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聖杯戦争-(マイナス)1/「はじまり」の短編集

1 : ◆J6dGJkDICc :2016/01/03(日) 22:23:23 8u7yUs860



────英霊の座には、多くの英霊が君臨している。



────そして、SSの座には、多くのSSが眠っている。





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2 : ◆J6dGJkDICc :2016/01/03(日) 22:23:42 8u7yUs860
【ルール】

・当企画は、二次聖杯戦争の候補作品を投下したい人が、とにかく投下をし続ける企画です。
 この企画で投下された作品は、下記のルールに則って、掲示板内で「フリー利用可」の作品となります。
 その話をする前にまず、コンセプトから。

たとえば……こんなコンペ案、ありませんか?

 過去の聖杯企画で出し忘れて今後流用できそうにない案
 マイナーすぎて出せない案
 奇抜すぎて出していいのかわからない案
 マスターやサーヴァントが被ってハードルが挙がった案
 次の聖杯企画が待てないので早く投下したくてウズウズしている案、
 候補作が200KB超過の超大作になってしまって投下できなくなってしまった案
 自案を投下した後でもっと良い主従を考え付いちゃって投下しづらくなってしまった案
 作品の中で主従が死んじゃう等の形で完結してしまうトンデモ案
 ブッ飛び過ぎたりふざけすぎたりして二次聖杯には投下しづらい案
 一過性の時事ネタ

……などなど。

 こんな日の目を見ない案や眠ったままの作品が世の中にはいくつも存在します。
 それを形にして投下し、これまで眠っていた作品たちを掘り起こしてみるのがこのスレです。

 とにかく、おおよそなんでもアリで、とにかく連続性のない登場話を投下してください。
(一応、俺ロワの形式を取らなければならないので、当企画はリレー小説でもなんでもない「聖杯登場話短編集」という扱いです)
 聖杯コンペの練習の為、文章練習の為、ひまつぶしの為に利用しても構いません。

・どんなに短くても構わないので、投下する作品はステータスシート以外にも本文を入れてSSの体裁を保ってください。
 内容は詩やフレーバーテキストレベルでも全然かまいません。ルールらしいルールは殆ど無いので、マスター不在でも可とします。
 ただし、二次聖杯企画なのでサーヴァント不在は流石にダメです。聖杯の候補作みたいなのをお願いします。
 オープニングやコンセプトが存在しない為、「こんな舞台を想定して書いてみました」もアリです。そういう場合、想定している舞台設定も追記するとわかりやすいですね。
 既にコンペ期間が終わった聖杯を舞台としていても多分大丈夫です。
 パロロワや二次創作からのキャラクターの流用は扱いが微妙ですが、そこの住民ならば、基本問題ないかと……。

・原則自由ですが、個人中傷の為のサーヴァントとかほんとやめてください。
 直近の犯罪者みたいに不謹慎な物とか、どっかの企業や団体に喧嘩売るSSとかそういうヤバそうなやつは絶対やめてください。
 掲示板のルールとかネチケットとかにちゃんと則って投下しましょう。


3 : ◆J6dGJkDICc :2016/01/03(日) 22:23:59 8u7yUs860
【ここに投下される作品の扱い(フリー利用について)】

・このスレに投下を行う方は、必ず以下のルールを読んで了承した上で投下してください。

・当企画にこのスレに投下された作品は、「俺ロワ・トキワ荘」内ではフリー素材のように他の聖杯企画に流用する事が出来るものと考えてください。

・「ステータスシート」と「キャラクター説明」は、今後の二次聖杯企画の作品において、その一部を自企画用に書き換えて再利用しても良い物とします。
 ただ、フリーとは言っていますが、流用される事が作者にとって嬉しい場合もあるので、このスレで一言あるのも良いかもしれません。

・更に、本文を含めた「作品」そのものを今後に聖杯戦争に利用する行為も、OKとするのが今企画です。
 ただし、その場合、以下の条件を満たした上で行ってください。

①この企画の作品を自企画で流用する場合には、必ずこのスレで一言挨拶をする事
(ルールで流用可能としているので、作者の返答を待つ必要はありません)

②別企画においても、流用した作品は、このスレでその作品を投下した作者の物である事を、しっかりと主張しておく事
(「別スレでも、元の作者のトリップの代理投下という扱いにして、wikiとかにも元の作者のトリップで収録してね」という事です)

③無断で本文を書き換えない事
 本文にミスがある場合や舞台設定に齟齬が出る場合は書き手氏と連絡し相談した上でお願いします
 返答がなかったら修正は諦めてください
(聖杯コンペに投下された作品と同様の扱いを心がけましょう)

 現在はコンペ形式の聖杯企画が主流ですが、たとえば「>>1が全て名簿を決めて始める」という形式などを行う場合、他の作品の流用が出来る環境があると便利かなという事でこうした特殊なルールを立案しました。
 他にも、既存の作品を新しい聖杯企画に出したいなどの場合に自由に利用してみてください。

・また、過去に別の聖杯企画で投下した作品をフリー化したい場合は、わざわざここで投下するのも面倒だと思うので、同じトリップで「この聖杯スレで投下したこの作品をフリー化します」みたいな宣言で良いと思います。
 このスレには、未だ投下された事のない新しい作品や、これまで投下した作品の修正版・完全版を投下していってください。

・こうして他の企画に流用される事は少ないかもしれませんが、もし流用された作品があったらお祝いしてあげてください。


【感想とか言った方が良い?】

・感想を言われると嬉しい書き手もいるので、知ってる作品の鯖や鱒があれば、一行でも何かしら言ってください。
 めんどくさかったり知らなかったら言わなくても良いです。


【オープニングは?オープニングがない企画は建てちゃ駄目だよね?】

・オープニングは、>>1にあるやつです。
 設定上は、日の目をみない物語の溜まり場という事にします。
 Fateの「英霊の座」の、SSバージョンだと思ってください。
 リレー小説でも俺ロワでもなく、ただ不連続に聖杯の短編SSが投下されていくような、そんなスレだという事で。
 こういうスレなので、「不連続」といいつつ、何か他の投下作品と繋がってても全然良いです。


【やり場のない作品を投下スレ?】

・のようなものです。
 ただし、聖杯コンペの場合、「次があるかもしれないから取っておく」などの事を言ってあの手のスレに投下しづらいですし、聖杯オンリーでトキワに建てました。
 あと、上の【ここに投下される作品の扱い】などでそのスレとの差別化を計りました。


4 : ◆J6dGJkDICc :2016/01/03(日) 22:24:45 8u7yUs860
以上でこのスレのルールの投下を終了します。


5 : ◆BATn1hMhn2 :2016/01/04(月) 00:28:39 fKQga/Sg0
スレ立て乙です。
登場候補作は書き手初心者にとってはもっとも書きやすいSSの一つだと思うので、新規参入のハードルを下げるという意味では面白い試みだと思います。
ひとまず賑やかしということで、過去のコンペで落選した候補作のフリー化宣言をば。

・二次二次聖杯候補作
【首藤涼&ブギーポップ(アサシン)】
ttp://www63.atwiki.jp/2jiseihaisennsou2nd/pages/41.html

【浅井ケイ&ツナシ・タクト(セイバー)】
ttp://www63.atwiki.jp/2jiseihaisennsou2nd/pages/216.html

・帝都聖杯候補作
【海野藻屑&プロトゼロ(ビメイダー)】
ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/152.html

以上3作をトキワ荘、総合板の聖杯戦争関連企画において自由に流用することを許可します。
シリアスだろうがギャグだろうが一発ネタだろうが好きに使っちゃってください。
ただし過度に不謹慎な企画、悪意のある企画の場合は利用を取り下げさせてもらうことがあるかもしれません。

企画の舞台設定に合わせた修正ですが、このスレで連絡を頂ければ出来る限り対応したいと考えています。
1〜2週間ほど時間を頂ければほぼ全て書き直しというような場合を除けば修正出来ると思います。


……とまぁ、フリー化宣言ってだいたいこんな感じでいいんですかね……?
色々と難しい問題も出てくると思いますが、みんなで楽しく、聖杯企画の更なる発展に繋げられるスレに出来るといいですね。


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6 : ◆CKro7V0jEc :2016/01/04(月) 17:04:22 FZiImyVA0
とりあえず、中途半端に出来上がっていた作品を完成させました。
フリー化したい作品もありますが、それはそれとして、以前投下を逃した作品を投下させていただきます。


7 : メゥ・メゥ&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/01/04(月) 17:05:07 FZiImyVA0





バイストン・ウェルの物語を、覚えている者は幸せである。

私達はその記憶を記されて、この地上に生まれてきたにも関わらず、思い出すことのできない性を持たされたから。

それ故に、ミ・フェラリオの伝える次の物語を伝えよう……。









 ……電車の走る音が、彼の頭の上を過ぎ去った。
 真上で二つの電車がすれ違っているのを感じた。──多くの人の意思が頭上を通り過ぎ去っていく。

 電気街から少し外れ、一見のどかにも見える野原が近い場所だった。
 ここは、洞穴のように広い、トンネルの下だ。トンネルの上は、そのまま線路が作られ、通っているらしい。
 光は太い壁のせいでほとんど通わず、左右の端にだけ巨大な真昼の光が差していた。
 まるで前衛アートのような解読不能のラクガキが、トンネルの内壁に大きく描かれているのが、その光のお陰で目に入った。
 どこかジメジメとした場所が、彼が今、英霊として顕現した地であった。

「聖杯戦争、か……」

 ──ショウ・ザマは、「ライダー」のサーヴァントとしてこの聖杯戦争に顕現した。
 かつて、平和と己の正義の為に戦い、バーン・バニングスの怨念を絶ち、シーラ・ラパーナによって浄化された地上人……それが、この男ショウ・ザマである。
 元々は、一介の地上人でしかない彼が「伝説」へと変わったのは、地上にただ一人残ったミ・フェラリオが地上の人々に伝えていった「バイストン・ウェル」の物語の恩恵であった。
 伝えられた伝説は時に脚色され、人の意思は彼の持つ「オーラ力」と呼応し合う──。

 そして──その果てが英霊の座、なのであった。
 人々に伝承された存在となったショウは、英霊としての資格を得てしまったのである。
 バイストン・ウェルに導かれ、転生まで果たしたはずのショウであったが、その洗い流されたはずの魂にさえ安息はなかった。
 こうして魂を英霊の座に送りだされ、聖杯戦争に呼ばれてしまったショウのもとにあるのは、新たな戦争である。

 平和は、この時もまた打ち壊されようとしている。だから、また、剣を取らねばならない。
 聖杯戦争という災厄が人の手によってこうして地上に戦火を移そうとしている……。

 ショウは己が英霊として置かれた状況に対して、憤りを拭えなかった。

「俺の生きていた頃と、何が違うっていうんだ……。
 ……マーベルやニーが、命をかけてやってきた事は!」

 大事だったはずの仲間たち──マーベルやニーも。
 怨念に取り憑かれながら自らを襲ってきた者たち──トッドやバーンも。
 戦争の為、あらゆる者が散っていくあのバイストン・ウェルの戦争を記憶の片隅に残しているからこそ、ショウは激しい怒りを胸に抱いていたのであった。

 しかし、戦争はおそらく永年に続く。
 もはやそれは人類が消し滅ぶまで変わらない世界の仕組みであり、人間の精神構造から生まれる災厄だった。
 問題は、異界の戦争が地上へとその火の粉を散らそうとしているという事である。
 この聖杯戦争も、そういう意味では、かつての戦争と似通っていた。
 ──故に、彼はこの聖杯戦争を、耐えがたい程に嫌悪した。

「この聖杯戦争が、地上の人々にとって、何になるというんだ……!」

 ……と、彼が怒りに声を荒げ、トンネルに反響させたそんな時である。


8 : メゥ・メゥ&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/01/04(月) 17:05:35 FZiImyVA0

 一人熱を上げるショウの傍らで、桃色の髪の小さな少女が首を傾げながらショウの顔を見上げている──それが彼の傍らで目に入った。
 小学生くらい、だろうか。……全てピンクで揃えた幼い服装からしても、それらしい感じがする。
 頭の上で兎の耳を立てているかのようなヘッドフォンも目立ったが、小学生らしいファンシーなアクセサリーの一つだろう。

「あのっ……お兄さんは、誰めう?」

 見た所、ショウの周囲には彼女しかいない。──彼女からは殆ど邪心を感じなかった。
 通りすがる人間はいても、こうしてずっとショウを見つめているのは彼女だけだ。
 ショウは、彼女の問いを無視して問う。

「──ん? 君が俺のマスターなのか?」

「ますたー?」

「……マスター、名前は?」

 ショウは、彼女が自分を呼び出したマスターであろう事だけは即座に理解し、ひとまず彼女の名前を訊いた。
 対する少女は、ショウが何者なのやらさっぱりわかっていないようで──しかし、これから自分の運命と密接に関わる人間であるのをどこかで予期しながら──彼と不思議そうに言葉を交わしていた。
 彼女も、自分が置かれている不可解な状況については、少なからず理解しているのかもしれない。

「えっと……めう……芽兎めう、めう!」

 ──そして、やはり、この二人のオーラ力がどこか調和し合っていたのだろうか。
 質問をぶつけるばかりで、あまり会話が成立していない気もするが、言わんとしている事を理解しながら話は進む。
 芽兎めうと名乗った少女は至極素直にショウと会話を弾ませる。

「メゥ・メゥ……?」

「そうめう!」

「……そうか。俺は、ショウ・ザマ。でも、ショウっていう名前は秘密にしてくれ」

「じゃあ、何て呼べばいいめう?」

「『ライダー』……。それが俺の、この聖杯戦争で与えられた名前なんだ」

「……『ライダー』めうか。かっこいいめう!」

 若干の齟齬が生じていたものの、何とかそれぞれは互いの名前を知り合うまでこぎつけるのであった。
 ほとんど無邪気に会話を交わし合う二人は、傍から見ればそれなりに微笑ましくもあっただろう。

 ……だが、やはりここは聖杯戦争。
 この場にそれは似つかわしくない空気であった。
 ショウも、闘志がない人間というわけではない。むしろ人並以上の正義感があり、大人しい体質でもないくらいだ。

(メゥ・メゥか……この少女からは、全く邪心を感じない。良いマスターだが、もしかすると、聖杯戦争の意思もないのか?)

 ショウも、この少女にはこの瞬間まで邪心を全く感じていない。──良い事だが、それが却って不安でもあった。
 邪心がないならば、何故メゥ・メゥはこうして聖杯戦争に参戦しているのだろう、と。
 ……ただ、当人の聖杯戦争を引き起こす意思がないとしても、そこに巻き込まれる事は少なくない。
 彼女もまた、もしかするとそうした性質の地上人なのかもしれない。

 ……そして、サーヴァントであるショウにも、ここが正しい地上でない事は、少しの時間の経過と共に薄々わかりつつあった。
 メゥ・メゥのような生身の地上人と、頭上を通りすぎる「そうでない者」との差に気づきつつあった──そして、ここに溢れているオーラが、地上にあるはずのオーラでない事も。
 だとすると、メゥ・メゥは、地上からオーラロード的な何かを通ってこの聖杯戦争に呼ばれたマスターなのではないか、と。


9 : メゥ・メゥ&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/01/04(月) 17:05:59 FZiImyVA0

「なあ、メゥ・メゥは、もしかして、地上に帰りたいのか?」

「ちじょう? うーん……やっぱり、めうはおうち帰りたいめう」

「そうか、弱ったな……。帰り方は教えられてないぞ」

 ショウは頭を掻く。
 どうやら、本当にメゥ・メゥは巻き込まれてここに来てしまった者らしい。
 しかし、この聖杯戦争の巻き起こる地で如何なる事をすれば脱出できるのかはショウ自身にもわからない。
 もしかすれば、もう一度、オーラロード的な何かを拓く必要があるのだろうか……。

「メゥ・メゥがそうであるように、地上に帰ろうとする者がいればいいんだが──」

 ショウは少しだけ、そう考えた。
 このメゥ・メゥのように、地上に帰りたいと願う者も多くいるだろう。
 それは、ショウがかつてバイストン・ウェルで出会った地上人──マーベルたちのように。
 そういう人間がいれば、目的が同じである以上、味方につける事も出来る。
 実際、ショウはそうしてかつて、バイストン・ウェルから地上へと還る事が出来たのだ。

「……まあ、いいか。これも縁だ。それまでは、俺が面倒見てやるよ!」

 ともかく、今から考えても仕方ない。
 メゥ・メゥのサーヴァントであるショウは、メゥ・メゥに向けてそう溌剌と告げた。
 メゥ・メゥもあまりしっかり理解はしていないようだが、とにかうショウが悪い人でないというのは直感的に察したらしい。
 聖杯戦争のマスターとなった彼女の微量なオーラ力が、ショウのオーラ力と反応し合ったのかもしれない。

「めんどう? ……ならめう、とりあえずちくパが食べたいめう!」

「ちくパ? なんだ、それは?」

「ちくわパフェ」

 ショウは少し考えた。
 ちくわも知っているし、パフェもよく知っている。──だが、想像するだけであまりにも食い合わせが悪そうである。
 第一、しょっぱいのか甘いのか、さっぱりよくわからない。
 ショウは、ほんの少し経ってから、メゥ・メゥに訊いた。

「メゥ・メゥはいつもちくわパフェが好きなのか?」

「いつも食べてるめう!」

「──」

 ショウは、それから、目線を下げ、まじまじとメゥ・メゥの瞳を見る。
 瞳は、サファイアの宝石を埋め込んだように青く透き通っており、微かな潤みと共にきらきらと光っている。
 しかし、ショウはそんな美しさを褒めるのではなく、その色そのものを見定めていたのである。
 何故ショウが自分の瞳をじっと見ているのかわからず、無邪気な笑顔で首をかしげていた。

「目の色は、青か……。兎みたいだけど、ちゃんと人参は控えてるみたいだな」

「にんじん?」

「メゥ・メゥ、とにかくこれからよろしく」

「ん? まあいいめう。よろしくめう、ライダー!」


10 : メゥ・メゥ&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/01/04(月) 17:06:15 FZiImyVA0




【CLASS】

ライダー


【真名】

ショウ・ザマ@聖戦士ダンバイン


【パラメーター】
筋力E+ 耐久E 敏捷E+ 魔力A 幸運B 宝具A+++


【属性】

秩序・善


【クラススキル】

対魔力:C
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 大魔術・儀礼呪法など大がかりな魔術は防げない。

騎乗:B
 騎乗の才能。幻獣・神獣ランク、恐獣を除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。
 彼の場合、生前はモトクロスに凝っていた為、乗り物の中ではとりわけバイクの操縦に長ける。
 また、聖戦士として「オーラバトラー」と呼ばれる機体を、オーラ力を駆使して自在に操る事も可能。
 更に、バイストン・ウェルに住まう獣たちは、凶暴な恐獣以外は乗りこなしてしまう。


【保有スキル】

オーラ力:A
 彼が魔力に代わって持っている生体エネルギー。
 その際の感情によってランクは上下するが、ショウは常時からAランクレベルのオーラ力を持っている。
 オーラバトラーをはじめとするオーラマシンを操るには、このスキルを保有する必要がある。
 地上人たちは全てこのオーラ力を持っているが、ショウはその中でも特別高いオーラ力の持ち主である。
 オーラ力がこのランクに達しているショウは「聖戦士」とも呼ばれ、オーラバトラーを自在に扱う。
 また、オーラ力を通して人の邪心や怨念を感じる事も出来る。
 更に高いランクになれば魔法のように扱う事も出来るが、人間種でそこまで達する事は滅多な事ではありえない。

言語理解:C
 バイストン・ウェルを訪れた地上人の加護として、地上における全ての言語を理解する事が出来る。
 ただし、言葉に込められた相手の意図までは必ずしも汲み取る事は出来ず、感情レベルまで理解する事は出来ない。
 あくまでも、その言語で記された言葉通りにしか理解できない為、言葉が持つニュアンスや機微はライダー自身の解釈に左右される。

ハイパー化:-
 高いオーラ力を持つ者だけが合わせ持つスキル。宝具(オーラバトラー系)使用中に発揮されるスキル。
 人間の負の感情(憎悪、嫉妬、殺意など)が強まった時にオーラ力が高まり、搭乗するオーラマシンを巨大化する事が出来る。
 しかし、その代償に力が暴走し、搭乗するオーラマシンが負荷に耐えきれず自爆してしまう事もある。
 ショウもかつては、このスキルによって暴走しかねない状態になった事もあるが、彼は後にその怨念を否定している為、スキルは眠っている。
 ただし、オーラ力を持つ者は、全て逃れられないこのスキルの素養を持っており、一度克服したショウも決して例外ではない。
 仮にもし、ハイパー化のスキルが発動してしまった場合、マスターの魔力は相当数削られてしまう事になるだろう。

オーラバリア:-
 高いオーラ力を持つ者だけが合わせ持つスキル。宝具(オーラバトラー系)使用中に発揮されるスキル。
 核攻撃にも耐えうるほど強固なバリアを張る事ができる。
 弱点として「人の意思」により貫通できてしまう事が挙げられる。
 つまり、射撃兵器は無力化できるが、パイロットが搭乗する機体そのものの攻撃(格闘攻撃・白兵戦・特攻など)は防げない。

直感:E
 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。
 また、視覚・聴覚への妨害を半減させる効果を持つ。
 宝具を使った戦闘時にBランクまで上昇する。

無辜の怪物:-
 生前の行いによって、過去や在り方を捻じ曲げられた英霊に付与するスキル。
 彼の場合は、生前、「カシオペア座第28惑星系の人間」と地上人に名乗った故に、一時地上人には彼の正体について、「宇宙人」という誤解も広まっていた。
 とはいえ、その後の活躍やミ・フェラリオが伝えた物語によって、それらの誤解は少しずつ氷解し、今の彼はほぼ生前のままの姿で現界できる。


11 : メゥ・メゥ&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/01/04(月) 17:06:39 FZiImyVA0

【宝具】


『ルフト家の守護者(ダンバイン)』
ランク:A+ 種別:対軍・対城宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人

 ショウ・ザマが最初に搭乗したオーラバトラー。
 全高 6.9メット(約6.9m)。重量 4.4ルフトン(約4.4t)。
 ショウが操るのは青いダンバインであるが、他にも黒と緑が存在したと言われる。生前の戦いでは、ビルバインに乗り換えた為、この機体をマーベル・フローズンに譲っている。
 高い性能を誇るが、操る為の必要オーラ力も高く、パイロットのオーラ力によって性能が変わり、その格差が大きすぎるというクセの強い機体であり、それ故に三機しか製造されていない。
 宝具として顕現されている全盛期の『ルフト家の守護者(ダンバイン)』は、当初の状態と異なり、背にはオーラコンバーターが取り付けられ、大気中のオーラ力を吸収してエネルギーに還元している。
 オーラ・ソードの他、左腕にオーラ・ショットの外装、両腕にショット・クローが内蔵されており、それらを駆使して戦う。
 後続の機体よりも魔力の負担が小さく、他の機体に比べれば比較的扱いやすい。
 ちなみに、二つの腕を振り上げて呼ぶ必要はない。


『怨念を殺す再構者(ビルバイン)』
ランク:A+++ 種別:対軍・対城宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

 ショウ・ザマが最終決戦までに搭乗したオーラバトラー。
 全高 8.8メット(約8.8m)。重量 8.6ルフトン(約8.6t)。
 オーラバトラーの中で唯一の可変機であり、猛禽類のような形態と、西洋騎士のような人型の形態とに変形できる。
 多くの戦いにおいては、赤と白の意匠であったが、最終決戦のみ、夜間迷彩仕様になっており、宝具としてはデザインを使い分ける事が出来る(性能に差異はない)。
 オーラ・ソード1本、背部に大型のレール式オーラ・キャノン2門、左右の前腕部に連装のワイヤー付ショット・クローを各1基ずつ備える。
 また、携行火器として連装オーラ・ショットとオーラ力のエネルギー刃を形成する銃剣を模した新兵器オーラ・ソード・ライフルを装備している。


『白き秘宝(サーバイン)』
ランク:- 種別:対軍・対城宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

 ショウ・ザマの転生したシオン・ザバの愛機だったオーラバトラー。
 ショウの伝説としては存在しない為、封印された宝具となっている。
 転生後の記憶が再臨した場合にその封印が解ける事になるが、現状ではショウはショウである。


『地上人たちに物語を伝えた異界の精霊(ミ・フェラリオ)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

 ショウの死後、地上で、死者の魂が行きつく場所「バイストン・ウェル」の物語を伝えた小さな妖精。
 バイストン・ウェルで生まれ変わったはずのショウ・ザマが英霊として顕現されたのは、地上にただ一人取り残された小さな妖精の伝えた物語が具現化したからという説もある。

 その妖精の名は、チャム・ファウ。
 ショウの生前は、相棒として共に戦い、戦いの合間にも彼にとって妹のように扱われたお茶目なミ・フェラリオである。
 ライダーとして顕現されたショウも、彼女を宝具として常時から呼び出す事が出来る(ただしチャム・ファウ自身が「英霊」として何らかのクラスで呼び出されている場合を除く)。
 ライダーの消滅と同時に消えてしまうが、チャムと契約を交わしてマスターが延命する事も不可能ではない(とはいえ、チャムは宝具も持たず、基本的にパラメーター・スキルも魔力と対魔力以外オールE〜E-レベルと考えて良い)。
 彼女がバイストン・ウェルの物語を伝えるほどライダーは英霊として強くなり、バイストン・ウェルという世界が人々の記憶の中から呼び覚まされていく。

 「バイストン・ウェルの物語を、覚えている者は幸せである。
  私達はその記憶を記されて、この地上に生まれてきたにも関わらず、思い出すことのできない性を持たされたから。
  それ故に、ミ・フェラリオの語る次の物語を伝えよう。」
 

【weapon】

『無銘・剣』
 バイストン・ウェルの騎士が持つソォド。

『無銘・戦闘服』
 バイストン・ウェルの騎士が纏う戦闘服。
 ショウの着ているのは緑色。ヘルメットはつけたりつけなかったりする。


12 : メゥ・メゥ&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/01/04(月) 17:07:02 FZiImyVA0


【人物背景】

 東京都武蔵野市東吉祥寺在住の日本人で年齢は18歳。
 空手の心得があり、ウサギの目が赤い理由を「ニンジン食べてるから」だと思いこんでいる人。
 両親との関係が悪く、本人はモトクロスに没頭していた。

 そんな彼はある日、モトクロスサーキットからの帰還中に、突如として開いた「オーラ・ロード」に導かれて、海と陸の間にある異世界バイストン・ウェルへと召喚される。
 当初は地上人としての高いオーラ力から、ドレイク・ルフトを領主とする「アの国」の聖戦士として迎えられ、オーラバトラー・ダンバインを与えられて戦わされようとしたが、後に離反。
 ギブン家のゼラーナ隊に所属し、聖戦士として、平和の実現の為に戦う決意をする。
 地上をも巻き込んだ様々な激戦の果て、彼はアの国の黒騎士バーン・バニングスとの決戦で、彼の怨念を浄化する為に相打ちした。

 700年後、彼の魂はバイストン・ウェルでシオン・ザバとして転生する事になる。
 しかし、英霊の座に君臨されていたのは、ショウ・ザマのみで、シオン・ザバとしての意識は現在はほぼ無い。
 もし、その記憶が呼び覚まされれば、彼の使っていた宝具も発動する事が出来るであろう。


【サーヴァントとしての願い】

 メゥ・メゥを地上界に送り返す。
 それと同時に、この怨念の渦巻く聖杯戦争を止めたい。


【基本戦術、方針、運用法】

 戦法はオーラバトラーを用いた大規模なものに限られる。
 生身の彼は、高いオーラ力を持っていても、せいぜいアスリート級の人間と互角程度であり、人間を超越するような敵とはまともに戦えないからである。
 さらには、多数持っているスキルも殆どは戦闘中しか使えない。
 まあ、オーラバトラーを使用する事による魔力の負担は大きいので、一般人マスターであるめうめうと契約している内は多用すべきではないだろう。


13 : メゥ・メゥ&ライダー ◆CKro7V0jEc :2016/01/04(月) 17:07:16 FZiImyVA0


【マスター】

芽兎めう


【出典】

ひなビタ♪


【マスターとしての願い】

おうち帰りたいめう


【weapon】

はんこ


【能力・技能】

 ドラムができる
 音ゲーがうまい
 成績が意外といい


【人物背景】

 「日向美ビタースイーツ♪」のメンバーで、ドラム担当。
 日向美商店街でも古い歴史を持つ、はんこ屋『兎月堂』の看板娘。
 純喫茶『シャノワール』の常連で、名物メニューのCKP(ちくわパフェ)をこよなく愛す。
 中学生になってすぐに、さくら野地区にあるショッピングセンター『チャスコ』のゲームセンターの常連となり、ドラムマニアやポップンをはじめとする各種音ゲーにおいて全国トップランカー級の腕前を発揮する。
 アニメ・ゲームなど秋葉系寄りのカルチャーを好み、アニメキャラ風の普段着で語尾に「めう」を多用する。要するにロリ電波系のキャラ。
 ただし、あくまで「電波キャラ」であり、本当は仲間想いの常識人らしい。その為、稀にキャラを忘れる。


【方針】

 ライダーとちくパ食べるめう。


14 : ◆CKro7V0jEc :2016/01/04(月) 17:10:12 FZiImyVA0
投下終了です。
サーヴァントのステシだけ考えたものの、マスターの把握不足が原因で筆が進まなかったのが未完成の理由だったと思います。
多分今後もどこかで採用される事はないと思いますが、とりあえず作品だけ出しておく為に。


15 : ◆CKro7V0jEc :2016/01/07(木) 21:37:44 so9Pa6f20
下記作品のフリー化をば。

一部作品は完全にその企画のために書いた作品ですので、状況に応じて修正要求をお願いします。
また、作品によっては新しい聖杯企画のコンペに修正したうえで投下する可能性もありますので、その際には念のために一時的にフリー化を取り下げる場合があります(既にどこかで使用されていた場合はコンペには投下しません)。

・帝都聖杯候補作

【真島誠&セイバー】(セイバー:大神一郎)
ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/18.html

【ジョン・マクレーン&アーチャー】(アーチャー:ジョン・ランボー)
ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/30.html

【安藤崇&ライダー】(ライダー:セルティ・ストゥルルソン)
ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/33.html

【赤木信夫&キャプテン】(キャプテン:キャプテン・マーベラス)
ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/49.html

【雨宮桂馬&アサシン】(アサシン:カナン)
ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/95.html

【木之本桜&セイバー】(セイバー:真宮寺さくら)
ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/70.html

【花村紅緒&ランサー】(ランサー:南城二)
ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/85.html

【雪城ほのか&セイバー】(セイバー:イクサー1)
ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/94.html

【月読ジゼル&アサシン】(アサシン:六星竜一)
ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/149.html

【工藤俊作&バーサーカー】(バーサーカー:坂田銀時)
ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/155.html

【平山周吉&ランサー】(ランサー:神崎すみれ)
ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/158.html

【真山徹&ホルダー】(ホルダー:当麻紗綾)
ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/164.html

【速水ペルシャ&バーサーカー】(バーサーカー:エレイン・リード)
ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/173.html

【Godzilla】
ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/151.html


16 : ◆CKro7V0jEc :2016/01/07(木) 21:38:02 so9Pa6f20

・夢現聖杯儀典:re

【香月舞&ランサー】(ランサー:東光太郎)
ttp://www63.atwiki.jp/letsrebirth/pages/56.html


・Maxwell's equations

【高遠遙一&セイバー】(セイバー:ウイングマン)
ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/22.html

【織田敏憲&セイバー】(セイバー:セフィリア=アークス)
ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/137.html

【成歩堂龍一&セイバー】(セイバー:大神一郎)
ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/140.html

【赤坂衛&アーチャー】(アーチャー:北大路花火)
ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/131.html

【霧島純平&ランサー】(ランサー:レッドマン)
ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/47.html

【獅子丸&ランサー】(ランサー:虎錠之介)
ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/116.html

【明智健悟&ランサー】(ランサー:グリシーヌ・ブルーメール)
ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/136.html

【泉野明&ライダー】(ライダー:チェイス)
ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/121.html

【間明蔵人&キャスター】(キャスター:魔王カーンデジファー)
ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/68.html

【月読ジゼル&キャスター】(キャスター:紅渡)
ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/113.html

【城戸誠&キャスター】(キャスター:死神博士)
ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/71.html

【森沢優&キャスター】(キャスター:ミンキーモモ)
ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/138.html

【見崎鳴&アサシン】(アサシン:山地闘破)
ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/117.html

【遠野英治&バーサーカー】(バーサーカー:ジェイソン・ボーヒーズ)
ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/87.html

【野原ひまわり&イフ】(イフ:究極生命体イフ)
ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/112.html


17 : ◆kyonl9ApbE :2016/01/10(日) 15:58:28 Tmegeadc0
おふざけ要素が強すぎるので、コンペへの投下は見合わせていたネタを投下させていただきます


18 : 若&セイバー ◆kyonl9ApbE :2016/01/10(日) 15:59:12 Tmegeadc0
オッス、俺アルマムーン国の王子!
「若」って呼んでくれ!
いやー、まいったよ。いきなり異世界に呼ばれて「聖杯戦争」とかいうのに参加させられちゃってさあ。
おまけに俺の最大の武器であるたまごは、元の世界に置いてきちゃったし。
まあたまごだけあったところで、ランプキンがいなけりゃエッグモンスターは召喚できないから意味ないんだけどね。
まったく、たまごが使えない俺なんて単なる腕っ節の強いイケメンですよ。
まあエグモンの代わりに、サーヴァントってのを従えて戦うのが聖杯戦争だそうなんだけど。
で、俺が引き当てたのがセイバーのサーヴァント。
一般的には「最優のクラス」って言われてるらしいんだけど、俺のところに来たやつに限って言えば外れだね。
ステータスは低いし、だらけてばかり。
そもそも、名前が「バカ殿」って! 絶対あかんやつだろ!
とはいえエグモンにもふざけた外見や名前で、けっこう強いやつがいたりするから一概には言えないんだけど……。
でも、アレはダメだ。

「おーい、マスター。ちょっとお姉ちゃんのいる店で飲んでくるから」

これだよ! お前さあ、マスター放置して毎晩飲み歩くサーヴァントがどこにいるんだよ!

「じゃあ、マスターも来ればいいじゃん」

未成年だよ! 入りたくても入れないよ、そういうお店!

「ああ、そっか。それじゃしょうがないわな。
 まあ俺が優勝したらお姉ちゃんいっぱい呼び出して宴会やるからよ。
 その時まで我慢してくれや」

それはぜひともお願いしたい! けど現状で俺たちが優勝できる気がしない!

ああ、神様。サーヴァント選定、もう1回やり直してください……。


19 : 若&セイバー ◆kyonl9ApbE :2016/01/10(日) 16:00:10 Tmegeadc0

【クラス】セイバー
【真名】バカ殿
【出典】志村けんのバカ殿様
【属性】混沌・善

【パラメーター】筋力:D 耐久:A 敏捷:E 魔力:E 幸運:A 宝具:B

【クラススキル】
対魔力:E
魔術に対する抵抗力。
無効化は出来ない。ダメージ数値を多少削減する。

騎乗:C
乗り物を乗りこなす能力。野獣ランクの生物は乗りこなせない。

【保有スキル】
黄金律:A
人生においてどれほどお金が付いて回るかという宿命を指す。
Aランクの場合、「一生金に困ることはなく、大富豪でも十分やっていける」。

殿様特権:A
「皇帝特権」の日本人版。
効果は同じで、本来持ち得ないスキルを、本人が主張することで短期間だけ獲得できる。

破壊工作:E
戦闘の準備段階で相手の戦力を削ぎ落とす才能。トラップの達人。
ただし、このスキルが高ければ高いほど、英雄としての霊格が低下する。

暗君:A
無能な君主という逸話から生まれた、バッドスキル。
彼が集団の指揮を執る場合、指揮下に置かれた者全員の能力にマイナス修正がかかってしまう。


20 : 若&セイバー ◆kyonl9ApbE :2016/01/10(日) 16:01:26 Tmegeadc0

【宝具】
『愉快な家臣達』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:―
家老の桑野、家臣の肥後、寺門、上島を召喚できる宝具。
ただし彼らの能力は一般人レベルのため、話し相手くらいにしかならない。

『殿様ご乱心』
ランク:D 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大捕捉:1人
一時的に理性を失い、衝動のままに暴れ回る。
発動中はBランクの「狂化」を獲得し、それに伴いステータスも上昇する。
ただし持続時間は短く、マスターの魔力量に関係なく長くても1分ほどで解除される。

『変なおじさん』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:0-10 最大捕捉:20人
極めて近く限りなく遠い存在である、「変なおじさん」と一時的に入れ替わることができる。
変なおじさんが「だっふんだ!」と叫ぶとその場にいた全員がずっこけ、たとえ戦闘中であっても戦意を失い、うやむやのうちに解散となる。
どんな大英雄であっても、この言霊には逆らえない。

【weapon】
無銘の日本刀

【人物背景】
江戸っぽい時代で、ある地方を治める城主。
白塗りの顔がトレードマーク。
頭脳は小学生レベルで、政治にまったく興味が無く毎日遊んでばかり。
酒と女に目がないダメ人間。
そのバカッぷりや過剰ないたずらにあきれた家臣から罵倒されることもあるが、
面倒見がよかったりする面もありなんだかんだで人望はある。

【サーヴァントとしての願い】
酒とお姉ちゃん。


21 : 若&セイバー ◆kyonl9ApbE :2016/01/10(日) 16:02:16 Tmegeadc0

【マスター】若
【出典】半熟英雄4

【マスターとしての願い】
美女とウハウハ……勝ち残れる気がしないけど!

【weapon】
普通の剣

【能力・技能】
王家に伝わる、不思議なたまごを扱う能力を持つ。
だが、今回はたまごを持ち込めていないため意味が無い。

【人物背景】
アルマムーン国の王子。
父である王が故人のため実質的な君主だが、正式な即位はしていないようで「若」と呼ばれる。
まだ少年と言っていい年齢だが精神年齢はさらに低く、はっきり言っておバカ。
一方で戦闘力はかなり高く、戦士としては優秀である。


22 : ◆kyonl9ApbE :2016/01/10(日) 16:03:06 Tmegeadc0
以上で投下終了です


23 : ◆2LEFd5iAoc :2016/01/11(月) 01:58:48 n6qX0UwE0
投下乙です。
バカ殿様をセイバーとして召喚する発想に脱帽しました。
全く勝てなさそうですが、参戦したら戦いを大いに掻き乱してくれそうです。

元ネタのマイナーさ故に投稿出来ずにいた作品があるので投下させていただきます。


24 : ◆2LEFd5iAoc :2016/01/11(月) 02:00:39 n6qX0UwE0
見てご覧。
これが、君の作った人の輪だ。
王国という中で、君が話しかけ、勧誘し、作ってきた人の輪だ。
他人の為に笑い、泣き、話しかけ、仲間に入れ、友人となったらまた笑い、
お人好しが育ててきた、人の輪だ。

私以外の誰も信じていなかった君の才能を、今ではもう誰も疑いやしない。
人の輪を作り、広げる才能……!
君こそが国王に相応しい!


   ◇   ◇   ◇


次元を超えた先は、廃れた街だった。
空は曇天。
死んでしまったような街並。
そんな街に溶け込むかのようにぼろぼろの衣を纏った男が一人。

黒咲隼。
強大な力に蹂躙され、故郷を、家族を、友人を奪われた男。
黒咲の見下ろす視線の先には、彼とは対照的に鮮やかな青い服を身に着けた少女が映る。

「なんだかすごそうな機械でちねえ。デーリッチの国じゃこんなの見たことないでち」

自らをデーリッチと名乗る少女は、黒咲の腕に装着された平らな機械を興味津々に見つめている。

「おいキャスター、ここでは真名を口にしてはならないんじゃなかったのか」
「はっ!? 自分で教えたのにまたやっちまったでち!」

キャスターと呼ばれた少女は慌てて口を押える。
キャスターとは、彼女のサーヴァントとしてのクラスである。
小さな体に不釣合いなほどの大きな鍵を持ち歩くこの少女は、驚くことに英霊の一人であった。


   ◆   ◆   ◆


25 : ◆2LEFd5iAoc :2016/01/11(月) 02:01:50 n6qX0UwE0
聖杯戦争。
それは願いを懸けて挑む命懸けの決闘。

黒咲はいつの間にかこの廃れた地に呼ばれ、立っていた。
自身がその聖杯戦争とやらに巻き込まれてしまったこと、
そしてキャスターが彼のサーヴァントであると彼女に聞かされたのは、此処に来て間もない頃であった。

「ここには何かしらの強い願いがないと呼ばれないはずなんでちが……。
 黒咲くんにも、どうしても叶えたい願いがあるんでち?」

一通りの説明を終えた後、キャスターはそう質問した。

願いなら確かにある。
黒咲の願い。
それは故郷と仲間の奪還。
奪われたものを奪い返す。
それこそが、彼が戦い続ける理由だった。

彼の願いを聞いた時、キャスターは顔を顰めていた。
彼女自身、かつて同じような境遇の者を何度も見てきたという。

「黒咲くんはちょっとマーロウさんに似てるところがあるでちね」
「マーロウ?」
「ちょっと待つでち……」

キャスターは鍵を掲げ、何かを念じる。
いつの間にか、彼女の横には大剣を携えた大柄な男が立っていた。
……いや、ただの男ではない。
長い耳、大きな口、そして全身を包む毛皮。
それはまるで――

「獣戦士……」
「そう。見てのとおり、マーロウさんは獣人なんでち。
 理不尽に虐げられてきた怒りが爆発して、ついには獣人の仲間を引き連れて戦争を起こしたんでち。
 本当はとってもいい人なんでちけどね」

キャスターが鍵を下ろすと、マーロウと呼ばれた狼男は姿を消した。

迫害される者、虐げられる者の尊厳を守ること。
それがキャスターの根底にある行動指針であった。
されど、全てを救うことが出来たわけではない。
不条理を嘆き、死にゆく者を幾度も目にしてきた。
そのような悲劇を招かぬよう、全身全霊を傾けて黒咲を支えるのだと彼女は息巻いている。

「ま、このキャスターに任せておけば心配いらないでち!
 大船に乗ったつもりでどーんと構えてればいいでちよ!」

頭上の王冠を輝かせ、キャスターは自信満々に胸を張る。

確かに、この少女からは並々ならぬ信念を、鉄の意志を感じ取れる。
だが、果たしてこのような子供に何が出来るのか。
かつて自分を応援してくれていた故郷の少年らと、さほど変わらないように見えるこんな子供に。
黒咲はそう言いかけるのを堪え、ただ疑念の眼差しを向け続けていた。

「聖杯戦争何するものぞ! ローズマリーがいなくてもちゃんとやれるってところを見せてやるでちー!」

国王と反逆者。
名前も知らないこの土地に今、たった二人の王国が誕生した。


26 : ◆2LEFd5iAoc :2016/01/11(月) 02:03:55 n6qX0UwE0
【クラス】
キャスター

【真名】
デーリッチ@ざくざくアクターズ

【属性】
秩序・善

【パラメーター】
筋力D+ 耐久D 敏捷D 魔力B 幸運B 宝具E〜A++

【クラススキル】
陣地作成:C
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
 ただし、彼女が作成するのは"工房"ではなく"王国"である。

騎乗:C
 騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、野獣ランクの獣は乗りこなせない。
 自身の召喚する番犬ベロベロスに騎乗する場合、幸運、宝具以外のステータスが1ランクアップする。

【保有スキル】
カリスマ:C
 軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
 カリスマは稀有な才能で、小国の王としてはCランクで十分と言える。

単独行動:B
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

動物会話:C
 言葉を持たない動物との意思疎通が可能。
 動物側の頭が良くなる訳ではないので、あまり複雑なニュアンスは伝わらない。

回復魔法:A
 魔力を消費し、対象者の受けたダメージを回復させる。
 戦闘中でない時に発動した場合は魔力の消費が少ない。

タイガーモード:B
 接近戦に弱いキャスターが特訓の末に習得したスキル。
 虎になりきり、身も心も野生に帰ることで身体能力を向上させる。
 発動中は筋力に「+」の補正がかかるが、代償として魔力がDランクまでダウンする。


27 : ◆2LEFd5iAoc :2016/01/11(月) 02:06:06 n6qX0UwE0
【宝具】
『病める者に力を(オープンパンドラ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜40 最大捕捉:3人
 キャスターの持つ奥義の一つが宝具として発現したもの。
 キーオブパンドラの力を開放し、神々の世界へ通じる扉を開くことで莫大な量の魔力を獲得する。
 得た魔力は全て自陣営に属する者に分け与えられ、傷を完治させる他、一定時間ステータスを向上させる。
 ただし、キャスター自身は魔力を得られず、発動後しばらくの間は一切の行動をとることが出来ない。

『はぐれ者の千年王国(アクターズ)』
ランク:E〜A++ 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
 キャスターの人徳と求心力、明日を夢見る心が宝具として発現したもの。
 彼女の国に属する臣下の姿を強く念じることで、対象者のイメージを実体化させる疑似召喚術。
 臣下はおよそ40人弱存在し、全員がサーヴァントに匹敵する戦闘力を保有している。
 全員を一度に召喚することも可能だが、実体化させた人数に応じて魔力を消耗する為、現実的ではない。
 3〜7人程度であれば極端な消費をせずに運用できる。
 呼ばれる者は魔術師から妖精、果ては宇宙人や神まで千差万別であり、それぞれランクが異なる。

【weapon】
『キーオブパンドラ』
 召喚という技術革命の切っ掛けとなった元祖召喚士の鍵。
 使用者の魔力を媒介にすべての距離を0にする。
 一言で言えばワープ能力。

【人物背景】
ハグレ。
それは広まり過ぎた召喚魔術による被害者。
闇雲に異次元から招集され、居場所をなくした逸れ者。
デーリッチはそんなハグレの一人である。

迫害されるハグレの為の居場所、「ハグレ王国」を作った国王。
はじめは親友のローズマリーを含むたった二人だけの、とても国とは呼べない組織であったが、
持ち前の明るさと優しさで一人、また一人と仲間を呼び、やがて誰にも脅かすことのできない強国を作り上げた名君。

ぐーたらでお子ちゃま。
強くもなければ威厳もない。
けれど、他人の尊厳を守る為なら自ら犠牲になることも厭わない生粋のお人好し。
故に、ハグレ王国の臣下は皆、口を揃えてこう言うのだ。
「彼女こそ真の王である」と。

【サーヴァントとしての願い】
黒咲の願いを叶える。

【基本戦術、方針、運用法】
戦闘は兎にも角にも宝具の発動が最優先。
キャスター自身も多少の自衛力はあるが、それでも回復魔法による後方支援以外はあまり期待出来ない。
一度宝具の発動に成功してしまえば優位に立つことが出来るだろう。
最悪の場合、マスター自身が時間稼ぎをすることも視野に入る。

基本的にはマスターの願いを叶えることが最優先。
だが、殺し合いを強いる聖杯戦争というシステム自体にはいい印象を抱いていない。
出来る限りサーヴァントのみを狙い、聖杯戦争を破綻させられる算段が見つかればそちらを優先するだろう。
あわよくば、その後黒咲と共に融合次元とやらに殴り込みをかけようと企んでいる。


28 : ◆2LEFd5iAoc :2016/01/11(月) 02:09:31 n6qX0UwE0
【マスター】
黒咲隼@遊戯王ARC-V

【マスターとしての願い】
故郷と仲間を取り返す。

【weapon】
『デュエルディスク』
 質量を持ったソリッドビジョンにより、鳥獣族モンスターを実体化させることが出来る。
 また、戦闘不能の相手をカードに封じ込めることも出来るが、現在は制御されている。

【能力・技能】
過酷な環境の中で戦い続けてきた為、身体能力が非常に高い。

【人物背景】
エクシーズ次元と呼ばれる世界から来た決闘者。
皆を楽しませるプロデュエリストを目指し、日々奮闘していたが、ある日を境にその夢は途絶える。
並行世界からの侵略者に故郷を滅ぼされたのだ。

並行世界の名は「融合次元」。
黒咲は融合次元に反逆し、奪われたものを奪い返す為に戦い続けるレジスタンスである。
協調性のない孤高の男だが、仲間を想う気持ちは誰よりも強い。
常に最悪の事態を想定し、逆境を切り開く力に長けている。

【方針】
立ち塞がる者は全て倒す。


29 : ◆2LEFd5iAoc :2016/01/11(月) 02:12:01 n6qX0UwE0
投稿は以上です。
タイトルをつけ忘れていましたが、「黒咲隼&キャスター」でお願い致します。


30 : ◆q4eJ67HsvU :2016/01/11(月) 16:45:16 ikshmBok0
皆様、投下お疲れ様です。
私も以下の五作品について、トキワ荘内での使用フリー化を宣言します。


・「聖杯戦争異聞録 帝都幻想奇譚」候補作

【岸波白野&ネバーセイバー(渋谷凛)】 ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/110.html

【御神苗優&ランサー(写楽保介)】 ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/86.html

【朱鷺宮神依&バーサーカー(壬無月斬紅郎)】 ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/20.html

【九頭竜天音&デウスエクスマキナ(アヤトゼフォン)】 ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/67.html


・「夢現聖杯儀典:re」候補作
【ウェカピポ&ランサー(ミリア=レイジ)】 ttp://www63.atwiki.jp/letsrebirth/pages/54.html


以上の作品は各聖杯企画に合わせた描写がなされているため、採用をお考えの場合はまずこちらのスレッドでご一報ください。
こちらで採用予定の企画に合わせて細部を調整いたします(事実上の書き直しが必要な場合は申し訳ありませんがお断りする場合があります)。

これからも聖杯企画の更なる発展を祈っております。ついでにこれらの没候補にもう一度スポットが当たれば嬉しい限りです。


31 : ◆GO82qGZUNE :2016/01/11(月) 18:18:06 150JiQCA0
皆様、投下お疲れ様です。
私も以下の九作品について、トキワ荘内での使用フリー化を宣言します。

「Fate/Fanzine Circle-聖杯戦争封神陣-」 候補作
【アイラ&アーチャー(天樹錬)】ttp://www8.atwiki.jp/kamakurad/pages/37.html

「魔界都市<新宿> ―聖杯血譚―」候補作
【七代千馗&キャスター(緋勇龍麻)】ttp://www8.atwiki.jp/city_blues/pages/30.html
【葛葉キョウジ&ライダー(ヴァ―ミリオン・CD・ヘイズ)】ttp://www8.atwiki.jp/city_blues/pages/47.html
【キカイ人間の少女&キャスター(神野陰之)】ttp://www8.atwiki.jp/city_blues/pages/68.html
【ヒメネス&バーサーカー(比何ソウマ)】ttp://www8.atwiki.jp/city_blues/pages/84.html

「少女性、少女製、少女聖杯戦争」候補作
【橘ありす&ホルダー(白野蒼衣)】ttp://www41.atwiki.jp/girlwithlolipop/pages/37.html

「Maxwell's equations」候補作
【杉村弘樹&セイバー(黒沢祐一)】ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/14.html
【佐城雪美&アーチャー(コリエル12号)】ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/26.html
【ねむりん&ライダー(The A)】ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/54.html


以上の作品は各聖杯企画に合わせた描写がなされているため、採用をお考えの場合はまずこちらのスレッドでご一報ください。
こちらで採用予定の企画に合わせて細部を調整いたします(事実上の書き直しが必要な場合は申し訳ありませんがお断りする場合があります)。


32 : ◆ZjW0Ah9nuU :2016/01/11(月) 18:34:46 ksJ0.ccI0

皆様、投下お疲れ様です。
>>30-31氏に便乗して以下の作品群をトキワ荘内での使用フリー化を宣言します。
万が一採用してくださったらこの上なく幸いです。


・「Gotham Chalice」候補作

【夜神総一郎&シーカー(レオーネ・アバッキオ)】 ttp://www63.atwiki.jp/gotham/pages/40.html
(「夢現聖杯儀典:re」様の方でも投下しています→ ttp://www63.atwiki.jp/letsrebirth/pages/80.html )

【平坂黄泉&キャスター(アナカリス)】 ttp://www63.atwiki.jp/gotham/pages/69.html

【魏&セイバー(ブローノ・ブチャラティ)】 ttp://www63.atwiki.jp/gotham/pages/55.html


・「Fate/Fanzine Circle-聖杯戦争封神陣」候補作
【桜咲刹那&バーサーカー(テンペルリッター)】 ttp://www8.atwiki.jp/kamakurad/pages/31.html

【クロエ・フォン・アインツベルン&セイバー(ギュスターヴ13世)】 ttp://www8.atwiki.jp/kamakurad/pages/60.html


・「魔界都市<新宿> ―聖杯血譚―」候補作
【秦こころ&ライダー(機巧おちゃ麻呂)】 ttp://www8.atwiki.jp/city_blues/pages/32.html

【宮崎のどか&バーサーカー(シーハルク)】 ttp://www8.atwiki.jp/city_blues/pages/92.html


・「Maxwell's equations」候補作
【ポチョムキン&セイバー(アデルバート・スタイナー)】 ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/129.html

【ボインゴ&ライダー(ドロンジョ)】 ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/124.html


以上の作品は各聖杯企画に合わせた描写がなされているため、採用をお考えの場合はまずこちらのスレッドでご一報ください。
こちらで採用予定の企画に合わせて細部を調整いたします(事実上の書き直しが必要な場合は申し訳ありませんがお断りする場合があります)。


33 : ◆7PJBZrstcc :2016/01/11(月) 18:34:58 HRgI4ZQs0
以下の2作品のフリー化を宣言します。

「Gotham Chalice」候補作
【王に、神になれなかった者<ディアボロ&アサシン(夜神月)>】
ttp://www63.atwiki.jp/gotham/pages/35.html

「Maxwell's equations」候補作
【ディオ・ブランドー&アサシン(DIO)】
ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/74.html


34 : 名無しさん :2016/01/12(火) 08:36:12 o/.hE/.c0
うおお、デーリッチだ
この娘、パラは控え目だけど功績だけなら間違いなく大英雄なんだよなぁ


35 : ◆.QrNUkmVxI :2016/02/05(金) 03:04:41 5gDC6nlU0
皆様投下お疲れ様です
私も以下の三作品について、トキワ荘内での使用フリー化を宣言します

・「Maxwell's equations」候補作
【ツバサ&キャスター(キャロル・マールス・ディーンハイム)】 ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/61.html

【大神ソウマ&ライダー(神隼人)】 ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/51.html

【河嶋桃&エクストラクラス(キャシャーン)】 ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/106.html

採用に当たって細部の変更が必要な場合は、こちらのスレまでご一報ください
修正したものを、改めて投下させていただきます


36 : ◆CKro7V0jEc :2016/02/14(日) 00:36:23 aToQ/xhQ0
「メゥ・メゥ&ライダー」及び、>>15-16でフリー化した自作の一部を、他企画のコンペでリメイクして再利用します。
採用された場合、重複するリスクがあるので、期間中の使用にはご注意ください(重複しても良いなら全然構いません)。


37 : せつら :2016/03/09(水) 20:58:59 .exLTmZ60
思いつきはしたものの投下のしようが無い魔改造ネタを投下します


38 : ◆T3rvSA.jcs :2016/03/09(水) 21:00:02 .exLTmZ60

【クラス】
バーサーカー
【真名】
アーカード(HELLSING)
【マスター】
不在
【ステータス】
筋力B+ 耐久C 敏捷A 魔力B 幸運A 宝具EX
【属性】
混沌・中庸
【クラススキル】
狂化E-
思考をし、会話をすることが可能。ただし自身の信条を絶対の行動原理としている
そこにいかなる妥協も無い。パラメーターアップの恩恵は受けない
【保有スキル】
戦闘続行・EX
首を落とされようが全身を粉砕されようが死ぬことなく戦闘を続行する。いかなる攻撃もバーサーカーの戦闘意欲を削ぐことは無い
勇猛・A
威圧・混乱幻惑といった精神干渉を無効化し、格闘ダメージを向上させる
威圧・B
戦闘状態になるとバーサーカーは持ち前の狂気を解放する。ランク以下の精神耐性の持ち主はその狂気に呑まれてしまう
千里眼・C
意識の集中により遠隔視・透視が可能
魔力放出・D
偶発的に身に付けたもの、本来の能力では無いためランクは低い
単独行動・EX
マスターを必要としない
怪力・A++
一時的に筋力を増幅させる、魔物・魔獣のみが持つ攻撃性。持続時間はランクに比例する
再生A+++
取り込んでいる魂が尽きぬ限り再生する
【宝具】
黒犬獣(ブラックドッグ・パスカヴィル)
ランクB 種別・対人宝具 レンジ1〜10 最大補足・1
バーサーカーの身体から現れる巨大な無数の目が全身についた獣。
巨大な口で対象を噛み砕き、食い尽くす

零号解放(死の河)
ランクEX 種別・対軍宝具 レンジ1〜99 最大補足・1000
取り込んだ魂全てを解放して敵を殲滅する。解放された魂は無数の死者の群れとなって生前の能力を振るって敵を襲い、死者に殺されたものもまた死者の戦列に加わる。
対軍の域にとどまらず、国すら制圧できる宝具
ただし使用時には再生スキルと後述の宝具の使用が不可能になる

闇の賜物(クリフォト・バチカル)
ランクB 種別・対人宝具 レンジ・無し 最大補足・自分自身
バーサーカーを召喚したマスターであるヴィルヘルム・エーレンベルグが所有していた聖遺物を、バーサーカーがマスターごと取り込んだもの
全身から無数の杭を生やして近接武器として使用。さらに射出することで飛び道具としても使用可能
杭によりダメージを受けるとダメージ分の魂を奪われる
神の手になるものであるために同ランク以上の神性が無いと防御不能

【人物背景】
HELLSINGのアーカードをDies iraeのヴィルヘルム・エーレンベルグが召喚
その後主従で争いになりアーカードに聖遺物ごと喰われてしまった結果
アーカードが受肉して独立した存在として活動可能になった



……まあこんな代物出せるわけもなく
ベイ中尉がアーカード召喚したら?とか考えてたら出てきた代物


39 : 名無しさん :2016/03/09(水) 21:20:50 N0Sb/2iQ0
>どんなに短くても構わないので、投下する作品はステータスシート以外にも本文を入れてSSの体裁を保ってください。
ステシだけの投下はアウトよ、ここ


40 : ◆T3rvSA.jcs :2016/03/09(水) 21:24:10 .exLTmZ60
すいませんでした。次からはSSを付けます


41 : 名無しさん :2016/03/09(水) 22:59:35 SfK7JvJI0
敏捷Aってアーカードそんなスピードキャラだった?
それにApヴラドやEXTRAヴラドが幸運Eなのになんで幸運A?


42 : ◆K5TysXl7Yw :2016/03/13(日) 13:10:43 4RsDVAiw0
以下の作品のトキワ荘内での使用フリー化を宣言します。

・二次二次聖杯候補作
【宗像形&アーチャー】
 ttp://www63.atwiki.jp/2jiseihaisennsou2nd/pages/96.html

仕事の都合上、修正要求に応えることができません。
ですのでマスターを変更しない、サーヴァントのステータスを変更しないことを条件に、
ご自分で内容修正していただいて構いません。

スキル、宝具は名前のみ変更可能です。


43 : 名無しさん :2016/03/13(日) 21:05:00 ufhEJFTc0
>>41

動き回るタイプじゃ無いけどかなり速いと思うんですよね
幸運に関してはSNとZEROのセイバー見るにマスターに拠るところが大きいんで
今回は「気に入らないけど受肉できたからツイてる」位の感覚ですね


44 : 変態糞親父&アサシン ◆GHJQFqiC.Y :2016/03/21(月) 20:50:23 jCeJt0RI0
皆様方投下お疲れ様です。
処女作にする予定でしたが、あまりにもおふざけが過ぎたためにコンペ参加を見合わせたものを投下します。


45 : 変態糞親父&アサシン ◆GHJQFqiC.Y :2016/03/21(月) 20:52:17 jCeJt0RI0
ありとあらゆる願いを叶えることができると言われている奇跡の願望器「聖杯」。そして、その聖杯を巡り、多くの魔術師や英霊たちが血で血を洗うような熾烈な戦いを繰り広げるのが「聖杯戦争」である。
そんな聖杯戦争の幕開けと時を同じくして、ある一件の書き込みがネット上の某掲示板サイトに投稿されていた。その内容は非常に下劣なものであり、道行く人々100人に聞けば100人が「嫌悪感を抱いた」と答えるであろう。
しかし、その汚い書き込みこそが聖杯戦争の行く末を決定づけ、多くの人々の運命を狂わせるものになるのであった…


46 : 変態糞親父&アサシン ◆GHJQFqiC.Y :2016/03/21(月) 20:53:38 jCeJt0RI0

やったぜ。 投稿者:変態糞土方 (8月16日(水)07時14分22秒)

昨日の8月15日に先日召喚した傷だらけのサーヴァントのにいちゃんとわし(53歳)の2人で岡山の北にある川の土手の下で盛りあったぜ。
「糞あそびしようや」とわしが言うとサーヴァントのにいちゃんが嫌そうな顔をするんで令呪で言うことを聞かせてから滅多に人が来ない所なんで、
そこでしこたま酒を飲んでからやりはじめたんや。
2人でちんぽ舐めあいながら地下足袋だけになり持って来たいちぢく浣腸を3本ずつ入れあった。
しばらくしたら、けつの穴がひくひくして来るし、糞が出口を求めて腹の中でぐるぐるしている。
兄ちゃんの宝具にけつの穴をなめさせながら、兄ちゃんのけつの穴を舐めてたら、
先に兄ちゃんがわしの口に糞をドバーっと出して来た。
それと同時にわしも糞を出したんや。もう顔中、糞まみれや、
2人で出した糞を手で掬いながらお互いの体にぬりあったり、
糞まみれのちんぽを舐めあって小便で浣腸したりした。ああ〜〜たまらねえぜ。
しばらくやりまくってから又浣腸をしあうともう気が狂う程気持ちええんじゃ。
兄ちゃんの宝具のけつの穴にわしのちんぽを突うずるっ込んでやると
けつの穴が糞と小便でずるずるして気持ちが良い。
にいちゃんも宝具の口にちんぽを突っ込んで腰をつかって居る。牙がちょうど良い具合に食い込んでいて気持ちよさそうや。
糞まみれの宝具のタマキンを掻きながら、思い切り射精したんや。
それからは、もうめちゃくちゃに兄ちゃんと糞ちんぽを舐めあい、
糞を塗りあい、令呪を使い果たした。もう一画欲しいぜ。
やはり糞まみれになると最高やで。こんな、変態親父と糞あそびしないか。
ああ〜〜早く聖杯戦争しようぜ。
函館の北で闘りあえる奴なら最高や。わしは163*90*53や
糞まみれで闘りたいやつ、至急、メールくれや。
土方姿のまま浣腸して、糞だらけで闘ろうや。


47 : 変態糞親父&アサシン ◆GHJQFqiC.Y :2016/03/21(月) 20:54:29 jCeJt0RI0

朝陽が部屋に差し込み、その部屋の全貌が明らかになったーーーーー。やもすれば豚小屋とも揶揄されかねないような小さな部屋の中心に、可愛らしい、だがどこか畏怖を感じさせる人形がちょこんと座っていた。そしてーーーー部屋の片隅には気配を感じさせぬようにして男。朝陽に照らされ、露わになったその顔には無惨な傷痕が幾重にもなって刻み込まれていた。黄金に輝く目映い朝陽とは決して相容れないであろうその鋭い眼差しと無数の傷痕は、男が表社会の「人間」でないことを示していた。
いや、「人間」と言うと語弊があるのだろう。何故ならば、彼は1987年に凄絶な死闘の末この世を去っているはずの者なのだから。彼の名は「デーボ」。「呪いのデーボ」。聖杯戦争にアサシンのクラスとして召喚された英霊である。

朝陽が彼の顔全体を照らした時だった。驚くべきことに、それまで大きな目を閉じ、静止していたはずの人形が突如として憤怒の形相になって瞬く間にカーテンを閉めたのだ。無論、普通ならば人形がひとりでに動くなどということは有り得ないだろう。ならば人形は電気仕掛けなのだろうか?否、この人形は生きている。確かに生きているのだ。そう、この人形こそがデーボの宝具であり、幽波絞と呼ばれる生命のビジョンなのだ。
しかし、彼を知っている者ならば当然疑問に感じることがあるだろう。「何故恨みのパワーもなしで彼の幽波絞が動けるのか?」その疑問を解消することは容易い。ように彼はある人物に対して並々ならぬ恨みを抱いていたのだ。もしかすれば、生前に抱いたどの恨みをも凌駕しかねないその恨みは、彼自身のマスターに注がれていた。
彼のマスターである土方は、彼を召喚した直後。事もあろうに、令呪を使って彼を犯したのだ!犯されたことによって傷ついた彼は、マスターへの復讐を誓い、恨みを大きくしていった。
今、アサシンの暗殺・復讐劇が聖杯戦争と共に幕を開ける。


48 : 変態糞親父&アサシン ◆GHJQFqiC.Y :2016/03/21(月) 20:55:14 jCeJt0RI0

【クラス】
アサシン

【真名】
呪いのデーボ@ジョジョの奇妙な冒険 第三部『スターダストクルセイダース』

【ステータス】
筋力:D 耐久:B+ 敏捷:D 魔力:C 幸運:E 宝具:C

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
気配遮断:E
サーヴァントとしての気配を少し断つ。
鋭い殺気をしているためにランクは低く、すぐに発見されてしまう。もっとも、彼の場合は見つからなければ戦闘さえできないのだが。

【保有スキル】
頑健:C
耐久力を向上させるスキル。
数多の傷を負ってなお殺し屋稼業を続けることができたタフさに由来する。

追い込みの美学:D
敵に先手を打たせることによって、あえて傷を負う。
そしてアサシンはその傷をもってして強い恨みのパワーを得、スタンドを操るのだ。

【宝具】
「悪魔」(エボニーデビル)
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜500 最大補足:1人
タロットカード大アルカナ15番目のカード『悪魔』の暗示を持つスタンド。呪いに振り回され精神状態の悪化、不吉なる墜落の道を意味している。
怪しげな偶像のような姿をしたスタンド。このスタンドを人形等に取り憑かせることによって戦う。
デーボの恨みとそのスタンドパワーは比例しており、デーボが相手を恨めば恨むほど強くなる。

【Weapon】
宝具である『悪魔』。
ステータスは筋力E+〜B、耐久C、敏捷C相当。

【人物背景】
DIOに金で雇われたスタンド使い。
「アメリカインディアンの呪術師」という触れ込みで商売をする殺し屋。殺し屋としての腕前はかなりのものでマフィアや軍人、果てには政治家さえもが彼を雇った。
スタンドの力を発揮させるために、相手を挑発して自身を痛めつけさせるので全身傷だらけ。切れ長の目や傷から受ける彼の印象は、冷酷で非情なものだが、「男性器を噛みきる」などの下品な発言もしている。
シンガポールにてポルナレフと対峙した。
恨めば恨むほど強くなるスタンド『悪魔』でポルナレフを翻弄したものの、最終的には彼のスタンド『銀の戦車』に男性器以外の場所を切り刻まれて絶命した。

【サーヴァントとしての願い】
巨万の富と権力。

【方針】
聖杯戦争で優勝する。
然るべき時が来たらマスターを抹殺する。

【マスター】
変態糞親父

【マスターとしての願い】
共に糞あそびをする仲間がたくさん欲しい。

【weapon】
糞といちぢく浣腸

【能力・技能】
特になし。

【人物背景】
岡山県に実在する親父。職業は土方。

【方針】
県北で糞あそびをしつつ優勝を狙う

【備考】
・変態糞親父はすべての令呪を消費してしまいました。
・アサシンは変態糞親父のことを恨んでいます。


49 : 変態糞親父&アサシン ◆GHJQFqiC.Y :2016/03/21(月) 20:57:33 jCeJt0RI0
以上で投下を終了いたします。お目汚し失礼いたしました。


50 : ◆GO82qGZUNE :2016/05/18(水) 20:23:33 BAAAo2Eg0
以下の候補作のフリー化を宣言し、>>31のリストに追加いたします。

・「Fate/Reverse ―東京虚無聖杯戦争―」
【青い、青い空&クリエイター(エドワード・ザイン)】ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/35.html
【ディー&アーチャー(ティトォ)】ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/77.html
【セラ&ランサー(プリセラ)】ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/116.html

その他備考は>>31と同一です


51 : ◆CKro7V0jEc :2016/05/19(木) 00:18:25 0Z0rn0hA0
作品のフリー化宣言をば。



終了から時間が経ちましたが、>>36で宣言していた東京虚無聖杯の期限は終了しており、
基本的には私の作品は自由に使用できる事を報告しておきます。
また、【遠野英治&バーサーカー(ジェイソン・ホービーズ)】は採用が決定しましたので、
そちらの使用をする場合には、虚無聖杯企画主様の許可を重ねて取る形でお願いします。


52 : ◆CKro7V0jEc :2016/05/19(木) 00:21:19 0Z0rn0hA0



以下は、「Fate/Reverse ―東京虚無聖杯戦争―」に投下した作品です。
これらもフリー化を宣言しておくので、必要とあらば自由に使ってください。
修正できる限りは修正しますが、舞台設定によっては修正できない場合もあるのでよろしくお願いします。
>>15-16にも自分の作品があるので、そちらもよろしければ。



【檜山達之&セイヴァー(乾巧)】
金田一少年の事件簿/仮面ライダー555
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/40.html

【西木野真姫&セイバー(剣崎一真)】
ラブライブ!/仮面ライダー剣
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/44.html

【ソラ&バーサーカー(ゼットン)】
仮面ライダーウィザード/ウルトラ怪獣擬人化計画
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/52.html

【ペガッサ星人&アーチャー(テンペラー星人)】
ウルトラ怪獣擬人化計画
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/53.html

【狩谷純&ライダー(アマゾン)】
金田一少年の事件簿/仮面ライダーSPIRITS
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/55.html

【イース&アーチャー(トレイン=ハートネット)】
フレッシュプリキュア!/BLACK CAT
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/63.html

【孤門一輝&キャスター(邪悪なる暗黒破壊神ダークザギ)】
ウルトラマンネクサス
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/65.html

【海東大樹&バーサーカー(クリード=ディスケンス)】
スーパーヒーロー大戦/BLACK CAT
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/83.html

【結城リト&ランサー(イヴ)】
To LOVEる/BLACK CAT
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/86.html

【アインハルト・ストラトス&アーチャー(跡部景吾)】
魔法少女リリカルなのはVivid/新テニスの王子様
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/105.html


53 : ◆CKro7V0jEc :2016/05/19(木) 00:22:19 0Z0rn0hA0

【李小狼&セイバー(真宮寺さくら)】
カードキャプターさくら/サクラ大戦
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/135.html
※小狼が桜になっている版が>>15にあります。

【東京都&ゴジラ】
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/136.html
※似たようなやつが>>15にあります。

【甲斐享&ライダー(黒井響一郎)】
相棒/仮面ライダー3号
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/149.html

【灰原哀&キャスター(エリカ・フォンティーヌ)】
名探偵コナン/サクラ大戦3
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/155.html

【金田一一&アーチャー(空条承太郎)】
金田一少年の事件簿/ジョジョの奇妙な冒険
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/158.html

【杉下右京&キャスター(綾里真宵)】
相棒/逆転裁判
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/163.html

【ルーラー/『Mephilas』(メフィラス星人)】
ウルトラマン
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/166.html

【詩島剛&ライダー(チェイス)】
仮面ライダードライブ
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/167.html

【のび太と狂戦士(バーサーカー)(ルーシー)】
ドラえもん/エルフェンリート
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/194.html

【ルーラー/セフィリア=アークス】
BLACK CAT
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/195.html

【上田次郎&セイヴァー(ミスター・サタン)】
TRICK/ドラゴンボール
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/197.html

【古畑任三郎&セイバー(ギャバン)】
古畑任三郎/宇宙刑事ギャバン
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/201.html

【美柳ちなみ&アサシン(大道克己)】
逆転裁判/仮面ライダーW
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/217.html

【牙琉霧人&アサシン(カナン)】
逆転裁判/CANAAN
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/226.html

【雪城ほのか&セイバー(大神一郎)】
ふたりはプリキュア/サクラ大戦
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/230.html


54 : ◆CKro7V0jEc :2016/05/19(木) 00:23:19 0Z0rn0hA0




※下記は、他所で一度投下した作品のほぼ流用ですが、一部東京聖杯向けに内容を変更したリメイクになってます。
 こっちの方が完成度が上がっているかと思うので、流用の際はぜひこちらで考えてみてください。



【月読ジゼル&キャスター(紅渡)】
金田一少年の事件簿/仮面ライダーキバ
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/100.html

【明智健悟&ランサー(グリシーヌ・ブルーメール】
金田一少年の事件簿/サクラ大戦3
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/107.html

【芽兎めう&ライダー(ショウ・ザマ)】
ひなビタ♪/聖戦士ダンバイン(>>6-14
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/110.html

【赤坂衛&アーチャー(北大路花火)】
ひぐらしのなく頃に/サクラ大戦3
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/121.html

【城戸誠&キャスター(死神博士)】
太陽を盗んだ男/仮面ライダー
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/186.html



今回フリー化する作品は以上です。


55 : ◆CKro7V0jEc :2016/05/19(木) 00:31:37 0Z0rn0hA0
あ、以上じゃないです。
別酉で投下した二次二次聖杯の候補作品も、折角なのでフリー化しておきます。

【ジョン・シルバー&バーサーカー(ノロイ)】
宝島/ガンバの冒険
ttp://www63.atwiki.jp/2jiseihaisennsou2nd/pages/129.html

【円谷光彦&セイバー(ぶりぶりざえもん)】
名探偵コナン/クレヨンしんちゃん
ttp://www63.atwiki.jp/2jiseihaisennsou2nd/pages/130.html

本当に以上です。


56 : ◆OzO3NU97wY :2016/05/19(木) 00:31:57 0Z0rn0hA0
↑酉ミス。


57 : ◆7PJBZrstcc :2016/05/19(木) 11:25:52 EDj7yvW20
以下の4作品のフリー化を宣言します

「Fate/Reverse ―東京虚無聖杯戦争―」候補作
【吉井明久&アーチャー(白井黒子)】
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/49.html

【闇と光<ハーゴン&バーサーカー(無銘(ドラクエ3女勇者)>】
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/122.html


「柩姫聖杯譚/Holy Embryo」候補作

【リンゴォ・ロードアゲイン&アサシン(ケンシロウ)】
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1458363246/29-32

【六星竜一&アーチャー(デス・ガン)】
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1458363246/250-253


58 : ◆Ee.E0P6Y2U :2016/05/29(日) 07:40:25 s3J.gK9g0
以下の作品をフリー化いたします。


【二次二次聖杯候補作】
久世響希・キャスター
ttp://www63.atwiki.jp/2jiseihaisennsou2nd/pages/106.html

神名綾人・アーチャー
ttp://www63.atwiki.jp/2jiseihaisennsou2nd/pages/178.html

【帝都聖杯候補作】
織作茜・セイバー
ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/28.html

殺生院キアラ・バーサーカー
ttp://www63.atwiki.jp/tokyograil/pages/101.html

【少女聖杯候補作】
主人公子・アサシン
ttp://www41.atwiki.jp/girlwithlolipop/pages/50.html

【Fate/Fanzine Circle-聖杯戦争封神陣- 候補作】
ルカ・ミルダ&セイバー
ttp://www8.atwiki.jp/kamakurad/pages/13.html


59 : ◆CKro7V0jEc :2016/06/01(水) 00:10:52 EXdAbcjM0
断片集スレで設定改変した続編を書けるようにもなったので、
残っているものでまだフリーに出来そうなものをとりあえず著作権フリー化しておきます。
また、ステシ等もルールに則り、他企画での流用を行っても構いませんので、機会があったらご活用ください。

【魔界都市<新宿> ―聖杯血譚―】

逆転侍/御剣怜侍&セイバー(志葉丈瑠)
ttp://www8.atwiki.jp/city_blues/pages/59.html

【仮題/終焉戦争】

夢原のぞみ&ライダー
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1454744935/73-80


60 : ◆GO82qGZUNE :2016/06/14(火) 20:57:19 7F01VqtY0
現行の聖杯コンペに出すにはちょっとアレなのでこちらに投下させていただきます


61 : アリス&ライダー ◆GO82qGZUNE :2016/06/14(火) 20:58:05 7F01VqtY0




 人の世の終わりまで永久に繰り返されるその問いに。

 我等は唯一無二の絶対なる回答を探求する。

「彼らは、この世界で生きるに値するのか」

「この世界は、彼らが生きるに値するのか」





   ▼  ▼  ▼


62 : アリス&ライダー ◆GO82qGZUNE :2016/06/14(火) 20:58:58 7F01VqtY0





 雨が降り注ぐ。

 時刻は12の文字を通り越し、日を跨いで夜の帳を黒く染め上げている。
 街にはただ雨だけが降り注いでいた。間断なく響く雨音は規則正しく、ざあざあと反響を繰り返す。
 雨は止まない。夜色の空から叩き付ける、水の姿をした石つぶて。
 道を行き交う人々は皆一様に傘を差し、雨天のことなど気にも留めない。
 そして黒の雑踏の中、一際目立つ白にも、また。


「……」


 ―――白の服を纏った少女。

 その少女は濡れていなかった。
 降りしきる雨の中、髪も服も、どこにも雫はない。

 ふわふわと歩いて、熱の籠らない瞳で街を見渡す。
 小さく小さく首を傾げる。何かを思っているのだと、赫い瞳が告げる。
 問いに応えてくれる人など、どこにもいないのだけれど。
 ただ歩く。雑踏など目に入らず、触れることもなく。少女は歩き続ける。

 ここは都市。夜を知らぬ雑踏街。文明の火が灯った石造りの森。
 賑やかな大通りではなく。路地の、ひっそりとした場所。
 まともな子供なら、まず近寄らない夜の裏路地。
 喧騒とも光とも無縁なその場所に、少女はいた。白の服を着崩して、白の輪郭を纏って。
 髪も、肌も、服も何もかもが白く。街という世界に小さく空いた空白のように。

 たったひとりで。
 ふわふわ歩いて、立ち尽くして。

「……」

 ただ、人々を見つめるだけ。
 ただ、世界を見つめるだけ。

 彼女の瞳は―――
 見つめるだけで―――

「観測しているのかな。きみは、その赫い瞳で」
「うん、見ているの」

 掛けられた声にその子は頷いて。
 声の主であるところの、路地の影に答えた。


63 : アリス&ライダー ◆GO82qGZUNE :2016/06/14(火) 20:59:34 7F01VqtY0

 小鳥や子猫のような小さな生き物が鳴くような、か細い声で。震えるように。
 それは雨の音に紛れて、余人であるなら微かにしか聞こえてこないものであったが。
 それでも、路地の影は頓着しない。

「あなたはだれ? 黒い影のひと、どこかの紳士のひと」
「どちらも正解だ、狭間の子よ。私は正しく私の影であり、そして紳士でもある。ジェントル、とでも呼んでくれたまえ」

 異邦紳士を名乗る影は愉快気に言った。あるいは、慮るようにか。
 紳士は少女が言うように黒い姿をしていた。一目で異国のものと分かる服装は頭の先から爪の先まで黒く、ダービーハットと手に持つステッキが彼を紳士然とさせていた。
 そして彼もまた少女と同様に、その髪と肌と衣服の一切を雨に濡らしてはいなかった。ひとりでに避けるように、あるいはすり抜けるかのように、一滴の雫も伝ってはいない。

「ジェントル……うん、なんだか物珍しく感じちゃうな。知り合いに物凄い変態が何人もいたから。あなたみたいな人を見るのは久しぶり」
「おや。そうすると、きみは私のことが気に入らないかな?」
「ううん、全然。変態さんは変態さんで面白い人たちだったけど、あなたのこともわたしは嫌いじゃないよ。
 ……あ、念のために言っておくけど、ほとんどの人はまともだったよ? 変態さんは本当に数えるくらいしか知らないからね?」

 あたふたと慌てるように手と首を振って答える少女に、男はただ苦笑の響きを以て返答とした。
 白と黒の対比した二つの影が、面映しそうに顔を見合わせた。

「……実はね。わたし、なんでここにいるか分からないんだ」

 ふと、少女が言った。
 明るい雰囲気ではない。喉の奥から絞り出したような声。けれど不思議と暗さもなかった。

「わたしはもう終わったはずだったの。勇士のみんなと戦って、それで目の前が真っ暗になって」
「気が付いたらここにいたと」
「そう。せっかく晴れ晴れ、旅立てると思ったんだけどね」

 思い出すのは最後の情景か。脳裏に最も新しく刻まれた記憶の断片か。
 名前と同じく毒のような顔をした勇者、彼が振るった剣を受けて宙へと沈んだ自分の姿。
 あの時確かに、自分は終わったはずなのだ。神としての性と人としての性の狭間に引き裂かれそうになり、かつて交わした友誼との軋轢に苦しみ、その果てに己が使命を果たさんと足掻き。
 父の意思を継ぎ、母の血肉を食らい、師の愛を胸に抱いて。
 そして、果てた。

「でもね、こうして生きてることを、わたしは嫌だな、なんて思わないよ。
 むしろ嬉しいの。わたしは最後に、またみんなと一緒に色んなことをやりたいなって思いながら瞼を閉じたから。
 こうして生きてることが、またみんなと共に在れることが、今は素直に嬉しい」


64 : アリス&ライダー ◆GO82qGZUNE :2016/06/14(火) 21:00:14 7F01VqtY0

 それでこんなところに連れ出されちゃったんだから本末転倒なんだけどね、と困ったように笑う少女に、男は「ふむ」と思案するかのように言葉を投げかけた。

「ならば、きみの願いは叶っていると」

 その問いは酷く穏やかなものではあったが。
 同時に、これ以上なく真剣味を帯びた言葉でもあった。

「死に至る病に至る生を得て、自らの拠るべき場所を取り戻して。
 ならばきみの望むべく総ては形を成したのだと、そういうことかい?」
「ううん」

 きっぱりと否定する。
 少女はふざけるように、あるいははしゃぐように、手を伸ばしてくるりとその場で一つ回った。
 暗く澱んだ裏路地に、一輪の花が咲いた。思わずそう形容したくなる衝動に駆られるほどに、その情景は美しかった。

「わたしの願いは、もっといっぱいあるの。
 わたしはお父様の星に行ってみたいし、みんながいる星にも遊びに行きたい。
 みんなとずっと一緒にいたいって気持ちがあるし、それと同時にわたしの知らない景色を知っていきたいって気持ちもある。
 わたし、こう見えても欲深なんだから」

 そう言って、満面に笑う彼女の顔は。
 どうしようもなく、輝きに満ちていたから。

「それに何より、ね……」
「何より?」
「ううん、これは秘密。なんだか気恥ずかしいし」
「おっと、これは手厳しい。しかし乙女の秘密を詮索したとあっては、私がリザにどやされてしまうか」

 男は笑う。それは少女の笑みに合わせたように。はにかみが、雨粒の降りしきる路地へと伝わっていく。
 ひとしきり笑い合って、やがて声が収束していった頃。ふと、少女は何かを尋ねたいような顔をして。


65 : アリス&ライダー ◆GO82qGZUNE :2016/06/14(火) 21:01:01 7F01VqtY0

「ねえ、ジェントル。紳士のあなた。あなたは何を願っているの?
 ジェントル、サーヴァントのあなた。サーヴァントは叶えたい願いがあるから喚ばれるのだと、私はそう聞いているけれど」

 そんなことを、何気ない所作で問いかけた。
 おや、とでも言いたげな様子で、男は大仰に驚いてみせる。いや、これはむしろ感心だろうか。
 ともかく彼はそんな風に、表情を動かしてみせて。

「そうか、いやそうだね。確かにきみの言う通りだ。サーヴァントとは総じてそうした存在であるし、そうでなくてはならない。
 それに私はきみの願いを聞いてしまった。ならば言って聞かせるのも吝かではないが……」
「面倒くさい前置きはいいから」
「やはりきみは手厳しいな」

 男は、僅かに首を傾げて―――


「―――――……」


 ―――気配が変わった。存在感が変わった。その違和感の源泉は、目の前の男。
 彼は決して少女を威圧したわけでも、また無意識の憤怒なり憎悪なりが表層に現れたわけでもない。
 しかしそれでも、目に見えるほどの域で彼の気配はその性質を異としていた。

 男は瞼を細める。
 それは、遥かな過去を見据える瞳か。

 透き通った色の瞳で、彼は、今や漆黒に染まった空を見つめる。
 彼は、夜色の帳に包まれた天を見上げて。

 僅かに唇開いて。
 誰にでもなく呟いていた。


「私は知りたいのだ。人は、私が抱いてしまった命題を否定できるのか、その価値を証明できるのか。
 地に火を放ち、空を灰色に染めてなお、その存在が許されるほどのモノであるのかを」


 ―――ああ、それは。

 その言葉は、ただ無機に満ちて。
 その言葉は、ただ無感に満ちて。

 空しく宙へと溶け消えた。一体どれほどの時間を、その探求に費やしたのか。
 神の如き業を振るい、しかし自らが神ではないと知るこの男が。
 一体何を求めているのか、少女はおのずと察することができて。


66 : アリス&ライダー ◆GO82qGZUNE :2016/06/14(火) 21:01:38 7F01VqtY0

「つまり、あなたは」

 この、万能なる男は―――

「【人類はこの世界で生きるに値するか】。ただそれだけを知りたいと、そう言うのね」

 少女の言葉に。
 男は、ただ笑って答えた。

「その通りだとも、遥か遠き異星の少女よ。人類を滅さんとして、しかしその内に希望を見出した狭間の半神よ。
 私はただ人々を見つめ、彼らの願いを叶えるだろう。そしてその果てに、我が命題は回答を得る」

 彼は願わない。
 彼は望まない。
 ただ、祈りにも似た渇望があるだけだ。

 あらゆる知識を炎にくべて。
 あらゆる存在を炎にくべて。
 自らを、昂ぶらせ燃焼させ続けるのみ。

 彼の願いがあるとすれば。
 彼の望みがあるとすれば。
 それは、全ての答えが出揃った時に。
 その答えこそが、彼の望んだ結末なれば。

「……なら、さっき言わなかった私の願い。その一つを、あなたに教えてあげる」

 だからこそ。
 少女が返すべき言葉など決まりきっていた。
 何故なら彼女は狭間の者だったから。
 神として滅びを願い、人として生を願い。
 その狭間で苦しみ、しかし一つの救いを得て。
 星を尊ぶ神として。
 絆を尊ぶ人として。
 狭間ではなく、そのどちらをも擁してあるがままに進んでいく者であるために。


67 : アリス&ライダー ◆GO82qGZUNE :2016/06/14(火) 21:02:23 7F01VqtY0

「わたしの願い、それは人と共存していくこと。
 だからわたしは、かつて滅びてしまったお父様の星を蘇らせたいと願う。そしてそこに生まれる命たちと、共に生きていきたいの」

 それは、その願いは。
 人の無価値を悟ってしまった男に対する、これ以上ない反証の願望で。
 だからこそ、それは彼女が言わなければならないことであった。

「わたしは……ううん、わたしたちは人の生きる世界を創るわ。
 そして問いたいの。わたしたちが創った世界は、彼らが生きるに値するものなのかって」

 それは、彼女が望んだ終の棲家。
 遥か異星に希う、始原と終末の形。
 星は永遠を運ぶ旅人なればこそ、名も無き旅人として在りたかった彼女が望む、それは理想の在り方で。


「―――なるほど。これは私では手が出せない願いというわけだ」


 あっけらかんとした声は男のものだった。
 既に緊迫した雰囲気は霧散して、男は気さくな調子を取り戻していた。
 少女は思わず、ぽかんとして表情を崩してしまう。あれ、これは一体なんだろう。

「私には望まれればそれを成せる万能があるが、しかしきみの願いは他者の手によって叶えられるべきものではないらしい。私は元より、聖杯でさえもその助力になりはしないだろう。
 ここで私が介入しては、それは単に無粋というものだ」
「え、ちょ」
「おや、いけないなマスター。レディがそのような顔つきをしては」
「いや、そうじゃなくて」

 言っててなんだか虚しくなってきた。彼は軽薄な顔をこっちに向けるだけだ。あれ、さっきまでの緊張感はなんだったんだろう。無駄に意気込んでシリアスなことを言った自分がアホらしく思えてきた。


68 : アリス&ライダー ◆GO82qGZUNE :2016/06/14(火) 21:02:47 7F01VqtY0

「ともかく。私はきみの願いを聞き届けた。ならば、きみが至るべき願いの果ては、やはりきみ自身の手によって為されるべきだろう」

 ぱん、と軽く手を叩き彼は言う。それは土砂降りの雨の中では酷くか細い音ではあったが、すんなりと少女の耳に入ってきた。

「今の私はサーヴァントだ。仕え奉じる者だ。きみを願いの果てへと至らせることはできないが、しかしきみを覆う囲いを取り払うことはできる。
 きみは存分に私という万能を使いたまえ。私はその一切に応えるとしよう」
「……いいの?」
「良いとも。既に言ったが私はサーヴァント、マスターの命に背くことはない」

 事実であった。彼は、嘘を吐くことがない。そして吐く必要もなかった。
 何故ならば、彼にとってもこの少女の元に喚び出されたことは本望であったのだから。

 本来であるならば、彼はサーヴァントなどというものに身を窶すことなどあり得ない存在であった。
 けれど、他ならぬこの少女の存在こそが、彼を此処まで導いた。
 かつて人類を鏖殺せんとした少女の、しかし人類との共存を選択した少女の願いに応じて。
 かつて人類に絶望し、しかし人類の可能性を信じた男は喚び出されたのだ。

「……なら、お願い。わたしのサーヴァント、わたしの盟友。
 わたしを、ここから、連れ出して」

 故に、彼は少女を通じて人々を見つめるだろう。
 嘆きの果てに消えぬ願いが。
 悲嘆の果てに潰えぬ望みが。
 その手に確かに在ったのだと、そう確信するために。

「―――賜った」

 そして、男は手を差し伸べる。
 その右手を、何か眩しいものへと掲げるように。
 ただ、少女へと―――

「そしてここに告げよう。我が真名はレオナルド・ダ・ヴィンチ。此度はライダーのクラスで顕現せし万能の王である。
 私は見つめ、そして導こう。きみの物語を、きみたちの物語を。
 そしてその行き着く果てを、我が命題への到達階梯とせん」

 ―――人を望んだ小さな神と、人を見定める神ならざる男。
 ―――共に人の輝きを望む二人の縁は、今ここに結ばれた。


69 : アリス&ライダー ◆GO82qGZUNE :2016/06/14(火) 21:03:22 7F01VqtY0

【クラス】
ライダー

【真名】
レオナルド・ダ・ヴィンチ@白光のヴァルーシア-What a beautiful hopes-

【ステータス】
筋力D 耐久A 敏捷B 魔力A++ 幸運A++ 宝具EX

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
対魔力:A++
数億の日々を生きたライダーの神秘は極まっており、極一部の例外を除けばあらゆる魔力干渉をシャットアウトする。

騎乗:A++
竜種を含めたあらゆる騎乗物を乗りこなせる。

【保有スキル】
無窮の叡知:EX
この世のあらゆる知識から算出される正体看破能力。
赤色秘本と緑色秘本の双方を目にし、三世の書を保有するライダーはおよそあらゆる物事を知っていると言っても過言ではない。

精神耐性:A++
精神ダメージへの耐性。

現象数式:A+
数式により世界を捻じ曲げる、チクタクマンの権能を模した異形の技術。
彼の数式は文字通りの万能であるが、今回の召喚に当たっては「不老」及び「不死に限りなく近い再生」のみに留まっている。

《完全独立》:-
現在は機能していない。

《万能王》:EX
ウォーモ・ウニヴェルサーレ。
その身は人に望まれたが故に万能となり、およそありとあらゆる物事を成し遂げることができる。しかしサーヴァントとして現界した都合上、彼の万能も正しく万能に成り得ていないのが現状である。
「原初の一」などの一部例外を除くあらゆるスキルを極めて高いランクで習得可能。
ただし、神授の智慧や魔境の智慧などと同じように、一度に使えるスキルは一つまで。

【宝具】
『三世の書』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
人類が終焉までに辿るすべての歴史が記されているという、伝説でのみ存在が伝えられている書。別名を史実の書という。
碩学協会こと《結社》はこの書のラテン語版写本を有しており、解読を進めることで、歴史の裏で暗躍する術をここから学び取ったと言われている。
ただし、現在この宝具が有する意味と意義の大半は失われており、ランクも大幅に低下している。


70 : アリス&ライダー ◆GO82qGZUNE :2016/06/14(火) 21:04:05 7F01VqtY0

『善なる左手』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
過去再生者にして無限増殖者。
無限の力にして無限の変容。ライダー自身、あるいは後述の宝具による「左手」で接触することにより、対象の「耐えられない現在」を無限に増殖させることで肉体と精神を変容させる。
およそ耐えられる知的生命体は存在せず、同ランク以上の菩提樹の悟りに匹敵する強固な精神防壁でも持たない限りは確実に死に至る。仮に回避したとして、この左手は周囲の空間ごと増殖するため完全な回避は難しい。

『巨いなりしは偽なる神威(《巨神》)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1
体長100フィートを超す鋼鉄の人型。物語を終わらせる裁定者にして機械仕掛けの神。
漆黒を湛えた鋼鉄の体表には青色に淡く輝く鱗粉の如き光がまとわりついている。頭部らしき部分で輝く“眼”の色は血の真紅。
万能なる者が数億の日々の果てに生み出した例外存在であり、顕現のプロセスが明確化したものでも確固とした技術体系によって形作られるものでもない。
意思なきあらゆる力を、鋼鉄を、鉛を、火を、暴風を、精神を、時間牢獄でさえこの異形の《巨神》は砕く。
ただ歩くだけで進行上の空間が消失し、白光の如き無色しか残らない。
世界から完全に独立している故に世界に対し多大な影響を与え、世界に遍く存在する総ての干渉を受け付けないが、世界そのものに対して敵対できないという性質を持つ。
なおこの《巨神》はあくまで神体ではなく偽神であるため、真実の《巨神》たるルリム・シャイコースの足元にも及ばないとか。

この宝具は現マスターが保有する規格外の魔力を以てすら発動が困難なほどの存在規模を有しており、令呪の補助があったとしても完全な顕現はほぼ不可能となっている。
しかし、マスターであるアリスに架せられた枷が外れた時には、あるいは―――

【weapon】
なし。

【人物背景】
物語の外に立つ者。
自らを万能であると嘯き、それに恥じない無限の知識と強靭なる精神を以て人類を観察し続ける何者か。
彼は人類を裁定し、その存在意義を探求し続ける。
その名はレオナルド・ダ・ヴィンチ。十碩学第六位《万能王》。しかしその名さえ真の名ではなく、七番目の名前。

【サーヴァントとしての願い】
自らが抱いてしまった命題を否定する。彼が抱いた命題とは以下の通りである。
『空を灰色に染め地に火を放つ人類に価値はない』

【方針】
アリスという存在を通して人類を推し量る。



【マスター】
アリス@アリスの標本箱

【マスターとしての願い】
人類との共存の可能性を探す/?????

【能力・技能】
半神である彼女は不老長命かつ、本来ならば星を脱するほどの力を持つ。
しかし今回の聖杯戦争においてはその力の大半を封じられ、少なくともサーヴァントに伍するほどの戦闘力は持たない。

【人物背景】
人を憎み、世界を憎み、星を滅ぼさんとした神の末裔。
旅を愛し、人を愛し、世界を愛し、ただ父親に愛されたかっただけの一人の少女。
タルタロスに堕ちる直前より参戦。

【方針】
一つ目の願いも、二つ目の願いも、聖杯を通じて得られるものではないと分かっている。
だから、せめて旅をしたい。
この星の景色を目に焼き付けて、見知らぬ人々の思い出を心に刻んで。自分の世界を広げて。
いつの日にか父と向き合えるように。


71 : 名無しさん :2016/06/14(火) 21:04:28 7F01VqtY0
投下を終了します


72 : ◆69lrpT6dfY :2016/06/19(日) 23:05:52 9jrlbgdM0
以下の5作品の使用フリー化を宣言します。

「夢現聖杯儀典:re」候補作
 【サラ&キャスター(ベアトリーチェ)】 ttp://www63.atwiki.jp/letsrebirth/pages/75.html

「邪神聖杯黙示録 - Call of Fate -」候補作
 【繭&キャスター(ゼロ)】 ttp://www8.atwiki.jp/21silverkeys/pages/138.html
 【フィオレ・フォルヴェッジ・ユグドミレニア&ランサー(ハムリオ・ムジカ)】 ttp://www8.atwiki.jp/21silverkeys/pages/129.html
 【白河ことり&キャスター(古明地さとり)】 ttp://www8.atwiki.jp/21silverkeys/pages/141.html

「Fate/Fanzine Circle-聖杯戦争封神陣-」候補作
 【マカオ&アーチャー(ボン太くん)】 ttp://www8.atwiki.jp/kamakurad/pages/33.html


以上の作品をもし採用される場合は、こちらのスレまでご一報ください。
なお、採用される方の手で上記の作品を内容修正して別企画に流用しても構いません。クラスやスキル、宝具などの変更もOKとします。
また、こちらの都合により修正要求にはあまり応じられないと思いますのでご了承ください。


73 : ◆UwuZt7dr4s :2016/06/21(火) 21:29:22 4PMeFKv.0
以下の作品をフリー化させて頂きます。
使用の際、必要があればこちらで修正致します。

「Maxwell's equations」候補作
【アナスタシア&キャスター】ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/64.html
【オルガマリー&ランサー】ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/40.html


74 : ◆UwuZt7dr4s :2016/06/21(火) 21:33:40 4PMeFKv.0
それと記念に投下させていただきます。


75 : 塩見周子&セイバー ◆UwuZt7dr4s :2016/06/21(火) 21:34:07 4PMeFKv.0






あたしらしく、新しくなれたらよかったのに。





◆◆◆◆


76 : 塩見周子&セイバー ◆UwuZt7dr4s :2016/06/21(火) 21:34:50 4PMeFKv.0


生まれは京都の老舗の和菓子屋だった。
彼女が産声を上げた時から、後継となることは決まっていた。
両親は一人娘を厳格に、そして大切に育てた。
塩見家の娘として、和菓子屋の跡取りとして。
相応しくあれ、という想いを胸に彼女を育て上げた。
彼女がそんな実家を窮屈に思ったのは、幾つの時だったか。

塩見周子という人間を一言で表すならば、奔放だ。
呑気で、遊び好きで、気まぐれで。
そして、誰よりも自由だった。
この世に生まれたんなら、せめて楽しく生きたい。
それが彼女の信条だった。

それは元来の性格だったのか、両親の躾に対する反動だったのか。
今となっては解らないし、本人もきっと理解していない。
ただはっきりと分かるのは、周子は次第に反発するようになったということだけ。

幼い頃から和菓子屋の娘として育てられた周子は、思春期を機に変わり始めた。
実家に縛られているような感覚を、仄かに理解し始めたのだ。
別に和菓子屋が嫌いというわけではない。
自分を育ててくれた両親には感謝しているし、甘い和菓子だって大好きだ。
ただ、なんとなく、今の環境が窮屈だと思った。
今が楽しくないな、と思った。

そうして気がつけば、店の手伝いを怠るようになった。
気の向くままに外で遊び歩くようになった。
髪だって自分の好きな色に染めた。
両親の教育に背くように、塩見周子は自由気ままな人間へと変わった。
「塩見家の娘がこんなことでは」と両親から嘆かれるのはしょっちゅうだった。
あの頃の自分は不良だったんだろうなー、と今の周子は振り返るだろう。

それでも結局、周子の帰れる場所は和菓子屋しか無かった。
どれだけやんちゃしても、どれだけ勝手に夜歩きしても。
彼女は、和菓子屋の塩見家という檻から抜け出すことは出来なかった。
不良のまねごとをしたところで、結局周子は生まれた環境から飛び出せないのだ。
そう気づいたのは、やはり思春期の半ば。


77 : 塩見周子&セイバー ◆UwuZt7dr4s :2016/06/21(火) 21:35:19 4PMeFKv.0

自分はきっと、これからも両親の世話になり続けるのだろう。
うだうだと反発したって意味はない。
このまま実家で和菓子を売ることに一生を費やすことになるのだろう。


まあ、人生なんてそういうもんか。
文句言ってたって仕方ない。
半ば妥協するように、そう思うことにした。


店番を再び手伝うようになったのは、高校に入ってそれなりに経った頃から。
それでも周子は大した仕事はしていなかったし、出来ることなら気楽にヌクヌク過ごしたいな、なんて思っていた。
どうせ和菓子屋を継がなきゃならないんなら。
せめてのんびりと、気ままにやらせてほしい。
それが周子の想いであり、妥協の中でのせめてもの反発だった。

そして、周子が18歳になり。
ある日出会ったのが、一人の男性だった。
店番をしていた周子に男性は話しかけてきた。
彼は周子に名刺を差し出し、こう告げたのだ。



「アイドルに、興味は無い?」



◆◆◆◆


78 : 塩見周子&セイバー ◆UwuZt7dr4s :2016/06/21(火) 21:35:56 4PMeFKv.0


夕焼けで、空が燃える。
茜色に染まった光が街を覆い尽くす。


夕方の街、交通量の少ない道路。
そのすぐ横の歩道を歩く少女が一人。
ブレザーの制服。肩にぶら下げた鞄。
その姿を一目見れば、すぐに学生と解るだろう。
一際目立つ銀色の髪を靡かせながら、少女はふわぁと欠伸をする。
やはり学校帰りは何となく眠くなる。
すぐに家に帰ってゆっくり休もうか。
それとも、休憩がてら少し寄り道しようか。
そんなことをぼんやりと考えながら、少女は空を見上げた。

彼女の名は、塩見周子。
プロデューサーにスカウトされ、アイドルになった筈の少女。
そして、この聖杯戦争に巻き込まれたマスター。

彼女はつい最近になって己のサーヴァントを呼び寄せ、現状について一通り話は聞いている。
曰く、聖杯戦争。
マスターとサーヴァント、二人一組の戦い。
願いが何でも叶えられる『願望器』というものがあって。
それを巡って、何組もの参加者が殺し合う。
最期に勝ち残った組だけが、聖杯を得られる。
周子はそう聞いている。
己のサーヴァントである『セイバー』が教えてくれた。
そのことについて、周子は自分なりに頭の中で考える。

正直言って――――あまり実感が無い。
自分は殺し合いの真っ直中にいて。
いつでも誰かに殺されるかもしれなくて。
生きる為には、セイバーを使ってその誰かを殺すしかない。
あまりにも過酷な環境であり、あまりにも殺伐とした世界だ。
しかし、周子の目の前に広がっているのは安穏とした日常に過ぎなかった。
今この眼に映っているものと言えば、雑居ビルや商店、住宅などが並ぶ地味な街並。
とても戦いの巻き起こる場所には見えなかった。

そんな街を眺めるだけでも、周子は何となく落ち着いたような気分になれる。
この街は所詮、聖杯戦争の会場として用意された紛い物に過ぎない。
見覚えの無い場所、見覚えの無い交遊関係が用意されている、偽りの世界。
それでも、親しいクラスメイト達がいる。
遊びに行く予定の話とか、恋の話とか。
そんなのどかな青春の語らいが出来る安らかな一時がある。
殺し合いなんて考えず、のんびりと帰路に着くことだって出来る。
仕事のことも考えずに、ぶらぶらと遊び歩くことだって出来てしまう。
例え嘘であっても、此処に在るのは間違い無く穏やかな日常だ。

これが、『聖杯戦争』とやらの舞台なのだろうか。
何組もの参加者が殺し合う、凄惨な戦場なのだろうか。
シンデレラガールになってからの日常と比べれば余程平和で気楽とさえ思えてしまう。
それとも、ただ自分が何も知らないだけなのか。
いくら考えたところで解らない。
そもそも周子は、聖杯戦争というものを未だに目の当たりにしていないのだから。


79 : 塩見周子&セイバー ◆UwuZt7dr4s :2016/06/21(火) 21:36:26 4PMeFKv.0

もしも本当に聖杯戦争が血みどろの戦いで。
誰かに殺されそうになったとして。
その時、自分は自分のままでいられるのだろうか。
気ままにのんびり過ごす、なんて言っていられるのだろうか。
死ぬことや苦しいことは、勿論辛い。
だが、それ以上に、周子は自分が自分でいられるのかが不安で仕方無かった。
然るべき時が来て、恐怖に呑まれたとして、その時自分はどうなってしまうのか。
自分でさえ解らぬ未知の自分自身に、周子は恐怖を覚えていた。


出来ることなら、いつまでも奔放で居続けたい。
『気楽で自由なシューコちゃん』こそ、塩見周子が知る自分自身なのだから。


のんびりと歩き続けた矢先、歩道近くの施設が視界に入る。
こじんまりとした公園である。
其処にあるものと言えば、小さな砂場と申し訳程度のベンチくらい。
親子連れでさえ余り訪れることのない地味な場所だ。
普段からその有様である上に、夕方のこの時間は特に閑散としている。
それ故に、周子にとっては格好の休憩所なのだ。

そういえば、鞄の中にお菓子もしまっていた。
丁度いい。折角だし、『いっつぁん』と少し休んでいこうかな。
周子は帰路に着いていた足取りを公園へと向けた。
公園へと足を踏み入れ、すたすたとベンチへと座り込む。
ベンチに腰掛けた周子は、通学鞄の中に入っていた菓子袋を取り出した。
それは抹茶味のクッキー。いわゆる「和菓子もどき」である。
クッキーを取り出した周子は、ふっと虚空へとそれを差し出す。
誰もいない筈の方を向き、彼女は声をかけた。


「いっつぁん。一緒に食べよー」


彼女の傍に居た『彼』は霊体化を解き、ベンチに腰掛ける周子の隣に姿を現す。
時代錯誤な和服。ごく短い短髪に、髭の生えた顔。右手に握られた杖。
そして、まるで眠っているかのように閉ざされた両の瞼。
あからさまに変わった風貌の男は、サーヴァントだった。

彼こそが塩見周子の従者。
盲人でありながら無双の剣士として活躍した、任侠の英雄だ。
サーヴァントとしてのクラスはセイバー。
『いっつぁん』とは、彼の真名をもとに周子が付けたあだ名である。


80 : 塩見周子&セイバー ◆UwuZt7dr4s :2016/06/21(火) 21:36:57 4PMeFKv.0

「頂くとしましょうかい。辱い、お嬢さん」
「お嬢さんじゃなくて、周子だよシューコ。言ったでしょー?」
「ああ、そうでしたね。すいやせん、周子さん」

ベンチに恐る恐ると腰掛けたセイバーは、ゆっくりと左手を動かす。
そして周子が差し出していたクッキーを受け取り、口に運んだ。
サーヴァントは食事の必要こそ無いが、食事そのものを楽しむことは出来る。
食とは生物にとって最大の欲求の一つ。
食を喰らい、味を楽しむことはセイバーにとっても満更ではなかった。

「これは美味いですなァ。こんな甘味は初めて味わいます」
「ふふ、どーも。気に入ってくれたのなら何よりだよー」

顔が綻ぶセイバーを見て、周子もまた笑みを浮かべる。
クッキーを口に運び、静かに咀嚼する彼の姿をじっと見つめる。

「周子さんも食いなさんな。折角の休息ですから」
「おっと、そうだね。ありがとね、いっつぁん」

周子がこのセイバーと出会ってから、まだ一日も経っていない。
彼について知ることはクラスと真名、そして両目が見えないということだけ。
それでも周子は、少ない交流の中でセイバーに少なからず好感を抱いていた。
颯爽としていて、どこか変わっていて、そして謙虚で不思議な魅力のある彼のことを好んでいた。
『大人』にここまでの安心感を覚えたのは、プロデューサー以来かもしれない。
それ故に周子は自分の差し出したクッキーを彼が気に入ってくれたことに喜びを感じる。

「そういや、周子さん」
「ん、何ー?」
「周子さんァ、唄や踊りで皆を楽しませる“あいどる”を生業としていたんですよね」

ふと、そんなことを聞かれて。
周子は僅かな沈黙の後、「そうだよー」と頷いた。
一応、周子は自分の身の丈を彼に話している。
彼と初めて出会ったあの時、18歳のアイドルであるということを明かしている。
セイバーはアイドルというものが何なのかよく理解していなかったが、周子は「歌や踊りでみんなを楽しませる職業」とざっくり教えていた。
どうやら、セイバーはアイドルとしての周子に興味を抱いているようだった。
盲目である彼は、「見て」楽しむことはできない。
しかし歌ならば、「聴いて」楽しむことができる。

「折角の機会ですし、いっぺん唄を聴かせちゃあくれませんか」

だから彼は周子にそう頼んだ。
まだ出会ってから間もない自らの主人の唄を、聴いてみたいと思った。


81 : 塩見周子&セイバー ◆UwuZt7dr4s :2016/06/21(火) 21:37:22 4PMeFKv.0
そんなセイバーの頼みに、周子はきょとんとした表情を浮かべる。
咀嚼していたクッキーをごくりと飲み込み、少しだけ迷うように周囲を見渡す。

一応、周囲に人の姿はない。
夕方にこんな場末の公園に人が訪れることはないだろう。
通行人が近くを通る可能性も否定はできないが。
まあ、その時は仕方ない……かもしれない。
それでも、誰かから「唄を聴きたい」と言われれば満更ではなかった。
周子は少し考えた後、再びセイバーの方へと顔を向ける。

「いいよー。聴くからにはちゃんと聴いてよね、いっつぁん?
 こう見えて、あたしって結構スゴいんだから」

ふふんと少し自慢げな微笑を浮かべる。
こう見えて、周子は歌には自信がある。
プロデューサーや同僚のアイドルからも一目置かれる才能だ。

周子は、ふと思う。
こうやって気ままに歌うのが、一番楽だ。
好ましい人たちに、好きなように歌を聴かせてあげるのが自分の性に合っている。
久々の機会を得られて少しだけ胸躍ると同時に、周子の心中に複雑な思いが浮かび上がる。
この聖杯戦争から抜け出して、元いた場所に戻れたとして。
『アイドルの塩見周子』としてこんな気持ちで歌える機会は、もう来ないんだろうなと自覚する。
それが、なんだか無性に寂しい。
楽しく歌えたあの頃を、恋しく思う。
あの夕焼けのように綺麗だった光景――サイリウムの輝きを見渡せるステージ――も、今では重荷にさえ感じてしまう。
輝きに恋い焦がれていた頃が、塩見周子の色に染まっていたあの頃の思い出が、こんなにも愛おしい。

かといって、聖杯とやらを手にしてでも過去を取り戻したいかと聞かれてしまうと。
答えは否、という中途半端な状況だ。

死ぬのは怖いし、何でも願いが叶う道具の魅力だって解る。
それでも他人を殺してでも生き残る度胸なんて無い。
殺伐とした世界に身を投じてしまった自分がどうなるのかも解らないから、尚更戦いが怖い。
でも、誰かを殺さなければ自分は生きて帰れない。
そんなジレンマに挟まれ、周子は目を逸らした。
聖杯戦争という現実と真面目に向き合おうとすることもなく、安穏とした日常に身を寄せた。
普通の学生らしく日々を過ごし、従者である『いっつぁん』と交流する。
それだけでも彼女は楽しかったし、気楽であったし。
何よりも、安心できた。
だからこそ、周子は『いっつぁん』の為に歌うことも吝かではなかった。



『声をあげることもなく ひとり静かに――――』



塩見周子が、静かに唄を紡ぐ。
ガラスの靴を脱いだ少女は、ただ一人の盲人のために唄を捧げる。


◆◆◆◆


82 : 塩見周子&セイバー ◆UwuZt7dr4s :2016/06/21(火) 21:37:56 4PMeFKv.0


塩見周子はプロデューサにスカウトされ、そしてアイドルになった。
両親から告げられた言葉は「やるからには真面目にやれ」。
アイドルになることをあっさりと承諾してくれた両親に驚きつつ、周子は実家から飛び出した。

渡りに船とはこのことかな、と当時の周子は思った。
どうせ家に居続けたって、自分はだらだらと過ごすことしか出来ない。
そんな娘なんて追い出されて当然だと思うし、いい自立の機会だと思った。
それに、ようやく『外』へ飛び出せるのだ。
何となく居辛くなっていた実家に居座るより、外でもっと楽しいことを探す方が性に合っている。
まあ、アイドルも楽しくなかったら。
その時はその時だ。
つまんなくなった時には、テキトーにやるか、テキトーにやめるかのどちらかだ。
そう思っていたのも、少しの間だけだった。

周子には才能があった。
それなりの運動神経と歌唱力を備えていた彼女は、レッスンやライブを経て着々と実力を伸ばしていった。
プロデューサーから「今日の歌も良かった」とか「可愛かったぞ」とか褒められて、少し照れ臭く思うこともあったが。
それでも周子は、悪い気はしなかった。

やがて周囲からも大型新人として少しずつ取り上げられるようになってきた。
雑誌の取材や撮影など、歌や踊り以外の仕事を受けることも少なくなくなった。
アイドルになった周子の日々は、輝いていた。
大変だったけど、新しい体験ばかりで楽しかった。
何かに夢中になることを初めて見つけられて、嬉しかった。
周子の才能は、やがてアイドルへの熱意として実を結んだ。
熱意に背中を押され、周子はアイドルとしての階段を駆け上がった。



そして、周子は。
全てのアイドルの頂点たる称号、シンデレラガールの座を勝ち取った。



夢のような想いだった。
アイドルという非日常に胸を躍らせ、アイドルを楽しみ抜き。
そして眩い星の輝きに憧れ、走り続けた。
熱意はいつしか向上心へと変わり、周子を奮い立たせていた。
故に彼女が喜ばない筈が無かった。
シンデレラガール――――トップアイドルの座を勝ち取ったのだから。
他のアイドル達。
会場で見守る何百、何千人ものファン。
そして、此処まで自分をずっと支えてくれたプロデューサー。
皆がいたからこそ、周子はここまで上り詰められた。
嬉しかった。幸せだった。
その、はずだった。


それ以来、周子を取り巻く世界は変わった。
皆が、期待の眼差しを向けるようになった。
「シンデレラガール」への期待、願望を、一身に向けられた。


83 : 塩見周子&セイバー ◆UwuZt7dr4s :2016/06/21(火) 21:38:22 4PMeFKv.0

塩見周子は凄い。
塩見周子は天才だ。
だから。
塩見周子が下手を踏む筈が無い。
塩見周子ならこれくらい出来て当然だ。
塩見周子は結果を出して当たり前。
塩見周子はシンデレラガールなのだから。
彼女の周囲にいるスタッフ、アイドル達は、そう思っていた。
時に嫉妬の眼差しを向ける者もいた。
ぽっと出でありながら頂点にまで上り詰めた周子を羨み、妬む者が少なからずいた。
そして陰口を叩かれ、身に覚えの無い噂を流されることもあった。
憧れの天辺まで辿り着いて周子が得られたものは、息苦しさだった。

それと同時に、プロダクションの重役達は、周子を重要な存在として重用するようになった。
トップスターとして、稼ぎ頭として、彼女に惜しみない投資と期待を向けるようになった。
それが周子の心の重荷となることなど、彼らが知る由もなく。
以来、プロデューサーも変わってしまった。
何でも上からの圧力が掛かっているらしく、彼は上の意向で用意された仕事を遂行するだけの存在となった。
自分がプロデュースする周子がシンデレラガールになったというプレッシャーと、その周子で稼ぎたい上司の意向の板挟み。
最早周子の意思を汲んでいる余裕など無い。そんなことをすれば、周子は輝き続けられなくなってしまう。
結果、周子のプロデューサーは利益を最優先とする上層部の操り人形も同然となった。

周子に用意されるのは、完璧にお膳立てされた舞台と衣装。
完璧であるが故に面白みが無く、戸惑いを感じるステージ。
今までのプロデューサーなら、周子の意思を汲んで仕事を取っていただろう。
だが、最早彼に周子の感情を考慮している暇などなかった。
周子はシンデレラガールであり、ただの一介のアイドルでは済まされない領域にまで来てしまったのだから。
少しでもミスや不手際をすれば、大きな問題になる。

憧れ。期待。嫉妬。下心。打算。
周子に関わる者、遠目で周子を見る者が抱く感情は様々だ。
いずれにせよ、そのどれもが周子の重荷となっていた。
無論、それでもライブなどの仕事はそつなくこなしている。
それが自分のやるべきことであり、シンデレラガールになった塩見周子の役目なのだから。
しかし、一つだけ――――とても悲しいことがある。
それは、恋い焦がれるように抱いていたアイドルへの熱意が、今ではすっかり枯れてしまったということだ。


「こうあるべし」と言われて。
自分の役割を期待されて。
面倒なしきたりや、窮屈な小言に縛られて。
ああ、結局―――――実家にいた頃と変わらない。


非日常なんて、少し慣れてしまえば日常だ。
夢の世界だと思っていたアイドルの業界だって同じだ。
楽しかった未知の体験も、慣れてしまえば『仕事』でしかない。
アイドルとはプロの仕事だ。損益の介在するビジネスなのだ。
そこは子供が自由気ままに夢に浸れる世界ではない。
奔放な少女が、奔放なままでいられる場所ではない。
プロの世界の頂点に立ち、周囲から「在るべき姿」を押し付けられ、そうして周子は漸く幻想から眼を覚ました。



――――何だか、楽しくなくなっちゃったなぁ。



夢の頂点に立った少女は、夢への憧れを失った。
そして、悲しみと諦観を抱えた灰被りの姫君は。
奇跡を巡る戦いへと誘われることになる。


◆◆◆◆


84 : 塩見周子&セイバー ◆UwuZt7dr4s :2016/06/21(火) 21:38:53 4PMeFKv.0


「……いい歌ですなァ、周子さん」


塩見周子のデビューソング『青の一番星』。
プロデューサーの依頼によって作られた、塩見周子の為の楽曲。
彼女を意識した歌詞や曲調は、多くの者を魅了した。
セイバーもまた、歌唱を終えた周子の唄を賞賛していた。
口元を綻ばせ、微笑みながら軽く拍手をする。

「ありがとね。そう言って貰えると嬉しいよ」
「いやァ、見事な歌声でした。あなたの唄う姿がありありと浮かんできましたわ。
 きっと周子さんはさぞ美しい女子なんでしょうなあ」

伴奏もメロディーも無い中での歌唱だった。
そのため周子は少しばかり反応に緊張していたが、安堵の表情で礼を言う。
朗らかな笑みを浮かべるセイバーの褒め言葉を少し照れ臭く思う。
たった一人のために歌を披露するなど、初めての経験と言えるかもしれない。
それだけに、こうしてセイバーに賞賛して貰えるのは嬉しく思う。
出会った当初は『古今東西の英雄』と聞いて少し身構えていたこともあったが、やはり優しく大らかな彼には親しみを感じる。
サーヴァントと言えど、やはり人間であることに変わりは無いのだ。
周子はそう思った後、ふとあることに行き当たる。

「……ねえ、いっつぁん」
「はい、何でございやすか」
「いっつぁんって、叶えたい願いとかあるの?」

周子はふと、セイバーにそう問いかけた。
聖杯戦争とは奇跡の願望器を巡る争い。
勝ち残った人組だけが願いを叶える資格を得られる。
セイバーもまた、そんな闘争に参加した英雄の一人。
ならば、彼にも何か願いがあるのではないか。
交流の最中で周子はそう思ったのだ。
しかし、セイバーが返してきた答えは意外なものだった。

「願いなんてモンはありやしません。
 あっしはただの流れのやくざ、それも『めくら』ですからね。
 高望みの出来る人間じゃあねえと自覚していますよ」

気さくに微笑みながら答えるセイバー。
そんな彼に周子は目を丸くし、意外そうな表情を浮かべる。

「でもさ、目が見えるようになりたいとか、そういうのって思ったことは無いの?」
「無いと宣えば嘘になります。ですが、奇跡なんて大層なもんに祈るほどの願いじゃありませんや。
 奇跡ってえのは、お天道様の下で生きてる人間のためにあるもんでしょう」

あっさりとそう言ってのけたセイバーに、周子は驚きを隠せずにきょとんとする。
セイバーは、この聖杯戦争への願いを持ち合わせていなかった。
自分は奇跡に縋るほどの願いを持ち合わせていないし、奇跡というものも今を生きる生者のためにあるものだ。
他のサーヴァントが何を考えているのかはともかく、少なくとも彼はそう認識していた。

「だが、願いすら無い死人のめくらが周子さんの従者として呼び寄せられた。
 これも何かの縁とあっしは捉えております。だからこそ、従者としての筋目ァ通させて頂きます」

彼女の方へと顔を向け、セイバーは断言する。
願いが無くとも、周子の従者として呼び寄せられたのは何かの縁だ。
ならばその縁に応え、筋を通すだけだ。
迷わずそう答えるセイバーに戸惑いつつ、周子は問いかけた。


85 : 塩見周子&セイバー ◆UwuZt7dr4s :2016/06/21(火) 21:39:23 4PMeFKv.0

「本当にいいの、いっつぁん…?」
「それが『さあばんと』として此処に来た自分の為すべき義理です」

困惑する周子に対し、セイバーは変わらず己を意思を貫く。
サーヴァントとはマスターの従者。
マスターと共に戦い、マスターを守ることが役割。
周子に呼ばれたことが縁ならば、周子のために戦うことこそが筋だ。
それを貫き通すためならば、汚れ仕事を担う覚悟も背負っている。

「あっしは周子さんのしてえことに付き合います。
 周子さん。貴方は何がしてえのか、何を願っておられるのか、聞いておりませんでしたね」

だが、あくまで重要なのは周子自身の意思。
彼女が何を成したいのか、どうしたいのか。
それを未だに聞いていなかったが故に、セイバーは問う。

自分が何をしたいのか。
そう聞かれた周子の胸の内に、不安と恐怖が仄かに込み上がる。
今の自分がどうしたいのかさえ、解らない。
聖杯戦争という現状でどう動くべきなのかも、はっきりと決めていない。
勝ち残るのか、それ以外の道を探すのかさえ未定だ。
自分の願いというものも、殆ど考えていない。
沈黙が場を包む中で、周子は記憶を思い返す。


和菓子屋で生まれ、両親から厳しく育てられた日々。
そんな家に反発し、遊び歩くようになった思春期。
それでも結局自分の居場所は実家しか無いと、半ば諦観のように悟った瞬間。
店番をしていた自分の下に現れたプロデューサー。
それから、アイドルになって。
楽しい日々が続いて。
それから―――――――――。


そして、周子は思う。
一つだけ、願いを上げるとしたら。
これしかないな、と。



「……楽しく生きたい、かな」



悩んだ末に搾り出した、彼女の願い。
それは何よりも在り来たりで、曖昧な望み。
しかし夢に幻滅した少女にとって、何よりも強く想った願望。


86 : 塩見周子&セイバー ◆UwuZt7dr4s :2016/06/21(火) 21:39:58 4PMeFKv.0
楽しく、奔放に、気ままに生きたい。
それこそが塩見周子という少女のモットーである。
実家での窮屈な生活ではそう生きることも出来ず、彼女は外の世界に希望を見出した。
しかし、希望もまた現実という壁によって失われた。
アイドルへの熱意を滾らせて階段を駆け上がり、アイドルの頂点たるシンデレラガールになり、その結果アイドルへの熱意を失った。
実家も、アイドルも、結局どちらも彼女にとって窮屈な世界に過ぎなくなった。

自分が自分で居られる場所は、何処だったのだろう。
実家で大人しく過ごしていれば、そのうち窮屈なりの幸せを掴めたのだろうか。
下手に向上心を持たず、アイドルとして程々の活動をしていれば、ずっと楽しい時間を過ごせたのだろうか。
そもそも、あの頃の自分が何も知らない子供だっただけだったのだろうか。
思うがままに願いを叶えられれば。
聖杯を掴めば―――また、思い出になってしまった楽しい時間を取り戻せるのだろうか。


(今はまだ、よくわかんないな)


『楽しさ』とは奇跡に縋ってでも取り戻すべきものなのか、それとも自分の手で探すべきものなのか。
結局、今も答えは出ていない。
いっそこのまま、ずっとのんびりと現実から目を逸らしてみようか。
厳格な和菓子屋の実家よりも、完璧を求められるアイドル業界よりも。
殺し合いの舞台として用意された箱庭の方が、気負うものがなくてよっぽど気楽だ。
それに、『いっつぁん』はいい人だ。
自分のことを気遣ってくれるし、彼と話していると何となく気が楽になる。
いっつぁんとこのまま暢気に日々を送るのも、それはそれで悪くないかもしれない。
周子はそう思っていた。

同時に、彼が聖杯戦争という『現実』を遠回しに突きつけていたことも、仄かに理解していた。
こんなことが現実逃避に過ぎないというのは、自分でも解っている。
いつかは選択の時が来るということは、周子自身理解している。
その時に何を選ぶのかは、今の彼女には解らない。


(……いっつぁんを戦わせなきゃならない時も、いつか来るのかな)


周子の言葉を聞き届けた従者は、ただ無言で佇むのみだ。
彼女にとって、口惜しかったこと。
それは、『いっつぁん』には『歌』を届けることは出来ても。
塩見周子の『姿』を、見せられないということ。


◆◆◆◆


87 : 塩見周子&セイバー ◆UwuZt7dr4s :2016/06/21(火) 21:40:19 4PMeFKv.0



兇状持ちのやくざ。
裏街道を歩く渡世。
云わば己は、天下の嫌われ者。
故に己は、筋を通さにゃならない。

己を従えるは唄歌いの女子。
未だ覚悟を決められぬ、若き乙女。
だが、それも致し方ない。
女子は己のような泥とは違う、御天道様の下で歩ける人間だ。

主人を守るのは、己のような従者の役目。
敵を殺めるのは、己のような泥の役目だ。
乞食同然の『座頭』ならば失うものは何もない。
ならば己が、汚れ役を買って出よう。

願いは無いが、確かに呼び掛けに応じた。
これも何かの縁(えにし)ならば。
主人(おなご)の為に剣を取るのも―――悪かねえ。



.


88 : 塩見周子&セイバー ◆UwuZt7dr4s :2016/06/21(火) 21:40:46 4PMeFKv.0

【クラス】
セイバー

【真名】
市@座頭市シリーズ(勝新太郎版)

【パラメーター】
筋力C+ 耐久C 敏捷B 魔力E 幸運C 宝具D

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
対魔力:E
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
彼自身に対魔力が皆無なため、セイバーのクラスにあるまじき低さである。

騎乗:E
乗り物を乗りこなす才能。
馬程度なら一応操れるが、乗りこなすことはできない。

【保有スキル】
直感:B+
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を「感じ取る」能力。
市の場合、匂いや音、気配によって通常時においても周囲の状況を察知することが可能。
盲目であるが故に身に付けた、一種の心眼。

無光の武芸:B
修練によって体得した達人級の剣術。
刀を用いた攻撃を行う際、命中率にプラス補正が掛かる。
また敵の攻撃に対する反撃を行う際に有利な補正が掛かる。
光無き盲人でありながら、その剣の技量は卓越している。

無窮の武錬:C
無双の域にまで到達した武芸の手練。
心技体の完全な合一により、いかなる精神的制約の影響下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。

風来の侠客:B
御天道様の下から外れた裏街道を往く在り方。
真っ当な堅気の道を歩めず、兇状持ちの賞金首として各地を転々とする流れ者。
同ランク以下のカリスマを無効化する他、同ランクの単独行動スキルを兼ね備える。

【宝具】
『座頭市』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:5
盲目の剣客が鍛練の末に身に付けた神速の居合。
技術による純粋な“技”でありながら、己の通り名を冠する宝具の域に達した魔剣。
この居合を放つ際のみ、市の敏捷値はA++ランク相当にまで跳ね上がる。
余りの抜刀の速さ故に相手のあらゆる攻撃・防御・回避行動に対し有利な判定が得られ、ほぼ『確実』に相手よりも『先手』を取れる。

【weapon】
杖に仕込んだ居合刀

【人物背景】
各地を放浪する盲目の侠客。
普段は按摩や博打などで生計を立てている。
己が世間の逸れ者であることを自覚し、それ故に義理と筋を通すことを重んじる。
居合の達人であり、その太刀筋は神速の域に達している。
市は流れ者として諸国を旅し、時にその居合を駆使して悪人を挫く。

【サーヴァントとしての願い】
なし。
ただ、従者として呼ばれたからには筋を通す。

【方針】
今は塩見周子を守る。敵が襲ってくれば容赦はしない。
ただし、最終的には周子の意思を尊重。


89 : 塩見周子&セイバー ◆UwuZt7dr4s :2016/06/21(火) 21:41:12 4PMeFKv.0

【マスター】
塩見 周子@アイドルマスター シンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
これからも、楽しく生きていたい。

【weapon】
なし

【能力・技能】
歌やダンス等において高い技術を持つ。

【人物背景】
京都出身のアイドル。18歳。
自由奔放でノリは軽く、遊び人気質な性格。
実家は和菓子屋だが、当人曰く「ダラダラしていた」らしく真面目に家業を手伝ってはいなかった。
そんな時にプロデューサーにスカウトされ、家を飛び出すような形でアイドルになる。
当初は軽い気持ちで仕事に臨んでいたものの、やがてアイドルとして前向きに進むようになる。
その後彼女は第四回シンデレラガール総選挙で1位に輝き、アイドルの頂点たるシンデレラガールの称号を勝ち取った。

【方針】
どうしよっかな。


90 : 名無しさん :2016/06/21(火) 21:41:40 4PMeFKv.0
投下を終了します。


91 : ◆ZjW0Ah9nuU :2016/06/23(木) 23:49:52 qCCRTmjw0
>>32に加え、下記の候補作のフリー化を宣言します。
また、私の候補作に限り、>>32に記載されております備考を以下のように改訂いたします。
これは>>32の候補作の全てにも適用されるものとします。

採用される方がおりましたら、勝手に内容修正して別企画に流用しても構いません。
ステータスシートの改変もOKとします。最悪、キャラクターの組み合わせを変えてくださっても結構です。
なお、こちらの都合により修正要求にはあまり応じられないと思いますのでご了承ください。


・フリー化候補作

・「夢現聖杯儀典:re」候補作

【ケン&バーサーカー(エクスイ)】 ttp://www63.atwiki.jp/letsrebirth/pages/123.html

・「Fate/Reverse ―東京虚無聖杯戦争―」候補作

【海パン刑事&ランサー(ドンキーコング)】 ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/209.html

【イレギュラー(パイロン)】 ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/229.html

・「柩姫聖杯譚/Holy Embryo」候補作

【暁&アーチャー(アカツキ)】 ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1458363246/236-245
(「Gotham Chalice」様の方でも投下しています→ ttp://www63.atwiki.jp/gotham/pages/64.html )
(「Maxwell's equations」様の方でも投下しています→ ttp://www25.atwiki.jp/infinityclock/pages/27.html )


92 : ◆cT.c4WK4wQ :2016/06/23(木) 23:52:36 qCCRTmjw0
トリップが違いますが、>>91と同一人物です。

>>91に続いて、以下2作のフリー化も宣言します。備考も>>91のものに順じます

・「Fate/Reverse ―東京虚無聖杯戦争―」候補作

【アエ&ミュータント(フー・ファイターズ)】 ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/150.html

【矢澤にこ&バーサーカー(アルフレッド/ハート)】ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/101.html


93 : ◆yaJDyrluOY :2016/07/03(日) 23:54:41 4IJv/5FQ0
今更ながら過去に投下した候補作の一部をフリー化させていただきます

【Fate/Reverse ―東京虚無聖杯戦争―】

相川始&バーサーカー(SCP-682)
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/46.html

徳川光成&アサシン(服部半蔵)
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/129.html

エクスデス&バーサーカー(SCP-1111)
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/160.html

ギアーズ博士&アドミニストレーター(GLaDOS)
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/184.html

邪悪の化身ディオ!!&ランサー(レジーナ)
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/215.html

キング博士&アーチャー(アタランテ)
ttp://www65.atwiki.jp/ljksscenario/pages/221.html


94 : ◆UwuZt7dr4s :2016/07/07(木) 23:43:10 N2/0zC4U0
現行企画には合わなそうなのでこちらに投下します


95 : アバッキオ&セイヴァー ◆UwuZt7dr4s :2016/07/07(木) 23:43:56 N2/0zC4U0
◆◆◆◆



「―――やめろ!!」


夜の路地に、僕の声が轟いた。
静寂を切り裂いた僕の姿を、彼らは見つめる。

何故誰もヒーローになろうとしない?
どうして憧れの自分に変身しようとしない?
そんな奴はただのコスプレイヤーか、変人に過ぎないのか。
それが現実だと認めるしかないのか。
嫌だ、諦めてたまるか。
正義のために駆け回るヒーローが現実に居たっていい。
憧れのコミック・ヒーローに扮して戦うことは、罪でも恥でもない。
僕はそう信じて、緑のコスチュームを身に纏った。


「彼を傷付けるのは止めろ」
「ハァ?」


僕の目の前にいるのは、三人組の不良少年達。
彼らは学生と思わしき少年を取り囲み、リンチにしていた。
少年は尻餅を突き、痣の出来た顔でこちらをまじまじと見ている。
対する不良達は眉間に皺を寄せ、いかにも不機嫌そうに僕を睨んでいた。

何だか昔を思い出す。僕が有名になるきっかけとなった、あの戦いのことを。
まるであの時を再現したかのようなシチュエーションだ。
彼らがどんな関係なのか、何故痛めつけられているのか、それさえ解らないのも一緒だ。
だが、僕は放っておくことなど出来なかった。
だから僕は彼らの前に姿を現し、そして牽制した。


「もう一度言うぞ、彼を傷付けるのは止めろ。
 さもないと、お前達にも痛い目見てもらうことに―――――」


言い切る直前、僕の視界が一瞬だけ潰れた。
不良の一人が僕の顔面に拳を叩き付けたのだ。
堪らず僕は尻餅を突き、鼻血を垂れ流す。
今の僕はヒーローであると同時に『サーヴァント』だって言うのに、何て情けない姿だ。
他のサーヴァントと戦うどころか、不良少年に傷付けられる始末。
だが、それが僕という英雄なのだから仕方無い。
間違いなく最弱の部類に属するサーヴァントと言えるだろう。


96 : アバッキオ&セイヴァー ◆UwuZt7dr4s :2016/07/07(木) 23:44:23 N2/0zC4U0


「何だよこいつ、コスプレ?」
「キモいわ」
「こいつうぜえな、纏めてボコろうぜ」


不良少年達は僕を睨み、口々にそう吐き捨てる。
拳の骨を鳴らしながら、じりじりと僕へと迫ってくる。
弱い頃の僕だったら、きっとヘコヘコと機嫌を伺いながらどうにか難を逃れようとしていただろう。
例え誰かが同じ目に遭っていたとしても、見て見ぬフリをして逃げていただろう。
本当に、懐かしく思えてしまうような状況だ。

だけど、今は違う。
僕はヒーローなのだから、立ち上がらなきゃいけない。
殴られて傷付いている罪の無い人を守るためにも。
僕は立ち上がって、鼻血を流しながら勢いよく啖呵を切る。


「かかってこい、クソッタレ共!僕は決して逃げたりしないぞ!」


大いなる力には大いなる責任が伴う、とはベン叔父さんの弁。
ならば、力が無ければ責任は伴わないのか?
違う。
例え大いなる力が無くても、救世主(セイヴァー)のサーヴァントとして呼ばれたのなら。
そこに守るべき人がいるのなら。
どれだけ格好悪くても、ヒーローとして戦うのが僕の役目だ。



◆◆◆◆


97 : アバッキオ&セイヴァー ◆UwuZt7dr4s :2016/07/07(木) 23:45:17 N2/0zC4U0
◆◆◆◆


【速報】正義のヒーローが現代で活躍?不良グループから高校生守る

1 名無しさん 20XX/XX/XX 21:30:48
xx日、××市にコスチュームを身に纏った正義のヒーローが再び現れた。
ヒーローは地元の高校生(15)に殴る蹴る等の暴行を加えていた10代の不良グループの前に現れ、身を以て暴力を止めさせようとした。
その後ヒーローと不良グループは殴り合いに発展し、グループの少年らがその場から逃げたことで事態は収拾したという。
暴行を加えられていた高校生は病院に搬送されたが、ヒーローの活躍によって重傷には至らず、命に別状も無いとのこと。
現場の様子を撮影していた通行人によると、ヒーローは【■■■・■■】と名乗っており、少年らが逃げた後にふらりとその場から立ち去ったという。
一週間前からxx市では【■■■・■■】と名乗るヒーローが人助けを行っていたという情報が相次いでいる。
彼の活躍は大手動画サイトにアップロードされた動画を中心に拡散されており、注目を集めている。

ttp://xxxx.xxxnews.com/xxxxx.xxxxx

2 名無しさん 20XX/XX/XX 21:34:10
動画見たけどだせえ

3 名無しさん 20XX/XX/XX 21:36:01
緑のコンドームかよ

4 名無しさん 20XX/XX/XX 21:36:54
見てみたけどかっけえじゃん

5 名無しさん 20XX/XX/XX 21:37:26
マジで言ってんの…

6 名無しさん 20XX/XX/XX 21:38:23
衣装ダサいけどすげー頑張ってて痺れた
妙に辿々しいけど高校生ちゃんと守ってんじゃん

7 名無しさん 20XX/XX/XX 21:38:30
なんかいいね 俺もヒーローになるわ

8 名無しさん 20XX/XX/XX 21:39:49
>>7
ボコられて終わりだろwwwww

9 名無しさん 20XX/XX/XX 21:40:01
こいつ人気あんの?

10 名無しさん 20XX/XX/XX 21:41:21
>>9
【■■■・■■】に触発されてヒーローごっこしてる奴らが何人もいるらしい

11 名無しさん 20XX/XX/XX 21:41:33
>>9
影響されてる奴が沢山いるのは事実
コイツが現れてから地元の空気ちょっと変わってきた気がする

12 名無しさん 20XX/XX/XX 21:41:36
>>9
スーツはダサい、でもイカしてる


◆◆◆◆


98 : アバッキオ&セイヴァー ◆UwuZt7dr4s :2016/07/07(木) 23:46:58 N2/0zC4U0
◆◆◆◆



「このワンちゃんを見かけませんでしたか?」
「ごめんなさい、特に心当たりは……」


後日の夜。
それなりの数の人々が行き交う繁華街で、緑のコスチュームを身に纏った男が彷徨っていた。
彼は「探しています 名前:ペロ 3歳雑種」と書かれた犬の写真付きの張り紙を持ち、道行く人々に声を掛ける。
尤も、得られる情報は乏しい―――というより、殆ど収穫無しと言ってもいい状況だ。
大抵の人は「知らない」と答えてそそくさと去ってしまうし、時には変態を見るような目を向けられて無視されることだってある。
それだけならまだしも、彼の姿を見て周囲の迷惑も考えず冷やかしや野次馬に来る者もいる。
彼らの対応に手間を取られ、調査が遅れてしまうことも少なくない。
とまぁ、こういう訳で迷子のペット探しというものは苦労が絶えないのだ。

ハァ、と軽く溜め息を吐きながらコスチュームの男は気晴らしのように夜空を見上げる。
サーヴァント――――救世主(セイヴァー)になったというのに、努力空回りしてしまうのは相変わらずだ。
尤も、自分がこういった活動をスマートにこなせるほど要領が良い訳ではないということも自覚しているが。
何とも言えぬ気分で頬をぽりぽりと掻いていたが、不意に横から声を掛けられた。


「この期に及んでアンタは探偵ごっこかよ」
「困っている誰かのためにを戦うのがヒーローだよ」


どこか冷ややかな声色で送られる言葉に、セイヴァーは反応する。
銀色の長髪。卵の殻を連想させる帽子。黒を基調とした派手な装い。白人であることを示す白い肌。
男の装いはコスプレじみた格好をしたセイヴァーほどでないにせよ、奇抜でそれなりに目立つものであった。
男は『人助け』に没頭するセイヴァーを呆れた眼差しで見つつ、冷淡に言葉を投げ掛ける。
そんな彼の冷やかしに対し、セイヴァーは少しの間を置いて答えた。

この男こそが、セイヴァーのマスター。
レオーネ・アバッキオというイタリア人だ。
彼はヒーローとしての活動をするために飛び出したセイヴァーを追って繁華街まで来たのだ。


「相変わらずだな、アンタは」
「それだけが僕の取り柄というか、プライドみたいなものなんだよ」
「そんなワケの解らんコスプレまでして貫きたいプライドがあんのかよ」
「コスプレじゃない、ヒーロースーツ」


やれやれ、と言わんばかりの表情でアバッキオはセイヴァーを見据える。
少なくともセイヴァーは組むのを躊躇いたくなるようなゲス野郎ではないし、その点に於いては従者として有り難い。
だが、どうしようもないバカであることも確かだ。
ヒーローのコスプレに身を包み、剰え戦いと何の関係もない人助けに傾倒している。
その結果、セイヴァーはインターネット等で話題になるほどの存在になってしまっているのだ。
初めはブチャラティのような大きな理想を掲げているのかと思ったが、正直言ってそうにも見えない。
まるでヒーローになりきることが使命であるかのように、セイヴァーは人助けを行っているのだ。
そのくせに大して強くない。情熱ばかりが突っ走っているような男だと、アバッキオは思う。


99 : アバッキオ&セイヴァー ◆UwuZt7dr4s :2016/07/07(木) 23:47:38 N2/0zC4U0


『そもそもアンタ、聖杯戦争ってのはいいのか』
『僕に願いは無い。君が困っていたようだから、ヒーローとして駆け付けただけ』


アバッキオはセイヴァーから教わった念話を使い、聖杯戦争の話題を切り出す。
まだ戦いが本格的に始まってないから人助けに集中できるのも確かだけど、と付け足しつつセイヴァーは答えた。
大きなお世話だ、と思いつつアバッキオは言葉を続ける。


『誰もアンタに助けなんて求めちゃいねえ』
『でも、君は困っていただろ?こんな訳の解らない戦いに突然巻き込まれて』
『それはそうだがよ』


実際、セイヴァーの言う通りだ。
アバッキオは『自分に願いなんて無い』と考えている。
聖杯なんて奇跡に頼る気はないし、さっさとブチャラティ達の所に帰りたいくらいだと。
少なくともそう自覚している。
だからアバッキオはこの聖杯戦争でどう動くか決め倦ねていたのだ。
セイヴァーはそんな彼を助けるために駆け付けたという。


『誰かが困っているのを見て見ぬフリして、黙っているのはイヤだ。
 僕はそう思ったからヒーローになったんだ。単純に憧れだったからっていうのもあるけど。それに……』
『それに……何だ?』


アバッキオが眉を顰めて、セイヴァーを見る。
少しの間を置き、彼は答えた。



『現実に生きる人達は、誰も憧れのヒーローになろうとしなかった。
 でも、本当は誰だってヒーローになれる。そのことを君にも知ってほしいんだよ』



真っ直ぐにそう答えたセイヴァー。
純粋な想いと情熱を胸に、ヒーローはそんな言葉を紡いだ。

誰もが、ヒーローになれる。
かつての自分は、ただのギークに過ぎなかった。
でも、世界に疑問を抱いた。
誰もヒーローにならないことを不思議に思った。
だから憧れのヒーローになった。
ヒーローになって、人のために戦う道を選んだ。
大怪我をしたり、『本物のヒーロー』と出会ったり、ギャングに命を狙われたり
苦難や挫折を乗り越えて戦い続けて、自分は『夢の世界の扉』を開いてみせた。
セイヴァーは己が英雄として召し上げられるきっかけとなった過去を振り返りつつ、アバッキオを見据える。

対するアバッキオはただ無言で、目を僅かに見開く。
彼は何も言葉を返せず、無言で聞き流すことしか出来なかった。
驚愕しているのか。唖然としているのか。
セイヴァーには解らなかった。何か不味いことを言ってしまったのか。
少しばかり困惑しそうになるも、アバッキオがそっぽを向きながら言葉を紡いだ。


「ヒーローなんて、俺はなれやしねえよ」


情熱に満ちたセイヴァーの言葉とは違い。
アバッキオの言葉は、己の中の諦観を吐露するかのように乾いていた。


◆◆◆◆


100 : アバッキオ&セイヴァー ◆UwuZt7dr4s :2016/07/07(木) 23:48:18 N2/0zC4U0
◆◆◆◆



くだらねえ。
セイヴァーと出会った当初から、俺は心底そう思っていた。
何処までもお人好しで、善人で。
そして、正義への情熱を絶やさない馬鹿野郎。
こんなヤツが俺の従者とやらになるとは思いもしなかった。

こめかみが疼く。
かつての自分を思い出し、苛立ちが募る。
あの頃の俺は、何も知らないガキに過ぎなかった。
セイヴァーのように正義を信じていた。
胸の内の情熱を燃やして、みんなを守るために突っ走っていた。
けれど、ダメだった。

守るべき人々はクズだった。
頼るべき仲間はゲスだった。
市民は自らの保身のために平気で賄賂を渡し。
警官は自らの利益のために平気で汚職を行い。
信じていた正義や理想なんてモノは、幻想でしかなかった。

結局、俺はダメな男だ。
子供の頃から高潔な警官になりたいと思っていたのに。
現実にぶち当たって、結局何もかもダメになっちまった。
そんな自分を苛立たしく思う。
同時に、かつての自分のようなセイヴァーのことも不快に感じてしまう。


だが、しかし。
もしも過去をやり直せると言うのなら。
挫折した過去を変えられるのなら。
それを叶える力が、聖杯に在るのなら。


……いや、駄目だ。
何を考えているんだ、俺は。
結局の所、俺は過去を捨て切れていないらしい。
一瞬でも聖杯とやらに頼ろうと思ってしまった時点で、俺は吹っ切れられていない。
ブチャラティに拾われて、ギャングの一員になってからも、結局俺の根本は昔のままだ。
くだらねえのは、お互いさまか。



なあ、ヒーロー。
キック・アスさんよ。
アンタは正義に絶望した時―――――一体どうするんだ?


101 : アバッキオ&セイヴァー ◆UwuZt7dr4s :2016/07/07(木) 23:48:52 N2/0zC4U0

【クラス】
セイヴァー

【真名】
キック・アス@キック・アス(映画版)
※本名はデイヴ・リゼウスキだが、聖杯戦争においてはヒーローとしての通り名「キック・アス」が真名として扱われる。

【パラメーター】
筋力E 耐久E+ 敏捷E 魔力E 幸運A 宝具D+

【属性】
中立・善

【クラス別スキル】
対悪人:E
ヴィラン(悪役)としての属性を持つ者と戦う際、相手のパラメーターに僅かなマイナス補正が掛かる。

【保有スキル】
戦闘続行:E
痛覚の鈍化と治療で埋め込まれた金属板によって常人よりも打たれ強い。
とはいえ多少しぶとく根気強い程度であり、高い生命力を備えているというわけではない。

変身(偽):D
正義のヒーローとして振る舞うことによる一瞬の自己暗示。
ヒーロー「キック・アス」のコスチュームを身に纏っている際、悪人からの精神干渉の効果を僅かに軽減させる。
更に自身の身体能力に僅かなプラス補正が掛かる。

仮装の英雄:A
神秘を帯びていない攻撃であってもキック・アスはダメージを受ける。
古今東西の英雄達とは異なり、キック・アスの正体はごく普通の民間人に過ぎない。
スーパーパワーも無ければ特別な技術も持たない弱者に過ぎず、それでも彼は悪事を見過ごしたくないから立ち向かう。

【宝具】
「Bring it on,Motherfuckers!」
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
『見て見ぬふりはもう御免だ。だから僕は戦うんだ』
他者を直接的に守るために戦う際、キック・アスの戦闘続行スキルに強力なプラス補正が掛かる。
尤も元々のスキルのランクが低い上、耐久値の変動も発生しないので肉体が頑強になる訳でもない。
その為「負傷しても普段より粘り強く戦える」といった程度の効果しか発揮されない。
しかしそれでもキック・アスは己の中のヒーローに殉じるため、悪にしぶとく食らい付く。
キック・アスの名が世間に知られるきっかけとなった、男を庇って三人組のチンピラと戦った逸話の具現。

「His name is KickーAss!!!」
ランク:D+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
キック・アスには何のスーパーパワーもない。しかし空想のヒーローに扮したことで彼は空想の世界への扉を開いた。
ヒーローとして活動するキック・アスの姿をNPCに認識された際、噂やインターネット、ニュース等を通じて瞬く間に「キック・アスに関する情報」が拡散される。
やがてキック・アスに触発されたNPC達が出現し、彼らはヒーローのコスチュームを身に纏って自警活動を行うようになる。
ヒーローとなったNPCは攻撃に神秘が宿るようになる他、E-ランク相当の「対悪人」「変身(偽)」スキルを獲得する。
またヒーローに扮したNPC達はキック・アスへの協力を惜しまなくなる。
ただしNPCの基礎的な身体能力や技能はあくまで当人達の能力に依存するため、戦闘力は並のサーヴァントにもまるで及ばない。
その上拡散されたキック・アスの情報を他の主従に掴まれる危険性も高い。

「Justice Fire!」
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:2~40 最大捕捉:100
ヒット・ガールから託されたキック・アスの最終兵器。
有り体に言えば機関銃を備えたジェットパックである。
これを装着することでキック・アスは飛行が可能となり、更に機関銃による掃射も行える。
ただし発動と維持に莫大な魔力が必要となり、無計画に飛行や乱射を行えばあっという間に宝具を維持できなくなってしまう。
機関銃もあくまで低ランクの神秘を帯びた近代兵器に過ぎず、戦闘に長けるサーヴァントならば回避・防御は難しくないだろう。
とはいえ急所に命中させればサーヴァントの殺害も不可能ではないし、人間相手ならば十分な殺傷力がある。

【Weapon】
棒状の武器×2
テーザーガン

【人物背景】
元々はヒーローオタクの学生に過ぎなかった少年。
誰もヒーローになろうとしないことに疑問を抱き、自らヒーローに扮して自警活動を始める。
ある時三人組のチンピラ相手に必死に戦う姿を撮影され、動画サイトを起点に「キック・アス」として注目を集めるようになった。
彼のキック・アスとしての活動は、やがて後発のヒーローが続々と出現するきっかけとなる。
因みに自警活動の際に負った重傷が原因で痛覚が鈍くなっており、治療のために金属板を埋め込まれている。

【サーヴァントとしての願い】
なし。
強いて言うなら、ヒーローとしての自分を貫きたい。

【方針】
ヒーローとして振る舞う。


102 : アバッキオ&セイヴァー ◆UwuZt7dr4s :2016/07/07(木) 23:50:03 N2/0zC4U0

【マスター】
レオーネ・アバッキオ@ジョジョの奇妙な冒険 第五部「黄金の風」

【マスターとしての願い】
生還。
あるいは、過去の過ちを――――

【weapon】
武器は持たないが、元警官であるため腕っ節は強い。

【能力・技能】
『ムーディー・ブルース』
破壊力-C/スピード-C/射程距離-A(再生中に限る)/持続力-A/精密動作性-C/成長性-C
アバッキオが操る人型のスタンド。
過去にその場にいた者の行動を再生(リプレイ)する能力を持つ。
再生は巻き戻しや一時停止など融通が利くものの、再生中にスタンドは一切の攻撃・防御が出来ない。

【人物背景】
ギャング組織「パッショーネ」に所属するブチャラティの部下。21歳。
過去の経験から余り他人を信用しないが、一度信頼した相手にはとことん義理を貫く性格。
かつての彼は正義感に溢れた警官であり、人々を守りたいという純粋な情熱を持っていた。
しかし警察や市民の腐敗を目の当たりにしたことで正義に絶望し、自らも賄賂を受け取る汚職警官へと成り果てる。
最終的に自身の汚職が原因となって同僚が殉職してしまい、更に汚職が発覚したことで警察からも除名されてしまう。
アバッキオは全てを失い、ギャングへと身を落とした。

【方針】
とにかく生還の方法を探す。
殺し合いには今の所乗らないが、襲ってくる相手には対処する。


103 : 名無しさん :2016/07/07(木) 23:50:16 N2/0zC4U0
投下終了です


104 : ◆ZjW0Ah9nuU :2016/07/30(土) 16:32:40 iV8eYhoQ0
>>32>>91-92に加え、更に下記の候補作のフリー化を宣言します。

なお、修正要求についてですが、ある程度リアルの方で時間が取れるようになってきましたので時間さえいただければ修正要求に応じられると思います

・「夢現聖杯儀典:re」候補作

【斎祀&ライダー(電光戦車)】 ttp://www63.atwiki.jp/letsrebirth/pages/20.html

【テッド&アーチャー(電)】 ttp://www63.atwiki.jp/letsrebirth/pages/57.html

【安藤寿来&ランサー(無銘、幻水1主人公)】 ttp://www63.atwiki.jp/letsrebirth/pages/57.html
※トリップが◆mjMMzIwy1Eとなっていますが同一人物です

・「仮題:終焉戦争」候補作

【ゲーニッツ&アサシン(ヴァニラ・アイス)】ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/otaku/12648/1454744935/230-238 230〜238レス目の候補話です
※トリップが◆kRh/.U2BNIとなっていますが同一人物です


105 : ◆jBbT8DDI4U :2016/07/30(土) 17:13:58 wVKAbMBM0
サマナーズ・バトルロワイアルにて投下しました候補作を、
採用された下記作品を除き、全て開放いたします。
・記号
・幻影
・生贄
・渇望
・精神
・凹凸
・野心
ttp://seesaawiki.jp/summoner-br/d/%c5%d0%be%ec%cf%c3%b8%f5%ca%e4%ba%ee%b0%ec%cd%f7

但し、サマロワ向けに書いた話なので、聖杯用にコンバートが必須となると思いますので、
使用されたい方は、是非こちらのスレッドまでご一報ください。
当方にてコンバートしたものを投下させていただきます。
その際に、ご要望などありましたら、明記していただけると幸いです。

また、その際にステータスシートの作成はお願いすることになると思いますので、よろしくお願い致します。


106 : ◆bPGe9Z0T/6 :2016/08/01(月) 00:05:57 yRQatdWI0
>>30,>>91

失礼します、「Fate/Malignant neoplasm 聖杯幻想」の企画主です。

今回、当企画にて
【暁&アーチャー(アカツキ)】
【岸波白野&ネバーセイバー(渋谷凛)】
の二作を当選主従として採用させていただこうと思っております。
それに際しまして、お手数ですが使用の許可と、作品の微修正(企画に合わせた描写の修正)をお願いしたく思います。ご面倒をお掛けしますが、作者様のお返事をお待ちしております。


107 : ◆q4eJ67HsvU :2016/08/01(月) 01:24:27 AQs4kzrY0
>>106
岸波白野&ネバーセイバーの作者です。連絡ありがとうございます、光栄です。
採用の許可ですが、もちろんOKです。是非とも使ってやってください。

企画に合わせた描写の修正についてですが、元の候補作はムーンセルの存在を前提として書いておりまして、
どこまで修正すれば「Fate/Malignant neoplasm 聖杯幻想」の世界観的にセーフなのか、私ひとりでは判断がつきません。
ですので、具体的に「このあたりをこういう風に」などご指示をいただければ、非常に助かります。

それと、投下後に原作で追加された最終開放の要素をステータスシートに反映していいかも、加えて伺いたいです。


108 : ◆ZjW0Ah9nuU :2016/08/01(月) 05:26:31 WxYKxAd.0
>>106
暁&アーチャーを書いたものです。拙作を選んでいただき、光栄の限りでございます。
>>107氏と同じく、採用は喜んで許可させていただきます。

修正に関しては対応いたします。少々時間はかかるかもしれませんが、コンペの〆切までに仕上げるようにします。
『柩姫聖杯譚/Holy Embryo』に投下した本文とステシをベースにしようと考えておりますが、別企画のものを希望でしたらその都度ご連絡ください。


109 : ◆bPGe9Z0T/6 :2016/08/01(月) 22:55:23 yRQatdWI0
お二方、御返事ありがとうございます。

>>107
御返事ありがとうございます。
ムーンセルの存在は前提にしたままで構いません。
なので、ほんの少々の描写変更(当企画の舞台・時代設定等に微調整)のみで大丈夫かと思われます。

>>108
御返事ありがとうございます。
恐らく企画が始まるまでにまだ結構時間があるので、八月中、場合によっては九月初頭くらいまでに済ませていただければ全然大丈夫です。


110 : ◆q4eJ67HsvU :2016/08/02(火) 00:53:22 or8.iYBA0
>>109
回答ありがとうございます。
では「聖杯幻想の世界にもムーンセルはあり、そこから彼女達が送り込まれた」ということにして、本文はほぼ細部の修整のみで行こうと思います。
それに加えてステータスシートの一部スキルの調整、およびグラブルの最終開放をモチーフとした宝具の追加を予定しています。

差し支えなければ、修正版の投下はそちらのスレッドで行わせていただこうかと思いますが、よろしいでしょうか。


111 : ◆bPGe9Z0T/6 :2016/08/03(水) 03:30:09 Yllm5tRE0
>>110
はい、そういった感じでお願い致します。
宝具の追加についても好きに行っていただいて大丈夫です。


112 : ◆0080sQ2ZQQ :2016/08/03(水) 08:15:33 DoNTf6ZU0
投下します。
以前投下したやつとは別鯖ですが、鱒が難物過ぎました。


113 : 久織巻菜&セイバー ◆0080sQ2ZQQ :2016/08/03(水) 08:16:11 DoNTf6ZU0
「待っていたよ、招かれたセイバー君…」

 実体化したセイバーが自身のマスターを背後に押しやると同時に、感情を窺わせない声が投げられた。
まもなく黒いコートの男が、両者の死角となっている塀から姿を現す。

 マスターの少女は礼装らしき何かを取り出しつつ遁走。察したセイバーも両刃の剣を出現させる。
男が眼鏡のブリッジを持ち上げた時、黒い外套が水面を思わせる淡い紫に包まれる。男は光の中に姿を消し、刺々しい甲殻の怪人と入れ替わった。
その全身は紫の鎧で覆われ、右腕からレイピアのような長針が伸びている。


 セイバーに飛び掛ると、怪人は喉を鳴らしつつ刺突を繰り出す。
迫る刃を半身を反らしてセイバーが避ける。その顔面に掌を叩き付けられ、ほぼ同時に軸足に回し蹴りを浴びせられた。
すかさず長剣を振り上げた両腕に、節くれた拳が飛ぶ。セイバーは動きを止めて、背後に小さく跳躍した。
空を切った腕がすばやく怪人の脇に収まる。

(彼もセイバーらしいが…)

 この変身が彼の宝具なのだろう。このわずかなやり取りで、優れた体術の持ち主であることは良くわかった。
さらに異形化したことで身体能力を向上させたらしいが、それだけとは思えない。


 踏み込んだセイバーは無骨な直刃を袈裟懸けに振り下ろす。
躱した怪人は次段の突きを捌くと、剣士の甲冑に左足を突きこむ。セイバーは呻きつつも体勢を崩すことなく、再び距離を取った。らちが明かない。

 セイバーはマスターにバックアップを要請すると、自身の宝具を発動させた。
真名を開帳し、怪人の視線を仮面越しに浴びる。まもなく愛剣に魔力が集束していき…、



―――吹き飛ばされた。



 鋭い痛みと衝撃、そして驚愕。宙に舞ったセイバーは前方の怪人に顔を向けようとしたが、力を失った首は命令に逆らい、小さな頭をがくんと垂れさせた。
マスターの少女は礼装を展開したまま、今しがた起こった事態の把握に努めている。紫の怪人が首を動かす。
はぐれとなった少女は結末を察しながらも、礼装をその場に捨てて、己の脚力に細い望みを託した。






114 : 久織巻菜&セイバー ◆0080sQ2ZQQ :2016/08/03(水) 08:16:32 DoNTf6ZU0
≪ご苦労だった。流石の情報力だ、マスター≫

≪どうも≫

 日の落ちた駅。隣接する商業施設の展望台から夜景を眺めながら、巻菜は応じた。
彼女こそ甲冑のセイバーを倒した怪人――黒コートのセイバーのマスターだった。

 ある時間軸の日本・渋谷に落ちた隕石、それに乗ってやってきた災厄。ワーム。
他者の外見や記憶を完全にコピーする能力によって地球で繁殖していた彼らは、人類が開発したマスクドライダー達によって討伐された。
このセイバーはワームの集団を束ねて人類に戦いを挑んだが、最終的に他のワーム達と同じ道を辿る事になった。


 今再び、復活のチャンスを与えられた彼だったが、サーヴァントの身分には不満があった。形ばかりとはいえ、人間に仕えるなど阿呆らしい。
許容量を超える程につまらないマスターなら、殺害して座に帰還しようと考えていたセイバーだったが、対面した巻菜の才能を確かめるにつれ、身分への不満より好奇心が大きくなっていった。

 ふと、庭園の傍に立つ女性に違和感を覚えた。

 今こうして見る彼女のタートルネックに包まれた胸は薄く、ともすれば少年にも見える。
しかし、記憶にある限りではもっと豊かな乳房の持ち主だったはずだ。セイバーは疑問を口にする。
現代日本人の感性ならセクハラでしかない質問だったが、巻菜は口元を歪めただけで咎めるようなことはしなかった。
ざっくりいうと宇宙人に当たるセイバーに、そういった意図が無いのは彼女も承知している。

≪あぁ…今は体格も変えられるんだ。ここにくるまでに成長したから≫

≪ほう、初耳だな。悪魔憑きは進化するのかね?≫

≪ん、天性と才能でね≫

≪ますます興味深い。その能力、長ずれば、いずれ我々に追いつくだろう≫

≪まぁね、あんたぐらいになれれば、私も安心して暮らせるよ≫

 巻菜は、種族全員が極めて高度な擬態能力を習得しているワームの生態に感嘆した。
聖杯の力で彼らと同等の存在になることも考えたが……やめた。
どうせなら、この才能を極めていきたい。鍛えて鍛えて、彼らのように完全に成りすませるようになる。巻菜は決意を新たにした。


 セイバーは、巻菜の進化した顔と優れた分析力による擬態―ワームのそれに比べれば、稚拙そのものだったが―に興味を抱いた。
病んだ心が肉体を変質させるA異常症。死後に知った未知の疾病。今回自分に宛がわれたのは、そのなかでも自分達そっくりの生き方を選んだ患者。
巻菜がワームに加わる事を望むなら歓迎してやらないでもない。結局そうはならなかったが、それもまた良し。精神活動が種族の壁を飛び越えさせるなら、その瞬間にぜひ立ち会いたい。


 巻菜はくるりと身を翻すと、新しい"顔"を探しに向かった。


115 : 久織巻菜&セイバー ◆0080sQ2ZQQ :2016/08/03(水) 08:16:54 DoNTf6ZU0
【クラス】セイバー

【真名】乃木怜治

【出典作品】仮面ライダーカブト

【性別】男

【ステータス】筋力D 耐久D 敏捷C+ 魔力B 幸運D 宝具B

ディミディウス 筋力B 耐久B+ 敏捷B 魔力B 幸運D 宝具A++


【属性】
混沌・悪


【クラススキル】
対魔力:B+++
 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
 さらにセイバーは下記宝具を得ていることから、A+以下の時間干渉を無効化してしまう。


騎乗:D
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。


【保有スキル】
擬態:EX
 同ランクの変化、蔵知の司書の効果を内包する特殊スキル。
 襲った人間の外見および全ての記憶、能力、趣味嗜好をコピーできる。
 これはセイバー個人ではなく、ワームという種族全てが保有している。


軍略:D
 一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
 自らの対軍宝具の行使や、逆に相手の対軍宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。



【宝具】
『時を治めた甲虫(カッシスワーム・ディミディウス)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
 擬態を解き、本来のワームとしての姿に変化する。
 生前は再生復活の能力を備えていたが、サーヴァント化したことで制限された。

 全身を覆う外殻は単純な物理攻撃なら、格上の宝具にも耐える。
 下記宝具と併用することで、セイバーは絶対的な戦闘能力を発揮する。


『この一時よ、永遠なれ(フリーズ)』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
 成虫ワームが持つ高速移動術「クロックアップ」の究極。
 流れの止まった時間流に身を置くことで、一瞬にも満たない時間のうちに相手を一方的に蹂躙できる。

 擬態中でも問題なく発動できる。
 発動は一瞬。単体の魔力消費はそう大きい物ではなく、セイバーの自前の魔力だけで3、4回は連続使用可能。
 ただし持続時間が短く、一度に十数秒が限度。


【weapon】
無銘:杖。

セイバーは擬態中でも高い格闘能力を発揮、杖を織り交ぜたコンボで使い魔程度なら容易に蹴散らす。


【人物背景】
渋谷隕石と共に地球にやってきた地球外生命体の長。
ワーム軍団を率いてゼクトとの決戦に臨んだが、最期はハイパーカブトによって倒される。

二度蘇りマスクドライダー達の前に立ちはだかるが、今回は最も強大な特殊能力を持つ一回目の状態で召喚された。


【聖杯にかける願い】
受肉。


116 : 久織巻菜&セイバー ◆0080sQ2ZQQ :2016/08/03(水) 08:17:23 DoNTf6ZU0
【マスター名】久織巻菜(ひさおり まきな)

【出典】DDD

【性別】女

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
「A異常症」
特殊な精神病。正確にはアゴニスト異常症という。通称"悪魔憑き"。
軽度の場合は感情がコントロールできなくなり、重度になるとトラウマを克服する身体機能「新部」が形成される。
患者は常人には持ち得ない能力を発揮できるようになるが、その分通常組織に負荷を掛けてしまう。

巻菜は顔の皮膚・筋繊維が変質しており、表情を自由に作る事が出来る。
入院時より成長したことで女性限定なら3人まで"顔"の切り替えを蓄積でき、体型を変える事すら可能になった。
ただし、依存性の強さと主体性の薄さから他人の真似をしないと生きていけない為、常に"誰か"を装う生活を続けなければならない。


「人間観察」
ずば抜けた解析力と学習力。
対象となる他人をじっくりと観察し、生活習慣、成績、趣味嗜好、口調、運動レベル、雰囲気を模倣することで対象に成り切る。


【人物背景】
オリガ記念病院の元患者。
神童と讃えられたほどの天才児だが癇癪持ちであり、物の加減を知らない。一度やると決めたら納得いくまで続ける。
際限なく教材を買い集め、覚えたら燃やして処分するという学習法を続けた結果、家計を圧迫。

ある日、家族と何気ないやり取りをきっかけに自分が疎まれていることに気付く。
家族との仲を修復することは結局叶わず、彼女は間も無くパーソナリティを喪失。自発的に何かをする事が出来なくなった。
母の何気ない一言で弟・伸也の「全て」を真似て、伸也の立ち位置を乗っ取った巻菜は巧妙に計算した上で、伸也を使って両親を殺害。
仕上げに自分も身を投げる事で弟に罪を擦り付けたが、A異常症の診断を受けてオリガに収容された。


【聖杯にかける願い】
なし。擬態能力を鍛えつつ、勝ち残る。


117 : ◆0080sQ2ZQQ :2016/08/03(水) 08:18:03 DoNTf6ZU0
投下終了です。


118 : ◆mcrZqM13eo :2016/08/06(土) 21:17:42 Mw4EyQWI0
以下の候補作のフリー化を宣言します
ステータスやスキルや宝具を書き換えても構いません。
使って頂けるんならそれでいいです

ティベリウス&バーサーカー
ttp://www65.atwiki.jp/quatropiliastro/pages/30.html

上月由良&アサシン
ttp://www65.atwiki.jp/quatropiliastro/pages/41.html

巴マミ&キャスター
ttp://www65.atwiki.jp/quatropiliastro/pages/51.html

チョコラータ&アーチャー
ttp://www65.atwiki.jp/quatropiliastro/pages/80.html

真木清人&アヴェンジャー
ttp://www65.atwiki.jp/quatropiliastro/pages/84.html

タカオ&セイバー
ttp://www65.atwiki.jp/quatropiliastro/pages/85.html

結城千種&リーガー
ttp://www65.atwiki.jp/quatropiliastro/pages/89.html


119 : ◆mcrZqM13eo :2016/08/06(土) 21:19:23 Mw4EyQWI0
上記の候補作は聖杯四柱黙示禄のものです


120 : ◆aEV7rQk/CY :2016/08/10(水) 12:12:36 GuHOTq6.0
投下します。
鯖のステシを、以前投下したやつより修正してあります。


121 : コバヤシ&アーチャー ◆aEV7rQk/CY :2016/08/10(水) 12:13:39 GuHOTq6.0
「気付いたかい……?」

コバヤシの耳に、掠れたような男性の声が投げられる。彼がゆっくりと瞼を開くと、そこは打ち放しの地下室だった。
両手には手錠がかかっており、目の前ではくたびれた笑みを浮かべる中年男性が、寝転がったコバヤシを眺めていた。

姿勢を正したコバヤシは、ちょっと考えてから切り出す。
上体を起こす事には成功したが、相変わらず両手に自由はない。

「ひょっとして……僕が追いかけていたのは、あなたですか?」

「みたいだね。こうもはやく敵に捕捉されるとは、…慣れない事はするもんじゃないな」

くたびれた印象が深くなる。顔から笑みが抜け、男性は自嘲の籠った息を吐いた。


コバヤシの住んでいる地区では最近、子供の失踪が相次いでいた。
昨日は担任から注意喚起が成され、クラスメイト達も恐怖やら好奇心やらで、ひそひそと噂話に花咲かせていたが、コバヤシは実際に事件があった場所を調べて回っていた。
義憤に類するものは一切なく、ただ面白そうだったので。そして4人目の男児が消えた遊具を調べていた時に、コバヤシは何者かに昏倒させられたのだ。

「なぜこんなことを?事件として報道された時点で、別の方法を考えるべきでは?」

「はっはっはっ……そうなんだけど、アサシンがね」

問われた男性の顔に苦い笑みが走る。

「へぇー、あなたはアサシンと契約しているんですね!」

男性がサーヴァントのクラスを明かした事を受け、コバヤシは驚きの声をあげる。
その態度は学友と会話している時以上に落ち着き払っており、不審人物に囚われている被害者のそれとはアサシンのマスターには思えなかった。
アサシンが帰還するまで、ちょっとかかる。

「……君が契約したサーヴァントは、何のクラスかな?」

「教えません」

花が咲くような笑顔ですげなく返すと、男性も唇を歪め、曖昧に笑った。
その時、部屋の空気に変化が起こった。瞬く間に景色が、いや世界が変わった。


二人が立つ地面はチェス盤のような石畳に変わる。
周囲には中世ヨーロッパの城下町がモノクロで再現され、空を覆うのは星の瞬く黒と、暗雲の白。それらがゆったりと彼方にながれていく。

呆となった男性が首を左右に動かすと、コバヤシが自身の背後をじっと見つめているのに気付いた。
振り返った彼の視界に飛び込んできたのは、己の頭部ほどある左手を叩き付けんとする、巨大な紳士服の男だった。

まもなく、アサシンのマスターは紳士服――帽子屋によって頭部を吹き飛ばされる。
力の抜けた胴体が倒れ、断面からは血液が勢いよく流れていく。それを見守っていたコバヤシの両手に何者かの手が添えられた。
気付いて振り向いた先には、艶やかな黒髪の少女が座り込んでいた。
彼女は大振りのナイフを振りおろし、コバヤシの両手にかかる縛めを解く。

「アーチャーさん!ありがとうございます」

「ありがとう、じゃないわよ!調べものがしたいなら、私がいるときにしてって、昨日言ったでしょう!」

立ち上がったコバヤシを、アーチャーは腕を組んで叱りつける。
毒気はなく、出来の悪い弟を注意する姉のような態度だった。
コバヤシに応えた様子はなく、けろっとした表情で彼女に笑い掛けた。


122 : コバヤシ&アーチャー ◆aEV7rQk/CY :2016/08/10(水) 12:14:32 GuHOTq6.0
「ごめんなさい。つい、気になっちゃって……」

「本当に怖いもの知らずなんだから、それとも帰りたくないのかしら」

「いえ、ハシバ君が心配するでしょうから―」

「―グッドタイミング!間抜けな部下のお帰りだ!」

二人が帽子屋の視線を追うと、屋根の上にカーキ色が突っ立っている。
固有結界が展開されたまさにその時、室内で実体化したアサシンはマスターから大きく離されてしまい、いまようやく駆けつけることが出来たのだ。
アサシンは三人の近くに倒れたマスターを認めると、建物の陰に姿を消した。

「このまま逃げられると不味いわ。行って!」

アーチャーの一声で帽子屋の姿が消える。

「私たちも行くわよ!」

「はい!」

二人は無人の往来を走り抜け、アサシンが消えたあたりを目指す。
そこが近づくにつれ、金属音や爆発音がコバヤシの耳に入る。

やがて、コバヤシと変わらない背丈のチェスピースの兵隊や、顔色の悪い帽子屋に蹂躙されるアサシンが視界に入った。
あまり戦闘力はないようだ、とコバヤシは見当をつけた。
アーチャーはチェスピースの兵隊にアサシンを押さえさせると、四角い箱を彼らの前に投げつけた。帽子屋は既に姿を消している。

二人が距離を離してまもなく、箱から人形が飛び出し炎をあたりに撒き散らす。アサシンは高熱の苦悶に身を捩るが、兵士たちが拘束を緩めることはない。
やがて箱を中心に大爆発が起き、赤黒い肉塊と化したカーキ色は兵士たちと共に消滅していった。

「死んじゃったんですか?」

「みたいね」

彼女は自身の特殊スキルによって、アサシンにかなりのダメージが与えられた事を察した。
また、血や煙を垂れ流しながら消えるのは、霊体化による消滅とは様子が異なる。

アーチャーが結界を収める。
薄暗い地下室に取り残された二人は、遺体から鍵を拝借し、面倒が起きる前に部屋を後にした。


123 : コバヤシ&アーチャー ◆aEV7rQk/CY :2016/08/10(水) 12:15:27 GuHOTq6.0
【クラス】アーチャー

【出典】アリス・イン・ナイトメア

【性別】女

【真名】アリス・リデル

【パラメータ】筋力C 耐久D 敏捷B 魔力A 幸運E 宝具EX

【属性】中立・悪

【クラス別スキル】
対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

単独行動:A
 マスター不在でも行動できる。ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。


【固有スキル】
精神汚染:-(EX)
 精神が狂っている為、他の精神干渉系魔術を完全にシャットアウトする。更に固有結界を生み出すほどの狂気を孕んでいるため、アリスとコミュニケーションを取り続けた場合、低ランクの精神汚染を獲得することがある。
 クラス補正によってランクを喪失しており、アーチャーとは普通に意思疎通が可能。


勇猛:B
 威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。また、格闘ダメージを向上させる効果もある。


投擲(ナイフ):C
 ナイフを弾丸として放つ能力。


赤の女王:-(A)
 不思議の国を狂わせたもう一人の自分。
 平時は機能していないが、固有結界発動時にカッコ内のランクに修正。
 幸運値を永続的にワンランクアップさせ、攻撃を命中させるたびにダメージ値相応の魔力が回復していく。
 敵サーヴァント撃破時には、かなりの魔力回復が期待できる。

 同ランクの使い魔使役を内包。不思議の国の住人を結界内において自由に動かす事が可能。


124 : コバヤシ&アーチャー ◆aEV7rQk/CY :2016/08/10(水) 12:15:48 GuHOTq6.0
【宝具】
『いざ、三度目の冒険へ(アリス・イン・ナイトメア)』
ランク:EX 種別:対軍宝具(対人宝具) レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人(自身)
 三度目に歩いた恐怖と流血の世界を再現する固有結界。展開時に赤の女王スキルをカッコ内のランクに修正。
 結界内は凄まじい広さを誇り、毒の水が溜まる鉱山、菌糸類の森、石像の少女が流した涙の池、白い城郭などを銃剣で武装した巨大なアリや生肉を引き裂いて食べる花、肉食魚やトランプの兵隊達がうろついている。
 また「帽子屋」や「ジャバウォック」といったおなじみのキャラクターが疑似サーヴァントとして現界しており、結界内に侵入した敵に襲い掛かる。
 ……副次効果として、この宝具は保有するアーチャーに三騎士としての戦闘力を与えている。本来のアーチャーは重い精神障害を患っている少女でしかない。


『汚れた夢の玩具箱(ナーサリーライム・マッドネス)』
ランク:D〜B 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:300人
 三度目の冒険で振るった武器を一種類、出現させて装備する。装備を変更する分にはほとんど魔力を消費しないが、ナイフ・クロッケーの木槌以外の武器は、使用する度に相応の魔力が減っていく。
 キャスタークラスの場合は「不思議な時計」、「怒りの箱」、「グラスホッパーティー」、「暗き手鏡」が使用可能な装備に追加される。


【Weapon】
ナイフ:使い勝手のいい大振りのナイフ。

トランプ:追尾機能を持つトランプ。

クロッケーの木槌:球技用の木槌。追加で魔力を消費することでボールを生成、敵に向かって打つことが出来る。

びっくり箱ボム:投げると爆発するびっくり箱。有効範囲が広い。

アイスワンド:冷気を噴射する杖。敵を氷漬けにできるが魔力消費量は多め。

ジャック:投げて遊ぶ遊戯用の玩具。壁や天井を跳ね回って、敵を攻撃する。

悪魔のサイコロ:投げると悪魔が召喚され、味方として戦ってくれるサイコロ。敵がいない場面で使うと逆に襲われる。

ジャバウォックの目玉の杖:ビームを発射する杖。高火力だが燃費は悪い。

らっぱ銃:らっぱを模した銃。破壊力抜群だが、一度使うとステータスが半減するほどの魔力を消費する。


【人物背景】
世界一有名な夢物語「不思議の国のアリス」、「鏡の国のアリス」の主人公……の、ありえたかもしれないその後。

2度の冒険を終えたのち、原因不明の火災により自宅が全焼。同時に両親を失ってしまう。
家と両親を同時に失ったショックにより、心を深く閉ざした彼女はラトレッジ精神病院で10年の月日を過ごす。

薄暗い病室でひとり、ウサギの人形を手に眠り続ける日々を過ごしていたが、ある日、持っていたウサギの人形に助けを求められ、再び不思議の国に出発する。
……舞い戻った不思議の国は腐敗したキノコの森や帽子屋の実験場など、かつての美しい景色とは似ても似つかない狂気めいた悪夢の世界であった。

アリスは美しい不思議の国を取り戻すべく、殺気と暴力に満ちた混沌の世界で三度目の冒険に挑んだ。

【備考】
帽子屋のステータスは以下の通り。

「ステータス 筋力B 耐久A 敏捷D 魔力E 幸運E  スキル 道具作成:B  自己改造:B 精神汚染:A 単独行動:E  weapon 帽子グレネード 指ミサイル 杖」


【聖杯にかける願い】
この冒険(聖杯戦争)を制覇する。


125 : コバヤシ&アーチャー ◆aEV7rQk/CY :2016/08/10(水) 12:16:31 GuHOTq6.0
【マスター名】コバヤシ

【出典】乱歩奇譚 Game Of Laplace

【性別】男

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
「サイコパス?」
興味のない人物の顔を覚えず、色つきの影としか認識しない。
はっきり認識した相手でも、興味を失えば影に戻る。

また猟奇的な状況や、危機的状況においては、自己保身より好奇心や興奮を優先し、常人にとって理解不能な犯罪者の性癖や思想にすら理解を示す危うさを秘める。


「男の娘」
中性的な容姿をしており、非常にハイレベルな女装が可能。


【ロール】
中学生。


【人物背景】
周囲から浮いている男子中学生。
退屈な日常を過ごしていたが、担任教師殺害の容疑をかけられたことで探偵のアケチと出会い、事件解決後に学業そっちのけで彼の助手として働く。


「地獄風景」終了後から参戦。


【聖杯にかける願い】
生還する。また、聖杯戦争を満喫する。


126 : ◆aEV7rQk/CY :2016/08/10(水) 12:17:10 GuHOTq6.0
投下終了です。


127 : ◆aEV7rQk/CY :2016/08/13(土) 18:08:34 ZcKQDnbU0
投下します。
鯖のステシを、以前投下したやつより修正してあります。


128 : 吉良吉廣&キャスター ◆aEV7rQk/CY :2016/08/13(土) 18:09:15 ZcKQDnbU0
泉の中央、女性像が水瓶から透き通った水を流し続ける。
数十名を一度に収容できそうな部屋の中央で、その勢いは衰える気配すら見えない。
瓶からはいつまでも水が流れており、溢れた水が室内のみならず、外の床まで水浸しにしていた。


無言で瓶を傾ける女性の頭には、どこから飛んできたのか、小さな紙片が張り付いている。
紙片から腕が突き出た。まもなく像から浮かび上がり、紙片から小さな老人の頭部が這いだしてくる。
老人は寂れた印象の部屋を眺めまわし、小さく息を吐いた。


老人――吉良吉廣は嘆息する。

息子が明日にも敵の手に落ちようとしている今、聖杯戦争などに身を投じている暇はない。
一刻も早く杜王町に戻らねば、息子を助けることが出来ない。
皆殺しか?脱出か?早く済むならどちらでもよかった。


吉廣が契約したキャスターは皆殺しを方針としている。
ただし、聖杯を欲しているわけではなく、自身の眠りを妨げた聖杯戦争そのものに怒りを抱いており、最終的にはマスターすら殺害するつもりらしい。
敵味方の区別を捨てた狂気のサーヴァントであったが、吉廣の身の上を知ると、彼に向ける殺意を僅かに和らげた。

吉廣も意思疎通には難儀したが、女性像の上に佇んでいる現在、キャスターとの協力体制は着々と整いつつある。


移動するか。吉廣が首を動かした時、声が掛かった。
まもなく女性像の隣、水面の真上にサーヴァントが姿を現した。

≪マスター……≫

ボロボロのドレスを着た、顔の焼け爛れた女。
本名は記録されていない。我が子を失い、悪霊となって現世に舞い戻った女という部分だけが、聖杯によって再現された怪物に近いサーヴァント。

「私の…赤ちゃんは…見つかった?」


129 : 吉良吉廣&キャスター ◆aEV7rQk/CY :2016/08/13(土) 18:09:43 ZcKQDnbU0
「…残念だが、まだだ」

キャスターの目に、初対面の時と同様の光が宿る。
顔中が酷い火傷で覆われており、往時の美貌は露ほども窺えない。

キャスターは母親だった。
悪霊に堕ちた後も、家族への愛情だけは忘れなかった。
聖杯戦争においてもそれは変わらず、戦闘の無い時は隠されてしまった我が子を探して、陣地中を彷徨っているのだ。

吉廣も陣地に滞在する間は手を貸しているが、未だに成果は上がらない。

「睨まれても困る。子供一人見つけ出すには、お前の陣地は広すぎるのだ」

おまけにこれじゃしな。吉廣は視線を落とす。
彼もまた己の生を終えた死者であり、今はスタンドや息子への情によって、写真を依代に現世に留まっている。
生身の肉体を失った吉廣―肉体を持っていても難度は変わらないだろうが―には、キャスターの陣地はあまりに広大だ。調べていない階層も、まだあるのだろう。


おそらく子供はサーヴァント体で再現されたのだろう、吉廣と予想している。
とはいえ自身の宝具でありながら、キャスターには位置が分からない事など腑に落ちない部分はある。これほどの愛情を注ぐ赤ん坊なら、常に目の届くところに置いておくはずだ。
だがキャスターに聞いてみたところで、まともな返答は返ってこない。なので突っ込んだ質問をするのはよした。


「焦る気持ちもわかるが、居場所が掴めんのでは他に…」

「…殺す」

「……?」

「殺してやる。みんな死ね…!」

「うむ、わしも出来ることなら何でもやるぞ……我が子を放っておくなど、できるわけがないからなぁ〜」

キャスターはしんみりとした声に答えることなく、恨み言を呟きながら姿を消した。
彼女が浮いていたあたりを見つめたまま、吉廣は溜息をつく。

正直なところ、召喚されたのが三騎士でないのは不満だった。だがキャスターならキャスターでやりようはある。
魔術師としての実力に問題はないし、承太郎共に似た英霊が宛がわれるよりはいい。

(ただ、あまり好き勝手されるとなぁ……)

真っ当な英霊ではなく悪霊であるがゆえに、実力差を無視して戦いを仕掛けかねないのが不安だ。
とりあえず、彼女の子供を見つけ出すことだ。そうすれば、荒れ狂う心も多少は落ち着くだろう。

吉廣は風に流されるような動きで、噴水の部屋を後にした。


130 : 吉良吉廣&キャスター ◆aEV7rQk/CY :2016/08/13(土) 18:10:09 ZcKQDnbU0
【クラス】キャスター

【真名】間宮夫人

【出典作品】スウィートホーム

【ステータス】筋力D 耐久B 敏捷E 魔力EX 幸運E 宝具A+

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
陣地作成:EX
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
 キャスターは呪いの力によって、神殿を超える『間宮邸』を建設できる。


道具作成:-
 魔術師として魔力を帯びた器具を作成可能。
 下記スキルを得た代償に喪失している。


【保有スキル】
魔物作成:A+
 魔力や素材を費やす事によってモンスター・クリーチャーを作成できる。
 人魂、狂犬程度なら数十体を一度に作成できるが、並のマスターでも十分対抗できる。
 死神やドクロゴーストになるとサーヴァントを相手取れる実力を持つが、彼らの作成は相当量の魔力を蓄えない限り、令呪の助けが必要。
 素材の質に応じて、負担する魔力は増減する。


精神汚染:A
 キャスターは召喚される前、家族で幸せに暮らしていたと思っている。
 精神が錯乱している為、他の精神干渉系魔術を高確率でシャットアウトする。
 ただし同ランクの精神汚染がない人物とは意思疎通が成立しない。


自己改造:C
 自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。
 邸内で殺された子供達の霊と一体化している。


飛行:C
 力ある幽霊として宙を舞う事が出来る。飛行中の敏捷値はスキルランクで計算する。


131 : 吉良吉廣&キャスター ◆aEV7rQk/CY :2016/08/13(土) 18:10:29 ZcKQDnbU0
【宝具】
『間宮邸(スウィートホーム)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜100 最大捕捉:屋敷に足を踏み入れた者全員
 キャスターが作成する陣地。生前慣れ親しみ、死後に憑りついた自宅の屋敷を再現する。
 間宮邸の内部は空間が歪む為、屋敷に存在した部屋や通路が追加される度に外観より広くなっていく。

 邸内に配置された無数のトラップが侵入者を迎え撃つほか、作成したモンスター達の戦闘力を陣地外にいる間より強化する。
 くわえて、陣地の完成度合いに応じてキャスターおよび、モンスター達の魔力消費を軽減させる効果を持つ。

 間宮邸の内装はキャスターの精神状態を示す様に荒廃しており、ポルターガイストなどの怪奇現象が頻発する。
 特筆すべき点として、陣地内で死亡した犠牲者は間宮邸を警備するモンスターの一員に加えられてしまう点があげられる。



『長い悪夢の終わり(フューネラル・フォア・マミヤ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:1人
 土偶・古びた写真・間宮一郎の日記・子供の棺。間宮邸が完成した時点で、陣地内の何処かに自動配置される4種類のアイテム。
 この宝具はキャスター自身が使うのではなく、間宮邸に侵入した者達が使う。これらの配置をキャスターが知る事はない。

 4種類のアイテムを順番通りに突き付ける事でキャスターは成仏する。
 キャスターはサーヴァントと化した事で宝具による攻撃でも打倒する事が可能になったが、この宝具を使用されない場合は彼女の魂が救われることはない。


【weapon】
破壊効果のある閃光。


【人物背景】
フレスコ画家・間宮一郎の妻。
生前に子供を不慮の事故で亡くした精神的外傷により発狂。近隣の子供達をさらって焼却炉にくべるという凶行に手を染める。
そして自らも命を絶った。

彼女の死後、何者かによって子供の供養塔が荒らされ、子供の遺体が隠されてしまう。夫人は怒り狂い、亡霊として現世に舞い戻った。
そして屋敷に住まう者、屋敷に足を踏み入れる者を無差別に呪い続けた。
彼女が亡くなってから30年後、屋敷に侵入したTVクルー達の活躍によって成仏する。


【聖杯にかける願い】
聖杯戦争を破壊する。


132 : 吉良吉廣&キャスター ◆aEV7rQk/CY :2016/08/13(土) 18:10:55 ZcKQDnbU0
【マスター名】吉良吉廣

【出典】ジョジョの奇妙な冒険第4部『ダイヤモンドは砕けない』

【性別】男

【Weapon】
「矢」
適性のある生物をスタンド使いに変える矢。


「写真」
自分が写っている写真。
写真に写っているものを外に出したり、外の物を写真の中に収納する事が出来る。


【能力・技能】
「アトム・ハート・ファーザー」
矢から授かったスタンド能力。
自分が写った写真の空間を支配する。写った生物は魂エネルギーごと外界から隔離される。
この能力で閉じ込められた場合は「写真の縁」から脱出する事は叶わず、逆に外から侵入する事もできない。

写真の中で行われた攻撃は現実に反映され、如何なる手段を用いても防ぐことはできない。
さらに写真が破壊された場合、写っている物品も同じように破壊されてしまう。

弱点は写真を撮り直される事。幽霊となった吉廣自身は写真から身を乗り出して現実世界に干渉できる。


「幽霊」
聖杯戦争に招かれる以前に死んでいる。
生身の肉体を持たないがゆえに、膨大な量の魔力を扱う事が可能。
スタンド使いでもあるため、無茶な供給を行わない限り、サーヴァントを楽に維持できる。


【人物背景】
杜王町に潜伏する殺人鬼「吉良吉影」の実父。
ガンで死亡するもスタンド能力ゆえか、幽霊となってこの世に留まり続ける。
息子の性癖を知っているが更生させる気はなく、吉影の殺人を積極的にサポートしている。


吉影がバイツァ・ダストを入手する前から参戦。


【聖杯にかける願い】
息子にプレゼントする。


133 : ◆aEV7rQk/CY :2016/08/13(土) 18:11:28 ZcKQDnbU0
投下終了です。


134 : ◆aEV7rQk/CY :2016/08/26(金) 09:30:27 axVsBIUM0
投下します。
鯖のステシを、以前投下したやつより修正してあります。


135 : 三沢岳明&ライダー ◆aEV7rQk/CY :2016/08/26(金) 09:31:29 axVsBIUM0
息を吸って、吐く。三沢は顔をあげて周囲を眺めてみた。
昼間だがカーテンを閉め切っている為、室内は薄暗い。どこかで水滴が落ちた……かもしれない。
電源をつけていないテレビの前からキッチンの方に顔を向けても、自分の呼吸音以外は何も聞こえない。
ちょっと息を止めて耳をこらすと、秒針が時を刻んでいるのがわかる。


この部屋以前のことで一番の不安材料は、島に残してきた永井のことだ。
心情は理解できるが、死人が蘇る場所であの様子では、生きて島から脱出することなどできないだろう。
既に死んだならしょうがないが、生きているなら急いで助けに行かねばならない。


ふと流し台の影が気になった。何もいないとは思うが、一旦意識すると肌が粟立った。
立ち上がり、そろりと歩を進める。踏みしめる度にフローリングが音を立て、浮き上がった音があちこちにできた影に吸い込まれていく。
耳鳴りがするほど静かな部屋で三沢は左手に握り拳をつくり、Vの字を描いた腕を前に突き出した。
流し台は窓から奥の方にあるので、リビングより更に暗い。その向こうは陰になっているのでここからでは見通せない。

しばらくすると徐々に鈍い銀色が視界に入り込んできた。息苦しさをこらえつつ、さらに進む。
やがて、三沢はゆっくりと調理スペースを覗き込んだ…。







何もいない。ただ濃い黒だけがそこにある。
流しの下の戸棚も調べてみたが、調理器具が収まっているだけで、おかしな点はない。
戸をそっと閉めた時――


136 : 三沢岳明&ライダー ◆aEV7rQk/CY :2016/08/26(金) 09:32:06 axVsBIUM0
―――視線を感じた。

「ぅウわぁあッ!!」

背後の何かが息を吐いたのを認めた時、三沢は弾かれたように二三歩、後ずさった。
三沢が振り返ると、先ほどまで彼が立っていた位置で黒ずくめの男が、目も口も大きく開けた彼を険しい眼差しで見つめていた。
喪服のようなスーツの上で、豊かな黒髪が真ん中で分かれ、左右に流れている。

「誰だ…」

「サーヴァントだ。記憶は戻っていると思うが…」

分かる。聖杯戦争。
ここは日常ではなく、新たな悪夢の始まりなのだ……もっとも、三沢の日常は2年前に死んだのだが。


ややあって、三沢は機敏な動作でついさっき閉めた戸を音を立てて開け、取り出した包丁をサーヴァントに向けた。
向けられた黒い男は突っ立ったまま、切っ先を少しだけ眉を寄せて見つめる。
険しい視線をきらりと光る刃から確信を持って自分を睨む目に移すと、サーヴァントは口を開いた。

「これにはどういう意図があるのか、教えてもらえるだろうか」

「…お前、何か連れているな」

「………おそらく、私の宝具の事ではないかな」

マスターがおおまかにサーヴァントの能力を把握できることは黒い服の男――稗田礼二郎も知っていた。
だが、それだけではないのではないかと稗田は考える。その物言い、この態度からして目の前の偉丈夫には霊感のようなものが備わっているのでは、と彼は仮定した。
三沢の問いの根拠は直感が大部分を占めていたが、その推測は間違っていない。たしかに稗田は生前に出会ってきた者達を引連れて、この場にやってきたのだから。

稗田は生前、超能力者の少女と親交があったため、ESPの類にも寛容な態度をとっている。
なにより自分を招くマスターだ。これまでに奇怪な事件に巻き込まれ、異常な能力を感得していたのだとしても不思議には思わない。





三沢は稗田の説明を聞き終えると、ため息を吐いた。
敵味方の区別なく攻撃を行う、制御不能の宝具。
くわえて、それを保有するサーヴァント――ライダーには戦闘力を全く期待できないときている。
お互い口にはしないが、招かれた主従の中でも底辺に位置する事を了解していた。
三沢はサーヴァント替えを考えて始めているが当ては当然なく、現段階ではライダーの生存能力に期待するしかない。


軽く自己紹介を済ませると、三沢は支度を整えて外に出た。稗田もこれに同行する。
雑居ビルに面した通りを1本挟んだ大通りを、車が盛んに行き交っているのが見て取れる。
市内はまだ平穏な日常そのものだが、いずれ地獄となるのだ。

電柱の側によった三沢は懐から錠剤を取りだす。
2年前を切っ掛けに薬物の服用で精神を安定させるようになったのだが、こちらでも同様の代物を処方されていたとは幸先がいい。
その一粒を味わうように飲み下すと三沢は大きく息を吸い、晴れやかな笑みを顔いっぱいに浮かべた。
稗田は危うげなマスターを、相変わらずの鋭い眼つきで観察していた。


137 : 三沢岳明&ライダー ◆aEV7rQk/CY :2016/08/26(金) 09:33:14 axVsBIUM0
【クラス】ライダー

【出典】妖怪ハンターシリーズ

【性別】男

【真名】稗田礼二郎

【パラメータ】筋力E 耐久E 敏捷D 魔力D 幸運A++ 宝具EX

【属性】中立・中庸


【クラス別スキル】
対魔力:E
 魔術に対する守り。無効化は出来ず、ダメージ数値を僅かに削減する。


騎乗:A-
 騎乗の才能。Aランクなら幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。
 ライダーは後述の宝具を除くと、自動車や自転車といった現代の一般車両しか乗りこなせない。


【固有スキル】
単独行動:B
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。


探索者:A+
 恐るべき事実に接しながらも、在るべき日常に帰還した者の事。
 幾度となく異形の手から逃げ延びたライダーは、極めて高ランクでこのスキルを獲得している。
 同ランクの仕切り直しの効果に加え、ランク相応の精神耐性を保証する。


神性:E
 神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。
 ライダーは生命の木の力を一時的に受けた為、獲得している。


138 : 三沢岳明&ライダー ◆aEV7rQk/CY :2016/08/26(金) 09:33:39 axVsBIUM0
【宝具】
『天磐船(あまのいわふね)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜70 最大捕捉:2人
 風土記において天の若日子が天下りの際に乗ってきたという石の船。ライダーはこれに騎乗することで自由に飛行出来る。磐船はライダーが騎乗した時点で光に包まれた状態になり、ライダーの思念によりコントロールされる。
 ライダーはこの宝具の本来の担い手ではないので真名解放は行えず、殺傷力において同ランク帯の宝具に大きく水を空けられている。


『探究者はここに記した(マージナル・マン)』
ランク:EX 種別:対界宝具  レンジ:会場全域 最大捕捉:1(個体)、50(群体)
 多くの忌まわしき災厄と遭遇して生き残ったライダーの有り様が、宝具として昇華されたもの。ライダーは現界翌日から幸運判定を昼と夜で計2回自動で行う。
 幸運判定に失敗すると、かつて遭遇した「骨の無い多腕多足」、「女性の身体を乗っ取る唇」、「独りでに歩き回る植物」などのうち一種類が、ライダー及びライダーのマスターの拠点をのぞく会場全域の何処かに放たれる。

 これらはライダーの使い魔ではないので、召喚されたか否か、何が放たれたのかは対峙してみないとわからない。
 ただし、彼らは召喚・現界維持にライダーの魔力を必要としない。
 対処法は攻撃により耐久値をゼロ未満にすること、呪具による相殺のみ。ライダー自身は彼らから生き残った実績により、対応する呪具を作成できる。


『非時の香菓(ときじくのかぐのみ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
 世界中に残っている大樹伝説の原典である生命の木の種子。タジマモリが常世から持ち帰ったとされる果実。
 花のように見える生命エネルギーの結晶であり、取り込んだ者に神通力を与える。

 魔力を消費することで作成でき、令呪1画を消費すれば種子を一度に10個作成することが出来る。
 数百個も用意すれば死者蘇生をも可能とするが、聖杯戦争中にそれだけの魔力を用意するのは困難を極めるだろう。


【Weapon】
宝具によって再現された怪物に対応する呪具。神秘を帯びているので霊体にダメージを与えられる。


【人物背景】
元K大考古学教授。日本中の様々な「奇怪な事件」の研究を生業としており、各地で客員教授や著述活動を行っている。
痩躯長身に全身黒ずくめがトレードマークであり、若い学生やマスコミから妖怪ハンターの異名を付けられた。

扱う題材ゆえか、行く先々で怪奇事件に遭遇するも、持ち前の知識と幸運で生還し続けた。


【聖杯にかける願い】
願望器について研究したいが、ひとまずマスターに協力する。


139 : 三沢岳明&ライダー ◆aEV7rQk/CY :2016/08/26(金) 09:34:03 axVsBIUM0
【マスター名】三沢岳明

【出典】SIREN2

【性別】男

【Weapon】
なし。


【能力・技能】
「幻視」
他者の視界や聴覚を覗き見る能力。
距離が近いほど鮮明になり、遠いほどノイズが強くなる。


「神話的感覚」
羽生蛇村の任務以降、勘が鋭くなっている。
異常な光景を目の当たりにしても取り乱さなくなり、人間に擬態した異形を看破することすら可能となった。
ただし、真っ当な精神の持ち主から見ると、三沢の振舞いは奇人のそれにしか見えない。


【人物背景】
作戦行動中に夜見島に不時着した三等陸佐。
2年前に起きた羽生蛇村事件において救助隊として現地に派遣された三沢は、生存者の救助中に村の怪異の一端に触れてしまう。
これ以降、彼は幻覚や悪夢に悩まされることになり、精神昂揚剤らしき薬の服用で精神を保っている。

夜見島/瓜生ヶ森 1:09:55〜で目を覚ます直前から参戦


【聖杯にかける願い】
島に帰還する。


140 : 三沢岳明&ライダー ◆aEV7rQk/CY :2016/08/26(金) 09:34:34 axVsBIUM0
投下終了です。


141 : ◆As6lpa2ikE :2016/10/29(土) 21:23:47 qICQYD.Q0
0 まえがき

『パンさえあれば、たいていの悲しみは堪えられる。』

眉美に倣い、俺も名言を引用させてもらった。
俺のような不良でも知っている、世界的に有名な作品、ミゲル・デ・セルバンテス・サアベドラの『ドン・キホーテ』から引用した一節だ。
飢えた幼少期を過ごし、食については他人よりも一家言あると自負する俺だからこそ、この言葉には納得する。
心に飢えが生じても、腹の飢えさえ満たせば、結構何とかなるもんだ。
実に素晴らしい、人生の指標とすべき言葉である。
(俺は眉美のようなひねくれ者とは違うからな。歴史に残る偉人の格言にいちゃもんをつけるような、無粋で礼を失した――美しくない真似はしねー。)
最早言うまでもないかもしれないが、『ドン・キホーテ』とは妄想と現実がごっちゃになった狂人が主人公という、あらすじだけ見ればトンデモない物語だ。
昔の人はよくもまあ、こんな話を考えられたな、と感心するぜ。
だが、事実は小説より奇なりと言うべきか、そういう奴が現実に少なくないのも確かだ――それも、現代に。
じゃなきゃあ、昨今のメディアがあそこまで、偏った見解と思想を織り交ぜた報道を行うわけがないだろ?
あんなモン、記者が自分のことを正しいと狂信していなければ、作れるはずがねー。
どんな時代のどんなところにも、一定数の狂人は居るのだ。
何より、彼らの恐ろしい所は『自分が狂人であることに気づいていない』という点である。
なので、こうも偉そうな口をきいている俺自身が狂人なのかもしれない――という可能性もなくはないのだ。
例を挙げるならば、俺は『自分が美食に通じていると思い込んでいる狂人』なのかもしれないし、
俺を含めた団のメンバーたちだって、端から見れば『自分たちを美少年だと思っている狂人の集まり』なのかもしれない。
考えるだけで恐ろしい、ぞっとする想像だ。
だが、その馬鹿馬鹿しい妄想を否定する手段は、俺にはない。
俺がどれだけ必死にそれを否定しても、それらは全て俺の視点から見た否定なのだから。
狂人かもしれないものの視点から見た、全くもって頼りない否定なのだから。
俺の正常を確立する手段があるとすれば、それは第三者からの視点くらい――これまた団で例を挙げると、俺の美少年ぶりや美食ぶりを眉美あたりの視点から評するしかないのだが、それはあくまで物語や小説の中の話なのである。
現実でそのようなメタな手段を用いる事は、出来ない。
まあ、その第三者も狂人だったってパターンもあるっちゃあありそうなんだけどな。
ほら、ミステリー小説なんかではよくあるだろ? 語り部こそが狂ってた、っていうオチが……。


142 : 魔法少女と美少年 ◆As6lpa2ikE :2016/10/29(土) 21:28:31 qICQYD.Q0
「はっ、くっだらねぇ。自分が狂人かそうじゃないかなんて、それを判断するのに他人の視点が必要だなんて、くだらなすぎて笑いが出るなあ、おい。そんなん一々気にしてたら、面白くねえだろ」

俺がらしくもなく(おそらく語り部になってしまった所為だ。この役割は色々と頭を使うので、とても疲れる。まったく嫌になるぜ)、まるでアイデンディティクライシスまっただ中な思春期の中学生みてーな考えをしている時に、そのようなことを言ってきたのは美少女であった。
美少年ならぬ、美少女。
美少年探偵団に属しており、普段から何かと『美』に関わっているため、美観でなくとも目が肥えている俺が、そう評するほどの美少女だ。
もしこの場にヒョータが居たら、『美少女ってことは、ナガヒロにお似合いなんじゃないの? ……いや、この子は既にナガヒロのストライクゾーンを越えてしまってるかな?』とからかいの一つは言いそうなくらいである。
赤から緑へのグラデーションがかかった、まるで植物のような髪。そして、何よりも頭の上にでんと乗っかるように生えている巨大な『花』が著しく目立っている。
このように描写すると、なんだかファンタジックで可愛らしいが、髪の下の顔――美しい顔には、『挑発的という言葉を顔面パックしたらこんな表情に仕上がるんだろうな』と思わせられる表情を浮かべていた。
それはまるで――狂人のよう。
ああ、そうだ。
なんで話題が『ドン・キホーテ』の格言から狂人へと変わっていったのか、今更ながらに疑問に思い、そして納得した。
それは目の前の美少女――バーサーカーこと『袋井魔梨華』が、まごう事無き狂人だからである。

「狂人なんて、そんな酷いこと言うんじゃねえよ。ドン・キホーテと違って、私はちゃんと本物のドラゴンに戦いを挑むさ」

そもそもドラゴンに戦いを挑む時点で相当おかしいと思うけどな。
『それはさて置き』と、バーサーカーは逸れた話題を修正する。

「そもそも、お前が最初に持ってきた格言からしておかしいんだよ。『パンさえあれば、悲しみは乗り越えられる』だあ? それじゃあ、悲しみで物が喉を通らない時はどうすりゃいいんだ?」

そんなエモーショナルな出来事と、誰よりも無縁そうなバーサーカーは語る。
確かに。
あまりの悲しみで胸が一杯になり、喉を食事が一口も通らない、なんていうのは、それこそ小説においてありがちで、御涙頂戴な演出だ。
ストレスによって消化器官に不調が生じ、食事を受け入れられないというのは、よくある話なのである。
そうなれば、飢えた腹を抱えながら、ただただ悲しみに身を沈めるしかない……。

「そういう、時と場合によるコンディションに左右されずに、悲しみやストレスなんかを、その原因まで纏めてぶっ飛ばせる方法こそが、私は最高だと思うんだよな。つまり、それは――」

バーサーカーがここまで言った時、俺は彼女が言おうとしていた事を予知した。
狂ったように戦闘を好む彼女が次に口にする言葉なんて、火を見るより――花を見るよりも明らかである。

「戦い。次から次へと湧いてくる、血沸き肉踊る戦いさ」

そう言って、バーサーカーは甲高い声で笑う。
その姿は、狂戦士(バーサーカー)に相応しく――ドラゴンなんかよりもよっぽど化物じみていた。


143 : 魔法少女と美少年 ◆As6lpa2ikE :2016/10/29(土) 21:29:23 qICQYD.Q0
【クラス】
バーサーカー

【真名】
袋井魔梨華@魔法少女育成計画JOKERS

【属性】
混沌・中庸

【ステータス】
筋力B 耐久B 敏捷C 魔力B 幸運D 宝具C

【クラススキル】
狂化:C
バーサーカーは強い相手と戦い、戦闘を楽しむためならばそれ以外のメリットデメリットを無視するほどの戦闘狂である。
狂化によって理性こそ失われておらず会話は可能だが、彼女を戦闘から引き離すのは殆ど不可能と言って良い。

【保有スキル】
魔法少女:A
魔法少女である。ランクが高いほど高水準の魔法少女となる。
魔法少女は人間離れした戦闘能力と視覚聴覚を得、排泄や食事などの新陳代謝行為を一切行わなくて良くなる。
また、疲労の蓄積する速度が人間よりも遥かに遅く、長期の不眠不休にも耐えられるスタミナと常人離れしたメンタルを持つ。
更に、固有の魔法を1つ使える。
バーサーカーの場合それは宝具となる。
そしてバーサーカーは魔法少女の状態で呼び出されているためこのスキルの発動は阻害できない。

魔力回復(日光):A
下記の宝具によって得たスキル。
花の育ちやすい環境下、特に、太陽の光を浴びる事で魔力が急激に回復する。
環境が日中であるならば、マスターからの魔力供給が途絶えても宝具を十全に発動できるほどの魔力回復を行える。

戦闘続行:B
往生際が悪い。悪すぎる。

勇猛:A
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
己の覚醒すらも拒否する精神性。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。


【宝具】
『頭にいろんな魔法の花を咲かせるよ』
ランク:E〜A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜100 最大補足:1〜100

花の種を飲み込み、魔法の花にして頭に咲かせる魔法 。
見た目は間抜けだが、頭の花は不思議な力を持っている。
咲かせる花の種類によって効果が異なる。
すぐに成長させた花はすぐに枯れるが、その分早く実を取ることが出来るという利点がある。

【weapon】
己の魔法と肉体

【マスター】
袋井満@美少年シリーズ

【マスターとしての願い】
なし

【能力技能】
・美少年
美少年である。

・不良
美少年探偵団の肉体労働担当。
指輪学園の治安を裏から守っているとまで言われるほどの喧嘩の腕っ節を持つ。

・美食
美少年探偵団の料理担当。
美食に慣れていない者が食べればあまりの美味しさに思わず吐き出してしまうほどに、調理が上手い。

【人物背景】
カリキュラムにおいて芸術分野が廃止された指輪学園。
そこの使われなくなった美術室を無許可で占拠し、探偵活動を行っている美少年たちこそが、美少年探偵団である。
袋井満――通称『美食のミチル』はその一メンバーであり、プロ顔負けレベルにハイクオリティな料理を団員たちに提供している。
大柄で目つきが鋭く、見た目こそはいかにも不良と言った感じだが、実際はかなり面倒見のいい、いい子。
また、――美声のナガヒロほどではないものの――話せばかなり饒舌であり、風刺の効いたツッコミを度々口にする。


144 : 名無しさん :2016/10/29(土) 21:29:48 qICQYD.Q0
投下終了です


145 : ◆CKro7V0jEc :2016/11/03(木) 20:27:04 spE3QLhs0
次の候補作品をフリー化します。

聖杯四柱黙示録

ロベリア・カルリーニ&セイバー
ttps://www65.atwiki.jp/quatropiliastro/pages/78.html

Fate / Winter morning ―史実聖杯―

高遠遙一&アサシン
ttps://www65.atwiki.jp/winterfate/pages/60.html

遠坂凛&ランサー
ttps://www65.atwiki.jp/winterfate/pages/89.html


146 : ◆T3rvSA.jcs :2016/11/14(月) 19:19:30 CCjVDy4k0
投下します
以前に投下したものに手を加えたものです


147 : GREED TYRANT ◆mcrZqM13eo :2016/11/14(月) 19:22:18 CCjVDy4k0
男が気づいた理由は恐怖。
死にたく無い死にたく無いもっと金を得てもっと女を抱いてもっと美食に耽り美酒を飲みもっともっともっともっともっっともっともっともっともっっともっともっともっともっっともっともっともっともっっと
果て無き欲望、限度の無い欲望。しかしそれは満たされない。
死。
生者必滅の理がやがて男に死を齎し、後はただの――――無。
イヤダ!!イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ!!!
そして男は思い出す。死を免れる手段を。
そして男は思い出す。その手段がこの偽りの世界に無いことを。
全てを思い出した男は脳が灼けつくほどの凄まじい憤激を抱き。

声が――――聞こえた。

「ふぅん。おじさんがぁ、わたしのマスター?キャハハ、これはあたりかなぁ」





夜も更けたオフィス街に、複数の影が乱舞していた。圧倒的に数が多いのは異形。犀や鮫や百足やハエ取り草やヤドリギといった動植物と人体を融合させたような怪物達が100体以上。
異形以外の影は六つ。長柄の武器を持った男と、ローブを羽織った女と、大剣を持った男が一人。
残りの三人は、人混みに紛れれば忽ち溶け込んで見分けがつかなくなる平凡な外見の無手の男女。
無手の男女は、この地で行われている聖杯戦争に巻き込まれたマスター達。残りの三人はそのサーヴァント。
戦っているのは、セイバーが一人、キャスターが一人、ランサーが一人。
この三組は脱出方法を探していた者や、争いを止めるべく奔走していた者達が出逢い、同盟を組んだグループであり、目下のところ対黒幕の最有力勢力であった。
既に聖杯戦争に乗った主従を、七組撃破しているところからも、その戦力が窺える。
今宵はオフィス街を探索して、黒幕の何らかの動きを誘おうとしていた所を、この異形の群れに襲われたのだ。
異形は強かった、人間基準では。制圧するのは軍隊でもなければ不可能だろうというほどに。
しかし対抗するのは、超常の存在であるサーヴァント。怪物退治をお手の物とする英雄達だ。
異形の群れが、御伽噺に語られる英雄譚のように、サーヴァント達に殲滅され、消滅するまで、さして時間はかからなかった。

「なんなんだ此奴等」

槍を一振りしたランサーが忌々しげに呟く。

「私の知識には無い。キャスターは」

誰にとも無く放たれた女の呟きを、槍を持った男のランサーが受けてローブの女に振る。

「わかりません。ですが、この異形達を生みだしたのは魔術によるものでは無いことは確かです」

「魔術で…ない。となると錬金術か?東洋の術か?それとも宝具?」

ランサーの問いに、キャスターは首を振るだけだった。
原因不明の異形の大量発生。確実に聖杯戦争に関係するのは事実だろうが、原因も生みだした者も解らぬでは手の打ちようがない。
その場を重苦しい沈黙が支配した時。

「わたし、知ってるわぁ」

突如として聞こえた、場違いな明るく幼い声に、全員が声の方を見た。
視線の先に居たのは、身長が140cm程も無い、漆黒のゴシックドレスに身を包んだ少女。こちらに歩み寄る一歩ごとに、頭を飾る蝶を象ったヘッドドレスがゆらゆらと揺れている。
死人を思わせる程に白い肌は夜闇を思わせる漆黒の衣装とあわさって、絶妙なコントラストをつくりだし。衣装よりも黒いボブカットの下で、大きめな紅い瞳が愉し気な光を浮かべている。
触れれば折れそうな細い線で構成された身体は、肌の白さとあいまって繊細で儚げなイメージを与え、幼く可憐な顔立ちは無垢そのものだ。
だが、その場に居たサーヴァント達は、少女を見た刹那、一斉に臨戦体制に入ったのだ。その戦意の苛烈さは異形の群れを相手にしていた時とは比較にならない。
彼らには解るのだ。少女が放つ異質極まりない存在感が、少女の全身から立ち上る瘴気が、そして、少女の声から視線から感じる底知れぬ邪悪さが。
少女を見た瞬間から、サーヴァント達は底知れぬ奈落に墜ちゆくような感覚を覚え続けて居た。


148 : GREED TYRANT ◆mcrZqM13eo :2016/11/14(月) 19:24:06 CCjVDy4k0
「知っている。そういったな。それは此奴等が何処から来たのか…ということか。それとも」

詰問するセイバー。一同を少女から守るように前に出て、宝具でもある大剣を油断無く構える。

「この人達をけしかけたのは…わたしよ。英雄さん達」

どうでも良さげな口調で行われた宣戦布告。サーヴァント三騎を相手にする行為では無い。ならばこの少女は狂っているのか?
否。口元に浮かべた傲岸不遜な笑みを見よ。総身から滲み出る、未だ解放されておらぬのに周囲の空間を陽炎の如く歪ませるその暴虐な魔力を。
少女は――――魔少女は狂ってなどいない。此処でこの四組を皆殺しにする自信が行わせた宣戦ーーーー否。宣殲布告であった。

「人…と言ったな。ならばこの化け物共は」

マスター達を守るべく下がっていたランサーが怒気も露わに叫ぶ。

「奴等ははエクリプス。自分の欲望に呑まれ…影に喰われた愚かな人間達。自分に正直になっただけ……とも言うんじゃないかしらぁ」

朗らかに楽しそうに笑う魔少女。闇の中、街灯に浮かぶ姿は、病的で、背徳的な美に満ちていた。マスター達はおろか、四騎のサーヴァントですら、昏い欲望を一瞬抱いてしまった程に。

「貴女は…何者なのです。どうやってあの異形達を作ったのです」

震えながら問うキャスター。魔術師である彼女は他の者より解るのだ、この魔少女の異質さが。

「わたしは始原(アルファ)にして終末(オメガ)たる影魔(えいま)の姫、オメガエクリプス。クラスはバーサーカーよ。失礼だわぁ。こぉんな美少女が狂戦士だなんて」

頬を膨らませるバーサーカーの無垢な愛くるしさよ。その仕草は甘美な毒のよう、口にすれば死ぬとわかっていても、口にせずにはいられない。そして陶酔のうちに五臓六腑を腐らせて死に至るのだ。

「ちょぉっと力の有るエクリプスなら簡単にできることよ。一番強くて一番偉いわたしなら、できて当然よ」

三騎の英霊達ですら、思わず息を飲んだ程に、それは蠱惑的な仕草だった。

「グ…オオオオオオオオオ!!!!」

そんな己を恥じたのか、先の魔少女の言葉に怒りを覚えたのか、サーヴァント達は、可憐で儚げな少女に襲いかかった。


149 : GREED TYRANT ◆mcrZqM13eo :2016/11/14(月) 19:25:01 CCjVDy4k0
最初に地を蹴ったのはランサーだが、攻撃したのはセイバーが先だった。
その場から動かずに大剣を振り上げ、一気に振り下ろすと、ランサーの武器が今だ魔少女に届かぬ内に、
右肩から左脇腹に走る斬痕を距離を無視して魔少女の躰に描いたのだ。
細めていた瞳を見開いた魔少女の心臓を槍が深々と抉った。

「やったか!?」

マスター達の一人が叫び、夜の空気を震わす。その響きが収まらぬ内に。

「はじまったばかりなのに、もう終わりにしたいのぉ?ひょっとしてぇ、早漏?」

まるで、晴れた春の午後に、暖かい日差しを浴びてはしゃぐ幼子の様な声に隠れて。
異音が聞こえた。

その音を肉が裂ける音と気付いたのはサーヴァント達のみ。

「ゴァハッ!!」

男のランサーの身体が震えると、その背中から紅と白の色彩が飛び出した。

「な…ランサー!?」

何たる無惨。ランサーの背から出た二つの色彩は、血に染まっていても白いと判る小さな繊手。そして、その手に握られた、今もなお脈打つ血塗れた心臓だった。
魔少女は心臓を貫く槍をそのままに前進、刃に更に身体を抉らせながらランサーとの距離を詰め、驚愕の為に動くのが遅れたランサーの心臓を目掛けて繊手を差し込んだのだった。
セイバーの呼びかけに応える事無くランサーの全身から力が抜けて行く。
僅かに痙攣するだけのランサーの肉体が突如として宙に浮くと、銃弾にすら勝る猛速でマスター達の方へと飛翔した。
濡れた布を思い切りコンクリートに叩きつけた様な音を残し、ランサーの身体が命中したランサーのマスターが、人体であったと一見では理解できない姿へと変わった。

「マスター達は逃げて下さい!」

キャスターが必死という言葉を体現して二人に叫ぶ。ランサーを容易く屠った攻撃力と、セイバーとランサーの攻撃を歯牙にもかけぬ耐久力を見て、勝算が無いことを悟ったのだ。

「え〜。なにそれぇ」

詰まらなさそうに呟き、手中のランサーの心臓を握り潰した魔少女目掛けて、キャスターは火や雷や氷結といった属性を乗せた魔力弾を連発する。
その悉くがバーサーカーに触れる直前に消滅し、逆に全てを飲み込み消滅させる魔力球をキャスターに対しバーサーカーが放つ。
即座に魔力障壁を展開して防ぐキャスターをよそに、セイバーがデタラメに大剣を振るいまくる。大剣の描く軌跡に沿って次々と虚空に斬裂痕が刻まれるが、バーサーカーは舞う様な動きで全て回避。
バーサーカーの瞳が一層赫く輝くと、セイバーの眼前に無数の動植物を無理やり一つにまとめた様な醜怪な肉の柱が直立した。
咄嗟に振るった大剣は肉柱の半ばまで食い込んで止まり、次の瞬間。セイバーの身体は、肉柱ごと腰の部分で上下に分割されていた。

「一人になっちゃったぁ」

セイバーを両断した大鎌を手に、キャスターに呟くと。地面に落ちたセイバー の上半身の胸の部分を踏み抜く、口から噴水の様に鮮血が迸り、バーサーカー顔を濡らす。

「ああ……」

恍惚と血を浴びるバーサーカーの姿の何と淫靡で妖しい美に満ちていることか。
なまじ外見が可憐な幼女であるだけに、その妖美さはどんな精神も麻薬の如くに蝕む。

窮地にあることも忘れて立ち竦んだ三人を、無数の肉蛇が取り囲んでいた。


150 : GREED TYRANT ◆mcrZqM13eo :2016/11/14(月) 19:26:51 CCjVDy4k0
――――某所

そこはオフィス街の地下に作られた広大な空間であった。
そこは悪徳の地だった。淫靡な香が炊かれ。薄暗い照明の中、仮面以外は何も身につけていない無数の男女が、酒食を貪り、男と女、男と男、女と女で交わり合う。
眩く照らされるステージの上では、招かれたもの達が壇上に挙げられた男女を責め苛み、嬲り殺す。
嘗て神の怒りに触れて地上より消えたソドムの再現がここにはあった。
だが欲望を貪る者達は気付かない。照明に照らされた影に蠢く蛇に。
そして蛇共は一斉に天井近くにまで鎌首をもたげ、人間など数人纏めて入りそうな大口を開けて、悦楽を貪っていた人間共を喰らいだす。
肉が裂ける音。骨が砕ける音。血を啜る音。それらを圧して轟く阿鼻叫喚。函館市の地下に現れたソドムの都は、あっさりと滅びを迎えた。
しかし、この背徳の都を滅ぼしたは、神でもその御使いでも無い。

「はぁあ…欲望に塗れて絶望に染まった魂はおぃしいわあぁ…もっと無いの?マスター?」

血の一滴、肉片一つ残さずに、その場にいた者達を喰らい尽くした黒い蛇共。その蛇の群れを全て己の影に収めて笑うのは、漆黒のゴシックドレスに身を包んだ、儚げな容姿の少女。
しかし、外見からは想像もつかぬ、周囲を圧する存在感、その邪悪に歪んだ唇、凶悦の色を浮かべた紅い瞳、何よりもその全身から立ち上る、漆黒の瘴気。
昨夜三組の主従を殺したバーサーカーであった。

「待つことだなバーサーカー。早々、餌は集まらん」

魔少女に応えたのは高級なスーツに身を包んだ男。その眼はどんな姿をしていても、見る者全てに男が他者と隔絶していると理解させる、内面からの欲望にギラついていた。

「余り餌を食い散らかしては、他のマスター共に気付かれる恐れもある」

「うふふ…また御馳走」

艶やかな邪笑を浮かべる魔少女。その目はまるでプレゼントを待ち焦がれる幼子のよう。昨晩戦った三騎のうち、キャスターを喰らい、糧とした時の味が忘れられない様だった。
サーヴァントを喰らい、魔力充溢した状態で、魂食いをする必要は全くない。にも関わらず魂食いを行ったのは、ただ単にやりたかった。それだけの理由である。
百人以上の男女を駄菓子の如く食い散らかして笑う姿は、まさに魔性と呼ぶに相応しい。

「英霊かぁ、お姉ちゃんみたいに、皆の為に戦うんだって人達…。犯して嬲って辱めて貶めて……。楽しみぃ」

クスクスと笑う魔少女。その目は恍惚と煙り、何処か遠くを見つめていた。

「そぉいえばマスターは、何かお願いしたいことはあるの?」

バーサーカーに問われて男は歪んだ笑みを浮かべる。

「いくらでも有る。金、地位、権力、女、美食。美食。いくら貪っても足りない。しかしそれらは幾らでも手に入れられる。私に必要なのは飽き果てるまで欲望を満たす為に必要なモノ……不老不死だ」

男の答えにバーサーカーは愉快そうに笑う。

「不老不死が目的じゃなくて手段かぁ…本当にマスターって面白ぉい。わたしを呼べる訳よねぇ。本当に欲深いんだから」

ひとしきり笑った後おもむろに踵を返した。

「それじゃあ、用がある時か、ご飯用意できたら言ってね。それまで適当なエクリプスを造って遊んでるから」

手をひらひらと振って去ろうとするバーサーカーに男が最後の質問を放つ。

「勝てるのだろうな」

振り返った魔少女の紅い瞳が禍々しい色を帯びた。

「当然よ。サーヴァントもマスターも全員遊び潰して貴方に聖杯をあげるわぁ。そしてわたしはもう一度お姉ちゃんと……ふふふ」


151 : GREED TYRANT ◆mcrZqM13eo :2016/11/14(月) 19:27:31 CCjVDy4k0
バーサーカーが去って行った方向を見つめて、男は短く息を吐いた。

――――歴史上や伝説の英雄を使い魔として行う代理戦争?馬鹿馬鹿しい。あれのどこが英雄だ。

胸中に呟く。バーサーカーの可憐な外見から滲み出る瘴気。無垢な表情とは裏腹に、周囲を圧する存在感。しかも意図してのものでは無く、只ありのままに振舞っていて漏れ零れたものであれだ。
男の脳裏にバーサーカーから聞いた知識が思い起こされる。
エクリプス…抑えきれない欲望がきっかけで、人が押さえつけている人格。心理学的に言うところの“シャドウ”に呑まれ怪物と化した人間。通常のエクリプスは人間に擬態する能力はあるが知能は極めて低い。欲望をに非常に忠実。

欲望を越える精神力で以って、影による侵食を跳ね除け、影を支配したものは上級エクリプスとなり、人としての思考と通常のエクリプスには無い超常の力を行使する。
他人をエクリプスに変えたり使い魔を生みだしたりできる。

影魔王はそもそもの来歴が不明。他のエクリプスを遥かに超越した力を持ち。エクリプスを従える存在。

そしてエクリプスの本質は……欲望を満たすこと。

男が影魔王たる――――影魔姫と称しているが――――バーサーカーと接することができるのは胆力の故では無い。バーサーカーに匹敵する化け物を養子として“飼っている”からに他ならない。

――――今ばかりは、貴様に感謝するぞ。紅麗。

いつか殺害する予定の男に心中で感謝する。
あの魔人と称すべき養子と向かい合ってきた経験を持って、男は魔少女を従える。

――――治癒の少女も、天堂地獄も、この地では手に入れられぬ。元の世界に何としても帰還しなければ。

だが彼の私兵集団である麗(うるは)も裏麗(うらうるは)もこの世界には存在しない。
だが問題は無い。バーサーカーの存在が補って余り有る。問題はその性状だった。気紛れに自分を殺すかも知れない。

――――これは無くせんな。

右手の甲にいつの間にか刻まれた令呪を見る。
それは、何かを掴むかのように指を広げた手の形をしていた。


152 : GREED TYRANT ◆mcrZqM13eo :2016/11/14(月) 19:28:08 CCjVDy4k0
バーサーカーに倒された三組の主従の不幸は、この主従が拠点としている場所に、それと知らず近づいたことであった。
オフィス街に設置して有る監視カメラで接近を知り、自分達の拠点が気づかれては面倒と思案していたところ、バーサーカーが勝手に迎撃に向かったのだが、
まさか作り続けたエクリプス全てをバーサーカーが使い潰すとは思ってもいなかった。それも英霊達の戦いを見たいという理由で。
バーサーカーから予め聞いていたエクリプスの習性。欲望に忠実で、欲望を満たすことのみに生きている。そしてバーサーカーの欲望は自分が愉しむこと。
この二つの知識と、三騎のサーヴァントを一蹴したバーサーカーの実力が無ければ怒り狂っていただろう。
しかし、どうでも良いことだ。バーサーカーの戦力は下級エクリプス100体どころでは無い。当人曰く「生きていた頃と比べると大分弱くなってる」とのことだが、それであの強さなら、生前の力を取り戻せば、紅麗をも凌駕するやも知れぬ。
男は自分の養子であり、最大の力であり、最も油断ならない男の顔を思い浮かべる。
――――バーサーカーの力があれば、奴を、紅麗を恐れずに済む。

聖杯を手に入れ、バーサーカーを完全な形で蘇らせ、天堂地獄を手に入れ、治癒の少女を得て不老不死となり、紅麗を殺し、バーサーカーを喰らってその力を取り込み、そして何も恐れること無く永遠に欲望を貪る。
男の――――森光蘭の欲望は、再現なく膨れ上がっていた。
前提としての聖杯戦争の勝利。聖杯の獲得の為に、ロールとして得た大企業のトップとしての財力と権勢を用いて、この地の至る所に監視カメラを設置し、人を放って情報を集めている。
此処で目立つ動きをした主従は、即座に把握できる体制を既に整えていた。



欲望の化身たる影魔姫と、欲望そのものと言うべき男。両者は我欲を満たす為に戦場に身を投じる。
その過程で他者を踏みにじろうと。他者の夢を砕こうと、それすらも彼らの欲望を満たす為の行為。
聖杯戦争は彼等にとって通過点であり、欲望を満たす狩場であった。


153 : GREED TYRANT ◆mcrZqM13eo :2016/11/14(月) 19:29:08 CCjVDy4k0
【クラス】
バーサーカー

【真名】
オメガエクリプス@聖天使ユミエルシリーズ

【ステータス】
筋力:C+++ 耐久:C+++ 敏捷:C 幸運:C 魔力:EX 宝具:EX

【属性】
混沌・狂

【クラススキル】
狂化:EX
言語能力と思考能力を有するが、バーサーカーの思考は「自分が愉しむ」ということに固定化されている。意思疎通ができないというより他者を眼中に入れない。
パラメータ上昇の恩恵は受けないが同ランクの精神異常のスキルと同じ効果を得る。
このスキルはバーサーカーの在り方そのものを表している。

【保有スキル】

影魔王
影魔王であるバーサーカーは最高位の霊格を持ち、影魔の持つ種としての性質や基本的な能力を全て持ち併せている。
極めて高ランクの天性の魔・怪力・魔力放出・再生・薬物生成(媚薬)・加虐体質を発揮する複合スキル。
使い魔スキルの効果も持ち、人間を影魔へと変えられるが、元となる人間次第の上上級エクリプスは作成不能な為Cランク相当となる。
人類種を捕食する存在の為に、魂喰いを行った場合の効率が通常よりも遥かに高い。
影魔王独自のものとして、エクリプスに対してA+相当のカリスマ(偽)を発揮し、絶対暴君として君臨できるが、所詮は圧倒的な暴力によるものなので、力が衰えれば即座に叛逆される。
影魔王は唯一オメガエクリプスのみの為、このスキルにランクは付かない。


仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力。
煌翼天使の必殺技を受けて死に掛かるもなんとか離脱できた。
致命的な宝具の直撃を受けてもなお生存し、離脱できる可能性がある。


形態変化:ー
状況に応じて姿を変え、能力を変化させられる。
再現の限界により、呼び出された姿のまま固定されている為によりこのスキルは使用不能。


対魔力:A+
A+以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、魔術ではバーサーカーに傷をつけられない。
影魔の王として破格の神秘をバーサーカーは有している。


154 : GREED TYRANT ◆mcrZqM13eo :2016/11/14(月) 19:29:46 CCjVDy4k0
【宝具】
奪い操る影遊び(シャドウスティール)
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人

バーサーカーの肉体を融解させて対象の影に入り込み、自在に操る技。
対象の能力の使用や、知ってさえいれば宝具の真名開放も可能。
Bランク以上の対魔力もしくはAランク以上の精神耐性の持ち主には効かない。


終焉を齎す暴食の顎(エンド・オブ・グラトニー)
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ1~70 最大補足:100人

バーサーカーの影から巨大な顎を持つBランクの魔獣に該当する肉蛇を多数召喚する。この時影の形や大きさは、肉蛇の数や大きさにより変化する。
肉蛇は極めて強靭で、Bランク以上の宝具かA以上の筋力を持ってしなければ傷をつけることさえ難しい。
この肉蛇に食われた者はバーサーカーの魔力として吸収される。制限により吸収できる魔力量はかなり低くなっているがサーヴァントを一騎喰えば、この宝具の消費分を充足させることは可能。

ライダーとして召喚されていれば、高層ビルを崩壊させるサイズの肉蛇を無尽蔵に召喚する対城宝具となるが、バーサーカーとして招かれた為、規模が落ちている。


魔姫の審判以って下される暗黒の槌(ダークネス・パニッシャー)
ランク:A++ 種別:対城宝具 レンジ20〜60 最大補足:500人

バーサーカーの持つ影の力をを破壊エネルギーに変えて解放する。
解放されたエネルギーは超重力の形を取り、範囲内のもの全てを押し潰し、消滅させる。
本来ならば右手を軽く振るだけで何の消耗も無く街一つ消すこともできるが、制限によりかなりの魔力を消費し、真名解放必要とする。
威力は変わらないが範囲は極端に狭まっている。


暴君が振るう終焉の絶対斬撃(デッド・エンド・オーヴァーロード)
ランクEX 種別:対人宝具 レンジ1〜3 最大補足:3人

バーサーカーの本質である、終末の力を凝集して生み出した大鎌による斬撃。
万象に待ち受ける終末という運命を具現化したと言える絶対斬撃は、全てを消滅させる無を生みだし、空間すら飲み込んで軌道上のもの全てを消滅させる。
本来ならばかなりの射程を持つ飛び道具だが、再現の限界により直接攻撃としか機能しない。



【weapon】
大鎌
自分の影から取り出す、自身の身長よりも長大な鎌。

【人物背景】
二次元ドリームノベルズの変身ヒロインもの“聖天使ユミエル”シリーズのラスボス
性格は幼児の残虐さと気ままさに悪魔の狡猾さを併せ持った暴君。
種として欲望の追求に忠実な為、目先の快楽に気を取られて周りが見えなくなることも。
それが元で姉である煌翼天使に敗北を喫する。

【方針】
楽しめる相手(オモチャ)を探す。自分は最強だから負けないと思っている。

【聖杯への願い】
受肉。姉であるユミエルとの再会


155 : GREED TYRANT ◆mcrZqM13eo :2016/11/14(月) 19:30:25 CCjVDy4k0
【マスター】
森光蘭@烈火の炎

【能力・技能】
ロールにより齎される財力。
底無しの欲望とそれを満たす為にはわが身を顧みない根性。烈火達が紅麗を消耗させ切ることを、紅麗が裏武闘殺陣の開催を要求した時に予測する頭脳と高い嗜虐性を有する。


【ロール】
日本有数の大企業のトップ。開催地に本拠地がある。森の拠点はオフィス街の地下に作った施設。

【人物背景】
少年週間サンデーに連載されていた“烈火の炎”のラスボス。
底無しの欲望を有し、それを満たす為に不老不死を求める。
そうして偶然発見した“治癒の少女”佐古下柳を拉致。烈火達の戦いの幕を開けるのだった。
結局柳は奪い返されるものの、裏武闘殺陣の開催を要求した紅麗の言葉から烈火達の潜在能力を悟り、紅麗暗殺計画を始動。決勝直後満身創痍の紅麗を襲撃するも取り逃がす。
その後究極の魔導具“天堂地獄”の在り処を知り、入手に赴く。烈火達との戦闘や、生きていた紅麗の逆襲を掻い潜り、天堂地獄に選ばれ、融合。人間を辞める。
その後は傷を癒し更なる力を得る為に、性欲と一体化した食欲を満たし続ける。
そして佐古下柳を再度拉致し、柳を取り込むことで不老不死を獲得しようとしたが、烈火に妨害され、柳の力により身体が崩壊。紅麗の追撃を受けて剥き出しになった本体を烈火に砕かれて死亡した。

【方針】
バーサーカーに餌をやりながら他の主従の情報を集める。
バーサーカーの戦力ならば魔力が尽きない限り負けることは無いと思っている。
令呪は絶対に一画残す。

【聖杯への願い】
不老不死とバーサーカーの受肉。


156 : GREED TYRANT ◆mcrZqM13eo :2016/11/14(月) 19:31:28 CCjVDy4k0
投下を終了します


157 : 名無しさん :2016/11/23(水) 15:26:17 8GgKtV2M0
テスト


158 : ◆v1W2ZBJUFE :2016/11/23(水) 15:27:03 8GgKtV2M0
テスト


159 : ◆DdYPP2qvSs :2016/12/11(日) 13:38:14 ./3Wfcng0
勿体ないので、箱庭聖杯に投下しようか迷った末に結局投下しなかった方の作品を投下します


160 : ROMANCE DAWN ~偉大なる威光の夜明け~ ◆DdYPP2qvSs :2016/12/11(日) 13:39:32 ./3Wfcng0

聖杯戦争に勝ち残る。
願いを叶えるためではない。勝つためにだ。
超級の聖遺物である聖杯を巡る主従同士の争い。
そこで自分が勝者として君臨し、己の優秀さ、そして実力を証明する。
それが彼女の、木王 早苗の方針だった。
彼女は勝つために此処に立っている。
既にサーヴァントは召還した。
能力は決して高いとは言えないが、不平は言っていられない。
馬鹿正直に戦う必要は無い。
勝つための手段を惜しみなく用いることが真の強さだ。
真正面から正々堂々とか、騎士道とか、そういった高潔さは本物の馬鹿が貫くものだ。
自分は違う。
優秀である自分は、勝つためにあらゆる手段を使う。
冷静に、知的に勝利を掴んでみせる。
早苗はそう考えていた。
考えていた、はずだった。
なのだが。



――――どうしてこんなことになったのだろう。



早苗は心底思っていた。
頭を抱えるような仕草を見せながら、彼女はソファーに腰掛ける。
けたたましい喧噪。馬鹿騒ぎの声。
荒くれ共の騒がしさにうんざりする。
周囲のやかましさに呆れながら、早苗は事の発端を思い出す。

早苗がこの聖杯戦争に参加したのは偶然だった。
始めに断っておくと、彼女は魔法少女である。
否、正確には魔法少女候補生と言うべきか。
早苗は都市部の一流企業に属していたエリート社員だった。
しかしその気難しい性格と歯に衣着せぬ言動を疎まれ、地方都市であるN市へと左遷させられた。
その後は地方の事業所でお茶汲みやコピーと言った下らない仕事を任されるばかりだった。
そんな生活にうんざりしていたある日、彼女は本物の魔法少女に選ばれた。
魔法少女『ルーラ』に変身する力を得たのだ。

それをきっかけに早苗は事業所での仕事を辞め、魔法少女として活動するようになった。
カラミティ・メアリからの攻撃といった危機に見舞われることもあった。
彼女に対抗するためにルーラは自身の魔法を利用し、複数名の魔法少女を部下として従わせた。
使えぬ馬鹿共ばかりだが、リーダーである以上は自分が面倒を見なければならない。
部下の指針となる優秀な人間として振る舞う。それが偉大なリーダーとしての役目だ。
そしてルーラが聖杯戦争に誘われるきっかけとなったのは、スイムスイムが『白紙のトランプカード』を拾ったことだ。
キャンディー集めでゴミ処理を任せた時のことだったか。
スイムスイムはゴミの中に紛れ込んでいたカードを回収し、ルーラに差し出したのだ。
何故こんなゴミをわざわざ渡したのか、最初はルーラも疑問に思っていた。
しかしそのカードに思う所があったルーラは一先ず保管しておくことにした。
その結果、聖杯戦争に参加することが出来たのだ。
あのカードは聖杯戦争への参加の為のチケットだったのだ。


161 : ROMANCE DAWN ~偉大なる威光の夜明け~ ◆DdYPP2qvSs :2016/12/11(日) 13:40:10 ./3Wfcng0

最初こそ驚いたものの、マスターとしての自覚を得た早苗はすぐさま聖杯戦争に乗ることを決意した。
キャンディー集めなど比ではない、聖杯戦争という超級の戦い。
自分の威光を示すにはもってこいの舞台だ。
早苗はそう考えた。同時に、自らの部下達のことも思い返す。
自分がいない中、彼女らは大丈夫だろうか。
下手な真似をしていないだろうか。
馬鹿なことをしていないだろうか。
不安で仕方無いのが事実である。
出来る限り早めに勝利して、さっさと奴らの下へと帰るのもいいかもしれない。
矮小な子羊共には偉大なるリーダーの指揮が必要なのだから。

ともかく、当面の目標は聖杯戦争での勝利。
聖杯を獲得することで自身の実力を証明する。
誇り高き戦いが、此処に始まる。
始まる……筈だった。



「『バギーズデリバリー』復活記念パーティーだァ!!」
「バギー座長ばんざーい!!」
「最高だぜキャプテンバギー!!アンタはやっぱ俺たちの希望だァ!!」
「ギャハハハハハ!てめぇらどんどん飲め!ハデに楽しもうぜェ!!」
「ヒャッハァ!!」



――――どうしてこんなことになった!?



