったのか……!」

魔術師として彼が思い浮かべたのはそれだった。
このキャスターが人形使いに類する者であり、その技を使って自身を擬似的に二つ並べた――のかと考えたが、


986 : タダ&キャスター  ◆Ee.E0P6Y2U :2016/02/23(火) 23:41:55 JfJBFy1Y0

「違うな、間違っているぞ」

――だがキャスターはそれを真っ向から否定した。

「私が吐いた嘘は一つだけだ。それをお前が幾重にも勘違いした、それだけだよ魔術師くん。
 ――私は最初からあの画面の向こうにはいない」

そう宣言され、彼は思わず液晶を振り向いた。
東京タワーの下で、キャスターの姿はなおも動かない。

「馬鹿な。だがお前は確かに俺と会話して――」
「一つ教えてあげよう、魔術師くん。画面を介しての会話と言うのはね、思いのほか面倒な用意がいるんだ。
 コンピュータとか、ネット回線とか、こんなビルに整っている訳もないだろう?
 だから――」

魔術師の現代技術に対する無知を嘲笑い、ニィ、とキャスターは口元を釣り上げる。
その所作から、彼はキャスターの策を知る。

「まさか! お前は俺の思考を呼んで」
「そうだ。私はお前のことを調べる時間があった。お前は今朝ようやく船団のことを知ったのだろうが、しかし我々はその前からずっとお前に目をつけていたのだよ。
 ――次なるターゲットとして。思考パターン、会話の間、何を知って何を知らないか、お前の全てを把握できるようにな」

キャスターの言葉に彼は舌打ちをする。
ディスプレイ越しの会話は全て茶番だ。あれはきっと数日前に録画したものだろう。
それをこの場で流し、あたかもキャスターが東京タワーにいるように錯覚させる。

「――だがそれがどうした。
 お前ごとき軟弱な魔術師、俺の敵ではない」

まんまと嵌められたことを自覚しつつも、しかし彼は声高にそう叫ぶ。
マスターたる彼にはキャスターのステータスが見えている。
筋力:E- 耐久:E 敏捷:E ――と非常にひ弱なステータスしか持っていない。
同じ“魔術師”として、敗けるとは思わない。このキャスター相手ならば直接対決でも負けるとも思えない。

「起動/awake」

故に彼は揚々と魔術を行使する。
そして――闇の中に、ぬっ、と彼のもう一人の従者が立ち上がる。
煌々と不気味に照り光る瞳。陶器のような真っ白なボディ。ぎぎぎ、と歪な音を立てる間接。
魔術師として、彼が得意とする“人形”の魔術であった。
その自信に裏打ちされるように、彼の人形は多機能かつ強力、操る彼の詠唱もまた洗練され無駄がなく、そこに関しては慢心がない。

「……二つ、教えてあげよう。
 一つは、確かに私は君よりも弱いだろうということだ。私の本分は軍師であり、王だ。
 チェスにおけるキング。それが私だよ。対する君はナイトか、あるいはルークか、何にせよ王よりは強い駒だ」

立ち上がった人形を前にしても、キャスターは変わらず傲岸に告げる。

「そして、もう一つ。これは――方舟の船団なる組織は初めから存在しない、ということだ」
「何っ!?」
「ここにいるのは――我がマスターだけだ!」

ばっ、とキャスターがマントを広げた――と同時にその男はやってきた。

「――何時まで待たせる気だ、キャスター」

その男は――えらく古風な格好をしていた。
古風な、というのは魔術師たる彼の感覚だ。真っ白いローブを羽織り、デカい杖を持っているその姿は、現代性とは程遠い魔術師から見ても古風な――あるいは陳腐な外見をした魔術師のように見える。


987 : タダ&キャスター  ◆Ee.E0P6Y2U :2016/02/23(火) 23:42:29 JfJBFy1Y0

「何で僕が待っていなくちゃならない」
「マスターの役割は神官/ビショップだろう? サーヴァントは言うならばクイーンだ。
 鬼札は引き離しておくに限る」
「何でもいいから――」

キャスターと会話を交わしつつも、敵マスターは眼鏡を、くい、と上げた。

――マスター同士の戦いと来たか。

その思惑を把握して、彼は自然とその手に力が籠る。
キャスターはどうやら戦闘能力がないらしい。故にバーサーカーを引き離し、マスター通しの戦いへと持ち来んだ。
彼は目の前の陣営の行いをそう分析した。

――望むところだ。

その思惑に対し、魔術師たる彼は「Start!」と叫びを上げた。
ぎぎぎ、と人形が動き出す。魔術師の決闘。ならば敗ける気はしない。
故に彼は令呪でバーサーカーを呼び戻すような真似もしない。受けてたとう。そんな心持であった。

