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王道ロワイアル
1 ◆vQfaAFC7Cg:2011/12/10(土) 05:35:00 ID:JYK8w0Ds0
4/4【AIR】
○国崎往人/○神尾観鈴/○遠野美凪/○霧島佳乃

6/6【Angel Beats!】
○音無結弦/○仲村ゆり/○立華奏/○日向秀樹/○直井文人/○椎名

4/4【家庭教師ヒットマンREBORN!】
○沢田綱吉/○雲雀恭也/○六道骸/○古里炎真

5/5【Kanon】
○相沢祐一/○水瀬名雪/○川澄舞/○倉田佐祐理/○北川潤

5/5【CLANNAD】
○岡崎朋也/○古河渚/○伊吹風子/○坂上智代/○春原陽平

5/5【コードギアス 反逆のルルーシュ】
○ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア/○C.C./○枢木スザク/○ロロ・ランペルージ/○ユーフェミア・リ・ブリタニア

5/5【コープスパーティー】
○持田哲志/○中嶋直美/○岸沼良樹/○篠崎あゆみ/○刻命裕也

6/6【シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
○御剣総一/○姫萩咲実/○北条かりん/○長沢勇治/○高山浩太/○手塚義光

5/5【涼宮ハルヒの憂鬱】
○涼宮ハルヒ/○キョン/○長門有希/○朝比奈みくる/○古泉一樹

4/4【そらのおとしもの】
○桜井智樹/○イカロス/○ニンフ/○アストレア

5/5【とある魔術の禁書目録】
○上条当麻/○御坂美琴/○白井黒子/○一方通行/○アウレオルス=イザード

5/5【ハヤテのごとく!】
○綾崎ハヤテ/○三千院ナギ/○マリア/○桂ヒナギク/○瀬川虎鉄

5/5【ひぐらしのなく頃に】
○前原圭一/○竜宮レナ/○園崎魅音/○園崎詩音/○古手梨花

6/6【Fate/stay night】
○衛宮士郎/○セイバー/○アーチャー/○ランサー/○アサシン/○真アサシン

4/4【Fate/Zero】
○衛宮切嗣/○ライダー/○バーサーカー/○キャスター

4/4【BLEACH】
○黒崎一護/○更木剣八/○グリムジョー・ジャガージャック/○ウルキオラ・シフォー

6/6【ペルソナ4】
○鳴上悠/○花村陽介/○天城雪子/○巽完二/○白鐘直斗/○足立透

4/4【めだかボックス】
○黒神めだか/○人吉善吉/○球磨川禊/○宗像形

6/6【物語シリーズ】
○阿良々木暦/○戦場ヶ原ひたぎ/○羽川翼/○神原駿河/○千石撫子/○忍野忍

6/6【リトルバスターズ!】
○直江理樹/○棗鈴/○来ヶ谷唯子/○棗恭介/○井ノ原真人/○宮沢謙吾

計100名

自分と◆WzpMn05TJA氏で管理します

wiki
ttp://www18.atwiki.jp/45kssos/

2 ◆WzpMn05TJA:2011/12/10(土) 05:36:56 ID:GvdIbWv.O
片方の管理人です

よろしくお願いします

では早速投下します

3それはとても眩しい夜 ◆WzpMn05TJA:2011/12/10(土) 05:38:15 ID:GvdIbWv.O
――明日まで残り1時間の23時00分。
また明日も毎日の様に死んだ世界戦線メンバー達と一緒にどこかへ連れられる日になるのだろう。

いつも巻き添えをくらっている形になっているが俺は今の生活が好きになってきている。

明日はどんな1日になるのだろうか?
また、日向と一緒に嫌な仕事をゆりに押し通されるかもしれない。
また、みんなと武器を用いて戦いへ参加させられるかもしれない。
また、奏と一緒に話しながら新たな一面が見られるかもしれない。

無限に広がる明日の可能性。

――だが俺達の日常は、狂った世界が干渉し合いやがてそれは絶望が始まる事を告げるのだった。

It is a very dazzling night.
『それはとても眩しい夜』の物語。

―――――

「ここはどこだ?」

俺が目を、いや意識を覚ましたのは暗い外のグラウンドの様な場所に立っていた。
目の前にはそびえ立つ学校。

そこではじめて死後の世界に来た日の事を思い出す。
あの日も夜中にグラウンドで目を覚ました。

だが、今とその時で決定的に違う事が2つあった。
1つは自分が倒れていた事。
これ自体は特にどうとでもない。
2つは周りにたくさんの人物が居る事。
しかも世界戦線メンバーでは見かけた事がないというか知らない人達が溢れかえっていた。

4それはとても眩しい夜 ◆WzpMn05TJA:2011/12/10(土) 05:39:09 ID:GvdIbWv.O
「なんだよここ?」
「あれこんなところに来た記憶なんかないんだけど……?」
「たくさん人が居るな」

口々とたくさんの男女の声がする。
そこで俺はみんなの共通点に気付く。

なんだみんなが付けている首輪は?

俺が自分にも首輪がはめられている感触に気付く。
その首輪に触ろうと手を伸ばしたが……、結果的に首輪には触れなかった。

理由はグラウンドに取り付けられていたライトが一部のみを照らし、全員が全てを忘れてその方向を向いたからである。

―――――

みんなが目線を向けた先のライトが照らされた場所には1人の人間か立っていた。

まるで中世ヨーロッパの貴族を傍観させる老人に近い人物だった。
それでいて貴族らしい上品なイメージはなく、人を見下す王――むしろ殺人者に近い目をしている。

「我が名はシャルル・ジ・ブリタニア。貴様らは明日からは儂が主催するゲームに参加してもらう」

それは低く、響く、貫禄のある声であった。
まるでみんなが彼の言葉に従う様に黙り込んだ。

5それはとても眩しい夜 ◆WzpMn05TJA:2011/12/10(土) 05:40:15 ID:GvdIbWv.O
そんな中、主催者に反逆する様な声がグラウンドいっぱいに広まった。

「ふざけるなシャルル・ジ・ブリタニア!貴様はアーカーシャーの剣と共にマリアンヌと消えたはずだっ!」
「それは悪かったなルルーシュ。なら貴様とは違う世界から来たという事だよルルーシュ。それを言うならば、儂の世界ではお前は儂とマリアンヌに屈したはずだよ」
「なっ!?そ、そんなパラレルワールドの様な世界の存在を認めろとでも言うのか!?」
「真実は1つではないのだよ、ルルーシュ」

そう言うとルルーシュと呼ばれた高校生ぐらいの少年は黙り込む。
それを気にした様子もなくシャルルは話を進める。

「少し話が脱線してしまった様だな。話を戻そう。
君達は儂のゲームのチェスに参加をしてもらう。その名もバトルロワイアル」

『バトルロワイアル』。
その単語が出た瞬間辺りがザワザワと騒ぎだした。

―――――

「なっ!?バトルロワイアルだって」

驚いたのは俺だけではなかった。
冷静そうに見えていた『ルルーシュ』という少年もポカンとした顔になっている。

「では詳しい話は進行係である2人にお願いしてもらおう」

そう言うとシャルルの奥から2人の女性が歩いて来た。
1人は眼鏡をかけたエリートの様な女性で女社長という様なキャリアが見える40前後の女性。
もう1人は優等生の様な髪の長い少女。シャルルや前者の女性と比べると不釣り合いに見えなくもなかった。

6それはとても眩しい夜 ◆WzpMn05TJA:2011/12/10(土) 05:40:54 ID:GvdIbWv.O
「はじめまして郷田真弓です」
「朝倉涼子です。よろしくお願いします」

と2人が名乗る。

俺は今から語られるバトルロワイアルの単語に嫌な予感が離れなかった。
死んでも蘇ってしまう自分も果たして死んでしまうのかはわからない。
意味はわかっていてもどうか破滅する未来が待っていない事を願いながら。

「あなた達は現在103人の人が居ます。この103人に、私達で用意するランダム支給品や自分の力で殺し合ってもらい最後の1人になるまで続けさせてもらいます。無事優勝した暁にはあなた達に優勝商金の20億円と元の世界に帰還させる権利を保証します」
「制限時間は無制限です。しかし24時間誰も死ななかった場合は全員を失格にして殺害致しますので平和なハッピーエンドは期待しないでください」

2人は笑顔なのか無表情なのかよくわからない表情を浮かべている。
そして自分達を考えさせる間もなく話を続けられる。

7それはとても眩しい夜 ◆WzpMn05TJA:2011/12/10(土) 05:42:06 ID:GvdIbWv.O
「次は首輪の話をしようかしら」

郷田と名乗った女性は手からみんなや俺に付けられているだろう首輪を手に持っていた。

「単刀直入に言うならこの首輪は爆弾です。どんな人物であっても必ず死んでしまいます。この首輪が爆発する条件は3つです。
1つはこの首輪を外そうとする事。
2つはこの首輪に大きいショックを与える事。
3つは禁止エリアに侵入する事です」
「では禁止エリアの説明をします。そのままの意味ですが侵入したら30秒だけ警告音を鳴らします。その警告音が止んだ瞬間爆発します。まぁお手本を見せましょうか」

ピピピーと無機質な音が鳴り響く。
音源はよくわからないが俺は郷田が持っていた首輪が爆発すると思っていた。

だが、その考えは平和的なご都合主義に過ぎなかった。

パーン!

「え……?」

『首元』が砕け、『赤』が飛び散る。

飛んだ首から外に出たがっていたかの様に飛び散る。
溢れる血がなくなる頃には小学生くらいの少女が2人一緒に血溜まりに倒れていた。
俺より小さい子が2人も……。
みんな時間が止まったのだろう。
見慣れた死であっても、こんなにも呆気なく醜い死を見た俺は思考すら止まっていた。

8それはとても眩しい夜 ◆WzpMn05TJA:2011/12/10(土) 05:42:55 ID:GvdIbWv.O
「不意打ちすみませんね。この私の手にある首輪には火薬が入っていませんでしたので爆発を証明する為、ランダムで首を飛ばしました」
「でも考えようによってはどうせ今から親しき人に裏切られ無常に殺される未来がなくなっただけ一番幸せ者かもしれませんね」

狂ってる……。
主催のシャルルも、進行役の郷田も朝倉も。

「説明を戻します。禁止エリアは1回目からの定時放送から2時間後と4時間後に発表されます。これは人が少なくなっていった時に参加者同士の遭遇率を上げる為の処置なのでご了承くださいね。因みに禁止エリアの解除はありません」
「そして定時放送は6時間事に発表されます。さっき郷田さんが言った禁止エリアの位置とその間に亡くなった参加者の名前を呼び上げます。重要な放送なので絶対に聞き逃さないでね
あとさっきさらりと触れた支給品の事だけどこれには食料1日ぶん、水、デバイス、地図、参加者の名簿、筆記用具、ノート、ライトとランダムに配られるランダム支給品を3つをデイパックに入れて配ります
皆さん張り切ってこのゲームに参加してくださいね」

語られた事が今までのミッションが子供騙しだと思えるほど酷い内容でみんな黙ってしまっていた。

ただ1人を除いて。

「そんなくだらない事をさせると思うか?」

黒い肌で筋肉質の男が刃向かいの声を上げた。

9それはとても眩しい夜 ◆WzpMn05TJA:2011/12/10(土) 05:43:32 ID:GvdIbWv.O
「シャルル・ジ・ブリタニア!郷田真弓!朝倉涼子!みんなをふざけた事に巻き込ませようなんて俺がさせない!」

腕が変形をし、力がその拳に集まっていく。

「今みんなを解放すればこの技は出しはしないぞ。首輪にショックなど与えていないし、どうせ首輪を爆発させるのに30秒かかるのだからな。さぁみんなを解放しろっ!」
「愚か者。すぐにでも首輪なぞ爆発出来るわ」
「何っ!?」

パーン!

