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ジョジョ×東方ロワイヤル
1 ◆YF//rpC0lk:2013/05/18(土) 14:03:17 ID:/fBvXA5.0
【このロワについて】
このロワでは『ジョジョの奇妙な冒険』及び『東方project』のキャラクターによるバトロワリレー小説企画です。
皆様の参加をお待ちしております。
なお、小説の性質上、あなたの好きなキャラクターが惨たらしい目に遭う可能性が存在します。

【参加者】
『side東方project』
5/5【東方紅魔郷】
○チルノ/○紅美鈴/○パチュリー・ノーリッジ/○十六夜咲夜/○レミリア・スカーレット
5/5【東方妖々夢】
○アリス・マーガトロイド/○魂魄妖夢/○西行寺幽々子/○八雲藍/○八雲紫
5/5【東方永夜抄】
○上白沢慧音/○因幡てゐ/○鈴仙・優曇華院・イナバ/○八意永琳/○藤原妹紅
5/5【東方風神録】
○河城にとり/○射命丸文/○東風谷早苗/○八坂神奈子/○洩矢諏訪子
5/5【東方地霊殿】
○星熊勇儀/○古明地さとり/○火炎猫燐/○霊烏路空/○古明地こいし
5/5【東方聖蓮船】
○ナズーリン/○多々良小傘/○寅丸星/○聖白蓮/○封獣ぬえ
5/5【東方神霊廟】
○幽谷響子/○宮古芳香/○霍青娥/○豊聡耳神子/○二ッ岩マミゾウ
8/8【その他】
○博麗霊夢/○霧雨魔理沙/○伊吹萃香/○比那名居天子/○森近霖之助/
○稗田阿求/○宇佐見蓮子/○マエリベリー・ハーン

『sideジョジョの奇妙な冒険』
5/5【第1部】
○ジョナサン・ジョースター/○ロバート・E・O・スピードワゴン/○ウィル・A・ツェペリ/○ブラフォード/○タルカス
5/5【第2部】
○ジョセフ・ジョースター/○シーザー・アントニオ・ツェペリ/○ルドル・フォン・シュトロハイム/○ワムウ/○カーズ
5/5【第3部】
○空条承太郎/○花京院典明/○ジャン・ピエール・ポルナレフ/○ホル・ホース/○DIO
5/5【第4部】
○東方仗助/○虹村億泰/○広瀬康一/○岸部露伴/○吉良吉影
5/5【第5部】
○ジョルノ・ジョバァーナ/○ブローノ・ブチャラティ/○グイード・ミスタ/○プロシュート/○ディアボロ
5/5【第6部】
○空条徐倫/○エルメェス・コステロ/○フー・ファイターズ/○ウェザー・リポート(ウェス・ブルーマリン)/○エンリコ・プッチ
5/5【第7部】
○ジャイロ・ツェペリ/○ジョニィ・ジョースター/○リンゴォ・ロードアゲイン/○ディエゴ・ブランドー/○ファニー・ヴァレンタイン

12/12【書き手枠】
○/○/○/○/○/○/○/○/○/○/○/○

計90名

まとめサイト(現在構築中)
ttp://www55.atwiki.jp/jojotoho_row/

2 ◆YF//rpC0lk:2013/05/18(土) 14:03:48 ID:/fBvXA5.0
【基本ルール】
●全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
●生き残った一人だけが、元の世界へ帰還および主催者権限により願望が成就。
  (ただし死者復活は1名のみ)
●ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
●ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
●プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
●会場からの脱出は不可。

【スタート時の持ち物】
●プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
  (ただし義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない)
●武器にならない衣服、帽子は持ち込みを許される。
●スタンド能力、翼等の身体的特徴はそのまま保有。
●ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を「特殊なエニグマの紙」に入れられ支給される。
  「地図」「コンパス」「照明器具」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランダムアイテム」

「特殊なエニグマの紙」→他の荷物を運ぶためのスタンド能力の紙。この紙は破れない限り何度でも出し入れ自由。
「地図」→ 大まかな地形の記された地図。禁止エリアを判別するための境界線と座標がひかれている。
「コンパス」→ 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
「筆記用具」→ 普通の鉛筆と紙。A4用紙10枚。
「水と食料」→ 通常の飲料と食料。量数は通常の成人男性で二〜三日分。
「名簿」→全プレイヤーの名前がのっている、顔写真はなし。
「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが入っている。内容は以下の通り。
                 ○現実世界にある日用品
                 ○『ジョジョの奇妙な冒険』並びに『東方project』に登場する道具並びに武器
                    (武器にはプレイヤー以外のスタンドDISCも含む)
                 ○馬、亀などの動物もあり。(ただし人間形態に変化しないものに限る)

【マップについて】
●マップは以下の通り
ttp://www55.atwiki.jp/jojotoho_row/pages/5.html

●会場にはプレイヤー以外の動物、妖怪等は存在しないが、食料、銃器以外の物資は存在する。
  (例えば商店には水、酒を含めた品物が十分に存在する)
●墓地があれば死体は存在する。
●会場から出ようにも、何故か上空を含めて見えない壁で進めない。

3 ◆YF//rpC0lk:2013/05/18(土) 14:04:23 ID:/fBvXA5.0
【放送について】
●放送は6時間ごとに行われる。
●放送毎に、過去6時間の死者の名前、残り人数、次の6時間に増える禁止エリアが発表される。
●禁止エリアの増加割合は一放送毎に1つ。

【作中での時間表記】(1日目は午前0時より開始)
●深夜  : 0時〜 2時
●黎明  : 2時〜 4時
●早朝  : 4時〜 6時
●朝    : 6時〜 8時
●午前  : 8時〜10時
●昼    :10時〜12時
●真昼  :12時〜14時
●午後  :14時〜16時
●夕方  :16時〜18時
●夜    :18時〜20時
●夜中  :20時〜22時
●真夜中:22時〜24時

【キャラのテンプレ】
【地名/時間(日数、深夜・早朝・昼間など)】
【キャラ名@作品名】
[状態]:体調、精神状態、怪我 など
[装備]:装備 手に持っていたりすぐに使える状態の物
[道具]:基本支給品、不明支給品、などエニグマの紙に入っている物など
[思考・状況]
基本行動方針:ロワ内での基本的指針
1:
2:
3:
現在の状況での行動・思考の優先順位
[備考]
参戦時期、その他、SS内でのアイテム放置、崩壊など


【「首輪」と禁止エリアについて】
●このロワに首輪はない。代わりに主催者の能力により脳そのものを爆発できる。
●妖怪、神、妖精、柱の男なども脳を爆発されると死亡する。
●爆発すればどのような能力でも修復不可能。
●脳の爆発以外の要因で死亡した場合、以降爆発することはない。誘爆もなし。
●主催者は能力によりプレイヤーの位置を把握可能。ただし会話内容などは把握できない。
●爆発するのは、以下の条件の時である。
  ○放送で指定した禁止エリア内に、プレイヤーが入ったとき。(進入後10分で爆発)
  ○24時間で、一人も死者が出なかったとき。(一斉に爆発)
  ○プレイヤーが、主催者に不利益な行動をとろうとしたとき(主催者の右手にスイッチがあり手動で爆発が可能)

4 ◆YF//rpC0lk:2013/05/18(土) 14:04:43 ID:/fBvXA5.0
【制限について】
●全ての参加者はダメージを受け、状況により死亡する。(不死の参加者はいない)
●回復速度は本人の身体能力に依存する。
  蓬莱人のプレイヤーは吸血鬼並びに柱の男と同等の回復速度だが蘇生はしない。
  妖精にも「一回休み」はなく死亡する。
●弾幕生成・能力使用など霊力を消費するもの、並びにスタンド能力は同時に体力も消費する。
●翼や道具等、補助するものが無ければ、基本的に飛べない。
●弾幕の有効射程は拳銃程度、威力は弾幕だけでは一般人を殺せない程度。
●鬼などの怪力持ちは木造一戸建てを全壊する程度に制限。
  天狗などの高速移動キャラは移動速度100km/hまでに制限。
  広範囲能力、瞬間移動能力はエリア1つ分までに制限。
●神の分霊、仙術による仙界への入り口作成は禁止。
●時間停止の長さは平均5秒、最長9秒まで。
●スタンドのビジョンは非スタンド使いにも視認可能。ただし接触、破壊は不可能。
●矢じり、聖人の遺体によるスタンドの付与は禁止。
●GER、バイツァダストは使用不可能。
●吸血鬼によるプレイヤーのゾンビ化は不可。肉の芽はあり。
●波紋エネルギーは東方projectの吸血鬼、キョンシーなどにも効果あり。
●その他各能力の制限は各自常識の範囲。問題があった場合は随時議論を行う。
●なお、以上の事項はプレイヤー全員に持ち物内のメモとして通達する。
●また全ての登場人物が日本語で思考し、会話し、読み書きすることができる。
  (妖怪化していない動物などの例外あり)

【書き手の方々へ】
●初心者から経験者の方まで、誰でも歓迎。
●予約の際はトリップ必須、ゲリラ投下の場合は名無しでも可能。
●予約期間は1週間、報告無しでそれ以上経過すると予約は解除される。
●予約期間中に書ききれない場合は延長が可能。
●延長は1週間。
●自己リレーは不可。
●書き手枠については『ジョジョの奇妙な冒険』並びに『東方project』に登場するキャラクターから選択可能。
  ただし、以下の事項を厳守する。
  ○『東方project』のキャラクターならば、名前ありのキャラクターに限る。
    (設定のみのキャラなどは禁止)
  ○『東方夢時空』などの「旧作」のキャラクターは、上記制限の他、明確な公式設定を提示できるキャラに限定。
  ○二次創作のキャラクターは禁止。
  ○『ジョジョの奇妙な冒険』は原作漫画の本編並びに短編漫画に登場したキャラクターに限る。
    (小説のみに登場したキャラクターは禁止)
  ○『東方茨歌仙』『東方鈴奈庵』『ジョジョリオン』など現在進行中作品に登場するキャラクターの設定は
    ロワ登場時の公式設定を採用
●今回「二次設定」の使用は禁止。(カップリングの使用、参加者の性格他の改変は不可)

5プロローグ『穢き世の穢き檻』 ◆YF//rpC0lk:2013/05/18(土) 14:05:30 ID:/fBvXA5.0
「……うぅ、頭痛い」
妙にズキズキする頭のせいで、心地よい微睡から覚醒させられた。
昨日はそんなに呑んでいないはずなのにと、宇佐見蓮子はまだ覚めやらぬ脳で思考する。
しかし彼女の脳髄は、開かれた眼に映る光景により回転を速めたのだった。

「アレ……ここ、どこ?」
いつもの自分の部屋ではない、どこまでも闇の広がる空間。
その暗闇の中蠢く気配は、大勢の人間が放つものだった。
自分と同じくこの未知の場所で目覚め、自身の置かれた状況に戸惑う様が伺える。
頭上を見やっても闇ばかり。星さえあれば場所が分かり、月さえ見えれば時計いらずの彼女の眼にも
今は何も見つけられない。

すると、闇全体に突如として強い光が灯り、蓮子は思わず目を背けた。
明転に慣れたその目で見渡せば、実に様々な者たちがいた事を理解した。
和服に洋服、大男に子供、男性女性、中には翼や角のあるものまでいる。
(仮装パーティーか何かかしら?)
そんな素っ頓狂な事を考えていると、異様な存在感を放つ二人の男がいるのを見た。

一人はメガネにハンチング帽をかぶった痩せた男で、その手には何故かビールジョッキがあった。
もう一人は意味深な笑みを浮かべた男だ。
一見すれば若いはずなのに、何故か蓮子にはその男が長きを生きた賢者にも見えた。
その賢者のような男は声高らかに話し始めた。

「ようこそ諸君。私の名前は荒木飛呂彦。そして彼は太田順也。君たちをこの場に集めた張本人だ」
聞いたことのない名前だ。だが蓮子は不思議と、その太田順也と呼ばれた男に懐かしさを覚えた。
(懐かしい……なんで? 会ったことないはずなのに)
それはまるで遺伝子が、魂が記憶しているような感覚。
そんな彼女を余所に、荒木は話を続ける。


「集めた理由はただ一つ。君たちにはこれから殺し合いを行ってもらいたい」

6プロローグ『穢き世の穢き檻』 ◆YF//rpC0lk:2013/05/18(土) 14:05:43 ID:/fBvXA5.0
『殺し合い』……そんな非現実的な言葉に周りの者たちはざわめき始めた。もちろん蓮子も例外ではない。
だが、彼女は気づいてはいなかったが、その場にいる人物の何人かは、
その言葉をすんなりと受け入れたかのように物怖じ一つしていなかった。

「ルールは単純明快。この場にいる者全てを殺し、最後に残った者が優勝者となる。
 もちろんタダとは言わない。優勝者にはどんな願いだって叶えてあげよう。
 巨万の富も不老不死も世界の王も自由自在さ。『死者の蘇生』は一人限定だがね」
「とは言え、ただそれだけじゃ戦い慣れていないものは不利だ。
 そこで、君たちには通常のサバイバル用品の他に『ランダムアイテム』を進呈しよう。
 日用品の他、刃物に銃器、珍妙不可思議なマジックアイテム、馬なんかの生物の場合もある。
 いくら弱いものでも、このランダムアイテムが大当たりだった場合は自衛も可能って事さ」


「冗談じゃないわよ!」
ざわめきがまだ残る群衆のなかから、説明をする荒木に詰め寄る者がいた。
ボブカットの金髪にブドウの飾りのついた帽子を被った少女が、見るからに荒木達に憤怒しながら歩んでいく。

「あー、説明の途中なんだけど。誰だっけ君? えっと確か、秋……あき……」
「秋穣子よ! み・の・り・こッ! さっきから聞いてたら、いきなり拉致して、今度は殺しあえ!?
 あんた達何考えてんのよッ!」
「あのさぁ、君こそ僕の説明聞いてた?
 それとも幻想郷じゃ、丁寧に説明している相手に喧嘩吹っかけるのが挨拶なわけ?」

「ンフフ、まあまあ荒木先生。一寸待って下さい」
噛みついてきた穣子とそれに応対する荒木の後ろから、先ほどまで沈黙を保っていた太田が喋りかけてきた。
「ちょうど良いじゃないですか。我々に逆らったらどうなるか説明するのは、
 具体例を挙げるのが一番だと思いますよ。その子『神様』の部類ですし」
「そうか、それは確かに都合がいい」
「ちょっとアンタ! 人の話聞いてるの! 何二人で変な事言い出して……」

結論から言えば、穣子の声が聞こえる事はこれ以降ないだろう。
何故なら、彼女の頭が突如として爆発したからだ。
鳳仙花の実のように弾け、あたりに血液と脳しょうなどが混ざった液体が飛び散った。
首から上がなくなった彼女の体は、ほどなく全身の力が抜けてその場に倒れ伏した。

7プロローグ『穢き世の穢き檻』 ◆YF//rpC0lk:2013/05/18(土) 14:05:53 ID:/fBvXA5.0
「今のを見れば分かるように、僕たちは君たちの脳を爆発させる能力がある。
 彼女は人間ではなく所謂『八百万の神』の一柱だが、僕たちにかかればこうなる。
 『自分は頭を破裂させられても生きていける』なんて考えるなよ。
 吸血鬼や柱の男、妖怪に蓬莱人なんかも、この場にいる全員例外はないんだ」
彼女を殺した荒木は語る。自分はお前たち全員の命を握っているのだと。
如何な幻想の住人も、自分にかかれば「鉛筆をベキッとへし折る」より簡単に始末できると。

「君たちの脳が爆発する条件は主に3つ。
 まずは、会場内に設けられた禁止エリアに入った場合。これは進入後10分で自動で爆発する。
 次にゲームが開始して以降、連続24時間で死者が一人もいない場合。
 最後に僕たちに逆らった場合。まあこれはさっきのを見ればわかるよな?」

戦い慣れていないものは今まさに起こった惨状への恐怖故に、
逆に死に慣れたものはこれから起こるルールを聞き漏らさないために、
先ほどまでのざわめきを静め、荒木の話を聞いている。

「それから、ゲーム開始から6時間ごとに放送を会場全体にかける。
 死亡人数と生存人数、死んだプレイヤーの名前を発表する。
 それから、放送毎に禁止エリアを1つ設置するから聞き逃さない方が身のためだぞ」
荒木の後ろにいる太田は、手にしたジョッキにビールを注いでいる。

「説明が長くなってしまったが、これよりゲームを開始しよう。君たちはこれから会場のどこかへランダムに飛ばされる。
 最初の禁止エリアは"F5"だ。君たちの健闘を祈る」

荒木が言い終わるや否や、蓮子の意識は反転した。
たちまちのうちに彼女を含め、会場の者たちはその場から跡形もなく消え失せた。
場に残ったのは荒木と、ビールを旨そうに呑む太田、そして首を無くした穣子だけだった。


生死を賭けたゲームが今、幕を切った。
果たしてゲームを制するのは

人間か、幻想か。感謝か、後悔か。敬意か、欲望か。

それはきっと、神様さえも分からない。

【秋穣子@東方風神録】死亡

8 ◆YF//rpC0lk:2013/05/18(土) 14:07:27 ID:/fBvXA5.0
以上、OP投下を終了いたします。
皆様の参加を心よりお待ちしております。

なお、観てくださった方のなかに秋穣子のファンの方がいらっしゃったら申し訳ありません。
別に憎いわけじゃなかったんです、ハイ。

9名無しさん:2013/05/18(土) 16:28:30 ID:EMMm3kY60
書き手枠に関して質問があるのですが、
デッドマンズQ出展で吉良吉影を書くのは可能でしょうか

10 ◆YF//rpC0lk:2013/05/18(土) 16:35:53 ID:/fBvXA5.0
>>9
質問ありがとうございます。
申し訳ございませんが、吉良吉影に関しては
第四部時点かデッドマンズQ時点のどちらかにして頂けますようお願いします

第四部枠にいる吉良をデッドマンズQ時点で登場させるというのは可能です

11 ◆kwnpscAh8Q:2013/05/18(土) 16:59:47 ID:EMMm3kY60
>>10
返答ありがとうございます、
岸辺露伴、吉良吉影を予約します

12 ◆YR7i2glCpA:2013/05/18(土) 21:06:05 ID:vqdATW1c0
チルノ、ジャン・ピエール・ポルナレフ予約させていただきます。

13名無しさん:2013/05/18(土) 21:36:30 ID:H9leK9FI0
そういえば、東方キャラにジョジョキャラの能力を持たせることは出来るみたいですが、その逆は出来ないのでしょうか?
公式設定重視の企画のようなので難しいかもですが、クロスオーバーの幅が広がるかなーと……

14 ◆YF//rpC0lk:2013/05/18(土) 21:59:17 ID:/fBvXA5.0
>>13
一言でいえば「ルール上出来ない」としか言いようがないですね

ただ、例えば魔理沙のミニ八卦路を持てばジョジョキャラでもマスタースパークは撃て、
青娥の鑿を持てば壁抜けはできるなど、東方のマジックアイテムは誰でも
ある程度使えるよう制限はつけるつもりです

15 ◆n4C8df9rq6:2013/05/19(日) 00:00:56 ID:2GFbrNrE0
藤原妹紅、エシディシ(書き手枠)を予約致します。

16名無しさん:2013/05/20(月) 01:01:06 ID:kaezT71M0
>>13
スタンドDISC支給すれば東方キャラもスタンド能力使えるんだよな
スタプラを得た咲夜がオラオラ無駄無駄言いながらDIOを撲殺することも出来るな

17名無しさん:2013/05/20(月) 01:31:02 ID:7m4HqkX.0
>>16
おい、その話はやめて差し上げろ

18名無しさん:2013/05/20(月) 03:33:43 ID:jmJYRTxk0
書き手枠が存在する以上ジョジョキャラが出そろうまではDISCは安易には出せなそうな予感
いやまぁ絶対出演しないであろうキャラのスタンドのDISCなら出せるかもだけど…

19 ◆YF//rpC0lk:2013/05/20(月) 20:02:41 ID:9.agKM/Q0
>>18のような意見があったため、ルールに訂正を加えます。
ランダムアイテムとして登場するスタンドDISCに関してですが、書き手枠のプレイヤーが所有するスタンドの場合、
別途スタンドDISCとして支給できる事にします。

具体的には、例えば書き手枠としてパンナコッタ・フーゴが登場しても、
別のプレイヤーにパープルヘイズのスタンドDISCを支給できるという事です。

しかし、空条承太郎は書き手枠ではないため、スタープラチナをスタンドDISCとして支給することはできません。


もう一つ、プロローグの文章に致命的な間違いがあったため、>>5の修正分をこれより投下いたします。

20プロローグ『穢き世の穢き檻』修正分 ◆YF//rpC0lk:2013/05/20(月) 20:03:39 ID:9.agKM/Q0
「……うぅ、頭痛い」
妙にズキズキする頭のせいで、心地よい微睡から覚醒させられた。
昨日はそんなに呑んでいないはずなのにと、宇佐見蓮子はまだ覚めやらぬ脳で思考する。
しかし彼女の脳髄は、開かれた眼に映る光景により回転を速めたのだった。

「アレ……ここ、どこ?」
いつもの自分の部屋ではない、どこまでも闇の広がる空間。
その暗闇の中蠢く気配は、大勢の人間が放つものだった。
自分と同じくこの未知の場所で目覚め、自身の置かれた状況に戸惑う様が伺える。
頭上を見やっても闇ばかり。月があれば場所が分かり、星さえ見えれば時計いらずの彼女の眼にも
今は何も見つけられない。

すると、闇全体に突如として強い光が灯り、蓮子は思わず目を背けた。
明転に慣れたその目で見渡せば、実に様々な者たちがいた事を理解した。
和服に洋服、大男に子供、男性女性、中には翼や角のあるものまでいる。
(仮装パーティーか何かかしら?)
そんな素っ頓狂な事を考えていると、異様な存在感を放つ二人の男がいるのを見た。

一人はメガネにハンチング帽をかぶった痩せた男で、その手には何故かビールジョッキがあった。
もう一人は意味深な笑みを浮かべた男だ。
一見すれば若いはずなのに、何故か蓮子にはその男が長きを生きた賢者にも見えた。
その賢者のような男は声高らかに話し始めた。

「ようこそ諸君。僕の名前は荒木飛呂彦。そして彼は太田順也。君たちをこの場に集めた張本人だ」
聞いたことのない名前だ。だが蓮子は不思議と、その太田順也と呼ばれた男に懐かしさを覚えた。
(懐かしい……なんで? 会ったことないはずなのに)
それはまるで遺伝子が、魂が記憶しているような感覚。
そんな彼女を余所に、荒木は話を続ける。


「集めた理由はただ一つ。君たちにはこれから殺し合いを行ってもらいたい」

21 ◆YF//rpC0lk:2013/05/21(火) 22:32:08 ID:nJNA6aEw0
【現在までの予約状況】
>>11岸辺露伴、吉良吉影
>>12チルノ、ジャン・ピエール・ポルナレフ
>>15藤原妹紅、エシディシ

現在、書き手枠は残り11名です。
あのキャラを登場させたい、このキャラで書きたいとお思いの方はお早めに

22 ◆n4C8df9rq6:2013/05/23(木) 22:33:14 ID:SlguakRE0
投下します。

23Like a Bloody Storm ◆n4C8df9rq6:2013/05/23(木) 22:36:56 ID:SlguakRE0
静寂と月明かりのみがその場を包む。
そこは幻想郷の地でも名の知れた原生林―――魔法の森。
キノコの胞子や魔力による瘴気が漂うその森は、魔法使いが多く住み着くという。
とはいえ、人間にとっては『呼吸するだけで体調を崩す』というレベルの悪環境と言われる。
殺し合いの会場である以上、『普段の魔法の森』と比べればまだマシなレベルになってはいるが。

その森の南方の外れに存在するのは、本来あるはずのない、開けた『果樹園』。
傍には小さな小屋も存在している。魔法の森の内部にこのような果樹園など無い…はずだった。


――と言っても、『彼女』も此処の全てを把握しているというわけじゃあない。
普段は人里や竹林の方をうろついている。魔法の森には滅多に訪れない。
直接赴くことは殆どなかったが…『森の南方に果樹園がある』なんて話自体は、噂にも聞いたことが無かった。


「……………。」

紅い瞳を周囲の果樹園に向けながら、白髪の少女は小屋の傍に立っていた。
冷静に視線を辺りに向けるその姿は、少女にしてはどこか大人びて見える。
当然と言えば当然のことだ。彼女の名は「藤原妹紅」。
蓬莱の薬を飲んだことにより不老不死となり、千年以上の時を生きている『蓬莱人』。
少女の外見とは不釣り合いとも言えるような長い生を、彼女は経験しているのだ。
数百年を超える時を生きること自体は、長命な妖怪が多数存在する幻想郷ではあまり珍しいことではない。
しかし彼女は正真正銘の不老不死。他の妖怪達が朽ち果てようと、永劫のような時が流れようと生き続ける、久遠を生きる存在。
本来ならば、殺し合いなんかで死ぬような少女ではなかった。


だが、今の彼女は―――――――


◆◆◆◆◆◆

24Like a Bloody Storm ◆n4C8df9rq6:2013/05/23(木) 22:43:11 ID:SlguakRE0


気分は最悪。何とも忌々しい。
荒木飛呂彦。太田順也。二人の男は私達に『殺し合いをしろ』と言った。
見せしめとしてあの神様を殺し、私達をこの場に駆り出した。

…私自身、殺し合いそのものには慣れてる。数百年の間、妖怪共を無差別に退治していた時期があった。
あの頃の私はかなり荒れていただけに、倒した妖怪を手にかけることなんてザラにあった。
今だって定期的に「あいつ」と殺し合いをしている。とはいえ相手は自分と同じく不老不死なので、どちらも死にはしないけれど…。

「誰かを殺す」ということ自体への恐怖心は私にはない。
千年以上も彷徨い続けて、私の手はとっくの昔に血の色に染まってる。
だけどこの殺し合いは許容出来ない。あの主催者達は、楽しんでいる。
「死」という恐怖で参加者達を縛り付け、強制的に殺戮の場へ駆り出す。
現に、あの神様だって虫を捻り潰すかのように簡単に粛清されてしまったんだ。
ここには弾幕ごっこのような華やかさも美しさも存在しない。
あるのはただ…凄惨な殺し合いという、黒く淀んだ…嘘のような現実だけだ。
…馬鹿げている。望まない者達すらも、無理矢理こんな狂った催しに巻き込む。

そんな主催者に抱いた感情は、『悪趣味』かつ『最悪』。
こんなふざけた殺し合いに乗るつもりなんて微塵も無かった。
殺し合いなんてのは、やりたい奴だけで勝手にやればいい。
…私と、輝夜のように。

主催者の力は計り知れない。もしかしたら、すぐに手を打たれて始末されてしまうかもしれない。
…だが、それでもおめおめとあいつらに従いゲームに乗ろうなどと言う気にはならなかった。
こんな殺し合いに嬉々と乗る程、私は腐ってはいないつもりだ。
例え万に一つの勝ち目しか無いとしても…出来る限りの抵抗はしてみせる。

25Like a Bloody Storm ◆n4C8df9rq6:2013/05/23(木) 22:46:44 ID:SlguakRE0
―――一先ず彼女は、その場で名簿や支給品を確認した。
まず、ランダムアイテム。…入ってたのは折り畳まれた紙。それも複数。
…手紙か何か?とでも思ってそのうちの一つを開いてみることにしたのだが…
「…おぉっ!?」
そう、開いた紙の中から突然物体が飛び出してきたのだ!
というより、突然紙の中から『出現した』と言った方が正しい気がする。
どうやら支給品やら荷物やらは、この紙の中に入っているらしい。スキマに近い能力なのだろうか?何とも摩訶不思議な…。
ともかく、一つ目のランダムアイテムは「一八七四年製コルト」と書かれている物体。
形状や構造を見る限り…銃器?数百年前に火縄銃程度なら見たことがあるが…こんな代物は初めて見た。
恐らく…いや、確実に『外来品』だろう。ご丁寧に予備弾薬まで用意されている。
此処の引き金を引けば銃弾が発射される、と言うことくらいは理解出来た。
そして二つ目の支給品。……ただの煙草だった。別に私は煙草が好きと言うわけでもないので、それは適当にしまっといた。

そして、名簿の確認。
名簿には見知った名前が幾つも見受けられる。それを見て抱いたのは「やっぱり…」と言った感情。
ゲームのルール説明が行われたあの最初の空間。そこでは幻想郷の住民の姿が数多く見られたのだ。
人間。魔法使い。妖怪。亡霊。吸血鬼。果ては、『蓬莱人』。
知っている限りでも、もはや『何でもアリ』と言わざるを得ない人選だった。
妖怪や吸血鬼は兎も角…蓬莱人は死ぬはずがない。不老不死を手に入れた存在なのだから。
…だが、あの男はこう言っていた。


『自分は頭を破裂させられても生きていける』なんて考えるなよ。
 吸血鬼や柱の男、妖怪に蓬莱人なんかも、この場にいる全員例外はないんだ』



あの男の言葉を信じるならば、自分は『死ねる身体』になっていると言うことだ。
蓬莱の薬で確かに不老不死になっているはずだというのに…どんな原理で私の身体を弄くったんだ?
不老不死すら無効化するとなると、奴らは相当「やばい」力の持ち主なのかもしれない。
…まぁ、今はまだ置いておこう。情報が少なすぎて考えようが無い。
それよりも、引っかかり続けるのは―――

26Like a Bloody Storm ◆n4C8df9rq6:2013/05/23(木) 22:52:47 ID:SlguakRE0


「…………例外はない、か。」

ぼんやりと見下ろすように、私は自分の身を眺める。
焼き尽くされようが、穿たれようが、斬り飛ばされようが…何事も無く永劫の時を生き続けてきた、この身。
だけど、それすらもここでは意味を成さなくなる。
普通の人間と同じように、死ぬことが出来る。
今までも、そしてこれからも囚われ続けるであろう永劫の輪から抜け出すことが出来る。
「親しい者との死別」という、何度も繰り返した哀しみからも解放されるのかもしれない。
もし、本当に死ねるとしたら…もしかしたら…それが私にとって、幸せなことなのかも。
永遠から解放されるなら、それでもいいのかも。…いいのかもしれない。
…でも。私は此処で「死のう」とは思わない。

例えいずれ、本当に死を迎える運命であるとしても。

狂った殺し合いの地で死にたいだなんて、これっぽっちも思わない。

何も出来ずに…下衆な奴らに踊らされたまま終わるなんて、私は真っ平御免だ。




その場で思慮を続けていた私は、今後の方針についても改めて頭の中で纏めようとした。
…だけど、そうしている暇はすぐに無くなった。何故かって?
『別の参加者』が、現れたからだ。



「…………。」

そいつは北の方角から、一歩一歩…確かな足取りでこちらに向かってくる。
木々に隠れて姿がよく見えなかったけど…草木などを掻き分ける音と共に、少しずつその姿が見えてくる。
…一言で言うと、浅黒い肌をした筋肉隆々の半裸大男。
逞しい肉体を衣服のあちこちから露出させているのが何とも強烈。
何というか…古代人?とか一瞬思ってしまうような出で立ち(まぁ、千年くらい前から生きてる私も古代人みたいなものだろうけど)。
幻想郷であんな奴を見たことはない。というか、外でもあんな出で立ちの奴見たことがない。
男は深い森の奥から現れて果樹園にいる私の方を向き、一歩一歩踏み頻るようにゆっくりと歩み寄ってくる…

27Like a Bloody Storm ◆n4C8df9rq6:2013/05/23(木) 23:12:34 ID:SlguakRE0

「よォ、小娘」

男は歩きながら、太く低い声でこちらに向けて声を発する。
その声から滲み出ているものは、ドシリと響き渡るような威圧感。
体格といい声といい、随分と強烈なプレッシャーを感じさせるというか…。
ともかく、私は男の挨拶に返答することもなく黙ったまま目を向けていた。

「お前みたいな可愛らしいお嬢ちゃんまで殺し合いに巻き込まれてるとはなァ。
 荒木に…太田と言ったか。奴ら、随分とご趣味の悪い『人間』だそうだ」
「…同感ね。酷い趣味だし、勝手にこんな場所に呼び出されて…迷惑極まりないって奴よ」
「フフフ…あぁ、『勝手に呼び出された』ってェなら俺もその口だ。
 それに、どうやら此処には俺の『仲間』達もいるみたいでね」
「へぇ。お互い境遇は似たようなモノってとこかしらね」
「……ま、そう言った所らしいぜ?」

そこはかとなく飄々とした態度を取る目の前の男は、私と言葉を交わしながら歩を進めている。
ずんずんと地を踏み、私の方へと確実に向かってきているのだ。
どこか威圧的な雰囲気すら感じる一歩一歩を、地に刻み続けるかのように。
男は口元に不敵な笑みを浮かべながら…やがて、私の目の前まで辿り着いた。
仁王立ちの状態で立ち止まり、男は私をゆっくりと見下ろしている。
近くで見ると…やっぱり、かなりの巨体だ。とはいえ、それで怖じるつもりもないが。
2m前後の身の丈を持つ目の前の大男を、私は見上げていた…

「なあ、小娘。あの主催者の男がルール説明の際に言っていたが…
 ―――此処には、『神々』や『妖怪』が存在するんだとな?」
「そうね、というか妖怪とかとはしょっちゅう会ってるわよ?
 魑魅魍魎の類いなんて、案外沢山いるわ」
「ほう…?」

男は私の返答に対して興味深そうな反応を示す。
この男は妖怪や神々について知らないようだ。やはり外界出身の人間か何かだろうか。
…いやまぁ、雰囲気的には『ただの人間』のようには思えないけど。
妙にニヤついた笑みを浮かべながら、男は更に問いかけてきた。

「小娘、お前はどうなんだ?お前も俺の知らない『何か』なのか」
「別に?私はあくまで人間。ただ、違うことと言えば…『ちょっと特殊な身体してる』ってこと」
「……………。」
「まぁ、平たく言えば―――――――――」


私は自分の身について、少し語ろうとした。
わざわざ男から問いかけられたのだ。何となくの気まぐれに、話してみようかとも思った。
だが、この会話は直後に力づくで途切れることになる。
この後の男の行動によって。




「あぁ、もういいぜ。貴様に少しばかり興味が湧いてきた…
 あとは『自分で』確かめる。どちらにせよ、俺はお前を―――」


私の言葉を遮るかのように発せられた男の言葉の直後。
直後に私の顔に目掛けてそれは放たれる。
私の視界が、生々しい紅の色に染まる。
殺し合いの中で何度も見てきた『色』。
そう。目の前の男の身体から放たれたものは真っ赤な『血液』。
それが私の顔面にかかり、視界を塗り潰したのだ。
咄嗟に対処をしようとした。だが、もう遅かった。
そして私の顔が、急に熱くなり―――――



「―――殺してやるのだからな」



◆◆◆◆◆◆

28Like a Bloody Storm ◆n4C8df9rq6:2013/05/23(木) 23:17:17 ID:SlguakRE0


―――少女の端正な顔面は、男の血液によりグツグツと『焼かれていた』。
堪らずに少女はその場で倒れ込み、成す術も無く顔を焼き溶かされていく。
そんな少女の姿を男は笑みを浮かべながら見下ろしていた。
男の名は『エシディシ』。人間を凌駕する『力』と『生命力』を生まれ持つ、闇の一族の一人。
通称『柱の男』と呼ばれる存在だ。
彼女の顔面を焼き尽くす血液。これこそが彼の能力、『熱を操る流法“モード”』。
彼が『炎のエシディシ』と呼ばれる所以。自らの血液を500℃まで上昇させる、灼熱の能力。
暫しの会話を交わした目の前の少女を、その能力の毒牙にかけたのだ。

彼は決して妹紅と友好的な意図で接したわけではない。
あんな会話は単なる気まぐれだ。どうせいずれは皆殺しにする有象無象の塵共の一人なのだから。

エシディシの目的はあくまで『他の柱の男との合流』『会場からの脱出』。
その為には柱の男の仲間達と共に他の参加者共を殺害し、あの荒木と太田とかいう二人の男の下へ辿り着かねばならない。
少々小癪だが、下手に逆らえば脳を爆破されて死ぬだけだ。
だったら一先ずはゲームに乗り、優勝や生き残りを狙うであろう邪魔なカス共を減らしておいた方がいい。
それに、神々や妖怪など…未知の存在への好奇心もあった。少し試してみるのも一興だろう。



男は尚も不敵な笑みを見せ、少女を観察し続けていた。

さて…お前はこの状況で一体どんなことが出来る?
此処から何をしてみせてくれる?
お前の持つ力とは何だ?見せてくれ――――

そして、男の口の両端が三日月のように釣り上がった。



「成る程…それがお前の『力』ってワケか」


そこで彼が目にしたものは、『ただの人間』ならば有り得ない光景。
それは人間でありながら永劫を手にすることの出来た、少女の能力。
火傷を負った少女の顔が、生々しい肉の音と共に『治癒されていく』。
焼き尽くされ、溶かされていた顔が通常の人間ならば有り得ない速さで再生していく。
先程まで灼熱の血液に顔を焼かれていた少女は――――――
炎を意にも介さぬ様子で、こちらを『見据えていた』。


「…いきなり、酷いわね……顔を焼くなんて」

冷静に言葉を紡ぎながら――『灼熱の血液』が、振り払われるかのように消え失せ。
少女は、その場から立ち上がった。

「人間の身でありながら、再生能力を持つのか?」
「ま、有り体に言えば…そう言った所ね。そうじゃなかったらこんな調子良く立ち上がらないわよ」

蓬莱の薬によって不老不死の存在と化した少女――藤原妹紅。
とはいえ、此処ではそれも『偽り』となっている。あくまで持つのは、弱体化した再生能力だけだ。
彼女は不敵な笑みを浮かべることもなく、怒りの形相を見せることも無く。
ただ淡々と、冷静沈着な表情で―――自らの『不尽の火』を発現させた。
対するエシディシは、心底面白そうに笑みを浮かべていた。
彼の心に浮かぶのは、久しく感じていなかった昂揚感。そして、未知の力への興味。
そして彼は一旦後方へとバックステップをし、少しだけ距離を取る。


「ほう!小娘、貴様も炎を操るのか!面白いじゃあないかッ!
 今まで久しく好敵手がいなかったのだ…丁度いい、この『エシディシ』を楽しませてみせろ!小娘ッ!
 ―――『怪焔王の流法“モード”』ッ!!!」

エシディシもまた、己の指先から触手の血管を飛び出させるッ!
それは500℃にまで達する灼熱の血液を用いて戦う『熱を操る流法』。
数多くの波紋戦士を葬ってきたその能力を、彼は解き放ったのだ!

相対するは不老不死の少女と、太古より蘇りし柱の男。
距離を取っていた『柱の男』が地を蹴ると同時に、『少女』もまた戦闘態勢に入る。
果樹園の中央にて、闘いの火蓋が切って落とされたのだ。


◆◆◆◆◆◆

29Like a Bloody Storm ◆n4C8df9rq6:2013/05/23(木) 23:21:38 ID:SlguakRE0


「――――ッ、」
「ハハハハハハッ!!どうだ、満足に反撃も出来ないかァ!?
 そらそらァ!どこまで耐えられるのかなッ!!」

結論から述べれば、戦況はエシディシが優勢だった。
回避された沸騰血は地面へと落ち、土や雑草を容赦なく焼き焦がす。
妹紅は触手のような血管を、後方へ下がりながら辛うじて回避し続けている。

彼女は腕や胴体などにエシディシの血液を何度か喰らっていた。
先程顔面に浴びせられた際よりも多量の血液を受けたということもあるのだろうが…妹紅の身体には、所々火傷が残っている。
普段ならば既に塞がっているであろう負傷。しかし、じわじわと再生しているとはいえ未だに負傷は完治していない。
即ち「いつもより傷の治りが遅い」。再生能力が弱体化している。

彼女は元々戦闘においては再生能力頼りであることが多かった。
当然だ。絶対に死なない身体なのだから、強引に攻めれば押し切れる。
だが―――今回は違う。負傷によって死を迎える可能性がある。
下手に重傷を負えばこちらが不利になるのだ。回避も行う必要がある。
しかし、彼女にとって回避行動は不得手。
「回避」という不慣れな行動に気を取られ、そちらに専念する形になってしまっていたのだ。


「逃げてばかりじゃあ、ラチも開かんよなァッ!!」

そしてエシディシの攻撃は血管だけではない。
不意を突くように時折織り交ぜてくるのは、強靭な筋肉をバネに放たれる剛拳。
妹紅はそれに対し、とにかく回避に徹していたのだ。
如何に妹紅が妖怪退治や殺し合いなどで身体能力に秀でていようと、あくまで元は人間。
対するエシディシの単純なパワーとスピードは、吸血鬼をも遥かに凌駕する。
それだけではない。彼は数多くの波紋使いを葬ってきた百戦錬磨の戦士。並大抵の者を上回る格闘技術をも併せ持つのだ!
一度あの拳に対処した際、妹紅はエシディシの身体能力、そして技量の高さに気付いた。
そしてエシディシはその体術と自身の能力を存分に生かし、激しく攻め立ててくるのだッ!
エシディシは己のパワーを生かして至近距離での戦闘に持ち込み、徹底的な攻撃態勢に入っている!
今の妹紅がしていることは、ほぼ回避のみ。
時折僅かな隙を突いて炎弾を放ってはいるが、殆どダメージを与えられていない。



軽く舌打ちをしながら、妹紅は何とかエシディシの攻撃を躱していく。
しかし、このままでは全く埒が開かないのは当然のこと。
どうにかして打開しなければならない。
いっそ、自分の再生能力を信じて強引に攻めるか。
それとも、攻撃の隙を突いて体勢を立て直すか。
考えている間にも、敵は鋭い攻撃を仕掛けてくる。
迷っている暇なんてない。

そう。既に男は、拳を握り締めているのだから―――!

30Like a Bloody Storm ◆n4C8df9rq6:2013/05/23(木) 23:25:52 ID:SlguakRE0

「―――そぉらァァァッ!!!」

直後、目の前の男が猛々しい声と共にこちらへ再び拳を放つ。
無骨な拳が真っ直ぐにこちらへと迫り来る。獣のように力強く、弾丸の如く勢いが籠った一撃。
しかし、その軌道は真っ直ぐだ。私は右手に霊力を纏わせる。
そのまま、迷うことなく―――拳を両腕で、強引に受け止めようとした!



「…ほう?」

男は、強引に拳を受け止めようとした少女を見下ろし…ほんの少しだけ感心したように声を漏らす。
しかし拳を防いだ妹紅の口からは…ごふっ、と口から血が吐き出される。
力づくで受け止めようとしたとはいえ、その衝撃は相当のものだ。
ある程度ダメージは緩和出来たが、当然の如く妹紅の身体は吹き飛ばされる。
だが、吹き飛ばされる直前の少女の口元には。

笑みが浮かんでいた。


「――不死」

そして、エシディシが目にしたものは…吹き飛ばながらも、右腕をこちらに向ける妹紅の姿。
右掌の正面に形成されているのは、不尽の炎の鳳凰。

「火の鳥、―――鳳翼天翔ッ!!」

火の鳥を模した真紅の炎弾が、エシディシ目掛け放たれる。
スペルカード、不死「火の鳥―鳳翼天翔―」。
それは不死鳥のような煌めきを見せる、紅き炎。
周囲に熱風が吹き荒れ、目を見開くエシディシの身に火の鳥が直撃する――!


「ぬうッ…!?」
その身が炎で焼かれ、男の身体が大きく仰け反る。
先程までの炎弾ではあまり傷を受けていなかったが…今回の攻撃はスペル。少なからずダメージは与えられている。
同時に、吹き飛んだ妹紅が小屋の壁に強く叩き付けられた。
全身を叩き付けられ、口から血を流し、強烈な鈍痛が回りながらも…妹紅はよろよろと立ち上がってみせた。
――苦痛には慣れてる。この程度の痛みなんか、…力づくにでも持ちこたえてやる。


「……よくも……やってくれたじゃないか…なァ、小娘ェッ!!?」

血管ピクピクで怒るかのような、されどどこか楽しげに笑みを浮かべているような。
そんな微妙な表情で、男は声を荒らげて地面を蹴る。
胴体の正面が焼け焦げながらも、ダメージを感じさせぬ凄まじい瞬発力で妹紅の方へと迫り来る。
両足の筋肉を躍動させ、獣のような勢いの速さで突撃をしたのだ。

31Like a Bloody Storm ◆n4C8df9rq6:2013/05/23(木) 23:31:24 ID:SlguakRE0

―――しかし、エシディシが妹紅の所まで到達することは出来なかった。


パァン、パァン。


二度に渡って響き渡ったのは、乾いた破裂音のようなもの。
そう、銃声だ。妹紅が懐に隠し持っていた、『一八七四年製コルト』。
妹紅はそれを咄嗟に抜き、エシディシに向けて不意打ちの如く放ったのだ。
エシディシの頭部と首筋は弾丸に貫かれ、血肉をブチ撒ける。
絶叫じみた咆哮を上げながら、男は傷口を両手で抑えて転倒する―――




「………ふー…。」
銃を握り締めながら、私は一息を吐く。
引き金は躊躇いなく引いた。先程も言ったように、私は殺し合いには慣れている。
自分から積極的に仕掛けるつもりはない。だが…殺そうとしてくるなら、別だ。
殺しにかかってくると言うのなら…とことんまで抵抗するだけだ。

あの男は、どうなっている?
スペルを直撃させ、頭部に弾丸を叩き込んでやったんだ。
普通ならば、これでもう死んでいる。少なくとも、行動不能にはなるだろう。
主催者の話を思い出す。頭を破壊されれば不老不死だろうと例外なく死ぬ、と。
逆に考えれば、頭部さえ破壊すれば確実に敵を殺せるということなのかもしれない。
それが正しければ、これであの男はもう動けなくなるはず――――


そんな私の期待を嘲笑うかのように。
小汚く、不気味な笑い声が…耳に入ってきたのだ。







「―――痛ェなァァァ〜… 中々粘るじゃねえか、小娘… 今…ほんのちょびっとでも、思ったんだろう?」

ニヤニヤと笑みを浮かべながら―――――男は、立った。
その両足で、確実にその場に立ち上がってみせた。
頭部から血を流しながらも、男の余裕の表情は崩れない。
いや、むしろその顔は「愉しげ」にすら見えたのだ。




「『この化物を仕留められた!』とでも…思ってたんだろう、なァァァーーーーーーッ!!!!!?」

32Like a Bloody Storm ◆n4C8df9rq6:2013/05/23(木) 23:35:31 ID:SlguakRE0


地響きが鳴る様な轟く声で、男は心底愉しそうに―――叫んだ。
コイツは…とんでもない、化物だ。こんな奴に…勝ち目があるのか?
あの男も手傷を負っているとはいえ、今は私の方にだってダメージと霊力の消耗がある。
このまま戦った所で…恐らく、ジリ貧。互いに傷を再生しながら長期戦になるだけ。
『制限』がある以上、どこまで再生能力が持つかも解らない。
それだけに、こちらの方が不利になる可能性が高い。
あの男の能力は、計り知れないのだから。
…いや、違う。そんな理屈の話じゃない。あいつは、とにかく…危険だ。
冷や汗を流し、私はただただ歯軋りをする。




「く、っ…………!」

そして、最終的に私が選んだ道は…撤退。
傷付いた身体を押しながら、私は強引に走り出す。
身体は痛むし、所々焼け焦げて熱い。それでも、立ち止まっていたら再び攻撃されるだろう。
とにかく果樹園から、この場から離れるべく、両足に力を踏ん張らせ…駆け始めたのだ。
私は、必死に逃げ出した。


―――無意識の内に目の前の男に恐怖を抱いていたことに、少女は気付いていない。


◆◆◆◆◆


エシディシは、逃げていく少女を何も言わずに見ていた。
俺に臆したのか。それとも、この状況では不利だと感じたのか。
まぁ、正直どっちでもいい。追いかけるのも面倒だ。
また後で探し出して、くびり殺してやればいいだけのこと。いちいち追撃する必要はない。
あの小娘、確かに実力はあるが…あくまで十分に対処出来るレベルの強さだ。
この会場の中で、殺す機会などいつだってある。

「シラけちまったじゃあねえか、全く」

とはいえ…敵に逃げられ、少々面白くない気分ではあった。
追撃さえすれば追うことは出来たかもしれないが、こちらとて傷は受けている。
下手に深追いをし、妙な傷を負わされたらそれもそれで厄介。
それに…時間はたっぷりあるのだから、焦る必要も無いだろう。

ともかく、あの少女との闘いで彼は理解した。
柱の一族とも、波紋使いとも違う、「未知の存在」がいることを。
少女は不死鳥の如し炎を操り、同時に高い再生能力を兼ね備えていたのだ。
あの力が一体どのような技術によるものかは解らないが、興味はある。
この会場に同じような存在がいるとなれば、尚更だ。

さて。此処にはカーズやワムウもいるらしいが…まぁ、アイツらはそう簡単に死にはしなないだろう。
俺は俺で、気ままにやらせてもらうとするかね。
勿論あいつらと共に生き残り、荒木と太田を殺すつもりではある。
抜け駆けをしてカーズやワムウを殺害し、優勝しようだとか…そんなことは微塵も考えてはいない。
あくまで敵は荒木飛呂彦と太田順也だ。
だが、そこに辿り着くまでにはまず「勝たなければ」ならない。
そう。―――最終的に、仲間達以外の参加者共は皆殺しだ。
だが、先程も述べたように他の参加者に対する興味はある。
此処にはどんな奴がいる?どんな能力を持つ者がいる?
是非とも試してみたい。ま、最後は殺すことには変わりないがな。



月を見上げ、男はゆっくりと歩を進める。
行く先は特に決めてはいない。
ただ風が流れるように、気の赴くままに進み続けるだけだ。
その口元に、邪悪な笑みを浮かべながら…彼は果樹園から離れていった。

33Like a Bloody Storm ◆n4C8df9rq6:2013/05/23(木) 23:40:53 ID:SlguakRE0
【B-4 魔法の森・果樹園の小屋付近(7部)/深夜】
【藤原妹紅@東方永夜抄】
[状態]:全身打撲(中)、身体のあちこちに火傷(中)、疲労(大)、霊力消費(中)、再生中
[装備]:一八七四年製コルト(4/6)@ジョジョ第7部
[道具]:予備弾薬(18発)、煙草(数本)@現実、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:主催者を倒す。
1:今はとにかく逃げて傷を癒す。
2:主催を倒す為の協力者を探す。出来れば慧音を探したい。
3:こちらからは仕掛けないが、襲ってくるのなら容赦しない。
4:エシディシを警戒。無意識に僅かな恐怖を抱いている。
5:主催者の言っていたことが気になる。本当に不死の力は失われているのか?
[備考]
参戦時期は永夜抄以降(神霊廟終了時点)です。
風神録以降のキャラと面識があるかは不明ですが、少なくとも名前程度なら知っているかもしれません。
果樹園から離脱し、南下中です。


【エシディシ@ジョジョの奇妙な冒険 第2部「戦闘潮流」】
[状態]:胴体に火傷(中)、頭部と首筋に銃創、疲労(小)、再生中
[装備]:なし
[道具]:不明支給品、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:カーズらと共に生き残る。
1:一先ず気の赴くままに動いてみる。神々や蓬莱人などの未知の存在に興味。
2:仲間達以外の参加者を始末し、荒木飛呂彦と太田順也の下まで辿り着く。
3:他の柱の男たちと合流。だがアイツらがそう簡単にくたばるワケもないので、焦る必要はない。
4:夜明けに近づいてきたら日光から身を隠せる場所を探す。
[備考]
参戦時期はロギンス殺害後、ジョセフと相対する直前です。
エシディシがどこへ向かうのかは次の書き手さんにお任せします。
頭部に銃弾を受けましたが、脳への直撃は避けているのでさほど深刻なダメージではないようです。


『一八七四年製コルト』
藤原妹紅に支給。ジョジョ7部でリンゴォ・ロードアゲインが使用していた回転式拳銃。
装弾数は6発。予備弾薬付き。威力は現在の拳銃と比べても遜色はないが、固定式シリンダーなので弾丸の装填には時間がかかるだろう。

34 ◆n4C8df9rq6:2013/05/23(木) 23:42:16 ID:SlguakRE0
投下終了です。
内容への指摘などがあればお願いします。

35 ◆YF//rpC0lk:2013/05/23(木) 23:54:32 ID:.r2j6SLk0
乙です。本スレ初投下作品ありがとうございます。

何と言うか、読んでいて脳内で二人の戦闘が映像化していました。
特にエシディシの楽しそうな表情がありありと。
改めて、こんなの倒したジョセフとんでもないと思いたくなる見事な化け物っぷりでした。


それよりも、スレを建てた>>1よりも高品質な作品が第一号ということで、
実は初心者の>>1に多大なプレッシャーがかかった次第です。

時間を置いて、◆n4C8df9rq6さんの作品をまとめサイトに載せたいと思います。

36 ◆n4C8df9rq6:2013/05/24(金) 10:51:42 ID:Daqn4QHg0
収録ありがとうございます!わざわざ感想まで頂けて恐縮です。

続いて
宇佐美蓮子
で予約します。

37 ◆n4C8df9rq6:2013/05/25(土) 00:46:15 ID:kO4gwGQw0
投下致します。

38真空のメランコリー ◆n4C8df9rq6:2013/05/25(土) 00:47:12 ID:kO4gwGQw0


先程の惨劇が信じられなくて。
これが夢であることを期待して。
私の両目がゆっくりと開かれる。
これが「本当」であることに、気づいてはいた。
それでも、信じたくなかった。
こんなことが「本当」だなんて、信じたくなかった。

だけど、何もかも現実だ。
悪い夢なんかじゃない。
必死に目を醒まそうと足掻いたところで、これが現実。
無意味な希望は、すぐに砕け散る。


◆◆◆◆◆◆


視界に入ったのは、物々しい「石造り」の部屋。
湿っぽくて、薄汚い…それでいて何とも言えない悪臭が漂う。
檻の壁を見つけた途端、私は此処が監獄であることを理解する。
どうやら扉は明けっ放しなので、外には出れるみたいだ。
だけど、何となくどこかへ行く気分にもなれなくて。
どうにかしようと思っても、勝手に体が震えて動くことも出来なくて。
私は、ただ膝を抱え…呆然と宙を眺めていた。

ただじっとしているだけで、焼き付いた光景が脳裏に浮かび上がる。
まるで記憶をペンキで塗りたくられたかのように、鮮明に…思い出してしまう。
荒木飛呂彦。太田順也。あの男たちの宣告―――「殺し合いの開催」。
嘘だと思った。こんなのは夢なんだろうと、思った。
みんなを集めて最後の一人まで殺し合いだなんて…悪い夢なんだと、期待した。
でも、そんな期待はすぐに水泡のように消えた。
ざわめく群衆の中から、二人に詰め寄った金髪の女の子。
あの二人に恐れることもなく、正面から立ち向かう姿は、何となく頼もしく思えた。
もしかして何とかしてくれるんじゃないかって、根拠の無い希望を抱いた。
だけど…その女の子は。

目の前で死んだ。

真っ赤なトマトを握り潰したみたいに。
女の子の頭が弾け飛んで。
血や肉が、辺りに飛び散った。
首から上が無くなった女の子を目の当たりにして、私はようやく気づいた。

これは夢じゃないんだって。
怪奇とロマンと満ち溢れたオカルトの世界ですらないんだって。
―――血で血を洗う殺し合いっていう現実が、目の前に広がっているんだって。

震えが止まらない。
こんなにも怖い。
いつもの楽しいオカルトなんかとはワケが違う。
こんな現実なんて…あってほしくなかった。

せめて。
せめて隣に。
親友“メリー”が居てくれたら…
ちょっとは、気が安らいだのかもしれない。
でも…居てほしくもない。だって、最後の一人になるまで殺し合わないといけないのだから。
殺したくなんて――――

39真空のメランコリー ◆n4C8df9rq6:2013/05/25(土) 00:47:50 ID:kO4gwGQw0



「…………。」


ふと私は、思った。名簿を確認していない。
…傍に転がっているデイパックに手を伸ばし、中身に手を突っ込む。
少しばかり手探りで中身を探し、名簿を発見した。
私は恐る恐る、不安な気持ちを抱きながら…名簿を確認する。
殆どが聞いたこともない、見知らぬ名前ばかりだ。
もしかしたら、メリーもいないのかもしれない。
少しばかり、心細いけど。殺し合う必要もなくなる―――
そうして、私の名前が記載されている辺りに目を通した直後。
私は、唖然とした。



『マエリベリー・ハーン』




あの子の名前が載っていた。
こんな珍しい名前の子が他に居る訳も無いし、私の隣にわざわざ書かれている。
きっと、間違いなく…あの『メリー』。
メリーも、こんな殺し合いに巻き込まれているんだ。

――――私は、どうすればいいんだろう?
死にたくない。死ぬのはどうしようもなく怖い。
まだまだ生きていたい。死ぬのは嫌。
もっと楽しいことを、醒めない夢のようなミステリーを探求し続けたいんだ。
これからもメリーと一緒に、果てのないロマンを追いかけ続けたいんだ。
だけど。此処を生きて脱出するためには。
みんな、殺さなくちゃいけない。
名前も顔も知らない誰かを。
90人もの参加者たちを。
そう。

メリーすらも――――――――

40真空のメランコリー ◆n4C8df9rq6:2013/05/25(土) 00:48:39 ID:kO4gwGQw0





直視したくない現実を認識してしまった、直後のこと。
コロン、とデイパックの中から何かが落ちてくる。
どうしようもない不安と恐怖を押え込みながら、私はそれを見た。
「…ディスク?」
そう。それは円盤状の情報媒体。俗に言う、『DISC』。
傍にはメモ書きのような紙が落ちている。
『頭に挿入して使え』とだけ書かれた、小さな紙が。
…意味が分からない。このDISCのことなのだろうけど…頭に挿入?
そんな不思議現象が起こるはずが……………、
…………無くもないかもしれない。一応私はオカルトサークルをやってるんだ。
そんな私が、不思議なことを否定してどうする。
よくわからない理屈で、私はとりあえず…何となく。
そのDISCを、頭に押し付けてみると。

「――――っ!?」

押し付けたDISCが、まるでコンピュータに挿入されたかのように私の頭に入り込んでくる。
奇妙な感覚が私の頭の中に渦巻く。
まるで記憶や精神がごちゃごちゃに混ぜられてるかのような、気持ち悪い感覚。
得体の知れない何かを手に入れたかのような。
そして私の頭に――DISCが、完全に入り込んだ。


「…な、何?どう…なったの…?」

…だけど、何も起こらない。
特に自分に変わった様子も無く、さっきの変な感覚くらいしか実感が無く。
劇的な変化は、特に見られない。
一体、何のDISCだったんだろうか?
落ち着かない頭を整理しながら、私は考えてみようとした―――――









『あなた様が…私の新しい本体ですか?』


突如右隣から、声が聞こえてきた。

41真空のメランコリー ◆n4C8df9rq6:2013/05/25(土) 00:49:15 ID:kO4gwGQw0


「ひっ…!?」

何の脈絡も無く聞こえてきた声に私は驚いて、恐怖する。
それでも、後ろから聞こえてきた声が何なのか。
正体を確かめるべく…そちらをハッと向いた。



『そんなに怖がらなくてもいいじゃないですかァ。
 あなた様が自ら、この私の…《ヨーヨーマッ》のスタンドDISCを挿入したんですから』


私の隣に立っていたのは…なんというか。
ヘルメットのようなものを被っている、人型をした緑色の何か。
《ヨーヨーマッ》って名前らしいけど…、どっかの音楽家みたいな名前だ。
ずんぐりした体系をしているその生き物は、直立してまじまじとこちらを向いている。
…オバケか何か?一瞬そんなことを思ってしまった。
「……スタン…ド?」
『あぁそうか。あなた様はスタンドを知らないのでしたね』

するとヨーヨーマッは、スタンドに関して親切かつ事細かに解説してくれた。
『精神エネルギーの具現化』『基本は一人につき一体』『スタンドが傷つくと本体も傷付く』
―――などなど、妙に解りやすい説明で私に教えてくれた。
そしてどうやら先程のDISCは、スタンド能力を封じ込めている特殊な物体らしい。
それを頭に挿入したことで、私はスタンドである『ヨーヨーマッ』を手に入れた、と。






『―――以上が、スタンドの説明です。何か解らない点があれば、質問をどうぞ』
「…いえ、何も。…大体、解りました…」
『そうですか。それならば良かったです。』

先程までの解説を咀嚼しつつ、私はとりあえず大体解ったと答えていた。
スタンド…なんだか守護霊みたいだ。こんなファンタジーな存在までいるなんて…
ちょっとだけ私はロマンを感じたけど、今はそんなことを考えてる場合じゃない。
そう、ヨーヨーマッが話を切り出してきたんだ。

42真空のメランコリー ◆n4C8df9rq6:2013/05/25(土) 00:50:28 ID:kO4gwGQw0


『―――それで、どうするのですか?ご主人様』
「…え?」
『此処に篭城して人数が減るのを待ちますか?
 適当に待っていれば、参加者同士で勝手に殺し合ってくれるでしょうし。
 尤も、此処に勘付かれた際のリスクもそれなりに大きいでしょうけどね』
「………………。」
『………どうかしました?ご主人様』

篭城作戦。確かにそうすれば危険な参加者と会う可能性もグッと下がる。
危険な殺し合いの渦中に巻き込まれるリスクもほぼなくなる。
この広い施設の中で暫く人数が減るのを待つことが出来れば、かなり消耗が少ない状態でやりすごせるはずだ。
…だけど、私はそれに賛同出来なかった。
どうしても、あの娘のことを放っておくことが出来なかったから。
だから私は話すことにした。マエリベリー・ハーン―――メリーのことを。

「…ヨーヨーマッ。…その、何ていうか…この会場に、私の親友もいるんだ」
『ほう』
「その、マエリベリー・ハーンって言ってね?私はメリーって呼んでる。」
『…………』
「…同じサークルの親友で、たった二人で活動してるから…相棒みたいな感じでさ。」
『…………』
「一緒にいるのが、すっごく楽しくて…あの娘と一緒なら、どこでも最高に楽しい。
 あの娘ほど気の置けない親友はいないんだ。…だから、メリーが私と同じように…
 こんな悲惨な現実に怯えて、何処かで隠れてるかもしてないって考えたら…放っておけない。
 だから…その、…私……―――メリーを、探したい。」

私は、ヨーヨーマッに向けてはっきりとそう言った。
例え殺し合いという現実が避けられなくても、せめてあの娘に会いたい。
傍に行って、支えになってあげたい。こんな現実から守ってあげたい。
………私の、唯一無二の親友なんだから。放っておけるわけがない。
だから、…凄く怖いけど。怖くて仕方無いけど。こんな所で、うずくまってる場合じゃ――――







『ご主人様、それはあまりお勧めしませんよ』


しかし、ヨーヨーマッの返答は予想外の物だった。
「ヨーヨーマッならきっと手を貸してくれる」という確信が、何となくあった。
でも、そんな期待はすぐに蹴り飛ばされる。
驚いていた私を気に留めず、ヨーヨーマッは言葉を続ける。

43真空のメランコリー ◆n4C8df9rq6:2013/05/25(土) 00:50:59 ID:kO4gwGQw0


『この殺し合いのルールを理解していますよね?
 総勢90人の参加者によるデスゲーム。生き残れるのは―――たった一人。


淡々と紡がれる言葉。


『確かご主人様は…親友のメリー様を放っておけない。そう仰っていましたよね?』


ただ冷静に、有りのままに言葉を発する。


『お言葉ですが、止めておいた方がいいと思います。
 親友なのですから、ご主人様はあくまで彼女との思い出を守りたいのでしょうけど…
 それに直接触れ合えば触れ合う程、喪った時の絶望が肥大化するだけと見受けられます』


そして彼は、最終宣告のように私に告げる。


『――――もう一度言いますよ。このゲームで生き残れるのは一人だけです。
 残念ですが、メリー様は諦めた方が宜しいかと…』




「――――っ!!!」

―――淡々と『現実』を突きつけるような言葉に耐え切れず。
気がつけば私の身体は、勝手に動いていた。
目の前のヨーヨーマッの両肩を強引に掴んでいた。
多分私は、いつの間にか苛立っていたのだろう。
しかし彼は一切表情を変えることもなく、こちらを真っ直ぐに見ている。
それが余計に…腹正しかった。




『………………』

「……お勧めしないとか……諦めるとか……そう簡単に、言わないでよ」

『………………』

「――言ったでしょ、あの娘は私の親友なのよ!!」

『………………』

「ずっと一緒にロマンを追い続けてきた…かけがえのない相棒!!
 メリーのことを……そんな簡単に、諦めさせないでよ…っ!!」

声を荒らげながら、私は叫ぶ。いつの間にか…涙が溢れていた。
メリーを見捨てなければ生き残れないという、無惨な現実からか。
淡々と理屈だけを突き立てるヨーヨーマッの言葉に煮えくり返ったのか。
―――それとも、こんな選択をしなければならないこの殺し合いへの怒りと哀しみからか。
理由は自分でも……解らない。
だけど、とにかく…私はヨーヨーマッの言葉を受け入れたくなかった。
そして…ヨーヨーマッの返答が、ようやく返ってきた。






『成る程。殊勝な心掛けですね。それで、どうするのですか?ご主人様』
「……………………」

この瞬間、本気でキレそうになった。
拳を握り締めて軽く殴ってやろうか、なんてことまで思ってしまった。
だけど、私はそれを必死で抑え込んだ。
こんな所で怒っていたって無駄な労力を使うだけだ。
とにかく、私は…自分の意思をはっきりと言うこと。
必要なのはそれだけだ。

44真空のメランコリー ◆n4C8df9rq6:2013/05/25(土) 00:58:53 ID:kO4gwGQw0


「―――決まってるでしょ!メリーを探しに行く!
 生き残れるのは一人とか言うけど……私は諦めない!メリーと一緒に、絶対に生きて帰る!
 不思議や怪奇に真っ向から立ち向かう!…それが、秘封倶楽部なのよ!ただ震えて、怯えてるだけなんか…絶対に嫌!」

バッとその場から立ち上がり、涙を拭いながら私は威勢良く言った。
だけど本音を言えば…本当は凄く怖い。
死にたくないし、殺したくもない。メリーが死んじゃうことだって怖い。
こうやって前向きになることで、どうしようもない不安感を抑えている。
でも…本当は、それも無駄な努力なのかと考えると。
とにかく…怖くて、堪らない。もう私達は、既に闇に染まった沼へと身体が嵌っているのかもしれない。
それでも…それでも、どうにかなると信じたかった。
そうでもしないと、本当に何もかも終わってしまう気がしたから。
絶望に飲み込まれて、身動きが取れなくなってしまう気がしたから。
とにかく…少しでも前へ踏み出さなければ、何も始まらない!


「………ほら!そうと決まれば…行くわよ、ヨーヨーマッ!」
『…了解しましたァ。ご主人様の命令には従います』


ヨーヨーマッに一声かけて、私は牢屋から飛び出した。
私に追従するように、ヨーヨーマッもすぐに牢屋を出る。
行く宛などない。多分、ただの直感で探すことになる。
――何でもいい。とにかくメリーをすぐにでも見つけたかった。
淡い希望と不安を抱きながら、私の冒険は始まった。
その先に何が待ち受けるのかなど、今は知る由もない。



【C-2 GDS刑務所/深夜】

【宇佐見蓮子@秘封倶楽部】
[状態]:この状況への不安と恐怖(前向きになって強引に抑えている)、苛立ち、焦燥
[装備]:スタンドDISC「ヨーヨーマッ」@ジョジョ第6部
[道具]基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:メリーと一緒に此処から脱出する。
1:とにかくメリーに会いたい。死にたくないし怖いけど、希望を捨てたくはない。
2:殺し合いに乗ってない人に会いたい。
3:ヨーヨーマッが気に入らない。けど、ある程度は頼りにせざるを得ない。
[備考]
参戦時期及び蓮子がどこへ向かうのかは後の書き手さんにお任せします。

[スタンド「ヨーヨーマッ」について]
破壊力:C スピード:D 射程距離:A→C 持続力:A 精密動作性:D 成長性:C
①基本的には本体の命令に召使の如く従う従順なヤツです。
②本体に助言もしてくれますが、時には苦言を呈すこともあります。
③虐められると非常に喜びます。
④制限により射程距離はC(10~20m程度)に下がっています。
 それ以外のステータス及び物体を溶解させる唾液の能力はほぼ原作通りです。
⑤ほぼ不死身で再生能力もありますが、制限により徹底的に身体を破壊すれば一定時間消滅します。
 本体へのダメージは無く、消滅した際もおよそ1時間程度で復活します。
⑥自動操縦型のスタンドである為、本体の任意で操ることは不可です。
 その代り、ヨーヨーマッが自ら思考し、高い知能とスタンド能力で本体をサポートし守ってくれます。
 逆を言えば、「相手は本体に害を成す存在である」等とヨーヨーマッが判断すれば独断で排除に出ることも有り得ます。

45 ◆n4C8df9rq6:2013/05/25(土) 00:59:44 ID:kO4gwGQw0
以上で投下終了です。
指摘やツッコミ所、特にヨーヨーマッの能力について何かあればよろしくお願いします。

46 ◆kwnpscAh8Q:2013/05/25(土) 13:41:10 ID:pCu3cHqM0
予約を延長します

47 ◆YF//rpC0lk:2013/05/25(土) 14:17:01 ID:SE.njkOI0
>>◆n4C8df9rq6氏
乙です。少し疑問点があるので質問させていただきます。

●原作では、ヨーヨーマッは複数の監視下では従順でしたが監視が一人になったら唾液攻撃をしていました。
  このロワにおけるヨーヨーマッもそのような習性があるのでしょうか?

●具体的に蓮子は現在、GDS刑務所のどのあたりにいると想定していますか?
  女子監2階など大まかでかまいませんので書いていただけると分かりやすいです。

>>◆kwnpscAh8Q氏
了解です。期限は2013/06/01までです。

48 ◆YF//rpC0lk:2013/05/25(土) 19:05:06 ID:SE.njkOI0
◆YR7i2glCpA氏に連絡がございます。
予約分の期限は本日となっています。
延長なされる場合はその旨を報告してください。

49 ◆YR7i2glCpA:2013/05/25(土) 19:21:07 ID:be.k./e60
すいません、予約の延長を申請します。

50 ◆YF//rpC0lk:2013/05/25(土) 19:24:07 ID:SE.njkOI0
>>49
了解いたしました。
延長期限は2013/06/01です。

51 ◆n4C8df9rq6:2013/05/25(土) 22:25:14 ID:kO4gwGQw0
>>47
●「監視が一人になったら唾液攻撃する」という習性は無くなっています。
 此処でのヨーヨーマッはあくまで「本体に従順に従い、サポートすること」がメインのつもりです。

●蓮子の初期位置は囚人監房206(徐倫とグェスが収監されてた部屋)です。
 現在位置はGDS刑務所の女子監2階で大丈夫です。

52 ◆YF//rpC0lk:2013/05/26(日) 21:26:48 ID:AG9XhrGM0
予約分がないキャラクターの登場回が書き終りましたので、投下してみます。
なお、>>1でも予約なしで書くのはおかしいというのであれば、今回の投下は破棄します。


それでは、マエリベリー・ハーン、ウィル・A・ツェペリで投下します。

53夜の竹林を行く ◆YF//rpC0lk:2013/05/26(日) 21:27:29 ID:AG9XhrGM0

なんでこうなってしまったのか、何がどうなっているのか分からない。

蓮子に伊弉諾物質を見せた事は覚えてる。
サナトリウムで療養していたときに、夢を通って垣間見た地底世界。
それは神々が今も眠る別の日本の風景だったのだ。
二人で見つけようとしたのは、かつてあった神々の住まう風景だったんだ。
そう、見つけようとしたのは、こんな地獄じゃなかったはずなのに――――――



目が覚めたら、何処かも分からぬ見知らぬ場所。
そこで私は、荒木と太田と名乗る二人から「殺し合いゲーム」をしろと伝えられた。
それに穣子という女の子が詰め寄って行って、彼らに異議を申し立てようとしたら、彼女の頭が…………


そのときの光景を思い出したら、急に喉の奥の方から何か込み上げてくる感覚があった。
あの場では非現実的な感覚で麻痺していたけれど、今になって体が反応してしまったらしい。

私はその場に座り込んで、そのまま吐き出してしまった。
お昼にカフェで食べたフルーツパフェも、蓮子と一緒に飲んだハーブティも、全て嘔吐物として排出される。
吐瀉物の水っぽい音が、誰も居ない竹林の中へ消えていく。


ひとしきり吐いて、もう出てくるものもお腹からなくなってしまった。
そうしたら今度は目頭が熱くなり始めた。恐怖と寂しさとが無秩序に混じり合った感情が湧いてくる。

衛星トリフネに行ったときも、ウィングキャットに襲われた時は怖かった。
でもあの時は隣に蓮子がいた。私の無二の親友で、いつも引っ張っていく活動家。
それに夢を通して行った場所、夢を通ってしっかりと地球に戻ってこれた。

今回は違う。隣に親友はいない。帰れるかもわからない殺人ゲーム。怖くて怖くてしかたがない。

「蓮子、怖いよぉ……」

近くにいない親友の名を呟いても、だれも聞いている人なんていない。
震えるしかない。恐れるしかない。怖がるしかない。何もできない。
ただただ目から涙が零れ落ちていく。




「お嬢ちゃん、蹲ってどうかしたかね?」



不意に声の聞こえる方向に振り向いた。
そこには、派手な色彩のシルクハットを被った口髭の男性が立っていた。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

54夜の竹林を行く ◆YF//rpC0lk:2013/05/26(日) 21:27:46 ID:AG9XhrGM0

「あの、先ほどは情けない恰好で、その……」
「かまいやせんよ。お嬢ちゃんみたいな若い子が、いきなりこんな場所に放り込まれたら参って当然」

溢れていた涙も、今はもう流れてこない。泣いたことで、気持ちが幾分スッキリしたみたい。
でもその分、初対面の男性にさっきの姿を見られたという事実に、耳が赤くなるのを感じる。
『穴があったら入りたい』って言葉はこういう時に使うのかしらね。落とし穴でもいいから何処かにないかしら。


「レディ相手に自己紹介が遅れてしまったのぉ。わたしの名はウィル・A・ツェペリ。
 気軽にツェペリとでも呼んでおくれ」
「マエリベリー・ハーンです。でも友達からはメリーって呼ばれてます」
「メリー君か。君はこの殺し合いにはのるつもりはなさそうだが、これからどうするつもりかね?」
「…………」


ツェペリさんの問いに、私はすぐに答えられない。
確かに殺し合いなんて、まっぴらごめんだ。
今までそんな事したことないのに、いきなり出来るわけもない(今までにしたことがあるのは大問題だけれど)。

それに、人殺しをした血まみれの手じゃ、きっと蓮子も手を繋いでくれないだろう。
私だって、蓮子の手が血で汚れるようなことになったら、人生の全てを無碍にしてしまうかもしれない。

けれど、だからってあの荒木と太田と名乗る二人に立ち向かう事も出来ない。
境界の見える眼を持って、夢を通してトリフネにも地底にも行ったけれど、それは不思議を求めるため。
戦う力も方法も、普通の女子大生をしていた私が持ち合わせているはずもなく――――――



「えっと、その……」
「すぐには決められんか。まあ無理もない」


そう言いながらツェペリさんは、自身のデイパックの中をゴソゴソと探り出した。

「あったあった。ところでお嬢ちゃんは名簿って確認した?」
「あっ、そう言えば……」

55夜の竹林を行く ◆YF//rpC0lk:2013/05/26(日) 21:28:10 ID:AG9XhrGM0

さっきまではデイバックの中身を確認する余裕もなかったっけ。
ツェペリさんと一緒に名簿を確認しようと、私もデイパックを漁る。
程なく、二人とも名簿を発見した。デイパックの中身が殆ど紙だったのは気になるけれど……


名簿をめくり、中に書かれた名前を一つ一つ確認する。
殆どは知らない名前だったけれど、その中でも3つのよく知る名前を確認できた。
私の名前、さっき出会えたツェペリさんの名前、そして――――――




『宇佐見蓮子』




「蓮子……」
嫌な予感はしていたけれど、やっぱり蓮子も参加させられていたのだ。

一緒にデンデラ野に冥界探しをして、ヒロシゲ36号で共に東京へ旅行し、
夢を通してトリフネまで冒険に行って、伊弉諾物質で神様の世界を見ようと約束した
――私の親友

蓮子もこの狂ったゲームに参加させらていたんだ。



そう考えていたとき、不意にツェペリさんが呟いた。

56夜の竹林を行く ◆YF//rpC0lk:2013/05/26(日) 21:28:44 ID:AG9XhrGM0

「どういう事なんじゃ、これは?」


「どうかしたんですか?」
「名簿を見てみるんじゃ、メリー君。わたしと同じツェペリの姓を持った人物が二人も書かれておる」

そう言われて、名簿を再度確認する。
確かに、『シーザー・ツェペリ』『ジャイロ・ツェペリ』という名前が書かれている。
けれど、兄弟とか子供とかなら同じ姓になるんじゃ……


「わたしにも息子はいるが、シーザーもジャイロも聞いたことがないわい。
 それだけではないぞ。わたしの知り合いにジョジョ……ジョナサン・ジョースターがおるのだが」

ツェペリさんは名簿に書かれた『ジョナサン・ジョースター』という名前を指さしながら続ける。

「下の方を見てくれ。同じジョースターの姓を持った人物が書かれておる」

私の名簿でも確認すると、そこには『ジョセフ・ジョースター』と載っていた。

「同じ『ジョースター』……兄弟じゃないとすれば、一体誰なんでしょう」
「分からん。じゃがこれで当面の目的は出来たわい。
 ジョジョやスピードワゴン君だけでなく、彼らにも出会って何者なのか確認する必要があるのぉ」



そう言われて私はふと考える。
蓮子は無事なのかしら。ツェペリさんに出会える前の私みたいに、一人ぼっちなのかしら。
普段の行動的な彼女からは想像も出来ないけれど、怖くて震えてるのかもしれない。

そう思い始めたら、自然と言葉が口に出てきた。

57夜の竹林を行く ◆YF//rpC0lk:2013/05/26(日) 21:29:01 ID:AG9XhrGM0

「ツェペリさん、お願いがあるんです」
「急にどうしたんだね、メリー君?」

「私には、宇佐見蓮子って言う友達がいるんです。
 一緒に秘封倶楽部として活動してて、いつも私を引っ張ってくれる子で。
 けれど、あの子もこの殺し合いに参加させられてて、もしかしたら怖がってるかもしれなくて……
 私、蓮子に会いたいんです」
沈黙するツェペリさんに、私は話し続ける。
「けれど、私いままで戦った事なんてないから、怖くて怖くてしかたがないんです。
 だから、その……」






「分かった。一緒に探そう」
ツェペリさんの言葉に、一瞬茫然とした。

「メリー君の友達への思いは分かった。安心したまえ。わたしも蓮子君の事を探すのを手伝おう」
「ツェペリ、さん……」
「なぁに、先ほども言った通り、わたしも人を探さねばならんのでな。
 ついでにお嬢ちゃんの友達探しをするぐらい、わけないわい」

出会った時から、飄々として掴みどころがないと思っていた。
けど違った。この人は、まるで父親が子に接するように優しい人だったんだ。
そう思えたら、なんだかまた目頭が熱くなるのを感じた。

58夜の竹林を行く ◆YF//rpC0lk:2013/05/26(日) 21:29:20 ID:AG9XhrGM0

「それでは今後我々の方針として、先ずは人探しからじゃな
 ……とは言え、この竹林は一筋縄ではいかなそうじゃわい」
「そうですね。何処も同じに見えて、方向感覚が狂いそう」


夢の中で来たことはあるけれど、あれも夢から覚めて出て行ったようなものだし。
この竹林をどう抜け出せばいいのか、と考えていると、ツェペリさんはデイパックから1枚の紙を取り出した。


「しかし、アラキもオオタもわしらに紙ばかり持たせてどうするつもりなんじゃ?」
そう言いながらツェペリさんは紙を開く。
「サバイバル用品を渡すって言っていたはずなんですけれど、この紙に何が……」



紙の上には、大きな朱塗りの盃が『出現した』。
そうとしか形容できない。今までなかったものが紙の上に鎮座しているのだ。

「驚いたわい。紙を開くと物が出てくるのか。一体どうなっておるんじゃ!?」
「不思議……もしかして他の物も」

私も確認するために、自分のデイパックから紙を1枚取り出す。
開いてみれば、そこにはペットボトルに入った水が数本出てきた。

「もしかして、紙の中にサバイバル用品が入っているのかしら」
「うむ、そうとしか考えられん。だが、これなら嵩張らず重くもない。
 これは便利かもしれんのぉ」

そう言いつつ、ツェペリさんは二枚目の紙を開く。
中からは私と同じようにペットボトルが数本出てきた。

59夜の竹林を行く ◆YF//rpC0lk:2013/05/26(日) 21:29:32 ID:AG9XhrGM0

「水に杯か。これならこの竹林でも、人探しは出来そうじゃな」
「水に杯で? 一体どうするんですか?」
「まぁ、それは実演しながら教えよう」


そう言いながらツェペリさんはデイパックを背負い直す。
片手に大きな盃を持ってどうするのか。
と、ツェペリさんは私に尋ねてきた。



「ところで嬢ちゃん、この『ビン』の栓抜きって持ってなぁい?」

……ツェペリさんってペットボトル知らないのかしら?




【C-6 迷いの竹林/深夜】

【マエリベリー・ハーン@秘封倶楽部】
[状態]:健康、精神はだいぶ落ち着いている。
[装備]:なし
[道具]:不明支給品、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:蓮子と一緒に此処から脱出する。
1:蓮子、今会いに行くから待っててね。
2:ツェペリさんの仲間や謎の名前の人物も探そう。
3:……なんでツェペリさん、ペットボトルを知らないんだろう?
[備考]
参戦時期は少なくとも『伊弉諾物質』の後です。能力の制限は不明です。
これからツェペリとともに何処に向かうかは、皆様にお任せします。
ツェペリとジョナサン・ジョースター、ロバート・E・O・スピードワゴンの情報を共有しました。
ツェペリがペットボトルを知らない事、ツェペリやジョナサンと同じ苗字の人物もいる事に疑問を感じています。


【ウィル・A・ツェペリ@第一部 ファントムブラッド】
[状態]:健康
[装備]:星熊盃@東方地霊殿
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:ジョジョやスピードワゴンと出会い、主催者を倒す。
1:波紋レーダーで人のいる場所を探そう。
2:ジョジョ達だけでなく、メリーの友達も探そう。
3:……ところでこのビンどうやって開けるの?
[備考]
参戦時期はウィンドナイツロッドに到着した直後です。
メリーと宇佐見蓮子の情報を共有しました。
自分やジョナサンと同じ苗字の人物がいることに疑問を感じています。


『星熊盃』
星熊勇儀が持っている朱塗りの杯。一升入る大きさ。
鬼の名品であり、注いだ酒のランクを上げる(普通の酒が注いだ瞬間純米大吟醸になる等)不思議な盃。
ただし注いだ酒の質は時間経過と共に劣化するため、注いだら早く飲まないと損をする。
さすがに水の質を高める効果はないと思われる。

60 ◆YF//rpC0lk:2013/05/26(日) 21:30:28 ID:AG9XhrGM0
以上で投下を終了します。
ツッコミ所、質問等があればご自由にお願いします。

61 ◆n4C8df9rq6:2013/05/26(日) 21:54:54 ID:DBWbfmuo0
投下乙です!
拙作の蓮子登場話に続いて早速メリー登場話を書いて頂けるとはw
ツェペリさんの安定感は凄いなぁ…やっぱり彼がいるだけで非常に心強い
蓮子と同じように親友を捜しに行ったメリーには頑張ってほしい
今後に期待したいコンビ…!

あと予約に関しては今回はいいと思われますが
出来る限り宣言はしておいた方がいいと思いますね…
事前に予約されてないキャラから話のネタを考えることもあるでしょうし

62 ◆YF//rpC0lk:2013/05/27(月) 20:21:38 ID:9IQiV1DI0
>>61
了解です。以降宣言をつけます。

63 ◆n4C8df9rq6:2013/05/28(火) 18:57:02 ID:aAuNUhVA0
広瀬康一、エンリコ・プッチ、古明地こいし
予約します

64 ◆n4C8df9rq6:2013/05/29(水) 04:46:05 ID:kGeqSxI20
すみません、どうも話に組み込めそうにないので広瀬康一を予約から外します…

65 ◆n4C8df9rq6:2013/05/29(水) 09:26:36 ID:kGeqSxI20
ちょっと今更感の漂う質問ですが、ランダムアイテムって一つだけなのですか?
いや、ちょっと妹紅の所で断り無く二つ出してしまったので…

66 ◆YF//rpC0lk:2013/05/29(水) 20:09:17 ID:xrkJVLrs0
>>65
ジョジョのアイテムおよび東方のアイテムを出す場合は一人一つですかね
ただ、それに加えて現実のアイテム一つは可能としています

具体的には
・スタンドDISC(ジョジョ) + タバコ(現実) ←OK
・ミニ八卦路(東方) + タバコ(現実) ←OK
・スタンドDISC(ジョジョ) + ミニ八卦路(東方) ← NG

と言う具合です

67 ◆n4C8df9rq6:2013/05/29(水) 22:27:12 ID:kGeqSxI20
>>66
了解です、回答ありがとうございました。

68 ◆n4C8df9rq6:2013/05/30(木) 15:49:51 ID:Wu2bsmso0
エンリコ・プッチ、古明地こいし
投下します

69硝子に映り込んだ夢を ◆n4C8df9rq6:2013/05/30(木) 15:54:17 ID:Wu2bsmso0


「人間と妖怪は手を取り合うことが出来る」
『あの人』がいつも言っていた言葉だ。

私は博麗の巫女や白黒の魔法使いと出会ってから、頻繁に地上に顔を出すようになった。
とは言っても、いつもふらふら、あちこちをうろつくだけ。
無意識を操る程度の能力を使って、誰にも気付かれずに散歩する。
時折…というかしょっちゅうお姉ちゃんから心配されるけど。
のんびり、のびのびとしていて。そんな毎日も結構楽しかった。
心を閉ざしてからも、楽しめることはあるんだなぁと。

そんな私にも、最近は地上で変わったことがあった。
とある尼僧さんから、お寺に来ないかって誘われた。
名前は聖白蓮って言うらしくて、何となく私はその人に着いて行ってみたんだ。
『あの人』はすごく優しくて、暖かい人だった。
人間だろうと。そうじゃなかろうと。
等しく手を差し伸べて、力になってあげる人だった。
最初は不思議だったし、何でそこまでするのか解らなかったけど…
気がつけば、私もなんとなく『あの人』に惹かれていた。
聖の教えを信じてみるのも悪くないかなって、思っていた。


――――ねえ。人間だろうと妖怪だろうと、みんな解りあえるんだよね?
――――たとえこの世界が、血で血を拭うような…殺し合いの場でも。
――――お互いに、手を取り合えるのかな?

70硝子に映り込んだ夢を ◆n4C8df9rq6:2013/05/30(木) 15:54:46 ID:Wu2bsmso0






周囲一体に広がるのは、だだっ広い向日葵畑。
時折冷たい風が靡き、向日葵達は静かに傾くように揺れ動く。
此処が殺し合いの場でなければ…のんびりと眺めていたくなるような美しさだ。
そんな花畑の中。大の字になって、仰向けになって倒れているのは…
黄緑色の髪を持つ、一人の少女。
地霊殿の主、古明地さとりの妹『古明地こいし』。現在は命蓮寺の在家信者。
彼女は今、なんとなく…空をぼーっと眺めて、考え事をしたかったのだ。


「…お姉ちゃん…、聖…」


ぽつりと漏れた一言。
記憶の底から浮かぶ、地霊殿のみんなのこと。命蓮寺のみんなのこと。聖のこと。
―――そして…お姉ちゃんのこと。

夜空のお星様を眺めながら…私は、迷っていた。
この状況で、どうすればいいのか。何をすればいいのか。
私にはまだ、解らなかった。
支給品の刃物を手に取った時、殺し合いというものを実感した。
そして名簿には見知った名前が幾つもある。
会いたい。出来ることならば、今すぐ会いたい。
今は、怖くてたまらない。あの二人の男が、怖い。
あんな恐ろしい人間達を前に、ちっぽけな私に何が出来るのか。
不安で、怖くて仕方がない。
――どうしようもない恐怖が抑えられない。誰か、傍にいてほしかった。

『孤独』で在り続けた私が、『孤独であること』に心細さを感じた瞬間。
なんでだろう。今まではいつも独りでも、何とも思わなかったのに。
こんな状況だから?お姉ちゃんやみんなのことはやっぱり頼りに思ってるから?
…わかんない。でも、とにかく…今の私は…なんだか、寂しい気持ち。



最近の私は…なんとなく変だと思う。
さっきの山の神様が死んじゃった時だって…私は。
怖い、ってだけじゃなくて。何となく、哀しい気持ちになった。
前の私なら…きっと「どうでもいい」って思ってたと思う。
でも、今は違う。あそこで山の神様が死んじゃって。
哀しい…って、思ってる。

71硝子に映り込んだ夢を ◆n4C8df9rq6:2013/05/30(木) 15:55:13 ID:Wu2bsmso0

…たぶん、聖が言っていたからかな?
命蓮寺の信者になってから、私は聖の教えを何度も聞いた。

殺生は良くないって。人が死ぬことや、殺し殺されることは…とても哀しいことだって。
聖はその上で、それは妖怪でも同じ…って。
妖怪が死ぬことも、彼らが迫害や偏見の末で命を落とすことも。
それは、とても哀しいことだって。
でも人間と妖怪は解りあうことが出来る。
幻想郷の在り方のように、受け入れることが出来る。
お互いを理解し、共に生きることが出来る。
―――人も妖怪も平等に、手を取り合うことが出来るって。
聖は、そう言っていたんだ。
正直言うと、私にはよく解らなかった。


「私達」の能力は周りから疎まれていた。『心を読む』と言う能力を、忌み嫌われていた。
周囲の人達は、心を読める私達を自然に遠ざけていた。
人間だろうと、妖怪だろうと…関係なく。地霊殿に住むようになるまでは、この有様。
だから私は耐え切れなくなって、この『第三の目』を閉じたんだ。
もう二度と誰かに嫌われないようにするために。
私は人間や妖怪に避けられて、こうなったんだ。

人間も妖怪も、本質は同じだって思う。
それは『お互い解りあえる』とか、『どちらにも想う心がある』とか、そうゆう意味じゃない。


結局は…自分達に理解できないものや、都合の悪いものを。
疎んで、忌み嫌うだけの。狡賢くって、意地悪な存在だっていう意味。


そう思っていた私には、人間と妖怪が解りあえるだなんて全く思っていなかった。


でも、聖の言うことは凄いと思う。
妖怪を守ったことで人間から迫害されて、封印までされたのに。
復活してからも…妖怪だけじゃなくて、人間にも手を差し伸べて。
そうやって今もああして、妙蓮寺の住職として誰かの為にがんばっている。
人間と、妖怪。どちらの為にも精一杯がんばっている。
…ほんとに、すごいって思ってる。嫉妬するくらいに…輝かしい。
たぶん私は、聖を真っ直ぐに見ることが出来ない。実際そうだ。

とはいえ、私は聖のこと自体は大好きなんだろうって。
そう思うんだ。…まぁ、お姉ちゃんほどじゃないけど。
すごく優しくて、心を閉ざした私にも理解を示してくれて。
本当に、聖人君主ってああゆう人のことを言うんだと思う。
…でも、どうしても直視は出来ない。
聖は言うなれば光だ。『心の瞳』を閉ざした私には、あの人は眩しすぎる。
あんなに綺麗なヒトになることは出来ないんだろうなぁと。
私にはなんとなく理解出来る。

72硝子に映り込んだ夢を ◆n4C8df9rq6:2013/05/30(木) 15:55:49 ID:Wu2bsmso0



だけど。私は、ちょっとずつ変わってるのかもしれないって…何となく思ってたんだ。
あの寺の信者になってから、度々行事とかの手伝いに言って。
…まぁ、まだまだ新入りだし雑務も多いけども。
みんなと一緒に頑張って。聖から教えを聞いたりして。
地霊殿のペットたち以外で、初めて友達や仲間が出来たような。
そんな気持ちだった。あの人達は、信じられる人達だった。



心を閉ざした私にも、信じられる。
命蓮寺のみんながそうゆう人達だったからこそ。
私はほんの少しでも、『人も妖怪も平等に生きられる世界』を信じてみようって…思えるようになったんだ。
私も、聖のような人になれるのかなって。





でも、この世界では…どうなんだろう?
平和も平等も無く、あるのはただの絶望だけ。
人間も妖怪も…死ぬのが怖くて、殺し合っちゃうのかな?
私も、生きる為に誰かを平気で殺しちゃうのかな?
そうすれば、多分。
お姉ちゃんや聖は、悲しむと思う。
だけど。―――だったらどうする?
死ぬのは怖い。お姉ちゃんや聖たちを裏切りたくもない。
でも、抵抗なんて出来る?
あの恐ろしい人間二人を前に。
逆らえばすぐに殺されるだけ。
命の手綱を握り締められた私達に、何が出来る?
…………解らない。
今はただ、解らない。


そうして、みんな恐怖に引きずり込まれて。
その手を血に染めてしまうのかもしれない。
こんな世界でも…みんなは、解りあえるのかな?






「…そんな所で寝転がって、どうしたんだい?お嬢さん」


私の思考に割り込むノイズのように。
向日葵を掻き分ける音と共に、どこからか唐突に声が聞こえてきた。
ふと、仰向けに倒れたまま顔をそちらの方へと向けた―――



◆◆◆◆◆◆

73硝子に映り込んだ夢を ◆n4C8df9rq6:2013/05/30(木) 15:56:51 ID:Wu2bsmso0


少しだけ時間を遡る。


「面倒なことになったな…」
花畑の中を歩きながら、ぼそりと私はつぶやく。
真っ先に私が抱いたのは、そんな感情。
予め言っておくと、私の名は『エンリコ・プッチ』。神父を職業としている。
私はあの緑色の赤ん坊と融合し、『天国へ行く方法』を実行すべく刑務所を出た。
あの時、私の首筋に生まれたアザは確かに共鳴していた。運命に導かれていた。
私の傍に、『彼』―――『DIO』の血縁が存在していることを認識していた。
そのまま私は導かれ、彼らと出会う……はずだったのだ。

気がついた時には、私はスデにあの場にいた。
東洋人の2人組が「殺し合いをしろ」と私達に言ってきた。
最初は悪い冗談かと思ったが…主催者に食って掛かったあの少女が虫を捻り潰すように殺されたのを見て、この殺し合いが本物だということを確信した。
やれやれ…厄介な催しに巻き込まれてしまったものだ。
私はこんなことをしている場合じゃあない。天国へ行く方法を実行しなければならないのだ。
さっさと此処から抜け出したい所なのだが…
名簿を確認し、私はとある名前の存在に気付いた。


―――ディオ・ブランドー。DIOの名を、名簿で確認したのだ。


馬鹿な。彼は数十年前に死んだはずだ。
何故彼の名が名簿に?それだけではない。仮死状態のはずの空条承太郎の名も載っているのだ。
そして名簿に見受けられる幾つかの『ジョースター』の名。
あの一族も、この場に何人か居ると言う。数名は聞いたことも無い名前だが…
どうゆうことなんだ?DIOが生きていると言うのか?いや、そもそも何故空条承太郎がいる?
私が此処まで「連れてこられた」記憶が無いということと言い、不可解な現象が多すぎる。
主催者達は、やはり何らかのスタンド能力を持っているのだろうか…?

推測と思考を重ねながら、向日葵畑を掻き分けるように進んでいた時だった。
向日葵の隙間から、一つの影が見えたのだ。
仰向けになり、空を眺めている…一つの影が。私の場所から少し離れた地点にいるのが解る。
暗くてよく見えないが…どうやら少女のようか?
…ともかく、何かしらの情報が得られるかもしれん。接触をしてみるか。

そうして、私は少女の方へと歩み寄って行く――――



「…そんな所で寝転がって、どうしたんだい?お嬢さん」

74硝子に映り込んだ夢を ◆n4C8df9rq6:2013/05/30(木) 15:57:30 ID:Wu2bsmso0






「……えっと……神父、様?なのかな…?」

私の姿を見て、仰向けに倒れていた少女はぽかんとしたように声を上げる。
ゆっくりと上半身だけ起こして、きょとんと私の出で立ちを眺めている。
なんだか見知らぬものを初めて目にしたような、そんな感じの反応だ。

「ああ、その通りさ。私は神父をやっていてね。
 …君は、一人で此処で寝転がっていたのかい?あまり良いとは言えない行為だね。
 好戦的な参加者に見つかれば危険だし、うっかり風邪を引いてしまうかもしれないぞ?」

ぼんやりとこちらを眺めている少女に対し、私はあくまで柔和に接する。
見た所、随分と幼い容姿をしている。ただ単に巻き込まれただけの哀れな一般人かもしれないが…
DIOや空条親子、そしてこの私など…名簿にはスタンド使いの名が数多く見受けられるのだ。
一応、彼女から話は聞き出しておきたい。

「別に、大丈夫だよ。私妖怪だし、人間みたいにヤワじゃないよ」

……妖怪?
聞き慣れぬ言葉に、私の心の中に疑問符が生まれた。
いや、正確には少し前にその言葉は聞いた。あの荒木という男が口に出していたことだ。
奴は『妖怪』という言葉を口にしていた。さも当然の如くこの場にいるかのように。
最初の見せしめの少女は『神の一柱』であるらしいが……
奴らの言っていることがどこまで真実かは解らない。
しかしこの少女は、自らを妖怪だとはっきり名乗っている。
吸血鬼である『彼』が存在する以上、妖怪がいたって不思議ではないかもしれない。
彼女の言葉は、真実なのだろうか?
ほんの少しだけ、彼女に興味が湧いた時だった。

「ねぇ、神父様」
「……何かな?」



「ちょっと、お話したいんだけれど」


◆◆◆◆◆◆

75硝子に映り込んだ夢を ◆n4C8df9rq6:2013/05/30(木) 16:00:25 ID:Wu2bsmso0



私の前に現れたのは、神父様だった。
本物は初めて見たけど…なんとなく、お洋服から神父の人だってことは解った。
神父って言えば、尼僧の聖と同じようなものだよね?
神仏を敬って、人々に教えを説くような。そうゆう感じだよね。
―――人々のために力になってあげるような、そんな存在だよね?
ちょっと不安だけど、そう考えるとなんとなく信じられる気がしてきた。
なんとなく、だけどね。だから、脈絡も無いけど…
この人にも、聞いてみたくなったんだ。






「人間と妖怪って、本当の意味で解りあえると思う?」

聖ならはっきりと「ええ、解りあえます」と肯定する質問だ。
…同じ聖職者の神父様は、なんて答えるんだろう?
少しばかり気になった。この人が何を言うのかを知りたかった。
かつては人からも妖怪からも嫌われて、心を閉ざした私。
でも、色々と変わって…聖と出会ってから、このことが気になって仕方無かった。



神父様は、ちょっとだけ咀嚼するように暫く黙っていた。
そして、ゆっくりと口を開いた。

「…そう考えるに至るようになったきっかけを、教えてはくれないか?」
「…うん」



神父様に問われて、私は全てを話した。
自分と姉が『心を読む力』で人間、妖怪問わず嫌われていたことを。
そのことがきっかけで自分が心を閉ざし、無意識を操る能力を手に入れたことを。
他人と、姉とすら距離を置いていたことを。
…そんな中、二人の人間と戦ってから少しずつ変わっていったことを。
姉やペットと少しずつ関わるようになり始めたことを。
―――そして、聖白蓮と出会ったことを。
聖との出会いで、私は教えを説かれたんだ。
「人間も妖怪も互いに解りあえる」って。聖は、地霊殿のみんなと同じくらいに信じられる。
でも。…このことは、本当なのかなって。
人間も妖怪も、私達を嫌って疎んでいたように…本当は醜いのが本質なんじゃないかって。
こんな殺し合いの場では、手を取り合うことも忘れて殺し合うんじゃないかって。
そんな思いがよぎっていたということを、私は神父様に吐き出したんだ。



何故か知らないけど、さっきまでの不安は殆どなくなって。
不思議な安心感があった。…質問を切り出した時点で、『無意識』に神父様のことを信用していたのだろうか。
そして神父様は、きっぱりと答えてくれた。




「そうだな…」

「………」

「―――私は、『解りあえる』と思う。」

76硝子に映り込んだ夢を ◆n4C8df9rq6:2013/05/30(木) 16:01:50 ID:Wu2bsmso0
それは慰めの言葉とか、気を使ってくれての発言とか。
そうゆうのじゃなくて。
「そうであって当然だ」と言わんばかりの、確かな確信を瞳に宿していたのが解った。
少しばかり驚いていた私をよそに、神父様は言葉を紡ぐ。



「私には、DIOという親友がいたんだ」
「…DIO?」
「当初は知らなかったのだけどね。彼は、吸血鬼だった」
「…………。」
「―――彼は私の人生に大きな影響を与えてくれた。
 人は生涯に何人の人と出会うか。生き方に影響を与えてくれる人物とは、一体どれくらい出会うのだろうか?
 私にとってのそれは、吸血鬼であるDIOだった。
 彼がいなければ今の私はいなかっただろう、とさえ思う。そうゆう意味では恩人だ。
 …そして、彼は無二の親友だったんだ。彼ほど話していて落ち着く者はいなかった」


語り続ける神父様の表情や言葉は、私にはとても穏やかに見えた。
昔の友達のことを話しているんだから、きっと当たり前なんだろうけど。
懐かしむような思いと共に、過去を話してくれている。



「吸血鬼である彼も妖怪の定義に当てはめるのならば…
 私は胸を張って『彼と解りあえた』と答えられる。
 そう。人であろうと、そうでなかろうと。何かを願い、想う心があれば。
 私は…種族の壁を乗り越え…誰とでも解りあえると思うよ。
 現に、君と聖という人物は『解りあえた』。…違うかい?それが何よりの証拠さ。」



穏やかな笑みを浮かべながら、神父様は語りかけてくれた。
紡ぎだされるその言葉は、暖かくて。優しくて。
私は、自然に聞き入ってしまっていた。
心の中で、感銘を受けていたんだ。

「…神父様…。」
「君の想いは尤もだ。心ある者は、必ず誰かを疎み妬んでしまう…
 だが、あくまで心ある者の本質はそうではないと思う。
 私とDIOのように…互いを知れば、必ず心を通わせることが出来る。私はそう信じてるよ
 ―――君も同じだ。皆と同じように、誰かと手を取り合えるんだ。」

全てを話して、こうして諭してもらって…私はすぐに気付いた。
この人は…何となくだけど、雰囲気が聖に似ているって思った。

こんなに真面目に、私の話を聞いてもらえた。
こんなにも真摯に、諭してくれた。

初めて会った時の聖と同じだ。
私の中で、「この人は信じられる」っていう気がしてきた。
そう思ってしまえるような、優しいものがあった。


―――神父様は、いい人なんだろうって。

77硝子に映り込んだ夢を ◆n4C8df9rq6:2013/05/30(木) 16:05:07 ID:Wu2bsmso0
◆◆◆◆◆◆


彼女は、感動したような、心酔したような瞳で私を見上げていた。
―――今まで、数え切れないほど見てきた『表情』だ。
他者の懺悔や告白に耳を傾け、神父としての教えを説く。職業柄、こうゆう行いには慣れている。
あの刑務所で働くようになってから、常にやってきたことだ。
囚人達からもこうやって信頼や仰望の眼差しで見られてきた。
まぁ、さほど興味は無かったが…神父としての職務を全う出来ているのはいいことなのだろう。

かつての私ならばこうして誰かの力になれたことを喜ぶのだろう。
しかし、生憎だが今の私からすればこうして信用された所であまり心に響くものは無い。
他者を神の教えの下に諭すことは出来ても、真に救済することは出来ないからだ。
本当の意味で人を救うのは『天国』―――『未来への覚悟』だ。
口先の言葉だけで人は救われないし、変わることは出来ない。大切なのは確固たる意志と行動。
私はそれらを握り締め『天国』を目指しているのだ。

それに…彼らと人間が解りあえるかどうかなど、知ったことではない。
私とDIOには『引力』があったからこそ親友になれたのだ。

彼はそこいらの有象無象の妖怪“バケモノ”共とは違う。
人間は神の下に平等だ。だがあくまで平等なのは「人間」。
DIOのような崇高な存在以外の「人ならざるもの」は、所詮神に淘汰された悪しき種族に過ぎないのだ。
そんな種族と人間が解りあうなど、考えようとも思わない。

とはいえ、彼女の話そのものは興味深い。
他人の心を読む力を持っていたことで、人間からも妖怪から疎まれたという姉妹。
嫌われることに耐え切れず、己の心を閉ざした彼女。
そんな君と聖が出会ったことも、そうゆう疑問を抱くようになったのも。
それは一つの引力なのかもしれない。そう考えると面白いものだ。
だが、人間と妖怪が手を取り合えるかという話に関しては別だ。
解りあえるのは『引力によって導かれた者同士』だと私は思う。

とはいえ、この少女の信用を勝ち取れたならばそれはそれで良いことだ。
殺し合いに乗るかは兎も角、保身の為に使うことは出来るかもしれない。
『無意識を操る能力』…暗殺には最適かもしれないな。十分に利用価値がある。
まぁ…もう暫くは様子見と洒落込むつもりだけどな。
彼女の扱いをどうするかは、これから考えていけばいい。


きっと『手駒』以上の価値は無いであろう。
だが安心するといい。どんな悲惨な運命が待ち受けようと、覚悟を決めれば幸福になれるのだから。


◆◆◆◆◆◆

78硝子に映り込んだ夢を ◆n4C8df9rq6:2013/05/30(木) 16:06:25 ID:Wu2bsmso0


「……ところで、こいし。君は名簿を確認したかな?」
「うん。ちょっと前に一応見たよ。…私の知ってる名前が、何人もいた」

こいしの返答を聞き、神父は内心「やはり」と思っていた。
DIOに、空条親子、エルメェス・コステロ、フー・ファイターズ、ウェザー・リポート…
名簿には神父にとっても見覚えのある名前が幾つか見受けられたのだ。
そしてこいしにも姉や聖を始めとした親しき者たちの名が名簿に見受けられる、と…
どうやらあの主催者、幾つかの「関係者同士のグループ」をゲームに巻き込んでいるらしい。
確かに、全く見知らぬ者同士で殺し合いをさせるよりはそちらの方がいいのだろう。
神父やジョースター、こいしや地霊殿の住民…など。
因縁のある者同士の対立、親しき関係者同士の潰し合い。彼らが望んでいるのはそれかもしれない。
あくまで推測に過ぎないが…これが当たっているとすれば、奴らは紛うことなき悪趣味な連中だ。

「私も、この場に知り合い…いや。さっき話した、親友のDIOがいるらしいんだ。私は、彼を捜したい」
「…ねぇ、神父様。私も…着いていっていい?」
「ああ、構わないよ。独りでは心細いだろうからね。…君の知り合いにも、会えたらいいな。」
「うん。どうすればいいのか解らないけど…とにかく、みんなには会いたい。
 でも、こんな殺し合いの場だし…独りだとどうしても不安だから…とりあえず、神父様に着いていきたいんだ」

妖怪と言えど、流石にこのような異常な状況下では不安感を抱く。
先程までのこいしの瞳は無感情に見えたが、神父に諭してもらったことで少しだけ光が籠ってはいるが…
その表情を見る限りでは、あくまで不安そのものは残っている様子。
殺し合いという状況において、独りでいることの恐怖を『無意識』に抱いていたのだ。
自分が信じられる、誰かの暖かさを求めていた。

「…解った、君の知り合いと会う時まで…この私『エンリコ・プッチ』が君の支えになろう。安心してくれ。
 ――では、そろそろ行くとしようかな?」
「…うん!」

神父の呼びかけと共に、こいしは立ち上がってすたすたと着いてくる。
太陽が並ぶような向日葵畑の中を、神父と少女は共に進んでいく。
――後ろから着いてくる少女を尻目に、神父は少しばかり思慮をしていた。







(…さて。あの少女…少なくとも、当分は私のことを信用するだろう。
 どこまで『使える』かはまだ解らないが、まぁ同行させながらそれを見定めていけばいい。
 もしもの時は、私のスタンド『ホワイトスネイク』を使わざるを得ないかもしれないが…
 その時はその時だ…―――ともかく、今は早急にDIOと会いたい。)


彼の脳裏に浮かぶのは、数十年前に死んだ親友のこと。
邪悪の化身『ディオ・ブランドー』。
彼と再会し、共に天国を目指せるということがあれば…それこそ最上だ。
彼と共に理想を追えるだなんて、夢のような話だ。
知らず知らずのうちに、神父は内心高揚していた。
こいしのことなどさほど気にかけてはいない。今はとにかく…親友と会いたい。
―――向日葵畑を進みながら、彼はただ…そう思っていたのだった。

79硝子に映り込んだ夢を ◆n4C8df9rq6:2013/05/30(木) 16:10:53 ID:Wu2bsmso0




【E-6 太陽の畑/深夜】

【古明地こいし@東方地霊殿】
[状態]:健康、主催者への恐怖
[装備]:なし
[道具]:不明支給品、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:死にたくないけど…私はどうするべきなんだろう…?
1:今は神父様に着いていこう。神父様は信じられそうだ。
2:地霊殿や命蓮寺のみんな、特にお姉ちゃんや聖に会いたい。
3:DIOってどんな人だろう…?
[備考]
※参戦時期は神霊廟以降、命蓮寺の在家信者となった後です。
※無意識を操る程度の能力は制限され弱体化しています。
気配を消すことは出来ますが、相手との距離が近づけば近づくほど勘付かれやすくなります。
また、あくまで「気配を消す」のみです。こいしの姿を視認することは可能です。

【エンリコ・プッチ@第6部 ストーンオーシャン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:不明支給品、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:DIOを探す。『天国』へ到達する。
1:さて、どこへ向かおうか?地図には「DIOの館」という場所が記載されていたのが気になるが…
2:あくまで保身を優先。殺し合いに乗るかはまだ保留。
3:ジョースターの血統は必ず始末する。
4:古明地こいしの価値を見定める。場合によっては利用する。
5:主催者の正体や幻想郷について気になる。
[備考]
※参戦時期はGDS刑務所を去り、運命に導かれDIOの息子達と遭遇する直前です。
※緑色の赤ん坊と融合している『ザ・ニュー神父』です。首筋に星型のアザがあります。
星型のアザの共鳴で、同じアザを持つ者の気配や居場所を大まかに察知出来ます。
※古明地こいしの経歴を聞き、地霊殿や命蓮寺の住民について大まかに知りました。

80 ◆n4C8df9rq6:2013/05/30(木) 16:13:32 ID:Wu2bsmso0
投下終了です。
指摘やツッコミがあればお願いします。

81 ◆n4C8df9rq6:2013/05/30(木) 18:28:25 ID:Wu2bsmso0
すみません、こいしの状態表の表記をミスしておりましたorz

[道具]:ナランチャのナイフ@ジョジョ第5部、基本支給品

に変更でお願いします…

82名無しさん:2013/05/30(木) 23:18:50 ID:mmrAaFAEO
投下乙です。

さすが神父、好かれ方が分かってる。

83 ◆YF//rpC0lk:2013/05/30(木) 23:56:14 ID:peMfDyqc0
投下乙です

白蓮さんのこと信頼しているこいしちゃんかわいい!
けどその神父はアカン

そして神父は既に融合後ということは
ロワ内で一波乱ありそうな予感

84 ◆YR7i2glCpA:2013/06/01(土) 16:13:14 ID:rF45eI6w0
遅くなりましたが投下します。

85おてんば少女、出会う ◆YR7i2glCpA:2013/06/01(土) 16:14:04 ID:rF45eI6w0
「うーん……」
ここは地図で言うところのE−6にある、タイガーバームガーデン。
ギンギンの色彩で彩られた彫像が所狭しと並ぶ、悪趣味にも見れるその場所に、一人の少女が腕組みをしながら座っていた。
青を基調にした、ゆったりとしたワンピースを身にまとい、水色のフワフワした髪の毛にまだ幼さが残ったあどけない顔立ち。
背中から生えている六本の羽根は、まるで氷柱のようだ。
彼女の名前はチルノ。
『冷気を操る程度の能力』を持つ、幻想郷最強の妖精だった。
そんな彼女は、このタイガーバームガーデンで彼女なりに何が起こったのかを、必死に考えていた。



チルノ自身、何故自分が今この場にいるのか、どうも思い出せないでいた。
記憶をさかのぼってみても、幻想郷でカエルを凍らせて遊んだり、霊夢や魔理沙に突っかかっては返り討ちにあったりと言った記憶が浮かぶだけで、なぜあの場にいたのかが思いだせないでいた。
無論、そこにいた荒木、太田といった男もチルノは今まで見たことも聞いたこともない。
そしてその先の記憶を呼び起こそうとしたのだが……

「……うえ、思い出すんじゃなかった。」

チルノの脳内にリピート再生されるのは、秋穣子の無残な死。
死という現象は幻想郷においてはそんなに珍しいものではないが、ああいう風に『殺される』件については、さすがのチルノといえど耐性がそこまであるわけではなかった。

「うーん……うーん……どうしよう……」

吐き気にも似たよく分からない未知の感情を抱えながら、チルノは必死に考える。
普段からバカと称される彼女であるが、それでもチルノは特に理由もなく自らの意思で死に急ぐようなバカではない。
だがその他思考力洞察力がほんの少し――ほんの少し、足りないだけなのだ。
それでも、チルノは必死に考える。
「……殺しあえって言われても、そう言うのはあたいの趣味じゃないし……でも下手なことしたらさっきみたいに頭がパーンってなっちゃうし……あーもうどうしたらいいのよ本当にもう!!」
まるで子供が癇癪を起こすように、近くにあった彫像の一つを蹴飛ばしても、チルノよりも大きい彫像はぐらりと揺れる事もない。
それどころか脚にしびれるような痛みすら覚え、チルノの機嫌はますます悪くなっていく。



と、その時チルノは何者かがやってくる気配を感じた。

86おてんば少女、出会う ◆YR7i2glCpA:2013/06/01(土) 16:14:43 ID:rF45eI6w0



(……これは、一体どういうことだ……?)
ジャン=ピエール=ポルナレフは現状にただただ困惑していた。
自分は先程まで、ジョースター一行を倒すために香港にいたはずなのに。
ジョースター一行の一人、モハメド・アヴドゥルを倒すために店から出て、決闘の場をタイガーバームガーデンに選び、いざ決闘を始めようとしていたはずなのに。

気がついたら、殺し合いをしろと荒木と名乗る謎の男に言われていた。

そして、それに反抗した少女の頭が破裂し、荒木から殺し合いの説明を受けたと思ったら、またタイガーバームガーデンにいた。

自分でも何が起こっているのかさっぱり分からない。
あの荒木という男と、彼と一緒にいた太田という男は何者なのか?
対峙していたはずのジョースター一行はどこに行ったのか?
ジョースター一行と決闘しようとしていた時には燦々と日が照っていたはずなのに、何故今は月が出ているのか?
――――何が何やら、さっぱりわからない。

(これは、一体……)

いくら考えても、どういうわけなのかがさっぱり分からない。
ただポルナレフに分かるのは、何やらとんでもないことに巻き込まれたという事だけだった。

(……む?)

その時、ポルナレフは彫像の森の中に何者かの気配を感じた。
さてはジョースター一行か、そう思ったポルナレフは意識を集中させ直すと気配の方へと向き直った。

「おい、そこに隠れている奴、出てこい。」
「隠れてなんかないわよ!!」

その声と同時に飛び出てきた少女の姿に、ポルナレフは思わず目を丸くした。

かなり小さい、見た目には愛らしいながらもその顔には不機嫌さをこれでもかと言わんばかりにため込んだその姿はまさしく少女、いや幼女と言っても差し支えない。
てっきりジョースター一行の誰かと思ったポルナレフは拍子抜けしてしまった。

87おてんば少女、出会う ◆YR7i2glCpA:2013/06/01(土) 16:15:04 ID:rF45eI6w0



「……なんだ、君は?」
「あたい?あたいはチルノ!げんそーきょーさいきょーの妖精だよ!!そう言うあんたはいったいなんなの?」
「……確かに、名乗りも上げずに名前を聞くのはいささか無礼だったな、私は……」
「あーもうめんどくさいから、ホウキ頭で良いよね?」
「ほ、ホウキ……まあ良い、チルノとやら、ここに誰か来はしなかったか?少しばかり因縁のある相手を探しているんだがね……」
「ううん、あたいはここにきてからあんた以外誰にも会ってないわよ。」
「そうか……だとするとジョースター達め、どこにいるんだ……」

チルノと名乗る少女の心ない言葉に若干傷つきながらも、どうやらこのタイガーバームガーデンにはジョースター一行はいないと判断したポルナレフは、その場から立ち去ろうとした。

「ちょっとちょっと!!何しれっと帰ろうとしてんのよ!!」

しかし、そのポルナレフをチルノが不機嫌そうに呼びとめた。
ポルナレフが振りかえると、そこにいたチルノは両頬を膨らませた怒りの形相でポルナレフをキッと睨みつけていた。
「ム?」
「ム?じゃないわよ!!あんた一体何しにここに来たのよ!?」
「……さっきも言っただろう。私は人を探している、と。そしてその相手はここにはいないようだから、別の所を探しに行く……それが何か?」
「むむむむ………」

現に、チルノがポルナレフを引きとめる理由などそこには一片も存在していない。
それでも、非常に機嫌の悪いチルノにとってこのポルナレフの言動は、チルノの神経を逆なでするのに十分すぎるものだった。

「では、失礼するよ、お嬢さん。」
「……待ちなさーいっ!!」



堪忍袋の緒が切れたチルノは、立ち去ろうとしているポルナレフに一斉に弾幕を叩き込んだ――――そのはずだった。

だが、チルノの目の前に広がった光景は、弾幕を受け倒れ伏すポルナレフではなかった。
突如ポルナレフのそばに現れた、甲冑姿の謎の男。
彼の持つレイピアによってチルノの放った弾幕は軌道を反らされ、弾かれ、ポルナレフは完全に無傷であった。

「……やれやれ、随分おてんばなお嬢さんだな。」
「なっ……あ、あんた、何者なの!?」
「……ジャン=ピエール=ポルナレフ。そして俺の『スタンド』は戦車のカードをもつ……」

そう言いながら、レイピアを持った男が、近くにあった彫像を眼にもとまらぬ速さで刻み始めた。
そして文字通り、あっという間にそこに鎮座していた彫像はまるでチルノを模したかのような彫像に彫りかえられていた!!