「我が炎を前にして、決闘とは良い覚悟だ。我が名は――」
「――いくぞぉ!」

――が、格式に則り名乗りを上げようとした彼を、敵マスターは完全に無視した。

ばっ、と敵マスターはリノリウムの床を蹴る。
白いローブがふわりと舞い、同時に積み重なった埃が散った。
その向こうから敵マスターが「おらあああああああああ」と獰猛な雄叫びを上げながら迫ってくる。
その突飛な行いに彼は面を喰らい、一瞬人形の動きが止まる。そこに敵マスターが杖を振るってくる。
人形に対し敵マスターはまず杖を使い殴打。次に殴打。そのまた次にも殴打――殴り殴り殴り殴っている。

――コイツ、魔術を使わないのか。

その殴打に“強化”だとか“エンチャント”だとか、そうした技術の香りは一切なく、彼はただ物理的に杖を振るっていた。
ガンガンガン、と敵マスターは人形を殴り続ける。我に返った魔術師は人形を動かし、敵マスターを追い払わんとする。
こちらは腕部に刻んだルーンにより呪いを込めた一撃。生身で喰らえばひとたまりもないであろう一撃だ。

「もともと! これは! 僕の戦いだったんだよ!」

が、敵マスターはさっとそれを避け、すぐさま反撃に転身した。
殴り殴り殴りまくって、人形の攻撃が来たらすぐに身を逸らし、また殴る。
別に奴が敏捷という訳じゃない。動きは常人の範疇だし、何よりローブが動きにくそうだ。
が、えらく肝が据わっているのだ。人形の一撃一撃を必要最低限の動きだけで躱している。
一撃の危険さを理解していないのか――それとも自分を不死身だと思っているのか、敵マスターは一心不乱に攻めてくる。

「それを! あんのキャスターが! 余計なことしやがって!
 ここはグリムガルじゃないみたいだから! 精々従ってやったが!
 ああクソ! クソ! クソ! クソ! やっぱりお前の! 敵は! 僕! なんだよ!」

敵マスターは攻めている。攻める以外の行動を知らないのか、叫びながら杖を振るってくる。
無論、人形だって攻めている。耐久やら攻撃の威力やらで勝っているのは間違いなく彼の人形の方で、普通に考えたら勝つのも自分の方だ。
が、敵マスターはそんなこと知ったことかと言わんばかりに攻撃だ。
その様子を例のキャスターは涼しげな表情で見ており、彼は本当に戦闘に参加しない心積もりのようだった。


988 : タダ&キャスター  ◆Ee.E0P6Y2U :2016/02/23(火) 23:43:04 JfJBFy1Y0

「おらあああああああ、旋回破斬/トルネード・スラム!」
 
そして――遂に人形が打倒されていた。
敵マスターが、ぶうん、と回るようにして杖を振り回した結果、ぐら、と人形が態勢を崩す。
そこを更に攻められる。強引に作った隙にねじ込むようにして攻撃が叩き込まれる。更に殴打殴打殴打殴打、だ。

結果として――人形は倒れていた。
糸が切れたようにその人形は動かなくなり、後には、はぁ、はぁ、と息を切らす敵マスターだけが立っている。

「そんな――」

馬鹿な、と思わず魔術師たる彼は漏らしそうになった。
魔術師同士の対決で、単なる物理的な攻撃のみで勝利するなど。
そもそもそれでは魔術師の決闘では――

「うおらぁぁぁぁ! 輪転破斬/サマーソルト・ボム!」

――言葉を遮ったのは、今度はこちらに回ってきた敵マスターの攻撃だった。

がん、と頭が殴られる。血が滲み、前歯が飛び、よだれが舞った。
痛みの中にあって、敵マスターのエキセントリックな叫びが耳を打った。

「クソ! あほ! しね! ばーか! ばーか!」

その叫びと共に、彼は令呪を使うまでもなく意識を喪った――









「あああああったく、気に入らないんだよ!」

呼び寄せた魔術師は、キャスターの策により撃破することができた。対するこちらの消耗はないに等しい。
聖杯戦争序盤においては完璧な立ち回りであったが、しかし白いローブのマスター――タダにとっては不満しかない結果だった。
次はこうはいかない。聖杯戦争において記憶を取り戻してから未だ日は浅いが、しかし立ち回り方は分かってきた。

呼び寄せた人形使いのマスターは既に倒れている。
殴打により地に伏せた彼の身体はビルの床に塵のように放置されていた。頭部から伝う赤い血が床を汚す。
何もしなければすぐにその身を散らすだろう。
聖杯戦争もつまりはグリムガルと同じ。とにかく殴れ、だ。

――タダが記憶を喪うのは、一度目のことではなかった。

この聖杯戦争において、マスターの資格を有する者は記憶を喪っている。
それと同じくタダが元いた世界――グリムガルにおいても彼は当初記憶を喪っていた。
そうして訳も分からないまま義勇兵の仕事を押し付けられ、戦士を経て神官という職についた末に、彼はまた別の世界へと連れてこられた。


