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古生物バトルロワイヤル- 1 : ◆sOMmvl0ujo:2013/03/11(月) 18:14:35 ID:VpDTsm/Q0
- 【参加者名簿】
【節足動物】
○アノマロカリス/○オパビニア/○ユーリノプテルス/○イソテルス・レックス/○アースロプレウラ
○ブロントスコルピオ/○メガニューラ
【軟体動物】
○ネクトカリス/○ライオンノセラス/○パキディスクス
【魚類】
○ダンクレオステウス/○ヘリコプリオン/○リードシクティス/○メガロドン
【両生類】
○エルギネルペトン/○ディプロカウルス/○プリオノスクス/○イブクロコモリガエル
【爬虫類】
○ロンギスクアマ/○ポストスクス/○プルスサウルス/○デスマトスクス/○イカロサウルス
○アーケロン/○メイオラニア/○メガラニア
【海竜類】
○タニストロフェウス/○エラスモサウルス/○クロノサウルス/○エクスカリボサウルス/○モササウルス
【翼竜】
○プテラノドン/○ケツァルコアトルス/○プテロダウストロ
【肉食恐竜】
○ティラノサウルス/○ヴェロキラプトル/○シティパティ/○カルノタウルス/○テリジノサウルス
○ヴェロキサウルス/○スピノサウルス/○アルヴァレスサウルス/○トロオドン/○コエロフィシス
【植物食恐竜】
○ブラキオサウルス/○アマルガサウルス/○トリケラトプス/○ステゴサウルス/○パキケファロサウルス
○イグアノドン/○レエリナサウラ/○ランベオサウルス/○アンキロサウルス/○ペゴマスタックス
【単弓類・獣弓類】
○ディメトロドン/○エダフォサウルス/○ゴルゴノプス/○リストロサウルス/○キノドン
【哺乳類】
○アデロバシレウス/○ウィンタテリウム/○ブロントテリウム/○アンドリューサルクス/○バシロサウルス
○カリコテリウム/○ミロドン/○インドリコテリウム/○オオツノジカ/○ケナガマンモス
○スミロドン/○ボルヒエナ/○クアッガ/○フクロオオカミ/○ニホンカワウソ
【鳥類】
○アーケオプテリクス/○ディアトリマ/○ティタニス/○オステオドントルニス/○テラトルニス
○オルニメガロニクス/○ジャイアントペンギン/○モア/○ドードー/○リョコウバト
【絶滅人類】
○アウストラロピテクス・アファレンシス/○パラントロプス・ロブストス/○ホモ・エレクトゥス/○ホモ・ハビリス/○ホモ・ハイデルベルゲンシス
○ホモ・ネアンデルターレンシス/○ホモ・フローレシエンシス/○ミトコンドリア・イブ/○Y染色体アダム
【古生物学者】
○メアリー・アニング/○ギデオン・マンテル/○リチャード・オーウェン/○ウィリアム・バックランド/○チャールズ・ダーウィン
○エドワード・コープ/○オスニエル・マーシュ
100/100
- 2 :OP ◆sOMmvl0ujo:2013/03/11(月) 18:15:08 ID:VpDTsm/Q0
- ノアの箱舟か、博物館の標本室か。
その光景を見た人間たちは一様に同じ感想を述べるであろう。
薄暗く、さして広くも無い空間の中に、巨大な恐竜やクジラから人間、鳥、魚に昆虫までもが勢ぞろいしていたのだから。
彼らはみな、何が起こったのかよくわらかないという顔をしている。
辺りを不安そうに見渡すものもいれば、苛立ち紛れに吼え声を上げるものもいる。
なお魚やクジラなど海生の動物も床の上に横たわっていたが、呼吸は正常にできているようだった。
『皆さん、ようこそお集まり下さいました』
やがてどこからともかう声が聞こえた。女性の声だ。だが声だけだというのに、圧倒的な存在感を伴うように感じられる声であった。
「お前は何者だ? 一体どこにいる?」
集められた者の中の一人が苛立たしげに声を上げる。
『私はいつも皆さんとともにあります。正確には、皆さんの足元に、ですけど』
不思議な答えに、ざわめきがひときわ大きくなる。
『私は大地です。一部の人たちには、地球、と名乗ったほうがいいのかもしれませんが』
一同の間に衝撃が走った。悪い冗談だろうと顔をしかめるもの、顔面蒼白になるもの、よくわからないといった顔をするもの。
『私は、今までに私の上に生まれた私の子どもたちの中から、ある目的に沿って代表者を選びました。それが貴方たちです』
荘厳な雰囲気を纏ながらも、やわらかい母性をどこかに感じさせる声で彼女は続けた。
『貴方たちは、貴方たちの種族の代表でもあり、同時に今までに生まれたあらゆる動物たちの中の代表者でもあるのです』
「……それで、我々に一体、何をさせようとするのです」
群衆の中からまた一人、声に問いかける者がいた。声は明瞭に答えた。
『はい。皆さんには今から、最後の一匹になるまで殺し合いをしてもらいます』
ざわめきは、この言葉をもってようやく止まった。
『といっても、今すぐここで、ではありません。これからみなさんを、私を模して作ったミニチュアの地球にご案内いたします。
そこでは今までいた世界とは違い、食べ物を食べなくても飢えることはなく、水を飲まなくても乾くことはありません。
つまり、みなさんは自分が生きるために他の動物を殺す必要は無いのです。
この条件のもとで、みなさんには殺しあってもらいたい』
質問の声は上がらなかった。誰もが、一体何を聞けばいいのか皆目判らないという顔をしている。
『また、そのミニチュアの地球では、水の生きものも陸上で自由に息ができ、陸上の生きものも水の中でも自由に息が出来ます。
また、そこではみなさんは何不自由なくお互いに会話をすることが出来ます』
「ちょ……ちょっと待ってくれ。何のためにそんなことをしなきゃいけないんだ?」
当然の疑問が真っ先に出された。しかし、
『それにだけはお答えできません。ただ、皆さんにはあくまでも、お互いに対等な立場で殺し合いをしてもらいたいのです。
それでは、そろそろ始まりと致しましょう。私の愛しい子どもたち。どうか存分に、純粋に生命を賭けて戦ってください』
やがて声は途切れ、その空間は再び、深い闇に閉ざされた。
【主催者・地球】
- 3 :ルール ◆sOMmvl0ujo:2013/03/11(月) 18:17:32 ID:VpDTsm/Q0
- 【基本ルール】
・ 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる
・ ゲームに参加する参加者間でのやりとりに反則はない
・ ゲーム開始時、参加者はミニチュアの地球上にバラバラに配置される
・ 参加者全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる
・ 会場から逃げ出すことはできない
【このロワの特殊ルール】
・ 支給品は無し(名簿も参加者には配られない)
・ 参加者同士は全員意思疎通が可能
・ 主催者の精神干渉により、参加者は全員自分の名簿上での名前を知っている
・ 参加者の知能レベルについては、全員が「ただ飢えを満たすために他の動物を殺す必要は無い」という点は最低限認識しているものとする
・ 全ての参加者が、陸上・水中関係なく呼吸可能(呼吸ができるだけで行動制限などは当然受ける)
・ 制限は一切無い
【MAPについて】
・ 会場は赤道周が10キロメートルのミニチュアの地球
・ 地形や気候や実際の地球に準じる
【首輪・放送・禁止エリア】
・ 時間帯が変わるごとに主催者による放送がなされる
・ 参加者には全員首輪もしくはそれに順ずるものが付けられ、取り外すことは原則不可能である
・ 禁止エリアは半日ごとに、以下の大陸もしくは大洋のいずれかを指定する(最初の指定は「朝」と「昼」の間)
禁止エリア指定区域
・ アフリカ大陸
・ ヨーロッパ
・ アジア北部(ヒマラヤ山脈以北)
・ アジア南部とオセアニア
・ 北アメリカ
・ 南アメリカ
・ 南極
以上はいずれも島嶼部を含む
・ 北極海
・ 北太平洋
・ 南太平洋
・ 北大西洋と地中海
・ 南大西洋
・ インド洋
・ 南極海
【時刻について】
黎明から開始する
・ 黎明
・ 早朝
・ 朝
・ 昼
・ 午後
・ 夕方
・ 夜
・ 深夜
禁止エリアの指定は朝と昼の間および夜と深夜の間の放送で行われる
【投下時の注意】
・ 初登場の参加者は、生存死亡に関わらず性別・年齢層(子ども・若者・中年・壮年・老人)・出身地を明記すること
・ 特にモデルとした標本や個体がある場合はそれも明記
・ 古生物学者については生涯のうちいつごろからの参加なのかを明記
・ 予約希望者はトリップと使用したいキャラを明記
・ MAPは特に設けないので、現在地については大陸・大洋の名前と、位置を大まかに特定できる地形などを明記する(例:アフリカ大陸・ナミビア砂漠)
・ 予約期間は一週間+延長一週間 延長は一週間まで
- 4 :ルール ◆sOMmvl0ujo:2013/03/11(月) 18:18:32 ID:VpDTsm/Q0
- 続いて本編を三篇投下します
- 5 :オーウェン博士恐竜に会う ◆sOMmvl0ujo:2013/03/11(月) 18:18:58 ID:VpDTsm/Q0
- 「なんたる屈辱!! なんたる辱めか!!」
どこまでも続くかに見える砂の海のただ中で一人の老人がわめいていた。名をリチャード・オーウェンという。
偉大なる大英帝国、その学会の頂点に君臨する自分が、なぜこのような扱いを受けなければいけないのか。
それも、マンテリのごとき三流学者と一緒にされるだけでも我慢ができないのに、けだものや原始人たちとも対等に殺しあえなどという。
「この私が原始人や太古の爬虫類などと対等だと!? ふざけるな!! このような不当な扱い、断じて受け入れるわけには……」
「よーおっさん、随分な言い草じゃねえの?」
「ひいいいいい!!」
オーウェンは悲鳴を上げて、砂の上に尻餅をついた。
何しろ目の前に現れたのが、まさに原始人と爬虫類のコンビだったからである。
「まあこんなことになって落ち着いてられねえのも無理はねえけど、そうパニクるな。悪態ついてたって何の解決にもならねえぜ?」
全身を羽毛で包んだ爬虫類、ヴェロキラプトルが、鶏冠の羽を揺らしながらそう言うと、石でできた棍棒を持った原始人、ホモ・エレクトゥスも口を開く。
「そうアルね。あの女は最後の一匹になるまで殺しあえ言ってたアルけど、きっと抜け道はあるアルよ。
ワタシたちその点で同意して、なんとかここから出る方法探してるアルよ。旦那さんも一枚噛まないアルか?
あ、この棍棒はさっきそこに落ちてた石を加工して作ったアルよ。旦那さんの分も作ってやろうアルか?」
だがオーウェン、それらの言葉に耳を貸さないどころか、そもそも耳に入っていない。
「ひ、ひいいいいい!! わ、私を取って食おうというのか!! か、神よ、どうか敬虔なる私を助け給えええええええ!!」
砂の上を転がるようにして、悲鳴を上げながら逃げていってしまった。
「……やれやれ、なんて自分勝手な男だ。きっと群れにも入れてもらえない口に違いねえ」
「左様アルね。あんなのがうちの集落にいなくて良かったアルよ。しかしほっとくわけにもいかんアルよ」
そんなわけで、オーウェンの後を追いかける二匹。
「それにしても、味方にできるアテがあるって本当アルか?」
「ああ、俺にはもう何年も一緒に巣作りをしているパートナーがいるんだが、さっき大勢集められてた時に、あいつの姿もあったんだ。
とんだ偶然だが、あいつが味方になってくれるのは間違いねえ」
「それは心強いアルよ。こっちは知り合いもいなくって途方にくれてたアルからね」
ヴェロキラプトルは両足を揃えて跳びはねながら、ホモ・エレクトゥスは直立二足走行をしながら、砂の山を駆け下りていった。
一方のオーウェンは、何度も砂の上に転びながらほうほうの体で逃げていた。
「はあ、はあ、どうしてこの、大英帝国一の頭脳を誇る私が、こ、こんな、目に……」
そんなオーウェン博士も、目の前の砂の山の頂上に現れた巨大な影を見て立ち竦んだ。
さっき出会った恐竜と原始人よりも大きな体。おまけに、頭部には何本もの角が生えている。
敬虔なオーウェンは、本気で地獄から悪魔が出てきたのかと思った。
そしてその悪魔はオーウェンの姿を認めるや否や、鼻息も荒く彼に向かって突進してきた。
またも腰を抜かしたオーウェンの前に、後ろから駆けてきたヴェロキラプトルとホモ・エレクトゥスが立ち塞がった。
「おっさん、戦う気が無いんならもっと下がってな?」
ヴェロキラプトルは足の鍵爪を持ち上げ、ホモ・エレクトゥスは棍棒を振り上げて攻撃体制に入る。
砂丘を駆け下りてきた悪魔・パキケファロサウルスも、ただならぬ殺気を感じて立ち止まる。
だが体格で圧倒的に優位に立っているのを見て取ると、再び勢いを付けて突進してきた。
ヴェロキラプトルは右に、ホモ・エレクトゥスはオーウェンを担ぎ上げると左側に飛びのいてかわした。
間近で見れば、あの刺のいくつも付いた分厚い頭蓋を打ち付けられたら命は無いだろうと確信できた。
「おお、神よ、この私にこんなところで死ねというのか!!」
ホモ・エレクトゥスの方の上で震えながら祈り続けるオーウェンに、他の二体は呆れてため息をつく。
- 6 :オーウェン博士恐竜に会う ◆sOMmvl0ujo:2013/03/11(月) 18:19:28 ID:VpDTsm/Q0
- 「やれやれ、このおっさんが戦えれば、ここでみんなでバトルしてもいいんだけどな」
「うん、そうもいかないアルね。ここはワタシが囮になるアルよ」
「いいのか?」
「仲間を集めることのほうが先決アルよ。これでも、大きな獲物を倒したこともあるし自信はあるアルよ」
そう言って、担ぎ上げていたオーウェンを下ろした。
「じゃあおっさん、しょうがねえから俺の背中に乗りな。あんたの足じゃ逃げ切れんだろう」
「な、何を言うか、私がお前のようなおぞましい怪物に跨るなど……それに、そんなことを言って私を食おうというのでは……」
「ったく、何も食べなくてもお腹が空かないって言われてるのに、わざわざ獲物を捕まえて食うわけが無いだろう、バカバカしい。
四の五の言ってねえでさっさと乗りな」
「時間がないアル。来るアルよ」
パキケファロサウルスが二度目の突進を仕掛けてくる。
ヴェロキラプトルはオーウェンを背に乗せて、砂丘の上に向かって登っていった。
「鬼さんこちら、アルよ!!」
ホモ・エレクトゥスは棍棒を振り上げてパキケファロサウルスを挑発する。
パキケファロサウルスは彼めがけて、勢い良く突進していった。
数十分後、砂漠の砂の上には息絶えた原人の亡骸と、それを見下ろす一頭の恐竜がいた。
思いの外手ごわい相手ではあった。しかし彼の胸中を満たすのは勝利の喜びよりも、激しい怒りだった。
先頭の最中、石の棍棒を持った原始人が話しかけてきた。
「こんな風にワタシたち同士が戦ってたって何にもならないアル。それよりも一緒に、あの女を倒すために手を組まないアルか?」
老いたパキケファロサウルスは鼻で笑った。
「何を言う。我々はいつも孤独のうちに戦ってきた。こうして最後の一頭になるまで争うなど、いつもやっていることの延長でしかない」
すると原始人は答えた。
「随分寂しい話アルね。ワタシやさっきのヴェロキラプトルさんは、助け合うことの大切さを知っているアル。力を合わせれば何でもできるアルよ」
その、無条件に「仲間」というものを信頼し肯定する姿勢が、彼には我慢できなかった。
彼はかつては、大きな群れのボスだった。長年群れのメンバーを纏め上げ、危険から守り、子どもたちを育て上げてきた。
しかし群れの者たちは、彼が老いてくるとボスの座から引き摺り下ろし、挙句群れから追放したのである。
「仲間」から食らったあんまりな仕打ちに、彼の心は打ちのめされた。
(我は仲間など信じぬ。そのようなものに依存する愚か者共は、いずれ痛い代償を払うこととなろう)
そして、棍棒を握ったまま砂の上で眠る原始人を残して、砂の上にまだ残るヴェロキラプトルの足跡を辿り始めた。
【一日目・黎明】
【アフリカ大陸・サハラ砂漠】
【ホモ・エレクトゥス 死亡確認】
【備考】オス・若者 中国出身
【リチャード・オーウェン】
【状態】健康
【思考】早くこんなところから逃げ出したい
【備考】晩年からの参戦
【ヴェロキラプトル】
【状態】健康
【思考】シティパティと合流し、脱出方法を探る
【備考】オス・若者 モンゴル出身 シティパティとは共同営巣のパートナー同士
【パキケファロサウルス】
【状態】健康
【思考】他の参加者を皆殺しにして生還する
【備考】オス・老人 アメリカ出身 かつては群れのボスだったが失脚した
- 7 :オーウェン博士恐竜に会う ◆sOMmvl0ujo:2013/03/11(月) 18:19:50 ID:VpDTsm/Q0
- 参加者紹介
【リチャード・オーウェン】
1804-1892。イギリスの生物学者・古生物学者。
比較解剖学を確立し、「恐竜」という用語を始めて考案した。
学者としては時代の先端を行く天才だったが、人格的には最悪だったと言われる。
他人の研究成果を剽窃したり、在野の研究者ギデオン・マンテルに対し執拗な嫌がらせを行った。またダーウィンの進化論には強硬に反対し続けた。
上記のような行動のせいでその功績にも関わらず学会からは孤立し、家族にも先立たれて孤独な晩年を送ることになる。
【ホモ・エレクトゥス】
新生代第四紀更新世。アフリカ・ユーラシア一帯に広く分布。
初めてアフリカの外に進出した人類であり、現生人類の直系の祖先でもあるとされる。
かつて「北京原人」や「ジャワ原人」と呼ばれた原人もこの種に含まれる。
ユーラシア一体に広まったものの一度絶滅し、アフリカで現生人類に進化したグループがもう一度拡散したという説と、各地でそれぞれ現生人類に進化したという説とがある。
【ヴェロキラプトル】
中生代白亜紀後期カンパニアン期。中央アジアに分布。
鳥にかなり近い恐竜で、最近は羽毛で覆われた姿で復元されることが多い。
モンゴルではシティパティの巣からヴェロキラプトルの子どもの化石が見つかったことがある。
これについてはヴェロキラプトルが托卵をしたとも、獲物として持ち運ばれたものとも考えられるが、このロワではヴェロキラプトルとシティパティが共同で同じ巣で子育てをしていたと解釈した。
【パキケファロサウルス】
中生代白亜紀後期マーストリヒト期。北アメリカに分布。
ドーム状の分厚い頭蓋骨とその周りに生えた多数のトゲが特徴。
かつては仲間同士でこの頭蓋骨をぶつけ合って争ったとされていたが、最近ではむしろ外敵への攻撃の用途が大きかったという説が有力。
- 8 :五十億分の一の物語 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/11(月) 18:20:37 ID:VpDTsm/Q0
- 彼女は高いもみの木の上で一羽、吹き抜ける風を全身に感じながら思案に沈んでいた。
あの女性は他の生きものを全員殺してでも生き残れと言った。だが無力な小鳥に過ぎない自分にそんなことができるはずがないことはわかっていた。
そもそも、こうして自由の身になれた今、そんなことはもはやどうでもいいことにも思えた。
死は怖くなかった。というよりも、早くそれが自分に訪れることを彼女は動物園の檻の中で祈っていた。
かつて彼女の種、リョコウバトは、五十億羽もの大群でアメリカ大陸の空を飛び交っていた。
鳥類の歴史上もっとも個体数が多い種だったとも言われる。
食糧不足に苦しむ開拓者たちがリョコウバトに目を向けたのはごく当然であったし、彼女もそのこと自体を責めようとは思わなかった。
だがいつしか飢えを満たすためのものだったはずの狩りは金儲けの手段となり、スポーツとなった。
彼女がこの世に生まれてきた時には、リョコウバトにはもう種を維持できるだけの個体数は残っていなかった。
そして彼女は一度も大空を自由に飛ぶことすらないまま、動物園の折の中で生涯を送ることとなった。
思いがけず手にした自由の身。死が訪れるまで、このまま風のままに飛び続けるのも悪くは無いかもしれない。
しかし、と彼女は思うのだった。
ならば一体自分は何のために生まれてきたのだろう、と。
彼女の脳裏を先刻からよぎるのは。ついさっき最初に見た光景。
さっき集められた生き物たちの中には、何人もの人間たちがいた。
人間の姿など金網越しに飽きるほど見てきたから、今までは特段の感情を抱いたことは無かった。
しかし、今こうして生まれて始めての高みから景色を見下ろしていると、新しい思いが胸の底から這い上がってきた。
彼らは彼女から仲間たちを奪い、自由を奪い、そしてこの景色を奪ってきたのだ。
横暴ではないか。冷酷ではないか。
強きものが弱きものを滅ぼすのが生きものの定めではあっても、一つの種族の命運をいとも簡単に弄び、握りつぶすような真似など許されるのだろうか。
何より、自分の生涯は、一体何のためにあったというのだろうか。
いつしか、彼女の気持ちは定まっていた。
恨みもない他の生き物のことはどうでもいい。
だが、人間たちだけは許さない。どんな手を使ってでも、ここにいる人間だけでも皆殺しにしてやる、と。
【一日目・黎明】
【ヨーロッパ・イギリスの森林】
【リョコウバト】
【状態】健康
【思考】人間は皆殺し
【備考】メス・アメリカ出身 リョコウバト最後の一羽である「マーサ」
参加者紹介
【リョコウバト】
1914年絶滅。鳥類史上最大の個体数を誇ったとも言われるが、乱獲により絶滅した。
その数は、リョコウバトの群れが飛んできただけで昼間でも真っ暗になるほどだったとされる。
本ロワに参戦しているのは、リョコウバトの最後の一羽となったメス「マーサ」である。
- 9 :王者の長き眠り ◆sOMmvl0ujo:2013/03/11(月) 18:21:28 ID:VpDTsm/Q0
- (やれやれ、こんな老いぼれが代表者とは、わが一族も気の毒なもんじゃわい)
オーストラリア大陸の中心に位置するエアーズ・ロックを背に、この地の王がゆっくりとその巨体を歩ませていた。
あの女はミニチュアの地球などというよくわからないことを言っていたが、周囲の光景は彼にとっては住み慣れた土地と瓜二つであり、この幸運にほっと一息をついた。
彼、メガラニアの姿は七メートルもの体長がある巨大なトカゲである。このオーストラリア大陸で最大の肉食動物だった。
もっとも、彼がこの地の「王」であったのはもう随分と昔のことである。
(この老いぼれが幼い頃には、我が物顔でのし歩いていたものじゃがのう。いつからかのう、彼らがやってきたのは)
無敵の捕食者であった彼の一族は、獲物にくいっぱぐれることなどなく安泰に過ごしていた。
風向きが変わってきたのは、ある時今まで見たことも無い奇妙な生きものたちが彼らの目の前に現れてからである。
「ヒト」という、まっすぐに立ってあるく奇怪な動物と、「ディンゴ」という彼らにつき従う不思議な獣。
最初は大して力も無さそうな動物だろうと思っていたのだが、彼らの狩りの成功率は、この地の他の捕食者と比べると驚異的なものだった。
次第にメガラニアたちは獲物にありつけなくなり、一頭また一頭と餓死していった。
生き残ったものたちは、死骸や他の肉食獣の食べ残しで糊口を凌ぐしかなかった。
かつての王者の姿はもうそこには無かったのだ。
(だというのに、今更殺し合いなどをせよ、などと言われても、のう)
今更玉座への未練などないし、無益な殺生もしたくない。
ならば、ここで今までと変わらぬ暮らしを営むというのもいいかもしれないが、他の者たちはそうは思わないだろう。
(全く、面倒なことになってしまったわい)
やがて大河が目の前に現れた。とりあえず水浴びでもしようかと思いながら近付いていくと、川岸の大木の下に見慣れぬ生きものがいるのに気付いた。
一見エミューによく似ているが、奇妙なトサカと長いツメがあるのでそうではないとわかる。
この者も、無理矢理連れてこられて殺し合いを強いられているのだろう。
「そこなお方、何をお考えかな?」
振向いた動物は、メガラニアの巨体に驚いたようだったが、すぐに落ち着きを取り戻した。
「俺はシティパティって言います。向こう岸に渡ろうかどうか迷ってまして……」
「これは異なことを。先ほどの話を信じるなら、水の中でも息はできるとのことですぞ」
「いやあ俺、昔溺れて死にかけたことがあって以来、水の中がどうも苦手で……いくら息が出来るって言われてもねえ」
「ふむ……ならばこの老いぼれが力を貸しましょうや。ささ、この背中にどうぞ」
「いいんですか?」
「なあに、この老いぼれ、生まれてこの方溺れたことなどありませぬ。どうぞ遠慮せずに」
シティパティは申し訳なさそうに頭を下げる。
「じゃあ、ホントにすいませんけどお願いします」
そう言って、自分の三倍近い大きさのあるメガラニアの背に跨った。
「さて、それでは行きますかの」
しかし、メガラニアは進むことはできなかった。
前足を動かそうとするよりも早く、シティパティの鋭い鍵爪がメガラニアの喉元を切り裂いたからである。
シティパティはメガラニアの背から素早く飛び降り、しばし遠くで様子を伺った。
そして、確実に事切れたことを確信した。
「ははっ……バカなやつ」
しかし一匹殺したくらいで気を緩めるわけにはいかない。ここには他にも大勢の動物たちがいるのだ。
最初に全員が集められたあの場で、彼は長年共同営巣のペアを組んでいるヴェロキラプトルの姿を確認した。
自分が何年にも渡って子孫を残し続けられたのは、彼の存在があってのことだった。
なので、殺し合いのルールを聞いたとき、これは彼に恩を返すチャンスだと思ったのだ。
(あいつを生きて帰らせるために、他の奴は全員殺す。その後、俺も死ぬ。それでいい)
そしてシティパティは歩き出す。
その背後で王者は無言で、自らが支配した地に体を預け、静かに横たわっていた。
- 10 :王者の長き眠り ◆sOMmvl0ujo:2013/03/11(月) 18:21:50 ID:VpDTsm/Q0
- 【一日目・黎明】
【オーストラリア・中央砂漠】
【メガラニア 死亡確認】
【備考】オス・老人 オーストラリア出身
【シティパティ】
【状態】健康
【思考】ヴェロキラプトル以外は皆殺し
【備考】オス・若者 中央アジア出身 ヴェロキラプトルとは共同営巣のパートナー
参加者紹介
【メガラニア】
新生代第四紀更新性。オーストラリアに生息。
地上性では史上最大のトカゲで、ほんの1万年前まで生息しており、アボリジニの祖先とも遭遇していたと思われる。
なお、現在でも時折目撃報告がある。
【シティパティ】
中生代白亜紀後期カンパニアン期。中央アジアに生息。
かつて「オヴィラプトル」と呼ばれていた恐竜の一種。
巣の上で卵を抱いたまま化石化した標本で有名である。
鳥に近い恐竜とされるが、鳥類と似た特徴はいずれも収斂進化だという説もある。
しかしごく近い種類の恐竜から羽毛痕が見つかっていることから、羽毛があったのは確実視される。
- 11 : ◆sOMmvl0ujo:2013/03/11(月) 18:22:18 ID:VpDTsm/Q0
- とりあえず今日の投下はここまでです
- 12 :名無しさん:2013/03/11(月) 20:21:33 ID:ug88wg.o0
- 乙でした。
なんとマニアックな!
卵泥棒恐竜って名前変わってたんですねえ。
ジャック・ホーナーいないなあと思ったが、この面子では格的に仕方なしですね。
テリジノサウルスって草食恐竜じゃなかったでしたっけ?
- 13 :名無しさん:2013/03/11(月) 20:24:42 ID:Vshd4Cfk0
- 書き手枠が無いのが悔やまれる
- 14 : ◆aWSXUOcrjU:2013/03/11(月) 20:43:17 ID:caFVr3oU0
- 投下乙です!
これってもう、>>1さん以外の書き手も予約していいんですよね?
ティラノサウルス、ケナガマンモスを予約させていただきたいのですが
- 15 : ◆sOMmvl0ujo:2013/03/11(月) 22:54:10 ID:n.51shM20
- 感想、ご意見ありがとうございます。
携帯から失礼します。
>>12
オヴィラプトルの名前が変わったわけではなく、いままでオヴィラプトルの化石だとされていた標本の一部が別種として、シティパティなどに分類されたという感じですね。
テリジノサウルスは確かに誤解を招きますね。
肉親恐竜というか、鳥類以外の獣脚類恐竜だとお考えください。
古生物学者は一応20世紀前半までから選びました。
テイヤール・ド・シャルダンを入れるかどうか最後まで悩みました。
>>13
全く想定していませんでした。
ご要望が多いようなら検討します。
>>14
早速の予約ありがとうございます。
もちろん大歓迎です。
- 16 : ◆JUJ3JcJgbI:2013/03/11(月) 22:56:23 ID:hlPw1ZDs0
- 面白そうな企画ですね!
ウィリアム・バックランド、トロオドンを予約させていただきます!
- 17 : ◆JUJ3JcJgbI:2013/03/11(月) 23:02:39 ID:hlPw1ZDs0
- そして書き上がったので投下させていただきますね!
- 18 :さよなら創世記 ◆JUJ3JcJgbI:2013/03/11(月) 23:03:38 ID:hlPw1ZDs0
-
「おお、神よ……!」
ユーラシア大陸の東部に位置する赤茶色の大地、ゴビ砂漠。
その地に、まるで迷い人のように彷徨う一人の老人の姿があった。
年の頃は六十過ぎぐらいだろうか。大きく禿げ上がった頭と、生真面目そうな顔立ち。
彼は決して道に迷っているわけではない。しかしながら、生きる道を見失っていた。
彼の名はウィリアム・バックランド司祭。
世界で最初に記載された三種の大いなる爬虫類“恐竜”のうちの一、メガロサウルスの発見者である。
バックランドのメガロサウルスとマンテルのイグアノドン、そしてヒラエオサウルスの三種から全ての恐竜研究は始まった。
後世においては恐竜学黎明期の代表的人物と評価され、植物学や地質学の分野でも多大な功績を残した自然科学の巨人である。
しかし、今の彼の様子からはそんな深遠なる智性は伺えない。
今の彼は、まさしく価値観という地図を取り上げられて人生の道に迷った、哀れな老人だった。
「おお……信じられぬ……あんな、あんな生き物が、存在して良い訳はない……」
バックランドはぶつぶつと独りごちながら、ふらふらと歩く。
譫言のように繰り返すのは、現実の否定……もっと正確には今さっき体験した現実の否定だった。
見たことも聞いたこともない、現代のものとは掛け離れた生物たち。
彼自身が想像したメガロサウルス、巨大なトカゲどころの騒ぎではない。
まるでおとぎ話の怪物が勢揃いしたような光景に、バックランドの価値観は根底から揺るがされたのだ。
しかし、普通の人間ならショックは受けても、ここまで茫然自失に陥りはしない。
ここまで苦悩し、煩悶し、生きる意味すら問うほどに悩みはしない。
しかし、バックランドは違った。彼にとって、「見たこともない生物」というのは全く違う意味を持っていた。
「あんな、あんな者どもを……神がお造りになったはずはない! そんな、はずは……!」
そう、バックランドは学者であると同時に司祭だった。キリスト教に一生を捧げた人物だったのである。
敬虔なキリスト教徒にとって、全ての生物は神によって今のままの姿で創造されたもの。
ノアの方舟によって生き残ったものこそが全ての生物の祖先でなければならない。
今のあらゆる生物とも異なる者どもが、存在してはならない。神がそんなものを生み出すはずがない……。
- 19 :さよなら創世記 ◆JUJ3JcJgbI:2013/03/11(月) 23:04:05 ID:hlPw1ZDs0
- 今のあらゆる生物とも異なる者どもが、存在してはならない。神がそんなものを生み出すはずがない……。
「――ふむ。なかなか興味深いな、“神”という存在は。我々の社会には存在しなかった概念だ」
「なっ……!?」
思いがけない方向からの言葉に、バックランドは目を剥き振り返る。
そして、そこにいた存在を視界に収めるないなや腰を抜かした。
「あ、あわわわわわ……」
「おや失敬。別に捕って喰おうというわけではないよ。私の見立てでは君は中々知性的な個体のようだからね」
一見すると毛のない鳥のようだ。全長は2mに満たないぐらいだろうか。
しかし個々の特徴はトカゲのようにも見える。大きな目に知性を宿していることを覗けば。
恐竜学が生まれた時代の人間であるバックランドは、これこそが“恐竜”だとは思いもしなかった。
その鳥トカゲはまるでバックランドを値踏みするように眺め、それから自己紹介をした。
「先に名乗らせていただこう。私は“トロオドン”。君とは文化的な交流を持てると踏んでいるのだが、どうかね?」
大きな脳と立体視が可能な両目を持ち、恐竜史上最大の知性を持つとすら推測されるトロオドン。
バックランドが初めて出会ったのは、皮肉にも人類が未だ目にしたことのない知的な爬虫類だった。
▼ ▼ ▼
「なるほど、君の苦悩には得心が行った。難儀なものだな、敬虔なる信仰心というものは」
数十分後。気付くとバックランドは、自分の悩みを洗いざらい打ち明けていた。
単純に相手の雰囲気に呑まれたというのもある。しかし、単純に聞いて欲しかったのかもしれない。
自分の中で堆積するばかりの、このジレンマを。
こんな得体の知れない生き物相手に話している自分が滑稽にも思えたが、相手は誠実に聞いてくれている。
バックランドはどこかこのトロオドンの知性に心を許しかけているのかもしれなかった。
- 20 :さよなら創世記 ◆JUJ3JcJgbI:2013/03/11(月) 23:04:32 ID:hlPw1ZDs0
-
「神は完全なのだ……神が、私を裏切るはずはないのだ……こんな現実は、夢に決まっている……」
「ふむ。私も夢かね? なかなかに哲学的ではあるが、しかしそれは違う。理性的になりたまえ」
「うっ……し、しかし、あれだけの種が“ノアの大洪水”だけで滅んだはずはないではないか!」
「そうとも。私はその大洪水とやらは知らないが、この地上の全生命が一度の洪水で壊滅するなどありえんよ」
トロオドンが断言し、バックランドが呻く。
心のどこかで「やはりそうか」と納得の声が上がったが、バックランドは無視した。
「そ、そんな……あれだけの多種多様な生物が全て実在したなど……嘘だ……」
「嘘とは言うがね、バックランド君。君の中では、初めから答えは出ていたのではないか?」
「なっ、」
トロオドンの問いに、バックランドは言い返せない。
そのことについて考えてはいけないと頭の中で警鐘が鳴り響いている。
よりにもよって、生涯を信仰に捧げたこのウィリアム・バックランドが、神の世界を疑っていたなどと……!
「バックランド君。君は確かにメガロサウルスと呼称される恐竜の骨を発掘した。
それは現代のあらゆるトカゲとも異なるように見えた。少なくとも神が創ったものとは思えなかった」
「や、やめろ……!」
「だから君は、“ノアの大洪水”によって神自らによって淘汰された悪しき種族ということにした。
君は宗教者達からよくぞ真実を見抜いたと賞賛され、自分の信仰心とも折り合いをつけることができた」
「やめろ、やめてくれ……!」
「しかし君は本当はこう考えていた。証拠が見つかれば見つかるほど、事実と聖書は矛盾すると。
大洪水は本当にあったのか。恐竜達は本当に洪水で滅びたのか。聖書は――誤りだったのではないか、と」
「やめてくれぇぇぇぇぇ!」
残り少ない頭髪を掻き毟りうずくまるバックランドを見下ろし、トロオドンは興味深そうに呟いた。
「やはり尊敬に値する知性の持ち主だ、君は。社会規範に疑問を持てる個体などそうはいないよ。
君と共に行動すれば私も更なる刺激を得られるようだ。このバトルロワイアル、なかなかどうして悪くない」
- 21 :さよなら創世記 ◆JUJ3JcJgbI:2013/03/11(月) 23:04:53 ID:hlPw1ZDs0
-
学術的関心に逸るトロオドンだが、バックランドはそれどころではなかった。
彼の神は死んだ。いや、初めから死んでいたのかもしれなかった。
そして、彼はこれから、この地球の真実の歴史を受け入れなければならないのだ。
「しばらくはこの土地を漫遊するとしようじゃないか、バックランド君。
私や君とは別の時代の生物とも出会えるかもしれないぞ。好奇心で心が踊り出しそうだよ」
自分とは正反対の感情を見せるトロオドンの言葉に、バックランドは魂の抜けた顔で頷くのが精一杯だった。
【一日目・黎明】
【アジア北部・ゴビ砂漠】
【ウィリアム・バックランド】
【状態】健康、激しい精神的ショック
【思考】(茫然自失)
【備考】60代、科学と宗教の板挟みになって精神のバランスを崩す前
【トロオドン】
【状態】健康
【思考】知識欲が最優先(殺し合いには関心なし)
【備考】オス、成体 アメリカ出身
- 22 : ◆JUJ3JcJgbI:2013/03/11(月) 23:05:17 ID:hlPw1ZDs0
- 投下終了しました。こういう方向性で大丈夫でしょうか?
- 23 : ◆sOMmvl0ujo:2013/03/11(月) 23:24:32 ID:n.51shM20
- 投下乙です!早速ありがとうございます。
バックランドといい、初期の有名な恐竜学者は本当に報われない人生送った人が多いですよね…
トロオドンは意外なキャラ付けで楽しかったです。
- 24 :名無しさん:2013/03/11(月) 23:32:51 ID:s2I/QT6c0
- 書き手枠あるなら11枠入れると111人でいい感じですね
- 25 : ◆aWSXUOcrjU:2013/03/12(火) 01:00:43 ID:V4dRi5T60
- 投下乙です
よもや恐竜が知性を得るとは……これもこのロワならではで、とても面白いですね
自分もティラノサウルス、ケナガマンモス分を投下させていただきます
- 26 :竜王 ◆aWSXUOcrjU:2013/03/12(火) 01:02:22 ID:V4dRi5T60
- 荒涼とした平原に、静かな夜風が吹き抜ける。
満天の星空の中心で、銀月が穏やかな光を放つ。
ずぅん――と大地を揺らす音が、静寂の最中に響き渡った。
喉を鳴らし、吐息を漏らし、ぎらついた瞳を煌めかせるのは、全長15メートルの巨獣だ。
その名も名高き白亜の大帝。地上最強の肉食生物。
巨大竜王――ティラノサウルス。
地球の歴史上において、最強と讃えられる暴君竜が、月下にその姿を現していた。
「随分な殺気じゃねェか」
文字通り、低く、唸るように。
くつくつ、と笑い声を漏らしながら、ティラノサウルスは闇へと呟く。
否、正確にはその奥に立つ、もう1体の獣に向けてだ。
ごわごわとした体毛によって、全身がびっしりと覆われている。
異様に長い鼻を挟むように、両サイドからせり出しているのは、これまた異様に長い牙だ。
その名を、ケナガマンモスと言う。
恐竜の時代よりも遥か遠い、氷河期の大地を生き抜いた、最重量級の哺乳類だった。
「俺の見たところじゃ、普段は、そこらの草でも食ってるんだろう?」
草食動物の割には、えらく殺る気に満ちてるじゃないか、と。
毛むくじゃらの奥から吹きつける、刺すような気迫を受け止めながら、暴君はマンモスへと問うた。
今までに見たことのない相手だが、牙の配置や、推測される顎の大きさからして、肉食というわけではなさそうだ。
あれでは外敵を刺し殺すことはできても、獲物にかじりつくことはできない。
しかし、そうした草食動物にしては、奴の放つ殺意は異常だ。
来る者は拒み、されど自らに関せぬ者には、無暗に襲いかかることをしない奴らには、これほどの気配は似つかわしくない。
「……私の母は、肉食の獣によって殺された」
重く、低く。
ややあって、マンモスの小さな口が、ティラノサウルスの問いかけに答えた。
「昔、襲われた私を庇い、足を痛めてしまっていてな。サーベルタイガーの群れに目を付けられた」
「よくある話だ。さして珍しいことでもねえ」
生存競争の場において、それは至極当たり前のことだ。
マンモスの語る母の過去を、ティラノサウルスは一蹴する。
子供が外敵に狙われることも、親が傷を負うことも。
あるいはその傷が尾を引いて、抵抗もかなわず殺されることもだ。
手を下した当人を恨みこそすれ、世界のシステムそのものに、怒りを覚えるのは道理とは言えない。
「私もそのつもりだった。大地の声を聞くその時までは」
ティラノサウルスの反論に、されどマンモスはそう返すと、四肢を動かし姿勢を整える。
「今まさに思ったのだ。殺してよいと言うのであれば、」
乗らせてもらうのも手ではないか、と。
やや前掲気味のその踏み込みは、正面への突撃に備えてのものだ。
角竜・トリケラトプスらを襲った際にも、何度か見覚えのある光景だった。
「お前が肉を食らう獣であるならば、悪いが、恨みを晴らさせてもらう」
「面白ぇ」
それならば、と暴君もまた、マンモスの放つ殺意に応じる。
奴の恨み言世迷言には、まるで理解も共感も持たない。
それでも、殺されるわけにはいかない。何より己のプライドが、引き下がることを許さない。
巨獣と巨竜――平原を舞台に向き合う両雄が、静かに闘志をぶつけ合う。
闇夜に張り詰めたプレッシャーが、幾千万の刃となって、互いの身体に突き刺さる。
「――――――ッ!!」
仕掛けたのは、双方同時だった。
ティラノサウルスの筋肉が脈打ち。
マンモスの体毛が風に揺れる。
巨大な足を踏みしめて、双方が一直線に走り出す。
ずしん、ずしん――と轟く響きは、まるで地震が起きたかのようだ。
雑草ごと地面を掘り返し、暗黒を土色で濁しながら、竜と獣は激突する。
どしん、と鳴り響く鈍い音。
頭蓋を突き出したティラノサウルスが、マンモスの牙と激突した瞬間。
文字通り大気が鳴動し、びりびりと草木を震わせた。
ただの一撃で、この迫力だ。
衝突の瞬間の衝撃は、音と空気の振動だけで、鳥すらも叩き落とすのではないかと錯覚させる。
- 27 :竜王 ◆aWSXUOcrjU:2013/03/12(火) 01:02:56 ID:V4dRi5T60
- 「……!」
真っ向勝負を制したのは、ケナガマンモスの方だった。
互いに弾かれ合う同士だったが、僅かにティラノサウルスの方が、強くその身体を揺さぶられた。
牙が刺さったわけではない。弓なりに大きくしなった牙は、構造上、竜には刺さり得ない。
お互いの優劣を分けたのは、その重量の差にあった。
ティラノサウルスの体重は、一般には5トンほどと言われている。
対するマンモスの体重は、それを凌ぐ8トンだ。足が4本もある分、踏み込みの安定においても、マンモスの方が勝っている。
(これほどのモンだとはな)
もちろん、ティラノサウルスにも、全く想定できなかった事態ではない。
恐らくはその体格からして、この未知の毛玉の質量は、トリケラトプスとほぼ同等だろう。
それでも、そのトリケラトプスと正面からぶつかった経験が、ティラノサウルスには全くなかったのだ。
マンモスの曲がった牙と違い、角竜の頭部に並んだ角は、真っ直ぐ正面を向いていたからだ。
あれを真っ向から突き刺された者が、無事で生きているはずもない。故に角竜との戦いは、側面から攻めるのが定石だった。
トリケラトプスの凶器が、あの角だけではなかったとは。
皮肉にも、体格以外には、まるで共通点のない敵を相手に、その事実を思い知らされる。
「――――――!!」
咆哮と共に、巨獣が迫った。
一瞬のティラノサウルスの怯みを、好機と見なしたマンモスが、追撃のために飛びこんできたのだ。
冗談じゃない。これ以上あの突撃に、まともに付き合ってたまるか。
暴君は自らの巨体を、マンモス目掛けて振り回す。
標的を遥かに凌駕する、体長15メートルの巨躯――その背後に突き出した、丸太のような尻尾をぶつけるためだ。
「ッ!?」
そしてマンモスはこの一撃を、まともに頭頂部に食らった。
毛むくじゃらの巨獣の身体が、大きくよろめき大地を揺らした。
ずずぅん、と響き渡る音と共に、一層盛大な土煙が上がる。
一撃一撃の激突が、大地を裂くほどのインパクトを誇る。
これが太古の昔に繰り広げられた、巨大生物同士の戦いの姿だ。
キログラムなどでは計り知れない、文字通り天地を揺り動かす激戦なのだ。
(なんと……!?)