また同じ光景が繰り返される。

――あまりにも現実離れした現実だった。

「その程度も予想も出来ぬバカ者には負けぬわ!
それと言い忘れおったが死神やサーヴァントや未確認生物などのたくさんの個性豊かなメンバーが揃っておるが彼らは能力や力を制限されておる。
儂らの発見がした未知の力によってな。ある程度どのくらい制限されたかは理解出来るであろう」

フフフと笑うシャルル・ジ・ブリタニア。

「それでも一般人なんかよりは遥かに強いがな。だが儂らにとってはみんな同じくチェスの駒に過ぎんがな。3人が死に、生き残った100人の者達よ殺しあうのだ!」

俺は『自分もNPCの1人に過ぎなかった事』を実感し、皮肉にも笑ってしまっていた。

――もう後戻りは出来ない。

―――――

23時15分。
長いと感じた時間はまだ15分しか経過していなかった。

「0時ちょうどに貴様らは起床する事になる。
――では優勝時にまた会おう」

そう主催者に言われ俺の意識はまた唐突に消えた。

これも未知の力の力なのかと疑問を抱きながら……。

闇へ……。

【持田由香@コープスパーティー  死亡】
【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に  死亡】
【茶渡泰虎@BLEACH  死亡】


【主催者 シャルル・ジ・ブリタニア@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【進行役 郷田真弓@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【進行役 朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱】


※キャラクターの能力制限は、どの程度制限されているのか自分でわかる様になっています。一応仕様となっています。

10 ◆WzpMn05TJA:2011/12/10(土) 05:46:31 ID:GvdIbWv.O
どんな王道なバトル展開でも、ギャグ展開でも、鬱展開でも歓迎します!


【書き手ルール】
・俺得ロワですが非リレーではないので書いてみたいという方はトリップ付きでの予約して投下してください。
 ・予約期間は1週間+延長3日間以内。
 ・ゲリラ投下&投下直前でのキャラ追加は不可。
 ・自己リレーについて、間が空いたけど投下されない状態が続いた場合はOKにします。

 ・何か質問があればお気軽にどうぞ。
・SSの元ネタがある場合にはそれを投下終了後書き込んでください。
・矛盾した話の場合は自分が話を加えるか、または没になりますのでキャラの状態を把握してください。
・お願いですが意味のない自殺や描写なきズガンはNGで絶対没になりますのでご注意を

【留意事項】
・ランダム支給品枠を使った原作での装備・道具の本人支給に制限はない。
・作品内では特別なキャラしか使えない支給品などの制限はなしになります
例…斬魄刀@BLEACH、ボンゴレリング@家庭教師ヒットマンREBORN!等

【作中での時間表記】
開始は深夜0時とする。
時間表記
未明:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
日中:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
深夜:22〜24

【状態表テンプレ】
【(エリア名)/(時間帯名)】
【(キャラ名)@(出展作品)】
【装備:(キャラの携帯している武器や物)@(出展支給品)】
【所持品:(上記と同じ)例→支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:(キャラの身体的な事)】
【思考・行動】
1:(キャラの考えや方針を優先順に並べてください)
2:(MAXは5くらいまで)
【備考】
※(参戦時期)。
※(制限内容)
※(特別に表記しなければならない事)


初登場した支給品について
【(支給品)@(出展)】
(簡単に説明を表記してください)

11 ◆WzpMn05TJA:2011/12/10(土) 05:47:03 ID:GvdIbWv.O
【基本ルール】
・最後の一人になるまで参加者は殺し合いを続けなければならない。
・最後の一人を優勝者として、元の世界への帰還及び優勝賞金20億円権利を与える。
・島内での参加者のやりとりに一切の反則は無い。
・島から逃げ出すことはできない。

【首輪について】
・参加者には首輪を装着され、以下の条件で首輪が爆破される。首輪の爆発による死は絶対であり、いかなる参加者も例外ではない。
 ・首輪を無理に外そうとした場合
 ・首輪に大きなショックを与えた場合
 ・禁止エリアに侵入した場合
 
【定時放送について】
・1日4回6時間区切りで主催者からの放送が入る。最初の放送は1日目の6時です
・放送間での死亡者発表、禁止エリアの発表、その他。

【禁止エリアについて】
・侵入すると30秒の猶予がありますが、その猶予を過ぎると首輪が爆破されて参加者は死亡します。
・放送から2時間後、4時間後に放送で発表した箇所が禁止エリアとなる。以降ずっとそのままである。

【スタート時の支給品について】
・参加者には開始時に支給品として以下の物資が与えられる。
「デイパック」「食料1日ぶん」「水」「地図」「デバイス(現在位置と時間がわかります)」「筆記用具とノート」「懐中電灯」「参加者の名簿」「ライト」「ランダム支給品3個(説明書付き)」

【制限について】
・進行に著しく影響が出る能力は制限対象となり威力の低減、もしくは使用不可となる(参加者は制限された能力を察する事が出来る様になっています)。
・参加者の意思疎通に本来の言語は影響しないものとする。読み書きの場合も同様。

12 ◆WzpMn05TJA:2011/12/10(土) 05:53:57 ID:GvdIbWv.O
因みに自分は書き手、向こうは管理専用的な感じになると思います

ではテンプレートに話を自分から7作品投下します

岡崎朋也、古河渚

白井黒子、雲雀恭也

足立透、ランサー

直井文人、白鐘直斗

前原圭一、朝比奈みくる

球磨川禊、宗像形

春原陽平、霧島佳乃


ボチボチに更新していきます


書き手の皆さん!
経験問わずにどしどし予約してください!

13 ◆vQfaAFC7Cg:2011/12/10(土) 06:13:34 ID:JYK8w0Ds0
一応wikiオープン出来ました

14アナタは恋人を殺せますか? ◆WzpMn05TJA:2011/12/10(土) 07:08:25 ID:GvdIbWv.O
0時きっかり。
岡崎朋也は目を覚ます。

森と野原の境目という位置に朋也は名簿を見ながら立っていた。

田舎でも都会でもない。
そんな微妙な場所に住んでいる高校生の朋也は父親から連れられた事などなく、この様な場所に行った事はなかった。

いずれ恋人の古河渚と結婚し、働いた時の休日を取り、子供と海や山などに出かけたいと2人で語り合った。
その様な場所に行きたいと話していたのだが、まさかこの様な状況で連れられた事に皮肉を感じ、苛立ちを感じていた。

しかも古河渚の他にも親友の伊吹風子と坂上智代、そして悪友の春原陽平と知り合いが4人も来ている。

―――――

「渚……」

渚は病気で運動神経だってない様なもんなんだぞ!

「ならっ――」

俺はデイパックに入っていた『ドラグノフ』というライフルらしきものを取り出す。
大型な物で使いにくそうだが威力はありそうだ。
右腕が使えない俺には刀などよりありがたい武器である。

「渚を護るっ!」

たとえ風子、智代、春原、それ以外の人々が無害だとしても俺は躊躇いなく殺し、渚を優勝させてやる。

ドラグノフを強く握り決意を固める。

15アナタは恋人を殺せますか? ◆WzpMn05TJA:2011/12/10(土) 07:09:26 ID:GvdIbWv.O
悪魔の決意とはわかっている。
それで許される事ではないのはわかっている。
だが勝たねばならない。

その決意を本物にする為……、
それを証明する為……、
――少し前を歩いている人間を殺す!

森側に行き、長い木に隠れてドラグノフのスコープで標的をロックオンする。
俺は躊躇いなくロックオンされた瞬間引き金を引いた。

――結果的に俺が引いたのは不幸の始まりの引き金であった。

―――――

「誰か居ませんか〜」

恋人の朋也や、親友の智代や陽平らを捜している渚は不用心に歩き、叫んでいた。
渚はすぐに名簿を見て、知り合いと合流する事を決めていた。
そして心優しい渚は武器があってもそれを手には取らず、みんなで島を脱出する方法を探す事に決めた。
その為、主要な場所へ行けば誰かと会えるのではないかと、一番近かった森へ向かって……。

そんな事をしているうちに森が見えてきた。

森が見えた渚は気まぐれで森へ向かおうと歩みを始める。

「え……?」

その時、腹を抉られる痛みが走る。

何が起きたか、わからない。
どうして……?
持病の病気でも起こらない症状。

血が流れる。
手で止めようとしても、隙間からドクドクと溢れて、制服と手を赤で汚す。

渚は最後の力を振り絞り痛みが飛んできた方向へ目を向ける。

――その人物は遠くて目が霞むが、
――そこには見慣れた気がする人影があった。

「と、もやく……ん」

その人影は恋人の人影であった気がした……。

―――――

16アナタは恋人を殺せますか? ◆WzpMn05TJA:2011/12/10(土) 07:10:24 ID:GvdIbWv.O
「渚……?」

いや。いや。いや。
違う。違う。違う。
見間違い。見間違い。見間違い。

そんなわけないと朋也は自分に語りかける。

自分が撃ったはずの女が恋人――渚であるわけがない。

――だって俺が命を賭けて護ると誓って……。
――さっきの人間は元気そうに歩いていたではないか。

「ははは……何の冗談なんだよ……」

死体に歩いて近付く度、見慣れた少女の姿に変換されて……。

「うわぁぁぁぁぁ…………」

絶叫の真ん中。
恋人を護ると決意した直後、恋人を手にかけた男の悲痛の叫びが360゚響き渡った。

だがいくら叫んでも悲しみが癒える事はなかった……。

17アナタは恋人を殺せますか? ◆WzpMn05TJA:2011/12/10(土) 07:10:48 ID:GvdIbWv.O
【古河渚@CLANNAD  死亡】


【F-4 森と野原の境目/未明】

【岡崎朋也@CLANNAD】
【装備:ドラグノフ(9/10)@現実】
【所持品:支給品一式 ドラグノフの弾丸×20 ランダム支給品×2】
【状態:健康、精神的大ダメージ】
【思考・行動】
1:渚……。
2:俺はこれから……。
【備考】
※渚ルートの卒業の少し前くらいの参戦です。

18 ◆WzpMn05TJA:2011/12/10(土) 07:11:57 ID:GvdIbWv.O
投下終了です

元ネタはシークレットゲームのOP内にあるキャッチコピーの『アナタはQを殺せますか?』からです

19 ◆WzpMn05TJA:2011/12/10(土) 07:59:53 ID:GvdIbWv.O
真弓「本編の内容のシリアスブレイカー死者スレも募集しますわ」
涼子「早速4人も居ますわね……」



渚「皆さんよろしくです」
沙都子「歓迎しますわー」
由香「よろしくお願いします」

チャド「…………」(交ざれない)

20 ◆WzpMn05TJA:2011/12/10(土) 17:37:46 ID:GvdIbWv.O
投下します

21ジャジメントですの! ◆WzpMn05TJA:2011/12/10(土) 17:38:25 ID:GvdIbWv.O
「お姉様〜、どこに居るんですの〜」

広い廊下から高い鈴の様な声が響く。
その声は妙に響き、年齢が若くも、年をくっている様な声に聞こえなくもない。

コツコツと足音を響かせながら少女は階段へ着き、そのまま上へ上へと上がって行った。

少女の特長な髪型である茶色いツインテールを揺らしながら。

彼女の名前は白井黒子。
自分が慕っている御坂美琴を捜すのを優先に行動をしていた。

こんなふざけたバトルロワイアル。
そして知っている者で参加をしている御坂美琴、一方通行、上条当麻。
一方通行は信頼は出来ないが、それだけの実力派のメンバーが揃っている。
それでなくともさっき殺されたマスクマンの人以上の実力者全員がシャルル達に立ち向かえば勝てると彼女は確信していた。