989 : タダ&キャスター  ◆Ee.E0P6Y2U :2016/02/23(火) 23:43:28 JfJBFy1Y0

「なんで僕がバーサーカーの戦いを避けなくちゃいけないんだ!
 ――今からでも呼びに行く。トーキョータワーとかにまだいるんだろ!?」
「フフフ……落ち着け、これは戦争だ。王には王の、神官には神官の戦いというものがある」

一方で眼帯の少年のキャスターは傲岸に構えている。
非常に好戦的なマスターに対して、彼は狡猾な笑みを浮かべ、

「私にかかればこんな戦争、すぐに終わらせてみせよう。
 瞬く間にお前に勝利を握らせてやる。帰還の際には、我らの勝利を祝う民でこの東京を埋め尽くしてやろう。ありとあらゆるものを使ってな!」

キャスターは声高に叫ぶ。それに対しタダは「は?」と苛立たしげに漏らした。
タダにしてみれば、このキャスターのやり方はとにかく性に合わなかった。
このトーキョーでの初戦だけは従ってみたが、次はやり方を考えることをその身に誓う。

が、そんなタダの想いを無視してキャスターは言葉を重ねる。

「民衆も、国家も、友も、社会も、そして――家族でさえも利用し尽くして……うっ」

その時、不意にキャスターが左眼を抑えた。
そのまま彼は膝をつき「ああああああああああああああ!」と叫びを上げる。

「家族? 家族? うあああああああ、トーキョ―? うぅぅぅ……?
 私は! 俺は! 私はぁ! あああああああああああああああああああ!
 ナ、ナナナ、ナナリぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

異様な叫びを上げながらキャスターは身体をびくびくと震わせる。
何か強烈な頭痛が彼を襲っているようだった。稲妻に撃たれたかのようにキャスターは苦しみだした。

「あん? どうしたんだお前?」

その豹変に、さしものタダも困惑しているようだった。
何をやってるんだコイツは、と冷たいまなざしで己がサーヴァントを見つめている。

「あああああああ、水を! 水をくれ……水をくれ、マスター」

ぶるぶると手を震わせながら彼はマスターへと手を指し延ばす。
「水をくれ」と言いながらも彼はもう一方の手で左眼を抑えている。
傲岸不遜な態度はどこへやら、少年から一転して、弱々しい態度で倒れ込んだ。

「水を……水をくれないか」
「水くらい勝手に飲め。僕はあのバーサーカーを探しに行く。
 まだ消えてるまで間がある筈。今度こそ僕がぶっ飛ばす」
「水を……」

既に勝利したというのにまだまだ戦い足りない殴らせろと杖を振り回すマスター。
突然身体を震わせ「水を……」と連呼する情緒不安定な軍師のキャスター。

――何だ、コイツら。

床に転がっている魔術師――人形使いの彼は、薄れゆく意識の中、頭上で騒いでいる彼らに対してそう思った。
思いながら、死んでいった……


990 : タダ&キャスター  ◆Ee.E0P6Y2U :2016/02/23(火) 23:43:57 JfJBFy1Y0


【クラス】キャスター
【真名】ジュリアス・キングスレイ(またの名を■■)
【出典】コードギアス 亡国のアキト
【性別】男
【属性】混沌・悪
【パラメーター】
筋力:E- 耐久:E 敏捷:E 魔力:B 幸運:A+ 宝具:D
【クラススキル】
・陣地作成 A
彼にとっての陣地とは集団における主導権を指す。
多人数の集団において強引かつ巧みにイニシアティブを握る。

【保有スキル】
・破壊工作 A
戦闘の準備段階で相手の戦力を削ぎ落とす才能。トラップの達人。
Aランクの場合、進軍前の敵軍に六割の損害を与えることが可能。ただし、このスキルが高ければ高いほど、英雄としての霊格が低下する。

・軍略 A
多人数を動員した戦場における戦術的直感能力。
自らの対軍宝具行使や、逆に相手の対軍宝具への対処に有利な補正がつく。

・扇動 A+
数多くの大衆・市民を導く言葉と身振りを習得できるスキル。個人に対して使用した場合はある種の精神攻撃として働く。

・フラッシュバック A
時おり顔を見せる■■の残滓。無理な人格改竄の弊害。
保有者は、あらゆる行動が失敗するリスクを伴うようになる、デメリットスキル。
発生確率はそれほど高くないが、戦闘時に発動した場合のリスクは計り知れない。

・魔眼 -
キャスターは眼帯で左眼を隠しているが、その奥にある魔眼は既に喪われており、使用できない。

【宝具】
『方舟の船団(フィクション・オーガ二ゼーション)』
ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:1-100 最大補足:1000
キャスターが生前“でっち上げた”架空のテロ組織。
情報の捏造と巧妙かつ大胆な扇動工作によって民衆にその存在を信じ込ませた。
特定の事件、出来事を“方舟の船団”なる組織による犯行であるという噂を発生させる。
噂が噂を呼び、結果、あたかもそのような大組織が実在しているかのような影響力を社会に与える。