そしてそれはマンモスにとっても、未知と言っていい領域だった。
彼の暮らしていた氷河期には、これほど巨大な肉食獣は、ほとんどいないと言っていい。
狼やあの剣歯虎共も、ここまで大きくはなかった。マンモスの戦ってきた相手は、常に自分より小さかった。
ひょろひょろとぶら下がっている程度の尻尾――それをまさか武器として、顔面に叩きつけてくるとは。
それが巨木のような質量を伴い、これほどに脳髄を揺り動かすとは、全く思ってもみなかったのだ。
「――――――ッ!!」
竜の叫びが鼓膜を突き刺す。
正面を向いた暴君が、轟然とその牙を剥く。
真っ向からの突撃ではない。狙いはよろめいた身体の側面だ。
駄目押しにその顔面を振り、マンモスの横っ腹を殴りつける。
たまらず、マンモスの巨体は、爆音と共に横倒しになった。
多様な恐竜達がひしめき合う時代、ティラノサウルスの王座を裏打ちしたのは、その圧倒的な顎のスケールだ。
暴君竜の巨大な頭部は、ジュラ期の覇者・アロサウルスのそれを、一回りも凌ぐサイズを誇る。
噛み砕く力も相当ながら、ティラノサウルスの頭部は、それ自体が最強の鈍器でもあるのだ。
「――――――!!」
もはや遠慮も躊躇も要らない。倒れた獲物を倒すのに、それほどの時間は必要ない。
唸りを上げるティラノサウルスは、遂にその大顎を開き、マンモスの首筋へと喰らいついた。
ぶしゅう、と赤い血が噴き出す。
茶色の土煙と混ざり合い、漆黒の夜へとぶちまけられる。
最大咬合力、実に8トン。その強烈なプレッシャーは、同族の骨すらも粉砕する。
最強の鈍器に秘められた牙が、今まさに最凶の魔剣と化す。
刹那、悲鳴にも似た鳴き声が上がった。
追い詰められたマンモスが、最後の抵抗を示してのたうち回った。
さしものティラノサウルスも、これには一瞬振り払われる。
しかし、重量が重量だ。たった一瞬程度では、マンモスの巨躯は立ち上がれない。
- 28 :竜王 ◆aWSXUOcrjU:2013/03/12(火) 01:03:16 ID:V4dRi5T60
- 「――――――ッ!!」
その隙を逃す暴君ではない。
咆哮を伴った一撃は、再び獲物の首を捕えた。
べきべきと嫌な破砕音が、大きなマンモスの耳へと届く。
鮮血が首から噴き出すほどに、じわじわと意識が薄れていく。
畜生、畜生、と声が上がった。
死ねよ、死んでしまえよと、怨嗟の声がマンモスから漏れた。
呪いの言葉を呟きながら、血風の吹き荒れる戦いは、静かに決着へと向かっていった。
【ケナガマンモス 死亡確認】
【備考:オス・若者 東アジア出身 サーベルタイガーの群れに母を殺された】
◆
「たまらねぇな」
滴り落ちる鮮血で、てらてらと牙を濡らしながら。
舌先に広がる肉汁に、呟く声を躍らせながら。
マンモスの死体を足で踏み、噛みちぎった肉を味わいながら、ティラノサウルスは勝利に酔う。
腹が減ることはないというのは、なるほど本当のようだ。
食べ始める前の空腹感も、食べ終えた後の満腹感も、どちらも今は感じられない。
だとしても、ティラノサウルスの性分までは、微塵も塗り潰されてはいなかった。
食事の喜びというものは、何も満腹を得ることだけではない。
鈍重なティラノサウルスは、実は腐肉専門だったのではというのは、学説ですらない与太話だ。
要するに、美味いのだ――直前まで確かに生きていた、ナマの肉というものは。
「食うために殺し合う必要はねぇ、とは言われたが……だからってこいつは、クク、やめられねぇな」
くつくつと笑みを漏らしながら、ティラノサウルスは歩み始める。
先ほどまで味わっていた一口を、一息に喉へと飲み込むと、次なる獲物を探し始める。
黙って殺されるつもりはない。向かってくる者には容赦はしない。
そして向かって来ない者を、そのまま放置するつもりもない。
歩むなら最後の勝者となるまで、全てを殺す修羅の道だ。
獲物を仕留める快感と、舌を震わす勝利の美酒――肉食獣の本能に従い、それらを存分に味わうだけだ。
ずしん、ずしんと音を立てながら、地上最強の竜王は、夜の闇へと消えていった。
【一日目・黎明】
【アジア東部・華北平原】
【ティラノサウルス】
【状態】健康
【思考】全ての動物を皆殺しにし、その血肉を味わい尽くす
【備考】オス・中年 北アメリカ出身
- 29 : ◆aWSXUOcrjU:2013/03/12(火) 01:03:28 ID:V4dRi5T60
- 投下は以上です
- 30 : ◆sOMmvl0ujo:2013/03/12(火) 01:17:09 ID:lObFbMEU0
- 投下乙です!
おそらくこの二頭が実際に対峙したらこうなるんだろうなと思える、リアルなバトルですね。
また、自分はティラノサウルスはメスのイメージが強かったので、オスでマーダーというのは逆に意外でした。
- 31 : ◆ou4L/DcH3E:2013/03/12(火) 01:34:43 ID:.uZ1zheE0
- プテラノドンを予約させていただきます
- 32 : ◆sOMmvl0ujo:2013/03/12(火) 01:36:17 ID:lObFbMEU0
- ここで私も予約をします。
メアリー・アニングとヴェロキサウルスを予約します。
- 33 : ◆k3fZfnoU9U:2013/03/12(火) 01:55:40 ID:rVYOQ0io0
- トリケラトプス、クロノサウルスを予約します
- 34 : ◆sOMmvl0ujo:2013/03/12(火) 11:55:17 ID:utc7O2G20
- メアリー・アニング、ヴェロキサウルス投下します
- 35 :それが私には楽しかったから ◆sOMmvl0ujo:2013/03/12(火) 11:55:42 ID:utc7O2G20
- カツーン カツーン
岩だらけの海岸に、何か硬いもの同士がぶつかるような音が響き渡る。
その音に、一頭の肉食恐竜が足を止めた。
(何だ? 誰かいるのか?)
興味をそそられた彼は、その音のするほうへと歩いていった。
恐竜とはいっても大型犬程度の体長で、背丈はヒトよりも低い。
決して強い動物だとは言えなかったが、彼には一つだけ他の恐竜には負けないと自負しているものがあった。その足である。
彼の時代の彼のいた場所では、全力で走ればそのスピードに追いつける者など誰もいなかった。
よって、例え音のする場所に危険な者がいたとしても必ず逃げおおせられるという自信があった。
音は次第に大きくなっていく。どうやら、岩と岩がぶつかる音のように聞こえる。
一体誰がそんなことをしているのかと、いぶかしみながらも岩陰に隠れて首をそっと伸ばし、覗き込んだ。
薄暗がりの中、波打ち際で、奇妙な生物が片手に石を握って、足元の岩に何度も何度も打ちつけていた。
何のためにそんな行為をしているのか。警戒心よりも興味のほうが勝り、更に身を乗り出した。
そして、石を握ったままふと振り返ったその生物と目が合った。
「「あ…」」
その後は互いに言葉が見つからない。
「えーと……」
かなりの沈黙の後、石を握った人間の少女が口を開いた。
「私はメアリー。あなたは?」
海岸でスカートを膝の上までたくし上げ、尻まで海水に濡れている姿など他の人間に見られたら赤面ものだが、相手が恐竜ならさほど気にならなかった。
「ああ、俺はここではヴェロキサウルスって名前なんだ」
「ふうん、聞いたこと無いなあ?」
顎に手を当てて考えこむメアリー。
どうやら全くもって安全な相手らしい。ヴェロキサウルスはもう一段階警戒を緩めた。
もちろんすぐに走り出せる用意は忘れていない。
「んなことより、一体何をやってたんだ? あんたの種族の儀式かなんかか?」
「ううん、ちょっと化石を探してただけ」
「かせきぃ?」
一際大きな波が打ち寄せ、運ばれた海水が彼らの足元を流れていった。
「うんそうそう。地層の構造から見て、化石が埋まってる可能性が高そうだと思ったからね。けどやっぱりただの石じゃダメだねー。
ハンマーかなんかがあればいいんだけど。あとできればスケッチブックと筆記用具もねー。
うーん、ロケーションとしては最高なんだけどなあ、惜しいなあ」
更に話を続けようとするメアリーに、どうにか割って入る。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺にもよくわかるように説明してくれないか……化石とかなんとかとか」
するとメアリー、途端に目を輝かせる。
「化石って言うのはね、大昔の生きもの骨や殻が鉱物に変化したものなの。もちろん掘り出して集めるだけでも楽しいんだけど、沢山の化石を比べてみれば色んなことがわかるんだから。
この海岸は見たところ白亜質の海生層ね、だから化石が含まれてる可能性はかなりあると思うの。
もうちょっと明るくなってからもう一度掘ってみたいなあ。この地点もいいんだけど、あっちのほうにもいい感じの露頭があって(以下、延々と続く)」
メアリーの話のなんとか四分の一くらいを理解しながらも、クラクラするような頭で聞いていたヴェロキサウルス、メアリーが一呼吸置いたのを見計らって口を挟んだ。
「でもそんなことやってる場合なのかよ? さっきの奴の話が本当なら、最後の一匹になるまで殺しあわないといけねえって……」
「へ?」
メアリー、全く予想外の話を聞いたかのように目を丸めて驚いた。そしてそのまま顎に手を当て、たっぷり一分は考えあぐねる。
そして、
「ああ、そう言えばそうなんだっけ!!」
「忘れてたのかよ!!」
ヴェロキサウルスは生まれて初めて、生死に関係しないことで激昂した。
【一日目・黎明】
【北アメリカ・アラスカの太平洋側沿岸】
【メアリー・アニング】
【状態】健康
【思考】化石を採集する
【備考】12歳時点(イクチオサウルスの化石を発見した頃)からの参戦
【ヴェロキサウルス】
【状態】健康
【思考】殺し合いにはとりあえず乗らない
【備考】オス・若者 南米出身
- 36 :それが私には楽しかったから ◆sOMmvl0ujo:2013/03/12(火) 11:56:20 ID:utc7O2G20
- 参加者紹介
【メアリー・アニング】
1799-1847。イギリスの化石ハンター・化石商人。
近代地質学・古生物学の黎明期において、計り知れないほどの貢献を残した女性である。
故郷リージスで父の跡を継いで化石商人となり、わずか12歳の時に世界初となるほぼ完全な海生爬虫類(イクチオサウルス)の化石を発見。
その後も首長竜や翼竜の化石を発掘し、ロンドンにいる研究者たちや各国の博物館に送り続けた。
幼少期に雷に打たれたことに始まり、極貧や病と闘いながら一流の学者たちを支え続けたその生涯は、今でも古生物ファンの間では語り継がれている。
【ヴェロキサウルス】
中生代白亜紀後期チューロン期。南米に生息。
たった一つの不完全な後肢とごく僅かな断片的化石しか見つかっていない恐竜だが、その後肢に見られる著しい特殊化から、肉食恐竜マニアの間では人気が高い。
より早く走るための適応として、第三中足骨が著しく太く丈夫になっている。これは、他の大陸で発見されたランナータイプの肉食恐竜とは全く逆の特徴で、当時孤立していた南米で速さを求めて独自の道を歩んだことが伺える。
全体像は全くわかっていない恐竜だが、当時の南米の小動物にとっては非常に恐ろしい動物だったと思われる。
- 37 :それが私には楽しかったから ◆sOMmvl0ujo:2013/03/12(火) 11:56:33 ID:utc7O2G20
- 以上になります。
- 38 : ◆wdsIwtMsVI:2013/03/12(火) 13:01:44 ID:DW8nS1M.0
- 投下乙です!
現代人より落ち着いてる原始人や、人類を憎むハトや、狡猾に生きる恐竜や
はたまた知識を求めたり、大暴れしたり、化石に夢中だったり目が離せませんな!
個人的には>>1さん以外の書き手さんがかかれたキャラについて>>1さんに御教授願いたいです。
簡単なキャラ紹介にもなりますし!
てなわけでケツァルコアトルスとドードー予約します。
- 39 : ◆sOMmvl0ujo:2013/03/12(火) 14:18:37 ID:utc7O2G20
- 予約ありがとうございます。
参加者紹介については、登場話を書かれた書き手氏にお任せしたいと思います。
その書き手氏から要請があれば、代理という形で私が担当します。
ネクトカリス・イブクロコモリガエル・インドリコテリウム・メガロドンで予約します。
- 40 : ◆sOMmvl0ujo:2013/03/12(火) 15:45:48 ID:utc7O2G20
- ネクトカリス・イブクロコモリガエル・インドリコテリウム・メガロドン投下します
- 41 :揺り篭と墓場の海 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/12(火) 15:46:37 ID:utc7O2G20
- 深くて暗い海の底には、生命の気配など微塵も無かった。
しかしよく目を凝らして見れば、小さな小さな無脊椎動物が死に物狂いで泳いでいるのがわかっただろう。
ネクトカリスは、最初の場所で地球から説明を聞いた後いきなりこの海の中に投げ出された。
大陸付近の浅い海に暮らしていたネクトカリスによっては、海流が急な深い海は異界にも等しかった。
光を求めて必死で泳いでみても、ただ海水の流れに翻弄されるのみだった。
彼女は、今回殺し合いのために集められた生物の中でも最小。わずか二センチメートルの大きさしかない。
二本の触手を必死で動かしてみても、満足に水を掻くことすらもできない。
極めて粘度の高い液体の中に落とされたも同然だった。
彼女はパニックに陥り、わけもわからずに冷たい海水の中でもがき続けていた。とても殺しあうどころの騒ぎでは無い。
「……もしもーし?」
そんな彼女にいつからか、寄り添って漂うもう一つの小さな影があった。
ネクトカリスよりも二周りほど大きなカエルだった。
「もしもーし? 私の声聞こえてるー?」
カエルはネクトカリスとは対象的にのんびりと水を掻き分けながら泳いでいた。その姿を視認したネクトカリスは思わず悲鳴を上げた。
「イヤ、イヤ、こないでえええええ!!」
デタラメに触手を動かしながら、必死でカエルから逃げようとする。
「心配しないで、別にあんたを食べるつもりなんかじゃないんだから」
「やだやだ、近寄らないで!! あっち行ってったら!!」
この場にいるほとんどの動物が自分とは比べ物にならないほど巨大だということは、彼女も自らの目で確認していた。
さっきあの場にいたのは、小山のように大きな動物たちばかり。
それらを見て縮み上がっていた彼女が、自分より僅かに大きな相手にも過剰な警戒心を発動させたとしても無理からぬことであった。
「もう、そんなに連れなくしないでよ」
カエルは落ち着いた素振りでネクトカリスの後を追いかける。
だがその時、急激に水流の動きが変化した。暗い水の中から、黒く大きな影が姿を現した。
ネクトカリスが気付いた時には、その巨大な怪物の顔がすぐ間近にあった。
だが、怪物は彼女の存在など全く意に介さないかのように、長い四肢で海底の泥の上を急ぎ足で歩んでいった。
ネクトカリスとイブクロコモリガエルは、怪物が起こした水流と砂煙に吹き流されるようにして怪物の来た方向へと飛ばされていった。
そして、そこで更に信じられないものを目にした。
視界一杯に広がる、信じられないほど巨大な牙の並んだ大きな口である。
その時初めて彼女たちは、先ほどの怪物はこの巨大な口から逃げていたのだということを悟ったのだった。
巨大な口は、辺り一帯の海水を、彼女たちもろとも飲み込もうとした。
こんなに早く、こんなところで死んでしまうのか。
そう覚悟を決めようとしたネクトカリスの体を、一つの口が丸呑みにした。
- 42 :揺り篭と墓場の海 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/12(火) 15:47:04 ID:utc7O2G20
- インドリコテリウムは必死で逃げていた。が、それは明らかに最初から勝敗の決している逃走であった。
呼吸が出来るといえども海の生物ではないインドリコテリウムは、海水に邪魔されながら慣れない海底を走って逃げなければならなかった。
しかしいかに長い四肢を力強く動かそうとも、追跡者との距離は縮まる一方だった。
そして彼の恐怖は、一瞬の激痛とともにようやく終わった。
メガロドンの巨大な口は、インドリコテリムの首筋から肉を抉り取り、海の一部を真紅に染めた。
味わったことのない肉の味を喉に流し込みながら、メガロドンはしばし勝利に酔いしれた。
だが陸上最大の哺乳動物であっても、彼の闘争心を完全に満たしてはくれなかった。
彼の願いは、優勝して生還することでも無ければ他の動物を皆殺しにすることでも無い。
ただ、強い敵と戦いたい。
強い者を倒し、その血肉を自分の一部としたい。
彼の胸中にあるのはそれだけだった。
「図体がでかいばかりで、案外骨の無い奴だったな……次からはもっと相手を選んでいくか」
辺りに漂うインドリコテリウムの血の匂いが、彼の血を滾らせていた。
ネクトカリスは狭い暗がりの中に閉じ込められていた。
一体ここはどこだろうか。自分は死んだのでは無かったのか。
少し落ち着きを取り戻してきた頭でそう考える。
しばらくして、突如彼女はその狭い場所から外へと吐き出された。
目の前にあったのはカエルの顔。その口は彼女の触手の端を咥えていた。
さっきまで彼女がいた場所はカエルの腹の中だったのだ。
カエルは彼女を守るため、自分の腹の中に彼女を避難させると泳いでメガロドンから逃げたのである。
「ほらね、小さな生き物は助け合ったほうがいいんですよ?」
カエルは彼女の触手を咥えたまま、そう微笑んで見せた。
【一日目・黎明】
【南太平洋・ニュージーランド東沖】
【インドリコテリウム 死亡確認】
【備考】オス・壮年 中央アジア出身
【ネクトカリス】
【状態】健康
【思考】呆然
【備考】メス・若者 北アメリカ沿岸出身
【イブクロコモリガエル】
【状態】健康
【思考】ネクトカリスを保護する
【備考】メス・中年 オーストラリア出身
【メガロドン】
【状態】健康
【思考】強き者と戦う
【備考】オス・壮年 南太平洋出身
- 43 :揺り篭と墓場の海 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/12(火) 15:47:39 ID:utc7O2G20
- 参加者紹介
【インドリコテリウム】
新生代古第三期始新生から漸新生。ユーラシア一体に生息。
奇蹄類の黄金時代を代表する、史上最大の陸上哺乳類。
また名前の表記が非常にややこしいことになっている動物でもある。
インドリコテリウム・パラケラテリウム・バルキテリウムは全て同じ動物に付けられた名前である。日本の図鑑などでは本によって違う名前が使われているため、混乱する人も多い。
現在では最初に命名された「パラケラテリウム」を使うのが望ましいとされているが、いまだ「インドリコテリウム」の名前も日本ではよく使われ、むしろこちらのほうが馴染みがあるため本ロワではこの名前を採用した。
【ネクトカリス】
古生代カンブリア紀中期。北米から発見されている。
カンブリア紀のいわゆるカンブリアン・モンスターについては近年急速に見直し作業が進んでいるが、その中でもネクトカリスは復元図が全く変わってしまったことで有名。
かついてはエビの頭に魚の胴体がくっついたような姿で復元されていたが、保存状態のいい化石の調査によって、頭足類の祖先にあたる軟体動物である可能性が高まった。
ネクトカリスに限らず、カンブリアン・モンスターは現在では原生動物の各門のれっきとした祖先であるとみなされており、「進化の実験過程で生まれた全く異質な生物」という史観はもはや過去のものである。
【イブクロコモリガエル】
1983年絶滅。オーストラリアに生息。
メスが卵を自分の胃の中に飲み込み、胃の中で孵化させ、育ててからカエルになった子どもを口から吐き出すという奇怪な育児方法で知られる。
絶滅の理由ははっきりしない。近代に絶滅したカエルにはこういうパターンが多い。
【メガロドン】
新生代新第三期中新生から鮮新世。ほぼ世界各地の海洋に生息。
歯の化石以外はほとんど見つかっていないが、推定体長は14メートルから20メートルと、巨大ザメとして知られる。
クジラを常食としていたことをうかがわせる化石がいくつか発見されている。
なお、属名ではなく種名のほうで一般的に知られている稀有な古生物でもある。
- 44 :揺り篭と墓場の海 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/12(火) 15:48:00 ID:utc7O2G20
- 以上になります。
- 45 : ◆BdIG1U8FAs:2013/03/12(火) 16:05:31 ID:WyBu62xg0
- 皆様投下乙です&>>1さんスレ立て乙です
素晴らしい個性に溢れたロワ、思わず参加したくなってしまいました。
ということで、
ミトコンドリア・イブ、Y染色体アダム、スミロドン 予約します。
- 46 : ◆gxtITL8wNY:2013/03/12(火) 21:20:24 ID:4PawMe7.0
- アノマロカリスを予約します
- 47 : ◆BdIG1U8FAs:2013/03/12(火) 21:20:50 ID:WyBu62xg0
- 改めまして、皆様投下乙です! まとめて感想つけちゃうっ!
>オーウェン博士恐竜に会う
オーウェンってこんな性格悪い人だったのかwww
北京原人と子育て恐竜が共にイイ奴だから余計に現代人の酷さが目立つ……
そして石頭のジジイはこの先も色々とやらかしそうだ。
>五十億分の一の物語
うわー、この恨みは強そうだ……
しかし現代人以上に、ホモ属の先祖あたりに会った時のリアクションがどうなるんだろうと楽しみです
>王者の長き眠り
怖ぇぇ……! 知恵を使ってくるなぁ……!
この奉仕マーダーはまだまだ仕掛けてきそうで目が離せませんね!
>さよなら創世記
うわー、そりゃ確かに信仰も揺らぐよなぁ……。
しかしこの恐竜の賢者は楽しそうだ。この無垢な探求心は面白いなー
>竜王
ガチンコ勝負っ!
誰もが夢見た対戦カード、決着に至る過程の説得力も見事っ!
>それが私には楽しかったから
無邪気だ、メアリーちゃん天然過ぎるwww
そりゃヴェロキサウルスも思わず叫ぶわwww
>揺り篭と墓場の海
これは面白い出会い。陸のモノと海のモノ、本来交わらぬはずの線が上手く出会いましたな
この小粒なコンビはいいコンビになりそうな予感っ
さて、では私も、予約分を投下致します。
- 48 :失楽園 ◆BdIG1U8FAs:2013/03/12(火) 21:21:41 ID:WyBu62xg0
-
◆
ミトコンドリア・イブ。
またの名を、ラッキー・マザー。
現代に生きる人類の母系を辿っていった時、たった一点に収斂する、偉大なる母。
彼女について、現代の人類に分かっていることはほとんどない。
そもそも、化石などで存在自体が確認された訳ではないのだ。
遺伝子解析の果てに存在が推測された、ただそれだけの理論上の存在である。
彼女の人柄、能力、その他もろもろを確定させるための材料は、どこにもない。
しかし、推測ならできる。
例えば、彼女が類まれなる幸運に恵まれていたこと。
当時存在したはずの他の血統が全て途絶える中、彼女の血統だけが残るには、単純な能力差だけでは説明できない。
例えば、彼女が高い生存能力、高い危機察知能力を持っていたこと。
何はともあれ彼女自身が生き延びねば話にならない。子供たちを守れなければ先に繋がらない。
彼女が健康で魅力的であったことも、言い切ってしまって良い事柄かもしれない。
当時の基準での「魅力的」がそのまま現代人の視点にも当てはまるかどうかは不明だが、ともあれ彼女は、多くの子を残したのだ。
そして、例えば――
◆
森の中、『彼女』は駆けていた。
現代人とほぼ変わらぬ、浅黒い肌の美少女と呼んでもよいような容姿、しかしその身を包むのは粗末な毛皮の服1枚。
木の根を飛び越え、枝の下をくぐり、素足で必死に駆けながら。
彼女はチラリと、背後を振り返る。
「ゼェ、ゼェ……ま、待ちやがれコイツ!」
「誰が待つもんですか!」
荒い息をつきながら彼女を追いかけていたのは、見るからに凶悪な肉食獣。
口の中に納まりきらない、2本の長い牙。
発達した前足には、鋭い爪が光る。
頭の高さは彼女の胸あたりだが、もしも2本足で立ち上がったりすれば見上げるほどの体躯となるだろう。
ちょっとした熊ほどの存在である。
彼女にとっても、初めて見るタイプの猛獣。
けれどもその脅威は疑うまでもない。
何しろ相手は、出会い頭に不意打ちで、その牙を彼女に向けてきたのである。
あと一瞬でも気づくのが遅れたら間に合わなかった、それくらいの紙一重の回避であった。
「畜生、この“スミロドン”様の飛びつきを避けやがるとは……! ハァ、ハァ、ゼェ……!」
「運が良かった、けど、このままじゃきっと……!」
勘の良さにはそこそこ自信のある少女である。幸運にも恵まれた。
けれど、このまま逃げ続けてもジリ貧にしかならないことも理解していた。
相手は思いのほか鈍足で、飛び跳ねる度に息を荒げているが、体力の限界が近いのは少女も同じ。
反撃しようにも、手元にもあたりにも使えそうな武器はない。素手でなんとかなる相手ではない。
悪い予感に怯えつつも、少女は駆けて、駆け続けて……
不意に、視界が開けた。
- 49 :失楽園 ◆BdIG1U8FAs:2013/03/12(火) 21:22:12 ID:WyBu62xg0
-
「っ…………!」
「ゼェ、ゼェ……! よ、ようやく追い詰めたぜェ……!」
木々が途切れた先に待っていたのは――広い川。彼女は絶望する。
泳げない訳ではない。
けれど、彼女を追う猛獣もまた、泳げるだろう。
むしろその巨体がハンデにならない、水中という浮力を受ける場においては――ここまでのような鈍足は、期待できない。
スミロドンを自称する獣もそれに気づいたのか、焦ることなく、ゆっくりと間合いを詰めてくる。
「い、いや……! 来ないで……!」
「故郷じゃ俺たちは、こういう場所に獲物を追い込んだモンさ……!
たまに、てめぇ自身も獲物と一緒にハマっちまうバカもいたけどな……!
さあ、てめぇの血肉の味を教えろやァ!!」
剣歯虎(サーベルタイガー)の異名を持つスミロドンが、その鋭い双牙の間でじゅるりと舌なめずりをする。
生きるために食う必要が無いと分かってはいても、目の前に初めて見る珍味が歩いていれば襲ってみたくなるのは当然の獣性。
牙も爪も蹄もない相手、組み伏せてしまえば勝負は決まったも同然。
スミロドンはそして、全身のバネに力を込めて、一挙動で少女に飛びつこうとして、
「――待てィ!」
飛びかかろうとしたその瞬間、横合いから上がった鋭い声に、少女も猛獣も揃って振り返る。
そこに居たのは――
「見も知らぬ仲だが……
男として、同族が襲われてるのを見過ごす訳にはいかないんでな! 邪魔させてもらうぞ!」
現代人にも似た容姿ながら、粗末な毛皮の腰巻1つという姿でしっかと立った。
なにか棒状のものを携えた、浅黒い肌の精悍な青年だった。
◆
Y染色体アダム。
現代に生きる男たちの父系を辿っていった時、たった一点に収斂する、偉大なる父。
彼について、現代の人類に分かっていることはほとんどない。
そもそも、化石などで存在自体が確認された訳ではないのだ。
遺伝子解析の果てに存在が推測された、ただそれだけの理論上の存在である。
彼の人柄、能力、その他もろもろを確定させるための材料は、どこにもない。
しかし、推測ならできる。
例えば、彼が類まれなる幸運に恵まれていたこと。
当時存在したはずの他の血統が全て途絶える中、彼の血統だけが残るには、単純な能力差だけでは説明できない。
例えば、彼が高い生存能力、高い危機察知能力を持っていたこと。
何はともあれ彼自身が生き延びねば話にならない。子供たちを守れなければ先に繋がらない。
また彼が存在したと推測される6万年前と言えば、ちょうど人類がその総数を激減させ、一時は絶滅すら危惧された頃に重なる。
多少の誤差はあるから「最も厳しかった時期」とまでは断言できないが、それでもラクな時代で無かったのは確かなのだ。
そんな苦難の季節に生を受け、見事多数の子孫を残した男が、身体・頭脳ともに優れていない訳がない。
そして、例えば――
◆
- 50 :失楽園 ◆BdIG1U8FAs:2013/03/12(火) 21:23:03 ID:WyBu62xg0
-
突然の乱入者。
スミロドンは先に追い詰めた方の少女を横目に、新たに現れた青年の方に向き直る。
見た感じとしても、先の言葉からしても、どうやら少女と青年は同じ種族であるらしい。
多少体格の違いがあるが、雌雄の差で説明がつく範囲だろう。
しかし、その体格の違いから言って、こちらの方がおそらくは強敵。
積極的に事態に関与してきたことから見ても、より警戒を要する相手であることは間違いない。
(一回り大型で、正面上方の膨らみがなくて……あとは、ありゃ何だ。左右非対称じゃねぇか。角か何かか?)
相手の戦力を図ろうとして、スミロドンは首を傾げる。
明らかにシルエットが左右非対称だ。片方にだけ、長い茶色の物体が伸びている。
今まで見たことのない生物の姿に少しだけ悩んだ彼だったが、しかしすぐに腹を決める。
「どうせちまちま考えてたって、やることは1つなんだ……!
さっさと仕留めさせてもらうぜェ!」
絶叫と共に、スミロドンは飛び出した。
飛び出しながら、大きく口を開く。
狙いは相手の首筋。全身の力を込めて、頭部を後ろに逸らす。
これぞまさに彼の一族が誇る必殺技、『スラッシュバイト』。
顎の力で噛み付くのではない――噛み付くために口を開いたのではない。
下顎が攻撃の邪魔にならないよう、どけるための120°の開口。
その上で、鋭い牙が伸びた頭部を槌のように振り下ろし、相手の急所を、神経を気管を動脈を、鋭利に瞬時に掠め斬る!
一撃で確実に命を奪う、まさに必殺の技。
何度も繰り返してきた攻撃だ、一瞬視界が途切れるからといって、外れる道理がない!
彼は必勝の確信を持って襲い掛かり――
――そして、彼は自らの身に起こったことを、最期まで知ることは無かった。
予想よりも早い鮮血の味。
上顎を襲う激痛。
そして、薄れる意識。
(な……何が、起こって……!?)
どうっ、とスミロドンの身体が地に倒れ伏す。
死んでなお開いたままの口には、スミロドンが「ツノ」だと思ったあの茶色くて長いもの――
Y染色体アダムが自ら削りだした、鋭い槍が、深々と、スミロドンの脳髄深くまで突き刺さっていた。
スミロドン必殺の振り下ろしが強烈であればこその、それは、カウンターの一撃だった。
◆
「ふぅ……肝が冷えたな。しかし、上手く決まって良かった」
槍での一撃で見事に猛獣を返り討ちにした青年は、額に滲んだ汗をぬぐう。
普通に槍を突き出していただけでは、勝ち目のない相手だった。余裕なんてカケラもなかった。
- 51 :失楽園 ◆BdIG1U8FAs:2013/03/12(火) 21:23:35 ID:WyBu62xg0
-
何しろ、急ごしらえの粗雑な槍である。槍と言うより杭に近い程度の代物である。
例えばあの分厚い肩のあたりに刺さっていたら、相手は怒り狂うばかりで、実質的なダメージなんてほとんど無かったろう。
願わくば、首筋か、眼球か、それとも口腔内か。
それらの急所を狙えるチャンスを伺っていたら、猛獣は無防備にも大口を開いて飛びかかってきたのだ。
あと必要なものは、踏み止まって槍を突き出す勇気だけだった。
「あ……あの、ありがとうございます……」
「気にするな。当然のことをしたまでだ」
血を流す猛獣が動きを止めたのを見て、襲われていた少女がトテトテと近づき、青年に感謝の意を告げる。
少女の頬がほんのり赤く染まる。
青年も、鷹揚に頷いてみせるものの、その微笑みはどこか柔らかだ。
「俺は、“Y染色体アダム”」
「私は、“ミトコンドリア・イブ”」
「どうやら俺は、『ツイている』らしい――こんなにも早く、同族の女に出会えた」
「ええ――私も、『運が良い』みたい。こんなに早く、同族の男性に出会えるなんて」
2人は互いに名乗りを交わす。
期せずして早々に出会った同族同士。言葉を交わす2人の間に、緊張はない。
とはいえ、どちらも『大地』を名乗るあの声のことを、忘れた訳でもない。
現実逃避をしている訳でもない。
少女の瞳を見据えて、青年は言う。
「『大地』に、殺し合えと言われた。最後の1匹になるまで殺し合え、と。
ただでさえ一族が滅びんとしてるこの危機に、まったくなんてこった。
俺の妻も子も『大地』に引き離されてしまった。
……あるいは俺が、あいつらの所から引き離されたのか?」
「私も、乳離れしたばかりの赤ちゃんを奪われて、まだまだ赤ちゃんを授けてくれるはずの夫も奪われたわ。
いえ……むしろ私が、彼らの所から奪われてきたのかしら」
「どうやら俺たちは、似たもの同士らしい」
「そうね。きっと私たち、すごく似ている」
2人の視線が、熱く絡み合う。
互いに1歩、距離を縮める。
確かめるように、言葉を紡ぐ。
「死はいずれ避けえぬものだ。
そして、戦いは男の仕事。
戦えというなら、そして巨獣が襲ってくるというなら、いくらでも戦おう。知恵と勇気を尽くして戦おう。
しかし、『ただそれだけ』では困る。
それでは我らは、いずれ途絶えてしまう」
「ええ。私も同じことを思っていたわ。そしてたぶん、私たちは同じことを考えている」
「『大地』と争い抗う手段すら見えぬ今、取れる手は1つだろう――
性別・人数・その後の運命、全て賭けになってしまうが、仕方ない」
「大丈夫。きっと何とかなるわ。だって私は――いいえ、『私たち』は、『とっても運がいい』。
私たちがこうして出会えたこと自体が、きっと、『そういうこと』なのでしょう」
ミトコンドリア・イブ。
Y染色体アダム。
どちらについても、現代の人類に分かっていることはほとんどない。
しかし、推測ならできる。
例えば、彼らが類まれなる幸運に恵まれていたこと。
例えば、彼らが高い生存能力を持っていたこと。
例えば、彼らがオスとしてメスとして、それぞれ一定水準以上の能力を備えていたこと。
そして例えば――彼らが高い生殖能力を持ち、かつ、生殖に対する高い意欲を持っていたこと。
「イブ。俺の子を産め。俺の子を腹に宿し、その上で『最後の1人』として生き延びろ。俺たちの血を繋ぐんだ」
「ええ、喜んで――アダム、私の新しい夫」
スミロドンの血臭残る森の中。
アダムはイブを荒々しく押し倒した。イブは期待に潤む目で足を開いた。
程なくして青空の下、何かを叩き付けるような連続音と、鼻にかかった奇妙な鳴き声が奏でられ始めた。
- 52 :失楽園 ◆BdIG1U8FAs:2013/03/12(火) 21:23:59 ID:WyBu62xg0
-
【一日目・黎明】
【インド亜大陸・平野部森林】
【スミロドン 死亡確認】
【備考:オス。北米出身。群れからはぐれて1人で彷徨い暮らしていた若者。リア充爆発しろっ……! 畜生っ……!】
【Y染色体アダム】
【状態】健康。
パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパン(ry
【思考】子を作る。イブとその子を守り抜く
【備考】オス。アフリカ出身。10代半ば。妻子あり
【ミトコンドリア・イブ】
【状態】健康。
アンアンアンアンアンアンアンアンアンアンアンアンアン(ry
【思考】子を作る。アダムと協力し、何としても生き抜く
【備考】メス。アフリカ出身。10代半ば。既婚者、出産経験あり
参加者紹介
【スミロドン】
いわゆるサーベルタイガーの一種にして最後期の種。南北アメリカ大陸に繁栄した
一見してその長大な牙が目を引くが、他にも発達した前足、短い後ろ足、短い尾などが特徴的
走る速度などを犠牲に、前足での押さえ込み・長い牙での噛み付きと、パラメータを攻撃力に全振りした印象のあるネコ科動物
群れで暮らしていたと考えられており、怪我をした個体が仲間の助けで長く生きていたことが確認されている。
当ロワ参加の個体は、群れで暮らす動物にありがちな、群れの外を彷徨う若いオスがいたとの想定によるもの。
人類およびその先祖とは、生息した地域・時代は重なっていない。
なお、他のネコ科と比べても脳の容量が少なく、知能の面で劣っていた可能性が指摘されている
なんでもタールの沼にハマった獲物を狙ったはいいが、自分も一緒にハマって死んだ挙句に化石を晒された馬鹿が多数いるとか。
【ミトコンドリア・イブ】
人類のミトコンドリア染色体を辿った時に、現在の人類の全ての共通の祖先とみなせる概念上の人物
ミトコンドリアという細胞内小器官にあるミトコンドリアDNAは、通常の核のDNAと違い、母親からのみ受け継ぐとされている。
そのため、世界中の人類の突然変異を調べ計算することで、母系の共通祖先が1人に収斂する年代が推定できる
約12万年〜20万年前の人物
別にその時代に彼女以外の女性がいなかった訳ではないので注意。
「全ての人類の母」と言うと誤解が大きいということで、「ラッキー・マザー」説という呼称も提唱されている
【Y染色体アダム】
人類のY染色体を辿った時に、現在の人類の男性すべての共通の祖先とみなせる概念上の人物
Y染色体は男性から男性へと遺伝し、突然変異の可能性はあれど、父親と息子は基本的に同じY染色体をもつ
そのため、世界中の男性の突然変異を調べ計算することで、男性の共通祖先が1人に収斂する年代が推定できる
約6万年前の人物
こちらも、別にその時代に彼以外の男性がいなかった訳ではないので注意。他の系譜が途中で途絶えたというだけである
(ミトコンドリア・イブよりも近い年代になるのは、Y染色体の方がより断絶しやすいため)
- 53 : ◆BdIG1U8FAs:2013/03/12(火) 21:24:21 ID:WyBu62xg0
- 以上、投下終了です。
参加者紹介、こんな感じでいいのかな……?
- 54 : ◆JUJ3JcJgbI:2013/03/12(火) 21:56:05 ID:bAgoayNs0
- 投下乙です!子孫を残すのは生物の重要な目的だよね(ぼうよみ)
しかし必然的にアダムに生存の可能性はなくなるわけで……密かにシリアスだったり
こちらはボルヒエナ、プリオノニクス予約しますね
- 55 : ◆JUJ3JcJgbI:2013/03/12(火) 21:58:58 ID:bAgoayNs0
- ニクスじゃないスクスだ。ツメとワニではえらい違いだ
- 56 : ◆gxtITL8wNY:2013/03/12(火) 23:09:06 ID:4PawMe7.0
- アノマロカリス投下します
- 57 :独りぼっちの存在証明 ◆gxtITL8wNY:2013/03/12(火) 23:09:56 ID:4PawMe7.0
- ――抱きしめていたのは、滅びの記憶であった。
◆◆
かつてアノマロカリスらには敵はいなかった。カンブリア紀と呼ばれる時代の海で、アノマロカリスらに叶う相手は存在しなかった。
海に生息するあらゆる生命は餌であり糧であり養分であった。
偽りなく、そうであったはずなのだ。
なのに。
だというのに、アノマロカリス類は、滅亡の時を迎えた。
多くの仲間が命を落とした。
肉親も親友も愛する相手も、無慈悲に酷薄に完膚なきまでに、滅びの運命を迎えさせられた。動かなくなった同胞の間を、絶望に暮れながら泳いでいた。
忘れられないその記憶を、海の中、鰭に水流を受けてたゆたいながら。
最後の生き残りとなった、たった一匹のアノマロカリスは、思い出していた。
それは忘れられるはずがない、悲しみの記憶だった。
その記憶は激痛と辛苦と悲哀に溢れていた。けれどそれでも、アノマロカリスはそれを探っていく。
そうやって奥の底までその記憶に塗れることで、見つかると思った。
敵などいなかったはずのアノマロカリス類が、何故滅んでしまったのか。
その滅びに、どのような意味があったのか。
見つかると、思ったのだ。
けれどどれだけ掘り返しても、どのように辿っても、見つけられるのは死の想い出だけでしかなくて、求める答えはどうしても見つからないままだった。
――解せぬ。
一個体の死であるならば理解はできる。
アノマロカリスは捕食者なのだ。生命を維持するために狩りをし、命を奪うことは日常だった。
故に命の脆さは十分に知っていたし、捕食者であるからといって永遠に生きられるなどとは思っていない。
だが、絶滅となれば話は別だ。
全ての同胞が生きることを許されない様は、簡単に受け入れられるものではなかった。
滅びを定めとして受け入れるには、このアノマロカリスはまだ若かった。
滅亡にも意味があると信じなければ、連綿と受け継げられてきたこの生命が、無価値なもののように感じてしまう。
そしてそれは、即ち。
――我らの糧となった者どもの生命すら、無碍であったということに他ならぬ。
そう思うと、意識が喰われ身が裂かれるようだった。
それは強者の傲慢であり、捕食者の思い上がりであり、そして。
王者の、慈悲だった。
それでも、アノマロカリスは知っている。知ってしまっている。
――されど、同胞は死に絶え残されたのは我が身のみ。もはや子を成すことも叶わぬ。故にもはや、滅びは避けられまい。
潮流に乗って遊泳しながらアノマロカリスが思うのは、痛く悲しく虚しい確信だった。認められずとも訪れてしまう、約束された運命だった。
アノマロカリスは独りぼっちだ。この殺し合いで生き延びることに、意味は感じられなかった。
もう、子孫は残せない。
もう、アノマロカリス類は完全に行き詰ってしまっていた。
理由なき滅びに押し潰され踏み荒らされることはもはや、必定だった。
ならば。
ならば、せめて。
――証が欲しい。我らアノマロカリスが、確かに在ったという、証が欲しい。
この場には、数多くの生命が存在している。
殺し合いというからには、その全てが生き延びることは叶わないのであろう。
だからこそ伝えたかった。見せつけたかった。
アノマロカリスという存在を、少しでも多くの生命体の意識に、記憶に、想い出に、遺伝子に。
刻み込んでやることが、最後に残されたアノマロカリスが、たった独りで願うことだった。
――我らが命の証を立てるその時を。どうか、見守っていて欲しい。
記憶の中にある同胞に祈りを捧げ、アノマロカリスはひたすらに遊泳する。
泳ぎ慣れているはずの海が、やけに広く感じられた。
【一日目・黎明】
【インド洋・アフリカ大陸東】
【アノマロカリス】
【状態】健康
【思考】多くの生命体に出会い、アノマロカリスという存在を記憶に刻み込ませる。
【備考】メス・若者 北太平洋出身 アノマロカリス最後の生き残り
- 58 : ◆gxtITL8wNY:2013/03/12(火) 23:10:17 ID:4PawMe7.0
- 以上、投下終了です
- 59 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/13(水) 00:44:52 ID:te1OlKBc0
- 皆様投下乙です!
>>失楽園
やっぱりスミロドンは筋肉バカな三枚目キャラが似合いますねw
自分たちの子孫を思うというのは、本ロワでは避けては通れないテーマかもしれません
>>独りぼっちの存在証明
アノマロカリスがこんな清しくも切ないキャラに……
最後の一匹ということは、オルドビス紀からの参戦でしょうか
なお恐縮ですが、アノマロカリスは種によって体長の差が非常に大きい動物ですので、だいたいのサイズを明記していただけると幸いです。
もちろん次の書き手氏にお任せでも構いません
ホモ・ハビリス、パキディスクスを予約します。
- 60 : ◆aWSXUOcrjU:2013/03/13(水) 00:56:13 ID:ygv6AwIA0
- 皆様投下乙です
参加者の紹介についてなのですが、自分は他の書き手の方々に比べると、いかんせん知識量に自信がありません
なので、ティラノサウルスおよびテナガマンモスの紹介を、>>1さんに依頼したいのですが、よろしいでしょうか
- 61 : ◆JUJ3JcJgbI:2013/03/13(水) 01:04:02 ID:GGqc7wKo0
- ボルヒエナ、プリオノスクス投下します
- 62 :両・棲・最・強 ◆JUJ3JcJgbI:2013/03/13(水) 01:06:08 ID:GGqc7wKo0
-
たとえミニチュアではあっても、ナイル川はこの小さな地球で最大級といえる流れを湛えていた。
まさに大自然が生み出した雄大なる神秘。生物の生も死も飲み込んで流れ続ける、不変の象徴だ。
その川岸を歩く、一頭の動物の影。彼の名を、ボルヒエナという。
ボルヒエナは、捕食者である。
新生代第三期の終わりから第四期初め、およそ2000万年前を生きた狩人である。
その外見は、尻尾の長い痩せたクマといったところだろうか。
全長は1.5メートルと現代のクマよりはかなり小さいし、そもそもクマとは完全に別種なのだが。
ボルヒエナは生物学的にはカンガルーやコアラと同様の、有袋類の肉食動物なのである。
もっともこのボルヒエナはオスなので、子供を育てるポケットはついていなかったが。
「殺し合いだと? 上等だぜ。この俺が全部まとめて狩ってやるよ」
自信満々の様相で、ボルヒエナは川辺を闊歩する。
彼の生まれ故郷である南アメリカでは、彼らの一族はハンターとして君臨していた。
だからこそ彼もまた自分が“狩る側”であることは当然だと思い、微塵も疑いを持たなかった。
あの“大地”に集められた場所には自分より大きい生物もいたが、ボルヒエナはなんとかなると高を括っていた。
地元では負け知らずなのだ。どこへ行っても通用する、そう思っていた。
だからこうして、堂々と闊歩することも許されると考えていたのだ。
「この世は弱肉強食なんだぜ! だったら強い俺が生き残る……当然のことだよなァーッ」
結論から言うと、ボルヒエナは世の中を舐めすぎていた。
自分がハンターであることを疑っていなかったし、呑気に水辺を歩くのがどういうことか分かってなかった。
もっともそれは彼固有の性質というだけでなく、彼の種族全体の問題でもあったのだが。
ボルヒエナという有袋類は、外見的にはいかにも肉食獣らしい特徴を備えている。
しかしその一方で、現生の犬や猫といった食肉目の動物とは決定的に異なる部分を持っていた。
それは足の裏。犬や猫がカカトを浮かせて爪先だけで歩くのに対し、ボルヒエナはカカトを地につけていた。
手の平と足の裏、その両方をべったりと大地につけた状態で歩いていたのである。
どちらが走りやすいかは一目瞭然だろう。現生の哺乳類は爪先立ちでの高速移動によって生き残ったのだ。
残念なことに彼自身は自覚していなかったが、ボルヒエナは端的に言えば“トロい”捕食者だったのである。
- 63 :両・棲・最・強 ◆JUJ3JcJgbI:2013/03/13(水) 01:07:06 ID:GGqc7wKo0
- 何故彼らのような種が捕食者足りえたのか? それは単に、獲物も似たような歩き方のトロい奴だったというだけ。
他の大陸から事実上切り離されて独自の進化を遂げた南アメリカでならトロい同士で良かったかも知らない。
しかし、実際に彼の種族が速く走れる草食獣の登場によって滅びたように、彼らは文字通り井の中の蛙。
ましてや“狩る側”であったボルヒエナは、自分がいかに“狩りやすい”獲物であるか気付けない――!