「『銀の戦車』。」
「……くっ。」
さっきまでとは違うポルナレフから放たれる殺気に、チルノは一歩も動く事が出来ないでいた。
霊夢や魔理沙とも違う、次元の違う『強さ』や『凄み』。それらがチルノの身体を動かさせない。
まるで蛇に睨まれたカエルのようなチルノの姿を確認すると、もう話す事もないと判断したポルナレフはまた後ろを向き歩きだした。
そしてその場には、ただ呆然としているチルノと、シルバーチャリオッツによってチルノを模した姿に彫りかえられた彫像だけが取り残された。

88おてんば少女、出会う ◆YR7i2glCpA:2013/06/01(土) 16:15:31 ID:rF45eI6w0





【E−6 タイガーバームガーデン/深夜】

【チルノ@東方紅魔郷】
[状態]:健康、不機嫌、ほんの少し恐怖
[装備]:なし
[道具]:不明支給品、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:まだはっきりとどうしようとは考えていない。
1:……なんなのよ、あのホウキ頭。
2:これからどうしよう?
3:『スタンド』ってなんだろう?
[備考]
※参戦時期は未定です。
※支給品を確認していません。

【ジャン=ピエール=ポルナレフ@第3部スターダストクルセイダース】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:不明支給品、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:ジョースター一行を探し、始末する。
1:ジョースター一行はどこだ?
[備考]
※参戦時期は香港でジョースター一行と遭遇し、アヴドゥルと決闘する直前です。
※肉の芽の支配下にあります。
※支給品を確認していません。

89 ◆YR7i2glCpA:2013/06/01(土) 16:16:09 ID:rF45eI6w0
以上で終了です。
投下が遅くなり、申し訳ありませんでした。

90 ◆YF//rpC0lk:2013/06/01(土) 21:25:42 ID:U2.MIWOA0
乙です
まさかのポル、肉の芽状態で参戦
けどポルはこの状態でも騎士道精神溢れるからそこまで危険人物ってわけでもなさそう

チルノは参戦時期が花映塚以降なら少なからず「死」について思うところがあるかもしれませんね

91 ◆n4C8df9rq6:2013/06/01(土) 22:15:24 ID:RANCUjQc0
投下乙です!
何気に肉の芽ポル、余所のロワを含めても初参戦じゃないんだろうかw
描写を見る限りでは無差別マーダーというよりストイックにジョースター抹殺がスタンスか
DIO奉仕になる可能性も大かな?果たしてこのまま突っ切るのか、肉の芽を抜かれるのか…

92 ◆n4C8df9rq6:2013/06/01(土) 22:18:01 ID:RANCUjQc0
ついでに
紅美鈴、多々良小傘、霍青娥、ウェザー・リポートで予約します。

93 ◆YF//rpC0lk:2013/06/01(土) 22:19:02 ID:U2.MIWOA0
>霍青娥

今から期待してもよろしいでしょうか!?

94 ◆n4C8df9rq6:2013/06/01(土) 23:02:21 ID:RANCUjQc0
>>93
ご期待に添えるかは解りませんが、程々に頑張りますw

95 ◆YF//rpC0lk:2013/06/02(日) 00:18:25 ID:5QtYbY620
◆kwnpscAh8Q氏に連絡があります
予約分の延長期限を過ぎましたので、予約を破棄した扱いになります。

96 ◆YR7i2glCpA:2013/06/02(日) 13:10:47 ID:ZAQRnPj.0
ワムウ、博麗霊夢、ジョセフ・ジョースター、予約します。

97 ◆n4C8df9rq6:2013/06/03(月) 02:17:28 ID:t6.45Maw0
紅美鈴、多々良小傘、霍青娥、ウェザー・リポート
投下します

98ナイトウォッチ ◆n4C8df9rq6:2013/06/03(月) 02:19:13 ID:t6.45Maw0








――――取り戻す。






◆◆◆◆◆◆

99ナイトウォッチ ◆n4C8df9rq6:2013/06/03(月) 02:20:57 ID:t6.45Maw0

その地はかつてイタリア・ナポリにて繁栄した古代都市。
火山の噴火による火砕流、火山灰によって壊滅を遂げた集落。
長い時を経て、19世紀に発掘された遺跡の街。
古代のローマの伝統と姿をそのまま残した外観を持つと歴史かからは称される。
規則正しい直線的な道筋と、計画的に設計された構造を持つ。
そこは「ポンペイ」と呼ばれる都市だ。
幻想郷であるはずなのに、何故かイタリアの遺跡が存在している。
冷静に考えなくても異様だと理解出来る状況だ。とはいえ、幻想郷の住民はポンペイなど知らないであろうが。


無論、『彼女』もポンペイなど知らなかった。
むしろ此処がどこなのかということにもさほど関心を抱いていなかった。
殺し合いという状況について考えることで、手一杯だったのだから。


石造りの建物の壁の裏に隠れ、化け傘を抱えながら水色の髪をした少女はガタガタと震えている。
鮮やかな紅い左目、澄んだ蒼い右目が目元に涙を浮かべながら周囲をちらちらと見渡している。
その表情に浮かんでるのはやはり恐怖。そりゃあ場慣れしてない彼女は怖くて仕方がない。
しかし、「屈しない!」と言わんばかりにグッと涙を堪えている…

「こ、殺し合いなんて…わ、わ、私がみんなを脅かせば…なんとかなるんだから…!」

化け傘を携え、少女は必死に怖い思いを抑えながらぼそぼそと喋る。
妖怪の彼女でもあんなに恐ろしい光景を目の当たりにすれば怖いに決まってる。
ただ私はみんなを驚かせようとしてただけなのに。
なんでこんな目に遭わなくちゃいけないのか。
理不尽な現実に彼女は畏れ戦くも、屈したら負けだと。そう感じていた。
それ故に彼女はグッと恐怖心を抑える。
私が他のみんなを脅かして追い払えば、きっと逃げ出して殺し合いをほっぽり出すだろう。
私がみんなを脅かしちゃえば、みんな私にびっくりして逃げ出す。そうすれば殺されることもなくなる!
そんな思考が脳裏をよぎった彼女は、こっそり隠れてこの場を通った他の参加者を脅かすことに決めた。
私なら出来る、私なら出来ると呪文のように心の中で唱える。

―――脅かせる根拠?そんなものはない。
現在、「何とかなるかもしれない」という気持ちと「どうにかなるわけない」という気持ちが半々。
…だけど、こうゆう殺し合いの場ってのは…殺らなきゃ、殺られる。
だったら、それと同じ。簡単なことだ―――





「――――脅かさなきゃ、脅かされるっ…!!」


ギュッと拳を握りしめて、唐傘お化けの少女「多々良小傘」は決意した。

100ナイトウォッチ ◆n4C8df9rq6:2013/06/03(月) 02:21:37 ID:t6.45Maw0

みんなを脅かして、戦意喪失を狙えばいいんだ!
そうすれば殺し合いなんてわざわざやる必要もなくなる!
殺し合いの場ならみんな私みたいにビクビクして、脅かしやすくなってる!
やれる!

……………多分!







――――――そうこうしている間に、近くの通りから足音が聴こえてきた。


「…ふぁっ!?」

何故か小傘がすぐにびっくりしていた。
しかし声は極力抑えている。自分の存在を悟られたら意味がない。
気付かれたら脅かすことも出来ない。
そして足音は、ずんずんと私が壁際に隠れている建物の方へと近づいてきているのだ。
それは偶然なのか、はたまた私の存在の気付いているのか。
どちらかはまだ解らない。ただ、重要なことは…
早速「脅かせる相手」がこちらに近づいてきているということだ。

いざこの状況に直面した小傘の心臓はバクバクと鳴り続けている。
こんな異様な状況下であるが故に普段の何十倍以上も緊張している。
下手してミスっちゃったら、殺されるかもしれない。


でも、たぶん大丈夫だろうとも思っている。
私だって今まで人々を驚かしてきた実績(自称)があるんだ。
ミスさえしなければ―――いける!
GO!私、GO!このままどんどん足音はこっちに迫ってきている!
この物陰からガバッと飛び出して、通りを歩いている人を脅かせば…間違いなくビックリする!
私だってこんな状況じゃ驚くに決まってるし!だから、余裕余裕!
―――――ファイトだよ、私!!


覚悟を決めた小傘は、化け傘を抱きしめるように携えて物陰で息を潜める。
もうすぐ私の隠れている建物の傍を通り過ぎる。
その瞬間を狙って…私が飛び出して、驚かせる!このまま特攻(?)すれば、いける!
自分を信じればいける!…ような気がする!覚悟を決めればなんとでもなる!当たって砕けろ!
唐傘お化け、多々良小傘!行きます!!

101ナイトウォッチ ◆n4C8df9rq6:2013/06/03(月) 02:23:12 ID:t6.45Maw0



そして小傘は、足音が建物のすぐ傍に来たのを見計らい。
―――傘を構え、足音の主の目の前まで飛び出すッ!!










「――――ぎゃーーーおーーーーー!!!!!食べちゃうぞーーーーーーっ!!!!!!」


笑いながら舌を伸ばす化け傘と共に、大きな声を上げながら彼女は「足音の主」に向けて脅かしにかかる!
そう、それは――――オカルトマニアの間で囁かれているという伝説の巨大恐竜「モケーレ・ムベンベ」のモノマネ!
紅魔館の主である吸血鬼も使っていたという伝家の宝刀!
無意識の内にそのネタを使っていた、悪く言えば『パクった』ネタである。
文々。新聞に載っていたが故に知っていたという。
しかし彼女は、このネタに一瞬の命運を賭けたのである…!

102ナイトウォッチ ◆n4C8df9rq6:2013/06/03(月) 02:25:53 ID:t6.45Maw0










「………………………。」

「………………あ、あれ?」

――――無反応。現実は非情である。
あれ?ウ、ウケなかった…?小傘は動揺が隠せず、冷や汗が流れる。
ぽかんとした表情を浮かべながら、小傘は顔を上げてみる…
足音の主は、角飾りの着いたファーの帽子を被っている壮年の男だった。
無表情、無言のまま立ち止まって小傘を見下ろしている。何を考えているのかよく解らない。
小傘は目の前の男に対してそんな印象を抱いたのだ。…それ以上に。
なんでピクリとも反応してくれないんだろう………。
ちょっとくらい驚いてくれてもいいんじゃないかな………。泣き言じみた思いを内心抱える小傘であった。


「…おっ、驚きなさいよ!ほらっ!ほらっ!」
「…………………………。」

それでもめげず、小傘は携えた化け傘をこれ見よがしにブンブンと振り翳し続ける。
まだ勝機(?)はあるかもしれない。ワンチャンあるかもしれない。
微塵のアテもない根拠を頼りにしながら、少女は無意味な行動を続ける。
当然の如く、男は驚くことは愚か、ピクリとも反応をしたりしない。
流石の小傘でもちょっとばかり痺れを切らしていた。
此処まで反応がないと、何だかちょっとムカついてくる!
グッと傘を握る力を強めながら、目を少しだけ細める―――


「…というか!流石にあなたちょっとくらい何か反応を――――」














「やかましい」


小傘が言い終える前に、男がぼそりと呟いた時だった。

103ナイトウォッチ ◆n4C8df9rq6:2013/06/03(月) 02:27:27 ID:t6.45Maw0

ドスリ、という鈍い音が響く。

直後に小傘の腹部に走ったのは、鈍痛。

男が小傘の腹部目掛け、力づくで蹴りを叩き込んだのだ。

え、と突然起こった事に小傘は全く対処も出来ず。

その場でお腹を押さえて何度も咽せながら、化け傘を落として…膝をついた。



「か、はっ……げほっ…」

小傘は思考が追い付かなかった。突然おなかを思いっきり蹴られた。
痛みと恐怖で先程までの思考など何処かへ吹き飛んでしまった。
脅かすことなんてもはや考えてもいない。いや、この人は脅かせない。
暴力を前にした時の自分の脆さを、ようやく認識出来た。
まるで夢から覚めて、現実に無理矢理引き戻されたような気分。
とんでもない人を脅かそうとしてしまったんだ、と。
いくらなんでも、こんな酷いことって――――



「飛び出してきた時は何かと思ったがよ、」

そんな小傘の思考も余所に、男が呟きを発する。
男は何の躊躇いも、動揺もなく。どこまで冷徹な瞳で見下ろしながら―――
再び小傘の腹部に力の限り蹴りを叩き込んだのだ。

「あぐっ…!?」

あまりの痛みに耐え切れず、小傘は堪らずその場でうずくまる。
苦痛で表情が歪み、げほ、ごほ、と何度も咳き込む。
今の彼女は痛みと恐怖以外、何も考えられない。何も感じられない。

やばい、やばい、やばい、やばい、やばいやばい。
痛い、痛い。とにかく痛い。怖い。苦しい。死にたくない。

さっきまでの小傘の必死に頑張る暢気な様子はどこにもない。
目の前の男に対する恐怖に心を蝕まれ始めている。
どこまでも冷たい氷のような瞳で見下ろしてくる男に対しての恐怖に支配されている。
苦痛に塗り潰されながら、恐る恐る目を男の方へと向けた…。


「そんなモンかよ、クソガキ」


―――やっぱり…本当に冷たい表情をしている。

怖すぎて、涙が溢れていた。ガタガタと震えて、気がつかない内に漏らしてしまう程だった。
とにかく怖い。私をそこらへんの虫みたいに見下ろす表情が。とことんまで恐怖だった。
嫌だ。死にたくない。死にたくない、死にたくない死にたくない死にたくない――――

小傘が踞って倒れた際に、彼女のデイパックは少しだけ開いてしまっていた。
その中から一つだけ紙が零れ落ちており、男の足下に落ちている。
震える少女を余所に、男は紙を拾い上げてゆっくりと開く…

「成る程、手榴弾か…まぁ使えなくもないな」

紙を開くと、どうゆう原理か―――その中から手榴弾が飛び出した。
それは小傘の支給品である「手榴弾×5」のセット。
小傘は殺し合いと言う状況への恐怖で、「支給品の確認」という重要なことをうっかりし忘れていたのだ。
それ故に小傘は目の前の「紙が開いて物体が出てくる」という現象には驚きを隠せなかっただろう。
対して、男は冷めた表情で再び適当に紙の中に手榴弾をしまい小傘を見下ろす。
ひっ、と声を上げる小傘。仏頂面のまま、男は少女を見る。
男は、チッと苛ついたように軽く舌打ちをして。







「『ウェザー・リポート』」

104ナイトウォッチ ◆n4C8df9rq6:2013/06/03(月) 02:28:30 ID:t6.45Maw0


男が、静かに呟く。
直後に背後から出現したのは、己が『分身』である存在。
無数の気流が、屈強な人のカタチを形成していく。
猛々しい風を身に纏いながら、『分身』は拳を握りしめる。
それはあらゆる気象を自在に操作する力。
それは精神のエネルギーが具現化した化身。



―――スタンド『ウェザー・リポート』。



男の名は、ウェス・ブルーマリン。



震えながら踞る小傘を見下ろしながら、ウェスは己が『スタンド』を出現させる。
スタンド出した際、彼はふと気付いていたのだが…あの『虹』が出てこない。
オゾン層を破壊することで発動する、サブリミナル効果で猛威を振るう能力を使うことが出来ない。
そのことに気付き、彼は僅かながらも怪訝な表情を浮かべる。
参加者には制限とやらが施されているらしいが、『虹』が出せないのは制限の一つなのだろうか?
もしそうだとすれば…少々面倒な施しをされてしまったということになる。
とはいえ、あくまでただ単に「面倒」なだけ。
戦う上で手間はかかるが、まぁ何とかなるだろう。今は『ウェザー・リポート』だけで事足りる。
そう、誰かを殺す為には…それで十分だ。



(―――何、あれ?…何なの?)

ウェスの傍に姿を現した雲の集合体のような「守護霊」を見て、小傘はそんなことを思っていた。
あんなの、見たこともないし聞いたこともない。
あれが何なのか、小傘の知識では理解が追い付かない。
バチバチと雷が鳴り響くような音が何度も聴こえてきている。
周囲の「空気」が文字通り変わり出していることにも気付いた。

ただなんとなく解ることは、アレは目の前の男の「力」だということ。
アレを用いて…私を殺すつもりだということ。

それだけは―――なんとなく、理解出来た。

そして、スタンドは当然のように拳を握りしめる。
スタンドの右拳に暴風のような気流を纏わせながら。
怯えながらも恐怖で動けない小傘の姿を、ウェスは再び捉える。
ウェスの瞳に宿るのは、確かな殺意だった。


「死ねよ」


少女に向けて、男は冷徹に死刑宣告を言い渡す。


―――その言葉と共に放たれる スタンドの剛拳。


強烈な重圧を持つ気流を纏った拳によるストレート。

少女の命を奪うのには、十分な攻撃。

唐傘お化けの少女は、全てを諦めた。

もう駄目だと思った。死を悟った。

私みたいな「小物」がどう足掻こうとしたって。

全て、何もかも、無意味なんだって。

迫り来る拳を見て、理解した――――――――――――









「―――――!?」

しかし、小傘は―――直後に予想外の光景を見ることになる。
気がつけば、ウェスは驚愕の表情を浮かべていたのだ。
そう。―――どこからともなく、鮮やかな『虹色の弾幕』が飛んできたからだ。
少女にスタンドの拳が届くことはなかった。
拳の一撃が叩き込まれるよりも前に――――
無数の虹色の弾幕が、ウェスとスタンドを攻撃したのだ。


◆◆◆◆◆◆

105ナイトウォッチ ◆n4C8df9rq6:2013/06/03(月) 02:29:07 ID:t6.45Maw0





「参ったなぁ、全く…」

小傘とウェスが接触する時よりも、少しだけ前のこと。

石の建造物に囲まれた遺跡の大通りを、紅い長髪を揺らしながら一人の華人風の少女が歩き続けている。
やれやれと言わんばかりの困ったような表情を浮かべつつ、そんなことをぼやいていた。
しかしあくまで「気」を張り巡らすように周囲への警戒は怠っておらず、一歩一歩確かな足取りで道を踏み頻っている。
彼女の名は「紅美鈴」。悪魔の棲む館である『紅魔館』を守る妖怪の門番だ。
朝には太極拳を舞い、時には職務中に昼寝をしたりするような…どこか暢気であり、穏和な性格の持ち主。
悪魔の館の住民でありながらも人間と親しく話すことさえあるという、そんな少し変わり者の妖怪である。

とはいえ、彼女自身たった一人で悪魔の館の門番を任されている身。
決して能天気なだけの人物ではなく、この異常な状況においては流石に気を引き締めていた。

「殺し合いなんて真っ平御免だ…って言いたい所だけど…」

先程名簿を確認した時に、紅魔館の住民の名前が何人か載っているのを確認した。
たった一人しか生き残ることの出来ない、殺し合いという状況。
お嬢様達がこんな下衆な殺し合いには乗らない…と、信じたい。
少なくとも、私は乗るつもりなんてこれっぽっちもない。殺し合いなんてやりたくはない。
だけど、先程の空間を見渡した限りでもとんでもない人数が「参加者」として呼び寄せられているのが理解出来た。
そうだ。まず、主催者の力がとんでもない…山の神様が一瞬で殺されたんだ。
頭部を爆破する力といい、私達を一堂に此処まで呼び寄せた力といい…どうも摩訶不思議な能力の持ち主のようで。
こうして逆らった所で、一瞬で首を吹き飛ばされるだけかもしれない。
そうなればどんな人物でも、生きる為に殺し合いに乗らざるを得なくなる。

もし、紅魔館の住民が…殺し合いに乗るようなことがあれば。
もし、こんなことを考えているのが私だけなら。
仲の良かった友達同士も。忠誠を誓った主従同士も。
みんな、この狂気に飲まれて…殺し合いに乗るとしたら―――

106ナイトウォッチ ◆n4C8df9rq6:2013/06/03(月) 02:30:11 ID:t6.45Maw0


……………ああ、もう。辛気臭いってば、私。

なんとも自分らしくない。私は途中で気持ち悪くなって、そのことについて考えるのをやめた。
そんなネガティブな思考を重ねた所で何も始まらないし、いいことなんてないし。
とにかく、私は殺し合いには乗らない!
まずはそれは決まりだ。誰が殺し合いに乗ろうと乗らなかろうと、関係ない。
暢気で平和な世界の方がいいに決まってる。戦うにしても、お互いの実力を認めあう正々堂々としたものの方がいい。
ただ生き残りを賭けるだけの凄惨な殺し合いなんて、あっちゃいけない。

とはいえ、私程度の実力でどこまで抵抗出来るかは解らないけど…。
体術の心得や、気を使う程度の能力は一応持ち合わせている。けど、それだけだ。
主や、他の紅魔館の住民の能力に比べればちっぽけなもの。
…だけど、やれる所まではやるつもり。
勝てないかもしれないからって、ただのうのうと命運を受け入れるのも…なんだか、癪だ。
もし勝てなくても、お嬢様や咲夜さんとか。そうゆう人達と一緒に立ち向かえば、いけるかもしれない。
一人では勝ち目がなくても、全員で挑めば…もしかしたら。

…ともかく、誰か他に…「殺し合いに乗ってない人」を探す。
そうして一緒に協力したい。共にゲームに抵抗する為の仲間として。
さっき名簿を確認した限りでは、紅魔館の住民以外にも何人か信用出来そうな幻想郷の者は居る。
出来ればその人達にも接触出来たらいいな、と。

―――おっと、そうだ。支給品とかって、確認してなかったなぁ。
名簿みたく、あの不思議な紙の中に入ってるんだろうか?
とりあえずさっさと確認を――――











「――――ぎゃーーーおーーーーー!!!!!食べちゃうぞーーーーーーっ!!!!!!」



―――遠くから、変な大声が聴こえてきたのはその直後のことだった。
私は一瞬拍子抜けして…ぽかんとしたまま動きを止めてしまった。

…少しだけ間を置いて、はっとしたように声が聞こえてきた方を向く。
えっと…一体何が起こってるんだろう?今のって確か、モケーレ…ムベンベ?だっけ…?
お嬢様があんなことやってた気がするから、何となく覚えてる…
声を聞く限り、お嬢様じゃなさそうだけど。少なくとも他の参加者だろうし、ちょっと行ってみようかしら?

一先ず美鈴は、声が聞こえた方角へと向かうことにした。
その先に騒動が待ち受けていることも知らずに。


◆◆◆◆◆◆

107ナイトウォッチ ◆n4C8df9rq6:2013/06/03(月) 02:30:41 ID:t6.45Maw0
◆◆◆◆◆◆





自分が「ここに来る前」まで何をしていたのか。

曖昧だが、俺は大切なモノを―――『記憶』を取り戻していた。

その矢先に、こんな場所に放り込まれた。

傍迷惑もいい所だ。

だけど、構わない。俺はこの場に用がある。

殺し合いに勝ち残った暁には、『死者蘇生も可能』だと主催者は言っていた。

対象は、たった一人だけ。

―――それでいい。それだけで十分だ。

89人の犠牲を払って俺は頂きまで上り詰める。

目の前で怯えているだけのこのガキも殺して。

この殺し合いに優勝してやる。全員皆殺しにしてやる。

そうして、その末に。






俺は、『ペルラ』を生き返らせる。

あの時に喪われた、全てのものを。

――――取り戻す。


◆◆◆◆◆◆

108ナイトウォッチ ◆n4C8df9rq6:2013/06/03(月) 02:31:41 ID:t6.45Maw0



「―――何、やってるのよ」

時は再び、現在に戻る。
虹色の弾幕を放ったのは、先程のモケーレ・ムベンベのモノマネ…の声を聞きつけて、この場に辿り着いた『紅美鈴』。
突き当たりの道から別の通りへと曲がった際に、彼女は二人の姿を確認した。
そう。ウェスが小傘を殺害しようとしている光景を目の当たりにしたのだ。
美鈴は考えるよりも先に身体が動いていた。咄嗟に弾幕を放ち、中距離からウェスを攻撃したのだ。
今の攻撃でウェスの行動を妨害することは出来た。
―――しかし、その身に一切の傷は負っていない。スタンドが無数の弾幕を両腕で弾いたからだ。
冷めたような表情で、ウェスは美鈴の姿を確認する。
また、か。どいつもこいつも…女子供しかいないのか?此処は。そう思っていた。

「何を、って?…別に、このガキを殺そうとした。それだけのことだ」

ウェスは無感情に、冷静にそう答える。
あくまでそれが当然であるように、彼は返答していた。
対する美鈴は、彼をキッと睨むように目を細めて見据える。

「殺し合いに…乗るつもりなの?」
「当然だ」
「…随分きっぱりと言うのね」
「俺には、『願い』がある」

美鈴の言うように、男はあまりにもきっぱりと言ってのける。
彼を殺し合いに駆り立てているのは、その『願い』への執着心。
平然と人を殺そうとしていた様からか、それは美鈴にも理解出来た。
――――それ故に、彼女はグッと拳を握りしめる。

「…そこの貴女。出来たら、今すぐ逃げて」
「…………えっ?」

ずっと倒れ込んでいた小傘に、美鈴は逃げるように言う。
先程までぽかんとしながらウェスと美鈴を見ていた小傘は、惚けたように声を漏らす。
だけど、もはや呑気になっている場合ではなかった。
痛みや苦しみで立ち止まっていては、今度こそ本当に殺されるだけだ。
故に、中々動こうとしない小傘に向けて…美鈴は声を荒らげた。

「――――早くッ!!」

「え、あ……は、はいっ…!」

小傘は言われるがままに立ち上がり、必死でその場から逃げ始める。
腹部の痛みを何とか抑えて、彼女は走って逃げ始める。
あの赤い髪の妖怪が誰なのかは…あまりよく知らない。
でも、彼女は私のことを助けてくれた。わざわざ、逃がしてくれた。
―――とにかく、この場から離れないと…!その思いで一杯だった。

109ナイトウォッチ ◆n4C8df9rq6:2013/06/03(月) 02:32:59 ID:t6.45Maw0



「………………。」

ウェスは、逃げていく小傘を無言で見送っていた。
まるで興味を失ったかのように、特に追撃することもなく。
今の彼が警戒を向けているのは、むしろ美鈴の方だ。
中国憲法の構えを取りながら、こちらを見据える美鈴を睨むように見ていた。
構えを見る限りでは…恐らく、ただの素人ではない。十二分に鍛錬を積んでいる。
先程の弾幕を放った奇妙な術といい…あのガキのような雑魚ではないようだ。
まぁ、いい。あのガキを逃がしたのも単なる気まぐれだ。

―――この女を殺して、追い付けばいいだけの話。




「お前も…死ねよ」
「…殺されるつもりなんて、さらさらありませんよ。私は、あなたを止めるんですから」


少女と男は、当然の如く相容れない。
男は、願いを叶える為に殺し合いに乗る。
目の前の少女を見据え、スタンドを身構えさせる。
少女は、自分の心に従い殺し合いに抗う。
目の前の男を見据え、その腕に気を纏わせながる。
それぞれの思いを抱えた二人の闘いが―――始まる。


◆◆◆◆◆◆


「あらあら、中々面白いことになってきましたわね」

一触即発、戦闘直前。
そんな二人の様子を、『彼女』は彼らから少し離れた地点の建物の上に座りながら眺めていた。
そこに確かに存在しているはずなのに、彼女の姿は透明になっている。
支給品である「河童の光学迷彩スーツ」を身に纏い、姿を消しているからだ。
本来ならば美鈴が気を張り巡らせることで少しは気配を察知することは出来たかもしれない。
しかしウェスと小傘の発見でそちらに意識が向いてしまい、周囲への警戒が疎かになってしまっていた。
それ故、美鈴は「彼女」の存在に気づかなかったのだ。

彼女は迷彩を使用した状態で手元の双眼鏡を使い、彼女は二人を見物している。
にやにやと、どこか楽しげに。先程、唐傘お化けが逃げていくのも見えたが…
まぁ、そこはどうでもいい。
気になるのはあの二人。片方は…確か、紅魔館という場所の門番だったかしら。
職務中に昼寝をしたりするような能天気な御方だと聞いていたけど、あの様子を見る限り腕は立ちそうだ。
そしてもう一人。不思議な人形を操る、あの殿方。
あの力がどうにも気になって仕方がなかった。アレは一体どんな原理で使っているのか。
どのような能力を持っているのか。そもそもアレは何なのか。
好奇心がくすぐられる。気になって仕方がない。
だから彼女は見物してみたくなったのだ。それは未知の力への興味。

邪仙である彼女―――「霍青娥」は、強い力に惹かれる。
そして同時に、驚くほどに気まぐれかつ好奇心旺盛だった。
興味深い力や人物には積極的に関わり、干渉する。彼女は主に強い者に惹かれる。
それは悪意や野心からではなく、邪仙としては当たり前の純粋な性質。
そんな彼女が人形―――スタンド―――に興味を抱くのは、必然だったのかもしれない。
彼女はワクワクしたように、双眼鏡で覗き込んでいた。

殺し合いにおいても青娥は変わらない。
ただ気まぐれに動いて、興味のあることに首を突っ込んでみる。
此処には幻想郷の住民でない者もいる。彼らに自分の力を見せびらかすのもいいかもしれない。
制限とかいうモノが少々鬱陶しいことになりそうだが、元からそこそこ実力には自信があるのだ。
私ほどの強さがあれば、さほど面倒なことにはならないはずだろう。
―――ま、ともかく。私は私らしく、動くとしましょうかね。
とりあえず今暫くはあの方達の闘いを見物、と。それでいいかな。


…あ、芳香もちゃんと探しておかないとね?

110ナイトウォッチ ◆n4C8df9rq6:2013/06/03(月) 02:35:57 ID:t6.45Maw0
【B−2 ポンペイ/深夜】

【紅美鈴@東方紅魔郷】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:不明支給品、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを止めたい。
1:目の前の男(ウェス)を止める。
2:主催者に抗う為に協力出来る仲間を捜したい。出来れば紅魔館の住民達を。
3:男(ウェス)を撃退したら、さっき逃がしたあの妖怪(小傘)も探したい。
[備考]
※参戦時期は後の書き手さんに御任せします。
※小傘の声を聞きつけ、そちらの方へと向かった為に支給品の確認はしていないようです。

【ウェス・ブルーマリン(ウェザー・リポート)@第6部 ストーンオーシャン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:手榴弾×5@現実、不明支給品、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:ペルラを取り戻す。
1:皆殺しだ。
2:エンリコ・プッチは絶対にこの手で殺す。
[備考]
※参戦時期はヴェルサスによって記憶DISCを挿入され、記憶を取り戻した直後です。
※肉親であるプッチ神父の影響で首筋に星型のアザがあります。
 星型のアザの共鳴で、同じアザを持つ者の気配や居場所を大まかに察知出来ます。
※制限により「ヘビー・ウェザー」は使用不可です。
 「ウェザー・リポート」の天候操作の範囲はエリア1ブロック分ですが、距離が遠くなる程能力は大雑把になります。

【多々良小傘@東方星蓮船】
[状態]:腹部や胴体へのダメージ(中)、疲労(大)、恐慌
[装備]:化け傘@東方星蓮船
[道具]:不明支給品(ジョジョor東方)、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:???
1:とにかくこの場から逃げる。ウェス(ウェザー)への恐怖でまともに思考が出来ない。
[備考]
※参戦時期は後の書き手さんにお任せします。
※ランダムアイテム「手榴弾×5@現実」をウェスに奪われました。
※本体の一部である化け傘は支給品ではなく初期装備です。

【霍青娥@東方神霊廟】
[状態]:健康
[装備]:河童の光学迷彩スーツ@東方風神録、双眼鏡@現実
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:気の赴くままに行動する。
1:美鈴とウェスの闘いを見物してみる。飽きたらその場を去る。
2:面白そうなことには首を突っ込み、気になった相手には接触してみる。先程の殿方が使っていたような「まだ見ぬ力」にも興味。
3:時間があれば芳香も探してみる。
4:殺し合い?まぁ、程々に気をつけようかしら。
[備考]
※参戦時期は神霊廟以降です。
※制限の度合いは後の書き手さんにお任せします。


【河童の光学迷彩スーツ@東方風神録】
にとりの製作した光学迷彩の技術が施された服。霍青娥に支給。
特別仕様で見た目はコートに近い。これを着ること姿を隠すことが出来る。
何かしらの制限があるかどうかは後の書き手さんにお任せします。

111 ◆n4C8df9rq6:2013/06/03(月) 02:36:42 ID:t6.45Maw0
投下終了です。
指摘やツッコミがあればお願いします。

112 ◆YF//rpC0lk:2013/06/03(月) 16:38:32 ID:G0XwDWO60
乙です

ウェザーに記憶が戻った状態で死者蘇生出来るって聞いたら、やっぱり殺しに乗っちゃうんですかね?
美鈴はなかなかカッコよくて、青娥もDIoなんかと出会ったら何かしちゃうんでしょうね
そしてポンペイの隣には無名の丘がありますけれど、これがどう絡んでしまうのか



小傘ちゃんは安定の無害妖怪でした

113名無しさん:2013/06/03(月) 18:58:52 ID:FTd4sSD6O
投下乙です。

ウェザーに女難の相が見える!
兄弟揃って珍しい時期からの参戦だな。

114 ◆n4C8df9rq6:2013/06/03(月) 22:15:55 ID:t6.45Maw0
感想ありがとうございます。

宮古芳香で予約します

115 ◆n4C8df9rq6:2013/06/06(木) 09:18:55 ID:OOeouRrA0
宮古芳香、投下します。

116命ノゼンマイ ◆n4C8df9rq6:2013/06/06(木) 09:19:45 ID:OOeouRrA0

「………………………。」


エリア「A-4」。
そこは会場の外れに位置する地区。
辺りには目立った施設もないし、これといった町や森なども存在しない。
あるのはただ、雑草が生い茂っているだけのだだっ広いだけの平原。
そこには人の気配もないし、誰かが寄り付くような雰囲気もない。
その場を支配しているのは静寂のみ。時折風が草を揺らす程度の、無音の世界だ。

彼女は、そんなエリアの端っこで…ぽかんとした真顔で立ち尽くしていた。
どことなく中華風に見える服を身に纏い、血相の悪い肌が手足や顔から覗いている。
その顔には札が貼られており、出で立ちは一言で言えば中国のキョンシー。
事実、彼女は死体を蘇らせて生み出されたキョンシーの妖怪なのだ。その名を「宮古芳香」。
邪仙である霍青娥の命令に従う、忠実な僕。少し前まで、青娥の命令で豊聡耳神子の復活の為にとある場所を守護していた。
そしてその目的は果たされた。それ故に彼女は一旦役目を終え、土に還されるはずだったのだ。
無論、また必要な時になれば再び部下として土から蘇らされる手筈だったが。

…しかし、気がつけばこんな場所に飛ばされていたという。
何がどうなっているのか、彼女は現状をあまり把握出来ていない。
当然のことだ。キョンシーとなった彼女の頭脳は前時代のコンピュータ並の思考しか出来ない。
言わば少なめの脳ミソ。現状をある程度理解をすることが出来ても、完全に咀嚼することは出来ないのだ。
彼女に主に出来ることは「指示された命令をできるかぎりこなすこと」だ。自分で理解し、考えることは超ニガテである。
それでも彼女は、自分なりに今の状況を考えようとしていた。

117命ノゼンマイ ◆n4C8df9rq6:2013/06/06(木) 09:20:27 ID:OOeouRrA0



「私の…主…」

「…ええっとぉ……名前なんだっけなー……」

「………えっと…うーんと…………」

ぼそぼそと呟きつつ、彼女なりに精一杯頭をフル回転させ働かせる。
彼女の腐りかけの脳では、人の名前などの簡単な記憶すらすぐに曖昧にぼやけてしまう。
例えそれが、自分の主といった縁の深い人物の記憶でも。
それでも彼女はどうにかして懸命に考えて自分の記憶を引っ張りだそうとする。
あの記憶は出来るだけ忘れてはならないということを、彼女は何となく理解していた。

「…………せ…いが…………青娥……!」

数分ほど時間をあけて、彼女はようやく主の名前を思い出す。
さっきの謎の人間二人がいた変な場所で、青娥の姿をちらっと見かけた。
あの場所での説明は、あまり耳に入ってなかった。ルールなんて理解できない。
簡単な命令だけをこなすことしか出来ないんだから、当たり前のこと。
長々とした説明など聞くほどの頭脳は持ち合わせていない。
…でも。青娥がいたことは、ぼんやりだけど…確かに覚えている。

そして。
変なヤツが、頭を吹き飛ばされて死んでしまった様も…脳裏に焼き付いている。
真っ赤な血が華のように地面に広がって。
そいつが死んだということは、はっきりと覚えている。
何で死んだのかも、何で殺されたのかも、わからないけれど…とにかく、死んでしまった。

死んでしまった。

死んでしまったのだ。

118命ノゼンマイ ◆n4C8df9rq6:2013/06/06(木) 09:21:16 ID:OOeouRrA0



「青娥…せいがー…」

「…あれだけは…いかん…」

「死ぬのは、いかんのだ…」

ぼそぼそと呪詛を唱えるかのように、芳香は何度もその言葉を吐き出す。
駄目だ。死んだら駄目なんだ。今の子の状況が何なのかはいまいち、というか殆ど解らないが。
この場所で、「誰かが死ぬ」ってことだけはわかるのだ。

無表情だったはずの顔には、ほんの僅かな不安の様子が浮かんでいる。

「死ぬのは………」

私はキョンシーだ。例え頭を破壊されようと、胸を貫かれようと、全身を蒸し焼かれようと、死ぬことはない。
問題なく生き続けることが出来るし、不調になれば青娥がすぐに治してくれる。
だから私はいいんだ。私は死なないんだー。だけど、だけどな。
青娥は、どうなんだ?私みたいにキョンシーじゃない。
きっと私みたいに顔を潰されたり心の臓を貫かれたりして生きていられるわけがない…
もしかしたら――――死んでしまうかもしれないんだ。

駄目だ。彼女は脳髄を言葉に支配されたかの如く、ただ只管にそう思っていた。
でも、その思いは確かだった。その思いは決して嘘偽りではない、純粋なものだった。
とにかく青娥を死なせちゃ駄目だ。死んだらいかんのだ。
そうだ…青娥のキョンシーだから…青娥を守らなきゃいけない。青娥、死ぬのは駄目なんだ。

「駄目なんだー…せいが… 生きなきゃ駄目なんだ…」

常に命令のみに従って動いてきた彼女が、自分の意思で動き出す。
必死に腐りかけの固い頭を回転させ、彼女なりの思考をした末。
それは彼女にとって一番「大切なこと」を考え、導きだした末の結果。
「青娥」が「死ぬこと」。それだけは避けなくてはならん。今の彼女を動かすのは、たった一人の主を護るという思い。
自分と違って、命が零れ落ちたら本当に『おしまい』なんだ。

せーがを…護らないと。
私はせーがのキョンシーなんだ…私が護らなくちゃ駄目なんだー…。

119命ノゼンマイ ◆n4C8df9rq6:2013/06/06(木) 09:21:55 ID:OOeouRrA0


「…………………。」

行く宛もなく、土地勘もなく。固い身体に鞭を打って、適当にその場から歩き出そうとした時。
彼女はふと気付いた。背中に背負っている煩わしい『荷物』らしきものに。
それは支給品一式が詰め込まれたデイパックなのだが、ルール説明を殆ど聞いてなかった彼女はそのことを知らない。
ただ「背中になんか邪魔なものがある」程度にしか思っていなかったのだ。
彼女はとりあえずそれを背中から下ろして退かしたかった。なんか気持ち悪いし邪魔だ。
そうして、どうにかして下ろそうとしたのだが―――――

「うーん…うーん…………」

両腕が固い。上下にゆらゆらと動かしたり、メキメキと音を立てながらほんの僅かに横に動かしたりもしているが…
間接が固くてデイパックを下ろせない。青娥からは柔軟運動を進められていたが、彼女はここ最近それを怠っていたという。
それがこのような所で仇になるとは予想もせず。
ぶんぶん、じたばたと頑張って腕を上下左右に動かしているが思いの外関節が動いていない。
結果的にデイパックを下ろせず、悪戦苦闘をして数分が経つ。

「無理だなー…」

デイパックを下ろせないことを把握した彼女は、素直に諦めた。
どうせキョンシーの自分には無用の長物だろうし…と考えて、自分自身で納得した。
そもそも、こんなことで手こずっている場合ではない。
自分には自分の、大切な…やるべきことがあるということをふっと思い出した。
そう、護る。あいつを…えっと…あれ?うーん…………………


さいが…、せみが…?よしか…じゃない…えっと、うんと…

えーと…なまえ…なまえ‥‥‥‥―――――


「……………せいが!」


私は…青娥を…護るんだー。
何なんだか解らないけど…ここでは誰か死ぬ。誰かが死んでしまう場所。
だけど、青娥は絶対に死なせない。死ぬのはあっちゃいけない。青娥は…生きなきゃ、駄目なんだ。

固い関節を動かし、ふらふらとゼンマイで動き出したかのように彼女は平原を進みだす。
自分のただ一人の主を捜すべく、彼女は歩み出す。
それは「指示された命令」ではない。芳香自身の意思で、そう決めたこと。
彼女は途方もなく彷徨う。その先に何が待ち受けているかは、知る由もないだろう。

120命ノゼンマイ ◆n4C8df9rq6:2013/06/06(木) 09:24:08 ID:OOeouRrA0
【A-4 平原/深夜】

【宮古芳香@東方神霊廟】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:不明支給品、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:青娥を護る。
1:死ぬのはいかん、あれだけはいかんのじゃ…
2:お腹がすいたら多分ガマンできない。
[備考]
※参戦時期は神霊廟後、役目を終えて一旦土に還される直前です。
※殺し合いのゲームという現状をあまり把握していませんが、「誰かが死んでしまう」ことは理解しています。
※間接が固いせいで背負ったデイパックを自力で下ろすことが出来ません。
 それ故に支給品及び名簿を一切確認していませんが、最初のルール説明の会場で青娥がこの場にいることは認識しているようです。
※制限により、彼女に噛まれた生物がキョンシー化することはありません。
※彼女がどこへ向かうかは後の書き手さんに御任せします。

121 ◆n4C8df9rq6:2013/06/06(木) 09:24:34 ID:OOeouRrA0
投下終了です。
指摘やツッコミがあればよろしくお願いします。

122 ◆YF//rpC0lk:2013/06/06(木) 23:13:06 ID:IzngWZKs0
乙です
芳香ちゃん健気やなぁ(本編で自我あるのかどうかは詳しくは分かりませんが、ゾンビギャグはかましてるんですよね)

ただ、ツッコミどころと言えば
>血相の悪い肌が手足や顔から覗いている。
確か霊夢曰く「随分と血色の良いゾンビ」らしいんですよね

123 ◆n4C8df9rq6:2013/06/06(木) 23:50:03 ID:OOeouRrA0
芳香ちゃんはゾンビギャグや「あの悲しき宗教戦争が〜」とか「死ぬ、だとぉ!」とか
自発的に喋ってるような台詞が度々見受けられるので、多少の自我があるつもりで描写しました…

>「随分と血色の良いゾンビ」
申し訳ありません、ここは完全に自分のミスでしたorz
その辺りの修正版です↓

どことなく中華風に見える服を身に纏っている。
その顔には札が貼られており、出で立ちは一言で言えば中国のキョンシー。
事実、彼女は死体を蘇らせて生み出されたキョンシーの妖怪なのだ。
所々から覗く肌の血色の良さは、主人の『手入れ』の賜物か。彼女の名は「宮古芳香」。

124 ◆YR7i2glCpA:2013/06/09(日) 15:32:00 ID:3QwWc82c0
申し訳ありません、予約の延長を申請します。

125 ◆n4C8df9rq6:2013/06/14(金) 00:38:20 ID:mkKY9y9E0
ジョナサン・ジョースター、レミリア・スカーレットで予約します

126名無しさん:2013/06/15(土) 03:32:01 ID:gRdN5DkA0
波紋使いと吸血鬼、嫌な予感だ
それとも互いに手を取り合うことが出来るのだろうか

127 ◆YR7i2glCpA:2013/06/15(土) 19:21:33 ID:2yBtN8Ls0
申し訳ありません、予約を破棄します。
長い間のキャラ拘束、申し訳ありませんでした。

128 ◆n4C8df9rq6:2013/06/20(木) 08:38:31 ID:baQzLdvQ0
延長お願いします。

129 ◆n4C8df9rq6:2013/06/20(木) 20:44:49 ID:baQzLdvQ0
何だかんだで期限に間に合ったので投下します

130Scarlet Overture ◆n4C8df9rq6:2013/06/20(木) 20:46:16 ID:baQzLdvQ0
「丸太のような両足」が、石の敷き詰められたような道を踏みしきる。
道の両脇には幾つもの灯籠が立ち並び、英国には存在しなかった風流な和の雰囲気を感じさせる。
逞しく大柄な体格の青年―――「ジョナサン・ジョースター」が、夜の微かな明かりに照らされたその施設の庭を歩きながら見渡していた。
その足取りはどこか堂々としているようにも見えるが、決して周囲への警戒は怠ってはおらず隙を感じさせぬ雰囲気を纏っている。
しかしその瞳に浮かんでいるのは緊張だけではなく、どこか好奇心に近いような感情も多少ながら滲み出ていた。

「此処は…。」

地図や周辺の様子を確認する限り、自分の現在位置は「E-4」地区の「命蓮寺」という施設らしい。
(地図は東洋で使われているという「漢字」で記載されているが、何故か自分はその言葉を「読む」ことが出来た)
辺りに広がる光景や目の前の建造物を見渡してみる限り、此処は東洋で言う「寺院」の類いだろう。
庭の道を暫く歩いた所で立ち止まり、目の前に存在する大きな寺院の本堂を見上げて彼はそう認識する。「命蓮寺」という名前の時点で、何となく感づいてはいたが…
英国の貴族家系出身である彼にとって、それは生まれて初めて直に目にする物。存在は知っているが、せいぜい話で聞いたことのある程度。
初めて見る東洋の木造建築である寺院を前に、彼の好奇心は少しばかりくすぐられていたのだ。
とはいえ、それにばかり気を取られてはいけない。此処は―――殺し合いの場だ。
いつ、どこから、誰が襲ってくるか全く解らないのだ。決して警戒を解いてはいけない。
目の前の寺院をゆっくりと眺めてみたい気持ちもあったが、この場における危険を忘れてはならない。

荒木飛呂彦、太田順也。あの二人が自分たちに言い渡したのは「生き残りをかけた殺し合いのゲーム」。
会場を見渡した限りでは老若男女、人種を問わず実に何十人もの人物がこの場に呼び寄せられているようだった。
そしてあの場での人々の響めき、主催者に反抗し見せしめにされた少女…。恐らく、参加者は皆「強制的に参加させられている者達」なのだろう。
自分も気がつけばあの場にいたのだ。タルカスを撃破し、ポコの町へと向かっていた途中だったのだが…そこからあの場に至るまでに記憶が無い。
まるで記憶からその部分だけが抜け落ちたかのように、急に会場に呼び寄せられたのだ。
他の者達のあの場での様子から察するに、他の参加者たちもそうして此処に無理矢理呼び出されたのかもしれない。
戦いを望まぬ者達の生殺与奪すらも握り、凄惨な殺戮を強要する…

そうならば、尚更あの主催者達を許すことが出来ない。
只ならぬ怒りを胸に、彼は決意する。

131Scarlet Overture ◆n4C8df9rq6:2013/06/20(木) 20:47:42 ID:baQzLdvQ0
こんな残酷な催しなど、あってはならない。
この「殺し合い“バトル・ロワイアル”」を止め、荒木飛呂彦と太田順也を倒す。
その過程で無力な者たちは保護し、殺し合いに乗っている者は倒す。
ジョナサン・ジョースターの思考は至ってシンプルだ。
自分の正義を信じ、真っ直ぐに突き進む。
太陽のような輝きを持つ「黄金の精神」は、例え殺戮の場であろうとも変わらなかった。

しかし、気になることが幾つか存在する。
名簿には何人か見知った名前が見受けられた。一つは「ロバート・E・O・スピードワゴン」。
共にディオと戦ってきた仲間の名だ。彼のことは早いうちに探さなくてはならない。
そして「ブラフォード」「タルカス」の名…。彼らはこの手で倒したはずの屍生人だ。
何故彼らの名が記載されている?波紋によって完全に消滅した、彼らの名が。
いくら屍生人といえど波紋による攻撃を受けて復活できるはずがない。…それだけじゃない。
「ウィル・A・ツェペリ」の名が、記載されていたのだ。
自身に全てを託し、散っていった――――波紋の師。
彼の名前までもがこの名簿に書かれている。そう、「死者を蘇らせた」かのように。
これは…どうゆうことなのだろうか?何かしらの意図があって、死者の名前を記載しているだけなのか?
それとも、主催者は本当に死者すらも蘇らせる力を持っているというのか?
波紋で消滅した屍生人たちすら蘇生させることが出来るとすれば…とんでもない力だ。
ともかく、真偽を確かめたい。彼らがこの場で本当に蘇っているのかどうかを。
それ以外にも、名簿には「ジョースター」「ツェペリ」の姓が何人も見受けられた。「ブランドー」という姓の人物もいる。
ジョースター家の血族は既に自分以外は存在しないはずだが…同姓の人物がいるだけなのか?それにしても妙だ。
「ツェペリ」という姓も複数存在することから、単なる「同姓の人物」とは思えない。どうにも引っかかる。
彼らとも一度会ってみたい。一体何者なのだろうか?

そして――――

「ディオ…」

そう。名簿には「DIO」という名も載っているのだ。
彼は何故か名を英語で表記されているが、十中八九あのディオ・ブランドーだろう。
スピードワゴンらが参加させられているのだから、彼がいても決して不思議なことではない。

ディオ。父を殺した邪悪の化身であり、自身の宿敵であり―――そして、奇妙な友人。

凶悪な吸血鬼と化した彼は、恐らく…いや、確実にこの殺し合いに乗るだろう。
目的の為には手段を選ばない吸血鬼であるディオならば、十分に有り得る。
吸血鬼には波紋法以外の有効打がない上、屍生人を増やされれば尚更厄介なことになる。
彼には日光と言う弱点も存在するが、拠点となる隠れ家を早い内に見つけ出す可能性だってある。
――――それに、殺し合いに乗ろうと乗らなかろうと…ディオは倒さなくてはならない。
彼は多くの人間を苦しめた。罪もない者達を次々と、自分の私欲の為に殺してきたのだ。
元々僕の旅は吸血鬼と化したディオを倒す為のものだ。

どちらにせよ、僕はディオと戦い…倒さなければならないのだ。
石仮面が生み出した争いを、この手で断ち切る為に。

132Scarlet Overture ◆n4C8df9rq6:2013/06/20(木) 20:48:39 ID:baQzLdvQ0



決意を改めて固め、彼は寺院の本堂の入り口へと歩み出した。
一先ず、目の前にあるこの寺院の内部を調べてみたい。
これほどまでに立派な建築物だ。誰か参加者が中で身を潜めているかもしれない。
もしそれが無力な者だったら、護らなくては。
そうして、意を決して本堂の中へと入ろうとした…
――――その直前のこと。







「おい、そこの人間」

背後から自身を呼びかける声が聞こえてきた。
その声は唐突に、まるで突然誰かが後ろから姿を現したかのようだった。
声色を聞く限りまだ少女のようだったが。
しかし、何か妙だ。ピリピリするような…妙な感覚が自身の全身を駆け巡っている。
得体の知れぬ奇妙な胸騒ぎを感じつつ、僕はハッと振り返った…。


―――――僕の後ろに立っていたのは。青みがかった髪を靡かせる、幼き少女。
歳は下手をすれば十にも満たない。背も自分よりずっと小柄だ。
しかし、少女の吸い込まれるような紅い瞳は外見不相応なまでに妖艶に感じられた。
その笑みを浮かべる表情は、幼い少女とは思えぬ程奇妙な余裕に満ち溢れている。
何よりも、背中に生える一対の翼。そして、不敵な笑みを見せる口から覗いている『モノ』――――
そう。吸血鬼のような『鋭い牙』が、彼を強く警戒させていた。

「…君は、何者だ?」

ゆっくりと身構えつつ、僕は目の前の少女に問いかける。
理由は解らないが、得体の知れない警戒心が僕の胸の内に広がっていた。
この幼く可憐な少女に、僕は僅かながらも奇妙な「不信感」のような感情を抱いていたのだ。
何故だ。いったい何故なんだ?――――それは確かに感じることが出来るのに、その不安の正体が解らない。
対する少女の方は、怪訝そうな表情で眉間を僅かにしかめている。

「随分身構えてるわねぇ。それに、最初に話しかけたのは私の方なんだけど…まぁいいか」

ふぅ、と溜め息を吐くように少女は言葉を漏らす。
しかし、さほど気にかけてもいない様子ですぐに調子を戻し…

「で、まぁ…私のことだっけ?聞いてるの」
「ああ…君はその気配を隠しきれていない。そこいらの者とは明らかに違う、異質な気配を」
「そもそも隠す気もないし」
「……………」

少女はさっきから何とも飄々とした態度で喋ってくる。
外見不相応なまでに傲岸不遜で余裕を崩さず、口元には不適な笑みさえ浮かべているのだ。
その様子や雰囲気、そして翼や牙を持つ出で立ちからこの少女はただの子供ではないことは一目で分かっていた。
そんな僕の警戒をよそに、少女はふっと口元を吊り上げる。

「ま、いいわ。自己紹介くらいならしてやるわ、人間」






「私は紅魔館の主、レミリア・スカーレット。『吸血鬼』よ」

133Scarlet Overture ◆n4C8df9rq6:2013/06/20(木) 20:49:09 ID:baQzLdvQ0


―――僕の心中で抱いていた不穏な予感は、あっさりと「確信」へと変わった。
バチバチと、輝きを見せるかの如く両腕を光らせる。
吸血鬼。少女の口から出てきた言葉に反応し、すぐさま「波紋の呼吸」を行ったのだ。



◆◆◆◆◆◆



「―――吸血、鬼…!」

「あら、…何か光ってるわね?へぇ、面白そうじゃない」

波紋の呼吸を行ったジョナサンを見る少女の表情は、警戒や敵意というワケではなく…「好奇」と「興味」。
一言で言って、そんな感情が滲み出ているのが分かった。
未知の力を目の当たりにし、好奇心をくすぐられたかのような表情。
反応から察するに、この少女は「波紋」の存在を全く知らないようだ。
そう出なければ波紋を前にここまで余裕でいられる訳がない。そもそも、波紋の呼吸を前にこんな反応を見せている時点で解る。
彼女は波紋そのものを初めて目にしたのだろう、と。


吸血鬼。ジョナサンにとって、非常に因縁の深い相手だ。
太古より存在するという石仮面によって人間を超越した怪物―――
幼なじみのディオ・ブランドーも、石仮面を被り邪悪な吸血鬼となった。
彼は己が野望の為、数え切れぬ程の人間を犠牲にし踏みつけている。
目の前の少女は、そのディオと同じ存在…!
その事実だけでも、ジョナサンを戦闘態勢に入らせるには十分なことだった。

当然だ。―――彼は吸血鬼を「倒すべき敵」として認識している。
ましてや幻想郷のような「人と人外が共存している世界」など、知りもしないのだから。


レミリアはそんなジョナサンの認識を余所に、指をクイクイと曲げて挑発をする。
単なる好奇心故か、敵意を初めて見せたのか。

「 少しくらいは、遊んでやろうかしらね」

相変わらずその余裕綽々な態度は崩れない。口元には不敵な笑みを浮かべ続けている。
そして少女の左手には、紅い霧のようなオーラが集い始めている…。
それと同時に、彼女の身からこちらへの明確な「敵意」が剥き出しに放出されたのだ。

――「波紋を知らない」という推測が当たっているのか、やはり先程から波紋を警戒する様子を見せない。
それならば、吸血鬼である彼女の不意をつけるかもしれない。
そう、あの「ランダムアイテム」を使えば…更に。
ツェペリさんによれば、波紋は「水」に伝導しやすい。ならば―――
ランダムアイテムに仕込まれた「これ」に波紋を流し込めば…「波紋を伝導する飛び道具」になるだろうッ!
僕は迷わず、「予め両手に嵌め込んでいたランダムアイテム」で両手を擦るように構えた―――!

134Scarlet Overture ◆n4C8df9rq6:2013/06/20(木) 20:50:32 ID:baQzLdvQ0




「波紋の―――!」

バチバチとジョナサンの両手が光るッ!それは波紋の光!
両手の「液体」に深く染み込まれた太陽の輝きッ!
ジョナサン・ジョースターの呼吸から生み出された波紋が練られたのだ!

「―――シャボンだッ!!!」

そして両手から放たれたのは、幾つものシャボン玉!
波紋を流し込まれ、練り出された『それ』は目の前の吸血鬼へと向かっていくッ!


「…シャボン玉?」

少女はこちらの方へと向かって来るシャボン玉を見て、ぽかんと呟く。
そう、ジョナサンに支給されたランダムアイテム―――それは「シーザーの手袋」。
彼は知らないことだが、波紋の師匠であるウィル・A・ツェペリの孫であるシーザー・A・ツェペリが身につけていた手袋だ。
手袋には特殊な石鹸水が仕込まれており、それを使うことで「シャボン玉」を作り出すことが出来る!
ジョナサンは会場に送り込まれた直後、支給品を確認した際にこれを両手に嵌めていたのだ。
球状の液体と言ってもいいシャボン玉ならば「波紋」を使う際に利用できることに気づき、迷わず身につけていたのだッ!


次々と周囲を対空するかのように飛び交うシャボン玉。
それを目の当たりにした吸血鬼の少女は、少しばかり驚いたように目を丸くしたが…すぐさま右手の爪を突き立てる。
フッと口元笑みを見せ、周囲のシャボン玉をなぎ払うように自らの爪で引き裂こうとしたが――



シャボン玉に触れた右手に―――バチバチと、電流の如く瞬間的な「熱」が走る。



「―――――――ッッ!!!?」


レミリアの表情が、予想だにしなかった驚愕と痛みによって歪んだ。
吸血鬼の再生能力で苦痛には慣れているはずだが、これほどまでに直接的な「痛み」を感じるとは思ってもいなかったのか。
バッとシャボン玉に触れた右腕をすぐさま引きつつ、その場から咄嗟に後方へ下がりシャボン玉を回避する。
シャボン玉に流し込まれた波紋を受けた右手には、まるで太陽で焦がされたかのような『火傷』を負っていたのだ。

135Scarlet Overture ◆n4C8df9rq6:2013/06/20(木) 20:52:21 ID:baQzLdvQ0

ジョナサンはすかさずその手に再びシャボン玉を形成し始める。
このまま更に波紋による追い討ちをかけるッ!
そして、その両手に無数のシャボン玉が形成される―――!

「まだまだ行くぞッ!波紋のシャボン―――――」










「必殺『ハートブレイク』」


少女が呟いた―――瞬間。

「――――!?」

ジョナサンが追撃でシャボン玉を放とうとした直前だ。

レミリアの周囲に滞空していた無数のシャボン玉が、凄まじい勢いで「消し飛んだ」。

暴風のような衝撃波に吹き飛ばされたかのように、消滅する。

そして――ジョナサンの頬を鋭い「刃」が掠め、微量の紅色の血を吹き出させる。


それはレミリアの形成した『真紅の槍』。少女達の必殺技とでも言うべき「スペルカード」。
左手に集わせていた霊力を使い、すかさずスペルを発動したのだ。
レミリアの手から投擲された真紅の槍は、彼女の周囲に滞空する無数のシャボン玉を刃と霊力の衝撃波で消し飛ばしたのだ。
そのまま槍はジョナサン目掛けて飛んでいき―――こうして頬を掠めた。

「槍、ッ…!?」

ジョナサンは衝撃で体勢を崩して怯み、驚きを隠せぬ様子で口に出す。
形成した真紅の槍を、素早く強力な飛び道具として使った。同じ吸血鬼とはいえディオには見られなかった技だ。
ディオの気化冷凍法のような独自の能力を持っているのか――――


思考し、行動しようとしていた矢先。




「遅い」


怯んだ隙を突いたレミリアが、翼をはためかせて瞬時に『ジョナサンの至近距離』まで接近していた。
ジョナサンが対応する間もない。まるで疾風のような、凄まじい瞬発力だ。
優位に立った少女は、不敵な笑みを口に浮かべる。
そして滞空しながら、ジョナサンの首筋に素早く己の鋭い爪を突き立てた。



―――ジョナサンも同時に、咄嗟に右手をレミリアに向けていた。

136Scarlet Overture ◆n4C8df9rq6:2013/06/20(木) 20:52:54 ID:baQzLdvQ0


「…へぇ」
「く、っ…!」

ギリリと歯軋りをしながら屈強な右腕をこちらに向けるジョナサンを、レミリアは面白そうに見る。
その右手は太陽にも似た光を放っている。そう、先程の「波紋」だ。
これを叩き込まれれば、恐らく先程シャボン玉を喰らった右手のように少女の身は焼き焦がされるだろう。
とはいえ、彼は爪を突き立てられているのだ。普通ならばこんな大胆な行為には出ない。
しかしジョナサンの腕は「レミリアの行動とほぼ同時に行われた」。
その咄嗟の瞬発力、そして判断力は大したものだと…レミリアは内心で評価する。

そしてレミリアは…爪を突き立てながら、静かに笑みを浮かべる。


「やるじゃない、お前」
「………………。」

少女の言葉に対し、ジョナサンは何も答えない。
その反応に、少しばかりつまらなそうな表情を見せたが。

「私ほどではないようだけど…うん、中々使えそうね。」
「………どうゆう意味だ?」
「ん?そのままの意味に決まっているじゃない」

レミリアが発するどこか意味深な言葉にジョナサンは眉を顰めながら問いかける。
とはいえ、レミリアは飄々とした態度を崩さずに笑みを浮かべており。
―――そして、唐突に爪を突き立てていた手を下ろした。

「何、そう難しいことではないわ。貴方にも悪いことじゃあないしね?」










「――――私と、手を組みなさい」


それは、突然の持ち掛けだった。
その唐突な発言に、ジョナサンはぽかんとした表情をせざるを得なかった…

◆◆◆◆◆◆

137Scarlet Overture ◆n4C8df9rq6:2013/06/20(木) 20:54:07 ID:baQzLdvQ0
◆◆◆◆◆◆



先程の一時の争いから、暫くした後のこと。

そこは命蓮寺本堂の客間。
襖に床の間、敷き詰められた畳などジョナサンにとっては初めて見るものばかりだ。
その落ち着いた彩りは西洋にはない、和の風流な雰囲気を彼に感じさせる。
とはいえ、部屋の中央には少々洋風にも見える机が置かれている。人里で手に入れたものかもしれない。
この寺院そのものが立派なだけあって、客間自体がそこそこ広く立派な作りをしている。
そして――――机を挟んで、座布団に座った「二人」が向かい合っていた。

「…レミリア。」

―――ジョナサンは礼儀正しく正座をしながらレミリアを真っ直ぐに見ている。
さながら見合いのようにも見えるのが少々滑稽だが、その姿勢は彼の生真面目さを表している…のかもしれない。
対するレミリアは…懐から取り出した漫画を読んでいる。ジョナサンにはたまに目を向ける程度。
支給品である「ピンクダークの少年」というタイトルの漫画にどうにもハマっているようだった。
左手には波紋による火傷を負っているが、特に意に介しておらず。


「それで、私に対して質問って…何かしら?ジョジョ」

ちらっと漫画を読みながらジョナサンに目を向ける。
この客間に訪れる前に、既にお互いに名前は聞いたのだ(ジョナサンはいつの間にかあだ名で呼ばれている)。
彼女が協力を持ちかけてきたことで、ジョナサンも一応は話を聞くことにした。
最初は当然の如く警戒をしたが、戦闘を自ら止めてわざわざ話を持ちかけてきたのだ。
あくまで友好的に接しようとしているのかもしれないと判断し、とりあえずこうして客間で話をすることにしたのだ。
客間に訪れた直後、二人は名簿を開き互いに「知り合い」や「信用出来る人物」、そして「危険人物」など最低限の情報交換を行なっていた。
互いに事前に名簿を確認はしていたので、さほど時間をかけずにその情報交換は終わったが。

…ともかく、ジョナサンには気になることがあった。少女のことについてだ。
彼女もまた、石仮面で吸血気になった存在なのだろうか?
どこでそれを入手のだろうか?と。

138Scarlet Overture ◆n4C8df9rq6:2013/06/20(木) 20:55:43 ID:baQzLdvQ0

「…君は、石仮面を被って吸血鬼に?」
「何それ」
「!? …レミリア、君は石仮面を知らないのか?」
「初めて聞いたわよそんな仮面。センスの欠片もなさそうな名前ね」

初っ端から予想もしなかった返事が返ってきたことにジョナサンは驚く。
そう、彼女―――レミリア・スカーレットは「石仮面の存在を知らない」と言うのだ。
普通なら有り得ない。石仮面以外に吸血鬼化の方法があるとでも言うのか…?

「そもそも、石仮面って何よ?」
「…僕が以前、考古学の分野で研究を重ねていた不思議な仮面だ。
 誰が何の為に作った物かは全く解らない…だが、ある事件をきっかけに解ったことがある。
 『その仮面を被った人間の脳を骨針で刺激し、吸血鬼に変化させる』ということだ」
「道具一つで吸血鬼を生み出すだなんて、随分安っぽい製造法だこと」

石仮面のことを聞き、レミリアが皮肉混じりにそう言う。
彼女の表情に浮かんでいたのは、ほんの僅かな興味。
そして、何とも言えぬ不快感のような…そんな微妙な表情だった。

「そんなインスタントみたいな方法で吸血鬼を生み出されるなんて堪った物じゃないわねぇ。
 ま、私は生来の吸血鬼。そんな安物の連中とは違うわ」
「…生来の、吸血鬼?」
「生まれつきってこと。解るでしょ?」
「石仮面にも頼らず、道具も用いず…生まれた時から吸血鬼だったのか?」
「そ。 ま、昔のことはあんまり覚えてないけどね。どうでもいいし。」

漫画を読みながらそう語る彼女に、ジョナサンは何ともいえぬ表情を浮かべていた。
石仮面を用いていない生まれつきの吸血鬼。そんな存在がいるとは知りもしなかった。
彼女は自身の出自を「あまり覚えてない」と言い、過去について詳しく語ろうとはしていない。
これは推測だが…『石仮面で生まれた吸血鬼同士の交配で新たな吸血鬼が生まれる』ということもあるのだろうか?
それで彼女のような生来の吸血鬼も生まれる、ということはあるのかもしれないが…

―――そもそも、彼女は何とも奇妙な吸血鬼に思える。
特にこちらの隙を突こうともせず、本を食い入るように見て楽しんでいる。
一応会話はしてくれているのだが…こうして何とも暢気な態度を貫いている。
飄々としているのは確かだが、ディオのような凶暴性は殆ど感じられない…。
出会った当初は、吸血鬼の例に溺れない邪悪な存在なのかと思ったが…
…いや、あれは自分の過失だ。あの時攻撃してしまったのは完全に僕の早とちりだった。

「―――というか、もしかして…貴方って『外の世界』の人間?
 幻想郷だと『生来の妖怪』なんて別に珍しくも何ともないのだけれど」

ジョナサンが思考をしていた最中、レミリアが問いかけてくる。
彼は疑問を抱いたように彼女の顔を見た。

「…幻想郷?」
「あ、やっぱり外の人間ね。…いいわ、話してあげる」

139Scarlet Overture ◆n4C8df9rq6:2013/06/20(木) 20:56:47 ID:baQzLdvQ0

聞き慣れぬ単語に疑問を抱いたジョナサンだが、それを見たレミリアの反応は「予想通り」と言わんばかりだ。
そして彼女は、ゆっくりと『幻想郷』について語った。
極東の国の山奥、巨大な結界によって隔離された『楽園』。
文明の発達した現代社会(『外の世界』と称するらしい)の裏で人間、妖怪、神が共存しているという郷。
外ではとっくの昔に廃れている『幻想の力』が当たり前のように存在している世界。
それが『幻想郷』だ、と。彼女によれば、この会場は『幻想郷そのもの』に見えて少し違うらしい。
そしてレミリアは、外の世界から幻想郷に流れ着いた妖怪…とのこと。
―――人間と、人ならざるものが共存する地。ジョナサンの常識ではとても考えられない世界だ。
吸血鬼もまた、その世界では平穏に暮らしているのだろう。
そう思っていた最中、レミリアが少しばかり何か思い出したかのように顔を上げる。

「まぁ、こんな所かしら。…さて、質問は特にないわね?」
「ああ、今の説明で理解したよ。」
「宜しい。」

レミリアはニコリと微笑みながら短くそう言う。
どこか尊大にも見える態度をしていたかと思えば、少女のような笑みを浮かべている。
そんなレミリアの様子に、ジョナサンは彼女のことをどことなくつかみ所がないようにも思えた。

「さて、それじゃ説明は終わりと。それで…私の方針、言わせてもらうけど」
「…ああ。」

「私はねぇ。人間の血は吸うけど、何もこんな殺戮までするほど血には飢えちゃいないわ。
 それに『殺し合いをしてもらう』ってのが気に入らない。完全に上から目線だもの。
 この私に向かって「こうしろ」だなんて指図をしてきてるのよ?アイツら。ムカつくったらありゃしないわよ。
 …ま、要するに殺し合いに乗るつもりなんてない。むしろ『荒木』と『太田』を徹底的に叩きのめしてやるつもり」

ようやく読んでいた漫画を机の上に置き、両腕を組みながら彼女は自らの意思を告げる。
「主催者が気に入らない」、それ故に「反抗する」。
レミリアの方針はある意味でジョナサンと同様、至ってシンプルなもの。
『永遠に紅い幼き月』はいつだって傲慢だ。指図されて黙って従うわけはない。

「それで共闘を?」
「そうゆうことよ。さっきは少しばかり茶番に付き合ってやったけど…
 見なさいよ?貴方から受けた傷、けっこー痛いんだから」

そう言って少女は左手の傷をぶらぶらと見せびらかす。
指や掌の広い部分が黒く焼け焦げている。先程よりは治っているようだが、やはり波紋による負傷。
彼女は平然としてはいるものの、通常の傷よりも治癒はかなり遅いようだ。
そのことを改めて認識し、ジョナサンは申し訳なさそうな表情を浮かべ…深々と頭を下げた。

「レミリア。先程は、本当に申し訳無かった…。
 君の話を聞こうともせず、僕の安易な思い込みで攻撃してしまって…」
「え、あー…いいのよ別に。そこまで謝んなくても…」

ジョナサンの律儀な謝罪に少しばかり驚いたのか、レミリアがそれを制止する。
彼女辛すれば少しからかった程度のつもりだったのだが、どうにも彼は生真面目な性格のようで…。
幻想郷の連中は嫌味や皮肉混じりに会話する奴が多いだけに、こうも真面目に返事を返されるとちょっとばかし調子が狂う。

「ま、まぁとにかく…そうゆうわけだから。
 こうして私の話を黙って聞いてるってことは、貴方もこのゲームに乗るつもりはないんでしょ?
 なら話は早い。―――手を組みましょう、ジョジョ。」

フッと口元に笑みを浮かべながら、少女が目の前の青年に小さな手を差し出してくる。

140Scarlet Overture ◆n4C8df9rq6:2013/06/20(木) 21:00:03 ID:baQzLdvQ0


ジョナサンは思う。
――目の前の少女は『吸血鬼』。ディオと同じ種族だが、彼とは違う。
幻想郷という地で、彼女は平穏に暮らしていたという。
こんな殺し合いに乗るつもりもないことも、はっきりと宣言した。
そして、僕に対し協力を求めてきた。共に主催と戦う為の、協力関係を。
…正直に言って、最初は吸血鬼である彼女のことを少しばかり疑っていた。
こうして飄々と様子を伺い、隙を突いて攻撃してくるのではないのか。そう思っていたのだ。
「吸血鬼である」という理由で警戒し、最初は攻撃すらも行ってしまった。
しかし…彼女と話し、その事情などを聞いて僕は気付いたんだ。
彼女のことはきっと信用出来る、と。
共に主催者を倒す為の力になってくれる、と。
ジョナサンは、心で理解したのだ。

それ故に、彼は逞しい手を差し出したのだ。


「―――あぁ、解った。君を信用しよう。そして…これから共に闘おう、レミリア・スカーレット!」

「ふふ…感謝するわ。ジョナサン・ジョースター。」


互いに握手を交わし、ジョナサンとレミリアは共闘を誓う。
呼吸から生み出される太陽の波紋で戦う「波紋戦士」。
闇の力を振り翳す夜の支配者「吸血鬼」。
本来ならば相容れぬはずの二人が、殺し合いという現実を前に共に手を組んだのだ。

二人の行く末は「殺し合いの打破」か。
それとも「絶望の最期」を迎えることになるのか。
―――その結末は、今はまだ…誰も知らない。


◆◆◆◆◆◆



「ほらレミリア、本ばっかり読んでないで行くぞ?」

「えー、今いい所なのにー…ほんのちょっと。あとほんのちょっとだけ」

「…本は後で、な?」

「…もー、仕方無いなぁ…」

先程の会話の後、客間でちゃっかりピンクダークの少年を再び読み始めようとしていたレミリア。
しかし寺から移動しようとしたジョナサンに咎められ、ぶーぶーと文句を垂れながら漫画を閉じてデイパックにしまった。

漫画を読破している場合じゃないぞ、お嬢様。


【E-4 命蓮寺/深夜】

【ジョナサン・ジョースター@第1部 ファントムブラッド】
[状態]:左頬に掠り傷(処置済)
[装備]:シーザーの手袋@ジョジョ第2部
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:荒木と太田を撃破し、殺し合いを止める。ディオは必ず倒す。
1:レミリアと共に行動。彼女はきっと信用出来る。
2:スピードワゴンらと合流する。レミリアの知り合いも捜す。
3:打倒主催の為、信頼出来る人物と協力したい。無力な者、弱者は護る。
4:名簿に疑問。死んだはずのツェペリさん、ブラフォードとタルカスの名が何故記載されている?
  『ジョースター』や『ツェペリ』の姓を持つ人物は何者なのか?
[備考]
※参戦時期はタルカス撃破後、ウィンドナイツ・ロットへ向かっている途中です。
※今のところシャボン玉を使って出来ることは「波紋を流し込んで飛ばすこと」のみです。
コツを覚えればシーザーのように多彩に活用することが出来るかもしれません。
※幻想郷について大まかに知りました。

【レミリア・スカーレット@東方紅魔郷】
[状態]:霊力消費(微小)、右手に軽い波紋の火傷(行動及び戦闘においての大きな支障は無し)、再生中
[装備]:なし
[道具]:「ピンクダークの少年」1部〜3部全巻@ジョジョ第4部、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:主催者共を叩きのめす。
1:ジョジョ(ジョナサン)と行動。
2:自分の部下や霊夢たち、及びジョナサンの仲間を捜す。
3:自分から積極的に仕掛けることはしないが、敵対するなら容赦なく叩き潰す。
4:ジョナサンと吸血鬼ディオに興味。
5:…ピンクダークの少年の作者の岸部露伴って、名簿にいたわよね?
[備考]
※参戦時期は少なくとも非想天則以降です。
※波紋のダメージで受けた傷は通常の傷よりも治癒が遅いようです。
※「ピンクダークの少年」の第1部を半分以上読みました。

※ジョナサンとレミリアは互いに参加者内の知り合いや危険人物の情報を交換しました。
どこまで詳しく情報を教えているかは未定です。

141Scarlet Overture ◆n4C8df9rq6:2013/06/20(木) 21:00:29 ID:baQzLdvQ0

<シーザーの手袋@ジョジョ第2部>
ジョナサン・ジョースターの支給品。
波紋戦士であるシーザー・アントニオ・ツェペリが身につけていたグローブ状の手袋。
特殊な石鹸水が仕込まれており、手袋からシャボン玉を精製することが出来る。
シーザーは自らの波紋をシャボンに伝導させ、飛び道具として用いていた。

<「ピンクダークの少年」全巻@ジョジョ第4部>
レミリア・スカーレットの支給品。
漫画家・岸部露伴のデビュー作にして代表作である少年マンガ。
サスペンス・ホラー風の作品で、1〜3部の巻がセットでエニグマの紙の中に入っている。
グロテスクなシーンが多々あるものの、個性的でスリル溢れる作風に加え登場人物の特徴的なポーズや擬音が魅力である。
人によってはっきりと好き嫌いが分かれるマンガであるが、レミリアは割と楽しんで読んでおり続きが気になっている。

142 ◆n4C8df9rq6:2013/06/20(木) 21:01:04 ID:baQzLdvQ0
投下終了です。
指摘やツッコミ所があればお願いします。

143名無しさん:2013/06/20(木) 21:12:02 ID:ggOEIbuE0
投下乙です
レミィとジョナサンは紳士とお嬢様でいいコンビになりそうだ
何よりレミリアが可愛い!!

144 ◆YF//rpC0lk:2013/06/20(木) 21:47:11 ID:.b3OpL2c0
投下乙です
波紋使いと吸血鬼でどうなるかとヒヤヒヤしていましたが(某ロワではジョナサンがマーダー化してたらしいですし)
仲良くなれてよかったです

それとこの二人が並ぶと歳の離れた兄弟にしか見えないのは私だけでしょうか?

145 ◆YF//rpC0lk:2013/06/20(木) 21:51:26 ID:.b3OpL2c0
それと今見返すと矛盾していた部分があるので訂正いたします。

>>53『夜の竹林を行く』
ウィル・A・ツェペリの参戦時期について
×ウィンドナイツロッドに到着した直後
  ↓
○ウインドナイツロッドの入り口のトンネルを抜けた直後

146名無しさん:2013/06/21(金) 01:55:27 ID:G6ZN6BHEO
書き手枠について質問
ジョジョの本編漫画に出たキャラを小説版の時間軸から出すのってアリか?


パンナコッタ・フーゴ@第五部を恥知らずのパープルヘイズの時間軸から

147 ◆YF//rpC0lk:2013/06/22(土) 17:20:47 ID:3r7NfuLc0
>>146
回答が遅れました
ジョジョキャラの書き手枠の時間軸に関しては、あくまで「本編および短編漫画内」までとします

話は変わりますが、◆n4C8df9rq6氏の『Scarlet Overture』に関して
>そう言って少女は左手の傷をぶらぶらと見せびらかす。
>指や掌の広い部分が黒く焼け焦げている。先程よりは治っているようだが、やはり波紋による負傷。
と言う部分がありますが、ここは「右手の傷を〜」に修正した方がいいですか?

148 ◆n4C8df9rq6:2013/06/22(土) 22:15:02 ID:gK7t.s/20
恥ずかしいことながら今指摘されて気付きましたorz
「右手の傷」に修正お願いします

149 ◆n4C8df9rq6:2013/06/24(月) 17:26:08 ID:QeZv8Wes0
グイード・ミスタ、十六夜咲夜、リンゴォ・ロードアゲイン、秋静葉(書き手枠)
予約します

150 ◆n4C8df9rq6:2013/06/30(日) 07:12:50 ID:8.8JpCME0
延長します。

151 ◆YF//rpC0lk:2013/06/30(日) 23:03:34 ID:ZSgY9HSs0
自分も、魂魄妖夢、ブローノ・ブチャラティ、プロシュートで予約しておきます

152 ◆n4C8df9rq6:2013/07/02(火) 22:14:42 ID:pJTTEsRM0
すいません、予約から十六夜咲夜を外します

153 ◆n4C8df9rq6:2013/07/02(火) 23:00:39 ID:pJTTEsRM0
そしてグイード・ミスタ、リンゴォ・ロードアゲイン、秋静葉(書き手枠)
投下します。

154Red Dead Redemption ◆n4C8df9rq6:2013/07/02(火) 23:01:37 ID:pJTTEsRM0


そこは木々の間から僅かな月の光が指す原生林の内部。
『魔法の森』。化物キノコの放つ胞子が宙を舞い、瘴気による悪環境を生み出している深い森。
「普通の人間ならば呼吸をするだけで体調を崩す」と称されるレベルだ。
しかし、主催者の何らかの力によるものか…その瘴気は普段と比べれば遥かにマシな程度にまで抑えられていた。
通常の人間でも森の内部における活動が可能になっているのだ。とはいえ、流石に長時間の滞在となれば多少なりとも体調に悪影響を及ぼす可能性が出てくるが。

「メンドーなことに巻き込まれちまったぜ…」

大きな樹木の傍に立つ一人の男が、現実を改めて認識しつつ気怠げに呟く。
その男の名はグイード・ミスタ。ギャング組織「パッショーネ」の一員にしてスタンド使い。
ジョルノ・ジョバァーナが組織のボスになって以降、事実上のNo.2として見られている。

さっきまで自分が何をしていたかを思い出せない。
軽く痛む頭を片手で抱えるように触りながら、彼は軽く舌打ちする。
ワケもわからずに殺し合いの場に巻き込まれてしまった。職業柄、殺人そのものに抵抗はないが…こんな催しに付き合うほど悪趣味でもない。
総勢90名もの参加者によるルール無用の殺し合い?馬鹿言え。ふざけやがって。
ギャングの抗争でも何でもない、享楽の為の殺し合いにわざわざ乗れってか?
即座に「NO」って言ってやりてー所だぜ。第一、あの場には女子供もわんさかいた。
つまり、此処は俺みたいなギャングだろうと女子供だろうと『参加者』として駆り出されてるってワケらしい…。
悪趣味にも程があるぜ、クソッタレ。
荒木飛呂彦に、太田順也…とか言ったっけな?アイツらには絶対に『オトシマエ』を付けてもらわなくっちゃあな…

だが、どうする?
反抗した所であの場の女のコみてーに頭をフッ飛ばされちゃあ敵わないからな…
どうにかしてアイツらを攻略する方法を捜さなくっちゃあならねえ。その為には仲間が必要だ。
名簿を見る限りではジョルノの名は見受けられた。…アイツは頼りになるだろう。
だけど、それよりも気になることは――――

「『ブチャラティ』『プロシュート』『ディアボロ』…何であいつらの名が記載されてたんだ…?」

そう、死んだはずの人間の名前が記載されているのだ。

155Red Dead Redemption ◆n4C8df9rq6:2013/07/02(火) 23:02:12 ID:pJTTEsRM0

ブローノ・ブチャラティ。俺の所属していた護衛チームの頼れるリーダー。
だが、ボスとの抗争の末に死亡した。ジョルノがその意志を受け継いだんだ。

プロシュート。かつて俺たち護衛チームが戦った『暗殺チーム』の一員。
奴はブチャラティと戦った末に死亡した、とスデに聞いている。

ディアボロ。俺たちが裏切ったギャング組織「パッショーネ」のボス。
レクイエムに目覚めたジョルノに倒され…死んだはずの男。

みんな死んだはずの人間だ。いるはずがない。
だが、この名簿には確かに載っている。こいつは一体どうゆうことなんだ?
まさか、連中には死者を生き返らせる能力でもあるっていうのか?
それとも何らかの意図によるウソの記載?
…どちらにせよ今はまだ何も解らねえ。情報が足りなすぎるんだからな。そのことは保留だ。

「とりあえず…拳銃があっただけマシか?」

そうぼやくミスタの右手に握り締められているのは小型の拳銃。
まるで玩具のように小柄であるその拳銃は『ダブルデリンジャー』。
ミスタに支給されたランダムアイテムの一つ、上下2連の中折れ式シングルアクション拳銃だ。
単純な機構故に故障しづらく、小型で隠し持つことが容易であるという「護身」や「暗殺」向けの拳銃だ。
とはいえ構造上装弾数は2発のみ。極端に銃身が短く、銃弾の飛距離も長いとは言い難い。
拳銃を手に入れられただけマシだが、この小さな銃でどこまで戦闘を乗り切れるか…
出来れば手慣れてる奴…そう、リボルバーが欲しかったんだけどな。
だが、この手の銃は威力も十分にあると聞く。それに、俺の「ピストルズ」で飛距離とかはある程度ならカバーは出来るだろう。
…ともかく、今回も何とかなるといいんだけどな。

銃を試しに真っ直ぐ構えてみる。…やっぱりっつうか何つうか、手には馴染まねーな。
ここまで小振りのサイズの銃を手にした経験は殆ど無いだけに「手慣れない」というのがまず第一の感想。
構えづらいし、小さいせいで照準も妙に合わせづらい。
こうゆう、デリンジャーとかはは西部劇でもよく出てきた銃らしいが…

「…やっぱ『護身用』だな…」

俺は少しばかり文句を垂れるようにぼやく。
欲を言えばリボルバーが欲しかった。こうゆう護身用のデリンジャーとかよりな。
だが、不満を抱いていた所で何も始まらない。
ともかく、今の俺に必要なのは「仲間」と「情報」だ。あの主催者をブチのめす為に必要だ。
そうゆうわけで…そろそろ動くとするか。




(あ、そういやもう一つ支給品あったな。新聞紙だったけどよ。
 確か…カカシネンポー?とかそんな名前の。妙に固っくるしい文章で読んでて退屈だったけどな)

156Red Dead Redemption ◆n4C8df9rq6:2013/07/02(火) 23:03:46 ID:pJTTEsRM0
◆◆◆◆◆◆





彼女は呆然と膝をついていた。

その瞳は虚ろであり、宙を眺めているかのようだ。

顔に張り付けられているのは唖然とした絶望の表情。

さっき起こった現実を、現実だと認識したくなかった。

でも、頭は既にその事実を理解している。本物だと解っている。

もはや膝に感じる数多の雑草の気持ち悪い触感すら気にならない。

そんなことを気にしている余裕なんて、彼女にはなかったのだから。

何故なら、彼女は――――





「………穣子…………」



ぽつりと口から漏れた名前。
それは主催者の手により、見せしめにされた哀れな少女の名。
少女の名は「秋静葉」。
秋の神様の一人。寂しさと終焉の象徴。秋の『衰退』を司る少女。
―――そして、この催しの見せしめとなった「秋穣子」の姉だ。

ルール説明の後、気がつけば彼女は深い森――魔法の森の中に送り込まれていた。
先程起こったばかりの妹の死という事実を受け入れ切れられないままに。


「どうして…、…どうして…」

うわ言のように少女の口からぽつぽつと言葉が漏れ出てくる。

どうして、どうしてこんなことに?
あの場に拉致され、二人の主催者を目の当たりにした時から…私は恐怖していた。
いや、正確にはあの「太田順也」という男に恐怖していた。
何故かは解らない。だけど、本能が理解してるような、脳髄に染み付いてるような…そんな恐怖心を、あの男に抱いていた。
そして…太田順也から感じる、言いようのない既視感に…更なる畏れを感じた。
何で私はあの男を『懐かしい』と感じているんだろうか?何で私は…あの男を、こんなにも畏れているんだろうか?
これでは、まるで―――『神』を恐れる『人間』みたいじゃないか。
神である私が、こんなにもあの人間に恐怖している。

157Red Dead Redemption ◆n4C8df9rq6:2013/07/02(火) 23:04:21 ID:pJTTEsRM0

得体の知れぬ恐怖が晴れぬまま、男達から「殺し合いの開催」を宣言された時だった。
そう、隣にいた私の妹「穣子」があの男達に臆することもなく食って掛かったのだ。
殺し合いなんて冗談じゃない、って。――当然だ。あの娘は昔から、納得出来ないことには真っ向から立ち向かう。
そうやって、今回もああやって恐れることもなく立ち向かったんだろう。
行っちゃ駄目だ。あの男は絶対にマズい。そう言おうとした。でも、出来なかった。
怖かったから。妹のことよりも、得体の知れない恐怖が勝ってしまった。
声を出そうとしても、怖くて出すことが出来なかった。





そうして、気がついた時には。
二人に食って掛かった穣子の頭が なくなっていた。



紅葉なんかよりも、ずっと濃い『紅色』が散らばっていた。
そこから、私は呆然とするしかなかった。
目の前で―――穣子が殺されたという事実に気付いてしまったから。
止められるはずだったかもしれないのに止められなくて、あの子を死なせてしまったから。
そこから男達が何かルールを説明していたらしいが、私の頭には殆ど入ることはなかった。
あの瞬間、私の頭の中が真っ白になってしまったから。


ゲームが始まり、こうして会場の森の中に送り込まれても…彼女は動くことが出来なかった。
ただただ、うわ言のような言葉を漏らしながら呆然としていた。
今もこうして何も考えられなかった。


―――それから、目の前より「銃を携えた男」が近づいて来ていることに気がついたのは少し時間が経った後。

158Red Dead Redemption ◆n4C8df9rq6:2013/07/02(火) 23:04:49 ID:pJTTEsRM0
◆◆◆◆◆◆


「…子供か」

木々の間から僅かに差す月明かりを浴びる男が、拳銃を片手に低い声で短く言葉を紡ぐ。
少女はゆっくりと目の前に立ちはだかる拳銃の男を見た。
月光で服装などの出で立ちの部分のみ少しだけ姿が見えるが、薄暗く顔がよく見えない。
少々古びた、小汚い服を身に纏っているのが解る。僅かに見える口元には髭が生えている。
声から察するに中年前後の男性に思える。声色はどこか冷たく、素っ気ないように感じる。
そして―――説明のし難い、でも確かに存在する『殺意』が男から感じられた。

「お前も、この殺し合いにおける参加者だろう」

「………………………。」

私は何も答えない。
何も答える気になれない。元より殺し合い自体がどうでもよかった。
私の力で生き残れる気なんてしないし、穣子が死んでるんだからどうでもいい。
…あぁ、そういえば皆死ねば一つだけ願いが叶うんだっけ?
でも、無理だろう。私たちはただの秋の妖怪。戦闘能力なんて、他の大妖怪と比べればずっと低い。
勝てるわけがないし、生き残れる気もしない。
ならいっそ、もう殺されても良かった。穣子の後を追うのもいいかな、って。
そう思っていた。

「……殺してよ」

「何?」

「貴方は…生きたいんでしょう?この殺し合いで…生き延びたいんでしょう?
 なら…もう、私は…死んでもいいから… あの会場で…私はスデに、妹も殺されてる。
 この闘いで勝ち残れるワケもない、…だから。 私を、殺してよ」

私は、自分の思いを吐き出した。
お願い、その銃で私の頭を貫いて。
別に此処で死んだって構わない。
衰退の象徴のような、惨めな最期を迎えさせてよ。
これから襲いかかってくる恐怖に逃げ惑って殺されるくらいなら、妹と一緒に――――





「―――お前は、俺を侮辱しているのか?」


予想もしない返答が返ってきた。
男はそう吐き捨ててきた。
心底忌々しげに、私の言葉に対して苛立っているかのように。
私は、ぽかんと男を見上げていた…

159Red Dead Redemption ◆n4C8df9rq6:2013/07/02(火) 23:05:30 ID:pJTTEsRM0

「え…?」
「何の抵抗もせず、絶望に飲まれ、ただ呆然と殺されるのを待つだけか?」
「私は…、もう…」
「それ以上お前の言葉を聞くつもりはない」

目の前の男は私に失望したように言葉を吐き出す。
いや、そもそも元から期待すらされていなかったのかもしれない。
ただ単に予想通りに結果を前に改めて苛立ったのかもしれない。
――どちらにせよ、目の前の男は私を『見下している』のが解った。

「俺が『生き延びるために戦う』とでも…思っていたのか?」

「………………。」

「俺の望みは、『公正なる果たし合い』…それだけだ」

公正なる…果たし合い?

「お前のような小娘に、俺の世界は永遠に理解できないだろうな…
 いや…生長することも出来ず、前に進む意志をも放棄した『死にたがり』に理解させるつもりもない」

生長?前に進む…意志?



「―――そこで永遠に立ち止まっているのがお似合いだ、小娘」



目の前の男はそうやって私を見捨てるように言い放った。
私は何も言い返す事も出来ず、ただ唖然と男を見ていた。
そうして目の前の男は歩き出し、私の傍を通り過ぎようとする。
私の言葉を一蹴して、その場から離れようとしてる。
一瞬引き止めてみようか、という思考も浮かんだ。だけどそんな考えはすぐに吹き飛んだ。
止めた所で、どうにもならない。この男は…私を楽にしてくれないから。
私は、男が雑草を踏みながら歩く音をただ黙って聞くことしかできなかった―――

160Red Dead Redemption ◆n4C8df9rq6:2013/07/02(火) 23:05:55 ID:pJTTEsRM0

だけど、唐突にその音が鳴り止んだ。
膝をついている私の少し後ろの方で、男は立ち止まっていた。
ふと振り返って見た。――男は、私の方なんて見向きもしていない。
でも、何故か立ち止まっていた。
私は少し不思議そうに男を見てから、ようやく現状を理解することが出来た。


「…『参加者』だな?アンタら…」

もう一人、『銃を片手に持った男』が木々の奥底から姿を現したのだ。
新たに現れた男は、怪訝そうな表情で私たちを見ていた。

◆◆◆◆◆◆


「…………。」

「…オイ、アンタら。聞いてんのか?」

この俺、『グイード・ミスタ』はあれからダブルデリンジャーを片手に森を少しばかり進んでいた。
そうしたら、こんな風に二人の参加者らしき奴らを発見したってワケだ。
支給品に照明器具はあったが、そんなもの点けて歩いてれば遠距離から攻撃される危険性だって増すだろうから使ってない。
だから薄暗くてよく見えねーんだが…どうやら、一人は女のコ。もう一人は体格のいい男だ。
女のコらしき影はさっきから膝をついたままぽかんとこっちを見ている。
さっきの様子を見る限り、男はこの場を去ろうとしてたみたいだが…どうにも状況がよく解らない。
それに、男の方も女のコも方も何も答えてくれないって始末だ。
男の方は銃を片手に握り締めているし油断も出来ない。…にしても、返事が帰ってこない。
全く、何か一言くらい――――

「成る程、お前はいい目をしている」

「…は?」

目の前の男から唐突にそう言われた。
いきなりすぎる一言に、俺はうっかりぽかんとしてしまった。

「その様子を見る限りでは、銃を使うのにも慣れているらしいな」
「…何が言いてーんだ、アンタはよ?」

俺が銃の扱いに慣れていることをすぐに見抜いた辺り、シロートってワケじゃないらしい。
こいつも片手に銃を持っている…というより、よく見たらアレは俺の銃じゃないのか?
それに、鋭く真っ直ぐにこちらを見据える眼差しからもただ者じゃないことは理解出来る。
…そもそも、こいつの意図が少しばかり読めない。一体何が目的だ…?
そう思っていた矢先だった。



「――お前との果たし合いを、申し込みたい」
「……何?」

161Red Dead Redemption ◆n4C8df9rq6:2013/07/02(火) 23:06:25 ID:pJTTEsRM0

―――男の発言に対し、俺は少し呆気にとられたように言葉を漏らしてしまった。
果たし合い。つまり、決闘。
出会ってからものの数分も経っていない男からの、いきなりの申し込み。
こいつ…いきなり何なんだ…?イカレてんのか?この状況で…?

「自己紹介させてもらおう。俺の名は、『リンゴォ・ロードアゲイン』」
「おい、アンタ…」
「そして聞こう。お前は、『これ』が見えるか?」
「―――!!」

リンゴォと名乗った男がそう言った直後のことだった。
―――男の右肩に、突如『何か』が出現しやがった。
それは触手の生えたタコみてーな…何とも形容し難い見た目をした何か。男の右肩に纏わりつくように存在している。
その時俺は目を丸くして、身構えた。…そうだ。この感覚は、間違いなかった。
アレは、『スタンド』だ。

「テメェ…スタンド使いか」
「その通り…。俺のスタンドは―――『マンダム』。
 能力は、時間をきっかり6秒だけ巻き戻すこと。ほんの6秒…それだけが俺の能力
 そして獲物はこの回転式拳銃一丁、装弾数は6発。…『ミスタの拳銃』、と書いてあった」

野郎…、やっぱりアレは俺の拳銃だったらしい。…いや、それよりも…だ。
―――この野郎、自分で自分の能力をバラしやがったのか?
いや、そもそもコイツの言っていることは真実なのか?敵にスタンド能力が知られることは死活問題だ。
ブラフの可能性だってあるかもしれねーんだ。
一先ず、俺は怪訝な表情を浮かべながら男に問いかける。

「テメー、何故能力を明かした?」
「俺の求めているものは公正なる果たし合い。正々堂々とした決闘。
 それは俺の精神を生長させるモノ。故に手札は全て開示した。」
「成る程、マカロニ・ウェスタン気取りってワケかよ」
「……………。」

暗闇に少しばかり慣れて、男の瞳を見た時に…俺は気付いた。
こいつは、正真正銘の『狂人』だと。時代遅れの『刹那主義者』だってことを。
正々堂々とした決闘に身を任せ、命を賭ける…『死にたがり』の狂った野郎ってワケだ。
だが、決して卑劣な奴じゃあないらしい。
こうして自分の能力まで明かすくらいの奴だ。―――本物だ、こいつは。
ある意味で、本物の『荒野のガンマン』。…おもしれーヤツだ。
こんなヤツ、今まで見たこともない。ギャングにも存在していなかったタイプの人間。
精神の生長の為に公正なる果たし合いを挑む。成る程、そんな奴が俺との闘いを望んでいるっつうなら…
―――少しだけ、付き合ってやるぜ。リンゴォ・ロードアゲイン。

162Red Dead Redemption ◆n4C8df9rq6:2013/07/02(火) 23:06:57 ID:pJTTEsRM0

「俺は…『グイード・ミスタ』だ。…そしてスタンドは『セックス・ピストルズ』」
「……。」
「能力は…銃弾に取り憑き、その軌道を自在に操作すること。
 ちっとばっかし特殊でな。6体で一つの、それも意思を持ったスタンドってワケだ」


『――――ヤッハァーー!!!』
『ミスタァー!アイツが『敵』ナノカァー!?』
『アノオッサン、銃構えてガンマン気取リカヨォー!俺タチ相手ニ度胸あるゼーッ!』
『つかコノ拳銃セメーヨッ!何デ弾丸2発シカ装填サレテネーンダ!?』

そう言って、俺の構えてる拳銃に6体のスタンド…『セックス・ピストルズ』が出現する。
口々に色々と喋ってやがるがまぁいつものことだ。気にすんな。
意思を持ったスタンドなんだから、賑やかなのはご愛嬌ってワケさ。


「成る程…やはりお前は俺の望んだタイプの人間らしい。
 目的の為に、他者を殺すことをも厭わない…気高き殺意を持つタイプの人間」
「ご期待に添えてどうも、とでも言っとくぜ」


静寂が周囲を支配し、互いに銃を片手に向かい合う。

鋭い眼光が交差するかのように、相手を真っ直ぐに見据える。

この相対は、二人のガンマンの『決闘』の始まりを意味していた。

互いに睨み合うように立ち尽くす二人。

―――そして、リンゴォが一礼をしつつ…言った。





「それでは―――よろしくお願いします。」

「……、…よろしくお願いします」

163Red Dead Redemption ◆n4C8df9rq6:2013/07/02(火) 23:07:26 ID:pJTTEsRM0
◆◆◆◆◆◆


二人の男が、決闘を始めていた。
ただぽかんとそれを眺めることしか出来なかった私がいた。
この男達は、危険だと思った。
どちらも幻想郷では全く見かけなかった種類の人間。
多分…『目的の為に相手を殺すこと』を平然と出来る人間だって。
こうして何の躊躇いもなく、互いに銃を向けているんだ。
―――それも、あんなに冷たい瞳で。
暗がりに目が慣れ、ようやく気付けた。あの二人の瞳の冷たさに。
引き金を引くことに躊躇いを持たず、戦えるということを。

どうして、貴方達はそんなに『強い』の?
どうして、貴方達は…こうも平然と恐れることなく『戦える』の?
どうして、貴方達は『恐れない』の?

私は、あの主催者に畏れたまま動くことが出来ない。
リンゴォという男からも罵られ、見下された。
何も出来ずに、絶望して死にたがっていた私がいた。

…悔しい。
少しでもそう思ってる自分がいることに、気付いた。


◆◆◆◆◆◆

164Red Dead Redemption ◆n4C8df9rq6:2013/07/02(火) 23:08:46 ID:pJTTEsRM0


先に動いたのはリンゴォだった。

瞬時に向けられた拳銃。
そして―――パァン、と乾いた銃声が森に響き渡った。
互いの一礼の直後、リンゴォが構えていた拳銃から素早く弾丸が放たれたのだ。
ミスタは咄嗟に右に跳んで樹木の後ろに隠れるように回避する。

「っ、」

ミスタは木の後方に隠れて壁にしながら咄嗟に銃を構えた。
――やはりこの暗がりの中だ、距離を取り過ぎれば視認が難しくなる。
だが、まだ距離は近い。それに、奴が移動する気配も見せていない。
ならばまだ、『コイツら』で撃ち抜ける―――!

「――『セックス・ピストルズ』ッ!!」

『イィィィィーーーヤッハァァァァーーーーー!!!』

引き金を引いた瞬間、ピストルズの取り憑いた弾丸が勢いよく放たれる!
普通の銃では有り得ない『軌道の曲がる銃弾』が、暗がりの中のリンゴォ目掛けて飛んでいく。
まるで相手を追尾するかのような軌道を見せるその弾丸は、確実にリンゴォを捉えるだろう。

―――捉える、はずだった。


「『マンダム』」

リンゴォが、右腕の手首に触れているのが一瞬だけ見えた。
その直後のこと。





―――――――――――――




「――――!?」

ミスタは、驚愕で目を見開いていた。
そう。――ミスタは『木の後ろに隠れて銃を構えようとしていたのだ』。
銃弾を避けた直後に取ったはずの行動だ。
無論、デリンジャーから銃弾は「一発も放たれてない」!
これが、あのリンゴォの「時を巻き戻す能力」―――!
そう思っていた矢先のことだった。

165Red Dead Redemption ◆n4C8df9rq6:2013/07/02(火) 23:09:59 ID:pJTTEsRM0


撃鉄が叩かれ、破裂音が響き渡る。
それと同時に放たれたのは――――


「ぐ、あ―――っ!!?」

ミスタの左肩に鋭い痛みが走る。
それと同時に感じたのは、生暖かい液体の感覚。紛れもない、己の血液だ。
リンゴォの放った弾丸がミスタの左肩に着弾したのだ。
―――それはミスタに避ける隙をも与えない、一瞬の攻撃。
突然時間を巻き戻され、現状を把握していたミスタの一瞬の隙を狙った射撃だった――!

「『一手』見誤ったな、グイード・ミスタ」

そして暗闇の中でも臆することなく、リンゴォは大胆とも取れるような動きでミスタの方へと接近していく!
先程の着弾で完全に位置を把握したのか。
その動きは鋭く、素早く、そして微塵の迷いもない
リンゴォは、至近距離からの射撃でミスタにトドメを刺そうとしていたのだ!

カチャリと、再び撃鉄が下ろされる。
木の裏に隠れるミスタに接近しつつ、リンゴォは引き金を引こうとする―――!



「う、おおおおおおーーーーーッ!!!!」

「―――!」


しかし、リンゴォが引き金を引く前に――彼は動いていた。
雄叫びのような咆哮と共に、樹木の後ろに隠れていたミスタが飛び出す。
飛び出して、すぐさま―――あろうことか、リンゴォへと向かい強引に突撃をしたのだ!
そして、ミスタが手元のデリンジャーを片手で構えた!

「―――ブチ込んでやるッ!!」

リンゴォの方へと突撃しながら、ミスタのデリンジャーより弾丸が放たれる!
これに対処するように、リンゴォも咄嗟に銃弾を放つ!

――リンゴォの銃から放たれた弾丸は、ミスタの右腕へ先に着弾。
対してミスタの放った銃弾は、リンゴォの身体を掠めるだけで着弾することはなかった―――
着弾することはなかった、はずだった。
しかしミスタのスタンドは、スデに『放たれた銃弾』に取り憑いていたのだ…!


『『『『『『タップリと!受ケ取リヤガレェェェェーーーーーッ!!!!!!』』』』』』


6体のセックス・ピストルズが――リンゴォの胴体を掠って通り過ぎたはずのデリンジャーの銃弾を『蹴り飛ばす』ッ!
蹴り飛ばされた弾丸は、そのまま軌道を強引に変えられ別方向へと飛んでいく!
そう、軌道を変えられた弾丸が飛んでいく方向は――――

166Red Dead Redemption ◆n4C8df9rq6:2013/07/02(火) 23:11:03 ID:pJTTEsRM0


「――くッ…!?」

リンゴォの左の二の腕を、銃弾が勢いよく貫いた!
そう、ミスタはあることに気付いていたのだ。リンゴォがマンダムを使う直前に「左腕で右手首に触れていたこと」を。
一瞬の光景であるが故に、腕時計の存在には気付かなかった。
だが、『右手首に触れる』という行為に意味があるということをミスタは瞬時に推測し、理解したのだ!
それ故に、彼はあの行動を『スタンド発動の為のスイッチ』と理解したのだ。
そして彼は、強引に突撃しリンゴォの不意を突き左腕を攻撃したのである。
右手首に触れさせない為、相手の片手を撃ち抜いたのだ!
弾丸による銃創でリンゴォは左腕から出血し、怯むように仰け反る。
その隙を逃さず、ミスタは至近距離に接近して銃を構えていたのだ――!

「これが『トドメの一発』だぜ、リンゴォ」

デリンジャーの短い銃身を、リンゴォの頭部に向けていた。
完全な、零距離。引き金を引けば、まず当たる。
左腕を貫かれたリンゴォは、恐らく時間を巻き戻す余裕もない。
そんなことをした瞬間、まず銃弾で穿たれるのだから。
だが、リンゴォは一切怯むこともなく。臆することもなく。
―――すかさず、堂々と右腕の銃をミスタに向けたのである。
ミスタもこれには、僅かながら驚愕をする。

「……面白い、面白いぞ…グイード・ミスタ」
「そいつはどうも」

互いに銃口を向けあい、再び睨み合いのような状態となる。
ほぼ真正面とも取れるような至近距離で、彼らは銃を構え合う。


「ミスタ…。俺の銃と、お前の銃」
「…………」
「――果たして、『どちらが早いか』?」
「さしずめ、早撃ち対決…ってワケか」

フッと口元に笑みを浮かべながら、ミスタが呟く。
こうして拳銃使いと一騎打ちをすることなど、滅多にない機会だった。
果たして自分がこの男との決闘を楽しんでいるのか。
それとも、この場の流れに乗せられているだけなのか。
どちらかは解らない。だが―――――一つだけ確かなことは。


『目の前の、この男と』―――『決着を着けたい』ということだ。


「上等だぜ、リンゴォ」
「ああ、こちらこそ…。決着と行こう、ミスタ」

167Red Dead Redemption ◆n4C8df9rq6:2013/07/02(火) 23:11:45 ID:pJTTEsRM0


いつの間にか、二人は数歩だけ距離を取っていた。
銃を片手に握りながら、再び鋭いまなざしで睨み合う。
銃を構えながら、一歩一歩…二人は円を描くように向かい合いながら動いていた。
さながら獣が互いを威嚇するかのように。
そしてミスタが静葉のいる位置を背にした所で、互いに動きを止める。
再び静寂が、周囲を包む。刹那の緊張感が、二人の間に流れる。
正々堂々、決着をつける。――次の一撃で。
それはさしずめ、西部劇のガンマンの決闘が始まる瞬間のようだった。
―――『男の世界』。二人のスタンド使いは、瞳に『漆黒の殺意』を宿す。
それは「対応者」としての態度ではない、「決闘者」として戦いと向き合う姿勢。
決して油断もなく、手を抜くこともなく。



目の前の『敵』と、果たし合う。








―――そして、二人が瞬時に銃を構えた。










乾いた銃声が静かな森の中に響き渡る。








次の瞬間に、崩れ落ちたのは――――








「――――………な、に…………?」



『ニャァ…』



先程響いた銃声は 

一発だけ。

グイード・ミスタが驚愕の声と共に、ゆっくりと崩れ落ちる。

唐突に、脈絡もなく猫の鳴き声が聞こえてきた。

168Red Dead Redemption ◆n4C8df9rq6:2013/07/02(火) 23:12:28 ID:pJTTEsRM0
◆◆◆◆◆◆


決闘は熾烈なものだった。
まるで死を恐れないような、むしろ死に真っ向から立ち向かうような。
そんな、苛烈な争い。
幻想郷には殆ど存在しなかった、全身全霊を賭けた命の奪い合い。

私は恐怖に負けて、殺し合いという恐怖に挑むことが出来なかった。

でも、目の前の二人の男は―――全く畏れてなんかない。

それどころか、こうして全力で戦い合っている。

自分の命を、とにかく燃やしている。

悔しかった。
何も出来ない自分が、悔しかった。
目の前の男達のように、燃え上がることが出来なかった。
自らの目的の為に、此処まで熱することが出来なかった。

―――いや、違う。
私は、そうしようともしなかったんだ。
ようやく、気付くことが出来た。
あのリンゴォという男の言葉の意味を、ようやく理解出来た。

私は、主催者への恐怖に屈して…『諦めていた』。
そう。――穣子のことでさえ。
何の抵抗もせず、何の行動も起こさず。

私は、何もかも放り出していたんだ。

本当に…私は馬鹿だ。
何も出来なくて、何もしなくて…馬鹿。神の名が廃るって物だ。
恐怖を物に出来なくて、何が神だ。
あの男達のような、『漆黒の意思』が―――欲しい。
目的の為に命を燃やせる精神を、私も掴み取りたい。

でも、どうやって?
私は幻想郷でも力の弱い存在。

私如きなんか、すぐにやられて――――



『ニャア』


デイパックから鳴き声が聞こえることに気付いたのは、その直後。

え、と目を丸くして静葉はデイパックの中を開いていた。

戦いを続けるリンゴォとミスタは、その行動に気付いていない。

―――秋の神は、その時一つの『力』を手にした。



その手に抱え込まれたのは、植物のような何か。


しかしそれは、気まぐれな動きで顔をぽりぽりと掻き…

そして、猫のような鳴き声を発していた。


それは秋静葉の支給品。


猫草―――『ストレイ・キャット』。



◆◆◆◆◆◆

169Red Dead Redemption ◆n4C8df9rq6:2013/07/02(火) 23:13:30 ID:pJTTEsRM0



ミスタが両膝を突き、拳銃を右手から落とす。

銃弾は既に左胸を貫かれていた。

対するリンゴォは、先程の左腕の傷以外に特に負傷はない。

そう、ミスタは『弾丸』を放っていなかった。

いや―――違う。

ミスタは、『弾丸を放つことが出来なかった』。


「ち、く…しょう……………―――――――――」

歯軋りと共に、ミスタがか細い声で言葉を漏らす。

―――そのままゆっくりと、正面に崩れ落ちた。

瞼が閉ざされ、荒い呼吸音が途絶えたのもそのすぐ後のこと。

同時に、ミスタの傍で6体のスタンド――『セックス・ピストルズ』の身体が次々と崩壊し、消滅する。

それは―――『グイード・ミスタ』の死を意味していた。




「―――――。」

リンゴォは、ただ唖然としたようにミスタの亡骸を見下ろしていた。
彼は既に、違和感に気付いた。
目の前の男が、引き金を引かずおめおめとこちらの銃弾を喰らったことを。
ミスタ程の拳銃使いならば、こちらの弾丸と同時に発砲することなど容易いはずだ。
こうも素直に銃弾を喰らうわけがない。
一体、何故――――

170Red Dead Redemption ◆n4C8df9rq6:2013/07/02(火) 23:15:06 ID:pJTTEsRM0




「はぁっ…はぁーっ…」

リンゴォはハッとした様子で、ミスタの斜め後ろの方向を見た。
そう。秋静葉が荒い息を整えていたのだ。
目を凝らして見た瞬間に、リンゴォは気付いた。
―――静葉の両腕に抱え込まれるように、『それ』が存在していたことを。


『ニャー…』

静葉の両腕に抱え込まれていたのは、まるで観葉植物のような。
それでいてどこか気味の悪い、奇妙な生物。
猫のような鳴き声を発しながら、ボリボリと身体を掻いている。
まさか、あの小娘――――リンゴォが目を見開いた。


ミスタが銃弾を放つことの出来なかった理由。
それは、引き金を引く前に『猫草“ストレイ・キャット”』の空気弾を片足に叩き込まれたからだった。
空気弾による衝撃で怯んだことで生まれた大きな隙。
それは、リンゴォの銃撃がミスタの心臓を貫くには十分な程の物だった。
この会場において支給品として用意された猫草は、『自身を手にした人物を主人として認識する』。
それ故に猫草は最初に自分を手にした静葉を主人とし、彼女の意思に従いミスタへ攻撃を行ったのだ。

「――…私は…勝ち残る…絶対に」

「…小娘…お前…」

息を何度も吸っては吐きながら、彼女は言葉を紡ぎ出す。
その手に猫草を抱えながら、ゆっくりと立ち上がる。
―――瞳には、恐怖と覚悟の入り交じった感情がこもっていた。

「この戦いで絶対に勝つ!!
 私以外の、89人の参加者全員を乗り越えて…!
 穣子を、生き返らせる!荒木と太田に…復讐する!!
 八百万の神の名において、宣言するわ!私は、この殺し合いを征する!
 ――――絶対に、絶対に…勝ち残ってやるっ!!」

秋の神―――「秋静葉」は、高らかにそう言い放った。
精一杯の声を、感情を、覚悟を吐き出した。
先程までの絶望に飲まれていた少女の姿とは、まるで違う。
それは願いの為に戦う決意をした、一人の神の姿だった。

171Red Dead Redemption ◆n4C8df9rq6:2013/07/02(火) 23:15:32 ID:pJTTEsRM0


リンゴォは、その時確信した。
果たし合いに水を差したのが、目の前の少女であるということに。


「―――殺してやる」

リンゴォの口から零れ落ちたのは、怒りで震えた声。

「―――絶対に殺してやるぞ、小娘……!!
 俺とミスタの公正なる果たし合いを、お前は侮辱したッ!!」

果たし合いを侮辱された。グイード・ミスタという気高き男を、横槍を入れて攻撃した。
その事実を前に、リンゴォは冷静さを大きく失っていた。
怒りに身を任せ、拳銃を静葉に即座に向ける。
その腕の苦痛も何もかも忘れ、ただ目の前の少女を殺害することのみを考えていたのだ。


―――だが、リンゴォもまた。握り締めた拳銃で攻撃することは出来なかった。


ボンッ、とリンゴォの身に鈍痛が走る。

まるで何か鉄槌による衝撃を直接叩き込んだような。

そんな苦痛が、突如彼の身を襲ったのだ。

「―――ご、ふっ………」

リンゴォの屈強な身体が、勢いよく樹木に叩き付けられる。
猫草の空気弾が、リンゴォにも襲いかかったのである。
その攻撃を防ぐ術もなく、彼は吹き飛ばされたのだ。

空気弾により吹き飛ばされたリンゴォを尻目に、静葉は背を向ける…。

「…いつか必ず、貴方も仕留めてやるから。覚えていなさいよ」

そうして、静葉はその場から足早に去っていく。
それはリンゴォとの戦いを避ける為の判断だったのか、初対面の際の意趣返しだけで留めたのか。
解らないが、彼女はとにかくリンゴォから離れて行ったのは事実だった―――

172Red Dead Redemption ◆n4C8df9rq6:2013/07/02(火) 23:16:16 ID:pJTTEsRM0
◆◆◆◆◆◆


「……………。」

時間を巻き戻し、彼女を逃がすまいとしていた。
だが、左腕の負傷と樹木に叩き付けられた衝撃により…それを行うことが出来なかった。
結果的に、彼は静葉を逃がしてしまったのだ。
――ギリ、と歯軋りをしながら…リンゴォはゆっくりとその両足で立つ。

あの小娘は、俺とミスタの決闘を侮辱した。

公正なる果たし合いを、穢した。

絶対に、許すものか。

俺は、必ず奴を殺してやる。男の世界を侮辱した、穢らわしき小娘を…絶対に!