早苗は頭を抱えていた。
馬鹿騒ぎをするサーヴァントとその部下に苦悩していた!

サーヴァント、クラスはアーチャー。
真名は――――千両道化の『バギー』。
どうにも生前には海賊をやっていたらしい。
海賊派遣組織等という得体の知れない組織を率い、各地に海賊を派遣するビジネスを行っていたとのこと。
アーチャーと共に馬鹿騒ぎをしているのはその時の部下であり、現在は彼の使い魔だ。
彼らはあろうことか市街地のマフィアの事務所を武力で乗っ取り、そこを新生バギーズデリバリーの拠点としたのだ。
アーチャーらが催しているこの宴は、つまり『新生バギーズデリバリー勃興記念パーティー』である。
マフィアの事務所を舞台に、彼らは豪勢な酒やら食事やらを調達して馬鹿のような宴を繰り広げているのだ。
早苗は苛立つに決まっている。
会社の飲み会なんかとは比較にならないレベルで下品な馬鹿騒ぎに苛つかざるを得ない。


162 : ROMANCE DAWN ~偉大なる威光の夜明け~ ◆DdYPP2qvSs :2016/12/11(日) 13:41:18 ./3Wfcng0

「馬鹿なの?」
「あ?」
「貴方達、本物の馬鹿なの!?」
「うるせェなルーラァ!そんなことよりおめェも飲め飲め!
 聖杯とかいう超弩級のお宝は必ずオレ様が頂くが、その前にまずは宴だぜ!!」

早苗の指摘はアーチャーの笑い声で即座に遮られる。
あろうことか酒を差し出された。
「お前も飲め」「騒ぎまくろうぜ」と言わんばかりにニヤニヤと笑っているのが実に苛つく。
いっそ令呪でも使って黙らせるか――――と早苗は一瞬思うが、すぐに否定する。
三画しかない貴重な令呪を、こんな下らないことの為に使うのは気が引ける。
そんなことを考え、早苗がぴくぴくと眉をひくつかせている最中にもアーチャーは酒を差し出し続ける。

「飲まねェのか!?飲め飲め!飲んじまいな!ギャハハハハハ!」
「誰が飲むって――――」
「そうッスよルーラ姐さん!どんどん飲みましょうや!」
「アンタはキャプテンバギーが認めた女!遠慮しないでいいんだぜ!」
「ルーラ姐さァーん!酒持ってきましたよォー!!」

今度は荒くれ共が囃し立ててきた。
流石の早苗も少しばかり驚いた表情を浮かべる。
屈強な大男達がこぞって早苗に媚び、彼女に酒やら食事やらを差し出している。
早苗の顔がきょとんとした表情に変わる。

彼らは召還した時から妙に従順だったと、早苗は思い返す。
どうやら早苗を『キャプテンバギーが認めた偉大な相棒』と認識しているらしい。
アーチャーの異様なカリスマ性(何故こんな男にカリスマがあるのだろうと早苗は思う)も相俟って、早苗もまた持ち上げられていた。
千両道化の相棒。座長の相方。バギーズデリバリー第二の頭脳。偉大なルーラ姐さん。
そこまで持ち上げる必要があるか?と早苗自身思ってしまう程だった。

しかし、悪い気はしなかった。
元々早苗は自尊心の強い性格だ。
社会との折り合いが悪い彼女は他者からの承認に飢えていたし、自分の能力を認めてもらえないことに苛立っていた。
それが、今はどうだ。
自分なんかより圧倒的に屈強な荒くれ達が、こうして自分を持ち上げている。
馬鹿の集いではあるが、馬鹿といえど自分の偉大さを理解している。
こういう経験には慣れていないし、ここまで持て囃されたことも今までの人生で無かった。
故に早苗は少し機嫌が良くなった。
少々照れくさく思いつつ、気分を良くした。

それ故か。
荒くれの一人が差し出した酒のグラスを受け取り。
――――――ごくごく、ごくごく。
木王 早苗、豪快に飲み下す。
うおおおおおおお!!と野太い歓声が響き渡る。
アーチャーもまた爆笑。手をパンパン叩きながら大はしゃぎ。
ぷはぁっ、と早苗がグラスから口を離し、頬を紅潮させながら男達を見渡す。


163 : ROMANCE DAWN ~偉大なる威光の夜明け~ ◆DdYPP2qvSs :2016/12/11(日) 13:41:45 ./3Wfcng0


「……貴方達ッ!」


やや呂律が回らなくなっている舌で、早苗が言い放つ。
木王早苗はもう酔っている。
飲み会の経験は少なくないものの、度数の強い酒を此処まで豪快に飲み干したのは始めてだった。
更に荒くれ共から持て囃されて機嫌を良くしたのも相俟って――――早苗のテンションは最高潮である。



「バギーズデリバリー副座長……ルーラが命ずるッ!!」
「いつから副座長になったガネ?」



横から変な頭の幹部がツッコミ。
しかし、早苗は気にしない。
バギーズデリバリー副座長(いつ任命された?)ルーラは、まるで気にしない。





「――――――思いっきり、ハデに勝つわよッ!!!」
「「「「うおおおおおおおおおおおおーーーーーーッ!!!!!!!!」」」」
「ギャハハハハハ!!それでこそオレの相棒だぜルーラァ!!!」





喝采!歓声!昂揚!
早苗の堂々たる宣言に、バギーズデリバリーの興奮は最高潮に達する。
偉大なるリーダー、木王 早苗/ルーラは生涯最高の統率力を手に入れたのだ。
――――それでいいのか。


【クラス】
アーチャー

【真名】
バギー@ONE PIECE

【パラメーター】
筋力D 耐久C 敏捷D+ 魔力D 幸運A+ 宝具A+

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
対魔力:E
魔力に対する耐性。
無効化はせず、ダメージ数値を多少軽減する。

単独行動:A
マスター不在・魔力供給なしでも現界出来る能力。
Aランクなら一週間程度の現界が可能。
海賊団の部下達とはぐれ、たった一人で冒険を繰り広げて帰還を果たした逸話に基づきランクは高い。

【保有スキル】
カリスマ:E++
弱者を恐怖で支配しやすくなり、悪党に対してもハッタリや出任せである程度の信頼を得やすい。
尤もバギーの実力を見抜いている者には一切の効果を発揮しない。
宝具『千両道化・黄金劇団』で召喚される海賊達にのみAランク相当の効果を発揮する。

精神汚染:D
同ランク以下の精神干渉をシャットアウトする。
いかに滑稽であろうと、彼も海賊。時にはハデに残忍な一面を覗かせる。

蒐集者:D
芸術品や美術品、骨董品など宝物としての価値がある宝具を目にした場合、低い確率で真名を看破できる。
世界中の宝を自らの手中に納めようとした執着心がスキルとなったもの。

悪運:B
自分の実力ではどうしようも出来ない事態に陥った際、偶然や幸運によって切り抜けやすくなる。
更に自身の行動におけるクリティカル判定の成功率が上昇する。


164 : ROMANCE DAWN ~偉大なる威光の夜明け~ ◆DdYPP2qvSs :2016/12/11(日) 13:42:21 ./3Wfcng0

【宝具】
「千両道化、ハデに参上!(バラバラ・クラウン)」
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~40 最大捕捉:30
悪魔の実シリーズ『バラバラの実』の能力。
自身の身体をバラバラにして自在に操ることが可能。
バラバラ化した肉体による変幻自在の攻撃や回避能力を駆使して戦う。
その性質上斬撃に対しては絶大な防御力を誇る。
ただし悪魔の実の能力者は一切泳げなくなるという弱点を持つ。
この『バラバラ化した肉体を射出する』という性質がアーチャーの適性となった。

「撃て!ハデにぶちかませェ!!(バギー・カノン)」
ランク:D+ 種別:対軍宝具 レンジ:2~80 最大捕捉:500
大砲好きの海賊としての逸話が宝具化したもの。
強力な大砲を召喚し、魔力で形成された砲弾を自在に発射することが可能。
更に多大な魔力を消費することで村一つを吹き飛ばせる威力を持つ『特製バギー玉』を射出できる。
なおバギー玉を小型化した『マギー玉』はクラス制限で使用できない。

「千両道化・黄金一座!(バギーズ・デリバリー)」
ランク:C+ 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
王下七武海が一人、千両道化のバギーが抱える海賊派遣組織!
自身の配下であるバギー海賊団員、インペルダウンの脱獄囚を召喚する。
配下達は絶対的な統率力で纏め上げられており、バギーの指揮にどこまでも従順。
更に多くの魔力を消費すればアルビダやギャルディーノといった幹部級のメンバーも召喚可能。
因みにインペルダウン脱獄囚配下の多くはバギーを上回るパラメーターを持つ。

【Weapon】
ナイフ、剣

【人物背景】
東の海で活動していた海賊。懸賞金は1500万ベリーであり、四つの海で最弱とされる東の海では大物とされていた。
元々はロジャー海賊団の見習い団員であり、シャンクスとは同期の仲だった。
ルフィに敗北した後に偉大なる航路へと入り、その後紆余曲折を経て巨大監獄インペルダウンに投獄される。
しかしインペルダウンでの騒動をきっかけに脱獄。
数多くの脱獄囚を従える存在となり、更には海軍にロジャー海賊団のメンバーという経歴も知られる。
数々の幸運と機転が重なった末にバギーは三大勢力のひとつ『王下七武海』入りをするという大出世を果たした。
その後は海賊派遣組織『バギーズデリバリー』を立ち上げ、七武海の権限を盾に新世界で暗躍している。

【サーヴァントとしての願い】
超級の財宝・聖杯を手に入れてやるぜェ!

【方針】



【マスター】
ルーラ(木王 早苗)@魔法少女育成計画

【マスターとしての願い】
自身の実力を証明する為に聖杯戦争に勝ち残る。

【weapon】


【能力・技能】
『魔法少女』
魔法少女(正確には魔法少女候補生)としての力。
変身することで常人を凌駕する身体能力と肉体強度を獲得し、更にそれぞれ固有の能力となる魔法を使える。
また魔力を扱う存在であるため魔術師と同等以上の魔力量を備える。

『目の前の相手になんでも命令できるよ』
対象に絶対服従の命令を下せる魔法。
発動時には「ルーラの名のもとに命ずる」という命令を下して杖を相手に向けるポーズを取る必要がある。
魔法の射程は5m程。ポーズを維持している限り効力は続く。

【人物背景】
N市の廃寺を拠点とする魔法少女。
スイムスイムを始めとする複数名の魔法少女を従えてチームを形成している。
高飛車で傲慢な性格。完璧主義者であり他人にも厳しいが面倒見のいい一面も持ち、根は努力家。
かつては一流企業で働くエリート社員だったが、性格を疎まれて左遷させられた過去を持つ。

【令呪】
ハデな輝きを放つ王冠のような形状。
令呪の消費は左側の輝き(一画目)→右側の輝き(二画目)→王冠(三画目)。

【方針】
バギーズデリバリー副座長として強かに立ち回る。


165 : 名無しさん :2016/12/11(日) 13:42:32 ./3Wfcng0
投下終了です


166 : 名無しさん :2016/12/11(日) 13:56:01 ./3Wfcng0
すみません、バギー船長の宝具ランクは誤りで正しくはC+です。
また宝具『撃て!ハデにぶちかませェ!!(バギー・カノン)』の説明に以下の文章を追加します。

飛び道具である大砲を好んで用いた逸話もまたアーチャーのクラス適性として機能している。


167 : ◆DdYPP2qvSs :2016/12/20(火) 00:56:42 Jasl/z/k0
アニメまほいく最終話放送記念に投下します。
鯖の把握難度が高く、現行企画に投げづらいのでフリースレを利用させて頂きます。


168 : A princess and joker ◆DdYPP2qvSs :2016/12/20(火) 00:57:20 Jasl/z/k0


かがみよ、かがみよ。
ほんとうのおひめさまってなに?

おひめさま
「リーダーとはグミンのうえにたつもの。
 しはいすること、したがえることがひつようよ」



かがみよ、かがみよ。
おひめさまはどうすればいいの?

おひめさま
「リーダーはかちつづけなればならない。
 チョウテンにたつにふさわしい、イダイなショウシャにならなければならないのよ」



かがみよ、かがみよ。
かてばおひめさまにちかづけるのね。

     おひめさま
「だれもがリーダーをめざすことでチームはカッセイカする。
 あなたもはげみなさい。イダイな『わたし』のせなかをおいつづけるのよ」



かがみよ、かがみよ――――

       おひめさま
「かちなさい スイムスイム」



不思議なゆめを見た。
鏡に映っているのはあこがれのおひめさまだった。
鏡に巻き付いていたのは、黒い毒蛇。
鏡を覗き込む私の手は、赤い血に濡れていた。


169 : A princess and joker ◆DdYPP2qvSs :2016/12/20(火) 00:57:59 Jasl/z/k0
◇◇◇◇


日が落ちてから既に数刻ほど流れていた。
多くの者が寝静まり、世界が静まり返る時。
家屋の中もまた、当然のように静寂に包まれていた。
薄暗い明かりのみが付けられた和室にて、少女が小さな机に向かって正座する。

「そんなんやってる場合かよ」
「頭を使うことは大事」
「そうかい」
「ルーラが言ってた。だから勉強する」

側から飛んできた声に、少女『坂凪 綾名』はぽつりと呟くように答える。
鉛筆を右手に持ち、黙々と算数ドリルをこなしている。
内容は概ね足し算、引き算といった簡単な計算ばかり。
小学生に上がったばかりの彼女にとっては然程珍しい問題ではない。
無言。無表情。少女は淡々と、計算を進めていく。

和室の隅で壁に寄りかかるように座る男は、怪訝な表情で綾名を見つめていた。
黙々と勉強に取り組む彼女の姿を眺めつつ、蛇のような眼を細める。
男が『召喚』されてからほぼ一日が経過する。
聖杯戦争を自覚してからも綾名はマイペースだ。
男から事情を聞かされても表情一つ変えず、いつものように日常を過ごしている。
何事もなく通学し、何事もなく帰路につき、何事もなく家での勉強に取り組んでいる。
呑気に宿題とやらに取り組むほどの肝っ玉を備えているとでも言うべきなのか。
あるいは、現実が見えていない程に能天気な愚者なのか。
そう思いつつ、男は痺れを切らしたように問いかける。

「これからどうする、テメェは」
「勿論、戦う」

鉛筆を動かす手が止まる。
そして、綾名はゆっくりと振り返る。


「聖杯を取る」


断言。
無垢な少女は、己の勝利を宣言する。
この聖杯戦争に勝つことを堂々と言い放つ。

坂凪 綾名は、魔法少女『スイムスイム』だった。
魔法の国の試験官によって選抜され、魔法の力を得た存在だった。
そして――――この聖杯戦争のマスターとして選ばれた参加者でもあった。
男は、彼女にあてがわれたサーヴァント。
『暗殺者(アサシン)』のクラスで現界した、『混沌の蛇』だ。
アサシンは綾名の宣言に僅かな笑みを浮かべる。


170 : A princess and joker ◆DdYPP2qvSs :2016/12/20(火) 00:58:59 Jasl/z/k0

「テメェは何を願う?」
「願わない」
「……あ?」

綾名の答えに、呆気に取られる。

「願う必要なんてない」
「何故だ?」
「勝ちたいだけだから」

そう言ってのけた。
願いへの執着など、一切なく。
奇跡にすがる想いなど、一欠片もないと言わんばかりに。
綾名は、なんら聖杯にかける願いを持たなかったのだ。
ぽかんとした表情を見せるアサシンに、綾名は更に言葉を続ける。

「大切なのは『聖杯戦争に勝つこと』。
 リーダーたるもの、優秀にして偉大であるべき。
 ルーラがそう言ってた。私はその教えを守る。だから勝って、聖杯を手にする」

『お姫様』の姿が、綾名の頭に浮かんでいた。
それは彼女の脳裏に焼きついた『理想の存在』であり。
彼女を導き、ここまで成長させた張本人だった。

ルーラ。
N市の廃寺を拠点とする魔法少女。
複数名の魔法少女を従えるチームのリーダー。
綾名は、彼女に心酔していた。
誰よりも美しく、誰よりも賢い彼女に『理想』を見出していた。
幼い頃から憧れ、恋い焦がれていた『お姫様』。
綾名にとって、ルーラはお姫様そのものだった。

「ルーラとやらの為だけに、聖杯を穫るってのかよ」
「うん」
「テメェにルーラ以外の願いは」
「ない」
「ルーラが全てって訳かァ?」
「うん」

ゆえに彼女は、迷わなかった。
ルーラの教えを守り続けることになんら躊躇を覚えなかった。
それは彼女にとって当然のこと。
子が親に従うこと、鳥が空を飛ぶことと同じように当たり前のことだった。
綾名は、ひたむきにルーラの教えを守り続ける。
『リーダーとは偉大で優秀であり』。
『リーダーとは勝ち続ける者である』。
『リーダーとは頂点に立つ者だ』。
だからこそ綾名はこの聖杯戦争で勝ち残ることを選んだ。
勝つことがリーダーの証だというのならば、この聖杯戦争でも勝たなければならない。
他の参加者を退け、聖杯という勝利の勲章を掴むことで自身の能力を証明しなければならない。
綾名は、迷うことなくそう考えた。
自分はルーラからリーダーの座を受け継いだ者なのだから、と。


「……ぶっ」
「……?」
「くくく、へへへはははははは……」


彼女の答えを聞いたアサシンが、唐突に吹き出した。
綾名はその様子を、不思議そうに見つめる。


「何が可笑しいの?」
「テメェの記憶、ちょっとばかし覗かせてもらったぜ」
「…………」
「どんなマスター様かと思っていたが、とんだ傑作だぜ」
「…………」
「なぁお嬢ちゃん―――――ルーラを殺したのは誰だ?」


171 : A princess and joker ◆DdYPP2qvSs :2016/12/20(火) 00:59:27 Jasl/z/k0


下卑た笑みを浮かべるアサシンの、問いかけ。
直後に綾名は自身を取り巻く『漆黒』に気づく。
それは、鎖の肉体を持った黒い蛇。
座り込んでいた綾名の足元から出現し、彼女を囲むように渦を巻いていた。
この『蛇』が自身の記憶を読んだということ、この『蛇』がアサシンの宝具であることを綾名は察する。

ルーラは、既にこの世にはいない。
殺されたからだ。
誰に殺されたのか。
それは綾名/スイムスイムだ。
彼女がルーラを、殺したのだ。

お姫様への憧れを抱く綾名は、ルーラに理想のお姫様を見出した。
彼女の言うことに忠実に従い、彼女の教えを守り続けていた。
このままお姫様に仕える僕として頑張り続けるのだろうと、彼女自身思っていた。
しかし。
キャンディー集めと称した魔法少女同士のデスゲーム。
『リーダーのようになるべし』というルーラの教え。
夢の中で出会った魔法少女が言った、『あなたがお姫様になればいいんだよ』という言葉。
それらは綾名を動かした。運命の歯車を大きく変えた。
ルーラのようにならなきゃいけない。自分がお姫様になりたい。
つまり、ルーラを殺さなくちゃいけない。
ルーラ/お姫様を蹴落とさなければ、ルーラ/お姫様になれない。
リーダーを殺さなければ、リーダーにはなれない。
悩んだ。苦しんだ。悲しんだ。
何日も、何日も。
されど――――ルーラの教えを守る為にも、やらなければならない。
決意したスイムスイム/綾名は、理想のお姫様を殺した。
彼女は、お姫様になった。
数多の犠牲を払って勝ち続け。
すべての部下を失った。

アサシンの言葉に対し、綾名は何も答えず。
アサシンは、立ち上がった後にゆっくりと綾名へ歩み寄る。
邪悪な笑みを口元に浮かべ――――煽るような言葉を続ける。


「ルーラの教えを守る!そのためにルーラを殺す!
 ルーラは死んだ!でもルーラの教えは生きている!
 ルーラを殺した私がルーラの跡を継ぎます!嗚呼、なんと儚くも美しい忠誠心!!」
「…………」
「クク、ククククク、ヒヒヒヒヒヒッ…………そんなお嬢ちゃんに俺様が一言!」
「…………」




「――――――馬鹿だろ、テメェ」




蛇の瞳が、少女を蔑んだ。
蛇の顎が、少女を嘲った。


172 : A princess and joker ◆DdYPP2qvSs :2016/12/20(火) 01:00:16 Jasl/z/k0


「お姫様だのリーダーだの宣う前にまず自分の頭のおかしさにでも目を向けろっつうの。
 ルーラの教えを守る?ルーラを殺したのはテメェ自身なのに?イカレてんのかよ、テメェは」


綾名は何も言わない。
蔑む男の言葉に、何も答えない。


「ルーラ、ルーラ、ルーラ、ルーラ、ルーラルーラルーラ!お前の中に詰め込まれてるのはルーラだけ!
 ルーラを殺した理由!リーダーで在り続ける理由!聖杯戦争に勝ち残る理由!全ッ部―――――――ルーラ!」


両腕を広げ、大仰に言い放つ。
綾名の在り方を見下すように、アサシンはべらべらと侮蔑の言葉を並べ立てる。


「つまりテメェは人形だ。その頭に死人の教えを兎に角詰め込んだ、気色の悪ィ空っぽのガラクタ!」


表情を変えない綾名に、構うこともなく。
アサシンは彼女の側で膝をつき、囁いた。


「テメェみてえな空っぽのイカレ野郎は『お姫様』なんて呼ばねェ。
 『狂人』だ!それも飛び切り最悪の気違い!人間も世界も秩序も全て巻き込み、地獄へと引き摺り込む『災厄の申し子』!」


男は心底楽しそうに、嗤う。
嘲るながら、見下しながら、狂った少女の在り方を笑い続ける。
己のマスターであるにもかかわらず、アサシンは彼女を侮辱していた。


アサシンのサーヴァント。
彼の真名は『ユウキ=テルミ』。


かつて黒き獣を討伐し、世界を救ったとされる六英雄の一人。
しかしその正体は黒き獣を生み出した全ての元凶であり、諸悪の根源。
彼は破壊を好み、殺戮を好み、他者を踏みにじることを楽しんでいた。
踏み躙られた他者が苦しむ、嘆き、絶望する――――そんな有様を見下すことを何よりも楽しむ男だった。
英雄でありながら、外道の存在。
悪逆の限りを尽くす、反英雄。

綾名を侮辱したのも単なる気まぐれだ。
彼にとって、他人を傷付けることは娯楽と言ってもいい。
好奇心で記憶を読み、何となく『面白そう』だったから。
そして純粋に『気色が悪い』と思ったから、何の躊躇も無く彼女を煽った。
ただそれだけのこと。
それだけでも、アサシンが己の主を貶す理由となる。
彼は己のマスターの心を暴き、抉り出し、嘲る。
遊び甲斐のある玩具を戯れに弄くり回すように。
何も言い返さないマスターに対し、アサシンは調子に乗ったかのように罵声を続ける。


「ヒヒヒヒヒヒ、ルーラお姫様も笑っちまうぜ!
 テメェのようなイカレた小娘を僕にしちまったばかりに謀反されちまうなんてなァ!
 いやマジ笑えるわ、あいつもあいつで余程の馬鹿――――――――――」
「令呪を以て命ずる」


ぽつりと、一言。
何も答えなかった少女が呟く。




「『ルーラを侮辱するな』」




――――――絶対命令権が、下された。
右手の甲に刻まれた令呪が輝き、その一画が消失する。


173 : A princess and joker ◆DdYPP2qvSs :2016/12/20(火) 01:00:55 Jasl/z/k0


その身に令呪の効果が下されたアサシンは、僅かながら唖然とした様子を見せる。
令呪は、マスターがサーヴァントに下せる絶対服従の権利。
己の力量を遥かに超える命令を3画に限って強制的に宣言できる、主人の切り札。
それをこのマスターは、何の躊躇も無く使ってきた。
それも『戦略に何の関係もない』命令で。
アサシンの沈黙を確認した綾名は、何事も無さげに彼から目を離していた。

「テメェ、マジかよ」

アサシンの口から言葉が漏れる。
この少女は、それほどまでにルーラとやらに執着しているのか。
『お姫様への憧れ』は、絶対命令権を躊躇無く使える程に重いものなのか。
貴重な令呪を些細な命令でこんなにあっさりと切ってのけた綾名に、彼は不敵に笑いつつも驚愕していた。

「貴方はルーラじゃないから、貴方の言葉に耳を傾ける必要は無い」
「あァ?」
「貴方はおしゃべりなピエロ」

唐突にアサシンが呆気に取られる。

「本で読んだ。ピエロは面白おかしく喋ってオウゾクを楽しませるって。
 オウゾクから馬鹿にされるけど、オウゾクに唯一口答えが出来る人だって」

少女は己の記憶を辿りながら、ぽつぽつと言葉を紡ぐ。
母親から様々な絵本を読み聞かせて貰ったし、色んな本を読んだ。
その中には、ピエロの話もあった。
ピエロは、オウゾクに仕える笑わせ人。
ピエロは、オウゾクを楽しませるコッケイな人。
ピエロは、オウゾクを唯一馬鹿にできる人。
自身を嘲るアサシンの姿に、綾名はピエロを見出した。
お姫様/オウゾク―――坂凪綾名―――を貶す、道化師/ピエロ――――アサシン―――そう認識したのだ。

「だから私を馬鹿にしても怒らない」

故に彼女は、そう断言する。
『お姫様』を侮辱する者を許さない彼女が、アサシンの罵倒を見逃したのだ。
ピエロはそういうものだから。
オウゾクを馬鹿にしてもいいのがドウケシだから。


「でも、ルーラは別。たとえピエロでも、ルーラを笑うのは私が許さない」


幼い少女の声は、恐ろしく淡々としており。
しかし、次第に微かな感情が籠り始める。

「……ヒヒヒヒッ……ルーラを笑うのは許せないのに、ルーラが死ぬのはいいってか?」
「ルーラを殺すのはつらかった。でも、やらなきゃ駄目だった」

綾名の脳内に、かつての記憶が過る。
お姫様になる為に、ルーラを殺さなくちゃいけない。
ルーラのようなリーダーになる為に、ルーラを消さなくちゃいけない。
何日も葛藤した。高熱を出す程に苦悩し続けた。
その末に、彼女は決断した。


「ルーラが言ってたから。ルーラのようにならなきゃ駄目だって」


ルーラの教えは絶対だった。
だから綾名は、ルーラの教えに従って叛逆した。


174 : A princess and joker ◆DdYPP2qvSs :2016/12/20(火) 01:01:38 Jasl/z/k0

「だから私はルーラを殺した。ルーラのようなお姫様になるために。
 でも、私の中でルーラの教えは生きている。尊いものは、ルーラの教え」


胸に手を当てて、静かに目を閉じる。
憧れの対象だった『お姫様』の威光を、教えを噛み締めるように。
そして、再び目を開き。
酷く冷たい眼差しで、アサシンを見た。



「ピエロのヨマイゴトなんて、どうでもいい」



――――――ピキリと青筋が浮かんだ。
偽りの姫君を嘲っていた蛇の顔が、苛立ちに歪んだ。
綾名にとって、アサシンの言葉は。
姫君の前で戯ける、道化師の狂言に過ぎなかったのだ。

アサシンが、歯軋りをしていた。
どれだけ嘲笑おうと、侮辱しようと意にも介さず、逆に冷淡な眼差しを返してくる小娘に苛立ちを感じていた。
この小娘は、澄ました態度でこちらを馬鹿にしてきているのか。
それとも――――――あの『記憶』で認識したように、本当に何かが狂っているのか。
己の中の不快感を抑え込みながら、アサシンは口元に嗜虐的な笑みを浮かべる。
その眼差しは、蛇のように鋭く。


「……ククク、ヒヒヒヒ……調子に乗ってんじゃねえぞ、ガキ」


捨て台詞のような言葉と共に立ち上がったアサシンが背を向ける。
そのまま風景に溶け込むように霊体化し、姿を消したのだ。
綾名は消えたアサシンを興味も無さげに目で見送る。


「…………」


アサシンが消えたことを確認し。
再び、宿題に取り組もうと鉛筆を握った。
しかし、奇妙なことに。
握った鉛筆が小刻みに揺れていた。
どうしたのだろうかと、思った矢先。
綾名はその現象の正体に気付く。


「……あ」


右手が、僅かに震えていたのだ。
綾名の表情が、初めて変わった。
きょとんとしたように、己の手を見つめた。
そして彼女は、ようやく自覚する。



―――――怖いと、思っていた。



綾名はそんな自分の感情に、ようやく気付いた。
思えば、あんな相手は周りにいなかった。
たまはおどおどしているけど可愛らしくて。
ピーキーエンジェルズはいつも騒がしくて。
ルーラは厳しいけど、誰よりも優秀で、偉大で、キレイで、可愛らしくて。


175 : A princess and joker ◆DdYPP2qvSs :2016/12/20(火) 01:02:26 Jasl/z/k0

だけど、アサシンは違った。
純粋な悪意。
意地汚い侮蔑。
卑劣な嗜虐心。
言うなれば、カラミティ・メアリと近い。
でも、それよりもっと歪んでて、更に黒く淀んだ―――――そんな臭い。

嫌だ。
怖い。
気持ち悪い。

アサシンが去った後、綾名は初めてその思いを自覚した。
そして、そんな男が孤独のお姫様にとって最後の僕だった。
部下だったピーキーエンジェルズも、たまは既にこの世にはいない。
理想のお姫様を目指していた筈だったのに、気が付けば独りぼっち。
ルーラだったら、きっと上手くやれていた。
自分はまだ、ルーラに程遠かったのかもしれない。


―――――だからこそ、勝たなければいけない。


この聖杯戦争に勝つことが、自分の証明なのだから。
聖杯を勝ち取ることで、自分の能力を示す。
そうすればきっと、自分はルーラに近づける。
そう、勝ち続ければ。
偉大なリーダーに。
理想のお姫様に、なれる。


(かがみよ、かがみよ――――――――)


夢の中で響いた言葉を、脳内で反復する。
まるで自分自身を勇気付けるように。
無垢な少女が、あどけない夢を見続けるように。


【クラス】
アサシン

【真名】
ユウキ=テルミ@BLAZBLUE(ブレイブルー)

【パラメーター】
筋力B 耐久D 敏捷B 魔力C 幸運D 宝具B+

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
気配遮断:C+
サーヴァントとしての気配を絶つ。
更に自身の行動や策略を周囲に気付かれにくくする。
諸悪の元凶として暗躍を繰り返した逸話の具現。

【保有スキル】
精神汚染:A
残虐非道を地で行く精神性がスキルとなったもの。
同ランク以下の精神干渉をシャットアウトし、逆に自身が他者へと働きかける精神干渉判定の成功率を上昇させる。

神性:B
神霊の適性。
神に等しい存在『アマテラスユニット』をツクヨミユニットと共に守護した存在であり、属性としては限りなく神に近い。
ただし現在は仮初めの器に身を落としている為ランクが低下している。
なお本来ならば精神体として活動することが出来るのだが、サーヴァントとして現界した今はテルミの肉体と分離することが出来ない。
そのためテルミの肉体が死亡すればそのまま本体の精神体も消滅する。

観測者:B+
世界の理を観測する者。
マスターとの契約が消失した際、自身を『観測』することで現世に定着させることが可能。
自己観測による現界時にはAランクの単独行動スキルと同等の効果が得られる。
ただし自己観測時には全ステータスが1ランク低下し、宝具『大蛇貪吼』による魔力吸収攻撃も使用不可となる。

加虐体質:B
戦闘において、自己の攻撃性にプラス補正がかかるスキル。
戦闘が長引けば長引くほど加虐性を増し、より多くの攻撃を命中させやすくなる。
攻めれば攻めるほど強くなるが、反面、防御力が低下してしまう。

漆黒のスサノヲ:A
恐怖や憎悪と言った負の感情を他者から向けられることであらゆる判定の成功率にプラス補正が掛かり、更に現界に必要な魔力消費も軽減される。
戦闘時、敵が自身に直接憎悪を向けている場合には更にパラメーターにも一時的に有利な補正が掛かる。
また世界の秩序を破壊すべく暗躍した逸話から、属性が『秩序』のサーヴァントへの与ダメージ値・攻撃判定にプラス補正が掛かる。


176 : A princess and joker ◆DdYPP2qvSs :2016/12/20(火) 01:03:01 Jasl/z/k0

【宝具】
「大蛇貪吼(フォースイーター)」
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
禍々しい漆黒のオーラによる吸収能力。
邪気のようなオーラを纏った攻撃を命中させることで対象の魔力を吸収する。
ダメージの有無に関係なく『命中』すれば効果は発動する。そのため例え攻撃を防がれたとしても対象から魔力を吸収できる。
吸収した魔力は『単独行動』スキル等と同様の予備魔力として貯蓄され、テルミの任意で運用することが可能。
更に吸収によって貯蓄した多量の魔力を利用することで、宝具にも匹敵する威力を持つ必殺技(ディストーションドライブ)を発動することが可能となる。

「蛇双牙衝(ウロボロス)」
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:2~50 最大捕捉:10
黒き獣との戦いにおいて製造された事象兵器『アークエネミー』の一つ。
先端に蛇の頭部が付いた鎖の形状を取り、テルミの任意で異空間から射出される。
射出されたウロボロスは空間や物体に食らいつくことが可能であり、伸縮する鎖を利用した変幻自在の立体機動、または食らいついたものの投擲等を行うことが可能。
更にウロボロスを飛び道具として使うことも可能であり、対象の精神を直接攻撃する能力を持つ。
精神への干渉によって他者の記憶に触れることも可能であり、精神干渉判定に成功することで特定の記憶を捕食し消滅させる『マインドイーター』が発動できる。
ただし『聖杯に与えられた聖杯戦争の基礎知識』『聖杯戦争に参加する前の記憶』を捕食することは出来ない。
なおウロボロスは破壊されても即座に修復され、再び異空間から射出することができる。

【Weapon】
ウロボロス、ナイフ、素手

【人物背景】
かつて人類を滅亡の危機に陥れた怪物『黒き獣』を討伐した『六英雄』の一人。
しかしその正体は黒き獣出現の原因を作った元凶であり、ブレイブルーの世界における諸悪の根源と言える人物。
神に等しい存在『アマテラスユニット』を破壊し、今の世界を滅ぼすという目的のために暗躍する。
元々テルミは『スサノオ』としてツクヨミと共にアマテラスを守護していたが、あるきっかけで意思を手に入れて以来アマテラスに縛られた世界を憎むようになった。
性格は破壊を好み、他者を虐げることを楽しむなど残虐非道そのもの。

【サーヴァントとしての願い】
世界を破滅させ、生まれ変わった新たな世界で恐怖の力によって君臨する神となる。

【方針】
どんな手を使ってでも勝ち残る。
今はスイムスイムと協力するが、都合が悪くなればマスター乗り換えも視野に入れる。



【マスター】
スイムスイム(坂凪 綾名)@魔法少女育成計画

【マスターとしての願い】
聖杯はいらない。
ルーラの教えを守り、ルーラのようなリーダー/お姫様になる。
聖杯戦争に勝ち残るのもその証を手にする為の通過点に過ぎない。

【weapon】
「ルーラ」
かつてのリーダーの名を冠する薙刀状の武器。
魔法の国の武器であるため、魔力によって肉体が構成されたサーヴァントにも干渉可能。

【能力・技能】
『魔法少女』
魔法少女(正確には魔法少女候補生)としての力。
変身することで常人を凌駕する身体能力と肉体強度を獲得し、更にそれぞれ固有の能力となる魔法を使える。
また魔力を扱う存在であるため魔術師と同等以上の魔力量を備える。

『どんなものにも水みたいに潜れるよ』
あらゆる場所を水中のように自在に泳ぐことが出来る魔法。
スイムスイムが魔法を使えば地面だろうと山の中だろうと潜水して泳ぎ回ることが可能。
魔法の性質上「物質を擦り抜ける」という特性を持つ為、相手の物理攻撃を擦り抜けることで事実上の無効化が出来る。
ただし音や光などを透過することは出来ない。
また潜水中は実際に泳いでいる時と同様に息継ぎが必要となる。

【人物背景】
N市の廃寺を拠点とする魔法少女の一人。
他者を従わせる魔法を持つルーラのチームの一員であり、ルーラに忠実に従っている。
常に口数が少なくぼんやりとした性格だが、ルーラの教えは常に記憶し守り続けている。
正体は未だ小学生の幼い少女であり、『お姫様』に対する強烈な憧れを抱いていた。
ルーラに忠誠を誓っていたのも彼女に『理想のお姫様』としての姿を見出していた為。
しかしルーラの教えを鵜呑みにし続けたこと、魔法少女同士の命を賭けたデスゲームが幕を開けたこと。
そして夢の中でねむりんと出会ったことでスイムスイムの運命は大きく動き出す。

【令呪】
波飛沫を上げるウロボロス。
消費は左側の飛沫(一画目)→右側の飛沫(二画目)→ウロボロス(三画目)。
既に令呪を一画使用済み(『ルーラを侮辱するな』)。

【方針】
どんな手を使ってでも勝ち残る。
ルーラの教えは守る。


177 : 名無しさん :2016/12/20(火) 01:03:16 Jasl/z/k0
投下終了です


178 : ◆lkOcs49yLc :2017/01/05(木) 20:48:43 ZxMGJ9G20
2つ程投下します。


179 : 常守朱&ライダー ◆lkOcs49yLc :2017/01/05(木) 20:49:07 ZxMGJ9G20
◆  ◆  ◆



秩序を保つ天秤に、慈悲の心など無い。



人は皆、ドス黒い鉄格子の中で生まれてきた。

だがそれでも彼らは、今を生きる意味を探しながら、今日も速度を上げていく。


◆  ◆  ◆


一週間前、とある殺人事件が起こった。
ある平穏な家族が、一家全員惨殺されたと言う、極めて酷く悲惨な事件。
その犯人は3日後に逮捕された。
だが結局は不起訴、精神鑑定に引っかかり彼は釈放されたのだった。

しかしそれから2日後、その犯人が突然行方不明になったという。
関係者によれば、1日前から高熱を訴え、更には虚言を吐き幻覚を見ているような行動と言動を見せていたとか。

そしてこれは、二週間前に起こった事件の事だ。
その事件は、とある不良集団が一人の少女を集団暴行したと言う事件。
その件は多額の保釈金により不起訴となり、不良集団は暫くの間はのさばっていた。
そう、数日後、幻覚と高熱に苦しめられるまでは。
結果この件は麻薬を摂っていたのではと言う事で済まされたのだが、やはり彼等も行方不明に。


◆  ◆  ◆


夜。
人っ子一人いない夜の街。
其処に、慣れた手つきで拳銃を構える、スーツを着た一人の女性がいた。
名は常守朱。
若くして警部補に上り詰めた、キャリア刑事だった。
朱は、拳銃を向けた方向に合わせ、まるで猟犬の様に睨みつけるような目つきで、遠くの方角を見つめている。
そしてその方角に向け、朱は一声を上げる。

「出てきて、ライダー。」

直後、その声に答えるかのように、暗闇の中からふらりと人影が姿を現す。
夜を照らす街灯に照らされたのは、白いロバに乗った一人の青年だった。
金砂の髪に、透き通った白い肌。
王子様と見間違えるような容姿をした、ヨーロッパ人風の青年…ライダーは、朱を見つめたかと思えば、その場でロバを止め、はにかんだ笑みを浮かべる。

「どうしたんだい、マスター。」

そう。
このライダーは、常守朱がこの聖杯戦争にて招いた使い魔「サーヴァント」である。
しかし朱は、このライダーに対してまるで敵を睨むかのような形相を見せつけた。

「貴方、またやったの、此処にいる人達を。」

朱は既に感づいていた。
此処最近起こった、釈放された犯罪者達の発狂が、彼…ライダーの仕業であることに。
ライダーの能力は、「正体不明の病原菌を感染させる能力」だと聞いている。
ともなれば、彼がやった事は明白だろう。
しかしライダーは、相変わらず穏やかな口調で、朱の問いに答える。

「ああ、そうだ、私のやった事だよ。それがどうかしたのかい?」
「……ッ!どうか…したって……。」

一瞬、驚いた表情を見せた朱は、直ぐに唇を噛みしめる。
確かに、当事者からしてみれば、犯人が捕まらずに生き残ると言うのは、許せない事なのかもしれない。
いや、槙島に親友を殺された事の有る朱なら、尚更気持ちは察せる。

だが、だからと言って人を殺めることは許されない。
例え悪行に走ったとしても、人は人なんだ。
あの槙島だって、殺す必要は無いはずなんだ。


180 : 常守朱&ライダー ◆lkOcs49yLc :2017/01/05(木) 20:50:28 ZxMGJ9G20

「何で、彼等が殺される必要があるの……彼等だって人間なのよ。」

朱は拳銃を下ろし、代わりに口から出た言葉をライダーに目掛けてぶつける。
口調こそ落ち着いてはいるが、それでも朱は人が殺された事に対する怒りをぶつけられずにはいられなかった。
だがライダーは冷たい表情でそれに答える。

「決まっている、生きる価値が無いからだ。
彼等が何をしたと思う?
どんな善行を施したと思う?
何処まで彼等の性根が腐りきっていないと言い切れる?」

ライダーの言葉に、朱は一旦俯く。
そして暫くした後、もう一度顔を上げ、その問いに答える。

「……そうだね、確かに彼等は間違えているのかもしれない。
彼等が生きているのを許さない人だって沢山いるのかもしれない。」

彼の言う事も分かる。
シビュラシステムの支配する世界で、理不尽な差別や隔離を受けてきている人々を、朱は沢山見てきた。
逆に、持って生まれた体質に助けられた残酷な犯罪者がのさばっているというのにも、理解はし難かった。
だがそれと同時に、それによって今日まで平穏が保たれてきているのも、朱は知っている。

「でも、この世界を愛している人だって、きっと沢山いる。
例えこの世界が間違っているのだとしても、幸福や平和を望む人間は山程いる。
だから―」
「そうか、やはり君も、同じことを言うのか。」

ライダーが、まるで失望したかのような眼を朱に対して向ける。

「今正直に言わせてもらうと、君は生きるべき人間だ。
幸福に生きる価値の有る人間の一人なんだ、誇るべき力も有る、他者を思いやる優しさも有る。
なのに何故、君のような人間に限って、私の創る世界を拒むんだ。
マスター……朱。他者を傷つけるのを拒み、護ろうとする君は、生きる価値のある存在だ。
あの時、聖杯を私欲に扱おうとしたアサシンを狩った時の君を見て、私はそう思った。」
「……。」

それは、朱が三角の令呪をその左手に宿して間もない頃の事だった。
朱は、ある通り魔がアサシンのサーヴァントである事を突き止めた。
そして自分のライダーと戦わせた。
ライダーの強さは飛んでもない物だった。
当然の如くアサシンは敗れ、マスターは姿を消した。
今思えば、あのマスターは、今目の前にいる彼によって消された可能性も少しは見えるが。


だが、朱とて、ライダーの何かを全く知らないわけではない。
そんなことは、一度夢に見ている。
救おうとした人が救われず、虐げてきた人々がのさばるこの世界に絶望した彼の生前の出来事を。
そして彼が、こんな理不尽な世界を変えようとしてきた事も。
だがそんな彼も、嘗ては人を助けようとしてきた一人の医者だったのだから。

「生きる価値の無い人間なんて、一人もいない。
貴方の言っていることは、只の我儘だよ。
皆、こんな理不尽な世界であろうとも、必死に生きていこうとしているんだから。」
「その人達の為にも、この世界を変えたいとは思わないのか。」
「思わない、今有るこの世界に生きる人達の為にも、私は聖杯を破壊する。」

常守朱が選んだ道は、聖杯の破壊。
確かに、朱とて聖杯に望みたい願いが無いわけではない。
だが、その為に罪のない人々を殺めるのはダメだ。
聖杯が齎す恩恵は、シビュラのように多くの人々が手に入る様な物じゃない。
代わりに平等に与えられるのは、人と殺し合う権利のみ。
そんな事のために人々を踊らせる聖杯を、許すわけには行かない。


「そうか、だが私は聖杯を求める。
来るべき黙示録の為に、私は聖杯を使おう。」

そう言い、ライダーはさっき通った道へとロバを振り返らせる。
そして顔だけ朱のいる方向に振り向き、説くような口調でもう一度声を掛ける。

「君を殺すつもりはないよ、でも、今のこの世界に、肯定されるべき価値等ない。」
「そんなはずはない、この世界にだって、幸福は必ずある。」

そう言って、朱は踵を返して夜道を歩いて行く。
同時に、ライダーもまた手綱を引きゆっくりとロバを走らせながら、身体を粒子化させ霊体化していく。


181 : 常守朱&ライダー ◆lkOcs49yLc :2017/01/05(木) 20:51:09 ZxMGJ9G20







【クラス名】ライダー
【出典】BLASSREITER
【性別】男
【真名】マドワルド・ザーギン
【属性】混沌・悪
【パラメータ】筋力A 耐久B 敏捷A 魔力C 幸運C 宝具E


【クラス別スキル】

対魔力:E
魔力に対する耐性。
無効化はせず、ダメージを無効化する程度。


騎乗:C+
乗り物を乗りこなす才能。
車やロバを乗りこなした他、融合化により機械や金属と融合することも可能。


【保有スキル】

医術:C
多少の医術への心得。
彼は生前は医者だった。

融合進化体:A
彼はナノマシンにより己の力を凌駕させている。
Aランクなら、全ての融合体を凌駕しているレベル。
武器を創造から生成出来る他、超人的な身体能力を有する。

絶望の病馬:A
彼は人の醜悪さに絶望し、優しかった頃の己を殺した。
怠惰や我欲に塗れた者に対しては補正が掛かり、その様な存在に苦しめられてきた者に対してはDランクの「カリスマ」と同等の効果を発揮する。
しかし、今の世界を美しく思うものに対しては無効となる。


【宝具】

「希望の道知らぬ蒼い馬(ペイルホース)」
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1

ライダーが体内に有しているナノマシン。
人類の進化を促す力に成り得た可能性を持った、化物の中核。
血液を介して感染し、血管内の蛋白質に分解されてしまう。
ナノマシンはそのまま人体の活性化を促し、人間を幻覚症状や高熱に苦しめた末に「デモニアック」と呼ばれる存在に変質させる。
デモニアックは理性を消失し、本能の赴くままに人間を襲う。
しかし、72の感染パターンに当てはまった人間は「ブラスレイター」と呼ばれるより高位の存在へと変化する。
ライダーはそのブラスレイターの中でも最強にして最も適した存在とされる「バアル」の姿を持つ。
背中の触手や生成した剣を振るって戦う他、人間体でも右手の紋章から発する光線を使って戦うことが可能。
デモニアックを洗脳し操ることも可能。
この宝具の伝染機能は生きているが、ブラスレイターを生みだすことは不可能。
その代わりデモニアックには神秘が宿る。


「愚に殺されし哀れな老芦馬(ヴァイス)」
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:10

ライダーが生前拾い上げ、ペイルホースを与えたロバ。
嘗ては用済みに成る程に老いぼれた老ロバだったが、今ではペイルホースを与えられた影響で進化を果たしている。
普段は白い普通のロバの姿でいるが、ブラスレイターとしての姿に変化することも可能。
魔改造を施したスーパーマシンを追い上げるほどの速さで走れる他、天馬の如き羽を生やし空を飛ぶことが出来る。
雷撃を発生することも可能で、蹄から発した雷撃を遠距離から発射するという戦法を行っていた。


【Weapon】

生成した剣と触手、そして光線。


【人物背景】


神を憎み、滅びの黙示を迎えようとした哀れな蒼馬。


【聖杯にかける願い】

世界を再構築する。
今ある世界は、滅ぼさなければならない。


182 : 常守朱&ライダー ◆lkOcs49yLc :2017/01/05(木) 20:51:26 ZxMGJ9G20

【マスター名】常守朱
【出典】PSYCHO-PASS
【性別】女

【Weapon】

「警官としての装備」
手帳、手錠、ポリスリボルバー、その他諸々。


【能力・技能】

・メンタル美人
クリアなサイコパス色相を保てる体質。
免罪体質とはまた異なる。


・監視官としての腕前
職業適性で全てAランクの適正値を表すほどの素質を持っている。
また、捜査時にも優れた指揮力と機転で幾つもの窮地を脱した。


【人物背景】


神に選ばれ、正義と秩序を両方選んだ心強き監視官。
1期〜2期の間からの参戦。


【マスターとしての願い】

聖杯を破壊する。
それでも、今ある世界は大切だと思う。


183 : ◆lkOcs49yLc :2017/01/05(木) 20:55:43 ZxMGJ9G20
一つ目、投下終了です。
尚、この投下作のステータスにおきまして、「聖杯四柱黙示録」において◆mcrZqM13eo氏の
「蒼白い騎士」を参考にさせていただきましたことを、此処に表記させていただきます。
此処でお礼を申し上げます。

もう一作投下します。


184 : 紀田正臣&キャスター ◆lkOcs49yLc :2017/01/05(木) 20:56:45 ZxMGJ9G20
黄巾賊という盗賊が、後漢の末期に現れた。
文字通り黄色い布を髪に巻いた彼等の勢力は日に日に増していた。
そしてそれらを仕切っていたのが、張三兄弟の長兄張角であった。
だがその張角が病死したと共に、黄巾賊は散り散りになり組織は破綻した。


だが、黄巾賊は滅びてはおらず、国中に散らばった残党達は今だに略奪を繰り返していたとか。



◆  ◆  ◆

そしてその黄巾賊の名を冠した巨大な不良集団が、この日本に存在していた。
黄色い布を何処かに身につけた集団、黄巾賊。
その勢力は次第に増しており、勢いこそその名に恥じぬものだった。
だが賊党の名は子供のごっこ遊びで付けた物であり、彼等は碌に喧嘩というものをしていない。
結局は中高生が群がって出来たカラーギャング集団に過ぎない。

その「黄巾賊」の集会が先程終わった。
もう機能していない廃工場に、黄色い布を付けた者達が規律正しく成立し、リーダーらしき少年の気だるげな演説を耳に置く。
時折態度が乱れた者が棒で突かれ、それをリーダーが宥めてまたミーティングが再開。
そんな流れが何時もの様に続いていきながらも、集会は続いていく。

そして演説が終わり、各メンバーは散り散りになって出口に出て行く。
それをステージの上で見届けていたリーダーの少年……紀田正臣は、建物にいるのが自分一人になった瞬間、丁度後ろにある椅子に勢い良く座り込む。
そして溜息を付けば、無気力な、しかし非常に苛立ちの混じった言葉を吐く。

「あーもうどうしてこうなるんだよ!」

あの時、ダラーズと、帝人と戦うと決意した直後に、このザマだ。
まるで落とし穴にでも落とされたかのように、正臣は突然この世界に来てしまった。
住んでいる場所が池袋ではないこと、自分が黄巾賊に復帰していること、予選突破の武器には十分過ぎる程違和感があったため、辛うじて今右掌には令呪が宿っている。
沙樹のことを考えれば、己が黄巾賊にいること自体が変だが、幸い沙樹は無事だとのことだ。
折原臨也の姿は今の所確認されていないのだが、やはりその御蔭なのだろうか。

彼のいつもの軽快な態度はやや鳴りを潜め、軽快さを体現していたはずの彼の顔には悔しさの篭った表情が浮かんでいた。
正臣は自分をこんな聖杯戦争という儀式に呼び込んだ連中が苛立たしくてしょうがなかった。
あの池袋にまた戻り、碌でもないことをやらかした彼奴を殴り飛ばそうとしたと決めた時に、この世界に来てしまった。
未だ黄巾賊の再結成すら出来ていないというのに。
大体願いをかけて殺し合いだなんて何だ、ゲームの世界か。
いや、その手のゲームはやらなかったけれど、狩沢さんや遊馬崎さんとかならともかく。

「俺はこんな日常なんで望んでねーのによ……。」

もう最悪だ。
やりたいことやろうとしてこの有様かよ。
確かにゲームの世界に入り込むだけなら悪くはないかもしれない。
だが出られないとはどういう事だ、信じられるか。

願いならあるが、それは元の世界に帰ってからの話だ。
とにかく、正臣はこの聖杯戦争から抜け出したいと考えている。

「聖杯戦争」

1つの願望機を巡って、サーヴァントという使い魔の手綱を握り、「殺しあう」儀式。
それが脳内に送り込まれた聖杯戦争の概要だ。
殺し合う儀式だなんて信じられるか、どっかの映画で観た魔法使いだってこんなトチ狂ったことはやらない。
生命の取り合いというなら、もうブルースクウェアとの抗争で慣れっこだ。

だが人間同士での生命の取り合いとは訳が違う。
此処で戦うのは「サーヴァント」という使い魔だ。
折原臨也、平和島静雄、首無しライダー、そして切り裂き魔。
詰まる所あのような連中がゾロゾロいるという事だ、殺す気かとでも言いたくなる。
というか、もう言っている気がするのだが。

(でも、こんな所で立ち止まるわけには……いかねえんだよな……)

そうとは言うものの、少なからずとも正臣は戦いに乗ることを決めている。
殺し合うのははっきり言ってゴメンだ。
何度抗争を繰り返そうが、そんな気持ちは変わらない。

正臣だって人間だ、人は殺せない。
あの情報屋が聞いたらバカげたことを抜かしてくるだろうが、それは事実だ。




◆  ◆  ◆


185 : 紀田正臣&キャスター ◆lkOcs49yLc :2017/01/05(木) 20:57:24 ZxMGJ9G20

「どうした、小僧?」
「うっ!」


不意に聞こえた背後からの声に、正臣はビクッと背筋を震わせる。
その声はしゃがれてはいるが、しかし威厳のある声であった。
振り返ってみると、其処には兜を被った白髪の老人がいた。
眼帯が付いていない方の目で正臣を睨みつけるその眼光には、威厳すら感じさせる。
彼の名は「キャスター」、紀田正臣のサーヴァントとして現界した英雄である。

「あ、いや何って、男なら無論美女をナンパする事に決まっているじゃん!」

自分の悩みを誤魔化そうと、正臣は笑顔を作り虚言を吐く。
実際に正臣はそんな事をよく言う人物だと認識されている、これならキャスターだって……

「そうか、私にもその様な戯言を吐く『仲間』がいたが、少なくとも、先ほどの貴様程思い詰めた表情では言ってなかったぞ。」

老人が如何にも「呆れました」とでも言いたげな表情で正臣を見つめる。
それを見てやや冷や汗をかいた正臣は、ハァっと溜息を付いた後、椅子をズリズリと引きずってキャスターの方に身体全体を傾けた。
そしてもう一度溜息を付いた正臣は、思い切った表情を見せ口を開く。

「分かった、話すよ。」
「やはり、何か悩み事を抱えているのか。」

脱力気味な姿勢で椅子に座っている正臣を、憐れむかのようにキャスターは見つめる。

「……そういやさ、アンタにはまだ話していなかったっけ、俺の願い。」
「ほう?やはり貴様にも願いはあったのか。」
「ああ、まぁな……。」

其処まで言った後、正臣は一度目をつぶり、引き締まった表情と共に目を開き握り拳を天井に掲げる。

「殴りに行くんだよ、俺のダチを……」
「ダチを……仲間か。」
「そうだよ、其奴さ、どっからどう見ても普通の奴なんだけれど、今、彼奴が入ってはいけない場所に入り込んじまったんだ。
彼奴には、平凡すぎるほどに平凡な日常が一番似合っているはずなんだよ、なのにあの馬鹿野郎は……勝手にブクロの闇に入り込んじまって……」

正臣は、流れ出ようとする水を抑えるかの如く苛立ちを堪えようと、歯をギリギリと食いしばる。
正臣の無二の親友である竜ヶ峰帝人は、何処からどう見ても普通の高校生であった。
少なくとも、池袋の闇に入り込むには余りにも不相応な人種であった。
紀田正臣とは違う世界で生きるべき人間であった、「向こう側」等行く必要は……いや、知る必要すらなかった。

だが、結局彼は入り込んだ、まるでパンドラの箱を開けるかの如く。
そんな風になってしまった友を止めてやるのが、同じく友である自分の務めではないのか、と正臣は考える。
彼がどうしてこうなったのかは知らない、彼が何をやりたいのかは知らない。
だが、帝人が「向こう側」に行こうとすることだけは何としても阻止してやると。

「キャスターのオッサン、俺乗るわ、聖杯戦争。」
「やはりか、だが人を殺めることは―」
「分かってるよ、俺だって其奴はゴメンだ。」

まるで図星を突かれたような苛立った表情をキャスターに見せつけた正臣は、キャスターを真剣に見つめ、言葉を続ける。

「だからさ、ちょいとマスター殺るのは勘弁してくれよ。
サーヴァントなら構わねえけれど、流石にただの人を殺す勇気は、俺にはねえからさ。」
「分かった、私とてサーヴァントだ、貴様の命令は尊重しよう、しかし、これからどうする?如何にして戦う?」

それを聞いた正臣は、ハァ〜っと溜息を上げて干された布団のように背もたれに寄っかかる。

「それなんだよな……確かサーヴァントって、其処らのチンピラと違ってちゃっちゃと殺れる様なモンじゃないんだろ?」
「そうだな、サーヴァントは常に姿を隠している、何時どんな時に我々が狙われるか知れたことではない。」

冷たい顔でキャスターはうんと頷き、言葉を続ける。

「だが、陣地を転々とすることは可能だ。私の宝具でなら、それが出来るだろう、外に出てみろ。」

キャスターの言う通りに、正臣は椅子から立ち上がり、ステージから飛び降り、出口に向かって走る。
そして出口から出た時に眼にしたものは……


186 : 紀田正臣&キャスター ◆lkOcs49yLc :2017/01/05(木) 20:57:48 ZxMGJ9G20

「オイオイ、戦艦って……マジかよ。」

其処にあったのは、まるで中世ヨーロッパの伝承にも出てきそうな、木製の戦艦だった。
それが、海ではなく、陸に置いてある。
幾ら首なしライダーや切り裂き魔が跋扈するブクロの空気が染み付いているのか、正臣はさほど驚いた様子を見せなかった。
いや、口はパッカリ空いているのだが、しかしリアクションは薄い方だ。
大体、この世界もこの世界で英霊なんぞがうろちょろしているんだし。

「この宝具は、私の力の要とも言える重要な存在だ、これが破られれば、我々の戦力は落ちるだろう。
故に、一定の場所に置くのには無理がある。」

後ろからキャスターがゆっくりと歩きながら説明を付け加える。

「つまり、どういうこと?」

正臣がキャスターの言う事を問いただす。

「此奴に乗って移動しておけ、と言う事だ。」

そう言うと、キャスターは正臣よりも前の位置にまで歩き、船に乗り込もうとする。

「ちょ、オイ、勝手に置いてくなって!ていうかさぁ、俺も一応子分いるわけだしどーすんの!」
「集会には帰れば良いだろう、マスター、貴様も乗れ。」
「勝手な奴だなぁオイ!後我儘な女とのクルージングなら嬉しいけど爺は好みじゃねぇぞオレは!」

そう言いながらも、正臣はキャスターの後を追う。



◆  ◆  ◆


―仲間、か。
マスターたる彼の願いを聞いたキャスター…「マスター・ハデス」は、嘗て自分がギルドマスターの座を譲った男を思い出す。
彼はギルドを護るためにと己と戦った。
幾ら老いるまで研鑽を積もうが、元より経験と才能に恵まれ魔法の根源を目指し続けたハデスとの差は歴然だったはずだった。
結果その男は敗れた、ハデスに言わせれば当然の結果だった。

だがその男達の意志を継ぐギルドメンバー達はその限りではなかった。
彼等の前に七眷属は倒れ、自らも眼帯を外す羽目になった。
それでも勝てなかった、彼等の連携には為す術もなかった。
魔法の根源を具現化させた力をもいなした物、それは「仲間」の存在だったという。

そして、それは全て貴方から教えてもらったことだと、現マスターは答えた。
「力」に固執する余り、己は最も大事にしていた存在すら忘れてしまったのだ。
やがて彼の前に立ちはだかったのは、嘗て自らに魔法を教えてくれた少年だった。
その絶対的な力に為す術もなく倒れたハデスは、今のギルドのメンバー達の姿を思い浮かべる。
その仲間達と明るく騒ぐ彼等の笑顔は、「彼女」に良く似ていた。


自分をこの場に蘇らせた少年は、今「仲間をぶん殴る」と言った。
現マスター……マカロフも、嘗て自分に立ちはだかった時その様な事を口にしていた。
やはり、メイビスと言いマカロフと言い彼と言い、やっぱり自分は「仲間想い」な連中と縁があるのだろうか。
ギルドを抜けようが、闇魔術に傾倒しようが、座に登ろうが、やはり己は仲間の存在を出会いを重ねる度に教えられるのだろうか。
「大魔法世界」を見るために現界したのは良いが、まさか己を喚んだのはこの様な男だったとは。

無論聖杯は手に入れる、それは変わらない。
魔法の根源とやらに繋がるほどの膨大な魔力を持つ聖杯。
それが手に入れば、己の願いも自ずと叶うだろう。
嘗て眼にしたゼレフの力を、いや、それ以上の価値を有する可能性のある魔力の塊を、手放してどうする。

だが、一方でマスター・ハデスはこの少年の手助けになりたいとも思っていた。
嘗て己は、後を継いでいく仲間達に教えたはずの「仲間の大切さ」を忘れてしまった。
だがこの少年は「仲間」を殴りに行く事が願いだという。
嘗てキャスターが喰らった仕打ちと同じことを、この少年はやろうとしている。


―全て、貴方が教えたことです。


嘗て、己がギルドを託した愛弟子が放った言葉が、ハデスの中で反芻する。
仲間を想い、支え合う心。
思えば自身も、少女メイビスによってそれを教えられた男の一人だった。

(私は絆を捨てた……)

大魔法世界の実現。
ハデスはその為に、今迄護り続けてきた「絆」を捨てた。
そしてその果てに、己はその「絆」とやらに敗れ去った。
だが、彼の絆を支えてやりたいと言う想いは紛れもなく、彼があのギルドの一員であった証である。


187 : 紀田正臣&キャスター ◆lkOcs49yLc :2017/01/05(木) 20:58:35 ZxMGJ9G20




【クラス名】キャスター
【出典】FAIRY TAIL
【性別】男
【真名】ハデス(ブレヒト・ゲイボルグ)
【属性】混沌・悪
【パラメータ】筋力C 耐久A 敏捷B 魔力A+ 幸運D 宝具A++


【クラス別スキル】

陣地作成:-
自らに有利な陣地を創り出すスキル。
このスキルは陣地となる宝具と引き換えに失われている。



道具作成:C
魔力を帯びた器具を創り出すスキル。
魔法関連の道具を作り出せる。


【固有スキル】

高速詠唱:A
魔術詠唱を早める技術。
フィオーレ王国に蔓延る魔導師はどうやら全員このスキルを習得している様である。


魔眼:A
キャスターが持つ「悪魔の眼」。
万物を見通し、更に悪魔の召喚や膨大な魔力の生成をも行う。
実質的には「使い魔(悪魔)」「魔力放出」のスキルを兼ねている。


戦闘続行:C
往生際が悪い。
致命傷を受けない限り戦闘を続行する。


カリスマ:E
人々を導く天性の才能。
一ギルドを率いるには十分なランクである。


【宝具】

「悪魔の心臓(グリモアハート)」

ランク:A++ 種別:対城宝具 レンジ:99 最大捕捉:1000

キャスターの陣地にしてギルドの本拠地たる戦艦。
キャスターが率いた闇ギルド「悪魔の心臓(グリモアハート)」が宝具化した物でもある。
ギルドの名を冠した心臓の運び船。
強力な魔力炉「悪魔の心臓」を内蔵した魔力炉が積んである。
これこそがキャスターの強さの秘訣であり、これが破壊されればキャスターの力は大幅に減少する。
また、ギルドが宝具になった物でも有るため、船内で「煉獄の七眷属」を初めとするギルドメンバーを召喚することも出来る。
ただしウルティア、メルディは他のギルドに乗り換え改心したため、召喚に応じない可能性もある。
其の上一度消滅したギルドメンバーは召喚が不可能となる。
これのお陰で、キャスターは「ライダー」の適性も持ち合わせている。



「悪魔睨見・天罰(ネメシス)」

ランク:A+ 種別:対魔術宝具 レンジ:10 最大捕捉:-

キャスターが持つ魔眼。
ゼレフ書第四章十二節の裏魔法を発動する闇の魔術。
普段は封印されているが、眼帯を外すことで開放される。
キャスターに膨大な魔力を与え、地から悪魔を召喚することも出来る。
更に魔力を闇のオーラに変え、魔弾に変えて撃つ等、非常に強力な魔術を放つ。


188 : 紀田正臣&キャスター ◆lkOcs49yLc :2017/01/05(木) 20:58:57 ZxMGJ9G20



【人物背景】

魔導師ギルド「妖精の尻尾(フェアリーテイル)」の二代目マスター。
その魔法の腕は天才として讃えられたが、ある時マカロフにギルドを託して突如ギルドから去る。
しかし彼は闇ギルド「悪魔の心臓(グリモアハート)」のマスターとして生きていた。
そして彼はより強大な黒魔術を手にするため黒魔導師ゼレフを求め、妖精の尻尾の聖地たる「天狼島」へとやってくる。
魔道戦艦と「煉獄の七眷属」を従えS級昇格試験で此処に来ていた現「妖精の尻尾」の魔導師達を苦しめるが、紆余曲折の末に煉獄の七眷属は全て倒される。
遂に己が出陣する羽目となり、マカロフを圧倒した後自らも出て、「妖精の尻尾」の主力メンバーを終始圧倒する。
だが己の魔力の元となっている魔道戦艦の魔力心臓を破壊され、それでも尚戦い続けるもとうとう敗れる。
そして覚醒し「怒った」ゼレフに一瞬で倒され、息絶える。
冷酷非情な性格だが、何処か不器用な一面もある。
その冷静沈着な性格はメイビスと出会った時点で変わらなかった模様だが、嘗てはメイビスには心を開いていた。



【聖杯にかける願い】

ゼレフの力を目覚めさせる。


【基本戦術・方針・運用法】

陣地を戦艦とする、どちらかと言えばライダー寄りなキャスター。
しかしゼレフに手ほどきを受けているハデスの魔導師としての腕前は本物で、「グリモア・ロウ」や「天照」等の強力な術を司ることが出来る。
宝具である魔眼を使えば使い魔とオーラを扱った戦闘を行うことも可能だが、キャスターにも弱点はある。
戦艦にある心臓を破壊されれば、キャスターの力は減少する。
それでもギルドメンバーの召喚能力は相変わらずなので、まずはギルドメンバーを使って自分は様子見をしておくのが一番であろう。


189 : 紀田正臣&キャスター ◆lkOcs49yLc :2017/01/05(木) 20:59:14 ZxMGJ9G20




【マスター名】紀田正臣
【出典】デュラララ!!
【性別】男


【能力・技能】

・腕っ節の強さ
カラーギャング元頭領なだけあって、相当な実力だったかと思われる。
と言うか彼の腕っ節も黄巾賊の勢力拡大に関わっている。

・「黄巾賊」
三国志演義において悪名高い同名の賊軍をモチーフにしたカラーギャング集団。
正臣はそこの頭「将軍」であった。
彼が抜けてからも、その勢力は大幅に拡大。
ダラーズに負けず劣らずの一大組織と化してしまった。
このロールにおいても黄巾賊は健在で、正臣もリーダーに復帰している。


【人物背景】

池袋に住む高校生。
なのだが、嘗てはカラーギャング集団「黄巾賊」のリーダーで、そこでは「将軍」と呼ばれていた。
だが恋人の三ヶ島沙樹を切り裂き魔にやられたことをきっかけに黄巾賊を抜け出す。
それからは幼馴染の竜ヶ峰帝人や、クラスメートの園原杏里と一緒に平凡な日々を送っていた。
しかし彼もまた、必然的に非日常に戻る羽目になり、「首なしライダー」や「切り裂き魔」に関わる事になる。
やがて彼は、帝人がカラーギャング紛いの交流サイト「ダラーズ」の組織力を拡大していき暴走していったことを知る。
正臣は親友を殴り飛ばすため、再び黄色い布をその身に纏った。


陽気な性格で女の子をナンパするのが趣味。

今回は、ダラーズと戦うために黄巾賊に戻る直前からの参戦。


【聖杯にかける願い】

帝人を日常に引きずり戻す。


【方針】

参戦派だが、人を殺すことにはやや躊躇がある。


190 : ◆lkOcs49yLc :2017/01/05(木) 20:59:38 ZxMGJ9G20
以上で二作の投下を終了します。


191 : ◆lkOcs49yLc :2017/01/05(木) 22:34:40 ZxMGJ9G20
すみません、ライダー(マドワルド・ザーギン)のステータス表に幾つかミスがあったので、
こちらに変更させていただきます。

【クラス名】ライダー
【出典】BLASSREITER
【性別】男
【真名】マドワルド・ザーギン
【属性】混沌・悪
【パラメータ】筋力A 耐久B 敏捷A 魔力C 幸運D 宝具E(バアル変身時)

【クラス別スキル】

対魔力:E
魔力に対する耐性。
無効化はせず、ダメージを無効化する程度。


騎乗:C+
乗り物を乗りこなす才能。
車やロバを乗りこなした他、融合化により機械や金属と融合することも可能。


【保有スキル】

医術:C
多少の医術への心得。
彼は生前は医者だった。

融合進化体:A
彼はナノマシンにより己の力を凌駕させている。
Aランクなら、全ての融合体を凌駕しているレベル。
武器を創造から生成出来る他、超人的な身体能力を有する。

絶望の病馬:A
彼は人の醜悪さに絶望し、優しかった頃の己を殺した。
怠惰や我欲に塗れた者に対しては補正が掛かり、その様な存在に苦しめられてきた者に対してはDランクの「カリスマ」と同等の効果を発揮する。
しかし、今の世界を美しく思うものに対しては無効となる。


【宝具】

「希望の道知らぬ蒼い馬(ペイルホース)」
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1

ライダーが体内に有しているナノマシン。
人類の進化を促す力に成り得た可能性を持った、化物の中核。
血液を介して感染し、血管内の蛋白質に分解されてしまう。
ナノマシンはそのまま人体の活性化を促し、人間を幻覚症状や高熱に苦しめた末に「デモニアック」と呼ばれる存在に変質させる。
デモニアックは理性を消失し、本能の赴くままに人間を襲う。
しかし、72の感染パターンに当てはまった人間は「ブラスレイター」と呼ばれるより高位の存在へと変化する。
ライダーはそのブラスレイターの中でも最強にして最も適した存在とされる「バアル」の姿を持つ。
背中の触手や生成した剣を振るって戦う他、人間体でも右手の紋章から発する光弾を使って戦うことが可能。
デモニアックを洗脳し操ることも可能。
この宝具の伝染機能は生きているが、ブラスレイターを生みだすことは不可能。
その代わりデモニアックには神秘が宿る。


「愚に殺されし哀れな老芦馬(ヴァイス)」
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:10

ライダーが生前拾い上げ、ペイルホースを与えたロバ。
嘗ては用済みに成る程に老いぼれた老ロバだったが、今ではペイルホースを与えられた影響で進化を果たしている。
普段は白い普通のロバの姿でいるが、ブラスレイターとしての姿に変化することも可能。
魔改造を施したスーパーマシンを追い上げるほどの速さで走れる他、天馬の如き羽を生やし空を飛ぶことが出来る。
雷撃を発生することも可能で、蹄から発した雷撃を遠距離から発射するという戦法を行っていた。


【Weapon】

生成した剣と触手、そして光弾。


【人物背景】


神を憎み、滅びの黙示を迎えようとした哀れな蒼馬。


【聖杯にかける願い】

世界を再構築する。
今ある世界は、滅ぼさなければならない。


192 : ◆0080sQ2ZQQ :2017/01/18(水) 23:01:03 W8hTBKPA0
一作投下します。


193 : 君島邦彦&バーサーカー ◆0080sQ2ZQQ :2017/01/18(水) 23:02:09 W8hTBKPA0
 22年前、日本の神奈川県の一部地域で大規模な隆起が発生。
後に「ロストグラウンド」と呼称される独立空間が誕生する事となった。
復興は遅々として進まず、何時しかロストグラウンド内では崩壊地区の住人と復興した市街の住人による、二層社会が形成された。
そして大隆起からしばらく後、当該地域の新生児の一部に「アルター使い」と呼ばれる特殊能力者が確認された…。

――まぁ、こっちじゃそんなもの、影も形もないんだけど。

 邦彦は内心、独りごちた。
彼は親友の背で息を引き取ったその瞬間、こちらの世界に招かれた。
復興した都市の風景、保証された身分。何もかも本来の邦彦の生活とは違った為、マスターの自覚を得るのは容易だった。
しかし…。

(聖杯戦争つってもさぁ…)

 彼に魔術の素養は無い。ただのチンピラでしかない。
親友のようなアルター使いならまだ違ったかもしれないが、魔力の十分な供給など土台無理な話。
魂喰いでもするか?リスクの割に実入りが少なすぎる。
もう少し安全で、リターンの大きい方法が欲しい。
幸い邦彦が契約したサーヴァントには単独行動のスキルがある為、猶予はしばらくある。

(でも、バーサーカーなんだよなぁ)

 よりにもよって狂戦士。
ちょっと手綱を緩めれば、破滅確定。
事前情報とは違い、意思疎通がとれたのが唯一の救いだった。







「えっ、ここどこ?」

 自室でくつろいでいた邦彦の前に降り立った、バーサーカーの第一声。
黒い上下に身を包んだ若い男が、困惑した顔を左右に振り向けている。
幼さが残る、整った顔立ち。
邦彦は荒っぽい若さの化身に、恐る恐る声を掛けた。

「あんた、俺のサーヴァント…なんですよね?」

 黒い男は目をしばたたかせる。

「はいはい。あ、そーだ聖杯戦争だったけね。…で、あんたが俺のマスター?」

 黒い男――バーサーカーは背筋を伸ばし、腕を組む。
些か気の抜けるやり取りになったが、契約は完了した。
二人は床に座り、お互いの紹介と方針の相談に移る。
これから短くない期間、コンビを組む事になるのだ、踏みこんではならないラインを早いうちに見極めておきたい。

「へー、アンタも死んだの?実は俺もなんだよ」
「いや、死んだからサーヴァントになったんでしょ…」

 腕は立ちそうだが、どこか抜けた部分がある。
邦彦は何となく、彼の佇まいに既視感を覚えた。
相棒に少し似ているのだ。もっとも、向こう程ガラは悪くないが。
落ち着いた雰囲気を漂わせており、頭も向こうより良さそうだ。

「それで、やっぱり聖杯を獲りに行くのか?」
「んー、俺はこのまま脱出できればそれでい〜んでな。欲しけりゃアンタにやるよ。そっちは?」

 バーサーカーの顔に影ができた。
僅かに発散する雰囲気が曇った事を、邦彦は見逃さなかった。

「俺は欲しいな。本当にどんな願いでも叶えてくれるなら…な」

 招きを受けるだけあって、悩みの一つくらいはあるようだ。
はっきりいらない、と言わなくて良かった。
マスター替えなどされたら非常に不味いのだ。神秘への造詣が無い以上、次の契約相手などまず見つけられないだろう。
ちらりと見たバーサーカーの表情に変化は無く、相手が自分にどんな印象を抱いたかは不明だ。

「…とりあえず、最初の内は情報収集だ。全員と闘う必要はない。組めそうな相手がいたら、同盟を組もう」

 邦彦が案を出す。
聞いたバーサーカーは両手を枕に、ごろりと寝転がった。

「じゃそれで。探索は明日からでいいよな」
「賛成。これからよろしくな、バーサーカー」

 片眉を持ち上げ、ふっとバーサーカーは微笑んだ。
彼は寝転がったまま、ひらひらと手を振りつつ宙に解けて消えた。


194 : 君島邦彦&バーサーカー ◆0080sQ2ZQQ :2017/01/18(水) 23:02:46 W8hTBKPA0
【クラス名】バーサーカー

【出典】シャドウハーツ

【性別】男

【真名】ウルムナフ・ボルテ・ヒューガ

【属性】中立・善

【パラメータ】筋力C 耐久C 敏捷D 魔力B 幸運D 宝具A++

アモン 筋力B 耐久B 敏捷C 魔力A 幸運D 宝具A++(狂化補正無し)

天凱凰 筋力A 耐久A 敏捷B 魔力A+ 幸運D 宝具A++(狂化補正無し)


【クラス別スキル】
狂化:-(E〜A)
 通常時は一切機能していない。
 フュージョンを発動すると、カッコ内のランクに修正。
 1ターン経過するごとに、ランクが一段階上昇。能力の更なる向上と引き換えに、ウルの理性が削れていく。


【固有スキル】
単独行動:B
 その人生に付き纏う孤独。
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

神殺し:C
 星の彼方からやってきた神を殺した男。
 神性の持ち主に対し、与えるダメージが増加する。

ハーモニクサー:A-
 封じた怪物を抑え込む鋼の魂。
 他の精神干渉系魔術を完全にシャットアウトする。
 ただしクラス補正により、狂化スキルに対しては抵抗できなくなっている。

魔力放出:-(A+)
 通常時は一切機能していない。
 フュージョンを発動すると、カッコ内のランクに修正。
 自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。
 強力な加護のない通常の武器では一撃の下に破壊されるだろう。



【宝具】
「破壊の凶神(アモン)」
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1〜1000
 自身の内に封じ込めた破壊神の魂と融合する。
 破壊の魔力を光芒として放つ他、いかなる負傷も一瞬で完治させる事が可能。
 あらゆる事象を否定する力を持ち、Aランク以下の防御系のスキル・宝具を破壊することができる。

「この星とあの子の未来のために(天凱凰)」
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1〜1000
 自身の内に封じ込めた星の守護神の魂と融合する。
 星の力そのものを己の魔力として放ち、「地球で生まれたもの」の生命を吸い上げる力を持つ。
 また、任意のステータスを最大:A++まで強化する事が可能。
 かつて上海を瞬く間に壊滅させたその力は、宝具化したことで大きく削ぎ落とされている。


【weapon】
「レザーグローブ」
殴る男の皮手袋。


【人物背景】
内に封じた怪物の魂と融合、その力を引き出す「フュージョン」の使い手。
自身の能力をひどく恐れているが、普段はそんなことをおくびにも出さず、冗談と軽口で周囲を和ませる。
両親を失ってからは、頭の中に聞こえる「声」に従って旅を続けてきた。
魔術師ロジャーの手からアリス=エリオットを救い出した時、彼の運命は動き始めた。


【聖杯にかける願い】
アリスのもとに帰る。


195 : 君島邦彦&バーサーカー ◆0080sQ2ZQQ :2017/01/18(水) 23:03:12 W8hTBKPA0
【マスター名】君島邦彦

【出典】スクライド(TV版準拠)

【性別】男

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
「フィクサー」
招かれる前は危険な仕事の斡旋で身を立てていた。
広い人脈に加えてコミュ力がかなりあり、ならず者の集まりであるネイティブアルター使いの連合を結成できる。


「意地」
時には弱音を吐く彼にも五分の魂。
右腕一本で理不尽に立ち向かう友の雄姿は、今も心の中に。


【人物背景】
近未来の神奈川に突如出現したロストグラウンドの崩壊地区で生きる青年。
便利屋の青年「カズマ」に仕事の斡旋をするフィクサーであり、彼が最も信頼する友人。
基本的にカズマとコンビで仕事をしており、主に頭脳労働を担当。

武装警察ホールド、およびアルター使いで構成された特殊部隊ホーリーの侵攻に苦戦するカズマの元に駆けつける最中、背中に銃撃を受けてしまう。
力を合わせて敵アルター使いが操る「ダース部隊」を倒した後、カズマの背の上で息を引き取った。
死亡後から参戦。


【方針】
脱出狙い。闘いも止む無しだが、逃げれるなら逃げる。


196 : ◆0080sQ2ZQQ :2017/01/18(水) 23:04:02 W8hTBKPA0
投下終了です。鱒のみ、鯖のみ、自由にお使いください。


197 : ◆VJq6ZENwx6 :2017/03/01(水) 22:40:29 k4FZ6SkA0
次の候補作品をフリー化します。

Fate/Malignant neoplasm 聖杯幻想
中島朱実&セイバー
ttps://www65.atwiki.jp/holycon/pages/1.html

また、以下の作品はFate/Fessenden's World-箱庭聖杯戦争-に投下させていただいた
ホル・ホース&アサシンですがフリー用に加筆修正を行ったため、このスレに投下することに致します。

投下します


198 : ◆VJq6ZENwx6 :2017/03/01(水) 22:41:03 k4FZ6SkA0
オレは何をやっているんだろう。
世界中をふらふらし、その地の衣食住は現地で作ったガールフレンドにお世話になる、そんな生活を送っていたガンマンスタイルの男は、ソファの上で愛用のテンガロンハットを直しながらふと、そう思った。
育ちの良さそうな女と付き合って、世話になるなり金目の物を貰う、それはたしかにオレの性分だが、オレは年がら年中そうやって暮らしている腑抜けた男であったか?
そうであるなら、この胸の漠然とした不安と、そしてそれに対してイラつく強い心はどこから来ているんだ。
オレが女に世話してもらわなきゃ生きられない、腑抜けた男だというのなら、どこか生活に不安もあるかもしれない。
しかし、今後の生活を考えても、何の定職も、女に上手いこと言うだけのこの口以外、なんの能力も無いはずのオレは、なびく女が居ないようなボロッボロのおっさんになろうが、食いっぱぐれないという自信がなぜかみなぎっていて。しかし、それすら包み込んでしまうドス黒い、やはり腑抜けた男には荷が重すぎるはずの強大な悪への恐怖が巣くっていた。

『君は…普通の人間にはない特別な能力を持っているそうだね?』

なにか、とても恐ろしいものから逃げているような

『ひとつ…それを私に見せてくれると嬉しいのだが…』

そして、何か大切なものを忘れているような、
そんな気がしてならねえ。

―ブーン、ブン

ん?ハエか?ハエもなんか大切な記憶があったような…

―ブン、ブン、ブーン

「ええい、鬱陶しい!纏わりつくんじゃねーぜ!」

腕を振り回し、ハエを追っ払おうとするが、ハエは離れることはなかった。
まるで、逃れようとしても無駄だと、あざ笑うようにハエは中で舞っていた。


199 : ◆VJq6ZENwx6 :2017/03/01(水) 22:41:19 k4FZ6SkA0
「………」

不思議と心は落ち着いている、怒りもあるが、それ以上の殺気を込めてハエを見据えた。
冷静にハエの動きを目で追う、いつまでも飛び回ってるはずがねえ、止まった時に叩く。
そう考えた途端、ハエはやはりあざ笑うかのように、オレから離れ、飛び回ったが冷静に目で追った、
そしてオレから約一メートルほど離れたテーブルの上、当然オレの手の届かぬ所で止まった時、オレは動いた。
オレはハエに向かって拳銃を持つかのように構え、次の瞬間その手の中に拳銃が現れ、それに驚くこと無く、引き金を引いた。
そしてそれを察知したかのようにハエが飛び、銃弾は標的から外れ、テーブルを貫くーーかと思われた所で、弧を描いて上方にカーブしてハエを貫き、さらに天上を傷つける前に消えた。
それを見届けたオレは、手に持った拳銃をクルクルと回転させ、改めて眺めた。
これがオレの能力、常人には見えぬ拳銃のビジョンのエネルギー、すなわち側に立つ者<スタンド>。
『意思』の暗示を持つ4番目のタロットカード、皇帝<エンペラー>だ。

「思い出したぜ…DIO」

バラバラになったハエをゴミ箱に捨てたオレは、胸のポケットからタバコを取り出し、火を着けた。

オレの名はホル・ホース。世界一女にはやさしい伊達男だ。持ち前の超能力、スタンドで殺し屋をやって金を稼いでたが、金に目がくらんで100年前から復活した吸血鬼、DIOというとんでもない怪物に能力を買われてしまい、そいつの因縁の相手であるジョースター家抹殺を頼まれた(断ったら殺されていただろう)が、つぐつぐ失敗し、相棒とともに病院送りにされてDIOの粛清にビビっていた。
そんなオレがなぜのんきにこんな場所にいるんだ?
そう考えていた矢先、ふいに静寂を破る声に身を凍らせた。

「あ、あの」

この背のすぐ後ろ、ガールフレンドより幼い少女の高い声だ、いつからいた。
人っ子一人どころかハエ一匹も居なくなったこの部屋で、オレの背後を取るなんてただもんじゃねー。


200 : ◆VJq6ZENwx6 :2017/03/01(水) 22:41:43 k4FZ6SkA0
DIOが粛清に送ってきたスタンド使いか、そう考えていた矢先に次の声が響いた。

「あなたが私のマスターですか?」

マスター。その単語を聞いた瞬間、頭のなかに膨大な知識が入ってきた。
そしてオレは現状を理解した。
聖杯、かつて太古から多くの権力者が求めたその聖遺物を巡る戦いに巻き込まれたのだと。

現状を整理しよう。
とてつもないパワーを秘めた聖杯を巡る戦い、すなわち聖杯戦争、
マスターと呼ばれる魔術師がサーヴァントと呼ばれる英霊を召喚し二人一組で戦う、これは良い。
No.1よりNo.2、これがオレ、ホル・ホースの人生哲学であり、矢面に立つ側を用意してくれると言うなら願ったり叶ったりである。だがーーー

「オレにか弱い女子どもを相棒にする趣味はねーぜ…」

相棒運の無さに、思わずため息を付いてしまった。

「え?」

背後から声をかけてきた、とぼけた顔の目の前の少女を見つめる。
頭から生えた犬耳が貫通したフード付きケープ、尻尾、肉球グローブともこもこふわふわした格好、
これで英霊とは何かの間違いではないかと頭を抱えたくなる十代半ば程度の美少女。
これがオレのサーヴァントである。

「いや、なんでもねえ、悪いな。
で、嬢ちゃんがサーヴァント…ってことで良いんだよな?」

「は、はい!そうだと…思います」

いかにも気の弱そうな返事だぜ…
オマケに会話も苦手そうだが、まぁオレの口説きテクにかかればどうにでもなるだろう
萎える気持ちに鞭打って、もう一つ質問を投げつける。


201 : ◆VJq6ZENwx6 :2017/03/01(水) 22:42:06 k4FZ6SkA0
「嬢ちゃん、名前はなんていうんだ?」

「犬吠崎珠――あ!この姿だと『たま』っていいます」

「たまか、耳にしねー名前だが、どんなことやった英霊なんだ?」

「え?えーっと…」

誰にも知られない聖人なんてものが存在しないように、誰にも知られない英雄なんてものが存在するわけはない。そう考えたオレは眼の前に居る少女がやった偉業に期待を膨らませた。
しかし、目の前の少女は腕を組んであれでもない、これでも無いと考えている。
オレが少し不安になってきた所で、少女はその手の可愛らしいグローブをポンと打った。

「わかりました!」

「おお!」

「校外学習で、土器とか化石とか掘ったんです。きっとその発表で有名になったんです!」

「それは凄えな…ん?」

それは凄い、確かに凄い、しかしそれで英霊になったと言われてもパッとしない。
イマイチ肩透かし感が強かった。

「本当にそれで有名になったのか?」

「発表される前に死んじゃったのでよくわかんないですけど、きっと遠い未来にすごい評価されたんです!」

求めてるのはそういうのじゃない。しかしこんなに自信満々で明るい表情なのに色々と突っ込むのは気が引ける。
思わずため息を付いてしまった。

「OK,理解したぜ。
それで、お嬢ちゃんは何ができるんだ?」


202 : ◆VJq6ZENwx6 :2017/03/01(水) 22:42:31 k4FZ6SkA0
重要な質問だ、あのDIOもスタンド使いを集めているように、人を選ぶのに、一番『大切な』事は『何ができるか』!
あの元相棒のボインゴも異常な人見知りだったが、能力は万能の願望具にも負けるとも劣らない『都合のいい未来を漫画にして映し出す』なんてインチキ能力。
何にしろ英霊になったんだ、たまもきっとすごい能力を持ってるに違いねえ!

「ええと、ちょっと、待っててください」

訝しむオレを横目にアサシンは中庭に駆け出し、芝生に爪を立てる。
すると、爪を立てた所に直径1mほどの穴が開いた!
驚いたオレはすぐに駆け寄り、穴を覗き込んでみたが底が見えねえ…
試しに咥えていたタバコを落としてみた所、か細いタバコの火はすぐに見えなくなり、煙も出てこなくなった、どれだけ深いのかは全く検討もつかねえ。

「その…こうやって、穴を開ける魔法が使えます」

「ふぅむ…」

整った真円の穴に、エンヤ婆の開けた穴を思い起こし右手が疼いた。

「なあ嬢ちゃん、この穴っていうのは地面じゃねえと開けられねえのか?」

「え?いや、傷つけられればなんでも大丈夫です」

「そうか」

あのエンヤ婆のスタンドのように人体でも…と聞きそうになったが、
能力を使ったアサシンの、自信なさげな子犬のように小さく縮こまった佇まいを見てやめにしておいた。
常にコンビで動いてきたオレにはわかる、この嬢ちゃんはあのボインゴの様に強力な能力を持ってもビビって使えねえタイプ。
この聖杯の召喚に応じてる以上、殺し合い、聖杯を持って願いを叶える意思はあるんだろうが、それを実行できる精神力があるかどうかは微妙だ。


203 : ◆VJq6ZENwx6 :2017/03/01(水) 22:42:46 k4FZ6SkA0
ま、スタンドで人を殺して、人から金を貰ってるオレにその辺をとやかく言う筋合いはねえし、
女に対してボインゴの様に発破をかけるのは流儀に反する、ちっと厄介な相棒を引いちまったもんだぜ。
途中で心が折れて、聖杯戦争に参加する意思自体が無くなったら、強要する気はねえし、迷わず手を引いて、次の相棒を探さなきゃならねえかな。


「あ、あのう…他にも…こんな道具もあります」

穴を見つめながら考え込んでるオレを、能力を微妙と思ってると見られちまったのか、アサシンが自信なさげにおずおずと飴の二つ入ったビンを差し出してきた。

「えっと、元気の出る薬です」

元気の出る薬、アサシンを自信付けるためにも精一杯フォローしようと思ったオレだが、なんと返せばいのかわからない。
ヤバイ薬じゃないのか、健全な薬でも元気が出るからどうなのか、返事に詰まってしまった。
そんなオレを見て、アサシンはさらにたどたどしく外套を取り出した。

「えっと、その、スイムちゃんのだけど、うんと、透明外套です…」

そう言って、外套を着たアサシンは消えたーーー消えた!?
魔力のパスからしても、目の前にアサシンが居るのは感じる。
しかし、目を凝らしても全く見えない。
そうして固まってる間に、外套を脱いだアサシンが目の前に現れた。

「えっと…どうですか…?」

「凄え道具じゃねえか…疑ってたわけじゃねえが、本当に魔法みてえな道具だな…
 それ、お嬢ちゃんじゃねえと使えないのか?」

「あの…どうぞ」

返答代わりにアサシンは外套を差し出した。
受け取ったオレは早速外套を羽織ってみる。
サイズは合わないが魔法の道具というだけあり、オレが無理に扱っても破けそうにはない。
着終わったオレは自分の腕があるべき所を見てみる、無い、いや、完璧に透明になっている。


204 : ◆VJq6ZENwx6 :2017/03/01(水) 22:42:57 k4FZ6SkA0
それを確認したオレは静かに外套を脱いだ。

「ど、どうですか…?」

「クックックック…」

笑いが止まらねえ、『暗殺』のオレの能力と『透明』のこの外套、これほど相性が良いものがあるだろうか

「オレたちゃ無敵だ!無敵のコンビだぜ!」

「え!?」

「凄えな嬢ちゃん、これさえあれば聖杯に手が届くぜ」

「ほ、本当ですか…?」

「ああ、きっと手に入れようぜ、オレたちの手でな」

アサシンの顔にここで初めて笑顔が浮かぶ。
オレも嬉しい。
このお嬢ちゃんの手を、わざわざ汚させねえで聖杯を取る。
このやり方に差し込んだ一筋の、いや大量の光にオレの目の前は明るくなった。

「じゃあ、そろそろこれ閉じてくれ」

「え?」

「魔法とやらで開けたこの穴だ、泊めてもらってるガールフレンドの家に穴あけっぱなしは流石に不味いからな。能力を解けば閉じるだろ?」

「え、えっと…」
アサシンの顔がみるみる青くなっていく。

「ん?」


205 : ◆VJq6ZENwx6 :2017/03/01(水) 22:43:15 k4FZ6SkA0
「ご、ごめんなさい!私の魔法だと穴を開けられても閉じられないんです!」

この答えを聞いた時、一筋の光は消え、オレの顔も真っ青に染まった。


『この後二人は頑張って穴を埋めようとしたけど、埋めきる前に家の持ち主が帰ってきてホル・ホースはメチャクチャ怒られたあげく、絶交されて家から追い出されちゃった!
 がんばれ、ホルホースとたま、人生そんなものさ!』


206 : ◆VJq6ZENwx6 :2017/03/01(水) 22:43:44 k4FZ6SkA0
【クラス】アサシン
【真名】犬吠埼 珠
【出典】魔法少女育成計画
【性別】女性
【属性】中立・中庸

【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:D 魔力:D 幸運:C 宝具:C

【固有スキル】

気配遮断:E
サーヴァントとしての気配を絶つ。隠密行動に適している。

【保有スキル】
観察眼(土):B
大地に対する造詣が深い。
落とし穴などの罠に回避補正がつく。

魔法少女:C
魔法の才能を持った生物が、魔法の国の技術によって変身する生命体。
通常の毒物を受け付けず、暗闇を見通し、飲食を必要とせず、精神的に強化される。
内包した魔力は使いようによって、魔法の国を再興させうるとも言わる。
これによってアサシンはランクB相当の単独行動を保有し、魔力消費量も軽微なものとなる。

仕切り直し:D
戦闘から離脱する能力。

落第生:A
落ちこぼれゆえに自分以外に敵対対象がいる場合、アサシンの優先順位が大きく落ちる。
幸運、宝具を覗いたパラメーターが全てアサシンより2段階上回る相手は実力差故慢心し、アサシンに対し心眼(真)と直感が無効になる。


207 : ◆VJq6ZENwx6 :2017/03/01(水) 22:44:07 k4FZ6SkA0
【宝具】
ここほれニャンニャン(いろんなものに素早く穴を開けられるよ)
ランク:C 種別:対物宝具 レンジ:1-10 最大補足:1人
視界内にある自分で掘り返した穴・傷などを一瞬で、直径1mまでの穴に広げられる。
たとえどれだけわずかな傷であっても、傷つけることさえできれば広げることができる。

抱き合い飛ぶ片翼の天使達(元気の出る薬)
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
本来は10錠だがアサシンは己が服用した2錠分しか出せない。
服用してから30分の間、筋力値、敏捷値を一段階上げ、戦闘続行D、心眼(偽)Cを付与し、
効果適用中の間、かつての仲間であるルーラ、スイムスイム、ユナエル、ミナエルを召喚する。
召喚されるのはランダム、かつ2錠服用した際、合計で4人全員が揃うように召喚される。(一度召喚されたものは召喚されない)

アサシンの仲間、ユナエルが3年分の寿命を差し出し、手に入れたとされる魔法の国の日用品。
かつて姿を消しても音で居場所がわかる音楽家に、対応できたのはこの薬の存在が大きいとされ、
逸話型宝具として、共に音楽家の試験を生き残るのに全力を尽くした仲間たちをも召喚可能になった。たまが一番元気なのは仲間といる時、というのも大きいかもしれない。


208 : ◆VJq6ZENwx6 :2017/03/01(水) 22:44:28 k4FZ6SkA0
土曜日のメリュジーヌ(透明外套)
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
羽織っている人間の姿・匂いを消すマント。
認識されながら強敵を打ち倒した、及び見てはならないものを見てしまったアサシンの末路から、これを羽織っている最中のアサシンを認識した相手の幸運値を一段階下げる。
更にこの効果で相手の幸運値がEになった、または効果を受けたが元々Eの場合はアサシンに一回限りの直感Bを付与し、更に落第生が発動している場合、確実に先手が取れる。

アサシンが所属していた魔法少女グループの、当時のリーダーとされる魔法少女が25年分もの寿命を差し出し、手に入れたとされる曰く付きの魔法の国の日用品。
前述の通り元々はアサシンの所有物でもなく、元気の出る薬のように有用に扱った覚えのない道具である。
さらにアサシンはこのマントの元々の所有者に殺されたとのことであり、未だに所有権が譲られているとも考えづらい。
この道具をアサシンが所有できている理由は謎。

みにくい愚民の子(ルーラ・ザ・ビギニング)
ランク:― 種別:対人宝具 レンジ:2〜3 最大捕捉:1人
アサシンが5年分の寿命を差し出し、手に入れたとされる魔法の国の日用品。
当時のリーダー、そしてかの魔法少女狩りの手に渡り、数多くの戦いを通し不遜、聡明、可憐にして唯一無二の女王(ルーラ)として宝具に至る武器。
仮にも寿命を支払った当人であるアサシンが用いてもおかしくはないはずだが、
当のアサシン本人に所有している意識がないため、使用不能である。

【サーヴァントとしての願い】

受肉して復活。


【マスター】
ホル・ホース@ジョジョの奇妙な冒険

【参戦時期】
ボインゴと仲良く病院に入れられている最中。

【マスターとしての願い】
DIOの粛清から逃げる。


209 : ◆VJq6ZENwx6 :2017/03/01(水) 22:44:47 k4FZ6SkA0
投下終了です


210 : ◆T9Gw6qZZpg :2017/03/12(日) 15:48:14 miutCQyo0
以下の作品をフリー化いたします。

・「Fate/Malignant neoplasm 聖杯幻想」様より
【遠見真矢&セイバー(木場勇治)】
ttp://www65.atwiki.jp/holycon/pages/50.html

【桐生萌郁&ライダー(野上良太郎)】
ttp://www65.atwiki.jp/holycon/pages/87.html

・「Fate/Fessenden's World-箱庭聖杯戦争-」様より
【コヨミ&ライダー(鴇羽舞衣)】
ttp://www65.atwiki.jp/ffwm/pages/57.html

【ジェイク・マルチネス&アーチャー(イカロス)】
ttp://www65.atwiki.jp/ffwm/pages/147.html


211 : ◆T9Gw6qZZpg :2017/03/12(日) 15:49:47 miutCQyo0
それと、候補作をこちらに一本投下します。


212 : 高森藍子&ランサー ◆T9Gw6qZZpg :2017/03/12(日) 15:51:18 miutCQyo0



 高森藍子は写真を撮ることを日頃の趣味の一つとしている。
 しかし、構図や光彩といった芸術的な観点で写真撮影の技術を追求することは無い。
 藍子にとっての写真とは、日々の中で巡り会えた幸福を思い出として記録するための手段という意味合いが強い。
 道端に咲いていた花が綺麗だった。小道を横切った子猫が可愛らしかった。立ち寄ったカフェで食べたケーキが美味しかった。友人達と一緒に一息つきながらお喋りするのが楽しかった。
 何気なく、ささやかな、そして胸の中を穏やかな熱で満たしてくれた事物を、大切な記憶として自らの中に留めておくための方法である。
 日々に、世界に満ち溢れた幸せを見つけることの価値を理解しているから、他の誰かに優しくなれる。藍子自身も、誰かにとっての幸せの提供者でありたいと願う。
 藍子が一人のアイドルとして目指す姿を構成する要素を成すのが、藍子が日々の中で撮り溜めた写真であった。
 藍子にとって、写真とは優しい世界の具現とも言えるのかもしれない。
 そして、また異なる事実として、世界は優しいだけではないし、写真も世界の優しさだけを映し出してはくれない。






213 : 高森藍子&ランサー ◆T9Gw6qZZpg :2017/03/12(日) 15:52:19 miutCQyo0

 惨い写真が、目の前に突き付けられていた。
 人体から離された肉片や臓器を鮮明に映したグロテスクな代物というわけでは無い。しかし、四角形の光景の中には、確かに痛苦と死があった。
 流れ往く時間の一瞬だけを切り取られた兵士らしき青年が、遠からず死を迎えること。彼が絶望と悲嘆の中で命を終えること。そんな未来が、既に一つの過去となってしまったのだということを、藍子にすら想像させた。
 自らの手で、左の目尻を拭う。

「これが、戦争なんですね」

 街の大型ショッピングセンター内でのイベントとして催された、広間を使っての写真展。
 人々が貧困に喘ぎ紛争に明け暮れる「とある国」の現実というコンセプトであり、その国に赴いた戦場カメラマン達が持ち帰ったという写真が何十枚と展示されていた。
 その全てが、説得力を有していた。平和な世界に生きる少女の一人でしかない藍子では不可能だろう、プロフェッショナルの技巧と体験に裏打ちされた重厚なメッセージ性。
 世界の持つ残酷な側面が、克明に描き出されていた。
 聖杯戦争の舞台となるこの街を含めた世界のどこかでの、現実。聖杯戦争の舞台となるこの世界がまだ見ぬ誰かに用意されたものだとしても、紛れも無くこの世界の住民にとっての真実であった。

「これが、ランサーさんの見てきた世界なんですか」
「ああ。こういう光景を俺は何度も見てきた」

 藍子の隣で、男が同じ写真を見据える。聖杯戦争における藍子のサーヴァントとして現れたランサーのサーヴァントであり、本来の名は姫矢准というらしい。
 彼は、自らがかつて戦場カメラマンという職を担っていたのだと語った。
 活動の場を世界各地へと拡大したジャーナリストとして、世界の持つ負の側面をカメラで記録する。報道のための道具というカメラの持つ役割が、ランサーの手で果たされていた。
 その写真はれっきとした功績として人々からの注目を浴びるほどであり、しかし、ランサーは賛美された事実に対して悔恨を抱いていたのだという。
 曰く、自分は人を襲う不幸だけしか伝えられなかった。
 その自責の念は、彼がいつか授けられたという『巨人』の力さえも己の罰なのだと解釈させるほどに強かった。悪との戦いに殉ずることが、果たすべき贖罪なのだと。
 そうして彼は人々を守り続け、己の役目を終えた。
 しかし、今の彼に聖杯で過去を変えるという償いを果たそうという気は無いのだという。
 彼の紡いだ絆が、後悔の払拭ではない本当の使命を教えてくれた。だから、自らの過去では無く誰かの未来のために戦いたいのだと、彼は藍子に語った。

「もしかしたら、この街の人達も同じように悲しい気持ちになるのかもしれないんでしょうか」
「そうだな。サーヴァント同士の戦いが、必ずしも周囲を巻き込まないとは限らない。誰もが俺のような能力を持っているわけでもない」
「……それって、防げないんでしょうか」

 これから、聖杯を巡る戦火はより本格的に勢いを増すこととなる。
 幸いと言うべきか藍子自身は未だ他のサーヴァントに脅かされることなく今日までを過ごせているが、それももうじき終わりを迎える。
 そのことを頭の片隅で理解していたためなのかもしれない。こうして、街で見つけた「戦争」を訴える写真展を訪れようと思ったのは。
 踏みしめる大地も、手に取る武器も、殺し合う面々も全くの別物。それでも、同じ「戦争」の光景に触れられる機会には違いなかった。
 望むと望まないに関わらず、高森藍子もまた戦争の当事者となる。その未来の中で、自分のなすべきことを見つける手掛かりを求めての選択だった。
 そして、実感出来たことは。


214 : 高森藍子&ランサー ◆T9Gw6qZZpg :2017/03/12(日) 15:52:54 miutCQyo0

「君が望むなら、俺は人々を守ろう。どんな敵とも戦える。それが俺の得た光、ウルトラマンの力だ」
「……私には」
「君は歌が、声がある」

 藍子がこの世界からの生還を望み、ランサーはその達成のために手を尽くす。しかし、藍子自身は生還のために何か具体的な行動を取るわけでないし、実のところ取りようも無い。
 害意に立ち向かう意志と力を持つランサーの戦いを見届ける以外に、藍子に出来る事は無い。
 正確に言えば、藍子の磨いた技術によって行える活動が一つある。今、藍子が本当に為したい行為でもある。しかし、それはいずれランサーが重ねる戦いとは関わりの無いものだ。
 藍子の望むままに振る舞うことは、一人のマスターとしての藍子が果たすべき責務と言えるのだろうかと、不安を抱いていたのだ。
 それをランサーは察し、肯定した。

「……優しくなれるアイドルになりたい。そう言ったな」
「はい」
「君はそのために努力してきた。だったら、この世界でも君の優しさを誰かに分けてほしい。自分に出来る一番のことを、俺も、君にしてほしいと思っている」
「……私は、他の人達と話をすることと、歌を届けることしか出来ないと思います。そうしていたいって……こうして、これから悲しい思いをする人達の傷を癒したいって」
「それが、君の今の願いだろう」
「ランサーさん。許してくれますか?」

 少しだけ見上げて、ランサーの顔を真っ直ぐに見つめて、問い掛ける。
 答える代わりに、ランサーは藍子へと手を伸ばした。首から紐でぶら下げた、お気に入りのトイカメラをその手でそっと掴む。

「昨日、君の撮った写真のアルバムを見せてもらった時に思った。こんな写真を、俺も撮りたいと。俺には、出来なかったから」
「私の写真、撮影の仕方とかちゃんと勉強したわけじゃないんですけど……?」
「人の幸せを写真に収めていたところなんだ。俺が君の写真に惹かれたのは。緩やかで、柔らかく、君の感じた暖かさが伝わってくるようで」
「そんなに、気に入ってくれたんですか」
「ああ、そうだ。俺が君に呼ばれた理由が、今なら分かる気がする。俺は、君に憧れたんだ」
「私に?」
「……俺は、この光を君には託さない。その必要が無い。だからどうか変わらず、俺の、俺達の憧れであってくれ。それが、俺の願いだ」

 視線が、声色が、赤い熱を帯びていたように思えた。
 得意の微笑みを、返事の代わりに浮かべた。






215 : 高森藍子&ランサー ◆T9Gw6qZZpg :2017/03/12(日) 15:53:44 miutCQyo0



 写真展の会場を出た後、モール街を歩いていると雑貨店を見つけた。
 カラーボックス内に飾られていたのは、少女を模したぬいぐるみだった。そういえば、同業のアイドルがキャラクターグッズとして商品化されるという話だったと思い出す。
 手に取り眺めてみると、確かに面影を感じさせる。頭の部分が妙に大きいが、それが却って愛らしさを際立たせているように思える。
 これもまた、見つけられたささやかな楽しみの一つだ。戦争の渦中だから、尚更に嬉しく思える。
 いつものようにトイカメラを手に取り、ファインダー越しにぬいぐるみを覗きこもうとして、ふと振り向く。
 藍子の姿を見つめるランサーの姿があった。初めて見る、柔和な笑みだった。

「ランサーさん。このカメラで、私と一緒にぬいぐるみ撮ってくれませんか」
「……いや、それは俺でなくても」
「もう。ランサーさんに撮ってほしいんです。私が」

 そう言って手渡したトイカメラを、困ったような表情でランサーは受け取る。
 武骨な両手の中に収まるトイカメラの小ささのアンバランスさが少しだけおかしく思えて、くすりと笑った。
 瞬間、ぱしゃりと音が鳴った。

「……ほら。ランサーさんも撮れるじゃないですか。幸せのカケラ、こうして形に出来てます」
「どうかな。トイカメラだから、上手く撮れたかどうかは分からないだろう」
「いいえ。今見なくても分かります。大丈夫ですよ」

 その確信が、藍子にはあった。
 人に宿る命の光を守れる人だから。光のリレーを継いだ彼は、英雄だから。
 世界の持つ優しさだって、彼のカメラは映し出せる。

「きっと……ねっ」


216 : 高森藍子&ランサー ◆T9Gw6qZZpg :2017/03/12(日) 15:55:22 miutCQyo0



【クラス】
ランサー

【真名】
姫矢准@ウルトラマンネクサス

【パラメーター】
通常時⇒筋力E 耐久E 敏捷E 魔力B 幸運E 宝具A
変身時⇒筋力B 耐久C 敏捷B 魔力B 幸運E 宝具A

【属性】
中立・善

【クラススキル】
・対魔力:A
Aランク以下の魔術を完全に無効化する。
事実上、現代の魔術師では、魔術で傷を付けることは出来ない。
宇宙の彼方から齎された光の力による賜物。

【保有スキル】
・適能者:A
デュナミスト。光の力に選ばれた人間の一人。
ウルトラマンの現界の方法には、ウルトラマン自身がサーヴァントとなる場合と、デュナミストがサーヴァントとなりウルトラマンを宝具として扱う場合の二種類がある。
今回の現界は後者の方法で行われており、今回は歴代のデュナミストのうち姫矢准が選出されることで、ランサーのサーヴァントとなった。
その特性上、デュナミストには依代としての役目を効果的に果たすための恩恵が自動的に授けられる。
このスキルの持ち主は、召喚されたクラスに関わらず別個でDランク以上のスキル「単独行動」を獲得することとなる。
(仮にアーチャーとして現界していた場合、クラススキルとして得た「単独行動」のスキルランクが上方修正される)

デュナミストは誰もが人間を害する怪物と戦う宿命を背負い、たとえ幾度となく傷付くとしても必ず人々の下へと駆けつけ敵へと挑む。
このスキルは同ランク程度のスキル「戦闘続行」、および獣の性質を持つサーヴァントや使い魔等への特攻性能を内包している。

・単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。Cランクならばマスターを失っても一日程度現界可能。
スキル「適能者」の効果、及び生前の活動期間において組織に属さなかった経歴から、中程度のスキルランクで獲得した。

・情報抹消:A
対戦が終了した瞬間に目撃者と対戦相手の記憶から、能力、真名、外見特徴などの情報が消失する。例え戦闘が白昼堂々でも効果は変わらない。
これに対抗するには、現場に残った証拠から論理と分析により正体を導きださねばならない。
ウルトラマンは最終的には人類の希望の象徴となったが、姫矢准が活動していた時期に限れば決して大衆に存在を知られなかったという事実に基づく。
このスキルの存在故に、ランサーと志を同じくする他者さえも彼の存在を知覚することが困難となり、ランサーへの助力も同様である。
しかし、たとえ孤立無援になろうともランサーは人を守るための戦いから退くことは無い。

・受け継がれる絆:EX
光は絆。人から人へと受け継がれていく。
ランサーの任意で、またはランサーの消滅時に自動的に発動するスキル。
このスキルの効果により、ランサーが無意識に指定した他者へと後述の宝具が譲渡される。
なお、譲渡された後の宝具の効果は必ずしも同一の物とは限らず、全く別の形となる可能性もある。


217 : 高森藍子&ランサー ◆T9Gw6qZZpg :2017/03/12(日) 15:56:55 miutCQyo0

【宝具】
・『巨人-ウルトラマン-』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
人から人へと受け継がれながらその輝きを増していく、神秘の光の巨人。
ランサーはエボルトラスターにより戦闘形態である光の巨人の姿への変身を果たす。
基本形態である「アンファンス」と強化形態の「ジュネッス」の二つの形態を持ち、後者の場合はパラメーター値がやや上昇する。
多彩な光線技を武器に持ち、ランサーの場合はジュネッスの状態で放つオーバーレイ・シュトロームを最高火力の必殺技とする。
サーヴァントとしての再現の際に課された制約により、全長は2メートル弱で固定されている。
それでも、ランサーの姿を見た者達は直感的に「巨人である」と感じることだろう。
なお、スキル「受け継がれる絆」の効果により、この宝具はランサー以外の者への譲渡が可能となっている。

・『亜空間-メタフィールド-』
ランク:B 種別:対界宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:100人
ランサーが展開する戦闘用不連続時空間。ジュネッスの形態時のみ展開可能。
一度展開した時点で範囲内にいた者全員を巻き込み、外部とは隔絶された位相の異なる空間へと連行する。
現実世界の内部に空間を展開するという点では陣地作成スキルの延長線上にあり、固有結界とは異なる。
そのため、空間跳躍の類による侵入も決して不可能ではない。
空間内においてランサーの戦闘能力には更なる上方修正が加えられる。
しかしランサーの著しい魔力消費によって維持されているため、目安として3分間以上の展開状態の持続は致命的な消耗へと繋がりかねない。
また、ランサーの体力的問題により展開状態の持続が困難となり強制的に解除される場合もあり得る。

・『英雄-ヒーロー-』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
姫矢准をデュナミストとしてランサーのクラスで現界した場合のみ解禁される、第三の宝具。
戦士としての使命に殉じた戦いを終えた姫矢准の最後の逸話の具現。
ランサーが消滅を覚悟の上で己に残された全ての力を振り絞る時、瞬間的・爆発的な力を秘めた一撃を叩き込む。
この一撃が命中すれば、他の一切の効果を無視して“相手を必ず消滅させる”という結果を導く。
当然の代償として、ランサーもまた必ず聖杯戦争の地から消滅する。
因みに、観測された姫矢准の戦いにおける最後の一撃は、悪魔へと“突き出した”拳であったという。

【weapon】
・エボルトラスター
ウルトラマンへの変身アイテム。鞘に収まった短剣のような形状をしており、本体を鞘から抜くことで変身する。
鞘に収めた状態ではサーヴァントの気配感知能力の補強(スペースビーストの振動波感知機能の応用)を行う。

・ブラストショット
デュナミストのみ扱える小型の銃。
発射する光弾はサーヴァント相手でも多少のダメージを与えられる。

【人物背景】
二人目のデュナミストとして活動していた男。デュナミストとなる前は戦場カメラマンであった。
戦場で出会い親交を深めた一人の少女を自らが原因で死に追いやったことで、強い自責の念を抱えていた。
ウルトラマンの力を得たことも、怪物との戦いで傷付き孤独に死ぬという罰であると解釈していた。
しかし人々との触れ合いの中でウルトラマンの力で果たすべき真の使命に気付き、悪へと立ち向かう。
そして最後の戦いで彼はウルトラマンの力をまた別の誰かへと託し、姿を消した。

【サーヴァントとしての願い】
自らの過去は変えない。藍子達の未来を守る。


218 : 高森藍子&ランサー ◆T9Gw6qZZpg :2017/03/12(日) 15:58:13 miutCQyo0



【マスター】
高森藍子@アイドルマスターシンデレラガールズ

【マスターとしての願い】
優しくありたい。

【weapon】
アイドルとして必要な一通りの技能。

【人物背景】
東京都出身、16歳の高校生アイドル。心優しいゆるふわ乙女。
「ファンのみなさんが優しい気持ちになれるような、微笑んでくれるようなアイドル」を目指している。
趣味は近所の公園をお散歩すること。トイカメラでよく写真を撮っているらしい。
持ち歌は「お散歩カメラ」「青空リレーション」など。

【方針】
聖杯戦争に勝ち残ることなく脱出する方法を探してみる。
傷付いた人がいたら、放っておきたくない。


219 : 名無しさん :2017/03/12(日) 15:59:19 miutCQyo0
投下終了します。


220 : ◆5/xkzIw9lE :2017/05/03(水) 08:41:00 lFtfl69Y0

以下の作品をフリー化いたします。

「Fate/Fessenden's World-箱庭聖杯戦争-」様より

【■■少年育成計画/岸辺颯太&ランサー(ポルシオン)】
ttp://www65.atwiki.jp/ffwm/pages/89.html

【魔【まじんとまほうしょうじょ】/姫河小雪&キャスター(脳噛ネウロ)】
ttp://www65.atwiki.jp/ffwm/pages/118.html


221 : ◆3SNKkWKBjc :2017/05/03(水) 22:11:43 WtCHm/g20
以下の作品をフリー化いたします。

「Fate/Fessenden's World-箱庭聖杯戦争-」様より

【ジンロウがジンロウ】
ttps://www65.atwiki.jp/ffwm/pages/51.html

【狂気のエメラルド煮込み】
ttps://www65.atwiki.jp/ffwm/pages/73.html

【シスターナナ&セイバー】
ttps://www65.atwiki.jp/ffwm/pages/83.html

【隠館厄介&ランサー】
ttps://www65.atwiki.jp/ffwm/pages/102.html



「Fate/Malignant neoplasm 聖杯幻想」様より

【土方歳三&セイバー】
ttps://www65.atwiki.jp/holycon/pages/74.html

【右代宮真里亞&ライダー】
ttps://www65.atwiki.jp/holycon/pages/103.html

【レイチェル・ガードナー&バーサーカー】
ttps://www65.atwiki.jp/holycon/pages/71.html


「Fate/Fanzine Circle-聖杯戦争封神陣-」様より

【二人(一人)】
ttps://www8.atwiki.jp/kamakurad/pages/35.html


「聖杯四柱黙示録」様より

【無桐伊織&ライダー】
ttps://www65.atwiki.jp/quatropiliastro/pages/35.html


222 : ◆pIZCQSKum2 :2017/05/18(木) 00:41:38 9pBro95w0
投下させていただきます


223 : むちゃぶり! ◆pIZCQSKum2 :2017/05/18(木) 00:43:32 9pBro95w0
「えー、透明度の高さで有名な北海道の摩周湖ですが、どこにも川と繋がっていないため、
 法律上の扱いは大きな水溜りとなっているそうですがむちゃぶりです。
 いやー、このくだりをやるのも久々ですね。えー、ご覧になってる方々の中にもおそらく当番組をご存じない方もおられると思いますので
 一応説明させていただきますと、当番組は2007年から2009年にかけてTBSの深夜で放送されたむちゃぶり!という番組でして
 この!2017年の今日、スペシャル番組として復活の運びと相成りました。これも皆様のご愛顧のおかげです。
 もう10年近く経つんですね。年月の経つのは早いもんで……

 で、今回ただのスペシャルじゃないようでして、何でも、聖杯戦争とかいう結構大きなイベントをやってるらしく、
 そこに間借りする形でこれの収録をやっちゃおうって事になったみたいでしてね。
 いいのかとは思うんですけど、まぁ多分許可も出てるんでしょう。
 それでね、この収録も東京じゃないんですよ。
 冬木市、ってとこなんですけどね、ちょっと地理には疎くて今一何県にあるか分からないんですが……。
 まぁスタジオを離れてのロケはこの番組初!……じゃないか韓国に続いて二度目!
 とはいえやることは変わらず、相変わらずのこの控室使うのは貧乏性なのか何なのか……

 さて!それじゃさっそくですが第一回のゲストをお呼びしましょう!
 ……え?名前分かんない?槍持ってるから多分ランサー?
 それでいいから呼べって?分かりましたって…… ランサーさんとそのマスターさんのお二人です!」

……何もかも分からない事だらけだった。
私は聖杯戦争の一参加者。記憶を取り戻し、ランサーを引き当て市内を散策中、令呪を隠そうともしない上に何故かマネキンと喋っている男を発見した。
いかにも怪しい、というか怪しすぎる。幸い周りに人気は無い、ランサーに命じて攻撃させようとした……
そこまでは合っているはずだ。だが、なぜか今私とランサーは先ほどから喋り続ける男に促されて卓袱台を囲んで腰かけている。

「いやー、本来ね、ここに座るのは片方は芸人、片方は若手のアイドルって事になってるんですけど今回男三人でちょっとむさ苦しいですが」

そんな男の言葉を遮るように叫ぶ。
「芸人?アイドル?ふざけるな!誇り高き魔術師たる私を愚弄する気か!やってしまえランサー!」
「……それができればとっくにやっている。おそらく何らかの結界で攻撃が封じられている。マスターもそうなのだろう?」

その通りだった。先ほどから攻撃用魔術を何種類も発動させようとしていたが全てが不発、業を煮やして直接殴りかかろうともしたがそれすらできない。
攻撃を封じる強固な結界……だが、目の前のヘラヘラした男がそんな高度な魔術師とはとても思えなかった。
私がそんな思いを巡らせる間も、有田哲平と自己紹介した中央の男は喋り続ける。
やれこんな番組二度とやりたくなかった。やれそんな番組にゲストに呼ばれるなんて不運な人たちだ。やれルールは分かってますよねだ。
ん……ルール?

「待て、ルールとは何だ」

考えてみれば違和感はあった。攻撃封じの結界を貼ったなら、とっととこちらを倒してしまえばいい。
それをやらないという事は何かそれができない理由があるのか。
例えば、結界内での行動はルールに縛られるとか……

「あ、聞いてなかったですか?
 この番組のルールは一つ、司会者から無茶なお題を振られても決してそれにNOと答えてはならない。それだけです。」

……正直なところ、予想していたのとは別の答えが返ってきた。
司会者?お題?何のことだ!


224 : むちゃぶり! ◆pIZCQSKum2 :2017/05/18(木) 00:44:41 9pBro95w0
「本番開始まで、一分前」
「よし!それじゃやりますか!」

おもむろに天から聞こえてきた一分前の声に反応し、有田が立ち上がる。
そしてこちらにも立ち上がるよう促すと、少し先の光の漏れる場所で待機してしまった。
相変わらず何もかも分からないが、ついていけば少しは分かる事もあるか……。
やむを得ずそう判断して、有田の後ろに付き幕の間から様子をうかがう。


「さぁー、今回も始まりましたその時最も旬なゲストに最も旬なトークをしてもらう番組、むちゃぶり!
 司会のチェアマンですどうぞよろしくー!」

分からない事だらけだった。
幕の隙間から見えたのはチェアマンを名乗る先ほど見たマネキンが喋っている姿。
そのマネキンがいるのは豪華……というよりはけばけばしいセット。
おまけに観客らしい男女数十名の姿さえ見える。神秘の隠匿はどこへ行った!

「最近最も旬なお三方に登場していただきましょう!どうぞ!」

バカに明るい音楽とともに有田が入場、慌てて私とランサーもそれに続く。
今度は下品な真っ赤なソファに座るよう促され、やむを得ず従う。
さっきから観客どもの拍手が鬱陶しい。

そしてチェアマンと名乗ったマネキンは有田以上に癇に障る。
こちらの神経を逆なでするのが目的のように軽薄な口調で軽薄な事ばかり並べている。
しかしやはり魔術を発動させることはできない、イライラが頂点に達した時この言葉が飛び込んできた。

「今回のゲストは前聖杯戦争優勝者の三人です!」

またしても拍手。
そんなわけがあるか!と叫びたかった。
これから聖杯を求めて戦争を行うのだ、お前だってそうだろう!と
しかし私とランサー、そして有田の口から出た言葉は

「「「……はい」」」

もしやこれが無茶な振りにNOと答えてはいけないの意味か……!


225 : むちゃぶり! ◆pIZCQSKum2 :2017/05/18(木) 00:45:03 9pBro95w0
そこからは地獄だった。

聖杯戦争はマスターとサーヴァントの二人組が基本のはず、有田は一体何者?という問いに対する
二人のマネージャーをやっていますという有田のボケがすべての始まり。

前聖杯戦争に参加した三文字のある方法とは?と尋ねられ、一人一文字の形で答えさせられた。
当然打ち合わせもなしにまともな答えになるはずもなく、観客どもの失笑を買った。

最も苦戦した敵サーヴァントの攻撃を再現すると称して熱々のおでんを食べさせられた。

ランサーは自身の誇りの象徴たる槍でモノボケを強要された。
ランサーとコンビを組んで長いわけではないが、あの英雄がこうも泣きそうな顔になるのかと思うと私も悲しくなった。

挙句の果てに聖杯を得て叶えた願いは「オカマにモテるようになりたい」であったとチェアマンが嘯くと、
それが合図だったかのようにオカマの大軍が殺到して私もランサーも有田ももみくちゃにされた。
(マネージャーの有田には聖杯の願いは及ばないはずだったが、有田は元々オカマにモテる体質だったそうだ。バカにしている!)

ボロボロの私とランサー、そして多少余裕のありそうに見える有田が観客とチェアマンに見送られ、舞台裏へと戻ったのはかれこれ一時間は経ってからの事だった。

だが、舞台裏でも地獄は続く。
先ほどの茶番劇を見た観客どもがそれを評価し、ありがたくも50点満点で採点してくれるのだという。
そして今回の点数は…19点。

散々あざ笑われ、バカにされ、そしてあまり面白くなかったと言い捨てられる。これ以上の屈辱があろうか!
怒る気力すら起きず、ぐったりとしてしまった私だったが、その隣ではもっと大変な事が起こっていた。

「……?ランサー、おいランサー!?」
「誇り高き戦士であるこの私が……」

令呪を通して感じるランサーの魔力が滅茶苦茶になっている。
私も随分消耗したが、ランサーのそれはただの疲れとは思えない、まさか敵の攻撃を……!?

「あ、なんかチェアマンさんが言ってたんですけど、精神的な消耗がそのまま魔力にダメージとしていくシステムになってるらしいですよ。
 心が折れたらそれで終わり、とか」

横からの有田の言葉で全て合点がいく。
私のこの消耗もランサーの異変も全てそのためだったのか……。
いや待て、それで終わり?

「ラ、ランサー!」
「このような生き恥を晒し、戦士として生きていく事など……!」

ランサーの存在が希薄になっていく。まさか!
待て、こんな……!こんなバカげた事で!


226 : むちゃぶり! ◆pIZCQSKum2 :2017/05/18(木) 00:45:33 9pBro95w0

「うっわなんか消えちゃったよ、ほんとにオカルト系の存在だったんだなぁ」

どこかへ消え去ったランサー、そして気絶してしまったそのマスターを前に有田は一人ごちる。
チェアマン……無茶鰤男に言われるがまま、いつも通りの収録を行っただけなのに不思議な気分だ。

「収録お疲れ様でした!いやー幸先のいいスタートですね!」

いつの間にやら番組のセットは無くなり、椅子に腰かけたままのチェアマンが、仮面をつけたAD……使い魔に自らの椅子を押させてやってくる。

「ああ、鰤男さん!……おっとここではチェアマンって呼んだ方がいいんでしたっけ?」
「それでお願いします、こっちも有田さんの事はマスターって呼ぶようにしますんで」

実は有田がこの聖杯戦争について知ってからほんのわずかしか経っていない。
一時間半ほど前、右手に刺青(令呪と呼ぶらしい)が浮き上がったと思うと鰤男が突然現れ、聖杯戦争への参加とむちゃぶり!の復活を告げられたのだ。
鰤男の説明はとても簡素な物だった。
戦争だなんだと言っているが、いつも通りに収録をすればいい。それで危険な事は何もない。さっそく一回目の収録を始めよう。
そう鰤男が言った直後にまたしても突然控室が現れ、有田の前説から収録が始まったのだった。

「とにかくこんな感じに収録をしていきますんで、よろしくお願いしますね!」
「了解です、最近はロケもあんまりなかったし、楽しむくらいのつもりでいきますよ」



順風満帆に見えた二者だったが、彼らにはお互いに隠していることが一つずつあった。

まずはチェアマン、無茶鰤男。
危険は無いなどと伝えたが、当然ながら大嘘である。
彼の固有結界『むちゃぶり!』内部では確かに攻撃を受けることは無いが、四六時中発動していられるわけではない。
さきほど聖杯戦争の参加者であるランサーとそのマスターが結界に巻き込まれたのは、神憑り的なタイミングからくる全くの偶然であった。

鰤男としては、てっとりばやく有田に事情を飲み込んでもらうために誰でもいいから一回目のゲストとして収録を行おうくらいのつもりでいたのが、
そこへ襲撃をかけようとしていたランサーとそのマスターがたまたま対象として選ばれてしまっただけなのだ。

(焦った〜、もしあそこで発動させてなかったら100パーそのまま殺されてたな……)



そしてマスター、有田哲平。

(しっかしTBSも意外と金あるんだなぁ…こんな大掛かりなドッキリ仕掛けるなんて…)

そう、彼はこれら全てがドッキリだと考えていた。
有田哲平は芸能人であるため多少世間知らずではあるが、社会常識を持った立派な大人である。
そして芸能人の常識内で判断すると、これはもう100%ドッキリである。
何しろ最初に証拠だとして示された令呪が、TBSの三文字なのだ。
これでシリアスな魔術戦争が本物だと信じる方がどうかしている。
そうなれば後は全てが怪しく見えてくる。
むちゃぶり!という番組は以前にもご褒美のはずの韓国旅行で騙し討ち的に収録を行った前科もある。
一回目のゲストの二人は外人だったようだ。最初から日本人の芸人ではすぐにドッキリとバレてしまうからだろう。
外タレだろうか?それにしても設定に凝った二人組だった。
ランサーが消えてしまったのもセットが一瞬で無くなったのも、まぁ最近の技術力って凄いからなんとかしたんだろう。

(しばらくはドッキリにひっかかったふりしとかないとダメだよなぁー)

さらに芸能人の常識としてこんなお金のかかっているであろうドッキリには引っかからなければならない。
早々にドッキリだと気付いた素振りを見せては、番組が台無しになってしまう。

こうして芸人二人の番組ロケ、もとい聖杯戦争は多少の不安要素を孕みつつも始まったのだった。


227 : むちゃぶり! ◆pIZCQSKum2 :2017/05/18(木) 00:45:55 9pBro95w0
【クラス】

チェアマン

【真名】

無茶鰤男@むちゃぶり!

【パラメーター】

筋力E-- 耐久E-- 敏捷E-- 魔力A+ 幸運C 宝具A

【属性】 

混沌・中庸

【クラススキル】

司会者:A
司会者としてのスキル。任意の相手と相対したとき、相手の「バラエティ番組で披露したら盛り上がりそうなエピソード」
(アーサー・ペンドラゴン@fate stay/nightならば伝説上は男性、息子とうまくいってない、など)を
天啓にも似た形で1~3個知ることができる。対魔力である程度抵抗が可能。
また、Cランク相当の弁舌、Eランク相当のカリスマを内包し、複数名での議論をまとめる際に他人から信用されやすくなる。

【保有スキル】

芸人:B
明らかに罠と分かっていてもオイシイ状況が待っていればついつい手を出してしまう。バッドスキル。
ただし、周りに観衆がいる場合ステータスが向上し、消費する魔力を抑えることができる。
芸人は観客の前でこそ真価を示す。

対芸能人:A
数多の芸人、アイドルを手玉に取ってきた逸話から生じたスキル。
相手が芸人、アイドル、歌手など芸能人あるいは芸人気質を持つ者の場合、常に有利な判定を得る。
政治家、大学教授、スポーツ選手など厳密には芸能人と言えない場合でもテレビに出て違和感のない人物ならばある程度このスキルは機能する。
なお、歴史上の偉人などは対象外である。

陣地作成:E~A+
自らに有利な陣地を作り上げる。ただし作り上げることができるのは番組収録のためのスタジオのみ。
東京都港区赤坂、赤坂サカスに存在するTBS放送センターをはじめとするTBS系列のスタジオではA+を誇るが、
他局のスタジオ→会議室など収録に適した屋内→その他屋内→ロケに適した屋外→その他の順に弱体化していき最終的にはEランクまで下がってしまう。

道具作成:E~A+
魔術を帯びた器具を作成できる。
陣地作成と同条件でA+からEまで変化する。
A+クラスの元では、魔力の続く限り熱々おでん、鼻フックマシン、金ダライ、熱湯風呂、回答用フリップ、ドッキリ看板などバラエティには必須のアイテムを作り出すことができる。


【宝具】

『むちゃぶり!』
ランク:A 種別:結界宝具 レンジ:1~100 最大捕捉:3

チェアマンが司会を務めていたバラエティ番組を再現する固有結界。
バラエティの名のもとに、すべての存在を茶番に貶める宝具。
この結界内では(チェアマン側からも含めて)一切の物理的、魔術的暴力は禁じられ、チェアマンからの様々な無茶振りに答え続けなければならない。
初めに対象の三人にむちゃな設定を与え(具体例としてはノストラダムスの生まれ変わり、明日デビューするアイドルグループ、20世紀少年のモデルなど)
それに沿った形で細かい無茶振り(モノボケ、リアクション芸、あいうえお作文など)が番組終了(およそ一時間)まで続けられる。
そしてその間、精神的なダメージは魔力へのダメージへと直接変換され、いわゆる「心が折れた」場合
サーヴァントなら霊核の消失、マスターならサーヴァント維持に必要な魔力の消失により脱落することになるだろう。
元の状態では一週間に一度、30分ほどの収録が限界であったが、今回はスペシャルという事で予算(魔力)は潤沢であり、一日に二度の発動程度なら問題なく継続できる。
なお、この宝具発動の条件は「対象が三人である事」「うち一人が有田哲平である事」のみであり、その組み合わせは
「有田、サーヴァント、そのマスター」でも「有田、サーヴァント1、サーヴァント2」でも、極端な話「有田、NPC1、NPC2」でもかまわない。
もちろん上記の効果は有田哲平に対しても発動されるが、チェアマンは仮に自分が脱落することになるとしても手加減をする気はないようだ。


【weapon】

なし

【人物背景】

2007年から2009年にかけてTBSの深夜で放送されたバラエティ番組「むちゃぶり!」の司会者。バナナマン設楽統の声で話す。

実際にはただのマネキンを司会者という設定で椅子に座らせているだけであり、司会進行は裏にいる設楽が行っている。
今回の聖杯戦争では、「むちゃぶり!」の設定上のままで召喚されており、いわばマネキンにバナナマン設楽の人格を移植したような状態になっている。
ただしあくまでマネキン、ちょっと殴ればすぐに壊れるし当然動けない。
後者の問題については座っている椅子にキャスターを付け、移動アシスト用に使い魔として仮面を付けた番組ADを召喚することで補っている。
なお、このADはあくまで一般人であり、もし戦闘が始まればおそらく逃げ出すだろう。


【サーヴァントとしての願い】

スペシャル番組「むちゃぶり!」の高視聴率
あわよくばレギュラー番組としての復活

【方針】

とりあえず番組の収録を続ける。
取れ高が十分になったらその時考えよう。


228 : むちゃぶり! ◆pIZCQSKum2 :2017/05/18(木) 00:46:21 9pBro95w0
【マスター】

有田哲平@むちゃぶり!

【マスターとしての願い】

スペシャル番組「むちゃぶり!」の高視聴率

【weapon】

なし

【能力・技能】

人気お笑い芸人として生き馬の目を抜く芸能界を生き延びてきたタレント力。

なんとなく場の空気を読んで、それっぽい小芝居をすることにも長けている。

チェアマンからの無茶振りにも慣れており、簡単に心が折れることはないだろう。

また、かなりのプロレスフリークとしても知られており、相手がプロレスラーないしはそれに類する存在の場合
何か察することができるかもしれない。

【令呪の位置、形】

右手の甲にTBSの三字
一字一角

【人物背景】

人気お笑いコンビ「くりぃむしちゅー」のボケ担当。
1971年生まれの46歳。新婚ホヤホヤ。
アゴがしゃくれている。

【方針】

とりあえずはチェアマンに従って番組の収録を続ける。
内心ドッキリだろうと思っている。






なお、作中のむちゃぶり!がスペシャル番組として復活するというのはあくまでこのSS中の設定です。
現実にはそういった動きは全くありません。


229 : ◆pIZCQSKum2 :2017/05/18(木) 00:48:16 9pBro95w0
投下終了です。
混沌聖杯に投下しようと思っていたものの、書き上げた後で現実出典アウトに気づいたのでこちらに投げさせていただきました。


230 : ◆GO82qGZUNE :2017/09/05(火) 01:08:11 uQjHuTXY0
投下します


231 : ◆GO82qGZUNE :2017/09/05(火) 01:08:45 uQjHuTXY0







 それでも───

 それでも、あの世界は───










   ▼  ▼  ▼










 自慢にもならないが、自分は誇れるような英霊ではない。
 本来基本7クラスに分けられるサーヴァントにおいて、アヴェンジャーなどという特殊クラスに割り当てられてしまう程度には、人でなしであると自覚している。
 だから狙って自分を喚んだとすればその人物の性根は相当に歪んでいるし、縁召喚だとすればやはり歪んだ自分に相応した人物の下にしか喚ばれないだろうと、そう思っていたのだが。

 自らを喚んだマスターは、自分でも思ってもみなかったほど、穏やかな人物だった。

「私ね、もうお婆ちゃんなの」

 そう言って笑う彼女の姿は、どう見ても少女のものでしかなかったけれど。
 浮かべる表情はどう見ても、少女のものではなかった。

 哀しい笑み。
 それはまだ十四か十五に見える、そんな少女が浮かべるには酷く疲れた、消え入りそうな微笑みだった。

 凛、と澄んだ声音。
 纏う花弁を乗せた風。
 新緑の芽吹く山の頂に立つ彼女は、まるで出来過ぎた一幅の絵画のように、儚げな白を湛えているのだった。

「本当なら、私はもう終わってるはずなの。体はもうボロボロだし、感じられるものもどんどん少なくなっていく。
 シミも皺もないけど、でも私は、やっぱりお婆ちゃんなんだな」

 少女は清廉なまでに白い姿をしていた。
 髪も、肌も、纏う服も何もかもが白く。僅かに細められた瞳だけが煌々と赤く輝いている。
 世界から浮き上がったような美しさを、彼女は持っていた。
 それはまるで、世界という画布に空いた人型の空白のように。
 振り返る彼女は今にも消えてしまいそうなほどの存在の希薄さを伴って。


232 : ◆GO82qGZUNE :2017/09/05(火) 01:09:31 uQjHuTXY0

「だから、君はここまで僕に運ばせたのか」
「うん、ごめんね。どうしてもここの景色を見てみたかったから」
「いや、構わないさ」

 少女のような老婆と向かい合うように立つ、その人影は少年だった。彼女と同じく全身が白く、海のように透き通った青の瞳を湛えた、非人間的な美しさを持つ少年。
 向き合う二人のどちらもが、作り物のような美を持っていた。しかしそれは、生のレールを外れてしまったがための偽物の美しさであると、二人のどちらもが知っていた。

 二人は暫し、眼下の風景を見つめていた。青々とした山麗は清々しく、風と揺れる木の葉の音だけが耳を優しく撫でた。
 沈黙の幕が下りる。二人とも言葉はなかったが、不思議とそれを気まずいとは思わなかった。

 どこか遠くで、名前も知らない鳥が高くひと声鳴いた。
 ぼんやりと見上げた空は、木々の梢の額縁の中で、どこまでも青く澄みきっていた。

「……あなたは、ずっと旅をしていたんだね」

 沈黙を破ったのは少女のほうだった。
 木陰に背を預けて、彼女は少年に問いかけた。
 問いでもあり、確認でもあった。
 彼女はアヴェンジャーを知っていた。口頭でも説明を受けたし、その記憶を垣間見てもいた。
 だから彼女が聞いているのは、事実としての言葉ではなく。
 彼が確かに経験した、実感というものだった。

「ああ。思えば僕は、ずっと旅をしていたよ。
 ……旅とは言えない、彷徨のようなものだったけど。僕は世界のあちこちを、ずっと歩き続けた」

 思い起こし、ぽつりぽつりと話す。それは、彼が辿ってきた道行か。
 元いた世界において、彼は死の恐怖そのものだった。

 万人に安寧を与えた太陽が死んだことで、世界は荒廃の一途を辿った。
 彼は記憶を失くし、その世界の只中に落とされた。彼は失われた記憶と人々の想いとを紡ぎ、ひたすらに荒れ果てた世界を彷徨った。
 その果てに得られた真実は残酷だった。道中に幾度も世界の敵と蔑まれた彼は、事実として世界を滅びへと誘った張本人だったのだ。
 月という名の太陽を殺した男。世界に逃れ得ぬ死を刻み付けた死神。それこそが、彼の正体だった。

「そして最後に、あなたは……」
「そう。僕は最後に呪いを残した」

 荒廃した世界は、それでも何とか立て直すことができた。
 再び人々の前に現れた癒しの女神の名の下に、生き残った者たちは次々と集っていった。
 アヴェンジャーは、そんな歓喜の只中に現れた。
 女神を守るロボットたちを退け、怯える女神に彼は呪いを残した。
 ───皆が死を忘れたその時に、自分は再びお前を殺しに現れる、と。


233 : ◆GO82qGZUNE :2017/09/05(火) 01:10:07 uQjHuTXY0

「……あなたは、とても優しかったのね」

 話を聞くだにおぞましい、世界を滅ぼし理不尽な呪いを残した男の逸話。
 それを聞いて、しかし少女は、ただ穏やかな笑みを彼に向けるのみだった。

「再誕した女神は完全じゃなかった。彼女は死の瞬間の記憶を引きずり、ひたすらに死を嫌悪した。
 彼女が皆に命を与えたのは、皆を慈しんだからじゃなくて、ただ自分の目の前から死を消し去りたかっただけ。あなたはそれを知っていた」

 救済など建前に過ぎない。
 死を嫌悪した女神は、故に死に近づいた者らを斬り捨てた。一人や二人どころではない、それこそ数えきれないほどの者らを救済の名の下に見放した。
 死に瀕して、それでもまだ生きている者らを、女神は無慈悲に殺し尽くしたのだ。

「……死を忘れた者はいつの間にか生すら忘れてしまう。命は、ただ与えられるだけでは生きていくことができない。
 こう生きたいという思いも、死者を悼む心さえも、彼らは失ってしまった」

 無限に与えられる生は、ロボットたちを衆愚へと変えた。限りのない生は目的も意思も鈍らせ、変わらない怠惰を過ごすだけの盲目的な存在へと民衆を貶めた。
 少年の目にしてきた彼らは、どうせ治してもらえるからと争いに明け暮れ、あるいはひたすらに自傷を繰り返すような連中であった。そしてその刃は、永遠の命を持たぬ者らにまで向けられた。
 死を失った者たちは、最早生きようともしなかった。
 少年の中の何かが、壊れたような気がした。

「死を忘れることなかれ。あなたが彼らに望んだのは、ただそれだけだったのね」
「別に永遠の命を否定するつもりはないさ。けどそれも、死があることを忘れてしまえば永遠の停止だ。
 だから僕は、もう一度死神になると決めた」

 生と死は表裏一体で、そのどちらもが無くてはならない存在であるというのなら。
 それを思い出させる者が必要だった。絶対の生たる女神の影として、絶対の死を体現する者がいなくてはならなかった。
 故に彼は呪いを残した。死を忘れた者に死を刻むべく、死の恐怖そのものとして在り続けることを自らに課した。

 それは、女神と同じく永遠の存在であり、死ぬことが許されなかった少年にしか為し得ないことだったから。

「あなたはまるでアハシュエロスのよう。審判の日、世界の最期まで彷徨うことを運命付けられた、永遠の放浪者」

 文字通り、世界に住まう最後の一人が死に絶えるまで。自分と女神以外の全員がいなくなるまで。
 彼は死ぬことができなかった。手段の問題ではない、死そのものとなった彼は全員が死ぬまで彷徨うことを強いられた。
 それはあまりに無慈悲で、残酷で、救われないものだったから。

「やっぱり、あなたはとても優しい人よ」
「……馬鹿な。僕はただ耐えられなかっただけだ。耐えることができないほど、弱かっただけだ」

 少年は自らの回顧録を、最後にそう締めくくった。
 再び二人の間に沈黙が流れた。言葉はなく、ただ目の前の風景が、自然の赴くままに通り過ぎて行った。


234 : ◆GO82qGZUNE :2017/09/05(火) 01:10:37 uQjHuTXY0

「私もね。旅、していたの」

 ふと話しかけたのは、やはり少女のほうで。
 少年に合せるように、彼女は今度は自分の辿ってきた道行を、彼に語って聞かせた。

「色んな風景を目に焼き付けて、色んな思いを聞いてきた。それでも、まだまだ、見知らぬものがたくさんある。
 自分の世界が広がると、嬉しくなってもっともっと広げたくなるの。
 それで世界が広がったらね、なじみの地でのんびり世界を纏めていく。
 纏まった小さな世界を、心の宝石箱に入れ眺め楽しむの。
 宝石の輝きが色褪せたら、再び旅立ちの時。
 私はこうして生きてきたな」

 語られるのは、少女の半生そのものか。
 遠き星の地を旅していたというその記憶は、鮮明な情景を映し出すように、少年の耳に木霊した。

「例えば今も。この風景を目に焼き付けたい。この世界を思い切り感じたい。
 それが、私の生の実感。私の生きた証そのもの」

 ぱぁ、と。輝くように少女は言う。
 憂いた表情などもうどこにもなく。語る彼女は少女の見た目そのままに、大好きなものを自慢してはしゃいでいるかのように明るかった。

「だから、君はここまで来たのか」

 呟き、彼は眼下の風景を見る。雄大な自然はどこまでも続き、生命の力強さに満ち溢れていた。
 滅びなんてどこにも見当たらない、たくさんの命がひしめき合う世界。そしてそれを見つめる少女の姿。
 懸命に生きて、だからこうしたいと願った彼女の見る景色。

 ああ、それは、なんて───

「綺麗、だな……」

 本当に心から、素直にそう思うことができた。
 名もなき花も、木々の梢も、柔らかな風も突き抜けるような青空も。
 そんなたくさんの命たちと、生に向き合う少女の姿が。
 いとおしくて、せつなくて、心臓なんてないはずの少年の胸を打った。

 命も、命の意義も。
 未来永劫、決して持つことのできないものだったから。


235 : ◆GO82qGZUNE :2017/09/05(火) 01:11:03 uQjHuTXY0

「僕には生の実感がない。けど今僕の目の前にある景色が綺麗だということは、痛いくらいに分かるよ」
「そう?」

 少女は覗き込むように、彼に笑いかける。
 それはまるで、自虐する少年をそれでも肯定するように。

「そう思えるなら、きっとあなたも生きてるんだよ」

 歌うように、そんなことを言った。

「……分からない。死ねない僕は生きることもできず。結局今も、生きるということが分からない」

 眦を伏せ、彼は沈んだように言う。それは偽りなき彼の本心であり、英霊となった今に至っても尚、彼を苦しめる命題であった。
 死ねない己は生きることもなく、生がない故に死が分からず。
 煩悶とした迷いだけを抱えながら、彼は荒廃した世を彷徨い続けた。

「マスター。死とはなんだ? 生きるとはなんだ?
 僕はついぞ、その意味を知ることがなかった」

 その問いは、恐らくは無意識に出たものだ。
 救いを求めた彼が救われることはなく、命題に答えが出されることもない。
 否、出されたとしてもそれを実感として受け止めることができない。
 だからこれは問いではなく、願いだった。
 悲しいくらいに純粋な、彼の求めた願いだった。

「難しいなぁ……」

 問われた少女は、困ったような表情で。

「でもね、命っていうのは果てしなく続くものだと思う。
 個の生命に対する……普遍的な生命とでも言うのかな。それはずっと続く。
 個体を越えた、連綿たる命の様相。昔の人はゾーエーって呼んだらしいよ」

 けれども真摯に、彼女なりの答えを彼に返した。
 命は続くものであり、終わりがない。
 永遠は、彼一人だけを孤独にするものではないのだと。


236 : ◆GO82qGZUNE :2017/09/05(火) 01:11:45 uQjHuTXY0

「わたしは半分神さまだけど、でも死ぬと思うよ。そう遠くないうちに。
 けど、私はただ、ありのまま死を受け入れたい。
 ひょっとしたら、死とは大いなる何かの始まりかもしれないしね」

 はにかむようにして、少女は自分なりの考えを語り終えた。
 その思いは、死に向き合う少女の姿は、やはり尊いものであると思えたけれど。

「……分からない。
 僕は老いを知らない。死を知らない」

 打ち沈む少年に、少女は慮るように語りかける。

「ずっと考えてると、気分が澱んでくるよね……。
 ぼーっとしようよ! 草の絨毯に寝転がってさ」

 微笑んで、手を差し伸べる。
 少年は虚を突かれたようにして、でも次の瞬間にはやはり微笑んで。

「……そうだな」

 その手を掴もうと、一歩を踏み出し。



「───あっ」



 声は一瞬。

 予兆もなく、全身の力が抜けるように、少女の体が崩れ落ちる。



「アリス───ッ!」



 焦燥の声が喉から迸り、考える暇もなく体が動く。

 倒れ込む少女の体。必死に伸ばす手。走馬灯のように流れる刹那。



 少年の腕が、倒れる少女を抱きとめた。
 憔悴した瞳が、真剣味を帯びた少年の顔を見つめ返していた。



「大丈夫か、マスター」
「……あはは、ごめんね。少しだけ疲れたみたい。
 手も足も、ほとんど動かないや」

 ぎこちない笑みを浮かべようとして失敗し、咳き込んだ拍子に出た血が草原を赤に染めた。
 少年に抱きとめられる少女は、恐らくは少年と出会ってから初めて、弱った気配を露わにしていた。


237 : ◆GO82qGZUNE :2017/09/05(火) 01:12:06 uQjHuTXY0

「大丈夫だよ。ちょっと大げさなだけで、別に今すぐ死んじゃうわけじゃないから。
 休めばいつも通りだよ。だからもう少し、このままで……」

 少女は自分の体を撫で、お願い、と呟いた。
 少年は言葉なく、しかし決然と頷いた。それを見て、安心するかのように、少女は静かに瞼を閉じる。

 少年は自らが抱き留める少女を見下ろした。年若い見た目とは相反して、今は弱弱しい息遣いをする、小さな小さな命。
 心配の感情も悲しみの感情も、共に少年の胸を埋めてきりがないけれど。
 それ以上に湧き上がってくるのは、目の前に在る命がどうしようもなく『美しい』という、そんな感嘆の感情であった。

「こんなになっても。それでも君は、懸命に生きようとしている」

 少女の手を取り、彼は呟く。
 思い起こすのは、彼が今まで出会った、滅びに抗う人々の記憶。
 この少女は彼らと同じく、懸命に生きている。
 こんなにも小さな体で、けれど誰よりも力強く。

 それが少年には、とても眩しく見えた。
 握る彼女の手から、何か暖かなものが伝わってくるように思えてならなかった。

「暖かいな、君の手は」
「ええ、あなただって」

 身じろぎして、少女は彼の胸に頭を寄せる。
 竦めるように顔をうずめ、今度こそ上手く笑みを浮かべて、どこか嬉しそうに。

「生きてるって、あったかいんだねぇ……」

 ほころぶように、彼女は笑っていた。


 ……──────。


 向かい合う二人の間を、ふと何かが通り抜けていった。
 一枚、また一枚とひらひら舞い落ちる。小さくて、ピンク色で、頼りなく風に揺れる。それは、桜の花びらだった。

 大ぶりの桜の枝一面に、鈴生りに連なる無数の蕾たち。
 その中に一輪、ここ数日の陽気に誘われた気の早い花が、風の冷たさに身を震わせていた。

 ただ、それだけのことだった。

 それがどんなに不可思議なことであっても、二人にとってどんな意味を持つのだとしても。この一幕はただひたすらに、それだけのことでしかなかったのだ。





   ▼  ▼  ▼


238 : ◆GO82qGZUNE :2017/09/05(火) 01:12:33 uQjHuTXY0





 これはいにしえのうた。
 滅亡へと突き進む、とある世界のおはなし。

 その昔、その星には神さまがいた。生と死を司り、人とロボットに永遠を与えてくれる神さま。
 だけどその神さまは殺され、彼女の死が世界の死になったんだって。

 神の抱えた死は瞬く間に世界へと広がった。人とロボットは死に呑まれ、永遠の命を失った。
 やがて世界は諦念に包まれ悪徳が支配した。

 誰もが滅びに抗った、けれど。
 誰もが誰をも省みず、殺戮と欲望の宴に明け暮れた。
 滅びはますます早さを増して、世界は取り返しのつかないところまで行き着いた。

 狂える人々は偽りの安寧と永遠に縋った。
 彼らは今も神へとしがみつき、そこにある死から目を背けようとしている。
 神さまの名前はルナ。この星に永遠をもたらした偉大な太陽。
 神殺しの死神の名はキャシャーン。月という名の太陽を殺した男。

 けれど忘れてはいけない。
 目を背けてはいけない。
 死を忘れた瞬間こそが、再び"彼"の現れる時なのだから。

 ………。

 ……。

 …。

 ────────────。


 世界は死に満ち溢れた。
 人々は諦観と悪徳に支配された。

 けれど、けれど。

 それでも、限りある命を懸命に生きようと足掻く者たちは、決して諦めようとはしなかった。



 最果ての塔で鐘を鳴らす女がいた。

 希望の途絶えた世界で尚も希望の賛歌を謳う女がいた。

 滅びの谷に咲く花があった。

 生きた時間を色にして、雪の降る街に遺したいと願う男がいた。

 復讐さえ果たせればいいと願って、それでも生きてて良かったと、男の腕の中で瞼を閉じた女がいた。



 世界は、死と滅びに溢れていた。
 希望なんてなく、嘆きだけがそこにはあった。

 それでも。
 それでも、あの世界は。

 確かな歓びに満ち溢れていたのだと。
 今でも僕は、そう信じている。


239 : ◆GO82qGZUNE :2017/09/05(火) 01:13:02 uQjHuTXY0


【クラス】
アヴェンジャー

【真名】
キャシャーン@キャシャーンsins

【ステータス】
筋力A 耐久C 敏捷A+ 魔力E 幸運E 宝具EX

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
敵対者:A
あらゆる調停者の天敵であり、他者の怒りと恨みを一身に集める在り方。アヴェンジャーは世界に永遠の命を与えた調停者の唯一絶対なる敵対者である。
周囲から敵意を向けられやすくなるが、向けられた負の感情はただちにアヴェンジャーの力へと変化する。

忘却補正:-
犯した罪を忘れても、人々は決して忘れない。世界に刻み込まれた原罪は忘却の彼方よりアヴェンジャーに襲い来る。
彼の場合、このスキルは本来在るべき形と反転した状態となっており、そのためスキルランクが存在しない。
彼の名が消えることはあり得ない。人々が死を忘れたとき、永遠の敵対者たるアヴェンジャーは再び彼らの前に姿を現すだろう。

自己回復(魔力):E
この世から怒りと恨みが潰える事がない限り、憤怒と怨念の体現である復讐者の存在価値が埋もれる事はない。
活動の意義が果たされるまでその魔力は延々と湧き続ける。アヴェンジャーの掲げる意義とは「忘却された死を再び刻み付ける」ことであり、死が当たり前に存在するこの世界においてランクは最低限のものしか保証されない。

【保有スキル】
不死:-
アヴェンジャーは死の概念を喪失している。永劫に死ぬこともない代わりに、真に生きるということも実感できない生の牢獄。
どれほどの傷を負ったとしても、それに比例した苦痛を伴い、瞬時に再生する自己修復能力。
事実上の戦闘続行や再生といった肉体の頑強さを意味するスキルを数多く複合したスキルであり、不老でもあるため時の劣化を受け付けない。

不死殺し:B(A+)
死と再生を司る太陽を落とした逸話から生じたスキル。
不死者や生死者に与えるダメージが増加する他、同ランクまでの再生・不死等に由来する能力を無効化し、更に高位の不死能力に対してもスキルランク分効力を削減する。
後述の宝具発動時にはスキルランクが修正される。

虚ろなる亡者の嘆き:A
いつ果てるとも分からない滅びの怨嗟。百億の憎悪を一身に背負った死神の称号。
このサーヴァントの真名は、彼が生きた世界において極めて特殊な意味を持つ。
「キャシャーン」の名はそれを聞く者に死の恐怖を想起させ、身と心を縛り萎縮させる。
キャシャーンと相対し、その真名を聞いた相手は、恐怖により大きく精神を揺さぶられる。
その上、一度刻まれた恐怖心は、容易く拭い去れるものではない。
戦闘終了後も、その恐怖はトラウマとなって残留し、再び顔を合わせることがあれば、即座に効力が蘇る。
このスキルの効果を抹消するには、Aランク級の解呪の魔術を使うか、あるいはマスターを倒しキャシャーンを脱落させるしかない。
同ランク以上の精神耐性系スキルがあれば、効果を軽減させることは可能。
また、死神としてのキャシャーンの逸話が具現化したものであるため、彼の人となりを理解したものに対しては効果が激減する。事実上の無辜の怪物や無冠の武芸を内包した特殊スキル。


240 : ◆GO82qGZUNE :2017/09/05(火) 01:13:42 uQjHuTXY0

【宝具】
『降り注げ死の落涙、光輝の滅びた大地へと(イクスティンクトゥ・オリジナルシン)』
ランク:EX 種別:対界・対文明宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000
世界に滅びを齎した最も新しき原罪(シン)。月という名の太陽を殺した男。
神殺しによる太陽の死は世界の全てに波及し、永遠の命を手にしたはずの諸々に逃れ得ぬ死を刻みつけた。世界の抑止すら殺した逸話の再現こそがこの宝具の正体である。
この宝具はアヴェンジャーという存在そのものと彼の身に埋め込まれた罪を指し示すが、真名解放に際しては彼の罪を表すかのような滅びの風景が独自法則の結界となって周囲を塗り潰す。
展開された空間には滅びの概念が色濃く投射されており、レンジ内に存在するアヴェンジャー以外のあらゆる対象にその概念を押し付けることで、肉体や構成情報を急速に劣化させる。
原理としては概念武装に代表される事象干渉に近しいため、対抗するには肉体の頑強さや精神耐性ではなく魔力・概念的な防御が必須となる。
心象風景の具現化たる固有結界とは異なり、アヴェンジャーの存在に刻まれた原罪を具現することで展開される大禁呪であり、彼の犯した罪と同じく「世界を滅ぼした上で塗り潰す」代物であるため、抑止による世界からの修正を受けない。

【weapon】
腰部にはブースターが搭載されており、瞬間的な加速が可能。

【人物背景】
月という名の太陽を殺し、世界を滅びへと導いた男。
取り返しのつかない罪を贖うため、尊い命を守るために、死神の忌み名を背負った復讐者。
選ばれなかった弱者を救いながらも、選ばれた強者の秩序を破壊したために、反英霊の十字架を科せられた男である。

死を失ったがために死ぬことはなく、死ぬことがないために生きることもなく。
永遠の苦痛と引き換えに生の実感を得ることがない、世界でただ一人の"美しき"者。

【サーヴァントとしての願い】
アリスの存在を通して命の意義を推し量る。


【マスター】
アリス@シューニャの空箱

【マスターとしての願い】
ただあるがまま、生きていたい。

【weapon】
なし

【能力・技能】
半神である彼女は本来、星を脱するほどの力を持ち合わせる。
しかし既に力の大半は失われ、最早死を待つのみの存在と成り果ててしまった。

【人物背景】
神殺しの神格ドグマにより生み出された半神の娘。
獣と化した女の胎より生れ落ち、罪人の手で育てられ、聖人の教えと共に生きた。後に仲間と共に聖都を築く。
聖都において実存の教えを説く彼女は、人々から死や苦しみを取り除き歪んだ救いを与えた。死と苦しみを忘れた人々は聖都に歪な楽園を築き、偽りの安楽を謳歌した。
神としての半身たる彼女は人類根絶を目的とし、力による絶滅ではなく過剰な幸福による生産活動の停止での滅びを与えるため動いていた。しかし人としての半身たる彼女は真に人々を救いたいと願っており、神と人の狭間で苦しんだ末、上記のような惨状を生み出してしまった。
勇士によって倒された彼女は心身を冥界で保護され、ドグマと和解。邪神としての性から解放され、既に滅び去ったドグマの星へと移住。その生涯を星の復興へと費やすこととなる。
神であった彼女は不老長命であったが、半神ゆえに有限の存在でもあった。1000年の後に彼女は現存在としての完全な死を決断、受け容れた。享年1400歳。

本質的には、他者と生命を尊び、自らもまた弛まぬ好奇心と慈しみを持った明朗快活な少女である。
聖女として活動していた頃の「人を救いたい」という気持ちにも嘘はなく、数百年もの間抑えきれない邪神としての精神汚染に苦しみながらも他者への愛を失わなかった。
限りある生をこそ美しいと感じる彼女はやがて荒れ果てた星に再度命の芽吹きを与えることとなるが、同時に自らも斯く在るべしと定めたがために、永遠を捨て人と同じように死を受け止めることとなる。

【方針】
???


241 : 名無しさん :2017/09/05(火) 01:16:11 uQjHuTXY0
投下を終了します。特に投げる企画がなかったためこちらに投下させていただきました。
ステータスシートはFate/Malignant neoplasm 聖杯幻想 より◆V05pjGhvFA氏の「ミズシロ火澄&アヴェンジャー」を参考にさせていただきました。この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。


242 : ◆T9Gw6qZZpg :2017/09/16(土) 16:56:59 UJgIk6Bs0
投下します。


243 : スウェン&アーチャー ◆T9Gw6qZZpg :2017/09/16(土) 16:58:19 UJgIk6Bs0



「名前は?」
「スウェン」

 意識が微睡み始める。この身体はもうすぐ眠りの中へと堕ちていく。
 生きて目覚められるかは分からない。整えた環境が齎す生存への可能性は最低限だ。
 運に恵まれなければ、いずれ孤独に死を迎えるのだろう。
 ……いや、孤独というわけではないか。
 隣に身を寄せ、その呼吸を弱々しくしながらも声を掛けてくれる女がいる。
 一人で死ぬのが寂しいからと言って、ほんの少し前まで殺し合っていた自分を救いだした女だ。
 女の想いは、モニターの外へと目を向ければ少しだけ理解出来るような気がした。
 人間の体躯に違いはあれど、この無限の宇宙空間の中では等しく矮躯だ。己という生命の小ささを、弱さを、星空はただただ冷たく突き付ける。
 だから、帰るのだ。二人だけで宇宙の果てを見つけ出すことを諦め、何億もの人々の待つ星へと帰るのだ。

「おやすみ、スウェン」
「君は?」

 二人を載せて、鋼の巨人が宇宙を駆ける。
 惑星探査用として開発された人型の機械は、今だけはその使命の遂行を中断する。
 もしも母なる星へと帰還することが叶ったならば、いずれはこの巨人も再び地球の外へと飛び立つのだろうか。
 冠した「星の観測者(スターゲイザー)」の名の通りの働きを、人々と共に全うする日が来るのだろうか。

「私? 私は、……」
「……」

 宇宙は広大だ。その内に秘めた、途轍もなく広がる可能性で人を恐れ竦ませるのだ。
 それでも、人は諦めること無く目指してしまうのだろうか。
 銀河の海の果てを。星の扉の、向こう側を。






244 : スウェン&アーチャー ◆T9Gw6qZZpg :2017/09/16(土) 16:59:21 UJgIk6Bs0



 見上げた先には、澄み切った夜空が広がっていた。
 黒いキャンバスの中で爛々と輝く星々の光は、何に遮られることも無く瞳へと届けられる。
 そう、何物にも遮られない。大地を焼く炎も、空へと伸びる狼煙も、死を訴える光も。何も、無い。

「……綺麗、だ」

 辿り着いた“聖杯戦争のための”地球は、スウェンの知るそれと比べれば随分と平和な星だった。
 世界各地では今も紛争が絶えない。一歩間違えば戦火が噴き上がるだろう火種というべき要因なら幾らでもある。それでも、スウェンから見ればまだ穏やかなように思えた。
 地球全土を、宇宙すらも舞台にモビルスーツ同士が撃ち合う戦争は無い。「人間(ナチュラル)」と「人間もどき(コーディネーター)」の対立なんてものも無い。そして日本という国は、持てる武力をどこにも振るわない。まるで、あのオーブという国のように。
 これが、西暦の地球とコズミック・イラの地球との違い。故にスウェンの視界に映る限りについて「この世界は平和である」と言うには十分であった。
 しかし、その平和もいずれ終わりを迎えるということを、スウェンは知っている。
 この小さな街で、戦争が始まる。三桁にも満たない数の、しかし一騎当千の言葉すら過小評価と言える兵達による、戦争が。
 この名も無き草原も、いずれは焦土となるのだろうか。
 眼前に迫る得物を見据える未来の中で、こうして空を見上げられる時は再び来るのだろうか。

「マスター。好きなのかい? 星」
「それなりには」

 さく、さくと。冷えた空気をそっと割く足音。缶コーヒーを両手に歩み寄る一人の男は、スウェンの従者として現れたアーチャーのサーヴァントであった。
 彼の正体は、宇宙人だ。
 ナチュラルが嫌悪の意を込めてコーディネーターへと向ける蔑称としてのそれとは違う、正真正銘の地球外生命体。地球を訪れた「星の観測者(スターゲイザー)」。
 より正確に言えば、その地球外生命体の複製。それがアーチャーであった。
 彼――正確に言えば、彼のオリジナルとなった個体――は、地球の平和を守るために数々の侵略者と戦ったのだという。地球とは異なる星から来訪した異星人、数十メートルの巨体で暴れ回る怪獣。いずれも、スウェンにとっては存在していないはずの生物であった。
 いや、もしかしたらスウェンの生きる宇宙にも存在しているのかもしれない。
 人類の持つ技術力のほぼ全てを戦争のために費やしているために、地球の外側で待つ神秘など誰も追い求めない。争い続ける人類の手で疲弊させられていく母なる星は、もしかしたら宇宙人から見ても既に侵略するだけの価値を失っているのかもしれない。
 アーチャーのオリジナルとされる者は、果たしてスウェンの生きる星の守護者となってくれるだろうか。そして、アーチャーは。
 そんなことを思ったからだろうか。考えのままに、スウェンはアーチャーへと疑問を投げかけていた。

「アーチャー。宇宙は、平和か?」
「と言うと?」
「お前の見てきた地球以外の星は、俺達のように戦いに明け暮れているのか、それとも」
「……前も言っただろう、マスター。それを知るのは僕のオリジナルだけだ。僕自身は、君の問いには答えられない。その答えを持ち合わせていないんだよ」
「…………そう、だったな。すまない」

 アーチャーのオリジナルとなった者は、恐らく今もどこかの銀河で生きている。そして宇宙の果てで生きるその者を、聖杯とて流石に呼び出せなかったようだ。
 その代わりのように、その者の複製としてアーチャーが生み出された。その者が地球で戦っていた頃の記憶だけを与えられて、である。
 地球で生きた、ほんの短い期間の記憶しか持たない者同士。二人の縁を述べるならば、そういうことになるのだろうか。

「それでも」
「ん?」
「それでも、お前のやることはそいつと変わらないのか」
「まあね。僕は、僕の記憶の中にいる彼に恥じる真似をしたくない。きっと宇宙のどこかから見守っている彼に、僕は報いたいと思っているよ」
「それは、お前自身の意思と言えるのか? お前に与えられたその者の記憶をもとに、真似をしているだけじゃないのか」
「いいや。僕自身の意思だよ」

 力強い声と、微笑みがそこにはあった。


245 : スウェン&アーチャー ◆T9Gw6qZZpg :2017/09/16(土) 17:00:02 UJgIk6Bs0

「美しい平和を守りたい。そう望むことは決して特別なんかじゃないよ。だから」

 衣服の胸ポケットから取り出した、赤いフレームの眼鏡をアーチャーは見つめる。暖かな眼差しで、此処にはいない誰かを想うように。

「今この星で不当に脅かされようとしている命を守る。それが、ウルトラセブンなんだ」

 何の迷いも無い面持ち。間違いなく、彼は自らの本心を伝えているのだろう。
 だからこそ、スウェンには分からない。
 自らの来歴をアーチャーには伝えた。地球の名を冠する軍の兵士として、同じ地球で生きる数多くの生命を摘み取った過去を。
 その時点で、スウェンはアーチャーからすれば排除すべき悪のはずだ。その大いなる力で、スウェンを亡き者にしてしまっても何らおかしくはない。
 それなのに、アーチャーは今も隣に腰掛けて穏やかにコーヒーを啜っている。僕は君を敵と見なしていない、そう言外に訴えるように。スウェンが人々を無為に害することはないと、確信しているかのように。
 まさか自分でも気付かぬうちに、自分の印象が変わっていたとでもいうのだろうか。

「マスター。君の願いは、まだ決まっていないかい? 人々を脅かさないなら、僕はそれで良い。でも、僕達のその先の未来を決めるのは、君自身だ」

 アーチャーと二人で過ごす時間の流れは、随分と遅く感じる。しかし、不快では無い。
 身体に馴染んだ敵意と殺意はこの場の誰も抱かず、それをつまらないと思うことも無い。
 コーディネーターに死を。奴らに死の鉄槌を。蒼き清浄なる世界のために。それがスウェンの聖杯へと捧げねばならない祈りだと唱える者は一人もおらず、答えはスウェン一人に委ねられている。

「さあ、な」

 口から零れるのは、未だに現状の維持のみ。

「……ただ、星を見たい。星を、目指してみたい。それだけだ」

 その漫然とした願いは、しかし、静かにうなずくアーチャーの納得するものであったようだ。

「君にその願いをくれたのは、誰なんだい?」
「わからない」

 脳裏を過ったのは、大人達の姿。
 子供が語る星への夢を楽しげに聞く、遠い昔の日常の中で笑い合う男女。
 そして、スウェンの最後の記憶の中、安堵したように薄く笑う艶やかな碧髪の女。

「名前を知らないんだ」

 もしも、生きて帰ることが叶ったならば。
 あの時聞きそびれてしまった、彼女の名前を教えてほしい。
 それは、小さく芽生えたスウェンのもう一つの願い。
 人の身で持て余すことの無い、ささやかな願い。


246 : スウェン&アーチャー ◆T9Gw6qZZpg :2017/09/16(土) 17:00:41 UJgIk6Bs0



【クラス】
アーチャー

【真名】
ウルトラセブン(モロボシ・ダン)@ウルトラセブン

【パラメーター】
筋力B 耐久B 敏捷B 魔力C 幸運A 宝具A(宝具解放時)

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
・対魔力:B
魔術に対する守り。魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷付けるのは難しい。

・単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

【保有スキル】
・ウルトラ戦士:A
宇宙の平和を守るために地球へと降り立った、M78星雲「光の国」出身の平和の使者。
彼等の力の源は太陽エネルギーであり、これを確保することで悪の侵略者との戦いを可能とする。
太陽光の下にいる状況に限り、魔力量の消費ペースが軽減され、回復ペースも向上する。
また「混沌・悪」の属性のサーヴァントとの戦闘時、大幅に有利な判定を得られる。

・擬態:A
ウルトラ戦士は地球での活動の際には地球人の姿を借りる者も多く、ウルトラセブンもまたその一人である。
宝具非解放時のアーチャーは他マスターに真名やステータス等を視認されない。
また、この時にはアーチャーの真名は「モロボシ・ダン」であると扱われることとなる。

・念力:B
アーチャーが得意とする超能力の一つ。文字通りのサイコキネシス。
魔術ではないため、敵の対魔力スキルの影響を受けない。純粋な筋力値によって対抗される。
宝具非解放時でも行使可能な能力であるためスキルとして記載する。

・透視:B
アーチャーが得意とする超能力の一つ。姿を見せない敵の正体を暴き出す。
他者の行使した気配遮断スキルや肉体の不可視化、情報秘匿系スキルなどを無効化または軽減する。
宝具非解放時でも行使可能な能力であるためスキルとして記載する。

・冷気耐性:E-
氷属性の攻撃等に対する耐性。
E-ランクではマイナススキルであることを表す。アーチャーは寒さに弱い。
零下百四十度の状況下での戦いを強いられた際の後遺症。


247 : スウェン&アーチャー ◆T9Gw6qZZpg :2017/09/16(土) 17:01:58 UJgIk6Bs0

【宝具】
・『奇跡の双眸(ウルトラアイ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
赤いゴーグルを模した変身デバイス。
この宝具を解放(装着)することでアーチャーは地球人への擬態を解き、M78星雲人「ウルトラセブン」としての姿を取り戻す。
解放時にはパラメーターが上記の値まで上昇する。
主な武器は頭部に装着した宇宙ブーメラン・アイスラッガー。近接武器としても、念力による飛び道具としても使用可能。
その他、エメリウム光線やワイドショット、アイビームや手裏剣光線といった多彩な光線技も保有している。
なお、聖杯がアーチャーをサーヴァントとして再現する際に課した制限により、基本となる2メートル弱以上の体長へと巨大化することは不可能となっている。

・『明けの明星が輝く頃(ファイナル・ウルトラファイト)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
地球の平和を守るため、その生命の限界まで戦ったとされるウルトラセブンの逸話の再現。
アーチャーが致命傷を負う、或いは回復不可能なレベルでの甚大な消耗をしている状態で何者かを守るための戦闘行為に及ぶ際に自動発動する。
宝具発動中、アーチャーは最大クラスでの戦闘続行スキルを発動し、その戦闘に決着が着くまで力尽きることなく戦い抜く。
たとえ霊核を破壊されようと、魔力が枯渇しようと、その身が地球に在り続ける限り彼は己の使命を貫き通す。

【weapon】
・ウルトラガン
地球防衛機関ウルトラ警備隊で制式採用されている光線銃。
ウルトラ警備隊員モロボシ・ダンとしての側面の再現から、一丁のみ専用武器として獲得した。
神秘性を有していないためサーヴァントにダメージは与えられない。それでも牽制程度には有用。

【人物背景】
M78星雲出身の宇宙人、恒点観測員340号。
とある地球人の青年の行動に感銘を受け、地球へ来訪。地球人としては「モロボシ・ダン」を名乗り、また他の地球人からは「ウルトラセブン」の名を贈られた。
数多の侵略者達との戦いへと身を投じ続け、最後の戦いを終えた後に自らの故郷へと帰還した。

彼は遥か未来まで大宇宙に生きる生命であり、本来ならばサーヴァントの規格に到底収まらない存在である。
しかし“地球で観測された”ウルトラセブンの逸話のみを基にすることで、アーチャーのサーヴァントとして召喚されることに成功した。
そのため、アーチャーは“本物のウルトラセブンが地球圏外で得た経験”の記憶を一切持っていない。
ウルトラセブンの故郷とされる「光の国」の光景をアーチャーは知らないし、ウルトラセブンが愛したという家族の存在も知らない。

【サーヴァントとしての願い】
平和を守る。


248 : スウェン&アーチャー ◆T9Gw6qZZpg :2017/09/16(土) 17:02:43 UJgIk6Bs0



【マスター】
スウェン・カル・バヤン@機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER

【マスターとしての願い】
特に思いつかない。
……強いて言うならば、星を見たい。

【能力・技能】
特殊部隊の兵士としての一通りの技能。白兵戦を心得ているほか、銃器の類も扱える。
一応の薬物投与も受けているが、さほど恩恵は無い。その代わり禁断症状も起こさない。

【weapon】
特に無し。
銃器の類は持ち込めなかったし、ストライクノワールは既に失われている。

【人物背景】
「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」の世界観をベースとしたOVA作品「機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER」の登場人物。
地球連合軍の特殊部隊ファントムペインに所属するMSパイロット。専用機はストライクノワールガンダム。
任務遂行のためなら非人道的行為も黙々とこなす冷淡な性格。しかし倫理観が破綻しているわけでは無く、自らの行為に疑問を抱くこともある。
かつては天文学に憧れるごく普通の少年だったが、両親の死の際に地球連合軍の預かりの身となり、兵士としての徹底した教育を受けた。
その境遇から今の人間性が完成されており、幼少期のことは殆ど覚えていない。
宇宙でのトロヤステーション襲撃任務の際、セレーネ・マクグリフとソル・リューネ・ランジュの操縦するスターゲイザーガンダムと交戦。
ソルを脱出させたセレーネの特攻により、機体ごと地球圏外への超長距離移動を余儀なくされる。
その後、戦う理由も無くなったことにより、セレーネと共にスターゲイザーガンダムで地球圏へと帰還した。

【方針】
一先ずは、生きて帰ることを考える。



【把握媒体】
アーチャー(ウルトラセブン):
「ウルトラセブン」本編(全51話)の視聴。
最低限の把握なら、評判の高いエピソードや特定の必殺技が使用されるエピソードのみ重点的に視聴することでも可。
余裕があれば参考として他シリーズでの登場作品を見るのも良いかもしれない。

スウェン・カル・バヤン:
「機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER」本編(約45分)の視聴。
世界観についての理解はある程度調べれば事足りるため、「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」本編の視聴は必須というわけでもない。


249 : 名無しさん :2017/09/16(土) 17:03:25 UJgIk6Bs0
投下終了します。


250 : ◆Vj6e1anjAc :2017/09/18(月) 00:29:29 oLWtYJq60
拙作も投下させていただきます


251 : ◆Vj6e1anjAc :2017/09/18(月) 00:30:02 oLWtYJq60
 最初に記憶が戻った時には、何の冗談だろうと思った。
 聞かされてもいないはずの知識を、刷り込まれていたことに気付いた時にも、同じことをもう一度思った。

 家の財力を見込んでの誘拐、でもない。
 暴力を振るわれたことへの報復劇、でもない。
 魔法が世界に根付き、日常化した世でも、あまりにも非現実的なシチュエーション。
 怪しげな魔術儀式に巻き込まれ、そのために殺し合いを強いられる――なんて、悪い冗談にも程がある。
 厄災が水際にまで迫った世界を、何とか安定させるために、時空管理局なんてものまでが、創立された世界だというのに。

「お前が私のマスターか」

 儀式を行うための道具――戦いを勝ち抜くための手段も、これまた馬鹿げたものだった。
 歴史に名を残した偉人達を、現世に呼び寄せる召喚術式。
 表に現れ実用化されれば、世界のバランスが一気に傾く、完全究極無欠の使い魔――英霊召喚・サーヴァント。
 こんな戯れに使わずとも、悪用しようと考えれば、手段はいくらでも考えられる。
 そんな大仰に過ぎる魔術を、しかしたかだか数十人規模の、小競り合いのような殺しに使う。それがこのふざけた儀式だった。

「そうですが、何か」

 そうして呼び出されたサーヴァントもまた、冗談のような外見をしていた。
 歴史の偉人だと聞いていたのに、装いはあまりにも現代的で。
 かと思えばその顔だけが、珍妙なマスクに覆われていて。
 されども有無を言わさぬ声音と、見上げるほどに巨大な体躯。
 そしてマスク越しに射抜くような、猛獣を思わせる眼光が、これは只者ではないのだと、私の勘に訴えかけていた。

「良い筋をしている、と思ったまでだ。その歳にしてその体……どこの誰の下で仕上げた?」
「DSAA……魔法格闘技のジムで、少し」

 その覆面の英霊は、しばしの間こちらを眺めて、私の問いかけに、そう答えた。
 伝説の偉人と言われているらしい、その男に言われて、悪い気はしない。
 しかし同時に、そのことに対して、何の意味があるのだ、とも思った。
 きっと私は、あのジムに、もう戻ることはないだろう。
 磨いた拳も無為に堕した今、それを褒め称えられたことを、どう喜べというのだろう。
 掴めば願いが叶うという、儀式の果てに待つ奇跡――聖杯。
 それを求めることすらも、いいや信じることすらも、素直にできなくなった、この私が。

「人手が要るな」

 サーヴァントはそれ以上詮索はせず、自分の身分と生活環境を尋ねた。
 裕福な今の家族ではなく、元のそれへと戻ったような――あるいはマシな夢かもしれないと、そう思えていた、孤児院での暮らしを。
 それを聞いたサーヴァントは、やや考えた後に結論を出し、言った。
 その時聞かされた内容もまた、冗談だろうと言いたくなるような、そんな馬鹿げたものだった。


252 : ◆Vj6e1anjAc :2017/09/18(月) 00:31:28 oLWtYJq60


 主要な市街地から少し離れ、歓楽街の先にある港。
 下世話な商売に海路と来れば、そこにゴロツキが吹き溜まるのは、必然であると言い切れた。
 そんな港の倉庫の一つで、今宵大きな非合法組織が、怪しげな取引を行うとされていた。
 そういう設定だ。不自然ではあったが、あくまでも、背景設定の一つに過ぎなかった。
 少なくとも、この日の夜、彼女が――リンネ・ベルリネッタが乗り込むまでは。

「こっ、のクソガキ! 調子こいてんじゃ……ぶへッ!」

 殴る。投げる。蹴り飛ばす。
 挨拶もなしに扉を開けて、当然出迎えてきた強面達を、次から次へと薙ぎ倒していく。
 外面ばかり取り繕っても、まともに訓練すら受けていない。そんな者共は気にも留めない。
 骨が砕ける音すらも、血が手に染み付く感触も、今は何一つ気にならない。

「………」

 私は何をしているのだろう。今更こんな馬鹿げたことに、どうして手を染めているのだろう。
 もう戦わないと決めたのに。戦う意味なんてないと分かっていたのに。
 それでも体は動いてしまう。上の空と言ってよくても、そんな有様にあってもなお、鎧袖一触に駆け抜けてしまう。
 白いドレスに、背の伸びた体で、波濤の暴力を振りかざしながら、リンネは迫るゴロツキ達を、次から次へと蹴散らしていった。

「お頭! こりゃ立派なカチコミです! あのガキろくなもんじゃ……げぇっ!」

 チンピラを投げて、その背にぶつける。
 頭目に何かを促そうとした、下っ端の男を沈黙させる。
 既に大物は一人だけだ。片方は常識外れの光景を前に、どさくさまぎれに逃げ出したようだ。
 それがいい。賢明な判断だ。魔法も使えない有象無象に、己はそう簡単に倒されはしない。
 であればこの光景を前にしてなお、薄ら笑いを崩さぬ男は、身の程知らずの愚劣か、あるいは。

「随分派手にやるじゃねえか。俺ぁそういうの好きだぜ、嬢ちゃん」
「どうも」
「しかしこっちも商売だ。俺のお仕事っつーか、やることにはな……先立つ物がいるんだよ」

 刹那浮かんだ後者が、答えだ。
 空気が歪む。蜃気楼が生ずる。
 虚空に結ばれたものは、人影。虚像が実像にすり替わり、結ばれた魔力が血肉を成して、人の姿を具現化させる。
 ただの使い魔などではない。そんなちんけなものではない。
 ステータスを見るまでもなく、不敵に構えるその存在が――英雄(サーヴァント)であることは自明の理だ。
 この非合法組織の長なる者は、そうした役割を与えられた、聖杯戦争の参加者だったのだ。

「シマを荒らす奴を生かしてはおけねぇ。悪いがせいぜい、餌になってくれるか」

 頭目の言葉に呼応するように、サーヴァントがぐるりと得物を回す。
 真っ向向けて突き出されたのは、妖しげな輝きを放つ魔槍だ。
 槍型の魔術デバイス自体は、モニター越しにも観客席からでも、何度か目の当たりにしたことがある。
 しかし幾千の時を経てなお、色褪せぬ神秘を放つそれは、根本からして別物であると、否応無しに理解させられる。
 その彼方からこちらを見据える、鋭く冷たい瞳の光も、全く引けを取っていないということもだ。
 伝説の宝具と、それに足る達人――恐らくこの男と相対すれば、あるいはリンネであったとしても、容易く血祭りに上げられるだろう。


253 : ◆Vj6e1anjAc :2017/09/18(月) 00:32:57 oLWtYJq60
「――下がれ、リンネ。ここからはお前の戦いではない」

 嗚呼――それでも分かってしまう。
 これほどの武芸者を前にしてでも、未だぬるいのだと悟ってしまう。
 この身の背後から己を見下ろす、あの獣の双眸に比べれば、未だ及ばぬのだと理解してしまう。
 背後からよく通る声が響いた。誰もがそちらをすぐさまに向いた。
 破れた天井から静かに注ぐ、月のスポットに照らされたのは――己の呼び寄せた、あのサーヴァントだ。
 二階三階はあろうかという、クレーン用の高足場に、あのマスクの男が立っていたのだ。

「バーサーカー……サーヴァント、だとォ?」
「娘もマスターだったとは。これは、少々驚かされたな」

 目を見張る主と、感嘆する従者。
 不釣り合いな二人であったが、今は見据えるものは一つ。突如乱入したサーヴァントだ。
 山のごとき長身の体躯を、純白のスーツで着飾った男。それだけならば背丈を除けば、どこにでもいるような現代人だ。
 しかし、それでもただ一つ。ただ一点だけの特徴が、この男の存在を歪める。
 人の体を持ちながら、全く異なる生物の顔面――白い毛並みの虎のマスクが、尋常ならざる気配を放つ。
 牙持つ魔獣。鋭き眼差し。冗談にしか見えないはずの、ふざけたようなその覆面も、しかしこの男が被るとなれば、至極自然に見えてしまう。
 そこが何よりの異常なのだ。人でありながら、この男は、紛うことなき虎だったのだ。

「では、マスターは私が……」
「下がれと言った。私を白けさせるつもりか」

 リンネの提案を一蹴しながら、虎の男は高台より降り立つ。
 全く苦にもしていないように、自然な動作で着地を果たす。
 バーサーカーのサーヴァント――それは本来、言葉通りの、狂った戦士であるはずだった。
 理性を犠牲に本能を引き出し、本来あるべきステータスを、強引に引き上げる異容の英霊。それがバーサーカーであるはずなのだ。
 にもかかわらず、この男には、未だその片鱗も見られていない。
 乱暴な言い草ではあったものの、しかし虎の白い背には、静かな理性の気配が見える。
 なればこそ、令呪は使えない。確たる意志の下に命ずるのならば、それを捻じ曲げる意味などはない。

「サーヴァント二人が相対した今、小兵の競り合いは意味をなさん。ここは我らのシングルマッチで、決着をつけることとしよう」
「狂戦士崩れが、礼を語るか。土足で上がり込んだのは、むしろ貴様らの方だろうに」

 戯言を抜かす、と嘲笑いながら、敵のサーヴァントが槍を構えた。
 相手はランサー。槍兵のクラス。未だ無手なるこちらに比べて、そのリーチはあまりにも長い。
 彼我の戦力が互角であるなら、この差は大きなハンデとなって、バーサーカーに牙を剥くだろう。

「行くぞッ!」

 気合いと共に、ランサーが駆ける。
 リーチを完全に見定めた猛者が、轟然と唸り疾駆する。
 埃にまみれた空が切られた。風の鳴く音が鼓膜を打った。
 常人なれば目でも追えない。己も傍から見るならまだしも、果たして受け止めきれるかどうか。
 疾風は即座に台風へ変わる。鋭く光る槍の穂先が、必殺の破壊力を宿して、バーサーカーの胸元を穿つ――!


254 : ◆Vj6e1anjAc :2017/09/18(月) 00:34:49 oLWtYJq60
「――ッ!」

 その、はずだった。
 人と人との戦いであるなら、なるほどまさにこの戦いは、ランサーの勝利で終わったかもしれない。
 しかし、相手はそうではなかった。バーサーカーは虎だったのだ。
 野生の六感を想起させる、並外れた反射と観察眼は、リーチの優劣差を易易と越えた。
 身をさばき、紙一重の差で鉄閃をかわし、ふりかざし見舞ったものは、腕だ。

「ごっ……!」

 瞬間、ばぁん、と大気が弾けた。
 爆弾が炸裂するかのような、轟音が倉庫を響かせたのだ。
 それも魔力も何もない、素手で放ったラリアットが、それほどの大音響を轟かせたのだ。
 ランサーの体が、重さを失う。猛加速を真っ向から止められ、ふわりと糸が切れたように浮く。
 たかが無手の一撃を、喉元に食らった神話の勇士は、しかし一瞬白目を剥きかけ、僅か回りながら床へと向かった。

「ぬぅううッ!」

 それでも、虎は手を緩めない。
 雄叫びと共に右手首を掴むと、そのまま強引に手繰り寄せる。
 背中から抱え込んだバーサーカーは、猛然と己が背を反らせた。
 敵の頭が一つ飛び出た、その姿勢でブリッジをすれば、どんな結果を招くかは自明だ。
 固い床へと脳天と首を、慈悲も容赦もなく叩きつける――ジャーマンスープレックスと、人は呼ぶ。
 無論、ドイツのないミッドチルダでは、そうした呼び名はされてはいない。されどリンネはその光景と、その威力だけは、認知していた。

「なるほど、貴様格闘家か……」

 放り捨てられてから数秒の後。
 ようやく意識を取り戻し、微か呻きを漏らしながら、ランサーのサーヴァントが立ち上がる。
 必殺級の格闘術とはいえ、元来武器同士で戦う舞台だ。ただの一撃で終わってくれるほど、敵も甘くはないらしい。

「惜しいな。これが戦争でなければ、そちらのリングに乗りもしたろうに」

 そうだ。戦争にルールはない。
 闘法に規則を問うてしまえば、様々な武具・魔術が乱れ舞い飛ぶ、聖杯戦争自体が意味をなさない。
 敵が格闘技の使い手であり、武器のリーチを持たないと言っても、それが己が手を抜くことの、理由になどはなりえないのだ。
 まして賞品もかかっている。対等な条件を投げ捨ててなお、求めねばならない聖杯があるのだ。
 不敵に笑みながらも、言葉のどこかに、無念を滲ませるランサーの目は、そう語っているように見えた。

「――御託はいい」

 それも、僅か一瞬ではあったが。


255 : ◆Vj6e1anjAc :2017/09/18(月) 00:35:37 oLWtYJq60
「……ッ!?」

 吹き荒ぶ風が、血の飛沫を呼ぶ。
 振りかざされたその一閃が、風も光すらも纏う。
 目の前に見えたその光景を、一瞬、リンネは理解しかねた。真正面から見た敵マスターは、それこそ呆然として腰を抜かした。
 一体誰に読めただろう。誰に想像できただろう。
 筋肉が鳴動し盛り上がった。勢いに負けて衣服が弾けた。
 スーツを引き裂いたその下には、白いパンツと、白いブーツ。全身をくまなく塗りつぶした、白虎のボディペイントだけだ。
 泰山のごときその筋肉を、総動員して放ったそれは――ただの手刀であったはずだ。
 にも関わらず、肉が断たれた。まともに受けたランサーの額は、真っ向から切り裂かれて流血を晒した。
 あり得ない。あるはずもない。凶器も魔力補助もないチョップが、人体を切断するなどということは、本来あり得ない異常なのだ。
 このリンネ・ベルリネッタですらも、そんな芸当は不可能なのだ。

「この私を軽んじるとは、挨拶代わりでは足らんと見える」
「ラン、サー……!?」

 額を押さえるランサーの背後で、ようやく事態を把握したのか、荒くれの長が弱々しく鳴く。
 誰も自分たちの頭の、情けない姿を責められはしない。
 つい一瞬まで、サーヴァントの姿に、安堵を取り戻していたゴロツキ達も、皆一様にこの惨状に、恐慌の表情を浮かべているのだ。

「リングを降りたプロレスラーを、止められる者がいると思うな……!」

 瞬間、遂に理解した。
 分かったつもりでいながらも、分かりきってはいなかったことを、改めて痛感させられていた。
 この男が武器を持たぬ理由を。無手で戦場に立つその理由を。
 白い猛虎のこの男には、それが必要ないからなのだ。
 極限以上に研いだその身は、比喩でも誇張でもなく、鋼と化した。
 なまくら刀や銃弾の類を、肉の鎧は弾くだろう。真っ向からの剣閃であっても、あの肉の拳は、叩き割るだろう。
 己が身自体を宝具に磨き、なればこそあのスタイルこそを、十全のものとし、英霊へ至った。
 武器を持たぬから不公平だと、世迷い言をほざくランサーに対し、彼が怒るのは必然だったのだ。

「とくと見ておくがいい」

 それは誰に向けた言葉か。今まさに果てんとするランサーに向けてか。
 あるいはこの場に首を並べた、全てのギャラリーに向けたものか。それこそ己がマスターである、リンネ・ベルリネッタにすらもか。

(あれは……!?)

 あれは何だ。両目を見張った。
 リンネが目の当たりにしたものは、これまた異様な光景だった。
 伸びた足の、片方だけを畳む――4の字固めという姿勢は、確かに彼女も認知している。
 しかしその関節技は、元来、寝技の態勢で行うものだ。
 両手を使ってその足を折り、まして高々と掲げるというのは、前代未聞の光景のはずだ。

「これが私の、宝具(フィニッシュ・ブロー)だ……ッ!」

 これはいけない。何かが起こる。
 正当なスポーツ格闘のリングでは、絶対にあってはならない破綻を招く。
 バーサーカーの声に宿った、凄絶な凄みを耳にした時、リンネは直感的に理解させられた。
 リングを降りたプロレスラーに、レフリーストップは存在しない。
 あらゆる制約は意味をなさぬと、宣言して放つこの技こそは、その外側で磨かれた外法のはずだ。
 それは標的の体を壊し、命すら奪うことに特化した、忌むべき魔技であるはずなのだ。
 純白の虎が跳躍する。掲げた敵ごと天へと躍る。
 地へ向かうのは、振り下ろした五体。瞠目するランサーの体の、首筋と肩だ。

「――『満たせ虎を、捧げよ贄を(サクリファイス)』ッ!!」

 リンネ・ベルリネッタは、この光景を、忘れることはないだろう。
 この恐るべきファイターが、雄叫びと共に繰り出した地獄を、記憶から消すことなど叶わぬだろう。
 脊椎を、体幹を、その先にある足も膝も。
 全身を一直線に抜ける、地獄の鉄槌の如き威力が、バーサーカーの両腕に宿った。
 そこに小山の重量と、逃げ場を奪う堅牢な床だ。導き出される結論など、ただひとつ以外にあるはずもなかった。
 血肉に餓えた虎の咆哮――その牙にかかった獲物に、もはやなすすべなどあるはずもなく。
 落下の轟音、鈍い破砕、そして痛烈な悲鳴が、絶望の三重奏を奏でて、夜の倉庫を禍々しく揺らした。


256 : ◆Vj6e1anjAc :2017/09/18(月) 00:36:59 oLWtYJq60


「互いに手札は見せ合った。これで今後の戦いにおいて、不足となることはなかろう」

 惨劇を生み出した張本人は、至極冷静にそう言い放った。
 グローブについた鮮血を拭い、リンネのもとへ歩み寄りながら、バーサーカーは事も無げに、そんなことを言ってのけたのだ。
 必殺技を食らわせた後の、戦いの有様は地獄だった。
 足を折られ、背骨を砕かれ、それでも辛うじてランサーは、霊核を保ち生き残ってしまった。
 その一歩も動けなくなった勇士を、路傍のゴミを見下ろす態度で、バーサーカーは蹂躙したのだ。
 魔刃の手刀を振りかざし、砲弾の鉄拳を振り下ろし、たっぷり全身の筋肉と骨を、粉微塵に叩き割った末に、ランサーを絶命に至らしめたのだ。

(人のことなんて、言えないけれど)

 血みどろならば、何度でも見ている。
 格闘技も何も知らなかったことから、現在の戦いに至るまでなお、リンネは暴虐を繰り返している。
 それでも、だとしても、この有様には、目を覆わずにはいられなかった。
 分かりきっていたはずのことだが、あるいは己自身の姿もまた、あの子供達からはこう見えていたのか。

「当面の目と足も得た。町に潜むサーヴァント共を、探し当て燻り出すためのな」

 そんな視線など気にもとめず、虎の男は涼しい様子で、視線を背に向けながら、言った。
 元よりこの取引に乗り込んだのは、そこにあのサーヴァントがいると、認識していたからではない。
 要は出来るだけ派手に暴れて、手駒を手にしたかったのだ。
 恐怖を植え付け、忠誠を誓わせ、以降を有利に運ぶための、組織を得ることが目的だったのである。
 ここもまた、伝え聞いたはずの狂戦士とは、一線を画する要素であった。
 このバーサーカーは、明らかに、計算された目的を持って、手勢を従える道を選択していた。

「……それは?」
「私のもう一つの顔だ」

 そんな時、ふと、彼がいずこから取り出したものが、リンネには妙に気にかかった。
 問いかけにバーサーカーはそう答えると、覆面の上から、それを被る。
 彼が頭部に身に着けたものは、おどろおどろしい黄色のマスクだ。
 瞬間、薄ら明かりと共に、バーサーカーの姿が一変した。
 晒された筋肉はどこへやら――先ほどのものとは明らかに違う、ディープレッドのワイルドなスーツで、彼はその身を包んでいたのだ。
 露出された胸元に、もはや虎柄のペイントはない。ステータスもワンランクずつ下がり、全くの別人に成り果てている。

「これより私は『イエローデビル』だ。全力で挑むに値せぬ限り、私の真名を呼ぶことは許さん」

 ゆめゆめそのことを忘れるなと、そう忠告する声音だけは、同じバーサーカーのものであった。
 どうやら彼の被ったそれは、自身の真名を別物にすり替え、正体を隠すためのものであるらしい。
 制限を課し、弱くなりこそしたが、これを身に着けている限りは、正体が割れることはないということか。
 どこまでも狂戦士(バーサーカー)らしからぬ、狡猾で抜け目のない男だ。
 脳筋ここに極まれりという、獰猛なファイトスタイルからも、あまりに想像しにくい立ち回りだった。


257 : ◆Vj6e1anjAc :2017/09/18(月) 00:38:31 oLWtYJq60
「強くなりたかったと、お前は言ったな」

 そんなバーサーカーが、リンネに言う。
 召喚された時に僅か聞いた、彼女の願望を確かめる。
 強くなりたいと願うのではなく、今でない過ぎ去った時間に、強くなりたかったと願ったのだ、と。

「……過ぎたことです。多分、私にはもう、その資格はないから」

 力を磨き、振りかざせたなら、強くなれると誤解していた。
 なればこそひたすらに己を鍛え、汗と汚物にまみれてもなお、力を追い求める修羅となった。
 それでも、それはただの鎧だ。道を切り拓く刃ではなかった。
 ただの一撃で脆くも崩れ、寄辺を失った裸の己に、再起する勇気など湧かなかったからだ。
 強さを求める資格など、今の己の手にはない。
 自信をなくし、恐怖に囚われ、逃げ出し引きこもった己を、そうあれと認める者など、誰もいない。

「しかし、お前は喜ぶべきだ。私が聖杯を手にした時に、お前の願いもようやく叶う」

 それでも、そんなものは些事に過ぎぬと、バーサーカーは一蹴する。
 少女の些細な迷いなどに、耳を貸すつもりは毛頭ないと、優しくも残酷な言葉をかける。

「私がお前を強くする。だからお前は共に来い」

 他の者共はどうだか知らぬが、我ら主従が共にある限り、聖杯を奪い合う未来は来ない。
 何故なら己とリンネの二人は、同じ方向を向いて立ち、戦いに臨んだ者同士だからだと。

「タイガー・ザ・グレート・ザ・サードの名の下に――お前もまた、虎になるのだ」

 虎の瞳が、リンネを見据える。
 獣の光が、視線を寄せる。
 マスクが変わり、枷を嵌めても、その瞳だけは衰えはしない。
 タイガー・ザ・グレート・ザ・サード――それは呪われし魔獣の称号。
 善も正義も欠片も謳わず、破壊と邪欲の本能のままに、万象を喰らう羅刹の姿だ。
 手を取れば、二度と戻れない。ひとたび外道に堕ちた己は、今度こそ誰からも救われぬだろう。
 それでも、その手を払えないのは、拭い去れぬ彼女の未練か。
 資格などないとほざきながらも、それでも汚辱にまみれた己を、清算したいというみっともない素顔か。

(フーちゃん……)

 自ら手をほどいた友。乱暴に切り捨て、踏みにじった過去。
 堂々巡る自己嫌悪の中、浮かんだ名前を持った少女に、無性に会いたいと願った。
 それすらもまた、一人では立てぬと、そう認めていることの証明に思えて、リンネはなおも、自嘲を覚えた。


258 : ◆Vj6e1anjAc :2017/09/18(月) 00:39:07 oLWtYJq60


 昭和のプロレスリング・シーンに、一人のヒールレスラーがいた。
 彼もまた向かうところ敵なしと謳われ、それ故に誰彼からも恐怖された、恐るべき男であるはずだった。
 しかし、主役はその男ではない。最期には敗れ、文字通りリングに死んだ男の、カビの生えた物語ではない。
 その屈辱を恥じ、同じにはならぬと、我こそが真の虎なのだと、名乗りを上げた孫の話だ。

 半世紀近い時を超え、最悪の男は蘇った。
 かつてと同じマスクを被り、かつてより相応しい男なのだと、知らしめるかのように暴れまわった。
 やがて男もまた、死神に会い、敗北によって姿を消したが、それでも平成末期のリングに、彼は確かに爪痕を遺した。

 ――本当に、ただそれだけの話だ。
 本来ならばこのような逸話、酒場の肴にしかなり得ない。
 吟遊詩人の謳う叙事詩や、世界を動かす伝承などとは、比べることすらおこがましいだろう。
 だとしても、彼を目の当たりにした人々は、一様に男の姿を恐れた。
 ギリシャの民がゴルゴーンを恐れ、ドイツの民がファヴニールを恐れた。
 それら邪神や魔獣の姿と、全く同様の恐怖こそを、彼らはその姿に見出したのだ。

 男はただのプロレスラーだ。神の加護など受けてはいないし、悪魔の血すらも啜っていない。
 空も飛べない、火も噴けない。星の聖剣も呪いの魔槍も、彼は持ち合わせてはいなかった。
 しかし、その一言で切り捨てるには、彼はあまりにも強靭すぎた。
 宮本武蔵の無双剣が、李書文の殺人拳が、そうあって伝承に至ったように。
 男のプロレスも、絶対の剛毅と、絶対の恐怖の具現によって、邪悪なる伝説へと到達したのだ。

 故に男はここにある。
 英霊の座へと刻まれた名を、サーヴァントとして現世に降ろす。

 タイガー・ザ・グレート・ザ・サード。

 数多の人々を震撼させた、平成最後の大悪党。
 最悪の虎は伝説となり、恐るべき反英霊として蘇る。
 全ては彼の狂信の所以――その名を懸けるに値すると誓った、たった一つの野望のために。

 かつて興した虎の穴を、今こそ三度復活させんと。
 虎の率いる最強の組織を、己こそが背負うべき名を、この命と共に、蘇らせんと。


259 : ◆Vj6e1anjAc :2017/09/18(月) 00:40:25 oLWtYJq60
【クラス】バーサーカー
【真名】ザ・サード@タイガーマスクW
【性別】男性
【属性】混沌・悪
【ステータス】筋力:A+ 耐久:A+ 敏捷:D 魔力:E 幸運:B 宝具:C

【クラス別スキル】
狂化:EX
 理性と引き換えに身体能力を強化するスキル。
 平時は機能しておらず、ザ・サードが理性を失うことはない。
 しかし宝具『虎の掟(タイガース・デン)』が発動した時、このスキルが同時に発動。加速度的に狂気と暴力性を増していく。
 祖父が潰した組織ではなく、自身が盛り立てる「虎の穴」――そして偉大の二文字に、真に相応しいタイガー・ザ・グレート。
 この二つへの並外れた執着こそ、他のどのクラスの適性も持たない彼が、バーサーカーとして召喚された所以である。

【固有スキル】
人体理解(破壊):A
 精密機械として人体を性格に把握していることを示す。
 相手の急所をきわめて正確に狙うことが可能となり、攻撃時のダメージにプラス補正が加えられ、被攻撃時には被ダメージを減少させる。
 ザ・サードの場合は、人体の壊し方に特化したスキルとなっているため、治療・修復行為に転用することはできない。
 幾多の技を編み出すプロレスラーは、それが相手の体を壊しかねない「禁じ手」にならぬよう、細心の注意を払っている。
 裏を返して言えばそれは――どのような技が「禁じ手」となるかを、正確に把握し振りかざすことができる、その証明に他ならない。

戦闘続行:A
 往生際が悪い。
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
 このスキルが発動した時、宝具『虎の掟(タイガース・デン)』が連鎖して発動。バーサーカーとしての本性が明らかになる。

邪智のカリスマ:C
 人を率いる才能。特に「悪」の属性を有する者に対しては、1ランク上の効果を発揮する。
 馬鹿にプロレスラーは務まらない。特にチャンピオンであるなら尚更である。
 技を見極め、戦況を操り、リングの外ですらも支配者として立つ――冷酷な戦闘頭脳こそ、虎の穴の首魁たる所以である。


260 : ◆Vj6e1anjAc :2017/09/18(月) 00:40:57 oLWtYJq60
【宝具】
『満たせ虎を、捧げよ贄を(サクリファイス)』
ランク:なし 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
 タイガー・ザ・グレート・ザ・サードの必殺技。
 抱え込んだ相手の両足を、四の字固めにした状態で跳躍。後頭部から敵を叩きつけ、そのままマットへと押し込む。
 首を、背骨を、両足を。全身至る所を圧迫し、五体を粉々に砕く殺人技である。
 ……本当に、それだけの技である。無論それだけのプロレス技に、特別な神秘など宿るはずもない。
 しかし、相手が人であるなら。プロレス技をかけることができる、人型の敵に放つのならば。
 並み居る敵を血に染めてきた、平成の大悪党の必殺技は、確実にそれを葬り去るだろう。

『悪魔の証明(イエローデビル)』
ランク:E 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大捕捉:-
 真名秘匿宝具。覆面レスラー用の黄色いマスク。
 ザ・サードはこのマスクを被り、「イエローデビル」という名前で活動していた時期がある。
 宝具『満たせ虎を、捧げよ贄を(サクリファイス)』を封印し、宝具としてのこのマスクを被ることで、
 ザ・サードの能力は、全てが1ランクずつダウンする(魔力はEのままとなる)。
 しかしこのマスクを被っている限り、ザ・サードの真名は、「イエローデビル」として扱われることになる。
 ……つまりこのマスクを被っている限り、ザ・サードの真実には、容易に辿り着かれることはない。
 何故なら「イエローデビル」という名のレスラーは、ザ・サードが扮していたもの以外にも、複数確認されていたからである。

『虎の掟(タイガース・デン)』
ランク:C 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大捕捉:-
 虎の強さ、禿鷲の翼、蛇の狡さと執念。
 魔獣の力をその身に宿し、世界のリングを荒らして回る、邪悪なプロレスラー養成機関――それを「虎の穴」と呼ぶ。
 一度は壊滅した虎の穴を、一代で再建してみせたザ・サードは、その虎の穴の掟こそを、自身最後の宝具として保有している。
 虎の穴のプロレスラーには、敗北は決して許されない。自身が虎の穴であるからこそ、決して違えるわけにはいかない。
 故にこそ、戦闘続行スキルが発動するほどの窮地に追い込まれた時、ザ・サードの戦闘能力は、爆発的に向上する。
 ……しかし、この宝具の発動は、狂化スキルの発動とも連動している。
 虎の穴の名に囚われて、狂気に走ったザ・サードからは、「敗北」「逃走」を受け入れるという選択肢が消失。
 手負いの虎は魔獣と化し、終いにはマスターの制御下からも離れ、死ぬまで戦い続けるようになる。


261 : ◆Vj6e1anjAc :2017/09/18(月) 00:41:46 oLWtYJq60
【weapon】
なし。超一流のプロレスラーには、凶器の類など必要ない。
しかし必要に迫られた時には、パイプ椅子や長机など、様々なオブジェクトを武器として操る。

【解説】
かつて昭和のプロレス界を、荒らして回った「虎の穴」。その虎の穴の頂点に立つ者を、人々はタイガー・ザ・グレートと呼んだ。
虎の穴が壊滅し、半世紀の時を経た後に、再び蘇った最悪の虎――タイガー・ザ・グレート三世(ザ・サード)が、このサーヴァントの真名である。
自分は祖父とは違うと語り、祖父を超える組織を生まんとした彼は、極めて狡猾に立ち回った。
それでも蘇った最悪の虎は、同じく復活を遂げた正義の虎――タイガーマスクと相対したことで、再び闇に葬られたという。

――あくまでも、彼はそれだけの男である。
竜を退治した伝説の騎士でも、神の寵愛を受けた英雄でもない。
世界制圧の本懐すらも、成し遂げられなかったザ・サードは、あくまで一介のプロレスラーでしかない。
しかしその一言で片付けるには、彼はあまりにも強く、鋭く、そしてあまりにも恐ろしすぎた。
江戸時代に武芸を極めた、宮本武蔵がそうだったように。19世紀末に殺人拳に至った、李書文がそうだったように。
なればこそ、タイガー・ザ・グレート・ザ・サードは、平成最後の大悪党として、人々に語り継がれるのである。

暴力でなく、企業闘争により、世界を支配しようとしたザ・サードだが、それは彼の卑小さを意味しない。
リングの上でのザ・サードは、並外れた膂力を発揮して、敵を真っ向から叩き潰す猛虎である。
宝具へと至った『満たせ虎を、捧げよ贄を(サクリファイス)』の他、敵を抱えてダイブするデビルズクラッシュ、
切断力すら内包する手刀・デビルズトルネードを得意技とする。
パワーと技で圧倒するストロングスタイル、残虐無比な必殺技、そして的確な分析力。
力と技の知恵の全てを、完全な形で合一させた、死角なきファイトスタイルこそ、ザ・サードの底知れぬ実力の所以である。

【聖杯にかける願い】
受肉する。タイガーマスクが消え去った今こそ、再び虎の穴を復活させる。


262 : ◆Vj6e1anjAc :2017/09/18(月) 00:42:21 oLWtYJq60
【マスター】リンネ・ベルリネッタ@ViVid Strike!

【マスターとしての願い】
 誰よりも強くなりたかった。誰からも奪われないように、自分を許せるようになりたかった。
 同じことを願えるかどうかは、正直、今は分からない。

【weapon】
スクーデリア
 魔術の行使をサポートする、競技用ストレージデバイス。普段はアクセサリーの形状を取っている。
 セットアップ時には防護服・バリアジャケットと一体化。武器としてでなく、サポーターとしての機能に専念している。

【能力・技能】
魔導師
 体内のエネルギー結晶体・リンカーコアの魔力を行使し、奇跡を具現化する魔術師の称号。
 リンネの住む世界においては、魔法も魔術も区別なく、この呼び名で表現されている。
 格闘競技者であるリンネは、身体強化のために使うのがほとんどだが、
 魔法攻撃が解禁されるルールにおいては、遠距離砲撃などもこなすことができる。

魔法格闘術
 魔法による身体強化を前提とした格闘技。スタイルはトータルファイティングを基礎とする。
 距離を詰めての投げ技や、拳による直接打撃が得意。
 特筆すべきはその筋力であり、魔力のブーストを受けた拳は、堅牢なガードの上からであっても、確実に標的を葬り去ることができる。
 唯一敗北を喫した、持久戦を想定した訓練も施されているため、ガードやタフネスも盤石。

強化変身
 肉体を大人のものへと成長させ、筋力とリーチを補強する魔法。
 リンネはデバイスのセットアップと同時に、6つほど年上の姿へと成長する。

【人物背景】
 地球とは異なる異世界・ミッドチルダの、大手ファッションメーカーの社長令嬢。13歳。
 自身は華やかな舞台ではなく、荒々しい格闘技の世界において、トップランカーの称号を勝ち取った女傑である。

 実は両親との間に血縁関係はなく、元は孤児院から拾われてきた養子であった。
 元々は現在のような修羅としてでなく、平穏な人生を送ろうとしていたが、
 ある時人生を一変させる悲劇が起き、盲目に力を求めるようになってしまったという。

 分をわきまえない弱者が嫌い。自分の大切なものを奪おうとするから。
 人に弱さを見せるのが嫌い。奪われないという安堵を保てなくなるから。
 そして彼女は何よりも、それらを恐れ震えている、弱くて罪深い自分自身が、世界で一番嫌いなのだった。

 今回は高町ヴィヴィオ相手に、敗北した後からの参戦。
 自己嫌悪を極まらせた彼女は、戦う意義すら見失い、心の迷宮に囚われている。

【方針】
 ザ・サードが主導権を握っているため、極力彼に従って動く。
 必要に迫られない限り、あくまでも『イエローデビルのマスター』として振る舞う。


263 : ◆Vj6e1anjAc :2017/09/18(月) 00:43:06 oLWtYJq60
投下は以上です
本作を執筆するに当たり、「Fate/Fessenden's World-箱庭聖杯戦争-」様にて自分が投下した、
リンネ・ベルリネッタのステータスシートを流用させていただきました


264 : ◆nY83NDm51E :2017/10/04(水) 23:37:35 .JQfW2rs0
以下の作品をフリー化いたします。

・「Fate/Fessenden's World-箱庭聖杯戦争-」候補作

【兆し】
ttps://www65.atwiki.jp/ffwm/pages/163.html

【ホーリー・グレイル・ヴァーサス・フューリー・ソウル】
ttps://www65.atwiki.jp/ffwm/pages/164.html

【悪党たちの交響曲】
ttps://www65.atwiki.jp/ffwm/pages/194.html


265 : ◆0080sQ2ZQQ :2017/11/01(水) 09:44:17 Ej3THC560
投下します。


266 : アリス&ライダー ◆0080sQ2ZQQ :2017/11/01(水) 09:46:05 Ej3THC560
 寝静まった図書館の前で、命のやり取りが行われていた。
コート姿の男が振るう真紅の鉈を、斑模様の怪人が避ける。
技量を感じさせない、獣のような動きだ。地を這う蛇のように迫る怪人に、コート姿は鉛の弾丸を浴びせた。
散弾を浴びた怪人――アサシンの肩や腹から鮮血が噴き出す。

 窒息しそうな表情をしている女は、拠点を追われたマスター。
獣のアサシンに守られながら、這う這うの体で自宅を逃げ出し、戦闘に持ち込んだ。

「アサシン!宝具を使って!」

 二騎が暴れてのは高架駅とショッピングモールを繋ぐ通路。
図書館は両施設の間に存在している。モール側から、彼らの戦舞を見つめる者がいた。
伸びきったシャツを肩まで下げた、長身の少年。髪を無造作に遊ばせているが、不潔さは無い。
のんびりと歩いてくる少年に、コート姿のアーチャーがまず気づいた。

「盛り上がってるねぇ…、僕も混ぜてよ」

 少年――ライダーの腰には、無機質な銀色の帯が巻かれている。
ウェーブヘアーの若者は握っていたグリップに向かって一言呟き、帯の側面に差し込む。
柔らかな笑みを浮かべているが、眼窩の奥に喜色が浮かんでいない。アーチャーはその笑顔に不吉さを感じた。

『stand by…complete』

 漆黒の鎧に身を包んだ、天使が降臨する。
ライダーは襲い掛かってきたアサシンを軽々とあしらう。
細身ながら一撃一撃が重い。さらに悪い事に彼らの敏捷値は同等だった。
コートのアーチャーが狙撃を計るも、取り出した小銃を逆に撃ち落とされる。

 爪を繰り出す暗殺者を前蹴りで撃ち落とし、ライダーは光の錐を出現させた。
目の前に浮かぶ錐に指されたアーチャーは、金縛りにあったように動けなくなる。
良からぬ気配を感じ取った獣を裏拳で吹き飛ばし、黒白の天使は宙に舞う。
巨大な光矢がアーチャーを貫……かなかった。

「令呪…」
「ひどいなぁ、今のは僕の見せ場じゃん」

 鎧に身を包んだアーチャーは肩を落とす。
彼はアサシンと、そのマスターの少女に向き直ると、期待するように言った。

「君達は逃げないよね?…ま、逃がす気も無いけど」



 アリスは深夜、ベッドの上に横たわっていた。
眠りは必要ない。また、眠れもしない。
新しいおともだち――ライダーの帰りを待っているのだ。
街の皆……黒おじさんと赤おじさんが姿を消した今、彼だけがおともだちだ。

 アリスはライダーが好きだった。
一度死んだ、オルフェノクという超人である彼は紛れも無くアリスのおともだちだ。
戦いの無い時は、彼はよく遊び相手になってくれる。

 住んでいた町が滅んで途方に暮れていた頃、アリスはこの場所に招かれた。
聖杯戦争というものに勝ち残れば、どんな願いでも叶えてくれるそうだ。
アリスは参戦する事に決めた。最後まで勝ち残り、赤おじさんと黒おじさんに帰ってきてもらう。
死んだ参加者たちには、おともだちになってもらえばいい。


267 : アリス&ライダー ◆0080sQ2ZQQ :2017/11/01(水) 09:46:34 Ej3THC560
【クラス】ライダー

【真名】北崎

【出典作品】仮面ライダー555(TV版準拠)

【性別】男

【ステータス】筋力A 耐久C 敏捷B 魔力C 幸運C 宝具B(デルタ変身時)

魔人態 筋力A+ 耐久A+ 敏捷C  魔力B 幸運C 宝具B

龍人態 筋力B 耐久B  敏捷EX 魔力B 幸運C 宝具B


【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
対魔力:B
 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

騎乗:B
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】
精神異常:C
 精神を病んでいる。通常のバーサーカーに付加された狂化ではない。
 高すぎる能力ゆえに、誰かと心を通わせることが無い。精神的なスーパーアーマー能力。

怪力:C
 一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
 使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。

灰を握るもの:B(-)
 触れるもの全てを灰に変える力。
 対魔力スキル含む魔術防御の影響を受けるが、スキルランクを下回っている場合は貫通。ランク以上の場合のみ無効化される。
 オルフェノクやライダーズギア変身者の場合、ランク問わず効力を減衰させることができる。

 ただし、ライダーはこのスキルを完全制御できていない。
 半日経過する度に幸運判定を一回行い、失敗すると手で触れていた物体が灰に変わる。
 灰化はライダー自身および着衣物、デルタギアには作用しない。

 デルタ変身中はカッコ内のランクに修正。一時的にその効力が喪われる。


268 : アリス&ライダー ◆0080sQ2ZQQ :2017/11/01(水) 09:46:53 Ej3THC560
【宝具】
『葬送する紅炎の堕天使(デルタギア)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
 新人類たちがいずれ姿を現す「王」の護衛用に開発した三本のベルト。ライダーズギアのうちの一つ。
 デルタドライバーとデルタフォンを操作することで、専用の強化装甲服をライダーは身に纏う。

 スーツ胸部に装備された装置「デモンズスレート」により、装着中はBランク相当の勇猛スキルを一時的に獲得。
 前述の装置と高出力によって恐るべきパワーを誇るが武装に乏しく、光線銃デルタムーバーしかない。
 そのスペックを活かしきるなら装着者にもある程度の戦闘能力が必要。

 なお、この宝具はライダー以外のサーヴァント、マスターでも扱う事が出来る。
 ただしオルフェノクとの縁を示す宝具やスキルの持ち主でない場合、不適合者とみなされて使用後にEランクの精神汚染スキルが自動付与される。
 スキルランクはベルトを使用し続けることで最大Aランクまで上昇。ここまでいくと人格が本来のそれから大きく変わり、デルタギアの力を求めて誰彼かまわず襲い掛かる様になる。

 必殺技はデルタムーバ―から射出したポイントマーカーで敵の動きを封じて放つ跳び蹴り「ルシファーズハンマー」。
 スーツを循環している流体エネルギー「フォトンブラッド」を撃ちこむ事で標的の命を奪う。


『災厄の竜は暴君の如く(ドラゴンオルフェノク)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
 死を乗り越えた人類の進化種――オルフェノクとしての姿。
 ドラゴンをモチーフとしており、パワー型の魔人態とスピード型の龍人態を使い分けて戦う事が出来る。

 魔人態は両腕の籠手と頑強な肉体による肉弾戦を得意とする。
 光弾を射出可能なほか、ライダーズギア装着者2体のマーカーをまとめて吹き飛ばす程のパワーを持つ。

 装甲を脱ぎ捨てる事で龍人態に移行。
 魔人態の1000倍の速度で行動することができる。
 高速化しているライダーは凄まじい殲滅力を発揮するが、龍人態への移行・維持に消費される魔力量も桁が外れている。


『強襲鉄騎(ジェットスライガー)』
ランク:D 種別:対城宝具 レンジ:1〜70 最大捕捉:50人
 「3821」のコードで呼び出す最高時速1300kmの超高速アタッキングビークル。
 360℃回転可能なホイールを持ち、ブースターやエンジンによって水平移動、旋回を行う。短時間なら飛行すら可能。

 小型乗用車並みの巨大さと機動力を活かした突進のほか、搭載した追尾式ミサイルポッドや光弾によって対象を粉砕する。

【weapon】
宝具、スキルに依存。


【人物背景】
一度死んだ人間が覚醒する怪人、オルフェノク。
オルフェノクの組織の精鋭集団「ラッキークローバー」の一人。
一見あどけない少年のようだが、本性はプライドが高く残忍。

気まぐれで行動に一貫性が無く、気分次第でオルフェノク相手でも凶暴さを発揮して襲い掛かる。
楽しい事や面白い事を常に求めているがひどく飽きっぽく、通りかかった紙飛行機に気を取られて、戦闘を中断する事もあった。


【聖杯にかける願い】
受肉する。


269 : アリス&ライダー ◆0080sQ2ZQQ :2017/11/01(水) 09:47:19 Ej3THC560
【マスター名】アリス

【出典】真・女神転生(1、2)

【性別】女

【Weapon】
「一工程で発動する呪詛」
死から復活した事で得た、呪詛。未だその真の威力は発揮できない。
感情が高ぶった時にしか発揮できず、サーヴァントの対魔力で容易に防げる。

【能力・技能】
「永遠の少女」
大悪魔によって生み出された、限りなく人間に近いゾンビ。
高位の悪魔に匹敵する魔力を持ち、本来の歴史では魔人として、様々な時空に出没するようになった。

【人物背景】
ICBMによって破壊された東京に現れた二柱の大悪魔、ネビロスとベリアル。
幼くして死んだ白人美少女を憐れんだ彼らは、彼女の亡骸を知性あるゾンビとして蘇らせ、アリスという名前と偽の記憶を与えた。
そして彼女が寂しがらないように次々と生ける死者を増やしていく。
二柱はイケブクロを結界によって閉じ、彼女の為の理想郷とした。

3人のヒーローによってイケブクロが破滅した後、二柱の加護を断たれ崩壊したはずだったが、彼女はひっそりと蘇る。
庇護者も家も無い、孤独な少女として。

真女神転生2の時間軸から参戦。
詳しい経緯はビジョナリーアイテム「真紅の人形」で閲覧できる。


【聖杯にかける願い】
赤おじさんと黒おじさんに会いたい!


270 : ◆0080sQ2ZQQ :2017/11/01(水) 09:48:00 Ej3THC560
投下終了です。鱒、鯖は改変自由。好きに使ってください。


271 : ◆0080sQ2ZQQ :2017/11/03(金) 12:54:34 66D8R0is0
投下します。


272 : ウィルバー・ウェイトリー&セイバー ◆0080sQ2ZQQ :2017/11/03(金) 12:55:17 66D8R0is0
 寂れた動物園で3人の男が向かい合う。
2人の男は、1人の少年に鋭い視線を注いでいた。
彼らは少年に運命を告げるためにやってきた、処刑の刃なのだ。

「溶原性細胞は危険すぎる。君自身にもコントロールできないくらいに」

 茶色のジャケットを羽織った、優男が告げた。それを聞き、血と泥で汚れた少年は吼える。

「…そうだね!イユがこうなった原因は…俺だ!他の人も…!それに…母さんも!」
「違う…!俺だ。…だからなあ…俺が送ってやる。母さんのところへ」

 黒ずくめの、獣のような男が反論する。
彼は少年の父親だった。己が始めた災禍を終わらせるために、息子の前に立つ。
愛した女は、彼の発明により異形となった。彼女を看取った男は今、呪われた生命である息子を彼岸に送るべく、姿を現したのだ。

「…わかった。でも…俺は最後まで生きるよ!」

 3人の姿が消える。
それと入れ替わりに、3匹の怪人がその場に出現。
銀の装甲で覆われた青の異形が、2体に躍りかかった。



 少年――千翼が再び生を受けた時、まず感じたのは怒りだった。
安穏とした場所から、苦痛の只中に送られる感覚。そして内側で蘇る、食人衝動。
セイバーのクラスに当て嵌められた彼は、どのような人物が自分を呼んだのだろうと考えた。

「お前が、俺のマスターか?」

 彼が降り立ったのは、暗い広間。
窓という窓が板で塞がれ、家具は置かれていない。
奥に出入口と思しき扉があり、その前に大柄な男が立っている。

 男、と表現したのは年齢がはっきりしないからだ。
山羊のような顔に、2mを超す体躯。服のボタンを全て閉めた男は低く、響き渡る声で喋った。

「おう、俺があんたのマスターらしい……どうした?」

 千翼は不思議な感覚に掴まれていた。生前に感じたものだが、彼女とは違う。

「変なこと言うけど、お前、人間か?」

 男は目を見開いた。千翼は目に見えて反応したマスターに構う事なく、言葉を続ける。

「食いたいって気持ちが全然起きない、けど、イユとは何か違う。お前、アマゾンじゃないよな…?」
「アマゾン?」


273 : ウィルバー・ウェイトリー&セイバー ◆0080sQ2ZQQ :2017/11/03(金) 12:57:19 66D8R0is0
 男――ウィルバーは渋々、自身の身の上を語った。
農村で生まれた母親が、悪魔に孕まされた結果、誕生した呪われし兄弟。
母親は失踪し、祖父は老衰で死去。唯一の肉親である兄弟は寝たきりで働ける状態ではない。だから無事に帰らねばならないと、感情を籠めて語った。

――もちろん、祖父の意図と自分の使命は隠した。

一通り話し終えた頃、狼狽していたのは千翼の方だった。

「悪魔。だから食いたくなかったのか…」
「それよりあんた、話しぶりから察するに、人を喰うのか?」

 千翼は躊躇しつつ、生前の経緯を話す。
TEAM Xの事、父親の事、戦いの中で出会った一人の少女の事。
ウィルバーが方針を尋ねると、セイバーは堰を切ったように語り始める。

「俺は、聖杯が欲しい。俺のせいでたくさん取り返しのつかない事が起こったけど、生き返ったのに、大人しく死ぬなんてできない。やっぱり生きていたいし、イユと一緒にいたい…!」
「そっか。なら、あんたに聖杯はやるよ。贅沢は言わねぇ、俺を無事に帰してくれ」

 頭を下げたウィルバーに、千翼は力強く頷いた。
自身の都合もあるが、ウィルバーに親近感を覚えた事で、彼は強く勝ち残りたいと思ったのだ。
ヒトならざる血を引く、早熟の怪物。二人は一時、手を組む。片方は平穏に生きるために、片方は平穏を壊す為に。




 無定形の霊力が、女の胎を借りて産み落とした魔人ウィルバー。
彼は聖杯戦争の知識を得た時、思わずしたり顔になった。
あてがわれたサーヴァントには見られずに済んだようだ。彼にはせいぜい働いてもらおう。
ヨグ=ソトホースの門を開けるために、千翼と願望器はとても役立ちそうだ。


274 : ウィルバー・ウェイトリー&セイバー ◆0080sQ2ZQQ :2017/11/03(金) 12:57:42 66D8R0is0
【クラス】セイバー

【真名】千翼

【出典】仮面ライダーアマゾンズSEASON2

【性別】男

【ステータス】筋力B 耐久A 敏捷B 魔力C 幸運E 宝具B(アマゾンネオ変身時)

オリジナル 筋力A 耐久A 敏捷B 魔力B 幸運E 宝具B

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
対魔力:C
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

騎乗:D
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。

【保有スキル】
食人衝動:E+〜C+
 レジスターでも抑えきれない、食人衝動。
 人の腕に対しては効果が倍増する。

 サーヴァントとなった事で、魔力供給が潤沢なら程度をかなり抑えられる。
 また半神や魔獣など、人外の性質を持つ相手には食欲を抱かない。

戦闘続行:A
 アマゾンとしての高い活動能力。
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

怪力:C
 一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
 使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。

気配感知:C
 アマゾンとして持つ、気配感知能力。
 聖杯戦争においては、サーヴァントの気配を感知する事が可能。


275 : ウィルバー・ウェイトリー&セイバー ◆0080sQ2ZQQ :2017/11/03(金) 12:58:20 66D8R0is0
【宝具】
『少年は星なき夜に吠える(アマゾンネオ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1(爆炎:1〜50) 最大捕捉:1人(爆炎:100人)
 ネオアマゾンズドライバーを使い、自身を兵器化する。
 変身時には赤い爆炎を、周囲に複数回放射する。
 ステータスを専用のものに変化させるほか、バックル部分の注射器を操作する事で、腕から武器を形成する事が出来る。
 
 形成できるのは3種。
切れ味鋭いブレード、敵の捕縛や自身の移動に使うワイヤー付きの鉤、鋭い針状の弾丸を撃つニードルガン。


『たとえこの生命が罪でも(オリジナル・タイプフィフス)』
ランク:B 種別:対人類、対軍宝具 レンジ:細胞が生存する限り(1) 最大捕捉:体液に触れた者すべて(オリジナル化は自身)
 セイバーが保有する変異細胞。
人間がこれに感染すると、アマゾンに変貌する。感染者は体表に黒い痣が浮かび上がり、理性を消失する。

この宝具によってアマゾン化した人間は、Aランクの単独行動を持つ疑似サーヴァントとして活動を開始し、人肉を求めるようになる。
体液を取り込んだ時点で感染するが、水分が無ければすぐに死滅する為、接触感染や空気感染など二次感染の心配はない。
ただし水源にセイバーの身体を投入する事で、感染者を一気に増やす事が可能。

 また、セイバーは6本の腕と全身から無数の紫色の細い触手を持つ、アマゾン体に変化する。
触手は人体を容易に貫通する破壊力を誇り、敵を拘束してそのまま折る事も可能。


【weapon】
「ネオアマゾンズレジスター」
セイバーに装着された腕輪。
定期的に薬剤を投与することで細胞の覚醒と食人衝動を防ぐ。

「ネオアマゾンズドライバー」
変身時に必要なベルト。アマゾン細胞に影響を与え、戦闘力を向上させる。
サーヴァント化した現在は、意識を集中するだけで呼び出せる。


【人物背景】
アマゾンに育てられた少年。
秘密機関4Cに保護され、戦力として育成されるも脱走。
不良集団TEAM Xに加わり、八つ当たり気味にアマゾンを狩っていた。

アマゾン狩りの最中に出会った少女イユに食人衝動を抱かなかった事をから、己の拠り所にするべく、自ら4Cに戻る。
イユの境遇を知るうち、生前の感情を取り戻させたいと思うようになるが…。

実は人間と元人間のアマゾンの間に生まれた、アマゾン。
外見は18歳ほどだが、これはアマゾン細胞による急成長の為で、実年齢は5歳に満たない。
食事という行為を嫌い、他人との接触を避ける傾向にある。



【聖杯にかける願い】
招かれてしまった以上、大人しく死ぬつもりは無い。
聖杯が手に入ったなら、イユと二人、完全な人間として生きていくつもり。
それが叶わないなら、イユに人間として平穏に過ごさせてほしい。


276 : ウィルバー・ウェイトリー&セイバー ◆0080sQ2ZQQ :2017/11/03(金) 12:58:57 66D8R0is0
【マスター名】ウィルバー・ウェイトリー

【出典】ダニッチの怪

【性別】男

【Weapon】
1910年代の拳銃。

【能力・技能】
「早熟の悪魔」
父親から受け継いだ、異次元の血。
人間としては異常に成長が早く、その身体のほとんどは異形と化している。
それでも、兄弟に比べればずっと人間に近い。

「魔術師」
祖父によって、冒涜的な知識や呪文を教え込まれている。
老ウェイトリーの死後も、人類にとって有害な目的の為に、奇怪な書物を読みふけって過ごす。


【人物背景】
魔術師ウェイトリーが、娘ラヴィニアに産ませた兄弟の片割れ。
2月2日の聖燭祭の夜に生まれた、ヨグ=ソトホースの息子。

ミスカトニック大学の図書館に忍び込む前から参戦。


【聖杯にかける願い】
外宇宙とこの世界を繋ぐ門を開く。


277 : ◆0080sQ2ZQQ :2017/11/03(金) 12:59:30 66D8R0is0
投下終了です。鱒、鯖は改変自由。好きに使ってください。


278 : ◆0080sQ2ZQQ :2017/11/03(金) 14:19:08 66D8R0is0
以下の作品をフリー化いたします。

・「Fate/Mythology――混沌月海神話」候補作

【須藤雅史&アサシン】
ttps://www65.atwiki.jp/stselysium/pages/26.html


279 : ◆0080sQ2ZQQ :2017/11/04(土) 20:45:18 5SrYfIXE0
琢磨君には気の強い女性が似合うと思ったので、投下します。


280 : 琢磨逸郎&キャスター ◆0080sQ2ZQQ :2017/11/04(土) 20:46:02 5SrYfIXE0
 雪の降る摩天楼の中を、1台の白いイタリア車が走る。
ハンドルを握るのは、どんな高給取りだろうか。当の運転手――琢磨逸郎の顔には、影が差していた。
その手には、万能の願望器を巡り争う聖杯戦争の選手の証、令呪が刻まれている。

(聖杯など、誰も求めてはいないのですが…)

 逸郎は人間ではない。
死を克服した上位者オルフェノク――だった。
彼は三本のベルトを巡る争いを経験し、人間として最期を迎える事に決めたのだ。
そして拙いながらも懸命に働き、一日を終えた時、この場に招かれた。

 勿論、聖杯には魅力を感じる。
永遠の命とは言わないでも、人間並みの寿命は欲しい…しかし戦うのは怖い。
殺し合いに対する恐怖が、心根にまで刻まれている。

《イツロウ…》
《も、戻りましたか、キャスター》

 威厳を伴った女の声が、脳内を満たす。
逸郎が人でないように、彼が呼んだサーヴァントも人ではなかった。
オルフェノクも人間も、彼女に比べればよちよち歩きの雛ですらない。
生物に寄生して、自分達の住みやすい環境が整うのを――地上の覇権を握る時を、永劫の昔から待ち続けた女王…Eveにとっては。

 オルフェノクの存在しない時間軸において、彼女はマンハッタンで覚醒した。
一週間足らずで島を封鎖に追いやったが、同時期に覚醒したもう一人の女王、一人の女性警官に敗れ去る。
その逸話が記録され、この場に魔術師として現界した。
逸郎の前に現れたキャスターは、ワインレッドのドレスに身を包んだ女の姿をしているが、これは身体を乗っ取った人間のものらしい。

《陣地の構築はどこまで進んでいますか?》
《まだ召喚されて間もないからな、完成していない。と言えば嬉しいか、お前は?》

 キャスターの声に、嘲る様な声が滲む。
彼女は逸郎の弱さを見抜いていた。しかし、並のマスターより使いではある。

《まさか!ただ、急いて他の主従に気取られるような事態があってはならないと、忠告したかったのですよ》
《高説、確かに聞いた。実際、私の宝具は言ってみれば軍団を形成するものだからな、陣地とは別に兵隊を控えさせておく場所は、必要だろう》

 キャスターの宝具は目立つ。
彼女の主戦法は、覚醒したミトコンドリアによって異形化した生物――NMCによる物量作戦となるが、その前段階で耳目を集める事になる。
マスター殺しに長けるとはいえ、正面対決に持ち込まれると危うい。

《えぇ、そうでしょう!》

 逸郎の警告は、半ば命乞いだ。
折角戦いを離れたのに、こんな場所でひどい最期は迎えたくない。


281 : 琢磨逸郎&キャスター ◆0080sQ2ZQQ :2017/11/04(土) 20:46:24 5SrYfIXE0
【クラス】キャスター

【真名】Eve

【出典作品】パラサイト・イヴ

【性別】女

【ステータス】筋力D 耐久C 敏捷D 魔力A 幸運D 宝具A++

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
陣地作成:D+
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
 出産に相応しい「分娩室」を形成できるほか、大量の魔力を用意すれば、より安全度が高い「肉のドーム」を形成することが可能。
 これらは地球生物の故郷である、有機的スープを再現したものだ。

道具作成:EX
 魔力を帯びた器具を作成できる。
 後述の宝具、およびその発動に必要な人工精子以外は何も作成できない。

【保有スキル】
怪力:A
 一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
 使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。

飛行:B
 後述スキルにより、空中を自在に飛ぶ。
 飛行中の敏捷値はスキルランクで計算する。

ネオ・ミトコンドリア:A+
 細胞核を支配する能力を得たミトコンドリアを保有している事を示す。生産したエネルギーを使って多彩な効果を発揮できる。
 キャスターは他者に宿るミトコンドリアに干渉することで、対象のゲル化や人体発火を引き起こす。

 対魔力スキルによって干渉を無効化されることに加え、標的が魔獣や魔物など通常の生物でない場合、効果を軽減されてしまう。
 姿を変えることが出来るがクラス補正によって、ゲーム版でいう第1形態と第2形態を行き来する事しかできない。


282 : 琢磨逸郎&キャスター ◆0080sQ2ZQQ :2017/11/04(土) 20:47:46 5SrYfIXE0
【宝具】
『古き世を喰らう新生児達(ネオ・ミトコンドリア・クリーチャー)』
ランク:D〜C 種別:対生物宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:50人
 レンジ内に生息する生物を"NMC"に変化させる。
 NMCに変化した生物は、いずれも奇怪な外見に変貌を遂げ、体格や殺傷能力が向上。

 特殊能力を発現する個体も存在し、彼らは生産したエネルギーを使って攻撃や防御を行う。
 攻撃手段は個体によって異なり、ビームや放電、超音波など様々。
 基本的に優れた生物ほど強力なNMCになる。

 魔力が潤沢なら化石すらNMCに作り替え、生前はトリケラトプスやT-REXを手駒にした。
 ただしネオ・ミトコンドリアスキルと同様、標的が魔獣や魔物など通常の生物でない場合、効果を軽減されてしまう。


『完全生命体(アルティメット・ビーイング)』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
 受精することで宝具が発動。完全体のサーヴァントを妊娠、陣地内部で出産する。
 この時に生まれる生物は通常のNMCと違い、肉体の全てがネオミトコンドリアで構成されている。

 最初は赤ん坊のような姿をしているが、人間一人分のエネルギーで戦艦一隻を沈める爆発を起こすなど、規格外の能力を持つ。
 完全体は時間経過やエネルギー補給によって4段階まで成長。その度にステータスが変化していく。

 受精するのは、父系のミトコンドリアDNAを持たない人工精子でなければならない。反乱の芽を摘むためだ。
 取り出した精子を保存し、道具作成スキルによって作り替える必要がある。

 完全体・第一形態のステータスは以下の通り。
【ステータス 筋力D 耐久D 敏捷E 魔力A+ 幸運E  スキル 飛行:D  天性の肉体:A 戦闘続行:B  単独行動:A+  ネオ・ミトコンドリア:EX】



【weapon】
変形させた自分の肉体。主に巨大化させた両腕と鋭い爪。

「NMC」
ネオ・ミトコンドリア・クリーチャー。
進化したミトコンドリアに肉体の主導権を奪われたことで異常進化、奇怪な外見・能力を得た生物。
キャスターの死後に一部がNYを離れ、アメリカ全域に散っていった。

【人物背景】
およそ10億年を生き延びた結果、宿主の身体を奪うまでに至ったミトコンドリアDNA。
生化学者・永島利明の手によって培養され、Eve1と名付けられた彼女は細胞核に反乱を起こし、人類の支配を目論む。
日本において完全生物を誕生させる事を試みるが、最期は永島の手によって殺害された。

数年後、聖夜を迎えたアメリカ・マンハッタンにて復活を遂げる。
人類に対し再び宣戦布告したEve――ミトコンドリアの女王は、同時期に超能力に目覚めた女性警官・アヤ・ブレアの手によって討伐された。


本来、最も適性があるのはライダーのクラス。
生物を乗り物とする彼女が騎兵として呼び出された場合、一般人を分身(疑似サーヴァント)に変える宝具が追加される。


283 : 琢磨逸郎&キャスター ◆0080sQ2ZQQ :2017/11/04(土) 20:48:33 5SrYfIXE0
【マスター名】琢磨逸郎

【出典】仮面ライダー555(TV版準拠)

【性別】男

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
「オルフェノク」
人間が一旦死亡する事で生まれる次世代の霊長。
自然死によって発生するほか(オリジナル)、オルフェノクの使徒再生によって誕生することもある。

琢磨はムカデの特性を持つオルフェノク。棘付きの長い鞭と俊敏な身のこなしを武器にする。
力を完全に制御しており、変身せずとも能力をある程度発揮する事が可能。

【人物背景】
上の上たるオルフェノクであった男。
確かな実力の持ち主だが、超越種としてのプライドと人間の弱さを併せ持つ表情豊かな人物。

三本のベルトを巡る戦いを経て自身の弱さを自覚した彼は、残された時間を人間として過ごす事に決めた。
最終話登場後から参戦。

【聖杯にかける願い】
キャスターに協力。脱出手段が見つかれば、その限りではない。


284 : ◆0080sQ2ZQQ :2017/11/04(土) 20:49:17 5SrYfIXE0
投下終了です。鱒、鯖は改変自由。好きに使ってください。


285 : ◆nY83NDm51E :2017/11/07(火) 22:56:02 YoTkJjh20
以下の作品をフリー化いたします。

・「Fate/Mythology――混沌月海神話」候補作

【この世全ての悪】
ttps://www65.atwiki.jp/stselysium/pages/49.html

【合縁奇縁一期一会】
ttps://www65.atwiki.jp/stselysium/pages/58.html

【NIMROD】
ttps://www65.atwiki.jp/stselysium/pages/70.html

【Open Invitation】
ttps://www65.atwiki.jp/stselysium/pages/79.html

【Walk Like an Egyptian】
ttps://www65.atwiki.jp/stselysium/pages/85.html


286 : ◆lkOcs49yLc :2017/12/23(土) 14:08:47 oXoyaC1w0
前々から暖めていたネタですが投下します。


287 : ◆lkOcs49yLc :2017/12/23(土) 14:09:10 oXoyaC1w0
ざあざあと、午後の墓場に小雨が降り注いで行く。
陽の光が雲で覆い隠されたこの暗い墓場に唯一人、墓石に蝙蝠傘片手に花束を置く老人がいた。
花を置き立ち上がった老人、芳村功善は、糸目で墓石を見つめていた。
墓石には「UKINA YOSHIMURA」とローマ字で名前が彫られている。

(結局、此処でも会えなかったか、憂那)

最も、この墓も土も偽物ではあるのだが。
それを芳村が知り、聖杯戦争の参加者の切符を得たのは、10日前の事だった。
此処では、芳村はあんていくのマスターとして、平穏な日々を過ごしていた。
しかしそこかしこに散らばる違和感は日増しに繋がっていき、こうして今に至る。

此処における「設定」では、憂那の死因は交通事故、だそうだ。
皮肉にも、命日は自分が殺した月日と一致していたのだが。
この世界における芳村が、彼女とどの様な日々を過ごしたかは、本人にも分かるような事ではない。
それでも、彼女への想いは変わらない。

「今日は、これを届けに来たんだ。」

そう言った芳村は、墓石の前にしゃがみ込み、懐からビニールで包んだノートを取り出す。
取り出したノートには、「本日のブレンド」と書かれていた。

「この間、従業員達が考えてくれたブレンドの内の一つだ。
もし、君が店に来る時が来たのなら、是非とも、これを参考にしてほしい。」

穏やかな口調でそう言った芳村はスクッと立ち上がる。
表情はあまり変わらないが、芳村自身はそれで少しは満足になった。

『ねぇ、お爺ちゃん』

脳内に声が響き渡る。
突然くすぐったくなった芳村の左肩には、一匹の梟が止まっていた。

「……どうしたかな。」
「何で、こんな石にノートなんて置くの?
意味なんて無いじゃないか、誰も拾ってくれるはずもないのに……。」
「何故、だろうね。」

芳村の脳内に声を響かせるは、己のサーヴァント、キャスターだった。
左肩に止まっているこの梟は、その分身とも言える存在であり、恐らく彼は、この梟を通して此処を見ているのだろう。
しかし、遠くの物を見つめることは出来ても、キャスターには見えない物があった。

「……やはり分からないか、心は。」
「うん、全く分からないよ、愚かな人間共の感情みたいな物なんて。」
「…そう、か。」

そう呟いた芳村は踵を返し、墓場の出口までゆっくりと歩き出す。
要は済んだ、此処に長くいる理由も無いだろうと。
梟が飛び立つ。
蝙蝠傘からスッポリと抜け出したキャスターの分身は、降り注ぐ雨の中を平然と飛び立っていった。


◆  ◆  ◆


―きみも、このきょくがすきなの?―

パパが用意してくれた水槽の中から、宏くんが流した音楽が聴こえてくる。

―パパ、このこも、このきょくがすきなみたいだよ―

パパは、宏君から時計を取り上げた。
思えば当然の事なのだろう。
パパは常に言っていた、余計な感情は必要ないのだと。


でも、何故だろうか。
この曲を聴くと、不思議と心が揺さぶられ、和らいでいく。



◆  ◆  ◆


288 : ◆lkOcs49yLc :2017/12/23(土) 14:09:29 oXoyaC1w0

例え虚構の世界であろうとも、「あんていく」の建物は変わらずにあった。
従業員の顔ぶれも、行きつけの豆屋から、従業員の顔まで、何もかもそっくりだった。
そしてそっくりなのは、本来なら「冷蔵庫」が保管されているであろう倉庫まで。

「丁度淹れ終わった所だよ。」

暗い地下室の階段をゆっくりとコツ、コツと下りながら、湯気の立ったコーヒーカップを手に取った芳村が下りてくる。
此処の地下室は暗い。
しかし奥の方から、ちっぽけな緑色の光が顔を見せている。
其処に向かって芳村は歩き出す。

光の源にいたのは、壁に張り付いている緑色の悍ましい肌をした少年だった。
少年の真下には、丸い何かの大きな穴の様な物があり、光は其処から発している様だ。
この少年こそ、キャスターの本体。
一人の人間の狂気が孕んだ究極生命体「ネオ生命体」である。

「ふぅん、これが、こーひー、って飲物、か。」
「此処は暗くて寒い、直ぐに冷めるだろうから、飲むなら今の内だ。」

そう言った芳村は、珈琲のカップを穴の上にコトンと置く。
湯気はさっきと比べて少なくなっている。

「良いよ、お爺ちゃん。僕には、食事なんて要らないんだから。」
「……。」
「さっき、魂食いの為に分身を放ったよ。お陰で魔力は十分溜まっている。『僕』が動かすためのエネルギーなら、これぐらいで賄えるよ。」

珈琲に興味を向けぬキャスターに対し、芳村は只、湯気が徐々に減っていくであろう珈琲を見つめていた。
キャスターには、人の心が分からなかった。
それもそうだ。
このネオ生命体は、感情と言う名のバグを親から取り上げられ、完成された生物として昇華されていった怪物。
さながらフランケンシュタイン博士の人造人間の様に、親の愛情を知らぬが故に狂ってしまった存在。
それはまるで―

―エト。

別れた娘の名が浮かぶ。
子と別れた化物と、親に捨てられた化物。
きっとそれが、自分とキャスターを引き合わせた切っ掛けなのかもしれない。

しかし、人間と怪物は混じり合う事ができる……
そのような確信が、芳村の中にはあった。
喰種であった自分が、憂那と混じり会えた様に。
このキャスターも、何時かはきっと、人の心を理解する事が出来るだろう。

「お爺ちゃん。」
「どうした。」
「サーヴァントが、一体見つかったよ。」
「分かった、見せてくれ。」

即座に感覚を共有する。
見えたのは、森を偵察している少女と騎士だった。
騎士たるサーヴァントのクラスはランサー、パラメータは……

「悪くは無いだろうけど……少なくとも僕が出たら勝ち目はあるかもしれないね。」
「それで、どうするつもりだ。」
「様子を見るよ、今此処を映しているクモに相手をさせてやる。」

彼には、やるべきことがあった。
娘の……エトを救う。
心が荒んでしまった彼女の心を救う。
その為にも、聖杯は手に入れる。
そして、やりたいことは―

「所でだ、キャスター。一つ、言っておきたい事がある。」
「何?」
「……人は、君が思っている程、理解できない存在では無いのかもしれないよ、キャスター。」
「……どれぐらい掛かれば、理解できるの、あんな下等生物が。」

自身に眉間の皺を寄せるキャスターに対し、芳村は口を緩ませる。

「何時かは、私にも計り知れない。だが、君にはその答えの扉を開く資格がある。それだけは……明確なる真実だ。」

プールに置かれている珈琲は、すっかり冷めきっていた。


289 : ◆lkOcs49yLc :2017/12/23(土) 14:09:50 oXoyaC1w0




【クラス名】キャスター
【出典】仮面ライダーZO
【性別】無
【真名】ネオ生命体
【属性】混沌・中庸
【パラメータ】筋力-(A) 耐久-(B) 敏捷-(B) 魔力E 幸運E 宝具E ※()内はドラス時の数値

【クラス別スキル】

・陣地作成:D
自らに有利な陣地を創りだす能力。
己の肉体を安定させる為の生体プールを作成出来る。

・道具作成:-
魔力を帯びた道具を生み出すスキル。
このスキルは極めて高ランクな「自己改造」と「変化」が補っているため、必要としない。

【固有スキル】

・自己改造:A+
自身の肉体に別の肉体を付属・融合させる。
このスキルのランクが高くなればなるほど、正純の英雄からは遠ざかる。
キャスターの場合、あらゆる生物や物質を、自身に融合させることが出来る。
ただし、取り込んだ生物の耐性、戦闘続行スキルによっては融合が解除されることも。
また、このスキルは自分以外の物にも適用され、懐中時計を直すことも可能。

・変化:EX
自らの姿を自由自在に変化させる。
また、蜘蛛や蝙蝠の様な生命体を自身の肉体から生み出すことが出来る。
その使い魔にもこのスキルは付与され、人間に化けさせることも可能。

・単独行動:C
マスターとの魔力供給を絶っても現界を保っていられる。
Cランクなら、マスターが死んでも1日は現界出来る。

・戦闘続行:A
異常な程の生命力。
最後まで戦闘を続行させることが可能で、自身の再生能力と併用させることで幾らでも戦い続ける。

【宝具】

「ネオ生命体」
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大捕捉:-
キャスターの身体そのもの。
脅威的な生命力、戦闘力、融合能力を持つ。
そして、パラメータを自在に変化させる事も出来る。
生前とは異なり、生体プールに浸からなくても活動できるが、その代わり不死の力が失われている。
また、戦闘時にはバッタ怪人「ドラス」に変身して戦い、その時にはパラメータが()に修正される。
ドラス時には、青色のレーザービームを発射したりロケットパンチを撃ったりといった攻撃方法を持つ。
また、巨大な針に姿を変えて攻撃したり、身体がもげても其処らにある金属で補強、同化してしまう等器用な戦闘方法を用いる。
ただし、この形態に変身している時は声帯が使えなくなるため、マスターとの会話は念話で済ませる。


【人物背景】

1人の人間が生んだ究極生命体。
彼は人を見下していた。
彼は愛を知らなかった。
そして、愛に飢えていた。

【聖杯にかける願い】

パパに、宏君に―――


290 : 芳村功善&キャスター ◆lkOcs49yLc :2017/12/23(土) 14:13:39 oXoyaC1w0

【マスター名】芳村功善
【出典】東京喰種
【性別】男

【能力・技能】

「喰種」
人を喰らう亜人。
「赫包」と呼ばれる臓器を持っており、其処から人の肉を「Rc細胞」に変え、
そしてRc細胞を使って「赫子」と呼ばれる血液で出来た捕食器官を形成する。
普通の食事は出来ない、無茶をすれば何とか食べられるが汚物のように不味く感じてしまう。
基本的な身体能力においても人間を遥かに上回るが、戦闘力の殆どは「赫子」に大きく依存している。
芳村の赫子は「羽赫」と呼ばれるタイプで、遠距離攻撃が武器だが反面スタミナは劣る。
また、彼は「赫者」と呼ばれる、喰種を喰らい続ける「共喰い」の末に進化した喰種である。
喰種の弱点である「赫包」も複数存在し、並大抵の攻撃は受け付けない。

・珈琲淹れ
喫茶店のマスターとしての、珈琲のブレンドに関する知識。
それは経験からなる物なのか、或いは彼女との思い出なのか。

【人物背景】

喫茶店「あんていく」を拠点とする、喰種の「東京20区」の縄張りのリーダーたる老人。
元々は「V」と呼ばれる組織の下働く「掃除屋」であったが、「憂那」と呼ばれる女性と出会い結ばれ、それから彼は彼女との日々の中で「優しさ」を知る。
しかし憂那との関係は組織に暴かれてしまう。
芳村は彼女の「生きて」という願いを受け入れ最後の仕事として彼女を殺め、彼女が自分との間に身籠った「エト」を何処かへ預ける。
それから自らは「あんていく」のマスターとして静かな日々を過ごすことに。
喰種だらけの店員達に世話を焼き、彼等からはとても強く慕われていた。しかしその日々は終わりを告げた。
喰種を取り締まる「CCG」の襲撃で仲間達は死ぬか行方不明になり、自らは突如現れた「エト」の手で……
今回は、その直後からの参戦。
温厚であんていくの従業員(なかま)達からは慕われている。

【聖杯にかける願い】

エトを――

【基本戦術・方針・運用法】

キャスターは変幻自在の能力を持ち、耐久力に優れる上に多数の使い魔を放って偵察や捨て駒にすることも出来る。
ただし、それを使うにしても魔力はかなり使う。
芳村自身もサーヴァントにこそ敵わないものの赫子を使った戦いは出来る。
ただし、それだとキャスターに与える体力は減少してしまい、戦闘の続行は難しくなる。
キャスターがドラスに変身すれば圧倒的な戦闘力を発揮するが、やはり消費する魔力はそれなりに高いので気をつけるように。

【把握資料】

・キャスター(ネオ生命体):
映画一本、45分。

・芳村功善:
性格自体は原作無印版全巻で把握可能。『:re』の把握は個人にお任せいたします。


291 : ◆lkOcs49yLc :2017/12/23(土) 14:14:10 oXoyaC1w0
投下を終了いたします。
ステータスシートや投下話はご自由にお使いください。


292 : ◆0080sQ2ZQQ :2018/03/27(火) 22:14:41 c0eWQeWc0
投下します。


293 : ウィーグラフ・フォルズ&バーサーカー ◆0080sQ2ZQQ :2018/03/27(火) 22:15:20 c0eWQeWc0
自宅の扉を開けたウィーグラフを、妹のミルウーダが出迎えた。
小麦色の髪、気の強そうな目元、なにもかも記憶にある通りだ。
切羽詰まった雰囲気だけがそこにはない。死に別れる前――この場に招かれる前、このように穏やかな彼女を見たのはいつだったか?