だから、なんの前触れもなく川面が盛り上がったと見えた次の瞬間、弾け散る水の中から“何か”が姿を現した時、
ボルヒエナは咄嗟に危険を察知することも、攻撃を回避できるほどの瞬発力を発揮することもできなかった。
ただ「ヤバい」と思ったときにはもう遅かった。その時にはとっくに“何か”は彼の後足に齧り付いていた。
そして引きずり込まれる。そいつが潜んでいた水中へ。ボルヒエナが抵抗しきれないパワーで。
「う、うおおおおおおおおおおおお!?」
予期せぬ痛みと死の恐怖でパニックになりながら、ボルヒエナは必死で陸に縋ろうとする。
しかしいくら残った三肢をばたつかせようと、その場に留まることすら出来はしなかった。
あっという間に尻尾が、ヤツの牙が食い込む後足が、もう片方の足までも水に飲み込まれていく。
(ち、チクショウ、油断した! 水辺ならワニがいたっておかしくねえ! クソッ、このままじゃ……!)
当時の南米にもワニはいる。ボルヒエナはその水際の凶悪な狩人の存在を忘れていた自分を呪った。
焦燥で機能停止寸前の脳を必死に働かせたが、しかしワニに噛まれて脱出する方法など思いつかない。
それこそ片足を捨てる覚悟でないと脱出なんて不可能に違いない。
だがボルヒエナのハンターとしての意地が、その体を決死の反撃に転じさせた。
「ナメやがって! 逆にブチ殺してやる! その喉元食いちぎってやるぜワニ公ッ!!」
ボルヒエナの自慢の牙が、一転攻勢のチャンスとばかりに輝く。
どうせコイツは自分のフィールドに引きずり込めばなんとかなると慢心しているのだろう。
その隙をついて噛み付けば逆にクリティカルヒットだって狙えるはずだ。
そう結論づけたボルヒエナは、全生命力を投じる勢いで状態を反転させ――
「――――――――なんだ、こいつ……」
瞬間、思考を放棄した。
- 64 :両・棲・最・強 ◆JUJ3JcJgbI:2013/03/13(水) 01:07:42 ID:GGqc7wKo0
- 自分の目で捉えたそいつは、確かにワニであるように見えた。
しかし鎧のようなウロコで覆われているはずの肌は、ぬるりとした粘膜で覆われていた。
こいつはワニではない。それによく似た、全く別の何かだ。
そして、ボルヒエナを真に恐怖させたのは、その大きさだった。
大きいなどという次元ではない。ボルヒエナの鼻の先から尻尾の先までの、優に六倍はありそうだ。
長さにして9メートル。十分に怪物的サイズと言っていいレベルだ。
これほど大きなワニなどボルヒエナは見たことがなかった。もっともこいつはワニなどではないのだが。
そう、ボルヒエナはこの時初めて、真の意味で恐怖したのだ。
「う、うわ、うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」
そいつが全身をムチのようにしならせるとボルヒエナの全身は軽々と浮き、そのまま水面に叩きつけられた。
そのまま抵抗すらできずに水中まで引きずり込まれ、そのまま右に左に振り回される。
息が、息が出来ない。この世界では水中でも呼吸ができるはずなのに、激流の中ではそれすら叶わない。
それどころかナイルの深い水の中で揉みくちゃにされて、ボルヒエナにはどちらが上かすら分からなかった。
(い、嫌だ……俺はハンターなんだ、狩る側なんだ……こんな惨めな死に方は、嫌だぁっ……!)
酸欠で薄れゆく意識の中で、ボルヒエナは弱肉強食の真の意味を悟った。
強いものが生き、弱いものは死ぬ。誰一人例外なく。
ただ、それだけのことだった。
▼ ▼ ▼
プリオノスクス、という名は古代ギリシャ語で「ノコギリワニ」という意味を持つ。
確かにプリオノスクスはノコギリのような歯を備えてはいたが、ワニではない。
シルエットこそワニそのものだが、プリオノスクスは迷歯類に分類される。
つまりは両生類。現代にこそカエルやイモリなどの小動物しか生き残ってはいないが、
かつてはこの地球上の至るところで繁栄した支配的生物群である。
そしてプリオノニクスは、この地球上で誕生したあらゆる両生類の中で最大の体を持つ生物であった。
全長9メートルに及ぶ全長は、両生類全体を見回しても群を抜いて巨大である。
両生類史上最大にして最強。恐るべき水際のハンター、それがプリオノニクスだった。
「………………くだらん」
しかし、プリオノニクスはたった今仕留めたこの哀れな有袋類を横目で見ながら、不満そうな声を漏らした。
- 65 :両・棲・最・強 ◆JUJ3JcJgbI:2013/03/13(水) 01:09:10 ID:GGqc7wKo0
-
「これが我らよりも進化した哺乳類とやらか? 実にくだらん。進化が聞いて呆れるではないか」
プリオノニクスは自らの強さに自信を持っていた。
そればかりか、自分たちが属する両生類というグループに強い誇りを持っていた。
古生代の終わりと共に両生類が地球の支配者の座を完全に追われたと知らされれば、激しく憤慨もする。
そしてナイルの川底に潜み、進化した生物とやらの実力を試してやろうとしたら、これだ。
そこにいたのは所詮は水中ではろくに身動きも出来ない、古生代のそれと変わらぬただの獲物だった。
「くだらん。拍子抜けだ。進化にあぐらを掻く連中め、生かしておけん。こんな連中にこの地球は任せられん」
淡々とした口調ながら、プリオノニクスはその巨体に激しい怒りを秘めていた。
こんな進歩のない連中に、我々両生類は支配権を明け渡したというのか?
こんな緩みきった存在に、我々の子孫達はこそこそと怯えながら暮らしているというのか?
もしも新たなる支配的生物が自分達よりも遥かに優れているのならば、観念して未来を譲ってやってもよかったが、
これではまるで話にならない。この地球を一度は支配した両生類の誇りにかけて、そんな未来は認めない。
そんな軟弱生物群は一匹残らずこの牙で殺し、両生類の底力を知らしめてくれよう。
「爬虫類も、鳥類も、哺乳類も、いずれ等しく我が獲物。今まで通り、ただ待ち伏せて狩るのみ」
プリオノニクスはその誇りにかけて、全ての進化した生物を狩り尽くすと誓った。
原始的な生物がそのまま弱者であると、誰が決めたというのか。
今も昔も変わりなく、両生類こそが、水辺の覇者だ。
その巨体を水中に沈め、史上最大の両生類は次の獲物を探して移動する。
【一日目・黎明】
【アフリカ大陸・ナイル川】
【ボルヒエナ 死亡確認】
【備考】オス・若者 南アメリカ出身
【プリオノニクス】
【状態】健康
【思考】自分達より進化した生物を狩り尽くし、両生類の誇りを取り戻す
【備考】オス・壮年 南アメリカ出身
- 66 : ◆JUJ3JcJgbI:2013/03/13(水) 01:09:48 ID:GGqc7wKo0
- 投下終了しました。参加者紹介は前の分と合わせて後ほど投下しますね
- 67 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/13(水) 01:11:06 ID:te1OlKBc0
- 【ティラノサウルス】
中生代白亜紀後期マーストリヒト期。北米に分布。
おそらく地球史上最強の陸上肉食動物であると同時に中生代の最末期に登場した生物であり、生物進化の一つの頂点と言える。
頭骨は非常に頑強で、これ自体をハンマーのように使ったという説もある。
その一方でスカベンジャー説も根強い。
最近近縁種の化石に羽毛の痕跡が見つかったことから、羽毛復元が主力になりつつある。
【ケナガマンモス】
新生代第四紀更新世。ユーラシア北部および北米に分布。
もっともメジャーなマンモス。ただしマンモスとしては比較的小柄である。
何より冷凍ミイラの存在で有名。生前とほぼ同じ姿が拝める稀有な古生物である。
なお、冷凍マンモスの肉でバーベキューをやった研究者たちもいる。
お腹を壊しもしなかったが、あんまりおいしくなかった、とのこと。
こんな感じで大丈夫でしょうか?
- 68 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/13(水) 01:17:32 ID:te1OlKBc0
- 投下乙です。リロードせず書き込んで失礼しました。
身体機能に着目したストーリーに刮目いたしました。
ただボルヒエナら米州袋類は、そのトロさというか無骨さ加減がいいんですよね。
- 69 : ◆aWSXUOcrjU:2013/03/13(水) 01:28:26 ID:ygv6AwIA0
- >>67
ありがとうございます。お手数かけてすみません
頭部ハンマー攻撃は、「こんだけ頭デカかったら武器にもなるだろ」と思って、
想像で書いたものだったのですが、実際にこういう説があったのですね。驚きました
◆JUJ3JcJgbIも投下乙でした
>「――――――――なんだ、こいつ……」
地味にこの台詞が好きですw
世代が違うだけで常識がまるで変わってくる、このロワの参加者ならではの一言ですね
- 70 : ◆qp1M9UH9gw:2013/03/13(水) 01:52:40 ID:0ioF1V9.0
- 延長します
- 71 : ◆qp1M9UH9gw:2013/03/13(水) 01:54:10 ID:0ioF1V9.0
- スレ間違えました、申し訳ない
- 72 : ◆sOMmvl0ujo:2013/03/13(水) 02:39:39 ID:te1OlKBc0
- いくつかの場所で把握のハードルが高すぎるという意見を目にしたので、参加しようか考えあぐねている方向けに、把握の参考になる書籍を紹介したいと思います。
○「絶滅哺乳類図鑑」丸善出版
哺乳類勢はこの一冊で把握できます。最新の研究成果と美しいイラストが満載。
一万二千円という値段に二の足を踏む人もいるかもだけど、十分お釣りが帰ってくる内容です。
○「徹底図解 恐竜の世界」新星出版社
恐竜について、最初の一冊としてオススメ。
装丁はややチープな感じがあるけど、ほぼ最新の内容を網羅している。
○「ぞわぞわした生き物たち」サイエンスアイ新書
古生代の節足動物だけを取り上げたマニア垂涎の書。節足動物勢はこれで完璧。
○「失われた動物たち」広林書林
近代組にはこちらを。伝説の激鬱番組「生き物目次録」の書籍化。
セーシェルゾウガメやリョコウバト、グアムオオコウモリの章は泣ける。
○「アナザー人類興亡史」技術評論社
絶滅人類組の把握にはこれが最適。
○「カンブリア爆発の謎」技術評論社
カンブリアンモンスターについてはこれ。
しかし、グールドの名著「ワンダフル・ライフ」も、内容的にはすっかり古びてしまった。
○「哺乳類型爬虫類」朝日選書
まだ「哺乳類型爬虫類」が死語では無かったころに出た一冊ですが、単弓類・獣弓類についてこれより詳しい本は多分まだない。
○「恐竜の世界をもとめて」無名社
最初期の古生物学の歴史を紹介した一冊。古生物学者勢の把握に。
なお更に興味があれば、朝日選書「メアリー・アニングの冒険」はかなりオススメです。
○「ありえない!?生物進化論」サイエンスアイ新書
○「みんなが知りたい化石の疑問50」サイエンスアイ新書
生物史の流れや、古生物の系統関係を押さえるには最適。
ありえない!?は挿絵がかなりかわいいです。
- 73 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/13(水) 03:03:20 ID:te1OlKBc0
- 番外編
○「謎と不思議の生物史」同文書院
かなり昔に出たせいで古くなっている内容が多い上に、書物としても非常に問題の多い一冊である。
何しろ作者本人が、後になって「あんな本、世間に出ないほうがよかった」と述べているくらいである。
しかし、生命の誕生から現在にいたるまでの生物史を、これほど手軽かつ深く概観できる本は他に無いのではないか。
本ロワに参加している生物の多くが収録されている。
何より、日本の古生物アート最前線を今も走る絵師たちによる挿絵だけでも一見の価値あり。
取り扱いは要注意だが、個人的には外せない一冊である。
他にも、この生物について資料が欲しいなどの場合は遠慮なくおっしゃってください。
管見の範囲で良ければ、助力いたします。
- 74 :名無しさん:2013/03/13(水) 03:07:49 ID:14aov1sw0
- すげえ……
一体>>1さんは何者なんだ?
- 75 : ◆gxtITL8wNY:2013/03/13(水) 07:39:06 ID:3c6QIYTM0
- >>59
感想、ご意見ありがとうございます。
アノマロカリスのサイズについては、次の書き手氏にお任せいたします。
また、恐縮ですが、紹介を>>1さんにお願いしたく思います。
自分で書こうかと思ったのですが、私の生半可な知識ではどうにも上手くまとめられず。
お手数お掛けしますが、よろしくお願いします。
- 76 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/13(水) 15:17:17 ID:fpVVVlpk0
- 了解致しました。
【アノマロカリス】
古生物カンブリア紀前期アトダバニアン期〜中期ステージ5。北米、中国から発見。
カンブリア紀を代表する生物で、体長60センチから最大で推定二メートルにもなる、カンブリア紀最大の生物である。
その奇妙な姿から長く分類不明とされてきたが、最近では原始的な節足動物という説が有力(有爪生物説もある)
アノマロカリス類はカンブリア紀中期以降絶滅したとされていたが、最近オルドビス紀の地層から非常に状態のいい化石が発見され、大きなニュースになった。
またこのグループはデボン紀まで生き残っていたという説もあり、一般のイメージよりも遥かに長生きしたグループであった可能性もある。
なお、色々書籍を挙げましたが、初心者の方でもどんどん遠慮なく書いていただきたいと思っています。
そもそも支給品なしとかルールがいい加減なことからもお分かりのように、暇な時にさらさらっと書けるようなロワを目指して企画しましたので。
参加者紹介についても、ロワ内でのキャラ付けに関わってくるような情報は最低限入れていただければ、ごく簡単な文章で結構です。
- 77 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/13(水) 15:18:02 ID:fpVVVlpk0
- ホモ・ハビリス、パキディスクス投下します。
- 78 :Who am I? ◆sOMmvl0ujo:2013/03/13(水) 15:20:52 ID:fpVVVlpk0
- 鬱蒼と木々が茂る密林。
ぬかるみに足を取られそうになりながら、一人の小柄な少女が草や蔦をかき分け歩いていた。
もちろん、今自分が置かれている状況を理解していないわけでは無い。
だが、今何をするのが最善であるかなど、彼女には考える余裕などなかった。
(なんで、私なんかが……)
美しい顔立ちに浮かぶ、戸惑いと憤怒が混じった表情が、彼女の苛立ちを表していた。
そして、殺し合いの主催者に怒りを向けている者たちとは違い、彼女の苛立ちには誰にもぶつけようが無いものだった。
(なんで、)
邪魔な蔦を手で力任せに引き千切る。
(なんで、)
足元の邪魔な倒木を蹴り倒す。
(なんで、なんで、なんで!!)
それらの男は、暗い密林の中に吸い込まれるように消えていった。
(なんで私なんかが、種族の代表なんかに選ばれたのよ!!)
しかし彼女の心の中の悲鳴は、どこにも消えていきはしなかった。
彼女、ホモ・ハビリスが、自分は群れの中で異質な存在らしいと気づいたのはしばらく経ってからだった。
自分の顔立ちは、群れの仲間たちとは明らかに違っていた。
また、自分だけが器用に石器を作ったり、魚や小動物を捕まえることができた。
他の仲間たちが食べている、動物の骨髄など、彼女には美味しいとも思えなかった。
そんな異質な彼女を群れの仲間たちは忌避した。
群れの和を乱す悪意ある個体、呪われた娘。そのような目でしか、彼女を見ようとしなかった。
やがて成長した彼女は、自ら群れを去った。
一人でも十分生き抜いていける自信はあったし、孤独も苦にはならなかった。
少なくとも、その時は。
一人で旅を続けていた彼女の前に、ある日、他の群れが現れた。
それは彼女の故郷の群れとはまるで違っていた。
群れの個体たちは皆、彼女に似た顔立ちをしていた。
そして彼女と同じように、精密な石器を作って魚や獣を狩って食べていた。
体毛が無い代わりに毛皮の服を身に纏い、大きな巣を地面の上に作って住んでいた。
簡素な石器で、動物の骨を砕いて骨髄を食べ、裸でうろつきそこらに眠るかつての仲間たちとは、まるで違う集落だった。
この群れになら、受け入れてもらえるかもしれない。
自分には彼らほどは上手に石器を作ったり、毛皮を加工することは出来ないけど、ここになら居場所があるかもしれない。
そう思った。
しかし彼女の懇願を、その群れの者たちは冷笑ではねつけた。
「お前など俺たちと比べたら、ただのサルでは無いか」と。
故郷の仲間からは器用すぎる不気味な女だと怖がられ、新天地で出会った群れには原始的すぎると蔑まれた。
その夜、彼女は寝ることも忘れてサバンナを彷徨い歩いた。
サルにもなれず、ヒトにもなれず。
アウストラロピテクスにもなれず、ホモ属にもなれず。
ボーンコレクターにもなれず、ハンターにもなれず。
自分が優れているのか、劣っているのかさえもわからない。
ただ一つわかったことがあった。
この世界に、自分の居場所などどこにも無いのだと。
だというのに、この状況だ。
黎明のジャングルの中を歩みながら、彼女は「どうして」と呟き続けていた。
あの大地の声というのは、ここに集められたのはそれぞれの種族の代表だと言っていた。
ならば私も代表者だと言うのか。
ふざけるな。
仲間など一人もいなかった私が、一体どの種族に属するというのか。
サルでもヒトでもなく。
アウストラロピテクスでもホモ属でもなく。
ボーンコレクターでもハンターでもない。
それなのに、ここに呼ばれた。
「ああもう!!私は一体何者なのよ、全くもう!!」
- 79 :Who am I? ◆sOMmvl0ujo:2013/03/13(水) 15:22:01 ID:fpVVVlpk0
- 行き場の無い思いを声に出して吐き出した。
もちろんそれは、ジャングルの木々の合間の深い闇に吸い込まれていった。
だが、
「そんなん何でもえいねん!!」
空から、そんな返事が帰ってきた。
「そんなことより、ワシをここから下ろしてえな!!」
思わず頭上を見上げた彼女は、そこにいたものを見て面食らった。
巨大な巻貝が、うねうねと沢山の職種を動かしてもがきながら、木の枝にひっかかっていた。
「いやあ、ホンマこれどないしょうか思てたんや。ホモ・ハビリスさん、ホンマおおきに」
地面に上に下りたその巻貝は、ほっとしたように礼を延べた。
直径は彼女の身長とほぼ同じほどもあるその巻貝ー触手があるのが、貝にしては妙だったがーは、パキディスクスと名乗った。
やっとの思いで彼を木の上から下ろしたホモ・ハビリスは、ため息をつきながら尋ねる。
「で、なんであんな木の上なんかにいたのよ?」
「あいや、自分で登ったわけちゃいますねん。最初の場所で説明を聞いた後、気がついたらああなってましてん」
つまりは、最初から木の上にワープさせられたということらしい。
「いやあ、面食らいましたわ。ただでさえあんなわけわからんこと言われて……
あ、そういえば、助けてもらったことで安心してましたけど、ハビリスさんは素直に殺し合いをする気は……」
「まあ、今のところは無いわね」
そんなこと、考えてもいなかったというのが正しいのだが。
「それは安心しましたわ。お腹も空かへんのに、そんな物騒なことするわけにいきまへん。
それで、どうするつもりですん?」
「そうねえ……他の生き物たちがどう考えているのか探るのが先決じゃないかしら。
素直に殺し合ってる生き物が多いのか、私みたいな意見が多数派なのか」
「確かにそれは重要ですなあ。早速そうしましょ。ほな、まずは明るくなるまでにもうちょっと開けたとこに行きましょうか」
なんだか知らないうちに、一緒に行動することになっているらしい。
まあいいか、と彼女は思った。どうせ、長い付き合いにもなるまい。
そして彼らは、密林の中を、草や蔦を掻き分け、倒木を踏み越えながら歩いていった。
ずるずる。
ずるずる。
ずるずる。
……………ずるずる。
「ったくもう、もう少し早く歩けないの!?」
「か、堪忍してえな。陸の上に上がったことなんか初めてですきに……」
【一日目・黎明】
【南アメリカ・アマゾン中心部】
【ホモ・ハビリス】
【状態】健康
【思考】他の参加者の考えをさぐる
【備考】メス・若者 アフリカ出身
【パキディスクス】
【状態】健康
【思考】他の参加者の考えをさぐる
【備考】オス・老人 ヨーロッパ近海出身
参加者紹介
【ホモ・ハビリス】
新生代第四紀更新世。アフリカに生息。
最古のホモ属とされるが、アウストラロピテクスとホモ・エレクトゥスの中間の形質を持つ化石は何でもかんでもという感じでホモ・ハビリスに分類されてしまっており、全体像を掴みにくい。
頭部はアウストラロピテクス、顔はホモ属に近い標本もあれば、その全く逆の標本もある。おそらくは、最低でも2〜3種類に再分類されるべきだろう。また、アウストラロピテクスとホモ属の混血個体が含まれている可能性もある。
研究者によってはそもそもホモ・ハビリスという種の実在を認めないという説すらある、謎の多い人類である。
【パキディスクス】
中生代白亜紀後期マーストリヒト期。ヨーロッパと南極から発見されている。
アンモナイトの歴史の最後に登場した、最大級のアンモナイト。直径は最大で二メートルに達する。
- 80 :Who am I? ◆sOMmvl0ujo:2013/03/13(水) 15:22:17 ID:fpVVVlpk0
- 以上になります。
- 81 :名無しさん:2013/03/13(水) 16:55:40 ID:bDFsDgys0
- 投下乙です!
関西弁……w 三人目の女性参加者に期待大ですね!
現在編集中ですがWikiを借りてきました。簡易編集方ページへのリンクなどもつけてあります。
ttp://w.livedoor.jp/palaeontological_br/
現在地ツールも設置しました。使い方はWikiの地図項目に記載しております。
ttp://www20.atpages.jp/~r0109/palaeontological/
- 82 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/13(水) 17:17:42 ID:fpVVVlpk0
- wiki!! わざわざありがとうございます。
私は自宅などでは基本的に携帯キャリアのため、編集に協力できず申し訳ありません。
参加者個別ページを作るなら、分類や体長などのデータも載せたほうが見栄えがしそうですね。
ただ、分類はリンネ式を採用するか分岐分類を採用するかで揉めるかもしれませんね。
地図はやはりあったほうがいいですよね。
ただ、私としてはできるだけゆるゆるなノリでいきたいので、現在地表記は今までのような大体の位置でよく、緯度や経度は指定しなくてもよい、という方向で行きたいと思います。
地図の編集が大変になってしまうかもしれませんが、ご意見をお聞かせいただけると幸いです。
- 83 :名無しさん:2013/03/13(水) 17:21:18 ID:bDFsDgys0
- >>1氏
現在は仮の処置としてグーグル検索で引っかかった世界地図を地図の項目に掲載しています。
大体の場所に設置する感じでいいんじゃないでしょうか。
- 84 :名無しさん:2013/03/13(水) 17:34:06 ID:bDFsDgys0
- あと、>>1氏にお伺いしたいのですが、Wikipedia以外で把握に役立つWebサイトなどはありますか?
書籍はなんだかんだで購入に二の足を踏んでしまいがちなので、気軽に閲覧できるWebサイトなどあればより把握しやすいと思うのですが。
お勧めのサイトなどあれば、教えていただきたいです。
- 85 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/13(水) 18:16:13 ID:fpVVVlpk0
- 有名ブログですが、「古世界の住人」などはどうでしょうか?
非常に楽しく学べると思います。
ただし一般の方のブログのため、コメントを書き込む際には文体に気をつけて下さい。
ウィキペディアでも、英語ページなら日本語ページより遥かに情報量が多いと思います。
最新の発見や研究成果については、「恐竜の楽園」などが参考になると思います。
ただ、あまり詳しく把握することばかりに拘らず、もっともっと多くの方に気軽に書いていただきたいですね。
- 86 :名無しさん:2013/03/13(水) 18:28:46 ID:bDFsDgys0
- ありがとうございます。
それとWiki、最新話まで収録終了しました。
- 87 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/13(水) 20:53:36 ID:fpVVVlpk0
- 収録ありがとうございます。
協力してくださる方が沢山いて、非常にいいスタートをきれた幸せなロワだと感謝しています。
早くから話題にもなったようですが、まだ未参加の方も決してハードル高いとかガチすぎるなどと思い込まず、じゃんじゃん参加して下さいね。
私はアウストラロピテクス・アファレンシス、メガニューラ、リストロサウルスを予約します。
- 88 : ◆gxtITL8wNY:2013/03/13(水) 21:54:33 ID:3sdznrCc0
- >>76
アノマロカリスの紹介、ありがとうございました。お手数をおかけしました。
知識は乏しいながら古生物にロマンを感じますので、また折を見て参加できればと思います。
地図については、>>1さんが仰っているように大まかな位置でいいかと思います。
細かく指定すると大変ですので、だいたいこの辺りにいるよーくらいが分かればいいかと感じます。
また、投下お疲れ様でした!
アイデンティティを求めて叫ぶホモ・ハビリスと、愛嬌のあるパキディスクス。
対照的でいいコンビですが、凶暴な奴らに出会ったらどうなるのか……。楽しみです!
>>81
wikiお疲れ様です!
これから色々と充実していくといいですね。私も何かありましたら編集の協力をさせていただきます。
- 89 : ◆JUJ3JcJgbI:2013/03/14(木) 00:14:16 ID:t2N0sfhY0
- >>1さんの丁寧なフォローと解説、ありがたい限りです。
知識こそ及びませんが非常にロマン溢れる企画なので、暇を見て参加していけたらいいなと思っております。
それはそうと参加者解説が出来たので、置いておきますね。
>>21
【ウィリアム・バックランド】
1784-1856。イギリスの古生物学者・地質学者。カトリックの司祭でもある。
地質学に多大な貢献をした人物であり、最初期に発表された恐竜メガロサウルスの発見者として著名。
若くしてオックスフォードの教授になった秀才である一方、自宅でハイエナを飼う変わり者でもあった。
地質学と旧約聖書の辻褄を合わせようと腐心し、絶滅とノアの洪水を関連付けた論文は宗教家に歓迎される。
しかし研究が進むにつれて聖職者としての信仰心と地質学者としての信念の狭間で苦しむようになり、
最終的にはとうとう精神の均衡を崩し、晩年は精神病院に隔離されて孤独のうちに死す。
【トロオドン】
中生代白亜紀後期マーストリヒト期。北アメリカに分布。
立体視能力を持つ大きな目と体重に対して重く発達した脳を持ち、最も知能の高い恐竜であるという説がある。
なお、恐竜人類(ディノサウロイド)のモデルとなり、国内でも映画「ドラえもん のび太と竜の騎士」などで知られる
恐竜「ステノニコサウルス」はこのトロオドンと同種である(当時は別の種類の恐竜だと思われていた)。
>>65
【ボルヒエナ】
新生代第三紀漸新世〜中新世。南アメリカに分布。
オポッサム科から分かれた有袋類であり、分類上は全く関係ないがクマに似た外見を持つ。
足が短いうえに足の裏が扁平で、走るのは得意でなかったとされる。腐肉食説もあり。
南米大陸で繁栄したが、次第に高速化する草食獣の進化についていけず姿を消した。
【プリオノスクス】
古生代ペルム紀後期。南アメリカに分布。
地球史上最大の両生類であると同時に、古生代通しても最大級の生物。
他の両生類の全長がせいぜい5m以下である中、9mという規格外の巨体の持ち主である。
断片的な化石しか見つかっていないが外見はワニ、特にガビアルに酷似していたと推測される。
一生の大半を水中で過ごし、水際を訪れる獲物を待ち伏せしていたらしい。
- 90 : ◆wdsIwtMsVI:2013/03/14(木) 01:10:11 ID:nvnr/iEo0
- 短いですが、投下します。
- 91 :すっげぇ! 神様ってすっげぇ! ◆wdsIwtMsVI:2013/03/14(木) 01:10:47 ID:nvnr/iEo0
- 自分の一族は「ケツァルコアトルス」という名前らしい。
そんなこと今まで気にもしなかったというか、気にする機会も無かったのだが。
ともかく、自分達はそういう名前で一括りにされているらしい。
とりあえず、ここでは殺し合わなくてはいけないらしい。
早速今後の振る舞いをどうするか? というのを考えなくてはいけないところだったのだが。
「ケツァルコアトル展……?」
自分が呼び出された場所に書かれていた一枚ののぼりが、彼の興味を引く。
たった今"自分達の名前"として与えられた名前に似通った名前が、そこに書いてあったのだから。
文字というものが読めるようになっていることにも違和感があったが、それよりも書いてあった文字のほうに興味を奪われた。
「ケツァルコアトル、とは」
柔軟性に欠ける身体を頑張って捻りながら、小さな小さな本のページを上手くめくって行く。
その本にはケツァルコアトルという神話上の神について、綿密に詳しく描かれていた。
そもそも神話ってなんだ? っていう疑問もあったが、知らないことに対する知識欲が、雑念を取り払ってしまう。
本以外にも、まわりを見渡せば関連グッズと称して様々なものが置かれている。
一つ、ケツァルコアトルが出演するゲームに関連する資料だとか。
一つ、一説ごとのケツァルコアトルの姿、神話上におけるポジションだとか。
今まで知らなかった、知りえることも無かった知識の数々に彼のワクワクは止まらない。
そして、ついに一つの本の一つの記述に辿り着く。
「何何……絶滅した翼竜、ケツァルコアトルスの命名は、ケツァルコアトルが由来……!?」
驚きの一文。
しかし、彼は自分の一族が絶滅している、ということに驚いているのではない。
「俺って、神様なのか!?」
神として祭られている存在が、自分の名前の由来だと言うこと。
つまり、神の名を関していると言うこと。
神と言うのが具体的になんなのかは理解していなかったが、とりあえずすごいということだけは本で分かった。
「ええ!? マジで!?」
そんな彼の足元で、小さく可愛らしい鳥、ドードーがマジビビリしていた。
彼女も"神様"というのがなんなのかは今一理解していないが、目の前の大きな生命体がマジビビリしているのに、つられて驚いた声を上げてしまった。
そんなビビっている彼女に気がつき、少し見つめてからケツァルコアトルスは。
「……そうだぜ!!」
大見得を切った。
「すっげーーーーーーーー!!」
興奮と羨望に包まれながら、ドードーはケツァルコアトルスを見つめる。
"すごい"と言われて、生まれて初めて張って見た見得も、悪くは無いなと、ケツァルコアトルスはそう思った。
【一日目・黎明】
【東南アジア・日本】
【ケツァルコアトルス】
【状態】健康
【思考】俺って……神の化身!?
【備考】オス・若者
【ドードー】
【状態】興奮
【思考】すっげーーーー!!
【備考】メス・少女
- 92 : ◆wdsIwtMsVI:2013/03/14(木) 01:11:43 ID:nvnr/iEo0
- 投下終了です。
参加の二の足を踏んでいましたが、>>1氏のやさしい言葉に勇気付けられ、学が無いなりに頑張って書いてみました。
キャラ解説は上手くかけないので、>>1氏にお任せしたいと思います。
- 93 : ◆k3fZfnoU9U:2013/03/14(木) 01:25:02 ID:gpgOAkNM0
- トリケラトプス、クロノサウルスを投下します
- 94 :編み込まれたSTニコルの絆 ◆k3fZfnoU9U:2013/03/14(木) 01:27:07 ID:gpgOAkNM0
- とある砂浜、波は白く冷たく打ち寄せては引きを繰り返す
その常に変わる海と砂浜を境界にして、2匹はお互い相手の顔を見つめていた
しばらく無言のまま時が流れる
「なあじっさん、四足歩行でオレから角とフリルを取り除いた代わりに背中に互い違いにヒレを付けている緑色をした奴とは会ったか?」
「すまんのぅ、ここに連れて来られてからであったのはお主が初めてじゃ」
しばらくして根負けをした草食性恐竜の若者、トリケラトプスが口を開く
それに対して海竜の老体、クロノサウルスは律儀に答える
「そうか…じゃあな」
「少し待ちなさい、慌ててもいい結果は生まれんぞ」
その場を立ち去ろうとするトリケラトプスに対し、クロノサウルスは静止を求める
「すまんがじっさんと話をしてる余裕はない。早くあいつを探さないと食われてしまう」
「そうかそうか、早くせんとそいつは食われてしまうのか」
「あぁ、オレと違ってあいつは抵抗する術が余りにも弱すぎる。牙にかかればひとたまりもないだろうな……」
トリケラトプスはこれまでの境遇をクロノサウルスに伝える
「オレ自身元々群れの中の一頭として暮らしてたんだが、少し草を食べるのに夢中になり過ぎて気がつけば周りに仲間はいなくオレ一頭になっていた」
自分自身が群れから外れてしまったこと
「オレはすぐに仲間を探し駆けまわった。だけど何処に行っても見つからず夜も更けどうしようかと落ち込んでた時、オレと同じように群れから外れたあいつと出会ったんだ。まぁ、あいつはトリケラトプスじゃなかったがな」
途方に暮れていた時、種こそ違えど同じ境遇の者にあったこと
「オレ達は一緒に仲間を探しまわった。全然見つかる気配はなかったけどな。オレが落ち込んだらあいつが、あいつが落ち込んだらオレが励ましてたな」
お互い励まし合いながら自分たちの群れを探しまわったこと
「敵に見つかって食われそうになることなんてしょっちゅうだったな。時にオレが犠牲になってあいつを逃がそうとしたこともあったな。ま、結局どっちも食われはしなかったけどな」
時に自分達を食らうものから命からがら逃げたこと
「そんなこんなであいつと仲間を探しているうちに……なんというかあいつがかつてオレと共に過ごした群れの仲間より大切な仲間だと思うようになってたんだ」
いつしか種を超えた仲間意識をお互い持ち始めていたこと
「ま、そんなこんなで群れを探している時にこんなところに連れて来られたってわけだ。それに俺だけじゃなくてあいつまで連れて来られてた。あそこで辺りを見渡した時にあいつの姿を見たんだから間違いない」
そしてこの殺し合いに巻き込まれた時その相棒と呼んでも差し支えない仲間、ステゴサウルスも巻き込まれていたこと
「確かにオレは草食として食われるほうの立場だ。何度命の危機にさらされてきたか分からない。だけどそう簡単に食われる気はない。危険を感じたらその場からすぐ逃げだすし、いざとなればこの角で抵抗だって辞さないぜ」
トリケラトプスは魂の籠った揺るぎない瞳でクロノサウルスに自分の決意を告げた
沈黙が時間を支配する
トリケラトプスは話し終えた後もクロノサウルスに対し揺るぎない瞳で見つめている
波の満ち引きの音が繰り返し海岸に響き渡る
どのくらい時間がたったのだろうか
今度はクロノサウルスのほうが口を開く
「お主の決意は聞かせてもらった。わしも影ながら応援するとしよう」
「じっさん……じっさんはどうするつもりだ」
「わし自身寿命も近いしここで生き残れるとは思えないからのぅ……
わしの命が尽きるまでのんびりと顛末を見届けることにしよう」
「そうか……短い間だけど世話になったな、じっさん。あ、もしあいつにあったらオレのことを伝えてくれ。じゃ、オレはもう行くぜ」
クロノサウルスに別れを告げトリケラトプスは自身のフリルをたなびかせながら駆け出した
- 95 :編み込まれたSTニコルの絆 ◆k3fZfnoU9U:2013/03/14(木) 01:27:44 ID:gpgOAkNM0
- 【一日目・黎明】
【フィリピン・アロナビーチ】
【トリケラトプス】
【状態】健康
【思考】一刻も早くあいつ(ステゴサウルス)を見つけ出す。草食だからって舐めるな
【備考】オス、若者、アメリカ出身、群れから外れてしまった個体、同じく群れから外れてしまったステゴサウルスと親友関係、ただし種族としての名前は知らない
【クロノサウルス】
【状態】健康
【思考】殺し合いはせずにゆっくりと顛末を見守る
【備考】オス、老体、オーストラリア出身
参加者紹介
【トリケラトプス】
中生代白亜紀後期の北米大陸に生息していた草食種の一種
三本の角と後頭部から首の上に伸びたフリルが特徴
鳥のくちばしのように尖った口先で草や木の実を摘み取って食べていたとされている
余談だがトロサウルスはトリケラトプスのシノニムであるとされているが、反論があることもあり一般論としては定着していない
【クロノサウルス】
中生代白亜紀前期のオーストラリアに生息していた首長竜の一種
大抵『時のトカゲ』と訳されるが名前の由来はギリシャ神話におけるゼウスの父クロノスであるため厳密にいえば誤りである
長く伸びた三角形の吻と25センチの鋭い歯を沢山持っている
鰭脚と尻尾の鰭を駆使して舵を取っていたとされる
- 96 : ◆k3fZfnoU9U:2013/03/14(木) 01:30:01 ID:gpgOAkNM0
- 投下完了です
参加者紹介ともどもこのような感じでよろしいのでしょうか?
- 97 :名無しさん:2013/03/14(木) 01:41:48 ID:VmM18QUw0
- 投下乙…と言いたい所だけど、トリケラトプスとステゴサウルスって時代違くなかったっけ?
- 98 : ◆k3fZfnoU9U:2013/03/14(木) 01:43:12 ID:gpgOAkNM0
- >97
あらかじめ調べたところ、ギリギリ大丈夫だと判断しました
- 99 : ◆aWSXUOcrjU:2013/03/14(木) 01:47:20 ID:5vDVhm/20
- 皆様投下乙です
ケツァルコアトルスもクロノサウルスも、みんないいキャラしてるなぁ
ステゴサウルス、ニホンカワウソで予約させていただきます
- 100 : ◆wdsIwtMsVI:2013/03/14(木) 02:08:23 ID:nvnr/iEo0
- すいません、出身地ですが。
ケツァル→アメリカ
ドードー→インド
でお願いします
- 101 : ◆aWSXUOcrjU:2013/03/14(木) 02:21:00 ID:5vDVhm/20
- 短いですが、ステゴサウルス、ニホンカワウソ分を投下します
- 102 :時代の岐路 ◆aWSXUOcrjU:2013/03/14(木) 02:21:15 ID:5vDVhm/20
- ざざぁん、と押し寄せる波の音が、耳に心地よく響いている。
きらきらとまたたく星の光と、日の昇り始めた紫の空。
それらが揺れる水面に映し出されて、幻想的な光景を演出している。
夜のアメリカ西海岸は、穏やかな静寂に包まれていた。
自然の静けさに包まれた中、唯一響く雑音と言えば、巨大な竜の足音くらいだ。
のっし、のっしと地を揺らすのは、剣竜・ステゴサウルスの歩みだった。
「ひょっとしたら、おっちゃん達も、絶滅しちゃう運命なのかな」
そしてその剣竜の背中に、ちょこんと乗った影がある。
文字通り剣のようなプレートの隙間に、すっぽりと納まって座っているのは、胴長の茶色い哺乳類だ。
名を、ニホンカワウソと言った。
ステゴサウルスとは、お互い殺し合いに乗らず、行動を共にすることにした者同士だ。
「かもしれん。俺も、そういう奴らは何度か見てきた」
ステゴサウルスの言葉には、ほのかに、哀愁が漂う。
自分と同じ姿をした仲間達は、めっきりと見なくなってしまった。
肉食恐竜に襲われ、群れからはぐれてしまって以降、同族に出会った経験はない。
ひょっとしたら、自分達ステゴサウルスは、滅びに向かいつつあるのかもしれない。
たとえば、親指の大きな草食竜――イグアノドンという個体がそうだ。
いつの間にか見かけるようになったが、最近は数も減ってしまったようだと、父親から聞いたことがある。
(何とも、埋めがたいものだな)
こんな小さなカワウソを、わざわざ連れ歩いているのは、寂しかったからかもしれない。
ミニチュアの地球に放り出され、1人月下で歩いていた、その時の心境を振り返る。
これまた最近になって見かけるようになった奴だが、角の生えた若い恐竜とは、幸いにも交友関係を築くことができた。
それでも、同族に会えない寂しさというのは、どうしても埋めがたいものがある。
きっとこれからは、あの角竜の若者が、大地を支配するのだろう。
そして自分のような老いぼれは、時代の流れに押しやられ、置いて行かれてしまうのだ。
そうした類の感慨も、彼の気分を暗くさせていた。
「オイラ達もさ……最近、同じカワウソの仲間を、見かけなくなっちゃったんだ」
そしてどうやら、意外にも、カワウソも同じだったらしい。
彼は自分と違う時代に、自分と違う島国で生きていた。
しかし、環境の変化に伴い、彼らの個体数もまた、じわじわと減りつつあるのだそうだ。
「そうか」
しゅんとしたカワウソの声に、小さく頷く。
不器用なステゴサウルスは、ただそれだけを短く言う。
全く立ち場の異なる者同士だが、絶滅という二文字が、シンパシーとなって、彼らの間に繋がっていた。
静かな波の音だけが聞こえる浜を、剣竜ステゴサウルスは、板を揺らして歩いていった。
【一日目・黎明】
【北アメリカ大陸・西海岸】
【ステゴサウルス】
【状態】健康
【思考】角の生えた若者(トリケラトプス)と合流したい
【備考】オス・壮年・アメリカ出身。群れから外れてしまった個体。絶滅を目前に控えた時期からの参戦。
同じく群れから外れてしまったトリケラトプスと親友関係。ただし種族としての名前は知らない。
【ニホンカワウソ】
【状態】健康
【思考】とりあえず死にたくない
【備考】オス・少年・日本出身
- 103 : ◆aWSXUOcrjU:2013/03/14(木) 02:22:21 ID:5vDVhm/20
- 投下は以上です
ステゴサウルスとトリケラトプスですが、白亜紀の中期頃に、
こういう事情で参戦させれば、多分どうにかなるのではないでしょうか
お手数かけますが、ステゴサウルスとニホンカワウソの紹介も、他の方にお願いしたいと思います
- 104 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/14(木) 05:20:17 ID:9O3oK3OA0
- 皆様投下乙です!!
トリケラとステゴの年代についてですが、別にこのままでもいいのでは無いかと思います。
ステゴサウルスの子孫が細々と白亜紀末まで生き残っていたと想定することも、(極めて可能性は低いとはいえ)一応は可能ですので。
ただ、トリケラトプスが白亜紀中期にいたというのは流石に無理があるかと思います。
トリケラトプスは最も進化した角竜ですが、中期だと角竜自体がまだごく原始的なものしかいませんので。
◆aWSXUOcrjU氏には恐縮ですが、私としてはステゴサウルスの回想の中のイグアノドンの話を、父からの伝聞ではなく、彼の種族に代々語り伝えられた話とし、ステゴとトリケラが出会ったのはあくまで白亜紀末期マーストリヒト期とすることを提案いたします。
なおここからは余談になりますが、同じ「白亜紀」という名前の時代でも年代によって生物相は劇的に違います。
白亜紀自体、新生代全体よりもかなり長い時代ですので。
同じ「白亜紀前期」であっても、その始まりから終りまでは、新生代の始まりから現在までの長さにほぼ匹敵します。
つまり白亜紀前期はじめの動物と白亜紀前期おわりの動物が出会うというのは、我々が新生代初期の動物と出会うというのと同じということになります。
これは例えて言えば、同じ「江戸時代」の人物であっても、徳川家康と坂本竜馬が出会うことはありえない、というのと同じようなことです。
なので年代に関しては、紀ではなく期レベルで考えていただけると、誤解がなくていいかと思います。
感想はまた後ほど改めて書き込みます。
- 105 : ◆aWSXUOcrjU:2013/03/14(木) 12:53:38 ID:5vDVhm/20
- >>104
了解しました
それぞれの生存時期の中間でギリギリかぶっていた、とするには、無理がある時期だったわけですね
修正しようと思うのですが、自分も1個気になる箇所があります
イグアノドン滅亡の件を代々語り継いだことにしてはどうか、ということでしたが、
ステゴサウルスらが、わざわざ他種族の滅亡について、
脈々と語り継ぐような連中であったのかと考えると、若干疑問符が浮かびます
(父親の代という、比較的近い世代で数が減っていた種を選んだのは、そのためでもあります)
なのでここに関しては、ちょうどこの時期に絶滅しかかっていた、別の恐竜に置き換えようと思います
お手数かけますが、その時期ならこの恐竜がそうなんじゃないか、という案がありましたら、教えていただけるとありがたいです
- 106 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/14(木) 13:06:14 ID:Kq7xk6Kg0
- ご対応ありがとうございます。
マーストリヒト期の北米にいた恐竜ということでは、名簿の中では、
ティラノサウルス・トロオドン・アンキロサウルス・ランベオサウルス・パキケファロサウルスが該当します。
- 107 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/14(木) 13:09:17 ID:Kq7xk6Kg0
- すいません、トロオドンとランベオサウルスはマーストリヒト期の一つ前の、カンパニアン期の恐竜でした。
しかし「つい最近絶滅した」ということに該当しそうという点では、この二種類のほうがいいかもしれません。
- 108 : ◆aWSXUOcrjU:2013/03/14(木) 13:30:19 ID:5vDVhm/20
- ありがとうございます。それでは、
> たとえば、親指の大きな草食竜――イグアノドンという個体がそうだ。
このくだりを、
> たとえば、頭に丸いトサカのついた草食竜――ランベオサウルスという個体がそうだ。
と変更させていただきます。お手数かけて申し訳ありませんでした
- 109 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/14(木) 16:21:19 ID:Kq7xk6Kg0
- 修正お疲れ様です。
細かいようなことを言ってしまってすみませんでした。
以下感想です。
>◆JUJ3JcJgbI氏
参加者紹介、ありがとうございます。
簡潔にわかりやすく纏められていていいですね。私も見習いたいです。
>すっげぇ! 神様ってすっげぇ!