その右手には拳銃をしっかりと握り締める。
屈辱と憎悪の籠められた指が、拳銃をがっしりと掴んでいる。
彼の怒りは収まらない。あの小娘を仕留めぬ限り、絶対に。
気高き世界を穢した者を許してたまるものか。
―――奴を、あの小娘を…この手で仕留める。

よろよろとした足取りで、リンゴォはその場から歩き出す。
向かう先は、あの少女が去っていった方向。
彼の瞳に宿るのは、焔のように燃え盛る『怒り』だった。



その場から去ろうとしたリンゴォ。
だが、彼はそうしようとした直前に行動を止める。



「………………。」


リンゴォは立ち止まり。足下に転がるミスタの死体を見下ろしていた。
何も言わず、無表情のまま彼の死体を眺める。
だが先程まで怒りを浮かべていた瞳に、僅かながらも…ある種の嘆きのような。
そんな感情を宿しているのが、少しでも見られたのだ。

173Red Dead Redemption ◆n4C8df9rq6:2013/07/02(火) 23:17:17 ID:pJTTEsRM0


「…グイード・ミスタ」

彼はゆっくりと片膝を突き、目の前のミスタの死体を見る。

「お前は、見事な『決闘者』だった」

静かに語りかけるように、リンゴォは言葉を紡ぎ出す。
そして、軽く一礼するように頭を下げ。

「お前の名は決して忘れないだろう。…安らかに眠れ、ミスタ」

―――そう言って、リンゴォは再び立ち上がる。
少しだけ、冷静さを取り戻したのか。その表情は精悍だ。
だが、内なる怒りは収まらない。この決闘者を侮辱したあの少女を許すつもりはない。

だからこそ、俺はあの少女に『決闘』を申し込む。
正々堂々とした果たし合いの上で、奴を殺す。
果たし合いを侮辱した者には、果たし合いで決着を付けなければならない。
それは自分の生長の為でもあり、そして目の前のミスタの名誉の為でもある。

必ず、あの小娘と決闘をし…殺す。

『漆黒の殺意』を胸に、決闘者リンゴォは森の中を進んで行った。
―――向かうは、あの少女が去っていった方向だ。



【グイード・ミスタ@第5部 黄金の風】死亡


【B-4 魔法の森/深夜】

【秋静葉@東方風神録】
[状態]:覚悟、主催者への恐怖(現在は抑え込んでいる)
[装備]:猫草(ストレイ・キャット)@ジョジョ第4部
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:穣子を生き返らせる為に戦う。
1:恐怖を乗り越えてこの闘いに勝ち残る。
2:とりあえず、これからどこへ向かおうか…。
3:二人の主催者、特に太田順也に恐怖。だけど、あの二人には必ず復讐する。
[備考]
※参戦時期は後の書き手さんにお任せします。
※一先ず南へと進んでいます。

【リンゴォ・ロードアゲイン@第7部 スティール・ボール・ラン】
[状態]:怒り、疲労(中)、左腕に銃創(出血中)、胴体に打撲(中)
[装備]:ミスタの拳銃(3/6)@ジョジョ第5部
[道具]:予備弾薬18発、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:公正なる果たし合いをする。
1:男の世界を侮辱した秋静葉と決闘する。
2:ジャイロ・ツェペリとは決着を付ける。
※参戦時期はジャイロの鉄球を防御し「2発目」でトドメを刺そうとした直後です。
鉄球や木片による負傷は主催者の力により完治しています。
※静葉を追って南下中です。


※ミスタの参戦時期は第5部終了後(ジョルノがパッショーネのボスになって以降)でした。
※ミスタのランダムアイテム「花果子念報@ダブルスポイラー」「ダブルデリンジャー(0/2)@現実」「予備弾薬×8」はB-4の魔法の森の中に放置されています。

174Red Dead Redemption ◆n4C8df9rq6:2013/07/02(火) 23:17:45 ID:pJTTEsRM0

<花果子念報>
グイード・ミスタに支給。
射命丸文をライバル視しているブン屋の鴉天狗、姫海堂はたてが発行する新聞。
念写によって得られた写真しか載せない為記事が新鮮味に欠ける、紙面が生真面目で面白味が薄いなどの理由で人気は低い。
新聞紙なのでよく燃える。窓拭きにも便利だ。

<ダブルデリンジャー>
グイード・ミスタに支給。
41口径の小型拳銃。非常にシンプルな機構故に故障が極端に少なく、サイズも小さく持ち運びしやすい。
銃身が極端に短いので、相手に押し付けるように射撃することが多いとされる暗殺向きの銃だ。

<猫草(ストレイ・キャット)>
秋静葉に支給。
元はブリティッシュ・ブルー種の猫だったが事故で死亡し、埋葬された際に植物と融合を果たした不思議な生き物。
周囲の空気を自在に操るスタンド能力「ストレイ・キャット」を持つ。
本ロワ内では「現在の所有者」を主人として認識し、主人の意思である程度猫草の攻撃を操ることが出来る。
現在の所有者以外の者が猫草を入手すると、その人物を『新たな主人』として認識する。

<ミスタの拳銃>
リンゴォ・ロードアゲインに支給。
ミスタが愛用する小型の回転式拳銃。装弾数6発、ハンマーの両サイドがフレームで覆われてるのが特徴。
銃の種類は作中では言及されていないが、S&W M49かS&W M15が有力とされている。

175 ◆n4C8df9rq6:2013/07/02(火) 23:18:46 ID:pJTTEsRM0
投下終了です。
指摘やツッコミがあればお願いします。

176 ◆n4C8df9rq6:2013/07/02(火) 23:40:49 ID:pJTTEsRM0
>>174
すいません、ダブルデリンジャーの弾丸は(1/2)でしたorz

177 ◆YF//rpC0lk:2013/07/03(水) 01:27:34 ID:PkW9y1E.0
乙です。
リンゴォとミスタと言う時点で、ガンマン対決キタコレ! とわくわくしていましたが
まさか静葉が原因でミスタが一番最初に死ぬとは……
原作でも不死身っぷりが話題になっていただけに予想外です。

それにしても、リンゴォはいかんなく男の世界を発揮してくれました。
でもこれ、弾幕ごっこからは一番遠いのよね……

178名無しさん:2013/07/04(木) 09:21:42 ID:OhuUEOZg0
感想ありがとうございます。
続いてディエゴ・ブランドー、ファニー・ヴァレンタインで予約します

179 ◆n4C8df9rq6:2013/07/04(木) 09:22:18 ID:OhuUEOZg0
>178
うおおおお、鳥付け忘れてました…

180 ◆n4C8df9rq6:2013/07/04(木) 20:42:16 ID:OhuUEOZg0
投下します

181GUILTY CROWN ◆n4C8df9rq6:2013/07/04(木) 20:45:33 ID:OhuUEOZg0




―――新しい時代の幕開けの時には必ず立ち向かわなくてはならない『試練』がある。

―――試練には必ず『戦い』があり『流される血』がある。

―――試練は『強敵』であるほど良い。

―――試練は『供えもの』。立派であるほど良い。



◆◆◆◆◆◆

182GUILTY CROWN ◆n4C8df9rq6:2013/07/04(木) 20:46:27 ID:OhuUEOZg0


「―――改めて言わせてもらおう。『久しぶり』だな、Dio」
「…少し前に『殺し合っていた』相手から言われる言葉じゃあないな」


そこは幻想郷の霧の湖の傍に立つ緋色の洋館「紅魔館」の一室。
吸血鬼の館であるが故、部屋に窓は殆どと言っていい程存在していない。
恐らくこの館の主人がくつろいでいた部屋だろう。それなりの広さであり、本棚も幾つか置かれている。
家具や内装は小綺麗できっちりと整えられており、使用人による手入れが行き届いていることが解る。
そんな一室にて、二人の男は部屋の真ん中でテーブルを挟んで向かい合うように椅子に座っていた。

「Dio、お前は理解しているだろう?この異常な状況を…」
「ああ、…さっきまで俺とお前は殺し合っていた。そして戦いの末に、二人共車両から落下…。
 そのまま線路に激突したと思ったら―――あの場に放り込まれていた、と。異常としか言い様がない」
「フン、やはりお前もそうだったか」

互いに警戒をするような表情を浮かべつつ、会話する二人の男達。
その片方、壮年の男は第23代アメリカ合衆国大統領『ファニー・ヴァレンタイン』。
強大な力を持つ「聖人の遺体」を手に入れるべく、合衆国横断レース「スティール・ボール・ラン」を利用した大統領。
そしてもう片方、鋭い眼光を持つ若い男の名は『ディエゴ・ブランドー』。
スティール・ボール・ランにおいての優勝候補であり、遺体を手に入れ社会の頂点に立とうとした男。
この殺し合いの場に呼び出される前―――
二人は、完成した『聖人の遺体』を巡って熾烈な争いを繰り広げていた。
血で血を洗う壮絶な死闘の末に、二人は汽車の車両から落下した。
そのまま線路に激突し、二人は共に死を向かえる――――はずだったのだ。
(正確に言えば、大統領だけが『助かる』はずだった)
しかし彼らは、生き延びた。『殺し合い』という凄惨な催しの場に召還されることで。

「――90名もの参加者によるバトル・ロワイアル。
 優勝者にはあらゆる願いを一つだけ叶える権利を与えられる…『生還』という席の奪い合い。
 だが、Dio。聡明な君ならば理解出来るだろう?」
「…たった一人で生き残ることは困難、とでも言いたいのか?
 こうして俺と話す場を設けている時点で薄々と勘付いてはいたけどな」
「その通りだ。この殺し合いを一人で勝ち残ることなど到底不可能だろう。
 しかし…情報、戦力、判断―――仲間がいることで得られるモノは多い」

――少し前に、彼らはこの『紅魔館』という施設の内部で真っ先に出会ったのだ。
それは運命か、引力か、それとも必然か。
答えは解らない。ただ一つだけ確かな事実は、二人がこうして再び邂逅したということ。
そして大統領は、ディエゴに『対話』を持ちかけたのだ。
突然の提案に警戒心を解かずにはいられなかったディエゴだが、結局はこうして彼の誘いに乗ることになった。
わざわざ堂々と姿を晒してきたことから、恐らく此処で仕掛けられることはない。と…そう推測したのだ。

「それ故に、だ。―――私と手を組め、Dio」

183GUILTY CROWN ◆n4C8df9rq6:2013/07/04(木) 20:46:56 ID:OhuUEOZg0

――真っ直ぐにディエゴを見据えながら、大統領ははっきりと同盟を持ちかけた。
対するディエゴの表情はどこか怪訝な様子であり、僅かに目を細めながら大統領を見る。
少しだけ間を置き、ディエゴが口を開いた。

「…これから滅び逝く自分の『延命』の為に、か?」
「我々が来るべき時までに『生き残る』為に、だ。間違えないでほしい。
 本来ならば我々は敵同士だが、今回は事情が違う。異常極まりない状況を前にして、因縁など気にしている場合じゃあないだろう?
 一先ずは生還の為に、そして主催を撃破する為に手を組むべきだ」
「成る程、ね。確かに俺も…あの主催者の東洋人共は気に食わないと思っていた所さ。
 だが、遺体を巡って争いを繰り広げたお前と呉越同舟のまま信頼しろとでもいうのか?」
「何、わざわざ『信頼』などしてもらう必要はないさ。『主催者を倒すまでの一時休戦』と思ってくれて差し支えはない」
「………………。」

ディエゴはその場で、少しばかり思考をする。
確かにこの異常な状況下において、『仲間』は欲しい。
殺し合いで生還し、あの主催者の下へ辿り着くまでの戦いで『大統領』は大きな戦力となるだろう。
あれ程までに厄介で強力なスタンド能力を保持しているのだ。
だが、それと同時に面倒で『優秀』な男でもある。いつ俺の隙を狙ってきても不思議じゃあない。
一先ず、この男への警戒は怠っては駄目だ。
とはいえ、大統領も俺と組むことに『利益』を感じているはず。ならば…『利用』する価値はあるだろう。

「…一つ条件がある、大統領。俺は支給品を全て開示する。その代わり、お前も開示しろ」
「何…それならば構わんよ。元より同盟を組む上で、最低限の手札は知らねばならんからな」

条件を呑み、大統領はゆっくりと頷きながら答える。
その直後に、大統領のデイパックから取り出された支給品がテーブルの上に一つずつ置き出された。
それは陰陽のマークが描かれた奇妙な二つの球体。
ランダムアイテム『通信機能付き陰陽玉』だ。それぞれに通信機能があり、遠距離で無線としての使用が可能である不思議な道具。
そしてもう一つは「暗視スコープ」。赤外線による暗所の視界を確保する為の装置だ。

「説明書きがあったが、この2つの球体…「陰陽玉」は互いに通信機能を持つらしい。
 一つをお前に渡すことにする。そうすれば、遠距離に離れた際にも互いに連絡を取り合うことが可能だからな」
「…成る程ね。便利な道具があるもんだ」

軽くぼやくようにそう呟きながら、ディエゴがテーブルに置かれた陰陽玉の一つを受け取る。
思ったよりも大したものを持っていなかったとでも思っているのか、さほど興味を持ってる様子でもない。
だが確かに便利だ、遠方での連絡が可能になっているのだから。内心はそう思っていたようだ。
そして自らの支給品を開示した大統領は身体を前に軽く屈め、ディエゴを少しばかり覗き込むように見る。

「さて、Dio…お前の番だ。開示してもらおうか―――」
「大統領」
「……………ん?」

唐突に声をかけてきたディエゴを見て、軽く言葉をこぼす。
ほんの少しの沈黙の直後のこと。
そうして、ディエゴは少しばかり口元に笑みを浮かべながら…デイパックから『とある書物』を取り出した。

184GUILTY CROWN ◆n4C8df9rq6:2013/07/04(木) 20:47:29 ID:OhuUEOZg0

「俺の支給品には、『面白いもの』がある。その代わり、たった一つだけだがな」
「ほう…?」
「『幻想郷縁起』という書物だ。お前と会う前に中身を拝見したモノだ。
 この本にはなかなか興味深いことが記されている…
 ――幻想郷。妖怪や神々の住まう地。外の世界に追いやられた幻想の、最後の楽園。」
「…楽園?」
「そう、楽園だ。この書物にはその地に住まう妖怪について事細かに書かれている。
 妖精、亡霊、魔女、果ては吸血鬼―――まさに『何でもアリ』ってワケだ」
「胡散臭さすら感じる程だな」

どこか不敵とも取れるような笑みを浮かべながらディエゴは語り続ける。
対する大統領は、まだディエゴの意図が読めないのか皮肉るような言葉でそう吐き捨てる。

「そして、俺はそこで気付いたことがある。幻想郷には『レミリア・スカーレット』という吸血鬼がいるらしい」
「…おい、名簿でその名は見かけたぞ」
「そう、名簿に載っているんだ。それに俺たちの現在位置…どうやら地図によれば『紅魔館』という施設だそうだ。
 そして、このレミリアという吸血鬼は『紅魔館の主』と記載されている」
「何…?」

目を細めつつ、大統領が短く声を漏らす。ディエゴの言葉はそのまま続く。

「そう、幻想郷の『住民』と『施設』がこの会場に存在しているんだ。
 他にも参加者と同じ名を持つ妖怪、そして地図に記された施設の名が本の中で幾つも見受けられている」
「………………。」
「そして名簿に記載されていたものと同じ名を持つ妖怪は、ほぼ『人間の少女』の姿で描かれている。
 覚えているか、大統領?あの最初の会場のことを」
「…何とかな。見渡す限り、やけに少女が多かったのが疑問だったが…」
「そう、少女が多いんだ。それにあの主催者は『妖怪』や『神』という言葉を口にしていた。
 あの見せしめの少女も『八百万の神である』と言っていたしな。…つまり、だ」

大統領は意図を理解したように唸るような声で頷いた。
幻想郷。数多の妖怪が存在する地。参加者と同名を持つ妖怪達、そして複数の施設。
本に記された、少女の姿をした数多の妖怪達。そして最初の場において不自然なまでに多かった少女達…
そして主催者二人が口にしていた『妖怪』『神』という言葉。
そう、この催しはあまりにも『幻想郷』と結びつくものが多いのだ。
―――だが。ふと大統領は、僅かに表情を顰めながら…あることに気付いた。
あの荒木と言う男が言っていた何気ない一言を、思い出したのだ。

「――――成る程な、Dio。お前が『あの主催者共は幻想郷と何らかの関わりを持っている』と言いたいことは解った。
 だがあの荒木と言う男の言動を覚えているか?『幻想郷じゃ、丁寧に説明している相手に喧嘩吹っかけるのが挨拶なのか』と。
 見せしめとなった少女に向かってそう言っていただろう。些細な言葉だが、まるで幻想郷についてさほど詳しくは知らないかの様な言動だ」
「………ふむ、確かに…それもそうか。だが、あの男達は少なからず幻想郷と関わりがあるのは間違いないと思っている。
 そうでもなければ、此処まで殺し合いに幻想郷のことを持ち込むことがあるか?…それに、どちらか片方だけが深い関わりを持っているという可能性も十分にあるからな」
「…あの太田順也、という男の方か?」
「そうだ。まぁ、長々と話しておいてなんだが…これらの推測がどこまで『正しい』かはまだ解らない。他の参加者や、あの主催者共に会わない限りには」
「………だろうな。」

185GUILTY CROWN ◆n4C8df9rq6:2013/07/04(木) 20:49:49 ID:OhuUEOZg0

情報。そうゆう点において、ディエゴの支給品はある意味ではアタリだった。
彼らにとって完全に未知の領域である『幻想郷』や『妖怪』についての知識を得ることが出来たのだから。
―――だが、まだ疑問点は幾つも存在する。何故SBRレースに関わりと持つモノが5人召還されているのか、ということもある。
それに名簿に幾つも見られる『ジョースター』『ツェペリ』『ブランドー』の名…。何か関係性があるのか。少なくとも、ディオ・ブランドーという男をディエゴは知らなかった。
情報を交換し、支給品の名簿を確認することでそのことを互いに認知する。
そして、これは口には出さなかったのだが…大統領が内心抱いた疑問の一つ。ジャイロ・ツェペリに敗北し死亡したはずの『リンゴォ・ロードアゲイン』の名が記載されているということ。
何故死亡したはずの人間の名が記載されている?奴の死体は私の部下が確認したはずだ。
死者蘇生?それとも私のように平行世界、もしくはそれに準ずる時空から呼び寄せた?…そもそも、あの主催者共は一体どんな力を持っているというのか?
―――――『遺体』が絡んでいる可能性?いや、それはおかしい。『遺体』はスデに女神“ルーシー”を選んでいるハズなのだ。
疑問は尽きないが、今は情報がまだまだ足りない。

「…さて、Dio。互いに出せるだけの情報は出したな?疑問点も含めて」
「ああ、十分すぎる程に」

「では此処で、我々の盟約を改めて言わせてもらおう。
 コレはこの殺し合いに勝ち残り、生還する為の同盟だ。互いに利用し合う…全てはこの地で生き残る為だ」
「……………。」
「―――あくまでこれは『一時的な共闘』だ。『味方』になるワケではない。
 だが、少なくともこの殺し合いの最中においては協力をしてもらう。今はもはや『遺体争奪戦』どころではないからな…
 全てはあの荒木飛呂彦、太田順也から、全ての謎を聞き出し…抹殺するまで。この同盟は続くモノだと思って頂こう」
「わざわざ同盟を持ちかけて頂き光栄の限りだ、大統領閣下殿」

慇懃無礼な態度で軽く皮肉るようにディエゴは笑みを浮かべ、そう口に出す。
―――やはりこの男は信用出来ない。だが、利用出来る価値は十分にある。
私はお前を『優秀』だと見込んでいるのだからな。ハングリーで、狡猾で、どこまでも野心的。
そういった人格を持つこの若造は使える。大統領は内心そう思う。


「―――解った。その提案を受け入れよう。この戦いで生き残る為の同盟を、な」
「感謝するぞ、ディエゴ・ブランドー。…では、」


すると、大統領が懐から何かを取り出す。―――そう、ワインボトルだ。
何故かご丁寧にグラスまでしっかりと持っている。…どこから持ち出したんだ、こいつは?
ディエゴがささやかに疑問を抱くも、大統領はそれに気付いてないのか気付いているのか解らない。
ともかく、少し呆気に取られるディエゴを見つつ…ワインを二つのグラスに手早く注いだ。

「この酒はこの館を探索している時に見つけたモノだ。あまり深いことは気にしなくてもいい。」
「…………。」


「さて、Dio。―――乾杯をしないか?」
「…一体何に…だ?いずれ滅び逝く絆であろう…俺たちの同盟に…か?」
「それでは縁起が悪いだろう?我々がこの杯に捧げるモノは、もっと違う」


口元に笑みを浮かべながら、大統領はグラスを摘み――軽く持ち上げつつ、言う。


「『立ちはだかる試練を乗り越える我々に』」

「試練、ね………。なら、俺からも二つ程言わせてもらおうか」
 

そう言いながら、ディエゴもまたワインの注がれたグラスを指で摘むように持ち上げる。


「『栄光を掴み取る俺たち』に、そして『俺たちの勝利の礎となる88人の生け贄の為』に」



「―――乾杯」
「乾杯。」


祝杯の言葉と共に、互いのグラスが小気味よく触れ合う音が静かに響いた。

本来ならば敵同士の二人。―――だが、今回は事情が違う。

荒木飛呂彦、太田順也。あの主催者達を打ち倒すべく、再び手を組んだ。

だが、その過程や方法は凄惨な血に塗れたものになるだろう。

―――彼らは、己の目的の為には一切の手段を選ばないのだから。

88の犠牲を乗り越え、主催者の下へ向かう。それこそが目的。

186GUILTY CROWN ◆n4C8df9rq6:2013/07/04(木) 20:53:13 ID:OhuUEOZg0



だが、その先に見据えるモノは互いに違う。

ディエゴは内心、主催者の力をも利用しようと算段していた。
いっそ優勝を狙い、願いを叶えることもアリかもしれない。そう思ってすらいたのだ。
使えるものなら何だって利用してやる。俺が頂点に立つことが出来るのならば、尚更だ。
ともかく、あの主催者共の利用価値を見極める限りには何も始まらない。まずは様子見だ。
――――場合によっては、大統領を隙を突いて殺害すればいい。少々厄介だが…この場においては参加者の能力に『制限』がかかっているそうだ。
俺の能力もどこまで手が加えられているかは解らないが故に、慎重に行かなければならないだろうがな。

共通しているのは、互いに向けられた偽りの信頼。
目的の為に互いを利用し合うという腹の底に秘める禍々しき魂胆。
彼らの往く果てにあるモノは、栄光か。崩壊か。今はまだ、誰も知らない―――――



【C-3 紅魔館/深夜】

【ディエゴ・ブランドー@第7部 スティール・ボール・ラン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:幻想郷縁起@東方求聞史紀、通信機能付き陰陽玉@東方地霊殿、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:生き残る。過程や方法などどうでもいい。
1:同盟者である大統領を利用する。利用価値が無くなれば隙を突いて殺害。
2:主催者達の価値を見定める。場合によっては大統領を出し抜いて優勝するのもアリかもしれない。
3:ジャイロ・ツェペリ、ジョニィ・ジョースターは必ず始末する。
[備考]
※参戦時期はヴァレンタインと共に車両から落下し、線路と車輪の間に挟まれた瞬間です。
※主催者は幻想郷と何らかの関わりがあるのではないかと推測しています。
※幻想郷縁起を読み、幻想郷及び妖怪の情報を知りました。参加者であろう妖怪らについてどこまで詳細に認識しているかは未定です。

【ファニー・ヴァレンタイン@第7部 スティール・ボール・ラン】
[状態]:健康
[装備]:紅魔館のワイン@東方紅魔郷(現地調達)
[道具]:通信機能付き陰陽玉@東方地霊殿、暗視スコープ@現実、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:生き残る。ナプキンを掴み取るのは私だけでいい。
1:同盟者であるDioを利用する。だが決して信用はしない。
2:荒木飛呂彦、太田順也の謎を解き明かす。最終的には抹殺。
3:ジャイロ・ツェペリ、ジョニィ・ジョースターは必ず始末する。
※参戦時期はディエゴと共に車両から落下し、線路と車輪の間に挟まれた瞬間です。
※幻想郷の情報をディエゴから聞きました。

【幻想郷縁起】
ディエゴ・ブランドーに支給。
稗田阿求並びにその一族が代々書き記している書物。
元々は人間の為に妖怪の弱点や対策法などを記した本だったが、現在は幻想郷が平和なこともあってか妖怪紹介本としての趣が濃くなっている。
参加者を含めた妖怪の情報が詳細に記されているが、膨張表現や推測で書かれた箇所も多々あるという。

【通信機能付き陰陽玉×2】
ファニー・ヴァレンタインに支給。
地底の異変の際に八雲紫が霊夢に渡した通信機能付きの陰陽玉。
2つセットで支給されており、それぞれの陰陽玉と通信することが可能。

【暗視スコープ】
ファニー・ヴァレンタインに支給。
夜間や暗所において視界を確保する為の装置。

187 ◆n4C8df9rq6:2013/07/04(木) 20:53:41 ID:OhuUEOZg0
投下終了です。
指摘やツッコミどころがあればよろしくお願いします

188 ◆YF//rpC0lk:2013/07/05(金) 20:48:22 ID:hLBWBZBk0
乙です。
まさかこの二人に幻想郷の情報が渡るとは……
今後、紫なんかの実力者がどう出るかにかかってきますね

>さて、Dio。―――乾杯をしないか?
この一連の流れってジャイロとジョニィの飲みかけワインでの乾杯みたいですね
中身は全くの逆ですけど

189名無しさん:2013/07/05(金) 21:18:52 ID:Im9hy2Hk0
ちょっと気になることがあるのですが

> 少なくとも、ディオ・ブランドーという男をディエゴは知らな かった。
の部分なのですが、「Scarlet Overture」ではジョナサンがディオの名前を「何故か英語で表記されている(DIO)」とあり、名簿のディオの表記がぶれているように捉えられるのですが、どちらが正しいのでしょうか?

190 ◆n4C8df9rq6:2013/07/05(金) 23:01:12 ID:VnujO/dY0
>>189
ウェザー・リポート(ウェス・ブルーマリン)みたく
DIO(ディオ・ブランドー)で表記されているつもりで描写していましたが、どちらも説明不足感が否めませんでしたorz

Scarlet Overtureの「彼は何故か名を英語で表記されているが、十中八九あのディオ・ブランドーだろう。」を
「何故か英語表記が先に書かれており、フルネームは括弧内に付け足されてるかの様に表記されている。」に修正お願いします…

191名無しさん:2013/07/05(金) 23:41:45 ID:Im9hy2Hk0
>>190
対応ありがとうございます。
改めまして、投下乙です。

192 ◆YF//rpC0lk:2013/07/07(日) 21:47:47 ID:dUnbP93M0
ちょっと書き終りそうにないので、予約を延長しますね。

193 ◆n4C8df9rq6:2013/07/09(火) 16:27:36 ID:qC2umUVI0
稗田阿求、西行寺幽々子、マエリベリー・ハーン、ウィル・A・ツェペリ
予約します。

194 ◆n4C8df9rq6:2013/07/09(火) 21:02:50 ID:wy9g3kt.0
すいません、追加でジャン・ピエール・ポルナレフも予約します

195 ◆YF//rpC0lk:2013/07/14(日) 19:31:35 ID:P7/XJa/Q0
間に合いそうもないので、今回の予約は破棄とさせてもらいます。

196 ◆XksB4AwhxU:2013/07/15(月) 02:45:19 ID:GgWvzNxQ0
古明地さとり、ディアボロ、虹村億泰、鈴仙・優曇華院・イナバ
で予約します。

197 ◆n4C8df9rq6:2013/07/15(月) 12:41:10 ID:PoYTsUrw0
予約延長します。

198 ◆n4C8df9rq6:2013/07/15(月) 13:04:24 ID:PoYTsUrw0
>>196
そのトリップは検索すれば簡単に特定出来てしまうので、
#passの『pass』の部分を好きなパスワードに変えた方が宜しいですね…

199196 ◆.OuhWp0KOo:2013/07/15(月) 21:17:48 ID:GgWvzNxQ0
ご指摘ありがとうございます。
ではこちらのトリップを使わせて頂きます。

古明地さとり、ディアボロ、虹村億泰、鈴仙・優曇華院・イナバ
で投下を開始します。

200地獄の番人 ◆.OuhWp0KOo:2013/07/15(月) 21:19:31 ID:GgWvzNxQ0
ゲーム開始直後のことである。
地底のさとり妖怪、古明地さとりがB−6エリアの草原でしばし途方に暮れていると
オドオドした様子の少年と遭遇した。
人間であれば、恐らく年齢は15、6歳ほどであろうか。顔立ちから察するに、西洋人のようだ。
彼は突然、とおるるるる、とおるるるると奇声を上げ、
カバンから水の入ったボトルを取り出して『通話』を始めたのだった。

「ボス……ボス!またお会いて、嬉しいです!」

アレはただのビンだ。同じ物を自分のカバンでも確認している。通信機能など、ない。
なのに、彼が会話する様子は真に迫っている。では、気違いの類か?
こちらの様子などお構いなしに通話を続けるその少年の思考を、
胸の第三の目『サード・アイ』で読み取ろうとした所で、
古明地さとりは異変に気付いた。
心が、読めない。

「ローマの時以来ですね!こうしてまたお話できるなんて!」
『人■■■■■、■ッピ■。■■目■……恐■くス■■■使い■。』

第三の目のピントがボケて、相手の心を『読む』ことができない。
まるで酷い近眼に罹った様だ。だが距離を詰めると、少しづつ心が読めるようになってくる……

「ボスゥ……寂しかったんですよ、僕、本当に……」
『そう■……あの■娘は■■■に■する警■が薄■、そ■■ま引■■けろ
 キ■■・■リム■ンの射■距離……■mの■■までな』

少年はチラリとこちらに視線を向けたが、すぐにそっぽを向いて通話に戻ってしまった。
さとりと少年の距離は、ついに『2メートル』程度まで縮まった。

201地獄の番人 ◆.OuhWp0KOo:2013/07/15(月) 21:20:21 ID:GgWvzNxQ0
『今だ■、殺れッ■!“キ■グ・ク■■ゾン”!!』

この男、『二人分の心』を持っている!
小心ぶりを振りまく少年の姿は餌だった!
果たしてどちらが本性か、残忍で狡猾なもう一人の人格を隠し持っている!!
その事実に古明地さとりが気付いたのは!!

「あ……がッ……はっ……」

赤い人型の幻像の拳を、みぞおちに叩きこまれてからのことだった!

さとりの体は手荷物を置き去りに緩やかな放物線を描いて宙を舞い、5m後方に落下する!

「ううっ……うっ、ごっ、ゴボッ」

喉から熱い何かが猛烈な勢いで昇ってきて、
口と鼻とついでに涙腺を突き破る勢いで、あふれ出してきた。

「ボスゥ……あの女、まだ生きてますよ?」
『腹■ブチ■■■もり■■■が……あ■■娘、見■■よ■頑丈■な。
 ■や……この■■■・■■ムゾ■の■ワーが、■干だが弱■■てい■の■?』
「立てないみたいです。トドメ、刺しましょうか?」
『■■、頼む……■が、慎■■仕■めろ■?』

『奴ら』はジリジリと間合いを詰めてくる……!
もう一度あの赤い幻像の、あの『鬼』のようなパワーで攻撃されたら、今度こそ、バラバラに解体される!!
立って、立って!逃げなければ!
なのに、脚が……動かない!?
……いや、感覚がない!!背骨をやられた!
なら、妖術で……飛べない!!

202地獄の番人 ◆.OuhWp0KOo:2013/07/15(月) 21:21:08 ID:GgWvzNxQ0
「くッ……来るなッ!私のそばに来ないでぇーーッ!!」

右手をかざし、妖術の弾幕を連射。
だがそれもあの赤い幻像の腕に容易に弾かれる!
あの幻像は一体何なんだ!?『スピード』も、『精密さ』も、尋常ではない!
足止めにすらならない!

……だが、その程度は……計算のうちだッ!

『■ッピ■!罠■ッ!左■だ!あの小■、『■腕』が空■■いる!!』
「……ハッ!」

『中の男』の助言で少年はさとりの左腕を注視する!
袖の中から赤いケーブルが草むらの中に伸びている!

「隠し武器!草むらの中にッ!!」
(惜しいけど、『不正解』よ!!)

さとり妖怪の『第三の目』から伸びるコードは!
手足と同様に自由に扱うことができるのだ!
左のソデから伸びたコードは草むらに紛れて少年の後ろに回り込み!
カバンからこぼれた草刈り鎌をたった今拾い上げた!
このままコードを引き戻す勢いで!お前の頸動脈を掻き切る!

(既に鎌はお前のもとに迫っている!
 ……たとえ振り返って後方を確認したとしても、もう『遅い』!)

203地獄の番人 ◆.OuhWp0KOo:2013/07/15(月) 21:21:42 ID:GgWvzNxQ0
その時、少年の額に小さな顔面が浮かんだ!
同時に、少年の首の頸動脈が背後からの鎌でバックリ切り裂かれる……
……イメージが、少年の脳裏に浮かぶ!
その映像は、少年の心を覗くさとりにも、視えた!

『キング・■■ムゾン!■を、■.1■だけ、■きと■せッ!!』

草刈り鎌が猛スピードで少年の首筋を通過!
だが、斬れたのは……首の、薄皮一枚!!

(そんな……かわされた!?
 未来を視たとでもいうの!?いや、それだけでは、今の現象は…!)
「射程距離だ!今度こそッ!仕留める!!」

赤い幻像の手刀が、猛然とさとりに迫る!
終わりか!
ああ、今度こそ、終わりか。
最初に飛ばされたあの広間には、見知った姿や……ペット達に、こいしもいたっけ。
ごめん、お姉ちゃんケンカ弱いから……ここでリタイアだわ。

204地獄の番人 ◆.OuhWp0KOo:2013/07/15(月) 21:22:15 ID:GgWvzNxQ0
『今■こそッ!たっ■一度■『敗北』を乗り■えて!この■ィ■■ロは!!帝王は、再■ッ!!』

敗北。これだけの力を持つこの少年も敗けることはあるのか。
一体どんな相手がこいつらを倒せるのだろう。

(想起『テリブルスーヴニール』)

ちょっとした、好奇心……あるいは、さとり妖怪のサガとでも言うべきものだった。
今更この絶体絶命の状況を覆せるとは思っていない。
だが、この猛スピードで迫り来る幻像の手刀が私の頭蓋を叩き潰す前に、
こいつらを敗かした者の顔、この男のトラウマを覗いておきたかった。
たったそれだけのことだったのだが……。

205地獄の番人 ◆.OuhWp0KOo:2013/07/15(月) 21:22:43 ID:GgWvzNxQ0
『排水溝の臭気』『円形闘技場』
『浮浪者』『ティベレ河』『空き缶の焚き火』『散らばった注射器』
『血の滴るナイフ』『脇腹から溢れ出る鮮血』
『薄汚れたコート』『N.68』『検死解剖』
『明るい電灯の光』『健康な肝臓』
『夜の市街地』『石畳の道路』『行き交う自動車』
『散歩する犬と老人』『犬の鳴き声』
『猛スピードで迫る自動車』『クラクション音』
『一面に広がる丘陵地帯』『晴れ渡る青空』
『遠くに見える石造りの小屋』『人形を抱えた少女』

な……何!?この男は……!

『こっこっ このダボがぁあーッ!』
『オッオッ オレッちのコッコッ コートを!盗ろ〜ッたって』
『そうはさせねぇえぞーッ』
『来いッ!かかってきやがれーッ!』
『えーと今日の日付は25日…午前の11時20分』
『ファイルNO.68 担当はわたし ドクター モニカ・ユルテッロ…』
『成人男性 年齢の推定は30さいから40さい身分は不明』
『皮膚の状態から判断して死後およそ48時間から54時間以内…これより司法に基づく検死を行う』
『健康な肝臓だわ とてもいい色』
『もし…そこのあなた……大丈夫ですか?そんなところにうずくまってどこか具合でも?』
『ワンワンワンワンワンワン!』
『あ おいこら』『パパァーーーーー!』
『うずくまって おじちゃん オナカ痛いの?』

この男は、一体どれだけのトラウマを抱えているの!!
死に続けている!苦しみ続けている!地獄に堕ちた罪人のように!

206地獄の番人 ◆.OuhWp0KOo:2013/07/15(月) 21:23:12 ID:GgWvzNxQ0
『だが… なんだったのだ… あの『レクイエム』は… くっ… う…』
『こんな!バッバカなッ!』
『ま…まさかッ!た…立てないッ!うお…がっがッ!』
『だっ 誰か…!こ…こんなことが!』
『この痛み… こんな所で…! オ…オレはッ!』
『なにを言ってるんだ?きさまッ!おい女!ここはどこだ!なんでおれがここにいるんだ?』
『おい女ッ!聞いているのかッ!貴様は誰だ何をしているッ!なんでオレの体は動かないのだッ!』
『し…しかも…この痛みは!?』『ぐあぁああぁあぁあぁあぁあ』
『わ…夢か?オレは…!!『夢』を見ているのか!?』
『だがま…まただ…ここは!?いったい?』
『今何時でここはどこだ?ローマじゃあないようだが…』
『オレは確かにローマのティベレ河に…いて…そして…あの感覚は…』
『死体置き場で味わった…あの想像を絶する苦痛は…ゆ……夢にしては……』
『あの『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』の……』
『くう…くっ ハァーハァーハァー』
『お おれは何回死ぬんだ!?』
『次はど……どこから……い…いつ『襲って』くるんだ!?おれは!おれはッ!』
『おれのそばに近寄るなああーーーーーーッ』

『レクイエム』!
『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』!
それが、お前を『地獄』に落とした者の名かッ!!
眠りを覚ます恐怖の記憶(トラウマ)ッ!冥途の置き土産に!くれてやる!

207地獄の番人 ◆.OuhWp0KOo:2013/07/15(月) 21:23:35 ID:GgWvzNxQ0
(想起……)

『胸に開いたハート』『腕に突き刺さる矢』
『砕け散る黄金の幻像』『抜け殻』
『風になびくチョココロネ』『宙に浮く新たな幻像と、その使い手』
『石柱から産まれるサソリ』

(想起……!)

『生き残るのは……この世の『真実』だけだ……『真実』から出た『誠の行動』は……』
『……決して滅びはしない……』
『あんたははたして滅びずにいられるのかな?ボス』

(想起、想起、想起ッ!!)

『『レクイエム』……ダ!!オマエが見テイルモノハ確カニ『真実』ダ』
『確カニ オマエノ能力ガ実際ニ起コス『動き』ヲ見テイル……シカシ……』
『実際ニ起コル『真実』に到達スルコトハ決シテナイ!』
『ワタシノ前ニ立ツ者ハドンナ能力ヲ持トート絶対ニ行クコトハナイ』
『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!』
『無駄ァーーッ!』

「想起ッ……!」

208地獄の番人 ◆.OuhWp0KOo:2013/07/15(月) 21:24:07 ID:GgWvzNxQ0
『なっ……!いかんッ!ドッピオ、退けッ!!
 そいつに、手を出すなッ!!』

赤い幻像の手刀が、さとりの頭上でピタリと止まった。

「何故です、ボスッ!」
『バカな……なぜ、この小娘が!
 この小娘がッ!何故ッ!『奴』のスタンドを……持っているのだッ!!』

さとりの背後には、グリーンの人型を模した幻像が出現していた。
あの赤い幻像と、同質の存在……生命エネルギーが造り出す、パワーある像『スタンド』。
対峙する男に消えることの無いトラウマを植えつけたそのスタンドの名を……

「想起『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』」

209地獄の番人 ◆.OuhWp0KOo:2013/07/15(月) 21:24:47 ID:GgWvzNxQ0
だが……

「ぐっ……うっ……ハッ、ハアーッ……」

死ぬっ!死んでしまうッ!!
このスタンドとやらの像を出現させるだけで、何て負担だッッ!
鬼や、スキマ妖怪といった大物妖怪の弾幕さえ再現してみせるさとりの『想起』でも、
そのスタンドを出現させる体力・精神力・妖力の消耗は、それ自体が死の恐怖を覚える程のものであった!

(お願いだから、これで……退いて……私には、もう、これ以上……)
『ドッピオ、『退けッ』!あのスタンドは、まずいッ!ここは一旦『退く』のだッ!』

「……。いいえ、『退けません』、ボス。
 退く訳には、いかない。この女は死にかけている。スタンドを出すことに成功はしたが、それだけです。
 もうパンチの一発も繰り出すことができないでしょう。一旦退いて傷を癒す暇を与えるよりは、
 ここで確実にトドメを刺しておくのが、『最善』です。」

(まずいッ……男の方のトラウマは抉ったが……少年の方は、冷静だったッ!!)

「けど……問題はそこじゃない。そこじゃないんです。
 僕はボスの、帝王のスタンドをお借りしたんです。
 ……このキング・クリムゾンに、ボスに、敗走は、許されないッ!!
 だからこの女は……ここで!今、ここで、始末するッ!!」

「ハァ……ハッ……」
(もうダメ……いしき、が)

その瞬間である。
妙な懐かしさを覚える謎の声が聞こえたのは、古明地さとりが意識を失うまさにその瞬間のことであった。

210地獄の番人 ◆.OuhWp0KOo:2013/07/15(月) 21:25:17 ID:GgWvzNxQ0
『イエローカード、1枚目だよ。古明地さとり。
 説明しとかなくて悪かったけど、反則なんだよ、それ。
 次それ出したら、頭バーンだから。もっとも、その状態じゃあ2回目は無理かな?
 んふふふ』

再びさとりの脳天に迫るキング・クリムゾンの手刀。
意識を失うのと同時に、全身を後ろに引っ張られる感覚を覚えた。
ああ、死んだ後の人間は沢山見たけど、自分が死ぬ瞬間って初めてだったな。
と、さとりは思うのだった。

――――

211地獄の番人 ◆.OuhWp0KOo:2013/07/15(月) 21:25:55 ID:GgWvzNxQ0
最初の大部屋に呼び出された時は、半信半疑だった。
あの、無限に襲い掛かってくる死の恐怖と苦痛から逃れ得たわけではないと、そう思っていた。
恐らく、最初の見せしめのダシにでも使われるのだろう。脳味噌を爆破……か、今回は一瞬で済みそうだな。
ディアボロは、半ば諦めの境地に達していた
ところが、そうではなかった。
五体満足でこの会場に立つことができていた。
腹心のドッピオに再会することができた。
そして、何より……キング・クリムゾンをこの身に取り戻していた。
生きている。俺は、生きているんだ!
あの、アラキと、オオタとやらに殺しあえとは言われたが、
それは裏を返せば俺は今、確かに生きているということだ!
俺はあの地獄のようなループから脱出する……チャンスを手にしたのだ!
まずは一人!ボーっとツッ立っているスタンド使いらしき小娘を発見した!
『ドッピオ』の姿で油断を誘いつつ近づき……不意討ちで仕留めるのだ!
多少の抵抗は受けたがこの程度、『キング・クリムゾン』の前では物の数ではない!

『だというのに、何故だ……!何故、あの小娘が、あのスタンドを……』

ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム。
ディアボロを永遠の死に叩き落とした、ジョルノ・ジョバァーナのスタンド。
スタンド能力は、一人に対し一つしか持てないのが原則だ。
だが全くの赤の他人が偶然、似た性質のスタンドを持つことはある。
複数の体が群体となり、一つのスタンドとして成立していることもある。
我がキング・クリムゾンのように、一つのスタンドが『未来視』と『時を吹き飛ばす』という複数の機能を持つこともある。
スタンドとは、個々人の人格がそうであるように、脈絡なく多様であるものなのだ。
だが、

212地獄の番人 ◆.OuhWp0KOo:2013/07/15(月) 21:26:51 ID:GgWvzNxQ0
『同じだ……!同じだったんだ……!
 あの像(ヴィジョン)、ジョルノ・ジョバァーナのそれとまったく同じだった……!』

……そうでなければ、半死人の少女がスタンド像を出そうとしたところで
ディアボロがあれほどまでにまでうろたえるハズがない。

『あの小娘の、スタンド能力か……!』

あの小娘のスタンドには、自在に操作できる触手と、
光弾を発する能力があるだけではない。
きっと、敵が過去に相対したスタンドを再現する能力こそが、
あの小娘のスタンドの『目玉』であり、本領なのだ。

『だとしたら、なんという皮肉だ……
 いや……『試練』、か!!
 あのアラキと、オオタがこの俺に課した……『試練』!!』

『ドッピオ!後を追うのだ!『新手のスタンド使いと共に逃げた』あの小娘を追えッ!
 あの小娘だけは、このキング・クリムゾンで仕留めなければならんッ!!』

【B―6エリア/深夜】
【ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険 第5部 黄金の風】
[状態]:首に小さな切り傷、、体力消費(小)、ドッピオの人格で行動中
[装備]:なし(原作でローマに到着した際のドッピオの服装)
[道具]:基本支給品×2、不明支給品×1〜2(ディアボロに支給されたもの)、
   不明支給品×0〜1(古明地さとりに支給されたもの。ジョジョ・東方に登場する物品の可能性あり)
[思考・状況]
基本行動方針:参加者を皆殺しにして優勝し、帝王の座に返り咲く。
1:新手と共に逃げたスタンド使いの小娘を追い、この手で殺す。
[備考]
※第5部終了時点からの参加。ただし、ゴールド・エクスペリエンス・レクイエムの能力の影響は取り除かれています。
※支給品と参加者名簿をまだ確認していません。
※能力制限の程度については、後の書き手さんにお任せします。

――――

213地獄の番人 ◆.OuhWp0KOo:2013/07/15(月) 21:27:55 ID:GgWvzNxQ0
古明地さとりを窮地から救ったのは、改造学ランに剃りこみ頭の古式ゆかしい不良高校生。
そのまま幻想郷に流れ着いてもおかしくないようなファッションの彼の名を、虹村億泰といった。
不良ながら情にあつい彼は、古明地さとりをおぶって一目散に逃げ出している所であった!

どうにか、間に合った!
あの外人、どー見ても中坊くれぇだったけどよぉ!
出会うや否や、いきなり女のコの腹をスタンドでブン殴りやがった!
俺がそれをたまたま見かけたのは離れた所だったから、
射程距離まで近づくのに時間がかかっちまったがなァーッ!
何とか、あのチョップが届く前に、この『ザ・ハンド』で、空間を削り取り、
このコを引き寄せることができたぜ!
とにかく今は何とかあのイカれたヤローを振り切って、このコを手当してやらなくちゃならねぇ!
この先に見える竹林、そこならあのヤローも俺たちを見つけ辛ェはずだ!
名簿は途中までしか読めてねーが、確か仗助に康一に、承太郎さんに、露伴先生もいたハズだ!
仗助か先生か、とにかく、誰でもいい!ひでーケガだぜ!
一刻も早く、傷を治せるヤツと合流しねえと!

214地獄の番人 ◆.OuhWp0KOo:2013/07/15(月) 21:28:59 ID:GgWvzNxQ0
【B―6エリア/深夜】
【虹村億泰@ジョジョの奇妙な冒険 第4部 ダイヤモンドは砕けない】
[状態]:健康、体力消費(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜2
[思考・状況]
基本行動方針:未定。ただし、殺し合いに乗る気はない。
1:あのイカれたヤロー(ドッピオの姿をしたディアボロ)を振り切るため、竹林に隠れる。
2:この女のコを守る。なるべく早くケガの手当てをしてやりたい。
3:知り合い(東方仗助、広瀬康一、空条承太郎、岸辺露伴)と合流したい。
[備考]
※支給品をまだ確認していません。
※参加者名簿を一部確認しました。
 (東方仗助、広瀬康一、空条承太郎、岸辺露伴の名は確認しています。吉良吉影の名は確認していません。)
※参戦時期は未定ですが、東方仗助、広瀬康一、空条承太郎、岸辺露伴の4名とは面識があります。
※能力制限の程度については、後の書き手さんにお任せします。

215地獄の番人 ◆.OuhWp0KOo:2013/07/15(月) 21:29:28 ID:GgWvzNxQ0
【古明地さとり@東方地霊殿】
[状態]:脊椎損傷による下半身不随、内臓破裂、
肉体疲労(極大)、妖力消費(極大)、精神疲労(極大)、
[装備]:草刈り鎌
[道具]:なし(基本支給品などの入ったデイパックは、ディアボロに回収されました)
[思考・状況]
基本行動方針:未定。
1:気絶中。
[備考]
※参加者名簿をまだ確認していません。
※会場の大広間で、火炎猫燐、霊烏路空、古明地こいしと、その他何人かのside東方projectの参加者の姿を確認しています。
※参戦時期は未定です。
※読心能力に制限を受けています。東方地霊殿原作などでは画面目測で10m以上離れた相手の心を読むことができる描写がありますが、
このバトル・ロワイアルでは完全に心を読むことのできる距離が1m以内に制限されています。
それより離れた相手の心は近眼に罹ったようにピントがボケ、断片的にしか読むことができません。
精神を統一するなどの方法で読心の射程を伸ばすことはできるかも知れません。
※主催者から、イエローカード一枚の宣告を受けました。
もう一枚もらったら『頭バーン』とのことですが、主催者が彼らな訳ですし、意外と何ともないかもしれません。
そもそもイエローカードの発言自体、ノリで口に出しただけかも知れません。



――――

216地獄の番人 ◆.OuhWp0KOo:2013/07/15(月) 21:29:53 ID:GgWvzNxQ0
「ハッ、ハッ、ハッ、ハアッ!」

古明地さとりとディアボロの戦闘、その目撃者はもう一人いた。
紺のブレザーに赤いネクタイ、プリーツスカートを履いた、
赤い瞳にロングヘアの少女。頭のウサ耳さえ外せば、『外の世界』にいてもさほど違和感の無い格好だ。
彼女は月生まれの妖獣……玉兎の、鈴仙・優曇華院・イナバ。
鈴仙もまた、戦闘の現場から一目散に逃走しているところだった!

怖い、怖い……怖いッ!!
なんなのよ、アレ!操り人形?式神?
何の力もないただの人間でさえ怖いのに、あんなの扱うヤツと本気で殺しあえっていうの!?
あの、地霊殿のさとり妖怪の子がパンチ一発で死にかけてるのよ!?
あの子たしか戦いは苦手って話だけど、それでも妖怪よ!?
パンチ一発で死にかけるってどんな破壊力よ!?鬼?吸血鬼?
あんなのって無いよ!勝てっこないじゃない!!

怯えた表情で息を切らしながら、彼女はそう考える。
彼女は人一倍臆病だった。
月の兵士として訓練を受けていながら、戦争の噂が流れただけで逃げ出した脱走兵である。
彼女の『波長を操る程度の能力』は簡単に姿を消し、人の精神を乱すことができる。
軍でも優れた能力と評されていたが、その臆病で自分勝手な性格は、兵士として致命的であった。
彼女は……人から敵意を向けられること、それ自体に耐えることができないのだ。
この場所には見覚えがある……迷いの竹林の近くの草原だ。
脱兎のごとく逃げ出した鈴仙の目指す先は……D−6エリア、永遠亭。
月から逃げ出した彼女をかくまってくれた恩人達の住まう場所、彼女の唯一の安息の地である……。

【B―6エリア/深夜】
【鈴仙・優曇華院・イナバ@東方永夜抄】
[状態]:健康、人間から敵意を向けられることに対する恐怖
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜2
[思考・状況]
基本行動方針:未定。とにかく、恐怖から逃れたい。
1:自分の安心できる場所(永遠亭@D−6エリア)を目指す。
※支給品と参加者名簿をまだ確認していません。
※参戦時期は未定です。
※能力制限の程度については、後の書き手さんにお任せします。


――――

217地獄の番人 ◆.OuhWp0KOo:2013/07/15(月) 21:30:22 ID:GgWvzNxQ0
支給品紹介
○草刈り鎌
【出典:現実】
古明地さとりに支給。
主に園芸などの除草作業に使われる、木製の柄に鋼の刃が付いた何の変哲もない鎌。
刃渡り20cm弱の小さな刃物だが、切れ味は鋭い。
目玉をえぐる、頸動脈を掻き切るなど、急所を狙えば十分な殺傷力がある。

218 ◆.OuhWp0KOo:2013/07/15(月) 21:30:46 ID:GgWvzNxQ0
以上で投下を終了します。

219名無しさん:2013/07/15(月) 21:44:17 ID:hONhnlwU0
ボスもドッピオも元気だなあ

220 ◆n4C8df9rq6:2013/07/15(月) 21:50:26 ID:PoYTsUrw0
投下乙です!やはりボスは相当強い…!
レクイエム後の参戦ながらもドッピオ復活+精神的にも落ち着いていてかなり厄介なマーダーになりそうですね!
さとりちゃんもトラウマ想起で奮闘したが、下半身不随の満身創痍…
億泰に助けられたとはいえ、これからどうなることか
そしてうどんげちゃんしょっぱなから不安定で今後が怖い予感…!?

221 ◆YF//rpC0lk:2013/07/15(月) 22:00:00 ID:gqUf/a/I0
乙です。
レクイエムからの参戦なのに、対主催になったジョジョロワ2ndとは真逆な強敵マーダーになりそうなボス、素敵です
さとりんは死にかけてるけど、億泰の向かった場所にはツェペリさんがいるがはたしてどうなるのか……


鈴仙はビビりすぎて笑いさえ誘います。兄貴に叱られたペッシの方がまだ肝座ってたレベル

222名無しさん:2013/07/15(月) 22:11:33 ID:mPchaVhE0
投下乙です。
良かった、億泰なら安心だね…と思ったら、内臓破裂に下半身不随だと!?
しかしトラウマ再現=スタンド発言は目から鱗だった
億泰がんばれ億泰。ボス怖いよボス

223 ◆.OuhWp0KOo:2013/07/16(火) 00:04:20 ID:dYBM.jFY0
う…うげえ!!誤字を……誤字を発見しちまったッ!!!
>>200だッ!!
>>200のドッピオの最初のセリフ!!

✕「ボス……ボス!またお会いて、嬉しいです!」
○「ボス……ボス!またお会いできて、嬉しいです!」

すんません修正お願いしますorz

あと、ボスの続き書いてくれる人で、ボスのセリフの伏字無しが欲しいというリクエストがあったら、
その旨のレスお願いします

224 ◆n4C8df9rq6:2013/07/16(火) 09:01:23 ID:Yx7bJZvk0
拙作の「Like a Bloody storm」確認をしたのですが
こちらもミスを発見しました…orz
場所及び現在位置をB−5に修正お願いします…

225名無しさん:2013/07/16(火) 15:40:54 ID:7ZL0OWkA0
さとりんがジョニィ状態になってしまった…

226名無しさん:2013/07/16(火) 19:03:42 ID:LwrDkY8c0
>風になびくチョココロネ

不覚にもwww

227 ◆n4C8df9rq6:2013/07/16(火) 22:38:46 ID:0bZYclGo0
完成したので投下致します。

228彷徨える魂、巡り会う者達 ◆n4C8df9rq6:2013/07/16(火) 22:43:41 ID:0bZYclGo0

「…馬、か」

タイガーバームガーデンを後にしたポルナレフは、E-6の竹林のすぐ傍に位置する川沿いの草原で足を止めていた。
その手に抱えているのはデイパック。そして――ポルナレフの前に立っているのは、一頭の馬。
無駄のない筋肉によって構成されたその逞しい外見は、一種の美しさすら感じさせる。
それはポルナレフに支給されたランダムアイテムにして、一頭の馬。
その名は『ヴァルキリー』。鉄球使いであるジャイロ・ツェペリという男の愛馬だ。
デイパックの中に入っていた紙から飛び出てきたのは流石に驚いたが、やはり何らかのスタンド能力によるものなのだろうか?
ともかく、この馬がこちらに大人しく頭を垂れてきている辺り素直に従うつもりがあるらしい。
馬は機動力の高さ故に移動手段としてはかなり魅力的だ。徒歩で駆け巡るよりもよっぽど効率がいい。
乗馬の経験は殆どないが…まぁ、コツさえ覚えれば何とかなるだろう。
このヴァルキリーとやらは素直に使わせてもらおう。

そうしてポルナレフは慣れぬ動きでヴァルキリーに跨がる。
…やはり特に暴れることもなく、素直に操ることが出来るようだ。
手綱を片手に、懐から『あるもの』を取り出す。

もう一つ、支給品があったのだ。
確認した所、それは手持ちサイズのトランシーバーのような物体。
取り付けられた画面には黒い画面のレーダーが表示されている。
どうにも『首輪探知機』というらしく、周辺の首輪の反応を教えてくれるとのこと。
丁度いい。これを使えばジョースターの一行やDIO様を見つけ出すことも可能かもしれない。

ポルナレフを乗せたヴァルキリーはその両足を一歩ずつ踏みしきる。
そして長い両足に勢いを重ね―――雄々しく、猛々しく草原を駆け抜ける。
風の如く、地を刈り取るような疾走を開始した。

向かう先は、前方に存在する広大な竹林の内部。


◆◆◆◆◆◆

229彷徨える魂、巡り会う者達 ◆n4C8df9rq6:2013/07/16(火) 22:44:30 ID:0bZYclGo0
◆◆◆◆◆◆



深い深い竹林の中をとぼとぼと和服の少女が歩く。
その表情は暗く、こわばった様子で周囲をきょろきょろと見渡している。
片手に握りしめているのは一種の通信機器『スマートフォン』。彼女の支給品の一つだ。
スキマ妖怪がこんな道具を持っていたような気がする…。悪戦苦闘の末に使い方は理解できたのだが、いまいち用途がわからない。
一応もう一つ支給品があったのだが、それは紅く輝く奇麗な宝石(エイジャの赤石、というらしい)で戦闘には到底使えそうにもない道具だった。
つまるところ彼女に武器は一つも支給されていない。戦闘が不得手なこの少女にとって、これはかなり致命的な事態である。

それにしても…こんなことに、巻き込まれるなんて。

少女――『稗田阿求』は、殺し合いという状況下で自衛の手段を得られなかったこと。そして、ゲーム開始時に『迷いの竹林』に転送されるという己の不運を呪った。
この竹林は非常に広大で深々としているし、此処を迷うことなく進むことができるのは因幡の兎くらいだと聞く。
それに、夜間である為にいつどこから人が襲いかかってきてもおかしくはない。
万が一、殺し合いに乗っている人物に遭遇すれば…その時点で終わりかねない。
参加者として記載されている数多くの妖怪達に比べれば、自分は赤子も同然の実力なのだから。
というかそもそも…自分に戦闘能力なんてない…。

勿論、こんなことに巻き込まれて怖いに決まってる。
転生の時までの短い命とはいえ、日々を平穏に暮らしていたのだ。
――そんな私が、こんな『殺し合い』という催しに突然巻き込まれた。
理解なんて出来るわけがないし、殺し合いなんてしたくもない。
だけど、あの主催者たちは―――山の神をも殺す力を持っているのだ。
生殺与奪を握られている。その時点で私達は殺し合いに乗らざるを得なくなってしまうのだ。
…それでも、私は乗ろうとは思えなかった。そもそも、乗った所で生き残れる自信もないという…。
というか、あの二人が何者なのかも解らない。荒木飛呂彦に、太田順也といった名前の二人組。
妖怪とは違う、神々とも思えない。見かけは人間なのだが…
まるで、神々をも超越したような賢者の様な。神々をも創り出す絶対者の様な。
そんな雰囲気さえ、感じ取れた。勝ち目なんて無いような気すらしたのだ。

………。

…………。

…私は、さっきから頭の中でごちゃごちゃした情報をまとめながら色々と考えていた。

そうしながら…何の宛も無く、歩いてきたけど。

これから…どうしようか?

何をするかも、方針も決まってない。殺し合いなんてしたくもないけど…
かといってあの主催者を倒す、なんてことが出来るんだろうか…?
出来るとしたら、この殺し合いに巻き込まれてる大妖怪達がとっくにやってるような気さえする。

230 ◆YF//rpC0lk:2013/07/16(火) 22:44:45 ID:g4FVpmvQ0
>>228
スイマセン、割り込み申し訳ないのですが
このロワ、首輪ないです

231彷徨える魂、巡り会う者達 ◆n4C8df9rq6:2013/07/16(火) 22:44:59 ID:0bZYclGo0


『―――し―――』


―――やっぱり、殺し合いに乗るしかない?
私達は命を主催者の掌に握られてるも同然なのだ。


『――もし――』


大妖怪ですら対処出来ない状況となれば…本当に、私達は従わざるを得ない?
殺し合いなんていう、残酷で、ふざけた催しに…。



「―――もーしもーし?」

―背後からぬっと誰かの声が聞こえてきた。
ひゃっ、と情けなく小さな悲鳴を上げながら私はハッと後ろへ振り返った。
物思いに耽りすぎて、周りのことを前々気にしてなかった…!我ながら不覚にも程があった。
そうして何だかんだで振り返った先にいたのは―――


「――貴女は、」

「確か…稗田のお嬢さん、よね?」

私の背後から話しかけてきたのは、桜色の髪を靡かせるお嬢様だった。
やはりと言うか何というか、当然の如く見覚えのある人物。
というより、自分でもよく知っている人物だ。稗田の一族が書き記す幻想郷縁起にも載っている、名のある御仁なのだから。
――彼女は、『西行寺幽々子』。冥界に住まう亡霊の姫君だ。
こんな暗い竹林の奥底で亡霊のお嬢様と出会う。…何となく怪談物のようでもある展開だ。

ともかく、私はそうして幽々子さんとこの殺し合いの場で出会ったのだ。

232彷徨える魂、巡り会う者達 ◆n4C8df9rq6:2013/07/16(火) 22:46:16 ID:0bZYclGo0
◆◆◆◆◆◆


どれくらいの時間を歩き続けていたのだろうか。
行けども行けども、竹林から抜けられるような気がしない。
たった数分の時間でさえ、何十分も経過しているような気分になる。
私―――『マエリベリー・ハーン』は、盃を片手に持つツェペリさんを後ろから着いていくように歩いていた。
自衛用といっては心許ない日傘(『八雲紫の傘』という私の支給品である)をその手に携えて。
一応振り回せば武器にはなるかもしれないし、がんばれば敵の攻撃も防げる…かもしれない。そう思って一応握りしめていたのだ。

「…メリー君、大丈夫かね?疲れた時は遠慮なく言うんじゃぞ。お嬢ちゃんが無理することはないからのう」
「あ、はい…まだ大丈夫です。お気遣い、ありがとうございます」

時折こうして、ツェペリさんを振り返って私のことを気遣ってくれていた。
…やっぱりツェペリさんと一緒にいると、心強く感じる。そう思うことが出来た。
さて、私達はこうして歩いている間。少しばかり言葉を交わしていたのだ。
その時に私は、少し前に抱いていた疑問を投げかけたのだ。


『―――ツェペリさん、ペットボトル知らないんですか?』


些細なことだけど、どうも気になっていたのだ。
現代人がペットボトルのことを知らないなんて、有り得ないと言ってもいい。
でも、ツェペリさんはペットボトルの開け方を知らないどころか「ビン」だと思っていたらしい。
どうにもそこが引っ掛かって…私はそのことについて聞いてみたんだ。
(ペットボトルの開け方も教えてあげたのは余談。)
ツェペリさんは当然の如くペットボトルなど見たことがないと言っていたし、それどころか現代人なら当然のように知っている道具も殆ど知らなかったのだ。
そこから色々と会話を重ね、私はふとあることに気づいて…ツェペリさんにこう質問をした。


『―――えっと、ツェペリさん。今は西暦何年ですか?』


それがきっかけで、私達はあることに気がついたのだ。
―――ツェペリさんは今を『1888年』だと思っていたらしい。
そう、私の生きている時代から見て…何百年も前の時代。言うならば馬車が街中を普通に走ってるような時代だ。
オカルトサークルに所属していたせいか、何というか…こうゆう『お互い時間軸が違うのでは』みたいな発想が何となく浮かんだのだ。
そうして聞いてみたら、案の定だった。ツェペリさんが居たという「英国」も、話で聞くだけでも明らかに現代とは異なる環境だった。
最初は半信半疑というか、思いつきのようなものだったのだが…互いに話を交わして確信することができた。
私とツェペリさんは―――別々の時代から呼び寄せられている。

233彷徨える魂、巡り会う者達 ◆n4C8df9rq6:2013/07/16(火) 22:47:50 ID:0bZYclGo0
>>230
すいません素で間違えてました…投下終了後に修正版載せますorz
毎回ミスが多くて申し訳無いです…

234彷徨える魂、巡り会う者達 ◆n4C8df9rq6:2013/07/16(火) 22:52:08 ID:0bZYclGo0

『―――もしかすると、名簿に見受けられるジョースターやツェペリの名を持つ者は時間軸の異なる血縁者…ということも有り得るかもしれんな』

私の推測を汲み取りしながら、ツェペリさんはそんなことも呟いていた。
そうなると、あの主催者達は時間干渉すら可能ということになる。
あの大人数を、全く気づかないうちに一つの場に呼び寄せるというだけでも相当な力なのに…いよいよ相手が全能の神のようにさえ思えてきた。
一体、どんな手段を用いればあの二人を倒せるんだろうか?
正直…勝ち目がないんじゃないか、ってさえ思えてくる。でも、諦めるなんて駄目だってこともわかってる。
この期に及んで諦めるなんて…私を支えてくれて、蓮子を探すことにも力を貸してくれているツェペリさんを裏切ってしまうようなものだ。
それに…もっともっと、蓮子と一緒に毎日を楽しく過ごしたいから。
だから、私は諦めたりなんか…





「メリー君、誰かが此方に接近している」

盃の水に浮かぶ『波紋』を覗き込みながらツェペリさんが私にそう言ってきた。
え、と私は慌ててその場で身を固くして身構える。
誰がこの殺し合いに乗っているかも解らない以上、とにかく注意はしなくちゃいけない気がした。
…ツェペリさんが波紋の動く方向をじっと見ている。
そして、私の耳にも次第に何かの足音が聞こえてきた。―――人間の足音じゃない。
これは…もっと違う、動物か何かの足音?

そう思っていた矢先。竹林の陰から、ゆっくりと一頭の『馬』が姿を現してきた。
屈強な馬の上に股がっているのは、箒のような頭をした西洋人の男性。

235彷徨える魂、巡り会う者達 ◆n4C8df9rq6:2013/07/16(火) 22:53:46 ID:0bZYclGo0


「―――やはり、人が居るようだな」

電子機器のような機械を片手に、男は私たちを見下ろしてそう呟く。
何となくだけど…ピリピリとした雰囲気を纏っているのが解る。
殺気のような、威圧感のような。そんな只ならない雰囲気を。
ツェペリさんはそれに気づいてか、私を庇うように身構えている。

「…君は、殺し合いに乗っているのか?」

ツェペリさんは片手を構えながら、目の前の男の人にそう問いかける。
もしYESと答えれば即座に攻撃しかねないような態度を見せている。
しかし目の前の男の人は、その問いかけに対し特に気にかけることもなく。

「君たちに質問がある」

ツェペリさんの質問を遮り、男の人が逆に質問を返してくる。
そして、男が静かに口を開いた。


「―――『ジョースター』という名に聞き覚えは?」


ツェペリさんは、きっとその質問を聞いて驚いていただろう。
私だって、ジョースターの名が出てきたことに驚いていたのだから。


◆◆◆◆◆◆

236彷徨える魂、巡り会う者達 ◆n4C8df9rq6:2013/07/16(火) 22:54:52 ID:0bZYclGo0
◆◆◆◆◆◆


「いやぁ、最初に会えたのが貴女で良かったわ〜。」
「ん、そうですか?」
「貴女って何となく冷静そうというか、それなりに聡明そうだし。現に殺し合いに乗るつもりもないんでしょ?」

『何となく冷静そう』。まぁ、喜ぶべきところ…なのかしら?
私と幽々子さんは、互いが殺し合いに乗っていないことを確認して竹林を歩きながら情報交換をすることにしたのだ。
どうやら幽々子さんも突然この催しに巻き込まれ、私のように竹林を彷徨っていたらしい。
そこで私を見つけて声をかけてみたものの、私が物思いに耽っていたせいで何度も呼びかける羽目になって…と。
うーん、我ながらなんとも恥ずかしい…。何度も発せられてる呼び声に気づけなかったなんて…。
しかも背後から声をかけられてちょっとばかし吃驚してしまったし。
それにしても、このお嬢様はこんな状況下でも結構飄々としてるなぁ…と。

「えっと、というか…幽々子さんは、怖くないんですか?割といつもと変わらぬ態度に見受けられますけど…」
「んー…そりゃ、少しは怖いわよ。…でも、怖がってた所で何も始まらないじゃない?そもそも私は怖がられる方でしょ、亡霊なんだし。」

悪戯っぽく笑みを浮かべながらそんなことを言いつつ、幽々子様は懐から何かを取り出す。

「それに、ね。」
「…それって、」
「これ、私の支給品。この刀が何なのか、解るでしょ?」

当然の如く、それが何なのかを理解することが出来た。
そう、それは彼女にとって非常に縁のある人物が持ち合わせていた物―――
人の迷いを断ち切ると言う、あの短刀だ。

「…勿論、解りますよ。それは…貴女の従者の」
「そ、『白楼剣』。あの子が――妖夢が愛用してる刀。何だか知らないけど、運命みたいなものを感じない?」
「運命、ですか」
「―――何だか、離れていても…あの子が私の傍に居て守ってくれてるみたいじゃない。」

彼女はにこやかな表情を浮かべて、心強そうに刀を両手で抱きしめるように抱えていた。
幽々子さんの顔からは、不思議な安心感のようなものさえ感じ取れる。穏やかなその表情は、何となく…美しくさえ見えた。
それにしても、運命か。…数多く存在するであろう支給品の中から、自分の従者の武器が支給される。
それは確かに、ある意味で一種の必然のような巡り合わせなのかもしれない。
―――そして。やっぱり彼女は、妖夢さんを信頼しているんだな…と。そう察することが出来た。
ずっと傍に居て、幽々子さんの為にいつも頑張って奮闘してると聞く。
彼女はやっぱり…幽々子さんにとって、かわいい従者なんだろうなぁ…。
そんな信頼出来る大切な人がいつも傍に居るのは、やっぱり素敵なことだと思う。
それだけに、今の状況は彼女に取っては…多少なりとも…いや、きっと確実に心細いのだろう。
…だからこそ、私も出来る限り…このお嬢様を支えてあげよう。
戦える力なんて何も持ってない私だけど、せめて誰かの支えにはなってあげたい。
それが私に出来る、精一杯のことならば。

237彷徨える魂、巡り会う者達 ◆n4C8df9rq6:2013/07/16(火) 22:57:19 ID:0bZYclGo0


「―――ねぇ、阿求」
「…ん?」

歩きながら少し考え事をしていたが、暫くして幽々子さんが私に声をかけてくる。
どうしたのだろうか。少し黙り込みすぎてしまったかな…。
そう思っていた矢先、私の予想とは違う答えが返ってきた。


「向こうに、誰かいるわ。…3人ほど」

幽々子さんはこちらをちらりと見ながら足を止め、小声でそう言ってきた。
どうやら、人がいるらしい。…直後に、私もすぐに動きを止める。
しー…と幽々子さんが指で「静かにしてね」と言わんばかりの素振りをしつつ、竹の間から『誰か』を覗き込んで見ていた。
私もそれに追従し、極力音を立てないようにとことこと動きながら竹林の隙間から覗き込む。



『――君は――殺し合い―――乗っているのか――?』


『君たち―――質問が―――』


『―――『ジョースター』という名に――』


自分達のいる場所から、距離にして十数歩以上はゆうに離れているか。
どうやら、二人の男性が何か会話をしているようだ。
見た所、片方は馬に乗ったがっしりとした体格の、箒のような頭をした男性。
会話をしているらしいが…どことなく、ピリピリとした…妙な囲気が感じ取れる。
距離のせいか会話内容は少し聞き取りづらいものの、曖昧になら一応把握することは出来る。
そして男が向く先に居るのは、二人の影。…姿を見る限り、一人は壮年の紳士風の男性。
もう一人は―――


「……………。」

その時、ふと私は横を向いた。
そう、一緒に竹林の隙間から状況を覗き込んでいる幽々子さんが、目をぱちぱちとさせていることに気が付いた。
何か『意外なもの』を目にしたかのように。『数十年来の知り合い』を突然見つけたかのような。
とにかく、幽々子さんが『何か』に驚いていることだけは理解することが出来た。
それはあまりにも突然のことだった。一体、どうしたのだろう…?
そう思っていた最中、幽々子さんが静かに口を開いた。




「……あの子。紫に、似てるような…」

238彷徨える魂、巡り会う者達 ◆n4C8df9rq6:2013/07/16(火) 22:58:34 ID:0bZYclGo0


小声でそう呟いた幽々子さんの視線の先を私は向く。
そう、紳士風の男性の傍にいる『もう一人の人物』の姿を見たのだ。
―――それは、金色の髪を持つ少女。特徴的な帽子を被り、その手には閉じられた傘を携えている。
少しばかり怯えているのか、男性の後ろに隠れるようにして不安そうな表情を浮かべているのが見える。
あの様子を見る限りだと、彼女は恐らく普通の人間なのかもしれない。とても場慣れしてるようには見えない。


でも。その姿は。
幽々子さんが口にした『人物』に、何となくだけど…似ていた。
彼女の姿を見た瞬間、確かにそれを理解することが出来たのだ。
あらゆる『境界』を手中に収める『かの大妖怪』に。
妖怪の大賢者と呼ばれる『彼女』に。

―――スキマ妖怪『八雲紫』様に、あの少女はどこか似ているような気がした。



【D-6 迷いの竹林/深夜】

【稗田阿求@東方求聞史紀】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:スマートフォン@現実、エイジャの赤石@ジョジョ第2部、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:とりあえず殺し合いはしたくない。
1:八雲紫様に似ている?ともかく、状況を伺ってみよう。
2:主催に抗えるかは解らないが、それでも自分が出来る限りやれることを頑張りたい。
3:荒木飛呂彦、太田順也は一体何者?
[備考]
※参戦時期は未定です。

【西行寺幽々子@東方妖々夢】
[状態]:健康、多少の不安
[装備]:白楼剣@東方妖々夢
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない。紫や妖夢に会いたい。
1:あの子(メリー)は、紫に似てる…?
2:主催者を倒す為に信用できそうな人物と協力したい。
※参戦時期は神霊廟以降です。

【マエリベリー・ハーン@秘封倶楽部】
[状態]:健康、精神はだいぶ落ち着いている。
[装備]:八雲紫の傘@東方妖々夢
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:蓮子と一緒に此処から脱出する。
1:あの人(ポルナレフ)はジョースター家のことを知ってる?
2:メリーを探す。ツェペリさんの仲間や謎の名前の人物も探そう。
3:……なんでツェペリさん、ペットボトルを知らないんだろう?
[備考]
参戦時期は少なくとも『伊弉諾物質』の後です。能力の制限は不明です。
ツェペリとジョナサン・ジョースター、ロバート・E・O・スピードワゴンの情報を共有しました。
ツェペリとの時間軸の違いに気づきました。
幽々子と阿求には今のところ気付いていません。

【ウィル・A・ツェペリ@第一部 ファントムブラッド】
[状態]:健康
[装備]:星熊盃@東方地霊殿
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:ジョジョやスピードワゴンと出会い、主催者を倒す。
1:目の前の若者(ポルナレフ)と対話する。彼はジョースターの血族について何か知っている…?
2:ジョジョ達だけでなく、メリーの友達も探そう。
[備考]
参戦時期はウインドナイツロッドの入り口のトンネルを抜けた直後です。
メリーと宇佐見蓮子の情報を共有しました。
メリーとの時間軸の違いに気づき、「ツェペリやジョースターの名を持つ者は時間軸の異なる血縁者なのでは?」という推測を立てました。
波紋探知機は最も近い距離にいるポルナレフにのみに反応しています。幽々子と阿求には今のところ気付いていません。

【ジャン・ピエール・ポルナレフ@第3部 スターダストクルセイダース】
[状態]:健康
[装備]:ヴァルキリー@ジョジョ第7部、生命探知機@現実
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:ジョースター一行を探し、始末する。
1:目の前の二人から情報を聞き出す。DIO様に害を為すと判断すれば始末。
[備考]
※参戦時期は香港でジョースター一行と遭遇し、アヴドゥルと決闘する直前です。
※肉の芽の支配下にあります。
※生命探知機は竹林に隠れてる阿求と幽々子も探知していますが、後回しにしてツェペリ達への尋問を優先しています。

※5人は地図から見てD-6の中央辺りの竹林内部に居ます。永遠亭からは距離的にはさほど遠くありません。

239彷徨える魂、巡り会う者達 ◆n4C8df9rq6:2013/07/16(火) 22:59:47 ID:0bZYclGo0

<スマートフォン>
稗田阿求に支給。
現代人なら誰もが知っているタッチ式の携帯電子機器。
此処ではどのような機能が使えるかは今のところは不明。

<エイジャの赤石@ジョジョ第2部>
稗田阿求に支給。
ルビーのような真紅の宝石。
その内部に入った光は何億回も反射を続け、皮膚をも溶かす光線として照射される。
柱の男であるカーズは究極生命体に至るべく、これを石仮面に使い骨針のパワーを強化しようとしていた。

<白楼剣@東方妖々夢>
西行寺幽々子に支給。
白玉楼の庭師兼剣術指南役の魂魄妖夢の愛用の刀の一つ。人の迷いを断ち切るとされる短刀。

<八雲紫の傘@東方妖々夢>
マエリベリー・ハーンに支給。
大妖怪である八雲紫が常に携えている傘。弾幕ごっこの際だろうと構わず携えており、恐らく耐久力は高いと思われる。

<ヴァルキリー@ジョジョ7部>
ジャン・ピエール・ポルナレフに支給。
死刑執行人の一族であるジャイロ・ツェペリの愛馬。

<生命探知機>
ジャン・ピエール・ポルナレフに支給。
一定の距離に存在する生物の位置を探知し、画面上に表示する電子機器。
サイズ的には携帯電話などと大差ない。少なくとも数十メートル圏内に存在する生物は探知出来るようだ。
あくまで『生命』を探知する為、死体には反応しない。
尚、参加者以外の生命も探知することが可能(ゴールド・エクスペリエンスの能力で生み出された生物など)。

240 ◆n4C8df9rq6:2013/07/16(火) 23:03:45 ID:0bZYclGo0
投下終了です。
指摘やツッコミがあればよろしくお願いします。
そして>>228の一部を以下のように修正します。ミスばかりで申し訳ありません…

×どうにも『首輪探知機』というらしく、周辺の首輪の反応を教えてくれるとのこと。

◯どうにも『生命探知機』というらしく、周辺の生命反応を教えてくれるとのこと。

241 ◆YF//rpC0lk:2013/07/17(水) 01:00:02 ID:IjiMNGtw0
乙です
ここでメリーと紫ネタが来ましたか
今後どうなるか楽しみです

それとメリーの状態表について
>2:メリーを探す。ツェペリさんの仲間や謎の名前の人物も探そう。
>3:……なんでツェペリさん、ペットボトルを知らないんだろう?

この辺り修正しますか?

242 ◆n4C8df9rq6:2013/07/17(水) 01:13:55 ID:idBIezd60
>>241
お願いしますorz

243 ◆n4C8df9rq6:2013/07/19(金) 14:02:49 ID:J.KeobfY0
上白沢慧音、封獣ぬえ、吉良吉影
予約します

244名無しさん:2013/07/20(土) 00:41:40 ID:QWD3FBKo0
>>243
吉良と女性が同時に予約されるだけで醸し出されるこの
「逃げて、超逃げて」感・・・・・・w

245名無しさん:2013/07/20(土) 00:49:05 ID:GlOA2ZE60
>>244
デッドマンズQの吉良なら女性でも安心できる仕様だし(震え声)

246 ◆n4C8df9rq6:2013/07/21(日) 17:06:40 ID:44dNwb6Q0
投下します

247藁の砦を築く者 ◆n4C8df9rq6:2013/07/21(日) 17:07:54 ID:44dNwb6Q0


やれやれ、タチの悪い夢を見ていたのかと思っていたが。
本当にこれは…現実らしいな。この感覚、夢にしては生々しすぎる。
このような何も無い草原に放り込まれたが、此処が殺し合いの会場なのだろう。
にしても、面倒なことに巻き込まれてしまったな…。
私は他人と顔を入れ変えてまで空条承太郎共から逃げて、別人として暮らすことを余儀なくされた。
自分を偽り続け、毎日ストレスが貯まるばかりの生活だったが、ようやくあんな争いから解放されたのかと思っていたのに…
しかも名簿を確認したら、私の平穏を脅かしたあの忌々しいクソカス共の名が載っていたのだ。
東方仗助、虹村億泰、広瀬康一、岸辺露伴、そして空条承太郎…
最悪だ。最悪にも程がある。


目の前に広がる深夜の草原を眺めながら、サラリーマン風の装いをした男――『吉良吉影』は内心苛立った感情を抱く。
社会において「心の平穏」を求めていた彼にとっての『最悪のゲーム』に巻き込まれてしまった。
争いや面倒事を嫌い、自身の正体―――殺人鬼としての本性―――を隠し通してきた彼にとって、こんな催しなど呼ばれたくもなかった。
戦えば自分の『能力』がバレてしまうし、殺し合いという状況下で衝動を抑えられなくなってしまうかもしれない
故に彼は、殺人鬼でありながら『殺し合いに乗ろう』と考えようとはしなかった。
誰彼構わず殺したいというワケではない。彼は女性の美しい手を求めて殺人を犯すのだ。
尤も、此処最近『それ』が出来なくて非常に欲求不満な状態なのだが…
…ともかく、彼は『ひっそりと隠れられる』場所を探していたのだ。

殺し合いなんてやりたい奴らが勝手にやってればいい。自分は人数が減るまで適当に隠れてよう。

そんな思考の下、彼は隠れ家に丁度いい施設を求めてアテもなくだだっ広い草原を歩き続けていた。
深夜の暗闇には多少は慣れてきたものの、夜空に浮かぶ星と満月程度の灯りしかないこの状況だ。
どこに『参加者』が潜んでいるのかがよく解らない以上、少しばかり慎重な足取りになってしまう、
程よく手入れされた皮靴を履いた両足で一歩一歩雑草を踏み頻りながら、彼は進んでいた。


(…湖、か?それに…彼処に見えるのは)


何分か歩き続けた吉良は立ち止まり、目を細めて前方に見える光景を確認する。
そう、視界の先に湖らしきものが見えるのだ。そして傍に見えるのは…一軒の施設。
アレは何だ?輪郭が多少見えているが、それなりに立派な建造物に見える。
目を凝らして、吉良は遠方に見える建物の姿を確認しようとした。
…見た所、アレは…………神社、なのか?
吉良はそう認識し、その場から再び歩き出してそちらへと向かおうとしていた時だった。

248藁の砦を築く者 ◆n4C8df9rq6:2013/07/21(日) 17:08:34 ID:44dNwb6Q0





「―――参加者、だな?」


吉良の後方から、誰かが話しかけてきたのだ。
突然の呼び声に少しばかり驚きつつも、吉良はすぐさま振り返る。
無論、多少なりとも警戒を抱いて身構えつつ。
この会場にはどんな連中がいるのかも解らない以上、暢気にしてはいられない―――
そう思っていたのだ。
そして、振り返った先にいた人物を見て。
吉良は、多少なりとも驚いた様子を見せたのだ。

「……あ、あぁ…そうだが……。」

「安心してくれ。私は、こんな殺し合いを許容するつもりなんてない」

吉良が振り向いた先にいたのは、一人の少女だった。
月光に照らされる美しい銀色の長い髪を持っており、小奇麗な身なりに感じる。
赤みがかった瞳は真っ直ぐに吉良を見据えており、そこから敵意は見られない。
…いや、吉良が驚いていたのはもっと違う所だった。
警戒が解けないような固い態度を見せる吉良を見て、少女は何となく予想してたかのような様子を見せて再び言った。


「…尤も、今の私はこのような『妖怪』の姿。警戒されるのも仕方無いとは思う。だけど、信じてほしい」


自らの姿を眺めるように呟いた後、再び吉良を真っ直ぐに見つめながら彼女は言った。

そう。
吉良が驚いていたのは、その少女の外見。
―――彼女の頭部から生えている角や衣服から覗いている尻尾のことだった。


そして、彼が驚いていたことは…もう一つ。


「………美しい……」
「…え?」

吉良の口からぼそりと言葉が漏れた。
少女が一瞬ぽかんとした様子を見せるが、彼女に吉良の心情は伺い知れず。
いや、恐らく理解することも出来ない感情だろう。
吉良がまじまじと視線を向けていたのは、少女の『手』。


◆◆◆◆◆◆

249藁の砦を築く者 ◆n4C8df9rq6:2013/07/21(日) 17:09:17 ID:44dNwb6Q0
◆◆◆◆◆◆


少女の名は『上白沢慧音』。
人間から妖怪へと転じた後天的な獣人―――ワーハクタク。
人里で寺子屋を営みつつ、幻想郷の歴史を刻み続ける編算者。


あの場での凄惨な光景は彼女の脳に強く焼き付いていた。
見覚えのない場所で目を覚まし、唐突に言い渡された『殺し合い』の幕開け…。
会場にどよめきが訪れたのはすぐ直後のこと。
周囲を見渡してみれば、見覚えのある顔が幾つも見受けられた。妹紅さえも見かけた。
そして妖怪の山に住まう秋の神・秋穣子があの荒木と太田という男に食って掛かる。
そう、食って掛かった。―――そこから先のことは、はっきりと記憶している。

彼女の頭が吹き飛んだ。
会場が静まり返った。私でさえ言葉を失い、唖然としていた。
そう、目の前で―――彼女が死んだ。
山の神様である彼女が、「見せしめ」として一瞬で殺された。
信じられなかった。あの八百万の神が、主催者の手によってこうも容易く死んでしまったことが。
そして―――こんな凄惨な悲劇が、『本当』だと言うことが。

それから気がつけば私は会場に送り込まれていた。
何も無い原っぱにて、ぽつんと取り残されたかのように私は殺し合いの地に存在していた。
…暫し、呆然と空を眺めていた。満月が空に浮かんでいる。
私の中の『妖怪』としての血が目覚める、満月の夜だ。
…獣のように昂る主催者への強い憤りを抑え込みながら、私はその場ですぐさま決意をしていた。

この殺し合いを、止めなくてはならない。
哀しみと苦しみを生み出すだけの、血に塗れた凄惨な争いなんて…あってはいけない。
あの山の神様も犠牲となってしまっている。――これ以上、誰かを犠牲にしてしまうものか。

悲しい歴史を、紡がせるわけにはいかない。


◆◆◆◆◆◆

250藁の砦を築く者 ◆n4C8df9rq6:2013/07/21(日) 17:10:14 ID:44dNwb6Q0
◆◆◆◆◆◆


「―――それで…慧音さんの知り合いは、この場に何人も?」
「ああ。親しき者もいれば、少し面識のある程度の者もいるし…とにかく、知り合いが何人もこの場にいるんだ」
「成る程な…」

そうして彼女―――慧音が最初に会場で見つけたのが一人の男性、名は『吉良吉影』。
彼女は対話を試みた。角や尻尾の生えた自身の容姿を少し驚かれることはあったが…吉良はすんなりと同行を許可してくれた。
二人は互いに自己紹介をしつつ、一先ず現在地から近い守矢神社に向かうことにした。
神社の中に誰か人がいるかもしれないし、探索を行ってみたいと慧音が提案したのだ。
吉良はすんなりとそれを受け入れた。元からあの神社へと向かうつもりだったし、丁度いいと思ったのだ。

軽い情報交換程度の会話を交わしつつ、二人は歩いていた。
この場にいる知り合いのことや、此処に来る前の経緯など…
無論、二人共警戒は解いていない。他の参加者がどこかに潜んでいる可能性もあるし、殺し合いに乗っている人物もいるかもしれないからだ。


(しかし…幻想郷、妖怪ねぇ……)

吉良吉影は、慧音と会話を交わしながら内心思考する。
彼女の口から出てきた『幻想郷』という言葉が気になり、そのことについて聞いたのだ。
そこから明らかになったのは、自分の知らぬ未知の世界の話。
人間、妖怪、果ては神々が共存し住まう幻想の地。結界によって隔離された最後の楽園。
聞いた時は「イカレているのか?」とでも思ったが…嘘にしては話が出来すぎている。
最初の会場で見せしめにされた少女が『八百万の神々』と呼ばれていたことも脳裏によぎる。
そして、同行している彼女…慧音さんはワーハクタクの妖怪であるという。
…何もかも無茶苦茶な話だ。神々が殺し合いの犠牲になり、妖怪がこうして目の前にいる?
それどころか、彼女の知り合いには「不老不死の人間」がいるらしい。
普段なら「馬鹿馬鹿しい」と一蹴しているだろうが…こんな異常な状況下に置かれている今。
そんな無茶な話が「現実」でも不思議ではないような気がしたのだ。

251藁の砦を築く者 ◆n4C8df9rq6:2013/07/21(日) 17:10:41 ID:44dNwb6Q0

―――断っておくと、吉良は自分のことをあまり話していない。
せいぜい「争いとは無縁な会社勤めの平凡なサラリーマンである」ということだけだ。
無論、空条承太郎や東方仗助たちのことは一言も話していない。
名簿に載っている名前を適当に使って偽名を名乗ることも考えたが…途中でボロが出たら面倒だ。
渋々「吉良吉影」という本名を名乗ることにした。…本当に空条承太郎らにはそこらで勝手に死んでいてほしい。
本当に会いたくない…気苦労が多くて疲れる。そう思っていた。
そしてこの情報交換において、吉良は「キラークイーン」のことについては一切話さなかったのだ。
キラークイーンは彼にとっての切り札。そして殺人の証拠隠滅の為の重要な能力である為、下手に晒すわけにはいかない。
それ故に片手には『建前の護身用武器』として、『スタンガン』を握り締めているのだ。
これは吉良に支給されたランダムアイテム。無害な一般人ということになっている私の唯一の武器。
とはいえ、実際には妖怪やスタンド使いがいるこの状況では精々時間稼ぎにしか使えないだろう。
基本的に戦闘は慧音に任せることにする。スタンドを使うのは、本当に身の危険が迫った時だ。
今は『無害な一般人』として、彼女の加護を受けることにしよう。


「…さて、そろそろだな」

会話を一旦止め、慧音は前を向きながらそう呟く。
吉良もそれに釣られるように、彼女の向いた方向を見た。

「ここが守矢神社だ」


◆◆◆◆◆◆

252藁の砦を築く者 ◆n4C8df9rq6:2013/07/21(日) 17:12:00 ID:44dNwb6Q0
◆◆◆◆◆◆



これから、どうしよう。

守矢神社の境内、居住空間の内部。
こじんまりとした部屋に隠れて潜んでいるかのように、一人の少女がそこにいた。
デイパックを抱え、恐怖と緊張の入り交じったような強ばった表情を浮かべながら部屋の外を覗き込むようにきょろきょろと見ていた。
支給品、そして名簿は既に確認している。その片手には一本の刃物―――メスが握り締められていた。

「私が、一体何したっていうのよ…」

少女は泣き言のように小声で言葉を吐き出す。
黒い髪や服に、大きな触手のような翼が目を引く出で立ちだ。
彼女の名は『封獣ぬえ』。悪戯好きで天の邪鬼な鵺の妖怪。

記憶を遡ってみれば、確か自分は外の世界から旧友を幻想郷に呼び寄せた所までは覚えている。
聖が封印していた聖人『豊聴耳神子』が復活を果たしたと言うのだ。
人間に味方である彼女が人里の民の心を掌握し、勢力を伸ばせば…きっと聖や妖怪が危ない。
だからこそ、私は聖人にも対抗し得る『強大な妖怪』である旧友―――マミゾウを呼び出したのだ。
そうして私は、聖人を含めたあの神道の連中をどうにかしようとしていた…はずだったんだ。
それなのに。
何で私が、私達がこんな狂った催しに巻き込まれなくちゃならないのか。
人間たちに封印された時なんかよりもよっぽど理不尽で、恐ろしい。
―――本当に、私が何したって言うんだ。

名簿には命蓮寺のみんなやマミゾウの名前が載っていた。勿論、聖も。
そしてあの神霊の連中の名が幾つか記載されいるのも見受けられた。

…私は、この場でどうすればいいのだろう。

私を暖かく迎え入れてくれた聖を喪う。…それは、本当に悲しいことだ。
聖は本当にいい人だった。妖怪を受け入れ、私を受け入れてくれた…
聖者のように清らかなあの人が、殺し合いを許容するとも思えない。

だけど、それじゃ彼女が危ない。
あの主催者は本当に『ヤバい存在』だってことが私にも感じ取れた。
逆らえるわけがないんだって本能が直感していたんだ。
きっとアイツらには、『勝てない』―――



「―――誰かいるのか?」

縁側から、こちらに呼びかけてくるような声が聞こえてきた。
少女の声だった。私は、部屋から顔を覗かせつつ恐る恐る目を凝らす。
――私が目を向けた視線の先。先の縁側に立っていたのは…二人の参加者らしき者達。

「君は、確か…命蓮寺の?」
「…あんた、寺子屋の」


そう。その内の片方は人里で見かけたことのある、寺子屋を営む妖怪。
そしてもう一人は、見覚えのない人間の男だった。


◆◆◆◆◆◆

253藁の砦を築く者 ◆n4C8df9rq6:2013/07/21(日) 17:12:34 ID:44dNwb6Q0
◆◆◆◆◆◆


守矢神社の境内に辿り着き、すぐに慧音は何者かの気配を感じ取った。
それは妖怪としての第六感なのかもしれない。
彼女は吉良と共に慎重に移動し、神社内の居住空間の方へと移動してみたのだ。
…そうしてみると、居住空間の演題にて一人の参加者を発見したのだ。
それは、命蓮寺の門下にいるという鵺の妖怪――『封獣ぬえ』。
慧音は警戒しつつも、ぬえとの対話を試みたのだ。






「それで、慧音さん。これから…どうするんだ?」

対面から少しだけ経ち。
全員が一つ一つ支給品を確認し合った後、先程までぬえが隠れていた居住空間の一室にて吉良が畳に座って問いかける。
ぬえは吉良から少し距離をとって尻餅をつくように座っている。
外から指す月明かりを眺めるように、慧音は少し考え込み…そして自分の方針を言った。

「…会場を移動して、一緒に此処から脱出する為の仲間を集めたい。可能なら、主催者を倒す為の手段も」
「…殺し合いには私も反対だが、移動して仲間を集めると言うのは少々危険ではないかな?
 このゲームに乗っている参加者が把握出来ない以上、今は動かず慎重に様子を…」

吉良が少しばかり慎重な意見を言おうとするが、慧音は首を横に振る。

「時間が過ぎるのを待っていれば、それだけ犠牲者が増えてしまう。
 …私の我侭のような形になってしまうが…出来れば、戦えない者も保護したい。
 吉良さんのような『力を持たない』人達が怯えている隠れている可能性だってある」
「………そうか」
「…吉良さんや、ぬえには迷惑をかけてしまうかもしれない。でも…何かあった時は、私が絶対に守る。
 だから…主催に抗う仲間を集める為にも、一緒に来てほしい。必ず、主催者への勝算を…打開策を見つけてみせる」

真剣な眼差しで、慧音は吉良に向かって言う。
主催に立ち向かう為の仲間を集めなくてはならない。他の参加者を見捨てるわけにはいかない。
だからこそ、彼女は『行動すること』を優勢したのだ。
吉良やぬえを守ることも決意し、自分が率先して戦うことを決めた。
勝算すらあるかも解らないが、少なくとも行動を起こさねば何も始まらない。
故に彼女は、僅かな希望を手に立ち向かうことを決意したのだ。

254藁の砦を築く者 ◆n4C8df9rq6:2013/07/21(日) 17:13:43 ID:44dNwb6Q0


(…フン、大した正義感だな)

そんな慧音の態度を、吉良は内心冷ややかに見つめる。
やはりこの上白沢慧音とやらはあの東方仗助共のような奇麗事を語る善人らしい。
―――馬鹿馬鹿しい。
私としては、出来ればこの神社で暫く籠っていたかった。どうせ移動した所で面倒なことに巻き込まれるだけだ。
…まぁ、ここで更に反論した所で彼女が意見を曲げるとも思えない。
仕方無いが、従ってやろう。

「…解った。慧音さん、私も貴方に着いていこう。
 乗りかかった船と言うこともあるが、私もこんな催しを許すつもりはないからな。
 この私は、君たちのような『力』は持ち合わせていないが…出来る限りの協力はしたい」

建前で作った偽りの『決意の表情』を見せながら、吉良は慧音に同調するように言う。
とはいえ、こんな催しを許すつもりはないというのは事実ではある。
私の平穏な生活を脅かしたのだ。その時点で許すつもりはないし、抹殺も考えている。
そうゆう点においては、ある意味私は嘘はついてはいないのだ。…能力のことを一切明かしていないのは事実だがな。


「え、…あー…じゃあ、私も…ついでに、着いていこうかな…?」

殆ど会話に参加していなかったぬえも、曖昧ながら二人に同行を宣言する。
吉良や慧音と違い、その態度は「なし崩し的に乗った」とでも言わんばかりの様子だ。
何とも言えぬ表情を浮かべながら、吉良がぬえに視線を向けていた。
吉良の視線に気付いたのか、ぬえが少しだけやりづらそうに目を逸らしつつ慧音の方を見る。
…慧音は、二人を微笑みながら見ていた。

「…吉良さん、ぬえ、二人ともありがとう。本当に助かるよ…。」

慧音の口から発せられたのは感謝の言葉。
その表情からも解る、心からの御礼だった。
吉良はそれに対し、謙遜したように言葉を発する。

「気にすることはないさ。皆で手を取り合って状況を打破するのは大切なことだからね…」
「それだけでも私からすれば礼を言いたいくらいだよ。主催に反抗する者が少しでもいれば、心強いものさ」

そう言いながら慧音は立ち上がり、再び外を見る。
仄かな月光に照らされている『幻想郷』が、彼女の視界に広がっていた。
―――こんな場で、既に殺し合いは始まっているのだと。

255藁の砦を築く者 ◆n4C8df9rq6:2013/07/21(日) 17:14:18 ID:44dNwb6Q0

「…さて、一通りの纏めはもう終わったことだ。
 そろそろ行動を始めたいが…吉良さん、ぬえ。大丈夫かな?」
「…ああ、構わないさ。」
「……私も…うん」

慧音の一声に対し、吉良とぬえは承諾し立ち上がる。
どうやら、もう移動する時が来たらしい。吉良からすれば存外速いなとも思わなくもない。
まぁ、あの正義感の持ち主となれば当たり前なのかもしれないが。

―――それよりも、私が未だに気になっていることがあった。


「ならよかった。…それでは、行こうか?」

月明かりに照らされつつ、慧音が先頭を歩き部屋を後にして行くのを後ろから見ていた。
ぬえ君と共に着いていきつつ、私は彼女のある一点を凝視する。


美しい。


美しい。


美しい。


彼女の『手』が、どうしようもなく美しい。


私の内からどうしようもない衝動が沸き上がる。


あれを手に入れたい。


私は、手に入れたい。


『彼女』を、自分だけのものにしたい―――――



殺人鬼『吉良吉影』は女性の美しい手を狙い、殺人を繰り返していた。
数多くの『手』を愛でてきた彼が久方ぶりに目をつけたのは、上白沢系音の『手』。


◆◆◆◆◆◆

256藁の砦を築く者 ◆n4C8df9rq6:2013/07/21(日) 17:17:27 ID:44dNwb6Q0
◆◆◆◆◆◆


(『私が絶対に守る』って…こっちだって一応力には自信あるんだけどね…)

隣の…吉良、って人と共に私は慧音に着いていく。
吉良って人は何となく苦手だ。柔和なんだけど…こう、なんか…怖い。
それに、この場では流されるがまま慧音たちに着いていってしまったが…はっきり言って期待していない。
主催に立ち向かう?勝算はないけど打開策を見つけてみせる?
…あのさぁ…無謀ってのはそうゆうことを言うんだよ!
馬鹿じゃないの!?そんなんで勝てるんだったら苦労はしない!

軽い苛立ちを抱きつつ、私は内心思考を続けていた。

…ともかく、聖を喪うのは絶対に駄目だ。妖怪にとっての希望なんだから。
でも、聖はきっと殺し合いには乗らない。希望を信じて主催者に立ち向かうのだろう。
慧音と同じように、主催に反抗するのだと思う。
だけど―――こんな大人数の、それも神々や妖怪を容易く呼び寄せられるような主催者に勝てるのか?

―――無理だ。そんなこと無理、無理だ!

下手すれば聖が主催に始末されるかもしれないし、聖が不殺を訴えた末に『乗っている』参加者に殺されることだって有り得る。
聖は優しすぎる。それが彼女の弱点なんだ。こんな血に塗れた場所だと、きっと…生きることは出来ない。
だから。聖を守る為には、他のみんなを殺さなくちゃならない。
汚れ役は…私のようなヤツが請け負わなくちゃいけないんだ。
主合えば彼女は妖怪の味方だということも知らずに、私は聖の復活の時に迷惑をかけてしまった。
そう、今…私が彼女を守れば。恩返しにだってなる。

でも、最後はどうする?
聖を守る為にみんなを殺す。殺し合いに生き残れるのは一人だけ。
要するに、最後は私でさえも死ななくちゃならない。…聖が生きてくれるならそれでいい?
…嫌だ。死ぬのは嫌だ。私だって怖い。死ぬのは、怖い。聖は守りたい。でも、私も死にたくない。

257藁の砦を築く者 ◆n4C8df9rq6:2013/07/21(日) 17:18:57 ID:44dNwb6Q0

だったら、むしろ自分だけが生き残る為に行動する?
命蓮寺の皆を、マミゾウを、聖を。みんなのことを裏切って、私だけが生き残る?
それもいいのかもしれない。死にたくなんかないもの。
でも、その後の私はどんな罪の意識を背負って生き続けることになるんだ?

…どちらにするか、未だに私は決められていない。
でも。殺すこと自体は、私が手に入れた『あの円盤の能力』でどうにでもなる。

私の支給品は、さっきから握り締めてるメスなんかじゃない。
『スタンドDISC』とかいう光る円盤のような代物。慧音や吉良と会う前に、既に私は円盤を『挿入』していた。
円盤とセットになって入っていた『頭に挿入して使え』とだけ書かれた紙に従い、それを自分の頭に挿入したんだ。
その円盤には未知の能力が封じ込められていた。そう、私が手に入れたのは『メタリカ』という力だ。
私は二人にはこのことを話していない。メタリカの能力で造り出したメスを支給品だと偽った。
この能力を利用すれば、きっと暗殺だって余裕で出来る。神道の連中を始末することだって出来るかもしれない。


覚悟を決めるのは私だ。
主催者に抗うことなんてどう考えても出来っこない。
なら殺し合いに乗るしかないんだ。
でも、聖を選ぶか。私を選ぶか。問題はその選択だ。
―――私は、どうすればいい?

◆◆◆◆◆◆

258藁の砦を築く者 ◆n4C8df9rq6:2013/07/21(日) 17:22:31 ID:44dNwb6Q0
◆◆◆◆◆◆


智慧の妖怪、上白沢慧音。
殺人鬼、吉良吉影。
正体不明の妖怪、封獣ぬえ。
3人の参加者が手を結び、守矢神社を後にする。
だが…その各々の目的、そして思惑は全く違うものだった。

一人は主催を倒す為、弱者を守る為。
一人は己の保身の為、歪んだ欲望の為。
一人は恩義か保身か、どちらを取るか決める為。

―――彼らは誰一人として、互いを理解していないのだ。
この同盟が脆く崩れ去るか、纏まりを見せて結束するのか。
その行く末は、彼らの行動によって変わるだろう。


【D-1 守矢神社/深夜】

【吉良吉影@第4部 ダイヤモンドは砕けない】
[状態]:健康、興奮
[装備]:スタンガン@現実
[道具]:不明支給品(ジョジョor東方 確認済み、少なくとも武器ではない)、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:平穏に生き延びてみせる。
1:面倒だが、一先ず彼女らと同行する。
2:他の参加者同士で精々潰し合ってほしい。今はまだは様子見だ。
3:無害な人間を装う。正体を知られた場合、口封じの為に速やかに抹殺する。
4:空条承太郎らとの接触は避ける。どこかで勝手に死んでくれれば嬉しいんだが…
5:慧音さんの手が美しい。いつか必ず手に入れたい。抑え切れなくなるかもしれない。
[備考]
※参戦時期は「猫は吉良吉影が好き」終了後、川尻浩作の姿です。
※自身のスタンド能力、及び東方仗助たちのことについては一切話していません。
※慧音が掲げる対主催の方針に建前では同調していますが、主催者に歯向かえるかどうかも解らないので内心全く期待していません。
ですが、主催を倒せる見込みがあれば本格的に対主催に回ってもいいかもしれないとは一応思っています。
※幻想郷についてある程度知りましたが、さほど興味はないようです。
※能力の制限に関しては今のところ不明です。

【封獣ぬえ@東方星蓮船】
[状態]:精神不安定
[装備]:スタンドDISC「メタリカ」@ジョジョ第5部、メス(スタンド能力で精製)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:聖を守りたいけど、自分も死にたくない。
1:今は慧音と吉良に同行する。正直言って、主催者に歯向かうのは自殺行為にしか思えない。
2:聖を守る為に他の参加者を殺す?皆を裏切って自分だけ生き残る?
3:この機会に神霊廟の奴らを直接始末する…?
4:あの円盤で発現した能力(スタンド)については話さないでおく。
[備考]
※参戦時期は神霊廟で外の世界から二ッ岩マミゾウを呼び寄せてきた直後です。
※吉良を普通の人間だと思っています。
※メスは支給品ではなくスタンドで生み出したものですが、慧音と吉良にはこれが支給品だと嘘をついています。
※能力の制限に関しては今のところ不明です。

【上白沢慧音@東方永夜抄】
[状態]:健康、ワーハクタク
[装備]:なし
[道具]:不明支給品(確認済み)、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:悲しき歴史を紡がせぬ為、殺し合いを止める。
1:吉良、ぬえと共に行動する。
2:仲間を集め、脱出及び主催者を倒す為の手段を探す。弱者は保護する。
3:殺し合いに乗っている人物は止める。
4:出来れば早く妹紅と合流したい。
[備考]
※参戦時期は未定ですが、少なくとも命蓮寺のことは知っているようです。
※吉良を普通の人間だと思っています。
※満月が出ている為ワーハクタク化しています。
※能力の制限に関しては今のところ不明です。

※3人がどこへ向かうかは後の書き手さんにお任せします。

259藁の砦を築く者 ◆n4C8df9rq6:2013/07/21(日) 17:23:35 ID:44dNwb6Q0


<スタンガン>
吉良吉影に支給。
対象に電気ショックを与えて短時間だけ行動不能にするハンディタイプの護身用器具。

<スタンドDISC『メタリカ』@ジョジョ第5部>
破壊力―C スピード―C 射程距離―C(5~10m) 持続力―A 精密動作性―C 成長性―C
封獣ぬえに支給。
極小の群体型スタンド『メタリカ』のスタンドDISC。
射程距離内に存在する鉄分を自在に操作する能力を持つ。
操作した鉄分を鉄製品に組み替えることが可能で、相手の体内で刃物を精製し内側から切り裂くと言うことも可能。
鉄分を失うことで呼吸をする生物は酸素を体内に供給出来なくなり、呼吸困難に陥り最終的に死に至る。
直接的な殺傷能力の高さ、及び酸欠による死を狙えるという点で暗殺においては非常に適した能力だろう。
ただし制限により鉄分を纏って姿を隠すことは不可能になっている。
また、多くの鉄分を操作をしたり能力を長時間維持すればそれだけ本体の消耗も大きくなる。

260 ◆n4C8df9rq6:2013/07/21(日) 17:24:25 ID:44dNwb6Q0
投下終了です。
指摘やツッコミどころがあればお願いします。

261名無しさん:2013/07/21(日) 17:41:37 ID:Hm/jLXpw0
投下乙
やっぱり吉良は殺人鬼じゃないですかやだー
ぬえちゃんも精神不安定で危ないしけーねの明日はどっちだ
しかしけーね先生の手が美しいのは同意(マテ

あと>>255で先生の名前が系音になってました

262名無しさん:2013/07/21(日) 18:37:19 ID:R/IfysqwO
投下乙です。

手が美しければ人外でも関係ないよねっ!

263 ◆.OuhWp0KOo:2013/07/21(日) 18:39:28 ID:jV1yVtdE0
>>261
投下乙です。

やっぱり吉良さん女の子のおてて大好きだったじゃないですか!やだー!!
タイトルどおりの藁の砦みたいなチームじゃないですか!やったー!!


ところで、
>>257
>>神道の連中を始末することだって出来るかもしれない。

ぬえちゃんが始末したいのは、『神霊廟』の連中じゃないですか?

264 ◆n4C8df9rq6:2013/07/21(日) 18:42:26 ID:44dNwb6Q0
うおお、ミスの指摘ありがとうございます…

>>255
系音× 慧音◯

>257
×神道の連中を始末することだって出来るかもしれない。
◯神霊廟の連中を始末することだって出来るかもしれない。

265名無しさん:2013/07/22(月) 09:56:11 ID:wQHiQKy.0
ぬえちゃんかわいい

266名無しさん:2013/07/22(月) 20:20:00 ID:2WO14HuA0
おれは小傘ちゃんの方が……w

267名無しさん:2013/07/22(月) 20:40:21 ID:38ET3hZo0
初っ端からイライラしてるウェザーにボコボコ蹴られてたな

268名無しさん:2013/07/23(火) 00:25:16 ID:qyh3vuyQ0
レミィ最かわ

269名無しさん:2013/07/23(火) 00:46:44 ID:sl.isOgwO
ボスが一番燃える

270名無しさん:2013/07/23(火) 01:55:02 ID:qyh3vuyQ0
燃えてるのはもこたんとエシディシなんだよなぁ…

271 ◆YF//rpC0lk:2013/07/23(火) 01:59:38 ID:hIOVs1AQ0
誰が上手いこと言えと

あとジャイロ・ツェペリ、豊聡耳神子で予約しときます
今度こそ書けたらいいな

272名無しさん:2013/07/23(火) 23:29:02 ID:i2iQDgWw0
神子か……参戦時期によって大きくキャラが変わりそうな予感

273 ◆E13IOgcHG2:2013/07/24(水) 04:45:29 ID:rv2/L2us0
アリス・マーガトロイド予約します。

274 ◆bfQHEFG87Q:2013/07/24(水) 04:49:18 ID:rv2/L2us0
失礼。
トリップ変更します。

275 ◆WjyuuPGo0M:2013/07/24(水) 04:59:39 ID:rv2/L2us0
すいません、また引っかかったので変更……。

276 ◆n4C8df9rq6:2013/07/26(金) 01:52:32 ID:euLR.fMQ0
比那名居天子
予約します

277名無しさん:2013/07/27(土) 12:16:49 ID:hODyPW/Y0
プロシュートの兄貴が東方キャラと相性悪すぎる

278名無しさん:2013/07/27(土) 21:03:20 ID:YgKsx30I0
妖怪みんなクッソ長寿なせいでグレフル効くかが怪しいんですよねぇ…(震え声)

279名無しさん:2013/07/27(土) 21:19:09 ID:Oo98DWUk0
ていうかそもそも女には効果が薄いんですよねぇ……>>グレフル

280名無しさん:2013/07/27(土) 21:53:03 ID:3vYqvj6k0
直は素早いんだぜ…するしかないな

281名無しさん:2013/07/27(土) 22:00:03 ID:YgKsx30I0
か、覚悟の差でなんとか…

282名無しさん:2013/07/27(土) 22:15:57 ID:LI.lhn/A0
直なら、対ミスタ戦を見ても一瞬で50〜60歳老化させれるみたいだが……

283名無しさん:2013/07/28(日) 00:43:33 ID:n2gb9wP60
たった50〜60歳じゃないか。幻想郷の住人は1000年やそこら生きててあれなんだぞ
しかもジョジョ側にも柱の男や吸血鬼がいるし。こいつらジョジョロワでもプロシュートポコッてたんだよな

284名無しさん:2013/07/28(日) 17:31:18 ID:XPkmKVdYO
女に効果薄いのは体温低いせいだから、燃やしちゃえばいい。

285名無しさん:2013/07/28(日) 17:33:00 ID:QzEjKV4w0
でも燃やしたら普通に殺せませんかねぇ…

286名無しさん:2013/07/28(日) 17:34:12 ID:etURoFmM0
妹紅&エシディシ「おう」

287名無しさん:2013/07/28(日) 17:49:07 ID:QzEjKV4w0
>>286
仲いいなお前らw

288名無しさん:2013/07/28(日) 19:29:02 ID:urUe/WxYO
うにゅ?

289名無しさん:2013/07/28(日) 19:40:20 ID:QzEjKV4w0
>>288
いずれ書いてあげるから待ってなさい!!

290 ◆n4C8df9rq6:2013/07/29(月) 17:14:50 ID:TZYIyN.E0
投下します

291偽りの空を裂く ◆n4C8df9rq6:2013/07/29(月) 17:17:32 ID:TZYIyN.E0


―――山腹から、彼女は世界を見下ろす。


幻想郷に存在する唯一の山、通称『妖怪の山』。
天狗や河童、果ては神々が住まう山。
険しき山岳の他、陽気にも思える穏やかな自然が生い茂る土地。
そこには『妖怪による組織的な社会』と『外の世界に匹敵する技術力』が存在し、幻想郷のパワーバランスの一角を担うとも言われている。

しかし、今や此処も『殺し合いの会場』の一つに過ぎない。
普段ならば当たり前に暮らしている天狗たちも、河童たちも、その姿は一切見られない。
果たして此処は本当にあの『妖怪の山』なのか。それとも、ただ模して作られただけの偽りの地なのか。
答えは解らないが、そもそも『彼女』にとってそんなことはまだどうでもよかった。


「…………。」

山腹の崖の端から、天人の少女『比那名居天子』はこの会場を見渡す。
蒼い長髪を靡かせており、凛とした紅い瞳が目の前に広がる世界を見据える。
右手に握り締めているのは一本の木刀。

まだ時刻は深夜。夜空に輝く星と満月だけが世界を照らす『灯り』だ。
故に、視界は悪く景色はよく見えないが…うっすらと、ぼんやりとながらも見渡すことは出来る。
―――薄暗く視界に広がるのは、『いつも通りの幻想郷』だ。
あの日が来るまでずっと天の上から見下ろして、毎日憧れを抱いていた『あの世界』。
少女が異変を起こし、弾幕ごっこで決着をつける幻想の地。
天界で退屈な日々を過ごしてきた私が求めていた―――『理想郷』。

だけど、

「殺し合い、かぁ」

そう。―――此処は、違う。
大地震の異変を起こし、あの巫女たちと争ったような理想郷じゃない。
ただの殺し合い。悲劇的で、可笑しくて、馬鹿馬鹿しい…凄惨な演目の会場。
私達は、そこで踊らされる舞台役者というわけらしい。
『生還』というただ一つの席を巡って争う、血塗れた奪い合い。
そうやって争う私達を見て、『あいつら』はほくそ笑んでいるのだろう。

292偽りの空を裂く ◆n4C8df9rq6:2013/07/29(月) 17:17:58 ID:TZYIyN.E0


「…気に入らないわね」


そう、気に入らない。
主催者とやらが。―――太田順也と荒木飛呂彦が、気に入らない。
あいつらはこのゲームを完遂したいんだろう。狡賢く出し抜いて、冷酷に他人を殺した所で…それはあいつらの思うツボ。
そんなのは気に入らない。この私が掌の上で踊らされるなんてのは、そりゃあ許せない。
たかが地上で這い蹲ってるような『人間』が、『天人』である私を檻の中に叩き込んで見下ろしてるって言うのよ?
見せしめに山の神様が死んだ時には、確かに驚いたし少しでも恐怖を感じた。
…でも、そんな脅しで屈するなんて私らしくないし…何よりそれが気に入らない。
一言で言うと、苛つく。生殺与奪を握り締めて高みの見物だなんて…この私が黙って見過ごすとでも思ったのかしら。

―――上等じゃない、太田順也。荒木飛呂彦。

私が今まで見てきたような、ワクワクに満ち溢れている弾幕ごっことは趣が全く違う。
誰かを殺した末に願いを叶えるなんて言う最悪の催し。
だけど、私はこれを『異変』だと捉えましょう。そう、いつもの通りの『異変』。
私はそれを解決するべく立ち向かう、いわば『主人公』ってワケよ。

ただ良いように踊らされるだけで終わるなんてつまらないでしょ?
だったら私は、この異変に徹底的に抗ってやるってものよ。
この私が、命惜しさに「はいそうですか」って素直に従うとでも思ったのかしら?
比那名居の総領娘をあまりなめるんじゃないわよ、『黒幕共』。
私は気に入らない奴は徹底的にこてんぱんにしてやりたくなるタチなのよ。
そう、殺し合いなんて…私は乗るつもりはない。
あいつらが残酷な悲劇を望んでいるのなら、私はそんな筋書きに反抗してやるだけ。
どうせなら演目そのものをぶっ壊して、悲劇そのものをおじゃんにしてやればいい。
太田と荒木の思い通りの脚本になんか、進めさせてやるわけないじゃない。

殺し合いを滅茶苦茶に叩きのめして、あいつらもぶっ倒して―――この『異変』を解決する!

293偽りの空を裂く ◆n4C8df9rq6:2013/07/29(月) 17:18:48 ID:TZYIyN.E0



右手に握り締めた木刀を軽く振り下ろしつつ、総領娘は不敵な笑みを浮かべる。
その表情には自信と期待に満ち溢れていた。
これは新たな『異変』。それを打ち砕く主役は『私」。
彼女にとっては、この催しさえも『一種の冒険』にしか過ぎないのかもしれない。
比那名居天子からすれば、『殺し合いの異変を叩き潰す』という異変解決ごっこなのだ。
表情に一片の迷いも浮かべずに、彼女は目の前の世界を再び見据える。

こんな美しい幻想の地が、数時間後には地獄と化すのかもしれない。
そんな筋書きは気に入らない。私の恋した理想郷がそんな姿になるのは…気に入らない。
だったら尚更、この殺し合いを叩き潰す気になるってものだ。


彼女は、崖を蹴り勢いよく跳躍する。
妖怪の山から移動すべく、飛ぼうとしたのだ。
比那名居天子にとっての『このゲーム』の始まり。
さあ、この異変を解決すべく戦ってやろう。
どこまでも徹底的に、反抗してや―――――――





……………。

………………あれ?

崖から飛んだはずなのに、落ちてる?

確かにさっき跳躍して飛翔しようとしたはずだ。

なのに…あ、あれ?

―――私、落ちてるじゃない!?


嘘、私飛べてな――――




「え、ちょっ、――――きゃああ〜〜〜〜〜っ!!!?」



―――崖から跳躍した天子は、そのまま勢いよく落下。
雑草に覆われた緑色の斜面に叩き落ちて、ゴロゴロと転がり落ちていく…。
幸い斜面までそれほどの高度の落下ではなかったことや、天人の頑丈な肉体によって大怪我は免れているだけマシ…かもしれない。
恥ずかしいことに、彼女は気付いていなかったのだ。『参加者は基本的には飛べない』という制限に。



◆◆◆◆◆◆

294偽りの空を裂く ◆n4C8df9rq6:2013/07/29(月) 17:19:24 ID:TZYIyN.E0
◆◆◆◆◆◆


「〜〜〜っっ………」

山の中腹から転がり落ちた天子は、麓の近辺の緩やかな原っぱで腰をさすりながら立ち上がる。
落下の衝撃だの、ゴロゴロ情けなく転がったりだので身体が地味に痛む…
というか帽子や木刀を落っことしてしまった。
慌てて周辺をきょろきょろと見渡したが、幸いどちらもそう遠くない地点に転がっていた。

「……ったく、ついてないったらありゃしない…」

彼女はとぼとぼと歩き、帽子と木刀を拾って回収する。
きゅっと帽子のズレを直しつつ、服や髪に振れて自身の身だしなみも確認。

「ああ、もう…汚れちゃってるじゃない!」

ばつが悪そうに呟きながらぱたぱたと左手で服の汚れを落としたり髪を整えたりしている。
今は髪の櫛も無いし、手入れをしてくれる召使いの天女たちもいない。
身だしなみを整えることなんてのは常に召使いに任せっきりだっただけに、どうも自分でやるのは慣れないし荒っぽくなってしまう。
お父様やお母様からも、身なりには気を使いなさいってよく言われてたけど…
いつかはちゃんと一人で出来るようにしないとなぁ…と軽く苛々しつつもそんなことを思い。


「さて、」

準備完了。
彼女なりに身なりを整えて、改めて麓の付近を見渡しつつ彼女は思考する。

295偽りの空を裂く ◆n4C8df9rq6:2013/07/29(月) 17:22:19 ID:TZYIyN.E0

さっきは明らかに『飛べなかった』。あの主催者の仕業かしら?
不老不死の人間すらも殺す力があるとか言ってたし、どうやら面倒な施しをされているらしい。
全く、面倒臭いったらありゃしないけど… ま、いいわ。
敵は強大、圧倒的、反抗は困難。でも、それでも構わない。
何故かって?そりゃ当たり前のことでしょう。


―――黒幕は『強敵』でいてくれないとね。その方が燃えるじゃない!