黒子は風紀委員の正義を胸に背負っていた。

屋上の扉を右手で開く。
それと同時に叫ぶ。

「お姉様っ」
「……うるさいな」

明らかに不機嫌な男の声が聞こえて来る。

黒子は一歩引く時に声の主が見える。

明らかに眠っている青年で学ランを着ていたので学生だろう。
鋭い目つきで眠そうで不機嫌なのは見ても明らかである。
まだ暗いからであるからなのかはわからない。

「あなた何者ですの?このゲームに巻き込まれた被害者ですの?」
「うるさいな。これ以上近付くと咬み殺すよ」

男は銀色の鉄のトンファーを構える。
彼は使い慣れている様子であった。

「ほっといてほしいのもわかりますのよ。でも私は――」

そう言って彼女は腕章を見せる。

「ジャッジメントですの!」

22ジャジメントですの! ◆WzpMn05TJA:2011/12/10(土) 17:38:53 ID:GvdIbWv.O
「へー。僕はね風紀委員長なんだ」

男は風紀委員長の証である『風紀』と書かれた腕章を見せる。

「君、強いんでしょ?」
「では、少しだけお見せしましょう」

と笑みを浮かべたと同時に彼女は消え去った。

「後ろががら空きですのっ!」

『空間移動(テレポート)』能力を使い彼の後ろに回り込む黒子。
いつも通りに敵に回り込んで、そのまま右足で蹴り上げる。

「っ!?」

――男の学ランを蹴るはずだった右足。
だが彼は余地していたかの様に足を受け止めていた。

「なんだ、その程度なんだ」
「あなた、何者ですの!?」

知られていないだけの能力者なのか。
それともレベル0の強さに特化した者なのか。

男が足を離すと黒子も後ろに退き、また構える。

「いいよ、君の力はわかったよ。楽しかった」

そう言って男はトンファーを離した。

「え……?」

黒子は唖然とする。
それっきり男はまた寝る体制になって殺気など微塵も無くなっている。

「私は白井黒子と申しますの。出来ればあなたの名前を聞かせていただきたいですわ」
「並盛中風紀委員長、雲雀恭也」

それだけ聞くと恭也に背を向ける黒子。

「ではお姉様捜しに戻りますわ。邪魔をして申しわけありませんでした」

そう言って黒子は屋上から出て行くのであった。

恭也は何もなかったかの様に、気にした様子もなくまた眠り始めた。

23ジャジメントですの! ◆WzpMn05TJA:2011/12/10(土) 17:41:57 ID:GvdIbWv.O
【G-5 中学校屋上/未明】

【白井黒子@とある魔術の禁書目録】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:お姉様捜しに黒子が参ります。
2:恭也に少し興味。
【備考】
※夏休み終了後からの参戦です。
※『空間移動』は制限されています。移動は10メートル以内で連続の使用は体に負担が大きくなり、また物を体内や柱に入れる事は出来ません。

【雲雀恭也@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【装備:仕込みトンファー@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:眠い。
【備考】
※継承式編終了後からの参戦です。


【仕込みトンファー@家庭教師ヒットマンREBORM!】
恭也愛用の鉄の仕込みトンファー。色々なギミックが付いている。

24 ◆WzpMn05TJA:2011/12/10(土) 17:43:06 ID:GvdIbWv.O
投下終了です

タイトル元ネタは白井黒子の口癖からです

25 ◆WzpMn05TJA:2011/12/11(日) 10:15:34 ID:9ceVNipQO
投下します

26戦士は独り遥か戦地に埋もれてわたしを動かす ◆WzpMn05TJA:2011/12/11(日) 10:18:01 ID:9ceVNipQO
未明の0時。
全ての参加者は目を覚ました頃であろう。

今から彼ら、彼女らは生きながら地獄以上の体験をする事になるだろう。
そして命を失った者は地獄へ行きこのロワイアルから抜け出したとも言える。

苦しみながら生きている者と、安らかに死に逝く者。
どちらが幸せでどちらが不幸なのだろうか。
答えは簡単。
死に逝く者の方が幸せではないか!

「さぁて、僕も仕事頑張らなくてはいけないね」

彼の職業は警察官。
少しドジでヘマばかりやらかすというイメージからは本当に警察官なのかと疑うだろう。
だが、その本性は謎の殺人者として裏方から傍観する者である。

――その名も足立透。
彼は実際警察官になった理由が堂々と銃を持てるからという不謹慎な理由からである。

そんな透はある日、記憶には薄いが力が目覚める何かの出来事があった。
それから彼はテレビの中へ人を放り込められる様になった。
放り込んだ人間は自分のシャドウから殺される。
完璧な殺人の出来上がりである。

――そして今、このバトルロワイアルにて彼には新しい任務があった。

その任務とは……。

―――――

「このロワイアルは僕にとって最高の催しだよ」

僕に数日前、シャルルから手紙が届いた。
それはこのバトルロワイアルにて盛り上げる為に戦ってくれとの依頼だった。
僕はすぐによろしくって返事を出したね。

だから今のバカな参加者達は知らない。
シャルルがみんなに披露した未知なる力に僕の力が混ざっている事など。
僕があいつらと協力関係にある事など。

そして僕はロワイアルを盛り上げる為にたくさんの参加者と接触したり、殺し合ったりしなくてはならない。

(早速1人死んでやがるよ。古河渚ねぇ。彼氏の岡崎君に殺されるなんてねぇ
喜んであげなよ古河さん。彼氏は君をロワイアルから抜け出してあげたんだよ?好きな者に殺されたんだよ?これ以上の幸せなんてないんじゃない?)

僕にだけ主催者側の郷田真弓から新しい情報や参加者の位置などが送られるPDAがある。
しかも参加者の中で僕だけ意図的支給品が3つ。
武器も持っているし、相当僕はこのゲーム内で有利な存在だね。

ん……?
PDAに参加者の反応があるね。

ウワァオ、怖いねぇ〜ハハッ。

(そこに参加者が隠れているみたいだけど彼は相当強いしまだ生かしたままの方が良いな。あくまで優勝は2の次でかき回すのが仕事だからね)

僕は彼に気付いていない振りをしながら自然を装い遠く離れ、面白い事が起きそうな場所へと向かった。

27戦士は独り遥か戦地に埋もれてわたしを動かす ◆WzpMn05TJA:2011/12/11(日) 10:24:34 ID:9ceVNipQO
【D-2 路上/未明】

【足立透@ペルソナ4】
【装備:不明(武器は持っている)】
【所持品:支給品一式 PDA@シークレットゲーム-KILLER QUEEN- 意図的支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:ロワイアルをかき回す仕事をしつつ楽しむ。
2:僕を警戒している男が居るね。
【備考】
※直斗救出後からの参戦です。

―――――

「ちっ、あいつ不吉なにおいしかしなかったぜ」

黒髪の人間で、いかにも何も出来ませんよって面の仮面を被った黒い奴。
実際あいつからは嫌な感じしかしなかった。
もしかしたら俺のマスターなのにこの場に居ない言峰よりやっかいな奴かもしれねぇ。

ここで俺は愛用の武器があったら迷わず襲いかかっていたが、俺のデイパックには武器になりそうなもんがブーメランしかないというのが致命的だ。
他2つはミニカーと柔道着という本当に使えない物ばかりだ。

「英雄だったらこんな殺戮での決着は望まないだろうしな」

セイバー、アーチャー、キャスター、ライダー、バーサーカー、アサシン(何故か2人居るが?)だって英雄で、人間を護った奴らしか居ないであろうしな。

「襲いかからない奴とはあまり戦いたくねぇが……。とりあえず他に誰か見つけてから方針を決めるか」

青い槍の騎士ランサーは先程どちらかへ向かった不吉な男を追う事はなかった。

【D-2 路上/未明】

【ランサー@Fate/stay night】
【装備:ブーメラン@現実】
【所持品:支給品一式 ミニカー@リトルバスターズ 阿久根高貴の柔道着@めだかボックス】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:あいつには近寄らねぇ。
2:どうすっか……。
【備考】
※Fate全編の全サーヴァントとの戦い終了後からの参戦。
※透を危険視。


【PDA@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
シークレットゲーム本編中にゲーム参加者に配られる情報探知機。本来は機能は拡大するにはソフトウェアを入れなければならないが、透に配られた物は便利な機能ばかり意図的に入れられている。

【ブーメラン@現実】
投げてぶつける普通の武器。

【ミニカー@リトルバスターズ!】
戦いの時にランダムに投げられる。一応本編中では武器扱い。

【阿久根高貴の柔道着@めだかボックス】
めだかボックスの高貴の柔道着。今や柔道部を引退した為着ている姿を見る事は稀である。

28 ◆WzpMn05TJA:2011/12/11(日) 10:26:28 ID:9ceVNipQO
投下終了です

元ネタは、『子猫は独り遥か雪に埋もれてわたしを見つめる』からです

29君は僕に似ている ◆WzpMn05TJA:2011/12/11(日) 20:10:50 ID:9ceVNipQO
「くっ……。こないだ僕は先輩方に助けてもらったばっかりなのにまたこんな事件に巻き込まれるなんて……。探偵失格じゃないか」

1人自分の力がない事に失望している者が居た。
学ランを着ている身長の低い彼の異名は『探偵王子』。
いや、本当は彼ではなく彼女の方に該当する。
常に男装をしている事は伏せている事実である為、一部の以外の者は知らない事実だったが、狭い町の中で学校中には知られてしまったが……。

(でもこのロワイアル中は伏せた方が良い事実だよな)

直斗はそういう事にし、まずはデイパックからすぐに名簿を取り出す。
最初は知らない名前から始まる。

アーチャー、相沢祐一、アウレオルス=イザード、アストレア、足立透……ん?

「足立さん!?」

知り合いという仲と言って良いのかはわからないが知り合いの人を見つけ、それから急ぎ下に目を向けると天城先輩、巽君、鳴上先輩、花村先輩と僕を助けてくださった先輩方の名前が見つかる。
見逃しただけかと思い見直すが里中先輩と久慈川さんとクマ君の名前がないという事はあの3人は無事であったらしい。

「出来る限りみんなでこの島を脱出しないと」

先輩方以外にも巻き込まれた被害者は103人居て3人が亡くなって100人か……。
賛同してない者だっているはずだ。

「僕もその意見に賛成ですよ」
「っ!?」

と直斗に向かい歩く青年が居た。
1人名簿に目を向けていた直斗はその者の気配に気付かなかった。

「僕の名前は直井文人です。出来たら貴様と話がしたい」
「う、うん。僕は白鐘直斗です」

直井文人と名乗った青年も直斗と似たような学ランを着ていて、背も低く、男とも女とも聞こえる声など、性別の偽り以外は直斗とそっくりだった。
直斗と直井。案外名前まで似ている2人であった。

―――――

30君は僕に似ている ◆WzpMn05TJA:2011/12/11(日) 20:11:20 ID:9ceVNipQO
「僕は音無さんを尊敬しています。音無さんはそれはとても良い人で〜」
「はぁ……」

文人は自分の尊敬をしている音無結弦の話をたくさん語り出した。
自分と結弦の敵対関係から、今の慕う過程などなど。

「ねぇ、すごい人でしょ?」
「……そうですね」

直斗は後半は適当に相槌を打っていたが、次の言葉に直斗は時間が止まるのだった。

「いやぁ、僕が死んだあとに尊敬出来た人は音無さんが始めてですよ」
「え……?」
「ん?どうかしましたか?」

文人は『自分の言った言葉にどこか変な事があった?』と言いたげな眼だ。

まさか……?
ここは……?