その発想は無かったwww
名簿にゴジラサウルス(もちろん実在のほうの)かシネミス・ガメラを入れなかったことを後悔させられました。
あ、でもシティパティはそのまんま神の名前だ……
文字が読めるって設定はいいですね。いただきです。
あと、ドードーの出身地は「インド洋(の島)」の間違いでは?
>編み込まれたSTニコルの絆
これは予想外にかわいいトリケラトプス。
やっぱり「群れからはぐれた一匹狼」というキャラは魅力的ですね。
クロノサウルスもいい味出してます。
>時代の岐路
ニホンカワウソかわいそすぎる……
絶滅動物にはみんな悲劇のイメージがつきまといますが、それをいい具合に焙りだしていますね。
皆さん本当に投下乙です。
参加者紹介についてはもうちょっと待ってください、すいません。
- 110 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/14(木) 16:47:43 ID:Kq7xk6Kg0
- なお、参加者の出展年代については、大まかに次のような『目安』を設けようかと思います。
○その動物の最古の化石が見つかっている年代より前の年代からの参戦は原則不可
○その動物の最後の化石が見つかっている年代よりも後からの出展とする場合は、
五大大量絶滅を挟まない場合は最後の化石の年代+2000万年後までは可
五大大量絶滅を挟む場合、および+2000万年以上新しい年代から出す場合は何らかの説明を入れてくれると助かります
五大大量絶滅…オルドビス紀末、デボン紀末、ペルム紀末、三畳紀末、白亜紀末
ただし以上に該当しなければ即NGなどというものではありません。
あくまでも目安として活用してください。
- 111 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/14(木) 17:23:00 ID:Kq7xk6Kg0
- アウストラロピテクス・アファレンシス、メガニューラ、リストロサウルス投下します
- 112 :ブラック・ボーン・コレクター ◆sOMmvl0ujo:2013/03/14(木) 17:23:45 ID:Kq7xk6Kg0
- 薄暗い高層ビルが林立する中を、ビルからビルへと翼を広げて静かに飛び移る影が一つ。
一見すると鳥かと思うが、その正体は鳥ほども大きな昆虫だった。
メガニューラ――翼開長七十センチに達する、地球史上最大級の昆虫の一つである。
しかしいくら昆虫として最大で、元の時代では多くの獲物に恐れられた存在であっても、このミニチュア地球の上では決して大きくて強い動物であるとは言えなかった。
彼はその事実をついさっき、自分の目で思い知ったのである。
(全く、あそこにいたのは揃いも揃って化け物じゃねえか)
今まで、自分より大きな動物などほとんど見たことも無かった彼だったが、さっき集められた場所にいたのはほとんどが自分の何倍もある怪物たちだった。
また、翼を広げて木から木に滑空するように飛ぶのがせいぜいの彼とは違い、自在に翼を操って空中を飛びまわれる者もいた。
(ったく、俺はこんなところで死ぬわけにはいかねえんだ……せっかく成虫になれたってのに、子孫も残す前に死んでたまるか!!)
しかし、あれほど体格も運動能力も違うような相手に、真正面から挑んでも勝ち目など無いのはわかっていた。
生き残れるのが最後の一匹だけだというのなら、他の動物を全部殺すことに躊躇は無かったが、その方法が問題だった。
(正攻法じゃダメだな。ひとまず誰か強そうな奴に取り入って、チャンスが巡ってくるのを待つか)
それにしても、と彼は思う。一体ここはどこなんだろう、と。
木のように高くて、いくつも穴が空いた岩が何本も地面から突き出している、不可思議な場所だ。地面の色も岩がむき出しなのか、灰色一色だ。
こんな妙なところで本当に誰かと会えるんだろうか、と思っていた時、その岩に開いた穴の奥で、誰かの影が動くのが見えた。
「いいかい、もう一度だけ説明するよ?」
わずかばかりの光が差し込む廃ビルの一室。女の苛立ったような声が響く。
声を上げたのは猿人アウストラロピテクス・アファレンシスの女。外見は一見すると類人猿と変わらないが、その表情からは意志の強さと利発さが伺える。
実際、彼女は幾多の艱難辛苦を乗り越えてきた、群れのリーダーであった。
本来のリーダーである彼女の夫が肉食獣に襲われて死んだ後も、生来の才能と夫から教わった知恵を武器に、仲間たちを守り抜いてきたのである。
彼女は今回の異常事態にもすぐに落ち着きを取り戻し、まずは自分がワープさせられたこの廃ビルの中をくまなく調べた。
そして、何か意味がありげな二枚の薄くて大きなもの――「紙」を発見した。
その内容から、彼女はこれがこの近辺の地形を平面状に現したもの――「地図」であることに気がついたのだ。
そしてそのことを他の誰かに伝えようとしていた時、一匹の別の参加者に遭遇した。
早速とばかりに、その変な顔をしたトカゲのような動物に説明を始めたのだが……
「私たちが今いる場所は多分この辺さ。で、ここからが大事なところだけど……」
もう何回同じ話をしているのか、と思いながらもなんとか頑張ってもう一度始めようとする。しかしすぐに遮られた。
「いまいるばしょがそこってどうしてわかるのさあ?」
鼻から抜けるような声で、「変な顔をしたトカゲ」リストロサウルスは首をかしげる。
「だからそれも何回も説明したでしょうが……いい、ここの文字は『山』、こっちは『海』って読めるわよね?」
彼女もどうして自分に文字が読めるのかはわからなかったが、それを考えるのは後回しにしている。
「うーん、たしかにぼくにもそうよめるよー。だけどさー」
「そしてこの小さな粒みたいなものは、多分私たちが今いるこの岩の塔のことだと思うのよ。
そしてそこの穴から外を見れば、あっちの方角に山が見えるわよね?
てことは、私たちがいるのは大まかにこの辺りだと絞ることが出来るわけで……」
「うーん、よくわかんなくなってきたよー。もういっかいはじめからいってくれよー」
こうして、会話は再び最初に戻っていくのである。
もう何度同じことを繰り返しているのか、わかったものではない。
アウストラロピテクスもいい加減頭にきはじめていたが、仕方ないのでもう一度説明を始めようとする。
が、そこで思わぬ闖入者があった。
一匹の巨大なトンボが、地図の上に舞い降りてきたのだ。
- 113 :ブラック・ボーン・コレクター ◆sOMmvl0ujo:2013/03/14(木) 17:24:32 ID:Kq7xk6Kg0
- 「すげえなアンタ。話を聞かせてもらってたが、俺の見たところあんたの考えで当たりだと思うぜ」
「わー、おっきなとんぼさんだー」
突如現れたメガニューラに、リストロサウルスは暢気な感想を述べた。
その後、お互いに自己紹介を済ませた彼らは、改めてアウストラロピテクスの考察内容を聞いた。
彼女は地図上における現在位置を特定した上で、そこを基点としてどう行動すれば効率がいいかを検討していった。
リストロサウルスは相変わらずわけがわからないよといった顔をしていたが、メガニューラが構わず先を促したため、アウストラロピテクスもようやく最後まで話を聞かせることができた。
「いや、お見事としか言いようが無いねえ。あんた一体何者だ?」
「別にただの小さな猿人の群れの親分よ。ま、地形から食物のありかを予想したりとか、似たようなことは普段からやっているからねえ」
そう言って肩をすくめるアウストラロピテクス。
彼女たちが常食としているのは、動物の骨髄である。他の肉食動物が見向きもしない、サバンナに転がっている骨を簡単な石器で砕き、栄養価の高い骨髄を食べる。
すなわち“ボーン・コレクター”と呼ばれる生存戦略である。
これは一見狩りをする必要のない手軽な戦略にも思えるが、大型の動物の骨ないし死骸を見つけられないと餓えかねないという危険な食性でもある。
そこで群れのリーダーには、住処の周囲の地形と動物の生息域、動物の行動パターン、動物が死ぬ可能性の高い場所の推定とそれらの場所を効率よく巡回するためのルート探索など、極めて高度な空間把握能力が要求される。
アウストラロピテクスとはその能力を突き詰めて進化させた生物であり、その中でも彼女のそれは群を抜いていた。
「だから、私はここでもみんなを守るんだ。弱い奴らを守るのが、私の役目だからねえ。
もちろんあんたたちも私が守ってやるよ。まあ、どこまでやれるかはわからないけどねえ」
「姐さん、最終的にはここから逃げ出すつもりか?」
「ああ、上手く行くかは賭けになるが……案外どうにかなるんじゃないかと思ってるよ」
彼女はそう言って、犬歯を見せて笑った。
そしてメガニューラも、内心で大きく笑った。
これはついていた。これほど頭の働く奴に守られていればそうそう死ぬことはあるまい。
もちろんいずれは殺さなければならないが、今は大人しく従うのが得策だろう。
リストロサウルスだけが、よくわからないという顔をしていた。
「それで、当面どうするんだ姐さん?」
「まずはもう少しここを調べてみようかと思うんだよ。まだまだ役に立つものがあるかもしれないからねえ。
ちょっと手分けして手伝ってくれるかい?」
アウストラロピテクスの指示で、三匹は取り合えず別れて、別々の場所を探すことになった。
といっても、リストロサウルスはそもそも何を探せばいいのかもよくわかっていない。
「なんとかピテクスさんととんぼさんは、むずかしいことをしっててすごいなー」
などと言いながら、廊下をうろうろと歩き回っているだけである。
そこに、他の場所を調べていたアウストラロピテクスが戻ってきた。リストロサウルスは彼女に背を向けていてそれに気付かない。
離れた場所にある部屋を調べているメガニューラは、まだ当分ここに戻っては来ない。
アウストラロピテクスは、その機会を逃さなかった。
- 114 :ブラック・ボーン・コレクター ◆sOMmvl0ujo:2013/03/14(木) 17:25:49 ID:Kq7xk6Kg0
- 背後から走り寄り、リストロサウルスの体を両手で掴みあげると、開いていた窓から放り投げた。
リストロサウルスは悲鳴も上げないまま、遥か下の地面に向かって落下していった。
この高さなら助からないだろうことなど、もちろん承知の上だった。
窓から下を見下ろし、リストロサウルスが死んだのを確認したアウストラロピテクスは安堵のため息をついた。
あのような無能な者を群れに入れていては、他の群れのメンバーの足を引っ張ることになり、下手をすればそれが原因で全滅することもありうる。
ならばここから脱出するどころではない。
ああいう無能で、かつ無能なりに周囲に合わせることさえもしないような個体は、追放するかさもなければこうするしかないのだ。
群れを守るためには、群れに害を成す個体は排除せねばならない。
自分はボーン・コレクター。捨石にした仲間の骨は、自分たちの脱出という形でちゃんと拾ってやる。
幸い、メガニューラのほうはまだかなり頭が働くようだ。これから出会う味方も、ああいうのばかりであればいいのだが。
そして彼女は踵を返した。
メガニューラに、リストロサウルスが一人で勝手に落ちて死んだと説明するために。
【一日目・黎明】
【東アジア・日本列島】
【リストロサウルス 死亡確認】
【備考】メス・子ども 南極出身
【アウストラロピテクス・アファレンシス】
【状態】健康
【思考】みんなで脱出する(足手まといになる奴は容赦なく殺す)
【備考】メス・中年 アフリカ出身 1974年エチオピアで発見された標本「ルーシー」
【メガニューラ】
【状態】健康
【思考】大人しいふりをしつつ、隙を見て弱そうなものから殺す(最終的に優勝する)
【備考】オス・若者(変態直後) ヨーロッパ出身
参加者紹介
【リストロサウルス】
中生代三畳紀前期インド期〜オルネク期。アフリカ・インド・ユーラシア・南極に広く分布。
離れた大陸から化石が見つかっているということで、大陸移動説の根拠の一つに挙げられる。
ディキノドン類の中でも、寸づまりというか垂直に切り立ったような顔面が特徴的。
「かわいい」古生物の代表に挙げられ、女性ファンも多い。
【アウストラロピテクス・アファレンシス】
新生代新第三紀鮮新世。アフリカ東部に分布。
アウストラトピテクスは猿人と呼ばれる所期の人類の一種で、その中でも最もメジャーなのがアファレンシスである。
当ロワに参戦しているのは1974年に化石が発見された女性「ルーシー」である。
この標本は猿人の化石としては例外的に保存状態が良く、人類の起源に関する研究を塗り替えた。
食性ははっきりしないが、原始的な石器で大型動物の骨を砕いて骨髄を食べたという「ボーン・コレクター説」が唱えられており、本ロワではこの説を採用している。
【メガニューラ】
古生代石炭紀末期Gzhelian期(日本語発音わからなかった…)。ヨーロッパに分布。
翼開長は推定で最大70センチを超える、史上最大級の昆虫の一つである。
よく「巨大トンボ」といわれるが、現生のトンボとは目のレベルで違う。
- 115 :ブラック・ボーン・コレクター ◆sOMmvl0ujo:2013/03/14(木) 17:26:26 ID:Kq7xk6Kg0
- 以上になります。
- 116 : ◆ou4L/DcH3E:2013/03/14(木) 20:32:56 ID:2AZ7TlVk0
- どうしても話が纏まらず、期限までに書き上がりそうにないので予約を破棄させていただきます
大変申し訳ありませんでした…
- 117 : ◆wdsIwtMsVI:2013/03/14(木) 23:20:03 ID:XKEeuiBY0
- >>109
お手数をおかけします。
インド洋、ということでお願いします。
- 118 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/15(金) 00:37:58 ID:f4RyR4.g0
- >◆ou4L/DcH3E氏
了解いたしました。
どうかお気になさらず、またいつでも気が向いた時に書きにきて下さいね。
>◆wdsIwtMsVI氏
返答ありがとうございます。こちらこそお手数おかけしました。
ホモ・ネアンデルターレンシス、ブロントスコルピオを予約します。
- 119 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/15(金) 15:41:42 ID:6Zhlt6Ns0
- ホモ・ネアンデルターレンシス、ブロントスコルピオ、投下します。
- 120 :しっぽについて ◆sOMmvl0ujo:2013/03/15(金) 15:42:19 ID:6Zhlt6Ns0
- 信じられない。
あのような醜い動物が、この世界に存在するなんて。
夢中で草むらを掻き分けて進みながら、彼は何度も何度も心の中でそう繰り返した。
あんな醜く、奇怪で、化け物のような生物が、一匹や二匹ならまだしも、あんなに沢山集まっているなんて。
彼にとっては「殺し合い」ということよりも、むしろそちらのほうが恐ろしい事態だった。
あんな怪物がもし目の前に現れたら、一体どうすればいいのか。
恐怖に足が竦んで、まともに話すことも戦うことも出来ないかもしれない。
一体、どうしたらいいのか……
そしてやがて、その恐れていた事態は現実のものとなった。
ようやく草むらを抜けたかと思ったら、目の前に言葉では言い現すこともできないような、おぞましい姿をした生き物が現れたのだ。
「うぎゃああああああああ!! か、怪物ううううううううう!!」
巨大サソリ・ブロントスコルピオの若者は、二本の鋏を振り上げて悲鳴を上げた。
ホモ・ネアンデルターレンシスの若者は、呆気に取られた顔でブロントスコルピオを見た。
一メートルもあるような超巨大サソリが出てきたのだから、本来こっちが悲鳴を上げて逃げ出したっておかしくない。
なのに先にサソリのほうに悲鳴を上げられてしまったのだから、こっちは面食らってしまった。
しかし自分のほうこそとんでもなく不気味な容姿をしている癖に、人を化け物呼ばわりするとは何事か。
大体自分は仲間たちから、集落の中でも一際美しいと言われているのだ。
化け物のようなサソリに怪物呼ばわりされてはたまったものではない。
「何よ、あんたのほうこそよっぽど怪物じゃないの!!」
怪物に怪物と言われたのだから、ブロントスコルピオのほうも黙っているわけにはいかない。
「何言ってんだよ!! そんな、ふさふさぬめぬめした不気味な格好してるくせに……」
外骨格生物である彼にとっては、内骨格の哺乳類、それも毛が一部しかなくて皮膚がむき出しになっている人間など、おぞましい姿にしか見えない。
「そ、それになんでお前尻尾が無いんだよ!! 尻尾のない生き物なんかありえねえだろ!! 怖すぎるよ!!」
立派な毒針のある尻尾を持っている彼からすれば、尾の無い動物などは首がない動物と同様に恐ろしい存在だった。
「そんなこと言われてもねえ……私の尻尾は、ここに連れてこられた時にどっかいっちゃったし」
「はあ? お前の尻尾は着脱可能なのかよ?」
「もちろん生まれつき付いてた尻尾じゃないわよ。村の男の人の一人が、私のために作ってくれた狐の尻尾の飾りよ。普段はこう、腰のあたりに付けてるんだけど……」
ホモ・ネアンデルターレンシスは、服の裾をまくって尻を見せた。それを見たブロントスコルピオは泡を吹いて卒倒しそうになる。
「ちょ、ちょっとあんたどうしたのよ急に!?」
「あーびっくりした……そんな姿ってだけで気持ち悪いのに、脱皮しようとするなんて……」
「誰も脱皮なんてしようとしてないでしょうが。ただ服をめくっただけよ」
「皮膚が自在に剥がせるのか? なんて恐ろしい……」
この世には自分の想像も付かない奇怪な生物がいるということに、驚愕の念を隠せないブロントスコルピオ。
今まで美しいとしか言われたことのないホモ・ネアンデルターレンシスとしては、少し面白くない。
「何よもう……村の男たちは、私がこんな風に服の裾を捲ってお尻を見せたらみんな喜んで触りに来ようとするのに」
「そんな尻尾のついてない変な体のどこがいいんだ。さっぱり理解できん」
「尻尾なんか無くたって別にいいじゃない」
「それに、お前の種族はみんな尻に触りたがるのか? なんて変な習性なんだ。何のためにそんなことをする?」
「何のためにって言われても……私にもよくわかんない。同じ村にいる人たちでも、男の人の考えてることは私にもよくわかんないわよ。
お尻じゃなくて、こっちに触ってこようとする人もいるし……」
彼女はそう言うと、自分の胸に両手を当てた。
彼女の胸についている二つの脂肪塊は、彼女の種族の中でも、かなり大きな部類に属する。
同じく脂肪がバランスよく豊富に付いた尻と同じく、彼女の村の若い男たちを誘引する効果を持っているのだ。
だがブロントスコルピオにとっては、
「ええ? そんな不恰好な肉の固まりが?」
という感想しか持てない。
「もう、さっきから失礼な奴ね。だいたいあんたの体だってねえ……」
こうしてしばらく彼らは、「どっちの体のほうが不気味か」ということを議論し続けたのであった。
- 121 :しっぽについて ◆sOMmvl0ujo:2013/03/15(金) 15:42:43 ID:6Zhlt6Ns0
- 【一日目・黎明】
【北アメリカ・イエローストーン国立公園のあたり】
【ホモ・ネアンデルターレンシス】
【状態】健康
【思考】殺し合いにはとりあえず乗らない
【備考】メス・若者(10代中盤〜後半くらい) ヨーロッパ出身
【ブロントスコルピオ】
【状態】健康
【思考】殺し合いにはとりあえず乗らない
【備考】オス・若者 ヨーロッパ出身
参加者紹介
【ホモ・ネアンデルターレンシス】
新生代第四紀更新世。ヨーロッパに生息。いわゆるネアンデルタール人。
現生人類(ホモ・サピエンス)と同時代・同地域に生きた人類で、文化的な交流があった可能性も指摘されている。
かつては「野蛮な原始人」というテンプレート的な理解をされていたが、美術や装飾、死者への弔いなどといった概念を持っており、精神的には我々とほとんど変わらないような人々であった可能性も高い。
絶滅の原因ははっきりせず、現生人類との競争に敗れたとも、火山噴火など局地的な災害や気候変動(現生人類と違ってヨーロッパローカルな分布をしていたのが仇になった)が原因とも言われる。
遺伝子解析の結果現生人類にも一部にネアンデルタール人の遺伝子を受け継ぐ人がいることがわかっており、かつて我々の祖先と彼らはどこかで混血したのではないかと言われている。
【ブロントスコルピオ】
古生代シルル紀末期Pridoli期。イギリスから発見。
見つかったのは片方の鋏の部分の一部だけという不完全な状態ながら、その大きさから全長を推定すると一メートルに迫る。
おそらく史上最大のサソリだと思われる。
なお全身の化石が見つかっていないので毒針があったかどうかはわからないが、本ロワではあったとしたほうが話が広がりそうなので、あったことにしてみた。
- 122 :しっぽについて ◆sOMmvl0ujo:2013/03/15(金) 15:45:13 ID:6Zhlt6Ns0
- 以上になります。
女性陣がロリとおばさんばかりになってきたので、中間の年代を出してみました。
続けて、二連続な上にゲリラ投下になりますが、カルノタウルス・アンキロサウルスで投下します。
- 123 :長恨歌 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/15(金) 15:46:39 ID:6Zhlt6Ns0
- 「おいこらこの老いぼれ!! この俺様の前にのこのこ現れたからには、生きて帰れるなんて思ってんじゃねえだろうな!!」
草原に、威勢のいい声が響き渡る。
その声の主は、その威勢もむべなるかなというほど恐ろしげな姿をしていた。
左右の目の上には巨大な角。他の肉食恐竜と比べて上下に分厚い頭部からは鋭い歯が覗いている。
そして背中を覆う骨片の鎧。極端に短い前肢さえも、その異界の悪魔のような形相に拍車をかけて、ますます印象を恐ろしくしていた。
彼こそまさに、孤立した大陸だからこそ生まれた異形の肉食恐竜。名をカルノタウルスと言った。
「殺しあえなんて、俺は知らねー!! もともと俺様の前に現れた奴は、誰だろうと皆殺しだって決まってんだよおおおおお!!」
だがその異形の悪魔がいくら咆哮し、威嚇しても、対峙しているもう一頭の恐竜は微動だにしなかった。それどころか、眉一つ動かさない。右目が傷によって潰れていることが、かえって凄みを与えていた。
「なにシカトきめてんだジジイ!! そんな鎧なんか俺様の牙の前には無意味だっつーことを教えてやろうかコラ!!」
大きな顎を開いて自慢の牙を見せ付けてみても、その隻眼の鎧竜の余裕は微塵も揺るがなかった。
「ほう、お主ごときがワシの相手になるというのか? 狩りというものは身の程をわきまえた上でやらねばならんぞ、若いの」
彼もまた、カルノタウルスと同じく全身を装甲で覆った恐竜であった。
しかもその装甲はカルノタウルスのそれを遥かに上回っていた。
頭、首、背中から尻尾の先までの全てが鎧に覆われた「装甲竜」。それが彼、アンキロサウルスたちが歩んだ進化の道であった。
だがカルノタウルスは臆しなかった。
「うっせーんだよ老いぼれが!! もうガマンならねえ、死ねえええええ!!」
威勢も激しく、アンキロサウルスの首筋をめがけて飛び掛った。
しかし次の瞬間、カルノタウルスの右足に激痛が走り、視界は大きく一回転した。
轟音とともに、彼の巨体は地面に叩きつけられるように倒れこんだ。
アンキロサウルスがしたことといえば、ただ右足を軸に体をくるりと一回点させただけであった。
それによって勢い良く振られた尾の、先端に着いている骨の塊が、カルノタウルスの足を払ったのだ。
- 124 :長恨歌 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/15(金) 15:46:53 ID:6Zhlt6Ns0
-
「ってえ……」
カルノタウルスは弱々しく鳴いた。アンキロサウルスは彼に向き直り、嘆息する。
さして強く打ったわけではない。彼が本気で尾を振れば、彼の足の骨は粉々に砕かれていたし、そもそも地面に倒れた時に即死していただろう。
「……どうした、若いの? さっきまでの威勢はもう消えたか?」
起き上がろうともしないカルノタウルスに、アンキロサウルスは呆れたように言った。
随分と打たれ弱い悪魔であった。
「強く……」
倒れこんだまま、カルノタウルスは喉の奥から搾り出すように言った。
「強く、なりてえなあ……一撃であんたを倒せるくらい、強くなりてえなあ……」
「……若いの。お主にワシを仕留めるのは無理じゃろうて。ワシを屠れるのは多分この地上でただ一匹だけじゃ」
老アンキロサウルスは静かに言った。
重い鎧を持って生まれてきた彼は、子どもの頃を除けば命の危機を感じたことなど無かった。
ただ一回、普通のティラノサウルスよりも二回り以上巨大な体躯を持った雄のティラノサウルスに襲われた時を除いては。
老いたアンキロサウルスの右目の傷は、その時に付けられたものだった。
カルノタウルスは、膝の痛みを堪えながら、悲鳴のように叫び続けた。
「それじゃあ、駄目なんだっ!! 力がねえと……あんたを倒せるくらいの強い力がねえと、群れを守れねえんだ。だから、俺は……俺はっ!!」
咆哮はやがて、慟哭に変わっていた。
「若いの。少々、訳ありかのう?」
「こんな俺にも……昔は仲間がいたんだ。俺はそいつらのボスだった。俺は一度も負けたことなんか無かったんだ。俺たちの群れは無敵だった。
だけど、ある時、他のカルノタウルスの群れに縄張り争いを仕掛けられた。そして……」
カルノタウルスは言葉を飲み込もうとした。が、アンキロサウルスは
「それでどうしたのじゃ、若いの」
と先を促した。
「俺は、俺の群れは負けたんだ。俺以外の仲間はみんな殺された。俺はみんなを守れなかったんだよ。
俺が……弱いからだよ。俺に力があれば、あんたや、ここにいる他の奴らを全員ぶっ殺せるくらいの力があれば、あんなことにはならなかった!!」
悪魔の顔をした肉食竜の慟哭が、まもなく朝を迎えようとしているサバンナに響く。
「若いの。それでワシを殺すことができれば、お主の強さは証明されるのかの?」
「……ああ。あんた一匹殺せねえようじゃ、仲間なんか守れねえからな」
「ふむ……」
アンキロサウルスは得心した、と言うように頷いた。
「ならばやってみよ。ワシは逃げも隠れもせん。ずっとお主と行動を共にしよう。
そしてもしワシに隙が生じることがあらば、いつでも屠るがいい」
「じ、ジジイ……あんた何言って……」
「“強く”なりたいのではないのかのう、若いの?」
その言葉にどんな意味があるのかなど、この時のカルノタウルスはまだ考えもしなかった。
- 125 :長恨歌 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/15(金) 15:47:16 ID:6Zhlt6Ns0
- 【一日目・黎明】
【アフリカ大陸・東部サバンナ】
【カルノタウルス】
【状態】健康
【思考】自分の「強さ」を証明する
【備考】オス・中年 南米出身
【アンキロサウルス】
【状態】健康
【思考】カルノタウルスと行動を共にする
【備考】オス・老人 北米出身 参加者のティラノサウルスとは過去に戦ったことがある
参加者紹介
【カルノタウルス】
白亜紀後期カンパニア期。南米に生息。
正方形に近い頭骨、一対の大きな頭部の角、異常に退化した短い前足、背中を覆う骨片の鋲など、他に類を見ないほど特殊化した、これぞ南米というような肉食恐竜。
足が長く発達しており、顔に似合わずパワーファイターではなくランナー系の捕食者だったと思われる。
【アンキロサウルス】
白亜紀末期マーストリヒト期。北米に生息。
有名なわりには標本が少なく、詳しいことがわかっていない恐竜で、このロワの中の姿もあくまでも最も一般的な復元である。
ただし鎧竜で最大級にまで成長したのは間違いなく、ある推定では全長10メートルに達する。
尻尾の先にハンマーがありこれで身を守ったとされるが、、尻尾の柔軟性はかなり低いので、片足を軸にして体ごと回るか、上下方向に振ったかのどちらかだろう。
半水生だったという説もある。
- 126 :長恨歌 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/15(金) 15:47:31 ID:6Zhlt6Ns0
- 以上になります。
- 127 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/15(金) 16:09:52 ID:6Zhlt6Ns0
- 最後に、依頼されていた参加者紹介です。大変お待たせしましてすみませんでした。
【ケツァルコアトルス】
中生代白亜紀末期マーストリヒト期。北米に分布。
知られている限り最後にして最大級の翼竜であり、翼開長は12メートル、地上にいる時の体高も5メートルに達する。
当然普通に飛べたのかどうか疑問になる所だが、上昇気流を上手く使って滑空するように飛翔していたとされる。
食性は謎で、魚食性とも腐肉食性とも言われる。
【ドードー】
1681年絶滅。モーリシャスに生息。
飛べない鳩の仲間で、発見後船乗りたちに手軽な食料として乱獲されたことと、人と一緒に上陸した鼠などにヒナや卵を襲われたことで絶滅した。
近隣の島にいた近縁種も同じく絶滅している。
唯一残っていた剥製標本を、所蔵していた博物館の館長があろうことか焼却処分したため、有名な動物のわりには学術的な調査はあまり進んでいない。
なお太っていた姿で描かれることが多く、「太って逃げるのが遅かったから乱獲された」と誤解されることもあるが、実際には太った肖像画は船乗りにもらったエサの食べすぎでああなったものであり、野生のドードーはもっと痩せていたと思われる。
ステゴサウルス、ニホンカワウソについても担当します。
【ステゴサウルス】
中生代ジュラ紀後期キンメリッジ期〜チトン期。北米に生息。
もっとも有名な恐竜の一種でありながら、復元図がコロコロ変わる恐竜。
現在では、背中の板は互い違いで、尾のトゲは四本、喉元にウロコがあったということで収まっている。
体の割に脳が極めて小さいことから、昔の図鑑などでは「尻尾に噛み付かれてもしばらく気付かない」などと、酷いことを書かれていた。
そんな野生動物が存在し得ないことくらい、ちょっと考えたらわかるだろうに。
【ニホンカワウソ】
1979年を最後に消息を絶つ。日本列島に分布。
かつては日本中で見られ、河童のモデルの一つにも挙げられる動物だが、近代化にともなう開発と乱獲で姿を消していった。
2012年度版の環境省レッドリストで絶滅種に指定される。
哺乳類の場合は最後の記録から50年を経過した場合に絶滅種に指定するという習慣があるにも関わらず、異例の速さでの指定となった。
当然生存を信じて調査を行う人々もいるが、テンやイタチの足跡や糞を誤ってカワウソのものと見なしているという指摘があるなど、現場レベルでも混乱が見られるようだ。
- 128 :名無しさん:2013/03/15(金) 16:22:01 ID:sjUqvDFE0
- 月報集計お疲れ様です。
古生物 15話(+15) 93/100(-7) 93.0(-7.0)
- 129 :名無しさん:2013/03/15(金) 16:23:09 ID:sjUqvDFE0
- リロードしてなかった……申し訳ない。
古生物 17話(+17) 93/100(-7) 93.0(-7.0)
こちらが正しいデータになります。
- 130 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/16(土) 17:47:29 ID:AfyCsDA.0
- 月報に掲載していただき、ありがとうございました。
>>128氏、集計ありがとうございます。
今になって、名簿に瑞浪mioを入れなかったことを後悔。その為だけに書き手枠作るわけにもいかないし。
入れるとしたら【その他】としかしようが無いですけど。
エダフォサウルス、コエロフィシス予約します。
- 131 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/18(月) 18:13:13 ID:gRdc87co0
- 自分以外にこのスレを見ている人がまだいるのか不安になってきましたが;
エダフォサウルス、コエロフィシス投下します。
- 132 :Power for Living ◆sOMmvl0ujo:2013/03/18(月) 18:13:51 ID:gRdc87co0
- 自然界に生まれてから、いつも「死なない」ことを考えていた。
死なないために植物が多く生えた水辺に住み、敵から身を守っていた。
運が悪ければ、すぐに死んでしまうのが生き物だ。とにかく一日一日を、死なないことだけを考えて生きてきた。
ある日、遂に運が尽きた。
大きな顎と鋭い爪を持つ捕食者に、追いつかれて捕らえられたのだ。
もはやこれまでと、諦めて死を待つ彼女だったが、捕食者は突如動きを止めた。
「クソッ……こんな時に。お前、運が良かったな」
そう言って、彼は彼女を離した。
「ど……どうして?」
彼女の問いかけに、彼は立ち去りながら答えた。
「侵入者だ。他の奴の匂いがする。誰かが俺の縄張りの中に入ってきやがった。命拾いしたな、せっかくだからその命を大事にしろ」
そう言って彼は、背中の大きな帆を揺らしながら、茂みの中に姿を消していった。
自分が「生きている」ということを皮膚で感じたのは、この時が始めてだったのかもしれない。
そしてそれから彼女は、「死なない」ではなく「生きる」ことだけを考えるようになった。
一日一日を死なないのではなく、一日でも多く「生きる」ことを。
- 133 :Power for Living ◆sOMmvl0ujo:2013/03/18(月) 18:14:33 ID:gRdc87co0
- 「殺し合いだなんて言われたって、私にはそんなの関係ないもんね〜」
荒野をまっすぐ横切って走る舗装された道路の上を、鳥に手と尾をつけたような動物がよたよたと走っていた。
三畳紀を代表する恐竜、コエロフィシスの若い雌である。
彼女もまた、今わが身が置かれている状況はわかっていた。
しかし、憎くも無い相手を殺す気にもなれないし、わざわざ自分よりも大きな動物と戦うつもりも無かった。
ならばここから逃げ出すために何か手を打とう、などとも思えない。別にここで今まで通りの生活を続けたっていいだろうというのが本音だ。
お腹が空かないなら狩りをする必要もないし、他の生き物に殺されるかもしれないというのは、考えてみれば別に今までと大した違いは無い。
むしろ今は、せっかくの機会なのでこのミニチュアの地球を隅々まで見て回ろうと思っていた。
さっそく、土の上に延々と伸びる灰色の砂の塊のようなものを見つけたので、それがどこまで伸びているのかを確かめようとしていた。
もともと夜行性なので、暗い夜道でも不便は無かった。それに、少しずつだが、だんだんと明るくなってきた。
やがて行く手に、一軒の建物が見えてきた。もちろん彼女はそれまで「建物」というものを見たことは無かったが、一見して何らかの生物が、何か特殊な用途のために作った巣ではないかということは想像できた。
興味を引かれて、木で出来た足場を上って首を伸ばし、中を覗き込んで見る。中は巣にしてはかなり広く、彼女と同じコエロフィシスなら数十匹は中で眠ることができそうだった。
もっと見てみようと思い、足を踏み入れた。
天井から音も無く巨大な金属塊が落ちてきて、彼女の意識ごとその頭を刈り取った。
- 134 :Power for Living ◆sOMmvl0ujo:2013/03/18(月) 18:15:04 ID:gRdc87co0
- 荒野を走る一本の車道、その脇に立つバーの梁の上に座っているのは一匹のエダフォサウルスだった。
その真下では、迂闊に店に入ってきた一匹のコエロフィシスが重い缶の下敷きになって潰れている。
梁の上には他にも、武器になりそうな様々なものが並べられていた。
彼女がどうにかして梁の上に運んだものである。
「こんなに早く、誰かに見つけられるとはね……場所を変えたほうがいいかしら。いや、ここを動かないのがやっぱり得策でしょうね」
彼女の狙いは、できる限り少しでも長く生き残ること。別に最後の一匹にまで残ろうとは思っていないので、打って出ようとは思わない。
彼女はここに連れてこられる前に集められた場所で、かつて彼女を捕らえ、そして逃がしたディメトロドンの姿を確認していた。
思わぬ再会。しかし、彼女にとってはそれがここでの指針となった。
この身は、彼によって預けられた命も同然。
ならば、どうせ生きて帰ることなど叶わないこの状況、この命をこの場で彼に返そう。
ただしそれまでに他の動物に殺されることは避けないといけない。
なので、ここに篭城することにした。
ここで他の動物の目を避けながら彼が来るのを待ち、彼が来たならば、大人しく殺されてやる。
「あの死体を片付けたいところだけど……体温が下がってる今、動くわけにはいかないわね。しばらくは大人しく、日射量が上がるのを待つか……」
彼女はそう呟くと、十分物音に耳を澄ませながら、目を閉じてしばしの休息に入った。
【一日目・黎明】
【北アメリカ・中央部砂漠付近】
【コエロフィシス 死亡確認】
【備考】メス・若者 北アメリカ出身
【エダフォサウルス】
【状態】健康
【思考】ディメトロドンに再会して殺される。それ以外は基本的に殺す
【備考】メス・若者 北アメリカ出身
参加者紹介
【コエロフィシス】
中生代三畳紀後期ノール期。北アメリカに生息。
小型ながら、三畳紀の北米を代表する恐竜。
大量の化石が一度に見つかることから、群れを作って行動していたとされる。
名前の変遷過程が非常にややこしい。
【エダフォサウルス】
古生代石炭紀前期サープクホビアン期〜ペルム紀後期Wuchiapinqian期。北米・ユーラシアに生息。
初の陸生植物食動物の一つで、背中に大きな帆があるのが特徴。
これは体温調節及び個体識別に役立ったと考えられるが、この機能が有効だったことは、彼らが8000万年近く繁栄したことから伺える。
なおディメトロドンやプラティヒストリックスら、同時代の同地域には同じように背中に帆を持った動物が多く、見事な収斂進化の一例とされる。
- 135 :Power for Living ◆sOMmvl0ujo:2013/03/18(月) 18:15:20 ID:gRdc87co0
- 以上になります。
- 136 : ◆wdsIwtMsVI:2013/03/18(月) 21:20:06 ID:2bRHJl8g0
- 遅れましたが投下乙です!&参加者紹介ありがとうございます!
独特なスタンスが多いですなあ。
殺されるための奉仕マーダーは珍しいかも
- 137 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/18(月) 21:34:05 ID:gRdc87co0
- 感想ありがとうございます。
二連続&ゲリラ投下になりますが、プルスサウルス、モササウルスで投下します。
- 138 :持ちつ持たれつ ◆sOMmvl0ujo:2013/03/18(月) 21:34:50 ID:gRdc87co0
- 朝を待つ海岸を、一頭の巨大なワニがのし歩いていた。
その体長は二十メートルに迫る。地球史上最大級のワニであるプルスサウルスの中でも、ひときわ巨大な個体だった。
生まれつき体格に恵まれたのに加え、百年を超えるほど長生きしたことがその巨体を可能にしていた。彼ら爬虫類は、生きている限り成長が続くのである。
しかし陸上では無敵の彼も、海の中となれば話は別だった。
彼は若い頃にしか海は見たことは無いが、海中には巨大な怪物が棲んでいると聞いたことがある。
そして彼は今、まさにその巨大な海生の怪物を目の当たりにしていた。
(鯨……では無いな。私たちと同じ、ワニの一族か?)
ゆっくりとこちらに近付いてくるその影を見て、老プルスサウルスは推測する。
体格は鯨に極めて良く似ていたが、水面に見える皮膚の様子からすると、爬虫類らしかった。
かなりの巨体ではあったが、プルスサウルスよりはまだ小さい。
不意に争いになってもこちらが有利と判断し、彼はそのまま動物が近付いてくるのを待った。
やがて海面から、その動物が顔を出した。
爬虫類のそれではあったが、ワニというよりもトカゲに似ていた。
「よお、でっかいワニさん」
「こんにちは、大きなトカゲさん」
「私はトカゲじゃないよ。ここではモササウルスって名前らしいね」
海から出てきた生き物はそう言った。
「ふむ、私もワニという名前では無いぞ。プルスサウルスと名乗らせてもらおう」
「それで爺さん、あんたはこの殺し合いには……」
「ああ、乗る気は無い」
その場しのぎの答えというわけでも無かった。どう出るかと身構えていると、モササウルスはさらに海岸のほうへと身を乗り出してきた。
「それは良かった。なら厚かましいお願いを一つしてもいいかねえ? もちろんそれなりの礼はできると思うよ」
「ふむ、それは何だね?」
モササウルスはヒレ状の前足を海面に出して言った。
「私は見ての通り水中専門でね。陸の上ではのんびり這って歩くのがせいぜいさ」
「ほう。つまり、私の背に乗せて欲しいというわけかね?」
「ああ。海のほうがどっちかと言えばヤバイ連中が多そうだ。それに、私にはどうしても探したいヤツがいる。そいつが陸に上がっているとしたら、私も陸を探さないといけないからね」
プルスサウルスにはほとんど得になりそうになく、しかも危険な行為であったが、彼女の話には興味を惹かれた。
「一体、誰に会いたいというのかね?」
しばしの呼吸を置いて、彼女は答える。
「私の子どもを食べた憎い相手さ。さっきあの場所で、そいつの顔を見つけたんだ。あいつもここにいるはずだ」
「ワニか? サメか? それとも、もしや同族か?」
「いや、アンモナイトさ。知らないかい、イカに貝殻がくっついてるような連中だよ。普通は小さくてかわいらしいもんなんだが、私の子どもを食べた奴は桁外れのデカさだった」
「ふうむ……つまりは、その者を討つというわけだな。まあ、それは良かろう。それよりも、貴女が出す礼と言うのは……」
本当は、それにはもう大して興味も無かったのだが、老プルスサウルスは尋ねてみた。
「なに、大したもんじゃないさ。私は子どもの頃から世界中の海を周遊してるんでね、この……チキュウ、とかいうもののどこにどれくらいの大きさの陸地があるのか、大体わかってるんだ」
「ほう。それはなかなか興味深い」
「爺さんは、生まれた場所からどこまで行ったことがある?」
「ほんの少し遠くまで行ったくらいかのう。大体いつも同じ川の底におったわ」
ついさっきまでのことなのに、まるで遠い昔のことのように目を細める老鰐。
「ちなみにここは多分、寒い海に近いほうの、細くとんがった岬の先だね。なあ、私の知識はきっと役に立つと思うんだ。どうだい?」
老いた巨大ワニは、猫のように目を細めて喉から笑った。
「こんな道連れも悪くないのう。まあ、どこまでいけるかは保障できんぞ?」
「ああ。承知の上だ」
こうして、モササウルスを背中に乗せた巨大ワニという、異様な構図が出来上がることになった。
- 139 :持ちつ持たれつ ◆sOMmvl0ujo:2013/03/18(月) 21:35:12 ID:gRdc87co0
- 【一日目・黎明】
【南アメリカ・南端の海岸】
【プルスサウルス】
【状態】健康
【思考】とりあえずモササウルスと一緒に行動する
【備考】オス・老人 南米出身
【モササウルス】
【状態】健康
【思考】子どもの仇(パキディスクス)を殺す
【備考】メス・中年 ヨーロッパ近海出身
世界中を周遊したため、大陸・大洋の位置関係を把握している
参加者のパキディスクスに子どもを食べられたことがある
参加者紹介
【プルスサウルス】
新生代新第三紀中新世。南米に生息。
ワニの一種。不完全な化石しか知られていないながら、推定体長は14〜20メートルに達する。
中生代のサルコスクスやデイノスクスと並んで史上最大級のワニとされる。
新第三紀最強の生物かもしれない。
【モササウルス】
中生代白亜紀後期マーストリヒト期。北アメリカ・ユーラシアの海に生息。
他の海生爬虫類と同様、恐竜といっしょくたにされることも多いが、恐竜でないどころかれっきとしたトカゲの仲間である。
この仲間では最大級。おそらくは卵胎生。
今まではワニのような姿で復元されることが多かったが、最近になってクジラもしくは魚竜に近い体型での復元が主流になっている。
- 140 :持ちつ持たれつ ◆sOMmvl0ujo:2013/03/18(月) 21:35:27 ID:gRdc87co0
- 以上になります。
- 141 :名無しさん:2013/03/19(火) 22:29:19 ID:.cMd8ZQc0
- 皆様乙ですー
非常に勉強になるロワです
知識が殆どない読み手ですがこのロワを読んで古代生物って面白いなぁと思い
>>72で挙げてくださった「ぞわぞわした生き物たち」を今借りて読んでいる所です
ロワ内でも種を超えた交流をする者、本能に従う者や奉仕する者とスタンスが様々ですね
今後の投下も楽しみにしてます
- 142 : ◆k3fZfnoU9U:2013/03/20(水) 00:32:13 ID:/61kq7lI0
- 恐縮ですがプテラノドンを予約させていただきます
- 143 :名無しさん:2013/03/20(水) 11:57:19 ID:BvUl4Wdw0
- 投下乙〜
普通のロワってどうしても陸地が主体になるけれど、このロワは参加者からして空陸海一揃いしているし、舞台も海川豊富なんで楽しみ
しかしなるほど。海主体な生物たちからすれば、陸主体に運んでもらうのも一つのてか
- 144 : ◆k3fZfnoU9U:2013/03/21(木) 00:47:14 ID:aLN2PHVc0
- プテラノドンを投下します
- 145 :全裸で絶叫 海へGO! ◆k3fZfnoU9U:2013/03/21(木) 00:48:27 ID:aLN2PHVc0
- 「なんでボクが殺し合いをしなくちゃいけないんだもん」
翼竜に属するプテラノドンは誰に言うともなく呟いた
周りを見渡しても他の生物すら見当たらない
「おっかぁ、寂しいんだもん……」
そもそもここに呼び出されたプテラノドンはようやく自分で餌を取ることに慣れてきた子供である
連れ去られる前日も遊び疲れて親に抱かれながら眠ったような気がするが、目が覚めるとこの殺し合いに巻き込まれていた
周りを見ても自分の親どころか同じ仲間すらいない
おとなしそうな奴もいたが怖そうな生き物も沢山いる
この状況に怯えていると、突如最後の一人になるまで殺しあえという声がどこからともなく響き渡った
(そんなの、無理に決まってるもん)
プテラノドンはすっかり怯え萎縮してしまう
いかにも好戦的な生き物がいる中、彼自身生き残れるような気が全くしなかった
そんなプテラノドンの意思とは裏腹に深い暗闇に閉ざされ次に気がついたときには見知らぬ海岸にいた
運がいいのか悪いのか周りを見渡しても誰もいない
海岸をしばらく歩いても結果は変わらない
そのうち疲れたのかボーっとした様子で波を見ていた
「……ボク、ひとりぼっちだもん」
プテラノドンは寂しそうな瞳で海を見つめつつ呟いた
心が不安で埋め尽くされていく
それは殺し合いに巻き込まれるまでの出来事が繰り返され加速していく
目に涙がたまり完全に押しつぶされそうになる刹那ある一つの言葉を思い出す
「そういえば、水の中で息が出来るって言ってたような気がするもん」
プテラノドンは普段翼をあまり動かさず滑空により海上から餌である魚を捕えて食べている
当然海の中の世界なんて知らない
しかし息が出来ないということがどういうことかは知っている
それはとても苦しく、そのまま命を落としてしまうこと
しかし、彼自身はまだまだ子供である
このチャンスを逃すと二度とお目にかかることはないかもしれない
その思いが彼を押しつぶそうとした不安を打ち払い、それを埋め合わせるように好奇心が刺激される
「もう我慢できないもん」
そう叫びながら勇気を出して水飛沫を立てつつ頭から突入する
水の中に潜ったプテラノドンは慣れないながらも何とか体勢を立て直し、ゆっくりと辺りを見渡す
「わぁ、水の中で息が出来るなんて不思議な感じがするもん」
水中に潜るという初めての経験にプテラノドンは興奮していた
普段見ている空の青とはまた違った青
海上からではお目にかかることのない海底の景色
水中から見る、普段の空とはまた違った空
これらの要素はまだまだ子供であるプテラノドンの目を輝かせるには十分だった
【一日目・黎明】
【地中海・キプロス付近】
【プテラノドン】
【状態】健康
【思考】死にたくない・しばらく水中内の景色を楽しむ
【備考】オス、子供、日本・北海道出身
- 146 : ◆k3fZfnoU9U:2013/03/21(木) 00:50:03 ID:aLN2PHVc0
- 投下完了です
ラジオツアーに合わせたお目汚し失礼しました
また、プテラノドンの紹介は>1の方に任せたいのですがよろしいでしょうか?