気を取り直すように、天子は原っぱから走り出す。
目指すは妖怪の山からの下山。
そこからどこへ向かうか?そんなのは特に決めていない。
ただ自由な風雲のように、気の赴くままに。
総領娘は奔放に駆け抜けるだけである。目的地など、気分が勝手に決めてくれるのだから。



【E-1 妖怪の山(麓付近)/深夜】

【比那名居天子@東方緋想天】
[状態]:落下の衝撃で全身に鈍痛(時間経過で治まる程度には軽微なもの)
[装備]:木刀@現実
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに反抗し、主催者を完膚なきまでに叩きのめす。
1:気まぐれにどこかへと赴き、殺し合いをおじゃんにする為の手段や仲間を捜す。
2:主催者だけではなく、殺し合いに乗ってる参加者も容赦なく叩きのめす。
3:自分の邪魔をするのなら乗っていようが乗っていなかろうが関係なくこてんぱんにする。
4:紫には一泡吹かせてやりたいけど、まぁ使えそうだし仲間にしてやることは考えなくもない。
[備考
※参戦時期は少なくとも非想天則以降です。
※この殺し合いのゲームを『異変』と認識しています。
※制限の度合いは不明です。


<木刀>
日本刀を模して作られた木製の刀。
主に剣術の稽古などで使用され、現代においては土産物としても有名だ。
強度は高く、鈍器としての殺傷能力は十分にある。

296 ◆n4C8df9rq6:2013/07/29(月) 17:23:23 ID:TZYIyN.E0
短めですが投下終了です。
指摘やツッコミ、及び感想があればよろしくお願いします。

297名無しさん:2013/07/29(月) 19:42:26 ID:bF.KGFoY0
投下乙
華麗に飛ぼうとして坂を転がっちゃう天子ちゃんかわいい

298 ◆WjyuuPGo0M:2013/07/30(火) 15:42:45 ID:KL7IwXWgO
すみません延長します

299名無しさん:2013/07/30(火) 23:26:46 ID:jH1bPju2O
投下乙です
安定の天子www早々に転落死かと思って一瞬びびったw
スタンスはまともな対主催だけど緊張感を全然感じないところがまた天子

300 ◆YF//rpC0lk:2013/07/30(火) 23:34:54 ID:BEI9YwU20
間に合いそうにないので自分も延長します

301 ◆YF//rpC0lk:2013/08/05(月) 23:59:47 ID:aTiBWJWU0
間に合ったので投下いたします。
キャラ把握がいまいち出来ていなかったり、内容が短いです。

302 ◆YF//rpC0lk:2013/08/06(火) 00:00:22 ID:eEUoQS6o0

迷いの竹林の奥に、その建物―――永遠亭はある。
純和風の佇まいが情緒あふれるその場所は、
かつて月より移り住んだ者たちが永久にも等しい時間を過ごすための場所。
尤も、満月異変が終わってからは「永遠の魔法」も解かれ、他と同じく時が過ぎていく。

この和を極めた屋敷の中に彼は連れてこられた。
屋敷とは完全にミスマッチな、つば広帽子にゴーグルとアメリカの荒野を旅する方がお似合いの恰好だ。
彼、ジャイロ・ツェペリは未知なる和風空間を探索している最中だった。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


「いきなり殺し合いをしろと言ってきて、妙なところに連れてくるとはな」

ジャイロはヨーロッパのネアポリス王国にて、代々死刑執行人を務める家系である。
無論、このような純日本的な建物など、生まれてこの方一度も訪れた事などなかった。
そのため、畳を踏み締める足の感覚も、障子や襖を開閉する腕の感覚も、人生初めてのものばかりである。

だが、それよりも彼を驚愕させたのは、永遠亭に存在する「設備」であった。
彼は処刑人の家系ではあるが、副業として医師としても活躍する。
そのため医療関連の代物には敏感であるが、それ故この建物は興味深かった。
数多ある医薬品に、その材料の数々。
手術台も、彼が国で用いていたそれより圧倒的にハイテクであり、
なにやら不可思議な機器―――近くにあったマニュアルによれば、レントゲンという体内を撮影する機器らしい―――まであった。

「こりゃスゲエや。父上に報告したらなんて言うか。
 鉄球も用いずに体内を観測するなんて、こんなの国にあったら商売あがったりだぜ」

半ば冗談めいた事を口にしながら、彼は様々な医療機器を調べていた。
そんなときだった。

303 ◆YF//rpC0lk:2013/08/06(火) 00:00:44 ID:eEUoQS6o0


―――ギィ……ギィ……―――


木の板を踏み締める音が聞こえた。
誰かが外の廊下にいるようだ。しかも近づいてきている。

(まずいな)

ジャイロは内心毒づいた。
仮に接近している人物が、この殺し合いに積極的だった場合、自衛がままならないからだ。何故か?
永遠亭の周りは竹林である。彼も先ほど探索中にチラリと見たが、
竹の葉や竹の節と節の間にも、しっかりと「黄金長方形のスケール」があるのを確認している。

だが―――肝心の鉄球が手元にないのだ。
デイパックの中身は確認したが、「アレ」に付いていた説明通りなら戦闘には使えない。
通常、鉄球がなくなった場合は削ることで作成するのだが、和風屋敷のほとんどは植物由来であり、
数少ない金属製のほとんどが医療機器であり破壊したくなかったのだ。
しかたがなしに、近くにあったメスを数本拝借する。
刃物は本来の得物ではないのだが、この際贅沢は言えない。
いざとなったら、黄金長方形の回転を加えれば、使い捨ての飛び道具ぐらいにはなる。

(にしても、この足音の主……「軽い」のか)

先ほどすぐ近くの曲がり角を過ぎた足音を聞きながら、ジャイロは思った。
一般的な大人の踏む音にしては軽い。自分が歩いた時とは音の感覚が違うのだ。
むしろ子供が歩くような体重の軽さを覚える音。

そうこうしているうちに音の主はジャイロのいる部屋の入口まで数メートルという所まで接近してきた。
メスを握る手にも、緊張の汗が滲みそうになる。
障子に接近者の影が映し出された。足音の軽さの通り、背丈はジャイロよりずっと低い。
身構えたまま障子が開くのを待とうとしたときだった。

304 ◆YF//rpC0lk:2013/08/06(火) 00:01:33 ID:eEUoQS6o0

「君が武器を持っているなら収めて欲しい。私は殺し合いにはのっていないわ」
件の影が障子越しに声をかけてきた。少女特有の高い声だ。

「生憎とよぉ、そんなこと言われて『はいそうですか』って構えを解くバカがいるか?
 アンタが何者か俺は知らねぇんだぜ」
ジャイロは表情を変えずに反論する。
視界の隅に、丸い窓から見える竹の「黄金長方形のスケール」を捉えておいたままだ。

「君はそうかもしれないけれど、私は君の事が良くわかるわ。
 君は殺し合いに乗る気はなく、むしろあの主催者たちへの義憤と医療機器への興味がよく聞こえるのよ」
それと親友に会いたい気持ちね、と声の主は付け加える。

「!?」
ジャイロは呆気にとられた。確かこの屋敷を探索していたときに人の気配はなかったはずだ。
何故コイツは医療機器を興味津々に探索していたことを知っているのか。

それだけじゃない。なぜコイツは親友―――ジョニィを探そうかと考えていたことまで知っている?
名簿までは確認したわけではないが、あの謎の場所にジョニィがいたのはチラリとだが確認していた。
荒木と太田を打破するためにも、ジョニィと合流しようと思っていたのは、メモにも言葉にもしていなかった。
つまり、この障子の向こうにいる人物は……

「……わかった。武器は捨てる。殺し合いにのっていないというその言葉も信じるぜ」
思いつく限りの能力を持っていた場合、おそらく今の自分では勝ち目は万に一つもない。
そう結論付けたジャイロはメスを近くの机に置き、障子を開けた。








「信じてくれて、なによりです」
そこにいたのは、2つに尖った金髪と、耳当ての特徴的な少女だった。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

305 ◆YF//rpC0lk:2013/08/06(火) 00:02:47 ID:eEUoQS6o0

畳の上に座り込んで、二人が対峙する。
ジャイロは、金髪の少女―――豊聡耳神子と情報交換をすることに決めたのだ。
二人の手には、参加者名簿が握られていた。
ジャイロはジョニィやディエゴら3人の名前を、神子は青娥や神霊異変にやってきた4人、
そして3者会談を行った白蓮と神奈子の名前を確認した。

「となると、まずはジョニィや博麗の巫女と接触するのが当面の目的となりそうね」
「そうなってくるな。にしても、身内より商売敵のほうが信用できるって、お前んとこどうなってんだよ?」
「青娥については、この際とやかく言うつもりはありませんよ。わたしにとっては反面教師って奴ですからね」
「いいのかそれで……」

コイツの身内関係については深く考えないようにしよう。そうジャイロは思った。

「しかし、疑問点もある。まずリンゴォの奴だが、アイツは確かに死んだはずだ。
 俺が決闘の末に止めを刺したから間違いない。
 それにディエゴは大統領に殺されたのをジョニィを確認している」
「つまり死亡したはずの者たちが参加していると?」
「あぁ。それと気になるのが名簿に多くいる『ジョースター』と『ツェペリ』の姓だな。
 ジョニィの血縁についてはよくわからんが、ここに載っているウィルやらシーザーやらは俺の親類にいないのは確かだな」
(そもそも俺自身の名前がシーザーなんだけどな)
この事はジョニィとの秘密である。

「とは言え、最初の疑問についてはある程度目星がついてる。
 さっき言った大統領なんだが、コイツは並行世界へ移動する能力を移動する能力を持っているんだが、
 他人も連れてくることが可能らしい」
「つまり、『まだ生きている世界』から連れてきた存在というわけですか」
「つまりはそうなるな。もっともこの場合あの二人も同じ能力を持っているという事になるだろうが」
「もしかしたら、その『ジョースター』と『ツェペリ』の姓を持つ者たちも
 並行世界から連れてこられた可能性があるわね」
「なるほど、そうかもしれねぇな。しかしそうなると奴さんたちの能力を打破する方法をどうするかだな……」

最初に考えていたより相手は強敵かもしれない。そんな懸念にジャイロが頭を抱えていたときだ。

306 ◆YF//rpC0lk:2013/08/06(火) 00:03:22 ID:eEUoQS6o0

「打破する方法と言えば、君の支給品はなんだったの?」
神子が不意に、ランダムアイテムの話題を振ってきた。

「あぁ、アレか。付属の説明書を読んでよ、武器に仕えなさそうだから仕舞っといたんだが……」
ジャイロはそうぼやきながら、自らのデイパックの中を漁る。
取り出された紙を開くと、中から出てきたのは水晶のネックレスだった。
金属の鎖に、藍色の輝きの眩しい八面体カットの水晶が繋がっている。

「これは、命蓮寺にいるネズミが持っている振り子ですね」
「お前コレ知ってるのか? 説明書きには『ナズーリンのペンデュラム』って書いてあったがな。
 物探しには使えそうなんだが、武器としては使い勝手が悪すぎるみたいでよ」
ジャイロは、手に持っていたその説明書きをパンと叩いた。

「……それは例えば」

神子が自身のデイパックから何かを取り出した。
「こんな鉄球とか、かしら?」
その手に握られていたのは、模様のついた手の平大の鉄球だった。

「それ、俺の鉄球じゃねえかッ!?」
ジャイロは立ち上がるほど驚いた。
神子の手に、自分の愛用する鉄球があるのだから当然である。

「先ほどから鉄球を欲する気持ちが手に取るように分かったのよ。どうやらただの鉄球みたいだし、私には無用の長物だわ」
「なぁなぁ、そう言うんならよ、俺にその鉄球くれないか? 条件があるなら飲むからよぉ」
「どうしようかしらねぇ……」

ジャイロの必死の訴えに神子がどうするか考えていた時だった。

307 ◆YF//rpC0lk:2013/08/06(火) 00:03:35 ID:eEUoQS6o0

「……ん!?」
「この音、馬の足音か?」
遠くの方から、蹄の鳴る音が響いてきた。
竹林の中を馬が駆けていっているのである。

ジャイロは神子の隣を通り抜けて、障子の向こう側にある庭に降り立った。
その眼は馬のいるであろう方向を見つめている。
と思うと、おもむろに手に持っていたペンデュラムを前に突き出し、その水晶を凝視しだした。
水晶は少しずつ揺れ動きだし、やがてある方向を明確に指し示す。
その方向は、先ほどまでジャイロが見つめていた、馬の方向である。

「やっぱり、思った通りだぜ」
「一体どうしたと言うの?」
「あの蹄の音に聞き覚えがあったから、ペンデュラムで探知してみたのさ。
 さっきはそこまで言わなかったが、説明書きには明確なイメージがあればより確実に探知するらしい。
 そうしたらビンゴだぜ。あの音は、俺のヴァルキリーの蹄だ!」
ジャイロは馬の方向へ歩き出した。
それを制止するように、神子が声をかけた。

「話によればここは『迷いの竹林』といって、自然の迷宮となっているわ。
 道に迷った挙句奇襲されてしまうかもしれない」
「そう言われても、ここで待っていたところでヴァルキリーが来てくれるとは思えねェ
 第一、ジョニィ達を探すためにもここに留まっているわけにはいかねぇだろ」
そういうとジャイロはペンデュラムの指し示す方向へ進みだす。
神子も、それもそうだと思い直し、ジャイロを見失わないよう後をついていくのだった。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

308 ◆YF//rpC0lk:2013/08/06(火) 00:04:08 ID:eEUoQS6o0

【D-6 永遠亭/深夜】

【ジャイロ・ツェペリ@第7部 スティール・ボール・ラン】
[状態]:健康
[装備]:ナズーリンのペンデュラム@東方星蓮船
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:ジョニィと合流し、主催者を倒す
1:ジョニィや博麗の巫女らを探し出す
2:リンゴォ、ディエゴ、ヴァレンタイン大統領、青娥は警戒
3:俺の愛馬(ヴァルキリー)、待っててくれよ
[備考]
※参戦時期はSBR19巻、ジョニィと秘密を共有した直後です。
※豊聡耳神子と博麗霊夢、八坂神奈子、聖白蓮、霍青娥の情報を共有しました。
※この会場でも、自然には黄金長方形のスケールが存在するようです。
※豊聡耳神子の能力を読心能力と認識しています。


【豊聡耳神子@東方神霊廟】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ジャイロの鉄球@ジョジョ第7部
[思考・状況]
基本行動方針:聖人としてこの殺し合いを打破する
1:博麗の巫女など信頼できそうな人物を探し出す
2:今のところジャイロに味方する
3:あのペンデュラムを白蓮に渡したら面白いかも
4:……青娥、もしかしたら裏切るかもしれないわねぇ
[備考]
※参戦時期は『東方求門口授』の三者会談を終えた後です。
※ジャイロ・ツェペリとジョニィ・ジョースター、リンゴォ・ロードアゲイン、
  ディエゴ・ブランドー、ファニー・ヴァレンタインの情報を共有しました。
※能力制限については、後の書き手の方にお任せします。

309 ◆YF//rpC0lk:2013/08/06(火) 00:04:31 ID:eEUoQS6o0

【支給品情報】

○ナズーリンのペンデュラム
【出典:東方星蓮船】
ジャイロ・ツェペリに支給。
ナズーリンが探し物をする際に用いているダウジング用振り子。
銀色の金属製の鎖の先に、藍色の八面体カットの水晶がついている。
このロワでは誰でも使用でき、生物、器物問わず半径200m以内のものを探知できる。
探しているもののイメージが明確であるほど探知精度が高い。
(例えば「移動手段」よりも「馬」、更に馬の固有名詞と身体的特徴が分かっている方が精度が高い)
ただし一度に探知できる対象は一つのみ。
またスペルカードのような攻撃・防御手段に使用できるのはナズーリン本人のみである。


○ジャイロの鉄球
【出典:ジョジョの奇妙な冒険 第7部 スティールボールラン】
豊聡耳神子に支給。
模様の刻まれた手の平大の鉄球(1個)。
回転の技術を取得しているものなら万能の武器になるが、そうでなければただの鉄球である。

310 ◆YF//rpC0lk:2013/08/06(火) 00:04:42 ID:eEUoQS6o0
投下を終了します。
指摘やツッコミ、及び感想があればよろしくお願いします。

311 ◆n4C8df9rq6:2013/08/06(火) 00:36:30 ID:GlnpHwVA0
投下乙です!ジャイロは個人的に気になっていましたw
神子様の能力はなかなか安定気味で此処でもカリスマを発揮してくれそうで活躍を期待したいですね…!
さりげにペンデュラムは人捜しにも使えるあたり便利そうな
そして別サイドとの合流フラグ、うどんげといい今回の話といい竹林に着々と人が増えてきてる…w

312 ◆YF//rpC0lk:2013/08/06(火) 09:09:34 ID:eEUoQS6o0
スイマセン、題名忘れてました
題名は『ルイとサンソン』です。

313名無しさん:2013/08/06(火) 10:16:01 ID:KbEXGyOA0
話が進んできて良いねェ

314 ◆WjyuuPGo0M:2013/08/06(火) 14:01:32 ID:/Wp.EdOg0
大変遅れてしまいましたが、アリス・マーガトロイド投下します。

315プラスチックハート? ◆WjyuuPGo0M:2013/08/06(火) 14:04:28 ID:/Wp.EdOg0


それはゲーム開始から約十分後の事だった。
二本目の蝋燭に火が点され、部屋の一室と二人の少女?を僅かに照らした。
この光量ならたぶんバレないわね、と少女――アリス・マーガトロイドは思った。
いま自分達がここにいるのが他の参加者に知られるのは、よくないと判断しているからだ。
訝しげに口を開こうとしたもう一人の少女?の口を人差し指で押さえた。
相手はすぐ理解しただろう口を噤んだ。私のと違い、硬い感触だと思った。
そしてすぐさま思考を切り替え、まずはと、先ほど起こった惨劇の事をアリスは考えた。


――――私は家で使い捨て用の人形を作って一日を終えようとしていたはず。
それが、いつの間にか自分と知人達が見知らぬ場所に集められ、二人の男からいきなり殺し合いを強要された。
直後、誰よりも早く男達に食って掛かった秋穣子という神が、魔法使いであるアリスにとっても見当のつかない方法で殺された。
そして程なくして、これまた未知なる力で意識を失い、今度は見知った場所に飛ばされた。

……訳が解らない。
夢かと思ったが、今日は(多分)気分が良くなく眠れる気分じゃなかったので、足をつねってみたが
痛いだけで何も変わらなかった。

仕方ないので状況把握に頭を働かせたが、私達の平穏を乱す誘拐犯どもは、私達はいつでも気絶させられ、
殺せて、なおかつ別の場所に転移できる程度の能力の持ち主で、
しかも参加者の素性もある程度知ってるという種族人間っぽいけど人間とは思えない怪人だ。
アリスは思考を中断させ、少女?の口から指を離し溜息をついた。


「歯向かうとか考える自体が馬鹿馬鹿しくなってくるわね」


命の執着や未知への恐怖がないではないが、あまりにも出鱈目すぎて現実味がない。
ゲームの舞台のどこかにいるだろう、だいぶ前に闘ったあのいけ好かない天人も本気を出せば非常に強かったが、
あの二人の力はあまりにもスケールが違いすぎる。


「じゃあ、あんたは乗るの?」


呆れたような素っ気無い、小さな声での問いがもう一人の少女の口から出た。
いつも聞く、でも違うアリスの声だ。
心の鼓動が僅かに早まったのを感じた。

316プラスチックハート? ◆WjyuuPGo0M:2013/08/06(火) 14:06:37 ID:/Wp.EdOg0


「そのつもりはないわ」


太田や荒木の命令どおり殺し合いに参加するにしても、情報が少なすぎる。
しかも武器である複数の人形や魔術書も没収されて手元にない。
まあ、その気になれば所持してる時と遜色ない力は出せるのだが、
所持している方が心理的余裕ができるので、無い今は不安なのだ。
アリスはこの状況において、いつも以上に自分の力を過信できないでいた。
支給品を全て確認した今でもだ。名簿も確認している。


「様子見?それとも?」
「…………」


今度の少女の問いにはすぐ答えられなかった。
他の参加者はこの殺し合いではどう行動するだろう?
一応、古馴染みの霧雨魔理沙と博麗霊夢は性格的にも職業的にも、いつもの異変と同一視して解決に乗り出すだろう。
あの二人の行動パターンは判りやすいし、そういう意味では安心だ。
だが幻想郷在住の、それもアリスと交流のない、もしくは少ない参加者は、この事態にどう出るかこの場において想定し難かった。
アリスは妖怪でありながら、人里で人形劇を開く、住居の近くに迷い込んだ者を家に泊めてやるなど、それなりに人間とも交流がある。
だが反面、知人からの妖怪退治の依頼をされてもあっさり断わったり、必要以上に関係を深く持つのを避けたり、
戦いにおいてもなるべく強敵との戦闘をしないよう行動するなど、危険と感じた面倒を避ける傾向がある。
故に今のアリスには、軽度ではあるがある種の人間不信に陥りつつあった。
でもこのまま立ち止まるのはもっと不安だった。


「『それとも』はないわね」


不安を遮るよう苦笑しながら、もう一つの選択をアリスは告げた。
どの道、自分一人ではどうしようもないと結論は出ている。
それに自分の知り合いが、それも自分の軽はずみな行為が原因で死ぬというのは、
想像したくなかったし、そもそも自分も平気でいられるかどうか解らなかった。
ならばせめて他の参加者の動向を、ゲームの進行を見定めつつ方針を決めようと思った。

317プラスチックハート? ◆WjyuuPGo0M:2013/08/06(火) 14:10:09 ID:/Wp.EdOg0



「もしかしたら、無いとは思うけど……霊夢か誰かが短時間で解決するかも知れないけど……
 それでも、とにかく他の参加者達を見なけりゃ、何も始まらないわよね。柔軟に対応しなきゃね」
「そうね。でも、できれば誰かと会って話くらいした方がいいわよ」

アリスの心の奥底では思っていた事、図星ともいえる同意にアリスは半眼になった。


「あんたを元の木人形に戻すには、どうすれば良かったんだっけ?」
「頭のあれを抜けばいいんじゃない?」


呆れ顔で額に螺子らしき物体が付いてるアリス姿の支給品は、仮のスタンド本体――アリスに対してすぐさまそう言った。
アリスはそっけない返答に軽く頭痛を覚えた。
ゲーム開始直後、彼女はすぐに支給品を確認をした。
見つけたのは基本支給品である食料など、そして絵画に使うような素っ気無いデザインの等身大木人形。
そして見た事のない銀色の円盤。
説明書があったのでそれを読み、彼女なりに周囲の警戒をすると円盤の挿入を試みたのだった。
好奇心と焦燥が彼女を早急の行動に移させたといっても良いだろう。
そのまま木人形に自らの姿をコピーさせたのも、その直後だった。
アリスはスタンドディスク「サーフィス」の説明書の内容の一部を思い出した。

…………木人形――サーフィス素体は触れた者の身長、体重、性格や癖などを完全にコピーする事ができます。
本来はコピーした者を操れますが、このゲームでは使えません。
スタンドDISKと合わせてご使用下…………


「…………」


アリスは自分の性格について良い悪いとか考えたことは殆どない。
しかし、こうして自分の性格をコピーした存在と会話すると釈然としないというか
少し腹が立つというか、複雑な気分で腹がいっぱいになりそうな感じであった。
私は薄情なのだろう。現に知り合いの安否を少しも気遣っていないのだから。
そう思った。

318プラスチックハート? ◆WjyuuPGo0M:2013/08/06(火) 14:17:42 ID:/Wp.EdOg0


「……あんたは、誰か近づいてこないか注意してて、私はこの部屋の中を物色するわ」
「わかったわ」

アリスの命令を聞き、サーフィスそれに従って部屋を出た。
アリスは家具の引き出しを空けながら包帯やら衣服などを必要な分だけ、デイパックやエニグマの紙に納めていく。
取れる分だけ取ったら、ここを出るつもりだ。
時間が経てば、殺し合いに乗った参加者にとって、ここは絶好の狩場になりかねない。
吸血鬼のような再生能力が無い参加者もいるだろうし、その怪我人を狙う事も考えられる。
なぜなら彼女が今いる場所は八意永琳の診療所――永遠亭だから。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【D-6 永遠亭/深夜】

【アリス・マーガトロイド@東方妖々夢】
[状態]:健康、精神疲労(小)、不安
[装備]:スタンドDISC「サーフィス」、サーフィス人形(アリスに変身中)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:遭遇、または発見した参加者を複数人観察した上でスタンスを決める。
       それまでは生存優先。
1:薬品や医療器具、衣服をある程度収集した後、永遠亭を出る。
2:サーフィスをこのまま自分に変身させておくかどうか、考え中。
3:1の後、単独でいる時は道具や情報の収集に努める。

[備考]
※参戦時期は少なくとも非想天則以降です。
※支給品は確認していますが、自分に掛けられた制限にはまだ気づいておりません。
※掛けられた制限は不明です。

<スタンドDISC『サーフィス』@ジョジョ第4部>
破壊力:B スピード:B 射程距離:C 持続力:B 精密動作性:C 成長性:C
アリス・マーガトロイドに支給。
等身大の木人形と同化して発動する『サーフィス』のスタンドDISC。 人形とはセット。
スタンド発動後、触れた人間の外見をほぼ完全にコピーする能力を人形は持つ。
外見の違いは額にあまり目立たない(らしい)螺子のようなものが付いてるくらい。
身長、体重、指紋、声紋、性格、癖などもほぼ完璧にコピーできる。
過去の記憶がどの程度されるかは不明。スタンドなどの異能力はコピー不可。
本来はコピーした者と向き合えば動きを操れるが、このロワでは封印されている。
人形と一体化しているのでスタンドに攻撃できるが、逆に普通の物理攻撃でも破壊される可能性が。
ただしスタンド本体にはダメージは無い。素体は木製なので衝撃には弱い。
破壊された後、他の等身大人形で再発動が可能かどうかは不明。

319 ◆WjyuuPGo0M:2013/08/06(火) 14:20:14 ID:/Wp.EdOg0
短いですが投下終了です。
指摘やつっこみ、感想がありましたらよろしくお願いします。

320 ◆n4C8df9rq6:2013/08/06(火) 14:45:56 ID:GlnpHwVA0
投下乙です!
人形繋がりのサーフィスですね…w
アリスは多少の不安は抱いていながらも、やはり冷静なだけあって柔軟にスタンスを決められそうですね
対主催と成り得るのか、はたまたマーダーとなるのか…
現状対主催メンツ結構多いのでそちらに転がる可能性も大いにありそうw

指摘と言えば、◆YF//rpC0lk氏が先日投下した作品と場所被り発生してますね…
(どちらも永遠亭スタート)

321 ◆WjyuuPGo0M:2013/08/06(火) 14:50:13 ID:MvlokGNQO
コメントとご指摘ありがとうございます。
明日、修正版を投下させていただきます。

322 ◆n4C8df9rq6:2013/08/06(火) 15:32:42 ID:GlnpHwVA0
了解です。
ではこちらも
寅丸星、ナズーリン、タルカス、カーズで予約します

323 ◆YF//rpC0lk:2013/08/06(火) 15:45:10 ID:eEUoQS6o0
>カーズ
ナズ、星、ご愁傷様……
タルカスは別に……

324名無しさん:2013/08/06(火) 20:22:00 ID:WE2cb2W60
竹林がどんどん魔境と化してゆく……

325名無しさん:2013/08/06(火) 20:53:38 ID:ECdtlO2s0
よし、DIO様も送り込もう(提案)

326名無しさん:2013/08/06(火) 23:06:12 ID:.9lx064k0
アリスがACDCと会うかもこうと会うかで変わりそうだな

327名無しさん:2013/08/06(火) 23:48:47 ID:KbEXGyOA0
思えば星ちゃんの能力ってなんとなくラブトレインっぽいな
なんて思って検索してたらこのスレを見つけたんだよな(しみじみ)

328名無しさん:2013/08/07(水) 00:00:14 ID:rMPE54JQ0
東方とジョジョはどちらも単独でロワ開いてたけど東方ロワは制限重いイメージ、ジョジョロワは制限が軽いイメージなんだよね
能力が扱いにくくて制限され、弾幕も威力減
一方ジョジョ勢は不死能力やスタンドの視認ぐらい。参加者の弱体化はほとんどなし

329名無しさん:2013/08/07(水) 00:12:09 ID:KYy1L34I0
>>328
東方は能力が曖昧だから、制限付けないとどこまでも拡大解釈が可能だからな。
紫なんか、拡大解釈しようと思えばどこまでもできるしな。そういう意味では仕方ないんじゃね?
あと、弾幕の威力は原作でもそんなに高い描写はない。所詮は遊びという枠内でのものだし。

330名無しさん:2013/08/07(水) 04:18:01 ID:LHFayMh.0
最強スレだと、うどんげはブロリーより強いらしいからな
東方信者の拡大解釈は異常過ぎる

331 ◆WjyuuPGo0M:2013/08/07(水) 05:22:03 ID:y2Zp9qcg0
修正版が完成しましたので投下します。

332プラスチックハート(修正版):2013/08/07(水) 05:23:36 ID:y2Zp9qcg0


時間はゲーム開始直後だろうか?気が付けば少女は独り竹林にいた。
そこは少女にとって、おぼろげながらも見覚えがある場所だった。
少女はしばし黙考し、簡単ながら状況把握と整理を済ませる。
そして様々な疑問を抱えつつ、少女は数年前の記憶を頼りに、
配布された地図に記載されたある施設を目指した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


二本目の蝋燭に火が点され、部屋の一室と二人の少女?を僅かに照らした。
この光量ならたぶんバレないわね、と少女――アリス・マーガトロイドは思った。
いま自分達がここにいるのが他の参加者に知られるのは、良くないと判断しているからだ。
施設に入る前、外周を回るなどして、現在自分以外の参加者がいないは、既に確認済みだ。
考え込むアリスに対し、もう一人の少女が訝しげに口を開こうとした。
アリスはとっさに少女の口を人差し指で押さえる。
相手はすぐ理解したのだろう口を噤んだ。私の唇とと違い、硬い感触だとアリスは思った。
そしてすぐさま思考を切り替え、まずはと、竹林に転移される前に起こった惨劇の事をアリスは考えた。


――――私は家で使い捨て用の人形を作って、そのまま一日を終えようとしていたはず。
それが、いつの間にか自分と知人達が見知らぬ場所に集められ、二人の男からいきなり殺し合いを強要された。
直後、誰よりも早く男達に食って掛かった秋穣子と呼ばれた神が、魔法使いであるアリスにとっても見当のつかない方法で殺された。
そして程なくして、これまた未知なる力で意識を失い、今度は迷いの竹林……に似た場所に飛ばされた。


……訳が解らない。
竹林だけを見てもそうだ。
最初に来た時に感じた独特の空気や、殺し合いの参加者でもある知り合いの妖怪兎による幻惑こそなかったが
幻想郷にある迷いの竹林によく似ている。今いる施設もそうだ。
殺し合いの舞台を何でここまで幻想郷に似せる必要があるのか。
本来の幻想郷を作り変えた可能性もちょっと頭をよぎったが、地図に記載された幻想郷にない施設名やや
迷いの竹林の空気の違いからなどから、それを拒否する。
次に夢かと思った。そういや今日は(多分)気分が優れない。
眠れる気分じゃなかったが、いつの間にか眠っているのかも知れない。
試しに足をつねってみる。
痛いだけで何も変わらなかった。

333プラスチックハート(修正版):2013/08/07(水) 05:23:58 ID:y2Zp9qcg0


仕方ないのでアリスはため息をつきながら、更に考えを巡らせる。
殺し合いを強要している、太田順也と荒木飛呂彦の二人の力について考える。
私達の平穏を乱す誘拐犯どもは、私達はいつでも気絶させられ、
殺せて、なおかつ別の場所に転移できる程度の能力の持ち主で、
しかも私達参加者の素性もある程度知っている感じだ。
見た目こそ種族人間っぽいけど、人間とは思えない程の力と得体の知れない凄みを感じさせる怪人。
アリスは思考を中断させて、少女の口から指を離し、深く溜息をついた。


「ああもう、歯向かうとか考えること自体が馬鹿馬鹿しくなってくるわね」


だいぶ前に闘ったアリスが闘ったいけ好かない天人(比那名居天子)を初め
見知った参加者だけを見ても、アリス自身非常に強いと評する者は何人もいる。
だが、この状況に置いてさえ倒すのは絶対に不可能と感じさせる者はいない。
だが、あの二人は違う。
行使する能力があまりにもスケールが違いすぎる。まるで現実味がない。
大きな弱点を見つけてようやく、脅かせるかも?と思えるレベルだ。


「じゃあ、あんたは乗るの?」


呆れたような素っ気無い、小さな声での問いが少女の口から出た。
いつも聞く、でも違うアリス自身の声だ。
心の鼓動が僅かに早まったのを感じた。


「そのつもりはないわ」


即答だった。
表には出さないが、アリスにだって命への執着や未知への恐怖は人並みにはある。
かといって殺し合いに乗った方が生還できる可能性があるともアリスには思えなかった。
打倒太田と荒木、優勝。どちらを目指すにしても情報が少なすぎる。
しかも自分の武器である複数の人形や魔術書などは没収されて手元にない。
まあ、その気になれば所持してる時と遜色ない力は出せるのだが、
所持している方が心理的余裕ができるので、無いなら無いで困るのは同じだ。
このままだと自分の力を信用しきれない。
支給品を全て確認した今でもだ。名簿も確認している。

334プラスチックハート(修正版):2013/08/07(水) 05:24:37 ID:y2Zp9qcg0


「様子見?それとも?」
「…………」


今度の少女の問いにはすぐ答えられなかった。
他の参加者はこの殺し合いではどう行動するだろう?とアリスは思った。
一応、古馴染みの霧雨魔理沙と博麗霊夢は性格的にも職業的にも、いつもの異変と同一視して解決に乗り出すだろう。
あの二人の行動パターンは判りやすいし、そういう意味では安心だ。
だが幻想郷在住の、それもアリスと交流のない、もしくは少ない参加者は、この事態にどう出るかは想定し難かった。
アリスは妖怪の身でありながら、人里で人形劇を開く、住居の近くに迷い込んだ者を家に泊めてやるなど、それなりに人間とも交流があった。
だが反面、知人から妖怪退治の依頼をされてもあっさり断わったり、必要以上に関係を深く持つのを避けたり、
戦いにおいてもなるべく強敵との戦闘をしないよう行動するなど、危険と感じた面倒を避ける傾向がある。
故に今のアリスは軽度ではあるがある種の人間不信に陥りつつあった。
でもこのまま立ち止まるのはアリスにとってもっと不安だった。


「『それとも』はないわね」


不安を遮るよう苦笑しながら、もう一つの選択をアリスは告げた。
どの道、自分一人ではどうしようもないと結論は出ている。
それに自分の知り合いが、それも自分の軽はずみな行為が原因でただ死ぬというのは、
想像したくなかったし、そもそも自分も平気でいられるかどうか解らなかった。
ならせめて、二つの選択からの僅かながらの生還の可能性を見つけるべく、
他の参加者の動向を、ゲームの進行を見定めつつ方針を決めようと思った。


「もしかしたら、無いとは思うけど……霊夢か誰かが短時間で解決するかも知れないけど……
 それでも、とにかく他の参加者達を見なけりゃ、何も始まらないわよね。柔軟に対応しなきゃね」
「そうね。でも、できれば誰かと会って話くらいした方がいいわよ」


アリスの心の奥底では思っていた事、図星ともいえる同意にアリスは思わず半眼になった。
腹が立った。


「あんたを元の木人形に戻すには、どうすれば良かったんだっけ?」
「頭のあれを抜けばいいんじゃない?」


呆れ顔で額に螺子らしき物体が付いてるアリスと同じ姿の支給品は、
仮のスタンド本体――アリスの頭を指さしながらすぐさまそう言った。
アリスはそのそっけない返答に軽く頭痛を覚えた。

335プラスチックハート(修正版):2013/08/07(水) 05:25:15 ID:y2Zp9qcg0


太田達がいた場所から竹林に転移させられた後、彼女はすぐに身を隠しつつ支給品を確認をしていた。
見つけたのは基本支給品である食料など、そして絵画に使うような素っ気無いデザインの等身大木人形。
そして見た事のない銀色の円盤。
説明書があったのでそれを読み、彼女なりに周囲の警戒をすると円盤の挿入を試みた。
好奇心と焦燥が彼女を早急の行動に移させたといっても良いだろう。
そのまま木人形に自らの姿をコピーさせたのも、その直後だった。
アリスはスタンドディスク「サーフィス」の説明書の内容の一部を思い出す。

…………木人形――サーフィス素体は触れた者の身長、体重、性格や癖などを完全にコピーする事ができます。
本来はコピーした者を操れますが、このゲームでは使えません。
スタンドDISKと合わせてご使用下…………


「…………」


アリスは自分の性格について良い悪いとか考えたことは殆どない。
しかし、こうして自分の性格をコピーした存在と会話してみると釈然としないというか
少し腹が立つというか、複雑な気分で腹がいっぱいになりそうな感じであった。
私は薄情な奴なのだろう。現に知り合いの安否を少しも気遣っていないのだから。
そう思った。


「……あんたは、誰か近づいてこないか注意してて、私はここをもう少し物色するわ」
「わかったわ」


アリスの命令を聞き、サーフィスそれに従って部屋を出た。
アリスは家具の引き出しを空けながら包帯やら衣服などを必要な分だけ、デイパックやエニグマの紙に納めていく。
取れる分だけ取ったら、ここを出るつもりだ。
時間が経てば、殺し合いに乗った参加者にとって、ここは絶好の狩場になりかねない。
吸血鬼のような再生能力が無い参加者もいるだろうし、その怪我人を狙う事も考えられる。
なぜなら彼女が今いる場所は八意永琳の診療所――永遠亭だから。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

336プラスチックハート?(修正版 状態表):2013/08/07(水) 05:28:29 ID:y2Zp9qcg0



【D-6 永遠亭/深夜:本編15話「ルイとサンソン」より後の時間軸】

【アリス・マーガトロイド@東方妖々夢】
[状態]:健康、精神疲労(小)、不安
[装備]:スタンドDISC「サーフィス」、サーフィス人形(アリスに変身中)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:遭遇、または発見した参加者を複数人観察した上でスタンスを決める。
       それまでは生存優先。
1:薬品や医療器具、衣服をある程度収集した後、永遠亭を出る。
2:サーフィスをこのまま自分に変身させておくかどうか、考え中。
3:1の後、単独でいる時は道具や情報の収集に努める。

[備考]
※参戦時期は少なくとも非想天則以降です。
※支給品は確認していますが、自分に掛けられた制限にはまだ気づいておりません。
※掛けられた制限は不明です。
※「ルイとサンソン」からの経過時間および、永遠亭でのジャイロと神子の形跡に
  アリス達がどれだけ気づいているかは後の書き手さんにお任せします。

<スタンドDISC『サーフィス』@ジョジョ第4部>
破壊力:B スピード:B 射程距離:C 持続力:B 精密動作性:C 成長性:C
アリス・マーガトロイドに支給。
等身大の木人形と同化して発動する『サーフィス』のスタンドDISC。 人形と説明書とセットで支給。
スタンド発動後、触れた人間の外見をほぼ完全にコピーする能力を持つ。
外見の違いは額にあまり目立たない(らしい)螺子のようなものが付いてるくらい。
身長、体重、指紋、声紋、性格、癖などもほぼ完璧にコピーできる。
過去の記憶がどの程度されるかは不明。スタンドなどの異能力はコピー不可。
本来はコピー先の対象と向き合えば、対象の動きを操れるが、このロワでは封印されている。
人形と一体化しているスタンドなので他のスタンドに攻撃できるが、逆に普通の物理攻撃でも破壊される可能性が。
ただし破壊されてもスタンド本体にはダメージなし。素体は木製なので衝撃や火には弱い。
破壊された後、他の等身大人形で再発動が可能かどうかは不明。

337 ◆WjyuuPGo0M:2013/08/07(水) 05:32:40 ID:y2Zp9qcg0
>>315-318の修正稿、投下終了です。
タイトルは「プラスチックハート?」で。

338 ◆YF//rpC0lk:2013/08/07(水) 13:05:29 ID:lJ5.D1D60
修正版いただきました。
それではこちらをまとめwikiに載せさせていただきます。

339 ◆WjyuuPGo0M:2013/08/08(木) 11:33:53 ID:HJ/3YLBQ0
>>338
収録していただきありがとうございました。
次は河城にとり、フー・ファイターズを予約します。

340 ◆n4C8df9rq6:2013/08/08(木) 18:57:07 ID:xYvfz98g0
寅丸星、ナズーリン、タルカス、カーズ
投下します

341魔王 ◆n4C8df9rq6:2013/08/08(木) 18:58:44 ID:xYvfz98g0


傍で穏やかに川が流れる、E-3の平原。
周辺から薄暗く見えるものは蓮の浮かぶ小さな池、そしてぽつんと畔に存在する小さな祠のみ。

川の流れる音に紛れるように、カチャリと金属音が静かに響き渡る。
長い鞘から、ゆっくりと剣を引き抜かれる。
鞘から引き抜かれた剣から、銀色に鈍く光る刃が露となる。
これが、私に支給された『武器』。
「LUCK&PLUCKの剣」。大柄な西洋剣が白く細い手に握り締められる。
殺し合いにおける自身の相棒となるであろう。
そう。ここから先、戦い抜く為の…刃。

されど、他者を殺すのは自分の意思。
手に握り締められた剣は殺人の為の『手段』―――『道具』に過ぎない。
この剣で誰かを斬り捨てることは、私自身の意思が決めることだ。

殺すのは己の殺意。誰かをこの手で殺めるのは、己の殺意。

剣をその手に握りしめ、立ち尽くす少女―――毘沙門天の化身「寅丸星」。
凛々しい表情とは裏腹に、瞳には殺意と決意を宿す。
彼女は、覚悟を決めていた。
自らが住まう命蓮寺の僧侶であり、同時に自身を仏教の道へと誘ってくれた師のような存在―――聖白蓮を護る覚悟を。

「聖、私は…貴女に許しを乞うつもりはありません」

剣を両手に握り締め、彼女は真剣な表情で呟く。
その瞳に宿るものは―――覚悟の表明。

「貴女だけは、もう…喪いたくない」

―――そう。あの時と同じように。
聖が封印されるのを『見殺し』にした時と同じように。
彼女が再び傍から喪われることなど…あってはならない。
私達が巻き込まれているのは「たった一人しか生き残れない殺し合い」。
主催者は…数多の妖怪の、異変解決を生業とする巫女の、八百万の神々の生殺与奪を平然と握れる程の存在。
死から程遠い我々に対し、『死』を刷り込ませた強大な存在。
最初の会場で、見せしめに秋の神が殺された。あの主催者は、神々をも簡単に殺すことが出来るのだ。

あの男達は、神をも超える『化物』。

それほどの力を見せつけられた以上、恐らくは多くの参加者がこの殺し合いに乗るだろう。
いや、乗らないとしても…参加者が彼らに反抗することなど、不可能に近い。


私は、怖い。聖がこの場でも誰かの為に奔走するかもしれないということが。
かつて、人間から裏切られ封印された時のように騙されて。
あるいは凶悪な参加者と相対して、殺されるかもしれない。
聖は誰よりも優しい。―――だからこそ、悪意ある者に利用され…踏み躙られるかもしれない。
そうして再び彼女を…いや、本当の意味で彼女を喪うことが。
どうしようもなく、怖い。

だから私は決意した。―――『汚れ役』を担う覚悟を。
これは自分の意思。聖を護る為、自らの手を血に染めるのは…自分の意思だ。
毘沙門天の化身としてではない。命蓮寺の一員としてでもない。一匹の妖怪…寅丸星としての意思。
宝塔や毘沙門天の加護など、今は無い。だが…それでも、やらなくてはならない。

342魔王 ◆n4C8df9rq6:2013/08/08(木) 19:00:38 ID:xYvfz98g0


「私が、全ての罪を担います… 聖。貴女だけは、生きて下さい」


―――私は聖を護る為に、他の参加者を殺す。
彼女だけは、二度と喪いたくない。せめて彼女だけは、生きていてほしい。
そして…罪を背負うのは、私一人でいい。これは、私の私闘。
聖の為ならば…私は、『魔王』のような存在にだってなってみせる。

彼女は、ゆっくりと背後を振り返る。
他者がこちらへと近づいてくる『気配』を感じ取ったのだ。
その歩行音はどこか地響きの如く大きい。相当の体格の持ち主と見受けられる。
目を細めつつ、星は剣を握り締めて構えていた…。





「―――ほう、何かと思えば…小娘か」


星が睨む草原の方向から歩いて姿を現したのは、まるで山のような巨躯を持つ大男。
全身に甲冑を身に纏い、その姿は騎士を連想させる。
瞳に宿るのは『殺意』。…星はすぐに理解出来た。この男は、殺し合いに乗っている。
恐らく、人間ですらない。そう思える程の異常な気配を醸し出していたのだ。
男は右手に見覚えのあるアンカーを握り締めながら、剣を構える星を見下ろしてきた…

「………。」
「だが、小娘にしては中々の『殺意』を持っている…それにその剣は我が盟友ブラフォードの物ではないか。
 クク…楽しみ甲斐がありそうだ」

剣を握り締めながら無言を貫き通す星とは対照的に、男は不敵な笑みを浮かべながら呟く。
どこか興味を抱いているかのような、愉悦を求めているような…そんな様子だ。
そして右手に握り締めたアンカーを構えるような体勢を取り。


「さて、本番と行こうじゃないか」

「…………。」


「――我が名はタルカス。『貴様ら』を、殺し尽くす者だ」


男は、『タルカス』は名乗りを上げる。
その様はまさに中世に名を馳せる騎士だ。
だが、その表情に浮かべるのは邪悪とも取れる笑み。
彼は残忍な殺戮のエキスパート。―――目的は『皆殺し』だ。
DIO以外の全ての参加者を血祭りに上げること。それがタルカスの方針。
『たった一人』の為に他の『全て』を殺す。ある意味では、星と同じ。
しかし、その胸に抱くモノは違う。タルカスは、殺戮を『楽しんでいた』。
心より殺し合いを楽しもうと―――期待を抱いていたのだ。
そんな彼の感情に星が気付いているのかは定かではない。
名乗りを上げたタルカスを見上げつつ…こちらも、言葉を発した。


「…私は、寅丸星」


ブン、と握り締めていた剣を下ろすように構え。




「ただの『妖怪』だ」



―――星は一言、そう呟いた。
そして疾風の如き素早さで、勢いよく地を蹴る。
それは戦いの火蓋が切って落とされた、戦場の合図。
彼女は駆け抜けた。黒騎士の『LUCK&PLUCKの剣』を構え―――タルカスへと向かっていった。




◆◆◆◆◆◆

343魔王 ◆n4C8df9rq6:2013/08/08(木) 19:01:13 ID:xYvfz98g0




さて…
この私に与えられた支給品は、一体何だ?
…ふむ…これは、『銃』…か。
型は少し違うが、我々を監視していた軍人共が使っていたのを見たことがある。
数千年前にはこのような道具は無かったからな…記憶に残っている。
人類もほんの少しは進歩している、と言うことなのだろうな。
尤も、大した威力でもない恐るるに足りぬ長物であったが。
解析してみた限り…長身の形状、それにこの構造…成る程、遠距離射撃に特化した銃器ということか。
弓矢を超える射程距離を持つ飛び道具。確かに『厄介』ではある。
だが、私からすれば玩具のような物だ。
こんなもの―――必要は無い。

…………ふむ。
分解は容易いな。やはり機械的なものは構造が解りやすい。
所詮はガラクタだ。弾丸を発射する道具など私には不要だ。

だが…
『弾丸』にはまだ使い道がある、な。
長距離射撃を目的としている弾丸だ。遠方まで弾丸を届かせるとなれば、威力は信頼出来るはず。
人間程度なら恐らく容易く仕留められるだろう。

利用するに越したことは無い。





◆◆◆◆◆◆

344魔王 ◆n4C8df9rq6:2013/08/08(木) 19:01:51 ID:xYvfz98g0



毘沙門天の化身。
屍生人の騎士。
二人の『人ならざるもの』が、闘いを繰り広げていた。
始まりから、暫しの時間が経っていた頃か―――



――鋭利な刃と重々しい鉄塊が打ち合う音が響き渡る。
星のLUCK&PLUCKの剣とタルカスの握るアンカーが衝突したのだ。
周囲に強大な波紋が広がるかのような重圧。
勢いと力を乗せた、二人の重い一撃がぶつかり合った――。

「―――ッ!」

――競り合いで大きく仰け反ったのは星の方だった。
単純なパワーの差、そして技量の差で彼女は打ち負けた。
生前より騎士として戦場を駆け抜けてきたタルカス。
「88の輝輪」の試練を乗り越えた勇者の一人である、百戦錬磨の騎士だ。
対して星は、宝塔の加護による能力増強で大きな力を発揮する。
しかし…今の星の手元に、その宝塔は無い。


「そォらァァァッ――――!!!」


星の耳に入ったのは…風を斬る音!
そう、間髪入れずに振り下ろされるアンカーが―――星に迫っていた!
星はそれをギリギリで横に跳んで回避し、アンカーはそのまま地面に叩き付けられた。

ガァン、と鈍い破壊音が響き渡る。

アンカーの叩き込まれた地面に入ったのは大きな亀裂。
巨大な鉄塊を落下させたような凄まじい衝撃であることは、一目で分かる。


―――無論、それを暢気に眺めている暇など星にはない。


「はっ―――!」

アンカーを回避した星の手から放たれたのは、輝く無数の弾幕。
幻想郷の住民が得意とする『霊力の弾丸』。
星も例外ではない。宝塔を持たぬ状態とはいえ、単独の戦闘自体は可能だ。
彼女は回避した直後に距離をとるように後方へ下がりながら弾幕を放ったのだ!
幾つもに連なる弾丸は、攻撃を放ち終えた直後のタルカスに迫る―――!

しかし、その攻撃は彼の前では意味を成さなかった。



「―――失せよォッ!!」



――タルカスは、地面にめり込ませていたアンカーを『力づく』で引き抜いたッ!
そのまま引き抜いた勢いを乗せたアンカーを振るい、強引に弾幕を散らしたのだ!
少ない霊力で形成した弾幕は、いとも容易く消滅させられる。
タルカスの強靭なパワーはそれを可能とした。


「どうした、小娘!?貴様の力はそんなものかッ…!」


――タルカスが言葉を吐き出すと同時に、獣のような脚で地を蹴る!
地響きのような音と共にタルカスは星に迫る!
目の前の敵を仕留めるべく、巨躯の騎士は躊躇い無く迫るッ!
星はギリ、と歯軋りをしながら…タルカスを睨んでいた。
このタルカスという男は―――予想以上に強い。
見た目通りの腕力だけではない。単純な技量も相当に高い。
あのアンカーを手足のように自在に扱っている。
タルカスが百戦錬磨の戦士だということは、直接闘って『理解』することが出来た!

どうやらこの場には、自分も知らないような実力者が存在するようだ。
そう、目の前のタルカスのような…殺戮を望む『実力者』が!
ならば尚更、私は負けるわけにはいかない。
勝ち目がどこまであるかは解らない。だが、やるしかない―――!

345魔王 ◆n4C8df9rq6:2013/08/08(木) 19:02:26 ID:xYvfz98g0



「まだまだ、こんなものじゃない―――ッ!」


剣を握り締め、寅丸星は立ち上がる!
こんな所では終わらない!聖を護る為に闘うと誓った以上―――ここで死ぬつもりなど無い!
雄叫びのような声を上げながら、彼女は構える。
そう、目の前のタルカスを全力で仕留める!
奴は必ず危険となる。ならば、今此処で…あらゆる手段を使ってでも!
迫り来るあの騎士を、この手で『殺す』――――!














「捜符、」


その直後のことである。
聞き覚えのある声が、どこからか聞こえてきた。
――え、と星は唐突に耳に入った声に驚きを隠せずにそちらの方を向く。
そう、それは彼女にとっても聞き覚えのある声。
忘れることなど決してない、一人の妖怪の少女の声。
当然のことだ。この声の主は、彼女にとって縁のある人物なのだから。
―――そして、それは迫り来るタルカスもその声に気付いた瞬間のことだった。





「――――『レアメタルディレクター』!!」




側面から突如タルカスに向けて放たれたのは―――無数の氷結弾!
まるで鋭い氷柱のような無数の弾幕が次々と放たれてくる!
怒濤の勢いで放たれるそれは、獣の如しタルカスの突進を大きく阻む!
防御の体勢を取らざるを得ない程の攻撃の勢いが、タルカスの行動を阻害したのだ――!

「ぬぅっ…!?」

タルカスは突然の奇襲に堪らず仰け反り、防御をして何とか防ぎつつ後方に下がる。
幾ら百戦錬磨の騎士と言えど、唐突な乱入にすぐさま対処は出来なかった。
そう―――突然の新手の出現。彼は驚きを隠せず、舌打ちをしながら攻撃が放たれた方角を向いた。
一体何者だ…!?この小娘のような弾丸を放つ術を使ってきた者は―――






「…おい、ご主人」

ひょこっと星の傍に近づいていたのは。
―――『鼠のような大きな耳』を持つ、一人の少女。
少女である星よりも更に小さい、子供のように小柄な体格だ。
星は、目を丸くするように彼女を見ていた。驚きを隠せぬ様子で、彼女を見ていた。
タルカスに向けてスペルを放ち、星を助けたのは―――



「大丈夫かい?…どうやら、厄介なことになってるようだな」


「―――ナズーリン…」


―――それは、毘沙門天の化身である寅丸星の部下であり…監視役。
彼女と同じ、命蓮寺の一員で毘沙門天の弟子である妖怪。
小さな小さな賢将。そう。彼女の名は、『ナズーリン』。




◆◆◆◆◆◆

346魔王 ◆n4C8df9rq6:2013/08/08(木) 19:03:02 ID:xYvfz98g0





しかし、ここは一体何処だというのだ?
周囲一体に見えるのは精々だだっ広い草原くらいだ。
今まで見てきたような大規模な都市らしきものは一切見当たらない。
文明も行き届いていない程の辺境の土地で『殺し合い』が開催されているのか。
それとも、この会場自体が『殺し合いの為に用意された盤上』に過ぎないのか。
此処が一体何処なのかは…会場を動いて、少しばかり調査してみる必要がありそうだな。

…あの太田順也に、荒木飛呂彦という男は一体何を企んでいるのだろうか?
総勢90名もの人間をこの地に呼び寄せ、殺し合いをさせる。優勝者には褒美がある、と…
奴らの意図が読めない。わざわざこれ程までの人数を呼び寄せて殺し合いを開き、何の益があると言うのだ?
殺し合い自体に何らかの意味があるのか、あるいは単なる余興に過ぎないのか…
ふむ、こればかりはまだ解らないな…あの二人について知っている参加者が居ればいいが。
それに気になるのはもう一つ。名簿には死者の名前が記載されていたのだ。
彼らは確かに『死んだはず』。―――なのに何故、名簿に名が載っている?

まさか死者蘇生の類い?
それほどまでの力をあの主催者共は手にしていると言うのか?
…推測すれば推測するだけ、謎が浮かび上がってくる。埒が明かないな…。
暫くは保留としよう。そもそも、彼らが本当に蘇っているのかも疑わしい。
まずはこの会場の探索からだ。生きているかどうか…それはこの目で確かめる他ない。
そして――――『虫けら共の始末』も、行わなければな。




…それにしても、何かが聞こえてくる。

これは戦闘の音か。

どうやら…あちらの方角が、少々『騒がしい』ようだな。





◆◆◆◆◆◆

347魔王 ◆n4C8df9rq6:2013/08/08(木) 19:03:38 ID:xYvfz98g0




腰に手を当てながら、ナズーリンは星を横目で見る。
タルカスへの警戒を解かずに、いつでも交戦に入れる体勢だ。
そんなナズーリンを、星はぽかんとしたように見ていた…


「まだ開始からさほど時間も経っていないというのに、既に殺し合いが始まっているとはね…」
「ナズーリン…、貴女は…」
「―――解っている、ご主人。私は別に殺し合いに乗るつもりはない。
 あの荒木に太田とか言うのに従う気なんて、更々無いさ」


星の言葉を察するようにナズーリンは先に言葉を発する。
彼女は当然の如く、きっぱりと言ってのけた。「殺し合いに乗るつもりは無い」と。
その言葉を聞いた星の心に渦巻くのは…罪の意識。
罪を背負う覚悟は出来ている。―――だが、こうして面と向かって部下と会ってしまった。
そしてその部下は自分とは違い、主催に抗う決意をしている。


――私は、『聖を護る為に他者を殺すことを決意した』。
殺し合いに乗り、聖一人を生き残らせる為に。私は、この手を血に染める決意を固めていた。
それはある意味で…主催に立ち向かう自身の部下を裏切るような行為でもある。
覚悟はとうに決めているはずだった。だが、星の心に沸き上がっていたのは…罪悪感のような感情。

…私は、ナズーリンに何と言えばいいのだろうか。
彼女に私の方針を知られたら、もはや主人ではないと失望されるのかもしれない。
恐怖に屈した臆病者と軽蔑されるのかもしれない。


…でも。

それでも、私に手を差し伸べてくれた聖を護る為に。

私は―――――――





「と、ご主人。話は後みたいだ」


星の思考をよそに、ナズーリンはさっと身構える。
キッと睨むような彼女の視線に先にいるのは―――巨躯の騎士。
その身から強大な殺気を放つ、凶暴な殺戮のエリート。
弾幕に怯んでいたタルカスが、体勢を立て直して星とナズーリンを見据えたのだ。






「…よもや仲間が居たとはな、小娘…!だが、まぁいい…数が増えた所で変わらんわ…!」


右手のアンカーを引き摺るように持ち上げ、忌々しげに言葉を吐き捨てる。
先程の弾幕を受けたとはいえ…その身には殆どダメージを受けている様子はない。
小さな裂傷を身体の至る所に負っているが、全く消耗を感じさせない。
威風堂々と、猛々しく。彼は力強く、武器を構えていた―――!


「……、」
「…来るぞ、ご主人!」

すぐさま身構え、ナズーリンは星に向けて声を発する。
ナズーリンを見ていた星も、タルカスの行動に気付き急いでその手の剣を握り締める。
そしてタルカスは、アンカーを握り締め―――強靭な筋肉をバネに、地面を凄まじい勢いで蹴った。
まるで戦車のように大地を震わせ、突撃を開始する――!


「纏めて貴様らの生き血を喰らい尽くしてくれるわァァァーーーーーッ!!!!!!!」


至近距離まで接近してきたタルカスが、アンカーを横に薙ぎ払うように振るう!
強烈な暴風の如し勢いと共に、二人に巨大な鉄塊が迫る。
星とナズーリンは咄嗟に左右に跳んで回避し、ナズーリンが空中で両手を構える――

348魔王 ◆n4C8df9rq6:2013/08/08(木) 19:04:34 ID:xYvfz98g0


「―――そらッ!」

跳躍から落下するナズーリンの手から放たれたのは無数の弾幕。
牽制程度に霊力を込めて放たれたもの。当然の如くタルカスにはアンカーで容易く防がれるが―――
地面に着地した星が、その隙を見逃さなかった!
そう。剣を握り締めた星が、アンカーで弾幕を防ぐタルカスに接近していたのだ!
獣の如き眼光で、星は剣を振るう―――!

「はァァァァーーーーッ!!!!」

「ぬ、うッ…!」

―――タルカスの左脚が、剣の刃によって切り裂かれる。
勢いよく鮮血を吹き出し、負傷により一瞬怯むも―――
屍生人であり、かつての英雄であるタルカスはその程度で動きを止めることはなかった。

直後のこと。
タルカスが、弾幕を防いでいた『アンカー』を振るった。
その身に弾幕を次々と喰らいながらも、力づくでアンカーで薙ぎ払い―――

「―――ぐ、あァッ…!?」

アンカーが、星の身を勢いよく吹き飛ばした。
剣による一撃を叩き込んだ隙を見て、タルカスは弾幕への防御を捨てて攻撃しにかかったのだ。
元より頑丈な肉体に加え、屍生人と化したことにより更なる肉体の強度を得ているタルカス。
弾幕や剣の一撃を、容易く持ちこたえ―――星にカウンターを叩き込んだ!


「ご主人っ…!!」

地面に着地したナズーリンが、吹き飛ばされた星に向かって叫ぶ。
だが、タルカスは間髪入れずに右腕のアンカーを構えていた―――!
ナズーリンはハッとしたように、正面のタルカスの方へと向いた。


「クハハハハハハッ!!!余所見している暇があると思ったかッ―――!?」


ナズーリンの小さな身体目掛け、再びアンカーが振り下ろされる――!
避けようとするも、星が吹き飛ばされそちらに注意が引かれてしまったことにより…彼女は『一手』遅れた。
回避が、間に合わない―――!
振り下ろされるアンカーが、ナズーリンの身に叩き込まれようとした直前。




―――タルカスが、左目を抑えて転倒した。



断末魔のような絶叫を上げ、左目から出血し――仰向けに倒れ込んだ。
突然の出来事に、ナズーリンはぽかんとしたような表情を浮かべる。
倒れ込むタルカスの左目に異変が起こっていた。
いや、異変なんてものではない。直接的な攻撃。
―――LUCK&PLUCKの剣が、左目に突き刺さっていたのだ。
幾ら強靭な肉体を持つタルカスと言えど、目を貫かれればひとたまりも無い。
その刃が脳の近くにまで達すれば、尚更。



「はぁっ―――、はぁっ――――……」


先程吹き飛ばされ、転倒していた星が腹部を抑えながらタルカスの方を見ていた。
ナズーリンが隙を突かれて攻撃を喰らいそうになった直前、LUCK&PLUCKの剣を咄嗟に投げた。
狙いは当然、タルカスに向けて。
投げられた剣は彼の左目に突き刺さり、行動を阻害することに成功したのだ。

349魔王 ◆n4C8df9rq6:2013/08/08(木) 19:05:40 ID:xYvfz98g0

「…ご主人、」
「―――ナズーリン、まだです!」

星に助けられたことに気付いたナズーリンは言葉を発しようとするも、星はすぐに声を上げた。
そう、悶え苦しみながらも―――タルカスがまだ生きている。
そのことに気付き、すぐさまナズーリンに伝えたのだ。
ナズーリンは咄嗟にタルカスの方を向き、彼と距離を取るように後ろに下がった。

左目に突き刺さった剣を強引に引き抜いたタルカスが―――動いた!


「―――URRRRRRRRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!!!!!!!!!!!」


咆哮を上げながら、憤怒のままに星の方へと突撃する!
まさに怪物の如き、圧倒的なまでの殺意を身に纏い。
先程までとは比べ物にならない暴風のような勢いで―――迫り来る!
星は身構える。迫り来る『怪物』を前に、霊力を高める。



「―――寅符」


星は―――その身に霊力を身に纏い、球体のような姿と化し。


「『ハングリータイガー』ッ――――!!!」


そして、七つの大型の弾幕と共に―――タルカス目掛け突撃する!
その姿は、飢えた獣の如し。身を投げ出した人間に喰らいつく、獣の如し。
毘沙門天の化身としてではなく、一人の妖怪としての矜持。
目の前の化物目掛け、突撃した―――!!


「ぬ、おおおおおォォォォォォーーーーーーッ!!!!!」


タルカスは、真正面から星の突撃を受け止める!
決して一歩も退かぬ勢いで、アンカーで星と弾幕を受け止めるッ!
両腕の力を最大限に込め、押し勝とうとする―――!
星も同じだ。このままタルカスのガードを押し抜けようと、渾身の力を込めている!
互いに一歩も――動けぬ状況。
一歩も退けぬ、そんな状況。

―――主人の生み出した隙を、ナズーリンは見逃さなかった。




「ご主人、感謝するよ」

350魔王 ◆n4C8df9rq6:2013/08/08(木) 19:06:40 ID:xYvfz98g0
咄嗟に懐から取り出したのは――一枚の紙。
支給品を封じ込めている、エニグマの紙。
そう、ナズーリンは勢いよくその紙を『開いたのだ』。
飛び出すのは、一つの支給品。
それはもはや『幻想の道具』とすら言えるかも怪しい、近代的な武装。
河童の技術力が生み出した、強力な重火器。
―――もはや兵器と言っても差し支えのない、暴力的な火砲!


「――――!?」


タルカスは気付いた。
ナズーリンが何かを取り出し、構えたことに!
だが―――動くことは出来ない。
防御体勢を取る事も出来ない!対処する事も出来ない!
星との競り合いにより、動きを封じられているのだから―――!





「―――終わりだ」



――――ナズーリンの支給品『スーパースコープ3D』より、砲弾が放たれる。

狙いは当然、タルカス目掛けて。

近代兵器と比類しても遜色のない火力が―――タルカスに襲いかかる。

爆炎と同時に、タルカスの身を吹き飛ばした――――



◆◆◆◆◆◆

351魔王 ◆n4C8df9rq6:2013/08/08(木) 19:07:31 ID:xYvfz98g0




「……終わった…のか…?」

「…多分、そのはずだよ…多分ね」


星とナズーリンは、倒れたタルカスを見ていた。
タルカスは、右腕の部分が大きく焼け焦げており重傷は間違いないだろう。
だが…二人の表情は少し強ばり、警戒の色は抜けていない。
多少の距離は取ったままだ。あのしぶとさは油断出来ないが故に、警戒は怠らない。
もしかすれば、また立ち上がるかもしれない。
そんな予感さえ、した。
だが、星は一先ずナズーリンの方を向く。

「…ナズーリン…此度は、ありがとうございます」

「ご主人?」

「貴女の援護が無ければ、あのタルカスという男に負けていたかもしれませんから」

「……。こちらこそ、だよ。ご主人」

星の言葉と共に、二人は互いに言葉を交わす。
そう、星は改めて礼を言わねばならないと思ったのだ。
―――今は少なくとも、ナズーリンの援護で助けられた。
そのことに関しては、純粋に感謝を抱いていた。
だからこそ礼を言った。…これから、自分達が相容れるかは別だ。
私はあくまで聖を護るという願いの為に戦うことを決意した。
だが、ナズーリンは殺し合いに反抗すると言っていた。
主従と言えど―――私達の願いは、相反している。
これから、どうするべきなのか。まだ私には――――

352魔王 ◆n4C8df9rq6:2013/08/08(木) 19:08:12 ID:xYvfz98g0
「―――ぐ、うゥッ……………」


――呻き声が耳に入ってきた。
星とナズーリンは、はっとすぐさま身構える。
そう、倒れていたはずのタルカスが声を上げたのだ。
その瞳からはまだ殺意が抜けていない。まだ敗北を認めていない。
あの一撃を受けて尚―――彼はまだ生きていたのだ。

「―――まだ、…終わらん…ぞ……!」

とはいえ…その身は満身創痍だ。
恐らく無事では済んでいないだろう。トドメを刺すことも、容易いはずだ。
星は真っ直ぐにタルカスを見据えた。
…これから奴を、どうするか。
このまま―――仕留めるべきなのだろう。そう思い、拳をグッと握りしめていた。
ナズーリンも、ゆっくりと口を開く。


「…ご主人、もう奴はそう長くないだろう。惨いことになるが――――」






その時だった。







パァン。




乾いた破裂音のような銃声が、響き渡る。



それは何の脈絡もなく、唐突に訪れた。




「―――え?」




後方から聞こえてきた音に振り返る星。


タルカスも気付いた。唐突に響き渡る銃声に。


刹那。星は唖然と―――驚愕の表情を見せる。


自身が振り返った先。彼女の瞳に写ったもの。


それは―――






鮮血。

まるで潰された果実のように、無数の紅が飛び散る。



タルカスを見据えていた、ナズーリンが。



頭部を撃ち抜かれていた。



ナズーリンの小さな身体が、壊れた人形のように崩れ落ちる。



即死だ。―――ナズーリンの命は、たった一瞬の一撃で奪われた。

353魔王 ◆n4C8df9rq6:2013/08/08(木) 19:09:38 ID:xYvfz98g0




「ナズー、リン―――」

星の顔が――絶望の色に染まる。
何が、何が起こったというのか。
どうして…ナズーリンが、倒れているんだ?
どうして、ぴくりとも動かない?
どうして、また起き上がってくれない?
どうして、どうして―――――
今の状況が、理解できなかった。




「何かと思えば…」



―――低く威圧的な声が、静かに響き渡ってくる。
倒れたナズーリンの後方。距離にして10歩程度離れた位置に立つ、一人の男の影が見えた。
それは逞しい筋肉に覆われた、どこか美しささえ感じる妖艶な男。
そして、その身体から放つのは―――幻想郷の大妖怪にすら匹敵する、圧倒的なプレッシャー。
傍にいるだけで感じ取れる、肌がピリピリするような凄まじい威圧感。
唖然とする星だけではない。タルカスですら、この男に言い様の無い『畏れ』を心中で抱いていた。

あらゆる悪を超越する―――『魔王』が、そこには君臨していた。

その男は、真っ直ぐ前に突き出した指先から硝煙を発しながら―――星と、タルカスを見据える。



「この『カーズ』にとって、雑作もない虫ケラ共か」


フン、とつまらなそうにナズーリンの『死体』を見て…男は、カーズは呟く。
瞬間。星は即座に理解した。
ナズーリンを殺したのは、この男だと。
私の部下の命を奪ったのは、この男だと。
大切な仲間を虫けらのように踏み躙ったのは――――この男だ。
私の中で、何かがぷつりと切れる音がした。
―――剣を、強く握り締め。
動き出していた。







「―――――貴、様ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!!!!!!」


まるで慟哭のような咆哮を上げ、星はカーズに向かい―――駆け抜ける。
渦巻くものは、激昂。憎悪。
部下を殺されたことへの、強い怒り―――それが星の身体を動かしていた。
もはや疲労すらも忘れて、全身の筋肉を躍動させる。
激情が、彼女の身を強引に動かしていた―――――!!

354魔王 ◆n4C8df9rq6:2013/08/08(木) 19:10:06 ID:xYvfz98g0
だが、




―――パァン。



「な、―――」

再び響き渡る破裂音――銃声。
突撃する星の脇腹が、勢いよく貫かれる。
大きくバランスを崩した星は吐血し――転倒する。
彼女の身を襲ったのは弾丸。先程ナズーリンの命を奪ったものと同じ。
カーズの支給品「ジョンガリ・Aの狙撃銃」の弾薬。
しかし彼は銃など構えていない。行っていた行動は「指を星に向けただけ」。
そう―――彼は狙撃銃の弾丸をその身に『取り込んでいたのだ』。
取り込んだ銃弾を自らの指先に移動させ、放つ。
それは柱の男の中でも最下位の階級の者である「サンタナ」も行っていた攻撃。
彼よりも遥かに上位の存在であるカーズにとって、雑作もなく行えることだった。


「このカスが…」


崩れ落ちた星を見下ろし――その左腕から『刃』を生やす。
カーズの能力『輝彩滑刀の流法』。
あらゆるものを自在に切断する、輝く光の刃。
脇腹を銃撃されて尚何とか立ち上がろうと膝をついた星が、その刃に気付いた時には―――
既に遅かった。


星の目の前に、一瞬のようなスピードでカーズが迫る。



「―――騒ぐじゃあない」



一瞬の交差。

刹那に響く、鋭利に切り裂かれる音。

直後に飛び散ったのは、真紅の鮮血。

そして、焼けるような―――激痛。




「が、ああぁァァァァァァァッ―――――――!!!!?」



――星の左腕が、『吹き飛んだ』。
悶え苦しみ、叫び声を上げながら星は左腕の切断部を抑え込んで倒れる。
それは輝彩滑刀による瞬時の一閃。
凄まじい切れ味を誇るその一撃が、彼女の左腕の肘から先を切断したのだ。
激痛に悶える星を流し見るカーズの瞳は――冷徹そのもの。

355魔王 ◆n4C8df9rq6:2013/08/08(木) 19:11:29 ID:xYvfz98g0


「激情に身を任せ、突撃し…そして返り討ちか。フン、下らん茶番だ」


倒れ込んでいる星に、ゆっくりと…男は近づく。
その腕より光り輝く刃を生やしながら、余裕に不敵な笑みを浮かべる。
どこまでも傲岸に、彼は一歩一歩を踏みしめる。
力の差は歴然だった。―――このカーズという男は、圧倒的な『強者』だったのだから。
疲弊した今の星の命を奪うことなど、容易い。




「一瞬でその命―――刈り取ってやろう」

「が、ァ…ッ……――――」


カーズが、腕を振り翳した。
左腕から生やす刃を―――『輝彩滑刀の流法』を。
転がる星の命を文字通り一瞬で奪う一撃。
それは、星の首に向けて振り下ろされる――――







―――――だが、その一閃が星の命を奪うことはなかった。

何故ならば。



カーズの身体が、宙を舞っていたからだ。

そう、カーズが『吹き飛ばされていた』。

星が顔を上げた先、その瞳に写ったのは―――


満身創痍の身体を押し、カーズを突進で吹き飛ばしたタルカスの姿だった。
星は、目を丸くして驚愕の表情を浮かべた。


「―――タル…カス……どう、して………」

「はァーッ……はぁー、ッ…………!」


カーズを吹き飛ばしたタルカスの息は荒く、乱れている。
その表情には必死さが現れている。
あれほどの傷を受けながらも、無理矢理立ち上がったのだから。
彼は―――星を助けたのだ。

「勘違い……するな……寅丸星、とやら…!貴様に…肩入れしたのではない…」
「……………。」
「おれは……あのような、男の……思い通りに……事が進むのが―――」


そして、タルカスは―――その右腕に、再びアンカーを握り締める。


「―――気に入らんだけだッ……!!」


タルカスは、アンカーを右手で構え。
その屈強な両足で、猛々しく立って見せる。
鋭い視線で見据えるのは―――ゆっくりと立ち上がったカーズの方向。

これほどまでの傷を負った。もはや自分は満身創痍だろう。
―――そんなことは解っている。だからどうしたというのだ。
片目が見えぬ。この腕に、胴に焼けるような激痛が走る。
だから、何だと言うのだ。
それがあのような男に屈する理由になど。あのような男におめおめと殺される理由になど―――ならぬ。
あのような男の好きになど、させてたまるか。

356魔王 ◆n4C8df9rq6:2013/08/08(木) 19:12:01 ID:xYvfz98g0


「此処は俺が引き受けよう、寅丸星」
「……タルカス、」
「―――あの男は、俺が殺す」

タルカスは、屍生人の騎士は宣言した。
目の前の男を、カーズを―――『柱の男』を、この手で殺すと。
時間稼ぎや身代わりではない。殺してみせると言ってのけたのだ。
―――駄目だ。タルカス、お前も逃げるべきだ。
星は動揺しつつも、そう言おうとしたが―――

「貴様は早く逃げろッ!!」
「…………っ、」

声を荒らげながらタルカスが凄まじい気迫と共にそう叫ぶ。
星は感じた。タルカスは…本気で闘うつもりだ。
本気で――あの男に、立ち向かうつもりだ!
私は、驚いていた。まさか敵として闘っていた相手に…助けられるとは、思ってなかった。
一瞬、迷いすら抱いていた。だけど―――今の私では、勝つ事も出来ない。
それ理解していた。だから私は、立ち上がった。

すぐさま、その場から走り出したのだ。
私は―――逃げ出した。


◆◆◆◆◆◆



草原で相対し合う二人の男。
巨漢の騎士は、先の戦闘で重傷を負いながらもその両足で立っていた。
対する長髪の男は―――余裕の態度で、両腕を組んでいた。傲岸不遜な笑みを浮かべながら。

「…ほう。貴様…屍生人か」
「………………。」
「吸血鬼にも劣るような搾りカスが、この私を殺すだと?」
「………………。」
「それに女子供を逃がし、自らが撃って出るか。成る程成る程、勇ましいことじゃないか」



その直後のこと。
カーズの表情が、冷徹なモノへと―――変わった。




「―――図に乗るのも大概にしろよ、ウジ虫が」

357魔王 ◆n4C8df9rq6:2013/08/08(木) 19:13:34 ID:xYvfz98g0
長髪の男―――カーズが、駆け抜けた。
疾風怒濤と表現するに相応しい、圧倒的な瞬発力で走る。
地を駆け抜けながら、その右腕から刃を発現させる。

タルカスは、その男に対し…ある種の恐怖すら感じていた。
それはまるで。獣を前にした羊のような。圧倒的な化物を前にした人間のような。
魂が記憶しているかのような、本能的な畏れ。
だが―――屈するつもりはなかった。口元には、笑みが浮かんでいた。
ああ、やってやるさ。
この目の前の男を、この手で殺してやるさ―――――!!




「『輝彩滑刀の流法』ッ!!」

「う、おおおおおおォォォォォォォォォォォ――――――――――ッ!!!!!!」





雄叫びを上げ、タルカスもその両足で奔った。
右腕にアンカーを握り締めながら。全身の筋肉を躍動させながら。
この一撃で仕留めんばかりの全力を、魂に込めて。
恐怖に屈することなど無い。
強大な恐怖に挑む、騎士としての誇り高き魂が―――その瞳には宿っていた!





そして、駆け抜けた二人の男が―――

すれ違い様に、ほぼ同時に放った一撃が。

一瞬の交差を起こす。






吹き荒れるのは、大量の鮮血。


次の瞬間に崩れ落ちたのは――――




「――――が、はッ―――――」



巨漢の騎士が、膝をつき―――倒れた。
その胴体には大きな裂傷を負い、血を流していた。
刃による一撃が、タルカスの身に大きな傷を負わせたのだ。
此処まで戦い抜いた男と言えど、もはや助かる術など無いだろう。

――対するカーズの右腕の刃から、多量の血が滴っていた。

それは当然の如く、タルカスの血だ。

邪悪な笑みを浮かべながら、カーズは…タルカスの方へと振り返り、歩み寄って行った。

358魔王 ◆n4C8df9rq6:2013/08/08(木) 19:14:26 ID:xYvfz98g0


「…理解出来ただろう?貴様如きの虫けらでは、何も出来ないと」

嘲笑うように、弱者を見下すように…カーズは言い放つ。
彼にとって、屍生人など『餌が生み出す家畜』程度の存在でしかない。
その屍生人が、究極の生物を目指すこの私を殺す?私を倒す?
あれ程の大口を叩いたからには、どれほどのものかと思ったが…所詮は身の程も解らない阿呆だったか。
フン、自信過剰もいい所だ…クズが。
―――カーズは、タルカスのすぐ傍まで歩み寄る。
彼は心底冷たい瞳で、這い蹲るように倒れるタルカスを見下ろしていた。


「さあ、命乞いをしてみせろ」

カーズは、タルカスの頭を容赦なく踏み躙った。
この程度の虫けらを殺すことなど、雑作もない。ならばせめて最大限の屈辱を与えてやろう。
私に屈服してみせろ。恐怖に戦いてみせろ。貴様の誇りを捨ててみせろ。
―――絶望の表情を見届けてやる、ゴミが。
だが、―――タルカスからの返答は。カーズの予想とまるで違うものだった。

タルカスは、嗤っていた。

「………ッ…く、はは…はははっ………」
「…何が可笑しい」

恐怖で頭が狂ったか?カーズはそんな思考すらよぎった。
それほどまでにタルカスは、嗤い続けていた。
どこまでも、不敵に――――不遜に。

そしてタルカスが、口の端を吊り上げ。

言い放つ。


「…地獄で遭える日を、楽しみにしているぞ」


「…………」


「待っているぜ、」


「…………」


「この『虫ケラ』が」




――――タルカスの首が、跳ね飛ばされた。

輝彩滑刀の流法による一撃が、彼の首を刈り取った。



◆◆◆◆◆◆

359魔王 ◆n4C8df9rq6:2013/08/08(木) 19:15:29 ID:xYvfz98g0



「…剣に、錨…か。まぁ、どうでもいいな」

カーズは、タルカスとナズーリンの支給品を回収していた。
とはいえ、見つかったものは西洋剣と巨大な錨のみ。後は基本支給品だけだ。
どちらも自分にとってはどうでもいいもの。武器は流法だけで十分だ。
故にランダムアイテムは放置することにした。
一先ず彼らの基本支給品だけは一応調達することにした。
闇の一族である自分たちがこのようなモノに頼るかは解らないが、念の為だ。


「さて…」

カーズは、首を喪った騎士の死体を見下ろす。
この男は最後まで屈しなかった。どこまでも傲岸に、言葉を吐き捨てた。
…気に入らんヤツだ。忌々しい。
心底苛立つ。だが、まぁいい。結局死んだのはあの男だ。
そう、勝ったのはこのカーズなのだから―――関係ない。
小娘一匹にも逃げられたが…既に満身創痍の身であったし、今は放っておいてもいい。

今は死体になど構っている暇は無い。
このカーズの目的は生き残ること。殺し合いで生還すること。
最終的にあの荒木と太田とやらも抹殺する。それだけだ。


柱の男は、ゆっくりと歩き出す。
全てはこの場で生き残る為に。この場での情報を得る為に。
邪魔な連中を、これから始末する為に。




◆◆◆◆◆◆



「はぁ―――はぁ――――っ………」


星は、逃げ続けていた。
必死で、逃げ続けていた。
その右腕に抱えているのはナズーリンが使っていた支給品「スーパースコープ3D」。
逃げる直前に回収したモノだ。ナズーリンの、形見のような物。
彼女は何も考えられなかった。
ただ今は、逃げることだけを考えていた。

聖を護れるのか。死んだナズーリンを裏切ってでも戦い続けるのか。
覚悟を決めて、闘い続けるのか。それとも。
―――今の彼女に、そんなことを考えられる余裕すらなかった。

必死で必死で、彼女は走り続けた。
どこへ向かうのかさえ、解らずに。



【ナズーリン@東方星蓮船】死亡
【タルカス@第1部 ファントムブラッド】死亡

360魔王 ◆n4C8df9rq6:2013/08/08(木) 19:18:35 ID:xYvfz98g0

【E-3 大蝦蟇の池付近/深夜】

【寅丸星@東方星蓮船】
[状態]:左腕欠損、右脇腹に銃創(出血中)、肋骨骨折(複数)、ダメージ(大)、霊力消費(大)、疲労(大)、精神疲労(中)、迷い
[装備]:スーパースコープ3D(5/6)@東方心綺楼
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:聖を護る。
1:???
[備考]
※参戦時期は神霊廟以降です。
※能力の制限の度合いは不明です。
※ナズーリンのランダムアイテム「スーパースコープ3D@東方心綺楼」を回収しました。
※彼女がどこへ向かうかは後の書き手さんにお任せします。

【カーズ@第2部 戦闘潮流】
[状態]:疲労(小)、全身打撲(軽傷)、再生中
[装備]:狙撃銃の予備弾薬(7発)
[道具]:基本支給品×3
[思考・状況]
基本行動方針:生き残る。最終的に荒木と太田を始末。
1:どんな手を使ってでも勝ち残る。
2:この空間及び主催者に関しての情報を集める。
3:ワムウとエシディシ、それにあのシーザーという小僧の名が何故記載されている…?
4:あの小娘(寅丸星)は放っておいてもいい。
[備考]
※参戦時期はワムウが風になった直後です。
※ワムウとエシディシ、シーザーの生存に関しては半信半疑です。
※ランダムアイテム「ジョンガリ・Aの狙撃銃@ジョジョ第6部」はE-2の川辺でバラバラに分解して破棄しました。
※ナズーリンとタルカスのデイパックはカーズに回収されました。
※彼がどこへ向かうかは後の書き手さんにお任せします。

※「村紗水蜜のアンカー@東方星蓮船」「LUCK&PLUCKの剣@ジョジョ第1部」はタルカスの遺体の傍に放置されています。


<LUCK&PLUCKの剣@ジョジョ第1部>
寅丸星に支給。
ディオの僕となった黒騎士ブラフォードが使用していた西洋剣。
ブラフォードが敗北し消滅する直後、人の心を取り戻した彼によってジョナサンに託された。

<村紗水蜜のアンカー@東方星蓮船>
タルカスに支給。
命蓮寺の信者である妖怪、村紗水蜜が立ち絵で所有していた大きなアンカー。
振り回せば武器にはなるが、癖が強く重量もあるので扱いは難しい。

<スーパースコープ3D(5/6)@東方心綺楼>
ナズーリンに支給。
河城にとりがラストワードで使用していた重火器。
バズーカに似た銃身を持ち、高威力の砲弾を発射する。
どこか幻想郷らしからぬ近代的な武器だが、河童の科学技術の賜物なのだろう。
予備弾薬は支給されていない。

<ジョンガリ・Aの狙撃銃@ジョジョ第2部>
カーズに支給。
元・DIOの忠実な部下であり囚人である盲目の狙撃手「ジョンガリ・A」が使用するライフル。
パーツを分解することで杖に偽装することが可能。
弾丸のみを必要としたカーズによって不要と判断され、文字通りバラバラに分解されてしまった。
バラバラに分解された狙撃銃はE-2の川沿いに捨てられている。

361 ◆n4C8df9rq6:2013/08/08(木) 19:19:35 ID:xYvfz98g0
投下終了です。
指摘やツッコミ、及び感想があれば宜しくお願いします。

362 ◆n4C8df9rq6:2013/08/08(木) 19:23:28 ID:xYvfz98g0
それと
>>353の「―――剣を、強く握り締め」の部分はミスです…

363名無しさん:2013/08/08(木) 19:30:26 ID:z.lgiB720
まさかタルカスをかっこいいと思う時が来るとは思ってもいなかったぜ…

364名無しさん:2013/08/08(木) 20:57:29 ID:S9fRsHbg0
投下乙
あーん!ナズが死んだ!
ナズよいしょ本&ナズF.Cつくろー!とまでは思ってなかったけど…
くすん…美人薄命だ…

365名無しさん:2013/08/08(木) 21:04:08 ID:/3bUKmD60
>>363
ジョジョロワに行けば格好いいタルカスが見れるぜ

366 ◆YF//rpC0lk:2013/08/08(木) 21:48:55 ID:CjS5bgWc0
>>364
ストさまネタやめいwww

しかしカーズさまは改めて化け物ですぜぇ

367名無しさん:2013/08/08(木) 22:31:55 ID:gYkbR28U0
ブラフォードと比べていいとこなしのタルカスが妙に男らしくてワロタ

368 ◆n4C8df9rq6:2013/08/08(木) 23:08:46 ID:xYvfz98g0
感想ありがとうございます。
でもタルカスだって元々はメアリー王妃に仕えてた誇り高き騎士だからいいとこなしではない(震え声)

それと、wikに収録された今回の拙作の作者の欄の修正お願いします(◆YF氏になっておられる)

369 ◆YF//rpC0lk:2013/08/08(木) 23:12:16 ID:CjS5bgWc0
>>368
すいまェん。思いっ切り間違えてました。
タルカスはアレです。星ちゃんが投げた剣が脳まで届いちゃったから
なんか精神的にトラぶったんでしょう(棒)

370 ◆n4C8df9rq6:2013/08/08(木) 23:13:40 ID:xYvfz98g0
>タルカスはアレです。星ちゃんが投げた剣が脳まで届いちゃったから
>なんか精神的にトラぶったんでしょう(棒)

不覚にもワロタ

371名無しさん:2013/08/08(木) 23:32:13 ID:/3bUKmD60
タルカスはワムウの部下になったり、リンゴォと男の世界に行ったり、まさかの人間状態(処刑される直前)で参戦し対主催になったりとロワだとかなり頑張ってるぞ
このスレでジョジョロワの話はマナー違反かもしれないけど

何はともあれ柱の男は相変わらず強マーダーだな。こいつらがいれば当分はマーダー不足には
ならないと思う
ラスボス組

372名無しさん:2013/08/09(金) 16:33:43 ID:QSsHEST20
ほんとだジョジョロワまだ少しずつしか見れてないから知らんかった…

それにしても柱の男で対主催になりそうなのってやっぱりワムウぐらいなんだろうな・・・

373名無しさん:2013/08/09(金) 16:45:08 ID:GWK0D/.20
対主催になったとしてもカーズやエシディシと合流すればその方針に従うことになりそうだよなぁ…
ワムウは純粋な対主催で貫き通すのは難しそう

374名無しさん:2013/08/09(金) 17:08:38 ID:1CEr7Tgg0
ジョジョの悪役は悪としの信念はちゃんと持ってるから基本的には改心はしないんだよね
2ndのディアボロはかなり特殊、タルカスも騎士道を取り戻しても基本マーダー

375名無しさん:2013/08/09(金) 17:47:05 ID:GWK0D/.20
ジョジョ悪役はブレないからマーダーとして使いやすそう
東方キャラは何だかんだでしょっぱなから殺し合いに乗せづらい気がする…

376名無しさん:2013/08/09(金) 18:01:35 ID:4K4n4hUs0
2ndのディアボロはレクイエムで摩耗しきってたからな…
そんな弱り切った状態なら改心してもおかしくはないけど

東方キャラを初っ端から乗せるとなると…今回の星みたいに奉仕マーダーとか?

377 ◆YF//rpC0lk:2013/08/09(金) 18:59:19 ID:5ZXU/v3E0
宇佐見蓮子、ジョニィ・ジョースター、
書き手枠でヴァニラ・アイス@第3部 スターダストクルセイダース
を予約します。

378名無しさん:2013/08/09(金) 19:02:51 ID:GWK0D/.20
ヴァニラ来たwww期待大

379名無しさん:2013/08/09(金) 19:51:26 ID:Vw9ImSYk0
タスクACT4ってヴァニラがスタンドの中にいる時もダメージ与えられるのかな

380名無しさん:2013/08/09(金) 19:56:53 ID:Vw9ImSYk0
>>376
東方ロワの時も奉任や生存優先、天然マーダーはいたけど純粋な優勝狙い(霊夢もやや特殊)は天子ぐらいしかいなかったんだよな

381名無しさん:2013/08/09(金) 20:47:43 ID:vCAaAdqY0
蓮子ジョニィヴァニラ…なんとなくいい並びだな

>>379
大統領の光の線よりは簡単にブチ抜けそうだぜ

382名無しさん:2013/08/09(金) 21:03:08 ID:Vw9ImSYk0
そういや死亡後参戦は可能なのか?

383 ◆YF//rpC0lk:2013/08/09(金) 21:08:07 ID:5ZXU/v3E0
>>382
一応「死亡する直前の状態で、心身万全状態に修復して参戦」までなら可能といたしております
過去にジョジョロワにおいても、例えばワムウなどが風に変える寸前の状態から参戦などありますので

384 ◆.OuhWp0KOo:2013/08/09(金) 21:18:34 ID:EQRGY1Bc0
>>382
ボスはレクイエム後の参戦だしねw

385 ◆YF//rpC0lk:2013/08/09(金) 21:23:28 ID:5ZXU/v3E0
>>384
まあ、ボスの場合はレクイエム喰らってリタイアした状態なので
そこまででしたら可能な範囲ですかね
現にジョジョロワでもそうでしたし

386名無しさん:2013/08/09(金) 23:37:06 ID:Vw9ImSYk0
ZUNも荒木も現実出身の主催者だけど全然

387名無しさん:2013/08/09(金) 23:38:24 ID:Vw9ImSYk0
ZUNも荒木も現実出身の主催者だけど全然タイプが違うんだよな
今ロワでも荒木はでしゃばるのか?

388名無しさん:2013/08/10(土) 00:38:58 ID:JQ/7M.wA0
ZUNさんは阿鼻叫喚の地獄絵図をにやにやと見下ろしてそうだけど
荒木先生はなんかこう、眺めるだけじゃなくてめっちゃちょっかい出しそう

389名無しさん:2013/08/10(土) 17:06:33 ID:VyYLzZbI0
そういや会場内は食料が存在しないんだよな。パロロワは食料は現地超達できる(本家ロワもシチューとかは現地超達。爆弾の材料も)と思ってたから割と衝撃的だった

390 ◆YF//rpC0lk:2013/08/10(土) 17:13:48 ID:I0BNU99o0
>>389
その代りランダムアイテムに食べ物だすのは構いませんよ
トニオさんのフルコースに、ホットパンツが食べてたサンドなども可能です

391名無しさん:2013/08/10(土) 17:33:41 ID:9i9dp0Tk0
うん?民家漁れば食糧くらいあるんじゃね?

392名無しさん:2013/08/10(土) 17:42:22 ID:JQ/7M.wA0
>>391
「会場には食糧以外の物資は存在する」って書いてあったので、多分食糧は基本支給品のみのようですね

393名無しさん:2013/08/10(土) 17:46:02 ID:JQ/7M.wA0
連発失礼
wikiの会場地図に物資のことが記載されてる様子

394 ◆YF//rpC0lk:2013/08/10(土) 17:46:51 ID:I0BNU99o0
ただまあ、抜け道として「野草」は生えてるんですけどね……

395名無しさん:2013/08/10(土) 17:54:18 ID:VyYLzZbI0
おまえは参加者1人に支給できるアイテムが原作から1つだけだとするとサンドイッチじゃなくてスタンドdiskやスレッジハンマーを支給するだろ

誰だってそーする おれだってそーする

396名無しさん:2013/08/10(土) 17:56:40 ID:9i9dp0Tk0
まあ、現実の日用品として食糧を支給することはできるけどねw

397名無しさん:2013/08/10(土) 17:59:55 ID:JQ/7M.wA0
柱の男「食糧とかいっぱいあるやん(参加者吸収しつつ)」

398名無しさん:2013/08/10(土) 18:17:47 ID:9i9dp0Tk0
レミリア「せやな」(チューチュー)
DIO「おう」(ズギュウゥゥン)

399名無しさん:2013/08/10(土) 19:53:47 ID:vFJeINoU0
ジョニィの能力ってちょっと物理学が関係してるっぽいから蓮子好きそう

400名無しさん:2013/08/10(土) 19:55:41 ID:HWcBje1.O
てっきり家や店から手に入れるもしくは魚とか釣ったり畑から野菜とったり動物狩ったりするものかと思ってた・・・

401名無しさん:2013/08/10(土) 20:04:04 ID:xb0SUwwA0
東方ジョジョロワでは普通のパロロワの常識に囚われてはいけない

402名無しさん:2013/08/10(土) 20:14:59 ID:9i9dp0Tk0
もっかい東方ロワ読んでくるか…

403 ◆YF//rpC0lk:2013/08/10(土) 20:15:57 ID:I0BNU99o0
何と言うか、食料関係のルールが不評なようなので変更させていただきます。
会場には民家、店舗などに食料が十分あるものとします。
ただし、その他の物品については変更なしです。

404名無しさん:2013/08/10(土) 20:22:44 ID:xb0SUwwA0
そういや戦闘機が現地超達できるロワがあってだな…
あれはひどかった

405名無しさん:2013/08/10(土) 20:40:07 ID:JQ/7M.wA0
>>400
動物が生息してたらディエゴ恐竜軍団作っちゃうから…(震え声)

しかし食糧解禁か、話の幅がちょっと広がりそうかな

406名無しさん:2013/08/11(日) 00:34:22 ID:6wh0T9m.0
>>399
超ひも理論だっけ

407名無しさん:2013/08/11(日) 07:37:42 ID:T86jXLEQ0
ジョニィが蓮子のヒモになるのかと一瞬思ってしまった、危ない危ない

408名無しさん:2013/08/11(日) 10:54:10 ID:6wh0T9m.0
なんてこと言うんだ!

409名無しさん:2013/08/11(日) 14:27:45 ID:Ug9xerwM0
ジョニィの介護に勤しむ蓮子

410名無しさん:2013/08/11(日) 16:14:45 ID:Ug9xerwM0
何となく現在位置纏めてみた

D-1:吉良、慧音、ぬえ
E-1:天子

B-2:美鈴、小傘、青娥、ウェザー
C-2:蓮子

C-3:ディエゴ、大統領
E-3:星、カーズ

A-4:芳香
B-4:リンゴォ、静葉
E-4:ジョナサン、レミィ

B-5:妹紅、エシディシ

B-6:さとり、億泰、うどんげ、ボス
D-6:阿求、幽々子、ツェペリさん、メリー、ポルポル君、ジャイロ、神子、アリス
E-6:こいし、神父、チルノ

南方、圧倒的密度…!
うどんげが永遠亭へ移動中+B-6面子が竹林に近い+妹紅やエシディシが南下中ってことも考えると
迷いの竹林に続々と人が集まるフラグ

411名無しさん:2013/08/11(日) 16:54:19 ID:TEVbEZLU0
まとめ乙
迷いの竹林さんモテモテやでぇ……

412名無しさん:2013/08/11(日) 17:31:57 ID:aE7dMurM0
>>410
加えて気絶中のさとりを背負った億泰はさとりを狙うディアボロをまくために
竹林に移動中というついげきのグランドヴァイパw
迷いの竹林だからなーw
追いかけるつもりが追い越して別の奴らにぶつかったとかならないといいけどなーw

413 ◆YF//rpC0lk:2013/08/11(日) 19:14:04 ID:srKgncbU0
それでは宇佐見蓮子、ジョニィ・ジョースター、ヴァニラ・アイスで投下します

※ネタバレ:今回は死人は出ません(まだ)。

414愛し君へ ◆YF//rpC0lk:2013/08/11(日) 19:14:59 ID:srKgncbU0



こんなことがありえるんだろうか?
「突如として連れてこられた奇妙な場所」で「死んだ親友の姿を見る事」がありえるのだろうか……


あの場所、謎の場所で突如金髪の女の子が殺されたのを見た。
それまでの記憶がどうも抜けている。覚えているのは、ヨーロッパ行きの船に乗ったところまでだ。
その後からあの場所までの記憶が、どんなに思い出そうとしても思い出せない。


けれど、今はそんなことはどうだっていい。
その場所に、親友―――「ジャイロ」がいた事の方が重要だ。
死者が蘇ったのか、大統領のように並行世界から連れてこられたのか。
もし後者なら、彼は「今まで共にレースを走った彼」じゃないのだろう。


……それでもいい。例え僕の事を知らない彼でも、僕は彼に会いたい。
僕が―――ジョニィ・ジョースターが再び歩き出せるようになったのは、他ならぬ彼に出会えたからだ。
だから、彼に会いたい。そして今度こそ「ありがとう」と面と向かって言いたい。


僕は歩けるようになった足で立ち上がる。
ここはテーブルや椅子が大量に並んだ、どうやら食堂のようだ。
石造りの壁は、病院かはたまた牢獄の中である事を示しているのだろうか。

とにかく外に出よう。どこかにいるジャイロに会いに行こう。
そう思って歩き出したときだ。



―――ほら!そうと決まれば…行くわよ、ヨーヨーマッ!
…了解しましたァ。ご主人様の命令には従います―――


近くの階段の上から声が聞こえてきた。
この建物に、他の参加者がいるのだろうか。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

415愛し君へ ◆YF//rpC0lk:2013/08/11(日) 19:15:52 ID:srKgncbU0


立ち止りたくなかった。とにかく何処かへ行きたかった。
もしこの歩みを止めれば、すぐにでも不安と恐怖で窒息する。
この「石造りの海」の中で溺れ死んでしまう。そんな気がした。


蓮子はヨーヨーマッを連れて監房を出る。一刻も早くメリーに会うために。
そのためにはこの檻の中、じっとしているわけにはいかないからだ。
けれど、殺し合いにのっていない参加者に会う事も考慮すると、どうしても人の集まりそうな場所に行く事になるだろう。
無論、そうなれば危険に接触する確率も飛躍的に上昇する。
けど、だからこそ立ち止りたくなかった。そんな不安も忘れるために。

監房の目の前に1階へ降りる階段がある。
外に出るには下へ行くしかない。階段に足をかけ降りていく。
『ご主人様、待ってくだざいよォ』
ヨーヨーマッが何か言っているが気にしてられない。
早く外に出なきゃ。早くメリーに会わなきゃ。

そうこうしている内に1階に到達する。
普通ならこの階に外への出口があるはずだと辺りを見渡す。
そんな時だった。



「なぁ、君。君も参加者だろ?」



何処からか声をかけられた。この監獄に他の人間がいたって言うの!?
声のした方向を振り返ると、そこには男の人が一人。
蹄鉄の飾りがついたバンダナを頭に身に着けた、白人の少年がいた。

416愛し君へ ◆YF//rpC0lk:2013/08/11(日) 19:16:39 ID:srKgncbU0

でも相手していられない。メリーに会わなきゃ恐怖で精神が折れそうになる。
彼を無視してそのまま出入り口があるであろう方向へ歩き出す。

「待ってくれ。僕は殺し合いにのっていないッ!」
さっきの少年が続けて声をかけてくる。
でも急がないと。こうしている間にもメリーに会える確率が減っているような感覚に陥る。

「私は、すぐにでも会わなきゃならないの。友達に。親友に」
振り向きもせず立ち止り、それだけ言い捨てる。
構ってはいられないんだ。早く外へ、外へ出なければ始まらない。

「親友……」
さっきの言葉に彼は何かを感じとっていた。
そして私は立ち止った。彼の言葉を聞いて。


「僕も会いたい親友がいる。」

思わず驚いて彼の方を振り向いた。
彼は同じだった。親友に、メリーに会いたい私と。

『ご主人様ァ、やっと追いつきました』
ヨーヨーマッが殴りたくなる声で何か言っていた。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

417愛し君へ ◆YF//rpC0lk:2013/08/11(日) 19:17:45 ID:srKgncbU0

互いの名前を教えあった後、食堂の一角で、ジョニィと蓮子が面と向かって座った。
蓮子は先ほどまでの焦りが幾分か落ち着いた様子だ。
その近くにはヨーヨーマッが変わらぬ表情で突っ立っている。

「それで、ジョニィがさっき言った『会いたい親友』って誰なの」
「あぁ、ジャイロ・ツェペリって言ってさ。レースの中で出会った僕の親友で、恩人なんだ」
「恩人?」
「話せば長くなるけど、僕が歩き出せるようになれたきっかけ、のようなものかな」

蓮子の問いかけに、ジョニィはなんだか楽しそうに答える。
その親友をどう思っているのか、短い答えの中にも思いが滲み出ている。

「そういう蓮子も、会いたい人がいるんだろ? 僕にも聞かせてよ」
「マエリベリー・ハーンって言ってね、私はよくメリーって言ってる。
 大学のサークル仲間で、二人でよくオカルトスポットに出かけていてね」

蓮子の言葉は続く。まるで何かの堰を切ったかのように。

「墓場に探検しにいったり、一緒に私の実家に帰ったり、行動するときはいつも隣にいてね。
 私よく待ち合わせに遅刻しちゃうんだけどさ、それでも一緒にいてくれて。
 よく不思議な夢を見る子で、それで……」

蓮子の言葉が詰まり始める。何も思い出せないからじゃない、その逆だ。
まだまだ壊れたダムのようにメリーとの思い出が溢れてくる。










―――思い出とともに、涙と寂しさが溢れてきたから、そこから先が言い出せない。

418愛し君へ ◆YF//rpC0lk:2013/08/11(日) 19:18:57 ID:srKgncbU0


「……メリーに会いたい! すぐにでも姿が見たい!
 あの子の夢の世界の話が聞きたい! あの子の手を握っていたいッ!
 こんなところで失いたくないッ!! もう会えないなんて、思いたくない……」

涙声になりながら、蓮子は今まで強引に抑えていた思いを止められなかった。
目の前にジョニィという異性がいるのも忘れて、ただただ思いをぶちまけていた。
そんな蓮子の言葉に、ジョニィも再び口を開く。


「僕だって同じだ。ジャイロを失いたくはない。
 せっかく、今度こそちゃんと礼を言えるチャンスが巡ってきたんだ。
 彼に会えるまで、僕は人間として『マイナス』だった。
 『ゼロ』に戻って、また立ち上がれるようになったのも、彼がいたからなんだ。」

親友への思いを蓮子と同様に言葉にする。
ただ、感情が止められない蓮子とは対照的に、ジョニィはあくまで冷静な面持ちだ。
そして、未だ涙が流れる蓮子に、彼は話しかける。

「なぁ、一緒に互いの親友を探さないか?
 僕がメリーを探すように、君はジャイロを探すんだ。
 危険も存在するこの場で、誰かを見つけるのには一人じゃ荷が重すぎる」

服の袖で涙を拭いながら、彼女は聞き返した。

「一緒に、メリーを探してくれるの?」
「君が望むなら、そうするつもりだ」

蓮子はジョニィの眼を見る。嘘のない、揺るぎのない光がそこにはあった。
彼を信じたい。彼とならメリーに会えるかもしれない。
そう思えた蓮子は、彼に返答する。もう涙はひいていた。

「わかったわ。一緒に行きましょう」
「よし来た。だったら、出かける前に準備をしていこう」

蓮子の答えを聞いて、ジョニィは椅子から立ち上がる。

「ここは見たところ食堂みたいだし、なにか食べ物があるかもしれない。
 そうでなくても、建物全体を探して包帯やら持って行った方がいい」

ジョニィの提案に、蓮子は今までの自分の行動を振り返り、その浅はかさを反省する。
(あんなに焦って、プランク並の頭脳を自称してるのが嘆かわしいわね)
そう考えながら、何か物色するためにジョニィと共に辺りを探し始めた。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

419愛し君へ ◆YF//rpC0lk:2013/08/11(日) 19:19:32 ID:srKgncbU0

ジョニィの提案は、総合的にみても正しかったと言えよう。
なぜなら、あのまま蓮子が外に出ていたとしたら、『彼』に出会う事になったかもしれないからだ。



C-2の中央、GDS刑務所の北。
一見すれば、そこには人っ子一人見当たらない。
だがその場所から、突如として男が一人顔を出してきたではないか!

ウェーブがかった紫の長髪に、金色のハート型の飾りが額に輝いている。
だがその瞳には、『どす黒い暗黒のクレバス』のような闇が見て取れた。
男の名はヴァニラ・アイス。DIOの腹心にして狂信者である。


この殺し合いにおいて、彼のスタンスなど最初から決まっていた。
目の前で小娘が爆破されたからなんだ。生き残った者に褒美が与えられるからなんだというのだ。
彼にとってはDIOこそが全て。他は自分も含め取るに足らぬゴミ同然だ。
なら行動は一つだけ。敬愛する主君のため、他のものを皆殺しにするのみ。

ゲーム開始から少しして、ヴァニラはデイパックの中にある名簿と地図を確認した。
このゲームの参加者の中に、主君であるDIO、そしてそれに刃向う憎きジョースター一行の名前が載っていた。
他には命令に失敗したホルホース、それになぜかジョセフや承太郎と同じ『ジョースター』と『空条』の姓を持つ人物もいた。
尤も、先ほども言った通りDIO以外の参加者など殺すだけなのだから、どうでもいい。

ところで、なぜ何もない場所から男の顔だけが出ているのかと言えば、これこそが彼の能力だからだ。
彼のスタンド『クリーム』は、口が暗黒空間への入口となっており、
彼と彼のスタンドを除いた一切合切を全て粉微塵にして消滅させてしまうのだ。
不思議なことに、デイパックは彼と共に暗黒空間の中で消えずに残っているのだが、彼はそこまで考察はしないだろう。
再確認した地図をデイパックに収納する。

「DIO様、あなたのためにこのヴァニラ・アイス、全てを葬り去りましょう」

男は一人呟くと再び暗黒空間に顔を引っ込めた。
仮にも主君たるDIOを粉微塵にせぬよう、不可視の球状となって飛んで行く。
最初に目指すのはGDS刑務所。主君の栄光のための贄がいる事を期待しながら。

420愛し君へ ◆YF//rpC0lk:2013/08/11(日) 19:20:03 ID:srKgncbU0

【C-2 GDS刑務所女子監・1階/深夜】
【宇佐見蓮子@秘封倶楽部】
[状態]:健康。恐怖、苛立ち、焦燥はだいぶ和らいでいる
[装備]:スタンドDISC「ヨーヨーマッ」@ジョジョ第6部
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:メリーと一緒に此処から脱出する。
1:ジョニィと共に、メリーとジャイロを探す。
2:殺し合いに乗ってない人に会いたい。
3:今は何か持って行けるものを貰っていこう。
4:ヨーヨーマッはやはり気に入らない。けど、ある程度は頼りにせざるを得ない。
[備考]
参戦時期は少なくとも『卯酉東海道』の後です。
ジョニィとは、ジャイロの名前(本名にあらず)の情報を共有しました。

【ジョニィ・ジョースター@第7部 スティール・ボール・ラン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:不明支給品、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:ジャイロに会いに行く
1:蓮子と共に、メリーとジャイロを探す。
2:殺し合いに乗ってない人に会いたい。
3:今は何か持って行けるものを貰っていこう。
4:……ところでアレ(ヨーヨーマッ)って蓮子のスタンド?
[備考]
参戦時期はSBR24巻、ヨーロッパ行の船に乗り込んだ直後です。
まだ自分のデイパックの中身を確認していません。
蓮子とは、メリーの名前の情報を共有しました。
ヨーヨーマッについてはまだ何も聞いていません。


【C-2 平原/深夜】
【ヴァニラ・アイス@第3部 スターダストクルセイダース】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:不明支給品(本人確認済み)、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:DIO様のために皆殺しにする
1:DIO様、貴方のために全てを葬りさりましょう
2:ジョースター一行は最優先で抹殺する
3:まずは手始めにジョースター邸に向かう
[備考]
参戦時期はジョジョ26巻、DIOに報告する直前です。なので肉体はまだ人間です。
ランダム支給品は本人確認済みです。
GDS刑務所に向かうようです。

421 ◆YF//rpC0lk:2013/08/11(日) 19:21:10 ID:srKgncbU0
以上、短いながらも投下を終了いたします。
指摘、ツッコミ、感想などがあればよろしくお願いします。

422名無しさん:2013/08/11(日) 19:33:53 ID:KSjL01tg0
投下乙です
いやー危ない危ない… ゲームじゃこういう選択肢で焦るとたいがいデッドエンドだもんなぁ

423名無しさん:2013/08/11(日) 19:37:21 ID:Ug9xerwM0
投下乙!
思いを吐露する蓮子が生々しくていいなぁ…
親友と会う為に同行した蓮子とジョニィ、だけどあかん!そこヴァニラ迫っとる!逃げて!

指摘と言えば、ヴァニラの状態表に
3:まずは手始めにジョースター邸に向かう
と書かれているの対し、備考と本文には「GDS刑務所へ向かう」と表記されているのが気になりましたね…

424 ◆YF//rpC0lk:2013/08/11(日) 19:38:31 ID:srKgncbU0
>>423
スイマセン、そこ修正しときます。
こんな感じですかね

1:DIO様、貴方のために全てを葬りさりましょう
2:ジョースター一行は最優先で抹殺する
3:まずは手始めにGDS刑務所に向かう

425名無しさん:2013/08/11(日) 19:49:28 ID:Ug9xerwM0
>>424
対応ありがとうございます、そんな感じで宜しいかと思われます

426名無しさん:2013/08/11(日) 20:44:04 ID:UFiPkxgk0
ジョニイ蓮子逃げてー!
いや、ジョニイならワンチャンあるか。ヴァニラも人間状態だし
一方のジャイロ、メリーも魔郷と化した迷い竹林に
お互いの親友に再会することができるのか?

427名無しさん:2013/08/11(日) 22:17:10 ID:6wh0T9m.0
とりあえずジョニィがトチ狂って蓮子を射殺したりはしなさそうで良かった

428 ◆.OuhWp0KOo:2013/08/12(月) 00:06:51 ID:zP8W6kVQ0
博麗霊夢、十六夜咲夜、魂魄妖夢、空条承太郎
予約します。

429名無しさん:2013/08/12(月) 00:21:37 ID:6faomNSk0
主人公勢ktkr!!
これで勝つる!

430 ◆YF//rpC0lk:2013/08/12(月) 00:22:25 ID:9pmFDSsM0
>>429
と思うじゃん?
ジョジョ3rdじゃ承太郎ズタボロだし
東方ロワじゃ霊夢ちゃんマーダーよ

431名無しさん:2013/08/12(月) 00:22:39 ID:oJ0TetmU0
なんて安心出来る組み合わせなんだ…ww

432名無しさん:2013/08/12(月) 00:23:51 ID:oJ0TetmU0
ジョ、ジョジョロワは空条親子が割と酷い目に合うけどよそだと元気だし(震え声)
霊夢もよそだと元気だし(震え声)

433名無しさん:2013/08/12(月) 00:28:01 ID:axnyiiGY0
霊夢と妖夢は東方ロワ、咲夜はニコロワでゲームに乗ってるんだよな…
ま、まあ承りもいるし、対主催になる確率法が高いし(震え声)

434名無しさん:2013/08/12(月) 00:38:52 ID:2S1yy4xA0
承太郎は徐倫、ホリィ、妻関連の事以外で隙をつくることは殆どないから大丈夫(タブン
東方組は…

435名無しさん:2013/08/12(月) 07:41:01 ID:1JMXek4g0
ここの奴らいつもいつも声震えすぎだろ(震え声)

436名無しさん:2013/08/12(月) 15:10:09 ID:JmxsEl/YO
お、俺は声が震えたことがないから(強がり)

437名無しさん:2013/08/12(月) 21:52:07 ID:AfMVJ/kc0
さすがに霊夢がゲームに乗っても東方ロワみたいに無双できないだろうな。ジョジョロワ2ndの驚異、柱の男がいるし

438名無しさん:2013/08/12(月) 22:15:37 ID:axnyiiGY0
今回ゲームに乗って無双しそうなのは
東方よりジョジョサイドのほうが多いんだよな

439名無しさん:2013/08/12(月) 22:24:11 ID:oJ0TetmU0
このロワはマーダー率自体はそこまで高いとは言えないけど
東方勢と比べてジョジョ勢は迷うことなくマーダー化してるのに加えて、乗ってるのが原作でも猛威を振るった強キャラ達だからなぁ…

440名無しさん:2013/08/12(月) 22:41:57 ID:AfMVJ/kc0
東方ロワのマーダーとジョジョロワのマーダーはまったく逆の性質だからな
東方キャラのマーダーは闇堕ちのイメージだけどジョジョロワのマーダーは悪役や狂人のイメージなんだよね(つまり原作通り)

441名無しさん:2013/08/13(火) 00:43:26 ID:L02DOX/E0
>>440
ジョジョ1stのナランチャやダイアー
2ndのFFやジョナサン
3rdのリサリサや承太郎
闇落ちも結構あるんだよね

442名無しさん:2013/08/13(火) 00:49:42 ID:mruhQzo60
承太郎はマーダーっていうか泥沼のマーダーキラーって印象
まぁ闇落ちには変わりないか

443名無しさん:2013/08/13(火) 01:08:10 ID:L9KF06fY0
>>441
そりゃ1人や2人はいるだろ、ロワに闇堕ちはつきものだし

444名無しさん:2013/08/13(火) 01:18:11 ID:L9KF06fY0
まあジョジョロワ2ndは序盤から中盤はカーズ、ラバーソール、チョコラータ、Jガイル、アンジェロら悪役マーダーが活躍してたが中盤以降はエシディシと闇堕ちマーダーが活躍するから2ndは東方ロワや変身ロワ(序盤)と同じく闇堕ちのイメージになるかもしれないけど

445名無しさん:2013/08/13(火) 14:23:00 ID:Zo35K35k0
2ndなら積極的マーダーではないが未来の部下たち+男の世界探求者たち+未来の親友を従えて暗躍してた1部ディオも印象深いなァ〜

446名無しさん:2013/08/13(火) 15:32:42 ID:lSRKGFKE0
まったく関係ないけどせっかくだから>>444
( ・ω・)つミスタ

447名無しさん:2013/08/13(火) 15:47:20 ID:mruhQzo60
此処だと男の世界に付き合った末に第三者からの不意打ちが原因で決闘でポックリ逝ったワキガ…

448名無しさん:2013/08/13(火) 17:29:31 ID:6nDvTUgQO
ふと思った
ジョニィの参戦時期って大抵大統領死亡後だよな

もっと前から参戦ってできないのか?アクセルRO戦の時あたりから呼んでも面白い か も

449名無しさん:2013/08/13(火) 17:46:48 ID:mruhQzo60
ぶっちゃけ大統領死亡後参戦のジョニィの一番のメリットは歩けることだと思う
それ以前だと地面這い蹲りながら動くことになるし…

450名無しさん:2013/08/13(火) 18:45:36 ID:XZepwJ/Y0
ロワで障害者キャラは扱いにくいからな

451名無しさん:2013/08/13(火) 19:14:50 ID:F/tHd0Sw0
蓮子におぶさって移動せざるを得ないジョニィって構図も面白いと思ったけどね

ジョニィ「最高だった……」
蓮子「最低よ……うう、重いぃ」

452名無しさん:2013/08/13(火) 20:06:56 ID:qA.soG520
蓮子がカワイイのは結構だがジョニィ貴様は爪で移動したほうが速いだろ

453名無しさん:2013/08/13(火) 20:25:54 ID:mruhQzo60
女子大生がとことこ歩いている横で這い蹲りながらタスクでガリガリ進むジョニィを想像してワロタ

454名無しさん:2013/08/13(火) 20:28:28 ID:F/tHd0Sw0
まあ、刑務所なら医務室辺りに車椅子の一つや二つあるんじゃね?w

455名無しさん:2013/08/13(火) 20:54:28 ID:9D2vdVls0
蓮子は虫に刺されないように気を付けないとな
いや、このままクリア後に結ばれ(ry

456 ◆YF//rpC0lk:2013/08/13(火) 20:55:56 ID:Y4EY6kVs0
よし、そのうちジョニィ●すか

457名無しさん:2013/08/13(火) 20:57:19 ID:qA.soG520
ケッ 虫さされフェチのジョジョめ!行こうぜ!ジョジョと結婚すると誰でも奇病に侵されるぜ!