『我が下へ来たれ七番目の白き騎士(ナイトメア・ランスロット)』
ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:1-10 最大補足:10
生前、キャスターの護衛にして監視役を務めた騎士を呼びつける宝具。
七番目の騎士たる彼はランスロットと呼ばれるマシンを駆って戦場に駆け付ける。
たった一騎であろうとも、無数の敵を軽々と蹴散らしていくその勇猛さには対人宝具でなく対軍宝具がふさわしい。
キャスターが号令を掛ければ彼は剣と共にやってくる。

……筈だが、当の騎士はキャスターのことを常に軽蔑と苛立ちに満ちた視線で見下ろしている。
よって状況次第では呼びかけに応じてくれないかもしれないし、場合によっては騎士の方がキャスターを殺しにかかるかもしれない。


【人物背景】
皇歴2017年、E.U.(ユーロピア共和国連合)と神聖ブリタニア帝国との戦いの最中、本国より突如として送り込まれてきた軍師。
ナイト・オブ・ラウンズの一角である枢木スザクと共にユーロ・ブリタニアに派遣された。
左目は大きな眼帯で覆われている。自信過剰な言動を隠しもしない高慢な性格。
テロを装った犯行声明と高度な情報操作によりE.U.国内を大混乱に陥れ、その隙を突いて攻め込むという大胆な作戦を提案・実行する。

皇帝の名代とされているが、E.U.での戦い以降の消息は杳として掴めず、またかのような人物はブリタニアには存在しなかったという説もあり、その正体は謎に包まれている……

【サーヴァントとしての願い】
???

【基本戦術、方針、運用法】
元よりひ弱な身体であるのに加え、常に情緒不安定かつ突然「水を……!」と呻き始める。
他のサーヴァントとの直接対決を挑めば即敗ける。マスターに挑んでも瞬殺される。
宝具で切り札たる騎士を呼べるが、何度も呼ぶと向こうが猛烈に不機嫌になるのは想像に難くないので安易には使えない。

なので、軍師は軍師らしく集団を動かして戦うべきだろう。
扇動や軍略などのスキルを活かして、とにかく戦況を混乱させ敵を潰し合わせる。
フラッシュバックが起こる等、本当にどうしようもなくなったら宝具を使うしかない。


991 : タダ&キャスター  ◆Ee.E0P6Y2U :2016/02/23(火) 23:45:05 JfJBFy1Y0

【マスター】タダ
【出典】灰と幻想のグリムガル
【性別】男性
【マスターとしての願い】
戦いたいのかもしれない。

【weapon】
・戦鎚
グリムガルにおける杖。タダはこれで殴る。癒すのではなく殴る。

【能力・技能】
・神官
グリムガルにおける義勇兵の職業の一つ。光明神ルミアリスの加護を授かる。
癒し手・癒光・光の奇跡といった傷を癒すものから、状態異常回復の浄化の光、基礎能力を向上させる護法の光といったサポート系のスキルを習得でき、戦士同様、パーティには欠かせない職業。
後衛が主だが、護身として強打などのスキルも習得できる。ただし、ギルドの掟で刃が付いた武器は持てないため、スタッフや錫杖などを用いる。

・戦士
タダ自身は神官だが、元々は戦士であったためこちらのスキルも使用可能な模様。
ただし神官の掟で刃のついたものは持てない。

【人物背景】
異世界“グリムガル”に召喚された人間の一人。
他の義勇兵と同じく召喚前の記憶を喪っており、選択の余地なく戦場に送り込まれている。
トキムネ率いるクラン“トッキーズ”の一員であり、職業は神官。イロモノだらけのパーティの中では眼鏡をかけた一見まともに見える男。

が、元戦士の神官というおかしな経歴が示す通り、彼もまた変人であり、仲間を癒すことが仕事の神官でありながら“自分が最強”というよくわからない信条を持っている
そのため戦闘となれば前衛で元気よく戦鎚を振り回し、ガンガン敵を殴っている。闘う神官。
魔物を見れば迷うことなく滅殺、人間相手にも挑発を欠かさない。ちょっと怖い先輩に対しても変わらず強気。でもトキムネとアンナには従順。
実際、前衛としてはかなりの力量は持っているが、神官の本分であるパーティの回復は基本的にやらない。それでいいのか。

【方針】
サーチ&デストロイ(でも主従共に後衛職)


992 : ◆Ee.E0P6Y2U :2016/02/23(火) 23:45:41 JfJBFy1Y0
投下終了です。


993 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/24(水) 11:53:17 9VIc6IiU0
皆さま投下お疲れ様です。遅れましたが感想を投下します。