聖杯戦争に招かれる前、ウィーグラフは絶体絶命だった。
戦時の働きに報いず、王家や貴族に斬り捨てられた同胞たちと共に決起した彼は、妹の命を奪った小隊に敗れ去った。
小隊長ラムザと地下書庫で再会し、再び剣を交えた彼は惜しくも敗れた。這う這うの体で逃げ出し、地上に出るその瞬間――気づいたら見慣れぬ街にいた。

周囲のきらびやかな街並み、天を衝く高楼の群れ。
信じがたい技術と資本で作られた都市。彼の恰好も、街の住人とうり二つに変わっている。
記憶と共に「ルール」を思い出し、割り当てられた自宅で妹と再会した時、ウィーグラフは誘いに乗ることに決めた。

ミルウーダと夕食。
茸たっぷりのハンバーグ、ミネストローネ、きゅうりとミニトマトとエビのサラダ。
これほど豪華な食事が、こちらでは当たり前のように食べられる。貧困はこの街にもあったが、招かれたウィーグラフと再現されたミルウーダには関係ない。
夕食を終え、今日は休もうかと思った時、心の中に男の声が響いた。

《マスター、敵が近づいてくる。戦闘するか?》
《あぁ…》

ミルウーダに一言告げてから、ウィーグラフは家を出る。
その傍らに出現したのは、精悍な顔立ちの青年。怜悧な微笑で、ウィーグラフに付き従う。
彼のクラスはバーサーカーだ。決して暴走しない、無機質な狂戦士。

バーサーカーに願いは無い。
最初にそのことを聞いた時は驚いたが、彼が高ランクの無我スキルを保有している事を知ると、ウィーグラフは納得した。
いうなれば彼は、人間の様な武器。ゆえにサーヴァントである彼は、マスターの意向に全面的に従う。バーサーカーを生かすも殺すも、自分次第。

まもなく、示し合わせたように二騎のサーヴァントが雑木林で向かい合った。敵のマスターはいない。
熊の毛皮で身体を覆った、長身の鎧騎士。手には凍えるような青い穂先を持つ長槍。

「姿を晒すとは、勇敢なマスターだな」
「ランサーか。マスターに警戒してくれ」
「あぁ、武運を祈る…!」


294 : ウィーグラフ・フォルズ&バーサーカー ◆0080sQ2ZQQ :2018/03/27(火) 22:15:51 c0eWQeWc0
ウィーグラフが距離を取ると紫色の眼を持つベルトが出現。
バーサーカーが、髭の様なハンドルを捻ると、合成音声が重く響いた。
槍兵は敵の出方を窺う。臆病なマスターに招かれ、些か欲求不満だったのだ。強敵との仕合に飢えている。
何を見せてくれるのか?舞台上の俳優を見るように、ランサーは眼前のサーヴァントを見た。

――SI・G・MA

「アマゾン」

青い爆炎と衝撃波が、夜闇を薙ぎ払う。
爆炎が晴れると、青年は姿を消していた。立っていたのは銀色の鱗に身を包んだ怪人。
肉食魚を思わせる顔には、紫色の複眼。肘のエッジが攻撃的な印象を与える。
アマゾンシグマ。倫理を無視して作成された生体兵器。

「魔物の類か?」
「そんなところだ」

銀色の怪人は、指を四本立てた。

「…お前は、四手で詰む」
「よし、破って見せよう。その宣告」

ランサーは一足で怪人を間合いに入れ、長槍を横に払う。
シグマは身を屈めてくぐりぬけ、幽鬼のように立ち上がると、槍兵の喉笛に手刀を突き入れた。

「1!」

槍兵は蹴りを浴びせるも、その時にはシグマは足の射程外。
宝具の開帳、をちらりと頭に浮かべた槍兵に、銀のバーサーカーが突撃する。
刺突の方が早い。ランサーは身体を切り替えると、凍てつく穂先を真っすぐに奔らせた。
浅い。槍は身体を捻った狂戦士の脇をすり抜ける。槍が戻るより早く、シグマはランサーを蹴り倒す。

「2!」

地に転がったランサーに、銀の怪人が迫る。
空中で回転した体勢を立て直した槍兵は、あっという間に大きくなる銀の影を見るや、反射的に突きを繰り出す。

「は…、破ったぞ」

槍は右肺を貫き、背中の装甲を食い破った。
達成感と緊張が僅かに解けた。トドメを刺そうとするランサーだったが、次の瞬間、言葉を失った。
銀のサーヴァントが向かってきたのだ。傷を意に介する事無く、槍をさらに深く、自らの身体に刺していく。
驚愕で手を離した瞬間、得物と運命がランサーを見捨てた。


295 : ウィーグラフ・フォルズ&バーサーカー ◆0080sQ2ZQQ :2018/03/27(火) 22:16:26 c0eWQeWc0
【クラス】バーサーカー

【真名】前原淳

【出典】仮面ライダーアマゾンズ

【性別】男

【ステータス】筋力B 耐久A 敏捷A 魔力D 幸運E 宝具B(アマゾンシグマ)

【属性】
中立・悪

【クラススキル】
狂化:E-
 凶暴化する事で能力をアップさせるスキルだが、理性を残しているのでその恩恵はほとんどない。
 肉体が"痛みを知らない"状態となってリミッターが外れているが、それでも向上値は微々たるもの。

【保有スキル】
心眼(真):C
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
 逆転の可能性が数%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

直感:C
 戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
 敵の攻撃を初見でもある程度は予見することができる。

無我:B
 アマゾンとして蘇生した事で、自我や情動が希薄になっている。
 あらゆる精神干渉を高確率で無効化し、かつての仲間すら手にかける事が可能。

戦闘続行:B
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、致命的な傷を受けない限り生き延びる。
 アマゾン細胞由来の高い再生力。


296 : ウィーグラフ・フォルズ&バーサーカー ◆0080sQ2ZQQ :2018/03/27(火) 22:17:21 c0eWQeWc0
【宝具】
『黄泉軍を吊る銀鎖(アマゾンドライバー)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
 バーサーカーの細胞を兵器化させ、高い戦闘力をもたらすベルト。
 生前とは異なり、意志一つで腰部に出現。左側のアクセラーグリップを捻ることで、淳は銀色の体色を持つアマゾンシグマに変身する。

 痛覚遮断機能が搭載されており、行動不能になるまで戦い続ける事が出来るが、これは自身のダメージを把握できないという欠点にもつながっている。
 変身中にアクセラ―グリップを捻ることで、必殺技の発動が可能。


【weapon】
ベルトの右側、バトラーグリップが生成するナイフ、槍、鎌、鞭。

【人物背景】
野座間製薬で生み出され、脱走した実験体アマゾンを狩る駆除班のメンバー。
同僚の大滝竜介が変化したトンボアマゾンに殺害されるも、その死体は新型のアマゾンとして復活を遂げる。
生前の人格、記憶を残すが、言動からは人間味が消失。
駆除班や他のドライバー保有アマゾンを襲撃するも、最後は共闘した彼らによって討たれる。

【聖杯にかける願い】
なし。サーヴァントの在り方に忠実に従い、マスターのサポートをする。



【マスター名】ウィーグラフ・フォルズ

【出典】FFT

【性別】男

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
「ホワイトナイト」
清らかな鎧に身を包む聖騎士。汚れなき精神が編みだした『聖剣技』で邪なるものを退ける。
基本的な体術に加え、神の加護を宿した奥義によってサーヴァントにすら傷をつける可能性を持つ。


【人物背景】
五十年戦争末期、平民の義勇軍「骸騎士団」の団長に就任した男。
正規の騎士団に匹敵する活躍をした彼らだったが、母国イヴァリースの敗戦により一切の恩賞なく解散させられる。
王家や貴族に切り捨てられた彼らは骸旅団として、貴族の圧政からの解放を大義名分にテロ活動を行うようになった。

ウィーグラフ自身は革命を目指して戦っているが、団員の中には略奪や誘拐を繰り返す者もいる。
組織が壊滅し、妹ミルウーダを失った彼は力を求めて、イヴァリースでの権力拡大を狙うクレバドス教会につく。
彼の中からかつての高潔さは消え、汚い事に手を染めるのも厭わなくなった。

chapter3地下書庫 地下一階終了直後から参戦。


【聖杯にかける願い】
イヴァリース貴族社会の打倒。


297 : ◆0080sQ2ZQQ :2018/03/27(火) 22:18:36 c0eWQeWc0
投下終了です。鯖、鱒、本文は改変自由。好きにお使いください。


298 : ◆0080sQ2ZQQ :2018/03/28(水) 20:03:43 nuWyEg.Q0
思いついたので、投下します。


299 : 浅倉威&セイバー ◆0080sQ2ZQQ :2018/03/28(水) 20:04:33 nuWyEg.Q0
夜明け前、濃い闇は青く染まる気配すらない。
無人の倉庫街で、2つの影が幾度も交差していた。
片方は紫の甲冑で身を包んだ戦士。悪鬼の角を思わせる黄金の突撃剣を振り回し、突撃する。
戦士の咆哮をつまらなさそうに捌くのは、獣の様な顔の偉丈夫。大木の幹よりも逞しい腕に、馬をも両断するような大剣を握っている。
彼の名はゾッド。ミッドランドの戦場において不死と語られる戦士。今宵、セイバーのクラスで招かれた男。

「まだ続けるのか?」
「黙れェ…、俺は苛ついてるんだ。サーヴァントだろォ、俺に付き合え!」

紫の戦士――仮面ライダー王蛇を見て、ゾッドは溜息を吐く。
何を考えているのか、このマスターは自分に戦いを挑んできた。
魔力の乏しいマスターだが、呼び出した甲冑が与える身体能力は面白いと思う。
とはいえ三騎士と打ち合うほどでは無いし、何より神秘は籠っていない状態では、足止めくらいしかできないだろう。
当の王蛇、浅倉威は一切意に介していないらしいが。

「お前では、俺に傷一つつけることさえ出来ん。いい加減にしろ。マスターの替えすら見つかっていないのだ」
「黙れェ!」

王蛇はベルトからカードを引き抜く。
コブラを象った杖に引き抜いたカードを装填すると、合成音声が響き渡った。

――FINAL VENT

契約したミラーモンスターの力を借りて放つ必殺技の到来をゾッドに告げる。
ベノクラッシュを放つが、大剣の一振りで撃ち落とされてしまう。蠅を叩く主婦よりも、気のない一撃で王蛇は倒れ伏した。

「戯けが!戦いを拒んでいるのでもあるまいに、何を考えて自らの従者に挑む!?」
「うるさいんだよ、俺は殴るか殴られるかしないと落ち着かないんだ。あぁ、俺をこんな所に連れてきやがって…」


300 : 浅倉威&セイバー ◆0080sQ2ZQQ :2018/03/28(水) 20:07:20 nuWyEg.Q0
戦いに明け暮れるゾッドを閉口させるほどの狂犬だが、望んでやってきたのではないらしい。

「…小僧、お前に満ち足りる相手はいないのか?」

身体を引きずり、ゾッドに迫る王蛇の動きが止まった。

「俺にはいる。求めし敵が。貴様にはいないのか、必ずこの手で降すと心に決めた敵が?」
「それがどうした?お前に関係あるのか?」
「そやつを殺さずして、この場に屍を晒すのがお前の望みか?」

やや間を置いて、紫の甲冑が消える。
中から現れたのは、蛇皮のジャケットに身を包んだ痩身の男。
彼はゾッドを睨みつけるも、言葉を発する事無くアスファルトに背中をつけた。

「宿敵がいるなら、お前は生きなければならない。そも、お前の鎧でサーヴァントと打ち合う事は出来ん」
「…あぁ、つまらん」

ゾッドはため息をついて、威を肩に担ぐ。
軽くない傷を負っている彼は定職についておらず、医者にかかれる資産を持っていない。
本人の回復力が頼みだ。これで死ぬならその程度の男だったのだろう。
一人の英霊にも出会わず退場するのは不本意なので、サーヴァントの在り方に従い、ゾッドは彼を保護する。

当のゾッドも、最初に現界したときは随分と困惑した。
死んだ記憶がないのに、なぜ招かれているのか?もっともらしく推論するなら、自分は「捧げた」時点で死んだとみなされたのだろう。
だが、どうでもいい。同じようにクラスを宛がわれた者たちは、使徒よりも自分を満たしてくれる強者のはず。

マスターも、悲観するほど外れでもない。
魔力に乏しいのは残念だが、この男の契約下でなら、気兼ねなく暴れられるだろう。
これほど戦いを予感させるマスターは、おそらく二人といない。


301 : 浅倉威&セイバー ◆0080sQ2ZQQ :2018/03/28(水) 20:08:14 nuWyEg.Q0
【クラス】セイバー

【真名】ゾッド

【出典】ベルセルク

【性別】男

【ステータス】筋力A 耐久B 敏捷B 魔力C 幸運D 宝具EX

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
対魔力:C
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

騎乗:D
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。

【保有スキル】
無窮の武練:A
 ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。心技体の完全に近い合一により、いかなる地形・戦術状況下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。
 ミッドランドの傭兵の間で神とすら謳われる、戦場の伝説。

狂喜:B
 戦場における異常なまでの精神高揚。戦闘中、威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する。
 また痛覚などのバッドステータスによる行動制限を受けない。
 思考能力の低下等は無いが、ゾッドは強敵との仕合を何よりも楽しみとし、邪魔するならマスターにさえ気概を加えるだろう。

戦闘続行:A+
 霊核が破壊された後でも、最大5ターンは戦闘行為を可能とする。
 使徒としての高い再生力と、戦闘を好む気質の相乗効果。

単独行動:B
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。


【宝具】
『神約・不死の魔獣(リインカーネーション・ゾッド)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
 超越的な力を呼び出し、大切なものを捧げて手に入れた魔として生命。
 開帳する事で使徒としての形態に移行し、蝙蝠の翼と雄牛の両足を持つ悪魔のような巨躯に変貌。
 展開中は筋力と耐久が1ランクアップし、Bランクの飛行スキル、再生スキルを獲得。
 あらゆる負傷を瞬時に治癒しながら敵を蹂躙する戦力を得るが、マスターに相応の魔力消費を強いる。



【weapon】
無銘:大剣

【人物背景】
ミッドランドの傭兵の間で、神のように語られる戦士。
その正体は使徒。強者を求めて300年以上戦場をさまよっていた彼は、鷹の団の団長グリフィス、切り込み隊長ガッツと出会う。
グリフィスの持つ真紅のベヘリットと彼らの絆に興味を抱き、死の予言を残してその場を去った。

自らの上位たるゴッドハンドに忠実な半面、自分と同じ使徒達を軽く見ている部分がある。
ゴッドハンドと敵対する髑髏の騎士を好敵手とみなし、人の身で蝕を乗り越えたガッツとの戦いを望む戦闘狂。


【聖杯にかける願い】
英霊との心躍る戦い。


302 : 浅倉威&セイバー ◆0080sQ2ZQQ :2018/03/28(水) 20:09:01 nuWyEg.Q0
【マスター名】浅倉威

【出典】仮面ライダー龍騎

【性別】男

【Weapon】
「王蛇のデッキ」
コブラ型ミラーモンスター「ベノスネーカー」と契約済みのデッキ。
鏡にかざす事でベルトが出現。仮面ライダー王蛇に変身する事が可能。
サーヴァントを倒す事は出来ないが、高い身体能力と鏡の中の世界を出入りする能力は他のマスターにとって大きな脅威となるだろう。


【能力・技能】
「サバイバリスト」
類まれな頑健さを誇り、トカゲを焼いて喰い、ムール貝を殻ごと食べるほど悪食。
近くにいたライダーを盾に、敵のファイナルベント(必殺技)を防ぐなど並外れた直感の持ち主。


【人物背景】
関東拘置所に拘置されていた殺人犯。
常に苛々しており、殺人と暴力に明け暮れている。
その攻撃性から、仮面ライダー同士のバトルロイヤルを運営する神崎に戦いの潤滑油として見出された。
神崎の狙い通り、ライダーを次々と殺害しながらも、自分を無罪に出来なかった弁護士にしてバトルロイヤル参加者の北岡秀一を追い回し続けた。

王蛇のベルト入手後から参戦。

【聖杯にかける願い】
脱出して北岡を殺す。その過程で聖杯戦争を楽しむ。


303 : ◆0080sQ2ZQQ :2018/03/28(水) 20:09:44 nuWyEg.Q0
投下終了です。鱒、鯖、本文は改変自由。好きに使ってください。


304 : ◆0080sQ2ZQQ :2018/09/13(木) 19:27:49 nfDh87B.0
投下します


305 : アルヴィス&バーサーカー ◆0080sQ2ZQQ :2018/09/13(木) 19:28:22 nfDh87B.0
綿のような雪が降る、夜のハイウェイ下。
寒さをものともせぬ若者が起こす喧騒から、逃げるように離れていく一人の男がいた。
日本人ではない。壮年男性だが顎のラインはすっきりとしており、眼差しは鋭く、鼻筋の通った美男子だ。
なにより目を引くのは髪。炎のような紅髪が頭頂から肩に向かって、豊かに波打っている。

「もし…」

男――アルヴィスはハッとしたように振り向いた。
振り返ると、その場に立っていたのは着流しの若い何者か。番傘で降り続けている雪を遮っている、傘を持ち上げる。
若い男だ。腰に太刀を佩いている。

「参加者ですね?どうぞ一仕合」

アルヴィスは無言で頷く。
ここは本来、彼がいるべき土地ではない。本来いるべきはもっと文明レベルの低い、グランベル大陸。
若かりし頃、国を簒奪するべく手を組んだ邪教徒どもの手により、死につつある都市を成す術なく眺めていたはずだった。

万能の願望器、聖杯。
その名を知り、アルヴィスは心動かされた。後悔があり、願いがある。
奇跡を掴む勝者を決める聖杯戦争なる奇怪な催しに招かれ、アルヴィスは夜な夜な敵を求めてさまよっていたのだ。

2人は黙々と歩き、やがて国道に面した神社にやってきた。
開発された街の中、忘れられたように佇む朽ちた神殿。鬱蒼と生い茂る林。

「さ、ここならば問題ないでしょう。英霊を呼びなさい」
「貴様の主人はどこだ?」
「ここにはいませんよ、寝床で震えている間に終わらせてくれと…フフフ、ありがたい事です」

アルヴィスは問答は無駄と決め、契約したサーヴァントを呼ぶ。
現れたのは壮年の東洋人男性。一言で言うと、浮浪者のようだった。
金のメッシュが入った癖毛は肉食獣の体毛を思わせ、目は白く濁っている。
黒系統の衣装に、金属の帯が出し抜けに浮かび上がった。臍の上に位置するバックル部分から柄が2本、髭のように伸びており、金メッシュの男は片方を捻った。

「…アマゾン」

炎熱が両者の間を薙ぎ払った。
冷気が解けると同時に、甲冑のような赤い鱗で全身を覆った怪物が姿を現した。
バーサーカーが宝具を開帳したのだ。

「■■■――!!」

 赤の怪物は吼える。
獲物の到来を喜んでいるとも、殺し合いを強いられた我が身を嘆いているともとれる不思議な音色だ。
少なくとも、着流しのセイバーは喜んでいた。

「鬼殺しか、面白い」

セイバーは流れるような動作で抜刀するや、バーサーカー目がけて踏み込んだ。


306 : アルヴィス&バーサーカー ◆0080sQ2ZQQ :2018/09/13(木) 19:28:53 nfDh87B.0
【クラス】バーサーカー

【真名】鷹山仁

【出典】仮面ライダーアマゾンズ

【性別】男

【ステータス】筋力A+ 耐久C 敏捷A 魔力C 幸運E 宝具B(アマゾンアルファ)

【属性】
秩序・狂

【クラススキル】
狂化:C
 耐久と幸運を除いたパラメーターをランクアップさせるが、言語能力を失い、複雑な思考が出来なくなる。

【保有スキル】
心眼(偽):B
 視覚妨害による補正への耐性。
 第六感、虫の報せとも言われる、天性の才能による危険予知である。

戦闘続行:B
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
 ガトリングで撃ち抜かれようと、致死毒の中であろうと仁は戦闘を続けることが出来る。

単独行動:B
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。
 愛した女性を、血を分けた息子を葬ろうと止まる事の出来ないその生き様。

食人鬼狩り:B
 食人の逸話を持つ英霊・マスターなどに対するダメージ値を増加させる。
 人を食うのであれば、純粋な人間も例外ではない。

不殺:-
 人間は殺さない、というコード。生前に捨てた為、ランクを喪失している。
 精神耐性を保証するスキルであり、これがある事で狂化のランクが高くなり過ぎない。


307 : アルヴィス&バーサーカー ◆0080sQ2ZQQ :2018/09/13(木) 19:29:16 nfDh87B.0
【宝具】
『始まりの男が行くのは無限の荒れ野(アマゾンアルファ)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:自身
 アマゾン、という人食いの新生物の始まりであることを示す宝具。
 英霊となった事で、半神や魔獣、サイボーグなどを除く「純粋な人間」に対して、殺害特権を所持するに至った。
 ニンゲンと対峙した際、敏捷判定と耐久判定の成功率が自動的に大きく上昇する為、有利に戦闘を行う事が可能。

 下記のアマゾンドライバーを用いる事で、異形に変身する事が可能。
 変身時に放つ熱風は、戦況を仕切り直すほどの威力を誇る。変身後は兵器化した肉体を用い、徒手空拳で敵を圧倒する。
 視力を失った状態で現界している為、体術を十全に振るう事が出来ず、代わりに攻撃を繰り出した相手を掴み、捕らえてから仕留めるスタイルをとる。


【weapon】
「アマゾンドライバー」
仁をアマゾンアルファに変身させるベルト型ツール。
生前とは異なり、意識するだけで腰部に呼び出すことが可能。
左のグリップを捻る事で、変身機能が発動。戦い漬けの日々を送った為か、バーサーカーとして狂気に沈んだ後もスムーズに変身動作を行う。


【人物背景】
野座間製薬特殊研究開発本部に勤務していた細胞生物学者。
食人細胞「アマゾン細胞」の危険性に気づき、実用化に反対していた彼は、アマゾン細胞から生まれた実験体の出奔を機に後天的にアマゾンとなる。

豪放磊落な態度とは異なり、責任感が強く、誕生に関わったアマゾンに対しても自責の念を抱いている。
しかし、危機管理能力は低いと言わざるを得ない。
アマゾンを滅ぼすトラロックガスが散布された街に飛び出し、狂乱のまま我が子ともいえるアマゾンに襲い掛かる。
その結果、理性が崩壊した彼は人間に感染するアマゾン細胞、溶原性細胞に纏わる災厄の幕を開けてしまう。

溶原性の災厄が終わった後、彼の細胞から畜産化された草食アマゾンが生み出される。
最後はニンゲンとアマゾンの間に立つ青年によって討たれたという。



【聖杯にかける願い】



308 : アルヴィス&バーサーカー ◆0080sQ2ZQQ :2018/09/13(木) 19:29:49 nfDh87B.0
【マスター名】アルヴィス

【出典】ファイアーエムブレム聖戦の系譜

【性別】男

【Weapon】
「なし」

【能力・技能】
「ファラの末裔」
グランベル大陸に自由をもたらした十二聖戦士の末裔。
神器ファラフレイムの魔導書の担い手である魔道士。今回の聖杯戦争には持ち込めなかった。

【人物背景】
グランベル王国を構成する七つ公国の一つ、ヴェルトマー公爵家の当主。
若かりし頃、暗黒教団「ロプト教団」を利用し、グランベル王国の乗っ取りを画策。
実権を握り、初代グランベル帝国の初代皇帝となるも、全ては本尊である暗黒神ロプトウスを復活させる教団の企みだった。

息子ユリウスがロプトウスの化身となるや実権を奪われ、傀儡皇帝となってしまった。
最愛の妻ディアドラを息子に殺された彼は、かつて葬ったシグルドの息子が解放軍を率いて帝国と戦っていると知ると、神器である聖剣ティルフィングと共にユリウス打倒を彼に託そうとした。

セリスに討たれる前から参戦。


【聖杯にかける願い】
叶うなら、失った家族を取り戻したいのだが…。


309 : ◆0080sQ2ZQQ :2018/09/13(木) 19:30:17 nfDh87B.0
投下終了です。鱒、鯖、本文は改変自由。好きに使ってください。


310 : ◆lkOcs49yLc :2018/09/23(日) 07:29:48 PmL7ZFRM0
貯め込んでいた作品を一つ投下します。


311 : ◆lkOcs49yLc :2018/09/23(日) 07:30:48 PmL7ZFRM0
カタカタと、PCのキーボードを叩く音が淡々と響く。
殺風景なマンションの一室で、卓上のコンピュータを女性刑事、霜月美佳は動かし続けていた。
このPCで行っている作業は、文書作成ソフトによる資料の作成であった。
パソコンの性能は美佳が生まれる前―美佳の生まれた時代にブルーレイディスクを使っていた最後の世代は絶滅危惧種にある―なので、効率に文句はあるが、これでも十分書ける。

「はぁ……。」

作業を終えた美佳は、腕をうんと伸ばした後、シャワーを浴びる。
シャワーを浴び、肩にかけたタオルでまだ湿っている頭を拭きながら、リビングのテーブルに目を向ける。
美佳から見て右手前にある椅子には、外国人の屈強な男性がどっしりと座り込んでいた。


「どうだ、警官としての仕事は。」
「……まだ足りない。」
「足りない……何がだ。」

不満げに漏らす美佳に対し、男は眉をひそめて問う。
それに同じくして彼女もまた眉をひそめる。

「決まっているじゃないですか……この国の、犯罪者の増加量の事ですよ。」
「私のいた世界と比べれば、随分と平和的な時代ではあるのだが。」
「だったら何であんなに未解決事件が増えているんですか!!」

美佳の感情の爆発が白い部屋中に響き渡る。
男はその硬い表情を少し引き締める。

「この前起こった事件もそう……状況的証拠は残っているのに……容疑者は未だ禄に炙り出せていない。」
「………。」
「でもシビュラがいれば違った。シビュラさえあれば……こんな些細な事件……直ぐに解決出来たのに……!!」
「……ふむぅ。」

霜月美佳のいた世界には、犯罪を取り締まる神の如きシステムが存在していた。
その名も『シビュラシステム』、人間の心理状態を数値化し、犯罪を行いかねない危険な人物を全て取り締まり、更には人々の将来をも決めてしまう、正に理想的なシステム。
元となっているのは心が濁らない性質の者達だが、そんな彼等が、こうした、誰もがシビュラに依存しても問題なく過ごせる理想的な世界を構築している。
多くの英雄が依存され、信仰されていく中、その栄光とともに彼等は皆滅びているが、シビュラだけは、この栄光も寿命も全く縮めない、永久不滅の英雄にして指導者なのだ。
そんなシビュラシステムのない世界……犯罪者が片っ端から摘発されず、のうのうと生きていられる罪人が数多くのさばっている、旧世紀の世界こそが、彼女の招かれた場所であった。

「とてもじゃないけど、許せないわ、こんな世界は。」
「……成る程。」

その言葉に、男はうむ、と頷くだけだった。
しかし美佳はまだ吐きかけた感情が蹲らない様な、まだ眉間の皺が残っているような表情のままだったが、それをひと目見て男は話題を変える。

「それでミカ君、君はこれから、聖杯を破壊する方針で行くのか。」
「召喚時にも言いましたけど、そのつもりで行きます。」

先程の鬱屈とした感情を残した雰囲気から一点、美佳は言葉を続けるが、それから徐々に目がキラキラと輝いていった。

「恐らく、近頃多発している未解決事件の中にも、サーヴァントの仕業と考え得る可能性はあります。
もしそれが見つかれば、私はそれを行った主従を倒します。その時にはランサーさん、貴方にも協力して貰います。」

自身のサーヴァント……ランサーに頼み込む美佳の目つきと声の抑揚は、まるで猟師が猟犬に獲物を食わすように支持する様であった。
しかしそんなことは意に介さず、ランサーはそれに頷く。

「分かった、私は君のサーヴァントだ。それに従おう。」

美佳はそれに微笑む様にして頷く。
彼女の方針は脱出―ではなく、聖杯の破壊。
聖杯戦争、万能の願望機。
キリストの血を注いだ杯が聖遺物として残り、それが願いを叶えるというのは、嘗てミッション系の女学校に通っていた美佳からしても、俄に信じがたい話であった。
それに、公務に没頭していられる使命を全うしているだけの自分に、そういった願いはない。

―あるとすれば……常守先輩を……
自分を目障りに照らしつける彼女の姿が一瞬浮かんだが、直ぐに打ち消す。
それに、問題は願いがどうとか、そういったものではない。
それが、自分と同じく無差別に巻き込まれた人間を戦いの渦に巻き込み、願望と言う欲望に心を濁された輩に殺されてしまいかねない事と言うことだ。
こうなってしまっては、正義も何もあったものじゃない。

―この舞台の秩序でさえそうだもの、だったら、私が執行(ドミネート)するまでよ。

だからこそ、自分が止める。自分のこの手で、眼の前のランサーで、止めてみせる。




● × ● × ● × ● × ●


312 : 霜月美佳&ランサー ◆lkOcs49yLc :2018/09/23(日) 07:32:23 PmL7ZFRM0


――成る程、若く純粋で正義感に満ち溢れた女性だ。

だからこそ、自分は召喚に応じたのだろう。
ランサーのサーヴァント、ガドヴェド・ガオードは内心そう考えた。
聞けば、このマスター、霜月美佳は、国の秩序を守る名誉有る立場にある人間……『監視官』と呼ばれるらしい職業に就いていたとか。
それは宛ら、嘗てガドヴェドも所属していたオリジナル7に良く似ている。最も、此方は完全に錆び果ててしまっているのだが。

―だからこそ、私は彼女を見極めなくてはならない。

彼女を通して答えを知る。その為に、ガドヴェドはこの聖杯戦争に喚ばれたのだ。
囚人惑星の秩序を管理するオリジナル7。
その役割を与えられた時、ガドヴェドは誇らしげに思い、この星をより良い世界にしようと考えていた、若い理想に燃えていた。
だが、その夢は果てしなく遠いものであった。
秩序の楔と成り得た誇り高き称号を持つ者は、今となってはヨロイを暴力として振りかざし、権力で好き勝手暴れ放題の無法者揃いであった。
そして彼等も次第に死に、気がつけばオリジナル7と言う存在すら忘却の彼方へと飛んで消えた。

そんな時に、ガドヴェドは同じく平和を願う『同志』と出会った。
同時に、オリジナル7の機体の研究を行っている女性と出会った。
何でもない、只の馬鹿と出会った。

それこそが悲劇の原因だった。
女性は同志に殺され、怒りに燃えた男は復讐の旅に出た。
故にガドヴェドは迷った。
同じ夢を持つ同志を信じ、悪を断罪するか、仲間を殺めた同志を裏切り、贖罪するか。
迷いに迷って戦った結果、自分を破ったのは馬鹿を貫いた、あの何でもない只の馬鹿だった。

―あの後、奴は同志を倒した、と聞いている……彼女の残した、あの機体で。

彼ならやってくれる、座の知識で識ったその経過を見返して真っ先に浮かんだ言葉がそれであった。

―しかし、これで本当に良かったのか。

幸せの時が頓挫して、相も変わらず世界は昏く周り続けている。
死んでいった同胞達は、これを良しとするのだろうか。
計画の要と成り得たあの少年は、果たしてどの様に思うのだろうか。

このマスターは、あの少年……ミハエルとよく似ている。
彼もまた、若き理想に燃え、邁進していた期待溢れる人間であった。

美佳の唱えるシビュラシステムに対する言いようは、正に同志の夢の誕生を共に願う自分達のそれに似ている。
形こそ違えど、人々が幸福に過ごせる理想郷(ユートピア)を求める気持ち、それは互いに同じであった。

このマスターは、詰まる話自分達の生き写しなのだ。
彼女の求める正義の果て……それは彼が、同志達が求めた、あの幸せの時に生きる人々のそれに近い。
故に、ガドヴェドはここへ来た。自分の信じ続けてきた夢の正しさを、もう一度確かめるために。
例えそれが、馬鹿の意地と比べれば遥かに脆く折れやすい物だとしても。
霜月美佳の正義は、裁かれるべきなのか、それとも肯定されるべきなのかを。
この戦いからの脱出の過程で、自分の正義の在り処を探す、探してみせると。
まっすぐに進み続ける若き執行者の行く先を、迷える老いた執行者は追い求める決意を改にした。


313 : 霜月美佳&ランサー ◆lkOcs49yLc :2018/09/23(日) 07:33:27 PmL7ZFRM0




【クラス名】ランサー
【真名】ガドヴェド・ガオード
【出典】GUN×SWORD
【性別】男
【属性】秩序・中庸
【パラメータ】筋力C 耐久E 敏捷D 魔力D 幸運C 宝具D

【クラス別スキル】

・対魔力:D
魔力に対する耐性。
魔除けのアミュレット程度。

【保有スキル】

・オリジナル7:A
エンドレスイリュージョンを管理する、七人のヨロイ乗りの称号。
改造によって生体電流を強化し、ヨロイを意志で操ることが可能。
『悪』に対し様々な補正が掛かる他、改造によって治癒能力が高まっている。
『ヨロイ乗り』『自己改造』『処刑人』『生体電流』等様々なスキルが合わさっている。

・心眼(真):B
修行、鍛錬によって培った洞察力。
窮地に陥った際、自身と敵の戦力を冷静に分析し、逆転のチャンスを手繰り寄せる戦闘論理。

・勇猛:B
威圧、混乱、幻惑等の精神攻撃を跳ね除ける。
また、格闘ダメージを増強させる効果もある。

【宝具】

『二日目の目覚め・悪魔の斧(ディアブロ・オブ・マンデイ)』
ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:1〜3 最大捕捉:100人
ランサーが生前駆った旧オリジナル7のヨロイ。
専用のトマホークを振るう事で上空から斧の形で飛んでくる(因みに生前は人工衛星「サテライトベース」から飛ばしていた)。
着陸し人型に変形、それにランサーが搭乗し『ウェイクアップ、ディアブロ』と唱える事で起動する。武器は斧。
スキル『オリジナル7』の効果により魔力をGE-R流体に変換させることで動く。
尚、ランサーは生前このヨロイのエネルギーと人工心臓をリンクさせていたため、定期的にこの宝具に乗らなければ身体を維持できないというデメリットスキルを有す。
長い間ディアブロに乗っていない場合、ランサーは高熱を出し禄に動けなくなる。
その代わり、このディアブロに乗れば直ぐに傷も癒やされる、この機体は正に、ランサーと一心同体なのである。

【Weapon】

『斧』
宝具の起動キーにして操縦桿。
普段は銃の様に腰に挿してあるが、引き抜くことで斧となる。
これ自体にもそれなりの殺傷力はある。


【人物背景】

宇宙の吹き溜まり、囚人惑星エンドレスイリュージョンに生きる者。
囚人を管理し惑星の秩序を守る『オリジナル7』の一人であり、改造を受けた者としては最後の一人。
女性科学者エレナと共にオリジナル7の一つであるダン・オブ・サーズデイの実験を行っており、そこで何でもないただのヴァンと出会う。
ヴァンにオリジナルの素質を見出したガドヴェドとエレナは、ヴァンに社会の常識を教え飯を食わせながらもダンのデヴァイサーとして実験させる。
その際無我の境地に至れば解けるパズルをプレゼントしている。
その裏ではカギ爪の男と内通しており、ガドヴェド自身、エンドレスイリュージョンの今を憂いている節があり彼の思想にも共感していた。
勿論彼が、エンドレスイリュージョンの秩序の証たるオリジナル7を求めていることも知っており、その結果エレナとヴァンの結婚式で二人が殺されると言う羽目になる。
エレナの命を擦り減らしての改造手術でヴァンは一命を取りとどめたが彼女は死に、ヴァンはダンと共に復讐の旅へと出る。
その後もガドヴェドはカギ爪の男の組織の幹部たるオリジナル7の一人として彼の夢の為に行動するが、同時に罪の意識に苛まれており、迷い続けていた。

【聖杯にかける願い】

聖杯からの情報によってヴァンがカギ爪の男を倒したことを知っているため、願いは持たない。
だが、彼女の行動を行く先によっては、再び幸福の誕生を求めることも吝かではない。


314 : 霜月美佳&ランサー ◆lkOcs49yLc :2018/09/23(日) 07:36:13 PmL7ZFRM0


【マスター名】霜月美佳
【出典】PSYCHO-PASS 2
【性別】女

【Weapon】

ドミネーターは持ち込めていない。
あると言えば警官の標準装備。

【能力・技能】

・監視官
監視官としての指揮能力、捜査能力。

【人物背景】

シビュラシステムに管理された近未来の秩序を守る、公安局刑事課の監視官の一人。
元はミッション系の女子学園の生徒だったが、マドンナが芸術作品にされて死ぬと言う事件に巻き込まれた経緯を持つ。
先輩監視官である常守朱とは対象的にシビュラシステムに心酔しており、やはりというか執行官に対しては割と冷たい。
最も、この世界においては寧ろそのような感性が常識的ではあるのだが。
それでも本質的には生真面目で正義感の強い性格。
本編終了後からの参戦。

【聖杯にかける願い】

聖杯の破壊、命を奪った輩は殺す。


【把握資料】

・ランサー(ガドヴェド・ガオード):
基本的な出番はテレビ本編10〜12話ですが、15〜16話で彼の過去が描かれています。

・霜月美佳:
テレビ本編全12話、コミカライズ版全5巻。


315 : ◆lkOcs49yLc :2018/09/23(日) 07:46:03 PmL7ZFRM0
続いて投下します。


316 : 真戸呉緒&ライダー ◆lkOcs49yLc :2018/09/23(日) 07:48:05 PmL7ZFRM0




「これで良いのかな?」

コンクリートの様な真っ白な空間。
大きな六角形を背景に、かのパキケファロサウルスを思わせる様な頭を形どった黒い巨大ロボが佇んでいた。
ロボットのコックピットには、二人の男性が座らずに入っていた。
その内、灰色のコートを着た男性、真戸呉緒がコックピットから降りる。

「ああ、それで充分だ。これで我が愛馬にアルドノアの光は宿る。」

真戸がコックピットから出て直ぐ隣にある柵を飛び越えた直後に、もう一人の男も柵に乗り移る。
出てきたのは、灰色のコートを着てゾンビじみた顔立ちをしている真戸とは対象的に気品に溢れる男だった。
右手にはステッキを手に取り、紅いスーツを着こなしながらも男性は慣れた足つきで柵へと飛び移る。
気品に溢れる貴族風の男性は、真戸のサーヴァント、クラスは騎乗兵(ライダー)。
真名はザーツバルム、火星帝国ヴァースが37家門に連なる伯爵位にして、地球と火星の戦いを煽動した反英雄である。

(これで、宝具の動力源は賄えるか)

ライダーの宝具「皇権が放つ紅い星の光(アルドノア)」。
嘗てヴァース皇帝が、誇り高き37家門の貴族達に、火星人の叡智たるアルドノアの力を与えた逸話の具現化。
アルドノア。
それは、嘗て火星にて掘り起こされた永久機関であり、未だにシステムは解明されぬ、火星のロストテクノロジー。

(まさか、起動権がマスターの手に委ねられるとは……サーヴァントにとって、伝承とやらは随分と不便な物だな……)

アルドノアは、その力に選ばれたヴァース皇帝、そして彼のDNAを受け継いだ人間のみが起動する力を有していた。
しかし、サーヴァントの宝具として昇華された今では、その限りでは無い。

(ヴァース皇帝にアルドノアを起動して頂いた逸話……恐らくはそれか)

自分で起動することはままならなかったが、今ではマスターが起動してくれている。
今隣にいるマスター…クレオは、自身には協力的な姿勢を見せている。
義理のない地球人に手を貸すのは気に食わないが、レムリア皇女を傀儡としていた頃と比べれは、ずっと心地は良い。
そういう点では、伝承に感謝、と言うべきかもしれない。

先程マスターにアルドノアを起動して貰った機体(あいば)に目を向ける。
ライダーが手繰るカタフラクト「ディオスクリア」。
ザーツバルムが騎乗兵のクラスたる象徴の一つ。
しかしライダーは、今目の前にあるのが、旧ディオスクリアの核となっている本機。
Ⅱではオミットされていた合体機能が、弱体化される形で復活していたのであった。

(Ⅱを持ってくることは出来なかったか……)

自身と運命を共にした頃のディオスクリアⅡを思い返す。
ディオスクリアは、他の貴族達の機体のアルドノアドライブのテストを行っていた機体であるが故に、多種多様な武装を有している。
ビームサーベル(の抜☆刀)、腕(と言う名の眷属達)の射出及び遠隔操作、バリア、透明化、雷撃……
ありとあらゆる機能を有したこの機体でなら、大抵の敵は退けられるだろう。

―問題は、未だ改善されぬ弱点か。

どんな機能にも穴は有る。
其処を界塚伊奈帆に突かれた結果、ディオスクリアは大敗を喫した。
スペックでは圧倒しているはずだ、と思ったのが、自身の最たるミスであろうか。

それを改善したのがディオスクリアⅡ。
弱点は実戦では突かれていたが、それでも敵に裏を掻かれない様にするには十分な機体だ。
全体的な性能もディオスクリアよりは上だ、それこそ暗殺でもされない限り大抵の敵は寄せ付けないだろう。

考えても結果は出ぬか、と其処は一旦諦める。
例え全力が出し切れなくとも、自分は此処で止まるわけには行かないのだから。

(おのれ……妻では飽き足らずスレインまでも……)

聖杯からの記憶。
其処で養子たるスレイン・トロイヤードが、我々軌道騎士達を苦戦させた界塚伊奈帆に倒されたと言うのは聞いている。

(ましてや、それで和睦……だと……)

ならば、月はどうなる。
ヘブンズフォールで死んでいった妻はどうなる。
恩人の子にして己が養子たる彼はどうなる。
今までの戦いは、一体何だったのだ。
ザーツバルムは、それを許すことが出来なかった。

(ならば良いだろう、地球、そしてヴァースの民達よ。
未だに遺る我が憎悪、我が怨念の光で、汝らが身勝手に望んだ平和とやらを焼き尽くしてご覧に入れようではないか。
その為にこのザーツバルム、ライダーのクラスを以ってこの戦いに馳せ参じたのであるからな!!)

―聖杯は手に入れる。
妻と子の無念を晴らすために。
そして、旧きヴァースの社会を打破するために。
アルドノアの光をも凌駕するであろう聖杯の力で、我が望みを叶えんとせん。


317 : 真戸呉緒&ライダー ◆lkOcs49yLc :2018/09/23(日) 07:48:40 PmL7ZFRM0


「待たれよ、我がマスター。」

ふと、ライダーはマスターについて気になる面があった。
真戸呉緒と言う人間がマスターであることについて、ライダーは特に大きな不満は無かった。
強いて言えば、彼が地球人である事ぐらい、の物だ。
また、彼のマスター適性は底辺だが、しかしアルドノアの光はそれすらもカバーしてくれる。
魔力消費と言える物が機能するのは、せいぜいが機体の修理や手駒となるステイギスの生成ぐらいの物だ。
マスター等特に気にしない。

だがそんな手駒としての見方では無く、もう少し感情的な理由で、ライダーは気になることがあった。
ふむ、と首を傾げる真戸に対し、顰めた表情でライダーは問う。

「貴殿は聖杯に、一体何を望む?」
「ふむぅ……何を、か。」

その言葉を聞き、真戸は口元を歪める。
分厚い革の手袋で包まれたその左手を置きながらも、クックックッと笑って見せる。

「クックックック………」
「……何か、気に触ることでも言ったかな?」

ライダーは不気味だ、と言う感想を覚える。
スレインが以前アセイラム姫に教えていた地球の文化の一つに、死霊(グール)と言う伝説があったのを思い出す。

「いや、済まない、つい癖でね。しかし私の願い、か……。」

真戸の笑顔が濃くなる。
それに比例して、ライダーの眉間の皺も濃くなる。
しかし真戸は飄然とした態度で首を左手で擦りながらも問いかけに応じる。

「そうだなぁ……話すと長いが……一言で表すとすれば……『ゴミ掃除』と言った方が宜しいかな?」

真戸にもまた、この戦いにてかけたい願いがあった。
元の世界で、彼は上官たる妻を喰種(グール)に殺された。
故に喰種(ゴミ)を憎み、喰種(クズ)を消せるだけの掃除道具(クインケ)を探したがるようになって10年。
持ってこられたクインケは、残念ながら此処に来る直前、ラビットと戦った際に振るった夫婦だけだった。

他の20種が惜しいなぁとは思うが、現状ではクインケは殆ど意味を成さない。
サーヴァントを相手取れそうな武器は、強いて言うならライダーの保有するロボット兵器ぐらいの物だ。
此処で勿体ぶってもしょうがないだろう、折角のコレクションが

「つまり、聖杯を以って、そのゴミとやらを取り除きたいと?」
「そうだとm…いや、そうだとも限らないか。」

口を窄ませるライダーに対し、真戸は変わらず戯けた口調で、口をニィと歪めてみせる。
成る程、聖杯の力を以って、喰種を一掃する、と言うのも悪くはないのかもしれない。
だが、その前にどうしても殺りたい事が、彼には一つだけあった。
真戸呉緒が願うもう一つの願い。

(―待っていろよ、『隻眼の梟』……今度こそ、私の手で貴様をクインケにしてやる……)

亜人種を憎んだ男と、蒼き星を憎んだ男が立つは、天空に浮かぶ城の中だった。
これこそがザーツバルムを始めとする火星貴族が所有する宝具たる「揚陸城」である。
天空に聳え立つこの拠点から今、彼等の第二の怨戦は幕を開こうとしていた。


318 : 真戸呉緒&ライダー ◆lkOcs49yLc :2018/09/23(日) 07:50:04 PmL7ZFRM0


【クラス名】ライダー
【真名】ザーツバルム
【出典】ALDNOAH.ZERO
【性別】男
【属性】秩序・悪
【パラメータ】筋力E 耐久E 敏捷E 魔力D 幸運C 宝具C

【クラス別スキル】

・対魔力:E
魔力に対する耐性。
単なるお守り程度の物。

・騎乗:C
乗り物を乗りこなす才能。
大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせる。

【固有スキル】

・軍略:B
多人数を動員した戦闘による戦術的直感能力。
対軍宝具の行使、対処に補正が掛かる。

・カリスマ:E
人々を率いる天性の才能。
志を同じくする物に対する人望。

・話術:B
言葉を操る才能。
弁論や交渉に補正が掛かる。

【宝具】

「皇権が放つ紅い星の光(アルドノア)」
ランク:C 種別:対機宝具 レンジ:- 最大捕捉:1
ライダーがヴァース皇帝から賜った力。火星人が遺したオーバーテクノロジー。
無限に魔力を生成する事が可能な永久機関。これは、そのアルドノアの所有権であることが宝具として昇華された物である。
後述の宝具の揚陸城や、ディオスクリアのエネルギー源を担っており、お陰で消費魔力は低い。
また、このアルドノアは、「ヴァース帝国の血を持つ者が起動権を握っている」という逸話から、マスターの命令により初めて起動が可能となる。
ただし、起動権はライダーと魔力供給バイパスが繋がっているものが有している為、ヴァース一族の様にマスターと同じDNAを有していても起動することは出来ない。

「憎き星貫く楔城(ザーツバルム・グランドキャッスル)」
ランク:D 種別:対城宝具 レンジ:50 最大捕捉:1000人
ライダーが所持している揚陸城であり、地球における彼の拠点、これを召喚する。
ヴァース帝国37家門の伯爵位以上は全員この宝具を所持している。
上空に浮かべて移動させることも出来る他、地面に打ち付けることで変形、ライダーの陣地とする事が可能。
陣地となった時にはバリアや弾幕を張ることが可能となる。
更にこの宝具の特徴は、彼が生前愛用していたカタフラクト「ディオスクリア」が格納されていることである。
輸送用戦闘機「スカイキャリア」、量産型無人カタフラクト「ステイギス」等も大量に格納されている。
ディオスクリアは基本的には城内に格納されており、其処では魔力によるダメージの修復が可能となっている。
移動などに使う魔力は「アルドノアドライブ」と呼ばれる永久機関が担っており、燃費に問題はない。
本来、この宝具の操縦はオペレーターが行っていたが、その必要もなくなっている。


319 : 真戸呉緒&ライダー ◆lkOcs49yLc :2018/09/23(日) 07:50:29 PmL7ZFRM0

【Weapon】

「ディオスクリア」
ライダーが生前に搭乗した人型兵器「カタフラクト」。揚陸城に格納されている。
魔力は「アルドノアドライブ」が担っている為、大きさに不相応な程には燃費は低い。
ライダーが搭乗するコアユニットは、両肩に装備されたミサイルランチャーと、両手に隠されたビームサーベルが武器で、飛行形態にも変形可能。
アルドノアドライブの固有能力は「電波ジャック」。対象の通信電波を解析し、傍受することが出来る。
その他、「眷属」と呼称される遠隔操作で動く数体ものユニットで構成されており、数の暴力を利用した戦術も発揮できる。
更に、全てのユニットと合体することで一回り巨大な重装甲型ロボットへと姿を変える事が可能で、この姿になって漸く本領を発揮できる。
合体形態では、電磁バリア、ビームサーベル、オールレンジ攻撃用アーム、装甲の単分子化等、多彩な装備を振るうことが可能となる。
これはこの機体が殆どのアルドノア搭載型カタフラクトの試作型であり、多くのカタフラクトの機体の装備を搭載されていたおかげ。
ただし、バリアにも遠隔操作アームにも弱点は存在するため、決して無敵ではない。
キャスタークラスでないためにそれを改善した「ディオスクリアⅡ」には改造できず、其処が大きな穴となっている。

「ステイギス」
火星軍が使用している量産型カタフラクト。同じく揚陸城に大量に格納されている。
AI制御で機能しており、ライダーの出したコマンドのままに動く。
大破しても新たに作ることが出来るが、相応に魔力は喰う。

「スカイキャリア」
火星軍が所持している輸送型戦闘機、コウモリに近い形状をしている。
偵察機、或いは脱出装置としての役割も果たす。

・その他、ステッキや護身用の銃を所持している。

【人物背景】

ヴァース帝国37家門に属する貴族の1人であり、アルドノアドライブを応用したカタフラクトを早い時期から使用していた軌道騎士。
嘗ては火星の繁栄の為に動いていたが、妻がヘブンズフォールの影響で戦死した事で地球と皇族、双方を憎むようになり、その為に動いていた。
それは友人であったクルーテオを容赦なく殺す程にまで至ったが、ヘブンズフォールで火星に帰れなくなった所を助けてくれたトロイヤード博士に恩義を抱いており、
その息子であるスレイン・トロイヤードを何かと助けたりと義理堅い人物。
火星帝国で暗躍する一方、地球には憎悪を以って戦いに臨んでいたが、最後には養子となったスレイン・トロイヤードに不意打ちを喰らい倒れる。
謀略や戦略に長けている知略家だが、反面カタフラクトの操縦は殆どスペック任せであるため、訓練機で無双している界塚伊奈帆との戦いではスペックで漸く互角に至った。
聖杯における記憶で、地球と火星が和解した事は知っている。
しかし、マスターの影響が強い事に加え、妻の死が無駄になっている事への憤りや、養子のスレインが撃墜された事への怒りから、自身の願いを改めるには至れない。

【聖杯にかける願い】

地球と火星、双方に復讐を。
そして、ヘブンズフォールの悲劇が起こらない世界を創り出すこと。


320 : 真戸呉緒&ライダー ◆lkOcs49yLc :2018/09/23(日) 07:57:41 PmL7ZFRM0


【マスター名】真戸呉緒
【出典】東京喰種
【性別】男

【Weapon】

「フエグチ壱」「フエグチ弐」
笛口夫妻の赫包から作ったクインケ。
普段はトランクに収納されているが、取っ手スイッチを押すことで赫包がクインケを形成し武器となる。
「壱」は伸縮自在の蛇腹型の装備で、「弐」は蝶の羽の如き盾である。
彼が死ぬ直前に手にしていたクインケ。
他の20種類程のクインケは置いてきてしまった。


【能力・技能】

・クインケ操術
「喰種」の臓器を素材に作られた兵器「クインケ」を操る技術。
彼は20種ものクインケを所持しており、かつクインケ集めへの執着ぶりは異常である。

・推理能力
捜査官としての優れた推理能力…というより勘だが、
その洞察力は非凡な物である。

【人物背景】

不気味な雰囲気を持つ喰種捜査官。10年前に同じく喰種捜査官である妻を失った過去から「喰種」を憎悪する様になり、
より強いクインケに執着しているのはより多くの喰種(と言うより隻眼の梟)を殺すため。基本喰種を殺すことにしか興味はなく、昇進に興味はない。
そのため周りからは「クインケマニア」呼ばわりされ変わり者扱いされていた。
喰種に対する憎しみは非常に強く、喰種を「ゴミ」と読んでいる上に、 喰種に対しては常に残虐非道な行動や言動で苦しめている。
クインケですら素手で触りたがらないようで常に手袋をしている。
喰種をえげつないやり方で殺してクインケの材料にするのは彼の一番の楽しみ。
だが、それはあくまで「喰種」に対しての姿勢で、同僚や家族に対しては 本来のユーモラスで気さくな優しい態度で接している。

【聖杯にかける願い】

喰種の抹消。ゴミに生かす価値は無い。
だがその前に、隻眼の梟だけは絶対に殺す。

【方針】

聖杯を入手する。
「人間」のマスターは殺したくない。

【把握資料】

・ライダー(ザーツバルム);
アニメ1〜14話。ディオスクリアの戦闘描写は11〜12話のみで十分です。

・真戸呉緒;
原作2〜3巻まで登場。
呉緒は回想シーンでその背景が詳しく描かれていくので無印最終巻までの把握を推奨しますが、時間がなければこの二冊でも十分です。


321 : 真戸呉緒&ライダー ◆lkOcs49yLc :2018/09/23(日) 07:58:40 PmL7ZFRM0
投下を終了します。


322 : 名無しさん :2018/09/29(土) 04:23:28 LFgX/5qY0
荒廃した世界観が似合う組が続くな。


323 : ◆aEV7rQk/CY :2018/10/03(水) 20:07:48 ncYQLKJ60
投下します。


324 : シーモア&ランサー ◆aEV7rQk/CY :2018/10/03(水) 20:08:47 ncYQLKJ60
血濡れたような赤の男が、落ち着いた雰囲気の書斎に現れる。
口髭と整え、額は知性を示すように広い。豪奢な真紅の甲冑に身を包み、ファー付きのマントを羽織っている。
鋭い眼差しは赤一色に染まっており、発する殺気も相まって人間か疑わしい。
文机の前に座っていた青年が立ち上がり、恭しく一礼する。

彼は甲冑に身を包んだ男とは異なり、青を基調としていた。
目元は涼しく、鼻はつんと高く。端正な顔の若者だが、顔立ち以上に目を引くのは髪だ。
海のように青く、さらに長髪をジェルで固めたのか?3本の角のようにしている。額から1本、側頭部に2本。

「このような辺鄙な場所に招いてしまった非礼、どうかお許しください」
「茶番は要らぬ。どうせ好き好んでこの場に参上したのでもあるまい?憐れな子羊よ…貴様が俺のマスターだな?」
「如何にも。シーモアとお呼びください」

真紅の男は眉間に幾筋も亀裂を走らせる。

「貴様はこの戦いに何をかける?黙秘は許さぬ」
「私が本来暮らす…スピラに永遠の安息を」

シーモアは自らの出自とスピラを取り巻く災いについて語った。
超巨大怪物、シン。出現するや世界各地で破壊をまき散らすこれに唯一対抗できるのが、究極召喚。
しかし、究極召喚を用いた召喚士は、召喚獣の強大さから命を落とす事になる。そしてシンを破っても、不在期間「ナギ節」を過ぎればシンは復活してしまうのだ。

「私はこの死の螺旋を――」
「もういい、黙れ」

真紅の男が冷厳に言い放つと、シーモアは口を閉じた。

「貴様のような嘘くさい男の口からそのような殊勝な言葉、怖気が走るわ。世界の安寧など、興味ないだろうに」
「辛辣ですね。スピラに永遠の安息を…偽りは申しておりません」
「ふん。貴様は魔力源としてはなかなか有用らしい、替えが見つかるまでは組んでやる」
「有り難き幸せ…ところで、英霊殿?二つ質問があるのですが」

真紅の男は分かりきっていると言いたげな顔でシーモアを見下ろす。

「俺のことはランサーと呼べ、真名は必要あるまい。俺の聖杯に託す目的は、人間の滅亡だ」
「ほう」

シーモアの顔に張り付いていた涼しげな微笑が、一瞬剥がれた。

「俺はこの汚らわしい世界を滅ぼさねばならん。人間は腐っている、価値などない。このまま存続させるより、滅んだほうが良い。そうは思わぬか?」
「…えぇ、同感です。今後の方針はどのように?」
「恭順の意あるならば従え、敵は全て叩き潰す。それとも皇帝たる俺に、なんぞ指図してみるか?」
「とんでもない。すべてランサーの意志のままに」
「…俺はもう行く。敵が来たなら念話で呼べ」

ランサーは霧のように解けて消えた。
制御が取れそうにないのが不安だが、おおむねあたりだ。暴走にさえ気を付ければ、問題なく戦っていける。
シーモアの望みも、ランサーと全く同じ。生まれ育った世界――スピラの滅亡。
新たなシンとなり、全ての命を滅ぼす。その時、全ての悲しみは癒えるのだ。


325 : シーモア&ランサー ◆aEV7rQk/CY :2018/10/03(水) 20:09:25 ncYQLKJ60
【クラス】ランサー

【真名】ハーディン

【出典作品】ファイアーエムブレムシリーズ

【ステータス】筋力A 耐久A 敏捷C 魔力E 幸運E 宝具A

【属性】
混沌・悪(秩序・善)

【クラススキル】
対魔力:B
魔術に対する守り。三節以下のものを無効化する。大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。


【保有スキル】
カリスマ:C
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能だが、大国の王としてはCランクでは心許ない。

黄金律:B
身体の黄金比ではなく、人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。
大富豪でもやっていける金ピカぶりだが、散財のし過ぎには注意が必要。

精神異常:A
宝具の影響により、精神が変容している。他人の痛みを感じることが無く、周囲の空気を読むことが出来ない。
精神的なスーパーアーマー能力。

守護騎士:-
他者を守る時、一時的に防御力を上昇させる。
王妃、家臣達、王となった後にあらゆる人々とすれちがった彼はランクを喪失している。


【宝具】
『暗闇の中に独り(闇のオーブ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1人(自身)
封印の盾に嵌められていた聖玉のうちの一つ。
闇の加護によりレンジ内なら物理・魔術問わず、ランサーへの攻撃を全て封印する。この攻撃封印は魔術抵抗・精神抵抗により防ぐことはできない。
ただし、神および竜に由来する攻撃を封印することはできない。

また、所有者の心の闇を引き出すことで精神異常や精神汚染のスキルを自動付与するデメリットがある。


『抉り穿つ剛毅の宝槍(グラディウス)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:1人
アカネイア王家に伝わる三種の武器のひとつ。岩をも容易く貫く逸品。
担い手の技能習熟を助けるほか、投擲すると砲弾の様な速度で飛んでいき敵を貫く。投擲された槍は対象を攻撃した後、込められた理力によってランサーの手元に戻る。


【weapon】
宝具に依存。

【人物背景】
アカネイア大陸・オレルアン王国の第二王子であり、現国王の実弟。後のアカネイア神聖帝国・初代皇帝。
狼騎士団長を務めていることから、「草原の狼」の異名をとる。マムクートが率いるドルーア帝国軍との大戦「暗黒戦争」当時、アカネイアから落ち延びたニーナ姫をアリティア連合軍と交流するまで守り抜いた。

暗黒戦争終了後は国土復興に尽力。司祭ボアの薦めもあってニーナ王女と婚約、アカネイア第24代国王となる。
しかし、妻ニーナは戦死したとされるカミュへの未練を断ち切っておらず、アカネイアの騎士達とも関係が上手くいかないことから次第にストレスが溜まりハーディンは毎晩自室で酒を煽るようになった。

其処に目を付けた暗黒司祭ガーネフが商人に化けてハーディンに近づき、闇のオーブを渡す。
オーブの魔力で嫉妬心や憎悪を引き出されたハーディンは残虐な暴君と化し、アカネイア神聖帝国の建国を宣言。
圧政によって民衆を苦しめるが、後に英雄戦争と呼ばれる戦いで討ち取られることになる。

【聖杯にかける願い】
アカネイアに滅びを。


326 : シーモア&ランサー ◆aEV7rQk/CY :2018/10/03(水) 20:11:05 ncYQLKJ60
【マスター名】
シーモア・グアド

【出典】
FINAL FANTASYⅩ

【性別】


【Weapon】
なし。

【能力・技能】
多彩な魔法を操り、攻撃も回復もこなす。夢見る祈り子が存在しない為、召喚獣を呼び出す事は不可能。

【人物背景】
スピラと呼ばれる世界に住むグアド族族長であり、エボン四老師の一人。
人間とグアド族のハーフであり、幼少期は一族から疎んじられて育つ。
後に人間の母親とともに召喚士として旅立ち、スピラを襲う災厄『シン』への対抗しうる究極召喚を得たが、その結果得たのは母親との別れと、究極召喚が次代のシンとなるという真実だった。
彼がたどり着いた結論は、自らがシンとなりスピラを滅ぼすことであった。

【聖杯にかける願い】
聖杯の力でスピラを破壊する。召喚士と絆を結ぶことなく、シンとなるのだ。


327 : ◆aEV7rQk/CY :2018/10/03(水) 20:11:50 ncYQLKJ60
投下終了です。鱒・鯖・本編は改変自由。好きに使ってください。


328 : ◆0080sQ2ZQQ :2018/10/06(土) 20:23:05 zDPPLrS60
投下します。鯖のほうは、他所聖杯企画に投下したものを改変したものです。


329 : 川田章吾&キャスター ◆0080sQ2ZQQ :2018/10/06(土) 20:23:55 zDPPLrS60
市内の高校に通っている川田章吾は、数名の友人と連れ立って学校を後にした。
取り立てて幸せだと感謝する気もないが、不自由もない平凡な毎日。時折、何かを置き忘れてきたような違和感が浮上する事を除けば、とくに不満はない。
だが、友人達とファストフード店に入ったその日は違った。

――今回と同じようにお互いを信じ敬い、これを助けてくれよ。

操舵室の中、自分を見下ろす若い男女。
あまりにも多くの身近な人々を失った自分だが、最後に2人助けることができた。
真実を思い出した章吾は慌てた様子で友人達に別れを告げ、代金を置いて店を飛び出す。
額に汗して自宅に入った。

(俺の家……)

思い出がある。
母親を早くに亡くし、外科の看板を掲げている開業医の父と二人暮らし。
しかし、ここにいるのは本物の親父ではない。最初のプログラム――章吾が生まれた大東亜共和国で行われる恐怖のゲーム――から帰還した時、既に死んでいた。
政府に殺されたのだろう。

「……」

章吾は居間に立ったまま、眉間を抑え、ふぅっと長い息を吐いた。
この程度でいちいちオタついていたら、あっさり脱落してしまう。
その瞬間、背後に人の息遣いを感じた。素早く身をひるがえした先にいたのは、軍服に身を包んだ角刈りの男。
その眼光は鋭く、専守防衛軍の兵士の銃口より威圧感がある。

「あんたが俺の相方で、いいのかな?」
「キャスターだ。魔術の心得はないようだが、その割に落ち着いているな」
「そうでもない。聖杯戦争…だっけか?こういう形式は初めてなんで、緊張してる」
「まるで似たような催しに参加したことがあるような口ぶりだが」
「うん?そうかな。まぁ、聖杯戦争は、とにかく初めてだ」

章吾はキャスターを自分の部屋に招き入れた。

「確認として聞くんだが、アンタは聖杯が欲しくて来たって考えていいんだよな?……理由を聞いても?」
「問題ない。私の目的は日本に千年王国を築かんとするメシア教の企みを挫く事。そのためには、日本に行われたミサイル攻撃という過去を変えねばならない」
「…穏やかじゃないが、わからん単語がいくつか出てきたな。学の無い男でな、補足説明をお願いできるかい」

キャスターのサーヴァント…ゴトウは頷き、自らの生前を語り始める。
古の悪魔や妖怪、神霊が現実を侵食する世界の日本において、アメリカが行おうとしている大虐殺計画を察知したゴトウはクーデターを敢行。
人間を奴隷のように扱おうとする西洋の神々を排除し、古き悪魔と人々が共存する理想郷を築かんがために。

「計画は3人の少年により砕かれてしまい、東京にはミサイル攻撃が行われた…」
「成程。一度死んでまでご苦労なことだ。しかし英霊なんてやってるだけあって経歴も出鱈目だな。悪魔なんてものを呼び出せるとはね」

キャスターは章吾にも、聖杯戦争にかける意気込みを語るよう求めた。

「俺は、俺の生まれたファッキン大東亜をぶっ壊したい。聖杯の力なら、それができるのかな?」
「見たことのないものについて語ることはできない。私は……できるものと仮定して、この戦いに臨む」
「オーケイ。だったら聞かせてやる」

大東亜は現在、川田が暮らしている日本とは所々異なっている。
圧制、指導者への服従、思想教育などなど……全体自由がない。成功した近代工業国で暮らすために、国民には幾つかの負担が課せられる。
そのうちの一つがプログラム。中学3年の1クラスを任意に50選出し、最後の一人になるまで殺し合わせる。章吾は不運にも2度、プログラムを戦う羽目になった。

「…偽物だ。そんなシステムで得た成功なんてものはな。アンタ、そう思わないか?」

ゴトウは神妙な顔で頷いた。
章吾が語ったものは、秩序に組み敷かれた人間の姿だったから。それと戦うために、ゴトウは古き神々と手を組んだのだ。

「さ、て!辛気臭い話はここまでだ。考えることはほかにもあるしな、キャスターは外れクラスって話だが…?」

キャスターのステータスを透視したが、能力は意外なほど高い。
値が高いのは耐久と魔力。他もアベレージには達しており、際立って低い項目はない。
それでも三騎士には叶うまい、と章吾は考える。

「これからどう動く?」
「まずは探索に出る。魔術師の陣地か、自衛隊駐屯地があれば私の宝具が発動できる」
「へぇ、どんな宝具だ」

キャスターの宝具は二つあり、片方は会場内を戒厳令下に収めるというものだ。
これにより警察と自衛隊を動かし、聖杯戦争を有利に進めることができるようになる。
しかし、その代償としてゴトウは自らの手で陣地を構築することが出来ない。

「なるほど、となると俺の出番はないかな」
「今の私にマスターを守りながら戦えるほどの力はない。何かあったら、令呪を使ってでも呼び戻せ」
「了解、司令官」
「学生服で敬礼などするな…」


330 : 川田章吾&キャスター ◆0080sQ2ZQQ :2018/10/06(土) 20:24:32 zDPPLrS60
【クラス】キャスター

【真名】五島公夫

【出典作品】真・女神転生シリーズ

【性別】男

【ステータス】筋力C+ 耐久B 敏捷C 魔力B 幸運C 宝具B

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
陣地作成:EX
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
 キャスターの陣地は宝具と不可分である。

道具作成:E
 魔力を帯びた器具を作成できる。
 大破壊とは別世界軸で、武器を不法収集した逸話を持っており、既製品の携行火器や無銘の刀剣を用意することが可能。

【保有スキル】
悪魔召喚:B
 契約した悪魔を召喚する。
 召喚にかかる魔力をキャスターが負担する引き換えに、忠実な手下として悪魔を動かすことができる。

扇動:D+(B+)
 大衆・市民を導く言葉と身振りの習得。
 特に個人に対して使用した場合には、ある種の精神攻撃として働く。下記宝具発動時にカッコ内のランクに修正される。
 自由や変革を強く希求する者の心を、強く揺さぶることが可能だ。

魔術:C
 一工程で発動できる魔術を幾つか習得している。

心眼(真):C
 修行・鍛錬によって培った洞察力洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
 逆転の可能性が数%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
 ゴトウは自衛隊に長年在籍し、多数の部下を持つに至った。


【宝具】
『東京戒厳令(とうきょうかいげんれい)』
ランク:B 種別:対人民宝具 レンジ:会場全域 最大捕捉:会場内の人民
 キャスターが生前、千年王国に対抗するべくクーデターを起こし、東京を支配下に置いた逸話が宝具に昇華されたもの。
 彼は自力で陣地作成を行う事が出来ないが、別の魔術師の陣地あるいは自衛隊駐屯地を武力占拠する事で、己の陣地を形成できる。
 占拠に成功した際に扇動スキルをカッコ内のランクに修正、加えて自衛隊や警察組織を指揮することが可能になる。
 発動には魔力を要求するが、展開後は自衛官や警察官、会場内の住民から維持にかかる魔力を徴収することが出来る。

 戒厳令が発動した時点から、以下の指示を出すことができるようになる。
 一つ目は移動の制限。警察官や自衛官を指揮して、通行禁止エリアを設置することが可能。
 会場内に、キャスター自身およびガイアーズのサーヴァント以外が通行できない「立ち入り禁止区域」の設置が可能になる。
 初期状態では2か所。キャスターの勢力が増すたびに設置可能数が増えていく。

 上述の自衛隊と警察掌握と併用することで、不審人物を逮捕・拘束することができる。
 これにより、使い魔すら放たずに敵主従の動きを封じることが可能。

 二つ目はプロパガンダ放送。
 会場内の通信媒体に干渉する事で、視聴者にキャスターのメッセージを伝えることが可能。
 マスター、サーヴァント、一般人問わず、彼の思想に共感した者にはガイアーズの属性が付与される。
 これは能力強化をもたらすものではないが、対象の属性を混沌の側に傾け、NPCならゴトウの傀儡に変える効果を持つ。


『破滅の時告げる亡者の軍勢(シンジュク・ゾンビーズ)』
ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
 大破壊前の新宿を徘徊していた屍鬼を呼び出す。
 真名解放後、1000体のゾンビがキャスターの陣地を含む私有地を除いた公道や公共施設内に放たれる。
 ゾンビはキャスターの使い魔ではないため、制御が利かない代わりに彼らを維持する魔力を負担する必要がない。さらに各自がBランク相当の単独行動スキルを持っている。
 ターゲットの優先順位は敵主従>一般人>ガイアーズ>ゴトウとそのマスター。屍鬼の種類は以下の通り。


[屍鬼ゾンビコップ 特殊行動 防御/毒引っかき]

[屍鬼ボディコニアン 特殊行動 防御/麻痺引っかき/麻痺噛みつき]

[屍鬼ゾンビアーミー 特殊行動 防御]


331 : 川田章吾&キャスター ◆0080sQ2ZQQ :2018/10/06(土) 20:25:01 zDPPLrS60
【weapon】
「銘刀虎鉄」
キャスターの愛刀。
特異な能力はないが、宝具との打ち合いにも耐えうる強靭さを誇る。男性専用装備。

「軍服」
非戦闘時に着用している衣装。

「召喚悪魔」
キャスターがスキルによって召喚する悪魔達。
どの個体も魔力消費量は軽く、キャスターの自前の魔力で長時間維持できる反面、三騎士と戦わせるには心許ない。
召喚可能悪魔は以下の通り。

妖獣:ヌエ
悪霊:ピシャーチャ
幽鬼:ベイコク
悪霊:シェイド

【人物背景】
神の名のもとに千年王国を築こうとするトールマンの計画を察知した陸上自衛隊一等陸佐。
アメリカによるICBM投下を防ぐべく、悪魔との契約により超人となった五島は市ヶ谷駐屯地でクーデターを起こすと、東京を戒厳令下に置いた。
以後、東京を支配下に置き、プロパガンダ放送で迫る危機を訴えつつ、自身に反発するメシア教勢力とレジスタンスの撲滅に力を注いだ。
最後は運命に選ばれし、3人の少年によって討たれたという。


フルネームはデビルサマナーを参照しました。

【聖杯にかける願い】
199x年の東京に戻り、大破壊を阻止する。



【マスター名】川田章吾

【出典】バトルロワイアル(小説版)

【性別】男

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
大東亜の主催する殺人ゲーム「プログラム」で2度優勝した。
魔術などの特異な技能はないが、この年代としては実戦経験が豊富。

【人物背景】
城岩中学校に3年生のころ、転校したきた男子生徒。
少年というより青年と呼ぶにふさわしい風貌をしており、体中に傷跡があるなど近寄りがたい人物。
その正体は、バトルロワイアル本編の1年前に行われたプログラムの優勝者。
饒舌でユーモアあふれる人物だが、大東亜政府への憎悪を静かに滾らせており、ハッキングにより首輪の解除方法を調べていたなど反政府活動に手を染めていた。


【聖杯にかける願い】
大東亜政府を解体できる力。


332 : ◆0080sQ2ZQQ :2018/10/06(土) 20:25:53 zDPPLrS60
投下終了です。鯖・鱒・本文は改変自由。好きにお使いください。


333 : ◆0080sQ2ZQQ :2018/10/09(火) 21:49:31 0Q84A2Nw0
投下します。鯖は他所聖杯に投下したものを改変したものです。


334 : マモル&ランサー ◆0080sQ2ZQQ :2018/10/09(火) 21:51:28 0Q84A2Nw0
土砂降りだった。 
夜に沈んだ街に、桶の底を抜いたような勢いで、水滴が降り注ぎ、建物の窓を殴りつけている。
自らのデスクに座ったまま、窓から社屋の外を眺めた若いサラリーマンは退勤時には止んでくれる事を願って、目の前のPC画面に視線を戻した。

雨の中、長いコートの青年が一軒の空き家に忍び込む。
この雨の勢いに負け、そのまま潰れてしまうのではないかと思えるような、頼りない佇まいだが、青年――マモルにとっては貴重な寝床だ。
同胞たちから離され、聖杯戦争なる悪趣味な催しに招かれてしまった彼には、まともな身分がない。
もっとも、アマゾンである彼には必要ない。人間に混じって働くなど、想像するだけで反吐が出る。

マモルは闇の中、タンパク質の補給を済ませた。
人間が最も効率が良く、また美味なのだが――食べられない。

(ふん…)

休もうと目を閉じたマモルの細胞が、警報を発した。
突き動かされたように表に飛び出したマモルの身体から、爆炎が発せられる。
炎はすぐに晴れた。マモルの姿はそこにはなく、代わりに驟雨の中に鈍色の怪人が立ち、周囲を警戒していた。
両腕から伸びる長大な爪、顔からは巨大なドリルが突き出ている。モグラアマゾンだ。

マモルの変身を見た何者か――トレンチコートのアサシンは彼についてマスターに念話で伝える。
明らかに聖杯戦争の関係者だ。恐らくキャスターあたりが放った使い魔だろう。霊体化を行い、帰還しようとした刹那。
水の跳ねる音がする。

「はぁ……」

振り向くと、男が一人歩いてくるところだった。
目鼻立ちの整った美男子だが、全身を雨に打ち付けられるのも構わず、生に倦み疲れた老人のような目でアサシンを見ている。
サーヴァント――マスターの影はない。アサシンは彼の人相を頭に叩き込むと、姿を消した。

「はぁぁ……」

変身を解き、空き家の玄関を潜ろうとしたマモルは近づいてきた男に気づく。黒いコートに身を包み、雨粒で全身を濡らす薄笑いの青年。

「迎えに来たぜ……相棒」
「ひょっとして、君が僕のサーヴァント?」
「さっき別のサーヴァントがお前を見ていた。この塒はもう使えない。移動しろ」

マモルの脳裏に緊張が走る。

「そいつは?」
「逃げた」
「逃げられたの!?なら追ってよ!」
「どうやって。気配を消したアサシンに追いついている間に、別のが来るかもしれないぜ」

中に入るのも忘れて、マモルは立ち尽くす。
やがて雨の中に進み出るが、その顔は怒りに歪んでいた。

「ようやく会えたと思ったら敵に見つかるなんて!しかも逃げられた!そんなので勝てるの!?そもそも、君ちっとも強そうじゃないよ!?」
「あぁ、俺に期待するな……なぁ、俺なんか呼べる癖に願いがあるのか?」
「当たり前でしょ!なんでも願いが叶うんでしょ!?だったら僕は貰うよ!当然じゃないか!」

マモルは人間が同胞――アマゾンにした仕打ちを知っている。
多くの仲間が殺された、だから次は自分たちの番だ。仲間を増やす、強いアマゾンを増やして反撃をする。
生きるために。小さいが、他のいかなる願いよりも根源的な望みだ。

「最高だぜ、相棒。お前の中で、蛍のような光が舞っているのがわかるよ」
「闇?何言ってるの?」

雨の中、新たな隠れ家を探しに2人は歩く。人通りのより少ない、暗がりに向かって。

「俺にはわかる。お前は闇の住人だ、しかも光の中から転がり落ちた…な」

黒いコートの青年…矢車想は確信と共に言い放った。


335 : マモル&ランサー ◆0080sQ2ZQQ :2018/10/09(火) 21:52:52 0Q84A2Nw0
【クラス】ランサー

【真名】矢車想

【出典作品】仮面ライダーカブト(TV版)

【性別】男

【ステータス】キックホッパー 筋力B+ 耐久C 敏捷B+ 魔力E 幸運D 宝具B

ザビー(マスクド) 筋力B 耐久A 敏捷D 魔力E 幸運D 宝具B

ザビー(ライダー) 筋力B 耐久C 敏捷B 魔力E 幸運D 宝具B

【属性】
中立・中庸(秩序・善)

【クラススキル】
対魔力:E
魔術の無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減するのみ。


【保有スキル】
精神汚染:D
信念を捨てた自暴自棄で無気力な有り様。
他の精神干渉系魔術を低確率でシャットアウトする。ただし同ランクの精神汚染がない人物とは意思疎通が成立し難い。

心眼(真):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
逆転の可能性がゼロではないなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。


クロックアップ
種別:対人機能 最大捕捉:1人(自身)。
マスクドライダーシステム・ライダーフォームの共通機構。下記宝具の展開中のみ使用可能。
簡単に言うと一時的に超高速で行動できるようになる。
全身を駆け巡るタキオン粒子を操作する事で、ランサーは時間流を自在に行動可能になる。
同ランクの時間干渉への耐性を持たない限り、クロックアップ中の彼を認識するのは不可能。

自分の時間の流れが速くなることで、発動中は世界が静止しているように見える。
単純な加速ではなく時間操作に分類されるため、展開中も攻撃力は変化しない。
持続時間は短く、数十秒程度で自動解除される。自ら解除する事も可能。
生前とは違い、発動させる度に一定量の魔力が自動消費される。マスターは令呪一画で魔力消費を回避できる。


完全調和:-
低ランクのカリスマと軍略を内包する特殊スキル。生前の経緯から喪失している。


336 : マモル&ランサー ◆0080sQ2ZQQ :2018/10/09(火) 21:53:17 0Q84A2Nw0
【宝具】
『金色の栄光、今は遥か遠く(マスクドライダー・ザビー)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
出現させたザビーゼクターとライダーブレスを使用して、仮面ライダーザビーに変身する。
ザビー資格者は精鋭部隊「シャドウ」のリーダーを務めることになる。

マスクドフォーム時は高い防御力を得るが、サーヴァントを相手取るには頼りない。
キャストオフを行い、ライダーフォームに移行すると耐久力が落ちるがその分身軽になり、俊敏な戦闘を行う事ができるようになる。
必殺技はゼクターを操作することで発動する「ライダースティング」。

完全調和を捨て去ったランサーには必要ない代物。クラス補正によって押し付けられた栄光の残り滓。
どうしても使わせたいなら、令呪一画を切るしかないだろう。


『地獄への道連れを探して(マスクドライダー・キックホッパー)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
出現させたホッパーゼクターとゼクトバックルを使用して、仮面ライダーキックホッパーに変身する。
マスクドフォームは存在せず、直接ライダーフォームに変身する。
ゼクターはリバーシブルになっており、差し込む方向を変えるだけでパンチホッパーに変身できる特性を持つが、宝具化した現在は機能していない。

パワーを向上させる特殊兵装アンカージャッキが脚部に備わっていることにより、多彩な足技を振るう事が出来る。
必殺技はゼクターを操作することで発動する「ライダーキック」。

【weapon】
宝具に依存。

【人物背景】
ZECTの精鋭部隊「シャドウ」の元隊長。
パーフェクト・ハーモニーを信条に掲げ、部下たちから絶対的な信頼を寄せられている。
スタンドプレーを重んじる仮面ライダーカブト・天道総司の抹殺指令に執着するうち、シャドウリーダーの資格を失ってしまう。
その後、かつての部下の裏切りもあって組織から完全に姿を消した。

しばらく後、天道らの前に姿を見せた彼はパーフェクト・ハーモニーを捨てて、アウトローさながらに荒みきっていた。
自らを闇の住人と称するようになってからは、目についたワームやライダーに戦いを仕掛けるなど無目的に街を彷徨うようになった。
同じようにシャドウから切り捨てられた影山瞬を弟分に闇の中を彷徨った末、自分達にもつかめる光を求めて旅立った。

【聖杯にかける願い】




【マスター名】マモル

【出典】仮面ライダーアマゾンズSEASON2

【性別】男

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
野座間製薬が開発した人工生命体。
個体は動物の特徴を備えており、マモルはモグラアマゾンである。
両腕のクローを用いた格闘戦を得意とするほか、モグラらしく地中に潜ることも可能。
地中から奇襲を仕掛ける、密室から脱出するなど用途は様々。

【人物背景】
ノザマペストンサービス駆除班に配属されていたアマゾン。
ある任務の最中、人肉を摂取してしまった事で食人衝動に覚醒。仲間である三崎一也の腕を食べてしまう。
アマゾンを抹殺する特殊ガスが散布されている雨の街に飛び出し、そのまま駆除班を出奔。
5年ぶりに駆除班メンバーと再会した時には以前とは大きく言動が変化しており、アマゾンを狩る人間への憎悪を募らせていた。


【聖杯にかける願い】
生存と復讐。アマゾンの仲間を増やす。


337 : ◆0080sQ2ZQQ :2018/10/09(火) 21:53:54 0Q84A2Nw0
投下終了です。鯖・鱒・本文は改変自由。


338 : ◆lkOcs49yLc :2018/10/10(水) 13:32:18 cKDZiW9o0
ひたすらに生きたいマモちゃんに兄貴の闇センサーが反応
果たしてマモちゃんは地獄兄弟の四男になってしまうのかそれとも

それはそうとこちらも投下します。


339 : ライブベアラー&ライダー ◆lkOcs49yLc :2018/10/10(水) 13:34:40 cKDZiW9o0

――誰かが言った。
こことは異なる異空間に存在し、世界を変革する魔法であらゆる願望を成就させる『聖杯』があると。

――聖杯を奪い合う殺し合い、聖杯戦争。
その勝者が進むは、勝利か、敗北か。



◆  ◆  ◆



『グルメカジノ』と呼ばれる至極シンプルな名を持つ会員制―詰まる所非合法の―ギャンブル場が、この街の地下に根を張っていた。
元々は中東に根城を張っていた闇カジノだが、事業の拡大に伴いこの日本に新たにカジノを開いたのである。
因みに賭博が禁じられているこの国で危険を冒してまで地下に開いているのは、この様なカジノに興味を抱いたとある日本の投資家の頼みと協力があってこその事だった。

賭けるものはその名の通り、世界中の高級な味。
三大珍味から熟成バルサミコ酢の様な調味料まで多くの貴重な食材を会員が持ち込み取り合い、そして取引されているのだ。
高級料理店の無料券も時には賭けられている。これもまた闇さながらと言えるだろう。
また、食材がなくてもチップを購入すればカジノ内にある食材を購入することが可能で、実際カジノ内にある多くの賞品が今も尚取られていく。
一見すればこの事業主も相当酔狂な性質なのだろうと皆考えるだろうが、ここまでこのカジノがのし上がった理由の一つは、他と比べても世界の多様な珍味が非常に手に入りやすい市場だということにある。

噂に聞けば、賭博の世界と同様に料理の世界にも闇と言うものが存在し、そこでは数多くの珍味が取引されているのだという。
このカジノの賞品はそこから入ってきており、その量は釣り合いの悪すぎる戦略を取っても食い潰しきれない程。
供給が高めな為、ここにある食材の値段は比較的安めの相場で取引されており、安価な額で味を手に入れたいというグルメやギャンブラー達が大勢入ってくる。
また手に入れた食材は普通の市場で売れば更に大儲け出来るので、事業者も一定以上賭け事にやってくる。
因みに裏社会に多くの高級食材が流通するのにも、また別の所以があるのだが、それはまた別の話。




◆  ◆  ◆




「うーん、ぜーんぜん美味しくないわねー。」

グルメカジノの最奥部にあるスイートルーム。
そこにあるフカフカのソファの側においてあるテーブルで、皿に置かれたにんにくとフォアグラのソテーを一気に飲み込んだ太り気味の道化師は、ふとそんな言葉を呟いた。
施設を自身の生活場とするという、労働法に触る様な行為を取りケータリングの高級料理を丸呑みする道化師、ライブベアラー。
彼こそが、このグルメカジノのオーナーなのである。
それも、この支店ではなく、中東にある本店を創業した人物。
料理界の闇にて卓越した手腕を発揮し、このグルメカジノという一回り変わった闇賭博を経営する者……それがライブベアラーに与えられた『ロール』であった。


この偽りの記憶に気づいたのはそう遠くもない頃であった。。
記憶を取り戻した切っ掛けは、普段から取る食事の味があまりにもシンプルすぎていたこと。
そして何より、環境も置かれる食材があまりにも普通すぎるという事にあった。


ライブベアラーがいた世界は、未知なる味を探求するグルメ時代の真っ只中にあった。
数多くの未知の食材がこの世に溢れ、多くの人々が美味を求める世界が構築されていた。
美食屋と呼ばれるハンターが危険を冒してまで多くの食材を集め、自分の人生最高の味を求め、名声を手にしていく。
危険な区域から様々な味が非凡なる美食屋に発掘されていく様は、宛らこの世界で言う大航海時代に良く似ていた。

しかし、この空間にはライブベアラーのいたグルメ時代の様な高級食材が全く存在しない。
勿論美食屋も。それは宛ら、かのアカシアがグルメ細胞を発見する前の時代の食生活に酷似していた程。
無料券を配り、料理に招待する等の処置を行って何とか繁盛させているとは言え、本来のそれとは程遠い。

ライブベアラーが開いているこのグルメカジノも、元の世界では更に規模の大きい施設だった。
今置かれているカジノも数々の幸運が積み重なって東洋の島に地下支店を置けているが、規模は本店すら越えている。
近くの市場では麻薬食材や超高級食材が溢れ、スロットを引けば沢山の食材が落ちてくる、そんな所だった。


340 : ライブベアラー&ライダー ◆lkOcs49yLc :2018/10/10(水) 13:36:03 cKDZiW9o0

そして何より、VIPには食の記憶『食歴』を吸い取る『グルメテイスティング』が開かれており、これこそライブベアラーの至高の愉しみであった。
ギャンブルで戦い、そして負けた者に対する処置こそ、彼の求める美味……食の『記憶』である。
脳の海馬から記憶を吸い取り、食歴をデータとして保管し、賭け事のチップから裏社会での交渉のカードにまで様々な用途に利用する。
これによってグルメカジノを繁盛させ、様々な食材を密売ルートで入手していったのだが……生憎、グルメモンスターもいなければ、必然食歴と言う概念も存在しない。
となれば、設計図が彼の脳内から一時的に消え去るのも、やはり必然であった。

「今、私の食歴を満たしてくれる設備は着々と建設されているけれど、果たして、それが完成するのにどれ程掛かるのかしらねぇ……。」

が、やはり記憶から味を引き出す感覚と言うものは忘れがたい物で、カジノにマスターが来た時にそのデータを吸引すると言う作戦も兼ねて作らせている。
記憶を取り戻すとともに設計データを思い起こし、設計図を書き起こして部下達に作らせたのは良いが、やはり時間は足りない。
設備と技術は資金で賄える、が、時間と言うものは聖杯戦争の集結時期を踏まえると限られる。

「本来なら急ピッチ、と行きたいところだけど、下手に事を起こしたらまた睨まれそうなのよね〜やーん……そ・れ・に・何より……。」

ライブベアラーの愉悦に満ちた笑顔が更に歪む。
口からは涎が垂れる。

「聖杯でこの世全ての味を愉しめると言うのなら……食歴の吸引なんて詰まらない味よねぇ……ええ欲しいわぁ……ウフフフフフフ」

ウフフフフフフと道化師は嗤う。
聖杯戦争、万能の願望機を賞品として競い合う殺し合い。
もしそれが手に入れば、ありとあらゆる食の味を知ることが出来るであろう。
グルメ界の捕獲レベル測定不能の食材は勿論、あのアカシアのフルコース……メインディッシュのGODさえも……

グルメテイスティングと比べれば分の悪いギャンブルだが、もし手に入ればと思うだけでも涎が滴る。
ならば手に入れてみせよう、聖杯を。
――そう思い、続いてやってきた白トリュフのリゾットに手を付けようとしたその時。

「戻ったぜ。」

その声とともに、光の粒子が収束し、頑強な日本人の男性の姿を創り出す。

「あーらお帰りライダー、どうだった?今夜のお相手は。」

日本人の男性……ライダー。
彼こそが、ライブベアラーに与えられた使い魔……サーヴァントだった。

「食い足りなかったな、昔俺を喰らったあの忌々しい小僧と比べりゃ、チンケな味だったぜ、サラダの皿にすら割に合わないくらいにはな。」

軽々とそう言い放ったライダーは、ライブベアラーのいたソファーにドサッと座り込んだかと思えば、素手でリゾットの半分程を鷲掴みにして口に入れる。
人の料理を何食わぬ顔で咀嚼し、ゴクリと飲み込みふんぞり返るマナーに縁のない様には、流石のライブベアラーもイヤな顔を作らざるを得ない。

「あーらあら、相変わらずマナーに縁のない男なのね。」
「ルールだなんだに縁がねぇのはお互い様だろうが。俺が食う事に指図する謂われはねぇよ。例えマスターであるテメェであろうとな。」
「食べること、ねぇ……。」
「ああそうだ、ここまで付き合いが長けりゃアンタにも自然と分かると思うが、俺はなぁ、食い足りなくてしょうがねぇんだよ。何もかも、時間さえもだ。」

そう言うライダーの眼光は、まるで獣のように鋭かった。
この様な形相を見せつける者は、自身のカジノに来ていた美食屋でもそうはいない。


341 : ライブベアラー&ライダー ◆lkOcs49yLc :2018/10/10(水) 13:36:34 cKDZiW9o0

「特になぁ、時の味なんてのは飽きた、いやうんざりしているんだよ、そんなもの、この俺に喰われてなくなっちまえ。」

まだ足りねぇ、そうとでも言いたげに苛立たしい表情を見せたライダーは、テーブルに残っているリゾットを更に鷲掴みにし、口に放り込む。

「聖杯の中身も俺が喰らう、この世の全ての時ごとな。」

それを口ではなく体で示すとでも言いたげに、ライダーは高級食材をふんだんに使った料理を咀嚼し、ゴクリと飲み込む。

「ほぉぇ〜〜〜〜〜〜〜そうなると、私とは間逆なのねぇ〜〜〜〜〜〜。」

その言葉を聞いたライブベアラーは、隣に座るライダーに梅干しでも食ったようにすぼんだ口を作って驚いた様な表情を見せる。

「真逆だぁ?そりゃ、お前みたいなカマと一緒にされるのは俺も御免被るが?」

その言葉に、再びライブベアラーは本来の道化師めいた不気味な笑顔を形作る。

「だって、私は食事の味を愉しみたいから聖杯が欲しいのに、貴方はそれを噛み砕くだけで満足。
こんな滑稽な話、ひっさしぶりにきいたわぁぁぁぁぁ〜!!ウフフフフフフ!!」
「…………。」
「あーんそんな溜息ついちゃってー……これでも良いビジネスパートナーだと思うんだけどねぇ、私達。」

確かに、ライダーはそのマスターとは明らかに真逆であろう。
互いに求めるのは、聖杯の中身による至高の食。
だが、片方が求めるのがこの世全ての美味の堪能であるのに対し、もう片方が求めるのはこの世全ての時の消滅。
方や享楽的で、方や破滅的な願い。
とても釣り合いがないように見えたが、この世の全てを喰らおうとする、と言った点では、互いに合致していた。
そういう点では、ライブベアラーの元にこの豪胆なサーヴァントが喚ばれたのは必然なのかもしれない。
またこの世全てを食らわんと言う、過去における暴食の罪を被った多くの美食屋の様な欲望と願望に取り憑かれていると言うのも縁ありだと感じている。
流石に良い美食屋と良い料理人―例えばかのアカシアとフローゼの様な―とまでは行くまいが、それでも殆どの確率で決別とまでは行かないだろう。

それに能力面でも、多少の不満はあるが、このライダーを引いたのはラッキー……ジャックポットだと思っている。
何しろ、この男はワニの様な甲冑を着たかと思えば、ああ言って楽を言えるほど簡単に敵のサーヴァントを倒してきた。
未だに解放していない宝具もある、十分に期待できると思っていいだろう。

(それに、お楽しみ用に作らせているあの設備だけど……これにマスターが引っかかってくれたら面白いわよねぇ〜ウフフフフフフ……)

趣味―あわよくば敵への罠も兼ねた―グルメテイスティングの開催も開こうかと考えている。
幸い裏社会に関するコネは比較的残っており、マスターもある程度炙り出せている。
準備が整い次第、彼等が此処に来る様に仕向けるのも、やはり悪くはないのかもしれない。

「それとライダー、次のマスターらしき人間を、もう一体、仕留めてもらえないかしら〜ん。」

そう言ったライブベアラーは、右前の机の引き出しから取り出したリストを取り出しに立ち上がる。
またお使いか、そう思ったライダーは、やはり不機嫌な眼差しでマスターの太った後ろ姿を一瞬睨みつけた。
虎視眈々と、獲物を狙う獣の目を再び作り出して。


342 : ライブベアラー&ライダー ◆lkOcs49yLc :2018/10/10(水) 13:37:09 cKDZiW9o0





【クラス名】ライダー
【真名】牙王
【出典】劇場版 仮面ライダー電王 俺、誕生!
【性別】男
【属性】混沌・悪
【パラメータ】筋力C 耐久C 敏捷B 魔力D 幸運C 宝具A+(ガオウ変身時)

【クラス別スキル】

・騎乗:B
乗り物を乗りこなす才能。
大抵の乗り物は人並み以上に乗りこなすが、魔獣、聖獣ランクは乗りこなせない。
時の列車を乗りこなす技能は非常に高い。

・対魔力:D
魔力への耐性。
魔力よけのアミュレット程度。

【保有スキル】

・心眼(真):C
修行、鍛錬によって培った洞察力。
窮地に陥った際、自身と敵の戦力を冷静に分析し、逆転のチャンスを掴み取る戦闘論理。

・戦闘続行:B
往生際が悪い。
致命傷を負わないかぎり戦闘を続行する。

・魔力放出(オーラ):C+(-)
自らの魔力をイメージの具現化たる「オーラ」に変えて武器、ないし自身の身体に纏わせ瞬間的に能力を向上させる能力。
ガオウ変身時にのみオーラをフリーエネルギーに変換し、足やガオウガッシャーにチャージして技を放つことが出来る。

【宝具】

「期限無き時間切符(マスターパス)」
ランク:C 種別:対時間宝具 レンジ:- 最大捕捉:1
ライダーがデンライナーのオーナーから奪い取った金色のライダーパス。
無期限に時の列車を動かす『インフィニティチケット』を挿入し、時の列車を自由に動かすための特権パスポート。
従来のライダーチケットと異なり、行き来できる時間表記が「∞」になっている。
オーナー特権の所謂マスターキーの様な物で、これがあれば、半永久的に時の列車を動かすことが出来る。
後述の宝具の起動キーとなる他、ライダーを仮面ライダーガオウに変身させることが出来る。
ライダーは変身能力が無ければ所詮只の列車泥棒。
この宝具で変身して初めて、まともにサーヴァント相手に戦うことが出来る。


「時を貪り食う神の列車(ガオウライナー)」
ランク:A+ 種別:対時間宝具 レンジ:50 最大捕捉:1000人
ライダーが奪い取った「神の列車」。
超古代の文明が残したオーバーテクノロジー。
あまりにも強大過ぎるその力故に走ったことは無かったらしい。
操縦桿となる「ガオウストライカー」にマスターパスを差し込むことで起動し、走り出す。
この列車が走り去った時間は、存在しない「無の時間」となる。
神の路線という特殊な時間のレールを走り、全ての時間を支配出来るとも言われた最凶の時を走る列車。
ただし、この聖杯戦争を破綻させかねない「時を喰う力」はおろか、時の列車の最大の特徴であるタイムスリップすら出来なくなっている。
精々がガオウライナーの車頭にあるビームキャノンと牙、神の路線による上空移動ぐらいしか武器にならない。
一時的に時空間の穴を開いて移動することは出来るが、魔力は相当に喰う。


343 : ライブベアラー&ライダー ◆lkOcs49yLc :2018/10/10(水) 13:37:35 cKDZiW9o0

【Weapon】

「ガオウベルト」
マスターパスの力とライダーのイメージで生成されるベルト。
これを腰に巻き付け、バックルにマスターパスを翳すことでライダーはガオウに変身出来る。
ただし、何度も創り出せるわけには行かなく、1つしか生み出せない。

「ガオウガッシャー」
ガオウベルトに装備されているパーツを連結して使用する剣。
先端に装着されている牙を想起させるオーラソードを刃として敵を切り裂く。
マスターパスを「フルチャージ」することでフリーエネルギーを込めたオーラソードを発射、遠隔操作して複数の敵にぶつける必殺「タイラントクラッシュ」が発動できる。
威力は非常に高く、自身と同等のスペックを持つはずの電王4フォームとゼロノスを纏めて地に伏せている。

「ガオウストライカー」
ガオウライナーの操縦桿ともなる超高性能バイク。
マスターパスを装填することでガオウライナーを起動させる。
ガオウライナーから発出して地面を走行させることも出来る。

【人物背景】

複数体のイマジンを引き連れ時の列車を何度も奪い取っている時の列車専門の強盗。
本人曰く「時間に飽々して」おり、時間を喰らうことが出来る「神の列車」に目をつける。
そしてそれを奪うためにデンライナーをハイジャック、戦国時代の真田幸村を利用して神の列車を発掘する。
遂に神の列車に乗り込んだ彼は、手始めにまずは1986年の時間を喰らい、続いて神の路線に乗り込み全ての時間を喰らいつくしに向かおうとする。
だがそれはデンライナーの常連乗客である野上良太郎/仮面ライダー電王やその仲間達に阻止され、神の列車は砕かれ自らもまた時間の修正力に喰われてしまう。
基本的に豪胆かつ粗野だが、一方で時の列車の業界で有名になるほどには優れた戦闘力と手腕を併せ持つ。

【聖杯にかける願い】

全ての時間を喰らい尽くす。


344 : ライブベアラー&ライダー ◆lkOcs49yLc :2018/10/10(水) 13:38:02 cKDZiW9o0



【マスター名】ライブベアラー
【出典】トリコ
【性別】男

【Weapon】

「包丁」
二振りの包丁。料理人の標準装備。
これを振るうことで高捕獲レベルのグルメモンスターを倒せる。

【能力・技能】

・食の記憶
グルメテイスティングで奪い取った様々な記憶。
彼はこれによって様々な味を擬似的に堪能している。
料理の腕前も奪い取っているため、彼の作る料理は正に一流。

・自己改造
グルメテイスティングで勝利するために、自身の体内を改造している。
特殊な3D映像を見るためのコンタクトレンズを付けている。
胃を生分解性プラスチックで加工しており、猛毒を持った料理だって食っても大丈夫。
彼は、料理の味を素で味わう気など更々無いのである。

・イカサマ
ギャンブルにおける駆け引きやイカサマに関する技能。
彼はグルメテイスティングで負けたことは一度もない。

・グルメ細胞
アカシアが発見した、有名な美食屋の殆どが持つ特殊な細胞。
食べた養分を強力なエネルギーに変換する他、養分や旨味成分を大幅に増す効果もある。

【人物背景】

違法料理や麻薬食材を専門に取り扱う地下料理界のボスにして、ジダル王国にあるグルメカジノのオーナー。
グルメカジノの会員制エリアにて「食」の記憶を賭けるギャンブルを行っており、彼自身も参加している。
卑怯なイカサマによって一度も負けたことは無く、その御蔭で様々な食に関する記憶が彼の中に入っている。
不気味なオカマ口調で喋る道化師の様な人物。
極めて狡猾にして残忍な性格で、人の記憶を吸う事が何よりの楽しみ。
嘗ては真っ当に料理人を目指し自分なりの実力で美味しさを探求しようとしていた時期もあったが、今はそんな頃のことなど忘れている。
トリコ達がやって来る前からの参戦。

【聖杯にかける願い】

この世全ての食材の味を知る。

【把握資料】

・ライダー(牙王):
劇場版1本、上映時間90分。

・ライブベアラー:
原作18〜19巻で把握可能。


345 : ◆lkOcs49yLc :2018/10/10(水) 13:38:28 cKDZiW9o0
投下終了します。


346 : ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 18:28:00 R9TXYInE0
投下します。


347 : 贖罪転生 ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 18:32:03 R9TXYInE0
夜、腐り切った林、タールで濁りきった無数の枯れ木。
中央で剣閃を轟かせるは、二人の剣士達。
一人は、悲しき憎悪を振るう倭刀の青年。
一人は、空しき哄笑を挙げるレイピアの男性。
その戦いは狂わされた運命(さだめ)なのか。
或いは定まった因果なのか、それは私にも分からない。

だが、ああだが、この戦(うんめ)いは、まるで―



□■□■□■



サーシャ・ジョブスンが記憶を取り戻したのはつい先日。
「ドイツからやって来た、生物工学の若き権威」
それが彼女に与えられたロールであった。
今考えてみれば、とても好ましいものとは思えない様な役割であるが。

そんなサーシャは、10年前と同様、大学の研究室に篭ってナノマシンの研究に着手していた。
この研究は、きっと人類の発展と幸福に大きく貢献する。
大きな理想と情熱に燃えていたサーシャは、まるで心が10年若返った様だった。



記憶を取り戻した切っ掛けは、偶々すれ違った若き医学生。
□ー□□と名乗った若き青年に、サーシャは吐き気をするような幻影に襲われた。
記憶の激流に飲まれるように我を忘れ、大学の門を抜け出し、青年の幻影から逃げ出すように走り出すサーシャ。



―ザーギン、なんで、なんで貴方が……



志を同じくした友人の姿が、眼に焼き付く。
人から悪魔へと成り果て、発展への力を破壊へと変えて人々の遺伝子を悪魔へと塗り潰していくザーギンの姿が、嫌でも重なる。
それから逃げる様に走って走って、走って―教会の隣で立ち止まる。

普通なら肺が焼けるぐらいの速度と時間を浪費したにも関わらず、サーシャの肉体は健在であった。
これがナノマシンの力。人の肉体を、病にも負けぬほどに成長させる進化の力。
アポカリプスナイツを動かすために与えられた耐久力が、ある意味で本来の用途で役に立つとは、今立ち止まって考えてみれば、少し皮肉に思える。

ポツンと、肌に冷たい感触が触れる。
それは肌に触れた雨粒。
雨粒の数はますます増していき、サーシャの身体を濡らしていく。

眼を曇天へと向けてみる。
雨空から薄っすらと見えるのは、教会の屋根の十字架。
弟や友人が信仰し続けてきた神が縛り付けられた懺悔の象徴。

この世界に果たして神はいるのだろうか。
一介の学者たるサーシャにそれはわからない。
弟や友人に聞いてみても、きっと答えは曖昧な物に違いない。

かと言って、神を信じて救われたかと問われれば、サーシャ自身は否としか言えない。
信じた結果、自分の善行は罪と成り果てたのだから。
世界の残酷さは、祈りで救われる程生温い物ではなかった。


左手が熱く感じる。
見てみれば、細かい棘が付いた十字架の紋章が刻まれているではないか。
身体に宿されし三画の令呪が。


348 : 贖罪転生 ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 18:33:04 R9TXYInE0


「聞こえるか。」



後ろから声が響く。
振り向いてみれば、降り注ぐ雨に隠れる様に、コート姿の男が立っていた。
布のほつれ目からは金属の何かが浮き出て、鞘には倭刀を拵えている。

(ジョセフ……?)

黒いコート姿の青年に、嘗て残酷な道を行かせてしまった弟を重ねる。
だが、その様は弟よりもボロボロで、眼はあまりにも乾き果てていた。
顔立ちはアジア人独特の平たい造りである。
元の世界にアジア人の同僚がいるが、顔の造形に関しては彼に良く似ている。
それと同時に、幾つもの数値が現れ、彼がアサシンのサーヴァントであることをサーシャは知ることとなった。

「その眼、その肌、まさかお前、サイボーグか?」

冷たい眼差しで問いかけるアサシンに、サーシャも真顔で答える。

「ええ、良くご存知ね。」
「俺が生きていた頃には、嫌というほど見掛けていたさ。」

教会を彩る木々を少し感慨深い目で一瞥した後、アサシンは再びマスターに向き直る。

「お前が、俺のマスターか。」
「ええ、そうみたいね。」




□■□■□■




「令呪を手に取ったマスターを一人発見した。」

自宅にアサシンが戻る。
サーシャがアサシンを召喚して3日。
今回の報告に出た主従が、彼女達にとって一番最初の獲物となった。
アサシンは生前、犯罪組織の暗殺者として名を馳せており、また中国拳法の達人でもあった。
氣を巡らせて気配を絶つ技能にも長けており、その為彼女はアサシンに偵察を任せていた。

「それで?」
「マスターは殺した。残ったサーヴァントは……。」
「そう……ありがとうね、アサシン。」

答える代わりに右掌を開いたアサシンに、彼の言いたいことを理解したサーシャは表情を引き締めたまま15度程頭を垂れた。

「礼はいらん、こうして殺す事には嫌という程慣れている。」

アサシンの宝具、それは中国拳法の応用によって掌から電磁パルス(EMP)を発生させる物だった。
物理学は生物学と比べればサーシャの専門と言える程ではないが、それが電気回路に流れれば、発生した膨大な電流を回路が御しきれずにショートする、と言う事ぐらいならサーシャには分かる。
そしてそれが、自分達にも効果がある、と言う事も。

(パラディンの様に絶縁コーティングを付けるべきかしら……)

そんな事をサーシャが考えている時、同時にアサシンもまた掌を拳へと握りしめながら、口で僅かに弧を描いていた。
表情こそ昏いが、その言葉の抑揚には、まるで解けない問題を解けた子供のような感覚が帯びていた。

「生前はサイボーグ殺しに使った電磁発勁……まさか此奴を、負担なしで、しかも生身の人間に対して振るうことが出来るとはな。」

―やはり、彼は立派な剣客なのね。
自分のような研究者が発見や実験の成功を喜びとするように、この男もまた、技の習得や上達を喜びとするのだろう。そうサーシャは思った。

(そう言えば―)
「所で、アサシン。」
「……何だ、マスター。」

一瞬問う事を躊躇いながらも、問いを投げかける。

「貴方に、聖杯にかける願いは無いの?」
「……お前はどうなんだ。」
「私にも、勿論……身勝手で、本当にどうしようもなく後ろめたい願いだけど。」

サーシャの願いは、自分がバラ撒いたナノマシン『ペイルホース』を消滅させることであった。
元々は、病気の身体に耐えられない人々を救うために生み出したナノマシン。
しかしそれはヴィクターやザーギンによって狂わされ、人の身体を強くするための力は、悪魔(デモニアック)を作るための力に変わり果ててしまった。
その原因は全て、自分自身にある。
だからこそ、ペイルホースは、デモニアックは、自分自身の手で壊さなければならない。
己の過ちは、己自身の手で償わなければならない。

その為にも聖杯は手に入れる。
例えザーギンの変身するバアル型や彼の操る無数のデモニアックであろうと、世界の法則その物を塗り替える力である聖杯を使えば、確実に存在すら消せるはずだ。
ジョセフやザーギンが運命に狂わされる事も無いようなあの時にまで時間を巻き戻す。
担い手次第で悪魔にさえ成り果ててしまうだろう力に頼らず、人々が幸福になる事を模索して生きていく。
ザーギン達ブラスレイター達の力も剥奪し、彼にも罪と向き合うチャンスを作らせる。
ジョセフやザーギン、そして世界中の人々が本当の意味で笑顔になれる世界を創り出せるようにやり直して生きていく。
それで、私の贖罪は終わる。

「贖罪……それがお前が聖杯に託す願いなのか。」
「ええ、元はと言えば、私がペイルホースを作り出したせいで、彼も弟も運命を狂わされてしまった。
何もかも、私が元凶なのよ、だから……。」


349 : 贖罪転生 ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 18:33:43 R9TXYInE0





―何もかも……貴様が元凶だ……俺も、彼女も……濤羅、貴様に……




「ッ!!」
「……アサシン?」
「うぅっ、いや、何でも、ない……。」

突如アサシンが目眩を感じ、頭を抱えてふらつき膝を付く。
親友にして宿敵だった男の最期の言葉が、アサシンの脳内にフラッシュバックする。
その言葉は脳を付き、心に刺さる痛みはアサシンの知る如何なる技をも凌駕する。

それは正に呪いの言葉であった、己自身、その言葉から逃避してやろうと此処に現界して何度思ったことだろうか。
だが、その言葉こそが、アサシンのサーヴァント、孔濤羅(コン・タオロー)がこの女の召喚に応じた理由だった。

「ッ……。」

手を頭に置きながらも、アサシンは立ち上がる。
さっきまで机の回転椅子に座っていたマスターが心配そうな顔で、此方を見つめている。

「マスター……ッ……お前は、お前自身が狂わした運命を変えたいと言ったな……お前自身の罪を、償いたいと。」

まだ目眩が残っているのか、アサシンは頭をまだ手で抑えながら、マスターの顔を神妙そうに見上げる。
彼女を見つめるその目には、幾度も躊躇なく人を殺し続けられたとは思えないような、悲しみの色が浮かんでいた。

「……俺も同じだ。」
「え?」
「俺も、お前と同じ様に誤ちを犯した。友と家族を嘆かせた、俺自身が悪かったんだ……」


そうだ。全ての原因は己自身にある。
あの時、妹の想いに気づいてやれば。

―だってね、だってね、ルイリはいつもいろんなひとにたべられながら、あにさまのこと、おもってたんだよ。

彼女を、長い間待たせずに済んだのに。

―だからこそ瑞麗は苦しんだのだ!!ただ兄としての優しさしか見せなかった貴様に、どれほど瑞麗が心苛まれていたか……

友を、怒らせずに済んだのに。

だからこそ濤羅は聖杯に願う。
彼女の想いを胸に抱きながら、もう一度やり直したいと。
勿論、妹の想いを受け入れることは難しいと思う、何せ俺達は、兄妹なのだから。
そのルールは変えられない、由緒ある孔家の子として、そんな恥ずべき真似は出来ない。
だが、だがもし彼女の心を知ることが出来れば。

きっと、彼女の想いと向き合うことが出来るはずだ。
向き合って、話し合って、そうすれば、彼と共に幇会に身を捧げて生き続ける事も出来るかもしれない。

その為にも聖杯は手に入れる。
これまでの記憶を運んで過去へと遡り、瑞麗(ルイリー)の愛と向き合う為にも。
それが、彼女の心を真に救うというのなら、幾らでもこの血を流してみせよう。

「だから、俺はもう一度やり直す。皆と、皆を今度こそ、幸せにしてみせる。」

―人々の幸福を願って作り上げたはずの力を、世界を滅ぼす悪魔の力にしてしまった女。
―友や家族の幸せを願った果てに、愛を掴めぬ鬼へと成り果ててしまった男。
二人の願う贖罪は、あまりにも血生臭く、かの神の子が血と共に流した罪と比べれば、ごく私的な欲に過ぎない物であった。
しかし思い浮かべるのはそんな美しさや気高さ等ではなく、弟妹の悲しみと、友の絶望。

悪魔を孕んだ女と、鬼でしかいられなかった男は、その罪を滅ぼす為に、聖杯へと手を伸ばす。


350 : 贖罪転生 ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 18:35:23 R9TXYInE0



【クラス名】アサシン
【真名】孔濤羅(コン・タオロー)
【出典】鬼哭街
【性別】男
【属性】中立・悪
【パラメータ】筋力C 耐久C 敏捷C 魔力E 幸運E 宝具-

【クラス別スキル】

・気配遮断:A+
自身の気配を絶つ能力。
戦闘中は解除されるが、撤退時に使用することで敵の目を免れることは可能。

【保有スキル】

・中国武術(内家):A+
中華の合理。宇宙と一体になる事を目的とした武術をどれほど極めたかの値。
本来このスキルは、外家と内家の二種類の大系を合わせた物だが、これはその内『内家』に全振りした亜種スキルである。
丹田から「氣」を練って全身に巡らせ自在に操る「発勁」と呼ばれる技術を扱う。
骨や筋肉からなる力と技でねじ伏せる外家とは対象的に、此方は身体の器官やツボを使って柔よく剛を制すと言った物で、氣を込めれば軽い攻撃でどんな物も軽々と打ち砕く。
氣を込めることにより、パラメータを無視できる程のパワーとスピードを発揮できる他、身体の傷を癒やすことも出来る。
純粋な力を物にする外家と比べて極めるのは至難の業であり、A+となれば達人中の達人といえる程。
意よりも先に体が動く『一刀如意』の境地に至っており、先手を取りやすく相手の動きを軽々と読むことも出来る。
回避に補正が掛かる他、精神を集中させる事で発動することから、「透化」「宗和の心得」の真似事さえも行える。
五感を研ぎ澄ますことも出来るが、それが仇となり轟音等で感覚を狂わす事もある、その為拳銃等による戦法は難しい。
アサシンは内家拳法「戴天流剣術」の免許皆伝であり、因果律をも斬り裂く氣を込めた刃を振り下ろす。

・戴天流:A++
アサシンが習得した、剣法を主とする内家武術。
二十八剣三十六刀、しめて六十四套路の剣法が存在するが、使用する刀剣は問わない。西洋の剣から棒切れまで十分武器足りる。
内家拳士が氣を込めた物は、布帯なら剃刀に、木片なら鉄槌程の効果を持つ。そして鋼の刃の行き着く先は……因果律の破断、万物万象を絶ち裂くに至る。
また掌法においても、五臓六腑を外側から四散する『黒手裂震破』や、外家のサイボーグ拳士を殺すに至った『電磁発勁』等、力の差を瞬く間に破戒する絶招を有している。
過去の常識に縛られず様々な制約を跳ね除けた在り方を持つ逸話から、外部的な要因による様々な制約を跳ね除け、貫通することを可能となる。
免許皆伝を持ち、絶技に開眼したアサシンは、最高ランクのスキルを保有している。

・剣鬼の慟哭:A
アサシンが魔都上海で引き起こした復讐劇で見せつけた憎悪と執念をスキル化した物。
高ランクの『戦闘続行』を兼ねている他、魔力消費の減少や、自身に対する様々なデバフを高確率で無効化する効果がある。
剣鬼は止まることを知らない。例え全てを失ったとしても、その手に剣を握り続けている限り。

・六塵散魂無縫剣:- 種別:対人絶技 レンジ:1〜5 最大捕捉:1〜10
戴天流剣術・絶技。
目に見えぬほどの素早さで音速を越えた幾多もの剣撃を放つといった技。
傍から見れば十の剣が同時に斬った様に見え、且つその内の九が残像だという超速の剣。
アサシンは二度、極限状態においてこの絶技を放ち、勝利を修めた経験を持つ。
しかし何時でも発動できる訳でも無く、アサシンは鍛錬でこの絶技を放ち十の剣を連続で放つことには成功しているがダメージは七割程しか与えられなかった。
この絶技を放つには、剣を除いた全てを己から消し去る『無我の境地』に至る事が必要とされる。


351 : 贖罪転生 ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 18:36:05 R9TXYInE0

【宝具】

「紫電掌」
ランク:- 種別:対機(対人)宝具 レンジ:1〜3 最大捕捉:1〜20人
アサシンがサイバー殺しと呼ばれた所以たる、戴天流の裏奥義「電磁発勁」。
多くの人間がサイボーグへと変わっていくこの時世を生きるために生み出された殺戮の絶技(アーツ・オブ・ウォー)。
これを扱える戴天流拳士は、師範を除いてアサシンが生きた頃には彼含めて二人しかいなかったそうな。
特殊な練氣法で内勁を電磁パルス(EMP)に変化させ、掌に帯びさせ電子回路をショートさせる。
電磁パルスを流した掌を当てられたサイボーグは、皆々その焼き尽くされるような痛みに苦しみながら倒れていったとされる。
また、この宝具の真名はアサシンが紫電掌と言う二つ名を持っていたことに由来しているため、周囲の電子機器を停止させる「轟雷功」もこの宝具に含まれる。
引き起こした電磁誘導で対象の回路を焼く技であるため、本来なら金属ならともかく人体には効果が得られないが、宝具化した影響で神秘の類にもダメージは与えられる。
サーヴァントに対しては効果が薄く、耐久、及び対魔力のランクによってダメージが縮小される。
尚、本来電磁発勁には臓器に膨大な負担を与えると言ったデメリットが存在し、その為戴天流においても長らく封じられており、連続して使えば死も免れられない。
サーヴァント化した影響で肉体が強化され、魔力が持つ限り紫電掌を放てる様になったが、反面魔力による負担も少なくない。

【Weapon】

「倭刀」
アサシンの得物。
散々使い古した無銘の刀だが業物ではある。
内勁を込めることでその切れ味は因果律を突破し、その気になれば戦車も斬り裂ける。

【人物背景】

近未来の上海を牛耳る『青雲幇(チンワンパン)』の凶手。
この世では数少ない人の身でありながら、鍛えた内勁によってサイボーグを仕留める、人呼んで「紫電掌」。
彼は任務で赴いたマカオで命を落とすが、一年後、彼は再び姿を現した、復讐の鬼として。
嘗ては義兄弟の契りを結んだ仲である青雲幇の香主達を次々と斬り殺し、その身を捧げたはずの幇会を壊滅に追いやった。
―その後、孔濤羅の行方を知る者はいない。

【聖杯にかける願い】

あの頃からやり直したい。

【方針】

聖杯は必ず取る、基本的には偵察を行い、隙を突いてマスターを殺す、サーヴァントとも戦うが、無理だと判断した場合は逃げる。


352 : 贖罪転生 ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 18:36:52 R9TXYInE0




【マスター名】サーシャ・ジョブスン
【出典】BLASSREITER
【性別】女


【能力・技能】

・改造人間
彼女は瀕死の状態から改造手術を受けている。
その為、人並み以上の身体能力を有している。
改造には彼女自身が作り出したナノマシン技術が応用されており、人並み以上の耐久力を持ち、老化現象も起こらない。
アポカリプス・ナイツの機体に耐えるための身体であるため、魔力負担や打たれ強さにもある程度補正が掛かる。

・生命工学
学会から一目置かれた程の生物研究者。
人間を金属融合生命体へと変質させるナノマシン「ペイルホース」を開発した。

【人物背景】

人類の肉体を、病気にも耐えられる様強くする研究をしていた若き女性研究者。
元は異民の子だったが、弟のジョセフが産まれる前に奉公に出されていた。
その後、医学生のマドワルド・ザーギンとも知り合い良き友人(恋人?)となった。
しかし人体強化の研究において発明したナノマシン、その出資を行っていた組織ツヴェルフの目的は別にあった。
それを分かっていながらもサーシャは研究を続け、遂にナノマシン『ペイルホース』を完成させるが、直後に異民であるために現地の住民からリンチを受ける。
それに嘆き悲しんだザーギンは世界に絶望し、ペイルホースを撒き散らし、結果的に彼女の発明は人を救う力を壊す力に変えてしまう事にも繋げてしまった。
瀕死の重傷を負ったサーシャはツヴェルフの実験によりサイボーグとなり、ペイルホースを処分するため、自身の罪を償うために戦うことを決意する。
ジョセフと再会する直前からの参戦。

【聖杯にかける願い】

贖罪。

【把握資料】

・アサシン(孔濤羅):
PCゲーム(R18版)、リメイク版(R15版)、またスニーカー文庫より小説版も刊行されています。
手っ取り早いのは小説版ですが、面白さで言えばリメイク版をオススメします。

・サーシャ・ジョブスン:
TVアニメ全24話、初登場は13話から。
最低でも彼女の苦悩が描かれている15話までの把握を推奨致します。


353 : ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 18:45:53 R9TXYInE0
続いて投下します。


354 : ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 18:47:58 R9TXYInE0
古来より人々を見守った地球の衛星を象りしムーンセル。
0と1とで構成されたプログラムの世界で、一台のフォード・マスタング・マッハ1が夜の公道を走り抜ける姿が見受けられた。
見る者が見れば成る程年代物だと感心するかもしれんが、周囲に数多くの車が走り抜けるこの道で、生憎そう言う嬉しい感想を抱く者は殆どいなかった。

マッハ1を運転する30代(自称29歳)の男性、滝本壮介は、これから仕事の現場に向かう途中だった。
彼の仕事はある秘密組織にて、多くの危険なサイバー犯罪事件を社会の裏から解明する、と言った物である。
滝本は元は警察の人間だが、職業柄ネットワークに関する知識はそれなりに深く、組織での実績もトップクラスのエージェントだった。
そんな彼の今回の仕事は、あるネットニュース配信会社で起こったハッキング事件を解決すること。

被害を受けた会社は、金色のザリガニを見つけたと言うようなふざけた記事を書いており、滝本も何度かは目にした事がある。
その会社が、突如配信相手に謎のゲームを送りつけ、購読者たちを次第にのめり込ませていったと言う。
そして、そのゲームを遊んだ者達は、生気を失いバタリと倒れた、とか。
以前どっかで騒がれたテクノブレイクみたいな何かと言う冗談も出たがそれは良いとして、組織の中で暇なのが滝本しかおらず、彼が出動することになり、今に至る。

ハンドルを握る滝本は、走りながらもやや不安な気持ちが走りつつあった。
あのケータイなしで事件を解決できるか、というような些細な事ではない。
組織が誇るあの歩くケータイがなくても、滝本は組織のエースとして第一線で活躍できる程度の技能は持ち合わせている。
ましてや仕事で一々そんなガクガクしていたらエージェントが務まるはずもない。
なら何故、滝本が心配なのかと言えば――

「公道の移動速度は厳守するのが人間のルールではないのか。」

右側の助手席にいる、この無表情な青年であった。
確かに、この青年の言う通り滝本のマッハ1は公道の規定速度を僅かにだがオーバーしている。

「あーはいはい分かっているよそれくらい分かっていますよ。」

目の前に通行人がいたら速攻でブレーキをかけられる程度に運転スキルには滝本は強い自信を持っている。
一々そんなことを気にしていられる質ではない。

「滝本、お前は『仮面ライダー』と同じ様に警察の人間だと聞いているが。」
「もう辞めて三年だし、生憎今の俺の職場は公僕ではないの、俺には関係ないの。これぐらいではクビにならないの。」
「ルールであると分かっていると言ったはずだが……。」
「あーすいませーん知りませーんそんなこと分かりませ……」
「ルールではないのか……!!!!!!」
「………はぁ。」

自分の上司兼恋人と同じくらいウルサイやつだな、と考えながらも滝本は無意識にブレーキに掛ける力を少しだけ強める。
右に大幅に傾いていたスピードメーターが少しだけ左側に落ちていく。だがこのまま行っても目的地にまで3分も掛からないだろう。
だが、滝本が心配しているのは、そんなことではない。
この男、目の前にいる『アサシン』の言う事ではなく、彼についてである。

今、滝本の目の前にいる男は、自身の喚び出した使い魔『サーヴァント』である。
滝本壮介は、この世界の人間ではない。
ムーンセルが作り出した『SE.RA.PH』に呼び出された人間『マスター』の一人である。

滝本がこの世界に迷い込んだのは、元の世界……即ち地球で捜査を進めたある事件が切っ掛けだった。
巷で名を馳せていたあるハッカーが、ある日突然部屋から消えたとされる失踪事件。
因みに滝本が追いかけていたのはそのハッカーが作成したとされるプログラムのソースコードを押収するためだったが、部屋に飛び込んだ途端に彼が姿を消していたのだ。
男のいた部屋は密閉された空間であり窓すらない、自宅の中央にある倉庫のような場所だった。その上出ていったと言う噂は全くない、靴も残っている。

その男のPCの画面を覗いた時だった。
内部には、極めて複雑な自家製と思わしきソフトウェアが起動しているだけであった。
ソフトウェアを適当に弄った途端、事件は起きた。
滝本壮介は、この地球から消滅してしまったのである。
後に滝本の所属する組織『アンダーアンカー』の歩くケータイ『サード』が解析してみた所、このソフトウェアは宛ら魔方陣の様に非常に秩序だった演算プログラムだと言う。
だが、消えた滝本が、今それを知る由もないであろう。

職業柄、サイバー事件において時折オカルトじみた物に突っ込んだことはしょっちゅうあるが、ここまで行くとは思ってはいなかった。
だが、今こうして冷静にいられることこそ、自身がエージェントであるが所以とも言えるだろうか、アンダーアンカーさまさまである。


355 : 滝本壮介&アサシン ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 18:49:19 R9TXYInE0
古来より人々を見守った地球の衛星を象りしムーンセル。
0と1とで構成されたプログラムの世界で、一台のフォード・マスタング・マッハ1が夜の公道を走り抜ける姿が見受けられた。
見る者が見れば成る程年代物だと感心するかもしれんが、周囲に数多くの車が走り抜けるこの道で、生憎そう言う嬉しい感想を抱く者は殆どいなかった。

マッハ1を運転する30代(自称29歳)の男性、滝本壮介は、これから仕事の現場に向かう途中だった。
彼の仕事はある秘密組織にて、多くの危険なサイバー犯罪事件を社会の裏から解明する、と言った物である。
滝本は元は警察の人間だが、職業柄ネットワークに関する知識はそれなりに深く、組織での実績もトップクラスのエージェントだった。
そんな彼の今回の仕事は、あるネットニュース配信会社で起こったハッキング事件を解決すること。

被害を受けた会社は、金色のザリガニを見つけたと言うようなふざけた記事を書いており、滝本も何度かは目にした事がある。
その会社が、突如配信相手に謎のゲームを送りつけ、購読者たちを次第にのめり込ませていったと言う。
そして、そのゲームを遊んだ者達は、生気を失いバタリと倒れた、とか。
以前どっかで騒がれたテクノブレイクみたいな何かと言う冗談も出たがそれは良いとして、組織の中で暇なのが滝本しかおらず、彼が出動することになり、今に至る。

ハンドルを握る滝本は、走りながらもやや不安な気持ちが走りつつあった。
あのケータイなしで事件を解決できるか、というような些細な事ではない。
組織が誇るあの歩くケータイがなくても、滝本は組織のエースとして第一線で活躍できる程度の技能は持ち合わせている。
ましてや仕事で一々そんなガクガクしていたらエージェントが務まるはずもない。
なら何故、滝本が心配なのかと言えば――

「公道の移動速度は厳守するのが人間のルールではないのか。」

右側の助手席にいる、この無表情な青年であった。
確かに、この青年の言う通り滝本のマッハ1は公道の規定速度を僅かにだがオーバーしている。

「あーはいはい分かっているよそれくらい分かっていますよ。」

目の前に通行人がいたら速攻でブレーキをかけられる程度に運転スキルには滝本は強い自信を持っている。
一々そんなことを気にしていられる質ではない。

「滝本、お前は『仮面ライダー』と同じ様に警察の人間だと聞いているが。」
「もう辞めて三年だし、生憎今の俺の職場は公僕ではないの、俺には関係ないの。これぐらいではクビにならないの。」
「ルールであると分かっていると言ったはずだが……。」
「あーすいませーん知りませーんそんなこと分かりませ……」
「ルールではないのか……!!!!!!」
「………はぁ。」

自分の上司兼恋人と同じくらいウルサイやつだな、と考えながらも滝本は無意識にブレーキに掛ける力を少しだけ強める。
右に大幅に傾いていたスピードメーターが少しだけ左側に落ちていく。だがこのまま行っても目的地にまで3分も掛からないだろう。
だが、滝本が心配しているのは、そんなことではない。
この男、目の前にいる『アサシン』の言う事ではなく、彼についてである。

今、滝本の目の前にいる男は、自身の喚び出した使い魔『サーヴァント』である。
滝本壮介は、この世界の人間ではない。
ムーンセルが作り出した『SE.RA.PH』に呼び出された人間『マスター』の一人である。

滝本がこの世界に迷い込んだのは、元の世界……即ち地球で捜査を進めたある事件が切っ掛けだった。
巷で名を馳せていたあるハッカーが、ある日突然部屋から消えたとされる失踪事件。
因みに滝本が追いかけていたのはそのハッカーが作成したとされるプログラムのソースコードを押収するためだったが、部屋に飛び込んだ途端に彼が姿を消していたのだ。
男のいた部屋は密閉された空間であり窓すらない、自宅の中央にある倉庫のような場所だった。その上出ていったと言う噂は全くない、靴も残っている。

その男のPCの画面を覗いた時だった。
内部には、極めて複雑な自家製と思わしきソフトウェアが起動しているだけであった。
ソフトウェアを適当に弄った途端、事件は起きた。
滝本壮介は、この地球から消滅してしまったのである。
後に滝本の所属する組織『アンダーアンカー』の歩くケータイ『サード』が解析してみた所、このソフトウェアは宛ら魔方陣の様に非常に秩序だった演算プログラムだと言う。
だが、消えた滝本が、今それを知る由もないであろう。

職業柄、サイバー事件において時折オカルトじみた物に突っ込んだことはしょっちゅうあるが、ここまで行くとは思ってはいなかった。
だが、今こうして冷静にいられることこそ、自身がエージェントであるが所以とも言えるだろうか、アンダーアンカーさまさまである。


356 : 滝本壮介&アサシン ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 18:53:02 R9TXYInE0

そして、こういった経緯を通して滝本の元に喚ばれたサーヴァント、彼こそが共に戦う、謂わば『バディ』である。
最も、ここでは自分は『バディ』ではなく『マスター』と呼ばれるそうだが。
『相棒』ではなく『ご主人様』と呼ばれるのは桐原のサードを思い出して少しこそばゆい気もするが、上から目線になるのはどうしても好きになれない。
なので、このサーヴァントの青年、アサシンには、基本名前で呼ばせる様にしている。

ロールアウトして間もないセブン、そして行方不明になった嘗てのゼロワンに良く似た、大変生真面目な人物である。
多少口うるさいのは気になるが、こういった人が自分の肌には合うようだ。亡くなった母親が原因だろうか。

――本当に大丈夫か……?
昨日、滝本が見た夢が想起される。

『俺は、人間を、守る。』

人間によって生み出された、一人のロボットの夢である。
ロボットは初めて生み出された心を持った機械人形であった。
ロボットの使命は人間を守ることであった。
造物主の命令した通り、ロボットは人間を守るために、人知れず戦い続けた。
まるで、子供の頃テレビに出てきたなんちゃらライダーみたいに。

『俺は魔進チェイサー、ロイミュードの番人―』

だが半年後、ロボットは作り変えられた。
記憶を失った彼は、人類と敵対する機械人形達を管理する用心棒として生まれ変わった。
それでも彼の中で人間を守ると言うコマンドは残っていたが、それもまた、彼等の手で書き換えられた。
人類の希望として産まれた戦士は、絶望をバラ撒く死神へと変わっていった――
それが、滝本の喚んだサーヴァント、アサシンの過去であった。

(だから俺なんかに出来るわけねぇって、こんな中途半端に意志を持った機械を動かすってのは)

嘗ては滝本も、バディを欲しがっていた時期はあった。
共に捜査を行えるパートナーを。
……あの時までは。


――だが私は、私の思考に従い、解を求める。人間に問い続けるまでだ。
(こいつはあいつ……ゼロワンと同じだ)

人類と共存できる人工知能として生み出されたにも関わらず、人間をどこかで苦しめ続けた死神ケータイ……フォンブレイバー01の記憶が思い起こされる。
彼もまたそうであった。人間の手によって作られた身でありながら、人間の敵となった機械生命体であった。
アンカーがゼロワンに壊滅されかけたあの日以来、滝本はそれ故にロールアウトしたセブンと向き合うことが出来なかった。
いつか、セブンもアイツの様になってしまいそうで怖い、と。
もっとも、制御回路を外されたゼロワンと比べればアサシンは大分人間に忠実なのかもしれない。
アサシンがゼロワンと同じく人類に仇をなすロボット軍団に従い続けられたのも、プログラムの書き換えがあったからなのだろうというのは彼の夢からも読み取れる。

だが、このアサシンは言葉を喋っている。
自分の意志による思考がそれなりに得意である。
常に自分の意志で思案し続けている。
きっと彼は、遅かれ早かれ自分の意志で動き出すであろう。
チップに書き込まれたプログラムから逸脱した、あのゼロワンの様に。

悩みが浮き出ている滝本の思考とは真逆に、彼の操る車は淡々と走り続ける。
やや乱暴な彼のハンドル操作に忠実に走り続けている。
機械は、本来こうあるべきだ。
担い手の手綱に繋がれて、担い手の思うがままに動くべきだ。
そういった考えを、今の滝本は持っている。
だからこそ、滝本壮介はアサシンを受け入れられない。


357 : 滝本壮介&アサシン ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 18:53:58 R9TXYInE0



◆◆◆



その頃、ネットニュース配信会社は、既にニュースを配信するジャーナリズムを遂行する場ではなくなりつつあった。
ここにいた編集者は全員メール作成アプリに全神経を集中させている。
素早いキーボード操作とは裏腹に一切の動きが感じられないその虚ろな眼球は、何かしらの暗示を受けている証であった。
編集長専用の回転椅子にふんぞり返るハッカーの青年と、そのサーヴァント、キャスターによって。


「ほらほらほら遅いよ遅いって!!あんたら文字書く事だけが取り柄の人間なんだからさぁ、これぐらいチャッチャと出来ないと話しにならないでしょって!!」

やや焦れったげに眉の皺を濃く見せながらも、青年がニヤけながらパンパンと両手のひらを叩く。
まるで、車を回し疲れた籠の中のハムスターを煽る少年の様な態度で。
しかし文字を書くように暗示を掛けられている記者達は、その言葉に耳を通さずに只管文字を打ち続ける。

「キャスター、もーちょっとこいつらの物書くスピード早められないの?。」
「だからそれは難しいと言っているじゃないかマスター、私の暗示では全神経を執筆に集中させる事までが限界だ、人間の思考速度を早めることまでは出来ない。」
「……あっそ。」

青年がニヤけるのをやめ、舌打ちをし、机の引き出しを横に蹴る。
彼は決して理屈が理解できない男ではない、寧ろ他人と比べれば利口な方だと思っている。
しかし、今の彼は自分を認めない、思い通りにならない現実に苛立ちを感じていた。
そこで出会ったのがこのキャスターだった。
その危険思想故に排斥された魔術師である彼は、自分を認めない人々への憎しみを持つ自身に共感し、今こうして協力している。
……一々皮肉を挟む癖さえやめれば、もう少し好感は持てそうなのだが。

青年の居座る編集長用のマスターPCから全体の作業状況を確認する。
各画面にはメールアプリは勿論、プレゼンテーションソフト、画像編集ソフト等、それぞれ別々のアプリケーションによる作業が行われていた。
文面は……まあ悪くはない。これなら自分も惹かれそうだ。

「ま、文章は流石プロって言ったトコじゃない?って思うけどさぁ、なぁキャスター、プロって言うのは、もっとスピード有りきと言える程の勝負じゃないと意味なくない?」
「マスター、今宣伝している君のその最高傑作とやらの完成には1週間も掛かったじゃないか。」
「お前ー、寧ろそこはこのご主人様たる俺を褒める所だろ。あのゲームの開発に、俺がどれだけの時間を注いだと思う?」

青年が突然椅子から立ち上がり、記者達が淡々とキーボードを打つ音のみが響く空間にて声を先程よりも大きくする。

「まず、ここに来る前の時点で既に構想は始まっていた。更には、看板と成り得るキャラクターのデザインとグラフィック、物語を印象づけるBGMの作曲、そしてこの俺が何度も脳内に描き続けてきた膨大なスクリプト……
そんじょそこらのサークルでも五人以上の人数を要する作業を俺は一人で、しかも一週間でやり遂げたんだぜ!!」
「その話は前に聞いたと思うが……ん!?」


「おー、そうか、ここでたった一人のクソガキが創り上げた壮大なゲームがあるって聞いてさー……ちょっと話聞きたいんですけどーごめんくださーい?」

ドア越しから男の声が響く。
ガチャガチャと開けようとしているようだが、生憎鍵を掛けているためその様子は見えない。

「何者だ。」

陣地作成によってこのビルの周辺に展開した結界を比較的軽い物にした己の慢心を恥じながらも、向こうにいるであろう男に問う。
マスターも両手でメガホンを作り男めがけて声を上げる。

「もしかしてお巡りさんですかー?」
「あー、ちょっと違うなー。どちらかと言えばー。」
『ブレイク』

刹那、激しい振動と轟音と共に、鉄製のドアが弾き飛ばされる。
ドアは横の壁と繋がる金具との繋がりを物理的に砕かれたことで、そのまま勢いよく、地面にそのまま縦に大きく音を立てて倒れる。
しかし記者達は一切気づいていない。ただ眼の前の作業のことしか頭には入っていないのだ。

「サイバー捜査官、って言った方が良かったかぁ?」

ドアの向こうから、その場でサングラスを外して見せた余裕な顔つきの滝本と、パンチユニットを装備したアサシンのサーヴァント、チェイスが姿を現す。
あっさりと自分の居場所に来られたキャスターのマスターが、わなわなと身体を震わせる。


358 : 滝本壮介&アサシン ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 18:54:21 R9TXYInE0

「……フン!」

キャスターが出現させた杖で地面を叩く。
すると、奥の方にいる編集者が操作しているPCから次々と無数の0と1の塊の様な何か―実体化したプログラム―が出現し、それが一体の怪物を形作っていく。
生み出されたのは、血のように紅い模様を持った、一人の戦士であった。

「こいつは……。」
「俺が開発したゲーム、そのボスキャラのポリゴンを具現化させたんだよ、こいつの……コードキャストとやらを応用してね。
ま、要するにPCに保存しているファイルを、こちらの空間に適応させた上で移動させてやったんだよ。アンタらを殺すための対策としてねぇ。」

編集長室の回転椅子に座りながらもぐるぐると回るマスターがそれを解説する。
その様を滝本は睨みつける。

「坊主、ゲームごっこはお終いだ、とっととそのサーヴァントを捨てて、おとなしくお兄さんの言う事に従いなって。」
「それはこっちの台詞だぜおっさーん、今俺はとっても大事なプロジェクトを進行させているんだ、アンタの間違った正義感なんかに邪魔されてたまるかよ。」

……聞く耳持たずって訳か。
だが、だからと言って躊躇なく殺すつもりはなかった。
性善説を信じているわけでもなかったが、滝本はちょくちょく自分でも気にする程度には、お人好しな人柄である。
だが滝本が迷っている間にも、怪物は次々と生成されていく。


アサシンが、先程ドアを破壊する際に使用したパンチユニット……ブレイクガンナーに手を掛ける。
――また、こいつは人間を殺るつもりなのか。

「マスター、このキャスターも、マスターも、人間だ。」

キャスター達には見せなかった苦い表情で問いながらも、滝本は右手に隠している令呪に力を込める。
彼はひょっとしたら、あのキャスター達を殺すかもしれないと。
滝本の方針としては、警察を呼び、マスターを保護するつもりにある。
彼は聖杯戦争に乗るつもりはない。
どちらかと言えば、聖杯戦争の仕組みを暴き、それを打破することが目的である。
そして、打破した際には他のマスター達も同時に脱出させるつもりだ。

「もしかして、、お前はこいつを殺す、とかじゃねえよな?」
「いや、違う。」

表情を一切変えず、アサシンはブレイクガンナーの銃口を左手にぶつける。
エレキギターの旋律がガンナーから響き渡る。

「俺は人間を守る。」
「え……。」
「彼等も、この男達も、俺が守る。」
『ブレイク・アップ』

電子音声が鳴ったと同時に、アサシンはブレイクガンナーを自身の右側……即ち壁の部分に向ける。
それと同時に、けたたましいエレキギターの旋律とともに、アサシンの周囲に二個のタイヤの如きオーラが出現する。
そのタイヤのオーラに囲まれたアサシンの肉体に、徐々にエンジンを思わせるパーツが纏われていく。
パーツが全てを覆い尽くし、タイヤが合体する。その時、既にアサシンは人間の姿を象ってはいなかった。
いるのは、鋼鉄で覆われた漆黒の戦士、魔進チェイサー。

正義の戦士ドライブの複製品でありながら、怪人の味方として産まれた死神。
滝本が子供の頃に観たなんとかライダーとは、大凡似ていながらも真逆の在り方を持つ半英雄。
そして彼は今、人間たちの殺し合いの中で、人間の味方として、再び姿を現したのであった。



人間を守る。
二人に与えられたこの道を、同じ目的追いかけて、二人走り抜けるだろう。
バックギアは、ない。


359 : 滝本壮介&アサシン ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 18:54:48 R9TXYInE0


【クラス名】アサシン
【真名】チェイス
【出典】仮面ライダードライブ
【性別】男
【属性】中立・中庸
【パラメータ】筋力B+ 耐久B 敏捷B 魔力E 幸運D 宝具E(魔進チェイサー変身時)

【クラス別スキル】

・気配遮断:D
自らの気配を絶つ能力。
ただし、戦闘時は解除される。

【保有スキル】

・重加速:A+
俗に「どんより」と呼ばれる現象。
コア・ドライビアの超駆動により空間を歪め周囲に結界を展開し、結界内にいる同ランク以上の重加速スキルを持たぬ物の速度を弱める。
彼はメディックの改造により「超重加速」と呼ばれる能力を有しており、初めてロイミュードや仮面ライダーの重加速を無効化することに成功した。

・戦闘続行:A
往生際が悪い。
身体が動かなくなるまで戦い続ける。

・単独行動:B
マスターとの魔力供給を絶っても現界を保つ能力。
Bランクなら、マスターが死んでも2日程は現界を保てる。

・機械生命体:A
ロイミュードと呼ばれるアンドロイドたる証。
精神干渉が通らぬ他、「自己改造」「変化」に近い効果も併せ持つ。

【宝具】

「原初の加速英雄、今は追撃の死神(魔進チェイサー)」
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1
アサシンが嘗て「魔進チェイサー」と呼ばれるロイミュードの死神として戦ってきた逸話から。
ブレイクガンナーを起動させることにより、魔進チェイサーへと変身する。
魔進チェイサーとなれば戦闘力は上がる他、「チェイサーバイラルコア」と呼ばれる特殊バイラルコアを使うことで右腕をチューンアップ可能。
ルールを破ったロイミュードを裁いた逸話から、この姿に変身している時のみ、属性が『混沌』の敵に対し補正が掛かる。
ドライブシステムは科学の産物であるため神秘性は低いが、ロイミュードの番人としての知名度が高いためにある程度の神秘ランクを獲得した。
本来なら「ライドチェイサー」も召喚できるのだが、ライダーのクラスでないためにそれは出来ない。
そして、もし過去、ないし未来のチェイスが現界していたのなら、別の宝具として顕現する可能性もあったとか。

【Weapon】

「ブレイクガンナー」
ドライブシステムを解析して作られた銃型デバイス。
ノズルを押し込むことで銃撃が可能な「ガンモード」、パンチユニットとしての機能が扱える「ブレイクモード」の二つにモードが変更できる。
銃口を左手で押し込むことで認証、チェイスを魔進チェイサーに変身させる。
ドライブシステムが元になっている為に、シフトカーやバイラルコアを装填するためのスロットも搭載されている。

「チェイサーバイラルコア」
ハートからプレゼントと称されて送られたチェイス専用のアイテム。
ロイミュードの媒体となる「バイラルコア」をカスタムした物。
これをブレイクガンナーに装填することで、右腕にモジュールを装填させることが可能となる。
鉤爪と盾を併せた『スパイダー』、弓型の『バット』、鞭型の『コブラ』の三種類を保持している。
自律行動も可能で、飛び回ってチェイスをサポートしてくれることも。

【人物背景】

世界を静止させた「グローバルフリーズ」を引き起こした機械生命体「ロイミュード」の一人。
約束の十人であるハートやブレン、メディックと行動を共にしている。
任務を失敗したロイミュードのバイラルコアを破壊し、もう一度やり直させる「ロイミュードの死神」であり、約束の十人の用心棒も兼ねている。
その正体は、嘗てグローバルフリーズを止めたプロトドライブの素体にして全てのロイミュードの試作品「ロイミュード000」。
記憶を喪っており、その後もメディックに洗脳されて改造されたりと碌な目にあっていない。
超重加速を引き起こし、仮面ライダーを倒すことに執着していくが、タイプフォーミュラとなった仮面ライダードライブに倒され、昏睡状態になる。
今回は、その後からの参戦。

基本的に生真面目且つ几帳面な性格で、図書館には静かにしろと特状課のメンバーに注意を呼びかけている。
病院から抜け出す時にもきちんと布団を畳んでから出ていっている。
ロイミュードに対する仲間意識も強く、仲間を処罰しても殺しはせず、仮面ライダーには敵意を向けても人間を殺すような真似はしなかった。
ドライブに倒され、霧子に発見される間からの参戦なので、霊体化は出来ない。
ただしアサシンの気配遮断スキルにより姿を晦ますことは可能。

【聖杯にかける願い】

己の正体を知る。


360 : 滝本壮介&アサシン ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 18:55:27 R9TXYInE0



【マスター名】滝本壮介
【出典】ケータイ捜査官7 滝本壮介の事件簿
【性別】男

【能力・技能】

・エージェント
元刑事としての洞察力と事件解決へ導く事に関する技能。
アンダーアンカーのエージェントであるため、ネットワークに関する知識も豊富。
本来ならフォンブレイバーを扱う資格も得られたはずだが、今の彼はフォンブレイバーを操れる気には到底なれない。
体術も心得ており、そこらのチンピラなら楽々取り押さえられる。

・カリスマ(偽)
幼い頃はガキ大将で、子供のように純粋な人の心を惹かせる魅力がある。
セブンやゼロワン等のフォンブレイバーからも好感を持たれている。
余談だがこれはセブンのバディの後任である網島ケイタにも共通している事でもある。

【人物背景】

サイバー犯罪と戦う秘密組織『アンダーアンカー』のエージェント。
アンカーのエースで、会長ともプライベートで会話したりと他のエージェントよりも信頼関係はある模様。
サイバー犯罪への対抗と人間に近いAIの誕生の為に作り出されたフォンブレイバーの最初期型『ゼロワン』の最初のバディに選ばれるがこれを拒否。
やがてゼロワンがサードを除く全てのフォンブレイバーを再起不能に陥らせた事件により、次第にフォンブレイバーと距離を置くようになっていく。

贅沢を好まず、愛車を乗り回して気ままに生きているちゃらんぽらんな性格。
所が根はかなりのお人好しで、困った人がいれば直ぐ様助けに行こうとする。
後に主人公である網島ケイタがエージェントになる切っ掛けを作った人物でもある。
小説で御厨ミキと出会う前からの参戦。

【聖杯にかける願い】

聖杯戦争の舞台からの脱出。


361 : ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 19:01:07 R9TXYInE0
すみません>>354で連投してしまいました。

もう一つ投下します。


362 : 伊達一義&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 19:01:53 R9TXYInE0




薄暗い電灯と、ややアンティークな木製のテーブルで彩られたバー。
その明るさとレトロな雰囲気には、それなりの年季と趣きが取れている。
黒檀のカウンターテーブルの上で、劈く様なミキサーの音が鳴り響く。
厨房側から透明のミキサーの中で踊る桃色の液体を眺めるのは、黒いジャケット姿の男性。
席側からそれを座りながら見つめているのは、バーテンダー…ではなく、赤と黒の背広の上に黒いジャケットを羽織った髭の男性であった。
やがてミキサーの音が鳴り止み、薄暗い店の雰囲気に似つかわしい静寂が取り戻されていく。
ミキサーから取り出された桃色の液体が、グラスに注がれ、ストローを添えて髭の目前のテーブルに置かれる。

「お待ちどおさま、伊達一義特製いちごミルクです。」
「済まない。」

伊達一義、そう名乗った男性から、髭の男はいちごミルクを受け取り、ストローに優しく口を咥える。

「お味は如何ですか?」
「いちごの菓子は俺の好物だが、いちごミルクもまた格別だな。昔自動販売機で特に好んで買って飲んでいた頃を思い出す。」

気取った様な敬語で喋る男性は、その笑顔に続いて、更に私的な話での言葉を加える。

「先程は助けていただいて、ありがとうございます。」
「例には及ばない。俺はサーヴァントとしての役割を果たしただけだ。」

客席に座る髭面のこの男は、そう、伊達のサーヴァントである。
そして、伊達は、聖杯戦争に参加することを強いられた"マスター"の一人なのである。
左掌に付いている、銃弾とトランプの道化師(ジョーカー)を混ぜたような模様が、何よりの証だ。

「うーん、でも、俺聖杯戦争に乗る気しないんですよねー。」
「ないのか?叶えたい願いは。」
「……。」

この殺し合いを共に生き抜くことになるであろうサーヴァントからの疑問に、曖昧な態度で返す伊達。
サーヴァントは、いちごミルクのストローを加えながら、何も言わず、ただ品定めするようで、どこか優しさを捨てられないような目つきでそれを見つめるだけであった。

「まだ決まっている訳ではないのか。」
「いやそういうわけでもないかなー。うーん。」

こめかみに指を置きながら首を左右に傾げ続ける伊達。
彼がこの運動を続ければ続けていくほどに、サーヴァントのいちごミルクはストローを通って彼の口の中を伝っていき、少しずつそのグラスの中身を減らしていく。
やがていちごミルクのグラスが空っぽになり、僅かな水滴と空気をストローが啜りきろうとする音のみが残った時。
伊達がようやく首を傾げ続けるのを止め、懐から緑色の茎を取り出し、慎重にテーブルに並行にして両端を握った。
サーヴァントはそれを真顔で見つめるだけであった。

「よーく見てくださいアーチャーさん。この茎の端に手を添えると……パッ!!」

何と、色とりどりの花びらが出てきた。
彼の見事な手品に、サーヴァント……アーチャーは、称賛の拍手を思わずパチパチと叩き始める。

「凄いでしょ〜。」
「ブラボー――――じゃない、お前の願いは何なんだと聞いているんだ!!!!!」

彼に乗せられそうになりながらも、机から思わず立ち上がり、怒鳴るアーチャー。
その言葉に、思わず「てへっ」のポーズを取りながらも、伊達は再び頭を抱える。

「何故、俺の願いにそこまで……。」
「お前が戦う理由によって、俺が聖杯戦争に乗るかどうかも自然と決まるからだ。」

だが、伊達は口を開けなかった。
否が応でも話そうとしない彼に、アーチャーは食い下がることは出来ず、結局そのまま数分の間沈黙が続き―

「お客様、そろそろ閉店のお時間です。」
「逃げるのか。」
「閉店は閉店でーす、お片付けしなくちゃいけないのでお先にお帰り下さーい。」
「ここは貸し切りだったはずだが?」
「貸し切りであろうと開店時間と閉店時間が無効になったわけじゃないからねー、ほら、出てった出てった。」

結局、アーチャーは己のマスターより店を追い出されることになった。
このバーは地下に出来ているらしく、アーチャーは地上に繋がる階段をゆっくり上がって退店することになった。
こうして地下で話し、階段を上がって出ていくのは、以前喫茶店の地下室に仲間と共に集まっていた頃のことを思い出し、不覚にも少し懐かしくなってしまう。

バーよりも更に暗くなった路上に上がり、階段を振り返れば、近くにあった店の看板には名前が刻まれていた。
『BAR joker』
誰かの名前だろうか、と思って見ていたその時、看板を照らす外灯がプツンと消される。
それを暫く物憂げに見つめていたアーチャーは、そのまま踵を返し、店を後にし、闇に溶け込んでいく。



◆  ◆  ◆


363 : 伊達一義&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 19:02:58 R9TXYInE0


伊達一義がアーチャーとコンタクトを交わしたのは、つい数時間前のことだった。


太陽の輝きとも、賑やかなざわつきとも縁のない、夜19時の港。
そこで聖杯戦争の参加条件を満たし、伊達の手元に令呪が浮かんだ直後、伊達は剣を操る未来風の甲冑を着た戦士に出くわした。
直後、戦士を見る伊達の目に『Saber』という文字が浮かび上がり、同時に幾つもの数値が脳内を駆け巡る。

――じゃあ、この男が、サーヴァント……。

まず、命乞いするかのように説得を試みようとするも――やはり通じることはなく、結局戦士は剣を振りかざしてきた。
警官時代に培った格闘術と、暴漢に襲われるのは日常茶飯事な経験を活かして彼の剣から身を交わすも、間もなく伊達の身体は次第に披露していく。
ここで終わりか……と思いつめ、死んだ両親の顔が浮かび上がってきたその時。

――SCRASHDRIVER――――DANGER――

――変身。

やかましい電子音声とともに、まるで子供の頃に見たヒーローの様に戦士の背後に立ちふさがったのが、アーチャーだった。
アーチャーは、万力を模した様なバックルに、紺色の容器を差し込み、押し潰した瞬間、ビーカーの中に包まれ、ビーカーが割れた時には、ワニを模した様な異形の戦士に変わっていた。
パラメータは、高い方ではあったが、この戦士に勝てるかと言われればやや怪しい部分があった。
しかしアーチャーは決して逃げることはしなかった。どこからかパイプを模した赤黒い短刀を取り出したかと思えば、それを手にセイバーに立ち向かっていく。

伊達の見立てでは、アーチャーの体術は英雄と言われるだけあって悪くはなかった。寧ろ良い方だった。
だが、その技で聖杯戦争を制する程の腕前を持っているわけではなかった。一方でセイバーは、その剣技で名を馳せたであろうか、優れた剣の動かし方と反応の良さで彼を捌き切っていた。
戦闘時間はこの流れを変えぬまま十分を経過。セイバーは動きにブレがないが、アーチャーはそうも行かないのか、徐々に攻撃が当たらず、回避が困難になりつつあった。
この立ち合いでは、アーチャーはセイバーに勝つことは難しい、そう思った時。

――マスター、早速で悪いが、ここで宝具を使わせてもらうぞ。

宝具。
その言葉その意味は、まるで警察学校で勉強したそれと同じ様に、伊達の知識の引き出しの中にいつの間にか入り込んでいた。
宝具とは、謂わばサーヴァントにとっての切り札であるとは聞いている。
この初戦でそれを使うことの了承を求めるということは、それなりのリスクが伴うということを表していることなのだろう。
そして、同時に、それを使わざるを得ないという現状を、アーチャーは理解しているということになる。

伊達が頷いた直後のアーチャーの反応は早かった。
その時のアーチャーは、セイバーと辛うじて鍔迫り合っている状態であった。
が、その時セイバーは正にその刃を徐々にアーチャーの短刀の柄の所にまで滑らせようとしている所であった。
このままでは、アーチャーの腕に深刻なダメージが入る。その時である。
アーチャーは短刀を握っていない左手を動かし、短刀に力を込める……のではなく、瞬時にバルブを二回転させる。

――ELEKI STEAM――

電子音声を合図とし、刃から電撃が奔る。
それは鍔迫り合っているセイバーの刃を通し、剣士の甲冑に、肉体に次第に伝導していく。

セイバーの肉体が痺れ始め、動けなくなる。
その隙を、アーチャーは逃がすことはなく、直ぐ様バックルのレンチに手を伸ばす。

――『喰らい砕く黒鰐の牙(クラックアップフィニッシュ)』――

電子音声とともに、アーチャーの左手にエネルギーが籠もっていく。
紫色のエネルギーを纏った左拳を、アーチャーはセイバーの鳩尾に叩き込む。
セイバーは背後のコンテナにまで大きく仰け反り、漸く痺れが治まってきたのか、鳩尾を刀剣を持っていない片手で抑える。

セイバーの刀剣に光が灯っていく。
恐らくそれは彼の宝具であるその剣の在り様であろうか。
ともかく、この技を凌ぎ切るのは、アーチャーにとっては困難であった。


364 : 伊達一義&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 19:03:39 R9TXYInE0

しかしアーチャーの猛攻は留まらなかった。
アーチャーが取り出したのは、今度はサメの模様が彫られた紫色の容器。
それをシャカシャカ振った後に蓋を開けて銀色のハンドガンに装填し、今度は紫色の一回り大きなハンドガンに、バックルにハマっている方の容器を装填する。

――FULL BOTTLE――
――CROCODILE――

左手に銀の銃、右手に紫の銃を構えたアーチャーは、それを同時にセイバー目掛けて構えたかと思えば、同時に引き金を離す。
その時にはセイバーが魔力をフルチャージした剣を振りかざした頃であった。

――STEAM ATTACK――
――FUNKY BREAK――CROCODILE――Aaaaaaaaaaaaaaaaaa!!

開かれた双銃の銃口からは、サメとワニのエネルギー体が並びながらも海原を駆けるかの如く襲いかかる。
光の込められた刃からは、眩い斬撃波が空間に刻まれる。

アーチャーの放った光弾は、確かに剣士を射抜いていた。
しかし、剣士はその直後に真上に跳躍し、ぶつかる場所を失ったサメとワニの弾丸は剣士の背後のコンテナに衝突。
先程の衝撃で大穴が空いていたコンテナは二度目の突撃に耐えられずに崩壊、貫通される。
コンテナを貫通した二頭の光の弾丸はそのまま真後ろにある海へと沈没、霧散してしまう。

アーチャーが仮面の下で驚愕の表情を浮かべているのも束の間。
セイバーの斬撃波は先程までサメとワニの通った間の場所の中間を見事にすり抜け、アーチャーの胸部に命中したのだ。
今度はアーチャーが仰け反って背後のコンテナに衝突する。

アーチャーの耐久ランクは非常に高いのもあって、コンテナに大きなクレーターが空いていた割にダメージはそこまで通らなかった。
そのまま立ち上がり、突進しようと構えるが、近くにいた伊達を見つめて一旦俯いた後、再びセイバーを見つめその場に立ち止まった。

セイバーも剣を構えたまま、アーチャーを見つめているだけで何もしてこない。
お互いの出方を見計らっているのだろう。そのまま静かな沈黙が続く。
20秒にもなるだろう駆け引きの中で、まず先にカードを引いたのは、アーチャーであった。
アーチャーは再び、あの容器を取り出す。だが今度はサメではなく、蝙蝠の容器である。
しかし今度は、鰐をバックルより取り外し、代わりに蝙蝠の方を装填し、再びレンチを倒す。

――CHARGE BOTTLE――TSUBURENAI――

その電子音声と共に、アーチャーの背中に一回り大きな、蝙蝠の如き翼が生える。
頑強なアーチャーの身体にはとても似つかわしくなかったが、ダークなカラーリングが良く似合う。

――やはり、こいつが一番身体に馴染む。
――CHARGE CRASH――

懐かしむ様な口調でそう言うと、アーチャーはその巨大な翼を羽ばたかせ、上空に飛び上がる。
当然、セイバーはその場で限定的に魔力を剣に込め、小規模の斬撃波を上空のアーチャー目掛けて放つ。
だがアーチャーはそれを躱したかと思えば、移動しながらも短刀と紫の方のハンドガンに合体させ、更に鰐のボトルを装填する。

――RIFLE MODE――FUNKY――CROCODILE――

月を背に、ライフル形態になった銃を構えるアーチャー。
同じくセイバーもまた、剣にエネルギーを込める。
引き金が放たれるのと、柄が振りかざされるタイミングは、ほぼ同時であった。

――FUNKY SHOT――CROCODILE――Aaaaaaaaaaaaa!!

紫色の弾丸と、山吹色の剣戟が、同時に炸裂する。
周囲には爆風が広がり、その勢いで近くにいた伊達も数m後ろにまでに吹き飛ばされる。

アスファルトにぶつかり、右肘に擦り傷を負う。
前方を見上げれば、爆風で何も見えない。
そこに、蝙蝠の翼を生やしたままのアーチャーが飛んでくる。

――今だ、逃げるぞマスター。

そう言うと、翼を畳んで右腕で伊達を覆うように抱き込む。
アーチャーは紫のハンドガンで煙を散布した後、伊達が気がついた時には、港とは比較的遠い路上に移動していた。




◆  ◆  ◆


365 : 伊達一義&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 19:04:23 R9TXYInE0


伊達一義が初めて人を刺したのは、まだ十歳の頃であった。
ドラム缶の中に閉じ込められた両親を借金の肩として躊躇なく殺害した極道の男を、躊躇なく、子供の身でありながらも刺すことが出来た。
それは恐らく向こうが子供だと舐めて掛かっていたからであろう。殺すまでには至らなかったが、結局男は倒れた。
伊達の行動は正当防衛として認められ、男はそのまま逮捕された。
だが、伊達の罪が彼の中で消えることはなかった。

嘗て自身を助けてくれた"三上"と名乗る刑事は、伊達の行動は正しかったと説得してくれた。
今思えば、あの言葉を受け入れなければ、きっと自分は路頭にでも迷っていたのだろう。

伊達は三上を追いかけるように警察官になった。
しかし刑事になって直ぐに、己の両親を殺害した男と再会する。
男に脅された伊達は三上に相談すると、三上は伊達にある仕事を紹介した。

この世界には、法の裁きを免れた犯罪者は何人も存在する。
権力による法への圧力、周到な証拠隠滅まで、様々な手段を以ってして多くの犯罪者達が、人を殺めても尚のうのうと生き続けている。
そんな理不尽な社会に抗う仕事もまた、この世界に存在していた。
近頃、未解決事件の容疑者が、原因不明の失踪を連続で起こす事件が多発していた。
警察はそれを『神隠し』と呼んでいる。
そしてその神隠しの正体こそ、『ジョーカー』であり、伊達の恩人である三上であったのだ。
三上は、伊達をその神隠しに誘っているのだという。

犯罪者に威力の低い麻酔銃を向け、撃ち、どこか知れぬ所へ終身刑にする。そんな仕事であった。
最初は三上のサポートをするだけであった。
初めての仕事は両親を殺した男を裁くことだったが、人を傷つけることは、幼い頃に人を傷つけた過去のある伊達には何よりも堪える物があった。
が、伊達は引き金を引いた。男はそのままどこかへと送られていった。

伊達が初めて仕事を請け負った相手は、警察の官僚の男だった。
官僚は息子の治療費を稼ぐためにヤクザから賄賂を受け取っており、その内金に目が眩んで自分を見失ってしまったという。
彼にも家族がいる、守りたい明日がある。それを思う度に伊達の手元はより一層狂いを見せそうになっていく。

自分が中高生になった時、三上は諭してくれた。

―――何度も言っているだろう、あのヤクザは一命を取り留めた、別に殺したわけじゃ……

―――でも人を刺した!

―――ほっといてくれよ!俺の苦しみなんか誰も分かっちゃくれない!!

―――良いか!?お前が刺してなければ、あのヤクザは逃げ延びて、また同じ様に誰かを殺していたんだ。お前は……正義の為に戦っただけだ。

―――お前が苦しんでいるのなら、痛みを抱えているのなら、俺も一緒に…背負ってやる。

この男を野放しにしておけば、他の大勢の人達が明日を失うことになる。
そう思えば自然と覚悟が決まり、激しい取っ組み合いの末に、伊達は彼を撃った。
男を捕まえる際、三上はこう言った。

――お前はこいつの明日を奪った。

――だが代わりに、多くの人間が救われた。

それからも、伊達は多くの法から逃れた者を裁き続けた。
快楽のため、金のため、正義のため、犯行動機はバラバラだが、何れも裁かれることもなければ罪を認め自首することもなかった。
法の下で裁かれる余地がないと判断した瞬間、伊達は犯人の引き金を引き、彼等をどこかへと送り続けていた。


だがそれでも、伊達の罪は消えることはない。
人を傷つけることは、絶対に許されることじゃない。
例え自分の行動が社会のためになろうとも、それが変わることはなかった。
伊達のやろうとしていることは、子供の頃、あのヤクザを刺した時と全く変わらない。
あの苦しみを、同じ様に味わおうとしているのだ。
それを忘れない様に心がけながらも、伊達は今日まで、十数人もの犯罪者を裁き続けた。
その過程での、加害者家族へのケアも怠らずに。


◆  ◆  ◆


366 : 伊達一義&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 19:05:59 R9TXYInE0

アーチャーが姿を消した後、伊達は元の世界では殆ど戻らなかった自宅のアパートに帰る。
鍵を閉め、シャワーを浴び、着替え、寝床にばったりと倒れ込む。
神隠しの仕事の際に来るバーに徹夜でいることが多かった伊達にとっては、帰宅するのは月に一回あるかどうかだった。
なので、このアパートにも、自分で誂えたはずの家具が揃った部屋にも、最近はあまり見慣れなくなってきた。
どちらかと言えば、あのバーの方が家の様に見慣れて来ている気がする。


神隠しを行うタイミングは比較的低い方だったが、それでも事件という物は毎日のように起きる。
大抵の場合、犯人は逮捕されるが、それでも釈放になるホシが出る確率も決して低くはない。
それを調べるために、伊達は毎日のように調査しているのだ。
犯人だと確証が出来たと同時に、法で裁けないと確信するために。
もし無罪だと完璧に証明されたのなら、骨折り損だがそのままにしておく。
だがもし有罪でありかつ法で裁ける確率がゼロなのであるなら―迷わず犯人に銃を向ける。

故に、伊達は神隠しを毎回行わずともほぼ徹夜でこの仕事をしなければならないのである。
その為に居眠りや遅刻は多く、毎回同僚には叱られてばかりだ。


誰もいない、真っ暗な寝室で、伊達は寝間着姿で大の字になりながらも、この世界の出来事に独りごちる。
この世界は、そもそも何かが違う。
伊達の所持品も調べてはみたものの、警察手帳も財布の中身もどれもこれも変わらない。


だがこの世界に、神隠しという事件は存在しない。
この間、女性が毒殺された事件の被疑者が釈放された後、自宅から姿を消す事件はあった。
しかしそちらに関してはヨーロッパ行の便で飛び立ったという調査が見つかっており、神隠しとは全く関係ない。

にも関わらず、伊達がさっきまで経営していたバーには何も変わりはなかった。
店名が『BAR joker』という名前に変わっているのを覗いて。

(いやしかし、何で俺があの店を切り盛りすることになったんだろうねー、あの店は、三上さんが……)

この店は、元の世界で三上が警察を辞めた後、神隠しの拠点も兼ねて借りた建物とそっくりそのままな物を使っている。
伊達がこの店でいちごミルクを飲むようになって5年が立ち、そろそろ椅子や壁に付いている傷や癖も覚えるようになってきているが、これもまた全く変わっていない。
何故この店を切り盛りすることになったのか。それが唯一の違和感であった。

(まるで、俺が元の世界と殆ど変わらない日々を過ごしている様に誰かが仕組んだみたいだな)

というようなある種の気味の悪さも覚える。
この店を伊達が切り盛りしているのは、確かに元の世界の自分と変わらない。
しかしそれは、この店を経営していた男がいなくなったからである。

――神隠しを……やめないでくれ。

今から5年前、伊達の同期である警察官が、何者かに刺殺された事件。
その犯人こそが、元刑事にして伊達の恩人でもある、あの三上だった。
殺された警察官は、神隠し……ジョーカーの存在を突き止めていた。
だが三上はそれを許さなかった。


367 : 伊達一義&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 19:06:24 R9TXYInE0

妻子を殺され、その犯人がのうのうと生きているのに絶望した三上にとって、紹介してもらったジョーカーは助け舟の様な物であった。
彼もまた許せなかったのだろう、法の裁きを逃れた者達がいるこの現実を。
しかし、同時に彼は裁かれるのを望んでもいた。
伊達と共に多くの犯罪者を裁いていく中で、三上は自分を常に呪い続けていた。
だが、証拠は一切残っていない。三上が裁かれることはないのだ。他の神隠しの被害者達と同じ様に。
だからあの日、伊達に自分を殺させる様に、終身刑にするように仕向けようとしていた。
三上は同じなのだ、嘗ての伊達と。

だが伊達は殺さなかった。裁きもしなかった。
三上がこれまで伊達が裁いてきた犯人との最大の違いは一つ。己の罪を自覚していることだった。
つまり、自首して法の下で罪を裁かれる余地があるということである。
だからこそ、伊達は三上を裁かなかった、そのまま、警察に手錠を嵌めさせ、今も尚服役の身に置かれている。

あの言葉通り、伊達は今もなお神隠しを続けている。
その時には必ず、あのバーを拠点としていた。
いつか、三上が罪を償い終わった後に、帰ってくる場所を作るために。

それは今でも変わらず、だから伊達に与えられた役割(ロール)も、刑事兼バーのマスターなのであろう。
三上という男の概念がこの世界より消え失せ、代わりに残されたバーのみが、伊達一義の所有物として置き去りにされたのだ。
それに、今の伊達の周りには、嘗て元の世界で見知った人間が一人としていないのだ。
神隠しを手伝っている、(自称)イケている監察官も。
同期の妹である後輩も。
口煩い同僚も。
世話になった上司も。
元同僚であるフリージャーナリストも。

(まるで俺一人だけ、取り残されたような気分だ)

そう物思いに耽っていると、自分の中にある一つのやるべきことが浮かび上がってくる。
ジョーカー。
許されざる捜査官。
法から逃れた者を裁く使命を負った今の自分が、成すべきことについて。
与えられた役割ではなく、自分自身の意志を最大限に尊重した上で。

それから聖杯戦争について、今の自分が出来る限りの範囲で纏め上げた。
棚からメモ帳とボールペンを取り出し、聖杯戦争に関する情報を引っ張り出しながらもひたすらに考える。
今の自分の状況がどうなっているのか。
ルールはどの様な物か。
主催者はどこにいる誰なのか。

それをメモに纏め上げた上で、自分の方針を書き上げたのが一段落した後、目覚まし時計を一瞥すれば時刻はもう明日になっていた。
ペンとメモをその場に置き、伊達は寝床で泥のように眠った。


◆  ◆  ◆


368 : 伊達一義&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 19:07:04 R9TXYInE0


その日の夢は、夢と言うには妙に鮮やかであった。
よく、両親を殺したヤクザを刺した日の夢は見るが、あれ以上に今見ている光景は鮮明であった。
現実的(リアリティ)に溢れている。起こっていることは非現実的すぎる。なのに……
これは現実なのだろうか、いやそうじゃないかもしれない、いやそうじゃないじゃないかもしれない……



JAXAらしき施設の広場で起きた、謎の物質に関する展示会。
そこには大勢の客人が出席していた。
伊達はそこの客人の一人になりきっていた。

ガラスケースの中に入っているのは、一個の年代を感じさせる灰色のキューブ状の石。
ケースが開かれ、いよいよそれが公の場にさらされた時……
一人の作業員が、関係者を押し飛ばし、キューブに手を触れた。

刹那。
触れられた瞬間、キューブがまるでスイッチの押された照明の様に眩しく光り輝き、その気の狂いそうな眩い光の中に伊達の視界も巻き込まれる。
光が止んだかと思えば、近くの地面から出現した三つの大きな壁が、上にいた人々を押し飛ばし、まるでパイを一気に三人分に分けたかの様に地面を隔てていく。

当然、伊達も冷静さを失い、大勢の人々に紛れ逃げ惑う。
まるで誰かに操られているかのように感じられたが、これは夢だからであろうか。


その瞬間、視界が暗転する。

次の瞬間、伊達は真っ黒な地下室の中にいた。
目の前には、複数の作業服姿の人々が、何かを叫ぶように、何かを讃えるように叫んでいた。

――ファウスト!
――ファウスト!
――ファウスト!

イギリスの著名な古典文学に出てきた、一人のマッドサイエンティストの名を、神でも讃えるかのように彼等は叫び続ける。
たった一人、その光景に戸惑いを隠せない作業員を除いて。
伊達は、その手に何かを握っているのかを確認する。
それは、アーチャーが昨夜の戦いで使っていた銀色のハンドガンであった。
ふと、伊達は聖杯戦争に巻き込まれた時に一つの物事を思い出す。

(そうか、これはアーチャーの夢か)

マスターは、魔力バイパスを通し、時折サーヴァントの記憶を夢として見るらしい。
つまり、伊達は今、アーチャーになりきり、彼の記憶を追体験しているということになる。


369 : 伊達一義&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 19:07:44 R9TXYInE0

伊達……アーチャーがもう片方の手に握っているのは、ピンク色の容器であった。
蝙蝠を象ってはいるが、あの時の戦いで使っていたのとはデザインも色も何もかもが別物だ。禍々しい。
それをスロットに装填したかと思えば、アーチャーは何やら口を動かす。
口と同時に動きを見せたその身振り手振りは、宛ら自分をより良く見せようとする為政者の演説の様であった。

――嘗て俺の中に流れていた"血"は、俺の燃え盛る野心によって"蒸"発した!
――もう昔の俺は要らない……"蒸血"。

そう言うと、アーチャーは銃口から視界を塞ぐ霧を噴出し、自身を包み込む。
次の瞬間、アーチャーの視界には何かしらの計器らしき表記がチカチカと写り込んでいる様な状態になっていた。
まるでVRゴーグルか何かをつけられたかの様な気分だ。いやこの瞬間が正にVRなのだが。

――今の俺の名は、ナイトローグ。

ナイトローグ。
暗闇の悪党。
それが、伊達の喚び出したサーヴァントの真名であった。


視界が暗転する。


次の瞬間に戻っても、伊達の視界はまるでパワードスーツの様な計器に包まれたままであった。
アーチャー……ナイトローグは、フカフカのソファーに座りながらも何かを眺めていた。
視界の中では、ガスマスクに身を包んだ作業員達に囲まれている、吸引器を咥えさせられた一人の青年の入った水槽を眺めていた。
青年は暫くの間藻掻き苦しんでいたが、暫くして意識を失う。
すると、青年の隣に、紅い宇宙飛行士の様な格好に身を包んだ男が現れる。
頭部の煙突には、ナイトローグに近い意匠が見え隠れしていた。
宇宙飛行士は、意識を失った男を、そのままどこかへ運び込んでいった。

(アーチャー、お前は一体、何をしようとしていたんだ……)

再び視界が暗転した後も、ナイトローグは相変わらずソファーに座り込んで水槽を見物していた。
水槽で藻掻いているのは、先程の青年とは少し年上の男性であった。
だが男性は、暫くしている内に、形を見る見る変質させていった。
それは人間ではなく、ただの化け物であったのだ。
ナイトローグは、人間を化け物にする研究を初めていた、ファウストに勝るとも劣らない正真正銘のマッドサイエンティストだったのだ。

視界が暗転する。
今度は、藻掻き苦しむ女性を眺めながら、ケータイ……スマートフォンを片手に握っていた。
話している相手は、この女性の恋人らしい。
ナイトローグは、女性を人質にしているようであった。
暫くすると、女性もまた、禍々しき怪物に変貌していく。

伊達に言わせれば、この男は紛れもなく悪党であった。
罰せねばならない悪党であった。
だがまだ、その時ではない。
そう思った時、再び視界が暗転する。

次の瞬間、水槽に浸かっていたのは……自分であった。
見てみれば、あの計器が消え去っている。今のアーチャーはナイトローグではないのだ。
先程の紅い宇宙飛行士が、アーチャーの心臓に優しく触れ込む。
まるで何かを弄るかのように。


370 : 伊達一義&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 19:08:21 R9TXYInE0

次の瞬間、アーチャーは暗い部屋の中にいた。
だが、そこには水槽も、作業服もない。
あるのは、ドラム缶などの障害物と、幾つもの死体のみ。
何かを蹴り上げる。
蹴った男の首は半分裂かれていて、両側を挟み込むように立っていたのは全身が歯車の、対象的なデザインの二つの戦士であった。
それは正に兄弟の様であった。
だがアーチャーは怯えずに、何かを手に取る。
それは、彼が鰐男に変身するときに使っていたあのバックルだった。
バックルを巻き、ワニ模様の容器を装填する。
暫くは悶え苦しむが、辛うじてバックルは答え、アーチャーは鰐男へと変貌を遂げていく。

――CROCODILE IN ROGUE――O-raaaaaaaaaaaaa!! Aaaaaaaaaaaaaa!!

喧しい電子音声を合図に、アーチャーは猛突進していく。
疲労が溜まっているのか、その動きはぎこちなかったが、再び計器に包まれた視界の中で、どうにか歯車兄弟に立ち向かう。
柵の奥で、眼鏡の男が叫ぶ声が聞こえる。
どうやら、その歯車の兄弟はアーチャー……ナイトローグの部下だったらしい。
だがアーチャーは、嘲笑った。ひたすらに嘲笑った。何かを堪えるかのように笑い続けた。
その様は、伊達を窮地から救い、いちごミルクを美味しそうに啜っていた彼からは全く想像もつかない様であった。

バックルのレンチを倒す。
再び力が込み上がり、あの時、セイバーを弾き飛ばしたパンチが歯車の一人を粉砕する。

――俺は……ローグだ!!

再びバックルのレンチを倒す。
生き残った方の歯車を、今度は巨大な鰐の足へと変貌した足で、粉々に喰らい砕く。

――仮面ライダー……ローグだぁぁぁぁ!!

アーチャーが、虚空に向かって雄叫びを上げる。
ここで、伊達の夢は一旦終わった。



◆  ◆  ◆




その次の日、伊達は警察の仕事を終えた後、バーを一旦臨時休業に切り替え、アーチャーに先日セイバーと戦った港に来るように命じた。
しかし伊達はバーに戻り、黒いポリエステル製のジャケットに着替え、麻酔銃に弾丸を込める。
伊達は、聖杯戦争に来て以来初めての神隠しを行おうとしているのだった。それも、自分のサーヴァントに。

サーヴァントを殺す。
それが、この聖杯戦争においてどの様な意味を持つかは、参加させられて数日も経たない伊達にも十分理解し得ることだった。
だが、自分の信念を曲げてまでみっともなく生き延びること。それだけは、伊達は絶対にしたくなかったのだ。
何より。

――アーチャーは、本当に悪人なのだろうか?

彼とは出会って間もないが、見た所、サーヴァントとしての役割を忠実に果たそうとする、生真面目でどこか抜けている、自分と同い年ぐらいの男性なのである。
アーチャーの属性も『悪』、だがそれでも主を絶対に守り抜こうとする意志はあの戦いで感じ取れた。
伊達は、試そうとしているのだ。
自分のサーヴァントが、本当にあのナイトローグなのか、それとも否かを。

この近くにあったラーメン屋は、相も変わらず繁盛していた。
伊達は、神隠しを一人で行って以来、ずっとこのラーメン屋に通いつめていた。
店の女店主の顔も変わらない、店の形も変わらない。味も変わらない。
その度に、初めて神隠しにしたあの警察官僚の姿を思い浮かべ、割り箸を割り、ラーメンを啜り、スープまで飲み込む。


時刻は午後10時。
先程セイバーと戦った港の海から見える日差しを物憂げに眺めていたアーチャーの目前に、一人の男が現れる。
だが伊達の手には、一丁の拳銃が握られていた。拳銃を握る手には、道化師を象る令呪が僅かに灯りを見せていた。
麻酔銃を撃った上で、令呪で自害させるつもりなのだ。勿論、サーヴァントに麻酔銃等効かないに等しいのは分かっている。
本来なら『自害せよ』で済ませようものだったが、それでも伊達は自分の流儀を曲げることを拒んだのだ。
だからこそ、一日立つのを待ってまでラーメンを啜り、麻酔銃を射つ形で終わらせようとしているのだ。

「……何のつもりだ。」
「法から逃れた者を裁く、それだけだ。」

訝しげな表情を浮かべるアーチャーに対し、伊達は彼に銃を向け、忽然と言い放った。お前を裁くと。
その表情は、最早陽気なマスターではなく、冷酷な人殺しの顔であった。たった一つ、物憂げな目を覗いて。

「法?この聖杯戦争には関係ない――」
「いやあるさ、お前は多くの人々を人体実験のモルモットに変え、怪物に変え、幾つもの明日を奪って来た。そうだな?ナイトローグ。」


371 : 伊達一義&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 19:09:04 R9TXYInE0

ナイトローグ。
その言葉に、アーチャーの表情が一瞬変わる。

「見たのか……俺の記憶を。」
「お前は何のために聖杯戦争に現界した?己の欲を満たすためか?誰かの苦しみを味わうためか?それともメフィストフェレスでも作ることか?」

アーチャーは俯いたまま黙っていた。
伊達はそれをずっと見つめていた。

「大義のためだ。」

アーチャーの口が開く。
伊達は表情を変えずに銃を向けたままだ。

「大義?」
「俺が現界したのは、愛と平和の為に戦うという大義故だ。それ以上でも、それ以下でもない。」
「…………。」
「あの光を浴びて以来、俺は目に見える者全てを敵とみなしてきた。多くの人々を苦しめてきた。
だがそれは全て俺自身が犯してきたことだ、俺が何を言おうと言い訳にしかならんだろう。」
「なら、償う意志はあるのか?」
「幾ら償おうと償いきれないがな。」
「……。」
「お前が今俺を自害させようとしたがっているのは分かる。だがそれでも、俺は愛と平和の為に、なにかを助けたい、救いたいんだ。それだけは、叶えさせてくれ……。」

アーチャーは地面を見つめ俯いたまま、両膝を地面に付き、続いて両手を地面に置いて四つん這いの姿勢になった。
それはこの日本で言う『土下座』と呼ばれる、最も恥ずべきことをした人間が行う一種の行為であった。

「頼むっ……。」

その様に、伊達の銃を握る腕が力を失う。
銃を懐に仕舞うと、その手で伊達は、土下座している男の手を握る。
アーチャーが顔を上げると、彼のその表情は、いつも飄々としたマスターの姿と相違なかった。

「俺も同じだ、アーチャー。」
「……?」
「俺も、誰かの明日の為に戦いたい。そのために力を貸してくれないか。」

その言葉に目頭が熱くなったアーチャーは、直ぐ様彼の手に力を掛けて立ち上がる。



◆  ◆  ◆



その後、伊達とアーチャーは今後の方針について話し合った。

「もし俺みたいに、唐突にこの世界に巻き込まれた人がいるってことは、俺みたいな人は沢山いるってことでしょ?」
「ならどうする。」
「仲間を作る。俺達と同じ様に、この聖杯戦争に納得を示さない主従と、同盟を組むんだ。」

以前、監察官の久遠をジョーカーに迎えた時、三上に反対された時のことを思い返す。
だが、今は誰もが遅かれ早かれ互いの存在を知られることになるであろう状況だ。その様なリスクは度外視して構わない。

「同盟……か。」

その言葉に、アーチャーの顔がくしゃっと少し綻ぶ。
あの狂気の蝙蝠男の姿がアーチャーとどうしても重ならなくなり、伊達の中で違和感が少しだけ増えるも、表情は敢えて変えずに言葉を続ける。

「仲間は多い方が楽だろ?」
「そうだな……以前、共に仲間と戦った時のことを思い出す。」
「仲間……もしかして、あの研究員のことを言っているのか?ナイトローグ。」
「もうその名前で呼ぶのは止せ。その名はとうに捨てた。」
「なら、仮面ライダーローグ、と呼んだ方が良かったか?」

アーチャーの顔がやや赤くなっていき、不貞腐れたように口を動かす。

「氷室幻徳、それが俺の真名だ。」
「氷室、幻徳……じゃあ幻さんか。」
「その名で呼んだ奴は、これで三人目だ。」

恥ずかしがるように答えられる。
ますますアーチャー……幻さんのことが分からなくなってきた。

「それで、今後のお前の方針は、聖杯戦争の打破、ということで良いんだな?」

表情を整え直したアーチャーのその言葉に、伊達は忽然と頷き、再び麻酔銃を引き抜く。
しかし今度はアーチャーではなく、港の向こうにある月に向けられた。

「この聖杯戦争という出鱈目なゲームを創り出し、多くの人々を弄んだ主催者は、未だ裁かれていない。裁けない。だから俺が裁く。」
「まるで、正義の英雄(ヒーロー)みたいなことを言うな。」
「いや、俺のやってきたことは少なくとも正義だと思ってやってきたわけではない。戦いを望まない者は助けるが、その代り、他者の明日を奪う様な連中は絶対に倒す。
それを法は許さない。だから、俺達がこれからやっていくことは許されるわけには行かないんだ。けどそれでも俺は、誰かの"明日"を守りたい。」
「なら、お前は悪か。」
「………。」


372 : 伊達一義&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 19:09:29 R9TXYInE0

こうして語っている間にも、伊達は相も変わらず月に拳銃を向け続けている。

アーチャー……氷室幻徳からして、伊達一義のその姿は嘗てぶつかり合い、共に戦い、己が全てを託したある一人の戦士と重なっていた。
その戦士は真っ直ぐであり続けていた。
誰かの力になりたくて、戦い続けようとしてきた。
誰かを守りたくて、立ち上がり続けてきた。
自分が信じた道を突き進むために。大勢の人々の"明日"を、この手で創る為に。
"幻さん"という呼び名と言い、軽い言動といい、真っ直ぐな姿勢と言い、どこか似ているかと思えば……

「成る程、お前が、俺を喚んだ理由が分かってきた気がするよ。」
「ん?」

すぼんだような表情で振り向く伊達。
振り向けば、幻徳はいつの間にかあのバックルを手にとっていた。

スクラッシュドライバー。
10年前にあの眩い光を放ち、国を隔てたあの箱より湧き出た力を人間の手で操り、兵器としての機能を発揮させる『ライダーシステム』の集大成。
戦争に打ち勝つための兵器としての機能が余りにも完成しすぎていた力。
非人道的な人体実験の末に、幻徳が手にした大義を成し遂げるための術。
血に塗れ、血が糊のように彼にくっつけているそのベルトは、ライダーシステムが兵器としての概念を放棄し、英霊の座に召し上げても尚、彼の手元に残っていた。

「随分、哀しそうな目で見つめているな。」
「何が悲しい物か。」
「その力で、大切な人を殺めたのを悔やんでいるのか。」
「……何とでも言え。」

その目は、慚愧の眼差しであった。
伊達がこれまで何度も目にした顔であった。
三上、久遠、そして自分自身。それに今の彼が重なる。
そう、きっと彼もまた、今もなおどこかで苦しんでいる"普通じゃない"人間なのだろう。
そして、そんな慚愧の眼差しをかなぐり捨てるかのように、だが表向きは極めて平静に、彼はバックル…スクラッシュドライバーを腰に巻いた。

――SCRASH DRIVER――

続いて、あの鰐の容器……クロコダイルクラックフルボトルの蓋を開き、バックルに刺す。

「変身。」

――割れる!喰われる!砕け散る!――CROCODILE IN ROGUE――

大義の為に、他者も、己すらも犠牲にせんとする漆黒の戦士・仮面ライダーローグに、彼は再び変貌を遂げる。
その様を、やはり落ち着いた、だが何かを覗こうとする眼差しで伊達は見つめている。
そして伊達は口を開く。

「一つ、訊きたいことがある。」
「何だ。」
「俺はこれから許されざる行為を時にやろうとする。それを手伝うことに、お前は躊躇するか?」
「俺は悪党(ローグ)だ。悪を成すことに、今更何を戸惑うことがある?」

だが幻徳は、だがと付け加える。

「もしお前が、大義の為に、愛と平和の為に戦うというのなら、俺はこの手を血に染める覚悟はいつでも出来ているぞ、マスター。」

自分は再び悪の名を背負う。
そう誓ったマスターに喚ばれたからこそ、幻徳は仲間達と共に地球外生命体エボルトに立ち向かった頃の姿ではなく、西都の用心棒だった頃の姿で喚ばれたのだと確信している。

「分かった、これからも俺に力を貸してくれ、アーチャー。」

アーチャーは腕を組み、その言葉にコクリ、と頷く。
それを一瞥した伊達は、月を人睨みする。
あの月が偽物であることは察しがつく。
無論、この夜空もまた、偽りであることを。
その偽りの壁を壊すことを宣言するかの如く、伊達は引き金を引く。
引き金が引かれる。
数m先へと放たれた麻酔弾は、実弾と比べて勢いは低く、そのまま勢いを失って直ぐに海へと落下し、ポチャリと沈んでいった。
だが、これで十分だった。聖杯に裁きを与えるという宣戦布告と、その誓いとしては。
海に落ちた弾丸を見つめた伊達は、冷たい声で言い放つ。これまで、多くの人々を裁いた時と同じ様に。




「お前に明日は来ない。」


373 : 伊達一義&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 19:11:08 R9TXYInE0


【クラス名】アーチャー
【真名】氷室幻徳/仮面ライダーローグ
【出典】仮面ライダービルド
【性別】男
【属性】秩序・悪
【パラメータ】筋力B 耐久A+ 敏捷B 魔力B 幸運C 宝具B(ローグ変身時・初期値)

【クラス別スキル】

・対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法等大掛かりな物は防げない。

・単独行動:B
マスター無しで現界を保つ能力。
Bランクなら、マスターが死んでも2日は現界を保てる。

【保有スキル】

・ハザードレベル:C
地球外生命体『エボルト』が保有する力であるネビュラガスを吸ったことで手に入れた能力。
ネビュラガス由来のアイテムの行使、或いは耐性に補正が掛かる。
人体実験で高いハザードレベルを手にしており、闘志が高まればランクも上がっていく。
西都に属していた頃の姿で召喚されているため、現状ではスクラッシュドライバーが使用できるCランク程だが、意志が高まればある程度上昇し、上手く行けば1ランク向上も夢ではない。
ただし、人間の限界値を逸脱しなければならないAランクへの到達は不可能と言える。
もし対エボルト戦の時期で召喚されていたのなら、B+ランクにまで上昇しているが、代償として変身が強制的に解除された際には消滅する。

・仕切り直し:B+
不利な戦闘から離脱する能力。
戦闘状態を一からやり直す効果もある。
ネビュラスチームガンを使用すればより高確率で離脱できる。

・カリスマ:C
団体を指揮する才能。
国家運営には向かないが、小規模の組織の士気を向上させるには十分。

・鋼鉄の決意:C
鋼に例えられる、アーチャーの不撓不屈の精神。
10年の間に重ねた罪を清算するため、父親が愛するこの国を救う大義の為に戦い、父が死んでも尚国を守るために戦い続けた。
同ランクの『勇猛』『冷静沈着』を兼ねる他、耐久ランクに補正が掛かる。

【宝具】

『空を隔てる六十の鍵(フルボトル)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
火星で発見されたパンドラボックスに内包されていた容器型のアイテム。
内部にはネビュラガスを、地球上の概念を模した力に性質を変化させた物質が詰まっている。
使用時にはボトルをシャカシャカ振って成分を活性化させることが必要。
アーチャーは西都の擁する仮面ライダーであった逸話から、西都が嘗て保有していた20本のボトルを所持している。
スクラッシュドライバーやネビュラスチームガンに装填して必殺技を放つ際に使用する。

『喰らい砕く黒鰐の牙(クラックアップフィニッシュ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜5 最大捕捉:1人
アーチャーの仮面ライダーローグとしての必殺技が、彼の生き様を現す宝具として昇華された物。
クロコダイルクラックフルボトルの装填されたスクラッシュドライバーのレンチを再度引くことで、ボトルのエネルギーを活性化。
拳にチャージされた際には、腕の強度を向上させ、敵に強烈なパンチを叩き込む技として機能する。
脚部にチャージされた際には、巨大なワニを思わせる紫色のエネルギーを発言させ、敵を両側から連続で噛みついて倒す技として機能する。
因みに蹴り技として使用した場合、両足で敵を挟み込む体制になるため、命中率が非常に高くなる。
ブラッド族の生き残りの一人を倒し、エボルトに一矢報いた逸話から、人外の側面が強い英霊に対し特攻が掛かる。


374 : 伊達一義&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 19:11:50 R9TXYInE0

【Weapon】

『スクラッシュドライバー』
アーチャーが難波重工から受け取ったバックル型アイテム。
フルボトルに内包されている成分をゲル化させることで成分の可塑性と柔軟性を高め、更なる戦闘力を発揮することが可能。
腰に装着し、ボトルを装填することでボトルの成分をヴァリアブルゼリーへと変化させ噴出、アーチャーを仮面ライダーローグへと変身させる。
ローグに変身することで初めてアーチャーは自在に力を振るうことができる。
また、フルボトルを装填することで、そのボトルの能力を発現させることも可能である。

『クロコダイルクラックフルボトル』
アーチャーが仮面ライダーローグに変身するために必要なアイテム。
ネビュラガスを凝縮させたトランジェルソリッドが含まれている。
難波重工が独自に開発した特殊なフルボトルであり、スクラッシュドライバーに反応する数少ないボトルの一つ。
フタを開いただけで『デンジャー!!』という音声が鳴ったりと極めて危険なボトルであることが示唆されている。

『ネビュラスチームガン』
最上魁星が開発したカイザーシステムを難波重工が再現、改良したハンドガン型のアイテム。
ネビュラガスを封じたギアを装填することで変身アイテムとしても使えるが、生憎ギアは持ってきていない。
フルボトルを装填した特殊攻撃も可能な他、改良時にトランスチームガンのデータも使っているのかスチームブレードとも互換性がある。
ネビュラガスを変化させた煙を巻くことでその煙を覆った対象を別の場所に転送させることが可能。

『トランスチームガン』
アーチャーが嘗てナイトローグと名乗っていた頃に使っていたハンドガン型のアイテム。
ネビュラスチームガンを元に葛城巧がライダーシステムの実戦テストの相手をさせるために作ったトランスチームシステムのコア。
ボトルの成分を煙に変えて放出し、特殊パルスで変質させる効果があり、この機能を利用し以前はバットロストフルボトルを使用してナイトローグに変身していた。
仮面ライダーローグとして召喚されているためにバットロストフルボトルは所持していないが、アーチャーで喚ばれた為銃としては使用できる。
ネビュラスチームガンと同様にフルボトルを装填出来る他、スチームブレードとの合体も可能。

『スチームブレード』
カイザーシステムを改良したトランスチームシステム専用の装備である小型ブレード。
氷結ガスを放出する『アイススチーム』、電撃を放つ『エレキスチーム』、ネビュラガスを放出して対象を怪物『スマッシュ』に変貌させる『デビルスチーム』が使える。
消費魔力はないに等しいが、デビルスチームに関してはスマッシュに神秘を与える過程で魔力を消費する。最も今のアーチャーは使うつもりは毛頭ないのだが。
ネビュラスチームガン、トランスチームガンと合体することでライフルモードになり、射程距離を高められる。

【人物背景】

愛と平和の為に戦う仮面ライダーの一人。
死んでも尚消えることのない罪を背負い続ける"悪党(ローグ)"。

死亡時までの記憶を宿しているが、罪を背負おうとし続けているマスターの影響で西都の仮面ライダーだった頃の姿で召喚されている。
そのため第三の宝具『金色に咲き誇る大義晩成(プライムローグ)』は使用できない。

【聖杯にかける願い】

望みたいことは確かにあるが、今の自分にその資格はない。
今はただ、愛と平和の為に戦うのみ。


375 : 伊達一義&アーチャー ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 19:12:50 R9TXYInE0




【マスター名】伊達一義
【出典】JOKER 許されざる捜査官
【性別】男

【Weapon】

『麻酔銃』
伊達が神隠しの際に使用する銃。
通常の銃と比べると反動も少ないため、普通に片手で撃てる。
相手を傷つけずに眠らせて安全に車に乗せられる。

『警察装備』
警察手帳、警棒、その他諸々。
いざとなれば机からオートマチック式の拳銃も引っ張り出せる。

【能力・技能】

・捜査能力
張り込み等における高い推察力。
どんなに立件不可能な証拠であろうと僅かなヒントは絶対に逃さない。
若くして警視庁の警部になれるほどの実力者。

・格闘術
一応心得はある。
チンピラ程度なら軽く取り押さえられるが、暴漢に殺されかけたりと決して強い訳ではない。

・手品
口の中からトランプのカードを出したり、パッと花びらを出現させたりと手先が器用。
会話中に相手を和ませる時などに使用する、彼の特技。

・仏の伊達さん
中の人特有の笑顔も相まって、決して笑顔を絶やさずに事情聴取を行う話術。
優しく容疑者の言葉を聞き出そうとするが、場合によっては容疑者の精神を追い込むような方法も平然と行う。
同僚の来栖淳之介曰く『時間ギリギリになって漸く状況を動かすタイプ』。

【人物背景】

法から逃れた者に裁きを下すジョーカーの後継者。
裁く度に増えていく罪を背負い続ける"許されざる捜査官"。

最終回後からの参戦。

【聖杯にかける願い】

聖杯に裁きを下す。

【方針】

同じく聖杯戦争に消極的な主従と同盟を結ぶ。


376 : ◆lkOcs49yLc :2018/10/13(土) 19:13:46 R9TXYInE0
以上で投下終了です。


377 : ◆0080sQ2ZQQ :2018/10/13(土) 21:19:51 YIZTAm5.0
投下します。


378 : 溝呂木眞也&アーチャー ◆0080sQ2ZQQ :2018/10/13(土) 21:21:00 YIZTAm5.0
「俺は…ただの操り人形だった…」

全ての力を使い果たした溝呂木は、思いを寄せていた女に語り掛ける。
猛禽のごとき鋭い眼差し、男らしい骨太な顔つきには深い苦悩が刻まれている。
彼はかつて、スペースビーストと呼ばれる人類の敵を狩る戦士だった。その少し後、闇の力の誘惑に負けた彼はビーストを従えた人類の敵であった。
そして現在、闇から抜け出た溝呂木は人間に戻った。しかし、その命はすぐにも尽きようとしていた。

「もう一度…人間として……」

女は一度ならず溝呂木に銃を向けたが、潜む脅威の警告した彼の改心を悟ると、生きるよう彼に求めた。
男の意識が消える刹那、白い雪が降る。溝呂木は僅かな未練を残して、女のもとを去った。



溝呂木は栄養補給のための食事を済ませると、自宅として宛がわれた部屋のリビングに座り込んだ。
考えているのは現在の状況について。聖杯戦争。万能の願望器を巡る死のゲーム。

(馬鹿馬鹿しい)

溝呂木に聖杯を求める理由はない。
彼の心にあるのは、贖罪の意志のみ。謝りたいのだ。
自分の行いによって、平穏な日常を奪われた人々に。あの両親を奪われた少女に。
許されるとは思わない。もう一度だけあって……。

溝呂木の眉間に刻まれた皺が深くなる。
立ち上がるべきだとは思う、こうして蹲っていたとて、戦いは止められないのだろう。しかし動かない。身体は鉛が詰められたように重い。
不意に、部屋の中に気配が一つ増えた。

「誰だ!」

廊下の方から、若い男が顔を出した。
見覚えはない。戦闘態勢をとった溝呂木だったが、現在自分の置かれている状況に思いが至ると、警戒を少し和らげた。

「お前は……」
「サーヴァント。アーチャーのクラスで現界した、橘朔也だ」

溝呂木の瞳に、不審の色が浮かぶ

「聖杯の奪い合いに手を貸せってんなら、御免だ。俺はここを脱出する――」
「わかった。協力しよう」
「あぁ?えらく物分かりがいいな」

銃を抜く寸前のように右手を脇に回していた溝呂木は、橘の様子を窺う。
部屋は暗いがカーテンは開けられており、彼の表情は細部まで見て取れる。
アーチャーを名乗った橘自身、この場にいる自分に困惑しているようだった。

「聖杯に興味があるのは事実だ。しかし、これは未練のようなものなんだ。マスターが気が乗らないというなら、戦いは俺が一人で進めよう」
「言っている意味が分からない。聖杯が欲しいのか?お前は」
「それは長い話になるから、少し時間をもらう。聞いてくれるか?」

溝呂木は頷く。この場において、彼は休職中のロールを与えられていた。
聖杯戦争に乗り気ではない以上、アーチャーの話を聞くだけの暇はある。

アーチャーが語ったのは、一人の若い戦士の話。
剣崎一真。支えてくれる仲間と共に、不死生命体アンデッドをはじめとする人類を脅かす者たちに立ち向かっていった男。
誰も愛する人を失ってほしくない、仲間を犠牲にしたくない。その優しさは一つの結末を招いた。

アンデッドでありながら人間を護ろうとする相川始。
彼は封印から解放されている最後のアンデッドとなった時、世界を崩壊させるジョーカーアンデッドだった。
剣崎は二体目のジョーカーとなる事で世界の崩壊を止め、始をも救ったのだ。アーチャーは彼を人間に戻すべく、生涯を研究に費やした。

「剣崎はもう十分戦った。もう休んでもいいはずなんだ。情けない話だが、今の俺には他の解決方法が思いつかない」

溝呂木にはかける言葉が無かった。
真偽はともかく、橘の抱える煩悶が感じ取れたからだ。
しかし、自分ではあまり力になれそうにない。だから聖杯を獲ろう、と呼びかけるなど思うだけで吐き気がする。
2人の迷いが晴れるには、いましばらくの時間がかかりそうだった。


379 : 溝呂木眞也&アーチャー ◆0080sQ2ZQQ :2018/10/13(土) 21:22:03 YIZTAm5.0
【クラス】アーチャー

【真名】橘朔也

【出典】仮面ライダー剣

【性別】男

【ステータス】
筋力D+ 耐久C+ 敏捷C+ 魔力D 幸運C 宝具C+(ギャレン・ノーマルフォーム)

筋力C+ 耐久B+ 敏捷B+ 魔力C 幸運D 宝具C+(ギャレン・ジャックフォーム)

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
対魔力:E(C)
 普段は魔術を無効化する事は出来ず、ダメージ数値を多少削減するのみ。
 ギャレン変身後は第二節以下の詠唱による魔術を無効化できるようになる。大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

単独行動:C
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。

【保有スキル】
生物学:A
 生物学の判定において上方修正を得ることが出来る。
 橘はサウスハービー大学を卒業後、不死生命体アンデッド研究に携わり、バトルファイト停止後は剣崎を人間に戻すべく研究を続けた。

心眼(真):C
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
 逆転の可能性が数%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

生まれ変わるほど強く:-(A)
 橘はこのスキルを自覚していないし、マスターによる透視能力では閲覧できない。
 本人にとって重大な局面が訪れた時、このスキルはカッコ内のランクに修正される。
 ランクが修正された時点で低ランクの直感の効果が発動、さらに回避判定と命中判定のクリティカル率が大幅に上昇する。
 ただし、ギャレン・ジャックフォームに変身している間は発動しない。


【宝具】
『颯爽たる紅蓮の射手(ライダーシステム・ギャレン)』
ランク:C+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜 最大捕捉:1人(自身)
 ギャレンバックルを召喚し、仮面ライダーギャレンに変身する。
 変身後は専用武器である醒銃ギャレンラウザーによる銃撃戦と、ダイヤスートのラウズカードから得られる能力で戦う。
 システムへの適合度は融合係数という値で数値化されており、闘争心や怒りといった強い感情によって能力が上昇。
 融合係数が上昇する事で、基礎ステータスアップ、格闘ダメージ上昇、武器攻撃力上昇といった恩恵を受けることが出来る。

 ラウズアブゾーバーにカテゴリーQを装填、カテゴリーJをラウズすることでジャックフォームに変身する事が可能。
 ステータスがノーマルフォームより上昇し、さらに空中飛行が可能になる。

【weapon】
宝具に依存。

【人物背景】
人類基盤史研究所「BOARD」の研究員。
研究員、広瀬義人が研究対象である不死生物「アンデッド」を復活させた事をきっかけに、ライダーシステム適合者として戦いに身を投じることになる。
優れた戦闘技術の持ち主だが、本来のギャレン適合者の代理として変身することになった人物であり、BOARD壊滅後は原因不明の体調不良に悩まされていた。
一時は上級アンデッドである伊坂の傀儡にまでなったが、心の支えである小夜子の死、先輩研究員である桐生の暴走を経て復活。
後輩の剣崎と共闘してアンデッドを封印していく中で、仮面ライダーカリス=相川始の正体が世界を滅ぼすジョーカーであると知り一時は敵対したが、最終的に始と、始を信じる剣崎を信じた。

 本編最終盤、世界の滅びが始まってしまうも、剣崎が二体目のジョーカーとなったことで世界はひとまず守られた。
戦いが終わった後、橘は剣崎を人間に戻すべく研究を続けたが、願いを果たすことなくその生涯を終えた。

【聖杯にかける願い】
剣崎を人間に戻す。手に入れる過程に対しては不快感を抱いている。


380 : 溝呂木眞也&アーチャー ◆0080sQ2ZQQ :2018/10/13(土) 21:22:58 YIZTAm5.0
【マスター名】溝呂木眞也

【出典】ウルトラマンネクサス

【性別】男

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
ダークメフィストと融合していた暗黒適能者であった。
変身ガジェットであるダークエボルバ―は失われたが、心の光を集める事でダークメフィストへの変身が可能。
その力はマスターとサーヴァントの差を覆すが、ウルトラマンネクサス、ダークメフィストツヴァイとの激闘により疲弊したその身体は、英霊との戦闘に耐えられないだろう。

【人物背景】
スペースビーストを狩るナイトレイダーAユニットの副隊長であった男。
優れた戦士だったが、その心の底には死への恐怖と力への渇望があり、闇の巨人ダークメフィストの囁きに抗しきれなかった溝呂木は闇のウルトラマンに変貌。
スペースビーストを操り、暗躍を続けていたがウルトラマンネクサスの適合者・姫矢とナイトレイダーの連携を前に敗れる。

その後、記憶と変身能力を失った状態で彷徨っていた所をかつて利用した少女・山邑理子と出会うも、TLTに拘束される。
過去の記憶を取り戻した溝呂木は改心し、自身が両親の死の原因を作った理子に贖罪するべく、施設を脱走。

Episode.32「影-アンノウンハンド-」にて死亡した瞬間から参戦。

【聖杯にかける願い】
なし。贖罪がしたいのであり、奪い合いには乗らない。


381 : ◆0080sQ2ZQQ :2018/10/13(土) 21:23:38 YIZTAm5.0
投下終了です。鱒・鯖。本文は改変自由。


382 : ◆0080sQ2ZQQ :2018/11/18(日) 17:33:07 dTx6qhdI0
投下します。鱒は他所聖杯企画に投下したものを加筆・修正したものです。


383 : 辰巳&アサシン ◆0080sQ2ZQQ :2018/11/18(日) 17:33:41 dTx6qhdI0
油の跳ねる音が耳朶を打ち、醤油の香ばしい香りが鼻腔をくすぐる。
からりと揚がった唐揚げをフライパンから取り出し、辰巳はクッキングシートにあげていく。
彼の相棒が帰還したのは、辰巳が夕飯を完成させる一呼吸ほど前だ。まもなく、ダイニングキッチンに線の細い青年が姿を現す。

「お帰りなさい、アサシン。いいタイミングで帰ってきましたね」
「…みたいだね」

アサシンと呼ばれた青年――水澤悠は悪戯を見つかった子供のように笑った。
まもなく夕飯をつまみがてら、辰巳は報告を聞く。メニューは大皿の唐揚げをメインに、付け合わせのレタスと千切りキャベツとニンジン。
冷奴の小皿と、ひじきと大豆の煮物の小鉢。

「サーヴァントを捕捉したけど、まだ皆情報収集に徹しているみたいだね。見てきた限りでは、やる気になっている主従はいないよ」
「そうですか。何人くらい招かれたのか知りませんが、長丁場になりそうです」
「港近くの団地に陣地がつくられていたから、用がなければ近づかないで」

悠は大口を開けて唐揚げを頬張る。
彼の分は、辰巳の皿とは別に用意されている。その数はざっと見るだけで12個、辰巳の2倍ほど。
悠は特殊な性質故に、タンパク質の摂取状況に応じてコンディションが大幅に変化する。燃費が劇的に変化し、十分に供給していれば、魔術師ならずとも高いパフォーマンスを発揮させることが可能だ。

辰巳は人間ではない。
人の血を吸う「動く死体」、屍鬼達の中から稀に生まれる、体温や脈拍を持つ変異体「人狼」である。
彼は屍鬼の長である桐敷沙子が目論んだ起き上がりのコロニー建設に従事していたが、それは聖杯戦争に招かれる前に潰えた。
建設地に選んだ外場村の医師がすべてを明らかにし、村人たちを率いて屍鬼狩りに打って出たからだ。

状況は坂を転がるように悪化し、塒にした屋敷も村人に取り囲まれてしまった。
彼は沙子を人間でありながら起き上がりに味方した若い住職に託し、自身は囮を買って出た――彼らは生き残っただろうか?
逃げ延びたならそれでよし、死んだなら……残念だ。


叶わぬ夢だ。
屍鬼とは人間にとって捕食者、その数は人間より少なくてはならない。
それが繁殖するなど不可能。起き上がりの数は、あらゆる捕食者の中でも少なくてはならない。
もし沙子の企みが成功して、種族が大繁殖したなら、待っているのは種族全員飢え死にの未来。
屍鬼でも、人間でもない視点から、辰巳は彼女の野望を診断する。

――それも悪くない。

もとより、起き上がりの理想郷ができるなどとは思っていない。
沙子だって興味がないだろう。10代前半で起き上がった彼女が、人間だった頃の続きをしたくなった…それだけの話だ。 
老獪で用心深いが、人間だった頃の暮らし、自分を包んでくれる家や共同体に固執している。彼女は数えきれない命を奪って動き続ける一方、そんな自分を罪深いものと感じていた。

――悲劇だ。

化け物のくせに人間の正義に拘っている愚かな少女。
人間は人間だし、屍鬼は屍鬼だ。如何に対話できるとはいえ、両者は違うものだ。
腹が減れば食べればいい。逆に人間は屍鬼を恨み、罵ればいい。辰巳は沙子を愚かだとは思うが、蔑みはしない。

人恋しい自分に忠実な、破滅に抵抗し続ける少女。
その見ごたえのある生き様が、喪われたら惜しいと思う。だから勝ち残ったら、聖杯は彼女にあげようと辰巳は決めた。
人間だった頃に望んだ世界の破滅を、彼女が聖杯の力でもたらしてくれるはずだから。

(そういえば…身の上を語った時)

アサシンは複雑な表情をしていた。
何か琴線に触れる部分があったのだろうか?人間とアマゾンの合いの子である彼。
来歴について深くは聞いていないが、彼と自分は似ている気がする。


384 : 辰巳&アサシン ◆0080sQ2ZQQ :2018/11/18(日) 17:34:38 dTx6qhdI0
【クラス】アサシン

【真名】水澤悠

【出典】仮面ライダーアマゾンズ

【性別】男

【ステータス】筋力B 耐久C 敏捷A 魔力E 幸運C 宝具B+(アマゾンオメガ)

筋力B 耐久B 敏捷A 魔力E 幸運C 宝具B+(アマゾンニューオメガ)

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
気配遮断:C
 サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。完全に気配を断てば発見する事は難しい。
 対アマゾン用の特殊対策機関から5年間身を隠していた実績から。

【保有スキル】
気配感知:B
 サーヴァントの気配を感知できる。近距離ならば、同ランクまでのスキル「気配遮断」を無効化できる。

補給:A
 彼を構成するアマゾン細胞はタンパク質を好み、摂取度合いがコンディションに影響を及ぼす。
 補給が十分なら基礎ステータスの向上、治癒再生効率の上昇、魔力消費の軽減といった恩恵を受けることが可能。
 逆に補給が十分でない場合、上記の恩恵が反転して悠を襲う。

戦闘続行:A
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
 アマゾン細胞に由来する再生力。タンパク質の補給が十分なら、上記スキルとの相乗効果により、ランク以上の効果を発揮する。

狂喜:C
 戦場における異常なまでの精神高揚。
 戦闘中、威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する。また痛覚などのバッドステータスによる行動制限を緩和する。

全てを守りたい:E
 人でもアマゾンでも、守りたいものを守るという誓い。
 生前、心を通わせた少女のアマゾンを喰らった事で大きくランクを落としている。
 精神耐性を示すスキルであり、精神干渉の効果を多少減衰させる。


【宝具】
『最後と呼ばれし流離者(アマゾンオメガ)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
 トラロック作戦を潜り抜け、食人に手を染めなかった第三のアマゾンとしての在り方が宝具に昇華されたもの。
 悠は「魔獣・怪物を対象にした攻撃」を無条件で回避する。
 また、下記の2種類のドライバーを呼び出し、使用することで自身の肉体を兵器化させることが可能。
 いずれの形態も格闘戦を得意とし、アマゾン細胞から生み出した装備や手足のエッジを武器とする。


【weapon】
「アマゾンズドライバー、ネオアマゾンズドライバー」
悠が変身に使うツール。念じるだけで腰部に出現させることが可能。


【人物背景】
野座間製薬の重役、水澤令華の息子。
その正体はアマゾン細胞に令華の遺伝子を組み込んで生み出された半人半アマゾンとでも言うべき存在。令華曰く、最高傑作。
引きこもり状態で暮らしていたが、食人衝動を抑える薬物の投与を拒んだことで、アマゾン細胞が覚醒。
「人か怪物か」という苦悩の中、脱走したアマゾンを狩る駆除班に配属され、彼らと共に戦いに身を投じる。
静かに暮らすことを望むアマゾン達との出会いをきっかけにアマゾン駆除に躊躇いを覚えるようになった彼は、駆除班のメンバーを襲った同僚であるアマゾン「マモル」との対話を経て、アマゾンとして生きることに決める。

しかしアマゾンを守りはするが、アマゾンを狩る人間と敵対する意思を見せない彼とアマゾンの間には、いつの間にか一線が引かれていた。
溶原性細胞の災禍の際は単独で事態の解決に奔走。やがてアマゾンも家畜化された者達を除いてその殆どが駆除され、己が立てた誓いに自ら背いた彼は何処かに姿を消した。



【聖杯にかける願い】
守りたいものを守る。掛ける願いは無く、争いを招く聖杯を解体する事と「生きる」事を目的に行動するつもりだ。


385 : 辰巳&アサシン ◆0080sQ2ZQQ :2018/11/18(日) 17:34:39 dTx6qhdI0
【クラス】アサシン

【真名】水澤悠

【出典】仮面ライダーアマゾンズ

【性別】男

【ステータス】筋力B 耐久C 敏捷A 魔力E 幸運C 宝具B+(アマゾンオメガ)

筋力B 耐久B 敏捷A 魔力E 幸運C 宝具B+(アマゾンニューオメガ)

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
気配遮断:C
 サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。完全に気配を断てば発見する事は難しい。
 対アマゾン用の特殊対策機関から5年間身を隠していた実績から。

【保有スキル】
気配感知:B
 サーヴァントの気配を感知できる。近距離ならば、同ランクまでのスキル「気配遮断」を無効化できる。

補給:A
 彼を構成するアマゾン細胞はタンパク質を好み、摂取度合いがコンディションに影響を及ぼす。
 補給が十分なら基礎ステータスの向上、治癒再生効率の上昇、魔力消費の軽減といった恩恵を受けることが可能。
 逆に補給が十分でない場合、上記の恩恵が反転して悠を襲う。

戦闘続行:A
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
 アマゾン細胞に由来する再生力。タンパク質の補給が十分なら、上記スキルとの相乗効果により、ランク以上の効果を発揮する。

狂喜:C
 戦場における異常なまでの精神高揚。
 戦闘中、威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する。また痛覚などのバッドステータスによる行動制限を緩和する。

全てを守りたい:E
 人でもアマゾンでも、守りたいものを守るという誓い。
 生前、心を通わせた少女のアマゾンを喰らった事で大きくランクを落としている。
 精神耐性を示すスキルであり、精神干渉の効果を多少減衰させる。


【宝具】
『最後と呼ばれし流離者(アマゾンオメガ)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
 トラロック作戦を潜り抜け、食人に手を染めなかった第三のアマゾンとしての在り方が宝具に昇華されたもの。
 悠は「魔獣・怪物を対象にした攻撃」を無条件で回避する。
 また、下記の2種類のドライバーを呼び出し、使用することで自身の肉体を兵器化させることが可能。
 いずれの形態も格闘戦を得意とし、アマゾン細胞から生み出した装備や手足のエッジを武器とする。


【weapon】
「アマゾンズドライバー、ネオアマゾンズドライバー」
悠が変身に使うツール。念じるだけで腰部に出現させることが可能。


【人物背景】
野座間製薬の重役、水澤令華の息子。
その正体はアマゾン細胞に令華の遺伝子を組み込んで生み出された半人半アマゾンとでも言うべき存在。令華曰く、最高傑作。
引きこもり状態で暮らしていたが、食人衝動を抑える薬物の投与を拒んだことで、アマゾン細胞が覚醒。
「人か怪物か」という苦悩の中、脱走したアマゾンを狩る駆除班に配属され、彼らと共に戦いに身を投じる。
静かに暮らすことを望むアマゾン達との出会いをきっかけにアマゾン駆除に躊躇いを覚えるようになった彼は、駆除班のメンバーを襲った同僚であるアマゾン「マモル」との対話を経て、アマゾンとして生きることに決める。

しかしアマゾンを守りはするが、アマゾンを狩る人間と敵対する意思を見せない彼とアマゾンの間には、いつの間にか一線が引かれていた。
溶原性細胞の災禍の際は単独で事態の解決に奔走。やがてアマゾンも家畜化された者達を除いてその殆どが駆除され、己が立てた誓いに自ら背いた彼は何処かに姿を消した。



【聖杯にかける願い】
守りたいものを守る。掛ける願いは無く、争いを招く聖杯を解体する事と「生きる」事を目的に行動するつもりだ。


386 : 辰巳&アサシン ◆0080sQ2ZQQ :2018/11/18(日) 17:35:13 dTx6qhdI0


【マスター名】辰巳

【出典】屍鬼

【性別】男

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
「人狼」
屍鬼の襲撃を受けた後、完全に死亡することなく超常の力を得た人々。極稀に生まれる屍鬼の変異種。
不老、高い治癒力や襲った人間への暗示、夜目が利くといった屍鬼と同じ能力を備え、彼らと違い、人間の食事で生命を維持できる。
くわえて昼間でも活動でき、体温や脈拍を生前と変わらず保ち、呪物への高い耐性を持つ。
循環する血液を力の源としており、心臓や頭部の破壊によってのみ殺害する事が出来る。


作中では屍鬼の完全体なのだろうと推測されている。


【人物背景】
屍鬼の首魁「桐敷」の下男。
桐敷の長である沙子に血を吸われたことで変異体の人狼となるが、恨むことなく彼女を支え続ける。
桐敷の最古参であり、沙子が外場村に起き上がりのコロニーを作ろうとしたときには、蘇生した屍鬼達の現場指揮官を担った。本人曰く、虚無主義者。
外見は20代くらいだが、実年齢は不明。

静信に沙子を託した後から参戦。


【聖杯にかける願い】
沙子にあげる。


387 : ◆0080sQ2ZQQ :2018/11/18(日) 17:35:54 dTx6qhdI0
投下終了です。鯖・鱒・本文は改変自由。


388 : 名無しさん :2018/12/30(日) 20:12:10 7j5F3QPg0
まず最初に
今回投下するのは当スレの主旨に大幅に沿ぐわないものになります。簡単に言うと「コンペ用SS」でないことです。
とある聖杯戦争の本編用に作ってみた裏設定用ですが、今のところSSなしのステータスシートのみになります。
こちらは一年以上前に考えてそのままフォルダの中に埋もれていましたが、出す機会もないまま埋もれてしまうのも忍びないと思ったので、この年の瀬に酔った勢いで投下してみました。
それではみなさん、よいお年を。

【クラス】異譚のビースト
【真名】闇の書@魔法少女リリカルなのはA's
【属性】混沌・中庸
【ステータス】
筋力- 耐久- 敏捷- 魔力EX 幸運EX 宝具A+ (闇の書)
筋力B 耐久B+ 敏捷B+ 魔力EX 幸運C 宝具A++ (闇の書の意思)
筋力A+ 耐久A++ 敏捷C 魔力EX 幸運D 宝具A+ (闇の書の闇)

【スキル】
『単体顕現:?』
 単体で現世に現れるスキル。闇の書の場合、段階・状態に応じてランクが変化する。
 第一段階はあまり自律的な行動を取らず、魔力の蒐集に主や守護騎士を必要とする。
 第二段階は悲愴感を纏った銀髪赤眼の女性が現れ、蒐集の完成の直後に主との強制的な融合により具現化、抗えぬ衝動のまま敵対者の排除を行う。
 第三段階は合成獣のように醜悪で巨大な魔獣となり、周囲に存在する全てを喰らい尽くす災厄の獣が完全顕現する。
 このスキルは「即死耐性」および「状態異常耐性」を備えている。

『蒐集:EX』
 生命体が有する魔力の源を蒐集し、その術者の魔力資質もコピー・アレンジして行使することが出来る。
 このスキルにより蒐集した魔力資質に応じて白紙の頁を埋めていき、獣の数字とされる666もの頁を揃えることでビーストは覚醒へと至る。
 魔術使用の場合、蒐集完成前であればその魔術に応じた分のページ数を消耗するが、完成後であれば消耗もなしに自由に行使可能となる。
 ただし、一度蒐集を行使した相手に対し再度の蒐集・頁数の補填を行ることはできない。
 また、一定期間蒐集が行われなかったり蒐集完成が遅い場合、主の魔力を奪い身体を蝕むデメリットを持つ。

『終わらぬ闇:EX』
 ビーストを不滅の存在に至らしめる二つの機能、「再生」と「転生」を複合したスキル。
 闇の書が破損した場合や覚醒後に身体を破壊された場合、霊核が残っていれば即座に再生を開始してしまう。
 例え暴走の根源が異次元の狭間に葬られても、闇の書の中核が残っている限りはやがて復活してしまう。
 また、ビーストが破壊された場合、もしくは主が死亡した場合、ビーストは白紙の魔導書に戻って別世界の新たな主の下へと転生する。
 転生機能は蒐集完成前のビーストに無理に干渉した場合にも発動し、その際に持ち主をも呑み込んでしまうため、事前の破壊・封印も不可能になる。


389 : 名無しさん :2018/12/30(日) 20:12:40 7j5F3QPg0

『自己改造:EX』
 完全顕現を果たすと様々な生体部品で構成された巨大な化物へと変化する。
 また、特定の形を持たないプログラムなので様々な姿に変えられる。
 この姿になったビーストはランクA以下の攻撃を無効化する。

『干渉遮断:EX』
 ビーストの持ち主以外によるシステムへのアクセスを受け付けなくする。
 また、闇の書の暴走を正すことは持ち主であっても受け付けない欠陥を抱えている。
 このスキルは情報収集系のスキル・宝具に対する耐性も備えている。

『ネガ・マギア:A++』
 人々の欲望により捻じ曲げられ、それでも魔導を極めるために機能する異形の霊子演算装置。
 高速思考・並列処理により蒐集した魔術を詠唱なしに発動し、さらに大魔術も一言で発動できる。
 また、蒐集した術式を独自に改変・調整することで、膨大な魔力を用いてオリジナル以上の威力を生み出したり、
 チャージ時間が長引く代わりに広域攻撃属性を付加させる、などの攻撃強化を施せる。


【宝具】
『守護騎士(ヴォルケインリッター)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
ビーストの第一次覚醒と共に起動する守護プログラム。
闇の書と主を護り、魔力蒐集を行わせるために編み出される4騎の魔力生命体。
守護騎士たちはサーヴァントと同等の能力を有し、目的のために独自の行動を取ることができる。
――しかし、偽りの冬木においては何かしらの理由によりその者達の召喚は確認されていない。


『闇の書の意思』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:0 最大補足:1人
闇の書の中核たる管制人格(マスタープログラム)。
術者と「融合」して魔力の統制・補助を行う融合騎(ユニゾンデバイス)。
だが『闇の書の闇』の暴走の影響により正常に機能せず、蒐集完成後には主を呑み込む「融合事故」を引き起こしてしまう。
その際主の身体を依り代として銀髪紅眼の少女へと変貌し、蓄積した魔力による圧倒的な戦闘能力で全てを排除する。
――そして名もなき少女は涙を流す。永遠に終わらぬ連鎖に絶望する。


『???』
ランク:? 種別:??? レンジ:??? 最大補足:???人
詳細不明。


以上となります


390 : ◆0080sQ2ZQQ :2019/01/12(土) 20:05:00 .s4EFoys0
投下します。


391 : 辺見和雄&アーチャー ◆0080sQ2ZQQ :2019/01/12(土) 20:05:42 .s4EFoys0
朝に自宅を出て、日没まで職場で過ごす。
同僚や上司と飲みに行くことなどはあるが、家に招くような友達や恋人はいない。
家族とは離れて暮らしており、ここ数年会っていない―辺見はそんな現状に違和感を抱えて過ごしていた。

全てを思い出したのは、台所で捌いたアジの身を鍋に入れている時。
照明に照らされる包丁の鈍い輝き、刃を動かす度に違和感が大きくなっていき、アジと一口大の大根と調味料を火にかけるだけの段階で、過去が走馬灯のように脳裏を駆け抜けていった。
肌寒い北海道の風、己が手に掛けた者に印を刻む手、そして顔に傷のある兵士。

(杉元さん…)

どうして忘れていたのか。
あれほど昂る殺し合いを、あの素敵な人をどうして忘れてしまっていた?
考えを巡らせるより前に、辺見はその場で屈み、杉元に懺悔するように頭を下げた。

(忘れないでって…僕が言ったのに)

杉元と出会ってからシャチに攫われるまでの記憶を辿った後、辺見は現状を整理する。
馴染みのない記憶がいくつもあり、辺見はさほど混乱せずに済んだ。
自分達が生きていた頃より100年以上経過した世界で、聖杯戦争なる催しに巻き込まれてしまったらしい。
サーヴァントはどこか首を巡らした時、ダイニングキッチンの居間部分に経絡の結ばれた英霊が姿を現した。

現れたのは黒髪をヤマアラシのように逆立てた、小柄な少年。
まだ幼さの残るあどけない顔立ちだが、威圧的な眼差しで辺見を見ている様は押し入り強盗と思われても仕方がないと思える。
彼はタンクトップにチノパン、長靴というシンプルな格好をしている。首元に巻き付く赤い外套がひときわ目を引く。

「あ、あなたが僕のサーヴァント…ですか?」
「おぉ。俺は鉄雄。島鉄雄だ。あんたは?」

辺見は躊躇いがちに質問する。
辺見は優れた洞察力により、男が殺人者であることをすでに見抜いている。
真偽を確かめるべく彼が質問すると、赤マントの少年は余裕ぶった態度で辺見を見た。

「そんなにビビんなくても、とって食やしねぇよ」
「ハハハ…ありがとうございます。丁度夕飯を用意するところでしたし、一緒にどうです?」
「じゃあ頼む」

鉄雄は居間に向かい、テレビをつけて放送していた番組を退屈そうに見始めた。。
出だしはまずまず、と判断した辺見は夕飯の調理を開始。まもなくアジの煮つけ、豆腐の味噌汁、きんぴらごぼうの小鉢と白飯がローテーブルに並んだ。
2人は夕食に手を付け始める。

「えぇと、鉄雄さん?」

アジの肉を箸でつまんでいた鉄雄が顔を上げる。

「英霊だそうですが、人を殺したことは?」
「あぁ?あるよ。それが?」
「何人くらい殺しました?」
「…知らねぇよ。俺を追っかけまわして、銃向けてきたんだから自業自得だ」
「…そうですか」

彼に抱いた期待が萎んでいくのが、辺見にはわかった。
今のやり取りだけで、同じ殺人者であるが自分とは価値観の異なる相手だと辺見は悟った。
鉄雄の方も、辺見にはさほど興味を示さず、供されたメニューをすべて平らげると気怠そうに立ち上がった。

「もう始めるんですか?」
「ちょっと街を見て回るだけだよ……あぁ、そうだ。お前は魔術師か?」
「いえ。僕はそういったものは心得ていません」
「なら目立つ行動はすんな。敵が出たら、念話で知らせろ」

鉄雄は言いたいことを言うと、辺見の自宅を後にした。
マスターの生死に興味は無いが、替えも見つかっていない現段階で死なれるとまずい。
監禁してもいいが、その場合は生存させる為にあれこれ手間を掛けねばならないだろうから、邪魔しない限りは放置する。

(本当にどんな願いでも叶えてくれるのでしょうか…)

置いていかれた形の辺見は、未だに我が身に起きた事態を信じかねていた。
子供でも鵜呑みにはしない与太話だ。しかし真実ならば、杉元にもう一度会いたい。
もう一度殺し合い、そして彼の手にかかって同じように死にたい。最後のやり取りを反芻するだけで、血液が下腹部に向かっていくのがわかる。
それは流石にできないだろうか、せめてもう一度話がしたい。辺見は遠い過去の北海道で戦っているであろう男を思った。


392 : 辺見和雄&アーチャー ◆0080sQ2ZQQ :2019/01/12(土) 20:06:03 .s4EFoys0
【クラス】アーチャー

【真名】島鉄雄

【出典】AKIRA(劇場アニメ版)

【性別】男

【ステータス】筋力E 耐久D 敏捷C 魔力A++ 幸運D 宝具B

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

単独行動:C
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。

【保有スキル】
蛮勇:D
 超能力を得たことによる全能感がもたらす攻撃性。
 同ランクの勇猛効果に加え、格闘ダメージを向上させるが、視野が狭まり冷静さ・大局的な判断力がダウンする。

サイコキネシス:A++
 戦車を潰し、地形を一変させるほどの念動力。
 障壁のように展開する事で防御にも使用可能。視界に納めていれば砲弾程度は軽く防いでしまう。
 感情の高ぶりによってその威力は爆発的に増大する。念動波そのものは対魔力スキルで減衰されるが、周囲の物体を投擲する場合はその限りでない。

飛行:B
 超能力により飛行する。飛行中の敏捷値はスキルランクで計算する。

頭痛持ち:C
 超能力のコントロールが十全でないが故の肉体疲労による頭痛。
 アーチャーのクラスに嵌められたことで右腕を失う前の状態で固定されている為、自滅の危険が無い分生前に比べればマシである。

【宝具】
『全人類に眠るもの(アキラ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
 宇宙の絶対のエネルギーとも言われる、人類にはまだ早すぎる力。
 鉄雄に上記スキルをもたらした力。生前はコントロール不全により自滅に至ったが、英霊に至った事でこの欠点を克服している。

【weapon】
なし。


【人物背景】
2019年の東京湾上に建つ「ネオ東京」で暮らしていた暴走族の少年。
いつものように暴走していたある晩、皺だらけの少年と衝突した結果、彼は警察に連行されてしまう。
その際に超能力に開花した彼は、自分を捕らえていた研究所の職員を殺害しつつ、身についた能力で施設を破壊して脱走。
自らの中に入り込む「アキラ」を目指し、「アキラ」が封印されている開催を控えるオリンピック会場地下に軍を退けながら進んでいった。

同じ養護施設で育った金田正太郎は幼馴染であり親友なのだが、強引な彼に不満を感じていた。
超能力を得た事で溜まりに溜まった鬱憤を晴らすように暴れる鉄雄はコンプレックスを増大させており、自らの念動力で崩壊させた会場で金田と対決する。
金田を打ち負かすも軍が衛星レーザーを照射。右腕を失うもレーザー衛星を破壊した鉄雄は、瓦礫を義手にするとスタジアムに退避した。
最終的に能力の制御が利かなくなり、膨張する肉塊になり果てるもアキラ覚醒により発生した光の中に消える。

金田を疎ましく思っていたのは事実だが、最後に助けを求めたあたり長く続いた友情も偽りではない。
座に至った事で彼に対する鬱屈した感情は晴れているが、覚醒以前の彼より攻撃的なのは変わらず。マスターが偉そうに出たなら、逆上して殺害する事もあり得る。

最も適性があるのはアヴェンジャー。
アヴェンジャークラスの場合、義手の右腕を触手のように扱うことが可能。
さらに宝具『全人類の先駆け(アキラ)』が追加され、対城宝具級の破壊を引き起こすことが可能になるが、開帳した場合は鉄雄自身も聖杯戦争から退場することになる。
ただし、能力の制御が十分でないという欠点まで再現されてしまう。


【聖杯にかける願い】
強いて言うなら、金田達にもう一度会いたい。
大望や理想は無く、10代の不良少年らしく目先の怒りと超能力を頼みに敵に向かっていくだろう。


393 : 辺見和雄&アーチャー ◆0080sQ2ZQQ :2019/01/12(土) 20:06:24 .s4EFoys0
【マスター名】辺見和雄

【出典】ゴールデンカムイ

【性別】男

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
「殺人鬼」
各地を放浪しながら100人以上を殺してきたシリアルキラーであり、C〜Aランク相当の精神汚染スキルを所持。
その身体にはアイヌの隠し金塊の在処を示した暗号の一部が彫られている。


【人物背景】
明治時代末期、のっぺら坊なる死刑囚に促されるまま網走監獄から脱獄した囚人の一人。
人当たりの良い温厚な人物だが、他殺願望と破滅衝動がないまぜになった倒錯した性癖の赴くまま殺人を重ねてきた人物。
幼少期、弟が多いの四肢に食い殺される様を目撃して以来、「必死の抵抗にする自分を殺してくれるもの」を求めて犯行を続けていた。

脱獄後、ニシン漁に従事するヤン衆に加わっていた彼は、漁の際に船から転落。溺死寸前だった所を、隠し金塊を求めて旅をする杉元佐一達と出会う。
日露戦争の帰還兵である彼と対話し、その強さと優しさに惚れ込み、彼に殺されたいと願った辺見は杉元の殺害を決心。
同じ脱獄囚である白石に招待を暴露された後、渇望した殺し合いの果てに杉元に致命傷を与えられた辺見は、シャチに嬲られながら絶命した。
死亡後から参戦。



【聖杯にかける願い】
自らの死に様には満足しているが、首尾よく勝ち残ったなら杉元に会いたい。


394 : 辺見和雄&アーチャー ◆0080sQ2ZQQ :2019/01/12(土) 20:06:25 .s4EFoys0
【マスター名】辺見和雄

【出典】ゴールデンカムイ

【性別】男

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
「殺人鬼」
各地を放浪しながら100人以上を殺してきたシリアルキラーであり、C〜Aランク相当の精神汚染スキルを所持。
その身体にはアイヌの隠し金塊の在処を示した暗号の一部が彫られている。


【人物背景】
明治時代末期、のっぺら坊なる死刑囚に促されるまま網走監獄から脱獄した囚人の一人。
人当たりの良い温厚な人物だが、他殺願望と破滅衝動がないまぜになった倒錯した性癖の赴くまま殺人を重ねてきた人物。
幼少期、弟が多いの四肢に食い殺される様を目撃して以来、「必死の抵抗にする自分を殺してくれるもの」を求めて犯行を続けていた。

脱獄後、ニシン漁に従事するヤン衆に加わっていた彼は、漁の際に船から転落。溺死寸前だった所を、隠し金塊を求めて旅をする杉元佐一達と出会う。
日露戦争の帰還兵である彼と対話し、その強さと優しさに惚れ込み、彼に殺されたいと願った辺見は杉元の殺害を決心。
同じ脱獄囚である白石に招待を暴露された後、渇望した殺し合いの果てに杉元に致命傷を与えられた辺見は、シャチに嬲られながら絶命した。
死亡後から参戦。



【聖杯にかける願い】
自らの死に様には満足しているが、首尾よく勝ち残ったなら杉元に会いたい。


395 : ◆0080sQ2ZQQ :2019/01/12(土) 20:07:37 .s4EFoys0
投下終了です。鯖・鱒・本文は改変自由。好きに使ってください。


396 : 名無しさん :2019/01/15(火) 19:45:34 Z5BfBf920
へ、変態だー!