458名無しさん:2013/08/13(火) 21:06:56 ID:F/tHd0Sw0
>>456
ヴァニラが近くにいるのに黒丸の伏字は不吉だなぁ…w

459名無しさん:2013/08/13(火) 21:21:17 ID:qA.soG520
よし、そのうちジョニィッすか

460名無しさん:2013/08/13(火) 21:24:38 ID:9D2vdVls0
よし、そのうちジョニィ嫁がすか
…だめだ、一文字多い

461名無しさん:2013/08/13(火) 21:26:35 ID:F/tHd0Sw0
よし、そのうちジョニィ犯すか

462名無しさん:2013/08/13(火) 21:38:35 ID:mruhQzo60
蓮子の二の腕の…ぷくっと膨らんでいるあの「虫さされの痕」…
あれを見た時…何というかその…下品なんですが…フフ(ry

463名無しさん:2013/08/13(火) 21:52:02 ID:qA.soG520
よし、そのうちジョニィ落すか

464名無しさん:2013/08/13(火) 22:21:14 ID:F/tHd0Sw0
>>463
ジョニィを落とすなら>>462の言うとおり虫さされ跡を作れば一発っすよ

465名無しさん:2013/08/13(火) 23:30:40 ID:25HNL8f60
>>451
不覚にも、蓮子の背に乗りながら、
その力を利用した"騎兵の回転"を撃ち出すジョニィを思い浮かべてしまったじゃないかwww

466名無しさん:2013/08/13(火) 23:46:56 ID:qA.soG520
つまり蓮子に蹴飛ばされたいってことだな

467名無しさん:2013/08/13(火) 23:52:22 ID:mruhQzo60
ここに来て突如人気急上昇・蓮子×ジョニィ

468名無しさん:2013/08/14(水) 00:22:06 ID:eOAXKJLg0
蓮子は黄金の回転とかいかにも好きそうだな

469名無しさん:2013/08/14(水) 00:31:47 ID:oR9wSBXI0
蓮ジョニは俺のジャスティス

470名無しさん:2013/08/14(水) 00:35:50 ID:A0MnJUUYO
つってもジョニィの方はともかく
蓮子はガチレズくせえんだよなぁ

471名無しさん:2013/08/14(水) 00:43:59 ID:eOAXKJLg0
ジョニィも将来の嫁と出会う直前か直後から来てるぜ

472名無しさん:2013/08/14(水) 19:03:05 ID:Ij4salg60
ロワでは作品またいでのカプとかよくあるし、もしかしたらロワ中で蓮ジョニ実現なんて事になるかもなw

473名無しさん:2013/08/14(水) 19:24:51 ID:eXwTeIzs0
変にそこまで仲が進むのは許可しないィィィィィーーーッ だが!虫さされフェチを言うことまでを許可しろォォォーーーッ!
まあ次回にでも2人とも死ぬ可能性がないわけじゃないんだけど

474名無しさん:2013/08/14(水) 19:52:58 ID:cwKstWgQ0
そういやパロロワで東方キャラとかジョジョキャラが
作品またいだカプを成立させた所ったあんまり見たこと無いね

作品がクロスするロワだと、
どっちも異性に興味無さそうな『濃い』奴らが選出される傾向にあるからかな

475名無しさん:2013/08/14(水) 22:55:28 ID:ARrUfYkA0
パロロワだと出てくるジョジョキャラと言えば硬派な承太郎だの悪の帝王DIOだの
むしろカプに持ってけそうなキャラが少ない気が…w
東方も霊夢とかは異性にさほど興味なさそうだしw

476 ◆WjyuuPGo0M:2013/08/14(水) 23:46:15 ID:hTBj0/xg0
予約延長します

477名無しさん:2013/08/15(木) 00:27:31 ID:89jyA7jw0
ジョジョで女好きなキャラって浮気性のジョセフや女をとっかえひっかえしてる吉良以外にいたかな

478名無しさん:2013/08/15(木) 01:03:30 ID:y0pyxMV.0
霊夢は割りと面食いなそうな

479 ◆n4C8df9rq6:2013/08/15(木) 03:04:13 ID:3pD4uai.0
東風谷早苗、プロシュート
予約します

480名無しさん:2013/08/15(木) 11:52:36 ID:W8yJrXKYO
兄貴来たー!

481名無しさん:2013/08/15(木) 22:45:41 ID:AgPkodME0
『執筆する』と
心のなかで思ったならば!

482名無しさん:2013/08/15(木) 23:55:06 ID:ch44.9uEO
その時スデに投下は終わって・・・ねぇよ!

484名無しさん:2013/08/17(土) 16:28:14 ID:9nzsOLs20
果たしてこのロワで究極生命体は誕生するのか?

486名無しさん:2013/08/17(土) 17:56:55 ID:ExJguXwE0
>>484
石仮面と赤石があればいける気がする
究極生命体誕生ならジョジョロワ2ndのエシディシって前例あるし

487名無しさん:2013/08/17(土) 18:14:35 ID:4nS0rvJk0
しれっと阿求の支給品に入ってる赤石

489名無しさん:2013/08/17(土) 18:50:31 ID:HHKSCSIw0
東方キャラでカップリングか
ニコロワでアリスなら…

490名無しさん:2013/08/18(日) 01:08:45 ID:jpduCnmc0
ピコまろといい感じになってたよねぇ…w

491 ◆n4C8df9rq6:2013/08/18(日) 01:36:23 ID:84wis0D20
短めですが
東風風早苗、プロシュート 投下します

492客星の煌めく夜 ◆n4C8df9rq6:2013/08/18(日) 01:37:50 ID:84wis0D20


目を開くと、星が煌めく夜空が視界に広がっていた。
夢から醒めた後のような不明確な意識を整えつつ、現状を把握しようと頭を回転させる。
背中に、腕に、首筋。身体の至る所から感じるのは煩わしい幾つもの感触。
それが無数の雑草が触れていることによるものだと、少しずつ確かになりつつある自身の五感が認識していた。
自分が仰向けになって倒れていた、ということを『彼女』はその場で理解する。

「……うぅ、…ん………」

彼女はゆっくりとその場で身体を起こし、目を擦りながら周囲の風景を見渡す。
辺りに広がるのは雑草の生い茂る大地。
所々に木々が立つのは見えるが、それ以外は際立って目立ったものもない。
この風景は、何となく見たことがある気がする。少なくとも此処が『幻想郷』であることは理解出来た。
恐らく幻想郷の外れに位置する地点か。人里からも遠く離れているような、言わば野良の妖怪がうろついているような場所だろう。

現状を認識した彼女は、戻り始めた意識の中で『先程までの記憶』を掘り返していた。

荒木飛呂彦。太田順也。
ゲーム開幕の宣言。
ざわつく会場。
食って掛かったのは、あの秋の神様。
目の前で起こった惨劇。
殺し合いという現実。
――――そして。

「…夢じゃない、よね…これ…」

今、この場にいる自分。
夢にしてはあまりにも生々しかったし、現実味を帯び過ぎた感覚だった。
幻想郷のように見えるこの地でさえ、殺し合いの場に過ぎないなのだろう。
現状の全てを漸く思い出してから…私は、急に心細くなり始めた。
ひとりぼっち。殺し合いという現実。誰を信用すればいいのかも解らない。
誰かが死ぬ。誰かが殺される。嘘やまやかしでも、冗談でもない。それはあの秋の神様の死を以て思い知らされた。
彼女が死ぬ瞬間を思い出すだけで、身体が震えていた。
孤独の恐怖。始まってしまった殺し合いという現状への恐怖。死への恐怖。

守矢神社の風祝にして現人神である「東風谷早苗」の胸中に渦巻くのは、数多の恐怖。

493客星の煌めく夜 ◆n4C8df9rq6:2013/08/18(日) 01:38:21 ID:84wis0D20

「…神奈子様…、諏訪子様…」

心細くなった彼女がぼそりと呟いたのは、自身にとっての『家族』の名。
今すぐにでもあの二人に会いたい。安心感を手に入れたい。
最初の会場を見渡した時に二人の姿は見かけたのだ。この殺し合いに巻き込まれていることは確実。
一刻も早く二人を見つけたかった。

だけど。
だけど…今、自分がやるべきことは…たぶん、違う。

怖いけど。恐怖に飲まれたままでいるのはもっと駄目だ。
そんな姿を見せたら、神奈子様や諏訪子様にも顔向け出来ないだろうから。
彼女は、すっとその場から立ち上がった。
拳をぎゅっと握りしめながら、渦巻く恐怖を誤摩化すように抑え込み決意を固める。


「…殺し合いを、止めなくちゃ…!」


自分がすべきことは何か。
それはきっと、この殺し合いを止めること。
恐怖に押し潰されて何も出来ないままなんて…そんな姿を見られたら、神奈子様や諏訪子様に叱咤されるだろう。
私だって、情けなく震えてるだけなんて真っ平御免だ。
怖くて仕方無いし、不安なのは事実だけど…そんなんじゃ、きっと駄目だ。

私は、守矢神社の風祝として。現人神として。

この『異変』を―――解決してみせる!



決意を固めてから間もなくして、後方から雑草を踏み頻る音が聞こえてきた。
早苗はすぐさま気付く。人がこちらに近づいて来ていると言うことを。
足音から、一歩一歩とゆっくり警戒するように歩いていることが解る。

殺し合いの場である以上、近づいてくるのが参加者であることは明白だろう。

予想よりもずっと早く、他の参加者と初めて出会うことになったのだ。
一体、どんな人物なのだろうか。
殺し合いに反対しているならば、まだいいけど。もし『乗っている人物』となれば―――
不安と期待を混ぜ合わせたような感情を胸に抱きながら、彼女は振り返った。

494客星の煌めく夜 ◆n4C8df9rq6:2013/08/18(日) 01:38:48 ID:84wis0D20




「…お前も『参加者』だな、お嬢ちゃん」


振り返った早苗が目にしたのは、鋭い視線を向けるスーツ姿の男だった。
片手に握り締めているのは一本のナイフ。
早苗と一定の距離を保ちながら、ドスの利いた低い声で彼女に話しかける。

「っ……………、」
「一つ質問させて貰う。お前は殺し合いに乗っているのか?」

彼女はごくりと唾を飲む。目の前の男性が『普通の人間』でないことは、すぐに理解出来た。
それは特殊な力があるとか、何か才能があるとか、そうゆう意味ではない。
早苗は、彼が「全うな生き方をしている人間」には思えなかったのだ。
身に纏う雰囲気はどこか物々しく、威圧感を漂わせている。
こちらを睨むように見据える目付きは刃物のように鋭く…冷たい。
少なくとも、目の前の男性がただ者ではないということは理解したのだ。

「…いいえ。私は…この殺し合いを止めるつもりです」
「………。」

早苗は目の前の男に向かって、ハッキリとそう言った。
対する男は、何も言わずに彼女の瞳を真っ直ぐに見ている。
沈黙のようにも思える。
その鋭い瞳に見据えられたことで早苗は思わず目線を逸らしそうになったが、何とかグッと堪えて男と向き合っていた。
少しの間、静寂のまま時が流れ続けるが――。


「…なら良い。俺も『今の所』は殺し合いに乗るつもりはない」

男はそう言いながら、ゆっくりと早苗の方へと近づいていった。
今の所、という表現に引っ掛かるものを覚えつつも早苗は近づいてくる男を見る。
がっしりとした長身の男の姿が先程よりも明確に見え始めてくる。
そして、早苗との距離にして数歩ほどの地点で男は立ち止まった…。


「さて、自己紹介が遅れたな…。俺の名は『プロシュート』だ」


◆◆◆◆◆◆

495客星の煌めく夜 ◆n4C8df9rq6:2013/08/18(日) 01:39:25 ID:84wis0D20



「お嬢ちゃん。確か早苗、と言ったな」
「あ、…はい」
「興味深い情報を聞かせて貰ったぞ。感謝しておく」

早苗とプロシュートは、真夜中の草原で情報交換を行っていた。
木陰の下に隠れ、出来る限り目立たぬように互いに言葉を交わしていた
とはいえ、主に情報を話していたのは早苗の方。
プロシュートの方は極力自分の素性について語らなかった。
彼が語ったのは精々「ギャングの一員である」ということくらいだ。
やはりというか何と言うか、彼が堅気ではないことを知って早苗は少し表情が強ばっていたがプロシュートは特に気にはしない。
その後はプロシュートが早苗から出来る限りの情報を引き出すという形になっていた。
それもそのはず。彼女はこの会場の地図についての心当たりがあったからからだ。
故にプロシュートは早苗の言う「幻想郷」について積極的に聞き出した。
この会場の地図に酷似している所か、殆ど同じという幻想郷の地。
そのことについて聞き出せば有力な情報と成り得ると踏んだのだろう。


「しかし、妖怪や神々の住まう地…か。まるで御伽話のような世界だな」
「そりゃあ勿論ですよ。幻想郷は常識に囚われない幻想の楽園なんですから」
「成る程ね…。本当に、夢のような話だ」


そう呟きながら、プロシュートは内心思考する。
支給された地図を確認した際に、早苗から指摘されたのだ。
『この会場の地図は幻想郷の図面と殆ど同じだ』と。…コロッセオやポンペイなど、何故かイタリアの観光地なども見受けられたのが不自然だったが。
そして目の前の早苗という少女は、外の世界から『幻想郷』に引っ越してきた身らしい。
彼女に幻想郷について聞き出してみれば、信じ難い話が次々と飛び出してきた。
外の世界で追いやられた妖怪達の最後の楽園。幻想が生き続け、人と妖怪、そして神々が共存する世界。
まるで嘘のような話だったが、嘘にしてはあまりにも出来すぎている。
幻想郷について話している早苗の様子を見る限りでもデタラメを言っているようには思えなかった。
故に彼は一先ず早苗の言葉を信用することにしたのだ。
だが、あの荒木と太田に関しての情報は得られなかった。
「あの二人は知らない」。早苗が確かにそう断言したのだ。
幻想郷を殺し合いの場として選んだあの二人が、何かしら幻想郷に関わりを持っているのではないかと踏んだが…
少なくとも、早苗からは情報を手に入れられなかったのは確かだ。

496客星の煌めく夜 ◆n4C8df9rq6:2013/08/18(日) 01:43:44 ID:84wis0D20
「得られた情報はこんなものか。さて、俺はこれからこの場から移動するが…お前はどうする?」
「その、改めて聞きますけど…プロシュートさんも、殺し合いに乗ってないんですよね?」
「…ああ、そうだ」

短くそう答えたプロシュート。
彼の返答を聞き、早苗は意を決したように言葉を出す―――

「だったら、私…プロシュートさんに着いて行きたいです!
 『殺し合いに乗ってない人達』同士で行動出来た方が、一人で居るよりもずっと良いって思うんです」
「…………。」
「私は、この殺し合いを止めたい。…だけど、一人でやれることには限界があると言うことも理解しています」
「…………。」

「だから、その…プロシュートさん。何というか…私と一緒に、闘って欲しいんです!
 迷惑をかけてしまうかもしれない、ってことも解っています。けれど…私も、出来る限りのことは全力で頑張りますから!」

…早苗の頼みに対し、彼は何も言わず。
小柄な彼女をじっと見下ろしながら、黙ったままでいる。
プロシュートを見上げる早苗の表情は、瞳は、真剣だ。
異変解決の為の、共に闘う仲間。早苗が求めているのはそれだったのだから。
―――そして、プロシュートがゆっくりと背を向けて独りでに歩を進め始める。
振り向きながら、彼は言葉を発した。


「好きにしな、お嬢ちゃん」
「―――っ、ありがとうございます!」

その一言は素っ気なくも、彼女の呼びかけに対する「肯定」であることはすぐに理解出来た。
早苗は表情を明るくして嬉しそうに礼を言いながら、プロシュートに着いていくように早足で歩き始めた。


◆◆◆◆◆◆


視線を後方へとちらりと向ける。
俺の後ろを歩くのは、緑色の髪が特徴的な『早苗』という嬢ちゃんだ。
殺し合いを止める為に協力してほしい、と俺に頼んできた。
今はまだこの殺し合いに乗るつもりは無いし、奴らの掌の上で躍らされるのも癪だ。
そう思い、一先ず彼女に同調することに決めたのだ。

だが、あくまで『今の所は殺し合いに乗らない』というだけだ。
俺は生きなくちゃあならない。ボスの正体を突き止めるという『俺たちの目的』の為に。
今はまだ様子見も兼ねて早苗と共に行動することにしたが、本格的に主催に立ち向かうとすればそれは『勝利する見込みが見えてから』だ。
勝算の無い戦いに挑むこと。それは勇気でも何でもない、ただの無謀というものだ。

場合によっては、『殺し合いに乗ること』だって構わない。
あくまで大切なのは生き残ることだ。

それに、この場にはあの護衛チームの奴らも何人か参加しているという。
丁度いい。俺たちのチームの為に、奴らを始末することも出来るのだから。
だが、今はまだその時ではない。
まずは参加者を捜し、情報を集め、現状を見極めてからだ。
それまでは一先ず生存優先のスタンスで動く。殺し合いに乗るか、主催に立ち向かうか、脱出を目指すか。
『選択』の時は今ではない。

これから向かうのは『ポンペイ』。
地図にも記載されている土地だ。何故幻想郷にイタリアの遺跡が存在するのかは解らないが…
ともかく、俺はまず他の参加者を捜すべくそこへ向かうことにした。
現在地は「A-1」。ポンペイはそこから最も近い位置に存在する施設。
地図にも記載されている目立った土地には少なからず人が集まるかもしれない。故に俺はそこへ向かうことにした。
俺が必要とするのは情報だ。その為には誰か他の参加者と会わなければならない。
だが、殺し合いに乗っている奴がいる可能性も十分に有り得る。
決して警戒は怠ってはいけない。それを肝に銘じよう。

俺の目的は、どんな形であれ『生き残る』こと。

自分達「暗殺チーム」が、栄光を掴み取る為にも。

俺は、生き抜いてみせる。

497客星の煌めく夜 ◆n4C8df9rq6:2013/08/18(日) 01:48:17 ID:84wis0D20


【A-1 草原/深夜】

【東風谷早苗@東方風神録】
[状態]:健康、若干の不安
[装備]:なし
[道具]:不明支給品(確認済み)、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:異変解決。この殺し合いを止める。
1:プロシュートさんと同行。彼に着いていく。
2:殺し合いを打破する為の手段を捜す。仲間を集める。
3:出来れば神奈子様や諏訪子様に会いたい。
4:2の為に異変解決を生業とする霊夢さんや魔理沙さんに共闘を持ちかける?
5:死ぬことは怖い。でも、何とか恐怖を抑える。
[備考]
※参戦時期、制限の度合いは未定です。
※プロシュートと情報交換をしましたが、彼の素性は殆ど聞けていません。
 「ギャングの一員である」「闘う力はある」ということくらいです。

【プロシュート@第5部 黄金の風】
[状態]:健康
[装備]:十六夜咲夜のナイフセット@東方紅魔郷
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:一先ずは生存優先のスタンスを取りつつ、現状を見極める。
1:早苗と同行。ポンペイへと向かう。
2:他の参加者を捜す。今はとにかく情報が必要だ。
3:殺し合いに乗るかどうかは保留。
4:護衛チーム(ジョルノ、ブチャラティ、ミスタ)はいずれ始末する。
5:今は早苗に同行するが、手を貸す価値がないと判断すれば切り捨てることも厭わない。
[備考]
※参戦時期、制限の度合いは未定です。
※早苗との情報交換をし、幻想郷について知りました。
 知り合いについてはどこまで聞いているかは後の書き手さんにお任せします。
※スタンドについては一切話していません。ただ、「闘う力は持ち合わせている」という程度には伝えています。


<十六夜咲夜のナイフセット@東方紅魔郷>
プロシュートに支給。
紅魔館のメイド長である十六夜咲夜が弾幕に用いる投げナイフの複数セット。
投擲だけではなく接近戦にも使用可能。銀の刃を持つ為、吸血鬼に効果大。

498 ◆n4C8df9rq6:2013/08/18(日) 01:49:00 ID:84wis0D20
以上で投下終了です。
指摘やツッコミ、感想があればよろしくお願いします。

499名無しさん:2013/08/18(日) 01:51:58 ID:jpduCnmc0
良かった、兄貴がまだ『ぶっ殺す』と心の中で思っていなくて……!

500名無しさん:2013/08/18(日) 17:39:16 ID:txbs.cn2O
投下乙です
速攻ズガンは免れたけど、下手すると早苗が「直」は素早いんだぜ、の憂き目に・・・!

501 ◆.OuhWp0KOo:2013/08/19(月) 00:02:45 ID:Ty.f9mNU0
>>428の、
博麗霊夢、十六夜咲夜、魂魄妖夢、空条承太郎
の予約を延長します。

502 ◆n4C8df9rq6:2013/08/19(月) 01:08:18 ID:RYFEFZSg0
感想及びwiki収録ありがとうございます。

唐突にネタが舞い降りてきたので
姫海棠はたて(書き手枠) 予約します

503 ◆n4C8df9rq6:2013/08/19(月) 02:38:35 ID:RYFEFZSg0
何だかんだで書けたので投下します。

504W.O.D-WRITE OR DIE!- ◆n4C8df9rq6:2013/08/19(月) 02:40:12 ID:RYFEFZSg0

LEVEL 1

1-1 決闘中?
【銃声が聴こえてきたので念写してみたら写ったわ】
【二人の男が拳銃を構えて厳つい目付きでガン飛ばし合ってるわね】
【今時珍しいわねー、ストイックで古臭い決闘って感じで】

1-2 異人の殺害現場
【今度は現場に赴いて撮影 今まさに天狗は見た!殺し合いという現実を!】
【殺人事件勃発!念写した時に映し出された男の片方が射殺死体として発見されたわ】
【決闘とはかくもシビアなものね はてさて、もうおっ始まってるとなると私も取材頑張らなくっちゃなぁ】

505W.O.D-WRITE OR DIE!- ◆n4C8df9rq6:2013/08/19(月) 02:41:16 ID:RYFEFZSg0
◆◆◆◆◆◆


パシャリ。

パシャリ。



うっすらと瘴気に包まれ、月光が木々の間から射す魔法の森の内部。
幾度かのフラッシュと共に静かに響く撮影音。
そう、参加者が写真撮影を行っているのだ。
古めかしいカメラを携えながら、被写体へと真っ直ぐ向けている
深夜の仄暗い森の中、動物一匹存在しないはずの森の中で何を撮影しているのか?
それは―――


「『現場の写真』、撮影完了っ」


被写体は、人間の死体。
傍にはデイパック、小柄な拳銃が転がっている。
デイパックの中身は回収されており、撮影直後に少女は小柄な拳銃も回収していた。
少女の足下で転がる死体の左胸、左肩、右腕の三か所に銃創が出来ているのが解る。
死因は『射殺』で間違いない。心臓を銃弾で撃ち抜かれたのだろう。
この死体の身元が「グイード・ミスタ」というスタンド使いのギャングであることを少女は知らない。

茶髪のツインテールの少女は、カメラを携えながらその死体を見下ろしていた。
彼女が手を下したと言うわけではない。あくまで発見した死体を『撮影』しただけ。
少女は鼻歌を歌いながら機嫌良く撮影を終える。
撮影に使っていたカメラは紐で首にかけたままだ。
『新聞記者』にとってカメラは命。これが無ければ記事を書くどころか取材も出来ない。
故にカメラは常に携えたまま。新聞記者である彼女からすれば当然のこと。

506W.O.D-WRITE OR DIE!- ◆n4C8df9rq6:2013/08/19(月) 02:42:24 ID:RYFEFZSg0

「さてさて…今回のネタは、とんでもないスクープになりそうね…!」


彼女の名は「姫海棠はたて」。
新聞『花果子念報』を発行する、鴉天狗の新聞記者。
同業者であり、同じく鴉天狗である射命丸文をライバル視する少女。
とはいえ、はたての新聞は文からも「弱小新聞」と称される程度のもの。
彼女は能力である「念写」を利用することによって現場に赴かずして写真を撮影することが可能だ。
しかし念写に必要なものは「キーワード」。彼女自身にとって全く未知の出来事を撮影することは出来ない。
つまるところ、彼女の認識のうちに存在するものしか撮影できないのだ。
故に彼女の記事はどこかで聞いたことのあるようなネタしか扱わない、新鮮味の欠ける新聞となってしまっているのだ。

はたては、ライバルである文を調査することでようやく「自らの足で現場に赴き、取材すること」の重要性を知ったばかり。
彼女は改めて記者としてスタートを切り始めていたのだ。
そんな矢先に、この殺し合いのゲームに巻き込まれてしまった。

だが、彼女にとってそれは決して不幸なことではない。
はたてはこの殺し合いを「大スクープ」と捉えたからだ。

たった二人の首謀者が巻き起こした最悪の異変。
総勢90名もの参加者を集めたルール無用の殺し合い。

―――最高に刺激的なネタになること間違いなし!

殺し合いに巻き込まれたことはむしろ幸運だ。この殺し合いを自分の目で目撃し、取材することが出来るんだから。
開始直後、はたては魔法の森の内部をうろうろと彷徨っていた。
暫く歩き続けていた時、どこからか乾いた銃声が聞こえてきたのだ。
それはこちらへ仕掛けられた襲撃ではない。もっと離れた方向から聞こえる音だった。そう、恐らく遠くで参加者同士が交戦している。

はたてはその時咄嗟に能力である『念写』を行い、付近にいる「人物」をイメージして撮影したのだ。

念写した写真を見た所、「二人の男が銃を構えて物々しく対峙している様子」が映し出されていた。
彼女はすぐさまスクープの予感を感じ取り、銃声が聞こえた方向へと駆け付けたのだ。
そうしてみると…死体を発見できた。先程念写で撮影出来た男二人のうちの片方だ。
生憎もう一人の男は見つけ出せなかったが、まぁ今は良いとしよう。
肝心なのは、殺し合いは既に始まっているということ。彼女は早速事件を掴めたのだ。
この殺し合いがドッキリなんかじゃなく、本物だと言うことがすぐに証明出来た。
最高のネタは、決してデタラメなんかじゃなかったのだ。

507W.O.D-WRITE OR DIE!- ◆n4C8df9rq6:2013/08/19(月) 02:42:58 ID:RYFEFZSg0

ならばやることは一つ。このゲームを徹底的に『取材』する!
そして文の奴の「文々。新聞」を出し抜く程の記事を書く!

人間や妖怪の生き様を。凄惨な争いを。殺し合いの有りのままの真実を。
この目と記憶に焼き付け、このカメラに収め、「花果子念報」の記事にするのだ。
衝撃的な写真も含めた最高にスパイシーなネタ。そしてこの私の推敲を重ねた詳細な記事。まさに完璧な組み合わせだ。
それだけではなく、自ら参加者を煽ってゲームを加速させるのも面白いかもしれない。
虚偽を交えた情報を流したり、殺し合いを促したりして更なる争いを生み出す。
そうすれば記事に使えるネタがどんどん生まれていくことになる。
派手な祭りこそが人の目を惹き付ける。事件は盛大になる方が良い。当然のことよ。
あいつから学んだことだけど、時にはこーゆう強引さも必要なのだ。

勿論、死なないように立ち回ることも大切だけどね。
それに―――

(…あんたの新聞記事と勝負がしたいんだからね、私は。)

脳裏に思い浮かべるのは、自身の記者としてのライバルである「射命丸文」の姿。
支給品が「射命丸文のカメラ」だったのは何の因果か。
はたては彼女の取材に影響され、自らの足で現場に赴くようになった。
ある意味、彼女に取材の何たるかを教えて貰ったようなものでもある。
それに、ライバルとはいえ―――決して嫌っているわけではない。
あいつの記事には不思議な魅力があることも認めている。そんなあいつの記事に勝ちたいと私は確かに思っていたのだ。

(死んだら承知しないわよ、文)

だからこそ、私はあいつに死んでほしいとは思わない。
私は文の記事と勝負したいのだから。同業者と競い合ってこその新聞記者。
死んだら、許さないんだから。
ただ、あいつは強いことは解っている。そう簡単に死ぬタマでもないことも。
故に彼女を捜すようなことはするつもりはなかった。
あいつなら一人でも生き残れるし、ひょっとしたら上手く立ち回ってちゃっかり会場からの脱出手段を見つけてたりするかもしれない。
…まぁ、それは流石に買い被り過ぎかもしれないけど。
とにかく、そう易々と死なないであろう文を捜すつもりは今の所無かった。今は取材を優先だ!

508W.O.D-WRITE OR DIE!- ◆n4C8df9rq6:2013/08/19(月) 02:44:36 ID:RYFEFZSg0

彼女の瞳は、期待と自信に満ちていた。
これから世紀の特ダネを取材出来ると思うと、胸の高鳴りが抑えられなかった。
私はこの最高のネタで徹底的に記事を書いてやる。おちおち死ぬつもりなんて無い。


―――記事を書かずに、死ねるか!


「さあ、姫海棠はたてによる『ゲームの徹底取材』! 始めましょうかっ!」


新聞記者は意気揚々とその場から駆け出す。
彼女は記事の為に殺し合いを促すことでさえ躊躇いを持たなかった。
とにかく目標は「特ダネを掴むこと」、そして「生きて文以上の新聞を書くこと」。
久方ぶりに記者魂を燃やす彼女の行く末は、どうなることか。



【B-4 魔法の森/深夜】

【姫海棠はたて@ダブルスポイラー】
[状態]:健康
[装備]:射命丸文のカメラ@東方文花帖、ダブルデリンジャー(2/2)@現実
[道具]:花果子念報@ダブルスポイラー、予備弾薬(7発)、基本支給品×2
[思考・状況]
基本行動方針:『ゲーム』を徹底取材し、文々。新聞を出し抜く程の新聞記事を執筆する。
1:記事のネタを掴むべく奔走する。
2:使えそうな参加者は扇動。それで争いが起これば美味しいネタになる。
3:死なないように上手く立ち回る。生き残れなきゃ記事書けない。
4:文の奴には死んでほしくない。でも、あいつは強いからきっと大丈夫。
[備考]
※参戦時期はダブルスポイラー以降です。
※念写は可能ですが、どの程度制限がかかっているかは不明です。
※ミスタの基本支給品及びランダムアイテム「花果子念報@ダブルスポイラー」「ダブルデリンジャー@現実」を回収しました。
※彼女がどこへ向かうかは未定です。


<射命丸文のカメラ@東方文花帖>
姫海棠はたてに支給。
鴉天狗のブン屋である射命丸文が取材に用いるカメラ。
撮影した範囲の弾幕を消滅させることが可能。

509 ◆n4C8df9rq6:2013/08/19(月) 02:46:07 ID:RYFEFZSg0
投下終了です。
指摘やツッコミ、及び感想があればよろしくお願いします。

510 ◆YF//rpC0lk:2013/08/19(月) 20:11:39 ID:qKaS5IM.0
遅れながら乙です。

>虚偽を交えた情報を流したり、殺し合いを促したりして更なる争いを生み出す。
>そうすれば記事に使えるネタがどんどん生まれていくことになる。

はたてちゃんそれジョジョキャラのいる世界でやったらすごく危ない(邪悪的な意味で)
このままいくとどこかで色々洩らしながら死にそうな気がする

それと一つ疑問なのですが、はたての念写は基本的にキーワードが必要だったと思うのですが
(必ずしも入力は必要でなく思い浮かべるだけでいいらしい)
普段使っている彼女の携帯型カメラ以外でもいけるものなのでしょうか?

511 ◆n4C8df9rq6:2013/08/19(月) 21:13:56 ID:RYFEFZSg0
指摘ありがとうございます。
再確認した所、はたての能力の解釈を誤っておりました…

はたての支給品を「姫海棠はたてのカメラ@ダブルスポイラー」に変更お願いします
それと、>>507
>支給品が「射命丸文のカメラ」だったのは何の因果か。
の部分の削除をお願いします…

512 ◆BYQTTBZ5rg:2013/08/19(月) 22:11:10 ID:gyFDplbg0
八雲紫と書き手枠でズィー・ズィー(運命の車輪の人)を予約します

513 ◆YF//rpC0lk:2013/08/19(月) 22:32:40 ID:qKaS5IM.0
ズィー・ズィーだと……
今確認してきたけど、コイツジョジョロワ1〜3のどれにも出てないじゃないか……
意外すぎるぜ

514 ◆n4C8df9rq6:2013/08/19(月) 22:34:41 ID:RYFEFZSg0
>ズィー・ズィー
予想斜め上の変化球…!?

515 ◆.OuhWp0KOo:2013/08/19(月) 22:39:51 ID:Ty.f9mNU0
ズィー・ズィーって、
「勝った!第3部完!!」
のあの人!?

516名無しさん:2013/08/20(火) 23:46:02 ID:9U1s5F7Q0
ところで、
書き手枠を除くと
東方キャラ:ジョジョキャラ=43:35
で、東方キャラの方が多いのな
ジョジョキャラは殺しても死にそうにない奴が多いとか、その辺の配慮かな?

517名無しさん:2013/08/21(水) 00:03:31 ID:j.808Okc0
一作品5人で収めたかったこともあるのかもしれないけど
東方は作品7つの他にも主役勢や単独キャラとかが【その他】に何人かいるからなぁ
さりげなく花映塚が入ってないのは流石に人数が増え過ぎるからだろうか…

518 ◆WjyuuPGo0M:2013/08/21(水) 13:16:01 ID:fg9ASFxI0
河城にとり、フー・ファイターズを投下します。

519 ◆WjyuuPGo0M:2013/08/21(水) 13:17:01 ID:fg9ASFxI0


荒木と太田に魔の手によって始まった殺し合いの舞台C−3地点、霧の湖。
その北方、ジョースター邸よりやや離れた川沿いに、一人の少女が川面を横目で見ながら
霧の湖を目指して走っていた。
少女はかなり小柄で青色の髪と瞳、機械整備士の作業着に似た服を着ていた。
少女の名は河城にとり。
殺し合いの参加者にして、河童という人ならぬ水棲妖怪だ。

「周囲に誰もいないよな」

にとりは湖から2メートル離れた所で立ち止まると、息を荒げながらそう呟いた。
彼女は地面に胡座をかきつつ、ポケットの中から『エニグマの紙』があるのを確認する。
幻想郷でもそう見られない『エニグマの紙』の容量に軽く驚きながらも1枚目を確認する。


「……ちっくしょー」


基本支給品。荒木の説明通り全て揃っていたものの、通背が無かったのに彼女は落胆する。
通背とはかなり大きめなリュックといった外見だが、リュックと違って入れ物以外の用途があり、
多くの場合河童の高い機械技術を詰め込んだ武器でもある。
殺し合いの説明に準すれば没収されて然るべきなのだが、当然にとりの心中は穏やかでは無い。
基本的に河童の身体能力は陸上においては人間並みで、独自の道具を使わなければ妖怪の中でも弱い部類だ。
にとり自身、最近の異変に大きく関わったこともあり、戦闘経験は十分にあるが、鬼や神や天狗といった
強い種族とやり合うと思うと勝機はゼロに等しく感じられた。


「あー、服も光学迷彩仕様じゃ無くなってるじゃないか」

服を引っ張ったりして、姿を消せる便利な装備でない事もにとりは確認する。
今着てる服は河童製の服だが、特に何の力も無いものだ。
通背を留める鍵型の留め金の付いたバンドは残されていたが、別に利点にはならない。
心細さを抱えながら、なおもにとりはポケットを探って『エニグマの紙』を探す。
そしてさらに紙を見つけた。

「……二つか」

基本支給品以外の紙は二枚。
せめて河童製のアイテムであるのを祈りつつ早速にとりは紙を開けた。
ゴトッと重い物が落ちる音がした。
にとりはすぐにランダムアイテムとその説明書を拾って見ると、軽い驚きで目を見開いた。

520 ◆WjyuuPGo0M:2013/08/21(水) 13:18:58 ID:fg9ASFxI0

「うお……これって」

それは彼女の、河童の商売において何度か協力している人間の愛用品だった。
そんなの使えるかとしばし憤慨したが、説明書を読むにつれ興味に口をゆがませた。
そんな時だった、前方から水しぶきが上がったのは。
にとりは慌ててランダムアイテムと説明書を懐に仕舞った。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


気が付けば霧が立ちこめる湖の浅瀬にフー・ファイターズと呼ばれる存在はいた。
フー・ファイターズもまた多くの参加者と同様に殺し合いの舞台に転移させられ、
状況をある程度でも把握した上で支給品を確認し、今後の方針について考えを巡らせた。
フー・ファイターズは覚えている。
気を失う前の、荒木と太田という男から殺し合いの催促と説明をされた事を。
その前の事も覚えている、の二人の女性と戦っていた時の事を。

フー・ファイターズは会場に連れてこられる前、二人の女性に追い詰められ、頭だけの状態になっていた。
今は五体満足だが、それで気が晴れるわけでは無い。命が惜しいのとは少し違う。
自らを生み出したスタンド『ホワイトスネイク』から警備を任された20枚を超えるスタンドDISCが無かったからだ。
フー・ファイターズはホワイトスネイクによって生成された、スタンドDISCと記憶DISCによって、
自我と知性とスタンド能力を与えられた微生物の集合体である。
フー・ファイターズにとって、それらのDISCは自らの存在の証でもあった。
なので支給品を全部確認するまでは、焦っていた。
だが、すぐ側に浮いていた、エニグマの紙入りビニール袋を認めると
丁寧に慎重に中身を確認し、ひとまず安堵した。
最悪でも優勝さえすればDISCを全て取り戻せると希望を抱けたのだから。
さっきまで戦っていた二人の女性――空条徐倫とエルメェス・コステロも参加者で選ばれた以上何の不足もない。
しかし同時に困惑したこともあった。
何故、基本支給品の紙に、ランダム支給品としても不自然な物体が入っているのか。
フー・ファイターズは『それ』をどう扱おうか考えていたが、すぐに必要無いことだと判断し、
『それ』を紙に戻した。
とりあえずフー・ファイターズは紙をビニールに再び入れ、湖の近くに隠した。
そして湖に潜み、参加者を待ち伏せ仕様とした矢先、偶然視界に小柄な人影を見つけた。

521 ◆WjyuuPGo0M:2013/08/21(水) 13:20:05 ID:fg9ASFxI0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

水面から突き出た二本の黒い腕はにとり掴もうと迫っていた。
だが早く反応したにとりは後ろに飛んで距離を取る。
腕の動きが止まった。

「どういうつもりだよ!」

ドスの効いた声で威嚇するにとり。
しかし腕は動きを止めたまま反応は無い。
にとりは視線をそらさず両手を前にかざす。
妖力によって弾幕を射出する準備だ。

突如、両腕が伸び、しなるように縦に風を切る。
当たりこそしなかったが、にとりは水色に輝くエネルギー弾を4発弾かれたように撃つ。
いずれの弾も当たらない。そして黒い両腕は何とぽとりと腕だけ地面に落ちた。
狙いを付けようとしていた、にとりの表情が軽い困惑に変わる。隙ができた。
次の瞬間、大きな水しぶきが上がり、黒い大きな人型が速い速度でにとりに迫る。

「ひっ」

悲鳴を上げながら、横っ飛びにタックルをにとりは回避する。身体の前面が地面に落ちる。
強い風と死の匂いを感じた。
視界の橋に入ったのはにとりが見た事のない、出目金の様な顔をした黒っぽい人形。
河童から見ても明かな異形。
にとりは身体を震わせながらも慌てて身を起こす。もう一度、攻撃されれば回避する自信は無い。
あのスピードだと力も強いかも知れない。通背がない今、掴まればアウトと彼女は恐怖を押し殺し攻撃を即断。
そして土埃に構わず最速かつ全力の、十を軽く超える数の弾の通常弾幕を射出する。
それは幻想郷で奨励される決闘法『弾幕ごっこ』を度外視した、いわゆる美しくない弾幕。
今のにとりには余裕が無い。だが、それだけに、あくまでそれなりの速度と威力はある攻撃。
それに対し、『異形』は慌てる様子もなく高速度のパンチの連打で、弾幕を破壊しようとする。
だが――

「ギャアアアアアーーーーーー!」

十を超える小規模の発光と炸裂音と共に『異形』の両腕は黒い粉をまき散らしながら半壊し、
顔と胴体にも傷を負う。

522 ◆WjyuuPGo0M:2013/08/21(水) 13:21:08 ID:fg9ASFxI0

「よっし!!」

にとりは笑みを浮かべて下がり距離を取った。
実体のある弾幕と勘違いしたんだろう、そうにとりは解釈した。
にとりは弾幕に水や発明品の攻撃を取り混ぜる事があるが、基本的に弾幕は低威力ながら実体のないエネルギー体。
単純な(実は今のはあまり単純では無いが)物理攻撃で払いのけられるものではない。
にとりは弾幕で追撃をかけようとせず、ランダム支給品を取り出し、使用する準備を始める。
弾幕では相手を倒しきる確信が持てないからだ。

「ん?」

『異形』の背後でさっきより大きな水しぶきの音がした。
水の塊が異形に掛かる。

「フーフォアアアアァァァ!」

『異形』の傷ついた箇所が瞬時に復元する、次に姿が歪んだようににとりには見えた。

「ぐはっ……!」

『異形』の高速の体当たりをまともに食らって、にとりは吹っ飛ぶ。
頭を打ち付け、頭痛と共に吐き気も催す。足音が迫る。
『異形』の身体から同じ色の触手のようなものが生えた。

「うわ……あ……」

『異形』が両腕を広げ、にとりに掴みかかろうとした時……

「……!」

前触れも無く『異形』の指先が崩れた。

「フーフォ……?」

『異形』が足を踏み出す、踏み出した足先が崩れた。

「フォ……フォッ!??」

523 ◆WjyuuPGo0M:2013/08/21(水) 13:22:05 ID:fg9ASFxI0

「何だこりゃあ?」

にとりはじりじりと後ろに下がりながら、再びアイテムをかざす。
『異形』は視線をあちこちに向けながら何もできないでいる。
にとりはアイテムの照準を合わせる。
『異形』は顔を止めた。視線の先には大きな石。
それと同時にアイテムは発動した。

「ギャアアアアァアアーーーーーースッ」

『異形』の上半身へ放たれた炎はすぐさま着火し、瞬く間に全身に燃え広がる。


にとりは油断無く、黒色六角形の物体『ミニ八卦炉』を構えながら、徐々に後退する。
水しぶきの音がした。
それに構わず、ミニ八卦炉から帯状の炎がさらに『異形』へと放たれる。

「……ッ、……ッ」

炎にまかれ『異形』の形が崩れ、縮み消えてゆく。
『異形』の背後にあった物体も、動きを止めている。

「……」

にとりはしばし足早に後退していたが、踵を返し全力で逃げた。
何かが一つ、顔の横を通り過ぎたが、構わず逃走に専念した。
もう一体の『異形』は追ってこなかった。

524 ◆WjyuuPGo0M:2013/08/21(水) 13:23:30 ID:fg9ASFxI0

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

フー・ファイターズは微生物の集合体。
水分さえあれば、ほぼ本能のみで動く存在だが、自立行動ができる分身を作り出すことができる。
スタンドの力を持った新生物といっていい存在で、分身を使役するのに距離に影響は受けない。
だが、ここでは……

「これが制限か……」

己の分身の燃えカスを遠目に見ながら、分身と比べて端整な顔立ちの
フー・ファイターズの本体は冷静に自身と戦闘の分析を行っていた。

「本体であるわたしから5メートル離れた途端、分身が崩れ始めた。
 本来ならあり得ない。そして……」

深く息を吐くように胸を上下させる。
水分は十分補給しているのに、何故か少し身体が鈍い。

「これは疲労……か」

制限は二つ、分身の有効射程距離の縮小、そして増殖による疲労。

「参ったな、最初の時はむしろ調子がいいと思えたのだが」

フー・ファイターズは、DISC所持の確認と肉体の乗っ取りの為、
あの青色服の少女――河城にとりを分身に襲撃させたのだ。
痛めつけて動きが鈍くなってから乗っ取る算段だった。


「……仕方がない。『アレ』を使うか」

フー・ファイターズの支給品の一つはフー・ファイターズが何年も守ってきた、
20枚以上のスタンドDISCの一部。
説明書が付いていて、それにはスタンドDISCセット2のタイトルと、
『このDISCを差しても、スタンドは使えません。外れです。
 ただし全部集めると良いことがあるかもね』の記述があった。

正直勝手に没収されて、不快な気持ちがあるが、元々あの徐倫達に敗れかけていた事を
思うとある程度許容できる。
奪還する意欲が湧くというものだ。

525 ◆WjyuuPGo0M:2013/08/21(水) 13:24:41 ID:fg9ASFxI0

そして『アレ』というのは、二つ目のランダム支給品であるだろう若い女性の遺体だ。
フー・ファイターズ自身一応知っている顔だったが、どういうつもりで支給品にしたのか見当が付かなかった。
殺人者という誤解を招く為か?
それなら遺体を修復(どうやったのか見当が付かないが)する必要など無いと思うのだが。
そう疑問に思いながらフー・ファイターズは湖に身を躍らせる。
支給品を取りに行く為に。

水分が多量に補給されなければ肉体を維持できないという
元からの弱点を補う方法、生物の遺体に寄生する手段を取る為に。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

河城にとりは妖怪の山の麓にある玄武の沢を目指し、川沿いに歩く。
目指すはあるかも知れない河童のアジト。
にとりは殺し合いの舞台が幻想郷そのものとは思っていない。
ただ、わざわざ幻想郷に実在する施設を同名のものを用意するという事は、
ある程度でも似せようとしているからだと推測している。
支給品に相当するアイテムは無くとも、工具や製造機械があるかも知れないという
淡い期待を抱いての進路だ。
本人も多少は自覚しているのだが、当てが無い状況だった。
だが絶望はしていない。
さっきの異形が襲撃してきても切り抜ける自信が出たからだ。
にとりのもう一つの支給品、銀の円盤らしきもの――F・Fの記憶DISCから情報を得て。
参加者の中には外の世界らしき男が何人もいたのをにとりは覚えていた。
ほとんどが妖怪の獲物として人知れず消えていくが、会場にいた連中は見るからにただ者には見えなかった。
その中には記憶DISCにいた人間も入っているだろう。
得た情報を上手く活用できれば利用できる人材も得られるかも知れない。
そう彼女は思っていた。
河城にとりは進む。参加者の中に真に親しい者がいなくとも。

526 ◆WjyuuPGo0M:2013/08/21(水) 13:25:27 ID:fg9ASFxI0

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【C-3 霧の湖内/深夜】

【フー・ファイターズ@【第6部 ストーンオーシャン】
[状態]:プランクトン集合体(むき出し)、疲労(小)
[装備]:なし(本体のスタンドDISCと記憶DISC)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:守っていたスタンドDISCを全部集める。殺害も辞さない。       
1:水中に隠した基本支給品とランダム支給品を取りに行く。
  それから支給品『エートロの遺体』に寄生する。
2:DISC回収の為、隙のある参加者を中心に襲撃する。
3:空条徐倫とエルメェスと遭遇すれば決着を付ける。
[備考]
※ 基本支給品とランダム支給品は比較的浅い湖の底に隠しています
※隠しているランダム支給品は『スタンドDISCセット2』と
 『エートロの遺体』と、もう一つは確認済の不明支給品です。
※参戦時期は徐倫に水を掛けられる直前です。
※能力制限は現状、分身は本体から5メートル以上離れられないのと
 プランクトンの大量増殖は水とは、別に体力を消耗ありです



【D-3 廃洋館付近/深夜】

【河城にとり@東方風神録】
[状態]:疲労(小)、精神的疲労(小)
[装備]:ミニ八卦炉
[道具]:基本支給品 、F・Fの記憶DISC(最終版)
[思考・状況]
基本行動方針:生存最優先     
1:自分から殺し合いはしないが、危険が減るなら殺害も視野に
2:知人や利用できそうな参加者がいればある程度は協力する
3:通背を初めとする河童製のアイテムがほしい
[備考]
※参戦時期は東方心綺楼にとりルートエンド以降です。
※F・Fの記憶DISC(最終版)を一度読みました。
 スタンド『フー・ファイターズ』の性質をある程度把握しました。
 他にどれだけ情報を得たのかは後の書き手さんにお任せします。

527 ◆WjyuuPGo0M:2013/08/21(水) 13:26:44 ID:fg9ASFxI0

<ミニ八卦炉>
河城にとりに支給。
元の所持者は霧雨魔理沙。
森近霖之助が作成した小型のマジックアイテムで、簡易型の火炎放射器として使用が可能
最大威力は山一つを焼き払うことさえ可能。でもこのロワでは制限されている。
魔理沙がマスタースパークを使う際にはこれが使用されている。
冷房やお守りなど昨日は多種多様。材質は錆びない上に頑丈。
このロワでは使用者の体力を消耗することによって、火炎放射器としての使用が可能。
威力の調整もできるが、威力を上げると体力を大きく消耗する。
魔理沙など魔法使いが利用すれば、威力は元のに近づき体力の消費も少なくなる。
説明書付き。

<F・Fの記憶DISC(最終版)>
河城にとりに支給。
プッチ神父に殺され奪われたF・Fの記憶DISC。
プッチ神父が化けた偽ウェザーに襲撃されるまでの記憶が入っている。

<スタンドDISCセット2(はずれ)>
フー・ファイターズに支給。
フー・ファイターズがエートロの遺体に寄生する前から守っていたスタンドDISC5枚。
プッチ神父が殺害したスタンド使いから回収したもの(数えてみたら全部で23枚あった)。
ただし参加者の誰が使用してもスタンド能力は利用できない仕様。
全部集めた人には何か良いことが(荒木談)

<エートロの遺体>
フー・ファイターズに支給。
ストーンオーシャン本編に置いて、徐倫らと交戦した後のF・Fの寄生した女囚の遺体。
本編では手首と顔が損傷していたが、このロワでは復元した上で支給されている。

528 ◆WjyuuPGo0M:2013/08/21(水) 13:34:50 ID:fg9ASFxI0
投下終了です。
タイトルは 水妖 です。
ご意見、感想、特に突っ込み所が多々ありそうではありますが、ありましたらよろしくお願いします。


今回のはてたを見てるとプロシュート兄貴がまっとうに見える不思議。
早苗は何だかんだで想定外のハプニングには弱そうだなあ。
あとジョ二ィもげろ。

529名無しさん:2013/08/21(水) 13:48:34 ID:FsxSMTxs0
水をかけられる『直前』とはまた困った時期から来ましたな

530名無しさん:2013/08/21(水) 15:37:15 ID:j.808Okc0
投下乙!
今後の伏線になりそうな支給品が登場か
肉ポルといいウェザーといいジョジョ勢は参戦時期が変化球のキャラが多いw
にとりも生存優先の方針だし、どちらも危険そうだなぁ…

531名無しさん:2013/08/21(水) 19:17:29 ID:nRBpC.7o0
初期FFに肉ポルとどことなく3rdを思わせる参戦時期だな
人間ブラフォードの出番か?

532名無しさん:2013/08/21(水) 19:49:52 ID:ofvdT8ao0
私の解釈が間違ってたら申し訳ないんだけども
>>66でランダム支給品は東方もしくはジョジョのアイテム一つ+現実のアイテム一つだけだと言われているのですが……

533 ◆WjyuuPGo0M:2013/08/21(水) 21:09:40 ID:P.I5Ya.2O
>>532
ご指摘どうもです。
明日に支給品の一部と展開を少し変えた修正版を投下します。

534名無しさん:2013/08/21(水) 22:22:59 ID:nRBpC.7o0
しかし意味不明なルールだよな

535名無しさん:2013/08/21(水) 23:03:32 ID:1yXvBE060
>>534
アンチは帰って、どうぞ

536名無しさん:2013/08/21(水) 23:16:54 ID:j.808Okc0
まぁ実際東方ジョジョ現実問わずランダムアイテム1〜3個までくらいでも良かったんじゃないの感は確かになくもない
もう話が結構進んでいる以上このままでいいと思うけどね

537 ◆WjyuuPGo0M:2013/08/22(木) 12:49:11 ID:wha9GGsU0
『水妖』修正稿投下します。

538水妖(修正稿) ◆WjyuuPGo0M:2013/08/22(木) 12:50:54 ID:wha9GGsU0

 
荒木と太田に魔の手によって始まった殺し合いの舞台C−3地点、霧の湖。
その北方、ジョースター邸よりやや離れた川沿いに、一人の少女が川面を横目で見ながら
霧の湖を目指して走っていた。
少女はかなり小柄で青色の短めのツインテールと瞳、機械整備士の作業着に似た服を着ていた。
少女の名は河城にとり。
殺し合いの参加者にして、河童という人ならぬ水棲妖怪だ。

「周囲に誰もいないよな」

にとりは湖から2メートル離れた所で立ち止まると、息を荒げながらそう呟いた。
彼女は地面に胡座をかきつつ、ポケットの中から『エニグマの紙』があるのを確認する。
紙を開封し、その中身の量に軽く驚きながらも、通背が無かったのに彼女は落胆する。

「……ちっくしょー」

通背とはかなり大きめなリュックサックといった外見だが、リュックと違って入れ物以外の用途があり、
多くの場合河童の高い機械技術を詰め込んだ武器でもある。
殺し合いの説明に準すれば没収されて然るべきなのだが、当然にとりの心中は穏やかでは無い。
基本的に河童の身体能力は陸上においては人間並みで、独自の道具を使わなければ妖怪の中でも弱い部類だ。
にとり自身、最近の異変に大きく関わったこともあり、戦闘経験は十分にあるが、
これから先、鬼や神や天狗といった強い種族とやり合うと可能性があると思うと
生還は至難の業と感じられた。

「あー、服も光学迷彩仕様じゃ無くなっているじゃないか」

服を引っ張ったりして、姿を消せる便利な装備でない事もにとりは確認する。
今、彼女が着ている服は河童製の服だが、特に何の力も無いものだ。
通背を留める鍵型の留め金の付いたバンドは残されていたが、別に利点にはならない。
心細さを抱えながら、なおもにとりはポケットを探って『エニグマの紙』を探す。
そしてさらに紙を見つけた。

「……二つか」

基本支給品以外の紙は二枚。
せめて河童製のアイテムであるのを祈りつつ早速にとりは紙を開けた。
ゴトッと重い物が落ちる音がした。
にとりはすぐにランダムアイテムとその説明書を拾って見ると、軽い驚きで目を見開いた。

539水妖(修正稿) ◆WjyuuPGo0M:2013/08/22(木) 12:51:28 ID:wha9GGsU0

「うお……これって」
 
それは幻想郷の外にある武器、それも近代に制作されたものだった。
説明書を読むにつれにとりは興味に口をゆがませる。
そんな時だった、前方から水しぶきが上がったのは。
にとりは慌ててランダムアイテムと説明書をエニグマの紙に仕舞った。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


気が付けば霧が立ちこめる湖の浅瀬にフー・ファイターズと呼ばれる存在はいた。
フー・ファイターズもまた多くの参加者と同様に殺し合いの舞台に転移させられ、
状況をある程度でも把握した上で支給品を確認し、今後の方針について考えを巡らせた。
フー・ファイターズは覚えている。
気を失う前の、荒木と太田という男から殺し合いの催促と説明をされた事を。
その前の事も覚えている、の二人の女性と戦っていた時の事を。

フー・ファイターズは会場に連れてこられる前、二人の女性に追い詰められ、頭だけの状態になっていた。
今は五体満足だが、それで気が晴れるわけでは無い。命が惜しいのとは少し違う。
自らを生み出したスタンド『ホワイトスネイク』から警備を任された20枚を超えるスタンドDISCが無かったからだ。

フー・ファイターズはホワイトスネイクによって生成された、スタンドDISCと記憶DISCによって、
自我と知性とスタンド能力を与えられた微生物の集合体である。
フー・ファイターズにとって、それらのスタンドDISCは自らの存在の証でもあり意義でもあった。
生物学上、プランクトンに高い知性と自我はない。集合したとして何も変わらない。
それ故に人と変わらない知性を与えてくれたDISCに強い愛着をも持っていた。
だから所持品を全て没収されたと聞かされた時は
(会場に連れてこられる直前にエルメェスに持ち去られようとしていたが)焦っていた。

だが、すぐ側に浮いていた、エニグマの紙入りビニール袋を認めると、丁寧に慎重に中身を確認し、
ひとまず安堵した。
全てではないが、ランダム支給品は自分が守護していたスタンドDISK八枚だったからだ。
説明書もついておりそれによれば、他のスタンドDISCもランダム支給品として、
他の参加者も所持しているというではないか。
つまり最悪でも優勝さえすればスタンドDISCを全て取り戻せる。そう、希望を抱けたのだ。
正直、勝手に没収されて、不快な気持ちもあるが、元々あの徐倫達に敗れかけていた事を
考えるとある程度許容できる。
より一層、奪還する意欲が湧くというものだ。

540水妖(修正稿) ◆WjyuuPGo0M:2013/08/22(木) 12:53:48 ID:wha9GGsU0
 
参加者名簿を見る限り知った名は、さっきまで戦っていた(はずの)二人の女性――空条徐倫とエルメェス・コステロのみ。
そもそも敵同士で殺害に抵抗はない。
しかし同時に困惑したこともあった。
それはランダム支給品の説明書にスタンドDISCとは関係ない、荒木と名乗る男のメッセージが
書かれていたからだ。
意味の無い言葉の羅列ではないし、フー・ファイターズにとっても参加者にとっても
有益になると取れる内容だが、意図が読めなかった。

フー・ファイターズはとりあえず結論を後回しにし、支給品をエニグマの紙に仕舞った。
紙をビニールに再び入れ、湖の近くに隠す。
そして湖に潜み、参加者を待ち伏せしようとした矢先、偶然視界に小柄な人影を見つけた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

水面から突き出た二本の黒い腕はにとり掴もうと迫っていた。
だが早く反応したにとりは後ろに飛んで距離を取た。
腕の動きが止まった。

「何のつもりだよ!」

ドスの効いた声で威嚇するにとり。
しかし腕は動きを止めたまま反応は無い。
にとりは視線をそらさず両手を前にかざす。
妖力によって弾幕を射出する準備だ。

突如、両腕が伸び、しなるようににとりへ迫る。
にとりは更に後方へ跳んで回避し、水色に輝くエネルギー弾を4発弾かれたように撃つ。
狙いを定めなかったからか、いずれの弾も当たらない。
そして黒い両腕は何とぽとりと腕だけ地面に落ちる。
狙いを付けようとしていた、にとりの表情が軽い困惑に変わる。隙ができた。
次の瞬間、大きな水しぶきが上がり、黒い大きな人型が現れ、高速度でにとりに迫る。

「ひっ」

悲鳴を上げながら、横っ飛びにタックルをにとりは回避する。身体の前面が地面に落ちる。
強い風と死の匂いを感じた。
視界の橋に入ったのはにとりが見た事のない、出目金の様な顔をした黒っぽい細い人形。
河童から見ても明かな異形だった。

541水妖(修正稿) ◆WjyuuPGo0M:2013/08/22(木) 12:56:26 ID:wha9GGsU0
 
にとりは恐怖に身体を震わせながらも慌てて身を起こす。もう一度、攻撃されれば回避する自信は無い。
あのスピードだと力も強いかも知れない。通背がない今、掴まればアウトと彼女は恐怖を押し殺し攻撃を即断。
そして土埃に構わず最速かつ全力の、十を軽く超える数の弾の通常弾幕を射出する。

それは幻想郷で奨励される決闘法『弾幕ごっこ』を度外視した、いわゆる美しくない弾幕。
今のにとりには余裕が無い。だが、それだけに、あくまでそれなりの速度と威力はある攻撃。
それに対し、『異形』は慌てる様子もなく高速度のパンチの連打で、弾幕を破壊しようとする。
だが――

「ギャアアアアアーーーーーー!」

十を超える小規模の発光と炸裂音と共に『異形』の両腕は黒い粉をまき散らしながら半壊し、
顔と胴体にも傷を負う。

「よっし!!」

にとりは笑みを浮かべて下がり距離を取った。
実体のある弾幕と勘違いしたんだろう、そうにとりは解釈した。
にとりは弾幕に水や発明品の攻撃を取り混ぜる事があるが、基本的に弾幕は低威力ながら実体のないエネルギー体。
単純な(実は今のはあまり単純では無いが)物理攻撃で払いのけられるものではない。
にとりは弾幕で追撃をかけようとせず、ランダムアイテムが納められた紙を取り出し、使用する準備を始める。
弾幕では相手を倒しきれないと判断したからだ。
 
にとりは恐怖に身体を震わせながらも慌てて身を起こす。もう一度、攻撃されれば回避する自信は無い。
あのスピードだと力も強いかも知れない。通背がない今、掴まればアウトと彼女は恐怖を押し殺し攻撃を即断。
そして土埃に構わず最速かつ全力の、十を軽く超える数の弾の通常弾幕を射出する。

それは幻想郷で奨励される決闘法『弾幕ごっこ』を度外視した、いわゆる美しくない弾幕。
今のにとりには余裕が無い。だが、それだけに、あくまでそれなりの速度と威力はある攻撃。
それに対し、『異形』は慌てる様子もなく高速度のパンチの連打で、弾幕を破壊しようとする。
だが――

「ギャアアアアアーーーーーー!」

十を超える小規模の発光と炸裂音と共に『異形』の両腕は黒い粉をまき散らしながら半壊し、
顔と胴体にも傷を負う。

542水妖(修正稿) ◆WjyuuPGo0M:2013/08/22(木) 12:59:27 ID:wha9GGsU0
 
「よっし!!」

にとりは笑みを浮かべて下がり距離を取った。
実体のある弾幕と勘違いしたんだろう、そうにとりは解釈した。
にとりは弾幕に水や発明品の攻撃を取り混ぜる事があるが、基本的に弾幕は低威力ながら実体のないエネルギー体。
単純な(実は今のはあまり単純では無いが)物理攻撃で払いのけられるものではない。
にとりは弾幕で追撃をかけようとせず、ランダムアイテムが納められた紙を取り出し、使用する準備を始める。
弾幕では相手を倒しきれないと判断したからだ。
「うわ……あ……」

逃げようにも足も思うように動かない。
『異形』が両腕を広げ、にとりに掴みかかろうとする。
死の予感がにとりの顔色を白くさせる。そして……

「……!」

前触れも無く『異形』の指先が崩れた。

「フーフォ……?」

『異形』は困惑した様子でしばし崩れた指を眺めていたが、
気を取り直したかのように今度は右足を1歩踏み出す、踏み出した足先が崩れた。

「フォ……フォッ!??」
「何だこりゃあ!?」

にとりはじりじりと後ろに下がりながらエニグマの紙を手に取る。
『異形』は視線をあちこちに向けながら何もできないでいる。
その隙に調子を戻したにとりは、ランダムアイテムの入ったエニグマの紙を開封する。
出てきたのは携帯放射器。現代日本の自衛隊にも使用されている火炎放射器だ。
にとりは初めて使用するとは思えないほどの動きで、放射器の照準を『異形』へ合わせる。
『異形』は顔を止め、回避しようとする。
それと同時に放射器は発動した。

「ギャアアアアァアアーーーーーースッ」

『異形』の上半身へ放たれた炎はすぐさま着火し、瞬く間に全身に燃え広がる。

543水妖(修正稿) ◆WjyuuPGo0M:2013/08/22(木) 13:00:55 ID:wha9GGsU0
 
にとりは油断せず、火炎放射器を構えながら、徐々に後退する。
水しぶきの音がした。
それに構わず炎をさらに『異形』へと放つ。

「……ッ、……ッ」

炎にまかれ『異形』の形が崩れ、縮み消えてゆく。
『異形』の背後にあった物体も、動きを止めている。

「……」

にとりはしばし足早に後退していたが、踵を返し全力で逃げた。
何かが一つ、高速度で顔の横を通り過ぎたが、構わず逃走に専念した。
もう一体の『異形』は追ってこなかった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


フー・ファイターズは微生物の集合体。
水分さえあれば、ほぼ本能のみで動く存在だが、自立行動ができる分身を作り出すことができる。
スタンドの力を持った新生物といっていい存在で、分身を使役するのに距離に影響は受けない。
だが、ここでは……

「これが制限か……」

己の分身の燃えカスを遠目に見ながら、分身と比べて端整な顔立ちの
フー・ファイターズの本体は冷静に自身と戦闘の分析を行っていた。

「本体であるわたしから7メートル離れた途端、分身が崩れ始めた。
 本来ならあり得ない。そして……」

深く息を吐くように胸を上下させる。
水分は十分補給しているのに、何故か少し身体が鈍い。
水分を失ったのとは異なる、生物の身体に寄生し動かしていた時に僅かに覚えた感覚。

「これは疲労……か」

制限は二つ、分身の有効行動範囲の短縮、そして大増殖によるスタンドパワーの消耗。

544水妖(修正稿) ◆WjyuuPGo0M:2013/08/22(木) 13:03:06 ID:wha9GGsU0
 
 
「参ったな……」

フー・ファイターズは有機体――人間等の生物に寄生する能力を持っている。
フー・ファイターズはスタンドDISCの所持の有無の確認と肉体の乗っ取りの為、
あの青色服の少女――河城にとりを分身に襲撃させたのだ。
痛めつけて動きが鈍くなってから相手の肉体と精神を乗っ取る算段だった。
むき出しのプランクトン集合体のままでは、活動がかなり制限される。
水が無ければ増殖が不可能な上に、本体の維持も困難だ。
乾いた地面を歩くだけで徐々に足が崩れていくくらいだ。
このままでは殺し合いからの生還は非常に難しい。
だからこそ、あの少女の肉体がほしかったのだ。
生物の水分を使って自由に活動する為に。

「……墓場を目指すのも選択に入れた方がいいかもな」

ランダム支給品の説明書には支給品であるスタンドDISC八枚についての
『このDISCを頭に差しても、スタンド能力は使えません。外れです。
 ただし全部集めると良いことがあるかもね』などの説明文と
『墓場の墓をよ〜く調べると君達の……みんなじゃないけど、勝ち残りに有利なものが
 見つかるかもね』という、スタンドDISCとは関係の無い記述があった。
どういうつもりでランダム支給品にそういう事を書いたのか見当が付かなかった。
死体を操れるスタンド使いが複数参加しているのだろうか?
そう疑問に思いながら、フー・ファイターズは湖に身を躍らせた。

自らの支給品を取りに行くために。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


河城にとりは妖怪の山の麓にある玄武の沢を目指し、川沿いに歩く。
目指すはあるかも知れない河童のアジト。
にとりは殺し合いの舞台が幻想郷そのものとは思っていない。
ただ、わざわざ幻想郷に実在する施設を同名のものを用意するという事は、
ある程度でも元の幻想郷に似せようとしているからだと推測している。
支給品に相当するアイテムは無くとも、工具や製造機械があるかも知れないという
淡い期待を抱いての行動だ。
当てが無い状況だった。

545水妖(修正稿) ◆WjyuuPGo0M:2013/08/22(木) 13:04:53 ID:wha9GGsU0
 
だが絶望はしていない。

さっきの異形がまた襲撃してきても切り抜ける自信ができたからだ。
にとりのもう一つの支給品、銀の円盤らしきもの――F・Fの記憶DISCから
さっきの異形を初めとする外の世界の情報をいくつか得た。
会場にて参加者の中に外の世界らしき男が何人もいたのをにとりは覚えていた。
所謂幻想郷における外来人は、ほとんどが妖怪の獲物として人知れず消えていくが、
会場にいた連中は見るからにただ獲物にされるだけの弱者には見えなかった。
その中には記憶DISCにいた人間も混ざっているに違いない。
得た情報を上手く活用できれば、利用できる人材を得られるかも知れない。
そう彼女は思っていた。

河城にとりは進む。
参加者の中に真に親しい者がいなくても。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【C-3 霧の湖内/深夜】

【フー・ファイターズ@【第6部 ストーンオーシャン】
[状態]:プランクトン集合体(むき出し)、疲労(小)
[装備]:なし(本体のスタンドDISCと記憶DISC)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:スタンドDISCを全部集める。基本手段は選ばない。       
1:水中に隠した基本支給品とランダム支給品を取りに行く。
2:DISC回収と寄生先の遺体の確保の為、隙のある参加者を中心に襲撃する。
3:墓場を目指すか、あるいは……
4:空条徐倫とエルメェスと遭遇すれば決着を付ける。
[備考]
※ 基本支給品とランダム支給品は比較的浅い湖の底に隠しています
※隠しているランダム支給品は『ジャンクスタンドDISCセット2』と
 『不明支給品(現実)』です。
※参戦時期は徐倫に水を掛けられる直前です。
※能力制限は現状、分身は本体から5〜10メートル以上離れられないのと
 プランクトンの大量増殖は水とは別にスタンドパワーを消費します。

546水妖(修正稿) ◆WjyuuPGo0M:2013/08/22(木) 13:06:10 ID:wha9GGsU0
 
 
【D-3 廃洋館付近/深夜】

【河城にとり@東方風神録】
[状態]:疲労(小)、精神的疲労(小)、全身打撲(軽度)
[装備]:火炎放射器
[道具]:基本支給品 、F・Fの記憶DISC(最終版)
[思考・状況]
基本行動方針:生存最優先     
1:積極的に殺し合いはしないが
2:知人や利用できそうな参加者がいればある程度は協力する
3:通背を初めとする河童製のアイテムがほしい
[備考]
※参戦時期は東方心綺楼にとりルート終了後です。
※F・Fの記憶DISC(最終版)を一度読みました。
 スタンド『フー・ファイターズ』の性質をある程度把握しました。
 他にどれだけ情報を得たのかは後の書き手さんにお任せします。


<携帯(火炎)放射器・ロワ仕様>
河城にとりに支給。
現代、自衛隊で使用されているM2火炎放射器の改良型。
外見が従来の物とは少し異なるが、性能に大差は無い。
異能力はない。説明書付き。


<F・Fの記憶DISC(最終版)>
河城にとりに支給。
プッチ神父に殺され奪われたF・Fの記憶DISC。
プッチ神父が化けた偽ウェザーに襲撃されるまでの記憶が残っている。


<ジャンクスタンドDISCセット2>
フー・ファイターズに支給。
フー・ファイターズがエートロの遺体に寄生する前から守っていたスタンドDISC八枚。
プッチ神父がスタンド使いを殺害しながら生成したきたもの(数えてみたら全部で二十三枚あった)。
参加者の誰が使用してもスタンド能力は利用できない仕様。
説明書付き。
それぞれの説明書かスタンドDISC内に、主催者から参加者にとって
(ゲーム進行に置いて)有益な情報が一つ入っている。
このDISCセットには墓場についての情報が記載されている。
全部集めた人には何か良いことが(荒木談)

547 ◆WjyuuPGo0M:2013/08/22(木) 13:09:18 ID:wha9GGsU0
投下終了です。

>>546の 1:自分から殺し合いはしないが は

1:自分から殺し合いはしないが、危険が減るなら殺害も視野に

です。

548名無しさん:2013/08/22(木) 13:40:15 ID:rPVsY.Jk0
修正乙です
汚物を消毒する河童

549名無しさん:2013/08/22(木) 20:15:35 ID:/E7pWgMY0
霊夢「そうだな。汚物は消毒しないといけないな」
にとり「アッー!」

こうですか分かりません!

550 ◆BYQTTBZ5rg:2013/08/22(木) 21:34:29 ID:Q9hcLWiM0
投下します

551ドライヴに行きませんか? ◆BYQTTBZ5rg:2013/08/22(木) 21:35:33 ID:Q9hcLWiM0
「グチャグチャのミンチにして、その汚ねえ肉片をこの丘にバラ撒いてやるぜッ!!」


獰猛。その言葉を似つかわしくした車を、目の前で呆けたように立ちつくす女に向かって、猛スピードで向かわせた。
車のサイズはトラックに等しく、車体は鉄よりも堅く、タイヤに生えたスパイクは岩をも容易く貫く。
その固まりをアクセル全開でぶつけるのだ。それはまさしく死の導きに相応しい。


「な、なにィィィィッ!!」


確実な未来を前にして、不思議と疑問の声が口から飛び出た。が、それも当たり前の話だ。
衝突寸前に、女がいきなり消えたのだ。驚くなという方が、無理なことだろう。
もしかしたら、車の下敷きになったかもしれない。そんな考えが頭にちらつくが、車にぶつかったのなら、何かしら手応えがあって然るべきだ。
しかし、そんなもはどこにもない。慌てて車を止めて、女の行方を探るべく、何度も首を左右に向ける。
そしてすぐさま女の居場所が、明確な形となって知らされた。眩いほどの光弾が横から勢いよく飛んできて、サイドガラスから出していた顔にぶつかったのだ。


「ひでぶッ!!」


衝撃により鼻と口から血が溢れ、痛みにより情けない悲鳴が漏れ出た。
それでも反撃を、と即座に攻撃が来た方向にハンドルを切るが、肝心要の女の姿はこちらを嘲笑うかのように消えてなくなっていた。
種も仕掛けも分からぬ不可思議な現象。だが、この車を前にして隠れ通すなど不可能なこと。
その証拠にと、異形と化した車が、更なる変形を行う。


突如として、車のヘッドライトが両サイドのドアに浮かび上がり、テールランプもヘッドライトのように眩しく輝やきだした。
僅かな時間で、これほどの車の改造は不可能なことだ。しかし、それを可能にし、車を自由自在に変化させることができる。
これこそドライバーであるズィー・ズィーのスタンド――運命の車輪(ホイール・オブ・フォーチュン)の能力。
夜が告げる暗闇を車の無数のヘッドライドで縦横無尽に隙間なく照らし出す。果たして女はどこに行ったか。


「あら、見た目に反して座り心地は良いわね」


疑問の答えはすぐに分かった。何故なら、女はいつの間にか車の助手席に座って、こちらに聞こえるようにシートの感想を述べていたのだから。
このクサレアマがッッ!! いつ忍び込みやがった!! さっさと下りやがれ!! 加齢臭がシートに移るだろうがッッ、このボケッ!!
そんなことを捲くし立てたかったが、残念ながら口から出てきたのは、こんな哀しい言葉だった。


「ひっ、ひぃ〜〜〜、勘弁して下さい。もう逆らいません。だから、命だけは取らないでぇ〜〜」

552ドライヴに行きませんか? ◆BYQTTBZ5rg:2013/08/22(木) 21:35:58 ID:Q9hcLWiM0
事は単純だった。文句を言おうと女を睨みつけた瞬間、反対に女によって射竦められてしまったのだ。
冷徹さと残酷さを兼ね備えた女の鋭い目。絶対的強者にして、純然たる支配者。
ただ女の冷たい視線を受けただけで、そこにある圧倒的な隔絶にズィー・ズィーは気がつかされてしまった。
この女には勝てない。どうあがいても、蟻を踏み潰すように簡単に殺されてしまう。
それを悟ってしまった瞬間、化け物の如き巨大な車は、風船がしぼむかのように小さくなっていき、薄汚いランドクルーザーに変わり果てた。


「……精神を具現化した自動車? 中々面白い能力を持っているわね、人間」

「はい、そ、そうですぅ〜」


ズィー・ズィーの心境の変化に連動した車の状態から、スタンドのことを見て取ったのだろう。
その様子からして、正確な呼称を知らないと見えるが、別段間違っていることでもないし、女の機嫌を損ねまいとズィー・ズィーは笑顔で何度も頷く。
それが功を奏したかは分からないが、次に彼の耳に入ってきた言葉は、大分険の取れた優しい口調のものであった。


「なら、ちょうどいいわ。自分で歩き回るというのも手間だと思っていたし……貴方、私の運転手になりなさい」


初対面にして随分な物言いだが、ズィー・ズィーは躾けられた従順な犬が主人に向かってするように勢いよく尻尾を振ってみせる。


「はい、喜んで〜」

「良い心掛けね」

「あの、それで、どちらに向かえば?」

「そうねえ……」


女はそう言って、手に持っていた扇子の先端を唇の先につけ、憂いをのせた思案顔を見せた。
長く垂れ下がった金色の髪で影となっているせいか、よくは表情は窺えない。だけど、そこには美人と評せるだけのものが、既に散りばめられていた。
肌荒れなど知らぬとばかりに白磁のような透き通った白い肌があり、その上には幽谷に飾られる月のように円(つぶ)らな瞳が妖しく佇んでいる。
綺麗に鼻筋の通った下には一切の穢れは知らないという風に柔らかな唇が静かにかしこまっている。絶世の美女であった。
そんな至上の絵画にズィー・ズィーが見入っていたのに気がついた女は、程なくしてその顔に子供のようないたずらな笑みを浮かべて、からかうようにこう言った。


「……どうしましょうか?」


ドクン、と心臓が跳ね上がった。女の笑顔を見た瞬間、ズィー・ズィーの中にあった血は躍動し、顔を真っ赤に染め上げた。
それは常にはない、異様ともいえる変化だ。だけど、そこに嫌な感情は決してない。それどころか逆に歓喜が心に広がっていく。幸せが全身に染み渡っていく。
後に八雲紫と名乗ったこの女性。当初は、それこそ胡散臭いクソババアだと思っていた。だが、本当のところは違っていた。


この人は間違いなく運命だ。世界を正常なものとして作動させる己の運命の車輪なのだ。
自分は、この人と出会うために、この人と一緒に同じ道を歩くために、この世界に生れ落ちたのだ。
ズィー・ズィーは神託を受けた巫女のように、厳かに、静かに、そして喜びと共にその事実を受け止めた。


ズィー・ズィーの胸の高鳴りに伴って、再び車は変形を始める。
無骨なランドクルーザーはメリーゴーラウンドの馬車のような形となり、その車体には夢の国のナイトパレードのように派手なイルミネーションが飾られた。
そして仕上げとばかりにリアバンパーから糸がぶら下がり、その先では無数の空き缶がぶつかり合い、音を鳴らし合っている。


ズィー・ズィー。運命の出会いを迎えた彼は、この悲惨なバトルロワイアルの中で、まさしく幸せの絶頂にあった。

553ドライヴに行きませんか? ◆BYQTTBZ5rg:2013/08/22(木) 21:36:26 ID:Q9hcLWiM0
【E-2/深夜】
【ズィー・ズィー@第3部 スターダストクルセイダース】
[状態]:鼻血ダラダラ、口から血がドボドボ、喜びで胸が一杯
[装備]:ランドクルーザー@第3部(ガソリン残量 99%)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:運命(八雲紫)に従う
1:幸せ〜〜 !!
[備考] 
八雲紫を運命の相手だと思っています


【八雲紫@東方妖々夢】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:ランダム支給品、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:さて、どうしようかしら?
1:目的地の選定


<ランドクルーザー>
ジョースター一行がズィー・ズィーとの対決の際に乗っていた車。
パワーと耐久性で世界に名を馳せたSUV。

554 ◆BYQTTBZ5rg:2013/08/22(木) 21:37:04 ID:Q9hcLWiM0
以上です
投下終了

555名無しさん:2013/08/22(木) 21:47:32 ID:2Ww.CawE0
投下乙です。

第3部完の人、てめぇDIO様への忠誠はどうしたよ!?
・・・まあ、ゆかりんが隣に乗るとなれば、話は別だよね、うん!w

556名無しさん:2013/08/22(木) 21:58:39 ID:b2AMYLi6O
>無骨なランドクルーザーはメリーゴーラウンドの馬車のような形となり、その車体には夢の国のナイトパレードのように派手なイルミネーションが飾られた。

クッソ吹いたじゃねえかwwwwww畜生wwww
ゆかりんの運転手役とか、役どころおいし過ぎだろwww

557 ◆BYQTTBZ5rg:2013/08/22(木) 22:04:21 ID:Q9hcLWiM0
>>555
感想ありがとうございます。

それと確認したいのですが、ズィー・ズィーはDIOへ忠誠を誓っていたのでしょうか?
エンヤ婆に雇われた刺客としか、wikiには書かれていなかったもので
てっきりDIOとの面識はないと、こちらで勝手に判断してしまったのですが。

558555:2013/08/22(木) 22:13:18 ID:2Ww.CawE0
>>557
ジョジョ3部読んで確認した所、特にDIOに忠誠を誓ってる描写はなかったなw
wikiのとおりババアに雇われただけって解釈した方が良いみたいw

559 ◆YF//rpC0lk:2013/08/22(木) 22:16:17 ID:dGAWPdP20

だめだこのズィー・ズィーwww
こんなの見たら戦った承太郎は絶対変な笑いするww
具体的にはサン戦のあの笑い方w

560 ◆BYQTTBZ5rg:2013/08/22(木) 22:24:22 ID:Q9hcLWiM0
>>558
返答ありがとうございます
やっべっ書き直しかって、滅茶苦茶焦りましたわ

561 ◆n4C8df9rq6:2013/08/22(木) 22:26:49 ID:rPVsY.Jk0
投下乙です!
意外ッ!運命の出会いッ!
しかしゆかりんに惚れるとはwww
体よく使われるだけ使われる予感しかしないズィー・ズィーの明日はどっちだ!?

562名無しさん:2013/08/22(木) 22:28:29 ID:/8bADztE0
乙ー
なんだか分からないが、このロワですげー人気になりそうだな、ズィーズィー

>>559
微笑んでるじゃねーかwww

563 ◆YF//rpC0lk:2013/08/22(木) 22:38:55 ID:dGAWPdP20
>>562
それ、運命の車輪戦
太陽戦のはフヒヒヒって笑ってる

564名無しさん:2013/08/22(木) 23:13:20 ID:xgRihnOs0
投下乙
ズィーズィーがギャグ要員と化しているwww
いや原作でも戦闘後はギャグ要員だったけどさあwww

565 ◆YF//rpC0lk:2013/08/22(木) 23:15:50 ID:dGAWPdP20
そういえば、参戦時期について書かれていないのですが
いかがなさいますか?

566 ◆BYQTTBZ5rg:2013/08/22(木) 23:40:43 ID:Q9hcLWiM0
>>565
後の書き手様に任せます

567 ◆AC7PxoR0JU:2013/08/23(金) 04:59:48 ID:mHTSye0c0
ワムウ、霊烏路空
予約お願いします

568 ◆WjyuuPGo0M:2013/08/23(金) 13:12:43 ID:.Js2kcCQO
八意永琳、エルメェス・コステロを予約します。

>>566
乙です。
大いに笑わさせて頂きました。
加齢臭てwww

569 ◆YF//rpC0lk:2013/08/23(金) 15:39:30 ID:mDzirGv.0
紅美鈴、ウェス(ウェザー・リポート)、霍青娥、多々良小傘、ジョルノ・ジョバァーナ
書き手枠でトリッシュ・ウナ(第5部 黄金の風)を予約します。

570 ◆n4C8df9rq6:2013/08/23(金) 15:47:00 ID:ZOb6K1.g0
幽谷響子、ホル・ホース、ルドル・フォン・シュトロハイム
予約します

571名無しさん:2013/08/23(金) 18:21:41 ID:GQxDivsE0
一気に予約きたー

572名無しさん:2013/08/23(金) 18:42:35 ID:RfihpGFE0
これは荒れるぜ

573名無しさん:2013/08/23(金) 19:12:35 ID:ZOb6K1.g0
荒れムードとは、わたしが目指す『平穏なスレ』と相反しているから嫌いだ…
次の『荒れ』のためにストレスがたまる…愚かな行為だ。
他人と争うのは、きりがなくムナしい行為だ。

574名無しさん:2013/08/23(金) 19:28:32 ID:gR0Hod/M0
これから荒れるのは、スレじゃなくてロワ会場だがなw

575名無しさん:2013/08/23(金) 20:58:16 ID:Jn6w9EyQ0
うまいこと言った>>574に蓬莱の薬を食わしてやりたいんですが、かまいませんね!!

576名無しさん:2013/08/23(金) 21:04:47 ID:RfihpGFE0
だめだ

577574:2013/08/23(金) 21:26:10 ID:gR0Hod/M0
肛門が空いているではないか……行け

578名無しさん:2013/08/24(土) 10:59:30 ID:KrvhWBTQ0
まさかのZA★YA★KU志願!?

579名無しさん:2013/08/24(土) 14:21:26 ID:2Z84t8220
熊はな…………土をガムみたいにかんで丸めて冬眠するとき虫が入ってこないようにその土ガムを尻の穴につめるんだぜ

580名無しさん:2013/08/24(土) 14:31:34 ID:ZrcA4Ct.0
>>579
つまり…ゆかりんやレティも長く寝る時は…

581名無しさん:2013/08/24(土) 14:47:08 ID:2Z84t8220
えっ

582名無しさん:2013/08/24(土) 15:04:04 ID:0ridd0Gs0
ゆかりんやレティは熊じゃないだろ!いい加減にしろ!

583名無しさん:2013/08/24(土) 16:50:17 ID:bTTgFsqE0
じゃああれか。勇儀の姐さんが(このコメは粉砕されました

584名無しさん:2013/08/24(土) 18:15:40 ID:ZrcA4Ct.0
ひょっとして柱の男達も!?

585名無しさん:2013/08/24(土) 18:27:45 ID:0JoubuHc0
神砂嵐のように回転させて詰めるんですね、わかります

586名無しさん:2013/08/24(土) 19:40:31 ID:iLTo3mB.0
サンタナが体をねじってケツの穴に…いや、何でもない

587名無しさん:2013/08/24(土) 19:42:35 ID:0ridd0Gs0
サンタナが俺の穴♂から体内にーッ!!

588名無しさん:2013/08/24(土) 20:09:59 ID:f7cGGqsw0
仲いいな……お前ら…

589名無しさん:2013/08/24(土) 20:13:45 ID:2Z84t8220
わからないのか?言葉の裏に隠された邪悪な意思が……

590名無しさん:2013/08/25(日) 05:09:07 ID:JOzaKPD60
このスレには紳士が多いな
どいつもこいつもジョースター家の血を引きやがって…

すき

591 ◆AC7PxoR0JU:2013/08/25(日) 17:59:31 ID:p8MCo81o0
ワムウ、霊烏路空 投下します

592北風と太陽 ◆AC7PxoR0JU:2013/08/25(日) 18:00:06 ID:p8MCo81o0
 D4エリア北部、魔法の森と呼ばれる捻じくれた森の中で一人の男が佇んでいた。
 男は2mにも及ぼうかという長身に均整な肉体を誇り、最小限の衣服のみを身に着けたその姿は
見る者によってはギリシャ彫刻を思わせるものだった。

「下衆な殺し合い、『ゲーム』……か、人間ごときがよくもこのワムウの前で『決闘』を侮辱してくれたものだ」
 男--ワムウは不機嫌さを隠そうともせずに吐き捨てた。
 その言葉から読み取れる通りに、ワムウは人間ではない。
 食物連鎖の頂点に立っていると勘違いしている人間、その人間を捕食する吸血鬼、その二者よりも
さらに上位に位置する『柱の男』、最後のそれが彼の種族だ。
 その自分が、たかだか人間ごときに生殺与奪を握られているというのは屈辱以外の何物でもなかった。
 そして、戦闘の中にあってなお、正々堂々や誇りといったものを重視するワムウにとって、その屈辱とはまた別の次元で
この弱者を嬲り殺しにすることを強要される殺し合いは、到底許容できるものではないと考えられた。

 しかし、もしやと思って確認した名簿には、案の定というか彼の主であるカーズとエシディシの名前が見受けられた。
 この二人がそのような瑣事に拘る性格をしていないのは、ワムウとしても既に納得済みである。
 むしろそのような感傷を持ち続けている自分こそが、ある種の甘さを捨てきれていないのだとすら思っているが
1万数千年も貫き続けた生き方を変えられるともまた思っていなかった。
 ともあれ、自身の感情がどうであれ、それよりも主2人の方針を優先する忠義をワムウは持ち合わせていた。
 それゆえの、これからの展開を予想しての不機嫌さでもあった。

 そして、名簿といえば
「ジョセフ=ジョースター……あのときの小僧か」
 ちっぽけな波紋しか操れぬにもかかわらず、史上初めてワムウの額を深く抉り取った男である。
 絶体絶命の窮地にありながら、タフな交渉力でワムウの興味を引き出し、一月の延命を勝ち取った男でもある。
 ワムウは口元のピアス--ジョセフの心臓に埋め込んだ毒薬の解毒剤--を無意識に手で触れた。
 お調子者のハッタリ屋であったが、不思議と大成して自分を楽しませてくれる戦士に育ちそうでもある。

「そういえば、ちょうど一月だったか?」
 人間とはスケールの違う長命ゆえに、いまいち細かい日付までは意識していなかったが
あのローマの地下での戦いからは、確かに1ヶ月ほどが経過しているように思えた。
 そうであれば、ジョセフ=ジョースターに、その仲間であるシーザー=ツェペリ!
 この場で再戦を果たすこともやぶさかではなかった。
 そして今の時点では、恐らくそれだけが、唯一自分の意思にも、主達の意思にも反しない行動だった。
 だが、それさえも、『主催者』達の意に乗るようで決して面白くはないのだ。
 最高の決闘に余計な水をさされるような感覚が、ワムウを気後れさせていた。

 『ゲーム』が開始してから、そう長い時間は経っていない。
 しかし、ワムウとしては珍しく堂々巡りする思考で、苛ただしげに眼前の森を睨み続けるのだった。

593北風と太陽 ◆AC7PxoR0JU:2013/08/25(日) 18:00:42 ID:p8MCo81o0
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 霊烏路空は憤慨していた。

 空(うつほ、ではなく、そら)がまともに飛べないのだ。
 まず、普段のように霊力を消費して浮くことが出来ない。
 仕方ないので翼を使っても、落ちないように高度を維持するホバリングすらままならない。
 後は、自身の能力である核エネルギーを推進力にしての飛行だが
速度はともかく距離や持続力という点で効率が悪く、全く夜空を楽しむことが出来ない。
 極めつけは今しがた高度を上げた所でぶつかった見えない壁だった。
 低空、少なくとも幻想郷の弾幕少女にとってはきわめて低空、しか飛べないのでは返ってストレスがたまるというものだ。

「あー、もう、これはあの荒木と太田はフュージョン確定だね!」
 究極の力、核融合を手に入れたことに自信を持ち、地上侵攻を考えていた空にとって
今回の『ゲーム』で地上に連れて来られたことはある種渡りに船であった。
 そのため、最初は主催者二人も自分の言うことに従うのであれば、寛大な処置を施してやるつもりではあった。
 しかし、もはや完全にその気も失せてしまっている。
 これは何も待望の地上を満足に飛ぶことの出来ない怒りによるものだけではない。
 名簿を見れば、大多数は初めてみる名前だったが、地底で聞いた覚えのある名前も幾つか見受けられた。
 その中には、飼い主にその妹、同僚でもある親友も含まれていた。
 それらも含めての怒りである。

 とはいえ、彼らが連れて来られた事自体には腹を立てる空だが、一方でこれはいい機会だとも感じていた。
 親友である火炎猫燐は、空が八咫烏の力を得てからというもの
調子に乗るな、地上侵攻なんて馬鹿な真似はよせ、などとやたら口煩く絡んでくるようになっていた。
 主人である古明地さとりと、その妹のこいしにしても、ここの所暫く会っていないが、いまだ空のことを
以前のような頭の足りない地獄鴉だと思っているに違いない。
 しかし、それも今日から変わる。
 この殺し合いの場においてさえ、自分の力はもっとも強力なはずだと空は考えていた。
 ならば、この力で彼女らを保護してやれば、自分への評価は一転するだろうと考えた。
 お燐は自分を尊敬するようになるだろうし、さとりらは自分を飼っていることを誇りに思うようになるだろう。
 そう考えて、空は取らぬ狸の皮算用に顔を綻ばせた。

 そして、その一方で他の参加者たちに関しては、ここで始末してしまおうとも考えていた。
 どうせ、この後の地上での予定は八咫烏の力を全開にしての灼熱地獄化だけだ。
 別に『ゲーム』なんぞ、あろうがなかろうが関係ないのだった。
 地底の妖怪については元から侵攻する対象にも入っていなかった相手だ。
 まあ、邪魔さえしなければ見逃してやってもいい、程度には考えていた。

 --霊烏路空は『ゲーム』に『乗って』いなかった。
 むしろ完全に無視していた、といっても良いぐらいだった。
 しかし、その事は彼女が『殺し合いをしない』という事は全く意味しないのであった。

「おっと、早速一人目を発見!」
 翼をはためかせながらゆっくりと自由落下していく空が視線を下に向けると、どれほどの偶然か森の木々のわずかな隙間から
一人の長身の男の姿が目に入った。
 もちろん地霊殿の住人ではないし、地底で見た覚えも無い相手だった。
 ならば会話をする必要すらないとばかりに、空はスペルカードを宣言する。
「鴉符『八咫烏ダイブ』!」
 そうして、発生させた核エネルギーを身にまといながら、空は眼下の男へ向かって猛落下を開始した。

594北風と太陽 ◆AC7PxoR0JU:2013/08/25(日) 18:01:09 ID:p8MCo81o0
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 ワムウの流法(モード)は風。
 木々の枝をへし折り進む音が耳に届く前に、空気の流れから上空を羽ばたく敵の来襲を察知していた。
 ゆえに回避はあまりに容易。
 背後から迫る敵の突進を、振り返ることすらなく、横に軽く動いただけであっさりと避ける。
 
 勢いの乗り切った突進を避けられた襲撃者は、そのまま地面に激突。
 盛大に砂煙を巻き上げながら、地面を抉り取って進み、木々をなぎ倒し、やがて止まった。

 ワムウはわずかな驚きとちょっとした疑問を感じていた。
 と言っても、突っ込んできた相手のことは全く意識になかった。
 なぜ自分は攻撃を避けたのか、それがちょっとした疑問である。
 ワムウら柱の男と呼ばれる種族の特性を考えれば、相手が生体である以上、究極的にはこのような攻撃を避ける必要は実はない。
 にもかかわらず、何故か自分はこの突撃を避けた。
 そのことが疑問であった。

 先ほどまでの不機嫌さを打ち消して、瞑目するワムウをよそに、舞い上がる砂煙の中から、複数の赤い塊が飛び出してくる。
 落下してきた襲撃者--霊烏路空の撃ち出した弾幕だ。
 砂煙の中からゆえか、狙いは甘く、回避することはさほど難しくなかった。
 ワムウが視認できた都合9つの弾幕のうち、6つは端から明後日の方向に飛んでいく。
 自身に向かう弾幕2つの射線から身を外し、残る1つを腕で振り払った。
 豪腕で打ち払われた赤弾は粉砕されるが、同時に接触箇所に火傷のような傷跡を残した。
「熱だけではない。これは……波紋か? いや違うか?」
 常と違い、多少なりとも治癒する速度の遅い傷跡を眺めながらワムウは独りごちた。
 これが波紋であるならば、先ほどの自分の奇妙な行動にも説明が付く。
 しかし、数え切れない波紋使いと戦い続けてきたワムウには、どうにもわずかな違いが感じられた。

 そして、10数メートル先の砂煙の中から空が現れる。
「あれ? おっかしいなー」
 姿を現した空は、困ったような顔をしながら、腕に装着した八角形の角柱である制御棒を目の前で振っている。
 けん制のつもりで発射した弾幕ではあったが、あまりに火力が低いため制御棒の不調を疑っているようだ。
「まあいいや、もう一回いくよ!」
 そして、ワムウをようやく目に入れ、制御棒を突き出し弾幕の生成を始める。
 眩い光が一瞬あたりを照らし出した。
「ムウ!」
 ワムウはその光を直視することが適わず思わず目を背け、また体の表面から微量の刺すような痛みを感じた。
「なるほど、太陽か!」
 ワムウは 出会い頭の突進を自然と避けたことに得心が行ったとばかり声に出した。

 一方、ワムウの独白には興味が無い、とばかりに空からの弾幕が発射される。
 先ほどとは違い、弾数も多く、軌道も避けにくいよう配置がされている。
 しかし、肝心の火力はそう変わったようには見えなかった。

「フッ、随分と貧弱な太陽だ」
 疑問が解けた以上、襲い来る相手を返り討ちにすることに何の躊躇も無かった。
 『乗って』やるのは少々癪だが、気分転換と思えばちょうど良いとも思えた。
 そう考え、ワムウは、嘲笑しながら頭をグルリと回す。
 それだけで弾幕は打ち消え、あるいは軌道を変えて森の中に消えていった。
 早々に種を明かせば、ワムウの頭飾りに付随するワイヤーのようなパーツが、頭の動きを元に真空刃を生成し
空の弾幕をことごとく、触れることすらなく打ち払ったのだった。
 しかし、そのようなことは想像もつかない空は呆気に取られる。
 さらに畳み掛けるようにワムウの姿が突然消える。
「え、ちょ、どうなってんのよ!?」 
 空は続く理不尽に明確に狼狽した。

595北風と太陽 ◆AC7PxoR0JU:2013/08/25(日) 18:01:42 ID:p8MCo81o0
 しかし、空が幸運だったのは、八咫烏ダイブで巻き上げられた砂煙が若干ではあるが残っていたことだった。
 急速に近づいてくるワムウの姿が、ノイズ入りの空間にクリアすぎる人型として浮き彫りになる。
「!! 透明になったのね!」
 あるいは、太陽光を防ぐためとはいえ、一対一の戦いにおいて卑怯とも呼ばれかねない能力を
ワムウが使用したのは、この風の流法によるステルスを見破りやすい環境化にあったからかもしれない。
 
 ともあれ、ワムウの透明化は姿を隠すのが主なる目的でなく、太陽光を遮るためのもの。
 一旦居ると分かってしまえば、目で追い続けるのはそこまで難しくない部類の能力だ。
 気を取り直した空だが、我を失ったわずかな間の動きで、どうやら接近戦は避けられない状況になったようだと判断する。
 それは弾幕の不調が隠せない空としても、むしろ望むところであった。

 巨体からは想像も出来ない速さで目前に迫った、陽炎のような人型が胴を両断するような勢いの回し蹴りを放つ。
 空は、高速ではあるが大振りなそれに対して、制御棒を盾のように構えて受けの体勢を取る。
「お、重いッ!」
 パワーにはそれなり以上に自信のあった空だが、ワムウの蹴りを受け止めきれずに体が横跳びに宙を舞った。
「んのおっ!」 
 しかし、着地前に空中で核エネルギーを推力として反転突進、Gに耐えながら制御棒から刃状のレーザーを撃ち出し唐竹割にワムウに斬りかかる。

 ちょうど蹴り足を地に下ろしたところのワムウは、レーザーには直接手を触れず、制御棒部分を横に払うことで刃を避ける。
 勢いの付きすぎた攻撃を空は制御することが出来ず、レーザーは地面を深く切り裂いた。
 その隙を見逃さぬと、ワムウの拳が上から押し潰さんと空を襲う。
 しかし、次の瞬間に足元から間欠泉のように噴出した炎がワムウの体制を崩した。
 地面を切った際に仕込まれた空のヘルゲイザーだ。
 その間に空は倒立から腕を使って跳ね上がり、左足--分解の足を使った浴びせ蹴りを繰り出す。
 対してワムウは慌てず、斜めに一歩間合いを詰める。
 自然、空の膝の裏に、ワムウの肩が入る形になり、熱を帯びた踵はワムウの背中を軽く叩くに終わる。
 
 ワムウは半ば逆さ吊り状態になった空を絞め殺さんと両腕を抱きしめるように交差させる。
 両脇から迫るワムウの両腕を、空は肩にかかった左足を基点にした腹筋と核推力で急速に上体を起こすことで回避した。
 次いで、空いた右足も同様に肩口に乗せ、ちょうど肩車の前後逆の体勢でワムウの頭部にしがみつく形になった。
 空はその勢いのままにに右肘を脳天に突き落とし、左手の親指を爪先から眼孔に突っ込んだ。
 それは尋常な相手ならば決定打にもなりえた一手だったが、空の肘と指先から伝わってくる感触は
ゴム鞠か何かを押し込んだようなものだけだった。
「死ねッ!」
 空は異常な感触に気を留めず、側頭部にずらした右肘と、眼窩に指を突っ込んだ左手で
ワムウの頭部を固定し、次の瞬間に思い切り捻り込んだ。
 何の抵抗も無くワムウの首は異様な方向に捻じ曲がった。
 いや、何の抵抗も無さすぎた。
 --ワムウたち柱の男と呼ばれた種族の特性には、自身の骨格や体系を自在に操作できるというものがある。
 その自由度は、指ほどの細さの換気口の隙間に自身の体を折りたたんで進入できるほどのものだ。
 肩の上からの空の一連の攻撃は、その柔軟さによってほとんど意味を成していなかったのだ。

 ところでワムウの透明化は体表を覆う風の保護膜によるものである。
 空が組み付いたことにより、風の循環が狂い次第にその姿が見えるようになり始めていた。
「少し、遅れたか」 
 再び見え始めたワムウの額の中心からは、回転する一本角が突き出していて、その先端に赤い液体が付着していた。
 戦闘の興奮状態により気付いていないが、空のわき腹の端には、いつの間にか小さく抉り取られたような傷が出来ていた。
 言うまでも無くワムウの角によるもので、首を捻り折ろうとするのが一瞬遅れていれば、恐らく臓腑がシェイクされていたのだろう。

596北風と太陽 ◆AC7PxoR0JU:2013/08/25(日) 18:01:59 ID:p8MCo81o0
(ったく、とんでもないヤツね……でもまだ本命が残っているのよ!)
「制御『セルフトカマク』!!」
 間髪入れずに叫んだ空の周りに発光体が発生、核エネルギーが周囲を循環し始める。
 そして、それらは急激に加熱をはじめ、ワムウを灼きはじめた。
「ヌウゥゥ!」
 二人が戦いを開始してから、初めてワムウがダメージを感じさせる雄叫びを上げた。
 しがみ付いた空を中心にした空間はあっという間に火を発し始め、ワムウの頭部のみならず上半身全体を炎に包んだ。
「ガアアアアアアァァァ!」
 叫びながらも、ワムウは空を振り落とさんと、身をよじり、頭上に腕を振るう。
 しかし、空も羽とマントで身を包みながら必死にしがみ付く。
 近すぎる距離に、頭上という有利なポジションで、ワムウといえど満足な打撃が放てない状況に
更には核熱によるフィールドとマントに翼といった遮蔽物を経て、空が落とされることは防がれていた。
「このまま焼き殺す!」
 獰猛に叫んだ空の言葉に答えるように、ワムウに回った炎は勢いを増し、彼を生きた松明へと変えだした。
 ワムウが片膝を地面に付き、空は勝利を確信した笑みを浮かべた。
「勝っ、ああああああ!」
 しかし、直後に入れ替わり空が悲鳴を上げ始めた。

 空の腹部にワムウの指が潜り込んでいた。
 速度やパワーで突き破ったのでない、ワムウたち柱の男が持つ生物と融合する能力を用いて空の腹中へと指を突き入れたのだ。
 しかし、核反応中の空と融合することは、太陽の光に焼かれるワムウにとって自傷行為に等しい。
 空の腹の中で指先は焼けるのを通り越して溶けていく。
 最初に突撃を無意識に横に避けたのも、組み付かれた際に融合能力を使わなかったのも、この能力の相性のためだ。
 空は生涯『2』度目になる、別の生物と融合する感触に悲鳴を上げ続けるも、ワムウにしがみ付いて離れない。

 ワムウからすれば万策尽きたかに思えた状況だが、なんとワムウはそのまま突っ込んだ指先で空の内臓を『食い』始めた。
 柱の男が持つ能力に、融合した生物を細胞単位で捕食するというものがある。
 食物連鎖の頂点に立つにふさわしい強力な能力ではあるが、反面その部分では体表によるガードがなくなるため
天敵である波紋--つまるところ太陽の力--に対する抵抗力がなくなるという弱点にもなっている。
 今がまさにその状態で、空の内臓を傷つける間もなく、ワムウの指先は融解していく。
 一見すると戦略上何の意味も無い行動であった。
「ああぁぁぁああ! 何なのよ!アンタはさ!?」
 が、ここで空がしがみ付いた足を解き、ワムウの頭部を蹴り付けて飛びずさった。
 そのまま地面を転がり蹲る。
 最初の融合までは八咫烏を取り込んだ際の経験で耐えられていたが、自らが侵食されるのはその時と真逆の状況ゆえ耐性が無かった。
 生きたまま内臓を食われるという異常状況に本能が警鐘を鳴らし、それに従い緊急に避難をしたのだった。

597北風と太陽 ◆AC7PxoR0JU:2013/08/25(日) 18:02:35 ID:p8MCo81o0
 一方、蹴り離されたワムウは、全身の痛々しい火傷の傷跡をものともせずに立ち上がる。
 まとわり付いた炎は、風の操作で瞬く間に吹き散らされていた。
「……『覚悟』が足りないようだな、小娘」
 見ればワムウの親指以外の右手の4指はすべて根元から溶け落ちていた。
「あの状況、貴様が真の戦士であるのならば、決して俺を離しはしなかっただろう。
たとえ腕を飛ばされようが脚をもがれようともだ」
 この場において、不死身の参加者が居ないというのであれば、いかな自分とてあのまま焼かれ続けていれば、あるいは。
 その思いをこめてワムウは言葉を続けた。
 対して空は蹲ったままゼイゼイと荒い息を上げていた。
 細胞単位で食われかけるといった異常な体験の精神的動揺のためでもあるし
単純に大量のスキルやスペルを短時間に消費した疲労のためでもある。
「とはいえ、このワムウが少しばかり焦らされたのも事実! その『食えない』能力の厄介さも含めて、貴様を『敵』として認めよう!」
 炭化しかけた顔をニヤリと歪め、ワムウは腰を軽く落とした中段の構えを取る。

「こんのぉ、言わせておけば!」
 空は動揺を恐怖ではなく怒りに転化した。
 空にしてみれば、放っておいても死ぬような火傷の相手に、つまるところ勝ちかけていると認識している相手に
偉そうな口を叩かれるのは我慢がならなかった。
「究極の核融合で身も心もフュージョンさせ尽くしてやる!」
 弾幕が弱体化しているのは理解したが、同時に発射しない類の攻撃はそれほど変わらず使えるのも確認している。
 つまりは発射型の弾幕でもゼロ距離、発射前の状態なら有効ではないかと空は考えた。
 通常に比べて桁外れに巨大な弾幕を生成できる空ならば、この距離でも発射プロセスを経ることなく相手に直接攻撃をぶつけることができる。
(こんな死にかけ、私のメガフレアで吹っ飛ばしてやる!)
 ふらつきながらも立ち上がり、制御棒を相手に向けて構えた。
 
「爆符!」
 制御棒の先端に先端に灼熱した弾幕が生成される。
 それは太陽の如き光を放ちながら、瞬く間に巨大化し
 人間など軽く飲み込むほどの大きさに成長した。

「闘技!」
 左腕を関節ごと右回転! 右腕をひじの関節ごと左回転! 
 既に勝ったつもりになってた空も
 拳が一瞬巨大に見えるほどの回転圧力にはビビった!

(メガフレアじゃあ……足りない!)
 全力のぺタフレアで対抗するべきだったと瞬時に悟る空だが、時すでに遅し。
 

         「ギガフレア! / 神砂嵐!」
 大容量の核エネルギーが発生し / そのふたつの拳の間に生じる真空状態の
 空の前方すべてを焼き尽くす! / 圧倒的破壊空間はまさに歯車的砂嵐の小宇宙!
 

 急遽エネルギーを継ぎ足された核熱球が、ワムウを飲み込むようにさらに膨れ上がる。
 しかし、直後に発生した2本の巨大竜巻によって、ギガフレアはその両端を一瞬にして削り取られた。
 さらにその間に発生した真空空間によって、鈍く重低音を立てながら爆発崩壊したのだった。
 爆発に煽られ乱れ狂う二本の竜巻と、撒き散らされる爆炎と閃光によって辺り一帯は白と赤で染められた。

598北風と太陽 ◆AC7PxoR0JU:2013/08/25(日) 18:02:47 ID:p8MCo81o0
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 魔法の森から、南下した地点にある湿地帯。
 バシャリ、と音を立てて空の体は湿地の水草の上を横に転がった。
 結構な勢いで着水したため、早々には回転は止まらないが、空は流れに身を任せて転がり続ける。
 やがて、程よく背中がつかる程度の水溜りで回転を止めて夜空を仰いだ。
 背中に感じる水の冷たさが、戦闘で熱った体に心地よかった。

 あの爆発の直後、森を突きぬけ、間にある草原を飛び越え、直接湿地帯に突っ込んだのだ。
 相当な距離を飛ばされてきたといえるだろう。
「はあ……」
 しばらく水の心地よさに身をゆだねた後、空はため息をついた。
 ギガフレアと神砂嵐の激突の直後、不利を悟っていた空は核エネルギー推力に換えて後方に飛び下がっていた。
 おかげで大した怪我もなくこうしていられる訳であるが、初戦から大苦戦の挙句に
尻尾を巻いて逃げ出した格好になった結果に疲れ果てているのだろうか?
 
「ああ、黒い太陽、八咫烏様。我に力を与えてくださった事に感謝します。やっぱり核融合は究極の力なのね」
 否、逆に空は思い切り自信を付けていた。
 消沈ではなく、感嘆のため息であった。
 炎と黒煙が遠目からでも確認できる魔法の森を見て空はキリリとした表情で呟いた。
「あの爆発だ、まさか生きてはいまい」
 そもそも空は大技同士の激突前の時点で、ワムウが瀕死であると認識していた。
 ある意味でその認識は正しく、ワムウが通常の生物や妖怪であるのならば
あの時点で、まず助かりようの無い火傷を負っていたようにしか見えないのは確かだった。
 で、あるならば、それに加えてあの大爆発である。
 生きているはずがない、あるいは生きていてもすぐに死ぬだろう、というのが空の主張である。
 
 まあ、その認識が正しいかどうかはともかくとして、空の中で名前も知らない大男
--ワムウは既に葬り去った強敵になっているのである。
 そして、あれだけの強敵を倒した自分への信頼は絶賛鰻上り中である。

「でも、ちょっと疲れたな。少し休もう」
 ふらふらと立ち上がり、荷物から取り出した地図を広げて適当な拠点に目星を付ける。
 頭に組み付いた後の攻防で盾にした翼は殴られた痛みが強く、飛行やダイブスペルはしばらく控えることにした。
「ここからだと、命蓮寺とかいう所かな」
 そういえば、と、自分には必要ないと高をくくっていた支給品のことを思い出した。
 あんな敵がこれからもいるのであれば、休憩がてらに確認してみるのもいいかもしれない。
 そう思いながら、空は東へと歩き始めた。

【D-4 湿地帯/深夜】

【霊烏路空@東方地霊殿】
[状態]:わき腹の端に刺し傷(小)、翼に打撲(無理をすれば飛行は可能)、疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:地上を溶かし尽くして灼熱地獄に変える。
1:地霊殿の住人は保護する。
2:地底の妖怪は邪魔しなきゃ見逃してやる。
3:ワムウ(名前知らない)は私が倒した(キリッ
4:取りあえず東進して命蓮寺で休む。寺は休んだ後で焼き討ち予定。

[備考]
※参戦時期は東方地霊殿の異変発生中です。
※D−4中央部の湿地帯に吹き飛ばされました。
※地底の妖怪と認識している相手は、星熊勇儀、封獣ぬえ、伊吹萃香、他書き手枠追加次第です。

599北風と太陽 ◆AC7PxoR0JU:2013/08/25(日) 18:03:19 ID:p8MCo81o0
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 変わって、激戦の舞台となった魔法の森の中、焼け焦げた巨漢--ワムウは爆発など無かったのかのように
神砂嵐を放ったままの、膝を曲げ腰を軽く落とした体勢を維持していた。
 周囲はギガフレアの爆発を取り込み、軌道を大きく乱れさせた火炎竜巻が蹂躙し
まるで灼熱地獄のような有様に成り果てていた。

「フフ、覚悟は足りないようだが、センスはあるようだな」
 ゆっくりと背と脚を伸ばし、ワムウは空がいるかのように正面を見て笑う。
 神砂嵐とギガフレアの激突の直後、空が後方に向かって急発進していたのをワムウの目は捉えていた。
 ギガフレアの爆発による閃光で確認こそ出来なかったが、付近に空の気配が感じられない以上
神砂嵐の片方の竜巻にあえて乗るか何かで飛距離を大幅に伸ばして、この場からの離脱を成功させたとも推測していた。

 空が概ね無事な形で生き残れたのは幾つかの事象が関わりあっていた。
 ワムウの右手の指の欠損により、神砂嵐の左右の竜巻のバランスがわずかに崩れたていたこと。
 メガフレアではなくギガフレアに攻撃を格上げしたことで激突時の爆発が巨大化したこと。
 そのために、竜巻間の角度が大きく開き、逆に致命傷をもたらす真空空間の射程距離は短くなっていたこと。
 後方に大きく移動したことで、短くなっていた左右の竜巻が強力に引き合う真空圏内に捕らわれなかったこと。

 その全てが揃って、初めて無事に神砂嵐の猛威から生還できたのだった。
 とはいえ、それらが揃ったのは一種の偶然でも、それぞれの事象はすべて空が自身で掴み取った結果だ。
 その事実は敵として戦ったワムウが誰よりも高く評価していた。

「仕切り直しが必要か」
 余力が十分にある以上 追撃も考えたが、こうも死力を尽くした後に、どこに飛んでいったかも定かでない相手を
探し出すところから始めるのは興が冷めると感じ、ワムウはまずは自身の傷の治療を優先することにした。
 まず、火傷は短期的な影響こそ大きいが、高熱が原因で発生した箇所は再生に何の問題も無い。
 戦闘中は警戒した太陽の力も、所詮は作られた太陽だったのか
ワムウの表皮を軽く焦がすだけで、致命的な傷は存在しないようだった。
 もっとも溶け落ちた指を見る限り、こちらは切られたり貫かれたりしたところから流し込まれれば話は別になるようだったが。
 ともあれ、差しあたっては、死体なり他の参加者からなり、溶けた指の代わりを調達することが急務だろうか。

「……フフフフ、ハハハハハハハ!」
 そこまで考え、ボロボロと炭が落ち新しい皮膚が再生しつつある顔で、ワムウは堪え切れぬとばかりに笑う。
 ワムウは当初、人間の悪趣味な『ゲーム』に乗った戦いなど、自分の誇りが許さないと考えていた。
 しかし、戦い終わって、自身でも度し難いほどに敵との戦いに高揚している自分に気が付いたのだった。
 ローマの地下で目覚めて以来、いや、2千年前に眠りについて以来、久しく味わっていない興奮であった。

「いいだろう、荒木と太田とやら。このワムウが戦う価値のある相手を用意しているというのなら!
 少しだけ、この『ゲーム』とやらに付き合ってやろうではないか!」
 先ほどの名も知らぬ翼を持った娘! ジョセフ=ジョースター! シーザー=ツェペリ!
 更には、名簿に載る80余人!
 ワムウの目には、その全てが、更なる戦いへの招待状に見えていた。

【D-4 魔法の森/深夜】

【ワムウ@第2部 戦闘潮流】
[状態]:全身に重度の火傷(再生中、行動に若干の支障)、右手の指を欠損、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:他の柱の男達と合流し『ゲーム』を破壊する
1:カーズ・エシディシと合流する
2:ジョセフに会って再戦を果たす
3:霊烏路空(名前は聞いていない)を敵と認識
4:代えの指を探す
5:主達と合流するまでは『ゲーム』に付き合ってやってもいい

[備考]
※参戦時期はジョセフの心臓にリングを入れた後〜エシディシ死亡前です。
※D−4北西の魔法の森にいます。

※魔法の森北東部にて火災が発生しました。
燃え広がるか、森の湿度や環境により自然鎮火するかは不明です。

600 ◆AC7PxoR0JU:2013/08/25(日) 18:03:31 ID:p8MCo81o0
以上、投下終了です。

601名無しさん:2013/08/25(日) 19:34:33 ID:gRoG3bm20
投下乙
ワムウとお空の戦いは引き分けか
つかお空物騒な時期から来ているな
でもドヤ顔してるであろうお空ちゃんを想像すると萌える(真実)

602名無しさん:2013/08/25(日) 20:36:57 ID:4aaM21BQ0
流石ワムウだな、制限込みとはいえ、相性最悪の相手と引き分けに持ち込むか

603 ◆YF//rpC0lk:2013/08/25(日) 20:40:37 ID:Wi4ltfwc0
例えて言えば(ファンの人には申し訳ないけど)
お空はモンスターマシンに乗った子供で、
ワムウはそのモンスターマシンを乗りこなすための技術も経験も積み重ねたプロなんですよね

604名無しさん:2013/08/25(日) 21:29:24 ID:xZFT/oAw0
投下乙!
おくうvsワムウ、序盤ながら激戦だったな
相性のよさもあったとはいえ、あの戦闘の天才相手にここまで渡り合ったおくうちゃんもやっぱすごい…!