アイリス=トンプソン&セイバー
既に東京で殺戮を続ける彼を少しでも知るアイリスは果たしてどうするのでしょう。
そして、アイリスがセイバー・ナイブズにとって人類の見極めの対象であるとは知らない以上
今後が期待と不安のあるもので、続きが気になる主従でした。
投下ありがとうございました。

シャーロック・シェリンフォード&バーサーカー
まさかヴァンガードが介入してくるとは……やはり謎の青髪の少年は何導アイチなのでしょうか?
シャロのサーヴァントが妖怪首おいてけとは、心強いですが。かなり不安要素があります。
どうにか他の主従が巡り会い、彼女たちの手助けして欲しいものですね。
投下ありがとうございました。

野原しんのすけ&アーチャー
まさか最高峰のサーヴァントを引き当てるとは、しんのすけは幸運のような、しかし
結局はしんのすけは幼稚園児な訳ですし、アーチャーを完璧に運用することが難しいでしょう。
ともあれ、主従関係は良好なので何とかやりくりをして聖杯戦争を生き残って欲しいです。
投下ありがとうございました。

熊枕久瑠美&バーサーカー
よくもこんなキチ熊を! これほどの所業をしておきながら愛くるしさを見せつけ良い子ぶる
このバーサーカー。間違いなく悪意の塊と称していいでしょう。
一方の久瑠美はバーサーカーの恐ろしさを知りません。もし彼女が全てを把握した時、どうなるのでしょう。
投下ありがとうございました。

ディアボロ&キャスター
悪魔が悪魔を引き寄せるとは運命にしては皮肉なものを感じてしまいます。
キャスターは独特なキャラクターをしており、ディアボロが今後キャスター(彼ら)とどのようなやり取り
をしていくのか。原作では誰かと関わりを持とうとしなかったディアボロだからこそ楽しみです。
投下ありがとうございました。

浅上藤乃&バーサーカー
マスター藤乃による日常が異常に変貌してく描写が不気味で、それでいて狂気を覚えます。
彼女はバーサーカーの存在を把握しているとはいえ、聖杯戦争の巻き込まれる以上。
うまくバーサーカーとやっていかないといません。そのバーサーカーは本能のまま行動しているのですが……
投下ありがとうございました。

SCP-020-JP&ライダー
翼のある少女を優しく見守ってくれるサーヴァント。なかなか良いコンビなのではないでしょうか。
少なくとも神を探し、戦力としても、あまりに小さな存在に対し、ベストフレンドは全力で
彼女をサポートし、聖杯戦争を生き延びて欲しいものです。
投下ありがとうございました。


994 : ◆3SNKkWKBjc :2016/02/24(水) 11:53:50 9VIc6IiU0
甲斐享&ライダー
警察関係のマスターは他にもおりますが、甲斐ことカイト君の場合は『ダークナイト』としての側面があり
その暗躍を聖杯戦争の渦中で行おうとしているようですが。それよりも殺人鬼など物騒なサーヴァントたち
がいる状況では、どうにかライダーの存在、聖杯戦争の存在を把握しておきたいのですが……
投下ありがとうございました。

アエ&ミュータント
ミュータントのF・Fがマスターの思う気持ち。思い出があれば本能的ではなくなる、かつて自分がそうであった
からこそ、マスターのアエをある意味では救いたいと願っているのは良いものです。
しかしながらアエは……彼女たちの行く先には何が待ち受けているのでしょうか?
投下ありがとうございました。

速水奏&アサシン
キスに纏わる因果によって導かれた主従ですね。奏がちゃんとアサシンを理解しようと積極的な姿勢のおかげもあり
アサシンも彼女と良好になりつつあるのは何よりです。しかしながら、アサシンも格別強い訳ではなく
奏も戦える身ではない為、聖杯戦争で生き抜くには工夫をしなければなりません。
投下ありがとうございました。

バーサク・アーチャー
これは酷い(褒め言葉)アーチャーこと長門にはマスターというか、自分の身に起きている事を把握して欲しいですが
聖杯戦争という状況下では難しい話でしょう。このままでは最悪の結果に至るのが目に見えます。
最終的に彼女は記憶の彼方にある光景と同じ最期を迎えて欲しくはないものです。
投下ありがとうございました。

ディーン・ウィンチェスター&アーチャー
あの殺人狂を阻止しようとする主従は他にもおりますが、ディーンは新たな可能性に不安を覚えており
もしかすると『元始の剣』も東京のどこかに……偽りとはいえ、この東京都はどうなってしまったのでしょう?
アーチャーと共に、聖杯戦争の陰謀を阻止してくれることを期待します。
投下ありがとうございました。

タダ&キャスター
なんなんだこの主従……と敗北したマスターと同じように思ってしまうほど意思疎通が出来ていません。
タダもキャスターも足並みを全く揃えようとしませんし、不安ばかりが増えていくような……
このまま聖杯戦争が本格的になれば熾烈な戦いになるでしょうし、どうにか頑張って欲しいものですね。
投下ありがとうございました。


995 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/24(水) 13:56:59 15mbJaw60
多分>>1000ギリギリになりますが、入り切りそうなので投下します。


996 : 灰原哀&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/24(水) 13:58:05 15mbJaw60





 おっはよ〜おっはよ〜ボンジュール♪


 おっはよ〜おっはよ〜ボンジュール♪


 哀ちゃん♪ 哀ちゃん♪ おっはよ〜哀ちゃん♪ んーっ!