「おかしな事と言えば死んだってところか?」
「ぼ、僕はこないだ殺されそうになりましたが先輩方に助けられました。昨日までは何もなかったんですよ」

文人は結弦の話を中断してまで考え込む。
単なる死後前の記憶がないだけか、はたまたあのシャルルとやらが言った未知なる力とはこの事なのか?
前者なら気にする事はないのだが、もし後者だとしたら……?

――この島は死後の世界なのか。
――それとも自分の生前の世界なのか。

「僕は不吉な物を感じますね。白鐘、僕と組んで脱出しよう。もしかしたら長くいたらいけない世界かもしれない」
「え……?」
「まぁ、貴様には意見を言う隙を与えないがな」
「え……?」

勝手に決まったとばかりに頷く文人。
直斗としても協力する事は願ったり叶ったりでもあるのだが随分と口が悪い。

―――――

31君は僕に似ている ◆WzpMn05TJA:2011/12/11(日) 20:11:49 ID:9ceVNipQO
文人は2つの仮説を建てていた。
1つは死後の世界の長く住みすぎた為の神からの天罰。
2つは死後と生の世界の硲の世界。

(この説を音無さんや生徒会長などに言えば何かわかるかもしれない。それに白鐘を巻き込むのは気が退けるが……。まぁ、僕は神だから許されるだろう)

勝手に文人はそれで納得をした。

―――――

直斗は探偵が故に自分も少し状況を考えていた。

もしかしたらテレビの世界の異変なのかと直斗は仮説を建てる。

そしたら世界の崩壊などが起きてしまうのかもしれない。

(テレビの世界の話に直井君は巻き込みたくはないですが仕方ないでしょうか)

直斗はそれで自分に納得させた。

―――――

「直井君。音無さんという人以外の知人がいるなら教えてください」
「音無さん以外の知人はゴミです」
「え……?」

結弦以外の事になるとテンションの下がる文人だったが直斗は死後の世界の説明、知人達死んだ世界戦線の説明、この世界の2つの過程を、
直斗は文人に事件の内容と知人、この世界の自分の考えをそれぞれ述べた。

「なるほど。大変興味深いです」

両者共、疑いはしなかった。
両方の世界がどちらも特殊な世界だったというのもあり受け入れられる話だった。

文人は死んであの世界に行かなければ、直斗は事件に巻き込まれる前でなければきっと信じてはいなかったであろうという内容であった。
偶然とは時に必然的に話が噛み合うのだ。

「行くぞ貴様。それと貴様がなんて言おうと最初は音無さん探しからだ。神からの命令だ」
「ぅ、うん。わかったよ」

文人は口は悪いながらも襲おうとしたりする本当の意味での悪人ではないみたいだった。
直斗も素直な人で襲ったり、騙したりする人間でもないみたいだった。

それがお互い思っていた事であった。

32君は僕に似ている ◆WzpMn05TJA:2011/12/11(日) 20:12:17 ID:9ceVNipQO
【A-3 橋周辺/未明】

【直井文人@Angel Beats!】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:音無さんと合流したい。
2:音無さん以外の世界戦線メンバー、直斗の仲間探し。
3:島からの脱出。この島に不吉を感じている。
【備考】
※ユイが消える少し前からの参戦です。



【白鐘直斗@ペルソナ4】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:先輩方または戦線メンバーとの合流。
2:島からの脱出。
【備考】
※直斗救出から少し経ってからの参戦です。

33 ◆WzpMn05TJA:2011/12/11(日) 20:13:11 ID:9ceVNipQO
投下終了です

元ネタは機動戦士ガンダムSEED DESTINY4期ED『君は僕に似ている』からです

34強い意志 ◆WzpMn05TJA:2011/12/12(月) 00:44:03 ID:a2BVEF/EO
「さ、沙都子……。チクショウ!」

俺の最高の仲間であり、親友であり、ライバルであった沙都子が死んだ。
あいつが何をやったってんだよ!

確かにあいつは口は悪いし、すぐに罠を作るし誉められる様な奴じゃない。
だからって死んで良い理由にはならないじゃないか!

あいつは明るくてみんなを元気にさせる良い奴なんだぞ!
折角こないだ沙都子を助けられたっていうのに……。

絶対に殺し合いなんかに乗らない!
沙都子を殺した奴らの言う事なんか聞いてたまるかよっ!

仲間を信じればこんなゲームを終わらせる事だって出来るはずだ!
仲間を信じられない人間の末路を俺は知っている。
それはどこか遠い世界の俺で、自ら平和を……。レナと魅音を殺して、1人寂しく首をかきむしって後悔しても後悔仕切れずに死んだ。

「よし、行くか!」

俺は自ら誓う様に信じられる仲間を探しに出た。

―――――

「はわわわわ……。い、一体なんなんですか……。本当に首輪があるし、キョン君達も名前にあるし」

とある民家に入り、身を隠し私は震えていた。
死んでしまった3人の死を見て私は怒りや悲しみという感情より、恐怖の感情が強く出てしまった。
これはまた全て無意識に思い通りになる涼宮さんの影響なのではないかと考えるが、涼宮さんがこんな事を望むのか、いや望むわけがない。
長門さんなら何か知っているかもしれないけど。

「それにしても変な物しかないなぁ……。身を守れる盾の様な物が欲しかったな」

くじらの包帯と説明されていた物と自分にとっては愛着があるメイド服(圭ちゃん専用って何?)に10年バズーカっていう武器じゃなくて何か現在の自分と10年後の自分を10分間入れ換わるらしい。

と当たりなのかどうかというか、ハズレなのではないだろうか?

「こんなんじゃ私もあの子達みたいに……」

首輪が作動したあの光景がフラッシュバックされる。
目を逸らしたくなる出来事が何回も何回も、グルグルグルグルと脳内再生される。
いつかの夏休みの時間みたいに。

「大丈夫ですか〜?」
「っ!?」

ビクンと反応する。
心臓がドキドキと鼓動し、今や殺されるのではないかと身構える。

「安心しな、俺はこのゲームには乗っていない。協力して仲間になってくれ」

真っ直ぐな目をした、熱い男ってイメージで、周りにはいないタイプの人だった。

――名を前原圭一と。

―――――

「そ、そんな……。前原さんのお友達があの少女?」
「……はい」

話が出来る人が居ないか民家に入り込んだがすぐに当たりが出て、朝比奈さんという協力的な人物と出会えた。
戦力とは言いにくい俺と同じ中学生の様だと思ったら高校2年であり少し驚いたのは内緒である。

「実は私、このロワイアルの原因かもしれない事があるんです」
「なんだって!?」

シャルル達が仕組んだこのロワイアルの原因!?
まさか、こんなすぐに考えられる事があるのか?

「可能性は低いんですけど私の友達に涼宮ハルヒって人が居て〜」

SOS団、宇宙人、未来人、超能力者、なんか非科学的な事ばっかり言われたぞ?
流石に昭和の今で信じる奴は居ないだろう。

35強い意志 ◆WzpMn05TJA:2011/12/12(月) 00:44:25 ID:a2BVEF/EO
あれ?
俺の知り合いにも不思議なあの子が居るじゃないか。

色々と過去を知っているあの子が。

「俺の知り合いにも居ました!古手梨花っていう仲間が!何か原因を知っているかもしれません」
「古手さん?」

体験を交えながら俺は梨花ちゃんの話をする。
そういう話には怯えていた人とは考えられないくらい理解を持ってくれた。

「どちらにしてもその涼宮さんか梨花ちゃんを探さないとな。数ある民家の中でここに入って来る奴が居る可能性なんか低いだろうし」

まぁその低い可能性を当てたのは俺なんだがな。

「で、でも私武器がなくて……」
「女の子になんか戦わせられないよ。俺が朝比奈さんを守りますよ」

普通はレナや魅音みたく戦える女の方が少ないだろうしな。

俺には剣が支給されていたし戦う事も出来るだろう。

「朝比奈さんの仲間が涼宮ハルヒとキョンと長門有希と古泉一樹だな」
「前原さんの仲間は竜宮レナ、園崎魅音、園崎詩音、古手梨花ですね」

2人の探し人を理解する俺と朝比奈さん。

俺をリーダーに朝比奈さんと仲間と合流及び島を脱出、または主催者撃破を目指すチームが動きだした。

「ところで圭ちゃん専用って前原さんのですかこれ?」
「魅音のです」

朝比奈さんが変態を見る目になっているじゃないか。


【E-8 民家/未明】

【前原圭一@ひぐらしのなく頃に】
【装備:エクスカリバー@Fate/stay night】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:朝比奈さんを守る。
2:仲間との合流。
3:島からの脱出か主催者の撃破。
【備考】
※皆殺し編の沙都子救出後からの参戦です。



【朝比奈みくる@涼宮ハルヒの憂鬱】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 黒神くじらの包帯@めだかボックス 圭ちゃん専用メイド服@ひぐらしのなく頃に 10年バズーカ3/3@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:前原さんに着いて行く。
2:仲間と合流。
【備考】
※涼宮ハルヒの消失後からの参戦です。


【エクスカリバー@Fate/stay night】
第四次、第五次聖杯戦争にてセイバークラスで召喚されたアーサー・ペンドラゴンの宝具。使用者の魔力を『光』に変換し斬撃にとして放つ。
このロワイアル内にて魔力のない人間は体力を使えば斬撃を出せるという制限をかけています。

【黒神くじらの包帯@めだかボックス】
めだかの姉のくじらが顔に巻いている包帯。

【圭ちゃん専用メイド服@ひぐらしのなく頃に】
魅音達が部活の罰ゲーム時に圭一に着せるメイド服。

【10年バズーカ@家庭教師ヒットマンREBORN!】
ボヴィーノファミリーに伝わる武器。弾が当たった人物を10分間だけ現在の自分と10年後の人物を入れ替える。

36 ◆WzpMn05TJA:2011/12/12(月) 00:46:54 ID:a2BVEF/EO
テンプレートの5作品目終了

元ネタはひぐらしのなく頃に解11話皆殺し編其の六『強い意志』より

37名無しさん:2011/12/12(月) 08:56:31 ID:Te75RFuAO
スレタイから王様たちでロワかと思ったら違うのか

38 ◆WzpMn05TJA:2011/12/12(月) 12:54:50 ID:a2BVEF/EO
>>37

わかりにくいタイトルでしたかね?
一応王道展開や王道作品という意味にしたつもりでした

39嘘の境界 ◆WzpMn05TJA:2011/12/15(木) 19:23:47 ID:GEcqMrboO
『あれれー?僕は確か今戦挙の途中だったはずなのになー?』

不吉と嘘をばらまきながら青年は呼ばれた様なものだった。
常に屈託なく喋り、嘘か本心かわからない言葉を投げかけ、他者を簡単に踏みにじる過負荷。

そして箱庭学園の生徒会戦挙にてこの青年は昨日庶務戦にて中学時代の後輩人吉善吉に自ら降参をしたにも関わらず、攻撃を仕掛け2人一緒に死んだ……はずだった。

『大嘘憑き(オールフィクション)』
この過負荷である青年のスキル。
現実(全て)を虚構(無かった事)にするスキル。

全て彼、球磨川禊の『大嘘憑き』により無かった事にされる。

『うーん。こんな過負荷の力が制限されているってわかるけどそんな未知の力をバトルロワイアルに使うなんて僕には理解出来ないなぁ』

彼の読みだと主にジャンプなどで人気のバトル漫画でチートと呼ばれる『死んだ人(自分を含め)を蘇る』事と『どんな傷も完全回復する』事が出来る自分の力の制限に気付く。
だが彼にとっては『死んだ事』を無かった事に、『傷を受けた事』を無かった事にするマイナスの力であるのだが。