- 147 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/21(木) 01:22:53 ID:GwIu0oV60
- 投下乙です!
これはなんてかわいいプテラノドンw
こういう話もいいですねえ
私もゲリラ投下になりますが、アルヴァレスサウルス、アデロバシレウス、ウィンタテリウムで投下します。
- 148 :動物を顔で判断してはいけません ◆sOMmvl0ujo:2013/03/21(木) 01:24:30 ID:GwIu0oV60
- 「アデロバシ……なんだって?」
「だーかーらー、ア・デ・ロ・バ・シ・レ・ウ・ス!! いい加減覚えなさいよね!!」
海に浮かぶ、さして広くもない島というか岩礁の波打ち際に、二匹の小動物がいた。
一匹は一見鳥のように見えるが鳥では無い。極めて短い腕には、一本だけ太い鍵爪が付いている。
もう一匹は鼠のように見えるが鼠ではない。鋭い歯が並んだ頬の無い顔が、それを物語っている。
「覚えにくい上に発音しにくいのも甚だしい。これからはお前のことはアデと呼ばせてもらうことにする」
鳥に二本のツメが生えたような生き物が、もうどうでもいいと言うような顔で告げる。
「そ、そんなこと言ってるあんたの名前のほうがよっぽど言いにくいわよ!!」
「何を言う、アルヴァレスサウルスのどこが言いにくい名前だ」
「一体どこ誰がそんなややこしい名前を付けたのよ、傍迷惑な」
「そんなこと知るもんか。自分に名前があることなんか、ここに来て初めて知ったんだからな」
「それは私も一緒よ。てゆーか名前ってそもそも何?」
「さあ?」
アデロバシレウスの素朴な疑問に、アルヴァレスサウルスも一緒に首を傾げる。
「多分、何か俺たちにはわからない意味があるんじゃないか?」
「つまり、あんたの長くてワケのわからない名前にも、何かちゃんとした意味があるってワケ?」
「それは知らん。それに、知る手段もあるまい」
「……私はそうでも無いと思う」
波の音にかき消されそうになりながらも、小さなアデロバシレウスの声が岩礁に響く。
「さっき大勢いた連中の中に、ちょっと変わった感じの奴らがいたでしょう?」
「ああ、そう言えば……明らかに同じ種族から何匹も出てきてる奴がいたな」
彼らが言っているのは、人間たちのことである。
「確かに気にはなったが、奴らがどうかしたのか?」
「気付かない? 私たちはほとんど一種族から一匹ずつしか集められていないのに、あいつらだけ何匹もいた。
つまり、あいつらはよほど数が多いのよ。数が多ければ、名前だって付ける必要が出てくるでしょう」
「なるほどなあ。身の回りに同じ種類の動物が何匹もいるなら、『ボス』とか『若いの』とか『婆さん』とかいう呼び方だけじゃあ不便があるってわけか」
つまり、彼らは「名前」という概念を、極限まで発達させた生き物なのかもしれないということだ。
「なるほどな。だとすれば、俺たちがここに来てから初めて知らされた『名前』とは、奴らが付けたものかもしれないってわけか」
「確信は持てないけどね。まあ、可能性としては棄てがたいでしょう」
アルヴァレスサウルスは、納得しつつも解せぬ、という表情を作る。
「しかしなあ、お前、そんなことそこまで知りたいか?」
「私は知りたいと思う。自分の名前がどういう意味なのか、何のために付けられたのか」
アデロバシレウスはそう答え、アルヴァレスサウルスはもはや、その話を続けようとはしなかった。
「しかし何にしろ、ここに居たんじゃラチが開かねえな」
- 149 :動物を顔で判断してはいけません ◆sOMmvl0ujo:2013/03/21(木) 01:24:43 ID:GwIu0oV60
- アルヴァレスサウルスは自分たちの足元を見た。
海の向こうには、大きな陸地が見えている。泳げば大して時間も経ずに辿り着けそうだった。
「イチかバチか、あっちに渡るしかねえか」
「その時は、私はあんたの頭の上に乗せなさいよね」
「ったく図々しい。泳げなくても溺れやしないって話だぞ」
「だけど私の泳ぎじゃ、あんたに付いていけるわけないでしょう」
一緒に行動することを決めた以上は、アルヴァレスサウルスも拒めない。
それよりも問題は、海の中にどんな敵がいるかわからないという点だ。
さっきの場所では巨大な魚や海竜の他、全く得体の知れない生き物たちも沢山いた。
彼らがもし殺し合いに乗っていたとしたら、海中で鉢合わせれば圧倒的に不利だ。
「海を渡るにしても、もう少し明るくなってからのほうが良いだろう」
「そうねえ、それまではもう少しこの島を調べたりとか……」
そう話が纏まりそうになった時、彼らの背後で大きな物音がした。
警戒し振向いた彼らの目に入ったのは、岩の上に屹立する一頭の巨獣だった。
四本の角を持ち、口からは二本の牙が生え、しかも、その口からは信じられないほど長い舌も伸びていた。
その獣は、その舌を蛇のように蠢かせながら、彼らのほうに顔を向け、その赤い目を薄闇の中に光らせた。
もはや躊躇は許されなかった。
アルヴァレスサウルスはすぐに身をかがめ、頭をアデロバシレウスに差し出した。
アデロバシレウスはその頭に飛び乗り、頭の羽毛にしっかりとつかまる。
アルヴァレスサウルスはそのまま声も無く海に飛び込み、対岸の陸地に向かって泳ぎだした。
しばらくして、アルヴァレスサウルスの頭の上で後ろを振向いたアデロバシレウスは悲鳴を上げた。
四本角の怪物が、彼らの後を追って海に飛び込んだからだ。
アルヴァレスサウルスは必死で尾と後肢を動かした。
とにかく、怪物から逃げることだけを考えていた。
- 150 :動物を顔で判断してはいけません ◆sOMmvl0ujo:2013/03/21(木) 01:25:15 ID:GwIu0oV60
- 彼は恐怖と絶望に襲われていた。
平和でのんびりした生活から、突如呼び出された殺し合い。
身を守るための角は持っているとはいえ、ロクに争いごとなどしたことのない自分が生き残れるとは思えなかった。
そこで、とにかく仲間になってくれる個体を探して、最初に飛ばされた島の中を歩き回った。
そしてついに、他の二匹の動物たちを見つけた。
どうやら殺し合いにも乗っていないらしい。
ようやくほっとできるかと思っていたら、その二匹は突如海に飛び込んで泳ぎだした。
せっかく見つけた仲間と離れるわけにはいかない。彼は慌てて二匹の後を追って泳ぎ始めた。
彼らが逃げ出した理由が、自分の恐ろしい顔にあるとは露ほども思わずに。
【一日目・黎明】
【インド洋・マダガスカルとアフリカ大陸の間の海】
【アルヴァレスサウルス】
【状態】健康
【思考】アデロバシレウスと一緒に行動する
【備考】オス・中年 南米出身
【アデロバシレウス】
【状態】健康
【思考】アルヴァレスサウルスと一緒に行動する 自分の名前の意味を知りたい
【備考】メス・若者 北米出身
【ウィンタテリウム】
【状態】健康
【思考】一人ぼっちはイヤだ
【備考】オス・若者 北米出身
参加者紹介
【アルヴァレスサウルス】
中生代白亜紀後期サントン期〜カンパニア期。南米に生息。
レストランの裏庭から発掘されたことで有名。しばらく全貌不明の恐竜だったが、近縁種の研究から、一本しかツメのない極めて短い腕を持つ鳥に似た恐竜として復元されることになった。
ツメの用途としては、アリ塚を壊してアリを食べるためという説が唱えられている。
【アデロバシレウス】
中生代三畳紀中期ラディン期。北米から発見。
現在発見されている中では最古の哺乳類。直系ではないにしても、全ての哺乳類の祖先に近い動物と思われる。
この後中生代を通じて、哺乳類は恐竜の影に隠れながらも様々に多様化していく。
【ウィンタテリウム】
新生代古第三紀始新生。北米に生息。
哺乳類の歴史上、最も早く生まれた大型植物食動物で、始新生の後期には姿を消した。
二列になった四本の角、長い牙と、生前はかなり恐ろしい動物だったと思われる。
半水生でキリンのように長い舌を持っていたという説があり、本ロワではこれを採用した。
- 151 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/21(木) 01:29:25 ID:GwIu0oV60
- 以上になります。
続けてプテラノドンの紹介文を。
【プテラノドン】
中生代白亜紀後期カンパニア期。北米・日本に生息。
最も有名な翼竜。映画では大概悪役だが、実際に人間を攫って飛ぶようなことは出来なかったとされる。
滑空飛行が主だったと思われる。
トサカの形状によっていくつかの種に分類されるが、種の差ではなく性差だとされたり、逆に別属にするべきだという説があったりしてややこしい。
- 152 :お詫びとお願い ◆sOMmvl0ujo:2013/03/21(木) 01:44:38 ID:GwIu0oV60
- ここで今更になりますが、名簿にとんでもないミスを発見してしましました。
【単弓類・獣弓類】のキノドンですが、これは特定の生物の属名ではなく高次分類群の名前です。
これは完全な私のミスになります。
もちろん投下前に名簿に記載ミスが無いか何度も確認したのですが、キノドンを属名と間違えて覚えていました(キノグナトゥスあたりと混同していたようです)。
間違いがあるまま名簿を投下したのみならず、今の今まで気付かないという体たらくで、参加してくださっている皆様には大変申し訳ありません。
つきましては名簿からキノドンを削除した上で、代わりに他の参加者を一名加えることにしたいと思います。
大変勝手なことを言って申し訳ありませんが、他の書き手氏および読み手氏のご了承をいただきたいと思います。
また、代わりに追加する参加者について、提案があればよろしくお願い致します。
この度は大変申し訳ありませんでした。
- 153 :名無しさん:2013/03/21(木) 01:50:46 ID:vNrtpu7U0
- 名簿枠に納めるなら学者でテイヤール・ド・シャルダンだと思うんですが、瑞浪mioが見たいかも……w
- 154 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/21(木) 23:36:25 ID:3pMnw5cc0
- それでは、キノドンを削除した上で瑞浪市化石博物館出展で瑞浪Mioを追加することにします。
また、併せて名簿の【単弓類*獣弓類】表記を【盤竜類*単弓類】表記に改め、ユーリノプテルスを、より一般的なユーリプテルスに呼称変更致します。
後ほど、訂正した名簿を投下します。
- 155 :訂正済み名簿 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/21(木) 23:38:25 ID:3pMnw5cc0
-
【参加者名簿】
【節足動物】
○アノマロカリス/○オパビニア/○ユーリプテルス/○イソテルス・レックス/○アースロプレウラ
○ブロントスコルピオ/○メガニューラ
【軟体動物】
○ネクトカリス/○ライオンノセラス/○パキディスクス
【魚類】
○ダンクレオステウス/○ヘリコプリオン/○リードシクティス/○メガロドン
【両生類】
○エルギネルペトン/○ディプロカウルス/○プリオノスクス/○イブクロコモリガエル
【爬虫類】
○ロンギスクアマ/○ポストスクス/○プルスサウルス/○デスマトスクス/○イカロサウルス
○アーケロン/○メイオラニア/○メガラニア
【海竜類】
○タニストロフェウス/○エラスモサウルス/○クロノサウルス/○エクスカリボサウルス/○モササウルス
【翼竜】
○プテラノドン/○ケツァルコアトルス/○プテロダウストロ
【肉食恐竜】
○ティラノサウルス/○ヴェロキラプトル/○シティパティ/○カルノタウルス/○テリジノサウルス
○ヴェロキサウルス/○スピノサウルス/○アルヴァレスサウルス/○トロオドン/○コエロフィシス
【植物食恐竜】
○ブラキオサウルス/○アマルガサウルス/○トリケラトプス/○ステゴサウルス/○パキケファロサウルス
○イグアノドン/○レエリナサウラ/○ランベオサウルス/○アンキロサウルス/○ペゴマスタックス
【盤竜類*単弓類】
○ディメトロドン/○エダフォサウルス/○ゴルゴノプス/○リストロサウルス
【哺乳類】
○アデロバシレウス/○ウィンタテリウム/○ブロントテリウム/○アンドリューサルクス/○バシロサウルス
○カリコテリウム/○ミロドン/○インドリコテリウム/○オオツノジカ/○ケナガマンモス
○スミロドン/○ボルヒエナ/○クアッガ/○フクロオオカミ/○ニホンカワウソ
【鳥類】
○アーケオプテリクス/○ディアトリマ/○ティタニス/○オステオドントルニス/○テラトルニス
○オルニメガロニクス/○ジャイアントペンギン/○モア/○ドードー/○リョコウバト
【絶滅人類】
○アウストラロピテクス・アファレンシス/○パラントロプス・ロブストス/○ホモ・エレクトゥス/○ホモ・ハビリス/○ホモ・ハイデルベルゲンシス
○ホモ・ネアンデルターレンシス/○ホモ・フローレシエンシス/○ミトコンドリア・イブ/○Y染色体アダム
【古生物学者】
○メアリー・アニング/○ギデオン・マンテル/○リチャード・オーウェン/○ウィリアム・バックランド/○チャールズ・ダーウィン
○エドワード・コープ/○オスニエル・マーシュ
【瑞浪市化石博物館】
○瑞浪Mio
100/100
- 156 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/21(木) 23:45:47 ID:3pMnw5cc0
- 以上が訂正後の名簿になります。以降はこの名簿を準拠とするということで、どうかご了承願います。
私自身決して単弓類に興味が薄いというわけではなく、むしろ好きなつもりなのですが、自らの学の浅さに辟易しています。
また、パロロワラジオツアーの最終日というおめでたい日に不祥事を起こしてしまった点についても、深くお詫び申し上げます。
後からの名簿変更という、パロロワとしては最低のことを起こしてしまった本ロワですが、厚かましいようですが以後も参加を強くお願いしたく思っております。
- 157 :名無しさん:2013/03/21(木) 23:49:03 ID:vNrtpu7U0
- 修正乙です。
ここは氏の俺ロワですし、とやかく言う人もいないんで氏のやりたいようにやるのが一番だと思いますよ!
- 158 : ◆ZD6tzBOJl6:2013/03/22(金) 00:06:32 ID:EAyoHa6U0
- 修正乙です。
間違いは誰にでもあります。むしろ迅速な対応、流石です!
では早速なんですが瑞浪Mio、エラスモサウルスを予約します。
- 159 : ◆ZD6tzBOJl6:2013/03/22(金) 01:28:44 ID:EAyoHa6U0
- で、完成したので投下します
- 160 :知識と思考 ◆ZD6tzBOJl6:2013/03/22(金) 01:29:35 ID:EAyoHa6U0
- 『知識と思考』
学習や考えるという事自体は、他の生物にもできる。
しかし、考える事と『思考』は、また別なのではないか。
より複雑に進化したのが『思考』だ。
得た『知識』をフル活用してより高度に考える事を『思考』と呼びたい。
それは、人の特権だ。
* * *
(え……嘘、なんで……?)
―――瑞浪mioという少女は、水の中にいた。
それは、あまりにも不可解な事だった。
- 161 :知識と思考 ◆ZD6tzBOJl6:2013/03/22(金) 01:30:26 ID:EAyoHa6U0
-
いや、水中にいること自体はただの人間でも可能なことだ。
いきなり水の中にいるというのも混乱した彼女には理解できなかったが、対した問題ではない。
一番の謎、それは―――息が、できる。
(何、これ……意味がわからないよ……!)
不思議な感覚だった。
水の中に居るという感触はある。地上に上がればびしょ濡れだという事も実感するだろう。
そんな中で唯一異彩を放つ『呼吸が可能』という現象に、ただでさえ正確な思考ができない年端もいかない少女はただ錯乱した。
――その現象は、実際に説明があった。
最初に地球という存在は既に説明した事だ。この世界は地上でエラ呼吸ができて、水中で肺呼吸ができる。
その理屈はわからないが……実際に彼女が体験している以上、それが真実だ。
しかし、その前の前提条件……ここが、殺し合いの場だという事。
彼女は、それを受け止めることが出来なかった。彼女はあまりに幼く―――純粋だった。
(いや、いや……っ!)
その幼い心を支配するのは―――恐怖。
普通に生きていれば経験することもなかっただろう恐怖が、彼女を蝕んでいた。
彼女の人生は充実していた。
普通に学校で生活しているし、近くの博物館には自分の好きな物がたくさんある。
正に人生の絶頂だっただろう。人間の寿命から考えればまだまだ先も長い。
しかし、その未来が今、消えようとしている。
充実していた日々も、思い出も、未来も―――全てが。
その事実は、彼女を押しつぶすのには十分すぎた。
しかし、ただ怯えているだけでは何も始まらない。
彼女が例えそれを理解できていなくても、そんなことお構いなしに世界は廻っている。
それを証明するかのように、水の中、何かの流れが変わった。
水流が動いたとでもいうのだろうか。とにかく何かが近づいてくる事だけは分かった。
一体、何が―――?
怯える少女が見上げた、そこには。
「――――――ッッッ!!?」
彼女の精神が振り切れる程の、あまりにも大きな存在があった。
* * *
- 162 :知識と思考 ◆ZD6tzBOJl6:2013/03/22(金) 01:31:36 ID:EAyoHa6U0
-
大海を悠々と泳ぐ存在がいた。
『それ』にとって、泳ぐ事など造作もない。正に息をするようにやってきた事だ。
しかし、それとはまた別に異常な自体に巻き込まれていることは理解していた。
――殺し合いだ。生物同士の殺し合いが行われている。
他の参加者を殺して一人になれと、そう言われたのだ。
大海を泳ぐ存在――エラスモサウルスは、その事について思考していた。
(食事が要らぬのなら……殺す必要もないのではないか……?)
彼の頭に浮かんだ思考は―――疑問、であった。
殺す事自体は今までだってやってきた。生きてきた今までにどれだけ殺したのかなどは最早分からない。
しかし、それはあくまで『生きるため』だ。栄養分にするために殺してきた。
それが必要ないと言われてしまったこの状況で、率先して殺す動機がなかった。
(わけがわからない……一体何が目的なのか………)
その存在は、この場所で生物がたった一つになる事を望んでいる。
強い生物を厳選する為?弱肉強食、確かに最後には強い者が生き残るのだろう。
だがそれも『生きるため食らう』という枷が無くなった以上、成立するものだろうか。
少なくとも、自身に意思は無い。少なくとも、今何か不自由を感じているわけでは無い。
だが、他の生物は違うのだろうか。元の世界に帰りたいと……そう願うのだろうか。
――分からない。自分がずれているのだろうか。
思考はただぐるぐると回るだけだった。
慣れない思考に頭を悩ませているその時、目の前に何か動く存在が見えた。
- 163 :知識と思考 ◆ZD6tzBOJl6:2013/03/22(金) 01:32:36 ID:EAyoHa6U0
- (む……あそこにいるのは……なんだ……)
この世界で動く存在……つまり生物ならば、それはこの殺し合いの参加者となる。
つまり、殺害対象になる……ルール上は。
「――――――ッッッ!!?」
(見慣れぬ姿だ………地上の生物か………?)
その姿は自分の姿とは全く違っていた。
エラのようなものも、ヒレのようなものもない。
あまり生物の構造に詳しくはないが、水中での生活に適応した姿とはとても思えなかった。
「あ……ああぁ………ッ」
その存在はただ自身を見上げ、呆けている。
一体何をそんなに見ているのかと一瞬考えたが、その答えは直ぐにでた。
(………………恐怖、している………)
そのちっぽけな存在を見た時に、そう確信した。
恐怖……という感情はここに来るまでは知らなかった。今でもピンとはきていない。
しかし、その姿を見た瞬間に直感的にそう思ったのだ。それは恐怖している。
そうなると、彼はまた別の思考に移行する。
(一体何故……恐怖している……恐怖とは、何だ……?)
思考を得てから考える様になった知識、恐怖。
彼にはそれが分からない。それが何なのかが見当もつかない。
しかし、目の前の存在はそれを抱いている。自分の知らない感情を、持っている。
「あ…………―――」
そのうち、目の前の存在がいきなり動かなくなってしまった。
気を失ってしまったのか。感情が膨れ上がって、許容範囲を超えてしまったのだろう。
それほどまでに恐怖とは影響を与えるのかと、変な所で関心してしまう。
(ふむ…………………)
その感情に、興味がある。
彼女の事をもっと見ていたい。彼女は、知らない事を多く知っているだろうから。
――ルールに反する行為だろうが、暫くは自分の意志で動きたい。
決意した巨大な存在は、動かないちっぽけな存在を咥えて、遠くへと泳いでいった。
- 164 :知識と思考 ◆ZD6tzBOJl6:2013/03/22(金) 01:33:20 ID:EAyoHa6U0
-
* * *
―――それは、本当に人の特権か?
他の生物の考えている事など、読めるはずもない。
もしかすると、他の生物だって高度な『思考』をしているかもしれない。
それを知らずにただ自分達の概念だけで考えるのは、浅はかなのではないだろうか。
同じ『知能』を与えれば、同じ『思考』ができる舞台の上に立たせれば――ほら、人は本当にちっぽけなだ。
【一日目・黎明】
【北大西洋】
【瑞浪mio】
【状態】気絶
【思考】死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない―――
【備考】岐阜県瑞浪市出身
【エラモスサウルス】
【状態】健康
【思考】とりあえず目の前の存在を保護する
【備考】オス・中年 北太平洋出身
- 165 :知識と思考 ◆ZD6tzBOJl6:2013/03/22(金) 01:35:40 ID:EAyoHa6U0
- 以上で、投下終了です。
何か不具合や矛盾がありましたら、ご指摘お願いします。
後、エラスモサウルスの紹介ももしよろしければお願いします。
……すいません。名前間違ってました。今気づきました。
【エラスモサウルス】
【状態】健康
【思考】とりあえず目の前の存在を保護する
【備考】オス・中年 北太平洋出身
です。大変失礼しました
- 166 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/22(金) 01:46:00 ID:FxlH1Dfw0
- 投下乙です!
いやあ、陸上組にとって海中スタートは過酷ですよねえ。地球さんマジ鬼畜。
動物が何を考えているのか想像するのは本当面白いですよね。
どうでもいいけど、私は瑞浪Mioは化石採集中に濡れてもいいように、服の下にスクール水着を着ている派です。
- 167 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/22(金) 01:50:01 ID:FxlH1Dfw0
- ここで、今のところ未登場かつ未予約の参加者の一覧です。
【節足動物】
○オパビニア/○ユーリプテルス/○イソテルス・レックス/○アースロプレウラ
【軟体動物】
○ライオンノセラス
【魚類】
○ダンクレオステウス/○ヘリコプリオン/○リードシクティス
【両生類】
○エルギネルペトン/○ディプロカウルス
【爬虫類】
○ロンギスクアマ/○ポストスクス/○デスマトスクス/○イカロサウルス/○アーケロン
○メイオラニア
【海竜類】
○タニストロフェウス/○エクスカリボサウルス
【翼竜】
○プテロダウストロ
【肉食恐竜】
○テリジノサウルス/○スピノサウルス
【植物食恐竜】
○ブラキオサウルス/○アマルガサウルス/○イグアノドン/○レエリナサウラ/○ランベオサウルス
○ペゴマスタックス
【盤竜類*単弓類】
○ディメトロドン/○ゴルゴノプス
【哺乳類】
○ブロントテリウム/○アンドリューサルクス/○バシロサウルス/○カリコテリウム/○ミロドン
○オオツノジカ/○クアッガ/○フクロオオカミ
【鳥類】
○アーケオプテリクス/○ディアトリマ/○ティタニス/○オステオドントルニス/○テラトルニス
○オルニメガロニクス/○ジャイアントペンギン/○モア
【絶滅人類】
○パラントロプス・ロブストス/○ホモ・ハイデルベルゲンシス/○ホモ・フローレシエンシス
【古生物学者】
○ギデオン・マンテル/○チャールズ・ダーウィン/○エドワード・コープ/○オスニエル・マーシュ
【瑞浪市化石博物館】
全員登場済み
未登場かつ未予約参加者
52/100
有難いことに、書き手の皆様のおかげで半数近くの参加者が既に登場しました。
ここで私はヘリコプリオン、ディプロカウルス、エクスカリボサウルスを予約します。
- 168 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/23(土) 18:16:21 ID:i3/6pZSk0
- ヘリコプリオン、エクスカリボサウルス、ディプロカウルスで投下します。
- 169 :その刃は誰を斬るべきか ◆sOMmvl0ujo:2013/03/23(土) 18:17:14 ID:i3/6pZSk0
- (ただ飢えを満たすために他者を屠る必要はない、か)
大陸の西岸沿いに広がる浅瀬を泳ぐ、一匹の魚影があった。
そのシルエットは、現生のサメと比べればいささか奇妙な雰囲気はあるものの、古生代のサメとしてはそこまで奇異なものでも無かった。
ただ一点、その渦巻きながらながら突き出したような奇怪な下顎を除けば。
サメの仲間は、新しい歯が生えてくると古い歯は次々と抜け落ちる。
しかし彼らヘリコプリオンは、顎の後方から新しい歯が生えてきても、古い歯が抜け落ちることは無い。
結果として、成長するに従って歯は顎もろともどんどん渦巻いていき、最終的には手裏剣のような円盤状の歯の板が下あごにくっつくことになる。
この用途はもちろん獲物および外敵への攻撃である。
現生のカジキやイッカククジラの鋭い歯や鼻先と同じ目的を持つものであるが、その破壊力はそれらの比では無い。
小魚の群れの中に突っ込んで首を左右に振るだけで、歯に巻き込まれた獲物はバラバラになる。
そして当然、より大きな獲物に対しても強力な武器となりえる。
今、ここでは獲物を捕食せずとも飢えることは無いという。
しかし今までこの刃を振るうだけの日常を送ってきたヘリコプリオンにとっては、突如そのようなことを言われても、素直に受け入れることは出来なかった。
(今まで、ずっとそうして生きてきたのだ。毎日獲物を切り裂き食べてきたのだ。
子孫を残すことができたのも、この刃でライバルどもを蹴散らしたからこそ。
だが……そのどちらも必要が無いというのなら、私は何をすればいいというのだ)
あてどもなく泳いでいるうちに、今まで感じたこともない強い衝動が体の奥から湧き上がってきた。
斬りたい。何者かを切り刻みたい。
それは“本能”としか言いようのない、彼の種族にとっての宿命であった。
- 170 :その刃は誰を斬るべきか ◆sOMmvl0ujo:2013/03/23(土) 18:17:59 ID:i3/6pZSk0
- 斬りたい。斬りたい。斬りたい。
どれだけそうして泳いでいただろうか。
目の前に現れたのは奇妙な動物だった。
四肢のある動物を見たことは無いわけではなかったが、三角形の巨大な頭と、縦に平たく自在に動く尾とを持った生き物は初めて見た。
その生き物は彼に気付いた様子は無く、水面に顔を出して外の様子を伺っているようだった。
斬りたい。
ヘリコプリオンの衝動は、頂点に達した。
あの左右に長い大きな頭を切り裂きたい。
あのしなやかで力強そうな尾を、胴体から切り離したい。
あの申し分程度についている四肢を切り刻みたい。
この身に血が流れているが故のこの本能を、誰に責めることができようか。
巨大な頭部を持つ両生類・ディプロカウルスは、接近してくる巨大な魚影に気付いた。
その下あごについた鋭い牙から、到底太刀打ちできない相手であろうことを知る。
即座に、尾を力強く振って逃げ出した。
一見ユーモラスにも見える姿をしたディプロカウルスだが、その実泳ぎにかけては両生類の中でも指折りである。
巨大な頭は、飛行機の翼と同じく水中で揚力を生み出す。縦に平たい尾も、水中でスピードを出すための、他の両生類には見られない形態だ。
だが、相手も百戦錬磨の海のハンターである。
海中での追いかけあいは、互いの距離を保ちながら暫く続いた。
先に息切れを起こしかけたのは、ディプロカウルスのほうである。遊泳を得意とする両生類とはいえ、さすがに海生の魚類を相手にしては分が悪い。
しかも、状況を把握しようとしていた最中に不意を突かれて逃げ出さざるを得なかったディプロカウルスとは違い、ヘリコプリオンの脳内には一つのことしかない。
“とにかく、あの獲物を切り刻みたい”
だがその一続きの思考を中断させることが起こった。
ヘリコプリオンとディプロカウルスの間に、一振りの刃が割り込んだからだ。
それはヘリコプリオンや現生の一部のサメが持っている鋸のような刃ではなく、まっすぐ天を指すように伸びる剣であった。
ヘリコプリオンは慌ててUターンし、刃の正体を見極めようとする。
その刃の持ち主は、隠れることもなく自ら彼の前へとその全貌を現した。
剣の正体は鋭く尖った鼻先。ほの暗い水の中に浮かぶ胴体は、ほぼヘリコプリオンと同じ大きさだった。
(魚……では無いな。何者だ?)
ヘリコプリオンが驚くのも無理は無い。彼の時代には水棲の爬虫類などほとんど居なかった。
それも、そこに現れたのは爬虫類の全歴史上最も水中生活に適応した特異な生物、魚竜であった。
一見魚と見まごう輪郭だが、鰓もウロコもないぞっとするほどしなやかなその姿は、ヘリコプリオンを恐怖させるに十分だった。
「その刃……よほどの猛者と見えるな。何故私の前途を阻む?」
- 171 :その刃は誰を斬るべきか ◆sOMmvl0ujo:2013/03/23(土) 18:18:26 ID:i3/6pZSk0
- 魚竜は咆哮にも似た声で答える。
「弱き者を追い回す卑劣な下種め!! この聖剣エクスカリバーの錆となりたくなければ、今すぐここを立ち去るがいい!!」
「……どうした。殺しあえなどと言われて気がふれたか」
心底呆れた顔でヘリコプリオンが呟く。
「否!! 俺はもとより悪を裁き、弱き者を救うために遣わされた聖剣士。この上まだ手向かうようであれば、その命は無きものと心得ろ!!」
裏返らんばかりの声で、自己陶酔を隠そうともせずに叫び続ける魚竜。
「エクスカリバー……それがお前の名なのか?」
「否!! 天より与えられし我が名はエクスカリボサウルス!! その操る剣には、エクスカリバーという名こそ相応しい!!」
「ふむ……お前は何ゆえ私に刃を振るおうとする? 本気で弱き者を救いたいなどと思っているのか?」
「無論!! それのどこが悪い!! 今まで他者を斬ることのみしか知らなかったこの孤独な剣士に、天が与えてくださったこの好機を生かさんとするのみ!!
貴様は何ゆえ、この場においてまだ、かよわき者に刃を向ける!!」
「あいにく、それしかこの刃の使い方を知らぬのだ。お前とて同じはずであろう?」
「笑止!! 俺にはもはや揺れ動かぬ使命があるのだ!!」
ヘリコプリオンは悟った。この相手には説得など通じないことを。
自分が血から沸きあがってくる“斬りたい”という衝動に従わざるを得なかったように、この動物を動かしているのもまた、自らでは抗い難い衝動なのだ。
「ならばその使命とやら諸共、その体、斬らせてもらおう!!」
ヘリコプリオンはエクスカリボサウルスのわき腹目掛けて突進する。
それをかわして、素早く下に潜り込むエクスカリボサウルス。
ヘリコプリオンは一瞬、その姿を見失った。
「愚かな捕食者よ。私たちの武器は自らを守り、飢えをしのぐためのもの。お前も本当は、その衝動に耐え切れないのではないか?」
眼下に広がる墨色の水に向かって問いかける。
答えはすぐに返ってきた。
「否!! この俺の血塗られた剣は、本当は生れ落ちたその日から、ここで誰かを守るためにあったのだ!!」
原始的なサメであるヘリコプリオンには理解も出来ぬほどの素早さで上昇してきたエクスカリボサウルスの鼻先は、ヘリコプリオンの胴体を真っ二つに斬り裂いた。
【一日目・黎明】
【南太平洋・南米近海】
【ヘリコプリオン 死亡確認】
【備考】オス・老人 北米近海出身
【エクスカリボサウルス】
【状態】健康
【思考】弱い者を助けるために刃を振るう
【備考】オス・子ども イギリス近海出身 天から啓司を受けたと錯覚している
- 172 :その刃は誰を斬るべきか ◆sOMmvl0ujo:2013/03/23(土) 18:18:47 ID:i3/6pZSk0
- 「……逃げ切れた、みてえだな」
少し離れた陸の上。ディプロカウルスは安堵のため息をついていた。
「覚悟はしていたが、しょっぱなからなんて物騒なやつらに会っちまったもんだ。最初に襲ってきたほうもヤバイけど、割り込んできた奴もまともそうには見えなかったしな……」
恐ろしい二匹の捕食者から逃げ延びたことに感謝すると共に、彼はこの場に潜むまだ知らぬ捕食者への警戒心を新たにした。
【南アメリカ大陸・北西海岸】
【ディプロカウルス】
【状態】健康
【思考】ヘリコプリオンとエクスカリボサウルスを警戒
【備考】オス・中年 北米出身
参加者紹介
【ヘリコプリオン】
古生代ペルム紀全体を通じて生息。ほぼ世界各地に生息。
アンモナイトかと思うような渦巻状になった歯の化石しか見つかっておらず、この歯が体にどのようについていたかは不明。
作中の「下顎についていた」というのも一つの仮説に過ぎない。
ギンザメなども含む広義のサメの仲間なことは間違いなさそうだが、ほとんど詳しいことはわからない。
【エクスカリボサウルス】
中生代ジュラ紀前期シネムール期。イギリスから発見。
名前の中二病っぽさは全古生物中1、2を争う。
魚竜の一種で、カジキを思わせる鋭い鼻先が特徴的。
魚竜は一般的なイメージよりも遥かに多様性が高く、その幅広い形態の一例である。
【ディプロカウルス】
古生代ペルム紀全体を通じて生息。北米に分布。
ブーメランのような形状の頭部が特徴。
この用途は防御用、個体識別用などの説があるが、水中で揚力を得るためだったという説もある。
縦に平たい尾、相対的に小さな手足などもそれを裏付けているように思える。
- 173 :その刃は誰を斬るべきか ◆sOMmvl0ujo:2013/03/23(土) 18:19:46 ID:i3/6pZSk0
- 以上になります。
続けて、ミロドン、テリジノサウルスを予約します。
- 174 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/29(金) 16:35:26 ID:wuLeB9.20
- ミロドン、テリジノサウルス、投下します
- 175 :異端児 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/29(金) 16:36:50 ID:wuLeB9.20
- 「肉食動物は、自分が食べるため以外の不必要な狩りはしない」
としばしば言われるが、これは誤りである。
多くの肉食獣が、食べるため以外の目的で植物食動物や小動物を殺すことは珍しいことでは無いとされている。
シャチやヒョウアザラシなどは、一度捕まえた獲物をわざと逃がしてからもう一度捕まえるといった、獲物を弄んでいるかのような行為が観察されることもある。
その一方で、肉食獣だからといって獲物を殺すことだけを考えているわけではない。
動物が弱肉強食の世界でのみ生きていると信じている者にとっては、実に奇妙な事例が度々報告されている。
動物園で、エサとして与えられたヒヨコを一匹だけ食べずに生かし、エサをやって育てていたミーアキャットもいる。
野生のメスライオン、カムニャックのケースはもっと不可解だ。
彼女は少なくとも五匹の、本来は獲物であるオリックスの子どもを育てた。
それも自分の狩りや睡眠の時間を削ってまで、他の肉食動物の襲撃から守りながらである。
動物の世界は、人間が想像するものよりももっと複雑なものであるようだ。
弱肉強食という、単純明快な論理だけが通用する世界では無い。
生き物たちの心的世界はもっと複雑で、非合理的で、不可解で、理不尽だ。
進化とは、時にはそのようなものを生み出すものでもあるらしい。
森の中で、その二頭はばったりと出会った。
どちらも劣らず、人間の目には奇妙に思える動物である。
ミロドンは、全身毛むくじゃらでまるで雪男を思わせる。
一方のテリジノサウルスは、鳥に短い尾と長い腕を付けたような不思議な姿をしている。
一見すると全く違うように見える二頭だが、良く見れば後ろ足で立ち上半身を直立させたような姿勢、植物を消化するための長い腸を納めた太い胴体、そして後ろ足と比較して長い前足とそれについた長い鍵爪、と、いくつもの共通点がある。
彼らは同じ食生活を選んだことによって似たような姿勢に進化した、まさに進化論の生き証人であった。
「やあ」
ミロドンは手を挙げて軽く話しかけた。
「妙なことになったもんだねえ。ボクはミロドン。こんなナリだが、君に危害を加えようってわけじゃない」
「随分暢気なんだから」
テリジノサウルスはまだ子どもだった。身長はミロドンの半分ほどで、長い腕を伸ばせばやっとミロドンの喉に届く程度だ。
「そんなことを言って、私が殺し合いを素直にやるつもりだったのならどうする気なんだから」
「キミがボクを殺す? そりゃ、ムリムリ」
ミロドンは顔を人懐っこそうに歪めて笑う。
「ボクはこの毛皮の下にヨロイみたいな皮膚があるからね。キミの爪がいくら長くたって、切り裂くことは出来ないと思うよ。
そんなことより、これからどうするかを考えようか? やっぱりこのままってのはイヤだからね」
「そんなこと言ったって、私たちにはどうしようも無いんだから」
「確かに“ボクたち”だけじゃあどうしようも無いね。だけど、ボクたちよりも物を知ってそうな奴らに聞いてみるのはムダじゃないと思うんだ」
「そんなのいるのかどうかもわからないんだから」
「いいや、覚えてるかい? さっきこう言ってたろう? ―――『一部の人たちには、チキュウ、と名乗ったほうがいいだろう』、ってね。
この『一部の人たち』ってのが気になるんだ。あの大地の声も特別扱いせざるを得ないほどの連中がここにはいるってことだよ。
それに、そいつらは確実にボクたちよりも多くのことを知っているんだ。もしかしたら、ここから逃げ出す方法だって知っているかもしれない。実際、さっきの場所にはニンゲンっぽいのもいっぱいいたしね」
- 176 :異端児 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/29(金) 16:37:42 ID:wuLeB9.20
-
「ニンゲン?」
「ああ。恐ろしく知恵の働く生き物さ。ボクも実は少し前に、ニンゲンの掘った穴に落ちて捕まっちゃってさ。しばらく洞窟に閉じ込められていたんだ。
ニンゲンたちが恐ろしい生き物でもあるけど、多くのことを知っているのは間違いない。
なに、落とし穴なんて使われなければ、一対一ならそう簡単にやられはしないさ」
「じゃあ、ニンゲンに会って話を聞こうっていうんじゃないかしら」
「仮定に仮定を重ねているのは承知の上さ。だけど今のところ、他に突破口になりそうなものも無いだろう?」
「じゃあ、それに掛けてみようって言うの? まあ、悪くは無いかもしれないんだから」
「そういうことさ。で、キミももし良かったら一緒に来ないかい? ボクくらい体が大きかったら大丈夫だろうけど、キミくらいの小さな生き物が一匹だけってのは危ないからねえ」
「うん……けど、一つだけ聞いておかないといけないことがあるんだから」
テリジノサウルスは、半歩だけ後退しながら尋ねた。
「なんだい?」
「あなた、何を食べるの?」
ミロドンは笑って答える。
「ボクは植物食だよ。木の葉っぱしか食べないさ」
「ふうん……でもそれにしちゃあ……」
テリジノサウルスはミロドンから顔を背け、小声で何かを呟く。
ミロドンの耳には、セリフの後半部分は小さすぎて届かなかった。
もっと良く聞こえるように、ミロドンは身を屈めて顔を近づける。
その両目に、テリジノサウルスの長い爪が突き刺さった。
「うわああああああああ!!」
両目から鮮血を噴出しながら、ミロドンは思わず仰け反る。
その喉元を、長い爪が深く刺し貫いた。
「ぐぅ……」
まともに悲鳴も上げられない。
体がヨロイに覆われているというならば、それが薄いはずのところを狙えばいいだけのこと。
テリジノサウルスの爪で頚動脈を切られた上に気道も塞がれたミロドンは、串刺しにされた魚のごとく、暫く痙攣したのちに絶命した。
「うふふふふふフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフふふふふふふふふふうふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」
その間、テリジノサウルスはずっと笑っていた。
「うふふふふふ、あふふふ、うっふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」
ミロドンが地面に倒れこんで落ち葉の上に鮮血を撒き散らせるのを見るまで、ずっと笑っていた。
彼女が鳥に近い動物であることを考えれば、「さえずっている」と言ったほうが正しいのかもしれないが。
「ふふ……うふふふふふふふ」
息絶えたミロドンの死骸にはもう目もくれず、テリジノサウルスは爪についた血を洗うために川の音のする方向に歩いていった。
生き物は、合理的な行動しか取らないとは限らない。
食べる目的も無く狩りをする生き物もいる。
獲物を生かして育てる生き物もいる。
ならば、長い歴史の中には、他の植物食動物を殺すことで快楽を覚える植物食動物の個体が現れたとしても、不思議は無いのである。
【一日目・黎明】
【ヨーロッパ・北部の森林】
【ミロドン 死亡確認】
【備考】オス・中年 南米出身 少しの間人間に飼育されていた
【テリジノサウルス】
【状態】健康
【思考】他の植物食動物は殺す
【備考】メス・子ども 中央アジア出身
参加者紹介
【ミロドン】
新生代第四紀更新世。南米に生息。
現生の二種のナマケモノはいずれも樹上生活だが、歴史的にみればナマケモノは基本的に地上生活の動物であって樹上生活種のほうが例外である(ちなみに樹上生活の二種は完全に別系統)。
ミロドンはその代表種で、大きな爪で木の葉を手繰り寄せて食べていたらしい。
人間に遭遇・捕獲されていたようで、当時の人が洞窟にミロドンを閉じ込めて飼育していたらしき痕跡も発見されている。
【テリジノサウルス】
中生代白亜紀後期カンパニア期。中央アジアに生息。
このグループはあまりにも特殊化しすぎた姿のため、発見当時は何の種類の恐竜だかさっぱりわからなかった。
現在では鳥に近い、植物食に適応した獣脚類だとされている。ミロドンと同じく、爪で木の葉をたぐりよせて食べたとされる。
なお確実にテリジノサウルスのものと言える化石はかなり少なく、一般に知られている復元図は近縁種の骨格を元にしている部分が多い。
- 177 :異端児 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/29(金) 16:38:31 ID:wuLeB9.20
- 以上になります。
- 178 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/03/29(金) 16:42:26 ID:wuLeB9.20
- 続けて、アーケロン、オオツノジカで予約します。
それにしても仮面ライダーの彼、どうして植物化石に興味を持ったのがきっかけなのに考古学のほうに行ってしまうのでしょうか。
途中で心変わりしなければ古生物学者ライダーが誕生したかもしれないのに残念です。
あと、考古学と古生物学の区別がつかない子どもを増やしそうですね。
- 179 : ◆BdIG1U8FAs:2013/04/04(木) 23:05:36 ID:i59qIHU60
- ゲリラ投下になりますが、ホモ・フローレシエンシス、クアッガ、リョコウバト を投下します。
- 180 :ホビットは銃弾の夢を見るか ◆BdIG1U8FAs:2013/04/04(木) 23:07:33 ID:i59qIHU60
-
「――つまり、アンタは『人間』じゃないって訳か」
「『ニンゲン』、って言葉の範囲が曖昧だけどね。
少なくとも、お前さんの一族を殺したり閉じ込めたりしてたのは、『大きな人たち』だろうね。
あたしらの一族じゃあなくってさ」
「『大きな人たち』ねぇ……」
「あたしらはそう呼んでたよ。
島の向こう側に住んでる、『大きな人たち』。
昔、海を越えてあたしらの島に渡ってきたっていう、『新しい人たち』。
まぁ向こうからすりゃ、コッチが『前から住んでた小さな人たち』、なんだろうけどさ」
森の中の、少し開けた天然の広場で。
倒木に腰かけた人型のシルエットと、馬のようなシルエットとが話し込んでいた。
人型の方は、突き出た胸の形から見ても女性だろうか。
しかし小さい。身長わずか1mほど。
それでいて、身体の各部の造形は重ねた年輪を感じさせる。
対する馬型の方は、一見するとシマウマのようにも見える。
しかし縞模様は身体の前半分にしかなく、細かい造形を見れば馬にも見える。
シマウマと馬、そのどちらともつかない不思議な生物。
「確かにアンタは小さいな。俺の知ってる『人間』の子供みたいだ」
「失礼だね。こう見えても子持ちだよ。立派な長老格さ」
「いいねぇ……羨ましいぜ、こん畜生!」
半分シマウマが、両の前足を宙に躍らせ天に向けて吠える。
憤懣やるかたなし、といった風に、怒りをぶちまける。
「俺だってなぁ! オスに生まれたからにはヤりてぇよ! 群れを率いてぇよ!