605 ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 21:57:33 ID:4aaM21BQ0
>>428で予約し、>>501で延長した予約を投下します。

606 ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 21:58:04 ID:4aaM21BQ0
十六夜咲夜がD−3エリア中央付近の廃洋館に差し掛かったのは、
『ゲーム開始』から2時間が経過しようとしていた頃の事である。
エプロンドレスにホワイトブリムという彼女の服装が示す通り、彼女はメイド……家政婦、あるいは召使いである。
勤め先は紅魔館……彼女の主であるレミリア・スカーレットの他、
多数の妖怪らが住まう『悪魔の館』であり、彼女の当面の目的地でもあった。
参加者名簿に記載されていたレミリアや他の紅魔館の住人たちが、
慣れ親しんだ我が家を拠点とすることは想像に難くない。
まずはレミリアお嬢様と合流を。そしてこの生命に代えてもお護りするのだ。
お嬢様が殺し合いのゲームに乗るか、乗らないかは問わない。
だって私は……『悪魔の犬』なのだから。

それにしてもまったく、『飛べない』ことがこれほど不便であるとは、思ってもみなかったことだ。
満月の明るさのお陰で何とか行動に支障がないのは幸いだが、
それでもミニスカートにストッキングで草むらの中なんて歩くものではない。
枝葉をガサガサかき分けて進まなければならないから、
ストッキングはとっくに伝線してしまっているに違いない。

……ストッキングがダメになる程度ならまだいい。
『音』が目立ち過ぎる。
辺りが静か過ぎるからだ。虫の声や鳥獣の気配が全くと言っていいほど、無い。
自然に聞こえる音といえば、時折吹く風が草木を揺らす音くらいのものだ。
ゲーム開始直後には、火薬によるものらしき爆発音が聞こえてきた。
遠くで見えた光から推定するに……ざっと1キロは離れた所の爆発音が耳に届いたのだ。
こうして私が藪をかきわけ進む音は、一体何メートル先から聞こえるのだろうか。

607 ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 21:58:45 ID:4aaM21BQ0
ようやく開けた所に出た。件の廃洋館の庭だ。
先の春が奪われる異変の解決に乗り出した際に、
咲夜にちょっかいを出してきた音楽好きの騒霊姉妹……プリズムリバー三姉妹のねぐらだ。
廃洋館というだけあって、外観は荒れ果てているし、庭も雑草が伸び放題だ。
中々立派な屋敷なのに、勿体無い。まさか部屋も掃除していないのだろうか。
外を演奏して回っている時は身奇麗なのに。
妖怪と化して食事や病気の心配がなくなると、こうも身の回りに無頓着になってしまうのだろうか。
確か彼女たちも生前は名家の令嬢ではなかったか。

……急に咲夜亡き後の紅魔館が心配になってきた。
やはり生き残るなら、お嬢様だけでなく、私も。
もちろん、他の皆も。私が愛しているのは、『今の』紅魔館なのだ。
紅魔館の皆と合流したら、何とか全員が生き残る方法を探そう。
お嬢様たちが殺し合いに乗るというなら、どうにかして説得してみよう。
殺し合いに乗って優勝しても、生き残ることができるのは、一人しかいないなのだから。

そう決意を固めた咲夜は廃洋館の敷地を後にしようとする。
夜でも薄明るい草地を滑る影にふと気づいて空を見上げると、
白装束を纏った博麗霊夢が、上空から咲夜の額に日本刀を突き立てようとしていた。

608 ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 21:59:01 ID:4aaM21BQ0
TITLE:宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション――

609宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 21:59:46 ID:4aaM21BQ0
咄嗟過ぎる出来事に息を呑む咲夜。
だが、回避行動だけは忘れなかった。彼女にとってそれは、『息を止める様に』慣れ親しんだ動作。
咲夜の額の薄皮一枚だけを貫いた刃は、持ち主と共にそこでピタリと空中に静止。
微かに聞こえていた木々のざわめきも完全に消え、この世の全てが静止する。
咲夜は、『時を止めた』のだ。彼女の主観で、約1秒。
霊夢の着地点の背後に回りこみ、ナイフを構えるには十分な時間だ。

時が再び動き出した次の瞬間、霊夢は勢い良く地面に着地する。
咲夜の反応が遅れていたら、即・串刺しだったに違いない。
明らかに殺意の篭った奇襲。咲夜はその真意を問うために、右手のナイフを振り下ろす。
もちろん寸止めだ。殺気立った相手と話し合う為にはこうするしかない。
だが霊夢は、首筋目掛けて背後から振り下ろされたそのナイフを、返す刃で正確に受け止めた。

相変わらず、勘が鋭い。異常なまでに。
……だが、この程度は予想内。
刃を小刻みに軋らせながら、咲夜は問いかけた。

「……なぜ私を殺そうするの?」

「別にあんただから殺すってわけじゃないわ。
 何となく最初に遭うのはあんたじゃないか、とは思ったけど。
 でもツイてるわ。あんたが最初に来てくれて」

霊夢は咲夜のナイフを振り払いつつ飛び退くと、
白いネグリジェの裾をはためかせながらふわりと向き直った。
綿毛のように軽やかな動き。
緊張を全く感じさせない、霊夢の『いつも通り』を感じさせる動作だ。
目の前にいるのは、弾幕ごっこで異変を解決する時の、いつも通りの霊夢だ。

610宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:00:12 ID:4aaM21BQ0
「霊夢……これはいつもの異変とは訳がちがうのよ」

「分かってるわよ、そんなこと。
 今回は『まいった』と言わせるだけじゃなくて、殺さなきゃいけないんでしょ?
 まずはあんたからね」

そう告げると霊夢は刀を正眼に構え、ジリジリとにじり寄ってきた。

駄目だ、説得が通じない。……上空から串刺しにしようとしてきた時点で期待はしていなかったが。
そして今放たれたこの袈裟懸けの一撃からも、気の迷いは微塵も感じられない。
だが、

「……やっぱり考えなおしたら?その剣さばき、素人にしてはサマになってるわ」

咲夜はナイフでその斬撃も容易く受け止め、再度の通告を行った。

「…………」

霊夢からの返答は、なし。
無言で咲夜目掛けて刀を振り回して来るが、それも咲夜は軽くいなす。

「悪いけど、剣のお稽古に付き合う時間は無いのよ」

霊夢の本来の得物は長柄の大幣だ。
支給品であろう刀を振るう霊夢の動きは、不慣れなこともあってややぎこちない。
一方咲夜に支給されたのは、『DIOのナイフ』と名付けられた16本の洋包丁。
あいにく銀製ではないが、いつものナイフに近い、格闘にも投擲にもちょうどいいサイズだ。
慣れた武器に近いという点では、咲夜の方が圧倒的に有利だった。

「どうしても殺しあう気だと言うなら……2、3日の間は再起不能になってもらうわ」

咲夜が反撃に転じると、たちまち攻守が逆転する。
霊夢が防戦一方の形となり、ネグリジェの袖や裾が次々と破れ始めた。
そしてナイフに気を取られた隙を狙った渾身の右回し蹴りは、霊夢に辛うじてブロックされるものの、
その細身の身体を大きく弾き飛ばした。

「ぐうっ……!」

駆け寄って追い打ちを狙う咲夜に対し、霊夢は服のポケットから御札を取り出した。
文字が赤黒い。恐らくここに呼び出されてから霊夢自身の血で書いたものだろう。
霊力を吹きこまれた正方形の御札・博麗アミュレットが、意志を持つかのような動きで咲夜に飛来する。
霊夢との弾幕ごっこで、何度も見た技だ。

611宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:00:42 ID:4aaM21BQ0
(この御札は左右にかわしたくらいでは振りきれない……
 加速をつければかいくぐることは可能だけど……
 霊夢は既に地面に、トラップ型の御札『常置陣』を置いている……
 走って近づいたら間違いなくアレを踏み、無防備な体勢で空中に弾き飛ばされる……!)

(空中で加速すればアレは踏まなくても済むけど、霊力での飛翔はできない……
 立ち止まってナイフを投げれば『博麗アミュレット』の相殺は可能だけど
 ナイフの本数は限られている……『時止め』の霊力の消費が異常に激しい、時を止めて回収する余裕はない……
 そして霊夢のことだから、あの御札は十分な数を用意しているはず……遠距離ではこちらが不利……)

(……となると……!)

咲夜、意を決し勢い良く地面を蹴る。
彼女の選択は……地雷覚悟の突撃か。

霊夢との距離が急速に縮まってゆく。残り5メートル、4メートル、
全力疾走する咲夜を、博麗アミュレットは捉えきれない。彼女の服をかすめるだけにとどまる。

霊夢まで残り3メートル、2メートル、
地雷などまるで視界に入っていないかのように、突貫する咲夜。

残り1メートル。
あと1歩で地雷を踏む距離。それでもなお咲夜は、霊夢目掛けて果敢に突進する。
……14本のナイフと共に!

咲夜の選択は……地雷覚悟の突撃、に見せかけた時間停止からの強襲。
霊夢の目の前で時間を止めた咲夜は霊夢に向けて14本のナイフを投擲。
時間停止の解除と共に一斉にナイフが襲う様は、まさにチェスでいう詰み(チェックメイト)。
紅魔館のメイド、咲夜の放つそのスペルカードの名を……

「『チェックメイド』よ、霊夢」
「ッ!」

612宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:01:10 ID:4aaM21BQ0
霊夢は自ら『常置陣』を叩き、その反動で真っ逆さまに空中へ飛び出す。
ナイフは間一髪、手足や背中をかすめるだけに留まった。

「『詰んだ』と言ったでしょう。それも計算のうち」

霊夢に殺到するナイフの中に紛れてただ1本だけ、上空へ向けて放たれたナイフがあった。
咲夜は霊夢が『常置陣』で上空に逃げる事も読んでいたのだ。
飛行能力を失ったのはお互い様だ。いつもの様に飛行で回避することは不可能。
いや、仮に霊夢がいつもどおり飛べたとしても、彼女の飛行スピードではかわしきれないだろう。

「せええええええい!!」

霊夢は苦し紛れに空中で刀を振りかぶるが、ナイフの軌道には届かない。
その反動で刀を振りかざした霊夢は竹トンボの様に回転し……急激に空中での軌道を変えた。
間一髪の所でかわされ、明後日の方向へ向かうナイフ。

「なっ!?」

驚愕の声を漏らす咲夜。霊夢はあんな飛び方しない。
あの『異国風の拵えの刀』が宿す能力なのか?
霊夢はそのままくるくると回転し、咲夜の頭上を通過する。
まずい、ナイフがもう2本しかない。距離をとられたら、圧倒的に不利。

613宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:01:43 ID:4aaM21BQ0
だが咲夜の上空を通り過ぎようとした霊夢は、咲夜の読みに反してそのまま刀を振り下ろしてきた。

「速いッ……!」

最初の奇襲に増して鋭い一撃。
ナイフで辛うじて受け止めつつも、
霊夢の全体重を載せた刃を防ぎきることはかなわず、咲夜の右肩に食い込んだ。
なおも霊夢は嵐の如く刀を振るい、猛攻を仕掛けてくる。
先刻とは逆に、防戦一方となる咲夜。

(つ、強い!!霊夢はこの僅かな時間で刀の扱いを覚えたというの!?
 右肩の傷が深い、持ちこたえられない!
 もう一度、時間を止めなければ……!
 時間停止の連発、今の状態で何秒止められる……?)

今の咲夜に迷っていられる余裕はなかった。
再度の時間停止。
能力の制限を受けた上に『休憩時間』が十分取れない現在、停止可能なのは……

「残り0.5秒……!殺すしかない……!
 心臓を一突きにして……!迷うな、十六夜咲夜……今の霊夢を野放しにする訳にはいかない……!」

かくして、震える刃が渾身の力と共に博麗霊夢の胸に振り下ろされる……!

コツン。

ナイフを握る左手に響いたのは、人体ではありえない、硬い感触。
驚愕する咲夜。

「詰め物……!」

614宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:02:05 ID:4aaM21BQ0
そして、時は動き出す。
自らの胸に突き刺さったナイフを見た霊夢がつぶやいた。

「アンタへの対策で前もってまな板を仕込んでおいて、
 ついでにゆったりした服に着替えたのは正解だったみたいね……。
 ねえ、咲夜。アンタの『時を止める』能力だけど、正確には『ものすごくゆっくり』にしてるんでしょう?
 でなければ、時を止めても光が伝わらなくて物を見ることができない……からね」

「いきなり何を言い出すの……?」

「それでね、時間の流れを咲夜にとって『ものすごくゆっくり』にするってことは、
 私にとっては逆に咲夜が『ものすごく速く動く』ってことよね……」

「だから、どうしたというの……?」

霊夢の『無駄話』に応じる咲夜。
もう一度時を止めるための『休憩時間』が……万全には程遠いが、再度チャージされた。
咲夜はすかさず再び0.5秒だけ、時間を停止。
今度は霊夢の右こめかみに向けて、ナイフを突き立てた。
……だが。

「……この『アヌビス神』に、
 止まった時の中で動くスピードを『憶えさせて』くれてありがとう、咲夜」

霊夢の手にした刀が止まった時の中でひとりでに動き、咲夜のナイフを受け止めていた。

「別にアンタをただ殺す位ならいつでもできたんだけど、今後の戦いもあるじゃない」

霊夢の繰り出す突きをナイフで受けようとする咲夜だったが、刀はナイフを通り抜け咲夜の脇腹を貫いた。

「お陰で少しはラクができそうよ、さようなら」

615宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:02:16 ID:4aaM21BQ0
膝をつき地面に崩れ落ちた咲夜の額に、再び突きの狙いを定める霊夢。

(霊夢……貴女は、何故……)

咲夜を見据えるその瞳からは、何も伺い知ることはできない。
こうしてずっと見つめ合っていても、何も覗くことができない、深い深い闇がそこにあった。
そこで咲夜、異常に気付く。

(……トドメを刺してこない?……いや、これは……『時間停止』!
 私じゃない……一体誰が!)

異常の原因は、咲夜の背後にあった。止まった時の中なのに、身体を持ち上げられる感覚。

「やれやれ……
 『時を止める気配』がするから騒がしい所に近づいてみたものの、DIOの野郎は居なかったか。
 代わりに見知らぬ女同士が戦っていた。そして、そのうち片方が止まった時の中で動く俺に気付いた様だ……。
 状況がさっぱり掴めねえが……」

咲夜を抱えているのは、身長2メートルに迫ろうかという大男。
若々しさの中に、どこかダンディさを感じる低い声。
強固な意志を感じさせる凛々しい顔立ち。
全身藍色に統一された独特の服装……山の巫女から話に聞いた『ガクラン』らしきその出で立ちから判断するに、
彼は外の世界の学生なのだろうか。(早苗と同年代とはとても信じ難いが。)

「あ、貴方は一体……」

「黙ってろ、傷に障る。しかし、状況がさっぱり掴めねえ、だが……
 そうだ、やることはハッキリしている……!」

咲夜の質問を、男はぶっきらぼうな言葉で遮る。
そして、廃洋館の陰に咲夜を下ろし、霊夢の方に向き直ると……。

616宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:02:38 ID:4aaM21BQ0
「エジプトでバラバラにぶちまけたハズの『アヌビス神』がなぜここにあるかはこの際どーでもいい……
 やることはハッキリしている……。今この場で、もう一度粉々にするだけの事だからな……!
 『星の白金(スタープラチナ)』!!」

ドスの効いた叫びと共に、男から青い人影が飛び出した。
青い人影は隆々とした筋肉を躍動させ、止まった時の中で未だ突きの構えを取る霊夢に突進する。
その拳が狙うは霊夢の握る『アヌビス神』の柄。

「オラァッ!」
(ガシィン!!)

だが、『アヌビス神』を手にした霊夢の身体はまたも止まった時の中でひとりでに反応し、
スタープラチナの拳を刀の峰で受け止めた。

同時に、スタープラチナによって数秒の間止められていた時間が、再び動き出した。
霊夢は後方に後ずさりながら、すぐさま状況を把握し、体勢を立て直す。

「『スタンド使い』……貴方の事は話に聞いていたわ。
 『時を止める』能力を持っているとまでは聞いていなかったけど……既に対策済みで助かったわね。
 そして……刀を持つ手が痺れる程のこのパワーも……今、改めて『憶えた』わ」

男の右手の甲から走る鋭い痛みと滴る血液……
スタープラチナが受けたダメージのフィードバックに気づいた男は、事態の深刻さを察した。

(こいつは、ヤバいぜ……!
 どうやら『アヌビス神』は、『止まった時』の中での攻撃まで『憶えていた』らしい……!
 あの『操られた女』を止めるとなると……生死を気遣う余裕は、無えみてーだぜ……!)

617宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:03:01 ID:4aaM21BQ0
男の決断は早かった。
ポケットから手の平サイズの赤い金属塊……ミニ八卦炉を取り出し、
スタープラチナの右手に握らせたそれを霊夢に向けてかざしたのだ。

(この八角形のカタマリ……説明書きによれば
 どうやら元は霧雨魔理沙とかいう奴の持ち物らしいが、
 今はスタンド使いでも取り扱い可能になっているらしい……。
 さっき試しにスタンドエネルギーを送り込んでみたら、レーザー光線が出た……
 大きなエネルギーを送り込む程、強力なレーザーが出るみてーだ……
 全力で撃てば、奴にはかわしようが無いほどの巨大なレーザーが、出る……!)

「オオオオオオオオオオオ……!」
(キィィィィィィイイイイ……)

スタープラチナが右手の『ミニ八卦炉』に気合を込めると、
その中心が微かに輝き出し、耳を突く甲高い音が漏れだした。
かなりのエネルギーが蓄積されている。
それこそ『ミニ八卦炉』の本来の使い手・霧雨魔理沙の『マスタースパーク』にも劣らないほどのエネルギーが。
流石の霊夢も、僅かに動揺の色を示した。

(『マスタースパーク』が来る……!この距離、避けきれない……!)

(アレも喰らったら俺が『憶えて』やるから心配いらねえぜ、霊夢の嬢ちゃん!)

(憶える間も無く黒焦げよ……私も、アンタも。
 何、まだ手はある……私は『アレ』に集中するから……私の身体を『完全に』アンタに貸すわ)

618宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:03:35 ID:4aaM21BQ0
「フフ、フフフフフ」

突如、霊夢の顔つきが豹変した。据わった目で不気味な笑みを浮かべだした。
殺気の質が変わった。
人形のような無機質な殺気から、抜身の刃物のような攻撃的な殺気に変わったのだ。

「ウッシャアァーーーッ!!」

刀を振り上げ、甲高い奇声を上げながら男に飛び掛かる霊夢。

「オラアアアアアアアアア!!」
(ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!!)

男はそれを全力の砲撃で迎え撃つ。
ミニ八卦炉から巨大な青白い光が噴射された。
辺りを満たす、独特の重く鋭い振動音。
全てを焼きつくす直径5メートルの極太の光の柱が、博麗霊夢を無慈悲に飲み込んだ。
だが……

「ぶった斬ってやるぜェーーーーッ!!ワハハハハハ!!」

「なにィー!無傷ですり抜けて来ただと!」

男にとってそれは目を疑う光景だった。
霊夢は、マスタースパークもかくやという威力の破壊光線を、耐えるでも、押しのけるでもなく、
『そんなものただの懐中電灯だ』と言わんばかりの勢いで通り抜けてきたのだ。

619宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:03:55 ID:4aaM21BQ0
『夢想天生』……その瞬間、霊夢は『空を飛んだ』のだ。
世界の、幻想郷の管理者たる霊夢が創造主から与えられた、全ての事象の干渉を拒む能力。
紙に書かれた人物が読者に触れることができないように、男の放つ全力の光線は彼女に届かない。
わずか数秒の発動時間だったが、刀の間合いまで接近するのには、十分過ぎる時間であった。

「間合いだッ!デャアーーーーーッ!!」

「覚悟を……決めるしかねえようだな!!」

そして、アヌビス神をその身に『下ろした』霊夢の放つ二人掛かりの攻撃(タンデムアタック)と、
男の放つ全身全霊のオラオララッシュが、激突した。

「シャッ!ウッ!ウッシャッ!シャッ!くゥたばれェーーーーッ!
 ウーーッシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャァーーーッ!!」

「行くぜオイ!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
 オラララオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」

霊夢の振るう刀と、男のスタンドの拳が、両者の間でバチバチと無数の火花を散らす。
髪を振り乱し乱舞する霊夢、スタンドの肩越しに目標を睨みつける男。
両者の間で、凄まじい打撃と斬撃のラッシュがしばしの間、拮抗するが……。

「ぐうっ……ま、まずいッ!やはり、こちらのパワーを、『憶えて』きているッ!」

スタープラチナと、男が、ジリジリと押されてきている。
急所こそ辛うじて外すものの、徐々に切り刻まれてゆくスタンド像。
そのフィードバックは本体の男にも伝わり、全身から血が吹き出し始める。

620宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:04:13 ID:4aaM21BQ0
「と……止めなければッ!一旦、奴の動きを止める!『時よ止まれ』!」

スタープラチナの能力が発動し、再び時間は停止する。
アヌビス神を振りかぶる霊夢の姿も、精巧な等身大フィギュアの様に静止……しなかった。
一旦距離を置こうとして飛び退いた男の後を、追いかけてきたのだ。

「なっ……!止まった時の中で『防御』や『反撃』するだけでなく、
 『攻撃』まで出来るようになっただと!」

「言ったはずだ!その『時を止める攻撃』は『憶えた』と!
 ワハハハハハハ!今度こそ、死ねぇ!ブッた斬れろォ!」

「いや……死ぬのは、テメーだ……。目の前、見てみな」

「!!」

止まった時の中、霊夢の腰の辺りを八卦炉が宙に浮いている。

「今飛び退くときに置き去りにしちまった……なけなしのスタンドエネルギーを込めてるから、
 時間が再び動き出すと同時にテメーに向けてレーザーをぶっ放す……
 俺を倒そうと、倒すまいとな……早く避けた方が良いぜ」

「う……ウソだ、ハッタリだ!そんなパワーが残っているハズがねえ!」

「ウソか真か当ててみな」

「クソッ!嬢ちゃん、もう一度『アレ』を!……しまったアッーー!!
 止まった時の中で動くのを『憶えた』のは俺だけだーー!霊夢の嬢ちゃんは動けねぇーッ!!」

「時間切れだぜ」

621宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:04:38 ID:4aaM21BQ0
そして、時間は再び動き出した。
宙に浮いていた八卦炉は、再び重力に引かれ地面に向かう。

「レーザーは……出ね「オラァッ!」

『アヌビス神』がミニ八卦炉に気を取られた瞬間、霊夢の右肩に突き刺さるスタープラチナの鉄拳。
フッとばされてゆく霊夢、苦し紛れに放った左ストレートは男の右手の甲をかすめるに留まった。
刀は衝撃で握力を失った右手からすっぽ抜け、男の頭上を飛び越えていった。

「ああ、レーザーなんて出すスタンドエネルギーは残ってねえぜ……!
 もっとも、パンチを一発打ち込む隙を作る事はできたみてーだがな……!!」

その時、男は右手の甲の違和感に気付く。

「何だ、この紙……うおっ!!」

男の右手が、右手の甲に張り付いていた紙切れが、まぶたを突き抜けるほど強力な青白い閃光を放ち……爆発した。
霊夢は殴られざまに『封魔陣』のお札を貼り付けていたのだ。
その威力はとても一枚の紙によって引き起こされたとは思えない程で、
身長2メートル近い男の身体を、何メートルも後方に吹き飛ばしたのだった。

15メートル程の距離を空けて地面に投げ出された霊夢と男。
両者とも、辛うじて意識は残っていたが、立ち上がることはできない。いわゆるダブルノックアウトである。

死闘の繰り広げられた廃洋館の周囲を、しばしの間沈黙が支配した。

622宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:05:13 ID:4aaM21BQ0
霊夢は、廃洋館の玄関近くにうつ伏せになって倒れていた。
意識を取り戻した霊夢が周囲を探ろうと首を動かそうとしたところで、身体の異常に気付いた。

(……刀を落とした上に右肩が外れてる……おまけに酷い筋肉痛だわ。
 どうやらあの男に出し抜かれたみたいね。
 あの『ワンちゃん』残念ながら、知能まで犬並みだったってことか)

霊夢の支給品である刀には、魂の力・『スタンド』が宿っていた。
スタンドの名は『アヌビス神』。
墓所を守護する狗頭の神の名を冠された、そのスタンドの能力は大まかに3つ。

1.物体を透過する能力。
2.戦った相手のパワー・スピード・技を学習する能力。
3.刀身や柄に触れた者の精神を支配し、操る能力。

このうち、1番と2番の能力については先ほどの戦闘で示された通り。
咲夜のガードをすり抜けて脇腹を貫き、『星の白金』と互角以上の打ち合いを演じた上、
時間停止にも対応して見せたのが、それである。
3番の能力。これは霊夢には通用しなかった。彼女の持つ『空を飛ぶ程度の能力』のお陰だ。
如何なる重圧も、力による脅しも、彼女には全く通用しない。
故に『アヌビス神』の干渉も、彼女の許す時以外は全く受け付けないのだ。

(殴られざまに身体の主導権を奪い返して『封魔陣』を叩き込んでやったはいいけど、
 あの『スタンド』とやらにはどこまで通用するのかしらね)

623宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:05:38 ID:4aaM21BQ0
つまり霊夢は……自分の意志で殺し合いに乗っていたのだ。
あの男に、『太田順也』に……霊夢は気付いてしまった……
世界の『創造者』たる存在に『殺し合え』と命じられてしまった。
刷り込まれたように、当たり前の様に、
世界の管理者である彼女は優勝を目指して、自ら殺戮に身を投じたのだった。

最初に遭遇すると予感していた十六夜咲夜は、
事前に対策を打っていたこともあって難なく戦闘不能に追い込んだ。
狙い通り、完全に制御下に置いた妖刀『アヌビス神』に
『止まった時の中での攻撃』を学習させることにも成功した。

咲夜の救援に現れた新手の『スタンド使い』は、霊夢の予想を遥かに超えた強敵だった。
アヌビス神から話に聞いていた通りの強力なスタンド・『星の白金』に、冷静な判断力と、
強力な支給品『ミニ八卦炉』、……極め付けに、咲夜と同じタイプの能力『時間停止』まで獲得していた。

何とか痛み分けの形に持ち込む事はできたものの、右肩を脱臼する重傷を負った上、
スタンドであるアヌビス神の能力を最大限に発動し、『夢想天生』、『封魔陣』と強力なスペルカードを
立て続けに使用したせいで霊力・体力を大きく消耗してしまった。

624宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:06:10 ID:4aaM21BQ0
ゲーム開始からまだ2時間余り、戦うべき相手はまだ9割以上残っているのに、この消耗はあまりに大きい。
それでも、『創造者』に刷り込まれた意志……異変解決モードの、
幻想郷のシステムの一部と化した霊夢の思考は冷静だった。

(正直、手痛いダメージを負ってしまったけど……
 ここで、この状況でこの男と遭遇出来たのは幸運かもしれないわね。
 この男は『アヌビス神』のことを知っている……アヌビス神が人を操る妖刀であることを知っている……)

アヌビス神を失ったこのタイミングで、『殺し合いに乗る意志が無く、刀に操られていた』フリをすれば
正義感が強いと聞くこの男に同行できるかもしれない。
そうすれば保護を受けて体力を回復したり、未知の強敵に相対した際に共闘したり捨て駒にすることができる。
面倒なら不意を突いてさっさと殺害してしまっても良い。

(とにかくここは……しばらく大人しく『倒れたフリ』をしていましょ。
 ……封魔陣がどの程度効いたかにもよるけど……しばらく様子を見た方が良いわね)

霊夢は拾っていたナイフを白いネグリジェの袖に一本忍ばせ、
しばらく動けないフリをして男の復帰を待つことにしたのだった。

625宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:06:32 ID:4aaM21BQ0
男は、廃洋館の角のすぐ近くで大の字に倒れていた。

(今のは……『スタンド攻撃』それとも、ジジイの使う『波紋』か……
 ……すげえ光の割にケガは無えみてーだが……)

男の忌々しげな視線の先は右手の甲、霊夢の執念の反撃の跡があった。

(身体が、殆ど動かねぇ……。感覚は残っているようだが……。
 スタンドも出せねぇ。この『お札』のせいか……。
 チッ、『スタンド使い』が『悪霊憑き』ってのはあながち間違いでもなかったらしいな……)

(あの赤リボンの女も動けねぇか……息はしてるみてーだが……
 『アヌビス神』からはどーにか引き離したが……
 妖刀の魔力に操られるまでもなく、殺し合いに乗っているということも十分にありうる……
 木立の中にすっ飛んで行った『アヌビス神』も早いトコ始末しねぇとマズイ……
 刀に刺されてた方の、女中風の女も……早く手当てしてやらねえと……)

男はその強靭な精神力でもって再び身体を動かそうとする。
……努力の甲斐あって、遂に男は左手を右手の甲に持っていくことに成功した。
そのまま左手でお札に触れようとするが、高圧電流のようなスパークと斥力によって阻まれてしまう。

(クソッ……まさに『悪霊封じ』のお札という訳か)

その時、男の右手を柔らかくすべすべしたものが触れる感触があった。
……女の手だ。

626宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:06:49 ID:4aaM21BQ0
男が懸命に首を向けると、『女中風の女』が這うようにして廃洋館の陰から手を伸ばしてくるのが見えた。

「『お札』に、やられたのですね?」

女は小声でそう話しかけてきた。
青いエプロンドレスの背中には、大きな血の跡が滲んでいる。

「少々痛みますが……我慢して下さい」

「何をする気……だ」

男が問いかける間に、すでに『治療』は終了していた。
女の手には、ナイフと血の付いたお札が握られている。
突如男の右手に鋭い痛みが走り……思わず腕がビクリと跳ねる。
男の身体の自由が、戻っていた。

「時を止めて……その間にナイフで皮膚ごとひっぺがしたのか」

「動けるようになったみたいですね。
 右手……ごめんなさい。もう少し上手くできれば良かったのですが」

「あんたに比べれば、だいぶマシだ……ケガ人が無茶しやがるぜ」

女の手には熱湯を浴びたように、いくつもの水ぶくれができていた。
止まった時間の中で無理矢理お札を引き剥がそうとしたためだろう。

「ともかく、ありがとうよ……」

627宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:07:33 ID:4aaM21BQ0
(しかし、『時を止める』能力を持った女……か。
 スタンド像こそ確認できてねえが、俺の『星の白金』や、
 カイロで確かに灰にしたハズのDIOのヤローの『世界』と同じタイプの能力だ……)

(死人といえば、花京院はDIOに殺されたハズだが、なぜここに名前が載っている?
 DIOの手下のヴァニラアイスも、ポルナレフたちが確かに仕留めたハズだ……。
 俺のひいひいじいちゃんのジョナサン・ジョースターも、DIOの首から下になってたんじゃなかったのか?
 あの二人がまとめて生き返らせて呼び出したとでもいうのか?
 ……だが、現に破壊したハズの『アヌビス神』はスタンドごと元通りに復元されてたんだ、
 とても信じ難えが、やはり名簿の連中はここにいると考えて間違いなさそーだな……)

(情報をもっと集める必要があるな……。
 例えば今俺の傍にいる『時を止める』女……。
 顔も見たことがねぇ女だが、もしかしたら……実は俺やDIOと関係があって、
 (例えばの話だが、ジジイ辺りがコッソリ仕込んだ隠し子とかな)、それが何らかの手がかりになるかも知れねぇ。
 名簿には確か、俺の知らねぇ『ジョースター』姓に、『空条』姓、
 それから……『ブランドー』姓の名前があったな。『ジョニィ』に『徐倫』に『ディエゴ』……。
 女性名は『徐倫』だけだが……)

(まあ、本人に聞けばすぐわかる話か)

「おい……あんた、名前は」

「自己紹介は……後にしましょう。彼女は……霊夢は、まだ、戦う気です」

「何?」

「そして、ごめんなさい……私、貴方の言う通り……無茶、し過ぎた。
 ……後、お願いします。……そのあと名前、必ず…………おしえ……」

洋館の外壁に身体をあずけるようにして、女中風の女は再び気を失った。
同時に赤リボンの女が何かを叫びながら、飛び起きるのが見えた。

――――

628宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:08:14 ID:4aaM21BQ0
霊夢の耳には男の声と……建物の陰にいるであろう咲夜の声がかすかに聞こえてきていた。
薄目を開けると、仰向けに倒れながらも、確かに封魔陣を貼り付けたはずの右手を動かしている男の姿が見えた。
お札の効果は、すぐに切れてしまったらしい。あの男と同行するなら、これは好都合だ。

……そこで霊夢は、自らの行為の矛盾に気付いた。
果たしてあの場で封魔陣を繰り出す必要はあったのか?
男は私の事を刀に操られていたと思っている可能性が高い、
ならば刀を落とした時点で反撃を諦めた方が良かったのではないか?

「くっ……くそおおおおおおおお!!」

考えを巡らすと同時に、勝手に身体が動いていた。
全身の痛みを押して、無理矢理身体を起こしていた。

「はあ……、はあ……」

霊夢は、起き上がろうとしている男に向かってファイティングポーズを取っていた。
外れた右腕をぶら下げ、左腕だけで、
『さあ第2ラウンドの開始だ、さっさと立たないとぶん殴るぞ』と言わんばかりの気迫で身構えていた。

(なん、で……?)

自分の行動の意味が、分からない。
これではまるで、『私は刀に操られていようがいまいが、殺し合いに乗っています』と言っているようなもの。
情け容赦ないあの男の事だ、今度こそ殺す気で向かってくるに違いない。
私は、どうしてこんなことをしている?
彼女に浮かんだ疑問は、ムクリと起き上がった目の前の男の言葉によって、霧散した。

629宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:08:25 ID:4aaM21BQ0
「ガキが……そんなに負けるのが『悔しい』か」

「うるさいッッ!!……まだ負けては、いないわ」

それは、人が本来生まれ持っていた感情。
大人になっていく過程で何度も暴発させ、叩きつけられ、次第に慣らされ、退化していく感情。
太田順也に『殺し合え』と命じられた瞬間、蓋をされた霊夢の感情の、ごく一部。
全力の戦いに負けて『悔しい』と思う感情。

その恵まれ過ぎた天性の能力ゆえに、霊夢が数えるほどしか味わったことがなかった感情だった。
だから、耐えられなかった。負けた『悔しさ』をこらえて、『与えられた役割』に徹し、
男の保護下に入りつつ機を見て殺害することは、彼女のプライドが許さなかったのだった。
もう殺し合いなどどうでもいい。ただ目の前の男を殴り倒して、一言『まいった』と言わせたい。
その一心が博麗霊夢を、刷り込まれた役割から逸脱させたのだった。

「さあ、決着をつけるわよ……もうこんなものは、要らない」

霊夢が、ネグリジェの袖に収めていたナイフを足元に投げ捨てた。
地面に突き刺さるナイフを見て、男が問いかける。

「それで……『テメーは俺を殺す気が無い』とアピールしているつもりか?
 そんなアピールした所で、『俺がテメーを殺す気にならない』という保証はどこにも生まれないんだぜ……!」

「勘違いしないで。私の戦闘スタイルはナイフを必要としない、というだけよ。
 それに、ナイフだと……当たり所が悪いとすぐ死んじゃうじゃない……!
 私は、あんたをボコボコに殴り倒して……一言『まいった』と言わせたい。
 だからナイフは要らない。それだけよ」

630宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:08:58 ID:4aaM21BQ0
霊夢は、自分が歯を出して笑っているのに気が付いた。
もっとも、眉間にシワを寄せて額に血管を浮かべ、目の前の男を睨みつけているその表情を見て、
『笑っている』と判別する者はいないだろうが。
男は……両手をズボンのポケットに突っ込み、直立不動の体勢で霊夢を見据えていた。
こちらの出方を伺っているようだ。あの『スタープラチナ』は、本体の肩から左腕だけを出現させている。

廃屋の傍らで睨み合う不良が二人。
その間に流れる張り詰めた空気が、今にも断ち切れんとしてビリビリと震えていた。

そして一陣の夜風と共に、緊張の糸は断ち切られた。
霊夢は足元のナイフを機敏な動作で拾い上げ、アンダースローで投げつけた。
男は霊夢の投剣を半身になってかわし、その勢いに任せてスタープラチナの裏拳を打ち込んだ。
……男の背後、『廃洋館の陰で聞こえた物音』に向かって。

「……ウッ!!」

だが物音の正体に気付いた男は、振り下ろそうとした拳をピタリと止めた。
物音の正体は咲夜だった。十六夜咲夜が首を斬り落とされ、転げ落ちる音だったのだ。

「死んでいる!……既に……!」

「咲夜ァ!!」

悲痛な叫びと共に咲夜の元に駆け寄る霊夢。
ついさっき殺そうとした相手を、何故?
脳裏をよぎる疑問の答えを探す余裕は、男にも、また霊夢にも存在しなかった。

【十六夜咲夜@東方紅魔郷】 死亡

631宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:09:19 ID:4aaM21BQ0
――――

既に『犯人』は廃洋館を離れつつあった。

『クク、クククッ』

咲夜を殺害したのは、年の頃15に届くかどうかという見た目の小柄な少女。
緑を基調としたベストとスカートに身を包み、セミロングの銀髪に黒いリボン付けたその姿は
『外界』の女子高校生に見えなくもない。
彼女の名は魂魄妖夢。その手には清水の様に冷たい輝きを放つ刀を携えていた。

『フフフフフフッ……!』

彼女が廃洋館の付近を通り掛かり、そこで戦闘が行われている事を察したのが数分前。
極力気配を殺しつつ慎重に近づくと、博麗霊夢と見知らぬ長身の男が激戦を繰り広げていた。
本来なら知り合いの方に付くべきなのだろうが、男の傍の物陰には咲夜がいた。
状況が判らない。
しばし戦闘の行方を見守っていると、霊夢の振るっていた刀が
男の操る『半霊』らしき何かの攻撃を受けてすっぽ抜け、妖夢の目の前に飛んできたのだった。
刀剣の扱いを得意とする妖夢にとってそれは、願ってもない幸運だった。

『ワーーッハッハッハッハッハッハ!!』

願ってもない幸運だった。笑いを堪え切れないほどに。
霊夢の嬢ちゃんから話は聞いていたがこのメスガキ、仲間内じゃあ一・二を争う剣の使い手と聞いている。
アイツと違って、コイツの精神は簡単に乗っ取ることができた。
おまけにコイツも『スタンド』らしきものを使えるじゃねえか!
お陰で、睨み合う奴らに気付かれずに『時間を操る程度の能力』を持つ女を
まんまと仕留めることができたゼェーッ!

『ギャハハハハッハハ、ぐふフフフははは、ゲッヒヒヒーーーッ』

632宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:09:46 ID:4aaM21BQ0

あーもうマジ笑い止まんねーー!くるしーっ。
『星の白金』のパワー!
『止まった時』の中で動く程のスピード!
そして『魂魄妖夢』のワザとスタンド!
『アヌビス神』はこれら全てを手に入れたッ!!
これもう『一対一』なら無敵なんじゃねーの!?
一度は敵わないと悟ったDIO様にも勝てんじゃねーの!?
一人一人、『一人でいる所を慎重に』仕留めて行けば、優勝も遠くない気がするゼェーッ!
……ん?『優勝』?よく考えたら、『支給品』のオレに優勝特典は与えられるのか?
まあいいや、オレの願いは『人でも何でも、とにかく斬って斬って斬りまくる』事だからな!
願いは自分の力で叶えるもの!運命は自分で『斬り』開くもの!
な?アンタもそう思うだろ?妖夢の嬢ちゃん!

「ええ……全ては斬れば分かります……そうでしょう?『アヌビス神』」

【D−3エリア/黎明】
【魂魄妖夢@東方妖々夢】
[状態]:健康、アヌビス神に精神を乗っ取られている
[装備]:衣装・髪型は神霊廟ver、アヌビス神
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜2(刀剣類が無いことを確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:全員斬り殺す。
1:一旦廃洋館の傍を離れる。
2:一対一の状況を作り、一人ひとり斬り殺す。
3:『アヌビス神』のスタンドについて知っている者を、優先的に仕留める。DIOも例外ではない。
※魂魄妖夢の参戦時期は東方神霊廟以降です。
※能力制限の程度については、後の書き手さんにお任せします。
※アヌビス神の参戦時期は、承太郎に敗北し刀身をナイル川に沈められた直後ですが、完全に修復されています。
※アヌビス神は霊夢から、幻想郷の住民についての情報を得ています。
※アヌビス神は、現在『咲夜のナイフ格闘』『止まった時の中で動く』
 『星の白金のパワーとスピード』を『憶えて』います。

――――

633宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:10:14 ID:4aaM21BQ0
咲夜の首は非常に鋭い刃物で切断されていた。
間違いなく『アヌビス神』によって斬り落とされたものだろう。
付近を捜しても、落ちているはずのそれを見つける事はできなかった。
『新たな持ち主』がすぐにここを立ち去ってくれたのは、傷だらけの二人にとっては幸運と言うべきか。

「……咲夜、ちょっとの間だけど、ここで待っててね。
 全部終わったら、必ず紅魔館に送り届けてあげるから」
「吸血鬼の主人に仕える、時を止めるメイド……か」

廃洋館の角には、人間一人がちょうど横になれる程の穴が掘られていた。
部屋から失敬したベッドシーツに咲夜の遺体を包み、静かに土を被せる。
そうしてできた小さな盛り上がりに、咲夜が男から剥がしたお札の刺さったナイフを立て、
後で掘り返すための『目印』とした。ついでに缶ビールも供えておいた。

「おい、テメー。……なぜ殺し合いに乗っていた?」

男は壁にもたれて座り、底に穴の開いた空き缶を投げ捨てると霊夢に尋ねた。

「んぐっ、んぐっ……、ぷはーっ。霊夢、よ。博麗霊夢。
 『太田順也』に命令されたからよ。……初めて会った男だけど、あの男には逆らえる気がしなかった。
 ……それだけよ」

あぐら座りで豪快に3本目のビールを空けた霊夢は、短くそれだけを答えた。
自分がこの世界・幻想郷の『管理者』であること、
そして最初に呼び出された所で『太田順也』が幻想郷の『創造者』であることに気付いてしまった……
とは、流石に言えなかった。

「『カリスマ』という奴か……」
「そういうもの……なのかしらね」

4本目を開封した霊夢に、男は更に質問を投げ掛けた。

634宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:10:48 ID:4aaM21BQ0
「じゃあ、テメーはなぜ正気に戻った?」
「…………」

霊夢のビール缶が口元で固まった。別に男は時間を止めてはいない。

「答えられねーのか?それとも自分でもわからねーってだけなのか?
 ……テメーのダチが、テメーと同じようにあの野郎の『カリスマ』にあてられて、
 殺し合いに乗らねーとも限らねーんだぜ?正気に戻す方法がねーなら、殺すしかねえ」

霊夢は半ば観念したという面持ちで、小声で話しだした。

「わかった、話すわ。……『悔しかった』からよ。あんたに負けそうになったのがね。
 そうね……あの相討ちの後、私は『刀に洗脳されていたフリ』をしてアンタに近づこうと思ってたのよ」

「それで隙を見てグサリ……の予定だったのか」

「でも、アンタをそうやって倒すのは、何だかとても『悔しかった』。
 よくわからないけど、負けた気がして」

「……で、『プッツン』したのが、正気に戻るきっかけだったという訳か?」

「そう、それが第一のきっかけ。
 プッツンした私が我を忘れてアンタに再戦を申し込んだ時に、咲夜が襲われたのが……
 第二のきっかけね……こんなこと言って、信じてもらえるかわからないけど」

「……いや、信じるぜ……とりあえずの所はな」

「ありがとう。……でも安心して。あの男の『カリスマ』にあてられたのは、私だけだと思うわ」
(あの男が『創造者』ということに気付いているのは、恐らく私だけだと思うから)

「根拠は」「勘よ」「やれやれ……」

635宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:11:00 ID:4aaM21BQ0
「あ、でも紫あたりは怪しいかも。
 まー、もともと殺し合いに乗りそうなヤツらも結構いるからね……」

「そうだったな……この名簿には、DIOのヤローもいる……」

それから廃洋館の一室に場所を移した霊夢は、男と参加者についてお互いに知っている限りの事を話しあった。
外界の住人である男が幽霊や妖怪の存在を疑わしく思っていたのは予想の範囲内だったが……
その他にも疑問に浮かんだ点はいくつもあった……霊夢が半数以上の参加者と顔見知りなのに対し、
男との直接の顔見知りは10人にも満たず、霊夢が『アヌビス神』から伝え聞いた人物と一致していたこと。
霊夢と男の知り合いの、男女比が両極端に分かれていたこと。
そして、男の祖父である『ジョセフ』なる人物から伝え聞いただけの、
50年、100年の昔に故人となったはずの人物が何人も居たこと。

いくつもの疑問が浮かんだ……だが、霊夢が抱いた最大の疑問点……より正確には、不安は……。
……その不安は、まだハッキリと言葉にはできなかった。
それでも、何となく……これから、霊夢の世界が、世界の住民達が、
咲夜の様に、あるいはもっと酷く蹂躙されるのではないか。そんな予感がした。
霊夢は10本目のビールを飲み干していた。
形にできず、だが確かにそこに存在する不安を飲み込む様にして。

男はそろそろ行くぞとばかりに立ち上がり、布の巻かれた右手でビールの缶を勢い良く握り潰した。
……右手に走る痛みと共に、男は咲夜の事を思い出した。

「……やれやれだぜ」

そして自分の名前を告げることができなかった事を、『空条承太郎』は少しだけ悔やんだのだった。

夜空は、うっすらと白み始めていた。

――――

636宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション―― ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:11:36 ID:4aaM21BQ0
【D−3エリア・廃洋館内/黎明】
【博麗霊夢@東方 その他】
[状態]:右肩脱臼(処置済み。右腕は動かせますが、痛みは残っています)
   左手首に小さな切り傷(処置済み)、全身筋肉痛、あちこちに小さな切り傷(処置済み)
   肉体疲労(中)、霊力消費(大)
[装備]:いつもの巫女装束、アヌビス神の鞘、
[道具]:基本支給品、自作のお札(現地調達)×たくさん
   DIOのナイフ×5、缶ビール×9、不明支給品0〜1(現実に存在する物品)
   その他、廃洋館で役立ちそうなものを回収している可能性があります。
[思考・状況]
基本行動方針:この異変を、殺し合いゲームの破壊によって解決する。
1:戦力を集めて『アヌビス神』を破壊する。殺し合いに乗った者も容赦しない。
2:承太郎と同行したい。が……今までの経緯もあるので、無理強いはしない。
3:いずれ承太郎と、正々堂々戦って決着をつける。
※参戦時期は東方神霊廟以降です。
※太田順也が幻想郷の創造者であることに気付いています。
※空条承太郎@ジョジョ第3部の仲間についての情報を得ました。
 また、第2部以前の人物の情報も得ましたが、どの程度の情報を得たかは不明です。
※白いネグリジェとまな板は、廃洋館の一室に放置しました。

【空条承太郎@東方ジョジョの奇妙な冒険 第3部 スターダストクルセイダース】
[状態]:右手軽い負傷(処置済み)、全身何箇所かに切り傷(処置済み)、肉体疲労(中)
   左腕以外のスタンド封印(時間とともに回復しますが、その速度は不明です)
[装備]:長ラン(所々斬れています)、学帽、ミニ八卦炉
[道具]:基本支給品、DIOのナイフ×5、缶ビール×2、不明支給品0〜1(現実に存在する物品)
   その他、廃洋館で役立ちそうなものを回収している可能性があります。
[思考・状況]
基本行動方針:主催者の二人をブチのめす。
1:花京院・ポルナレフ・ジョセフ他、仲間を集めて『アヌビス神』を破壊する。DIOをもう一度殺す。
  その他、殺し合いに乗った者も容赦しない。
2:霊夢他、うっとおしい女と同行はしたくないが……この際仕方ない。
3:あのジジイとは、今後絶対、金輪際、一緒に飛行機には乗らねー。
4:霊夢との決着は、別にどーでもいい。
※参戦時期はジョジョ第3部終了後、日本への帰路について飛行機に乗った直後です。
※霊夢から、幻想郷の住人についての情報を得ました。女性が殆どなことにうんざりしています。

※十六夜咲夜は、東方輝針城直前からの参戦でした。
※十六夜咲夜の遺体は、廃洋館の角の付近に埋められています。
 お札の刺さったナイフが目印に立てられています。缶ビール1本が供えられています。
※DIOのナイフが5本、廃洋館の周辺に転がっています。
※白いネグリジェと・まな板・ビールの空き缶が、廃洋館の一室に放置されています。

637 ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 22:12:05 ID:4aaM21BQ0
以上で投下を終了します。

638 ◆YF//rpC0lk:2013/08/25(日) 22:38:52 ID:Wi4ltfwc0
乙です
まとめに支給品情報も載せる予定なので
そちらの詳細情報もお願いします。

639名無しさん:2013/08/25(日) 22:41:34 ID:5oZLuiEc0
主人公コンビ 受難の末に結成ですね
ジョジョロワではあまり活躍できないどころかマスコット扱いを受けてしまっていたこともあるアヌビス神ですが絶好調のスタートとなりましたね
妖夢の明日はどっちだ! to be continued→

640名無しさん:2013/08/25(日) 23:03:44 ID:ZWSouLLk0
投下乙!
霊夢、ここでもマーダー化かと思いきや承太郎との戦闘で改心して一安心
つか妖夢!それ拾ったらあかん!乗っ取られとる!
ロワ内で原作通りの洗脳効果がしっかりついてるおかげでアヌビス神も相当厄介な奴に…
そしてやはり承太郎カッコよかった…!
しかし咲夜さん…(泣)

641 ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 23:47:27 ID:4aaM21BQ0
>>638
いつも更新乙です。
支給品情報を投下します。

支給品紹介
○アヌビス神
【出典:ジョジョの奇妙な冒険 第3部 スターダストクルセイダース】
「絶ッ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜対に、負けなぁーーーいッ!」
博麗霊夢に支給。
日本刀に近い形状の、エジプトの古刀。
同名のスタンド『アヌビス神』が宿っている。
そのスタンド能力は3つ。
1.物体を透過する能力。
2.戦った相手のパワー・スピード・技を学習する能力。
3.刀身や柄に触れた者の精神を支配し、操る能力。
現在は、刀身を魂魄妖夢が装備中。鞘を霊夢が装備中。
鞘自身にに特殊な能力はない……が、鞘に収まったアヌビス神は
スタンド自身の意志で抜かれる事を拒むことができる。
『咲夜のナイフ格闘』『止まった時の中で動く』『星の白金のパワーとスピード』を『憶えて』いる。

○DIOのナイフ
【出典:ジョジョの奇妙な冒険 第3部 スターダストクルセイダース】
「そこで承太郎!貴様が何秒動けようと関係のない処刑を思いついた」
十六夜咲夜に支給。
DIOがカイロ市内のレストランで大量に拾ってきた普通の洋包丁。
今回咲夜に支給されたのは16本だが、作中ではもっと大量に登場していた。
現在は霊夢・承太郎が5本づつ所持。
咲夜の埋められた場所(D−3地区・廃洋館)に1本刺さっている。
残りの5本は霊夢・承太郎が見失ったため、廃洋館の周辺に放置されている。

○ミニ八卦炉
【出典:東方project】
空条承太郎に支給。
「弾幕はパワーだぜ!」
本来は霧雨魔理沙の所有物であるマジックアイテム。
外観は脚の付いた手のひらサイズの八角形の金属塊である。
本来は魔力を燃料として火やレーザーを放つ火炉だが、このバトルロワイアルで支給された本品は
スタンドエネルギーや霊力・妖力を魔力の代わりとすることができる。
他にも製作者の趣味で空気清浄機能などを有しているが、今回それが発揮されるかどうかは不明。

642 ◆.OuhWp0KOo:2013/08/25(日) 23:49:28 ID:4aaM21BQ0
○缶ビール
【出典:現実】
十六夜咲夜に支給。
発泡酒や、第3のビールでない、正真正銘のビールである。
350g缶・1カートン(24本)、エニグマの神の能力のお陰でキンキンに冷えた状態で支給された。
第24話『宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション――』で、
霊夢が10本、承太郎が2本消費した。1本は咲夜の遺体を埋めた地点に供えられている。
現在残っている11本のうち、霊夢が9本、承太郎が2本を所持している。

○自作のお札
【現地調達】
博麗霊夢が第24話『宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション――』開始前(深夜)に自作したお札。
廃洋館で調達した紙に、自分の血で呪文を書いて制作した。
『博麗アミュレット』『封魔陣』など、霊夢のお札を使った術の媒介とすることができる。
霊夢以外が使っても、ただの紙でしか無い。
余程の無駄遣いをしない限りは、十分な数が用意されている。

○白いネグリジェ
【現地調達】
霊夢が廃洋館で調達した。ゆったりしたデザインの白い寝間着。
咲夜との戦闘時に、胸に仕込んだまな板を隠すためにいつもの服から着替えた。
現在はD−3地区・廃洋館内の一室に放置されている。

○まな板
【現地調達】
霊夢が廃洋館で調達した。
何の変哲もない木製のまな板だが、さらしの中に仕込めば包丁を防ぐくらいはできる。
現在はD−3地区・廃洋館内の一室に放置されている。
胸にまな板を仕込んだのは咲夜に対する当てつけではない……はず、きっと。



……すごい冒険作で不安だから、もっと感想どんどん言ってくれていいのよ?(震え声)

643名無しさん:2013/08/26(月) 00:04:31 ID:nHS355pE0
投下乙です
咲夜脱落かー、残念
しかし霊夢と承太郎が組めたのは大きいな
ちゃっかりビール分ける仲になってるし
あれ、どちらも未成n(ry

644名無しさん:2013/08/26(月) 00:20:14 ID:/hMZpB3.0
乙です。
霊夢がマーダーを経てから対主催になるになる過程が
別ロワ覚えてるとちょっとニヤリとくる流れでよかったw
妖夢+アヌビス神も悪く言えばありがちな組み合わせだけど
最初に霊夢に持たせることで自然な感じにしているのは素直に上手いと思う。

645名無しさん:2013/08/26(月) 00:53:29 ID:HQJkaWWs0
咲夜落ちたか・・・対主催っぽかったしいろいろ残念だ…
妖夢は早く刀を捨てろ!そして、対主催になってくることを祈る…

霊夢と承太郎が組めたのはでかいな、ってか
この主人公コンビ二人とも生還したことあるのか。

646 ◆n4C8df9rq6:2013/08/26(月) 13:53:43 ID:mkgyq/4s0
お二方、投下乙です!

>北風と太陽
かたや戦闘の天才、かたや八咫烏の力を得た地霊殿ボス、どちらも強かった!
ワムウの実力も見事ながら、それと渡り合って引き分けまで持ち込んだおくうもやはり相当強い
熱い戦闘話でした!あとおくうちゃん可愛い!

>宇宙1巡後の博麗霊夢――忘我のエモーション――
霊夢と承太郎の主人公対決、そしてコンビ結成と面白い展開にw
霊夢を変えたのは今まで味わったことの無い「悔しさ」だったのが印象的
咲夜さん脱落は好きなキャラなだけになかなか悲しいですね…
しかし洗脳効果が残っているとなると此処でのアヌビス神は相当厄介な みょんの今後やいかに
ちゃっかりビール飲んでる未成年二人がなんともw

647 ◆n4C8df9rq6:2013/08/26(月) 13:58:08 ID:mkgyq/4s0
さて、こちらも
幽谷響子、ホル・ホース、ルドル・フォン・シュトロハイム
投下致します

648始まりのヒットマン ◆n4C8df9rq6:2013/08/26(月) 14:10:26 ID:mkgyq/4s0

「―――動くんじゃねえッ」

A-5地点、幻想郷の閑散とした共同墓地である「無縁塚」。
幾つもの墓標代わりの石が並ぶその土地で、『西部劇風の男』が『拳銃』を軍人の後頭部に突きつけていた。
懐から取り出したわけではない。その軍人の尾行中から携えていたわけではない。
瞬時に「男」の手元に出現したのだ。そう、それはただの『銃』に非ず。
暗殺者『ホル・ホース』の、精神力の具現―――拳銃型のスタンド『皇帝“エンペラー”』。
『皇帝』は殺意を持って威嚇するかの如く、軍人の後頭部に突きつけられた。
先程まで墓地の中を歩き続けていた軍人の動きはピタリと止まっている。

「黙って両手を上げな。抵抗しようなんて考えんじゃねーぜ」

ホル・ホースは皇帝を軍人の頭に突きつけながら早口気味に言い放つ。
彼のスタート地点はこの共同墓地――無縁塚の内部。
宛も無く彷徨っていた所で彼は同じく墓地の中を歩く軍人の姿を見かけたのだ。
その軍人に気付かれぬように背後から接近し、ホル・ホースは拳銃を突きつけた。
静かに素早く、悟られずに軍人の背後を取ることが出来た。それはDIOと出会う以前から行っていた「裏社会の稼業」で培われた暗殺の為の技術。
生死を懸けたこの争いにおいて、その能力は活かされたのである。
背後を取り、『獲物』を突きつける。それだけで十分なアドバンテージを稼げたと言っても過言ではない。

ホル・ホースが軍人を狙った目的は「尋問」、そして「利用価値」。

この男がスタンド使いか、そうでないかはまだ解らないが…どちらにせよスタンドは確認出来るはず。
デイパックの中に入れられていたメモによると「会場内ではスタンド使いでなくともスタンドビジョンが視認可能」。
故に相手がスタンド使いであろうとそうでなかろうと、脅しの手段として皇帝を用いるのは可能であると判断したのだ。
あとはこの軍人から出来る限りの情報を絞り出す。その上で利用価値を見出す。
この殺し合いにおいて「使える」か「使えない」か、それを確かめたかったのだ。
尤も、ダメだったらすぐさまドタマをブチ抜くだけだがな。

649始まりのヒットマン ◆n4C8df9rq6:2013/08/26(月) 14:11:38 ID:mkgyq/4s0

しかし、軍人は一向に両手を上げようとはしない。
ただ沈黙したまま棒立ちをしているだけ。動きを見せる気配もない。
そもそも、ホル・ホースの脅しに対して全く聞く耳を持っていないフウにさえ思える。
…聞いてんのか、コイツ?僅かに苛立ちを感じつつ、ホル・ホースは再び口を開く。

「…おい、テメー…もしかしてマヌケか?自分の立場ってモンを―――」
「中々に見事じゃあないか」
「………は?」

唐突に軍人が喋り出した。少しだけぽかんとするホル・ホース。

「気配を極限まで殺し、俺を尾行し…その『銃』を突きつけた。随分手慣れた動きだな?どうやら、素人ではないらしい」
「……!?」
「ン〜…敵ながら褒めてやりたい所よ!この俺でさえ、『途中まで』気付くことが出来なかった」
「途中まで、だとッ…?」
「そう。貴様を引きつける為、あえて泳がせてやったというワケだよ」

途端に軍人は脈絡もなく饒舌に口を開き始める。
銃を突きつけているのはホル・ホース。だが、余裕の態度を貫いているのは軍人の方。
ギリリ、と歯軋りの音が僅かにホル・ホースの口の中で鳴る。
こいつ、どうやら自分の立場を全く理解出来ていないらしい。
あえて泳がせてやっただと?ハッタリ抜かしやがれッ!このダボがッ!
有利なのはこちらだってことに変わりはねーんだ。

650始まりのヒットマン ◆n4C8df9rq6:2013/08/26(月) 14:12:55 ID:mkgyq/4s0

「テメェ、」
「確かに…相手がただの人間だったならば、お前の行動は完璧だっただろう。」
「…何が言いてーんだ、テメーは…」
「そのまま銃の引き金を引き、容易く相手の脳髄をブチ抜くことだって出来たはずだ」
「ッの野郎、だから…さっきから人の話を――」


「しかァァァァァァァァしッ!!!」


―――軍人の口から、絶叫にも似たハイテンションな声が発せられる。



「貴様の不運は!この『シュトロハイム』を標的に選んだことよォォォーーーーーッ!!!!」




『軍人』が自信満々に、高らかに叫んだ直後だった。
ホル・ホースはその時気付いていた。一瞬だが、軍人の右腕が動き出していたことに。
無論、慌てて咄嗟に引き金を引こうとした。何か手を打たれるよりも前に、仕留めるべきだと判断した。
そうだ、最優先は自己の保身だ。つべこべは言っていられない…!
―――だが、軍人の『動き』は彼の予想を遥かに上回る瞬発力を持っていたのだ。


ガッ、と鈍い打撃音が響き渡る。


瞬間。
引き金に指をかけていたホル・ホースの顔面に叩き込まれたのは、まるで鋼のような固さの『肘鉄』。
メキィと何かが砕けるような音を立てた直後、その屈強な身体が赤子の如く簡単に吹き飛ばされた。
地面を転がり、粗末な墓石に勢いよく突っ込むように叩きつけられる。
それはホル・ホースにとっても信じられない程のスピード、そしてパワーだった。
しかし当然のこと。シュトロハイムの身体は、柱の男であるサンタナの能力をベースに改造された『最強の肉体』なのだ。


「が……は、ッ…!?」

墓石に叩き付けられ、横たわるホル・ホースが何度も咳き込むように咽せていた。
口からは血液が垂れ流れている。口の中を大きく切ったのだろう。
顔面には大きな打撲を負い、へし折られ鼻からも同じように血が流れ出ていた。
恐らく、頭蓋の骨も幾つか折れているだろう。
有り得ない程の力だった。とても人間業とは思えない。頭がくらくらと、目眩すら感じる。
そもそもあの腕力と瞬発力は明らかに異常だった。
俺の早撃ちよりも素早く攻撃が放たれたのだ。もはやスタンドか吸血鬼の枠だ。
とんでもない男と対峙してしまったことを、彼は理解したのだ。
それでもホル・ホースは、混濁する意識を何とか整えながら体勢を立て直そうと苦痛を抑え『皇帝』を構える―――

651始まりのヒットマン ◆n4C8df9rq6:2013/08/26(月) 14:14:05 ID:mkgyq/4s0

「ッ…の、野郎…!」
「ほう!多少手加減してやったとは言え…俺のパワーをその身に受けながら、まだ怯まずに銃を構え続けるとはなッ!」

不敵な笑みを浮かべながら、倒れるホル・ホースを見据えるシュトロハイム。
うつ伏せに倒れながら皇帝を構え、キッと鋭い視線を向けるホル・ホース。
状況は完全に逆転。『有利』なのはシュトロハイムの方だった。


「だが、そんな抵抗など無意味ッ!!全く持って無意味よォォーーーッ!!」

シュトロハイムが身を翻すように軍服の上着を素早く脱ぎ捨て、筋肉質で逞しい上半身が露になる。
軍人として鍛え上げられたその肉体からはもはやある種の美しさすら感じられる。
そのまま彼は、両腕を高らかに上げつつ後ろ手で組むように背中へ回した。
その直後――ガシャン、ガシャンと彼の身体から物々しい機械音が響き渡る。
まるで近未来の機械が音を立てて新たな形態に『変形』するかの如く。
いや、正確に言えばそうではない―――何故ならそれは、もはや『変形』そのものであったからだッ!


「ニャニィーーーーーーッ!!?」

「―――我がナチスの科学力はァァァァ!!世界一ィィィィィッ!!!!」

そう!それは『スタンド使い』であるホル・ホースから見てもあまりに異様な光景ッ!
シュトロハイムの機械化された腹部より長身の『重機関砲』が飛び出たッ!
軍人にしてサイボーグであるシュトロハイムの肉体は、ナチス・ドイツの圧倒的科学力の粋を集められて改造されている!
ナチスの恐るべき科学技術の手にかかれば、肉体に機関砲を搭載することですら不可能ではないのだ!
そしてシュトロハイムは、ホル・ホースへの明確な『殺意』を瞳に宿す。
彼は殺し合いに乗るつもりなど無いが―――襲撃の意思を見せた相手に情け容赦をする程甘くはなかった。
故に彼は、自身に危害を加えんとした目の前のホル・ホースを射殺すべく機関銃に弾丸を『装填』したのだッ!
そのまま彼は、あまりにも荒唐無稽な光景を前に驚愕の表情を浮かべるホル・ホースに向けて照準を定める。
ホル・ホースの肉体を、命を無惨に刈り取るべく―――シュトロハイムは、不敵に笑みを浮かべた!


「喰らえェェいッ!!一分間に600発の徹甲弾を発射可能ッ!!30mmの鉄板を貫通できる重機関砲が、貴様を」


「やーーーーーめなさぁーーーーーーーーーーいっ!!!!!」


「蜂の巣にしてくれr――――!?」

652始まりのヒットマン ◆n4C8df9rq6:2013/08/26(月) 14:15:25 ID:mkgyq/4s0
シュトロハイムの台詞は、何の脈絡もなくどこからともなく聞こえてきた大声に掻き消された。
それはもはや、音量を最大まで叩き上げたスピーカーから放たれる音のような――凄まじい『叫び声』。
耳をつんざくような大音量に、シュトロハイムも、ホル・ホースも、すぐさま気を取られる。
直後、バタバタと忙しなくシュトロハイムの方向へと走ってくる音が聞こえてきた。
あまりにも突然の出来事に対し、彼の行動は完全に出遅れていた。
不運なことに、ホル・ホースへ向けて機関砲の照準をじっくりと定めていたことも乱入者に対して遅れを取る『隙』に繋がったのだ。
対処するにはもう遅い。そのまま墓石と墓石の間から姿を現すように駆け抜けながらシュトロハイムの至近距離まで接近していたのは―――



ガァンッ。



「…は?」

ホル・ホースが目の当たりにしたもの。
それは血を流しながら仰向けに崩れ落ちて転倒したシュトロハイムの姿。
頭部を鈍器か何かで思いっきり叩かれたかのような勢いだった。
シュトロハイムは文字通り『ブッ倒れる』。その一撃と共に彼は動かなくなる。
失神したのか。それとも本当に打ち所が悪かったのか。どちらなのか、答えは解らない。
ただ理解出来たこと。それは先程の大声を放った張本人と思わしき『少女』が、シュトロハイムの頭部にハンマーをブチ込んでいたこと。

その少女は、一言で言って『犬みたいな耳の生えた少女』だった。

小柄な身体に不釣り合いな大柄なハンマーを握り締め、シュトロハイムの頭に叩き付けていた。
その姿は完全にヤケクソの力任せと言うか、必死に気合いで振り下ろしているフウにしか見えない。
うつ伏せに倒れながら、ぽかんとした表情でホル・ホースは少女を見ていたが…

「―――おぉ、とと……とっ!?」

叩き付けたハンマーの反動と重みによって少女がふらふら仰け反り、ズルッと尻餅を付いてずっ転ける。
なんとも痛そうに腰を摩っておられる。ハンマーを振るっていたはずなのに逆に軽く振り回されてた。

(…何やってんだ…アイツ…)

そんな様子を見て、ホル・ホースはぽかんと内心軽く呆れてたのは内緒。
自分の腰や尻をすりすりと涙目で摩っていた少女は、ふいにホル・ホースの方を向く。

「っっっ…… あ、えっと…そうだ!そっちのおじさん!大丈夫ー!?」

少女はホル・ホースの身を心配するように呼びかけてきた。
重くて一度振り下ろすのも大変なハンマーをズルズル引き摺りながら、とことこと彼の傍へと近寄っていく。
傍に来た少女を、ホル・ホースは呆気に取られた表情で見上げる。

653始まりのヒットマン ◆n4C8df9rq6:2013/08/26(月) 14:16:02 ID:mkgyq/4s0

「おじさん、あのヘンな人に襲われてたんでしょ?」
「あ、あぁ…。そうだけどよ…嬢ちゃん、俺を助けてくれたってワケか?」
「…その通り!このヤマビコの『幽谷響子』、妖怪と言えど無用な殺生は好まないわ!たまには人助けもするよ!」
「………」

どうやら彼女――もとい幽谷響子は、ホル・ホースが襲われていると認識していたらしい。
恐らくシュトロハイムを『殺し合いに乗っている参加者』と思い、攻撃したのだろう。

それにしても…ヤマビコ?妖怪?
何言ってんだ、この嬢ちゃん…イカレてるのか、この状況で?
…いや、現にあんなサイボーグ軍人だっていたんだ。それに俺は『吸血鬼』だって知ってる。
別に妖怪くらいいたっておかしくない……のか?ったく、ここは映画の世界かっつーの。
ホル・ホースはそんなことを内心で軽く思いつつも口には出さず。
今の彼にはそれ以上に気になることがあり、クラクラする意識を押して身体を起こし立ち上がった。

「―――そ、それより…あのヤローはどうなってる!もうくたばったのかッ!?」
「あのヤローって、さっき私が叩いたヘンな人のこと?」
「そうだよッ!アイツはもう死んでんのか、それが問題なんだ!」
「いや、たぶん生きてるよ」
「…おい、嬢ちゃん!あのヤローは危険だッ!早くトドメを刺さねーと…」




「ぐ、うぅ……」

その時である。
鈍器で頭部を殴打されたシュトロハイムが、呻き声を上げていたのだ。
それどころか、腕や足などがぴくりと少しずつ動き始めている。
そう、シュトロハイムに『意識』がある。
頭部から出血をしている限り、確かにダメージはある。
しかし人間を超越した力を持つシュトロハイムが、先程の乱雑な鈍器の一撃程度で気絶するわけなど無かった。
とにかく、ゆっくりと…軍人の身体が動き始めていたのだ。それもはっきりと、着実に。
唖然としたようにシュトロハイムを見るホル・ホースの顔が青ざめる。

654始まりのヒットマン ◆n4C8df9rq6:2013/08/26(月) 14:16:52 ID:mkgyq/4s0

「………おい 嬢ちゃん、走れるか?」
「…? うん、大丈夫だけど…」
「………予定変更だ、逃げるぜッ!!」

ほぇ、と惚けた顔をしていた響子の顔が突然驚いたような「!?」と言わんばかりの表情になる。
何故ならばホル・ホースが彼女の手を握って強引に引っ張ったからだ。
エスコートと呼ぶには些か乱暴な手捌き(?)で、為されるがままに響子は引っ張られる。
そのままホル・ホースは響子の手を掴んで無理矢理走り出した!
あの軍人が起き上がる前にこの場から離れるべく。

「え、ちょ、オジさんっ!?流石にっ手を掴むのは―――」
「うるせー!こまけぇことは気にするんじゃねえ、嬢ちゃんッ!今は逃げるんだよォーーッ!!」

嬢ちゃんの反応が妙に初々しい。男に手を掴まれるのは始めてだったのだろうか。
というか軽く振り向いてみたら、嬢ちゃんは明らかに混乱したような表情を浮かべて頬を軽く紅くしている。
…いかにもこうゆう経験への免疫低そうだな、コイツ…
まぁ流石の俺と言えどこんなションベンくさいガキは射程距離外だ。世界一女性に優しいとは自負しているので傷つけるつもりは無いけどな。
ともかく、そんなこと気にしてる場合でもない。あの軍人が起き上がったらヤバい!
直接対決で勝てるわけが無い相手に勝負を挑むつもりなんてさらさらなかった。
今は離れる!逃げる!引き際を見極めるのも大切なことだッ!


【A-5 無縁塚/深夜】

【ホル・ホース@第3部 スターダストクルセイダース】
[状態]:顔面強打、鼻骨折、顔面骨折、胴体に打撲(小)、鼻血、口内出血(軽傷)
[装備]:なし
[道具]:不明支給品(確認済み)、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:とにかく生き残る。
1:あのイカレたターミネーターみてーな軍人(シュトロハイム)とは二度と会いたくねー。
2:死なないように立ち回る。
3:誰かを殺すとしても直接戦闘は極力避ける。漁父の利か暗殺を狙う。
4:使えるものは何でも利用するが、女を傷つけるのは主義に反する。とはいえ、場合によってはやむを得ない…か?
5:DIOとの接触は出来れば避けたいが、確実な勝機があれば隙を突いて殺したい。
[備考]
※参戦時期はDIOの暗殺を目論み背後から引き金を引いた直後です。

【幽谷響子@東方神霊廟】
[状態]:健康、困惑
[装備]:大型スレッジハンマー@ジョジョ第2部
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:死にたくないので頑張る。
1:今はとりあえずこの場から離れる。というかおじさんに引っ張られてる。
2:聖たち命蓮寺の面々と合流したい。寺で暴れた博麗の巫女とかとは会いたくない…
3:殺し合いに巻き込まれたくないけど、かといって殺されそうな人を放っておくのは流石に気が引ける。
[備考]
※参戦時期は神霊廟終了後、こいしが命蓮寺の信者になって以降です。
※シュトロハイムを殺し合いに乗っている参加者だと思っています。
※明確な方針はとりあえず聖たちと合流してから考えればいいかな程度に思っています。

655始まりのヒットマン ◆n4C8df9rq6:2013/08/26(月) 14:19:47 ID:mkgyq/4s0
◆◆◆◆◆◆


「…っ、……。」

シュトロハイムは殴られた頭を抑えながら、よろよろと立ち上がる。
脳が掻き乱されたような感覚だ。意識が混濁している。多少の目眩も感じる。
歪んだ認識を整えながら、彼は何とか周囲を見渡していた。
どうやらあのガンマン風の男には逃げられてしまったらしい。もう一人、小娘も居たが…一緒に逃げられたか。
やれやれ、まさか『殺し合いに乗っている側』と勘違いでもされたのだろうか?
迷惑甚だしい話だ。彼らを追跡することも考えたが…まぁ、今はまだ良い。

「…やれやれ、だな。まぁ、今は奴らに構っている暇など無い」

今の俺がすべきことは『荒木と太田を打倒する意志を持つ者を捜すこと』だ。
あのガンマンに会う前に名簿を確認したが、この会場にはJOJOとシーザーがいるらしい。
(そう言えば名簿にはジョースターやツェペリの名が幾つか見受けられたが、彼らの血縁者だろうか?)
柱の男と闘う波紋戦士である彼らならば間違いなく対主催に回るだろう。奴らの正義感の強さは理解している。
主催者と闘うべくまず彼らとの合流は優先すべき事項と言えるだろう。赤石のことはまだ『一時休戦』として、だ。
彼ら以外にも信頼出来そうな「勇敢な意志を持つ者達」を集める。そのついでにあのガンマン達を捜せばいい。
奴らの危険度など、柱の男に比べれば赤子同然だ。無論、この会場にいる柱の男は抹殺する。
しかし気になるのはエシディシだ…奴は死亡を確認したはず。波紋戦士の連中からもその旨を聞いたのだ。
何故名簿に名前を記載されている?密かに生きていたのか?荒木と太田が蘇らせた?
まぁ、いずれにせよ抹殺対象に変わりはない。
今後の方針を考えつつ、露出させていた重機関銃を腹部に収納させた。
…先程頭を殴られたのが効いているのか、未だに軽く目眩のような症状は続いているが構っていられない。

とにかく、まずは『同志』を集めるとしよう。
特に波紋戦士の面々だ。あの荒木と太田を打倒する為の仲間と成り得る男達。
ナチスの軍人『ルドル・フォン・シュトロハイム』は歩き出す。
この殺し合いで生き残る為に。主催者『荒木飛呂彦』『太田順也』を打倒すべく。
彼にとってのゲームはまだ始まったばかり。


【A-5 無縁塚/深夜】

【ルドル・フォン・シュトロハイム@第2部 戦闘潮流】
[状態]:頭部強打(出血中)、脳震盪(軽傷)
[装備]:ゲルマン民族の最高知能の結晶であり誇りである肉体
[道具]:不明支給品(確認済み)、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:ドイツ軍人の誇りにかけて主催者を打倒する。
1:ジョセフ・ジョースター、シーザー・A・ツェペリと合流。その他主催に立ち向かう意思を持つ勇敢な参加者を集める。
2:殺し合いに乗っている者に一切の容赦はしない。特に柱の男及び吸血鬼は最優先で始末する。
3:エシディシは死亡が確認されたはずだが…?
4:ガンマン風の男(ホル・ホース)と小娘(幽谷響子)を捜す。とはいえ優先順位は低い。
[備考]
※参戦時期はスイスでの赤石奪取後、山小屋でカーズに襲撃される直前です。
※ジョースターやツェペリの名を持つ者が複数名いることに気付いていますが、あまり気にしていないようです。



<大型スレッジハンマー@ジョジョ第2部 戦闘潮流>
幽谷響子に支給。
長柄の先端に金属塊を取り付けた鈍器。
ジョセフ対ワムウの古式に乗っ取った戦車戦において用意された武器の一つ。
そこそこの重量があり、扱いは難しい。

656 ◆n4C8df9rq6:2013/08/26(月) 14:21:41 ID:mkgyq/4s0
以上で投下終了です。
指摘やツッコミ、感想があればよろしくお願いします。

657名無しさん:2013/08/26(月) 20:40:28 ID:OqTzSK/g0
投下乙です
ドイツの科学力は世界一ィィィィィ!!!
ホル・ホースの微妙なヘタレっぷりも世界一ィィィィィ!!
響子ちゃんの可愛さは東方一ィィィィィィィ!!!!!!

658名無しさん:2013/08/26(月) 21:25:33 ID:m0RxHYHI0
ドイツの科学力とホルホースの微妙ヘタレだけは許可するゥゥゥ!!
だが、響子ちゃん=東方一カワイイだけは許可しないィィィィィ!
東方一カワイイのはヤマメちゃんnnnnnn!!!!

それはそうと、ホルホース響子コンビって積極的なマーダーじゃないのに
承りれいむコンビと対立してんのねw
距離は離れてるけどw

659名無しさん:2013/08/26(月) 22:44:44 ID:m0RxHYHI0
しかし、響子ちゃんも力持ちだなーw
あんなスレッジハンマー普通は持ち上げるのも無理だ
……と、ASBの動画見て思ったw

660名無しさん:2013/08/26(月) 23:38:31 ID:Vrhm.Z2k0
波紋戦士だからこそ使える武器だもんなアレ…

661 ◆n4C8df9rq6:2013/08/27(火) 00:01:33 ID:1NzsByko0
感想及び指摘ありがとうございます。
>>659>>660のような意見も見受けられたので、必要ならば修正致します

662659:2013/08/27(火) 00:03:51 ID:l6DwwrJ60
>>661
いや、そこは別に良いですよw
きょーこちゃんも妖怪だから、それくらいの筋力あっても不自然じゃない

663660:2013/08/27(火) 00:57:25 ID:nEzuxNJE0
>>661
あ、いやいやケチ付けたんじゃなくあんなハンマー生身で持てる
ジョセフ凄ぇーよなー的なノリなんで気にしないでくだせえ

664 ◆n4C8df9rq6:2013/08/27(火) 01:10:52 ID:1NzsByko0
>>662
>>663
そうでしたか、失礼しました。

実を言えばあの描写は地味に不安ではありましたが、先程言われたように響子ちゃんも一応は妖怪の端くれなので
全力を出せば振り下ろせないこともないかなーと…

665659:2013/08/27(火) 07:46:09 ID:l6DwwrJ60
>>664
おかしい描写があったら、その時はきちんと指摘するので、
氏には萎縮せずに書いてもらいたいですw

私が響子ちゃんにスレッジハンマー持たせたら、
多分ジョセフより軽々と振り回す描写にすると思うw

666名無しさん:2013/08/27(火) 07:48:22 ID:jygADCl60
巨大な武器を振り回す女の子は正義ですからまったく問題ありません!

667名無しさん:2013/08/27(火) 09:41:50 ID:2BDxMwEI0
まあ架空とはいえ獣系の妖怪だしw
怪力関係ない、どこぞの舟幽霊ももっとすごい武器振り回してるし

668名無しさん:2013/08/27(火) 10:22:45 ID:URo1mXhkO
獣繋がりで思い出したんだが、アヌビス神って世界のスタンド能力、
少なくともホル・ホース程度には知ってたみたい
その上で敵わないって言ってたような
数日経ってから言うのもなんだが

669名無しさん:2013/08/27(火) 21:33:17 ID:l6DwwrJ60
>>668
ジョジョ3部・作中のワンちゃんは

「DIO様のスタンド
 ワールド21はあまりにも強く
 おれにはとてもかなわぬスタンド」
「だから忠誠を誓った……」

って発言してたね

咲夜さんと遭遇する前の霊夢との情報交換で
DIOの能力の正体に気付いてたりしてw
ロワ本編で早速対策できちゃったしw

670 ◆.OuhWp0KOo:2013/08/27(火) 22:34:42 ID:QmspSDzgO
>>1さん
wikiの更新乙です。
2分割になっちまった…!

671 ◆BYQTTBZ5rg:2013/08/27(火) 22:42:47 ID:EiRAzSqY0
八雲藍と書き手枠で橙(東方妖々夢)を予約します

672名無しさん:2013/08/29(木) 00:31:17 ID:8Y11MoqU0
JOJOASBがいろいろすごいことになってるっぽい

673名無しさん:2013/08/29(木) 01:14:04 ID:ZX9L4jIw0
今日発売だもんな

674 ◆WjyuuPGo0M:2013/08/29(木) 09:05:38 ID:8Ur/62D20
延長します。

675 ◆YF//rpC0lk:2013/08/29(木) 23:01:57 ID:GShLD0JM0
自分も延長いたします。

676名無しさん:2013/08/30(金) 16:42:53 ID:x/u5D4M.0
ASB発売の影響か、本家ジョジョロワも若干盛り返したみたいだな
よかったよかった

677 ◆BYQTTBZ5rg:2013/09/01(日) 23:02:03 ID:GJArhQeY0
投下します

678紫の式は妖しく輝く ◆BYQTTBZ5rg:2013/09/01(日) 23:03:22 ID:GJArhQeY0
紫様、私は気がついてしまったのです。
あの荒木、太田と名乗った男たちには、どうやっても勝てないということに。


幻想郷の実力者たちを集める。単にそれだけなら、不肖のこの身とて可能でありますし、またその手段に対する策も思いつきます。
ですが、あの二人の存在と殺し合いという言葉に、皆が寝耳に水だったことが示す通り、誰もが知らぬ内にあの場所に集められたのです。
博麗の巫女に始まり、吸血鬼、大魔法使い、鬼、蓬莱人、月の頭脳、神、そして紫様といった居並ぶ強者を出し抜いて、彼らはその所業を平然とやってのけたのです。
この事実から得られることは、あの二人は幻想郷全ての力を凌駕しているということ。即ち、私たちには最早勝ち目はないということを意味します。


だとしたら、この蟲毒――バトルロワイアルにおいて、私に残っている選択肢など、一つしかありません。
それは紫様を最後の一人として、勝ち残らせるということ。つまりは、紫様を除いての皆殺しです。
勿論、そこに何の葛藤がないというわけではありません。紫様のお手伝いをさせて頂き、幻想郷の結界を管理してきた中で、私は幾人もの人間や妖怪の知己を得てきました。
そして私はその一つ一つを、掛け替えのないものとして認識しております。ですが、それらを何百、何千、いえ何万と束ねたところで、私のたった一つの想いには遠く及びません。
その想い――それは私の紫様への敬愛の念。紫様、私は貴方が生きていてくだされば、他はどうでもいいのです。
例え知人を殺めようと、例え友人を裏切ろうと、例えこの身が砕け、塵と成り果てようと、紫様の命が残れば、私は救われるのです。




私は再度のその胸中を確認すると、地面に転がった橙の背中を勢いよく踏みつけた。


「さて、橙……もう一度問おう。紫様以外の皆を殺すのを手伝ってくれないか?」

「ら、藍様……ど、どうして?」


私はその答えとして、橙に妖気の弾を放った。たちまち橙の隣にあった土は抉られ、土埃を上げる。
私の容赦の無さに気がついた橙の顔から血の気が一気に失せ、それに代わるかのように瞳からは涙が零れてきた。
恐怖に怯え、身体中を震わせる様は、いつも見せてくれる陽だまりのような温かい、無邪気な笑顔とは正反対のもの。
そういった橙の変化に、私は胸が締め付けられるような痛みを感じてしまう。


何も私とて橙が嫌いというわけではない。
橙はそれなりの手間をかけて作り出した私の式であり、決して少なくない時間を共に過ごしてきたのだ。
単なる道具として以上の想い入れは、当然ある。だけど、所詮はその程度なのだ。
今感じる痛みとて、紫様を失った時と比べればどうか。答えなど決まっている。
それならば一々橙に思い悩んでいる暇もない。私は自らの式を有効に利用すべく、「優しく」、ゆっくりと語りかけた。


「橙は悪い子だな。質問文に質問文を返してどうする? そんなんじゃテストで正解は与えられないぞ。ちゃんと教えていなかったか、橙?」

「ひぐ……ら、藍しゃまぁ……」

「泣いてばかりで、これにも答えられない。やれやれ、これでは式の躾けがなっていないと、また紫様に怒られてしまう。どうやら悪い子には、お仕置きが必要みたいだな、橙」


私の殺気を感じ取ったのだろう。生存本能が喚起されてか、橙は爪を大地に立て、足をジタバタと動かし、必死に私から逃げ出そうとした。
しかし、私はそんな橙を踏み潰すかのように、背中に乗せてあった足に力を込め、橙の意志と逃走を砕いてやる。
私と橙との力の差は歴然だ。それを否応なしに悟らされた橙は身体を動かすのを止め、今度は涙を誘うほどの情けない顔で哀願をしてきた。

679紫の式は妖しく輝く ◆BYQTTBZ5rg:2013/09/01(日) 23:04:34 ID:GJArhQeY0
「ひっ……ご、ごめんなさい、藍様! ちゃんとします! 許して下さい、 藍様ぁ!」


橙の顔は恐怖に歪められ、涙と鼻水が滂沱のように流れ出ている。
平素の私であれば自らに非を見出し、逆にこちらが謝っていたかもしれない。
だけど、今の私はそんな橙に向かって、温かく微笑んでやる。


「安心しろ、橙。私は寛大だ。だからもう一度だけ、チャンスをやろう」

「藍しゃま?」

「さあ、教えてくれ、橙。紫様以外の皆を殺すのを手伝ってくれるのか、くれないか? 橙は良い子なのか、悪い子なのか? さあ、一体どっちなんだ、橙?」


私の表情を窺い、一生懸命に頭を巡らしている橙。
気まぐれと言われる猫から作った式だが、この時ばかりは一つの選択肢しか選べなかったようだ。


「て、手伝います! だ、だから、酷いことしないで、藍様!!」

「そうか、橙はいい子だな。もし手伝わないなどという悪い子だったら、どうしようかと思ったぞ」


私はそう言いながら、地面に倒れた橙を起こしてやり、小さな頭を撫でてやった。
私の一挙一動にビクビクする橙の姿は、どれほど私と心の距離が離れたかを如実に示してくれる。
それに伴って、私の胸がズキズキと痛む。とても辛い作業だが、紫様の為と思い、私は言葉を続けていった。


「さて、橙……お前を信用しないというわけじゃないが、ここで私と一つ約束をしよう」

「約束?」

「そうだ。私のところに参加者の首を持って来い」

「く、び……? えっ……?」

「本当は私も橙と一緒にいてやりたいんだが、何分このバトルロワイアルとやらの参加者の数は多い。
ここは手分けして皆を殺しに行った方が、早くに紫様の助けとなるだろう。一人だと恐いかもしれないが、ちゃんと頑張れるよな、橙?」

「は……ぃ」

「確か荒木と太田は六時間毎に放送をすると言っていたな。なら、その放送の時でいい。参加者を殺して、その首を私のところに持って来るんだ。
場所は……そうだな、現在地を勘案すれば、D-4の香霖堂でいいだろう。六時間後、私はそこで橙を待っている。
分かっているとは思うが……橙、もしそこに来なかったり、首を一つも持ってなかったりする悪い子なら、お仕置きだからな」


依然と涙を浮かべている橙は小さく頷き、それを返事とする。
口を開かないのは、私の命令に対するせめてもの反抗か、それとも恐怖で口が上手く回らないのか。
橙の性格からして、おそらくは後者なのだろう。そう判断した私は、橙のその感情を拭ってやろうと、穏やかに、愛情を込めて、橙に話しかけた。


「安心しろ、橙。私は寛大だと言っただろう? そんなにビクビクする必要はない」

「藍しゃま?」


うつむいて地面ばかりを見ていた橙は鎌首をもたげ、僅かに目を見開く。
きっとそこには悲惨な状況をどうにかしてくれるという期待があったのだろう。
だから、私は自らの式の期待に応えてやるべく、笑顔でその内容を告げた。


「三つだ」

「へ?」

「三つ以上の首を持ってきたら、褒美をあげようじゃないか、橙」


橙の顔が絶望に染まったかのように、暗く濁っていく。焦点を失った目の瞳孔は開き、口は苦しそうに息を喘ぎ、時折渇いた笑いが漏れるばかり。
人が折角ヤル気を出してもらうと、また末期の水の代わりになる潤いをと、善意を施してやったのに、この反応では少々やりきれない。
寧ろ、沸々と怒りが湧き出てくる。そのせいか次に私の口から発せられた言葉は、随分と低いものなっていた。

680紫の式は妖しく輝く ◆BYQTTBZ5rg:2013/09/01(日) 23:05:30 ID:GJArhQeY0
「嬉しいよな、橙?」

「ひっ……は、はい…………とても嬉しいです、藍様」


橙に私の真心が届いたのだろう。橙の答えに私は満足気に頷く。


「そうか、そう言ってくれて、私も嬉しいよ。褒美は期待しているといい、橙」

「はい、藍様」

「では、さっさと首を上げに行くがいい、橙。私はグズグズしている怠惰な輩は嫌いだ。そして何より約束を破る輩は大嫌いだ。
その事をちゃんと胸に留めておけ。でなければ、可愛い橙にもお仕置きをしなくてはならなくなるからな」


はい、と蚊の鳴くようなか細い声で返事をすると、橙はまるで逃げるかのように勢いよく私の元から去っていった。
可愛がっていた子に怯えられるというのは、やはり悲しいものだ。出来るなら、すぐにそんなものはなかったものとしたい。
だけど、私への恐怖が橙を武器にしてくれるのなら、それは歓喜と共に望むべきものなのだろう。何故ならそれこそが紫様の生存の可能性を上げるのだから。


「さて、私も頑張らなければな。橙にああ言った手前、私の首級がゼロでは格好がつかないというものだ」


自分の情けない姿を想像し、私は一人小さく笑う。だが、そんなものは杞憂と言えるだろう。
この私は一体誰だ。数多の人間を、そして幻想郷の実力者たちを殺めようと企て、それを実行に移そうなどと考えられる私は一体何者だ。
答えなど、私自身が一番良く知っている。


「我こそは白面金毛九尾狐にして、幻想の境界たる八雲紫様の式である八雲藍!! あまねく人間共、妖怪共よ!! 覚悟するがいい!! 今こそ最強の妖獣たる由縁を見せてくれようぞ!!」




【D-5/深夜】
【八雲藍@東方妖々夢】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:ランダム支給品、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:紫様を生き残らせる
1:マサクゥル! 皆殺しだ!
2:橙への褒美の用意する
[備考]
参戦時期は後続の書き手の方に任せます
第一回放送時に香霖堂で橙と待ち合わせをしています


【橙@東方妖々夢】
[状態]:背中ズキズキ、恐慌状態
[装備]:なし
[道具]:ランダム支給品、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:紫様以外の皆を殺す??
1:藍様のところに首を持っていく??
[備考]
参戦時期は後続の書き手の方に任せます
八雲藍に絶対的な恐怖を覚えています
第一回放送時に香霖堂で八雲藍と待ち合わせをしています

681 ◆BYQTTBZ5rg:2013/09/01(日) 23:06:19 ID:GJArhQeY0
投下終了
以上です

682名無しさん:2013/09/01(日) 23:09:13 ID:ps0zM1OU0
乙です。

683名無しさん:2013/09/01(日) 23:18:58 ID:Ri5DiaKA0
らんちぇんが揃ってマーダー化!?

そしてまた竹林周辺www

684名無しさん:2013/09/02(月) 00:17:35 ID:iMnuoePMO
投下乙です
この藍様マジ怖え・・・・・・白面金毛九尾の面目躍如といったところでしょうか
知能の高さと紫への忠誠心がまさかこんな方向に作用するとは・・・これは続きを楽しみにせざるを得ない

685名無しさん:2013/09/02(月) 00:36:57 ID:/vG0bCNY0
乙です
藍と橙が出会うシーンが無いせいか、冒頭部分が抜け落ちてるような印象を受けた

686名無しさん:2013/09/02(月) 14:58:09 ID:AqYRrFv60
竹林近辺がどんどん魔窟になっていく…ww

687名無しさん:2013/09/02(月) 16:27:36 ID:5fPCDE2E0
竹林にいったい何の引力が働いてるんだ

688名無しさん:2013/09/02(月) 19:21:05 ID:IpsRNxxw0
竹林
対主催:ツェペリ、メリー、ゆゆさま、阿求、ジャイロ、神子
危険人物:ポルナレフ、アリス?

竹林接近中or竹林付近
対主催::さとり、億安、妹紅
マーダー:ディアボロ、エシディシ、藍、橙
危険人物:プッチ
不明:こいし、チルノ、うどんげ

なんかヤバい(確信)

689名無しさん:2013/09/02(月) 20:27:30 ID:9K1JYPh.0
チルノは対主催になりそう
こいしとアリスも確率は普通にあるよね。
優曇華は・・・・わからないな

690名無しさん:2013/09/02(月) 21:10:38 ID:aF/STNw.0
さとりも実はスタンス未定なのよね……
まあ、ボスに腹パン喰らったせいで、スタンスが固まった所で何もできない状態だけどw

尿をティーポットに注いで誰かに飲ませようとした経験があったら死んでたな……

691名無しさん:2013/09/03(火) 00:09:53 ID:4YMBhqIA0
そういえばASB発売のお陰でジョジョサイドのキャラもかなりテーマ曲が付いたねw

692名無しさん:2013/09/03(火) 01:03:38 ID:movWt.pY0
シーザーのBGMは末路を思うと何か泣ける曲だったな。
確か孤独の青春だったか

693名無しさん:2013/09/03(火) 07:28:40 ID:4YMBhqIA0
俺としては柱の男たちの手強い中ボス感溢れるBGMも好きだな

694名無しさん:2013/09/03(火) 16:17:33 ID:9xDqMig20
ASBのBGMはなんかほとんど似たようなのばっかで好きじゃないな
元ネタの曲がテーマ曲ってことでいいじゃないか

695名無しさん:2013/09/03(火) 16:22:50 ID:fcc.rf/60
ワムウの元ネタはポップ・ミュージックなせいでテーマ曲として想像すると中々シュール

696名無しさん:2013/09/04(水) 00:44:24 ID:pJ7dRLJA0
キラークイーンとかメイドヘブン辺りは明らかに歌詞意識してるよな

697 ◆BYQTTBZ5rg:2013/09/04(水) 23:06:42 ID:m8sXA0ac0
星熊勇儀と魂魄妖夢で予約します

698名無しさん:2013/09/05(木) 00:00:52 ID:GFScshCg0
おお、鬼とアヌビス神化妖夢がかち合うのか……あれ?
アヌビス神が勝てるビジョンが全然見えてこないのは、俺だけか?
あっさり、へし折られる姿しか連想できん……

699名無しさん:2013/09/05(木) 00:04:31 ID:.Hy5hQLAO
アヌビスみょんは既にスタプラのパワーを憶えているから…(震え声)

700名無しさん:2013/09/05(木) 00:51:14 ID:ljlEWkZg0
アヌビス神は小物だけどジョジョの小物悪役ほど厄介な連中はいない(音石明とか)
そもそもラスボス組も大統領以外は妙に小物なんだよな

701名無しさん:2013/09/05(木) 01:14:09 ID:nQ/CIlOQ0
アヌビス神って原作で石柱をバッサリ斬ってたけど、透過能力を含めて事実上の防御無視の切れ味なんだろうか?
とは言っても、承太郎の脇腹を斬り抜けられなかった時点で切れ味自体は並なのか、さて?

702 ◆n4C8df9rq6:2013/09/05(木) 01:19:20 ID:tlkD2.qs0
因幡てゐ、ブローノ・ブチャラティ、DIO
予約します

703名無しさん:2013/09/05(木) 05:43:00 ID:JAb5nBVo0
これでジョジョ側のラスボス全員の予約完了か

704名無しさん:2013/09/05(木) 09:32:51 ID:/ScsLGNk0
さあ竹林へイクノデス

705 ◆WjyuuPGo0M:2013/09/05(木) 10:12:38 ID:fmG6KDUY0
間に合いそうにないので、>>568の予約を破棄させていただきます。
すみません。

706名無しさん:2013/09/05(木) 19:25:28 ID:BcYWmp4g0
二つの作品とも能力が独特で面白いがキャラの性格の特異さも気になる
ジョジョのみんなも大概だが東方のみんなもぶっとんだ性格してるからなあ

707名無しさん:2013/09/05(木) 19:44:30 ID:ZQOLmU8U0
>>700
大統領も平行世界のDioがいなきゃ「やめろオオこの無知のクソ野郎がああ」とか言ってたよ多分

708名無しさん:2013/09/05(木) 21:04:02 ID:wOy3LMGI0
実際平然と「貧乏人のカスが」とかのたまってたしな

709 ◆BYQTTBZ5rg:2013/09/05(木) 22:30:38 ID:c64Ee9hU0
投下します

710蟲毒の華 ◆BYQTTBZ5rg:2013/09/05(木) 22:32:50 ID:c64Ee9hU0
女である。夜風を孕んだ金色の髪を棚引かせ、朱色の帯に夜に溶け込んでしまいそうな藍色の着物を着飾った女が、カランカランと下駄の音を鳴らしながら、歩いていた。
異様な光景であった。今宵に上がった幕は蟲毒。血が血を呼ぶ陰惨な殺し合いである。その中を女は恐怖など微塵も見せずに平然と、暗闇を掻き分けるように力強く歩いていたのだ。
だがそんなものより遥かに異様なのは、女の額に生えた赤い角であろう。その女は人の姿形を取りながら、その角で以って明らかに人間であることを否定していた。
さもありなん。その女こそ、星熊勇儀。現代を生きる妖怪――真(まこと)の鬼である。


漆黒の闇から這いずり出るように、もう一人の女が現れた。おかっぱ頭の銀色の髪の上に蝶のような形に結んだ黒いリボン、緑のベストにフリルの付いた同色のスカート。
その出で立ち通り、少女である。しかし、その手には少女の稚気とは反し、冷たい水に浸けていたかのように妖しく光る一本の刀。
その殺意の煌きを往来にて放つは、まさしく血に飢えた狼――否、剣の鬼であった。


「名は魂魄妖夢……『冥界の神アヌビス』のカードを暗示とするスタンド使い。星熊勇儀と見受けた。おまえの命、貰い受ける」

「正面から正々堂々か……あんたみたいな人間が、まだいたとはね。どうやら地上を去るのは、早すぎる決断だったらしい。
まあ、後悔はその名の通り、後でするとして……いいよ、かかって来な! 暴れる奴には暴れて迎えるのが、礼儀ってね!」


神速の踏み込みである。勇儀の言葉の後には、もう目の前に刀を振り下ろす妖夢がいた。
その斬撃を迎えるは、無造作に掲げられし勇儀の腕。何ら武器も防具も付けていないただの腕である。
しかしそれが鬼の、とすぐに知らされたのは、攻撃を加えた当の刀――アヌビス神であった。


『にゃ、にゃにィィ〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!?』


アヌビス神の驚きが示す通り、刀は勇儀の腕を切り落とすことなく、僅かな切傷を与えるだけで終わっていたのだ。そしてその驚倒の隙に送られるは、怪力乱神の勇儀の拳。


「知らなかったのかい? 鬼は頑丈なのさ。ついでに教えといてやるよ。鬼は力持ちもでもあるのさ!」


山をも動かすと言われる鬼の怪力である。妖夢の前歯は全て弾け飛び、そこにあった顔はボールのように吹っ飛び、何メートルも地面を転がっていった。
しかし、その妖夢の顔からはニヤリと笑みが零れる。不気味な笑顔であった。歯は無くなり、鼻骨も折れ、鼻血がとめどなく流れるそこで、魂魄妖夢は口角を吊り上げて笑っていたのである。


「憶えたぞ! その怪力、その頑丈さ……確かに憶えたぞ!!」


妖夢の獣の如き咆哮と二度目の斬撃。怪我の痛みをものともせず、一瞬にして間合いを詰め、瞬息の剣を袈裟斬りに放つ。
そして先と同じように出迎えた勇儀の腕を、今度の刃はするりと音も立てずに通り抜けた。
斬ったのである。美しさを感じさせるほどの切断面を残し、アヌビス神は鬼の腕を綺麗に切り落としたのだ。
更に先の返礼と言わんばかりに、驚愕の色を顔に映す勇儀に向けて、逆袈裟の斬り返し。それは燕も逃れることの叶わぬ刹那の間であった。

711蟲毒の華 ◆BYQTTBZ5rg:2013/09/05(木) 22:33:43 ID:c64Ee9hU0
血しぶき上がり、勇儀の着物を新たに朱色に染め上げる。しかし意外なことに、そこには屈辱に顔を歪める魂魄妖夢がいた。
それもその筈。圧倒的な鬼の力を前にして、これ以上の身体の怪我、ならぬ損壊を恐れた魂魄妖夢は、十分な踏み込みが出来なかったのである。
必殺の機会を自ら手放す。十分な失態であった。とはいえ、刀が届かなかったというわけでもない。勇儀の豊かな胸には、刃による深い傷跡が残っていた。


「っつう! 全くこういう時は萃香のペッタンコな胸が羨ましいね。今度会った時に、胸を小さくする方法でも訊いてみるか」


おっぱいである。それがなければ、一撃目はともかく二撃目は完全にかわせた攻撃であった。それだけに眼下にあるものが恨めしい。
着物の裂け目からは、着物の窮屈さを抜け出そうと、たわわに実った白い果実が飛び出してきている。
零れ落ちそうなそれは、今の闘いにおいて右腕の損失よりも厄介な代物であることは明確であった。
さてどうしたものか。勇儀は妖夢との距離を一旦取り、怪我の痛みなど露知らず、と残った腕で暢気におっぱいを弄ぶ。


「随分とお気楽な様だが、今からすることを見せても、果たしてそのままでいられるかな?」


剣呑な台詞を傲岸に言い放ち、妖夢は足元にあったものを空中へ蹴り上げた。切り落とした勇儀の腕である。
そしてそれが輪を描きながら地面に向かう中、妖夢は刀を持たない左手で掴み取り、大仰に刀と共に構えた。


「二刀流! 柄がなくて、ちょいと持ちづらいが、この通りよッ!!」


ドン、と地響きが聞こえ渡った。足元には一際大きなクレーター。妖夢は勇儀の腕で地面を叩いたのである。
鬼の腕。アヌビス神の一撃にも耐え、怪力を生み出す筋肉。妖夢が持つそれこそ凡百の武器を越えた至高の武器である。
しかし、それを否定するかのような音が一つ。今度はズン、と地響きが聞こえ渡った。目の前には太い幹の大きな杉の木。
何と勇儀は身の丈の十数倍をあろうかという杉の木を片手で軽々と引っこ抜き、これまた軽々と担ぎ上げたのだ。
怪力乱神。それを体現する星熊勇儀は心底楽しそうに笑顔で口を開く。


「強いね! 気に入ったよ、魂魄妖夢! 最初は荒木と太田の野郎共をぶっ飛ばしてやろうかと思っていたけれど、そんなものはやめだ、やめ!! 
あんたみたいな奴がいるのなら、このバトルロワイアルに興じてみるのも悪くない。さあ、駄目になるまで、お互い全力で愉しもうじゃないか!!」

「フン、鬼風情が面白いわ! この私は剣の達人! 私は誰よりも強い! 私に斬れぬものなどない! だから……!」

『だから、俺は絶対に……絶〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ対に負けなあいのだあああああああああ!!』


鬼と鬼の殺し合ひ。これこそ蟲毒の華にて候。今宵、血の雨止むこと侍らぬ。

712蟲毒の華 ◆BYQTTBZ5rg:2013/09/05(木) 22:34:51 ID:c64Ee9hU0
【D-2 猫の隠れ里/黎明】
【魂魄妖夢@東方妖々夢】
[状態]:前歯全部喪失、歯茎出血、鼻骨骨折、鼻血ダラダラ、アヌビス神に精神を乗っ取られている
[装備]:アヌビス神@第3部 、星熊勇儀の右腕@現地調達
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜2(刀剣類が無いことを確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:全員斬り殺す。
1:星熊勇儀を殺す。
2:一対一の状況を作り、一人ひとり斬り殺す。
3:『アヌビス神』のスタンドについて知っている者を、優先的に仕留める。DIOも例外ではない。
※魂魄妖夢の参戦時期は東方神霊廟以降です。
※能力制限の程度については、後の書き手さんにお任せします。
※アヌビス神の参戦時期は、承太郎に敗北し刀身をナイル川に沈められた直後ですが、完全に修復されています。
※アヌビス神は霊夢から、幻想郷の住民についての情報を得ています。
※アヌビス神は、現在『咲夜のナイフ格闘』『止まった時の中で動く』『星の白金のパワーとスピード』
 『鬼の怪力と頑丈さ』を『憶えて』います。


【星熊勇儀@東方地霊殿】
[状態]:右腕欠損、胸部裂傷、おっぱいポロリ、ハッピーうれピー♪
[装備]:着物、大きな杉の木@現地調達
[道具]:ランダム支給品、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:全力でバトルロワイアルを愉しむ
1:魂魄妖夢と勝負をつける
2:たゆんたゆんに揺れるおっぱいをどうにかしたい
3:右腕を取り返す
4:萃香にどうすればおっぱいが小さくなるか訊くwww
[備考]
参戦時期は後続の書き手の方に任せます


<星熊勇儀の右腕>
スタープラチナの力を憶えたアヌビス神の一撃にも耐える頑丈さと怪力を生み出す筋肉で出来た鬼の腕。
その形状故に持ちづらいが、威力と耐久性は一級品。そんじょそこいらの武器よりは、遥かに優れた代物である。


<大きな杉の木>
日本固有種の常緑針葉樹。
幹の太さは成人男性4人分の胴回りほど、長さは20メートル前後。
『丸太』に使われる木でもあり、その威力と頼もしさはとある漫画で実証済み。

713 ◆BYQTTBZ5rg:2013/09/05(木) 22:35:34 ID:c64Ee9hU0
以上です
投下終了

714 ◆YF//rpC0lk:2013/09/05(木) 22:44:38 ID:.rwbFMLI0
乙です。
おっぱいwwww

715 ◆n4C8df9rq6:2013/09/05(木) 23:24:09 ID:tlkD2.qs0
投下乙です!
勇義姐さん、殺し合いにおいても強者を前に生き生きと闘争を楽しむ辺りやはり彼女らしい…!
そして思わぬおっぱいww
アヌビス神も次々と憶え始めて強くなっている中で果たしてどちらが勝つのか…

>『丸太』に使われる木でもあり、その威力と頼もしさはとある漫画で実証済み。

凄ェ!流石勇儀!

716名無しさん:2013/09/05(木) 23:49:47 ID:l6O6an3w0
みんな 丸太は持ったか!

717 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/06(金) 00:10:11 ID:iuvVf2/20
>>716
ワムウ「ぬうう〜っ、この縄文杉の丸太でーーっ!!」

DIO「発想のスケールで……負けた……」
レミリア「丸太は……丸太はアカン……!」

聖「すまぬ……すまぬ……!
 ってやっぱり和尚ポジは私なのですか!?」


>>710
凄ェ!
こんなに早くリレーしてくれる人が現れるとは!乙です!

718 ◆YF//rpC0lk:2013/09/06(金) 00:44:25 ID:QK5V59aY0
自分も一通り書けたので、
紅美鈴、ウェザー・リポート、霍青娥、多々良小傘、ジョルノ・ジョバァーナ、トリッシュ・ウナ(書き手枠)
で投下します。

719Golden Weather Rhapsody ◆YF//rpC0lk:2013/09/06(金) 00:45:29 ID:QK5V59aY0


「ハアァァァァッ!!!」


気を高めて、美鈴は腕を横に薙ぐ。
空を裂く美鈴の腕から、クナイのような虹色の弾幕が無数に発射される。
狙うは目の前にいる殺人者、ウェス・ブルーマリン。
しかし、ただ黙って弾幕を喰らうわけにはいかない。先ほどと同じく、スタンドの両腕で弾幕は防がれる。
ある個所の弾は右へ、またある個所の弾は左へと払われた。

だが、それは美鈴の誘導だった。
弾幕はただの目くらまし。ウェスは美鈴の接近を許してしまい、何時の間にか目の前に美鈴がいる。
それでも、あの距離を一瞬で詰められるのも、美鈴が妖怪であるからこそ。
素早く間合いを詰め、そのスピードを乗せた掌底が、ウェスの腹部めがけて叩きこまれる。
寸でのところで、ウェスはウェザー・リポートの能力で生み出された気流により
美鈴の腕を逸らせながら間一髪避けた。
だが、勢いをそのまま乗せられる掌底は、気流の上からでもウェスの腹付近の服に切り込みを入れた。

「くっ!」
(まずい。構えからして只者じゃないだろうと思っていたが、これは予想以上かもしれない……)
ウェスは後退する。
今のは避けれたとはいえ、理解できたのだ。
彼女の一撃が人間である自分に突き刺さればどうなるかを。

720Golden Weather Rhapsody ◆YF//rpC0lk:2013/09/06(金) 00:45:47 ID:QK5V59aY0

(何としても、コイツに一撃を与えて大人しくしないと)

美鈴の作戦はただ一つ、「接近戦で直接ウェスを叩く」事。
シンプルすぎるが、これが今美鈴の出来るベストだった。
その発想に至った理由は二つある。


一つは美鈴自身が接近戦が得意だという事。
彼女は幻想郷で定番の弾幕ごっこではそれほどの強者ではない。
その分野では同じ紅魔館に勤めるメイド長、
あるいはいつも異変を解決する白黒魔法使いや博麗の巫女の方が何枚も上手だ。
だが、武術に関しては彼女が門番がてら行う武術家との勝負では負けなしの達人だ。
人間相手には、妖怪の体力、身体能力も相まって強力なアドバンテージがある。

もう一つには、あの男の傍らに立つ人形―――スタンドにある。
先ほど、少女を守るために放たれた弾幕を、あの人形は全て防ぎ切った。
それだけならまだしも、人形には小さな損傷一つ見受けられない。
雲のようにも見えるアレには、攻撃は通じないのかもしれない。
ならば遠くから弾幕を無駄撃ちして霊力を消耗するより、最小限の気で接近戦により男を直接叩くべきだと判断したのだ。


彼女は知らぬ事だろうが、その判断で概ね間違いないだろう。
「スタンドはスタンドでしか傷つけられない」
―――この絶対法則により、スタンドはそれ以外の攻撃に対して無敵の盾となってしまう。
更にウェザーは、空気の壁によりある程度の飛び道具ならば完全に防いでしまうこともできる。
この男に、弾幕で挑むのは愚策と言えるのだ。
ある意味、美鈴は幸運だろう。

721Golden Weather Rhapsody ◆YF//rpC0lk:2013/09/06(金) 00:46:18 ID:QK5V59aY0

美鈴の攻撃を避ける事を選んだウェス。
だが、彼とてこのまま防御に徹するつもりは毛頭ない。
ウェスには皆殺しにする覚悟と、それを可能にする能力がある。

「ウェザー・リポート」―――天候を操るという、幻想郷では守矢の神が持ちうる力。
ウェスの意思に呼応し、周囲の水分が超小型の雲を形成する。
雲からは、ゴロゴロやバチバチという嫌な音が鳴り響く。

「『ウェザー・リポート』ッ!!」
明確な殺意が形となって、美鈴に襲い掛かる。周囲の天候は『雷』。
美鈴は腕に気を込め、ある稲光は軌道を見極めて避け、またある電光を防ぐ。
『雷』は『神鳴り』……妖怪とてまともに喰らえばただじゃ済まない。
これでは、美鈴のジリ貧は必至だった。

(あぁもう、もう少し気を温存するつもりだったけど仕方がない!)
決めるや否や稲光の隙を伺いながら、美鈴は気を練り上げる。
その腕は円弧を描き、自身とその周囲の気を循環させていく。
気は動きに合わせ収束していき、その輝きが増していくのがウェスにも見て取れた。
最大まで収束した時、気の塊がウェスに襲い掛かる!

『芳波』―――円弧の動きで気を循環させ前方への収束させて放つ気功波。
放たれた気は作り上げた暗雲を蹴散らし、ウェスへと迫っていた。
「こんなものッ!」
だが、ウェスの防御の方が速かった。
咄嗟にスタンドを前方に展開、クロスさせた腕で気功波を防ぎきる。

          瞬間、ウェスの体がバランスを崩した。

722Golden Weather Rhapsody ◆YF//rpC0lk:2013/09/06(金) 00:46:32 ID:QK5V59aY0

「グオッ!?」
突然の重心変化にウェスに驚愕した。
美鈴はウェスに気功波を防がれるのも予測していた。
何としてもウェスに一撃を与える。そのためにはスタンドを一瞬でも封じなければならない。
美鈴は土壇場で、腕だけでなく脚にも練り上げた気を蓄積させていた。
そこからの踏込で放たれる地面への衝撃。
「黄震脚」―――地の色は黄色。
自身と大地の気の呼応により放たれる衝撃波は、離れた相手も構えを崩す。

ウェスは倒れそうになる自身を、空気のクッションを生成して受け止める。
立ち上がろうとするウェスに、美鈴が高速接近してきた。
今度はスタンドの防御も間に合わない。
人間であるウェスの身体に、妖怪である美鈴の一撃が、鉄山靠がヒットした。

「グブッ!!」
美鈴の攻撃の勢いそのままに、ウェスは石壁へ叩きつけられた。
対して鍛えていない人間と、鍛練を積み重ねた妖怪。その肉体強度差は明白だ。
殺意のない、大人しくさせるための攻撃とは言え、その威力は大きい。
肋骨、内臓へ相当の損傷、さらには背中への打撲を受けた事を彼自身察した。
それでも、彼は壁に背を持たれながら立ち上がった。

「まだやるつもり?」
美鈴は構えを解かぬままウェスに問いかける。
尤も、彼の答えなんて最初から分かり切っていた。
「……当たり前だ」
彼は倒れない。ペルラを取り戻すと誓ったから。
そのためにこの手を血に染めようと決意したから。
何より……仕掛けておいた布石はまだ健在だから。

美鈴は気づかない。自身の最大の弱点―――「妖怪である」という点を突かれることを。
不自然にも「風が東から吹き続けている」事を。

723Golden Weather Rhapsody ◆YF//rpC0lk:2013/09/06(金) 00:46:49 ID:QK5V59aY0

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

「これはなかなか、楽しめる戦いになっているわね」

ウェスと美鈴から少し離れた建物の屋根。
河童の光学迷彩スーツによって気づかれていない青娥は、二人の戦闘を鑑賞していた。
どちらも最初の見立て通り、彼女を楽しませてくれた。

幻想郷の中では、その実力はお世辞にも上位とは言えない紅美鈴。
だが、それは幻想少女の間で流行しているのが弾幕ごっこだからだ。
彼女の技術は、いつもの華やかなごっこ遊びではなく、このように生死の狭間にある真剣勝負で光るのだ。
瞬時に気を練り上げ巧みに操るその技巧は称賛に値する。

対するウェスも、期待以上の存在だったと言えよう。
守矢の特権かと思われた天候操作を、詠唱もなしに成し遂げるその能力。
時に意識的に、時に無意識に雲を、風を、雷を操るそのさまはまさに風神雷神のごとく。
同じ人間でも、かの風祝を凌ぐかもしれないと彼女は見立てていた。


(んッ?)
そうして二人の実力に関心していた時に、彼女はあることに気が付いた。
先ほどから弱いながら、風が東から吹いている。
そう言えば、地図によれば東にあるのは……

(あの殿方の方が一枚上手だった、という所かしらね)
内心彼女は少し物寂しげだった。もうじきこの戦いは終わるだろうから……

724Golden Weather Rhapsody ◆YF//rpC0lk:2013/09/06(金) 00:46:59 ID:QK5V59aY0

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

「諦める様子なし、か……」
なんて精神力してるんだ。美鈴は目の前にいる男をそう評価する他なかった。
確かにさっきの攻撃は命までとるつもりはなかった。
それでも人間が内臓傷つけられれば、普通は立っている事だって出来やしない。
それでも向かってくるならと、美鈴は再び気を練り上げる。
こうなればもう一度攻撃して、再起不能にするしかない。
今度こそ終わらせる。そう意気込んで美鈴は一歩踏み込み


―――踏み込んだ脚がぐらりと崩れ、美鈴はそのまま倒れこんだ。


(あっあれ? えっなんで!?)
なんとか腕をついているが、体がいう事を聞かない。
猛烈な眩暈と頭痛がする。これはまさか……
(中毒症状!? でもなんで? こいつが毒を使ってた様子はなかったはず……)
その時、美鈴は弱い風が吹いていることに気づいた。それも、先ほどから東風ばかりである。


そういえば、と美鈴はある事を思い出した。
かつて花が季節問わず咲き乱れる異変があった。
その際、紅魔館のメイド長は巫女らとともに異変解決に赴いたという。
そこで出会った妖怪の中に、人形の付喪神がいたそうだ。
その名をメディスン・メランコリー。確か生まれた場所の名は……

(『無名の丘』ッ! しまった、コイツに嵌められたんだッ!!)
『孫子』にもある通り、戦ではその地形を利用することも計略の一つである。
なんということはない。単純な話、ウェスは地形を利用した。
ポンペイ遺跡の隣にある無名の丘、そこに咲く鈴蘭の毒を利用したのだ。

725Golden Weather Rhapsody ◆YF//rpC0lk:2013/09/06(金) 00:47:10 ID:QK5V59aY0

鈴蘭の毒は精神に深く作用する。
肉体が主体である人間や妖獣は大した症状は出ないが(てゐは例外だった)、
精神が主体である妖怪などには様々な中毒症状を引き起こす。
更に、美鈴はウェスを攻撃する際に多くの気を体中に巡らせた。
その過程で『毒気』も通常より速く多く巡る結果となってしまったのだ。

また、ウェスが起こした風は真っ直ぐに吹いていただけではない。
この東西に大通りの伸びるポンペイの遺跡の中でその風は、
時に留まり、時に滞りながら空気中の鈴蘭毒の濃度を高めながら運んでいた。

ウェスが鈴蘭毒の存在を知ったのは、小傘に出会う前に行った気流探知による偶然だった。
能力操作は遠くへ行くほど大雑把になる。それでも構わない。ただ近くまで運べばいいのだから。
あとは細かい操作は近くに来てからすればいいだけだった。
そして、彼自身は気流操作により毒が届かないようにされている。


かの李氏八極拳の創始者たる拳法家、李書文には試合に負けた武術家の遺族に毒殺されたという説がある。
拳法家に接近戦を挑むバカはいない。
どこかの誰かが、「本気で殺したいなら毒を盛る」と言ったように、毒を持って殺せばいいだけだ。

726Golden Weather Rhapsody ◆YF//rpC0lk:2013/09/06(金) 00:47:30 ID:QK5V59aY0

「……。」
ウェスは立ち上がれない美鈴を見下ろしている。
彼女の顔色は見るからに悪かった。
もはや、先ほどのような俊敏な動作も、力強い気の攻撃も出来ないだろう。
傍らに、自らのスタンドを具現化させる。

ウェザー・リポートの風圧による打撃ならば、簡単に人体を貫ける。
人間よりも頑丈である妖怪の体だが、おそらく何とかなるはずだ。
スタンドの拳を握りしめ、思い切り振りかざす。
人型の暴風が、美鈴の頭を破壊せんと振り下ろされた。

その拳は、途中で止められた。何故か?
突如として飛んできた銀色の物体を払い落とすために、止めざるを得なかったのだ。
だが、ウェスはそれを見て驚愕した。自身が払ったもの。


―――それは一尾の「トビウオ」ッ!