『僕ならそうだなー。女子は全員裸エプロンで僕に奉仕させるかなー』

と嬉しそうに声を上げながらデイパックを漁る。
楽しいおもちゃでも見つけるみたいに楽しそうな顔で。
バトルロワイアルに巻き込まれた事が『嘘』である様な顔で。

『へー。僕に対してこんな武器が渡るなんて主催者も狙ってんじゃない?なんてね。おや?あれは確か……』

そこで、彼の視界に見覚えのある人間が目に入った。

―――――

人の気配がする。
と男は本能で隠していた武器を袖から取り出す。

本来は何百といった数の武器を体中に隠しているのだがその武器全てが彼から没収をされていた。

その為支給された武器のハルバードしか手に持つ事が出来なかった。
他2の支給品である壊れているストーブと防犯ブザーは役には経たない。

「確か君は球磨川禊」
『そうだよ、僕は球磨川禊だよ。宗像君』

宗像形は少し前に禊と戦った。
だが禊の『大嘘憑き』の前に敗北し、大きな精神的な傷を負った。
だがそんな禊もめだかに負け副会長になり悪さはしなくなったらしいが。

『やぁ、こないだぶりだね宗像君。それにしても変だね?心に大きな傷を負わせたはずなのにピンピンしているし。めだかちゃんの会長の座を奪おうとしている敵なのに襲わないなんて。また僕の『大嘘憑き』を見せようか?』

ここで自分と禊の記憶に違和感を感じ始めた。
彼はめだかに負けて副会長として和解をしたはず。
『大嘘憑き』は『脚本作り(ブックメーカー)』を安心院さんから返してもらった代償に使えなくなったはず。

食い違いが起きていたルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとシャルル・ジ・ブリタニアの会話から推測される答えは1つ。

この球磨川禊と自分が呼ばれた時間が別時間の者であると。

「君には借りがある。だから殺す」

だから敵対している意志を見せ、ハルバードを禊に向けると禊はまた楽しそうに語る。

『うん。僕と戦おう宗像君。そうだ、君これに斬られない?』

と右手の刀を触りながら禊は彼に語りかける。

「斬られない。だから殺す」

ハルバードで斬りつけにかかるが、禊の持っていた刀により攻撃を受け止められる。

手の刀とハルバードに力が行くなか形は視線を下げそのまま蹴りを飛ばす。
その蹴りをくらい砂埃を上げながら後ろに飛ばされる禊。

『うーん。君にこれで斬るのは無理かなぁ』

降参とばかりに手を上げる禊。
昔の彼のすぐに降参する癖は人吉善吉との戦いで既に知っている。
この言葉を吐いてから禊の本気が始まるのだ。

40嘘の境界 ◆WzpMn05TJA:2011/12/15(木) 19:30:43 ID:GEcqMrboO
『そんな構えないでよ宗像君。僕はこれ以上攻撃しないから。ところで君は殺人衝動があるんだってね』
「情けで教えるよ。それは事実だ。僕は人間が大好きだ。だがらたとえこの場がバトルロワイアルの会場でも君でも誰でも僕は殺さないよ」

それが聞きたかったとばかりに笑う禊。
目の前にして前回の初対面時より悪化している事に気付く。

『じゃあその人間が好きな感情を無かった事にすればただの殺人衝動のある狂人になるんだね』

形が理解した時には既に遅かった。
止める暇もなく……。

「何っ!?や、やめっ――!?」
『大嘘憑き』

―――――

「今日はバトルロワイアルに巻き込まれた。だから殺す」

今の宗像形に人間を生かす感情を持ち合わせていない。
そして、禊でさえ『大嘘憑き』で無かった事を無かった事にする事も出来ない為、彼を止める方法はない。

彼は殺人衝動に駆られる殺人鬼と成り果てた。

【C-5 野原/未明】

【宗像形@めだかボックス】
【装備:野田のハルバード@Angel Beats!】
【所持品:支給品一式 壊れているストーブ@Fate/stay night 防犯ブザー@現実】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:みんな殺す。
2:だから殺す。
【備考】
※戦挙編〜次世代育成プログラムの間からの参戦です。


―――――

『大嘘憑き』を使い、いの一番に形から逃げ出した禊。

『結局宗像君にこの武器は試せなかったな〜。まぁ僕としてはこのロワイアルに巻き込まれたと予想するめだかちゃんか善吉ちゃんに使いたいところだよね』

なんの変哲のない刀の形をしているが実はとんでもない能力があるらしい。

『ブック・オブ・ジ・エンド』
殺傷能力はほぼ皆無。だが斬った対象の者や物に過去に自身の存在を挟み込み、過去を改変させる力があるらしい。

『嘘』で出来た様な彼にお似合いな『嘘』の武器である。

『でも絶対シャルル・ジ・ブリタニアって奴も郷田真弓って奴も朝倉涼子って奴もこのゲームの参加者全員も僕も道化だよな。これも安心院さんが絡んでいるんじゃない?』
『ずるいよな〜。ドラゴンボールとかでも、まさか今更レッドリボン軍が絡むの?って感じのセル編ぐらいにさぁ』

大好きな少年マンガと、今自分の置かれている現実で起こり得る事と同じに並べながら。

目的無き散策が始まる。


【C-5 野原/未明】

【球磨川禊@めだかボックス】
【装備:ブック・オブ・ジ・エンド@BLEACH】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:『目的なんて無いよ』
2:『安心院さんでも絡んでんじゃない?』
3:『めだかちゃんか善吉ちゃんにブック・オブ・ジ・エンドで斬りつけたい』
【備考】
※戦挙編の庶務戦終了後からの参戦です。

【野田のハルバード@Angel Beats!】
野田愛用のハルバード。槍の様に長く、刃先は斧の様になっている。

【壊れているストーブ@Fate/stay night】
衛宮士郎が直しているストーブ。

【防犯ブザー@現実】
鳴ると煩いブザー。

【ブック・オブ・ジ・エンド@BLEACH】
斬られた者や物の過去に自分の存在を挟み込む。

41 ◆WzpMn05TJA:2011/12/15(木) 19:33:11 ID:GEcqMrboO
投下終了

元ネタは『空の境界』より

42 ◆SENAs8NCE2:2011/12/17(土) 14:13:10 ID:qVcx0m/o0
涼宮ハルヒ、上条当麻、宮沢謙吾を予約したいのですがよろしいですか?

43 ◆WzpMn05TJA:2011/12/17(土) 15:01:52 ID:M4e8Y0sYO
>>42
どうも大歓迎です

このロワイアルは非リレーではないので遠慮しないで大丈夫ですよ(^-^)

44 ◆xR8DbSLW.w:2011/12/17(土) 16:42:30 ID:GCe4YMiQ0
はじめまして。
阿良々木暦、仲村ゆり 以上二名を予約させていただきます

45 ◆xR8DbSLW.w:2011/12/17(土) 17:54:16 ID:GCe4YMiQ0
あの一つ聞きたいことができたので。

このロワ内の作品の出典はいかがな感じなのでしょうか。
阿良々木暦を予約するときには忍野忍がいますし媒体は小説でいいかなとは思いましたが、
なんか不安になってきましたので一応尋ねておこうかと。
お手数おかけしますがよろしくお願いします

46 ◆WzpMn05TJA:2011/12/17(土) 18:30:43 ID:M4e8Y0sYO
>>45
名簿では別々なのでペアリングが切れている様な設定で良いと思います

書き手さんの意見を尊重致しますのでご自由でOKです

緩い感じの管理人ですのでお気になさらずとも構いませんです



たくさん予約も入り、自分もやる気が出てきました!
では投下します

47それと便座カバー、それと…… ◆WzpMn05TJA:2011/12/17(土) 18:33:39 ID:M4e8Y0sYO
「こ、殺し合い?ほ、本当にそんな事に巻き込まれているのかなぁ?」

私が目を覚ますと一番最初に出た言葉がこれだった。
普通の学生で、普通の一般人の自分がこんな殺し合いに巻き込まれた理由が思い当たらない。

喧嘩もなく。
問題もなく。
異常もなく。

いきなり、理不尽に、唐突に巻き込まれてしまった。

デイパックを開けると主催者が言っていた様な食料や地図など必要最低限の物は入っていた。

そして中には夏によくお姉ちゃんと食べるそうめんが3袋が出てきた。
そして鍋も入っている。
これに水がたくさん手に入れば食料には2日ぐらいは持つだろうか?

デイパックの最後の1つの支給品は黒光りした不思議な形をした鉄の塊だった。

いや、不思議というより見慣れていて、見慣れない形をしていた。

―――――

「こんな武器で人を殺すなんて犯罪だよ」

お姉ちゃんは医者をしている。
医者であるお姉ちゃんに仕事を増やすわけにはいかない。
あまり繁盛はしていないのだけれど……。

「誰か居ませんかー。殺し合いには乗っていませんよー」
と風と共に誰か男の人の声が聞こえた。

「わ、私も殺し合いには乗っていないよー」

遠くから見ると金髪で不良そうには見えるのだが、ただ悪ぶっているだけの優しそうな学生さんの姿が見えた。

私は彼は本当に人を殺さない人だと直感し、彼に近付いて行った。

―――――

「僕の名前は春原陽平です」
「私は霧島佳乃だよ〜。よろしく」

聞くと高校3年生らしい。
私より少しだけ年上らしい。

「いや、困ったよ。目が覚めるといきなり殺し合いをしろだし、信頼出来る知り合いには合流出来ないし」
「私もそうなんだぁ」

自分と陽平君が自分と同じ様な事になっていたらしく親近感が湧く。

「僕には何に使うかわからない様な赤いビー玉が」
「私にはそうめんと鍋なんてのがあったよ」

一般的に市販されているそうめんのパッケージを陽平君に見せる。
陽平君は「こんなのも支給されるんだ」と驚いていた。

「それと便座カバー」
「あはは〜。なにそれ〜」

真面目な顔をして便座カバーを出して変なマネをする陽平君が可笑しくて笑ってしまう。

48それと便座カバー、それと…… ◆WzpMn05TJA:2011/12/17(土) 18:37:50 ID:M4e8Y0sYO
私、こんな楽しい人と出会えて良かったかも。
往人君ぐらいに変な人だけど面白い人だ。
またお姉ちゃんと往人君とポテトと私で遊びたいな。
いや、次は陽平君も混ぜても楽しいだろう。

「こんなバトルロワイアルが終わったら陽平君を私の友達とお姉ちゃんと混ぜて遊びたいな〜」
「え……?」

なんて夢を語る。
でも少しくらい夢を語っても良いよね。
いつ死ぬかわからないんだから。

「僕の支給品はビー玉、それと便座カバー、それと――」
「な、なんで……。よぅへぃ君……」

その『いつ』かは、今来ていた。

―――――

「ひ、ひぃ……」

いつも岡崎や杏相手に驚く様な高い声が僕の口から出ていた。

理由は1つ。
自分で手にかけた事により、命を失った少女の体が横たわっているから。

僕は殺すつもりは無かったんだ。
なんて誰も聞いていない言い訳を自分以外の誰かにしていた。

「じゃあ僕はなんで佳乃ちゃんを殺したんだ?」

自分の右手に握られてある血塗られたサバイバルナイフを凝視しながら思い出す。

直前の佳乃ちゃんの行動。
直前の佳乃ちゃんの仕草。
直前の佳乃ちゃんの言動。

『こんなバトルロワイアルが終わったら陽平君を私の友達とお姉ちゃんと混ぜて遊びたいな〜』
確か佳乃ちゃんはこう言っていた。

「そういう事か」

頭が悪い自分でもわかってしまった。
ついさっき自分が衝動的に佳乃ちゃんを刺して殺してしまったのか。

「佳乃ちゃんがお姉ちゃんと単語を出したから僕は芽衣を思い出したんだ……」

自分がもし死んだら兄として誰が芽衣の成長を見届けてやれる?
自分がもし死んだら兄として誰が芽衣をしかってやれる?
自分がもし死んだら兄として誰が遊んでやれる?