でもよォ……パートナーくらい、自分で選ばせろってんだ!
メスなら何でもいいって訳じゃねぇぞ! 自分で勝ち取ってこその行為だろうが!」
「あらあら、それは災難だったねぇ」
「ついでに、てめえらジロジロ観すぎだってんだ!
あの頃は言葉とか分かんなかったけどよォ!
それでも、面白半分に見られてることくらい、分かるってェの!
狭いトコに閉じ込めた上に、適当なメスあてがって、見世物だとォ!? ふざけんな、『人間』ッ!」
「まったく酷いコトするもんだ、『大きい人たち』は」
鼻息も荒くいきどおるシマウマもどきに、小柄な女は肩をすくめて同情の意を示す。
「それで、『クアッガ』とか言ったっけ? あんた、復讐もいいけどさ。
何か『大きな人たち』に対抗する手段とか考えてるのかい?
あたしら『ホモ・フローレシエンシス』の群れでも、
『島の向こう側の大きい人たちには関わるな』が昔っからのルールだったのに」
「おう、それよ。
ぶっちゃけ、俺1人じゃ勝ち目なんてないって思うんだわ」
「それじゃダメじゃん」
「あいつら、1人1人の力は弱いし足も遅いのに、色んな道具使うしなー。
『銃』とか向けられたら、ほんとどーしよーもないわ」
「……『銃』?
そいつぁ聞いたことのない道具だね。
あたしらも石器や火くらいなら使うけどさ。どんな代物なんだい?」
「なんか、長い棒状のモンで、こっちに先端を向けて、不意に大きな音がしたら仲間が倒れてる、って代物さ」
「なんだいそりゃ。まじないか何かかね?」
「まあ全員が持ってるモンじゃないらしいんだが、アレ出されたらそれだけで終わりよ。
どんなに俺らが俊足でも、アレからは逃げ切れる気がしねェ。
俺が捕まる前も、仲間がだいぶソレで殺された」
「狩りの道具なのかい?
あたしらは使ってるのも見たことないけれど、気になる道具さね、そいつは」
- 181 :ホビットは銃弾の夢を見るか ◆BdIG1U8FAs:2013/04/04(木) 23:08:33 ID:i59qIHU60
-
クアッガと呼ばれた馬型生物は身を震わせる。ホモ・フローレシエンシスを自称した小人は首を傾げる。
「まあ、ともかくだ。
俺1人じゃ『銃』の前にはどーしようもねェし、どこかで『銃』を見つけても使えねェ。俺の前足じゃな。
その点、あんたと手を組むことができれば……」
「なるほど、確かにあたしのこの手は、道具を使うにはうってつけだからね。
大きさだけが心配だけど、『大きな人たち』が使う道具は大抵はあたしらも使えるしねェ」
「それにあんただって、俺と組んだ方がラクだと思うぜ?
あんた『銃』を見たこともないんだろ?
どうも話を聞いてる限り、『大きな人たち』については俺の方が詳しいようだ。
檻の内側からだけどよ、散々あいつらのコトは観察させて貰ってんだ。何年もな。
ついでに『銃』さえ出てこなけりゃ、大抵の相手からは逃げ切れる自信もある。
小柄なあんたくらいなら、余裕で背中に乗せられると思うぜ」
「あんたが足になって、あたしが腕になる。
そして互いに知恵も知識も出し合う……なるほど、悪くないね。
確かに、あの場に沢山いた『大きな人たち』。
それくらい念入りにやらないと、どうにもならなそうだ」
2人は互いに頷きあう。
知る者から見れば、『人間』は――『大きな人たち』は、下手な猛獣よりも遥かに恐ろしい。
殺し合え、と言われた時に真っ先に思い浮かんだ脅威。
あの多くの生き物が集められた中で、複数の個体が確認された存在。
それに対抗するための、これは、同盟の交渉だった。
「面白そうな話をしてらっしゃいますね」
不意に、頭上から新しい声が聞こえた。
クアッガもホモ・フローレシエンシスも振り返る。
そこに居たのは、今まさに木の枝に舞い降りてきた一羽の鳩。
「聞き耳を立てる恰好になったことは、謝罪させて頂きます。
けれど、わたくしも『人間』には少し含むところがありますの。
その話、この『リョコウバト』にも一枚噛ませて頂けませんこと?」
鳩はそして、ぎょろり、とホモ・フローレシエンシスの方を見て。
「とはいえ……そちらの『小さい人間』、本当に、『ニンゲン』じゃないのかしらねェ?」
粘着質の視線を、振り向けた。
【一日目・黎明】
【ヨーロッパ・イギリスの森林】
【ホモ・フローレシエンシス】
【状態】健康
【思考】『大きな人たち(他のホモ類・古生物学者等)』に強い警戒心。でも『銃』には興味
【備考】インドネシア・フローレス島出身、メス、国立科学博物館に復元模型もある個体・LB1
【クアッガ】
【状態】健康
【思考】人間への復讐(ホモ・フロレシエンシスは除外)。そのためにホモ・フローレシエンシスと組む。
【備考】捕獲され動物園で飼育されていた最後の頃のオスの1体。野生と飼育の両方の経験を持つ
【リョコウバト】
【状態】健康
【思考】人間は皆殺し。クアッガとの同盟を組みたい。しかし、ホモ・フロレシエンシスにはやや不信感
【備考】メス・アメリカ出身 リョコウバト最後の一羽である「マーサ」
- 182 :ホビットは銃弾の夢を見るか ◆BdIG1U8FAs:2013/04/04(木) 23:09:01 ID:i59qIHU60
- 参加者紹介
【ホモ・フローレシエンシス】
約1万2千年前まで生息。
インドネシア・フローレス島で発見された超小型の人類。21世紀になってから発見され新種としての提唱がされた。
愛称はホビット。身長1mほどで脳の容量も少ないが、火や石器を使っていたと考えられる。
その小柄な体格は、離島における島嶼化によるものである可能性が最有力視されている。
また彼らが暮らしていたとされる年代には、既に現生人類がフローレス島に渡っており、共存していた可能性がある。
なお近隣の島々では小人族の伝説や目撃談が残されており、かなり最近まで生き残りがいた可能性が指摘されている。
その一方、この一群の小柄な人骨たちを新種とすることに異論を唱えるグループもある。
【クアッガ】
1883年絶滅。南アフリカの平原に暮らしていたが、肉や皮の需要が高く、乱獲により絶滅した。
1861年に最後の野生個体が射殺された後、ヨーロッパの動物園で繁殖が試みられたが、けっきょく絶滅している。
ウマとシマウマの特徴を兼ね備え、身体の前半分にだけ縞模様がある。
当時はどちらに近いのか分からなかったが、近年サンプルのDNA鑑定によってシマウマに近いことが分かっている。
現在、クアッガに近いシマウマを交配させて復活させようというプロジェクトがあり、実際似た姿の個体が生まれている。
- 183 : ◆BdIG1U8FAs:2013/04/04(木) 23:09:20 ID:i59qIHU60
- 以上です
- 184 : ◆BdIG1U8FAs:2013/04/04(木) 23:15:34 ID:i59qIHU60
- ああ、クアッガは本当は、暴れたことで処分されて子作りの可能性が絶たれることになった「最後のオス」にしようかと思ったんですが、
どうも野生に生きてた時期があったかどうかが不明で……
ちょっとハンパな個体になってしまいました。申し訳ないです
- 185 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/05(金) 12:45:24 ID:rHzw4zh20
- 投下乙です!!
色んな思いが交錯して、今後どうなるか楽しみなグループですね。
フロレス猿人はその個体が来たかー!!
クアッガについては、私も手持ちの資料で色々調べてみたのですが、はっきり判りませんでした;
すいません。
- 186 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/05(金) 12:50:05 ID:rHzw4zh20
- なお、二週目の参加者ももちろん書いてくださって構いませんが、全員一回以上登場するまでは
「初登場参加者+二週目の参加者」の組み合わせで書いていただくよう、お願いします
- 187 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/05(金) 14:18:58 ID:rHzw4zh20
- オオツノジカ、アーケロン投下します。
- 188 :進化の呼び声 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/05(金) 14:19:53 ID:rHzw4zh20
- 角は男の勲章だ。
角の大きさこそが個体としての貴賎を決める。
最も大きく立派な角を持つ者こそが、多数の仲間を従える栄誉を受けるに相応しい。
そして俺は、自分がこの世界で最も大きく立派な角を持っていると、自負していた。
「……海の底、か?」
俺は思わず声を出してしまった。
なるべく身を隠さないといけない状況だというのに、何をやっているのかと自分でも思う。
しかし俺は驚かざるを得なかったのだ。
俺が立っていたのは、おそらくは深い海の底だった。
体の周りには冷たい水があり、目の前には荒地のような、見たこともない景色が広がっている。
「そういや、水の中でもどこでも呼吸ができるって話だったが……なんとも妙な気分だ」
雪解けの季節に、増水した川で溺れて命を落とした仲間を見たのは一度や二度ではない。
それだけに、自分が水底で生きているということに耐え難いほどの違和感があった。
そのうちに、違和感ではすまないような不味いことがあるのに気がついた。
俺の大きな角は、ここでは敵の攻撃に対して満足に機能しないどころか、水の抵抗を大きく受けてしまって、自由に動くことさえままならないのだ。
俺たちオオツノジカにとって、角が命取りになるのは珍しいことではない。
木々の枝や茂みに角がひっかかってしまい、動けなくなっている間に捕食者に喰われたり、そのまま衰弱して死んだ仲間や家族は今まで何匹いたか知れない。
俺は群れを率いる者として、そのような無様な死に方だけはすまいと心掛けていたのだが、この状況はいかにもまずい。
すぐに陸に上がらなければならない。が、一体どっちに行ったらいいのか。
突如、視界が黒くなった。
いや、大きな影が頭上に落ちて来たのだ。
見上げた俺は驚愕した。見たことも無いような巨大な、丸く平べったい生物。
水棲の動物なのは間違いないだろう。
捕食者か、あるいはこの殺し合いに乗った者か。
ここからでは判別しようが無い。
じっと出方を伺っていると、その巨体は首を俺のほう、つまり真下に向けて伸ばした。
「あれえ、これまた立派な角だこと」
- 189 :進化の呼び声 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/05(金) 14:20:21 ID:rHzw4zh20
- その巨大な動物は、アーケロンだと名乗った。
よく見れば亀の一種らしい。こんな馬鹿でかい亀がいるとは知らなかったが。
幸い、好戦的な輩では無かった。
「ほおー、オオツノジカさんは陸地に上がりたいんだべな。よかよか、おらが案内するとしよう。
さっき、少し泳げば着ける距離に陸地があるのが見えただべ」
老亀は親切にもそう言った。
もちろん、何らかの罠かもしれないが、他に頼るものが無いのも事実だ。
それに、この巨亀が俺を殺すつもりなら、面倒な策など弄さずとも今この場でたやすく済ませられるだろう。
俺は素直に従うことにした。
そして俺は、仮に友好的な相手に出会ったとしたら必ず聞いておきたいと思っていた質問をした。
「ところで、さっき集められていた中に、奇妙な角を生やしたのが何匹もいただろう」
俺は、沢山の生き物が一箇所に集められているということ以上に、そのことに衝撃を受けた。
目の上に一対の長い角を持ち、更に鼻先にも一本角を生やしていた者。
四本もの角を顔に付けていたもの。
盛り上がった頭頂部を覆うように、鋭いトゲが何本も生えていた者。
鼻の先に、二股の太い角をつけた者。
確かに、大きさでは俺が勝っていた。
だが、オオツノジカのものとは全く異なる華美で複雑な角を持った生き物を大勢見ると、俺は果たして自分の角が本当に随一のものなのかどうか、不安に駆られた。
「あいつらの中に、あんたの知ってる生き物はいたか?」
アーケロンは、なんでそんなことを聞くんだという顔をしつつも答えてくれた。
「うんにゃ、おらはずっと海の中にいるからわかんないだども……でも、陸の上には顔に何本も角のある、おっそろしい動物がいると聞いたことはあるだべ」
そうか、と俺は老亀に礼を言った。
あれほどの角を持って生きている者であれば、きっといずれ劣らぬ戦士でもあろう。
戦いたい。
俺はこう思うことを止められなかった。
戦いたい。
群れのリーダーとして、無益な争いをすることなどは恥なければならない。
戦わずに済む場面で相手に喧嘩を売るのは、経験の浅い若造のすること。
無益な戦いで命を落としでもすれば、リーダーとして群れの仲間に申し訳が立たない。
だが。
戦いたい。
俺は、自分の角が疼くような錯覚に襲われ続けている。
この角が俺に告げているような気がする。
あれほどの角の持ち主と、心行くまで戦いたい、と。
【一日目・黎明】
【北極海・ロシア沿岸】
【オオツノジカ】
【状態】健康
【思考】角を持った動物(トリケラトプス・パキケファロサウルス・ウィンタテリウム・ブロントテリウムなど)と戦いたい
【備考】オス・中年 アイルランド出身 群れのリーダー
【アーケロン】
【状態】健康
【思考】とりあえずオオツノジカを案内
【備考】オス・老人 北米出身
参加者紹介
【オオツノジカ】
新生代新第三紀鮮新世〜第四紀更新世。ユーラシア北部一帯に広く生息。
巨大な角が特徴的なシカ。あまりの大きさ故に、「角が大きくなりすぎてエサを探せなくなって絶滅した」などと言われていたこともある(現在は否定されている)。
なお、日本で見つかるヤベオオツノジカは別属。
【アーケロン】
中生代白亜紀後期カンパニア期。北米沿岸に生息。
史上最大級のカメの一つで、ウミガメとしては最大。
甲羅は退化しており、タイマイもしくはスッポンに近い外見だったと思われる。
大海を優雅に泳いでいたイメージがあるが、化石の産出状態から、遊泳能力はあまり高くなかったとも言われる。
- 190 :進化の呼び声 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/05(金) 14:20:35 ID:rHzw4zh20
- 以上になります。
- 191 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/05(金) 15:46:11 ID:rHzw4zh20
- プテロダウストロ、アーケオプテリクスで予約します
- 192 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/10(水) 16:19:00 ID:OlTPWQhY0
- プテロダウストロ、アーケオプテリクス投下します。
- 193 :飛べない翼 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/10(水) 16:19:28 ID:OlTPWQhY0
- 殺し合い? 笑止千万だ。
今更誰かに殺されるまでもなく、自分はとっくに死んでいる。
確かに自分は今も、海岸で食物を摂り、洞窟で雨風を凌いで生きている。
だけど自分は死んでいるのだ。
最初に飛ばされた場所が、昨日まで生活していた海岸と良く似た場所だったのは幸いだったかもしれない。
静かに打ち寄せる波の音。砂の感触。冷たい潮風。
それらを全身で感じながら、一羽のオスのプテロダウストロはじっと砂の上に佇んでいた。
南米で進化したほとんどの分類群と同じく、南米の翼竜もまた他の地域の類縁とは全く違う進化を遂げていた。
大きく細長い嘴はなるほど翼竜一般に見られる特徴に違いは無いが、そこに櫛のように細いヒゲが何百も生えているのは彼らに特有の形態だ。
彼らはこのヒゲで、フラミンゴもしくはヒゲクジラのように、水中の小動物を濾しとって食べる。
他の種類の翼竜と競合しないこの食性こそ、彼らが進化によって勝ち得た強みだった。
だが、彼には他のプテロダウストロには無い明確な特徴もあった。
その右の翼の皮膜が、大きく切り裂かれていたことだ。
彼ら翼竜の皮膜は、鳥の翼とは違って傷つくと再生することが難しい。
子どもの頃に負った傷ならばまだなんとかなっただろうが、この傷はつい最近付けられたものだった。
そして翼が再生しない以上、彼はもう空を飛ぶことは叶わない。
彼が海の魚や木の実を食べる種類の翼竜であったなら、とっくに餓死していただろう。
しかし、水さえあればどこでも手に入る微生物を食べるという習性が、彼を生かし続けていた。
また、肉食恐竜などが容易には近寄れない、切り立った崖に囲まれた海岸に住んでいたことも彼を生きながらえさせる要因となった。
そうでなければ、とっくに餌食となっていただろう。
しかし、彼の生活にはもはや何も無かった。
仲間と言葉を交わすことも、他の生き物と出会うことももはやほとんど無い。
繁殖に参加することなど夢のまた夢だ。
自然界においては、彼はもはや死んでいるも同然だった。
それでも彼の中に流れる血は、彼に無益な行動を強いた。
空腹になったら食物を探しに海に入った。
天候が悪ければ、雨風をしのぐため洞窟に篭った。
この血を子孫に伝える手段などもう絶たれたというのに、彼の中に流れる血は彼を生かそうとし続けた。
この血に抗って死を選ぶことができればどれだけ良かったかと思う。
それでも彼は、海岸で一羽孤独にまだ生きていた。
しかし他の仲間たちや他の動物たちにとっては、そしてその種族の血脈にとっては、彼は既に死んでいたのだ。
どうしたものかと海を眺める。
このような事態になって初めて、彼にもおぼろげながら意思に近しいものが生まれてきた。
飢えて死ぬ道は絶たれた。海に入って溺れて死ぬ道も絶たれた。
だが、いずれ誰かが自分を見つけて、その命を奪ってくれるだろう。
そんな悠長なことなど言わずに、こっちから殺してくれる相手を探すのも一興だろか。
相手には困るまい。何しろ、飛ぶこともできない翼竜を殺すことなど、多くの生き物にとってたやすいことなのだから―――
「うわあああああああおちるううううううううううううう!!」
突如素っ頓狂な声が聞こえた、かと思ったら、頭部に激痛が走った。
- 194 :飛べない翼 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/10(水) 16:19:54 ID:OlTPWQhY0
- 「ったく、俺も今度こそは死ぬかと思ったぜ」
ほうほうの体で起き上がったのは、鳥とも恐竜ともつかない――分類学的には、鳥と恐竜との間に境界線を引くこと自体が不可能なのだが――奇妙な生き物だった。
嘴には歯が生え、肉食恐竜のような長い尾と鍵爪を持っているが、黒白を基調とした羽の色は一見現生のカモメやアジサシとそっくりである。
彼女こそ始祖鳥、あるいはアーケオプテリクスと呼ばれる生き物だった。
切り立った崖の上に飛ばされた彼女は、とりあえず落ち着ける場所に移動しようと、崖の上を足場から足場へと滑空飛行していた。
その途中、横風に煽られて足を滑らせ、崖の下へと転がり落ちたのだ。
彼女の翼は滑空のためのもので、現生の鳥のような飛行は気休め程度しかできない。
せいぜい、なんとか墜落の衝撃を和らげようと羽ばたきするしかなかったのだ。
「いきなりこれじゃあ先が思いやられるぜ……俺もとことん運が悪いなあ」
彼女が悪態を吐くにも理由がある。
繁殖のパートナーには他にメスを作られて逃げられ、失意の中海岸で食べ物を探していたら波に攫われて溺れかけ、やっとの思いで陸に戻ったら肉食恐竜に追いかけ回され、息も絶え絶えに巣に戻ったら巣が翼竜に占拠されていた。
しょうがないので一人さびしく地上で寝て、起きたら殺し合いとかいうのに呼ばれていた。
「って、にょわあああー!! 下に誰かいたー!! まさか死んでねえよな? おーい、起きてくれー!!」
ようやく失神しているプテロダウストロに気付いた彼女は、どうやら自分の不運がまだ終わっていないらしいことを感じつつも、彼を必死に起こそうとしていた。
【一日目・黎明】
【ヨーロッパ・イベリア半島の地中海側海岸】
【プテロダウストロ】
【状態】失神
【思考】行動方針は未定
【備考】オス・中年 南米出身
【アーケオプテリクス】
【状態】健康
【思考】とりあえずプテロダウストロを起こす
【備考】メス・若者 イギリス出身
参加者紹介
【プテロダウストロ】
中生代白亜紀前期オーブ期。南米に生息。
上に沿った長い嘴と、その嘴に並ぶ千本近い細い歯が特徴の翼竜。
フラミンゴなどのように、水中の小さな食物を濾しとって食べたと考えられる。
現生の海鳥のように、繁殖期は群れで生活していたようだ。
【アーケオプテリクス】
中生代ジュラ紀後期キンメリッジ期。イギリスから発見。
現生鳥類の直系の祖先ではおそらく無いが、確実なところでは現在知られている最古の鳥類(正確には、鳥類の形態をしている最古の恐竜と言うべきか)。
飛行能力はそこまで高くなく、滑空飛行が主だったとされる。
最近、羽の色が黒だったことがわかって大きな話題になったが、一昔前はほとんどどの図鑑でも青を基調とした色に塗られ、何故か大抵トンボを追っていた。
また、生息地域の違うオルニトレステスにジャンプして襲われるというシーンも、色んな本で繰り返し描かれた(元ネタはおそらくチャールズ・ナイトの絵)。
古生物の復元図というのは同じようなものに成りやすいという傾向があるとはいえ、ここまでコピペのように同じ絵ばかり描かれるのも珍しい。
- 195 :飛べない翼 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/10(水) 16:23:53 ID:OlTPWQhY0
- 以上になります。
始祖鳥は自分の中ではなんかこんなイメージ。
鳥と言えば、自分的には去年出た中で最高のマンガである「ぢべたぐらし」がアニメ化されましたが、
子供向け番組内のアニメということで、原作の
「あいつ最近見ないけどどうしたの?」
「あー、こないだ食われたって」
というような世界観がちゃんと再現されるかどうか不安です。
(ああ、この作品、ロワで書いてみたい!!)
タニストロフェウス、スピノサウルス、フクロオオカミ、ホモ・ハイデルベルゲンシス予約します。
- 196 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/13(土) 19:17:41 ID:Eywpxeu60
- タニストロフェウス、スピノサウルス、フクロオオカミ、ホモ・ハイデルベルゲンシス投下します
- 197 :去り往く者への羨望 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/13(土) 19:19:31 ID:Eywpxeu60
- 密林の中を一本の川が流れている。
川といっても、その川幅の広さは海と見紛う程だ。現実の地球でも屈指の流域面積を誇るアマゾン川は、この殺し合いの会場でも変わらぬ威容を称えていた。
その川の真ん中を大きな波を立てながら泳いでいるのは、これまた生物として、とてつもない威容を称えた巨竜だった。
水の上に出ているのは身体の一部でしか無いが、背中の大きな帆と小さいながらも扇のような奇異な形をした鶏冠が、それが地球史上最大級の四足捕食動物であることを示していた。
スピノサウルスは、純粋な体長であればティラノサウルスやギガノトサウルスをも上回る最大の肉食恐竜である。
しかもこの地に呼び出されたこの個体は、優に十七メートルを超える巨体を持っていた。
もっともその巨体は、巨大な獲物を狙ったが故のものではない。
重力の影響が半減する、水中という環境に適応した結果である。
鰐に酷似した細長い吻部と円錐状の歯ももちろんその一環であるが、彼らにはその巨体と歯の頑強さ故に、他の水棲生物が手を出せない獲物を狩れるという強みがあった。
そして今、彼は水中から帆と顔の上部だけを注意深く出しながら、じっと進行方向を見据えている。
その目は、前を泳ぐ者たちの姿を捉えている。
朝闇に紛れながら、気配を隠して、彼らの後を追っている。
「ふうん、お爺ちゃんも色々大変だったのねえ」
「なに、去り行く者の定めじゃて。ただ我が種族の命運は尽きたというだけのこと」
スピノサウルスの前方を泳いでいるのは、一人のヒトの女と一匹の狼のような獣だった。
裸で平泳ぎをしているのはホモ・ハイデルベルゲンシス。
その若々しい顔立ちを見れば分かるように、現代人の感覚からすれば若者に当たる年齢である。
だが集落においてはそれなりの立場を任される重鎮とみなされている。彼らの平均寿命は現代人と比べてまだまだ短い。
その隣を犬掻きで泳いでいるのは、頭部だけを見れば確かに狼だった。
だが実際には狼どころか、あらゆる真獣類と別系統の哺乳類、即ち有袋類である。
とはいえこの個体には袋は無かった。雄だったのだから当然である。
近代にはすでにオーストラリアの南東に浮かぶタスマニア島にしか生息していなかった彼らだが、三千年前まではオーストラリア全土にまで広く分布していた。
彼はフクロオオカミの中で、オーストラリア大陸に生きていた最後の個体である。
彼らから獲物と住処を奪っていったのは、ある時を境に突然現れたホモ・サピエンスと彼らの連れるディンゴであった。
一見するとそっくりな動物であっても、真獣類であるディンゴの狩猟能力はフクロオオカミを大きく上回っていた。
やがてヒトの支配の下を離れたディンゴがオーストラリア全土を席巻し、最上位捕食者の地位をフクロオオカミから奪ったのである。
最後の一匹となったフクロオオカミの生涯は当然過酷なものだった。
ディンゴやヒトの目を偲びながら、細々と飢えを凌いでいくことだけが全てだった。
「そう、娘さん、ゆめ間違いなさんな……」
フクロオオカミの老個体がホモ・ハイデルベルゲンシスに告げる。
「『滅びる』とは、大きな災害や戦いでみな一網打尽に一瞬にして死ぬ耐えることではない。
滅びる者は飢えや孤独と長い間戦いながら、ひっそりと消えていくのだ」
しかしそれを聞いたホモ・ハイデルベルゲンシスは、笑い飛ばすような勢いで言った。
「そっか。でもお爺ちゃんは大丈夫だよ!! 私が絶対に守るから!!」
彼女は集落の中で、集落を知識面で支える長老の世話を主に任されていた。
老人の経験と知識は、他の何物を対価としても得られない集落の財産である。
故に、例え狩りや戦ができなくとも、老人は守り抜かねばならない。
彼女はずっと、こう教わりながら育てられてきた。
「ほっほ……これはまた心強い話じゃて」
フクロオオカミも、これには目を細めて答えた。だが、次の一言は声を潜める。
「ところで、気付いておるかの?」
「ええ。ずっとつけてきてるわね。それもかなり大きい」
「ワシもお主も本来は陸のもの、この水の中で追いつかれてしまうのはいかにもまずいのう」
「出来る限り引き離すしかないわね。とにかく岸を目指しましょう」
- 198 :去り往く者への羨望 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/13(土) 19:21:06 ID:Eywpxeu60
- そのような会話がなされている後方で、鋭い歯の並んだ顎が、彼らの後を追っていた。
早く泳ぐことはそこまで得意なわけではなかったが、相手が小型の陸生動物二匹であれば話は別だ。
追跡者は、自分はついている、と思った。
ここで早速一気に二匹も殺すことが出来るとは。
一刻も早く元の住処に帰りたい彼女としては、優勝が一気に近付く、願ってもいないチャンスだった。
距離はもはや僅か。ここは一気に距離を詰めようと、その長い首を伸ばした。
その時、彼女はようやく、自分が今まで見たことも無い巨大な生物がすぐ後ろにいたことに気付いた。
大きな水しぶきと悲鳴が、ジャングルを流れる大きな川に響き渡った。
水の上には二匹の動物が顔を出している。
片やワニのような顔をした動物、もう一方はヘビのように長い首を持った動物。
ワニ顔のスピノサウルスは、タニストロフェウスの長い首をその大きな口でしっかりと咥えていた。
「正々堂々とも戦わず、水の中から小さな生き物を不意打ちとは……随分と卑屈な真似をするものよのう」
ホモ・ハイデルベルゲンシスとフクロオオカミを追跡していたタニストロフェウスは、今やまるで歯が立たない追跡者に捕らえられた哀れな獲物にすぎなかった。
スピノサウルスがその強靭な首を左右に振ると、タニストロフェウスの首は一瞬にして引きちぎられた。
川面には鮮血が飛び散り、辺りには胸を焼くような匂いが立ち込めた。
スピノサウルスが気付くと、ホモ・ハイデルベルゲンシスとフクロオオカミはすでに姿を消していた。安全な場所に逃げたもののようだ。
(まあ、陸の上にまで逃げられればそうそう危険もなかろう。あまりお節介は焼かぬこととするか)
二匹を無事に助けられたことに満足し、スピノサウルスは再び、静かな水の中へと潜っていった。
「はあ、はあ、さ、流石に死ぬかと思った……」
アマゾン川の岸辺。
全裸の女性が地に手をついて息を荒げていた。
「何も、ワシを担いでくれとまでは頼まなんだが」
フクロオオカミは心配そうに彼女の顔を覗き込む。
何しろ彼の体を背中に担ぎ上げて全力で岸まで泳いだのだから、疲弊するのも当然だ。
「そうも行かないわよ。私はお爺ちゃんを守るって決めたんだから」
「自らの身を危険に晒してまですることでも無かろうに……まあ、お主のおかげで命拾いしたのは確かじゃわい。礼を言うぞ」
老フクロオオカミが言うと、ホモ・ハイデルベルゲンシスも満足そうに笑った。
「それにしても、あれほどの巨大な捕食者はワシも見たことが無いな」
「私もよ。ここから生きて帰るには、チキュウをなんとかする以前にあんな化け物をどうにかしないといけないのよね……」
自然、暗い面立ちになる。だが、やらなければならない。
「まあ、とにかく行きましょうか」
「ああ。先刻の怪物が、後を追ってこんとも限らんしな」
【一日目・黎明】
【南米大陸・アマゾン川】
【タニストロフェウス 死亡確認】
【備考】メス・壮年 ヨーロッパ出身
【ホモ・ハイデルベルゲンシス】
【状態】健康
【思考】弱者を守りながら、脱出を模索する スピノサウルスに強い警戒心
【備考】メス・若者(20代後半くらい・集落では壮年くらいの扱い) ヨーロッパ出身
【フクロオオカミ】
【状態】健康
【思考】脱出を模索する スピノサウルスに強い警戒心
【備考】オス・老人 オーストラリア出身 オーストラリア大陸に生きた最後のフクロオオカミ(生きた時代は今から三千年ほど前)
【スピノサウルス】
【状態】健康
【思考】弱者を傷つけるものは許さない
【備考】オス・壮年 アフリカ出身
- 199 :去り往く者への羨望 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/13(土) 19:21:26 ID:Eywpxeu60
- 参加者紹介
【タニストロフェウス】
中生代三畳紀中期ラディン期。ヨーロッパ・中国から発見。
水中生活に適応した爬虫類の先駆者の一人で、足には水かきがあり、泳ぎに便利な長い尾があった。
もっとも特徴的なのはその長い首で、全体長の実に3分の2を占める。
その割りに首の骨は十個しかないので、柔軟性はあまり無かっただろう。
【ホモ・ハイデルベルゲンシス】
新生代第四紀更新世。ヨーロッパ・アフリカに生息。
ホモ・エレクトゥスの亜種とされる場合もある。
ホモ・エレクトゥスよりも脳の容量が大きく、おそらく現代人の直系の先祖とされる(現生人類単一起源説を採る場合)。
家を作り、火で調理をするなど、人類の文化が大きく発達したのがこの時代である。
なお、老人の世話を群れ全体でしたというのは証拠が無く、このロワオリジナルの解釈と言ってもいい。
しかし雨風をしのげる「家」を手に入れたこと、狩猟技術も格段に発達して食料の確保も容易になったことを考えると、十分ありえるのでは無いだろうか。
【フクロオオカミ】
1936年絶滅。オーストラリア・タスマニア島に生息。
狼に収斂進化した有袋類である。
オーストラリア本土では三千年ほど前に絶滅。タスマニア島にはかなり最近まで生息していたが、家畜を襲うとされたことから入植者に乱獲され絶滅した。
今でも頻繁に目撃報告がある。
なおタスマニアオオカミ、タスマニアタイガーといった色々な別称がある。
フクロorタスマニア+オオカミorタイガーといった感じだが、「フクロタイガー」と言ったらオーストラリアで目撃されるUMAの事を指すのでややこしい。
【スピノサウルス】
中生代白亜紀後期セノマン期。北アフリカに生息。
最大全長17メートルと、単純な体長では肉食恐竜史上ぶっちぎりで最大。
ジュラシックパーク3ではティラノサウルスを瞬殺していたが、実際には体格が華奢な上に魚食性に適応していたと思われるので、ティラノサウルスのほうが強いと思われる(映画のパンフレットにも堂々とそう書いてあった)。
背中に大きな帆があり、魚食性だがかなり大型で硬い鱗を持つ魚も食べることができたとされる。
第二次世界大戦で標本が失われたため、最近新たな標本が発見されるまでは有名なわりによくわからない謎の恐竜だった。
このような理由により、ここ二十年ほどで復元図がやたら変わってしまった恐竜でもある。比べてみると面白い。
- 200 :去り往く者への羨望 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/13(土) 19:23:12 ID:Eywpxeu60
- 以上になります。
スピノサウルスは、どうしてもDINO2のクーデレ(ツンデレ?)スピノサウルスのイメージが抜けきらず……
なお、ホモ・ハイデルベルゲンシスの独自解釈(老人の世話)について、異論や修正要求があれば遠慮なくお願いします。
- 201 :名無しさん:2013/04/13(土) 22:01:07 ID:.8d7bAWo0
- 相変わらず素晴らしいです!
老人の世話も、作中の見せ方・行動の一貫性など説得力満点ですし、問題ないのではないでしょうか。
- 202 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/14(日) 20:28:50 ID:gwMAMjnE0
- ご意見ありがとうございます。
大丈夫そうですね。
リードシクティス、ロンギスクアマで予約します。
- 203 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/16(火) 19:33:57 ID:s/S5x7fg0
- リードシクティス、ロンギスクアマ、投下します。
- 204 :羽根と歯 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/16(火) 19:34:40 ID:s/S5x7fg0
- 深い雪に包まれた、険しい山脈。
中央アジアとインドの間に立ち塞がる天然の城壁、ヒマラヤ山脈である。
全てのものが小さく再現されているこの小地球では流石に本来とは程遠い標高でしか無かったが、それでも前進しようとするものに与える威圧感は絶大だった。
ここに一歩足を踏み入れれば、もう戻って来られないのではないか。仰ぎ見るものに、そんな不安を与える。
そんな山の山頂に転がる岩の上に、一匹の小動物が震えながら蹲っていた。
不幸にもここをスタート地点に定められてしまったらしい。生まれて始めての冷たい空気に、小さく震えながら耐える。
その学名をロンギスクアマと言った。
一見ただのトカゲとそう大差ない彼らの外見で、一際目を引くのは背中の「羽」である。
彼らの「羽」は、文字通り羽根が背中に二列に生えている、というものだった。
その存在自体が、進化の本質は偶然なのか必然なのかを問いかけるものである。
その羽根は、構造的には現在の鳥の羽毛に極めて近いものである。
だが彼らは鳥とは何の関係も持たない。滑空飛行という生活形態のために、この羽根という形質を選んだのは単なる偶然である。
いわば彼らは「偶然」原始的な鳥と同じ生活スタイルを獲得したせいで、「必然」鳥と同じ形状の羽根を進化させたのだ。
しかし今では、その自慢の羽根も役には立ちそうに無かった。
飢えで死ぬことは無いとしても、暖かい場所に移動しなければ殺し合いに対処するどころの話では無い。
だが、果たしてどちらに行けばいいと言うのだろうか。
山のどちら側に下りれば安全かなど、どうすればわかるというのか。
あるいはここから動かず寒さに耐え続けるというほうが、結果的には最善の手になるかもしれない。
自分はここに集められた動物の中では最小に近いということは、さっき思い知った。
山を降りて最初に出会うのが、大地の声に従おうとはしない動物であるという保証は無いのだ。
動くことも出来ず、動かないままいることも出来ない。
一先ず、吹きさらしの場所ではなく風を凌げる場所に移動することにする。
小山のような岩の上から下に飛び降りるために、背中の羽根を広げる。風が体に吹き付けて凍えそうになるが致し方無い。
羽根をパラシュートのように使って着地の衝撃を和らげる。もっとも、下は雪だったのでその必要は無かったのだが。
想像を絶する雪の冷たさに失神しそうになりながらも、なんとか上手い具合の岩陰に身を隠した。
「さて、これからどうするか……」
あまり物を考えることも、決めることも得意では無い。
「どうすりゃいいんだかなあ」
- 205 :羽根と歯 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/16(火) 19:35:06 ID:s/S5x7fg0
- 「思う通りにすればよろしい」
慌てて辺りを見回す。が、自分以外に誰の姿も無い。
幻聴かと思っていると、
「こんなに目の前にいるのにわからぬのか?」
ロンギスクアマは目を凝らした。そして、驚愕した。
目の前に、見たことも想像したことも無いような巨大な魚の頭があることに気付いたからだ。
そして一度気付けば、種明かしをされたかの如く全てが認識できる。
今まで自分が大きな岩だと思っていたのは、自分の百倍はあろうかという巨大な魚だった。
どんな悲鳴を上げればいいのかすら、見当がつかない。
「怯えることは無い。私はお前を取って食おうとは思わん。もっとも、そう思ったとしてもお前を捕まえることなど適わないだろうがな」
「ど、どうして……こんな所に」
「それは私が聞きたいものだ。突如陸の上に上げられて、死ぬかと思いきや死ねずに、得体の知れない声に説明を聞かされ、そして気付いたらここにいた。
身動きも取れぬし、どうにも打つ手が無い」
史上最大の魚、リードシクティスは悲惨な身の上を語る。そして、
「まあ、これも定め。詮無いことだ」
とだけ、付け加えた。
「定め……?」
「左様。私たちが何を為すか、どのようなことと出会うかは偶然の導きだが、その結果起きることは全て定めだ」
「全てが偶然でもなけりゃ、全てが定めでも無いのか?」
「矜持の問題だ。私の頭には、かつて私を食おうとした鰐の歯が今も埋まっている。
それでは、私がその鰐に食われることなく生きながらえたのは、何らかの意味があってのことだろうか? お前はどう思う?」
ロンギスクアマは何も答えられなかった。
「意味など無い。私は偶然鰐に襲われ、そして偶然今まで生き延びただけのこと。
しかし、今ここに生きている私にとって、私が生き延びたのは必然だ」
「それは……確かにそうだろう。あんたが死んでいたら、あんたはそもそもここには居ない」
「そういうことだ。過去は偶然の積み重ねだし、やってくる未来も偶然に左右される。だが今この現在だけは、今ここにいる私たちにとって紛れも無い必然だ」
もうロンギスクアマにも、彼が何を言おうとしているのかわかった。
「よってだ。お前が例えこの先ここで誰に出会い、どんなことを体験するか。そして生きて帰ることになるか、そうならずに終わるか。
全てを決めるのは、私たちにとってどうしようもない偶然に過ぎない。しかし……」
「その結果は、全て必然、か」
リードシクティスの言葉をロンギスクアマが引き継いだ。
そしてそう口にした時には、彼はもう立ち上がっていた。
「ありがとう。あんたのお陰で決心がついた」
「何、ただつまらぬ昔語りをしただけのこと。それに、今その心持を『決心』などと称するのも正しいことかどうか」
「いや……」
ロンギスクアマは返事しようとして、結局何も言わなかった。言っても仕方がないことだと思ったからかもしれない。
山頂に横たわる巨大な魚を後に残して、小さな爬虫類、ロンギスクアマは下山を開始した。
【一日目・黎明】
【アジア・ヒマラヤ山脈】
【リードシクティス】
【状態】健康
【思考】これと言って特になし
【備考】オス・壮年 ヨーロッパ出身
【ロンギスクアマ】
【状態】健康
【思考】山を降りる
【備考】オス・若者 中央アジア出身
参加者紹介
【リードシクティス】
中生代ジュラ紀後期キンメリッジ期。ヨーロッパから発見。
史上最大の魚類の候補とされる。小さなほうの復元でも14メートルで硬骨魚類では最大。
最大の推定値では28メートルと、シロナガスクジラにも匹敵する巨大魚となる(本ロワではこの推定値を採用している)。
海生のワニであるメトリオリンクスの歯が刺さった化石が見つかっており、餌食になっていたものと見られる。
【ロンギスクアマ】
中生代三畳紀前期インド期。中央アジアから発見。
鳥のような頭骨に加えて、背中から伸びる「羽根」が特徴の爬虫類。
おそらく滑空飛行していたものと思われる。
羽毛を持つことから鳥の先祖だとする説もあったが、あくまで収斂進化だというのが通説(今でも鳥の先祖説を唱える人もいるが少数派)。
- 206 :羽根と歯 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/16(火) 19:36:30 ID:s/S5x7fg0
- 以上になります。
なお、ロンギスクアマがヒマラヤのどちら側に下りたかは後続の書き手氏にお任せします。
イグアノドン、オスニエル・マーシュで予約します
- 207 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/17(水) 16:00:26 ID:XOgzdXUc0
- wiki更新して下さった方、ありがとうございます
- 208 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/23(火) 21:06:07 ID:PXV6vryg0
- すいません、延長させて頂きたいです。
- 209 : ◆n4C8df9rq6:2013/04/28(日) 16:46:35 ID:13251JIs0
- ディアトリマ、モア、ポストスクスを予約致します
- 210 : ◆n4C8df9rq6:2013/04/28(日) 21:30:37 ID:13251JIs0
- 投下致します
- 211 :RUNNER'S HIGH ◆n4C8df9rq6:2013/04/28(日) 21:32:19 ID:13251JIs0
-
密林じみた森林地帯の奥底。
邪魔な草木が多く、視界は良いとはいえない。
とはいえ、並の獣ならば力づくで退かせられるような小枝や雑草が多いだけマシか。
どこか薄暗い雰囲気を醸し出す森の中。
木々の間から覗く空を、彼は何も言わずに見上げていた。
「……………。」
森の中で僅かな月明かりを浴びながら空を見上げているのは、世界最大の鳥類『モア』。
体高にして3mと、人間を遥かに上回る体格を持っている。
元々、ワシ以外に天敵のいない島で穏やかに暮らしていたのだったが…
島に上陸してきた『人間』の介入による森林の伐採、そしてモアの過激なまでの乱獲…
―――そう。彼は滅びへと追い込まれていた一族だった。
「やはり我々は、滅び逝く運命なのだろうか」
ぽつりと、モアは静かに呟く。
人間が姿を現してからは、平穏な日々が侵食されていった。
両親、妻子、そして多くの仲間達。全て人間の乱獲によって死んでいった。
生き残った僅かなモア達も、毎日を『滅び』への恐怖によって心を苛まれていた。
減っていく。気がつけば、仲間が減っていく。
半ば諦観のようなものすら抱き始めていた中で、今度はコレだ。
『絶滅へと向かう日々』の次は『殺し合い』だ。
世界はどうやら、私達を既に見離しているらしい。
最初の『あの空間』で周囲を見渡したが、そこには私達を追い詰めている『人間』。
それどころか、自分なんかよりも遥かに巨大である見たことのない獣すら存在していた。
あんな連中に勝てるわけがない。ましてや、私を絶滅まで追い込んだあの種族すらいるのだ。
生き延びた所で、恐らく一族の滅びは避けられない。
運命があるとしたら、それはもうとっくに私達の破滅を宣告しているだろう。
私はこの地で、どうすればいいと言うのだ?