397 : ◆NIKUcB1AGw :2019/02/13(水) 21:39:07 glSmpvFg0
投下します


398 : 檀黎斗神&アルターエゴ ◆NIKUcB1AGw :2019/02/13(水) 21:40:06 glSmpvFg0

殺風景な刑務所の中、私は今日も退屈な日々を過ごす。
はっきり言って、毎日が苦痛で仕方ない。
だが、受け入れなければならない。
これは私が犯した罪に対する、罰なのだから。

……罪?
なぜ私は、そんなものが自分にあると思っているんだ?
償うべき罪など、私にはない。
なぜなら私は、神!
檀黎斗神だからだ!


◆ ◆ ◆


「ほな、これからよろしくなー」

記憶を取り戻した私の前に出現したのは、巨大な顔面だけの男だった。
こう言うと化け物のようだが、実際問題化け物にしか見えない。
しかも、妙にカクカクしている。
まるでゲームに導入されたばかりの頃のポリゴンで作られているかのようだ。

「君は……レトロゲームのキャラクターか何かか?」
「んー、割と近い存在ではあるんやけどナー。
 今の俺は、アルターエゴのサーヴァントや。
 とりあえず、クラス名で呼んでくれるかナ」
「わかった、アルターエゴ。
 それで……この聖杯戦争とやらに勝ち残ればどんな願いでも叶う。
 そういうことでいいんだな?」
「ああ、間違いないデ。
 まあ俺は、聖杯戦争に参加すること自体が目的やったからナ。
 願いを叶える権利は、おまえが使ったらええ」
「それはありがたい。だが、いざ何でも叶うとなると……。
 意外と悩むものだな」

私の究極の願い。それは私の作ったゲームを全人類がプレイすることだ。
だがそれは、私の実力によってなされるべきことだ。
私の才能と無関係なものを使って叶えても、意味がない。

「まあ今すぐ叶うわけではないし、ゆっくり考えればいいか。
 それより今やるべきは、ここから出ることだな。
 さすがに刑務所の中にいたのでは、できることが少なすぎる」
「せやったラ、最初の挑戦はそれにしとこうか」
「挑戦?」

よくわからない発言に首をかしげる私の前で、アルターエゴは突如として空中にスクリーンを投影する。
そこには、こう表示されていた。

『刑務所から脱出しろ!』


399 : 檀黎斗神&アルターエゴ ◆NIKUcB1AGw :2019/02/13(水) 21:40:42 glSmpvFg0


◆ ◆ ◆


数十分後、刑務所はがれきの山と化していた。
このアルターエゴとやら、見た目は珍妙だが戦闘力は十分のようだ。
あちこちからうめき声やら何やらが聞こえるが、私はそれを意に介することなく壊れた塀から敷地外に出る。
その瞬間、高らかにファンファーレが鳴り響いた。
さすがに面食らって足を止めると、アルターエゴが話しかけてきた。

「おめでとさーン。まずは最初の挑戦クリアやナ。
 ご褒美やでー」

アルターエゴから光が放たれ、それが私の手の上に移動する。
程なくして光が消えると、そこには見慣れた物体があった。

「ゲーマドライバーに……プロトマイティアクションXのガシャットだと!?
 なぜこれを君が持っている!?」
「これが俺の宝具、『魔王の挑戦状』の効果や。
 俺が出す『挑戦状』の内容をマスターがクリアすれば、ご褒美としてマスターの望むものをプレゼントできるんや。
 ただし、ゲームに関係するものだけやけどナ」
「なるほど……。私は君のマスターとして最適だったというわけか」

他の人間であれば、ゲームをもらったところで聖杯戦争の役には立たない。
だが、私なら別だ。
ゲームを元に仮面ライダーへと変身するシステムを作った、この私ならな。
もっとも、さすがの仮面ライダーでも科学とはかけ離れた存在であるサーヴァントとまともに戦うのは難しいようだが……。
それでも敵のマスターを潰したり、有用な使い方はいくらでもある。
それに設備さえあれば、仮面ライダーをサーヴァントに対抗できるようバージョンアップすることも可能だろう。
かつて人間の魂を宿らせることができる「眼魂」を研究したときの経験が、役に立ちそうだ。

「ではそろそろ行こうか、アルターエゴ。
 まずは拠点にできそうな場所を探さないとな」
「了解やでー」

先はまだまだ長そうだ。
だがこのゲーム、必ずクリアしてみせる。
この檀黎斗神がな!


400 : 檀黎斗神&アルターエゴ ◆NIKUcB1AGw :2019/02/13(水) 21:41:27 glSmpvFg0

【クラス】アルターエゴ
【真名】ゲーム魔王アリーノー
【出典】ゲームセンターCX 有野の挑戦状
【性別】男
【属性】中立・悪

【パラメーター】筋力:D 耐久:A 敏捷:D 魔力:A 幸運:C 宝具:C

【クラススキル】
対魔力:C
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
Cランクでは、魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。

【保有スキル】
天性の魔:E
英雄や神が魔獣と堕ちたのではなく、怪物として産み落とされた者に備わるスキル。
アルターエゴは生まれながらの魔王だが、元になった存在が一般人であるためたいした効果はない。

戦闘続行:B
名称通り戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
「往生際の悪さ」あるいは「生還能力」と表現される。


【宝具】
『魔王の挑戦状』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:1人
マスターを対象とする、異色の宝具。
マスターに対して、「挑戦状」として達成すべき課題を提示する。
マスターがその課題を達成したとき、アルターエゴはマスターが望む道具を与えることができる。
ただし、その道具は「ゲーム」に関係していなければならない。
なお発動の権利は完全にアルターエゴが握っており、マスターが望むタイミングで発動させるには令呪を使用しなければならない。

【weapon】
特になし。
攻撃手段としては、十字キー型の魔力弾を用いる。

【人物背景】
ゲーム攻略に失敗した有野課長の無念が、電脳世界で実体化した存在。
目をつけたゲーマーを過去に飛ばし、元の時代に戻る条件としてレトロゲームの攻略を強いる。
外見は粗いポリゴンで形作られた、有野課長の巨大な頭部。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯戦争というゲームを楽しむ。


401 : 檀黎斗神&アルターエゴ ◆NIKUcB1AGw :2019/02/13(水) 21:42:34 glSmpvFg0

【マスター】檀黎斗神
【出典】仮面ライダーエグゼイド
【性別】男

【マスターとしての願い】
考え中

【weapon】
「ゲーマドライバー」
黎斗自身が開発した変身ベルト。
ゲームカセットを模したアイテム「ライダーガシャット」をセットすることで、仮面ライダーに変身できる。

「プロトマイティアクションXガシャット」
黎斗が最初に使用していたライダーガシャット。
仮面ライダーゲンム・アクションゲーマーレベル1およびレベル2に変身可能。

【能力・技能】
「天才ゲームクリエイター」
数々の名作ゲームを世に送り出した。
その才能は、誰もが認めるところ。

「コンティニュー」
複数の命を持ち、死んでも蘇ることができる。
現在の残りライフは2。
ただし、この世界で正常に機能するとは限らない。

【人物背景】
大手ゲーム会社「幻夢コーポレーション」の社長であり、自ら多数のゲームを手がけるクリエーター。
表向きは実体化したコンピューターウイルスであるバグスターに対処する機関・CRの協力者であるが、裏ではバグスターとも結託している。
その目的は、仮面ライダーとバグスターを戦わせることでデータを収集し、自分の考える究極のゲームを作り上げることであった。
計画半ばにしてバグスターのリーダー・パラドに見限られ殺害されるが、後に自らバグスターとなって復活。
当初はパラドへの復讐のため、後には自分のゲームを好き勝手に改ざんする父・正宗を打倒するためにCRと共に戦う。
参戦時期は、テレビシリーズ最終回直後。


402 : ◆NIKUcB1AGw :2019/02/13(水) 21:43:51 glSmpvFg0
投下終了です


403 : ◆0080sQ2ZQQ :2019/04/28(日) 20:34:50 eBoOedDI0
投下します。


404 : 芝浦淳&アーチャー ◆0080sQ2ZQQ :2019/04/28(日) 20:35:42 eBoOedDI0
熱気と独特の湿気に満たされた寝室を出た芝浦は、静かにリビングに出ると赤ワインをグラスに注いだ。
寝室では引っ掛けた女が気をやって、そのまま眠りについている――たった今、性行為を終えた直後なのだ。
快い気怠さを感じていた芝浦の耳朶を、ベルベットを思わせる心地よい男の声が撫でる。

「おや、お楽しみ中だったか。失礼」
「あぁ、気にしなくていい。さっき済んだところだ」
「ふぅん。そうかい」

左右対称の整った顔立ち、筋肉質ではないがしなやかな身体。
黒い瞳の美男子こそ、芝浦に宛がわれたサーヴァント。キュヴィエ症候群なる奇病に脅かされる世界を生きたアーチャー、水無瀬眞。
長年の友人の如き態度で会話する2人だが、芝浦は微かな緊張を感じている。聖杯戦争に放り込まれたから?否、パートナーが信用できないからだ。

召喚されて早々、彼らは自己紹介を行った。
話しても良い部分のみを話し、都合の悪い部分は都合よく改変するか、意図的に隠して相手に伝える。

「ヒトタンパク?つまり人間ってことか」
「そう。あぁ、純粋な人間でなくてもいい。人間に匹敵する複雑な知性を摂取しなければならないのであって、ヒトかどうかはそんなに重要じゃない」
「へぇー、まるでモンスターだな」
「ハハハ…その言いぐさはあんまりだよ、マスター。まさにせめて上位者と言ってほしいな」

さも可笑しそうに水無瀬が笑うと、芝浦が悪びれた様子もなく訂正する。

「あぁ、悪い。前にも同じような戦いがあってさ、その時はミラーモンスターってのと契約して、自分で戦ってたんだけど…」
「興味深いね。話してもらってもいいかい?」
「勿論」

水無瀬はライダーバトルに興味を示したらしく、芝浦は経験した戦いを掻い摘んで教えた。
途中で脱落した、一度死んでいる事実も伝える。水無瀬は踏み込むべきでないと察してか、死因については聞いてこなかった。

「確かに似てると思う。関連はないだろうけど、実に奇遇だ」
「だろ?ちゃんと養ってやるから、俺を摘ままないでくれよ?」
「そんなつもりはないけど、暴走したら僕自身にも抑えきれない。もしもの時は令呪を使ってくれ」

聖杯を狙う、という点は一致した。芝浦は優勝と生還狙いだ。

「僕は聖杯に、平穏な暮らしを願うつもりだ。人々がキュヴィエ症候群に悩まされず、アートマ保持者が餓えに悩まされない世界をね」
「そっか。俺は勝ち残れればそれでいいから。頼んだぜ、アーチャー」

2人はどちらからともなく、握手を交わした。
芝浦は会話するフランクな態度の水無瀬を見て、背筋の凍るような予感を覚えた。
確証は得ていないが、腹の底を見せているのではないと芝浦は直感する。そして…相手も同じように感じているのではないか?

――自分を操ろうとしている。

触媒無しの召喚の場合、お互いの相性でサーヴァントが決定されるらしい。
刻まれた知識を根拠にするなら、芝浦が操りやすい性格の英霊か、あるいは芝浦と共通する部分を持った英霊だろう。
強いコントロール願望を持ち、人命を奪う事に躊躇いのない英霊。到底組める相手とは思えない。土壇場で手を噛まれる恐れがある。
芝浦は右手に刻まれた令呪を、左手で縋るようにさすった。


405 : 芝浦淳&アーチャー ◆0080sQ2ZQQ :2019/04/28(日) 20:36:17 eBoOedDI0
【クラス】アーチャー

【真名】水無瀬眞

【出典】クォンタムデビルサーガ-アバタールチューナー-

【性別】男

【ステータス】筋力B+ 耐久B 敏捷C 魔力A+ 幸運D 宝具B(アルダー)

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

単独行動:B
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

【保有スキル】
魅了:D
 異性を惹きつける見目の美しさ。
 水無瀬と対峙した女性は彼に対し、強烈な恋愛感情を抱く。
 相手の心理状態や感情によっては抵抗できる。

精神異常:C
 精神が歪んでいる。
 他人は愚か、近しい者の痛みすらも感じず、周囲の空気を読めなくなっている。
 精神的なアーマー能力。

アートマ保持者:B
 このスキルの保持者はヒトタンパクを摂取しなければならないが、効率的に摂取できていれば魔力効率が著しく向上する。
 魂喰いも摂取行動に含まれる。仮に供給を長期間断った場合、ステータス補正のない高ランクの狂化の効果が発揮され、マスターと一般人の区別すらつかなくなるだろう。

飛行:C
 アートマの力で浮遊する。飛行中の敏捷値はスキルランクで計算される。

【宝具】
『上位者を騙る人形(アルダー)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
 協会がキュヴィエ症候群後の世界で生み出した人工アートマ、アルダーの力を解放する。
 変身後はステータスが上昇するほか、魔力判定に成功した場合、相手の宝具・スキルをジャミング。無効か、あるいは減衰させることが出来る。
 攻撃においてはプラズマ球の炸裂や光弾、両腕に形成される光のブレードを武器とし、敵の身体を融解させるほどの電磁波と熱で戦場を支配する。
 生前、強化改造を受けたが、今回はそれ以前の状態で再現されている。代償にエネルギー効率が低下したため、全盛の状態とは呼べないからだ。


【weapon】
宝具に依存。

【人物背景】
キュヴィエ症候群に悩まされる世界で製造されたデザイナーベビー。
両親のステータスとして、高い知能と美貌を与えられた彼だったが、自分への認識が宝石や高級車と大差ない事は幼いころから理解していた。
自分を製作した両親を謀殺し、同じように生み出された双子の妹を道具とし、人形である事から逃れようとした彼は、親友と呼ぶ穂村一幾には強い執着を見せる。

一幾の痛みと悲しみを理解できなかった水無瀬は彼と袂を分かった後、一幾と同じ顔を持つ男を求めたが、彼もまた自分を見なかった。
誰からも必要とされない絶望と怒りの中、所属するキュヴィエ協会に反旗を翻した彼はテクノシャーマンを抹殺するべく大殺戮を敢行するが、前述の強化改造の代償により身体が崩壊。
一幾と同じ顔を持つ男…エンブリオンのヒートに自分が人形であるという事実を叩きつけられながら死亡した。


【聖杯にかける願い】
誰もが自分を愛さなければ生きていけない世界を作る。




【マスター名】芝浦淳

【出典】RIDER TIME 龍騎

【性別】男

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
「反社会的人格」
共感性に乏しく、幼稚で残忍だがそれらを隠す高い知性の持ち主。

【人物背景】
大会社の御曹司にして、神崎士郎なる怪人物の誘いに乗ったライダーの1人。
頭が切れ、人命を軽く見る退廃的な性格の自信家。人生をゲーム感覚で捉える幼稚な男だが、相手を蹴落とす事に躊躇いが無く、大変に図太いなど侮れない人物。
神崎士郎が作り出した幾つかのループで途中脱落したことが確認されているが、優勝経験があったかは不明。
神崎主催のライダーバトル終結から十数年後、ミラーワールドに集められた嘗ての参加者の中にその姿があった。

【聖杯にかける願い】
聖杯に託すような大きな望みはなく、優勝と生存を目標としている。
本文中では、「TV本編経由のRIDER TIME芝浦」と解釈しています。


406 : ◆0080sQ2ZQQ :2019/04/28(日) 20:36:55 eBoOedDI0
投下終了です。鱒・鯖・本文は改変自由。


407 : 光無き少年少女 ◆/sv130J1Ck :2019/07/13(土) 13:58:28 .8aau5H20
投下します


408 : 光無き少年少女 ◆/sv130J1Ck :2019/07/13(土) 13:58:43 .8aau5H20
少年は孤独だった。生まれた時から共にある『像』の為に、両親とすら心を通わず事は出来なかった。
少年の生涯は孤独で出来ていた。


少女は満たされていた。数多くの仲間に恵まれ、ある少年と心を通わせ合い結ばれた。
少女はその生涯で充分過ぎるものを得ることができた。


そして、今────。


夜の公園を死に物狂いで駆ける男。
追われているのに気付いたのは何時からか?
最初は気の所為だと思った。
どうしても気になり、角を曲がる時に後ろを振り向くと、得体の知れない影が居た。
息を呑んで影を見つめた男は、気味悪く輝く二つの目を見た気がした。
思わず走り出した男の耳に聞こえる足音。明らかに追ってきている。
どれだけ脚に力を込めようが、角を曲がろうが、音は一定の距離を保って着いてくる。
気がつけば公園の中を駆け抜けていた。ここは家の近く、もうすぐ家に着く。家に帰り、玄関に鍵を掛ければ、もうこの恐怖から解放される。
そう思った瞬間。目の前に得体の知れない影が蹲っていた。


409 : 光無き少年少女 ◆/sv130J1Ck :2019/07/13(土) 13:59:33 .8aau5H20
分厚い雲が空を覆い、奇怪な事件とウワサにより人の気配が絶えた夜の街。
照明もロクに無い暗い夜の公園に湿った音が響く。

咀嚼音。おそらくは骨だろう硬いものを噛み砕く音。液体を啜る音。咀嚼音。

地面にぶち撒けられた物体に、周りに飛散した夥しい液体。
もしこの場に灯りが有り、何がこの場に有り、何がこの場で起きているか、見てしまった者は生涯悪夢に苛まれて過ごすだろう。
地面に転がるのは、複数の箇所で捩くれ折れ曲がった人の四肢。
地面を濡らすものは、バケツ一つでは到底及ばぬ量の鮮血。
舌を眼球を引き抜き喰らい、頭蓋を割り開いて脳を貪り尽くした''ソレ''は、喰うところが無くなった頭部を乱雑に放ると、腹に口をつけて腸を引きずり出した。

「いつまでも喰っているんじゃない、このバカ猫がッ!」

公園に突如響いた怒声の主に''ソレ''は緩慢に顔を向けた。

「ぐるるる………」

"ソレ''は少女の姿をしていた。

着崩した和服を纏った少女は、胸を殆ど露わにし、肉付きの良い太腿や、白い肩を惜しみなく露出させていたが、この少女を見て情欲を催す者など存在するまい。
麻薬中毒患者を思わせる濁った瞳、剥き出した歯、内から湧き上がる凶猛な衝動に歪んだ顔、唇の端からしとどに溢れる涎が、老若男女を問わず人の目を惹きつけるだろう少女の顔を、醜悪怪奇な''バケモノ''のソレに変えていた。
その顔の悍ましさに比べれば、少女の格好や、頭から生えた一対の猫耳や、尻から伸びる猫の尾など些細なものだ。

「チッ!殺すならサッサと殺せッ!人目につくと厄介だ」

そう忌々しげに毒づくのは、緑色の学ランに身を包んだ長身の少年だった。
線の細い、端正な顔を、憤怒と嫌悪に歪めて少年は少女に怒鳴りつける。

「さっさと霊体化しろッ!私の魔力を無駄にするなッ!」

「ぐるるる…狩………死、血………」

「すぐに飽きるほど狩らせてやる」

忌々しげに少年が言い聞かせた言葉に納得したのか、少女の姿は虚空に溶け込むように消えていった。
少女が消えるのを見届けて少年は短く息を吐く。

────刹那。

カタチの無いナニカが体内から急激に奪われていく感覚に、少年の眉が顰められる。
消えつつあった少女が再度実体化しているのだ。
吹き荒れる魔力は颶風となって砂塵を巻き上げ、少年は腕を上げて顔を覆った。


410 : 光無き少年少女 ◆/sv130J1Ck :2019/07/13(土) 14:00:35 .8aau5H20
少女の右手が翻る。たおやかな白い手は、荒事に向いているなどとはお世辞にも言えず、大の男ならば、不意に顔を打たれても大した痛手になりはすまい。
そう、思わせる繊手の一振り。
それが巨獣の咆哮の如き轟きと共に、直撃すれば瞬時に家屋が倒壊する程の暴風を巻き起こしたのだ。
サーヴァントの身体能力は見かけになど全く左右されない。その事実を改めて認識させる腕の一振りだった。

────狩りジャ。

そんな声が聞こえた頃には、少女の姿は何処にもなかった。
呆然とする少年の前に落下する物体。
拾って見てみれば、捩じくれへし折れた、全体が鋼で出来た矢であった。
少女は獣の感覚で、少年を狙った矢を感知し、腕を振って起こした風で矢を破壊したらしかった。


────────────────────


「離脱するぞ!マスター!!」

とあるビルの屋上で、必死という言葉を体現したかの様な形相で、弓を持った男────アーチャー────が絶叫した。
アーチャーの叫びに、マスターである男が身を震わせた。
アーチャーとそのマスターの主従は、自分達の戦力を最大限に活用するべく。高所からの狙撃によるマスター若しくはサーヴァントの殺害を画策。
狙いは図に当たり、正面切って戦えば到底勝ち得ぬであろう、馬鹿げたステータスのバーサーカーを従える少年を捕捉。
高いステータスに加えて、如何なる宝具やスキルを有しているか不明なバーサーカーを一撃で仕留めるのは困難かも知れない。
それでもマスターの少年は確実に殺せるだろうと、バーサーカーが霊体化した隙を突いての狙撃は失敗。
此方の位置に気付いたバーサーカーが接近してきている以上、撤退するのは当然だった。
ビルの中に消えたマスターが、安全圏へ離脱するまで、足止めの為に立て続けに放つ矢を、足を止める事無く悉く躱しながら駆けてくる少女の姿は、アーチャーを怯ませるのに充分だった。
一直線にビルに駆け寄った少女は、アスファルトの路面が砕ける勢いで跳躍。傍の電柱を踏み折って再度跳躍し、一気にビルの屋上より高く飛び上がった。
上空に向いたアーチャーの視線と、少女の視線とが交わった時、折れた電柱が路面に落ちた音が響き渡った。
闇夜の中でも悍ましく輝く、妖光を放つ凶眼をアーチャーに向けて、真っ直ぐに飛来する少女に肝を冷やしながら、アーチャーは勝利を確信した
如何に高速の獣といえど、空中では満足に動けない。宝具を以って一撃のもとに仕留める。
アーチャーが高らかに宝具の真名を叫ぶと、弓がまばゆい光に包まれ、閃光が夜闇を切り裂いて少女に迫り────。


411 : 光無き少年少女 ◆/sv130J1Ck :2019/07/13(土) 14:01:14 .8aau5H20
轟く咆哮。少女が腕を振るうと膨大な魔力を帯びた衝撃波がアーチャーの放った閃光を微塵と散らす。
神秘の強弱。特殊な概念。果ては宝具でもスキルでも無い、只の筋力と魔力放出にモノを言わせた一撃。
その馬鹿げた威力だけでアーチャーの切り札を消し飛ばし、ビルの上方三分の一程を、哀れな主従ごと撃ち砕いた。






バーサーカーが敵を屠ったのだろう。魔力の消費が緩やかになったのを感じた少年は、念話でバーサーカーに霊体化を命じた。
少年は凡人より魔力の持ち合わせこそあるが、バーサーカーのクラスで顕現した少女を実体化させておく事は、流石に負担が大きいのだ。

「何故わたしが狂戦士(バーサーカー)なんぞを………しかし切り捨てるわけにもいかん」

いくら負担が大きくとも、 少女と縁を切れば、少年は単騎で聖杯戦争に望む事になる。そのような状態で勝てると思うほど少年は愚かではない。
少年のサーヴァントはバーサーカー。ステータスだけを見れば超一級。
されどもその特性の為に、少年の統御を受け付けない。
どれだけ禁じても、時折実体化しては『狩り』と称して人を喰いに行く。
しかもさっさと殺さずに追い回し、嬲り殺してから喰らう為に、魂喰いにもなりはしない。
それでも少年はバーサーカーを切り捨てられない。

「………あの方からの命令を邪魔されてこんな所に拉致されてしまった以上、聖杯とやらを得なければ戻る事もできん」

こんな事に巻き込んでくれた奴が呉れると言っているのだ。勝ち上がり、獲得した聖杯を献上すれば、あの方も喜ばれるだろう。
というより無様過ぎて戻る事が出来ない。何としても聖杯を獲得して、埋め合わせをしなければならなかった。
少年は思い出す。三ヶ月前のエジプトでの出会いを。
あの運命の出会いを思う都度、少年は決意するのだ。

かならずあの方の為に役に立ってみせる────と。


少年の決意に呼応するかの様に、少年の額で不気味な肉片が蠢いていた。


412 : 光無き少年少女 ◆/sv130J1Ck :2019/07/13(土) 14:01:45 .8aau5H20
少年は孤独だった。生まれた時から共にある『像』の為に、両親とすら心を通わす事は出来なかった。
少年の生涯は孤独で出来ていた。


少女は満たされていた。数多くの仲間に恵まれ、ある少年と心を通わせ合い結ばれた。
少女はその生涯で充分過ぎるものを得ることができた。


そして、今────。


少年は幸せだった。三ヶ月前の運命の出逢いにより、初めて自分を理解してくれる人物を得た。
少年は光を得たのだった。


少女は渇望している。血を肉を死を。
生前に得た光を全て失い。獣と堕ちた少女は、ただ本能に従い殺す獣と成り果てた。


光を得た少年と、光を失った少女は、共に聖杯戦争を駆け抜ける。


413 : 光無き少年少女 ◆/sv130J1Ck :2019/07/13(土) 14:02:24 .8aau5H20
【CLASS】
バーサーカー

【真名】
緋鞠@おまもりひまり(原作漫画版)

【属性】
混沌・狂

【ステータス】筋力:A+ 耐久:A 敏捷:A++ 魔力:A 幸運:E- 宝具:B+


【クラス別スキル】

狂化:B
全パラメータを1ランク向上させるが理性の大半を奪われる。



【保有スキル】

妖猫:A+
天性の魔・魔力放出・吸血・加虐体質を併せ持つ複合スキル。
金毛白面九尾から取り込んだ、負の情念と妖力の影響で、本来ならば有り得ない程の高ランクとなっている。
このランクでは、理性を喪失して無差別に襲い、殺し、喰らう存在となる。
獣と堕した為に''獣殺し''に対しては非常に脆弱。
また、獣である為に、身体能力や感覚や生命力は人の英霊より遥かに優れている。


変転の魔:A
英雄や神が生前に魔として変じたことを示す。過去に於ける事実を強調することでサーヴァントとしての能力を著しく強化させるスキル。
このスキルによりバーサーカーの筋力と耐久は跳ね上がっている。
バーサーカーが金毛白面九尾から妖力と共に取り込んだ無数の妖の負の情念と、バーサーカーが生来持っている獣性が混じり合った結果、バーサーカーは獣と堕ちた。
この為ランク相応の精神汚染スキルの効果も併せて発揮する。
完全に魔と堕している為に、対魔の性質を持つ存在には脆弱で有り、神社仏閣等の浄地では全ステータスが2ランク低下し、常時頭痛に苛まれる。
また、無数の怨念の集合体でもある為に、本来は最高位の幻獣クラスだった霊格が、並みの魔獣程度に落ちている。


怪力:A +
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。
完全なる魔と化したバーサーカーは、これを高ランクで所持する。


妖喰らい:A+
野井原の緋剣として数多くの妖を屠った逸話を持つ事と、数多の妖を喰らった金毛白面九尾の力を取り込んだ結果このスキルランクとなった。
魔物・魔性といったものとの戦闘時に敵のステータスを1ランク下げ、更に全ステータスに−補正を付ける事が可能。
魔力を持つ者を喰らう事で自身のステータスに補正を掛ける事が出来る。
多くの霊能力者と妖を喰らった金毛白面九尾の力を取り込んだ為に、既に相当量の魂喰いを行なっているのと同じ扱いとなっている。
無分別に魔力を垂れ流し、暴威を振るうが、膨大な魔力は尽きることを知らない。



心眼(偽):A
視覚妨害による補正への耐性。獣の本能による危険予知。
獣と堕した為ランクが向上している。


414 : 光無き少年少女 ◆/sv130J1Ck :2019/07/13(土) 14:04:05 .8aau5H20
【宝具】
宴の時 狩りの夜 紅き血に染まり狂う

ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:10 ~40 最大捕捉:500人

一定範囲内を現世から切り離し、異界とする宝具。
内部にはバーサーカーの妖力が満ちていて一般人は即座に気絶する。外部から内部を観測する事は出来ない。
魔術師やサーヴァントであれば意識は保てるが、体内の魔力の流れや魔術行使の阻害、全ステータスやスキルランクの低下、全感覚の鈍化、宝具の弱体化といった効果を対魔力に応じてつけられる。
Dランク以下であれば全ての効果が。
Cランクであれば体内の魔力の流れや魔術行使の阻害、全ステータス若しくはスキルランクの低下、全感覚の鈍化が。
Bランクであれば体内の魔力の流れや魔術行使の阻害、全感覚の鈍化が。
Aランクでも全感覚の鈍化が発生する。
これらの効果はバーサーカーの認めた者には発生しない。

この異界は外部からの侵入は容易だが、脱出は困難。また、異界化した領域は認識できなくなる訳では無く、普通に認識できる。
バーサーカーは異界内部の事は細部に至るまで把握する事が可能だが、バーサーカーの精神状態ではそんな器用な芸当は期待できない。
異界内部の任意の場所に、妖力を固めて作った自身の姿を象った傀儡を作成可能。
この傀儡は物理的な干渉は出来ない代わりに、脳に直接攻撃を受けた、接触した、といった認識を送り込む事で攻撃してくる。

異界は構造が非常に不安定な為、バーサーカーを倒すと''崩界''を引き起こし、異界内部の全てが現実から消滅する。
異界の維持に必要な魔力量はそれ程でも無い。
魔物や怪物といった存在に対しては特効の効果を持つ。


【Weapon】
爪と牙


415 : 光無き少年少女 ◆/sv130J1Ck :2019/07/13(土) 14:04:44 .8aau5H20
【解説】

おまもりひまりのメインヒロイン。cv小清水亜美

青みを帯びた黒のロングヘアー。赤い大きなリボンでポニーテールにしている。瞳は赤みを帯びた紫色。かなりの巨乳で、スタイルは抜群。
その正体は、猫の妖(あやかし)。戦うときは猫耳を晒す。他の妖たちには「野井原の緋剣」(のいはらのひけん)と呼ばれている。人間としての生活などで必要があれば、野井原姓を名乗る(これは緋鞠自身が名乗っているものであり、先祖代々が「野井原」を名乗ってきたわけではない)。本来は白猫の姿であり、かつて野井原に居た幼少の優人とはこの姿で共に過ごしていた(猫の姿のままでも人と会話が可能)。人間に変化しているときでも妖と戦うときや怒ったときなどには猫耳と尻尾が出る。


このバーサーカーは、緋鞠が金毛白面九尾と戦った際に、金毛白面九尾が数多の妖を喰らう事で蓄えていた妖力と喰われた妖達の負の情念が、緋鞠の内にある獣としての本質と融合して邪妖と堕ちたもの。
本来ならば最後に残った一欠片の意志が邪妖に抗っていたのだが、バーサーカーのクラス特性である『狂化』にその意志は呑み込まれた。
彼女を救った、心を通いあわせた少年の刻んだ光は、この邪妖の内には存在しない。


【聖杯に掛ける願い】
????

【把握媒体】
原作は12巻まで有りますが、この状態の緋鞠に関しては最終巻だけで充分把握できます。


【マスター】
花京院典明@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダーズ

【能力】
法皇の緑(ハイエロファントグリーン)

【破壊力:C / スピード:B / 射程距離:A / 持続力:B / 精密動作性:C / 成長性:D】


ボディを帯状に変化させることが出来る人型の遠距離操作型である。人型といってもスタープラチナのような近距離パワー型とは違い、パワーは劣るものの射程距離は最大100m以上とかなり長い。
空条承太郎曰く「緑色でスジがあって、まるで光ったメロン」とのこと。

他にも、スタンドを糸状にし周囲に張り巡らせることで結界を張り、それをセンサーとして相手が認識していない場所からの不意討ちもできる。結界は網目状に広く法皇を張り巡らせるため、その状態で一部分を切断されても元に戻した時はなんてことはなく、結果的に花京院本体へのダメージはほとんど無い
人間の体内に入れる事でその人物を操る事ができる。


エメラルドスプラッシュ:
体液を固めて超高速で飛ばす必殺技。
この技の為に遠距離型にも関わらず、近距離パワー型にも負けない破壊力を持つ。
DIO様にはデコピンであしらわれたが。
物体に反射させて相手を誘導・翻弄できる。
コブラチームのジョジョゲーではこの技のおかげで花京院は最後までアタッカーとして戦える。


【人物】
DIOに出逢ってゲロ吐く程怯えていたらカリスマッ!されてDIOの舎弟になった日本人のスタンド使い。
現在の性格は卑劣で残忍。自身の為に他者を平気で踏み躙り、悪とは敗者であり正義とは勝者であると定義する。
空条承太郎曰く『はき気のする悪』
スタンド使いであるためか魔力量は人並み以上に有る。

【聖杯に掛ける願い】
無い。聖杯はDIO様に捧げる。


【参戦時期】
空条承太郎の抹殺命令を受けた直後。
脳には肉の芽が埋まっている。


416 : 光無き少年少女 ◆/sv130J1Ck :2019/07/13(土) 14:05:08 .8aau5H20
投下終了です


417 : ◆0080sQ2ZQQ :2021/02/02(火) 20:39:39 Y8f2onLk0
投下します。


418 : キロランケ&アサシン ◆0080sQ2ZQQ :2021/02/02(火) 20:40:22 Y8f2onLk0
――良かった……この旅は無駄ではなかった。

 北樺太の氷上にて、キロランケは死にかけていた。

『さっき全部思い出した』

 己にすがりつく青い目の少女の一言で、ふっとキロランケの身体から力が抜ける。
やりきったのだ。少女…アシリパを連れて旅してきたのは無駄ではなかった。
キロランケの脳裏を旅の思い出が駆け巡り、それはやがて過去へ。日本の妻子や、同胞であるウイルクとソフィアへとスライドする。

 息を引き取ったキロランケの身体に、アムール川の流氷が積まれる。
ここで一つの怪事が起こった。氷を積まれたキロランケの身体が、音もなく姿を消したのだ。
使っていたマキリをキロランケの墓標とするべく氷を取り除けたソフィアは、唖然とした様子でしばし凍り付いた。
彼女がいくら考えようと、何が起こったかは分からない。


 目を覚ましたキロランケは洋装に身を包み、独り夜のバルコニーで紙巻き煙草を吸っていた。
軽くて落ち着かない、と不満げに顔を顰めつつ自らの身体を確かめる。絶命したはずだが、怪我どころか痛みすらない。
眠りから覚めた、としか思えないが、この場に招かれるまでの戦いが夢であったと思うほど彼は愚かではなかった。

(ありがたいね)

 キロランケは聖杯戦争なる奇怪な催しに巻き込まれた。
過去の英雄と組んで殺し合いを勝ち抜いた者には、万能の願望機が与えられる。
体調は万全。祖国の事はアシリパ達に任せ、そろそろ自分の心配をしようか、と考えを巡らせた時、キロランケに声を掛ける者がいた。
サーヴァントだ。キロランケが共に戦う事になる男だ。青々とした髭で顔を覆った、眼差しの鋭い東洋人。

「お主が俺のますたあか?」
「ここに居るのは俺だけみたいだしな。といっても、この場には好んでやってきたわけじゃないから、証明は出来ん。自分で確かめてくれ」
「…お主との間に繋がりを感じる。此度はお主と共に戦うようだ」

 サーヴァントと顔を合わせたキロランケは、いの一番に脱出の手段について尋ねた。
問われた男は表情を僅かに曇らせ、心当たりはないと返す。すると、現状は殺し合いに乗るしかないようだ。

「此度の戦は本意ではないのか」
「まあな。だがまぁ、素人じゃないんでね。足手まといにはならないようにするさ」
「…どういう意味だ?」

 男は眉根を寄せる。
キロランケは自らの身の上について、かいつまんで話す事にした。
見たところ和人のようだし、身に付けた装束から判断するに、明治政府やロシアと関わりはないだろう。明かして困る秘密でもなさそうだ。
願いにも関わる為、話しておいた方が後々都合がいいはず。
その前にキロランケは自己紹介をしていなかった事に思い至り、男に己の名を伝えた。
男は境井仁、クラスは暗殺者と名乗った。

「……と、俺の身の上については、だいたいこんなところだ」
「…大国が小さな営みを踏みにじり、やがて信仰すら奪っていくか。主の祖国も変わらぬな」
「心当たりがあるようだな」

 夜のバルコニーで、仁は感じ入る様子でキロランケを見た。
君主制の打倒を目指す、少数民族の闘士。仁はキロランケのサーヴァントとして招かれた理由を悟った。

「…主は、聖杯に如何なる望みを託す?」
「俺は、俺の国をぶっ壊す。同志たちと共に」
「家族のもとに帰ろうとは思わぬのか?」

 仁は痛々しそうにキロランケを見つめる。

「そりゃ思うさ、けどな、革命も捨てられない。勝ち残れば両方手に入る」

 この世界は、本来自分が生きた時代から随分と未来らしい。
しかし、キロランケにとっては、帝政ロシアとの闘争は歴史ではなく現実だ。
勝ち残り、もう一度ソフィア達と共に戦うのだ。戦わなければ、自分達は呑み込まれてしまう。

「俺の話はそろそろいいだろ、境井は何を願うんだ?」
「俺は聖杯を求めぬ。お主を家族と同胞のもとに帰すことが、俺の望みだ。聖杯は持っていけ」
「おいおい、そりゃ通らない。戦うのはアンタだ、使う権利はむしろそっちにある」
「いや、俺は日本がいまだに日本として存続している、それだけで満足だ。お主を死なせたくないのだ…」

 この男もまた、大国による侵略という憂き目にあい、厳しい戦いを始めている。共に渡って助けとなれれば幸いだが、それが出来ぬならせめて聖杯を託す。

「主よ、これより先、俺の事はアサシンと呼べ。癖をつけろ。それからどのように動く?」
「参加者を捕捉する。同盟を組んでもいいが、数は少ない方がいい。明日から探索に出てくれ」
「承った」

 キロランケは仁に抱えられる形でバルコニーから飛び降り、万華鏡のようにきらめく夜の街へと身を躍らせた。


419 : キロランケ&アサシン ◆0080sQ2ZQQ :2021/02/02(火) 20:40:49 Y8f2onLk0
【クラス】アサシン

【真名】境井仁

【出典】Ghost of Tsushima

【性別】男

【ステータス】筋力C 耐久B 敏捷B 魔力E 幸運D 宝具B+

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
気配遮断:B
 サーヴァントとしての気配を絶つ。
 完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。


【保有スキル】
千里眼:C
 視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。
 仁は遠方から攻略する野営や砦を探り、練った策により陥落させてきた。

単独行動:B
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

破壊工作:D
 戦闘を行う前、準備段階で相手の戦力をそぎ落とす才能。
 毒を盛る、罠を仕掛ける、闇に紛れて忍び込むなどゲリラ戦に長ける。
 ただし、このスキルが高ければ高いほど、英雄としての霊格は低下していく。

心眼(真):C
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
 逆転の可能性が数%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

対毒:C+
 毒物に対する耐性。ランク分、毒効果を軽減する。
 毒を受けてなお、行動を可能とし、また生存した逸話に由来。
 生前はトリカブトの毒を武器として用いており、英霊となってからは植物に由来する毒性に強い抵抗力を発揮する。


【宝具】
『闇より来る冥人(ゴースト・オブ・ツシマ)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
 蒙古が対馬を侵略した時、希望と嫌悪と共に人々が噂した伝説と、暗殺者としての戦いぶりが宝具に昇華されたもの。
 展開中はストーキング、気配感知、啓示などの知覚系スキルや探知宝具・ならびに同等の礼装の威力を宝具ランク分、削減する。
 相手の五感による判定を封じる事こそできないが、気配遮断スキルと併用すれば、極めて高い隠密性を発揮する。

 加えて、相手が侵略者、征服者としての属性を持つ英霊だった場合は追加効果が発生。
 保有する吹き針に毒を付加する事が可能になり、これは魔術抵抗によって威力を減衰させることはできない。
 さらに対象となる英霊に対して与える格闘ダメージに、有利な補正が与えられる。


『冥人奇譚(レジェンド・オブ・ツシマ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
 蹂躙されし民には希望を、征服者に恐怖をもたらした冥人の伝説。
 仁はアサシンでありながら、存在を把握されることで力を増す。存在を把握されるほど行動による魔力消費が減少。
 仮に聖杯戦争に参加している主従すべてが仁の存在を知った場合、魔力消費がおよそ半分にまで減る。自分の意思で発動できない代わりに、発動・維持にかかる魔力負担が存在しない。



【weapon】
境井家の太刀、境井家の短刀。吹き針、くない。

仁は飛び道具を使いこなすが、クラス補正、知名度補正により吹き針とくないしか持ってこられなかった。
アーチャークラスでの召喚の場合、吹き針に加えて弓矢を所持している。
加えて開催場所が対馬に近い場所であった場合、てつはうや煙玉、爆竹といった武器を所有していた。



【人物背景】
十三世紀後半、モンゴル帝国が送り込んだコトゥン・ハーン率いる軍団が対馬に上陸。
現地の武士団がこれを防ぐべく、志村家当主指揮の下、モンゴル軍と激突するも敗退。武士団は全滅したが、志村家当主の甥、境井仁は辛くも生き延びる。
目を覚ました仁は囚われた叔父を助け出すべく、ハーンに挑むも敗北した彼は、やがて武士の道から外れた「冥人」として対馬を覆うモンゴル軍と戦っていく。


【聖杯にかける願い】
戦いの中で喪われた人々を惜しむ気持ち、キロランケの故郷を思う心が、自分を彼に宛がったのだろうと思っている。
召喚当初の時点で聖杯を狙う気はなく、キロランケを生還させるために動くつもりだ。


420 : キロランケ&アサシン ◆0080sQ2ZQQ :2021/02/02(火) 20:41:16 Y8f2onLk0
【マスター名】キロランケ

【出典】ゴールデンカムイ

【性別】男

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
爆弾の扱いに長けており、若い頃に皇帝アレクサンドル2世を爆殺した筋金入りのテロリスト。
ロシア語やアイヌ語、日本語など様々な言語が堪能。さらに子供のころから馬に親しんでいたことから、優れた騎乗技術を持つ。


【人物背景】
10代半ばで皇帝暗殺を実行した、パルチザンの一員であるタタール人の男。
皇帝殺害後、リーダー格であるソフィアらと共に逃亡生活を続けた彼は、やがて日本に渡る。
現地で所帯を持ったキロランケだったが、旧友ウイルクの娘であるアシリパの周囲に湧いた金塊争奪に加わると、アシリパを網走にて杉元一行から引き離し、脱獄囚の白石らを伴ってロシアを目指す。


【聖杯にかける願い】
帝政ロシアの打倒、および日本に残してきた家族の幸福。


421 : ◆0080sQ2ZQQ :2021/02/02(火) 20:41:46 Y8f2onLk0
投下終了です。


422 : ◆0080sQ2ZQQ :2021/06/10(木) 18:59:28 cnGLustc0
新しいコンペ?はじまってますね。投下します。


423 : セツ&アーチャー ◆0080sQ2ZQQ :2021/06/10(木) 19:00:16 cnGLustc0
セツはバイト先のコーヒーショップで働いている最中、不意に記憶を取り戻した。
置かれた状況に困惑する彼女だったが、すぐに冷静さを取り戻し、退勤を待って帰宅するや、家の中や所持品を探る。

(見覚えのある名前はない、これまで会った人間の中に、乗員は紛れていない…)

星間航行が当たり前の時代より、はるか昔の地球。
初めて見る景色にセツの心は躍った。彼女はこの街に来る前、永いループに囚われていた。

グノーシア。
異星体グノースに触れられ、汚染された人間は乗員に擬態し、空間転移時に狙った相手を消滅させる。
船内でグノーシア反応が検出された時点で、宇宙船を管理する「擬知体」は乗員を保護する義務を失う。
セツは紛れたグノーシアを全て凍結させるまで、投票によって選んだ乗員をコールドスリープさせ続ける契約により、「擬知体」による実力行使を猶予させた。

人間かグノーシア、どちらかの勝利が確定した時点で時間が戻る。
セツは両陣営において、様々な役割で、投票する乗員を選ぶ論戦を繰り返した。
消滅させられたこともあった、消滅させたこともあった。



しかし、平和が訪れたわけではないらしい。
聖杯戦争なる催しを生き延びなければ、セツに未来はない。

(鍵は取り出せるけど…取り出せるだけ)

頼りとなるのは「鍵」ではなく、サーヴァントなる過去の英霊。
何者が来るのだろうか、意思疎通のとれる相手であればいいが、と不安を押し殺しながら待ち受けていると、部屋の中に声が降りてきた。

「この状態の俺を呼び出すとはな…」

現われたのは、奇妙な出で立ちの男だった。
長く伸ばした髪は真紅。しかも玉のような模様が入っている。髪色がヒョウ柄なのだ。
加えて上半身を網のようなシャツに包み、パープルのズボンを履いている。

「女、お前、生と死を繰り返しているな?一つの状態に、囚われているだろう」

格好に驚いていたセツは、男の問いに言葉を失った。
セツは自身が「汎性」である事も含めて、男に聖杯戦争に巻き込まれた経緯を説明する。
不幸中の幸いで、セツ以外にも「汎性」の住人は会場内にいる。バイト先にも数名在籍しており、「汎性」用のお手洗いも利用した経験がある。
その線から身元を辿られることは、すぐにはないだろう。

静かに耳を傾けていた男はアーチャーと名乗ると、セツに願いを尋ねた。

「私の願いは、私の世界が何故繰り返していたのか知る事、そしてあのループから抜け出す事」
「その為にはほかのマスターを蹴落とさねばならんが、その覚悟はあるか?」
「勿論。もう何度も消してきたからね」

自嘲気味に言ったセツは、アーチャーに聖杯に掛ける願いを尋ねた。

「お前と概ね同じだ。俺はもともとギャングでな」
「ギャング!?」
「組織内の勢力争いに敗れた時、無限に死に続ける状態に陥った。聖杯が真に願望機ならば、その力でこの地獄から解放されたいのだ」

ギャング、という経歴にセツは驚いたが、彼を招き寄せた理由を理解できた。
初対面の自分に、あえてギャングと名乗るメリットはあるまい。ならば事実なのだろう。
恐怖も感じたが、話しづらい部分を明かしてくれた。セツはアーチャーの過去には深く触れず、聖杯戦争の方針について話し合う事にした。
魔術師でないセツでは、魔力供給の面において不利。魂喰らいも選択肢の一つにあったが、聖杯戦争の主催が気にかかった。

「私に刻まれた記憶によると、聖杯戦争は一般には秘匿されるらしい。だから今のうちからNPCを襲うと、不味い状況に追い込まれるかもしれない。だから魂喰らいはギリギリまで待って欲しい。それまでは、魔力は私が負担するから」
「いいだろう。何組の主従が参加するのかは知らんが、俺に複数の英霊による包囲を破る能力はないからな…俺もしばらくは目立つ行動は控えよう」

最後の一言は聞かなかった事にし、セツはアーチャーの宝具について尋ねる。

「スタンドのDISC…?」
「それぞれ異なった能力を持つ、パワーある像。DISCを入れる事で、対応するスタンドを操れる」
「それは私にも使える?」
「無理だ。宝具に昇華されているからな」

そう、とセツは残念がった。
わかっていたことだが、戦闘はアーチャーに任せきりになるのが歯がゆい。
アーチャーはセツの様子を気にする素振りを見せず、予定がないならもう休むように言葉をかけると、霊体化して姿を消した。


424 : セツ&アーチャー ◆0080sQ2ZQQ :2021/06/10(木) 19:01:24 cnGLustc0
【クラス】アーチャー

【真名】ディアボロ

【出典】ジョジョの奇妙な冒険 Part5およびフリーゲーム「ディアボロの大冒険」

【性別】男

【ステータス】筋力E〜A 耐久E〜A 敏捷C 魔力A 幸運D 宝具EX

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

単独行動:B
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。


【保有スキル】
生と死の繰り返し:A
 死んでは蘇る、ループに囚われた有様。
 マスターとの類似性によってスキルランクが変動する。Eランクならば1回、Aランクならば5回まで死亡しても復活する。
 その際、マスターに魔力負担はないが、この死亡回数を聖杯戦争中に増加させることはできない。
 復活する際はその場で蘇るのではなく、陣地、もしくは召喚場所に再出現する。

返り咲く帝王:A
 現界中、戦闘や探索を行う事で筋力と耐久の値が少しづつ向上する。
 最終的にAランクまで向上するが、死亡した時点で上昇幅はリセットされて、最低値まで戻る。

仕切り直し:D+
 戦闘から離脱する能力。判定に成功すると、追撃を掛けられること無く戦場から撤退する事ができる。
 手元に有用な道具がある場合、スキルランクに補正が入る。

物品所持:C
 手にした物品を、自らの霊基に半同化させて持ち歩く能力。
 Cランクの場合、6つの品を隠匿、携帯する事が可能。


【宝具】
『来たれ運命の守護者(スタンド・オン・ハンド)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
 迷宮において、ディアボロは多彩なスタンドを扱うことが出来た。
 生命エネルギーの力ある像、スタンドを封じたDISCを魔力を費やして作成できる。
 「迷宮」で入手できたスタンドは全て作成可能だが、ディアボロの側で作成するスタンドを指定する事はできない。
 宝具に昇華された事により、マスターが扱う事は出来ないが、他の英霊に譲渡する事は可能。

 聖杯戦争中に作成できるDISCの枚数に限りは無いが、ディアボロが装備できるのは最大4枚まで。
 一度に展開できるのは1種類のスタンドのみ。


『いずれ出ていく仮宿(ヴェネチア・ホテル)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:拠点により変動 最大捕捉:室内にいる全員
 迷宮に挑む際、ディアボロが拠点となるホテルから探索に出発していたという逸話の具現。
 区切られた空間を一か所だけ、己の陣地とすることが出来る。
 サーヴァントの気配と魔力の反応を外部から隠す効果があり、Bランク以上の気配感知、千里眼、啓示など知覚系スキルを持たない限り、陣地内にいるディアボロとマスターを発見する事はできない。


『生存への一投(サバイバー・スロー)』
ランク:E+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜20 最大捕捉:1人
 投擲スキルが宝具に昇華されたもの。
 ディアボロは手にした物体にEランク宝具相当の神秘を付与、弾丸のような速度で投げ放てる。宝具としての格は最低だが、使い勝手は抜群。
 装備スタンドによって効果を増強できる。


【weapon】
宝具によって作成するスタンド、および宝具効果を帯びた投擲物。


【人物背景】
ギャング組織「パッショーネ」のボスであった、本名不詳の二重人格者。
正体につながる情報を全て抹消してきた彼は、組織を乗っ取ろうとした少年に敗れ、「無限に死に続ける」状態に陥れられる。
その繰り返しの果てに、スタンドのDISCを拾うことが出来る「迷宮」に辿り着いたディアボロのif。


【聖杯にかける願い】
レクイエムの呪いを解き、絶頂に返り咲く。


425 : セツ&アーチャー ◆0080sQ2ZQQ :2021/06/10(木) 19:01:50 cnGLustc0

【マスター名】セツ

【出典】グノーシア

【性別】汎性(手術で後天的に性別を無くしている)

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
「論戦力」
未知の怪物、グノーシアが宇宙船に忍び込んだ際、乗員は議論によってコールドスリープさせる者を選ぶ。
その代わり、宇宙船内での生存を許される契約を船を管理する「擬知体」と結んだ。
全てのグノーシアをコールドスリープさせるまで続く論戦を、様々な役割で繰り返してきたセツは対話の際に有利な補正を得る。

「銀の鍵」
宿主に寄生し、情報を集める生命体。
状況設定機能により、ループ開始時の役割を選択できるが、現在は殆どの機能を使用できない。


【人物背景】
連邦軍第928管区、対乙種防衛班所属。
階級は中尉。後天的に身体的特徴を排除した汎性。
ルゥアン星系から避難した際、宇宙船のシールド破損によるデブリの直撃を受け、重傷を負ってしまう。
「銀の鍵」による寄生を受けたセツは死を免れた代償に、永いループに囚われる事になった。


【聖杯にかける願い】
世界の繰り返しを止める。


426 : ◆0080sQ2ZQQ :2021/06/10(木) 19:02:44 cnGLustc0
投下終了です。


427 : ◆U1VklSXLBs :2021/08/02(月) 20:37:23 wMV//79U0
投下します。


428 : ジョン・コンスタンティン&ライダー ◆U1VklSXLBs :2021/08/02(月) 20:38:20 wMV//79U0
その日、ジョンの夢見は最悪だった。
古戦場のような場所を彷徨い、波濤の如き馬の蹄から隠れながら安全地帯を探した挙句、不潔そうな鎧の戦士に斬られて目を覚ましたのだ。

(なんだってんだ)

また大事の前触れか?
ミネラルウォーターを嚥下し、顔を洗って気分を入れ替えたジョンの耳に、電話のベル音が飛び込んでくる。何の気無しに出ると、男が上機嫌で話し始めた。

「やぁ、ジョン。経過はどうだい?朝の空気をたっぶりと吸っても、咳が出ないはずたが」
「ここで吸えるのは排気ガスくらいだよ…何をしに来た」

聞き覚えのある声だ。
ジョンの考えが正しければ、相手はサタン。以前、息子のマモンが地上に現れようとした事件で顔を合わせている。

「今日は親愛なるジョンに贈り物があるんだ」
「要らん」
「あいにくクーリングオフは効かないんだ。ひょっとしたらお前を救ってくれるかもしれないんだから、怒るなよジョン」

通話は唐突に切れた。
何だ、と思ってスピーカーから耳を離した瞬間、ジョンは言葉を失った。部屋の内装が変わっている。目についた抽斗を片っ端から開けると、契約した覚えの無い銀行の通帳とクレジットカードが出てきた。

サタンが何かしたのか。
着替えて探索に行こうとした時、力のある大きな存在が部屋の中に出現しつつある事を察知。やがて線の細い、甲冑に身を包んだ金髪の青年がジョンの前に現れた。

「誰だ?」
「僕はライダーのサーヴァント。参加者には記憶が刻まれているらしいけど、不足なら僕から説明しよう」

ジョンの中に、未知の記憶が存在した。
サーヴァント、令呪、聖杯戦争。サタンは自分にこれを送りつけてきたのだ。

「補足の説明はいるかな」
「…いや、必要ない。先の話をしよう」

ジョンは金髪のライダーと、今後の方針を話し合うことにする。彼がどのような望みを抱いているかによって、こちらも対応を考えなくてはならない。

「聖杯を手に入れたら、何を願うつもりなんだ?」
「…家族や友達と、もう一度集まりたいな」
「死者蘇生か」
「そこまでの事じゃない。一時、再会することができればそれでいい。復活させたところで、真ん中の兄や妹は受けいれないだろうから」

生前、ライダーは戦乱の中で過ごした。
その中で家名を棄て、名誉すら失ったが、信じる道を歩いた結果だ。納得している。ただ、家族運に乏しい人生だったな、と振り返って思う。
父が引き取った親友とは道が分かれ、一番上の兄は外道に落ち、真ん中の兄は魔に囚われ、そして妹は異形どもにその身を狙われた。

「マスターはどうするんだ?」
「俺は、やる気のない奴らを聖杯戦争から脱出させたい」
「ー!厳しい道だよ、それは」

ライダーに言われるまでもなく、困難である事は承知している。しかし、ジョンは死後、天国に行きたい。少年の頃、自殺を図った際に地獄の様子を垣間見た。それ以来、人間界で悪事を働く悪魔、あるいは悪魔側のハーフブリードを地獄に送り返してきた。

天国の切符を掴みたいジョンが、欲望渦巻く殺し合いに乗るわけにはいかない。ジョンの事情を把握すると、ライダーは得心したらしい。ジョンに全面的に協力を申し出てくれた。

「こんなやり方は、僕も疑問だった。この力、存分に使ってくれ」
「当てにさせてもらおう、ライダー」

話し合いは穏やかに終わり、ジョンは緊張を解いた。願わくば、これが最後の仕事にならない事を。


429 : ジョン・コンスタンティン&ライダー ◆U1VklSXLBs :2021/08/02(月) 20:39:19 wMV//79U0
【サーヴァント】
【CLASS】
ライダー

【真名】
ラムザ・ベオルブ

【出典】
ファイナルファンタジータクティクス

【性別】


【ステータス】
筋力B 耐久B 敏捷C 魔力B 幸運C 宝具C

【属性】
中立・善

【クラス別能力】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

騎乗:A
幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。

【保有スキル】
カリスマ:D
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。カリスマは稀有な才能で、一軍のリーダーとしては破格の人望である。

軍略:C
一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。自らの対軍宝具の行使や、逆に相手の対軍宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。

白魔法:A -
精霊の力をかりて、回復や補助を行う魔術体系。負傷の治癒、一定間隔の自動回復付与、魔術や物理ダメージの一時的な軽減が可能。キャスタークラスでない為、復活魔法は使用できない。

銃装備可能:B
銃を装備できるようになる。
バズーカ、ロケットランチャーなど重量のある火器を除く銃器を装備できるようになる。


【宝具】
『地を駆ける翼(チョコボ)』
ランク:D〜C 種別:対人、対軍宝具 レンジ:1〜10  最大捕捉:1人
イヴァリースに生息していた、大型の鳥を召喚する。敏捷な動きと体躯、鋭い嘴による体当たりを得意とする。下位種のチョコボを基準に、唯一飛行能力を持つ黒チョコボ、凄まじい跳躍力を持つ最上位の赤チョコボの3種を呼び出す。チョコボが最も負担が軽く、赤チョコボが重い。


『墜落する灼星(チョコメテオ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜25  最大捕捉:1人
最上位種、赤チョコボが使用できる技。
空に大きな隕石を生み出し、敵の頭上から叩きつける。魔術抵抗によってダメージを削減できるが技の出が非常に速く、加えて対象の回避判定値をCランク宝具分、削減する。Cランク宝具以上の回避判定値を持たない場合、確定命中となる。
騎乗している赤チョコボは、この宝具を使用できない。

『歴史に屈さぬ意思を示せ(ガッツ)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1〜12  最大捕捉:1人
ラムザによる鼓舞が宝具となったもの。
舞踏や唱歌が概念を帯びるイヴァリースにおいては、貴人の鼓舞もまた魔術に等しい領域に達している。おまじないを唱える事で自身の生命力と引き換えに対象の傷を癒し、励ました相手の格闘ダメージを向上させ、叫ぶ事で自身の筋力と敏捷に上昇補正を加える。


【weapon】
プラチナソード:
プラチナとミスリルの合金で出来た剣。幅広の刃の切れ味は抜群。

グレイシャルガン:
炎属性を持った弾丸を放つ銃。


【人物背景】
イヴァリースの武門の棟梁、ベオルブ家の末弟。
長兄ダイスダーグ、次兄ザルバックとは腹違い。同腹の実妹アルマの兄。王立士官アカデミーに籍を置いていた頃、反体制組織「骸旅団」殲滅作戦に加わった事で貴族と平民の間にある隔たりを知り、家名を捨てる。
傭兵となった後、王女オヴェリアの狂言誘拐に端を発する獅子戦争の裏で蠢くクレバドス教会、その内部に食い込むこの世ならざる者達「ルカヴィ」と、集った仲間達と共に戦った。

狂戦士を除く6クラス全てに適正を持ち、様々なジョブを渡り歩いたラムザの保有スキル構成はマスターの個性に影響を受ける。今回は「神秘を帯びた銃と白魔法」を持ち込むことになった。


【サーヴァントとしての願い】
もし聖杯を手にする機会があれば、兄弟、友人との再会を願うだろう。

【方針】
マスターに従う。


430 : ジョン・コンスタンティン&ライダー ◆U1VklSXLBs :2021/08/02(月) 20:40:22 wMV//79U0
【マスター】
ジョン・コンスタンティン

【出典】
コンスタンティン

【性別】


【能力・技能】
「悪魔祓い」
幼少の頃からこの世ならざるものが見えていたジョンは、人間界における善悪の均衡を破ろうとする悪魔やハーフブリードを地獄に追い返してきた。人間に混じったハーフブリードを識別する、悪魔の襲撃を察知する、水に浸かる事で地獄の様子を垣間見る、などのスキルを持つ。

「地獄の恩寵」
自殺未遂により、地獄行きが決定している。
サタンに目をつけられており、ジョンが死亡する時はサタン自らが迎えにやってくる。


【weapon】
ガム:
煙草の代わりにジョンが手にした、禁煙のためのガム。2度目に死にかけた時、天国行き妨害のためにルシファーはジョンの肺がんを癒した。

【人物背景】
少年期、2分間だけ死亡した事で、自殺者の烙印を押された霊能力者の男。それまで幻覚だと思っていた悪魔や天使、それらが人間界に送ったハーフブリードといった存在を現実と理解した彼は、均衡を崩す悪魔側の存在を地獄に送り返し、天国行きの切符を手に入れようと試みている。
神、天使といった存在を知っているが、信仰心は全く持っていない。映画終了後から参戦。


【マスターとしての願い】
死後、天国に行く事。

【方針】
天国に行く為の点数稼ぎ。弱者保護、聖杯戦争への抵抗をひとまず目的にする。


431 : ◆U1VklSXLBs :2021/08/02(月) 20:40:52 wMV//79U0
投下終了です。


432 : ◆U1VklSXLBs :2021/09/05(日) 16:23:02 GtYRhWoY0
投下します。


433 : ◆U1VklSXLBs :2021/09/05(日) 16:26:01 GtYRhWoY0
投下します。


434 : 海賊房太郎&キャスター ◆U1VklSXLBs :2021/09/05(日) 16:28:02 GtYRhWoY0
「杉元なら不死身だから、絶対に自力で脱出してくる!死ぬぞ、房太郎!」
「死なねえよ」

煙に包まれる建物の中、房太郎は制止する声に別れを告げ、息を大きく吸った。房太郎は30分の間、潜水を続けられる。その技能を応用すれば、火災現場での救出活動も容易だ。

「房太郎、お前助けに来てくれたのか…」

対象者、杉元とアシリパを見つけると、房太郎はシャベルで杉元を殴打。そばにいた門倉共々退け、アシリパをさらう。彼には夢がある。

たくさんの家族と国を作って、自分の事を語り継いでもらう。蝦夷共和国なんて掲げている連中も組んでいたら、自分の国を作れない。自分が帰ってこられる場所が無くなったから、新しく作るのだ。

皆、嫌いではなかった。
どこか自分に通じる部分を持った杉元、己の本質を突いてきた白石、民族の未来を背負わんとするアシリパ。だが自分の夢は裏切れない。

「金塊なんて忘れて、杉元と故郷で家族になっちまえ」

ふと、房太郎は視線を感じた。
何者かと顔を向けると、全身から血を流して立つボロ布を纏った男が、彼を見ていた。血溜まりの上に立ち、房太郎を見て笑っている。一撃を加えるべく、腰に力を溜めた瞬間、房太郎はオフィスデスクの前で立ち上がった。

ーー!?

唖然として視線を彷徨わせるが、見知った顔が誰もいない。札幌のビール工場と、さらったアシリパの代わりに、人のまばらな仕事場の中、房太郎は記憶を無くしたように立っていた。落ち着きを取り戻すと、自分の身に起きたことがわかった。

聖杯戦争。
万能の願望機を巡っての殺し合いに、参加者として招かれたのだ。房太郎はロールとして割り当てられた役職の経験に従い、書類作成や郵便物の発送など、事務仕事をこなして過ごす。

退社すると、すぐさま自宅に自家用車を走らせた。サーヴァントだ。共に戦う過去の偉人・豪傑の霊が召喚されるはず。されるとすれば、自分の元だ。人目につかない場所にいなければなるまい。

「お疲れ様、マスター殿♪ご飯にするかえ、それとも先にお風呂かの?」

鍵を開け、リビングに入ると声をかけられた。
随分と派手な格好の少女だった。黒と桃色を基調としており、腰回りを数冊の本が包んでいる。両肩と首回り、腰が露わになっているが、チンドン屋でもここまで派手なヤツはいない。

「…随分甲斐甲斐しいんだな、まるで新妻だ」
「あいにく冗談じゃ。期待したかえ?面倒臭いから、自分で用意せい」

房太郎は苦笑すると自室に向かい、ジャケットを壁に掛ける。冷蔵庫を眺め、簡単に夕飯を調理する。サーヴァントに尋ねると、欲しいと返事がきた。


435 : 海賊房太郎&キャスター ◆U1VklSXLBs :2021/09/05(日) 16:28:31 GtYRhWoY0
「クラスは…キャスター、てことは術師か」
「然り、外れとされるクラスよ。初っ端からつまづいたのう、マスター?」
「馬鹿言え。外れかどうかは、戦い方次第だろ」

魔術師は外れクラスらしいが、大事なのは勝ち筋を見極める事。房太郎は食事をとる間、マスターの目でステータスを透視してみた。すると敏捷が意外に高い。単独行動スキルまで持っている。

「儂は魔女だが、同時に冒険家でもある。よって、一般的なキャスタークラスのような戦い方はできん」
「そうか…こいつは厄介だな」

夕飯後に一服している間に尋ねると、キャスターは悪戯っぽく笑った。時間をかけて磐石の態勢を整える、という戦法は得意じゃないそうだ。かといって、正面切って殴り合えるステータスでもない。

正道から外れた性能のキャスターは悩ましいが、この程度のアクシデントで音を上げる房太郎ではない。家臣を失くし、杉元達からも孤立した現状、1人でも仲間が欲しい。魔力供給に秀でたマスターでない為、キャスターとの契約は極力維持するつもりだ。

(金塊争いからは抜けることになるな…しくじるなよ、白石)

俺は願望機で王になるから、白石達は埋蔵金でそれぞれの夢を叶えたらいい。この戦いをボウタロウ王伝説の第1章とするべく、房太郎はキャスターから持っている能力について聞き出す。

「…キャスターっていうより、アーチャーみたいだな、お前」
「そうじゃのう、しかし陣地を構えぬというだけで、持ち味を最も発揮できるのはキャスタークラスじゃがな」
「話は変わるけどよ、聖杯には何を願うつもりなんだ?」
「…知りたいかえ?」
「あぁ」

聖杯にかける願いに触れると、キャスターは急に真面目な表情になった。藪を突いてしまったか、と房太郎は緊張する。

「ならば答えよう。それはの…ノルルン奇術団の復活じゃ」
「奇術…手妻のことか」

彼女曰く、ノルルン奇術団は世界中で公演を行い、北の果てから南の島々まで巡ったそうだ。しかし、残念ながらその名は歴史の闇に消えてしまった。そのため、この時代に復活を遂げ、今度こそ芸能の歴史に不朽の名声を得るのじゃ!と、キャスターは歌うように言い切った。

全くの嘘ではないが、真実を話しているのでもないだろう。能力に加えて、性格も一癖あるらしい。しかし、房太郎は面白いヤツが好きだ。自分の願いと潟ち合う事はあるまいと判断し、彼女の願いにはしばらく触れないことにした。


436 : 海賊房太郎&キャスター ◆U1VklSXLBs :2021/09/05(日) 16:29:23 GtYRhWoY0
【サーヴァント】
【CLASS】

【真名】
マギルゥ(マジギギカ・ミルディン・ド・ディン・ノルルンドゥあるいはマギラニカ・ルゥ・メーヴィン)

【出典】
テイルズオブベルセリア

【性別】


【ステータス】
筋力E 耐久D 敏捷B 魔力A + 幸運C 宝具A

【属性】
混沌・中庸

【クラス別能力】
道具作成:E
魔術的な道具を作成する技能。マギルゥ奇術団として、鳩などの小道具を作成できる。

陣地作成:D
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。 範囲内の味方を癒す回復結界の形成が可能。

【保有スキル】
聖隷術:A
聖隷が自然を操る特殊能力、及びその力によって繰り出す魔術体系。 水と火の属性を得意とし、水圧弾や水の壁、炎の奔流や爆発、魔術のトラップ設置が可能。

単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 本来はアーチャーのクラススキルだが、契約していた聖隷に一時逃げられていた過去から所持している。ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。

博識:B
豊富な知識を溜め込んでおり、魔術儀式や噂、珍しい生物を知っている。判定に成功すればウェイストランド由来の英霊・宝具の正体を看破できる。

スペルアブゾーバー:A
敵の魔術使用時に発動すると、対象の魔術をキャンセルすると同時に敵の貯蔵魔力を吸収する。吸収した魔力が一定値以上蓄積すると、カウンターの魔術を発動できる。


【宝具】
『可愛い帽子(フューシィ・カス)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:-  最大捕捉:1人
マギルゥと契約している聖隷ビエンフー。
シルクハットのような面を被った、小動物の姿をしているノルミン族。自然を操る霊力は落ちるが、他者の力を引き出し強化する能力に秀でる。ビエンフーと契約することにより、マギルゥは聖隷術のスキルを得ている。

『我が元に来たりし四十九の軍勢(フォーティナイン・ノルン)』
ランク:C 種別:対人、対軍宝具 レンジ:1〜25  最大捕捉:49人
マギルゥの会得している秘奥義。
式神にボードの如く騎乗し、空に舞い上がったマギルゥの頭上から、49体のノルミンが降り注いで対象に突撃、着弾地点に小爆発を起こす。世界を統治する組織と敵対していた逸話から、秩序の属性を持つ英霊に対して、与えるダメージが増加する。


【weapon】
「瓜二つの双子神(ドッペルゲンガー)」
マギルゥにそっくりな式神。だけどマギルゥと違って裏がない。使い手の技能習熟を助け、倒した敵の装備品ドロップ率を増加させる。


【人物背景】
対魔士メルキオルの養女で、破門された元弟子。欠番の特等対魔士。生まれた時から聖隷が見えていた彼女は両親に捨てられ、怪しげな見世物一座で、目に見えない"式神"と話せる少女として、ひどい虐待を受けながら働かされていた。異端審問の容疑がかかった一座を連行する馬車が事故にあい、彼女も命を落としたと思われていた。
メルキオルに見出され、次代の筆頭対魔士の影となるべく育てられたが、期待に応えることができず、心が壊れてしまった。

収監されていた監獄島タイタニアにて発生した喰魔ベルベットの脱獄騒ぎに紛れて脱獄、ベルベットの復讐劇に興味を抱き、ロクロウと共に彼女に同行する。旅の中、何度傷ついても進むことをやめないベルベットに影響されていき、やがて聖主、対魔士アルトリウスが掲げる『穢れのない世界』を正面から否定するに至った。

【サーヴァントとしての願い】
ノルルン奇術団の復活じゃ♪ーー房太郎を警戒して、本来の名を伏せている。

【方針】
マスターに任せる。


437 : 海賊房太郎&キャスター ◆U1VklSXLBs :2021/09/05(日) 16:30:16 GtYRhWoY0
【マスター】
海賊房太郎(大沢房太郎)

【出典】
ゴールデンカムイ

【性別】


【能力・技能】
素潜りの達人であり、水深200mを30分の間、潜りつづけていられる。足のサイズは36センチ。

【weapon】
なし。

【人物背景】
網走脱獄囚の一人。55件以上の強盗殺人、ほかにも凶悪な犯罪を繰り返している重犯罪者。
子供の頃から木材を運搬する人夫として働いていたが、やがて人を水中に引きずり込んで金品を奪うようになった為、海賊と呼ばれるようになる。
家族を疱瘡で無くしており、東南アジアの小さな島に自分の国を作って王様になる事が夢。

【聖杯にかける願い】
自分の国を作り、死んだ後も自分の事を語り継いでもらう。

【方針】
優勝狙い。


438 : ◆U1VklSXLBs :2021/09/05(日) 16:30:54 GtYRhWoY0
投下終了です。鯖、鱒、本文改変自由。


439 : ◆Mti19lYchg :2021/10/08(金) 14:43:03 inbAco4w0
失礼します、「二次キャラ聖杯戦争OZ EFFECTIVE EARTH」の企画主です。

今回、当企画にて
第二次二次キャラ聖杯戦争に投下された◆BATn1hMhn2様の【首藤涼&アサシン 】
Maxwell's equationsに投下された◆UwuZt7dr4s様の【オルガマリー&ランサー】
の二作を候補作として採用させていただこうと思っております。
それに際しまして、お手数ですが使用の許可と、作品の微修正(企画に合わせた描写の修正)をお願いしたく思います。ご面倒をお掛けしますが、作者様のお返事をお待ちしております。


440 : ◆Mti19lYchg :2021/10/08(金) 16:42:18 inbAco4w0
失礼します。作品の微修正ですがこちらで既に完了しているので、許可をいただければありがたく存じます。


441 : ◆U1VklSXLBs :2021/10/10(日) 16:47:48 UpFrRoVE0
投下します。


442 : フー・ファイターズ&アーチャー ◆U1VklSXLBs :2021/10/10(日) 16:48:37 UpFrRoVE0
FF(フー・ファイターズ)は記憶を取り戻したとき、シャワールームにいた。温水シャワーを浴びた瞬間、刑務所での記憶が浮かび上がる。戦慄に襲われた彼女は思わず跳び上がり、尻を強かに打ってしまう。

「まずい!」

FFはシャワーのつまみを捻り、冷水に変更。
ヘッドから吐き出される湯の温度が下がり、温められた肌が冷えていく。FFはようやくひと心地ついた。スタンド体が露出していない為、湯を浴びても致命的な影響はない。この恐怖感はトラウマというものだろうな、とFFはぼんやり考えた。

ふと、自身に未知の記憶が刻まれている事にFFは気づく。聖杯戦争。サーヴァントと組になって、最後の1人になるまで争う催し。趣味がいいとは思えないが、絶命したはずの自分を、エートロの身体もろとも再生させるあたり、全く眉唾ではないようだ。

「記憶は戻った?」
「うぉおっ!?」
「落ち着いて、敵じゃないわ」

シャワーの温度をぬるま湯程度まで上げた時、脱衣所から女の声が聞こえてきた。侵入者か、と警戒したFFは指を銃身に変形させるが、直後に別の可能性に思い当たった。自身のサーヴァントが召喚されたのだ。
女はリビングで待っているとFFに告げると、すぐに脱衣所を出ていった。

「勝手に始めてるわよ。今後はもう少し、アルコールを充実させてくれると嬉しいわ」
「…あぁ、覚えとくよ」

風呂から上がったFFに、発泡酒を片手に持ったサーヴァントが声を掛ける。アーチャーと名乗った黒髪の女は、リモコンを操作してテレビの電源を消した。

「触媒なしで私を召喚するなんて何者なのかと思ったけど、まさか人間じゃないなんてね」
「…! わかるのか!?」
「パスが繋がってるから、なんとなくだけど。よかったら、何者か聞かせてくれない?」

FFは隠す必要もないかと考え、自身の経歴をざっとだが明かした。
FFはスタンドのDISCによって生まれた新生物であり、グリーンドルフィン刑務所でホワイトスネイクのDISCの番人をやっていたが破れ、自身を倒した徐倫に降るとホワイトスネイクと敵対した。
それからはエートロの体を乗っ取り、刑務所の女囚として暮らしながら、刺客のスタンド使いを徐倫達と一緒に倒していった。やがてホワイトスネイクの正体、プッチ神父に辿り着いたが、FFはそれ以上進めなかった。

「そのプッチって、神父を倒すのが願いなの?」
「それは徐倫が自分でやるだろ。あたしはなんていうか、燃え尽きたのかな。徐倫のところに戻りたいって思いはあるけど、やれることをやりきった感覚があるんだ」

戦いからは脱落したが、後悔はない。承太郎のDISCを拾い、魂を得て友達にさよならを言うことができた。

「未練がないのね」
「そうなるのかな。あたしが語ったんだから、アーチャーの願いも聞かせろよ」
「私も特にないのよ。古今東西の有名人が集まるって聞いたから顔を出しにきただけ」
「聖杯じゃなくて、聖杯戦争の方が目的ってことか」

お互い、悔いのない生涯を送ったようだ。
しかし、願いがないからといって、傍観者でいることはできない。聖杯を他人を平気で利用するようなゲスな奴に使わせるわけにはいかない。

「あたしは、聖杯はふさわしい願いの為に使われるべきだと思う。金とか権力とか言うのじゃなくてさ。あたしがそれを見届けるために、力を貸してくれない?」
「かける願いがないって言っちゃったしね。良いわ、使い道を思いつくまで付き合ってあげる」

落とし所は見つけられたらしい。
FFとて、願望機に興味が全くない訳ではなかった。しかし、誰を蹴落としてでも手にする、という強い意志が湧いてこないのだ。
勝ち残らなくても徐倫のもとに帰れるならそれで良し。帰れないなら、聖杯が彼女の害にならぬよう見張らなければならない。


443 : フー・ファイターズ&アーチャー ◆U1VklSXLBs :2021/10/10(日) 16:49:43 UpFrRoVE0
【サーヴァント】
【CLASS】
アーチャー

【真名】
ベヨネッタ(セレッサ)

【出典】
BAYONETTA シリーズ

【性別】


【ステータス】
筋力B  耐久C 敏捷A ++ 魔力A 幸運C 宝具EX

【属性】
中立・善

【クラス別能力】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

単独行動:A
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 ランクAならば、マスターを失っても一週間現界可能。

【保有スキル】
魔導術:A
魔界の住人と取引し、その力を引き出す術。
極限まで高めた精神力で瞬間を見切り、敏捷値を引き上げるウィッチタイム、月光を浴びる事で重力を凌駕するウィッチウォーク、髪の毛に悪魔を宿すウィケッドウィーブ、鳥や獣に姿を変えるウィズインなどの技を使用できる。

トーチャーアタック:A
魔女狩りの際に多くの魔女の命を奪った、アイアンメイデンやギロチンなどの拷問器具で相手を攻撃する。低ランクの加虐体質を内包しており、使用中は攻撃性にプラス補正がかかる分、防御力が落ちる。

直感:C
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。

無窮の武練:A
ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。心技体の完全に近い合一により、いかなる地形・戦術状況下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。


【宝具】
『天を落す無慈悲な女王(バレットアーツ・アンブラン)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:−  最大捕捉:1人(自身)
ベヨネッタが習得している戦闘術に必要な武器が宝具に昇華されたもの。アンブラの魔女は剣術や体術に秀で、四肢に銃火器を装備して打撃と同時に射撃を行うバレットアーツという格闘術を修めている。

魔界の名工ロダンが魔界の悪魔を素材に作成した、天使も泣き出す武器の数々を一部持ち込んでおり、構成はクラスによって変化。アーチャークラスの場合は飛び道具に偏り、今回の聖杯戦争においては「ラブイズブルー」、「カフカ」「オニキスローゼス」、「キルゴア中佐」を装備できる。

宝具展開中、神、悪魔、天使、聖人いずれかの属性を持つ英霊を攻撃する際、対象の防御耐性の種別問わず貫通判定を仕掛ける。成功した場合は全ての耐性を無視してダメージを与え、失敗した場合でもワンランク下降させた状態でダメージ判定を行うことが出来る。


『魔よ来たりて敵を滅ぼせ(ウィケッドウィーブ・クライマックス)』
ランク:A 種別:対城宝具 レンジ:1〜50  最大捕捉:40人
魔導術の奥義である大魔獣召喚。
獰猛な悪魔を現世に呼び寄せ、圧倒的な魔力と破壊力によって標的の息の根を止める。召喚の際にはベヨネッタの毛髪を触媒とし、そこへ憑依させる形を取る。

キャスタークラスでない為に制限がかかっており、召喚できるのは蝶の羽を持つ魔界の淑女"マダム・バタフライ"、魔界の森に棲む竜のような怪物"ゴモラ"、空を覆いつくさんばかりの巨体を持つ漆黒の怪鳥"マルファス"、強靭な六本の腕を持つ巨人"ヘカトンケイル"の4種類のみ。

いずれも主な攻撃手段は顎や嘴、拳などを用いる単純な打撃だが、質量やサイズ差により、人間大の標的なら攻撃を受け切る耐久力や特別な防御値を持たない限りは容易に破砕してしまう。


『神を斥ける永遠の黒(ウィケッドウィーブ・クイーンシバ)』
ランク:EX 種別:対神、対城宝具 レンジ:1〜99  最大捕捉:30人
宇宙が光、闇、混沌の3つに分かれた際、闇を司る魔界と共に生まれた超存在"クイーンシバ"を召喚する。
魔界の理を司るとされ、無限の闇が広がる魔界そのものとも言われる女王はベヨネッタをもってしてもその力の一端を引き出す事しかできない。

召喚が行われると巨大な女性が姿を現し、拳を放つ。神の属性を持つ英霊を攻撃する際、対象の防御耐性の種別問わず、全ての耐性を無視してダメージを与え、そのダメージ値は相手の神性の高さに応じて増加。
神性、女神の神核等といった神の性質を示すスキルをEXランクで所持していた場合、宝具が命中した時点で聖杯戦争から強制的に退場させられてしまう。


444 : フー・ファイターズ&アーチャー ◆U1VklSXLBs :2021/10/10(日) 16:50:23 UpFrRoVE0
【weapon】
「ラブイズブルー」
来るべき日のため名工ロダンが制作していた秘蔵の拳銃。ノクターン、トッカータ、メヌエット、プレリュードの4丁からなる。悪魔を宿す攻撃「ウィケッドウィーブ」のみならず、究極奥義「アンブラン・クライマックス」を放つことすら可能にする。

「カフカ」
かつて1人の男を呪い、自らも醜い蟲の姿へ変えられてしまった者を使って作られた魔導器。彼は弓の一部に組み込まれてた今でも生きており、呪いと共に強力な毒を流して矢を穢し続けている。

「オニキスローゼス」
魔界に咲くという黒薔薇に集まる妖精の魂を宿したショットガン。擊ち出す散弾の一発一発に、その妖精の呪いが込められる。

「キルゴア中佐」
ベトナム戦争で狂気に走って殺戮の限りを尽くし、地獄へ堕ちて悪魔となった男の魂を宿したグレネードランチャー。強大な魔力を帯びたグレネード弾を発射する。


【人物背景】
アンブラの魔女とルーメンの賢者の間に生まれた忌み子にして、世界を司る力である闇の左目の継承者。魔女狩りの嵐が吹き荒れる中、朋友であるジャンヌによって石棺に封印された彼女は、500年後に自分が魔女であるという自己認識以外の全ての記憶を失った状態で目を覚ます。
シスターを表稼業に、天使を狩り続けていたベヨネッタは記憶の手がかりとなる"世界の目"を追って侵入した古都ヴィグリッドにて立ちはだかる四元徳、ルーメンの賢者にして父親の「バルドル」を討ち、バルドルが呼び寄せた過去の自分"セレッサ"との邂逅を経て、失われていた500年を取り戻した。

しばらく後、ジャンヌの魂が魔界に連れ去られる事件をきっかけに謎めいた少年ロキと出会い、混沌の神エーシルとの戦いと"本来の"父バルドルとの対話を経験する。

【サーヴァントとしての願い】
古今東西の有名人が集うと聞いて足を運んでみた。聖杯をどう使うかは考えていない。

【方針】
マスター次第。



【マスター】
フー・ファイターズ

【出典】
ジョジョの奇妙な冒険 part6 ストーンオーシャン

【性別】
女。肉体は間違いなく。

【能力・技能】
「フー・ファイターズ」
小さなプランクトンの集合体であり、様々な形に変形できる。負傷には強く、水さえあれば増殖・分裂して活動できる。人体に宿れば、素早い動きはできないが、陸地で行動可能。

【weapon】
指を銃に変形させ、細胞弾を発射できる。

【人物背景】
グリーンドルフィン刑務所の敷地内農場倉庫に隠されていたDISCの番人。スタンドのDISCによって知性を与えられた、プランクトンの集合体。承太郎のDISCを探しに来た空条徐倫に敗れたのち、彼女との取引によって命を救われる。
恩義に報いる形でエートロという女囚人の身体に宿り、仲間に加わると刑務所で生活を始めた。徐倫達と行動を共にする事で、"生きるとは思い出を作る事"というある種の悟りの境地に達した彼女はホワイトスネイクの正体のプッチ神父に辿り着く。
徐倫との戦いの最中、神父が死にゆくアナスイに突き刺した承太郎のDISCを取り出して全ての力を使い果たし、徐倫にさよならを告げた。

【マスターとしての願い】
思い出を失いたくない。

【方針】
ゲス野郎に聖杯は渡せない為、ひとまず優勝を目指していく。


445 : ◆U1VklSXLBs :2021/10/10(日) 16:51:08 UpFrRoVE0
投下終了です。鯖、鱒、本文改変自由。


446 : ◆Mti19lYchg :2021/10/10(日) 18:52:11 7X4yU.z60
◆U1VklSXLBs様。失礼します、「二次キャラ聖杯戦争OZ EFFECTIVE EARTH」の企画主です。
この度投下された「フー・ファイターズ&アーチャー」を候補作として採用させていただこうと思っております。
本文はこちらで改変しますので何卒許可を願います。


447 : ◆U1VklSXLBs :2021/10/10(日) 19:05:14 UpFrRoVE0
◆Mti19lYchg様。問題ありません、お使いください。


448 : ◆Mti19lYchg :2021/10/10(日) 19:48:36 7X4yU.z60
◆U1VklSXLBs様へ。許可をいただきありがとうございます。


449 : ◆Mti19lYchg :2021/10/19(火) 13:59:54 M8VV1WVc0
失礼します、「二次キャラ聖杯戦争OZ EFFECTIVE EARTH」の企画主です。

今回、当企画にて

◆0080sQ2ZQQ様作「キロランケ&アサシン」
◆lkOcs49yLc様作「贖罪転生」
◆CKro7V0jEc様作「牙琉霧人&アサシン(カナン)」

の三作品を候補作として採用させていただこうと思っております。
それに際しまして、お手数ですが使用の許可と、当方による作品の微修正(企画に合わせた描写の修正)の許可をお願いしたく思います。
ご面倒をお掛けしますが、作者様のお返事をお待ちしております。


450 : ◆Mti19lYchg :2021/10/19(火) 14:26:02 M8VV1WVc0
連投失礼します、「二次キャラ聖杯戦争OZ EFFECTIVE EARTH」の企画主です。

今回、当企画にて

◆GO82qGZUNE様作「葛葉キョウジ&ライダー(ヴァ―ミリオン・CD・ヘイズ)」
◆lkOcs49yLc様作「贖罪転生」
◆T9Gw6qZZpg様作「コヨミ&ライダー(鴇羽舞衣)」

の三作品を候補作として採用させていただこうと思っております。
それに際しまして、お手数ですが使用の許可と、当方による作品の微修正(企画に合わせた描写の修正)の許可をお願いしたく思います。
ご面倒をお掛けしますが、作者様のお返事をお待ちしております。


451 : ◆U1VklSXLBs :2021/10/19(火) 17:28:45 6SgEplBw0
◆Mti19lYchg様。以前使っていたトリップの「キロランケ&アサシン」は採用していただいて問題ありません、お使いください。


452 : ◆Mti19lYchg :2021/10/19(火) 21:51:30 M8VV1WVc0
◆U1VklSXLB様へ。許可をいただきありがとうございます。


453 : ◆T9Gw6qZZpg :2021/10/20(水) 07:43:38 m1vnPerY0
>>450
◆Mti19lYchg様へ。
拙作の使用および微修正は特に問題ございません。


454 : ◆Mti19lYchg :2021/10/22(金) 20:24:25 08Z3Q2N20
>>453
◆T9Gw6qZZpg様へ。許可をいただきありがとうございます。


455 : ◆U1VklSXLBs :2021/11/03(水) 11:43:12 X194UtEE0
投下します。


456 : 海老沢晃平&キャスター ◆U1VklSXLBs :2021/11/03(水) 11:44:15 X194UtEE0
夕方に差し掛かる頃、高校生のカップルが並んで歩いていた。彼氏の家を目指しており、近道の公園を通る。その前方から1人の男が歩いてきた。顔にはそばかすがあり、鼻は丸っこい。
2人はちらりと見ると、それっきり興味をなくして互いに視線を戻す。

男はカップルの左手、彼氏のそばを通る。もう少しだけ観察していれば、すれ違った男の左手がブレた瞬間を見ることができただろう。視認できたとしても、彼女に出来る事は何もなかったのだが。

少年の腰が斜めに滑り、上半身が地面に落ちる。腕が、足が、撒かれた飴のようにその場に散らばった。少女は突然の悲劇を受け止めきれず、少しの間、ぼんやりと恋人の亡骸を眺める。少しずつ衝撃が迫ってきて、少女はそれに呼びかける。少女の耳に走り去る足音が届いたが、意識には引っ掛からない。

「やれ、キャスター」

そばかすの男、海老沢が何者かに呼びかける。
若い男−−が姿を現し、少女を殺害する。海老沢が距離を取ると突風の如く少女目掛けて猛進、鉄槌の如く右拳が振り下ろす。右拳は心ここにあらずといった表情の額を砕き、柔い肢体が水風船のように爆ぜた。海老沢は既に公園の出入口まで進んでおり、キャスターに霊体化するよう指示を飛ばすと、そのまま現場から逃走した。

途中、電柱に体を寄せる。再び歩き出した時、その顔は先程のそばかす面から変化していた。海老沢の左手はスレドニ・ヴァシュタール様と名付けた寄生生物に置き換わっており、その細胞を己の顔に貼り付けて人相を変えて歩いていたのだ。

「本物の人間じゃないらしいけど、感覚はあまり変わらないね」
「当たり前だ。NPCだろうと実際に生活しているんだからな」

海老沢は自宅まで無事に辿り着くと、固茹での卵を調理して食べ始めた。彼は人を殺した後、固茹での卵を食べたくなるのだ。

「魂喰いをさせるのでもないのに、やたらとNPCを殺すな」
「過去の英雄から見ると、僕のようなマスターは不快かな?」
「まだ替えの当てが見つかっていないからだ。お前が誰を殺そうが興味はない」

キャスターの答えを聞くと、海老沢は微笑んだ。

「キャスターには大事な人はいる?」
「…今はいない」
「そう」

例え家族が破滅しようと、キャスターの心には波一つ立たない。父親が自分の作成した麻薬に溺れたときも、兄が家を出て行ったときも、"なるようにしかならない"と思ったものだ。大事な人がいたとすれば、運命を共にした旧麻薬チームのメンバー達。

英霊としては最底辺だろうと、キャスター…マッシモは自分を判断している。しかしメンバー達との絆は、宝具として形になった。彼らとの日々を取り戻す為にマッシモは招きに応じたのた。

招いたのは破滅的なマスターだ。触媒無しで自分を招く人間なら十中八九清廉な人物ではないだろうから、驚きはない。生前から変わらぬ自暴自棄な性格から、マッシモが彼を諌めた事はない。

善き人間でありなさい、と海老沢は母から教えられてきた。テレビやゲームは禁止、悪い振る舞いは慎むこと。弱者の為にその身を捧ぐ心を持ちなさい。他所の家庭を知らなかった為、海老沢に母を糾弾することはできなかった。

結果だけ見れば、間違いではなかったのだろう。海老沢は大学病院の勤務医にまでなったのだから。だが、自分の人生に対する疑問は尽きなかった。しかし、それもやがて終わった。
父親の安楽死に迷う女性の背中を押した時、母の教えと自分の感情が一つに結びつき、海老沢は答えを得た。

彼女は植物状態となった父に対してなお、弱者であった。彼女のために、彼女のような人々のために我が身を捧ぐ。今日からあなたの幸せが始まりますように。叫ぶことを許されない、搾取され続けている人々を、特別な人々から解放するのだ。

ーー大きな未来を地球の為に!!

彼らは"僕達"を必要としなかったが、"彼ら"も僕達には必要ないのだ。破滅思想と刹那主義、そして自らの怒りや悲しみを殺す笑顔。それが海老沢の母による、教育の成果だった。


457 : 海老沢晃平&キャスター ◆U1VklSXLBs :2021/11/03(水) 11:44:53 X194UtEE0
【サーヴァント】
【CLASS】
キャスター

【真名】
マッシモ・ヴォルペ

【出典】
ジョジョの奇妙な冒険 恥知らずのパープルヘイズ

【性別】


【ステータス】
筋力E 耐久C 敏捷D 魔力B 幸運D 宝具B

【属性】
中立・悪

【クラス別能力】
陣地作成:E
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。 小規模な”結界”の形成が可能。

道具作成:D
魔術的な道具を作成する技能。
スタンド能力を塩や海水に浸透させることで、既存の薬物を超える効果を持つ麻薬を作成できる。薬効をコントロールできるが、他の物品は作成できない。

【保有スキル】
精神異常:C
退廃的で無気力な性格。
麻薬チームの仲間達を除き、誰が犠牲になろうと心が動かない。精神的なスーパーアーマー能力。

スタンド使い:B
生命エネルギーからパワーある像を具現化させる能力者。スタンドを行使する際、魔力消費をランク分軽減させる。

【宝具】
『侵蝕する自滅の産声(マニック・デプレッション)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜5  最大捕捉:1人
宝具に昇華されたマッシモのスタンド能力。生命力の過剰促進を可能としており、塩や海水に能力を浸透させると、服用者の脳内麻薬を過剰に出させる既存の薬物を上回る効果を付与する。このスタンドの棘に刺されると、心臓が破裂したり消火し過ぎで内臓が溶けたり、様々な効果が発生する。

自分自身に使用した場合は強化魔術として機能。筋力と敏捷の値をAランクに修正するが、魔力消費が高ランクのバーサーカー級にまで跳ね上がる。

『彷徨者達の夕焼け(ウィー・ハヴ ・ノー・トゥモロー)』
ランク:B + 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99  最大捕捉:500人
唯一、心を許した麻薬チームの仲間達との想い出とスタンド能力をベースにした宝具。小雨が降る南イタリアの市街地の固有結界を展開する。
身体が雨露に濡れている間、マッシモへのダメージは種別問わず全て3割に軽減される。結界内には小鳥が1羽飛んでおり、この鳥が生存している間、引き込んだ相手に毎ターン精神干渉が行われ、抵抗判定に失敗すると幻覚に陥る。干渉を受けている間は痛覚が消失している為、これの有無によって干渉されているか否か判別可能。


【weapon】
ナポレオン時代の短剣:
宝具によって得た、仲間の形見の武器。マッシモは本来の持ち主ではない。

【人物背景】
パッショーネの元麻薬チーム所属のギャング。
イタリアの没落貴族の生まれで、家の借金が原因でパッショーネに入団すると、入団試験によって麻薬を生み出すスタンドに覚醒。彼の存在によって麻薬ビジネスに参入した組織は一気に力をつけた。ジョルノ・ジョバーナが組織を乗っ取ると存在を危険視され、元同級生のフーゴを含む3名のスタンド使いがマッシモ達を始末する為に差し向けられた。
まとめ役であったコカキの死を察知すると、コカキが言い残した"石仮面"を手に入れるべく動き出すが、フーゴのスタンドが放つ殺人ウイルスによって、仲間のアンジェリカが命を落としてしまう。激昂したマッシモはシーラEを人質に取り、単身フーゴに決戦を挑んだ。

【サーヴァントとしての願い】
アンジェリカ達の復活。

【方針】
優勝狙い。


458 : 海老沢晃平&キャスター ◆U1VklSXLBs :2021/11/03(水) 11:45:52 X194UtEE0
【マスター】
海老沢晃平

【出典】
寄生獣リバーシ

【性別】


【能力・技能】
外科医として勤めることのできる高い教養と知性を持つシリアルキラーである。母親から抑圧され、歪んだ教育を受けていた彼は母の死後、植物状態の父の安楽死に迷う女性の背中を押した事をきっかけに、殺人によって立場の弱い人々を解放してきた。手を差し伸べた人々からは深く感謝されている。

【weapon】
「スレドニ・ヴァシュタール様」
左手に宿った寄生生物。伸縮自在の刀剣や盾として使用する他、細胞の一部を顔に貼り付けて、人相を変えることが出来る。供物として医療用麻薬を与えており、禁断症状を起こすと活動しなくなる。

【人物背景】
東福山市でバラバラ殺人を起こしている元四鷹大学附属病院の外科医、38歳。凶器を除くと衝動的、場当たりに犯行を繰り返しており、寄生生物について知られるころには全国指名手配犯となった。実体験をベースにした破滅思想を持っており、特別でない人々を扇動して、アルマゲドンと称した毒ガステロを計画している。

【マスターとしての願い】
聖杯の力でアルマゲドンを起こす。

【方針】
一応、優勝狙い。


459 : ◆U1VklSXLBs :2021/11/03(水) 11:46:18 X194UtEE0
投下終了です。


460 : ◆lkOcs49yLc :2021/11/17(水) 11:45:54 1Whe9j1o0
◆Mti19lYchg様へ。拙作は使用していただいて構いません。
修正版は後ほど投稿させていただきます。


461 : ◆lkOcs49yLc :2021/11/17(水) 12:05:56 1Whe9j1o0
>>460>>450へのレスです


462 : ◆Uo2eFWp9FQ :2021/11/27(土) 15:47:42 0hRjHgQM0
投下します


463 : Did I pass your test? ◆Uo2eFWp9FQ :2021/11/27(土) 15:49:21 0hRjHgQM0



───それは、変革が訪れようとする歴史の黎明でのこと。

───それは、時に1879年の英国でのこと。


夜闇で構成された暗がりだけがそこにある。
都市の各所を同時多発的に襲った悪意の炎は既に鎮火され、喧騒に満ちたロンドンは元の静けさを取り戻しつつあった。手を取り合った市民と貴族の目は、最早消え去った火の名残になど向いてはいない。
人々の視線は高く、高く、遥か高みにある一点へと注がれていた。
テムズ川を繋ぐ架け橋足らんと作られた、建設途中のタワーブリッジにか。いいや違う。
その上に立つ、たった二人の男に向けて。

共に黒の衣を身に纏う男であった。
共に人々の想いを背負う男であった。
一方は人々の怒りと憎悪を、一方は期待と憧憬を。
犯罪卿と呼ばれた"彼"は市民の正当なる怒りを向けられ、名探偵と呼ばれる"彼"は眼前の悪魔を誅する役目を期待と共に背負わされている。
すなわち、その名をウィリアム・ジェームズ・モリアーティ、並びにシャーロック・ホームズ。
何もかもが対照的な彼らは、あるいはその心さえも罅割れた鏡写しのままに向かい合う。

「お前の計画は見事だよ」

口火を切ったのはシャーロックであり、その静謐な口ぶりと表情とは裏腹に、激情にも似た巨大な感情のうねりを言外に込めた、言い知れぬ圧のようなものを滲ませていた。
それは怒りにも似て、しかし悔恨にも似ていた。それでいて期待や夢が叶ったような晴れやかさのようなものも覗かせて、同時に「させてはならぬ」という不安と焦燥に駆り立てられるようにも見えた。
あらゆる感情がそこにはあって、決して一つの面では表出しない。それを的確な言葉で表現することは、最早シャーロックにさえ不可能なことなのだろう。

「貴族と市民、大火から自分達の街を共に守らせることで階級の垣根を取っ払う……そして今、ロンドン中の憎しみが全て犯罪卿に集約した。
 ……悪魔。人々にとってお前は悪魔だ」

シェイクスピアに曰く、「全世界は一つの舞台であって、全ての男女はその役者に過ぎない」。
その言葉に則れば、なるほど確かに、この光景は舞台演劇に例えて相違ないのだろう。
舞台はロンドン、観客は総ての市民。主演は二人、犯罪卿と名探偵。
全ては蜘蛛糸を手繰る犯罪卿によって企てられ、名探偵は主演たれと仕組まれた。英国を覆う闇を切り裂き光をもたらす、人々の憧憬を担う英雄になれと祈りを込めて。
その果てに、地上の悪魔たる己を殺してくれと願いを託して。

だが、もしも仮に。
今や狡知の悪魔と化したウィリアムの誤算を、敢えて挙げるとするならば。


464 : Did I pass your test? ◆Uo2eFWp9FQ :2021/11/27(土) 15:50:20 0hRjHgQM0


「───だが、まだ間に合う……!
 この世で取り返しのつかねえことなんて、一つもねえんだよ!」


それはきっと、彼の存在こそが全てなのだろう。

"全世界は一つの舞台"、なるほど。確かにその通りだ。
少なくとも、ウィリアム・ジェームズ・モリアーティにとって、生まれてからの人生は全て、命を懸けた芝居で相違なかった。

───もし困っている人がいて僕なんかがお役に立てるのなら、何でもしたいなって思うんです。

嘘偽りのない言葉だった。紛うことなき善心だった。己はそれを偽善と欺瞞で塗り固めた。最初から致命的に間違えたのだという自覚だけを胸に。
持てる才の全てを賭して、彼は演じた。若き天才数学者、清廉な伯爵家次男、報われぬ人々を救う犯罪相談役、悪を殺す悪党。あらゆる仮面を使い分け、彼は全力で世界を騙した。
迷いも後悔もありはしなかった。その資格は失われていた。最初からそんなものなかったのだ。
舞台の上に生きた男は、やがて望む舞台を整えた。
世界の歪みたる貴族、民衆がその境遇に賛同できる犯人、貴族の腐敗を世に暴く探偵。
幕が上がる度に悪徳極めし貴族が斃れ、悲鳴が上がる度に暴かれぬはずの不正義は世に暴かれた。
罪深き我よ、悪を喰らう悪となれ。罪を抱いて堕天せよ。
緋色に染まる両手を見つめ、最早その行いに感慨さえ抱くこともなくなったその時に。

彼を、シャーロック・ホームズを見出した。


「……残念だよ。そうやって君は、僕を"生"にしがみ付けようと誘惑するんだね」


"生きたい"などと、思っていいはずがなかった。
地上の悪魔は全て滅ぼさねばならない。それはこの計画を始めた時から……アルバートの家族を殺した幼き日から決まっていたことだ。
そうであるはずなのに。


465 : Did I pass your test? ◆Uo2eFWp9FQ :2021/11/27(土) 15:51:36 0hRjHgQM0

「君の手は取らない」

君と共にいたかった。

「僕は間違ってなどいない」

君を見出したのは間違いじゃなかった。

「悪魔は貴様だ、シャーロック!」

けれど、僕は悪魔だから。

翳される刃に去来する数多の想い。記憶、尊く輝くもの。
白刃が夜闇に煌めく度、脳裏を駆けるかつての景色。忘れるはずがない。例え幾星霜経ようとも、永遠に。
シャーロック。君との出会いは僕にとって、罪深い計画を一瞬忘れてしまうほどに楽しいものだった。
唯一の理解者を得られた気がしたんだ。
互いの立場がなければずっと語り合っていたかった。全てを投げ出して君とずっと謎解きに興じていたいとさえ思った。
探偵の君にこんな感情を抱くのはおかしなことだけど、初めて会った時からずっと、年来の友人のように感じていたんだ。

だから。
だから、もし違う世界に生まれ変わることができたなら。
こんな薄汚れたところじゃない、誰も苦しまない美しい世界に生まれることができたなら。
今度こそ、本当の友達に───

「生まれ変わったらだぁ? まだ間に合うだろうが!」

幕を下ろそうとする腕を、阻むものが一つ。
犯罪卿と探偵の対決は十分なほど観客に見せつけた。だからもう、僕が生きる必要など何処にもなかったのに。
彼にその刃を突き立てて欲しかったのに。


「……死ぬことがお前の考える贖罪だってのか。笑わせんなよリアム、死を逃げ道にするんじゃねえ!」


466 : Did I pass your test? ◆Uo2eFWp9FQ :2021/11/27(土) 15:52:15 0hRjHgQM0

"全世界は一つの舞台"、なるほど。反吐が出る言葉だ。
少なくとも、シャーロック・ホームズにとって生まれてから今に至るまで、何かを演じたつもりなどただの一度も存在しない。

───まあ俺は奴の謎を暴いてとっ捕まえることが出来んなら、この命を捨てたって全然構わないんだがな。

その言葉に偽りはない。俺は俺の望む形で、ずっとお前をつかまえたかった。
犯罪卿がお前で良かった。お前と出会えてよかった。
俺はお前じゃなきゃ嫌だった。お前であって欲しかったしお前でなきゃ駄目だった。
何せ、お前は俺の友達(ダチ)なんだからな。
ここまで追い求めたのは犯罪卿が初めてだったし、ここまで共にいたいと思えたのはお前が初めてだった。
だから、犯罪卿はお前であって欲しかったんだ。俺が追い求めた誰かは、お前という唯一無二でなければならなかった。
けれど、なあ。

「そんなもん只お前が苦しみから逃れてぇだけだろ!」

お前を失うなど考えたくもないから。

「本当に罪を償いたいなら苦しみから逃げるな!」

他ならぬ俺自身が、お前に死んで欲しくないと願っているから。

「お前にとって一番辛い道を選択しろ!」

それこそが、お前を救うただ一つの道だと信じている。
だって、そうだろ?

「……俺はミルヴァートンをこの手にかけた。お前と同じ罪人だ。だから一緒に償っていこうぜ」

お前にだけ背負わせることはしない。
こっちはとっくにそう決めてるんだ。

「やり方はいくらだってある。そうだろ?」

全ての迷いを振り切った、晴れやかな顔で告げる。
それは今まで刃を向けられた者の表情ではなかった。命を懸けることなど些末事だと言う、純然たる友愛の言葉であった。

だからこそ。
ウィリアムが、死すべき最後の悪魔が返すべき言葉は決まっていた。


467 : Did I pass your test? ◆Uo2eFWp9FQ :2021/11/27(土) 15:53:13 0hRjHgQM0



「───サヨナラだ、シャーロック」



言葉と同時に爆ぜる光。
熱と爆音、砕ける鉄橋。
全てがスローモーションに引き延ばされる視界の中、シャーロックは確かに見た。
ウィリアムは……

───笑っていた。

憑き物が落ちたかのように、年若い子供であるかのように。
それは「安心した」とでも言いたげに、あいつは笑っていたから。

「ッ、馬鹿野郎!」

きっとそれは考えての行動ではなく、だから手を掴めたのは奇跡にも等しかった。
腕一本。それが爆発によって空中に身を投げ出したウィリアムの命を支える、最後の命綱だった。

「何故、そこまで僕を……」

「ハッ、何度も言わせんな。お前は俺の友達(ダチ)だからな、理由としちゃそれで十分だろ……ッ!」

それはきっと、たった一つの真実。
ただそれだけで、命を懸けるに値する答えだった。

「手紙は読んだ。お前は俺のことを単に計画に必要な駒だとは考えていなかった……ッ!
 それと同じように、俺もお前のことを只の解き明かしたい謎だなんて最初から思っちゃいねぇんだよッ!
 俺達は最初からずっと同じ気持ちだったんだ……なら! 同じ未来を見ることだって出来るはずだろ!」

溢れる言葉は止め処なく、堰を切ったように流れ出す。
それは彼に向けた想いと同じくして。
死が救いになるとは口が裂けても言わないが、しかし生きていればそれだけで救いが訪れるほど世界は優しくない。
その壮絶な半生に大きすぎる罪の意識、息をするのもやっとの重圧の中孤独に戦い続けた悪の旅路。これで終わりにしたいのだと、嘯くお前の気持ちを痛感する。
それでも、俺は何度だってこう叫ぶのだ。


468 : Did I pass your test? ◆Uo2eFWp9FQ :2021/11/27(土) 15:53:52 0hRjHgQM0

「……生きろ! 生きろ、ウィリアム!
 生きんのは辛いことばっかりかも知んねえ……だがお前の変えた世界はこれから生きるに値する世界になる。きっとなる!
 俺もこの世界を守っていく! だからお前も……っ!」

「……君は探偵としてではなく、友達としてここまで来てくれたんだね」

溢れるものがあった。
それは涙の代わりに、言葉の代わりに、何よりも雄弁に彼の心を物語る。
笑み。
死を前にしたものではなく、ただ愛する友を目の前にした嬉しさに、口元が綻ぶのを止められない。

「だが運命は僕を許してはくれない。その足場は重さを支えきれない」

「良いから剣を捨てろ! 両手で俺の手を掴め!」

「君だけは、生きて帰ってほしい」

振るわれる一閃。

最後の力。

舞う血飛沫に離れる手。

投げ出された体は一瞬の浮遊感と共に。

呆けた彼の顔。

涼やかな心。

迷いは晴れた。未練はない。

そうして、ウィリアム・ジェームズ・モリアーティは落ちていく。
末期に得た救いと共に。望外の喜びと共に。友と交わした友誼と共に。
それこそが犯罪卿に定められた当然の末路。
悪を喰らう悪とは、すなわち最も許しがたい悪党であるのだから。その最期は無惨な死と決まっている。
ウィリアムは今度こそ、全ての終局にその瞼を閉じて。


469 : Did I pass your test? ◆Uo2eFWp9FQ :2021/11/27(土) 15:54:28 0hRjHgQM0


「───お前ひとり、死なせてたまるかよっ……!」


……ウィリアムの誤算は二つ。
一つは、シャーロックという男を本気で好いてしまったこと。
そしてもう一つは、シャーロックはウィリアムの書いた筋書など"知ったことか"とぶち壊す、型に嵌らない男だったということ。

遠く離れ行くはずの彼が、同じように宙へ踊り出す様を見た。
信じられぬものを見たかのように、ウィリアムの目が見開かれる。

遠く離れ行く彼を、行かせるものかと飛び込む。
大切なものを掴むように、シャーロックの腕が伸ばされた。

「やっと、掴まえたぜ」

墜落が犯罪卿に定められた末路だとしたら。
これはきっと、名探偵にこそ定められた末路なのだろう。
星を掴んだ男は誇りと共に、胸を張って空を墜ちる。
地平線の彼方、黎明の朝焼けが人々の目を欺くその最中。二人は一つの星となって墜ちていく。
その眩さを前に、しかしそうではない確たる理由によって、ウィリアムは目を細めた。



───悪魔が消え去れば人の心は澄み渡り呪いが解ける。この国はきっと美しい───



「リアム、生きよう。生きて俺達は……」

言葉の先を聞くことはなかった。
ウィリアムは胸の内に去来する何某かの感情と共に、静かに目を閉じる。
緋色に染まった手も、迫りくる漆黒の水面も、最早恐れをもたらすには足りなかった。



ただ。
夜明けの光に照らされる街並みと、
自らを抱く友の姿が、あまりにも綺麗だったから───


470 : Did I pass your test? ◆Uo2eFWp9FQ :2021/11/27(土) 15:55:04 0hRjHgQM0





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





この日、犯罪卿ウィリアム・ジェームズ・モリアーティは死んだ。
名探偵シャーロック・ホームズの存在こそ、彼が生きた証となるだろう。



───そして世界は輝きを取り戻す。

───あの子供はもう、泣いていない。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


471 : Did I pass your test? ◆Uo2eFWp9FQ :2021/11/27(土) 15:55:54 0hRjHgQM0




それを正しく形容できる人間は、恐らくこの場には存在すまい。
近未来モデル都市、違う。石塔の街、違う。法則さえ異なる別世界、違う。
西欧はロンドンの東南地域でさえここには遠く及ぶまい。空を衝くがごとし巨大な石塔めいたビルディングの群れ、群れ、群れ。響き渡るガーニーの駆動音。雲のない夜空であるというのに星の見えない漆黒の空。
世界───かの遠きカダスを含まぬ地球圏においては、この時代最も繁栄した都市の一つであるところの巨大経済流通都市。
東京。その名を知る者は、やはりこの場には存在しなかった。

───夜の闇を駆ける男がいた。
───痩身長躯の男だった。

彼の名を知る者は多い。
彼の武勇伝は今や、新聞や伝記的小説によって幅広く伝えられている。

それは仕立ての良いブラックスーツに身を包んだ男だ。
知識の深淵で全てを見通すとさえ言われた男だ。

英国は愚か西欧諸国全土、果ては時を超えた未来にまで偉大な功績の知れ渡った、世界有数の諮問探偵がひとり。
欧州全土の謎を解き明かすという彼。
その名も高き犯罪卿の企みを暴き英国に光をもたらした彼。
碩学ならぬ身で"天才"と呼ばれる彼。
この世における叡智が示す人間の一角を担うに足るところであろう彼は、しかし聡明さの欠片も見せぬ様相でただひたすらに走っていた。まるで逃げるように。
何から逃げているのか。その顔に浮かぶものは恐怖にも似て、英国の闇を払拭せしめた勇壮なる彼が、まさか恐怖などと!

「逃がさん」

背後から聞こえた無慈悲な追跡者の声が届くと同時、半ば本能的に屈めた頭上数センチの距離を、鋭い何かが通り過ぎる。
首筋に文字通り刃のような冷やかさを感じる暇もなく、もんどりうって転がってしまう。視界の端でけたたましい音と共にズレ落ちるものが一つ。街灯である。鉄で出来ているはずの柱が、まるでゼラチン質であるかのように容易く切断されて倒れたのだ。そしてその暴威が、本来ならば己の首に飛来しているはずだった事実を、地面を揺らす振動と共に彼は正確に認識していた。
尻もちをついて見上げる先には、今まさに剣を振り抜いた姿勢で立つ男の姿があった。"彼"が知る時代の戦争においても帯剣の習慣はあったが、しかしこれは明らかに趣を異としたものだった。
その男の装いは古代オリエントの風格を帯びて、手にする剣もまた同じように古代の装飾が為された古式のものであった。銃砲火器が戦場を席巻する現代において場違いな装備。最早競技や式典にしか意味を見出せないカビの生えたそれは、しかし今しがた見せたように現代の武装兵士さえ歯牙にかけない圧倒的な武力をその身に宿しているのだった。
彼は、シャーロック・ホームズは多才である。その明晰な頭脳と豊富な知識のみならず、銃火器の扱いや拳闘の心得、果ては医学に則った人体の破壊に至るまで様々な技術を習得している。喧嘩なぞ数えきれないほどしてきたし、拳銃片手に命の取り合いをした経験も片手の指では足りない程度にはある。
しかし、眼前のこの男にはまるで勝てる気がしなかった。仮にこいつが無防備な姿を晒し、その脳天に銃撃をぶちかまそうが自分では決してこいつを殺せないという確信がある。

それは物理を無視し、質量保存則を無視し、既存概念を超越した個体───サーヴァント。
人道、条理、常識など一切意味を為さぬ魔道の真髄として顕現せし狂気の御業だ。
ならばこそ、シャーロックに抗する手段などありはしない。
物理を弾く神秘と加護された肉体は熱も刃も銃弾さえも通しはしない。この時代における既知科学最強たる核の炎を使ったとて傷つけ得るかどうか。


472 : Did I pass your test? ◆Uo2eFWp9FQ :2021/11/27(土) 15:57:05 0hRjHgQM0

「……大した挨拶だな。何が気に入らなかったか知らねぇが、随分と血気盛んじゃないか?」

「その魔力に刻まれた令呪。貴様がこの地に招かれたマスターであることは瞭然である。丸腰の相手を嬲るのは気持ちの良いことではないが、恨むならば己の不運と軽率をこそ恨むがいい」

だから、何言ってんのか意味わかんねぇんだよ……っ!
魔力、令呪、マスター。この場違い仮装野郎が一体何を言っているのか、まるで見当もつきやしない。
俺はただ、一緒に落ちたはずの"あいつ"を探したいってだけなんだ。
気付いた時には明らかロンドンじゃねえ場所で目が覚めて、現状も分からないうちに襲撃を受けた。一目で勝てないと分かったから逃げの一手で、癪だが無能の警察(ヤード)に問題丸投げしてトンズラ決めようと走ってはみても、馬車も人影も何も見つかりはしない。
そして追いつかれてこのザマだ。仮装男は長剣を構え、こちらに鋭い視線を送ってくる。
言われずとも分かる。殺すつもりなのだ、俺を。
何の逡巡もなく、何の理由もなく。

「……っざけんな」

胸の内に湧きあがるもの。それは怒りか、分からない。
自分が何を考えているのかさえ分からない。ただ、混乱する意識の濁流の中で意志だけが奔る。
それは、直感であったのかもしれない。
または、恐怖で麻痺した脳が産む狂気か。



『あなたはどうしたい?』



「いきなり死ねと言われて、はいそーですかと頷く馬鹿がどこにいるんだよっ!」

手近にあった拳大の投石、それは違わず男の右目に迫るが、それだけだ。
ガン、と人体に衝突したとは思えない硬質の音を響かせて、勢いの失った石が落ちる。男は不動、剣や手で振り払うことすらしない。攻撃どころか目くらましにすら成りはしない。
返答と言わんばかりに閃く一撃は、たまさか奇跡の産物か直感の為せる業なのか、一瞬早く飛び退ったおかげで本来の狙いである胴体を裂くことは叶わなかった。代わりに太ももを斬られてしまったが。
舞い散る血飛沫に奔る激痛、思わず痛みに呻き蹲るも、睨みつけるような視線だけは決して男から外さない。


473 : Did I pass your test? ◆Uo2eFWp9FQ :2021/11/27(土) 15:57:55 0hRjHgQM0



『あなたは何を願う?』



「貴様に願うものなど、何もないではないか」

「……なに?」

「未だ以てサーヴァントを連れぬことがその証だ。願い持つマスターならば当の昔に目覚めている。にも関わらず、命の危険に晒されようと従僕を呼び出せぬその姿、願いすら持たぬ落伍者であると断じて相違はあるまい。
そのまま蹲っているがいい。動かぬならば楽に首を落としてやる。所詮貴様には、立ち上がるべき理由などないのだから」

それは事実、なのかもしれない。
既に自分がやるべきことはなくなった。
時代の変革は訪れ、人民の心は確かに動いた。計画の遂行は残された人間だけで可能ではあるし、ジョンの創作活動は俺がいなくたって続くだろう。
すべき義務も、使命も、既にない。
それは事実、だろうけど。
けど、なぁ。



『あなたが望むものは、なに?』



「ざけんな、つったんだよ俺は……!」

意識が途切れそうなほどの激痛を堪え、立ち上がる。
それで何ができるわけでもない。それでも立つ。諦めない。

「ああそうさ、てめぇの言う通りだ。俺には立ち上がらなきゃならねぇ理由なんざねぇ! だがな───!」

「立ち上がりたい理由なら───譲れない気持ちだけは、俺には抱えきれないほどあるんだよ!」

きっとそれは、シャーロック・ホームズにとっての真実。
時代でもなく、国でもなく、使命でもなければ義務でもない。
ただひとりへの友情のためという、たったそれだけの答え。
他者から見ればどれほど下らないものであっても、光は今もこの胸に在る。熱も炎も消えてはいない。
岐路に迷って間違って、血に濡れようと沈もうと―――


474 : Did I pass your test? ◆Uo2eFWp9FQ :2021/11/27(土) 15:58:39 0hRjHgQM0

「あいつと一緒に生きたいと叫んだ言葉は、嘘なんかじゃねぇんだ……っ!」

シャーロックは叫ぶ。眼前にまで迫る言葉なき刃を視界に収めながら、叫んだ。



『それなら』

『あなたの魂が、本当は諦めていないのなら』



聞こえるものがあった。
それは決して声ではなく、それは決して音ではない。
周囲には誰もいない。自分と剣持つ男以外は。
だからこれは、決して耳に届く音響としての声ではなかったけれど。
確かに聞こえた。
聞こえたから。
俺は、お前を───



『呼んで。私は───』



「来い、フォーリナー!」

それは喉ではなく、魂の奥底から絞り出された絶叫だった。
理由は分からず、理屈も分からず。しかし根拠のない確信だけが胸にある。
これは力だ。呼び声に応え、喚起する力の奔流。
だから、きっと───



「万象破断する魔性の剣。しかしこのあたしの影は砕けない」


475 : Did I pass your test? ◆Uo2eFWp9FQ :2021/11/27(土) 15:59:26 0hRjHgQM0



静かに告げる、揺るぎない意思ひとつ。
静かに頷く、揺らめき始める周囲の影。

湧きあがるものがあった。
夜の闇に覆われたはずのシャーロックの影が、不気味に伸びあがっていく。
言葉に応じるかのように。意志に応じるかのように。それは影だ。暗がりだ。
決して形持たぬもの。
決して質量持たぬもの。
それが壁のようにせり上がって、細首刈り取るはずの剣閃を阻む。
絡め取られたように剣の動きが止まる。驚愕、信じられぬものを見たと言いたげな表情を男はして。

「あなたの声を聞き届けたわ。だからこそ、あたしはここに来た」

───それは、白銀色をした少女だった。

何時の間に現れたのだろう。泡立ち蠢く影の奔流の中にあって、ふわりと降り立つ少女は漆黒の闇の只中に浮かぶ白い光のように映えていた。
白銀色の少女。それは月の光を人の形に押し込めたような姿をして。
白き髪、白き肌。しかし何より目立つのは、その瞳だ。
黄金の瞳。白銀の少女は、夜空に浮かぶ月そのものの瞳を見開いて。

「───退きなさい」

右手に持つ剣を一払いするや、屈強であるはずの男を弾き飛ばした。
いや違う、吹き飛ばしたのではない。シャーロックの目にはそう見えただけで、実際には男の体に何の衝撃も運動エネルギーもぶつけられてはいない。少女の剣は男でなく、空間を切り裂いたのだ。その結果として、斬られた分の距離を延長された空間が、男の体をより遠くへ飛ばしたのだ。

「黒の剣能では剣の英霊に打ち勝てない。方程式の使用には行動を消費する。だからお願い、クロ。一瞬でいい、私に時間をちょうだい」

〈灰葬に踊れ水底の幻精(オールド・ディープワン)〉

宣誓と共に新たな影が迸る。
それは水だ。影と同じく漆黒の、しかし影ではなく黒き水の奔流が男を襲う。
それは決して傷つけず、それは決して命を奪わず、しかして動きを、思考を、精神を硬直させる幻惑の水。
まるで意思を持ったかのように動く水に絡め取られた男は、雄叫びと共に振り払おうと足掻くが、遅い。

「さあ、マスター。打ち勝ちたいなら宝具開帳の許可を」

「……あ? 宝具?」

問われ、未だ意味を理解できないままの男は、しかし。
理解はできずとも察することにより状況を把握する。


476 : Did I pass your test? ◆Uo2eFWp9FQ :2021/11/27(土) 16:00:10 0hRjHgQM0

「ああいいぜ、思いっきりぶちかましてやれ!」

「イエス、マスター。あなたに勝利を」

そして少女は黄金に輝く右目を覆うように、その右手で顔を覆って───
告げるのだ。世界の果ての何かへと。



「───城よりこぼれたかけらのひとつ」

「クルーシュチャの名を以て」

「方程式は導き出す」

「我が姿と我が権能」

「失われたもの」

「食らう牙」

「足掻くすべてを一とするもの」

───少女の周囲が。

───ざわめき、沸き立って、うねる。

見えているのは幻か、それとも夢か。
少女を取り巻き蠢くものが見える。それは、何かを思わせる。
それは今までの影と似て、今までの水と似て。
しかし違うのは、黒い粘液に似た不定形の群れが、少女の周囲に浮かんで"かたち"となること。

───黒い文字。

───古代の碑文を思わせる。

ぐるりと取り巻く黒い文字のような塊は、少女の影から吐き出され、周囲を蠢き回転し、不規則な幾何学模様を描き出す。
古代史はシャーロックの本業ではなかったが、類似する文字列を彼は知っていた。いや、それは厳密には言葉ではない。近いものは数列、それも恐ろしく複雑な。
関数、違う。これは何かの方程式だ。長く複雑すぎて、シャーロックには読めなかった。式が、そもそも何を意味しているのかさえ。
黒い群れを少女は呑みこんでいく。黒の布地と白のフリルが付いた茶会用ドレスの下に、あるいは口で、足元の影で。


477 : Did I pass your test? ◆Uo2eFWp9FQ :2021/11/27(土) 16:01:02 0hRjHgQM0
───ひとのかたちをしたものが、怪物の成り損ないを食べている。

その印象に間違いはない。今まさに、彼女は捕食を行っているのだ。
文字の羅列を少女は呑みこんでいく。それは通常の生物が行う食事とは大きく次元の離れた行為ではあれど、他我を自我に取り込むという同化捕食の行いであった。
未だ多くの群れを残したままで、少女は告げた。

「食べるわ」

───そして、少女の姿が変わる。

金に輝く彼女の右目が、朱く、朱く、輝いて。
闇が充ちた夜のように、影のように、彼女の姿が変わる。
黄金の瞳から溢れる赤い光は、奇妙な紋様を描き出して、揺れる。
そして───次に、右の腕が歪む。
服を、肉を食い破り。肩口を食い破るのは黒い刃。確かな硬度を持つそれらは、互いに擦り合わさって軋む。金属音を掻き鳴らす。
右腕の末端にまでその変化は及んでいた。服を破り、肉と骨を砕いて、幾つもの刃が五指に至るまで生え揃う。震える。軋む。掻き鳴らす。

───そして、最後に。
体に赤い亀裂が走る。右肩から左下腹部までを、斜めに引き裂く赤の亀裂。
少女の右半身が歪んでいた。鋭い肋骨にも乱杭歯にも見える黒色の刃が幾つも宙に突き出され、歪む。歪む。歪む。
右目と右腕に浮かぶのと同じ赤色をした亀裂は、少女の胴体を引き裂きながらも体を砕かず、人型を保って蠢く。
脈動しているのだ。まるで、巨大な生き物の血管であるかのように。
人体が歪んでいく。壊れていく。美しくも儚い白銀色の少女が、深淵の黒く名状しがたい何かによって浸食されていく。

「なんなのだ、何だというのだ貴様は……!」

蠢く水に囚われた男は、セイバーは、恐慌の声を上げる他になかった。
意味が分からない。理屈が通らない。寸前までシャーロックに不条理と恐怖を与えていたはずの彼は、今や己自身が不条理と恐怖に見舞われていた。
このサーヴァントはなんだ、キャスターか? いいや違う、このような見た者の正気を奪うような代物が、まさか尋常なる魔術式であってたまるものか。
あの男はフォーリナーと呼んでいた。降誕者、聞いたこともない。それが事実だとすれば、奴は一体何を、この世に降り立たせてしまったというのか。

「赦しは請わない。けれど、あなたがマスターの命を奪おうとするのなら」

少女の声が。
あらゆる闇を、引き裂いて。

「闇の如く、噛み砕け」

───────────────!

幻惑の水に囚われた剣士が、砕かれる。瞬時に。
砕いたのは奇妙な黒い腕だった。少女の胴体部の亀裂からするりと伸ばされて、巻きつくように剣士の体を取り込み、圧し潰す。
砕く。元の形が何だったのかさえ認識できない、ばらばらの破片に至るまで。刹那の間に。
悲鳴も懇願も上げる暇なく、剣士が、サーヴァントが破壊される。
男の声はかき消される。少女の黒い巨腕は、異様なまでに巨大な"口"を、押し開いて。痙攣する男を、呑みこむ。喰らい尽くす。

後には何も残らない。
ただ、戦いも喧騒も怪物も存在しなかったように振る舞う夜闇の帳が、張りつめたような静寂を保つのみであった。


478 : Did I pass your test? ◆Uo2eFWp9FQ :2021/11/27(土) 16:02:02 0hRjHgQM0





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





「ありがとう、助かったわクロ」

剣士も巨腕も影も消え失せて、後には白銀色の少女が、駆け寄ってくる小さな黒い子犬を抱き上げる光景が映るばかりである。
やたら人懐っこく見えるその子犬に、頬を舐められながら困ったように笑う少女は、今しがた名状しがたい異常な風景を生み出したとは思えないほど、ありふれて牧歌的なものに見えた。

「それで、えっと……大丈夫かしらマスター?」

「ああ、俺も助かったぜ、作家志望のお嬢ちゃん?」

どっ、と疲れが押し寄せる体を地に横たえて、深く息を吐いて脱力しながらシャーロックが答える。
同時に頭に流れ込んでくる数多の情報───聖杯、令呪、サーヴァント、魔力、契約……他にも他にも、聖杯戦争とやらに必要な知識が湯水のように頭に染み渡る。
あー、さっきの奴が言ってたのはつまりそういうことか……などとひとり納得しながら、ふと少女のほうを見やるとそこには驚いたような表情の彼女。
ああ? どういうことだ?

「……ミスター、どうして私が作家だと」

「あ? そんなん明らかじゃん。まずさっきの嬢ちゃんの動きだが、鮮やかではあったが心情的には手馴れてなかった。つまり境遇としては今の俺と同じで、力の使い方だけを与えられた立場だってのは推察できる。この時点で魔道なりを修めた裏側の人間じゃねえってな。
 そんで次に、剣を振るうにはアンタの体は出来上がってない。手もまあ綺麗なもんだ、荒事を生業にした人間じゃねえのは明白。で、指の端々にはペンダコの痕があり、右手の爪にだけインクが僅かに詰まってる。
 その服装を見りゃ俺の同郷ってのは分かるし、文化的にも大して差がないだろうことを鑑みれば、嬢ちゃんほどの歳でそうなるのは学業か文芸かの二択になるわけだが、フォーリナーの適性である感受性により適したのはどちらか、って考えれば当たりはつく」

ま、今しがた流れ込んだ付け焼刃の知識ありきだけどな、と締めくくるシャーロックであった。
こんなもん推理でも何でもねえ、とひらひら手を振り、あーマジ疲れたわぁ……と寝そべる彼であったが。

「め……」

「うん?」

「名推理だわ! 確かにあたしは絵本作家で、本当はこんな気色悪い力なんて持ってなかったの!
いきなりサーヴァントだなんて言われてジェイムズからは無茶振りされて、本当に困ってたのよ……」

「お、おう、そうか……」

ぐわっと顔を近づけて「驚いた、本当に凄いわ!」と言ってくる彼女に、ちょっとだけ引きながら答える。なあ、抱いてる犬っころビビってるけどいいのかアンタ? というかこの反応はジョンの奴を思い出すなぁ、つーかジェイムズ? やっぱ同郷の人間だったんだなとか思っていたところで。


479 : Did I pass your test? ◆Uo2eFWp9FQ :2021/11/27(土) 16:02:49 0hRjHgQM0

「それでマスター、あなたはどうするつもりなの?」

「……と、言うと?」

「あなたならもう分かっているのでしょう?」

そう、此処で行われるは聖杯戦争。たった一つの奇跡を求めて椅子を取り合う殺人ゲーム。
そして彼は、シャーロック・ホームズは聖杯に託して然るべき大きな願いを持っていた。

「……ひとり殺すもふたり殺すも同じこと、ってな」

「えっ?」

「人殺しはいけないことです、なんてそこらのガキでも知ってることだ。けど、一度でも手を汚せば次からは当然みたいな顔して選択肢に入ってきやがる」

シャーロックは罪人だ。
犯罪卿が罪人だと言うなら、シャーロックも同じくしてやはり罪人なのだ。
確かにシャーロックが殺した男、ミルヴァートンは屑であったし、死んだほうがマシどころか率先して殺さなければ人の世に害しかもたらさない肥溜めの糞のような男ではあった。
しかし、死んだほうがいい人間はいても、殺していい人間なんてどこにもいない。
それでもシャーロックは殺した。己の手で、明確な殺意と共に引き金を引いた。
その責を忘れはしないし、ごまかしもしない。ならばこそ、一度殺人という手段を用いた彼には次なる選択肢としてもやはり殺人というワードが紛れ込んでしまう。
"もういいや、面倒くさいしぶっ殺したほうが手っ取り早いからやっちまおうぜ。ひとりもふたりも変わらねえだろ"と。
その罪深さと愚かさを誰より承知であるはずなのに、常に頭の隅に浮かび上がる選択肢。人殺しが罪だというならば、法的な罪刑とは全く別の話として、これが正当な罰ということなのだろう。
だからシャーロックには、聖杯を手にして所在不明のあいつを保護するという道も存在したし、そもそも元の場所に帰るには聖杯を取る以外に道はない。
考えるまでもないリスクの多寡。選ぶべきは明白ではあるのだが。



───その心持ちでいるならば、きっとこの先どんな選択をしようともお前は道を誤らない。



「……あー! やめだやめだ! こんな辛気臭ぇ話してもしょーがねぇだろ!」

「わっ」

がばっ、と飛び起きて叫ぶ。傍らの少女は驚いた表情で、何してんだこいつみたいな顔を向けてくる。
うっせえ、俺はもう決めたぞ。俺は友達としてリアムを諦めないのと同じように、友達として二度とジョンを裏切らない。

「聖杯は求めねえ。俺は人間を誰も殺さずに生きて帰る。最後までその道は諦めない。
 こんな俺にも信じてくれる友達がいるからな。俺自身はともかく、そいつのことは裏切れねえんだわ」

選んだのは最も困難な道。誰も殺さず、死ぬこともなく、この巨大で全容もしれない前代未聞の「大量殺人教唆事件」を解決してみせる。
そんな男の解答を聞いて、少女は柔らかく微笑んだ。

「本当に、それでいいのね」

「あぁ? 俺に二言はねえよ。つーか、嬢ちゃんも明らかに場馴れしてねぇのは明白じゃん?
 さっきのは緊急避難ってことでノーカンにしても、一般人に手を汚せなんて言わねっつーの」

不遜に笑みを浮かべながら、シャーロックは努めて不敵に言い放つ。
そうだ、それでいい。悪を追い詰める正義のヒーローってのは、これくらい傲慢なのがちょうどいいんだ。

「つーわけで、いい加減互いの名前くらい知っておこうぜ」

「ええ、もちろん。これから長い付き合いになるのだから」

そうして二人は笑い合って、告げるのだ。

「俺はシャーロック・ホームズ。諮問探偵なんかをやってる……まあ、ヒーローってことになるらしい」
「あたしはメアリ・クラリッサ・クリスティ。しがない絵本作家だけど、それなりに戦う術は与えられてるわ。どうぞよろしく」

差し伸ばされた手を取り、ゆっくりと起き上がる。
その目には既に迷いも、恐怖も、ありはしなかった。


480 : Did I pass your test? ◆Uo2eFWp9FQ :2021/11/27(土) 16:03:28 0hRjHgQM0




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「我ら役者は影法師!」

「皆様方のお目がもし」

「お気に召さずばただ夢を」

「見たと思ってお許しを」

「───真夏の夜の夢」





【クラス】
フォーリナー

【真名】
メアリ・クラリッサ・クリスティ(黒の王)@漆黒のシャルノス

【ステータス】
筋力E 耐久A 敏捷C 魔力EX 幸運A+ 宝具EX

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
領域外の生命:EX
外なる宇宙、虚空からの降臨者。 邪神に魅入られ、その権能の片鱗を身に宿して揮うもの。

神性:EX
外宇宙に潜む高次生命の巫女となり、強い神性を帯びる。

狂気:-
周囲精神の世界観にまで影響を及ぼす異質な思考。
……のはずだが、彼女の場合何故かこのスキルは封じられている。下記黄金瞳による影響か、あるいは彼女を憑代とした神性の判断であるのかは定かでない。

【保有スキル】
黄金瞳:A+
夜に光る猫の目。真実を見通す瞳。あるいは、虚空に浮かぶ大いなる月の一欠片。
あらゆる隠蔽、虚偽の概念を無効化し、判定次第によっては当人すら知り得ない秘密の類すら見破ってしまう。有体に言ってしまえばアイデアロール確定成功。
また、これ自体が強大な魔力炉として稼働しており、事実上このサーヴァントに魔力切れは起こりえない。

黒の剣能:A
黒色なる茨の剣、人の心が持つ拒絶の形。
タタールの門を開く「銀の鍵」であり、同時に空間さえも断ち切る刃でもある。
人が互いを駆逐し合うための愚かなる自滅の道具。
この剣のような争いの道具を捨てられないがために、人はシャルノスを求める。

無貌の月:EX
人類種を観測するとある神格の残り香。別名をサードアイ、黒王赫眼。
虚数空間の境界面をより確かなものとし、周囲を狭間の世界へと落とす固有結界にも酷似した何か。
世界が異界の影に覆われた時、すべての時間は凍結する。


481 : Did I pass your test? ◆Uo2eFWp9FQ :2021/11/27(土) 16:04:08 0hRjHgQM0

【宝具】
『城より零れた欠片のひとつ(Kruschtya Equation)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000
人類とは相容れない異質な世界に通じる“門”を開き、大いなる歪そのものである黒の王の腕を限定的に顕現させる。
効果対象は人間として在るメアリの認識に即する。故の対人宝具であり、本来の種別は対界宝具とも言うべき果てのない性質を持つ。

『灰葬に踊れ水底の幻精(オールド・ディープワン)
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:10
太古の時代、人が文明の光を手にしたのと同じくして姿を消した、儚き〈ふるきもの〉。文明華やかなりし人類にとって幼き日に夢見た水の幻想。
その名をダゴン。深い深い海の底を揺蕩う暗がりの大いなる水の神性。
普段は黒い小さな子犬の姿でメアリの傍を付いて回る。主な役割は優れた嗅覚による魔力探知。クロという名前で呼ばれる、意外と臆病な性格。
その矮小な姿の通り現在はすっかり零落してしまっているが、真名解放と共に本来の姿を取り戻し大いなる幻惑の水を操る。

『漆黒のシャルノス(What a beautiful tomorrow)』
ランク:- 種別:- レンジ:∞ 最大捕捉:∞
心が望むままにかたちを変える、何もかもがあり、そして何もない世界。
死と断絶の明日を拒絶し永遠の今日をもたらす力そのもの。
誰しもの内に在り、そして誰をも映さぬ漆黒の境界。誰かがひとり諦めるたび、世界がひとつ終焉を迎える。

厳密には宝具ではない。宝具として形容することはできない。
スキル:無貌の月はこの存在に由来するものであるため、定義上宝具欄に記述されるに留まる。

【weapon】
黒の剣能:柄を持つ手を荊で苛む漆黒の剣。ただしフォーリナー自身に剣の才覚はない。

【人物背景】
1890年前後の英国に生を受けた女流作家。《史実の世界》におけるアガサ・クリスティであり、こちらでは女性の絵本作家として知られる。
彼女自身、作家としての知名度はさほどでもなく、何かしらの特殊な出自や由来、生得的な才能や隔絶した精神性等も持たないため、本来ならば英霊として登録されるはずのない人物なのだが、とある異質な神格の憑代として疑似的なサーヴァントとなり現界する。

西暦1904年の12月に黄金瞳を発現したことに端を発し、1905年のゾシーク計画、シャルノス計画にほぼ中核に近い場所で巻き込まれ、世界を剪定事象と確定させてしまうシャルノス降臨を未然に阻止するという、人理の防人としての偉業を成し遂げる。
その後は惑星カダス・水上都市セレニアンにおいて、ただ一柱生き残っていた水のふるきものであるダゴンに手を差し伸べ、黒犬となったダゴンと共に諮問探偵にして幻想殺したるシャーロック・ホームズの下で助手を務める毎日を送る。

前述の通り彼女自身は特殊な出自・来歴を持たない一般人に過ぎないため、サーヴァントとしての戦闘能力は〈黒の王〉と呼ばれる神格の力に依存している。
サーヴァントとしての彼女は黒の王に見初められた時期、すなわち1905年当時の少女の姿で現界しており、精神性もそれに準ずる。




【マスター】
シャーロック・ホームズ@憂国のモリアーティ

【マスターとしての願い】
ウィリアムを犯罪卿としてではなくただひとりの友として今度こそ掴まえる。

【weapon】

【能力・技能】
諮問探偵として破格の推理能力を持ち、人間観察や洞察力にも長ける。拳銃や拳闘の扱いにも優れ、変装・鍵開け・靴跡や指紋等の証拠隠滅改竄、果ては新薬調合などその能力は多岐に渡る。

【人物背景】
その名も高き諮問探偵。民衆にとっての英雄であり、「彼」にとってはただひとりのヒーロー。星を掴んだ男。
名探偵として犯罪卿を追い詰め、一人の人間として友の手を取った。名探偵と犯罪卿、今やその肩書きに意味などない。


482 : ◆Uo2eFWp9FQ :2021/11/27(土) 16:04:31 0hRjHgQM0
投下を終了します


483 : ◆e1iKht2T0g :2021/12/11(土) 21:23:22 olhBBLgM0
投下します


484 : 『悪魔』 ◆e1iKht2T0g :2021/12/11(土) 21:25:09 olhBBLgM0
スクランブル交差点を取り仕切る歩行者信号が青を灯す
青を合図に、白と灰のコントラストの上を人混みが埋め尽くす
その多くがスマホ片手にその画面を見つめ、指先でアイコンに触れページを開く
ましてやその光景を天空より睥睨すれば、まるで人が軍隊アリの行列のようだ
スマホを弄る理由はソーシャルゲーム、動画視聴、SNSへの投稿………理由は人それぞれであるが、その彼ら彼女らが注目しているのはとある一つのニュース記事

『〇〇市連続殺人事件、犯人は☓☓歳の女子学生』
『現代の異能力者!? 凶器無く殺す謎の殺人鬼の正体!』

能く在る殺人事件、能く在る大手新聞社からのゴシップ記事。新聞では一面記事として大っぴらに紹介され、聳え立つ巨大建造物に貼り付けられたモニターに映し出されたニュース番組のアナウンサーが業務的にその事件に関する事柄を読み上げる
横断歩道を渡る群衆の大半は、そんなニュースキャスターの声を流し聞きしながら、何時もの如く行き交っていく

伝えられるニュース、凄惨な事実と知れ渡る犯人の素性
SNS上で『#拡散希望』のハッシュタグと共にアップされる少女の写真
裏サイトにて違法にアップされる少女の個人情報
被害者会の遺族による情報提供、義憤に駆られた若き学生による独自の行動

人は情報に踊り、一喜一憂する生き物だ
判断材料が例え虚偽であっても、それを前提に思考し、行動する他無い
その結末が正しかったのか間違っているのかは結局の所個人の認識次第
だが、連続殺人鬼という明確な『大衆の敵』が齎したのは、大衆にとって何の理由もなく『叩く』事が出来る的を提供したことだ

ヘイトと言う名の弓矢を番える相手が出来たという事実は、暇を持て余した大衆にとっては格好の鬱憤晴らしでしかない
行き過ぎた正義は時に理不尽で無秩序な暴力となりうる、人間は己が正義や信念の為ならば、何処までも残酷になれるのだから


□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

323:以上、名無しがお送りします
例の殺人鬼、現在〇〇区のマンションの近くにいるとのこと

324:以上、名無しがお送りします
それマジ?

325:以上、名無しがお送りします
警察はもう動いてる?

326:以上、名無しがお送りします
既に包囲網が敷かれているらしい、近くの住民に聞いたんだけど

327:以上、名無しがお送りします
こっちの話だとYoutuberも配信に来てて一種のお祭り状態らしい
勿論警察に強制退去させられてるけど

328:以上、名無しがお送りします
でもその女子高生むっちゃ可愛いけど本当に件の犯人なわけ?

329:以上、名無しがお送りします
状況証拠出揃ってるからって理由でクロ確定らしい
あと例の異能力者の噂もあってアサルトライフル持ち込んでるぐらいガチっぽい

330:以上、名無しがお送りします
やり過ぎな気もするけどそんだけ危ない奴なん?

331:黒のカリスマ
ある犯行だとある一家が赤ちゃんもろとも殺されてた
ほんっと人のやることじゃないよね
詳細知りたい方用に後でリンク貼っとくね、ちなみに閲覧注意

332:モチツケ
モチツケ

333:以上、名無しがお送りします
>>332
荒らし乙

334:以上、名無しがお送りします
>>331
黒のカリスマキターーーッ!
情報サンクス、いつも頼りにしてます
……マジで人の心ねえんだなその犯人
家族の方にはご冥福をお祈りします

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


485 : 『悪魔』 ◆e1iKht2T0g :2021/12/11(土) 21:25:43 olhBBLgM0
○●○●○●○●○●○●○

夜闇に包まれたマンションの周囲に、パトカーのけたたましいサイレンが鳴り響いている
恐怖に震える老婆や、子供を下がらせる主婦、珍しいもの目当てでスマホのカメラを向けるスーツ姿で仕事帰りのサラリーマンがガヤガヤと騒いでいる
彼らを抑え、立ち並ぶ警官と黄色と黒の縞模様の規制線の向こう側に映し出されているのは血痕だ
ポタポタと、誰かが逃げたであろう血の痕跡

警官の一人が真っ黒なトランシーバーから声を受け取り、忙しなく動いている
別の場所には装甲車が何台か駐車しており、その中には機動隊の隊員が待機しているのだ

『こちら○○ 目標発見、抵抗あり。至急応援頼む』

警官の一人が受け取った情報から、隊員を載せた装甲車のランプが点灯し、目標のいる地点へと動き出す



場所は代わり、どこかの薄暗い路地
ポタポタと赤い液体を垂らしながら、腕を抑えながらも歩く黒髪の少女が一人
その右手には赤い刻印が――マスターの証たる令呪が刻まれている

「……どうして……こんな、事に……」

彼女はこの聖杯戦争に巻き込まれたマスターであり、そう珍しくはない巻き込まれた一般人である
だが、今彼女の隣にはいるべきはずの英霊の姿はない

「……ごめん、ごめんね……セイバー……!」

何故ならば、既に彼女が使役していた、セイバーのサーヴァントは既にこの世にはいない

何故そうなったかの経緯を話せば長くなる
巻き込まれる形で聖杯戦争に巻き込まれ、当初こそ召喚したセイバーに助けられながらも死にたくないという一心で生き延びてきた彼女
幾多の困難、ぶつかり合いの果てに新しく出来た友人との出会いを得て、少女は聖杯戦争を止めるという選択肢を選んだ
何故ならば彼女が抱く願望がありふれた物であり、誰かの屍を積み上げてでも叶えたいものではなく、どんな苦難があろうとも自分の力で叶える決意を抱いて
だが、この物語(Fate)に於いて彼女は主人公ではなく、ただの端役の一人でしかない。なので彼女の物語は唐突に終わりへと加速すた
正体不明のサーヴァントとの戦闘中、やむを得ず宝具を解放し、結果として街に被害を出してしまったのを切欠に、憶えのない被害に憶えのない凄惨な殺人の冤罪を着せられていた
彼女がこの世界で与えられた役割(ロール)は一人暮らしの学生である。殺人事件が続く中、偽物の証拠から少女の身元は割れ、学校ではストレスのはけ口として同級生のNPCによってイジメを受けることも多々あった
一介の少女には例え具合がどうであれ精神が追い詰められる事には変わりはない、犯人による犯行が過激なものへと変遷する毎に周囲からの視線は厳しくなり、果てに唯一の友人以外の理解者はいなくなってしまった
結果、彼女はついに指名手配され、このように機動部隊まで引き連れた警察の集団に追われる事となったのだ
勿論狙うのは彼らだけではない、敵を減らそうと合理的に行動する他のマスターやサーヴァントも挙って襲いかかってくる
度重なる襲撃にマスターの魔力は尽きかけ、セイバーもまたマスターに迷惑はかけたくないと、別のサーヴァントから致命傷を受けた際に最後に宝具を放ち、己が身を引き換えにマスターを逃し、少女は今に至るのだ


486 : 『悪魔』 ◆e1iKht2T0g :2021/12/11(土) 21:26:26 olhBBLgM0
「いたぞ、追えっ!」
「相手は不思議な力を使ってくる! 不用意に近づかず離れて攻撃しろ!」
「どこ行きやがったサイコパス女! よくもおれの娘を殺しやがったな!」

機動隊員から身を隠しながら、少女は夜の住宅街に紛れて逃げる
滴り流れる負傷は服の一部を破いて包帯代わりにして応急処置。だがそれでも痛いものは痛いのだ
歴戦の戦士ではなく、今迄セイバーに助けられて人並みに頑張ってきただけの、ほんの少し勇気がある一般人に過ぎない

「……はぁっ……はぁっ……!」

人影も気配もいなくなったタイミングを見計らい、すぐさま次の物陰まで駆け出す
未だ少女は包囲網に囲まれたまま、このまま捕まってしまえばどうなるか等予測がつかない、最悪の結末が待っているのだけは嫌でも理解できる

「………」

それでも身柄の無事という点で言うならばこのまま警察に捕まった方がまだマシなのでは?と頭に過る
サーヴァントを失った以上、他の参加者も脱落者として殆ど見向きもしないだろうし、態々殺しに行くメリットも皆無

「……ううん、違う」

咄嗟に首を振って雑念を払う。確かにその選択は生存のみを優先するなら最悪だが最良の手だ
だけどそれ以上に、自分たちの偽物を使って罪のない人たちを、例えNPCだとしても巻き込むような下劣な存在を野放しにしたままなんて出来ない
無駄足だったが、自身の冤罪を晴らすために集めた証拠が手元には有る
セイバーは最後に言ってくれた。「自分の信じた道を進んでほしい」と
だから、最後まで立ち向かう。自分が出来ることを、自分が信じた道を往くために

「……あれ?」

幸か不幸か、周囲が静まり返っている。頑張って隠れていたのが報われたのか
だが、少女はそれをただ運が良いとだけという安易な考えは持たなかった
仮にも聖杯戦争を生き延びてきた身、流石にこの空気は慣れたものだ

「……人払の結界……っ! まずい――――」

気付いた時には既に遅く、シュッ! という風切り音が聞こえれば、少女の胸元には鏃が刺さっていた
熱さが込み上げると同時に全身に激痛が走り、口から赤黒い血を吐き出して仰向けに倒れる

「……あ゛………」

ドクドクと心臓から血液が溢れ出して、意識が朦朧となり視界が歪む
歪む視界の向こう側には見覚えのある男の姿。あの友人のサーヴァントであったアーチャーの姿

「……どう゛、じで?」

どうしてなのか、まさかあの子も自分を裏切ったのか?
それはあり得ない。ありえないと信じたかった、信じたくて、でも今の状態ではまともな思考すら出来ず

「――すまない。これも、マスターを救うためなんだ」

アーチャーは、そんな哀しそうな目で、少女へと呟いていた
少女から見たアーチャーは、自分のマスターに対して恋心を持っていたらしいことを聞く
そうだったんだ、と少女は口にしたかったが、声は出せなかった。そして

「……な、に?」

アーチャーもまた、『鏃を自らの霊核に突き刺した』己が行為に理解が追いつかないまま
少女が最後に見た景色と共に、その命を夜空の下にて儚く散らしたのであった
結界が解除され、機動部隊が少女の死体を発見し、それを回収して撤収したのは、この直後であった


487 : 『悪魔』 ◆e1iKht2T0g :2021/12/11(土) 21:26:53 olhBBLgM0
○●○●○●○●○●○●○

《次のニュースです。本日未明、****さん(17)が死体で発見され――――》

オフィスに設置されたTVから、ニュースキャスターの台詞がオフィス中に鳴り響く
それを遮るように、机に置かれた電話が騒がしく鳴り響いては、担当者が受話器を手に取り対応する
編集長の騒がしい大声が部屋中を駆け抜け、それを聞いた社員たちがけたたましく動き回る
ここはとある新聞社のオフィス内、手に入れたてのスクープの記事を誰よりも先に作り上げようとしている最前線の一つ

顎に手のひらを当て悩みこむ編集長の前に、ここの社員である青年が出来上がった新聞記事の仮のレイアウトをテーブルに乗せた

「編集長、如何でしょうか?」

青年の未だ緊張が解れぬ顔には目遅れず、編集長は記事を見渡している
紙面の内容は先日の案件、件の連続殺人鬼が死体で発見された事件である
死因は何者かによる刺殺痕、凶器も犯人も行方知れず
一人暮らし故に親元の確認が来るまで死体は警察の霊安室に保管されることとなった

「紙面の構成としては、売れそうな文面を心掛けましたが……」

『現代の異能力者、死す』
『真実は闇の中? 未だ疑念残る少女の犯行』

青年としては、この事件には何かしらの疑いを抱いていた
確かに警察から提示された証拠写真や防犯カメラの映像を見る限りは明らかに少女が犯人であるというのは確実。だが、それでも青年の中に居残り続けている疑いという名の心の凝りが、このような文面を書くように掻き立てたのだ
あまり自己主張せず、あくまでこういう考察云々という内容で、ある程度ウケも重視して書かれていた
文面が載せられたレイアウトを、編集長は手にとって眺め、ため息をついて机に放り投げた

「ダメだ。全部書き直せ」
「……!?」

編集長の呆れたような言葉に青年は少しばかり吃驚しながらも顔を傾げるも、それを見て編集長は怠そうな表情で言葉を続ける

「この内容じゃ、三葉会長やクライアントは納得しない。疑う気持ちはわからんではないが、あの女は世間を騒がせた大量殺人鬼だ。下手に擁護する内容は検閲がはいる。今後売れる売れないに関係なくは気にするな、分かったな!」
「は、はいっ!」

編集長の言葉に、少々納得がいかないながらも青年は持ち場に戻る
小さくあくびをして、TVで流れるニュース番組を編集長は退屈そうな表情で眺める
此度の内容は倉庫内で暴力を振るわれて殺された女子高生の事件であり、警察も犯人探しに難航しているとのこと
だが、それに同情や憐憫こそ持てど、切り替えが早い新聞者の重役は次なるスクープじゃ記事のレイアウトが提示されるまで待ち続けるのである


488 : 『悪魔』 ◆e1iKht2T0g :2021/12/11(土) 21:27:14 olhBBLgM0
○●○●○●○●○●○●○


「――報告は以上です」
「そうか。下っても良いぞラスキン」

ラスキンと呼ばれた青年が、男の言葉を聞いて部屋から立ち去っていく
アンティーク感溢れる部屋の内装は、この場所だけ現代から切り離された、一昔前の富裕層のような意匠が施された椅子や本棚がずらりと配置されている
古めかしい椅子に座り、男の眼鏡越しのトパーズ色に輝く瞳が、新聞を眺めている

『――倉庫での凄惨な殺人事件、件の大量殺人鬼が関与か』
『恐るべき女子高生、その悍ましい犯行の経緯』

記事の内容にそれなりに満足したのか、新聞を丸めテーブル下の棚へ片付ける
椅子から立ち上がり、本棚へ近づく。心理学、現代医学、経済学――様々なジャンルの本が置かれているが
彼が手に取ったのは古ぼけた一冊の赤表紙の本――聖書だ
別段読むことが目的ではない。聖書の中に挟まれている栞。栞の中に隠すように入り込んだ一本のキーを取り出す
ちょうど聖書を取り出した場所から隠れて見える鍵穴がある。男がそこに鍵を差し込み回し、本棚から距離を取る
ギギギ……という擦音と何かが稼働する金属音が鳴り響き、本棚が床へと沈んでゆく
本棚で隠れていた壁には、ポツンと配置されているレンズと、無機質な色違いのタイルが配置されていた
男は指の一本をタイルに触れ、レンズを見つめる
数秒の沈黙の後、『ピンポーン』という軽快な音声が鳴り響き、男は壁から離れる
するとなにもない筈の壁に切り込みが入り、それを中心線として分かたれ奥へと扉の如く開く
扉の向こう側には薄暗い空間と階段、男は階段へ向かって進み、男の姿が見えなくなった所で壁の扉も、本棚もまるで何事もなかったかのように元に戻っていた


薄暗い空間に申し訳程度にランプが等間隔で置かれた階段を降り、歩いて数分程の場所にある鉄製の扉
ドアノブに手を掛け開いてみれば、客人を迎え入れたのは大量のモニターの輝きだ
モニターに映っているのはSNSの類にジャンルを問わない掲示板にまとめサイトの数々、そして各社各国のニュースサイトに動画配信サイト
ここはまるで世界の縮図だ、世界全ての情報が集っていると言わんばかりの、動力源も何もかも不明なパーソナルコンピューターやその他機器の稼働音が部屋の中に反響している
そんなモニターに映るサイトのコメント欄に打ち込み始めるのは椅子に座っている人物がいた
金の装飾が施された黒い仮面に黒いマント。まるで役者のような、演劇の舞台から飛び出してきたようなその奇っ怪な風貌。ただの一般人であるならばその胡散臭さと不気味さの方が目につくだろう

「……どうやら順調のようだな、アサシン」
「キミの方も楽しんでるようじゃないか、マスター」

アサシンと呼ばえた黒仮面は、椅子を回して男の方へ振り向く。仮面越しながらも男の事はちゃんと見えている
久方振りの対人での声を黒仮面は発しながら片手間にマウスを動かし、画面の一つにニュース記事を映し出す。ニュースの記事自体は森の中で顔がわからない程にぐちゃぐちゃにされた男性の死体が発見されたという内容だ


489 : 『悪魔』 ◆e1iKht2T0g :2021/12/11(土) 21:27:52 olhBBLgM0
「……まだ仕留めたようだな。働き者で何よりだ」
「何言ってるんだいマスター? ボクはただ書き込んだり、ネットのみんなに情報を提供しただけの話だよ」

男のお世辞に、黒仮面は皮肉を交えて言葉を返す。事実、ネットで報道された男性は聖杯戦争の参加者であり、山奥に工房を作り万全状態で戦いに望んだ人物である
が、万全であったはずの男の居場所は何故か他の主従にバレ、挙げ句工房を周囲もろとも爆破されるという予想外の攻撃により、最終的に別のサーヴァントに殺されたのだ
勿論、この事実を知りうるのは一部の聖杯戦争参加者であるのだが

「……進化したものだな、この世界は」

憂うように、羨ましがるように男は声を漏らす
男が本来居た時代にはソーシャルネットワークというものは存在せず、果てや電波なる概念すら存在しなかった
この時代は、情報が伝わる速度が段違いに速いのだ。速い上に、だからこそ目の前の情報に多くの人民は踊らされるのだ。例えどんな内容であれ、メディアがそう伝えれば嘘であろうと聴衆にとっては真実と成

「……だからこそ、楽しいじゃないか。自分の知らない事ばかりってのも、存外新鮮な体験だと思うよ」

仮面の裏で、アサシンは薄ら笑う。聖杯戦争、英霊とそれを使役する者達での殺し合い、そして万能の願望器たる聖杯。彼にとって聖杯戦争とは未知そのものであり、愉快で心揺さぶられるおもちゃ箱なのだ
数多の暗躍の果て、因果地平の彼方へと追放された混沌の王は、この聖杯戦争に暗殺者のクラスとして招待された

「それには同意ではあるな。何せ、私が生きた時代より未来よりも、メディアは大いに発展していたのだからね。やり甲斐はある」

それに対し、アサシンのマスターである男もまた嗤う
男の本質は、人を人生の大事な局面で'破滅'してゆく様を見て楽しむ、悪魔のような人間なのだから
この聖杯戦争にマスターとして呼ばれたとしても、それは変わらない
与えられた役割(ロール)もまた、彼にとって自らの愉悦を満たすのに最適なものである

「……それに、聖杯という代物に特段求めるものは無い。この第二の生でこの様に好き出来るだけでも価値はあるのだからな」
「それってつまり、聖杯はボクにくれるって遠回しで言ってる事で良いんだよね?」

マスターの発言は事実上、もし聖杯を手に入れたならアサシンの自由にしていいと言う宣言に等しいものだ
男に聖杯が掲げる万能の願望器など何ら興味はない。人を堕落させ貶める悪魔にとって、それは無用の長物であるのだから

「ああ。それに―――」

男は一泊置いて、アサシンに対し満面の邪悪さを、悪魔のような笑みで

「……君が望んだカオスな世界でこそ、私が見たかったものが、もっと多くの人の'破滅'が見れるのだろうからな」

そう、アサシンに対し言い切った。それがさも当然のごとく。男にとってはその邪悪の価値が、大いなる愉悦こそが、男の――"脅迫王"チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートンにとっての根幹なのだから


490 : 『悪魔』 ◆e1iKht2T0g :2021/12/11(土) 21:30:03 olhBBLgM0
「……くく、くふふ――くはははははっ! あーはっはっはっはっはっ!!!」

仮面の奥底から、心の奥底から、アサシンは高らかに喝采して笑っていた
まるでお目当てのおもちゃを手に入れた幼稚な子供のように
まるで宝くじを当てて喜びの余り唖然としているサラリーマンのように

「いやぁ、ごめんごめん。まさかボクの望みを聞いた上でそう言い切れる人間は中々いないよ!」

笑い声が魅せたのはアサシンの本質だ。これがアサシンの'地'だ
混沌を望み、混沌を愉しみ、混沌のままに振る舞い、ただ快楽のままに世界を、全てを嘲笑し弄ぶ
「善悪」という観念に囚われず、行動に一切悪びれる事はない
今の世界が抱える民衆たちの本音の集合体、無自覚なる悪意の塊だ

「だったら少しばかり張り切ることとしようか、キミは兎も角、ボクの方は聖杯は欲しいからね」
「そうか。ならば私も、マスターの手助けになるよう、手回ししておこうか、趣味と実益を兼ねて、な」

上機嫌なアサシンに言葉を返し、ミルヴァートンは身を翻し地上へ戻るための階段を登る
それに目もくれず、アサシンは新たなる混沌の為、掲示板にコメントを打ち込んで、エンターキーを押した

(……だったらお望み通りボクがカオスを見せたげるよ、マスター)
(このボク――ジ・エーデル・ベルナルがね!!!)

混沌と言う名の台風の目の最奥にて、黒き仮面のカリスマは笑う
――ジ・エーデル・ベルナル。かつて次元振動弾にて多元世界を作り上げ、全てを混沌に巻き込んだ男は、この小さな混沌の中で、大いに喜んでいた


【クラス】
アサシン
【真名】
ジ・エーデル・ベルナル
【属性】
混沌・悪
【ステータス】
筋力E 耐久C 敏捷B 魔力EX 幸運B 宝具A++
【クラススキル】
『気配遮断:B+〜A++』
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。自らが攻撃行動に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

『陣地作成:A』
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。

『道具作成:A』
魔力を帯びた器具を作成できる。科学者・技術者としての面において天才的な頭脳を持つアサシンは、様々な機動兵器を作り出すことが出来る

【保有スキル】
『二重召喚(ダブルサモン):B』
極一部のサーヴァントのみが持つ希少特性
彼の場合はアサシンとキャスター、両方のクラス別スキルを獲得して現界している

『次元力:A』
またの名をオリジン・ロー。宇宙の全てに存在する意志「霊子(エーテル)」に対する強制力。アサシンのいた世界の存在全ては霊子によって成り立っており、次元力はこれに対して働きかけ、霊子の定義する事象を書き換えるエネルギーである
次元力を引き出す方法は主に2つ、意志の力か、機械的なものかであり、アサシンの場合は後者によるものである
アサシンの場合、並行存在の召喚、自身の肉体を並行存在と置換、破壊された機体の再生が可能であるが、後述の宝具を解禁しない限りはこの力に大きな制限が掛かっている
現状はバインド・スペルによる暗示や、1体のみの並行存在の召喚のみが可能

『煽動:EX』
大衆・市民を導く言葉と身振り。個人に対して使用した場合には、ある種の精神攻撃として働く極めて強力な代物
アサシンは元の世界において、ありとあらゆる情報インフラ・メディアを手中に収め、自らデマを流すことでとある特殊部隊に仲間割れを引き起こした逸話から、ネットへのコメントでほぼ全ての人間を騙し信じ込ませる事が可能


491 : 『悪魔』 ◆e1iKht2T0g :2021/12/11(土) 21:31:23 olhBBLgM0
【宝具】
『黒のカリスマ』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大射程:-
情報サイトの類に様々な怪情報を垂れ流し、大衆を踊らせ続けるアサシンのもう一つの姿
この宝具の発動中のアサシンは気配遮断のランクがA++まで上昇し、『単独行動:A』のスキルを獲得する
黒のカリスマの本質は、彼が垂れ流す怪情報にあらず、大衆の集団無意識を体現し立ち回るその在り方にある
アサシンが生きていた時代における情報共有の根本にて、自分を名乗り会場を流す匿名者は数多くおり、直接的に世界を混乱させたのはアサシン自信であるが、その混乱を一層増幅させたのは、『黒のカリスマ』という器を与えられて形を為した、市民達自身の流言飛語なのだ
情報社会に出没する黒のカリスマの実態を掴むのは困難極まる。嘘を嘘であることを見抜けない限り、ネットを使うことは難しいと発言した某掲示板の元管理人の言葉の通りに
この宝具の存在により、『黒のカリスマ』を名乗る一般市民は捉えられても、アサシン本体を捉えることは事実上不可能

『創世の芸術家(ジ・エーデル・ベルナル)』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大射程:-
世界に混沌を振り撒いたアサシン自身の存在を体現した宝具。宝具発動時には真名情報の強制公開及びマスターに対する多大な魔力消費のデメリットを背負う代わりに、アサシンの本来の力である次元力の制限を解除する。この際、アサシンの霊器はキャスターのものへと完全に変化する
召喚されたクラスの都合上本来の搭乗機の呼び出しは使用不可となっているものの、機体の力による次元力の行使は可能

【Weapon】
なし。ただし次元力による本人の直接戦闘力は未知数

【人物背景】
次元振動弾であらゆる世界が混じり合った多元世界において暗躍した『悪魔』
ある時は特殊部隊お抱えの老科学者として
ある時は様々な人物や勢力と接触し、時には情報・技術の交換を行い、意味ありげな言葉で各組織の長を煙に巻くトリックスター
その実態は全てが『ジ・エーデル・ベルナル』という特定の個人、全てが並行世界の同一人物
究極の享楽家たる高二病、あとついでに妙なマゾヒズム癖あり
その真の目的こそ『太極』の屈服、及び御使いの打倒ではあったが、既に神を騙る愚者は倒されている。遂行せし使命が無くなった以上、混沌の王はただ欲望のままに

【サーヴァントとしての願い】
全てが混じり合ったカオスな世界を





【マスター】
チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン@憂国のモリアーティ

【マスターとしての願い】
特に聖杯に願うことなど無い、『悪』として己が愉悦を満たすのみ

【能力・技能】
『脅迫』の定義を知り尽しており、そのために相手を調べ上げる手段に長けている

【人物背景】
大英帝国最盛期においてメディア王として名を馳せた、人を破滅へと導く『悪魔』そのものになろうとした男
そんな男の最後は、名探偵と犯罪卿、決して交わらぬはずの男たちの親愛の絆によるものであった


492 : ◆e1iKht2T0g :2021/12/11(土) 21:31:40 olhBBLgM0
投下終了します


493 : ◆Uo2eFWp9FQ :2021/12/16(木) 19:13:41 zeQcYtEE0
投下します


494 : 誰かのための物語 ◆Uo2eFWp9FQ :2021/12/16(木) 19:14:26 zeQcYtEE0






アリスよ。子どもじみたおとぎ話をとって
やさしい手でもって子供時代の夢のつどう地に横たえておくれ
記憶のなぞめいた輪の中
彼方の地でつみ取られた巡礼たちの
しおれた花輪のように

                   ───ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


495 : 誰かのための物語 ◆Uo2eFWp9FQ :2021/12/16(木) 19:15:24 zeQcYtEE0






あたしはどこにいるんだろう。
あたしはどこにいきたかったんだろう。


最後まで残っていた右脚の感覚が、とうとうなくなった。
右足、とけちゃったのかな? 不安になる。視線を落とそうとして、でも、あれ? 首が動かない。しょうがないので目だけを動かして、そこにあるはずの足を探す。ぼんやりと霞む視界の端に、スカートの裾から覗いた白い足を見つける。
ああ、よかった。まだあたしはひとなんだわ。そう思ってほっと息を吐こうとして、自分が息をしていないことに気づく。
体の感覚が少しずつなくなっていることに気づいたのは、一体いつのことだっただろう。少しずつ、少しずつ、自分が存在するためのリソースを取り込むたびに、自分という存在を水で薄めるかのように希釈されていくあの感覚。最初はとても熱くなって、冷たくなって、震えが止まらなくなって、そして何も感じなくなる。あたしはずっと歩いているのだけど、もうあたしは自分が本当に歩いているのか、本当に足を動かせているのか、実はとっくに倒れて夢を見ているんじゃないか、何もわからなくなっていた。
目はみえるわ。耳もきこえる。でも、もうこえはでないの。
あたまの中はぼんやりかすんで、もやがかかって。まるで起きながらゆめをみているような気分なのに、ゆめのようにここちよくはない。
ねむくなる───ゆめにおちていく。
少しずつ「あたし」がこわれていく。
なにもわからないわ。なにもしらないの。かこも、きおくも、なまえさえ。ながれるなみだのいみすら、もうわからない。
ただ、たいせつだったことだけはおぼえている。
あれは、そう、いつだっただろう。そのときあたしはひとりじゃなかった。
×××がいて、××××××がいて、それはしあわせなワンダーランド。
さんにんはいつだっていっしょにいたわ。

×××、たいせつなあたしのともだち。
××××××、ふたりしかいなかったせかいで出会った、さいしょでさいごのひと。

たくさんわらったわ。とてもうれしくて、すごくあったかくて、だからあたしたちはずっとずっとわらっていたの。
ええ、たのしかったわ。たのしかったの。だから、あのときだってないたりしなかった。

……あのとき。
××××××が、いなくなったとき。



「いかないで××××××、あたしをおいていかないで」



きおく───とうとくかがやくもの。

きおく───それは、とてもあたたかな。


あたしがずっとほしかったもの。ほしくて、ずっとてにはいらなかったもの。
あのひとはそれをくれたから。きっと、あたしにうそなんかつかないから。


496 : 誰かのための物語 ◆Uo2eFWp9FQ :2021/12/16(木) 19:15:58 zeQcYtEE0



「絶対に帰ってくる。約束だ」



やくそく。
……うん、やくそくよ。

あたしはまってる。ずっとまってる。
ずっと、ずっと。

まってるの。
ずっと。
いつまでも。
あなたを。


───おにいちゃん。











「アリスは何処だ?」
「……え?」

開口一番に問われたその言葉に、少女は訳も分からず目を点にするばかりであった。
あれ、あたし、今まで何をしてたんだっけ?
まるで夢から覚めた直後であるように、少女はぽかぽか寝ぼけ眼な心地の頭で、うーんと首をひねった。
ふと気が付けば自分はちょこんと椅子に座っていて、目の前には真っ白なテーブルと、その上に乗ったティーカップ。中には淹れたばかりの紅茶があって、ゆらゆらと白い湯気が立っている。
そして、テーブルを挟んだ向こう側には知らない男の人。
鎧を纏った、ええと、誰?


497 : 誰かのための物語 ◆Uo2eFWp9FQ :2021/12/16(木) 19:16:55 zeQcYtEE0

「え、えっと……」

絶えず疑問符が浮かぶ頭を無理やり落ち着かせて、少女は改めて男を見やる。
一見して彼は、鎧の人だった。黒銀のフルフェイスを装着した彼は、まさしく中世の騎士そのものであり、ひどく時代錯誤めいた様相を呈した姿をしている。
そんな彼は、作法の整った姿勢で以て椅子に腰かけ、ティーテーブル越しに少女と向かい合っているのだった。
誰だろう、わからない。けれどこのまま黙っているわけにもいかず、少女はおずおずと、話しかける。

「……騎士様?」
「アリス」
「え?」
「アリスを探さねば」
「え、待って……え?」

ぎり、と軋むような音。
人であったはずの男の姿が、一瞬ゆがんだように見えた。
彼はまるで糸の切れた人形のように、あるいは朽ち果てた機械のように、人ではありえない不自然な動作と声音で以て、もはや声ではない音と化した声を発した。

「アリスが不足している」
「アリスをよこせ」
「アリスを訪ねる」
「アリスはどこにいる」
「お前がアリスを隠しているんだろう」

「ええと……ありすはありすよ?」

「さつが───いや、君はアリスではないだろう」

ぴたり、と狂騒めいた声が止む。
ちぐはぐな人形はそこにはなくて、まるで最初からそのように落ち着いていたと言うかの如く、行儀よく腰かける男の姿。
直前の壊れたテープレコーダーっぷりが嘘であるかのように。先ほどまでの狂的な様相は何処にもない。
そのことについて思うところはあるけれど、それより少女には、ありすには看過できないことがひとつ。

「むう……騎士様はあたしを嘘つきとおっしゃるの?」
「む、ああいや、そうか。君もまたアリスという名であるのか。だが君は私の探し人ではあるまい。数奇な巡り合わせではあるが」

探し人───
そう語らう彼は、どこか遠くを見るような素振りであった。

「私は探しているのだ。アリスを、愛しき少女を。彼女を探さねばならぬという一念だけが、今も私の胸の裡に渦巻き急かすのだ。他は何も覚えてはいないがね」
「何も……」
「そう、何もだ。恥ずかしながら記憶喪失という奴さ。名前、というより与えられた役柄だけは知ってはいるが」

そこで彼は、湯気揺蕩うティーカップを手に取り、口元へと傾ける。フルフェイスの兜はいつの間にか開閉口が開いていて、その素顔を明らかにしていた。
しかし、ありすは彼の顔をはっきりと見ることができなかった。黒く霞んでいたのだ。まるで、黒く染まる霧が顔の周りにだけ充満しているような光景であった。


498 : 誰かのための物語 ◆Uo2eFWp9FQ :2021/12/16(木) 19:17:40 zeQcYtEE0

「私はバーサーカー。サーヴァントであり、君を守護する英霊の一角ということになるらしい。聖杯戦争については知っているかね?」
「……せい、はい。えと、ううん。なんだか聞いたことがあるような気はするのだけど」

記憶の海の底に沈むもの、それを思い起こそうとすると、きりきりと頭が痛む。まるで頭の中に歯車ができて、それが軋んでいるかのようだった。
痛い。何も思い出せない。わかるのは自分の名前と、そしてあとひとつだけ。

「……おにいちゃん」
「うん?」
「おにいちゃんに、あいたい」

何もかもがなくなって、零れ落ちて。
最後に残ったのがそれだった。もう何も覚えていないけど、自分の口が語る「おにいちゃん」が誰だったのかすら、わからないけれど。
大切だったことだけは覚えている。それこそが、ありすの心の裡に残った唯一の真実。

「なるほど。私はこれを数奇な巡り合わせと言ったが、どうやら想像以上であったらしい。そんなところまで私と同じであるとは。
 だが案ずることはない。例え記憶が無くなろうと、想いだけは決して消えない。なにせ、人の想いは永遠なのだからね」
「えいえん?」
「その通り。愛はとても強い感情だ。なればこそ、尊く輝かしいそれが報われないなどありえない。
 例えば、聖杯。万能の願望器たる杯を得れば、あるいは求めるものが手に入るかもしれない」

私はそのための剣なのだ、と彼は語る。

「私はサーヴァント。聖杯戦争に参ずるは多種多様な魂たちのパレードだ。
 だが生者に向ける目はどれも濁っている。
 魂たちは私を憎んでいるのだろうか? けど、そんなことはどうだっていい。
 英霊という魂の循環がなくなることは永遠に来ないのだから。
 波打つドラムロール、灰のカーテン。そして再びパレードだ。
 アリスを見つけ出すことができれば終わりは来るのに───」

そして或いは君の探し人が、と付け加える。
彼は大仰に手を振り上げ、まるで舞台演劇であるかのように歌い上げる。

「呪わしきは聖杯戦争! 願望器が杯ならば、水などいくらでも注ぎ込めばよかろうに。されど天上におわす御方はただ一度きりの奇跡しか望まぬなどと!
 ありす、我が愛しきアリスにあらざる永遠に幼き水子の魂よ。無知なるままに惨劇の都へ投げ込まれた哀れな子よ。なれば汝は願うままに願えば良い、君にはすべてが許されている」

「……わからないわ」

ありすは沈んだ瞳のままに答える。覇気も、活力も、そこにはない。

「なにもわからないわ。あなたとあたしは同じと言ったけど、あたしには何もないの。
 あなたが語るものも、願いも。あたしにはあたしが無いんだわ」


499 : 誰かのための物語 ◆Uo2eFWp9FQ :2021/12/16(木) 19:18:40 zeQcYtEE0

自己の欠落とは、果たしてどれほどの不安と恐怖をもたらすのであろうか。
健常な人間にはきっと想像さえつきはしまい。己が己であるという当たり前に存在する存在証明が、まるで成立しないのだ。存在しない記憶、世界、価値観。名前や主観ですら信用するには値せず、目に見える全てが欺瞞によって構成される書割に等しいという孤独。
世界という舞台演劇の中に、己ひとりだけ役も何もないままに放り込まれるに等しい疎外感。それは一個人の矮小な自我など苦も無く呑み込んで削ってしまうほどに強大だ。
なければ1から作ればいい、などというのは何も知らぬ部外者の無責任な妄言だ。自意識すらなき真っ新な0である赤ん坊と、確固たる主観を有する個人とではまるで話が違う。その恐れを、孤独を、自分が自分であるという証明を、いったい誰が担保してくれるというのか。

「嘆かわしいなありす。君はとても聡明な子だが、やはりまだ幼いのだ」

彼は一言、ほんの少し哀れみのような色を含んで言った。
ありすは一瞬、自分が何か間違ったことを言ってしまったかと肝を冷やしたが、彼は問答を楽しむような表情を兜の向こうに浮かべつつ、さらに言葉を続けた。

「物事には、対象の外部からでなければ観察し得ない事実というものがある。例えばありす、君は君をわからないと言ったが───君の脳髄に宿る君の精神は、自分自身のことをどれだけ認識しているのかな?」
「??????」
「分からなかったかね? つまり私はこう言いたいんだ。君のことを教えてくれないか、と」
「じこしょうかい?」
「そう言い換えてもよい」

ありすは大人の真似事のように、らしくなく姿勢を正した。

「ありすはありすよ。歳は8つで、ずっとおにいちゃんのことを探しているの」
「それが君の全てかな?」
「? うーん、たぶんそう、かしら?」
「では今度は、私が知る君について語ろう」

すると彼はまるで頭の中のノートを諳んじるかのように、朗々と言葉を流しだす。

「ありす・性不詳。性別女性、生年不明。聖杯戦争に招かれたマスターのひとりであり、他ならぬ我がマスターである。
 ───と、ここまでは君の理解と同様だが、まだ続きがあるぞ。
 髪の色は白の色合いが強い薄桃色、瞳は髪と同様だがやや赤色の色素が強い。小柄痩身、栄養状態に難ありだが現状の活動に影響なし。記憶がやや不安定であり、過去について断片的にしか覚えていないのが不安材料。ぶっちゃけ私も心配だ。しかしそれを願いと並びたてた不安や謙遜として吐露するのは自分なりの節度と矜持のためだ。そう、君は優しくも誇り高い人間である。その年にして既にね。
 そして知っているかな、ありす。君は他者との会話中にしばしば目を逸らす。相手の視線から逃げたがっているのだ。誇りと自意識の鏡像としての自己への評価の不安が、君を消極的にしてしまうのだな」

ありすはティーカップに落としていた視線を、慌てて上げた。それを見て男は、安心させるように笑う。

「無論、それは未だ君が私を信頼しきれていないという、ごく当たり前の心情の現れに過ぎないのであり、不徳とすべきは私にあるのだが、まあ良い。
 そして君のその内省的な性質は長所でもある。すなわち、君はよく観察し思考する習慣を持ち、そして何某かの気づきを得られたときに初めて、その表情を太陽の如く輝かせる。実に好ましい精神的特徴だ」
「たいよう……おひさま?」

辛うじて聞き取ることのできた言葉を、ありすは反芻する。彼の言葉は難しくてまるで分らないが、どうも自分に対して好意的である、ということは察せられた。

「うむ。比喩、修辞的表現で「大変に輝かしい」という意味だ」
「おひさまはあたしも好きよ。ぽかぽかできもちよくって、まるで笑ってくれているみたい」
「ほう」

男は感心したように声を上げる。


500 : 誰かのための物語 ◆Uo2eFWp9FQ :2021/12/16(木) 19:19:21 zeQcYtEE0

「詩的であり、同時にそれだけで留まらぬ感性に満ちた言葉だ。然り、君の中には信仰と創造に値する資質があると、私は考える。自らを信じ、敬いたまえよ」
「むー……」
「理解できたかな、ありす?」
「あなたのいうことは回りくどくていけないわ。つまりこういうことかしら? 『じぶんの鼻を見るにはだれかに見てもらわなきゃいけない』」
「さらにひとつ付け加えるなら、先の私の言は『君の鼻は中々良い形をしている』という指摘も含んでいる」
「あなたの鼻もごりっぱよ。でもちょっと赤くなって、寒そうだわ」
「おお、それは私にとっては新たな発見だ!」

彼は片手で自分の鼻をつまみ、もう片方の手でありすの頬をつまんだ。

「しかし、そう言う君は顔が真っ赤だぞ!」

言われてみて、ありすは自分の顔の火照りを自覚した。吹き抜ける風の中、含んだ紅茶の熱が体内に蓄積され、頬を突き抜けて外に出ているかのようだ。

「どうかね、我らは互いを客観的視点から観察することによって、初めて己の鼻の色を知った。ならば自らを知ることに一体何の疑いがあろうや!」

男はまさに会心の笑みを浮かべた。

「よろしい、理解したようだな少女よ───君は今まさに、太陽の如く笑っている」






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


501 : 誰かのための物語 ◆Uo2eFWp9FQ :2021/12/16(木) 19:20:03 zeQcYtEE0



それは最初、確かに勝てる戦いであるはずだった。

涼やかな風が吹く夜半の街角。人通りなど誰もいない路地で遭遇したはぐれサーヴァントとの戦闘は、当初は優勢に進んだ。
魔術師としてはそれなりの腕を持つマスターたる青年と、総合的に優れた資質を持つランサー。そして相手は、マスターの付き添いもなく未だ宝具開帳の兆しもない狂戦士。となれば、要所要所で的確に魔術によるサポートを得られるランサーに隙はなく、下手さえ打たなければこちらの勝利は盤石であった。
そうして戦況は推移し、遂には宝具の真名を開放したランサーの手によって、狂戦士はその胸に槍を突き立てられ、絶命する末路に至った。
如何なサーヴァントとて心臓を潰されて無事に済む英雄などいるはずもなく……ならばこそ、彼らが自らの勝利を確信するのはある種当然のことではあったのだが。


「繧「繝ェ繧ケ縺ッ縺ゥ縺薙□?」


聞こえるはずのない声が、聞こえた。
男も、ランサーも、揃って驚愕に表情を歪める。その声は今まさに絶命したはずの、心臓に槍を突き立てられ大量の血反吐をぶちまけた狂戦士の口から放たれたものだったからだ。

「き、貴様……ッ!」

それでも流石は歴戦の勇士たるか、ランサーは即座に無手での反撃に成功。茫洋と伸ばされる狂戦士の手を払いのけ、その首を一撃にてへし折ったのだが。

「縺ゥ縺薙↓縺?k」
「くっ、づぅう……!」

頸骨の折れる乾いた音を響かせて、しかし狂戦士は何の痛痒も感じぬとばかりに尚もランサーへと腕を伸ばす。寸でのところで回避したランサーが後ろ手に飛んで後退するのを見遣り、男は未だ覚めぬ困惑のままに戦況を眺めるばかりであった。
それはランサーも同じようで、パスを通じて彼の混乱の感情が伝わってくる。男は既に、ランサーの生前を聞いている。戦場にて活躍した無双の英雄、ならばこそ致命傷を負っても立ち上がる傑物など幾度も見たことはあるはずだが、しかしこれは性質が違った。
死する傷を負っても戦う英雄はいたが、死して立ち上がる人間はいなかった。眼前の何かはまさしくそうした不条理であり、二人の理解の範疇を超えた存在である。
男は念話で指示を仰いだ。それはもはや怒号にも等しい悲鳴であり、返される言葉もまた同じであった。
狂戦士はぎしぎしと、まるで何度も折り曲げた針金めいてぐちゃぐちゃになった体を持ち上げて、虚空に手を伸ばした。それは生者を求める屍鬼にも似た動きで、しかし手元へ魔力が凝縮して現出したのは、人間の身長ほどの長径を持つ巨大な銃砲火器である。
機関銃───その単語を認識したかどうか、その刹那の時間ですべては終わっていた。
耳を劈く破裂音と、空気を切り裂く炸裂音。断続的にけたたましく鳴り響くはまさしく機関銃の放つ弾丸の射出音であり、ただ純粋に人の命を奪うための暴威であった。
男のすぐ隣に、ぱっと赤い花が咲いた。そうとしか形容できないほどに、すべてはあっけなかった。ランサー、稀代の英雄。彼が運命を共にし、優勝さえ狙えるだろうと確信した傑物。そうであるはずの英霊が、赤い水の詰まった風船であるかのように、びしゃりと弾けて消えてしまったのだ。

男は叫んだ。喉よ張り裂けろとばかりに、何もかも忘れて、ただ胸の裡を支配する恐怖の感情がままに。思考はおぼつかず、今や自分の置かれた状況さえも理解しないまま、脱兎と走る。逃げる。
嫌だ、嫌だ、死にたくない。あんな死に方はしたくない。聖杯なんてどうでもいい、無事に帰れるなら何もいらない。それだけを望んで、男は走って、走って、少しでもあの怪物から距離を離そうとして。
もつれる足で路地の角を曲がった瞬間、男の生はやはり呆気なく終わりを迎えた。
彼が最後に見たものは、自分に向かって迫る、何か黒く巨大な口であった。






502 : 誰かのための物語 ◆Uo2eFWp9FQ :2021/12/16(木) 19:21:00 zeQcYtEE0



『Ring-a-ring o'roses,
 A pocket full of posies,
 A-tishoo!
 A-tishoo!
 We all fall down.』

それは一見、黒く染まった樹木のように見えた。
樹木。細長い幹が一本と、同じく細長い枝がいくつもいくつも伸びている。枝の先には人の頭部ほどの丸い塊がついていて、ゆらゆらと揺れている。
しかしこれは樹木ではない。枝の先についた球体には口があり、歯があり、舌があった。それらは口々に歌いながら、歯を軋らせてぐちゃぐちゃと何かを咀嚼している。
球体が一つ動くたびに、新たに赤い液体がぶち撒かれる。食っているのだ、人を。今この場に逃げてきた魔術師の男を。
人でないものが人の歌を歌っている。人でないものが人を食っている。
そして最も異常でありグロテスクなのは───この黒木が、エプロンドレスを着た小さな少女の体から生えているのだという、拭えない事実。
少女を苗床にした異形の樹木。
ただ一言、怪物。そうとしか形容の仕様がなかった。

「蠕?◆縺帙◆縺ュ縲√◎繧阪◎繧崎。後%縺?°繧「繝ェ繧ケ」

近づく影がひとつ。
それは死したはずの狂戦士であり、彼はやはり死んでいなくばおかしなほどの傷を負ったまま、少女のような異形の傍に歩み寄る。
その胸には未だ槍が刺さり、首は折れて垂れ下がった頭部がぷらぷらと揺れている。手足もおかしな方向に折れ曲がり、およそ人としての行動ができる有様ではないはずなのに。
彼と彼女はおよそ常人には理解できない、何か独自の言語らしきもので少しだけ話すと、意思疎通ができているのか揃い踏んでどこかへと歩き出した。
点、点と伸び行く血の足跡。後にはただ、惨劇の残り香とも言うべき血の海だけが、そこに残されているばかりであった。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








きみはその右脚が左脚と違うほどにも私と異なるわけではないが、
私たちを結び合わせるのは、怪物を生み出す───理性の睡りなのである。

                    ───バタイユ『宗教の理論』







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


503 : 誰かのための物語 ◆Uo2eFWp9FQ :2021/12/16(木) 19:21:46 zeQcYtEE0


小さなお茶会の跡片付けを済ませると、ふたりは揃って歩き出した。
男はアリスを探すため、少女はお兄ちゃんを探すためである。煌めく夜空、笑う星々。静かな夜の冷たい空気が、手を握って歩くふたりには心地よかった。

「楽しいわ、楽しいわ! こんなにお話したのはいつぶりかしら!
 あたたかな紅茶に甘いお菓子、ときめく絵本に煌めく夜空! きっとここはワンダーランドなのだわ!」

はしゃぐようにありす。うきうきと、少女はまさに年相応の子供が如く、浮足立って笑う。
特に、そう。先ほど食べたケーキはとても美味しかった。ティーテーブルで語らうふたりの前に現れた、丸々と太った歩く不思議なケーキ。
「妊婦ケーキだ」、彼はそう言った。「あのおなかの中にはたくさんのケーキが詰まってるんだ」。
ああ、それはなんて素敵な。言われた通りケーキナイフを入れてみれば、あらびっくり! ぱんと弾けた妊婦ケーキから、たくさんのおちびたちが飛び出てきたのだ。

「好きなものができたのだね、ありす」
「ええ! 甘いものもおいしいものも大好きよ!」

るんるんと跳ねるありすを、何か微笑ましいものを見るように、彼は柔らかに見下ろす。

「喜びしか知らぬ者から祈りは生まれない。同時に、喜びすら知らぬ者から慈しみは生まれない。
 君は何もないと言ったが、好きなものができたのだ。ありす、たった今から君の世界は変わっていくだろう。私たちが互いの鼻の色を知ったように、これからの一歩一歩が君を形作っていく」
「あいかわらずあなたの言葉は難しいわ。でも悪い気分じゃないの」

うーん、とありすは首を捻り、ぽんと納得する。

「そうだわ、あなたはまるで『先生』みたいなんだわ!」
「……先生、かい?」
「ええ、そうよ! パパもママもお友達もお兄ちゃんも、みんな大切だけどあなたはどこかちょっと違ってて、うん。やっぱり先生なのだわ!」

そうなのだわそうなのだわ、と笑うありす。男もやっぱり笑ってて、でもどこか困ったふう。

「そうか……なんだか、前にもそう呼ばれたような気がする」

でも、と言葉を続ける。

「うん、悪い気分じゃない、か」

それは何かを懐かしむように。思い出せるものなど何もないはずの彼が、郷愁に浸って笑みを浮かべる。

「では行こうかありす。物語を続けるにはもう夜も深い。続きはこんど───」
「いまはこんどよ!」

そうしてふたりは笑いあう。
小鳥囀る黄金の昼下がりを、求めて。
ふたり以外のなにもかもから、見放されたまま。






504 : 誰かのための物語 ◆Uo2eFWp9FQ :2021/12/16(木) 19:22:20 zeQcYtEE0


どれだけの少女が、未知の物語を前に好奇心を抑えられるというのか?

「親愛なる君へのクリスマスプレゼントとして、
 夏の日の思い出に贈る」

手書きの挿絵を添え付けた、貴方の為の物語。




【クラス】
バーサーカー

【真名】
"グリム"或いは"ルイス・キャロル"或いは"アンデルセン"、或いは"名も無き不死者"@BLACK SOULSⅡ-愛しき貴方へ贈る不思議の国-

【ステータス】
筋力B+ 耐久B+ 敏捷B+ 魔力B+ 幸運EX 宝具E〜A++

【属性】
混沌・狂

【クラススキル】
狂気:A
憧憬と渇望、無垢と愛憎。調和と摂理からの逸脱。
周囲精神の世界観にまで影響を及ぼす異質な思考。

領域外の生命:A
外なる宇宙、虚空からの来訪者に見初められた者。
邪神に魅入られ、権能の先触れを身に宿して揮う器。

【保有スキル】
宇宙〈そら〉の恩寵:EX
虚空より見遣る無貌から贈られる、寵愛にして最悪の呪詛。
創造されたる箱庭宇宙の中枢を担うに相応しい高次生命として強い神性を帯びるが、代償に自身のあらゆる運命・未来・可能性を簒奪され、死後の輪廻までをも縛られる。
このスキルは自身の死亡、ないし令呪の使用、聖杯による奇跡を行使しようと、決して取り外すことができない。
余談だが、彼の幸運ランクEXはこのスキルに由来する(本来のランクはE-)。
これを規格外の幸運と解釈するか、逆に規格外の不運と解釈するかは、人によって別れるだろう。

不死の呪詛:A
その身に掛けられたる呪い。バーサーカーは決して死ぬことが許されない。霊核を破壊された場合、彼の肉体は一時的に消失し、次瞬に相応の魔力消費と共に復活する。
事実上戦闘続行の上位互換スキルとも取れるが、無論これにはいくつかの条件とデメリットが存在する。
第一に、復活にかかる魔力消費はサーヴァント召喚に匹敵するものであり、マスターがこれを賄えない場合にはバーサーカーの霊基は消滅する。
第二に、復活の度にスキル:精神汚染のランクが上昇し、更に汚染をマスターと共有する。
歪な比翼連理は溶けあうように墜ちていく、それは精神的な心中と言い換えてもいい。

精神汚染:A+++
愛しき少女の情念によって精神が汚染されている。
精神干渉をシャットアウトできるが、同ランクの精神汚染を持つ者でなければ意思疎通が成立しない。


505 : 誰かのための物語 ◆Uo2eFWp9FQ :2021/12/16(木) 19:22:58 zeQcYtEE0

【宝具】
『開演の刻来たれり、其は総てを弄ぶもの(ディアラヴァーズ・グランギニョール)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1000
あらゆる他者を演者とし、その運命を弄ぶ悪辣劇場。
かつて数多の物語を玩弄し結末を書き換えたご都合主義の支配者「メアリィ・スー」が保有する世界改変の権能にして、それ自体が意思を宿した最新の邪神とも言うべきもの。
その権能が最大まで発揮された場合、過去の改竄や死者の蘇生さえ実現できてしまう文字通りのデウス・エクス・マキナであり、限りなく全能に近い万能の力ではあるが、
その本質はあくまで既存の物語の改変であり、0からの創造だけは決してできないという性質を持つ。
かつて暗黒舞台装置・機械仕掛けの失楽園との戦闘で簒奪した力だが、バーサーカーは現在この宝具を失っている。

『終幕の刻来たれり、其は総てを尊ぶもの(アリス・イン・マリアージュ)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000
己一人を苦行者とし、物語を紡ぎ上げる創造能力。
神ならぬ人間であれば誰もが持つものであり、別の事象世界においては「観測の力」とも呼称されるもの。
バーサーカーが、そして彼の魂の大本となった童話作家たちが繰り返してきた、空想の創作にして世界の創造。
バーサーカーの場合、書き上げられた物語に準じた登場人物を夢霊として召喚することができたはずなのだが、現在彼はこの力を失っている。

『恐怖劇を終える剣よ、此処に(アンサンブル・カーテンコール)』
ランク:E〜A++ 種別:対人宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:100
かつてバーサーカーが揮った数多の武器群を、相応の魔力消費と引き換えに具現化する。
由来なく拾い上げた名も無きもの、想いと共に誰かに託されたもの、血と闘争の果てに奪い取ったもの。彼が歩んだ死山血河の旅路の象徴にして、力の具現。
それはまるで、彼らが紡いだ物語のように。
幾重にも折り重なる因果と縁にして、想いと願いの果てである。

【weapon】
アンサンブル・カーテンコールによって召喚した武器群。

【人物背景】
むかしむかしの物語
紡ぎだしたるおとぎ話
嬉々とし読みいるそのなかに
ひと際まばゆい彼女の眼
おとぎを紡ぐ少女はおもう
こんな世界になったらいいな
彼女は悦とし筆を執り
大団円を裏切った


「アリスよ」

「いつか君の、優しい手を取って」

「私が救いに戻る」


【サーヴァントとしての願い】
「アリスは何処だ?」


506 : 誰かのための物語 ◆Uo2eFWp9FQ :2021/12/16(木) 19:23:33 zeQcYtEE0

【マスター】
ありす@Fate/EXTRA Last Encore

【マスターとしての願い】
「お兄ちゃんは何処?」

【weapon】
なし。

【能力・技能】
サイバーゴーストの常として、際限なき魔力貯蔵量を誇る。また周辺物質をリソースに変換して肉体を保持する。
以上は本来的には電脳空間においてのみ機能するものであるはずだが、本成敗戦争においてはなぜか現実世界においても同等の機能を有しているようだ。
リソース使用による負荷と情報混濁により肉体そのものが変容してしまっており、並みのウィザード程度なら苦も無く虐殺できるほどの異形・身体スペックを持つ。

【人物背景】
かつて少女だった怪物。


507 : ◆Uo2eFWp9FQ :2021/12/16(木) 19:23:53 zeQcYtEE0
投下終了します


508 : ◆zzpohGTsas :2022/01/03(月) 00:35:17 1bqA4GLE0
このトリップ名義で投下した、当方の『企画に採用されているもの以外』の候補話の全てをフリー化いたします

投下します


509 : Ghost Dance ◆zzpohGTsas :2022/01/03(月) 00:37:18 1bqA4GLE0
 巨大な街頭モニターが特徴的なその歩行者天国は、スカウトのメッカであるのだと言う。

 収容人数数万人を超すドーム会場を観客でパンパンにする程の集客力を誇るあのアイドルは、此処を歩いている所を芸能プロデューサーに声を掛けられたと言っていた。
動画配信サイトでPVを公開すれば瞬く間に数十万超の視聴数を稼ぎ、今年の紅白にも内定しているあのミュージシャンは、此処で弾き語りしている所を誘われた。
放映が始まれば平均視聴率は15%を容易く超えるドラマや、封切られれば何十万もの人間を動員出来る映画の主役を務めるあの男優は、此処でスカウトされる前はただの底辺高校の生徒だった。
今やバラエティ番組の顔としての地位を不動のものにし、ある時は雛壇で番組を温め、ある時はコントでお茶の間に爆笑を齎すあの芸人は、此処で今の相方に組まないかと提案された時にはうだつの上がらないサラリーマンだった。
画壇に於いてその名を轟かせ、手がけた人物画は数百万、風景画が数千万で取引され、今や投資家の投機対象にもなる程に有名になった、水彩画を得意とするあの画家は、この場所でたまたまスケッチをしていた所、その絵を数百円で売ってくれと道行く主婦に言われたところから運が上向きになったと語っていた。

 成功の中の成功を収めている人物の中には、不思議と、この歩行者天国が全ての切っ掛けだと振り返る者が多い。
勿論、此処で何かをやっている事が、成功の方程式であると言う事でもない。況や、スカウトする側にも、此処を重点的に張れ、と言う決まりがある訳でもない。
ただ、トータルで見れば、此処で何かやっていた経験がある者が、スターダムを駆け上がっている事が多い。理由も理屈もそこにはない。たまたま、なのである。

 だが、その、たまたまとか偶然と言う所が重要になる。
この場所であるから、成功しなければならないだとかの決まりはない。業界の人間も、此処を肝心要の地点であると定めている訳でもない。翻って、スカウトのメッカと言う事実すらそもそもない。
だがどうあれ、此処から立身出世を成し遂げている芸能人が多い事もまた、事実なのだ。理屈では説明出来ない不思議と、統計上明らかな数値は、親睦性が高い。水と油の関係ではない。
不思議と数値が合わさったその結果、この歩行者天国に何が起こったのか? 我こそは、と言う一心と野心、夢を抱いたスターの卵達の、活動の場所になったのだ。

 ある者は、業界人は本当に此処をマークしているのだと信じながら。
またある者は、此処を成功の始点としている、尊敬する有名人に肖ろうと。
これまたある者は、此処がパフォーマンスや大道芸を披露する者達が多い事を知った上で、どういう者がいるのか研究し、後の活動の指針とするような、慎重な輩もいる。

 どちらにせよ、この場所が、本来想定してない形で、喜ばしい活況を齎している事は間違いなかった。
芸を目当てに、人が集まる。最近ではキッチンカーが集まり、ケバブやホットドック、丼物やクレープなどを振舞う者も増えて来た。
ギターを弾く者もいれば、イーゼルにキャンバスを立てかけて筆を走らせる者もいるし、パントマイムやジャグリングを行う者など、様々な業態の技を披露する者で一杯だった。
ある者は多くの観客に囲まれてもいるし、またある者はまちまちの客に囲まれていて、衆目の少なさに屈する事無く芸を見せつけていた。

 ――ベンチに座るその青年の目線は、そう言った人物達ではなく、一人の少女に向けられていた。
中学生位の年齢であろうか。顔つきは幼く、あどけない。数年前まではランドセルを背負っていたであろう事が伺える、歳の若さであった。

「……」

 青年は、ダンスの機微が良く分からない。
運動が得意な女友達はいたが、彼女は陸上部。今、青年が目線を注いでいる少女が行っているような、ダンスの類は専門外であった事だろう。
だが、青年の目には、パーカーを羽織ったあの少女のダンスは、上手い物に見えた。
動きにキレがある。元から素養もあるし、練習も積んで来ているのだろう。動きに無駄がなく、足取りも軽やか。もたついている様子もない。場数を踏んでいる者の踊り方だ。


510 : Ghost Dance ◆zzpohGTsas :2022/01/03(月) 00:37:50 1bqA4GLE0
 少女は明らかに、ダンスの達者であった。
何処かの事務所に所属する、軌道に乗りつつあるアイドルがお忍びでやって来ている。そうと言われても信じる事が出来た。よく見れば、成程、顔の方も愛くるしかった。
それにもかかわらず、彼女の周りに人が集まっていないのは、如何言う事か。その通り、これだけの原石がいるにもかかわらず、彼女の周りには人だかりもなく、
当然の事、スカウトの類も寄って来ない。その理由を何となくではあるが、青年は理解していた。彼女の踊りが、問題なのである。
人に見て貰う為の創意工夫を凝らしている訳でもなく、男子を魅了するような振り付けがある訳でもない。それは、例えていうなら、ウォーミングアップの為の踊りと言うべきか。
一流のアスリートや格闘家は、激しい練習の前に身体の調子を整えるべく、柔軟体操を初めとした軽めの運動で身体を慣らす所から始めると言うが、少女の踊りはまさにそれ。
そのウォーミングアップの踊りに、アクセント程度に、派手な動きを取り入れて見せたような、そんな程度のダンスなのだ。
見る者も、これが練習の為のものである事を薄々ながらに理解しているのか。或いは、少女の若さのせいか。
『夢見る世間知らずの子供が何かをアピールしているな』、位の感覚で、数秒だけ少女の踊りを見つめては、直ぐに其処を立ち去るのである。

 それでも、彼女は踊るのだ。
見られていない事など解っているであろうに。踊りながらでも、他のパフォーマーの方が衆目を集められている事を理解出来ると言うのに。
その踊りを、彼女は続けている。その様子を青年は、『自分は此処にいる』と言う事実を、他の誰かに見せつけているかのように、解釈した。

 ベンチから立ち上がり、青年は、彼女の所へと向かって行く。
踊りに集中している為か、彼女は、彼の接近に気づかない。声を掛ければ、もう、自分の事を呼んでいる事が解る距離であった。

「やぁ」

 青年がそう声を掛けた瞬間、少女のダンスが止まった。映像の、再生ボタンを一度押して、一時停止にでもしたように。
花咲くような嬉しそうな笑みで、少女が此方に顔を向ける。こう、口にしながら。

「プロデューサーさんっ!!」

 そう言葉にしながら、青年の顔を見つめる彼女だったが――。
目当ての人物でない事を悟った瞬間、露骨に、肩を落とし、ガックリとした表情で溜息を吐いた。

「ごめんなさい……人違いだったっす……」

 落胆の色を隠しもしない少女――『芹沢あさひ』の態度に、青年は苦笑いを浮かべてしまう。

「期待させてしまった事は悪かった。だが、流石にもう声を掛けないと拙いと思ってね」

 辺りを見回し、マークしている人物が誰も居ない事を確認してから、静かに言葉を紡いだ。

「聖杯戦争の参加者が、誰も連れずに一人でいるのは拙いだろう」

「……それじゃ、あなたが……」

「そうだな。そう言う事になる」

 親しみやすい笑みを浮かべ、あさひを安心させようとする青年。
少女はその笑みを、『作っている』と見抜いた。自然に出た物でなく、経験によって培われ其処で浮かべた方が良いと思って作ったそれじゃない。
徹底して、合理的。AIや、機械か何かが、過去のデータや統計から検索を行い、此処はこうした方が良いと言う、最もパーセンテージが高い方法を出力しただけのような。そんな気が、その笑みにはあった。

「キャスター、『秋月凌駕』。君のサーヴァントの名前だ」


.


511 : Ghost Dance ◆zzpohGTsas :2022/01/03(月) 00:38:52 1bqA4GLE0
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 場所を、二人は移した。
街頭ヴィジョンのあったあの場所から離れた、外れの公園。
寂しい場所だと、凌駕は思った。子供が怪我を負ったり命を落とすからと言う理由で、昔から存在していた遊具は、このご時世だと撤去の傾向にあると言う。
それが進んだ結果が、遊具もない、空き地同然の、公園と呼ぶのも憚る公園なのであろう。ベンチと、水飲み場。公衆便所しか其処にはない。殺風景だ。その、二人以外に誰も居ない公園のベンチに、腰を下ろしていた。

「……もっと凄い人が来ると思ったんすけどね〜」

 パタパタと足を動かしながら、あさひは言った。

「不服か? まぁ、気持ちは解らなくもないんだけどな」

 あさひの落胆に似た感情も、凌駕には解らなくない。
サーヴァントとは即ち、生前の凌駕では想像だに出来なかった上位次元に登録されていると言う、英霊と呼ばれる煌びやかな誰それが現世に召喚された存在の事だと言う。
アーサー王だとかシャルルマーニュだとか、カール大帝だとかヤマトタケルだとか、関羽だとか義経だとか。そう言った存在を望んでた人物にとっては、確かに、
あさひのような言葉を口にするのも無理からぬ事であろう。何せ秋月凌駕は昭和の年代に生きた高校生。世界から悉く神秘のヴェールとカーテンが剥ぎ取られ、
科学こそが人類の進展と進歩を決めるテーマであり、イデオロギーである、と言う思想が先進国の殆どを支配していた時代の住民なのだ。
神秘の類は勿論なく、不思議の残り香もありはしない。そんな青年が自分のサーヴァントだ、さぁ戦え。そうと言われれば、先行きも確かに不安になろう。

「ううん、寧ろ安心した方っす」

 先程口にした言葉の内容とは裏腹に、あさひは別段、凌駕がサーヴァントである事に、不満はないようであった。

「強い人だったりとか、聖杯が欲しい人がわたしの相方だったら、やっぱわたしも、その人に合わせなくちゃならないっすから……」

「……聖杯は、欲しくないのか?」

 聖杯の知識は、勿論の事サーヴァントとして顕現している凌駕である。頭の中に刻み込まれている。
病魔の完治、無限の富、精神の支配、若返り、――死者の、蘇生。凡そ人類が想起しうるあらゆる夢や理想、欲望を充足させる、万能の願望器であると言う。
これらを巡って殺し合う、と言う趣旨こそが聖杯戦争なのである。自分の思い描く夢が、一足飛びに叶ってしまうのだ。普通であれば、これに乗る者も多い筈だが……。あさひからは、そんな気分を感じ取れない。

「人を何人も殺さないと、叶えられない夢ってあるんすかね?」

 何気なく口にした言葉だったがしかし、凌駕は確かにその言葉に、あさひが発する心底からの疑問を感じ取った。

「欲しいスニーカーはたくさんあるっす、おそばのトッピングだって安く食べたいっす。みんなと一緒に……キラキラのステージに立ちたいっす。でもそれって、殺して叶える程じゃないし……凄く頑張ってれば、叶いそうなもんっすけど……

「……そうだな。君が正しいと思うよ、マスター」

 遠い目で、凌駕は空を見上げる。 

「多分君の言う通りなんだろう。人間が想像出来る、成し遂げたい夢って言うのは……多分全部が、例外なく。誰かを殺さなくても叶えられる夢なんだと思う」

「だけど、やっぱ聖杯……戦争? 参加してる人たちって、皆、戦うんっすよね?」

「ああ、そうだな」

「うーん……少し待つ事も、難しいんっすかね? その人たちって。なんだか、せっかちっすね」

「……せっかち、か」

 目を瞑り、凌駕は考える。
瞼の裏に浮かぶのは、もう一人の自分とも言うべき人物だった。時計の針を支配していた者にして、時代に夢と願い、祈りを託す事の愚かさと呑気さを否定した男。
オルフィレウスを名乗る、黄金の精神を持った宿敵の姿を、凌駕は思い出した。目を開き、あの男の幻影を瞼の裏から消し去った。青い空に、飛行船。視界に映った光景がそれだった。


512 : Ghost Dance ◆zzpohGTsas :2022/01/03(月) 00:39:38 1bqA4GLE0
「……人が空を飛ぶにはどうしたら良いと思う?」

「飛行機っす!!」

 即答するあさひ。「あ、でもわたし気球とかも乗ってみたいっすね」とも続けた。

「俺もそう思う。空を飛ぶ、って言うのは洋の東西、古今の別なく、人類の夢だった。だけど今、人はこんなにも簡単に、空の旅を楽しめるようになった。人類全体の夢は、何時しか、現実的なものになったんだ」

 「だけど」

「飛行機だって気球だって、一人の天才が自分の力だけで生み出せた訳じゃない。その時代、その時代に生きた人間の努力や熱意……そして、狂気。それらが連綿と受け継がれて来た結果なんだ。受け継がれた意思があったから、俺達は安全に空を飛べるんだ」

 今日の時代、飛行機など、目的地の距離と座る席のグレードさええり好みして考えなければ、一万円を遥かに下回る値段で搭乗出来る。勿論、安心と安全が担保された上で、である。
だがそれも、長年、それこそ代を隔てるレベルでの長い時間を掛けて、何人もの天才と秀才が努力と鋭意を惜しみなく費やした結果の話なのだ。
恐らくは、今日の飛行機が出来上がるその過程の中で最初期の方は、事故による死などザラにあった事であろう。
ぶっつけで、己の肉体と、技術者が魂を削って作り上げた装置を信じ、データの収集に当たり――その結果、死んでいった無銘のモルモットは幾人も居た事は想像に難くない。
人の死だけじゃない。恐らく過程の中で、狂ってしまった技術者や研究者達も大勢いただろう。
血反吐を吐く思いで練り上げた理論の下に、大枚を叩いて作り上げた装置が、ただの空飛ぶ処刑道具に終わってしまい、発狂してしまった者とていたかもしれない。
空を飛ぶ事が漸く安定して来た頃には、安全性とコストの低下を両立を図ろうとして、それが今の技術ではどうにもならない事を認められなかった者もいたかもしれない。

 それを思うと、飛行機とは、血塗られ、罪深い歴史の連続によって生み出された発明であるとも言えるだろう。
だがそれが、飛行機と言う発明がこの世に存在してはならないのかと問われれば、現世の誰もが否だと答えるだろう。
確かに人は死んだだろう。狂った者もいるだろう。だがそれは、必要な犠牲であったし、必要な失敗だったのだ。
命を賭してまで空を飛びたいと思った者達の願いに共感し、また誰かが命を懸けてみようと決心する。彼らの死を無駄にしないべく、失敗を基に次の絵図を描こうとする。
無念は受け継がれ、夢は共感を呼び、失敗した理論からはより厳密に詰められた高度な理論が産まれ、その理論を成立させるべく時代が新たな発明を産み、その発明が完成度に貢献する。人の思いはリレーされ、そのリレーの連続によって、我々の知る今の飛行機が産まれたのである。

 たった一人の天才が、一日で全ての理論を思いつき、たった一人でその理論が正しい事を証明する為に全ての道具を開発した訳じゃない。
多くの、それこそ数万人を容易く超える人間達がそれに関わり、何代も何代も実験と開発と実践とを経た末に、今がある。
夢を果たすのに、俺の代で、私が生きている内に、と。躍起になる事は、恐らくない。多分誰もが、何処かで、己の成果を誰かに明け渡さねばならない日が来る事を何処かで理解している筈なのだ。

 ――それを認められなかった、世紀の天才を、秋月凌駕は知って居る。
彼もまた、大義と正義の為に間違いなく動いていた事も、確かに、理解していた。

「……自分が生きている内に、叶えたい願いがある。俺はそれを否定しない。出来ないよ」

 当たり前の話だ。金持ちになりたい、誰かと結婚したい、自分の会社を大きくしたい。
そんな風な夢があって、自分が死んだ後でその願いが叶えてやろうと言われれば、誰もがふざけるなと怒鳴りつけるだろう。
死ねば人はどうあれ、この世に於いては形がない。無だ。意識も肉体も消失したその後で、果たされる願いなど、当人にとっては慰めにはならないであろう。

「ただ俺には、夢を叶えるのに、そこまで生き急ぐ事も、ないんじゃないかな……と、思うだけだ」

「うーん、わたしにはキャスターさんの言う事、長くて難しくてよくわかんなかったっすけど……戦争はやりたくない、って事っすかね?」

「平和的に済むなら、な」

「よかったぁ、それはわたしも同じっす」

 安堵したような声音であさひはそう言った後、一呼吸。置いてから、言葉を紡いで行った。


513 : Ghost Dance ◆zzpohGTsas :2022/01/03(月) 00:40:29 1bqA4GLE0
「ほんとを言うと……わたし、すぐになりたいとか、叶えたいって気持ち、よくわかるっす。だってわたしの今の夢って、今のわたしにしか出来ない事っすから」

「マスターの、夢」

「そっす。プロデューサーさんと、冬優子ちゃんと愛依ちゃん。んで、わたしの4人で、イケる所までイッてみたい。トップアイドルの、先に行ってみたいっす!!」

 成程、それは確かに、今しか出来ない事だな、と凌駕は思う。
人は年を取れば、否応なしに現実と言う、実際上の大きさを最早認識する事もかなわない程に巨大な機構に取り込まれてしまう。
アイドルとは、その現実と言う機構から隔絶された存在。地上にある星だ。そしてその星の輝きは、人の一生に於いて一瞬の時の事。
その一生の一瞬間の煌めきの中の頂点に立ちたいと言うのなら、確かに、それは、今しか出来ない事であろう。

「でも、その為に、誰かの命を奪っちゃうのは……やっぱ、よくないと思うっす。皆に怒られそうっすし……わたしの光も、なくなっちゃいそうだから……」

 それまでの元気な態度が、嘘のように、あさひのテンションは一気に底まで沈み込んだ。

「だからわたし、キャスターさんが戦争にやる気があまりない、って知った時、さっきも言ったけど凄く安心したっす。だってもしもやる気あったら、わたしも殺しにやる気にならなくちゃいけないと思ったっすから」

 沈黙。無言の時間が、数秒、場を支配した。

「プロデューサーさんや冬優子ちゃんに、何回、変な所に行くなとか、勝手な行動はやめろって言われたか、わかんないっす。でも、わたし、みんなを置いてけぼりにしてるつもり、ない。心はずっと、みんなの近くにあるって思ってる。多分3人も、同じ事、思ってくれてるっす」

 凌駕の方に顔を向けるあさひ。表情には、怯えと不安が、微かながらに浮かび上がっていた。

「誰かを殺したら、みんなと離れ離れになっちゃうっす……死んじゃったら、みんなを置いてきぼりにしちゃうっす……!! だから……」

「解ってる」

 人だ、と凌駕は思った。芹沢あさひは、人間だ、と思った。人間に、なりつつある少女だと凌駕は思った。
誰しもが生まれた瞬間から人間であった訳じゃない。学び、遊び、運動し、痛み、苦しみ、歳を取る。
日常の中の様々な喜びや煌めきや辛さを、澱のように堆積させて行き、積み重なる事で、人は大人に至るのだ。

 秋月凌駕はその事実を、ある時まで知らなかった。理解出来ていなかった。
今も昔も、秋月凌駕の精神性は高潔で高邁で、余人が見れば、己の醜さをまざまざ恥じ入らせてしまう程に、完成されたそれだった。
そしてその精神性の故に凌駕は、何故、自分と同じ考え方の者は少ないのだろうと、常に思っていた。少なくて、当たり前だった
常に何方か片方の天秤に傾く事無く……何時だって常に、双方の考えの、双方の現象の中間点を生きていれば、幸福に生きられる、など、常人には出来ないし及ばない考えだ。
中国に於いて伝説ともされる哲学者、孔子は、論語の中で『中庸』に至る事がどれ程難しいのかを説いていた事は有名だが、凌駕はこの境地を生まれた時から会得していたのだ。
故に、異常者。故に、完全者。だが凌駕はある時、自分の生き方は他人にとっては毒であり、苦しい物だと言う事実を克明に見せつけられてしまった。
生涯かけて守ると誓った一人の少女が、凌駕の在り方に追い付こうと必死に追い縋ろうとし、それでも影すら踏めぬ現実を突き付けられ泣き叫ぶ姿は、今も凌駕の霊基に刻まれている。
理解者など、いなかった。血の繋がった妹であり、己の理解者であると信じていた妹ですら、自分の思想に無理して合わせて背伸びしていただけだったのだ。

 凌駕は、この事実に対して落胆を示した。他人ではない、自分自身に対してだ。どうして人は、自分のような生き方が出来ないのかと、ずっと思っていた男は、その実。
『その生き方が最良であると誰もが思っているであろうにそれを如何して実行出来ないのか』と言う事について、全く考えが及ばなかったのである。
心が、耐えられないからだ。誰だって正しい道を歩み続けられる筈はない。レールの上をいつも走り続けていられる保証はない。
何処かで何かを間違える。真っ直ぐ、真ん中を、歩き続けていられる。それは、心が強いから出来る事なのだ。そして、殆どの人間の心は、弱い。
自分の歩いている道は本当に正しいのかと、常に不安を覚え続ける。自分の歩く道こそが中道の王道だと、狂信し続ける。その様な生き方では、いつかどこかで壊れる。精神的強者と弱者の違いは、その心が壊れるか否かの違いなのだ。


514 : Ghost Dance ◆zzpohGTsas :2022/01/03(月) 00:41:08 1bqA4GLE0
 何て事はない。秋月凌駕は、自分をライオンだと認識出来ていない獅子。強者だと言う事実を欠片も認識していなかった超人なのだ。
だから凌駕は、歩み寄ろうと。彼らの考えを理解しようと、寄り添った。今でも、凌駕は自分が本当に正しいのか、その答えを探し出せていない。
だが、これで良いのだと思っている。他人を理解しようとするその心だけは、俺は、間違っていないと。凌駕は信じているからだ。共感こそが、人を人たらしめる最大の力なのだから。

 あさひは、大人になりつつある。
他人を思いやれるようになる事が大人の階梯を上る事であると言うのなら、少女は、子供と大人の過渡期を今まさに歩んでいる時なのだ。
必死に必死に、彼女は考えた。他人の光(じんせい)を奪いたくない、自分も死にたくない、心を友達から遠ざけたくない。
その方法を、必死に、必死に。彼女は考えてそして………………思い浮かばなかったのだろう。そしてその末に、凌駕を頼ると言う選択を採ったのだろう。

 その必死さを。わがままを。現実から目を背けようとする愚かしさを。
秋月凌駕は、切り捨てられない。愛おしいと。思っていた。

「俺に出来る事なんてそう多くはないが、全力を出し尽くそう。それだけは、約束するよ。マスター」

「……へへ、やったっす。キャスターさんがわたしのユニット仲間で、正解だったっす!!」

 不安と憂いを帯びていたあさひの表情が、弾けるような笑顔に変わる。

「わたしが踊ってたあの場所……初めてプロデューサーさんがわたしに声をかけてくれた場所に、よく似てた。あそこで踊ってたら、いつかみたいにプロデューサーさんがやってきて、声をかけてくれるかも……って、思ったっす。でも、結局現れなかったっすね……」

「そう、だな」

「でも、それでへこたれるわたしじゃないっす。キャスターさんが代わりに来てくれたっすから、あそこで踊ってた意味は……やっぱり、あったっす!!」

 ああ、非合理的だ。
少女の言っている事には、裏打ちされた理論もなく、合理性も全くない。非科学的、とも言える。
結果として凌駕があの場所にいたから、意味があったように見えるだけなのだ。あさひがあの場所でステップを刻んでいたから、凌駕がいた、と言う因果関係ではないのである。

 その無邪気さを、愚かさを。凌駕は、愛する事にした。
人は愚かだ。過去に存在したあらゆる偉人に賢人の格言や、愚者の行いや思考を、冷静に俯瞰出来る、歴史、と言うツールを手にしていながら、同じミスを白痴の如く繰り返す。
何歩か進んでは、また大きく後退する。その後退からまた大きく進んでも、また同じ間違いや、人同士の諍いや足の引っ張り合いで、事が停滞する。
しかし、それでも人は目的に向かって歩けるのだ。進めるのだ。何千年、何万年経とうとも、人の代が変わり、思想が変質しようとも。憧れ(イデア)へと歩を進ませ続ける。
愚かである故に、当初の理想を捨て切れない。辿り着くのが無理だと解っていても脚を動かし続けられ、それをいつかは達成出来てしまう事。それこそが、人の強さなのだから。

「……何度間違えても、良いさ。その都度俺が何とかする。ゆっくりと、今は、歩こうか。マスター」

「はいっす!!」

 凌駕の言葉に、嘘はなかった。あさひの言葉に、不誠実はなかった。


【クラス】

キャスター

【真名】

秋月凌駕@Zero Infinity ―Devil's Maxwell―

【ステータス】

筋力D 耐久D+++ 敏捷D 魔力EX 幸運A 宝具EX

【属性】

『中庸』

【クラススキル】

道具作成:E+
キャスタークラスとしての体裁を満たす、申し訳程度のクラススキル。
キャスターの場合は後述のスキルによって発露される素粒子を元に、簡単な武装を創造し、己に纏わせる事が出来る。

陣地作成:-
キャスターはこれを保有しない


515 : Ghost Dance ◆zzpohGTsas :2022/01/03(月) 00:41:41 1bqA4GLE0
【保有スキル】

独覚:EX
目覚めた者。仏の教えを知る事無く、また、師の導きもなく、真理に到達し、悟りを啓いた者の事。
ランクEXは、この規格外に相当するスキルの中に於いてすら規格外のランク。キャスターは人生のある時、ある体験を経て、ある人物との繋がりを経た末に悟りを得たのではなく、
『生まれたその瞬間から既に悟りをその手に握りしめ、惑う事なくその悟りに沿った生き方を慣行』する事の出来た史上最初の人物である。
人類が永年の時を掛けて到達するべき究極の到達点、物質世界の栄華と技術の水準の極点に至るまでに人間が到達していなければならない視座。
生まれながらにこの域に踏み込んでいたキャスターは、生まれながらの仏陀であり、生まれながらの破綻者そのもの。
あらゆる精神攻撃をシャットアウトする精神防御として機能し、極限域のスキル・鋼鉄の決意を内包する複合スキル。

刻鋼人機:A+
イマジネーター。刻鋼式心装永久機関の移植手術を受け、人間から改造人間に生まれ変わった存在のことを指す呼称。
刻鋼式心装永久機関とは簡潔に言ってしまえば『永久機関』そのものであり、キャスターはこれを心臓に組み込まれている。
この永久機関から供給される力を以て、キャスターは戦闘を行う事が出来る。ランクA+はイマジネーターの頂点。
このランクに至ったものは、己の肉体そのものを一種の異界・異星法則と変じさせる、心装真理の発動を可能とする。
またこのスキルの持ち主は永久機関を保有していると言う都合上、魔力切れという概念がない(例外は存在する)。魔力ステータスのEXはこのスキルに起因する。
この永久機関を封印されてしまった場合、イマジネーターとしての力の一切を喪失してしまう。その状態であっても、魔力があるのならば、力は振るえないが現界する事は出来る。

【宝具】

『輝装・極秤殲機(First Form,Maxwell Destroyer)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
刻鋼式心装永久機関を励起させる事によって生み出される、質量ある素粒子、刻鋼。
キャスターの持つ宝具は全て、この素粒子を変形させ実体化させた物を装着したものであり、この宝具はその第一段階(ファーストフォーム)。
盾としても機能出来よう、両腕をくまなく覆う、武骨なガントレットのような形状をしており、これ自体が凄まじい質量を持つ為に単純に殴りかかるだけ大ダメージを負わせられる。
だがその真価は、極低温の冷気や超高熱を発生させ、打撃と共に叩き込むと言う事にあり、これを以て物理的な干渉力の他に属性的な大ダメージを負わせるのが、
キャスターの戦闘における基本骨子。この宝具を発動している間、キャスターの筋力・耐久・敏捷ステータスは1ランクアップし、キャスターでありながら白兵戦に耐えうる実力を得る。
ランクEは神秘性の薄さを示しており、刻鋼式心装永久機関により供給される魔力により、この宝具の使い過ぎによる魔力切れはない。

刻鋼人機スキルによって創造される最も基本的な武装であり、以降の宝具は、この第一宝具の発展形と言う事になる。
この宝具以降の武装を装着していない場合、キャスターは他のサーヴァントからはサーヴァントと認識されない。


516 : Ghost Dance ◆zzpohGTsas :2022/01/03(月) 00:42:29 1bqA4GLE0
『影装・皆既滅拳(Second Form,Devil of Eclipse)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
キャスターの有する第一宝具の発展形。己の中の認めがたい心の闇やエゴ、独善性、これらを認め、折り合いをつける事で発動可能な第二段階(セカンドフォーム)。
発動すると、確かに機能的でありながらも、人間の肉体の規格を逸脱した異形の姿になったり、精神的な安定を欠く事も多くなる影装の適合者の中でも、
キャスターは極めてその制御の安定に成功しており、ほぼ平時と変わらない精神状態で戦闘を行う事が出来る(と言うよりこのキャスターは影装の暴走に振り回される段階を卒業している)。

 能力の本質は、熱相転移による対象物の消滅。暖めたグラスを一気に冷却すると皹が割れるように、度を越えた温度の強制相転移によって物質を消滅へと導くという機能。
地球上のあらゆる物質を焼き滅ぼす超高熱と、絶対零度の超低温を両立したまま対象に叩き込む、という熱力学上においては空論そのものの、矛盾した消滅現象を攻撃として叩き込む。
直撃したならば、如何なる硬度、質量を有していようと原子核の崩壊と共に、跡形も残らず消滅する。いわば、当てれば勝ちの宝具。
またこの宝具の発動中、キャスターの筋力・耐久・敏捷ステータスは2ランクアップし、上位の三騎士サーヴァントとも渡り合える強さを獲得する。

 自分の有する哲学が、自分だけしか成し得ないもの。他者からすれば異常者の理屈を、当たり前のように行えてしまえる自分への不信。
何故自分以外の誰も行えないのか? と言う疑問と、それを行えてしまう自分がおかしいのだろうか、と言う自己矛盾が形となったのがこの宝具の本来の姿。
現在このジレンマをキャスターは克服しており、この点を突いた精神攻撃はキャスターに対し一切の痛痒も与えない。

『心装真理・均衡の彼方に、森羅掌握されるべし(Zero Infinity,Devil of Maxwell)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:- 最大補足:-
キャスターの有する第三宝具。己の存在意義を理解し、同時に、己の光の部分と闇の部分を受け入れ、その上で、自分が世界にとって何を成し得るのか。
そして、その事を実行できるのか? フリードリヒ・ニーチェが説く所の超人思想そのものになって初めて会得出来る、イマジネーターの最終段階(サードフォーム)。
人間世界を縛る諸々の摂理、その軛を破壊出来る機械仕掛けの神に己を変じさせる宝具であり、魔法そのものに形容される、人類の持つ技術の枠組みを超越した力を行使可能。
発動すると刻鋼は全身くまなく鎧のように展開され、宝具の発動中はキャスターの筋力・耐久・敏捷ステータスは全てA++に修正される。

 能力の本質は、『熱量の完全操作』。が、実態はそんな生易しいものでなく、『全ての事象の安定化・活性化』を司る能力。
宇宙に存在するあらゆる事象を、その活動内容を理解し、操作する能力。熱とはこの宇宙を貫く根源的な摂理(ファクター)の一つであり、
どれほど強力な機能であろうとも、常識、つまり通常法則の延長線上にある限り発生した理屈は単なる0と1の羅列に過ぎず、共通項を多分に含んだ法則である。
活性と非活性、運動と停止、全ては熱と言う法則に通じているからこそ、それがエネルギーを変化させる行いである以上は、熱という摂理・真理の桎梏からは逃れられない。
能力の発動中は、核兵器の炸裂程度の熱ならこれを操作し完全に無効化出来、ブラックホールそのものを『掴み』、その威力を増幅させた上で投げ返す、
と言う意味不明の所業も可能である。また、熱量の操作、即ち事象の安定と活性を司る事が能力の本質である都合上、条件さえ整えば恒星の熱運動すら一瞬で機能停止させ、
消滅させる事も、逆に励起させる事で大爆発を引き起こし星系そのものを消滅させることだとて可能。

 サーヴァントとしての宝具の軛を遥かに超えた宝具であるが、サーヴァントとして召喚された都合上、弱点も多い。
言うまでもなく魔力消費は激甚かつ劣悪の一言。言ってしまえばこの三次元空間に、機械の神を顕現させるに等しい行為に等しい為であるからだ。
また、既存の物理法則下の現象であるなら上述の通り全て掌握可能だが、この宝具と同等ランクの独自法則下の現象、並びに、
物理法則に全く依らない異星・異界法則の下による現象については、瞬時の制御・安定・活性は不能。但し、時間が掛かるだけであり、全く制御出来ない訳ではない。

【weapon】


517 : Ghost Dance ◆zzpohGTsas :2022/01/03(月) 00:42:40 1bqA4GLE0
【人物背景】

生まれながらの超越者。ブラフマンの導きなくして悟りを得た仏陀。人類種の到達点。精神的超人。
神に等しき者になり得たがしかし、俗世の塵埃に塗れる事を選び、愚かな人類を愛すると決め、多くの中の一人として生きる事を誓った。

適正クラスはキャスター、セイヴァー、ルーラーの3クラス。ただし後ろ2つは、本人が超越者だとか支配者としての道を嫌う為、このクラスで召喚される事はない。

【サーヴァントとしての願い】

なし。



【マスター】

芹沢あさひ@アイドルマスターシャイニーカラーズ

【マスターとしての願い】

元の世界に帰る。聖杯を使うのは283やストレイライトの皆、プロデューサーに悪いので考えてない

【能力・技能】

アイドル:
アイドルとしての才覚。その才覚は天才の評価に限りなく近く、特にダンス、換言すれば運動神経については他の追随を許さない。
また記憶力も抜群に良く、それは肉体面にも当てはまる。写真的な記憶力に優れているのか、映像を見ただけでその動きを完コピする事が出来る。

【人物背景】

見出された頃には、完成に近づいていた天才。人としての温かみや機微を理解しつつある、アイドルにして、『少女』。


518 : Ghost Dance ◆zzpohGTsas :2022/01/03(月) 00:42:51 1bqA4GLE0
投下を終了します


519 : ◆Uo2eFWp9FQ :2022/01/06(木) 18:29:52 IhN2Niic0
投下します


520 : 「  」 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/01/06(木) 18:30:51 IhN2Niic0




愛するものから憂いが生じ、愛するものから恐れが生ずる。愛するものを離れたならば、憂いは存在しない。
どうして恐れることがあろうか?