誰も彼も、変わりなんか務められるわけないじゃないか!

「佳乃ちゃん……ごめんね」

本人に聞こえない謝罪。
だが僕はこれを彼女に言わなきゃ、自分が罪の重さに絶えられなくなり自分も死んでしまいそうに感じてしまったから。

佳乃ちゃんのデイパックの荷物を全て僕のデイパックに移す。
こんなところで武器が手に入るのもラッキーだ。

「せめて顔くらいは隠してあけないと……」

ポケットにはハンカチはないし、デイパックには便座カバーがあるのだがそれでは失礼過ぎる。

だから彼女が大事そうに巻いていた黄色のバンダナを顔に乗せてあげた。

「さよなら、佳乃ちゃん。さよなら、元の自分」

僕は良心ある元の自分を佳乃ちゃんと棄てた。
いや、佳乃ちゃんと一緒に殺した。

そのまま僕は自分を置いてきた。


【霧島佳乃@AIR  死亡】

49それと便座カバー、それと…… ◆WzpMn05TJA:2011/12/17(土) 18:38:44 ID:M4e8Y0sYO
【H-1 野原/未明】

【春原陽平@CLANNAD】
【装備:サバイバルナイフ@現実】
【所持品:支給品一式 赤いビー玉@Kanon 便座カバー@現実 そうめん@AIR 鍋@現実 ベレッタM92(15/15)ベレッタM92の弾丸×15@現実】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:優勝してこの島から帰る。
2:生き残る為ならどんな事だってする。
【備考】
※渚ルート終盤からの参戦。
※佳乃の支給品を回収しました。


【サバイバルナイフ@現実】
軍事行動中、遭難などで他の装備をなくした時に、何とかして生き残る為に設計された大型のシースナイフ。

【赤いビー玉@Kanon】
祐一が名雪に勝ってあげたビー玉。

【便座カバー@現実】
便座につけるカバー。かの有名な『それと便座カバー』は陽平の迷ゼリフ。

【そうめん@AIR】
聖が往人と佳乃とポテトに振る舞った流しそうめんに使ったそうめん。

【鍋@現実】
普通に使えば調理、叩けば痛い、防御には被る。万能。

【ベレッタM92@現実】
ハンドガンともいう。装弾数15発と豊富で操作性も高い。知名度も高い。

50 ◆WzpMn05TJA:2011/12/17(土) 18:42:11 ID:M4e8Y0sYO
投下終了

元ネタは陽平の迷ゼリフ『それと便座カバー』より

51 ◆WzpMn05TJA:2011/12/17(土) 18:46:55 ID:M4e8Y0sYO
テンプレートの7話(だっけ?)全て投下致しました

次からは1話ずつ予約と投下します


音無結弦、相沢祐一、キャスター、更木剣八を予約します

52 ◆xR8DbSLW.w:2011/12/18(日) 00:33:58 ID:tYBnHDMg0
投下乙です。
………春原乗っちゃったか。
佳乃ちゃん南無。keyヒロインがどんどんと脱落してくな。

では自分も投下をさせていただこうかと。
阿良々木暦、仲村ゆり の二名です

53僕に捧げるIの詩 ◆xR8DbSLW.w:2011/12/18(日) 00:37:05 ID:tYBnHDMg0

 □


青春に君の死は―――――?


 □


今回の件、『バトルロワイアル』という言葉に僕は無論のこと馴染みはない。
つい先ほど聞いたばかりで馴染めというのが無理な話で、その内容もその居心地の悪さを促進しているだろう。
『バトルロワイアル』。
簡単に言っちまえばそれは殺し合い。
殺し合い、人と人とが、ないしは人と怪異が互いに互いを殺し合う、ただそれだけのこと。
それだけという言葉を使えば中々に危機感が衰えてしまっているがこの場合の「それだけ」とは言ってることが単純、といってることに対してだ。
まあ。
内容については言うまでもなく、意味不明だ。意味朦朧、魑魅魍魎。
これまでの人生に置いて僕に人の死というものが全く縁の無い代物という訳でもないけれど。
正直に言ってなによりも先行する気持ちと言ったら「理解不能」。
冷静でいられるかと言ったら勿論嘘になるだろうし、混乱していないと言えばそれはれっきとした戯言だろう。

もう一度言うが、僕は理解に追い付いていないのだ。
別に悲しんでいる訳でもなく、憤っている訳でもなく。
喜ぶわけないし、可笑しいわけでもない。
ただ呆然と、愕然と突っ立っている、といってもさほど間違いじゃない。

せめてもの救いとして、僕は運が悪かったから。
そう、不運の塊だ。だから僕は参加させられたのだと思いたい。
けれどその救いの求めも虚しく、明らかに確信犯だということは残念ながら容易に考えついた。
かつて蟹に行き遭った少女、戦場ヶ原ひたぎ。
かつて猿に願った少女、神原駿河。
かつて蛇に巻きつかれた少女、千石撫子。
かつて猫に魅せられた少女、羽川翼。
かつて人と巡り遭った少女、忍野忍。
その少女ら。
僕の知り合いが一同に固まって参加している時点でもうその可能性は低い。
どう考えたところで、落ちこぼれであるところの僕には狙われたという可能性しか見取れなかった。
無論のこと、僕には心当たりがあるわけではない。
そりゃあ最近は自由奔放すぎた一面こそ見受けられたかもしれないが、それもそこまでだ。

異常事態、非常事態。
一度は投げ出した命とはいえども、一度は放り出した生とはいえども。
惜しくないと言えば答えはノー。
少なからず僕は今のこの生活は好きであるし失いたいとは思わない。
だがそれでも事態は進んでいくのだ。

目先の見えない物語。
足跡が消えてく物語。

そんな物語は今ここに確かに存在していて、進行していた。
現在進行形、決して能動的な物語ではなく受動的な形であれども僕が巻き込まれた物語。
後日談でもないしオチでもない。どころか、いつもで言うところの零の文ですらない。

それでも。
それでもなお。
僕はこの物語のことを早々と語ろうと思う。
それはいわば、僕は一語り部としての責任がありこれもまた義務であろうと僕は思い至る。

いまだ終わってもいない物語を。
そして始まってもいない物語を。


いずれにしたところで。
僕の命が、物語を語り尽くせるまであるかなんて、分からないのだけど。


それでも良ければ。
自己満足として、僕は語ろう。

54僕に捧げるIの詩 ◆xR8DbSLW.w:2011/12/18(日) 00:37:21 ID:tYBnHDMg0



 □



締めというか今回のオチ。
始まって数分、何故だか僕は寝ていた。
あの縁と紫の塊であるところの学習塾跡の廃墟で。

「あー………」

僕の声はむなしく廃墟に響いた。
なんかあれは夢だったのかなあ。
よくわかんない学校に呼び出され、首輪が爆発して、人が死んだなんて。
夢だったのか、幻だったのか。
いや。

「そりゃないな」

大体あんな胸糞悪いくせに現実味がいやにびったりと纏わりつく夢なんて見てたまるか。
じゃあこれは一体全体なんだというと、答えは決まっている。

これは現実だ。
現実的でも、現実味でもなく正真正銘の現実だった。

ならば次の議題だ。
何故、この建物がここにあるのか、ということなのだが。

まあ、簡単に言うなれば。
先ほど僕が意識を手放していった原因と直結するんじゃないかな。
魔法の様な、なにか。
言うならば――――怪異の様ななにか。

「怪異………か」

ここにいると、何故だが八九寺のことを思い出す。
僕が最後に『くらやみ』と対面した場所だから。

瞳を閉じて、思い耽る。
確か少女と幼女と童女の三連コンボで戯れていた時。
それは突然現れて、忍と僕の結びを引き千切り、そして八九寺の消失の最もたる間接的要因となってしまった。
それがなにかと聞かれたところでやはり僕にはどう答えればいいか戸惑う。
あの人に、僕をこよみんと呼ぶあの人に色々教えて貰ったちゃあ貰ったが、よく理解していない。
そんな事を考えていた場合でも無かったような気がしたから。
まあ。
その嫌な胸騒ぎも見事的中して今のように色々と無念でハチャメチャで不条理な展開が続いている訳だけど。

そういえば、あの主催者であろう三人が言ってたな。
願いを叶える、とかなんとか。
だったら「八九寺真宵の復活」を願えば、また八九寺に遭えるのだろうか。
僕を好きだと言ってくれたあいつに逢えるのだろうか。
とはいえ、願うつもりもないのだけれど。
それは意を決して自らを犠牲にしたあいつに対して失礼だ。
失礼、噛みました。程度では済まされない。

と、僕は寝がえりを打ちながらぼんやりとそんな事を考える。

はあ。
全くどうしたものか。これから。
まずはみんなと合流して無事を確かめる、というのが先決だな。
…………ていうよりかはみんな殺し合いなんかに乗ってないよな?

まあ千石は乗るわけないよ、あんな性格だし。むしろ僕みたいな紳士じゃない人に襲われないか心配だ。
千石が絶滅しちゃ―――やっぱだめだよな。

羽川は難しいところだ。
勿論彼女を信じたい気持ちはある、だから「普通状態」の彼女に対してはさほど心配を抱いてはいない。
だが、一つ忘れちゃいけないのがあの猫。「ブラック羽川」。
ストレスの権化。ストレスの放出口。
彼女がこの殺し合いに巻き込まれたことで、再度ストレスが溜まるなんて話、ないわけではないだろう。
そこからなにかが発展することは逃れられないかもしれない。あいつ馬鹿だから何やるか分かんないし。

神原は…………どうなんだろうな。
あいつは変に畏まった奴だし、下手なことを起こす奴だなんて毛ほども思わないけど。
万が一のことを考えて、戦場ヶ原の為に善からぬことを起こそうとしている、なんて事はあるかもしれない。
さながら、五月の下旬に起きた一件の如く。

忍に関しては大丈夫だろ。
あいつにはそんな力は既にない。むしろ僕が死んであいつが元に戻る―――なんてことは避けなければならない。

最後に。
戦場ヶ原ひたぎ。
僕の恋人。
彼女はどうなんだろうか。
キャラとしての切れが無くなった今なら大丈夫なんだろうか。
だけど今だって時折見せる、毒舌時代の名残が蔓延しないだろうか。
それが心配だ。

まあ。
何はともあれ、僕が動かないことには意味がないだろう。
だから僕は動こうと思う。

……………。

ああ、なんかなー。
起きるって案外大変なんだな。

55僕に捧げるIの詩 ◆xR8DbSLW.w:2011/12/18(日) 00:37:35 ID:tYBnHDMg0
吸血鬼って夜行性だけど今の僕はペアリングも切れてることも相重なり、そんな言うほどじゃないんだよな。
こんなときに、役に立たないんだな。あの火炎姉妹。
たまにはさ。「いつまで寝てるの? お兄ちゃん。起きてよう」なんて…………。