 今日も元気にボンジュ〜ル♪


 早く起きてよボンジュ〜ル♪


 くるくる、くるくる、くるくる回って


 ボンジュール♪ボンジュール♪


 ボンジュール♪ボンジュール♪


 おっはよ〜哀ちゃん♪ ヘイッ!





◆ ◆ ◆ ◆ ◆



【2日目 朝】



「ふぁぁ〜……」

 灰原哀は、一つ大あくびをした後、至極眠気を訴えたそうな顔で、教会の椅子に座っていた。
 彼女自身がカトリックという訳ではなく、自らと共に行動しなければならない女性が、元々教会のシスターだったらしい。
 だから、そのパートナーの頼みと言う事もあって、この朝っぱらから、最寄りの教会を教えてやったわけだ。

 まだ六時なので、夜型の哀からすればもう欠伸が止まらない。学校ももっと後だ。
 あきれ果てたようなジト目で、哀は彼女の背中を見つめていた。

(教会のシスターと呼ぶには、あんまりね……)

 哀にしてみれば、全く、彼女がシスターであるというのは冗談だと思いたい事実だ。
 ものすごく派手で真っ赤な修道服を着ている事はまだ良い。
 しかし、スカートの下に二丁の短機関銃を携帯しているのである。
 短機関銃は、二丁ども十字をかたどった奇妙なデザインしていて、一見すると作り物のようだったが、どうやら実銃なのである。
 伊達に黒の組織の一員をやっていないというわけで、哀もそれをすぐに見抜いた。
 この短機関銃には、「ラファエル」、「ガブリエル」などと、キリスト教の天使の名前が付いているらしく、よくシスターがそんな物騒な物に随分な名前を付ける物だと半ば呆れる。

 その上、この女、相当なドジだ。
 何もないところで転んだかと思えば、カトリックであるというのに、「聖杯」の知識も満足にない(尤も、この聖杯戦争における「聖杯」は、キリスト教における「カリス」とは全く別の物であるようだが)。
 反面で、矢鱈に元気で、今日も変な歌で強制的に起こされた。

『おっはよ〜おっはよ〜ボンジュール♪
 おっはよ〜おっはよ〜ボンジュール♪』

 ああ、今も思い出すあの軽快な歌。
 マラカスの音とこの溌剌とした歌声と、無駄に耳に残るリズムが、今も哀の頭の中で繰り返される。
 本当は男性相手にしか歌わない歌らしいが、特別サービスで『マスター』の哀にも聞かせたらしい。
 ……本当にいい迷惑だ。
 本人は悪意が全くないのも含め、この女――『キャスター』エリカ・フォンティーヌは、ある種、すごく厄介なサーヴァントであると思う。
 毎朝あんな風に起こされたらたまらない。

 英霊を自称しているとはいえ、これではあまりに頼りない。
 哀もこの聖杯戦争なる儀式には半信半疑であったが、しかして、自分が普段と違う風に暮らしている実感はある。
 その非常時に、よりによってこんな変な女性と行動するとは――。


997 : 灰原哀&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/24(水) 13:59:35 15mbJaw60

「――」

 ……ただ。

「神よ……我がマスターに救いを……彼女をあるべき世界に帰らせたもう……」

 一人、この聖杯戦争の幸を祈らんとするサーヴァントの背中を見つめながら、「嫌いではない」と思った。
 彼女自身、英霊の一例にもれず、それなりの願いは持つはずだが、それを放棄して哀の帰還の方針を受け入れている。
 元々、彼女が持つ願いそのものが、「都市の平和」という物であったのも含め、悪い人間ではないに違いない。
 いや、能力面で劣っていても、性格面でこれほど信頼のおけるサーヴァントもなかなかいないだろう。

(悪い人では、無いみたいね)

 哀は、どこか和やかに笑った。
 エリカ・フォンティーヌは、子供のように純粋無垢である。
 哀が「子供の外見をした大人」であるなら、エリカはまさにその反対で、「大人のような子供」と呼ぶにふさわしい。
 子供の外見をした哀に優しく振る舞うあたり、性格はシスターとしては及第点だと言える。
 尤も、哀の実年齢は、全盛期のキャスターよりも少し上なのだが。