「!?」

海のない場所にいるはずのない生物の飛来。
スタンドの一撃を受けた魚は、体も砕け息も絶え絶えだった。
が、驚くべきことに、トビウオの身体が少しずつ石くれと化していく。
いや違う。石に「戻っている」のだ! これは何らかの方法でトビウオに変えられた石だったのだ。

と、ウェスは何かの気配を感じ取った。
トビウオが飛んできたであろう方向から受けるこの感覚。
星形の痣を通じ、神父や徐倫のような同じ痣を持つものの「シグナル」だ。
ウェスはその方向に顔を向ける。



そこにいたのは、特徴的なコロネのような金髪の少年だった。

727Golden Weather Rhapsody ◆YF//rpC0lk:2013/09/06(金) 00:47:54 ID:QK5V59aY0

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

―――時間は少し遡る。

B-2の一角、ポンペイ遺跡の入口付近に、二人の少年少女がいた。
一人は赤く軽いくせ毛の少女。もう一人は、金髪がまるで3つのコロネのようになっている少年。
少女の名はトリッシュ・ウナ。少年の名はジョルノ・ジョバァーナ。

見た通り歳は15と若いが、その瞳に宿る輝きは並の大人も持てぬほど力強い。
なぜなら、彼らはこの場所に呼び出される前から、自らの命を賭けた戦いに巻き込まれていたからだ。
イタリアのマフィア『パッショーネ』の中で行動し、様々なスタンド使いとの戦闘を繰り広げた。
故に彼らの信頼は、この『殺し合い』の中でも崩れるものではないのだろう。
最初に出会えたのが互いで良かったと、二人は素直に喜んでいた。

今、彼らの前には、地図と名簿が置かれている。
ゲームの会場と、参加者を確認するために出されたそれらだったが、
それは彼らに幾つもの混乱と疑問をもたらした。

「一体どういう事!? なんでブチャラティたちの名前が載っているのかしら?」
「僕にも見当が付きません。どんなスタンド能力をもってしても不可能なはずだ」

彼らの疑問、その一つ目は「死んだはずの人間」が記載されていた事だ。

チャリオッツレクイエムを攻略し、天へと昇って行ったリーダー・ブチャラティ。
そのブチャラティがフィレンツェ行超特急において撃破した暗殺チームの一人・プロシュート。
そして、仲間の死を越えて打倒したトリッシュの父・ディアボロ。
何故彼らの名前が書かれているのか。荒木か太田のスタンド能力で蘇ったとでもいうのか?
そんなことは出来やしない。それは誰より、ジョルノ自身が一番よく分かっていることだ。

728Golden Weather Rhapsody ◆YF//rpC0lk:2013/09/06(金) 00:49:11 ID:QK5V59aY0

二つ目は地図に記載された物。地図にはポンペイにローマのコロッセオが描かれている。
それらは二人もよく知っている場所。ただし、何方もイタリアにあるはずの物。
肌に感じるのは温暖湿潤気候の空気であり、イタリアを初めとした地中海気候のそれとは明らかに違っていた。
それは奇妙なパッチワークかモザイクとしか思えない地形であることを示唆している。

「奴らは僕たちを混乱させるために死者を名簿に載せている……とは思えないですね」
「そうね。現に今も感じるもの。どこかでアイツが確かに生きているってシグナルを」

親子の血脈が成せる業か、トリッシュとディアボロは互いにその存在を感覚的に捉えることができる。
かつてディアボロはそれにより自身の正体が暴かれるのを避けるために、
自らの手で殺すためにブチャラティ達に連れてこさせたことがあった。

「何処にいるのかは詳しく分からないけれど、アイツが生きているのは間違いないわッ!」
「トリッシュ、そのことと関係するのか分からないのですが……」
「どうしたのジョルノ?」
「同じものなのかは分かりませんが、僕も何かシグナルを受け取っている感覚があるんです」
「シグナル? 貴方、この名簿に親類がいるっていう事?」
「どうなのか分からないんです。少なくとも複数のものを感じるんですが」
ジョルノが感じた三つ目の疑問、それは魂が感じるシグナルだった。
それはジョースター家のものが発する信号なのだが、自身の血統を詳しくは知らぬジョルノには未知なるものである。

「なんにしても、まずはミスタ達と合流しましょう。
 荒木、太田をどうにかするにしても、今の僕たちには人手も情報も足りない」
「かもしれないわ。アイツをもう一度なんとかするためにも。
 それにブチャラティにも会わなきゃならないもの。本当に生きているのかを」

そう言いながら二人は場所を離れる準備をしだした。
と、その時だった。

729Golden Weather Rhapsody ◆YF//rpC0lk:2013/09/06(金) 00:49:35 ID:QK5V59aY0

ポンペイの方から、カランコロンという音が響いてくる。
音は確実に二人に近づいて来ていた。
その音に気づいたジョルノとトリッシュは、月明かりに映し出された音の主に少しばかり驚いた。

それは水色の髪に、水色と赤のオッドアイの少女だった。
走るその足には下駄が履かれ、それがあのカランコロンという音を出している。
何より目立つのは、大きな一つ目とベロリと垂れた舌が特徴的な紫色の雨傘だ。
だが、そんなことより二人が驚いたのは、その少女の表情だった。
その瞳には涙が溜まり、本来なら笑顔が似合うだろうその可愛らしい顔は恐怖と苦痛で歪んでいた。
二人を見た少女は、息を荒く吐きながら走り寄ってきた。
走る勢いを殺しきれなかったのか、二人の元にたどり着いた少女は止まった拍子に倒れそうになる。
トリッシュは転ばぬよう、その少女の身を受け止めた。


「お、女の、人、が、私、を……」
「何があったの? ゆっくりと呼吸して落ち着いてから、何があったか話してみて」

息も絶え絶えに何か話そうとする少女に、トリッシュは落ち着くよう促す。
深呼吸を数回行い、落ち着き始めた少女は話し出した。
「女の人が、私を逃してくれた。危ない男の人から……」
覚めない恐怖で回らない頭を必死に動かして、少女はなんとか状況を説明しようとする。
それを聞いたジョルノは、ポンペイの方向を見ながらトリッシュに言った。

「トリッシュ、僕のわがままなのですが聞いてください。
 先程話した予定ですが変更します。僕はまずポンペイに向かおうと思っています」
「この子を助けてくれた女の人を、助けるために?」

トリッシュは少女を抱えたままジョルノに問いかける。
「それもあるのですが、実はさっき言っていたシグナルの一つが、このポンペイから感じるんです。
 何があるのか確かめる必要があります」
「シグナルの一つが? それって二人の内どっちなの?」
「分からない。それも含め確かめたいと思うのです」
「……いいわ。先ずは近くの事からなんとかすべきね」

トリッシュの承諾の言葉を皮切に、二人はポンペイの中へ入って行った。



そして時間は戻る。

730Golden Weather Rhapsody ◆YF//rpC0lk:2013/09/06(金) 00:49:47 ID:QK5V59aY0

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

ウェスの振り向いたさきには、金髪の少年と赤毛の少女が立っていた。
面倒なことになった、と彼は真っ先に思った。
自分の受けたダメージは軽くない。その上、子供だというのにその雰囲気は只者ではない事が良くわかる。
この状態で、あの二人を相手に勝てるかは分からない。

ふとウェスは、少年の方が気になった。
先ほどから感じるシグナルもそうだが、それ以上に感じたことがあった。
見た目も何もかも違うのに、その眼の輝きは今までに確かに見た事のあるものだった。
そう、その輝きはかつて、刑務所で自分を含めた仲間の中心にいた彼女とそっくりだった。
(徐倫に似ている……なんなんだ、あのガキ?)



「ジョルノ、あの女性と男、どっちからシグナルを感じる?」
「男の方です。しかし、彼はあの女性を殺そうとしていた。彼には少し確認する必要がありそうです」
ウェスに聞こえないよう、トリッシュとジョルノは小声で会話をする。
視線の先、ウェスの影には長い赤毛の中国風の女性が蹲っている。
その顔色の悪さ、息の荒さは、ジョルノがかつて書物で見た様な症状だった。

「彼女の方は明らかな中毒症状を起こしている。治療する必要があるます」

ジョルノは女性に視線を向けながら、トリッシュに指示を出す。
「トリッシュ、僕は彼女の治療に当たります。終わり次第加勢しますので時間を稼いでください」
「わかったわ。でもなるべく早めにお願い」

731Golden Weather Rhapsody ◆YF//rpC0lk:2013/09/06(金) 00:49:57 ID:QK5V59aY0

二人の後方、建物の影に少女、小傘はいた。
先ほどのウェスの暴行による腹部の痛みもだいぶ和らいでいる。
小傘は壁に身を隠しながら、恐る恐る顔を出していた。

「二人とも、大丈夫かな……」
誰に言うでもなく、ぼそりと独り言を吐いた。
一方で何故かはわからないけれど、あの二人なら大丈夫だろうというよくわからない確信が心の底にあった。
このポンペイに入るときも、出たときには感じなかった気持ち悪さがこみ上げたとき、
ジョルノはどこからともなく取り出した(様に小傘には見えた)蛇の血を用いて治療してくれた。
彼はワクチンやら血清やら言っていたが、おかげで不快感はなくなった。
彼らならきっとやってくれる。そう思うには十分だった。

けれど、一方で否応なしに感じてしまうものもある。
それは己に対する無力感。あの男に出会った時もそうだ。
勝手に出来ると思い込んで、勇んで出て行ったのに、何もできずにただやられるしかなかった。
あの女性が助けてくれなければ自分は死んでいたかもしれない。

(結局、私なにも出来てない……)
人の役に立つ傘として生まれ、忘れられて妖怪に生まれ変わって、
それでも小傘は力になれていない自分が悲しくなってきた。

どうすればいいのか分からず、ただただジョルノとトリッシュを見続けるしかなかった。

732Golden Weather Rhapsody ◆YF//rpC0lk:2013/09/06(金) 00:50:22 ID:QK5V59aY0

【B-2 ポンペイ/深夜】
【ジョルノ・ジョバァーナ@第五部 黄金の風】
[状態]:健康、体力消費(極小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(本人確認済み、武器でない模様)
[思考・状況]
基本行動方針:仲間と合流し、主催者を倒す
1:まずは目の前にいる女性を治療する。終わり次第トリッシュに加勢する
2:ミスタ、ブチャラティに合流したい
3:ディアボロをもう一度倒す
4:あの男(ウェス)、何か信号を感じるが何者なんだ?
[備考]
※参戦時期は五部終了後です。能力制限は未定です。
※星型のアザの共鳴で、同じアザを持つ者の気配や居場所を大まかに察知出来ます。
※地図、名簿は確認済みです。
※小傘の名前をまだ聞いていません。

【トリッシュ・ウナ@第五部 黄金の風】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(本人確認済み、武器でない模様)
[思考・状況]
基本行動方針:仲間と合流し、主催者を倒す
1:まずは目の前にいる男を何とかする(ただし殺すつもりはない)
2:ミスタ、ブチャラティに合流したい
3:ディアボロをもう一度倒す
[備考]
※参戦時期は五部終了後です。能力制限は未定です。
※血脈の影響で、ディアボロの気配や居場所を大まかに察知できます。
※地図、名簿は確認済みです。
※小傘の名前をまだ聞いていません。

【多々良小傘@東方星蓮船】
[状態]:腹部や胴体へのダメージ(中、回復中)、疲労(中、回復中)、恐慌はだいぶ和らいでいる
[装備]:化け傘@東方星蓮船
[道具]:不明支給品(ジョジョor東方)、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗りたくない
1:ジョルノとトリッシュの戦いを見守る
2:……私、役立たずなのかな?
[備考]
※参戦時期は後の書き手さんにお任せします。
※本体の一部である化け傘は支給品ではなく初期装備です。

733Golden Weather Rhapsody ◆YF//rpC0lk:2013/09/06(金) 00:50:36 ID:QK5V59aY0

【紅美鈴@東方紅魔郷】
[状態]:鈴蘭毒の中毒症状(猛烈な眩暈と頭痛)、霊力消費(中)、疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:不明支給品、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを止めたい。
1:目の前の男(ウェス)を止める。
2:主催者に抗う為に協力出来る仲間を捜したい。出来れば紅魔館の住民達を。
3:男(ウェス)を撃退したら、さっき逃がしたあの妖怪(小傘)も探したい。
4:けれど、今は体が上手く動かない……
[備考]
※参戦時期は後の書き手さんに御任せします。
※小傘の声を聞きつけ、そちらの方へと向かった為に支給品の確認はしていないようです。

【ウェス・ブルーマリン(ウェザー・リポート)@第6部 ストーンオーシャン】
[状態]:肋骨、内臓の損傷(大)、背中への打撲(中)、疲労(中)、服に少し切れ込み(腹部)
[装備]:なし
[道具]:手榴弾×5@現実、不明支給品、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:ペルラを取り戻す。
1:皆殺しだ。
2:エンリコ・プッチは絶対にこの手で殺す。
3:目の前にいる二人をなんとかする。場合によっては逃げもありか?
4:できるなら、この女(美鈴)を殺しておきたい。
5:あのガキ(ジョルノ)、何者なんだ?
[備考]
※参戦時期はヴェルサスによって記憶DISCを挿入され、記憶を取り戻した直後です。
※肉親であるプッチ神父の影響で首筋に星型のアザがあります。
 星型のアザの共鳴で、同じアザを持つ者の気配や居場所を大まかに察知出来ます。
※制限により「ヘビー・ウェザー」は使用不可です。
 「ウェザー・リポート」の天候操作の範囲はエリア1ブロック分ですが、距離が遠くなる程能力は大雑把になります。

※ウェスの攻撃により、B-2 ポンペイの特に東半分は鈴蘭毒に汚染されました。
  人間、妖獣は若干の眠気程度ですが、妖怪などは吐き気、頭痛などの症状が発生します。
  なお、ジョルノ、トリッシュ、小傘の3名はジョルノのワクチン(血清)により無毒化できています。

734Golden Weather Rhapsody ◆YF//rpC0lk:2013/09/06(金) 00:50:47 ID:QK5V59aY0

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

(この殺し合い、やっぱり最高かもしれないわぁ……)
青娥は建物の上から、戦闘の鑑賞を続けていた。

美鈴が倒れた時には、もう楽しめるものはないと思っていた。
地の利を生かした毒霧攻撃により、この勝負はウェスの勝利で終わるだろう、
それが当初の彼女の予想だった。
ところが実際はどうだ。突然の乱入者により、勝負はまだ決着がつかなくなった。
むしろ、あのダメージから言ってウェスは戦えば不利になると容易に予測できる。

だが、彼女が「最高」と賞したのは他の理由にある。そう、あの乱入者の一人、金髪の少年だ。
霍青娥は強い力を持った者に惹かれる女である。
かつての聖徳王しかり、先の異変を解決した巫女しかり、
どのような相手であれ強き力を秘めた者を好むのだ。
そんな彼女が少年、ジョルノを見たときに抱いた感情はただ一つ。

――――俗にいう「一目惚れ」である。

遠目から見てわかる。あの少年から発せられるのは「王者の風格」そのものだ。
その黄金色まで見えそうな雰囲気は、あの聖徳王――豊聡耳神子に勝るとも劣らぬもの。
ジョルノに向けるその顔にはは、愛しき人を遠くから眺める恋する乙女と、
欲望にまみれた邪仙の表情が入り混じっていた。

(とは言え、今会いに行くのはやめた方がいいわよね)
青娥は先ほどとは一転して、神妙な面持ちで一人考える。彼に取り入りたいのは山々だが、それは今ではない。
仮に今出れば、戦闘を端から見ていて何をしていたのかと不審がられる。
それは彼女の望むところではない。

(一旦出直しましょう。彼には後で会いに行こうかしら。何か「手土産」を持って、ね)
そう結論付けた青娥はすくと立ち上がり、音もなく屋根を降りていく。
その場にいる者全てに気づかれることなく、彼女はその場をあとにしたのだった。

735Golden Weather Rhapsody ◆YF//rpC0lk:2013/09/06(金) 00:50:57 ID:QK5V59aY0

【霍青娥@東方神霊廟】
[状態]:健康
[装備]:河童の光学迷彩スーツ@東方風神録、双眼鏡@現実
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:気の赴くままに行動する。
1:今は彼らに接触すべきではない。早急に立ち去りましょう。
2:王者のような少年(ジョルノ)に「一目惚れ」。機会があれば後で会ってみたい。
3:面白そうなことには首を突っ込み、気になった相手には接触してみる。
  先程の殿方(ウェス)が使っていたような「まだ見ぬ力」にも興味。
4:時間があれば芳香も探してみる。
5:殺し合い?まぁ、程々に気をつけようかしら。
[備考]
※参戦時期は神霊廟以降です。
※制限の度合い、これから彼女が何処に向かうのかは後の書き手さんにお任せします。

736Golden Weather Rhapsody ◆YF//rpC0lk:2013/09/06(金) 00:52:32 ID:QK5V59aY0
以上で投下終了です。
ツッコミ、感想などを自由にお願いいたします。

これ書いてて思ったことはただ一つ。
「戦闘描写はただひたすらに難しい。特に格闘戦は」

737 ◆n4C8df9rq6:2013/09/06(金) 01:22:21 ID:WwZ441JQ0
投下乙です!リレーに感謝!
美鈴vsウェス、磨き上げられた体術で奮戦する美鈴がやはりカッコいい!
しかしウェザーリポートも流石に強力だった、天候で地の利を生かすとは…
小傘との邂逅からのジョルノとトリッシュの乱入でますます燃える展開に…!
にゃんにゃんはやはりにゃんにゃんらしいww

>「戦闘描写はただひたすらに難しい。特に格闘戦は」
これはマジ(確信)

738名無しさん:2013/09/06(金) 01:51:30 ID:sL4MxO/Q0
切れた腕を鈍器に使うアヌみょんを見てシロー・アマダを想起した

739 ◆IDjKD3qAb.:2013/09/06(金) 15:09:02 ID:UwQnu8x60
ゲリラとなりますが投下します

740 ◆IDjKD3qAb.:2013/09/06(金) 15:09:43 ID:UwQnu8x60
ディバックを漁る。
武骨な石で出来た仮面であった。
指でなぞるが、特になにが起こるというわけでもなく、ただの仮面が支給品として配布されたのだと気付く。
成程。
仮面が支給品とは中々洒落のきいたことをする。
彼女は石の仮面、曰く石仮面と呼ばれるそれを手放すと、青い焔が纏わり、彼女の周囲にふわついた。


仮面の付喪神である彼女――表情豊かなポーカーフェイスこと秦こころ。
彼女の目覚めはAの3の草原でだった。
何のことはなく、誰かに襲われるでもなく、平凡な目覚めである。

だからこそ、最初は夢かと思った。
今はまだ感情希薄の身分にして、夢見たがった。
希望がない――そう思う。
奪うまでもなく、現状ここには希望が見えない。
操るまでもなく、どうしようもなく絶望的である。

「……」

狐面を被り、これからのことを考えてみる。
殺し合いに乗ることは、しない。
現状彼女は『殺意』というものを抱いていないからだ――。
いや、そもそもの根底として、『死』とはつまり、『感情が零』であることを指す。
言いかえるならば、それは絶望であり、『希望』とは両極端に位置することだ。

『死』は希望(みらい)を作らない。
ましてや『殺す』、『殺される』だなんて、言語道断。

彼女の成すべきことは、全ての感情が平等に訪れるように調整することだ。
感情をなくすことでは決してないのである。
だとすれば、彼女は動かなければならない――この『異変』に対して。
ふわふわと自分を軸に回る仮面の一つ――『完璧な希望の面』を手に取り彼女は決意する。
彼女の『自我』がそうさせた。


まずは、どこかに移動しよう。
こんな草原の中に居たところで、仕様がない。
さしあたって行きたい場所も、特別合いたい人間もいないのだが、人目につくところに赴こう。
そうしたほうが、盛り上がる。
気分が。

「よーし♪」

何時までも意気消沈してられない。
心機一転、気持ち新たに。
幸先のいいスタートを切ろうと、『私と最強の称号を賭けて闘え!』という先ほどの宣言とは何だったのか、な決め台詞を唱えようと。

仮面を構えて、威勢よく。


「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!」


唱えた。
変な言葉が出た。
見ると石仮面を被った彼女は、傲然と、言い放つ。
――表情豊かな彼女。いささか表情豊かが過ぎたらしい。


「最強は誰のものでもないッ! このこころだッ!
 殺し合いを起こすなんてッ、ましてやこのこころまでをも巻き込むとはよほど馬鹿と見た!――しかし我々は、容赦せん!」


「なーんちゃって」


石仮面を外して。
女の人の仮面をつけ直す。
意気込み新たにしたところで、ようやく彼女は(これでも一応対主催として)最初の一歩を踏み出した。

こうして、表情豊かなポーカーフェイスな秦こころの旅路は始まる。
殺し合いを経て、彼女は感情はどのような得るだろう。或いは得れないのだろう。
――それを知るのは、まだ先のお話。

741 ◆IDjKD3qAb.:2013/09/06(金) 15:10:13 ID:UwQnu8x60
【A-3/草原/深夜】

【秦こころ@東方 その他(東方心綺楼)】
[状態]健康
[装備]様々な仮面、石仮面@ジョジョ第一部
[道具]基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない
1:ひとまずふらつく
2:殺し合いに乗っている人間がいたら戦う?
3:私が最強だ!
[備考]
※少なくとも東方心綺楼本編終了後から
※周りに浮かんでいる仮面は支給品ではありません


すげー短いですが投下終了です。
書き手枠より「秦こころ@東方心綺楼」でした。

こころの仮面の扱いですが、作中で明確に武器にしておりますが、
多々良小傘同様、彼女は仮面の付喪神であり、
メタ的なことを言うと彼女が仮面を外すと何もかもがままならなくと判断し、衣服等と同じ扱いにしました。
問題がある場合は、言っていただけたら、修正や破棄をさせていただきます。

それ以外にも何かありましたら、お願いします。

742名無しさん:2013/09/06(金) 15:59:00 ID:D.LNrVO60
★のGPSって便利な上にカッコいい設定だよなそんなことよりこころちゃんかわいい

743名無しさん:2013/09/06(金) 17:23:31 ID:iuvVf2/20
>>742
★のGPSってジョースターの星形のアザのことかw
最初何のことか判らなかったw

744 ◆n4C8df9rq6:2013/09/06(金) 18:23:59 ID:WwZ441JQ0
投下乙です!
こころちゃんキタコレ!やっぱかわいい!というか石仮面ww
マーダーではないんだけど、参戦時期もあって微妙に好戦的っぽそうな予感…w
あと仮面に関しては小傘の化け傘が初期装備で可能でしたし、大丈夫だと思います

さて
因幡てゐ、ブローノ・ブチャラティ、DIOを投下します。

745Look into my evil eyes ◆n4C8df9rq6:2013/09/06(金) 18:24:52 ID:WwZ441JQ0


絶対的な存在。
何者をも超越した万物の頂点。
この世の善悪に囚われぬ『真の帝王』。
それは社会を手中に収めて支配する『権力者』か。あらゆる力を極めた生粋の『強者』か。
今この瞬間、俺はその答えを理解した。
一瞬で脳髄に答えは焼き付けられ、俺の心がそれを確信していた。
何故ならば。
俺の眼前で堂々たる姿で君臨している男こそが。
まさに『全てを超越した帝王』そのものであったからだ。

746Look into my evil eyes ◆n4C8df9rq6:2013/09/06(金) 18:26:01 ID:WwZ441JQ0


「成る程、君はいい眼をしている」

妖艶な男の言葉が静かに発せられる。

E-4のコロッセオの入口付近。
ローマの観光地として名高いその建造物の内部にて、俺は―――『ブローノ・ブチャラティ』は、一人の男と邂逅していた。
金色の髪。透き通るような肌。男とは思えぬ妖しい色気。
そして、何者をも見下すような圧倒的なプレッシャー。男の身に纏う雰囲気は異常だった。
俺はギャングになってから数多の死線を乗り越えてきた、あらゆる殺意を目にしてきた。
だが、この目の前の男が纏う気はあまりにも異常だ。こんな男とは、今までに出会ったことがない。
人間離れしている。いや、人間なのかも疑いたくなる程の凄まじい威圧感。
一滴の汗が俺の頬を伝うように流れ落ちる。
目を見開き、俺は目の前に立ちはだかる者を刮目していた。
その男に対して恐怖を抱いていることに気付くのにさほど時間を必要とすることはなかった。
俺は、出会ったばかりのこの男を強く畏れていることをすぐに心で理解したのだから。

「きさま…何者、だ…?」
「そんなに怖がることはないじゃあないか。」

何とか絞り出した俺の言葉に対し、男は穏やかな声でこちらへと語りかけている。
その声色に何故か安心さえ感じてしまう。それがとにかく恐ろしい。
『コイツは危険だ』と俺の中で警鐘が幾度となく鳴り響いているのに。
それなのに、目の前の男の声に対して不思議な安らぎすら感じてしまう。

「君は…他の人間にはない、特別な力を持っているかね?」

男は微笑みかけるようにそう問いかけてくる。
特別な力。脳裏に過るのは、当然の如く『スタンド』だ。
俺は何も答えずに、恐怖を抑え込むように男を睨み続ける。

「『スタンド使いは引かれ合う』。あの老婆はそう語っていた」
「……………。」
「――さて。君はどうなのだろうな?君は果たして、私との『引力』に導かれた存在なのか?」

そう言った男の傍に―――瞬時に逞しい人型のビジョンが姿を現す。
その時、すぐに俺は気付いた。それはまさしく精神のビジョン。そう、『スタンド』だ。
俺はその時確信する。汗を流しながら、目の前の男が『スタンド使い』であるということを理解した。
筋肉隆々の屈強な肉体を持ったビジョンは、凄まじいスタンドパワーを身に纏っている。
まるで殺気のような。威圧感のような。表現のし難い、何かが滲み出ていた。


「もしもそうならば―――私と共に来ないか?この殺し合いで、共に勝ち抜こうじゃないか」


俺の心中に危機感が積み重なる。そして俺は直感した。こいつは、間違いなく『危険』だと。
殺し合いに乗っているということが解っただけじゃない。
あの『ボス』をも超えるカリスマを持つ、あまりにも強大な『帝王』だ――――!

747Look into my evil eyes ◆n4C8df9rq6:2013/09/06(金) 18:27:29 ID:WwZ441JQ0

「『スティッキィ・フィンガーズ』ッ!!」

俺の身は無意識の内にスタンドを発動させていた。
『あの男』に対する警戒心が告げていた。奴は野放しにしてはならない。
奴は間違いなく、大いなる『災い』を呼び寄せる…!



「やはり、か。それが君の…『スタンド』だね?」

男の言葉を聞く耳を持つこともなく、ブチャラティは破れかぶれに突撃する。
この時の彼は、完全に冷静さを失っていた。
あの絶対的なカリスマを前に抱いた恐怖と危機感で、まともな判断をする暇などなかった。
駆け抜ける。両足を極限まで躍動させ、男に対して接近する。
そして瞬時にスティッキィ・フィンガーズが拳撃を放った。
弾丸のように鋭く、風を斬るように素早いスタンドの拳による一撃。
―――しかしその攻撃は『男』を捉えることはなかった。

「な…!?」
「『何処を見ている』?」

何故ならば、先程までブチャラティが確かに見据えていた男の姿が忽然と消えていたからだ。
そして男は『一瞬でブチャラティの背後に立っていた』。
あまりにも突然の出来事だった。まるで道端に落ちた小石を避けるかのように攻撃を容易く回避してみせたのだ。
背後から聞こえる男の声に対し、ブチャラティはハッとしたように咄嗟に振り返る。
スティッキィ・フィンガーズが拳を握りしめながら。

「う、おおおおおお―――――――――ッ!!!!」

ブチャラティの雄叫びと共に、スタンドが何度も拳を放つ。
マシンガンのような鋭い攻撃に対し、男はただ腕を組んだ状態のまま黙ってそれを見ているだけ。
間違いなく男に拳は届くはずだ。いや、『届くはずだった』。


拳が叩き込まれる前に、男は再び姿を消していた。


「肉弾戦に長けている『近距離パワー型』スタンドか」

唖然とするブチャラティの耳に入ってきたのは、あの男の声。
それも至近距離ではない、ブチャラティから見て右方、5mほど離れた地点に男は立っていたのだ。
両腕を組んで堂々たる姿で立つ男の出で立ちには余裕すら感じられる。

「だが、このDIOのスタンドには及ばないようだ」

ガン、と鈍い音と共にブチャラティの身体が崩れ落ちる。
突然彼の目の前に出現したスタンド―――『世界』が、彼の腹部に拳を叩き込んだからだ。
『加減』したとはいえ、その威力は凄まじい。
最強のスタンドと称される「星の白金」と唯一互角に渡り合える程のパワーを持つのだから当然だ。
「がはッ……!?」
内臓を直接殴打されるかのような衝撃に襲われ、ブチャラティは腹部を抑えて踞る。
吐血混じりに咳き込みながら、彼はその場で動けずにいる。
対する男――『DIO』は、もはや身構えることすらしない。余裕そのものだ。

748Look into my evil eyes ◆n4C8df9rq6:2013/09/06(金) 18:28:32 ID:WwZ441JQ0
「冷静さを欠いているとはいえ、技の切れはいいじゃないか。パワーもスピードも十分…あとは能力だけ」
まるで品定めをするかのようにDIOは踞る男の能力を分析する。
不敵に笑みを浮かべながら、彼は手を下そうともせずにブチャラティを見下ろす。
ブチャラティは歯軋りをしながら辛うじて顔を上げ、男の顔を見た時に…彼は気付いた。

(この男―――ジョルノに、似ている―――?)

自身の部下である金髪の少年『ジョルノ・ジョバァーナ』。
新参ながらも高い行動力と判断力で運命を切り開く優秀なスタンド使い。
何故だろうか。このDIOという男は、ジョルノと何処となく重なって見えた。
容姿によるものなのか、雰囲気によるものなのか…いや、もっと根本的な『何か』が近いようにも思えた。
だが、少なくともこの男のような『威圧感』をジョルノは持っていない。
まるで黄金の精神と対になるような禍々しさを、目の前のDIOという男からは感じ取れるッ!


「どれ、それをもっと私に見せてくれると嬉しいのだが―――」


ブチャラティは目の前で巻き起こった光景を疑った。
男の頭髪が蠢き始めたのだ。
そして金色の髪の毛が、まるで触手のように伸び始める。
まるで生き物のように動き始めた髪の毛の先端から生えているものは、『肉塊で作られた芽のようなもの』。
直後、無数の触手と化した髪が獲物を狙うかのようにブチャラティ目掛け向かっていく―――!
ブチャラティの行動は早かった。彼の中で鳴り響いたシグナルが、咄嗟に身体を動かしたのだ!

「アリアリアリアリアリアリアリアリアリ――――!」

スティッキィ・フィンガーズが放つ無数の拳のラッシュが、触手を凄まじい勢いで殴り続ける。
拳を叩き込まれた触手には『ジッパー』が取り付けられ、パンチと共に先端の『肉塊』の部分のジッパーを分解し素早く切除した!
『触れたものにジッパーを取り付けること』、それがスティッキィ・フィンガーズの能力。
落下していく肉塊は地面に叩き落ち、のたれ打つように痙攣を繰り返し動かなくなる。
そのままブチャラティは、肉塊の触手を拳で切り抜けるようにDIO目掛け突撃する。
そしてスティッキィ・フィンガーズの右腕に、ジッパーが取り付けられた!

「――アリーヴェデルチ(さよならだ)ッ!!」

右腕のジッパーを開き、螺旋状の紐のようになった腕がDIO目掛け飛んでいく。
ジッパーの能力の応用編。腕に取り付けたジッパーを開くことで、通常のリーチ以上の射程を持ったパンチを放つことが出来る。
触手を伸ばすことによる隙が生じていたDIOの不意を突く攻撃。
『能力』を使用する間もなく、咄嗟に攻撃を防御するべく出現した『世界』の右腕に拳が叩き込まれたッ!

「ほう…?」

749Look into my evil eyes ◆n4C8df9rq6:2013/09/06(金) 18:29:21 ID:WwZ441JQ0
直後にDIOは感心の表情を浮かべる。
スティッキィ・フィンガーズの拳を防いだ『世界』の右腕が、地面に転がり落ちていたのだ。
同様にダメージのフィードバックによりDIOの右腕も切断されていた。
『世界』の右腕の切断面にはジッパーの無数の歯が取り付けられているのが見える。
ブチャラティのスタンドが、拳を叩き込むと同時に『世界』の右腕にジッパーを取り付けて分解したのだ。

「ほう、それが君のスタンド能力か!触れたものにジッパーを取り付ける…」
「はぁーッ…はぁーッ…」
「こうやって私の『肉の芽』や『右腕』にジッパーを取り付けて分解してみせた辺り、戦闘にも十分応用可能らしい」

だが、片腕を失いながらもDIOの余裕は全く崩れていない。
それどころか能力を目の当たりにして興味を抱いているかのようだ。
荒い息を吐きながらDIOを睨みつつ立ち上がるブチャラティは、傍にスタンドを立たせながら身構えている。


「―――とはいえ、残念だったな。」


再びブチャラティが、目を見開いた。
ククッと笑みを浮かべたDIOの右腕の切断面から『血管』が触手のように伸びたからだ。


「君のジッパーの能力で分解した所で、私には何の意味もないのだよ」


蠢く『血管』が、転がり落ちた右腕の内部へと侵入する。
グジュル、グジュルと不気味な音が響いた直後に右腕がDIOに引き寄せられた。
―――そして、何事もなかったかのように右腕が『くっついたのだ』。
外科手術を用いたわけでもなく、何かしらのスタンド能力を使ったようにも思えない。
『血管を伸ばし、切断された右腕を引き寄せて接着させたのだ』。

「化物、め…!」
「ふむ…化物か。まぁ、概ね正しい答えだな」

笑みを浮かべるDIOの口元から『牙』が覗いていた。
それはまるで、吸血鬼のような――――
ブチャラティは咄嗟にデイパックに手を突っ込む。
この男は本物の化物だ。手の内を知られ、それを破られた今の俺に勝算などまずない。
そもそも、この男の能力があまりにも謎だ。超スピードなどと言ったチャチなものではない!
まるであの『ボス』と対峙した時と非常に似た感覚だ。そう、『時間』に干渉する能力の可能性がある…!

「支給品に頼るか。さて、この私をどうにか出来る武器があるというのかな?」
どんな手が来るのか楽しむようにDIOは腕を組んでブチャラティを見据えている。
ブチャラティは汗を流しながらも、デイパックの中の紙を開き『それ』を手に取った。
「…確かに、今の俺にお前を『殺す』ことは不可能に近い…」
ブチャラティの様子は先程より少し落ち着き払っている。
何かしらの打開策を見つけたかのように、冷静に言葉を発し続けている。
DIOはその態度に少しだけ違和感を覚えた。

「だからこそ、今は――――」

そしてブチャラティが手元から『それ』を勢いよく投げつけた。

「―――『逃げ』に入らせてもらうッ…!」

DIOが気付いた時には遅かった。
それは『閃光手榴弾』。ブチャラティの支給品であり、DIO自身も殆ど目にしたことのない現代兵器。
瞬間、刺客と聴覚に凄まじい閃光と高音が襲いかかる。
幾ら化物と言えど、それは反応の遅れた彼を怯ませるには十分な物だったのだ。

750Look into my evil eyes ◆n4C8df9rq6:2013/09/06(金) 18:29:59 ID:WwZ441JQ0
◆◆◆◆◆◆


「…逃げられたか」

視力と聴力が戻ったことを確認し、周囲を見渡す。
どうやらあの青年にまんまと逃げられてしまったらしい。
冷静さを失っていたことさえ除けば、優秀なスタンド使いであっただけに惜しい。
とはいえ、あの青年は強いであろう。そう易々と死ぬことも無いだろう。いずれまた出会えるはずだ。
少しだけ口惜しく思いつつ、すぐさま思考を切り替える。

「さて、一つ気になることはある…」
そう呟きながら、DIOは首筋の『星型のアザ』に触れる。
ジョナサン・ジョースターから奪った肉体が共鳴している。
「奴らは『いる』…この会場の何処かに、確かに存在している」
彼はすぐに理解した。この会場にはやはりジョースターの血統が何人も存在している。
名簿を確認した際には既に死者となっているはずの人物の名前が複数見受けられた。
何らかの蘇生能力によるものか、はたまた時間干渉が可能な能力か…
答えは不明だが、いずれにせよ「ジョースターの血統」は確かに存在することだけは理解出来た。
このDIOに取ってジョースターとは最大の宿敵。
その血は必ず絶やさなければならない。
荒木に、太田とやらの仕組んだゲーム。どうやらジョースターを滅ぼす為のいい機会になりそうだ。

「待っていろよ、ジョースターの血族よ。そしてまだ見ぬ参加者達よ」

星型のアザに触れながら、彼は不敵に笑みを浮かべた。
目的は二つ。この殺し合いに勝ち残ること。そしてジョースターを滅ぼすこと。
答えはシンプル。勝利して支配する!それこそが最終的な目標。
このDIOに敗北など、有り得ない。


「―――勝利者は私だ。」


一歩一歩、歩を進める。
傲岸不遜に、堂々たる態度で笑みを浮かべながら。
その表情に浮かぶものは確信だった。自らの勝利を疑わぬ、絶対的な確信!


「このDIOこそが、唯一生き残る存在ッ!ただ一人の『頂点』だ――――!」



【E-4 コロッセオ(入口付近)/深夜】

【DIO@第3部 スターダストクルセイダース】
[状態]:健康、体力消耗(微小)
[装備]:なし
[道具]:不明支給品、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに勝ち残り、頂点に立つ。
1:永きに渡るジョースターとの因縁に決着を付ける。手段は選ばない。
2:日が昇る前に拠点となる施設を捜す。日中の間引きの為に部下に使える参加者を捜す。
3:優秀なスタンド使いであるあの青年(ブチャラティ)に興味。
[備考]
※参戦時期はエジプト・カイロの街中で承太郎と対峙した直後です。
※停止時間は5秒前後です。
※星型のアザの共鳴で、同じアザを持つ者の気配や居場所を大まかに察知出来ます。
※名簿上では「DIO(ディオ・ブランドー)」と表記されています。

751Look into my evil eyes ◆n4C8df9rq6:2013/09/06(金) 18:32:45 ID:WwZ441JQ0
◆◆◆◆◆◆



コロッセオから少し離れた地点に存在する川。
一息吐きつつ、ブチャラティは川辺で立ち止まって振り返っていた。
「…一先ず、撒けたみたいだな」
どうやらあの男が追いかけてくる様子も、気配も感じられない。
何とか逃げ切ることが出来たようだ。だが、此処でじっとはしていられない。
あの男は「共に殺し合いで勝ち残ろう」と言っていた。つまり、ゲームに乗ることを肯定した参加者なのだ。
野放しにし続けることは危険だろう。
しかし…あの男も、そのスタンドも、あまりに強力だということも間違いない。
こちらのスタンドの攻撃を軽く回避し、一撃を叩き込んでみせたあの能力。
髪の毛を触手のように伸ばした技や、切断された腕を平然と接着してみせた異常な再生能力。

それだけではない。
あのDIOという男からは異様なカリスマを感じた。
危険であるはずなのに不思議と安らぎを感じてしまう、妖艶な雰囲気を身に纏っている。
人を魅了し、虜にする力。それはある意味、単純な暴力よりも危険だ。

あの男は、いつか必ず倒す。
勿論このゲームも破壊しなくてはならない。その為には仲間が必要だ
90名もの参加者を強制的に巻き込んだ殺戮のゲームなど、下衆の極みでしかない。
俺はあの主催者達を絶対に許すワケにはいかない。絶対に、仲間達と共に奴らの野望を打ち砕く。
しかし気になることがある。イタリアの様々な施設が点在する異様な会場の地図。
そして参加者に記載されている『プロシュート』という名だ。
それは自身がかつて闘った男の名前。暗殺チームのメンバーの一人。
奴は既に死亡しているはずだ。なのに、何故名簿に名が記載されて―――


「…おーい」

思考に割り込んでくるかのように、どこからか呼び声が聞こえてきた。
それはまだ年端も行かぬ少女の声であることはすぐに認識出来た。
俺はそちらの方へと顔を向けて…少しぽかんとしてしまった。

「…ウ、ウサギの耳…?」
「そこの人間ー。貴方、どしたの?さっき必死に逃げてきたのが見えたんだけど…」

川辺の傍からこちらに呼びかけてきたのは、黒い髪の少女だった。
幼さを感じさせる容姿も特徴的だが何よりも気になったのは頭から生えている「耳」だ。
それは何とも立派な「ウサギの耳」。まるでコスプレのようにも見える。
彼女は口元を軽く微笑ませながら、とことことこちらへと歩み寄ってきた…

「私は因幡てゐ。ちょっと、何があったのか聞かせてくれないかな?」



【E-4 川辺(人里付近)】

【ブローノ・ブチャラティ@第5部 黄金の風】
[状態]:体力消耗(小)、精神疲労(中)、内臓損傷(中)、腹部に打撲(中)
[装備]:閃光手榴弾×2@現実
[道具]:不明支給品(ジョジョ東方)、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを破壊し、主催者を倒す。
1:目の前の少女に事情を話す。
2:ジョルノ達護衛チームと合流。その他殺し合いに乗っていない参加者と協力し、会場からの脱出方法を捜す。
3:殺し合いに乗っている参加者は無力化。場合によっては殺害も止さない。
4:DIOを危険視。いつか必ず倒す。
[備考]
※参戦時期はローマ到着直前です。
※制限の度合いは後の書き手さんにお任せします。


【因幡てゐ@東方永夜抄】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:不明支給品(確認済み)、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:死にたくない。どんな手を使ってでも生き残る。
1:この人間から事情を聞く。使えそうなら利用。
2:保身を最優先。凶暴な参加者同士で潰し合っててほしい。
3:鈴仙やお師匠様は…まぁ、これからどうするか考えよう。
[備考]
※参戦時期及び制限の度合いは後の書き手さんにお任せします。

752 ◆n4C8df9rq6:2013/09/06(金) 18:33:26 ID:WwZ441JQ0
投下終了です。
指摘やツッコミ、感想があればよろしくお願いします

753名無しさん:2013/09/06(金) 18:44:18 ID:D.LNrVO60
ルッキンツーマイーボアイズ サスリサイ ダイヲモンダイテマエヲァヤメンバッカリノマイマイン コォルヨーナマイスパイ

754名無しさん:2013/09/06(金) 18:44:33 ID:iuvVf2/20
投下乙です。
流石DIOッ!
ブチャラティも一目で気付くほどの圧倒的な悪の大気!
そしてやっぱり気付いたっ!!ジョルノとどこか似ている雰囲気にっ!

そしててゐ!
こいつやっぱり腹にイチモツ持ってそうな予感がビンビンするゼェーっ!!

755 ◆n4C8df9rq6:2013/09/06(金) 19:21:38 ID:WwZ441JQ0
っと、支給品解説を忘れておりました

<閃光手榴弾@現実>
ブローノ・ブチャラティに支給。
爆発時に爆音と閃光を発生させる特殊な手榴弾。3つセットで支給されている。
付近の人間に一時的な失明、眩暈、難聴、耳鳴りなどの症状、
及びそれらに伴うパニックや見当識失調を発生させて無力化させることを目的とする非殺傷兵器。

756 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/06(金) 19:24:14 ID:iuvVf2/20
火焔猫燐、ブラフォード、シーザー・アントニオ・ツェペリ
の3名で予約します。

757名無しさん:2013/09/06(金) 19:26:17 ID:8Xn/4.oYO
ていは腹黒嘘つきだからな〜汗を舐められるなこりゃ〜

758名無しさん:2013/09/06(金) 20:33:59 ID:XXpMqIYg0
じゃあ俺はうどんげの汗を舐めよう

759Golden Weather Rhapsody ◆YF//rpC0lk:2013/09/06(金) 22:42:25 ID:QK5V59aY0
現在予約分除いた未登場キャラ一覧

『side東方project』

【東方紅魔郷】 1/5
○パチュリー・ノーリッジ

【東方妖々夢】 0/5

【東方永夜抄】 1/5
○八意永琳

【東方風神録】 3/5
○射命丸文/○八坂神奈子/○洩矢諏訪子

【東方地霊殿】 0/5

【東方聖蓮船】 1/5
○聖白蓮

【東方神霊廟】 1/5
○二ッ岩マミゾウ

【その他】 3/8
○霧雨魔理沙/○伊吹萃香/○森近霖之助/

『sideジョジョの奇妙な冒険』

【第1部 ファントムブラッド】 1/5
○ロバート・E・O・スピードワゴン

【第2部 戦闘潮流】 1/5
○ジョセフ・ジョースター

【第3部 スターダストクルセイダース】 1/5
○花京院典明

【第4部 ダイヤモンドは砕けない】 3/5
○東方仗助/○広瀬康一/○岸部露伴

【第5部 黄金の風】 0/5

【第6部 ストーンオーシャン】 2/5
○空条徐倫/○エルメェス・コステロ

【第7部 スティールボールラン】 0/5

以外と主人公勢が残ってる模様

760 ◆YF//rpC0lk:2013/09/06(金) 22:42:48 ID:QK5V59aY0
スイマセン、題名消してなかった

761名無しさん:2013/09/07(土) 00:04:31 ID:4ce4iuOM0
東方サイドは逆にラスボス級が多く残ってるって感じだな

762名無しさん:2013/09/07(土) 00:19:51 ID:z1BxCoT.0
そういえば、残り書き手枠が残り何名残っている?
ジョジョ四部の文庫版売らなきゃよかったな……
そうすれば、四部で吉良が成り代わった少年で一本書いてみたかったぜ

763名無しさん:2013/09/07(土) 00:20:59 ID:z1BxCoT.0
ミス
そうすれば、四部で吉良が成り代わった父親の息子で一本書いてみたかったぜ

764名無しさん:2013/09/07(土) 00:29:50 ID:fg0k80fY0
>>763
川尻早人か、あと4枠残ってるしワンチャン…?
エシディシ、静葉、ヴァニラ、はたて、ズィー・ズィー、橙、トリッシュ、こころ
って感じに何だかんだで書き手枠ジョジョと東方で交互に出てきてるんだよな…w

765名無しさん:2013/09/07(土) 00:32:03 ID:fg0k80fY0
ついでに現在位置まとめ更新
ミスがあったらスマン

A-1:早苗、プロシュート兄貴
B-1:
C-1:
D-1:吉良、慧音、ぬえ
E-1:天子
F-1:

A-2:
B-2:美鈴、小傘、青娥、ウェザー、ジョルノ、トリッシュ
C-2:蓮子、ジョニィ、ヴァニラ
D-2:みょん(黎明)、勇儀(黎明)
E-2:紫、ズィー・ズィー
F-2:

A-3:こころ
B-3:
C-3:ディエゴ、大統領、フー・ファイターズ
D-3:にとり、霊夢(黎明)、承太郎(黎明)
E-3:星、カーズ
F-3:

A-4:芳香
B-4:リンゴォ、静葉、はたて
C-4:
D-4:ワムウ、お空
E-4:ジョナサン、レミィ、DIO、ブチャラティ、てゐ
F-4:

A-5:シュトロハイム、ホル・ホース、響子
B-5:妹紅、エシディシ
C-5:
D-5:藍、橙
E-5:
F-5:【禁止エリア】

A-6:
B-6:さとり、億泰、うどんげ、ボス
C-6:
D-6:阿求、幽々子、ツェペリさん、メリー、ポルポル君、ジャイロ、神子、アリス
E-6:こいし、神父、チルノ
F-6:

766名無しさん:2013/09/07(土) 00:49:53 ID:2.ickElQ0
D-1とE-6の嵐の前の静けさ的な不安感が凄いぜ。
こいしちゃん逃げてぇー!!

767名無しさん:2013/09/07(土) 02:05:24 ID:kXTt9lRA0
そういやフランちゃんとかぐーやとか布都とか割と人気のある東方キャラが参加者枠にいないんだよな
ジョジョキャラは割とメイン揃っているが

768名無しさん:2013/09/07(土) 02:11:45 ID:4ce4iuOM0
ホントだ布都ちゃんいねぇ
いるモンだと思ってた

でもジョジョ枠も結構苦渋の人選だと思うぜ
ヤンデレ由花子とか、ナランチャとか、イギー、アブ男とか、
割と美味しいキャラが選外になってる

769名無しさん:2013/09/07(土) 03:36:10 ID:4ce4iuOM0
>>741
おお、新しい書き手さんか!
こころちゃん登場話の題名があったら教えて欲しい!

770 ◆xWjWtY1WzY:2013/09/07(土) 07:17:57 ID:QvcSJwyY0
これでいいのかな?じゃ
花京院典明
の一名を予約します。

771名無しさん:2013/09/07(土) 09:16:01 ID:1KMdlz5I0
テンメイオンリーきたか…

772名無しさん:2013/09/07(土) 10:46:01 ID:HrN9bWVE0
>>764
ワンチェンに空目した

773名無しさん:2013/09/07(土) 12:48:54 ID:nXy5ONZAO
ワンチャン?ああ、椛が出るのか(白目)

774名無しさん:2013/09/07(土) 12:57:56 ID:4ce4iuOM0
>>773
新作の影狼ちゃんか、イギーかも

775名無しさん:2013/09/07(土) 13:49:19 ID:1KMdlz5I0
ポッキーだよ

776名無しさん:2013/09/07(土) 16:30:50 ID:Vy4hUm5M0
パチュリ―・ノーリッジ
岡崎夢美(書き手枠)
予約します。

777 ◆YF//rpC0lk:2013/09/07(土) 16:32:22 ID:/pn8AEqI0
岡崎教授、蓮子とジョニィ……
間違いない、次元の壁を超える物理法則により大統領は死亡するッ!!

778 ◆YF//rpC0lk:2013/09/07(土) 16:33:54 ID:/pn8AEqI0
>>776
予約は大変喜ばしいのですが、トリップを名前欄にお願いいたします。

779名無しさん:2013/09/07(土) 16:33:55 ID:4ce4iuOM0
急に予約が増えたなぁ
どこかの板でこのロワの話が出たりしたのか?

780 ◆IDjKD3qAb.:2013/09/07(土) 17:23:08 ID:rcIKe2nc0
失礼しました。
こころ登場話の題名は「開演「運命の石仮面」」とでも。

近いものから一つ感想を
圧倒的存在感…ッ! その名はDIOッッ!!って印象が読んでいてバシバシ伝わってきて素晴らしかったです。
そりゃブチャラティも逃げるわ、俺だってそうする。
しかしその中でジョルノとの似ている雰囲気を見出せたのは流石なところ。
さてはててゐとの邂逅はどう転がるか

781名無しさん:2013/09/07(土) 17:28:19 ID:fg0k80fY0
企画者様含めれば暫定で常駐書き手5名、そんでゲリラ投下や新規予約の新しい書き手さん3名…いい感じの流れ

782 ◆FqJgRex9b2:2013/09/07(土) 18:24:02 ID:B1E4CyLg0
#K5n2/sqt
これでよろしいでしょうか?
改めて、
パチュリ―・ノーリッジ
岡崎夢美(書き手枠)
予約します。

783 ◆YF//rpC0lk:2013/09/07(土) 18:28:50 ID:/pn8AEqI0
>>782
了解です。
作品を楽しみに待っています。

784 ◆FqJgRex9b2:2013/09/07(土) 18:54:50 ID:1KMdlz5I0
なんでトリップキー晒してんの

785 ◆dcnShg47Kk:2013/09/07(土) 19:10:13 ID:qOna/FXc0
何度もすみません。
これでお願いします。
パチュリ―・ノーリッジ
岡崎夢美(書き手枠)
予約します。

786 ◆n4C8df9rq6:2013/09/08(日) 02:12:45 ID:XwijvHM20
霧雨魔理沙
予約します

787名無しさん:2013/09/08(日) 02:32:32 ID:UAWbJtTw0
夢美教授とは懐かしい…

788 ◆n4C8df9rq6:2013/09/08(日) 03:28:18 ID:XwijvHM20
投下します。

789魔女と百騎兵 ◆n4C8df9rq6:2013/09/08(日) 03:32:07 ID:XwijvHM20

C-4、魔法の森の内部に存在する『魔理沙の家』。
一応は【何でも屋」ではあるのだが、客が来ることは殆ど無く大した整理整頓もされていない為にアイテムや日用品が散らかっている。
尤も、当の家主も家を開けていることが多い為さほど気にしてはいないのだが。
そんな家の一室にて、金色の髪と魔女風の服装が特徴的な少女「霧雨魔理沙」が椅子に座りながらぽつりと呟く。

「まさか、此処から始まりだなんてな」

自分の自宅がスタート地点だとは思っても見なかったが、まぁラッキーだったということで片付けておく。
私の日頃の行いの良さ(?)が此処に来て良い影響を及ぼしたのだろう。
私はそんなことを思いつつ、「殺し合いのゲーム」のことについて考え込んでいた。

「にしても…殺し合い、ねぇ」
たった一つの「生還」という席を巡る殺し合いゲーム。
今までの弾幕ごっこのようなお遊びなんかじゃない。命を賭けた文字通りの真剣勝負。
最初はしょうもないドッキリか何かか?とでも思ってたけど…あの秋穣子がみせしめとして殺された。
穣子の死が証明したんだ。ゲームは嘘っぱちなんかじゃなく、紛れもない本物の催しだったと。
私だってあの時はぞっとした。久しぶりに「恐怖」を抱いていたんだ。

それにしても、確かあいつら…荒木飛呂彦に、太田順也とか言ったっけ?
何でか知らないが、太田とかって方は…こう、変な感じがした。
何だろう。昔会ったことあるような、何となく懐かしさを感じるような。
アイツを初めて目にした時、私は奇妙な感情を抱いていたのだ。
その感情の正体が未だに分からない。何とも気持ちの悪い妙な感情が渦巻いていると言うか…
…まぁ、それはともかくとしてだ。一先ず私の方針はもう決めている。

「殺し合いなんて…悪趣味にも程があるぜ!私は乗らないね」
当然、反抗だ!殺し合いに乗るつもりは無い。
正直心細いし、誰を信じれば良いのかも解らないし…不安で仕方がないのは確かではある。
だけど、だからっておめおめと殺し合いに乗るってのも癪だ。
第一私は殺人は専門外だしやるつもりも一切無い、ふざけんなって奴だ。

「そうとなると、これからどうしようか…」
さて、そうと決まれば霧雨魔理沙。どうする?
まずはこの会場から脱出がしたい。ただ、今回ばかりは一人でどうにか出来そうにも無い…
どうやら名簿を確認した限りでは、半分以上が「見知った奴ら」だった。
人間、妖怪、神様。まさに何でもありってレベルの人選。この中で確実に信頼出来る奴と言えば…
…うん、まずは霊夢を捜そうかな。異変解決を生業としてるし、あいつなら絶対にこの殺し合いに反抗するだろう。
それ以外にも、何だかんだであいつのことは親友だって思ってるし…絶対に信じられる。
よし決定!まずは霊夢と合流しよう。それがベストだぜ。

790魔女と百騎兵 ◆n4C8df9rq6:2013/09/08(日) 03:33:18 ID:XwijvHM20

――あ。そういえば、支給品とか言うのがあるんだったな。

今後の行動方針を決定した直後に、ふとそのことを思い出した。
名簿や地図は確認していたけど、支給品のことを失念していたのだ。
私はすぐにデイパックの中に手を突っ込み、マジックアイテムめいた不思議な紙を開いた。
そこから勢いよく飛び出てきたのは。

「…何だこれ」

奇妙な輝きを見せる一枚の円盤。メモ書きが同封されていた。
「なになに…『頭に挿入して使ってください』…?」
何だ、これ?意味が分からないぜ。こんな円盤を頭に差せってのか?
そんなことして何になるんだ?用途不明の物体を前に疑問しか浮かばない。
半ば疑いのような感情を抱きつつ、「まさかなぁ」と思いながら頭にDISCを押し付ける―――

「―――う、おおぉっ!!?」
直後本当に頭の中にDISCが『入り込んだ』。
まるで精神に直接干渉してくるかのような不思議な感覚が全身を駆け巡る。
これには流石の私も驚きを隠せず、声を上げてしまった…。
そして少しして、身体と心が落ち着きを取り戻す。息を整えつつ、自身の胸に手を当てた。
「………な、何が…起こったんだ?」
一滴の汗を流しつつ、私は呟く。
変な感覚に襲われたが、特に変化したような要素は見受けられない。
身体が逞しくなったとか魔力が増したとか、そんな感じの直接的な影響は感じられない。
何だったんだ、あの円盤…?
自身の思考を冷静に落ち着かせようと腕を組んだ直後に―――

私は気付いた。



「え?」

自身の肩に、変なちっこいのが乗っかってることに気付いた。

まるで蜂のような黄色と黒のストライプ模様のそいつはせいぜい小判程度の大きさしかない。

それどころか、そいつは『何匹もいた』のだ。わらわらと私の両肩に乗っかってたのである。


―――私は、目を見開きながら驚愕した。



「何だ『コイツら』はァーーーーーーーッ!!!?」

791魔女と百騎兵 ◆n4C8df9rq6:2013/09/08(日) 03:37:13 ID:XwijvHM20
◆◆◆◆◆◆


それから、少しだけ後。
さっきの円盤による影響だとすぐに気付けたとはいえ、あの時は流石に驚きを隠せなかった。
突然あいつらは私の両肩現れたんだから。
だけど私は何となく理解出来た。

「さっきは驚いたけど…こいつは凄いな。なかなか使えそうだぜ」
そう、このちっこいのは『私が召還した』ということを。
こいつらは私の意のままに操れる存在だということを。
私の命令に従わせて自在に動かせるということを。
使い魔や守護霊の類いなのかは解らないけど、ともかくそうゆう存在なんだろうと。
私は理解することが出来たのだ。

「『傍に立つ』。だから『スタンド』ってワケなんだな」

先程の支給品には『スタンドDISC』とか書かれてあった。
多分こいつらが『スタンド』とか言う存在なんだろうということも、すぐに解った。
不思議な奴らだ。こんな類いの連中は幻想郷でも見たことがない。
一体何者なんだろうか、この変な生き物は?そもそも生き物なのかすらも疑わしいけど。
だけど、まぁいいや。使えるものは何でも使わせてもらうのがこの霧雨魔理沙だ。
コイツらやDISCに関しては、あとでじっくりと調べさせてもらおう。

そして―――こいつらの『名』はッ!


「―――『ハーヴェスト』ッ!!」


魔理沙の呼び声と共に、無数の小さなスタンドビジョンが瞬時に彼女の足下へと出現する。
総勢500体以上。それはまるで蟻の群れのような「群体」!
縞模様の丸い身体に小さな手足の生えた奇妙な姿をしたスタンド達が姿を現す!
スタンド『ハーヴェスト』はまるで百を超える兵隊のような統率性でその場に並ぶッ!
魔理沙が見渡すように視線を向けるのは、日用品などが散乱したこの部屋一帯!開きっぱなしの部屋の扉!
そして彼女は、『指示』を出したのだ!

「さ、家の中から使えそうなマジックアイテムを集めてくるんだ!!」

司令塔・魔理沙の指示と同時に無数のハーヴェストが家中に散らばっていく!
このスタンドの能力は『収集』!物品を掻き集めることを何よりも得意とする。
それを魔理沙が知っているかはさておき、彼女はその無数の群体であるというこのスタンドの特性を利用した!
支給品にマジックアイテムが無くとも、此処は魔理沙の自宅。
かつてよりあちこちで掻き集めていたマジックアイテムが散乱…もとい、保管されているのだ。
それを装備出来れば、自身に取っての強力な自衛手段として使えるだろう。
とはいえ、正直うちは日用品もごちゃ混ぜになっていたりするのでドコに何があるか、自分でもよく解っていない。
自力で家中を探しまわるのは流石に面倒だし大変だ。

「ほらほら!かっかと働けーーーーーーーーっ!!!」

そこでこのスタンドを利用した!こいつらに捜させれば荷物探しも超楽勝!
こうゆう時は人海戦術が一番!数に物を言わせれば何でも出来るぜ!
アリスが人形達に雑用させるのも納得できる。面倒なことはこうゆう人海戦術に任せれば万事解決だからな!

そのまま数百体を超えるハーヴェスト達は、収集の為に魔理沙の家中をあちこち忙しなく駆け巡っていく――――!

792魔女と百騎兵 ◆n4C8df9rq6:2013/09/08(日) 03:38:53 ID:XwijvHM20
◆◆◆◆◆◆



およそ10分後。


「………………。」


なかった。
何の成果も得られなかった。
マジックアイテムなんて何処にもなかった。
全てのハーヴェスト達が等しく手ぶらで戻ってきた。
自室にて魔理沙はぽかんとした表情で椅子に座って燃え尽きていた。

「おかしい…幾ら何でも一つも持ってこないなんて」
もしかして、あの主催者共がうちのマジックアイテムを勝手に押収しているのか?
どう考えてもそうとしか思えない。現にこの部屋を捜してみてもアイテムが一つも見つからない。
自室なんだから一つはおいてあるはずだし、ハーヴェストにも捜させたのに…ない。
兎に角、この家からマジックアイテムがごっそり無くなっていたのだ。

「うーん…やっぱりあの主催者共に勝手に盗まれたりでもしたか?」
冷静に考えてみれば、こんな所でマジックアイテムが回収出来るわけがないとも思ってきた。
そもそも此処は殺し合いの会場。言わばゲームの盤上なのだ。
わざわざ支給品を寄越して殺し合いをさせているというのに、マジックアイテムが現地調達可能なんて言ったらそれこそ魔法使いに有利にも程がある。
つまりフェアじゃない。メモ書きを見る限り参加者には制限も課せられているらしいし、ゲームはバランスを保つのが大切なのだ。
故に現地調達できる物資で『特定の参加者が有利になる物』は置いていないのだろう。多分。

「クソッ、あいつら殺し合いに巻き込むどころか人のもん勝手に盗むなんて。最低だぜ」
魔理沙が言えた口ではない。

…というかそもそも此処は『幻想郷』なのか?そんな思考が魔理沙の脳裏をよぎった。
地図が明らかに変だった。存在するはずの無い施設がいくつもあったのだから。
家の中から僅かに感じ取れる程度だが、魔法の森の瘴気も何だかいつもより大分薄いように感じられる。
何だか環境がおかしいのだ。もしかしたら『幻想郷っぽいだけの会場』なのかもしれない気がしてきた。
マジックアイテムは盗まれたのではなく、元々無かったのでは?

…まぁ、そうだろうとそうじゃなかろうとどっちでもいい。真相は後でゆっくり調べよう。
今は殺し合いっていう現状を打開することが先決なのだから。

793魔女と百騎兵 ◆n4C8df9rq6:2013/09/08(日) 03:41:35 ID:XwijvHM20


「仕方無い。此処にはもう用はなさそうだな」

ひょいっと座り込んでいた椅子から飛び上がり、とことこと窓辺へと移動する。
そのまま部屋の窓を勢いよく開き、私は軽快な動きで外へと身を乗り出し飛び出した。
入口から出てもよかったけど、何となくこっちのが手っ取り早い気がしたのだ。何となく。

「よっと、」

窓から家の外へと出て、雑草の生えた地面に着地しながら私はふっと顔を上げる。
正面に広がるのはいつも通りの魔法の森だ。…瘴気が薄くなっていること以外は、いつも通りに見える。
鬱蒼としている森を見渡しつつ、私はすぐさまその場で思考を纏める。
まずは適当にあちこちを駆け回ってみよう。とりあえず早く霊夢と合流したいし。
とはいえ、いつもの箒が無いせいで移動がちょっと面倒臭いな。
徒歩であちこち動き回るのもたまにはいいかもしれないけど、疲れそうだし…
「…ん、待てよ。」

そうだ。こんな時にもこいつらが使えるんじゃないか?
あんだけ数がいるんだし、頑張れば出来るかもしれない。
そう思って、私はすぐさま傍に『スタンド』を出現させた。



「ハーヴェスト!」

よっこいしょ、と私はその場で座り込む。
そして数百体のハーヴェストに座っている私を持ち上げさせた。
こいつら、何だかんだで見た目以上に結構パワフルかもしれない。数多いからかもしれないけど
そして私は、「もしかして出来るのでは?」と考えていた指示を出した。

「このまま私を運ぶんだ!」
私の掛け声と共に、無数のハーヴェスト達はそのままバケツリレーの如く私を持ち上げて移動を始めた!
数百体のスタンドがせっせと小柄な私の身体を素早く運んでくれる。
決して魔理沙をその手から落とすことも無く、きっちりと持ち上げながら運搬してくれている!

「おお!本当に出来たっ…!」
私は感心したように声を漏らす。なかなかのスピードだ!普通に歩くよりはずっと早いし楽チンだぜ!
こいつらやっぱり使える!さっきはマジックアイテムを見つけられなかったけど、それでも十分働いてくれた!
そもそも現にこうして私を運べている時点でキビキビと働けているんだ。まさにディ・モールトベネ(非常に良い)!って奴だな!
ハーヴェスト。こいつの魅力はマジックアイテムに勝るとも劣らない。
全く、こんな悪趣味ゲーム会場で何ともグレートな物をゲットしたもんだぜ!
案外『ツイてる』のかもしれないぞ、私!

「いやぁ、スタンドって最高だぜー!!」

ご満悦な様子で魔理沙はハーヴェストに運ばれていき、そのまま魔法の森を進んでいく。
数百体のちっこい何かが魔法使いの少女をせっせと運んでいる。
端から見れば異様な光景だが、何だかんだで魔理沙は新たな力「スタンド」を楽しんでいた。
気分は最高。昂揚感と共に『魔女』と『兵隊』は森の中へと消えていった。

794魔女と百騎兵 ◆n4C8df9rq6:2013/09/08(日) 03:43:23 ID:XwijvHM20
【C-4 魔理沙の家/深夜】

【霧雨魔理沙@東方 その他】
[状態]:健康
[装備]:スタンドDISC「ハーヴェスト」@ジョジョ第4部
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:異変解決。会場から脱出し主催者をぶっ倒す。
1:スタンドってすげー!
2:適当に会場を移動。まずは信頼出来る霊夢と合流したい。
3:出会った参加者には臨機応変に対処する。
4:出来ればミニ八卦炉が欲しい。
5:何故か解らないけど、太田順也に奇妙な懐かしさを感じる。
[備考]
※参戦時期は後の書き手さんにお任せします。

※「魔理沙の家」に本来あったはずのマジックアイテムが全て消失しています。
生活用品などは十分に置いてありますが非常に散らかっています。


<スタンドDISC「ハーヴェスト」>
破壊力:E スピード:B 射程距離:A 持続力:A 精密動作性:E 成長性:C
霧雨魔理沙に支給。
これを頭に差し込むことでスタンド「ハーヴェスト」が使用可能になる。
総勢500体以上(本体の自称)もの小型のスタンドビジョンからなる群体型スタンド。
名前通り『収集』することを得意とする能力で、作中ではあちこちから金銭やクーポン券などを掻き集めていた。
単体の破壊力自体は低いものの、その小ささや数に物を言わせた人海戦術は脅威的。
制限により射程距離は100m前後に低下している。

795 ◆n4C8df9rq6:2013/09/08(日) 03:44:08 ID:XwijvHM20
投下終了です
指摘やツッコミ、感想があればよろしくお願いします

796名無しさん:2013/09/08(日) 07:54:54 ID:n6bOzei60
乙です。

797名無しさん:2013/09/08(日) 11:25:45 ID:nDXTT5820
オイシイスタンドだな

798名無しさん:2013/09/08(日) 11:40:02 ID:XcE4flQc0
ああ、魔理沙の尻を合法的に触れるからな

799名無しさん:2013/09/08(日) 12:13:47 ID:nDXTT5820
失礼 今なんて?

800 ◆AC7PxoR0JU:2013/09/08(日) 12:44:17 ID:ZPzt5plE0
岸辺露伴、射命丸文
で予約お願いします。

801名無しさん:2013/09/08(日) 14:19:18 ID:Ew5i/7Hc0
嫌な予感しかしない

802名無しさん:2013/09/08(日) 15:56:27 ID:o2sBDdhE0
取材合戦になる気しかしないw

803名無しさん:2013/09/08(日) 16:41:29 ID:UAWbJtTw0
このふたりは考えてた

804名無しさん:2013/09/08(日) 17:40:24 ID:gpvfqT.MO
そして考えるのをやめた

805名無しさん:2013/09/08(日) 18:02:42 ID:6iQecS3o0
……魔理沙
おお、魔理沙にピッタリなスタンドだなぁ
というか、タイトルはあのゲームが由来だな

>>800
すげぇ、嫌な予感がビンビンするな
激突の予感

806 ◆zesG7hMHJ2:2013/09/09(月) 20:34:53 ID:EJybnTDw0
洩矢諏訪子、リサリサ(書き手枠) 予約します

807名無しさん:2013/09/09(月) 22:16:35 ID:RhfCTE0w0
>>806
若作りコンビ、か…

808 ◆BYQTTBZ5rg:2013/09/09(月) 22:26:10 ID:4QwtWu1A0
書き手枠でかぐやを予約します

809 ◆YF//rpC0lk:2013/09/09(月) 22:39:05 ID:4Ogpx4Io0
書き手枠が順調に埋まっていきますねぇ
最後は誰になるのやら

810 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/09(月) 22:59:46 ID:RhfCTE0w0
そうか、あと一人か……!

811 ◆n4C8df9rq6:2013/09/09(月) 23:43:04 ID:QCjDZ0220
岡崎教授、リサリサ先生、姫様が投下されれば残り一枠ですしね…w

812 ◆300BRMIvKA:2013/09/09(月) 23:55:36 ID:MsCULVDw0
東方仗助、広瀬康一、比那名居天子、サンタナ(書き手枠)を予約します

813名無しさん:2013/09/10(火) 07:19:41 ID:tcEgO7960
正直サンタナは都合よく黄金の精神にでも目覚めて頑張って欲しいと思う

814名無しさん:2013/09/10(火) 07:39:55 ID:zqTodhoc0
むしろ他の柱組と合流してほしい
ジョジョロワで毎回早期退場で会えてないし

815名無しさん:2013/09/10(火) 19:34:15 ID:tcEgO7960
合流したところでねえ…

816名無しさん:2013/09/10(火) 23:57:37 ID:E7FgZHXA0
原作でもサンタナのキャラが掴めないまま退場したし
どうしても無口キャラになりがちなんだよな・・・
でもそこがターミネーターっぽい恐怖感で好き

817名無しさん:2013/09/11(水) 01:14:07 ID:b6dtbX6w0
他の柱三人のが実力は圧倒的に高かったけど
相手を策略で出し抜いたり、戦いに誇りを感じてたり、狡猾な頭脳派だったりで何となく人間的な強さなんだよね
サンタナはぼそぼそとしか喋らないし地味だけどそこが却って不気味だし、能力も肉体操作メインで生々しくて怪物然としてて好きなんだよなぁ…

818名無しさん:2013/09/11(水) 01:43:58 ID:r1ZJhJI20
それにしても2部からの書き手枠参加多いな。

819名無しさん:2013/09/11(水) 02:21:56 ID:/DF6cyLQ0
アニメ効果かね

柱の男フルコンプなのは東方勢のラスボスに根っからの悪い奴は多くないし、
わかりやすく強いマーダーが不足してるってのもあるのかな

820名無しさん:2013/09/11(水) 12:34:33 ID:K1PUJaCk0
柱の男は基本的に安定した強キャラだしな マーダー比率も高いし

このロワで現状マーダー(もしくはマーダー寄り)といえば
エシディシ、ウェザー、ディエゴ、大統領、リンゴォ、静葉、ディアボロ、星、カーズ、ヴァニラ、
おくう(?)、アヌビスみょん、藍、橙、DIOか 強者限定だろうけど勇儀姉さんも一応乗ってる扱い…か?
吉良やせいがにゃんにゃんとかみたいな危険人物や生存優先スタンスも多い気はするけどね

821名無しさん:2013/09/11(水) 12:42:50 ID:HIvVWWQk0
参加者多いせいでマーダーの比率のちょっと低いな。ディエゴ、大統領も積極的じゃないし
当分は柱の男無双が続きそうだ

822名無しさん:2013/09/11(水) 14:54:08 ID:BgUfN96.0
へえこれでも少ないのか

823名無しさん:2013/09/11(水) 15:31:10 ID:DxFDcrcc0
参加者が90人で多めだしな
やっぱり東方サイドは素直に殺し合いに乗るような奴らは少ない印象

824名無しさん:2013/09/11(水) 16:29:20 ID:9gnjeLRI0
全部埋まった今だから言うが、アナスイ奉仕マーダーにして出すつもりだった

825 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/11(水) 16:32:35 ID:/DF6cyLQ0
同じく、全部埋まった今だから言うけど、このまま書き手枠が残りそうなら
堀川雷鼓、音石明、ミスティア・ローレライをまとめて出して紆余曲折の末に
バンド結成させるつもりだった

826名無しさん:2013/09/11(水) 17:09:13 ID:FC0UShzo0
音石の構想はあったけどあんまスタンド活かせなそうな舞台だったので没にしたなぁ…

827名無しさん:2013/09/11(水) 21:36:18 ID:XFNsc52o0
村紗船長を白蓮の奉仕マーダーとして出そうと考えていたな
その際はエアロスミスのディスク支給して空母ごっこさせようかと
某空母さんより燃費良さそうだし………

828名無しさん:2013/09/11(水) 21:45:22 ID:b6dtbX6w0
空母ムラサかわいい(確信)

幻想入り前から聖との関わりが深い命蓮寺組はなんとなく奉仕マーダーにしやすいイメージ
ナズは普通に対主催だったけどね

829名無しさん:2013/09/11(水) 22:20:12 ID:fG5xVcLo0
エンヤ婆のジャスティスで西行妖の封印を解いて、そのまま死亡というアホな話は考えていたな
地図やら何やらと色々問題があったので、結局書かなかったけれど

830 ◆iJsBuolr9Q:2013/09/11(水) 23:31:55 ID:.4CZfDNc0
投下します

831 ◆zesG7hMHJ2:2013/09/11(水) 23:32:27 ID:.4CZfDNc0
失礼しました。
鳥ミスです

8321939年の泣けない波紋戦士 ◆zesG7hMHJ2:2013/09/11(水) 23:35:42 ID:.4CZfDNc0
「あなたが『神様』?」
「そうだよー」
「……冗談が許される状況ではないと理解して言っているの?」
「あーうー、やっぱり『外の人』には信じられないよね。
ともかく、最初に殺された女の子がいたよね?
あの子の上司みたいなものだと覚えてくれたらいいよ」
「でも、今は力を封じられている」
「うん、地面にも長いこと潜っていられないようだし。
全盛期だったら、火山を噴火させた大地を揺らしたりするぐらいはできるんだけどね」
「……死人を蘇らせることも?」
「うん? 何か言った?」
「いいえ、何でもないわ。とにかく、私には早急に倒すべき敵がいる。
命が惜しければ、同行しようなどと考えないことね」
「おいおい、話はまだ終わっていないよ。
お互いに、探してる知り合いの情報とかあるはずじゃないの?
……あ、ちなみに私は家族が呼ばれてるんだけどね」
「家族……」
「そう、家族だよ。名前は……ああ、先に行かないでってば。
あと、さっきから気になってたんたけどさ」
「…………」





「タバコ……逆さだよ?」





使命を、背負っていた。
一族のために。血統のために。今は亡き夫のために。世界のために。
何よりも、人間の未来のために。
生き残った二人の『柱の男』を打倒し、秘宝であるエイジャの赤石を守るという使命。
それを果たすまでは母としての幸せなど望まないと決めていたし、必要ならば心だって殺すつもりだった。
たとえば、十数年ぶりの再会を果たした息子に、母親だと明かさずに厳格な『師匠』として接したように。

たとえば、もう一人の息子も同然だった愛弟子を喪った直後だろうとも、決して涙を流さないように。
悲しみをすべて心の底に封じて、ワムウとカーズに襲撃を仕掛けるために。

だというのに。
気づけば、見知らぬ場所にいた。
愛用の武器であるマフラーを没収されていた。
二人の東洋人から、殺し合いを宣告された。
だけでなく。
あの暗闇の空間には、確かにいた。
波紋マフラーがなくとも、その存在感を感知できるほどにありありと。
倒すべきはずの、柱の男たちが。
しかも。
確認した名簿には、見覚えのある名前がいくつもあった。
『ジョナサン・ジョースター』や『ディオ・ブランドー』と言った名前に、同姓同名の別人かと考えざるを得なかった。

8331939年の泣けない波紋戦士 ◆zesG7hMHJ2:2013/09/11(水) 23:36:27 ID:.4CZfDNc0

そして。
『シーザー・アントニオ・ツェペリ』と『ジョセフ・ジョースター』の名前を見つけた。

その死を知ったばかりの愛弟子と、弟子にして実の息子である青年。
荒木という男の嘯いていた『死者の蘇生』が脳裏をよぎる。
有り得ない、とリサリサの内面が悲鳴をあげる。

信用できない、偽の名簿に踊らされているだけかもしれない。
深く考えてはいけないと、そう断じていた。
いずれにせよ、果たすべき使命は残ってる。

人を殺して回るだろう柱の男たちを打倒し、このような催しを主催した東洋人たちに引導を渡す。
やるべきことは、はっきりしていた。
ジョセフがこの場にいようとも、シーザーが生きていようとも、情ではなく理性で考えなければならない。
戦力が増えるかどうかという一点でしか、彼らのことを気にかけてはいけない。

だがしかし、それでも。
最期に遺された鮮血のシャボンが割れた後のこと。
ジョセフに遺体を探してはならないと制止した、あの瞬間。
確かに、彼女の頭をよぎる想像があった。



もし、同じことがジョセフの身に降りかかってしまえば……?



彼女の名を、エリザベス・ジョースターという。
戦士である前に、一人の母であった。





「命が惜しければ付いてくるなと言ったはずよ」
「そうは言ってもね、私の目的地はこっち方向だし」
「そう。私の後を追っているようにしか見えないけれど、どこを目指しているというのかしら」
「守矢神社」
「…………」
「あ、いま、『チッ、まさか本当に同じ方向だったとは』って感じの目をしたね。
そのセンでいくと、あなたもウチの神社近くに用があるんだ。
地図を見たところだと、『エア・サプレーナ島』か『サンモリッツ廃ホテル』のどっちかかな?」
「…………」


正解、らしかった。
感情を表に出さないような態度が目立つのに、揺れている様子は分かりやすい。

8341939年の泣けない波紋戦士 ◆zesG7hMHJ2:2013/09/11(水) 23:37:13 ID:.4CZfDNc0

なんとも、難しい事情を抱えているようだね。
それが、リサリサと名乗った彼女に対する洩矢諏訪子の心象だった。
若いみそらで大変そうだねぇ、と感想は口にださずにとどめる。
早苗にも生真面目で色々と背負い込むところがあったけれど、感情表現だけは素直だった。
もっとも、リサリサは早苗よりも年配が上のようだったが。

――早苗は、きっと大丈夫。

やはり気にかかるのは、風祝であり家族であり娘も同然である早苗のことだった。
しかし、あの子は意外と強い。
いや、強くなったと言うべきか。

幻想郷に来たばかりの頃は、右も左も分からずに神社の儀式の進行さえおぼつかなかったというのに。
博麗の巫女の影響か、異変や妖怪退治に感心を持つようになって。
いい意味での無鉄砲さを身に着けるようになった。
最近では、稽古をつけたつもりだったのに諏訪子の方が一本取られることだってあった。

とはいえ、あまり無鉄砲すぎるのも心配の種になる。
神奈子の方は過保護だから、今頃などはもっとずっと心配しているかもしれない。

荒木と太田。
アイツらはヤバい。敵に回してはいけないものだ。
八百万神の一人だった少女が見せしめとばかりに脳漿を撒き散らした時、そんな直観が伝わった。
それは、ずっと昔に神奈子と戦った時のそれに近かったかもしれない。
あるいは、外の世界が信仰の薄い時代になって、初めて『人間に姿を認知されなくなった』時のそれにも似ていた。
これからどうにもならない絶望がやってくるような、そうなのだと分かる感覚があった。



――でも、親の私が、早苗に顔向けできない有様を見せるわけにはいかないね。



流れに逆らわず自然の成り行きに身を任せるのが神ならば、無体な真似を働く者に祟るのもまた神というものだ。
早苗が、信仰に値する神様だと胸を張って誇れるように。
神の畏怖される所以を、あの主催者どもに見せつけてやろうではないか。

8351939年の泣けない波紋戦士 ◆zesG7hMHJ2:2013/09/11(水) 23:37:45 ID:.4CZfDNc0
……なんて、思ってみたりするのだけれど。

(この様子じゃ、この人から信仰をもらうのは無理そうだねー。
ああでも、そばにいたら色々と頼りになるところをアピールできるかも。
そうしたら信仰をもらえて協力者もできて一石二鳥じゃないかしら。
あーうー。こういう営業っていつもは神奈子の担当なんだけどなぁ……)

まずは慣れない草の根運動について考えながら、早苗たちの向かいそうな神社を目指すことにしよう。



彼女の名を、洩屋諏訪子という。
一人の母でありながら、一柱の神であった。


【A-6 草原/深夜】

【リサリサ@ジョジョの奇妙な冒険 第2部「戦闘潮流」】
[状態]:健康
[装備]:タバコ
[道具]:不明支給品、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:柱の男と主催者を打倒し、主催者に奪われたであろう赤石を取り戻す。
1:一先ずはサンモリッツ廃ホテルに向かう
2:ジョセフとの合流。息子の心配より、波紋戦士としての使命を優先したいが……。
3:シーザーのことは、まだ考えない。
4:もし『死者の蘇生』という言葉が真実であれば、もし息子を失えば……。
[備考]
参戦時期はサンモリッツ廃ホテルの突入後、瓦礫の下から流れるシーザーの血を確認する直前です。
煙草は支給品ではなく、元から衣服に入っていたためにそのまま持ち込まれたものです。

【洩矢諏訪子@東方風神録】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:不明支給品(確認済み)、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:荒木と太田に祟りを。
1:一先ずは守矢神社へ向かう。
2:神奈子、早苗をはじめとした知り合いとの合流。早苗はきっと大丈夫。
3:信仰と戦力集めのついでに、リサリサのことは気にかけてやる。
[備考]
※参戦時期は少なくとも非想天則以降。

8361939年の泣けない波紋戦士 ◆zesG7hMHJ2:2013/09/11(水) 23:40:17 ID:.4CZfDNc0
あ、諏訪子の備考に以下を追加で
「制限についてはお任せしますが、少なくとも長時間の間地中に隠れ潜むようなことはできないようです」

以上、投下終了です

837名無しさん:2013/09/11(水) 23:43:53 ID:K099ejAw0
投下乙です!
またリサリサは不安定な時期だなあ…なんとか持ち直せたらいいな

ぶった斬りだけど支援絵!描かずには居られない!
ttp://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0249.jpg

838 ◆YF//rpC0lk:2013/09/11(水) 23:52:51 ID:mn24LH5I0
乙です。
理性の仮面に必死にしがみつこうとするリサリサと、
自然体で全部飲み込んで信じていられる諏訪子様の対比が素晴らしい。
同じ母親(厳密には諏訪子様は祖先だけど)でも、こうも地の力が違うものか

>>837
( ゚д゚)

(つд⊂)ゴシゴシ

(;゚д゚) なんという……なんという奇跡……

8391939年の泣けない波紋戦士 ◆zesG7hMHJ2:2013/09/12(木) 00:15:37 ID:Ca98ExVQ0
すみません、リサリサ先生の状態表にミスを…
シーザーが死んだ時点ではまだ赤石は持参してなかったのに、赤石ごと拉致されたと勘違いしてて
「主催者に奪われたであろう赤石を取り戻す。」って書いちゃってました…

この部分は無しでお願いします

840 ◆n4C8df9rq6:2013/09/12(木) 00:17:20 ID:ryUBjauY0
投下乙です!
波紋戦士としての使命を背負って、母としての私情を押し殺して
無理に気丈に振る舞おうとするリサリサ先生が非常に印象的…
ありのままの姿を貫くもう一人の『母親』の諏訪子様と対照なだけあって
不安定な先生の今後が気になる、頑張ってほしいなぁ…

>>837
支援絵乙です!見事なクオリティ…!
というかまさかのあのキャラwwwww

841 ◆dcnShg47Kk:2013/09/12(木) 03:23:55 ID:wN3TE35w0
投下します。

842魔法少女十字軍 ◆dcnShg47Kk:2013/09/12(木) 03:24:59 ID:wN3TE35w0
一人の少女が草原に佇んでいた。
赤く長い髪に、赤い服装、加えて赤いマントを羽織った岡崎夢美である。
夢美は、訳も分からないままに殺し合いに参加させられて、優勝者には願いを一つ叶えてやる
という主催者に対して、憤っていた。
「何よ!こっちが話しかけようとしたら、見せしめのように殺すなんてふざけてるの!
私の話を聞こうとしない学会の奴らより質が悪いじゃない!」
―――というよりは彼女の論文を一切相手にしない学会の人間と重ね合わせていた。

「しかも優勝者の願いを叶えるなんて、私のしたことに似ていて余計に悔しいわ、
勝手に真似するな〜!」

そう、夢美も以前幻想郷を訪れ、異変を起こした人間である。
夢美はとある世界で18歳にして『比較物理学』の教授をしており、幻想郷にいる人間ではない。
彼女の住む世界では、電力、重力などのありとあらゆる力は統一され、それ以外の力は存在しない
『統一原理』という理論が常識となっていた。
それに対して夢美は、この『統一原理』以外に魔力という別の力が存在するという
『非統一魔法世界論』という理論を発表した。
結果は散々で、学会の人間に大笑いされて相手にしてもらえなかったが。
夢美は自説の正しさの証明のために、彼女の助手の白河ちゆりと共に『可能性移動空間船』に乗って、魔力に溢れた平行世界を探した結果、幻想郷へとたどり着いたのだった。
そして、強い魔力の持ち主を探すために優勝者には一つの願いを叶える、という報酬を餌に招待状を
送り、参加者に弾幕ごっこによる勝ち抜き戦の大会を開いたのだった。
(ちなみに、招待状はちゆりが勝手にバラ撒いたものだった。)

最終的には、優勝者を魔力を持った生き証人として、無理やりにでも自分のいた世界へと
連れて帰る予定だった。
結果は、ちゆり、夢美共に弾幕ごっこに負けてしまい、優勝者の願い事を叶えさせるのだった。
その後は、集めたデータを学会でもう一度発表したのだが―――

「どーして、あいつらは人の話を聞かないのよ〜!」
残念ながら、集めたデータをもってしても学会には相手にされなかった。
相手にされない大きな原因は、夢美の『非統一魔法世界論』には何故か「宗教は世界を救う」、
「エネルギー、環境問題を救うのは宗教」
などといった怪しい文面が混じっているせいで、胡散臭いものになっているからかもしれない。

(やっぱり、実際に魔法を使える人を連れてかないと駄目みたいね。)

843魔法少女十字軍 ◆dcnShg47Kk:2013/09/12(木) 03:26:09 ID:wN3TE35w0
そこで、夢美はもう一度幻想郷へ赴こうとしていたところまでを覚えていた。


夢美はこの殺し合いに乗るつもりはなかった。
主催者が願いを叶えるという言葉に全く動かされなかったわけではないが、殺し合いの果てに他人から
与えられる願いなど、彼女の言葉を借りるなら、『素敵』ではないからだ。
夢美は支給品の確認のため、自分の隣にあるデイバックの中身を見てみた。

「紙しか入ってないわね。」
中には、折りたたまれた紙がいくつか入っているだけだった。
とりあえず、その1つを開いてみると・・・
開いた紙からさらに紙が出てきた。

「あら、素敵。紙の中からまた紙が出てくるなんてなかなか面白いわね。
マトリョーシカみたいにもっと出てくるのかしら。」
と期待してもう1度開いてみるが夢美の予想とは違い、開いた紙にはこのバトルロワイヤルの参加者
全員が記された名簿だった。
軽く一瞥するが、助手の白河ちゆりのように、特に自分が知った名前がないと思ったが、
もう一度よく見てみると4人の名前に反応した。
博麗霊夢と霧雨魔理沙、宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーンだった。

(あれ?この霊夢に魔理沙ってあの時の参加していた2人だっけ?)
夢美が起こした異変に、こんな名前の2人がいたような気がした。
(そういえば、あっちに行った時、だれが優勝したのかいまいちはっきりしないのよね。
月を止めてあげたり、メイドアンドロイドの『ま○ち』をプレゼントしたり
してあげた気はするんだけどなぁ。)

さらに、もう1つ気になる点もあった。
(事前にちゆりにどんな奴が参加するか調べさせたけど、霊夢の「霊」って名前はもっとこう難しい字
だったような、それに魔理沙の「理」も「梨」って書いてあったと思うのよね。)

そして、宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーン、この2人は目に留まったものの、
一体どんな人物だったか思い付かなかった。

(名前に見覚えがあるのに思い出せないってことは、私の大学の学生さんってところかしら?)
思い出そうにも何故か頭に靄がかかったようになり、顔が出てこなかった。

844魔法少女十字軍 ◆dcnShg47Kk:2013/09/12(木) 03:27:17 ID:wN3TE35w0
(うーん、流石にここまで思い出せないのが続くと怪しいわね。
あいつらが私の記憶でも弄ったのかしら? まあ、今は支給品の確認が大事ね。)
夢美は細かいことは後にして支給品の確認に戻った。

中身は、地図、コンパスなどのサバイバル道具があったが、夢美はこれらのサバイバル道具より
気になるものがあった。それはバトルロワイヤルのルールの説明書である。
説明書には神、仙人、幽霊、妖怪、妖精、蓬莱人、柱の男、吸血鬼、天狗に鬼と
見慣れない文字が見えたからだ。

(何よこれ、少なくとも私のいる世界にはこんな種族の生物なんて大昔のお伽話にしかいないわよ。
ルールブックにふざけてこんなこと書くとは思えないし・・・となると本当にいるの?
いるとしたら、なかなかオカルトチックなメンバーね、ぜひ会ってみたいものだわ。)

ちなみに、夢美は科学者の割にはオカルトなものが大好きであった。
夢美はルールブックを詳しく読んでみると、自分に影響しそうなものを発見した。
彼女が影響するのは「補助なしには飛ぶことができないこと」、「弾幕の威力、射程距離に制限がかかっていること」の2つである。
いくら殺しあうつもりはないといっても相手に殺されそうになったら対処・・・最悪殺すことも
念頭に入れなければいけない状況で、自分の攻撃方法と移動手段が制限されるのは喜ばしいもの
ではなかった。

(本当にやってくれるわね、あの2人全部が終わったらミミちゃんをあんた達の家めがけて
ぶっ放してあげるから、覚悟してなさいよ。)
※ちなみにミミちゃんとは岡崎夢美作のICBM(大陸間弾道ミサイル)である。

そして、いよいよ残り2つのエニグマの紙が残った。

(さーて、いよいよ本命ね、何が出てくるか少し楽しみね。)
期待を胸にエニグマの紙を開くと出てきたのは、それなりに使い込まれた箒だった。

「ちょっと、ちょっとどうして殺し合いの場に箒が出てくるのよ!
神社の巫女さんよろしく呑気に掃除でもしていろってこと?
それとも魔法少女よろしく空を飛べってことかしら?」

予想外の支給品に地団駄を踏んでいると、ひらひらと落ちる紙が見えた。

845魔法少女十字軍 ◆dcnShg47Kk:2013/09/12(木) 03:28:10 ID:wN3TE35w0
見てみると紙にはこの箒の説明が載っていた。

≪霧雨魔理沙の箒≫
霧雨魔理沙愛用の箒。これに乗ればスタンドエネルギー、霊力、魔力などをもとに飛ぶことが可能になる。魔理沙は異変解決の際には、一切持ち出していないが、それ以外の時はよくこの箒に乗って、暇つぶしになるものを探したり、泥棒の足として活用している。

(また霧雨魔理沙か、うーんやっぱり魔理沙の「理」は「梨」じゃないみたいね。
こんな簡単な字を書き間違えるなんて、帰ったらちゆりにゲンコツね。―――じゃなくて
予想通りなんて流石私ね。)

夢美は早速魔理沙の箒に跨り、彼女の扱う『魔力』でも『霊力』でもない力、『科学力』
を込めてみた。
すると、力を込めるごとに徐々に浮き上がり、最終的には天高くまで飛翔することに成功した。

「おおー、今までただ飛んでいたのと違ってこれはこれで趣があって素敵ね〜。」
夢美は非常に満足していた。彼女は魔法に対して、大きな憧れを抱いていたからだ。
使っている力は違っても、魔法使いのように空を飛べたのは彼女の気持ちを高揚させるのには
十分だった。
それから夢美はしばらく空の旅を楽しみながら適当に南下することにした。



10分ほど速度を緩めたり、速めたりしながら、箒の扱いを体で覚えていった。

(ああ、本当に素敵ね〜♪でもそろそろ下りないと科学力の無駄遣いになるわね、
もう一つ支給品の確認もまだだし、惜しいけど降りましょうか―――ってあれ?)

前方にはいまだ草原が広がっているが、その草原に誰かが倒れているのが見えた。
夢美は接触するかどうか、一瞬迷うが―――

(いちいちビビッていても、しょうがないしとりあえず接触しますか。)
夢美は高度を下げつつ、倒れている人物との接触を図った。

846魔法少女十字軍 ◆dcnShg47Kk:2013/09/12(木) 03:28:59 ID:wN3TE35w0


紫色の長い髪に、紫色の服装をしたパチュリー・ノーレッジは、歩き疲れて横になっていた。
彼女もまたこの草原にて目を覚ますのであった。
手早く支給品の確認を済ませて、とりあえずは人間の里か紅魔館を目指していたのだったが…

「…まさか飛べなくするなんて私に対してひどい仕打ちね、疲れたわ。」
パチュリーはぼやいた。
彼女は幻想郷の紅魔館に住む魔法使いなのだが、日頃から本を読み続けており、
外にはあまり出ないので引きこもりがちである。
当然体力などあるはずもなく30分ほど歩き続けてあえなくリタイアとなった。

(喘息の調子も悪くはないし、歩こうと思えばまだいける。
けど無理をすると後に響くしここは我慢のしどころかしらね。)

彼女はそう自分に言い聞かせると、体を投げ出し、仰向けになって休むことにした。
その間このバトルロワイヤルでどう動くか考えてみることにした。
パチュリーもまたバトルロワイヤルに乗るつもりはなかった。
叶えてほしいような願いなどなかったし、叶えてくれるなら今すぐにでもこんなふざけた殺し合いを
やめて、彼女たちの住む幻想郷へと帰してほしかった。
しかし、どのようにすれば解決に至れるのか、皆目見当もつかなかった。

(名簿には、知らない名前も半分近くいたけど、幻想郷の異変の関係者をほとんど集めた上に、
その気になれば頭をきゅっとしてドカーンなんて、滅茶苦茶な相手ね。)
だが、このバトルロワイヤルに乗るということは、紅魔館のみんなとも殺し合うことを意味していた。

(生憎だけど、友人達を手に掛けてまで生き延びようとするほど私は薄情じゃないの。
レミィも殺し合えって命令されてその通り従う性分じゃないし、むしろ歯向かうでしょうね。
咲夜はレミィが殺し合いに乗らない限り心配ないし、温厚な美鈴が自分から人の命を奪うような真似は しないでしょう。)

そう、パチュリーの見立てでは紅魔館の誰もこのバトルロワイヤルに乗るつもりはないだろうと
踏んでいた、ある一人を除いてはだが。その名前はレミリア・スカーレットの妹、
フランドール・スカーレットだった。
パチュリーは、名簿を見る限りではその名前はなかったようなので正直安心していた。

847魔法少女十字軍 ◆dcnShg47Kk:2013/09/12(木) 03:30:24 ID:wN3TE35w0
(この異常な状況なら、あの子がどっちに転がるか分からないわ。
暴れだしたら手に負えないし、妹様には悪いけどいなくて正解ね。
あっ、でもあの子以外紅魔館にいないとなると勝手に抜け出してしまいそうね。)
と紅魔館のみんなに思いを馳せていた。
そろそろ歩き出そうかと思ったら、空から何か向かってくるのが視界に入った。

(この状況で空を飛べる相手って、ブン屋の天狗か地霊殿にいる八咫烏かしら?
もし殺し合いに乗っているとしたら―――マズいわね。)

片や自称といっても幻想郷最速の天狗、片や太陽の化身である八咫烏を宿した妖怪、単独かつ飛ぶことができない今は相手にしたくなかった。
時間帯は深夜だろうが、月明かりは人を見つけるには十分な程度には差し込んでいる上に
辺りには遮る物が何もなく、隠れようがなかった。
そして、どうやら相手も気づいたらしく、真っ直ぐこちらに向かってきた。

(接触は避けられない―――か。どうやら腹を括るしかないみたいね。)

そう思いながら、ゆっくりと立ち上がり向かってくる相手を見据えた。





「ごきげんよう、ひょっとして起こしてしまったかしら?」
夢美は箒から降りながら、紫色の長い髪と紫色の服装をした少女に向かって軽く一言かけた。

パチュリーは天狗でも八咫烏でもないのに安心した。
しかし、箒に乗って来るとは予想外で、本を盗みに来る誰かさんを彷彿とした。

「残念だけど、眠ってなんかいないわよ。そんな箒を持ったやつが空から来ると、
私の住んでるところって窓ガラスが割れたり、図書館の本がなくなったりするのよ。
今頃眠っていたらきっと身ぐるみ剥がされてるでしょうね。」
思いの他、トゲのある言葉で返された。

(ん?まさか、この箒の持ち主に心当たりがあるかしら?)
これは話を広げるチャンス、と思った夢美はもう一言かけようかと思ったが―――

848魔法少女十字軍 ◆dcnShg47Kk:2013/09/12(木) 03:31:15 ID:wN3TE35w0

「悪いけど、単刀直入に言うわね、貴方はこのバトルロワイヤル―――いや殺し合いに
乗っているのかしら?」
先に向こうから切り出してきた。
(聞きそびれちゃった、まぁ分かりやすくていいわね。)
そう思うと、夢美は、デイバックを紫色の少女目がけて、箒を後ろの方へと放り投げた。

「えっ?」

パチュリーは攻撃かと思い咄嗟に避けたが、バックはただパチュリーの近くに落ちただけだった。

「これでいいかしら?私はこの殺し合いに乗るつもりはないわ。
それと私の名前は岡崎夢美、とある世界で比較物理学の教授をやっている人間よ。」

パチュリーは夢美の行動に目を白黒させると、ハッとしたように自分も名乗りだした。

「…悪かったわね、私もこの殺し合いに乗るつもりはないわ。
私の名前はパチュリー・ノーレッジ、幻想郷の紅魔館に住んでいる魔法使いよ。」

(ふう、にカッとなってつい格好つけちゃったけど、結果オーライでうまくいったわね。)

内心、夢美は冷や汗だらだらだった。

(ま、まあ、いきなり襲ってこようとしてなかったし、あんな風に警戒するなら懐の大きさを見せて
しまえば、殺し合いに乗っていないならちゃんと応じてくれるわよね。
乗っていたら…まあ戦うなり、最悪箒に乗って逃げれば大丈夫よね!―――ってあの子今…)

パチュリーは夢美のデイバックを持って近寄ってきた。

「はい、貴方の荷物、いくらなんでも方法は選んだ方がいいと思うけ―――」

パチュリーはそこまで言おうかして、いきなり夢美に両肩を強い力を込めた両手で掴まれた!
その力はまるで飢えた獣が狙った獲物を逃がさないように捕捉するかの如く力強いものだった。

「―――貴方今魔法使いって言ったわよね?」
「っ痛、だったら何?放しなさいよ。」

849魔法少女十字軍 ◆dcnShg47Kk:2013/09/12(木) 03:31:59 ID:wN3TE35w0
「いいえ、絶対に逃がさないわ!今度こそ私の『非統一魔法世界論』を学会に認めさせるためにもね!」

突然の出来事にパチュリーは混乱したが、咄嗟にスペルを唱え簡単な弾幕を夢美にぶつけた。
夢美の手は離れたが、さらに距離を空けてパチュリーは叫ぶ。

「一体どういうつもりよ、そっちがその気ならこっちにも考えがあるわよ!」
パチュリーはそう言うが早いが魔力を練り上げ、高速でスペルを紡ぎあげる。


―――「 火符 アグニシャイン! 」 ―――


炎が彼女の周囲を走り出し、パチュリーを守るように旋回し出した。
遠距離からの攻撃手段がなければ、パチュリーに近づくには炎の壁を破らなければならず、ただの人間には不可能に等しい。自分を守りながら、相手を攻撃するには最適のスペルカードだった。
いきなり掴まれたから焦ったものの、力は人間と何ら変わりないものだった。
なら万が一近づいてきても、この炎の壁が侵入を阻むだろうと判断しての選択だった。
十分に炎の壁が出来上がったところで、そのいくつかが夢美へ向けてと殺到する。

一方の夢美はというと、
「あれ、なんで私ふっとばされて―――ってえええええぇーー!」

スペルをぶつけられて正気に戻ったが、夢美は『魔法使い』の言葉に反応して、つい逃がすまいと体が動いてしまった。
彼女は魔力の高い存在がほしがっていたが、目の前に魔法使いがいるという状況に、いてもたってもいられなくなったのだ。
学会を追放され次こそはやってやるという、彼女なりの決意がそういった行動を取らせたかもしれない。


夢美はいつの間にかパチュリーが弾幕を展開していたのに驚いた。
弾幕に慣れている夢美はすぐさまそれを避けるが、第2弾、第3弾が夢美へと向かう。


「よく分からないけど、仕方ないわね。これでも―――食らいなさい!」

そう言うと、夢美の目の前に二枚の正三角形を合わせた形、六芒星の魔法陣が浮かび上がると

850魔法少女十字軍 ◆dcnShg47Kk:2013/09/12(木) 03:32:27 ID:wN3TE35w0
そこから強力なエネルギーが溢れだし、その衝撃が炎の弾幕を一瞬で吹き飛ばした。

「えっ?今のってまさかボム?」

パチュリーは夢美をただの人間だと判断していたため、まさか同じように弾幕を―――それどころかボムを放てるとは思わなかった。
流石のパチュリーも呆気にとられ、わずかなスキができた瞬間―――


―――「  苺 クロス! 」―――


夢美の宣言と同時にパチュリーの周囲に4つほど力が収束したかと思うと、
その地点を中心に赤く、白い十字架が突如発生した。
パチュリーは下がろうとするも、後ろ、左右にも十字架が伸びており、身動きが取れない。
それでももう一度スペルを唱えようとしたが…弾幕が顔を掠めた。

「悪いけど、口を動かしたりすると弾幕を撃つわ、止めてもらえるかしら?」

パチュリーは自分の失態を強く恥じた。
バックを投げて敵意のなさをアピールした程度で相手をあっさりと信用し、
今こうして生殺与奪の権利を相手に持たせてしまっていたからだ。
パチュリーは、この状況では従わざるを得ないと判断した。

「これでいいかしら。」
スペルの詠唱と練り上げていた魔力を霧散させると小さく呟いた。
夢美はゆっくりと相手に近づき、

「今から、私の質問に答えてもらえる?」
パチュリーは今さらこんな状況に持ち込んだくせに何を言い出すのかと思った。

「分かったわよ。」
「よろしい、なら尋ねるわ。あなたさっき魔法使いって言ったわよね。
それって本当かしら?」
「本当よ。さっき貴方に放った炎を見たでしょう。
あれが属性魔法っていう、小さな妖精や精霊を使役して生み出したものよ。」

851魔法少女十字軍 ◆dcnShg47Kk:2013/09/12(木) 03:32:51 ID:wN3TE35w0

夢美はふむふむ、と頷いた。
「もっと詳しく聞かせてもらえる?」
「私は7つの属性、生命と目覚めの『木』、変化と動きの『火』、基礎と不動の『土』、実りと豊かさの『金』、静寂と浄化の『水』、能動と攻撃の『日』、受動と防御の『月』を扱えるし、これらの2つを合わせたりした魔法を生み出せるわ―――そろそろいいかしら?
こんなに魔法使いのことを聞いて、魔法使いに対して何か恨みでもあるのかしら?」
やられっぱなしでは流石に癪だったので、軽く挑発してやった。
夢美の顔を窺うと、異様にニコニコとした笑顔だった。

(―――薄気味悪いわね…)
パチュリーがそう思った瞬間、夢美の両手が伸び、パチュリーの両手を包み込むように握しめた。

「あぁ〜幸せ♪いきなり魔法使いと出会えるなんて、
殺し合いさえなければ、案外ここは素敵なところかもしれないわね〜♪」

パチュリーを見る夢美の目はキラキラと輝いており、表情はどこか緩んだものになっていた。
一方のパチュリーはというと目まぐるしく変わる展開に着いていけずにいた。





その後、夢美はどうしても魔力の高い存在がほしかった、という理由を述べて、
パチュリーを襲うような真似をするに至ったのかを説明した。
「要するに、貴方は魔法使いを無理やりにでも連れ帰り、実験用のモルモットにする
つもりだったと―――」
パチュリーは、ため息をつきながら、呆れ返っていた。

「ちょっと、ちょっと!それは初めてあっちに行った時の話で、
今回はそこまでするつもりはなかったわ。」
夢美の反論に、パチュリーは訝しんだ。
「あっちに行った時って?」
「いや、まあその。わ、分かったわ、こうなったら包み隠さず話そうじゃない。」

夢美はさらに、『可能性移動空間船』に乗って自分の住む世界ではない、とある魔力の溢れる世界へと

852魔法少女十字軍 ◆dcnShg47Kk:2013/09/12(木) 03:33:30 ID:wN3TE35w0
向かったこと、そこで魔力の高い人物を集めて、弾幕ごっこで競わせたこと、最終的には優勝者を気絶させて連れ帰ろうとしたが、返り討ちに合い、相手の願いを叶えさせたことを説明した。

「…なんていうか貴方もこのゲームに似たようなことをしたのね。」
「流石にこんなバトルロワイヤルと一緒にしないでほしいわ。
私はあんな風に強制的に参加させてないし、殺し合いなんて惨いことはさせてないでしょう?」
「けど、優勝した人を無理やり自分の世界に連れて行こうかしたんしょう?
ゲームが終わったと思わせてさらに戦わせるなら、このゲームより質が悪いわね。」

(痛いところを突いてくるわね…。)
「うぅ、で、でも結果的には未遂に済んだことだし、ちゃんと願いも叶えたんだから、
私は無実、そう私は無実なのよ!」

堂々と言ってのけた夢美にパチュリーは彼女に会って何度目かのため息をつくのだった。
だが、パチュリーは夢美の今の話について概ね信用するつもりでいた。
夢美の言う通りならば、彼女は幻想郷から見た外の世界とはまた違った世界からやってきた、
ということになる。
荒唐無稽な話ではあるが、それぐらい無茶ができるならば、主催者が幻想郷の面々も連れてくることができるのかもしれない、と妙に納得できたからだ。

(けど、こんな科学の力を持ったやつを連れてくるなんて、主催者の底が見えないなんてれべるじゃないわね。)
つまり、主催者は彼女と同じ―――いやそれすら凌駕する力を有しているのだから、彼女の科学の力は主催者を知る上で、そしてこのバトルロワイヤルの打破を目指す意味でも役立つと考えたのだ。

(仮にこいつの知識を差し引いても、先ほどの弾幕勝負の腕前は見事なものだったわ。
まあ、私も簡単なスペルカード1枚しか使っていないから負けたっていうのもあるけど。)

このバトルロワイヤルの打破を目指すには、十分な逸材だと判断したパチュリーだったが、
自分を襲った相手にどうしたものか、と考えていた瞬間。


「改めて謝るわ、パチュリー・ノーレッジ。―――この通りよ。」

夢美はパチュリーに向かって深々と頭を垂れた。
人にものを教える立場だけあってその振る舞いは綺麗なものだと、パチュリーは軽く感心した。

853魔法少女十字軍 ◆dcnShg47Kk:2013/09/12(木) 03:34:22 ID:wN3TE35w0

「明らかに私に非があるのは分かるけど、このバトルロワイヤルとかいうふざけた殺し合いを
壊すために、力を貸してもらえないかしら?」
「貴方は叶えたい夢があるんでしょう?
この殺し合いでそれを果たすつもりはないって約束できるのかしら?」

これはパチュリー自身気になっていたことだった。
優勝しさえすれば、夢美は最終的な目標である、魔法の会得は容易に叶うからである。

「私はあいつらに従わないし、私の夢も叶えてほしくないわ。」
「それはどうして?」


「こんな『夢』のない殺し合いを催した奴に私の『夢』を叶えさせてやるほど、
私の『夢』は安くはないわ。
それに、どんな力を使ったかは知らないけど、たとえそれが『統一原理』だろうが、
私の大好きな『魔法』だろうが、こんなことに使う力なんてちっとも『素敵』
じゃないからに決まってるじゃない!」

夢美は自分の正直な気持ちをはっきりと言い切った。

(自分の夢を叶えさせたくないからの反抗―――それがこいつの考えね。
まったく・・・これで断ったら私が悪者みたいじゃないの。)

やれやれ、と思ったパチュリーは、両手を挙げて、降参だとアピールした。

「それじゃあ!」
「ええ、分かったわよ。
貴方の力を利用させてもらうわね、岡崎夢美さん。」
パチュリーは妖しく微笑むと夢美の申し出を受け入れるのであった。



「いいいいいやったあああああああ!
そうと決まったら、私のことは教授と呼んでもらえるかしら?
それとそれと、ぜひ魔法の使い方を私に教えて! ねっ、ねっ!」

854魔法少女十字軍 ◆dcnShg47Kk:2013/09/12(木) 03:35:25 ID:wN3TE35w0

夢美の興奮と喜びように呆れながらパチュリーは口を開いた。

「教授って、貴方の愛称?」
「そう、そんなものよ、折角こうして一緒に戦線を張るんだからね!」
(一応この場がバトルロワイヤルだってことは分かってたみたいね…)

「悪いけど、いきなり知り合った相手に愛称で呼ぶつもりはないわ。
それに、私から魔法を教わろうって立場なら、貴方のことを教授なんて呼ぶわけないでしょう?」

パチュリー自身愛称で呼んでいるのは吸血鬼のレミリア・スカーレットのみだったし
レミリアとは相当な付き合いだ。
対して夢美はたった今知り合っただけの仲、さらに教えてもらう側が『教授』とはおかしい、
と的を得た尤もな発言だった。
しかし、夢美は言葉に詰まるがすぐに発想を変えた。

「ふふん、その言葉は私に魔法を教えてくれるってことよね!
そういうことなら仕方ないわね〜。
私のことは今まで通り呼んでもらって構わないからよろしくね♪」

パチュリーはハッとしたが、構うとますます泥沼になりそうだったので、
適当に相槌を打つ程度にした。

(本当にやれやれね、まぁ一人で行動してると悪い方に考えちゃうし、
精々頑張ってもらいましょうか。)

 

こうして、とある世界の科学者と、幻想郷の魔法使いは手を組むこととなった。
科学者は己の夢のために、魔法使いは己の友のために、
 2人の結末はまだ神のみぞ知ることだろう。

855魔法少女十字軍 ◆dcnShg47Kk:2013/09/12(木) 03:36:06 ID:wN3TE35w0
【F-2・草原 / 深夜】
【パチュリー・ノーレッジ@東方紅魔館】
「状態」:疲労(小)、魔力消費(小)、頬に弾幕による掠り傷
「装備」:なし
「道具」:基本支給品、不明支給品(確認済み)
「思考・状況」
基本行動方針:紅魔館のみんなとバトルロワイヤルからの脱出、打破を目指す。
1:夢美を交えて支給品の確認、情報交換をする。
2:紅魔館のみんなとの再会を目指す。
3:岡崎夢美の知識に興味。
「備考」
※参戦時期は少なくとも非想天測以降です。
※喘息の状態は普段と変わりありません。
【F-2・草原/ 深夜】
【岡崎夢美@東方夢時空】
「状態」:疲労(小)、科学力消費(中)
「装備」:なし
「道具」:基本支給品
「思考・状況」
基本行動方針:『素敵』ではないバトルロワイヤルを打破し、自分の世界に帰ったらミミちゃんによる鉄槌を下す。
1:パチュリーから魔法を教わり、魔法を習得したい。
2:ルールブックにあった神や妖怪に興味。
3:霧雨魔理沙、博麗霊夢って、あっちの世界であった奴だったけ?
4:私の大学の学生に宇佐見蓮子、マエリベリー・ハーンっていたかしら?
5:できれば、パチュリーを自分の世界へお持ち帰りしたい。
現在の状況での行動・思考の優先順位
「備考」
※参戦時期は東方夢時空終了後にもう一度学会に発表して、つまみ出された直後です。
※霧雨魔理沙、博麗霊夢に関しての記憶が少々曖昧になっています、きっかけがあれば何か思い出すかもしれません。
※宇佐見蓮子、マエリベリー・ハーンとの面識はあるかもしれません。
※岡崎夢美はただの人間ですが、本人曰く『科学力』又は『疑似魔法』を使うことで弾幕を生み出すことができます。
※霧雨魔理沙の箒は夢美とパチュリーの近くに落ちています。

支給品紹介
○霧雨魔理沙の箒
【出典:東方project】
岡崎夢美に支給。
霧雨魔理沙愛用の箒。これに乗ればスタンドエネルギー、霊力、魔力などをもとに飛ぶことが可能に
なる。魔理沙は異変解決の際には、一切持ち出していないようだが、それ以外の時はよくこの箒に乗って、暇つぶしになるものを探したり、泥棒の足として活用している。

856 ◆dcnShg47Kk:2013/09/12(木) 03:41:47 ID:wN3TE35w0
投下終了です。
初投稿です。(本当)
教授はっちゃけさせ過ぎた気がする・・・
こういった企画に参加するのは初めて、
至らない点多々あると思いますがご指摘よろしくお願いします

857名無しさん:2013/09/12(木) 08:53:34 ID:ryUBjauY0
投下乙です!
自分の目的にどこまでも真っ直ぐでとことん自由奔放な教授がいいキャラしているw
パッチェさんとのコンビの今後がきになる…!

858名無しさん:2013/09/12(木) 11:54:23 ID:fJ52MiO60
パチュリーは東方ロワでは早期退場だったから、今回は見せ場があるといいなぁ

>もう一つ支給品の確認もまだだし
これが状態表に載ってない気がするのだけど気のせい?

859 ◆dcnShg47Kk:2013/09/12(木) 14:05:39 ID:GQoaNh6.0
教授の基本支給品に(未確認)と
表記すればよろしいでしょうか?

860名無しさん:2013/09/12(木) 14:20:55 ID:ryUBjauY0
ランダムアイテムがもう一つ残っているなら
教授の状態表の道具の欄に「不明支給品(未確認)」を追加すれば宜しいと思われます

861 ◆dcnShg47Kk:2013/09/12(木) 14:37:53 ID:wN3TE35w0
了解しました。
改めて教授の状態表を載せておきます。


【F-2・草原/ 深夜】
【岡崎夢美@東方夢時空】
「状態」:疲労(小)、科学力消費(中)
「装備」:なし
「道具」:基本支給品、不明支給品(未確認)
「思考・状況」
基本行動方針:『素敵』ではないバトルロワイヤルを打破し、自分の世界に帰ったらミミちゃんによる鉄槌を下す。
1:パチュリーから魔法を教わり、魔法を習得したい。
2:ルールブックにあった神や妖怪に興味。
3:霧雨魔理沙、博麗霊夢って、あっちの世界であった奴だったけ?
4:私の大学の学生に宇佐見蓮子、マエリベリー・ハーンっていたかしら?
5:できれば、パチュリーを自分の世界へお持ち帰りしたい。
現在の状況での行動・思考の優先順位
「備考」
※参戦時期は東方夢時空終了後にもう一度学会に発表して、つまみ出された直後です。
※霧雨魔理沙、博麗霊夢に関しての記憶が少々曖昧になっています、きっかけがあれば何か思い出すかもしれません。
※宇佐見蓮子、マエリベリー・ハーンとの面識はあるかもしれません。
※岡崎夢美はただの人間ですが、本人曰く『科学力』又は『疑似魔法』を使うことで弾幕を生み出すことができます。
※霧雨魔理沙の箒は夢美とパチュリーの近くに落ちています。

862名無しさん:2013/09/12(木) 15:05:58 ID:VGmD6PFk0
>魔理沙は異変解決の際には、一切持ち出していない
あれ?東方心綺楼で箒使ってなかったか?

863 ◆dcnShg47Kk:2013/09/12(木) 16:18:34 ID:wN3TE35w0
縦シューティングのときに箒に乗っていなかったので、
勘違いしていました。
修正しておきます。

支給品紹介
○霧雨魔理沙の箒
【出典:東方project】
岡崎夢美に支給。
霧雨魔理沙愛用の箒。
これに乗ればスタンドエネルギー、霊力、魔力などをもとに飛ぶことが可能になる。
魔理沙は異変解決の際にはあまり持ち出していないようだが、
それ以外の時はよくこの箒に乗って、暇つぶしになるものを探したり、泥棒の足として活用している。

864名無しさん:2013/09/12(木) 16:46:56 ID:PD/mORt20
教授にD4C見せたいな 殺られるかもしれないけど

865 ◆xWjWtY1WzY:2013/09/12(木) 22:56:27 ID:tEL969xI0
投下します

866 ◆xWjWtY1WzY:2013/09/12(木) 22:57:50 ID:tEL969xI0

「こ……これは……?一体どういうことなんだ……!?」

誰もいない暗闇の中、一人の青年の困惑した声が空気を波打たせた。


●●●●●


地図上でいうところのA-2、草原や平原が広がり、わずかばかりの風が草木をゆらりと揺らし、エリアの真ん中を横切るように流れる小川が見ようによってはどこかのどかで一瞬ここが殺し合いの場であることを忘れそうになる。
その場に転移されたのは、緑色の長ランに身を包み、特徴的な前髪をした青年────花京院典明だ。

彼はこの場に転移された後、突然の事態に困惑しながらも冷静さを保ち、自らのスタンド「ハイエロファントグリーン」で周囲に人影がないことを確認してから、現状を把握すべく己に支給されたデイバッグを調べた。
しかし、その中に入っていた名簿に載っている名により、彼の困惑は加速することになる。

そこには、過酷な50日間を共に過ごした仲間たちの名が刻まれていた。

空条承太郎、ジョセフ・ジョースター、J・P・ポルナレフ……彼らもまた、この「殺し合い」に招かれていたのだ。
それだけではない、宿敵・DIOの名とその部下の名もある。奴らがこの殺し合いに参加させられていることは不可解だったが、わざわざ嘘の名簿を作成するメリットもない以上、これは真実と見ていいと判断した。
他にも気になる点はある。名簿内で嫌でも目に入る「ジョースター」「空条」「ブランドー」の性だ。ジョースターや空条はジョセフ・承太郎それぞれの親類の者だとすれば納得できなくもない(それにしたってかなり怪しいものだが)。DIOの名の隣に括弧で記述がある「ディオ・ブランドー」とはおそらくDIOの本名なのだろう(何故本名が載っているのかはとりあえず保留にした)。しかし同じ性を持つ「ディエゴ・ブランドー」とは何者なのだろうか?まさか、自分たちの知らぬ奴の血縁者だとでもいうのか?

867 ◆xWjWtY1WzY:2013/09/12(木) 22:59:17 ID:tEL969xI0
それらの疑問もあるが、今のこの状況では解決することは不可能だ。それよりも重点を置くべき事柄は分かりきっている。花京院は己の行動方針を確定させた。

承太郎たちとの合流、DIOを倒したのち、二人の主催・荒木と太田に反抗、この殺し合いを破壊する……!