「いつまで寝てるのよ、死ね」


その声に驚き、目を見開くと。
僕の頭に鉈が振りかざされていた。


「うおおおっ!」

飛び跳ねる様にそれをかわす僕。
いや、かわし切れずに髪の毛の少しが持ってかれた。
そしてその髪の毛を散らしながら鉈の先端は床を突き刺した。

心臓がバクバクと言っている。
よ、よかった……。生きてる。

見れば、そこには見知らぬセーラーを着た女の子が呆れた表情で僕を見ていた。
凍てつくような鋭き眼。やだな、興奮するじゃねーか。
じゃなくてだな。

「お、おまえ何やってんだよ!? 見知らぬ僕を殺す気か!?」
「あんたが何回呼んでも起きないからでしょう。そんな奴一回死ねばいいんだわ。
 せっかくこのあたしが起してやってんだから起きるべきなのよ、死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ねばいいんだ」
「おまえなんかひでー横暴なキャラになってるぞ!? 何回死ねって言ったんだ!」
「死んだ世界戦線のジョークの応用よ。そのぐらい察しなさい」
「意味分かんねえよ!…………って、は? 死んだ?」

唐突なんだ。
おかしな子だとは感じたがまさかの電波か。
最近流行りの。

「成程ね、あなたも音無くんと同じく記憶がないのね」

と、言うが否や。

「じゃあ簡単に」

なんていって。
懇切丁寧、分かりやすく説明してくださったおかげで僕の頭はちんぷんかんぷんとなった。


 □


以下要約。


Q1:「死んだ世界戦線とは何?」
A1:「死んだ世界で神に抗うために作られた戦線名よ。………まあころころ変わるけどね」

Q2:「死んだ世界って?」
A2:「簡単に言うと死んだ人が行く世界、そこでは『死』って観念がないわ」

Q3:「具体的には?」
A3:「『死ぬ』という行為を行った人は数分もすれば元通りに再生するって感じかしら」

Q4:「それは僕の記憶と合致しないのですが?」
A4:「記憶喪失なんてことは割とあるものよ、さっき言った音無くんって人もそうだったし。…………ていうか今思ったけど声似てるわね」

Q5:「むしろ貴方が間違っているという可能性は?」
A5:「それはないわ、生前の世界から死後の世界に行くことはあっても死後の世界から生き返るのなんて恐らく不可能だわ。成仏するだけよ」

Q6:「根拠は?」
A6:「さっき、首輪爆発した時、さして時間を経たずして転送させたでしょ? あたしだったらそうはしないわ。
   だってあたしの様な人間だっているんだし、本当に『死』を与えたいのなら時間をおくべきだったのよ。警告だってしてたし。あの男の人で」

Q7:「転送について何か心当たりは?」
A7:「あの天使のスキルを盗めばどうとでもできるわよ」

Q8:「ならば、あなたはこの『バトルロワイアル』の意図は何だと思いますか?」
A8:「胸糞悪い悪趣味な『遊び』ね。付き合ってられないわ」

56僕に捧げるIの詩 ◆xR8DbSLW.w:2011/12/18(日) 00:37:50 ID:tYBnHDMg0

Q9:「ではこの『バトルロワイアル』での当面の目的は?」
A9:「あの三人とそれにつながっている人を殺す。そして元の学校に戻るわ。あーあと仲間にも合流したいわね」

Q10:「では最後に貴方の仲間は誰?」
A10:「音無結弦くん、日向秀樹くん、椎名さん、えーと……一応直井文人くん、ね」


以上要約


 □



あれだ。
簡潔にまとめると、

「僕は既に死んでいて、ここは死後の世界。そしてそこには『死』の概念がない」

とのご達し。
あれだな。よくわからない。
仲村曰く「そう言う人も偶にいるのよ」だって。
そりゃ僕という存在に『死』という概念は切っても切り離せないものだろうけど………。

それってありか?

理解する云々以前の問題として、それはいいのか? あり得るのか?
確かに僕は春休みに『死んで』いる。その時に死んだ世界とやらに行ったならまだ分かる。
だが、このタイムラグはなんだ?
僕の夏休みまでの生活はどうなったんだ?


……………さて、少し落ちこぼれの脳をフル稼働させてみよう。

パターン一。
八九寺真宵と類似するパターン。
幽霊パターン。
幽霊となって本来の人間には見えないしようとなっているが、
それこそ、怪異だか魔法だか天使の力やらでどうにかしたのだろう。
今僕の目の前に存在している。

パターン二。
阿良々木月火ちゃんと類似するパターン。
不死身パターン。
不死身だから死なないのは当たり前だ。
だが怪異を知らない彼女は、「死後の世界」という都合のいい世界を作り出して、
今現在まで生きてきたという、ある種の電波ちゃん。


しかし。
ふたつのどちらにしても言えることは、それは彼女一人の問題ではなく一つの学校を取り巻いていたということ。
だから僕はこう仮定づける。

例えばここに、「しので鳥」というある意味では馴染みのある「怪異」が彼女を蝕んでいた、ということとしましょう。
ですがそれでは彼女の言うような集団性が理屈付けれませんので、ここで「詐欺師」というものを挙げておきます。
いつかの千石の一件の如く、その「詐欺師」はありもしない「伝奇」を振りまき、その被害は一つの集団を巻き込んだものになったとさ。
その一人が彼女、仲村ゆりという少女でした。


うん、ここまでの理解度が限界だ。
要するに「怪異」の仕業ってことなのか?
……………ならば僕は働かなければならない。
理由なんて今さら必要ない。


女の子を救うのに理由なんていらないだろう。


まあ。
なんてわけで。


「まずは阿良々木くん。死んだ世界戦線に入らない?」
「ああ、是非入れさせてもらうよ」



少女の観察。
そして、できれば忍に解決してもらうとしよう。




こうして僕は、殺し合いへの抗いの第一歩を踏みこんでいった。

57僕に捧げるIの詩 ◆xR8DbSLW.w:2011/12/18(日) 00:38:03 ID:tYBnHDMg0
【B-5-塾の廃墟/深夜】

【阿良々木暦@物語シリーズ】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:仲村ゆりと行動、ついで観察
2:死んだ世界……ねえ
3:みんなとの合流、特に忍野忍、戦場ヶ原ひたぎを最優先
【備考】
※鬼物語で八九寺真宵が成仏してからペアリングが戻る前までのどこか
※ペアリングが切れているため、吸血鬼性は限りなく低いです
※死後の世界について凡そ聞きました


【仲村ゆり@Angel Beats!】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:気にいらないから主催どもを殺す
2:阿良々木暦君と行動
3:みんなを探す
【備考】
※ユイが消えるまでのどこか
※ここが死後の世界だということに思い至っていません
※怪異についてはまだ聞いていません

58 ◆xR8DbSLW.w:2011/12/18(日) 00:42:33 ID:tYBnHDMg0
以上で投下終了。
指摘感想等くれるとありがたいです。

て言うかごめんなさい。
題名ミスって、途中からになってる。

正しくは「Melodia〜僕に捧げるIの歌〜」でした。
誠に申し訳ない

題名元ネタ
歌手、藤澤ノリマのMelodia〜君に捧げる愛の歌〜  からです

59 ◆WzpMn05TJA:2011/12/18(日) 01:29:09 ID:Eq7Uui4UO
投下乙です

阿良々木君とゆりっぺの会話が中の人の意味もあってか脳内再生が何度もされ、ニヤニヤしてしまいました(^^)

昨日久し振りにリトバスの沙耶ルートをしていたから櫻井さんのVOICEが頭にたくさん浮かんできたりもして…

自分はあまり文章の構成力がないのですごく羨ましいです


ありがとうございました
年中無休で次回のご予約も受け付けておりますので機会があればまたご予約くださいませ

60 ◆vQfaAFC7Cg:2011/12/18(日) 02:22:24 ID:D8aono360
>>58さん
本日は投下ありがとうございます

滅多に顔を出さない方の管理人です

大変興味深く読ませていただきました

ゆりっぺの理不尽具合が最高でした!
また阿良々木ハーレムが増えて自分も喜んでいたりもしています


wiki収録へ入るにしての質問なのですがゆりっぺが暦を起こす際の鉈は調達品にしますか?それともランダム支給品に致しますか?


気を悪くさせたらすいません(^^;

こちらはたくさんのご予約を承っております
これからもこの王道ロワイアルを楽しんでいてくださいませ

61 ◆SENAs8NCE2:2011/12/18(日) 10:00:50 ID:bztqxIdw0
投下乙でした。
阿良々木さんは万能ですなあ

自分も、涼宮ハルヒ、上条当麻、宮沢謙吾投下します

62 ◆SENAs8NCE2:2011/12/18(日) 10:01:53 ID:bztqxIdw0
重い瞼をゆっくりと開けた。
少女の意識が段々と覚醒していき、そして大きな怒りが脳裏に蘇る。
無惨に殺害された三人の人間。彼女よりもずっと小さい子二人と筋肉質の男が、まさに『見せしめ』として余りにも惨たらしく殺害された悪夢の光景。
許せない。許せない。許せない。許せない許せない許せない―――!!

「許して、たまるもんですか」

少女・涼宮ハルヒは胸の内の恐怖心を押し殺して、静かに呟いた。
それを皮切りに、次々と苛立ちがハルヒの中で沸き上がってくる。自分たちの楽しくて騒がしい、愛すべき仲間たちとの日々を奪い去った主催者達への激しい怒りが。
キョン、長門有希、朝比奈みくる、古泉一樹。
誰一人として欠けてはいけない、大切な仲間達だ。
そしてSOS団の団長として、彼らを守る義務がある、と彼女は思った。

涼宮ハルヒは決して化け物じみた戦闘能力など持っていない。
学力は高いし運動神経もかなり高いが、所詮それだけだ。
銃を出されれば成す術がないし、不意打ちでもされたらひとたまりもない。
―――彼女は自覚していないが、本来存在した『願望を実現させる能力』も今は制限され、働くことはまずない。今のハルヒはただの人間だ。
だが。バトルロワイアルという悪趣味な催しへのありったけの敵意と、仲間を守りたいという強い意志。この二つに限っては、一点の曇りも存在しない。


「………みんな、待ってなさい。このあたしが助けてあげるわ!」


殺し合いの場においては軽率ともいえる大声だった。
さすがの彼女も口を押さえて、やばっ、と声を漏らす。
改めて辺りを見渡してみる限り、ここはレンタルビデオ店のようだ。室内ということもあり、声が割と店全体に響いてしまった。非常にまずい。
しかし既に遅く、かなり近くから人の気配が感じられる。
ほら、足音が段々と近付いてきて―――――。

「………えっと、誰か居るのか?怪しい者じゃないんだけど」

どうしよう。ハルヒは迷っていた。
声の人物は声からして自分と同じ高校生、そして男子といったところか。
相手が信頼できる人物かは分からない。『怪しい者じゃない』なんて自己申告を信用してしまうのは危険だった。だが、仲間になり得る人物だったなら話は別。
一人より二人、二人より三人の方が良いに決まっている。

「………おっかしいな、確かに声がしたと思ったのに」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」

ハルヒは声をあげていた。

63 ◆SENAs8NCE2:2011/12/18(日) 10:02:48 ID:bztqxIdw0

それは半ば反射的なものでもあり、ヤケクソ気味なものでもあった。
とにかくここでの出会いを無駄にしてはいけない、そんな気もした。

少し驚いたような表情を浮かべている少年。黒髪にツンツンヘアーが特徴的な風貌をしている。というかここまでツンツンした頭の人間見たことない、とハルヒは少し暢気ながら思っていた。少年の制服は少なくとも北高のものではなく、ハルヒのことを知る相手ではないようだ。
涼宮ハルヒは彼女の通う高校では結構な有名人だ。まあそれはどうでもいい。
どうもツンツン頭の少年には敵意はないらしい。少し安堵する。

「あたしはSOS団団長涼宮ハルヒ!!名を名乗りなさいウニ男!!」
「ウ、ウニ男!?上条さんはれっきとした人間ですよーっ!?」
「いいからとっとと名乗る」
「……………上条当麻です」

上条当麻。
彼は名乗る。ハルヒが敵ではないかなどと疑う様子はまるでない。

―――あたしの判断は正しかった!最初からいい仲間に会えたわ!