……絶滅へと向かい、行き着いた先が…こんな所か。
本当に、なんて理不尽な――――
「……よォゥ アンタも…鳥、か?とんだデカブツみてーだがよォー…」
- 212 :RUNNER'S HIGH ◆n4C8df9rq6:2013/04/28(日) 21:33:30 ID:13251JIs0
-
のらりくらりと歩きながら、草木の間から姿を現したのは一匹の鳥。
天敵である鷲のように鋭い嘴。退化した翼。それを補うかのように力強い両足。
そして自分ほどではないとはいえ、そいつの体格は鳥にしてはかなり大柄だ。
体高にして、ざっと2m前後。私ほどではないにせよ大きい。
クク、と何処か余裕を感じさせる笑みを浮かべながら…そいつはこちらを見ていた。
…こいつは、何か『危険』だ。私はそう直感した。
「……そうだが?そう言う君も、同じ鳥類と見受けるのだが」
「ヒヒ…そうゆうことよ!ま、俺ァあちこちをうろついていた所なんだが…
そんでなァァー…初めて見つけたのがテメェってワケよォ…」
ゆらりと首を動かしながら喋る『もう一匹の鳥』。
何処か飄々とした態度であり、その態度は不気味とさえ思えてくる。
…気味が悪い。私は『そいつ』に対しての嫌悪感を抱く。
奴の瞳が物語っている。自分が死ぬわけがないという確信。それが見て取れる。
負けるわけもないし、こんな所でくたばるわけもない。そんな自負だろう。
私は、こいつの『傲慢さ』をすぐに感じ取った。
それは、どこか人間じみている…そんな気持ち悪さだ。
そんな私の感情を余所に、そいつは言葉を並べ続ける…
「こんなワケの解らねェ場所に呼び寄せられてッ。
そんで、いきなり殺し合えと言われて…ワケわかんねェーッて…
ずっと思っていた所だがよ…!」
その直後だった。
そう。奴が明確な『殺気』を見せた!
私はすぐにそれに気づいた。奴が『凶暴な捕食者』であることを確信した!
「―――――!」
「捕食者である俺に今更『殺し合え』だなんて…随分とナメてるよなァーッ!!
だが、上等だぜ…!やってやんよッ!!この『ディアトリマ』様がッ!
テメーらみんなブチ殺してやるってなァーーーーーーッ!!!!!」
そいつは、地を蹴り…小枝を蹴散らしながらこちらへと一気に駆け出した!
強靭な脚に違わぬ、高い脚力による走行でヤツは迫り来る。
私はすぐに身を翻した。そう、生きる為の本能が私の身体を動かした。
モアの身体は、生きることを望んでいた!
例え滅び逝く運命だろうと、彼はただ純粋に生きたかった。
こんな所で死にたくはなかった!
とにかく、逃げなければ…!
――両足に力を込め、ヤツから逃れるべく疾走を開始した!
- 213 :RUNNER'S HIGH ◆n4C8df9rq6:2013/04/28(日) 21:34:40 ID:13251JIs0
- ◆◆◆◆◆
彼の種族名は『ディアトリマ』。
恐竜の絶滅後に地上に姿を現し、猛威を振るった鳥類である。
当時の哺乳類はどれも小型で原始的な種ばかり。
牙を持つ肉食獣など、全くと言っていいほど存在していなかったのだ。
そんな時代の中、彼は鋭い嘴を持っていた。
大地を駆け抜ける強靭な脚を持っていた。
そして2mを超す体高、200キロ以上の体重。
そう、彼は鳥類として規格外の体格を持っていた。
新生代の初期において―――
彼は間違いなく「最強」と言える捕食者だったのだ。
この異常な状況に放り込まれた中でも、彼は変わらない。
自分は強いのだから、勝ち残るのが当然。
そう、自分こそが最強の捕食者だ。
だが、決して油断はしない。いくら自分が強いとはいえ、もしかしたら思わぬ攻撃で手傷を負うかもしれない。
傷付いている所を狙われて命を落としました、なんてことになったら洒落にならないからな…
決して実力を出し惜しみはしない。
――――最大の力で、徹底的に他の連中をブチ殺す!
◆◆◆◆◆
黎明の森林の中、『追いかけっこ』が続く。
木々の小枝はへし折られ、草木は乱暴に踏み躙られていく。
当然、互いにそんなことを気にしている暇はない。
『狩られる/狩る』側である2匹に、そんなことを気にしている暇などない。
2匹は全速力で疾走を続けていた。
互いに高い脚力を持った鳥類だ。その走力は互角…いや、スピードという点ではディアトリマが優位か。
だがモアは巨躯による両足の長さを生かした走力、そして最大限に障害物を避けつつ駆け抜け続けたことにより
僅かながらも『追いかけっこ』でディアトリマを出し抜けていたのだ。
しかし、対するディアトリマも負けてはいない。
奴は生粋の捕食者。決して油断をせず、全力でモアを殺すつもりだった!
「ホラホラホラァァァ!!!逃げろ逃げろォ!!
じゃねェと俺がテメェの腸喰い破っちまうぜェェェェーーーーー!!!」
汚い笑い声と共に『追う者』が声を発する。
追われる者――モアは一瞬だけ後方を振り返り、軽く舌打ちをする。
彼の表情は焦っていた。今は何とか奴と距離を取れているが…予想以上のスピード。
あの島にはこれほどまでに素早い鳥は存在していなかった。
出会ったこともない捕食者の存在に、彼は内心焦りを抱く。
このままでは追い付かれるのも時間の問題かもしれない。
私は木々を潜り抜け、枝を振り払いつつ――
「…?!」
そうして、駆け抜けている直後のことだった。
森の中、周囲の木々が少ない場に抜け出た時。
後方を駆け抜けるディアトリマの動きが―――変わった!
- 214 :RUNNER'S HIGH ◆n4C8df9rq6:2013/04/28(日) 21:35:31 ID:13251JIs0
-
「イィィィィーーーーーヤッハァァァァーーーーーーーーーーッ!!!!」
ディアトリマは、その場で勢いよく地を蹴り…飛び跳ねた!
強靭な脚力により、強引に飛び跳ねてみせたのだ!
翼がなくとも彼は飛べる――いや、僅かな高さとはいえ強引に『跳んだ』のだ!
飛び跳ねた勢いで、周囲のモノを薙ぎ倒しつつ突撃し――
そのまま、モアとの距離を一気に縮めた!
「くッ…!?」
飛び跳ねてきたディアトリマが、そのまま勢いよく嘴をこちらに突き立ててきた!
突然のことに驚き、モアは回避が遅れ…その肉の一部が嘴で引き裂かれる。
鋭い牙のような嘴が、胴体の肉をざっくりと抉り取ってみせたのだ。
負傷したモアの動きがよろける。
その隙を、ディアトリマは逃がさなかったのだ!
「あばよ―――トリ公ッ!!」
走るモアの後方から振り下ろされる嘴。
それはまさに死神の鎌の如し。
そう、傷付いたモアの命を一振りで奪う刃。
今まさに、それが振り下ろされんとした―――!
だが。
「…こんな所で…終わってたまるかッ―――――!!」
◆◆◆◆◆
――気がつけば、ディアトリマは吹き飛ばされていた。
そう、傷による痛みを抑え突然振り返ったモアが…
その長い首を振るい、ディアトリマの胴体に思いっきり叩き付けたのだ。
唐突な出来事に当然ながら「捕食者」は対処出来ない。
呆然した表情で吹き飛ばされ、地面を無様に転がっていたのだ。
対するモアは、胴体に受けた傷を堪えながら…キッと吹き飛んだディアトリマを睨んでいた。
「…私は、死ぬつもりはない…生きたい。
この先に滅びが待ち受けようと、生きてみせる」
確かな感情を秘めた瞳で倒れ込む捕食者を見ながら、モアはそう言い…身を翻す。
捕食者が立ち上がる前に、その場から去る為だ。
捕食者に追われるという「死」を直面した彼の心に再び芽生えたのは…
「生きること」への執念。
滅びへ向かうことへの諦観を抱いていた彼は、それを取り戻した。
そうだ。何があろうと…自分は生きたい。生き続けたい。
彼はそう決意したのだ。例えどんな困難が待ち受けようと。
モアは、この世界で『生きること』を決意したのだ。
- 215 :RUNNER'S HIGH ◆n4C8df9rq6:2013/04/28(日) 21:36:52 ID:13251JIs0
-
「―――ッ…!テメェ、……」
起き上がろうとするディアトリマ。だが思いの外先程の打撃が痛む。
その隙に、モアは既に走り出していた。
ディアトリマから直実に距離を離していた。
今更追いかけようとした所で、奴が森林の木々が多い地点へ進んだ時点で追うのは困難だろう。
ギリギリと嘴を鳴らしながら、彼は悔しさと屈辱を感じる。
俺に一泡吹かせるどころか、生きて逃げ延びるだと?冗談じゃねェ。
今度こそ、ブチ殺して――――――――
どこからか血肉が何度も食い千切られる音がしたのは、その直後のこと。
◆◆◆◆◆
- 216 :RUNNER'S HIGH ◆n4C8df9rq6:2013/04/28(日) 21:40:12 ID:13251JIs0
- ◆◆◆◆◆
「………は?」
ようやく立ち上がったディアトリマは、唖然とした。
先程モアが逃げた方向から、新たな影が現れたのだ。
そう、それは一匹の獣…いや、爬虫類。
体格は6m前後という巨体。ワニに似ているが、少し違う。
そして…ソイツの口元には、大量の血がこびりついていたのだ。
それだけではない。牙の生え揃った口元から覗く、食い千切られている『皮膚』は…さっきのあの鳥。
モアの皮膚だったのだ。口中の血も恐らくヤツのものだろう。
ディアトリマを視界に捉えた爬虫類は、含むような笑みを浮かべる。
「さっきの鳥は大したことなかったが…お前はどうなんだ?
あいつは俺が木陰から飛びかかっただけですぐに殺れたぜ…。
ずっと背後を気にしていたようだったから、俺に気付かなかったんだろうがな…」
得体の知れない相手を前に後ずさるディアトリマへと歩を進める爬虫類。
彼もまた捕食者―――名はポストスクス。
その瞳に宿るのは、自分の実力への自信。
三畳紀後期で最強の存在であった己の力への絶対的な確信だ。
彼にとって、周囲に群がる有象無象の獣は「蹂躙の対象」でしかなかったのだ。
だからこそ、彼にとっては強敵との戦いも単なる「退屈凌ぎ」のようなモノでしかないのだ。
「―――お前は、俺を楽しませてくれるのか?」
不敵に笑みを浮かべるポストスクス。
未知の捕食者を前に動揺するディアトリマ。
互いに抱く思いは違うが、出会ったのは「狩るもの」同士。
戦いは――いつ起こってもおかしくなかった。
【モア 死亡確認】
【備考】オス・成年 ニュージーランド出身
【一日目・黎明】
【北米大陸・南部森林】
【ディアトリマ】
【状態】胴体にダメージ(小)
【思考】皆殺し(ポストスクスに対処)
【備考】オス・若者 北アメリカ大陸出身
【ポストスクス】
【状態】健康
【思考】戦いを楽しみ、最強である自分が全てを蹂躙する(目の前のディアトリマを殺す)
【備考】オス・壮年 北アメリカ大陸出身
- 217 :RUNNER'S HIGH ◆n4C8df9rq6:2013/04/28(日) 21:41:29 ID:13251JIs0
- <参加者紹介>
【モア】
ニュージーランドにかつて生息していた鳥。16世紀以前に絶滅した説が有力。
最大の種で3メートルを超し、体格においては最大の鳥類だった。
草食性だが生息地には天敵が殆ど存在しておらず、独自の繁栄を遂げていた。
しかしマオリ族の乱獲や森林伐採により個体数が休息に減少した末に絶滅した。
ディアトリマと同じく、脚力が発達している。
【ディアトリマ】
新生代の暁新世から始新世にかけて繁栄した肉食の鳥類。恐鳥類の一種。
2メートルにも達する体高と200キロ以上の体重を持ち、強力なクチバシを武器にしていた。
翼が退化をしている為に飛行は不可能だが、強靭な両足で疾走することが出来た。
哺乳類がまだ小型だった当時、ディアトリマは強力な捕食者として猛威を振るっていたという。
しかしヒエノドンなどの肉食哺乳類の登場でその勢力は衰えていった。
【ポストスクス】
三畳紀後期の北米に生息していた爬虫類。
原始的なワニの仲間であり、全長3〜6メートルと当時の恐竜を大きく上回る体格だった。
顎の力も強力で、その鋸歯は最大で8センチにもなった。
四肢は胴体の真下についており、現代のワニと比べると走行速度も速かったという。
当時の同地域の生態系においては最強の捕食生物だったと言われている。
- 218 : ◆n4C8df9rq6:2013/04/28(日) 21:42:17 ID:13251JIs0
- 投下終了です。
- 219 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/28(日) 22:25:23 ID:RcFijbcs0
- 投下お疲れ様です!!
この無情感はすごいですね……ある意味生物本来の姿でもありましょうが、モアの切なさが伝わってきました。
ディアトリマとポストスクスもいい味出していますね。
そうそう、モアの天敵のハルパゴルニスも参加させたかったんですよね。
流石に同時代の同島嶼部から二匹出すのは自重しましたが。
最後に本編以外のことで恐縮ですが、ポストスクスはワニではなく(近縁ではありますが)別系統のラウスキア類では?
- 220 : ◆n4C8df9rq6:2013/04/28(日) 22:42:32 ID:13251JIs0
- >>219
執筆後に気付きました…すみません、そのへんミスしておりましたorz
修正しました
【ポストスクス】
三畳紀後期の北米に生息していた爬虫類。
クルロタルシ類・ラウスキア目に属し、全長3〜6メートルと当時の恐竜を大きく上回る体格だった。
顎の力も強力で、その鋸歯は最大で8センチにもなった。
四肢は胴体の真下についており、走行速度も速かったという。
当時の同地域の生態系においては最強の捕食生物だったと言われている。
- 221 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/28(日) 23:24:23 ID:5amC4pro0
- 迅速な対応、ありがとうございます。
お手数をおかけしました。
- 222 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/30(火) 18:05:41 ID:4ENQxUq60
- イグアノドン、オスニエル・マーシュ投下します。
- 223 :本能の不在 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/30(火) 18:06:31 ID:4ENQxUq60
- 「殺し合いったってさあ……普段と、一体何が違うんだか」
薄闇が広がるビルの森の中で、一頭の恐竜が面倒くさそうに呟いた。
恐竜としては中型(といっても七メートル以上あるのだが)の体格。
頬と嘴のある顔と蹄のような爪のついた足先が、植物食恐竜であることを示している。
ただし前肢の第一指は鋭い棘状になっている。それがこの恐竜、イグアノドンの最大の特徴だった。
「まあ結局、ここでも、強いもんだけが生き残れるっての?」
強ければ生き残れることは知っていた。
ただ、強くなる方法を知らなかった。
彼女らイグアノドンは、他の恐竜と同じく群れを作って生きている。
だが他種との大きな違いは、イグアノドンの群れにおいてはオスとメスの関係が完全に逆転していることにある。
すなわち最も強いメスが群れのリーダーとなり、多くのオスを独占する。
父親の違う卵を同時に産むことのできる、鳥類や爬虫類でなければ不可能な繁殖戦略だが、他のメスとの争いに敗れて群れを形成できなかったメスは繁殖からは疎外される。
彼女は体格もさほど大きくは無く、力も強くなければ他のメスを出し抜く機転も利かなかった。
自然界において、一度繁殖から疎外された者が子孫を残すことは不可能に近い。
だが敗北者となって初めて、彼女は自分がさして悔しいとも、悲しいとも思っていないことに気付いた。
つまり、彼女には子孫を残したいという本能など、全く欠けていたのだ。
おかげで、彼女は群れから脱落した後もさして孤独も感じることなく、ごく自然に単独生活を送ることが出来た。
繁殖活動というくびきから逃れてみれば、一頭での気ままな生活も決して悪いものでは無かった。
彼女は彼女自身の本能の欠落に感謝し、同時に、他者と争うことなど二度としないと誓った。
だが今度はそうも行かない。
今度は子孫を残すためではなく、生き残るために争えと言われた。
他者を殺めなければ生き残れない。
植物食恐竜である彼女にとって、これほどの状況に置かれるのは始めてのことだった。
そして今一度自分に問いかけた。果たして自分には、『生き延びたい』という本能などあるのだろうか、と。
だがいくら考えてもわからなかった。
繁殖から脱落しなければ『子孫を残したい』という本能の欠落に気付くことができなかったように、この本能の有無もまた、この殺し合いから脱落しなければ気付くことの出来ないものなのかもしれない。
- 224 :本能の不在 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/30(火) 18:06:58 ID:4ENQxUq60
- 「にしても……さっきのとこにも見慣れない奴が沢山いたけど、ここも随分と見慣れないものばっかりね」
彼女は周囲を見渡して呟いた。彼女が居たのは大都会の、大きな交差点のど真ん中である。
中生代の生物にとっては想像もつかないような光景だ。
ここに連れてこられた人間たちでさえ、これほどの大都市を前にすれば目を疑うだろう。
警戒心よりも好奇心のほうが勝り、彼女はそこにある見慣れないものをゆっくりと吟味していった。
形も、色も、匂いも、手触りもまるで住処の森とは違う。ただ一点、今まで聞いたことのないような音だけがここには無かった。
が、それも僅かな間のことだった。
今まで聞いたどんな音ともまるで異質な破裂音が、彼女の顔の脇を掠めて飛んでいった。
既知の物に例えることも出来ないが、名前を付けるとすれば『殺意』のようなものが込められた音だと、彼女は直感的に思った。
次いで、またしても聞いたことのない音、いや声が聞こえた。
「動くな。俺はこれで、お前の頭を吹き飛ばすことも出来るぞ」
建物の影から姿を現したのは、長い棒のようなものを抱えた二足歩行の生き物だった。
さして大きくは無い。
が、先ほどの音がこの生き物の攻撃方法だと言うのなら、対処のしようも分からない。
しばらくの沈黙の後、破裂音が再び響き渡り、それと同時にずっと遠くにある建物の一部が砕け散った。
もう疑う余地は無い。この生き物は、触れることも無く遠く離れ場所にいる生き物を攻撃できるのだ。
「……見慣れないな。いつの時代の生き物だ?」
二足歩行の生き物、オスニエル・マーシュはそう詰問する。
彼の時代にもイグアノドンの存在はとっくに知られていたが、その復元図は現在のものとは大きく異なっていた。
「まあいい。俺に力を貸せ。ここで死にたく無いのならな。
なに、そう無茶は言わん。俺と組んで、他の奴を皆殺しにしようじゃねえかってことだ」
マーシュはビルの森の中で調達したライフル銃をイグアノドンに向けて言った。
捕食者と対峙する時とは、全く異質な恐怖が彼女を襲う。
だがこの恐怖の淵源は果たして何なのだろうか。
単に痛みから逃れたいからなのか。
それとも、『生き延びたい』という本能のためなのか。
わからない。そして今、それを知りたいと願っている。
なので彼女は、
「ええ、いいわ」
と答えた。
- 225 :本能の不在 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/30(火) 18:07:23 ID:4ENQxUq60
-
【一日目・黎明】
【北アメリカ・ニューヨーク市街】
【イグアノドン】
【状態】健康
【思考】マーシュに従う
【備考】メス・若者 ヨーロッパ出身
【オスニエル・マーシュ】
【状態】健康
【思考】イグアノドンを従わせる 最終的には優勝する
【備考】晩年からの参戦 ライフル銃を現地調達
参加者紹介
【イグアノドン】
中生代白亜紀前期アプト期。ヨーロッパ、アジア、北米に幅広く生息。
白亜紀前期の代表的な植物食恐竜であり、かなりの数の標本が発見されている。
前足の親指がスパイク状になっているのが特徴で、食物採取の他種内闘争や敵への反撃に使ったという説もある(接近戦でしかも正面から向き合わないと使えないという弱点があるが)。
古生物学史上最初期に発見された恐竜の一つで、発見者はギデオン・マンテリである。
なお作中の繁殖行動は、タマシギの生態から想像したもので、もちろん全くの創作である。
【オスニエル・マーシュ】
1831-1899。アメリカの古生物学者。
恐竜・翼竜・哺乳類など多くの分野で重要な発見を行った。
エドワード・コープとはもともとは親友だったが、マーシュがコープの復元ミスを指摘したのがきっかけで険悪になり、「化石戦争」と呼ばれるほどの発掘競争にまで発展した。
スパイを使ったり、銃撃戦までやったというのだから、「戦争」と呼ぶものあながち大げさでは無い。
しかしマーシュもそそっかしさではコープといい勝負で、トリケラトプスの角を野牛のものとして報告したり、同じ恐竜を違う名前で何度も記載したりしている。
常軌を逸していたとしか言いようのない化石戦争だったが、おかげでアメリカの古生物学は飛躍的に発展して他国をリードすることになった。
天才同士が喧嘩すると学問や文化が発展するという好例である。
- 226 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/30(火) 18:10:02 ID:4ENQxUq60
- 以上になります。少し気になる点があって資料を漁っていたので、投下が遅くなってしまいました。申し訳ありません。
次いでパラントロプス・ロブストス、レエリナサウラで予約します。
- 227 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/04/30(火) 18:16:54 ID:4ENQxUq60
- 現時点で未登場・未予約の参加者の一覧です
【節足動物】
○オパビニア/○ユーリプテルス/○イソテルス・レックス/○アースロプレウラ
【軟体動物】
○ライオンノセラス
【魚類】
○ダンクレオステウス
【両生類】
○エルギネルペトン
【爬虫類】
○デスマトスクス/○イカロサウルス/○メイオラニア
【海竜類】
全員登場済み
【翼竜】
全員登場済み
【肉食恐竜】
全員登場済み
【植物食恐竜】
○ブラキオサウルス/○アマルガサウルス/○ランベオサウルス/○ペゴマスタックス
【盤竜類*単弓類】
○ディメトロドン/○ゴルゴノプス
【哺乳類】
○ブロントテリウム/○アンドリューサルクス/○バシロサウルス/○カリコテリウム
【鳥類】
○ティタニス/○オステオドントルニス/○テラトルニス/○オルニメガロニクス/○ジャイアントペンギン
【絶滅人類】
全員登場・予約済み
【古生物学者】
○ギデオン・マンテル/○チャールズ・ダーウィン/○エドワード・コープ
【瑞浪市化石博物館】
全員登場済み
未登場・未予約は残り28/100です。
- 228 :名無しさん:2013/04/30(火) 19:07:03 ID:4uxEikG20
- 投下乙です!
ここまで古生物学者にまともな人物が殆どいないなw
実際化石戦争のマーシュならこんくらいやりそうなのが逆に怖いわ…
銃という力で恐竜をも従えたが、果たして彼は上手くいくのか
争いに敗れた孤高のイグアノドンもいい味を出している…
- 229 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/05/01(水) 18:24:15 ID:vjwJ2fDE0
- パラントロプス・ロブストス、レエリナサウラ、投下します。
- 230 :生まれてこなかった子どもたちへ ◆sOMmvl0ujo:2013/05/01(水) 18:24:41 ID:vjwJ2fDE0
- 『ロブストスに代表されるパラントロプス属は、人類の系統上の位置付けが難しい一族であり、アウストラロピテクス属に含めるべきであるとする意見もある。
しかしいずれにしても、彼らの系統は現生人類には繋がらず、途絶えたという点では研究者の意見は一致している。
アファレンシスなどの典型的なアウストラロピテクス属やホモ属と比較して頑丈な体格と顎を持つ彼らは、おそらくはゴリラのような植物食性だったと思われる。
そのため環境の変化に適応しきれず絶滅したとも、現生人類の祖先との生存競争に敗れたとも言われている。
現代を生きる私たちから見れば、パラントロプス属は進化の途中で枝分かれし、そのまま消えていった傍系の親戚に過ぎない。
なおロブストス種の化石は一箇所で集中して発見されており、肉食獣に襲われて食べられた跡ではないかと見られている
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
頑丈型猿人とも呼ばれるパラントロプス・ロブストスが書物の中で目にしたのは、このような無味乾燥な記述だった。
市街地に店舗を構える大型書店。その中にワープさせられたパラントロプスの若いオスは、まず何よりもそこに溢れている文字の量に驚き、また自分がそれらの文字の意味を理解することができることにも驚嘆した。
そして、並べられていた本の中から『生命の歴史』というタイトルの一冊を見つけた。
先ほどの大地の声の内容を思い出し、何かの参考になるかもしれないと思って手に取った。
自分の種族の名前もいつの間にか把握していたため、薄くは無い書物の中から自分たちに関する記述を見つけ出すのもそれほど時間はかからなかった。
だがそこに書かれていたのは、自分たちが進化の袋小路に入り込んで消滅した、取るに足らない存在であるという内容の文だった。
彼は慌てて、同じ書棚に置かれていた他の本にも手を伸ばした。
しかし何冊ページを捲っても、パラントロプスについては同じような内容しか書いていなかった。
おまけに、枝分かれした親戚の子孫であるホモ・サピエンスという種は、『今や世界各地に分布し、この地球上をほぼ支配したといってもいい』のだという。
この『本屋』という名の大きな家も、それらが集まった街というものも、全て彼らが作ったものであるらしい。
そしてホモ・サピエンスこそが、最後まで生き残った唯一の人類なのだという。
「なんてえ、こった……」
彼らパラントロプスは、アウストラロピテクス属ともホモ属とも共存して生きていた。
互いに干渉することは多くは無かったが、決して相対立する関係であったわけでもない。
しかし遠い未来には、ホモ属によって彼らの系統は滅ぼされることになるというのだ。
「どうして、俺たちじゃ無いんだ。俺たちが劣った生き物だからなのか?」
石器を器用に使うことは出来なくとも、力と体格では他の種族を圧倒していた。
そんな自分たちがなぜ滅ぼされなければならないのか。
また書物には、環境が変化した影響も考えられると記してあった。
ならば……その時環境が、全く逆の方向に変化していたら、滅びていたのは彼らのほうだったのではないだろうか。
自分たちとホモ属との立場は、完全に入れ替わっていたのではないだろうか。
「なあ、大地とやらよ。もしもう一度歴史を繰り返したら、この『街』とやらを作ったのは俺たちの子孫になりはしないんだろうか?」
しかし彼の足元の地面は、もちろん何も答えてはくれなかった。
「……わかったよ。どうせなら、自分の力で試してみろと、そういうことか」
ホモ・エレクトゥス。ホモ・ハイデルベルゲンシス。ホモ・ネアンデルターレンシス。
そして、ホモ・サピエンス。
この場にいる彼らを全員殺害すれば、歴史が変わって自分たちの系統が世界を支配することになるのでは無いか。
いや、そうでなくてもいい。本当のところは、そんな仮定の話をしたいわけでは無い。
自分の子孫から未来を奪った連中を、全員始末したいだけなのだ。
腕っ節にだけは自信があったし、何より今彼は、他の参加者に対して切り札となりうる武器を手にしているのだ。
「一冊は持っていくか。ここに集められた奴らの情報は大体書かれているみたいだしな。きっと役には立つだろう」
パラントロプス・ロブストスは棍棒の代わりに書籍を手にして、獲物を求めて歩き出した。
- 231 :生まれてこなかった子どもたちへ ◆sOMmvl0ujo:2013/05/01(水) 18:25:03 ID:vjwJ2fDE0
-
「……ふう。物騒な考えのいきものもやっぱりいるんだなあ」
パラントロプスの若者が立ち去ってからしばらく後、本棚の影から現れたのは一匹の小さな恐竜だった。
あちこち歩き回っているうちに偶然ここに迷い込んだのだが、幸いパラントロプスは彼女の存在には気付かなかったらしい。
「でも、この本ってものが役に立つのは確かに一理あるわね。私も一応持っていこうかしら。
うーん、どれがいいかなあ……」
パラントロプスが見ていた本棚のあたりを眺めていたら、平積みにされた本の中の一冊が目を惹いた。
それは表紙に恐竜の絵が描かれた小さな本だった。
おそらく、古生物に関する本だろう。他の参加者のことが詳しく載っているかもしれない。
いつまでもここに留まっているのは危険だし、中身を確認するのは後でもいいと、彼女はその一冊を口に加えて運び去っていった。
ちなみにその本のタイトルは日本語で『種の起源』といい、著者の名をチャールズ・ダーウィンといった。
【一日目・黎明】
【ヨーロッパ・ドイツの都市】
【パラントロプス・ロブストゥス】
【状態】健康
【思考】ホモ属は皆殺し
【備考】オス・若者 南アフリカ出身 古生物に関する本を所持
【レエリナサウラ】
【状態】健康
【思考】とりあえず身の安全を確保
【備考】メス・若者 オーストラリア出身 『種の起源』を所持
参加者紹介
【パラントロプス・ロブストス】
新生代第四紀更新世。南アフリカに生息。
おそらくは初期のアウスロラロピテクス属から進化した、ホモ属の傍流に当たる人類。
大きくがっしりした体格と強靭な顎を持ち、頑丈型猿人などとも言われる。
顎や歯からはほぼ完全な植物食性だったことが推定されている。
人類の歴史において、この系統は今から百万年ほど前に途絶することになる。
【レエリナサウラ】
中生代白亜紀前期アルブ期。オーストラリアに生息。
1メートルにも満たない小型の植物食恐竜。
当時のオーストラリアは南極圏にあり、現在ほどではないにしても冬は気温が氷点下にまで下がったとされる。
そのような環境に生きていたことから寒さに強く、また日照量が激減する冬に活動できるように視力がかなり発達していたらしい。
アニメ「恐竜惑星」に登場する恐竜人類の祖先としても有名(実際には白亜紀末を待たずに絶滅しているのだが)。
- 232 :生まれてこなかった子どもたちへ ◆sOMmvl0ujo:2013/05/01(水) 18:29:50 ID:vjwJ2fDE0
- 以上になります。
反則スレスレの物を出してしまいましたが、修正要求などご意見のある方は遠慮無くお聞かせください。
私としては、
「書物の記述内容と、実際の古生物の生態が一致しているという保障は無い」
「全ての参加者の情報が書かれているとも、ロワ内で有用な情報が書かれているとも限らない」
「偶然遭遇した参加者の情報を、参加者以外の生物の記述も多い本の中から短時間で得ることは難しい」
以上のような理由から、いわゆる「詳細名簿」とは異なる物であり、なんとかリレーで扱える範囲では無いかと思います。
- 233 :名無しさん:2013/05/01(水) 20:00:23 ID:Masbl5Ps0
- 投下乙です。相変わらずどれも面白いっ……!
問題の現地調達品ですが、構わないと思いますよ
懸念も分かりますが限定のされ方も理に適っていますし
- 234 :名無しさん:2013/05/01(水) 20:57:31 ID:7uvZKwaU0
- 投下お疲れ様です。
・RUNNER'S HIGH
脚力特化型の捕食者と非捕食者の追いかけっこ。
その運命に抗ったと思いきや、やっぱり弱肉強食でまさに無常…!
・本能の不在
種としての本能に欠ける彼女の個としての本能を問いかける場になったんだなぁ…
銃の発射音を「『殺意』のようなものが込められた音」と例えたのが個人的に印象に残りました
マーシュがロワ内での行動も史実も微妙にロクでもない感じがw
そういえばイグアノドンの親指の爪は昔は頭に生えてると考えられてたっけ…
・生まれてこなかったこどもたちへ
自分達が繁栄することのできなかった地球史を知ってしまったパラントロプス、現地支給品GETで情報アドバンテージが!
一読み手の立場ですが、持ってるのがマーダーですしメリットデメリットの幅が大きいので問題ないと思います。
むしろwktkします。一方レエリナサウラが入手した本がー!
- 235 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/05/01(水) 23:53:44 ID:XmG2gfKI0
- ご意見、ご感想ありがとうございます。
大丈夫では無いかという意見をいただけたので、このまま進めたいと思います。
カリコテリウム、ランベオサウルス予約します。
- 236 :名無しさん:2013/05/02(木) 00:20:45 ID:bdEEeqo20
- 投下お疲れ様です。
・RUNNER'S HIGH
脚力特化型の捕食者と非捕食者の追いかけっこ。
その運命に抗ったと思いきや、やっぱり弱肉強食でまさに無常…!
・本能の不在
種としての本能に欠ける彼女の個としての本能を問いかける場になったんだなぁ…
銃の発射音を「『殺意』のようなものが込められた音」と例えたのが個人的に印象に残りました
マーシュがロワ内での行動も史実も微妙にロクでもない感じがw
そういえばイグアノドンの親指の爪は昔は頭に生えてると考えられてたっけ…
・生まれてこなかったこどもたちへ
自分達が繁栄することのできなかった地球史を知ってしまったパラントロプス、現地支給品GETで情報アドバンテージが!
一読み手の立場ですが、持ってるのがマーダーですしメリットデメリットの幅が大きいので問題ないと思います。
むしろwktkします。一方レエリナサウラが入手した本がー!
- 237 :名無しさん:2013/05/02(木) 00:21:44 ID:bdEEeqo20
- ブラウザバックしてしまい二度書きこんでしまいました。すみません。
予約分も楽しみにしております
- 238 : ◆n4C8df9rq6:2013/05/02(木) 03:09:38 ID:4GpCoVrM0
- 投下乙です!
本で自分達の運命を知り、種の繁栄の為に殺し合いに乗ったパラントロプス…
彼は一体どのような道を辿るのだろうか
しかしレエリナサウラ、種の起原を入手するとは…w
そしてアマルガサウルス、ジャイアントペンギンで予約致します
- 239 : ◆n4C8df9rq6:2013/05/02(木) 13:49:19 ID:4GpCoVrM0
- 短めですが、投下致します。
- 240 :Hello,New World ◆n4C8df9rq6:2013/05/02(木) 13:51:03 ID:4GpCoVrM0
-
「―――ねえ、おばあさん」
――黎明の海は穏やかに流れている。
断崖絶壁の海岸に存在するのは、二つの影。
広大な海を眺めながら、小さい影は大きな影に語りかけている。
「大きな影」。それは大きな帆のような突起が背中に存在する小型の竜脚類(とはいえ、全長にして12mだが)。
「小さな影」。黒色をした身体の翼のない鳥類、現代でいう「ペンギン」。しかしそのサイズは現代のものと比べれば一回り大きい。
この殺し合いの地に呼び寄せられて、たまたま遭遇した二匹だ。
ペンギン―――現代では絶滅してしまった種族「ジャイアントペンギン」は、隣で座り込む竜脚類に話かけていた。
「…何だい」
「おばあさん、貴女…これからどうするつもりなの?アタシはこんな殺し合いはしたくない…。
…でも、生きたい。こんな所でおちおち死にたくはない」
「そりゃあ当然だろうよ。生きたいと思うのは、生物として正しい」
「…単に生きたいってだけじゃないわよ!私には仲間がいる。住処を守っている仲間が!
あのクソッタレのクジラ共との争いの真っ最中なのよ…だから死ぬわけにはいかない!」
若いメスのジャイアントペンギンは老婆の竜脚類「アマルガサウルス」にそう語る。
彼女らの種族は、南極に生息をしていた鳥類だった。
体格にして140~160cm程。現代のコウテイペンギンを上回る、大柄な体格。
しかしそれが種族に取っての仇となった。多少なりとも大柄な体格は、生存競争の対象を厄介な相手へと変えてしまった。
そう、同時期に海洋に進出してきた――巨大な海の帝王・クジラである。
彼女――ジャイアントペンギンの一族は、クジラとの生存競争の真っ最中だったのだ。
歴史を辿れば、最終的にはその競争に敗れ彼女らは絶滅へと追い込まれる。
事実、彼女らは少しずつ衰退の道を辿っている。それは彼女にも理解は出来ていた。
しかし、だからといっておちおち負けてはいられなかった。こんな所で死ぬわけにはいかなかった。
とにかく生きて、後世にも自分達ジャイアントペンギンの血筋を残したかった。
未来でも繁栄を続けていたかった。だから、仲間と共に戦わなくちゃいけない。
あのクジラ達と種族の未来をかけた競争をする為に、こんな所で死ぬわけにはいかない。
ワケも解らない殺し合いの場所で死にたくはない。
せめて仲間と共に、生きたい。
- 241 :Hello,New World ◆n4C8df9rq6:2013/05/02(木) 13:51:45 ID:4GpCoVrM0
- ジャイアントペンギンの若者は、確かな思いを抱えていた。
南極の仲間と共にこれからも生きたい。だけどこんな無意味な殺し合いはしたくない。
クジラとの闘いは「種族の競争」だった。あの忌々しいクジラ共だって、自分の種族の為に戦っている。
私も、その仲間達も、ジャイアントペンギンという一族の為に戦っているんだ。
でもこれは…種族の為でも、捕食の為でもない。こんな闘いに何の意味があるというのか。
殺し合いなんて、絶対にやるつもりはない。
「………」
老婆のアマルガサウルスは、若者のジャイアントペンギンの顔を横目でじっと見ていた。
急にこちらの顔を覗き込まれて、当然の如く若者は少しだけ驚く。
――暫くして、アマルガサウルスは。クク…と年老いた口元に笑みを浮かべていた。
「生きのいい若者だ。だが…仲間の為、種族の為、ね。
私はとっくに年老いている。もうそんな自分達への興味なんてないさ…」
座り込んでいたアマルガサウルスはゆっくりと立ち上がり、海岸から背を向ける。
彼女の言葉を聞いて、ジャイアントペンギンは慌てた様子で声をかける…
「きょ、興味もないって…じゃあ、おばあさんはどうするのさ!?」
「…種族の為に尽くす生など、私はとっくに全うし尽くしたってワケだ。
だが、ただ死を待つのもつまらない…老い先短ェ命だが、せめてこの世界をこの目で見てみたい…
見たか、若いの?あの最初の場でいた『見たこともない連中』の数々を。
私からすりゃあ、お前さんも『その内の一人』ってワケだがね」
口元に笑みを浮かべ、帆を揺らしながら恐竜の老婆は楽しげに話す。
その瞳はまるで何か真新しいものに期待する子供のよう。
年老いた表情とは裏腹に、若々しい好奇心が彼女を支配していたのだ。
若者はそんな老婆の表情を、目を丸くして意外そうに見ていた。
- 242 :Hello,New World ◆n4C8df9rq6:2013/05/02(木) 13:52:13 ID:4GpCoVrM0
-
「…確かに、私からしても…地上でおばあさんみたいにデカいのを見るのは始めてだけど」
「それが興味深いってワケだよ。『この世界』には、私でも見たことのない連中が沢山いるってことだ。
年老いて、群れを外れからは…時の流れと共にゆるりと朽ち果てるだけ…それで終わるこの身かと思っていた。
…だが、面白ェ。最後の最後にこんな機会を得られるとはね…夢みたいだ」
そのままアマルガサウルスは、ジャイアントペンギンの返答をも聞かずに歩き始めた。
え、と一瞬惚けた後にジャイアントペンギンは慌ててそれを追いかける…
「ちょ、おばあさん!?どこ行くのよ!?」
「あン?…知らねえさ。気の向くままに」
「い、いやいやいやどうすんのよ!ヤバい獣にでも出くわしたら!」
「…何とかなるだろ。ブチのめしてやるだけよ」
「き、危険でしょ!おばあさんなんだから無理しちゃ駄目よ!」
「年寄りを労るのはいいが、余計なお節介って奴さ。…若いの。まぁ、着いてきなよ」
「だ、だからー!」
微妙に噛み合ない会話をしつつ、アマルガサウルスは構わず前へ進んで行く。
…あのおばあさん、思いの外適当に行動するタイプだなぁ。
ジャイアントペンギンはすぐにそう思った。一瞬「やっぱり放っておこうかな」とか思ってしまった…
あくまで大切なのは自分が生きること。どうせあのおばあさんは老い先短いんだし…僅かでもそんな思考がよぎっていた。
…でも、どうしても心配になってしまう。何だかんだ言って、おばあさん一匹無視して何とも思わないほど酷い性格じゃあない。
そもそも、好奇心旺盛でどうもあの危なっかしいおばあさんは放っておけない。
とにかく、追いかけないと…やれやれだなぁ…
未知の存在への期待の笑みを浮かべるアマルガサウルスを、ジャイアントペンギンは慌てながら追いかけることにしたのだ…
- 243 :Hello,New World ◆n4C8df9rq6:2013/05/02(木) 13:53:22 ID:4GpCoVrM0
- 【一日目・黎明】
【アジア南部・海岸】
【アマルガサウルス】
【状態】健康
【思考】興味の赴くままに動く。襲ってくるなら容赦しない。
【備考】メス・老年 南アメリカ出身 かつては群れで行動していたが、年老いてからは一人で生きている
【ジャイアントペンギン】
【状態】健康
【思考】殺し合いには反対。生きたい。とりあえずアマルガサウルスと一緒に行動する。
【備考】メス・若者 南極出身 クジラとの生存競争の真っ最中
【参加者紹介】
【アマルガサウルス】
中生代白亜紀前期に南米に生息していた竜脚類の恐竜。
全長12mと他の竜脚類と比べると体格は小柄である。
最大の特徴として、首から背中にかけて生えている帆のような突起が存在する。
この帆はディスプレイや体温調節、あるいは武器や警告に使用されたなど様々な解釈がなされている。
【ジャイアントペンギン】
3700~4500万年前に生息していたとされるペンギン。
全長160cm前後、体重は80kgとペンギンとしてはかなり大柄な種だった。
同時期に海洋に進出してきたクジラが生存競争の対象となってしまい、最終的には競争に敗れ絶滅したと言われている。
- 244 : ◆n4C8df9rq6:2013/05/02(木) 13:53:43 ID:4GpCoVrM0
- 投下終了です。
- 245 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/05/02(木) 18:03:11 ID:3Fxo.x3k0
- 投下お疲れ様です!!
孤立時代の南米出身者にとって、他地域で進化した生物は同時代のものであってもかなり奇異に見えるのでしょうね。
同時に、南米出身者には他種との生存競争というのもピンとこないのかもしれません。
今後が期待できそうなコンビです。
- 246 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/05/09(木) 01:06:06 ID:Lnht4o9I0
- すいません、延長いたします。
ご連絡が遅れまして申し訳ありません。
- 247 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/05/15(水) 23:33:31 ID:/2sDG6UU0
- 申し訳ありません。
文献調査に予想以上に時間がかかってしまい、投下期限に間に合わせることができませんでした。
もちろん予約した時点でプロットは浮かんでいたのですが、一部の点について私の中で結論が出せませんでした。
今回の予約は解消させていただきたく思います。
大変申し訳ありませんでした。
- 248 :名無しさん:2013/05/16(木) 01:40:14 ID:RBr2QC2E0
- 了解しました
プロットがうまくまとまらないことや納得いかない時は誰にでもあるかと
無理にではなく自然に書けるようなものが一番かとー
- 249 :名無しさん:2013/05/16(木) 01:40:36 ID:RBr2QC2E0
- 了解しました
プロットがうまくまとまらないことや納得いかない時は誰にでもあるかと
無理にではなく自然に書けるようなものが一番かとー
- 250 : ◆sOMmvl0ujo:2013/06/04(火) 22:59:20 ID:vgD2tDx20
- オステオドントルニスで予約します。
ここの所古生物や古人類関係のニュースが色々続きましたね。
氷に閉じ込められていた氷河期のコケが再生したというニュースには、よくSFなどに出てくる氷漬けの美少女を連想してドキドキしました。
- 251 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/06/08(土) 18:41:42 ID:MmLaQGiM0
- オステオドントルニス、投下します。
- 252 :鳥の詩 ◆sOMmvl0ujo:2013/06/08(土) 18:42:35 ID:MmLaQGiM0
- 時刻は間もなく、黎明から早朝へと移行しようとしていた。
徐々に明るみ始めた空に、そこだけ墨を垂らしたような大きな影が浮かんでいる。
(この陸地の並びは僅かだが見覚えがある……大地全体を小さくしたってのはやはりウソじゃなさそうだな)
影の主はオステオドントルニス。空を飛べる鳥の中では史上最大級のものの一つである。
季節ごとに大陸から大陸への渡りを経験している彼にとっては、眼下に広がる世界は確かに自分の知っている世界ではあった。
(だが、大地だろうが何だろうが、こんなことをしてただで済むわけねえだろうが!!
俺には妻も子もいる。生きて帰るしかねえんだ)
彼はただ当ても無く飛び回っていたわけでは無かった。ある条件にあった陸地を探していたのだ。
なるべく標高が高く、四方を良く見渡せ、かつどこからでも到達しやすい場所。
出来るだけ多くの動物を集めたいのだから、そのような場所のほうがいいのだ。
ここに連れてこられてからというもの、彼はずっと思案しながら飛び続けていた。
他の生き物を全員殺すなど、自分の力ではまず無理だ。
いやそもそもおそらく、ここにいるどんな動物にとってもそれは至難の業。
間違いなく自分が生き残れるという確信を持てる生き物などそうはいないに違いない。
何よりも、生き残れるのが「一匹だけ」というのが曲者だ。
これが何匹かで協力し合ってもいいというルールなら、また話は違ってくるだろう。
あそこにはひたすらに巨大な者や、見るからに殺傷能力の高そうなハンターもいた。
そのような生き物と力を合わせられるなら、まだ戦いに参入しようとも思えるのだが……
そこまで考えた時、彼に一つの名案が浮かんだ。
やがて彼は、自分の目的に合致した場所を発見した。
行く手に見えてきた天を突くような山々。雪も無く、その最高峰の山頂まで行くのは、翼の無い生き物にとってもそう難しそうでは無い。
山頂に降り立ってみると、広さも申し分なかった。
その山が、ここに集められた動物の中の一種、人類という者にとっては特別な場所であるということなどは露知らず、彼はそこを根城にすることを決めた。
そうと決まったら、おちおちしてはいられない。
彼は再び翼を広げて飛び立つと、その山頂を中心として旋廻を始めた。
その翼の描く円は徐々に大きくなっていく。何者かと見上げた者の耳に、その鳥の発する大きな声が聞こえてきた。
「おいみんな、ちょっと聞いてくれ!! 俺の名前はオステオドントルニス。
みんな、本当に自分だけが生き残れると思っているのか? 他の生き物の誰でもなく、自分だけが残れるなんて自信が本当にあるのか?