「……そして、エリカには特上のプリンを……」
 
 エリカがついでに何か祈ったようだが、それは耳に入れなかった事にしておこう。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆





『東京都江東区―――で警察関係者を含む52名が殺害。容疑者と見られる20代後半の男性は以前逃亡中です。
 男性は身長195cm前後、体には刺青があるとの目撃情報があります。
 この男性は、同じく江東区の――博物館で発生した警備員2名の殺害他、
 複数の殺人事件に関与していると発表されました。現在、特別対策本部を設置し………』





◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 七時ごろ、帰ってから、哀は食パンをほおばりながら、テレビニュースを見ていた。
 哀の保護者として一緒に暮らしている太った初老男性、阿笠博士は、歯を磨きつつ、そのニュースを全く意に介さずに眺めている。
 阿笠博士……といっても、哀の知っている阿笠博士とはまた別だろう。
 彼はどことなく、いつもの阿笠博士の雰囲気というか、においというか、何かが違った。

『ひどい……』

 これが、ニュースを見たエリカの反応だった。
 そう、普通、こんな凄惨なニュースを見れば、まともな大人ならば一言二言、思わずコメントしてしまいそうになるのが人情だ。
 ましてや、この東京都内で起きたニュースであるならなおさら。
 しかし、阿笠博士は大きな関心を寄せる事もなく、まるで興味のない芸能ニュースでも見ているかのように関心を持たずニュースを見ている。

 ……どうやら、この世界では、そうらしい。
 マスターとサーヴァント以外は、みんなこうして半分意識のない人形のように過ごしているのだ。
 結局のところ、ニュースで大量に殺された人間にも、同情するだけ無駄なのかもしれない。
 勿論、あまり良い気分はしないと、思わざるを得ないのが人間だが。

(これでも学校側からの措置は無し。まるで、本当の無法地帯に裸で投げ込まれたみたいな気分ね)

 ただ、この場合、危ういのは、哀の身の方だ。
 ただの殺人犯とは明らかに気色の異なるこの大量虐殺犯は、どう考えても、意識のある人間の仕業にしか見えない。
 魔術師、もしくは、サーヴァント。
 哀やエリカの身を狙い来る可能性も決して低くはない。
 いや、こうして殺戮を始めている以上、哀の身は危険に晒されていると言って良い。

 こんな殺人者がうろついている町中で、小学生が呑気に登校しなければならないわけか。
 ……まあ、今更の話といえばそれまでだが。


998 : 灰原哀&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/24(水) 14:00:07 15mbJaw60

(工藤くん、あなたならどうするかしら? こういう時。
 ……この世界では、あなたも思考能力が半減するかもしれないけど)

 そういえば、あの推理オタクも、この世界では大事件に無反応なのだろうか。
 そう思いながら、哀は自嘲気味に笑う。
 この世界にも、おそらく、探偵――江戸川コナンはいるのだろう。

 ただ、高い確率でNPCだろうし、そうなると、普段の彼の推理力が発揮できるか疑わしいところになる。
 もし、彼がマスターであるのなら、哀も信頼のおける彼と共に脱出を目指したいが、今の状況では判断が難しい。

 だとすれば、現状、頼れるのは、ただ一人か――。

『キャスター。通学中の私の護衛は任せたわよ』

『はーい、エリカ了解ですっ!』

 この、ちょっと気の抜けたサーヴァントだけだ。
 灰原哀としては、エリカに賭けるのはギャンブルに近いが、彼女の実力に賭けるしかない。


 ――神よ……我がマスターに救いを……彼女をあるべき世界に帰らせたもう……


 哀は、彼女の祈りを思い出しながら、ふっと、強がるように笑った。





----

【CLASS】

キャスター

【真名】

エリカ・フォンティーヌ@サクラ大戦3〜巴里は燃えているか〜

【パラメーター】

筋力E 耐久E+ 敏捷D 魔力A+ 幸運A 宝具EX

【属性】

秩序・善

【クラススキル】

陣地作成:E
 魔術師として自らに有利な陣地な陣地「工房」を作成出来るといえば出来る。
 ただし、逆に目立ったり、あまり意味がない効果だったり、爆発して全部無意味になったりしてしまう。
 要するにエリカに工房を作らせるのは、マスターにとっても逆効果。

道具作成:E
 魔力を帯びた器具を作成する為のスキル。
 作成する事は出来るが、軒並み出来が悪い(ただし、宝具の再現を除く)。

【保有スキル】

霊力:A+
 キャスターが魔力の代わりに持つ力(実質的に魔力と同様の性質を持つが名称だけ異なる)。
 このスキルによって宝具『霊子甲冑』を操る事が出来るようになるほか、感情の高ぶりなどで筋力・耐久・敏捷のパラメーターを一時的に上昇させる事も出来る。