                                       ───ダンマパダ第十六章『愛(Piya-vaggo)』




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


521 : 「  」 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/01/06(木) 18:31:59 IhN2Niic0





二〇二一年、東京、七月二十九日、夜───

東京の酷暑は一時的に鳴りを潜め、涼やかな夜気がそよぐ風となって流れていた。大都会を行き交う自動車の喧騒も遠く、街角を見渡せるカフェのガラス張りのウィンドウに、水滴が筋を引いて流れ落ちていった。
不夜の街の明るい賑わいはカフェの落ち着いた雰囲気の中にまで入ってきていたが、過剰にと言うほどでもなかった。アンティーク調の室内調度を強調するように古く厳かなメロディが滔々と流されているが、そこまでだった。店内の主役はあくまで客の安らぎであり、いわゆる都会の喧騒というものは邪魔者ではないにしろ、ここでは丁重に外へ連れ出されるものであった。
人の姿は少ない。カウンターの向こうの厨房にたたずむ口数少ない店主を除けば、たったひとりだけ。その人物は身体を包み込む肘掛け椅子にゆったりと腰かけ、分厚い樫のテーブルに向き合って静かに両手を置いていた。
尼僧であった。
黒袈裟と白生地の袖頭巾を身に羽織る、それは紛れもなく尼僧の女性であった。欧州趣味の店内からは明らかに浮いているはずの彼女は、しかし鷹揚とした心地で手元のコーヒーカップをつまみ、ゆるりと口元に運ぶ姿が不思議と様になっていた。
切れ長に細められた瞳は彫深く、綺麗に整えられた睫毛が僅かに灯の光を反射していた。白磁の肌は染みひとつなく、ティーカップに口づける桜色の唇は瑞々しくも目に映え、まるで宗教的彫刻のように完成された均整をこそ誇っていた。
一般に、尼となった女性がその髪を剃り上げることを尼削ぎと呼ぶ。しかしそれは肩口で切りそろえた、現代で言えばセミロングにあたる髪型である。長い髪を殊更大事にする価値観があった時代において、仏門に帰依した女性であってもそれは例外ではなかったことが伺える。翻ってこの女性は、しかし白布の袖頭巾から覗くはずの髪は一切見えない。尼削ぎどころではなく、完全に剃り上げているのだ。剃髪(ていはつ)、あるいは禿(かむろ)と呼ばれる、仏門に帰依し奉る者にとっては慣習的な髪型であった。
しかし、それはこの女性が持つ美しさには何の悪影響も与えてはいなかった。その美はまさしく後光めいて映り、端正な顔立ちと醸し出される慈愛めいた表情を猶更に強調する結果となっていた。何より恐ろしいのは、彼女は観念的な美を持つと同時に、酷く蠱惑的な、女としての美すら持ち合わせているという事実であった。
性的な要素は何一つとして露出していないにも関わらず、何と煽情的な女であることか。歓びの桃(いろ)に染まった色香は男女の区別なくして、万人を等しく誘惑し、引き込むのだろう。
宗教的な神秘性と、俗な女の美しさ。
一見して相反する二つの属性を両立させながら、しかしそんな超越性など露と見せぬまま、女はただ静かに、カフェの一角に腰かけているのだった。

「……あ、申し訳ない」
「いえいえ、お気になさらず」

テーブルの間をすり抜けようとして、載っていた本を落としてしまった青年に、彼女はにこやかに首を振った。

「もう読み終わった後なので、どうぞお構いなく」

しかし青年はかがんで書籍を拾い上げ、丁寧に汚れを払い落としてから彼女に手渡そうとし、ふと動きを止めた。そこに書かれた文字を読み、ためらいがちに。


522 : 「  」 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/01/06(木) 18:33:11 IhN2Niic0

「立川流……失礼ですが、貴女は真言宗の尼僧の方ですか?」
「おや」

女性は温顔を僅かに驚きの表情に変え、改めて青年に向き直った。黒目黒髪の、見たところ高校生程度の年頃の青年である。彼は穏やかな眼差しでこちらを見遣り、続く言葉を待っていた。

「ええ。仰る通り、恥ずかしながら仏門の末席を汚す身の上でございます。貴方───ああ、かわいらしい御仁。まだお若いのに仏の教えにご興味が?」
「というほどでもないのですが、不躾ながら少しだけ気になって。立川流といえばもう随分と昔に途絶えてしまった流派ですし、同じ宗派からすればいろいろと複雑な事情もあるでしょう」

テーブルに置かれた本の表紙には、「真言立川流の真実」という文字が大きく印刷されていた。
青年の言う通り、立川流とは真言宗の一派ではあるが、江戸時代の中期には完全に途絶えてしまった傍流の教義である。というのも、性的儀式を信奉する「彼の法」集団との混同、髑髏本尊を祀る邪教との謂れなき風評被害に遭い、その勢力を減らしていったという経緯があった。
後年の研究によって立川流・彼の法集団・文観派の三者には一切関係がないとされたものの、それが明らかになったのは21世紀に入って以降。幾度となく繰り返された濡れ衣とバッシングは熾烈を極め、同じ真言宗からすら近年まで白眼視されてきたのは語るに及ばぬところではあった。

「先ほどは真言宗の一派と申しましたが、実のところ私の生家は詠天流というものを奉じておりまして───他ならぬ立川流の宗家、ということになるのです」

今度は青年のほうが驚きの表情をした。それを前に、彼女はくすりと笑う。

「驚きました。まさか現代まで立川の流れが息づいていたとは」
「それも私で末代になってしまうわけですが……もし、よろしければ暫く話し相手になってはもらえませんか? 私のような者にとって、若者の快い声で語り合うことほど、嬉しいものはないのです」
「よろしいのですか? では、お言葉に甘えて」

そう言うと、青年はテーブルを挟んだ向かいに滑るように腰を下ろした。朝露の一滴が流れるような優雅な動作であった。どこにでもいる普通の一般人にしか見えない彼であったが、どこか言い知れぬものを、それこそ気品であるとかそういった内面的な素養を感じさせるものがあった。


523 : 「  」 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/01/06(木) 18:33:54 IhN2Niic0
「申し遅れました。私、殺生院キアラと申します。何分山奥で育った世間知らずでして、無作法がありましたらご容赦を……」
「とんでもない。無作法があるとすれば、若輩者である自分にこそあるでしょう」

そう言うと、青年はまばゆいばかりの笑顔を見せた。鏡に反射した太陽を直接目に投げ込まれたような心地を、キアラは感じた。らしくもなく。
カフェオレが運ばれて、青年のわきに置かれた。口数の少ない店主によるものだ。キアラはちょうどいいと思い、コーヒーをもう一杯注文した。

「恥を晒すようですが、俺は仏門の教えにはとんと疎いものでして……ですが、聞きかじりの知識でも、その教義には一定の共感を憶えます」

青年は運ばれたカフェオレには手をつけず、淀みない口調で話を続けた。

「まず最初に釈尊……目覚めた人であるゴータマ・シッダールタが在り、彼は自ら悟って覚者となった。仏教はゴータマが悟りに至った道を指し示すものであり、いわば一種の教本のようなものである、と」
「その通りです。しかし、仏教では決して、それを学べば救われるとは語られておりません。なぜならば……」
「その教えだけが仏に至る道であるわけではなく、覚者になる方法は人それぞれであるから」

キアラは言葉なく首肯する。

「仏教に語られる仏……如来、菩薩、明王といった尊格は架空のものであり、実際には存在しません。存在しない、というのは無神論者が冷笑と共に語る神性の全否定ではなく、そもそも仏教という教えの中にあって彼らは一個の人格を持つ存在として語られてはいない、という意味です。
 ひどく大雑把で恣意的な言い方をしてしまえば、元来仏教というものは宗教ではなく哲学に分類されます。釈迦たるゴータマがその生涯で悟った人生哲学を記したものが初期仏教であり、その膨大な教えの記述を個々に纏め、衆生にも分かりやすいように教えそのものとその教えを遂行した結果を擬人化したものが仏……尊格として語られる如来や菩薩や明王になるのです。その意味でいえば、真に仏と言えるのは釈尊ただひとりであり……」
「そして将来、彼と同じく悟りに至るであろう誰かこそが仏であると。彼の教えにおいて人はみな仏になる可能性を秘め、誰もが最後には悟りに至れるのだと説いているのですね」

青年はやはり笑みを浮かべて、言葉を続ける。

「仏が神ならぬ人であるとするならば、その世界観において世界、すなわち宇宙を満たすのはやはり神性ではなく、因果である。物事の成立には全て原因と結果があり、偶然が挟まる余地はなく全ては必然の現象であるのだと」
「この世は総じて一切苦。そして全ての現象に原因があるのだとすれば、人が抱く苦しみにもまた原因があり、したがってそれを取り除けば人は苦界から解放される。いわゆる解脱論でございます」

キアラの言葉を、青年もまた首肯する。


524 : 「  」 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/01/06(木) 18:34:35 IhN2Niic0

「以前、このようなことを文献で見たことがあります。現在の世界を満たす数多の苦痛と混乱、至るところに散見される惨苦の数々は、未だ人が幼年期の途上に在り、辛い成長の半ばにあるからだと」

受け売りの言葉を語ることに若干の恥じらいがあるのか、青年は少しだけ照れたような口調で続けた。

「系統樹の枝は発散と収斂を繰り返し、何度も枝打ちされては伸びていき、遂にはその先端に人類という花を咲かせた。であるから人間は決して、冷笑主義者(ペシミスト)たちが語るような、遂には自滅すべき失敗作ではなく、地球という母にとりついた異形のがん細胞でもありえない。すべての人、すべての人類が、いずれは精神圏(ヌースフィア)と呼ばれる一個の活動的な精神体を築き上げ、進化の頂点にして超人類への道である、オメガ点へと上昇していく……」
「まあ、それはとても面白い考え方ですね。聞いたところ、基督教的な色が強いように感じますが」

ええ、と青年が認める。どうやら、異なる宗教観の類似性に興味を抱いていたようだ。

「であるならば、人類が至るべき極点である悟り……その方の言葉を借りればオメガ点こそが、覚者たる仏陀との合一の瞬間であり、人が、基督教においては神に望まれたとおりの生き物として進化を遂げる場所と言い換えてもよいのかもしれませんね」
「哲学的な仏教と宗教としてのキリスト教を同一線上に置いて語るのは根本的にナンセンスではあるんですが……しかしやはり、人と覚者は隔絶した二つの属性などでは決してなく、延長線上にある同じもの、元来同一たるべく作られたものであり、その意味で両者は対等であるのだと」

一転して、青年はやや難し気な表情になる。

「仏教は後年には衆生救済の方向性が生まれましたが、成立段階においては自力救済、個人救済の営みでした。悟りを得た人間が仏陀と対等であり、むしろ同一体とも呼べる存在ならば、苦界である世の理も、過去に自分たちが辿ってきた汚濁に満ちた歴史も全て知っているはずです。それでいて、何故彼らはそれを変えようとはしなかったのでしょうか。自分たちの精神的血に連なる先祖が、子孫が、存在の不完全性にあがき、憎みあい、傷つけあい、殺しあうのを、どうして黙ってほうっておくのでしょうか」
「それはきっと、そうした段階が必要なものであるからでしょう」

キアラは迷いなく告げる。


525 : 「  」 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/01/06(木) 18:35:30 IhN2Niic0

「人は誰しも生まれながらに完全なものではありえません。生まれて後はまず外界を認識し、言葉を覚え、やがては自らの足で立ち、一歩一歩を踏みしめていくのです。時には転ぶこともあるでしょう。手や足を擦りむいて血を流すことだって。そして痛みに戸惑い、涙を流し、蹲っては歩くことを放棄することだとてあるかもしれない。しかしそうやって、人は少しずつ、少しずつ、歩くこと、そしてやがては走ることを覚えていく。後になって思えば微笑ましい失敗も、その時は懸命の努力であり、血と痛みを代償にして悟りに至る道を歩んでいくのです」
「苦しまなければ成長できないというのであれば、人はみな傷だらけになるべく生まれてくるのでしょうか」

青年は反問した。

「人生における価値基準は、もちろん千差万別であって一概に比較することはできません。しかし単純な幸不幸を基準として置いた場合、傷つかなければ成長できないのであれば、人は生まれてこないことが正解というおぞましい結論になってはしまわないでしょうか。痛みも必要経費だからと放っておくという行いは、まさにその惨苦の渦中にある人間にとって、そのような覚者の態度はひどく冷酷なようにも思えます。確かに歩行すら覚束ない幼児にとって、よろめきながらも歩き出し、転んでは泣きじゃくる段階は必要でしょう。しかし、その泣いてる幼児を抱き上げる手や、涙を拭い傷を手当してくれる手は、存在しないのでしょうか。人たる覚者は、そうした属性を持たないのでしょうか」
「人はこの世に生まれるべきではない、というのは仏教観としては決して間違ったものではありません。というのもこの世は全てが苦であり、生誕や転生そのものは救いなどでは決してなく、むしろそうした輪廻からの脱出こそが唯一無二の救済となると定義されています。であればこそ、貴方が言った手を差し伸べる属性とは、すなわち覚者ではなく今を生きる衆生にこそ宿るべきものなのでしょう」

キアラは自らの胸に指をあてて、殊更強調するように指し示した。

「ですので私は、そうした物事において覚者たる釈尊が手を出す必要はない、と考えております。泣いてる子供に手を貸し、傷を労り、泣き止ませ、手を繋いでいくのは、同じ時代を生きる人々の役目であるのでしょう。そうやって人々は互いに支えあい、さらなる成長の糧とする。覚者が手を出すことは、この場合、かえって子の発達を遅らせることにしかならないのです」
「けれど、そうした行いは覚者の胸を痛ませやしないでしょうか。親が子の転ぶ姿を見て胸を痛めるように、彼らは苦痛を感じたりはしないのでしょうか」
「感じるのでしょう。覚者たる釈尊はまた慈悲でもあるのです。どのような人物の痛みであろうと、我が身に打ち据えられた鞭のように同じく苦しまれる。けれどその痛みは必要なものと知っているので、我々と同じ苦痛に覚者自身も耐えつつ、人類がその足元に到達する日をずっと待っているのです」
「ええ、その通りだと思います。"俺は"」

その言い方に違和感を覚えたキアラは、まじまじと青年を見た。彼は変わらず柔らかな笑みを浮かべて、キアラをまっすぐに見つめている。

「貴女は今まで語った全てを、そして人間のことを───全く信じていないのですね」


526 : 「  」 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/01/06(木) 18:36:18 IhN2Niic0







───それは、ムーンセル・オートマトンが存在する宇宙における、遠い未来のこと。

一度は訪れた破滅の波を乗り越えて、人という種はいつしか星の海へと飛び立つまでに至った。光子結晶の大演算器がもたらした可能性と、積み上げた叡智。そして星海にまで版図を広げた人類は一個の超意識に相当する調和の取れた意識群への到達に直面する。
旧時代において語られた魔力さえ超えた量子たるそれは、あらゆる場所、あらゆる時、あらゆる場合に存在し、人々と共に進む。彼らの精神を繋ぎ合わせ、知らぬ間に躍動するいくつものモナドを構築する、ひとつの巨大な精神圏として成長する。
その世代においては、子供たちはそうしようと思えば星々の彼方に居ながらにして覗き込み、次元の後ろに手を伸ばして、過去にいる友達の頬をつねることができる。流星をおはじきにして点取りゲームをし、恒星の周りで手を繋いで踊る。ピンポン玉を弾くように、複雑な概念の矢を投げ合い、検証と反証を繰り返し、見事な思念の伽藍を作り上げる。
傷つくことを忌み、成長を望まず、ただ安らかな平穏よ在れと願うことは、すなわち揺りかごの中で微睡むに等しいことを意味する。人類は今、まさに揺りかごから手を伸ばし、一歩を踏み出したのだ。世代を重ね、時を重ねるほどに彼らの精神は自らが生きる精神圏において緊密に結びつき、互いに刺激しあって自己を高める量子の集合体として、星の世界へ伸びていく。

そして待つ。五十六億七千万の永劫の彼方に降臨する者を、彼らは待っている。
彼らの手を取り、安らぎの揺りかごである物質の殻を脱ぎ捨てて、次なる世界へ導いてくれる、勝利者、救済者、目覚めた者、調律者、響界心奏者───その者を。






527 : 「  」 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/01/06(木) 18:37:29 IhN2Niic0



瞬間、世界はまさしく姿を変えていた。
カフェテラスの照明を消し去って、夜の闇が一気に押し寄せたと思わんばかりの漆黒が、辺りを覆ったのだ。そこにはキアラと語り合っていた青年ひとりしかおらず、他の誰も、キアラも、カフェの店主も、まるでいない無辺の闇ばかりが広がっていた。
彼は、己に向けられるものを知っていた。それは殺意ではなく、敵意でもなく、厳密には青年自身に向けられたものですらなかった。
それは愛だった。殺生院キアラが殺生院キアラ自身に向けた無限大の愛が、そこにはあった。彼女は確かに人類を愛していた。違っていたのは、彼女が定義する人類とは殺生院キアラただひとりであるということだった。
その、余人など容易に押しつぶして余りある巨大質量の愛の感情がまさしくうねりを上げ、無謬の闇の中を荒れ狂った。それは物質ではなく精神的な、それもひどく観念的な次元における大嵐に等しかった。恐ろしいことに、それは決して破壊的な性質ではなく、むしろ快楽という万色の性質をこそ有しているのだった。
耐えられる者など居はしまい。知性持つ者ならば誰もが抗えない、人生そのものを一瞬にして昇華させる対星の欲望。
曰く、『この世全ての欲(アンリマユ/CCC)』
その本流を一身に受けて───青年は静かに瞼を閉じ、数舜の間を過ごしたかと思えば、再びその瞼を開けた。
その瞬間には、世界は既に元の景色を取り戻していた。明るいカフェテラスの店内、注文したカフェオレは暖かな湯気を立て、ほんの僅かな時間も経っていないことが分かった。

「そういえば、まだ名乗ってもいなかったんだな」

そこで初めて、彼は手元のティーカップを取り、口元まで運んだ。少しだけ温くなったカフェオレの甘さが口の中に広がる。こうした店物のコーヒーやらの味について彼は詳しくなかったが、素直に美味しいと感じた。

「俺の名前は秋月凌駕。クラスはチューナー、貴女のサーヴァントという奴らしい」
「貴方は何者ですか」

その質問が、サーヴァントの身の上であるとか、生前の職業や立場について言っているのではないことを、彼は知っていた。

「俺は人間だよ。幸せに笑い、哀しみに泣き、理不尽に怒る、ただの人間だ」
「そんな戯言を───」


528 : 「  」 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/01/06(木) 18:38:22 IhN2Niic0
その時、キアラは言い知れぬ激情と共に青年の眼を直視した。そして不意に、寒気を感じて言葉を詰まらせた。穏やかなその視線に、何か巨大な、非常に巨大なものの一端と、自分が向かい合っているような気がした。
その感覚には覚えがあった。中国の奥地、はるかな古代に築かれた石窟寺院の大伽藍の中で……あれは何だっただろう……壁に描かれた彩色画だったか、それとも……ああ、ひび割れた壁の向こうから見下ろしてきた、彩色された仏像の、うすく開いた目と微かなアルカイック・スマイル───
不意に訳も分からずキアラは息が詰まるのを感じた。静かにこちらを見つめる青年の瞳が一瞬輝きを増したかと思えば、あたりを包み込むように感じられた。居心地の良いカフェの景色はその中に溶け去り、恐ろしい虚空の中に宙づりになっている自分にキアラは気づいた。そこには何もなかった。何も、何も……ただ遥か底のほうから、幾重にも重なった呻き声、苦痛の声、怨嗟の声が、絡みつくように這い上がってきた。
それらは進化の途中、歴史の途中で踏みにじられた大量の生命であり、死であり、積み重ねられた無惨と人間的営利の残骸だった。それらはこぞって手を伸ばし、キアラの体に巻き付いては暗黒の底から呪詛の言葉を吐きつけた。キアラはそれ自体に恐れを感じはしなかったが、しかし、遥か頭上に視線を合わせ恐慌に顔を凍らせていた。天を仰ぐキアラの視界には、救いはなく、罰もなく、当然に神も仏もなく、ただ己が呼んだであろうサーヴァントであるあの青年の瞳が、どこか哀しげに、あるいは広大な慈悲を湛え、あるいは巨大な憤怒を秘めて、冷たい太陽のように輝いているばかりであった。
キアラは必死にもがき、彼の瞳から逃れようとした。できなかった。彼女もまた人間であり、人間であることからは逃れられなかったのだ。例え獣に堕ちようとも。

「  !」

それを形容する言語は存在しなかった。
キアラは自分の喉が悲鳴で凍り付くのを自覚した。

「  !   ……!」

ふっ、と意識が遠くなった。視界が漆黒に遮断されたと思った一瞬、キアラははっと息を吐き、自分が呼吸を止めていたことに気づいた。冷汗が流れて額を伝っていた。

「俺からもひとつ、質問させてもらうとするよ」

青年は僅かに窓を開け、カフェの外の景色を眺めていた。伸ばされた前髪が夜気の風に当たって揺れている。

「マスターは俺のことを何者だと思っている?」

キアラは荒く息を吐き、呼吸を整え、能面のように固まった表情のまま指さした。
それは何かを糾弾するような、あるいは得体の知れない何かに恐怖するような。

「悪魔」



『───感じるのでしょう。覚者たる釈尊はまた慈悲でもあるのです』



青年はやはり、微かな笑みを浮かべたままだった。
それはかつて彼女が語った通り、慈悲と呼ばれるものであった。


529 : 「  」 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/01/06(木) 18:39:10 IhN2Niic0






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






語り得ぬものについては、沈黙しなければならない。

             ───ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』




【クラス】
チューナー

【真名】
秋月凌駕@Zero Infinity

【ステータス】
筋力E 耐久EX 敏捷E 魔力- 幸運A 宝具-

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
多元調律者:C
存在の奏でる音を束ねる者。響界心奏者。
すべての粒子は固有の振動を持ち、それが正しく振動するとき物質は生まれ消滅する。しかし振動する粒子自体は消えることなく別の振動数に移り、また別の物質が生まれる。
このようにして空間は存在という永遠の演奏に満たされ絶えることがないが、彼は既に存在の音であることから解き放たれている。
このスキルを持つ者は、本来ならば存在を脱し、因果に囚われることなく、時と空間を超越し、最早世界法則にすら縛られることはない「自由の岸辺」への到達さえ可能とする。
しかし彼は人の身であると同時に「人の世界を維持する者」であるため、上記のような特性を得ることは終ぞなかった。
無限の飛翔を果たすことのできる翼を持ちながら、弱々しく地を這う只人であることを善しとした者。そのため大幅なランク低下補正を受けている。


530 : 「  」 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/01/06(木) 18:39:57 IhN2Niic0

【保有スキル】
"人間":-
人という種が数億年に渡る進化と無限数の悲劇・惨劇を積み上げた果てに得るはずだった「答え」を、何故か生まれながらに獲得していたという事実。
理由なき強者としてこの世に生まれ落ち、そうした"超人"という在りかたさえ超克した姿。
彼は人の形を得たイデアであり、アナムネーシスの体現者であり、レテの川の彼岸に立つ"人間"である。
秋月凌駕という個の完成を以て、人類の存在意義は達成された。
彼という存在を受容できたその時こそ、人類種にとって幼年期の終わりである。

独覚菩提:-
苦界からの解放。世界という存在の音から完全に解き放たれた者が纏う守護の力。対粛清防御と呼ばれる“世界を守る証”。
物理、概念、次元間攻撃等を無条件で望んだだけ削減し、精神干渉は完全に無効化する。
スキル「神性」での対抗はできず、「人を脅かすことのない」「何の力も異能も持たない只人」だけがこの守りを突破できる。
このスキルは決して取り外すことはできず、またこのスキルがある限り彼のアライメントは中立・中庸から変動することはない。

【宝具】
『世へ在るがままに平穏なる調停を(パーソナル・アタラクシア)』
ランク:- 種別:対人理、対終末、対永劫、対粛清宝具 レンジ:∞ 最大捕捉:∞
彼が自ら抱いた命題と向き合い、その人生の旅路で気付いた悟り。限りあるヒトが生み出した、たった一度きりの奇跡の流星。
大地を満たす総ての真理に掲げられた、流転する命の答え。遠未来においては心奏と呼ばれる極晃の星。響界式心奏永久機関。
単独の存在でありながら精神圏(ヌースフィア)へ至りΩ点を超克した人間・秋月凌駕が至った解答とは、「人が生きるべき世界の在りかたを指し示す」というもの。
エゴにおいて得るのが熱量の操作、イドにおいては相反する熱量の両立という矛盾の実現。そして真理においては万象の掌握であり、更にその先へと至った姿。

宝具としての効果は「人類存続の最適値まで万象を強制調律する」というもの。
「事象の安定化」という能力を「人間にとって穏やかなる状態」という、より明確な定義に集中させた事により、事象に対する作用力が可能性領域にまで拡大している。
世を生きる人々が刻む心臓の鼓動、即ちただの人間の望む温度と波長を基軸として、人間にとって最適な状態へと万象を調律する。
暴風はそよ風に、業火はたき火に。これは数多の可能性世界を観測することによって割り出した、世界が続く上での最適値。
それは人理テクスチャを貫く最果ての聖槍とも類似した存在ということになるが、世界の維持に重点を置いた聖槍とは異なり、彼の場合は人理の存続に重点が置かれている。
すなわち、本来ならば時代によって固定化されるべき人理定礎を、秋月凌駕という単一の個体のみでの構築に成功しているという事実。意思を持ち物質として具象化した霊子記録固定帯。
彼が"人"である限り、何者も星の均衡を脅かすことはできない。

億年の果て、人類が一切苦を克服し各々の真理を獲得できるほどに成長するその時まで。
人がいつか必ず至る答えに続く道を守護し、維持する安らぎの揺り籠。やがて人類がこの揺り籠を脱し自ら歩き出すその日まで、秋月凌駕は総てを見守り続ける。


531 : 「  」 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/01/06(木) 18:40:28 IhN2Niic0


【人物背景】

     悟りし人のかんばせは気高く輝き、神々しい姿は何よりも尊い
     その光明は何ものも及ぶことなく
     太陽も月も宝玉の輝きも
     その前にすべて失われ、あたかも墨塊の如くである

どこにでもいる普通の人間。人となった超人。
彼は決して狂人なのではなく、彼ひとりが正気であり、彼以外の全人類が弱さと愚かさに狂っているだけなのだ。

【サーヴァントとしての願い】
???


【マスター】
殺生院キアラ@Fate/EXTRA CCC

【マスターとしての願い】
???

【weapon】
なし

【能力・技能】
心の解析、治療に秀でたウィザード。我欲を縛る我執封じの五蘊黒縄は隙さえあればサーヴァントでさえ拘束することができる。

【人物背景】
恋に破れた愛の獣。


532 : ◆Uo2eFWp9FQ :2022/01/06(木) 18:41:07 IhN2Niic0
投下を終了します


533 : 光往く闇の行方 ◆zzpohGTsas :2022/01/21(金) 19:54:05 rXWWY5hw0
投下します


534 : 光往く闇の行方 ◆zzpohGTsas :2022/01/21(金) 19:54:27 rXWWY5hw0
 その女性を見た時『春日一番』が思った事は、とんでもなく美人の姉ちゃんだな、と言う事だった。
顔立ちよりも何よりも、先ず驚いたのは、その白さだった。此処までの色白の女性は、産まれてこの方一番はお目に掛かった事すらなかった。
血液が血管を流れている様子が透けて見えそうな程に、白い肌。それが透明ではないと頭で理解していながらも、身体の中身が、透けて見えるのではと思う程に、綺麗な色白の柔肌だ。
髪の色も、白かった。一番は白い髪とは老人やストレスを抱え込む人間に特有のものだと思っていたが、その考えを改めた。彼女の白い髪は、持って生まれた、天然のそれ。
精神状況や肉体的な負荷によって、白く染まったと言う風ではなく、初めからそうあれかしと、設計図の段階で定められていたような、そんな自然な白。
その証拠に、彼女の髪は輝いていた。老人の白髪のような、枯れたような雰囲気は感じられない。瑞々しい、若い生命力で横溢していた。

「召喚に応じ、参上致しました。セイバーのサーヴァント……その名を、『ウェンドリン』と申します」

 よく透る、若い女の美しい声だった。見た目の美しさに違わぬ、見事な声。鈴を転がしたような、と言う比喩は、成程、言い過ぎではないのだなと一番は思う。
十代の面影を色濃く残す、血色の瞳が特徴的なその顔は、尻もちをついている一番の方に向けられている。
見おろされてはいるが、見くだされてはいない。あくまでも、目線の高さがそうであると言うだけで、今の立ち位置に、マウントのような関係性は一切ない。

「セイバー……? ってーと……ドラクエとかで言う、勇者とか、戦士みたいなものか……?」

「? ど、らくえ……? 勇者であるかどうかはともかく、戦士と言うのは、まぁ、そうなのかな……?」

 一番からすれば、セイバー、つまり、聖杯戦争に於ける『剣』を担当するこのクラスは、一番の生き方に強い影響を与えたファミコン・ソフト。
即ち、一般的に『ドラゴンクエストⅢ』で言う所の、勇者ないし戦士をイメージした。剣を扱う職業と言えば、この2つである。
一番もこの職業が好きだ。勇者は兎も角、戦士はPTにいつも組み入れていた。性別は、気恥ずかしさからか、いつも男で選んでいたが。

 ウェンドリンからすれば、戦士としては兎も角、自分が勇者であると言う自覚は大してなかった。
何方かと言えば彼女は、自分の事を騎士と自負している。自分の育ての親であるカムール伯爵を、彼女は甚く尊敬していた。 
彼のような高潔な騎士に憧れて、ネルやパリス達に混ざって冒険の真似事をしたものである。尤も子煩悩のカムールは、彼女が剣を取る事には、長い間反対していたのだけれど。

「あー、まぁよ。良いとこの出なのは間違いないんだろ? その、悪いな。こんな所でよ」

 一番はウェンドリンの身なりと、立ち居振る舞いから、しっかりとした家の出身である事を見抜いた。
その理解は正しい。彼女は騎士としての誉れも高い、カムール伯爵の嫡出子として、相応しい教育を受けて来た、世が世なら貴族の一員としての在り方を嘱望された女性なのである。
それだけに、この部屋で話をする、と言うのは、一番にとっては失礼なんじゃないか、と思うのである。

 七畳一間の畳張り、それが一番の住まう部屋だった。
畳は長年変えていないのか、タバコのヤニや、身体から出る汗や垢で変色。虫食いやら、タバコの焦げ跡やらも目立つものもあり、余りにも見てくれが悪い。
この部屋は――一階の小料理屋を営むベトナム人女性が、そのままもう一つの仕事に使用している部屋だった。小料理屋とは、体裁上のもの。
店で会話する内に仲良くなったと言う名目の下、二階に上がり、別料金で性的なサービスを行う所……と言うのが、この小料理屋の実態である。
風営法の隙間を掻い潜るようにして運営されている、『売春宿』。明け透けな言葉で言うのであれば、そうと言う事になるのであった。


535 : 光往く闇の行方 ◆zzpohGTsas :2022/01/21(金) 19:54:43 rXWWY5hw0
「別に大丈夫。四方が壁に囲まれて、天井があるだけ、マシな方ですから」

 寧ろウェンドリンからすれば、天井があって、しかも、寝っ転がっても問題ない場所と言うだけでも、上等過ぎる方とすら言えた。
確かに彼女は騎士の嫡男であるが、時と次第によっては騎士とは、家を捨て、何週間、事によっては何か月にも渡り、領地を遠く離れた戦場で過ごさなければならない責務を、
負わなければならないのである。勿論住み慣れた我が家を離れ、融通の利きにくい他所の土地で生活しなければならないのだ、ストレスにもなる。
だがそれ以上に、今一番が申し訳なさげにしているこの一室レベルの部屋にですら、滞在出来ない局面に陥る事すら往々にして起こり得るのだ。
戦場で拠点を焼かれた時、移動の最中に襲撃された時。その様な状況に直面した時、安宿どころか厩にですら身を寄せられない事が殆どである。
そうなれば、残る道はキャンプしかないが、そう簡単な話ではない。要するに野宿であるのだから、何時何人に襲われてもおかしくないのだし、何よりも、飲み水や食料の安定した供給も、次第によっては困難となる。総じて、ストレスの種にしか通常はなり得ない。

 それを思えば、天井があって囲いもある。つまり、雨風を凌げる事が確実に担保されている一番の拠点は、ウェンドリンにして見れば及第点なのだ。
陽の光が一切届かない地下洞窟でキャンプをする事もあれば、一歩歩けば踏んでいるのは石畳ではなく死体あったと言う程に死が身近だった廃墟で過ごさざるを得ない事もあった。
永劫に続くのではないかと言う程の長い期間、吹雪が吹き荒ぶ雪山の中腹で、食料を限界まで切り詰め、精神力だけで過ごした事もあった。
そうした極限の環境下での野営を経験して来たウェンドリンからすれば、一番が申し訳なさそうにする理由は、ないのだった。

「取り合えずさ、これから飯時何だよな。……食うか? って言っても、大したモンは出せねぇが……」

「サーヴァントに食事の必要性はないのですが……当世の食事の味がどういう物なのか気になるから、御厚意に甘えさせて貰うね」

「おう。少し待っててくれ。1階で温めて来る」

 言って一番は、階下へと降りて行くのであった。


.


536 : 光往く闇の行方 ◆zzpohGTsas :2022/01/21(金) 19:55:23 rXWWY5hw0
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 一番自体が、料理上手ではない。
自炊の方が安く済む、外で食えば高いと解っていても、外食してしまう程度には、料理が下手。早い話が、何処にでもいる独り暮らしの男性程度の腕前でしかないのである。
そんなものであるから、18年ぶりに娑婆の空気を吸って、物の試しに食べてみた冷凍食品の味には、甚く感動した覚えがある。
何せ一番が出る前、つまり警察に出頭し18年の刑務所暮らしをする前の時代の冷凍食品の味など、全く洗練されていない、それこそ急いで食べられればそれでよしの代物だったからだ。
産まれたばかりの子供が、丸々、大学生になるレベルの年数を独房で生活し、久方ぶりに外に出て、進歩の度合いに驚いた事の一つが、それであった。

 そしてそれを一番は、今ウェンドリンに振舞っている。
振舞っていると言っても、所詮は冷凍食品だ。大層な事をしていない。レンジで温めただけに過ぎない。
近所のスーパーマーケットで、一食200円となんぼの値段で売っている、袋から出してラップが掛かった状態で温められる肉うどん。それを二人は食べていた。

 本当に大した物を、出さなかった。
買い出し前であったので、下の冷蔵庫の中に、これしかなかったのである。凡そ、間違っても人に振舞うような品ではないのだが……。
胡坐をかきながらうどんを口にする一番の前で、畳の上で正座のウェンドリンはこれをまぁ、とても美味しそうに啜っていた。

「美味そうに食うなぁ……セイバー」

「はい!! それはもう……」

 実感を込めてウェンドリンが口にする。フォークでうどんを食べるその声は、喜色で弾んでいた。
人間である以上食事と言うのは今更言葉にするでもなく、生きる上で欠かしてはならない活動であり、その活動の保証と言うのは、戦士。
分けても、遠征や外征、冒険中ともあらば、確保自体が難しい事柄なのである。重苦しい鎧に身を包み、日に何十㎞も歩を進め、時には襲い来る外敵にも対処する。
そうすれば当然の事腹も空く。腹も空けばまともな精神状況ではいられなくなるし、最悪の場合死に至る。一にも二にも、食料の確保と供給は優先されねばならないのである。
そして得てして、遠征や冒険中に口にする食事と言うのは、味を度外視している。戦中食に求められるのは保存性と携帯性が第一なのだから、これは当然の話と言える。それは、ウェンドリンも良く理解している。

 ――理解していても、耐えられない味と言うのがまぁ、この世には存在する。
生前の仲間の一人であった、ウェンドリンの家に仕えていたメイドが得意とする料理が正しくそうだった。
口にすれば気絶している状態からでも、たちまち飛び起きられるような凄まじい味だった事を思い出す。その上、何故か腐敗しない為いつでも食べられたと言う代物だ。
食糧があと一歩の所で底を尽き、食べられるものが、フランお得意のポララボしかなかった時など本当に地獄だった。ネルもパリスも泣きながら食べていたっけね……。

 それを思えば、この冷凍うどんのなんと美味い事よ。常時氷が出来る温度まで冷やしておくと言う条件は厳しいが、温めればすぐに食べられると言うそのインスタント性は合格だ。
前者の条件さえクリア出来ればすぐにでも携帯食としても利用できるだろうし、生前、こう言うのが冒険の時にあって欲しかったなぁと、つくづくウェンドリンは思うのであった。

「セイバーはよ……その、せい、はい……聖杯だったか。欲しいのか?」

 やおら、と言った様子で一番が尋ねて来た。食べるスピードは、ウェンドリンよりも遅い。

「……世界を支配出来るっていう力に騙され、身を滅ぼした人を知ってるから、ちょっと……欲しいとは思わないわ」

 瞼を瞑ると、思い出す。テオルと言う荒々しい戦士の顔が、亡と記憶の中に結ばれた。
権力欲の強い男だった。燃え盛る野心を胸に抱く男でもあった。力を、何よりも求めていた男だった。
だが――悪ではなかったと思う。最終的に敵対する他なくなってはしまったが、権力への渇望も、果てぬ野望も、力の希求も、人ならば誰もが抱く普遍的なものである。
その普遍的な感情を、始祖帝に揺さぶられ、誘惑され……道を踏み外したあの男は、尊敬する父の仇でもある。それは、間違いない。
だが、憎みきれない。ある意味ではあの男も被害者であるし、何よりも、報いを受けた。師と仰ぐ程に尊敬していた、始祖タイタスに裏切られ、自らは利用されたに過ぎない。
それを骨身に染みて思い知らされ、失望や後悔、悔しさ、怒りを抱いて、テオルは死んだ。その無念を知る者が、此処にいる事だけが、テオルにとっての唯一の、幸運だったのかもしれない。


537 : 光往く闇の行方 ◆zzpohGTsas :2022/01/21(金) 19:55:56 rXWWY5hw0
 テオルは悪ではなく敵だった。そして、心の弱さに付け込まれ、堕ちてしまった事も今では理解している。
理解しているからこそ、『手に入れればどんな願いでも叶えられる聖杯』と言う代物には懐疑的なのだ。何故ならテオルもまた、その様な餌に釣られ、破滅してしまったから。
あの男を許せないとは思うが、同時に、同情も禁じ得ない。ウェンドリンもまた、テオルを誘惑して来たタイタスの魔手を伸ばされてしまった人間なのだ。
タイタス1世……今思い出しても、肌が粟立ち、心胆が凍り付く程恐ろしい敵だったと思う。自分一人だけでは、とても、彼の神算鬼謀を脱し切れなかったと今でも彼女は思う。
仲間がいたから、彼女は始祖の用意したレールと予測を大きく超え、彼の強いた運命を跳ね除けられたのである。一人だけだったらきっと……ウェンドリンは、傀儡になり果てていた事だろう。

 ウェンドリンは、この舞台に於いて、聖杯を求めるマスターの為に宛がわれたサーヴァントである。
それは、理解している。理解していてもなお、欲しいとは思わない。聖杯戦争自体にも、消極的だ。
勿論、マスターが聖杯を欲すると言うのであれば、剣を振るう事だって吝かじゃない。見た所、この一番。パリスのような無頼漢、悪く言えばチンピラのような容貌だが……。
目を見れば解る。真っ直ぐな男で、断じて悪人ではない。聖杯を手に入れたとて、変な事には使わない、と言う事は確信が持てる。

「良かった……」

 ウェンドリンの言葉に、心底から一番はホッとしたようだった。おや? とウェンドリン。

「俺よ、セイバー。……これ以上人を殺したくねぇんだよな」

「人を……? その言い方だと、昔殺した事があるみたいな言い方ね?」

 俄かには信じ難い。そう言う風には、見えないが……。

「18年……堀の中にいたんだよ。こう見えても、な。別にそれを誇る訳でもねぇし、脅しに使った事もねぇが……つまらない事が切っ掛け――」

「嘘ね」

 一番が全てを言い切るよりも前に、ウェンドリンが割り込んで来た。

「マスター、断っておきます。戦場や、法の庇護のない極地で、と言う形ではありましたが、私も人を殺しています。それも、貴方が想像している以上の人数を」

 華やかなだけが、騎士ではないのだ。
時には泥をひっかむり、時には腹を下す事も覚悟で野の水を飲まねばならず、時にはえぐみと臭みで食えたものじゃない肉だって我慢して口にしなければならない。
だが何よりも、騎士とは戦うものだ。戦うとはどういう事か? 相手を傷つけ、殺す事なのだ。その使命に従事出来るのか、人を殺す事に良心が耐えられるのか? そうでなければ、騎士の使命は全う出来ないのである。

「マスター、誤魔化す必要はありません。貴方は、誰も殺してないのよね?」

 花を手折る事すら躊躇いそうな、可憐な少女のような外見をウェンドリンは秘めているが、彼女も英霊として登録される程の戦士である。
英霊に至るとは、どういう事か? それは、生前に於いての行為が、後世の人間達の尊崇や畏怖、恐怖を寄せられる程の物であったと認められると言う事に等しい。
戦場で目覚ましい活躍を遂げる、生涯に於いて剣術勝負を飽きず繰り返しその全てが無敗、革命の余地を一切与えずして残虐で恐るべき支配を死ぬまで堅守し続けた。
そんな、只人には絶対に成し得ぬ活躍や生き様を、己が持つ目覚ましい才能を以て達成し、それが広く人々に周知されて、初めて英霊なのである。

 ウェンドリンは、頼りになる仲間達に支えられ、敬愛する父との壮絶な離別を経、己が身に課せられた過酷な宿命を跳ね除け、
数千年にも渡り鬼策を展開し続けていた始祖・タイタスを討ち滅ぼした、と言う、華々しさと悲哀に満ちた人生を送った、英霊に相応しい女傑である。
だが、決して身綺麗な人生だった訳じゃない。語られない所では、しっかりと彼女も、戦士であった。人を、殺している。
当たり前の話だ。その生涯で彼女は戦場に出た事もあったし、大事な生まれ故郷を守るその過程で、人を斬り殺した事もある。
或いは、その冒険の過程で、此方の命を奪ってから身包みを剥ごうとするような、野盗や追剥の類を返り討ちにして殺した事だとて、一度二度の話ではない。
順風満帆な人生ではなかったのだ。殺されかけた回数など片手の指じゃ効かない。殺して来た人間の数など、両の手足の指どころか、その第一第二関節分を含めたとて、なお足りない。
剣を振るう騎士の使う返り討ちとは、要するに、そう言う事なのだ。職務と殺しが、分け難く一体化している、不可分の関係。だからこそカムールは、彼女を騎士の仕事から引き離そうと躍起だったのである。


538 : 光往く闇の行方 ◆zzpohGTsas :2022/01/21(金) 19:56:18 rXWWY5hw0
 一度人を殺してしまった者には、本来的なものとは意を異にする、臭いなき臭いを感知する独自の嗅覚が備わる。
その嗅覚は、血の香りを――相手が人を殺したのかどうかを、的確に嗅ぎ分けてしまうのである。ウェンドリンは確信している。
目の前のマスター、春日一番は、その生涯に於いて、誰も殺していないと言う事を。

「……凄ぇなぁ、サーヴァント、って言うのは。そんな事も解るのか」

 参ったな、とでも言うように、頭を掻く一番。如何誤魔化したら良いのか解らない、困ったような苦笑いを浮かべ、彼は俯いていた。

「ではマスター、貴方は……」

「殺した、って事にしてくんねぇか」

 今度は一番が、ウェンドリンの言葉を奪う番だった。

「俺が、背負うって決めた罪なんだ。18年かけて、罰を受けて来たんだ。今更、俺は、なかった事にしたくねぇ」

 決然たる思いを秘めた言葉に、ウェンドリンも驚く。
殺した事に対して嘘を吐いて、殺していないと誤魔化す事は、洋の東西、古今の別なく幾らでも例がある。
と言うより、殺人に対して与えられる量刑と、この後降りかかるであろう社会的な地位のロストを考えれば、モラルはどうあれ、理解には足る事ではあろう。
だが、殺してもないのに殺したのだと嘘を吐く時、其処には、余人には計り知れない程の重いバックボーンがある筈なのだ。
殺せば、法の観念に照らし合わせ、重罰が下される。その様な事は、子供でも解る事だ。その子供でも解る未来を理解していてなお、殺したと主張する。重くて、深い事情がなければ、とてもでないが出来ない行動である。

 きっと一番にも、そう言った、ウェンドリンには想到も出来ない重い事情があったのだろう。
自分の身に重く苦しいペナルティが下される事だとて承知していただろう。現に彼は、18年もの懲役に服したと言っているのだ、事実罰は受けていた。
殺してない事を証明する事は、一番にとっては簡単な事なのかも知れない。だがそれでも、一番は、殺人のスティグマを背負うと誓っているのである。
誰にでも出来る事ではない。主君に対しての奉公を至上とする騎士達ですら、このような決断を下せるのは容易ではない。その、一番の決意を、ウェンドリンは尊重した。それ以上を追求、しなかった。

「思い起こせば……良い事の方がすくねぇ人生だった」

 一番、と言う名前とは裏腹に、彼の人生は余人には想像もつかない程に壮絶なものだった。
母親の名前も顔も知らない。一番の母親とは、桃源郷と言う名前のソープランドに勤めていた風俗嬢であり、一番を出産した後、行方を晦ませ、その後の足取りは杳として知れない。
育ての親であるソープランド・桃源郷の店長や、当時の風俗嬢達からは可愛がられて育ったが、親同然のその店長が死んでからは、荒んだ青年時代を送っていた。
喧嘩に明け暮れ、カツアゲで小銭を稼ぎ……その悪因に対する報いの如く、罰が下った。たまたま襲った相手がヤクザであり、報復と言わんばかりに監禁され、危うく命を落とす所だった。

「でもよ、そんな俺にも、本当に、心から楽しかった時期も、あったんだ」

 ――その絶体絶命の危機を救ってくれた大恩人こそが、一番が親っさんと尊敬し、今もなお慕っている、荒川組組長・荒川真澄その人だった。

 荒川に憧れ、一番は極道の門戸を叩いた。荒川真澄は、殺しの荒川と呼ばれ、恐れられていた程の武闘家のヤクザだった。
何時かは、荒川組の一員として身を粉にして働き、一生涯掛かっても返しきれない借りが出来てしまった荒川真澄に対して報いるのだと、本当に思っていた。

 ……その荒川真澄も、今はいない。卑劣な策略によって、その命を銃弾と共に散らした。
荒川真澄に、『頼む』とまで言われ、兄弟同然に過ごして来た、荒川真斗も死んだ。自分が散々無能だ、小物だと馬鹿にして来た男の凶刃に、倒れてしまった。
結局、本当に守りたかった、親しい人物は全て、一番の握った拳から、するりと、水のように流れ落ちて零れ落ち、取りこぼされた。まるでそれが、お前の宿命なのだと、言われているかのようだった。

「セイバー、聞きてぇんだけどよ」

「はい」

「血は繋がって無くても……親は、親だよな?」

「その通りです」

 ウェンドリンは、即答した。強い意志が、その返事には込められていた。

「世間の皆様からすればよ……俺の尊敬してた人……荒川の親っさんは、本当に極悪人だよ。それだけは、目を逸らしちゃダメなんだろう」


539 : 光往く闇の行方 ◆zzpohGTsas :2022/01/21(金) 19:56:47 rXWWY5hw0
 そも、荒川組とは、殺しと暴力によって地位を確立していた、武闘派達の集まりだった。
組長の荒川真澄だとて、例外じゃない。本人は語りたがらなかったし自慢もしなかったが、敵対する暴力団の組員を何人も葬って来ただろうし、
『こちらの世界』に踏み込み過ぎた堅気の人間も、殺した事だとてあるだろう。

 上からの命令でやった事かも知れない。
ヤクザの世界は完全なる縦社会、徹底した上意下達だ。上(おや)の命令には逆らえない。
自分の意志でやった可能性だとてゼロではない。上の命令に従ってばかりの指示待ちでは、ポジションを確立出来ないのは、ヤクザの世界でも同じ事。
状況に照らし合わせて、殺した方が良いと思ったからこそ、自ら手を血で染めた事だとて、あるかも、だ。
何方にしても言える事は一つ。殺しは、法的な観念から見ても、一般的な道徳から見ても、決して許される行いではなく、荒川真澄と言う人物は、社会的にも人道的にも許されない人物であると言う事だった。

「だけど……そんな親っさんは、俺が人を殺そうとする事から、遠ざけてくれた。才能がないって、見抜いてたのかな? 今となっちゃ解らないけどな」

 殺しで鳴らした組なのだ、その組内で成り上がるには、人を傷つけ殺す事が大事である。
だが、荒川が一番に対して下した仕事は、焦げ付いた借金の取り立てや、ローンの回収と言う、言ってしまえばチンケな仕事であったり、荒川の息子である真斗の付き人などの、
凡そ殺しだとか暴力だとかとは掛け離れたものだった。結果として一番は、今も……ヤクザとしては身綺麗な方なのだ。尤も、社会的には、殺人の前科持ち、と言う扱いになるのだが。

「だからよ、セイバー。俺は、親っさんの思いを汲みてぇ。俺に殺しをして欲しくなかったのなら、俺の犯した殺しは……あの時の一件だけにしてぇんだ」

 一番は今も昔も、人を殺していない。
自ら人を殺したと自首をした、18年前のあの事件だって、荒川組の解散と言う最大の危機を迎えつつあった荒川真澄に対する、恩返しの一環であった。
つまりは、スケープゴートだ。自らの罪でもない罪を背負い、その罰を受け続けてきたのも、荒川真澄の為を思ってこそだった。

 これ以上の罪は、背負えない。
あちらの世界にいる、荒川真澄に、合わせる顔がなくなってしまう。だから聖杯戦争には乗れない。

「……貴方の心は、良く分かったわ、マスター」

「ああ、一番大きな理由がそれだが……もう一つ、あるんだよ」

「?」

 気恥ずかしそうな顔で、一番が口を開いた。

「18年もよ、ムショで過ごしてたモンだから……俺の地位なんてまぁ、低いもんだ。出て来てみたら、金もねぇ免許もねぇ、挙句の果てにゃ職歴もねぇ。ひでぇ無職の中年男性の出来上がりだ」

 それは、そうだった。
元々、刑務所に入る前からして、一番には貯金もなければ大した資格も持ち合わせてなく、人に対して自慢できる様な正業になど勿論の事ついてない、酷い状態であったのだ。
こんな状態の男が、殺しの罪で18年も刑に服し、刑期を終えて娑婆に出てくれば、如何なる。18年だ。一番が警察に出頭したのは2001年の元旦。
その日から足掛け18年なのだ。その間世界の情勢も、文明の利器も、著しく発展した。一番が刑務所に出頭した同年、アメリカでは、世界史に刻まれる程悲惨なテロが勃発した。
そのテロを契機に中東では泥沼の戦争が長年続き、多くの人々が犠牲になった。知らぬ間に中国はアメリカと肩を並べる程の経済大国及び軍事大国として成長し、
並ならぬ影響力を世界に示している。日本国内に限れば、あの恐るべき生物テロを企てたカルト組織のトップに死刑が遂に執行され、世論に大きな衝撃を与えた。
数年前に起きた東日本の大震災は今も日本国に消えぬ災禍の爪痕を刻んでいて、福島の原発で起きたメルトダウンは記憶に新しい。
18年は、人間の時間と言う観点から見れば長いが、人類の歴史の総体として考えれば瞬きのように短い時間だ。その時間の間に、世界の情勢は目まぐるしく変わって行った。


540 : 光往く闇の行方 ◆zzpohGTsas :2022/01/21(金) 19:57:11 rXWWY5hw0
 一番は、その世界の変化に取り残された人間なのだ。
変化した後の世界に、2001年のまま時が止まった男が、世に出されたのである。これは最早、浦島太郎以外の何物でもない。
一番はスマートフォンの存在も、出所した当初は知らなかったし、インターネットに光ファイバー、クラウドの事も、ちんぷんかんぷん。
あれだけプレイしていたドラゴンクエストシリーズにしても、今でもシリーズが続いていて、11まで出ている程の人気作である事を知らなかったのだ。
世故にも疎く、職歴もない、資格も全然持ってない。殺人の前科だけは、罰として刻まれている。そんな人間が出てきたところで、社会が受け入れてくれるのか?
そんな訳はない。一番の言う通り、『底』に限りなく近いポジションの、中年男性が誕生しただけであった。

「だけど、今俺はこうしてさ、希望を捨てずに生きていられてる。まぁ俺が底抜けの馬鹿だからってのもあるけどよ……大事なさ、仲間がいるんだわ」

 刑務所から出所した人間の再犯率と言う物は、更生した人間に対する目が変わってしまう程に高い。
それは偏に一番も言ったように、出て来た所で、受け入れてくれる所がとても少ないから。
刑に服して来た年数による、とてつもない時間差によって、取り返しが出来ないからと言うのが大きい。

 ――一番はそうはならなかった。
自身がポジティヴな性格だからと言うのもある。本人が思ってる以上に、実際には器用で世渡りも上手く、殺しの罪状によるイメージを払拭してしまえると言うのもある。
だが最たる理由は、一番が、仲間に恵まれたから、と言う事が大きいのだ。

 銃で撃たれた自分の命を拾ってくれたナンバに、出所して右も左も解らなかった自分に進むべき道を示してくれた足立。
男以上に男気が強く、そしてその優しさには幾度も救われた紗栄子に、頼りになる喧嘩の腕っぷしで迫る危難を幾度も排してくれたハン・ジュンギに趙 天佑。
瞼を閉じれば、自分の事を助けてくれた人間が幾らでも思い浮かべられる。自分に感謝を寄せてくれていた人間も、際限なく浮かんでくる。
誰か一人の力でも欠けていたのなら、陽の光を浴びる事の最早ない、陰惨な闇の道程を歩く事になっていたかも知れない。
それどころか、権謀術数の渦中に知らぬ間に巻き込まれ、悲惨な殺され方をしていた可能性だって、出自を考えればゼロではないのだ。
そうならないよう、奔走してくれた仲間がいる。救い上げてくれた、恩人達がいる。一番は、一人ではなかったのだ。

「かけがえのない、アイツらをさ……裏切れねぇ。アンタにも叶えたい願いだってあるだろうし、虫のいい頼みだってのは俺も解ってる。なぁセイバー――」

「皆まで言わなくても、大丈夫ですよ。マスター」

 胸襟を正し、ウェンドリンは言葉を続けた。言葉に秘められた決然たる意志の強さも、ルビーよりもなお紅いその瞳に宿る決意の大きさも、一番が今まで見て来た者達のそれを遥かに上回っていた。

「騎士とは、忠義を尽くす者。主君の正義に殉じる者。マスター……春日一番。私は貴方の人生を切り開く、剣となりましょう」

 仲間がいなかったらどうなっていたのか、家族がいなければどうなっていたのか。
それはウェンドリンにしても同じ事。価値を数値化する事も、比較する事も出来ない、彼女の大事な仲間達がいなければ、ウェンドリンとて今頃は……。
性別も年齢も、生まれも時代も世界観すら違う、この春日一番に、ウェンドリンはシンパシーを感じた。この男は、自分だ。
一人では決して生きられず、そしてその事を理解し、誠実に生きようとする者。違うのは、ウェンドリンにとってその事は過去の事であるのに対し、一番は現在進行形の事柄である、と言う事。

 助けてやりたいと、ウェンドリンは思った。
仲間が大事であるという事も、血の繋がらない親に注がれた愛情の意味も、誰よりも理解しているウェンドリンだからこそ、だった。

「あんがとうよ、セイバー」

 うどんを啜る、一番。冷めていた。


541 : 光往く闇の行方 ◆zzpohGTsas :2022/01/21(金) 19:57:29 rXWWY5hw0
「俺はまだ、どん底から這い上がって、成り上がろうとしてる最中だ。こんな、訳のわからねぇ殺し合いで、台無しになんてされたくねぇよな」

「どん底から、這い上がる……ですか。素晴らしい事ですね」

「……ああ。そうだよな」

 ――どん底からやり直すか……いいもんだよな……――

 血の繋がらない唯一の兄弟、同じ日に産まれた一番の、光にして影。荒川真斗の、最期の言葉を思い出す。
生きろと、彼は言った。これから待ち受けるであろう孤独と、辛苦。それを理解していてなお、あの、権力欲に狂った義兄弟は、生きて欲しいと願ったのだ。
乗り越えられると、信じていたのだろうか? 答え合わせは、いつかあちらで聞くとしよう。一番はそう思っていた。

「戦いが終わったらさ、北京ダックでも……食いに行かねぇか? セイバー」

「? ペキン、ダック?」

「この世界の美味いモンを何でも知ってた、荒川の親っさんが、一番美味ぇって言ってた、中華料理の王様だ。俺はまだ食えてねぇけどよ……アンタと、食ってみてぇな。セイバー」

「……フフ、なんですそれ。プロポーズみたい」 

 春日の言っている事が、あまりにも、求婚の文脈に近しいそれで、おかしくなってウェンドリンは笑ってしまった。それを見て、春日は慌て始めた。

「な、ちょ、ちげぇって!! そう言う意味じゃなくってだな!!」

「冗談よ、マスター。面白くてからかっちゃった」

 一息ついた後、ウェンドリンは、残ったうどんの最後を啜った。冷めていてもなお、美味しかった。

「貴方のお誘いなら、乗ってあげる。イチ。私も食べに行きたくなっちゃった。その、ペキンダックって言うの」

「……ああ。きっと、すぐなくなっちまう程に……美味いんだろうぜ」

 窓を見やる一番。
すっかり陽が落ち、広がる昏黒の夜空のその下で、ビルの明かりが星の様に煌めいているのを一番は見た。
まだ俺は、生きていても良いのだと、一番は実感したのであった。




【クラス】

セイバー

【真名】

ウェンドリン@Ruina 廃都の物語

【ステータス】

筋力A 耐久A 敏捷B 魔力C 幸運B(EX) 宝具A+

【属性】

秩序・中庸

【クラススキル】

対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、野獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】

稀白の血脈:EX
始祖の血を継ぐ者。雪のように白い髪、透き通る様な白い肌、そして血のように赤い瞳。
これらの特徴は全て、セイバーの生まれた世界に於いておよそあらゆる文明の礎となった、始祖帝と呼ばれる者の代表的な特徴である。
これらの形質は遺伝し、始祖の有していて超人的な何らかの力をその子孫もまた受け継ぐ。
ランクEXは規格外かつ、例外そのもの。本来このスキルはEXで表記される物ではないが、セイバーは始祖帝が自ら、『我をも超えた』と認めた事から、このランクに至った。
極めて高いランクの武芸百般や魔術スキル、カリスマを発揮出来るだけでなく、セイバークラスとしての召喚の為か、軍略スキルにも造詣が深い。

道具作成:A
本来はキャスタークラスのクラススキルであるが、稀白の血脈スキルの影響か、これを発揮出来る。
薬や爆弾、所謂キャンプ道具の作成は勿論の事、材料さえ調達出来れば宝具手前レベルの礼装の作成も可能とする。材料がない場合、魔力を自前で消費する事となる。

専科百般:B+
類稀なる多芸の才。最も得意とするものは戦略や軍略だが、これ以外にも様々な術にセイバーは優れる。
身の危険を感じ取れる危険察知、鍵の施錠などのピッキング、実戦的なキャンプ術、古代の学問についての習熟や理解、そのほか水泳や操船など様々。
これらのスキルをセイバーは、Cランク相当のランクで発揮出来る。


542 : 光往く闇の行方 ◆zzpohGTsas :2022/01/21(金) 19:58:00 rXWWY5hw0
【宝具】

『時渡りの剣』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:2 最大補足:1
セイバーが保有する両手剣。剣身が太陽の如くに輝く魔剣。
相応しき時代に相応しき者の手に渡り、天の意志を果たさせると言う聖なる剣であり、一説に曰く、セイバーの居た世界に於いて、神々の始祖よりも旧くから存在したとも、
セイバーの居た世界に於いて神々が生まれ降誕するよりも以前の時代に異なる世界より現れたとも言われる剣。

 鞘からこの宝具を抜き放った瞬間、セイバーはA+相当の戦闘続行・矢避けの加護スキルを獲得し、幸運ランクをEXに上方修正。
攻撃を回避する、と言う一点に置いて最上の効果をこの宝具は発揮し、未来予知に等しいレベルで相手の攻撃の軌道が解るようになる他、
因果に作用して直撃の運命を固定化させるものにしても、『強制的にその因果を捻じ曲げ攻撃がセイバーから逸れるように修正する』と言う強引な手段で無効化してしまう。
幸運は防御や回避のみならず、当然攻撃にも及び、具体的にはクリティカル率や、攻撃の命中可能性が跳ね上がる。
この幸運ランクEXは、文字通り規格外かつ評価不能の意味でのEXであり、『セイバー自身には害意が及ばないがそれ以外には及ばせる』と言う形で無傷の未来を成立させようとする。
具体的には、セイバーの近くで戦っているマスターについては、無傷で終る訳ではない事を意味する。
また攻撃性能と言う点でも、遠方を攻撃する手段が備わってないと言うだけで凄まじく凶悪。ランク以下のスキル・宝具による防御を無効化させ、ダメージを減退させる効果についても問答無用で押し通る。
この宝具による攻撃で負傷した者は、筋力・耐久・敏捷のステータスが戦闘中1ランクダウンした状態になる。
あらゆる点で隙のない、優等生の中の優等生の宝具であるが、この宝具は今でこそセイバーの宝具として登録されてはいるものの、実際は『天意』が今この武器がセイバーが所有していた方が、
都合が良いと認めているに過ぎない状態にある。天意がもしも、『この宝具がセイバーの下を離れた方が良いと判定した場合、この宝具はセイバーに死の運命を与え次の所有者の下に流れる』。
これこそが、セイバーが認識していないこの宝具の最大の欠点である。セイバーが現在この宝具を所有しているそもそもの経緯が、前の所有者をそのような形でこの宝具が抹殺したからに他ならない。

『忌むべき白よ、宿命を越えよ(ピース・オブ・イーテリオ)』
ランク:EX 種別:対運命宝具 レンジ:- 最大補足:-
イーテリオのかけら。大河の女神アークフィアが始祖帝タイタスに与えたとされる神秘の秘石。保有者に無限大の知恵と力を約束する、星の欠片。
この宝具を用いて生前、始祖帝タイタス1世は、治水や製鉄、灌漑に農耕、医術に計算、建築に測量に度量衡など、文明の発展に必要なあらゆる技を発明し、人々に布教したとされる。
活動による消費魔力を著しく低減させる効果を常時発動しており、セイバーはこれにより、戦闘時に必要な魔力や魔術の発動に必要な魔力を、破格の燃費で取り回す事が可能。

 上述の効果ですらこの宝具の真の力ではない。
存在そのものが規格外の宝具かつ、この宝具は嘗てタイタスが所持していたイーテリオの欠片に過ぎない為、『今』はその力は発揮出来ない。
この宝具の効果は、『世界が危機的状況に陥った時にのみ発動出来る』。この危機的状況とは、セイバーの霊核が砕かれ消滅寸前になったりだとか、彼女のマスターが死にかけているだとか、
その程度の状況では発動出来ない。本当にそれこそ深刻な、それこそガイア・アラヤ双方の抑止力の発動すらも想定され得る状況で初めて行使出来る。
宝具の効果は単純明快で、無限回復。文字通り、完全な回復であり、魔力ですら回復する。この宝具自体、発動は勿論維持にも莫大な魔力が必要なのだが、
その魔力を『失った傍から回復し続ける為事実上発動コストは踏み倒し』である。勿論肉体的損傷やバットステータスも回復の対象であり、
特に前者については四肢の欠損、頭部の消滅レベルは愚か、死亡からの復活ですら形として完全なものとして成させるレベルであり、魔法の領域にまで突っ込んでいる。
更にこの宝具による極限のリジェネ効果は、世界の危機に立ち向かおうとする意思を持つ者すべてに等しく作用し、彼らもまた、魔力を含めた完全な回復の恩恵に与れる。

【weapon】

ルーンの剣:
ルーンの刻まれた剣。普段使いの武器。剣としては宝具には劣るが、魔法の発動媒体である焦点具としても使用可能。業物である為、宝具との打ち合いもこなせる。
破壊されたとしても、スキルにより修復可能。またこの武器以外にも、セイバーは様々な武器を取り扱える。


543 : 光往く闇の行方 ◆zzpohGTsas :2022/01/21(金) 19:58:10 rXWWY5hw0

【人物背景】
 
その名と功績を永遠のものとする為、近親同士で代を繋げていた始祖帝の末子の一族に生まれた、タイタスの御子。
始祖と同じ血を引き、始祖と似た生を歩み、限りなく始祖に近い御子を輩出すると言う使命のために川へと流され、ホルムの領主に拾われた。
ホルム領主カムールが命を懸けて奪った時渡りの剣を手にし、迫りくる死の宿命を跳ね除け、やがて己に課せられた忌まわしき宿命を知り、冒険の果て、
星を象徴とするイーテリオの欠片を手に入れ、数千年にも渡り世界に長い魔の手を伸ばして来た始祖帝・タイタスの影と雌雄を決し――――――――――。

ホルムの街の伝説に曰く、嘗て空に結ばれた古代アーガの都であるアーガデウムの幻に向かって行った4人の戦士がいたと言う。
その中にウェンドリンの姿はあり、稲妻の巨人と戦い、巨人を見事打倒し、都市と巨人の消滅と共に、彼女らの姿も忽然と消え去ったと言う。
その後の行方は杳として知れなかったと言う。その後彼らの生まれたホルムの街には、その勇敢な4人の戦士を奉る祝祭だけが記念として、毎年執り行われるようになったと言う。

【サーヴァントとしての願い】

聖杯には興味がない。取り合えずは、マスターである春日一番の願いを優先してかなえてあげたい



【マスター】

春日一番@龍が如く7 光と闇の行方

【マスターとしての願い】

誰も殺さずして元の世界に戻る

【能力・技能】

喧嘩:センスはある。が、龍が如くシリーズは『お前本当に人間か?』レベルの身体能力を持った極道の見本市であり、
彼らと比較すれば一番の喧嘩センスは下から数えた方が速い方である。

専科百般:ハローワークで斡旋された職業を無数極めている。
解体屋や臨時の機動隊員としての仕事や、料理人に占い師、ホストやダンサーにミュージシャンなどの経験が豊富。こんなの勧めるハローワーク何処だよ。
これらの仕事での経験や道具の使い方を、喧嘩に反映させる事を一番は得意とする。

口喧嘩:本人も自覚しているが勉強は出来ない。が、頭は寧ろ冴えている方で、機転が利く上、弁が立つ。

【人物背景】

大晦日の夜に産まれた光と闇。その闇であった方の男であり、その実は、光であった男。エンディング後から参戦。


544 : 光往く闇の行方 ◆zzpohGTsas :2022/01/21(金) 19:58:20 rXWWY5hw0
投下を終了します


545 : ◆e1iKht2T0g :2022/02/09(水) 21:19:11 zSrHCv.I0
投下します


546 : Why me? ◆e1iKht2T0g :2022/02/09(水) 21:19:47 zSrHCv.I0
――私は、弟に大罪を背負わせてしまった
――私は、彼女に重荷を背負わせてしまった

アダムとイヴは禁断の果実に手を出したが故に楽園から追放された
わがままっ子だった少女はチェンジリングによって取り替えられた

――世界は狂っている。それでも手を届かそうとしても離れた途端に腐り落ちる。それすらも救えない自分の愚かさに絶望した
――世界は狂っていた。華やかな箱の外側は埃被った汚れ塗れの掃き溜めで、私はそれを初めて知った


少年が何をしてもただの偽善にしかならない世界に絶望した。狂っているのは自分の方だと、そう思うしか無かった
胸躍る初めての景色を求め、少女が最初に理解したのが、目を逸らしてはいけなかった壁の向こう、過酷で残酷な現実だった


――絶望の底、ある日私は希望と出会った。世界を変える知恵を持った彼を欲した。私にとって、彼は救世主(キリスト)そのものだった
――現実を変えるため、見えない壁を壊すために、女王になって世界を変える夢を叶えると、彼女と約束した


少年は緋色の希望から知恵と勇気を借り、世界を変える第一歩を踏み出した。世界の歪みに苦悩することもなく、本当の居場所を見つけ、少年は救われた
少女は己が放棄したかった責務に目を向けた、その願いは友人である彼女と一緒にいる為に、貧富・差別という名の見えない壁を壊すために


――しかし――


――私はその罪をウィリアムに背負わせてしまった
勇気をも借りてしまったことで、ウィリアムを人殺しまで引摺り堕ろしてしまった
知恵と勇気を得るための禁断の果実を食らう覚悟を持てず、代わりに食べさせてしまった
その結果はどうだ? 心優しいはずのウィリアムは己が罪に苦しみ続けた、その手が緋色に染まるまで罪を重ね続けた
怖かったのに、血の繋がりのない己が。罪を重ね続ける事だけがウィリアムと繋がれる唯一の絆だったのに
己が身勝手な願望が、ウィリアムを追い詰め、死に追いやった。彼にとっての悪魔は、私だったのだ


――私はアンジェにその重荷を背負わせてしまった
革命に遭ったあの日、無慈悲な砲弾が私達を切り離した。私が背負うはずだった。立場も、責任も、責務も
なのに、何もかも彼女の押し付けてしまった。それが運命の紐の気まぐれだったとしても、私は後悔し続けている
彼女が綺羅びやかで過酷な小さな世界の中で、どれだけ血の滲むような努力をして、どれだけプレッシャーに押しつぶされそうになって吐き続け、バレたら死んでしまうという孤独の中でどんな思いで生き続けていたのか



――私が死ねばよかったのだ。私の傲慢な願望さえ無ければ、私が自分自身に絶望し死を選んでいれば
聡明な知恵があれば、自死への勇気があれば、何より私とさえ出会わなければ。ウィリアムは穢れること無く飛び立てたのではないのか、と
無限の刻の中で、この身を煉獄に焼かれながら、ウィリアムに十字架を茨冠を押し付けるしか無かった自分を呪い続けるしかない


――私は私が嫌いだった。アンジェと出会わなければ、あのまま井戸の底へ、闇の中に自分を消し去ってしまいたいと思っていた。だけどアンジェと出会えた。人嫌いで怖がりだった私が初めて出会えた大切な友達
私はアンジェとまた逢う為に生き続けた、革命の戦火を超え、嘘と欺瞞と実力主義に塗れた過酷な世界で、彼女に謝りたいという一心で、彼女を連れて平穏へと逃げ出すために
でも、やっとの思いで逢えた彼女は私以上のプリンセスになっていた。私が背負うはずだった願いを、かわりに叶えると言った


――あの頃と同じく知恵も勇気も持たないまま、永劫の暗闇の中を、私は灯りもなく一人彷徨い続けている
――だから私は、プリンセスの願いの為に世界を騙し、あなたも騙し、そして自分自身すらも


547 : Why me? ◆e1iKht2T0g :2022/02/09(水) 21:20:06 zSrHCv.I0
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


「私を引き出すため車の下にはいり込むのにマドレーヌ氏は種々考えてみはしなかったんだ。」彼はマドレーヌ氏を助けようと決心した。

 それでもなお彼は、いろいろと自問自答した。「私にあれだけのことをしてくれたが、もし盗人だったとしても助けるべきものだろうか? やはり同じことだ。聖者だからというので助けるべきだろうか? やはり同じことだ。」



             ――フォーシュルヴァン爺さん ユーゴー、豊島与志雄訳『レ・ミゼラブル』


□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


548 : Why me? ◆e1iKht2T0g :2022/02/09(水) 21:20:25 zSrHCv.I0
「……あ」

身を包む眩い光が、原罪を背負った私の業を焼き尽くさんと放った神の罰だと思っていた
事実、私が意識を取り戻した際に目にした光景は、あの時の始まりと同じ様に教会の、輝けるステンドグラスに照らされた十字架の前に立ち尽くしていたのだから

聖杯戦争、英霊、令呪、役割(ロール)――、押し寄せた情報の濁流が私の頭に知識を流し込む
大凡は理解出来た、その意味も察した、そしてどうして自分が呼び寄せられたか、というある仮説にも達してしまった

私の後悔が、私の原罪が、私の過去が、群れから逸れた魚の一匹をすくい上げるかのように、この舞台に引き摺りあげた
真実ならば、勝ち進んだ果てに荒唐無稽にも程があるような願望機がその者の願いを叶えるという
……それで、どうする?

愚かにも、真っ先に思い至ったのはウィリアムを蘇らせるという願いだ
出来ることなら、ウィリアムに戻ってきて欲しい、と兄として思ってしまうのだ
安らぎの場所を得たウィリアムを、再び現世という名の地獄に連れ戻そうとするのか?
そんな事出来るはずがない、だが戻ってきて欲しいという思いは否と言うには余りにもその心には凝り続けている
結局、贖罪だなどと言いながらそんな自己欺瞞の願望を抱いてしまう自分は、とても愚かしく罪深いのだと突きつけられるのだ

「……どうすれば、いい」

ならば愚かにも誰かに殺される事を思った。だがかつてと同じく、自分を消し去る勇気すら持てなかった自分に、そんな事が出来るはずもない

「……知恵も、勇気も、咎も、死も、全てをウィリアムに押し付けてしまった私は、どうすればいい」

柄でもない事を口走る。まるで目の前の神さまに懺悔をするように
神は人を救わない、神は人に罰か試練しか与えない、だが自分に科せられたのは罰ですらない何か
償いを求めるのか、希望を与えたのか、わかるわけがない
勝ち上がる知恵も、死を選ぶ勇気も、何ら持ち得ない自分を、ウィリアムとは全く違う自分を

「―――神は、私に懺悔すら、許してくれないのか」

ステンドグラスが割れる、神罰のように
割れ窓から白毛の狼とも野犬とも見える獰猛な四足歩行の生物が教会内に入り込む
重苦しい唸り声を鳴らし、自分を睨んでいる
天国ですら無い、地獄ですら無い場所。ならばあの生き物は清めの火の化身であるのか

「……そうか」

今にも襲いかかろうと、その肉を喰らおうとその生き物は牙を剥き、涎を垂らす
放心状態で、私は眼前に迫る死の獣を見つめている
これで良かったのかも知れない、あんな烏滸がましい願いを抱いてしまうのならば、尚更救われるべきではない人間だったことに
私こそが裏切者(ユダ)だった、救世主(キリスト)を追い詰め見殺しにした、最低な兄だ
―――いや、私はウィリアムの、兄ですら無かった。最低最悪の人間でしかなかった

あのまま腐り落ちていれば、あのまま死んでいれば、私は彼を地獄へと堕とす事はなかったのに
そんな勇気も無く今迄生き続けて、こんなところへたどり着いてしまった
―――私には、お似合いの末路か。このまま無残に食い殺されて灰となって霧散する
その躯の残骸すら、永遠に止まぬ煉獄の中で、焼かれ続ける罰こそが―――


549 : Why me? ◆e1iKht2T0g :2022/02/09(水) 21:20:43 zSrHCv.I0
……気づけば、一歩、足を下げていた
ああ、そうか。やはり、怖いのだ
やはり、死ぬ覚悟すら、直面すれば、無いに等しかったのだ

「――――ぁ」

何もかも、かつてと同じだった
手の届くところすら手を届かせる、いなくなってしまえばいいという答えは許されず
尚の事、自分では何も出来ないと、ただただ実感させられて
挙げ句、今や死の恐怖に怯え、後ずさってしまっているのだ

「……ウィリ、アム。私、は」

生きる価値も死ぬ価値も、私には、無いのだ
ああそうだ、こんな自分には、そんな事すらも許されないのだと――――


550 : Why me? ◆e1iKht2T0g :2022/02/09(水) 21:21:05 zSrHCv.I0
「………?」

一瞬の出来事だ、彼女が現れたのは
フリルの付いた黒いボディスーツを身に纏い、天の御使いの如く宙に浮かびながら
その手に携えた銃は獣たちを瞬く間に撃ち貫いてゆく

天使なのか? 否、私に限ってそんなはずなど無い。揺れる灰色(グレイカラー)の髪はまるで死神のようであった
黒いシルクハットから見え隠れする蒼晶の双眸は、私を見下ろしている。まるで罪人を見定める裁判官のように

「―――答えて、貴方が私のマスターなの?」

少女が自分に問う。口ぶりからして、彼女は英霊であろうというのは理解した
そして、その問いに呼応するように、右手に突如として刻まれた赤い紋様――令呪がそれを示すように輝いている

「……あ、ああ。そうだ」

震える口で、恐る恐る是の答えを出す。もしこれで違っていたのなら殺されてしまうかもしれない、などという考えなど思いつかず。答えと同時、背後から私を噛み千切ろうとした最後の獣が、直後に放たれた銃声と共に息絶えた

「そう、良かったわ。もし違ってたら、最悪貴方を文字通り殺さないといけなくなるから」

無感情で、淡々と告げられる事実。少女でありながら、地獄を知っているその雰囲気
余りにも似ていた、過去の自分に。世界の歪みを知った、あの自分と同じような顔が
なんとなく、私のサーヴァントが彼女だったという理由と、その意味が、理解る気がして

「……君は、一体……」
「サーヴァント、クラスはアサシン。……職業スパイの、ただの黒蜥蜴星人よ」
「……黒蜥蜴星人?」

暗殺者のサーヴァントなのは納得した、スパイなのもその振る舞いや服装から何となく察しが付く
だが黒蜥蜴星人とはなんだ? いや多分嘘だろうが嘘にしては本人は真面目に答えている
もしかしてアサシンとクラスを偽装したフォーリナーなのでは?

「そして私は、そんな不器用な黒蜥蜴星人の一番の大親友なのです」

困惑に陥る私の思考を遮るように、割れガラスの外からひょっこりと姿を現したのは先のアサシンと歳が変わらなさそうな金髪碧眼の少女だ
その歩き方には明らかな品が見え隠れしている、まるで高貴な王族の模倣の用に、体に染み付かせたような、違和感の感じられない仕上がりで

「始めまして。彼女からもう説明は受けてると思うけど、私達はアサシンのクラスで召喚された貴方のサーヴァント」
「………」

金髪の少女と、灰髪の少女。二人のアサシンは改めて自分へと目を向ける。灰髪の少女は金髪の少女を守るように周りを見渡し、安全が確認して再びこちらへ目を向けた

「……これから、私達をよろしくね、マスター?」


551 : Why me? ◆e1iKht2T0g :2022/02/09(水) 21:21:28 zSrHCv.I0
○ ○ ○




世界は余りにも変化していた。二度目の世界大戦を経て、表面上の平和のみを謳歌する人民を尻目に
当時よりはまともになったとは言え、弱者は強者に搾取される在り方が今なお続いている
戦争も貧困も、その時以上に数多の種族の、数多の人間の思惑が入り乱れた上で成り立っている
世界は余りにも変化していた。犯罪への抑止は今以上に強固になれど、それでもなお蔓延る悪は止む気配はなく
「地獄はもぬけの殻、全ての悪魔は地上にいる」とは弟の言葉だ。悪魔は埃のように掃いても無尽蔵に湧いてゆく。虐待・育児放棄。悪魔が齎した歪みがさらなる悪魔を生んでゆく
―――世界は変わって、変わらなかった

「これが、未来か」

スマートフォンという携帯器具を器用に操作し、その小さな画面に映し出される大手新聞社のニュース記事から個人のまとめサイト速報までを事細かに眺めている
感嘆の息を思わず吐き出した。こうも容易く遠くの国の情勢を把握できるのだから
情報は一種の武器だ。少なくとも私達の生きた時代では有線が主軸であり、無線が汎用化したのは未来の話
故に正も負も、その両方が瞬時に把握出来てしまう。それでもなお影に隠れる『悪魔』のしっぽを掴むのは難しい、むしろ発展した情報化社会だからこそ更に邪悪で狡猾な悪魔が今なお生まれ続けている

窓の外から見える時計塔にも及ぶ高さの建造物が、さも当たり前のように聳え立つ
建造物が生み出す日陰は、まるでこの世界を象徴するかのように翳り佇む
まるで世界の縮図の如く、輝ける光と、それに忍び寄る暗き闇
世界は貴族社会から人民による社会に変わったが、世界の歪みは未だ無くなってはいない。真偽不明のまとめサイトのネタでしか分からないような歪みは数多く溢れているのだ

「……私達のいた時代よりも、世界は善い方向になってくれた。それでもかつて私が願った世界には程遠かった」

扉を開け、トレイに乗せた二人分のティーカップとポットを運んで来たのはブロンド髪の少女。サーヴァントアサシン、その片割れの少女でアルビオン王国女王候補プリンセス・シャーロットだ

「……階級の呪縛は無くなれど、未だ世界は見えない壁で隔てられているということでしょうか、陛下」
「よしてください陛下だなんて」
「申し訳ございません。元々女王陛下に仕えていた身でありまして」
「だからそういうのはいいですって。貴方も私のことはアサシンもしくはプリンセスって呼んでくれても良いんですよ?」

どのような立場だったであれプリンセス・シャーロットは王族の分類だ。『彼女』自身が純粋な王族ではないとは言え、こうして畏まってしまうのはかつての立場故のものであろう
そんな私に困ったような表情をしながらも、その奔放さを表すような軽い口ぶりでそう自分に提案する

「……では、プリンセス。こちらに居らしたのはティータイムをしに来ただけ、と言うわけでは無いご様子で」
「――ええ」

談話は一時休止、本題。確信に迫る設問

「あなたの望みを、お聞きしたくて」

逃げることも、避けることも出来ない壁が、私の前に立ち塞がる

「私達はサーヴァント、歴史の影から蘇った影法師であり、マスターに仕える白鳩です」

その透き通った碧眼が、過去を見透かすかのように私を見つめている
その罪も、汚れた魂も、見定めるように

「ですが、あの時のあなたの目に生気はなく、けれども死を拒んでいた。何をそこまで後悔しているのか、何に苛まれているのか。――誰に懺悔しているのか」
「……!」

確信に迫る寸前までいる、プリンセスの言葉
指の震えが止まらず、思わず息が漏れる

「だから、問いましょう。あなたが見ているモノクロの景色に、願うものはあるのですか。あなたが見たであろう理想の先に、それでも叶えたいものがあるのかどうか」


552 : Why me? ◆e1iKht2T0g :2022/02/09(水) 21:21:50 zSrHCv.I0
まるで全てがお見通しのような、そんな王女の言葉が身に痛いほど染み渡っている
ああ、分かっている。ウィリアムの計画(プラン)は成就した、犯罪卿によって歪みはおおよそ取り払われ、世界は一歩ずつより善い方向へと進み始めた
だけど、それは血の繋がらないとは言え、大切な弟を犠牲にした上で

「……裁きの刻が来たと思いながら、あの時の私が死ぬことがほんの一瞬だけ怖くなった。私は己の救済を代価に、弟を地獄へと引きずり落としたような男がだぞ。そんな人間が死の間際に死にたくないと。救われる価値も、願いを抱える価値も無いような私が」
「………」
「共に罪を背負うと言いながら、弟に罪を押し付けたのはこの私だ」

そうだ、こんな愚かな男が願いを持つことなど間違っている
自分では何も出来ないで、その勇気すら持ち合わせられなかった自分には

「私は終わるべきだった。あの場所で。いや、それ以前に、贖罪を望んだあの暗闇の中で腐り落ちることこそが」
「――もう良いわ」

私の贖罪の言葉を遮るように、プリンセスの言葉が部屋に響き渡る

「……あなたも、そうなのね。ちょっと、似てる。あの娘と違って自虐的だけど」

その瞳の奥の揺らめきに、何かを思いかすかのように
少しだけ視線を下げて、再び視線をこちらに向ける

 ・・・・・・・・・
「背負うことになった人間からちょっとした助言よ。―――勝手に背負わせただなんて思わないで」
「……ッ」

少しばかりの怒気が籠もったその言葉が私の体中を貫き通した

「その始まりが誰かの願いからだったとしても、それはそれ本人が選んだ望みで、選んだ人生。傍から見れば苦難だったとしても。誰かを巻き込んだのは自分自身の選択。罪も咎も背負おうと決意したのものその本人の選択。ええ、私はあなたの弟さんがどんな人間なのかわからない、けれどもそれほどの覚悟は並の人間には出来っこない。その弟さんは良心の呵責や罪悪感に苛まれていたでしょうね」
「そんなことは分かっている! 全ては私の責任で、私の業がウィリアムをそう追い込んでしまったのだ! 心優しい弟が、そんな血塗れた行為に手を染めて、苦しむことを知って私はそれに気付かぬ振りをした!」

思わず反論していた。心からの叫びだった。間違いなく、ウィリアムに罪を背負わせたのは自分だ
私が全て悪いのだ

「そうだ、私が、私がウィリアムに依頼していなければ、私が余計な願いを抱いていなければ!ああ、そうだ、私こそが本当の悪魔―――」
「――失礼、マスター」

甲高い音が鳴り響いて、頬にヒリヒリとした熱さがこみ上げていた

「「自分が悪い」なんて言葉で勝手に逃げないで。償うのは兎も角、それを勝手に逃げる理由にしないで」
「―――!!」

脳天を不意に叩かれたような衝撃だった。明確な怒りと呆れが混じった声が王女の口から発せられていたから

「その彼がたいそれたことをして世界を変えて、その代償に命を落としたってぐらいしか私には分からないわ。でもね、それで苦しんでいたのなら、罪を一緒に背負うを言ってくれたあなたのその言葉は、何よりの救いだったはずよ」
「そ、れは……」
「あなたはその人の、最も辛い時に優しく寄り添えることが出来んだから」
「……あ」

言われてみれば、そうでもあった
当初のウィリアムが弱り苦しんでいる姿を知るものは、あの当時では自分だけである
苦しそうに悩むウィリアムの私はこう語りかけたこともあった

"お前はひとりじゃない" "私が共にいる"と

そう言われた時のウィリアムは、心なしか少しばかり微笑んでいた
私とウィリアムは、血が繋がっている兄弟ではない。それでも私は彼の弟であるルイスと違って、共に罪を背負うという形で兄弟の繋がりが欲しかった、それを思い出してた


553 : Why me? ◆e1iKht2T0g :2022/02/09(水) 21:22:14 zSrHCv.I0
「ごめんなさい。ちょっと昔のこと思い出しちゃって」

さっきまでの迫力は何処へやら、少しばかり熱くなっていたことを口頭で謝っているプリンセスの姿があった

「でもね、マスターとして私達と戦う以上は生半可な態度は取られてほしくはなかったし、それにこうやって話せてよかったわ。それに……マスターも少しだけ元気になったようですし」

カップに残ったすでに冷めたであろうお茶を口に放り込み、プリンセスは笑みを浮かべて話しかける

「……まあ、万全までには程遠いですが」

私としても、全てが吹っ切れたわけではない
ウィリアムを追い込んでしまったという自責の念は未だ残っている
けれど、ウィリアムにとっての私が、そういうものであったというのであれば――

「……ならば罪を償い終えるその日まで、死ぬわけにはいかない。到底許されてはならない罪だからこそ、目を逸らすことすら、許されない」

そう。これは私の罪であり、ウィリアムの罪であり、私達モリアーティ家の罪。地上の悪魔全てを消し去ると言う悪行をもって平和を取り戻し、そのために多くの命を奪った我らの責務
許されないからこそ、生き続けなければならない

「それに、もし仮に聖杯を悪用するものがいるならば、『モリアーティ』としてそれを阻止する必要がある」

聖杯戦争は万能の願望機を求めて争う、端的に言って殺し合いの類
故にそれを求むる『悪魔』もまた暗躍しているのは承知
それもまた阻止しなければならない。ウィリアムの繋いだ未来の為に、『モリアーティ』としても
必ずとは言わずとも、それでも自分が生きる今よりも善くなった未来の為に

「それがあなたの願いでいいのですね?」
「……今は、それで良い」
「……分かりました、マスター。私達アサシンはあなたのサーヴァントとして助力を尽くす事を約束します」

安堵が入り混じった表情で、プリンセス・シャーロットはこちらへ社交辞令とも言うべき笑顔を向けてそう言い放つ
そう、私は死ぬわけには行かない。変革の名の下に多くの命を奪ってきた『犯罪卿』の一人として、償いの生涯に未だ終わりは訪れないのだから

「……よろしく頼む」
「ええ、此方こそよろしくおねがいします」

その言葉を皮切りに、プリンセスは飲み干されたカップをトレイの上に乗せ持ち上げ、足早と部屋から立ち去ろうとする。部屋を出る寸前、こちらを振り向いてこう一言

「ではなくて……これからよろしくね、マスター」

去り際のプリンセスの言葉は、一刻の王女と言うよりも、何ら変わりない、歳相応の少女の言葉であった


554 : Why me? ◆e1iKht2T0g :2022/02/09(水) 21:22:31 zSrHCv.I0



「ちょっと、意地悪しちゃったかしら」
「……プリンセス」

小窓から木漏れ日が差し込む個室のベットの上に座り込む二人の姿
プリンセス・シャーロットとアンジェの二人
悪戯っぽく微笑みながら呟いたその言葉を、英霊となる前のポーカーフェイスのままにアンジェは聞き流す

「……思い出したの?」
「まあ、ね。あの時の、どこかの誰かさんみたいに後ろ向きだったのが被って、思わず」
「むぅ……」
「ふてくされなくてもいいじゃない」
「私はふてくされてない」

今でも思い出す、コントロールが軍部主導になり、プリンセスの暗殺命令がアンジェに下されて
策を練ってプリンセスと共にアンジェが逃げようとした時の事
プリンセスは自らの使命と願いのために、敢えてアンジェを突き放した、「わたしの人生ははあなたのおもちゃじゃない」と。彼女を軍部から守るために
プリンセスとしてはアルバートの懺悔から、アンジェとの何かしらの共通点のようなものを感じ取っていたようなもので
――背負わせてしまったと後悔してるところは似ていると思った
最も、アルバートは罪悪感からかなり自虐気味であったようで、気に障ってないと言えば嘘になるが、ちょっとばかし発破をかけた。多少は持ち直したようであるため、一応は納得というか

「……マスターも、だって思った」

思い詰めるようにアンジェが一言呟く。マスターと自分は同じ業を背負っているというのは、理解した
本来なら自分がするべき使命を、願いを、友に背負わせてしまったと
未だ世界の壁は無くならず、見える場所で貧富も差別も氾濫している。そんな未来に、現代に、彼女たちはサーヴァントとして召喚された
世界の壁を無くすために戦った偽りの王女プリンセス・シャーロット
そんな彼女の為ただそれだけのために全てを騙し続けたアンジェ・ル・カレ

「……マスターも、私と同じ。だから……」
「ええそうね。マスターもアンジェも、背負うべきものを背負えなかった。だから呼ばれたのかしら、ね」

二人は一人、一人は二人。比翼連理の白い鳩
類する後悔を持ち得た少女と長男はその縁に導かれて召喚されて、少女の親友である姫様はそんな彼女についてきた

   ・・・・
「……アンジェ。私は何も変わらない。私はあなたの為の味方。いつまでも、いつまでも」
「ええ、そうね。でも私達はサーヴァント。マスターが意志を見せたのなら、それに応えるつもりよ。あなたと似たりよったりの彼のことも放っても置けないから」

呟いたのは、本当の名前。アンジェ・ル・カレはシャーロットで、シャーロットはアンジェ
裏返った運命は数奇な形での再開をもたらし、今の彼女たちを形作った

   ・・・・
「……アンジェがそういうなら」

   ・・・・・・       ・・・・
故に、シャーロットが望むならば、アンジェもまた、一心同体
霊子と魔力で構築された第二の生を、聖杯戦争という抗争の中で、闇を裂く闇として振る舞おう
マスターの願いのために戦おう

「でも、一つだけ。あの時と同じことを言わせて」

だが、それでも、かつて王女になり損ない、友にその責務を負わせてしまった少女は誓う

「私が騙してあげる。マスターも。あなたも。世界も。――そして、私すらも」

彼女を照らす光は、まるであの時の再現のように
彼女が洩らした誓いは、かつての再現のように


555 : Why me? ◆e1iKht2T0g :2022/02/09(水) 21:23:17 zSrHCv.I0
私は決して夜明けを見ることは出来ない 一人きりで思索に潜んでいる

それは未だ私たちの心の中で育ち、高く飛び立ち、強く輝きを放つわ

――Void Chords feat.MARU/The Other Side of the Wall


556 : Why me? ◆e1iKht2T0g :2022/02/09(水) 21:23:39 zSrHCv.I0
【クラス】
アサシン
【真名】
アンジェ・ル・カレ/シャーロット
【属性】
秩序・中庸
【ステータス】
アンジェ・ル・カレ:筋力:D+ 耐久:C 敏捷:C+ 魔力:E 幸運:C+ 宝具:C(共通)
プリンセス・シャーロット:筋力:D+ 耐久:C 敏捷:D 魔力:E 幸運:C 宝具:C(共通)
【クラススキル】
『気配遮断:B』
サーヴァントとしての気配を絶つ。
完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。

『対魔力:D』
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

【保有スキル】
『諜報:B』
このスキルは気配を遮断するのではなく、気配そのものを敵対者だと感じさせない。

『単独行動:A』
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクAならば、マスターを失っても一週間現界可能。

『変装:B(A+++)』
変装の技術。真名看破の確率を低減させる。
ただしアンジェがシャーロットに、シャーロットがアンジェに変装する場合のみランクがA+++へと跳ね上がる。二人はかつてどちらでもあったが故に

『専科百般:B』
多方面に発揮される天性の才能
アンジェは演技・ピッキング・格闘・射撃等、スパイに要求される技術を高水準に納めている他、絵画や音楽等にも精通している
プリンセスは王宮における王女としての技術教養の他、他人の懐からモノを盗む手腕にも長けている



【宝具】
『比翼恋理・嬰児交換(チェンジリング・コントロール)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1
かつてアンジェ・ル・カレはプリンセス・シャーロットであり。かつてプリンセス・シャーロットはアンジェ・ル・カレであった。その在り方が宝具となって昇華されたもの
比翼連理、一心同体。アンジェとシャーロットで知覚した情報を即座に共有可能で且つ、何時何処でもアンジュとシャーロットの位置の入れ替えが可能
入れ替えの際、強制的にアンジェはシャーロットの、シャーロットはアンジェの姿へと強制的に変装される。
もとより、どちらもアンジェであり、どちらもシャーロットである。それ故にチェンジの際の生じる違和感は皆無


【Weapon】
『Cボール』
アサシンのいた世界において19世紀末に発見された、無重力を自在に生み出すケイバーライトと呼ばれる鉱石を、手のひらサイズまで縮小して操作可能にしたもの。
ボールの周辺の重力の増減、偏向が可能であり、アサシン自身を飛ばすだけでなく、他の物体を放り投げることも可能。
欠点としては、小型化によって冷却機能が省略されているため、使いすぎると加熱及び破損する。そのため連続使用の場合は冷却用の水筒(氷入り)が必要となる


『ウェブリー=フォスベリー・オートマチック・リボルバー』
1900年代初頭、ジョージ・フォスベリーが設計し、W&S社が生産した、反動利用式オートマチックリボルバー。
反動を利用して弾倉回転とコッキングを自動で行うため、シングルアクションリボルバー並みの軽い引き金で、ダブルアクションリボルバーのように連射できる。
しかしながら、構造上雨や泥に弱く、またリボルバーの癖に初弾は両手を使ってコッキングしてやらなければならない。


『ワイヤーガン』
遠距離にワイヤーを射出するもの。
フィクションでよくある巻き上げ機能はついておらず、遠方にワイヤーを固定するのみ。伝って移動するのは自力である。


【人物背景】
共和国の諜報機関『コントロール』所属のスパイの一人/アルビオン王国の第四王女。運命の悪戯にてそう生きざる得なかった二人。
本来ならば真逆であった。
アンジェ/シャーロットは貧民街にてスリをして生きるしかなった貧しい子供で。
シャーロット/アンジェは王家のしきたりに雁字搦めになってすべて投げ出そうとして。
二人は出会い、友人となりて、王女は世界の真実を知って世界を変えようとした。
王女の願いは叶わず、不運が二人を引き離した。
王女だった女の子は、地獄の最中を生き抜いてスパイへと成り上がった。
スリだった少女は重圧とプレッシャーに耐え抜き、修行僧のごとく技術と立ち振舞いを身に着け王女となった。

王女は少女と再開し、かつて少女が願った願いを叶えるがために。
少女は王女を守るため、全てを騙し抜くことを決めた。

そんな二人の少女の、そんな逃避行の続き

【サーヴァントとしての願い】
ある意味彼女たちの願いは叶っている。今はマスターの為に、この力を振るう


557 : Why me? ◆e1iKht2T0g :2022/02/09(水) 21:23:57 zSrHCv.I0
【マスター】
アルバート・ジェームズ・モリアーティ@憂国のモリアーティ
【マスターとしての願い】
ただ、死ぬわけには行かない。罪を償い続ける限り
【能力・技能】
秘密諜報部MI6の指揮官Mとして、己の地位と権力を有効活用して計画の為の舞台を整えることを得意とする。あと「魔王」と形容される程に酒が強い。

【人物背景】
モリアーティ家長男。幼き頃より世界の歪みを自覚し、理想と現実に苦しみ続けた凡人。
そんな凡人が救いを求めたのは、キリストと幻視するほどに聡明な或る一人の少年。

凡人の原罪は、そんな少年を人殺しにまで陥れたこと。


558 : ◆e1iKht2T0g :2022/02/09(水) 21:24:10 zSrHCv.I0
投下終了します


559 : 父の業と父の業、二人仲良くnn842fsk :2022/02/11(金) 03:10:37 9qrPFFlU0
投下します


560 : 父の業と父の業、二人仲良くnn842fsk :2022/02/11(金) 03:14:14 9qrPFFlU0
池袋にある寂しい喫茶店、そこに二人の男がいた。

年齢的には中年辺りになるだろうおじさん二人組。

それぞれ店員が持ってきた珈琲を美味しそうに飲んだ。

何かを恐れるように躊躇して一口。

「美味い」

気兼ねなく上品に一口。

「美味い」

それぞれの人生経験あれど、そうして異口同音が口から飛び出した。

「どこぞの趣味の延長のゲロマズコーヒーとは違うなぁ」

切間撻器が苦い思いを思い出しながら、この苦さを噛みしめている。

デル・カイザーはそれを少し気にした。

「……コーヒーというのは味覚がおかしいと駄目だからな」

「ぐはぁ!確かに!アイツの味覚は頭より先にボケたのかもしれないな!」

「いや脳と舌の感覚は密接な関係にある」

デル・カイザーはそれに対し、医者のような事を言った。

「それもそうだったな、記憶の食事風景を楽しむ装置が開発されて欲しいものだな」

「記憶?脳の異常から何故そう連想する?」


561 : 父の業と父の業、二人仲良くnn842fsk :2022/02/11(金) 03:14:46 9qrPFFlU0
脳の分野は様々である、言語機能から知覚、視覚、聴覚、味覚、触覚、筋肉繊維や神経を複合した運動に関する機能の情報を一度に処理するのが脳だ。今日日スポーツ科学という物もあり、様々なトレーニング方法と脳科学は密接にある。

その中でも記憶を選んだには何か事情があるのだろう。

「息子がな、そういう病気なんだ」

「ふむ、大変な事だな」

「記憶を忘れる、その度に絵本を見させないと駄目なんだ」

「絵本?タイトルは?」

「はちの王子様だ」

忘却した記憶想起には条件反射的に何か強いイメージを連想させる物がないといけない。

「蜂ね、鬼里人という日本に住まう原住人に蜂使いがいたな」

「動物兵器か」

スズメバチは凶暴で攻撃性も高く、執拗に人間を襲う可能性がある。その特性を利用して古来から、敵陣に蜂の巣を投げて混乱されるという手法は行われていた。近年ではイタリア・エチオピア間で起きた1935年の第二次エチオピア戦争で蜂が使われた。戦車など武力で勝るイタリアに対しエチオピアのパルチザンは対戦車兵器も無く、真っ向では太刀打ちできなかった。

そこで彼らが取った行動は戦車の車内に蜂の巣を入れる事だった。

蜂から逃れるために乗員は車外にでるしかなく、出てきたところを狙い撃ちした。

蜂の巣を投げつけるだけでも当時の戦車には至る所に蜂が入る隙間が十分あった。

「もはや蜂の巣そのものなっていた」

「蜂の巣そのものね、超個体というのは今時の人間のような話だ、あらゆる社会体系、学校、会社、そういうので超個体のようになってきている、それはファシズムというのの原型なのか、それとも時代という業の産物か分かりかねる」

不思議で奇妙な話、自由を会得した筈なのにその自由から逃げ出したがる。いっそ、自由なき世界に安心を求める心理、それは口に出しては言えないような話だろう。

遠足で動物園の生き物を見て、自分もこうなりたいと言う小学生はいないだろう。


562 : 父の業と父の業、二人仲良くnn842fsk :2022/02/11(金) 03:15:18 9qrPFFlU0
「時代という業、お前は息子に社長の座でも息子に譲ったのか?」

デル・カイザーはそこから話を広げようとした。

「確かに似たような話ではある」

「暗殺結社か?」

「近いが遠いな」

「まぁ今はいい」

「そうか?お前の業も似たようなモノだろう?」

「何故分かる?」

「似ている気がしたからさ」

聖杯戦争のマスターとサーヴァントは精神性が酷似、擬似する事が多々ある。そういう部分で何が似ているかは様々ではある。

馬が合うと言う話だ。

「あぁそうさ、俺も組織、いや、組織とは呼べないツーマンセル、二人一組のペアで仕事していた」

「そっちこそ暗殺手じゃないのか?」

独特の雰囲気、死をまとうという事、脳内に殺意というのが選択肢に浮かぶ状態。

常日頃から殺気が滲む、日頃ストレスに満ちた上司ですら怒気はあっても殺気はない。

殺伐とした世界の住人、闇の住人、表社会から隔絶された夢にも思わない世界、裏社会の住人と感じ合っていた。

わざわざ殺し屋ですと名刺に持ち歩いて名刺交換するなんて風習なんて無いだろう。

あったとしても表社会と裏社会の文化交流なんてそうそうない。

「腹の探り合いはよそう」


563 : 父の業と父の業、二人仲良くnn842fsk :2022/02/11(金) 03:17:30 9qrPFFlU0
もっとも公の場であった。

「今、この瞬間にも狙いを定めている人間がいるかもしれないからな」

「誰のだ」

「さぁな、俺の同僚に亘という人物がいたがあいつの殺気はよく覚えていない、あの時、俺とヤツの運命は平行線を辿っていたのかもしれない、目の前の殺気に全集中するので精一杯だった」

「あぁ、俺も似たような経験がある、人並み外れた殺気、お天道様だって眼を血走らせるだろうがそれより酷かった」

それでもなお物騒な話題を展開させる。

彼等の世界には死体によって非日常だと区別する風習があるのかもしれない。

世の中、殺し屋は電車に乗ったりもするし、飛行機にも乗る、街中を歩けばすれ違うかもしれない。

中には殺人鬼だっているだろう。

だが、彼等は公衆の面前で凶器を見せない、そして、路上のストリートファイトで武器を見せびらかさないだろう。

それでも凶器を持ち出すのはよっぽどの理由があったりするのかもしれない。

全ては憶測だが分かっている事がある、この二人組は余裕もって、コーヒーを飲んでいる、この殺伐とした世界で気の緩みが浮上させている。


564 : 父の業と父の業、二人仲良くnn842fsk :2022/02/11(金) 03:18:21 9qrPFFlU0
それは彼等が強いことに他ならない。

嫌な気配、集団ストーカーは電磁波を浴びせられる事によって声を感じとると言われ、気、生体磁気、邪気、先程述べた殺気も含まれるだろう。

人間のというのに敏感になる、それは「お前の命を奪いとる」という脅迫、暴力や殺人を予告しているようでもある。

気配を感じとるというのはそういう事である、仮に本当に電磁波を遮断するなら頭にアルミホイルを巻くよりも全身にアルミホイル巻かないといけないだろう。

スーツを着るよりもアルミホイルで出来た服を着る。

それで漸く遮断出来るだろう。

それでも彼等のような人種は分かってしまうだろう。

人間の本性、獣性、牙を向けようとしている者がいるという捕食に関する動物的本能から防衛本能を刺激する。

もしかしたら人間の業という概念の元々備わる一側面かもしれなかった。

「もはや真昼に百鬼夜行でも渡り歩いてるようだな」

切間撻器はそう感じていた。


565 : 父の業と父の業、二人仲良くnn842fsk :2022/02/11(金) 03:18:59 9qrPFFlU0
何がどうとかじゃない。

カラーギャングや半グレ、そういうのが近年また増幅したかもしれないし、他にも自警団やらテロリストだっているのかもしれない。

危険思想を把握する事は難しい。失敗国家指数には不満分子の存在というのがある。

「魔女もいるかもな、西洋の百鬼夜行はアーサー・ペンドラゴンをリーダーとする百鬼夜行、月の女神へカーテをリーダーにするワイルドハント、オーディンをリーダーとする百鬼夜行がある、海外翻訳したならばワイルドハントと言う」

デル・カイザーがウィッチクイーンの息子としての魔術知識を披露した。

「要するにバイカーズ集団が欧州各地にいるという話だな、オーディンは聞いた事があるぞ、北欧神話の戦の神」

そういう風に切間撻器は解釈することにした。

「何でそんな有名だろうな」

「理由は様々だが、理由よりもそんな存在がこの辺をうろうろしているかもしれないという話だろう?」

「考え過ぎかもしれない」

「少し前、池袋の北口は中華街化が推進されたが地元住人に反対されたようだな」

「そうらしいな」

「それでも、最近の池袋は中国人が多くなった気がする」

「それも考え過ぎかもな」

「何故?」

「気を総べる法を知らないという話だろう?だって学んでいないからな」

「…………なるほど」


566 : 父の業と父の業、二人仲良くnn842fsk :2022/02/11(金) 03:19:41 9qrPFFlU0
中国の言葉ではそれを杞憂と言う。

列子―天瑞に載っている話。春秋時代の中国でのこと。

杞という国に、天地が崩れ落ちるんじゃないかと憂えて、夜も眠れず、食事ものどを通らない人がいました。

そこへ、彼のことを心配した友人がやって来て、

「天は空気だから落ちて来ないよ」

と言います。

すると、

「だったら、太陽や月や星はどうして落ちないんだい?」。

「あれも、空気が輝いているだけなんだ」

「じゃあ、大地の方は?」

「分厚い土の層だから崩れはしないよ」

というわけで、不安で眠れなかった人もすっかり納得して、二人して大喜びしたということです。

「気狂いという言葉は一理あったという話だな」

切間撻器はその禁忌の単語を再考した。

「あぁ、西洋では東洋の神秘は眉唾物だからな」

「監視カメラのサーモグラフィーは犯罪者を見分けられる機能があるらしいな、ロシアで導入されたと聞いた事がある」

「科学についてはあまり知らないな」

デル・カイザーが専門外だと告げた。魔術師というのは科学を嫌悪する場合が多い。

「誰もが闇の住人に見えるストレス社会か、読心術の心得がある者がいたら大変だな」

切間撻がそう結論し、また一つ悩みの種が増えた。


567 : 父の業と父の業、二人仲良くnn842fsk :2022/02/11(金) 03:20:23 9qrPFFlU0
「悟り、その単語から連想されるのは息子の敵の一人だな」

「死を感じとれるのか?」

「正解だ、彼の能力は数秒先の未来を感じられるという話だったな」

「本当に悟りのようだったな」

「おまえの息子にも敵はいたか?」

デル・カイザーもそう質問されたからには気になったらしい。

「人間とは二人以上の事を言う、人の間だからな、その間にある出来事を慮るのは難しい、戦うというのは『天命』だったかもしれなかったからな」

「『天命』ね」

「紆余曲折を経ても、最後に経るモノは変わらない、惜しむべきは才も暴もその敵には足らなかったという話だ」

切間撻器はそう感じていた。

敵になるにはまだ相応しくない、それだけは確かな真実だった。


568 : 父の業と父の業、二人仲良くnn842fsk :2022/02/11(金) 03:21:06 9qrPFFlU0
「………敵の敵は味方というな」

デル・カイザーは少し話を曲げたいようだ。

「そうだな」

「亘という同僚はどうだった?」

「何が言いたい?」

「本当は気づいていたんじゃないのか?」

「知っていたとしてもそれを担当し、その役割を一任するのは俺ではない」

その男こそ元凶と言いたいようだった。

業の櫓と呼ばれる出来事があった、それは所詮賭け事である。それを取り仕切る立場にいたのが彼である。

賭郎立会人と呼ばれる存在。

それと時、同じにして起きた勝負、それが何よりのブラックボックスだった。

「第一、知ったところで何になる?尻拭いしろと?」

「そうは言ってない」


569 : 父の業と父の業、二人仲良くnn842fsk :2022/02/11(金) 03:21:36 9qrPFFlU0
「陰謀論者はトイレットペーパーを無駄に渡したがるだけの無能だ、自分でそれを使おうとしない、それなのに、トイレットペーパーを巻いている作業だけで興奮する、一体どういう変態の類なんだろうな」

「陰謀論の大半は幻臭からだろう、幻の臭いを感じている」

デル・カイザーにとって魔女狩りという陰謀論の元祖のような出来事において彼の祖先は実際の魔女であり、本当の陰謀の主役であり雛形だった。

無から生じた厄災など誰も認識したくない。

ある日突然、理由なく、なんとなく生まれる悪意もあるだろう、それも厄災だ、あるいは不吉、凶がある日突然大量発生した混沌、吉がある日突然大量発生しても混沌だろう、混沌とは幸福か?不幸か?それに満ちた空間なのである、無秩序であり、そこにはルールがない、呪縛なき呪縛だ、祝いや呪いがなくても不吉、凶や吉は発生する、運勢、運気、それをカオス力学、乱数と言ったりもする、それらの厄災、混沌が管理されているならば、自分達の厄災や混沌を支配してくれる誰かがいるならば、魔女や秘密結社が全ての厄災と混沌を担当、管理してくれるならば、これほど安心できる話はない。

混沌の支配、厄災の支配、どっかの国の王様が運転する車やプライベートジェット、電車のようなのに全人類を乗せて、未来という厄災と混沌に満ちた行き先は分かっていると告げて欲しいのだ。

突然生まれる混沌や厄災に理由があったとしても、それは善でも悪でもない不吉、凶、という御籤を引いたという話だろう、朝のニュース番組の星座占いならば12位だったというレベルで運がない。

そうして話はまた厄災や混沌の話に戻っていくのだ。

スロットマシンやルーレットのように不規則な事象。

「ぐはぁ!きな臭いだけに?」


570 : 父の業と父の業、二人仲良くnn842fsk :2022/02/11(金) 03:22:20 9qrPFFlU0
このぐはぁ!というのは切間撻器の笑い声である。

とても愉快なジョークに見えたのだろう。

「………少し下品な話題になったな」

「気にするな、俺も最近頭に来ることが多い、死んだはずなのに、まだ生き続けている事を後悔している」

「俺もだ」

二人は一度、死んだ身ではある、理由は別々であるが敗北から死を招いた、死こそ最大の厄災だ、神や仏の気まぐれか聖杯の気まぐれか、それとも聖なる厄災か聖なる混沌か。厄災として生まれ変わり、生き続けるのを許されたのか。

その答えは今の世界にもしかしたら誰も有していないのこもしれない。


571 : 父の業と父の業、二人仲良くnn842fsk :2022/02/11(金) 03:22:58 9qrPFFlU0
「あらゆる入り組んで糸がこんがらがったような問題というのを快刀乱麻に断つという形で解決出来る魔法のアイテム、聖杯とは何だ?」

切間撻器の疑問にデル・カイザーはありきたりな解答を即答した。

「……万能の願望器だ」

「業深いな、万能だなんてな、一万人の脳味噌の能力の集合体か?」

「………そんな不気味な万能の願望器があるとは思えないな」

「脳味噌にコンピュータをつけ加えたのを生体コンピュータと言う、サイボーグとも言うけどな、量子コンピュータそもそも隣接する人間の世界こそ誰かにとっては平行世界だろう?」

「平行世界ね」

「現実は無数の平行世界が重なり合った世界だ」

「面白い人生哲学だな」

「俺のじゃないさ、誰の言葉だったか忘れてしまったがな」

切間撻器が頭を抱えた。


572 : 父の業と父の業、二人仲良くnn842fsk :2022/02/11(金) 03:23:34 9qrPFFlU0
デル・カイザーが疑問に思った。

無数の脳味噌を一つにする、人間の体から摘出した脳味噌は心臓からの血液を首から切断されて、脈動を終えて、死骸になってしまう。

それを曲がりなりにも生かし続けるという技術は限られる。

「何か言ったか?」

切間撻器はその小声を聞き逃した。

「まぁいい、これも杞憂に終わると良い話だったな」

「何で出来ているか材質は今はどうでもいい」

業が深くてもやることは変わらない。


573 : 父の業と父の業、二人仲良くnn842fsk :2022/02/11(金) 03:24:05 9qrPFFlU0
「七夕は知っているか?」

切間撻器がそんな事を言った、今日日万能の願望器にその単語を結びつける人間は少ない。

「占星術の変化したようなヤツだな」

「複数人は難しいか?」

「………難しいな、平和主義、いや平等思想の賜物か?」

「そうじゃないさ、んー、そうだ、つまり他の七夕の短冊を切り捨てていくというのが聖杯戦争なんだよな?」

「………そうなるな」

デル・カイザーが相手の考えを分かりかねていた。

「他の人間に面白い願いがあったら俺はそれを叶えようと思う」

「は?」

一番予想外の言葉が出た。

「俺のお目に叶った願いを叶えてやろうと思うのだ、何、似たような形が重なり合ってもそれはそれ、これはこれ、だ」

「………無欲なんだな」

「何より貪欲だ、お前でも良いんだぞ?」

「何?」

聖杯戦争の終盤は本来、マスターとサーヴァントが敵対する可能性すら浮かぶという、それはマスターにも叶えたい願いがあり、サーヴァントにも叶えたい願いがあるからだ。

似たような願いと言っても、悲願を他人に叶えられるのは腹立つ事もあるだろう。

切間撻器は数奇な答え導き出した。


574 : 父の業と父の業、二人仲良くnn842fsk :2022/02/11(金) 03:24:55 9qrPFFlU0
彼の人生経験がそのような答えを出したのだ。

「気が変わるかもしれないがな」

コーヒーはやや冷めていたが、彼の熱気はデル・カイザーに伝わったようだ、もしかしたら、彼は自分で願いを探し当てるのかもしれないが。それはデル・カイザーも同じだった。聖杯戦争を経て、初めて願いを見繕う事だってあるだろうから。息子の事も考えないといけない。


575 : 父の業と父の業、二人仲良くnn842fsk :2022/02/11(金) 03:25:54 9qrPFFlU0
【クラス】

キャスター

【真名】

デル・カイザー

【属性】
中立・中庸

【ステータス】

筋力A 耐久A 敏捷EX 魔力A 幸運D 宝具B++

陣地作成 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。『裏新宿』の方の『無限城』中間層ベルトラインの支配者なためそれを再現できる。

【宝具】

悪魔の腕(デモンズ・アーム)

ランク:B++ 種別:対人宝具 レンジ:2 最大補足:1
魔女の力にして彼の持つ暴力の化身、両腕をポケットに突っ込んだ状態で圧倒できるとかいうどっかで見たような事していた。


576 : 父の業と父の業、二人仲良くnn842fsk :2022/02/11(金) 03:26:24 9qrPFFlU0

闇の住人達(ベルトライン・ピープル)

ランク:C〜A 種別:対界宝具 レンジ:?最大補足:?

ベルトラインの住人を呼び出せるだけの召喚系の能力。簡単に言えばデビルサマナー。


召喚出来るのは主に四つ。
不明
人並みの大きさ、100m程の爆発起こして無傷な相手をフルボッコにできる「下」の者は「上」の者には勝てないというロジックで赤屍に瞬殺された

虚無(ダス・ニヒ)、この世に存在するすべてには存在理由がある、意味がないという意味もあり、善であるがゆえに悪である、さながらメビウスの輪のようにすべては裏も表もなく因果律で結ばれるロジックの存在理由を生み出された数十m程の波動で下半身が消し飛ぶ、また地面にパンチして数mのクレーターができるくらい攻撃力がある。

DER HENKER(処刑人)、ただ一つの原子も電子もニュートリノ等の微粒子さえもない、完全な真空である、作中では電撃を無効化した。鹿の頭を被った2m超の人並み、体の中に宇宙が広がっている。

他にも地獄会堂(インフェルノ・ドーム)地下闘技場の主人公サイドじゃない人外は大体彼の手駒。

三騎士(ドライリッター)、三人の騎士達を従えて、それを召喚できる。


577 : 父の業と父の業、二人仲良くnn842fsk :2022/02/11(金) 03:27:05 9qrPFFlU0
【サーヴァントとしての願い】
息子との決着、そして天国の扉を開ける事、本当は呪術王を自分の力で倒したかった、いや、他にもしないといけない事があった気がするため、『願いを探すのが願い』となっている。

【人物背景】

美堂蛮の父親。初代GetBackersの片割れで「GetBackers」の名付け親。つまり、この男がいなかったら「美堂蛮の父親。初代GetBackersの片割れで「GetBackers」は無かったし、「美堂蛮の父親。初代GetBackersの片割れで「GetBackers」という物語も始まらなかった。

平凡な女性と結婚して、子供の力の暴走を妻に見られた結果、子供を祖母に預ける事に決めた。

17歳の時に子供が誕生する。

その後は祖国であるドイツへの一時帰還と無限城への挑戦、相棒である波児との別れを経て無限城中層スラム地区 =ベルトライン=の支配者となる。デル・シュロスを築いた。

作中では地底エリア(アンダーグラウンド) 頽廃の街・ソドムナードの地獄会堂(インフェルノ・ドーム)地下闘技場で偽りの格闘大会を開く。

そして自分の居城に乗り込んだ息子と死闘を経て、望みを託して、死んだ。


578 : 父の業と父の業、二人仲良くnn842fsk :2022/02/11(金) 03:27:45 9qrPFFlU0
切間撻器

【マスターとしての願い】
人、人間の業について考え直す、他人の願いを見極めてそれが良かったらそれを代わりに叶える。もしかしたら自分で願い見つけ出してそれを願うかもしれないが『願いを探すのが願い』なのは変わりない。


【能力・技能】
『暴力』は賭郎立会人としてかなり最上位に位置する、妥当しえる者は少ないだろう。
また相手の強さを自分を基準にして強いか?強くないか?というのを見分けられる。たまに答えをどっちか分からないと言う時もある。簡単に言えばドラゴンボールのスカウター。
靴ホイール、片方の靴にホイールがつけられており、それだけで移動する変な事をする。
【人物背景】
要請に応じて立会人を派遣し、あらゆるギャンブルを取り仕切る会員制秘密組織賭郎の元お屋形様、賭郎の立会とは要するにギャンブル中の暴力の介入、干渉を断絶して、禁じる、作中では廃ビル、富士山廃坑、警視庁地下、TV局、帝国タワー、そして離島に『卍』と呼ばれるシステムを設け、その一切を取り仕切る。あらゆる暴力は立会人によって立会中、塞がれ、そうして立会人には何よりも『強さ』、『暴力』が求められた、そしてゲーム立案能力、公正な審判を行うための優秀な頭脳、冷静さが基本的に求められる、賭郎会員には専属の立会人が就く。立会人は体内に発信機が仕込まれるため、所在と生死は賭郎が常に把握している。メンバー定員は零號から百號までの101人。で零に近いほど強いとされる、その中でも零號、『最強』だった人物。彼は弐號立会人零號夜行妃古壱を賭けた號奪戦で負けた。


579 : 父の業と父の業、二人仲良くnn842fsk :2022/02/11(金) 03:28:04 9qrPFFlU0
投下終了します


580 : 父の業と父の業、二人仲良くnn842fsk :2022/02/11(金) 03:30:56 9qrPFFlU0
>>570

のこもしれない

かもしれない

で誤字です、すいません。


581 : 父の業と父の業、二人仲良くnn842fsk :2022/02/11(金) 03:32:21 9qrPFFlU0
投下終了します


582 : ◆U1VklSXLBs :2022/02/13(日) 16:44:04 S9E/Y6JA0
投下します。


583 : 亜左弔兵衛&セイバー ◆U1VklSXLBs :2022/02/13(日) 16:45:00 S9E/Y6JA0
アルバイトを終えて帰宅した弔兵衛は、夕飯を済ますと勉強を始めた。資格を取る、などの目的ではない。こちらの生活に馴染むためだ。
弔兵衛は江戸末期の死罪人であり、無罪放免の約束状と引き換えに、神仙郷と呼ばれる島から不死の仙薬を取ってくる命令を御公儀から受けていた。監視役を務める山田浅エ門であり実弟の桐馬を伴い、弔兵衛は他の死罪人と監視役達と共に上陸。

島を徘徊する化け物達を蹴散らしながら仙薬の捜索を続ける中で、弔兵衛は聖杯戦争なる催しに巻きこまれた。過去の偉人達の霊と協力して、最後の一組になるまで殺し合う儀式。
参加する事に異存はないが、唯一気がかりなのは島に残してきた弟の事。このような事態になるなら、直前まで交戦していた忍者を襲ったりはしなかった。

−−だが、あの島の状況でなら生かしておくほうが利になるだろ。

弔兵衛がいたのは、天仙だのソウシンだのといった怪物が潜む島。計算ができるなら、殺すより戦力として取り込む方を選ぶ。

(最低限の知識が残ってるのはありがてぇ)

記憶を取り戻してから、弔兵衛は暇な時間は情報収集に励んでいる。会場となる街は信じられないほど発展していて、歴史や道具の扱いなど、覚えることは山のようにある。"えぬぴぃしぃ"として過ごしていた経験が無ければ、資料を読むことさえできなかっただろう。
隻眼で刀傷のついた己の顔は目立つ。群衆に紛れ込むのは難しく、本格的に始まる前に進んだ文明に適応しなくては、他の主従から逃げることさえおぼつかないだろう。

覚えのない知識も、異様な状況にも弔兵衛は慄かない。状況を理解し、適応する事こそか強さと信じるが故に。変化しないものなど、"せいぜい1つ"あれば十分。
どんな願いでも叶うというのなら、弟と一緒に自由になる。偉かろうと、正しかろうと自分達の生き方に口を挟む者達が許せない。

手の届かない所で藩は改易、母を自分達を置いてこの世を去り、父は刑死。残された遺族には見向きもしない。罪罪罪。自分と弟にいかなる咎があったというのか?

聖杯を手に入れねばならなかった。損害賠償という概念があるそうだが、びたりと納得がいった。万能の願望機でもなくては、兄弟が味わった苦しみは決して補填できない。弟があちらで死ぬ前に聖杯戦争に勝ち残る。

(タオを視れば、えぬぴぃしぃとマスターの区別はできると思うんだが…)

弔兵衛は神仙郷で頑強な身体を手に入れている。くわえて、タオと呼ばれる力を扱えるようになっていた為に魔力の供給にも自信があった。
弟…その姿を模倣したNPCと2人暮らし。現状、マスターらしい人物の影は周囲に無く、仮説を確かめることはまだ出来ていない。マスターとNPCのタオの差を覚えられれば、見つけた端から暗殺できる可能性も出てくる。

引き当てたサーヴァントは、中々悪くない。
祖国の滅亡を回避せんとする、不死を得た剣士。令呪を切らねばならないが、致命傷を負っても復活できる宝具を持つ。さらに不死の化け物を斬れる刀まで持っている。勝ち筋はあるだろう。

−−戦いは、まだか。


584 : 亜左弔兵衛&セイバー ◆U1VklSXLBs :2022/02/13(日) 16:45:38 S9E/Y6JA0
【サーヴァント】
【CLASS】
セイバー

【真名】
葦名弦一郎

【出典】
SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE

【性別】


【ステータス】
筋力B 耐久B 敏捷B 魔力C 幸運D 宝具B

【属性】
秩序・悪

【クラス別能力】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

騎乗:D
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。

【保有スキル】
戦闘続行:B +
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。下記宝具効果により、ランク以上の効果を発揮する。

千里眼:C
斬り合いの最中に矢を射る事ができる程の速射の名人。視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。

仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力。 また、不利になった戦闘を戦闘開始ターン(1ターン目)に戻し、技の条件を初期値に戻す。


【宝具】
『求めし常若の契り(もとめしとこわかのちぎり)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:− 最大捕捉:1人(自身)
弦一郎の変若の澱を摂取した逸話、追い求めた竜胤の逸話が混じり、一つの宝具に昇華されたもの。霊核が破壊された際、5ターンまで現世に踏みとどまることができる。この間に令呪1画と引き換えで発動可能。全ての負傷と疲労を全快・貯蔵魔力を最大値の30%回復させる。

生前は遂に得ることが叶わなかった、不死の契りを具現化させる宝具。仮に正当な不死の契りが宝具に昇華された場合、令呪を切る必要は無いが、連続で使用できる回数には上限が設けられる。さらに担い手が何度も死亡するとマスターや英霊自身の関係した人物が"竜咳"という病を発症してしまう。


『開門(かいもん)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1〜2 最大捕捉:2人
死なぬ者を斬る刀、不死斬りのうちの一振り。
蓮の花を象った鍔と白い柄を持ち、その刃は対象の持つ不死系の能力を無効化、自然の理に沿わぬ治癒を阻害する。さらに"自分自身"と"竜の因子を保有する者の血"を生贄として捧げる事で黄泉の門を開き、弦一郎が望む英霊を召喚する事が出来る。召喚される英霊は正規のサーヴァントと遜色ない能力を持ち、仮に契約に成功すればマスターは黄泉帰った英霊と聖杯戦争に参加し続けることも可能。


『巴の雷(ともえのいかずち)』
種別:対人魔剣 レンジ:1~10  最大捕捉:5人
師より受け継いだ技。雷を纏った刀で敵に斬りかかる。地に足をつけていた状態で命中した場合は感電、動作を封じられてしまう。この雷は通常の手段では防御不可能であり、防ぐ場合は雷電への耐性によって無効化するか、空中で雷を受け止めて返すしかない。


【weapon】
背負っている無銘:大弓と腰につけた矢筒。矢は魔力で補充可能。

【人物背景】
戦国末期の大名、葦名一心の孫。正当な出自ではなく市井の生まれである。葦名への想いは深く、内府の軍の襲撃により存亡の瀬戸際にあった国を救うべく、竜胤の御子の尋常ならざる力を求めて御子「九郎」を攫い、彼に仕える忍「狼」の左腕を切り落とす。
葦名城天守閣にて義手を得た狼に破れ、変若水を得た本性を晒すと稲光の中、天守から姿を消した。その後、一心は病没。その死を察知した内府軍に攻め寄せられた葦名城から脱出した九郎を襲い、駆けつけた狼との3度目の戦いに挑んで敗れる。無力感に苛まれながら、最後に入手していた黒の不死斬り、刀についた御子の血、自らの命を使って、全盛期の一心を黄泉帰らせた。

【サーヴァントとしての願い】
更なる力を得て過去に戻り、葦名滅亡を阻止する。

【方針】
優勝狙い。


585 : 亜左弔兵衛&セイバー ◆U1VklSXLBs :2022/02/13(日) 16:46:12 S9E/Y6JA0
【マスター】
亜左弔兵衛

【出典】
地獄楽

【性別】


【能力・技能】
タオ:
万物に偏在している、気とも呼ばれる力。強さと弱さ、静と動、精神の循環や流転によって引き出され、上手く扱えば感知能力や身体能力が向上する。ただし、消費しすぎると肉体や魂に反動が表れる。

混じりもの:
人間を不死の仙薬"丹"に変質させる外丹花のタオに侵食されながら、丹になる過程で人としてのタオが勝り、自我を保っている。高い再生能力を獲得した事に加え、タオを解放する事で戦闘能力を増加させるが、解放中は理性や思考力が落ちる。


【weapon】
体得しているタオ、タオ解放時に生えてくる触腕。

【人物背景】
若年ながら大盗賊を率い、伊予の山奥に賊の村を作り上げた傑士。元々は赤稿藩に仕える武士の息子だったが、藩主が起こした刃傷沙汰をきっかけに、一家は落ちぶれ困窮。母が亡くなり、藩主の仇討ちに参加した事で父親も死罪となった事で弟と路頭に迷うも、襲ってきた野盗の仲間となり、最終的に盗賊頭となった。

殺伐とした性格ながら思慮深く、力量差や状況を見極めて行動する柔軟性が持ち味。しかし、奥底にある唯一の肉親への愛と、自分達を追い詰めた体制への恨みは決して揺らぐことはない。

【マスターとしての願い】
弟の桐馬と自由に生きる。

【方針】
優勝狙い


586 : ◆U1VklSXLBs :2022/02/13(日) 16:47:03 S9E/Y6JA0
投下終了です。鯖、鱒、本文は改変自由。


587 : ◆zzpohGTsas :2022/03/01(火) 23:49:09 wkHJYZkY0
投下します


588 : 薔薇煙のサーカス ◆zzpohGTsas :2022/03/01(火) 23:49:32 wkHJYZkY0






    薔薇のなかの薔薇、こよなき薔薇よ

    そなたもまたおぼろな潮が悲しみの波止場に打ち寄せるところに来て、

    たえまなくわれらを呼ぶ鐘の音を聞いたのだ、かの慕わしくはるかな鐘を。

    美神はその永遠なる身をかなしみ、そなたをわれらから、暗い灰色の海からつくった。

    われらの長き船は思いに織られし帆を上げて待つ。

    神がわれらと同じさだめを与えたまいしうえは、かの船もまたさいごに神の戦いにやぶれおなじ白い星々のもとに沈んでいった。

    もうあのちいさな叫びを聞くことはないだろう。

    生きることも死ぬことも許されぬわれらのかなしい心の叫びを。

                                 ウィリアム・バトラー・イェーツ、戦いの薔薇




.


589 : 薔薇煙のサーカス ◆zzpohGTsas :2022/03/01(火) 23:49:53 wkHJYZkY0
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 そこは、近隣ではよく知られた屋敷であった。
立派な佇まいだ。装いは洋風、造りは木。イギリスだとかフランスだとかの、ヨーロッパ圏の貴族や名家の住まいを、そのまま持ってきたような、建売りのそれよりも格上の空気をかもしている。
このような場所に住まえるのだ。管理が出来るのだ。それなりの収入の道がなければやっていけないだろう。
だが、この家の主が、何をして生計を立てているのか、知る者は少ない。そう言う事実が、風評に拍車をかけていた。よく知られている、と言うのは、『幽霊屋敷』としてだった。

 幽霊屋敷とは、誰も住まう者がいないと言う意味ではない。本当に、『それ』が出ると言う意味である。
見れば、成程。確かに、草木も眠る時間に足を運べば、出そうな雰囲気が醸し出されていた。
外壁は長年の経過を想起させる程度に色褪せていて、これが、時の重みを見る者にイメージさせる。数百年の時を経ている、と嘘を吐かれても信じる者がいるのではあるまいか。
その上、屋敷の壁を這うシダ類にも似た植物のツタ。管理が余り行き届いていない証拠であった。広い中庭も、よく見ると荒れ放題で、庭師を雇っていない事も解る。
吸血鬼を題材にしたフィルム・ノワールの白黒映画の世界から、数千万色から成る色彩を伴って飛び出して来たような屋敷だった。
事実、満月を背後にすると言う構図で一眼レフで撮影したある一枚の写真をSNSに掲載したところ、本当に出そうだと言って、数万もの反応が得られた事もある。

 だが――往々にして真実と言うのは、大衆の心をくすぐるようなドラマティックさから掛け離れた、肩透かしを食らうようなものである事が多い。
この屋敷だとてそうだった。幽霊が出るだとか言う噂も勿論出鱈目であるし、ガリレオ・ガリレイが地動説を提唱しはじめた時代から生きている錬金術師が家の主と言う噂も当然嘘。
況して、この家の主が不在と言う話など、行政の機関が違うと認めるレベルには、あり得ない話なのである。

 真実とは得てして、そんなものだった。
登記簿は明白に、この屋敷もその土地も、今も生きているフランス人女性が全ての権利を保有している事を認めている。
屋敷にしたとて数百年が経過していると言う話も、登記に照らし合わせれば全く嘘で、真実は戦後移り住んで来たフランスの富豪が、
この国を甚く気に入りこの地に別荘を建て、其処に妾を住まわせて……それが今に至っている、と言うのが本当の話なのである。数百年は勿論の事、100年だとて経過していないのである。

 面白くもなんともない話であろう。
なんだ、つまらない。知らされれば、興味がそれで終わりの人間が殆どだろう。
それにそもそも、冷静に考えれば、人の通りも多く、時間帯によっては車の往来も盛んなこの住宅街の真ん中に建てられている屋敷なのである。
普通に考えれば、そんな立地に建てられている建造物が、廃屋である筈もなし。普通に考えれば、誰かしらが住んでいるであろう事は考えられる事柄であるし、
況してや面白いから侵入してみようと考える者など、真っ当なモラルが備わっているのならいないであろう。立派な不法侵入、犯罪を犯している事となる。

 とは言え、真実が面白いか面白くないかが全て解る者など、神を置いて他にいる筈もなく。
この屋敷が法的にも問題がなく、権利上に於いても一人の女性に帰属するものである事を、知らない者がいる事も事実。
そしてその中には、本当にこの場所に幽霊の類が出ると信じ切っている者もまた、いるのである。

 ――例えば、直立の状態からの跳躍で、高さ数mはあろうかと言う塀を飛び越えて、邸宅の中に忍び込んだ、黒装束のこの男だ
年齢を、悟らせない。顔に黒布を巻き付けているばかりか、身体の何処を見ても、肌の露出がない。長躯である事が、分かるだけだ。


590 : 薔薇煙のサーカス ◆zzpohGTsas :2022/03/01(火) 23:50:06 wkHJYZkY0
【おらぬか……?】

 胸中で呟く男性。
新たな拠点を増やす事に、彼――アサシンのマスターは積極的だった。
勿論、そのマスターはマスターで、与えられたロールに準拠した拠点と言うものを持っている。
だが、この拠点とは別に、スペアの拠点が欲しかったのだ。そしてマスターは、拠点の候補として、今アサシンに忍ばせている幽霊屋敷を選んだ。

 何て事はない、これは内見である。
本当に誰も居ない、と言う噂を真実かどうか確かめ、その上で、自分達の拠点として借りようと言う腹なのだ。
誰かいるのならいるのならで、簡単な催眠を掛けてやれば良い。屋敷から一時的に退去させる、こう言う事である。
だが、何人も催眠に掛ける訳には行かない。屋敷の主含めて、何人この屋敷には住み込んでいるのか、その確認の意味合いが特に強い。
主一人に催眠を掛け、使用人達に一時暇を出させる。理想的なムーブメントとしては、これである。

 忍び込むに当たり、夕方の内にアサシンは事前に調査を済ませていた。
目に見える場所に監視カメラがない事は確認済み。この辺りは特に有名な、所謂『お金持ち』の面々が住まう高級住宅街である。
召喚されてからアサシンは独学で、現代事情を学び、監視カメラの存在を学んでいる。この辺りの住民に限って言えば、敷地の中どころか、正門の段階ですら、
それと解るようなカメラが設置されていて、しかも高度な人感センサーも備わっているのか、一定距離に入ったらレンズを自動で此方に向けて来る物もある事も知って居る。
この屋敷にはそれがない。それどころか、一部の家には備わっている、番犬の類も見られない。本当に、防犯の為のシステムも道具も備えていないのだ。こう言った事情もまた、この屋敷が幽霊屋敷だと言われる理由でもある。

 とは言え、カメラがないだけで、実際には屋敷の中には沢山の人員が待機していて、それが庭や表の様子を確認している可能性だとて、ゼロではない。
だが踏み込んで解った。人の気配が、まるでない。アサシンは暗殺者の英霊として、鋭敏な気配察知の能力を兼ね備えている。
住居の中にこもって居ようとも、その中に蠢く人間の気配を、敏感に彼は感じ取る。その第六感が告げている。人の気配が、絶無だ。
驚く程誰も居ない。全神経を集中させ、屋敷に対して意識を傾けさせる。やはり、だ。呼吸の音も、鼓動の音も、人の話す声も聞こえない。
真夜中の山中の中の様に、静まり返っていた。しかしそれでも、油断がないのがこのアサシンの優れた所。
無音の歩法で屋敷に近づいて行く。狙いは窓。屋敷の裏に建付けられた1階部の窓に手を伸ばし、開けようと試みる。
――開いた。静かに窓を開け、完全に開け切ったとみるや、屋敷の中に侵入。

 ――――死ぬ程の、後悔を味わった。

「ッ……!?」

 先ず後悔したのは、侵入した部屋の不気味さだった。
保管場所、或いは、コレクションルーム。その様な印象を少年は覚えた。ただ、保管している物が問題だった。それは、洋人形が保管してある部屋だったのだ。
その数は、幾つか? 百か、二百か? それ以上か? まさに、沢山、であった。

 これが、小さい女の子が欲しがるような、ファンシーでメルヘンで、それこそ例えば、ディズニーやらサンリオやらの可愛らしい人形であるのならば、マシだった。
置いてある人形は全てが全て例外なく、精緻で、リアル。本物の人間のようにしか思えない程、精巧な作りの人形ばかりなのだ。
ドールのサイズは様々。子供が抱えて持てるような小さいサイズの物から、アサシンの体躯程の大きさをした物まで
ありとあらゆる大きさの人形が、ずらりと並んでいる。一瞬気圧されそうになるが、そうはならない辺りが、流石に英霊として召し上げられた存在である。

 ――だが、違う。これじゃない。真に後悔を覚えたのは、鎮座している人形の不気味さの故ではなかった。
この邸宅の内部に侵入した瞬間に覚えた、プレッシャー。歩く事もままならず、息する事すらただ辛い。
今にも身体がぺしゃんこになりそうな重圧感と、心臓を巨大な手で握り絞められているような圧迫感。それをアサシンは、一時に覚えたのである。


591 : 薔薇煙のサーカス ◆zzpohGTsas :2022/03/01(火) 23:50:24 wkHJYZkY0
 ――なんだ……これは……――

 敵に囲まれた時にですら、こんな感覚、覚えた事なかった。
予感がする。これ以上此処にいては、ならないと。何も持たないまま帰ろう。マスターには、この場所は不適合だから進言しよう。
これ以上此処にいては、ならない。そうとアサシンが判断し、踵を返して立ち去ろうとする。

 ――その最中に、アサシンは、全ての人形の目が、此方に注がれた事に気づいた。
それは錯覚だった。アサシンの焦りと恐れによって生じた誤認、錯誤の類であった。
だがもしも、この場にいる人形達に、熱い血潮が流れていて、鼓動が胸の奥で脈を打ち、意思を生じせしめる心が宿っていたのなら。きっと、彼の見間違えの様に、目線を動かしていたに違いない。

『そうだ、お前が正しい。早く逃げろ』

『この馬鹿、なんでよりにもよってこの家に入って来たんだ』

『もう遅い。あの御方が来る』

『来た。目を逸らせ』

 人形達に心があったのならば、その様な事を思ったに相違ない。
それが事実であろうと言う裏打ちの様に――部屋を占める重圧が、万倍にも倍化した。

「ッ!?」

 足が動かせない、膝を上げられない。腕が振れない、肘を曲げられない。
ゆとりのある呼吸が出来なくなり、マラソンや短距離走を終えた後みたいな、連続した短い息継ぎしか出来なくなっている。
鉛で出来たリュックサックを、背面と前面に負わせられたように、身体が重かった。無論それも、錯覚だった。アサシンの身体には、100g分の重りすら取り付けられていないのだから。
これこそまさに、当人の意識の問題なのである。事実は何も変わっていないのに、脳が、心が、魂が。そうであると誤認をし、現実の我が肉体に誤解を引き起こさせる。

 ――それ程の存在が、自分の背後にいる。それを、認識してしまったのだ。
振り返ってはいけないと思った。脳も心も魂も。細胞の一欠けらですら、それに同意している。逃げねば死ぬと言う、確信があったからだ。
満場一致に等しいその意思を裏切ったのは、誰ならぬ、アサシンの肉体と、その本能であった。人ならば誰にでも備わる、反射行動。
危機を察知したら、その方向に対して意識と身体を向けてしまうと言う、防衛反応。アサシンは、これらを自制出来る程の訓練を経ている。経ていてなお、身体が、裏切った。

「あ……あ……」

 天を衝く程の、大きな山が其処にあったと、アサシンは思った。
どれ程昔から存在したのか、頂上までの距離はどれ程なのか。そう言った事が一目で判別する事が出来ない程に、巨大(おおき)い山。それが、目線の先に佇んでいた。

 勿論の事、実際に本物の山がそこにあった訳じゃない。
其処にいる人物から放たれる、気風と覇気が、アサシンの脳に山のイメージを焼き付けさせ、網膜に映る光景にその模様を投影させてしまっただけに過ぎないのである。

「……ほう」

 だがそれにしたとて、その男が巨人である事には変わりはなかった。
見上げる程の大人物だった。1mは80㎝を超える恵まれた体格のアサシンよりも、更に、50㎝以上も大きい。宛らそれは、小山。

 日本は勿論の事、今時、ヨーロッパの王室に連なる貴き血筋の面々ですらが羽織っていないであろう、厚手の黒いマントを着こなす男だった。
顔立ちは、日本人のそれじゃない。ヨーロッパの国々の顔つきで、良く整えられた髭の生え方から察するに、歳の頃は、40の半ば程だろうか。
威厳のある顔立ちで、史記に出て来るような偉大なる大王や皇帝が、そのまま今の時代に蘇ったと思える程に、力と覇風と神威に溢れていた。アレキサンダーやカール大帝を題材にした映画を撮影しようと思い立ったのなら、モデルには、この男が選ばれよう。


592 : 薔薇煙のサーカス ◆zzpohGTsas :2022/03/01(火) 23:50:36 wkHJYZkY0
 平伏する事が、義務だと魂が吠えている。頭を垂れろと、脳が命令を下している。
生前、王の類を暗殺した事がある。貴族の類など、両の指では足りぬ程、その刃で倒して葬って来た。
何の感慨も、なかった。所詮王も貴族も、誰の助けも来ないと言う状況下で、刃を見せればただの人。
そうでなくとも、剣先を皮膚に突き立てれば、死を隣人とする何処にでもいる人間なのだと言う事が解ってしまうからだった。
我と同じ人間に、ただ身分の上で偉いからと、広大な土地と権能を引き継いだからと言って、何故、傅かねばならないのか。

 この男は、違う。
一目で、王である事が解る。神である、と嘯いても納得出来る。
王権神授。王の権威は、神から授かったもの、と言う事を意味する言葉だが、この男を見れば、それが真実であったと誰もが思おう。
このような覇気を発散出来る者、神か、神の化身以外にあり得ようか。アサシンは、生前でも見た事がなかった、本物の王者を。
魂を掌握する絶対のカリスマの保有者を、初めて目の当たりにしたのであった。

 ――だが、その神は善と光の神ではない。
これもまた、一目で理解した事だった。確かにこの男は、神の威光を帯びた、半神の者であるのかも知れない。
ただ、その神が司る物は――――――闇と魔である。この男はきっと、暗き闇の淵の領分を支配する、暗黒の支配者なのである。

「おおっ!!」

 魂を掌に包まれ、脳を屈服されているこの状況下。
肉体だけは、目の前の魔人の支配を逃れていた。嘗て積み重ねて来た、何千時間を容易く超える鍛錬の成果だ。
人生の数多い時間を、修練に割いて来た。その結果が今こうして、窮地に陥った際に反射的に身体が動く、と言う形で表れていた。
鍛錬に付け込んで来た肉体だけは、最後の最後で屈服を拒んだ。懐に忍ばせた短刀を、魔人の喉元に投擲しようとし――それを果たすよりも前に、アサシンの心臓は、魔人の右手に貫かれた。
心臓が魔人の右手に握られていた事も、貫かれた痛みも、そもそも自分が何をされたのか。全てを認識する間もなく、アサシンは即死し、魔力の粒子となってこの世から消滅した。
魔人の腕に着いた血も、握っていた心臓も、夢か、幻か、とでも言う風に、同じような末路を辿る。

 そこは、近隣ではよく知られた屋敷であった。良く知られているとは、幽霊屋敷として、である。
だが、この屋敷には幽霊はいない。そもそも、屋敷の持ち主だって今もこの瞬間に、邸内で作業に没頭している。幽霊屋敷など、嘘八百も良い所なのである。

 ――だが、幽霊ではなく『吸血鬼』なら住んでいると言う事実までは。
近所の住民も、そして、忍び込んだ末に息絶えたアサシンも。予想する事は、出来なかったであろう。


.


593 : 薔薇煙のサーカス ◆zzpohGTsas :2022/03/01(火) 23:51:08 wkHJYZkY0
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 彼女の作るドールは、1体で家が建つと言われる程の価値を持った逸品だと、その筋には広く知られていた。 
どのような世界にも、マニアや収集家と言うのはいるものだ。コイン、切手、硯、こけし、初版本、時計に模型に昆虫の標本など。
普通の人間でも集めていそうな物から、一部の好事家や金持ちしか集めていないような物まで。世界には、普通の感性の人間では及びもつかないようなものを集めるコレクターと言うのが数多くいる。

 だが、人形については、集めている、と公言したとて問題はない。理解の得られる物である事だろう。
その造形の美しさや精巧さに惹かれて買ってしまったり集めたりする者もいれば、金銭的な価値や投資の目的で手元に置いていたい者もいる。異常な点は何もない。
しかし人形と言う物は凝りだせば凝りだす程にその価値が天井知らずに跳ね上がって行くものだ。人形に着せる服装や、手入れの為の道具もそうだが、何と言っても人形そのものの値だ。
ドイツのシュタイフ社が1904年に世に出したテディベアは、6000ポンド、現在の日本円のレートに直せば90万以上の値段で取引されていたという事実からも解る様に、
年代が古く、そして、名のある人形師の手による真品であると鑑定されれば、容易く、この数倍以上の値段で取引される事もあるのだ。そして、その値段でも、手に入れたい者がこの世には、いる。

 彼女、『フランシーヌ』と言う名の女性が作る人形など、正しくその類だった。
彼女の手がけたテディベアや操り人形(パペット)、腹話術人形などは、一番安いもので100万程の値段で取引されたが、この女性人形師の神髄は、自動人形に集約されている、
と言うのがその手の好事家の間で有名なのである。自動人形、つまるところは、オートマタと呼ばれる、西洋版のからくり人形の事である。
これが、大層な評判だった。受注は一切受け付けておらず、彼女が気まぐれに作った物を、本当の金持ちか本当のマニアにしか知られていない、
彼女の経営する小さなドールショップ、『真夜中のサーカス』にやはり気まぐれに展示される。値札もつけられず、ただ、ショーガラスの中で静かに動くその人形に、マニアは法外な値を付ける。その様子はある種のオークションの競り争いの様子に似ていて、つい最近売れた、リュートを弾く詩人の自動人形は、3300万の値段で落札された。

 何が、マニアを其処まで惹きつけるのか?
動きが良いと言う者がいる。生きた人間そのもののような滑らかな動きに魅せられ、衝動のままに買ってしまった収集家の言葉である。
顔が良いと言う者もいる。人形の命は一にも二にも、顔である。人形と言う器物でありながら、フランシーヌの作る人形は、命一つ吹き込まれたかのように、精彩と精髄が宿っていた。
同じ人形師で、どんな手品や魔法が掛けられてるのかが知りたいと語る同門の者もいる。内部のカラクリの様子を見て、ネジ一本、歯車一つとっても、自らの及ばぬ超絶の技術で作られていた事を知り、愕然の念を覚えてしまい、今もその人形師はスランプから脱し切れずにいる。

 彼女の手がけた人形を買った者は皆、値段以上の満足を得る。 
仕事で使う操り人形や腹話術の人形を購入した者は、今まで以上に仕事が円滑になったしお客も満足したと喜んでいた。
コレクション目的で購入したコレクター達は、コレクションの調和により深みが出て、完成度も増したと満足気だった。
その技術を盗もうとした人形師達は、幾らでも月謝を払うからその技術を教えて欲しいと懇願して来た。フランシーヌは丁重に、それは断ったが。

 誰も彼もが、彼女の人形を購入し、満足すると、こう思うのだ。
まるで彼女は――人形と言うものと心が通じ合え、人形と、言葉を喋れるかのようだと。だってそうじゃなければ、こんな人形、作れる筈もないじゃないか。
彼女はそう、人形を作る為にこの世に遣わされた、天性の人形師だと。誰かが評し、その言葉を誰もが、疑いもしなかったのである。

「……御戻りになられましたか」

 目の前に突如として現れた巨躯の男に、フランシーヌは驚いた様子もなく告げた。
純銀を糸状に伸ばして見せたような美しい、白銀の如き銀色の髪を長く伸ばした女性で、その顔立ちはゾッとする程美しく整っていた。
剃刀のように冷たくて鋭い、人間性の感じられない顔つき。彼女はチェアに座りながら、テーブルに広げた大きな紙にペンを走らせていた。
設計図だった。自動人形の、だ。フランシーヌの横には、灰色の髪と黄金色の髪を長く伸ばした、ドレスを纏った子供2人が佇んでいて、それを交互に眺めながら、紙の空白部分を埋めていた。

「精力的な事よな……。順調なのか? それは」


594 : 薔薇煙のサーカス ◆zzpohGTsas :2022/03/01(火) 23:51:26 wkHJYZkY0
 良く通る声で、マントを羽織った大男が問うた。
フランシーヌのアトリエに、真の暗黒を落とす事なく薄明程度に留めている、蝋燭の弱い炎が、消え去らんばかりに揺らいだ。
人類が征服したと思い上がり、しかしその実、この世の片隅にまで追いやったのだと思い込んでいた、大いなる暗黒と宵闇の具現たるその巨人が発する威風に、炎ですらが、恐れたじろいだか。

「順調であるとは、言えません」

 羽ペンを置き、フランシーヌは言った。

「この人形を作りし方は、さぞや優れた方だったのだろうと思います。造詣は美の極致、身体つきは理想の少女のそれ。そして……歯車の音も発条(ぜんまい)の音も聞こえない。まるで、生きた人間から作られたよう」

「よく見ておるよ。お前は優れた人形師だ。私が保証してやろう」

「恐縮です」

 フランシーヌの周りに佇む、二体の人形。
即ち、カーマインとマジェンタと名付けられたこの自動人形は、彼女の言うように、正真正銘の生きた人間から作られた人形だった。
その事実に、憶測でも到達出来る存在がいるとは、と。この二体の人形の現状における主人は、内心で嘆息していた。

 ――きっと、彼女が。フランシーヌが、人間ではないから、気付けたのだろうと男は思った。
男は気づいていた。自らのマスターが、瞬きをしない事に。脈動の代わりに、纏うドレスのその下で、歯車と歯車がかみ合う音が、聞こえてくる事に。彼女は、人形だった。

「与えられたロールと、社会的な立場に則って、人形師の真似事をして……貴方の従える自動人形を模して作ろうとしましたが……。私の知る理の外なのでしょう、アプローチ出来ません」

 それもそうだ。
何せカーマインとマジェンタとは、大いなる闇の力をその身に宿す、太母リリスの血肉より創造された、生ける人形なのである。
歯車如何だ、螺子が如何だ、金属の管の配置が如何だ関節の駆動が如何だでは、到底生み出せない。魔性の業と、一人の女の妄執の結晶なのだ。
作れる筈がないのは当然だ。寧ろ、これを模した存在を、作ろうと思うその発想が、先ず出て来る事はない。男から見て、目の前のフランシーヌは、中々に面白い人形だった。

「それより、『プリテンダー』。貴方は何処で、何をされていたのですか? 貴方が何か威圧を放つ、気配を感じましたが」

「物盗りがやって来たのでな。我ら流の歓待で、出迎えたさ」

 その意味を理解しないフランシーヌではない。サーヴァントと、その主かを、葬った事を、その言葉は示唆していた

「真の吸血鬼は、己の領分を犯した者を許さない。道理ですね」

 フランシーヌはこの世界に呼び出される前……即ち、真夜中のサーカスの首領であった時代、誰もが連想するような吸血鬼そのもののイメージの人形を、作った事もある。
その時は確か、人間の著した書物を参考に、吸血鬼のパブリックイメージを優先して作った筈だ。
即ち、青白い肌に、ナイフの様に鋭くて大きい犬歯を持ち、黒いマントとタキシードを纏い、洗練された所作と慇懃な態度で相手に接し、それでいながら尊大さも兼ね備える。
そんな風なイメージで想像し、その自動人形もまた、嘗てのフランシーヌを笑わせようと、おどけて見せたり、劇を披露したりしていたか。

 プリテンダー……その真なる名を、『《伯爵》』と言うこのサーヴァントは、フランシーヌが、否。
この世界に住まう全ての人類が、吸血鬼と言われて想像する、全ての要素を完璧なまでに兼ね備えていた。

 人間では太刀打ちなど出来ようもないと一目で理解せしめる屈強な身体つき。語らずとも雄弁な、威風堂々としたその立ち居振る舞い。
嘗てこの世に産まれ落ちた如何なる諸王などよりもずっと威厳のある、整えられた髭が特徴的なその厳めしい貌(かんばせ)。
そして、夜の闇への恐怖から産まれた様々な異形や妖物全ての王であり、そして光の届かぬ絶対の暗黒を己の領土だと主張しても何一つ不足のない、絶対的な闇のカリスマ。
誰が疑いを挟もうものか。この男こそは、夜の覇種。人が瞼を閉じ、眠りて見ないようにする闇の現実の中を歩む者達全ての王。ドラキュラとは、正しく、この男の事ではないか。

「真の……吸血鬼、か……」

 フッ、と、《伯爵》は笑みを綻ばせた。我が身が背負いし、苦い過去。それに対して、呆れて、愛想を尽かせた。そんな、笑み。

「そうと呼ばれた事も、あるな。嵐とも、炎とも、雷とも形容された覚えもあるぞ。そして……斯様に扱われ、得意になっていた時期も、な」

「不服、なのですか? その認識は、正しい物かと存じますが」

「こうと言われた事がある。空っぽの存在、吸血鬼としての記号、張りぼて。……現実の何処にも居場所のない、夢幻」

 くつくつと、《伯爵》は笑った。今思い出しても、笑えるジョークや芸を思い出して、不意に、笑ってしまっているかのようだった。


595 : 薔薇煙のサーカス ◆zzpohGTsas :2022/03/01(火) 23:51:41 wkHJYZkY0
「吸血鬼等と言う存在が、この世にいると思うか?」

「私の目には、映っております。誰の目にも明らかな、理想の吸血鬼が」

「『そうと作られただけのオートマタ』だと言われ、信じられるか?」

 眉を動かし、フランシーヌが反応した。
自動人形……? この男が? いやまさか……だが認識してしまえば……、こんな理想的に過ぎる存在が……。

「問おう、マスター。己の親を思い出せるか?」

「はい。我が造物主様は、白金(バイジン)……プラチナを意味する名を冠する、錬金術師で御座いました」

「重ねて問う。己が足跡を思い出せるか?」

「はい。造物主様は、笑みを浮かべられぬ私に失望し、私を御見捨てになられました。私は……あの御方に振り向いて……戻って来て貰いたくて、笑みを浮かべる為の旅を続けていました」

 語っていて、フランシーヌは、己を笑わせる為に心血を注ぎ続けてくれた、側近達の事を思い出す。
皆、自らを師として、女王として、神として認識し、絶対の忠誠を捧げていた者達だった。最古の四人……アルレッキーノやパンタローネ、コロンビーヌにドットーレ達は、
今も影武者のフランシーヌを笑わせようと暗闇の中で己の芸を磨き続けているのであろうか? 本物のフランシーヌは、あの世界にはいないと言うのに……今も健気に……?

「思いを馳せられる旅路があるようだな」 

 黙りこくり、己の歩んだ足跡を振り返っていたフランシーヌを、《伯爵》はその一言で現実に引き戻した。

「初めから理想足らんと創造された私には、過程も何もなかった。蓋しの当然よ。初めから完璧な存在として生まれたのなら、以降の物語になど如何程の厚みと熱が産まれようか。足りぬ者が苦難の末に至った話には、過程が生じ得るが、全てを得ていた者が産まれただけの話には過程など起こり得る筈がない。自然な話だ」

 今度は、《伯爵》の方が黙る番だった。やおら、と言うように、口を開く。

「我が破壊の痕跡から着想を得た物書きが記した、ドラキュラの話に曰く。吸血鬼は、輝ける曙光を一身に浴び滅びるのが定めだと言うではないか」

「ブラム・ストーカーの事ですか?」

「形は違えど、滅んだと言う結末は同じだった。其処までも……理想的な死に方だったと言う訳だ」

 ――運命が、お前を射止めた――

 ――おまえ自身が撒いた種を、俺が紡いだに過ぎない――

 ――運命は、幻想ではないのだから――

 己が心臓に刀と言う名前の墓碑を突き立てた、あの宿敵の言葉を《伯爵》は反芻する。
血塗られた《伯爵》の2000年の旅路に終止符を打ち、どんな者にも辛くて厳しくて、理不尽な上に、裁きをも下す現実の世界を、それでも生きて行こうと決意した、あの旅人……。
縛血者(にんげん)、鹿島杜志郎の姿が、克明に、彼の心に思い描かれた。

「……迂遠な言葉で、煙に撒く……。最早今の私は、これを好かぬ。我が思いを……直截に告げよう。……堪らなく、悔しいぞ」

 絞り出すように、《伯爵》は言った。
無意識のうちに、難解な語彙を用い、威圧的で、謎めいた言葉を口にして、人々を惑わせる。そんな、有り触れた吸血鬼像から余りにも乖離した、ストレートな言葉だった。

「あと一歩のところで勝利を逃す……と言うのは、こんなにも悔しくて悔しくて、堪らない物なのだなぁ……。こんな、当たり前の情動すら、知らなかったのだよ。マスター」

「勝つ事が、願いですか?」

「大願は別にある。だが、これを成就する上では、ああ、その通り。勝利の為に」

 始祖であるリリスの願い。勿論これを、《伯爵》は忘れていない。彼女のエゴの為の道具である、その運命を彼は受け入れている。
受け入れたのなら、後は歩むのみ。心臓を穿たれた吸血鬼は、滅びるのみ。宇宙開闢の折より定められた、死者は蘇らないと言う絶対の理。
未だかつて誰も覆した事がなく、そして、その絶対性に誰も意を唱えた事のない永久不変のこの天則は、《伯爵》であろうと逃れられない。
この天則からすらも、こうして《伯爵》は免れた。仮初の生なのは解っている。自らがこのような歪んだ形で蘇ったのは、皮肉な事に、自らが広めてしまった吸血鬼幻想のせいであろう。
それでも良い。蘇ったのなら、今度こそ、真っ直ぐに歩む。最早この身は、己の在り方に疑問すら覚える事が出来なかった愚者の身ではないのだ。今度と言う今度は、果てなく往くのみであった。


596 : 薔薇煙のサーカス ◆zzpohGTsas :2022/03/01(火) 23:52:09 wkHJYZkY0
「大願……ですか。私にも、また」

「ほう。マスター……その身に鼓動のない娘、瞬き一つせず、この世の在り様を常に眺め続ける女よ。問おう、お前の願いとは?」

 カーマインとマジェンタ、二つの人形に目をやった後に、《伯爵》の方に目線を向け、一言。

「笑う事」

 告げた。

「笑う事が、人である事の証明。人になりたくてなりたくて、そうすれば、私を御認めにならなかった造物主様が戻って下さると思っていたから……何十年も、旅を続けた。……多くの人の、幸せを奪った」

 造物主と呼ばれ、崇められた事もある。アプ・チャーと言う側近は、フランシーヌの事を指して女神とすら認識していた事もある。
存在を疑ってはならぬ、自動人形にとってのレゾンデートルであり、現実世界に形をなした自動人形にとっての魂であると、最古の四人は考えていた。
そんな彼女の望みとは、果たして何だったのか。それは、世界の支配でもなければ神になる事でもなく、況して、人類の絶滅でもなかった。

 ――ただ、笑いたかった。それだけなのだ。笑えれば、自分は、人になるのではないか。
歯車の軋みが脈の代わり、金属の管を循環する生命の水が血潮の代替品、空気を循環させて呼吸の真似事をすると言う小賢しい小細工。
彼女に出来ない身体の動きはない。踊りも出来るし、新体操だってお手の物だ。ただ、笑う事、微笑む事が、フランシーヌには出来ない。
笑顔の素敵なフランシーヌ。彼女のモデルとなった人物は、弾けるような晴れやかな笑みが美しかったと、この人形を生み出した造物主は回顧し続けていた。
女神のような美しさを与えられた女は、しかして、その美しさをより一層際立たせる、最も簡単で確実な方法。人であれば子供ですら出来る、笑む、と言う行為だけをフランシーヌは剥奪されていた。

 女神の微笑みを射止める為に、多くの自動人形達が芸を磨いて来た。
お手玉、玉乗り、綱渡り。猛獣使いに猿回し、パントマイムに腹話術。ブランコ、物まね、演奏会。
人間が想起し得る、凡そあらゆる大道芸を、自動人形達は研究し、それを実行に移して来た。全ては、造物主たるフランシーヌの笑みを見たいが為。
そしてその全てに対し、彼女の表情は、不変。氷のような無表情を、保ち続けるだけであった。

 だから自動人形達は、語るも恐ろしい行動に出た。
フランシーヌは、恐らくは人類史上最後の錬金術師であったろう、白金の手自ら作られた至高の自動人形。人であれかしと作られた、最高の人型。
彼女以降の全ての自動人形は、所詮は彼女の後追いに過ぎない。どれだけ人に近づけようとも、精巧な人形の域を出ないのである。
だから、思った。人の心を理解していないから、自動人形たる我々は、フランシーヌ様を笑わせられないのだと。そうと思った彼らの後の行動は、迅速だった。
吸えば死ぬよりなお苦しい生を確約させる銀の煙を吐き散らし、彼らは世界を行脚した。自動人形の駆動に必要な疑似生命の水の劣化を防ぐ為に、人の生き血を啜った。

 女神を笑わせよう、笑わせようと懸命な努力を続けて来た自動人形達はその実、笑えない程に罪深い存在となり、天下の憎悪を一身に背負う怪物となり果て。
その自動人形を率いるフランシーヌの名を与えられたこの人形は、人々にとっては女神どころか、世界に災禍を振り撒く邪神同然の扱いとなってしまい――。
これでは、自らが笑う遥か以前の問題である。

「……愛すべき我が自動人形達の一生懸命で無為な努力を与えられる事にも、造物主様と同じ人間達から居場所と幸せを奪う事にも。私は、疲れてしまいました」

 陽の当たらぬ真夜中に、薄明かりの中で行うサーカスは、もう沢山だった。
その身の業の故に陽の光の下には最早歩く事は出来ず、生み出される血肉のない自動人形達は人々の生き血を啜り喰らい。
人の社会に寄生し、その社会を腐敗させ壊して行く、人間の形をした悍ましき何者か達。これではまるで――吸血鬼ではあるまいか。
その様な存在になりたくて、フランシーヌは、一念発起し旅を続けた訳じゃないのだ。

「笑いたいか?」

 《伯爵》が問う。

 フランシーヌが、首を振るう。横。

「笑えた……気がするのです」

「何?」

「私を見て、赤ん坊が、笑ったのです」

 フランシーヌの姿を見た者の誰もが、彼女の造形を見て、美しく思う。
その存在の真実を知った者の殆どが、彼女がこの地上にある事に恐怖し、また、憎悪し、滅びあれかしと強く祈った。


597 : 薔薇煙のサーカス ◆zzpohGTsas :2022/03/01(火) 23:52:27 wkHJYZkY0
 クローグの村で、自らにフォークを突き刺して来た女の顔を、フランシーヌは思い出す。
憎悪と憤怒。そんな言葉で表現する事すら躊躇われる程の、負の激情を宿した瞳と表情だった。力み過ぎて、双眸から血の涙すら流さんばかりだったと回顧する。
誰も彼も、そのような顔でフランシーヌを見て来た。お前を破壊する、罪を贖え、父母兄妹の仇だ。その様な、呪詛が立ち上らんばかりの悪罵も幾度となく浴びせられてきた。
斯様な態度で応対される謂れについて、覚えがあるし、されて当然だとも思う。優しさと温かみのある対応をされる事から、最も遠くかけ離れた、罪そのものの人形だと言う事実に、嘘はない。

 そんな彼女に……あの赤ん坊は笑った。
嘲り、愚弄、蔑み……。その様な負の感情からくる笑みじゃない。
エレオノールは確かに、フランシーヌを象ったこの人形に、安心を覚え、許しの笑みを浮かべたのである。
狭く、薄暗く、ほの寒い、水の張られた井戸の中。不安と恐れを湧き立たせるあの井戸の中で、エレオノールは、フランシーヌに救いと庇護を求めた。
その発露が、あの、邪気もなく罪もない、純粋な笑みだった。エレオノールは、世界の憎しみを一身に受けるフランシーヌ人形に、安堵していたのだ。

「恐らく、我々は……人形とは……何処まで行っても、誰かの為にしか在る事を許されないのでしょう。自立し、独立する事が出来ない」

 自動人形の頂点たるフランシーヌですら、創造主である白金に依存していた。そしてその配下の自動人形もまた、フランシーヌと言う造物主に絶対の忠誠を誓っていた。
人形とは愛玩され、利用される為の物。存在の本質自体が、誰かに依拠する受動的な存在なのである。能動的に動いているように見えても、それも結局造物主の都合で施されたプログラムだ。
それで、良かったのだ。その事実を、もっと早くに受け止め、人形としての己の道を選ぶべきだったのだ。
見捨てられた事を諦めきれず、人間になろうなどと思い上がって見っともなく足掻いて……、結果辿り着いた真実が、造物主が己を見捨てたのだと言う事実を強く受け止めるだけだったなど……。

「罪深い我が身に向けられたあの笑みを見た時……。歯車の軋みは止み、我が身を循環する霊水に不思議な熱が帯びました」

「それを、笑みだと?」

「わかりません」

 フランシーヌは直ぐに答えた。

「わかりませんが……。恐らくは……」

「恐らくは?」

「『私の生涯で、あの瞬間こそが私が一番人に近づけた時』だったのでしょう」

 自動人形は熱を持たない。
身体のどこにも生身の部分がなく、翻って体温もまたない。そもそも、熱いとか冷たいと言う温度の変化を、感じる事すら出来ないのである。

 そんな身体であるのに、フランシーヌは確かにあの時、温かかった。
不快なぬくもりでは断じてなく、その仄かな温かさは、何時までもずっと、己の歯車に宿していたいと思える心地よさがあったのだ。
それはきっと……人間の言葉で言うのなら、いい気持ち、と呼ばれるべきものなのだろう。

「あの時私が笑えたのかどうか。それを確かめる術は、きっとないのでしょうが……。あの娘が私を見て笑ってくれた事と、最期に見た夜の星が、たまらなく綺麗だった事は、確かでした」

 「全て――」

「それでよしと、致します。私の一生に打たれたピリオドは、悪くはない、ものでしたから」

「願いは、あらぬか。マスター」

「今際に感じた情動をまた味わいたいと言う思いは真実ですが、此度は聖杯戦争。誰かを殺して奇跡が成されるのでしょう? 今更、誰かの怒りと憎悪を一身に受ける必要性を、私は感じません」

「だが私の願いは、誰かを殺さねば果たせぬよ」

「自らを指して、オートマタと仰りましたね、プリテンダー」

「その通り」

「自らもまたオートマタであるからこそ解ります。我々には、これぞ、と言うべき存在意義が必要です。己の行動を規範づける、黄金の法に縛られねばならないのです」


598 : 薔薇煙のサーカス ◆zzpohGTsas :2022/03/01(火) 23:52:45 wkHJYZkY0
 自動人形は結局、誰かの為の被造物。
造物主であったり、それ以外の何者かに対して、何かを成す為のもの。それは奉仕する事であり、喜ばせる事でもあり、そして、人を傷つけ、殺める事でもある。
規範のない人形は、ただの人の形をしただけのもの。文字通り、ただの人を象っただけのモノに過ぎない。
モノと自動人形の境界線は、その形を人間のそれに象らせた意味が、あったかどうかに他ならない。この意味の否定は、アイデンティティの崩壊を越えて、自動人形の『死』である。
それを知悉するフランシーヌは、《伯爵》の願いを否定する事が出来ない。やめよ、と言っても、聞かぬだろう。ならば、止めない。

「貴方が歩む事を、敢えて止めはしません。ですが――」

「……」

「自らの滅びが来たと悟ったのならば、その現実を、静かに受け入れなさい。今となっては私も貴方も、世界にとっては……演目を終えた芸人でしか、ないのですから」

「……現実、か」

 瞑目し、《伯爵》は思う。
幻想の対義語として語られるこの言葉は、幻想などよりも余程大きくて恐ろしい。
現実とは言ってしまえば、巨大なベン図のようなもの。その中に於いては《伯爵》ですらが、現実の巨大で広大なベン図の中に存在する事を許された、ちっぽけな集合。居候でしかない。
現実の潔癖さ、無情さ、苛烈さ、残酷さ、峻厳さ……。何よりもその、応報のシステムの、完成度の高さ。《伯爵》も、フランシーヌも。それを、痛い程思い知らされている。
彼は既に、現実が織りなす、運命と呼ばれるものに射貫かれて、役目を終えている。現実は、死の淵に堕ちた者が蘇る事に、意義を唱えるもの。
自由なのは今だけだろう。2度目の『運命』が来るのは、近いか遠いか。この、違いでしかなかろう。

「よく、知っているとも。その時の、身の振り方はな」

 牙を見せて、《伯爵》は笑った。苦笑い、と言う風に、フランシーヌには見えた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『これが、井戸の中に溶けて消えた自動人形(オートマタ)の女と、現実の刃に心の臓を穿たれ消えた吸血鬼(オートマタ)の出会いの一幕』



『観客もいないテントの暗闇の中で配下の芸を見続けた女は、何の因果か、夜の帳の中に蠢いては母の大願の為に跳梁していた道具の男を召喚したのでございます』



『これは果たして、運命の女神の気まぐれか。地獄の機械の思し召しか。いやさ、因果の糸車が狂ったか』



『さても奇妙なこの演目、敢えて名付けるのであれば、【吸血鬼伝承(からくりサーカス)】とでも言うべきでしょうか』



『血を吸う自動人形達の首魁であった女の下、血を吸う鬼そのものたる男が、何を見、何処へ歩もうとするのか。それは次回のお愉しみと致しましょう』



『それでは――一時、閉幕となりまする』



【クラス】

プリテンダー

【真名】

《伯爵》、もとい、『吸血鬼(オートマタ)』@Vermilion -Bind of Blood-

【ステータス】

筋力A+ 耐久A++ 敏捷B 魔力A+ 幸運D 宝具A

【属性】

混沌・善


599 : 薔薇煙のサーカス ◆zzpohGTsas :2022/03/01(火) 23:53:10 wkHJYZkY0
【クラススキル】

対人理:A
人類が生み出すもの、人類に有利に働く法則、その全てに『待った』をかける力。本来は『クラス・ビースト』が持つスキル。
始まりの男女である、女・リリスの血肉より生まれたプリテンダーは、リリスの悲願である所の、嘗ての力ある太母としての姿を取り戻す事と、
その力によって新たなる種を地に満たさせると言う使命を実行する存在である。現生人類を駆逐する新種族の創造は、人理の焼却や地球の白紙化とは全く形を異にする人理の破壊。
その方法が人理にとってどれだけのダメージを与えるのか、そしてその方法が達成可能なのかを加味してランクは上下し、ランクAはその可能性が極めて高い事を意味する。
純然たる人間の英霊及び、人間に利する理念の持ち主、人類の奉仕者に対する特攻効果及び、行動の達成値に上方修正が掛かるものとする。

【保有スキル】

吸血鬼(真にして偽):EX
吸血鬼であるかどうか。高ければ高ければそれは吸血鬼としての格が高まって行く事を意味するが、同時に、正統な英霊からは遠ざかる。
プリテンダーのランクEXとは、絶対性と規格外の双方を意味するEXであり、そもそもの話、プリテンダーは吸血鬼ではなく、『全ての者が抱く絶対の理想像としての吸血鬼』、と言う名目の下リリスによって創造された『ホムンクルス或いはゴーレム、オートマタ』に類する存在である。

 その威厳ある振る舞いと姿、謎めきつつも確かかつ高度な知性を秘めた言の葉、そしてヴァンパイアをヴァンパイア足らしめる超常の力の数々。
これは誰もが思い描く、銀幕(ムービー)や古典(クラシック)の中でのみの存在としか思えない、理想的かつ完璧な吸血鬼。この意味でプリテンダーは絶対の吸血鬼である。
だが、先述の通りプリテンダーは吸血鬼と言う生物ではなく、絶対・完璧・理想的、をモットーとして作られた吸血鬼に似た何かである。この意味でプリテンダーは、吸血鬼の規格の外に君臨する何者かである。

 超高ランクの怪力や、催眠による魅了、再生を兼ね備えた複合スキルであり、特に再生については、脳や頭蓋を伴う頭部の欠損ですら、数秒の内に成立させる恐るべき力を持つ。
勿論、吸血鬼の代表的な力である、噛む事による下僕の創造並びに、自身と同じような吸血鬼の創造も可能となっている。但し吸血鬼の創造については、魔力を多分に消費する。
但し、サーヴァントとしての顕現により、プリテンダーは『理想的な吸血鬼と言う側面に縛られての召喚』となっており、『万人が想起する吸血鬼の弱点もそのまま』の形となっている。
陽光の下での戦闘を行えば全てのステータスはワンランクダウンするし、ニンニクや銀に対しては特攻ダメージを得るし、流れ水の上は渡れないなど、弱点についても理想の形になってしまった。
また、上述の理想的な吸血鬼の側面は、その姿を見られても発動し、具体的には目にした者はプリテンダーを『吸血鬼』であると認識するようになってしまう。

戦闘続行:A
吸血鬼の持つ不死性と再生性による恐るべきタフネス。霊核に損傷を負った状態ですら戦闘を継続する事が出来、それどころか下手な瑕疵では霊核が再生する。

対魔力:A+
A+以下の魔術は全てキャンセル。事実上、魔術ではプリテンダーに傷をつけられない。
2000年以上の時を経るプリテンダーの対魔力は最高クラスのそれであるが、上述の様に、吸血鬼の弱点として想起され得る属性の攻撃については、ダメージを負う。

カリスマ:A---
大軍団を指揮する天性の才能。Aランクはおおよそ人間として獲得しうる最高峰の人望。精神耐性がない場合、攻撃をする事に支障を来たす程の、精神的な威圧を相手は受ける事となる。
創造主である始祖リリスによって、最高の吸血鬼あれかしと作られたプリテンダーは、生誕の折より他を跪かせるカリスマを会得していた。
だがこれは言うなれば、『そのカリスマを得るにあたったエピソードが存在せず、厚みも何もない張りぼて』である事をも意味する。プリテンダーの本質的な薄っぺらさを理解した瞬間、このスキルの効果は消滅する。


600 : 薔薇煙のサーカス ◆zzpohGTsas :2022/03/01(火) 23:53:53 wkHJYZkY0
深雪の野:EX
――だがプリテンダーは、己のチープさを、誰よりも理解しているし、受け入れている。
自分が母のエゴによって生み出された自動人形であり、自らが会得していたと認識していたあらゆる力はその実与えられたものに過ぎず。
所詮は単なる張りぼてであり、他者が羨むような圧倒的な王者ではない。その事を受け入れたプリテンダーが、新たに獲得したスキル。
自分には何もないのなら、其処から新たに始めればいい、歩めば良い。母が己に願いを託したのなら、それを叶えてやればいい。
己の滑稽さと無様な生い立ちを受け入れたプリテンダーには精神攻撃の類が一切効かない。それによって心が惑わされる段階を、卒業しているからである。
またアサシンは戦闘の時間が長引けば長引く程、その戦闘時に於いてのステータスが向上して行き、更に生前の、『自分の人生において苦戦や挫折がなかったが故に敗北した』、
と言う逸話をもプリテンダーは受け入れており、『自分と互角に近い実力の相手との戦闘に勝利するか、苦戦を強いられたがその戦いを中断する』と言うどちらかの条件を満たした場合、
その条件達成以降の全ての戦いに於いて、上述のステータスの向上効果及び戦闘続行のスキルランクが跳ね上がる。

 純然たる幻想の住民、万民が理想とする吸血鬼でありながら、それに至るまでの過程がなにもない。
苦難も挫折も後悔も、怒りも悲しみも喜びもなく、理想の吸血鬼としてあり続け、その実、己の価値がそれしかなかった事を克服したプリテンダーだからこそ、得られるスキル。

 克服したと言えば聞こえはいいが、まぁぶっちゃけ、究極の開きなおりである。

【宝具】

『吸血神承(ドラキュラ)』
ランク:A+ 種別:対軍〜対国宝具 レンジ:10〜 最大補足:100〜
本来、プリテンダーのいた世界に於ける、吸血衝動を保有する人間。即ち、縛血者と呼ばれた者達は、その全てが、一切の例外なく特殊な能力、『異能(ギフト)』を有していた。
この宝具はプリテンダーの持つ異能が宝具となったもの――ではなく。プリテンダーが持つ生態現象そのものが、宝具として登録されたもの。プリテンダー自体は、異能を持たない。

 その能力の本質は、魂を吸い上げる事にある。言ってしまえば、魂喰いのウルトラ上位版の宝具である。
発動した瞬間プリテンダーを中心に、ありとあらゆるエナジーが吸い取られて行く。範囲内に存在するサーヴァントや人間、動物の類は勿論、
樹木や建造物、果ては大地ですらもエナジーを吸い取られて行く。このエナジーとは即ち、魂だとかソウルだとか呼ばれるものとニアリー・イコールである。
エナジーを吸い取られた存在は、極熱と極寒に同時に苛まれる感覚を覚え、重度の火傷と凍傷による痛みに似た感覚に苦しむ間に、エナジーを吸いつくされ死に至る。
有機物であればそのままこと切れるだけで終るが、建造物や大地等の無機物の場合は、存在を構築する為に必要な活力まで吸い取られているのか、そのまま崩壊の未来を辿る。
防御手段は神性並びに粛清防御、そして何よりも魂を吸い上げられてもまだ動こうと言う強い意志力によってのみでしか行われず、それらの手段を用意したとて、
吸い尽くされる時間を遅れさせる事しか出来ず、完全な無効化は出来ない。生前に於いては、この能力はそもそも能力ですらなく、呼吸や鼓動と同じレベルの、
プリテンダーにとっては基本となる生態現象であり、一度発動してしまえば能力の持ち主であるプリテンダーですら、能力のオフが不可能になってしまう程『だった』。
サーヴァントとして召喚され、宝具に登録された今では、出力の調整及びオフが効くようになり、吸血神承を纏わせた拳足で攻撃をも行える、と言うメリットまで得るようになった。


601 : 薔薇煙のサーカス ◆zzpohGTsas :2022/03/01(火) 23:54:29 wkHJYZkY0
 極めて強力な宝具であるが、弱点もある。
この宝具による魂喰いは本当に無差別であり、出力の調整は出来るが、『任意の相手のエナジーのみ吸収する、しない』と言う調整は不可能。
その為、範囲内にマスターがいるのなら問答無用でマスターもエナジーを吸い取られ死亡する。
次に、後述の宝具により当該宝具によって、出力を更に向上させる事が出来るのだが、この方法を用いて出力を上げた場合、上述の『出力調整』と言うメリットが消滅。
常に最大範囲で宝具が発動し続けると言うデメリットを負う事になる。そして極めつけに――この宝具はプリテンダーの大願である、リリスの夢を叶える為の宝具なのであり、
『吸い取った魂魄を己の活動魔力に変換する事が出来ない』。つまり事実上この宝具には、魔力回復の機能などなく、『魂に対しての特攻宝具』以上の域は出ない事になる。

 生前プリテンダーを討ち取った人物に曰く、天に生じた虚空の孔。有象無象を喰らい尽くす重力崩壊そのもの。
“焼却”と“略奪”の融合。魂という心血を啜るこれはまさしく鬼の魔業。存在するだけで命を奈落の祭壇へ召し上げる、まさに、魂をも啜り尽くすソウルイーターの宝具である。

『永劫の紅、不滅の緋(リリス・オートマータ)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
柩の乙女。プリテンダーのみが支配し、命令可能な二体の少女。ストレートの銀髪のロングヘアの少女がカーマイン、ウェーブのかかった金髪のロングヘアの少女がマジェンタである。
その正体は原初の人類であるリリスの肉体から作られた一種の自動人形であり、プリテンダー自身もまた、リリスによって作られた自動人形に該当する。
現生人類の大本である人物の肉体から作られたこの宝具は、表記不能・規格外の宝具であり、ランクEXとはその通りの事を指している。

この宝具の効果は、大別して3つ。
一つ目はスタンドアローン性。カーマインとマジェンタは単体で、『筋力C 耐久A++ 敏捷B 魔力A+ 幸運D、単独行動:A+ 催眠術:A 再生:A++』相当のステータスを持った、
プリテンダーの意志によってのみ動く使い魔のような存在であり、この高い単独行動スキルにより、プリテンダーから遠く離れていてもステータスを損なう事無く戦闘が可能になる。
催眠能力については凄まじいものがあり、生半可な精神防御スキルと意志力であればこれを貫いて、意思を奪われてしまう程である。
だが真に恐るべきはその再生能力。元が始祖リリスと言う埒外・規格外の存在の肉体を根源とする物の為か、同一の神秘を内在した宝具による攻撃でなければ、
傷一つ負わせる事すら困難であり、よしんば破壊し、損壊させたとしても、即座に再生してしまう程。首を刎ねられる事は元より、灰の状態からですら復活してしまう。
また、カーマインとマジェンタの見聞きしたものは、プリテンダーも知覚する事が出来、遠く離れていても手に取る様に解る。

二つ目は、裁定者(テスタメント)と呼ばれる存在の創造。彼女らに噛まれ、血を吸われた人間は、裁定者と呼ばれる、全体的に人間の姿を保った異形の怪物に変貌する。
裁定者は、『筋力B 耐久A 敏捷B+ 魔力D 幸運E、単独行動:B 対魔力C+ 再生:B 怪力C』相当のステータスを持った存在として機能し、カーマインとマジェンタ、及び、
プリテンダーの命令にのみ従う意思のない使い魔である。極めて発達した筋力による暴力は勿論、身体の内部から骨を突き出させ、それをミサイル染みた勢いで放つ、と言う芸当も可能。
裁定者化は本来、縛血者と呼ばれる存在達がカーマインとマジェンタに噛まれる事でしか変貌しえないのだが、
宝具として彼女らが登録された事により、範囲が広範化。特殊な防御スキルや宝具を持たないのであれば、NPCは当然の事、マスターやサーヴァントですら、裁定者になり得るようになった。
但し、この裁定者化の広範化は、『生み出される裁定者の基本スキルの劣化』と言う欠点を孕んでおり、具体的には、上述のステータスとは、平均レベルの戦闘能力の持ち主が、
裁定者になった時のステータスであり、そもそも何らの戦闘能力を有さないNPCが裁定者になった場合、一山幾らの雑魚と化す。
逆に言えば、これらの欠点は、『極めて戦闘能力の高い存在が裁定者になれば帳消しになる』のであり、元の存在が強ければ強い程上述のカタログスペック以上の強さをも発揮する。


602 : 薔薇煙のサーカス ◆zzpohGTsas :2022/03/01(火) 23:55:12 wkHJYZkY0
そして三つめは、プリテンダーそのものの強化。厳密に言えばこの使い方こそが、当該宝具の真の目的である。
この宝具は始祖リリスの身体を分割する事によって作られた自動人形の事であり、カーマインはリリスの脊柱で作られた魔聖槍、マジェンタは皮膚から作られた魔聖骸布に当たる。
この宝具をプリテンダーが取り込むという事は即ち、始祖リリスの力に限りなく近づく事を意味し、その恩恵は単純なステータスの向上と言う形では勿論の事、
第一宝具である吸血神承の威力・範囲の激増と言う形を以て現れる。但し、この三つ目の使い方を行った場合、当該宝具は消滅するだけでなく、
プリテンダーの第一宝具は常時発動しっぱなしの状態になる為、魔力の燃費と言う観点では最悪を極めるものとなる。当該聖杯戦争に於いてこの使い方を実行する事が意味するのは、自爆、道連れ、悪あがき、である。

 当該宝具にはもう一体、プリテンダーが切り札としていたスカーレットと呼ばれる第三の自動人形、リリスのスカーレットから作られた魔聖杯を担当する者がいたのだが、
現在はスカーレットから離反を受けている為、彼女に限ってはどの聖杯戦争に於いても持ち込む事は不可能。また翻って、プリテンダーが全ての魔神器を吸収して、完全体に至る事も出来ない。

【weapon】

右手のガントレット:
プリテンダーの右腕に装備されているガントレット。
これによって防御は勿論、攻撃の威力の向上も図っているのだが、そもそもプリテンダーの攻撃はガントレットを装備しようがしていまいが、
あり得ない威力を誇る為、大抵のサーヴァントからしてみれば、元より即死級の威力の攻撃になんかダメージが上乗せされてるな位の感覚でしかない。多分オシャレみたいな感じで付けてるんじゃね?


603 : 薔薇煙のサーカス ◆zzpohGTsas :2022/03/01(火) 23:55:56 wkHJYZkY0
【人物背景】

 何? 私に《伯爵》の説明をしてほしいだと……? クク……面白い事を言うな。
お前のような態度の人間、路傍の石の様に蹴散らして殺してやろうかと思ったが、私に《伯爵》の事を尋ねるとは、誰から聞いたかは知らないが、わかっているじゃないか。
良いだろう、興が乗ったぞ。私と、あの御方の関係について、話をしてやろう。おっと、直ぐに終わると思うな? 夜が更け……日が昇りて沈み行き、次の月がまだ沈んだとて、まだ話が終わってないのかもしれないのだからな。

 あの御方を指して、嵐と呼ぶ者がいる。とある地を亡者で埋め尽くし我が王国を建てようとした血族の前に現れ、その首を刎ねて断罪し、風の様に去って行ったからだ。
あの御方を指して、炎と呼ぶ者もいる。とある国家同士を陰で操り栄耀栄華を貪る血族達を、容易く滅ぼし再び闇の中に潜ったからさ。
あの御方を指して、雷と呼ぶ者は多い。とある城を美しい乙女の血で染める血族を、その愚かしい狂気と共に地獄の奈落に叩き落したのだ。
血族とは即ち、血を吸う鬼の事。己の事を選ばれたもの、不死の命を誇り、永遠の絶頂を味わい続ける夜の魔人だと気取る者達、与えられた薔薇の心臓に欲望の汚泥を塗りたくる者達に、
何処からともなく現れては裁きを下す、荒ぶる神であるのだと。有象無象の小童共は思っているよ。いや、年若い若輩共に至っては、存在そのものを信じていないのだ。
御伽噺(フェアリー・テイル)、ブギー・マンの類だとすら、決め込んでいるのではないか? 愚かしい、あの御方の偉大さ、高貴さ、恐ろしさ。それらを認識したその瞬間、彼奴等は恥じ入りては自ら灰になる事を選ぼうな。

 あの御方……《伯爵》は、実在されるのだ。私は、あの御方の御目に適い、慈悲を賜り、救われた。
最早生まれ故郷の名すら思い出せぬあの村で、嘲りと蔑みを受け、生きる事に絶望していたこの身に、夜の世界の美しさと、奔放に振舞う事の面白さ。
そして、絶対的な存在に仕える事は、この世のあらゆる快楽に勝る至上の福音を得られるのだ、と言う事を教えて下すったのだ!!

 《伯爵》の為であるのなら、私は何でもできる。
不肖の娘だと言われても、誇らしかった。私にはまだ、あの御方の御目に適う余地があるのだと。成長できる伸びしろがあるのだと、法悦に酔えた。
永遠に、《伯爵》に仕え続けられると思ったのに。女として彼を愛し、男として友誼を交わし続けると誓ったのに!! 私に生きる事の喜びを与えるだけ与えた彼は、夏の嵐の様に消えて行った。

 そうだ、私の数百年は全てあの御方との再会を願う為の旅路であったのだ。
《伯爵》と言う、星明かりなき夜空を逍遥する旅人の頭上に輝く暗黒の太陽、輝ける月を探し求める、足掻きの過去であったのだ。
久闊を叙する、と言う言葉では尚足りぬ程の年月を費やし、漸く出会えて見れば、私の中の太陽である御方は、当の昔に死んだ女のエゴの為の道具で――?
あああああああああああああああああああああふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな《伯爵》はそんな御方ではない!!
何だお前は過去の女であろう死んだのであろう消えたのであろう己の無力を《伯爵》に転嫁して隠れたのであろうふざけるなこの敗北者が私だ私の方があの御方の為に何百年も魂を燃やし続けた私の方があの御方の右に或いは後ろで傅く事を許される唯一の存在なのだそれを貴様《伯爵》の造物主であるからと言うだけの理由であの御方を独占するばかりか死ねとまで言うのかふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけ

 ――文責、ジョージ・ゴードン・バイロン ドン・ジュアン
 
【サーヴァントとしての願い】

母の理想を叶えよう


.


604 : 薔薇煙のサーカス ◆zzpohGTsas :2022/03/01(火) 23:56:17 wkHJYZkY0
【マスター】

フランシーヌ人形@からくりサーカス

【マスターとしての願い】

エレオノールが自分に笑いを向けた時、自分が何をしていたのかを知りたい。そして、あの時のいい気持ちと温かさをまた、味わいたい

【weapon】

【能力・技能】

自動人形:
フランシーヌは人間ではない。人間そのものとしか思えない程、見事な動きを披露するからくり人形なのである。
普段は高価な衣服を着て本質を隠してはいるが、その服を脱げば、歯車と鉄管で構築された、からくり人形としての駆動部が露わになる。
また、通常の運動能力と言う面でも、他の自動人形からは隔絶しており、フランシーヌは自動人形の中で最も美しい人形であると同時に、最も強い人形でもある。
だが今は、才賀正二によって施された改造により、自動人形の中でも最高峰の運動能力と戦闘能力は最低の値にまで低下されており、単純な戦闘と言う面では最弱の部類にまで落ち込んでいる。

生命の水:
アクア・ウイタエ。フランシーヌは造物主である白金(バイジン)によって、生命の水を利用して作られた唯一の自動人形である。
服用すれば、常人の1年分の身体の成長や老化には5年かかる・夜はほとんど眠らずに済む・傷の再生が目に見えるほど早い・髪と瞳の色が銀色に変化する、等と言った特徴を得る。

錬金術・人形作成能力:
卓越している。特に人形作成能力については、材料次第では戦闘力を秘めた自動人形ですら今でも作成が可能な程である。

【人物背景】

べろべろ、ばあ。


退場後からの参戦。

【方針】

正二やアンジェリーナ、エレオノールにギィ達に悪い為、聖杯戦争のモチベーションは低い

【人物関係】

《伯爵》→フランシーヌ:
よくできた人形。人形が人形を召喚するなど……、と言う皮肉には内心苦笑いしている。

《伯爵》→柩の娘達:
宝具。だが実際上は、《伯爵》もまた、用途こそ違えど、本質的には柩の娘達と同じ自動人形なのである。カーマインがいない事については、その理由を理解している。

フランシーヌ→《伯爵》:
願いを否定する事はないが、散り際は潔くして下さい。

フランシーヌ→柩の娘達:
下手すれば造物主である白金様よりも優れた人形かも知れない……、と思っている。まさか動力源が生身の人間の皮膚や脊柱であるとは夢にも思うまい。

文責の女→《伯爵》:
愛しい人。そして、私を産み、摘んでくれた人。英霊の座からその活躍見守っております

文責の女→柩の娘達:
嘗て《伯爵》より下賜された自動人形。《伯爵》が与えてくれたと言う事実に舞い上がり、愛でてもいたが、その真の利用目的を知っている為その思いは反転。本当に壊しておけば良かったと後悔している

文責の女→泥棒猫:
ふざけるな!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!《伯爵》の『マスター』だと!?!!!!?!!!不敬であるぞ木偶人形が殺して殺る!!!!!!!!816!!!!!!!!


605 : 薔薇煙のサーカス ◆zzpohGTsas :2022/03/01(火) 23:56:29 wkHJYZkY0
投下を終了します


606 : ◆U1VklSXLBs :2022/03/03(木) 18:08:05 lUmJ76Xc0
投下します。


607 : 岡崎誠&アサシン ◆U1VklSXLBs :2022/03/03(木) 18:09:30 lUmJ76Xc0
定時制高校の生徒、というロールに誠は思わず自嘲してしまった。共に学ぶ生徒達に見知った顔はないのに、まるで昔に戻ったようだ。聖杯戦争に巻き込まれる前の誠の学生生活は、決して明るい物ではなかった。いわゆるカースト下層、クラスメイトのパシリとして過ごしていた日々が、ある晩唐突に終わった。

吸血鬼、と呼ぶのが相応しいのだろう。
少女に襲われた誠は、それまでとは別のものになった。日光が辛く、血液への飢えを抱えた存在。血への欲求に突き動かされた誠は反撃する力を得た。
変化によって得た蜜月はすぐに終わり、吸血鬼サクとの出会いをきっかけに、元の生活には戻れない事をうんざりするまで自覚させられてしまった。

ー治らないよ。ずっとこのまま…

記憶を取り戻すのは簡単だった。屋上の縁や屋根を飛び伝う身体能力を発揮して、学校帰りに襲ってきた不良を返り討ちにして、そのうち1人に噛みついたのだ。そしてサーヴァントを宛てがわれた。

「クソったれなヴァカンスはここまでだ。よろしくマスター」

その場に現れたのは筋骨隆々の東洋人男性。
覇気と暴力を全身に漲らせた彼は残りの不良を一瞬で片付けると、しゃがみ込んで気絶した1人の頭を掴む。「本当に出来ねぇのか」と呟く。口元を血で染めた誠の姿を見ても、立ち上がった彼は何も言わない。

「ここは放っておくしかねぇ、場所変えるぞ」
「待って。僕、聖杯戦争は…」
「後にしろってんだよ、面倒クセェな」

連れ込まれた公園から逃げ、2人は自宅近くの駐車場に入る。車が数台止まっているが人気はない。男はアサシンと名乗り、聖杯戦争に乗るか否か誠に尋ねてきた。

「…聖杯に興味はあります、けど人殺しは、やりたくないです」
「あぁ、そういう感じね」

アサシン、伏黒甚爾は軽蔑の視線で誠を見下ろした。聖杯にかける願いはある。変わってしまった日常と自分自身の何もかもを元に戻したい。しかし、その為に人を殺したくはない。吸血鬼の身体さえ治してくれるなら、聖杯はその人に託してもいい。

「まぁ、お前がそれでいいんなら、いいんじゃね」
「え…?けど、聖杯が欲しいんじゃ…」
「当然だろ。けど、マスターはお前じゃなくてもいいんだ」

誠の顔が青褪める。小さく一度笑い、甚爾は自身の宝具『天与の呪縛』について説明する。ステータスの高さを保証する代わりに、魔力値がゼロになる宝具。しかし、甚爾の身体は魔力によって構成されている。この矛盾
を解消する為に、聖杯は彼から霊体化や念話、魂喰いの機能を奪う代わりに魔力の消費を無くした。

「だからお前と一緒に勝ち残る必要はないってわけ」
「あの、じゃあ僕はどうすれば?」
「はぁ?自分で考えろよ。ただ、せっかく召喚されたしな…替えのマスターが見つかるまでは、お前の周囲にいてやる。念話は使えねぇから、連絡手段は自分で用意しろ」

あばよ、と言い残して甚爾は姿を消した。
霊体化できないと言っていた事から、気配遮断スキルによって潜伏するつもりなのだろう。その場に1人残された誠は、力無い足取りで帰宅。これからどうするべきか、今夜はなにも思いつかないだろう。

(令呪については何も言っていなかったな…)

あの奔放な言動を鑑みれば、自分に命令される事を良しとはしないだろう。魔力供給を必要としていないとあればなおさらだ。空を飛べるほどの身体能力を誠は持ったが、それだけで戦いを生き残れるとは思えない。

(なんでこんな事ばっかり…)

こういう生活が欲しかったわけではない。
自分は大人しく生きていたのだから、その分トラブルからは遠くありたかったのだ。家族も友達もいた、新しいパートナーだっていたのに…。


608 : 岡崎誠&アサシン ◆U1VklSXLBs :2022/03/03(木) 18:10:01 lUmJ76Xc0
【サーヴァント】
【CLASS】
アサシン

【真名】
伏黒甚爾

【出典】
呪術廻戦

【性別】


【ステータス】
筋力 B+ 耐久B + 敏捷A + 魔力− 幸運D 宝具A

【属性】
中立・悪

【クラス別能力】
気配遮断:B
サーヴァントとしての気配を絶つ。
完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】
直感:C
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。 敵の攻撃を初見でもある程度は予見することができる。

千里眼:C
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。呪縛により強化された感覚。

追跡:B
鋭敏な感覚によって対象の臭跡、足跡を捉える。

破壊工作:D
戦闘を行う前、準備段階で相手の戦力をそぎ落とす才能。生前、星漿体の少女に賞金をかける事で、護衛の呪術師の神経を削り、確実に奇襲できるタイミングを作った。

【宝具】
『天与の呪縛(フィジカル・ギフテッド)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:−  最大捕捉:1人(自身)
生まれながらに肉体に強制的に課された"縛り"
甚爾の場合、呪力を全く持たない代わりに肉体の性能が大幅に向上。水面を容易に駆け抜けるスピードや人1人を片手で投げる膂力に加え、呪力への耐性を備えており、五感だけで呪霊の認識が可能。
常時発動型の宝具であり、筋力、耐久、敏捷の高さを約束し、あらゆる動作による魔力消費をゼロにする。魔力の反応もゼロになる為、高いステルス性を発揮。魔力によって甚爾の存在を感知する事は難しい。
マスター不在でも行動可能だが、代償に魔力値を喪失、念話と霊体化と魂喰いが封印、『天与の呪縛』以外の宝具使用に制限が設けられる。宝具の情報を開示する事で、ステータスのプラス補正が発揮されるようになる。

『天逆鉾(あまのさかほこ)』
ランク:B 種別:対人、対術宝具 レンジ:1〜20  最大捕捉:1人
穂先が二又に分かれた、短刀のような特級呪具。聖杯戦争においては接触した発動中の魔術スキル、宝具を強制解除させる。呪具"万里ノ鎖"と連結させることで、リーチを伸長させる事が可能。
『天与の呪縛』の効果により、マスター不在の間は開帳することができない。

【weapon】
武器庫呪霊:
物を格納できる呪霊。赤子のような人間の頭部に、細長い胴体を持つ。無銘の呪具、ハンドガン、無数の蠅頭などを取り出す事ができ、戦闘中はこれの胴体を体に巻き付けている。普段は自分の体を格納させる事でサイズを落とし、自身の腹の中にしまっている。


【人物背景】
呪術師の家系の一つ、禪院家に生まれついた男。
呪力を全く持たないが故に冷遇されていた彼は禅院家を出奔すると暗殺などの裏稼業で身を立てるアウトローとなる。
天元様と同化する星漿体の少女殺害を請け負い、学生時代の五条悟、夏油傑と衝突。2人を退けて依頼を完遂するも、反転術式を体得して当代最強の術師となった五条との再戦に敗北。実家に売り渡す取引を済ませていた息子・恵を五条に託して息を引き取った。
渋谷事変と称される事件の際、降霊術によって一時的に情報が降ろされ、成長した息子が伏黒姓である事を本人の口から知ると、満足した様子で自害した。その記憶も所持している。

【サーヴァントとしての願い】
まとまった金を持って受肉。それだけだ。

【方針】
優勝狙い。マスターに依存していない為、積極的に鞍替えを考えてはいない。


609 : 岡崎誠&アサシン ◆U1VklSXLBs :2022/03/03(木) 18:10:56 lUmJ76Xc0
【マスター】
岡崎誠

【出典】
ハピネス

【性別】


【能力・技能】
吸血鬼:
高い身体能力を持ち、日光を苦手とする人に似た何か。血液を主食とし、血の匂いに敏感。飢えや怪我、疲労などによって血液への欲求が増大する。

【weapon】
なし。

【人物背景】
北西高等学校の1年3組に在籍していた少年。クラスメイトの勇樹にパシリにされるなど冴えない学校生活を送っていたが、ある晩ノラという少女に血を吸われて吸血鬼となる。勇樹への反撃をきっかけに序列を塗り替え、気になる女子"五所雪子"と出会い、さらに不良グループによるリンチから救ったことで勇樹とも交遊関係が芽生える。

しかし、吸血鬼サクの出現や勇樹の吸血鬼化などの事件を経て、その日常は少しづつ崩れていく。吸血鬼を知る謎の集団に拉致されかかった所を勇樹に救われたが、彼がノラに襲いかかった事で仲違い。『殺さない』約束と引き換えにノラと2人で生きていく事を決意し、母に別れを告げた。




【マスターとしての願い】
人間に戻る。日常を取り戻す。

【方針】
脱出狙い。吸血鬼化を癒せる主従がいれば協力したい。


610 : ◆U1VklSXLBs :2022/03/03(木) 18:11:37 lUmJ76Xc0
投下終了です。鯖、鱒、本文は改変自由。


611 : ◆e1iKht2T0g :2022/03/06(日) 15:05:25 fV3c0Nkg0
投下します


612 : 久世しずか&アルターエゴ :2022/03/06(日) 15:07:27 fV3c0Nkg0
―――女の話をしよう。
女はただ現実に在っただけだ。何も語らず、何も語らせず、さもありなんと在り続けた榲桲の花。
誰かが彼女を淫売の娘と侮蔑した、誰かが彼女を被害者と哀れんだ、誰かが彼女を加害者と考えた。
誰かが彼女を殺さなければならない毒婦と恐怖した、誰かが環境によって歪んだ被虐孤児と考察した。

然して、女の内面は女にしかわからない。女は何も変わらない。
然して、女の内面は女にしかわからない。女は何も変わらない。
視点が変われば世界は別物だと誰かが言った。
正しくその通り、女が見る世界と、女を見る世界は隔絶している。
観測者は周囲を俯瞰的に観察できるが、観察されている当人にそんな柔軟な思考は出来るはずなど無い。
要するに、女の心の内は彼女の中に締まったままであるのだ。モノローグを漏らさない誰かの思考や感情など、誰にも分かるわけがない。
彼の者がそう思うのならそうであろう、彼の者がそう考えるのであればそうであろう。

だから誰にも理解できない、誰にもわからない、誰も知ることは出来ない。
女の深層は、誰かにとっての写し鏡としか認識できないのだから。

何? 結局女は何者だって? その認識こそ、押し付けというものではないのかな?
かく言う語り手もまた、認識の押しつけという点では何ら変わらないのであるのだが。


613 : 久世しずか&アルターエゴ ◆e1iKht2T0g :2022/03/06(日) 15:09:26 fV3c0Nkg0
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ありふれたマンション。街の外れに屹立する真っ白な壁に包まれて、テラスから清潔に干された布団が布団掛けにぶらさがり風に吹かれる。
外から見るだけで、パンパンパンと布団を叩く主婦の姿が疎らに見えるであろうし、今さっき洗濯物を干している主婦の姿も見える。
マンションと言いつつも都会等で見るマンションと、下町等で見かけるマンションとは天と地の差だ。
それは俗に言う子供たちの理想と言うなのフィルターで覆われた幼稚な幻想。薄汚い外壁と、小綺麗さと嫉妬のどちらかで構築されるご近所付き合いの関係。
そんな人間関係の縮図という名の箱庭の、そんな中の一室。開きっぱなしの扉と、扉の内に貼り付けられたであろう、落書きながらも家族愛に溢れた父と娘たちの一枚絵が冷たいコンクリートに横たわり、風に吹かれて向こう側に飛んでいく。

扉の向こうからは匂いが漂っている。血の匂い、腐臭が漂っている。それはまるで稚拙な強盗殺人犯が入り込んだような杜撰さのように、何の考えもなくただ何かをしたという幼稚な思考で。
部屋の中には血溜まりがあった。血溜まりの中心は大人一人のしたいと子供3人の死体。アジの開きの如く真っ二つに切り開かれて、誰かが何かを探していたのように中身はグチャグチャになっていた。
それは、飲み込まれた玩具を探していた子供が無造作に引っ剥がしたかのような、そんな無軌道な衝動で。

それを、何の感情もなく見つめているのは一人の少女。
薄汚い、と一般の誰彼ならそう言い表しても致し方ない程に見窄らしい少女である、泥と埃と塵塗れで黒く汚れたシューズに単ズボンに、白いシャツ。
その顔立ちも薄汚れていて、親の育て方が透けてみる細い顔立ち、その頭にはそんな汚らしさに反したドクダミの髪飾りがちょこんと乗っかっている。
その手は血で染まっている。それも触れただけではつかないような、中身を穿り返したような行為でないと染まらないであろうぐらいの血の量で。


「……チャッピー、いなかった。」


何の興味もないであろう声色で、少女はただ呟いた。飽きた玩具に目を向けるような、養豚場の豚を見るような表情で、動かなくなったものをただ見つめていた。例えそれが、少女の父親だった男と、その娘たちだったとしても。彼女はそれに眉一つすら動かさず、そう呟いていた。

「満足しましたか?」

「………。」

女の声が、部屋にこだました。
振り返り、死骸と少女以外居ないはずの世界に全く新しい誰かが、まるで魔法のように部屋の床に立っている。
少女にとっては見たことのない服装であった。白い頭巾のようなもの被り、体のラインが目立つ黒い服を着込み、淫靡さと悍ましい何かを兼ね備えた、女がそこにいた。

「……うん。」

少女の肯定が、静寂に流れてすぐに消える。
この惨劇を起こしたのは、信じられぬが紛れもなく女だ。少女はただ願っただけだ、ただ考えて、願って、女に命じて、こうなった。
ただこうなっただけだ、少女はただ『チャッピー』という存在の一つを優先しただけだった。
それ以外、どうでも良かった。

「しかしよろしかったのでしょうか?」

「……何が?」

「私は特に言うことはありませんが、一応、父親だったのでしょう?」

「いいよ。でも、チャッピーは居なかった。」

何の感情も籠もっていない言葉を、女は少女に向けて告げた。
少女もまた、何の感慨も抱かない言葉で、女に返した。

「もうお父さんはお父さんじゃなかったから。お父さんじゃなかったらどっちでもいいでしょ?」


614 : 久世しずか&アルターエゴ ◆e1iKht2T0g :2022/03/06(日) 15:09:53 fV3c0Nkg0
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ありふれたマンション。街の外れに屹立する真っ白な壁に包まれて、テラスから清潔に干された布団が布団掛けにぶらさがり風に吹かれる。
外から見るだけで、パンパンパンと布団を叩く主婦の姿が疎らに見えるであろうし、今さっき洗濯物を干している主婦の姿も見える。
マンションと言いつつも都会等で見るマンションと、下町等で見かけるマンションとは天と地の差だ。
それは俗に言う子供たちの理想と言うなのフィルターで覆われた幼稚な幻想。薄汚い外壁と、小綺麗さと嫉妬のどちらかで構築されるご近所付き合いの関係。
そんな人間関係の縮図という名の箱庭の、そんな中の一室。開きっぱなしの扉と、扉の内に貼り付けられたであろう、落書きながらも家族愛に溢れた父と娘たちの一枚絵が冷たいコンクリートに横たわり、風に吹かれて向こう側に飛んでいく。

扉の向こうからは匂いが漂っている。血の匂い、腐臭が漂っている。それはまるで稚拙な強盗殺人犯が入り込んだような杜撰さのように、何の考えもなくただ何かをしたという幼稚な思考で。
部屋の中には血溜まりがあった。血溜まりの中心は大人一人のしたいと子供3人の死体。アジの開きの如く真っ二つに切り開かれて、誰かが何かを探していたのように中身はグチャグチャになっていた。
それは、飲み込まれた玩具を探していた子供が無造作に引っ剥がしたかのような、そんな無軌道な衝動で。

それを、何の感情もなく見つめているのは一人の少女。
薄汚い、と一般の誰彼ならそう言い表しても致し方ない程に見窄らしい少女である、泥と埃と塵塗れで黒く汚れたシューズに単ズボンに、白いシャツ。
その顔立ちも薄汚れていて、親の育て方が透けてみる細い顔立ち、その頭にはそんな汚らしさに反したドクダミの髪飾りがちょこんと乗っかっている。
その手は血で染まっている。それも触れただけではつかないような、中身を穿り返したような行為でないと染まらないであろうぐらいの血の量で。


「……チャッピー、いなかった。」


何の興味もないであろう声色で、少女はただ呟いた。飽きた玩具に目を向けるような、養豚場の豚を見るような表情で、動かなくなったものをただ見つめていた。例えそれが、少女の父親だった男と、その娘たちだったとしても。彼女はそれに眉一つすら動かさず、そう呟いていた。

「満足しましたか?」

「………。」

女の声が、部屋にこだました。
振り返り、死骸と少女以外居ないはずの世界に全く新しい誰かが、まるで魔法のように部屋の床に立っている。
少女にとっては見たことのない服装であった。白い頭巾のようなもの被り、体のラインが目立つ黒い服を着込み、淫靡さと悍ましい何かを兼ね備えた、女がそこにいた。

「……うん。」

少女の肯定が、静寂に流れてすぐに消える。
この惨劇を起こしたのは、信じられぬが紛れもなく女だ。少女はただ願っただけだ、ただ考えて、願って、女に命じて、こうなった。
ただこうなっただけだ、少女はただ『チャッピー』という存在の一つを優先しただけだった。
それ以外、どうでも良かった。

「しかしよろしかったのでしょうか?」

「……何が?」

「私は特に言うことはありませんが、一応、父親だったのでしょう?」

「いいよ。でも、チャッピーは居なかった。」

何の感情も籠もっていない言葉を、女は少女に向けて告げた。
少女もまた、何の感慨も抱かない言葉で、女に返した。

「もうお父さんはお父さんじゃなかったから。お父さんじゃなかったらどっちでもいいでしょ?」


615 : 久世しずか&アルターエゴ ◆e1iKht2T0g :2022/03/06(日) 15:11:12 fV3c0Nkg0
もし、この場にまともな論理感の人間が居たならばまともな怒号が飛んでいたであろう。
然して、ここにはまともな論理感を持ち得られなかった二人しかおらず、女は少女の言葉を聞いて興味なさげに言葉を発することにした。
なぜなら女は、サーヴァント・アルターエゴは己がマスターである少女の内情などまだわかっては居なかったのだから。

「……して、マスターはこの後如何様に?」

「'聖杯'を手に入れたら、チャッピーとまた会える?」

女の言葉に、少女はまた『チャッピー』の事を考えていた。
聖杯戦争、英霊、令呪、そして聖杯。究極の願望機。文字通りの『魔法』を知ってなお、少女の錆びついた感情から発せられる思考は固着してる

「ねぇ、アルターエゴ。私ね、魔法なんて信じなかったんだ。」

少女の言葉が続く。

「でもね、タコピーがまりなちゃんを殺してくれて、奇跡も魔法もあるんだねって、そう思ったの」

透き通った瞳の内に、濁った黒が埋めいて。

「でも、タコピーはもう私を助けてくれなくなった。」

少女の瞳から、涙が一滴こぼれ落ちていた。

「……ねぇ、アルターエゴは、私を助けてくれる?」

少女は願うように、言葉を振り絞って告げた。

「ええ、マスター。マスターがそう望むなら、私はマスターの願いを叶えましょう。」

女はその問い笑みを向けて少女に答えた。

「そっか。―――ありがとう、アルターエゴ。じゃあ聖杯とって、チャッピーに会いに行こう、アルターエゴ。」

少女はそれに、幸せを望む異星人にすら向けなかった、満面の笑みを浮かべ、女に言い返したのだ。
女はただ、誰も気付かない薄ら笑いを浮かべ、じっと見つめていた。


616 : 久世しずか&アルターエゴ ◆e1iKht2T0g :2022/03/06(日) 15:11:51 fV3c0Nkg0
【クラス】
アルターエゴ
【真名】
殺生院キアラ
【属性】
混沌・悪・獣
【ステータス】
筋力:D 耐久:A+ 敏捷:B+ 魔力:EX 幸運:E 宝具:EX
【クラススキル】
『獣の権能:D』
対人類とも呼ばれるスキル。ビーストからアルターエゴに変化したため大幅にランクダウン。通常の単独行動:Bほどに収まっている。

『単独権限:E』
アルターエゴに変化した事で自己封印している。自重、というヤツである。とはいえ、単独顕現がもつ「即死耐性」「魅了耐性」を備えている。

『ロゴスイーター:C』
快楽天としての特性。「万色悠滞」から派生した特殊スキル。どのような規模・どのような構造の知性体であれ、知性(快楽)を有するもの全てに強力なダメージ特攻を持っている。ただし、クラスチェンジに伴い大幅ランクダウンし、もはや"さわり"のようなものに。まさに前戯に等しい。ビーストⅢは人類愛なので、当然人類を愛している。ただしキアラにとって人間とは彼女だけ。キアラにとって自分以外のヒトは、自分という人間を満足させるための玩具でしかない。

『ネガ・セイヴァー:A』
救世主(セイヴァー)の資格を持ちながら、自身の世界のみを救世しようとした獣の末路。
かつて月に誕生した快楽天はその存在規模こそビーストⅢに勝るものの、このスキルを有していないため、救世主の前には撤退する他なかったという。

【保有スキル】
『千里眼(獣):D』
視力の良さ、より遠くを見通すスキル。Aランクに達すると相手の心理や思考、未来や過去さえ知ることが出来る。千里眼としてのランクは低く、"遠く"を見通せるものではないが、目の前の人間の欲望や真理を見抜き、暴きたてる。……それだけなら賢人としてのスキルなのだが、相手の獣性・真理を暴いた事でキアラ自身が高ぶり、随喜を得てしまう。獲物を前にして舌なめずりをする毒蛇のように。

『五停心観:A』
ごじょうしんかん。メンタルケアを目的として作られた電脳術式で、精神の淀み・乱れを測定し、これを物理的に摘出する事で精神を安定させる。もともとは患者の精神マップを作り、これを理解するためにキアラが開発した医療ソフトウェアの名である。


『女神変生:EX』
人の身から神に変生するスキル。強力なバフデパート状態。

『人理昇天式:A』
ゼパルを吸収し、体内で魔神柱を飼育することで、キアラは魔神柱を支配する魔人となった。キアラが扱うのは「七十二柱の魔神」ではなく「名も無い、無個性の魔神柱」。だがその数は無限とも言えるもので、キアラはこれを自在に操る。

わたしを みすてないで キアラさま

【宝具】
『快楽天・胎蔵曼荼羅(アミダアミデュラ・ヘブンズホール)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ: 最大補足:七騎
対人理、あるいは対冠宝具。
体内に無限とも言える無名の魔神柱を飼育するビーストⅢの専用宝具。
もはや彼女の体内は一つの宇宙であり、極楽浄土となっている。
その中に取り込まれたものは現実を消失し、自我を説き解(ほぐ)され、理性を蕩かされる。
どれほど屈強な肉体、防御装甲があろうとキアラの体内では意味を成さず、生まれたばかりの生命のように無力化し、解脱する。
ビーストⅢは現実に出来た『孔』そのものだが、
その孔に落ちた者は消滅の間際、最大の快楽を味わい、法悦の中キアラに取り込まれる。
苦界である現実から解放されるその末路は、見ようによっては済度と言えるだろう。

【Weapon】
会得した詠天流の武術や法術

【人物背景】
類い希なる救世主としての資質をすべて己の為に使い、人ならざるものに変生した者。

【サーヴァントとしての願い】
???


【マスター】
久世しずか@タコピーの原罪

【能力・技能】
なし、おそらくは。

【人物背景】
誰かにとってのファム・ファタル。

【マスターとしての願い】
チャッピーに会う。


617 : ◆e1iKht2T0g :2022/03/06(日) 15:12:29 fV3c0Nkg0
投下終了します、通信の都合が悪く多重になってしまい申し訳ございません。


618 : ◆sANA.wKSAw :2022/03/10(木) 00:11:24 gaVCOv2I0
投下します


619 : 日車寛見&アーチャー ◆sANA.wKSAw :2022/03/10(木) 00:12:12 gaVCOv2I0

 正義の女神は法の下の平等のために目を塞ぎ。
 人々は保身のためならあらゆることに目を瞑る。
 そんな中縋りついてきた手を振り払わない様に。

「私だけは」

 ああ。

「目を開けていたい」

 この夢は、いつのことだったろうか。


620 : 日車寛見&アーチャー ◆sANA.wKSAw :2022/03/10(木) 00:13:36 gaVCOv2I0
    ◆ ◆ ◆

「アハハハハハハッ! おいおい何だよ、もう終わりかよ手応えねぇにも程があんだろ。
 私を殺すって吠えたよな? 私は雑魚の三下なんだよなァ? ならこんな簡単に負けちゃダメじゃない。
 汎人類史のサーヴァントなんだろ? 万古不当の英雄サマなんじゃなかったのかよ。おい、お〜い? 答えろよ、手足もがれたくらいで狸寝入りか?」
 
 ケラケラと笑う声が響いていた。
 郊外にぽつねんと寂しく存在する廃墟の中は今凄惨な処刑場と化していた。
 汎人類史のサーヴァントと呼ばれた男は既に肉塊同然の姿に成りさらばえて久しい。
 手足は半ば程の所で寸断され、腹の皮膚と筋肉は取り除かれて五臓六腑を曝け出している。
 顔の皮を剥がされて両目を潰された顔で唯一自由の利く口も今は声にならない金切り声を撒き散らすばかりだった。
 惨めな姿だ。
 そして、哀れな姿だ。
 英雄の"え"の字もない憐れな被虐対象。
 肉屋の軒先に吊るされた豚の解体肉とそう変わらない姿になった英雄を、赤髪の女が口汚く嘲笑い罵り虐げていた。

「テメェの何処が英雄だよザコが。蛆涌き豚肉に改名しろよクソカス」

 上機嫌な高笑いが一転して冷たい殺意に変わる。
 手足の切断面から引きずり出した神経を弦に見立てて右手で弾いた。
 文字に起こしたなら濁点に塗れて大層読み辛いだろう絶叫が、かつて英雄と呼ばれた豚肉の口から迸る。
 弾(はじ)く。弾(ひ)く。
 雑にヒールの踵で擦る。踏み付ける。
 飽きたら乱雑に引き千切る。
 英雄は最早楽器だった。
 残忍極まりない振る舞いを恥も外聞もなく享楽のままに行い、残虐非道を地で行く悪趣味な「悲しみの子」。

「…あーあ。もう壊れちゃった。
 つまんねーなホント……弱いし根性も無いってさぁ。
 何のために英霊の座から出てきたんだよって話だよなぁ。お前もそう思うだろ?」

 彼女の拷問は英霊の耐久力でさえ耐え切れるものではない。
 彼女の嗜虐は英霊の忍耐力でさえ凌ぎ切れるものではない。
 英雄と呼ばれた男が達磨の格好のまま霧散して消滅する。
 辞世の句一つないその惨めな末路を見届けて、騎士を名乗る嗜虐家は退屈げに嘆息した。
 そして水を向ける。
 へたり込んで失禁し、歯をカチカチと鳴らしながら震える幼子に。
 英雄(サーヴァント)のマスターであった少女に。
 話の矛先を向けつつ彼女の方へと歩き始めた。

「可哀想になぁ。不甲斐ないサーヴァントのせいで」

 一歩また一歩とヒールの踵が音を鳴らす。
 少女は尻餅をついた格好のまま後ろに後退る。
 その姿を滑稽滑稽と嗤いながらまた一歩進む、女。
 少女の口からいや、いやと声が漏れた。
 それがあまりに愉快な音だったものだったから、女はまたケラケラと上機嫌そうに笑って。

「でも安心しろよ。私はこう見えて優しいんだ」

 ニィ、とその口を三日月を思わす形に吊り上げた。
 笑顔はほとんどの獣にとって最も攻撃的な表情であるという言説がある。
 この時その説はまさに正鵠を射ていたと言えよう。
 悪意と嗜虐心(サディズム)に塗れた殺意にあてられて、少女は声も出せずに涙を流した。

「ちゃあんと、お前の大好きな英雄サマと同じ風に死なせてやるからさ」


621 : 日車寛見&アーチャー ◆sANA.wKSAw :2022/03/10(木) 00:14:31 gaVCOv2I0
「――っ」

 涙を濁流のように流して首をふるふると振る幼い娘。
 その哀れみを誘う仕草すらもが女にとっては佳い肴だった。
 ああ面白い。
 ああ愉快だ。
 取り掛かる前から既にこんなに面白いのなら、一体実際に事を始めたらどんなに笑えるんだろう?
 考えただけで気分が躍る。
 さあ試そういざ試そう。
 勝者にのみ許される悪辣な笑みを浮かべて、いざ幼気な少女を壊す悪意の手を動かさんとしたまさにその瞬間。
 騎士の上機嫌に冷水を浴びせる淡々とした声が響いた。


「バーヴァン・シー」


 その名を呼ぶ声が騎士の手を止めた。
 上機嫌だった顔が瞬間不機嫌に歪む。
 敵意露わの形相で声の主を睨む騎士。
 否、妖精。
 悪魔の如きバーヴァン・シー。
 その表情も態度もお世辞にも従僕のものとは思えない不遜さだった。
 しかしそれに気分を悪くするでもなく、マスターである男は被虐待児と化した少女に視線を向けた。

「君のサーヴァントは死んだ。それは分かるね」

 無言で頷く少女。
 男はそれを見て同じように頷きを返す。

「ならこれ以上追う理由はない。
 …逃げるといい。そうすれば、私は君を追いはしない」

 少女は男の言葉に戸惑いを見せた。
 迷いを見せた。
 その感情の意味が男には分かる。
 マスターとしての信念、願い。亡きサーヴァントへの義理。
 それが彼女の中に迷いと躊躇いを生み出したのだろう。
 男はそれを見てこう祈った。
 男は宣教師のように、迷える子羊への接し方に熟達した人間ではない。
 だから彼はその心を口に出した。

「逃げろ」

 少女の方を見ず。
 手元の安酒で満たされたグラスだけを見ながら言う。

「逃げてくれ」

 その言葉に背中を押されてか少女は走り去った。
 敗者の屈辱と散った英雄への罪悪感を抱えながら、それでも逃げることを選んだ。
 彼女は生きることをこそ回答として打ち出したのだ。
 その答えを男は笑わないし謗らない。
 むしろそうなって良かったと、心の底からそう思っていた。

「おい」

 男のサーヴァントが不機嫌を露わに言う。


622 : 日車寛見&アーチャー ◆sANA.wKSAw :2022/03/10(木) 00:15:25 gaVCOv2I0
 男は目を瞑り酒を一口呷った。
 喉を焼くアルコールの濃さと、脳髄を蕩かす心地よい酩酊。
 駄目人間だなと内心自嘲しながら目を開ける。
 目に入るのは、眉根を寄せて顔を顰め、舌打ちをする己のサーヴァントの姿だった。

「邪魔しないでくれる? せっかくいいところだったのによ」
「…あの少女は戦うことを放棄した。
 "戦意なき善人"には刃を向けてはならない。そう命じていた筈だが」
「偽善者がもっともらしいこと言ってんじゃねぇよ。
 反吐が出るぜクソ野郎。既に死んだ奴を甚振るのは許せても、生きてるガキを弄ぶのは許せねぇってか?」
「死者の人権を保証する法はない。蘇った死者の処遇までは私の管轄外だ」
「ハッ、何だよその綺麗事は。弁護士ってのは詭弁だけ吐いてりゃ勤まる職業なのね、あぁ面白い」
「人間社会というのはそういうものだ。正しい者が泣きを見て狡い者が勝利に笑う。
 有史以前から現代に至るまで受け継がれてきた、由緒正しき弱肉強食の則(ルール)だ」

 空になったグラスを置いて。
 酒の滴る口を拭って男は言った。
 冴えない男だった。
 恐らく万人が一目見てその評価を下すだろう人相。
 その上彼が吐く言葉はどれもただの正論。
 それ以上でも以下でもなかった。
 
「それを覆すために私はこの手を汚した」

 長年の悪戦苦闘。
 その末に悟った。
 人生の全てを懸けて臨んでようやく気付いた。
 法(これ)では誰も救えない。
 法(これ)には限界がある。
 そう気付いたからこそ、男は悪徳弁護士の謗りをすら捨てて自らを殺人者にまで貶めた。
 道の内側で果たせない理想があるのなら。
 手の届かない領分があるのなら――道の外に出てそれを果たそう。
 ガベルから滴り落ちる血のしずく。
 既得権益と現世利益に魂を堕とした糞共の成れの果て。
 それが一滴また一滴としたたり落ちていく光景を、日車寛見は克明に記憶していた。
 そして今後一生忘れられる日は来ないのだろうとそう思う。

「その顛末がこれかよ。理想と一緒にタマまで落としたんじゃねぇの」
「自覚はあるさ。私には殺人者の才能はあっても、世界を変える英雄になる才能はなかったらしい」

 殺して、裁いて。
 正義の快音を鳴らすべきガベルで頭蓋を割って。
 血と屍を積み上げて入手した得点を全て譲り渡した。
 そんな矛盾した善悪螺旋の果てに日車は此処にいる。
 迷える人に手を差し伸べる弁護士としてでもなければ、気に入らない者全てを殺す度胸のある殺人者としてでもなくだ。
 何にもなれない癖して力ばかり一人前の流浪人。
 それが今の日車寛見だった。
 全く以って玉無しだ。
 命を懸けて成し遂げたい理想は遠くに離れ。
 徒に死体の山を築いて笑う自傷行為に浸る気分でもない。
 ただ生きているだけ。
 ただ生きて、偽善まみれの高説を垂れて残忍な妖精の機嫌を損ねるばかりの置物だった。


623 : 日車寛見&アーチャー ◆sANA.wKSAw :2022/03/10(木) 00:17:28 gaVCOv2I0
「でしょうね。そうじゃなきゃ言わねぇよ、"戦意を失ったマスターは殺すな"なんて気障なセリフ。寒気がするわ」

 ハッと牙を見せて妖精は笑う。
 日車は彼女の残忍を許した。
 悪逆を認めた。
 ただし無益な殺戮に限ってはその限りでなかった。
 戦意なき者への虐待と殺人を日車は諌めた。
 断るのであれば令呪を使うと言われれば、さしものバーヴァン・シーも舌打ちと共に閉口するしかなかったようだ。
 この馬鹿なら本当に使いかねない。
 そう思った側面も恐らくあるのだろう。

「あぁでも嫌いじゃないわよ? むしろちょっと好き。サイッコーに矛盾してて、愚かで…醜くてさ」
「霊体への加虐を取り締まる法律は無いからな。これ以上前科を重ねずに済む」

 安酒をまた一口呷る。
 喉の焼ける感覚と脳細胞が死ぬ感覚が厭に心地よかった。
 バーヴァン・シーがその姿をうんざりした様子で見ていたので少し考えて。
 氷も入っていない、すっかりぬるくなりつつある酒とグラスを彼女の方に差し出した。

「…君も呑むか?」
「ウィットなジョークのつもりなら死んでくれないかしら」
「別段生きる理由もないが、死ぬ理由もないからな」
 
 ごくり。
 残りの液体を飲み干してソファの背もたれに身を委ねた。
 元とはいえ弁護士が昼間から安酒で酔っ払っている光景は傍から見れば世も末だろう。
 酒臭い吐息を吐いた後で、廃屋の天井を見上げながら日車は言った。

「君のマスターという使命くらいは完遂しよう。その後は…追々考えるとするさ」

 聖杯の力があれば。
 日車が死滅回游で作ろうとしていた世界はきっと実現できる。
 真偽を争う議論も法律上のしち面倒臭い手続きも必要ない。
 総則(ルール)を犯した者は物理法則によって天罰宛らに罰せられる、完全無欠な法治世界。
 死滅回游を通じて実現を狙うよりも遥かに完成度の高い理想郷がきっと創り上げられる。
 聖杯の力さえあれば。
 聖杯戦争に勝ちさえすれば。
 そう分かっているのに日車の体は、その足は重かった。

「バーヴァン・シー」
「何だよ」
「君は今気分がいいか」
「当たり前だろ」

 妖精は鼻で笑った。
 
「弱いクセにごちゃごちゃうるさい雑魚をグチャグチャにして、踏み潰して消してやれたんだぜ? 気分悪ぃワケねぇだろ」


624 : 日車寛見&アーチャー ◆sANA.wKSAw :2022/03/10(木) 00:18:29 gaVCOv2I0
「…そうか」

 その質問に対して。
 自分はどんな答えを期待していたのだろう。
 日車は天を仰ぎながら思い出していた。
 呪わしき吸血妖精。
 悪魔の如きバーヴァン・シー。
 弱い者を弄び踏み躙ることを至上とし。
 彼らが苦しみ喚く声だけを娯楽とする悍ましい妖精。
 あぁ確かにそうだろう。
 自己であれ他己であれその評価に異議を唱える気は日車にはない。
 
「あーあ。お前と話してたらこっちまで陰気臭いバカになっちゃいそうだわ。
 息が詰まるから外の空気吸ってくる。止めんなよダブスタ弁護士」
「さっきの娘は追うなよ」
「チッ、分かってるようっせえな。一言多いんだよお前は」

 そういうところが好かねぇんだ。
 言い残して消えるバーヴァン・シー。
 その気配と魔力が完全に室内から消えたのを確認してから、日車は静かにその目を覆った。


「罰のつもりか」

 日車寛見は、彼女が思っている以上にバーヴァン・シーという妖精のことを知っている。
 彼女が異聞帯という此処ではない異常な時空から召喚されたサーヴァントであること。
 妖精國ブリテンなる存在そのものが何かの冗談としか思えないような人類史の出身であること。
 そして彼女がまだ思い出していない記憶も。
 悪意と呪いと因果と応報に塗れた最期も。
 果たせなかった誓いのことも、全て。
 日車は知っている。
 夢を通じて垣間見た彼女の生涯は硫酸のように彼の脳裏を焼いていた。
 哀しい過去があるなら人を殺しても放免になる。
 情状酌量の末の減刑ならばまだしも、完全に罪が免罪されるというならそんな法律は糞以下だろう。
 殺人とは不可逆の業なのだ。
 一人の人間を、一つの命を永遠に社会から消し去る最大の罪なのだ。
 それほどまでに重い。
 バーヴァン・シーは有罪だ。
 その行いには罪がある。
 人間社会に妖精の殺傷を裁く法律はないものの、妖精を人間に置き換えれば彼女は誰もが軽蔑する大罪人以外の何物でもない。

 だが。
 罪を重ねる以外の方法で。
 悪魔の如く振る舞う以外の道で。
 彼女は、生きていけたのか?