旅の目的である打倒DIOのことは承太郎の母・ホリィの命がかかっているため一刻も早く達成しなければならない。しかしDIOもここに招かれているのならばあの二人は未だに解明しきれていないDIOのスタンド「世界(ザ・ワールド)」を越える、もしくは抑え込むことのできる能力を持っているかもしれないのだ。放っておくわけにもいかない。
と、こうして考えながらも花京院はデイバッグの中身を確認する手を止めてはいなかった。そしてその手には既にある物が握られている。

それは真ん中に穴の空いた円盤────DISCであった。

中に入っていた紙を開くと出てきたそれはただのDISCではない、とあるスタンドの能力によって作り出されたDISCだ。そのDISCを片手に、花京院はわずかに驚いたかのような表情を浮かべている。
いや、正確にはDISCと共に入っていた説明書の内容に対して、であった。そこにはこう書かれている。


────空条承太郎の記憶DISC


そしていよいよ困惑は混乱へとシフトすることになる。



●●●●●

868 ◆xWjWtY1WzY:2013/09/12(木) 23:01:37 ID:tEL969xI0



「いやまて、落ち着くんだ……とにかく、整理してみよう」

『このDISCには空条承太郎の記憶が込められています。頭に挿入すると使用できます。』という旨の説明を確認した後、半信半疑ながらもこれも何らかのスタンド能力によって生み出されたものなのだろうと推測した花京院は、信頼する仲間の一人の記憶を見ると言うことに若干の抵抗はあったものの、支給品として支給されているということはそれなりに重要なアイテムなのではないか?と思い至りそのDISCを使用することを決めたのだ。

しかし、その内容は花京院にとってあまりにも予想外すぎるものだった。その結果発せられたのが冒頭の台詞である。

「空条承太郎……年齢は17歳の高校生、僕やジョースターさん、アヴドゥルとポルナレフ、それにイギーと共にDIOを倒すべくエジプトのカイロを目指し、そしてとうとう奴の根城を突き止め乗り込もうとしていた……確かに、ついさっきまで僕たちと一緒にいたはずだ………」

だのに、このDISCの記憶では────

「……彼は既に40歳手前、それに────妻子持ち(離婚済み)だと……?」

………………
違うッ!!そこじゃあないッ!!そうじゃあなくてだなッッ!!
勢いよく頭を振る、どうやら自分で思っているよりも混乱していたらしい。
パラリ、と再び名簿をめくる。

869 ◆xWjWtY1WzY:2013/09/12(木) 23:03:12 ID:tEL969xI0

ジョセフ・ジョースターの隠し子、東方仗助とその仲間たち。そして彼らに立ち塞がり死んだはずの殺人鬼、吉良吉影
DIOの息子、汐華初流乃…もといジョルノ・ジョバァーナ
そして、空条承太郎の娘、空条徐倫────

DISCの内容にもあったそれらの名は、確かに名簿にも記載されていた。

「このDISCの記憶がすべて真実かは解らない……だが、少なくともカイロまでの50日間の記憶や、名簿の彼らの名と記憶の中にある名は一致する……」

手の込んだ偽装でなければ、このDISCの記憶は真実、つまり未来の承太郎の記憶ということになる。

そう、『今の』花京院にとっての未来
────DIOのスタンド能力を、自らの命と引き換えに解き明かすということさえも。

「…………そうか、僕はDIOに屈することなく、奴に立ち向かって死ぬのか」

花京院だけではない、イギーやアヴドゥルも────
同じ目的、そして志しを持った仲間の死の記憶に、花京院は息が詰まり、背中に鳥肌が立った。
承太郎が直接その場面を見たわけではないが、ジョセフやポルナレフがその後承太郎にいかに戦い、そして死んでいったのかを伝えたのだ。

強張った体から少しずつ力を抜き、ふっ、と無意識に小さく笑みを溢す。それは自虐による自嘲ではない。むしろ胸中には「DIOのスタンド能力を明かしてやった」という誇らしさが渦巻いていた。
これからおこる事柄がどんなものであろうと、絶対に後悔しないと既に覚悟していたのだから────

870 ◆xWjWtY1WzY:2013/09/12(木) 23:04:20 ID:tEL969xI0

きっとアヴドゥルとイギーも、後悔はなかったことだろう。

だが、仮にDISCの内容がすべて真実だとして、同時に幾つかの新たな疑問が浮かび上がる。
一つ、自分はDIOの館に乗り込む直前にここに呼び出された筈だが、このDISCは自分にとって未来の承太郎の記憶、つまりDISCとの間にはかなりの時間の隔たりが存在している。これは一体どうゆうことなのか。
二つ、DISCの記憶ではとうに死んだはずの者が何故名簿に載っているのか、つまり何故生きているのか。これはDIOや吉良吉影という男、そして花京院自身にもあてはまることだ。……若干妙な気持ちではあるが。
三つ、名簿に承太郎やジョセフ、ポルナレフたちの名があるが、これは「いつ」の承太郎たちなのか。DISCの記憶に従うならば承太郎は既に40手前の年齢になるのだが……
四つ、そもそもこのDISCを作り出したのは何者なのか。目的は?まだ詳しくは見れてはいないが記憶によると、妙な模様のスタンドに攻撃されたのを最後にふっつりと記憶がとぎれてしまっている。(ひょっとして荒木か太田のスタンドか?)
大まかな疑問は主にこれらだが、まだ次々と細かな疑問が浮かび上がる。

「今の時点で推測できることと言えば、荒木か太田、少なくともどちらかが時間に干渉する能力を持っている……?」

そう、それこそDIOのような「時を止める」スタンド能力のように、何らかの形で「時間を操る」能力を持っている可能性があるのだ。それならば時間軸の違うDISCに関する疑問の幾つかに矛盾は無くなるのだが……。

871 ◆xWjWtY1WzY:2013/09/12(木) 23:05:19 ID:tEL969xI0

「…いや、こんな情報が少ない中で答えを導き出そうとすればそれが先入観となりいらない思い込みをするようになるかもしれない。それにまだDISCの内容がすべて真実だとは限らないんだ。今はまだ確かめる時期ではない…この事実はとりあえず……僕の胸にだけ秘めておこう」

かぶりを振りながらそう判断した花京院は、先の展開が気になる推理小説を閉じるようにそっとあらゆる疑問を一塊にして胸の中にしまいこみ、そこで考察は一旦打ち切りとした。

「今はとにかく何か動くにしても他の参加者との接触が必要だな……とはいえこんな状況だ、慎重にしなければ」

言いながら、一通り調べ終わったデイバッグを片手に持ちスッ……と静かに立ち上がる。視線は既にある方向、具体的には北の方角へと注がれていた。
実はDISCの考察をしている時点で先程よりも広範囲に「ハイエロファントグリーン」を先行させており既に人影を探知していた。

「二人…か、接触するかしないかの判断には微妙なところだ…」

もし一人ならば例え殺し合いに乗っていたとしても撃退はできる。三人ならば少なくとも今は殺し合いには乗っていない可能性が高い。しかし二人という中途半端な数が判断を揺らがせた。それに、二人の内どちらか、あるいは両方がスタンド使いという可能性もある。

二人と接触するか、しないか。それとももう少し周囲を注意深く観察してから事を決めるか。

花京院は思考の海を広げる。


「さて、どうする────?」

872 ◆xWjWtY1WzY:2013/09/12(木) 23:06:17 ID:tEL969xI0



【A-2 草原/深夜】
【花京院典明@ジョジョの奇妙な冒険 第3部 スターダストクルセイダース】
[状態]:健康、若干思考の混乱(回復中)
[装備]:なし
[道具]:空条承太郎の記憶DISC@ジョジョ第6部、不明支給品0〜1(現実のもの、本人確認済み)
[思考・状況] 基本行動方針:承太郎らと合流し、荒木・太田に反抗する
1:「ハイエロファントグリーン」で確認した二人と接触する?しない?もう少し周囲を調べる?
2:承太郎、ジョセフ、ポルナレフたちと合流したい
3:このDISCの記憶は真実?嘘だとは思えないが……
4:3に確信を持ちたいため、できればDISCの記憶にある人物たちとも会ってみたい(ただし危険人物には要注意)
5:DISCの内容に関する疑問はあるが、ある程度情報が集まるまで今は極力考えないようにする
[備考]
※参戦時期はDIOの館に乗り込む直前です。
※空条承太郎の記憶DISC@ジョジョ第6部 を使用しました。これにより第6部でホワイトスネイクに記憶を奪われるまでの承太郎の記憶を読み取りました。が、DISCの内容すべてが真実かどうかについて確信は持ってません。
※荒木、もしくは太田に「時間に干渉する能力」があるかもしれないと推測していますが、あくまで推測止まりです。
※「ハイエロファントグリーン」を通じてA-1にいる東風谷早苗、プロシュートの二人を確認しました。また少なくとも花京院の周囲数十m圏内には「ハイエロファントが確認できる限り」誰もいないようです。(具体的にどのくらいの規模かは不明です。)
※制限の度合いは他の書き手さんにお任せします。



<空条承太郎の記憶DISC>
花京院典明に支給
ジョジョの奇妙な冒険 第6部 ストーンオーシャンにてホワイトスネイクの能力によって奪われた承太郎の記憶が込められたDISC、頭に挿入することでその記憶を読み取る事ができる

873 ◆xWjWtY1WzY:2013/09/12(木) 23:07:58 ID:tEL969xI0
以上です。タイトルは「未来からの遺産」です。
書き手初心者なんで何か問題ありましたよろしくお願いします。

874名無しさん:2013/09/12(木) 23:24:12 ID:ryUBjauY0
投下乙です!
まさかの承太郎の記憶DISC使用で未来を知ることになるとは…
吉良の正体を知る人物が増えちゃって吉良が平穏から遠ざかるハメになってるw
しかしやはり恐怖を乗り越えて以降は安定感あるし、情報を鵜呑みにもせず冷静に状況を推察できる辺り流石花京院と言った所
(マーダーではないとはいえ)早苗さんとプロシュート兄貴を捕捉した花京院が今後どうなることか

875名無しさん:2013/09/13(金) 16:14:12 ID:9VJvLyj.0
やっぱ花京院はカッコイイな 346部出ずっぱりの承太郎の記憶を読めたのはおいしい

876名無しさん:2013/09/13(金) 21:43:07 ID:WIXtE6yI0
とはいえ、ともに戦ってきた仲間が40で子持ちのバツ1になると知ったら
誰だってびっくりする、DIOだってびっくりする

877 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/13(金) 21:55:42 ID:bJp4g/NE0
>>756の予約を延長します。

>>873
投下乙です。
花京院の光ったメロンみてえなスタンドと、
プロシュート(生ハム)のコンビは相性が良さそうですね。(生ハムメロン的な意味で)

持って生まれたスタンドを誰にも知られずに育った花京院と、
外界で信仰の失われた神に仕えていた巫女の早苗って意味では、
そっちのほうが相性が良さそうだけどw

878名無しさん:2013/09/14(土) 00:33:00 ID:ts.Cr0wI0
花京院に友達ができたらいいね

879名無しさん:2013/09/14(土) 00:49:07 ID:0DHXH8/Y0
>>878
お互い緑がイメージカラーで境遇も似ている早苗さんとちょっといい感じになったけど、
さくらんぼレロレロで知らないうちにフラグを折っていたところまで見えた>花京院

880名無しさん:2013/09/14(土) 00:50:35 ID:6iKDE23Q0
年齢も割と近そうだしな、花京院高校生だし
と思ったけどやっぱりレロレロでドン引きされそうだぞ花京院!

881名無しさん:2013/09/14(土) 00:59:08 ID:0DHXH8/Y0
「面白いかくし芸ですね!!」とお目々キラキラさせるって可能性もあるけど、
ここの早苗さんは大人しそうだからなぁ>>さくらんぼレロレロ

882名無しさん:2013/09/14(土) 02:01:16 ID:6iKDE23Q0
段々早苗さんが殺し合いの空気に慣れ始めてはっちゃける可能性が微レ存

にしてももうこのスレ900近くか
書き手も多いし良い感じの勢い

883名無しさん:2013/09/14(土) 06:24:08 ID:MGsK34r60
テンメイは美しく散ってこそみたいな感じはあるがどうなるかね

884名無しさん:2013/09/14(土) 09:19:20 ID:LdMCGd4I0
花京院「ぐわああああああぁぁぁぁぁ!!!!!」
早苗「カ、カキョウイーン!!」

こうですか分かりません!

885 ◆AC7PxoR0JU:2013/09/14(土) 09:45:30 ID:zMkLrYeo0
投下します

886清く、正しく ◆AC7PxoR0JU:2013/09/14(土) 09:46:29 ID:zMkLrYeo0
 --B1エリア双頭竜の間

 その血塗られた一室は、深夜という時間も相まって深い闇に包まれていた。

 その闇の中に、光源が二つほど浮いている。

 1つは部屋の天井から吊り下げられたチェーン、そしてその先に括り付けられた首輪を、そしてもう一方は
暗闇の中に持ち上げられたA4用紙と、その上で踊り狂う鉛筆をすぐ側から照らしていた。

 A4用紙の上には、見る間にもう一つの照らされた存在であるチェーンと首輪が写し取られていく。
 支給品の何の変哲もない鉛筆と、罫線入りのメモ用紙。
 その悪条件化で、凄まじい速度で筆を走らせているにもかかわらず、写し取られていく絵には
描き殴られた、などという印象は一切見られず、むしろ緻密な描き込みこそが見て取れた。
 ほどなくして、鉛筆の動きが止まる。絵は完成していた。

「よし、こいつのスケッチはこんなものでいいかな。
 作り物の舞台かと思ったが、なかなかリアリティがある」
 今しがた双頭竜の間を紙上に再現し終えた青年--岸辺露伴がエニグマの紙の中に鉛筆と描き終えたA4用紙を仕舞いながら言った。

「やっとですか……って言いたいところですが、あっという間に終わらせちゃいましたね」
 その言葉に食いつくようにして、両手に支給品の照明器具を持った少女--射命丸文が言った。
 そして、左に持った照明を露伴に返しながら続ける。
「とにかく、やっと漫画のネタ集めとやらが終わったんですから、さっさと外に行きましょうよ」

「おいおい、そんなに急ぐもんじゃあないぜ。そうだ、あの首輪が実際に使われてるところもスケッチしておきたいな。
 射命丸、悪いが君、あの首輪に嵌ってきてくれないか」
 急かす文に対して、露伴が真面目ぶった顔で返した。
 普通に考えればただの冗談だが、こと漫画が絡めば本気でこんなことも言い出しかねないのが、岸辺露伴という人物の特徴だ。

「露、伴、先、生〜!」
 文が、一字ごとにアクセント入れながら、ローキックで露伴の太ももを蹴りつける。
「お、おい! やめろマジに痛い! 妖怪の脚力でケリを入れるな!」
 蹴られた露伴は降参するように両手を上げた。

「まったくもう、漫画の取材も結構ですが、脱出のための取材も進めてくださいよ」
「そうは言うがな、君だってカメラがあれば、似たような感じでカシャカシャやってるんじゃあないのかい?」
「ぐ、むむむ」
 蹴るのを止めて代わりに苦言を呈するする文だが、露伴の反論に思い当るところでもあったのか、一瞬言葉に詰まる。

「ま、まあ何にせよ、調べてみてもここには何もなかったんです。
 余所へ生存者の捜索に向かった方がいいんじゃないですかね。
 少なくとも夜間はこんな暗いところ、だれも来ないでしょうし」
 誤魔化すように文は一息に言い切って、出口に顎を向けた。

887清く、正しく ◆AC7PxoR0JU:2013/09/14(土) 09:46:50 ID:zMkLrYeo0
「ま、確かに、ここで得られるものはもうないか。じゃあ、次はエア・サプレーナ島なんてどうだい」
 露伴も実際のところは、ここにはもう用はないと思っていたので、地図を広げながら次の目的地を提案する。
「……どうみても絶海の孤島なんですが」
「だから、いいんじゃないか。今から行けば、ちょうど朝焼けの頃かな。きっと絵になるぜ」
 文が無言で拳を振り上げにじり寄る。

「冗談、冗談だよ! ったく意外と融通がきかないんだな、君は。
 じゃあ、GDS刑務所にしよう。こっちは陸続きだし問題はないだろう」
 焦ったように露伴は目的地の変更を告げた。

「あれ、ポンペイはスルーなさるんですか?」
 拳をおろし地図を目で追う文だが、ここ双頭竜の間からGDS刑務所へ向かう途中
若干コースを外れるとはいえ、ほど近い位置にあるポンペイに目をつけて疑問を口にした。

「ポンペイはイタリア旅行に行った時に何度か見たからな」
 事も無げに露伴が答える。
「こ、この男は……!」
 こめかみを抑えながら、文が呻いた。
「もう、出発するならどこでもいいですよ!」
 そう言いながら、露伴を置いて、さっさと出口をくぐってしまうのだった。




 文が出口より姿を消した後、一人残された露伴は、先ほどまでとは打って変わった冷たい目をして呟いた。
「ヘブンズ・ドアーによる洗脳は完璧だ。今や射命丸文はこの岸辺露伴の手駒、か……」


 --さて、この2人がどうやって出会い、なぜ行動を共にすることになったのか。
 それを知るためには少しばかり時間を戻さなければならない。

888清く、正しく ◆AC7PxoR0JU:2013/09/14(土) 09:47:22 ID:zMkLrYeo0
=================================================
 時間は、およそ一時間ほど前へと遡る。
 場所は同じくB-1エリア、双頭竜の間からは若干北に離れている草地だ。


 それはどちらが先に気づいていたのだろうか。
 岸辺露伴は、正面から歩いてくる山伏帽子を被った少女を視界に入れていた。
 射命丸文は、正面から歩いてくるヘッドバンドを付けた青年を視界に入れていた。

 突発的な遭遇でも、一方的な奇襲でもなく、お互いがお互いを遠目に認識しながら
じっくりと距離を詰める、この殺し合いでは、ある種珍しいとも言える出会い方だった。
 
 どちらも、見ず知らずの相手に襲いかかるような凶暴性を持たなかったため、ゆっくりと歩みを進め
未知の相手から逃げ隠れするような性格をしていなかったため、歩みを止めることもなかった。

 やがて、深夜の月明かりの中でもお互いの姿がはっきりと見える距離まで近づいて、ようやく二人は同時に足を止めた。

「やあ、こんばんは。お互いとんでもないことに巻き込まれたものですね」
 先に声をかけたのは射命丸文だった。
 岸辺露伴は返答せずに、値踏みするように相手を見定めている。

「ああ、申し遅れましたが、私は射命丸 文。見ての通りの新聞記者です。
 ……カメラが無いので格好はつきませんがね」
 文は露伴の反応を気にも留めないようにそう続けた。

「……プッ、新聞記者ね。まあいい、僕は岸辺 露伴 漫画家だ」
 軽い笑いとともに、露伴も自分の紹介と共に声を返した。

「あやや、漫画家の先生でしたか。 なら、露伴先生と呼ばせていただきますね」
 文は露伴の反応には何ら苛立った様子は見せず、若干の愛想が見え隠れする笑顔を浮かべる。

「それで不躾ではありますが、露伴先生はこの殺し合いについて、どうお考えで?」
 文はペラペラとまくし立てる。
「もちろん、この清く正しい射命丸、こんな馬鹿げた殺し合いになんて乗ってませんよ」
 露伴の返事も待たずに、文の口上は続いた。

「そうかい。お互い運が良かったな。 こんな深夜に出くわしたのが殺人鬼じゃあなくって」
「……と仰りますと」
「乗っていない」
 短いやりとりの中で、お互いが殺し合いに否定的だと自称しあった。
 文はパチっと手を軽く叩いて、喜びの表情を見せた。

889清く、正しく ◆AC7PxoR0JU:2013/09/14(土) 09:48:00 ID:zMkLrYeo0
「いやあ、よかった。遠目に見えたのに自信満々に近づいてくるもんだから
 危険人物かとも思って、冷や冷やしてたんですよ」
「じゃあ、早速ですけど、情報交換と行きませんか?
 まず、私の支給品はこの鉄砲でした」
 手を腰の後ろに回し、服の間に入れたと思うと、そこから拳銃を取り出して見せる文。
 鋏を相手に向けるような感じに、銃把ではなく銃口を掴んで見せびらかす。
 あいも変わらず、露伴の返答を待たずに話を進めていた。

 ボールを渡された格好になった露伴が、仕方ないといった感じでエニグマの紙を半開きにし、その中から青みがかった液体の入った一本の瓶を取り出した。
「おや、そいつは……」
「マジックポーションとかいうらしい。説明書によれば魔法の森のキノコから作ったとあるな。
 飲めばたちどころに疲労が回復するらしいが、僕はちょっとばっかり怪しいと思ってる」
 口を開き始めた文を遮るようにして、露伴が取り出した支給品の説明を行う。

「それで、支給品の見せ合いときたら、次は知り合いの情報交換でもするのかい」
 露伴が、間をおかず次の話題を振った。
「頭のいい方が相手だと、話が早くて助かります」
 文がそう言いつつ、拳銃を再び背中の後ろに収納する。
 お互いがそれ以降口を開く事無く、初めて二人の会話が途切れた。


 しばらくの間の後、露伴が軽く鼻を鳴らす。
「まあいい、僕の知り合いは、広瀬康一に、ジョセフ=ジョースター、それから……」
 そうして、露伴が知己の名前と、外見とを上げていく。
「彼らも僕と同じく、まず確実に殺し合いには乗ってないと保証できる」
 全員の名前を上げ終わると、自信を持った様子で露伴はそう断言した。

「……そして、もう一人。吉良吉影という男がいる。
 こいつは今回の件に関係なく、すでに何十人も殺している殺人鬼だ」
「……殺人鬼ですって?」
 今まで質問もなく相槌を打ち続けていた文が、初めて疑問の声を上げた。
「で、その、外見や何かは」
「身長175cm前後、年齢は30歳前後の成人男性だ。顔は済まないがわからない」
「……うーん、他の方と比べて随分と曖昧ですね。その、どうとでも取れる特徴というか」
 返ってきた煮え切らない答えに、文も言葉を濁す。

「まあ、詳しいことは省くが、コイツは一度顔も名前も変えて、僕らの追跡から姿をくらましている。
 なぜここに本名で集められているのかは分からないが、警戒するに越したことはないぜ」
「……なるほど。とにかく吉良吉影は要注意……と」
 文も深くは追求せずに、吉良への言及はそこで終わった。

890清く、正しく ◆AC7PxoR0JU:2013/09/14(土) 09:48:30 ID:zMkLrYeo0
「で、僕からは以上だ。次は君の番だぜ射命丸」
 ようやくしゃべり終えた、と露伴が結ぶ。


「んー、まいったなあ、うん」
 それに対して、文は何かハッキリしないことをモゴモゴと言い始める。

「おいおい、まさか、僕にここまで喋らせといて、自分は何も言わないつもりじゃあないだろうな」
 それが長引くにつれ、ついには露伴が文を相手に凄みはじめる。

「いやいや、もちろん情報は交換したいですよ。
 ただね、実は名簿に載ってた私の知り合いって40人近くになるんです。
 ……露伴先生の6,7人とはちょっと釣り合いが取れないかな、ってね」
 露伴が押してくるのを待っていたかのように文がそう返す。
 
「そっちから持ちかけてきた交渉だろう? ケチ臭いこというなよ」
「この射命丸、情報の価値は誰よりもわかっているつもりです。新聞記者ですからね。
 だからこそ安売りは出来ないのですよ」
 抗議の声を上げる露伴を文が軽く突っぱね、二人の間に緊張が高まり始める。
 
「そこで、ですね。
 先ほど見せてもらったポーションですけど、あれを私に譲ってはくれませんか?」
 その緊張が危険水域に入る2,3歩手前で、文が場違いに明るい声を出した。
「私ってば、実はああいうゲテモノに目がなくてですね。是非とも譲ってほしいなあって」
 そうして、おどけるように続けた。

「……この岸部露伴から支給品を巻き上げる気か」
「いえいえ、巻き上げるだなんて。
 ただ、こんなところで貸し借りなんて作ると、面倒だとは思いませんか」
 思い切り不機嫌そうに睨めつける露伴に対して、文は飄々と返す。

「僕だって同行者がへばってたら、薬の一本や二本ぐらい何も言わずに奢ってやる。
 もちろん、貸し借りなんて言わずにな」
 なおも抗弁するように露伴は言った。

「同行……ですか?」
「お互い乗ってないなら、それもアリだろう」
 不審そうに聞き返してきた文に露伴が返す。

「いえ、どうも私は露伴先生に信用してもらえなかったように思っていたので。
 同行していただけるとは」
「はあ?」
 今までの笑顔とは打って変わって、若干の傷ついた表情を覗かせながら文が言う。
 それに対して、露伴もまた不機嫌そうな表情から一転して、意味がわからないといった顔を見せた。

「殺人犯、追ってるって言いましたよね。
 学生に、学者さんに、ご隠居に、漫画家の先生で」
 確認するように文は言う。

「ちょっと、取り合わせがおかしくないですか?
 どうみても捕物をする組み合わせじゃないです」
 腑に落ちないといった感じで言葉を続け。


「……私や、その知人みたいに特殊な能力を持っていれば別ですが」
 一瞬の溜めの後にそう言うのだった。

891清く、正しく ◆AC7PxoR0JU:2013/09/14(土) 09:48:53 ID:zMkLrYeo0
 
 露伴は音が聞こえそうなほど、奥歯を噛み締め、何も返さない。

「先生の仲間の方々の能力を教えてもらえなかった私は、きっと信頼されてないのでしょう。
 お互いの信頼が無い以上、一緒に行動するのは逆効果。少なくとも私はそう思います」
 そう続けた文が、ついには失望の混じった悲しそうな表情を見せる。

「……なるほど、言いたいことは分かった。しかし、僕に丸腰でこんな危険な会場をうろつけってのか?」
「私、結構目はいいんですけども、実はさっき露伴先生が紙からソイツを取り出してくれた時に
同じ色の瓶がチラリと何本か見えたのです。
 いやいや、もちろん私の見間違いなら、交換なんてやめにしましょう。
 その場合は、先ほど教えていただいたのと同じだけの人数を、適当に名簿から上げてもらえれば
私も同じくお教えします」
「……本当に、そっちの持ってる情報を寄越すんだろうな」
「もちろんですとも。きっかり全員分、能力だってお伝えしますよ」

「わかったよ。だが、これ以上余計な条件を付けるんじゃないぞ」
「ええ、商談成立ですね」
 少し考え込んだ露伴がそう言うと、コロリと打って変わって笑顔に戻った文が、右手を開いて差し出した。
 こうして、露伴の手からマジックポーションの青い瓶が文の手の中に渡った。

 その瞬間。

「ヘブンズ・ドアー!」
 露伴の叫び声とともに、シルクハットを被った少年のような『像』が、露伴から少し距離をとった斜め前
文から見れば視界の隅に入るぐらいの位置に突如として現れる。

 ほんの一瞬、虚を付かれた表情をした文だが、すぐさま手にした瓶から手を離し、空けた右手による貫手を正面の露伴に繰り出す。
 その動作は目にも留まらぬ言った風情で、人間の胴体程度ならあるいは貫手の文字の通りに貫けるのかもしれない速さだった。
 
 しかし、露伴に触れたその手は指先から肘辺りまでが、巻物か何かのように解け、露伴に大した衝撃を与えることもなく力なく垂れ下がる。
 同時に草の上にガラス瓶が転がる音が微かにした。

「な、なんなのこれは………? 手が、紙、に……!?」
 文が自身の右手を見ながら困惑する。

「なかなかに素早い奴だ。 先手を取られていたらヘブンズ・ドアーでも厳しかったかもな」
 一方で余裕綽々といった様子で露伴が言った。
 もっとも、内容とは裏腹に同時の勝負ならば絶対に負けるつもりはない、そう言外に滲ませてはいたが。

「く!」
 焦燥を見せる文の背中から、黒い翼が飛び出し、それと同時に地を蹴り飛び退る。
 しかし、文は宙を舞うことはなく、そのままの勢いで地面に転がり小さな悲鳴を上げた。
 よく見れば、翼の一枚一枚の羽根が短冊のように姿を変えていて、空を飛ぶという本来の目的を達することが出来なかったのだ。
 倒れ伏した文だが、ページの切れ目の見える左腕を崩さぬように慎重に、背から先ほど見せた拳銃を取り出す。

「くそっ、乗ってないんじゃなかったの!?」
 そう毒づきながら、震える腕で拳銃を露伴に向ける。

 しかし、その指が引き金を引く前に、指先を向けてきた『像』--ヘブンズ・ドアーが目に入り、射命丸文の意識は断線するようにブツリと切れた。

892清く、正しく ◆AC7PxoR0JU:2013/09/14(土) 09:49:28 ID:zMkLrYeo0
=================================================
「悪いが『30分ほど意識を失う』と、書き込ませてもらったぜ。
 『岸辺露伴を攻撃できない』でも良かったんだが、それでも厄介なことになりうるのは康一くんの時で体験済みだからな」
 ヘブンズ・ドアーの書き込みによって意識を失った文に語りかけるように露伴は呟く。

「ま、殺し合いに乗っていないのであれば、何も余計なことはしないと約束するよ。 情報は全部頂くがね」
 ニヤリと笑ってそう続けた。
 そう、岸辺露伴は殺し合いには乗っていない。
 彼の「自分が強いと思っている奴にNOと言ってやる」性格は、目下のところ主催者の二人に向けられている。

「しかし、この殺し合いとやらは思ったより厄介だな。
 余計な風評被害を避けるために、ヘブンズドアーを控えることにしたのはいいが
 いきなり、こんな敵だか味方だかハッキリしないやつに出くわすとは……」
 辺りを見回しながら、露伴が独り言を続ける。
 彼としても、ちょうどこのような場面を第三者に見られて、殺し合いに乗っていると誤解されるのは避けたいところだった。
 それ故に、出会い頭にヘブンズドアーで相手を本にするのはやめにしていたのだったが、結果は初遭遇からこのザマである。

 露伴としては、射命丸文という人物について、最初は中学生か、高校に入りたてぐらい小娘が新聞記者を名乗ってきて
ちょっと頭のおかしい奴なのかと思って、特に警戒もせずに笑ってしまう程度の認識だった。

 しかし、出会ってすぐに殺し合いへのスタンス確認から、支給品の見せ合いに移り
特に文が拳銃をこともなげに取り出しはじめた辺りで、早くも相当な違和感を感じ始めていた。
 そう思い警戒し始めていても、気がつけば支給品も、知り合いの情報も出さざるをえない流れにされていた。

 腹いせと、ついでにカマかけとして、仲間の情報からスタンド能力をすっぱり削ってやったと思ったら
今度は情報の価値だとか言い出して、支給品を強請られる羽目になった。
 このまま言い負かされるのも癪に障るので、同行を仄めかせて食い下がってみれば、露伴が自分を信用してないから無理だと言われる始末だった。
 更には、杜王町の仲間のスタンド能力を説明しなかったことを逆手に取られて、露伴が悪いような流れにされてしまったのだ。
 初対面の相手に仲間の能力を告げ口するような真似をするほうがおかしい、そう主張しようにも、女性が傷ついた風にしているだけで
無条件に男のほうが悪いといった空気になっているのを覆せそうもなかった。

「が、最後の最後でちょっとしたミスをしたな。
 ……いくら、支給品と交換とはいえ、40人分の能力を『同行もしない相手』に話しちまうのはちょっとやり過ぎだぜ」
 話すというのが嘘なのかもしれないし、話される内容が嘘なのかもしれない。
 あるいは知人を何とも思ってない危険人物なのかもしれない。
 もちろん、露伴を信用して真実を話す可能性もあるのだろうが、それ以外の可能性が露伴にヘブンズドアーを使わせるには十分な理由になった。
 通常ならば、特に『乗って』いないならば、その可能性だけで攻撃するにはリスクがあまりに大きく、逆に根拠が乏しい状況ではあるが
岸辺露伴のヘブンズドアーならば話は別だ。

 露伴のスタンドであるヘブンズ・ドアーの能力は、相手を『本』に変え、そのページを読むことで相手の情報を得て、逆に書き込む事でその行動を制限できる。

「『今起きた事を忘れる』、と」
 故に、わずか一文を書き込んで、問題は全て解決する。

893清く、正しく ◆AC7PxoR0JU:2013/09/14(土) 09:50:08 ID:zMkLrYeo0

「あとは、コイツがどこまでの悪意を持ったペテン師だったのか、あるいは、僕の疑心暗鬼だったのかを確かめるだけだな」
 そう言って露伴は文の近くに屈み込んだ。

「なになに、名前は『射命丸 文』……偽名は使っていなかったか」
 文の顔の部分からめくれたページに手を伸ばし、露伴はそのプロフィールを読み始める。

「種族……? 何ッ『鴉天狗』だとッ!?
 年齢は、せ、千……! こ、コイツが荒木と太田の言っていた『妖怪』か……!
 確かに背中の翼はスタンドではないようだが……」
 興奮を隠せずと言った様子で、露伴が小さく叫んだ。
 スタンドのような超能力があることだし、杜王町でジョセフ=ジョースターには吸血鬼なる存在がいることもチラリと聞いていた。
 そのため、主催者二人が神だの妖怪だの言い出した時も、まあそんなのもいるのか程度には考えいてた。
 それでも、新たに目にした超常的な概念に露伴の好奇心は激しく疼いた。

(よ、読んでみたい……が、クソッ!)
 口には出さずに露伴が毒づいた。
 いや、息が上がり始めていたため口には出来なかったといったほうが正確か。
 岸辺露伴は驚きや興奮といった原因でなく、スタンドの使用で急速に疲労して、息を上げ始めていた。

(コイツを本にした時は気のせいかとも思ったが、やはりスタンドの使用に凄まじい疲労感があるぞ)
 ヘブンズ・ドアーは本来それほど持続性の悪いスタンドではない。
 しかし、文を本にしている時間が長引くにつれ、そして特に『意識を失う』『今起きた事を忘れる』と書き込んだ際に
普段の使用とは一味違った疲労が襲いかかってきたのだった。
(奴らとしても、僕がヘブンズ・ドアーでわらしべ長者のようにして味方を増やしていく、って展開はお望みじゃないってことか)
 となると主催者により何らかの制限をかけられたと見るのが妥当、露伴はそう結論した。

(しかし、この岸辺露伴がこれほどの『ネタ』を前にして諦めるなど、なんて屈辱だ)
 露伴は、この分量1000年以上におよぶ絶好の新ネタを断腸の思いで諦め、射命丸文のスタンスの確認と、情報の引き出しだけに留めるように決心した。
 そして、苛立ちをぶつけるように乱暴にページを捲り始める。

『この異変を取材する』『文々。新聞もランキングアップ間違いなし!』
『購読者もきっと増える!!』
(こ、この女、正気か? とはいえ、まだ辛うじて『中立』だ……)
 いきなりエキセントリックな出だしで始まったページの内容に露伴は軽く引く。
 もっともその露伴本人も、本にして読んでみれば同じような内容が書かれている可能性が大きいのだが。

『でも殺人事件は記事にしたくない』
(……意外に『シロ』か、射命丸文)
 先の交渉と、直前に読んだ内容から予想外に思いながらも、露伴はほっと息をついた。

894清く、正しく ◆AC7PxoR0JU:2013/09/14(土) 09:50:48 ID:zMkLrYeo0
『荒木と太田の攻撃の正体が判らない』『勝ち目がない』
(くそっ。期待はしていなかったが、コイツもダメか)
 次ページの冒頭、主催者に対する記述を読んで、露伴が心中で吐き捨てる。
 露伴自身も主催者の二人に対しては、ほとんど同じ印象を抱いていただけに
それを打開するアイデアの取っ掛かりすら得られないことに苛立ちを隠しきれない。

 露伴は首を振って、射命丸を『読む』のを再開する。

 そして、主催に対する所感のすぐ下に
『最後の一人になるしかない』『気に喰わないし、気も進まないが、やるしかない』
 と、あるのを露伴の目が拾った。

「いや、『乗って』いたか」
 若干の失望とともに露伴が声に出して呟いた。

 主催者の得体のしれなさも手伝って、今この状況が絶望的なのは明らかだ。
 しかし、その上で殺し合いの打開を目指すのか、そのまま殺し合いに乗ってしまうのか。
 露伴は前者を選んだし、文は後者を選んだという事だった。
 少なくとも根っからの悪人でも、殺人者でもなさそうな内容を垣間見た直後なだけに、露伴には無念さが際立って感じられた。

 振り切るように露伴は次のページを捲る。
 そのページにはつい先程までの出来事が、散文的にまとめられている。

『人間に出会う』『身のこなしを見る限り只の人間か? 油断はするべきではない』
『岸辺露伴、漫画家。利用価値は低そうだ。』『翼は見せていないが、天狗だと気づいていない?』『適当に情報を引き出して放置するか?』
『マジックポーションは是非欲しい。魔理沙から一本くすねて飲んだ事があるが、徹夜明けの体に魔法のように効いた』
『何としてでも手に入れたい。最悪の場合……殺してでも奪いとる』
『殺人鬼に漫画家? どうもきな臭い』『何かの能力を持っている? しかも、警戒されているようだ』『排除しておくべきか』
『吹っ掛けてみたがどうなるか。渡せばよし。これ以上、難航するようなら……』
『モノはせしめたが、まだ何本かあるようだ。別れた後で仕掛けるか』

(クソ、確定的に『クロ』じゃあないか)
 現在に通じる先ほどの交渉の部分を読み終わって、露伴は顔をしかめた。
 少し前にしんみりした気分が台無しだった。
 交渉で上手を取られてヘブンズ・ドアーと言うのは、内心ちょっとばかり大人げない対応かとも思っていたが
蓋を開けてみれば、ヌルい事をやっていたら頭か腹かに風穴を開けられていたかもしれない展開だったとは、さすがの露伴も予想外だ。

(見た目はガキだし、緊急避難ってことで軽めに済ませてやろうとも思ったが、容赦する必要もなくなったな)

 露伴の意により、ヘブンズ・ドアーが接近し、射命丸文に情報を吐かせた後に再起不能とする命令を書き込むべく腕を振り上げる。

 ……が、そこでヘブンズ・ドアーの動きが止まり、露伴本人がチラリと横を見る。
 そこには、二人の争いの発端となった瓶詰めのマジックポーションが転がっていた。
 文も自分が手に入れることを意識に入れていたので、瓶は投げ捨てられるのではなく、そのまま草地に落とされていた。
 それが幸いして割れてはいないようだった。

(思ったより体力には余裕があるし、どうもあのポーションは本物らしい。
 しかも、さっきは射命丸を警戒して1本しか出さなかったが、紙の中には他に3本も残っている。
 ……す、少しくらいなら、読んでも大丈夫なはずだ)
 非常にわかりやすい自分への言い訳をして、露伴は文を読み進めることを続行した。

895清く、正しく ◆AC7PxoR0JU:2013/09/14(土) 09:51:15 ID:zMkLrYeo0
=================================================
(新聞だ。『新聞記者』、『文々。新聞』、『新聞のランキング』、コイツの行動の基準はどうも『新聞』にあるらしい。
 そもそも、なんで天狗が新聞なんかを作るんだ? クソ、好奇心が湧いてきたぞ)
 そうして、露伴は文のページから新聞に関する部分を探し始める。

『天狗の新聞大会の結果発表の日だ! 文々。新聞はまたも選外。次こそは』
 文々。新聞は相当な昔から発行されている天狗の新聞のようだった。
 そして、仲間内で出来を競うランキングでは、あまり評価されていないことが少し読んだだけで露伴にも分かった。
(なるほど、売れない新聞屋か。新聞はどっちかというと生活よりは趣味の類のようだな)

『白狼天狗に取材の手伝いをさせる。忙しそうだが、より重要度の高い私の新聞のためなのだから仕方がない』
『取材対象に追い払われそうになる。しかし、幻想郷最速を活かして付きまとってやる』
『最初は迷惑そうだったが、私の熱意が通じ、ついには快く取材に応じてくれることになった』
 そこからしばらくは文の普段の取材についての記述が並んでいた。
 各方面を通り越して全方面から邪険にされるも、気づいているのか、いないのか。
 ともかく自分本位な行動と、その一方で組織から除外されないように立ち回る狡猾さが目に付いた。

(何だコイツは。酷い取材スタイルだな。
 だんだんムカッ腹が立ってきたぞ。
 僕はこういう自分さえ良ければ他人の迷惑を考えない奴が一番嫌いなんだ)

『原稿が完成! 今回は自信作だ!』
『天狗の集会所で、ゴミ箱に突っ込まれている文々。新聞を見つけた』
(ふん、「ザマミロ&スカッとサワヤカ」の笑いってやつだな)
 若干引きつった笑顔を浮かべながら、露伴は直前の溜飲を下げた。
 
『実は誰一人読んでいないんじゃないかと不安になる。……馬鹿馬鹿しい』
『また、選外。何を書けば、皆認めてくれるのだろう?』
 そして、内容は反省とも愚痴とも付かない内容にシフトする。
 露伴は知らず空いた方の手で喉元を軽く抑える。 

 射命丸文の新聞についての記述は、個別の内容こそ多岐にわたるが、その流れは何十年も単調で
強引な取材と記事へ満足、そして結果に裏切られる、そのサイクルが延々と綴られていた。

896清く、正しく ◆AC7PxoR0JU:2013/09/14(土) 09:51:58 ID:zMkLrYeo0

(……読むんじゃあなかった)
 ヘブンズ・ドアーで、他人の人生を覗き見てから、殆ど初めてに近く露伴は思った。
 本来、岸辺露伴は他人の不幸にそれほど心を動かすタイプの人間ではない。
 しかし、そんな彼がページに書かれた内容に耐えかねたように、小さく呻いた。

 露伴のデビュー作にして、現在まで続く連載作品『ピンクダークの少年』は、その作風から常に賛否両論に晒されてきた。
 とはいえ、賛の部分では概ねが絶賛であったし、読者の絶対数も常に確保してきた。
 それでもなお、16歳からスタンドを手に入れる20歳までの間、露伴は1話を描き終える度に、言い様のない不安を感じ続けてきた。
 来週はだれも読んでくれなくなるんじゃあないか、何を書いていいか分からなくなってやる気が無くなってしまうんじゃないか。
 奇しくも、文のページに書き込まれている内容に非常に相似した不安だった。
 いや、露伴の不安は言ってしまえば、根拠のない被害妄想のようなものだったが、文のそれは露伴の最悪の妄想が現実化したような実体験だ。

 これが文本人の口から出た弱音であれば、露伴も笑い飛ばすなりなんなり出来たのだろう。
 しかし、露伴本人がいつか語ったように、ヘブンズ・ドアーの能力は、インタビューなどでは得られない岸辺露伴が体験したのと同じ100%のリアルさで
彼女の体験を伝えてくる。

 岸辺露伴のヘブンズ・ドアーのその本質は、決して他人を打ち倒す戦闘のためのものでも、他人を意のままに操る洗脳のためものでもなく
おそらくは、自身のその不安から逃れるための『ネタ集め』のための能力なのだろう。
 だとすれば、不安から逃れるための能力で、その不安を追体験してしまうというのは、何という皮肉だろうか。

 せめてもの救いは、文本人が文々。新聞の不振をそれほど深刻には捉えておらず、読むことによる負の感情の伝播がそれほど存在しない事だった。

 ページをめくることは、いつしか自身のトラウマを抉る苦行へと変わっていたが、露伴は半ば意地になって最後を目指す。
 やがて、書かれている内容に若干の違いが見え始めた。
『人間を相手にしてみたら意外に好評だ』『弾幕を特集してみたところこれも好評』
『人里のカフェに置いてもらえることになった』
 露伴には詳細はわからなかったが、『命名決闘が制定された』らしい辺りから
文々。新聞にも明るい内容が増えてきたのが見て取れた。
 やがて、ページに書かれる内容が、この殺し合いに追いついた。読み終えたのだ。

 正直、最後の方にだいぶ救われた心境で、露伴は文を読むこと自体をやめる。

 そうして、露伴は中空に浮かぶピンクダークの少年--ヘブンズ・ドアーを仰ぎ見た。
 ふと、このまま再起不能にするのなら、射命丸文は二度と新聞が作れないのだろうな、と当たり前の結果が露伴の頭をよぎった。
 そして、どれだけ長いのか知らない妖怪の余生を、廃人のようにして過ごすのだろうかと思った。
 
 そう想像しただけで、少し前には考えても見なかったような罪悪感が露伴を襲った。

「じ、自業自得だ……!」
 そう、言い訳でもするように、誰にともなく宣言するが、どうしても射命丸文を再起不能にしようする気力が湧いてこない。

 そのまましばらくの時間が過ぎ、露伴は息を整えるためか、別の目的かで、何度か深呼吸をする。

 そして、射命丸文を見据えて、自らのスタンドの名前を叫んだ。

897清く、正しく ◆AC7PxoR0JU:2013/09/14(土) 09:52:25 ID:zMkLrYeo0
=================================================
 時間は戻り、双頭竜の間。

 この物語の冒頭からも明らかなように、結局のところ、岸辺露伴は射命丸文を再起不能にしてはいなかった。
 『自分だけは生き残る』という記述を『皆で生き残る』に、そして『この異変の取材をする』を
『この異変を岸辺露伴とともに取材する』に書き換えるのが、あの場で行った全てだった。

 あの後、露伴はマジックポーションを半信半疑で飲み干してみて、本当に疲労が回復したことに驚いた。
 そうしてすぐに、ヘブンズ・ドアーに攻撃された記憶を持たない文が意識を取り戻し、共に最も近い施設である
ここ双頭竜の間の探索に乗り出した。
 施設自体には有用な情報や、利用可能な物品も、他の参加者も存在せず、探索はほぼ完全な空振りに終わったが
その分、今度はしっかりと腹を割ってお互いの情報を交換することに集中できた。
 そうして、ついでとばかりにこの施設をスケッチし始めた部分につながるというわけである。

(らしくない同情でもしたのか、岸辺露伴?)
 文が先に出て行き、完全に近い暗闇となった空間で声に出さず露伴は自問した。
 後の事を考えれば、それほど積極的ではないとはいえ明確に殺し合いに乗っている射命丸文は
やはりあの場で再起不能にするべきだったのではないか、というのが時間が経ち冷静になった後の露伴の考えだ。

 岸辺露伴は、かつての杜王町で虹村億泰に『焼身自殺をする』という命令を書き込んだことがある。
 しかし、その時は、東方仗助のクレイジーダイヤモンドに殴られたダメージで命令が解除される結果に終わっている。
 それに従うならば、自分が死ぬなり大ダメージを負うなりした場合には、殺人者が一人解き放たれることになるのだ。
 この場で射命丸文の命か人生かを救ったのだと、単純には考えられない状況だ。

(いや違う。僕のヘブンズ・ドアーに足りないのは直接的な防御能力だ。
 妖怪としての身体能力と、風を操る程度の能力を持つ射命丸文を、護衛にしたのは決して無駄でも間違いでもないはずだ)

 露伴はそう、自分に言い聞かせながら、先に進んだ文を追って、双頭竜の間を後にする。

 露伴はふと、文への処遇は彼が重視するリアリティを台無しにする行為であるにもかかわらず、そのことをあまり重要視していない自分に気づいた。
 殺人事件は記事にしたくない、そう考えていた文は、何かの取り合わせ次第で主催者に反抗する側になっていた可能性もあるのではないか。
 だからこれはそれほどの改変ではないのではないか、今の露伴はそう思っているのだった。

 それが、正しい直感なのか、あるいは自らの弱さから目を逸らすための言い訳なのか。
 露伴本人にすらわからないことだった。

898清く、正しく ◆AC7PxoR0JU:2013/09/14(土) 09:54:05 ID:zMkLrYeo0
【B-1 双頭竜の間/黎明】

【岸部露伴@第4部 ダイヤモンドは砕けない】
[状態]:疲労(小)
[装備]:マジックポーション×3
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:情報を集めての主催者の打倒
1:施設を巡って情報集め、人集め。
2:ついでにマンガの取材。
3:GDS刑務所へ向かう
4:射命丸に奇妙な共感

[備考]
※参戦時期は吉良吉影を一度取り逃がした後です。
※ヘブンズ・ドアーは相手を本にしている時の持続力が低下し
※命令の書き込みにより多くのスタンドパワーを使用するようになっています。
※射命丸文より幻想郷および住人の情報得ています。
※支給品(現実)の有無は後にお任せします

【射命丸文@東方風神録】
[状態]:健康、ヘブンズ・ドアーによる洗脳
[装備]:拳銃
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:今回の異変を取材しつつも、自分は生き残る
→基本行動方針(改竄):今回の異変を岸辺露伴と取材しつつも、皆で生き残る
1:カメラが欲しい。
2:私も取材がしたい。
3:GDS刑務所に向かう。

[備考]
※参戦時期は東方神霊廟以降です。
※ヘブンズ・ドアーの洗脳下にあります。
※岸辺露伴より杜王町のスタンド使いの情報を得ています。
※支給品(現実)の有無は後にお任せします



[支給品]
<マジックポーション@東方非想天則>
岸辺露伴に支給。
元ゲームでは霊力回復と一定時間の無制限使用が効果だが
本作では霊力・疲労などの1段階回復になっている。
4つセットで支給されていた。

[支給品]
<大統領の拳銃@第7部 スティール・ボール・ラン>
射命丸文に支給。
スティール・ボール・ラン終盤にて、ヴァレンタイン大統領が使用した拳銃。
リボルバー式で、装弾数は6発。支給時点ではフル装填状態。
同時支給された予備弾は12発である。

射命丸文は、説明書に『隠し持てる』との記述があるため、律儀に隠し持って使っている。

899 ◆AC7PxoR0JU:2013/09/14(土) 09:54:48 ID:zMkLrYeo0
以上、投下終了です。

文の翼は公式だと有るのか無いのかハッキリしないので
収納式っぽいイメージにしてしまいました。
ヘブンズ・ドアーの制限ともども、問題がありそうなら指摘お願いします。

900名無しさん:2013/09/14(土) 10:06:09 ID:MGsK34r60
殺伐としてると思いきや和むような感じもあるがやっぱり殺伐としてると見せかけてちょっと不安になる

901名無しさん:2013/09/14(土) 11:51:52 ID:6iKDE23Q0
投下乙です!
やっぱりヘブンズ・ドアーは強いなww
露伴先生は相変わらず奔放ながら、何だかんだで同じような境遇の相手には共感するんだなぁ…

902 ◆YF//rpC0lk:2013/09/14(土) 21:16:28 ID:K3BJSHPg0
乙です
そうか、露伴先生は漫画を読んでもらうために書いてるから、
誰にも読まれないってのはすごく怖い事なんだよな……

>僕はこういう自分さえ良ければ他人の迷惑を考えない奴が一番嫌いなんだ
おまえが言うな

903名無しさん:2013/09/14(土) 21:27:30 ID:0W488w8UO
投下乙!
鴉天狗に速さで勝つ露伴先生はやっぱり強かった。あややがボロ雑巾にならないことを切に祈る
しかし文ですら「主催の打倒」が念頭にあるのに、徹底して「取材」のみを目的としてるはたての異色さとブレなさ加減は今のとこ最強な気がする

904名無しさん:2013/09/15(日) 12:48:49 ID:1Wc4Hn6c0
そういや月報かな?一応まとめ

話数(前期比) 生存者(前期比) 生存率(前期比)
35話(+24)  86/90 (-3)  95.6 (-3.3)

間違ってたら申し訳無いですorz

905名無しさん:2013/09/15(日) 12:49:29 ID:1Wc4Hn6c0
一応age

906 ◆YR7i2glCpA:2013/09/15(日) 19:49:58 ID:mdSmXaE.0
橙、ジョセフ・ジョースター予約します。

907名無しさん:2013/09/15(日) 23:02:04 ID:12jHw4BM0
橙の受難が始まる…!

908名無しさん:2013/09/15(日) 23:16:27 ID:7t1tl0fM0
>>907
受難って決めつけてやるなよww

909名無しさん:2013/09/16(月) 00:17:05 ID:i0PsoZ/E0
橙の受精が始まる…!

910名無しさん:2013/09/16(月) 00:22:28 ID:Pkoh98vw0
>>909
受精って種付けてやるなよww

911名無しさん:2013/09/16(月) 00:32:21 ID:B7Mw/tPg0
えっちなのはいけないと思います(震え声)
あとジョジョ東方ロワ月報1位おめでとう!

912名無しさん:2013/09/16(月) 01:00:29 ID:0B5TUlYQ0
>>909
何てことだ、仗助の母親は外見ロリの化け猫だったのか……!

913名無しさん:2013/09/16(月) 01:07:24 ID:B7Mw/tPg0
俺が死んだ藍ばあさんに代わって守りますよ…おふくろと幻想郷を…

914名無しさん:2013/09/16(月) 04:24:37 ID:X4JkQG.gO
紫の方がばあさんじゃ(このコメントはスキマに送られました

915名無しさん:2013/09/16(月) 10:44:24 ID:lwCtexaM0
俺が死んだ紫ばあさんに代わって守りますよ…おふくろ(藍)と幻想郷を…

916名無しさん:2013/09/16(月) 11:27:50 ID:gMW/kVNo0
>>914-915
紫「私の歳がなんだって?」プッツゥーン

917名無しさん:2013/09/16(月) 11:47:21 ID:JZQnW1k20
お前は次に「紫ちゃんかわいい」と書く!

918名無しさん:2013/09/16(月) 12:06:12 ID:B7Mw/tPg0
紫ちゃんかわいい…ハッ!?

919名無しさん:2013/09/16(月) 12:11:14 ID:lwCtexaM0
紫ちゃんかわいい…は?

920名無しさん:2013/09/16(月) 12:37:29 ID:B7Mw/tPg0
まとめwiki覗いたけどしたらば出来てるのね

921 ◆YF//rpC0lk:2013/09/16(月) 12:46:48 ID:q/TV4A1g0
>>920
報告遅れましたが、したらば掲示板建てました
好きなように使ってください

922名無しさん:2013/09/16(月) 12:57:23 ID:JZQnW1k20
やったッ!!さすが◆YF//rpC0lk!おれたちにできない事を平然とやってのけるッ!そこにシビれる!あこがれるゥ!

923名無しさん:2013/09/16(月) 19:07:35 ID:0aBB1/PU0
乙ですッ!

924 ◆BYQTTBZ5rg:2013/09/16(月) 22:08:04 ID:514Fuf7k0
投下します

925輝夜物語 ◆BYQTTBZ5rg:2013/09/16(月) 22:10:01 ID:514Fuf7k0
かたち清らなること世になく、家の内は暗き處なく光滿ちたり。


輝くほどの美貌であった。腰より長い髪は鴉の濡れ羽色。眉は柳。目は鈴を張り、唇は濡れ艶の真紅。そして肌は抜けるような白に白磁の手触り。
蓬莱山輝夜は自らの美しさを天蓋より降り注ぐ月の光に遍く照らし出し、それをひけらかす様にその場をくるりと回った。


「私、やりたい事が見つかったわ」


輝夜は嬉しそうに、口から鈴のような音を転がしていく。


「この異変を解決する。ようやく私の居場所となった幻想郷の一員として、私は皆を助けるの!」


敵は強大である。難題を出す暇もなく輝夜を連れ去り、彼女が絶対の信頼を寄せる八意永琳すらも拉致に成功している。
そしてあろうことか、不死である蓬莱人――蓬莱山輝夜に死を強要してきているのだ。
それは最早、月の叡智を越えたと言って等しい。そんな相手に一体どんな手が有効なのか皆目検討もつかない。
不死に胡坐をかいて馬齢を重ねた輝夜だからと言えばそれまでだが、それでも彼女の永遠と須臾を操る能力を歯牙にもかけない敵の力の大きさは、明白な事実として残る。


だけど、それがどうしたことだろうか。かつて数多の人間が挑み、敗れ去った五つの難題。それは不可能の代名詞にすらなった。
だが、それを鮮やかに解き、輝夜の手を見事に取った者達がいたではないか。人間と妖怪。彼ら種族が異なる者達が手を組み、輝夜を前にして奇跡を成し遂げたのだ。
それは輝夜にとって、眩しきものだった。思わず羨んでしまう程の輝かしい光景だった。だからこそ、輝夜の顔からは笑みを零れてしまう。


今度は自分がそれを体現する番だから、と。確かにこの異変を解決するというのは、とても不可能なことであろう。まさしくそれは難題だ。
でもあの日、永遠の夜が終わりを告げた時のように、不可能は可能となるのだ。難題は解かれるのだ。それこそが人間と手を取り合うことによって成される奇跡。
輝夜はその煌くような未来を手に入れるため、今こそ人間達のいる地上へしっかりと足を下ろした。


「というわけで、その第一歩。いざ、支給品の確認〜♪」


先の意気込みはどこへやら、輝夜は暢気にエニグマの紙を掲げた。
地図、コンパス、照明器具、筆記用具、水、食料、名簿、時計といった基本支給品を一通り確かめると、いよいよお待ちかねのランダムアイテムの登場である。


「さて、取り出したるは〜、アラビア・ファッツのマジック・ミラー号!」


エニグマの紙に書かれていた名前を高々と呼び上げ、紙を開く。
そこから出てきたのは、何ともおかしな改造車であった。二畳ほど広さの床に四輪を付けた車とも言えぬ車。
二辺にはカーテン、もう二辺には壁となるマジックミラーが取り付けられ、外側が鏡で内側からは外の景色が見れるようになっている。
面白いのは床の上にはリクライニングシート、冷蔵庫、オーブンレンジ、エアコンがあることだろうか。
更に冷蔵庫にはお菓子、ジュース、ピザがデブの飢えを満たす程に入っており、ちょっとした生活すら出来そうだ。
輝夜はそれらを確認すると、さも当然のように早速お菓子とジュースを口に運んでいった。

926輝夜物語 ◆BYQTTBZ5rg:2013/09/16(月) 22:10:49 ID:514Fuf7k0
「って、美味しい」


もしかしたら毒が入っているかもと警戒していたが、舌に訴えかけるのは甘みと幸福感だけであった。
後々の不和の種にも成りかねない大切な食料に毒が入っていては、それこそ殺し合いを加速させかねない。
故に蓬莱人である自分が早急にその危険性を排除せねばと思っていたが、どうやら輝夜の心配は杞憂のようだった。
これ以上食料を漁る必要はないみたいだが、折角開封したのだからと、輝夜はポッキーを小さな口で啄ばみながら、最後の支給品を取り出す。


「続きましては〜、黄金期の少年ジャンプ一年分!」


エニグマの紙を開いた途端、滝のように冊子が輝夜の足元に流れ込んできた。慌てて紙を閉じた彼女は一冊のジャンプを取り上げ、それを仔細に検分する。


「これは漫画かしら? 殺し合いには不向きのように思えるけれど、わざわざこんなにも集めて配るものだし、何か意味があるのよね」


そう思った輝夜はリクライニングに深く腰掛け、時折コーラで喉を潤しながら、ぺらりぺらりとページをめくっていく。


「……ふむ」



ぺらり     ぺらり



「特徴的な絵柄ね」



ぺらり     ぺらり



「…………フフっ」



ぺらり     ぺらり





      ――
 
   ――――

     ――――――――





ピザの最後の一切れを口にほうばった輝夜は油に塗れた口と手を備え付けのティッシュで拭き取ると、次の号のジャンプを読むべく積み上げられた本の山に手を伸ばした。


「……って、ない! 何で次のジャンプがないのよ! これじゃあ生殺しじゃない! 荒木と太田の奴〜〜!! 配るのなら最後まで配りなさいよ!!」


思わず文句が口から出てしまう。折角、一から全てのジャンプを読んだのに、それが途中で切れてしまっていては、あまりに無慈悲というものだ。
さて、荒木と太田の二人をどうしてやろうか。そんなことを考えていた輝夜は、ふとあることに気が付いた。今はあの二人に嵌められて、バトルロワイアルの真っ最中である、と。
慌てて輝夜は警戒心を跳ね上げ、周囲を見渡す。そして愕然とした。さっきまであったはずの月の光りが根こそぎ取り払われ、今は眩しいくらいの太陽の光が空から燦々と降り注いでいたのだ。


「えっ!? え、今何時!?」


時計を見ると、とうに六時を過ぎて回っていた。その馬鹿げた現実にさっきまで快活であった輝夜の顔から血の気が失せていく。


「え〜と、確か六時間ごとにあいつらは放送をするって言っていたわよね。その時に死んだ人の名前や禁止エリアも発表するって……」


どれだけ記憶を掘り起こしても、そんなものを耳に入れた事実が湧いてこない。一体どれほど自分はジャンプに夢中になっていたのだろうか。
ジャンプを全て読破して、殺し合いについて得たものがゼロであったことを考えると、自らの情けなさが最早痛みとなって心を抉ってくる。

927輝夜物語 ◆BYQTTBZ5rg:2013/09/16(月) 22:11:46 ID:514Fuf7k0
「永琳は……大丈夫よね? イナバたちは……分からない。いえ、きっと生きている筈。そうよね? っていうか、もうこの異変は解決されてたりとかしないわよね?」


情報量の少なさに疑問がひしめいて止まない。しかし、ここで頭を抱え込んでも答えなど分かるはずもないということは、輝夜にはすぐに理解できた。
ならば、行動あるのみである。今までの遅れを取り戻そうと、輝夜はアラビア・ファッツのマジック・ミラー号のアクセルを、一気に限界までに押し込んだ。
たちまちエンジンは唸り声を上げて、タイヤを高速に回転させる。しかし悲しいかな、その疾風の如き疾走は僅か数メートルで終わってしまった。
そびえ立つ竹にマジック・ミラー号の車体が、鈍い音と共にぶつかってしまったのだ。


「ああ! もう何なのよッ!」


答えは簡単。輝夜がいる竹林ではマジック・ミラー号が走れるほどの広さがなかったのである。
先を急ぐ余り、そんな簡単なことに気がつけなかった自分が腹立たしくなる。車を降りた輝夜は怒りと共にマジック・ミラー号を蹴り上げた。
それによって先の事故で鏡の部分に出来たヒビが更に広がってしまったことに気が付いた輝夜は、いよいよ自分に嫌気が差してくる。


「落ち着いて。きっと皆はまだ生きている。この異変だって、ちゃんと私が解決する。うん、そして私は漫画家になるの」


負の連鎖を断つべく、輝夜は深呼吸をして自らの気持ちを整えた。依然と焦燥とした気持ちがあるが、目的を見誤らない程度の冷静さは取り戻した。
輝夜はマジック・ミラー号をエニグマの紙に戻し、次なる行動に移す。途中で山となったジャンプが目に付いたが、それを再び紙に戻すのはどう考えても手間だ。
確かにジャンプには夢中になるほどの面白さがあったが、この段になっては最早時間より貴重なものは存在しない。
輝夜は断腸の想いでジャンプと決別すると、他の参加者を求めて、その場を勢いよく駆け出した。




【C-5 竹林/朝】
【蓬莱山輝夜@東方永夜抄】
[状態]:健康、焦燥
[装備]:A.FのM.M号@第3部
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:皆と協力して異変を解決する
1:他の参加者を探す
[備考] 
参戦時期は東方儚月抄終了後です
第一回放送を聞き逃しました
A.FのM.M号にあった食料の1/3は輝夜が消費しました
A.FのM.M号の鏡の部分にヒビが入っています
支給された少年ジャンプは全て読破しました
黄金期の少年ジャンプ一年分はC-5 竹林に山積みとなっています


<アラビア・ファッツのマジック・ミラー号>
タロットの大アルカナ19番目のカード「太陽」を示すスタンド使い、アラビア・ファッツが乗っていた改造車。
二辺をカーテン、もう二辺を壁となるマジックミラーで覆った一つの部屋とも言うべき仕様。
その中にはリクライニングシート、冷蔵庫、オーブンレンジ、エアコン、そしてデブの飢えを満たす程の食料がある。
燃料や駆動方式は不明だが、砂漠を渡るだけの走破性と燃費の良さを併せもつ。反面、その形状からして旋回性能は低く、スピードは出ないと思われる。
また原作でジョースター一行を欺いたように、魔窟と化した竹林で誰にも気づかれることのない脅威のステルス性能を持っている。


<黄金期の少年ジャンプ一年分>
一時代を築いた週刊少年漫画の一年分。
殺し合いの中で時間経過を忘れさせるほどの魅力を持った魔性の本。また輝夜に漫画家になろうと思わせるほどの面白さも秘めている。
黄金期のジャンプゆえ、当然あの漫画も連載されている。

928 ◆BYQTTBZ5rg:2013/09/16(月) 22:12:31 ID:514Fuf7k0
以上です

929名無しさん:2013/09/16(月) 22:13:02 ID:B7Mw/tPg0
投下乙です!
何やってんだ輝夜wwwwww

930名無しさん:2013/09/16(月) 22:21:37 ID:ps2fne8.0
登場話放送超とは今や懐かしくて新鮮にさえ思えてくるwww
確かに読みふけっちゃうのも分かるし、そりゃその車は原作でも意外と快適と言われてたけど
ダメだろwww

931名無しさん:2013/09/16(月) 22:22:07 ID:ps2fne8.0
あ、作品が、じゃなくて、姫様がだめだこいつ、って意味のダメだろだからねw

932 ◆YF//rpC0lk:2013/09/16(月) 22:25:32 ID:q/TV4A1g0
乙です
つまりこれはエシディシと死闘を繰り広げた妹紅や、
ディアボロに恐れおののく鈴仙が姫様の横を通り過ぎて行ったって事に……
うん、運命って酷いww

933名無しさん:2013/09/16(月) 23:44:54 ID:wiEOFMpo0
あっ!この人無害な一般人ぶってるけど変態殺人鬼で救急車に敷かれて死ぬのよねぇーとかなるのかな
4部ラストは黄金期からチトそれてるかなぁ?

934名無しさん:2013/09/16(月) 23:49:59 ID:B7Mw/tPg0
>黄金期のジャンプ
これにジョジョが掲載されてたとしたらジョジョサイドの情報知ることできるんだよね
実際主催者に荒木先生いるから故意にそうゆう意図込めてそうだけど…w

935 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/16(月) 23:54:09 ID:Pkoh98vw0
黄金期っつったら、3部くらいかねぇ?

936 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/17(火) 00:08:10 ID:Sc.Djkec0
◆YF//rpC0lkさん、遅ればせながらしたらば作成乙です。
死者スレでは拙作の内容にちょっと触れてくれていたみたいで、嬉しいw

それでは>>756の予約作品を投下します。

937 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/17(火) 00:08:49 ID:Sc.Djkec0
霧深き湖のほとりに、黒騎士が一人。
甲冑に身を包む鍛えあげられた肉体と、そよ風になびく長髪の黒いシルエットだけが、
月明かりに白く輝く霧のスクリーンに写り込んでいた。

「KUWAAAAAA・・・・・」

黒騎士……屍生人・ブラフォードが『ルール説明』に次いで飛ばされた先は、
C−3エリア中央部・『霧の湖』の北岸であった。

「確かに俺は、あの若者の山吹色の拳を受けて吹き飛ばされたはず……」

その瞬間の太陽の輝き、あの男の拳から伝わる分厚い鉄の扉につぶてをぶつけたような振動音、
そして痛覚が失せたハズのこの体に蘇っていた『痛み』は、彼の記憶にはっきりと残っている。
彼が傷口から広がる痛みに耐え、『二度目の死』を覚悟の上で最期の反撃のために剣を掴み、
立ち上がろうとしていた時、気付いたらブラフォードは『ここにいた』。
『山吹色の拳』による傷も、それ以前の攻防によって失った右腕も、額の傷も、元通りに治っていた。

「これは、まるで……」

これはまるで、処刑場から300年の時を経て新たな主、ディオ・ブランドーに蘇らされた時の様だ。
そして、『ルール説明』の会場で言いつけられたのは、90人から最後の一人が残るまで続けられる殺し合い。
これはまるで、ブラフォードとその盟友・タルカスが乗り越えた『77の輝輪』の試練の様だ。

938 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/17(火) 00:09:16 ID:Sc.Djkec0
「では、俺は……あの時再び死んだというのか?
 ……そしてこの『遊戯(ゲーム)』とやらの為に、三度生き返されたと、そういう訳か?
 ……何の為に?」

そうだ、『77の輝輪』とこの殺し合い、似ているようで全く性格が違う。
『77の輝輪』は勇者を志す者が死を賭して挑む、神聖な試練だ。
志願した騎士が、一対一で正々堂々と77人の相手を打ち倒す戦いなのだ。
本人の意志を無視して参加を強制し、不意討ち、だまし討ち、
何でもアリのこのゲームに、一体何の意味がある?

「このカバンの中の参加者名簿には……俺と、ディオ様、我が盟友タルカス、
 そして……あの若者、ジョナサン・ジョースターの名があった。
 ……我らはともかく、あの者もどこかで死に、屍生人として再び生き返されたということか?」

一向に状況が判らぬ。だが、騎士の定めは、戦うこと。
『あの時』の光は、まだ俺の全身を焼きつくしてはいなかった。
そして、俺は戦意を失ってはいなかった。決着は未だ着かず。
ならば、俺のまず為すべき事は……ジョナサン・ジョースターとの決着、
そして、我が主・DIO様をお守りすることだ。

939 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/17(火) 00:09:37 ID:Sc.Djkec0
「……刀か」

決意を固めたブラフォードがカバンから取り出した紙を開くと、
現れたのは『楼観剣(ロウカンケン)』と名付けられた長刀だった。
柄尻に白い房が、鞘の先には一輪の花が、それぞれ飾り付けられている。
鞘を抜くと、緩やかな曲線を描く刀身が現れた。
月に向かって掲げると、霧に濡れた切っ先が微かに光を放っている……様に見えた。
見慣れぬ造りの刀剣だが、剣と共に生きてきたブラフォードには一目で判った。
この刀は、我が『Luckの剣』にも劣らぬ名剣である事、そしてその使い手が中々の腕の持ち主であろうという事が。
ついでに言えば……使い手は『女』であろうとも推測していた。

「『女』だろうな……鞘に花など飾り付けるのは」

そうつぶやいた時のことである。ブラフォードは背後から忍び寄る気配に気付いたのだった。
楼観剣を構え、振り返るブラフォード。
茂みを揺らしながら現れたのは……

「にゃーん♪」

「……黒猫、か。シッ!あっちへ行けッ。
 ……猫など斬って何になる。
 気のせいか、尻尾が2本あった気がするが……まあ良い」

ブラフォードの威嚇の前に、黒猫はあっさり退散した。
そして湖から背を向けた所に見えていた洋館に歩を進めようとしたブラフォードだったが……

940 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/17(火) 00:10:10 ID:Sc.Djkec0
「きさま……屍生人だな?」

今度は頭にバンダナを巻いた、金髪の青年に呼び止められたのだった。

「いかにも。おれの名はブラフォード。
 私に新たな生命を与えて下さったディオ様に仕える騎士だ」

振り返ったブラフォードがそう答えると、目の前の青年の目が見開かれる。

「……ママミーヤ……!……では、俺も名乗ろう。俺の名はシーザー・アントニオ・ツェペリ。
 我が祖父の仇・タルカスと違って、きさまは最期に人の心を取り戻して死んでいったらしいが……。
 ここで再び屍生人として蘇ったというのなら!もう一度俺の『波紋』で、救ってやる!」

その青年の名は、ブラフォードにとっても馴染みのある名であった。

「ツェペリ……!あの若者・ジョナサンの師の血統か!相手にとって不足はないィ!」

言い終える前に、ブラフォードは楼観剣を抜き、駆け出していた。
波紋の呼吸を練り、しゃがんだ姿勢から飛び掛かるシーザーを迎え撃たんとする為に。

941 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/17(火) 00:10:30 ID:Sc.Djkec0
「行くぞッ!波紋カッター!!」

軽快な破裂音と共に、シーザーの口から銀色の尾を引くコイン状の物体が吐き出された。
シーザーの祖父・ウィルも得意としていた得意とした波紋呼吸の応用技だ。
波紋戦士の驚異的な肺活量と波紋の呼吸は、ただの水をナイフをも切り裂く鋭い刃に変えたのだ。
甲高い風切り音を発しながらブラフォードに飛来する『波紋カッター』。

「ぬううううっ!!」

だが、ブラフォードは右手の楼観剣で飛来するカッターを打ち払ってゆく。
妖怪が鍛えた幽霊数十匹分の殺傷力を持つ名刀・楼観剣はただのナイフとはモノが違う。
そして、それを振るうブラフォードの腕前もまた一流。

「ならば!これなら、どうだッ!」

942 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/17(火) 00:10:53 ID:Sc.Djkec0
飛び掛かる勢いそのままに、シーザーの放つ次の一手。
デイパックから取り出したのは全ての参加者に配られた支給品、飲料水の入ったペットボトルだ。
シーザーはボトルの口をブラフォードに向けると、底を拳で思い切り打ち付けたのだ。

「青緑色の波紋疾走(ターコイズブルー・オーバードライブ)!!」

シーザーの拳を受けたボトルは底から一気に潰れ、ボトルの口から勢い良く噴き出した。
青白く輝く水が、レーザー光線の様にブラフォードに襲い掛かる。
だが、ブラフォード、それをかわさない。

「URYYYYAAAAHHHH!」

刀を大上段に構え、そして雄叫びとともに振り下ろす。
屍生人の贅力とブラフォード自身の技量、そして楼観剣の斬れ味でもって放たれた斬撃は、
滝の流れを断つがごとく、波紋の『銃撃』をも真っ二つに切り裂いたのだった。
斬撃の余波はシーザーにまで届き、頬に赤い線が入る。

「くっ……話に聞く通りだ、ただの屍生人ではない……手強い!」
「フフフ、きさま……こちらの懐に飛び込んでおいてそんな悠長な事を言っておれるのか?」

ブラフォードの不敵な微笑み、その輪郭が黒い闇の中に浮き出ている。
辺りは満月。こんなに暗くは無いはず……違う、髪だッ!
ブラフォードの髪が、飛び込んできたシーザーの四方を包囲していたのだ。

943 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/17(火) 00:11:13 ID:Sc.Djkec0
「うっ、うおおおおっ!!」
「もう遅いィ!このまま『波紋』とやらを使う暇も与えず、仕留めるッ!」

シーザーの全周囲から一斉にザワザワと迫る、ブラフォードの黒髪。
抵抗の暇を与えず、シーザーの全身をがんじがらめにして、そのまま地面に縫い付けたのであった。
伸縮自在の髪が、血を吸いながら、シーザーの肉体に鋭く食い込んでゆく。

「このまま一思いに首をハネてやれば、きさまをこれ以上苦しませずに済むし
 おれも首からあふれる血を一気に飲むことができるが……。
 トドメを刺しに近寄れば『あの時』の様に反撃を受けるかも知れぬ」

波紋の呼吸を練り、必死に髪を振りほどこうとするシーザー。
だが波紋は手足や口など、身体の末端から放つことで初めて攻撃力を生む技術。
手足を胴体に縛り付けられ、口をも封じられた今、シーザーに戦う術は残されていない。

「このまま息絶えるまで絞め上げるか、干からびるまで血を吸うか……
 どちらにせよ少々気の毒だが、しばらく苦しんでから死んでもらうぞ」

もはやこれまでか。命運尽きた事を悟ったかのようにシーザーはもがく動きを止め、大地に横たわった。

944 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/17(火) 00:11:30 ID:Sc.Djkec0
「……諦めたか?もう少し骨のある男かと思ったが……
 いずれにせよこのまま血を吸い尽くして、われらと同じDIO様のしもべにしてやると……
 ムッ!?」

ブラフォードは驚愕する。
シーザーが横たわった姿勢のままでこちらに向かって足を向け、跳んできたのだ!
奴の身体を縛り上げていたはずの髪の拘束が……解かれている!

(明らかに『波紋』を使った動き!何故だッ!?『波紋』は確かにこの髪で封じたはず!
 いつの間に!四肢を縛られた状態から、どうやって!?)

白楼剣を構え、キリモミ回転で迫るシーザーを迎撃せんとするブラフォード、
疑問の答えはすぐに見つかった!
剣を握る右手に、腕に、肩に、矢のように突き刺さる『痛み』!

945 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/17(火) 00:11:51 ID:Sc.Djkec0
「これは……『ミツバチ』!!
 この痛み、『波紋』を仕込まれているのか!
 そしてこの『波紋ミツバチ』で、おれの髪を噛みちぎったのか!」

波紋を帯びたミツバチが十数匹、ブラフォードの腕に喰らいついている。
そのダメージは微小ながら、ブラフォードの剣捌きを一瞬鈍らせるには十分だった。
そしてその一瞬は、シーザーが間合いを詰め、直接攻撃を叩き込むのに十分な時間だった。

「『波紋蹴り』を喰らえッ!」

「UGYYYAAAAAAAHHHH!!」

ブラフォードの左腕・左足にシーザー渾身の波紋蹴りの連打が直撃した。
大きく後方に吹っ飛ばされるブラフォード。
なおも追撃の為に駆け寄るシーザー。

「勝った!とどめだっ!!」

946 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/17(火) 00:12:21 ID:Sc.Djkec0
だが、そのシーザーの足元に、突如一匹の黒猫が駆け出してきた。
全身の毛を逆立て、シーザーを威嚇する黒猫。
眼中に無いとばかりにその黒猫の頭上を飛び越えようとしたシーザーの全身を、
突如、青白い炎が包んだ!

「う……うおおおっ!」

ジャケット、マフラー、手袋、シーザーの全身を包む衣服から、一斉に立ち上る炎。
呼吸が、できない。一息でも吸い込もうとすれば、口から肺まで、大火傷を負ってしまう。
それは波紋を練ることができないということを意味していた。

(呼吸が……!火を……消さなければ!!)

やむなくブラフォードへの追撃を中止し、消火のため湖に飛び込む事を余儀なくされたシーザー。
そして、波紋の呼吸を整え直して湖の水面に立ち上がったとき、黒猫の姿はどこにもなく、
ブラフォードは赤毛の少女の引く荷車で猛スピードで運び去られてゆくところであった。

947 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/17(火) 00:12:57 ID:Sc.Djkec0
「火炎を操る猫を連れた女の子……仲間がいたのか」

半ば呆気にとられながら、遠ざかってゆく荷車を見送るシーザー。
シーザーの傷は浅い。対して、ブラフォードに叩き込んだ波紋蹴りには、確かな手応えを感じた。
助かるためには、すぐさま左腕と左脚を捨てなければならないだろう。
だがシーザーは、彼らを追いかけようとはしなかった。

(黒猫も女の子も、屍生人や吸血鬼のようには見えなかったが……
 あの炎、厄介だな。呼吸が命の波紋戦士にとっての、天敵かも知れない。
 女の子の方も、ブラフォードの乗った荷車を引いてあのダッシュ力……只者じゃないな)

(そしてブラフォード……おじいちゃんの仇の相棒、屍生人だからと甘く見たつもりはなかったのだが……
 おじいちゃんの得意技『波紋カッター』も、
 その弟子ジョナサンがブラフォードに対して放ったという『青緑色の波紋疾走』も、
 奴には全く通用しなかった……30日の特訓を乗り越えた俺なら
 波紋の技のキレはおじいちゃんたちにも負けないという自信はあったんだがな……)

(……やはりシャボン液なしでも屍生人になら勝てると思っていた俺に、どこか油断があったのだろう。
 『波紋ミツバチ』を手袋に仕込んでいなければ、負けていたのは間違いなく俺の方だった)

(ジョセフの奴にも、認めたくねーけど、感謝しねーといけねーな……
 あらかじめ波紋を帯びたミツバチを仕込んでおくなんて発想、
 アイツと出会うまでは思いつかなかっただろうからな……ちょっと手がチクチクするけどよ)

948 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/17(火) 00:13:15 ID:Sc.Djkec0
「……まずは、石鹸を探そう」

結局、シーザーは自らが最初になすべきことをこう結論付けた。
これからブラフォードと少女を追うにせよ、重傷の彼を放置して
殺し合いに乗っているであろう柱の男たちや吸血鬼・屍生人を追うにせよ、
自らの戦闘スタイルで戦えなければ話にならない。そう痛感したのだ。
今回はたまたま上手く行ったが、『波紋ミツバチ』のような
付け焼き刃の奇策がそう何度も通用するとは思えない。
それができるのは、それこそあのいけ好かない戦友・ジョセフのような生粋のペテン師くらいのものだろう。

彼の本来の戦法はシャボン玉と波紋を組み合わせたもの。
そのため彼は手袋などに特殊なシャボン液を仕込んでいるのだが、
この会場に呼び出された際にカラカラに抜き取られてしまっていた。
まずはその代用品となるシャボン液を調達しなければならない。
名簿に記されていた過去の人物、地図に点在する見覚えのある地名……
気になることは多いが、まずは自らの準備を整えよう。

シャボン液の材料は、水と石鹸。
水の粘性を増すための砂糖があればさらにベネ。いずれも民家に行けばすぐに見つかるだろう。
赤毛の少女はブラフォードを連れて北に見えるジョースター邸(!?)に向かって走り去っていった。
すぐには彼らと再戦したくないシーザーが目指す先は……湖の対岸に位置する、吸血鬼の館・紅魔館。
なんとも皮肉な立地であるが、それはシーザーの知る所では無いのであった。

949 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/17(火) 00:13:36 ID:Sc.Djkec0
【C−3エリア・霧の湖北岸/深夜】
【シーザー・アントニオ・ツェペリ@第2部 戦闘潮流】
[状態]:全身に軽い火傷と切り傷、少量の失血、ずぶ濡れ、両手の甲に蜂刺され(処置済み)
[装備]:スイス・サンモリッツでの衣装(ただし、衣装に仕込んだ石鹸水は全て抜き取られています)
[道具]:基本支給品(水をボトル1本分消費)、ミツバチの巣箱@現実(ミツバチ残り90%)
   不明支給品1(ジョジョ・東方登場出典・確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:柱の男、吸血鬼、屍生人を打倒する。主催者も叩きのめす。
1:紅魔館へ向かい、石鹸水を調達する。
2:柱の男、吸血鬼、屍生人を打倒する。その他、殺し合いに乗った者も倒す。
3:仲間(ジョセフ、シュトロハイム、リサリサ)と合流する。
4:ブラフォードと共に逃げた女の子(火焔猫燐)は……気が進まないが、向かってくるならやるしか無い。
5:ウィル・A・ツェペリ、ジョナサンなど、過去の人物のことが気になる。
※参戦時期はスイスのサンモリッツ到着直後です。
※火焔猫燐の黒猫形態を、人間形態と別個体だと思っています。
※C−3エリアに、数千匹のミツバチが逃げ出しました。
 時間とともに各エリアに広がっていくことが予想されます。
 が、帰る所を失った働きバチはおとなしいので、よほど気を配らなければ見つけることはありませんし、
 こちらから手を出さない限り刺されることも無いでしょう。

○ミツバチの巣箱@現実
数万匹のミツバチが飼育されている、養蜂箱。
中にはミツバチの巣が板状に並んでいる。
巣には蜂蜜が蓄えられているほか、波紋使いなどは中に住む働き蜂を操ることも可能かも知れない。
だがその際は手痛い反撃を覚悟しなければならない。
ただし、巣箱がエニグマの紙に収納されると、箱を飛び出した働き蜂は守るべき場所を見失い、おとなしくなる。

950 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/17(火) 00:14:04 ID:Sc.Djkec0
――――


一方その頃、ブラフォードを連れて逃げ去った赤毛の少女・火焔猫燐は、ジョースター邸の裏にいた。
彼女はリヤカーを停め、振り返って追跡の気配が無いことを確認すると壁にもたれかかり、
しばし荒い呼吸を整えていたのだった。

「ハアッ、ハアッ……あの金髪のお兄さん、追ってはこないみたいね」
「……化け猫、貴様は何者だ。なぜ、俺を助けた」

リヤカーに寝転がるブラフォードが、訝しげに問いかける。

「あたいは火焔猫燐。長ったらしいからお燐って呼んでね。
 お兄さんを助けたのは……お兄さんが死体で、しかも意志を持って動いてるから、かな。
 ここで壊しちゃうのが勿体無くって」
「……まるで意味がわからんぞ」

やけに馴れ馴れしい口調で、少女が答えた。
……2番目の質問に対しては答えとして成立していない。
そのことを自覚しているのかいないのか、今度は少女の方から逆に問いかけてきた。

「ねえ、『ディオ様』ってお兄さんのご主人様?」
「……聞いていたのか」
「やっぱり。その人のこと、尊敬してる?」
「無論だ。ディオ様は処刑された俺に、新たな生命を与えて下さったお方だ」

951 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/17(火) 00:14:28 ID:Sc.Djkec0
「良かった、お兄さんを助けられて。あたいにも尊敬してるご主人様がいるんだ。
 さとり様っていうんだけどね。……あたい、難しいことよくわかんないけど、あたいは死体が好きで、
 しかもその死体には、あたいみたいに尊敬するご主人さまがいる。
 だから、あたいはその死体を元のご主人様の所に送り届けてあげたい。
 ……それじゃあたいがお兄さんを助けた理由になってないかな?」
「……」

『オリン』と名乗る少女の言葉に、ブラフォードは沈黙で返すことしかできなかった。
この少女は、何も知らない。生き返されたブラフォードの望みが世界への復讐であることも、
その主・ディオの望みが人類の頂点として君臨することも、何も知らないのだ。

「ところでお兄さん、ケガの方は……」

そんなブラフォードをよそに、ケガを気遣うお燐だったのだが……
ブラフォードの左腕と左脚が殆どドロドロに溶解してしまい、骨が見え始めている。
右腕の肉も、所々が泡立つようにえぐれている。
よく見るとその傷口は、今もゆっくりと広がっているようだ・

「お兄さん、これ……!」
「『波紋』にやられたせいだ。蜂に刺された程度の右腕は大したこと無いが……
 直接ヤツに蹴られた左腕と左足は……斬り落とさんと助からんな。この傷はいずれ頭まで広がる。
 そうなったら、いかに屍生人であろうと死ぬ……迷惑ついでだ、娘よ、肩を貸してくれ」

そう言うとブラフォードはリヤカーの横にふらりと立ち上がった。
そしてお燐が右肩を支えているのを確認すると、楼観剣を髪で振るい、
目にも留まらぬ速さで、左腕を肩から、左脚を腿から切り落としたのだった。

「お兄さん!……痛くないの!?」
「問題ない。むしろ波紋の傷が残る右腕の方が痛むくらいだ……
 では、化け猫の娘よ……これにて失礼する。オリンとか言ったな……一応、礼は言っておくぞ」

952 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/17(火) 00:14:55 ID:Sc.Djkec0
ブラフォードは酷くぶっきらぼうな感謝の言葉を残すと、くるりとお燐に背を向けた。
そしていつの間にか拾い上げていた棒切れを松葉杖の代わりとして、
ひょこひょこと右脚と右手だけで歩き出した。
そんなブラフォードを、お燐が黙って見過ごせるハズはなかったのだった。

「失礼するって!どこへ行くのさ、そんなマトモに歩けもしないような身体で!」
「……貴様には関係のない話だ」
「関係あるよ!またさっきの金髪のお兄さんに出くわしたら、今度こそ死んじゃうよ!?
 あたしが助けてあげた意味が無いじゃない!それにそんな身体じゃああんたのご主人様のお役に立てないよ?」
「……!」
「ほらほら、分かったらさっさと荷車に乗りな。役に立たないって知られたら、殺処分されちゃうよ?」

結局、左手足を失った現状では、例えディオ様に合流できても
見捨てられる危険性が高い事を悟ったブラフォード。
ここは観念してお燐の好意に甘え、大人しくリアカーで座っているしかなかった。

「で、お兄さん。その手足、どうにかして治らないかな?」
「ディオ様のような吸血鬼であれば、他人の死体を奪って手足を治すことも可能なのだろうがな……
 おれたち屍生人は吸血鬼ほどの再生能力はない。死体をつないでも、くっつくかどうかはわからんが……
 とにかく、まずは死体だ……なるべく新鮮な物が良い。
 手足が合わなくても、血をすすれば、傷が多少癒えることくらいは期待できる……」
「死体、かあ……」

953 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/17(火) 00:15:16 ID:Sc.Djkec0
お燐は心当たりがある、と言った様子でデイパックの中の紙を広げた。
現れたのはビーフジャーキーの様にカラカラに干からびた死体の……一部分だった。

「……って、こんなミイラみたいな死体じゃ何の役にも立たないよねぇ」

そう言うとお燐はリアカーの中へその死体をポイポイと無造作に放り込んだのだった。
投げ込まれたいくつかの部位のうち、両脚らしき部位がブラフォードの身体に触れた所で、
彼はそれがただの死体でないことに気付く。
つい今しがた切り落としたはずの左脚の切断面に、干からびたミイラが食い込もうとしているのだ!

(こ……これはッ!!)

お燐が死体のついでに投げ込んだ紙切れには、『聖人の遺体』と記されていた。

【C−3エリア・ジョースター邸裏/深夜】
【ブラフォード@第2部 戦闘潮流】
[状態]:左腕、左脚切断、右腕に何カ所かの小さな波紋傷
[装備]:楼観剣@東方妖々夢、リヤカーに乗っています
    聖人の遺体・両脚@ジョジョ第7部(左脚の傷口にめり込もうとしています)
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜1(現実出典)
[思考・状況]
基本行動方針:ディオ(DIO)に合流する。そして、ディオの望む通りに行動する。
1:傷を癒やし、再び戦える状態に回復する。そのために新鮮な死体から生き血をもらう。
  化け猫とはいえ、少女に保護されている現状は騎士として不服だが……甘んじて受けるしかない。
2:ジョナサン・ジョースターと再戦し、今度こそ倒す。
3:吸血鬼と屍生人の天敵・波紋戦士を倒す。(彼が現在知っている波紋戦士は、ジョナサンの他、
  ウィル・A・ツェペリ、シーザー・アントニオ・ツェペリのみ)
4:盟友タルカスと合流する。
5:襲い掛かってくる参加者は容赦しないが、それ以外はどうでもいい。
6:ところで、このミイラは一体何なんだ!?
※参戦時期はジョナサンに山吹色の波紋疾走のラッシュを受けて吹っ飛ばされ、
 再び立ち上がろうとした瞬間のシーンです。
※聖人の遺体がブラフォードに及ぼす影響は、後の書き手さんにお任せします。

954 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/17(火) 00:15:43 ID:Sc.Djkec0
【火焔猫燐@東方地霊殿】
[状態]:人間形態、疲労(小)、妖力消耗(小)
[装備]:リヤカー@現実
[道具]:基本支給品、聖人の遺体・左腕と両耳@ジョジョ第7部(リヤカーの荷台に転がっています)
[思考・状況]
基本行動方針:古明地さとり他、地霊殿のメンバーと合流する。
  殺し合いに積極的に乗る気はない。
1:ブラフォードの傷を治し、再び彼のご主人様(DIO)のために戦える状態にする。
  そのためにまずは、新鮮な死体を探す。
2:ブラフォードを彼のご主人様(DIO)の元まで送り届ける。
3:地霊殿のメンバーと合流する。
4:波紋使いの金髪の青年(シーザー)との接触は避ける。
※参戦時期は東方心綺楼以降です。


○楼観剣@東方妖々夢
ブラフォードに支給される。
妖夢が所持していた二振りの刀のうちの、長い方。
幽霊10匹分の殺傷力を持つという。
「妖怪が鍛えたこの楼観剣に、斬れぬものなどあんまりない!」とは妖夢の談。
柄尻に房飾りが、鞘の端に一輪の花が飾り付けられている。

955 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/17(火) 00:16:01 ID:Sc.Djkec0
○聖人の遺体(両脚・左腕・両耳)@ジョジョの奇妙な冒険 第7部 スティールボールラン
火焔猫燐に支給される。
スティールボールラン世界の北米大陸に散らばっている、腐ることのない聖人の遺体。
心臓、左手、両目、脊椎、両耳、右手、両脚、胴体、頭部の9つの部位に分かれて存在しているとされる。
手にした者の体内に入り込み、スタンド能力を発現させる、半身不随のジョニィの足を動かすなど、
数々の奇跡的な力を秘めているが、このバトルロワイアルではスタンド能力を新たに発現させることはできない。
但し、原作中で既に聖人の遺体によりスタンド能力を発現させていた参加者(大統領、ジョニィ)が
遺体を手放すことでスタンド能力を失うことはない。
(一時的に遺体の力でスタンド能力『スキャン』を獲得していたことのあるジャイロと、
 大統領が遺体を全て集めて発動する『D4C・ラブトレイン』の扱いについては、
 後の書き手さんにお任せします。)

○リヤカー@現実
火焔猫燐に支給される。
鉄パイプのフレーム、空気入りのゴムタイヤ、木板の荷台で構成された、2輪の荷車。
1920年頃、旧来の荷車(大八車)にサイドカーの利点を組み込む形で開発された。
大八車に備わっていた木製の車輪と車軸を廃し、ベアリング軸受けとゴムタイヤを採用した上に
主構造を金属として軽量化を図った結果、飛躍的な性能の向上を遂げた。
お燐に支給された本品は比較的頑丈な構造であり、平坦な舗装路なら最大1トン程度の荷物を運搬可能。

956 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/17(火) 00:16:53 ID:Sc.Djkec0
以上で投下を終了します。

タイトルは『猫は屍生人が好き』です。

957名無しさん:2013/09/17(火) 00:32:57 ID:d.f.oUFQ0
投下乙です!
ブラフォード、屍生人とはいえシーザーと渡り合うとはやはり実力者だな
しかしブラフォードを助けてくれたお燐はいい娘だな…w
聖人の遺体を手に入れることになった黒騎士はどうなるのか…!?
あとシーザー、そこアカン!吸血鬼の館!しかもディエゴと大統領おる!

958名無しさん:2013/09/17(火) 00:34:05 ID:sHY5T6yc0
投下乙です
問答無用の屍生人とはいえ騎士だったからか穏やかな着地点になったなぁ
波紋ミツバチとかいかにもジョセフが使いそうなあじなまねでイイネ

959 ◆300BRMIvKA:2013/09/17(火) 00:50:31 ID:TpLb/nz.0
投下乙です。
シーザーはどうにか勝利したが、向かった先にいるのは大統領とDio……一難去ってまた一難とはまさにこの事。
お燐はブラフォードに共感してるが、ソイツのご主人様はさとりと違って碌でもない奴だぞ……。
それにしても、大統領達はお目当ての遺体が自分の位置のすぐ近くにあっただんて思わないだろうなぁ。

時間が少し遅れましたが、延長させてもらいます。

960名無しさん:2013/09/17(火) 01:34:27 ID:8ahA62YI0
お燐ってなんでお兄さん呼びが定着したんだっけ?

961名無しさん:2013/09/17(火) 01:47:06 ID:d.f.oUFQ0
単純に彼女の気さくな性格からのイメージじゃないかな?
それが二次創作で広まって定着したと思われる

962名無しさん:2013/09/17(火) 02:31:06 ID:TbXPFl2g0
投下乙ー
屍と火車の出会いかあ。
主人のことも踏まえ色々美味しいなあw
そしてシーザーの目的地…アカン
シーザーの運命は如何に!?

ブラフォードの参戦作品間違ってるから、そこはwikiで直すべきとこかな

963名無しさん:2013/09/17(火) 16:45:55 ID:Onc89k1I0
フー・ファイターズが吸いとったカラカラ死体か何かかと思ったらどえらい物が出てきた

964名無しさん:2013/09/18(水) 19:49:06 ID:/EmHZyvE0
>>934
それどころか作者名に気付いてれば、一部の参加者が「漫画のキャラ」だっつー最強のメタ知識を得てる事になるなw
一年分だからコミックスに換算すると大体5巻分だけど、さて、黄金期はどの辺りになるのか…。

965 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/18(水) 20:39:51 ID:hNqEFok20
霧雨魔理沙、空条徐倫、エルメェス・コステロ、姫海棠はたてを予約します。

966 ◆DBBxdWOZt6:2013/09/19(木) 01:46:58 ID:EkAfWWQU0
聖白蓮、ロバート・E・O・スピードワゴン、秦こころを予約します。

967 ◆n4C8df9rq6:2013/09/19(木) 12:57:21 ID:c6G4.IXo0
二ッ岩マミゾウ、鈴仙・優曇華院・イナバ、アリス・マーガトロイド、ディアボロ
予約します

968名無しさん:2013/09/19(木) 15:56:34 ID:JDvNih8I0
なぜこのスレはこうも予約ラッシュが多いのか
最近のロワで一番盛り上がってのはここではないだろうか

969 ◆WjyuuPGo0M:2013/09/19(木) 16:19:31 ID:JD1UtLBM0
すみません、再予約に近い形になってしまいますが
ルドル・フォン・シュトロハイム、八意永琳を予約して宜しいでしょうか?

970 ◆YF//rpC0lk:2013/09/19(木) 19:54:36 ID:CNXW5ApA0
>>969
構いませんよ。お待ちしております。
次スレはあと一つSSが投下されたら建てようと思います。

971 ◆WjyuuPGo0M:2013/09/19(木) 21:03:12 ID:gf6QWPkgO
>>970
ありがとうございます

972名無しさん:2013/09/19(木) 22:33:17 ID:OREi8uyE0
少年ジャンプ
ピンクダークは載ってるかな・・・?

973 ◆.OuhWp0KOo:2013/09/20(金) 00:13:53 ID:ZlsMLwJQ0
>>961
地霊殿でも霊夢たちの事を『お姉さん』と呼んでいるので、
男性相手なら『お兄さん』と呼ぶのが自然ではないかと判断しました。

974 ◆n4C8df9rq6:2013/09/21(土) 18:07:42 ID:2/8jwlYk0
二ッ岩マミゾウ、鈴仙・優曇華院・イナバ、アリス・マーガトロイド、ディアボロ
投下します

975途方も無い夜に集う ◆n4C8df9rq6:2013/09/21(土) 18:11:16 ID:2/8jwlYk0

兎の少女は竹林を駆け抜ける。

彼女の脳裏にかつての記憶が蘇る。
『戦い』の噂を耳に入れて、心から恐怖したことを。
人から敵意を向けられる恐怖に負けて、月の軍隊から脱走したことを。
月から『堕ちる』ように、行き先も無く必死で逃げてきたことを。
こうやって、走馬灯のように過去を思い出しながら竹林の中を走っていたことを。

「―――――はぁっ…はぁ…」

鈴仙・優曇華院・イナバは、あの時と同じように必死に逃げていた。
どれほどの時間が経過したかも全く認識出来ない程に、彼女は走っていた。
怖い。怖くて仕方がない。
あんな人間とまともに闘える訳が無い。妖怪をも瀕死にするあんな人間に、勝てる訳が無い。
逃げなきゃ。とにかく、逃げなきゃ!
安息と平穏を求めて、彼女は必死で走る。
自分を助けてくれたお師匠様が住まう永遠亭を目指して。

てゐ。姫様。お師匠様。貴女達は、どこにいるの?

名簿さえ確認していない私には、この会場にみんながいるのかどうかも解らない。

―――でも、彼女達と会いたい。とにかく会いたい。

取り乱す心で彼女はそう思う。その思考に冷静さなど微塵も無い。
そこにあるのは恐怖から逃れたいという思い、安心を得たいという思いだけだ。
彼女らとも殺し合うことになるかもしれない等、考えられなかった。考えたくなかった。
疲労感も何もかも忘れて、ただ安息だけを求めて竹林を駆け抜け続ける。

976途方も無い夜に集う ◆n4C8df9rq6:2013/09/21(土) 18:12:21 ID:2/8jwlYk0

その時だった。


「きゃっ…!?」

突然鈴仙は何かに足を取られ、その場で正面に転ぶ。
転倒により顔から地面に叩き付けられたことによる鈍痛に見舞われる。
石ころや竹林の地形にでも躓いた…?そう考えつつ、彼女は立ち上がろうとするが。

「すまんな、少々荒っぽくなってしまった」

起き上がろうとした鈴仙の背後から突如他者の声が聞こえてくる。
え、と鈴仙は声を漏らす。周囲に気配なんて感じなかったはずだ。
驚きつつ、咄嗟に振り返った鈴仙の目に入ったのは―――

「しかし、御主のような妖怪が儂に気付かずに通り抜けようとするとはの」

鈴仙の背後に立っていたのは、大きな縞模様の狸の尻尾が特徴的な少女だった。
眼鏡をかけ、葉の笠のような帽子を被っており、煙管をくわえる姿には余裕すら感じられる。
鈴仙は混乱する思考を必死で纏めようと頭を回転させる。
どうゆうことだ?この妖怪の気配なんて感じなかったはずだ。
この装いを見る限り、彼女は化け狸であるのは確実だろう。まさか化けていたのか?
いや、私の能力さえ使えば見抜くことなんて容易な―――

「ふむ…その眼を見る限り、さしずめ恐怖で逃げ回っていたというワケか」
「…え、」
「儂に気づかなかったのも納得じゃな。恐怖に飲まれている最中で周囲に気が回る訳が無い」

ぽかんとしたように、鈴仙は化け狸の少女を見上げる。
図星だった。恐怖に飲まれて、ただ只管に逃げ回っていた。

波長を操り、他者からの認識を誤摩化して姿を消すことであの『悪魔』からも逃げ仰せると思っていた。
だが、実際の所は長時間の能力使用によってその効果はとっくに解けていたのだ。
冷静さを失った彼女はそのことに気付かず、周りの警戒をも怠って必死に走っていた。
故に本来ならば見破れるはずの『化け狸』の気配に気付くことが無かったのだ。

977途方も無い夜に集う ◆n4C8df9rq6:2013/09/21(土) 18:14:47 ID:2/8jwlYk0

「…にしても、この場で冷静さを欠くとは。気持ちは解るがのう」

――殺し合いに巻き込まれた化け狸『二ッ岩マミゾウ』は、先程まで迷いの竹林と言う慣れぬ土地を歩き回っていた。
視界が悪く、予想以上に道の入り組んだこの地の探索に少々手間取っていたのだ。
暫しの間動き続けていたのだが、そんな中で彼女は「誰かが近付いてくる気配」を感じ取ったのだ。
すぐさまその場で竹林に似合うような筍に自分を『化けさせて』、様子を伺ってみようと思ったのだが…。
訪れた妖怪はどうにも全く自分の気配に気付くこともなく、必死で走っていたのだ。
一目見た限りでは兎の妖獣の類い。彼女の表情は恐怖に染まっていた。
少し気になった。殺し合いに恐怖し、逃げ回っているような参加者かもしれない。そう思った。
故に彼女は、筍の変化を一瞬だけ解いて妖怪に足を引っかけて転ばせて自身の存在に気付かせたのだ。
意地が悪いと思うかもしれないが、マミゾウは人間を化かすことが好きな『化け狸』。種族を考えればこのくらいの悪戯は別にさほど珍しくもない。

「で、御主。名は何という?」
「…れ、鈴仙…優曇華院、イナバ…」
「では鈴仙殿と呼ぼう。儂は二ッ岩マミゾウと申す者じゃ」


そうして、そのままマミゾウは続けて口を開く。


「御主、『殺し合い』に乗っているか?」



殺し合い。

―――殺し合い。

その言葉を聞いた途端、再び鈴仙の恐怖が蘇る。

フラッシュバックするかの如く、脳裏に記憶が過る。

あの『悪魔』を。妖怪をも蹂躙する、圧倒的な力を持つ『人間』を。

鈴仙は顔を青ざめさせ、取り乱した様子で立ち上がったのだ。


「逃げ、なきゃ」
「…鈴仙殿?」

「―――逃げなきゃっ!あいつから、逃げないと……殺されるっ!みんな、殺されるっ…!!」

――その言葉と共に、突然鈴仙は再び走り出した。
錯乱したように、恐怖に負けたかのように、とにかく必死の行動だった。

「おい、鈴仙殿っ!鈴仙殿っ!!」
マミゾウの呼びかけも気にかけず、彼女は錯乱し逃げるように走っている。
突然の出来事にマミゾウも驚かざるを得ない。余程恐怖に飲まれているのか――

「…全く、面倒なことになったのう だが、放っておく訳にもいかんな…!」

やれやれ、と言わんばかりにマミゾウは呟く。
同時に鈴仙の姿を見失う前に彼女は走り出したのだ。無論、鈴仙を追う為にだ。

マミゾウは殺し合いに乗るつもりなど無かった。
鈴仙と接触したのも、恐怖していた彼女を介抱して仲間に引き入れられるかもしれないと考えらからだ。
どうにか対話に応じてくれれば、説得出来るかもしれないとは思っていたが…
どうやら予想以上に彼女の恐怖は大きかったらしい。
触れてはならぬ部分に触れてしまったのかもしれない、と考えればやはり自分の過失だ。
それに、無防備に走り回る彼女は放っておけば格好の的に成り得る。
それだけは避けなければならない。『乗った参加者』に見つかれば非常に危険だ。
故に彼女を追いかけることにしたのだ。とにかく、今の危険な状態の鈴仙殿を無視するわけにはいかない…!


◆◆◆◆◆◆

978途方も無い夜に集う ◆n4C8df9rq6:2013/09/21(土) 18:15:18 ID:2/8jwlYk0


何となく、理解していた。

もうすぐだ。もうすぐ、私にとっての安息の地へ辿り着ける。

直感や日常の記憶が蘇る。

こちらへ向かえばいい。この先を抜ければいい。

そうすれば、私はそこまで辿り着ける。

とにかく走ろう。私の目指す場所は―――もうすぐだ。

恐ろしい惨劇を見ることなんて嫌だ。

敵意を向けられることなんて嫌だ。


死ぬことなんて、絶対に嫌だ。



◆◆◆◆◆◆

979途方も無い夜に集う ◆n4C8df9rq6:2013/09/21(土) 18:17:09 ID:2/8jwlYk0


「さて…」

『サーフィス』に見張りを任せた後、『アリス・マーガトロイド』は整然とした机や棚を物色していた。

包帯や衣服など、使えそうなものは可能な限りデイパックに詰め込む。
あの天才の診療所なだけあってか、応急処置に使えそうな道具は十分に揃っている。
得体の知れない医療器具や金属製の設備も数多く存在しているが、自分にとっては構造も原理さえも理解し難いものばかりだ。
机に置かれたマニュアルを見る限り、人体の骨格を撮影出来る撮影機まであるようだ。
幾つもの道具を眺め、改めて八意永琳…というより、月の連中の技術のレベルを理解する。
とはいえ、私の分野は魔法であってこうゆうハイテクな技術の数々は自分の知識の知る範疇ではない。
故に驚きはしたが、さほど興味はなかった。それよりも、今はもう一つ少々気になることがあった。

目を向けたのは、この診療所の主人が使っていたであろう机の方だ。
机の上に置かれている鈍い輝きを見せる容器には、幾つかの見慣れぬ医療器具が置かれている。見た限りでは、恐らく外科手術に用いる道具だろうか。
それらの器具のうち、何故か数本のメスだけが不自然な形で机の上に直に放置されていたのだ。
その他の医療器具はきっちりと容器に納められているのに、メスだけが纏まりのない状態で机の上に置かれていた。
それ以外にも多少医療機器や物資などを調べてみたのだが、多少だが「既に物色されたような痕跡」も見受けられた。

(もしかして、先に他の参加者が此処に?)
永遠亭に辿り着くまで幾許かの時間を有したのは事実だ。私が来る前に、此処に他の参加者が来ていた可能性は十分に有り得る。
メスだけが取り出されている様子といい、物色の痕跡といい、恐らくこの予想は的中していると思われる。
しかし引っ掛かる点が無い訳でもない。何故、包帯や薬品などの応急処置が可能な医療器具は殆ど回収されていないのか。
棚を漁ってみた限りでは物色された形跡も殆ど無く、数多くの医療器具がほぼ手つかずの状態で保管されていた。
もし此処に本当に参加者が来ていたとすれば、応急処置を必要としない―――例えば吸血鬼のような。
自力で傷を治癒出来る参加者が此処を訪れたが故に、器具を回収しなかったのか。
もしくは、回収する暇も無く永遠亭からの移動を余儀なくされる事態が起こったのか。
私が此処に辿り着くまでには少々苦労したが、ゲーム開始時からはさほど時間を有さなかったのも事実だ。
本当に此処に別の参加者が来ていたとすれば、私が永遠亭に着くまでのごく短時間の滞在で移動を開始したということになるだろう。

(この竹林を真っ直ぐ抜け出すのは、妖怪兎でも無い限りは容易じゃない)
故に、その参加者は今もこの竹林を彷徨っている可能性はある。
他者との接触が一先ずの目的であり、永遠亭からも早いこと離脱しようと考えていた自分にとっては好都合だ。
とりあえず、此処の見張りはサーフィスに任せ―――

980途方も無い夜に集う ◆n4C8df9rq6:2013/09/21(土) 18:19:17 ID:2/8jwlYk0

直後に、入口の方面から静かに物音が聞こえてくる。

「……。」
私はすぐに理解した。音を立てたのはサーフィスだと。
恐らく誰かが近づいてきた合図として音を鳴らしてこちらに知らせたのだろう。
同時に、必死で走ってくるような足音も聞こえてくる。まるで何かから逃げて来ているかのようだ。
僅かにしか聞こえてこないが、恐らく相当取り乱しているのか…

「―――はぁっ―――はぁっ―――!」

少しばかり耳を立ててみると、外から聞こえてきたのは荒い吐息の混ざった声。
息の乱れ具合から察するに、余程疲労しているのか―――ともかく、予想以上に来訪者が早かった。
接触出来るのは好都合だが、自身に変身させたサーフィスをどう説明したものか。
出来れば、もう少し時間が欲しかったのだけれどね。仕方がない。

さて、どうするか。


【D-6 永遠亭/黎明】

【アリス・マーガトロイド@東方妖々夢】
[状態]:健康、精神疲労(小)、不安
[装備]:スタンドDISC「サーフィス」、サーフィス人形(アリスに変身中)
[道具]:永遠亭の医療器具や薬品など複数、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:遭遇、または発見した参加者を複数人観察した上でスタンスを決める。
       それまでは生存優先。
1:永遠亭に辿り着いた参加者と接触する?
2:サーフィスをこのまま自分に変身させておくかどうか、考え中。
3:単独でいる時は道具や情報の収集に努める。
[備考]
※参戦時期は少なくとも非想天則以降です。
※支給品は確認していますが、自分に掛けられた制限にはまだ気づいておりません。
※掛けられた制限は不明です。


【D-6 迷いの竹林(永遠亭前)/黎明】

【鈴仙・優曇華院・イナバ@東方永夜抄】
[状態]:人間から敵意を向けられることに対する恐怖、疲労(中)、体力消耗(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜2
[思考・状況]
基本行動方針:未定。とにかく恐怖から逃れたい。
1:永遠亭に、戻って来れた…
2:あの人間(ディアボロ)に対する恐怖。絶対に死にたくない。
※支給品と参加者名簿をまだ確認していません。
※参戦時期は神霊廟以降です。
※制限により波長を操る能力の持続力が低下しており、長時間の使用は多大な疲労を生みます。


【D-6 迷いの竹林(永遠亭付近)/黎明】

【二ッ岩マミゾウ@東方神霊廟】
[状態]:健康、体力消耗(小)
[装備]:煙管@初期装備
[道具]:不明支給品1〜2(確認済)、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを出し抜き、主催者に一泡吹かせる。
1:鈴仙を追いかける。どうにかして落ち着かせたい。
2:殺し合いには乗らない。自衛の際も殺生は極力避ける。
※参戦時期は心綺楼終了後です。服装も心綺楼verです。
※制限により、能力の使用による消耗が普段より増大しています。
※具体的な現在位置及び鈴仙に追い付けたかどうかは後の書き手さんにお任せします。


◆◆◆◆◆◆

981途方も無い夜に集う ◆n4C8df9rq6:2013/09/21(土) 18:20:39 ID:2/8jwlYk0


「とぅるるるるるる」

何処とも解らぬ竹林の内部で、一人の少年が足下に転がっていた石ころを耳に当てて奇妙な声を発している。
まるで電話をかけているかのように、無心で声を発し続けていた。

「もしもし…ボスですか…? …も、申し訳ございません。先程の『二人組』を、見失ってしまいました…」
恐る恐る言葉を選ぶように少年は『通話相手』にそう伝える。
彼は先程まで二人のスタンド使いを追跡していたが、追跡は途中で撒かれてしまった。
当然のことだ。迷いの竹林は非常に入り組んだ構造をしており、鬱蒼としている為視界も悪い。
その上、現在の時刻は夜中で竹林の内部は薄暗い闇に包まれている。
他の人物の追跡を振り切り、隠れる為にはうってつけの環境と言えるだろう。

「通話相手」は、暫しの沈黙の後に言葉を紡ぐ。
『…ドッピオ、此処は地図で言う「迷いの竹林」であることは理解出来るな?』
ドッピオと呼ばれた少年は「はい」と短く頷く。

『ならば一先ずは「永遠亭」という施設を目指せ。竹林の構造故に発見は困難かもしれないが…』
「永遠亭…ですか?」
『そうだ。取り逃がしたとはいえ、あの小娘には少なからず手傷を負わせた。恐らくは、そう長くはないだろう』
「…だから、小娘の療養の為に『新手のスタンド使い』が地図にも記載されている施設へと向かっている可能性がある…ということですね?」
『その通りだ、ドッピオ…例えそうでないにせよ、地図に記載されている以上人間が集まる可能性は大いにある』

通話相手―――ドッピオのもう一つの人格『ディアボロ』は冷静にそう伝える。
制限下とはいえ、あの小娘に叩き込んだ一撃は確かな手応えがあった。
肋どころでは済むはずの無い傷を負っているのは確実だろう。
新手のスタンド使いも小娘の容態を見てそのことに気付くはず。
そうなれば、小娘を休息させる為に施設へと向かう可能性があるのではないか。彼はそう考えたのだ。
例えその場にあの小娘がいなかったにしても、他の参加者がいる可能性も高い。

982途方も無い夜に集う ◆n4C8df9rq6:2013/09/21(土) 18:21:44 ID:2/8jwlYk0

『――ドッピオ、目指すは『永遠亭』だ。お前ならやれる…出会った参加者は一人残らず始末しろ』
「了解です、ボスッ!必ず、ボスのお役に立ってみせます!」

ペコペコと頭を下げながら、彼は「ガチャリ」の一声と共に石ころをその場に捨てる。
目的地は生まれた。目指すはこの竹林の先にあると言う「永遠亭」だ。
基本支給品の方位磁石を用いれば方角は解る。地図にも記載されているような施設だ、恐らく目立った位置に存在するはずだ。

どちらにせよ、ドッピオは必ずその施設を見つけ出すつもりだった。
ボスからの命令なのだから、それに従うのは当然のことだ。
彼は急ぎその場から離れるように駆け出す。

『帝王』の進撃が、開始した。


【D-6 迷いの竹林/黎明】

【ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険 第5部 黄金の風】
[状態]:首に小さな切り傷、体力消費(微小)、ドッピオの人格で行動中
[装備]:なし(原作でローマに到着した際のドッピオの服装)
[道具]:基本支給品×2、不明支給品×1〜2(ディアボロに支給されたもの。確認済)、
   不明支給品×0〜1(古明地さとりに支給されたもの。ジョジョ・東方に登場する物品の可能性あり。確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:参加者を皆殺しにして優勝し、帝王の座に返り咲く。
1:永遠亭へ向かい、他の参加者を発見次第始末する。
2:新手と共に逃げたスタンド使いの小娘を探し出し、この手で殺す。
[備考]
※第5部終了時点からの参加。ただし、ゴールド・エクスペリエンス・レクイエムの能力の影響は取り除かれています。
※支給品と参加者名簿をまだ確認していません。
※能力制限の程度については、後の書き手さんにお任せします。

983 ◆n4C8df9rq6:2013/09/21(土) 18:22:52 ID:2/8jwlYk0
投下終了です。
指摘やツッコミ、感想があれば宜しくお願いします。

984 ◆YF//rpC0lk:2013/09/21(土) 19:59:30 ID:djxd7UQc0
乙です。
いよいよ魔窟というレベルを超えてきた竹林
はたして鈴仙に安心はあるのか?

そういえばジャイロに薬とか盗らせるの忘れてたな……
完全な凡ミスだった

985 ◆YF//rpC0lk:2013/09/21(土) 20:09:18 ID:djxd7UQc0
それと予告通り、次スレを建てました
一部ルール等が変更されている箇所がありますが、新スレのルールを基準としています

ジョジョ×東方ロワイヤル 第二部
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12648/1379761536/

986名無しさん:2013/09/22(日) 00:13:59 ID:SoPT47TQ0
メルシーボークー 迅速なスレ立て 恐縮の至り…

987名無しさん:2013/09/22(日) 00:14:50 ID:HyyjY9EA0
するとこのスレは、早々に埋め立てた方が良いのかな?

988名無しさん:2013/09/22(日) 01:48:13 ID:2iRrK9cY0
つらいことがたくさんあったが…でも楽しかったよ
みんながいたからこのスレは楽しかった

989名無しさん:2013/09/22(日) 02:01:22 ID:bm9C2c.U0
今日一気に読んだがこれ死ぬほど面白いな
休日の楽しみが出来たってもんよ

990名無しさん:2013/09/22(日) 02:01:45 ID:HyyjY9EA0
ケツの穴にツララを突っ込むようなスレ埋め!

991名無しさん:2013/09/22(日) 02:05:35 ID:HyyjY9EA0
>>989
何と!
私もこのロワの書き手の端くれ、チョーウレシー!

それはそうと、惨虐にしてあざやか且つ完璧で勝者なスレ埋めッ!!

992名無しさん:2013/09/22(日) 02:12:25 ID:2iRrK9cY0
>>989
嬉しいこと言ってくれるじゃないの!(by書き手)

993名無しさん:2013/09/22(日) 02:37:46 ID:8OtsPq6.0
この俺の剣に刻んであるこの言葉を書き手達に捧げよう!
Luck!(幸運を)

そして書き手達の未来へこれを持って行けッ!
PLUCK!(勇気をッ!)


そしてついでにオプーナを買う権利を持って行け

994名無しさん:2013/09/22(日) 02:53:44 ID:2iRrK9cY0
オプーナの(スピード)ワゴン

995名無しさん:2013/09/22(日) 02:56:05 ID:HyyjY9EA0
(スピード)ワゴンはクールに去るぜ……

996名無しさん:2013/09/22(日) 09:45:00 ID:53sSKp9U0
ASBを買う権利もやろう

997名無しさん:2013/09/22(日) 11:58:40 ID:2iRrK9cY0
ジョジョ東方オールスターバトル

998名無しさん:2013/09/22(日) 13:00:41 ID:HyyjY9EA0
1000なら>>997が実現

999名無しさん:2013/09/22(日) 13:57:06 ID:lo/7O6CQ0
>>997ならまさしく今実現してる真っ最中なわけだが

1000名無しさん:2013/09/22(日) 14:15:04 ID:2iRrK9cY0
1000なら天子ちゃんが嫁になる

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