霊力放出:A
 武器・自身の肉体に霊力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。いわば霊力によるジェット噴射。
 絶大な能力向上を得られる反面、魔力消費は通常の比ではないため、非常に燃費が悪くなる。
 キャスターは絶体絶命の状況でのみ、無自覚に発現し、その間だけ口調が穏やかになる。

啓示:C
 "天からの声"を聞き、最適な行動をとる。
 『直感』は戦闘における第六感だが、啓示は目標の達成に関する事象全て(例えば旅の途中で最適の道を選ぶ)に適応する。
 だが根拠がない(と本人には思える)ため、他者にうまく説明できない。

洗礼詠唱:B
 教会流に形式を変化させた魔術。
 霊体に対し絶大な効果を及ばす。


999 : 灰原哀&キャスター ◆CKro7V0jEc :2016/02/24(水) 14:00:34 15mbJaw60

【宝具】

『霊子甲冑』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:1〜10人

 高い霊力を持つ者だけが操る事が出来る鎧のようなメカ。
 一見すると搭乗型巨大ロボットのようでもあるが、その性質上、騎乗スキルの有無に関わらず使用可能であり、キャスターもこれを手足のように自在に操る。
 生前のキャスターが光武F、及び光武F2の二機を操った伝説に基づき、この二機のいずれかを選択して現界させて戦う。
 この『霊子甲冑』を纏えば、筋力・耐久のステータスがBランクやB+ランクまで上昇し、魔族・魔物・魔獣などの怪物や巨大な機械などとも互角の戦闘を可能にする。
 しかし、一方で敏捷のステータスがEランクまで下降する。まさに甲冑の如き宝具である。
 キャスターの特性に合わせて、光武Fでは十字架を模した機関砲「ダブル弾倉式マシーネンカノン」、光武F2ではガトリングアーム「ザカリエル」を装備している。

『聖なる光(サクレ・デ・リュミエール)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:1〜6人

 キャスターの強い信仰と霊力が起こす洗礼の光。
 レンジ内のサーヴァントと魔術師を対象に、最大5名、ダメージ・体力を回復する効果を持つ(人数に関わらず消費魔力は同じ)。
 回復対象はすべて使用者の任意で選ぶ事が出来、レンジ内の敵の回復をキャンセルする事も出来るなど自由度は高い。
 また、その5名に加えてキャスター自身も回復可能である為、自己再生の為に用いるのも良いだろう。
 ただし、一度目の使用から再使用までは一定時間を置く必要が生じるので、一度の戦闘で何度も連続して使用する事は不可能。
 その為、使いどころを考えて上手く活用しなければならない。
 尚、本来ならば、『天の恩恵(グラース・オ・スィエール)』という技で初めて自己回復が出来るようになるのだが、全盛期のキャスターはあまりその二つ使い分ける必要がない為、この宝具名でも自己回復する事が出来る。

【weapon】

『ラファエル』
『ガブリエル』
 キャスターが修道服のスカートの中に隠し持っている二丁のマシンガン。
 これを携帯している為、生前はたびたび、凶器準備罪で現行犯逮捕された。

『マラカス』
『タンバリン』
 ただの楽器。

【人物背景】

 巴里華撃団花組の隊員。
 モンマルトルの教会でシスター見習いとして働き、夜は巴里華撃団本部の表の顔である劇場「テアトル・シャノワール」で踊り子を勤める。
 超ドジで、頭もあまり良くない天然ボケ。
 看板によく頭をぶつける、草むしりのはずが木まで抜いてしまうなど、いつも周囲を困惑させてしまう。
 そのため、彼女が助けようとした人は逆にひどい目に遭うという事が珍しくない。
 性格は非常に明るく、元気で心清らかで信仰心もあつく、人々に奉仕することを喜びとするなど、シスターの規範のようでもあるが、反面で自分が他人を傷つけてしまう事に強いコンプレックスも抱いている。
 趣味は聖書の朗読と神への祈り、人助け。そしてマシンガン射撃。好きな食べ物はプリン。

【サーヴァントとしての願い】

 都市の恒久的な平和。





【マスター】

灰原哀@名探偵コナン

【マスターとしての願い】

 この状況からの脱出。

【Wepon】

 なし。

【能力・技能】

 元科学者で知識に長けるが、推理は苦手らしい(ただしあくまでコナンくんと比較した場合)。
 とにかくかなりの頭脳派なので、その辺の立ち回りは上手。子供のフリもコナンより上手。
 ちなみに地震と静電気が苦手。

【人物背景】

 姉を喪った妹。
 実年齢は18歳だが、身体は小学1年生。帝丹小学校1年B組在籍。
 元・黒の組織の科学者だが、裏切った後、自殺しようと毒薬「APTX4869」を飲んだ事で子供の姿になる。

【方針】

 聖杯戦争について詳しく知っておく。
 特に、他のマスターと上手に接触しておきたい。


1000 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/24(水) 14:00:54 15mbJaw60
投下終了です。


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