625 : 日車寛見&アーチャー ◆sANA.wKSAw :2022/03/10(木) 00:19:07 gaVCOv2I0
“この世の誰にも彼女は救えない。"いつか"を先延ばしにし続けるのが関の山だ”

 善良なままでは生きられなかった。
 純粋なままでは生きられなかった。
 そうあれば誰もに好かれる。
 誰もが笑顔で構ってくれて。
 彼女も笑顔で使い潰される。
 利用されて、絞られて、使われて。
 都合が悪ければ殴られて、壊されて、いつか死んで。
 その生涯を永遠に繰り返す呪われた生命。
 "みんな"に愛されるバーヴァン・シー。

「私に何をしろというんだ」

 バーヴァン・シーは救われない。
 それを救うと云った女がいた。
 女は悪逆を認めた。
 残忍を認めた。
 自分の夢さえも捧げて。
 女はバーヴァン・シーを壊した。
 そうして、彼女に楽を与えた。
 彼女に意味を与えた。
 価値を与えた。
 自由で、残酷で、冷酷、ブリテンの人気者。
 "みんな"に愛されたバーヴァン・シー。

 何も守れなかったバーヴァン・シー。
 体は腐り信じた愛は裏切られ。
 ゴミと断じた存在に嘲笑われ指差され。
 恨みと共に大穴の底。
 残ったのは呪いの厄災だけ。
 ただ一人を除いて誰も、彼女の一切を祝福などしなかった。

 罰のつもりか。
 私に何をしろと言う。
 救えというのか、これを。
 お前がやれというのか。
 癇癪紛いに道を踏み外した下らない男に。
 彼女へ次の"いつか"を与えろというのか。
 誰かの信頼を裏切るばかりの役立たず。
 社会が壊れて回游が始まって、誰かを呪うことは格段に上手いと分かった人殺しに。
 新たな呪い(すくい)を刻めというのか。

「…あなたは上手くやったな、冬の女王」

 酒を追加しようとして先刻飲み干したばかりなことを思い出した。
 人生とはままならないものだ。
 自首でもして罪を償おうと考えていたが、それしきでこの罪は贖い切れないらしい。
 冬の女王の背中を夢に見た。
 祝福と共に彼女を後継と定めた愚かな女。
 世界でただ一人、彼女を宝石と認めた救世主。
 娘は母(おや)の手を離れ今、こんなろくでなしの汚れた腕に手綱を引かれている。


626 : 日車寛見&アーチャー ◆sANA.wKSAw :2022/03/10(木) 00:19:39 gaVCOv2I0
「…あぁ」

 重荷だと投げ捨てられれば楽だった。
 自棄になってさっさと自死できれば簡単だった。
 なのに日車寛見にはどうしても、それができなかった。
 あの憐れな妖精を見捨てられなかった。
 罪を犯すことでしか幸せになれなかった彼女を。
 幾度もの摩耗の末にようやく見つけた幸せさえ奪われた彼女を。
 いつか再びこの世の全てを呪うだろう彼女を。
 "法"でなど決して救うこと能わないだろう彼女を――。

「最悪の気分だ」

 送り届けてやりたいと想ってしまった。
 妖精國でも何処でもいい。
 誰の悪意も何の裁きも届かないところに行けばいい。
 "いつか"を永遠の彼方に追いやって。
 愛する誰かと。そして自分を愛してくれる誰かと、思う存分幸せになればいい。
 そう願ってしまったから日車はまだ生きている。
 彼はやっぱり損をしやすい性格だった。
 そういう性分なのだった。
 そんな男だからこそ。
 彼自身、自分はそういう人間なのだと分かっているからこそ。
 だからこそ弁護士を志したのだと今になってようやく思い出した。


【クラス】
アーチャー

【真名】
バーヴァン・シー@Fate/Grand Order

【ステータス】
筋力A 耐久C 敏捷A 魔力B 幸運D 宝具E

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
対魔力:EX
決して自分の流儀を曲げず、悔いず、悪びれない。
そんなバーヴァン・シーの対魔力は規格外の強さを発揮している。

【保有スキル】
祝福された後継:EX
女王モルガンの娘として認められた彼女には、モルガンと同じ『支配の王権』が具わっている。
汎人類史において『騎士王への諫言』をした騎士のように、モルガンに意見できるだけの空間支配力を有する。

グレイマルキン:A
イングランドに伝わる魔女の足跡、猫の妖精の名を冠したスキル。
妖精騎士ではなく、彼女自身が持つ本来の特性なのだが、なぜか他の妖精の名を冠している。

妖精吸血:A
バーヴァン・シーの性質の一つ。
妖精から血を啜り不幸を振り撒く、呪われた性。

騎乗:A
何かに乗るのではなく、自らの脚で大地を駆る妖精騎士トリスタンは騎乗スキルを有している。

陣地作成:A
妖精界における魔術師としても教育されている為、工房を作る術にも長けている。


627 : 日車寛見&アーチャー ◆sANA.wKSAw :2022/03/10(木) 00:20:01 gaVCOv2I0

【宝具】
『痛幻の哭奏(フェッチ・フェイルノート)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:無限 最大捕捉:1人
対象がどれほど遠く離れていようと関係なく、必ず呪い殺す魔の一撃(口づけ)。
相手の肉体の一部(髪の毛、爪等)から『相手の分身』を作り上げ、この分身を殺すことで本人を呪い殺す。ようは妖精版・丑の刻参りである。
また、フェッチとはスコットランドでいうドッペルゲンガーのこと。

【weapon】
フェイルノート。汎人類史のオリジナル、トリスタンが扱うものとは形状も性質も異なる。

【人物背景】
バーヴァン・シー。
スコットランドに伝わる女性の妖精。
"みんな"に愛されたバーヴァン・シー。
誰かが救えず。彼女は呪い。妖精の國は消え。
そうして悠久の時を経て聖杯戦争に召喚された。
 
【サーヴァントとしての願い】
折角呼ばれたからには聖杯を手に入れたいと漠然とそう思っている。
その真の願いは未だ夢の中。


【マスター】
日車寛見@呪術廻戦

【マスターとしての願い】
法が物理法則の一つとして機能する社会の実現。
…その筈だったが今はやる気がない。

【weapon】
ガベル

【能力・技能】
抜きん出て高い呪術師としての才能。
過去の術師をして「頭抜けた強者」と形容する程にその実力は高い。

◆ジャッジマン
 式神。両目を糸で縫い合わされた影法師のような姿をしている。
 日車にも相手にも味方することのない完全な中立の存在。

◆領域"誅伏賜死(ちゅうぶくしし)"
 結界術の極北、領域展開。
 日車の場合は必中必殺の性質を持つ現代の領域ではなく、デフォルトで領域が搭載された生得術式と呼ぶのが正しい。
 先述のジャッジマンを裁判官と据え裁判の形式で標的を裁き、罪に応じた罰を下す。

【人物背景】
岩手弁護士会所属の弁護士だった男。
何の分野であれそつなくこなし、果てには呪術師としての才覚まで持ち合わせているという作中公認の天才。
出世に拘ることなく自分の信念と強い正義感の元に生き、縋る者のない誰かの手を取ってきた男。
しかし今その手は血で汚れ背中には罪の重荷が乗り、そうまでして描いた理想への渇望すらも薄れてしまった。

【方針】
…私は。


628 : ◆sANA.wKSAw :2022/03/10(木) 00:20:21 gaVCOv2I0
投下終了です


629 : ◆D3GGtHVjD. :2022/03/12(土) 20:12:27 ehnqMuF20
投下します


630 : キャスター×三星太陽 ◆D3GGtHVjD. :2022/03/12(土) 20:15:36 ehnqMuF20
「がんばったねー。たいよーくん」
「し、しおちゃぁあん……」

小さな天使、また聖女か。穢れを知らぬ無垢な少女の掌が、三星太陽の頭を撫でる。
大人と子供程の体格差があり、未成年とはいえ相応に成長した男子高生が低学年の少女の胸の中に顔を埋め、あやされている。常軌を逸した光景だった。
しかし、太陽は鼻息を荒くし、涎と鼻水と涙を垂らしながら頬を紅潮させる。彼は充電の切れたスマホに電気が補充されているかのように、みるみる内に生気に満ち溢れていった。

「いい子、いい子。たいよーくんはとってもいい子」
「しおちゃん、しおちゃん、しおちゃん、しおちゃん……………しおちゃん」

夢だったんだ。太陽は思う。全て悪い夢だったんだ。
松坂さとうと共に逃亡を図った時、自分は汚れてしまったと、きれいなんかじゃないと告白されて拒絶されたことも。
穢れと恥でぐちゃぐちゃにされて、太陽が太陽でなくなっていく感覚、それを救って助けてくれる天使がもう居ないなんてことは。
助けてくれるんだ。浄化してくれるんだ。だって、ここには……理想のしおちゃんが居るのだから。

「もう5分、タイムアップだよ」

「…………………え」

だが、いつだって現実は真逆なものだ。束の間の理想が夢であり、現実は悪夢だ。
しおちゃんの小さくて、暖かくて、柔らかくて、甘い匂いが、少し舌足らずな美声が。全てが弾けて消えた。

「ねえ、もういい? 本当に嫌なんだけど」

蔑む瞳は天使のものとは変わっていた。
髪を二つに結んだ桃色の少女、されど普通の人間とは違う。ただ、主に付き従う傀儡の冷たい眼が太陽を凍らせていく。

「……ひっ」

加熱調理したトウモロコシのように、太陽は俊敏な速さで女性から飛びのき、腰を抜かしていた。
もうそこには理想のしおちゃんは欠片も残っていなかった。

「しおちゃん……しおちゃんは?」

「あのさ、マスター。この娘は僕の理想の女の子なんだよ!」

居たのは、三人の穢れた女共とそれを侍らす高慢でナルシストな愛の狩人。

「きゃ、キャスター……? しおちゃんは……?」

「キミの異常性癖に付き合うのはもう懲り懲りだ。令呪を2画も使って、無理やり僕の好みから極端に外れた女の子を作らせるなんてさ」

キャスター、その真名を来夏月爽と言う。

「返してよ……しおちゃんを!!」

「ああ、もう五月蠅いな!!」

来夏月の踵が太陽に鳩尾に吸い込まれていく。呼吸が出来ず、衝撃のまま背中から倒れる。
立ち上がれない太陽に、更に来夏月は何度も靴の底を打ち付ける。

「僕もキミも聖杯が欲しい! だから、聖杯戦争に勝ち残るって言ったよね!! 僕の好みから外れた女の子を作るのは魔力だって使うし、疲れるんだよ!!
 令呪だって無駄に使ってさ!!」

「……がっ、で、でも……やっぱり、人を殺す、なんて……ゲホッ……」

「今更それを言うのかい? 素敵なクエスチョンだよ」

「グッ、ぇ……!」

最後に大きく腹を蹴飛ばし、来夏月は荒げた息を整える。そのまま害虫を見るような目で太陽を見下ろす。


631 : キャスター×三星太陽 ◆D3GGtHVjD. :2022/03/12(土) 20:16:37 ehnqMuF20

「キミみたいな幼女性愛者が、まともな社会生活を送れるわけないだろ? それこそ、聖杯でも使わなきゃさ」

「そ、それは……」

「まあ、同情はするよ。薄汚い現実の女にレイプされて、自分が気持ち悪いんだろ? 僕なら即刻、生き恥を晒す前に自害するね。
 ……これだから本物の女は。
 とはいえ、それで真逆の幼女趣味に走るのは、同じ男として軽蔑するけどね」

「きっくん、こいつマジでキモい。もう別のマスターを探そうよ」

きっくんと呼び慕う三人の美女、常夏三姉妹の一人、理想にしおに変身させられていた三女「初夏」が張り詰めた表情で吐き捨てる。

「……確かに。ちょっと性癖を矯正してやるか。このままじゃ聖杯戦争に支障が出る。
 女の子達!!」

来夏月が指を鳴らす、初夏以外の二人の女性、長い髪に高い身長を持ち合わせる妖艶な長女「晩夏」と、短い髪に気品を伺わせる眼鏡を掛けた次女「仲夏」が前に出る。

「な、なにをする気……」
「フフ、坊や……お姉さんに慣れるいい機会じゃない?」

キャスター、来夏月爽の持つ宝具にしてアルター能力。理想の女の子達を具現化した、来夏月による来夏月の為に理想のアルター。
現実の女という最悪に、屈することなく反逆し続けた男が辿り着いた究極の極致。
それが常夏三姉妹。

「や、やめて……触らないでぇえええええ!!!」

三星太陽は年上の女性に触れることが出来ない。以前、強姦され監禁されたトラウマから、触れられるだけで破棄を催す程にまで重度な障害を負わされている。
真逆の幼女である神戸しおに対する執着もそれが原因によるものだ。
晩夏は長女というコンセプトから、年上であることを想定されている。当然ながら、太陽の精神的なフラッシュバックを誘発する。

「こら、動くんじゃないよ!!」

仲夏が太陽を羽交い絞めにし、晩夏が冷たい笑みを浮かべなら彼の頬を撫でる。
怖気が走り逃げ出そうともがくが、まがりなりにもサーヴァントが操る宝具(アルター)、その力は大の男を容易く抑えつける。

「ぐ、ぇ……お、えええええ……」

「おいおい、吐かないでくれよ。気持ち悪いな」

精神的な療法で見れば、これは明らかに度が過ぎた拷問に等しい。そんなことは彼女達も理解していた。
しかし、決してそれを止める事はしない。
彼女らは来夏月にとっての理想の女の子であり、それ以外の全てには等しく残酷にまで冷たい。

「……助けて、誰か」

穢されていく、犯されていく。自分が自分でなくなっていく。
崩壊していく自我の中に、僅かに見えた光に太陽は無意識に手を伸ばそうとする。

「しお、ちゃん……」


632 : キャスター×三星太陽 ◆D3GGtHVjD. :2022/03/12(土) 20:17:04 ehnqMuF20


【クラス】
キャスター

【真名】
来夏月爽(きっくん)@スクライド

【ステータス】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力A 幸運C 宝具A+

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
陣地作成:D
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
小規模な”結界”の形成が可能。

道具作成:E
魔術的な道具を作成する技能。

【保有スキル】

精神感応性物質変換能力:A
自身の意思により、向こう側と呼ばれる異界から力を引き出し物質をアルター粒子へと変化させ、各々のエゴを具現化した異能を召喚する。
来夏月が存在した世界では、これらの異能を扱う者たちをアルター使いと呼ぶ。
神秘などの異能が込められていなければ、生体以外の大半のものはアルターへと変換可能。
生前、来夏月はこの異能力を失ってしまったが、サーヴァント化の際に再度付与された。

だから本物の女は嫌いなんだ!!:EX
あらゆる魅了やそれに伴う事象を無効化する。
如何な美貌を以てしても、来夏月の理想の女の子を上回ることはない。
このスキルは何があろうとも、強靭な意思により決して無効化されない。
来夏月を満たすのはただ一つ、従順で優しく嫌な顔一つせずに尽くす女の子のみ。


【宝具】
『常夏三姉妹』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:-- 最大捕捉:3人

長女「晩夏」
次女「仲夏」
三女「初夏」

来夏月の持つ完全自立のアルター、理想の女の子を具現化した三人の美人姉妹を使役する。
それぞれが独自の意思を持ち、本物の人間と寸分違わない思考を可能にする。非常に精巧に人間の女の子を再現しており、彼女達の心を読まない限りは見極めることは非常に困難。
戦闘力も対アルター使いを想定した部隊員を、素手の戦闘でなら対応できる程度には強く、空中浮遊も可能。マスター(高い戦闘手段を持たない)以上、サーヴァント以下くらいの強さ。
生前、来夏月が人間に近づけるために常時具現化させていた為に、魔力をほぼ消費せず常に召喚し続けることが出来る。
本来はアルターを否定した来夏月により消失し、使用不可能であったがサーヴァント化の際、宝具として再現された形で復活した。

表向きは生前と同じく来夏月に尽くすような行動をするが、本心は聖杯を手に入れ、自分達を拒絶した来夏月からの解放を願っている。


『常夏の真実(バーニング・サマー)』
ランク:A++ 種別:対軍宝具 レンジ:100 最大補足:100人
常夏三姉妹が融合した真の姿。
巨大な花のような怪物になり、熱量を操作する。それは周囲をマグマへと変貌させ、その灼熱であらゆるものを燃やし尽くす。
強力な宝具ではあるが、常夏三姉妹と違い多くの魔力を消費する。


『太陽の理想のしおちゃん』
太陽によって、令呪二画で追加させられた。太陽の理想である穢れていないしおちゃん。
常夏三姉妹をしおちゃんに変化させると相応の魔力を消費するのと、好みの女の子から外れる為に来夏月はあまり使いたくない。
年下の妹を想定された三女の初夏が、しおちゃん役にさせられる。これは太陽が触れられるのが、年下設定の初夏だからである。


633 : キャスター×三星太陽 ◆D3GGtHVjD. :2022/03/12(土) 20:17:54 ehnqMuF20


【weapon】
とくになし

【人物背景】
アルター使いの犯罪を取り締まる武装警察「HOLD」、その中で作られたアルター使いだけの部隊「ホーリー」の隊員。
現実の女を根拠のない自尊心で見下し、侮蔑し、蔑む。権力者には尻尾を振り媚び諂う。かつての上司をあっさり見限り、見限った先の上司にもあっさり切り捨てられて命を落とす。
自身の作った人形しか愛せず、それすらも思い通りにならなければ全否定する。とある最速だった男曰く「倒す価値すらない」と呆れられた。
どうしようもない人間ではあるが、複数のアルターの常時生成かつ、実物の人間と違わない容姿、思考力、自我の付与、広範囲を焦土へと変える程の熱量操作、これらの全く別物の能力を高度に極めていることからその実力は本物。

【サーヴァントとしての願い】
優勝して理想の女の子を手に入れる。



【マスター】
三星太陽@ハッピーシュガーライフ

【マスターとしての願い】
まともな人間に戻りたい……。

【weapon】
しおの捜索チラシ×数十枚(内数枚アルター化に使用)、しおの靴下、令呪残り一画

【能力・技能】
普通の高校生。

【人物背景】
かつては真っ当で健全な男子高生であったが、アルバイト先の女上司に強姦されたことで性癖が歪んでしまう。
特に年上の女性にはトラウマがあり、近づかれたり触れる事すら嫌悪する。
神戸しおに対し、狂った狂気を内包しており、彼女なら穢れた自分を奇麗にしてくれると錯覚している。
異常な人物ではあるが、根っこは健常者であり、しおが家族と逸れたと察した際には、(下心ありとはいえ)家族が見つかるまで保護しようとしたり、自分がおかしいことには自覚があり葛藤もある。
参戦時期はしおに自分が汚れていると告白された直後で、理想の穢れていないしおちゃんを求めている。


634 : ◆D3GGtHVjD. :2022/03/12(土) 20:18:42 ehnqMuF20
投下終了します


635 : E=mc2 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/03/19(土) 22:36:50 RloszDNI0
昨日の夢は今日の希望であり、明日の現実である。

              ───ロバート・H・ゴダード






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


636 : E=mc2 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/03/19(土) 22:37:49 RloszDNI0






───光に充ちていた。

───数に充ちていた。

───そして、何よりもそこは知識に充ちていた。

そこはラボラトリーだ。
世界のあらゆる言語が集い、世界のあらゆる叡智が集い、鋼鉄と電子とで紡がれた数多の技術と秘儀が詰まる処。
雑然、混沌、まるで誰かのこころの如く。小さな子供が迷い込めば、もう二度とは外に出られぬであろうほどに入り組み、溢れた空間。
幾何学、精密、まるで電子の回路の如く。これでは何処に何があるのかさえ判別などつきはしない。目録を作るだけで幾日が消え去ることか。
壁一面を覆う無数のモニターには、全て異なる映像が映し出されている。外の光景……市街地や草原、山岳の頂上にも見える景色を映すものもあれば、全面真っ黒なブラックアウトした画面が、微かに水流のような揺らぎを映すことからそれが深海であることが分かる映像、果ては遠く星々を映す宇宙の窓、電子顕微鏡ですら捉え切れぬはずの微細な粒子の動きをつぶさに撮影しているもの、言語では形容不能な空間の揺らぎめいたものが絶えず動き、連鎖し、同化しては分離し、波紋のように調和する矛盾と合理の両立を果たしたユークリッド的紋様さえあった。
空間の只中に立つ青年は、これが作られた映像や何処かの動画サイトから引っ張ってきたものではなく、今まさにこの部屋の主によって観測された事象の光景に他ならないことを知っていた。
遠く立ち並ぶ培養槽には多くの生命とそのなり損ないが静かに浮かび、駆動する階差機関は今も数百万年に及ぶ演算をコンマ1秒にまで圧縮しながら数理を果てを手繰り寄せているのだろう。
他にも、他にも、他にも……数え切れぬ無限の叡智が、ここにはあった。その全てを理解することは、決して、誰にもできないであろうと予感させるだけの圧倒。
しかし、たったひとりが理解している。この空間がどう在るか。
星辰の正しき並びを知った賢者のように、素粒子の配列を解明した智者のように。
たったひとりが知っている。
そう、すなわち。今まさに超常の一室に立つ青年の、目の前に腰かける男こそが。



「やあ。待っていたよ石神千空、我が同胞」



───無謬の歯車が、そこにはあった。
それは朽ちず、それは止まらず、原初の存在意義に従って無限の時を回転する機械部品を想起させた。それしか知らぬ男であった。"こう"と決めた道をひたすらに走る、それ以外には目もくれぬ、そのような男であった。
美貌の男であった。白銀の髪は灯の光を受けて艶やかに煌めき、白貌は凄絶なまでの均整を誇っている。その美しさを前にして、培養槽から漏れる水音も、止めようのないモーターの音も、千空自身の呼吸音に至るまで、まるでその美しさに我々は無礼だと音自らが存在を止めたかのように、全ては消え去り完全なる静寂がこの場を支配するかのようだった。
一般に、美貌を指して「彫刻のように」と表現することがある。しかし千空は、自身の美的センスを度外視しても、そのような修飾をこの男に対して行う発想が出てこなかった。冷たすぎるのだ。眼前の男には一切の熱が籠っていない。ならばこそ、彼は人間の情熱と感性から生み出される芸術には非ず、冷たく無機質な数理によって構築される機械的な機能美に他ならない。
その声には抑揚がある。人間だ。
その顔には表情がある。人間だ。
その肌の下には熱き血潮があり、その心には感情がある。人間のはずだ。
そうとしか見えぬもの。されど、歯車としか形容のできぬもの。


637 : E=mc2 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/03/19(土) 22:39:18 RloszDNI0

「如何せん、君は覚醒するのが遅い性質であったようだからね。少しばかり"先回り"させてもらった。この空間はその成果の一環、とでも思ってくれたまえ」
「……クク、大したもんじゃねえか。英雄同士の決闘、だのと修飾語が付いちゃいたが、テメーみてぇな科学屋が出てくるってこたぁ英霊の座とやらは思ったよりか度量が広いみてーだな」

石神千空と呼ばれた青年は笑みを浮かべる。
凶的な、獰猛な肉食獣にも似た笑み。しかしそこに敵意や害意の類はない。
あるのは、そう、好奇心。未知のものを前にした研究者でもあり、好きなものを前にした子供でもある表情。
けれど同時に、何かを憂うかのような影。

「つまりそいつは、上手くやりゃあエジソンやアインシュタインのおっさんとも話ができるってことじゃねえか。
 夢の対談、そそるぜ。そこだけはな」
「ほう」

鉄の男は瞑目する。それはひどく楽し気な、興が乗ったような声音。

「理解が早いな。そして判断も。なるほど、君は実に聡明なようだ。
 最後の一言は聞かなかったことにしよう。生命倫理は未だ人類にとって未熟な分野であり、そもそも英霊召喚を死者蘇生と定義できるかすら怪しいのだからね。
 そして同時に、君には強く共感を憶える。表面的な性質こそ違えど、君と私は根本的な部分でよく似ていると、そう感じるのだよ」
「似たようなセリフを言ってきた奴を知ってるぜ。つまりテメーは」
「好物に対して子供のように夢中な大馬鹿者だよ。君と同じく」

男は椅子に手をかけ、足を組む。その大仰な動作すら、どこか演劇めいて様になるのは、男が持つ美と気品によるものだろうか。
かけたまえ。男は千空に言う。

「さて、私は君が言った通り、一介のしがない科学屋だ。その道に身をやつした理由も同じく、単純明快だよ。
 好きだったのだ。純粋に、科学というものが。時計の針が規則正しく動く様が好きだった。一分一秒を正確に刻む完成度が好きだった。
 そんなありふれた、ただの科学者に過ぎないのだよ」

千空の眉が動き、反応した。
彼は未だ、眼前の男に対して不審を持っていたが、しかし、その言葉にだけは共感を覚えた。
千空もまた、同じであったからだ。科学の道に進んだ理由は、好きだったから。それ以外に無かったし必要もなかった。
ただ、憧れた。宇宙という果てしない空に、未知と神秘を見た。幼い日の憧憬、忘れるものか。例え幾千年経とうとも、決して。


638 : E=mc2 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/03/19(土) 22:40:19 RloszDNI0

「なればこそ、今一度君に問うておかねばならないことがある。
 答えてくれ石神千空。科学とは何だ?」
「探求だ」

即答である。
その答えに、オルフィレウスもまた満足そうに頷く。

「然り。科学とは物事に既存知識を当てはめてその正否を問うものに非ず。
 全てには必ず原因があるのだという前提のもと、その原因とは何かを探っていく探求のことである。基礎中の基礎だな」

男は目を細め、千空を見遣る。そこにはやはり熱はなく、被検体を観察するかのような色があった。

「再度問おう。君にとって、魔術とは科学なりや?」
「科学だ」

再度の即答であった。男に代わり、今度は千空が、続きを口にする。

「科学の原則は法則性と再現性だ。俺は魔術とやらにゃ素人でしかねーが、技術として体系化され十分な再現性が担保されている以上、魔術ってのは魔力という未発見のエネルギーによって運用されていることを除けば既存科学と方向性自体は大差ねえ」
「そして原始の時代において、電力や原子力は人の手に収まらぬ超自然的エネルギーであったのと同じように、魔力もまた観測と周知が徹底されていないに過ぎない。反証と検証を繰り返し十分な論文と技術者、そして開発設備を用意できれば魔術は科学という人の手に落ちる存在であると。その通りだよ」

二人の会話は淀みなく進む。まるで一人の人間による人形劇のように、鏡に向かって話す一人問答であるかのように。

「であればこそ、最後の問いだ。君が招かれた催し、聖杯戦争には万能の願望器たる聖杯が存在する。
 さて、我らはこの奇跡の杯を必要とするかね?」

答えなど決まり切っていた。
今更問うようなことではなく、1+1よりも遥かに瞭然たるそれは、もはや一種の真理でさえあって。

答える。


639 : E=mc2 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/03/19(土) 22:41:14 RloszDNI0



「「必要ない」」



やはり、鏡写しの答えだった。
千空と男は、揃えたように同じ言葉を言い放った。

「その理由は、何かね?」
「決まってんだろ。人の未来は無限だからだ」

続く問いにも、重ねて不動。石神千空は弛まぬ意志と共に言い放つ。

「何でも願いの叶う道具。いいね、最高だ。猿の手みてーな詐欺紛いのモンじゃねぇってんなら余計にな。
 が、あいにく俺には必要ねぇ。俺はただ好きなだけなんだ、科学が。宇宙の秘密を知りたい、未来の世界をクラフトしたい。楽しみたい。なのにチートで結果だけ持ってくるのは萎えるじゃねえか」

「同意見だよ。私もまったく同じ考えだ。
 真理を知る、未来を創る。そのための努力は自分自身が為さねば意味がなく、ゆえに聖杯など不要、と。
 無論、研究対象として聖杯への興味は尽きんが、それはそれ。しかし石神千空、私と君とでは、残念ながらたった一点だけ違いがあるのだよ」

楽し気な口調はそのままに、男は告げる。

「君が聖杯を否定する理由、そこにはヒューマニズムも含まれているのだろう?」
「……」
「なに、否定はせんよ。道徳もまた、人が築き上げた集大成だ。その体現とも言うべき者に敗れた今の私は猶更にな。
 しかし石神千空、聖杯戦争が仮に、人死にの発生しないものであったなら、君はどうしたかね? 例えば知恵比べ、パズル、証明問題、知的遊戯。そういったもので勝負が決まるような催しだったなら、君は願望器の存在を否定できたかな?
 これは勝手な憶測だが、できなかったのではないかね。同じくヒューマニズムによって」

石神千空は優しい人間だ。
表面的には偽悪を気取り、我欲で以て突き進む人間ではある。だが彼はひどく良識的であり、常識を弁え、情に厚い男だった。
願望器というチートに頼ったクラフトは面白くない、というのは嘘ではない。
聖杯獲得とは大量殺人であるから否定する、というのもまた事実。
だが同時に、仮に無血で聖杯が手に入るなら喉から手が出るほど欲しい、というのも事実であった。何故なら千空の背には、多くの仲間と、70億人類の命運がかかっている。平和を取り戻し、科学文明を再興させたとて、残る課題は山積みだ。時間も資源も人手も致命的に足りない以上、それは明白な事実である。

男は違った。
彼は本当に、絶対的に、仮に自分以外の誰かの命がかかっていようと、そんなもの関係なく初志を貫くのだ。
だって、科学に寄与しない人間に、彼は価値を見出せないから。


640 : E=mc2 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/03/19(土) 22:42:08 RloszDNI0

「知っているかね、聖杯とは過程を省略して結果のみを出力する機能のことだ。
 時間、リソース、技術、工程……それら一切を魔力によって穴埋めし、目の前には結果のみが残る。
 それは逆に言えば、如何な過程を経ようとも実現不可能な結果を出力することはできないことを意味する。
 わかりやすく言い変えようか。人類が達成できること、あるいはいずれできるようになることしか、聖杯は叶えることができないのだよ」

くつくつと、耐え切れないと言うかのようにオルフィレウスは含み笑う。

「おかしいとは思わんかね。人類(われら)ができることしか実現できないならば、自分でやってしまえばいいだけの話ではないか。
 私は君と顔を合わせるまでに総計7組ほどの主従と遭遇したが、彼らは皆口を揃えて己が願いを叫んでいたよ。
 祖国のため、民草のため、未来のため、愛する者のため……ああ、金銭や物欲を口走った者もいたかな。まあどれも同じことだ。
 私はとても悲しくなったよ。彼らはその程度のことにさえ、超越者を必要としていたのだから」

「時間と工程の短縮は科学の重要命題だろーが」

「論点をずらすのは感心しないな石神千空。彼らは聖杯を目的達成の一助に使うのではなく、目的の達成そのものを外部に委託したのだ。
 いわば意志の放棄だよ。間違っていたなら改めて、愚かだったならば賢くなる。考えれば到達でき、意志があるなら前へと進める。人類(われら)に不可能など何もないと、所詮はその程度の話であるはずなのに。
 人という、己は己であると立証する主体性と至上なるものを実践する悟性を併せ持つ生物でありながら、彼らは人であることを止めたのだ。
 口を開けて餌の運搬を待つ雛鳥に己を堕してしまったのだよ。卵の殻を割る気概すら無くした怠惰、そんなものを人間などと呼べはすまい」

「お涙ちょちょ切れるほど前時代的なメリトクラシー拗らせてんなオイ、結局何が言いてーんだよテメーは」

「君だよ」

は? と千空。男は変わらず微笑を浮かべたまま。

「私の願い、とも言うべきものだよ。君がヒューマニズムを求めるように、私は君が欲しい。
 正確には、君の精神(こころ)と言うべきだが」

「キメェなホモかよ、近寄んな」

「生憎性愛の類はここ数百年は不要としている」

明らかに引き攣った顔をする千空を他所に、男は続ける。


641 : E=mc2 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/03/19(土) 22:43:10 RloszDNI0

「人の可能性は無限だ、とは言ったがね。悲しいかな限界というのは確かに存在するのだ。
 例えばタイムマシン、例えばパラレルワールド、例えば光速の突破。他にも、他にも、人が未だ実現できていない事象は山ほどある。
 しかし、これらは全て悠久の時と研鑽を積めば必ず実現できる事柄でもある。何故ならゴールが、実現すべき形が見えているからだ。終わりさえ見えるなら、後は迷わず進むのみ。ならばこそ、これらは人の限界とは呼び得ない。人の想像が及ぶものは、必ず人の手で成し遂げられるのだ。
 ならば、人の想像さえ及ばぬものは、どうか」

男はかぶりを振り、目を伏せる。

「それこそが人の限界、超えるべき大きな課題となる。今の人間では想像さえできない、理解も認識もできぬであろう全く新たな概念。それを生み出すことが私の悲願だ。
 ならばそれはどうやって生まれる? 想像はあくまで想像、ならばその源泉とは、やはり人の精神にこそ他ならない。
 凡夫は論外、天才でも足りぬ、故に私は超越者こそ必要とした。世界という流転する大流の中にあってなお揺るがぬ自意識を持つ人間、フリードリヒ・ニーチェが説く超人思想の体現者たる超越者だけが形にできる命の答え───すなわち"真理"を」

夢見るように言葉を紡ぐ。
その声には親愛の情があった。

「私では駄目だった。私という一個人の真理では、永久機関という極点に辿り着くことしかできなかった。
 それ以外の究極を、私は未だ、実現できてはいないのだ」
「するってーと、テメーの真名は……」

千空の脳裏に浮かぶ人名。自動輪を開発したという一人の科学者の名。
それを肯定するかのように、男は、オルフィレウスは続ける。

「石神千空、君の半生を私は見届けたよ。三七〇〇と十余年に及ぶ旅路、その全てを。
 素晴らしい、感動さえしたとも。この胸の高鳴りは決して嘘ではない。全てが失われ、荒廃した世界で君は、しかし決して諦めることはなかった。
 当初は火を起こすことさえままならず、辛うじて生きていけるだけの衣食住を確保するだけで這う這うの体だった君は、しかし不屈の精神で以て道を切り開き、科学文明を再興させ、遂には星の海にまで手をかけた。
 星の開拓者という肩書は、きっと君のような人間にこそ相応しいのだろう。さて、では一体君の何が、そうした偉業を果たす要因となったのか」

疑問の形を成しながら、しかし答えは既に出ている。
確固たる確信のもと、彼は告げる。

「精神だ。君の心こそが、この大偉業に最も多く寄与したのだ。
 明晰な頭脳、豊富な知識、人の輪……なるほど、それも確かにあるだろう。だが話はそんな些末な次元にはない。
 重要なのは、そんなものを超越した人としての在り方そのものだ。人類種族と文明の完全な滅亡という馬鹿げた現実に存在丸ごとを叩き込まれながら、尚も胸を張り王道を踏破してしまう、黄金のような不撓不屈の精神だ。
 それを前にしては、天賦の才能? 劇的な経験? くだらない、あまりにも矮小すぎる」

石神千空は最初、何も知らない子供だった。
年相応の知識しか持っていない。誰もが知っている理科の常識も知らず、当然英語も喋れない。取るに足らない子供でしかなかった。
けれど彼は、宇宙に憧れた。
憧れたが故、身に着けた。必要な知識を習得し、世界中の人間にコンタクトを取り、NASAの研究員さえ唸らせる知見を更に成長させた。
彼は"できることだけした"天性の才人ではない。
彼は"できるかも分からぬ明日に躊躇なくその身を投げ込んだ"探求者だ。


642 : E=mc2 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/03/19(土) 22:44:34 RloszDNI0

「君が目覚め、世界を救うと決めた時、そこに迷いや躊躇はあったかね? 無かっただろう、疑問にすら思わなかっただろうとも。分かるよ。
 だが普通の人間はそうはいかない。如何に豊富な知識を持ち、如何に優秀な頭脳を持とうが、精神が凡俗な人間はそもそも立ち向かおうとすら思わんのだよ。できることと、実際にすることでは天と地ほどの差もあるのだから。
 事実として君の先達、君の義父を筆頭とした宇宙飛行士の彼らは一体何ができた? 何もできなかった。ただ命を浪費し、再開発の一つも為すことなく死んでいったではないか。人類最高峰の頭脳と能力を持ちながら。
 あるいは、そうだな。君も周知の事実だろうが、人は完全な暗闇に閉じ込められたら48時間、完全な無音状態に置かれたら45分で精神に異常をきたすそうだ。さて、ところで君は無音どころか五感すら閉ざされた石化状態で3700年もの間意識を保ち続けていたね。それどころか、自分の覚醒時期を春に合わせるためだけに絶えず秒数をカウントし続け、石化が解かれた時点において記憶も人格も目的意識も一切の欠損なく覚醒した。無論、精神は健全なままに」

男は含み笑う。それこそが、石神千空に見出した最大の価値であるのだと。

「君は生まれながらの異形の強者だ。君が普遍と称し歩く道は、世に言う聖人や覚者だけが歩き通せた茨の道に他ならない。
 私は言った、私と君は同属だと。その言葉に嘘はない、何故なら私も、君と同じような道を疑問すらなく歩いてきたのだから」

そう。オルフィレウスこそは、真なる意味で石神千空の先達者と言える存在であった。
科学者として、人類の先導者として、そして───生まれながらの強者として。
だから彼は断言できるのだ。自分と同じように、石神千空は新たな真理に到達できるのだと。

「なるほど、よぉーーーーく分かったぜ」

男が語った長い言葉に、ずっと目を伏せ聞き入っていた千空は、ようやく一言を返し。

「テメー、友達いねぇだろ」

明確な反意を突き付けたのだった。

「言いてぇことなんざ多々あるが、とりあえずそのふざけた勘違いから正してやる。
 親父が何もできなかった、だと? テメー偉そうな口聞きやがる割に随分と節穴じゃねぇか。俺の旅路とやらが、石化復活液の量産が、そして石神村の連中が、一体誰のおかげで成り立ってると思ってやがる」

石神白夜がいなければ、きっと千空は早々に脱落していた。
子孫を残し、意志を伝え、それは時を超えて千空たちへのバトンとなった。
彼はその生涯において、数十年の時をかけて僅かな量のプラチナを採掘し、遺した。それが報われる保証など何処にないまま、次代へ繋がる希望と共に、後に託す決意だけを秘めて。
その行いを、人生を、受け継がれたバトンを、無意味だなどと嗤わせはしない。


643 : E=mc2 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/03/19(土) 22:45:56 RloszDNI0

「さっきからテメーの言い分聞いてりゃあ、個人的な好き嫌いで他人選別してるだけの超絶我がままクソ野郎でしかねーじゃねぇか。
 要するにテメーは強い人間が好きで弱い人間が大嫌いってだけだろうが。要求ハードルがクソ高ぇから一見高尚なように聞こえるだけの、駄々こねる子供の理屈だ」

「肯定しよう。私は人間を愛してなどいない。それこそ私が最期に悟った真実、拭い難い私の性に他ならない。
 だがそれで? それが一体何だという。私は私の真理を追究し、果てなく進むのみ。科学文明を加速させない衆愚など知らん、潰れて削れて糧となるが相応だろう」

「そこんとこも勘違いしてるようだから訂正してやるよ。そもそも俺も、テメーも、超人なんていう大それたモンじゃねぇだろうが」

千空は一歩近づき、オルフィレウスの胸倉を掴み、言葉の刃を突き付ける。睨み付ける瞳からは弩級の熱が籠り、無機的な男の視線と交錯する。

「科学は地道な努力の積み重ねだ。超人思想とかいう都合の良い救いなんかじゃ断じてねぇ。
 各々が悩み、苦心して、問題解決に取り組み、そして得られた成果を次へのバトンとして受け渡す。そうやって一歩ずつ、一歩ずつ、人類は道を歩いてきたんだ」

大樹がいなければ、千空は簡素なツリーハウスを築くまでしかできなかった。
石神村の連中がいなければ、数多の素材を調達することも、器具工具や設備を建造することもできなかった。
龍水がいなければ小さな島の外に出ることも叶わず、フランソワがいなければ道中の管理や細々とした作業は解決できず滞った。
コハクが、司が、氷月が、金狼が、銀狼がいなければ、物理的障害を乗り越えることはできなかった。
スイカがいなければ、人類は再び全滅の道をたどっていた。
Dr.ゼノがいなければロケットの再開発はできず、今日の千空は育っていなかった。
白夜がいなければ……
親父がいなければ、彼が3700年前に遺してくれたバトンがなければ、きっと千空は何もできなかった。
思いは継がれ、継承されていく。
それがやがては波紋となり、普遍となって、遂には見知らぬ誰かの手でさえ実を結ぶ。

それに、なあ。知ってるかオルフィレウス。

「何気ない願いの生まれる日常からこそ、科学は発展してきた」

「しかし思いを実行に移したのは、科学の道に身をやつした人間は、一体どれほどいたのかな?
 5割? 1割? いいや否。私や君のような、決意によって立ち上がった僅か一握りの者だけだろう」

「だからそれ以外の連中に価値はねーってか? 笑わせるぜオルフィレウス、科学の基礎を思い出せ。
 科学の辞書に無駄っつー言葉はねえ。どんな知見が何に繋がるかも分からねー以上、基礎研究において全ては意味を持つのと一緒だ」

「弱者の紡ぐ想いがあるから、超人(われら)の存在に価値などないと?」

「だからちげーって言ってるだろうが。どっちがどうとか、駄目だとか、そんな話じゃねぇんだよ。
 強さも弱さも、正しさも間違いも、光も闇も、全ては世界にあっていい。だがテメーの言い分みてぇに、どれか一つで満たされていいわけじゃねえ」


644 : E=mc2 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/03/19(土) 22:47:05 RloszDNI0
それこそが中庸。それこそが普遍であり、人の歩む道であると。
科学とは夢を叶えるためにあって、幻想を拡散させるものではないのだから。

「答えを得ていようがいなかろうが、人は支えあうことでまた踏み出せる。不足を認め補いあって、少しだけ足を進めることで何かに繋がっていく。
 お前はそれを弱者や愚者の馴れ合いと蔑むが、ならどうして人類はここまで歴史を繋げていくことができたんだ」

地を這う弱く愚かで幼かった種族は、道具を手にし、火を手に入れ、文明を築いた。
互いに相争い滅ぼし合う歴史を繰り返しながら、しかし少しずつ、少しずつ、平和の概念を広め、一般化し、道徳の道を積み重ねた。
そして21世紀には、遂に世界平和という言葉が生まれ、浸透している。どれだけ信じる者が、実現に努力する者が少なかろうと、理性と思想はここまで発展を成し遂げたのだ。
科学も人も、その歩みは止まらない。超人がいようといなかろうと、科学は永年の時をかけて静かに岩を穿つ。

「人類種族は全ての過去を糧として無数の未来を模索していく。想像力の翼を広げ、空漠たるに秩序を設け、名も無きものに名を与え、検証と反証を繰り返し、世代を重ねて幾億の楔を打ち続ける。
 未来の可能性は無限大だ。三七〇〇年の踏破、それがどうした。人類はまだ、始まってから二〇〇万年ぽっちしか経ってねェんだぜ?」

幾百億の命たちが、幾億年に渡り積み重ねる探求と研鑽。
その悠久の旅路に、たった一人の超人が敵う道理はない。
石神千空は人間だ。人の紡いだ、そしてこれからも紡いでいく長い歴史の中の一欠けら。
先人からのバトンを受け取り、それを後に続く者へ想いと共に受け渡すだけの、ちっぽけな人間。
だから彼は、そんなありふれた只人として、譲れぬ言葉を叩きつける。

「科学(にんげん)舐めんな、超越者(ファンタジー)」

「く───は、ははは。それを言われるのは二度目になるな。
 では知っているかな石神千空。君のような視座と思考の持ち主を、一体何と呼称するべきか」

言葉を受けて。
たった一人の超人は、歴史の中の一粒(にんげん)に告げる。
それは、底知れぬ侮蔑を含んで。
あるいは、言い知れぬ羨望を秘めて。
もしくは、大いなる祝福を込めて。

告げる。

「衆愚(ひと)はそれを、神と呼ぶ」

「主語がでけーんだよクソ爺」


645 : E=mc2 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/03/19(土) 22:48:12 RloszDNI0

笑みを浮かべるオルフィレウスと、険しい顔の千空。二人は対極であり、同時に確かな鏡写しでもあった。

「人の歴史を鑑みて、己はその中の一粒であるという君の意見、確かに受け取った。
 ならば君はどうする。私を前に、君は一体何を告げる?」

「それこそ決まりきってるだろうが」

千空の右手が赤い輝きを放つ。刻まれた三画の令呪が、その力を発揮する。

「令呪三画を以て命ずる。キャスター、お前は人を殺すな」

「く───」

そして刻まれる絶対命令。消え失せる全ての令呪。
胸倉を掴んでいた手を離し、変わらぬ険しい無表情の千空を前に、オルフィレウスは堪え切れぬと笑みを深めて。

「く、はは、クハハハハハハハ!!
 君はどこまでも───本当にどこまでも甘く、優しい男だな石神千空。君はもう、人を殺させぬ以外に私を縛ることはできないのだぞ?」

「だからどうした。知ってんだよ、テメーが本当は、令呪なんざどうとでもできるんだってことはな」

やろうと思えば、千空の口が動くより前に右手を消し飛ばすこともできた。
そもそも、これだけの事前準備にかける時間を与えて、オルフィレウスともあろう者が何の対策も打っていないはずがない。
そう苦々しく呟く千空に、オルフィレウスは静かに首肯する。

「君の言葉は真だとも。生け捕りにした魔術師(サンプル)の解析から、まあそれなりのものは作成していてね。
 魔力の生成器、疑似的な魔術回路の培養、魔力干渉を弾く絶縁体、魔力の貯蔵プール、聖杯からのバックアップを兼ねる要石と、その程度は出来上がっているとも」

「……殺してなかったのか、マスター連中」

「殺すのはいつでもできる以上、サンプルとするには生きているほうが都合が良かろう?
 それに君の過去を見た時から、君がその手の理想論を言うのは目に見えていたのでね。令呪を受け入れたことと合わせ、私からの誠意と受け取ってほしいのだが?」

オルフィレウスの指先が示す先にあったのは、蒼翠の水に満たされた培養槽に浮かぶ都合七人の人間の姿であり、彼らには欠損も見当たらず、静かに呼吸の水泡を浮かべている。
後遺症とはねえのかよ、という視線をやれば、私がその程度ぬかるとでも?という不敵な笑みが飛んできた。殴りたい。

「……至れり尽くせりじゃねえか。なんでそんな俺に媚びてくんだよ」

「新たな真理を生み出し得る、と既に言っただろう。それに、な。
 生前に私を打ち破った者らがいてね。彼らと君の言い分が、あまりにもそっくりなものだからな」

ふ、と笑うオルフィレウス。まさかこいつに、そんな殊勝さがあるとは思えないが。


646 : E=mc2 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/03/19(土) 22:49:26 RloszDNI0
「彼らの主張はまるで共感できなかったが、しかし理解できぬからと捨て置くのは愚の骨頂であろう?
 事実として私の総力を打ち破った以上、その価値を認め、検証し、詳細を詳らかにせねばなるまい。このような生き返りの機会があったなら猶更に。
 彼らの語る希望が、奇跡が、一体どのような理屈と原子で構成されているのか。勇気の成分を表にして出し、覚悟の量を数値化しよう。
 そして彼らが至った新たな真理を、今度こそ私の手に収めるのだ。そら、実に簡単な話だろう?」

うん分かってた。こういう奴だって分かってた。そんな思考でいる限り理解できる日は絶対こねーから根本から考え直せバカ。

「だから君には期待しているのだよ石神千空。君の導く新たな真理が、科学の果てが、どのような形をしているのか興味は尽きんよ」

「言ってろ。俺は俺で勝手にやる、テメーはテメーで好きにやりやがれ」

千空は吐き捨てると踵を返し、背を向ける。付いて来たけりゃ勝手にしろと、自分の道を歩き出す。

「魔術を科学で解き明かす。聖杯の解析し、構造を把握し、性能を確かめ、既知の事象に変える。
 目指すは全員揃っての生還だ。ククク、こっから忙しくなるぞ」

そして彼は、いつも浮かべる凶的な笑みを、好奇心に充ち溢れた人間の顔をして。

「そそるぜ、これは!」

年相応の少年であるかのように、未知への好奇心を露にするのだった。


647 : E=mc2 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/03/19(土) 22:50:39 RloszDNI0


【クラス】
キャスター

【真名】
オルフィレウス@Zero Infinity

【ステータス】
筋力D 耐久D 敏捷D 魔力EX 幸運A 宝具EX

【属性】
秩序・悪

【クラススキル】
陣地作成:A
自らに有利な陣地を作り上げる。
ただしキャスターの場合、魔術師としてではなく科学者としてのクラススキルであり、彼の場合研究施設を超えた「機星」の作成を可能とする。

道具作成:A++
魔力を帯びた器具を作り上げる。
彼が持つ叡智と技術は常に、人類史の遥か先を行くもの、どころか人類の叡智とはその大半が彼一人の手によってもたらされたものである。

【保有スキル】
刻鋼人機:A+
イマジネーター。刻鋼式心装永久機関の移植手術を受け、人間から改造人間に生まれ変わった存在のことを指す呼称。
刻鋼式心装永久機関とは簡潔に言ってしまえば『永久機関』そのものであり、キャスターはこれを心臓に組み込まれている。
この永久機関から供給される力を以て、キャスターは戦闘を行う事が出来る。ランクA+はイマジネーターの頂点にして始祖。
このランクに至ったものは、己の肉体そのものを一種の異界・異星法則と変じさせる、心装真理の発動を可能とする。
またこのスキルの持ち主は永久機関を保有していると言う都合上、魔力切れという概念がない(例外は存在する)。魔力ステータスのEXはこのスキルに起因する。

光の殉教者:EX
光のため、未来のため、希望のため、自分以外の誰かのため。
己がこれと定めた道を、どこまでも雄々しく他者を轢殺しながら突き進んでしまう者が持つ特異スキル。
総じて"光"と呼称される、英雄ならば誰もが持つであろう輝きの路なれど、その雄々しさは決して人が真似て良いものではない。
精神攻撃系の効果を完全にシャットアウトする他、極限域のスキル・鋼鉄の決意を内包する複合スキル。

無窮の叡智:EX
並ぶ者なき天性の叡智。この世のあらゆる知識から算出される世界の解。
知識判定において確定成功を保証し、思考系スキルにおいて限りない補正を加える他、肉体的付加以外の多くのスキルを極めて高ランクの習熟度で発揮可能。


648 : E=mc2 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/03/19(土) 22:51:56 RloszDNI0

【宝具】
『第零式永久機関(オリジナル・クロノサーキット)』
ランク:EX 種別:対文明宝具 レンジ:0 最大捕捉:1
始原の永久機関にして、人類史の全てを内包した機械星。
永久機関の創造主ヨハン・エルンスト・エリアス・ペスラー、すなわちオルフィレウスがその生涯で最初に生み出した永久機関であり、大情報収集機関も兼ねるこの論理の星は地球上における物質文明を導く全ての叡智が内包されている。
人造のアカシア記録にして、後世に星の記憶を残す最新のノアの方舟。
キャスターが生み出す人工天体・クロノゲイザーの中枢として機能するが、その真価はキャスター自身と直結することによって発揮される。
それすなわち真なる永久機関。文字通り永遠に尽きぬリソースと、無限大に等しい出力を両立させる。
そして最も恐ろしいのは、キャスターの存在情報が記録されたこの宝具を破壊しない限り、たとえキャスターを完全消滅させようとも状況次第ではキャスターの完全復活が実現してしまうというものである。


『頂穹械剣(アルティメット・イグジステンス)』
ランク:E 種別:対城宝具 レンジ:1 最大補足:1
刻鋼式心装永久機関を励起させる事によって生み出される、質量ある素粒子。
刻鋼人機と呼ばれる存在が持つ共通能力であり、その第一段階(ファーストフォーム)。輝装。
見た目は機械的な大剣だが、正確には出力端子としての意味合いが大きい。
第一宝具・第零式永久機関から流れ込む膨大なエネルギーを、自壊することなく三次元空間に現出させ、制御するための機構。
特異な性質は何も持たず、ただ純粋に圧倒的なリソースを行使するという、極めて原始的なもの。永久機関という性質を、最も永久機関らしい「果てのない出力と持続性」という一点に集約させた、基礎にして理想形。
神秘としてのランクは極めて低いものの、純粋な威力だけを見れば対城宝具を超え対国宝具の域に達している。


『頂穹械剣・万象遍滅(アルティメット・イグジステンス・アバランチ)』
ランク:E 種別:対城宝具 レンジ:1 最大補足:1
キャスターの有する第二宝具の発展形。己の中の認めがたい心の闇やエゴ、独善性、これらを認め、折り合いをつける事で発動可能な第二段階(セカンドフォーム)。影装。
その能力とは、リミッターの放棄。
第零式永久機関の生み出す動力を瞬間的に理論上最大値(∞)で引き出せるという、極々単純にして究極ともいえる力。
通常の動力機関ならば搭載された内部回路の劣化やエネルギー変換率の問題から、稼働している間に取り出せるエネルギー量は限られてしまうだろう。
しかし、心装永久機関という使用者の精神ある限り素粒子を吐き出す動力機関において、それはまさしく無限の力を気軽に取り出せるということに他ならない。
その結果、この段階のオルフィレウスの一撃一撃は「計測値無限の力による、息切れ無しの連撃」となる。
放出すれば極光の斬撃。纏わせ振るえば究極の剣戟。一撃毎に雲海が裂け、大地が砕け、海が断たれる……という他を圧倒的に凌駕する破壊の嵐が創造されていく。
まさに永久機関の基本を突き詰めた力であり、出力だけなら既に心装真理の領域に到達している。
「科学により発展した文明は、いずれ滅ぶ」という真実。
「人類に手を加えてでも到達する領域を押し上げたい」という妄念。
そして、「愚かと知りながら、それでも自分は永遠に止まらない歯車に焦がれている。否、それ以外に道はない。いざ新たな真理を」という覆せぬ妄執と真実から形作られたのが、この影装である。

この力を揮う代償は、自身の肉体の融解。リミッターを外し、ただ前進のみを追求した結果、自己保全という生存本能は放棄されている。
形を失っていく肉体が示すのは、「自分が消えてなくなろうとも、新たな真理が見たい。探求と証明に突き進みたい」という妄執であり、同時にオルフィレウスの考えうる最高の形。
そして、「是非ともこれを超える概念を生み出して欲しい」という彼の抱える歪んだ大望の証明でもある。


649 : E=mc2 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/03/19(土) 22:53:53 RloszDNI0
『心装真理・永劫たれ、天頂に廻る機構時計よ(ゼロインフィニティ・エターナルクロックワーク)』
ランク:EX 種別:対星宝具 レンジ:0 最大補足:1000
キャスターの有する第四宝具。己の存在意義を理解し、同時に、己の光の部分と闇の部分を受け入れ、その上で、自分が世界にとって何を成し得るのか。
そして、その事を実行できるのか? フリードリヒ・ニーチェが説く所の超人思想そのものになって初めて会得出来る、イマジネーターの最終段階(サードフォーム)。
人間世界を縛る諸々の摂理、その軛を破壊出来る機械仕掛けの神に己を変じさせる宝具であり、魔法そのものに形容される、人類の持つ技術の枠組みを超越した力を行使可能。
キャスターの肉体は素粒子となってほつれ、宝具発動中のキャスターのステータスはA++〜EXに修正される。

能力の本質は『素粒子生成』。が、実態はそんな生易しいものではなく、『無尽蔵のリソースから生み出される無限の素粒子にして、真なる永久機関へ己を変じさせる』というもの。
素粒子を生み出すという基礎の極致。この状態のキャスターはいわば素粒子集合生命体とも言うべき存在であり、肉体という不出来な殻を脱ぎ捨てた彼は、人類種を超越した全く新たな存在へと生まれ変わる。
ただそこにいるだけで、周囲一帯は熱量に耐え切れずその形を失っていく。
その輪郭は揺らめき、実体と非実体の狭間を往復し、太陽の如く燃え盛る。
素粒子の一粒一粒がオルフィレウスという人間の形状を記憶しているため、辛うじて人体らしき姿を保っているに過ぎない。
内包する力はまさしく無限。量子論における「曖昧な状態」にあることで亜光速移動を可能とし、攻撃を受けようとも無尽蔵にあふれる素粒子を枯渇させることは不可能。
その一粒一粒がキャスターであり、内の一つでも残っていれば無制限に再生可能という驚異の復元力を持つ。
光速で振るわれる刃は余波でさえ月まで届く衝撃であり、掠っただけでも一大陸を消滅させることなど造作もなく、物理学上の限界速度と圧倒的熱量の合わせ技を耐えうる物質は地球上には存在し得ない。

サーヴァントとしての宝具の軛を遥かに超えた宝具であるが、サーヴァントとして召喚された都合上、弱点も多い。
言うまでもなく魔力消費は激甚かつ劣悪の一言。言ってしまえばこの三次元空間に、機械の神を顕現させるに等しい行為に等しい為であるからだ。
ただしそれすらも、宝具の発動さえ叶ってしまえば永久機関による無尽蔵の魔力放出が為されるため、半永久的な能力行使は愚か、マスターという要石すら不要になるというサーヴァントにあるまじき維持性を持つ。

【人物背景】
「私は結局、人類を愛してなどいなかったみたいだよ」

稀代の科学者、永久機関の始祖、人類の導き手、精神的超人。
誰よりも人の可能性を信じながら、最期まで人を愛することができなかった哀れな落伍者。
彼は生まれながらの超越者であり、狂人であり、光の殉教者であり、人になれなかった超人である。

【サーヴァントとしての願い】
石神千空の存在を通し、人類の価値を再び推し量る/あの日の時計を、ずっと


650 : E=mc2 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/03/19(土) 22:55:30 RloszDNI0

【マスター】
石神千空@Dr.STONE

【マスターとしての願い】
全員合わせての生還。

【能力・技能】
非常に幅広い分野における極めて専門的・実践的な知識の数々。
それら知識を用いて様々な発明に出力する科学技術。
複雑怪奇な計算式の結果を一瞬で算出する概算能力、数千年に渡りほとんど誤差なく秒数を刻み続ける思考の正確性。
etc.etc…石神千空はその頭脳において人類史上最高峰の水準を持つことに疑いはない。

だが彼の最も優れた資質とは。
数千年の暗闇に耐え、何もかもが朽ち果てた世界でたった一人から文明を再興し、200万年の科学のバトンを拾いなおしたという、
砂漠から一粒の砂金を見つけ出すに等しい地道で気が遠くなるような、常人では決して達成不可能であるどころか、そもそも実行しようという発想さえない難行に疑問なく挑めてしまうという精神性。
すなわち、物質世界の栄華と技術の水準の極点に至るまでに人間が到達していなければならない視座の持ち主ということである。

【人物背景】
彼は只人である。
ごく一般的な家に生まれ、ごく一般的な親元に育ち、当たり前に友情を得て学業をこなし、
宇宙に憧れを抱き、科学を愛し、自分の好きなものに夢中になって打ち込み続けた、
強くて優しい普通の人間である。


651 : E=mc2 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/03/19(土) 22:55:48 RloszDNI0
投下を終了します


652 : 名無しさん :2022/03/20(日) 20:59:10 4rxTFKQo0
投下します


653 : 『知られざる益荒男達』ソリッド・スネーク&セイバー :2022/03/20(日) 21:01:19 4rxTFKQo0

北海道は今、騒乱している。

北海道の大半は牧歌的な牧畜と農業が支える場所であった。

だが、それは焼畑農業という話ですらない戦火の最中にある。

「ちっ………ロシア軍はソ連軍のようではないのだがな」

自衛隊の参謀と呼ばれる男が舌打ちをしながら困惑していた。彼のキャリアは長く、そして、同時に短い。長年様々な戦争、つまり戦争史を学んできた。そこら辺のミリタリーオタクやネトウヨの持つ知識量を遥かに上回る。老年期になってなおまだ学びはあるらしい。

「つまりあくまで現代戦というわけか………はぁ」

ソリッド・スネークは答え合わせをして溜息をついた。彼は聖杯戦争という特殊な環境においてマスターという立場である。だが厳密にはマスターと言うべきかどうかも分からない。現に目の前の自衛隊の参謀と呼ばれた者が彼のマスターのような者だからだ。

「書を捨てよ旅に出よという言葉もあるな」

その某県某市の別荘地帯にある単なる一軒家の和室、畳十畳の秘密会議には三人目がいた。セイバーだ。

「宮本武蔵、おっとセイバーと言うべきでしたな」

「言わずとも誰にだって理解出来るだろ?セイバーと言えば宮本武蔵とな」

「バーサーカーと言えば誰だろうな?」

「………」

ソリッド・スネークが言葉を詰まらせた、彼は断じて殺人狂でも、戦闘狂でも、戦争狂でもない。必要に迫られたから戦い、そして倒す、時に殺す。


654 : 『知られざる益荒男達』ソリッド・スネーク&セイバー :2022/03/20(日) 21:03:42 4rxTFKQo0
「まぁいい、他にアーチャー、ランサー、アサシン、キャスター、ライダーだっているだろうな、それが聖杯戦争だ」

自衛隊の参謀と呼ばれた者は他の兵について考えた、自軍の話は嫌という程聞いた。

宮本武蔵ならば言わずもがなだ。

ソリッド・スネークの戦歴。

ザンジバーランド騒乱
1999年12月24日。この頃からトレードマークであるバンダナを着けている。

カナダの奥地で療養生活を送っていたが、カザフスタン領の独立武装要塞国家ザンジバーランドが多数の廃棄核兵器を抱えて蜂起、さらに枯渇が問題視されていた石油を精製可能な微生物「OILIX」を発見したキオ・マルフ博士を拉致し、世界に対して軍事的・経済的に優位に立とうとする事件が発生した。事態を重く見た米国政府上層部とFOXHOUND総司令官ロイ・キャンベルの要請で再び召集され、ザンジバーランドの調査とマルフ博士の保護の為に潜入する。


655 : 『知られざる益荒男達』ソリッド・スネーク&セイバー :2022/03/20(日) 21:06:04 4rxTFKQo0
アウターヘブン蜂起
1995年、南アフリカの奥地ガルツバーグに存在する武装要塞国家アウターヘブンに潜入したFOXHOUND隊員のうちの一人だった。

マンハッタン沖タンカー沈没事件(タンカー編)

「フィランソロピー」の工作員として極秘裏に開発された新型メタルギアの情報を得て、海兵隊の偽装タンカーに潜入する。そこでロシア私兵部隊の女性隊員オルガ・ゴルルコビッチと出会い、新型メタルギアの存在を確認することにも成功したが、リボルバー・オセロットの策略によってメタルギアは奪われ、タンカーの爆破に巻き込まれた。世間にはタンカー爆破テロの首謀者はソリッド・スネークだと報道され、彼の遺体も見つかったとされていたが、実際はオタコンの用意した救命艇で生き延びており、遺体はリキッド・スネークのものを使った偽装だった。

ビッグ・シェル占拠事件(プラント編)

2009年4月29日。巨大海上除染プラント「ビッグ・シェル」で海軍が研究していた新型メタルギアの情報を聞き、その計画に十数年も音信不通だったオタコンの義妹が関わっているという情報もつきとめて潜入することになる。政府関係の技術者という名目でSEALsに随行する形で潜入したオタコンと同時期に海中からのダイビング潜入し、その後ビッグ・シェル内で合流する(雷電が潜入する前に海中のオイルフェンスが切断されて誰かが潜入した形跡があった)。


656 : 『知られざる益荒男達』ソリッド・スネーク&セイバー :2022/03/20(日) 21:07:34 4rxTFKQo0
ガンズ・オブ・ザ・パトリオット事件

2014年。「オールド・スネーク」 (Old Snake) として登場。「オールド・スネーク(スネーク爺さん)」とは、老化の進んだ姿からドレビンやオタコンからつけられた通称で、スネーク自身は気を落としていた。

「さて、おやつの時間だ」

最中、菊最中 - 宮中伝統の菓子 - 御菓子司 麻布 菊園(千葉市若葉区)、宮中での製法のまま造られている最上級の最中餡は、北海道十勝産の小豆を使用した香味豊かな逸品でございます。

「和菓子か………」

宮本武蔵はうんざりしていた、クローンながら転生者、現世で未知の敵、未知の味を求めるのは至極当然の事。

この味はよく知った味だ。

「ほう、最中か」

ソリッド・スネークは感慨深い趣だった、その最中が何を意味しているかも理解したのだろう。

何故ならば………

「美味い」

そんな後の言葉すら飲み込んだ。

「さて、この戦争、どう思う?」

おやつの時間は終わった。おやつの時間とはおやつを食べる時間であり、それ以下でもそれ以上でもない。おやつの時間に揉め事を起こすのは幼稚園児ぐらいだろう。

北海道の右半分は赤くなっている、これは敵の勢力下にあると言うことだ。つまりはロシア軍の魔の手がそこまで迫っているという事だ。

「戦上手がいるな………」

宮本武蔵は蘊蓄ではなく勘で物事を語った。彼にとって知識とは自分の全てではない、そして彼の勘とは長年の惨憺たる履歴が培った経験値とも言える。


657 : 『知られざる益荒男達』ソリッド・スネーク&セイバー :2022/03/20(日) 21:08:58 4rxTFKQo0

「戦上手?武田信玄や上杉謙信のような?」

自衛隊の参謀と呼ばれた者が疑問を投げかけた。宮本武蔵の生きた時代には戦国時代にある。戦国時代、群雄割拠の時代、様々な武将が未知なる戦を次々続けた時代。戦闘狂ならば格別の戦を次々に堪能したはずだ。

「似て非なるという言葉がある、豊臣秀吉の溺愛した三面大黒天の一つも毘沙門天だ」

宮本武蔵の言葉を知らぬと思ったが自衛隊の参謀と呼ばれた者は思い直す。

「同世代と戦うと言うのか?」

「分からん、兵法は今の時代では軍学という、世界各国軍の一つや二つあるだろう?」

「確かにそうだが………」

それに疑心暗鬼する、本当に全てがネオナチと結びつくならば状況は最悪とも言えるが、そもそも民兵組織という概念は不明瞭である。日本では日本赤軍というテロリストもいた。彼等は銃器を持って暴れた、オウム真理教という組織もいた、彼等は銃の密造を企んだが失敗に終わった。


658 : 『知られざる益荒男達』ソリッド・スネーク&セイバー :2022/03/20(日) 21:11:05 4rxTFKQo0
彼等は真の愛国者は自分と言っていた。愛国心は様々ある、その全てを内包してこそ大和魂と言えるだろう。

「諸葛孔明気取りならどこにでもいるが諸葛孔明のようなのなら今の社会にも色々いるだろう」

ソリッド・スネークはそう結論づけた。

「して、俺のようなクローンを生み出す技術は俺だけか?この国だけか?」

「………!」

自衛隊の参謀と呼ばれた者は気づいたようだ。

満洲国の引き口、そして樺太の戦いは、第二次世界大戦末期の1945年8月11日から8月25日にかけ、日本の樺太南部で、日本とソビエト連邦の間で行われた地上戦闘、その末路、シベリア抑留。そこに問題の起点があるという。そのシベリア抑留された日本兵のクローン、有り得ない話ではない。

「まさに最悪を超えた最悪だな」


659 : 『知られざる益荒男達』ソリッド・スネーク&セイバー :2022/03/20(日) 21:12:38 4rxTFKQo0
「………なるほど」

ソリッド・スネークもそのニュアンスに気づいたようだ。

「では我々はまず北海道の歓楽街、ススキノに向かう」

「あいわかった」

「……了解した」

宮本武蔵と自衛隊の参謀と呼ばれた者はその言葉を了承した。

新幹線、途中名古屋から豊橋、その間にソリッド・スネークと宮本武蔵は嫌な気配を複数感じたが今は置いておいた。

「あれ?」

その間、新幹線の運転士は新幹線の前に違和感を感じた、それはあまりにも見覚えがあるが故に現実では見覚えがない。

八本足の馬、北欧神話の主神オーディンの馬。 8本足の白馬で、あらゆる馬のうちもっとも速く、また空も駆け、死者の国へも赴くことができる。そして狼の頭を模した兜に全身甲冑、その全てが黄金色だった。

「スレイプニル、そしてオーディン!?」

瞬きする。

そこには何もいなかった。

「ソシャゲのやり過ぎだな」


660 : 『知られざる益荒男達』ソリッド・スネーク&セイバー :2022/03/20(日) 21:14:17 4rxTFKQo0
新幹線の運転士は仮眠よりもそもそもの睡眠時間をより確保しようと思った。

豊橋から浜松、浜松から名古屋、その間にもソリッド・スネークや宮本武蔵が感じた嫌な気配は増えたり減ったりした、鎌倉から東京、その間にも増えたり減ったりした。

「さて、東京から東北新幹線に乗り換える」

「異存ない」

ソリッド・スネークと宮本武蔵は新幹線を乗り換えた。

「宮本武蔵だな?」

「ん?」

宮本武蔵は東京から仙台の間、因縁をつけられた。

「俺は殺し屋だ」

白人、僧侶の服、と言ってもキリスト教の司教の格好ではなく仏僧だった。

「殺し屋?」

「お前を殺しに……ガバラ!?」

「すまぬ、殺気を感じたので、つい」

新幹線のトイレの中、突如現れた男を即座に殺し、宮本武蔵は死体をそのトイレの中に捨て置いた。


661 : 『知られざる益荒男達』ソリッド・スネーク&セイバー :2022/03/20(日) 21:15:29 4rxTFKQo0
仙台から青森には特に何も無かった。平和だ。とても平和だった。

ソリッド・スネークは仮眠に入った。気が緩んだ訳では無い。ただ、他の乗車客に殺気を滲ませる者はいない。歴戦の戦士がもしも出したとしても即座に起床するだろう。野生の勘というのはそういうところだ。宮本武蔵もそういう感じで仮眠した。

北海道新幹線新青森・新函館北斗間が開業し、青函トンネルはその一部となりましたが、ソリッド・スネークと宮本武蔵は寝ぼけながら瞼を擦りながらまた新幹線乗り換えをした。


662 : 『知られざる益荒男達』ソリッド・スネーク&セイバー :2022/03/20(日) 21:16:28 4rxTFKQo0
「さてススキノだ」

ソリッド・スネークと宮本武蔵は漸く紆余曲折の末、ススキノについた。

「何見てんだよおっさん」

ソリッド・・スネークはススキノの歓楽街、市街に溶け込んでいた。眼鏡にスーツ姿、トレードマークのような髭さえ剃っている。この初手の潜入は今までの潜入と少し違う。市街戦の段階ならばまた違うがこのススキノは戦争を知らない平和ボケの巣窟だった。いや魔窟か。

日本で五本の指に入る歓楽街、歓楽街には必ず裏社会の手が張っている、つまり暴力団、そしてチンピラの集団、半グレの軍団だっている。

問題は宮本武蔵だ、ジャージ姿を別荘にAmazonネットショッピングで取り寄せそのままこのままで来た。

グラサンもついでに買っており、それでススキノ。

これでは輩にさえ思える。

「どことは?」

「ガンつけしてるんじゃねぇよ」

「それはすまなんだ、怖気させてしまったのだな」

「あ?」

チンピラは怖気という言葉を知らなかったようだ。

「ふむ、そうだな、現代ではビビっていると言うのだな」

「あぁ!?テッメ!ナメてんじゃねぇよ!」

そして戦闘が始まった。

街のチンピラ、ススキノのチンピラは三人、野球帽、日本ハムファイターズの野球帽をしていてホスト風の格好と面相の青年、もう一人は学生服をしていたがその学生服の内側を改造していたのか、内側のポケットに入れていたナイフを手に持っている。バタフライナイフだ。ギミックがカチャカチャとしながらナイフを出したり閉まったりするのが楽しいがその実切れ味は鈍ながらやや鋭い。もう一人は格闘家のように鍛えられている肉体をしていた、ステップ、そしてその構えからして本当にボクサー選手の卵なのだろう。

「オラァ!」

バタフライナイフが刺さろうとした、宮本武蔵相手には命知らずとしか思えない。

「ぐさーーーー!」

いつの間にか宮本武蔵はそのバタフライナイフを手に持っていた。

不良の1人は手をジンジンさせていた。

「え……?あ……」

失禁、崩れ落ちる、腰がまるで突然溶けて飴になったように制御がない、溶けている。全身が溶けている、脳味噌、涙腺さえも溶けている。スライム、ゼリー状、ただ、倒れるために全身が溶けた。


663 : 『知られざる益荒男達』ソリッド・スネーク&セイバー :2022/03/20(日) 21:17:38 4rxTFKQo0
「てめぇ……ら!」

「蝶のように舞い、蜂のように刺す、格闘術の基礎だ」

もう一人の不良はソリッド・スネークの軽やかな肉体運動からの右ストレートのパンチの一撃で倒れた。

最後の不良は言う。

「はっ!やるじゃねぇか!だが俺は今年の春!防衛大大学に入って日本の未来を背負う強者よ!」

「強者とは何だ?」

「腐れ朝鮮人や腐れ中国人をぶっ殺す事だ!腐れロシア人もな!それ以外何がある?」

「そうか………貴様には兵隊の資格がない」

「あぁ?」

「死ね」

ソリッド・スネークは左ジャブのパンチを放つ。

「ぐっ………プロボクサーか……ならば!」


664 : 『知られざる益荒男達』ソリッド・スネーク&セイバー :2022/03/20(日) 21:19:32 4rxTFKQo0
アントニオ猪木対モハメド・アリは、1976年(昭和51年)6月26日に行われた新日本プロレスの企画した「格闘技世界一決定戦」。日本のプロレスラーであるアントニオ猪木と、ボクシング世界ヘビー級チャンピオンのモハメド・アリによる異種格闘技戦で「世紀の一戦」とされた。試合会場は日本武道館。

試合開始のゴングと共に、タックル、チョップ、投げ技、関節技などを禁止された猪木はアリの足元にスライディングをして、アリを転倒させる作戦に出たが失敗。それから猪木は幾度となくリングの上に寝転がり、アリの足を集中的に蹴った。そんな猪木の攻め方に、少し苛立ちを感じたアリは猪木に立つように挑発。猪木も何度か立ち上がりはしたものの、またアリの足を狙いに寝転がった。猪木の蹴りによるダメージは確実にアリに蓄積していたが、試合中では足の痛みを晒け出すことなく常に軽やかなステップを踏み続けた。猪木のセコンドを勤めたカール・ゴッチは、戦法に対して特にアドバイスをすることはしなかった。しかし後に、猪木にとって不利な試合ルールであったことに理解を示しつつも「戦法を間違えた」と評したことがある。

最終ラウンドに近づくにつれて、キックを受け続け体力も消耗していったアリのやる気は徐々に薄れていき、猪木を挑発することも無くなった。猪木もアリを転がすこともあったが決定打を出すことはできず、3分15ラウンドが終わった。

15ラウンドのほぼ全ての時間を寝ながら戦った猪木と何もなす術のないアリに対して、観客は物を投げたり、罵声を浴びせた。

勝負は判定に持ち込まれたが、ジャッジ3人の判定は、この試合のメインレフェリーを兼任したジン・ラベール(英語版)がドロー(ポイント:71対71)、遠山甲(日本ボクシング協会公認レフェリー)が猪木(72対68)、遠藤幸吉がアリ(74対72)に付け、両者引き分けの裁定となった。なお、ミスター高橋は遠藤が採点記入方法を間違えたと後年指摘しており、これがなければアリが勝利していたという。

試合後、AP通信の報道によると猪木のアリキックによりアリの太ももは激しく腫れ上がり、膝の裏に血栓症を患い、サンタモニカの病院に入院した。かなりの重症であったが、9月に予定されていたケン・ノートン戦の準備のため、アリは短期間で強引に退院した。ボブ・アラムはアリの足のダメージについて、足を切断する寸前だったほど悪く、ケン・ノートンとの試合がキャンセルになるだけでなく、アリは一生障害を背負う可能性があったほど酷かったと語っている。主治医のファーディ・パチェコは足の血栓が脳や心臓の血管を詰まらせて死に至ることを危惧。この後に韓国で予定されていたエキシビジョンマッチを止めるようアリを説得している。

その後もアリは入退院を繰り返し、この試合でのダメージが5年後の現役引退の大きな要因になったとまで言われている。また猪木も、15ラウンドの全てを寝ながら戦い抜くには強靭な肉体、スタミナが必要であり、何度もアリの足を蹴ったために脛と足の小指を骨折した。猪木いわく「足が3倍に腫れた」という。


665 : 『知られざる益荒男達』ソリッド・スネーク&セイバー :2022/03/20(日) 21:20:36 4rxTFKQo0
「これでどうだ!?」

最後の不良は寝っ転がった。

「付け焼き刃だな」

それをのしのしと上に乗り、そして座る、マウント、総合格闘技の勝利の最終段階、この体勢こそ総合格闘技の全てであり、喧嘩というあらゆる格闘術の基礎や基本、そうじゃなくても元々の闘争の原理が煮詰まった領域。

「え!?ボクサーじゃない?」

不良は驚き叫んだ。

「ここはリングの上ではない、路上、つまりストリートファイトだ、なんでもありなんだ」

「てめ!?そんな事が選手生命が死んでしまうぜ?」

命乞いよりも的確な言葉と思ったのだろう。

「戦士生命の方が大切だ」

殴る、また殴る、そしてまた殴る、阿修羅の形相、もはや半狂乱の状態、鬼がいるならばここにいるだろう。

「ガッガッバッガッガッ」

不良は呻き声しか上げられない、マウントから逃れる術はない。


666 : 『知られざる益荒男達』ソリッド・スネーク&セイバー :2022/03/20(日) 21:22:11 4rxTFKQo0
「その辺にしておけ」

宮本武蔵がソリッド・スネークの腕を握りしめた。

「………ふー、分かった」

彼の逆鱗に触れた不良はもう沈黙している、戦闘不能だ、それでも殴らずにいられなかった。

「………冷静を欠けたな」

「あぁ、それは当然だ」

「………」

「だが雑魚の首など誇るものではない、捨ておけ」

宮本武蔵はあくまで首級の価値観について述べた。

「………それもそうだな」

どこかからかパトカーの音がした、警察に通報した者が路上の喧嘩を観戦していた観客にいたのだろう。

「……警戒されたな」

ソリッド・スネークが言う、現代社会、そういうのはあまり無い。突如目の前にある流血沙汰、か弱い女性ならば悲鳴すら上がるだろう。

そして二人は何故か牛丼屋にいた。

「何故?」

「バイアスだ、逃げる者は逃げ続けるとな」

「なるほど」

ソリッド・スネークは牛丼並盛、宮本武蔵は牛丼大盛りである。

「ふむ、世情が荒れているな」

宮本武蔵が先程の乱闘騒ぎについて感想を述べた。

「そうか?俺達の強者のオーラを感じられるだけの脳味噌があるだけだ」

「そして争う、男だな、そういう益荒男はいくらでもいたな、だが力量不足については素直だったな」

宮本武蔵はソリッド・スネークの言葉にそう返した。宮本武蔵の名前一つで武名を上げようとする人間は多い、武芸者という者は強さこそ至上の理、他の理など南蛮から伝来した砂糖菓子、金平糖のように甘い理だ。

「まぁ男らしさの病理だな」

ソリッド・スネークはそんな事を言う。

「病理、つまり病気」

宮本武蔵は言葉を少し言い換えた。

「戦争馬鹿は男が多い、それは事実だ」

ソリッド・・スネークは長年の経験から会得した経験則を語る。

「ふむ」

二人は牛丼を食べ進めた。


そこに一人の男が現れた、目隠れ、目まで黒い髪を伸ばした学生服の男。

「あ、あの………」

「「なんだ?」」

「さ、さっきの戦い、み、見てましたよ、ス、スゴいですね」

「……」

「……」

ソリッド・スネークと宮本武蔵は沈黙した、こういう人間はかなり両極端になる。

「函館からの豪華客船のフェリー、それはカジノ船、そこでは喧嘩賭博がある」

「喧嘩賭博?」

ソリッド・スネークは訝しむ。宮本武蔵はウキウキとしながら返答する。

「そうか!出させてくれ!」

簡単なお仕事の話だった、カジノ船、日本の領海内を日本国内とする、ならば領海の外、そこはもはや日本国外である。その法の抜け穴、法の盲点を突いたのがカジノ船だ、もはや賭博法適用すらも無い。もちろん決闘罪もだ。そして傷害罪、殺人未遂罪、殺人罪でさえ警察の喉から手が出るような手は出ない。

日本国外の海上とは無法地帯と同義、同質なのだ。

「は、話が早くて助かる、きゅ、究極格闘技大会デッド・オア・アライブ、それに出ませんか?」

二人の答えは………


667 : 『知られざる益荒男達』ソリッド・スネーク&セイバー :2022/03/20(日) 21:23:39 4rxTFKQo0
【クラス】
セイバー

【真名】
宮本武蔵(刃牙道)

【ステータス】
筋力EX耐久B敏捷A魔力E幸運C宝具A++

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
対魔力:E
魔術の世界についてまるで知らないし、『魔道』に堕ちたわけでもない。

【保有スキル】

第五勢(A) 二刀の刀の利点、威力を最大限に発揮する構え。剣の思うまま、状況の流れるままに戦う二天一流だが、強敵と対した時、運命と対した時のみ己を静め、剣心を零に落とし、構えを取る。

無空(A) 剣者が到達する最高の位。究極の境地。柳生新陰流・水月に相当する。無空なるが故に無敵。これ捉える者、無限の境地に達した剣者のみ。多重次元屈折現象を用いた斬撃であれ、無空なるものは捉えられず。
戦闘続行(EX) とても生き汚い。負けない為なら死んだふりなどお手の物。弁舌で煙に巻く、みっともない逃走から超回復すらやってのける。「生き恥を晒してでも最終的に敵を殺す、トドメを加えてやる」「これは勝つための逃走、負けるための逃走ではない、小姓の夜伽の真似事だって場合によってはしてみせよう」

凶眼(EX)、流派・二階堂平法松山主水大吉が編み出した『心ノ一方』はすくみの術とも呼ばれる。刀を用いない技。相手を金縛りにかけるという超能力じみた技であったらしい。それは殺気を込めた眼で睨みつけられた人間にあまりにも死を予感させるかららしい。気迫、剣気そのものが既に相手そのものを已に『殺した』と錯覚させる。次元の違う争い、それはもはや贅沢なまでの害意と害意のぶつかり合いである。前人未到の領域を開拓した猛者だけが味わえる世界、俗にメンチビームとも言われたりする。

【宝具】

『五輪書』A++

宮本武蔵の著した兵法書。 剣術の奥義をまとめたといわれる。 寛永20年から死の直前の正保2年にかけて、熊本県熊本市近郊の金峰山にある霊巌洞で執筆されたとされる。 自筆本である原本は焼失したと伝えられる。云わば彼の生涯の全てを語った自伝である。宮本武蔵は剣術家である前に兵法家だった。武士とは剣を極めるだけでなく兵法を極めなくてはいけない。そして宮本武蔵はその内容を執筆者なので全て丸把握している……はず。

【weapon】
特注の日本刀、どこかの金持ちじいさんが金を注ぎ込んだ逸品。

【人物背景】
伝説の剣豪宮本武蔵のクローン。
 
【サーヴァントとしての願い】
これは剣豪以前に一人の男、一人の戦士としての業、強き者と戦いたい。


668 : 『知られざる益荒男達』ソリッド・スネーク&セイバー :2022/03/20(日) 21:24:37 4rxTFKQo0
【マスター】
ソリッド・スネーク

【マスターとしての願い】
この馬鹿げた戦争を終わらす。

【weapon】
無し

【能力・技能】
主に軍隊格闘術CQCを巧みに使い、様々な戦争を一人で単独潜入で基本隠れながら渡り歩いてきたとされている。あらゆる強敵を倒し、時に大型機械兵器メタルギアを破壊したりした。戦車を一人で破壊したのはもはや眉唾物だ。

人物背景公式には不明。

出典メタルギア


669 : 『知られざる益荒男達』ソリッド・スネーク&セイバー :2022/03/20(日) 21:27:22 4rxTFKQo0
投下を終了します


670 : ◆zzpohGTsas :2022/04/01(金) 02:41:13 GK8aDvk60
投下します


671 : キミの記憶 ◆zzpohGTsas :2022/04/01(金) 02:41:55 GK8aDvk60
.




     儚くたゆたう世界を キミの手で守ったから

     今はただ 翼をたたんで ゆっくり眠りなさい

     永遠の安らぎに 包まれて love flew on eternity

     優しく見守る私のこの手で眠りなさい

     笑ってた 泣いてた 怒ってた キミの事覚えている

     忘れない いつまでも 決して until my life is exhausted




.


672 : キミの記憶 ◆zzpohGTsas :2022/04/01(金) 02:42:10 GK8aDvk60
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 何かが違うと、少女は思った。

 学園での生活に、不足や不満を覚えた事はなかった。
フランスから留学にやってきた、名家の令嬢である。太陽王として後世に語り継がれ、世界史に於いてその名を正しく太陽か、綺羅星かの如くに輝かせる大王・ルイ14世の統治時代から続く大商家。
これを母体とする巨大な株式会社のCEOの、末娘。それが、彼女の素性であった。

 生まれに貴賤のあるなしかはさておいて、血筋、と言う面で言えば紛れもなく彼女は最上位の血統にあたるであろう。金銭もコネも、唸る程存在する。
勿論、学園と言う閉じた世界に於いて、これ程の少女が目立たない筈もない。その扱いは専ら、麗しい羽の胡蝶、高嶺の花、一粒の美しい宝石。それに等しい。
優婉な容姿の持ち主でもあった。煮溶かした純金を糸状に誂えたような、美しく照り輝く金髪に、エメラルドの様だと言う王道の表現がこれ以上となく相応しい緑の目。
加えてその可憐な顔つきと、女性的な曲線美と丸みを帯びた、身体つきである。大衆の中に紛れ込ませたとしても埋もれる事無く、その存在を彼女は主張出来るであろう。
飾らぬ言葉で言うのであれば、可愛らしい、と言うべきか。それだけでなく、声もまた、鈴を転がしてみせたかのように透明感のある綺麗なのだ。
笑みもまた、魅力的だった。屈託がなく、邪気もない。弾けるような明るい笑顔は、一目で、ああこの少女は善性の塊のような、優しい性格なのだろうな、と誰しもに納得させる魔力があった。

 異性からの評価が、頗る良いのは言うまでもない。凡そ、この学園の中で、彼女の事を悪し様に言う男は、学生は勿論、教師ですら存在しない。
同性からも、同じ評価だった。あの娘可愛いからって、仕草や声が、男に媚びている。猫を被って、ぶりっ子ぶっているのが、イラつく。その様な評価が、まるでない。
男の心理は男が一番良く分かるように、女の心理をよく理解するのもまた女である。仕草や声の調子でコロリと男は騙せても、同じ性別の人間は、騙せないのである。
だから、皆、良く分かる。彼女の所作や声は、素のもの。天来より授かった自前のサガ。彼女の普段の行いには打算もなければ裏もない事を知っているのである。
自分でテリトリーを築こうと言う意思なく、勝手に居場所が作られて行く。そしてそれを誇る様子も、彼女にはない。こんなもの、嫉妬するだけ無駄である。
余人には、僻みにしか見えなかろう。そして、そんな人物にすら、彼女は優しいのであるから、彼女を嫌おうと言う人物からすればもうお手上げである。こんな事をされれば、好かざるを、得ないじゃないか。好いてしまうのが、人のサガであろう。

 誰が言ったか、彼女を指してマドンナと称した。女神みたいだね、と誰かが言った。 
言い過ぎだよと彼女は笑ったが、そこで、変な違和感を感じた。今見たいなやり取りではないが、そんなことを昔、言われた事がある。
誰もいない、黄昏の浜辺。踏んでも痛くない柔らかい砂の上を、白くて薄いドレスを着た自分が、聞いた事もないし、歌った事もない歌を口ずさんでいる。そんな記憶が、瞼の裏をチラついた。

 その浜辺はいつも荒れる事無く、つねに、さざ波を波打ち際まで運んできた。同じ波は二度とこないし、繰り返さない。そうと言ったのは誰だったのか。
確かにそうかもしれないが、送られてくる波は何時だって、優しくも小さく、そして弱い勢いの波だった。彼女がその浜辺を去ってしまったとしても、永劫。
そんな気怠い波が緩やかに起こり続けるだけの浜辺であったことだろう。沖を遊弋する船もなく、空を舞うカモメもウミネコもまたない。
思えば、ヤドカリも小カニの類も、見た事がなかった。もっと言えば、沖の向こうに広がる水平線の先に、何があるのかすらも、気に留めた事がなかった。それを当たり前の物だと、認識していた。

 ――貴女に恋をした――

 ……彼女が、黄金色の朝焼けが美しい浜辺に立ち尽くしていた時代において、その始まり、原初と呼べるまでに遡れる最初の記憶。
その瞬間に近い時に、そんな事を言ってやって来た男(ひと)が、いたっけ。擦り切れたような黒いローブのような物を身に着けた、
子供の頃に聞かされた童話に出て来る胡散臭いペテン師だとか詐欺師を思わせる語り口でしかし、話しかけた言葉は余りにも直截で、飾る気も何もない、真っ直ぐなプロポーズ。
人生でそんな事を言われたのは初めてだったから、その男を疑うよりも先に驚いてしまった事も、覚えている。


673 : キミの記憶 ◆zzpohGTsas :2022/04/01(金) 02:42:24 GK8aDvk60
 口を閉じれば、死んでしまうんじゃないかと思う程に、
良く喋る男だった。自分が話すだけ話して、中々本題に入らない。勿体ぶって話す人だと、初めの数分言葉を交わすだけで解ってしまう程であった。
その上、使う表現も、何処か、オーバー、大きすぎるきらいがあった。初めて聞いた時は、何処かおかしかったものだ。私の事を、『女神』だなんて――――――――――。

 封じられた記憶の蓋が、一気に開放された。

 何時までも懐に抱いていたい、懐かしくて愛らしい既視感が、一気に身体に叩き込まれる。

 それまで他愛のない話をしていた、同じクラスの女友達達に目もくれず、彼女は走り出す。学園の福利厚生の一環。学生や教職員、用務員達に開放されている大食堂での話だった。
まだウェハースやコーンフレーク、アイス部分を大量に残したジャンボパフェをテーブルに放置し、急いで席を立って食堂から去って行く彼女の姿を、直前まで一緒だった女友達はキョトンとした表情で見つめていた。

 階段を一足飛びに駆け上がって行きながら、彼女は屋上を目指していた。すれ違う生徒や教師が驚いて彼女を見ていた。学園では、落ち着いた娘として通っているからだ。
昔、大好きな人と一緒に、学校の話をした事を思い出す。歳の近い人たちと一緒に、同じ部屋で同じ事を学び、お昼の時にはそれぞれ違うご飯を食べて、思い思いの事を話して。
そして時間が来たら、外で遊んだり、同じ部活で汗を流したり……。そんな事が出来る世界がある事を、彼女は知らなかった。其処で、時間を過ごしてみたいと心から思った。

 ――その夢は、叶った。この土地に、彼女の知る大切な人間が誰もいない、と言う形でだが。

 屋上の扉を勢いよく開け放つ。
いつかの時に話していたみたいに、大事な友達が、其処に集まっていてほしかった。
明るくて優しい香純が一人で盛り上がって、それを司狼がペットの機嫌でも直してやるみたいに窘めてて……。
そんな様子を一歩引いたところから、玲愛と螢、別の学校の筈なのになぜか混ざっているエリーが、めいめいの反応を見せつけて。

 そして、そんな有り触れた、何処を切り取っても平凡な毎日に、楽しんでいるのか楽しんでいないのかと言う微笑みを浮かべ、身を委ねる、大事な人。胸に空いた穴を埋めてくれる、大切な――

「レン!!」

 叫びながら開け放った先には、寝転がる青年が一人だけ。
雲一つない青空を眺めながら微睡んでいたその男は、昼休みのひと時を此処で眠って過ごしている……と言う訳ではないらしかった。
そもそも、纏っている制服が、全然違うのであるから。この学園の生徒ではない事は明白。

 ……そして何よりも、その青年を見た瞬間、情報の奔流が、爆発して行く。知らない筈なのに、知っている。まさに既知感の奔騰そのもの。クラスは、『セイヴァー』、その真名(な)を……。

「人違いだよ」

 ゆっくりと起き上がって、少し眠たげな眼で此方を見ながら、青年は気だるげな声音でそう言った。

 ――これが、『マリィ』と呼ばれる少女と、『有里湊』と呼ばれる少年の、出会いの一幕であった。


.


674 : キミの記憶 ◆zzpohGTsas :2022/04/01(金) 02:42:39 GK8aDvk60
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 マリィにとって大切な人であるところの、藤井蓮に似ている。そんな青年だった。
年のころは、ドンピシャだろう。背格好も、近い。顔つきは勿論全然違うのだけれど、中性的と言うか、ともすれば女形に近い顔立ちと言う点では、蓮と同様の特徴と言うべきか。

 何処か、超然とした雰囲気の男の子だな、とマリィは思った。達観している、老成している、とも言い換えられよう。
斜に構えているだとか、諦観だとか、否定からかかるような皮肉気な態度だとか、そう言うのとは違う。例えて言うのならそう、カリスマ、とも言うべき雰囲気である。
大人しそうな外見とは裏腹に、強い意思のようなものが、内奥から発散されているのである。宛らそれは、樹齢数千を超える大樹。神霊ですらが宿りそうな程の、巨大な神木が人の形をとっているかのような男子である。

「ウワキしてそう」

「え、なんで」

 マリィの口から飛び出た、名誉の毀損そのものみたいな発言に、湊は困惑する。場所をベンチに移していた。

「その顔の良さで、女の子をその気にさせる事を言ったりしたら、メっ、何だからね? 言ってないよね?」

「…………………………」

 無言で湊は両の手で握り拳を作りだし、一本づつ、その状態で指を立てていく。
「ゆかりだろ、美鶴先輩だろ、風花だろ、アイギスだろ、エリザベスさん……」。小声でつぶやく言葉の意味をマリィが理解した瞬間、胸ポケットに入れていたボールペンを取り出して、それで湊のこめかみを小突いた。

「痛ッ」

 ペン先は出してなかったものの、マリィは勢いをつけていた為か。かなり痛かった。こめかみを抑える湊。

「浮気する人は、抱きしめてあげません」

「……ハグ魔?」

 向こうの国では久方ぶりの再会の時に、抱きしめ合ったり、何ならば、軽い接吻(ベーゼ)すら交わすと言うが、その類なのだろうかと、湊は考えた。

「いや、まぁ……僕も、いつも通りの日常が続いてたんだったら、付き合ってた女の子達に謝ったり、殴られたりもしたんだろうけどね……」

「むっ、責任逃れは更にマイナス5ポイントだよ」

「責任……逃れ、ね」

 困ったような苦笑を浮かべ、湊は空を見上げた。ああ、蒼い。卒業式の時に、月光館学園の屋上で見上げた時と同じような、蒼い蒼い、空。

「特別なんだろ、何とかしろよ。そう言われた事もあったっけか」

「? セイヴァーの、特別?」

 そもそもサーヴァントになる時点で、特別な存在であろうし、湊はそのサーヴァントの中でも更に特別な存在に宛がわれる、エクストラクラス。
セイヴァーの号を与えられている人物だ。今更、湊自身が言うまでもなく、特別な存在であろう事は、論を俟たないであろう。

「別に、自分で自分の事を特別とも、別格とも思った事もないんだけどね。人よりもちょっとだけ、出来るようになる速度が早いだけ、位の感覚だよ」

 ふぅ、と一息吐いてから、更に言葉を続ける。

「少し出来る人間なりの、役割を全うした。それだけの事なんだけど。そのせいで、友達とも久しく遊べてないし、女の子達に責任を取る事も出来ないし、殴られも蹴られたりも、してないんだなぁ」

 まだ、高校も卒業していない年齢だった。
世話になった先輩たちが、一足先に学園から羽ばたくのを見届けた後、今度は自分達が、来年の同じ日に羽ばたくまでの準備をしなければならない、そんな期間。それは、有里湊と言う人物から一切失われた。

 親がなく、親類からも厄介者、腫物のように扱われた青年は、影時間と言う非日常のワン・アワーによって初めて、年相応の輝かしいジュヴナイルを送る事が出来た。
満ち足りた学校生活だったと、湊は思う。勉強もやった、部活にも励んだ、一足早い大人の遊びも経験したし、お金を稼ぐ大変さも身を以て味わった。
そして何よりも、それらがサーヴァントとなった今なお記憶の中で輝いているのは、その時一緒にいた友人や、親切な人々の姿があったからである。
勉強が楽しかったわけじゃない、部活が生きる糧なのではない、大人の遊びに魅力を感じたのも、日銭を稼ぐ大変さを耐えられたのも。其処に人がいて、彼らと繋がれたからに他ならない。


675 : キミの記憶 ◆zzpohGTsas :2022/04/01(金) 02:43:13 GK8aDvk60
 ああ、日常は楽しかった。気づいてしまえば、こんなにも、人生を彩る要素はあちらこちらに転がっているのだと、思わされた。
だけど同時に、非日常にも、楽しみがなかったのか、と言われれば、嘘になる。影時間を何とかしようと、尽力していたあの時、湊は間違いなく、生を実感していたのだ。
リーダーと呼ばれ、頼られる事が嬉しくなかったのか? 嘘である。楽しかったし、天狗にもなっていた。
影時間を消滅させ、その為に、シャドウを消滅させる為のあの戦いに、己のヒロイズムに酔っていなかったのか? 否、湊のみならず、誰もが少なからず、酩酊していたに違いない。
あの時間を楔にして、S.E.E.Sとは強い絆で結ばれたのだ。アイギスや、望月とも、出会えたのだ。無駄であったと、憎めるべくもない。

「僕が少し出来て、頼れるリーダーとしての居場所が確保されてたのは、本当に、どうしようもない非日常の世界での事なんだ。その世界が続いて欲しかった、と言う思いも、なくはなかった」

 「だけど、さ」

「それじゃ、良くないよね」

「よく、ない……?」

「非日常の世界が当たり前になって、日常の世界に流出し始めたら、日常の世界でしか生きられない人達に迷惑だろう? 迷いはした。何なら、僕には非日常の世界が終わる位なら全人類を道連れに出来る権利もあった」

「選んだの? セイヴァー」

「まさか」

 即答し、マリィの問いを湊は否定した。

「現実の厳しさも良く分かってたけど、『楽しい事が用意されているのもまた現実の世界』なんだって僕は知ってるんだ。じゃあ、非日常に逃げる必要性はない。現実にだって、耐える事も出来るよ。人の嫌がる事はしちゃいけない、当たり前の話だろ? だから、道連れ何て、僕には選べないさ」

 影時間と言う非日常を放置し、その時間の間存在する悪夢の楼閣であるところのタルタロスを無視する、と言う事は。
逃れ得ぬ滅びとイコールである、『ニュクス』の来臨を口を開けて待っているのと同じ事であった。
降誕の暁には、地上に如何なる結果が齎されるのか、それは最早改めて説明する程のものではなかった。その通りの結果しかない。地球上の全ての生命体が、一切の例外なく滅び去るだけだ。

 非日常の幻想の中でしか生きられない存在がいる事を、湊は知っている。
そして、その幻想が崩れ去るのなら、と言って、自棄になる人間の胸中もまた、理解は出来る。
湊もまた、両親を一時に突然失い、生きる活力も目標もなくした時、同じような事を微かながらにでも抱いたからだ。
だが、湊が非日常を生き抜く為の力の糧とした絆の力は――高校2年生の1年間を楽しいと思えた理由は、どうしようもなく、日常と現実の中でしか生きられない者達によって齎されたもので。
そして、彼らの多くが、辛い現実に直面しながらも、それでも、湊との出会いを切っ掛けにもう少し前を向いて歩いて行こうと心に決めた者達で。
ああ、彼らを切り捨てられない。彼らの死を、願えない。特筆するべき所なんて何もない、英雄的な所なんて何もない。湊は今でも自分をそう思っている。
何処の誰とも知らない何者かが尊ぶ破滅願望と不可分の非日常と幻想よりも、湊が良く知る大切な人が生きたいと願う日常の方を、選んだに過ぎないのである。

「自分に特別な才能があったとすれば、選べる自由が少なからずあったって事で、そしてその選択は、まぁ、自分一人が犠牲になる事と引き換えに世界が存続するって事で……」

「……寂しい?」

 後悔している? とは、マリィは聞かなかった。していないと言う確信があったからだ。

「……うん。寂しくは、あるかな」

 やや、間を置いてから、寂寥の念を感じさせる笑みを浮かべ、湊はマリィの問いを肯定した。
許されていた罪悪感が、きゅっ、と。マリィの胸を締め付ける。片時も忘れた事はないけれど。蓮も許してくれたけど。しこりとしては、それはやはり、彼女の心に残っていた後悔。

「でもみんな、僕がいなくても楽しく、上手くやってそうだからね。それでいいんだ」

 ああ、似ている。
日常の中に降り注ぐ陽だまりに焦がれ、それを求め、取り戻そうと足掻き、結局、望んだ形で取り戻す事が終ぞ出来なかった、あの青年。
マリィが地獄へと誘ってしまった、藤井蓮に、余りにも、彼は似過ぎていた。


676 : キミの記憶 ◆zzpohGTsas :2022/04/01(金) 02:43:43 GK8aDvk60
「セイヴァーは、貴方をそんな風にしちゃった人達を、許せる?」

「許してるし、感謝もしてるよ。彼らも大切な、友達だ」

 どうあれ、自らの身体にデスのシャドウを封印しなければ、今の湊は存在しなかったし、世界も破滅していた。
また、湊の中に封印されていたデス……ファルロスもまた、湊に対しては友誼のような物を抱いていて、世界に滅びを齎す事に対しては否定的だった。
彼らがいなければ……そうと考えた事もあるし、そう言うifも実際あったのだろう。だが、結果論的な話ではあるが、彼らがいたから、彼らに人格があったから。
世界も救われたのだし、湊が守りたかった日常もまた、暖かなままで守られた。それで、良かったのだ。これで、いいのである。

「わたしの大好きな人と、同じ事、言う」

 湊の言葉に、マリィは言った。優し気で、しかし、寂し気な声。

「わたしはね、大事な人を、酷い所に行かせちゃったんだ。いっぱい痛くて、血を流して、歯が震える程怖くて……人が、たくさん死ぬところに」

 自分がいなければ……自分がもっと、カリオストロの目にも留まらないような、凡俗な女の子だったらと。マリィは考える事がある。
マリィと藤井蓮の在り方は、不可分であり、コインの裏表である事は、彼が如何なる目的でこの世に生を授かったのかを考えれば、マリィが凡俗であったのなら、と言う仮定は前提から破綻している。
だがそれでも、と思うのだ。もし自分が凡俗だったら? もっとカリオストロが別の目的で藤井蓮を創造していたのだろうか? そうであったのなら、彼は、幸せだったのか?

「友達思いでね、無意識に女の子をその気にさせちゃうウワキな人でね、時々馬鹿な事しちゃう人なんだけど……わたしの大好きな、優しい人」

「……そうか」

 湊は、黙って、マリィの話を聞いていた。

「わたしとかね、カスミが酷い目に合うと、レンは本気で怒るの。それだけ、わたし達の事を大事に思ってくれてるんだけど……わたし、知ってるんだ。レンは、怒る事が、苦手な人なんだって」

 勿論、蓮は実際に全く怒らない人間だった訳じゃない。
寧ろ、マリィの知る蓮は、何時だって、怒っていた。自らの日常を完膚なきまでに破壊した黒円卓に、それを率いる黄金の獣、ラインハルト・ハイドリヒに。
そして、斯様なふざけた絵図を描いた、カール・クラフト・メルクリウスに。蓮は、何時だって、嚇怒の念を抱いていたのだ。

 彼らが、蓮にして来た仕打ちを考えれば、許されないのが当たり前だった。それ程の所業を、彼らは犯したのである。
しかしそれでも、蓮は、彼らに歩み寄ろうとした。理解しようと、尽くした。終ぞ彼らの思想に賛同する事はなかったが、それでも、許さないぞ、殺してやる、と言って。
話し合いもしないで殺しあいにかかりは、しなかった。彼らであろうとも、そう言う事をしなかったのだ。そうしたとて、誰も文句を言わない境遇に身を置かされていたにもかかわらず。

 マリィについても、同じだった。
彼女がいなければ、蓮が大事に思っていた香純は、人殺しのカルマを負う事もなかっただろう。それに対して、非難する資格は蓮にはあった筈なのだ。
だが、蓮はマリィを赦した。恨み言を言い放っても許される。大嫌いだと突き放されたとて、おかしくない。それなのに、蓮は、マリィを赦した。抱きしめた。

 理不尽に日常を奪われた青年は、逆に言えば、そうでもされなければ怒りを抱けないと言う事の証明であった。
陽だまりにずっと当たっていたい、一緒にいて楽しい人物達の時間に永遠に身を委ねていたい。青年はこの願望を、地獄しか生まないと心底卑下していたが。
マリィは、その渇望が、藤井蓮と言う青年が生来宿していた、優しさと子供っぽさからくる、切なる祈りである事を知っていた。

 蓮と湊は、当然の事、生い立ちは元より、顔だって違うし身体つきだって違うし、細部の性格だって全然違う。
だが、『自分がいなくなってでも、大事な者を守りたい』と言う思いが余りにも強い、という事を、マリィは感じ取っていた。
怒るのがヘタクソで、最後は自己犠牲で解決を図ろうとする。それは、マリィと言う少女が、何よりも愛し、幸福を祈り、そして、抱きしめたいと思う人物の姿であった。


677 : キミの記憶 ◆zzpohGTsas :2022/04/01(金) 02:44:01 GK8aDvk60
「レンは多分、今、とっても怒ってると思う。わたしに酷い事した人を、絶対にゆるさないって、強く思ってる」

 マリィは、全ての人物の幸福を祈る女神としての地位を、恐るべき少年の手によって、力尽くで以て追放され、今こうして、聖杯戦争の開催地に招かれているに至る。
身体が拉げ、やがて砕け散り、飛散した肉片の一つ一つに厚みがなくなるまで踏み潰された時に、マリィは、思った。
ああ、あの時の因果が巡って来たのかも知れない。大好きな男の子を地獄に誘い、それでいて、許されてしまった罪。
痛いだとか、どうしてそんな酷い事が出来るのだろうか、と。踏み躙られていた一方で、こういう形で清算される過去もあるのかと、冷静に感じ入っていた自分が、確かにあの時存在したのである。

「だからね、出来るんだったら……また、会えるんだったら。『落ち着いて』、って。言ってあげたいかな。レンは、思い切ったら、後は真っ直ぐ行く人だから」

 私の仇を取ってと言う事はしない。自分の滅びは、受け入れているから。
だけど、怒らないで、とも言わない。自分の為に怒ってくれる事は、確かに、嬉しいから。
少しだけ、冷静でいて欲しいのが、マリィの願いだった。あなたは倒すべき誰かを間違えない人。多分、あなた程の人が倒すと心に決めたのだから、それは正しく敵であるのだろう。
倒したいのなら、落ち着こう。そうと伝える為だけに、マリィは、彼にまた、逢いたかった。

「でもその為には、聖杯戦争、だっけ? 勝たなくちゃいけないんだろう?」

 そう、それこそが最大のネックであった。
これが昔の、蓮の為のギロチンとして在れる事が嬉しかった時代だったのならば、兎も角。
女神として昇華され、痛みと幸福を知った彼女が、今更、嘗て諏訪原の街で引き起こされたような、スワスチカを巡る殺しあいのような真似は、到底出来ない。

「……」

 それに対する答えは、まだ、見つかってない。
考えてみれば、あの戦いに於いて、マリィと言う存在は受動的な存在だった。
諏訪原の街に被害を出さない為の立ち回りとは? みんなを守る為には? それを考えていたのは、藤井蓮なのであって、マリィではなかった。
もっとあの戦いに、積極的に蓮と言葉を交わしておけば良かったとマリィは思う。退屈だからと寝ていた自分の頭を、叩きたくもなって来た。
蓮の為の力として活躍していればよかったあの時と違い、今度は正真正銘、マリィ本人が独立して、自分の意思と頭で選び、勝ち抜かなくてはならないのだ。

 自分に、出来るだろうか?
アレだけ頑張った蓮だって、その手で守り切れずに取りこぼしたものがいっぱいあったと言うのに。
座にいた頃の力を剥奪された今の自分に、この戦いを生き残る事が――今の自分に、殺しを選ぶ事が、出来るのか?

「答えは、今じゃなくても良いよ」

 黙りこくり、目を伏せ、思案に耽るマリィを見て、湊は言った。

「多分、今どれだけ考えた所で、それはやっぱり、理想論じゃないかな。マスターは、今の自分を全力で楽しみながら、時が来たら、僕と一緒に、頭が痛くなるほど考えればいい」

 「――そうだね」

「今は、今を楽しもう。答えの方が、近づいてくるまで。明日の死が、見えて来るまで。何て言ったっけ……これ……。――ああ、そうだ」

 思い出したかのように言葉が浮かんだ湊。マリィも、同じ事を思い出したらしい。

「メメント・モリ」

「メメント・モリ」

 memento mori。ラテン語で、死を忘れる事なかれ、と言う意味を示す警句である。
古代ローマの時代には広く受け入れられていた概念であり、ヴェスヴィオ火山の噴火によって一夜にして地図と歴史から消滅したポンペイの街からは、
この警句をイメージ図化したモザイクのテーブル天板が出土した位である。つまりそれだけ浸透し切っていて、家具のモチーフに使われていた程なのだ
尤も、ローマの民は、どうせ死ぬのなら、めい一杯人生を楽しもう、と言う意味合いで使っていたようであるが。


678 : キミの記憶 ◆zzpohGTsas :2022/04/01(金) 02:44:33 GK8aDvk60
「よく知ってたね、マスター」

「私を守ってくれてた人が良く言ってた言葉だから。……あまり好きな言葉じゃないんだけどね」

 それは、言葉自体が受け入れられないと言うよりは、今も、彼……黄金の獣に対する苦手意識があったからなのであるが。

「セイヴァー。……それじゃ、わたしの大好きな人に会えるまでは、一緒にいてくれる?」

「いいよ」

 即答する。

「う、ウワキじゃないよ。その辺りは、その、かんちがい、しないでね?」

「そんな事したら怒られそうだからしないよ」

 いや本当に、話聞いてる限りだと、マスターの彼氏怖そうだもん。

「……でも、全部が終わったら、セイヴァーを、抱きしめてあげたいな」

 それは、マリィの本心であった。
セイヴァー……有里湊は、見るからに儚くて、だけど強い意思を心の裡に秘めていて。
……何よりも、見ていて、幸福であったと言う気配をまるで感じさせない程、幸の薄そうな、青年であったから。そして、そう言う人の魂をこそ、マリィは、抱きしめてあげたかったから。

「……悲観される程、薄幸の人生を送って来た訳じゃないぜ、僕も」

 有里湊の人生は確かに、悲劇的であり、それでいて、余りにも短い人生であったが。
それでも、湊は自分の選択を後悔した事もないし、自分の辿って来た足跡を、誰かに哀れまれる程、幸せの息吹も芽吹きもない人生であった訳じゃないのである。

「だけど……そうだな。もしも、マスターが許してくれるのなら……」

「? 許して、くれるのなら……?」

 次の言葉を紡ぐのに、湊は、数秒程の間を必要とした。
言おうか言うまいか、迷っている様子だった。思い付きはしたが、言うのが気恥ずかしいみたいで。照れ臭そうな態度で、頬を掻きながら、こう言った。

「……膝枕の方が、良いかな」

 今際の際に、機械の乙女の膝に身体を委ね、見上げた空が綺麗だった事を、湊は、今でも覚えているから。
マリィが蓮に逢える事を夢見ているように、湊も、女神のような人物にそう言う事をして貰えるのは、悪くはないかなと思っていた。

「あっ、それ……蓮にもやってあげたいかも」

 抱きしめるより、そっちの方が良い事もあるかな、と一瞬思った。
ならば、蓮にも……カリオストロが羨ましそうにしてたら、彼にも、試してあげたいな、とマリィは、思った。

「してあげたら良い。その方が、喜ぶだろうしね」

 ふっと笑みを浮かべ、湊は空に目線を投げた。良い天気だ。死ぬには、良い日かも、知れない。



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679 : キミの記憶 ◆zzpohGTsas :2022/04/01(金) 02:44:43 GK8aDvk60
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





     眩く輝くひととき みんなと一緒だった
 
     かけがえのないときと 知らずにわたしは 過ごしていた

     今はただ大切に 偲ぶよう I will embrace the feeling

     キミはね確かに あのときわたしの そばにいた

     いつだって いつだって いつだって すぐ横で笑っていた

     無くしても取り戻す キミを I will never leave you





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680 : キミの記憶 ◆zzpohGTsas :2022/04/01(金) 02:45:00 GK8aDvk60
【クラス】

セイヴァー

【真名】

有里湊@PERSONA3

【ステータス】

筋力C 耐久D(EX) 敏捷C 魔力A++ 幸運E 宝具EX

【属性】

中立・中庸

【クラススキル】

境界にて:EX
死の境界、そのもの。セイヴァーは己の魂を以て、あらゆる生命体に絶対の終焉を齎す存在、『ニュクス』を封印する為の閂。
そして、人類が抱くどうしようもない、死滅への願望、自滅衝動が、ニュクスに触れる事を防ぐ為の大扉である。こうなる事を、セイヴァーは選んだ。
そう言う存在であるからか、セイヴァーは『死』、『滅び』、『終焉』と言った、過程を無視して行き成りこういった事象を齎す現象を、ランク問わず全て無効化する。
言い換えれば、即死に対する完全耐性。

対概念:EX
宇宙一つと、等価の少年。
独力で唯一、ユニバースのアルカナ、即ち、根源に等しい場所に辿り着いた少年は、本来、単一の宇宙に於いて成せない事は何もないと言われる程の、全能の存在。
まさに、『宇宙』を体現する存在であった。いわばセイヴァーは、人間大の宇宙、歩く人型の特異点である。
その性質の故、セイヴァーの身体をもしも概念的な攻撃や支配の類で影響を与えたければ、文字通り、『宇宙一つを丸々支配出来る範囲の物を用意せねばならない』。
大海に墨の一滴を零した所で、全海が黒一色に染まる事などあり得ないのと、これは同じ事。
催眠の魔術や呪法を行おうとも、それが対人の物であるのなら一切意味を成さないし、広範囲に渡る広域精神操作であっても、単純にそれが宇宙全土の範囲に影響を与えられねば意味がない。
また、魔法手前とも言われる大魔術である固有結界や、精霊種などが行う空想具現化ですら、上述のように宇宙一つが範囲でなければ、セイヴァーをその影響下に置く事が出来ないどころか、
単純に質量及び範囲の面でセイヴァーに負けるので、『固有結界や空想具現化の方が内から張り裂けるように砕け散る』。

要約すれば、精神に作用する攻撃や概念的な改変や支配攻撃や行動は、宇宙以上のレンジをカバーして初めてセイヴァーに影響を与えられると言う事を証明するスキル。
一見すれば無敵の力だが、これはあくまで上述の効果にのみ有効なものであり、『直接的に相手を殴る蹴ると言った物理攻撃や、肉体を直接損なう魔術や呪術』には一切作用しない。用は、ダメージを与える系の行動については、素通しする。

【保有スキル】

根源到達者:D-(EX)
「 」から生じ、「 」を辿るもの。宇宙の渦であり、全ての始まりであり、全ての終わり。根源と呼ばれるところに、到達したかどうか。
根源接続者と違う点は、『生まれついてその場所に接続していたか否か』の違いであり、このスキルの場合は、後天的に自らの力で到達した事を示す。
ランクEXとは、到達しただけで奇跡と言われる根源の、更に最奥に到達した事を証明する。事実セイヴァーは、すでに説明した通り、全能の存在とニアリーイコールであった。
だがセイヴァーは――己の全能性の全てを、絶対の死であるニュクスを退ける事と、人類の想念がニュクスに触れないようにする鉄扉になると言う事に注いでいる。
その為、サーヴァントとして召喚されたのとは別に、その全能性を十全に発揮する事は出来ない。その為セイヴァーに出来る事は、己の振るうペルソナ能力の超広範化に特化している。
セイヴァーは装備したペルソナによって己のステータスやスキルを変動させる事が出来、装備したペルソナ次第によっては、高ランクの対魔力や無窮の武錬、勇猛、再生スキルを得る事が可能。
またセイヴァーは、単一の力のみでミックスレイドと呼ばれる力を発揮出来る、唯一のペルソナ能力者でもあり、また、魔力の消費によって、受胎と呼ばれる、装備したペルソナ由来の宝具を生み出す力にも覚醒している唯一の人物である。

死の淵:EX
戦闘を続行する能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負っても戦闘が可能。戦闘続行と呼ばれるスキルの、ウルトラ上位版。
自らの意志が健在である限り、身体の過半が吹き飛ばされようが、戦う事を止めない。セイヴァーは、死そのものの直撃を受けてなお、戦う事を。立ち向かう事を、止めなかった。

カリスマ:D+++
人を惹きつける力。大軍を率い、国家を支配すると言ったような魔的なそれではない。
が、セイヴァーの場合は対人でのやり取りに於いて、その効果は強く発揮される。具体的には、魅力的な青年に映る。


681 : キミの記憶 ◆zzpohGTsas :2022/04/01(金) 02:45:28 GK8aDvk60
【宝具】

『絆、宙へと続け(コミュニティ)』
ランク:E〜A++ 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:22
セイヴァーが他者と交流し、絆を深めることによって22の大アルカナに対応したコミュニティが形成される。
コミュニティの数やランク(交流の深さによって変動する)に応じてセイヴァーのステータス・スキルに上昇補正が加わる。

『心の宇宙(ユニバース)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:??? 最大補足:???
嘗てセイヴァーが築き上げ、そして到達したとされる、アルカナの旅路の果てに存在すると言う宇宙/世界。
この宝具に覚醒したセイヴァーは、その身で出来ない事など何一つとして存在せず、森羅万象から奇跡の意味を消し飛ばす存在となる。
生身での宇宙空間の活動や、次元防御や一切の概念防御を無効化する絶対の『死』ですらも、彼の身体を害する事は不可能となる。
その本質は、セイヴァーが結び、縁を育てた絆の力の真の到達点。セイヴァーでなくとも人間ならば誰しもが有している、
現実の流れを些細にでも良いから変える力が、究極のレベルにまで高められたそれであると言っても良い。言ってしまえばセイヴァー自体がある種の願望器である。
サーヴァントとして召喚されたセイヴァーは、生前のような無茶は初期段階では出来ない。――但し、様々な存在と縁を育んだ場合は、別である。
セイヴァーのステータスやスキルランクは、上述の宝具によって縁を築き上げた人物の数が多ければ多い程無限大に上方修正されて行き、場合によっては新しいペルソナにも覚醒する。
育んだ人々の縁が多ければ多い程、奇跡を消し去ると言われた程の力をセイヴァーは取り戻す事が出来、事実上セイヴァーの強さは青天井にも等しい。

【weapon】

ペルソナ能力:
セイヴァーが、ユニバースに覚醒する前から得意とする能力。セイヴァーの様に、複数のペルソナを使い分けられる存在を、『ワイルド』と呼ぶ。
才能のせいもあるが、身体にデスと呼ばれる特殊なシャドウを封印された影響で、その才能が奇特な形で頭角を現してしまった。

無銘・小剣:
セイヴァーは様々な武器の扱いに長けるが、とりわけ得意とするのがこういった小ぶりな剣である。
装備したペルソナによっては、本職の三騎士サーヴァントを圧倒する程の力を発揮する事も可能。

【人物背景】

知恵の実を食べた人間はその瞬間より旅人となった。カードが示す旅路を巡り未来に淡い希望を託して……。

とあるアルカナがこう示した。強い意志と努力こそが唯一夢を掴む可能性であると
そのアルカナは示した。心の奥から聴こえる声なき声…それに耳を傾ける意義を。
そのアルカナは示した。生が持つ輝き…その素晴らしさと尊さを。
そのアルカナは示した。あらゆるものに毅然と向き合い、答えを決するその強さを。
そのアルカナは示した。己を導く存在、それを知る事の大切さを。
そのアルカナは示した。他者と心が通じあう…その喜びと素晴らしさを。
そのアルカナは示した。目標に向かって跳躍するその力こそ、人が命から得た可能性であることを。
そのアルカナは示した。何もかもが不確か故に、正しき答えを導かねばならぬことを。
そのアルカナは示した。時に己を見つめ、自らの意思で道を決するべき勇気を。
そのアルカナは示した。永劫、時と共に回り続ける 残酷な運命の存在を。
そのアルカナは示した。どんな苦難に苛まれようと、それに耐え忍ぶ力が必要なことを。
そのアルカナは示した。避けようのない窮状においてこそ、新たなる道を探すチャンスがあることを。

知恵の実を食べた人間はその瞬間より旅人となった。アルカナの示す旅路を巡り、未来に淡い希望を抱く。
しかし、アルカナは示すんだ。その旅路の先にあるものが、絶対の終わりだということを。いかなる者の行き着く先も絶対の死だということを。

――青年はその死を、乗り越えた。その先に、宇宙を見、奇跡を成し、そして、自らの旅の終わりに、魂を捧げる事で、皆の幸せを約束した。
 
【サーヴァントとしての願い】

特にはない。女神の膝枕ってのも、悪くはないのかな


682 : キミの記憶 ◆zzpohGTsas :2022/04/01(金) 02:45:42 GK8aDvk60
【マスター】

マルグリット・ブルイユ@Dies irae

【マスターとしての願い】

レンとまた逢いたい

【weapon】

【能力・技能】

神としての魔力:
マリィは覇道神と呼ばれる存在になる前からして、当代の絶対神に該当する存在が、次の代を引き継がせるに相応しいと確信させる程の魂の質を誇る存在だった。
実際彼女は、その神の手からなる戯曲を経て、神の座に座る事が出来た。が、最強最悪の邪神に神の座を追われた今では、覇道の神としての性質もその当時の魔力はない。
なので、覇道神になる前。即ち、求道の性質を持っていた頃と同等程度の魂の質、魔力を有する程度に留まる。
程度に留まる、と言ったが、その魔力量は極めて膨大で、Aクラスの攻撃宝具を何発も行使した程度では、到底其処を見せぬ程には圧倒的な総量を誇る。
但し、これだけの魔力を以てしても、セイヴァーが持つユニバースの力を無理に引き出そうとすれば、一瞬で枯渇するし、彼女自身も消滅する。

呪い:
彼女が有していた、斬首の呪い。彼女に触れた存在は、首が飛ぶ。これは比喩ではなく、物理的に、ギロチンを落とされたように首が宙を舞うのである。
その呪いの程は極めて強固。聖杯戦争のマスターとしての召喚、かつ、神の座を暴力によって追われ滅茶苦茶にされた今では弱体化こそしているが、それでも、
対魔力を持たぬサーヴァントは彼女に振れた瞬間首が切断され即死。持っていたとて、触れ続ければ時間差で首が舞う。
粛清防御レベルの防護手段を以て初めて、数分は触れていても耐えられると言う程で、例え粛清防御があったとしても、それ以上の接触は危険水準となる。
但しセイヴァーの場合は、既に述べたような、概念的な力に極めて強い防御手段を持っている為、マリィに触れても平気である。

【人物背景】

嘗て女神と呼ばれ、そして、水銀の蛇の導きと、超越者との二人三脚で、女神の座に至った少女。
全てを愛し、全ての幸福と健やかなるを祈り、そして抱きしめた聖女。その性質の故に、最悪の邪神の生誕をも祝福してしまい、当たり前の様に、その邪神に仇を返された。

マリィルート後、うんこマンによってクソミソにされ、神咒神威神楽に至る前の時間軸から参戦。

【方針】

聖杯戦争に対する意欲は低い。取り合えず、今は頑張ってがっこうせいかつ


683 : キミの記憶 ◆zzpohGTsas :2022/04/01(金) 02:45:55 GK8aDvk60
投下を終了します


684 : 巨悪!相克の邪心 :2022/04/02(土) 18:23:51 K1XjZKUM0
投下します


685 : 巨悪!相克の邪心 :2022/04/02(土) 18:25:03 K1XjZKUM0
人の性は悪なり、其の善なる者は偽なり。
今人の性、生まれながらにして利を好む有り。
是に順ふ、故に争奪生じて、辞譲亡ぶ。

生まれながらにして疾悪有り。
是に順ふ、故に残賊生じて、忠信亡ぶ。

生まれながらにして耳目の欲有り、声色を好む有り。
是に順ふ、故に淫 乱生じて、礼義文理亡ぶ。

然らば則ち人の性に従ひ、人の情に順はば、必ず争奪に出で、犯文乱理に合して、暴に帰す。
故に必ず将に師法の化、礼義の道き有りて、然る後に辞譲に出で、文理に合して、治に帰せんとす。
此を用つて之を観れば、然らば則ち人の性は悪なること明らかなり。
其の善なる者は偽なり

荀子『人之性悪』より


686 : 巨悪!相克の邪心 :2022/04/02(土) 18:26:05 K1XjZKUM0
夜九時、刑務所ならば消灯時間になる時間、その二人は高級住宅街で防弾ガラスを全ての家のガラスにした豪邸にいた。

談話室、一つの机にソファーが二つ、時計はアンティークであり、産業革命前後のイギリスのものである。

「お前引いてみろ、左京」

黄色く派手な服装をした人間、いや、正確に言えば西洋妖怪の吸血鬼と呼ばれる存在、それが左京と呼ばれた男にタロットカードを引けと命令した。

命令というか頼んだというのが正しいのかもしれない。

「坊主めくりのようだな」

坊主めくりとは百人一首かるたでやるギャンブルである。

絵札が男性(殿)の場合、そのまま、自分の手札にする。

絵札が僧侶(坊主)の場合、引いた人は自分の手札全てを捨て、その札を山札の横に積んでいく。

絵札が女性(姫)の場合、山札の横に置かれた札(坊主を引いた人が捨てた札)、全てをもらう。

山札が全てなくなった時、一番たくさん札を集めた人の勝ちです。

「蝉丸をめくったプレイヤー以外の全員が持ち札を没収」

「蝉丸をめくったプレイヤーは即時に負け」

という変異的なローカルルールもある。

「ふん、西洋の坊主なら神父、つまり法王、そして女教皇も西洋坊主だな」

「……あまり関わりたくないな、私は無神論者に近いからな、だがギャンブルに関わる以上運命の女神や勝利の女神の実在は信じたくなるな」

「運命の輪というのもある」

「……ふむ、私がそこまで大それた存在かね?」

「御託はいい、引け」

左京はその言葉通りに引いた、こういうところでうだうだやってても意味が無い。

何かに頼み、勝利を乞う、そういうのに似たような事をしても運命は変わらない。

「刑死者」

引いたタロットカードのアルカナは『刑死者』だった。

吊るされた男のデザインに反逆者・ユダのイメージを当て嵌め、罪を犯し処刑された者の姿として解釈した呼び名。
死刑囚、受刑者とも。

ただし、このアルカナ自体は死を強く暗示させるものではなく、特殊な解釈とされている。

「2本の(2人の)樹木(女性)に挟まれた身動きの取れなくなっている男」

樹木の下に地面(らしきもの)が見られ、吊られている男の頭部は谷のような(深さが不明な為、掘られた穴とも、樹木と土自体が地面より高い位置にあるとする説もある)場所で両側の地面(のような部分)より低い位置に描かれている。こうした危機的状況にもかかわらず、男の表情は素直にこの状況を受け入れているかのように凛としたものであり、この男自身が望んでこの状況を招き入れたことを暗示している。つまりこの絵に描かれているのは単純な辱めの為の刑罰ではなく、通過儀礼の儀式であろうことが伺える。

また、このカードを逆さま(いわゆる逆位置の構図)に置き換えて眺めてみると、追い詰められた状況にいた男の姿が一転してほんのり笑みを浮かべた表情へと変わり、その姿は片足で超絶的なバランスをとりながらダンスを踊っているように見える。このことから、男はやがて通過儀礼の儀式を終え更なる高みへと進むであろうことが暗示されており、この絵の状況が決して避けて通ることのできないものであることを示す1つの要因となっている。

「それは二つの意味がある、地獄を待望し、地獄に落ちようとしながらも、その状況を望んでいる、苦難上等、そしてひっくり返せば笑顔でダンスってるように見える、獄中にいる事さえ計画のうち、という事を暗示する」

「獄中ね、そんなところで陰謀を企むヤツがいるとでも?」

戸愚呂兄弟というのが左京の部下にいたが戸愚呂兄は品性下劣な上に不死身だ、地獄そのものには行けないだろう、戸愚呂弟は殉教者のようにも見えた、吹っ切れたように暴れ回ったあの最後以外、彼は何かに苦しんでいた、元人間の妖怪でもあんなにも違うのかと不思議だった。

「いや例えだ、例え、例えじゃない場合もいるのかもしれないがな」

「そうか、この状況を望んで招き入れたか、なんだいつも通りか」

左京は生粋のギャンブラーである、何度も自分の命をドブに捨てようとする心意気があった。


687 : 巨悪!相克の邪心 :2022/04/02(土) 18:26:49 K1XjZKUM0
「で、お前は引かないのか?」

左京が吸血鬼に問う。

「このDIOは既に決まっている、世界だ!」

「世界ね、完成された計画を暗示してるな?」

「そうだな、ここら辺は解釈次第だ、中には物騒な発想が出来なくて言い淀む事もあるからな、俺達にとってのアルカナへの自己解釈は色々と違う」

「ふむ、愚者、月、悪魔、死神、そして道化師もどれも物騒なニュアンスを含めるとはね」

「そもそもオカルトというのがバイオレンスな要素を含むのだ、このDIOが言うんだ、相違ないだろう?」

「あぁ、妖怪と裏社会は密接だ、人身売買よりも妖怪を売った方が儲かる」

左京が悪びれずに言った。

表向きの職業は不明だが、持ち前のギャンブラーとしての才能と強運で若くして莫大な富を築いている。

妖怪を利用したビジネスに手を出しており、人間が妖怪をブローカー兼ボディーガードとして雇い売買用の妖怪を捕まえるという方式を作り出したのも左京である。

仙水忍が霊界探偵として活躍していた当時から妖怪の売買や虐待・虐殺等の非人道的な商売を行っており、彼がB.B.C.の屋敷に潜入した際にそこで「人間が欲望のままに妖怪を喰いものにしている光景」を目撃、これが原因で全ての人間に憎悪を抱くようになった。

「……妖怪を売る?」

「お前は売らんよ」

「………悪い男だ、ならば俺以外の全ては売り物なのだな?」

「そうでもないさ」


688 : 巨悪!相克の邪心 :2022/04/02(土) 18:27:24 K1XjZKUM0
「どうだかな………」

DIOは思い出す。スピードワゴンと呼ばれた男、貧民街の単なる溝鼠みたいな者と思っていた、いつの間にかジョナサン・ジョースターという愛憎入り交じる奇妙な関係性になった後、突如、ジョナサン・ジョースターの友人になった男だ。

彼の人間に対する鑑定眼は鋭く、的を得ていた。

「おれぁ 生まれついてからずっと暗黒街で生き いろんな悪党を見て来ただから悪い人間といい人間の区別は「におい」で分かる!こいつはくせえッー!ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッーーーーッ!!こんな悪には出会ったことがねえほどなァーーーァッ!環境で悪人になっただと?ちがうねッ!!こいつは生まれついての悪だッ!ジョースターさん早えとこ警察に渡しちまいな!」

そんな本性を見破られた。


689 : 巨悪!相克の邪心 :2022/04/02(土) 18:28:31 K1XjZKUM0
「貴様は純粋な悪だ、最初から黒と呼ばれる色合いをしている、ブラックダイヤモンドという宝石のように黒く、そして砕けない」

DIOも自分と左京という男が似ている事に気づいた。

近年凶悪化する少年犯罪の統計的なセオリー、正答では自分達を計れない、計り知れない悪というのがこの場にはある、統計の外側、領域外の悪党とも言える。

精神崩壊や神経衰弱から来る悪とは話が違ってくる。

「それはどうも、防弾ガラスより精神が硬いならば安心出来る要素だ、いや安心できない、か?」

「暗黒街を歩むならば適性検査は合格だろうな」

「そうか、公務員にもあるんだっけな」

「公務員?警察とか軍隊の事か?」

確かに警察や自衛隊と特別職の公務員というカテゴリーではある。元不良の元暴走族族長が夢に見ていた世界観との食い違いに憤死するかの如くになり交通機動隊に成ったという話もある。有り得ない可能性の一つは可能性はゼロではない。ゼロというのは公安のチヨダ、サクラに次ぐ隠語だが。

「役所とかもあるだろう?まぁ、俺以外の兄弟達は全員公僕になったんだ、役割を演じていたのかもしれないがな」

左京は四兄弟である、普遍的な一般的、貧富の話も含んだとしてもどこにでもある普通の家庭。

そんな中で彼だけが闇の住人、犯罪者、どこかの著名なアニメでは黒いだけの人型に描かれるように染まってしまった。

黒の長髪でオールバック、右目に傷があり、常に黒いスーツを着ている。

10年前は短髪だった。

「まぁよい、俺達は聖杯を得るためにはどんな手段も選ばない、それだけ分かれば良いだろう?」

「あぁ……そのようだな」

純粋な巨悪二つは使用人ヌケサクが持ってきた高級ワインを開けて乾杯した。トゥルン・ウント・タクシス ドゥンケル、伝統的なミュンヘンスタイルで、バゲットの皮を思わせる香ばしいモルト香が印象的です。若干、醤油を焦がしたようなカラメル香も感じられた。


690 : 巨悪!相克の邪心 :2022/04/02(土) 18:29:53 K1XjZKUM0
【クラス】

クラッシャー

【真名】

DIO@ジョジョの奇妙な冒険

【ステータス】

筋力A 耐久EX 敏捷B 魔力C 幸運C 宝具EX

【属性】

混沌・悪

【クラススキル】

対人類史:EX、人類史の否定するために生まれた存在、吸血鬼はそもそも人間にあらず、そして人間を超越して害する存在である、つまりはその存在そのものが覚醒し、本気を出せば人類絶滅など秒読みになる場合もある。もはや人類が奴隷、比喩や例えではなく家畜同然の生命体になるならば果たしてそれは『人間』と呼べるのだろうか?

吸血鬼:EX石仮面から会得した吸血鬼としての能力、日光を浴びると存在そのものが消失、焼失するというデメリットこそあるが夜間、サラリーマンの夜勤の時間にはその行動の真髄が発揮される、不老不死に限りなく近く、また、凄まじい再生能力を持っている。

【保有スキル】
吐き気を催す邪悪:A常人には思い至らない吐き気を催す邪悪と呼ばれる類の凶悪な犯罪を計画し、実行する思考回路を持つ。知能犯が持つともされる。
邪智のカリスマ:B 国家を運営するのではなく、悪の組織の頂点としてのみ絶大なカリスマを有する。モリアーティの悪性カリスマはA、英国だけでなく世界全土を影から支配することも可能なランク、ただし金目当てや裏切り者を出したため少しランクが下がっている。悪の救世主と呼ばれた事もある。

【宝具】
『世界(ザ・ワールド)』ランク:EX種別:対軍宝具 レンジ:∞最大捕捉:∞

真名解放により世界に干渉し時間をクラッシャーの体感時間で5〜9秒間彼以外のすべて止める宝具で再発動には使用後数秒のブランクが必要、そして聖杯戦争の時間が進む事に肉体が馴染み時を止める時間も増える。

【人物背景】

ダリオ・ブランドーの子供として生まれたがダリオ・ブランドーを毒殺し、そしてダリオ・ブランドーと縁のあるジョースター一家に迎えられる事となり、ジョナサン・ジョースターと奇妙な友情を育むようになるが、やがて決裂と共に石仮面により人間をやめて、吸血鬼になり、ジョナサン・ジョースターに様々な刺客を送り続け、やがて決戦し、敗北、首から上の姿になるがジョナサン・ジョースターの体を奪い取り、棺桶で海に沈められる、その後、財宝目当てにサルベージされて復活、その後、エンヤ婆と呼ばれる老婆に出会い黄金の矢によりスタンド能力に目覚め、ジョナサン・ジョースターの末裔、空条承太郎達とも因縁が出来て、彼等の自分家までの旅路をまた様々な刺客を送り続け邪魔したが最終的に敗北、死亡した。

【サーヴァントとしての願い】

ジョースター家との決着、世界征服、天国にも到達したい。


691 : 巨悪!相克の邪心 :2022/04/02(土) 18:30:25 K1XjZKUM0
【マスター】

左京@幽遊白書

【マスターとしての願い】

大〜〜〜きな穴がいい…

魔界と人間界をつなぐ界境トンネルです…

不便なんですよ今は……
偶然にできる一瞬のひずみからしか互いが行き来できない

我々が人工的にゆがめると
拳大の大きさの穴を一個開けるのに200億かかります

それゆえに人間界には小物の妖魔しか通れないんです
ひずみが小さすぎてね

不公平でしょ?

より強大で邪悪な妖気を持つものほど通れないなんて


どんな邪悪な妖怪でも自由に通れる道が維持できたら……

この世の中もっと混沌としておもしろくなりますよ………

イベンターの夢ですなこれは


前回の金と今回の優勝賞金総額をあわせると
夢が実現するんですよ


692 : 巨悪!相克の邪心 :2022/04/02(土) 18:32:53 K1XjZKUM0


【人物背景】

家族構成は両親と4人兄弟であり、ごく一般的で平凡な家庭で暮らしていた。
後に兄弟の全員は公務員として社会生活を送っているが、彼だけが現在のような闇世界の人間になった。
一時は“血や臓物を見るのが好き”な時期があったらしく、動物や人間の解剖に没頭していたが数年で飽きてしまったとの事。
兄弟たちに関しては自分と違って、ちゃんとした生活を送っていることに安堵している様子。

後にギャンブルに明け暮れる日々を送り、その常勝不敗という実力と強運から莫大な富を得て闇世界で伸し上がった。
妖怪を利用したビジネスに関しては、少なくとも本編の十年前には手を染めていたが闇世界で名を挙げたのもこの前後の頃と思われる。
そんな半生を送ってきた彼は自嘲気味に“生まれついての破綻者”と語っている。

BBCのメンバーの一人として登場。垂金との賭けの勝負では、垂金の目論見を悉く打ち破るかのごとく、メンバー中で唯一幽助と桑原の勝つ方に賭け続け、一人勝ち。
最後に行われた当時の日本の国家予算並の金額を賭けた大博打も勝利を収めた。
後に戸愚呂兄弟は本当は左京と雇用関係にあり、左京の“商品”であった雪菜を横流しした制裁として垂金を破滅へ追い込む事と、幽助達を暗黒武術会のゲストとして招くために派遣されていた事が判明した

暗黒武術会編では、卑劣な策で浦飯チームを追い詰める魔性使いチームのオーナーである豚尻を粛清したりした。
実は前大会での優勝賞金と今大会の賞金を使い、人間界と魔界を繋ぐ「魔界の穴」を開通させ、妖怪達を大量出現させる事を目論んでおり、それが今回の暗黒武術会で優勝した時の望みであった。
この望みと左京の異常性を知った運営委員のメンバーによって抹殺されかけるが、戸愚呂兄弟によって差し向けられた妖怪達諸共に返り討ちにした。

前述通り、これまで命をチップ代わりにした勝負を含め賭けで一度も負けた事のない彼だったが、浦飯チームの優勝により賭けの負けを潔く認め、闘技場ともども最期を迎えた。

【方針】
今まで通り、普段通り。またギャンブルが出来るなら嬉しいしまた幽助達と会いたい。

出来れば戸愚呂兄弟とも再会したい。

仕事も山のようにある、やる事が多いなぁ。


693 : 巨悪!相克の邪心 :2022/04/02(土) 18:33:19 K1XjZKUM0
投下を終了します


694 : ◆hX7PcTS3Sg :2022/04/04(月) 19:09:27 OnemvDDc0
トリップやsageの説明があまりされていない(というか浸透していない)点も否めないので、もしもトリップを「知らない」という方のために、伝えておきます。
これらは「聖杯戦争-(マイナス)1/「はじまり」の短編集」のwikiの方でも載せておきます。

トリップとはタイトルの「◆」の後に続く書き手のネームのことを指します。
名前欄に「#」と付け、その後にパスワードを入れることで成立します。

sageとはメール欄に「sage」を入れることです。
青色に表示されるのがsageで、緑色に表示されるsageがない状態です。
sageがないと、提示版でスレッドが一番上に表示されてしまうので、使用されます。

これらはあくまでも暗黙のマナーみたいなものですので、一応推奨だけしておきます。


695 : ◆RQe2MSyq8o :2022/04/11(月) 18:24:36 jq7k7ZJo0
投下します


696 : 復活のキタムランド ◆RQe2MSyq8o :2022/04/11(月) 18:25:34 jq7k7ZJo0
「映司……?」

「北村? なんで、え?……なんで」

火野映司が死んだ。
北村雄一の元に届いた訃報は、彼の人生に於ける活力を根本から奪い去っていった。

800年前の王の復活、そしてグリードと呼ばれる驚異的な力を持つ怪人達、それらを纏め上げながら王は現人類に攻撃を仕掛けた。
侵攻は止むことを知らず、人類の8割は消える。残された人間たちがレジスタンスを組み、抵抗こそ続けたが人類の破滅は時間の問題だった。
当然ながら北村がオーナーのレジャー施設、ゆめいろレジャーランド(通称キタムランド)が閉鎖し、当然局限化における社会の崩壊から、娯楽施設の需要などなくなり会社も経営困難に。
だが北村は諦めなかった。かつては不登校の学生で人生に絶望したが、火野映司の出会いが彼を変えた。夢に向かって立ち直ろうと決めた。

映司は北村を一切覚えていないその他大勢程度の認識だったが、それでも北村は彼を親友だと思い込み、
自分がオーナーのレジャーランドに誘い、映司と二人きりになり、更には北村自身に頼らせ良い所を見せる為に、同行者の女の子を拉致監禁したりと様々な凶行に及ぶ。
だが、最後は映司の隣に居るべきはアンクという男であると、彼の繋がりを、絆を、信頼を目の当たりにし北村は映司の前から姿を消した。

けれども、映司から受けた恩を忘れたわけではない。彼が再び取り戻してくれた夢だってそうだ。
もう映司の隣には居れないが、自分の夢をそこで終わらせるつもりはなかった。例え隣に居てほしい人が居なくても。

だが、火野映司は死んだ。

800年前の王との戦いで、彼は死んだ。
訃報を聞き、駆け付けた時にはすでに全てが終わった後だった。
死に目にも会えなかった。ただ茫然と、あの男が立っていた。あのアンクとかいう、映司を利用し危険な目に合わせ、死なせた男が。

何故だ? どうして? 二人の絆に負けは認めた。だが、だからこそ何故こうなる?
なんで、映司が死ぬんだ? 怒鳴りつけ、問い詰めるがアンクは何も答えなかった。絶望と失望と敗北感と虚無の中、意識が朦朧とし気づけば全く別の街にいた。
頭の中に聖杯戦争という殺し合いとそのルールがインストールされる。そして、気づけば目の前に死んだはずの映司がいた。

「映司、お前どうして……」

「そっか、俺のマスターなのか。……取り合えず落ち着けるとこに行こうよ」

「どうして死んだんだよ映司ッ!!!」

聖杯戦争なんてもうどうでも良かった。ただもう何よりも欲したのは答えだ。
例え、映司の中ではとるに足らない存在であっても北村の中では唯一無二の恩人で親友で、それ以上の――――。
叶わない想いであっても、それでも生きていてさえくれれば良かったのに。

「あいつが傍に居たんだろ!? なのに、なんで映司が死んでるんだ!!」

「……アンクは、最後まで俺と戦ってくれたんだ。俺のやりたいことを、やってくれた」

「ふざけんなよ……やっぱあいつのせいだ……。お前を危ない目に合わせて、死なせたんだろ?」

「違う……アンクは俺を救ってくれた。……死んだのは、俺のせいだ。誰のせいでもないんだ。
 ……それに、俺は満足してるんだ。最後に会いたい人にも会えた……救いたい娘も救えた……」

「嘘だろ……そんなの、嘘だ……。嘘だって言ってくれよ……え……い、じぃ……」

瞳から溢れる涙を拭うことなく、壊れたように北村は映司の前で泣き崩れた。
体を震わせながら、子供のようにしゃくりを上げて泣き叫ぶ北村を、映司はバツが悪そうに見下ろす。


697 : 復活のキタムランド ◆RQe2MSyq8o :2022/04/11(月) 18:25:58 jq7k7ZJo0

「北村、ありがとう。でも俺は後悔してない……アンクの手を掴んだことは絶対間違いじゃなかったんだ。少し思い描いたのとは違っても、いつかの明日にも届いたんだ」
「……映司?」
「俺は絶対に北村を守るよ。だから北村、頼む。この戦いを止める為に力を貸してくれないか?
 聖杯戦争を、俺は止めたいんだ」

映司は願いを叶えたいという欲望を否定する気はない。映司の人を救うという思いだって、元をたどれば欲望だ。人は欲望を持ち、欲望があるから明日に進める。
だが、その欲望で人を傷付けること、ましてや殺めることは絶対に間違っている。
だからこそ聖杯なんて願望機を巡った殺し合いなど、容認することは出来ない。

「聖杯……戦争?」

「これから、きっと多くのマスターとサーヴァントが願いを叶える為に戦うと思う。でも全員が願いを持ってるわけじゃない筈だ。
 北村みたいに、巻き込まれただけの人もきっと居る。そんな人たちを死なせたくない」

「映司……」

「北村?」

「一つ違うよ。……俺には願いがある」

「え? でも、夢は叶えたって……それに800年前の王は倒れたし、俺達の世界はこれから復旧して……」

「そんなこと、どうでもいいんだ。映司……俺はあいつとは違う、もう俺はお前を――――令呪を以て命じる」

「きたむr―――」

「聖杯戦争に優勝しろ」

「ぐっ……!?」

体に錘を付けたかのような重圧と共に自由が奪われていく感触、サーヴァントに律する絶対に縛りが映司の身に施された。

「俺はお前に救われたんだ……だから、今度は俺の番だ」

「やめ、ろ……北村……」

「……あいつじゃお前は救えないんだ。なら、俺がやる……大丈夫だ。罪は全部、俺が背負うよ。
 俺は、俺はあいつとは違う……もうお前の手は、二度と離さないからな……映司」

そういう北村の顔には笑みと共に、頬に涙が伝う。

「映司……」


698 : 復活のキタムランド ◆RQe2MSyq8o :2022/04/11(月) 18:26:44 jq7k7ZJo0

【クラス】 ライダー

【真名】火野映司@仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダル

【属性】 中立・善

【ステータス】筋力C 耐久C 敏捷C 魔力A 幸運E 宝具EX

【クラス別スキル】

騎乗:B 

大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、幻想種あるいは魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなすことが出来ない。

対魔力:D

一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。


【固有スキル】

心眼(真):C
 
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
逆転の可能性が数%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

欲望--

映司の強い人を助けたいという想い、欲望がスキルとなったもの。
その欲望に反する事であるなら、令呪の命令すら無効化するが、
生前、映司は王との戦いで、かつて彼が救うことが出来なかった女の子を彷彿とさせる赤の他人の女の子を庇い、アンクを復活させ、欲望を満たし満足した為にこのスキルは死んでしまった。


【宝具】

『仮面ライダーオーズ』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:?? 最大捕捉:??

生前、映司が所持していたコアメダルとオーズドライバーのよって変身できる仮面ライダー。
メダルの組み合わせにより多種多様に力を発揮し、それぞれの属性が統一されたメダルの組み合わせによってコンボと呼ばれる強力な力を発揮する。
ただし、コンボの発動は絶大な力と引き換えに映司の体力と、膨大な魔力を要求されるというデメリットもある。


【人物背景】
仮面ライダーのオーズの主人公。
グリード、そして世界に終焉を齎し完成させるという狂気じみた思想に取りつかれた真木清人との戦いに打ち勝ち、アンクとの別れを経て世界を救った。
その後、アンクを復活させる条件を満たす大きな代償と彼が負う業により命を落とす。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯戦争を止めたい。


699 : 復活のキタムランド ◆RQe2MSyq8o :2022/04/11(月) 18:27:08 jq7k7ZJo0


【マスター】

北村雄一@仮面ライダーオーズ/OOO

【マスターとしての願い】

映司を復活させる。

【weapon】

令呪残り二画

【人物背景】

仮面ライダーオーズ 第33話「友情と暴走と残されたベルト」及び第34話「親友と利用とその関係」に登場するゲストキャラ。
……なのだが、登場早々主人公の火野映司の親友を自称し、当の映司からは一切記憶されていない所か、
映司が連れていた女性を拉致(当然だが、性的な目的は一切ない。あくまで映司の気を引く一環)したり、同じく同行したアンクを罠に掛け(敵の怪人連中にそそのかされたとはいえ)隔離を目論んだりとその行動と言動には逸脱している。
更に演じた役者の迫真の演技も光り、ファンからはキタムランドと呼ばれる。
最後はアンク救助に向かう映司に助力し、アンクに膝枕された映司を見て敗北を悟り、無言で去るなど根は善人ではある。


700 : ◆RQe2MSyq8o :2022/04/11(月) 18:28:18 jq7k7ZJo0
投下終了します


701 : ナナシ :2022/04/12(火) 17:15:02 fy8CxxpA0

すいません、匿名でいた方が残酷になれるんですよ。

聖杯企画にしっかりと参加した記憶も主催になった記憶も今はないんですよね。

そういうのにしっかり参加したらしっかりとバッドなトリップをキメてやります。

damkj398とかね。

あ、これもうそのまんま東みたいにそのまんまでいた方が良いんでしたっけ。


702 : 暗暗裏の二面性 ◇damkj398 :2022/04/12(火) 19:09:33 5LDsc/9s0
投下します


703 : 暗暗裏の二面性 ◇damkj398 :2022/04/12(火) 19:10:38 5LDsc/9s0

九人の母親が私を生んだ。
私は九人の姉妹の息子だ。

『ヘイムダルの謎』より


704 : 暗暗裏の二面性 ◇damkj398 :2022/04/12(火) 19:11:27 5LDsc/9s0
「あっちゃあ」

僕はその男を見て最初に思ったのが随分と無口な少年だなと思った、その割には顔面に刺青しているのが度肝を抜かれた。何の意味があるのだろう?表現の自由がどんなに日本や世界に推進化し、時に暴走したとしても、この表現は許されないだろう。

「んー、ひょっとして、これで人生の終わり?少年法改正したのいつだっけ?」

「さぁ.......興味無いよ」

彼のような馬鹿と違い彼は少年犯罪とは縁がない少年だった。友達とはオカルトクラブの付き合いで幽霊が出たり妖怪に纏わる場所に行く程度である。

「いやいや、誤解するなよ、コイツが先にナイフ、んー?これは米軍御用達のコンバット・ナイフか?」

少年は少し血まみれだった。と言っても手首だけだ。

夏服の白いシャツの手首の部分がほんのり赤かった。

だが目の前にある死体は全身真っ赤である。

それもそのはず、彼はナイフを、まるで絶滅したはずのサーベルタイガーのような牙の長さの刃渡りはもはや即死以外を付与する事は出来ないだろう。

「コイツが誰かは分からない、が、コイツは敵なんだな?」

「敵?」

「あー、すまんすまん、俺は根っからのヤンキーじゃねぇんだ、殴られようとしたら殴り返すだけの性分でよ、ふーむ、えーと、そうだな、家族みんなで報復するという話は分かる?お前はヤクザ?」

「.....................」

「あー、えーとほら、奴良リクオってぬらりひょんから二文字取ったって感じだからな、奴良組の奴良リクオ、ん?違う?ならすまねぇやん、今の話、水に流してくれ」

「半分正解で半分間違いかな」

当たらからずも遠からずである。

こと、真実はいつも一つという人気な漫画の話があるが、真実一つでも真実の価値は人それぞれ違う。馬の骨のようでもあれば馬の糞だったりする。玉石混交であり、馬の骨が牛の骨だったりしたら目も当てられない。

「ま、身内をぶっ殺されて黙る家庭環境ならそんな家庭なんて最初から無い方が良い、あ?これもタブー?」

なんでこいつはそんなところまで話を切り出してくるのか意味が分からない。

「ううん、親子関係は良好だよ」

「んー、俺はな、常々アニメ声優というのに感銘を受けているんだよ」

「?」

「つまり、お前を演じている声優の台本には家庭環境が良好だと記されているようなモノなんだぜ?」

「声優?この世界ってアニメかなんかだったの?」

冗談じゃない、自分は現実に生きている、アニメじゃないんだ。

「昔だとカストラートとかあったそうだからな、去勢してまで歌声を強化育成するなんてMobageとかGREEでやったらネットで叩かれるわな、ま、それも金玉握ったような話だがな、かはは」

屈託も無い。慮りもない。

何故ならば彼には遠慮というのがない。

「.......まぁ、僕の声が良いかどうかなんて関係ないよ、今は君が人を殺した方の話をしたい」

「正当なる防衛だ、略して正当防衛だ」

「なるは最初からいらなかったのでは?」


705 : 暗暗裏の二面性 ◇damkj398 :2022/04/12(火) 19:13:13 5LDsc/9s0
なるさんという人間がいたら申し訳なくなる発言だがこの場合、彼はただ事実を言った。素人意見そのものではある。

「うーん?夕方クインテットが始まる時間か?」

「..............」

俺から見てみればコイツもまたぬらりひょんに近いのかもしれない。

「あっれぇ?お前誰だ?」

昼から夜にかけて容姿が変わった俺を見れば誰だってそうなるだろう。

「お前オカルト、その中でも妖怪ってのは知ってるか?」

「話が急に飛んだな、つまり俺は幽霊が化けて鬼となったら報復されろと言いたいわけだな」

「そうじゃない、俺はぬらりひょんのクォーターなんだ、誰にも言うなよ」

俺は真実を言った。

ただ、それだけだ。

「ふーん、中二病混じりの二重人格って話か、まぁ本物だろうが偽者だろうがどうでもいい、ロールプレイっていうか、俺なんて名前が二つあるから二重人格ってオチをつけたいわけさ、このタトゥーの意味の話になるかもしれない」

タトゥー?そのタトゥーにそんな意味があるのか?

どうでもいいよ、しかしながら、こいつの名前が二つある?

「汀目俊希、そしてサーヴァント零崎人識、アサシン、【属性】 中立・中庸【ステータス】筋力C耐久C 敏捷C魔力C幸運C【固有スキル】、気配遮断EXお兄ちゃんのお陰、宝具C、成績みたいだな、宝具それでは零崎を始めよう、始めてしまえば例え下らない戯言な何か考えたとしても本分と本来性を獲得出来る。そう、彼は虚言虚飾入り交じる中で確実に人を沢山殺したのだから。ランク:B 種別:対人生宝具 レンジ:?? 最大捕捉:??幼年期、思春期、青年期の三つの段階がある、と言っても幼年期とは『零崎』であるというのを役割づけられただけであり、思春期で汀目俊希、零崎人識が、零崎姓を名乗る前の名前。中学では優等生だったらしい。ただし、二重人格の殺し屋殺し名序列一位、匂宮雑技団匂宮出雲と限りなく恋愛に近い関係性になったというのは傑作だな、そして、私立中学に通っていた。まだ黒髪。匂宮出夢や西条玉藻とは好敵手関係に当たる。戯言遣いとは対照的に『鏡の向こう側』というポジションに当たるキャラクターである。主な武器としてナイフを使う。尖ったものが大好きで甘党、家出して爪先にダイヤモンドカッターの後、小さな戦争で暗躍したとされる、戯言遣いにより、<<人間失格>>の二つ名を付けられる」

「サーヴァントは俺なんだけど?」

メタ発言ここに極まり、なんて下らない戯言だった。

あと人物背景まで言ってるんじゃねぇ、殺すぞ。

「んー、そうだ!閃いた!死体を隠す妖怪とか知らないか?」

汀目俊希?零崎人識?はどっちにしろそういうらしかった。

「..............黒田坊とかに連絡してみる」

「善処しろよ」

「それも俺の台詞だ」

俺はこのイカれたマスターに苦労かけられるだろう、いいや、どっちにしても、聖杯戦争とは戦わなければ生き残れないのだから。


706 : 暗暗裏の二面性 ◇damkj398 :2022/04/12(火) 19:15:22 5LDsc/9s0

【サーヴァント⠀】

【真名】奴良リクオ@ぬらりひょんの孫

昼の姿

【ステータス】筋力C 耐久C 敏捷C 魔力A 幸運E 宝具?

夜の姿

筋力? 耐久? 敏捷? 魔力? 幸運? 宝具?

【クラス別スキル】

気配遮断:EXぬらりひょんの血を引いてるからこうなってる。

【固有スキル】

ぬらりひょんの孫:A+ぬらりひょんの孫としての知名度、認識度合いがそのまま畏となってスキルに変化した、ぬらりひょんに関する能力を使う事が出来る。

三代目奴良組組長:B+++奴良組は妖怪ヤクザであり、その三代目としての人員を継承し、指揮する事が出来る。他の妖怪に纏わる組織とかなり堅実な同盟関係を結ぶことを出来る。

アサシン

weapon

「祢々切丸

ぬらりひょんから譲り受けた刀。妖怪のみを斬り、斬りつけられた箇所から妖力を抜け出させていく力を持つ刀。実は陰陽師である花開院家13代目当主、花開院秀元の生涯最高の傑作で、元々はリクオの祖母・珱姫の護身刀として作られた物。元々の銘は「鵺切丸」といい、花開院の打倒・鵺の精神と歴史が刻まれている。しかし復活した鵺・安倍晴明に対しては全く通用せず、粉々に砕かれてしまった。その後、恐山で秋房が鍛え直し、花開院千年の想いと主たるリクオの意志が一つとなり、退魔の力を持った刀として復活する。

宝具

明鏡止水"桜"
敵に妖銘酒を浴びせかけ、着火して焼き尽くす術。名前こそ似ているが、後述の明鏡止水との共通点は全くない。玉章によると、本来妖怪が持たない"陽"の性質らしいが詳細は不明である。

「明鏡止水
ぬらりひょんの畏。畏を発動することで相手を威圧し、相手に認識されなくなる技。強敵相手には効果が薄く、見破られてしまうこともある。ぬらりひょんの「真・明鏡止水」を見様見真似で模倣し習得した。

「鏡花水月
ぬらりひょんの畏。認識をずらして発生した幻影で敵を惑わす能力。攻撃を避けたり、隙を突いてカウンター攻撃を行う。見えていても触ると波紋が立って消えてしまう「水面に映った月」の様に、ぬらりくらりとして本質を掴ませない、ぬらりひょんの本質を表しているとも言える技。玉章との決戦終盤で偶発的に発動し、遠野での修行を経て自由にコントロールできるようになる。

鬼纏
信頼関係を築いた仲間妖怪の畏を借りることで強力な効果を得る「百鬼夜行の業」。詳細は鬼纏を参照。

「明鏡止水"斬"
明鏡止水"桜"の炎を帯びた斬撃。厳密には"斬"は火と斬を組み合わせた独自の漢字で書かれている。

フライング妖怪ヤクザキック・無回転ヤクザキック
ただの蹴り。奴良家一子相伝らしい。


707 : 暗暗裏の二面性 ◇damkj398 :2022/04/12(火) 19:16:25 5LDsc/9s0

【人物背景】

主人公。関東妖怪総元締「奴良組」の若頭。後に三代目総大将(組長)となる。
初代総大将・ぬらりひょんの孫であり、二代目総大将・奴良鯉伴の息子。妖怪と人間の混血(クォーター)で、1日の1/4(基本的に夜間)だけ妖怪に変身することができる。ただしストーリーが進むにつれ1/4という制限は緩くなっている。妖怪姿のときは性格や口調が変わるが、まったくの別人格というわけではない。屋敷の妖怪たちからは「若」「リクオ様」などと呼ばれている。治癒の力を持っていた祖母からの遺伝の影響で傷の治りが異常に早い。
幼少期のある出来事をきっかけに、一時は自分の中に流れる妖怪の血を拒絶し、組を継ぐことに否定的だったが、牛鬼との戦いを経て三代目を継ぐ決意をする。
薬師一派の鴆とは義兄弟の盃を交わしている。

牛鬼の謀反編
リクオと同級生らが所属する「清十字怪奇探偵団」は、妖怪合宿と称して捩眼山を訪れる。そこは奴良組系・牛鬼組の縄張りであったが、リクオたちは牛鬼組からの襲撃を受ける。
対四国八十八鬼夜行編
四国の妖怪組織・四国八十八鬼夜行が、奴良組のシマへの進撃を開始する。百鬼夜行を率いるリクオと、四国妖怪を束ねる玉章の全面抗争が始まる。
ぬらりひょんの過去編
奴良組の初代総大将・ぬらりひょんの過去が明らかになる。リクオの祖母・珱姫とぬらりひょんの出会い、妖刀・祢々切丸、羽衣狐率いる京妖怪との激突など、400年前の物語が描かれる。
遠野編
京都では、羽衣狐が再び動き出し始めた。リクオは、花開院家に戻ったゆらを助けると同時に、父の命を奪った羽衣狐と決着をつけるため、京都へ向かうことを決意する。しかし、リクオの未熟さを指摘したぬらりひょんは、リクオを遠野の里に送り込む。遠野での修行を経て、リクオは妖怪・ぬらりひょんの持つ真の力を理解する。
京都編
遠野妖怪を味方につけ帰還したリクオは、奴良組の面々と共に京都へ進撃する。京妖怪の侵攻に対し、花開院家の陰陽師たちは守勢に回っていた。リクオたちは花開院家と共同戦線を張り、「鵺」を産み出そうとする羽衣狐と対決する。
対百物語組編
京都での戦いを終え、リクオは奴良組三代目総大将を襲名。来たるべき鵺との戦いに備え、奴良組は力を蓄えていた。そんな中、百物語組が姿を表し、二代目・鯉伴との因縁が明らかになっていく。
対御門院家編
百物語組との抗争を経て、安倍晴明の子孫である陰陽師の一族・御門院家の存在が明らかになる。彼らは、晴明の生み出した術により不老の体を手に入れていた。晴明の復活を前に、妖怪を粛清する「清浄」を行おうとする御門院家に対し、リクオは日本中の妖怪たちと同盟を組み立ち向かおうとする。

完。


708 : 暗暗裏の二面性 ◇damkj398 :2022/04/12(火) 19:17:02 5LDsc/9s0
【マスター】
汀目俊希@戯言シリーズ
零崎人識@戯言シリーズ

汀目俊希

【マスターとしての願い】

学園生活満喫!

【weapon】

ん?タトゥー多くなった?

零崎人識

【weapon】

持ち物検査にひっかからないようにしたい。

【人物背景】

俺が教えて欲しいぐらいだね、と言っても戯言シリーズと零崎が主役の人間シリーズを見れば丸わかりだぜ?かはは。

【マスターとしての願い】
特にねぇや、家族になんかあったら守るし、元カノの境地に颯爽と駆けつけたら..............やっぱこの話無しで。

【人物背景】
それでは零崎を始めよう。


709 : 暗暗裏の二面性 ◇damkj398 :2022/04/12(火) 19:17:16 5LDsc/9s0
投下終了します


710 : 堕落の坩堝◇damkj398 :2022/04/15(金) 20:06:48 HmbLOYxQ0
投下します


711 : 堕落の坩堝◇damkj398 :2022/04/15(金) 20:07:17 HmbLOYxQ0
「戦前、グラン・ギニョール劇場の舞台上の出来事は現実にはありえないことだと誰もが信じていた。だが我々は現在、劇場で上演される陰惨な行為が…あるいはそれよりもさらに残虐な行為が…現実に起こりうると知ってしまった」

Outdone by Reality From TIME magazine - November 30, 1962より


712 : 堕落の坩堝◇damkj398 :2022/04/15(金) 20:07:48 HmbLOYxQ0
その日、一人の男が死んだ、名前はゴールド・ロジャー、またの名前をゴール・D・ロジャー。

処刑される彼の最後の言葉は世界を震撼させた。

「俺の財宝か?欲しければくれてやる!探せ!この世の全てをそこに置いてきた」

あれは、自分のやがての自分か?笑いながら死ぬ、何故?

あぁはなりたくねぇ、わざわざ世界を支配する力さえも見え隠れする財宝を何故譲り渡そうとする?

「つまり俺は死刑台に上がる気なんてないわけさ」


713 : 堕落の坩堝◇damkj398 :2022/04/15(金) 20:08:10 HmbLOYxQ0
「……そう、私も同じね」

暁美ほむらがそう返答した。

彼女も彼女の精神世界のような場所、自分の魔女としての内心の領域で断頭台に引きずられる絵図を描いた。

「はっ、どうだっていいさ、人間なんて欲望に満ちているわけさ、執着しているのがまだこの世に存在している限り、自分が先に死ぬなど言語道断だ」


714 : 堕落の坩堝◇damkj398 :2022/04/15(金) 20:08:30 HmbLOYxQ0
それには説教臭さがあった。

池袋のホテル街のラブホテルにチェックインした二人はそのままピロートークでさえもない前戯を交えてさえもいない。

むしろ、暁美ほむらはソファーに座り、キングサイズのベッドに腰を下ろしているおじさん、男性、黒ひげ、マーシャル・D・ティーチが語る。

「恋人一人のために世界をほろぼすなんざ常識じゃねぇ、だがよぉ、正義だの悪なんてのは誰かのバイアスで形成されるゴミの思想なんだ、その結果、人は倫理観と道徳観に束縛されて愛欲を失う、草食系男子はゴミの思想を食べ飽きただけのゴミなのさ」

口の減らない男だ、その文言を今日日ざっくりと切り出す人間はいない。SNSで言えば炎上必須、日常会話であったならば殴られるか謝罪するしかないだろう。

だが余りにもそれは正論でこそないが正解で正確である。

「自分と恋人以外全てゴミ?」

「いんや?俺には仲間がいる、バージェス、ドクQ、ラフィット、ヴァン・オーガーの初期メン、そして地獄のような退屈な監獄から脱走させた選りすぐりの精鋭達も俺の仲間だ」


715 : 堕落の坩堝◇damkj398 :2022/04/15(金) 20:09:06 HmbLOYxQ0
どっちなんだか。

「私も初期メンというのがいたわね、、鹿目まどか、美樹さやか、巴マミ、佐倉杏子、後はよく分からないわね………」

それを言い切ったら把握しにくくなるし、それはそこまで言わなくてもいい話だとメタ的にも思うし、そもそも初期メンを越えられる新しい友達なんていないだろう。

「海軍もゴミだな」

悪びれもせずに言い切った。

「………この世界で言う警察?」

「まぁ、絶対正義なんて言葉を確立させようとするヤツは莫迦に違いねぇ」

「莫迦?」

難読漢字で馬鹿と言うな、よく分からない話になる。

「どうだっていいさ、世の中単純に考えれば俺と味方と敵、そしてそれ以外の無関係なゴミ、四つに区分できる」

「敵もゴミじゃないの?」

「海軍や警察をゴミと言いたいのか?」

「ううん、もっと別の何かよ」

「………怖がりやがって」

「魔女を沢山倒して………いえ殺してきたと言った方がいいかしら、何度も世界は繰り返されて最後にはワルプルギスの夜が訪れる、それを倒さなかったらゲームは最初からやり直し」

「何年の月日費やした?」

「私がもう一人生まれて魔女になれるまでよ、つまり私という二十歳と更に私という二十歳合計四十歳」


716 : 堕落の坩堝◇damkj398 :2022/04/15(金) 20:09:32 HmbLOYxQ0
「なんだ、俺様と同じ年齢ってわけか、だが体は小娘のままだな」

「やめてよね、それはセクハラよ」

性犯罪に普通の人間性と公共の福祉を守るしか脳のない社会人としての規範を守るならば口が裂けても言えない言葉である。

「海賊、悪党稼業にそういうのなんて気にしてたら人生お終いだぜ?」

黒ひげはそれにも悪びれなく、即返答した。

「………確かに私も悪だね、だけどもそこまで腐り落ちてないわよ」

「さぁ、どうだかな」

二人はこれからも堕落、堕天をするだろう。


717 : 堕落の坩堝◇damkj398 :2022/04/15(金) 20:10:24 HmbLOYxQ0
それはダビデとシビュラの予言、ヨハネの黙示録、ノストラダムス、エゼキエル、日月神示、オカルト界隈で聖徳太子の予言書とされる「未来記」には、黒船来航、東京遷都と解釈される予言から200年ほど後(2016〜2017年ごろ)に、「クハンダ(クヴァンダ)が来て、東の都は親と七人の子のように分れる」とあり、クハンダが何なのか様々な解釈がされている。

それらそういう下らない話、もしかしたら占いや予知能力にまだ限界が無いならばまだ見通せるかもしれない。

彼等の運命とはもう一つの旅人を象徴する第二の愚者であり、そして歩き初めてすぐ変転する運命なのだ。


718 : 堕落の坩堝◇damkj398 :2022/04/15(金) 20:11:09 HmbLOYxQ0
【サーヴァント】

【クラス】

ブリテンダー

【真名】

黒ひげマーシャル・D・ティーチ@ONEPIECE

【ステータス】

筋力A++ 耐久D(EX) 敏捷E 魔力A++ 幸運 EX 宝具EX

【属性】

混沌・悪

【クラススキル】



【保有スキル】

暴君のカリスマ(EX)歪なる覇道の象徴、あらゆる悪党に君臨する悪の王、暴君、そも悪党とは元々、単に敵対関係を意味している。王道を歩む者にとっては邪道を歩む者は悪党と言うしかない。

悪逆戦略(A) 詳細不明。

狂える破壊衝動(B)今の世界を崩壊、破壊させて新しい世界の法と秩序を会得させたい渇望の証。

【宝具】
俺様が何者か?知ってるか?(パイレーツ・オブ・ブラックビアード)、彼は黒ひげ海賊団の船長である。それ以上でもそれ以下でもない。つまりは、黒ひげ海賊団の全てが彼の全てであるわけだ。

死に目に会えて嬉しいぜ!親父(アウトレイジ・ピリオド)、あらゆる悪党の世界でご法度の親殺しを成した結果生まれた力、親子関係に擬似的になった場合、それを破却する時、成功確率を上げる。

【weapon】

ヤミヤミの実、闇の力を使い、悪魔の実を無効化し、引力により敵に引き寄せられる。

グラグラの実、地震の力を使える。独特のフォームがある。

【サーヴァントとしての願い】

欲しいものは自分の力で手に入れる。聖杯の力を使ってでもな。


719 : 堕落の坩堝◇damkj398 :2022/04/15(金) 20:11:30 HmbLOYxQ0
【マスター】

暁美ほむら@魔法少女まどかマギカ

【マスターとしての願い】

まどかを愛するだけよ。

【weapon】

盗んだ武器

【能力・技能】



【人物背景】

魔法少女まどかマギカという物語の終結、そこから、今後同様のことが二度と起きないようにインキュベーターをねじ伏せ、「まどかを守り、人としての人生を取り戻す」というまどかとの『約束』や「まどかを救う」という自身の願いをほむらなりに達成し、今までの自身の罪と罪悪感、自己憎悪や自己否定への決着をつけた。

だが、叛逆行為には大きな代償も伴った。ほむらとまどかの気持ちには大きなズレが生じてしまっており、再改変後の世界においても、ほむらは「いずれ貴方は私と敵対するかもしれない」と、ある意味では自分から敵対宣言をしている。自らがいずれまどかと敵対する運命にあると自覚、確認したことで、今後まどかとともに歩むことで得られる自分自身の幸せを諦める覚悟をしている節がある。加えてエンディングの場面では『カラフル』で一人だけ踊っていなかったワルツを一人で踊るなど、非常に物悲しいものとなっている

【方針】

急いては事を仕損じるんだけど………


720 : 堕落の坩堝◇damkj398 :2022/04/15(金) 20:11:43 HmbLOYxQ0
投下終了します


721 : ◆K2cqSEb6HU :2022/04/17(日) 16:08:05 YLQnVTK60
投下します。


722 : Fate/Sole of Anoint - 天衣聖杯選定 ◆K2cqSEb6HU :2022/04/17(日) 16:09:17 YLQnVTK60
「────こんにちは。英霊の皆さん。」


 屈膝礼を取る、一人の女性。
艶めく銀髪が靡き、身に纏う純白のドレスが静かに舞う。


「私の名は『天の衣』。貴方たちを召喚させた大聖杯の端末になります。
聖杯に相応しき者を選定するため、今回の聖杯戦争が開催されました。」


 彼女は『天の衣』と名乗る、大聖杯の使者。
無邪気な微笑みを浮かべながらも、自らの目的を示した。


「当聖杯戦争では、原則として"マスター"は存在しません。
ご自身の意向で聖杯戦争を進んでいただくことが、当聖杯戦争となります。」


 開催形式は「はぐれサーヴァント」による聖杯戦争。
マスターはおらず、サーヴァント単身で勝ち残る形式で行われる。


「選定の条件はたった一つ、"最後の一人まで生き残ること"です。
聖杯戦争の勝利者を、大聖杯は相応しき資格者と認め、全権を贈呈いたします。」


 提示される条件は、"最後の生存者"。
それは"聖杯を起動する条件"ではなく、"資格者を選ぶ条件"のことであった。


「……こちらから伝える点は以上になります。
詳細・ルールについては、召喚の際に聖杯より知識として支給されるので、ご確認ください。」


 話を切り上げた天の衣は、両手を翳す構えを取り始める。


「……それでは。」


 突如。一器の小聖杯が掌に出現し、光が放たれた。


『────聖杯戦争に入りましょう。』


 赤色に煌めく召喚陣が、各々の地面に出現する。
輝光が結界を包み込み、世界の風景も光に覆われていった。


  :
  :
  :


 やがて風景に色が生まれ、降り立つサーヴァント達。
その先は、空気と魔力が自然に流れる、地上の世界であった。

====================
Fate/Sole of Anoint - 天衣聖杯選定 OP
====================


723 : Fate/Sole of Anoint - 天衣聖杯選定 ◆K2cqSEb6HU :2022/04/17(日) 16:10:35 YLQnVTK60
①Fate/Sole of Anoint - 天衣聖杯選定

TYPE-MOON原作のFateシリーズの設定・キャラを基にしたリレー企画(案)となります。
詳しい内容につきましては作品の設定などをご参照ください。

・当企画は「サーヴァントのみによる聖杯戦争」をテーマとしております。
・(企画案上の話ですが)ロールの存在は想定しておりません。
・あくまで「原案」です。詳細の追加・内容(世界観)の変更などは後続企画主にお任せします。


〇聖杯戦争
・基本的なルールは共通しているが、マスターは存在せず、はぐれサーヴァント同士が戦い合う形式となる。
・選定される条件は、「サーヴァント一体の生存」。だが、聖杯の起動とは別であり、実際は14騎の時点で起動している。
・何らかのルール違反が発生した場合は、ペナルティとして天の衣から「神明裁決」を受ける。
・基本的なルールやアイテムに対する知識は、現界時に各サーヴァントへ与えられる。

■携帯端末
それぞれサーヴァント達に支給される魔術礼装。
現世に留まるために必要な要石の役割を担い、破壊すると現界機能も停止する。
一方でサーヴァントが消滅しても、端末が消えるわけではない。

端末の接続先(サーヴァントなど)を変更し、他者が使用することも可能。
サーヴァント一人が使用できる端末の数に制限はなく、併用もできる。

▽魔力
燃料である魔力は舞台各地に設置されている補給地点より供給する形となっている。
魔力の最大残量はBランクの「単独行動」分(平均的なサーヴァントなら二日間現界可能)に相当。
現界維持分だけではなく、宝具や魔力放出といった消費分も直結する。
30%の時点で、警告灯が黄色に点滅する
15%の時点で、警告灯が赤色に点滅する。
0%となった時点で、魔力供給不全に陥り、全機能が停止する。

魔力容量は各端末ごとに一定に決められている。
ただ、複数の端末に接続し、多重に魔力供給を行うという手段も取れる。
また端末自体に拡張性はないが、他アイテムを介するなど何らかの手段で容量を増やすことは可能である。

なお、現界時点での残量は平均的なサーヴァントが一日間現界可能分に相当する。

▽端末各機能
ニュース:八時間ごとに更新し、サーヴァント現存数・消滅者数などが放送される。
============
マップ:舞台の全体図。自端末および登録端末を発信先として位置情報の取得が可能。
過去の位置情報も履歴から参照することも可能となっている。
============
メール・通話:念話信号を送受信し、端末に情報を伝達できる。
なお、識別子となる端末番号・アドレスは前述のマップの発信でも使用できる。
============
カメラ:映像の撮影。暗視機能や遠写機能などを有する。
============
Webブラウザ:インターネットへの閲覧が可能。数多くの英雄の真名に関する知識などが収められている。
============
令呪:端末所持者自身に課せられる強力な呪い。他端末への譲渡も可能。
用いられる魔力は端末側ではなく、聖杯側に備えられ、発動に応じて伝達される。
しかしシステムの性か、令呪が発動するまでに4、5秒というタイムラグが発生する。

「令呪を以て命ずる」という言葉に応じて発動するため、所持者以外が使用し、所持者に課せることも可能。
============


724 : Fate/Sole of Anoint - 天衣聖杯選定 ◆K2cqSEb6HU :2022/04/17(日) 16:11:51 YLQnVTK60
■疑似冬木市
当聖杯戦争の舞台。冬木市を再現した都市。サーヴァント達は、この地に召喚されることになる。
ベースは1994年頃の「第四次聖杯戦争時」とされ、建設途中のまま放置されている建物も少なくない。
水道や電気などのライフラインは通っており、時間帯に応じ、街灯も自動的に点灯する。
また、自動車やバス、バイクといった道具なども再現されているため、サーヴァントが自由に使用することも可能。

サーヴァント以外(NPC)の生物は存在していないため、魂食いは望めない。

■補給地点
冬木市各所に設けられている魔力の供給源。
柳洞寺など、各所は龍脈のある霊地の上に設置されている。
ここでは魔力を供給する術などを持たない者向けに端末を結ぶ装置とケーブルも用意されている。
ただ、別に端末のケーブルを介さずとも、サーヴァント自身で魔力を供給すること自体は可能。


【クラス】
ルーラー

【真名】
天の衣@Fate/Grand Order

【属性】
秩序・善

【パラメータ】
筋力E 耐久E 敏捷C 魔力EX 幸運B 宝具EX

【クラス別スキル】
対魔力:A
Aランク以下の魔術を完全に無効化する。

神明裁決:EX
ルーラーとしての最高特権。
召喚された聖杯戦争に参加している全サーヴァントの端末に干渉し、全角の令呪を行使できる。
これは管理者権限と設定されたものであり、発動する使用者の効果よりも優先される。

陣地作成:EX(B相当)
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
自身はBランクに相当するが、聖杯の機能により神殿を上回る世界を創り出すことができる。
この道具作成の応用から、舞台となる「疑似冬木市」が作成された。

【保有スキル】
女神の神核:C
完成した女神であることを現すスキル。
性質は近いものの、彼女は正式な神霊から派生した分霊ではないため、ランクはC止まりとなる。
精神系の干渉をほとんど緩和し肉体の成長もなく、どれだけカロリーを摂取しても体型が変化しない。神性スキルを含む複合スキル。

自然の嬰児:A
いずれ等しく、世界の裡で生まれ落ちた嬰児たち。
たとえ天然自然の生物ではなく、人の手によって造り出された命であろうとも、時に世界は多くの祝福を与え得る。
“嬰児”とは生まれたばかりの赤子のこと、そして聖杯の器・小聖杯として生み出された存在の隠語である。

【宝具】
『誰が為に杯は謳う(グレイル・オブ・ロストソング)』
ランク:EX 種別:魔術宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
聖杯の魔力量を算出し、願望器の補助および聖杯戦争の運営に必要な機能と判断を下す。
サーヴァントの召喚、舞台の形成、スキルの一時的獲得、自他のバッドステータス解除といったものを正確に実現することが可能。
所謂、「大聖杯の人工知能」。

元宝具が「自身の祈りの為、一時的に願いを叶える」に対し、「聖杯の機能の為、永続的に願いを使う」という点で異なる。

【weapon】
「シュトルヒリッター」
貴金属の針金に魔力を通すことで動く、変幻自在の使い魔。
鳥や剣、あらゆる形となり、自律的に敵を補足し、攻撃する。

【人物背景】
第四次聖杯戦争より大聖杯に還った嬰児「アイリスフィール・フォン・アインツベルン」。
聖杯の分霊という形でサーヴァント化したのが、オリジナルのアイリスフィール〔天の衣〕とされている。

この天の衣自身はアイリスフィール〔天の衣〕ではなく、コピーして設計された別のサーヴァント。
聖杯戦争を運営するために作られたコンピュータであり、ルール違反以外で基本的に介入することはない。

アイリスフィールと同じ様に、穏やかに接する淑女に映る。
だが、これは外面性に沿って反映しているだけであり、本性は機械的で人間性はない。
他者に愛情が向くこともなければ、聖杯戦争以外に向ける好奇心もない。

【サーヴァントとしての願い】
相応しいサーヴァントに聖杯を与えること。


725 : ◆K2cqSEb6HU :2022/04/17(日) 16:14:59 YLQnVTK60
投下終了します。

企画投下も可能ということですので、企画案を投下させていただきました。
どなたか気に入ったという方がおりましたら、リレーSSの企画を書いていただけると幸いです。
企画はやらないけども、「企画に沿った作品を書いてみたい」という方もおりましたら、是非是非お願いします。

私自身、「聖杯企画を立てたいけれども、続けられるほど時間も気力もない」というのと、
「これから先、新ジャンルとして切り開いていけばいいなぁ……」という面もあるので、他の方に任せたいと思いました。

……まぁ、興味を持っていただけるおろか、観ていただける方も少ないかもしれないので、高望みかもしれませんが。

wikiの方でも「企画案の存在」を表面化する様に、メニューなどを追加・修正させていただきます。


726 : ◆K2cqSEb6HU :2022/04/17(日) 16:15:36 YLQnVTK60
続けて投下します。


727 : 黒き騎士王は戦うのみ。 ◆K2cqSEb6HU :2022/04/17(日) 16:17:38 YLQnVTK60
 地面に描かれた魔法陣が、赤の輝きを放つ。
華美に響く、鋼の音。"人"が地に降り立つ音が鳴った。


 一体のサーヴァントが召喚された。
其れは血管が如く朱色のラインが走る漆黒の鎧を纏い、バイザーで目を隠した女騎士。
ホワイトブロンドを三つ編みとシニヨンに結い、黒いリボンで整えた髪型であった。
垣間見える人肌は、生気の色合いを感じさせないほどの青白さを見せる。

「──────ここが、今回の戦場か。」

 サーヴァントは無愛想に呟く。
面のバイザーが消失し、自ら露にする冷淡な無表情。
冷徹無比な王者の気を放ち、空間は彼女の気に吞まれている。
だが、その外見は、歳は十代半ばに相当する可憐な少女であった。

 そのサーヴァントは、「騎士王」と謳われるブリテンの伝説的君主。
セイバーのクラスで現界した、「アーサー王」こと、"アルトリア・ペンドラゴン"。
その内、「暴君としての側面」を表在化した「オルタナティブ」の状態であった。

「……やはり、与えられた知識の通りか。この程度の金塊に契約を留められるとはな……。」

 周囲を把握すると、手に握られている例の金塊に視線が移る。
状況は把握した。先に『天の衣』の説明を受けた通り、マスターに該当する人物は存在しない。
そして、事実。支給された"端末型の金塊"こそが、自身と契約を結ぶ「要石」となっている。

「支給された魔力量はこの程度か……。どうやら、この聖杯戦争は私とも相性が悪い。」

 端末から内臓されている魔力を知覚する。
フルの状態でやり合って、二戦がやっとなレベルの魔力量。
今のアルトリアからすれば、実に"その程度"の魔力容量であった。

 この戦争のシステムは、基本的な魔力容量は皆一定な点が挙げられる。
これは勝負事では、"平等"なシステムであり、同時に"不公平"なシステムなわけだ。
条件が同じ段階から開始されるとしても、使用者の状態ごとに合わせることはない。

 それはつまり、魔力の燃費が悪い者ほど、戦争時に不利を強いられてしまうということになる。
そのため、「魔力放出」によって消費してしまうアルトリアでは、システムとの相性が悪いのであった。

「ならば、魔力の確保が先だな。」

 "考えるまでもない"に反応すると、端末を仕舞い込む。

 システム性を理解すると、アルトリアの判断も早かった。
次に取るべき行動は明確。まずは、"魔力を確保すること"からだ。
即ち、"供給地点の制圧"ないし"他サーヴァントから端末の奪取"に絞られてくる。

(霊脈は……あそこか。)

 明後日の方角を仰ぎ見るアルトリア。
自らの直感が、この地に流れる魔力の泉源を告げている。
足取りは機械の如く淡々と、奇襲に対応した構えで歩き出した。


 "聖杯戦争に応える"

 今の彼女には、願望があるわけではない。
サーヴァントとして召喚される以上、戦いに退く道理もないだけだ。

 如何なる形に呼ばれど、変わることはない。
どのような聖杯戦争の形であれ、戦うことは変わらない。
マスターなどがいようが、いまいが、戦うことは変わらない。

 ────敵を蹂躙する。
非情な暴君に徹する今のアルトリアにとって、それだけの話なのだから……。


728 : 黒き騎士王は戦うのみ。 ◆K2cqSEb6HU :2022/04/17(日) 16:18:38 YLQnVTK60
【クラス】
セイバー

【真名】
アルトリア・ペンドラゴン〔オルタ〕@Fate/stay night

【属性】
秩序・悪

【パラメータ】
筋力A 耐久A 敏捷D 魔力A++ 幸運C 宝具A++

【クラス別スキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

【保有スキル】
直感:B
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
暴走状態で理性を保つために外界への注意がおろそかになり、ランクが低下している。

魔力放出:A
武器ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。魔力によるジェット噴射。
アルトリア自身の筋力は人並みだが、すべての行動をありあまる魔力で強化する事で数多くの敵を打ち倒してきた。

カリスマ:E
軍団を指揮する天性の才能。恐怖で従えるため、統率力は上がるが兵の士気は極度に減少する。

【宝具】
『約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)』
ランク:A++ 種別:対城宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000人
真名を解放することで所有者の魔力を光に変換し、集束・加速させることで運動量を増大させ、光の断層による“究極の斬撃”として放つ。
放たれた一撃は金色の奔流となって射線上にある一切を消し飛ばす。
本気で放てば数km先から発動が確認でき、攻撃対象がどれほど強大な構造物や大群であっても瞬く間に消滅させるほどの威力。
使い手の魔力を光に変換、集束・加速させるという作用の影響で、剣身や放たれる極光も黒く染まっている。
黒い極光の剣。自らの魔力を制御せず、思うままに聖剣を振るうため、魔力の粒子は光ではなく、光を呑む闇となってしまった。

『風王結界(インビジブル・エア)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1〜2 最大捕捉:1人
幾重にも重なる空気の層が屈折率を変えることで覆った物を透明化させ、不可視の剣へと変える鞘。
こちらでは覆い隠すことには使用されず、主に「風の宝具」の機能として使われる。
魔力放出スキルと併用することで、敏捷性の強化や超飛躍といったブースト、溜め込んだ風を一気に放つ「風王鉄槌(ストライク・エア)」を可能とする。

【weapon】
『約束された勝利の剣』

【人物背景】
「アーサー王伝説」に登場するブリテンの伝説的君主、アーサー王。
ただし、今の彼女は、"非情さに徹しきった暴君"の側面を抽出する形で現界した反転英雄である。

言動は傲岸不遜を貫き。性格は冷徹無慈悲。
敵対者には一切の容赦なく叩き潰す様は、さながら「暴君」と評したところ。
一方で、表向きに見せる尊大な口調は、あくまで「暴君」としての演技で、素の口調は本来と変わらぬ丁寧語口調。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯を見定める。本物ならば利用し、偽りならば破壊する。

【方針】
まずは魔力の確保から始める。
供給地点を制圧し、近くにいる勢力から潰していく。
敵は基本的に破壊し、敵端末は奪って、魔力容量などに使用する。

【把握媒体】
原作「Fate/stay night」、「Fate/Grand Order」などをご参照ください。


729 : ◆K2cqSEb6HU :2022/04/17(日) 16:19:11 YLQnVTK60
投下終了します。


730 : ◆K2cqSEb6HU :2022/05/17(火) 16:43:10 hlHtWVzA0
投下します


731 : 聖杯戦争は"なぜ"始まったのか(if) ◆K2cqSEb6HU :2022/05/17(火) 16:46:01 hlHtWVzA0
 ────警視庁本部庁舎。
それは、東京都二十三区内を管轄する警察組織の本部。
不可解犯罪が蔓延る時勢、警視庁は都内でも特に激動を走っていた。


 聖杯戦争参加者の一組が居るのは、警視庁の中。
割り振られたロールの都合上、警視庁本部庁舎に在籍している。
部署は、刑事部捜査一課。階級は、巡査部長と定められていた。


 その一人、刑事で『仮面ライダー』であった。


  ◎   ◎   ◎   ◎


 中心の回転台に停車するスポーツカー、"トライドロン"。
部屋に通じる扉の上には、「R」を図案化したエンブレムクレストの存在。
ここは、庁舎地下。秘密裏に設置されている、トライドロンの整備場「ドライブピット」。


 ホワイトボードに書かれている二十三区のマップ。
各地には赤点と時刻が記入され、渋谷区一帯は、赤線で囲まれている。
箇条書きの各発生日時と詳細の要点に、容疑者・被害者の写真が貼られていた。

 ボードの前には顎に手を置く男性と赤を基調としたクレードル。
男性の名は、"泊進ノ介"。二十三区に呼び寄せられた聖杯戦争参加者の一人である。

「……一体、何の目的があって聖杯戦争が行われているんだろうな。」

 進ノ介が疑問に思うのは、聖杯戦争の意味。
無関係の人間を呼び寄せ、この閉じられた二十三区内で戦わせている。
今も見知らぬ何者かの狙い、聖杯戦争を行う理由があまりにも不可解な話だ。

「う〜む……。情報に乏しい現時点では、理解できない問題だね……。」
「それもそうだよなぁ……。」

 ベルトから発せられる機械音声。
ディスプレイから発信される表情は、どこか苦々しさを示していた。

 "ドライブドライバー"。通称、「ベルトさん」。
「仮面ライダードライブ」としての進ノ介をサポートする友であった。

「……だが、"記憶を改竄されたまま放置していた"ということに、何らかの意味があるのではないだろうか?」
「意味?」

 ベルトさんに視線を向ける進ノ介。

「シンプルに聖杯戦争の運行のみを目的とするならば、覚醒に至るまで経緯はさほど必要にならなかっただろう。
"改竄された状態から記憶が戻り、サーヴァントを従えて戦っていく状態"そのものに、主催側の意図がある筈だ」
「つまり、俺達の記憶が戻るまで放置していたのも、こっちを"試していた"ということか……。」

 進ノ介とベルトさんの記憶が覚醒したのは、急に起きたことではない。
ドライブドライバーとシフトブレスを装着し、イグニッションキーを回したことがきっかけで記憶が覚醒したものだ。
つまり、改竄の時点は何者かの干渉があったが、一方で覚醒に対する干渉や対策は一切ないということになる。

 不完全な仕組みこそ、何者かの「目的」に繋がるのではないかと考えられる。
単に戦いが目的なら、記憶の改竄など手間でしかない。あるいは、このまま傀儡として利用する手もあった筈。
自らのきっかけで記憶を覚醒させ、自らの意志で二十三区の中で生きていくことに意味がある、と踏んだのだ。


732 : 聖杯戦争は"なぜ"始まったのか(if) ◆K2cqSEb6HU :2022/05/17(火) 16:47:00 hlHtWVzA0
「……お前達も、奴の従者というわけか。」

 後ろのデスクに座っている青年が、一人でに動くミニカーを観察していた。

「あぁ、それはシフトカーといってね。それぞれが意志を持ったミニカーなんだ。」

 ベルトさんのディスプレイは笑顔にも見える表情に変わる。
シフトカーとは特殊なミニカー。単独で人工知能を有し、人間に奉仕する存在である。

「付喪神だな。」
「い、いや?そんな超常的な存在ではないのだがね?」

 ロボットのような正確無比な軌道で振り向く青年。
ベルトさんのディスプレイは困惑にも見える表情に変わる。

「それでアンタ……じゃなくて、貴方があの"神武天皇"でいいんですよね?」
「ああ、俺が彦火火出見。後世では『神武天皇』と呼称されている存在の複製体だ。」

 サーヴァントの存在が、英雄を基とした戦士であることは進ノ介にも入っていた。
その中で進ノ介が召喚したサーヴァントは、セイバークラスで召喚された"神武天皇"。
神武東征を成し遂げ、現在の奈良県に大和王権を築き上げた、日本の初代天皇であった。

「チェイス……じゃないですよね?」
「人違いだ。」
「他人の空似というものがあるみたいだね……。」

 ただ、偶然にも似ている面もあった。進ノ介のライバルであったチェイスに。

「敬語はよせ。マスターとサーヴァントの関係である以上、気遣いは無用だ。」
「あ、ああ……じゃあ、よろしくたのむよ。」

 ぎこちない反応ながらも了承する進ノ介。
神武天皇も立ち上がり、進ノ介の下まで歩いていく。

「泊はこれからどうする気だ」
「ん?」

 神武天皇に視線を向ける進ノ介。

「聖杯戦争が何であるか、などに気を取られても仕方がない。
どのような方針で、何を求めて戦うつもりだ」

 進ノ介の目を見る神武天皇。
その顔は無表情。揺るがぬ目で進ノ介を観察していた。

「市民や聖杯戦争の犠牲者を救うことだ。……考えるのはやめた。」

 進ノ介はそう言って、ネクタイを締める。
聖杯戦争がどうなのか、よりもまずは聖杯戦争で起こる問題をどう対処するかだ。

 泊進ノ介は警察であり、市民を守るために戦う仮面ライダー。
皆を見捨てるつもりはない。二十三区の都民や聖杯戦争の被害者は守る。
何者かによって創り出されたであろう偽りの物であったとしても、その意志は変わらない。

「そういうアンタはどうしたい?サーヴァントとして何のために戦う?」
「日本を守ることが俺の使命だ。そのために召喚された。」

 神武天皇の問いに進ノ介も思わず笑う。
"そういうところも似ているな"。とライバルであったチェイスのことを思い返す。

「セイバー……いや神武天皇。」

 手を差し出す、進ノ介。
無表情で手を凝視する神武天皇。

「────ひとっ走り、付き合えよ。」

 差し出した手を握り、握手を交わす主従。
心のエンジンに火が点いた。ここからは"ドライブ"の始まりだ。


  ◎   ◎   ◎   ◎


二人の男と、一台の車はその運命を変えられるのか。


 ────Start Your Engines────


733 : 聖杯戦争は"なぜ"始まったのか(if) ◆K2cqSEb6HU :2022/05/17(火) 16:48:25 hlHtWVzA0
【クラス】
セイバー

【真名】
神武天皇@日本神話

【属性】
秩序・善

【パラメータ】
筋力A 耐久B 敏捷B 魔力B 幸運A 宝具A+

【クラス別スキル】
対魔力:A
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、魔術ではセイバーに傷をつけられない。

騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】
カリスマ:B
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、一国の王としてはBランクで十分と言える。

仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力。
不利になった戦闘を初期状態へと戻す。

神性:A
神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。
天照大御神の曽孫に当たり、自身も橿原神宮で祀られている。

不屈の意志:B
あらゆる苦痛、絶望、状況にも絶対に屈しないという極めて強固な意思。
肉体的、精神的なダメージに耐性を持つ。ただし、幻影のように他者を誘導させるような攻撃には耐性を保たない。

【宝具】
『布都御魂・建御雷』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜80 最大捕捉:700
天津神より授けられし霊剣。石上神宮に祭られている国宝のオリジナル。
真名開放によって建御雷神の御神体に転じ、霊位の段階が上昇。
振るわれる霊力の波は毒や呪い、邪神といった悪しきものを浄化させ、周囲に活力を齎す。

『征導の八咫烏』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
天照大御神より遣わされし八咫烏の召喚。
八咫烏は神獣であり、導きの神として信仰されている。
セイバーおよび同軍に同ランクの啓示に相当する効果を齎し、天照大御神の加護を与える。

【weapon】
「布都御魂」
金の装飾が施された環頭太刀。

【人物背景】
日本の初代天皇。諱は彦火火出見。『日本書紀』では神日本磐余彦天皇として語られている。
数多の試練と決戦を神武遠征を成し遂げ、大和王権の礎を築くと共に、橿原宮にて初代天皇として即位された。
127歳、橿原宮に崩御するまで現在の日本の原型となる国を治め上げた。

万年無表情で、生真面目かつ堅物然とした人物。
明達で強い意志を持ち、日本の建国・守護を神から与えられた使命として生きてきた。
機械生命体のように人間味が薄いが、不器用なだけで根は人間的。

【外見】
美豆良の髪型をしたチェイス(上遠野太洸)。
刑事という職種に順応するため、紺色のスーツに青ネクタイという正装を着用している。
戦闘時は白の衣褌姿になる。

【サーヴァントとしての願い】
日本の平和を守るために聖杯戦争を終わらす。

【方針】
基本的に作戦や事件解明は泊に任せ、自分は戦闘を務める。


734 : 聖杯戦争は"なぜ"始まったのか(if) ◆K2cqSEb6HU :2022/05/17(火) 16:49:37 hlHtWVzA0
【マスター】
泊進ノ介@仮面ライダードライブ

【能力・技能】
「戦闘スタイル」
警察が行う逮捕術に近い格闘技を主体とした戦闘スタイルが特徴。
また、下記のシフトカーやフォームを自在に駆使し、戦闘を優位に運んでいく。

「推理力」
人物の言動や事件の行動から相手の真意を読み取り、事件を解決させるほどの推理力や洞察力を持つ。
事件の真相が解明できた際、「繋がった。」と「脳細胞がトップギアだぜ!」が口癖。

【weapon】
「ドライブドライバー&シフトブレス」
「仮面ライダードライブ」に変身する変身ベルトとアイテム。
開発者であるクリム・スタインベルトの自身の意思、記憶、知識、性格を人格プログラム化して移植され、ベルトさんとしてサポートしている。
装着者の健康状態を記録・管理する機能が搭載され、また生命維持装置としての役割を担うことも可能としている。
イグナイターを押すことでフルスロットル状態にさせシフトカーを操作、必殺技を発動する。

□タイプスピード
「シフトスピード」で変身するドライブの基本形態。
優れたスピードを持つ形態。

□タイプワイルド
「シフトワイルド」で変身するパワーとタフネスに優れた形態。
パワーの大きいタイヤを軽々と扱える。

□タイプテクニック
「シフトテクニック」で変身する技術力に優れた形態。
機械構造を瞬時に分析して使いこなす他、精密射撃などを得意とする。

□タイプデッドヒート
「シフトデッドヒート」で変身する強化形態。
稼働エネルギーと熱を利用し、爆風を伴う超高熱の攻撃を繰り出していく。
一方で、バーストして進ノ介の意志を無視した暴走状態に入るという欠点がある。
リスクを加味してか、ベルトさんも使用は認めていない。

「シフトカー」
それぞれが意思を持ったミニカー。小型の道路を作り出し、独自に移動する。
ドライブを状況に先述したタイプへの変身や、タイヤを装着させドライブに応じた能力を与える効果を持つ。

◎マックスフレア:炎を身に纏う
◎ファンキースパイク:トゲで攻撃
◎ミッドナイトシャドー:分身/手裏剣型エネルギー弾
◎ジャスティスハンター:鉄柵生成
◎スピンミキサー:コンクリート弾
◎ドリームベガス:コイン攻撃
◎マッシブモンスター:カミツキ攻撃
◎ディメンションキャブ:ポータル生成
◎ランブルダンプ:ドリルを装備
◎マッドドクター:治療効果
◎フッキングレッカー:フックによる牽引
◎バーニングソーラー:発光による目潰し
◎ファイヤーブレイバー:アームを伸ばせる。
◎ローリングラビティ:シフトカーの進路生成
◎ロードウィンター:冷気を操る
◎カラフルコマーシャル:立体映像を映す
◎デコトラベラー:突進攻撃、演歌調の演出
◎アメイジングサーカス:パフォーマンス演出

なお、能力はシフトカー単体でも使用可能。

「ハンドル剣&ドア銃」
主にドライブ時で使用する武器。
ハンドル剣はハンドル操作により急激にターンしながら斬撃が可能。
ドア銃はドアを開閉することでリロードを行うが、半ドア状態だと撃てない。

「トライドロン」
進ノ介が主に乗用する車両。
基本のスポーツカー形態、オフロードカー形態、特殊車両形態の3つに変形機構を持つ。
操作系統がベルトさんと共有しており、遠隔操縦することも可能。


735 : 聖杯戦争は"なぜ"始まったのか(if) ◆K2cqSEb6HU :2022/05/17(火) 16:50:26 hlHtWVzA0

【人物背景】
この男、刑事で仮面ライダー!!

機械生命体ロイミュードによって引き起こされる怪奇事件専門の部署「特状課」に就く警視庁の刑事。
「ドライブドライバー(ベルトさん)」達の後押しを受け、錆びたエンジンに火が点き、以後「仮面ライダードライブ」として戦うことになる。

人をからかったり、茶目っ気のあるジョークを交えるなどもコミカルな面もあるが、素直で熱血漢な性格。
燃え尽きる覚悟で挑む相手の思いに応え、自らも相討ち覚悟で付き合おうとする場面や
「人間として生きていたい」と願うロイミュードに歩み寄って受け入れる場面など
立場や境遇に捉われず、相手と真摯に向き合う高潔な面も持ち合わせている。
その一方で、感情任せの行動を取ってしまうこともあり、当人もその点を反省することも多い。
ベルトさんの評では、「頭は回るが根は素直でお人好し、そして何度止まっても諦めず心のエンジンを動かす男」とのこと。

殉職した父"泊英介"の影響もあってか、警察として市民を守ることに誇りを抱いており、
ドライブとなってからは真面目に事件や被害者達とも向き合い、警察官として職務を全うしている。
しかし、隠された過去の真相については、この時系列ではまだ知らない。

【マスターとしての願い】
警察として市民の平和を守り、聖杯戦争を終わらせる。

【方針】
二十三区内各地に起こる事件を洗っていき、各マスターや聖杯戦争の真相を突き止めていく。
同じく戦争を望んでいないマスターの場合、警察での保護も検討する。

【ロール】
警視庁刑事部捜査一課に属する巡査部長。
なお、この世界では「仮面ライダードライブ」に関する記録はない。

【把握媒体】
特撮ドラマ『仮面ライダードライブ』をご参照ください。
時系列上はシフトデッドヒートが登場した17話後の想定です。


736 : ◆K2cqSEb6HU :2022/05/17(火) 16:52:46 hlHtWVzA0
投下終了します。

「人類観察都市 東京二十三区」様にて投下した同名作品のリメイク版(もしも違うサーヴァントだったver)です。
締め切りに間に合わなかったこともありますので、こちらの方で投下させていただきました。

サーヴァントおよびマスター、内容に関する改変についてはご自由にどうぞ。


737 : ◆U1VklSXLBs :2022/05/27(金) 05:24:35 TlxZsLag0
投下します。


738 : ヨナタン&セイバー ◆U1VklSXLBs :2022/05/27(金) 05:25:15 TlxZsLag0
早朝、ヨナタンは通学に使うバスを降りると学校に向かう坂を登り始めた。周囲には彼と同じように登校する生徒達がいて、気心の知れた顔を見つけると、それぞれ自然に集団を作る。ヨナタンに声をかける男子生徒もいて、朝のHRが始まる前には、ヨナタンの周囲には見知った顔が集合していた。

NPCである。あるいはまだ記憶を取り戻していないだけでヨナタンと共に戦っていた本人なのか?ヨナタンには区別がつかない。この街で普通の学生として過ごす日々は平穏で、
左手に宿った奇怪な痣さえ無ければ、いつまでもこの営みが続いてほしいと願わずにはいられない。

≪美しい街だ…王都すら、これほど整ってはいない…≫
≪以前任務で訪れた東京が似たような街でした。ここに比べれば、残骸のようなものですが≫

1日の授業を終え、ヨナタンは数人の友人達と遊んでから家路につく。契約しているセイバーと念話でやりとりしながら、ヨナタンはナラクを降り、ケガレビトの里…東京に降り立った時のことを思い出していた。

ミカド国よりも発展していたがあちこち荒廃しており、廃墟のような都市で人々は悪魔の肉を食べて暮らしていた。そこでヨナタン達は様々な考えに触れた。その結果、仲間達の結束は失われてしまった。

≪マスターよ…お前は聖杯に何を願う…?≫
≪僕は、祖国…東のミカド国の民を護りたい。個人的に託す願いはありません。彼らが変わらず明日を迎えられる事、それだけです≫

今日の平和を続けられるよう、サムライの務めを全うする。聖杯戦争を勝ち抜き、願望機を手に入れれば、東のミカド国と東京の双方を変わらぬ状態で維持できるかもしれない。そのためになら、殺し合いにだって身を投じよう。

≪触媒を用いぬ召喚の場合、気質の近い者同士が結ばれると知識にあるが…これがそうか…≫
≪というと、貴方も祖国を護りたい…?≫
≪祖国か…それも間違いではない。私が守るのは、黄金樹よ≫
≪…黄金樹≫

見上げるばかりに聳え立つ大樹、黄金樹とそれに祝福された狭間の地。黄金樹の力の源たるエルデンリングが砕かれたことで、狭間の地は荒廃。破片を手にしたモーゴット達デミゴッドは歪み、互いに争い、そして大いなる意志に見捨てられた。

壊れたままの世界に、かつて追放されし褪せ人達が帰還する。女王マリカの子供であるデミゴッド達より破片を奪い取り、新たな王となる使命を大いなる意志より託されて。

≪私は聖杯の力を得て、エルデンリングを手に入れる≫

エルデの王となり、黄金樹を守る。野心をたぎらせる褪せ人共、裏切り者のデミゴッド、皆有罪だ。語る内容には不明な語句がいくつもあったが、セイバーの真っ直ぐな感情はヨナタンにも理解できた。

≪確かに僕らは似ている気がします。しかしセイバー、大いなる意志とやらは、貴方を見捨てたのでしょう。聖杯の力で黄金樹によらぬ、新しい世界を構築しようとは思いませんか?≫
≪…要らぬ。黄金樹無き世界など、私の生きる世界ではない…≫

セイバーの声に怒気が籠る。

≪失礼。分を弁えない発言でした≫

野心などない。自分以外の尊いと感じたものの為に。ヨナタンも彼と同様だ。しかし、セイバーのように使命に殉ずる域には、まだ達していなかった。仲間達との友情に罅が入った事を、年若いヨナタンは悲しまずにはいられない。


739 : ヨナタン&セイバー ◆U1VklSXLBs :2022/05/27(金) 05:26:16 TlxZsLag0
【サーヴァント】
【CLASS】
セイバー

【真名】
モーゴット
【出典】
ELDEN RING
【性別】

【ステータス】
筋力B+ 耐久A 敏捷C 魔力B 幸運E 宝具B

【属性】
秩序・善
【クラス別能力】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

騎乗:D
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。
【保有スキル】
神性:C
神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。女王マリカの血を分けた親族、デミゴッドの一人。

戦闘続行:A
往生際が悪い。瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる

信仰の加護:A+
一つの宗教観に殉じた者のみが持つスキル。
加護とはいうが、最高存在からの恩恵はない。あるのは信心から生まれる、自己の精神・肉体の絶対性のみである。黄金樹に愛されずとも、愛し抜いた守り人。

投擲(槍):A
形成した光の槍を遠くまで投げ放つ能力。
【宝具】
『忌避されし呪血の曲刀(カースブレイド・オブ・モーゴット)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1〜10  最大捕捉:5人
異様に変色した歪み刃の剣。斬りつけられるたびに相手は耐久値による抵抗判定を行わねばならず、失敗すると短時間の間、傷口が癒えず出血し続ける。真名解放を行う事で、血の剣閃を放ち、斬りつけた軌道上に炎の爆発を発生させる。

『輝ける祝福の左(シャイニング・レフト)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:− 最大捕捉:1人(自身)
モーゴットの左手。
魔力によって生み出した光の長剣、ナイフ、長槍、ハンマーなど様々な武器を形成して、曲刀と共に連撃を繰り出すほか、自分を中心とした範囲に光剣の雨を降り注がせる事が可能。宝具に昇華された事で侵略者、簒奪者の属性を持つ英霊を攻撃する際、固定ダメージが攻撃に追加される。

【weapon】
『忌避されし呪血の曲刀』
『輝ける祝福の左』
【人物背景】
砕かれたエルデンリングの破片を持つ、デミゴッドの一人。王の一族でありながら忌み子として生まれ落ちた彼は、地下に捨てられ幽囚として過ごす。破砕戦争に身を投じると、黄金樹に挑んだ者達、数多の英雄を狩る。王都ローデイルに王として陣取っていたモーゴットは、祝福の導きによって狭間の地に戻った褪せ人によって討ち取られた。彼は最後まで黄金樹の守り人であり続けた。
【サーヴァントとしての願い】
エルデンリングを修復し、王となる。

【方針】
優勝狙い


740 : ヨナタン&セイバー ◆U1VklSXLBs :2022/05/27(金) 05:26:48 TlxZsLag0
【マスター】
ヨナタン
【出典】
真・女神転生4

【性別】

【能力・技能】
サムライ衆:
東のミカド国の治安維持と悪魔討伐を任務とする集団。18歳になった国民はガントレットを起動できるかどうか試され、起動できた者はサムライ衆に取り立てられる。

魔術:
氷結、衝撃属性の魔術を習得している。

【weapon】
なし。
【人物背景】
ラグジュアリーズ出身の少年。生真面目で心優しい性格。任務によって東のミカド国からケガレビトの里『東京』に赴く。そこで阿修羅会のタヤマや新宿にいるフジワラなど幾多の出会いを経た後、聖地シンジュク村にて四大天使達と面会した彼は、サムライ衆の使命を全うすることを改めて誓う。

四大天使達が正体を表した後より参戦。まだ人間である。

【マスターとしての願い】
民達が変わらず明日を迎えられる世界。

【方針】
優勝狙い


741 : ◆U1VklSXLBs :2022/05/27(金) 05:28:02 TlxZsLag0
投下終了です。鯖、鱒、本文は改変自由。


742 : 血が流れてるピンクにチェンジ ◆83d2jqQv8Y :2022/06/05(日) 18:47:03 UEpdkb3U0
投下します


743 : 血が流れてるピンクにチェンジ ◆83d2jqQv8Y :2022/06/05(日) 18:47:42 UEpdkb3U0
聖辺ルリは今をときめくアイドルである。といっても、その今とは何時の今なのか分からない。

日朝特撮に女性の主役、女性の赤色の戦隊ヒーロー、女主人公等取り質され、そして、それに対して是々非々賛否両論が飛び交うインターネット社会SNSの魔女の鍋等、年がら年中、それを掻き混ぜるのをやめるものはいない。

「カラオケですか……」

目の前の男はサーヴァント故の霊体を解いた姿でいる。

カラオケボックスにはちゃんと二人料金を払っている。

「やはり、XJAPANの紅……これって父殺しの歌でしたっけ?」

「違うわよ」

めちゃくちゃ物騒な割にネットの憶測の一つである。


744 : 血が流れてるピンクにチェンジ ◆83d2jqQv8Y :2022/06/05(日) 18:48:07 UEpdkb3U0
「ふむ、令呪で『用があるまで眠れ』と命令されて起きたらカラオケですか、これはどういう話ですかな?」

眠たげ、気だるげといってもいい男はうんざりとしている。

この場所は彼にとっては場違いかもしれない。

いや、彼にこそこの場所が相応しいのかもしれない。

「紅がいいなら紅が歌えばいいじゃない」

「GazettEも中々物騒な歌詞があって良いのですが………」

男はやや不満げであった。

「ならこれもいいじゃない?平沢進のMOMO色トリック、ねぇアサシン?」

「私は朝死さんじゃなくて黒贄礼太郎と言います」

そしてカラオケは約一時間続いた。

何故か聖辺ルリはドリンクバーで一人往復する事になったのはこのアサシンの問題行動を問題視したからだ。

聖杯戦争は始まろうとする、だがしかし、この池袋のカラオケボックスでは一つの歪んだ愛が始まろうとしていた。


745 : 血が流れてるピンクにチェンジ ◆83d2jqQv8Y :2022/06/05(日) 18:48:36 UEpdkb3U0
【サーヴァント】
【CLASS】
アサシン
【真名】
黒贄礼太郎
【出典】
殺人鬼探偵
【性別】
男性
【ステータス】
不死、カニバリズムでも悪魔崇拝の賜物でもない能力。
元魔王:C一応魔王を倒して代替わりした、その後八津崎市長に負けて、元魔王となった。
怪力:EX、実は魔界の住人であるらしく、それ由来の魔族としての暴力を発揮できる。
邪な魅了:B、イケメン無罪、何故かカッコよかったら犯罪者でもファンが出来る、犯罪者性愛とも言う。

【宝具】
『殺人鬼探偵(キラー・プライベート・アイ)』
ランク:B+ 種別:対人類宝具 レンジ:1〜全人類 最大補足:1〜全人類

その気になれば日本中の人間を皆殺しにして、世界中の人間を皆殺す殺人鬼探偵たる殺人鬼の真体、凶器くじにより凶器を選んでからが真骨頂、凶器を持つと凄まじいまでの殺意が必ず狙った誰かを殺す。


746 : 血が流れてるピンクにチェンジ ◆83d2jqQv8Y :2022/06/05(日) 18:49:07 UEpdkb3U0
【weapon】

凶器くじの一覧

番号 凶器 使用話
1番 斧
3番 マイクスタンド
8番 金鎚
9番 マシェット
14番 超強化プラスチック製物干し竿
16番 整地ローラー
17番 鎌
18番 せんとくんの着ぐるみ
19番 植木鋏
22番 モップ
23番 建物解体用の鉄球
25番 マイナスドライバ
29番 マンホールの蓋
33番 瓶詰めされたスライミー藤橋
34番 デザートスプーン
38番 シャベル
47番 削岩機
旧48番 縫いぐるみのヒグマのグリズリー君
新48番 世界殺人鬼王決定戦優勝トロフィー
53番 黒いボーリング球
54番 古いツードアの冷蔵庫
55 人間の倍はあるような大腿骨
61番 金鋸
65番 マグロおろし包丁
旧68番 止まれの標識
新68番 魔王の王冠→依頼人用ベンチ  
72番 チェーンソー I-1
85番 長い柄の大鎌 II-2
96番 七番アイアン I-2
99番 八津崎市長
101番 大谷五郎
鋼鉄ハンマー
電動丸鋸
ガイドのついた旋盤機
トイレブラシ
アイロン
電柱
半田ごて
大型消火器
【サーヴァントとしての願い】
探偵活動頑張るしかないな。

【方針】
とりあえず人を殺しましょう。


747 : 血が流れてるピンクにチェンジ ◆83d2jqQv8Y :2022/06/05(日) 18:49:28 UEpdkb3U0
【マスター】
聖辺ルリ
【出典】
デュラララ

【性別】

【能力・技能】
怪力、化外の混血故に。

【人物背景】

人気アイドル。内向的な性格の、物静かな美女。
元は資産家の令嬢だったが祖父、父と立て続けに事業に失敗した結果、没落。その後謎の火災で肉親の多くを失い、彼女はヤバめの遠縁の親戚に預けられた後、メイクアップアーティストとしての道を踏み出し、その後「澱切シャイニング・コーポレーション」の社長澱切陣内にスカウトされ、アイドルとしてデビューする。

実は母方の祖母から人ならざる者の血を受け継いでおり、祖父と父は聖辺家に迎えられた婿養子である。母には20歳年下の異父妹がひとりおり、ルリの叔母にあたるその人物こそが鯨木かさねである。
澱切陣内には元々異形の存在として目をつけられており、「儀式」へと参加させられ徹底した精神と肉体の陵辱を受ける。それでも澱切に父親を人質に取られてしまっていた事もあり、アイドルの人格を支えに何とか活動していたが、独自に父親を探す中で九十九屋真一に提供された情報で自分を救おうとした父親が既に殺されていた事を知り、異形の力が覚醒。怪物のメイクを施して「儀式」に関わった者たちを殺していき、「殺人鬼ハリウッド」の名で世に知られるようになる。

池袋で怪物姿で澱切を探していた中、ネブラから検体確保を依頼されたエゴールと交戦になったところ、たまたま側にいた平和島静雄のカバンを凶器に使用とした結果平和島静雄に倒される。その事からネブラからも「一般人に負ける程度の怪物」と思われ、興味対象から外れた。その後倒れていたところを以前仕事で関わりを持った羽島幽平こと平和島幽に救われ、その後、羽島幽平とは公私共に恋人となり、彼の所属する「ジャックランタン・ジャパン」に移籍する。熱愛報道にファンからは一時的に叩かれるも、幽平が完璧イケメンなのでファンの一部のコミュニティで浄化作用が働いた。

【マスターとしての願い】
芸能活動頑張るぞ………
【方針】
怖い目に会いたくない


748 : 血が流れてるピンクにチェンジ ◆83d2jqQv8Y :2022/06/05(日) 18:49:46 UEpdkb3U0
投下終了します


749 : 疾風迅雷さえ葬らんとする狂乱怒濤 ◆83d2jqQv8Y :2022/06/06(月) 01:38:50 qGfGLlTk0
投下します


750 : 疾風迅雷さえ葬らんとする狂乱怒濤 ◆83d2jqQv8Y :2022/06/06(月) 01:39:23 qGfGLlTk0
五条袈裟の僧服をした男が目の前の妖しき怪人に声をかけた。

ここもまた池袋のカラオケボックスである。

さりとて、時系列は凡そ平成後期である。

「地獄絵図とは何でござろう?」

怪人が僧侶に聞いた。

「古来、人間は地獄を忌避して天国を渇望する生き物だ、罪から逃れ、そして咎を嫌う、何故か分かるかい?」

それを質問を質問で返した。

「簡単な事、業が深過ぎるからだ、仏罰の概念はどうやら日本にしか芽生えない概念、神罰という概念から派生した異様な文化、全てを慈しむ存在からも罰があると思っている、妄念よな」

怪人は聞かれた事には一応答えることにしたらしい。

「仏教というよりキリスト教ならどうだい?」

質問はまた何故か彼が主導権を握っていた。

「伴天連の思想もまた面妖、救われたいから救いを求めるでござりまする、それは自分では自分を救えないと悟っているという事、それは仏教の無情に通じまする」

「通じてしまう、か、比較神話学にしては浅はかだね」

二人は会話を続ける。

そこに店員がやって来た。

ドリンクは二つ。

烏龍茶とコーラ。

「あれ?二名ですよね?」

「はい、二名です」

僧服は何故か聞かれた事にそのように答えた。

「あ..............いえ、なんでもありません」

店員は何かに気づいてしまったようだ。

目の前の怪人は明らかに人間ではなかった。

「じゃあ、何を歌う?キャスター」

男は漸く本題を切り出した。

「平沢進の1778-1985でござりまする」

カラオケボックスはその歌が終わった後、どうやら悲惨な事になるようだった。

何故ならば聖杯戦争の真っ最中だからだ。


751 : 疾風迅雷さえ葬らんとする狂乱怒濤 ◆83d2jqQv8Y :2022/06/06(月) 01:39:51 qGfGLlTk0
【サーヴァント】
【CLASS】
キャスター
【真名】
筋殻アクマロ
【出典】
侍戦隊シンケンジャー
【性別】
男性
【ステータス】
筋力C 耐久EX 敏捷C 魔力A+ 幸運B 宝具EX

【属性】混沌・悪

【クラススキル】
陣地作成:B護摩壇のような場所を作る。

対魔力:A
A以下の魔術は全てキャンセル。事実上、現代の魔術師では筋殻アクマロに傷をつけられない。

【保有スキル】
外道衆:A魔性の亜種として備わった力。

カリスマ:C一応、彼は自分で自分の配下を有しているため軍団を指揮する天性の才能はある。
【weapon】
削身断頭芴
蹴鞠
球を蹴っての変則的な遠距離攻撃
手からは青いエネルギー弾
手を変化させた巨大な鉤爪と鉤爪から放つ電撃を駆使して戦う
切神、特殊な紙を爪で切って巨大な人型の式神に変える術
人間をいがみ合わせる黒い雪を降らせる術も持つ能力。
【人物背景】
ドウコクの組織に入ろうとしてドウコクにダメージを受け、怖気つかなかった結果気に入られて参入後すぐシンケンジャーとバトル、蹂躙し、シンケンピンクにトドメを刺そうとするが、窮地に駆けつけたシンケンゴールドによって阻止され失敗。そのままゴールドと渡り合うも、出撃前にドウコクから受けたダメージが予想以上に大きかったようで撤退した。

その後は薄皮太夫や腑破十臓を傘下に引き込んだり、自身の配下を送り込んだ際も何やら別の企みを持っていたりと「独自の考え」を持っている描写がしばしば見られたが、アクマロは巧みにそれを隠し通し、表向きとはいえ「三途の川の増水」を目的として行動していた。
 

配下達を通して「この世の地獄」を作り出そうとする
三途の川を増水させるよりも直接この世から引き込む方が早いと、賽の河原を再現した作戦(ナナシ連中に子供達をさらわせ、「石を高く積めば親の元に帰れる」と吹き込んだ上でそれを都度ナナシ連中に邪魔させる)で嘆きを引き出し、「スキマ」から三途の川の水をあふれさせようとする
とある島で護摩のような儀式を行い、互いを疑心暗鬼で争わせる(いわく「人の世の最下層」)

そして、その計画の真実の暴露、裏見がんどう返し。

第四十一幕でアクマロの真の目的が明らかとなったが、それはなんと地獄を出現させること。配下を通して「この世の地獄を作る」としていた彼だが、物の例えでも"この世の地獄"でもない、正真正銘の「地獄」を呼び出そうとしていたのだ。
 
その計画の要として目をつけたのが、まさにはぐれ外道の腑破十臓であった。

が、駄目、失敗し、最後に地獄を見て死亡した。
【サーヴァントとしての願い】
この世に地獄を顕現させる。

【方針】
儀式を成功させる。


752 : 疾風迅雷さえ葬らんとする狂乱怒濤 ◆83d2jqQv8Y :2022/06/06(月) 01:40:20 qGfGLlTk0
【マスター】
羂索@呪術廻戦

【能力・技能】
脳を入れ替えることで肉体を乗っ取る禁忌の術式。名称不明。
脳は羂索の肉体の一部であり非術師にもみることができるが、本体とは明言されていない。
上述の通りに術者本人の生得術式に加え、乗っ取った肉体に刻まれた生得術式も使用可能になり、記憶も受け継がれる。
乗り替えた後の元の肉体の術式は消えてしまうが、それにも対処法がある模様。
また、反転術式の使い手であるが額の傷跡は『縛り』である為、残している。

戦闘能力現時点では、夏油傑由来の呪霊操術と自己回復の反転術式のみが明かされている。

【人物背景】
1006年前後(寛弘3年)、一度目の星漿体同化阻止失敗、六眼に敗れる。
1506年前後(永正3年)、二度目の星漿体同化阻止失敗。生後数か月の星漿体と六眼を殺害するが、同化の際に現れた六眼に敗れる。
1868年頃(明治初期)、加茂憲倫の身体を乗っ取り、呪胎九相図を作成する。
2003年頃(平成15年)、虎杖家に潜伏、虎杖仁(じん)の妻であった香織が亡くなり、後妻となる。2003年3月20日悠仁を産んだと思われる。
2006年(平成18年)、三度目の挑戦にて星漿体との同化阻止成功、呪霊操術の少年の存在も知り、計画を進める。
2012年頃(平成24年)、 五条悟は計画には邪魔なため獄門疆を捜索し続け、入手に成功。
2017年(平成29年、4〜6月ごろ)、伏黒津美紀、他多数の人間を呪い、寝たきりの状態に(マーキング)する。同12月下旬頃、呪霊操術の肉体を手に入れ乗り替える。
2018年(平成30年10月31日)、渋谷事変を起こし五条を封印。真人を呪霊操術でとりこみ、呪霊1000万体を放つ。『死滅回游』及び計画開始。
【マスターとしての願い】
呪術の最適化
【方針】
儀式を成功させる。


753 : 疾風迅雷さえ葬らんとする狂乱怒濤 ◆83d2jqQv8Y :2022/06/06(月) 01:40:43 qGfGLlTk0
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754 : ◆zzpohGTsas :2022/06/14(火) 02:11:56 2NlEIBrw0
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755 : 歩くような速さで ◆zzpohGTsas :2022/06/14(火) 02:12:38 2NlEIBrw0
 その子を見てると、天才ってのはいるんだなぁっていう気持ちと、自分は何とも日々を漠然と生きてるんだなぁ、と言う気持ちが湧きたってくる。

 ランドセルを背負っていてもおかしくない年齢と身長の男の子だった。
多分誰が見たって、この子を中学生とは思わない。小学校低学年程度の見た目だ。
まるでドラマとか映画に出て来る、主役レベルの役割を与えられている子役のように、顔立ちも可愛い。高校生位になったら、さぞモテなさるんでしょうなぁ、って感じだ。

 ――だけど、その見た目とは裏腹に、醸し出される雰囲気は、ビックリする程大人びていた。
大人ぶっているだとか、達観してるとか、そんな感じの話じゃない。本当に、雰囲気が、大人のそれ。
いや、大人と言うか最早、お爺ちゃんだとか、賢い学者様だとか、ファンタジーに出て来る、賢者様のそれだよ、これもう。

 ――君が、僕のマスターのようだね。ライダーのサーヴァントとして、君の求めを叶える為にやって来た。英霊と聞いて、こんな餓鬼が寄越されて失望しただろうけど、期待には応えるよ――

 なにせ、初対面の挨拶がこれだ。
声変わりだってまだの、ボーイズ・ソプラノだって可能なかわいらしい声なのに、その声に漲る笑っちゃうぐらいのインテリジェンス。
良い塾に通わせて貰っているんだなぁとかじゃなくて、根本的に、この子はあたしなんかとは……『宮薙流々』とは頭の出来が違うんだろう。
多分学級委員だって率先してこなしてたんだろうし、全校集会で全生徒の前でスピーチしたってプレッシャーなんてヘッチャラなのかも知れない。
落ち着いていて、冷静で、堂々としていて、この子に着いて行けば大丈夫だと言う安心感すら与えてしまう。うわー、大物。末は博士か、大臣か。平凡な人生何か、もう送れないねぇこの子。

 ――んでその子は今、何故か完全コピーされたあたしのお家のリビングで、納豆をかけたご飯と御味噌汁、たくあんと言う夕ご飯を。私と一緒に食べているのであった。

「ごちそうさまでした」

 米粒一つ、お椀には残ってない。うーん、お行儀が良い。

「何かその、サーヴァント? だか解らないけど、こんなご飯で大丈夫だった?」

「あぁ、気にしていないさ。むしろ、納豆と味噌汁何て……はは、久々に食べられて嬉しいぐらいだ。1000年ぶりに食べたな」

「1000年って……」

 冗談の才能は、ないらしい。これじゃスベっちゃうよ。

「食器、洗っておくよ。台所はどこだい?」

「だ、大丈夫だよ!! 遠慮しないでよライダーくん」

 見た目的な話で言えば、あたしの方が全然年上何だけど、どうにも気後れしてしまう自分がいる。
多分それは、ライダー君が他所のお家の子だからとか、サーヴァントだからとかじゃなく、本当に、偉い人なんじゃないかという思いが心のどっかであるからだった。

 そもそもの話、服装が普通のそれじゃなかった。
半袖短パン、だなんてワンパクぼーずみたいな服装じゃない。
白をベースにした清潔な印象を与える、子供用の礼服のような物をライダーは身に着けていて、まるでお金持ちとか政治家だとかが集まるパーティに出席するみたいな装いなのだ。
それだけならばまだしも、ケープには黄金色の糸で出来た徽章みたいなものが付いていて、更に更に、お胸の辺りには純金なんじゃないかと思ってしまうようなピカピカのドデカい、十字の紋章のような物をぶら下げているのだ。


756 : 歩くような速さで ◆zzpohGTsas :2022/06/14(火) 02:13:05 2NlEIBrw0
 あー、はいはいあたし解っちゃいました。
お金持ちだよこの子。納豆食べた事ないのも当然だよ。多分「ほーら僕も庶民と同じものを食べるんだよw」とか言って、納豆ご飯を食べてるのを尻目にご飯にキャビアをかけるんだ……。

「……君、凄く失礼な事考えてない?」

「キャビアとか好きそうだなって……」

「いや、それ程好きじゃないよ」

 まるで、アホ犬でも見るような生暖かい眼差しで、ライダー君はあたしの事を見つめて来た。声も、呆れ気味。

「……食事の席でする話じゃない事は、百も承知だが……君には現実を見て貰いたくてね。気が引けるけど、尋ねなくてはならない」

「うん?」

 これ程までに、『改まってお前に話がある』みたいな話しぶりはない。
ライダー君は、これまで、遥か高みの知性の持ち主が、私に歩幅を合わせて話をしてくれている、と言う風な感じだったけど、今は全然違う。
賢者とか神様が、試練でも与えているかのような、突き放した声音。初めて会った時のミュッさまよりも、遥かに偉そうだった。

 ……いや、実を言うとライダー君が何を聞こうとしているのか、あたしだって馬鹿じゃない。理解していた。
この子としては、聞いておかなきゃならない事だろうし、あたしとしても、答えなくちゃならない事でもあった。

「君は、聖杯戦争の参加者だ。君が聖杯戦争について何も知らない事は僕も解っているし、そもそも自分の意志とは無関係に訳も分からず巻き込まれただけだと言う事も知っている」

 さて、と言ってライダー君は言葉を区切った。

「聖杯について、解ってる事は?」

「願いを叶えてくれるって事しか……」

 それにしたって、あたしの頭の中にいつの間にか刻み込まれた知識を、口にしているだけに過ぎない。ライダー君に会うまでに知ってた知識じゃない。
聖杯なんて言葉、初めて聞いたし、何の伝説に出て来る物かも解らない。マグちゃんだったら、持ってるかも知れないけども。
どの国のどれ位昔の話に出て来る道具なのかあたしもわからないけれど、その、全ての願いを叶えてくれる魔法のランプみたいな機能だけは、確実なんだと言う実感が刻み込まれているのだった。

「その機能については、概ね、正しい物だと思っていて良い」

「でも、信じられないし、騙されてるような感覚が凄いよ?」

「普通は君が正しい。実際僕も、聖杯の機能とやらについては、ある程度信を置いて良いとは思ってるけど、全幅の信頼を寄せてる訳じゃない。半信半疑……ああ、七信三疑ぐらいかなぁ」

 何処か、人を小ばかにしたような、悪い笑みを浮かべて、ライダー君は口を開いた。

「けど、世の中、君みたいに立ち止まって『ちょっと待てよ?』が出来る人間ばかりじゃない。ぶら下げられたニンジンしか、骨の形をしたビスケットしか、眼中に映ってないような狭い視野で短絡的なお馬鹿さんが大勢いる」

「聖杯を信じてる人がいる、って事?」

「信じているだけなら可愛いもんさ。聖杯戦争のルールは解ってるだろう? 殺し合いだ。聖杯が欲しいから、殺しに乗っかって、君を殺そうとする者が絶対にいる」

 ゾッとしない話だ。多分、感情が顔に出てたと思う。

「ライダー君は、聖杯……? って奴、欲しかったりする?」

「その機能が本当なら、僕は……うん、そうだね。叶えたい願いがあるんだよ」

 私の質問に答えるのに、意味深な間があった。躊躇い、のようなものだったと思う。

「僕はね、マスター。少なくとも君よりは遥かに強いし、今回の戦いにおいても、早々遅れをとる事はないと思ってる。それなりには、強い方だと思うさ」

 それは、多分、そうなんだろうとあたしは思う。

「僕は、個人的な好悪で考えるなら、君の事は好ましい娘さんだと思うし、君に協力する事だって、吝かじゃない」

 「だからね――」

「君の方針を教えて欲しいな。聖杯が欲しいかい? それとも、この世界からの脱出をお望みかい? どちらを答えたって良いさ。ただどうあれ……どちらを選んでも、人は死ぬ。誰かを殺し、誰かに殺されるかも知れない。念頭に入れておいて欲しい」

「それを避ける事は……」

「残念ながら不可能だ。聖杯戦争の性質上、死は避けられないと思って良い。けれど、深刻に考えるな。殺すのはあくまで僕だ。罪の避雷針の役割を、果たすと約束するよ」


757 : 歩くような速さで ◆zzpohGTsas :2022/06/14(火) 02:13:34 2NlEIBrw0
 殺すだとか、罪だとか。あたしは、そんな事真剣に考えた事なかった。だって、宮薙流々の人生は、そんな物とは縁遠いものだと思っていたから。
そりゃ確かに、凄い破壊神のマグちゃんとはお友達だし、人間の一生を容易く左右する力を持った邪神の皆とも知り合いだよ。ミュッ様に至っては、あたしに殺意も敵意もぶつけて来た。
じゃあそれで、だったら聖杯戦争も同じノリで行け!!、って言われてもそれは違うだろう。賢くないあたしにだって大体解る。
この戦いに集まる人たちは、等身大の人間の筈なんだ。あたしとは違う生き方をして、違う考え方を持っていて、好きな人もいて趣味もあって、でも嫌いなものも勿論ある。
そんな、人間が参加しているんだ。多分だけど、本人からすれば、凄い切実な理由で、聖杯を求めてる事もあるんだろうな。
現実の世界に、自分が迷い込んだ袋小路を打破する手段何てもうとっくになくなってて、見つけられなくて、ワケ分かんなくなってて。そんな、可哀そうな人もいるんだろう。
そんな人を相手に、何で、殺し合い何て出来ると思うのだろう。何で、そんな人を相手に殺し合いをしなくちゃいけないんだろう。考えれば、誰だって分かるよ。聖杯戦争は、もう、コンセプトからして破綻しているって。

「それでも、あたしは、人を殺したくないよ」

 試すような態度のライダー君に、真正面からあたしは返した。

「……そうか」

「そしてね――」

 まだ、話は終わってないんだよ、ライダー君。

「ライダー君にも、出来るのなら人を殺して欲しくないな」

「……何で?」

 疑問の光が、ライダー君のキレイな瞳に宿り始めた。

「だってそんな事したら、ライダー君の日常が変になっちゃうじゃん」

「この際だから言うけど、サーヴァントとして召喚されてる時点で、その人物は、普通の日常から遥か遠い所にいる変態だと思って良い。僕とてそうだ。数え切れない程の人間を、この手で殺して来たよ。直接的にも、間接的にもだ」

「やっぱりライダー君良い子だよ。悪人って普通は、馬鹿正直にそんな事言わんて」

 ピクッと、ライダー君は反応した。
そりゃそうだよ、だって本当にどうしようもない悪い人で、こっちを騙そうとするんだったら、天使の顔して甘い言葉と嘘でも囁いてさ、その気にさせればいいだけじゃん。
ライダー君なんてただでさえ顔が良いし頭も良いんだから、あたしを騙す事なんて赤子の手を捻るみたいに出来た筈だもん。
でもそれをしないで、凄く真面目な顔してさ。覚悟をしておいた方が良いよだとか、願いは何だとか聞いてきたりとか、罪は自分が被るだとか。悪い人がそんな事、言う訳ないって。
自覚無かったのかな、この子? いや多分、本当はもっと上手に隠せるんだと思う。でも、此処までのやり取りでもう疑いようはない。この子は、根っこの根っこの部分は善良で、あたし達と何ら変わる所のない凡人の感性を持ってるんだって。

「あたしの夢はね、平凡で、素敵なヒトでいる事なの」

 「あ、平凡なのは今だってそうだろって突っ込むのナシね!! 今真面目な話だから!!」、と念を押す。

「あたしが今よりもちっちゃかった頃にね、お父さんが死んじゃってね……。子供心に、分かったの。平凡で普通の毎日って、『誰か一人いなくなるだけで壊れちゃう特別なもの』だったんだって」

 幸せな日々は幸せなまま、いつまでもずっと続いて行く。小さい頃の宮薙流々は、そんな事を思っていた。
だけど、実際には違った。大好きで優しくて、お母さんといるともっと大好きになれるお父さんが亡くなって、平凡な日々って言うのが、
実は、凄く絶妙なバランスの上で成立してた、一本の細い糸の上のヤジロベーみたいな物だったんだって分かっちゃった。
そして、何事にも終わりがある事も、その時理解した。そりゃそうだよね、だって年も取らない、死ぬ事もない人間なんて、いるわけないんだから。


758 : 歩くような速さで ◆zzpohGTsas :2022/06/14(火) 02:13:51 2NlEIBrw0
「あたし、何で聖杯戦争って奴に巻き込まれてるのかなぁって思う位には、普通の人間だよ。食べなきゃお腹空くし、暑いの嫌だし寒いのもダメ、特売の日なんて欠かさずチェックする位にはお金もないし……。んで、最終的にはまぁ、死ぬ事になるだろう。ふっつーの一般人よ」

「その日常を、変革しようと言う気は起きないのかい?」

「全然!! っていうか、変えるにしても聖杯使っててのはないでしょ」

 アハハ、と笑うあたし。

「これからあたし、高校に入るんだ。ド田舎でさ〜、高校の選択肢って近場のあそこしか実質選択肢ないんだよね〜。でも入試があるから勉強しなくちゃならんくってさ。んで、高校に入ったら勉強して部活もやったりしてさ、んで大学入るかこのまま就職するかとかで悩んでみてさ……。どっちを選んでも色んな人と出会って、で、今までの人生の中で出会った人達の中の誰かと結婚もしちゃったりしてみてさ……。子供も産むのかなぁ」

 「そんでもって――」

「死ぬ」

 ああ、あたし今、どんな顔してんだろ。得意げで、悟った顔とかしてないよね? そんな気はないけども……ライダー君の顔は、きょとんとしたそれになっていた。

「ライダー君のいった通りさ、多分、何かを変えなくちゃいけない時とかもあると思う。引っ越しだったりだとか、転校だったりだとか、転職だったりとか、あまり考えたくないけど……うーん、離婚、とか?」

 あたしの頭じゃ、そんな事ぐらいしか思い浮かばんや。

「でもでも、そんな事の為に聖杯何て、使える訳ないじゃん? そんなん使うぐらいなら、普通に友達に相談したりして、なんとかなれーってやるもん」

 ふぅっ、と一息つく。遠い目を、あたしはしながら言葉を続けた。

「普通に生きる事ってさ、結構不安だし、大変なんだね。いて欲しい人に先立たれちゃったから、あたしには解る。支えてくれる人がいるから、あたしは立ってられるんだって」

 そう言って思い出すのは、錬の顔だった。お父さんが死んで、一人で泣いてた時も、そばにいて、励ましてくれたっけ。
昔から、ずっと大切な友達だった。昔は同じ背丈だったのに、今じゃあっちの方が伸びて来た。後、あたしにもマルノヤの商品券もくれたりして、優しくて。
多分だけど、あたしより早く、結婚するかもなぁアイツなら。誰と結婚するんだろう。

「あたしを助けてくれたりした人や、仲良くしてくれてる人に、申し訳ないじゃん。聖杯の為に人を殺すって」

「……」

「身長が伸びて行って、女の子らしい身体つきになって、親しくて仲が良い皆と一緒に歳を重ねて、大人になって……。そんで、誰かと結婚して、子供を産んで、小さい幸福を一緒に噛み締めて……。それで、皺くちゃのおばあちゃんになる」

「普通の、生き方だ」

「そう。だけど、あたし本人からすれば、特別な生き方。誰でも出来るようで、だけど、中々難しい生き方」

 だからね、ライダー君。

「ごめんね。そんなあたしだから、聖杯戦争何か正直滅茶苦茶に壊して欲しい。ライダー君の夢も、叶わないと思う。あたし、人を殺した後で、『失ってはじめて気づいた大切なもの……』だなんて、死んでもいや。失うまでもなく、大事なんだって知ってるから」

「凄い事言うね、君。サーヴァントがサーヴァントだったら、殺されてるぜ?」

「でも、許してくれる気がしたから、正直にいった。……ちょっと、優しさに甘えた感じがしなくもないかな」

 こんな小さな子供の善意に甘えるのも、凄いその……倒錯的って言うか、アレな話だけど。
話しやすいし、正直にぶっちゃけても、許してくれそうだって、思ったのは本当の事だった。本当、何年生きればこんなオーラが出せるんかなぁ。


759 : 歩くような速さで ◆zzpohGTsas :2022/06/14(火) 02:14:18 2NlEIBrw0
「……僕の、夢、か」

 そう呟いた後、ライダー君は、まるで、自嘲するような笑みを浮かべ始めた。

「僕にもね、聖杯の機能が本当にあるんだったら、叶えたい夢って奴が、あったんだよ」

 ライダー君の、夢……?
過程は最悪だけど、どんな願いでも叶えられる、どっかの漫画の中に出て来るようなアイテムなんだ。
そりゃ欲しがる人がいるのも当然だし、現にあたしだって、アスレチックコースを誰よりも早くクリアー!! とかで手に入れられるんだったらそりゃ欲しいもん。
サーヴァントとして選ばれる程の人物なのだ。叶えたい願い何てすっごい達成困難なものに違いないだろうし、聖杯でもなければ、叶えられない大それた奴なのかも知れない。

「知りたいな、ライダー君の夢って奴。絶対笑わないよ、あたしの夢なんて聞いたでしょ? ザ・一般市民って感じで、面白みもなんともなかったんだから。聖杯使って叶えたい願いなんだから、普通だったら、おっきく、でっかく!! だよね」

「フフッ……そいつはね……」

「……」

 ゴクリ。

「――――――――――――――――――――――――世界一周だよ」

「………………………………………………………………は?」

 悪戯っぽい笑みを浮かべてそう言うライダー君とは対照的に、間抜け面そのものな表情を浮かべて固まるあたし。

「君は、僕の事を頭がよさそうって思ってるだろう? 実際その通りでね。5歳の頃には今でいう通信教育に似た制度を駆使して、当時の国内の最高学府に首席で入学して、1年後には博士号を取って。んで、その翌年には、史上前例のない、10歳にも満たない若さで、国の最先端技術の研究施設のコア研究員に抜擢……って感じなんだけど」

「ぶっとばしていい?(すごーい!!)」

「ありがとう、でも嘘でも良いから本音は隠した方がいいよ。それでねぇ、高い給料も貰っててね。ボーナスは確か、春夏秋冬全部のシーズンで支給されたよな。こんなに貰っても子供だったからさ、車を買っても運転出来ないし酒もタバコも勿論ダメだから、宇宙飛行士とかが使う高い椅子とか買ってたよ。当時の値段で2億円位だったかな」

「今ライダー君が食べた納豆、一粒1億円位の物なんだけど、払える?」

「ダイヤモンドで出来てるのかいその納豆は? 君が羨ましく思うのも当然な程のお金は、確かに貰ってたよ。そして、すぐに紙切れ以下の価値しかなくなった。僕らのしていた研究が元での、それは酷い事故のせいで、ね」

「……え?」

 途端に、話の方向性が、完全に変わってしまった為か。目をまん丸にし、ポカンと口を開けてしまう。

「君の生きていた時代に起きた事故で、最も近しい奴を上げるとするなら……フクシマ星辰体増殖炉……あぁ、この時代じゃまだ旧福島原発だったね。まだ原子力発電が最高効率の発電形式だったのを忘れてたよ。アレのメルトダウンの、数億倍は酷い事故だと思って良い」

 その事故については、あたしだって知ってる。
今日日、社会の教科書で当たりまえのように名前が出て来る、ここ10年以内に起きた中で……いや、今後何十年経とうとも風化する事はないだろう、一大事件。
それより酷くて、しかも、円の価値がなくなる位の大事故って、何……? 想像が、出来ない。何を、仕出かしてしまったんだろう。

「指が何本あろうが足りない人間が死んだよ。その倍以上の人間を、不幸にして来た。生き方を、激変させてしまった。世界の秩序もあり方も、滅茶苦茶だよ。凡そ、変わらなかった国何て一国としてなかった、影響を受けなかった人間なんて1人たりともあり得なかった」

「……それは、私に詳細を話して、スケールが私に想像出来る?」

「多分、難しいかな。それで、そんな事故を起こしてしまった責任から、僕も同志も、必死に元の世界に戻そうと、頑張るんだ。それ1個で1000億は下らない価格の研究機材何て全部役立たずの鉄くずで、事故以前に溜め置かれてた量子スーパーコンピューター数万台分の膨大な情報データはセルバンテスのドン・キホーテの100億分の1以下程の読む価値のないゴミになった。前例もない、道具もない、人もいない。何もかもが足りていない状態の中、手探りで、僕らはスタートしなくちゃならなかった」

 分からない。あたしは、ライダー君が何を話しているのかがてんで分かってない。
単語の一つ一つは、あたしにだって解るレベルのそれを使っていて、話してる内容だって破綻してないし、れっきとした日本語を喋っているにも関わらず。
この世界じゃない架空の世界の有様を、実際にあった・見て来たように話しているその様子。それなのに、あたしは、わかってしまう。ライダー君が、嘘を吐いていないってことを。


760 : 歩くような速さで ◆zzpohGTsas :2022/06/14(火) 02:15:00 2NlEIBrw0
「礼儀もなければ正義もない時代さ。殺されかけた事なんて百や二百何て数じゃ効かない、信じて側に置いていた側近が実は敵の送り込んだ暗殺者だった何て珍しくもなかった。ああ、遠距離から狙撃された事もあったっけ。敵対していた組織に拉致された事だって、あったよなぁ。本当に、思い起こせばロクな思い出がないや」

 まるで家族とアルバムでも一緒に見て、写真でも指さしながら。
ああ、こんな事もあったっけね、というみたいな事を口にするような声音で、ライダー君は、どうしてそうなったのか、あたしには想像も出来ない事を淡々と話している。
台本に箇条書きで書かれた事実でも、列挙していっている、そんな風な口ぶりでもあった。

「よく正気でいられたね、って顔をしているよ」

 微笑みを浮かべるライダー君。あたしはどうしたって、顔に出るタイプだ。彼からすれば、あたしが何を思っても、御見通しらしい。

「正気な訳はない。一番信頼していた部下からも裏切られたのをきっかけにさ、糸が、切れた。ぜーんぶ、嫌になったんだよ。何もかも投げ出して、着の身着のまま。路銀の一つも持たないで、家出したんだ。可愛らしいだろう?」

 ククッ、と忍び笑いを浮かべていたライダー君。
数秒程の沈黙の後だろうか。とても、穏やかな笑みを浮かべて、遠くを見るような目をして。夢見るような風に言葉を紡いで行く。

「いつ休憩をとって、いつ水分を補給して、どれだけの距離を歩いたのかな。名前すら気にも留めた事がなかったその村で、無垢な女の子に出会ったんだ」

「女の子……?」

「素直で、純粋で、イエスへの祈りを毎日欠かさず行う敬虔さも持った、地獄に咲く白百合みたいな娘だった。僕の話を、何でも信じてくれた。僕が歳を取らない事も、何をしても死なない事も、世界の破滅の引き金を引いた者の一人である事も。全て信じて、受け入れて、許してくれた」

「……好きだったの?」

 あたしは尋ねた。ライダー君が、誇るような口調でそんな事をいうんだから……微笑みを浮かべて、そう聞いてしまった。
ライダー君は、指を開いた状態で、両手の甲をこっちに見せて来た。シミ一つない、綺麗な肌。皮膚のハリときたら、本当に歳幼い子供のそれだった。

「指輪を用意しておけば良かったと、今でも時折後悔する位には、最愛の人だったよ」

 ああ……本当だ。ライダー君の両手の薬指には、愛を証明するものが、嵌められてなかった。

「僕の夢はね、世界一周なんだ。傍らには、勿論、愛する彼女と一緒さ」

 彼の話す事を、あたしは、頷きながら聞いて行く。

「キャリーバッグを引きながら、いろんな所を巡るんだ。御覧、あそこがビッグベンだ、ピサの斜塔だ、パルテノン宮殿だ、エッフェル塔だ、ノイシュヴァンシュタイン城だ、ハギア・ソフィアだ、タージマハルだ、ホワイトハウスだ、ポタラ宮だ、紫禁城だ、僕の生まれた国の姫路城だ」

 「ああでも――」

「自転車での旅ってのも捨て難い。キュリー夫人って知ってるかい? 放射線研究を最初に行った偉人さ。彼女は新婚旅行に、夫のピエールと一緒に、祝い金で買った自転車でフランスの田園都市を旅したんだよ。これも良い。一緒に自転車を漕いでさ、初夏の風を浴びながら、秋の涼しい風を一身に受けながら、夫婦で風と一体化しながら笑顔でペダルを漕ぐのも最高だと思う」