第一よく考えてみれば、俺たちがあんな命令に従う云われなんか何にも無いじゃないか!!
ここには沢山の生き物がいる。全員で力を合わせれば、大地だか地球だか知らんが、なんとか出来るかもしれないじゃないか。
だから殺し合いなんかすることは無え!! もしそんなことをしてる奴がいたら今すぐやめてくれ!!
俺たちは力を合わせなきゃいけないんだ。もし俺に賛成するなら、俺のいる所に集まってくれ」
そして、拠点に選んだ山の位置を説明し、すぐにでも赴くようにと頼む。
このようなことを、あちこちで繰り返しながら飛び続けた。
もう何回同じことを叫んだかわからなかったが、ついに声が枯れてきた。
(とりあえず一端戻るか。もうそろそろ、誰かがやってくる頃合かもしれんしな)
彼は大きく方向転換をすると、再びあの山の上へと向かって飛んでいった。
まだ姿を現したばかりの朝日が、その姿をうっすらと照らしていた。
- 253 :鳥の詩 ◆sOMmvl0ujo:2013/06/08(土) 18:42:58 ID:MmLaQGiM0
- 【一日目・黎明】
【アジア・トルコ(アララト山山頂付近)】
【オステオドントルニス】
【状態】健康
【思考】全員で力を合わせて脱出する 取り合えずアララト山を拠点にして仲間を集める
【備考】オス・中年 北米出身
※ アララト山を中心としてアフリカ北部・ヨーロッパ南部・ロシア南部・中央アジア・インドにいた参加者は、オステオドントルニスの声が聞こえた可能性があります。
参加者紹介
【オステオドントルニス】
新生代新第三紀中新世。北米に生息。
翼開長は最大で6メートルと、空を飛べる鳥の中では史上最大級のものの一つ(これと並ぶのがアルゲンダビス及びテラトルニス)。
生態はアホウドリに近かったとされるが、系統的にはアホウドリではなくペリカンの仲間。
嘴には始祖鳥のような歯が並んでいるが、特に原始的な鳥というわけでは無い。
- 254 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/06/08(土) 18:43:15 ID:MmLaQGiM0
- 以上になります。
- 255 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/06/08(土) 18:44:47 ID:MmLaQGiM0
- 途中送信してしましました、すみません。
続いてデスマトスクス、オルニメガロニクスを予約します。
- 256 :名無しさん:2013/06/08(土) 19:06:56 ID:YKxJSn4MO
- 投下乙です。
パロロワでは大抵死亡フラグだが、どうなるだろうか。
- 257 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/06/15(土) 21:58:58 ID:drbJVIqI0
- 度々すみませんが、延長させてください。
- 258 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/06/21(金) 17:06:42 ID:a1YmRsTc0
- デスマトスクス、オルニメガロニクス投下します
- 259 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/06/21(金) 17:07:05 ID:a1YmRsTc0
- なんて広い異界なんだろう、と彼は思った。
広大な砂漠の真ん中に立ち尽くすのは、体中を大げさなほどの装甲で覆った四足の爬虫類。
一見すると白亜紀の恐竜アンキロサウルスの仲間と良く似ているが、系統的にはほとんど関係が無い。
彼らデスマトスクスは恐竜ですらなく、生きた時代は恐竜時代の黎明期に当たる三畳紀後期。アンキロサウルスと共通する特徴は、植物食であるという程度しか無い。
故郷である、木々が豊かに茂る森林とはまるで違う景色に、彼はしばし見とれていた。
彼らアエトサウルス類は、雨の多い森でしか繁栄できない爬虫類である。
そして彼らが生きた時代は、地球が急速に乾燥化し、砂漠が広がっていった時代だった。
彼の故郷の森も、広大な砂地に侵食されてわずかずつながらも小さくなり、遂にはいくつかの小さなオアシスに分断された。
別のオアシスに行くには砂漠を横切らなければならない。が、高温にも乾燥にも弱い彼らにとっては、砂漠は命をかけなければ足を踏み出すことのできない異界だった。
必然、同種の他の個体との交流は激減し、やがてデスマトスクスという種は絶滅することになる。
地球は高温乾燥に適応した、砂漠を自由に移動できる爬虫類、恐竜のものとなるのである。
そんな、いつもいつも行く手を阻んでいた異界の真ん中に彼はいた。
それもどちらの方角を向いても、そこに広がるのは広大な異界。
故郷の森とはあまりにも違う景色。
だが、とふと考える。
自分の故郷にしたって、おそらくあと少しで砂の海に飲まれ、この異界の一部となるだろう。
その時、かつて自分の故郷のあった場所は、自分にとって故郷でありながら異界になるのだろうか。
あるいは、今自分が連れてこられたこの大地はどうだ。
見覚えの無い景色、見覚えの無い生き物、それでもやはりこの星は自分の故郷に違いは無いのだろうか。
「この場所では、水を飲まなくても渇くことは無い」という説明の通り、砂漠の上をいつまで歩き続けても喉が痛むことは無かった。
生まれて初めて見る景色に、思わず何度も目を奪われそうになる。
そうしているうちに、初めて他の生き物と出会った。
それは全く初めて見る生き物だった。足は肉食の爬虫類によく似ている。
しかし、足以外の体表を覆っている柔らかいものはなんだ。
平べったい顔から、そこだけ突き出しているやたら硬そうな口は何だ。
肉食なのか植物食なのか、それすらもわからない存在に警戒心が沸きあがってきたが、向こうのほうから声をかけてきた。
「なあ……俺と、かけっこ勝負をしないか?」
- 260 :お前と勝負がしたい ◆sOMmvl0ujo:2013/06/21(金) 17:07:40 ID:a1YmRsTc0
- 「……今、何と言いましたかな?」
デスマトスクスは慎重に聞き返す。
「だから、俺とかけっこ勝負をしないか? ここから、あそこの岩のところまで」
突如デスマトスクスの前に現れた鳥、オルニメガロニクスは、首を回してゴール地点を示した。
頭の位置はデスマトスクスより随分と高いが、体の大きさ自体は遥かに小さいようだ。
デスマトスクスは、その表情から何らかの意図を読み取ろうとしたが、不可能に近いようだった。
「……まあ、かけっこくらいならいくらでもお相手しましょう」
「ありがたい。では位置について―――」
オルニメガロニクスの声を合図に、二匹はいっせいに走り出した。
その直後、デスマトスクスは目を見張った。
同時にスタートしたオルニメガロニクスは、あっという間にデスマトスクスを引き離し、置き去りにしたままゴールしてしまった。
これほど早く走る動物を見たのは、初めてのことだった。
(ああ、ここは―――やはり、私にとっては異界だったか)
知らない景色の中を、知らない動物の後姿を見ながら、デスマトスクスは走り抜いた。
ゴール地点の岩に辿り着いた時には息も絶え絶えだった。
それでもなんとか顔を上げ、とうにゴールしていたオルニメガロニクスに
「いやあ、お早いですねえ」
とでも声をかけようとした、のだが。
デスマトスクスが言葉を発するよりも前に、オルニメガロニクスの足の鍵爪がその喉を真一文字に引き裂いた。
(―――え?)
その体は砂の上に倒れ、二度と起き上がらなかった。
「俺は……自分より、速いものと出会いたい」
オルニメガロニクスはただ一言そういい残して、あまりにも巨大な異界の中を再び歩き始めた。
【一日目・黎明】
【アフリカ大陸・サハラ砂漠】
【オルニメガロニクス】
【状態】健康
【思考】出会う参加者に片っ端からかけっこをしかけ、自分より遅い者は殺す
【備考】オス・若者 キューバ出身
【デスマトスクス 死亡確認】
【備考】オス・壮年 北米出身
参加者紹介
【オルニメガロニクス】
新生代第四期更新世。キューバから発見。
絶滅した飛べないフクロウの一種。
飛べない代わりに体高は一メートルもあり、強靭な後肢で地上を走り回っていたと思われる。
【デスマトスクス】
中生代三畳紀後期。北米に生息。
背面にかなり発達した装甲を持つ爬虫類で、アンキロサウルス類の先駆ともいえる。
特に肩には左右にかなり大きなスパイクが伸びていた。
腹面に装甲が無い姿で復元されることが多いが、近縁種には見られるため、あったとする意見もある。
- 261 :お前と勝負がしたい ◆sOMmvl0ujo:2013/06/21(金) 17:07:54 ID:a1YmRsTc0
- 以上になります。
- 262 :名無しさん:2013/07/19(金) 08:30:26 ID:lIz1qIwQ0
- まだ出てない古生物まとめってあります?
- 263 :名無しさん:2013/07/19(金) 12:55:49 ID:HPepViSk0
- 聞いた後から最新のまとめに気づいた。
更新してみました。
未予約、未登場です
【節足動物】
○オパビニア/○ユーリプテルス/○イソテルス・レックス/○アースロプレウラ
【軟体動物】
○ライオンノセラス
【魚類】
○ダンクレオステウス
【両生類】
○エルギネルペトン
【爬虫類】
○イカロサウルス/○メイオラニア
【海竜類】
全員登場済み
【翼竜】
全員登場済み
【肉食恐竜】
全員登場済み
【植物食恐竜】
○ブラキオサウルス/○ランベオサウルス/○ペゴマスタックス
【盤竜類*単弓類】
○ディメトロドン/○ゴルゴノプス
【哺乳類】
○ブロントテリウム/○アンドリューサルクス/○バシロサウルス/○カリコテリウム
【鳥類】
○ティタニス/○テラトルニス
【絶滅人類】
全員登場・予約済み
【古生物学者】
○ギデオン・マンテル/○チャールズ・ダーウィン/○エドワード・コープ
【瑞浪市化石博物館】
全員登場済み
未登場・未予約は残り23/100です。
- 264 :名無しさん:2013/07/19(金) 21:03:46 ID:d3Yq3eTIO
- まだ結構いるんだな。
- 265 : ◆m6yWKU4xdo:2013/07/19(金) 22:09:04 ID:9naigbMg0
- ライオンノセラス、 ブロントテリウム予約します。
トリップ忘れた……
- 266 : ◆wdsIwtMsVI:2013/07/22(月) 23:49:41 ID:6u9w0bhE0
- 投下します
- 267 : ◆m6yWKU4xdo:2013/07/22(月) 23:49:57 ID:6u9w0bhE0
- 一応証明。
- 268 :うわー、悪夢だー ◆wdsIwtMsVI:2013/07/22(月) 23:52:24 ID:6u9w0bhE0
- ぶつん、とブラックアウトした意識に流れ込んでくるのは、二つの映像だった。
見たこともない景色、感じたこともない空気、そして何より"地面に足をつけて立っている"ということ。
片方の自分は、円卓の十二騎士の一人であるアーサー王の顔を正面から掴んで、壁にすり下ろしていた。
片方の自分は、ヘソ出しの西○秀樹に翻弄されるがまま、戦車を突き抜けて拳を叩き込んでいた。
何なのかねこれは、と溜息をついたときである。
- 269 :うわー、悪夢だー ◆wdsIwtMsVI:2013/07/22(月) 23:52:34 ID:6u9w0bhE0
-
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く:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,::-'ソ^ヾ´}/ }/ }:::::}6.}:::::::::::ミ
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厶:::::::::::{∧.Y{/==ォ‐{/‐‐.ァ}三三三〈 `゙'ー--‐'丿 三レ:::::::::ミミヽ、 私はパロロワの精だ。
ソ八/{( |三 〈`゙'ー-‐''丿σ 三∂`゙'ー--‐‐'' 三|:::::::ミ ヽ、
/⌒〉 /ヽ|三 ゙'ー--‐'' .三 三|:::::::ミ \
/ } / 彡 |三 <_三_> 三|∧}/ ヽ \
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丿 {_/ / / ∨ヽ∧三 く ー=ニニ二二二ニニ-''"冫 三/::::::| \ \
{ ./ / /⌒i / }/∧三 三三 三/:::::::::| \ \
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..く / __ ノ ┌'` 、 // |:::::::::~""''' ‐------‐ ''' "::::::::::::::::::::::::::| \ 丶
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- 270 :うわー、悪夢だー ◆wdsIwtMsVI:2013/07/22(月) 23:53:08 ID:6u9w0bhE0
-
ツチノコくらい胡散臭さマックスな、奇妙な生き物が目の前に現れる。
何だろう、自分だけ殺し合いではない他の次元に来てしまったとでも言うのだろうか。
いやいや、そんな訳はないだろう、しかし、捨てきるわけにも……。
「セラス」
考え込んでいると、男の声に呼び止められる。
と、いうか二足歩行の生命体さんが自分に何の用なんだろうか。
つーか、ここどこ?
「私と違って久々のパロロワだ、存分に楽しむが良い」
は? と思わず声を上げてしまう。
いや、パロロワも何も、初対面だと思うんですけど。
それとも何か? ど○ぶつの森で出演前科持ちと勘違いされているのかな?
「……あのー」
おそるおそる目の前の生き物に話しかけてみる。
黒くて長い糸がすらっと延びているその生き物は、すっごく自分のことを威圧してきていた。
「ん? お前はセラスではないのか?」
とりあえず問いかけには思い切り肯定していく。
というか、セラスって何なんだよーっていう感じなんですが。
「まあ、良いだろう……私がこうして出てくるというのは、何かしら縁があると言うことなのだからな」
あれ、勝手に納得されてる。
「さあ、行け! HURRY! HURRY! HURRY!」
えっ、あの、えっ。
えーーーーーー!?
「ううん……」
目が覚めた。
なんとも気色の悪い夢だと思う。
まあ、夢のことを気にしていても仕方ないだろう。
だって、今目の前には。
「おいィ? 俺は殺しはしたくないんだが?」
夢の中に出てきたヤツよりうっさん臭そうなヤツが、ものすごいキメ顔で立っていたから。
……あたし、どうなるんだろ。
【一日目・黎明】
【日本・アキバのあたり】
【ライオンノセラス】
【状態】健康
【思考】アッハイ
【備考】メス・若者 ヨーロッパ出身
【ブロントテリウム】
【状態】健康
【思考】おいィ?
【備考】謙虚なオスのお兄さんである事は確定的に明らか 北米出身
- 271 : ◆wdsIwtMsVI:2013/07/22(月) 23:54:16 ID:6u9w0bhE0
- 投下終了です。
ブラキオサウルスとティタニス予約します。
- 272 :名無しさん:2013/07/23(火) 12:13:28 ID:rcxzIUxI0
- 夢オチとはいえ、真面目にコレはどうなんだ……?
- 273 : ◆wdsIwtMsVI:2013/07/23(火) 12:50:41 ID:gn0ZGMgg0
- すんません、見返して引っかかるところ出てきたんで破棄させていただきます。
申し訳ないです。
- 274 : ◆wdsIwtMsVI:2013/07/23(火) 12:52:18 ID:gn0ZGMgg0
- あ、予約も破棄でお願いします。
重ね重ね申し訳ない。
- 275 : ◆sOMmvl0ujo:2013/07/23(火) 15:43:54 ID:xyJjqIEs0
- 投下お疲れ様です。
夢オチですし、私としては面白かったのですが、作者ご本人が破棄を宣言された以上は従いたいと思います。
どうかこれからも、いつでも書きにいらしてください。
>>263
未登場まとめ、ありがとうございます。
オパビニア、アンドリューサルクスで予約します。
- 276 : ◆JUJ3JcJgbI:2013/07/25(木) 12:22:55 ID:0a6agHfA0
- お久しぶりです。
ダンクレオステウスとティタニス、予約させていただきますね。
- 277 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/07/31(水) 15:18:44 ID:WDNEl7fE0
- すみませんが延長します。
- 278 : ◆JUJ3JcJgbI:2013/07/31(水) 22:30:40 ID:X67C/9iA0
- それでは投下しますねー
- 279 :THE LAST HUNTERS ◆JUJ3JcJgbI:2013/07/31(水) 22:32:51 ID:X67C/9iA0
-
かつて、この地上には『恐鳥類』と呼ばれる鳥達がいた。
その者達は鳥でありながら翼を退化させ、空を捨てた。
代わりに彼らは地上で君臨するために獲得した、その強靭な両脚で大地を疾駆した。
そして遠い祖先である肉食恐竜が牙でそうしたように、斧のような嘴で獲物を仕留めたのだ。
彼ら恐鳥が地上の生き物達を震え上がらせた時代は、確かに存在した。
しかし、進化とは不可逆である。
どんなに狩りに適応しようとも、その翼は獲物を切り裂く前足には戻らない。
どんなに戦いの中で洗練されようとも、その嘴に再び祖先のような牙が並ぶことはない。
ましてや一度捨てた空を、もう一度取り戻すことなどどうして可能だろうか。
皮肉にも彼らが辿った進化の道が、そのまま哺乳類へのディスアドバンテージへと反転していった。
彼ら恐鳥類は、彼らが鳥であるがゆえに、避けられぬ滅びの道をひた走るしかなかったのだ。
そして"ティタニス"は、風前の灯火となった恐鳥類、その最後の一族であった。
▽ ▽ ▽
「…………たまんねぇな、こりゃあ」
自嘲めいた言葉を吐いて、若いティタニスはその凶器のような嘴の端からあぶくを吐いた。
考えうる限り最悪の状況だった。
現在地は何処とも知れぬ海の底。いくら息ができるとはいえ、鍛え抜かれた健脚も生かしようがない場所。
生まれてこのかた泳ぎなんてしたこともないし、自慢の嘴を振るうことさえこの抵抗では難しい。
そしてなにより悪いのは……そんな環境も、『敵』にとっては屁でもなさそうなことだ。
「なにボサッと見てやがんだよ、あぁ!? かかって来いよ、このティタニス様が返り討ちにしてやらぁ!」
威勢よく放ったその言葉の通りティタニスはまだ諦めるつもりはなかったが、自分の圧倒的不利は直感的に悟っていた。
もっとも、ティタニスでなくとも、相手の威容を見て容易に勝てると踏める者は少なかっただろうが。
ティタニスにも、それが魚類と呼ばれる生物であることは分かっていた。
しかし、あくまで陸生である彼が知るあらゆる魚とも、それは違っていた。
ただティタニスの捕食生物としての勘が告げていた。奴も、同種の存在だと。
すなわち、生まれながらのハンターなのだと。
- 280 :THE LAST HUNTERS ◆JUJ3JcJgbI:2013/07/31(水) 22:33:47 ID:X67C/9iA0
-
▽ ▽ ▽
かつて、この海には『板皮類』と呼ばれる魚達がいた。
彼らはこの地球上で誰よりも早く、骨格を持った顎を獲得した生物である。
開閉することのできる口。それは文字通り、生物史を一変させる進化だったのだ。
そして彼らを象徴するのは、頭部と前半身を覆う骨の装甲である。
顎という矛と、骨盤という盾。その両方を備えた彼らは、間違いなく革命的存在だった。
そして"ダンクレオステウス"は、板皮類の中でも最大最強と目される捕食者であった。
まさに鎧兜と呼ぶにふさわしい装甲と、ナイフかカミソリのような鋭い顎骨。
これほどの攻撃力と防御力を兼ね備えた存在など、当時の海には存在しない。
ディニクティス(恐ろしい魚)という科名そのものの、恐るべきハンター。それが彼らだった。
しかし、滅びとは不可避である。
今から3億7400万年前、古生代デボン紀後期の地球を襲った大絶滅。
原因は気候の急激な変化とも、あるいは隕石の落下とも言われるが真相は未だ不明。
ただひとつ確かなのは、この星の生物種の8割が、この時期を境に姿を消したことだ。
そして、繁栄を極めたはずの彼ら板皮類も例外ではなかった。
大海の覇者として君臨したはずのダンクレオステウスもまた、地球によって定められた滅びを待つばかりだった。
▽ ▽ ▽
ダンクレオステウスは、目の前で吠える二本足の生物をただ睥睨した。
おそらくは陸上の、それも異なる時代の狩人なのだろう。
しかしいかなる生物だろうと所詮は陸生、このフィールドで自分に勝てるわけがない。
なのにダンクレオステウスの心中には、微塵の戦意も湧いて来はしなかった。
「……勝ってどうする。生き残ってどうなる」
脳裏に彼の故郷の海がちらつく。激変する環境により、彼らの種族にとっては死の海と化した故郷が。
仮に最後の一体となり、元の時代に戻って、それでどうなるというのだろうか。
この殺し合いの果ての理不尽な死も、漫然と待つばかりの理不尽な死も、さして変わらないのではないか。
そう考えてしまったが最後、ダンクレオステウスはその顎で敵を食いちぎろうという気にはなれなかったのだ。
「しょせん我が種族が待つのは滅びへの道……生き残ったところでそれは変わらん。
……運が良かったな。このダンクレオステウス、本来ならば狩れる獲物を逃す趣味はない」
その頑強な前半身とは不釣り合いに未発達なヒレを翻し、ダンクレオステウスはその巨体を反転させた。
あの二本足が後ろから襲い掛かってくるかとも思ったが、そうなればそれまでだ。
しかし、半ば観念に似た境地に至りつつあった彼の動きを止めたのは、そいつの怒りに震える声だった。
「………………ざっけんな」
振り返る。
そいつは、全身から爆発しそうなまでの殺気を放ちながら、こっちを突き刺すような視線で睨んでいた。
「……なんだと?」
そして、思わず問い返したダンクレオステウスに、そいつは……ティタニスは、漲る怒りを叩きつけたのだ。
- 281 :THE LAST HUNTERS ◆JUJ3JcJgbI:2013/07/31(水) 22:35:13 ID:X67C/9iA0
-
▽ ▽ ▽
「ふざけんなって言ったんだよこの魚野郎! なぁにがどうせ滅びるから関係ないだ!?
テメエのその牙はなんのためだ! その鎧はなんのためだ! 戦うためにあるんじゃねえのか!」
それはきっと、ティタニスにとっては同族嫌悪だった。
どうしようもない滅び。自分自身の力ではどうしようも出来ない未来。まるで同じだ。
だから全てを諦めようとするダンクレオステウスの姿はまるでもう一人の自分で、とても見てはいられない。
「……貴様には分かるまい。これだけの力を持ちながら、ただ座してその時を待つしかない気持ちが」
「分かるさ! 分かるから言ってんだよ、この頭でっかちの石頭魚が!」
僅かにダンクレオステウスの巨体がたじろぐ。しかしティタニスにはそんなこと気にしてなどなかった。
いずれ滅びる、その運命は変えられない。ああ、そうだとも。そんなことは分かっている。
だからといって今までは認められずにいた事実を、ティタニスは絞り出すように口にした。
「自分で言ったらオシマイだがよ……オレ達の種族は、もうどうにもならねえ。四つ足どもに駆逐される未来さ。
新天地を求めて『北の大陸』へ渡ってきたらしいが、どのみち先は無さそうだ。俺達に待つのは、緩やかな滅びだけみてぇだな」
今度こそダンクレオステウスは目に見えて動揺した。
「……それではまるで、俺達と同じじゃないか」
呻くように呟く巨大な魚類の言葉を、しかしティタニスは憤りで返す。
「ああそうだよ。『オレ達とアンタら』は似たもん同士だ。時代に呑まれたお先真っ暗同士ってわけだ。
だがな……『オレとアンタ』は違うぜ! 俺はお前とは違う! 俺は、俺自身が生きることを諦めてねえ!」
ティタニスは彼の翼を、正確には翼であったものを、ダンクレオステウスの前に翳した。
他の鳥達よりも柔軟な関節を持ち、辛うじて前肢のようにつかえるその翼は、それでも貧弱で貧相なものには違いなかった。
しかしティタニスには、自分たちの種が貧弱な翼で辛うじて適応を見せたそのことが、誇りですらあったのだ。
「こんなつまんねー翼でもよ、手負いの獲物を押さえつけることぐらいは出来る!
四つ足共みてーな牙も爪もねえ、だがオレにはこのちっぽけな翼が、そして自慢の脚が、嘴がある!
滅びなんざクソ食らえだ! オレは死ぬまで狩人であることをやめねえ! 誰にもそれは止めさせねえ!」
ティタニスは叫んだ。もはや目の前の強敵との戦いなどどうでもよかった。
倒すべきは奴の弱い心……自分自身の中にあるかも知れない恐れ。それ以外の何物でもない。
「アンタだってそうだろ! 狩人として生まれたんだろ! だったら、まだ生き足りないんじゃねえのか!?」
だから叩きつける。心の丈を。奥底から湧き上がる命の叫びを。
- 282 :THE LAST HUNTERS ◆JUJ3JcJgbI:2013/07/31(水) 22:43:22 ID:X67C/9iA0
-
「お、俺は……」
ひどく不恰好で、論理の欠片も見当たらず、知性にすら欠けているようにすら感じるような、そんな叫びだったけれど。
それは、ティタニスの渾身の問い掛けは、ダンクレオステウスの芯を確かに揺らしていた。
今、はじめて巨魚の全身に焦りとも怒りともつかない感情が迸っていた。
それはあるいは、生命力と呼ぶべきものかもしれない。
「俺は、俺は……そうだとも! 俺は我が一族の、いや、俺自身の狩人としての誇りにかけて、まだ死ねん!
ティタニスとか言ったな。礼を言うぞ……例え滅びが待とうとも、俺は、俺が敗者であることを、認められそうにない……!」
嘘のない、心の底からの言葉。それを聞いて、ティタニスは初めてにやりと満足気に笑った。
ティタニス自身にとっても不思議な感覚だが、何故か応えてくれるような気がしていたのだ。
だから、次の台詞はこうだ。自分によく似た奴に投げてやる、次の台詞は。
「そうかい。だったら、オレと行くかい?」
「なんだと?」
ダンクレオステウスの当惑を見て一層愉快そうに、ティタニスは続けた。
「オレも死ねねえ、アンタも死ねねえ。だったら仕方ねえ、それ以外を狩って狩って狩り尽くすしかねえだろ」
「……なるほどな。俺が海の、貴様が陸の獲物を狩る。ここに集められた全生命よりも優れた狩人だと証明するために」
「そうともよ。俺達が真の狩人だってのをここにいる全員、いやあのチキュウとかいうやつにも見せてやろうじゃねえか」
「当然だ。そうでなければ死んでも死にきれん。容易くは死なんがな」
自信漲るダンクレオステウスの様子を見て、ティタニスも我が事のように妙な誇らしさを覚えた。
「それでだ。全ての獲物を狩りつくし、最後に俺達だけになったとして、その時はどうする?」
「最後? そうさな……」
ティタニスは僅かに思案した。
「その時は今度こそはっきりつけようぜ、ダンクレオステウス。真に生き残るのはどっちなのかをよ」
「面白いやつだ。いいだろう、決着はその時にとっておいてやるぞ、ティタニス」
そう互いに告げ、それから二体はどちらからともなく笑い出した。
今や二体の間には、奇妙な友情めいたものすらあった。
そして、ゆっくりと動き出す。獲物を探すために、彼らの存在意義を証明するために。
さあ、狩りを始めようじゃないか。
【一日目・黎明】
【大西洋・カリブ海】
【ティタニス】
【状態】健康
【思考】ダンクレオステウスと組み、他の参加者を狩る
【備考】オス、若者 北アメリカ出身
【ダンクレオステウス】
【状態】健康
【思考】ティタニスと組み、他の参加者を狩る
【備考】オス、壮年 北アフリカ出身
- 283 : ◆JUJ3JcJgbI:2013/07/31(水) 22:44:21 ID:X67C/9iA0
- 投下終了です。参加者紹介は後ほど。
それから指摘があれば是非ともお願いしますー
- 284 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/08/01(木) 16:30:22 ID:EsYyWgxQ0
- 投下お疲れ様です!
何気にマーダー同士の組は始めてでしょうか。動かし甲斐がありそうですねー。
- 285 :1 ◆sOMmvl0ujo:2013/08/06(火) 18:48:11 ID:xpZO.HoU0
- オパビニア、アンドリューサルクス、そして予約していませんでしたがバシロサウルスで投下します
- 286 :鳥篭の鯨 ◆sOMmvl0ujo:2013/08/06(火) 18:48:53 ID:xpZO.HoU0
- 動物の歴史上、最も大きな出来事の一つが「目」の誕生だったとも言われる。
動物史の初期において、自分の生まれた世界を「見る」ことのできた動物は、生存競争で他の動物に優位をつけて繁栄することが出来た。
脊椎動物・軟体動物・節足動物の目はそれぞれ独立に進化したとされるが、最も早く目を完成させたのは節足動物だったとされる。
中でも、カンブリア紀中期には目を驚嘆すべき方向に進化させた一派がいた。
水底に、じっと横たわっている一匹の生き物が居た。
甲殻類のようでもあり、昆虫のようでもあり、あるいは環形動物のようでもあり、しかしそのどれにも似ていない。
マジックハンドのようにしか見えない一本の触手と、頭部にある五つの目が、復元図を一度見たら忘れられない印象をもたらす古生物である。
学名をオパビニアと言った。
(さて、どうしたものだろうか)
本来なら身を守ることをまず考えないといけない状況だろう。しかし、彼女の頭に浮かぶのは全く別のことなのだった。
超大陸の分裂により世界的に浅い海が広がったカンブリア紀、動物たちの生息域はほぼそのような遠浅の海に限られていた。
現生の海洋生物に比べると遥かに遊泳能力の低い当時の動物たちでは、外洋に進出することなど全く不可能なことだった。
もちろんそれは彼女とて例外ではなく、自分は生まれた場所からさして離れることも無いまま生きて死ぬのだと思っていた。
そして、そもそもそれ以外の生き方など、当時の動物には想像することもできなかった。
だが、今彼女は外洋どころか、生まれた大地からも引き離され、全く別の惑星の上にいた。おぼろげながらもそのことを理解できた彼女は、もうただの無知な小動物では無かった。
確かに今までは、日々食べ物を得て生きていくだけで精一杯だった。だが、それでも確かに心の深底には別の思いが静かに息づいていた。
ここではない場所を見たい。
ここではない海を泳ぎたい。
自分の小さな体では無理だ、とも思う。しかし、この思わぬ災厄を、外の世界を見る好機と捉えたい気持ちはもはや抑えようも無かった。
「うん、行けるところまで行ってみようか」
今いるのは、かなり浅い水の底のようだった。おそらくは陸地から大して離れてもいないだろう。
どちらに向かって泳げばいいのかと考えていた彼女は、ふと視界が暗くなったことに気付いた。
五つの目の焦点を真上に合わせると、そこには夜空のような巨大な獣の影があった。
彼女がすぐに気付かなかったのも無理は無い。カンブリア紀の海には、こんな巨大な生命などどこにも存在しては居なかった。
そして驚く暇も無く、彼女の体は激しい水流に、上下左右もわからぬままに翻弄されていった。
- 287 :鳥篭の鯨 ◆sOMmvl0ujo:2013/08/06(火) 18:49:20 ID:xpZO.HoU0
- 「ちょ、ちょっと待ちやがれって!! 今は縄張りがどうとかこうとか、言ってるような場合じゃあ……」
水面に、二つの獣の頭が浮かんでいる。一見すると、互いによく似ているようにも思える。
実際、そこまで系統的に遠い生物では無い。
口を耳まで裂けんばかりにして叫んでいるのは、史上最大級の陸生肉食哺乳類、アンドリューサルクス。
一見オオカミかハイエナのようだが、足に備わっているのは鍵爪ではなく蹄。偶蹄類に近縁な動物である。
「それに、こんな狭いところで縄張りもクソもねえだろ。つまらんことに拘ってねえで、ここは一つ俺と一緒に、こっからみんなで出る方法を考えようじゃねえか」
「黙れ!!」
アンドリューサルクスの話に一喝で答えたのは。同じく大きな口をした肉食獣。
こちらは完全に水棲に適応した哺乳類、鯨だった。
「俺は、俺はやっと手に入れたんだ。他のバシロサウルスに邪魔されない、俺だけの縄張り、俺だけの海!! こっからは一歩だって出る気は無い!!
せっかく縄張りを持てたというのに、みすみす手放してたまるものか!!」
「おいおい、落ち着いて考えろよ!! こんなところを縄張りだとか言って威張ってたってしょうがないだろ。
それよか、今は海の者も陸の者も関係無く、元の世界に帰るために力を合わせて……」
アンドリューサルクスの声を遮るように、バシロサウルスの老人が突進する。
危ういところでかわしたアンドリューサルクスの耳に、怨嗟に満ちた声が聞こえた。
「貴様に分かるものか。力の弱い者として生まれたが故に、この老齢になるまで縄張りも家族も持てず、ただ広い海をさまようしか無かった惨めさが。
ここは、ようやく見つけた安住の地なのだ。これ以上邪魔をするなら、もう容赦はせぬ」
バシロサウルスはそう言って、水の底へと身を沈めていった。
体長で圧倒的に優勢で、しかももともと水棲の相手と水中でやりあうわけにはいかない。
アンドリューサルクスは、しぶしぶ陸に上がった。
陸地から振り返ると、バシロサウルスの巨体は水の底に大きな影となって佇んでいた。
「こんなちっぽけな場所を手に入れたからって、何になるってんだ……」
しかし、愚痴を言っても仕方が無い。こうしている間にも、すでに他の場所では殺し合いが始まっているかもしれないのだ。
仲間を集めるには、急いだほうがいい。
そう決意して、慣れない平らな地面の上を歩き出した。
しばらく進んだ時、頭の上から水と共に、一匹の小動物が落ちてきた。
「ん……?」
「あ……」
アンドリューサルクスとオパビニアは、互いに目を丸くした。
ちなみに、ここは都会の真っ只中。
とある小学校の、水泳の授業用のプールのすぐ傍である。
【一日目・黎明】
【日本・関西地方の都会】
【アンドリューサルクス】
【状態】健康
【思考】他の参加者と手を組んでここから脱出する
【備考】オス・若者 中央アジア出身
【オパビニア】
【状態】健康
【思考】広い世界を見たい
【備考】メス・若者 北米出身
【バシロサウルス】
【状態】健康
【思考】やっと手に出来た「縄張り」を守る
【備考】オス・老人 北米出身
- 288 :鳥篭の鯨 ◆sOMmvl0ujo:2013/08/06(火) 18:49:46 ID:xpZO.HoU0
- 以上になります。
なお参加者紹介はまた後日。
- 289 :名無しさん:2013/08/06(火) 19:16:50 ID:5Mw5FdIUO
- 投下乙です。
予想を超える縄張りの小ささw
- 291 :名無しさん:2013/11/29(金) 15:05:46 ID:1bkf7n.E0
- 捕手
- 292 : ◆sOMmvl0ujo:2014/01/11(土) 18:50:16 ID:6BA77HEE0
- ティラノサウルス、ブラキオサウルスで投下します。
- 293 : ◆sOMmvl0ujo:2014/01/11(土) 18:50:33 ID:6BA77HEE0
- 完全陸生の肉食動物としては地球史上屈指の巨体。
あらゆる方向からの力に強い、強靭な頭骨。
その顎が生み出す巨大な咬合力。
他の大型肉食恐竜とは全く異質な、太く強い歯。
肉食恐竜としては例外的な、立体視が可能な目。
極めて発達した嗅覚と平衡感覚。
高度な知能に裏打ちされた社会性。
これら全てが同じ一種の生物の特徴。
「やれやれ……腹が満たされねえってことは、この『飢え』も満たされることはねえってことか」
慣れない草の感触を足に感じながら、一頭の雄のティラノサウルスが歩いていた。
つい先ほど、大型の角竜ほどの獲物を平らげたばかりだというのに、血の滾りは収まるどころの話ではない。
飢えないということは、いくら食べても満腹感を得られないということでもあるらしい。
所詮は自分も生物ということかとも思ったが、まあそんなことはどうでもいい。
満腹感は、実のところ彼にとって煩わしいものでもある。
再び直前まで確かに生きていた生の肉の感触を喉で味わうには、多少なりとも時間の経過を待たねばならない。
だがこの場では、そんなものに振り回される必要も無いらしい。
彼の脳裏にはすでにケナガマンモスの肉の味の記憶は無く、その全感覚は今や次の獲物のみを求めていた。
そして、見つけた。
いや、目に入っただけだ。
視界を遮るものが何も無い平原で、その獲物は必然的に目に飛び込んできた。
「なんてえ奴だ、ありゃ? あれでも生き物か?」
さしもの彼の口からもそんな声が漏れる。
そこにいたのは、見たことも無い程の長い首、長い足、そして巨体を持つ動物だった。
彼の時代の北米にも竜脚類恐竜は生息していたが、その数は少なく、彼は生まれてから一度も見たことは無かった。
「ククッ……あんだけの量の肉、一度に喰えたらさすがのこの腹も収まるかねえ?」
通常、いかにティラノサウルスといえども一頭で対峙するような相手ではない。
それでも仮に挑むとすれば、相手よりも早く走れることを生かして素早く接近し、一噛みで齧り取れるだけの肉を奪って素早く離脱する、ということを繰り返すのが上策だろう。
持久力勝負に勝つことが出来れば、相手はやがて全身の傷に耐え切れず力尽きることになる。
だが、通常のティラノサウルスよりも二周り以上大きな巨体を持つ彼には、そのようなセオリー通りの狩などありえなかった。
突如として草原に、聞いた全ての者に死を覚悟させる咆哮が響く。
ブラキオサウルスは耳を疑い、その声の主を探した。
これから襲い掛かる相手に自分の存在を知らせるなど、本来は肉食動物として全くありえない行為。
言うまでも無く、自分の何倍もの体長のある相手にたった一頭で真正面から狩を挑むというのも、本来の生存本能からは逸脱した行為でしかない。
だが、大きく口を開けて巨大な獲物に突進しようとしているこの竜王の中の竜王には、そんな常識など通じなかった。
【一日目・黎明】
【アジア東部・華北平原】
【ティラノサウルス】
【状態】健康
【思考】基本:全ての動物を皆殺しにし、その血肉を味わい尽くす
1・ブラキオサウルスを喰らう
【備考】オス・中年 北アメリカ出身
【ブラキオサウルス】
【状態】健康
【思考】ティラノサウルスを警戒
【備考】オス・老人 北アメリカ出身
参加者紹介
【ブラキオサウルス】
中生代ジュラ紀後期チトン期。北米・アフリカに生息。
全長25メートルに達する巨大な竜脚類で、後ろ足より前足のほうが長いのが大きな特徴の一つ。
以前は垂直に近いくらい首をまっすぐ真上に伸ばした姿で復元されることが多かったが、あまりに心臓に負担がかかるということから、現在では首をなだらかに傾斜させた姿で復元するのが一般的。
なお巨大な竜脚類といえばジュラ紀の恐竜と言うイメージが強いが、ブラキオサウルスの仲間はどちらかというと白亜紀前期に入ってから繁栄したグループである。
- 294 : ◆sOMmvl0ujo:2014/01/11(土) 18:58:33 ID:6BA77HEE0
- 以上になります。タイトルは忘れていましたが、「彼らの王の王」で。
オススメ把握用資料紹介
・生物ミステリープロシリーズ
「エディアカラ紀・カンブリア紀の世界」
「オルドビス紀・シルル紀の世界」
(技術評論社)
特筆すべきはやはり第二巻。オルドビス紀とシルル紀だけを扱った一般書籍はおそらく日本初ではないでしょうか。
デボン紀編と石炭紀・ペルム紀編も今春刊行予定とのこと。
- 295 : ◆sOMmvl0ujo:2014/01/11(土) 19:52:59 ID:6BA77HEE0
- 続けてエドワード・コープ、パラントロプス・ロブストゥスで投下します
- 296 :天才の夢、猿人の悪夢 ◆sOMmvl0ujo:2014/01/11(土) 19:54:10 ID:6BA77HEE0
- 常人には理解しがたい理由から、天才同士が相争う。
科学や芸術、哲学の歴史上で何度も起きたことであり、多くの場合その争いを通じてその分野は大きく発展を遂げた。
それと同時に、争いの当事者たちについては、その才能と引き換えに性格に難があったというイメージか、孤独な印象が付きまとう。
だが多くの場合、仔細に見れば、彼らの多くは論争相手がいたからこそ歴史に名前を残せたのだ、と思える節が決して少なくは無い。
「ああー、こんなことになってしまって僕は一体どうしたらいいんだろうねえ」
町外れのパブの椅子に腰掛けて、やや大きな声で独り言をつぶやく紳士がいた。
整った髭からは、普段は凛々しい印象を周囲に与えているであろうことがうかがえるが、今の彼の様子はさながら親に叱られた少年の様である。
今にも泣き出しそうな目で、彼は神への祈りの言葉を繰り返しながら、その合間にこんな言葉をしばしば挟んだ。
「ああー、こんな時マーシュくんなら一体どうするんだろうねえ」
彼、エドワード・D・コープにとって、オスニエル・マーシュは嘗ての親友であり、かつ今は宿敵だった。
だが先ほど、あの得体の知れない怪獣が勢ぞろいしていた空間でマーシュの顔を見つけた時、コープは心の底から安堵した。
なぜそうだったのかは、彼自身にもわからない。マーシュが憎むべき相手であることは間違いない。だがもしここに彼が存在していなかったら、自分はもっと取り乱し、おそらくは命を絶っていただろうと想像できた。
殺し合いなど、彼には絶対に出来なかった。
両親の代からの熱心なクエーカー教徒だった彼は、普段から銃などは一切持ち歩かなかった。化石発掘中に原住民に襲われた際も、武器は使わずはったりをかまして逃げたほどだ。
増してや幼い頃から動物好きだった彼にとっては、自分の命と引き換えと言われようが、罪も無い動物や人間を傷つけるなど決してできないことだった。
「……まあ、こんなことをしていても仕方ないか」
あらかた祈りの言葉を言い終えたこともあって、少し落ち着きを取り戻したコープはゆっくりと顔を上げた。
「そうだな。やっぱりなんとしてでも、マーシュくんと仲直りをしよう。うん、まずはそこからだ」
彼がマーシュの顔を見て思い出したのは、彼への憎悪でも、激しくも不毛な化石戦争の記憶でもなく、十歳近く年下で駆け出しの学者の自分を親友として遇してくれた嘗てのマーシュだった。
あのマーシュなら、面と向かって話せばきっとわかってくれる。そう思いながら、彼の胸の奥には上手く言い表せられない静かな高揚が浮かんでいた。
自分にとって、マーシュと激しく争ったここ数年間も、マーシュと出会った当初と同じく大切な思い出だと、ようやく気付いたからだった。
なので彼は、何物かがパブに侵入し、自分のすぐ背後に立ったことにも、棍棒を振り上げたことにも気付かなかった。
自分の頭蓋骨が潰れる音を感じ、思わず振り返ったコープが生涯最後に見たものは、全身を毛皮で覆った得体の知れない男の、憎悪に満ちた顔だった。
コープが事切れたのを確認して、パラントロプス・ロブストゥスは忌々しそうに凶器の丸太を投げ出した。
「やれやれ、こいつが一人で勝手にべらべら喋ってくれるから、誰なのかはすぐに見当が付いたぜ」
パラントロプスは先刻本屋で入手した本の中の、古生物学の歴史に関するページを捲って、そこに掲載された写真の人物が目の前の男に間違いないことを確認した。
エドワード・D・コープ。アメリカ合衆国とやらを代表する古生物学者・生物学者で、オスニエル・マーシュとの化石戦争が有名。
マーシュと仲直りが出来なかったのはさぞ無念だろうが、こっちとしては知ったことではない。
本を閉じると、パラントロプスは急ぎ次の作業に取り掛かる。
コープの亡骸から服を脱がせ、手間取りながらもどうにかこうにか袖を通し、釦を留め、ズボンに足を通してベルトを締めた。
さすがにコープの知り合いを騙すのは無理だろうが、この本で得た知識があれば、人類というものを見たことの無い連中くらいなら誤魔化せるだろう。
パブの壁にあった鏡というもの――この存在も本屋で知った――に全身を映して見る。
「うん、まあ悪くないじゃねえか。俺はコープ。エドワード・コープという男だ」
鏡像に向かってそう呟くと。パラントロプスは本を手に取り、丸太はそのままにして、悠々とパブを出て行った。
- 297 :天才の夢、猿人の悪夢 ◆sOMmvl0ujo:2014/01/11(土) 19:54:22 ID:6BA77HEE0
- 【一日目・黎明】
【ヨーロッパ・オランダの都市】
【エドワード・コープ 死亡確認】
【パラントロプス・ロブストゥス】
【状態】健康 コープに変装(しているつもり)
【思考】ホモ属は皆殺し
【備考】オス・若者 南アフリカ出身 古生物に関する本を所持
本の中の「古生物学の歴史」の章についてはすでに読み終え、ほとんどの知識を身につけている
参加者紹介
【エドワード・コープ】
1840-1897。アメリカの古生物学者・生物学者。
マーシュと共に化石戦争を戦ったことで知られると同時に、進化論や比較解剖学の研究でも名を残す。
化石戦争では、単純に発見した恐竜の属数ではマーシュに敗れるものの、他の分野も含めるとその影響範囲の広さではマーシュを上回るとも言える天才。
ちなみに頭蓋骨は保存されている。
- 298 :天才の夢、猿人の悪夢 ◆sOMmvl0ujo:2014/01/11(土) 19:54:43 ID:6BA77HEE0
- 以上になります。
- 299 :名無しさん:2014/01/12(日) 21:22:44 ID:vp5fR29c0
- おお、復活している!
投下乙です
- 300 :名無しさん:2014/01/14(火) 23:22:59 ID:IheFavko0
- このロワの新作を待っていた!
投下乙です!
- 301 :管理人★:2015/07/01(水) 22:09:48 ID:???0
- 本スレッドは作品投下が長期間途絶えているため、一時削除対象とさせていただきます。
尚、この措置は企画再開に伴う新スレッドの設立を妨げるものではありません。
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