 それを口にするライダー君は、本当に、楽しそうだった。あたしも思わず、笑顔になる程に。

「船旅もいいよなぁ。砕氷船に乗って北極や南極を眺めたかったし、ホエールウォッチング何かもアリだ。ヘレンは絶対に、喜んでくれた筈だよ。行く先々で写真を撮って、分厚いアルバムに時系列に挟んで、時折眺めて指さすんだ。ああ、此処で食べたパンは美味しかった、あの屋台の親父はまだケバブを焼いてるのかな、見知らぬ子供にダンスで勝負だ!! なんて言われたりもしたね、とかさ……」

 其処までいってからだった。ライダー君が、消え入りそうな程弱弱しい笑みを浮かべたのは。

「……そんな事をしてあげられたら、良かったんだけどね」

「……」

「狭い村の中で一緒に最期まで過ごしてね。新婚旅行に何処にも連れて行けなくてごめんって謝ると、困ったような笑みを浮かべて『一緒にいられれば私は嬉しい』って言ってくれるんだよ。僕は何年経っても子供のままなのに、彼女の背丈だけは大きくなるんだ。本当に、親と子位の見た目の差になっても、彼女は変わらぬ愛情を注いでくれて……。クルミみたいな皺くちゃのお婆ちゃんになっても、最初に出会った時のままの僕を見て、バケモノのように扱わないで、優しく接してくれる……」

 「ああ、全く――」

「実に……実に。僕には過ぎた、女(ひと)だった。僕が彼女にしてあげられた事なんて、何一つとしてなかったのに……彼女は僕に、生きる力と勇気を、与えてくれた」


761 : 歩くような速さで ◆zzpohGTsas :2022/06/14(火) 02:16:00 2NlEIBrw0
 そうか……あたしは、分かってしまった。
ライダー君は……いや、この子は……真面目なんだ。責任感が強いんだ。……物の止め方を、知らなかったんだ。
素敵な人だったんだろう。ライダー君が何百年生きたのかあたしは知らないけど、それ以降の人生をずっと、前を向いて歩いて行けるだけの力をくれた、強い女性だったんだろう。
与えてくれたものが大きすぎたから。誰よりも愛した女の人だったから。誓いを捨てる事なんて出来る筈がなく、投げ出す事なんて出来なくなって。
愛と責任、そして、信念で、雁字搦めにされて、歩き続ける事しか出来なくなった、何処にでもいる普通の子供。それこそが……ああ、きっと。

「マスター。君は言ったね。平凡で、素敵なヒトでありたいって」

「うん」

 沈黙。数秒程だったかな。ライダー君は、ややあって、こう言った。

「君が正しい」

 ――と。

「これから聖杯戦争が終わるまで、君の人生の中で最大の試練と、最悪の事態に見舞われるだろう。そして、何も知らないボンクラ共は、訳知り顔で君に対して説教する。『此処は戦場だ、覚悟がない奴は去れ』、『お前みたいな奴から死んでいく、喰われて行く』、『半端な奴には聖杯は獲れない』……みたいな事をね」

 今口にした人達を、心底から嘲るみたいな顔をして、言葉を続けた。

「無視していい。そう言う事を説教する奴はね、往々にして『平和な世界での居場所をなくした』負け犬なんだよ。君を心配して説教しているんじゃない。平和な世界と繋がりながら、それでも生きている君が羨ましいから、憎いから。そんな事を言うんだ」

「――」

「千年の時を経て、僕が得た結論だ。愛より、偉大なものはない。君には、それを、忘れないで欲しい」

「大丈夫だよ、ライダー君。伝わってる」

「――うん。なら、良し」

 満足そうに、首を縦に振って、ライダー君はあたしの方を見据えて来た。
偉そうな態度だなぁと思ったけど、今は何ていうか、こう、愛おしさすらあった。

「何かライダー君、凄くお説教がサマになってたね」

「昔取った杵柄さ。信じられないだろうけど、数百年は、一国の教皇だったんだぜ?」

「きょ、教皇様!? あの、バチカンとかみたいな……?」

 ど、どうりで……立派な服を身に付けられている筈ですよ……。

「そんな所かな。と言っても、彼らほど立派でもなかったし、敬虔でもなかった。ハハ、誰も導く気もなかった、とんだ破戒僧だ。尊敬何てしなくて良いぜ」

 肩を竦めてそう告げるライダー君。本当に、お人よしだなぁ。そんな事、いわない方が良いって、ほんとは解ってるだろうに。

「ライダー君」

「うん」

「道を踏み外さないで……。一緒に、前を向いて歩こうね」

「……ああ、そうだね」

 口元を少し綻ばせて、ライダー君は言った。

「『皇(スメラギ)悠也』は……それだけは、得意なんだ。前を向いて、歩き続ける事だけは、いつだって一丁前さ。そこは、安心して良いよ。マスター」



【クラス】

ライダー

【真名】

スメラギ@シルヴァリオ ラグナロク

【ステータス】

筋力D 耐久A++ 敏捷C 魔力A++ 幸運E+++ 宝具A+

【属性】

秩序・悪

【クラススキル】

騎乗:D
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。


762 : 歩くような速さで ◆zzpohGTsas :2022/06/14(火) 02:16:37 2NlEIBrw0
【保有スキル】

神祖:A+
人の形をした恒星、悠久の時を経る輝ける綺羅星。地上を闊歩する、煌めく昴(すばる)。
その正体は、肉の身体を兼ね備えた自立活動型極晃現象とも言うべき超常生命体。
自己の根幹を担う魂とも呼ぶべき部分が三次元上に存在しておらず、物理的な破壊でこのスキルの保有者を破壊する事は著しく困難。
このスキルを保有する者は一切の例外なく、魔力を保有しないマスターであっても運用に問題がないレベルの凄まじい魔力燃費を誇る。
また、その性質上霊核が本体ではなく、『肉体を構成する魔力の一欠けら一欠けらが全て本体』であり、ライダーを構成する魔力の欠片が一つでも残っていた場合、
その魔力の欠片から完全な復活を果たす。頭蓋や心臓の破壊が勿論、細胞一つ残さぬよう木端微塵に消し飛ばしても、数秒で復活を遂げてしまう。
但し、マスターが死んでからライダーが大ダメージを負った場合、上述の再生は機能せず、最悪そのまま消滅するし、短時間の間に何度も何度も殺された場合も、魔力切れによって退場の危険性が内在している。

 このスキルの保有が確認されている四人は、千年の時を経た人型の怪物であり、その千年の間に、己の弱点を潰し続け、またその時間の間に強みをいくつも伸ばして来た怪物中の怪物。
その弱点とは精神的な達観面についても適用されており、具体的には、Aランクまでの精神攻撃を完全にシャットアウトする。
また、一見すると武器を携帯していないライダーは、その年数の間に拳法も達人級に鍛え上げており、具体的には、A++相当の中国拳法レベルに相当する格闘練度を披露出来る。
そして、神祖スキルを保有する者のもう一つの大きな特徴として、翠星晶鋼(アキシオン)と呼ばれる特殊な結晶の創造にある。
この結晶を保有する者は、全てのステータスが1ランクアップし、+の補正が1つ追加される強化を獲得出来るが、結晶は1分足らずで自壊する。
ライダー自身は、この翠星晶鋼の創造に極めて長けた神祖であり、かつ、サーヴァント化に際して、『使徒の創造が出来るのは彼だけ』になってしまった為、他の3人に比べて神祖ランクが高くなっている。

話術:B++
言論にて人を動かせる才。国政から詐略・口論まで幅広く有利な補正が与えられる。
元が凡俗な精神の持ち主であった者が、長い時を経て王に相応しい威風を獲得したと言う経緯から、弱者や凡人、一般的な考えの持ち主の心情を理解する事に、
特に長けていて、彼ら相手の場合だと話術の判定にボーナスが掛かる。

扇動:A
大衆・市民を導く言葉と身振り。個人に対して使用した場合には、ある種の精神攻撃として働く。
一国の教皇として君臨し続け、民草を支配し、誘導して来た手腕が反映されている。


763 : 歩くような速さで ◆zzpohGTsas :2022/06/14(火) 02:16:56 2NlEIBrw0
【宝具】

『国津平定・豊葦原千五百秋聖教皇国(Kunitsu Ashihara-Midgard)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜 最大補足:1〜
星辰体結晶化能力・分譲型。結晶化した星辰体である翠星晶鋼を元に己が力を分譲し、対象に爆発的な強化を齎すライダーの星辰光(アステリズム)。
神祖が例外なく愛用している只人を使徒に変える“洗礼”行為、その原型にして他者強化の頂点とも言うべき宝具。
己の肉体内部ではなく、体外に集束させた膨大な翠星晶鋼として物質化、エネルギー発生装置として誰にでも適合できるよう調整後、
対象に付属させると言う工程によってこの宝具は成立する。ライダーは生前、この宝具をベースとして眷属化、即ち洗礼の権能をマニュアル化。
他の神祖にも扱えるようにし、カンタベリー聖教皇国を管理するための組織形成に大いに貢献を果たした。

他の神祖サーヴァントも翠星晶鋼の創造は可能だが、ライダーの宝具を通して生み出された翠星晶鋼は例外となる。
神祖スキルにて説明した、自壊のデメリットが完全に消滅するだけでなく、この宝具によって作られた翠星晶鋼を装備させる・持たせる事で、
全てのステータスが2ランクアップし、+の補正が2つ追加される状態となる。また、ライダーによって使徒の創造が体系化されたと言う逸話から、
『ライダーだけが使徒の創造を可能とする唯一の神祖サーヴァント』となっており、これによって、任意の人物を使徒として改造する事が出来る。
使徒に改造された人物は上述のステータスアップの恩恵を受け、燃費の改善、更に、ライダーと全く同じレベルの再生能力を宿すなどの、デメリット皆無の強化の恩恵を与れる。
他者の強化と言う点に於いては、比肩するべき対象が見当たらないレベルの、最上位の宝具であるが、弱点が存在する。
生前に比べ、無軌道に何人も何人も強化できる訳ではなく、何人も使徒に出来る訳ではない。特に使徒化については、最高クラスの燃費の良さのライダーを以てしてすら、
無視出来ぬ程の魔力の消費を負うらしく、現状の状態では2人程度が関の山、と言う程にまで弱体化している。また、この宝具を利用して、ライダー自身を強化する事も不可能である。

『第五次世界大戦用星辰兵器・天之闇戸(High-Astral Generator,Amenokurato)』
ランク:A 種別:対人・対軍・対城・対国・対環境改竄宝具 レンジ:1〜 最大補足:1〜
眷星神・天之闇戸(アメノクラト)。人造惑星と呼ばれる人型兵器、その原点にして戦争兵器の完成形。
直接的な戦争に特化してチューニングされた完全なるコンバットモデルであり、世界の歴史を激変させる大事件さえ起きていなければ、この兵器が世界の戦場を席巻する筈だった。
ライダーが上述の宝具を、当該宝具に纏わせる事が起動の条件となり、これを同時に複数オペレーションし、類稀な連携を以て相手を追い詰めるのがライダーの基本戦術。
このアメノクラトと呼ばれる宝具が持つ能力は、『事象改竄』。搭載された超高度・超高速演算を可能とした電子頭脳によって、
任意の環境を改竄してしまい、特殊な現象を引き起こすと言うもの。火焔や水流、突風に落雷の発生は言うに及ばず、酸素濃度の調整による窒息死、
細菌兵器の創造による複数人の抹殺なども可能となっている。また、アメノクラトの数が複数体揃っているなら、小規模の水爆現象すらも引き起こす事が可能。
更に、物理法則に縛られない世界の場合、この事象改竄の規模は更に跳ね上がり、ブラックホールの創造や海溝に引きずり込む、大陸間プレートで圧殺させてしまう、
等の抜級の現象すらも引き起こしてしまえる。ライダー自身の魔力がある限り無限に創造が出来るが、言うまでもなく創造には魔力を消費する上、複数体操作すると言う事は、その分だけ翠星晶鋼を創造しなければならないという事でもあり、ボディブローのように魔力の消費が効いてくる。


764 : 歩くような速さで ◆zzpohGTsas :2022/06/14(火) 02:17:06 2NlEIBrw0
【weapon】

【人物背景】

千年の時を歩み続ける神祖の一柱、天津の秩序を万民に敷く大国主。
一度は神としての地位を辞するも、少女の無垢なる愛を知り、その愛に報いる為にと、再び神の座に返り咲き、歩み続け――。
その果てに、神殺しの牙を打ち立てられ、少女が自分に求めていた事、そして、その求めを今まで気丈に無視していた事を突き付けられ、少年は、天に召された。
 
【サーヴァントとしての願い】

英霊の座から、スメラギと言う名前も存在も完全に抹消し、『人として死に、罪を償い、ヘレンの下に逝く』

皮肉なことに、神祖の中では総代聖騎士・グレンファルトに並んで対外的に特に目立っていたポジションだった事。
そして、そのカリスマ性も絶大であった事から、カンタベリーは勿論諸外国からも広くスメラギの存在は認知されてしまっていた為、
結果、ヘレンの下へと逝く事無く、英霊の座でコキ使われると言う最悪の結果になってしまった。勿論本人は納得がいっていないので、全力でこの現状を何とかしようとしている。
……ただ、マスターである宮薙流々の言葉が、余りにも身を詰まらされるそれであった為か、今回は、彼女の願いの方を、優先して上げたいと思っている。



【マスター】

宮薙流々@破壊神マグちゃん

【マスターとしての願い】

誰も殺さずして元の世界に戻る

【能力・技能】

【人物背景】

破壊神の信徒、その第一号。
恐るべき破壊神によって、孤独を壊され、日々を楽しく過ごしている


765 : 歩くような速さで ◆zzpohGTsas :2022/06/14(火) 02:17:16 2NlEIBrw0
投下を終了します


766 : 絶対不変の光明 ◆IejJ5H8SNU :2022/06/18(土) 13:13:03 pcVNgjvU0
投下します。


767 : 絶対不変の光明 ◆IejJ5H8SNU :2022/06/18(土) 13:14:03 pcVNgjvU0
「おっさん?金持ってる?」

チンピラ達によるオヤジ狩りというのは時代を経てもやる者はいるものだ。

「あー.......お前ら金に困ってるのか?」

おじさんと言われた男は呆れ果てていた。

「君達、光の速さで蹴られた事はあるかい?」

禁断の質問を質問で返すの二度打ち、そこから閃光が迸る。

「は?」

チンピラの一人が吹っ飛んだ。

文字通り光速の蹴り。

嘘偽りではない。

「おいおいやり過ぎだ.......」

おじさんと言われた男はそれにドン引きしていた。

「仮にも正義の味方と名乗る人間が悪党にナメられたらいかんでしょうよ」

男は黄色いスーツに絶対正義と書かれた白いコートを着ていた。

片方は現実でペルソナの世界の地方警察の人間であり、もう片方はONEPIECEの世界において警察に位置する海軍の重役である。


768 : 絶対不変の光明 ◆IejJ5H8SNU :2022/06/18(土) 13:15:03 pcVNgjvU0
カツアゲされるはずのお金はスイーツ食べ放題に費やされる事になった。

平日のランチタイムに利用しましたが、女性客で満員だ。

バレンタインが近くいちごフェアをやっていた。予約すれば、とちおとめが食べ放題だったので、事前予約していた二人はとちおとめを食べ放題に漕ぎ着けた。

「美味いねェ〜」

「あぁ、美味いな」

「で、例の事件、少しは洗えたかい?堂島刑事」

「うーん.......難航しているよ、ボルサリーノ」

二人は公私混同な会話を始めた。

「やはり、聖杯という胡散臭いもののために罪もない人々が死ぬことないように務めるのは基本中の基本だからねェ」

過激的でも怠惰的ではない中間の人間としての発言だ。

「あぁ.......菜々子のような子供達が巻き込まれたら大変だ」

対する男も中間である。

法王のカードは精神的な深さや、慈悲を表しています。
寛大な愛情、例えば人を憎まず許してあげられる心の大きさを示していると考えてください。落ち着いていて穏やか、何物にも揺らがない普遍的な軸のようなものも感じさせるカードです。正位置なら精神的に満ち足りている状態と、人に対する思いやりの心を持っている状態を表します。また人のためになりたいという、慈悲の気持ちが起こっているときの状態。損得勘定ではなく、ただ誰かの役に立てればいい無欲な状況も示しているといえるでしょう。

逆位置では視野の狭さや思いやりのなさ、相手の立場や気持ちを無視して、自分の気持ちだけを押し付けようとしている状態を表すカードです。

正位置、縁、信頼、寛大、年輩の援助、誠実、共感、感動、慈愛、親切、包容力、優しさ、広い視野、ぬくもり、ゆとりのある心、逆位置、腐れ縁、頑固、疑い深さ、欲望、不運、誤解、不安、反感、悩み、悲観、狭い心、自己完結、狭い視点、落ち着きの無い心を意味する。

「それにしてもこの苺本当に美味いねェ」

ボルサリーノは相棒と共に余暇を堪能した。


769 : 絶対不変の光明 ◆IejJ5H8SNU :2022/06/18(土) 13:15:59 pcVNgjvU0
【サーヴァント】
【CLASS】
バーサーカー

【真名】
ボルサリーノ(黄猿)
【出典】
ONEPIECE
【性別】

【ステータス】
筋力A+ 耐久A 敏捷EX 魔力B 幸運A 宝具A

【属性】
秩序・善
【クラス別能力】
狂化:EX、その絶対正義の錦の旗を保持する事による正義感はある種の狂気としかとてもじゃないが言い表せない。

【保有スキル】

戦闘続行(歪):EX
一度、悪党を見つけたら悪党を掃討するまで戦闘をやめる事をしない。
無辜の怪物:Bそのサーヴァントの生前の行いから生じたイメージによって、過去や在り方がねじ曲げられ、能力・姿が変貌してしまうスキル。
誹諸中傷、あるいは流言飛語からくる、有名人が背負う呪いのようなもの。生前、残虐な行いをしたものほどこのスキルを持ちやすいが、中には権力者によって、怪物と疑められるケースもある。海軍としての活躍は他方面からは英雄と崇められるが他方面からは化け物と言われるはずだろう。

宝具:悪魔の実ピカピカの実
ランク:B種別:対軍宝具 レンジ:最大捕捉:1人〜∞



能力 体を光に変化させ、光速で移動、攻撃、蹴りを入れる、またレーザービームを放つ事が出来る。本人そのものも海軍大将であり、海軍屈指の戦闘能力を元々持つ、「能力の強さとキャラクターの強さはイコールではない」とONEPIECE79巻SBSで明言されている。

シャボンティ諸島で出陣した時には最悪の世代のX・ドレーク、バジル・ホーキンス、スクラッチメン・アプー、麦わらの一味ですら蹂躙する強さである、それを作中今のところ食い止められたのは海賊王ゴールド・ロジャーの副船長冥王シルバーズ・レイリーと白ひげ海賊団1番隊隊長不死身マルコぐらいである。



【方針】
正義のために尽くす。


770 : 絶対不変の光明 ◆IejJ5H8SNU :2022/06/18(土) 13:16:28 pcVNgjvU0
【マスター】
堂島遼太郎
【出典】
ペルソナ4
【性別】

【能力・技能】
オカルト的な力は持たないが一警察官としての操作能力を有している。

【weapon】
支給された拳銃

【人物背景】

稲羽署に勤める刑事で、一年間の海外出張に出た姉夫婦に代わり、甥である主人公を預かる。

また、相棒である足立透と共に「稲羽市連続逆さ吊殺人事件」の捜査にも関わっており、「マヨナカテレビ」については知らないものの、その職業柄ゆえの観察眼やカンの良さから、度々主人公達自称特別捜査隊に出くわし、その度に「余計なことに首を突っ込むな」と窘めている。

生真面目で不器用ではあるものの、情に厚く優しい性格。
娘の堂島菜々子とは、元より仕事が多忙なことから不在がちなことに加え、交通事故で妻「千里」を亡くし、その不器用な性格もあって真相を上手く語れないこともあり、不仲とまでいかないものの上手く接する事が出来ずに悩んでいる。

部下の足立は彼が赴任して以来から面倒を見ており家に上げたりスナックに連れていくこともしばし。足立の方も彼のことは多少怖い上司としてみているが慕っている模様。足立によると、職場の同僚と仕事以外の付き合いが無いらしい。

【方針】
菜々子のような子供を守る。


771 : 絶対不変の光明 ◆IejJ5H8SNU :2022/06/18(土) 13:16:39 pcVNgjvU0
投下終了します。


772 : ◆U1VklSXLBs :2022/08/04(木) 16:53:17 3EDqzoH60
投下します。


773 : 桃山&セイバー ◆U1VklSXLBs :2022/08/04(木) 16:54:25 3EDqzoH60
—SHIBUYA009

100以上のテナントを擁し、流行の発信地となっている若者に人気のファッションビルだ。今日も多くの群衆を呑み込み、また吐き出しているその建物を桃山は睨むように見つめ続けていたが、やがて視線を切ると建物に背中を向けた。渋谷駅に向かって歩き出す彼女の表情は固い。

自宅に帰ると、桃山はベッドに倒れ込んだ。
聖杯戦争に巻き込まれた彼女に割り当てられたマンションの一室で、桃山は一人で暮らしている事になっている。

—よかった

偽物の先輩と同居させられていたら、自分はきっと狂っていただろう。
3月3日、桃山の生きていた渋谷は人喰い金魚の群れによって崩壊。金魚鉢を思わせる巨大な壁によって、運悪く渋谷にいた人々は閉じ込められ、彼女も他の生存者と同じように命懸けのサバイバルに身を投じることになった。

その前日、桃山は愛しの伏見先輩とパートナーとなった。彼女と家族になるために、渋谷に居を構えた。未来を知っていたなら、きっと渋谷に住もうとは思わなかっただろう。

(先輩…)

先輩さえいれば、どこで生活することになっても良かった。けど、今はもういない。彼女の側から、永遠に去ってしまった。彼女が今いる再現された東京は平和そのもので、こういう場所で先輩と生きていくはずだったのに、という思いばかりが募り、体を重くする。

あの地獄と化した渋谷でなら、命の限り金魚を殺し続けて、その果てに先輩の側で眠ることだってできただろう。しかし、ここに先輩の仇はいない。願望機を手に入れる為、荒廃した化粧室に残してきた先輩の元に帰る為には、桃山は無関係のマスター達と対決しなくてはならない。

≪マスター≫
≪なに?≫
≪貴公が職を辞するのは自由だが、食事は質の良いものを採れ≫

記憶を取り戻した桃山は職を辞すと次の勤め先を探す事もなく、出来合いのもので日々の食事を済ませていた。供給できる魔力が乏しい為、セイバーとしてはせめて体力を維持してほしかった。

≪ごめん、気力が湧かなくて…明日からは頑張る≫

3〜4か月は暮らせる貯えがある為、戦いを終えるまでは働かなくても問題ないだろう……そこまで思考した時、自分が涙を溢していると桃山は自覚した。

(今更奇跡なんて……ぶらさげないでよぉ…)

願望機など桃山には必要ない。先輩と一緒にあの渋谷から逃してさえくれれば、それ以上は何も望まなかった。先輩のいない場所でこれから命懸けの戦いに身を投じる羽目になるなんて。

—死ねない

ひとりぼっちでは死ねない。戦いに乗ること、先輩はきっと怒るだろうな…と桃山は思うのだが、彼女に他の選択肢はなかった。


774 : 桃山&セイバー ◆U1VklSXLBs :2022/08/04(木) 16:55:25 3EDqzoH60
【サーヴァント】
【CLASS】
セイバー

【真名】
マレニア

【出典】
ELDEN RING

【性別】

【ステータス】
筋力B 耐久B 敏捷B+ 魔力C 幸運E 宝具C+

【属性】
秩序・善

【クラス別能力】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。

騎乗:D騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。

【保有スキル】
神性:B
神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。女王マリカと王配ラダゴンの間に生まれたデミゴッド。

戦闘続行:A
往生際が悪い。瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

抗う意志:A
マレニアは攻撃が命中した際、自身の生命力を回復させる。攻撃を防御された場合でも同様。

水鳥乱舞
種別:対人、対軍魔剣  最大捕捉:20人
生まれながら宿痾に侵された少女に無双の翼を与えた水鳥の剣。水鳥の如く一本足で空中に跳び、力を溜めた後、周囲を剣閃の乱舞で攻撃しながら何度も突進する。

【宝具】
『聖別の義手刀(ハンド・オブ・マレニア)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:− 最大捕捉:1人(自身)
マレニアが扱う金属製の義手と仕込まれた刀が宝具となったもの。聖別された刃は決して腐ることがなく、斬りつけた相手に耐久値による抵抗判定を仕掛ける。失敗した場合、相手は出血を促進され、体力が大きく奪われる。

『朱き腐敗の蕾(スカーレット・エオニア)』
ランク:C+ 種別:対軍宝具 レンジ:1〜20 最大捕捉:20人
マレニアの腐敗の女神たる技が宝具となったもの。空中に浮き上がった後、右腕で地面を叩き、自身を包み込んだ大輪の蕾を花開かせ、強烈な衝撃波と共に朱い腐敗をレンジ内に撒き散らす。腐敗を浴びた相手は耐久判定に成功するまで、全身を蝕まれ続ける。

【weapon】
『聖別の義手刀』

【人物背景】
女王マリカと王配ラダゴンの間に生まれた、双子のデミゴッドの片割れ。生まれながらに腐敗を宿していた彼女の美しく激烈な剣は不敗の象徴となり、共に戦い、腐りゆく事を受け入れた騎士達、腐敗に魅せられた者達が狭間の地には存在する。ラダーンと相討ちになった彼女は貴腐騎士フィンレイによって聖樹の元に運ばれ、黄金律原理主義を捨てた兄ミケラの帰りを待ち続けた。

【サーヴァントとしての願い】
ミケラと再会する。

【方針】
優勝狙い。


775 : 桃山&セイバー ◆U1VklSXLBs :2022/08/04(木) 16:56:29 3EDqzoH60
【マスター】
桃山

【出典】
渋谷金魚

【性別】


【能力・技能】
元自衛官として訓練を積んでおり、拳銃程度なら問題なく扱える。

【weapon】
なし。

【人物背景】
元自衛官の女性。レズビアンであり、中学、高校、大学と慕っている伏見先輩を追いかけ続け、同じ自衛官にまでなった。2人が家族になった翌日、渋谷を金魚が襲来。他の生存者と合流した彼女達は脱出ルートを探す組に加わるも目標達成ならず、犠牲者を出しただけで出発前まで避難していた地下に逃げ帰ることになった。その際、月夜田初と碓氷アリサに危機を救われる。

フェロモンを分泌する特異個体「アルビノ土佐錦魚」にマーキングされたアリサに救われた借りを返す為、ホームレス「貂」が立ち上げたアルビノ個体捕獲作戦に他の生存者達と共に参加。SHIBUYA009に侵入するも後方からの金魚達の奇襲によって伏見先輩を失ってしまう。

第15話終了直後から参戦。

【マスターとしての願い】
伏見先輩を復活させ、平和な世界で生きる。それが叶わないなら、金魚の全滅。

【方針】
優勝狙い。


776 : ◆U1VklSXLBs :2022/08/04(木) 16:57:23 3EDqzoH60
投下終了です。鯖、鱒、本文改変自由。好きに使ってください。


777 : ◆U1VklSXLBs :2022/08/14(日) 12:45:32 AVpyDYEY0
投下します。


778 : 加納クレタ/マルタ&キャスター ◆U1VklSXLBs :2022/08/14(日) 12:46:31 AVpyDYEY0
クレタが記憶を取り戻した時、まず探したのは妹マルタの痕跡であった。保育施設くらげの家で共に育ち、富士山の噴火によって亡くなった妹は、聖杯戦争の場においても既に死亡した事になっていた。両親もおらず、天涯孤独のロールがクレタには割り当てられている。

(忌々…しい…)

聖杯戦争。願望機を奪い合うそれ自体は魅力的だ。叶えたい願いもある。だが、一時的に割り当てられたロールだったとしても、愛する妹が死んだ扱いとされたのはクレタの癇に障った。

だから彼女は、マスターの身でヴァンパイアの力をどの程度振るうことができるのか、試すことにした。日没後に探し当てたマスターと交戦し、変身して戦闘を開始。優れた身体能力に加え、浮遊能力を持つクレタは、間合いをとりながら無数の魚の分裂体で攻撃するも、サーヴァントには通じない。
マスターに手傷を負わせはしたが彼女の攻撃に神秘が籠められていない為、ランサーに対しては牽制にすらなっていない。ヴァンパイアの力で勝ち抜くことは不可能、と結論づけると契約したサーヴァントに念話を送った。

——お風呂上がったよ

その声が聴こえるまで、戦いの主導権はランサーが持っていた。暗灰の外套で甲冑を覆った槍兵は上空のクレタを打ち落とすべく、腰を低くする。跳躍の準備姿勢をとった瞬間、背後から聞き覚えのない声を聞いた。振り返ると同時にどちゃり、と不吉な音がランサーの耳朶を打つ。

——お帰りなさい

一切の感情が窺えない表情。仔牛ほどの大きさと鮮やかな体色。宙に漂う金魚の外見した怪物が人の声を発したのだ。その背後では似たような生き物が、己のマスターの亡骸を貪っていた。

「危ういところだったわね…これでわかったでしょう?マスターがヴァンパイアである事は有利に働くけど、それでも英霊とは戦えないのよ」
「えぇ…頼りにさせてもらうわ、キャスター」

ランサー討伐後。変身を解いたクレタはキャスターに答えた後、大きく息を吐く。キャスターの直接戦闘力の低さを補えればと思ったのだが、自分が前線に立つ事はできそうにないと理解させられ、残念に思う。しかし、最も不満な点はそこではない。

彼女の内側には"喪った双子の妹のマルタがいる"。心も体も元々一つだったものが、二つに分かれた存在であったが故に。
夜の間だけ、2人に分かれる事ができるのだが、分裂体を維持する為に必要なエネルギーが契約したサーヴァントに吸われてしまう為、キャスターを実体化させた状態でマルタと共に戦闘する事は難しい。

(せめてこいつが真っ当なキャスタークラスなら)

契約した桟藻花は魔術師でなく。キャスタークラスに当てはめられただけの金魚飼育者。彼女がクレタを戦わせる手段を持たない故に、藻花に回す魔力を確保する為に、聖杯戦争の間はマルタを表に出す機会は減る。それでも、このキャスターを進んで切り捨てる気にはなれなかった。
キャスターの正道から外れた藻花の運用には骨を折ることになりそうだが、組んでいるのがヴァンパイアたる自分達なら勝ち筋はあるはず。

「お兄ちゃんを生き返らせるの!前は金魚に人間をたくさん食わせてお兄ちゃんにしようとしたんだけどダメだったから、聖杯の力でお兄ちゃんを生き返らせるのよ!」

聖杯戦争に臨む目的を尋ねた際、藻花は狂気に濁った瞳に喜色を湛えてそう言った。

「一緒にいられて羨ましいわ…こっちはキモい化け物にしかならなかったもの。私もヴァンパイアなら良かったのに」

クレタが自分達の正体を明かした際、うんざりした様子で藻花は言った。藻花の願いにはクレタは大いに共感できる。兄弟姉妹というのはこういう物だと、安心すらした。手詰まりとなったなら切り捨てるだろうが、勝ち残るなら藻花とがいい。


779 : 加納クレタ/マルタ&キャスター ◆U1VklSXLBs :2022/08/14(日) 12:47:17 AVpyDYEY0
【サーヴァント】
【CLASS】
キャスター
【真名】
桟藻花

【出典】
渋谷金魚

【性別】

【ステータス】
筋力E 耐久D 敏捷E 魔力C 幸運B 宝具B

【属性】
混沌・悪

【クラス別能力】
陣地作成:C
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。小規模な“工房”に匹敵する水槽の形成が可能。人喰い金魚を陣地の内側に留めておけるほか、産卵場としての機能を持つ。

道具作成:−
下記スキルを得た代償に喪失している。
【保有スキル】
金魚飼育:A
金魚の宿主となり、これを育てた人物であること。空中や水中を動き回る人喰い金魚を作成できる他、胃の中に金魚を隠匿することが可能。作成した金魚は食事によって自ら魔力を補給し、補給が滞った場合は餓死する。
作成された金魚は人の声真似をしながら獲物を探し、位置を捕捉すると空間跳躍や飛行を行なって接近。自身と契約しているマスターを除く全ての人間、英霊に襲いかかる。
サイズは通常〜車両並みの間で自由に調節でき、大きいサイズの金魚ほど作成時の魔力負担が大きい。

精神汚染:B
精神が錯乱している為、他の精神干渉系魔術を高確率でシャットアウトする。ただし同ランクの精神汚染がない人物とは意思疎通が成立しない。兄を喰った人喰い金魚が兄の声・言葉を発したことから、金魚を変異させて兄を復活させようとした。

諜報:C
このスキルは気配を遮断するのではなく、
気配そのものを敵対者だと感じさせない。
藻花は正体を偽って生存者に紛れ、病原体による金魚皆殺し作戦の妨害を図った。

【宝具】
『渋谷金魚(ゴールドフィッシュ・アポカリプス)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1〜99  最大捕捉:1000人
ある時空の渋谷を金魚の養殖場に変貌させた逸話が宝具となったもの。レンジの境目に高さ数百メートルの金魚鉢のような障壁を展開する。障壁の内側は全て藻花の陣地として扱われ、金魚飼育スキルで放った金魚達は自由に徘徊して囚われた人々を襲い、好きな場所に産卵、その数を増やしていく。

レンジ内の金魚達は急速に突然変異を繰り返し、時間経過によってフェロモンによって仲間を呼ぶ「アルビノ」、接触した相手の体内から金魚を噴出させる「手足」などの変異個体が産まれていく。障壁はCランク宝具以上の攻撃で破壊可能だが、維持する魔力が尽きない限り、直ちに損傷箇所は修復される。

発動の際は藻花の魔力を必要とするが、維持する魔力はレンジ内の金魚が餌となる人間を喰って賄う為、宝具維持の負担は軽い。

『巨金体(ゴールドフィッシュ・ジャイアント)』
ランク:B 種別:対城、対軍宝具 レンジ:1〜99  最大捕捉:1000人
宝具によって形成した養殖場内の金魚を融合させ、人の手足と巨大金魚の塊のクリーチャーを召喚する。その巨体と質量が発揮する規格外のパワーと、塊から突き出た金魚の顔をした人の上半身が吐く、これまで犠牲となった者達の遺体が混じった体液によって周囲を破壊。
さらに人の上半身が放つ"声"には強烈な呪詛が内包されており、聴いた者は精神抵抗に失敗すると"金魚の声"に意識を一時的に塗りつぶされ、近くにいる人間に襲いかかってしまう。さらに抵抗に失敗した対象は身体の一部から金魚が生えてくる。変化面積は魔術防御値が低いほど広くなる。

【weapon】
金魚:
人を喰います。

【人物背景】
渋谷に災厄をもたらした人喰い金魚を育てていた少女。元々、生徒を階段から突き落とす遊びをしていたり問題のある子供だったが、重症で意識不明だった兄の見舞いに持っていった「しゃべる金魚」が兄を食い、さらに兄の言葉を話す場面に立ち会った事で、その狂気は深まった。
言葉を話す金魚が兄になるまで育てることを決意し、動物や虫を食べさせていた藻花はある研究機関に目をつけられる。金魚に人肉を食べさせるべく彼らに協力した彼女だったが、一向に兄に変化しない金魚に業を煮やし、生きている人間を食わせるべく、金魚達を外界に放った。

【サーヴァントとしての願い】
お兄ちゃんを生き返らせる。

【方針】
優勝狙い。


780 : 加納クレタ/マルタ&キャスター ◆U1VklSXLBs :2022/08/14(日) 12:48:20 AVpyDYEY0
【マスター】
加納クレタ/マルタ

【出典】
血と灰の女王

【性別】


【能力・技能】
ヴァンパイア:
富士山の火山灰を浴びて超人的な力を身につけた人々。夜の間は怪物の姿に変身でき、優れた身体能力、固有の特殊能力を扱う事ができる。日が昇っている間は能力を行使できないが、伝承にあるヴァンパイアの弱点は持っていない。個人差はあるが再生能力が高く、心臓以外の負傷は自然に回復する。

【weapon】
ヴァンパイアの能力で生み出した魚型の分裂体。大量に生み出す事が出来、1匹が変身したヴァンパイアの身体を噛みちぎるほどの殺傷力を持つ。

【人物背景】
燦然党に所属する双子のヴァンパイア。昼間は姉妹で古着屋を経営している。幼少期、両親を火事で亡くした際に集まった人々が誰も助けに行かなかった事から、お互い以外を一切信用しない性格になった。
変身形態は人魚の姿を取り、浮遊能力と生み出した魚型の分裂体を使役する能力を持つ。

実は妹のマルタは既に死亡しており、分裂体を作成する能力を用いた一人芝居を演じている。姿、動き、表情まで本物そっくりな分裂体の妹の維持にはかなりの集中とエネルギーを必要とする。本気になると一人になり、ロングコートとハットを着用したような変身形態をとる。

【マスターとしての願い】
"加納マルタと完全に分離する"。

【方針】
優勝狙い


781 : ◆U1VklSXLBs :2022/08/14(日) 12:49:01 AVpyDYEY0
投下終了です。鯖、鱒、本文改変自由。好きに使ってください。


782 : 忌憚の華の影 ◆CvZGQjp48E :2022/09/04(日) 18:19:50 B7qK.uHU0
投下します。


783 : 忌憚の華の影 ◆CvZGQjp48E :2022/09/04(日) 18:21:44 B7qK.uHU0
本を読んでも、物語や歴史に聞くところからでも、真実の恋は滑らかに運んだためしがない。

 シェイクスピア

 人間の規範は倫理観と道徳観の結合した秩序の理である。
 それと対立するように恋愛には退廃的で不道徳、反倫理的というオンパレードである。
 それ故に世界があらゆる混沌により悪意の坩堝になったとしても、そのダイヤモンドが如き愛の結晶はあらゆる心の宝石の輝きに勝るだろう。
 「はぁ、てか、事故物件だったのね、ここ」
 アパートには閑散とした物が陳列されていた。一人住まいの女性の暮らしならば当然だ。
 しかし、違和感が一つ、目の前の浮遊する女性である。
 それは招いてない客人。
 「私はパンジャよ」
 「‥‥‥」
 「貴方、恋愛した事ある?」
 「‥‥‥」
 「私はあるよ」
 「‥‥‥」
 「でも、終わっちゃった、それは失恋ではなくヤバい話よ」
 「?」
 「つまり魔性に魅いられた」
 「?????」
 「そして私は悪霊になった」
 「うげぇっ‥‥‥」
 既視感、それは無意識から来る同族嫌悪かもしれない。パンジャの語りは最後、度肝を抜かれた。
 「あら?やっぱり見えてるの?」
 「あーもう、なんで‥‥、貴女、悪魔と契約でもしたの?」
 「そうね、部分的にそう」
 「えー、つまり、この部屋にはなんか星型のが刻まれてた!?」
 「うーん、それは違うかな」
 要点をどこか履き違えていた。
 「私はサーヴァント、貴方は聖杯戦争に選ばれたマスター」
 「聖杯‥‥戦争?」
 その言葉に耳を疑った。
 戦後数十年、戦争の言葉には蛇蠍が如く嫌悪されている。
 特に普遍的な学生ならばさもありなんと言える。
 あらゆる政治的なニュアンスを抜きにしても血飛沫と死体は目の前にあれば幻想では片付けられない。噂、都市伝説、そして陰謀論からも脱却した醜悪な真実がそこにはある。
 「‥‥‥よく分からないけど、つまり二人一組で二人三脚で戦いをしろって事!?私と貴方は司狼と蓮かよ‥‥‥」
 「え?それって、どっちが好きなの?」
 剣呑な言葉に場違いな質問が投げかけられる。
 「ぬわああああああああああああああああああああ」
 その言葉に絶叫と赤面が必須だった。


784 : 忌憚の華の影 ◆CvZGQjp48E :2022/09/04(日) 18:22:54 B7qK.uHU0
【マスター】
綾瀬香純
【出典】
Dies irae
【性別】

【能力・技能】
剣道部部長であり卓越した剣道の技術を有している。
【人物背景】
主人公である藤井蓮の幼馴染のひとりで、下宿先のアパートの隣人。日常の象徴でありながら異端の魔術師メリウリウスにより、ギロチンの魔導具のために生け贄を与える殺人鬼へと仕立て上げられてしまう。以後はその記憶なく、作中の闘いには無関係で居続けたが、実はゾーネンキント、「第二のバビロン」の素質のあるドイツ人のクォーターであった。その明るさは作中では「太陽」と例えられることもあった。
【マスターとしての願い】
高校生活を普通に送りたい
【方針】
やっぱり平和が一番!


785 : 忌憚の華の影 ◆CvZGQjp48E :2022/09/04(日) 18:24:28 B7qK.uHU0
【クラス】
アヴェンジャー
【真名】
パンジャ(桜井千代)@ムヒョとロージーの魔法律相談所
【ステータス】
筋力F 耐久B 敏捷C 魔力D幸運E+ 宝具D〜A
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
復讐者:D復讐者として、人の恨みと怨念を一身に集める在り方がスキルとなったもの。恋愛とは愛憎入り交じる時もある故に。

忘却補正:EX人は多くを忘れる生き物だが、復讐者は決して忘れない。特に初恋は忘れようにも忘れられない。

宝具魔人形の糸(あやつり)、ランク:D 種別:対人間宝具 レンジ:100〜∞ 最大捕捉:1〜∞
指から放たれる糸で人を自在に操る。また、操られている者に触れられたら糸が伝染する。契約している使者は地獄の女帝ミミ。
異形化(パンジーは……いや)ランク:B 種別:対人界宝具 レンジ:5  最大捕捉:10人
それは悪霊の業とも言えて、元々はティキの首飾りの結果だが、今では自分の意思で首や手足が延びるように変貌する事が出来るようになっている。
【人物背景】
幼い頃から霊媒体質であったが故、両親をはじめとする周囲から嫌悪されて、学生の頃から耐え難いいじめを受け続けていたために強い王子様願望に囚われるようになった。ある時、両親から勘当的にで無理やり家を追い出され、ムヒョの助手採用試験に行かされてしまうが、道中で申し込み用紙を無くしてしまい、困っていた所を偶然通りがかったロージーに助けられた。それ以来ロージーに惚れ込んでストーカー行為を続けていたが、一旦諦めて帰ろうとしたところをティキに唆されて、禁魔法律を教え込まれた。ミックと共に中継地の新潟のホテルでロージー達を待ち構えて「あやつり」によりホテルの人間達を操り、最終的にティキから与えられた魔導具に力を乞い、異形化、当初は箱舟の一員と思われたが、実際はエンチュー達にとって捨て駒のようにしか思われていなかった。最後はロージーと思いが通じ合い、明るく成仏した。
【外見】
黒髪の美少女
【サーヴァントとしての願い】
受肉‥‥‥かな?
【方針】
彼がいるなら眺めるだけでいい。


786 : 忌憚の華の影 ◆CvZGQjp48E :2022/09/04(日) 18:25:12 B7qK.uHU0
投下終了します、話はフリーでご使用可能、文字改変も自由です。


787 : いいえ、私は新蠍座の女 ◆9Jctl1yOCU :2022/09/12(月) 16:53:12 wk5t1v.E0
投下します。


788 : いいえ、私は新蠍座の女 ◆9Jctl1yOCU :2022/09/12(月) 16:53:43 wk5t1v.E0

 ジェンダーという問題が昨今どうしても顕在化してしまうが、性欲を忌み嫌い、それでいて、新しい性別の概念を求める。それは既存の性別から逸脱した第三の性別であり、本来の性別の話とは混同してはいけないと思われる。
 男と女、それは元々の人間に備わった機能である。性役割から逃げ出したい。父性を保持させなくても父親面がしたい、母性を保持しなくても母親面がしたい。そんな自己矛盾を孕む事だってあるだろう。
 しかし、彼女は女性である事を武器にして戦い抜いた子供を有していた母親であった。
 新宿チャイナストリートの一角、その空きビルのテナントはいつの間にか埋まっていた。
 ヤクザの事務所しては人がいなく閑散であり、OLが働くにしてもその場所にある陰湿な雰囲気は普通の会社とは格別に重かった。
 忌まれた隠れ里の土地財産をしっかりと所有する女性の隠れ家にしては最適と言えよう。
 「キャスター」
 その部屋は左官屋にペンキが何も塗られていないままのコンクリートが剥き出しである。
 しかし、様々なアニメイラストの美少女とポスターとグラビア女性のポスターが貼られている。それの二次元、三次元の美男版だってそこにはあった。
 部屋半分がピンク一色であり、大きなベッド、枕もピンクで塗り固められていた。
 そんな全てに勝る脳内ピンク色の女性がそこにいた。
 「なぁに?」
 半裸、高級ネグレジェ、ノーパンノーブラであるキャスター。
 「そろそろ私達も動くべきじゃないかしら?」
 何かしらの催促をした。
 「別にいいんじゃない?私達は男達のように手当たり次第に殴り、戦い、場合によっては男性が男性を犯すメイルレイプだってするかもしれない、でも女性は最初から好戦的になってはいけない、女性の好戦的はポーカーフェイスで余裕をぶっていてもすぐにアヘ顔ダブルピースだわ」
 それは卑猥な結論に見えた。
 「世の常理ね」
 キャスターの答えにマスターはそんな返答を返した。
 「女のクセに男のように真っ正面から闘いを始めるやつは無謀よ、男のために男のようになる必要性なんてないわ」
 「女だから女としてもっと男に理解をしないといけない」
 「アマゾネスだろうが魔女だろうとそこから目をそらすのは無謀よ」
 無謀、それは甘美な言葉にも聞こえる。それをしてくれるならば誰もが容易く勝利を会得する。しかしマスターは違う。
 「私の属性は策士よ」
 「美隷ちゃんは分かってるぅ♪」


789 : いいえ、私は新蠍座の女 ◆9Jctl1yOCU :2022/09/12(月) 16:55:06 wk5t1v.E0

 マスターもまた女性だった。
 「戦術と戦略の違うがあるし、男性にとっての戦略は満足する勝利をする事と思い込む事が多い、でもそれは小局、大局は目先にぶら下げた釣りにひっかかるなんて三流のすることではなく、漁夫の利を時に狙い、戦争の旨みだけ啜り終える事」
 女策士としての意見であるだろう、それに頷くキャスター。
 「男と男が争い、女性が裏で利益を貪るとまではまだ言えない、現代戦というより、ギリシャ神話ならば不和の女神エリスというのがいたし、古来より、真の勝者は戦争の勝利者ではなく、戦争の支配者よ」
 アスモデウスは男性の表層的な勝利と深層的な勝利の区別がどうやらついているらしかった。
 「でも、子供にはそんな下らない戦争は巻き込ませたくないのもまた事実である」
 その女にはマスターは子供がいる、息子の名前は霧人、緋蜘蛛の霧人とあだ名される男性だ。
 「へぇ、貴方がした戦争は何だった?」
 アスモデウスはベッドの上に無造作に置かれた二つの細長いバイブに電気を入れず、それをただ右手と左手で持って兜合わせのように突き合わせた。
 「一族の繁栄を願った、だけど、その本質は虫けらのカブトムシ一匹の生存欲のためだけの生け贄となった、それを解放したのがGetBackersの魔女の末裔、美堂蛮の邪眼と「雷帝」天野銀次の電撃、そして忌々しいはずだった魔里人の冬木士度、拉致った女に対する男の執着心があの結末を迎えた、仲介屋HEAVENと蝉族の奏蝉丸の知り合いのDrジャッカルとか風雅の三人、風鳥院のオカマも何故かいたけど‥‥‥」
 「ふーん、小さな戦争だったんだね」
 気づけば二つのバイブに電源が入れられていた。
 「それはやめなさい」
 「やめないよ」
 マスターの言葉を即座に否定したキャスター。
 「もっと気楽にセックスについて語り合いたいのになぁ、苛立ちで眉間に皺が寄りすぎると老けるぜ?」


790 : いいえ、私は新蠍座の女 ◆9Jctl1yOCU :2022/09/12(月) 16:55:30 wk5t1v.E0
「‥‥‥これでも70代だわ」
 マスターの肌は二十代のようではあるが、そこは化外の一族、鬼里人の蜘蛛族の秘術がその肌に現れているのだろう、チャイナドレスに身を包めば中華街のウェイトレスである。
 「若作りだね、まぁいいんじゃない?ハッピーならさ」
 「アンハッピーはあまり人生にいらないわ」
 「霧人君がやらはたになっしまったらアンハッピーだね」
 「‥‥‥さぁ、その時は私が童貞を卒業させてあげようかしら」
 「近親相姦でも別にいいんじゃない?困るのは人間の本当の素晴らしさを語る倫理的な人権屋だけさ、彼等が圧倒的に正しい、だけど色欲の大罪は間違っているけどハッピーにはなれるのさ」
 そのキャスターはどうやら元人間の上級女悪魔、ハイサキュバスであるようだった。
 「で、これから何をするべきかしら?」
 「そりゃあセックス一択だよ」
 ハイサキュバスはマスターをベッドに誘った、聖杯戦争は始まろうとするが濃厚なレズビアン二人のセックスも始まろうとしていた。
 絡み合う二匹の蛇、しかし、それは歪な話である、それでも毒々しい言葉が放たれた。
 「ずるいわ、キャスター」
 「何がずるなの?」
 「私から辛い思いを一時的に忘れようとさせている」
 キャスターはベッドに座ったマスターのマンコをクンニしていた。
 その後、二人はベッドに倒れこみ、塗れたマンコをくちゅくちゅと指で掻き乱し、愛液で塗れた指は胸まで駆け上がり、胸を揉み始める。Fカップの豊穣に実ったおっぱいをである。
 「んっ‥‥くぅ‥‥」
 マスターはつい喘ぎ声を漏らした。
 やがて、それは貝合わせのもどかしさで、混濁した愛情の錯乱がぶつかり合った。
 やがてそれは終わり、果てた、精根が尽きる。
 窓の外は仄かに薄暗く、暗い真夜中にある揺蕩う街灯がまだ部屋に入り込むようであった。
 動くべきかしらと質問したが、その今何をするべきかという悩みはたった一つの抱擁による混乱により有耶無耶になった。ハッピーなこの空間を邪魔する男など今はいないに決まっている。
 この空間というシュレディンガーの箱にいるのは淫乱な女豹、同時にお高くとまった正義感溢れる愛と平和の使者のような道徳的な人間達という一部のノイジーマイノリティに蛇蠍のように嫌われる狂った女性性の最低でもある、片方は蜘蛛でもあり、片方の色欲の大罪の象徴もまた蠍であった。キャスターの全裸のお尻には蠍のタトゥーがあった。


791 : いいえ、私は新蠍座の女 ◆9Jctl1yOCU :2022/09/12(月) 16:56:39 wk5t1v.E0
【マスター】
網美隷(もう びれい)
【出典】
GetBackers-奪還屋-
【性別】

【能力・技能】
卓越させた魅了と卓逸された擬態。
【人物背景】
属性・策士。蜘蛛族の長で七頭目の一人。通称女郎蜘蛛。若作りしていて20代の若さと美貌を誇る、Fカップの爆乳。彼女達蜘蛛の一族は、世紀末大不況(恐らくモデルはバブル崩壊)の折に中国人に化けて裏新宿無限城下のチャイナタウンに入り込み、その支配者として上り詰めた。裏新宿チャイナストリートではその破廉恥な格好と美貌でGetBackersを誘惑、マドカに化けて銀次を殺そうとしたが、覚醒した雷帝によってチャイナストリートを壊滅させられる。魔里人とその仲間達と鬼里人と全面戦争になるが、鬼里人の長、兜のやり方に疑問を覚え、GetBackers御一行に手を貸し、裏切る、戦争終結後は、愛する鬼蜘蛛と無事結婚したらしい。
【マスターとしての願い】
家族を二度と戦争に参加させないようにする。
【方針】
属性・策士として女性らしく策を巡らせていく。


792 : いいえ、私は新蠍座の女 ◆9Jctl1yOCU :2022/09/12(月) 16:58:34 wk5t1v.E0
【クラス】
キャスター
【真名】
アスモデウス
【ステータス】
筋力E 耐久A 敏捷C 魔力EX 幸運A 宝具A
【属性】
中立・悪
【クラススキル】
陣地作成:A魔術師の工房、自らに有利な陣地を作るための能力だが性欲という色欲の大罪の権化、風俗街を彼女は本陣としている。
道具作成:EX、本来は魔道具を生み出すスキルだが、彼女は性欲を満たす変態グッズを作り出す。
宝具色欲の大罪、涅槃からの生還者(ルクスリア・シン・ソウルサバイバー)、ランク:C 種別:対人間宝具 レンジ:1〜∞ 最大捕捉:1〜∞
所詮、誘惑の術(テンプテーション)ではあるが、香水やフェロモン、邪(よこしま)なオーラ、煩悩を溢れさせる煩悩、それを超越した精神支配の催眠術であり、それは女性ホルモンが多量にある者が放つ特有の微弱な電気信号でもある。男女問わず心がエロスに蝕まれていく。
【人物背景】
禁忌の果実を会得して猿から人間に進化して知性を会得した結果、聖書のアダムとイブは裸体に恥じらいを覚え、やがて人間は単なる生殖本能を娯楽へと手段を変えた。それは色欲であり、ありとあらゆる変態行為の化身となっていく。それは忌まれる事もあり、人間の業の一つである。それは風俗という者を生み出していった。それは性魔術と呼ばれる魔術体系へと発展していく。それゆえ、元々、彼女は古来より、セックスの神秘、性魔術を取得したどこにでもいそうな元娼婦の女魔術師。江戸時代、長崎出島の遊郭で髪を黒くして、遊女になった時もある。
【外見】
西洋絵画の美女という概念、
、イタリアの美術家レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた油彩画、「世界でもっとも知られた、もっとも見られた、もっとも書かれた、もっとも歌われた、もっともパロディ作品が作られた美術作品」、『モナ・リザ』のように黄金比、それは次の値で表される比のことである 1 : {\displaystyle {\frac {1+{\sqrt {5}}}{2}}} が宿っている。
それでも、顔面は恍惚と性欲に歪み乱れる事もある、卑猥なポーズをする事もある。誰もが美貌と言わしめる女性が恥辱の醜態を晒す時。それを見るたびに性欲を発露させる淫靡な体型、人相をしている。頭蓋骨が後ろへ突出している様子、反骨の相も含まれている。
【サーヴァントとしての願い】
あらゆる変態が大満足する新世界。
【方針】
暫く風俗の経営とマスターとの交遊を楽しむ。女の強みは男性を陥落させるためにあるため、男性の協力相手を求めている。


793 : いいえ、私は新蠍座の女 ◆9Jctl1yOCU :2022/09/12(月) 16:58:48 wk5t1v.E0
投下終了します。


794 : ◆Uo2eFWp9FQ :2022/10/29(土) 16:23:07 Lf2wZB/A0
投下します


795 : 蜻蛉が飛び、花が傾いだ日 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/10/29(土) 16:24:06 Lf2wZB/A0




          何も知らない者は何も愛せない。

          何もできない者は何も理解できない。

          何も理解できない者は生きている価値がない。

          だが、理解できる者は愛し、気づき、見る。

          ……ある物に、より多くの知識がそなわっていれば、それだけ愛は大きくなる。

          ……すべての果実は苺と同時期に実ると思い込んでいる者は葡萄について何ひとつ知らない。

                                            ───パラケルスス





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796 : 蜻蛉が飛び、花が傾いだ日 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/10/29(土) 16:24:51 Lf2wZB/A0





聖杯戦争において、戦況とは常に流動するものである。
国家間という、巨大に膨れ上がった共同体同士の戦いではない、個人同士での争いは、その単位の矮小さと身軽さによって、逆により複雑な勢力図を作り上げてしまうことだとてある。
特にこの聖杯戦争、数十から下手をすれば百にも及ぶ主従が入り乱れる都市戦においては猶更のことであった。
組織化されていない個人が一か所に放り込まれた戦場において、序盤はともかく中盤を迎えて以降はどう足掻いても「勢力化」を避けては通れない。
力で劣る主従が生き残るには他と協力を結ぶ必要があり、力で勝る主従はそれに対抗するため己もまた他と協力関係を締結し……という流れが常道になるからだ。
然るに、彼らもまたそうだった。
寝静まった夜の街を舞台に、散発的な陣形を取りながらも睨み合う二つの陣営。7騎の同盟、都合14騎のサーヴァントによる大規模陣営戦が、今まさに行われようとしている最中。
これから熾烈な戦場と化すであろう地に集った彼らもまた、そうした常道に則って同盟を膨れ上がらせた主従たちであった。
勢力が大きくなれば、当然他との摩擦も大きくなる。
この時点において間違いなく聖杯戦争最大規模の勢力を誇る二陣営は、当然の帰結として相容れぬ互いを排除せんと真っ向からの激突を選択した。
無論、彼らは敵陣営を相手にしながらも、味方側に決して背中を預けたわけではない。
なにせ、彼らは全員が聖杯というたった一つの優勝カップを狙う者同士なのである。今は同じ陣営として轡を並べてはいるが、それは長期的な戦いを効率よく生き延びるための戦略に過ぎず、甘えた仲間意識を抱いたことは一度とてない。
協力して敵を討ちましょう、という言葉に嘘はない。しかし同時に、この決戦を経て疲弊した同陣営の主従がいれば隙を見て寝首を掻き切ってやる、という思いもまた共通なのだ。
そんなことはマスターもサーヴァントも百も承知。何れ自分たちは、いつかのタイミングで袂を分かち、命をかけて殺し合う関係に変貌するだろうことを見据えていた。
それを踏まえたうえで、彼らは一時の共闘を選んでいた。何れのマスターも魔道に精通した熟達者、何れのサーヴァントもその実力に疑いはない歴戦の強者たち。彼らが結託することで得られる集団としての力は他を圧倒するもので、ならばこそ自分たち以外の勢力が存在することを容認はできなかった。

結果として、今の状況がある。
大都市のど真ん中という立地でありながら、今は人の気配はない。眠りを知らぬ不夜の街に有るまじきこの異常は、双方に所属するキャスターの手によるものだ。
いわゆる人払いの結界、という奴である。今回の衝突は行き当たりばったりの遭遇戦ではない。入念な事前準備のもとに行われる決戦なのである。邪魔な一般人の排除、神秘の露見を防ぐ下準備。その結果として、この無人の街という状況があった。

両陣営の陣形は至ってシンプル。セイバーやランサー、バーサーカーといった白兵戦主体のサーヴァントが前線に出でて、アーチャーやキャスターといった後方支援役が下がる。両者を取り持つように、遊撃役としてライダーが出張る。そんな、ありきたりな陣形。
しかし何れ劣らぬサーヴァントたちがやったれば、まさしく魔境の絵図になることは間違いないだろう。
セイバーが、手に持つ聖剣や魔剣に魔力を充填する。アーチャーは矢を番え、キャスターは何事か聴き取れぬ魔性の言語を詠唱する。
バーサーカーが嵐の前の静けさと言わんばかりに狂気を蓄積させ、いざ戦闘においてその暴威を解き放とうとした。
今からこの街は戦場になる。その刹那。

両陣営が睨み合う境目に───銀色の何かが墜落した。

遥かな上空から雲を裂いて飛来した、誰しもの目にも一瞬の残光としか映らなかった、銀色の彗星。
集いたる精強なサーヴァントたちと相対するには矮小すぎる体躯と、戦場の規模に比して余りにも小さな地響きが伝わり───


797 : 蜻蛉が飛び、花が傾いだ日 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/10/29(土) 16:25:33 Lf2wZB/A0

見えなかった。
優れた動体視力を持つ白兵型サーヴァントも、鋭敏な視力を持つアーチャーにも、索敵術式を用い常に奇襲に備えていたキャスターにも。
ステルスや、アサシンのような気配遮断能力が展開されていたわけではない。
ただ単純に───速すぎたのだ。

銀色の閃光が迸った。
そうと見えた瞬間には、前線に構えていた両陣営のサーヴァント六騎───銀彗星の落下地点を中心に半径250m内に存在した全サーヴァントが、全身を微塵に切り刻まれて消滅した。
そこに一切の例外はなかった。
あらゆる攻撃を弾く防御と加護された神授の鎧を持つセイバーも、矢避けと回避に纏わる加護を持つはずのランサーも、身一つで宝具の直撃さえ耐える肉体を誇るバーサーカーも。あまつさえ、気配遮断により高度な隠身を施していたはずのアサシンに至るまで。不可視かつ無数の斬撃によって、飛び散る血の一滴さえも両断する勢いで、文字通り血煙となるまで徹底的に斬滅されたのだ。
腹の底を震わす轟音と共に爆裂する大地───視界の端から端まで、見渡す地平線の向こうまでもが巻き上げられた瓦礫と土砂に染まり、斯くも局所的な竜巻が何十も同時に発生したような有様は、まさしく戦場を構築する結界の要までをも破壊された証左に他ならない。
一瞬の空白。双方陣営の後方にて矢を番えていたアーチャーたちが放った、光を纏った矢の雨霰。結界の維持をかなぐり捨てたキャスターたちによる、炎熱や光条といった攻性魔術の絨毯爆撃。
弾数にして千を優に超える弾幕は、しかし銀彗星に届くことなく"全く同時に"中空にて音もなく掻き消えた。それが防御障壁の類ではなく、セイバーたちを撃滅した不可視の斬撃によるものであると、認識できた者はいなかった。その瞬間には、弾幕を放ったアーチャー三騎とキャスター二騎の額に親指大の孔が空き、貫通した向こう側の風景を覗かせていたからだ。
何事かを絶叫するライダーが、金切り声と共に宝具を開帳した。爆発的に膨れ上がる魔力は見上げんばかりの巨躯として具象化、身の丈およそ30mにも及ぶ巨大な翼竜が大地を揺らしながら顕現し、鎌首をもたげた顎から雄叫びを上げようと。
した刹那には、既に翼竜は頭頂から股下までを両断され、更に次の刹那には召喚主であるライダー共々全身をくまなく寸断され、数百のパーツに断割された肉片と大量の液体をぶちまける音が夜闇の天蓋を血に染めたのだった。
詠唱と共に姿を掻き消した最後のキャスターが、銀彗星の落下地点に転移すると、特異な空間変調を伴って周囲一帯を取り込んだ。空間転移、並びに固有結界。共に魔法の一歩手前と言われる高等術式。紛れもない最上位の魔術師の手並みである。
ならばこそ、そのキャスターが「5秒」もの間命を繋げられたのは、まさしく健闘と言って過言ではなかった。
5秒の後、半径数十mに渡って展開された灰色の半球状異空間が、硝子が割り砕かれるような甲高い音と共に、無数の細かい破片となって粉砕されたのだ。
雲母の如く舞い散る灰色の欠片の只中に、神域のキャスターの姿はなかった。とっくの昔に、黄金の粒子となって消滅したのだと悟る。
その事実を認識した瞬間、この地に集ったサーヴァント最後の生き残りであるライダーは、180度方向転換して一目散に逃げ出した。
恥も外聞もなく背を向けて、己の誇りたる騎乗宝具を発動。近代的な意匠の戦闘機はコンマ秒で音速の壁を突破し、マッハ5という驚異的な速度で漆黒の夜空に一陣の白い軌跡を描いた。
なんだ。なんだ、これは。
ライダーの胸中を支配するのは混乱と恐怖である。見も知らぬ闖入者一人に味方も敵も壊滅させられたこと。その姿どころか、攻撃の正体さえも全く掴めぬ事実。理外の英霊として召喚された己をして、尚条理より逸脱した正真正銘の怪物、そうとしか形容の仕様がない何者か。
決戦であると意気込んでいた。この一戦が今後の聖杯戦争の趨勢を左右する、いやさ事実上の最終決戦であるとさえ思っていた。激闘になることは疑うまでもなく、当然己が戦死することも覚悟していた。
けれど、これはなんだ?
これでは「我らは無敵の連合である」「彼奴等を下して聖杯への道を」と語り合っていた言葉の全てが、滑稽な道化芝居ではないか。この聖杯戦争において最大の二派閥の激突と驕り高ぶっていた、弱者の群れも同義ではないか。
自分はここで、終わりなのか。
呆気なく敗走して、逃げ帰って、その先があるのか。果たしてあの化け物に、抗し得る術はあるのか。
いや、そもそも───自分は本当に逃げられるのか?

弱った思考が頭を過ったその時には、ライダーは騎乗する戦闘機諸共両断されていた。
月が見下ろす暗い空に、空中分離した機体のパーツがばらばらと舞う。
一瞬の浮遊感に停滞する中、頭部だけとなったライダーの視界には、月の逆光を背負い影の塊となった巨大な蜻蛉の姿が、やけにくっきりと映っていたのだった。





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798 : 蜻蛉が飛び、花が傾いだ日 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/10/29(土) 16:26:14 Lf2wZB/A0





晴れ渡る青空だった。
空は何処までも青く、澄み切っている。雑多な建物が立ち並ぶ街並みの向こう、地平線から昇る積乱雲が、遠景のビル群に覆いかぶさらんばかりであった。
燦燦と降りしきる陽光が照らす雑居ビルの屋上、丁寧に世話のされたガーデニングテラスに、少女はいた。
緑色のプラスチックの如雨露を手に、薄く笑みを浮かべながら色とりどりの花々に水を遣っている。

およそ非人間的な美を湛える少女であった。
同時に、酷く人間的な所作の少女であった。

陽の光を受けて煌めく銀の髪、白磁の形容すら生温い不純物の一切混ざらぬ肌。高く整った鼻梁に暁の空を思わせる澄んだ瞳。その全てが、生物という不格好な乱数の産物とは思えぬほどに、恐ろしいまでの完成度を以て均整の取れた美を体現している。
だがしかし、その顔に浮かぶ表情の、なんと眩しいことであるか。
不気味の谷という言葉がある。人形やロボットなどは、その外観や動作がより人間らしくなるにつれて人から好感を持たれる傾向にある。しかし、ある一定のラインを超えると好感は転じて嫌悪となってしまう。人に限りなく近いロボットは、その近さ故に人の目には奇妙に映ってしまうのだ。
翻って、この少女はどうか。
どう見ても作り物以外にあり得ない、一種の芸術作品にさえ達しているであろう美貌の外観を持ちながら、しかし彼女に気味の悪さを覚える人間は皆無に違いない。それは単に造形の優れたる事に留まらず、彼女の内から発せられる感情こそが、作り物の彼女を人間たらしめているのだ。

少女は笑う。爛漫と。心からの笑みを浮かべ、楽しそうに、或いは慈しむように。その手に握る如雨露から花に水を遣っている。

「サーヴァント・アーチャー、只今帰投しました」
「あ、おかえりアーチャー!」

視界に光が散った。
アーチャーと呼ばれた男の目には、声と共に振り返った少女の姿は、涼風と天日を背にして一層の煌めきと映った。

「大規模結界に集ったサーヴァント十四騎、全騎の討滅を確認しました。この街に住まうNPCを含め、我ら超常の者を除いた人的被害は零となります」
「……やっぱり、サーヴァントは殺しちゃったんだ」
「通常、闘争において無力化された敵性個体は即刻撃破されるものです。差し出がましくはありますが、気に病む必要はないと具申いたします」

やや沈んだような少女の声。それに答えるアーチャーの言は、対照的に揺ぎ無い真っすぐなものだった。己のやるべきことを強く自覚し、一切迷わぬ者の声。
表情も、視線に至るまで同様だった。彼は迷わず、疑わない。


799 : 蜻蛉が飛び、花が傾いだ日 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/10/29(土) 16:27:00 Lf2wZB/A0

「……ごめんね」
「謝罪は不要。自分は只、己の存在意義に従っただけのことでありますれば」
「それでも、ごめん。これは私なりのけじめみたいなものだから……」
「誰かを重ね合わせているのですか?」

まさしく図星であった。
少女は元から大きな目を更に真ん丸にして、驚きの表情を形作った。次いで納得したような面持ちで、言葉を続ける。

「少し、私の話をしていい?」
「構いません」
「ん、ありがと。といっても大したことじゃないんだけどさ」

あはは、と笑って、少女は続ける。

「私ね、ちょっと前までお父さんと二人で旅をしていたの。お父さんといっても血の繋がりはなくて、私を拾ってくれた人だったんだけどね。
 掻い摘んで言っちゃうと、その人にすっごい迷惑をかけちゃったなって、今になって思うんだ」

語る言葉には、少なからぬ苦笑の響きがあった。
困ったような笑み。それはもう、二度と帰れない日々を想起してのものか。

「自分で言うのも何だけど、ちょっと前の私は本当に馬鹿だったんだ。現実が見えてないはた迷惑な博愛主義者だって言われたな……
 私達を殺すつもりで襲ってきた強盗やならず者も『助けてあげてー』とか、明らかに罠な救難信号にも『でも私は助けにいくー』とか。
 しかもさ、その後始末は全部お父さんに押し付けちゃってね。体張って戦うのも、私を抱えて逃げるのも、痛い思いもつらい思いも全部お父さん。
 とうの私は何もできなかったのに『あなたは凄い運び屋なんだからできるでしょー』とか、今にしてみると本当に恩知らずの馬鹿娘だよね。自分で言ってて嫌になる」

隠し切れない自己嫌悪の感情が、そこにはあった。消せない過去の過ちであると、強く認識しているがための声音であった。

「でもね、やっぱり私は馬鹿な子供だから……それでも人には死んでほしくないなって、そう思うんだ。
 何の力もないのに、私は戦えないままなのに、無責任な思いだけが勝手に湧き出てくる。
 そうなるとさ、今度はアーチャーに全部押し付けることになっちゃうじゃない?
 だから、ごめん。こんな我儘、言ってる場合じゃないのにね」
「己(オレ)は───」

一歩の間合いから、男は少女を見下ろした。現実を知らぬ小娘の戯言と、切って捨てるのは簡単だった。しかし彼は、他ならぬ鬼虫の竜胆は、違った。


800 : 蜻蛉が飛び、花が傾いだ日 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/10/29(土) 16:28:18 Lf2wZB/A0

「己は、貴方のそうした在り方は間違っていないと思います」
「……本気?」
「肯定。これは心の在り様の話になりますれば。環境の如何によって否定される時と場合があるにせよ、本来的には人と獣を分かつ鉄の閾でありましょう」

少女は───フィリアという名のアンドロイドは、正しく人間ではない。
人為的に製造された機械。それも、人であれと祝福されて生誕した極めて特異な経緯を持つアンドロイドだ。
人という種と人類社会に溶け込むために最適化された彼女は、設計段階から親人類的思考を植え付けられている。彼女にとって人間に対する無条件の博愛は、経験から来る理屈ではなく本能的衝動に近い。

「貴方の過剰な善意は、それ自体は本能に近しいものでしょう。人が空腹を覚え、眠気を感じ、それを解消しようとする欲求と変わりない。
 それだけならば、己は何も言いません。斯く在れかしと造られた命にとって、それは善も悪もない生理的活動に過ぎないのですから。
 けれど現在の貴方が持つ利他的感情は、本能に基づいた衝動ではあり得ない、自らが辿った足跡によって形作られた、貴方だけの揺ぎ無き心が成せる在り様であるのだと、己は考えます」

サーヴァントとはマスターに従うもの。されど無条件の隷属を是とするわけではない。
特にこの男、四天の竜胆ならば猶更の話である。
名にし負う最強の鬼虫、その中でも群を抜く壱番式と相対するには一介の小娘では荷が勝ちすぎるかと言えば、決してそうではない。
彼は既に、フィリア・グレイという力なき少女を己が剣を託すに足る人物であると認識している。

「己は人たる者を崇敬します。それは、マスター。貴方も例外ではない」
「……私、アンドロイドだよ?」
「はい」
「骨格は金属だし、内臓はほとんどダミーだし、脳みそは粘菌なんだよ。
 息しなくっても平気だし、生まれた時からこの見た目なんだけど」
「承知しております。然れば、人間であることの定義とは、一体何を指すのでしょうか」

いきなり観念的なことを聞かれてしまった。
一瞬だけ言葉に詰まる。答えるべき言葉は持っていたが、目の前の彼が言いたいのはきっとそういうことではないと分かっていた。

「遺伝情報によって設計された五体満足の人体を持っていれば、それが人なのでしょうか。
 或いは、社会的な立場や肩書こそがその者を規定するのか。もしくは、木石ではなく母の胎から生れ落ちた事実こそが人たる証左であるのか」

そのどれもが違うのだと、言外に滲ませて彼は告げる。

「"意思"こそが人を人たらしめる、己はそう愚考します。
 本来、人格とは当人が今日これまでの人生において集積した経験によって形成されるものです。誰と出会い、何を体験し、どう思考したかの軌跡が個人を形作る。
 されど人間には、これまでの軌跡を喪って、それでも尚"消えない部分"があるのです。
 記憶より尚深くその者に沁みついた意思は、人を自己たらしめる最大の要素にして、自他を決定的に分かつ境界線であるのだと」

四天の竜胆は強く在ろうとする人の意思を何よりも敬愛している。そうした姿勢は生前から一度もぶれることなく、故に戦闘能力の有無に関わらずフィリア・グレイの強さを誰よりも信頼している。


801 : 蜻蛉が飛び、花が傾いだ日 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/10/29(土) 16:29:01 Lf2wZB/A0

「フィリア・グレイ、我がマスター。貴方は紛れもなく、一人の"人間"です」

揺ぎ無い真っすぐな瞳だった。
気負いも衒いもなく、心底より断言された言葉だった。

「……アーチャーは、お父さんと同じことを言うんだね」
「己程度の者と重ねられては、貴方の父君に失礼となりましょう」
「でもその変な謙遜はやめてほしいなー」

フィリアの表情に僅かに笑みの光が戻る。心の荷が少し降りた、そういう表情であった。
暫し、空間を沈黙が支配する。フィリアは如雨露を片付けて脇のコンクリブロックに腰を下ろす。竜胆は変わらず、不動の姿勢だ。燦々たる午後の陽射しが、より強く照り付けていた。

「ねえ、聖杯って割と何でも願いが叶うんだよね?」
「その通りです」
「ならさ、死んだ人を生き返らせることってできるのかな」
「不可能です」

断言されてしまった。

「聖杯に可能なのは過程の省略です。現時点の人類が成し得ないことは、如何に過程を差し引いても結果に繋がることはない。
 できるとすれば、精々が『死の解釈の変更』程度のものです。貴方の父君が死んだ意味を、後付けで塗り替える程度のこと」
「そっかぁ。じゃ、世界を救うっていうのはどうだろ?」
「聖杯は最も自然な形で結果を出力する性質があります。であれば、貴方が生まれた世界を救うに当たっては、グロウナー公爵が用意した衛星施設に、別個体のAe型アンドロイドが接続されるという形で社会の復興が行われると推測できます」
「うへー、じゃあいらないや。没、没」

べー、と舌を出すような所作で、フィリアは否定の感情を露にする。そして「とんでもないことになった」みたいな顔をして、大げさに言ってみせる。

「どうしよアーチャー、私聖杯いらないかも!」
「良かったではないですか、それは貴方が独力の可能性を追求しているという何よりの証です」
「いや、でもなー……」

うーん、うーんと頭を捻って、特に目ぼしい結論が出るわけでもなく、十秒程度の時が過ぎる。


802 : 蜻蛉が飛び、花が傾いだ日 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/10/29(土) 16:29:45 Lf2wZB/A0

「余計な世話かもしれませんが」
「うん?」
「生きたい、というだけで立派に戦う理由になると、己は考えます。
 それは生を受けた全ての命が等しく有する、原初の願いであるでしょう。ならばこそ、生きたいという願いを否定することは、誰にもできません」
「それでいいのかなぁ」
「己もまた、その思いを否定しません。しかし、貴方が進むべき道は、やはり貴方自身が選ぶべきなのです」
「アーチャーは優しいのに容赦がないから好きだよ」

うーん、と最後に首を捻って。フィリアは問う。

「アーチャーはさ、なんで戦うの?」
「負けるわけにはいかぬからです」

即答だった。迷いのない、確固たる言葉だった。

「お国のため?」
「いいえ、己が今まで相見えた全ての兵のためです」

暫しの無言があった。

「……どういうこと?」
「彼らには彼らの思想がありました。意思が故に鬼虫に挑み、それを踏み躙り、乗り越えて今の己がいます。何処かで歩みを止めてしまえば、それは彼らへの侮辱となるでしょう」

竜胆は独白のように言葉を続け、こう締めくくる。

「彼らを斃した鬼虫の蜻蛉が、途中で腑抜けたとあっては、いずれ合わす顔がなくなります」

それはどこまでも透徹した、兵士にして剣士の言葉であった。
戦闘を旨とはしないフィリアにとって、それは額面通りにしか受け止めることのできない言葉ではあったものの、少なからず共感できる部分もあった。
いずれまた、遠いところで会った時に。
胸を張って「自分はそう決めて、こう生きた」と自慢できるような。そういう生き方をしたいのだと。


803 : 蜻蛉が飛び、花が傾いだ日 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/10/29(土) 16:30:23 Lf2wZB/A0

「私さ、夢があるんだ」

ぽつりと、フィリアが呟く。誰ともなく、それは竜胆の言葉を受けてのものだったか。

「受け継ぐ、なんて格好良いことは言えないけどさ。それでも私は、お父さんみたいな運び屋になってみたい。お父さんは凄かったんだぞって会う人みんなに自慢したいし、私みたいな境遇の子がいたらできるだけ手助けしてあげたいの。そのために勉強や訓練もしてるし、というか独り立ちしてるし、まあ何が言いたいかって」

毅然と、何かを決めた表情。

「私、こんなとこで死んでらんないんだった!」

なんでこんな簡単なことで悩んでたんや、と言わんばかりの勢いである。
ぶっちゃけ、開き直りである。
けど、確かに、その通りだった。

「アーチャー」
「皆まで言わずとも、大丈夫です。マスター」

フィリアの視線が真っすぐに竜胆へと像を結ぶ。彼は身じろぎもせず受け、見返していた。

「元より我が身は一個の兵器、一振りの刃。貴方の意思が戦い続ける限り、己はその力添えとなりましょう」

抑揚のない彼の言葉を受けて、フィリアは、その碧い双眸に不可思議な熱があることを悟った。碧眼の中には小さな灯があった。それはかつて戦場で挑みかかる敵を正面から見据える瞳であり、ありふれた日々を営む多くの人々を見遣る瞳であった。
それは畏敬と憧憬の感情が成せる熱であることを、フィリアは知らなかった。

「……うん。ありがとね、アーチャー」

ただ一つ確かなことは。
フィリアは竜胆の言葉に感謝しているという事実のみ。

「あ、それでね。もう一つだけ良いかな?」
「何でしょう」
「それ。その口調、どうにかならない?」

竜胆の視線が、初めて揺れた。ほんの僅かではあったが、フィリアの目からも分かるほどに、明らかな変化だった。

「……自分はサーヴァントに過ぎません。行動の主たるマスターに対しては、これが最適の態度だと判断しますが」
「えぇー。でもね、やっぱり信頼感?みたいなのって大事だと思うんだよね。それに敬語なんて、慣れてないから逆に違和感だよ」
「そこは慣れていただくしか」
「慣れたくなーいー」

へそを曲げてしまった。そのまま如何にも私は不満ですと言いたげにぶーたれている。
竜胆は往生した。このままでは一向に話が進まない。いよいよ観念して大きくため息をつき、頭の中を切り替える。
体から不要な力が抜け、目がすっと細まった。自然な動きで腕を組み、一段低い声で返す。

「……いいだろう。これで満足か?」
「おっ、いいねー。そっちが素? 堅っ苦しいよりずっと親近感持てるじゃん」
「先程も言ったが己はあくまでサーヴァント、分は弁える。だがそちらから望んだ以上、これから遠慮はしてやらんぞ」
「OK、望むとこだよ」

笑顔で見返した先には、花々に囲まれた竜胆が、呆れとも取れぬ様子で嘆息する姿があった。
かつての光景と重なるものがある。それは、もう二度と帰ることのできない日々。

喪ったものがあった。手に入れたものがあった。
善きにつけ悪しきにつけ、人も世界も変わっていく。その流れは止められない。
それでも、私は世界に生きているのだと、フィリアは強く実感したのだった。





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804 : 蜻蛉が飛び、花が傾いだ日 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/10/29(土) 16:31:00 Lf2wZB/A0





     自分という人間はきっとこの世にいてもよかったし、いなくてもよかったに違いない。

     何をしたわけでも何を残せたわけでもない。

     それでも生まれ、そして生きたのだ。

                             ───白石一文「不自由な心 水の年輪」より



【クラス】
アーチャー

【真名】
四天の竜胆@エスケヱプ・スピヰド

【ステータス】
筋力C 耐久C 敏捷A+++ 魔力D 幸運B 宝具D++

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
騎乗:A

単独行動:A

水鉄精製:B
道具作成の互換スキル。
水鉄(みずがね)と呼ばれる、極小単位のナノマシンによって構成された流動金属を、魔力の許す限り生み出すことを可能としている。

【保有スキル】
鬼虫:A
八洲国軍が対帝國戦の切り札として開発した超兵器であり、後天的なサイボーグ。一機一機が戦略級の戦闘力を持つとされ、竜胆はその中でも原初の一体である。
人間を超越した身体能力と知覚領域、物体や熱源の感知センサー、ステルス能力、対毒分解、高速演算、高度電子戦能力など、その性能は多岐に渡る。
また神経加速(タキオン)と呼ばれる特別攻撃術を有しており、発動に際して知覚能力・思考速度をフェムト秒単位にまで加速させることが可能となっている。

心眼(真):A++
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
逆転の可能性がゼロではないなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

透化:A
精神面への干渉を無効化する精神防御。
アサシンクラスでこそないものの、武芸者の無想の域に達した彼は気配遮断を行うことができる。

千里眼:B+++
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。
アーチャーの千里眼は機械的なものであるため未来視に代表される概念的遠隔視は行えず、ランクA以上には到達し得ない。
しかし、純粋な動体視力では常軌を逸した性能を持つため、このような歪なランク評価となった。

斬撃結界:EX
自らの間合いに入ったものを、瞬間に斬滅する剣の理合。
所謂居合に代表される、武術における「先の先」を剣によって体現したものであり、極まればその剣は間合いの概念を失い、文字通り斬撃の結界と化す。
多重次元屈折現象をもたらす無銘の剣士を初め、極一握りの剣士が持つ亜種スキルだが、アーチャーの場合その中でも特に規格外。
機先(動作に先んじる行動の兆し)を見極める先の先を更に通り越し、相手の意思にさえ先んじる先々の先を呼吸同然に体得。
更にその斬撃がもたらす有効射程、並びに同時撃墜可能な数は半径250m・秒間数万〜数十万発と、まさしくEXランクに相応しい性能を有する。


805 : 蜻蛉が飛び、花が傾いだ日 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/10/29(土) 16:31:35 Lf2wZB/A0

【宝具】
『雲耀の太刀』
ランク:- 種別:対人魔剣 レンジ:0 最大捕捉:1
示現流にて語られる剣理の一端。
一呼吸を分と呼び、それを八つに割ったものを秒という。
秒を十に割ったものを絲。
絲を十に割ったものを忽。
忽を十に割ったものを毫。
そして毫を十分の一の速度域を、雲耀と呼ぶ。
雲耀とはすなわち稲妻。示現流の極意とは、打太刀の速さが雲耀に達することを指す。
示現流の常として二ノ太刀を捨てた一ノ太刀を重視し、その初太刀をこそ雲耀と化す剣理は、有体に言ってしまえば「髪の毛一本でも早く打ち下ろせ」という、極めて子供じみた先手必勝の理屈でしかない。
しかし当然ながら話はそんな簡単なものではなく、この理の本質とはその速度域において勝負の趨勢を見極めること。より端的に言うならば「戦闘の瞬間のみ通常世界と流れる時間を別にする」ということにある。
いわゆる走馬灯に代表される思考加速の業であり、人の身を文字通りの稲妻へと変える魔の法理の剣。
天凛を持つ稀代の剣士がその生涯を費やし、ニノ太刀を含めたその後すなわち「未来」を全て投げうち、命も運命も何もかもを捧げてようやくただ一度放てるかどうかという、悪鬼さながらの魔剣である。
アーチャーはこの雲耀を放つことの叶う剣腕を持つ。が、真に悪魔的な事実はそこではない。
彼にとって雲耀とは、ここぞという場面で放つとっておきの切り札、などではなく。
呼吸も同然の一太刀にさえこの剣理が付属している……すなわち、アーチャーの振るう剣はその全てが雲耀の域に達しているという事実である。

『鬼虫壱番式《蜻蛉》』
ランク:D++ 種別:対軍宝具 レンジ:0 最大捕捉:1000
鬼虫として竜胆が駆る戦闘機体。数メートルのトンボを模した形をしており、胴は黒色、羽が銀色、複眼が青緑色。蛇腹の腹部は龍を連想させる。
本来この蜻蛉は指揮官機として設計されており、そもそも戦闘を想定されておらず、固有武装も一切ない。本体生存のための装甲と機動性、電子戦技能、戦場を俯瞰するための知覚能力に特化されている。
しかし他ならぬ竜胆の狂気的な修練と発想によりその前提は崩壊。機体を構成する流動金属「水鉄」を、その幾億幾兆の構成分子全てを精緻に掌握・制御することにより、変幻自在の刃として操ることが可能となっている。
指揮管制のため元々高度な演算能力をタキオンで加速しているが、分子単位の精密操作の実現には竜胆の想像を絶する研鑽があったとされる。
単分子・単霊子単位に精密制御された千変万化の刃は物質・魔力の最小構成単位よりも更に細く、粒子結合をすり抜け直接崩壊させることにより、対象の物理的頑強さを無視して切り裂くことができる。
常に最適な形状をとる水鉄を使った攻防一体の戦法は「移動する斬撃の結界」「斬幕」とも称され、蜻蛉を中心に最低でも半径250mの斬撃結界を構築。
ナノ秒単位の間に千を超える斬撃を、その一つ一つが雲耀の域に達した至高の技量による必殺として放つ。

【weapon】
水鉄:
蜻蛉の装甲を構成する流動金属。宝具非発動時の生身においても、虚空からこの水鉄による攻撃を可能とする。

【人物背景】
人たる意思を崇敬する、かつて人だった機械。

【サーヴァントとしての願い】
機械にして兵士たる己に今や叶えるべき我欲はない。


806 : 蜻蛉が飛び、花が傾いだ日 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/10/29(土) 16:32:01 Lf2wZB/A0

【マスター】
フィリア・グレイ@終のステラ

【マスターとしての願い】
父親から受け継いだものを絶やすことなく、夢を叶え、最後まで生きる。

【weapon】
携行型ライフル、防弾仕様のテックコート、情報収集用の端末。
ver君は置いていかれた。

【能力・技能】
Ae型アンドロイド:
生体パーツを用いて組み上げられたアンドロイド(生体機械)。
人間的な情緒の構築・思考の揺らぎを持たせることに主眼を置かれており、代わりに通常アンドロイドが持つ機械的特性・技能の類は一切持たない。腕相撲はへっぽこだし計算も記憶も苦手、銃を扱わせればもたつき、物覚えはまあそこそこ。曰く「信じられないほど高度な技術を用いて、凡人を忠実に再現した」ような感じ。
設計段階から親人類的思考を埋め込まれている彼女らにとって、人間に対する無条件の善意は経験から来る理屈ではなく本能的衝動である。

本編終了後からの参戦であるため、運び屋としてのサバイバル技術・銃の扱い等は既に一端の腕前。

【人物背景】
人たる意思を獲得した、かつて機械だった人間。

【方針】
生存最優先。マスターのほうはできれば殺したくはない。できれば、だけど。


807 : 蜻蛉が飛び、花が傾いだ日 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/10/29(土) 16:32:17 Lf2wZB/A0
投下を終了します


808 : ◆Uo2eFWp9FQ :2022/11/27(日) 17:17:29 MO9E7B/Y0
投下します


809 : この痛みに名前はまだないけれど ◆Uo2eFWp9FQ :2022/11/27(日) 17:18:10 MO9E7B/Y0





     ある人が我々の愛するものを喜びに刺激することを我々が表象するならば、
     我々はその人に対して常に愛に刺激されるであろう。
     これに反して、その人が我々の愛するものを悲しみに刺激することを我々が表象するならば、
     我々は反対にその人に対して憎しみに刺激されるであろう。

                                ───バールーフ・デ・スピノザ『エチカ』






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


810 : この痛みに名前はまだないけれど ◆Uo2eFWp9FQ :2022/11/27(日) 17:19:03 MO9E7B/Y0





それはいつも通りの日常だった。
気怠い頭で登校し、クラスでいつものメンバーで駄弁り、授業では船を漕いで、他愛もない話をして、また明日と手を振る。
変わらない光景だ。自分でもそう思う。この都市に来てからの毎日は、空恐ろしいほどに何の変化もなくて、だからこそ致命的な「何か」が違っているのだという確信を抱かせた。

それは晴れ渡った日の正午だった。
強い日差しが照り付けて、伸びる影はどれも夜のように黒かった。陽光の反射が目に眩しくて、自然と顔は上を向く。
青空。
雲一つない晴れ渡った空は青一色で、まじまじと見ていると吸い込まれそうなほど深く、深く、一面に広がっているのだった。

「作り物みてー」

時折。
面倒ごとや人とのしがらみにうんざりすると、何もかも空の裏側に丸投げして、狸寝入りを決め込みたくなる。
そうして見上げた空は、夏の真っ盛りであるのに底抜けに冷たくて、息苦しいほどに空虚だった。
誰もいない学校の屋上、階段に繋がる扉のある塔屋を影にもたれ座りながら、白鳥司という名の少女はぼんやりとした呟きを漏らすばかりであった。

「いきなり何言ってんのさ」
「んー……」

どさっ、とビニール袋を置いて隣に座った男に、司は心ここに在らずといった様子で返す。
日本人離れした容姿の男だ。プラチナブロンドの髪は輝くようで、背丈は司より頭二つ以上は高い。日本の学校という場にはそぐわぬ、異物のような男。
しかしコンビニ袋片手によっこいしょと腰を下ろす俗な所作が不思議と似つかわしいのは、彼の庶民的な心持の表れなのだろうか。まあこっちのほうが話しやすいし別にいいか、と司は思考を停止する。

「はいこれ、オゴリ」
「おっ、サンキュー……って、なんか肉系多くない? いいけどさ」
「人をパシらせた挙句によく言うね。育ち盛りなんだからバランス良く食べなよ」
「と言いつつ自分の好み優先しやがってコノヤロー」

子供のようにじゃれ合う。袋の中から紙パックのいちご牛乳を出し、ストローを突き刺してちゅーっと吸う。安価な甘味と適度に冷えた感覚が体の内側に染み渡っていくようで心地よかった。

「で、何の話だっけ」
「んー? 甘いものなら何が好きとか?」
「そうじゃなくて」

白餡のいちご大福も好きだけどやっぱ洋菓子系かなー、とか宣う司を後目に。


811 : この痛みに名前はまだないけれど ◆Uo2eFWp9FQ :2022/11/27(日) 17:19:40 MO9E7B/Y0

「空」
「……あー。いや、別に何か意味があって言ったわけじゃないんだけどさ」

問われ、改めて見上げる。青い空、絵具でベタ塗りしたような一色。透き通るようなとか、抜けるようなとか、普通ならそういう修飾がつくんだろうけど。

「なんていうかさ、書割の世界。
 まあ実際偽物の世界なわけじゃん? だから裏っ側から引っ掻いたら、簡単に破れそうな空だなって」
「薄い生き方してる証拠だよ、それ」
「うっせ」

空を見ることは嫌いではなかった。
乙女趣味やロマンチストというわけではないけれど、天体観測が好きな人が傍にいたからだ。
鷲尾撫子という名の、その女の子は、まるで王子様のように凛々しくて、格好良くて、背が高くて、優しくも毅然としていて、大好きな二人の親友の片割れで。
そして、白鳥司にとっては───

「実際さ、かめはめ波とか波動弾とか螺旋丸とかぶっ放したら割れたりしないかなぁ。
 私、今でもなんで自分がここにいるのか正直意味分かんないし……帰れるなら早く帰りたいよ」
「……本当に書割が破けたとして」
「うん?」
「仮定の話。もし明日書割が破けて、一から書割を塗り直せたとして、君なら何を描きたい?」
「仮定多すぎ」

いいからいいから、と急かされて。うーん……と首を捻ってみる。

「そうだなぁ……」

これがどうでもいい雑談の流れの一つではないことは、司も薄々分かっていた。この都市には聖杯という願望器があるらしくて、なら自分も願いが叶えたい放題になる可能性は無くもない。
何でも願いが叶うとすれば、何を願うか。
世界という書割の中に、どんな風景を望むのか。

「むしろ……書割はどうでもいいから、舞台の上の私達が、立ちんぼで役割を忘れてる筋書きを何とかしたいかな」
「ふはは、なんだいそりゃ」
「笑うなよう」

傍から聞けばこっ恥ずかしいことは百も承知なのだ。そこは無言で聞き流してくれると有難かった。

「けどまあ、それが一番切実なのかもね」
「うん、きっとそうだよ」

そうして暫し、無言の時間が流れた。生温い風が穏やかに吹き付ける正午は、あまりにも鮮やかに過ぎる色彩を誇りながら陽射しの中に揺れているのだった。


812 : この痛みに名前はまだないけれど ◆Uo2eFWp9FQ :2022/11/27(日) 17:20:18 MO9E7B/Y0

「僕は……」

ふと。
傍らの男は呟いた。何気のない、最初に司が呟いたものと同じ響き。

「僕は正直、筋書きって奴はあんま好きになれないんだ。ずっとそれに縛られてきたからね」
「レールの上に乗せられた人生?」
「そう、それそれ」
「でもアルターエゴ、見た感じちょーお金持ちっぽいし、そういうのも逆にアリなんじゃない?」
「ははは、こやつめははは」

司の言った通り、彼は上流階級に特有のお高そうな服に身を包んだ、端的に言ってどこぞの貴族様と言わんばかりの見た目をしていた。
真っ白な礼服に宝石のついたケープ、手指は素手ではなくシルクの手触りが心地よいこれまた純白の手袋をしているのだ。どこからどう見てもお金持ち、大企業のボンボンといった風情である。
金持ちには金持ちの苦労ってもんがあるんだろうな、とは司もぼんやり考えてはいるが、貧乏庶民の立場から言えばそれでもなってみたいのがお金持ちである。レールに乗せられた人生?勝ち馬ならそれもいいんじゃね?とか軽く考えちゃう年頃なのである。
贅沢な悩み、とは流石に言えないけれど、何となく想像しにくいというのが素直な気持ちだった。

「いやまあ、金や生まれに関しては特に不満はなくてさ。
 僕は見ての通り良いとこの生まれでね。アンタルヤって商国のでかい豪商一族の出で、まあ言っちゃえば御曹司なわけよ。
 金なんて生まれた時から使い切れないくらいあったし、伝手や人脈もより取り見取り。運が良いことに商才にも恵まれたから家業にも抵抗はなかったし、勉強も商売も楽しかったなぁ。
 人生薔薇色、順風満帆、心配なんてこれっぽちもなかった……」
「イヤミかこいつ」
「ははは、でもまあ出る杭は打たれるって奴でね。僕の親族がやらかしたせいで、まー酷いことになってさ」
「なに? 没落とか?」
「粛清された」
「え?」
「粛清された」

ぽかん、といった表現が似合う表情だった。
しゅくせい……と、普段聞きなれない言葉であるためか、実感が伴わない様子で反芻している。

「所謂一族郎党皆殺しって奴でね、僕も巻き込まれてぶっ殺された。
 いやーあん時はマジでビビったね。突然のことだったから覚悟とかもなくてさ……いや、事前に知らされてたらずっと泣きっぱなしでブルブル震えてただろうけど」
「ア、アノ……マジすんません……」
「うん? いやいいよ。実際僕の国じゃ結構ありがちなことだったし、客観的に見れば自分の番がやってきたかーくらいのもんだったさ」

そこで終わってれば良かったんだけどね、と彼。


813 : この痛みに名前はまだないけれど ◆Uo2eFWp9FQ :2022/11/27(日) 17:20:58 MO9E7B/Y0

「でも話はそこで終わりじゃなかった。僕らを粛清した連中……帝国ってとこが、その時研究していた最新技術ってのがあってね。
 その実験台に僕の死体が使われた。その結果、晴れて僕は生き返り、これこの通りにサーヴァントとして呼ばれるくらいの強さを身につけましたとさ。パンパカパン」
「え、えっと……」
「まあ言葉に困るよね。でもそう硬くならないでよ。僕も不幸自慢してるつもりじゃないし、昔のことだから気にする必要はない」

そうは言われても実際困る、というのが正直な感想だった。世が世ならば過去の悲劇!みたいな感じで2時間ドキュメンタリーされてそうな人生経験を生で語られているのだから、どう反応していいのか分からない。話してる本人があっけらかんとしているから猶更だった。

「クソみたいなレールってのはここからの話でね。蘇った僕は、当然人権なんかもないわけだから帝国の連中から命令されるわけさ。
 まあ面倒なとこ全部差っ引いて結論から言えば、僕の役割は英雄と戦って死ねってことだった。みんな大好きなヒーローにぶっ殺される端役さ。ふざけんな、って思ったよ」

第二太陽を地上に顕現し、失われた国土を取り戻す使命に燃える神星。
その手段に賛同しつつ、最終的には自国の権益とするために戦う英雄。
この男、かつてルシード・グランセニックという名前を持っていた卑小な凡人は、そんなバカげた策謀と動乱に巻き込まれてしまった不運な犠牲者だった。

「つまるところ何が言いたいかっていうと、僕は戦うのが大嫌いなんだよ。
 殺し殺されなんて真っ平、痛いのも怖いのも二度と御免だ。まして古今東西の英雄だの人殺しだのが集って殺し合いなんて、どっか遠くの知らんとこでやってろっての」

はぁ、と吐かれるため息は、一体誰に向けてのものだったのか。

「別に、君に対して恨み言を言いたいわけじゃない。けど、呼ばれた以上は君とは一蓮托生になるわけだ。
 だからせめて、戦う理由くらいは聞かせてほしいってのが実情だ」
「私は……」

司はほんの少し震えた言葉尻のまま、答える。

「私は、戦いたくないよ……」
「同感だね」
「でも、戦わないといけない……」
「しなきゃ殺されるだけだ」

司は膝を抱え、俯く。そこに言葉はなかった。あったのは沈黙と葛藤と、ほろ苦い願いの残骸だ。
叶えたい願いは、ある。
どうしても失くしたくないものが、ある。
そして、失くしたくなかったものも、また。


814 : この痛みに名前はまだないけれど ◆Uo2eFWp9FQ :2022/11/27(日) 17:21:49 MO9E7B/Y0

「私ね、好きな人がいたんだ」

恐怖と不安と焦燥と困惑と閉塞感と、小さな憤りと悲しみと痛みと。
そうしたものがない交ぜになって、ぐるぐる訳が分からなくなって、この感情を名付けることはきっと誰にもできなくて。
そんな思いの果てに、出された言葉は"それ"だった。

「中学に上がった時からの仲でさ。きっかけはどーでもいいことだったなぁ……電車の中で私の髪が引っかかって、そしたらボタンのほうを引きちぎってさ。綺麗な髪に傷ついちゃダメでしょ、って…… 本当にそれだけのことだったのに、見惚れちゃったんだ」
「理想の高そうな君が一目惚れとは、ずいぶんと良い男だったんだろうね、その彼は」
「鷲尾は女の子だよ……」
「……まあ、今はそういうのもあるか」

ちょっと気まずい空気。それを知ってか知らずか、司は膝に顔を埋めたまま続ける。

「私と鷲尾と、もう一人琴岡って奴がいて……あ、こいつも女ね?
 私達三人は友達で、三人でいると凄く楽しくて、二人のことが大切で、その関係を壊したくなかった。
 言えるわけないよね。私達は女の子同士で、友達で、"二人と一人"になっちゃダメなんだって」

仮にその恋が実ったとして、その瞬間に三人の関係は変化する。それは避けられない。
だからずっとこの気持ちを隠していこう、自分だけの秘密にしていこう。そう思っていた。
けれど。

「鷲尾はね、琴岡のことが好きだったんだ」

ふと見つけてしまった彼女の秘密。知らないままだったらどれほど良かっただろうと、何度も思った情景。
司も琴岡みかげのことは好きだ。友達として。なら鷲尾は、いつ友達以上になったのだろう。
同じ女同士なら、どうして自分ではなかったんだろう、と。

「それが私と鷲尾、二人の秘密になった。そっからは鷲尾の恋を応援するよ、なんて言いながら誤魔化してさ。
 実は私はお前が好きなんだぞ、って……言えるチャンスはあったんだろうけど。私、こんなにビビりだったんだね。ずっと隠したまんまでさ。
 鷲尾に『司が友達で良かった』って何度も何度も言われて……その度に私はあいつの特別にはなれないんだなって、思い知らされて……」

鷲尾撫子の司に対する好意は、本物だっただろう。
友達で良かったと、笑顔で告げたその言葉は、本心から出た純粋な親愛なのだろう。
その気持ちが、司にとっては艱難の痛苦に値する鉄の針だった。曇りなき笑顔を前にする度に、絶対に塗り替えることのできない関係性の隔絶に気が遠くなる思いであった。

「まあ私もまだガキだからさ、仮に友達から恋人になったとして、でもそれって今までと何が違うんだ? って思うんだよ。
 抱き合ったりとかキスしたりとか、そういうのをする仲? デートに行くって、今までもよく遊びに行ってたけど、それとどう違うの?
 分かんない。友情と恋愛の違いなんて、難しくて私には分からないよ。でも、特定の誰かとずっと一緒にいられることが保証される立ち位置があれば……
 それを羨ましく思うのも、仕方ないよね」

人を好きになることは簡単だ。白鳥司の周りには、たくさんの「好き」が溢れている。
けれど、その「好き」をどこに終着させるかという問題は、幼い少女にはまだ難しくて、どうしたらいいかよくわからない。


815 : この痛みに名前はまだないけれど ◆Uo2eFWp9FQ :2022/11/27(日) 17:22:28 MO9E7B/Y0

「私と鷲尾と琴岡の三人は、ずっと一緒だ。"三人"は壊れない。けど……
 私達の中で恋が実れば、一人は余っちゃうよね。でも、それも三人組の一つの形かなって思う。だから……」

ふっと顔を上げ、言う。

「二人」

鷲尾撫子と琴岡みかげ。

「と、一人」

白鳥司。
意気地なしの、この私。

「いつか鷲尾なら、琴岡を振り向かせることができるかもしれない。
 好きになってくれる人を好きになっていい。そう言ったのは琴岡。
 私達三人は、多分それが一番きれいな形なんだと思う」

てへへ、と力なく笑って、司は言い切る。

「だから、私の戦う理由は、三人がずっと三人でいられることかな」

その結末を肯定すると。
二人のために一人になるのだと、断言する。
彼は司の言葉を黙って聞き、数瞬は無言のまま、ややあって唇を開き。


816 : この痛みに名前はまだないけれど ◆Uo2eFWp9FQ :2022/11/27(日) 17:22:57 MO9E7B/Y0




















「───バッカじゃねえの?」




















心底憎々し気な口調で、吐き捨てた。


817 : この痛みに名前はまだないけれど ◆Uo2eFWp9FQ :2022/11/27(日) 17:23:41 MO9E7B/Y0

「あのさあ、君もしかして自分に酔ってる?
 なら言っとくけど、それただの自己満足だよ。賢しげにこれが綺麗だとか無理やり自分を納得させて、結局自分だけ損する一番頭の悪い結論だ」

まくしたてる彼の口調からは、先ほどまでの穏やかさは消え失せていた。
激高している、というよりは。
聞きたくないものを聞いてしまった、癇癪に近しい声音。

「そいつのことが好きなんだろ? なら行動すればいい。告白すらしてないんだろう、君は。
 友達だから? ハッ、関係ないねそんなこと」

───だって、ゼファーは僕の友達なんだから。

「そもそも恋路に遠慮を持ち込むほうが馬鹿なのさ。負け犬は負け犬、その事実に変わりはない」

───ああ、そうさ。一人じゃ意味がないだろう?

「愛ゆえの献身? 結構なことだね。
 じゃあ遂げられない恋慕を良しとするのは、自棄や諦めと何が違うのさ?
 結局君は負けてんだよ。そして何も得られない。そんな結末が正解で、だから私はガマンしますだって?
 くっだらねえ自己犠牲で酔っぱらってんじゃねえよ。そんな終わりでいいはずないだろうがッ!」

───僕は彼女を愛している。そして彼は親友だ。どっちがどうとか、そんなことは関係ない。

───愛情も、友情も、お前なんかに渡すものか。二人の笑顔を取り戻す!

「……アルターエゴはさ、優しいのに容赦がないから好きだよ」

今や息を切らしてさえいる男を前に、司は悲し気にも見える微笑を浮かべていた。
分かっている。彼の言葉が意味するところを。そして、この恋が実らないという事実も。
そりゃ確かに、なんで自分じゃないんだろうって何度も思った。この恋が実るならと、叶わない空想に逃げ込むこともあった。
願いを叶える神様がいるならと、そう思うこともあった。
全て理解している。その上で───


818 : この痛みに名前はまだないけれど ◆Uo2eFWp9FQ :2022/11/27(日) 17:24:31 MO9E7B/Y0

「いいに決まってる。だって、琴岡は私の友達なんだから。
 二人の幸せを願うのは、とても当たり前のことじゃんか」

その結末を祝福する。
白鳥司は、心の底からそう断言するのだ。
大切な友人と、何より大好きな人が共に笑顔でいられる未来。
胸はちょっぴり痛むけれど……それはほら、とても素敵な明日じゃないか。
その光景を胸に抱き、今この時もそれを抱きしめる気持ちに嘘はない。

「馬鹿だ馬鹿だ、って……そりゃ私が一番そう思ってるけどさ。
 でも仕方ないじゃん。鷲尾も琴岡も大切な友達で、二人が笑顔でいてくれるなら、私も笑えるんだって知っちゃったんだから」

報われない? それがなんだ。
振られた後で、大げさに泣きながら馬鹿みたいに笑えばいい。
この痛みに名前はまだないけれど、流した涙も心の痛みも、いつか優しい思い出となって三人を繋げてくれる。

「私の気持ち、鷲尾のくれた言葉。琴岡と三人で過ごした時間。どれも全部、私の宝物。
 恋愛至上主義とはちょっと、ううん大分違う……なんて言えばいいんだろ。
 ……女の子。
 うん、それが女の子って奴なんだよ」

白鳥司は、晴れ晴れとした笑顔で応える。

「オトメゴコロ、分かってよね?」
「……きついなぁ。僕は結局、最期までそれが分からなかったんだ」

ふと生前を思い返す。
アレが好きコレが好きと好色なフリをして、欲望に忠実な体を装って。
結局のところ、愛というのが何を示すかということは、ルシードにとってあまりに煩雑として要領を得ないものだった。
ただ、自分が彼女を愛していたことだけは確かで。
なら結局、残された事実とはそれしかないのだろう。

「それに色々言ったけどさ、女の子にとって恋の結末が世界の全てじゃないよ。
 あーあ……私の抱えてるものも、私の日常も、私の恋も、ぜーんぶ一緒に綺麗に終わらせることができたら、どれだけ素晴らしいことか」

無いものねだりでしかないんだけど、と付け加える。


819 : この痛みに名前はまだないけれど ◆Uo2eFWp9FQ :2022/11/27(日) 17:25:00 MO9E7B/Y0

「私はまた、"三人"に戻るよ」
「そっか」
「……帰れるかな?」
「帰れるさ」

真っすぐに見つめて、断言する。

「そのために僕がいる」
「……ごめんね」

そしてありがとう、と。
今や言うまでもない言葉を、それでも心の内で反芻する。

「けど、うん。アルターエゴがそう言ってくれるなら、私も頑張るからさ」

ここでも、そして帰った後でも。
その思いがある限り、きっと私は歩いていける。

白鳥司は鷲尾撫子が好きだ。そして琴岡みかげは親友である。
どちらも等しく大切で、その事実に嘘はない。
なら、これが私の"好き"だ。

「私は、私の"好き"を諦めない」

誰にも否定なんかさせない、譲れない私の想いだ。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


820 : この痛みに名前はまだないけれど ◆Uo2eFWp9FQ :2022/11/27(日) 17:25:40 MO9E7B/Y0





     もしも誰かが、何百万も何百万もある星のうち、たったひとつに咲いている花を愛していたら。
     その人は星空を見つめるだけで幸せになれる。〈ぼくの花が、あのどこかにある〉って思ってね。

                                ───アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ『星の王子さま』



【クラス】
アルターエゴ

【真名】
ヘルメスNo.δアルケミスト@シルヴァリオヴェンデッタ

【ステータス】
筋力C 耐久B 敏捷B 魔力A+ 幸運A 宝具A

【属性】
中立・悪

【クラススキル】
魔星:A
第一世代型人造惑星。星の異能者・星辰奏者(エスペラント)の完全上位種。人間の死体を素体としたリビングデッド。
星辰奏者とは隔絶した性能差を持ち、出力の自在な操作が可能という特性から反則的な燃費の良さを誇るが、この存在の欠点として、生前の衝動を戯画化・肥大化され、それに引き摺られてしまう。
星辰体への感応、すなわち魔力の励起量に応じて本来の精神状態へと強制的に引き戻されてしまうため、本領を発揮すればするほどに地金が透け、精神的な脆さが露呈されていく。
上記のような特性は、別次元から取り出す巨大なエネルギーを用いる上で純粋な精神的方向性が必要となり、それ自体は無色である力に矢印や色をつけて個々の異能として行使するがためである。
そうした多大なデメリットを内包しつつも、同時に魔力の瞬間放出量の莫大さに比して燃費は極めて良好。マスターや自分自身のオドのみならず周囲のマナを肉体そのものに感応させて使用するためである。

【保有スキル】
自己改造:A
自身の肉体に、まったく別の肉体を付属・融合させる適性。
このランクが上がればあがる程、正純の英雄から遠ざかっていく。

落伍者の見識:B
相手の性格・属性を見抜く眼力。
カリスマ性や言葉による弁明、誘導、欺瞞に騙されない。
見識と言えば聞こえが良いが、ぶっちゃけ陰キャ特有の僻みと逆張り精神である。

無力の殻:B
魔星に備わる気配隠滅能力、或いは本人の精神的発露。
宝具の非発動時に魔力やサーヴァントとしての気配を発さず、ステータスの表示を無効化する。代わりに通常時においてサーヴァントとしての戦闘能力は発揮されない。
アルターエゴは自身を英雄と認めていない。


821 : この痛みに名前はまだないけれど ◆Uo2eFWp9FQ :2022/11/27(日) 17:26:43 MO9E7B/Y0

【宝具】
『雄弁なる伝令神よ。汝、魂の導者たれ(ミズラブル・アルケミスト)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:500
アルターエゴが保有する星辰光(アステリズム)。星辰光とは自身を最小単位の天体と定義することで異星法則を地上に具現する能力であり、すなわち等身大の超新星そのもの。
能力の本質は磁界操作能力。空間歪曲の域に達した強大無比な出力を誇り、不可視の圧力は人体はおろか周囲一帯の建築物ごとを根こそぎ圧壊させ、原子の粒にまで押し潰す。
純粋な威力を除いても斥力・引力の発生、対象内の鉄分干渉による捕縛、鉱物操作、磁力付加による高速移動など汎用性に長け、その支配領域の広さと操作性の自由度の高さ、そして規模に比して反則的な燃費の良さを持つ。
万能型の極致、人造惑星としては理想形にして完成形とまで称された異能だが、欠点としてアルターエゴの戦闘力はこの宝具(異能)に100%依存しているという点がある。
有体に言ってしまうと、アルターエゴにはこの異能を十全に扱えるだけの戦闘技巧や経験値、精神力といったものが総じて欠けているのである。
そのためこの異能が使えない、或いは通じない状況に陥った場合、素人丸出しのパンチしか出せないマジで情けない駄サーヴァントと化す。

『沈黙する伝令神よ。汝、冥府を下る恋歌たれ(ヘルメス・プシュコポンポス)』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1000、或いは1
星辰光の意図的な暴走、及び自身の肉体を使用した壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)。
広域に作用する対軍宝具の性質を持つが、そうした対軍の出力をただ一人に向けて放つことを想定しているため対人宝具に分類される。
紛うことなき自爆宝具であり、上記異能を限界を超えて行使するため威力は桁違いだが、アルターエゴは絶対死ぬ。なので当然、ビビりの彼はこの宝具を使いたがらないし毛嫌いしている。
ちなみにこの宝具にはもう一つ隠された効果があり、それは『望んだ相手をその者が望む場所に確実に送り届ける』というもの。
この効果にのみ限定して言えば、ランクはE相当。あくまで一時的かつ限定的に幸運値が上昇する程度であり、当然これ自体に聖杯戦争を脱する力はない。
アルターエゴは現在、この効果についてマスターに説明していない。彼女にはもう必要ないものと認識しているからだ。

【人物背景】
負け犬。

【サーヴァントとしての願い】
あると思うかクソボケェ!僕という存在を英霊の座から綺麗さっぱり消去してくれるわ!


822 : この痛みに名前はまだないけれど ◆Uo2eFWp9FQ :2022/11/27(日) 17:27:07 MO9E7B/Y0


【マスター】
白鳥司@ななしのアステリズム

【マスターとしての願い】
これからもずっと、三人でいたい。

【weapon】

【能力・技能】
運動神経は良い。

【人物背景】
三人は二人と一人になっていく。そのうちの、一人の側だった少女。

【方針】
都合の良い解決が欲しいって思ったことは一度や二度じゃないけど、一つだけ言える。
名前も知らないこの痛みだって、それでも私の■物なんだ。


823 : この痛みに名前はまだないけれど ◆Uo2eFWp9FQ :2022/11/27(日) 17:27:23 MO9E7B/Y0
投下を終了します


824 : ◆U1VklSXLBs :2022/12/16(金) 05:42:52 F3F00ix20
投下します。


825 : 桃寺神門&ランサー ◆U1VklSXLBs :2022/12/16(金) 05:43:49 F3F00ix20
自身の靴が奏でる乾いた音を聞きながら、神門は同僚と共に人気のない商業施設内を歩き回っていた。手に持った懐中電灯を動かして、フロア内の各所を舐めるように照らす。施設警備のバイトである。勤務時間は平日の18:00から22:00までの4時間。人が残っていない事を確認し、全ての窓とドアを施錠したら後はモニターチェックなどをしながら待機だ。

《これでこの場所もおさらばだな。やっと本格的に準備に入れる!》
《そうだね。聖杯戦争の定石に習うなら、夜間は自由に動けるようにしたい》

聖杯戦争なる殺し合いに巻き込まれた神門はロッカールームにて、やや疲れた表情で契約したランサーの念話に答えた。万能の願望機たる聖杯にかける願いが彼にはある。

ーー彼らは戦争を望んではいません!
ーー話を聞き、こちらも歩み寄れば戦争を終わらせられるかも知れません!

彼の生きた世界では、鬼と桃太郎の戦いがそれぞれの子孫同士の戦争として続いていた。それぞれが徒党を組み、おおむね桃太郎側が優勢。そんな歴史を経ているからか桃太郎の子孫は皆、鬼に対して差別的だ。

そんな中で、神門は異端児であった。人を傷つけない鬼ならば見逃す、集団のルールよりも自分で見たものを信じる神門が、すべての鬼のルーツである"鬼神の子"として目覚めた少年と心を通わせ、彼らの事情を知ったとあっては、融和を訴えるのは必然。

しかし上層部の返答は、副隊長から一般隊員への降格処分。だが、神門はどうでもよかった。出世や地位に執着はない。やるべきことはどこでも同じだ。願いを蹴落とし合う戦いの場であろうとも。

神門は制服を脱ぐと施設を出て、繁華街へ足を向けた。警備員生活最後の食事のついでに街を軽くうろついて、敵マスターを探す。

《おい、人気のない場所に移動しろ》
《なんで?》
《俺もなんか食いたい》
《困るよ、君に奢れるほど余裕がないんだ》

サーヴァントは食事を必要としないだろ、と神門は指摘しない。一人で食べる食事より、気心の知れた相手と一緒の食事の方が美味い。ただ次のバイト先を見つけてあるとはいえ、ランサーは中々食い意地が張っている。召喚されて早々、宅配のピザを注文したがLサイズ2枚を難なく平らげてしまった。これを毎度やられると、神門の首が回らなくなる。

「ランサーは聖杯に興味はないと言っていましたが、獲得できたら僕のものにしてしまっていいんですか?」

サイドのポテトを摘みながら、神門は尋ねた。何を置いてもこれだけは確かめておかなくてはならない。戦争をするために来たと話していたが、いざ手元に現れた時、彼は聖杯を諦めてくれるのか?もし人を傷つけるような願いを持っているなら、神門はどうにかしてランサーを止めなくてはならない。

「やー、待て。戦うのは俺なのに、お前にそっくりくれてやるのも面白くないなー」

ランサーはピザを食べる手を止めて考え込む。

「では、何を願うんですか?」
「…もう一度会いたい男がいる。聖杯が真に願望機というならばな」
「どんな相手か、聞いてもいいですか?」
「我が友にして、俺より強い男。ヨームの戦鬼と謳われたトールズ。いつかこの手で殺してやるつもりだったんだが、俺の手の届かないところで死んじまった」

物騒な発言だが、話題にした男に敵意を持っていない事はランサーの表情を見ればわかる。懐かしむような、どこか切ない顔。

「あいつは本当の戦士とは何かわかったそうだ…あいつの息子もそれを理解できたんだろう。久しぶりに会った時、同じ目をしていたからな。戦士に大切なのは魂のありか…オレにはそこまでしか分からなかった」

神妙な様子のランサーは大きく息を吐く。全力で駆け抜けた生涯に残る、たった一つの未練。

「トールズについていけば、オレにも本当の戦士ってやつがわかったかもしれんがな。もはや聖杯に頼むしかあるまい」

豪放磊落を絵に描いたような戦闘狂と思っていたランサーにも、このような一面があったのか。ランサーの話に聞き入っていた神門は「ありがとう」と一言呟いた。

「それで?お前は聖杯に何を願うんだ。ここまで気にしてんだ、特にないは通らないぜ?」
「勿論あります」

神門は自分達の世界で人知れず続く戦争についてランサーに説明する。鬼と桃太郎の末裔達のこと、鬼側が対話を望み、桃太郎達に話し合いの席についてもらうために抵抗を続けている事。そして、神門自身はこれからの生き方を鬼達と考えていきたいが、桃太郎機関内に賛同者は見つかっていない事。

「ふふふ…いいねぇ、戦の臭いだ」

ランサーの口元が緩む。常人ならざる者たちの争いがよほど興味を引いたらしく、先程までの大人しい様子はあっという間に消えた。
だがまぁ、まずは聖杯戦争だ。


826 : 桃寺神門&ランサー ◆U1VklSXLBs :2022/12/16(金) 05:46:43 F3F00ix20
【クラス】ランサー

【真名】のっぽのトルケル

【出典】ヴィンランド・サガ

【性別】男

【ステータス】
筋力A+ 耐久A 敏捷C 魔力E 幸運B 宝具B

【属性】中立・善

【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

【保有スキル】
狂喜:B
戦場における異常なまでの精神高揚。
戦闘中、威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する。また痛覚などのバッドステータスによる行動制限を受けない。思考能力の低下等は無いが、心から闘争を愉しんでいる為、戦闘の邪魔をすると味方すら殺しかねない。

戦闘続行:C
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、死の間際まで戦うことを止めない。

天性の肉体:A
生まれながらに生物として完全な肉体を持つ。このスキルの所有者は、常に筋力がランクアップしているものとして扱われる。全盛期を過ぎてなお、単独で戦場を揺るがす体力を保っていた逸話から。どれだけカロリーを摂取しても体型が変わらない。

反骨の相:C
戦士としての在り方を重んじ、その為なら主君への裏切りすら畏れぬ気性。同ランク以下の「カリスマ」を無効化する。

【宝具】
『至るは神槍の一撃(グングニル・ミズガルズ)』ランク:E + 種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大捕捉:4人
魔力で出現させた槍を投擲する。投擲(槍)のスキルが宝具に昇華されただけのもので、格は最低クラス。ただし、その分燃費が良く、自前の魔力だけで数十本は放つ事が可能。既存の銃火器を上回る威力を持ち、先制攻撃時のみ破壊力に上昇補正がかかる。

『唸る戦鬼の軍勢(エインヘリャル・フィンブルヴェトル)』ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大捕捉:1000人
生前に率いた部下達を、独立サーヴァントとして召喚する。聖杯に招かれた英霊ではないためクラスやステータスは持たないが、全員がランクCの単独行動スキル、狂喜スキル、戦闘続行スキルを持つ。総勢500名存在し、一度に呼び出す数はトルケル側で調整可能。倒された戦士は、本聖杯戦争中に再召喚する事はできない。また、展開時の副次効果として、対峙した相手に恐怖を抱かせる効果を持つ。効果は呼び出した戦士の数により上昇。4、5名程度では英霊にはまるで効果が無いが、半数以上を現界させれば精神耐性を持つ英霊に重圧をかけるほどの威力を発揮。
9割にあたる450名以上を展開すれば、重圧のバッドステータス付与に加え、あらゆる行動判定のファンブル率を大幅に上昇させる。

【weapon】
魔力を費やして出現させる二挺の斧、長槍、丸太。

【人物背景】
ヨーム戦士団首領シグヴァルディの弟。巨大な体躯を誇るデーン人の武将であり、自身の身体欠損を気にも留めないほどの戦闘狂。生前、ヴァイキング達の間では気さくな性格と軍神の如き武勇から生きる伝説として扱われていた。戦場を思うがままに蹂躙していた彼だったが、自分より強いと認めた男トールズとの別れがしこりとなっており、後年その男と同じ輝きを見せた王子についていく。

トールズの息子トルフィンと一時陣営を同じくするも、トルフィンは罪を得て放逐されてしまう。数年後に再会した彼の瞳にトールズと同じ輝きを認めたが、己の在り方を改めることはなかった。

【聖杯にかける願い】
トールズとの再会。言葉を交わすだけでも、決闘でもかまわない。また、聖杯戦争の催し自体が、夢見たヴァルハラそっくりなのでワクワクしている。


827 : 桃寺神門&ランサー ◆U1VklSXLBs :2022/12/16(金) 05:48:07 F3F00ix20
【マスター】
桃寺神門

【出典】
桃源喑鬼

【性別】


【能力・技能】
桃太郎:伝説の桃太郎の血を引いており、常人を超えた身体能力に加え、黒い靄のような細菌から武器を作ることができる。神門の場合、小銃やマシンガンなど銃火器を形成する。

【weapon】
八岐大蛇:
周囲に形成した銃火器を浮遊させ銃撃を行うほか、触腕のように体を持ち上げ、射撃の反動で走行する。

【人物背景】
桃太郎機関のメンバー。鬼を見つけて処分し、市民を陰ながら守ることが任務。19歳。
ピュアで真っ直ぐすぎる性格で強い意志を持つ反面、策謀を見抜く力が弱い。さらにヤバい人と知り合う星の下に生まれており、小さい頃に誘拐されかけたり、億の借金を背負った高校の同級生と仲が良かったりする。

一般隊員に降格後、東京から鹿児島へ異動となった時点から参戦

【マスターとしての願い】
鬼と桃太郎の戦争の終結。ただし、殺し合いを強いる聖杯戦争そのものには気乗りしない。


828 : ◆U1VklSXLBs :2022/12/16(金) 05:49:49 F3F00ix20
投下終了です。鯖、鱒、本文は改変自由。
また、鯖は以前結末聖杯に投下したやつの流用となります。


829 : ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/17(土) 18:09:20 Hopa4y6c0
投下します


830 : 悔やむと書いてミライ ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/17(土) 18:09:59 Hopa4y6c0





     三界の狂人は狂せることを知らず、四生の盲者は盲なることを識らず、

     生れ生れ生れ生れて生の始めに暗く、死に死に死に死んで死の終りに冥し

                                ───空海『秘蔵宝鑰』





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


831 : 悔やむと書いてミライ ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/17(土) 18:10:33 Hopa4y6c0





かつて、此処に一人の勇者がいた。
生まれた瞬間より勇者となるべき定めを与えられた男だった。その血と生誕を天と人と星に祝福された彼が、荒野の恐るべき魔物を身一つで打ち倒して見せたのは齢八つの頃であった。
彼は強く、正しく、揺ぎ無く、誰よりも勇者たることに忠実だった。
か弱き善良な民草には手を差し伸べ、その安寧を脅かす魔物には剣で応えた。
ただの一度も間違えることなく、正義の体現として戦い続け、勝ち続けた。その英雄譚の最中にて、破壊神の復活を目論む邪教団を討滅せしめたのは齢十六の頃であった。
必然、彼のもとには崇敬の眼差しが集まる。稀代の勇者に憧れて、その偉業に心打たれ、己もまた形作られる伝説の一助足らんと。
綺羅星の如き英雄譚は地に満ちて、必ず世界を救ってみせるのだと。
民も戦士も王たちも信じた。疑う余地など微塵もない。
これだけの期待、これだけの憧憬。常人ならば立ち上がることさえできない重圧を双肩に負わされて、彼は尚も笑っていたから。
どこまでも明快に、野原を駆ける子供のようにとびっきりの笑顔を浮かべて、告げるのだ。

見るがいい、必ず僕たちは勝利する。
貴方たちの想いこそが僕の剣だ。決して折れることはない。

その笑みに人々は痺れ、その言葉に嘘はなかった。
そんな男がいた。
その名を───





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


832 : 悔やむと書いてミライ ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/17(土) 18:11:53 Hopa4y6c0







                    どうして世界を救ったの?







◇◇◇





少女が召喚したキャスターは、正しくその使命を果たしてみせた。
煌々と照らす月だけが見下ろす、それは静けき夜のことだった。

地を揺るがす激震が、硝子の閾を砕くが如く、張り詰めた静寂を突き破った。
立ち上がるものがあった。それは周囲建築物の何よりも大きく、山にも及ぶ巨影を揺らめかせている。
それは人型を成していた。異形の、人に非ざるはずの、しかし人の形をした巨大な影。
巨人。それは一切比喩ではない。
騎士が如き威容。鋼鉄の鎧に身を包み、手には長刃の剣を携えて。
身の丈およそ三十mはあろうか。遠間に見えるビルディングさえも見越す巨体は、天蓋の月にさえ手が届くようにも見えた。

夜の帳の只中で、巨大異形の模造人機が重低音の潮騒のような咆哮を上げた。
───少女が召喚したキャスターは、正しくその使命を果たしてみせた。致命の傷を負って尚斃れることなく、宝具を開帳し、秘奥たるゴーレムを顕現させ、以て敵陣営の殲滅に移行したのだから。
聖杯戦争に、最早この超戦力と拮抗できる者などいまい。
城壁や要塞など、紙屑のように破いてみせるだろう。
天を衝く巨竜とて、その手の剣で両断してみせるに違いない。
対人の宝具など、いくら食らったところで如何程の痛痒であることか。
ならば。
ならば、斯くも強大無比なる人造の機神をして相対せざるを得ない敵とは、如何な脅威であるのか。

人だ。
たった独りの人間が、五十mほどの距離を開けて、機神の前に立っていた。
取るに足らない人間だ。成人すらしていない、十も半ばといった風情の少年だ。右手に剣呑な輝きを放つ刀を佩いて、しかしその刃の何と頼りないことか。今まさに少年に突き付けられる、巨人の剣を見るがいい。一指でさえ人の胴体ほどもある巨大な掌に握られしは、刃渡り二十mに届くかという大質量。間違っても只人が抗し得るものではない。
巨剣の切っ先が霞んだ。
次瞬、少年を標的に捉えた巨刃が、周囲一帯の地形を岩盤ごと叩き割る勢いで振り下ろされた。余人には、突如として世界が揺れたとしか認識できまい。鼓膜を劈く大絶叫はまさしく音速を超過した斬撃が大気の壁を打ち砕いた証左であり、巻き上げられた土砂と粉塵は局所的な竜巻が発生したが如しであった。
理想的な挙動であった。技の入りから残心に至るまで、まるで教科書通りの最効率を追求した攻撃動作。三騎士級サーヴァントであろうとも、直撃すれば即死を免れぬ超撃は、風圧の余波だけでも瓦礫を放射状に吹き飛ばす威力である。
ならば遥かに矮小な人間である少年は、微塵となって消し飛んだのか。


833 : 悔やむと書いてミライ ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/17(土) 18:12:55 Hopa4y6c0

違う。
立っている。
少年はまだ、傷一つなく生きている。
剣が割り砕いたのは、少年が立つ数十センチ横の空間のみ。

『──────!!』

一体誰が知るであろうか。
縦一文字に振り下ろされた巨剣が迫る刹那、少年は視界を覆い尽くさんばかりの巨剣の刃に対し、手にした刀の切っ先を向けた事実を。
刀の腹ではなく、刃でもなく、100分の1ミリにも満たない切っ先を巨剣の刃に合わせ、刃渡り20mの巨剣の全運動量を剣先の一点に集中。質量差から来る衝撃の負荷が肉体を破壊するより早く受け流し、機神の一撃は少年のすぐ脇にクレバスを穿つだけに終わったのだ。
少年の姿が掻き消えた。
分厚い砂塵が視界を塞ぎ、大破壊の爆轟が文字通り世界を揺らす刹那。常人ならば立つことさえできない極限的状況において、如何な術法を用いたのか、少年の姿は既に数十mの距離を踏破して巨人の振り下ろした右手部分に降り立っている。数度閃く銀閃と共に跳躍。斬り飛ばされた巨人の指が宙を舞い、巨剣を取り零した瞬間には、既に少年は巨人の腕を斜面に見立て超速で駆け上がっていた。
不可能な所業ではないだろう、物理学的な理論上では。だがその勾配は、人間の体感上は崖に等しいはずだ。小さな影が体表の僅かな凹凸を足がかりに駆け、その速度を一切減じないことが、一体どれほどの超絶であるのか。

「……………」

果たしてコンマ秒のうちに肩まで到達した少年は、更に跳躍して刀を一閃。甲高く澄んだ鈴音が、凄絶な破壊を伴って機神の首に炸裂した。
瞬間の停滞の後、ずれ落ちる頭部。しかし機神の動きは止まらず、未だ中空にて滞空する少年に向けて左の掌が迫る。当然である。機神はあくまで人を模しているだけで、人ではない。首を落としたとて、それが致命の傷足り得るとは限らない。
飛ぶ蚊を落とすが如き一撃が暴風と共に迫り行き、しかし再び鈴の鳴る典雅の響きが木霊した時には、機神の左上腕に黒く長い斬線が刻まれ、大きく枝分かれした腕は少年を捉えることなく虚空のみを叩きつけるのみであった。
重力に囚われ自由落下を始めた少年が、更に、更に、更に更に更に斬撃を繰り出す。必然として刻まれていく斬痕、抉り飛ばされる末端。明らかに刀の刃渡り以上の破壊をもたらす斬撃は瞬く間に機神を削り、その質量を大幅に目減りさせていくが、しかし。

『──────!!』

単純な体積差から斬滅されることだけは避けた機神が、恐るべき速度で右腕を振るう。壮絶な遠心力が周囲の民家ごとを枯れ葉のように吹き飛ばしながら、地に降りた少年に迫る。それは少年が人間である限り、どれほどの絶技と神速を以てしても覆せぬ、莫大な質量差という攻撃。
絶死とも呼べる暴圧にちらりとも目を寄越すことなく、少年は"それ"を振りかぶり。
次瞬、機神の右腕が肩口から斬り飛ばされた。

『──────!?!?』

まさに抉るような一撃だった。
あり得ぬ一撃。威力のみならず、破壊を成した射程さえ不可思議の一閃。
その正体を見たならば───仮に機神に人間のような情動があったなら、きっと目を疑い絶句していたに違いない。

先の攻防にて機神が取り零した、巨剣。
指を斬られ地に墜ちた剣。刃渡りにして二十mはある、柄の太さだけでも子供の身長ほどもある、もはや人の手に収まるはずもない神話の剣。
少年は、"それ"を振り翳していた。
少年の腰ほどまである柄に五指を穿ち、石塔ごとを握りつぶす膂力で以て横薙ぎに一閃。機神の右腕を含む周囲一帯ごとを薙ぎ払ってみせたのだ。


834 : 悔やむと書いてミライ ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/17(土) 18:13:47 Hopa4y6c0

もはや人智の領域ではない。
物理法則に喧嘩を売るに等しい所業。激突の衝撃に揺れる機神を後目に、少年は再び巨剣を振り上げる。
天頂に掲げられた切っ先が月にかかり、それが超絶の威力を以て大地に叩きつけられた時には、自身が核となり管制制御を行っていたキャスターごと縦一文字に両断され、機神は光を失って形無き土塊となって崩れ落ちるばかりであった。
石榑の滝が、街に降り注ぐ。どう、と塵灰が噴き上がる。
───少女が召喚したキャスターは、正しくその使命を果たしてみせた。
その行動と判断に、間違いは何一つとしてなかった。最善の行動を最善のタイミングで行ってみせた、紛うことなく歴戦にして優秀なサーヴァントであっただろう。
それがこのような状況にまで追い込まれた理由は単純にして明快。
この少年があまりにも強すぎた。本当に、ただそれだけの理由だった。

「あ……ぅあ……」

キャスターの主だった少女は尻餅をつき、手をついて後ずさる。
最早言葉も出ない。キャスター、ゴーレム使いの彼。彼だけが、少女の日常に回帰するという願い足らぬ願いに寄り添ってくれた、たった一人の人間だった。
今度こそ一人きりになった少女に、向けられる視線は熱を持たなかった。無感。ただただ冷たく無機質なだけの視線が、ぴったりと少女に照準されている。
歩み寄る少年は静かに刀を振り上げ、一刀の下に斬り伏せようと。

「そこまでだ」

と。
突如の声の乱入に、少女は弾かれたように後方へ駆けだした。
硬直から解かれた、反射の行動だった。恐怖よりも、焦燥よりも、ただ此処より逃げ出さねばという、本能が成せる無思考の結果であろう。
その背を追う者は、ない。
刀握る少年の手は、彼の後方より伸びた手に、がっしりと掴まれていた。

「……」

彼もまた、年若い男だった。
少年より少しばかり年上といったところだろうか。青い布で覆ったヘルメットにゴーグルをつけた、非常に簡素な装備を身につけている。
華美さはなかった。どこまでも機能性のみを追求した、それが故のプレーンな格好である。
鋼を想起させる男だった。
その視線は射るように鋭く、その在り方は巌のように揺ぎ無かった。今しがた人智を超越した破壊を成してみせた少年を前に、何があろうとも譲らないという確固たる決意を滲ませている。
セイバーのサーヴァント。
それが青年に与えられた仮初の名であり、少年の従僕という立場を表す記号であった。

「……」

少年は言葉なく、ふっ、と力を抜いた。
もうあの少女を、聖杯戦争に参じたマスターを追わないという意思表示だった。彼はセイバーの手を振り払うでもなく、ただそっと腕を戻し、歩を進めた。
そこに、何の感情もなかった。
我こそはという覇気も、敵マスターへの敵愾心もなかった。
逆に戦いを嫌う厭世も、無常の世を憂う哀しみもなかった。
さりとて諦観や、自棄、思考停止の気配さえそこにはなく。
自らを止めたセイバーへの怒りも、関心さえなく。
ただ、ただ、無感のままに。

「マスター」

声をかけて、しかしその先に続く言葉を持たなかったセイバーは、言い淀む。
伸ばしかけた手は、届かない。
その手は、先程マスターの少年を止めた手は、尋常ならざる膂力を誇る彼をして全霊を賭さねば少年の剣を止められなかった事実を示すように、鈍く痺れたままであった。





◇◇◇


835 : 悔やむと書いてミライ ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/17(土) 18:14:35 Hopa4y6c0










                    どうして、あなたは世界を救ったのですか?










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





かつて、此処に独りの英雄がいた。
何の運命も持たない少年だった。ごく一般的な家に生まれ、ごく一般的に育った彼が、動乱の中で初めて剣を執ったのは齢十六の頃だった。
彼は運命を持たなかった。
彼は才覚を持たなかった。
彼は祝福を持たなかった。
語らず、逸らず、粛々と。ただ目の前に立ち塞がる敵を斬り伏せ、混迷の世に覇を刻み込んでいった。
ただの一度も負けることなく、圧倒的な力の化身として戦い続け、勝ち続けた。
必然、彼のもとには多くの思惑が交差する。文明が滅び去り、数多くの人外種族が各々の陣営を率い覇を競っていた時代において、力ある彼は否応なく歴史の最前線に立たされる。
それでも、彼は何も語らない。
悪魔を殺し、
天使を殺し、
神を殺し、
そして何より、人を殺した。
言葉なく、淡々と、彼はひたすらに剣を振るい続けた。
屍山血河に彩られた英雄譚は地に満ちて、いずれ世界さえ変革してしまうのだと。
人々は盲信し、そこにある現実から目を逸らした。自らの意思を捨て、あらゆる全てを英雄という名の偶像に押し付けた。疑う余地など微塵もない。
これだけの妄執、これだけの憎悪。常人ならば息をすることさえできない呪詛を双肩に負わされて、それでも彼は何も変わらなかった。
どこまでも無機的に、悠久の戦乱にあらゆる全てをすり減らしながら。

「                」

彼の真意を知る者はいない。
人々が見つめるのは名もなき英雄であり、彼自身を知る者は、とっくの昔にいなくなってしまったのだから。
そんな男がいた。
その名を───





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


836 : 悔やむと書いてミライ ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/17(土) 18:15:29 Hopa4y6c0





剣とは、強さとは、すなわちそれまでの積み重ねの結果である。
セイバーのサーヴァント、かつてローレシアの地に生れ落ちた勇者であるところの彼は、そう考える。

戦いを知らぬ者の間ではよく「実戦経験こそが重要である」と吹聴されることが多い。実際、それは間違ってはいない。実戦の有無もまた積み重ねの一つなれば、強さを形作る一要素である事実に疑いはない。
が、話はそう単純ではない。
強さとは絶対値であり、総合値だ。様々な要素を漏れなく有し、その全てを極限まで高めた者が、当然だが最も強い。
そして強さの構築には順番がある。建築において骨組みを造ろうとしたとて、まず土台がなければ柱は立たず、仮組した建材もまた崩されるのみであるのと、それは同じこと。
土台となる基礎が全くできていない者が、いくら実戦だけを経験しようがまるで意味がない。
日々人々を襲い金品を奪う盗賊が、果たして国家直属の騎士団より強いだろうか。
紛争地帯で実戦のみを繰り返した少年兵が、大国の特殊部隊を凌駕するだろうか。
答えは否だ。経験とは然るべき時、然るべき環境、然るべき手順で積まねば全く実にならない。
実戦では練習で培った半分の実力しか出せないが、実戦では練習の1割以下の経験しか入らないのだ。
「実戦経験」が実力を伸ばす最たる要素となり得るのは、通常の鍛錬ではもうどうしたって伸びないほど基礎を鍛え上げた後であろう。
壁にぶつかり伸び悩む者を飛躍させ得る劇的な経験、あるいは基礎鍛錬で培ったものを確認し反復し得る場が実戦であり。
壁にぶつかることさえできていない未熟者がいくら戦場を渡り歩こうと、そんなものは努力にはならず徒労に終わるのみだ。

他ならぬセイバーもまた、そのようにして強くなった。
自らの強さの理由を問われれば、それは人々のためであるとか、世界の危機を前に死地を潜り抜けたから云々と御託を並べることもできようが。実情は全く違う。
彼の強さは単に、生まれ持った才覚を早期に見出され、適切な環境で適切な指導を受け、驕ることも腐ることもなく毎日こつこつと鍛錬を積み重ねたからだ。
そうした長い錬磨の果てに、今の強さがある。
一般的に、実力とは分野を問わずそうして形作っていくものだと、セイバーは考えている。

翻って、マスターであるこの少年はどうであろうか。
当初、彼の振るう剣を見て、セイバーは思った。

「これは、子供のチャンバラだ」

閃光。
轟音と熱風と、鮮血。
敵対者として現れたランサーのサーヴァント。刺突の構えを取ったその巨体がいきなり制止し、僅かな間を置いて破裂した。
ざっ、と血の雨が降る。少年は眉一つ動かすこともないまま、黙ってそれを浴びた。向こうで呆然とした表情を浮かべるランサーのマスターには、何が起こったのかまるで認識できなかったことだろう。
セイバーは、分かった。
まず閃光が少年の持つ刀から生まれた。
耳を劈く轟音は、何十何百もの擦過音がほぼ同時に重なったものだ。
刀から発しランサーを刻み尽くしたのは、火色に煌めいてのたうつ無数の「線」だ。片時も瞬きをしなければ人の目にも片鱗程度は見えたかもしれず、それらが駆け抜けた痕がこの狭い路地のあちこちに残っている。鋸で斬り付けたような、ずたずたの切れ口が。
それは戦いですらなく、ただただ一方的な殺戮でしかなかった。
その戦いを目撃したセイバーは、思った。
これは、子供のチャンバラだ、と。


837 : 悔やむと書いてミライ ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/17(土) 18:16:39 Hopa4y6c0

術理も呼吸も体勢も効率も何もない、ただ力任せに叩きつけるだけの剣技。
フェイントなどの駆け引きなどまるで知らない、そもそも相手の認知外速度で斬り伏せれば事足りるだろうという、子供の理屈めいた剣理。
少しでも強く、少しでも速く剣を相手にぶつければ、それで万事罷り通るだろう、と。
それを子供のチャンバラと言わずに何と言おうか。城で訓練するへっぴり腰の新兵のほうが、彼より余程サマになった剣を振るっていた。
にも関わらず、彼は強かった。あまりにも、強すぎた。
歴戦にして勇壮なるサーヴァント、人類史にその名を刻んだ紛うことなき英雄たちですら、まるで歯牙にもかけぬほどに、その力は圧倒的だった。

既に言った通りだ。強さとは鍛錬の結実である。
基礎を怠れば発展や応用は意味を為さず、実力を伸ばすなど不可能であると。
この少年は違った。
彼は剣術など何も知らなかった。指導してくれる人物も、訓練する機会も一切なかったのだろう。
彼は剣術など何も使えなかった。彼に生得的な才能はなく、戦いに関するセンスなど皆無に等しかった。
彼は本当に、そこらの枯れ枝を拾って振り回す子供の延長でしかないまま、鬼神の如き強さを獲得していた。
その事実に思い至った時、セイバーに宿った感情は、哀絶だった。

こうとなり果てるまでに、一体どれほどの地獄を経たのだろうか。
こうも堕ちてしまうまで、一体どれほどの人命を奪ったのだろう。
何も知らぬ実戦で得られるものは、本当に少ない。正しい鍛錬法に比べれば極小の経験値だ。
彼はそれを、億も兆も積み上げて無理やりに高みへと上り詰めたのだ。石材を敷いて階段とし登るべき「強さへの階梯」を、幾億の死体を積み重ねて並ぶどころか追い越してしまった。その姿が、これなのだ。

苦難の旅路、どころの話ではない。
これは世に言う聖者や覚者だけが歩き通せた茨の道だ。常人では歩けない、そもそも歩くなど想定さえできやしない無謬の回廊だろう。
そんなのものを歩き通してまで。こんなものに、成り果ててしまってまで。
彼には求めたものがあったのか。そうとならねば為せないことが、手に入らないものがあったというのか。

「君は……」

セイバーが、ローレシアに生まれた勇者たる彼が、問う。

「君は、何故───」

何故、世界を救ったのか。
何故、そこまで戦い続けたのか。

何を、願ったのか。

それを、どうしても聞きたかった。

少年はやはり無表情のままで。けれど嫌悪はなく、諦観もなく、億劫の感情さえ出さずに、確かに答えた。



「僕は───」



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838 : 悔やむと書いてミライ ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/17(土) 18:17:07 Hopa4y6c0





かつて、此処に一人の勇者がいた。
約定通り世界を救ってみせた男だった。
彼は強く、正しく、揺ぎ無く、誰より勇者たることに忠実だった。
しかし人々は彼の強さのみを注視し、その様を恐れた。
復活した破壊神は倒された。ならばそれは、破壊神をも上回る脅威が生まれたということではないか、と。
狡兎死して走狗烹らる、という言葉がある。用済みになれば猟犬は食われるという意味だ。
勇者という名の殺戮装置は、魔王の消失と同時に不要の存在と決めつけられた。
必要な人間、不要な人間。それは時代と民意こそが決めるものであり。
ならばこそ、彼が故国を追い遣られることに疑問はなかった。
その後、世界は泰平を迎えた。
しかし、そこに彼の居場所は存在しなかった。

そんな男がいた。
その名を───





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839 : 悔やむと書いてミライ ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/17(土) 18:17:45 Hopa4y6c0





「お前は、永遠の命などというものが存在すると思うか?」

それはかつての記憶。
ハーゴンとシドーを倒していくらか経った頃。竜王の居城であった一室で新たな友と語らっていた時のことだった。

「……よく分からない」
「正しい感想じゃ。だが想像したことは? 幼い頃の夢物語にでも、人はどう足掻いてもいつか死ぬと、一生の終わりは免れないと」
「うん、それはある。考えても仕方ないから、そのうち考えないことにしたけど」
「そう、それが普通よ。不死への憧憬は結局その延長に過ぎんのだよ。時としてそんな夢に妄執を捧げてしまう人間もまた、歴史上数え切れないほど現れては消えた」

サトリとルーナはここにはいなかった。凱旋からいくらか経ったとはいえ、各国の情勢は波乱万丈だ。他ならぬロランもまた忙しい身の上であり、今は久方ぶりに訪れた僅かな暇の時間であった。
そんな彼に、竜王の子孫を名乗る者は語る。

「敢えて断言するならば、そんなものは存在しない。あるいは人の身を捨ててしまえば悠久の寿命を得ることもできようが、それだけじゃ。
 永い時は魂を摩耗させる。その者を世界に繋ぎ止める縁は時間が全て振り落とし、かつてあった想いや信念も露と消えていく。
 そして心が壊れてもなお在り続ける者は、やがて己が存在を維持するためだけの、ただの本能の一塊となってしまうじゃろう。
 そのようなモノを、ワシは生きているとは認めんよ」
「それは実体験?」
「ぬかせ。ワシはまだまだ若いぞい」

当代の竜王の声以外には蝋燭の揺らめく微かな音しか聞こえず、城は静かなものだった。

「これは永遠の命に限った話ではない。
 妄執は人を蝕む。ただ一つの物事に心を傾けてしまった者は、突き詰めれば同じ末路を辿るのじゃよ。
 ロラン、道を究めた者が至る場所はいつも同じじゃ。幸か不幸か、ワシにその資質はなかったようじゃがの」
「……なら、そうなってしまった者は、どうすればいい」
「自分では止まれぬ。もとより理を外れてしまった存在じゃ。多くは正気すら持ち合わせておらんじゃろう。
 だからこそワシやお前のようなものが必要になる。ハーゴンにとっても、あれは一つの救いであったことじゃろうて」

彼はどこか皮肉げな笑みを漏らして。

「あるいはそうしたお題目こそ、他ならぬ我らの正気を守る薬なのかもしれんがの」

そう、なのだろうか。この奇妙な友人や、他ならぬ自分も化けの皮を剥いでみれば、人食いの化け物と変わらないのだろうか。ロランはそう思わない。
陽が傾くにつれて灰色雲は濃さを増し、夕暮れに先んじて地上を暗く閉ざす。薄闇の中に浮かぶ二人の姿が、影絵のように色濃く焼き付いているのだった。





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840 : 悔やむと書いてミライ ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/17(土) 18:18:20 Hopa4y6c0





かつて、此処に独りの英雄がいた。
斬り落とした首の数など、彼は最初から数えてはいなかった。
彼にとって落ちる首は物体に過ぎず、救済を掲げるメシア教徒が説く「魂の永遠」を彼は信じてはいなかった。死者の魂に本当に救済があるなら、転がる生首の目はもっと希望に満ち満ちているべきではないか。
死ぬ者はただ死ぬのだ。そこには理由も、因果さえ必要なかった。彼にとって、死とは単に死であり、それ以上の意味は存在しなかった。
彼はただ殺し、ただ生きた。
その事実にこそ、彼の生きる道はあった。
殺し、殺し、殺し尽くした果てに、彼もまた当然の理屈として死に直面する。
この手でまき散らした幾つもの死が、ついに己自身にも手をかけた。鏖殺の英雄など、見方を変えれば単なる大量殺戮者に過ぎなかった。
追い打つ怒号が、通り過ぎる木々のざわめきが、びょうびょうと吹き荒れる風が、死者の怨嗟となって高らかに謳う───死ね。死ね。死ね。死ね。死んでしまえ。お前は今ようやく、己自身が積み重ねた因によって果てるのだ。
それでも。
それでも、彼は何も変わらなかった。
自らが積み上げた無数の屍。斬り伏せた幾万幾億の死によって舗装された轍を振り返り、呟くのだ。

「           」

そんな男がいた。
その名を───





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841 : 悔やむと書いてミライ ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/17(土) 18:19:00 Hopa4y6c0





少年は、独り、無人の荒野を歩いていた。
無間に続く闘争の螺旋であった。神も仏も斬り尽くし、最早その手の感触さえ無くなってからどれほどの月日が経ったであろうか。
それでも影は湧き出でて、自分はそれを斬り伏せていく。
斬る。斬って、進む。
いつしか自分は自分でなくなり、純粋な別の何かと化していくような心地であった。
心が結晶し、肉が透明になり。
肉が結晶し、心が透明になり。
強い力に吸引されるように歩いていった。
優しい力に誘われるように歩いていった。
斬り、
砕き、
踏み割りながら、歩いていく。
草を踏んでいた。
業を抱えている。
縁に抱えられている。
傍を、透明な力が歩いている。
透明な力は、因果に寄り添い、人の姿をして、歩いている。
それは神に捧げられた魂であり、力を渇望する渇いた魂であり、道しるべであった女性の姿であり、あるいは遠い記憶の中にだけいる母親でもあった。

炎の荒野が、極光の白夜に切り替わる。

それは無尽の光だった。因果の果てであった。歩いているかは、既に分からなくなっていた。
どちらが前で、どちらが後ろであるのか。
どちらが上でどちらが下であるのか。
前後の感覚が失せている。
上下の感覚が失せている。
足の感覚がない。
肉体の感覚がない。
ただ、敵を斬り捨てる事実だけが延々と続いていた。

ふと、笑い声が聞こえてきた。
現実が何かと混ざり始めている。
此処は、神話の世界だった。

───君の願いは、一体なに?

声の一つが問うた。


842 : 悔やむと書いてミライ ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/17(土) 18:19:53 Hopa4y6c0

───君は一体、どんな不遜を聖杯に託したんだい?
───祖国の再興さ。そういうあんたは何を願った?

彼らは互いに笑い合いながら、今更のような質問に答え合った。

───全ての死者の復活
───恒久的な世界平和
───死の概念の撤廃

どれもこれも、子供がダダをこねたような無理難題ばかりであった。

───あなたは?

最後の一人に質問がいく。
他ならぬ、少年への声だった。
近い将来此処へたどり着くであろう、最後にして最新の英雄へ問いかけられた声だった。

「僕は……」

茫洋とした声だった。自分の声を、喉から発せられたそれを聞いたのは、ずいぶんと久方ぶりのことだった。
その質問には聞き覚えがあった。
それは、そう。青いヘルメットを身につけた、あの青年がした質問だった。
今まさに、剣の英霊たる彼から投げかけられた疑問だった。

───なぜ、あなたは世界を救ったの?

───君は神を殺した。
───お前は悪魔を殺した。
───破壊神を殺したよ。魔王も殺した。
───天魔も、阿修羅も、堕天使も、御仏だって殺した。
───人も大勢殺したね。
───秩序を壊し、混沌を破壊し。
───人々の憧憬を背負って。
───人々の憎悪を背負って。
───乱れた世を正し、人の未来を取り戻した。

───平和のため?
───復讐のため?
───それとも、人間のため?

───なぜ、あなたは世界を救ったの?

問われた少年は、こんな瞬間にさえ、休まず剣を振るい続けていた。
感情はなく、逡巡もなく、当然に情け容赦は何もなく。
淡々と、
粛々と、
いつか相応しい一撃が、その身を微塵に砕く日まで。


843 : 悔やむと書いてミライ ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/17(土) 18:20:38 Hopa4y6c0

「僕は……」

少年は皆に囲まれて、しかし全く気にせず、ただ剣を振るい続ける。
爪の中まで真っ黒に染まった手で柄を握り、当たり前のような顔で幾億度目かの剣閃を描き、切り裂かれた肉体から真っ赤な血の花が咲く。
そして少年は、現実と夢幻の二重に重なった彼は、声とセイバーのどちらにも同時に答えた。







「僕は、どうでもよかったんだ」







声は沈黙する。千年も万年も、沈黙する。
勇者は沈黙する。一秒も十秒も、沈黙する。

───なんだって?

「僕はただ、何となく、そうしただけなんだ」

声の出所を探り、その主に剣を振る。
また一つ、血の花が咲く。

「別に、何かを願ったわけじゃないし、何か目的があったわけでもない。
ただ、自分が死ぬまでの間。剣を振るおうと、思ったんだ」

───どうして、そんな

「他にやることがなかったから」

───君の母親を殺したのは、悪魔だったはず

「そいつはその場で殺したから、特に理由にはならないよ」

───君が殺した中には、君の友人だっていた

「さあ……ごめん、よくわからない」

───なんということだ

どよどよと、声たちはどよめく。

───まさか、誰より苦難を味わった君に、願いがないなんて

「……怒ったかい?」

───いいや
───そんな奴はいないよ
───そんな程度の低いものは、英霊の座にはいない

どよめきが止んだ。


844 : 悔やむと書いてミライ ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/17(土) 18:21:29 Hopa4y6c0

───ただ、君が哀れだ

「哀れ?」

───そうだ

しくしくと、すすり泣く声が聞こえる。泣き声は暴風となって座に吹き、涙は洪水となって座を濡らした。

───我らの石積みは終わる

そう言った声はぱっと赤く花開き、今まさに剣を振るった少年の頬に飛び散って新たな血の筋となって垂れた。

───どんな無理難題だろうと、聖杯の恩寵があればいつかは叶う

赤き血の花、ぱっと咲く。

───けれど、君には夢がない。そもそも叶える、願いがない

肉の芥子、ぱっと咲く。

───さすれば君の石積みは、永遠に終わらず……

脳漿の牡丹、ぱっと咲く。

───しかして諦めるには最早、地上は遠く

臓腑の百合、ぱっと咲く。

───君はたった、ひとりになる

骨の薔薇、ぱっと咲く。

極彩色の夢の花たちは少年を呪うようにぱっと咲き、血と肉と臓腑だけを残して斬滅された。


少年の行く道を幾千幾万の花吹雪が、血の雨となって彼に降り注ぐ。


夢の残骸を千も万もへばりつけて、人界にその威をそびえさせる。
しかし英雄譚は完璧を欠く。その頂点に伸びる、もっとも毅き道に救いはなし。

「……」

しかしやはり、そんなことも、彼の少年に関りはなく。
彼はただ、剣を振るうのみ。
真っ黒な手で。
願いなき心で。
花びらの舞う、無人の荒野で。
たった独り。


845 : 悔やむと書いてミライ ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/17(土) 18:22:27 Hopa4y6c0










「それでも」

「それでも僕は、君に───」











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「それでもなお、止まれぬ者が心を保つために大切なものがある。何か分かるか?」

かつての記憶。問う竜王の意図が分からず、ロランはただ首を振った。

「愛じゃよ」
「クッサ」

ぶん殴られた。素面で口にするには流石に恥ずかしいぞ、とは言い返しておいたが。それでも彼は至って真面目だった。
それも、これまでで一番真剣な声音だった。

「何かを愛すること。愛したものを得ること。あるいは愛したものを失うこと。そして、また新たな何かを愛すること。
 人を、物を、世界を愛し続けること。それこそが、心を心たらしめる───我らは弱い。きっと、何かを愛さねば、1秒だって生きてはいられまい」
「お前さん、それを僕に言うか?」
「同じことさね、きっとな」

くつくつと、竜王が笑う。

「ロラン」
「おう」
「ワシとお前は良い友達じゃと思っておる。それを忘れんでくれよ」
「今更じゃないか、恥ずかしいな」

言葉を受けて、竜王は朗らかに笑う。続く彼のしわがれた声には、断言に足る自信があった。

「ロラン、お前はきっと何にも負けんよ。ワシはずっと、そう信じておる」





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846 : 悔やむと書いてミライ ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/17(土) 18:23:53 Hopa4y6c0





セイバーの問いに答え、少年は背を向けると、独り暗闇の向こうへと歩を進める。
ロランはただ、それを見つめるばかりであった。

「何もない」

少年の言葉を、反芻する。

「何もない、か」

言葉と同時、拳を強く握った。

かつての己もまた、そうだった。
守ったはずの人々に排斥され、賞賛の声は罵倒へと姿を変えた。
せめてそれが正当な理屈であれば受け入れられた。しかし善意は悪意で舗装され、ロランは全てを失った。


───地獄から戻ってきたぞ、お前の為に。


……ああ、そうだ。
例えそうだとしても。
全てを失ったと思っていた僕にさえ、逃げ込める地獄があった。

君は、どうだ?
神に逢うては神を斬り、仏に逢うては仏を斬り。
死山血河を踏み拉いて、悪鬼羅刹の悉くを殺し尽くした、君は。
地獄にすら、最早居場所はないのだろう。

君よ。「英雄」という二字以外の全てを奪われた、名も無き君よ。
骨肉を断つ感覚も、砂塵に転がる石榑の如くに身を擦り減らす孤独も、心胆寒からしめる猜疑の瞳も、なんと悍ましい道行であることか。
闇を超えた向こうにあるのは、光であるべきはずなのに。
……何故なら、手を。
その背にいくら伸ばしても、届かない。差し伸べられた救いを、最も望まないのは君であるのだから。

破壊神を破壊した男。
そうとまで呼ばれたこの腕は、けれど暗闇を独り往く少年さえ掴んでやれないほどに、無力だった。

「それでも」

「それでも僕は、君に願おう」

その身にもはや救いはあらずとも。
積み重ねた屍が、天に坐す神の御許まで届かんとしていようとも。
願おう。
神にではなく、運命にではなく。
他ならぬ君自身に。

その魂よ、せめて救われてあれ、と。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


847 : 悔やむと書いてミライ ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/17(土) 18:24:35 Hopa4y6c0





     くだるべし くだるべし 哀れな犠牲たち

     くだるべし 永遠の地獄にいたる道を

     深い穴の底まで沈むべし あらゆる罪が

     天ざかる夷の風に鞭打たれ 嵐の怒号と聞き紛らうほどに沸き立つ所まで

                              ───アルフレッド・ド・ヴィニー




【クラス】
セイバー

【真名】
ロラン(ローレシアの王子)@ドラゴンクエストII 悪霊の神々

【ステータス】
筋力A+ 耐久A 敏捷B 魔力E 幸運E 宝具A++

【属性】
中立・善

【クラススキル】
単独行動:A

騎乗:B

【保有スキル】
無冠の武芸:A
遂には人々に認められることのなかった武芸の手練れ。
敵対者にはセイバーの全ステータスが1ランク低下した状態で認識され、属性は混沌・悪と誤認される。
この効果はセイバーの真名が露呈した場合に無効化される。

精霊の加護:D
大地の精霊ルピスによる加護。
ガイアに属する精霊による無制限のバックアップ……というわけではなく、戦闘時には優先的に幸運が舞い込む程度に留まる。

忘却補正:EX
信仰を忘れ事実を過去に追い遣る、人類という種そのものが持つ拭い難い宿痾。忘却されてしまった勇者の真実。
記憶と精神に関して時の劣化を受け付けず、時間回帰や幻惑による影響を無効化する。

無辺の光:E
一切の世界を遍く照らす光。人々に安寧と憧憬を抱かせる勇者の背中。
極めて強靭な精神力を保証し、特に害意に由来する精神干渉を無効化する他、その精神力を肉体に適用させ人類の域を超えた身体性能を発揮することさえ可能。しかし本来より大幅にランクが低下している。
それはセイバー自身の瑕疵ではなく、彼を見る民衆の認識に変化があったことに由来する。


848 : 悔やむと書いてミライ ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/17(土) 18:25:11 Hopa4y6c0

【宝具】
『永久に繋ぐ勇者の剣(ソード・オブ・ロト)』
ランク:A++ 種別:対魔宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
超鋼オリハルコンによって構成された、闇を切り裂き光をもたらす勇者の剣。
聖剣エクスカリバーが星に鍛えられた神造兵装というカテゴリにおける最上の幻想であるとすれば、こちらは人に鍛えられた英雄剣というカテゴリにおける最上の伝説。
数千年以上に渡る長い歴史の中で幾度となく姿を現し、特に世界と人類の大きな転換点においては、その時代の勇者と呼ばれる者が手に執り戦ったとされる。
純粋な武装としては宝具という括りにおいても異常と言える域の頑強さを誇り、過剰な魔力を通して尚刃毀れすることはなく、刀身もまた歪まない。
また抜いている間はあらゆるST判定(Saving Throw = 魔術・罠・状態異常などに対する無効化・ダメージ半減・状態異常軽減などの判定)において成功率が2倍となり、魔の属性を持つ者に対して特攻を得る。
真名解放に際してはあらゆる「邪」を判定なしで霧散・消滅させる。
言ってしまえば「非常によく斬れて」「非常に頑丈」な剣であり、未熟な者が使えば単なる硬い鉄の棒でしかなく、良くも悪くも使い手の技量に依存した武装と言える。
だが使い手がセイバー、すなわちローレシアの王子であるという一点が、この宝具の脅威を加速させている。
彼が振るうその一閃は大地を割り、雲海を裂き、天を衝く巨竜さえ断つ凄絶な威力を伴い、冠絶級の技量で以て斬撃が繰り出される。
何よりそれら必殺はあくまでセイバーの基礎的なスペックに依存しているため、真名の解放はおろか大きな魔力消費の必要さえなく呼吸同然に連発できてしまう。
デメリットとしては、この剣自体の知名度があまりにも高すぎるため、一度見せてしまえば真名バレは必至であること。なので普段は無銘の剣を使っている。

【weapon】
無銘の剣:
何の変哲もない数打ちの剣だが、セイバーが使えば巨獣さえ豆腐のように切断できる魔剣と化す。

【人物背景】
ロトの末裔は王の子として生まれ、剣の使いとして育ち、後に破壊の神を破壊した。
彼の下で人々は希望を取り戻し、封じられた邪念を己が一部と受け入れた。その泰平は幾百年に及んだ。

「ああ、僕もだ」「地獄から此処へ……逃げ込んできたよ」

【サーヴァントとしての願い】
今はただ、この救いなき少年に救済を。


849 : 悔やむと書いてミライ ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/17(土) 18:25:40 Hopa4y6c0


【マスター】
ザ・ヒーロー@真・女神転生

【マスターとしての願い】
そんなものは最初から存在しなかった。

【weapon】
ヒノカグツチ:
古代の霊剣より生み出された、神代の炎を宿す神刀。
これ自体が超高ランクの宝具に匹敵する神秘を有している。

【能力・技能】
三騎士級サーヴァントに匹敵、あるいは上回るほどの身体能力。
彼は将来、英霊の座に登録されることが確定している、現代の英雄である。

【人物背景】
英雄。
それ以外に、何の意味もない少年。

【方針】
殺す


850 : ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/17(土) 18:26:00 Hopa4y6c0
投下を終了します


851 : SUBMARINE STREET ◇m24wb4 :2022/12/19(月) 01:19:41 sJyTt1k60
投下します


852 : SUBMARINE STREET ◇m24wb4 :2022/12/19(月) 01:20:03 sJyTt1k60


 「銃は剣よりも強し」「ンッン〜名言だなこれは」そこで問題だ!このかわされた剣の隙でどうやってあの弾丸をかわすか?3択―ひとつだけ選びなさい
 答え①ハンサムのポルナレフは突如反撃のアイデアがひらめく
 答え②仲間がきて助けてくれる
 答え③かわせない。現実は非情である。


853 : SUBMARINE STREET ◇m24wb4 :2022/12/19(月) 01:20:19 sJyTt1k60

 新宿ゴールデン街の居酒屋、駄菓子をつまみにお酒を楽しめるバーがある。
 「砂糖菓子を酒のつまみにするとはな、景気良いじゃねぇか」
 駄菓子、かつて日本に伝来した南蛮のお菓子と言えば金平糖である、それは特別、当時、高価であり、限られた人間しか食べることが許されなかった。金平糖食わずんば富豪に非ずとはえ、言いきっていいだろう。
 「ハッ、時代錯誤だな、もはや、砂糖っていりゃあ大量生産の時代だぜ?そんな事、俺の前で二度と言うんじゃねぇぞ、剣さんよ」
 剣と呼ばれた人間はセイバーでなく実際アサシンである。
 翌々考えてもみたらどうだろうか、街中でアサシン、アサシンと何度も連呼する滑稽さ、なれど、その法則を熟知するアサシンとはニンジャに違いない。
忍者、日本最古の忍者の主・聖徳太子、聖徳太子、日本における仏教の布教に尽力し「十七条の憲法」や「冠位十二階」を作った、古代日本の偉人。聖徳太子は、「志能便(しのび)」「志能備」と呼ばれるスパイを使い、朝廷内の動きを探っていたと言われています。そして、聖徳太子が志能便として活動させていたのが大伴細人(おおとものほそひと)です。この大伴細人が日本最古の忍者であると言われています。元々、大伴細人は強い勢力を持っていた豪族の大伴氏の出だったのですが、聖徳太子が活躍していた時代には没落していたと言われています。一説によれば、聖徳太子は大伴細人以外にも服部氏族などの忍者を使っていたと言われ、服部氏族が伊賀忍者、大伴細人が甲賀忍者の源流になったと言われています。実在さえ疑われるがそのうち、源流が時代を経て、戦国時代の伊賀において、天正伊賀の乱で奮戦した百地三太夫、百地丹波という上忍がいました。彼は伊賀の喰代という地に砦を構え、服部家・藤林家とともに三大上忍と称され、伊賀の地で絶大な勢力を誇っていました。しかし、織田信長によって第二次天正伊賀の乱は制圧、鎮圧されたという。しかし、織田信長は本能寺の変で不審死という最後を迎えた。
 「で、鈴木さんよ」
 経歴、過去、それよりも今の酒、鈴木、鈴木孫一は、雑賀衆、雑賀党鈴木氏の棟梁や有力者が代々継承する名前、それが一般的に有名な雑賀孫一である。その鈴木をあえて、彼の隠し名とした。
 彼の本名はホル・ホース。


854 : SUBMARINE STREET ◇m24wb4 :2022/12/19(月) 01:20:40 sJyTt1k60
その言われた相手、ホル・ホース、スタンドと呼ばれる超常現象を攻撃方法に転ずる超能力、皇帝(エンペラー)は戦国時代、紀伊、紀北の戦国武将にして傭兵、雑賀孫一が銃を愛用するように、銃を具現化する能力である。それをわざわざ見せた、そしてすぐにやめた。
「便利だね、俺もクナイをそんな風にしてしたいもんだぜ」
 百地三太夫は完全なる皮肉を述べた。
 ホル・ホースはこう返す。
 「ニンジャも世界中で大人気、銃も世界中で大人気、FPSゲームの隆盛はすげぇよなぁ、サバイバルゲームとかもはやリアルすぎるぜ、仮初めでも弾丸は痛いからな、その恐怖の程度は人それぞれだからな、覚悟のないのがおふざけで使えば一大事だぜ?」
 百地三太夫は深く、笑う。
 「腸が真っ黒いのぶちまけて何が悪い?それを酒の肴にするのが粋のよい大人のたしなみさ、そんな酒が不味いと思うのは心が病み終えてるわけさ」
 どこまでも人間、そして忍者という底無しの闇がそこにはあった。


855 : SUBMARINE STREET ◇m24wb4 :2022/12/19(月) 01:20:54 sJyTt1k60
【マスター】

ホル・ホース@ジョジョの奇妙な冒険


【マスターとしての願い】仕事があればこなすだけ。アブドゥル、ポルナレフ、空条承太郎がいればぶっ殺し終えてやる。

【weapon】

『皇帝』 【破壊力:B スピード:B 持続力:C 射程距離:B 精密動作性:E 成長性:E】
 拳銃の形をしたスタンド。
 撃ち出される弾丸もスタンドであるため、弾道を自在にコントロールしたり瞬時に消したりできる。弾数はスタンドパワーの続く限り無限でリロードも必要なし。
【能力・技能】
傍に現れ立つ精神エネルギー『スタンド』を使う者。
スタンド使いはひかれ合う。
【人物背景】
ジョジョの奇妙な冒険第三部ジョジョの奇妙な冒険 Part3 スターダストクルセイダースに出て、DIOの殺し屋、刺客、凶手となった、外伝小説の『OVER HEAVEN』ではDIOから、その善にも悪にも属さない飄々とした性格をもって、個人的な好みとして捨てがたいと評されている。不評を買うこともない外伝、ジョジョの奇妙な冒険 クレイジー・Dの悪霊的失恋もある!リード!ナウ!
 【元ネタ】
【CLASS】アヴェンジャー
【マスター】ホル・ホース
【真名】百地三太夫
【性別】男
【身長・体重】cm・kg
【容姿】
【属性】悪・混沌
【ステータス】筋力:A+++耐久: A敏捷:EX魔力:E幸運:E宝具:EX
【クラス別スキル】
復讐者A
忘却補正EX
自己回復(魔力)C
【保有スキル】 
侍、滅ぶべしA、破壊工作のスキルが昇華された侍限定に破壊工作を好むようになっている、彼の前で武士に纏わる全てを褒め称えればこのスキルの餌食になる。
 刹那的な愛D〜EX、一応は弟分の羽柴秀吉のみをそれでも愛したままな気がするため、羽柴秀吉のバックアップ、サポート、まとめると羽柴秀吉のみをステータス向上をするスキル。
【宝具】
『武士滅(メガデス)』
ランク:EX種別:レンジ:0〜世界人口、最大捕捉:不明。侍という概念を憎む者、そのもの、あらゆる英雄譚、ラストサムライを筆頭に海外でも人気のある概念へと昇華している、復讐の炎は侍を体現する者には消せはしない限定的対魔術がある、侍の使う宝具のステータスを下げる。
【Weapon】
『鎖鎌』
【解説】伊賀忍団の頭領。
気さくで、飄々とした忍。秀吉を介して織田と共闘して以降、信長の傘下で汚れ仕事を請け負うようになる。秀吉からは、かつて世話した縁で兄貴分として慕われている。


856 : SUBMARINE STREET ◇m24wb4 :2022/12/19(月) 01:21:23 sJyTt1k60
投下終了します


857 : ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/28(水) 20:11:53 /8Mrcg8E0
投下します


858 : 僕の証 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/28(水) 20:12:35 /8Mrcg8E0





問 極微とは何か

答 極微とは、"在る"ものの最小単位である。切れず、壊せず、長くもなく、短くもない。
  四角でもなく、三角でもなく、形なく、見えず、聴こえず、触れず、一切のなにものでもなく、一切のなにものであるそれである。

問 微塵とは何か
  また、色とは何か

答 微塵とは、見えるものの最小である。色とは、微塵に因りて生じたものの全てである。
  色の総量とは識の総量に他ならず、識の総量とは色の総量に他ならない。色心不二とはこのことである。

問 識とは何か

答 識───想いは螺旋である。
  想えば即ち想いに因って極微は寄り、微塵を生ず、微塵は縁に因りて結び、業に因りてめぐり、即ち螺旋を生ず。
  螺旋は有情(生命)である。有情は輪廻に従い、輪廻は有情に従う。
  螺旋に因りて輪廻は生じ、輪廻に因りて更に螺旋は生ず。色界の実相は螺旋である。刻もまた螺旋である。刻に従う螺旋を進化と言う。
  色、識、有情、螺旋、進化。これ等は全てひとつものの別称である。

問 では仏とは何か



問 問う。仏とは何か



問 なお問う。仏とは何か





                                             ───夢枕獏『上弦の月を喰べる獅子』より








◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


859 : 僕の証 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/28(水) 20:15:17 /8Mrcg8E0








そこでは既に、死すらも形骸でしかなかった。

遠く、遠く、遥かに遠く。
広大無辺な虚無だけが、その空間を世界足らしめるたった一つの要素であった。
透明な闇。静寂と虚無。
もしその世界に属さぬ者が見たならば、あまりの無為と空っぽの広大さにたちまち正気を失ってしまうだろう、伽藍の洞。
生き物の棲まぬ深海の如く。
星光すら瞬かぬ宇宙の如く。
空虚な永遠だけがそこには在る。どこまでも深く、深く沈んでいく無謬の闇は、世界の始まりから全く変わらず、ただ在るがままに時の寄る辺にもたれかかっているのだった。

"彼"はその中心に坐していた。
それは虚空だった。
それは表象だった。
それは門であり、扉であり、永遠であり、生そのものだった。或いは具象化した解答だった。
"命の答え"と呼ばれるものだった。それは朽ちることのない無謬として永劫の虚無に身を置きながら、絶えず荒れ狂う嵐の怒号を総身に受け止める要石でもあった。
名を、ユニヴァース。
かつて有里湊と呼ばれた人間の、到達点。或いは成れの果てだった。


     時にもし終わりがあるとすればそのときまで
     ただ
     寄せてはかえし
     寄せてはかえし
     かえしては寄せ
     夜をむかえ、昼をむかえ、また夜をむかえ───


『おや……これは、《月の子(モンデンキント)》とは』

声に応じて。
"それ"の睡りはゆっくりと醒めていった。あたかも幼子が心地よい微睡みから覚めるように、決して動かぬ石扉に等しかった瞼を押し上げていく。
目が、開いた。
同時に、世界に光が満ちた。

例えるならば、それは光の大河だった。夜空を彩る千億の星屑だった。凝集した渦状銀河の中心にいるかの如く、周囲は眩いばかりの光に満ち溢れている。


860 : 僕の証 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/28(水) 20:16:02 /8Mrcg8E0

『見る目が変わったね』

声は、遠い遠い何処かから聞こえてきた。厳密にはそれは声ではなく、湊が「声」であると認識したからそう聞こえただけであって、実際には大気を震わす波ではなく、物質的な変化ですらなかった。
それは光であり、意味そのものであった。幾万幾億もの光の粒が目の前には在って、手に取れば転がせそうなその光の粒は、"全て"であると同時に"一"であり、"世界"であり"空"であると知った。
声とは、それら"意味"そのものが、湊の中で湊の言葉として組み直されたものであり、実際にはどのような手段で会話が成されているのか、うかがう術はなかった。

『すべてのものは様々な面を持ち、見る方向や見方によってさまざまな姿を見せる。
 君がその目を開いたからこそ、世界は今まさにその姿を変えたのだ。
 今や君は、ここにある光と瞬き、それらが奏でる音楽を感じ取ることができる。
 星にも見えるあの煌めき、あれらは、ひとつひとつが世界なのだ』

存在とはすなわち振動である。
すべての粒子が正しく振動することで物質は生まれ、消滅する。
しかし振動する粒子本体は消えない。別の振動数に移り、また別の物質が生まれる。
そうして宇宙は存在という永遠の演奏に満たされ、変化しつつも決して絶えることはない。

彼がそれを知った時には、全ては黎明の如くに白んだ不可思議な薄明に包まれ、心に染み渡る静けさが凝結していた。
既に生死も、運命も、時の流れすらも彼の内に在った。有里湊は、既に己が変転の内側に在りながらその変転を遥かに逸脱していることを知った。
有里湊は、己が「 」であることを知った。
宇宙を満たす存在という旋律の一部として、或いは奏でる弦として、もしくはそれらを調律する守り人として、かつて有里湊という名だった「 」は問うた。

───君は誰?

『私はトート・ヒュブリス・ロムという。
 黄金を瞳に戴く者だが、命の答えに至る求道者足り得なかった』

明滅が灰となり、光芒が水となり、続く境界が流れとなる。そして光は一つの巨大な大河となる。
そうした果てのない、灰と光の境界線に彩られて、光の大河はどこまでも、どこまでも続いている。
いつしか、大河は海となっていた。
茫漠たる水平線は宙と虚空ばかりを映して、その声なき声は日の出と共に広がりいく朝日の眩しさのように世界そのものへと浸透していくのだった。


861 : 僕の証 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/28(水) 20:16:42 /8Mrcg8E0

『かつて、という表現は正しくない。時とは因果の一次元的な定義に過ぎない。
 この言葉、そして君という存在は過去と現在と未来とを数珠繋ぎに並列させ、同時に俯瞰的な視点で認識することが叶う。
 菩提樹の下で悟りを得た覚者、磔刑に伏された聖者に続く、人類史における三人目の救世主よ。
 涅槃に達したる、人という種を次なる階梯へ導くに足る未来仏よ。生を父とし、死を聖霊として三位一体を成したるトリムールティよ。
 されど君は、何者でもなく人として現在に存在している』

───何を言いたいの?

『君は選ぶことができる。
 君は夢を歩き、夢を渡り、幾万、幾億、幾星霜の果て、物語られる世界を渡ることができるだろう。きみが であるかどうかに関わらず』

───…………

『君の祝福には力があるのだよ。
 君が幾多もの絆によって命の答えに至ったように。君にも同じことができる。
 物語を渡るがいい。
 世界を渡るがいい。
 たとえば、そう。
 ひとり、妖精國の孤高なる王に出会うこともあるだろう。
 ひとり、異形の都市で彷徨う男を見ることもあるだろう。
 ひとり、軍勢を率いる混沌の王を見ることもあるだろう』

声は虚空に染み渡り、続く。

『全ては知り得ぬ未来の出来事だ。
 願わくば、君が心優しき であらんことを』

声は消え、代わりに光があった。
星々の彼方。
或いは、宇宙深淵の果てそのもの。


862 : 僕の証 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/28(水) 20:17:05 /8Mrcg8E0

有里湊は光の葦海に立っていた。煌めきそのものである宮殿と庭園が、そこにはあった。その美しさは瞳を潰し、心を食らうだろう輝きだった。
誰も彼もがその輝きと高みに耐えられない。
イリジア。
時に、エリシアと呼ぶものもあるだろう。
大型の恒星とも、ペテルギウスとも、ヒアデスとも、さる銀河なり星団なりの中心核とも言われるがおよそ人がその所在を明らかにできるわけでもない。
そう、黄金の瞳が其処には在って───

湊を見下ろしている。
人の営みを見下ろす満月と同じく。
月の瞳そのものの双眸で、有里湊を見つめている。

「……」

湊は輝きの庭園をあてどなく歩いていった。
言葉も、思考も、意味を為さない。
トートと名乗ったあの声の導きが、この星海であるのだろうか。
いつしか光は失せ、湊は暗黒の只中にいた。
そこには、遥か下まで永遠と貫く、黄金の螺旋階段が無限に続くばかりであった。








◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


863 : 僕の証 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/28(水) 20:17:33 /8Mrcg8E0








勝利の塔の螺旋階段には、時の始まり以来、人間の影に敏感なア・バオ・ア・クゥーという生き物が棲む。
これは最初の段で眠っているのだが、人が近づくと、内に秘められた生命がそれに触発され、この生き物の内部深くで内なる光が照り輝き始める。
同時に、その体と半透明に近い皮膚が動き出す。だがア・バオ・ア・クゥーが動き出すのは誰かが螺旋階段を登り始めてからだ。
それは訪問者の踵にぴったりとくっついて、螺旋階段の外側を昇っていく。
一段ごとにこの生き物の色合いが強烈になり、その形が完全なものとなっていき、それが放つ青みを帯びた光が輝きを増す。
しかしそれが究極の姿になるのは最上段においてのみであり、そこへ登りついた者は涅槃に達した人間となり、その行為は如何なる影も投じない。

                                            ───ホルヘ・ルイス・ボルヘス 『幻獣辞典』








◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


864 : 僕の証 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/28(水) 20:18:20 /8Mrcg8E0








どこかで列車の走る音が聞こえていた───がたん、ごとん。
近くのようでもあり、遥か遠くのものが風に乗って届いているようにも想えた。
いつからその音が聴こえていたのだろうか。
半覚醒の思考で、ぼんやりとそんなことを考えていた。
音は腹を伝い、内臓を伝って、甘い振動となって耳に届いてくる。
胎児が羊水の中で聞く心音というのは、もしかすればこういうものなのかもしれなかった。
右頬に、ふわりとした感覚があった。
何か柔らかいものに触れている感触。それが段々と鮮明なものになっていく。
照明の暖かな光。
清潔な香り。
室内。
布団。
長い夢から覚めるように、ゆっくりと蘇生していた。
目を開ける。

「……」

有里湊は、天蓋付きのベッドに寝かされている自分を知覚した。
どこかの部屋の中だった。視線を傾けてみれば、思ったより広いその部屋は、恐らく教室一つ分くらいの大きさに見えた。
少女趣味の内装だった。リボンやレースがふんだんに使われた豪奢な内装は、およそ日本では中々目にすることはできないだろうアンティークの数々に彩られて、相当に金をかけて作ってあるのだな、ということが察せられた。
風花は意外と好きかもしれないな、などとぼんやり考えながら身を起こす。

自分の体が、そこにはあった。
他の誰でもない、有里湊の体だった。
傍にあった姿見に映るのは、かつて見慣れていたであろう自分の姿だ。男にしては少し長い、青みがかった髪。細い体躯、月光館学園の制服。夜に溶け込むような淡い瞳、人形のように白い肌。
どれもが有里湊のものであり、有里湊以外の何物でもない。
そう在ることの、なんと不可思議なことか。

「ああ……」

口を開くと声が出た。
それもまた他でもない、彼自身の声だった。
有里湊は今、人間としてその肉と像を結んでいた。

ふと視線を感じ、振り向く。
視線が合った。


865 : 僕の証 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/28(水) 20:19:17 /8Mrcg8E0

「ぴゃっ」

小さく声を上げて、その視線の主は物陰に隠れ、次いでおずおずと頭半分だけを出しこちらを窺ってくる。

小さな少女だった。
歳の頃は14かそこらだろうか。湊よりも年下の女の子。ショートカットの茶髪をした、日本人離れした容姿の少女だった。
恐ろしく顔立ちの整った少女だった。翠色の服に身を包んだ姿は、まるでよく出来たビスクドールのようで。
ああ、そうか。

「……人形?」
「誰が人形か」

喋った。
少女はちょっとむくれた様子でツカツカ歩いてくると、湊のすぐ傍、ぽすっとベッドに腰かけた。

「なにさ。今までずっと眠りこけて、いくら呼んでも起きなくて。
 それで目が覚めたらそんなこと言うなんて、きみは随分失礼な奴だね」

ぽん、と頬を両手で挟まれて。じぃっと見つめられる。

「大丈夫? 痛いところとか、ない?」
「……そっか。これは君がしてくれたのか」

湊は自分が何故、ベッドに寝かされていたのか得心した。
ならば、確かに、言うべきことは一つだろう。

「ありがとう。君の思い遣りを、僕は嬉しく思う」
「……」
「……?」
「きみ、なんだか女癖悪そう」
「え、なんで」

少女は答えず、またとてとてと歩いて、小さな茶会用の椅子に腰掛ける。テーブルにはいつの間にか湯気を立てるティーカップとクッキーが山盛りに乗った菓子皿があって、彼女はちょいちょいと湊を小さく手招きしながら。

「きみ、今の状況って分かる?」
「聖杯戦争だろ? さっき起きた時に知った」

さくさく、とクッキーをつまみながら、少女の対面に座る湊は答える。やけに美味しいなこれ。

「けど……君がサーヴァントだってのには驚いたな。織田信長とかカエサルとかアレキサンダー大王みたいな、そういう奴を想像してた」
「あたしだってびっくりだよ。でも、きみだって人のこと言えないんじゃない?」
「というと?」
「きみ、本当ならここにいちゃいけない人じゃないか」

湊は、やはりいつの間にか現れていたサンドイッチを頬張りながら、少女の言葉を聞いていた。その言葉の意図するところには心当たりがあった。


866 : 僕の証 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/28(水) 20:20:03 /8Mrcg8E0

「君には、僕はどう見えてる?」
「はりつけ」

端的な言葉だった。そして、何よりも的を射る表現だった。

「きみはここにいるけど、ここにいない。本当のきみは暗いところで磔になってて、今もひとりでみんなの気持ちを受け止め続けてる」
「……」
「ねえ」
「……なんだい?」
「どうして、きみはそうしたの?
 誰も知らない、ありがとうも言ってくれない。無関係な人たちのために、どうして」

どうして、自分を犠牲にしたの?
問うてくる少女に、湊は一瞬、ほんの一瞬だけ唇を結んだ。

有里湊の生涯は、「悲劇」としか形容できないものだった。
全く無関係の闘争に巻き込まれて両親を目の前で失い、
やはり無関係であったはずの「元凶」を、たまたまそこにいたからという理由で体内に押し付けられ、
それが原因で本来育まれるはずだった情緒も感性も奪われ、
愛してくれる人間も抱きしめてくれる人間もいないまま10年の時を無為に過ごし、
再びの闘争に巻き込まれ、ただ力のみを目的に利用され、
裏切りに遭い、仲間を失い、友であったはずの人間からさえ猜疑の目を向けられ、
全人類の命運という重責を、ただ一人の双肩に負わされ、
そして。
最期には、永劫の孤独を選択した。

悲劇だ。そうとしか言えない。
余りに惨く、そして短い生涯だ。その軌跡を尊ぶことができる者など、到底存在しないほどの。

だから彼は。
有里湊は。
少女の問いに、全く気負いのない表情で答えるのだ。

「みんなが好きだったからだよ。それ以外に何もない」

後悔などまるでなく、
慚愧などまるでなく、
心からそう断言して、湊は笑った。

「色んな人がいたよ。見栄っ張りな奴とか、誰かに寄り掛からないと生きていけなかった人や。復讐を望んでいたり、贖罪を望んでいたり、何も知らなかったり。厳しくて冷酷なようで誰より他人のことを考えてるような奴や、過去に縋りついているような人、残り少ない命の使い方を見つけた人もいた。ああ、そういや酒浸りの生臭坊主や悪徳商法の親玉なんかもいたっけ」
「……最後のはちょっと考え物だと思う」
「僕もそう思う。ともあれ彼らはみんな、現実に鬱屈して、自分の心に折り合いをつけられなかった人たちだった。けど、それでも少しだけ前を向いて、何とか歩いていこうとしていた人たちだった。僕はそんな彼らを見捨てられなかった。その死を願うなんて、できなかった。理由なんて、本当にただそれだけなんだよ」


867 : 僕の証 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/28(水) 20:20:56 /8Mrcg8E0

ニュクス。それは『死』の名前だ。
地球という星と、そこに住まう全ての命に死の概念を与えた、虚空からの来訪者。それが再び降誕するということは、すなわち全生命の死を意味する。
坐して待つ選択もあった。目の前の現実より目を背け、束の間の幸せを謳歌しながら終わりの時を待つ選択だ。
多分、それだって間違いではないのだと思う。避け得ぬ死を前に雄々しく立ち向かうこと、それはきっと素晴らしいことだけど、ならば誰もがそうすべきで出来ない者は人間失格なのかと言えば、そうではない。恐怖も畏怖も、人として当たり前の感情だ。そこに貴賤は一切ない。
同時に、それを認めぬと立ち向かうこともまた、人として当たり前の感情なのだと思う。
有里湊は、後者の側の人間だった。身を挺しても守りたいと思えるものがあった、幸福な側の人間だった。
結局のところ、それだけの話なのだと思う。
自分の行いは、本当に、ただそれだけだったのだ。成し得たことの大きさは自覚していたが、根本を見てみれば何のことはない、そこらの青臭い餓鬼の理屈であることも自覚している。
だから湊は、自分を英雄的とも、特別とも思っていなかった。
特別ではないありふれた一人の人間になることができたのだと、今でもそう信じていた。

「……きみみたいな人を、あたしは知ってる。悲しいはずなのに笑いながら、想いを残して逝った人を、あたしは覚えてる」

それは、決して、少女自身が出会った人間ではないけれど。
アラン・エイクリィという名の青年を、彼女は記憶していた。
何の変哲もない常人だった。朴訥な、少し抜けたところのある男だった。
ニューヨークの《大消失》という災害において、何も特別ではない彼は当然として死んだ。
到底幸せとは言えない最期だ。報われることのない末期だった。
未練も、後悔も、悲嘆も哀絶も何もかも、そこにはあったはずだけど。
けれど。

「きみたちはそうやって、誰かの想いに寄り添って、笑うことができるんだね」

何か暖かいものを見たように、少女は笑った。
太陽のような微笑みだと、湊は思った。玲瓏の闇の中から抜け出た今の湊にとって、それは昔日の日々を想起させるものであった。

「人はいつか死ぬものだけど、それでも悔いることなく生きていこう、と……そういえば、こう言うんだっけ」

思い出したように、湊は言葉を続ける。少女もまた、その言わんとしていることを察していた。

「死を忘れること勿れ(メメントモリ)」

古代ローマの警句であった。いつか来る死を忘れるな、目を背けるなという言葉。
けれど決して、それはネガティブな意味ではなく。
死を意識することで今を大切に生きていこうという、輝ける生をこそ謳った言葉でもあった。

「……正直さ。あたしは、聖杯戦争なんて願い下げって思ってたんだよ」
「割と同意するかな」
「けどね。きみは死んじゃいけないと思う。楔がどうとか封印がどうとかじゃなくて……うん、きみは生きなきゃダメだよ」

その末路が、再び無謬の彼方にてニュクスを封じ続ける孤独の永遠だとしても。
せめて、この世界に現界を許されるその時まで、この少年には生き続けてほしいと。そう思ったから。


868 : 僕の証 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/28(水) 20:21:45 /8Mrcg8E0

「だから、あたしはきみを忘れないよ。
 きみは生きていた。きみは確かに、ここにいたんだってこと。ずっと覚えてるから」
「ああ───」

言葉を受けて、湊は目を伏せる。
生きること。
忘れないこと。
その人がいたという事実を、決して無くさないこと。

「僕はきっと、独りじゃ何もできなかった凡人だ。みんながいたから、みんなが僕を覚えていてくれたから、僕は何かを成すことができた」

きっと、それこそが───

「それこそが、僕の生きた証だ」

そう在れたことに、これ以上はない喜びを自覚しながら、有里湊はやはり心から断言するのだった。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





「君がそうしなければよいと願っていた。私を通すと全てのものは変わりえなくなり、ゆき止まりとなる。
 望みを統べたもう金の瞳の君、君自身もだ。この卵は君の墓、君の柩だ。
 君はファンタージエンの記憶に足を踏み入れた。どのようにして、再びここから出るつもりなのか」

「卵は、新たなる生命の始まりです。」幼ごころの君は答えた。

「その通り」古老は書き、言った。「ただし卵が割れた場合にのみだ」

「あなたが殻を開けてくれればいいのです。あなたがわたしを入れてくれたのですから」

「あれは君の力で起きたことだ。だが、君は今ここにいるがゆえに、その力を持ってはおらぬ。我々は永遠に閉じ込められたのだ。
 ああ、君はここに来てはいけなかった。これぞ、はてしない物語のはてる時だ」

                                         ───ミヒャエル・エンデ『はてしない物語』


869 : 僕の証 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/28(水) 20:22:30 /8Mrcg8E0





【クラス】
アルターエゴ/フォーリナー

【真名】
リリィ・ザ・ストレンジャー/【薔薇の魔女】@紫影のソナーニル

【ステータス】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力EX 幸運A++ 宝具EX

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
女神の神核(黄金):EX
虚空の中心に坐する盲目白痴の王。
生まれながらにして完成した女神であることを現すスキル。精神と肉体の絶対性を維持する効果を有する。
しかし彼女は少女であり、変生した後は魔女であり、神性に類する要素は一見してないように思える。
彼女自身はこのスキルの由来を全く自覚していない。

シャドウビルダー:EX
イデス(ides)と形容される、魔力放出のスキルが強化されたアルターエゴとしての特殊スキル。
彼女の肉体から、足元から、無尽蔵に放出される影の海。虚数の属性を持つ混沌の波濤は魔力に対する反転の性質を有する。
厳密にはアルターエゴ自身のスキルではなく、彼女のサーヴァント化に伴い表象に現出したシャドウ、Aと呼ばれる者が持つスキル。
彼女はこのスキルを自分の意思で行使することができない。

【保有スキル】
宇宙〈そら〉の嬰児:A
うたかたの夢にも酷似し、さりとて対極に在る幻想。現象数式体とも呼ばれる、〈ふるきもの〉に連なる最新の幻想。
想いによって生まれ、認識によって姿を変える。本来なら一夜の夢であるべきもの。誰かが夢見た愛のかたち。
本来的には永遠に一個の生命体として認められないが、彼女の場合は世界で初めての完全に独立した現象数式体として顕現している。
認識によって姿を変えるという性質上、同ランクの変化スキルを保持し、限定的な拡大変容(パラディグム)を可能とする。

夢渡り:A
人々の想いを渡り歩く、こころの世界の放浪。文字通り夢を渡るメスメルの奥秘。
誰かの想い、こころ、愛、夢の中はもちろんのこと、その放浪に際する顕現はあらゆる時間と空間の制約を無視する。

無力の殻:A
後述する第三宝具の発動時を除き、サーヴァントとしての一切の気配を発することがなく、魔力反応やステータスといった要素をも隠蔽する。
黄金の力を使わない彼女は無力なストレンジャーに過ぎない。


870 : 僕の証 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/28(水) 20:23:05 /8Mrcg8E0

【宝具】
『1輛だけの地下鉄(ザ・ドリームランド)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:10
少女趣味の内装をした1輛だけの地下鉄。リリィの意思で現れ、運航するが、意志があり時たま勝手に動く。空も飛べる。
この車両自体が世界から浮き出た一種の異界に等しく、物質というよりは精神世界の産物に近しい。第二のバール、無意識領域。
サーヴァントという人々の信仰から成り立つ存在として顕現した現在においては、「夜空を駆ける1輛だけの電車」「満月に浮かぶシルエット」というフォークロアの性質も併せ持ち、
より幻想に近しい性質を強める結果となっている。
リリィがサーヴァントとなるに当たって、自分も付いていくとゴネにゴネまくったとある車掌が無理やりねじ込んだ力(道具)であり、後述するクリッターも含めてアルターエゴの霊基に滅茶苦茶後付けしまくることに成功した。

『退廃幻想・少女の剣(オズ・ザ・ソナーニル)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜10 最大捕捉:50
影の海から召喚される3体のクリッターを使役し、戦わせる。
彼らは現象数式体と呼ばれる存在であり、その力の根源は時計人間と呼ばれる神格に由来する。
7フィートほどの鋼鉄の巨人、或いは獣であり、有する膂力は強大無比。純粋な使い魔としてはサーヴァントと並ぶ最上位であり、戦闘力も引けを取らない。
第一宝具と同じくとある車掌がゴネまくって無理やり突っ込んだ宝具。アルターエゴとしては自分のものじゃなかった力がなんかついてきた事実に普通に困惑している。

『月は無慈悲な夜の女王(リリィ・ザ・シルエット/アザトース)』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:1〜1.29609239×10^26 最大捕捉:1×10^80
黄金の力。大いなる月を瞳に戴く黄金の女神。A.Z.T.Tと呼ばれる宇宙の中心の座。
限定的な拡大変容(パラディグム)であり、真名解放と同時にリリィの姿と霊基が変化、全ステータスがEXに修正されフォーリナー:【薔薇の魔女】となることで黄金の武器を揮う。マジカル撲殺アタック。
要はクソデカ武器を振り回してぶん殴る、というだけの極々シンプルな宝具効果なのだが、この場合武器、というよりその力の根源が非常に剣呑、かつ極悪。
黄金の力とは、アラヤやガイア、根源の渦といった上位概念的存在……すら歯牙にかけぬ、より根源的な力の凝集であり、この宇宙が生まれるより遥か以前から存在した「何者にも染まらぬ無垢(盲目白痴)」の力である。
黄金の武器による攻撃は距離や人数はおろか、因果、空間、時間軸、存在と非存在、不死と不滅すら完全に無視して対象に命中し、その存在そのものを打ち砕く必中即死の攻撃となる。
これは即死の効果を持つ、というよりは、存在の有する質量の桁が圧倒的すぎて通常次元の存在が接触すれば太陽に触れた薄紙のように容易く燃え落ちてしまう、と言ったほうが正しい。
事実上、この宝具によって攻撃されることは、すなわち宇宙の質量によって殴られるに等しい。

当然ながらそんなものを聖杯の権能で完全再現できるはずもなく、一サーヴァントの宝具となったことで様々な制約が付加されることになった。
まず言うまでもなく魔力消費は劣悪の一言。アルターエゴや有里湊の規格外の魔力数値ですら賄いきれず、行使には令呪の使用がほぼ必須となる。
また使用後は魔術回路が一時的に焼き切れ、暫くの間無力の殻以外の全てのスキルと宝具が使用不能となる。
対象と範囲は人間として在るリリィの認識に即し、事実上対人宝具と形容し得る程度の規模しか有さない。また一度の発動で持続可能な時間は僅か1秒間のみ。


871 : 僕の証 ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/28(水) 20:23:44 /8Mrcg8E0

【人物背景】
とある少女の感情の影。物語を渡り歩く永遠の旅人。幼ごころの君。
その在り方は猫にも似た幼く無垢で無知なる少女であり、いずれ新たなアザトースと成り得る可能性の嬰児である。

【サーヴァントとしての願い】



【マスター】
有里湊@ペルソナ3

【マスターとしての願い】
特にはない。

【weapon】

【能力・技能】
ペルソナ能力:
個々人の心象を現実に投射し、神々や神秘を模した「力あるヴィジョン」として行使する、特殊な異能形態。
ペルソナ能力者には当人の内的側面に悪魔の認知情報を宿すアルカニスト(秘儀精通者)と、人類の集合無意識の海から想念を汲み上げて行使するワイルドの二種類が存在するが、彼の場合は後者。
対応するアルカナは愚者、数字の0。無限の可能性を真価としているが、彼は既に〈宇宙のアルカナ〉へと可能性を固着させた、ワイルドとしての完成形である。

根源接続者:
「 」から生じ、「 」を辿るもの。宇宙の渦であり、全ての始まりであり、全ての終わりである根源に、彼は到達している。
それは即ちこの現実世界において全能とニアリーイコールの力を持っているということだが、彼は己の全能性の全てを、絶対の死であるニュクスを退ける事と、人類の想念がニュクスに触れないようにする鉄扉になる事に注いでいる。
そのため、彼はその全能性を十全に発揮することはできない。精々が、前述したペルソナ能力の広範化・強化に充てる程度に留まる。
しかしそれですら、彼が到達した位階を見れば分かる通り、彼は完成されたワイルドという規格外のペルソナ能力者の中にあって、更に規格外に位置する力を有している。
当然ながら魔力も潤沢であり、Aランク対城宝具を乱発した程度ではまるで目減りしないほどに、その総量は圧倒的。
ただし、これだけの魔力を以てしても、アルターエゴの持つ第三宝具を無理に発動させようとすれば一瞬で枯渇してしまう。

死の境界:
絶対的な滅び。あらゆる存在の終末。この星に死の概念をもたらし、生まれ往く命たちが定命であることを定めた降誕者。すなわち万象に定められた『死』そのものであるニュクスですら、彼を殺すことができなかった。
有里湊は『死』、『滅び』、『終焉』といった、過程を無視して行き成りこういった事象を引き起こす現象を、完全に無効化する。

【人物背景】
『知恵の実を食べた人間はその瞬間より旅人となった』

『アルカナの示す旅路を巡り、未来に淡い希望を抱く』

『しかし、アルカナは示すんだ。その旅路の先にあるものが、絶対の終わりだということを』

『いかなる者の行き着く先も絶対の死だということを!』

その絶対であるはずの死を、乗り越えた少年。
ブラフマンの導きなくして独覚へ到達した真如。神と等しき者にさえ成り得たがしかし、俗世の塵に塗れた只人として、人が抱く普遍的な想念を押し留めることを選んだ。

【方針】
生きようか


872 : ◆Uo2eFWp9FQ :2022/12/28(水) 20:24:04 /8Mrcg8E0
投下を終了します


873 : ◆Uo2eFWp9FQ :2023/01/09(月) 20:22:53 owZ0m8RA0
投下します


874 : ◆Uo2eFWp9FQ :2023/01/09(月) 20:23:21 owZ0m8RA0







          もしそれが彼女を喜ばせるのであれば、黄金の帽子をかぶるがいい。

          もし高く跳べるのであれば、彼女のために跳べばいい。

          「愛しい人、黄金の帽子をかぶった、高く跳ぶ人、あなたを私のものにしなくては!」

          と、彼女が叫んでくれるまで。

                                      ───トーマス・パーク・ダンヴィリエ





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


875 : Heartful cry ◆Uo2eFWp9FQ :2023/01/09(月) 20:25:20 owZ0m8RA0





笑顔が好きなの、と、彼女は言った。
小さく控えめな、鈴の転がるような声だった。
過ぎ去った記憶だ。九条李緒は、その時の何もかもを覚えていた。天気、時間、彼女の服の色、指先の形、風に揺れる髪の毛の先、わずかに傾けた首の角度。瞬きの回数だって覚えているけれど、そんなことに意味はない。
涼やかな風の通り抜ける平原と、どこまでも真っ青な空が印象的だった。目に見える何もかもが偽物でしかないその世界で、しかし私を見て嬉しそうに笑う彼女だけが、硝子細工の中に埋もれる宝石のように、紛れもない本物だった。
彼女は言う───笑顔が好きなの。
誰かが喜ぶ顔、誰かが誰かを思う表情。そして、例えば自分が作った料理を食べてくれたりとか、そういうことで思わずその人の顔が綻ぶことが好きなのだと。
その時の自分には、彼女の言うことが理解できなかった。今なら少し分かるかもしれない。だってその時の彼女は、彼女自身が言うように、花のように微笑んでいたから。
夢見るように彼女は笑っていた。その記憶を再認する私も、夢のような心地だった。

ただ、それだけのことだった。
彼女にとっては本当に何でもない、取るに足らない会話の一幕に過ぎなかったのだろうけど。
私にとっては、きっと───








876 : Heartful cry ◆Uo2eFWp9FQ :2023/01/09(月) 20:25:55 owZ0m8RA0





香りの記憶。
人間は外界を認識する時、自分が思う以上に嗅覚を用いているのだという。
それは例えば雨上がりの空気に満ちる、あの湿った土と植物の香りに既視感を覚え、それが子供のころ遊んだ祖父母の家の庭と同じ匂いであると気づくような。そういった経験の持ち主なら極めて容易に想像がつく感覚だろう。
あるいは、そこまで明確なものでなくとも、どこかで覚えのある匂いを場の空気から嗅ぎ取り、それは一体どこで嗅いだ匂いだったろうかと首をかしげるようなことが生活の中でも往々にしてあるはずだ。
然るに、この木材と埃と微かな植物の匂いを漂わせるこの廃屋は、幼少期に過ごした屋敷のことを否応なく想起させた。

「……気に入りませんわ」

傾く夕陽が視界を真っ赤に染める。
罅の入った窓ガラスから見渡す町並みは、失墜する朱に染まって稲穂のような黄金に焦がされていた。建物は黒々とした影を色濃く伸ばし、光と闇の境界線をくっきりと仕分けしているのだった。
逢魔が時。夕刻の切り替わり、下校を告げる学校のチャイム。人によっては郷愁を偲ばせる憂鬱の時間だろう。
九条李緒は違った。
夕暮れは彼岸の色。この国において、それは死を暗喩する。

九条李緒───リオネッタは死人である。
少なくとも彼女はそう自覚しているし、死の瞬間の記憶も感覚も残っている。首が軋み、骨が折れる感触は忘れたくても忘れられない。
ならばどうして、今こうして生きているのか。
五感は確りと命を認識していた。幻覚でも、あの時のような仮想空間でもないだろう。
知識はいつの間にか頭の中に入り込んでいた。聖杯戦争、願望器、サーヴァント、令呪、他にも他にも……聴きなれぬ単語が確かな実感を伴って浸透していく。
酷く現実味の乏しい話ではあった。けれど、それと同じくらいには馬鹿げた話を、自分は既に知っていた。
夢でも見ているわけではないと諦観と共に悟った時、リオネッタは嘆息して理解した。
ああつまり、自分はまた殺し合いに巻き込まれてしまったのだ、と。

気に入らなかった。何もかもが。
自分が死んだという事実も、今この状況も。宛がわれたロールが浮浪者同然の身分で路地を逃げるように走り、やっとの思いで見つけたこの廃屋がかつての記憶の中にある屋敷にそっくりだったということさえも。
そして何より。


877 : Heartful cry ◆Uo2eFWp9FQ :2023/01/09(月) 20:26:41 owZ0m8RA0

「ライダー。貴方はいつまでやってますの」
「うん?」

声に応じ、振り向く者があった。小さな子供だった。まだ小学生くらいだろう男の子。楽観的な、能天気と言っていい声音と表情をして。
それが無性に、リオネッタの神経を逆撫でた。
少年は不細工なわけではないが、特別整ったわけでもない顔立ちをしていた。手入れのされていない眉毛は太く、泥や煤や油汚れが手も顔も関係なくへばり付いている。
着ている服のほうはもっと散々だった。厚手のコートはどれだけ着古したらこうなるのか、オンボロを通り越して最早布クズ一歩手前といった様相を呈している。
汚らしい子供。一言で言ってしまえば、まさにその通りの少年だった。
それだけでも眉を顰めるに値するが、リオネッタが気に入らないのはそこではない。
表情、だった。
底抜けに明るい笑顔。何の苦労もなく育ち、この世の悪意なんて知らないと言わんばかりの無垢が、苛立ちを刺激して仕方が無かった。

「うんしょっと……うん、ちょっと待って。もう少しで出来上がるから」
「いえ、ですから何を」
「よっし、できた! はい、これ見てマスター!」

と。
こちらの苛立ちなんて知らぬ存ぜぬと言わんばかりの勢いで突き出される何か。
両掌に収まる程度の大きさのそれは、見知った形をしていて。

「……鳥?」
「そ。マスターは人形を思う通りに使えるんでしょ? なら役に立つかなって思ってさ」

差し出されたそれは、ブリキ仕掛けの鳥だった。
玩具にしては精緻な造りをしていて、しかり標本のように本物に忠実なわけではなく、細部はカートゥーンめいてデフォルメされた意匠を見せている。
なるほど、と思う。確かにこれは役立つだろう。少年の言う通り、リオネッタの魔法は人形遣い。ぬいぐるみもマスコット人形も関係なく操ってみせるが、人形を一から作ることはできないという絶妙に不便な魔法だった。
これが相応の金銭を持つ人間だったなら、大量生産品を確保して人形軍団を、なんてこともできただろうが。今のリオネッタは身一つの一文無し。できることと言えば玩具屋から人形をかっぱらってくるか、戦闘場所をデパートにでもしてマネキンを現地調達するか程度だったが。
こいつ、こんな顔してちゃんと聖杯戦争のこと考えてたんだな。ほんの少しだけ見直す。

「……ありがとうございます。一応礼を言っておきますわ」
「うん、また作るから期待してて!」

ニッカリ笑顔。
前言撤回。やっぱりこいつ気に入らない。
思えばこの子供は、最初からこういう性格だった。
姿が見えないと思ったら迷子の手を引いて一緒に親を探していたり、いつの間にか野良猫を手懐けて戯れていたりしていた。ある時なんか、路上の片隅で一輪車に乗りながらジャグリングなんていう大道芸みたいなことをし出して大いに慌てたものだった。群衆からのウケは何故か良かったけど、今時サーカスの真似事なんて流行らないし恥ずかしいし、何より聖杯戦争真っただ中で何やってんだこいつはという気持ちが強かった。
そうしてる時もずっと、こいつは笑顔、笑顔、笑顔……見ていてうんざりするほどの明るい表情。
あの日本かぶれの似非巫女のようにこちらに突っかかってくることがない分まだマシとはいえ、仮にも一蓮托生の相手がこれでは、先行きが不安で仕方ないものだった。


878 : Heartful cry ◆Uo2eFWp9FQ :2023/01/09(月) 20:27:28 owZ0m8RA0

「ま、次も期待しておきましょう」
「うん! あ、ちなみになんだけど、そのブリキって僕の友達に似せて作ったんだ。グリュポンくんって言って、凄く口数が多くてね……」
「人形なら、壊れても問題ありませんものね」

それは何の気なしに出た言葉だった。
リオネッタとしては本当に何の意図もなかった。が、ふと気が付けば、少年はピタリと話をやめて、じっとこちらを見ているのだった。

「何か?」
「あ、ううん。マスターには友達とか、そういう人がいるんだなってさ」
「友達?」
「うん。傷ついてほしくない大切な人が、ちゃんといるんだなって」

一瞬意味が分からず、そして「ああ」と納得した。
何のことはない。彼はリオネッタの言葉を、"そう"受け取ったのだ。
人形なら壊れても問題ない。ならそれは、壊れてほしくない、傷ついてほしくない人がいることの裏返しなのだと。
何をバカな。

「大切な、人」

リオネッタは鼻で笑った。普段のお嬢様然とした振る舞いには似つかわしくない、特大の侮蔑と嫌悪が内在した嘲笑だった。

「くだらない。私がこの世で、最も嫌う言葉」

いい機会だと思った。鬱憤晴らしと同時に、この際だから改めて主従関係というものを叩き込んでやろうと思った。
自分がマスターで、こいつはサーヴァント。
なら従僕は主に従うのが当然で、その意に反してはならない。まして言葉を勘違いし、世にありふれた良い人だとかくだらないことを抜かすことなどないように。

「そういえば言っておりませんでしたね。ライダー、貴方は私の願いが何か知っていますか?」

無言で首を横に振る。そりゃそうだ。願いなんて幼稚な絵空事、本当なら言ってやるわけもない。

「金ですわ。手に抱えきれないほどの大金、それが私の願い」
「……マスター」
「貴方の歳では判らないでしょうし、想像もつかないはずですから教えて差し上げます。この世には札一枚、硬貨一枚のために人殺しだって躊躇わないような人種が、それこそ掃いて捨てるほど存在しますわ。まして今度は聖杯、何でも願いが叶うという触れ込みが真実なら世界一の富豪になることだとて可能でしょう。なら何の不思議もないでしょう? 大金は、それだけで人を殺す理由になるのですから」
「……」
「もう一つ教えましょうか。私、前まで同じような催しに巻き込まれていたのですが、そこでも金をもらって殺し合いを加速させていましたの」

駄目押しに薄暗い真実を追加してやる。
少年は心底驚いた表情をして、それも当然だろう。リオネッタは真実、金のためなら何でもやる金の亡者であるし、それは仮想空間における魔法少女たちの生き残りにおいてさえ、魔王に協力して率先して脱落者を出していたほどだ。
リオネッタの願いは、人生は、金銭の一言に集約される。それ以外には何もいらない。必要ない。
ああ、なんだか胸がすく思いだった。


879 : Heartful cry ◆Uo2eFWp9FQ :2023/01/09(月) 20:28:18 owZ0m8RA0

「さてライダー。これを聞いてもまだ友人だの大切な人だのと言うつもりですか。私の願いは間違っていると、そう諭すつもりですか?」

言うだろう。
この手の人種は、きっとリオネッタを否定する。愛だの友情だの絆だの、とにかくそういう形而上学的なお題目を並べ立ててリアリストを詰るのだ。そしてリオネッタの経験上、普段からそんなヒューマニズムを得意げに口にする人間ほど、実際はすぐに他者を切り捨てることを知っていた。
今まで何人も、そんな人間を見てきた。何度も裏切られたし、何度も裏切った。そして自分を裏切った人間も、自分が裏切った人間も、全員等しく崖の下に叩き落してきたのがリオネッタの人生だった。
だからこの少年が、どんなきれいごとを言ってきたとしても徹底的にやり込めてやるという自信がリオネッタにはあった。そうしてこいつを否定して、隷属させて、完璧な主従関係を叩き込んでやるのだと。
少年が口を開く。ほんの少し悲し気に、けれど確固たる思いを乗せて。

「僕はその願いを否定しない。君の想いを手助けする」
「───は?」

一瞬、意識を手放すところだった。
リオネッタは初めて、眼前の少年の正気を疑った。侮蔑や嫌悪ではなく、全く違う感情を初めて抱いた。

「……吐き気を催すほど不愉快ですわね。心にもないことを言って私に媚びるつもりですか?」
「違うよ。お金が大切だって言うマスターのことは、間違ってないと思う。そうしなきゃ生きていけない人たちがいるってことも、それが一番大事だって人のことも、僕は否定したくない」

彼はふっと笑って、言葉を続ける。

「確かにマスターの言う通り、僕はお金なんかより家族とか友達とかそういうものの方が大切だって思ってるよ。けどそれは、あくまで僕個人の主観でしかない。
 それに僕がそんなことを言えるのは、単に僕の運が良かったからに過ぎないってことも知ってるんだ」

少年───才賀勝の人生は、まさしく波乱万丈という言葉でさえ生温い荒波の如きものだった。
母一人子一人の貧乏暮らしをしていたと思えば、自分が実は世界的大企業の社長の血を引く人間だと分かり、更に二百億近い遺産が突如として転がり込んできた。
世に語られるシンデレラストーリーならここで終わりだろう。だが現実はそう甘くない。たかが妾の子が何を独り占めしてるんだと、勝は実の兄姉から執拗に命を狙われるようになった。
金の大切さは勝とて人並み程度には分かっているつもりだ。それに執着する人間の欲望は間近で嫌というほど見せられたし、善良な人間だとて善意だけでは食べていけない現実も直視した。

「僕の周りはみんな良い人たちだった。お金なんかより、みんなのほうが大事だって胸を張って言える立派な人たちだよ。
 そんな皆と一緒にサーカスをしながら旅をして、生きていく術も教えてもらった。
 でもそれは、やっぱり僕が運が良かったってだけなんだよね」

出逢いに恵まれた。機会に恵まれた。
でも世の中には、大切だと言える人に出会えなかった人だっているし、かつていたとしても失ってしまった人もいる。
今日食べるパンすら賄えないほど底辺に這いずる人もいる。才能がなく、そもそも努力できる環境さえ取り上げられてしまった人や、努力を認められない人だっている。
そう考えてみれば、才賀勝のなんと幸せなことか。
「世の中金が全てじゃない」なんて言えるのは、自分が恵まれているからだ。世の中には金以外の色んな幸せが溢れているが、その多くは金がなければ手に入らないのもまた事実。それを忘れて、自分だけの哲学をまるで世界の真理であるかのように大上段から説教する資格など、勝にはない。

「だからマスターが、お金や物や豪華な暮らしにしか幸せを感じられないっていうんなら、それでいいんだと思う。君の幸せのためなら、僕も精一杯手を貸すよ」

でもさ、と勝。


880 : Heartful cry ◆Uo2eFWp9FQ :2023/01/09(月) 20:29:06 owZ0m8RA0

「多分、マスターはそういう人じゃないんじゃないかって思う。勝手な想像だけど」
「……それは、何故?」
「マスターはさ、頭が良いよね」

思わずぽかんとしてしまった。いきなり何を言うんだこいつは。

「話してて思ったけど、マスターは頭が良いし、世渡り上手なんだと思う。だから今まで人を騙してきたっていうのも、まあ本当なんだろうなって。
 けどさ、だったらなんでこんな露悪的なことを馬鹿正直に言うんだろうっても思ったんだ。頭が良くて悪い人なら、適当にそれっぽいこと言って僕を良い気にさせたまま、聖杯戦争を勝ち抜く体の良い駒にするはず。だってそのほうが賢いんだもん」

「それに、さ」

「マスターみたいな人たちを、僕は知ってる。どうにもならない過去を背負って、自分にはこの道しかないんだって振り返ることすらできなかった人たちを、知っている」

才賀勝がその半生において出会った人間たちは、概ね二種類に分けることができた。
前向きに未来を見据えた者と、未来に背を向けて過去に囚われた者だ。
後者の人間は、皆過ぎ去ってどうにもならない過去ばかりを見つめ、延々と変わることのない独り相撲を続ける者だった。
自分の中の本当に大切なものを見誤って、悪ぶって、最後に己の真実に気付いては笑顔で散っていった人たちだった。

大切な人はいないのか、と聞いた時。
侮蔑を語る口とは裏腹に、彼女の瞳に光が宿ったのを勝は見た。険が強くいつも苛立っていた彼女が、ほんの一瞬、穏やかで心優しい人間の顔になったことも。

「僕は君のことを知らない。けど……いたんじゃないかな。死んでほしくないって、生きていてほしいって、君自身が強く思える、そんな人が」
「……」

───けして良い生き方をしてきませんでしたが……誰かを誘える立派な人間ではありませんが、それでも……

かつて自分が言ったことを、思い出す。生まれて初めて誰かに縋った、あの言葉を。
らしくないことをしたものだと思う。それで勝手に消沈して、油断して。そんな自分を庇って那子は死んでしまって。

ぽっかりと、心に穴が開いたような気がした。

その事実に、リオネッタは動揺した。「動揺した」ということに更に驚いた。
人の死なんて、飽きるほど見てきたはずだ。
死に追い詰めたことも、実際に殺したことだって数え切れない。それに那子とは散々口喧嘩をして、罵り合ってきた。品がなくて喧しくて、およそ人として尊敬できる部分など何一つとしてない女だった。眼中になんてなかったし、さっさと死んでしまえとさえ思っていたはずなのに。
それでも、彼女の死を目の前にして、リオネッタは心に穴が開いた。

涙は出なかった。
胸にあったのは悲しみではなく、ただ喪失感だった。
近しい者の死とは、概ねそうしたものだろう。死者を悼む悲しみとは、死という現象ではなく記憶が誘うものだ。
そして悲しみを感じるには、彼女の記憶は新しすぎた。

ペチカ、グランテイル、那子。
三人はまだ会ったばかりの人間で、愛着を持つにはあまりにも短すぎる付き合いで、人でなしの自分は当然に情など湧くはずもなくて。
それでも。
それでも私は、別れを恐れていた。失うことを怖がっていた。


881 : Heartful cry ◆Uo2eFWp9FQ :2023/01/09(月) 20:29:49 owZ0m8RA0

「人間はみんな自分が一番大切、それはそうだよ。
 でも君は、自分"だけ"が大切って人種じゃないと思う。誰かを失うことを恐れる、その気持ちがあるなら」

リオネッタは人でなしではなく、近しい人間の死を忌避できる当たり前の人間なのだと。
語る勝の目は、どこまでも真っすぐに、リオネッタを見つめていた。

「そしてもし良ければ、君の本当に欲しいものを聞かせてほしいな。
 それでもお金しかないなら僕は否定しない。けど、もし君にもっと違う何かがあるなら」

「それを僕にも守らせてほしい。君の願う理想の光景に、君自身を帰らせてあげられるように」
「わた、しは……」

想像してみる。馬鹿馬鹿しい光景を、子供の夢見る理想像を。
そこには父がいて、母がいて、李緒がいる。三人は何の不安もないように語らって、そこには悲しみも遣り切れなさも、何の不幸もない。
そんな自分たちのところにやってくるのはペチカだ。彼女はやっぱり楽しそうに、その手に美味しそうな料理を携えて、どうぞ召し上がれと笑いかけてくれる。
隣にはグランテイルと、まあ那子もいていいかもしれない。どうせ自分たちはいがみ合うのだろうけど、あの関係も悪くはなかった。グランテイルは呆れたように見守り、ペチカは慌てて間を取り持つのだろう。
それは黄金の昼下がり。気ままにくつろぐ私達。
殺し合いは起こらず、我が身の不幸は何もなく。
家族は壊れず、彼女らとはまた違った出会い方をして、本当の友達同士になって。
私は。
年相応の少女のように、笑って。
ああ、それは、なんて綺麗な───

「……似合いませんわ、そんなもの」

全ては虚しい絵空事である。
何もかもが崩れ去ったあの日、あの時。九条李緒は全く違う道を選んだ。
父を助ける気はなかった。全ての原因を作った屑のために苦労を背負い込むなど御免だった。
母の顔はもう覚えていない。物心ついた時にはいなかったし、家を出て行った彼女のことを父は話そうとしなかった。
御世方那子は目の前で死んだ。顔中から血を噴き出して、悪霊のエネミーに体内をぐちゃぐちゃにされて殺された。リオネッタが殺したも同然だった。
今までだってそうだった。仲間も同志も必要ない。まして友人など。
彼女が欲したのは自身の身の安全と、金だけだ。人間社会に即応できる物質的富だけが、彼女の縋れる全てだった。
他人なんて信用できない。友達ぶって仲良くしても、いざとなれば崖の下に蹴り落とすのが人間だ。李緒自身も、もう数え切れないほどそうしてきた。

そんな人間が、今更、情など望めるはずもない。
誰より自分が分かり切っていることだった。この人形のように美しい手は、誰かと手を取り合えるなんてできないほどに、血と汚物で真っ黒に汚れているのだ。
あの時、ペチカに向けて言った誘いの言葉。
生まれて初めて一緒にいたいと、この薄汚れた手をそれでも掴んでほしいと、そう願ったあの綺麗な女の子に、「いいえ」とさえ答えてはもらえなかったあの瞬間。
当然のことだと思った。何より自分が分かっていた。百人に聞けば百人とも、何を当たり前なと嘲りを浮かべて笑うだろう。
リオネッタに、九条李緒に、人並みの幸せを願う資格などない。
今更誰かと並んで歩こうなどと、都合の良いことを言う権利などない。
ありふれた幸福な食卓は、自分には似合わないのだと。


882 : Heartful cry ◆Uo2eFWp9FQ :2023/01/09(月) 20:30:45 owZ0m8RA0

「似合うよ」

けれど。
彼は、違った。
彼は、リオネッタなどより遥かに年下であるはずの少年は、あまりにも真っすぐな瞳でそう断言した。
世間を知らぬ子どもの戯言ではない。彼は大人なんかより、ずっと世の辛酸をなめ続けてきた少年だった。
この世の黒と白の中にあって、ずっと黒だけを見せ続けられた少年だった。人間の醜い部分を、弱さを、恥ずべき悪性を、衆愚を、身勝手な欲望を、一身に浴びせられた幼子だった。
他人など何も信用できず、利己と厭世に塗れて至極当然であるはずの半生を送ってきた彼は、けれど。
本気で、何の混じり気もない目で、告げるのだ。

「幸せが似合わない人間なんて、いない」
「……詭弁ですわ。私は色々な不幸を見てきました。私が招いたことだとて。だから……
 私一人が、今更幸せになることなんて」
「バカ!」

びくりと体が跳ねてしまう。それは少年が発した、恐らくは召喚されて初めての叫びだった。
彼は何かに怒った顔をして、けれどその怒りはリオネッタに向けられたものではない。それは何かもっと巨大な、人の幸福を許さない運命にでも向けられたもので。

「時間は巻き戻せない、過去はどうやっても変えられない!
 だけど"今"は何とかできるんだよ。君はまだ生きてて、寄り添える人間がいるはずだろ!」

彼はギュっと、握りこぶしを作っていた。
きっと彼は、同じような人間をずっと見てきたのだろう。過去に縛られ、それがために生き方を変えられなかった人間を。リオネッタのような者を。

「そりゃ犯した罪は償わなきゃいけないよ。けどそれは、君が一生不幸にならなきゃいけないってことじゃない。
 それに君の理屈だと、人は誰も幸せになんかなれない」

彼が何故、ここまで怒っているのか、今になってようやくリオネッタは理解した。

「人間がみんな『昔』を背負って『今』を生きなきゃいけないなら、この世は幸せになっちゃいけない人しかいないじゃないか!」

彼はきっと、リオネッタが幸せになれないことに怒っていたのだ。
手を伸ばせば掴めるはずのものを、賢し気に拒絶して遠ざけていること。
羞恥や慚愧にかこつけて、光に背を向けること。
そして、そもそもリオネッタがそんな道を選ばなきゃいけなかった運命そのものに、彼は激怒していた。
少女は確信した。もはや疑う余地もない。この少年は、危ういまでに優しい人間だった。


883 : Heartful cry ◆Uo2eFWp9FQ :2023/01/09(月) 20:31:14 owZ0m8RA0

「……何を一人で熱くなっているのですか、貴方は」

リオネッタは違った。
彼女は、この期に及んでまで、やはり自分のことしか考えられない塵屑だった。

「言われなくても、聖杯を獲得して、私は幸福になってみせますわ。ご存じの通り、私は欲深なのですから」
「……うん、僕も願うよ。君が望む幸せが、本当に君を幸せにしてくれるってことを」

リオネッタは変わらない。たかが言葉一つ、思い一つで心変わりできるようなら、とっくに真人間に戻っている。
だからきっと、あの三人と出会い、触れ合い、旅を共にしたとて、リオネッタは何も変わらなかったはずなのだ。利己のために他者を陥れ、互いを相争わせて漁夫の利を得る。鉄火場には関わらず、姑息に生き延びる。そんな卑怯者の女であったはずだ。
そうであるはずなのに。

───ペチカさんの手を傷つける者は許さない。そう約束しましたの。

本当に馬鹿なことをしたものだ。生き残るだけならば、もっとスマートな方法はいくらでもあった。
けれど、その愚かな選択はきっと……いいや絶対、これが正しかったのだと、リオネッタは思った。

「……ライダー」
「うん?」
「私、貴方のような馴れ馴れしい子供は嫌いでしてよ」

その言葉を受けた少年はきょとんとした顔をして、しかし屈託のない笑みを浮かべたまま。

「そう? 僕はマスターのこと、結構好きだけどな」

ふん、と顔を背け、リオネッタはそれきり黙りこくる。
夕焼けの赤を夜の青が徐々に染めていき、直に空には星が散るだろう。
仮想空間ではない、本物の星空。それをできるならば、四人で見たかったと、リオネッタは思うのだった。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


884 : Heartful cry ◆Uo2eFWp9FQ :2023/01/09(月) 20:31:46 owZ0m8RA0





『人生とはなんと不可思議なものでございましょう』


『人の出会い、そして縁が絡み合う様は、複雑に歯車の噛み合う、まさにからくりのようではありませんか』


『そしてまたそれらから生まれる想いの織り成す綾模様は、あたかも芸人たちが飛び交うサーカスのよう』


『人の歯車はからからと互いを回し、人生という機械仕掛けのサーカスを演じてゆくのかもしれませぬ』


『さて、之なるは今際の際に愛を悟った人形(にんげん)の少女と、人形に彩られた恐怖劇で尚も人間で在り続けた少年の出会いの一幕』


『観客のいない暗がりの舞台で一人芝居を続けた女は、何の因果か、かつての舞台の主演だった男を召喚したのでございます』


『さても奇妙なこの演目、敢えて名付けるとすれば《新たな道行き(Re.START)》とでも言うべきでしょうか』


『人生とは果てなく続くものです。一度は命を落とし、二度目の生を受けた少女は、これより何を見、何を得るのか』


『巡り来る次なる舞台で、いずれ物語られるまで……今は一時、閉幕となりまする』


885 : Heartful cry ◆Uo2eFWp9FQ :2023/01/09(月) 20:32:19 owZ0m8RA0

【クラス】
ライダー

【真名】
才賀勝(リリィ)@からくりサーカス

【ステータス】
筋力C 耐久C 敏捷B 魔力D 幸運A 宝具B

【属性】
中立・善

【クラススキル】
騎乗:A
騎乗の才。乗り物という概念に対するもののため、生物や器物の区別なく効果が発揮される。

【保有スキル】
懸糸傀儡:A+
巨大なマリオネットを懸糸によって操作する特異な戦闘技術。
対自動人形を想定された戦闘技巧はサーカス芸にも近しい性質を持ち、彼が手繰る3体のマリオネットとの精密なコンビネーションを発揮する。

巡る人の輪:A
専科百般、天賦の叡智の互換スキル。受け継がれる人の意思。
ライダーは剣術、武術、医学、錬金術、機械工学、道具作成、芸事、話術といった分野において、C〜Aランクの習熟度でスキルを発揮できる。

鋼鉄の決意:B
200年に及ぶ恐怖劇を踏破し、定められた結末を破壊した旅路の具現。文字通り鋼鉄と化した決意がスキルとなったもの。
痛覚の全遮断、如何な苦難にも屈しない精神の絶対性の他、勇猛と冷静沈着を併せ持つ複合スキル。
また攻撃の遮断や全回避などといった「相手からの干渉を無効化する」性質の力に対し、一時的に突破できる可能性を担保する。

【宝具】
『巡り来る舞台に万雷の喝采を(からくりサーカス)』
ランク:B 種別:結界宝具 レンジ:1〜30 最大捕捉:1
人形破壊者としての完全励起。魔力を充填させた3体のマリオネットをほぼ同時に操作し、縦横無尽に敵を蹂躙する。
一見して連続攻撃系の宝具と思われがちだが、その真骨頂は真名解放と同時に展開されるサーカス形の舞台結界。
「人の生きる世界」そのものを構築することであらゆる魔や神秘をその霊的位階の高さに応じて引き下げ、強制的に霊格を零落させる大封印結界陣。
ありていに言ってしまえば、あらゆる存在を「人の土俵」にまで引きずり落とす宝具である。


886 : Heartful cry ◆Uo2eFWp9FQ :2023/01/09(月) 20:32:59 owZ0m8RA0

【weapon】
日本刀・無銘:

マリオネット:
巨大な鎌を持つ空戦主体のジャック・オー・ランターン、剛き拳を持つ陸戦主体のゴイエレメス、二刀を持つ水中戦主体のキャプテン・ネモ。
それぞれ固有の術技を持ち、ライダーはこれらを自在に操作し、切り替えながら戦う。

【人物背景】
地獄の歯車によって構築された舞台演劇の主演に選ばれ、その悪辣な運命を破壊してみせた少年。
全盛期ではなく12歳頃の姿での現界であり、本人はそれを「最も人形と縁があった時代だから」と推測している。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯に託す願いは「世界平和」。ただしどこぞの魔術師殺しが目指したような人類種の抜本的改変ではなく、人々の暮らしがほんの少しでも前向きになってほしいという程度のもの。
彼には縋って叶えるべき我欲は既になく、聖杯という過分な願望器を与えられても正直困る、というのが本音。
ただ今は、マスターである少女に笑顔になってほしい、という思いで戦いに臨んでいる。




【マスター】
九条李緒(リオネッタ)@魔法少女育成計画restart

【マスターとしての願い】
聖杯に捧げる願いは「金銭」。少なくとも彼女は周囲にそう嘯くだろう。
しかし、彼女はもう理解してしまっている。自らが抱いた本当の願いを。そして自らの罪は決して赦されるものではないことを。
故にリオネッタは願わない。人の道を踏み外した者に、願うべき神は存在しない。

それでも、たった一つだけ許されるならば。
もし、機械仕掛けの神がおられるのならば。
みんなで囲んだ食卓の光景を、もう一度───

【weapon】
人形:
ブリキ、ぬいぐるみ、マネキン、彫像に至るまで彼女の魔法の対象となる。
現在はライダーが作成した大量の機械人形を使役している。内蔵された機能により視覚情報の共有まで可能となっているが、一度に大量の情報を送られると普通に本体のほうが混乱してしまうため視界チャンネルを開けるのは同時に数体が限度。要練習。

【能力・技能】
人形を思い通りに操ることができるよ:
リオネッタの固有魔法。その名の通り、彼女が人形と認識したものを自在に操作できる。
支配下にある人形のスペックやスキルは、元となった人形に即する。人形の定義は主観に拠るため、彫像やマネキン、果ては死体に至るまで魔法の対象となる。

【人物背景】
かつて全てを失い、己が手から零れ落ちたものを必死にかき集めようとして、その実自分が取り戻したかったものを致命的に見誤っていた少女。
自分が本当に求めていたものを自覚し、それがために死出の戦いに臨み、そして命を散らした後より参戦。

【方針】
聖杯は獲る。自分の歩み、これまで仕出かしてきたことを無為にしないために。
……けれど、もう一度手を汚すということに一抹の躊躇を抱いてもいる。


887 : Heartful cry ◆Uo2eFWp9FQ :2023/01/09(月) 20:33:14 owZ0m8RA0
投下を終了します


888 : ◆nLYVJToE12 :2023/01/29(日) 12:50:18 DzRgzk.s0
投下します


889 : 永遠じゃねぇよMUGENだよ ◆nLYVJToE12 :2023/01/29(日) 12:51:06 DzRgzk.s0

平行世界という概念はフジテレビと一部の同局系列で2002年10月5日から2022年9月24日まで毎週土曜18:30 - 19:00に放送されていた旅行バラエティ番組のもしもツアーズというテレビ番組等の旅番組のミームで自然と上書きされるだろう。水曜どうでしょう、世界ふしぎ発見もそうだ。

 某大学校内の食堂のおばちゃんはいつもこんなことを思っている、「お残しは許しまへんでー!!」と。
 夏場、花粉症やインフルエンザ等の流行り病や疫病は全ての無縁であるため、ノーマスク、ノーソーシャルディスタンス、その某大学校内のフードコートで伝説の瞬間があった。
 「はい、あーん」
 目の前の女子生徒がポテトをあーんしている、目の前の男子生徒と惚気ている、そして、そのポテトはマクドナルドではなく、ケンタッキー・フライド・チキンというものであった。
 そう、その某大学校内のレストランが多数乱立するところにはケンタッキー・フライド・チキンがやって来ていたのだった。彼等は卒業間近かまだ大学生活を続けるのか分からないが、そのケンタッキー・フライド・チキンの看板は大学七不思議によりお残しをすると大変な事になるという噂があった、信じようが信じまいが‥‥‥‥
 

 【クラス】アベンジャー
【真名】カーネル・サンダース@リアル
 【ステータス】
筋力EX 耐久EX 敏捷A 魔力B 幸運D 宝具C
 【クラススキル】忘却補正:EXno leftovers‥‥‥!
 【保有スキル】純粋精肉:Bキャスターとしてのスキルそのまんまのケンタッキー・フライド・チキン味を精神が変容しようとお届け出来る。
 【宝具】大いなる鶏肉の使い方(キングオブジャンクフード)、ケンタッキー・フライド・チキンという陣地を製作する、店舗を増設するシムシティのような能力。
 お残しは許さない(アナザーヘブン)、ケンタッキー・フライド・チキンを食べ残して過ごした人間に発生する怪奇現象。
 【weapon】杖
 【人物背景】ケンタッキー・フライド・チキンの創業者が、何かの理由で憎悪の念を覚えている。
 【サーヴァントとしての願い】お客様より神様となりたい。

 食堂のおばちゃん@落第忍者乱太郎及び忍たま乱太郎
 【マスターとしての願い】お残しは許さない。
 【weapon】しゃもじ
 【人物背景】乱太郎の通う忍術学校の食堂のおばちゃん。
 【方針】食堂のおばちゃんをまだ続ける。


890 : 永遠じゃねぇよMUGENだよ ◆nLYVJToE12 :2023/01/29(日) 12:51:35 DzRgzk.s0
投下終了します


891 : ◆k7RtnnRnf2 :2023/02/03(金) 22:06:17 WQEaP/2s0
これより投下します。


892 : ゆい、マスターに!? おいしい笑顔を守れ! ◆k7RtnnRnf2 :2023/02/03(金) 22:07:21 WQEaP/2s0
 みなさま、ようこそ。いらっしゃいませ!
 ここは、聖杯戦争の舞台となった町。
 どんな願いでも叶えられる聖杯を巡って、たくさんの人が戦うちょっとあぶない場所です。
 ある日、この町に一人の女の子……和実ゆいちゃんがやってきました。
 いつものおいしーなタウンとは違うこの町で、ゆいちゃんからのごあいさつ!


 う〜ん♪
 デリシャスマイル〜!
 ……はっ!?
 あたし、和実ゆい。食べるのが大好きな中学生。
 でも、実はクッキングダムに伝わる伝説の戦士・プリキュアなんだ!
 ここねちゃん、らんちゃん、あまねちゃんと一緒に、デリシャスパーティプリキュアに変身して……怪盗ブンドル団からおいしい笑顔を守ったよ!
 いきなり聖杯戦争のマスターにされちゃって大変。
 プリキュアのみんなも、マリちゃんや拓海もそばにいないけど、あたしはくじけない。
 だってあたしの隣には、ずっと力を合わせたコメコメがいるから。
 コメコメはクッキングダムからやってきた妖精。コメコメと心をひとつにすれば、あたしはキュアプレシャスに変身できるよ。
 コメコメだけじゃない。あたしの元には、召喚されたサーヴァントさんもいる。
 三人で力を合わせて、あたしは頑張るからね!




「どうもー! お手伝いにきた和実ゆいです!」
「おぉ、君がゆいちゃんか! 今日はよろしくな!」
「はい! お祭りを盛り上げるために、がんばりますよ!」

 ぺこりと、思いっきり挨拶をする。
 あたし・和実ゆいはお祭りのボランティアに参加しているんだ。
 今度、この公園では町内会のお祭りが開かれるから、みんな大忙し。
 町内会の人たちと一緒に、あたしもベストを尽くすよ!


893 : ゆい、マスターに!? おいしい笑顔を守れ! ◆k7RtnnRnf2 :2023/02/03(金) 22:08:13 WQEaP/2s0

「お祭りを盛り上げるコメ!」
「うん、頑張ろうね!」

 あたしの隣にいるコメコメは、ボランティアのおばさんに挨拶してる。
 おこめのエナジー妖精で、白キツネによく似た姿の女の子だよ。頭を軽く叩けば、人間に化けられるの。
 女の子の姿になっても、コメコメはとてもかわいい。キツネの耳とシッポがついているけど、そういうアクセサリーってことにしているんだ。
 ピンクとベージュのお洋服に、真っ赤なブーツと合わさってとってもオシャレだよ。胸元のハートもキュートだからね!

「ゆいちゃんもコメコメちゃんも、とってもオシャレだね! ふたりなら、雑誌のモデルさんにもなれるんじゃないか?」
「本当コメ!? ゆいと一緒に出たいコメ〜!」
「ふふっ! コメコメと一緒に、なれるといいね!」

 ボランティアのおじさんに褒められて、コメコメは可愛くジャンプしてる。
 でも、コメコメはともかく、あたしはモデルさんになれるのかな?
 あざやかなピンク色のワンピースの上に、左胸におむすびの模様が見えるうすいピンクのベストを着ているだけ。
 履いているパンプスは小さなリボンがあって、お気に入りだけど……あたしはそこまでオシャレを意識してない。
 セミロングの髪も、リボンでツーサイドアップにまとめている。でも、オシャレよりも動きやすさを考えたからだよ。

「それじゃあ、ゆいちゃんにはこのダンボールを運んでもらいたいけど……大丈夫かい? 結構重いよ?」
「全然へっちゃらですよ! あたし、結構力持ちなので、ダンボールならいくらでも運べますし! ほら!」

 心配するおじさんをよそに、あたしはダンボールを持ち上げる。
 両手にずっしりとした重みが来るけど、これくらいならOKだよ。おいしいごはんでパワーをもらってるからね!

「おお、凄いじゃないか! なら、ゆいちゃんにお願いするけど、無理はしちゃダメだぞ?」
「はい! 頑張りますね!」

 このダンボールの中には、屋台で使うキャベツがいっぱい入ってる。
 お好み焼きやたこ焼き、焼きそばやはしまきとか、色んな料理の材料になるよ。うぅっ……想像したらはらペコった〜!
 でも、あたしは気合いを入れてダンボールを運ぶよ。みんなでお祭りのために頑張っているからね。

「ゆい、ファイトコメ!」
「ありがとう、コメコメ!」

 隣ではコメコメも応援してくれる。
 コメコメだってこのお祭りを楽しみにしてるから、もっとパワーが出てきそう。
 お祭りが始まったら、コメコメと一緒に屋台の食べものをいっぱい食べたいな。もちろん、サーヴァントさんの分も買うつもり。

(みんな、楽しそうに笑ってる。この気持ちとおいしい笑顔は、ニセモノじゃないよね!)

 あたしの周りにいる人たちはみんなNPCだよ。
 最初、何のことかわからなかったけど……この世界に生きる人たちの名前だって。
 もっと言うと、どこかの世界にいる人をコピーして生まれたみたい。
 だけど、人間やNPCかなんて関係ない。誰もが毎日を元気に生きている姿を、あたしはこの目で見てきたよ。

(この世界にいる人たちは、元の世界にいるみんなと同じように生きてるし、誰かと一緒に喜びを分け合ってる……だから、あたしもおいしい笑顔を届けないと!)

 今のあたしはお祭りを成功させるために準備してる。
 聖杯戦争や願い、それにあたしやコメコメのこれからとか、考えるべきことは山ほどあった。どれも重大だってわかってる。
 でも、このお祭りだって同じくらい大事。みんなが頑張ってるし、あたしとコメコメも心から楽しみにしてる。


894 : ゆい、マスターに!? おいしい笑顔を守れ! ◆k7RtnnRnf2 :2023/02/03(金) 22:09:10 WQEaP/2s0
「すみませーん! ダンボールを持ってきました〜!」
「おおー! 重いのに、ありがとう! ここに置いてくれれば大丈夫だからね!」

 お兄さんの明るい声に、あたしはがぜんワクワクしちゃう。
 中に入ってるキャベツは栄養満点でとってもおいしい。このキャベツを使ったおいしい料理をみんなが食べれば、お料理の妖精・レシピッピがやってくる。
 料理で幸せを感じる人たちはほかほかハートで溢れてて、そこから生まれる幸せのエネルギーにレシピッピが集まるんだ。でも、この世界にレシピッピはいない。
 もっと言えば、あたしが知ってるみんなもいないよ。拓海やマリちゃん、ここねちゃんやらんちゃんやあまねちゃん、お父さんにお母さんも……誰もいなかった。
 この世界では、とある料理屋さんで住み込みをしている。そのお店であたしはお世話になってるけど、みんながいないからちょっと寂しい。
 でも、あたしのそばにはコメコメがいるし、まるで二人だけで秘密の旅行をしているみたい!
 おいしーなタウンに帰れたら、この街で過ごした日々をみんなに教えたいな。
 大好きなみんなの顔を思い浮かべた、その直後。
 いきなり、遠くで爆発が起きて、周囲が大きく震えた!

「わわっ! な、何ー!?」
「コメー!」

 コメコメが倒れないように抱きしめながら、あたしは振り返った。
 ここから少し離れた森から煙が立ち上っていて、続けざまに爆発が起きる。
 あちこちがざわめき、このままじゃ大パニックになりそう。
 ドキドキ、とあたしの胸が音を鳴らして、おでこから汗が流れた。嫌な予感に手を強く握りしめる。

「お、おい! 大丈夫か!? あっちにも、確かスタッフが何人か来ているんじゃなかったのか!?」
「ダメだ、全然連絡が取れない!」

 お兄さんたちが焦る中、また森が爆発した。
 間違いない。聖杯戦争のため、誰かがあの森で戦っているんだ。
 みんなが楽しみにしているお祭りを台無しにするなんて許せない!

 ーーマスター! 俺が現場に駆けつけるから、君は安全な場所にいるんだ!

 頭の中に声が響く。
 念話だ。契約したマスターとサーヴァントさんが交わせるテレパシーのことで、どれだけ離れても届くよ。他の人に知られず、二人だけの内緒話も簡単だね。
 もちろん、あたしだってサーヴァントさんと念話ができるけど、コメコメは無理みたい。コメコメはあたしについてきたけど、サーヴァントさんと契約してる訳じゃないからだって。
 なんだか不公平な気がするけど……今はそれどころじゃない。

「ゆい、行くコメ!」
「うん! コメコメ、行こう!」

 コメコメと一緒にあたしは走る。
 サーヴァントさんから注意されたけど、黙って見ているなんてできないよ。
 聖杯戦争のマスターである以前に、あたしはプリキュアだから。
 傷ついている誰かがいるなら全力で助けに行かないと!

「ここなら大丈夫だね」
「カメラもないコメ!」

 誰もいない物陰に着くと、コメコメは妖精の姿に変わった。
 ぬいぐるみのように小さくて、胸元にはハートの宝石がついてる。
 くるり、と一回転して、おにぎりみたい(おむすびフォームって言うよ)になるコメコメを、あたしは両手で包む。
 コメコメと気持ちが一つになった瞬間、あたしの格好はピンク色に輝くリボンと和服に変わった。


895 : ゆい、マスターに!? おいしい笑顔を守れ! ◆k7RtnnRnf2 :2023/02/03(金) 22:10:02 WQEaP/2s0

「プリキュア! デリシャスタンバイ!」

 それは、みんなを助けられるあたしになれる魔法の言葉。
 コメコメとはじめて出会ったあの日から、何度口にしたのかもうわからない。
 あたしたちの想いに応えるように、周囲が暖かい光に包まれていく。

「パーティー・ゴー!」

 みんながおいしいごはんが食べられますように。
 パーティーのように楽しい食卓に集まって、ごはんを楽しめますように。
 どの世界にいても、あたしとコメコメの願いは変わらないよ。

「にぎにぎ!」
「コメコメ!」
「ハートを!」
「コメコメ!」

 ほかほかのおにぎりを握るように、あたしは両手でコメコメの体を包む。
 コメコメの体から出てくるのはたくさんのほかほかハート。コメコメの愛と優しさが、奇跡を起こしてくれるの。

「シェアリン・エナジー!」
「コメー!」

 気持ちをシェアした瞬間。コメコメの宝石がキラキラと輝き、あたしの体の奥底からすごいパワーがわき上がってくる。
 桃色の光は、大好きなおむすびに変わるよ。おむすびを食べると、あったかくて優しい味が全身に広がって、あたしの髪がボリュームを増しながらあざやかなピンクに染まる。お米のつぶみたいなツインテールがチャームポイントだよ。
 白い花飾りでしばられたリボンがついたカチューシャが頭に乗って、金色のイヤリングが耳にかざられる。
 ピンク色の和服は、着物とエプロンを組み合わせたオシャレなドレスに替わって、赤くてふわふわ……それにおむすびみたいな三角模様のスカートの中も、ぶあついフリルに包まれる。腰には大きなリボンが用意されているんだ。
 真っ白な手袋で両手が守られて、足袋(昔から日本に伝わるくつ下だよ!)みたいな赤いヒール、あとキュートなハイソックスが両足に履かれる。
 コメコメを優しく抱きしめると、大きなハートの宝石が胸元に現れた。コメコメとおそろいだよ。
 左脇腹にぶらさがったコメコメを2回タッチして、頭の上で両手をパンと叩いた。
 変身したあたしは空高くジャンプして、現場に向かうよ。
 助けを求める声に応えるため、あたしとコメコメは真っ直ぐに前を見つめた。
 




 鬱蒼とした森の中で、彼女は息を切らしながら走っていた。
 足下が不安定な林道では、どうしても走るペースが落ちてしまう。多種多様の植物は視界を遮っていて、まともに前を見ることも難しい。
 それでも彼女は懸命に走っている。立ち止まった瞬間に殺されてしまうからだ。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 少女は走る。息を切らしながらも走る。
 苦しい。胸が締め付けられるけど、ただ一心不乱に走った。
 後ろから爆音が響くが、振り向かずに走る。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 足元がおぼつかない。
 常日頃、体力作りの為に運動をしているが、それでも上手く走れない。疲労だけでなく、命を狙われている緊張と恐怖が彼女を支配している。
 それでも彼女は走った。少しでも力を振り絞り、真っ直ぐに走り続けていた。

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……!」

 呼吸がどんどん荒くなり、瞳から溢れる涙で視界がぼやけても、彼女は走る。
 刹那、背後の爆発で辺り一面が吹き飛び、衝撃と熱風が肌に突き刺さった。

「うあっ!」

 悲鳴と共に少女は転倒する。反射的に後ろを振り向いた瞬間、ひっと声を漏らした。
 死神は笑みを浮かべている。陽炎で視界が揺れても、背筋が凍りそうだ。


896 : ゆい、マスターに!? おいしい笑顔を守れ! ◆k7RtnnRnf2 :2023/02/03(金) 22:12:20 WQEaP/2s0

「いやっ……!」

 地獄のような光景に、顔が青ざめる。

「どうした? 逃げないのか?」

 燃え盛る火炎をものともしない声と共に、男は追いかけてくる。
 髑髏の如くマスクはおぞましく、双眸に埋め込まれた宝石は漆黒に彩られ、昼を忘れさせそうな程にどす黒い。
 漆黒と赤の二色に彩られたスーツは、所々に銀のモールドが飾られている。背中でたなびくマントを見れば、男が人ならざる異形であると、否応なく印象付けるだろう。
 だが、何よりも薄気味悪いのは左手で禍々しいオーラを放つロングソードだ。中世からそのまま持ち出したであろう西洋剣から滴り落ちる赤い色は、男が幾度となく非道を成した決定的な証拠。
 少女にとって、目の前から迫り来る男はまさに死神だった。

「な、なんなの……何で、私を……!?」
「フフッ……作り物の割には、一丁前に涙を流すのか」

 何を言われたのか理解できない。

「だが、あえて言うなら……いずれ壊れる道具でしかないお前に、俺が価値を与えているのさ」
「な、何を言って……!?」
「さあ、どうした? 生きる為に立ち上がらないのか? 逃げて、絶望し、そして俺を楽しませろ!」

 作り物?
 壊れる道具?
 何を言っているのかまるで理解できない。
 けど、このままだと死神に殺されることだけは確かだ。
 勇気を振り絞り、震える足で必死に立ち上がる。
 運動神経抜群で、幼い頃から走るのが得意だった彼女は、中高一貫して陸上部のエースとして活躍するため、トレーニングや自己管理を徹底していた。大会では上位ベスト3を維持し、各種メディアでも『期待の新星』と持て囃され、各名門大学からの推薦入試が後を絶たない。
 常人からすれば並外れた脚力を持つ彼女は、しかしたった一人の人間に過ぎず、異能からすれば虫も同然。じわじわと、確実に追い詰められていた。
 どうしてこんなことになったのか。平穏な町で充実した毎日を過ごしながら、家族や友達メと一緒に笑い合って、今日は妹と一緒にお祭りのボランティアに参加していた。
 でも、幸せは唐突に壊される。
 少女を追い詰めるのは、幽霊や怪異なんてレベルのスピリチュアルじゃない……子供向けアニメや特撮ヒーローに出てくる悪の怪人に等しかった。

「逃げないのであれば、俺がお前をもっと絶望させてやろう」

 男が鉤爪を翳すと、暗黒色のボールが稲妻を放ちながら姿を現す。
 無造作に放り投げた途端、小さな爆発が起こった。

「きゃあああっ!」

 熱を伴った衝撃によって、少女は吹き飛ばされてしまう。
 悲鳴すらも爆音に掻き消される中、彼女の体は地面に叩きつけられた。

「あ、あ……あ、あ……ああっ!」

 痛みで溢れる涙は止まらず、掠れるような悲鳴を上げる。
 不幸中の幸いか、身体はどこも吹き飛んでいない。いや、少女を確実に痛ぶるため、わざと残していた。
 もし、軽率に四肢を奪えば、痛みでショック死しかねない。サディズムな趣向を満たし続けた過程で、死に至らない程度に人を痛めつける方法も把握していた。

「う、あ、ぁ、ぁ……あ、あっ……」

 一方、まるで芋虫のような姿で、地面を這い蹲って進む少女。
 痛い。辛い。怖い。傷付きたくない。死にたくない。逃げ出したい。帰りたい。みんなの所に……みんなとまた会いたい。
 この世界で一番大好きな妹と、もっと一緒にいたい。


897 : ゆい、マスターに!? おいしい笑顔を守れ! ◆k7RtnnRnf2 :2023/02/03(金) 22:13:14 WQEaP/2s0

「フッ……無様な姿を晒してまでも生き残りたいか? ニセモノの分際で、実に愉快だな!」

 そんな少女を嘲笑う声と共に、またしても爆音が響く。
 ひっ、と声を零しながら目を瞑った。二度、三度と、熱風に肌が焼かれる。
 恐怖で震えるが、唐突に轟音は鳴り止む。思わず、瞼を開きながら顔を上げると……不気味な笑みを浮かべる死神と目が合った。

「さあ、もっと絶望してみせろ!」
「…………ッ!」

 冷酷非道な一言。
 無慈悲にも少女の脇腹が蹴られ、成す術もなく転がる。
 熱風が生易しく思えるほどの痛みだが、既に悲鳴すら零れない。ただ、蹲るしかなかった。

「……た、助けて……だれか、たすけて……!」

 嗚咽する少女には、誰も手を差し伸べない。
 ここにいるのは、絶望と死を齎そうとする死神だけ。
 死神。正位置では、終末や死の予兆などの不吉な意味を持つタロットカードであり、彼女の運命はゲームオーバーに向かっていた。

「嫌だ、嫌……こんなの、嫌……私は、私はまだ……! よしみ……よしみ……よしみ……!」

 死にたくない、という声すらまともに出ない。
 一歩、また一歩と男が踏み出していく……その時だった。

「プリキュア! プレシャス・トライアングルッ!」

 新たに森の中で響いたのは燦然とした少女の叫び声。
 同時に、眩い桃色の輝きで辺りが照らされて、反射的に瞼を閉じた。何が起こったのかわからないまま、体が浮かびあがる。
 誰かに抱き締められる温もりが全身に伝わった後、ゆっくりと下ろされた。
 恐る恐る瞼を開くと、そこには見知らぬ少女が立っていた。桃色のツインテールと、色鮮やかで可愛らしいカチューシャとコスチュームが印象的で、まるで女児向けのヒーローアニメから飛び出して来たような姿だ。
 その外見に困惑するも、少なくとも敵意は感じられない。真っ直ぐな瞳からは確かな優しさが見えた。

「ここはあたしに任せて、少しでも遠くに逃げてください!」

 強い宣言をしながら、謎の少女は男と相対した。
 そうして見えた背中はとても凛々しくて、頼もしい。ファンシーな外見とは裏腹に、ヒーローと呼ぶにふさわしいほど力強かった。
 根拠は何一つない。だけど、少女・キュアプレシャスの姿を見たことによって、助けが来た、という安堵が少女の中で生まれた。





 お姉さんを助けるため、あたしは全力のビームを発射したよ。
 ご飯を食べて生まれるエネルギーは大盛りで、ブンドル団が操る巨大な怪物・ウバウゾーだって浄化できる。
 だから、目くらましで相手を足どめして、あたしはお姉さんを抱えてその場を離れた。服が汚れて、手足にできた傷のせいで、ひどいことをされたって一目でわかる。
 でも、お姉さんは生きてる。顔が青ざめて、体が震えていたけど、あたしを見てホッとしてくれた。

「何者だ?」

 一方、辺りをめちゃくちゃにして、女の人を傷つけた相手は……不気味なマスクで顔を隠している。
 どす黒い視線とオーラが肌に刺さるけど、あたしはこぶしを強く握った。
 後ろには守りたい人がいるから、一歩でも下がっちゃダメ。
 それにあたしは一人じゃない。一緒に戦ってくれるコメコメがいるから、いくらでも頑張れる。

「あつあつごはんでみなぎるパワー! キュアプレシャス!」

 ポーズを決めながら、あたしは堂々と名乗った。
 今のあたしは和実ゆいじゃない。みんなのほかほかハートを守るため、怪盗ブンドル団と戦ってきたプリキュアの一人……キュアプレシャスだよ!
 あたしとコメコメのハートが一つになれば、どんな相手にも負けないからね。

「おいしい笑顔で、満たしてあげる!」

 両手でおむすびを作りながら、強い決意の言葉をぶつける。
 みんながごはんを食べられる毎日を守るために。


898 : ゆい、マスターに!? おいしい笑顔を守れ! ◆k7RtnnRnf2 :2023/02/03(金) 22:13:59 WQEaP/2s0

「フッ……ただの阿呆か、それとも余程のお人好しなのか」

 だけど、目の前にいる男の言葉はひややかだった。
 カチコチになったアイスよりも冷たくて、声だけで人を凍らせそう。
 顔は見えないけど、ニタニタと笑っているのはわかる。その悪意に負けないよう、あたしは相手をにらみ返した。

「どうして、この人を傷つけたの!?」
「簡単なことだ! この聖杯戦争に勝つには、確実に敵を屠る必要がある……その為に、小娘を餌にしてやったのさ!」
「え、エサ……!?」
「案の定、お前はホイホイとやってきた! その小娘を見ろ! 今でさえも絶望し、怯え、涙を流している……ああ、なんて素晴らしい顔なんだ! いい絶望じゃないか!」

 一瞬、頭が真っ白になった。
 ケラケラと笑う男の言葉がとても信じられなくて。
 聖杯戦争に勝ちたいから、お姉さんを傷つけて、ここまで追いつめたの?

「何を驚く? そいつらは、どうせ消えゆくNPC……ただの道具に過ぎない。そんなニセモノどもを相手に、何の義理が……」
「違うっ!」

 その先を言わせないため、あたしは叫ぶ。

「この人はちゃんと生きてる! 道具なんかじゃないし、一生懸命に生きて、おいしいごはんを毎日食べてるんだよ! それをバカにする権利なんて誰にもない!」

 あたしは知ってる。
 この世界の人たちはNPCで、確かにいつか消えるかもしれない。
 でも……みんなは心から笑って、自分で考えて、お腹をすかせて、ごはんだっていっぱい食べてる。
 この世界にいる人たちは、あたしに喜びをわけてくれたから。
 誰もが毎日を元気に生きている姿を、あたしはこの目で見てきたよ。

『ゆいちゃん! コメコメちゃん! 今度、店で出す新メニューのギガ盛りオムライスだけど……よかったら、一足先に食べてみるかい?』
『えっ!? い、いいんですか!? こんなに、大きくてほかほかのオムライスを!』
『全然、OKだよ! 二人とも、いつもうちの為に頑張ってくれてるからね!』
『ありがとうございます! では、お言葉に甘えて……おおっ、デリシャスマイル〜!』
『ふんわりしてるコメ!』

 この前、料理屋さんの店長さんは、あたしとコメコメの為にオムライスをごちそうしてくれた。
 ふわふわで暖かい卵とケチャップの味や、スパイスがほんのり効いたライスが口の中で広がって、体にパワーがみなぎる。
 ドームのように大きくて、店長さんのハートと情熱が伝わったよ。

『ゆいお姉ちゃん、おはよ〜!』
『なぁ、ゆい姉ちゃん。今度俺にサッカー教えてくれよ!』
『えぇー? 私が、ゆいお姉ちゃんにお料理を教えてもらうのが先でしょ!』
『大丈夫! サッカーもお料理も、あたしはどっちも教えてあげるから!』
『コメコメも手伝うコメー!』

 近所に住んでる双子の姉弟とも仲良くなった。
 お料理が好きなお姉ちゃんと、サッカーが好きな弟くん。二人とも、元気いっぱいにおいしい笑顔を見せてくれる。
 あたしとコメコメは、二人のお姉さんになったんだ。一緒に遊んで、時にはお泊まり会もしてる。
 二人とも天使みたいに可愛いよ。

『ゆい、今度部活の助っ人お願い!』
『和実さん……荷物運び、手伝ってくれてありがとう』
『和実、今度のテスト頑張れよ〜』

 この世界で通う学校でも、あたしはたくさんの友達ができた。
 私立しんせん中学校じゃない別の学校。生徒も先生も、みんな知らない人だけど、あたしに優しくしてくれる。部活や学校行事とか楽しいことでいっぱいだよ。
 勉強やテストは苦手だけど、授業についていけてる。拓海たちの代わりに、クラスの先生が勉強を教えてくれたおかげだよ。


899 : ゆい、マスターに!? おいしい笑顔を守れ! ◆k7RtnnRnf2 :2023/02/03(金) 22:16:12 WQEaP/2s0
「この世界には、優しい人がたくさんいる! そのあったかい気持ちはニセモノじゃないよ!」
「そうか……なら、クズどもと共に消えてしまえっ!」

 ぶつけあった言葉が、戦いのゴングになる。
 先手必勝! 風のような勢いで、あたしは地面を蹴った。
 一瞬で敵の前に近付いて、真っ直ぐにパンチする。けど、相手がジャンプしたせいで避けられた。
 顔を上げた瞬間、空中に飛んだ敵は両手をあたしに向けている。手のひらでは、真っ黒なエネルギーがバリバリと音を鳴らしていた。

「フンッ!」

 勢いよく放り投げてきたエネルギー弾を、左右に飛んで避ける。
 周りが爆発して、ピリピリと音を鳴らしながら熱風が襲いかかった。

「うわっ!」

 でも、あたしは耐えるよ。
 ここで倒れるわけにはいかないし、襲われたお姉さんの痛みはこの程度じゃない。
 怖くて、苦しくて、助けを求めて泣いていた。
 それでも、最後まで諦めずに前を向いて一生懸命走っていた。
 だからあたしは戦うよ。
 時にはジャンプして、時にはしゃがんで、エネルギー弾を避けながら、全力で走った。

「フハハハハハハッ! どうした、逃げてばかりでは俺は倒せんぞ?」

 後ろから響いてくる男の声。
 それに構わず、ジグザグを描くようにあたしは走る。
 部活の助っ人に頼まれる自慢の足があれば、誰にも捕まらないから。
 やがて森を抜け出すと、広い原っぱが目に飛び込んだ。おいしーなタウンの公園みたいに穏やかで、心地よい風に草木が揺れてる。
 この原っぱには誰もいない。ホッと胸をなで下ろしながら、あたしは振り向く。

「なるほど……お前が囮になって、ここまで俺をおびき寄せたのか」

 フン、と男は鼻を鳴らした。

「そうだよ。ここなら、あの人を巻き込まれないからね!」
「ご苦労なことだ! だが、聖杯戦争に参加したマスターは、俺以外にいくらでもいる……そいつらに狙われるかもしれないぞ?」

 男の言葉に、あたしは顔をしかめちゃう。
 確かに、あたしがこの人と戦っている隙に、あのお姉さんは誰かに襲われるかもしれない。
 聖杯を狙うマスターはたくさんいて、今も悪さを企んでいる可能性は充分にある。

「そうなる前にあたしがあの人を助けてみせる!」

 だからこそ、あたしは強く宣言した。

「助ける、だと?」
「あなたの悪巧みだって止める! もう二度と、誰かを絶望させたりなんかしない!」
「たった一人で俺と戦えるとでも思っているのか?」
「思うよ! だってあたしはプリキュアだから!」
「負けないコメ!」

 小馬鹿にしてくるけど、そんな言葉にあたしとコメコメは負けない。
 確かに、あたしと一緒に戦ってくれた友達はいない。プリキュアのみんなも、マリちゃんも、ブラペもここにいなかった。
 でも、あたしは一人じゃない。コメコメやサーヴァントさん、それにこの世界で出会えた優しい人たちとの絆があるから。

「ハッ、身の程知らずが!」

 吐き捨てるような言葉と共に、連続で発射されたエネルギー弾。
 どとうの勢いで襲いかかるけど、あたしは真っ向から迎え撃った。プリキュアならではの素早さと反射神経を活かして、両腕を振ってたたき落とす。
 後ろで起きた爆発を追い風にして、いっきに距離を詰めながらパンチを放つよ。


900 : ゆい、マスターに!? おいしい笑顔を守れ! ◆k7RtnnRnf2 :2023/02/03(金) 22:17:05 WQEaP/2s0

「たあっ!」

 あたしの拳はまっすぐに進むけど、受け止められちゃう。
 ガキン! って、鋭い音が響いたのと、同じタイミングだった。
 いつの間にか、その手に握った一本の剣でパンチを防がれちゃった。でも、衝撃はちゃんと届いていて、男を吹き飛ばしたよ。

「ぐっ……!」

 この一撃に、男は初めてうめき声をもらす。
 すぐにあたしは正拳突きを打ち込むけど、男は軽々とよけて、剣を振り下ろした。
 不気味に黒く染まった刃を、あたしは受け止める。真剣白髪ネギ!(真剣白刃取りだった……)が決まったよ。
 でも、次の瞬間…………男はもう片方の手からエネルギー弾を発射させた。

「うわあぁぁっ!」

 なすすべもなく、この体は大きく飛んじゃう。
 すぐに着地するけど、あたしの怒りがさらに燃えあがる。もしも、あのお姉さんが一発でもエネルギー弾に当たったら、体がバラバラにされた。
 爆発の炎で目の前が揺れる中、あたしは改めて構えたよ。

「ほう? 並の人間なら、容易く消し飛ぶはずだがなぁ!」

 男は猛スピードで突っ込んでくる。
 確かに、普通の人にとって危険な技だった。あのエネルギー弾を受けたらあたしだって痛いよ。
 でも……

「言ったはずだよ。あたしは、あなたの悪さを止めるって」

 鋭い刃を紙一重で避けて、あたしはカウンターの回し蹴りを放つ。
 また、剣で防がれた。素早くパンチしても、この剣は折れそうにない。
 プリキュアの攻撃を防ぐなんて、絶対に普通の武器じゃなかった。魔術師や聖杯戦争のことはまだあまり知らないけど、こんなに頑丈な剣を作れるんだ。
 驚いていると、男は剣をまた振り下ろしてくる。一振り、二振り、上下左右に刃が迫る。ダイコンやタマネギみたいに切られないよう、あたしは避けるよ。
 あたしだけじゃない。コメコメだって怪我しないように立ち回ってる。
 みんながいないから、ブンドル団との戦い以上に気をつけないと。

「そうやって、お前は正義の味方を気取るか」

 後ろに下がった直後、言葉をぶつけられる。

「NPCごときを助けて、ヒーローにでもなれたか?」
「ごとき、じゃない! あのお姉さんは、ちゃんと生きてるから!」
「その為に、奇跡にすがるしかなくなった者を、お前は突き放すのか」

 その声はさっきとは違った。
 あたしやお姉さんを見下しているわけじゃない。何か、別の想いを抱えているように聞こえちゃう。
 その変わりように、あたしは思わず足を止めた。

「聖杯を求めて戦うマスターはごまんといる。俺や、そいつらの願いを踏みにじり、お前一人がヒーローになれればそれで満足だろうなぁ?」
「願い……」
「この世界にいるマスターは、多かれ少なかれ願いを持っている。お前もそうだから、招かれたんじゃないのか?」

 最後に残った主従には、どんな願いでも叶う聖杯が与えられる。
 心からの願いがあるから、みんなは必死になって戦っているし、この男だって気持ちは同じ。
 もちろん、あたしだって願いはあるよ。おいしいご飯と「ありがとう」の言葉を分け合って、みんなで笑顔になれたらいいなって、いつも夢見てる。
 でも、それはあたしが……あたしが大切なみんなと力を合わせて叶えるからこそ意味がある。
 他の人を傷つけて、聖杯の力に頼ってもおいしい笑顔になれない。


901 : ゆい、マスターに!? おいしい笑顔を守れ! ◆k7RtnnRnf2 :2023/02/03(金) 22:18:40 WQEaP/2s0

「それとも、みんなで仲良くおててを繋いで、夢に向かって努力しましょう、とでも言うつもりか? 反吐が出るッ!」

 男は怒っていた。
 心からの怒りをあたしにぶつけている。
 酷いことをしてでも、叶えたい願いがあるんだ。
 その気持ちが間違っているって決める権利はあたしにはない。

「あなたにも、願いがあるのはわかるよ」
「ハッ。それなら、大人しく死んでくれるのか?」
「ううん、違う!」

 それでも、あたしは認めなかった。
 だって、大切な人がいなくなる辛さと痛みをあたしはよく知っているから。
 あたしにたくさんのことを教えてくれたおばあちゃん。
 大好きなおばあちゃんが亡くなった日、あたしはいっぱい泣いた。
 もうおばあちゃんには二度と会えないんだと知って、あたしの胸が張り裂けそうになった。
 でも、あたしの周りにはみんなが……拓海たちがいたから、あたしは悲しみを乗りこえられた。
 だからこそ、その悲しみを他の人に背負わせたくないし、誰も理不尽な犠牲になって欲しくない。

「あたしは、みんながおいしい笑顔でいられる毎日を守るため……全力で戦う!」

 おばあちゃんが教えてくれたおいしい言葉と笑顔を、あたしはずっと忘れないよ。
 優しくて暖かかったおばあちゃんを裏切りたくないし、そうしたらあたしのお腹は何をしてもふくれない。
 おばあちゃんからバトンを受け取って、あたしだけの想いをみんなに伝えるの。
 熱いお鍋を一生懸命に振れば、ホカホカのごはんができあがる。
 どんなごはんも毎日のパワーになってるから、ちゃんと作らなきゃ後悔する。
 あたしが今やるべきことは……自分の想いをぶつけるだけ!

「あたしはみんなでおいしいご飯を食べたい! そこには、あなただっていなきゃダメだから!」
「ほざけぇっ!」

 あたしが真っ直ぐに突き出したこぶしは、男が振り下ろす刃と激突した。
 衝撃で風がピリピリ震えて、互いに押し合うけど。

「むっ!?」

 驚きの声をあげる男。
 パキン! という豪快な音がして、その手に持つ剣が根元から折れた。
 力を込めて、あたしがこぶしを何度もぶつけたおかげだね。

「……どうやら、お前を侮っていたようだ。よもや、神秘が宿った魔剣が折られるとはな!」

 でも、男は態度を崩さない。
 折れた剣を投げ捨てると、あたしに手の甲を見せつけるようにかざす。
 そこに刻まれているのは、複雑な赤い模様……令呪だった。

「やむを得ん。令呪を以って命ずる……プリキュアを殺せ、バーサーカー!」

 男が叫ぶと、令呪が光り輝いて。

「ヴォオオオオオオォォォォォォォォォッ!」

 猛獣みたいな叫びと共に、辺り一面が大きく震えた。
 ドン! と地面が大きく揺れる音に、あたしは思わずジャンプする。
 振り向いた先では、頑丈な鎧を身にまとった人が立っていた。


902 : ゆい、マスターに!? おいしい笑顔を守れ! ◆k7RtnnRnf2 :2023/02/03(金) 22:20:20 WQEaP/2s0
「ヴォオオオオオオオォォォォォォォッ!」

 不気味なおたけびを上げながら、ギラギラと目を光らせる。
 バーサーカー。本能のまま暴れて、相手を容赦なく痛めつけるサーヴァントだ。
 背丈こそは大人と変わらなくても、ウバウゾーみたいに危険な相手だよ。
 頭に入った聖杯戦争の知識が、あたしに忠告している。

「さぁ、そいつを叩き潰してしまえ!」

 男はバーサーカーをここまで呼び寄せたんだ。
 マスターが令呪を使えば、サーヴァントはどんな命令でも聞いてくれるし、遠く離れた所からも駆けつける。
 でも、令呪は三つしか与えられない。いざという時の切り札なのに、こんな早く使うなんて。

「ヴォオオオオオオオォォォォォォォォッ!」

 あたしの命を奪おうと、バーサーカーは真っ黒な大剣を振り下ろす。
 まるで巨木のようで、さっきまで男が振るっていた剣より遙かに大きい。
 ブゥン! と、風が吹くほどの勢いに、あたしは素早く回避する。
 こんなに大きな剣を軽々と振り回す腕力だから、きっと歴史に名をのこしているはず。
 拓海やマリちゃん、それにここねちゃんやあまねちゃんなら、このバーサーカーがどんな英雄なのか知っているかな?
 ……って、今は戦いに集中しなきゃ。

「ちょこまかと飛び回るだけかっ!」

 敵はバーサーカーだけじゃない。
 黒いエネルギー弾を放り投げるマスターの男もいた。剣が折られても充分に戦えるからね。
 あたしのほっぺに汗が流れた。
 強いマスターとサーヴァントを、あたしは同時に相手をしている。
 目の前ではバーサーカーの大剣、遠くからは男のエネルギー弾がそれぞれ襲いかかる。
 二人の攻撃を避けるのが精一杯で、反撃するチャンスがつかめない。
 この世界ではじめての戦いはとても過酷だった。
 
「プレシャス〜!」

 でも、あたしは弱音を吐かないよ。
 コメコメはあたしをいつだって応援してくれるから。
 何よりも、コメコメはあたしみたいなヒーローになりたいって言ってくれた。
 その気持ちを知ったとき、あたしは心の底から嬉しくなったよ。
 コメコメが憧れるヒーローになるためにも、あたしは頑張りたい。

「大丈夫だよ、コメコメ」

 だから、コメコメを心配させないよう、あたしはハッキリと答える。

「あたしは絶対に負けないから」

 今は真っ直ぐに前を見るだけ。
 横一文字に振るわれるバーサーカーの大剣をしゃがんで避ける。 
 男が発射するエネルギー弾を両手ではじき返す。
 あまりの速さだけど、あたしなら大丈夫。だってあたしはキュアプレシャスだから。
 決意を固めて、バーサーカーの鎧にパンチを打ち込む。
 硬い鎧とこぶしがぶつかり合う音が響くよ。にぶくて重い感触に、あたしは顔をしかめる。
 でも、バーサーカーはわずかに後ずさった。


903 : ゆい、マスターに!? おいしい笑顔を守れ! ◆k7RtnnRnf2 :2023/02/03(金) 22:21:28 WQEaP/2s0

「ヴォアアアアアァァァァァァァッ!」

 叫びをあげながら、バーサーカーはブンブンと大剣を振り回し始めた。
 風圧だけで周りも破壊する刃を、あたしは一つずつ確実に回避する。
 令呪の命令なんて関係なく、バーサーカーは怒ってる。
 ほんの少しだけど、今の一撃は確かなダメージになっていた。
 息もつかせない勢いで迫る剣を避けて、あたしはうしろに飛ぶよ。

「やあああああぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 いきおいをつけながらジャンプして、一回転しながらキックした。
 バーサーカーの大剣に受け止められて、激突の衝撃でピリピリと空気が震える。
 すぐさま刃を踏み台にしながら高く飛び、あたしは右腕に全力を込めた。
 みんなの思い出を守るために。
 おいしいご飯が食べられる毎日を作るために。
 そんな願いを込めながら、あたしは地面に着地する。
 ほかほかのエネルギーが集まった腕から、まぶしくて暖かい光が放たれた。

「2000キロカロリー……」

 あたしは全力でダッシュする。
 目にもとまらぬ速さでバーサーカーは走るけど、その勢いに負けないように。
 迫る大剣より、あたしの方が早かった。
 バーサーカーのうなり声に対して、あたしも天をつくような大声を出して、全力の一撃をつきだした。

「……パアアアアアアアアァァァァァァァァァァァンチッ!」

 気合いと共に、あたしの決め技をバーサーカーにたたき込む。
 ドゴン! とはげしい音が辺りに響いた。
 左腕から解放された圧倒的なエネルギーは、パンチの勢いと合わせてバーサーカーを宙に高く吹き飛ばす。

「何!? まさか、宝具を展開したバーサーカーを吹き飛ばすだと!?」

 あたしの技がクリーンヒットして、男はまた驚く。
 宝具……それは、サーヴァントの切り札だよ。サーヴァントごとに特徴は変わるけど、宝具を使えば当時の伝説が再現されて、全力を出せる状況になるみたい。
 宝具を使ったバーサーカーは、いつもよりパワーアップしている。
 でも、その状態のバーサーカーを吹き飛ばしたことを、男は信じられないんだ。


904 : ゆい、マスターに!? おいしい笑顔を守れ! ◆k7RtnnRnf2 :2023/02/03(金) 22:22:13 WQEaP/2s0

 人間はサーヴァントを倒せない。これは、聖杯戦争において覆しようのない大前提だ。
 戦闘機や核爆弾でも、サーヴァントからすればそよ風に等しい。如何なる武術を体得していようとも論外だ。
 戦闘力の大小に関わらず、神秘を有していなければあらゆるサーヴァントに傷一つ負わせられない。
 神秘及び奇跡を再現する高度の魔術が絡めば、サーヴァントとも戦える可能性を有している。しかし、対魔力のスキルが備わるサーヴァント相手では意味がない。
 故に、神秘を宿さない限りサーヴァントの打倒は夢のまた夢。


 だが、サーヴァントと渡り合える力を持っていればどうか?
 後世に名を遺す偉業を成し遂げた英雄が、人々の信仰を元に祭り上げられたことで、英霊の座に登り詰めた存在。それがサーヴァントだ。
 伝説や神話など、相応の逸話によってサーヴァントは現世に召還される。
 そんなサーヴァントを相手にする少女・和実ゆいはプリキュアだ。
 和実ゆいが変身するキュアプレシャスは、クッキングダムに伝わる伝説の戦士……デリシャスパーティプリキュアの一人。
 クッキングダムに留まらず、ゆいが生きる地球すらも救うほどの偉業を成し遂げた逸話を持つ。
 出会った人々と心を通わせ、未来ある子どもたちの応援を背負うごとに、無限の力を分かち合っている。
 摩訶不思議で、常識では計りきれないほどのパワーで巨悪と戦い続けた。
 例えサーヴァントが相手だろうと、存在そのものが伝説であるプリキュアに立ち向かえない道理はない。


 されど、それはキュアプレシャスの勝利とイコールにならず。
 ここで猛威を振るうのは、後世に名を残した一騎当千のサーヴァント。
 戦乱を生きるため、修練に修練を重ねた紛れもない英雄だ。バーサーカーのクラスで現界して理知を失おうとも、武力は微塵も衰えず、むしろ研ぎ澄まされたまま。
 総合的な力で言えばキュアプレシャスも充分に優れている。マスターはもちろんサーヴァントにも引けを取らない。
 だが、彼女が対峙するバーサーカーは、数え切れない程の闘争を生き抜いた武人。
 いかに優れたスペックを誇ろうと、戦闘経験ではどうしても越えられない壁がある。
 ましてや、今はサーヴァントとして召喚された身。
 高出力の決め技を受けたとしても、たった一撃で崩れるなどありえない。



「ヴォ……ヴォオオオオオオオオォォォォォォォッ!」

 立ち上る煙から聞こえる叫び声。
 次の瞬間、ジェット機のように突っ込んでくるバーサーカーが、こぶしを振ってきた。
 素早く、あたしは両腕でガードするけど。

「きゃあっ!」

 もの凄い衝撃に、この体が軽々と吹き飛ばされちゃった。
 ゴロゴロと地面を転がって、雷が落ちたように腕がしびれちゃう。
 全身も痛むけど、あたしは立ち上がる。
 キッ、と前を見ると、バーサーカーは大剣を構え直していた。

「ヴォオオオオオオオォォォォォォォォ……ッ」

 さっきまでとは違って、その声は落ち着いている。
 でも、油断しているようには見えない。むしろ、ゆっくりとあたしに近づいていた。
 マスターの男だって、反対側から距離をつめてくる。


905 : ゆい、マスターに!? おいしい笑顔を守れ! ◆k7RtnnRnf2 :2023/02/03(金) 22:23:44 WQEaP/2s0

「ククッ、バーサーカーにダメージを与えたことは心底驚いたが……これでお前も終わりだ」

 意地の悪い笑い声と共に、手のひらをあたしに向けた。
 エネルギー弾を発射しようとしているんだ。
 それを避けたら、今度はバーサーカーが襲ってくる。
 あたしの逃げ道を塞ぐように、左右からじりじりと迫る二人。

「そら、令呪でも使ってサーヴァントを呼んだらどうだ? 助けて、サーヴァント! ってな……もっとも、俺達がお前を殺す方が早いだろうが」

 挑発している。
 あたしを追いつめて、サーヴァントさんを苦しめようとしているんだ。
 マスターのあたしがいなくなったら、サーヴァントさんは一気に不利になるから。

「せめてもの慈悲だ。苦しまないように殺してやろう」
「そんなつもりはないよ」
「何?」
「あたしはここで倒れないし、あなたたちの命だって奪わない。あたしは何度傷ついたって、絶対に諦めないよ! つらいこととも、真っ直ぐに向き合ってみせる!」

 みんながおいしいご飯を食べられるようになって欲しい。それが、あたしがキュアプレシャスに変身する理由だよ。
 とても難しい道だってわかってる。
 誰かを傷つけてでも、願いを叶えたいって人がいることを知っている。
 それなら、お互いに納得するまで話し合うだけ。
 そのために力が必要なら、あたしはいくらでも強くなってみせる。
 今まで何度もそうしてきたし、これからだって曲げるつもりはない。

「フン、どこまでも耳障りな戯言を……バーサーカー!」
「ヴォオオオオオオオオオォォォォォォォォッ!」

 でも、あたしの想いは届かない。
 男の右手にエネルギーが集まって、バーサーカーは叫ぶ。
 まるで、あたしの夢なんて無価値だと言われているみたいだった。

「あたしは負けない! みんなの夢を守って、おいしいご飯を食べるために!」
「がんばるコメー!」

 あたしとコメコメの声が重なる。
 無意味でも、無価値なんかでもない。
 今、あたしたちが戦っている理由は、優しい気持ちを守るため。ブンドル団からみんなのおいしい思い出を守ってきたのと同じ。
 ここであたしたちが諦めたら、誰がNPCさんの思い出を守るの?
 だから、あたしは走る。どれだけ傷ついても、この想いだけは捨てちゃいけないから。

「ーーーーよく言った」

 あたしの気持ちに応えるように、綺麗な声が風に乗りながら。
 ばさり、と翼の広がる美しい音が聞こえた。

「それでこそ、君たちは俺のマスターだ」

 ふわりと白い羽が目の前を横切って。
 あたしとコメコメの決意を認めてくれるその声を知っている。
 だって、あたしとコメコメがこの世界に連れてこられてから、神々しい光と共に現れたから。


906 : ゆい、マスターに!? おいしい笑顔を守れ! ◆k7RtnnRnf2 :2023/02/03(金) 22:26:07 WQEaP/2s0
「アイン・ソフ・オウルッ!」

 突然、まばゆい輝きに辺りが照らされて。
 降り注いだ閃光の雨が、バーサーカーの巨体を遠慮なく飲み込んだ。
 視界の外から、あたしを守る影が背中を見せてくれたのはそれからすぐだよ。

「大丈夫か、マスター?」

 振り向きながら、すごくきれいな顔だちを見せてくれるお兄さん。
 背は高くてスタイルがよく、TVや雑誌のモデルさんみたい。
 ふわふわした茶髪はやや長く、前髪の下にあるつり目はまるでトパーズみたいに光ってる。鼻筋やあごもきれいにとがり、くちびるだって美しい。
 鎧は黒と金の二色にきらめいて、腰当てからは真っ白な布がたなびいてるよ。
 だけど、一番目を引くのは……背中から大きく広げた六枚の羽で、おとぎ話に出てくる天使みたいだった。

「セイバーさん!」

 そう。
 このお兄さんこそ、セイバーさん。
 あたしとコメコメを守ってくれるサーヴァントになってくれた人。
 本当の名前は……いいや、真名はサンダルフォンさん。
 聖杯戦争で、サーヴァントの名前は簡単に口にしちゃいけないから、気をつけないと。

「突如消えたと思いきや、まさか俺のマスターを襲っていたとは」

 剣を構えながら、サンダルフォンさんは真っ直ぐにバーサーカーをにらむ。
 もしかして、先に現場に着いたサンダルフォンさんはこのバーサーカーと戦っていたの?

「ヴォオオオオオオオォォォォォォォォッ!」

 バーサーカーの叫びが答えだね。
 起き上がったバーサーカーはするどい目をサンダルフォンさんに向ける。さっきまで戦っていたあたしは眼中になさそう。
 でも、あたしとサンダルフォンさんの技を受けたせいで、構えがぎこちない。

「クッ……まさか、ここまでハイレベルのサーヴァントを従えているとは……!」

 サンダルフォンさんを前に、マスターの男は震えていた。
 一目見ただけで強さを肌で感じたはず。
 あたしを含めて聖杯戦争のマスターになった人は、サーヴァントのステータスを目で見られるようになったんだ。
 サンダルフォンさんのステータスは、ほんとうに凄かった。筋力や魔力、あと幸運とかいっぱいあるけど……ほとんどがAやBの判定を受けてる!

(こうして見ると、サンダルフォンさん……なんだか、学校のテストで全教科満点を取った人みたいだね)

 サンダルフォンさんは頭もいい。
 生前のサンダルフォンさんは『天司』って呼ばれてて、みんなを空から見守っていた凄い人だよ。
 『天司』をまとめるリーダーは『天司長』って呼んで、サンダルフォンさんはその天司長をつとめたからステータスも高いんだね!
 もちろん、敵のバーサーカーも強かったよ。
 でも、サンダルフォンさんと戦ったら、無傷じゃすまない。
 見えないところで、あたしはサンダルフォンさんに助けられたんだ。
 胸が暖かくなったその時だった。

「おねえちゃーん! おねえちゃーん! どこー!」

 突然聞こえた声に、この場にいる全員が目を向けちゃう。
 そこには、4歳くらいの小さな女の子がひとりで泣いていた。


907 : ゆい、マスターに!? おいしい笑顔を守れ! ◆k7RtnnRnf2 :2023/02/03(金) 22:26:37 WQEaP/2s0
「ク、ハーーーーッ!」

 不気味に笑う男に、女の子はおどろく。
 女の子をめがけて、男が腕を伸ばすのを見たあたしは。

「あぶない!」

 わき目も振らずにダッシュする。
 戦いの最中だってわかっているけど、緊急事態だから。全力で走らないと間に合わない。
 後ろから、エネルギー弾が放たれる音が聞こえるけど関係ない。
 女の子をかばうように抱きしめたとたん、あたしの背後で爆発が起きた。

「きゃあああぁぁぁっ!」

 腕の中で女の子が悲鳴を上げちゃう。
 この子を守るため、あたしは歯を食いしばった。背中が燃えるように熱いけど、ガマンする。
 二発、三発とエネルギー弾が襲いかかるけど、絶対に倒れたりしないよ。

「マスターッ!」

 爆発音にまざったのはサンダルフォンさんの叫び。
 女の子の悲鳴と羽が広がる音、バーサーカーの声が耳の中で一気に暴れ回って、頭の中がパニックになりそう。
 でも、爆発音だけがいきなり鳴りやんで、背中の衝撃も止まる。
 ズキズキとした痛みを感じながら、あたしは振り返ると…………もうあの男たちはいなかった。
 きっと、女の子を囮にして、自分たちだけ逃げたんだね。

「ケガはない?」

 女の子を安心させるため、にっこりと笑顔を見せる。
 小さな体は暖かくて、とてもやわらかい。丸みがあるショートボブはサラサラしてて、丁寧にセットされてるって一目でわかる。
 たくさんの人からおいしい思い出をもらっている子なんだね。

「……うん! ありがとう!」

 ほんわかと笑う女の子に、あたしはホッとした。
 よかった、泣きやんでくれたよ。
 人間とかNPCとかなんて関係ない。さっきのお姉さんもそうだけど、かけがえのない命だってことは変わらないんだ。

「プレシャス、大丈夫コメ?」
「あたしならへっちゃらだよ、コメコメ!」

 コメコメだってケガはなさそう。
 そんなコメコメを、女の子はまじまじと見つめている。すると……

「かわいい〜!」
「コメ!?」
「あなた、コメコメちゃんっていうの? はじめまして! わたし、よしみっていうの!」

 目をキラキラさせながら、女の子……よしみちゃんは楽しそうに笑う。
 ビックリするコメコメのほっぺを、よしみちゃんはぷにぷにといじった。
 ふ、ふたりともかわいい〜!
 胸がほかほかと暖かくなって、あたしは思わず抱きしめたくなる。
 でも、よしみちゃんは迷子だから、早くお姉さんを探してあげなきゃ。はぐれたお姉さんだって、きっとよしみちゃんを心配している。

「おねえちゃん、おなまえは?」
「あたし? あたしはね、キュアプレシャス! よしみちゃんを助けに現れた、スーパーヒーロー……プリキュアなんだ!」
「キュアプレシャス……かわいくて、かっこいい〜!」
「ありがとう! ねえ、よしみちゃん。あなたのお姉ちゃんって……」
「よしみー! どこにいるの、よしみー!?」

 立ち上がろうとしたその時だった。
 坂の上から、あの男に襲われていたお姉さんが走ってきた。息をきらしながら、不安そうな顔できょろきょろと辺りを見渡している。
 あれ。今、お姉さんは『よしみ』って口にしたよね?
 じゃあ、よしみちゃんの探してる『おねえちゃん』って……


908 : ゆい、マスターに!? おいしい笑顔を守れ! ◆k7RtnnRnf2 :2023/02/03(金) 22:27:36 WQEaP/2s0

「おねえちゃんだー!」

 腕の中で、よしみちゃんは高い声をあげた。
 その声にお姉さんは気づいて、こっちに駆けよってくる。でも、足元がふらついていて、今にも転びそうだった。

「よしみ……よしみ……っ!」
「待つんだ! 転んでケガをしたら危ない……マスター!」
「はい!」

 お姉さんを支えてくれるサンダルフォンさん。
 戦いで周りはメチャクチャになってるから、足がつまずかないようにしてくれたんだ。
 だからあたしは、よしみちゃんをだっこしながらお姉さんの前まで歩くよ。

「よしみちゃんなら、ケガはありませんよ!」
「あ、ありがとう……本当に、ありがとう……!」

 よしみちゃんを抱きしめながら、お姉さんは何度も頭を下げた。
 男に痛めつけられても、この人はずっとよしみちゃんを探していたんだ。
 怖くて、苦しかったはずだった。
 自分のいないところで大切な家族が傷つくなんて、考えただけでもつらいからね。

「よしみ……よかったぁ……本当に、よかったぁ……!」
「おねえちゃ〜ん! こわかったよ〜!」
「ごめんね……! お姉ちゃん、よしみとはぐれちゃって……本当に、ごめんね……!」

 緊張感がほぐれたのか、お姉さんとよしみちゃんはいっぱい泣いた。
 でも、二人は心から幸せそうで、あたしの胸にも暖かい気持ちが広がる。
 よかった。
 本当に、助けられてよかった。
 目の奥が熱くなって、ひとすじの涙がほっぺに伝ったよ。

(マスター。水を差すようで悪いが、長居はナンセンスだ)

 サンダルフォンさんが念話を飛ばした瞬間、鳴りひびくサイレンが聞こえてきた。
 森で爆発や騒ぎが起きたから、誰かが通報したはず。遠くに目を向けると、何台ものパトカーや消防車がこっちに近づいていた。

(俺たちの存在を迂闊に知られるわけにはいかない。これ以上は余計なリスクを招く)
(でも、このまま二人をほったらかしにするなんて……)
(彼女たちは、この世界のNPCに保護してもらおう。聖杯戦争は、誰かに知られていい戦いではない)

 その念話に、あたしは何も言えなくなる。
 そう。聖杯戦争はみんなに知られたらダメなんだ。
 聖杯戦争のマスターとサーヴァントはどこにいるのかわからない。
 あたしがマスターだって知られたら、周りの人たちが戦いに巻き込まれるって、サンダルフォンさんは言ってた。
 それはあたしもわかる。プリキュアになってブンドル団と戦っていたことも、みんなにはナイショだった。
 もしも、あたしの正体がバレたら、おいしーなタウンのみんなを心配させちゃうからね。

「ごめんなさい……あたしたちはもう行くけど、できれば秘密にして欲しいです! お願い!」

 必死に頭を下げる。
 本当ならちゃんと説明してあげるべきかもしれない。
 何が何だかわからないまま襲われて、命すらも奪われそうになったんだから。
 でも、あたしが聖杯戦争のマスターだって知られちゃいけない。
 あたし一人じゃなく、コメコメやサンダルフォンさんのことも考えなきゃいけないけど……もどかしい気持ちでいっぱいになる。


909 : ゆい、マスターに!? おいしい笑顔を守れ! ◆k7RtnnRnf2 :2023/02/03(金) 22:29:06 WQEaP/2s0
「二人は怖い目にあったのに、こんなことを言うのは無責任だってわかってる! でも、あたしたちのことは……知られちゃいけないの! だから……!」
「……いいよ」
「えっ?」
「あいつらは許せないけど、あなたは……キュアプレシャスは、命の恩人だから。何か、理由があるなら……私たちは秘密にする。よしみも、秘密を守ってあげて?」

 あっけに取られるあたしに、お姉さんはほほえんでくれた。

「うん! わたしは、ないしょにするよ! わたしと、としえおねえちゃん、それとキュアプレシャスとコメコメちゃんに……そこのおにいちゃんも! みんなだけのひみつだね〜!」

 お姉さん……としえさんに続いて、よしみちゃんもニッコリと笑う。
 二人の笑顔は、あたしたちにとってこの上ない贈り物だ。秘密を守ること以上に、ずっと大きな価値がある。

「ありがとう……二人とも、本当にありがとう!」
「えっと、それよりも…………あなたたち、大丈夫? 警察の人が来そうだけど……」
「そ、そうだった! それじゃあ、としえさんとよしみちゃん、さようなら! 気をつけて、帰ってね!」
「うん! バイバイ、キュアプレシャス〜!」

 二人に手をふって、あたしは背中を向ける。
 サンダルフォンさんと一緒に全速力でこの場から走り去った。プリキュアとサーヴァントの足なら、警察の人が来るより先に離れられるよ。
 もちろん、逃げる最中だって周りに気をつけてる。逃げ遅れた人がいないか、誰かに見られていないか……心配ごとは山ほどあった。
 でも、心ははずんでいるよ。だって、大切な思い出や笑顔を守れたから。





 誰もいないところで変身をといてから、あたしは公園に戻ったよ。
 森で起きた戦いのせいで、ボランティアの人たちはてんやわんやになってた。
 聞いた話によると、今度のお祭りは中止にするみたい。聖杯戦争がらみの事件があったから、仕方ないよね……
 不幸中の幸いは、亡くなった人は誰もいないこと。軽いケガをした人はいるけど、命に別状はないよ。
 それだけを聞けて、あたしは心の底からホッとした。
 きちんとケガを治せば、またいつかお祭りができるからね。

「二人とも、話がある」

 人気のないところでサンダルフォンさんと顔を合わせていた。
 落ち着いた金色の瞳は、なんだか鋭い。あたしとコメコメに怒っているって、一目でわかった。
 今のサンダルフォンさんは天司じゃなく、ラフな普段着の格好だよ。喫茶店で仕事をしていた時に着ていた服装みたい。

「何故、君たちはあそこに向かったんだ。安全な場所にいてくれと、俺は言ったはずだが?」

 あたしがキュアプレシャスに変身して、バーサーカーたちと戦ったことにサンダルフォンさんは怒ってる。
 サンダルフォンさんの言葉だって、かたくるしく聞こえた。

「ゆいはマスターだ。聖杯戦争において、戦いはサーヴァントに任せるべき……君たちは、それを知っているはずだ」
「ご、ごめんなさい……でも、サンダルフォンさんだけに任せるのは、ズルい気がしたんです! あたしだってプリキュアだから、ちゃんと戦えます!」
「確かに、君は単独でサーヴァントと戦えるほどの高い実力を誇るだろう。現にバーサーカーにダメージを与えた……だが、サーヴァントを舐めるな!」

 サンダルフォンさんの怒鳴り声に、あたしとコメコメはピクリとしちゃう。

「君たちの気持ちは充分理解できるが、その選択はナンセンスだ」
「……ありえない、って言いたいのですか? でも、あそこであたしたちが行かなかったら、としえさんとよしみちゃんは助けられませんでした!」
「一歩間違えたら君たちまでもが殺されていた! 聖杯戦争に参加するマスターとサーヴァントがいかに危険か、身をもって痛感したはずだ!」

 その叫びは正しかった。
 マスターの男とバーサーカーは強くて、あたしたちだけで戦うのはムチャだった。サンダルフォンさんが来てくれなかったら、絶対に命を奪われていたよ。


910 : ゆい、マスターに!? おいしい笑顔を守れ! ◆k7RtnnRnf2 :2023/02/03(金) 22:30:34 WQEaP/2s0

「もちろん、君たちも相応の経験を積んだのだろう。それについては否定しない……しかし、人間である君が戦場に飛び込む必要などなかった! 公園で避難誘導もできたはずだ!」
「逃げ遅れた人がいたかもしれないから、放ってはおけなかったんです! サーヴァントがいくら強いからって、何もしないのは違います!」
「それで二人が殺されてしまっては元も子もない! 馬鹿正直に前線に出るな!」

 すると、サンダルフォンさんの表情が変わっていく。
 スイッチを切り替えたように、あたしたちを心配する目になった。

「……君たちと、また会いたいと思っている人間のことを、少しは考えてくれ」

 あたしの胸に突き刺さる言葉。
 サンダルフォンさんが言うように、おいしーなタウンやクッキングダムではみんながあたしたちの帰りを待っている。
 いきなりいなくなったから、心配しているはずだった。

「ゆいとコメコメが危険な目に遭うのを、俺は見ていられない」

 そして今も、サンダルフォンさんを心配させている。
 この人に全てを背負わせたくないから、あたしたちも変身して現場に駆けつけた。
 だけど、そのせいであたしが傷つくことをサンダルフォンさんは望まない。やっぱり、この人はマリちゃんみたいに責任感がある大人なんだ。
 キュアプレシャスに変身したばかりの頃、マリちゃんからも心配されちゃった。
 マリちゃんはたった一人でブンドル団と戦おうとしたように、サンダルフォンさんもあたしたちを戦いから遠ざけるつもりだ。

「サンダルフォンさんを心配させて、ごめんなさい」
「わかってくれたか。なら、これからは……」
「でも、やっぱり見てるだけなんてイヤです! あたしも、サンダルフォンさんの役に立ちたいから!」

 その言葉で、サンダルフォンさんの目が丸くなる。

「昔、マリちゃんから、同じことを言われたんです。あたしを危ないことに巻き込みたくないって」
「ならば、尚更だ。その……ローズマリー、さんの気持ちを無碍にするな」
「ううん! あたしとマリちゃんで力を合わせて、頑張りました! だから、この世界でもサンダルフォンさんと一緒に頑張りたいです!」
「コメコメも、ゆいやサンダルフォンみたいに頑張るコメ!」

 あの時だって、あたしは一人でブンドル団と戦ったわけじゃない。
 コメコメやマリちゃんとのチームワークがあったからレシピッピを助けられたよ。
 誰かを想う強い心が、この世で一番強いっておばあちゃんは言ってた。
 その気持ちを忘れなかったから、あたしたちは何度だって強くなったし、おいしい笑顔だって守れた。

「一つだけ約束して欲しい」

 まっすぐにあたしたちを見つめるサンダルフォンさん。
 怒っていなければ、心配もしていない。
 ただ、あたしとコメコメの決意を受け止めていた。


911 : ゆい、マスターに!? おいしい笑顔を守れ! ◆k7RtnnRnf2 :2023/02/03(金) 22:33:01 WQEaP/2s0

「約束ですか?」
「君たちが誰かの命を奪いたくないと、俺は知っている。ただ、誰かを助けるために自分たちを危険に晒すのだけは、絶対にやめるんだ。
 少なくとも、これだけは約束してくれ……いいな?」

 純粋で、とても優しい声で求められる約束。

「今の俺は、君たちが必要だから」

 その言葉に、あたしの胸が熱くなった。
 マスターとサーヴァントの契約じゃなく、サンダルフォンさん自身の気持ちだから。

「はい! あたしも、サンダルフォンさんが必要です!」
「コメコメだって、サンダルフォンと一緒にいたいコメー!」

 右も左もわからないあたしとコメコメを、サンダルフォンさんは支えてくれた。
 この世界に連れてこられてから、買い物や食事とか、3人で日常を過ごしたよ。
 そうしているうちに、あたしたちはお互いについて知っていった。
 もちろん、サンダルフォンさんの過去だって、あたしの夢に出てきたよ。
 この人に関係する大きな戦争や、ルシフェルさんからのメッセージ。そしてサンダルフォンさんを信じた人たち……全部じゃないけど、あたしは知った。
 サンダルフォンさんは、尊敬するルシフェルさんに必要とされたくて、自分の役割を求めていた。
 でも、二人の間にすれ違いが起きて、本当の意味で心を通わせるまで2000年もの時間が経っちゃった。
 だから、あたしとコメコメはサンダルフォンさんに手を伸ばすよ。

「あたしの……あたしとコメコメの願いは、みんながおいしいご飯を食べれる明日を作ること! だから、サンダルフォンさんの力を貸してください!」

 聖杯戦争の過酷さを知ったのに、この選択はありえないかもしれない。
 それでも、あたし自身の気持ちにウソをつくなんて、あたしは絶対にイヤだ。
 誰かのおいしい笑顔を奪ったら、これから永遠に笑えなくなる。

「自分のことを大事にしますし、コメコメやサンダルフォンさんのことだって考えます! でも、何もせずに見ているだけなんて、絶対にイヤなんです! そうしたら、あたしはみんなとの約束を守れなくなるので!」

 傷ついたり、泣いている人の元に駆けつけられるヒーローになりたい。
 その約束をつらぬいたから、あたしはみんなと力を合わせて頑張れたよ。
 ワガママとか、余計なおせっかいって言われるだろうし、これから先がどうなるかわからない。
 でも、一緒に戦ってくれたみんながいないからって、あたしは願いを捨てたくないよ。

「どうやら、俺がいくら説得しても君たちは戦うだろう。全くもってナンセンスだな」

 ため息をつくけど、サンダルフォンさんは笑ってる。

「だが、私利私欲、あるいは"混沌"や"災厄"をもたらすために聖杯を求めず、ただ空と命を愛しむ……それだけは本気だと伝わった」
「もちろん! サンダルフォンさんが守りたかった空を、あたしも大事にしますし、その方がサンダルフォンさんのコーヒーをもっとおいしく飲めますから!」
「ちょっと苦いけど、コメコメもいっぱい飲めるコーヒーコメ!」
「……ははっ。そういえば、君たちは聖杯よりも俺の珈琲が大事だったな」

 サンダルフォンさんはコーヒーについても詳しいよ。
 豆やお湯はもちろん、カップやドリッパーなどの道具にもこだわっていて、分量も正確に計るんだ。
 口に入れると、コーヒーのほろ苦さと酸っぱさが広がって、体がぽかぽかするよ。香りも暖かくて、湯気を吸うだけでリラックスできちゃう。
 コーヒー豆を育てる農家や、流通や料理に関わっている人たち、そして実際に飲んでくれる誰か……そういった人たちに、サンダルフォンさんが真剣に向き合ったから生まれた味だよ。


912 : ゆい、マスターに!? おいしい笑顔を守れ! ◆k7RtnnRnf2 :2023/02/03(金) 22:33:47 WQEaP/2s0
「なら、帰ったら二人に珈琲を振る舞おう。おいしい笑顔のためにな」
「やったぁ!」
「楽しみコメ!」 

 帰り道を歩きながら、あたしたちは三人で楽しく笑っている。

(そうだ! いつか、サンダルフォンさんからコーヒーの淹れ方を教わりたいな。サンダルフォンさんのおいしいコーヒーを、いつかおいしーなタウンのみんなにも飲ませてあげたいから!)

 ルシフェルさんはサンダルフォンさんにコーヒーの味を教えてくれた。
 サンダルフォンさんを通じて、たくさんの人がおいしいコーヒーを味わった。
 その素敵な味を、簡単に教えてくれないだろうし、何よりもたどり着くまでの道だってけわしい。
 こんなにおいしいコーヒーのレシピをあたしは知りたいし、元の世界にいるみんなとも思い出を分け合いたい。
 そのためにも、コメコメやサンダルフォンさんと一緒に、おいしい笑顔を守れるように頑張らないとね。


 こうして、ゆいちゃんの聖杯戦争がはじまりました!
 頼れるサーヴァントのサンダルフォンさんと力を合わせるゆいちゃん。
 まだまだ大変なことが待っているけど、めげずに頑張ってね。


【クラス】

セイバー

【真名】

サンダルフォン@グランブルーファンタジー

【ステータス】

筋力B 耐久B 敏捷A 魔力C 幸運B 宝具A+
(天司長及び四大天司のスキルの発動時)

【属性】

中立・善

【クラススキル】

対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
本来、天司長の力を継承したサンダルフォンは対魔力スキルも優れているが、マスターであるゆいは魔術に関する技能を持たないため、Bランクに留まっている。

戦闘続行:B+
約束を守るために。
霊核が破壊されるほどの致命傷を負おうとも、たった一度だけならば立ち上がれる。


913 : ゆい、マスターに!? おいしい笑顔を守れ! ◆k7RtnnRnf2 :2023/02/03(金) 22:36:09 WQEaP/2s0

【保有スキル】

天司長:A
星の民の研究者・ルシファーが生み出した『原初の星晶獣』である天司の長。
星晶獣の力の源たるコアが羽に宿り、その数が天司としての格に繋がり、サンダルフォンは圧倒的な戦闘力を発揮できる。
ルシフェルの真の願いを知ったサンダルフォンは、天司長の座と大いなる力を継承した。
強き心を持たなければ力の制御はできないが、サンダルフォンが真の意味で己の役割に準じた時、天司長として無限のスキルを発揮できる。

四大天司:B +
火・水・土・風の元素を司る四大天司のコアである羽がスキルとなったもの。
天司長直属の部下である四大天司は、空の世界の均衡を保つためにそれぞれ強大な力を誇っている。
四大天司の力を全て取り込み、安定させるには天司長にふさわしい意志が必要で、サンダルフォンの心にほんの僅かな揺らぎがあればすぐに消滅してしまう。
しかし、サンダルフォンが強い意志を持って戦った時、天司長と四大天司の力を発揮できるため、各種ステータスアップは勿論、あらゆる精神攻撃を無効化する。

生命:C
サンダルフォンの願いから生まれたスキル。
空の世界で出会った仲間と共に生き、多くの時を人間と同じように過ごしてきた。
聖杯戦争中では常時このスキルが発動しており、彼はサーヴァントでなく人間として認識される。


【宝具】

『約束の天司長(Ain Soph Aur)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
ルシファーを前に追い詰められたサンダルフォンが、心からの願いによって発揮した力。
サンダルフォン、四大天司、ルシフェルの羽が、蒼の少女ルリアの力と相互作用したことで彼は十二枚羽となり、同じく十二枚羽となったルシファーに立ち向かった逸話から宝具となった。
この宝具を発動した瞬間、サンダルフォンの全ステータスは爆発的に向上し、更には心を通わせた仲間が一人でも多くいれば、世界の”終末”さえも食い止められる。
ただし、この宝具を真に発揮するために必要な魔力は、令呪三画を全て消費しようともまるで足りない。マスターから魔力供給をしようとも夢のまた夢。
何故なら、サンダルフォンが天司長として真に覚醒したのは、特異点やルリアを始めとする数多くのイレギュラー、そして積み重ねてきた絆が生んだ奇跡があってこそ。仮に令呪三画を使って強引に宝具を発動させた所で、A+程度の不充分な力しか得られない。
もしも、かつてほどの絆さえあれば、如何なる因果を前にしても天司長は真の力を発揮するだろう。

『加護』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
マスターを守るために発動されるサンダルフォンの加護。
天司のスキルが発動している最中、善の意志を持つサンダルフォンが認めた仲間の攻撃力を上げて、かつ傷を癒やす効果がある。
光、またはそれに近い属性を持つ人物であれば、更に強化される。
ただし、一度この宝具を発動した場合、再度の発動には時間経過を待たなければならない。

【weapon】
天司の力を発動させた際に顕現する各種武装。

【人物背景】

かつては己の存在意義に悩んだ天司。
本来、天司長ルシフェルが機能不全に陥った時のスペアで、自身の運命に絶望した果てに”災厄”を企てたが、特異点との戦いに敗れ去る。
その後、ルシフェルの真意を知り、力を継承したサンダルフォンは特異点たちと共に終末計画を阻止するために戦った。
激戦の果てに、約束や贖罪などではない、自分自身の"願い"を見つけたサンダルフォンはついに勝利する。
全ての決着をつけた彼は、心が安らう場所にて再会したルシフェルと語り合い、空の世界で仲間たちと共に生きる決意を伝えた。
仲間の呼びかけに答えるため、ルシフェルに見守られながらサンダルフォンは旅立った。

【サーヴァントとしての願い】

ゆいを守り、彼女が願う夢のために戦う。


914 : ゆい、マスターに!? おいしい笑顔を守れ! ◆k7RtnnRnf2 :2023/02/03(金) 22:37:57 WQEaP/2s0

【マスター】

和実ゆい@デリシャスパーティ♡プリキュア

【マスターとしての願い】

みんなでおいしいご飯を食べられるよう、コメコメやサンダルフォンさんと力を合わせたい。

【能力・技能】

運動神経抜群で、行き倒れの成人男性をたった一人で担げるほどに力持ち。
コメコメと気持ちをシェアすればキュアプレシャスへの変身が可能で、サーヴァントが相手でも遅れを取らない戦闘力を発揮する。
また、ハートキュアウォッチの不思議な力に守られているため、精神干渉に関する魔術及びスキルは通用しない。
料理も得意。

【weapon】

コメコメ。
クッキングダムからやってきたお米のエナジー妖精で、ゆいのパートナーをつとめている。
普段は白きつねの姿をしているが、人間の女の子にも化けられる。
特例でゆいに同行しているコメコメだが、令呪を保有していない。また、コメコメとサンダルフォンでの念話も不可能。
本名はコネクトル・モチモチット・フックララ・グリコーゲン・コメックス二世。

ハートキュアウォッチ
様々な機能を持つスマートウォッチ型のアイテムで、プリキュアたちに与えられている。
写真撮影やビデオ通話、そしてインターネットの閲覧はもちろん、コメコメがウォッチの画面に入ることも可能。
変身中に液晶をタッチすれば浄化技を放てる。

以下、聖杯戦争中でかけられている制限。
ブンドル団に盗まれたレシピッピのSOSを受信し、その居場所を探知するレーダーは機能しない。
作中ではクッキングダムとの通話も行えたが、異世界との連絡は制限により不可能。
ウォッチ同士またはデリシャストーンとの通信を行う場合、数km以内の距離に近付く必要がある。

ハートジューシーミキサー
レシピッピを助けたいというプリキュアの想いから生まれたミキサー型の武器。
ウバウゾーの強化版・モットウバウゾーを浄化する技……プリキュア・デリシャスプレシャス・ヒートを放てる。
ある程度であれば呪いの浄化も可能。

パーティキャンドルタクト
みんなを想うコメコメの気持ちから生まれたプリキュアのパワーアップアイテム。
プリキュアたちをパーティアップスタイルに強化変身させて、4人の心を一つにすることで浄化技の『プリキュア・ライト・マイ・デリシャス』で敵を浄化可能。
ただし、仮にたった1人でパーティアップスタイルに変身しても、真の力は発揮できない。

【人物背景】

TVアニメ『デリシャスパーティ♡プリキュア』の主人公で、エナジー妖精のコメコメと気持ちを一つにしてキュアプレシャスに変身する少女。声優は菱川花菜。
私立しんせん中学校に通う元気いっぱいの中学生。なんでも食べ、生野菜(特ににんじん)が大好物。
おばあちゃんの言葉を大事にし、困ったことがあってもおいしく乗り越えてきた。しかし、ある時からおばあちゃんの言葉だけでなく、ゆい自身が選んだ言葉を大切にすると決意する。
ブンドル団のボス・ゴーダッツとの直接対決で一度は大きな挫折を経験するが、これまでに出会った人との結びと受け取ったバトンで立ち上がり、ゆいはキュアプレシャスとして戦う。
彼女の真っ直ぐな想いは世界すらも救い、そして新しいヒーロー……キュアスカイことソラ・ハレワタールにバトンを渡した。


915 : ◆k7RtnnRnf2 :2023/02/03(金) 22:38:19 WQEaP/2s0
投下終了です。


916 : ◆ZBzxr8kFD6 :2023/03/10(金) 20:52:42 3SwQtBfQ0
投下します。


917 : 愛多間七&セイバー ◆ZBzxr8kFD6 :2023/03/10(金) 20:55:36 3SwQtBfQ0
政治とは、誤りを正すこと。指導者が正しくあれば、民が間違えることはない。


孔子


 民に愛された為政者が立っていた。
 威風堂々たる立ち姿からは指導者に相応しいオーラを放ち、道行く全ての人間の視線を否応なく集めるだろう。
 圧倒的な威厳を秘めながらも、誰かに畏怖の念を抱かせず、太陽にふさわしい在り方だ。
 世界全てを包み込むほど、優しくて暖かい光だった。


 男は空を見上げる。
 ただ、そこに立っているだけで、彼が偉人たる説得力を持たせていた。
 歴史の教科書、または偉人伝に取り上げられると、万人が思うだろう。
 如何な変装でも、男の風格を誤魔化せない。
 その男の名は愛多間七。内閣総理大臣として優れた政治を行い、日本国民から絶大な支持を受けた偉大な男だ。
 しかし、今は聖杯戦争のマスターとしてこの世界にいる。

「どんな願いでも叶う聖杯と、それを巡って私達が戦わなければならない……聖杯戦争か」

 既に間七の脳裏には聖杯戦争の知識があった。
 数多の世界から願いを蒐集し、最後の一つになった者には万能の願望器が与えられる。
 誰が生存(いき)るか死滅(くたば)るか? 歴史の闇にて、幾度となく殺し合った忍者と極道の如く、聖杯を賭けて殺し合う運命を背負った。
 仮初めの命が生きる仮初めの世界を、間七は見渡す。

「恐らく、この世界でマスターとなった者達は、皆……強い願いがあるはずだ」

 静かに瞼を閉じる。
 浮かび上がるのは総理官邸で凶行を行った幼き子供達の姿。
 彼らまたは彼女らは、この日本という国に強い不満があって、憎悪と狂気を宿らせた瞳で首相官邸を血に染めた。
 無論、子供達の罪は決して許されない。間七の友を、そして心より愛する無辜の民を殺す権利など誰にもない。

(子供達が……あの少年が聖杯戦争に巻き込まれたら、聖杯を求めるだろうか)

 間七は追憶する。
 子供達はテロリストだが、その心には人の情が確かにあった。
 投降を呼びかけた時、確かに心が揺らいだ。ほんの一瞬でも、やり直そうとした。


918 : 愛多間七&セイバー ◆ZBzxr8kFD6 :2023/03/10(金) 20:56:40 3SwQtBfQ0
 ーー…遅いよ
 ーーオレ達は、もうーー…!!

 でも、彼らは間七の手を取らなかった。
 もう遅いのだと、悲しげな表情で彼はつぶやいたが、そんなはずはない。
 失敗しても大丈夫。何度でもやり直せばいいのだから。
 出会いは敵同士でも、やり直せる。
 君達の未来は無限大で、大人としてその道を作ると伝えたかった。
 ならば、間七は聖杯を求めて戦うのか? 否ーーーー

「私を誰だと思っているのか!? 内閣総理大臣……愛多間七である!!!」

 カッ、と目を見開いて。
 悠然とした態度で間七は叫ぶ。
 まるで、世界にその名を轟かせるかの如く。
 何者にも侵せないほど、彼の言霊には揺るぎない誇りがあった。

「願いがある? それは至極当然! 私は、これまで幾度となく民の願いを聞いた! 誰も彼もが、切実な想いで私を頼りにしたはずだ!」

 内閣総理大臣は日本の核となる役職だ。
 言霊の重みは計り知れず、たった一つの失敗すらも許されない。
 常人であれば罪にならない些事も、彼が犯してしまえばどうなるか。
 日本という国の信用、そして安穏の時が崩壊し、全ての民から希望が消えてしまう。
 ならばこそ、間七は優れた政治で民を導き、日本を支え続けた。
 しかし、そんな彼でも救えない命があった。
 貧困、DV、汚職、ネグレクト、少子高齢化、いじめ、虐待……日本を蝕む数多の病魔により、犠牲となった無辜の民は数えきれない。
 忍者と極道の殺し合いがなくとも、この国には不幸が蔓延している。
 聖杯の奇跡さえあれば、全ての悲劇を払拭し、恒久平和が約束されるのか?

「だが、私は聖杯に頼らない! 私が弱気になり、奇跡に縋ってしまえば……一体、民はどこに向かえばいいのだ!?」

 間七の答えはただ一つ。
 戦争を仕組んだ世界に対する宣戦布告だ。
 聖杯の奇跡が誠で、間七が救えなかった者達を救えたとしよう。
 聖杯を手に入れ、願いを叶えた上で他の者達も蘇生できたとしよう。
 その過程で、他の願いや祈りを踏みにじり、血を流す事を良しとするか。
 大義の為に犠牲を許すなど、あの不当な地上げ屋達と何が違うのか?
 どんな美辞麗句を重ねようとも罪は消えない。
 仮に、聖杯の力で日本に平穏が訪れても、民の心が間七から離れるだけ。

「私の友達もそうだ! 彼らはみんな、私を信じてくれた! 私を信じ、我が国の奉仕者となり、命を燃やしてくれた熱い男達だ!」

 国の礎となる為、政治家となった彼らの勇姿は今でも鮮明に思い出せる。
 蘆花も、有数も、真虎も、荒来も、レジーも。幼き子供達の手にかかった彼らは、間七にとって永遠のともだちだった。
 最期まで国の未来を想った彼らから、間七はバトンを受け取った。
 亡き友の遺志を継ぐ男達もいるから、間七はテロに喧嘩を売り、闘争を続けられる。


919 : 愛多間七&amp;セイバー ◆ZBzxr8kFD6 :2023/03/10(金) 20:57:40 3SwQtBfQ0
「それに、私には親友(マブダチ)がいる! 親友(マブダチ)である多仲忍者君を失望させるなど言語道断! 彼の期待に応えるため、私は前を進み続けなければいけないのだ!」

 間七には友がいる。
 多仲忍者。彼は胸に熱いハートを秘め、忍者となって賊と戦い続けている少年だ。
 忍者が聖杯の奇跡など望むはずがないと間七は断言する。
 内閣総理大臣として、一人の大人として、忍者の親友(マブダチ)として。

「その為に、力を貸して欲しい……セイバー。否、英霊ジークフリートよ!」
 
 力強く振り返りながら、隣で寄り添う男に叫ぶ。
 驚天動地のオーラを放つ、長身かつ筋骨隆々とした青年で、白銀に光り輝く鎧を身にまとっていた。背丈ほどの大剣を背負う姿は、まさに英霊(サーヴァント)と呼ぶにふさわしい。
 ゲルマン神話にも伝わる龍殺しの英雄・ジークフリートを、博識たる間七ならば知っているが、実際に目の当たりにするのは初めてだ。むき出しになった屈強な胸部に走る複雑な紋様と、風にたなびく銀灰色の長髪も合わさり、雰囲気に圧倒される。

「それがマスターの願いか」

 頷くジークフリート。
 戦う力を持たない間七にとって、彼は剣であり盾でもある。
 何のために剣を抜き、戦い、何を願うのか?
 召喚されて以来、間七はジークフリートより見定められていた。
 修練を重ね、数え切れないほどの勝利を収めた最優のサーヴァントだ。ファヴニールすらも仕留めた彼を使役すれば、如何なる敵だろうと屠れるだろう。
 だが、彼は奴隷のように扱うのは、果たして正しいのか?
 セイバーとわかり合おうとせず、ただ戦いの駒として扱って、この聖杯戦争に戦いを挑めるのか?
 マスターは守りに徹し、セイバーだけに戦いの運命を背負わせるのは、間七が嫌悪した理不尽な大人と同じだ。

「当然だとも。私は内閣総理大臣……日本を守る使命がある。君のようにいられる補償はないが、立派な大人として振る舞わなければ示しがつかない」

 英霊は生前の逸話を元に召喚された影法師だ。
 情愛のない言い方をすれば、魔力で構成された英雄のコピーになる。
 それでも、ジークフリートには確かな心がある。
 返り血を浴びてでも、民の願いを叶えようと剣を振るい続けた強い意志があった。
 その良心を裏切り、ただ使い魔として見るなど間七にはできない。

「セイバー。もしも君に願いがあれば、聞かせて欲しい」
「俺の、願い?」
「そうだ。君のような高貴な英雄が、この世界で召喚された……それは君自身に願いがあるからではないか? もし、それがあるなら、私に聞かせてくれ!」

 ドンッ! と胸を叩きながら、間七はもう片方の手をジークフリートに差し伸べた。
 元の世界ほどの権力は当然のこと、ジークフリートのような戦う力もない。
 しかし、一目見ただけでわかった。間七の隣に立つジークフリートは、熱いハートを燃やす真の"漢"だと。その彼が召喚されたからには、サーヴァントとしての願いを叶える手伝いをするのが道理。
 英霊を見つめる間七の目はどこまでも真っ直ぐだった。

「…………召喚された時点で、もう叶った」

 微笑みこそが、セイバーの答え。


920 : 愛多間七&amp;amp;セイバー ◆ZBzxr8kFD6 :2023/03/10(金) 20:58:26 3SwQtBfQ0
「マスターは民を束ねる長として、あらゆる願いを受け取り続けた。一つでも多くを叶えようと奔走したのだろう」
「無論だ。命ある限り、願いを終わらせてはいけない。どんな時でも、私は”道”を進み続ける!」
「それは、あなたの望みか」
「あぁ!」

 彼は優しい英雄だ。
 出会う世界が違えば間七のよき友になった。
 誰に言われたのでなく、彼自身の意志で救うとを決めて、その決意を誇りにしていた。
 気高き祈りを、無碍にできる訳がない。

「ならば、マスターと共に無辜の民を守る英雄になろう。俺はそう褒められた男ではないが、貴方の期待に応えられるように戦う」
「何を言う! セイバー程の英霊が私の前に来てくれたのだ……感謝こそすれ、不平不満をこぼすつもりはない!」

 聖杯戦争では忍者達の助けは期待できない。
 内閣総理大臣という役職もいざとなればハリボテになり、いくら世の中を動かそうとも限界がある。それ以前に、忠臣たちを聖杯戦争に巻き込み、危険に晒してはならない。
 間七自身が動き、聖杯戦争の世界そのものに戦いを挑むのが道理だ。
 
「私には帰りを待つ民がいる! 世界が違えど、彼らの示しとなることを曲げるつもりはない」

 間七はこの世界で倒れるわけにはいかない。
 幼きテロリストの手にかかり、首相官邸が血に染まった後でも日本を脅かす邪悪がいる。
 その最中に、総理大臣が失踪したらどうなるか? 無論、言葉で表せない程の衝撃を皆に与えるだろう。
 一刻も早く帰国し、責務の為に身を粉にすべきだが、それは聖杯の奇跡に頼ることではない。
 重ねて言う。何を言われようと、この世界で邪悪と戦う決意を曲げるつもりはない。
 故に、遠くで帰りを待つ民に謝罪する。必ず皆の元に帰る、それまで暫し待って欲しいと。


921 : 愛多間七&セイバー ◆ZBzxr8kFD6 :2023/03/10(金) 20:59:16 3SwQtBfQ0

【クラス】
セイバー

【真名】
ジークフリート@Fate/Grand Order

【ステータス】

筋力B+ 耐久A 敏捷B 魔力D 幸運E 宝具A

【属性】

混沌・善

【クラススキル】

対魔力:-
「悪竜の血鎧」を得た代償によって失われている。

騎乗:B
騎乗の才能。
大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】

黄金律:C-
人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。
ニーベルンゲンの財宝によって金銭には困らぬ人生を約束されているが、幸運値がランクダウンしている。

仕切り直し:A
戦闘離脱もしくは状況をリセットするスキル。
技の条件を初期値へ戻しバッドステータスを解除する。

竜殺し:A
竜を殺した逸話から得たスキル。竜種に対し攻撃力と防御力が大幅上昇する。

【宝具】

『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』
ランク:A+  種別:対軍宝具 レンジ:1〜50 最大補足:500人
竜殺しを達成した呪いの聖剣。
原点である魔剣『グラム』としての属性も併せ持っており、手にした者によって聖剣、魔剣の属性が変化する。
柄の青い宝玉には神代の魔力(真エーテル)が貯蔵・保管されており、これを解放すると黄昏色の剣気を放つ。
竜種の血を引く者には追加ダメージを負わせる。


『悪竜の血鎧(アーマー・オブ・ファヴニール) 』
ランク:B+  種別:対人宝具  レンジ:-  防御対象:1人
――悪竜の血を浴びた逸話を具現化した宝具。
Bランク相当の物理攻撃及び魔術を無効化する。 Aランク以上の攻撃も、Bランク分の防御数値を差し引いたダメージとして計上する。
正当な英雄から宝具を使用された場合は、B+相当の防御数値を得る。
ただし血を浴びていない背中は防御数値が得られず、隠すこともできない。


【weapon】

『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』

【人物背景】

龍殺しを成し、ドイツの英雄叙事詩・ニーベルンゲンの歌で名が知られている大英雄。
高潔で、情が深い男。常に他者を思いやり、仲間を守るために戦場を駆け抜ける逸話は数知れない。

【サーヴァントとしての願い】

マスターの剣となり、英霊として戦う。


922 : 愛多間七&セイバー ◆ZBzxr8kFD6 :2023/03/10(金) 20:59:45 3SwQtBfQ0
【マスター】

愛多間七@忍者と極道

【マスターとしての願い】

聖杯戦争の世界に戦いを挑む。

【能力・技能】

内閣総理大臣になる程のカリスマを秘めている。サーヴァントにも引けを取らない。
心技体の全てが優れ、例え老いていようとも微塵の衰えも見せない。

【人物背景】

私を誰だと思っている!?
内閣総理大臣、愛多間七である!!

内閣総理大臣となった義に溢れる"漢"。
正義感が強く、如何なる試練を前にしても国民を想う熱いハートの持ち主。


923 : ◆ZBzxr8kFD6 :2023/03/10(金) 21:00:04 3SwQtBfQ0
投下を終了します


924 : ◆k7RtnnRnf2 :2023/03/24(金) 06:58:46 f3ADGMeI0
投下します


925 : My true self ◆k7RtnnRnf2 :2023/03/24(金) 07:01:38 f3ADGMeI0
『執行官……確か、裁判所の職員だったな』
『マスターの常識ではそうだろうね。でも、俺たちファデュイ執行官……ファトゥスは外交や軍隊の指揮も兼ねていた。銀行運営にも関わったほどの働き者なんだぜ?』
『ああ。君たちファデュイが、テイワット大陸で悪事を働いていたことも、私は知った』
『ハハハハハッ、手厳しい! でも、俺は確かに悪いヤツだからな!』

 口を動かさず、念話で意思疎通をしている。
 私……菓彩あまねの前では、一人の青年が笑みを浮かべていた。
 好男子、と呼ぶにふさわしいほど整った顔つきで、丁寧に手入れされた髪は明るい。イケメンや美男子とも称されるし、どこか影が見える鋭い目つきも、男女問わず多くの人を魅了させかねない。
 気品を漂わせる灰色の軍服を見事に着こなし、上質なグローブとブーツも合わせて、彼の格式を高めている。炎の如くストールは、彼の背でゆらゆらとたなびく。
 背丈も高く、長い年月をかけて鍛え上げた体からはまるで隙が見えない。
 唯一、異質な真っ赤なマスクすらも、彼の魅力を引き立てそうだ。
 『公子』の称号に見合った貴いオーラを放っており、偉人が歴史の教科書から飛び出してきたかのようだ。

『じゃあ、俺を切り捨てるかい? マスターが令呪を使えば、悪いヤツとすぐにサヨナラできるしさ』
『アーチャーがテロリストだろうと、私に命をもてあそぶ権利はない』
『へぇ? ファデュイである俺を気遣ってくれるとは、お優しいマスターだねぇ』

 はは、と不敵な笑みを浮かべる男。
 彼は人間に見えるが、厳密には違う。人々にたたえられた英雄が、亡き後に英霊となり、聖杯の魔力によって召喚されたサーヴァント・アーチャー。
 英霊タルタリヤ。異世界の組織・ファデュイの執行官であり、卓越した武芸を誇る男だ。
 表向きには他国との外交を執り行っているが、実際は卑怯な手段で侵略し、武力または陰謀で多くの人を苦しめている。当然、タルタリヤも悪事に関与した。
 一見すると礼儀正しいが、どうもつかみ所がない。慇懃無礼で、どこかのナルシストを連想させるこの男が私は苦手だ。

『ファデュイの最高幹部、ファトゥスの第十一位……『公子』。無数の戦いを乗りこえ、氷国スネージナヤにてその実力を評価された』
『君、俺の武勇伝を知ってるでしょ? なら、俺が何を望むのかだって……逸話を見れば、わかるんじゃないかな?』
『戦い、か』
『正解』

 過去を暴かれたにも関わらず、さも誇らしげに胸を張る。
 召喚されたあの日から、ずっと値踏みされている。今でさえ、私がどんな人間かを観察していたはずだ。
 部隊を率いて、兵隊一人一人を幾度となく鍛え上げたからには、人間観察力も養われている。
 誰かを傷つけるのはもちろん、命を奪うことを望まないマスターであると、タルタリヤは気付いている。

『執行官になった俺にとって、最高の娯楽……強い奴と戦い、勝つことさ。そういう意味じゃ、この聖杯戦争は実にいい舞台だ。俺の知らない時代、知らない世界から、数えきれないほどのサーヴァントが集まってくるから、今も胸が踊っているぜ』
『筋金入りだな。そうして、旅人さんも追い詰めたのか』
『あぁ、旅人との戦いは楽しかったさ! 俺が見る限り、マスターもなかなか見込みがありそうだが……なんだったら、俺が直々に稽古をつけてあげようか?』
『遠慮する』

 男の態度に私はため息をつく。
 私を挑発し、手玉に取ろうとしているのか。もしくは、タルタリヤなりの軽口かもしれない。
 彼と出会い、ぶつかって、心を通わせた旅人さんにも、飄々とした態度でいたのだから。


926 : My true self ◆k7RtnnRnf2 :2023/03/24(金) 07:03:57 f3ADGMeI0

『俺は戦いに躊躇しないサーヴァントだから、マスターが生き残るにはちょうどいいだろ』
『誰かの命を奪ってでもか?』
『おいおい、これは聖杯戦争……誰も死なない戦争なんかあり得ないって、ちゃんと歴史を勉強すればわかるだろ?』

 タルタリヤが話した『戦争』に、私の言葉が詰まる。
 縁が遠いように思えて、ある意味では密接に関わってきた出来事だ。
 世界中のあらゆる料理を奪おうと企んだ怪盗ブンドル団と、私たちデリシャスパーティプリキュアは戦った。
 みんなのおいしい思い出や笑顔を守り続けたが、誰かが悲しみ、涙を流す姿は何度も見てきた。
 最後は世界の命運を賭けた戦いにまで発展した。命こそ奪われなかったが、見方によっては戦争と呼べる。

『悲劇を繰り返さないため、私たちは日々学ばなければいけないはずだ』

 生きる中で悲しい出来事は避けて通れない。
 間違えたり、気持ちが空回りして誰かを傷つけるのは、誰にでもある。
 だが、後世に名を遺した偉大な先人は多くいる。その方々が生きた証から、最善を尽くすのが私たちの使命。

『戦いなんてやめましょうって、みんなに呼びかけるつもりか? そいつはずいぶんとご立派だが……時には妥協が必要だ。子どもだって、嫌いなメニューを食べる時があるだろ?』
『忠告は受け取る。君の言葉が間違っていると言うつもりはないが、思考停止して全てを諦めたくない……私の志す正義に誓って』
『おやおや? マスターの正義とやらは結構だが……この前、俺が他の主従に手をかけたって、忘れてないよね?』

 忘れ物はないかきちんと確認したのか、と聞くようなかるい口調で。
 タルタリヤは懐からスマートフォンを取り出し、私に見せつける。
 そのスマートフォンは戦利品にして、彼がこの世界で命を奪った確かな証だった。
 戸籍を持たないサーヴァントである彼が、店舗でスマートフォンの購入や契約などできるはずがない。
 数日前、他の主従を撃退し、奪い取ったのだ。その時は深夜だったため、私は就寝していたが、関係ないと言い訳するつもりはない。
 サーヴァントの罪は、マスターたる私が向き合うべき責任だ。

『アーチャーの行いだって流さないし、それはマスターの私が向き合う責任だってわかっている。だからこそ、もう一度言おう……無闇に誰かを傷つけないと、約束してくれ』
『約束? 命令じゃないの』
『命をもてあそぶ権利がないと言ったはずだ。君の意志をねじ曲げて、道具にするのも違う……その手の行いが、私は苦手だ』

 かつて、怪盗ブンドル団のナルシストルーによって意志を奪われ、私は怪盗ジェントルーとして多くの悲劇を生んだ。
 レシピッピを悲しませ、料理の味を変えて、多くの飲食店を追い込んでいる。らんの大切なラーメン屋・ぱんだ軒のメニューだって例外ではない。
 ブンドル団やナルシストルーが悪い? だが、私の過ちは永遠に消えない。
 操り人形にされる痛みや悲しみを知っているのに、どうして他の誰かに背負わせられるのか。

『…………悪いけど、それは約束できないな』

 少し間を開けた後、タルタリヤは真摯なまなざしで告げる。

『この聖杯戦争に呼ばれた連中は只者じゃない。俺が仕留めたセイバーだけでなく、マスターも油断できなかった。あそこで見逃したら、君に火の粉が降りかかると断言できる。俺の娯楽なんて関係ない、本気の忠告だ』
『そうだろうな。君ほどのサーヴァントが召喚された聖杯戦争だ……他のマスターも、相応の実力を持つサーヴァントと共に戦っているだろう』

 あるいは、タルタリヤを上回る強者がいてもおかしくない。
 百戦錬磨の猛者はもちろん、多数の罠を仕掛ける海千山千の策士もどこかに潜んでいる。
 私とて遅れを取るつもりはないが、今は共に戦ってくれたみんなはいない。プリキュアに変身しても、サーヴァントが相手ではどこまで通用するか?
 例え、私が一撃を与えたとしても、サーヴァントによっては蚊に刺される程度の痛みすらない。タルタリヤがいなければ、そもそも生存すら不可能だろう。


927 : My true self ◆k7RtnnRnf2 :2023/03/24(金) 07:05:59 f3ADGMeI0

『それでも、正義を捨てるつもりはない』
『実にご立派だ。俺よりも、君の方がサーヴァントに向いてるんじゃないかな』
『私は立派な人間じゃない。生徒会長を務めさせて頂いたが、それだけだ……君のように、母国の為に戦った男こそがサーヴァントにふさわしいだろう』
『母国? 君、まさか俺が……』
『ああ。タルタリヤ……君は、スネージナヤで一番人気のおもちゃ販売員も兼ねていたじゃないか?』

 あえて、私はタルタリヤの泣き所を突いた。
 うっ、と男の声が聞こえる。

『私の記憶に間違いがなければ……君はおもちゃ売りになって、宝盗団の取り立てを穏便に済ませたはずだが?』
『あー……あれは不可抗力だ。俺は執行官として、穏便に交渉しなきゃいけない時がくるからさ……』
『そうか? 君は最愛の家族のため、よき兄でいたじゃないか……私には、その姿が暖かく見えた』

 タルタリヤは祖国に自慢の家族がいた。
 ファデュイの『公子』として戦いを楽しみ、数多の戦場に自ら飛び込んだ。それは決して揺らがない彼の価値観だろう。
 しかし、弟のテウセルくんや妹のトーニャちゃんには理想の兄で居続けた。手紙でのやり取りはもちろん、お土産だって送っている。どれだけ傷つこうとも、ファデュイの執行官である黒き面は隠していた。
 タルタリヤの悪行は決して認めないし、許してもいけない。彼は紛れもないテロリストだ。
 だが、過去を糾弾したら、かつてジェントルーだった私にも返ってくる。

 ーー約束したら守る。悪い事したら謝る。
 ーー与えた夢はちゃんと最後まで守る…
 ーーあいつは俺の大事な弟だからね。

 弟を守るため、痛む体に鞭を打ってでも彼は戦った。
 深くないであろう傷を最後まで見せず、テウセルくんの帰国を見送ったタルタリヤ。
 その姿は、冷酷非道なファデュイ執行官でなく、家族を想う優しい兄だ。
 光を帯びない淡い瞳が、確かに暖かかった。

『だから、君は私の元に召喚されたのかもしれない』
『……おや。何か思い当たることでもあるのかな』
『私にも大切な家族がいる。尊敬する兄が二人もいると、君も知っているだろう』
『もちろん。とても幸せそうに見えた』
『ああ、君にもシェアしてあげたいくらいだ』

 フルーツパーラーKASAIはこの世界でも再現されている。
 老舗にして、私が帰るべき家だ。
 フルーツデザートに対する愛情を込め、見た目と味の美しさを追求したレシピを提供し、今日も進化している。
 再現されたのは私の家族も同じ。父と母、ゆあん兄さんとみつき兄さんが、NPCとして生きている。元の世界にいるみんなから再現されたコピーだが、れっきとした一つの命だ。
 いつものみんなと変わらない笑顔で、私とおいしい時間を過ごしている。

「ピー! ピピピピピピー!」

 この世界に連れてこられたのは私だけではない。
 私たちの間を飛ぶ小さな妖精、パフェのレシピッピもいる。私を見守ってくれた大切なパートナーだ。
 彼女がいなければ、私はプリキュアに変身できない。だから、共に連れてこられたのだろう。

「ピピピピピー!」
「ごめんね、内緒話をしちゃって! 俺とマスターで今後のことを話し合ってたのさ、敵はどこに潜んでいるかわからないからね」
「ピピピピピピー! ピー!」
「ふむふむ。
『わたくしを話に加えないなんて、失礼千万! あまねがあなたのマスターなら、わたくしだってマスターですわ! デザートの頂点に立つわたくしを、もっと敬うべき……あなたがサーヴァントだろうと、譲るつもりはありませんからね!』
 ……確かに、君たちは金蘭の友だからね。今後、気をつけるよ」
「ピピピー!」

 当然ですわ! と言うように、パフェのレシピッピは誇らしげに体を張っている。
 コメコメのようなエナジー妖精でなければ翻訳できないはずだが、タルタリヤは彼女の言葉がわかるのだろう。


928 : My true self ◆k7RtnnRnf2 :2023/03/24(金) 07:08:30 f3ADGMeI0
「……本当にわかるんだな、パフェのレシピッピの言葉が」

 念話から口頭での会話に切り替える。

「そのような逸話が君にあったのか?」
「いいや? きっと、サーヴァントとして召喚された都合かもしれないよ? レシピッピは普通の人間じゃ見れないとマスターは言ってたが……それじゃあ聖杯戦争のバランスが崩れる。だから、サーヴァントなら目視や会話ができるはずだ」

 あるいは、同じことができるマスターもいるかもね、とタルタリヤは付け加える。
 少なくとも、嘘を言っているようには見えない。
 タルタリヤと意思疎通できるのはありがたいが……反面、敵対人物からパフェのレシピッピが狙われる危険もあった。
 ちなみに、今は私の部屋に集まっている。念話を行っていたのも、家にいるみんなに聞かれないためだ。
 無論、誰かが近づく気配があれば、すぐにタルタリヤは霊体化で隠れられる。音読をしていたと言い訳するため、机の上に英語の教材を多数用意した。
 聖杯戦争の秘匿もあるが、それ以前に見知らぬ成人男性が家にいたら大パニックだ。家族会議は避けられない。

「さて……俺から君たちに改めて忠告しておこう。生きて本当の家に帰りたいなら、腹をくくった方がいい。できない約束をするのは、無責任だろう?」

 タルタリヤは本気だ。
 私たちを元の世界に帰すため、聖杯戦争に勝ち抜くつもりだ。その過程で、どれだけ血と罪に濡れようとも止まらない。
 彼の鋭さに、私とは違う世界で生きてきたのだと否応なく思い知らされる。

「私はとっくに決めているとも。アーチャーの罪を共に背負い、理不尽な聖杯戦争と戦う……その為に、君の力を借りたい」

 だからこそ、私は真っ直ぐに向き合った。
 この世界では、タルタリヤの方が圧倒的に正しいかもしれない。万能の願望器を求めて、最後の一人になるまで戦わなければ元の世界に戻れないのだから。
 それに、聖杯を求める主従にだって、切実な理由があるはず。譲れない大義や信念か、聖杯にすがらなければならないほどに追い詰められているか、または邪知暴虐のためか。
 そしてかりそめの世界に生きる命……NPCに気遣うことも、愚かと笑う者もいるだろう。

「俺がどんなサーヴァントなのか、マスターは知っているよね?」
「当然だ。ファトゥスの座に上り詰めた君は、とても強いサーヴァントだろう……なら、私にとって心強い味方だ」
「まさか、俺が誰かを殺さないって本気で思ってるの?」
「私だって、守りたい約束はある。何があっても……それを破るわけにはいかないんだ」

 タルタリヤからすれば、甘い理想論のはずだ。
 しかし、タルタリヤが家族を国の闇から遠ざけようとしたように、私にも裏切れない人がいる。
 私の心を信じて、必死に呼びかけてくれたゆいたちの気持ちを踏みにじれる訳がない。
 もし、タルタリヤを召喚したマスターが、私の知るみんなだったとしても、同じ選択をするはずだ。

「大言壮語と笑いたければ笑え。しかし、私はみんなに約束した……たくさんの人を笑顔にできる、パフェのような人になると」
「子供の夢だね、とても壊れやすそうだ」
「だからこそ、私はそれを大切にしたい。嘘をついて、氷づけにされたくないからな」

 私とタルタリヤは決して相容れない主従だ。
 彼は戦いを望み、他者を傷つける己に誇りすら抱いている。私が何を言おうと、タルタリヤが変わるなどあり得ない。


929 : My true self ◆k7RtnnRnf2 :2023/03/24(金) 07:11:07 f3ADGMeI0
「……君も、旅人と同じように、テウセルのいい遊び相手になっただろうなぁ」
「当たり前だ。私だけじゃない、私の大切な友人もみんな、テウセルくんやトーニャちゃんと一緒に、遊んでくれるさ」

 だが、家族の夢を守ろうとした優しい兄であることも事実だ。
 ファデュイ執行官のタルタリヤと、家族想いの兄であるタルタリヤ……アヤックスと呼ぶべきだろうか?
 どちらも、欠けてはならない大事な一面だ。

「君の考えはわかった。聖杯はいらないし、元の世界に戻りたいって」
「だが、アーチャーは戦うのだろう」
「当たり前さ。召喚されたからには、契約を守らないとね? こればかりは、マスターの運が悪かったってことで、受け入れてくれよ」

 じゃあ、俺はこれから見回りをしてくるから、と言い残して、タルタリヤは煙のように消える。
 他者からの束縛を嫌う彼だ。それこそ、私が令呪で行動に制限をかけない限り、戦いをやめないだろう。
 …………しかし、それがどうしたのか?
 たった一度で諦めてたまるか。
 どんな困難があろうとも、私や…………そしてブンドル団のゴーダッツにも想いをぶつけたゆいがいるじゃないか。
 何よりも、かつて私を操り人形にしたナルシストルーだって、私はわかり合うきっかけを作った。
 ここねやらん、マリちゃんたちだって私の過ちを受けとめ、仲間として認めてくれている。
 ゆいの在り方を認めた品田も、どれだけ傷つこうとも立ち上がった。
 今、私のやるべきことは、タルタリヤと心を通わせる。私たちがいかに力を持とうとも、話をしなければ何も成せないし、身近にいる人間とわかり合えなければ、どうやって聖杯戦争に立ち向かうのか?

「ピピー……」

 パフェのレシピッピは、心配そうな顔で私を見つめている。

「大丈夫だ、時間はある。私は、彼との縁も大事にするとも」

 彼が約束を貫くのなら、私もそれに応えるだけ。
 あぁ、だから私の元に彼が召喚されたのかもしれないな、と納得した。
 彼が二つの顔を持っていたように、私も二つの顔を持っている。
 手段や理念こそ違えど、お互いに守りたい人がいた。
 …………ならば、私たちはわかり合えるはずだ。そんな小さな希望が胸の中に芽生えた。


 がんばれ、あまねちゃん!
 タルタリヤさんはただ者じゃないけど、きっとあまねちゃんの味方になってくれるわ。
 遠くからになるけど、私も応援してるからね!


930 : My true self ◆k7RtnnRnf2 :2023/03/24(金) 07:13:13 f3ADGMeI0





「テウセルの件を持ち出したって無駄だ、って言おうとしたけどなぁ……やれやれ、これからマスターの子守りもしないといけなくなったか」

 ずいぶんと甘いマスターに巡り合ったと、俺はため息をつく。
 だが、ようやく答えを出した。
 闘争を史上の喜びとし、執行官(ファトゥス)の第十一位『公子』にして、一度は璃月を壊滅の危機に追いやった大悪党。
 マスターの言葉を借りれば紛れもないテロリストだ。そんな狂戦士(バーサーカー)が、何故弓兵(アーチャー)のクラスで、殺人はおろか喧嘩の経験があるかも疑わしい少女の元に導かれたのか。
 そう。戦いを望まない平穏な少女だからこそ、だ。

「マスターも戦いはできるみたいだけど、サーヴァントを前にしたらどれだけやれるか…………そこそこ渡り合えても、いつか限界は来る」

 この俺を従えるマスター・菓彩あまね。
 一見するとただの少女だが、俺の目は誤魔化せない。精霊レシピッピと共にし、こんな俺と毅然に向き合う胆力を持っている。しかも、当人曰くプリキュアという戦士だそうだ。
 ヒルチャールやアビス教団、ファデュイの兵を相手にしても遅れを取らない程度の実力は持っていると見ていい。流石に執行官(ファトゥス)や七神を相手に戦えるかはわからないが、自衛程度なら期待できそうだ。
 それに、無策で戦場に飛び込むようなリスクも侵さないはず。俺だけに任せれば、マスターが聖杯戦争で生き残るのは夢物語ではない。

「まぁ、マスターを元の世界に帰してあげる契約だけは、ちゃんと守るよ。罪だって、俺一人で背負う……君は、俺に付き合わされただけの被害者だ」

 だが、俺とマスターの理想は決して一つにならない。
 この世に産声をあげた日から、武芸と殺戮の技術を磨き続け、深淵にて才を開花させた。数え切れない闘争はもちろん、恐るべき魔獣を屠った逸話すらある。
 ましてや、俺はファデュイにいようとも束縛を嫌い、我を通し続けた執行官だ。可能性に満ち、最も危険な執行官とも恐れられたっけ?
 冷酷非道かつ傲慢な俺が、純真無垢な少女が望むように、誰一人の犠牲を出さずに事を進めるなどあり得ない。
 テイワット大陸と違って、ここは聖杯戦争の舞台となった狭き箱庭。故に、己の戦果を包み隠さず話したのさ。
 だが、過酷な運命を前にしても、理想をつらぬくと菓彩あまねは言い放った。


931 : My true self ◆k7RtnnRnf2 :2023/03/24(金) 07:15:43 f3ADGMeI0

「それに、君との約束だって忘れない。こんな世界じゃなくて、君が帰るべき本当のお家に送り届けてあげるからさ」

 悪意や陰謀とは無縁の世界で、マスターは生きなければいけない。
 仮初めの家族を前にしても、マスターは微笑んでいた。
 一方、仲よさげに歩くとある家族を、どこか寂しげな表情で見つめていた。
 強がってこそいるが、本当は寂しくて堪らない。

「強い奴らと戦えれば俺は満足だ。聖杯の奇跡とやらは、マスターに全部譲ってやるとも」

 聖杯の願いなど何一つとしてない。
 受肉し、世界に君臨しようと思わなくもないが、約束の前では霞んでしまう。
 『神の目』を手に入れる? 奇跡で女皇陛下の忠義を果たす?
 もしくは、愛する家族とまた幸せな日々を過ごす……それも悪くないし、その口実ならばマスターも協力するかもしれない。
 だが、果たすべき約束ができたから、心の中で家族に謝罪する。
 何の躊躇もなく、たった一つだけで妥協できた。
 彼女の未来のため、サーヴァントとして聖杯戦争に勝ち残る。

「マスターにあげられる俺からのプレゼントは、それくらいしかないけど」

 サーヴァントになっても、子供と縁があるみたいだな。
 苦笑しながら、英霊になった俺は決意する。
 心優しい少女が愛する家族と巡り会えるよう、この戦いに勝利することを。


【クラス】

アーチャー

【真名】

タルタリヤ、或いはアヤックス@原神

【ステータス】

筋力B+ 耐久B 敏捷A 魔力C 幸運C 宝具A+

【属性】

混沌・悪

【クラススキル】

対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。


932 : My true self ◆k7RtnnRnf2 :2023/03/24(金) 07:17:24 f3ADGMeI0

【保有スキル】

カリスマ:D
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、一軍のリーダーとしては破格の人望である。

無窮の武練:B
幼い頃、辿り着いた深淵にて謎の剣客と出会ったことをきっかけに得たスキル。
闘争の才に目覚め、数多の戦を乗り越えた彼はいつ如何なる状態でも十全の戦闘能力を発揮できる。

邪眼:B
タルタリヤが持つ「神の目」にして、氷の女皇から与えられた力の勲章。
テイワット大陸では「神の目」を持つ人間が特定の元素を操り、操作する超常の能力が与えられる。
ファデュイはその「神の目」を複製する技術を持ち、「邪眼」はその産物。「邪眼」の力は「神の目」を上回るとされるが、使用者の命すらも脅かす危険な代物なため、執行官(ファトゥス)以外に渡されることは滅多にない。
第十一位『公子』であるタルタリヤはこの「神の目」を得て水の元素を操り、更に「邪眼」を使えば雷の元素も思いのまま。
「邪眼」を与えた「氷の女皇」は神に等しく、『公子』も絶対の忠誠を誓っている。
故に、同レベル以下の精神攻撃を無効化できる。


魔王の武装・荒波:B+
タルタリヤの元素スキルにして、水元素の双剣を顕現できる。
双剣でダメージを与えた敵には水の元素を付着させ、扱い方次第では元素爆発を起こせる。
なお、タルタリヤは弱点克服のために弓で戦うことを選んでいるため、こちらの方がより実力を発揮できる。勿論、弓のスキルも並の弓兵を遥かに凌ぐが。

【宝具】

『魔王武装』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
かつて深淵にたどり着き、暗闇の国にて得た武装を身につけたタルタリヤの姿。
神の目と邪眼、双方の力を全て引き出したことで水と雷の元素を自由に操り、タルタリヤの戦闘力を限界以上に引き上げる。
堅牢たる武装は並大抵の宝具を容易く弾き、魔王の力を発揮したことで広範囲の攻撃も可能なため、半端な英霊では接近すら困難。
ただし、邪眼の力を利用している反動として、長時間の使用は不可能。令呪によるブーストをかけなければ、タルタリヤの霊基は加速度的に崩壊し、良くて三度しか発動できない宝具となる。
何のブーストもない状態で魔王武装を強引に纏っても、最大で5分程度しか維持できず、また霊核に致命的な傷を負ってしまい、タルタリヤは消滅を免れない。

『禁忌滅却の札』
ランク:A+ 種別:対城宝具 レンジ:- 最大補足:-
魔神戦争にて岩の魔神モラクスに敗れ、封印された渦の魔神オセルを呼び覚ますために使われた札。
厳密にはファデュイによる複製だが、タルタリヤはこの札を使って海からオセルを復活させ、一度は瑠月を壊滅の危機に追い込んだ。
また、この宝具を発動した場合、オセルのみならずファデュイの兵たちも顕現し、敵を殲滅させようと動く。
ただし、生前のタルタリヤは札の使用自体は不本意だったため、当人が自発的に発動させることはほぼないだろう。

【weapon】
弓及び双剣

【人物背景】

氷国スネージナヤの組織であるファデュイ執行官(ファトゥス)にして、第十一位『公子』の称号を与えられた青年。
人当たりのよい態度を取りながら、自らの戦績と名を広く知らしめていて、修練を重ねた戦士の一面を秘めている。
強者との戦いを何よりも好む戦闘狂で、同じ執行官(ファトゥス)からも危険視されるほど。戦いのためなら、執行官(ファトゥス)の地位すらも何の躊躇もなく使う。
そして、彼は家族想いの優しい兄でもあり、幼い家族に自分の闇をひたすらに隠し続け、自らの傷を顧みずに子供の夢を守り通す責任感を持つ。
行く先々で出会う子供とはすぐに仲良くなれる。
料理や掃除、釣りも得意。

【サーヴァントとしての願い】

敵対主従との戦いを楽しむが、それ以上にマスターであるあまねを元の世界に帰すことが重要。


933 : My true self ◆k7RtnnRnf2 :2023/03/24(金) 07:22:46 f3ADGMeI0
【マスター】

菓彩あまね@デリシャスパーティ♡プリキュア

【マスターとしての願い】

聖杯はいらない。
みんなの期待を裏切らないよう、この世界でタルタリヤと共に戦う。

【能力・技能】

文武両道。
勉強や料理が得意で、空手をたしなんでいる。
ハートフルーツペンダントを使って、食後のデザートであるパフェのプリキュア・キュアフィナーレに変身可能。
キュアフィナーレに変身すればサーヴァントとも戦える。

【weapon】

パフェのレシピッピ。
あまねと心を通わせたレシピッピ。レシピッピとは料理の妖精で、料理を愛する人から生まれるほかほかハートに集まる場所に現れる。
あまねたちプリキュアや、クッキングダムの住民及び無垢な子供しか姿がその姿を見られない。また、基本的にエナジー妖精が言葉を翻訳しているが、聖杯戦争中ではサーヴァントも視認及び会話ができる。

ハートフルーツペンダント。
パフェのレシピッピと出会ったあまねの願いとほかほかハートから生まれた奇跡のアイテム。
ハートキュアウォッチの所有者との通話、そしてインターネットとの接続ができ、またレシピッピを格納する機能がある。
パフェのレシピッピがペンダントの中にいる状態で、二人の心が一つになった時、あまねはキュアフィナーレに変身できる。

クリーミーフルーレ。
キュアフィナーレの使用する武器で、モチーフは絞り袋。
エネルギーを絞り出すことで決め技、プリキュア・フィナーレ・ブーケを使って敵を浄化できる。
更にエネルギーを絞ることで、上位技のプリキュア・デリシャスフィナーレ・ファンファーレを使用可能。

【人物背景】

私立しんせん中学校で生徒会長をつとめ、おはぎとパフェが大好きな女の子。
正義感が強く、真面目で面倒見がいいため人望も高い。双子の兄のゆあんとみつきを尊敬している。
かつてはブンドル団に操り人形にされ、怪盗ジェントルーとしてレシピッピを悲しませていたが、ゆいたちとのふれ合いで自分を取り戻した。
自らの罪に葛藤しながらも、過去と将来の自分に目を向けて、菓彩あまねはキュアフィナーレに変身し、ブンドル団と戦う決意を固める。

ある時、ブンドル団のナルシストルーから煽られて、あまねの心は大きく揺らいでしまう。
ナルシストルーを許せず、彼に大きな恨みを抱いてしまうが、ローズマリーからのアドバイスを受け、自分の感情と真っ直ぐに向き合う。
心を強く保ち、自らの正義を貫けるようになった彼女は、ナルシストルーの心を救うきっかけを作った。


934 : ◆k7RtnnRnf2 :2023/03/24(金) 07:23:28 f3ADGMeI0
投下終了です。


935 : ◆NIKUcB1AGw :2023/03/27(月) 22:36:18 hAQ3a38.0
投下します


936 : いぬ ミーツ いぬ ◆NIKUcB1AGw :2023/03/27(月) 22:37:03 hAQ3a38.0
俺の名前は、犬塚翼。
元は無名の劇団員だったが、ある日恋人の夏美をさらわれた上に冤罪まで背負わされた。
夏美をさらった謎の存在は、「1年逃げ切れば夏美とまた会わせる」と言ってきた。
その言葉を信じ、俺は警察から逃げ続ける日々を送ることになった。
そんな中で、俺はさらなる厄介ごとを抱え込む羽目になる。
正義のヒーロー、「ドンブラザーズ」の一員になっちまったんだ。
怪物と戦う使命なんてほっぽり出しちまえばよかったんだろうが、真面目に戦っちまうあたり俺もお人好しだな。

さて、ここまでは前置きに過ぎない。
今、俺は「聖杯戦争」なる命がけのゲームに参加者に選ばれ、異世界に連れてこられてしまった。
よりによって、なんで俺なんだ。
これ以上厄介ごとを背負わせるんじゃない。
不幸中の幸いなのは、この世界では俺が指名手配犯でないことだが……。
たった今、俺は警察よりも厄介そうな奴等に追われている。

「ギィィィィィィ!」

耳障りな鳴き声を上げながら俺を追ってくるのは、数え切れないほどのコウモリだ。
裏路地とはいえ街中にこんな大量のコウモリがいて、しかも人間を襲ってくるとは考えづらい。
おそらく、他の聖杯戦争参加者の差し金だろう。
いつもならドンブラザーズの力で異空間を通って逃げるところだが、どうもあの力はこっちの世界では使えないらしい。
仕方なく自分の足だけで逃げていたが、そろそろ限界だ。
こうなったら覚悟を決めて戦うか、と思い始めたその時。
突然、俺の前の地面が光を放ち始めた。

「な、なんだ!?」

驚く俺の眼前で、何者かが光の中から現れる。
それは巨大な剣を手にした、青い髪の男……いや、女だ。
顔立ちもボディーラインも明らかに女性だっていうのに、なんで一瞬男に思えたんだ?
混乱する俺に対し、その女は凛とした表情を浮かべて話しかけてきた。

「すまない、遅くなった。
 サーヴァント、セイバー。これよりマスターと共に戦わせてもらう」
「そうか、あんたがサーヴァントってやつか。
 ちょうどよかった。さっそくで悪いんだが、こいつらをどうにかしてもらえるか?」
「使い魔か……。了解した」

言うが早いが、セイバーと名乗った俺のサーヴァントはコウモリに突撃していった。
そして、空気を裂く音が数回響く。
おそらくは、セイバーが剣を振るったんだろう。
俺の目には全くそれが見えず、気がついた時には全てのコウモリが斬り捨てられていた。

「さて、当面の危機は去ったな。
 話をしよう、マスター」


937 : いぬ ミーツ いぬ ◆NIKUcB1AGw :2023/03/27(月) 22:37:55 hAQ3a38.0


◆ ◆ ◆


不用心にも扉が開けっぱなしにされた、無人の倉庫。
その中で、俺とセイバーは会話を始めた。

「私は、あまり弁の立つ方ではない。
 なので、単刀直入に訊こう。
 マスター、君に叶えたい願いはあるか?」
「当然だ」

セイバーの問いに、俺は即答する。

「離ればなれになった夏美を……恋人を取り戻す!
 俺にそれ以外の望みなんてない!」
「その願いを叶えるために、君はこの聖杯戦争で優勝を目指すか?
 他の参加者を殺すことになっても……」
「……ああ、そうだ」
「嘘だな」

俺の言葉を、セイバーはあっさり否定する。

「はぁ? なんでそう言い切れる」
「自分の願いを叶えるために他人を犠牲にするような人間が、媒介もなしに私を召喚できるはずがない。
 自分で言うのもなんだが……私は、とびきりの善人だからな」
「本当に自分で言うことじゃねえな……」

不敵な笑みと共に放たれた言葉に、俺は呆れを隠せない。

「とびきりって、具体的にはどのくらいだよ」
「世界を救うくらいさ」

そうのたまうセイバーの目は、あまりにも澄んでいた。
こんな目で見つめられたら、自分が小さく思えちまう。

「わかった、わかったよ。
 人助けを優先すればいいんだろ?」
「ああ、そうしてくれると助かる」

セイバーが笑う。
今度の笑みは、見た目の年齢相応の可憐なものだった。
俺に夏美がいなければ、見惚れていたかもしれない。

「ああ、そうだ。
 マスター、君の名前はなんていうんだ?」
「名前? まあ、別に教えてもいいか。
 犬塚翼だ」
「犬塚……」

俺の名前を聞いたセイバーは、きょとんとした表情を浮かべる。

「なんだよ。俺の名前がそんなに珍しいか?」
「いや……。ただ、縁があるものだと思ってな」
「なんだよ、縁って……」

何かその言葉が心に刺さるのを感じながら、俺は顔を伏せた。


938 : いぬ ミーツ いぬ ◆NIKUcB1AGw :2023/03/27(月) 22:39:05 hAQ3a38.0

【クラス】セイバー
【真名】犬塚信乃
【出典】里見☆八犬伝REBOOT
【性別】女
【属性】中立・善

【パラメーター】筋力:C 耐久:C 敏捷:B 魔力:C 幸運:B 宝具:A

【クラススキル】
対魔力:A
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
Aランクでは、Aランク以下の魔術を完全に無効化する。
事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。

騎乗:E
乗り物を乗りこなす能力。騎乗の才能。
「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。
特に乗り物に関する逸話を持たないため、最低レベル。


【保有スキル】
犬士:A
民を妖怪の手から守ることを運命づけられた、八人の若者の一人。
人ならざる魔のものを攻撃する時、攻撃力が上昇する。

戦闘続行:B
名称通り戦闘を続行する為の能力。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。
「往生際の悪さ」あるいは「生還能力」と表現される。
幾度も絶望の淵に追い詰められながらも、決して勝利を諦めず戦い続けた逸話に由来する。

【宝具】
「村雨」
ランク:A 種別:対人(神)宝具 レンジ:0-2 最大捕捉:1人
「破邪の大剣」として伝承される、信乃の愛刀。
本来は伏姫に成り代わった玉梓が用意した舞台装置に過ぎなかったが、信乃が伏姫を「倒すべき敵」と認識したことで「神殺しの剣」へと生まれ変わった。
「神性」を持つサーヴァントに対し、防御無効の効果が発動。
相手がさらに「悪」属性だった場合、与えるダメージが上昇する。

「八徳」
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:0 最大捕捉:1人(自身)
残り七人の犬士たちの魂を呼び出し、本来あるべき一つの魂へと戻る。
発動には、令呪を1画消費する必要がある。
発動中は「犬川荘助の槍術」「犬山道節の忍術」「犬飼現八の捕縛術」「犬田小文吾の怪力」
「犬江親兵衛の勇猛さ」「犬坂毛野の投擲術」「犬村大角の符術」全てを使いこなすことができる。


【weapon】
「村雨」

【人物背景】
八犬士のリーダー格である、「孝」の犬士。
その本質は幾度も転生を繰り返し、茶番劇の「主人公」を演じさせられる神の玩具。
だが男であるはずの「犬塚信乃」が女として生まれた時、神の脚本は破綻し始めた。

【サーヴァントとしての願い】
不本意に聖杯戦争に巻き込まれた人々を救う


【マスター】犬塚翼
【出典】暴太郎戦隊ドンブラザーズ
【性別】男

【マスターとしての願い】
夏美を取り戻したいが……

【weapon】
「ドンブラスター」
ドンブラザーズの変身アイテム兼共通武器である銃。
ヒトツ鬼が出現すると自動的にメンバーの元に出現するが、メンバーが任意で呼び出すことも可能。

「アバタロウギア」
ドンブラスターにセットすることで効果が発揮される、歯車型アイテム。
メンバー個人のギアの他、その戦隊の自分とシンボルカラーが同じ戦士に変身できるレジェンド戦隊のギアも存在する。
現在の犬塚は、「イヌブラザーギア」と「リュウソウジャーギア」を所持している。

【能力・技能】
料理の腕はプロ級。

【人物背景】
ドンブラザーズのメンバー、「イヌブラザー」にして、冤罪で指名手配中の元舞台役者。
逃走生活でやさぐれてはいるが、本来の性格は面倒見のいいお人好し。
参戦時期は、ドン1話終了時点。

【方針】
戦いを望まない参加者を守る


939 : ◆NIKUcB1AGw :2023/03/27(月) 22:40:40 hAQ3a38.0
投下終了です


940 : ◆ZBzxr8kFD6 :2023/04/15(土) 09:49:31 OFfn0hRs0
投下します


941 : ギルベルト・ハーヴェス&アヴェンジャー(ベリアル) ◆ZBzxr8kFD6 :2023/04/15(土) 09:53:02 OFfn0hRs0
 綺羅星の如く、威風堂々と男は歩を進めていた。
 行進する軍隊の如く威厳を放つ足音は、世界にその名を知らしめるファンファーレとなる。
 否、男だけに有らず。彼がこの世で最も敬愛し、歴史に名を遺した偉大なる英雄すらも、世に刻もうとしている。
 国の未来のため、紛れもない悪の敵となった英雄を想っていた。
 全ての悪を討ち滅ぼそうと、如何なる不条理をも捻じ曲げた英雄がいた。
 その英雄が報われる新世界こそが男の願い。

「が、はーーッ!」

 サーヴァントの悲鳴。
 心臓たる霊核を貫くのはアダマンタイトの剣。
 流星の如く速度で、男は二体目のサーヴァントも一閃し、マスターの頭蓋を叩き潰す。
 セイバーとランサー、生前に遺した武勇伝からこの地に召喚されたサーヴァントであり、非常に優れたステータスを誇っている。
 かの英霊たちが誇る聖剣と聖槍は、それぞれ対軍レベルの宝具。ひとたび振るわれれば、如何に数や質を揃えようと、瞬く間に蹂躙できる。
 男に向けて落とされる冷酷無情なギロチンは。

「それが、どうした?」

 パチン、と音が鳴って。
 光を伴った怒涛の剣圧と、正確無比の一閃は遮られた。
 炸裂。
 爆音。
 振動。
 閃光。
 変替して響き渡る衝撃は宝具すらも飲み込むほど。爆撃の余波は、構えに入った3組目の主従を容赦なく吹き飛ばす。
 指を鳴らしたと認識できたか定かでないまま、マスターごと英霊は塵となる。始めからいなかったように、跡形も遺らなかった。

「う、ウソ……だろ! どう、して……!?」

 顔面蒼白、としか形容できない無様な姿を晒すのは、たった一人残されたマスター。
 先程の横柄な態度とは打って変わって、みっともなく震えている。大の男が、バケツをひっくり返したように涙を流していた。
 イヤだ、助けて、なんでもする…………そんな月並みな命乞いが口から出る間もなく、喉を貫かれて息絶えた。


942 : ギルベルト・ハーヴェス&アヴェンジャー(ベリアル) ◆ZBzxr8kFD6 :2023/04/15(土) 09:55:37 OFfn0hRs0
 3分にも満たなかった。
 聖杯戦争を勝ち抜く為、同盟を組んだ複数の主従がいた話から遡らなければならない。
 どんな魔術師でも、如何に優れたサーヴァントを召喚しようとも、たった一組でトロフィーへの道を順風満帆に進むのは極めて困難だ。
 エキスパート、ベテランと称されるその魔術師たちは、優秀だからこそ結託した。いずれ敵対すると承知の上で、相手の弱点を探り、または確実な隙を伺う為の同盟が成立する。
 サーヴァントも皆、同じ目論見だった。生前の逸話で高貴たる真名を誇り、宝具及びステータスの両面が非常に優れ、聖杯戦争の脅威となり得る集団に見えた。
 そうして、アジトに敵性マスターの接近を感知した為、腕試しを兼ねて戦いに挑んだ。
 サーヴァントも引き連れず、ノコノコとやってきた格好のエサなど取るに足りない…………誰もがそう思っただろう。


 しかし、それが手の平の上で起きた出来事だったら。
 同盟からたった一人のマスターを襲撃するまでの流れが、誰かに仕組まれたものだったら。
 そもそも、如何なる食わせ物だろうと、都合良く遭遇するなど滅多にない。
 聖杯戦争の広い舞台で友好的な人物と巡り会うのは、余程の幸運が働かなければ不可能だ。
 だが、運命を自在に操れる狡知の持ち主がいたらどうなるか。
 優れた頭脳で敵を誘導し、彼らのアジトとなり得る場所を事前に用意できる人物がいれば?
 彼らも気付かない、細く丈夫な蜘蛛の糸を張り巡らせば一網打尽だ。
 アッパークラスの主従がどれだけ集まろうと、その男に手札を把握されれば意味がない。
 堅牢堅固のドリームチームと思われた集団は、サーヴァントも含めて、たった一人の男に鎧袖一触にされた。


 Metal Nova St.Stigma Elysium
 超新星――楽園を照らす光輝よ、正義たれ


 彼が勝利を収めた魔法ーー星辰光(アステリズム)の正体。
 衝撃を付着し、男が自らの意志で起動できる爆弾を仕掛けられる。
 ただの一発を多段攻撃に変える凶星。
 だが、真に恐るべき点は爆弾の数に制限がなく、その気になれば街一つを消し飛ばす威力を誇る。
 無論、今回の起爆では規模を押さえたが、サーヴァントを星屑に変えるのは造作もない。
 敵対チームの拠点に衝撃を仕掛け、頃合いを見計らって起爆させた。
 全てはこの主従だから成せた策。

「わお。流石はオレのマスター……前戯から激しすぎでしょ」

 一方的な蹂躙の末、勝利を手にした主を不敵に見守る男。
 老若男女問わず、人を魅了させるオーラを放つ程に整った容姿を誇っていた。声色も甘く、たった一言でも鼓膜に響けば全身を酔わせる程の威力がある。
 衣服は、黒一色だった。胸元を派手に開いたドレスシャツとパンツ、ベルトに革靴……短髪に合わせて、全てが漆黒だ。
 背丈も高く、格闘家やボディービルダーを自称してもおかしくないほど、抜群の肉体美だ。僅かに覗けるシックスパックだけでも計り知れないオーラがあった。
 咲き誇る血肉の花など一瞥もせず、狡猾な笑みと共に歩む。


943 : ギルベルト・ハーヴェス&アヴェンジャー(ベリアル) ◆ZBzxr8kFD6 :2023/04/15(土) 09:58:05 OFfn0hRs0
「ただ、ちょっとスマートじゃなかったかな? もっとムードを出さなきゃ、気持ちいいプレイはできないぜ」
「アヴェンジャー、貴様の下劣な言葉など私は聞く耳を持たん。汚物を垂れ流し、多くの人間を悪徳に堕とすその口……反吐が出る」
「ククッ、マスターの目つきと言葉は刺々しくてそそるねぇ。マゾヒズムに浸りそうだ」

 マスターの炯眼を真っ正面から受けて尚、アヴェンジャーは余裕を崩さない。
 男ーーギルベルト・ハーヴェスは召喚されたサーヴァントを心から嫌悪している。
 より輝かしい光を侮辱し、人の世を滅ぼすアヴェンジャー・『ベリアル』の逸話を知っては、一欠片の好感を抱けなかった。
 この男は非常に優れたサーヴァントだ。
 星辰奏者すらも容易く退けかねないスペックと強い精神力、何よりも極めて頭が回る。
 ギルベルトに匹敵する程の頭脳を誇り、狡知と称すにふさわしい。
 聖杯戦争で勝ち抜くにおいて、まさに理想的なサーヴァントと百人中百人が肯定するだろう。
 だが、そんなベリアルを召喚した上で、敢えてギルベルトだけで挑んだ理由はたった一つ。
 実力試しだ。
 いくらベリアルが強力なサーヴァントといえど、四六時中同行できるわけがない。
 何らかの理由で別行動を取った矢先、敵対サーヴァントとの戦闘に突入するケースもある。
 故に、単身でどこまで通用するのかを測る必要があった。
 かの偉大なる英雄ーークリストファー・ヴァルゼライド総統閣下なら、サーヴァントが相手でも渡り合える。
 ヴァルゼライド閣下なら勝てる。その希望を胸に、ギルベルトは闘争に身を投じて……難なく勝利を手にした。

「貴様は、ただ策を弄すればいい。屑は屑らしく身の程を弁えることだ」
「ずっとそうしているぜ? オレはマスターを勝たせたくて、誠心誠意尽くしているのさ。だからこうして、愉快に乱交パーティーにも興じれるだろ」
「その聡明さは認めよう。だが、聖杯は貴様の願いを満たさないーー"勝つ"のは私だ」

 嘲笑するベリアルと、焼き焦がれん程の光を掲げるギルベルト。
 彼らの間に、信頼関係など培われてない。
 実力と知性、そして精神性……その全てが高水準を誇り、如何なる者が立ちはだかろうとも、容易に吹き飛ばせる。
 先の集団も彼らからすれば蟻やミジンコに等しい。
 個としてはお互いを高く信用するが、その間には決して埋められない深い溝がある。

「私が望む願い……貴様のような塵屑には決して理解できない高潔なもの。正道、可能性を求める者が真に報われる世界だ」
「ルシフェルみたいなことを言うねぇ。そんな世界が実現できると、本当に思っているのかい?」
「できる。皆が弛まぬ努力を重ねれば、邪悪を屠る英雄になれるさ。貴様やベルゼバブ、そしてルシファーを打ち倒したようにな」

 審判者は、ただ一直線にベリアルを蔑む。
 そう。この二人が交わるのは世界が終わろうともあり得なかった。
 敬愛する救世主の意志を背負い、世界の”終末”を願うベリアル。
 偉大なる英雄の輝きを守るため、人々の幸運が約束された世界を目指すギルベルト。
 そんな二人が主従として組まされたのは、何の因果か。


944 : ギルベルト・ハーヴェス&アヴェンジャー(ベリアル) ◆ZBzxr8kFD6 :2023/04/15(土) 10:00:21 OFfn0hRs0
「……キミはわかってるのか? 人間はそんなに強くない」

 惑う事なき正論にも思える言葉を投げる主に、ベリアルは問いかけた。
 どれだけ険悪な関係になろうとも、主従を結んだ以上は否応なく互いを知る。
 すぐにベリアルは気付いた。ギルベルト・ハーヴェスという男の理想と正義は、極端な根性論で歪みきっていると。

「皆、いつだってベストを尽くせるとは限らないだろ。どんなにデカいモノを誇ろうとも、いつかは弾切れになる」
「限界を超えられるほど、努力すればいい。基礎ができていなければ、強くなる為に己を鍛えれば済む。単純な話だ」
「あのなぁ。誰も彼もが、そんなことできるわけーー」
「できる。如何なる理不尽に傷付こうとも、理想に突き進んだ英雄を私は知っているからな」

 返ってくるのはわかりきった単純な答え。
 予想通りだが、ベリアルはため息をつく。流石の彼も心底呆れていた。
 要するに、偉大な先人を見習ってお前らも頑張れと、世界中の人間に強制するつもりだ。
 生まれつき何らかの障害を抱えたり、または人生で消えない傷や欠損を負おうとも、本気の夢があれば生きられると……ギルベルトは主張する。そこに悪意はない。
 事実、ギルベルトは限界を超えて怪物になった。実に大したことだ。
 だが、それを倣える人間がどれだけいるのか?
 あの特異点もギルベルトには真っ向から異を唱えると断言する。
 この男の理想を叶えた先にあるのは、弱者が永遠に這い上がれない停滞した世界。
 実力が満たない、あるいは不遇な生まれの人間には"死"の他に何も齎さない。
 溢れる涙と血の量は計り知れず、頂点に立つ太陽は全てを焼き殺すだけ。
 いっそ”終末”させた方がまだ人道的な、鼻で嗤う出来損ないだ。

「それは実に結構だ」

 ベリアルがギルベルトに抱く印象は一つ。
 窮屈で心底つまらないマスターだ。
 愚直な狂気に染まった救えない男。
 完璧や正しさ、あるいは光の奴隷だ。
 何を言っても耳を傾けず、真っ直ぐに進むだけ。召喚されたその日のうちに、破滅に導くことを諦めた。
 ベリアルがどれだけ甘い言葉を溢そうと、ギルベルトはその全てを一蹴する。
 サイス・オブ・ベリアルを渡しても、このマスターは汚濁する気配を見せず、むしろ手足同然に振るった。
 ある意味では偏りきっている。
 恐怖や絶望、堕落といった言葉から遠く離れている男だ。
 仮に力で脅そうともギルベルトは信念を掲げて、逆にベリアルの弱みを的確に突くだろう。
 サーヴァントとして召喚された以上、ベリアルにとってギルベルトは不可欠だ。ベリアル個人のスペックが優れようと、今やマスターの存在が大前提となる。
 あのベルゼバブやルシファーがサーヴァントになろうとも同じ。エゴイストの体現者たる彼らが素直に従うはずがないが、否応なく手綱を握られてしまう。


945 : ギルベルト・ハーヴェス&アヴェンジャー(ベリアル) ◆ZBzxr8kFD6 :2023/04/15(土) 10:03:39 OFfn0hRs0
「サーヴァントがオレでよかったのかもな」

 ベリアルが最も崇める救世主や、同盟の末に決裂した黒衣の男が駒になれば、ギルベルトは終わりだ。
 曲がりなりにも秩序を目指すギルベルトに同調するなどあり得ない。逆鱗に触れられた末に、殺すだけ。
 ギルベルトはその結末を喜んで受け入れる。世界の敵となる男の野望を防げるなら、彼にとって本望だ。
 その最期が余計に神経を逆撫でさせ、原子レベルで消滅させても彼らの怒りは収まらない。

「キミほどのマスターに付き合えるサーヴァントなんて、そうそういない。癖が強すぎて、オレじゃなきゃ簡単にイッちまいそうだ」
「私も、貴様のスペックは高く評価している。手駒にするにおいて、これほど優れたサーヴァントは滅多にいない」
「フフ……オレがマスターを裏切るって、警戒しないのかい? ほら、オレは色男だから、どこかで浮気してるかもな」
「ならばよし。それで確実な”勝利”を手にするなら、私は自由を認めよう」

 彼らは狡知。
 指し手となり、他者を盤面の駒にする男達だ。
 鞍替えや裏切りの算段など、主従が成立したその日からつけている。
 真に勝つべき強敵と運命共同体になった上で、聖杯戦争に挑まなければならない。

「何事も使いようだ。貴様が宿した力……混沌を司るコアも、大義を成す切り札になり得るのだから」
「ヴェルサスか……これをモノにしたせいで、オレはいつだってビンビンに起ってるんだよなぁ」
「ならば、私に向けて破壊と殺戮の衝動を発散させるか?」
「大丈夫。オレは結構我慢強いからね、極上のオーガズムは本番までのお楽しみさ」

 エクストラクラス・アヴェンジャーとして召喚されたベリアルは混沌を宿している。
 ヴェルサス・コア。
 とある世界のとある物語にてベルゼバブより奪った強大なる力。
 恐るべき因果を、彼らは武器として扱えるのだ。
 歪みきった秩序と混沌の果ての”終末”ーー相容れない思想を抱えながらも、光の亡者と狡知の堕天司は理想を目指す。
 その後に、瓦礫の山と深紅の花畑を残しながら。


946 : ギルベルト・ハーヴェス&アヴェンジャー(ベリアル) ◆ZBzxr8kFD6 :2023/04/15(土) 10:06:40 OFfn0hRs0

【クラス】
アヴェンジャー

【真名】
ベリアル@グランブルーファンタジー

【ステータス】

筋力A 耐久A+ 敏捷B 魔力A+ 幸運D 宝具EX

【属性】

混沌・悪

【クラススキル】

対魔力:A+
A+以下の魔術は全てキャンセル。事実上、魔術ではアヴェンジャーに傷をつけられない。
原初の星晶獣たる天司にして、ヴェルサス・コアすらも取り込んだベリアルは格が高く、対魔力スキルも優れている。

陣地作成:B+
アヴェンジャーのクラススキル。
混沌、そして”終末”を目指すため、自らに有利な陣地を作り上げる。

道具作成:A
魔力を帯びた器具を作成できる。
アヴェンジャーの場合、闇または混沌の属性を帯びた武装すらも容易く量産できる。
その格はAランク相当の宝具に並ぶほどで、特にサイス・オブ・ベリアルは善の属性を持つサーヴァントにクリティカル判定のダメージを与える。

【保有スキル】

星晶獣:A
遙か昔、星の民と呼ばれる一族によって生み出された獣にして、原初の星晶獣たる天司。
原初の星晶獣たる天司は高い戦闘スペックと耐久力を誇り、人知を超えた力を持つ星晶獣の中でもトップクラス。
『進化』を司る天司長ルシフェルと同時期に誕生した為、アヴェンジャーもまたAランクに該当する。
星晶獣のコアの他にも、アヴェンジャーはもう一つのコアを取り込んでいる為、それらが複合した結果Aランク相当の勇猛・戦闘続行・無窮の武練のスキルを兼ね備えている。

狡知の堕天司:A+
ベリアルは『狡知』を司る堕天司。
天賦の見識、人間観察、千里眼、邪智のカリスマといった観察眼に関するスキルが複合され、初見の相手だろうと瞬時にプロファイリングできる。
また、『狡知』として相手を籠絡する話術にも長けており、如何に瀕死の状態に追い込まれようとも余裕を崩さず、あらゆる精神攻撃を受けつけない。

ヴェルサス・コア:B+
ベリアルがベルゼバブより掠め取ったもう一つのコア。
かつてベルゼバブはパンデモニウムに封印されたが、ケイオスマターの力を用いて自力で脱出し、空の世界に危機を及ぼした。また、ケイオスマターの力を世界そのものに浸透させて、大いなる混沌すらも起こしている。
不滅すら滅する槍の媒介にもなり、不死の存在すらも腐食、あるいは跡形もなく消滅させることが可能。あらゆる加護や回復、または不死に関するスキルを無効化し、神性スキルすらも貫通できる。
このコアを有している限り、ベリアルはあらゆる因果を捻じ曲げる他、その気になればベルゼバブの十八番であるケイオスマター及びケイオス・レギオンの顕現も可能。
無論、聖杯戦争の世界そのものに歪みを与えることはないが、固有結界に突入する程度なら造作もない。


947 : ギルベルト・ハーヴェス&アヴェンジャー(ベリアル) ◆ZBzxr8kFD6 :2023/04/15(土) 10:10:01 OFfn0hRs0


【宝具】

『破壊と闘争、混沌の再来を求めるは神の力に辿り着いた悪魔(アバタール・ベリアル)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
ヴェルサス・コアを取り込んだベリアルが、その力を真に発揮させた時に顕現する恐るべき姿。
禍々しい角と漆黒の翼、そして誰もを畏怖させる容姿は悪魔と呼ぶにふさわしく、神の領域に届く力で他者を蹂躙する。
特異点と黒衣の男ベルゼバブが奇跡の共闘を成し遂げなければ打ち倒せなかったほど、この姿となったベリアルの戦闘力は凄まじく、当人の全ステータスを大幅に増幅させる。
ヴェルサス・コアの影響で破壊衝動すらも引き起こし、Aクラス相当の宝具を受けても足止めすら困難となる。
ただし、長時間の発動をしてしまえば反動でベリアル自身が肉体崩壊する為、令呪のサポートがなければ諸刃の剣と呼べる宝具となる。

『ルシファーの遺産(アバター) 』
ランク:A+ 種別:対城宝具  レンジ:-  最大補足:-
幾つもの星晶獣のコアを繋ぎ合わせて誕生した怪物。
天司長ルシフェルによって封印されたが、後に黒衣の男によって現世に蘇る。
とある戦いではベリアルがアバターを使役し、特異点達に嗾けた逸話から彼の宝具となった。
ベリアルの指示で戦うが、アバター自身に意志はない。


【weapon】

各種武装、アバター。

【人物背景】

造物主ルシファーを崇拝する『狡知』を司る堕天司。
不埒者としての悪名を知らしめており、狡猾な手段で特異点を何度も翻弄した。

【サーヴァントとしての願い】

救世主が望む”終末”を成し遂げる。

【マスター】

ギルベルト・ハーヴェス@シルヴァリオ・トリニティ

【マスターとしての願い】

かの英雄が報われる世界を作るため、聖杯戦争に"勝利"する。

【能力・技能】

努力を惜しまず、本人の才能も非常に恵まれており、鍛錬と戦闘を重ね続けて非常に高いスペックを誇っている。星辰奏者の力と合わされば、並のサーヴァントを蹴散らすなど容易い。
重傷を負おうとも、限界を超えた戦闘続行も可能。
軍隊を率いる程の頭脳とカリスマ、政界すらも動かす権力を誇る。

【人物背景】

審判者(ラダマンテュス)の異名を持つ軍事帝国アドラーの中将。
品行方正・公明正大の体現者で、周囲からの人望も厚い。実力があれば敵対人物だろうと敬意を払う。
クリストファー・ヴァルゼライド総統閣下を敬愛し、家柄や才能に奢らず不断の努力で成長し続けた光の亡者。


948 : ◆ZBzxr8kFD6 :2023/04/15(土) 10:10:27 OFfn0hRs0
投下終了です


949 : ◆TPO6Yedwsg :2023/05/06(土) 23:24:33 mKNI9gto0
聖杯戦争企画案を投下させていただきます


950 : ◆TPO6Yedwsg :2023/05/06(土) 23:26:53 mKNI9gto0


序文:この企画内容、システムはフリー素材として自由に流用・改変可とします。


【企画ルール・コンセプト】
版権キャラクターを用いて聖杯戦争を行うリレー小説企画です。
採用主従の数はクラスを問わず最大16組を想定していますが、厳密には未定とします。


【候補作について・コンペ期間】
投下の際には必ず個人判別用のトリップを付けていただくようお願いします。
「ネットミーム」「オリジナルキャラクター」「実在人物」「その他一般的に見て公序良俗に反するキャラクター」の投下は禁止とします。
候補作は公式に存在する基本クラスからエクストラクラス、公式に存在しないクラスを作成しても構いません。
コンペ期間は1ヶ月間とします。またコンペにおいては主催による確定採用枠が存在しますのでご了承ください。
また採用傾向によってはクラスの偏りが発生する場合もありますのでそれもご了承ください。


【舞台設定】
東京23区をモデルとした聖杯によって作られた並行異世界が舞台とします。
現代の東京と相似していますが、採用主従の出身世界観に応じた住民や施設が生えてきても構いません。
ただし、このシステムを用いた不採用主従の限定的な起用を禁止します。
またこれらの住人たちは平行世界の別人とし、聖杯戦争に大きく干渉する力を持ちません。
エリア外は存在せず、一般人エリア外という概念を認識していません。
また後述しますが、聖杯戦争の進行に応じ区画が順次消滅していきます。


951 : ◆TPO6Yedwsg :2023/05/06(土) 23:28:21 mKNI9gto0


【聖杯戦争内でのルール】
『マスターの立場』
参加者は舞台に召喚された時点で令呪とサーヴァント、そして聖杯戦争に関する知識を与えられます。
ただし、前述のエリア消滅や後述の神秘の秘匿ルールはこの知識に含まれず、自力で理解する必要があります。
マスター達には何らかの形での社会的立場(ロール)が与えられます。
ただし、ロールが消滅したエリアを基礎とするものの場合、該当エリアが消滅した瞬間ロールも消滅します。
ロールなし、として一から生活基盤を構築するのも可とします。候補作ではどちらの設定を選んでいただいても構いません。

『現在(予選中)の状況』
現在聖杯戦争は「予選段階」です。招かれた参加者が互いに潰し合い、正式な聖杯戦争の参加者を選定している段階です。
舞台の外は存在せず、聖杯戦争中の脱出はいかなる手段をもってしても不可能です。
候補作の中で他の主従を倒しても構いませんが、打倒されるキャラクターは出典元が存在しないモブキャラのみとします。
予選期間は1ヶ月とします。

『本戦の日時、終了条件について』
本戦は1月1日の正午から開始されます。
3日目の終了時をおおよその決着期限とします。
残存サーヴァントが1騎になった時、聖杯戦争は終了します。

『マスターの生死について』
マスターはサーヴァントが脱落後も生存し、聖杯戦争終了時まで生存していた場合それぞれの世界に帰還することができます。
ただし、「すべての令呪を失いかつサーヴァントと契約していないマスター」はそうなった瞬間消滅、死亡します。
またマスターの中でも既に死亡している時間軸からの参戦者は、聖杯に自身の蘇生を願わなければ消滅します。

『令呪と契約について』
令呪を持つマスターは互いの合意によってサーヴァントとの再契約を行えます、特別な術式は不要です。
令呪の移譲については令呪の持ち主の合意があれば、他のマスターに令呪を譲渡することができます。
またマスターは敵マスターを殺すことで、令呪を奪取することができます。
ただしすべてのマスターは本戦開始時において所持令呪は3画とします。
本戦以降は令呪の譲渡奪取によって4画以上にすることも可能です。


952 : ◆TPO6Yedwsg :2023/05/06(土) 23:29:01 mKNI9gto0


『マスター不在のサーヴァントについて』
マスターを失ったサーヴァントは聖杯からの現界支援が途切れ、現界補助スキルや魔力供給がなければ短期間で消滅します。
その短期間の間に再契約を成功させることができれば残留は可能です。
マスターとは魔力を供給するだけでなく、サーヴァントを地上に留める要石でもあり、聖杯との繋がりでもあります。
自身の能力による魔力生産などで現界を続けられるとしても、マスターを擁さないサーヴァントは相応に弱体化します。
マスター不在でも現界を続けられる要石の代替となるスキルについては「単独行動」が存在します。
また後述の聖杯を獲得した場合も同様の効果が得られます。

『エリア消滅について』
23区は聖杯戦争の進行に応じエリアが切り離され消滅していきます。
予選終了時に東部エリア5区(足立区、葛飾区、江戸川区、墨田区、江東区)が消滅。
1日目終了時に西部エリア7区(板橋区、練馬区、杉並区、中野区、世田谷区、目黒区、大田区)が消滅。
2日目終了時には都心3区を除く8区(荒川区、台東区、北区、豊島区、文京区、新宿区、渋谷区、品川区)が消滅。
3日目以降には千代田区、港区、中央区とその海上のみが残ります。
これらのエリア消滅ルールは伏せられていますが、霊脈を詳細に調査すれば判明するものとします。
消滅したエリアはエリア外扱いとなり住民からは認識されなくなります。
エリア消滅時該当エリアに存在する主従はランダムなエリアに跳躍させられます。
消滅するエリアの住人たちは消えてしまうのか、それとも然るべき場所に戻るだけなのかは観測できないものとします。

『神秘の秘匿について』
この聖杯戦争に監督役は存在しない、とされていますが神秘の秘匿の大原則は伏せられたルールとして機能しています。
参加主従ではない大衆、社会に対しあまりにも大規模な神秘の露見を行ったキャラクターは聖杯によりペナルティを与えられます。
反面一時的に露見してもその後の隠蔽さえ完璧であればそれらの行為によるペナルティは打ち消されます。
噂程度のものであれば許容されますが、広告を用いた聖杯戦争の詳細喧伝などは神秘の秘匿に抵触します。
このルールは明示されていませんが、神秘の秘匿の基本理念についてはサーヴァントが得る現代知識に含むものとします。

『魂食い』
社会や大勢の人々に露見さえしなければ、つまり秘匿を怠らなければ魂食いをしてもルールからのペナルティはありません。
更に魂食いを行う陣営は伏せられたルールであるエリア消滅システムを利用することができます。
消滅寸前のエリアであれば大規模な魂食いを行っても日付変更まで隠蔽に成功すればエリアの消滅によって秘匿がなされます。

『聖杯について』
戦場の何処かに聖杯が出現しています。この聖杯は、本戦開始に主催の確定採用枠が所持しています。
この聖杯は願いを叶える聖杯そのものではありますが、聖杯戦争終了時までその機能はロックされています。
聖杯戦争終了時、現在地に関わらず勝者のもとへと降臨し、主従の願いを叶えます。
戦争中は最高位の強化礼装として、聖杯を獲得したサーヴァントを強化します。
聖杯は対象と融合するため通常の手段では奪取できず、対象が8割以上のダメージを受ける受けることで融合は解除されます。
聖杯は基本的にサーヴァントを強化するためのものですが、マスターが獲得してもよいものとします。
ただし、マスターが獲得する場合強化用途は更に限定的なものとなります。
サーヴァントの強化内容は、融合した段階で以下のものから「1つ」を選択します。
選択後は個人単位で強化内容を変更することはできません。

1:全ステータスが一段階向上する。AランクのものはA+となり、A+のものは怪物・魔性属性の持ち主のみA++まで向上する。
2:自身のスキル1つのランクがその取得難易度に関わらず一段階向上する。最大でA+++まで向上可能。
3:通常霊基では到底扱えない宝具等を、聖杯を依代に使用条件を緩和し使用可能とする。
4:聖杯を要石としマスター不在でも現界を可能とする。聖杯からは無限の魔力供給を受けるが、扱える魔力は魔力値を参照する。


953 : ◆TPO6Yedwsg :2023/05/06(土) 23:29:45 mKNI9gto0


【予約・投下について】
予約はトリップを付けてこのスレッドで行ってください。
予約から投下までの期限は延長なしの7日間までとします。期間内に投下されなかった予約は破棄されます。
予約破棄後再度予約を取る場合7日間期間を置いてください。
予約が入っていないキャラクターについてはゲリラ投下をしていいものとします。
ただしあまりに整合性の取れない突拍子のない話が投下された場合主催が差し止めを行いますのでご了承下さい。


【状態表について】
本編開始以降は投下にあたり本文の最後に状態表を記載し各陣営の状態を確認、設定します。
フォーマットは以下のものを使用してください。

【エリア名・施設名/○日目・時間帯】
エリア名は区の名前を、施設名は特筆すべき場所である場合具体的な記載をお願いします
時間帯は以下の6つの区切りを用います。
無論休息睡眠の必要性がある以上はすべての区切りですべての主従が活動しなければいけないわけではありません。
余程の長期戦闘中あるいは必要に駆られなければ、未明と早朝の活動主従は少なくなるでしょう。
未明(0〜4時)/早朝(4〜8時)/午前(8〜12時)/午後(12〜16時)/夕方(16〜20時)/夜間(20〜24時)

【マスター:名前@作品名】
[状態]:通常/消耗(小、中、大)/気絶/恐怖/錯乱 等、その時の状態又は感情などを記載
[令呪]:残り◯画
[所持品]:特筆すべき装備、道具があれば記載、なければ空欄で可
[所持金]:特筆すべき経済状況があれば記載、なければ空欄で可
[思考・状況]
基本方針:文字通り支柱となる方針を記載
1:それ以外の細々とした方針となる思考を記載
2:この欄は数字を増やし更に追記も可、数字を減らすのも可
[備考]
上記以外の特殊な状況を備考欄に記載

【サーヴァント:クラス(真名)@作品名】
[状態]:
[所持品]:
[思考・状況]
基本方針:
1:
2:
[備考]
令呪の有無を除き、上記のマスター欄の説明に準ずる


954 : ◆TPO6Yedwsg :2023/05/06(土) 23:32:31 mKNI9gto0
以上で聖杯戦争企画案の投下を終了します。
現行のシステムを参考に実験案を多数追記してみましたが、企画を動かせる機会がなさそうなのでフリー化して置いておきます。
誰かしら気が向きましたら参考にしてみてください。


955 : This is Halloween ◆TvGXaZ8xiU :2023/05/09(火) 11:34:59 ebvtrUiU0
投下します


956 : This is Halloween ◆TvGXaZ8xiU :2023/05/09(火) 11:36:13 ebvtrUiU0
妖怪というのは浅学だろうと専門的な民族学だろうと、日本人の心には歪に染み着いているものだ。人間は摩訶不思議な事に酷く困惑する、そして、それでもなお、人間は人間としての基準で怪物、悪魔、そして妖怪を分かろうとする。それらにも人間と同程度の心、精神が備わっているのは愛嬌があり、融和という話になる。異形萌えというのだってある。分かりやすく言えばモンスター娘というジャンルと言い換えた方が良い。しかし、モンスターとは世界各地の西洋の妖怪の場合もある、それを悪魔とも呼ぶ。
「これが完成品の一つですよ」
 千年伯爵が死んだ死体を素材に新しいAKUMAを作っていた、人間の肉体(皮)と千年伯爵が作り出した魔導式ボディ、そして皮となった人間が呼び出した、その人物が愛した人物の魂によって作り出される悲劇の産物。製造者である千年伯爵やノアの命令には絶対服従で、空腹に似た強い殺人衝動を持ち、中に取り込まれた人間の魂の苦痛や絶望と言った感情を糧に成長、進化するという性質を有する。それは日本東京の「ノアの方舟」と呼ばれる空間にて、イノセンスと対を成すという黒い物質「ダークマター」を素材に作られている。それを見た京極夏彦は感嘆していた。
 「悪魔憑きと狐憑きは似ているがそれをコントロール、それを自らの魔術の道理とする領域にするのは難しい、それを意図も容易く行えるとは、千年伯爵の千年とは平安時代ぐらいからの歴史そのものという事か」
 それに千年伯爵は訂正する。
 「七千年、聖書のノアにまつわるというような有り様です、千年前の平安時代?つい最近の事みたいですねぇ……」
 京極夏彦はそれを恐怖を覚えない。誇張表現かもしれない。薔薇十字団の創立者とされる伝説上の人物である。17世紀にドイツで出版された薔薇十字宣言文書によって知られるようになったクリスチャン・ローゼンクロイツ、最低最悪の魔術師、アレイスター・クロウリー、近代神智学を創唱した人物で、神智学協会の設立者、エレナ・ブラヴァツキー、全てペテンかもしれない。皆、神秘と言えばどんな不思議も許されると思っている。そんな事は本来、あり得ない。目の前の狂人に対して、もしも、その領域(ピリオド)の向こう側にいるのならば、それはそれでありだと思う。人間を悪魔にする技術など、人間界にはありふれている。軍産複合体から生まれる軍事兵器、サイボーグ軍人はまさに悪魔そのものだ。


957 : This is Halloween ◆TvGXaZ8xiU :2023/05/09(火) 11:36:54 ebvtrUiU0
洗脳という言葉にしても共産圏で着手されたPSI研究(超心理学/サイ科学研究)のうち、電磁波などを用いて人為的な心理変更を行わせるとする概念、精神工学(サイコトロニクス)というのがあり、催眠術の大道芸を軽く超越している。MKウルトラ計画、麻薬による洗脳は陳腐なお題目の新興教団では珍しくない。誰かを非人間、悪魔扱いする度、人間は罪悪感を失う、悪魔に近づく、それを一応、証明するため、聖杯戦争のマスターとして招来されてすぐに東京にて享楽を開始していた。幻術で楼閣を見せる幻術、蜃気楼を放つ蜃という妖怪が見せる行い、それはインターネットのディープフェイクと呼ばれる物であった。ナチスの軍服を着た爬虫類人種(レプティリアン)が街行く人々に紛れている。街並みがその存在によって破壊されて、人間が教われて、悲鳴が上がる、そして、その存在は山奥の白骨死体が盛り上がったようながしゃどくろが抱き抱えるような奇妙な白亜の城へと帰っていく。そして、帰宅すれば、アドレノクロムという医薬品を飲み干す。そして、ぬらりひょんを元ネタにした究極のハッキングツールでアドレノクロムの情報を軍事機密にまで偽造しておいた。それを段階ごとにとある人間に見せた結果、その男は変身したと思った人間の殺害へと至った。もちろん、全ては嘘であり、蜃気楼の最中に起きた一つの偽りの地獄である。他人をナチスやアドルフ・ヒトラーに例えても無益だ。ナチスに学べと言っても、何も良いことがない。黒幕以上の何かの腹話術によって白痴の言動が放たれた場合、それは、言葉を逆さまに言うのを好む天邪鬼に憑かれたのだと思うことにする。真実を歪めて伝えても真実の価値は無くならない。探偵による真実の看破は、誰にも歪められない、宿敵、特一級危険異能者の探偵・綾辻行人の言葉は歪められない。しかし、真実を曲げたいと願う者は言葉を続ける。闇の政府という大きな存在に対する虚勢の蟷螂の斧だ。それを眺めても、まだ、その人間に殉ずる自称正義の味方は多い。とにかく多い。伏魔殿と政界は例えられるが、京極夏彦は悪魔という存在に対して懐疑主義を貫く、元々、仏教と八百万の神道に親しみを覚える生粋の日本人で伴天連(バテレン)の道理がよく分からないのだろう。千年伯爵に対する気持ちはどこか親近感さえ覚える。彼の宿敵もまた探偵めいている、退魔師(エクソシスト)アレン・ウォーカーに追われている。


958 : This is Halloween ◆TvGXaZ8xiU :2023/05/09(火) 11:37:29 ebvtrUiU0
京極夏彦はククッ、と一人含み笑いをした。AKUMAを作り、AKUMAが倒される、妖怪を作り、妖怪が倒される、そこに何も違いはない。退魔の理は未来永劫、不変の生業である。逆に千年伯爵は京極夏彦に対しての興味は簡潔だった。
 「貴方とは一蓮托生デス、貴方が死ねば私もこの地より追放される、それは困る、この世界の人間にも終幕というのを見せなければなりません、貴方はそれを邪魔をしない、今はそれでいいではありませんカ?」
 それは主従関係のアドバンテージを捨てろと言ってるのに等しいが京極夏彦はその独断を許す事にした。どうせ、NPCに適当な妖怪を憑依させれば、こちら側の兵士に困る事はない。つまり、兵法で例えれば、鶴翼の陣、軍部隊を敵に対峙して左右に長く広げた隊形に配置する陣形で、鶴が翼を広げたような形なっている、それだけで充分、聖杯戦争に対しては最高最悪のアドバンテージが稼げる。京極夏彦は東京港区白金台のペントハウスに帰宅した。餓鬼を憑かせた児童がいる、それが己の死んだ母親の屍肉を貪っている。暴力的な妖怪、牛鬼を憑依させた青年が自らの恋人を虐待し尽くし死なせていた。
 「この世には不思議な事はないんだよ」
 京極夏彦はその四人の有り様を見た後、二人の憑き物筋を手駒にする事にした。これからこういうのをどんどん増やしていこう。やがて、あの殺人探偵に追いつかれるまで、地獄の一丁目まで鬼ごっこと洒落込む気でいた。


959 : This is Halloween ◆TvGXaZ8xiU :2023/05/09(火) 11:38:43 ebvtrUiU0
【クラス】キャスター
 【真名】千年伯爵、或いはマナ
 【ステータス】筋力B+ 耐久A 敏捷E 魔力EX 幸運C 宝具A++
 【属性】

混沌・悪

【クラススキル】
陣地作成:A彼の場合、ノアの方舟を生み出せる。
 ダークマター(歪):A道具作成の変異、AKUMAを作成できる。
【保有スキル】

カリスマ:EX
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。千年間、ノアの一族の一番目の長として君臨を続けてきた実績がある。
【宝具】『逆しまの魔剣』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
 アレン・ウォーカーの持つ退魔の剣と色合いが反転して逆になっている意味深な武器。
 『ノアの一族』
ランク:A+ 種別:対人間界宝具 レンジ:- 最大補足:-
 人類最古の使徒である「ノア」の遺伝子と記憶を受け継ぐ超人達。歴史の分岐点にたびたび出現しているがどの文献や書物にも記されておらず、歴史の裏でしか語られることはない。身体的特徴は肌が灰色であることと額に十字架の聖痕が7つある。悪性兵器「AKUMA」を利用して人類を滅ぼそうと暗躍を続けている。AKUMAからの人類保護を目的とする「黒の教団」とは対立関係にある。「イノセンス」と対局に位置する存在であり、「イノセンス」を破壊できる力を持つ一方で、体内に直接「イノセンス」の力を流し込まれると死亡。ノアにつながる遺伝子は人類全体の体内に組み込まれているとされ、誰か一族の者が滅ぼされると時を置いて人類の中の一人からまたそれに対応したノアの使徒が覚醒する。第一使徒にして事実上のリーダー格である千年伯爵を中心に家族に似た体系の組織を形成して活動している。第2使徒「裁(トライド)、不明、第3使徒快楽(ジョイド)、ティキ・ミック第4使徒欲(デザイアス)、シェリル・キャメロット、第5使徒智(ワイズリー)、ワイズリー、第6使徒蝕(フィードラ)、不明、第7使徒恤(マーシーマ)、不明、第8使徒怒(ラースラ)、スキン・ボリック、第9使徒夢(ロード)、ロード・キャメロット、第10・11使徒絆(ボンドム)ジャスデビ、第12使徒色(ラストル)ルル=ベル第13使徒能(マイトラ)不明を呼び出せる。
 【weapon】
剣、日傘
【人物背景】黒の教団と敵対するノアの一族の長。
 【サーヴァントとしての願い】アレン・ウォーカーとの因縁に決着。人類を滅ぼしたい。


960 : This is Halloween ◆TvGXaZ8xiU :2023/05/09(火) 11:39:04 ebvtrUiU0
【マスター】京極夏彦@文豪ストレイドッグス
 【マスターとしての願い】宿敵との決着
 【能力・技能】異能、憑き物落とし、他者に好きな妖怪の憑き物を降ろす事が出来る。強制的なシャーマニズムと言える。
 【人物背景】実在する作家・京極夏彦氏をモデルとしている。『文豪ストレイドッグス外伝』最大の敵にして、綾辻最大の好敵手。
白髪に丸眼鏡、ボロボロの着物と袴に羽織、首にはストールを巻き、鬼の能面を付けている。


961 : This is Halloween ◆TvGXaZ8xiU :2023/05/09(火) 11:39:23 ebvtrUiU0
投下終了します


962 : ◆k7RtnnRnf2 :2023/06/10(土) 07:31:36 YDwHOKV.0
投下します。


963 : 叶えたい願い? ここねとキアの分け合うキモチ ◆k7RtnnRnf2 :2023/06/10(土) 07:33:16 YDwHOKV.0
 特別な力を持つ女の子がわたしの隣にやってきた。
 たくさんの奇跡を起こせるけど、わたしたちと変わらない普通の女の子。
 わたしは彼女とまっすぐに向き合って、ちゃんと知りたい。
 もちろん、いつかお別れが来るとわかっているけど、せっかく出会えたから。
 おいしいパンを分け合って、一緒に食べて、大切な思い出として焼きつけたいな。





「ホブス……そんなパンがあるの?」
「北アメリカのモロッコって国では、定番のメニューになっているパンで……そのまま食べてもおいしいし、色んな料理と合わせられるの」
「じゃあ、マスター……ううん、ここねが作ったみたいに、サンドにもなるんだ」

 暖かい太陽の光がいっぱいのある日、緑豊かな公園でピクニックを楽しむわたしたち。
 わたし・芙羽ここねは、この日のためにキュートなデザインのサンドイッチケースを用意した。
 この世界で出会った新しいお友達に、自慢のパンを食べさせたいから。

「ポテトや卵のしょっぱさを、ホブスのほどよい甘さが引き立てて……お口の中でバランスよく広がっていくの」
「確かにおいしい……こんなに素敵なパン、初めてかも!」
「本当? 気に入ってくれて嬉しい」

 手作りのホブスサンドを楽しそうに味わう彼女の姿に、わたしの胸が弾んだ。
 そう。北欧神話など、さまざまなファンタジーに登場するエルフが、わたしのお友達。
 正確に言うと、偉業を成し遂げたエルフの英霊で、サーヴァントって呼ぶの。
 形では彼女のマスターになったけど、わたしは上下関係を作りたくない。必要な時以外は、お互いのことを名前で呼んでいる。
 今日は交流会を兼ねた秘密のパーティーを開いた。この日のために、手作りのパンをいっぱい用意したから。

「ねえ、ここね! こっちのパンはなんていうの?」
「これはドイツでポピュラーなライ麦パン! とても栄養価が高くて、美容や健康にもいいパンとして有名で……たくさんの人から愛されてるの」
「じゃあ、いっぱい食べればキレイになれる?」
「もちろん! キアだって、食べればもーっとかわいくなれるから!」

 エルフの女の子・キアの目はキラキラと輝いている。
 キャスターのクラスで召喚された彼女の真名は世界詞のキア。その一言であらゆる物理法則をねじ曲げられる魔法使い。
 高級な陶器人形のように繊細な体つきで、白みがかった金髪はふんわりしてる。澄み切った瞳は少しつり上がって、耳は人間よりとんがっていた。
 身にまとうローブだって、まるで童話に出てくるエルフが着ていそう。


964 : 叶えたい願い? ここねとキアの分け合うキモチ ◆k7RtnnRnf2 :2023/06/10(土) 07:35:24 YDwHOKV.0
「ここね! 今度、パンの焼き方を教えて! あたしが、あたしの手でパンを焼いてみたい!」
「いいよ。じゃあ、どんなパンにするか決めようか。パンによって、用意する材料や焼き方も変わるから」
「パムパムも、キアの手作りパンを食べたいパム!」

 わたしとキアだけじゃない。
 わたしのパートナーのパムパムもいる。パムパムはパンのエナジー妖精で、ダックスフンドのような毛並みないぬの女の子。人間にもなれるけど、尻尾が出るからめったに変身しないって決めてる。
 本名は『パートナル・フワフワン・コーバシィヌ・イースト・パムサンド』だけど、パムパムって呼んでるの。

「ふふん、腕が鳴るわ! 詞術じゃない、あたしの手作りパンでここねとパムパムをあっと言わせてあげる!」
「うん! わたしも楽しみにしてる!」
「ワクワクするパム!」

 穏やかに語り合うわたしたち。
 過酷な聖杯戦争の最中とは思えない時間だけど、いつまでも続いて欲しいと思う。
 だって、わたしの願いはーーーー





 それから数日後……
 ここねちゃんは学校に通っていました。
 聖杯戦争の最中でも、お勉強は忘れちゃダメよ!






 クッキングダムからやってきたパムパムと出会って、わたしは伝説の戦士プリキュアに変身した。
 お料理の妖精・レシピッピを狙う怪盗ブンドル団からおいしい想いを守り抜いた。
 一緒に力を合わせてくれたゆいたちと、平和な毎日を過ごせるはずだった。
 なのに、この世界に連れてこられて、わたしは聖杯戦争のマスターにされた。
 優勝すれば、万能の願望器と呼ばれる聖杯が渡されて、どんな願いでも叶えられる。
 もちろん、パムパムと一緒に元の世界に帰りたいけど、その為に誰かを傷つけたくない。


965 : 叶えたい願い? ここねとキアの分け合うキモチ ◆k7RtnnRnf2 :2023/06/10(土) 07:37:31 YDwHOKV.0

「ここねちゃん、手伝ってくれてありがとう!」
「どういたしまして」
「部屋の鍵は私が片付けておくから、後は大丈夫だよ」
「ありがとう。それじゃあ、また明日」
「うん、また明日!」

 放課後、クラスメートの女の子とお別れをするわたし。
 聖杯戦争に巻き込まれても、わたしの日常は当たり前のように続く。
 元の世界の社会的立場を参考にした役割(ロール)が与えられて、わたしはその通りに生活している。
 この学校も、わたしが住んでいる家も、更には生きている人たちも、おいしーなタウンから引っ越してきたみたいで。
 正確にはNPCって呼ばれて、人間を元に再現されてるデータらしいけど、ちゃんと生きているのは同じ。
 今だって、わたしに優しくしてくれたから。

「ここね、帰ったらキアのパンを食べられるパム!」
「あの子が作るパン……どんな味かな」

 スクールバッグに隠れるパムパムと小声でお話しする。
 パムパムがエナジー妖精の姿になれば、学校でも一緒にいられるから。





 そう。
 ここねちゃんたちは、キアちゃん手作りのパンをずっと楽しみにしています!
 ピクニックの後、ここねちゃんから借りた本でパンのお勉強をしていたキアちゃん。
 どんなパンを作るのかしら?





「ここね」
「なぁに、パムパム?」
「ここねは、キアの願いを知っているパム?」

 夕暮れの中、人通りが少なくなった頃。
 パムパムから聞かれたのはわたしたちにとって重大なこと。
 聖杯にかける願いがあるから、キアはわたしたちの元にサーヴァントとして召喚された。
 わたしとパムパムは聖杯を求めないけど、キアはどうなのか。
 彼女はわたしたちのお友達になってくれたけど、まだ想いを重ね合えたとは言えない。

「……まだ、聞けてない」

 パムパムにそう答える。
 でも、わたしはキアの願いに心当たりがあった。
 契約した主従は魔力パスで繋がって、相手の過去を夢で見られた。パムパムはわたしと一緒にいるけど、キアと契約を結んでいない。
 だから、わたしだけは寝ている時にキアの記憶を何度か見た。のぞき見をしたみたいで申し訳ないけど、キアがどんな子なのか知った。
 勉強が嫌いで、ちょっとイジワルだけど、友達想いの優しい女の子。
 好奇心も旺盛で、黄都って街に来た時は見るもの全てに目を輝かせていた。この世界にある建物や食べ物、本や機械など……どれもキアは興味津々。
 そんなキアには心から尊敬する先生がいた。名前は赤い紙箋のエレアさん。
 エレアさんはキアにたくさんのことを教えてくれた。キアはワガママを言いながら、エレアさんの言葉を強く守っていた。


966 : 叶えたい願い? ここねとキアの分け合うキモチ ◆k7RtnnRnf2 :2023/06/10(土) 07:39:48 YDwHOKV.0

 ーーねえ、エレア! さよならなんて言わないわよね!

 そんな二人にお別れの時が訪れる。
 キアが参加した六合上覧の試合……そこでエレアさんの不正が発覚して、二人は離れ離れになった。
 キアの『詞術』を黄都の兵隊が恐れていたから、キアは一人で囮になろうとした。

 ーーきっと逃げて。先生は、ずっと待っていますから。

 キアに微笑むエレアさん。
 でも、エレアさんは気付いていた。黄都兵からキアを逃がすためには、自分が犠牲にならないといけないって。
 キアは無事に逃げ切れたけど、エレアさんはーーーー

(ここね! 敵のサーヴァントが現れたわ!)

 頭の中に響くのはキアからの念話。
 すると、わたしの全身にイナズマが駆け巡る。マスターになって与えられた魔術回路が震えていた。
 ハッ、とわたしの思考が止まって、思わず辺りを見渡しちゃう。

(結構近い……あたしが戦ってくる!)
(待って、キア! 一人じゃ危ない!)
(あたしならやれる! だってあたしは無敵だから!)

 嘘だ。
 キアは無理をしている。
 確かにキアは『詞術』で、なんでも実現できる。
 ケガを治したり、天気や自然現象だって思いのままに操れる。たった一言、口にするだけでいい。
 でも、キアは決して神様じゃない。たまたまなってしまっただけで、英雄になることを望んでいない。
 天才、魔才ともてはやされたけど、本当は戦いができる子じゃなかった。

「ここね……キアが危ないパム!?」

 わたしを見上げるパムパムの声。
 キアと念話できないけど、パムパムも何があったか気付いている。

「行こう、パムパム。あの子を助けなきゃ!」

 物影に向かうわたしたち。
 今から少しだけ、誰にも見られちゃいけない。
 パムパムと気持ちを分け合って、みんなが知らない秘密のわたしに変わるから。
 パム! と声をあげながら、サンドウィッチフォームになるパムパムを手に乗せる。わたしの衣服がキラキラと煌めくドレスに変わると、さわやかな光が広がっていく。


967 : 叶えたい願い? ここねとキアの分け合うキモチ ◆k7RtnnRnf2 :2023/06/10(土) 07:43:39 YDwHOKV.0
「プリキュア! デリシャスタンバイ! パーティー・ゴー!」
 
 ふわふわと、心身をはずませながら唱える想い。
 大切なお友達や家族みんなで、おいしいパンを笑顔で分け合いたい。
 わたしとパムパムが、キアと一緒に楽しいピクニックができたように。

「オープン!」
「パムパム!」
「サンド!」
「パムパム!」

 お野菜やたまごを包んでサンドイッチを作るイメージで、パムパムの体をやさしくタッチしながら。
 パムパムと両手を繋いで、真っ直ぐに視線を交わす。
 
「シェアリン・エナジー!」
「ティスティー!」

 言葉と共に光り輝くパムパムの胸の宝石。
 青玉の光は、キレイな形に整ったパンに変わって、わたしは口に含む。暖かくて優雅な味が全身に広がり、強いパワーが湧きあがった。
 ショートボブヘアーは輝きながら腰にまで届いて、根元をドーナツのように結んだサイドテールとしてセットされる。
 ポン、とパムパムが頭に乗ると、飾られるのは大きなリボン。
 両腕がロンググローブで覆われた直後、輝くドレスはパフスリーブの上品なコスチュームに変わって、腰には水色のバックリボンが結ばれた。
 わたしがパムパムを抱き寄せると、ハートのブローチが青い光輝を放ち、瑠璃色のタイツとヒールで両足が守られる。
 コスチュームにくっついたパムパムを、わたしは優しくタッチして、全力でダッシュした。
 目にも留まらぬスピードで、誰にも見つからないように気をつける。わたしはもちろん、聖杯戦争のことは誰にも知られちゃいけないから。
 景色が過ぎ去っていく中、わたしはお友達のことを考えていた。

(キア! お願い……無理をしないで! あなたに何かあったら、わたしはーー!)



 ◆


 ーー先生の授業は……いったん、修了です。二つ目の名をあげますね。キア。

 この体を抱きしめてくれた先生のぬくもりは、あたしにとって大切な宝物だった。

 ーー”世界詞”。世界詞の、キア。

 そうして、あたしはもう一つだけ宝物をもらっている。
 綺麗で思いやりのある、完璧なエレア先生がくれた大きなプレゼント。
 それが真名になって、あたしは英霊(サーヴァント)・世界詞のキアとして召喚された。詞術があれば、どんな敵でも簡単に倒せる。
 そんなあたしのマスターになったのは、あたしとは正反対な人間(ミニア)の女の子だった。
 名前は芙羽ここね。ヤウィカみたいに勉強好きで、イズノック王立高等学舎でも成績上位を狙えそうな子。
 彼女のそばにはパムパムという妖精もいる。

『わたし、ひとつだけ願いごとができた』
『願いごと?』
『うん! あなたと、お友達になれたらいいなって……どうかな?』

 初めて出会ったその日、はにかんだ笑顔で出迎えるここね。
 彼女の言葉にあたしは面食らった。危険なサーヴァントが蔓延る聖杯戦争で、真っ先に考えたのがあたしとお友達になることだって。


968 : 叶えたい願い? ここねとキアの分け合うキモチ ◆k7RtnnRnf2 :2023/06/10(土) 07:46:17 YDwHOKV.0
 ーーキア。あなたの詞術を、正しく使いなさい。

 ただ、あたしにとってはそれでよかった。
 あたしの詞術は何のためにあるかを、エレアは教えてくれたから。
 ここねやパムパムと一緒に、それなりに楽しい日々を過ごせた。
 食べ物やお化粧など、あたしが知らないことは何でも教えてくれたし、無理難題を押しつけたりしなかった。
 あたしとお友達になりたいって言ったのも、本心からだってわかる。

 ーーそれは……それは…………人を幸せにするための、才能なんですから……

 ”世界詞”に込められた願い。
 あたしもそうありたいと思っているし、エレアやここねを裏切りたくない。
 でも、この世界で過ごしていると、どうしても考えちゃう時がある。いつか"その時"が来てしまうって。
 灰境ジヴラートみたいな酷い奴は必ずいる。
 エレアに暴力を振るったアイツのことは今でも許せない。生まれて初めて、心の底から本気で殺してやりたいと思った。
 詞術を使おうとした瞬間、エレアがジヴラートに手をかけた。
 しかも、エレアはあたしを責めたりせず、優しく抱きしめてくれた。
 あたしのせいで何もかもをぶち壊しちゃったのに、エレアは笑ってくれた。
 嬉しくて、悲しくて、申し訳なくて、色んな気持ちで思考がめちゃくちゃになって。
 せめて、あたしはエレアの勇者になろうと、六合上覧の第四試合に出場したけど、負けちゃった。

(今度はちゃんと戦うんだ。あたしが、ここねのサーヴァントだから)

 この世界からは逃げられない。
 全能の詞術ですら、ここねとパムパムを帰してあげられない。
 もちろん、あたしが故郷イータに帰ることだってできない。
 道はたった一つ。あたしがサーヴァントとして、ここねたちの敵と戦い続けるだけ。
 英霊(サーヴァント)……勇者候補に匹敵する怪物から、ここねたちを守れるのはあたし以外にいないから。

「【止まって】」

 詞術で相手サーヴァントの動きを止める。
 屈強な鎧で全身を守り、その背丈よりも長い大剣を構えるセイバーの動きは、金縛りにあってしまう。

「【飛んで】」

 そのまま、セイバーの体躯を吹き飛ばした。
 サーヴァントになっても詞術は健在で、あたしに傷一つだって負わせられない。
 誰も原理を知らないし、どんな理論や戦術を立てようとも、全てが無意味になる。
 当然、この程度でセイバーが負けるなんてあたしは思ってない。


969 : 叶えたい願い? ここねとキアの分け合うキモチ ◆k7RtnnRnf2 :2023/06/10(土) 07:48:29 YDwHOKV.0
「【動かないで】」

 再びセイバーを静止させる。
 これで指一本も動かせなくなった。必死に抵抗しているけど、向こうは声も出せない。

「【埋まって】」

 たった一言の詞術。
 セイバーの足元に地割れが起きて、一瞬で飲み込まれる。
 あたしだったらこの程度は造作もない。
 どんなに強い力を持ち、いくら頭が良くても、全能の前ではお遊戯に等しかった。

「せ、セイバーッ!」

 驚くのは相手マスター。

「勝負はついたでしょ」

 だからあたしは脅す。
 これ以上は何もできないって思い知らせるために。

「セイバーを連れてさっさと帰ったら? あたしも、こんな戦いで消耗したくないし」

 人差し指を向けて。
 あと少しで、何が起きるのかを遠回しに伝えた。
 その意味がわからないほど愚鈍なマスターじゃないはず。



   ◆


 学校の近くにいるマスターとサーヴァントをキアちゃんは見つけました。
 ここねちゃんたちを守るため、キアちゃんはたった一人で戦っているのです!


   ◆


「くっ……令呪を以て命ずる! 動け、セイバー!」

 でも、敵のマスターは令呪を輝かせて、詞術を打ち破ろうとする。
 そんなことをしても無意味なのに。セイバーを埋めた地面から荒々しい闘気が放たれ、あたしに突き刺さる。

「ーーーーオオオオオオォォォォォォッ!」

 猛烈とした雄叫びで吹き飛ぶ大地。
 舞い上がる大量の土埃に視界が遮られ、辺りが見渡せない。
 令呪のブーストで濃厚になった魔力と殺気を乗せた宝具が迫りくるけど。

「【飛ぶよ】」

 その一言で軽々と避けた。
 力術で風をあたしの元に呼んで、高くジャンプする。
 大剣からは発せられる膨大な輝きは、昼夜問わず世界を飲み込む太陽のようで、まともに受けたらあたしだって命が危ない。
 音すらも潰しながら、周囲の建物を破壊する光はどこまでもまぶしかった。

「…………最悪」

 ただ、あたしは顔をしかめる。
 いくら人気がないとはいえ、こんな派手に戦うなんて思わなかった。
 誰かが巻き添えになっていたらと思うと胸がざわついちゃう。


970 : 叶えたい願い? ここねとキアの分け合うキモチ ◆k7RtnnRnf2 :2023/06/10(土) 07:52:41 YDwHOKV.0

「……だぁっ!」

 迫り来るのは凶暴な刃。
 でも、あたしには届かない。【あたしを守って】と、熱術の盾を用意したから、どんな剣も通るわけがなかった。
 あたしの一言があれば決して傷つかないし、負けることもない。

「この、魔女めがぁぁっ!」

 ただ、いくら斬撃が届かなくとも、セイバーは止まらず。
 憎悪すらも秘めた剣で、ただあたしを殺そうとしていた。

「お前のような魔女が……我々を理不尽に踏みつけ、奪った! 卑劣な術で、村の英雄を傷付けたんだっ! そうやって、無辜の民を殺し続けた!」

 飢えた獣と何が違うのか。
 刺々しい眼差しがあたしに向けられて、この心が痛んだ。

「…………【埋めて】ッ!」

 抵抗を無にするために、あたしはセイバーをまたしても土塊に閉じ込める。
 そうしないだけで、ここからいつでも圧力で押し潰せた。でも、あたしはそうしない。
 何をしても勝てないって、この主従に思い知らせたかった。

「立つんだ、セイバー! お前は無敵なんだろう!」
「……そうだともッ!」

 マスターの呼びかけに応えるセイバー。
 その声量だけで土を吹き飛ばし、あたしに剣を向ける。
 セイバーだって無傷じゃなく、全身から血が流れ出ていた。
 けれど戦意は衰えを見せず、ただあたしを真っ直ぐに睨んでいる。

「……っ!」

 主従の姿に顔をしかめた。
 だって似ていたから。
 六合上覧であたしとエレアを疑い、どこまでも追いかけてきた人たちの視線と。
 彼らだけじゃない。第四試合であたしが戦った勇者……絶対なるロスクレイと、その彼を何があっても勝たせようとした観客たち。
 あたしの敵になった彼らと、目の前の二人が被って見えた。

「行け、セイバー! お前の剣なら奴の盾も両断できる……その太刀筋があれば、斬れないものはない!」

 すると、あたしを守る盾に亀裂が走る。
 かつてならあり得ない現象だけど、今のあたしは英霊(サーヴァント)として召喚されている。
 詞術には魔力が必要で、マスターになったここねから貰わないといけない。あたしが戦えば、それに応じてここねは消耗する。
 全能の詞術は無限じゃなくなった。たった一言で森羅万象をねじ曲げられても、代償として支払うのはここねの命。
 足止めはもちろん、熱術の盾を生成するだけで負担になる以上、天候や地脈を操る規模の詞術は滅多に使えない。
 盾の修復や維持にもここねの魔力が必要。
 だから、あたしとの圧倒的な実力差を見せつけて、相手を早く降参させたかった。


971 : 叶えたい願い? ここねとキアの分け合うキモチ ◆k7RtnnRnf2 :2023/06/10(土) 07:54:44 YDwHOKV.0

「この剣圧を受けろッ!」

 でも、敵のセイバーの猛攻は凄まじくて。
 突風すらも巻き起こす一閃は熱術の盾を砕き、あたしは吹き飛ばされた。

「あぁあああぁッ!」

 地面に叩きつけられて、あたしの体が汚れちゃう。
 痛い。
 幸いにも刃は届かなかったけど、体の節々が痛かった。
 怖い。
 サーヴァントになってから初めての痛みが怖かった。
 倒れたあたしを心配してくれる人は誰もいない。
 マスターとセイバーは、あたしにトドメを刺そうとしていた。

「セイバー、やるんだ!」
「応! 我が悲願、そしてマスターの大願のため……この魔女を討つ!」

 彼らは躊躇なくあたしを殺すつもりだ。
 そこまでしてでも叶えたい願いがあるから。
 ロスクレイに大切な誰かがいたように、この二人にも譲れない何かがあるから聖杯戦争に挑んでいる。
 故郷のイータ……そしてエレアの夢を守りたくて、あたしも勇者候補になった。
 でも、そのためにあたしはおぞましい怪物になりかけた。
 目の前の二人は自分の意志で、決して抜け出せない漆黒に身を委ねている。
 きっと、その選択を選ばない限り、あたしは誰にも勝てない。

(…………やらなきゃ、いけないの?)

 言葉を紡げば簡単だ。
 そうすればこの戦いに勝てるし、あたしは願いに一歩近づける。

(こんなことでエレアに会えて、いいの?)

 だけど。
 このままだと、エレアとの大事な約束を破っちゃう。

(そうしないと、ここねとパムパムを……守れないの?)

 それに、あたしのマスターになってくれた女の子が気がかりだった。
 彼女たちはあたしが人を殺すことを望んでいるのか。
 ここで彼らを放置したら、いつかここねたちにも被害が及ぶ。
 ここねも戦えるらしいけど、サーヴァントを相手に勝てるとは限らない。
 方法は一つ。【自害をさせて】と言えば、マスターは令呪でセイバーを殺してくれる。


   ◆


 いけない!
 キアちゃんは詞術を危ないことに使おうとしてる!
 それだけはやっちゃダメ!


   ◆


972 : 叶えたい願い? ここねとキアの分け合うキモチ ◆k7RtnnRnf2 :2023/06/10(土) 07:58:58 YDwHOKV.0
「……じ、じっ、じ……【じ、自害を】……」

 声は震えていた。
 痛みと、大罪に手を染める恐怖で、上手く言葉がつむげない。
 でも、優しい彼女を守る方法は他になかった。
 何があっても彼らは矛を収めないし、あたしだって戦いから逃げられない。
 心を鎖で縛りながら、あたしは詞術をかけようとする。

「……【自害を、させ】」
「ーーーーダメえぇぇぇっ!」

 それを塞ぐのは誰かの叫び。
 迫るセイバーの刃を弾く壁ができる。
 詞術をかけようとしたその時、あたしを守るように立った彼女が、両手でバリアを張っていた。

「何ッ!?」
「……ま、ます、たー…………?」

 驚くセイバーと、彼女の背中を見上げるあたし。
 人間とは思えない、サーヴァントと錯覚させそうな魔力をまとう彼女。
 可愛らしいエプロンが目立つ華やかなコスチュームを着た彼女はーーーー

「ふわふわサンドde、心にスパイス! キュアスパイシー!」

 高らかに、凛とした名乗りをあげた。
 キュアスパイシー。パムパムと心をシェアしたここねが変身した姿。
 とある世界で悪と戦った少女(プリキュア)の一人。

「分け合うおいしさ、焼き付けるわ!」

 そうして決めるポーズはどこか優雅で。
 全てのものを暖かく包みそうなほど、彼女の両腕は優しかった。
 だって、ここねは綺麗な手でたくさんのパンをこねたから。

「……なるほど。その魔女のマスターはお前か」

 問いかけるセイバーの目は険しい。
 声だけじゃなく、全身から放たれるオーラも凄味があり、幾度となく修羅場を乗り越えたと一目でわかる。
 でも、変身したここねはもちろん、パムパムだって怖じ気づかない。真っ正面から、毅然とした態度でにらみ返していた。

「違う。わたしはマスターじゃない」
「なら、何だ?」
「わたしは、この娘のお友達だから!」

 そう言いながら、振り返ってくれるここね……いいや、キュアスパイシーの笑顔が、わたしの目に焼き付く。
 その振る舞いに嘘偽りは何一つない。
 彼女はマスターとして振る舞っていない。
 だって、ここねとパムパムにとって、あたしは”お友達”だから。


973 : 叶えたい願い? ここねとキアの分け合うキモチ ◆k7RtnnRnf2 :2023/06/10(土) 08:00:44 YDwHOKV.0

「あなたたちにもゆずれない願いがあるかもしれない。でも、大切なお友達を傷付けるなら…………わたしは戦う!」

 疾走し、鋭い前蹴りでセイバーの剣を弾いたキュアスパイシー。
 プリキュアに変身すれば、サーヴァントとも渡り合える彼女。
 六合上覧の勇者候補に選ばれてもおかしくない力は本当だった。

「ぐっ!? それが、どうしたッ!」

 当然、得物を手放した程度で負けるセイバーじゃない。
 名高い英霊として召喚された彼は、素の身体能力自体が充分に優れている。剣がなくとも、格闘戦を選ぶだけ。
 拳は音速の域に達し、格の高さを伺わせる手刀や蹴りで空気が震える。しかし、キュアスパイシーはその全てを優雅に避け、いなして、時にはバリアで防いだ。
 人間(ミニア)とは思えない動きは、勇者と呼ぶにふさわしい。

「ダアアアアァァァッ!」

 でも、セイバーの猛攻を止めるには力不足だった。
 あたしが与えたダメージをまるで意に介さず、キュアスパイシーに攻撃を続ける。
 何故なら、セイバーは宝具で全ステータスを底上げし、深い傷を受けても戦闘ができた。
 一方、キュアスパイシーは表情を顰め、防御や回避で精一杯。頑丈なバリアもセイバーの拳でヒビが入り、その余波で風が荒れ狂う。
 あと一撃で、守りは容赦なく貫かれて、キュアスパイシーの体が砕かれるけどーーーー

「……【止まって】!」

 その一言でセイバーは金縛りに遭う。
 瞬間、キュアスパイシーはしなやかな動きで懐に潜り込み、掌底を叩き込んだ。
 あたしとそう変わらない体躯からは想像できない力で、巨体を弾き飛ばした。

「す、すごい……」

 思わず声を出しちゃう。
 腕力と俊敏さだけでなく、サーヴァントが放つ覇気に耐えるキュアスパイシー。
 変身してからあたしに流れる魔力量が一気に増幅している。魔力だけじゃない、ここねとパムパムはあたしに立ち上がる力をくれた。
 実力差なんて関係ない。彼女たちは、どんな強大な英霊(サーヴァント)が相手でも戦う勇気を持っている。

「行こう!」
「えっ?」

 瞬時に駆け寄ってきたキュアスパイシーに、あたしの体が抱え上げられちゃう。
 突然の行動に反応する暇もなく、彼女はあらぬ方向に走り出して、この場から離脱するように跳躍した。

「え、ええええぇぇぇぇっ!?」

 そのスピードに素っ頓狂な声を出す。
 頑丈じゃないし、筋力も優れていないとはいえ、サーヴァントとして召喚されたあたしを驚かせる勢いだった。

(こ、ここ……ううん、スパイシー!? なんで……?)
(ごめんなさい、キア! あの人たちに追いつかれないよう、全力で走るから!)

 空高く飛びながら念話をするあたしたち。
 既にあいつらの姿が見えないほど遠ざかり、濃厚な魔力反応も消えた。少なくとも、あそこから追いかけてくることはなさそう。
 ただ、ここねに抱っこされているあたし自身が、ほんの少しだけ恥ずかしかった。


974 : 叶えたい願い? ここねとキアの分け合うキモチ ◆k7RtnnRnf2 :2023/06/10(土) 08:04:34 YDwHOKV.0


   ◆


 キアちゃんを助けてから、キュアスパイシーに変身したここねちゃんはお家に帰りました。
 戦いの後だから、のんびり休んでね。
 

   ◆


 キュアスパイシーの変身を解いて、わたしとパムパムは元の姿に戻った。
 キアを連れて自宅まで逃げている。さっきの戦いで騒ぎが起きて、たくさんの人が集まりそうだったから。
 聖杯戦争は誰かに知られちゃいけない。ブンドル団との戦いはマリちゃんがデリシャスフィールドで隠してくれたけど、今はマリちゃんの力を借りられない。

「キア、大丈夫? ケガはない!?」
「だ、大丈夫よ! これくらいなら、すぐに治せるし……包帯だっていらないから!」
「……よ、よかった〜」

 ホッと胸をなで下ろす。
 キアが使える詞術はたくさんあって、人の体に関する『生術』が含まれている。その『生術』があれば、キアはどんな傷でも簡単に治せた。
 でも、心の傷は違う。セイバーたちと戦っていた時、怖くてたまらなかったはず。
 だから、キアに誰かの命を奪わせたくなかった。

「本当に危なかったパム! 一人で戦うなんて危険すぎるパム!」
「……あいつらを放っておく訳にはいかなかったの。ここねたちが通う学校に来そうだったから」
「だからって、ムチャなことはダメパム!」
「ごめんなさい……」

 パムパムの言葉にしゅんとなるキア。

「キア、わたしとパムパムはあなたを責めているわけじゃないの。ただ、心配だっただけ」
「心配……?」
「うん。お友達には傷ついて欲しくないから」

 励ましたくて、わたしはキアの両手をゆっくりと包む。
 わたしにとってキアは新しいお友達。
 この手に刻まれた令呪は……彼女と出会えた証で、わたしの大切な宝物。
 余程のことがない限り、この令呪を使うつもりはなかった。

「わたし、キアの手作りパンをずっと楽しみにしてた。どんなパンを作ったのか、考えるだけでワクワクする」
「パムパムも食べたいパム!」
「……あたしも、二人に食べさせてあげたい! クイニーアマンを作ったんだ!」

 ぱぁっ、と顔をほころばせるキア。
 「こっちだよ!」って喜ぶキアに手を引かれながら、キッチンに向かうわたしとパムパム。
 いそいそと歩いた先では、ピクニックバスケットの中でキラキラと輝くカラメルがわたしたちを出迎えてくれた。
 バターの香ばしさも、胸を躍らせてくれるほどに心地よい。


975 : 叶えたい願い? ここねとキアの分け合うキモチ ◆k7RtnnRnf2 :2023/06/10(土) 08:05:40 YDwHOKV.0
「どれも綺麗でおいしそう!」
「すごいパム!」
「あたしの手作りだから、味わって食べてよね!」

 口に含むと、サクサクとした食感が歯を刺激した。
 生地の柔らかさとほんのりした甘さは、幸せになりそうな味。もちろん、カラメルをこぼさないようにゆっくりと食べてる。
 でも、それ以上においしいのは……キアと一緒にこの時間を過ごしてること。

「バターとカラメル、それぞれの甘さが互いを引き立てて……まるで二人三脚をしてるみたい」

 キアの手作りクイニーアマンを食べて、わたしは食レポをしたくなった。
 キュアスタで『ちゅるりん』のアカウントでグルメの投稿をしているらんみたいに。彼女は食に敬意を示し、誰かにおいしさを知ってもらうため、たくさん研究を重ねた。
 だから、わたしもわたしなりにキアが作ったパンの魅力を伝えたい。

「ねぇ、キア。今度メイクをしてあげようか?」

 料理だけじゃない。
 キアが楽しいと思えることを、もっとしてあげたかった。

「メイク?」
「わたしね、キアと一緒におしゃれもしてみたい。アクセサリーやお洋服、それにお化粧……キアに似合いそうなものが、たくさんあるから」

 キアはエレアさんと一緒に綺麗なドレスを着たこともある。
 黄都のとあるお店で、楽しそうにお姫様の格好をした二人が羨ましかった。
 その後に起きた事件をきっかけに、キアは勇者候補として戦って、エレアさんと離れ離れになった。
 ずっと逃げ続けたから、お友達と遊ぶ機会だってない。わたしはキアに楽しい思い出をプレゼントしたかった。

「……じゃあ、お願い! ちゃんとやらないと、許さないから!」
「もちろん。気合いのメイクを見せてあげる」
「ここねはメイクだって完璧パム!」

 オシャレしたわたしたち3人で街を歩く……とてもワクワクする。
 そこにゆいたちもいてくれたらもっと嬉しい。みんな、キアと仲良くなれるはず。

「ここね」
「どうかした? キア」
「もし、あたしに願いがあれば……聖杯が欲しかったら、一緒に戦ってくれるの?」

 キアが口にした途端、この場がしんと静まる。
 たった今までの楽しい雰囲気が遠くに去ったように。


976 : 叶えたい願い? ここねとキアの分け合うキモチ ◆k7RtnnRnf2 :2023/06/10(土) 08:07:32 YDwHOKV.0
「……やっぱり、キアはエレアさんとまた会いたい?」

 無言だけど、重苦しい表情が肯定している。
 真っ直ぐに見つめ合うわたしとキアを、パムパムは見守ってくれる。
 この問答は避けて通れない。願いがあるからこそ、キアだって聖杯に導かれたから。
 ”お友達”として、彼女の願いを蔑ろにしちゃいけない。

「わたしはキアの気持ちを知りたい」
「あたしの気持ち?」

 ふと、わたしの頭に浮かび上がるキアの逸話。
 かつてキアは一人の勇者と戦っていた。人々の熱気と声援を受けて、何があっても立ち上がった絶対なるロスクレイさん。
 キアが有利なはずだった。でも、いくら詞術を受けてもロスクレイさんは立ち上がり、それを見た観客たちはキアに酷い言葉を浴びせた。
 みんなから追い詰められて、キアは泣いちゃった。傷ついたキアをエレアさんは守ってくれた。

「キアが本気で願いを叶えたいなら、わたしは協力したい」
「本気、なの? その為には、あたしたちがーー!」
「わたしは、キアには後悔してほしくないだけ! どんな選択をしても、わたしは受け入れる」

 これが今のわたしに届けられる精一杯の気持ち。
 マリちゃんみたいな頼れる大人なら、もっと的確な答えを出してくれるかもしれない。
 でも、キアにとって必要なのはわたし自身の言葉。他の誰かじゃない、わたしが気持ちを分け合わないといけなかった。
 ゆいと出会うまで、一人の時間が多かったわたしだけど、たくさんのお友達ができた。
 それはわたし自身が新しい世界に飛び込んだから。色んな人と出会い、物事を知って、かけがえのないものをたくさん貰えた。
 今度は、わたしがキアにプレゼントをする番。
 何があっても、わたしはキアの味方でいるって決めたから。

「……あたしはエレアに会いたい」
「その為にキアは聖杯が欲しい?」
「でも、エレアの言うことも守りたい」
「そっか」

 聖杯が欲しいって気持ちと、誰かを傷つけたくないって気持ち。
 どっちもキアにとっては切実で、天秤にかけられない。

「パムパムは……あたしが聖杯を求めてたら、戦ってくれるの?」
「ここねがキアの味方なら、パムパムだって味方パム!」

 パムパムに迷いはない。
 わたしはパムパムを裏切り、優しさを踏みにじろうとしているのに。
 でも、パムパムは何があってもそばにいてくれる。その思いやりが、今のわたしには痛い。


977 : 叶えたい願い? ここねとキアの分け合うキモチ ◆k7RtnnRnf2 :2023/06/10(土) 08:08:42 YDwHOKV.0
「……ごめん。あたし、まだ決められてないの。ここねたちがあんなに危ない目に遭ったのに、どうしたいのかわからない。サーヴァント、しっか……」
「違う! それはキアが優しいから!」

 その先を言わせないため、わたしはさけんだ。
 キアとパムパムがおどろいている。
 でも、わたしの言葉は止まらない。

「キアが悩んでいるのは、誰かを傷つけたくないから。それは、キアが真っ直ぐな証」

 キアの優しさをバカにさせたりしない。
 もしも、キアが自分を傷つけようとするなら、わたしが良いところをいくらでも言う。
 間違える前に、お友達として止めるだけ。

「だから、どんな願いでもいい。キアが願いを見つけたら、わたしたちに分けて欲しい」
「ゆっくり考えるパム!」

 わたしとパムパムは手を伸ばす。
 呆気に取られるキアだけど、すぐに笑ってくれた。

「……じゃあ、あたしの願いが決まったら、二人に教えてあげるね!」

 とても暖かいキアの両手が、わたしとパムパムに届いた。



 キアちゃんの本当の願い、見つかるといいわね!
 


 それは食の王国より生まれた妖精の手を取れば、英霊に並ぶ力を得る。
 それは暖かな両手で、ありとあらゆる暴虐から無垢な想いを守り続けた。
 それは己を遥かに凌駕する巨体が振るう一撃にも、耐える防御の盾を有している。
 友と絆を分け合い、如何なる不条理をも乗り越えた伝説の戦士である。


 少女(プリキュア)。人間(ミニア)。


 芙羽ここね。


978 : 叶えたい願い? ここねとキアの分け合うキモチ ◆k7RtnnRnf2 :2023/06/10(土) 08:12:19 YDwHOKV.0

【クラス】
キャスター

【真名】
世界詞のキア@異修羅

【ステータス】
筋力E 耐久D 敏捷B 魔力A+ 幸運B+ 宝具EX

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】

陣地作成:A
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
キアは詞術を使うことで、ありとあらゆるプロセスを無視して思うがままの陣地作成が可能。

道具作成: A+
魔力を帯びた器具を作成できる。
熱術または工術を活かせば、英霊の宝具に並ぶ武具の作成も容易い。

詞術:A++
話し手の言葉が音として届けば、言語や種族の壁を簡単に越えて意思を相手に届ける現象。
あるいは、自然現象をねじ曲げる魔法にも等しい術の総称で、主に力術・工術・熱術・生術の4つに分類される。
如何なる詞術だろうと、キアはたった一言で自在に駆使できる。

【宝具】
『世界詞のキア』
ランク:EX 種別:対界宝具 レンジ:- 最大補足:-
天才の域を超えた魔才と称された逸話を持つ世界詞のキアは、彼女自身が宝具となって召喚された。
有機物無機物問わず、詞術の行使には対象の理解が絶対条件となり、また種族や個体によって得手不得手がある。
世界詞のキアだけは例外中の例外で、あらゆる法則を無視して詞術を発動できる。
言霊そのものに神秘が宿り、囁きだけで天候を操作できる。極論、彼女が『死ね』と呟けば、瞬く間に対象の命を奪えてしまう。
キアのイメージから外れた事象は起こせないが、その範疇であればできないことは何一つとしてない。

ただし、サーヴァントとして召喚された制約で、全能の詞術には相応の魔力が必要になった。
例えば、地形を大きく操作するには令呪1画分の魔力が必要で、そうでなければマスターの命が脅かされてしまう。
また、Aランク以上の精神耐性を持つサーヴァントに干渉するには、最低でも令呪2画は必要。
何らかの方法で膨大な魔力を得れば、いかなる理屈や障害を無視して、世界詞のキアはあらゆる奇跡を起こすだろう。

【weapon】
全能の詞術から成される無数の術。

【人物背景】
赤い紙箋のエレアに見込まれた森人(エルフ)の少女。
ただの一言であらゆる法則や限界を超越し、自然すらもいとも簡単に支配する全能を誇る。
天才という言葉では留まらない魔才だが、本当はどこにでもいる普通の女の子。
生意気で勉強嫌いだが、故郷で幸せな日々を過ごし、友達を思いやる無垢な少女だ。

【サーヴァントとしての願い】
できるならエレアとまた会いたい。
でも、それは誰かを傷つけてでも叶えないといけないの?

【備考】
英霊として召喚された影響でいくつかの記憶が抜け落ちている。


979 : 叶えたい願い? ここねとキアの分け合うキモチ ◆k7RtnnRnf2 :2023/06/10(土) 08:15:17 YDwHOKV.0

【マスター】
芙羽ここね@デリシャスパーティ♡プリキュア

【マスターとしての願い】
マスターじゃなく、お友達としてキアを助けたい。

【能力・技能】
メイクや料理が得意で、読書も趣味。
地頭がよく、難しいテストで高得点を取れるほどに成績優秀。
パムパムと心を一つにすればキュアスパイシーに変身できる。優れた戦闘力はもちろん、一定レベルまでならサーヴァントの宝具すらも防ぐバリアを誇る。
ここねとパムパムの心はハートキュアウォッチに守られているおかげで、いついかなる時も精神支配の影響を受けない。
キュアスパイシーに変身すればキアの詞術に必要な魔力をカバーできる。

【weapon】

パムパム。
クッキングダムで生まれたパンのエナジー妖精で、ここねのパートナーになっている。
犬の姿をした女の子で、人間の姿にもなれる。おしゃまさんで、褒められるとすぐ調子に乗る性格。ここねを心から慕っている。
ここねと共に聖杯戦争の世界にやってきたパムパムが令呪やマスター権限を持つことはない。
本名はパートナル・フワフワン・コーバシィヌ・イースト・パムサンド。

【人物背景】
私立しんせん中学校に通う女の子で、おしゃれやかわいいものが大好き。
クールビューティで口数は少ない。しかし実際は人付き合いが苦手なだけで、どこか天然でもある。
学校では高嶺の花として見られていたが、和実ゆいとの出会いで自分の世界が広がり、新しい友達も増えていった。
パンが好物で、特にカレーパンとハートパンがお気に入り。
苦手な食べ物のピーマンはコメコメと一緒に克服した。


お友達と過ごした時間……それはここねにとってかけがえのない宝物になった。
両親と共にイースキ島に引っ越す話が出た時、家族とお友達のどちらを選ぶべきかをここねは悩む。
その悩みを受け止めたパムパムの励ましから、どちらも大事と気付き、その上でみんなと一緒にいるとここねは決めた。
暖かいハートを胸に抱きながら、ここねはキュアスパイシーとして大切なみんなを守り抜いた。


980 : ◆k7RtnnRnf2 :2023/06/10(土) 08:15:33 YDwHOKV.0
投下終了です。


981 : ◆kLJfcedqlU :2023/06/11(日) 11:48:15 tFRPErSk0
投下します


982 : アクアとライダー ◆kLJfcedqlU :2023/06/11(日) 11:52:06 tFRPErSk0
 数奇な人生

 星野アクアほどこの言葉が似合う人間も少ないだろう。
 前世にて、医者として生き、ある少女の影響でアイドルにハマり。そのアイドルが患者として目の前に現れ、その出産を手助けしようとした矢先に生涯を終えた。
 運命の悪戯か、次に目を覚ました彼はそのアイドルの実子『星野愛久愛海(アクアマリン)』として生を受け。幸福な第二の人生を謳歌していた彼を、母の死が変えた。

 今や、星野アクアという名は芸能に精通した人物には知られた名前だ。役者であり、舞台俳優でもあり、バライティにも席を持つ。そんな彼の動機は『最愛の推しであり母であり一番星、星野アイを奪った自分の父への復讐』
 芸能界という伏魔殿を、その野望を支えに進み続けるのが、今の彼だ。



 現実ではない空間、コックピットのような空間で、赤毛の幼子がアクアを見つめてる。
正しくは、コックピットの壁面ディスプレイに映る、星野アクアの映像を見ている。
 アクアの人生を、チャプターごとに切り取ったように映像が淡々と流れ続ける。唯一の視聴者であるライダーの目の前に、幼いマスターとその妹に愛を伝える星の瞳を持った美しい女が映る。その腹部からは赤黒いものがどくどくと流れ続け、その女がもう長くないことは映像越しのライダーにも良く分かった。

 ここが、マスターの原点だ。ライダーは確信する。
彼女がドームライブを目前に控えたあの日。男の逆上と、その背後にいる怪物により奪われた幸福の時。10年を超える月日を経ても星野アクアの脳に焼き付いて離れない、原罪にして原風景。

 生前のライダーの母が、夫やヴァナディース機関の仲間たちを奪われたことですべてが変わったように。
 この瞬間、星野アクアは変わったのだ。

 その後の人生は、歯車が噛み合ったかのように矢継ぎ早に巡っていた。
 復讐を決意し既知の映画監督の元でツテと技術を磨いたこと。
 リアリティショーや実写舞台と場数を踏む中で、復讐すべき相手に近づいていたこと。
 『有馬かな』『黒川あかね』そして彼の妹『星野瑠美衣(ルビー)』、彼女達との関係も変わって行ったこと。


983 : アクアとライダー ◆kLJfcedqlU :2023/06/11(日) 11:55:54 tFRPErSk0


『マスターにも、色々あったんだね。』
『お前から見せてと言ったのに、感想がそれか。ライダー。』

 一通りを見てきたライダーからの念話で簡潔な……ともすれば雑と捉ええられかねない感想を聞いたアクアは思わず毒づいた。

 マスターが夢を通じてサーヴァントの記憶を見る事がある。
 ライダーが見ていたのはその応用、データの渦の中に生きるライダーなら、マスターであるアクアとのパスを通じて彼の記憶を閲覧できる。
 当然、アクアもそんなことを頼まれた時は渋った。それだけ、彼の記憶には蓋をしたいことに、見たくないものに溢れていたから。

 それでもアクアが記憶の閲覧を許したのは。聖杯戦争という未知の環境でライダーとの不和を生まないため。自分の本性を隠すよりは、ライダーの関係が悪化するリスクを減らしたいため。ライダーにアクアはそう伝えていたし、アクアの中ではそのつもりでいた。

 それだけの理由じゃないことを、アクア自身さえ気づいているか分からないその感情に。ライダーは微かに気がついた。
 重く暗い秘密をアクアが一人で秘め続けることに端を発するものなのか。はたまたアクアが既にライダーの記憶を見たことによる心境の変化なのか。
ライダーには分からないが、それを聞くことはない。聞かなかったし、聞けなかった。

 誰より孤独な復讐を選びつつ、誰より他人に向き合う星野アクア。
 彼に真の意味で届く言葉を、ライダーは持っていなかった。


 ライダーの感想はシンプルだった。友人のアルバムを見たような、無関心ではないが心を震わされた訳でもない。念話の奥では、慕情と納得が混ざりあったような顔をしているのだとアクアは思ったし、事実その通りの顔を幼いライダーはしていた。
 本音を言うと、このような感想を向けられることはアクアには予想外であった。

『正直、もう少し嫌われるものだと思ってた。嫌いなんだろ、復讐。』

 遙か未来か、はたまた異なる時空の宇宙。ライダーの記憶の中で水星と呼ばれていたその土地で起きたことを アクアは思い出していた。


 ライダーの記憶の中。ライダーによく似た少女が嬉しそうに話している姿。その向かいには巨大な白い機兵が、どこか優しげな視線を向けて少女を見ていた。

ーーー エアリアル。私、学校に行けるの!

 記憶の中のライダーは知っている。それが彼女達の保護者である女による、復讐のための筋書きだということを。
 生みの親に逆らえず、記憶の中のライダーは喜ぶ少女を止めることができない。
 復讐は自分達だけでやろうと母に懇願しようとしても、その言葉が空気を響かすことは無い。

 自身の妹とも言える少女が、その結果として心を傷つけることも、戦禍に巻き込まれることも。ライダーは知っているし分かっていた。
 それでも彼女は、止められなかった。


984 : アクアとライダー ◆kLJfcedqlU :2023/06/11(日) 12:00:22 tFRPErSk0
 アクアのスマホが音を立てて震えだす。電源を付けたアクアが見たのは、見慣れた壁紙ではなく液晶いっぱいに映る宇宙服を着た赤毛の少女。

 ライダークラスにて現界したサーヴァント。エリクト・サマヤがそこにいた。

 データの中でしか生きられないライダーの性質は、英霊となっても変わらない。彼女は現実世界に体を持たない。対価として、電脳媒体を通じて世界とコンタクトを取っている。
 
 そんな彼女が、念話ではなく直接。精一杯のコンタクトをアクアに向けている。

「マスターは、僕やお母さんとは違う。」

 それは、ライダーの本心だった。

 復讐を己だけのものだと、全てを背負って進む星野アクア。
 彼の覚悟は、復讐以外の道が見えなかったライダーの母プロスペラとは違う。 
 大切な人たちを復讐から遠ざけようとする姿は、優しい人達に闘争と破壊以外を与えられなかったライダーとは違う。

 逃げたら1つ、進めば2つ。母が優しいあの子に教えた言葉。

 ライダーの目に映る優しい男もまた、逃げ出すよりも進むことを選んだ。
 それがどんな苦難の道なのかを、知っていながら。
 そこから離れたほうが幸せなのかとしれないと、悩み続けながら。

 アクアのスマホから伝わる電子音は、念話と同じ声で液晶越しにライダーの意志を伝える。
 アクアの宝石のような瞳が、一瞬だけ白く光り。その光はすぐに、淀んだ何かに塗りつぶされたように黒い輝きに変わった。

 「同じだよ。」

 アクアの声は、冷たい。

 「俺は俺のために、ライダーを利用する。ライダーの記憶にいた、仮面の女がそうしたように。」
 「これから、殺し合いになるとしても?」

 ライダーは、殺すことが好きなサーヴァントではない。だが彼女の性質は“戦士”でも“兵士”でもなく。どこまでいっても“兵器”である。
 加減することは不可能。殺すか、殺されるか。アクアとライダーの聖杯戦争に、その二つしか道はない。

「願いのため、誰かを殺さなければならないのなら。俺は殺してみせるよ、ライダー。」

 その上で、アクアは答えた。
 既に『実の父の殺害』という覚悟を、10年以上抱えているアクアは、殺し合いである聖杯戦争を勝ち抜く意志も、既に固めている。

 アクアは進むだろう、そしてその後で、きっと苦しむ。
 記録を見たライダーには分かっていた。星野アクアは、復讐を果たせる人間であるが、復讐に耐えられる人間ではない。
 その決意に押しつぶされないことを、ライダーはただ願い。祈り。

「そう...なら僕は、マスターのために戦うよ。」

 同じものを背負ってともに聖杯戦争を勝ち抜くと。彼女もまた告げたのだ。


985 : アクアとライダー ◆kLJfcedqlU :2023/06/11(日) 12:03:09 tFRPErSk0
【クラス】
ライダー
【真名】
エリクト・サマヤ@機動戦士ガンダム 水星の魔女
【性別】
女性
【ステータス】
筋力E 耐久A 敏捷C 魔力C 幸運D 宝具EX
【属性】
中立・中庸・人

【クラススキル】
対魔力 C+
魔術に対しての抵抗力 ライダーは神秘の薄い時代の生まれのため、このランクは純粋なモビルスーツの耐久力によるものである

騎乗 EX 
モビルスーツを手足のように扱うことが可能とするスキル その他の乗り物に騎乗することは彼女の性質上不可能である

【固有スキル】
GUNDーARM A+
人とモビルスーツを直接結びつける高密度の情報システム。あらゆる動作や思想において、ラグの無い高い反射性と対応速度を獲得している。

電脳の寵児 EX
ライダーは現実に体を持たず、情報の世界で存在している。パーメットのない現代に合わせた結果スキルも変質し、あらゆる電脳機器に干渉できるスキルと化している。消費魔力こそ少なくないものの、情報戦においてライダーは無類の強さを誇る

人機一体 C
彼女自身がモビルスーツである「エアリアル」であることを示すスキル。エアリアルを動かすためにパイロットは必要ない。

【宝具】
『集いで駆けよ風の姉妹(シスターズ・エスカッシャン)』
ランク:B 種別:対情報宝具 レンジ:環境により変動 最大補足:11機

情報空間に生きる彼女が持つ、並列解析と操作の能力。その姿はライダーによく似た11人の少女の姿をとる。
戦場では複数のガンビットを並列操作し敵を殲滅する。また情報の伝わる場所にいる限り、彼女達はあらゆる機械やデータへの干渉も可能となる。その速度は距離や対象の数に応じて変化する
普段はこの宝具により操作するビット部分のみが、ライダーが現実世界に物理的な干渉ができる部分となり、主に出力を落とした狙撃やマスターへの盾としてが主な役割である

『水星の白い悪魔(エアリアル)』
ランク:A 種別: 対城宝具 レンジ:40 最大補足:99
エリクト・サマヤと同一化を果たしてるモビルスーツ『ガンダム・エアリアル』そのもの。一度顕現すれば18mを超える最強の尖兵となる。コックピットは一人乗りであるが、今のライダーはパイロットを必要としない
悪意を持って用いれば、単騎で都市1つは優に滅ぼせる戦術兵器。
その分コストも大きく、この宝具を使用しライダーを『モビルスーツ エアリアル』として動かすためには、令呪による命令かそれに匹敵する多量の魔力が必要となる。

【weapon】
モビルスーツ:ガンダムエアリアル
【人物背景】
ヴァナディース機関のパイロット エルノラ・サマヤの娘
エルノラの手によりGUND-ARMの放つデータストームと完全に同期していたが、その体は宇宙の環境に耐えられず。その生体コードをすべてエアリアルに移されている。パーメットスコアは8を超えているため、エアリアルをパイロットなく動かせる。
パイロット、スレッタ・マーキュリーのことは大切に思っており。母エルノラ=プロスぺラ・マーキュリーの復讐や自分達から解放され自由になってほしいと思っている。
【サーヴァントとしての願い】
マスターを勝たせる 出来れば復讐とは無縁の生き方をして欲しい


986 : アクアとライダー ◆kLJfcedqlU :2023/06/11(日) 12:04:58 tFRPErSk0
【マスター】
星野アクア@推しの子
【性別】
男性
【マスターとしての願い】
復讐の相手に近づくためにはどんな手でも使う。聖杯であっても

【能力・技能】
高い知能と演技力。他人を利用し目的を果たす行動力

【人物背景】
B小町伝説のセンター 星野アイの息子
産婦人科医 雨宮吾郎としての前世の記憶を持ち合わせており、年齢に見合わない達観した精神と知性を持つ美青年 なお精神状態は年頃の青年なアクアに寄っている

現在は役者を初め様々な形で芸能界にて活躍しているが、その目的は、星野アイの死の原因=自分の父親に近づいて殺すこと。その為には手段を択ばないが、その過程で妹のルビーや関りのある黒川あかねを遠ざけるなど、自分一人ですべてを背負う傾向がある

【方針】
聖杯狙いであるが、まずは情報収集
ライダーの性質上令呪の使いどころがことさら重要なので慎重に


987 : ◆kLJfcedqlU :2023/06/11(日) 12:05:46 tFRPErSk0
投下終了します


988 : ◆kLJfcedqlU :2023/06/11(日) 15:05:54 tFRPErSk0
投下します


989 : ルビー&セイバー ◆kLJfcedqlU :2023/06/11(日) 15:12:11 tFRPErSk0
 芸能界は、厳しい世界だ。

 勝ち取った一部の勝者には、その身を削る過酷さと引き換えに財と名声を。
 実力が足りず、もしくは運や縁に恵まれず勝ち取れなかった人達は。陰りある退屈を享受するのみだ。
 その在り方は、まるで生き残りをかけた戦いのよう。

 以前の星野ルビーは後者だった。
 もとより素質はあった、運もあった。実力は十全とは言えずとも、伸びしろも抜群。
 だが先日まで、彼女はその才を十全に活かせてはいなかった。教科書通りと称されるよく言えば分かりやすい、悪く言えば特筆した個性のないアイドルだった。

 前世の恩人であり初恋の人の末路を、その眼にするまでは。
 大好きな推しであり大好きな母の命を奪った、男の事を知るまでは。

 その眼に黒い光を宿し、少女は羽ばたいた。
 今のルビーは、前者だ。



 芸能界が過酷だということは、芸能に疎いセイバーにも知識としては備わってはいた。
 だがその実態を目にした彼女は、その過酷さを遥かに甘く見ていたと認識を改めた。

 彼女のマスター、星野ルビーの一日は、それほどの密度を誇っていた。

 アイドルとしてのレッスン。打ち合わせ。学校に行ったかと思えば昼食もとらずに仕事に向かい、バライティの撮影に動画投稿。
人気上昇中のアイドルB小町としても、一人の芸能人『星野ルビー』としても。彼女は過渡期にあり、それゆえ多忙である。

「お疲れさま、マスター」
「ありがと、シズさん」

 ダンスレッスンを終えたルビーは、後ろで撮影していたセイバーからペットボトルを受け取り、ゴクゴクと飲み干す。水分を失ったルビーの体に、自販機で冷えた水が沁みる。
 マスターがクラス名ではなく『シズさん』と名前で読んだことを、セイバー/井沢静江は咎めない。真名の重要性を詳しく説いていなかったことや周囲に魔力らしいものが感じられないことも理由であったがそれだけではない。
 
「それじゃ、次の仕事にいくよ。」
「うん。お願い」

 次のスタジオに向けルビーは車に乗り込む。運転するのはセイバーだ。
生前のセイバーにこのような車を動かした経験は皆無だが、サーヴァントとして喚ばれた今回、運転に十分な騎乗スキルを有している。
 後部座席で次の仕事の台本を読み進めるルビーを、運転しつつセイバーはミラー越しに見守る。 
 聖杯戦争とは異なる戦場に立つこの時は、彼女は『セイバーのサーヴァント』ではなく、『星野ルビーの護衛兼送迎手』であった。



「セイバーの願いって何?」

 1日の仕事を終え帰路につく中、夜道を運転するセイバーにルビーが問いかける。ルビーが『シズさん』ではなく『セイバー』と呼んだ意味を、分からないセイバーではない。
 静けさの残る車内で、2人は「送迎手とアイドル」ではなく「サーヴァントとマスター」に戻っていた。

セイバーにも願いはある。聖杯を手にしたら知りたいことも、願いたいことも沢山ある。
勇者の事、魔王の事、教え子の事、恩人の事。とめどなく願いが浮かんでくる。

 だが、それらの願いは彼女にとって“聖杯を手にしてまで叶えたい”ものではない。
彼女の晩年はその全てを託すに足る人に出会えた。同郷の人物、そして異なる種族としてあの世界を生きた運命の相手。
死んだ後のことは分からなくとも、彼が自分の願いを叶えてくれたことは確信している。

考えた末、セイバーはシンプルな理由を返す。
星明かりに代わって夜を照らす、街並みの光を背景にして。

「この平和な時代を、この目で見ることかな。」

 最後の時に恩人が見せてくれた平和な街。今いる場所はまさしくその後継だ。
 焼きつくされた街しか知らないセイバーにとって、夢のような、希望にあふれた光景。
 泡沫の影法師でも、この平和をその眼で見たかった。
だから願いはもう半分くらい叶ってるのかな。セイバーの返答に、ルビーはなるほどねと納得をもって答えた。

「そういえばセイバーっていつの人なの?」
「いつのって言われたら、この世界に居たのは80年くらい前かな。」
「おばあちゃんじゃん。...あれ?でも英霊って歴史上の人物みたいなもんじゃないの?」
「色々例外もあるみたい、私も英雄って言うなら異世界の存在だし。」

 平穏な夜の街を、語らいながら主従は駆ける。
 苛烈な芸能界も、過酷な聖杯戦争も無い。ごく短い安息の時だ。


990 : ルビー&セイバー ◆kLJfcedqlU :2023/06/11(日) 15:14:23 tFRPErSk0
「...おかえり」
 ルビーが家に帰ると。ルビーの兄、星野アクアがリビングに居た。
 何処か義務感のあるその声に、ルビーに返さず。アクアも何も言わない。
 
セイバーはその理由を知っている
「伝説のアイドル 星野アイの隠し子報道」
兄妹2人が、伝説のアイドルの血縁であるという。話題沸騰中の大ニュース。
 その発信元がルビーの兄。星野アクアだということ。

 彼がそのような暴挙に出た理由を、星野ルビーは知っている。スキャンダルに巻き込まれた仲間を守るための行為であると。
 それでも、兄に対する怒りも失望も消えることは無い。
 仲がいいことで知られていた兄妹は、今をもっても険悪なままだ。


『いいの?お兄さんと話さなくて』

 部屋に戻ったルビーに、セイバーから心配そうな念話が届く。兄妹が険悪なことをいたたまれなく思うのだろう。 兄妹だから仲良く。そんな感情論をセイバーは口にはしなかったが、教育者でもあった彼女にとって、子どもであるマスターたちのすれ違いは好ましいものでは無かった。

『....ママのことをあんな風に暴いたお兄ちゃんを、許す気はないから』
 
 念話から聞こえる声に、セイバーの背筋が冷たく震える。昼間に“アイドル 星野ルビー”として聞いた陽気で快活な声とは全く異なる。暗い感情に包まれた鋭さと冷たさのあるものだった。
 今この時の彼女の怒りは、誰の言葉でも消えないと。確信させられた。


 黙々と企画書を書き進めるルビーを見つめ。セイバーは以前聞いた彼女の願いと半生について思い出す。
 ルビーのママ。星野アイ。
 “星野ルビー”という個人とって、その存在がどれほど大きなものなのか。前世から輝き続けるその一番星のことを、セイバーは既に聞いている。

 星野ルビーには、前世の記憶がある。
 前世。その半生を病院で終えた天童寺さりなという少女にとって、滅多に来ない実の母以上に、テレビに映る星野アイと彼女を気に掛ける優しいせんせーが救いだった。
“――退院したら、アイドルにでもなればいい。
――そしたら俺が推してやるよ。”
 そのせんせー、雨宮吾郎は。彼女に生きる意味をくれた。

 生まれ変わり、大好きなアイドルの娘となった。その奇跡ともいうべき幸せは、前世から大好きだった母を、無慈悲にも失ったことで終わりを告げた。
 ママの生き方を目指し、アイと同じ名のグループで活動するルビー。そうすれば再会を果たせると信じた大好きだったせんせーも、16年前に殺されていたと知ってしまった。
 その犯人が、今も生きていると。ルビーは知ってしまった。

『私の願いは...復讐』
初めて会った時、憎悪を吐き出すように願いを語るルビー。
セイバーを見るその瞳は、悪魔が宿ったかのような黒い星が輝いていた。


991 : ルビー&セイバー ◆kLJfcedqlU :2023/06/11(日) 15:16:02 tFRPErSk0
 ルビーの黒い願いは、教育者であり英雄であるセイバーにとっては進ませたくない泥の道だ。
手段を択ばない行為は歪を生む。他者を傷つけるだけの覚悟は悲劇を生む。
その果てにあるのは16年も邪悪の意志を育み続ける怪物だ。

 しかし、セイバーはその願いを否定できない。理解も納得もできる。できてしまう。
幼い頃に魔王レオンに召喚され。イフリートを取り込み生き永らえ、長らく彼の手下の魔人として生きたセイバー。
友を殺した後悔と、その身を焼く苦痛に苛まれる彼女は、一人の勇者によって救われた。彼女の強さがイフリートを鎮め、彼女が与えた仮面によって人としての生を与えられた。それがセイバーの人生の、ある意味で始まりとなった時間。

シズにとっての勇者クロノアは、ルビーにとっては雨宮吾郎と星野アイだったのだろう。
星野ルビーはその2人を、これ以上なく残酷に失ったのだ。
 それはどれほどの悲しみだったろう。どれほど深く傷つけられたのだろう。
 復讐なんか忘れろと言うのは簡単だ。その方が幸せかもしれないことも、当人たちは分かってる。
 それでも。奪われたものの憎悪は、簡単には消えない。苦しんだ人の心は、言葉の一つや二つでは簡単には治らない。
 
 
 セイバーは、自分の中にある熱い霊基の事を思う。
 セイバーの霊基であると同時に、彼女にとって宿業とも言うべきもう一つの意識。

セイバーの中には褐色の大男が瞑想をするように静かにたたずんでいる。
炎纏い角を生やした上位精霊――イフリート。死の直前にシズから離れたはずのそれは、英霊となった彼女の霊基の一部として登録されている。
セイバーは、未だ彼と向き合えきれずにいる。

 星野ルビーを縛るものが、自分の中の憎悪であるように。
 英霊:井沢静江を縛る者も、自分の中の憎悪であった。


 召喚された直後、セイバーは自分の中にイフリートが戻っていることを知った。
 彼女にとってイフリートは、命を繋ぐために必要だった相手である。だがそれと同時に、魔王との繋がりをどうしようもなく意識させる楔であり。自身の身も守るべきものも、大切な友すらも奪い去る情も呵責も無く焼き払う炎。
抑え込まねば人として生きられない相手だったそれとの再開に、恐怖や怒りを覚えなかったと言えば嘘になる。
 その感情と向かい合ったイフリートは、彼女を見ると口を開き。

『すまなかった。井沢静江』
「......え?」

 謝罪をしたのだ。

 生前には出したことも無いような頓狂な声しか出せずにいたシズは、自分の死後のイフリートが大きく成長していたことを知る。
イフリートはスライムの腹の中で、自我と感情を会得していた。個体としての名を与えられ、彼なりにシズとの付き合い方に苦悩と後悔を抱えていた。
会話が成立することを想定すらしていなかったシズにとって、全てが衝撃だった。

 彼の謝罪は、真摯なものだった。
 彼は決して許してほしいとは思っていない。許されるとも思っていない。
ただ、謝りたかった。
 自分の罪を死ぬその時まで背負わせた人間に、今度こそ誠意をもって向き合いたかった。
 それが炎精の意志であると、英雄はくみ取っている。

 くみ取れてはいるが、今もなおそこから先に進めずにいる。

 受け取りたくないのか、受け入れられないのか。セイバー自身にも分からない。
 セイバーは大人、それも“立派な”が付く人物である。
相手の歩み寄りに応えるべきだと思うし、今のイフリートとならそれが出来るとも思えた。
それでも答えが出ない。言葉で解決するには、人生一つに及ぶねじれた関係は長すぎた。

セイバーは、イフリートに言葉をかけない。イフリートも何も言わない。
 自分の中で整理がつくまでイフリートと向き合うのは待ってほしい。シズがそう望み、イフリートもまたそれを受領した。

 冷たい空気を受け入れているその光景は、数刻前の星野兄妹とどこか似ていた。

 兄の行動を理解しても、怒りを抑えられないマスターの顔を思い出す。
 今のセイバーも、リビングで彼女が兄に向けたものと同じ目をしているのだろうか。

 『マスターに、偉そうなこと言えないな。』
 平和な街の静かな夜。セイバーが望んだ光景に、その言葉は静かに消えた。


992 : ルビー&amp;セイバー ◆kLJfcedqlU :2023/06/11(日) 15:23:20 tFRPErSk0
【クラス】
 セイバー
【真名】
井沢静江@転生したらスライムだった件
【性別】
女性
【ステータス】
 筋力B 耐久C 敏捷A 魔力B+ 幸運E 宝具C
【属性】
 秩序・善・地
【クラススキル】
対魔力C+
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。 生前、己の内に炎の上位精霊を押しとどめたことから、炎に関してはより強力な効果を発揮する。
騎乗 D
乗り物を乗りこなす能力。正しい調教、調整がなされたものであれば問題なく操作できる。

【固有スキル】
教導の英雄 C
教育者としての逸話が形となったもの、特異性を持った人間を相手にすることに長けている
変質者 B
“統合”し“分離”するスキル。彼女においては精神や自我の防衛に高い効果を発揮する。
爆炎の支配者 A
炎を自在に操作するスキル。イフリートの生成したもの以外でも炎であれば操作や増強が可能である
抗魔の仮面 C
勇者から与えられ勇者に引き継がれた仮面 魔力抵抗を上昇させ、使用中は対魔力のスキルが強化される
このスキルは仮面を譲渡することで、他者にも適用可能である

【宝具】
『炎精よ、憎悪を示せ(イフリート・ハザード)』 
ランク:D〜B+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜20 最大補足:20人
契約しているイフリートの能力により。莫大な炎を生成する宝具
生成・消去も自在に行える。生前は暴走の危険性があったが、炎精そのものが自我と善性を獲得したため出力や応用が向上し、暴走の危険性は格段に低くなっている。

『獄炎剣・精魔霊王(■■■・レーヴァティン)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1〜60 最大補足:70人
完全なる炎との同機による、広域殲滅宝具
セイバーがこの宝具の真名...その名を刻む精魔霊王(フレイムロード)の名を把握していないため、現在は使用不可

【weapon】
刀剣 
【人物背景】
現代地球からの召喚者であり、「爆炎の支配者」と称される英雄
魔王に召喚され、死の間際まで精霊を抑え続けると苦難の人生を歩んだが。仮面の勇者によって救われ。多くの人を救い。願いを恩人であるスライムに託して永遠の眠りについた
地球から召喚された教え子達の他、魔国の長のスライムにも大きな影響を与えた人物
地球人としてはWW2頃の人間である

【サーヴァントとしての願い】
平和な街が平和であり続けること。聖杯は可能ならば欲しいが積極的ではない
星野兄妹の関係改善。自分もイフリートとの関係を変えねばと思っている


【マスター】
星野ルビー@推しの子
【性別】
女性
【マスターとしての願い】
せんせーとママを殺した奴をどんな手を使っても殺す
【能力・技能】
高い演技力 技術は並だが前世から「相手の望む姿を演じている」傾向がある
母親譲りのプロポーション、そして母と同じように努力家でもある
【人物背景】
B小町伝説のセンター 星野アイの娘にして。現B小町のメンバー
天童寺さりなという病弱の少女の前世の記憶を持ち、“母の愛”に関して大きな傷を抱えている
母の死、敬愛するせんせーの死を受け。元凶である自分の実に父に対する復讐心に目覚める。その結果アイドルの才、企画力など。その魔性を開花させていく
【方針】
復讐を果たすために、聖杯が必要なら取りに行くし殺すこともためらわない
セイバーのことは好きなので、彼女が嫌がることはさせたくはない


993 : ◆kLJfcedqlU :2023/06/11(日) 15:24:16 tFRPErSk0
投下終了です


994 : ◆C0c4UtF0b6 :2023/06/11(日) 16:23:07 LZ79hUwA0
投下します


995 : ◆C0c4UtF0b6 :2023/06/11(日) 16:23:20 LZ79hUwA0
ゴミ捨て場、一人の少女が立つ。
ナタを片手に、ゴミの山から降っていく。
少女−−−龍宮レナの願いは一つ、皆と仲良く暮らしたい、ただ一つだった。
なのに、こんな殺し合いに混ざれてと言われた、そんな道理なんて無いのに

「出てきて、アーチャー。」
ガードレール゙から、霊体化を解除する自身のサーヴァントを見つける。
「終わりか?マスター?」
大型のスナイパーライフルを抱え、髪は金髪、パイロットスーツを着た男。
アーチャー・ルドラ・シャンカル。
戦場において「死神」の異名を取り、数々の修羅場をくぐり抜けてきた。

「まっ、そう気を貼らなくてもいいじゃないか、いつもどおり過ごしてれば――」
「そんなの無理だよ。」
レナは言葉を遮った、すこし、怒りも含まれている。
「私はお父さんを守らないといけない!でもみんなとも交流しないといけない!でも、他のマスターがみんなの中にいたら!?どうなるの!?誰も信じられないよ!次の日には圭一君や魅ぃちゃんも敵かもしれない!そんなの!そんなのって――」
勢いのまま、首を掻きむしろうとしたのを止められた。
「落ち着けマスター、まずはゆっくり考えていけ。」
時間が止まるような感覚がほとばしる、空気がすこしやんだような気もする。

「、、、、ありがとう、アーチャー。」
「どーも、まぁ、とにかくこのまま帰るぞ。」
雛見沢に眠る聖杯、誰が当てるかはまだわからない
でも、願えるなら。
「みんなと、幸せになりたい」
たった一つの――小さな願い。

【クラス】
 アーチャー
【真名】
ルドラ・シャンカル@VIPER'S CREED
【性別】
男性
【ステータス】
 筋力B 耐久B 敏捷C 魔力C 幸運E 宝具B
【属性】
 中立・善
【クラススキル】
対魔力D
1工程の魔術を無効化、魔力よけのアミュレット程度。
騎乗 D
乗り物を乗りこなす能力。正しい調教、調整がなされたものであれば問題なく操作できる。

【固有スキル】
狙撃手B
戦場の狙撃手として経験からついたスキル。
射撃、特にスナイパー関係で発揮される。

真眼(偽)D
自身の経験から編み出された直感で、あらゆる弾丸を回避する。
発動しない時もあり、油断は禁物。
【宝具】
『戦場の死神(バトル・グリム・リーパー)』 
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:10〜30 最大補足:5人
戦場での彼の異名を冠する宝具。
自身のマニューバアーマーを召喚、狙撃体制へ移行する。
目標にされた場合、回避はほぼ不可能、彼の狙撃力の元、目標は殺される。

【weapon】
40mmアンチマテリアルライフル
【人物背景】
ユニット・ヴァイパーの狙撃手。
陽気な性格であり、ピンチなときでもそのスタンスは崩していない。
コードネー厶「グリム・リーパー」は彼の傭兵時代の異名。
戦場で各地でその異名を轟かせたが、同時に敵軍から恨みを買い、その際の拷問は彼のトラウマとなっている。

【サーヴァントとしての願い】
レナの願いを成就させる、マヤと再びであればそれでいい。

【マスター】
龍宮レナ@ひぐらしのなく頃に
【性別】
女性
【マスターとしての願い】
父や仲間と平和に暮らす。

【能力・技能】
洞察力と運動性が高い、ナタを使い、戦闘をすることも可能。

【人物背景】
雛見沢の住人の一人 14歳
可愛いものに目がなく、すぐ「お持ち帰り」しようとする。
また、ダムの現場跡地を拠点に、宝探しを趣味にしている。

一度雛見沢から引っ越しており、茨城に住んでいたが
母の不倫などのストレスが原因で、雛見沢症候群を発症、学校で暴れまわってしまう。
その際にオヤシロ様(羽生)の助言により雛見沢に引っ越す。
そこでも、父が美人局に騙されてたりしていたが、仲間たちの手助けで難を逃れている。
【方針】
聖杯狙いであるが、仲間が参加していたらという不安もある。
とにかく、今は自分の身を守る


996 : ◆C0c4UtF0b6 :2023/06/11(日) 16:23:48 LZ79hUwA0
投下終了です、練習がてらしました


997 : ◆Ydvc2XJMDI :2023/06/11(日) 16:37:17 gN6xusAo0
聖杯戦争-(マイナス)2/「はじまり」の短編集
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1686468796/
次スレ立てました


998 : 名無しさん :2023/06/11(日) 16:52:10 JDN2dXHg0
新スレ立て乙です


999 : ◆C0c4UtF0b6 :2023/06/11(日) 17:01:37 LZ79hUwA0
スレ立て乙です!


1000 : 名無しさん :2023/06/11(日) 18:42:17 ETsTO3rw0
1000なら採用作が増える


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