さすがはあたしね!なんて、ハルヒは少々舞い上がる。
何にせよ、上条という仲間を得られたことは彼女の心の弱い部分を補うことにつながった。まだ弱い、一人の少女の決意を後押しする。

ハルヒが予期しないほどに、上条との出会いは彼女を安堵させたようだ。

「そうだ、ビリビリ―――御坂美琴、白井黒子、一方通行。誰か会ってないか?探してるんだ。みんな信頼できる、殺し合いには乗らない頼もしい奴等だからさ」
「………残念だけど会ってないわね、じゃああたしも聞くわ」

この中の誰かに会ってないかしら?と言い、ハルヒは参加者名簿の名前を指差していく。残念ながら上条はここまでハルヒ以外に会っていないらしく、有益な情報は得られなかった。
互いに殺し合いに乗るような人達ではない、という点は合致していたが。
アクセラレータ、綴りは『一方通行』とは随分凄い名前だ。
興味を持って上条に聞くと、滅茶苦茶に強い奴だ、との返答。
扱いが難しい奴だけどな、と上条は頭を掻いて苦笑した。
そしてその後に、力強く付け足す。


「今のアイツはこんなふざけた殺し合いになんて絶対に乗らねえ筈だ。俺も負けてはいられねえ、必ずこの殺し合いを潰して、シャルルのクソ野郎をぶっ倒してやる」


ハルヒは初めてここで、この少年を頼もしいと思った。
自らの都合など省みず、他者の為に、悪を正す為に行動できる男。

彼女の知らない話。

64 ◆SENAs8NCE2:2011/12/18(日) 10:03:48 ID:bztqxIdw0
彼は一つの世界を幾度となく救っている。
その右腕に宿る正体不明の異能を殺す力『幻想殺し』によって。
先の学園都市最強の怪物・一方通行に打ち勝ち。
イギリスの第二王女のクーデターを防ぎ。
『神の右席』―――ローマ正教20億人の信徒たちのトップとも戦った。
神話級の大天使に突撃し―――――上条の記憶はそこで終わっている。
本来なら魔術組織『明け色の陽射し』に拾われる筈だったのだが、不幸にもその直前にバトルロワイアルに招かれてしまった。しかし、上条当麻は何も変わらない。
いつも通りに巨大な力に立ち向かい、いつも通りに誰かを守る。
偽善使い(フォックスワード)の詐欺師と蔑まれようが構わなかった。

英雄(ヒーロー)。人は彼をそう呼ぶ。
きっと彼はいつも通りに、哀れな参加者たちの希望となるのだろう。
シャルル・ジ・ブリタニア達は運が悪い。
よりにもよって彼を呼んでしまったのは、策の誤りだったろう。

「んじゃ行くか、涼宮」
「そうね、上条くんも知り合いを探したいだろうし」

二人は歩き出す。ごく、普通の行動。
バトルロワイアルのスタートとしておよそ最高の形でスタートを切ることができた二人は普通に仲間を探す。
しかし、物語は。


「―――――――――涼宮っ!!」


いつも通りの、普通の展開を嫌った。



「…………え?」

何が起きたのか理解できなかった。
上条当麻が不意に涼宮ハルヒを突き飛ばした。
続いて、渇いた粗末な音が響いた。
上条当麻の足元に、真っ赤な雫がこぼれ落ちた。
上条はよろめきながらも、倒れずに両腕を広げてハルヒに背中を向けている。

―――――――――ああ。理解した。

脳は理解することを拒否しているが、本能は確かに理解している。
ここはバトルロワイアル。そして参加者達には武器などが支給される。
もう逃げられない。涼宮ハルヒは、理解してしまった―――。


上条当麻は、涼宮ハルヒをかばって銃撃された。


「…………行け、涼宮。俺が『こいつ』を食い止める。お前は殺させない」

呻きに似たものが混じっていたが、上条はしっかりとそう言った。
ハルヒは首を横に激しく振る。逃げるなんて出来るわけがない。自分を守るために傷ついた男をみすみす死なせて生き延びるなど、ハルヒは認められない。
逃げるなんて出来ない。
上条の前方に見える銀髪に袴姿の青年はまだ銃を下ろしていないから。
上条は殺される。

65 ◆SENAs8NCE2:2011/12/18(日) 10:05:11 ID:bztqxIdw0
ダァン!!と、二度目の破裂音が大気を揺さぶる。
上条の肉体がまたよろけ、また元の通りに青年に立ちはだかる。

「早く、行け――――涼宮!てめえには大切な奴が居るんだろうが!!」

怒号。とても肉体の二箇所を弾丸に抉られた人間とは思えない。
足元の血溜まりがだんだん広がっていく。青年がもう一度引き金に指を掛ける。
ハルヒは震える足で静かに立ち上がった。
もう上条当麻は助からない。ハルヒ程度の技術では弾丸の摘出や銃創の処置、破損した内臓の処置などは出来ないのだ。たとえここに残っても、それは彼の遺志に背くことになる。自分は生きなくてはいけないのだ。無様に走り回ってでも、生きなければならない。
それでも、一言言わなければ気が済まなかった。

「あたし、生きるから」
「ああ、そうしてくれ」

涼宮ハルヒは走り出した。
上条当麻は確かに笑っていた。
振り返りはしない。そんな暇があるなら、より遠くに逃げなくてはいけない。
涙を流しながら彼女はレンタルビデオ店を飛び出した――――。


【H-4 レンタルビデオ店近辺/未明】

【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:疲労(中)、強い決意】
【思考・行動】
1:SOS団の皆を守り、バトルロワイアルを打倒する
2:生きる為に出来るだけ遠くに逃げる。
3:上条くんの知り合いも探す。
【備考】
※『涼宮ハルヒの暴走』終了後からの参加です。
※『願望を実現する能力』は完全に封印されています
※御坂美琴、白井黒子、一方通行の名前を記憶しました





「何故、お前は倒れない」

袴姿の青年、宮沢謙吾は困惑したような顔で上条当麻を睨んでいた。
おかしい。上条の胴体には既に四発の弾丸を撃ち込んでいる。
それなのに、上条は倒れずに手を広げたまま謙吾に立ちはだかっていた。
血塗れの体で、途切れ途切れに上条は言う。

「……俺、は、倒れねえさ。ここで倒れちまったら、てめえに負けたことになるんだから、よ。」
「何を言っている………お前が倒れれば、お前は楽になるんだぞ」

そうかよ、と笑い飛ばした。

「でも、な。てめえには、悪ぃが、男ってもんには、意地がある」

謙吾にだって意地はある。彼は何も自らの保身のために殺し合いに乗った訳ではない。命を賭してでも、達成しなければならない目的があった。
折れる訳にはいかない。たとえどんなに悲しい悲劇があっても、止まれない。
絶望の未来に一石を投じる為に、戦わなければならない。

「俺は、涼宮を生かしたかった。だから、あいつが少しでも遠くに逃げられるように、ここで俺が、てめえを食い止める」
「………すまない。俺には、目的があるんだ」

とても悲しそうな顔で、謙吾は彼の胸に銃口を向けた。

66 ◆SENAs8NCE2:2011/12/18(日) 10:06:17 ID:bztqxIdw0

乾いた音がした。上条当麻の肉体は今度こそ仰向けに倒れる。
もうその体は動かない。最期まで誰かの為に生きて、上条は死んだ。

「…………俺は、恭介を生き残らせなければいけない」

棗恭介―――彼の所属する『リトルバスターズ』のリーダー。そして、『繰り返される一学期』のゲームマスター。彼さえ生きていれば、リトルバスターズは終わらない。
たとえ彼以外全てが死そうと、彼さえいればまた繰り返せる。
自分は間違っていない。そう言い聞かせるその顔は、ひどく悲しそうだった。


【H-4 レンタルビデオ店内/未明】

【宮沢謙吾@リトルバスターズ!】
【装備:S&W M19(0/6)@現実】
【所持品:支給品一式、S&W M19予備弾薬×18、ランダム支給品×1、上条当麻のデイパック】
【状態:健康、強い決意、悲しみ】
【思考・行動】
1:恭介を優勝させる為に殺し合いに乗る。
2:理樹たちには会いたくないな………
【備考】
※Refrain開始直後からの参加です
※涼宮ハルヒの外見を記憶しました。
※上条当麻のデイパックの中身は後の書き手さんに任せます

【S&W M19@現実】
宮沢謙吾に支給。
装弾数6、予備弾薬18のリボルバー拳銃。



これは、走馬燈か。
ははっ。こうして見ると俺、かなり面倒事に首突っ込んでるな。
ああ、これは一方通行と初めて戦った時か。

御坂。お前と小競り合いすることももう出来そうにねえや、ごめんな。
だけど、お前と喧嘩したりするの―――そんなに嫌いじゃなかったぜ。

一方通行。お前は変わったな。守りたいものを得てから変わったよ。
今度はお前が、こんな下らねえ幻想をぶち殺してやってくれ。

これは白井を助けた時。結局敵はやられちまってて、何が起きたかいまいちよくわからなかったんだっけ。
白井は御坂を守ってやれ。あいつ、背負い込む所あるからな。

アウレオルス=イザード。
お前は多分俺たちと戦ったときとは違う人間になってるんだろうさ。
今度は、幸せになってくれ。

おっと、時間だ。
じゃあなみんな。―――――楽しかったぜ


【上条当麻@とある魔術の禁書目録   死亡】

67 ◆SENAs8NCE2:2011/12/18(日) 10:16:46 ID:bztqxIdw0
投下終了です。
題名:生き抜く事/守り抜く事
でお願いします

続いてアサシン、バーサーカーを予約します

68 ◆WzpMn05TJA:2011/12/18(日) 10:44:00 ID:Eq7Uui4UO
投下乙です

初の男の犠牲者になってしまった上条さんでしたがやっぱり熱い男ですね

ハルヒを逃がすシーンは個人的に大好きな展開ですね


そして健吾の行動は、やはりリトルバスターズの大切さが伺える悲しいシーンですね

Refrainの健吾シナリオを思い出してしまいました

69 ◆xR8DbSLW.w:2011/12/18(日) 15:11:56 ID:tYBnHDMg0
投下お疲れ様です。
上条さん熱いぜ……。まさしく「王道」。
彼の死が今後どのように動くのか楽しみなところ

で、指摘を貰いましたので。
以下のような感じで。

【仲村ゆり@Angel Beats!】
【装備:鉈@ひぐらしのなく頃に】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:気にいらないから主催どもを殺す
2:阿良々木暦君と行動
3:みんなを探す
【備考】
※ユイが消えるまでのどこか
※ここが死後の世界だということに思い至っていません
※怪異についてはまだ聞いていません



【鉈@ひぐらしのなく頃に】
林業や狩猟などの山林で働く人々の用途に適した刃物の類である。
一般的に斧、包丁、鎌、刀剣以外の大型刃物を総称して鉈という場合が多い。
竜宮レナが持ってる姿が印象的。仲村ゆりに支給された。

以上です

70 ◆vQfaAFC7Cg:2011/12/18(日) 15:42:32 ID:D8aono360
>>69
訂正ありがとうございます



それとやっぱり王道は最高ですね

71その男ら、凶暴につき ◆WzpMn05TJA:2011/12/18(日) 19:51:54 ID:Eq7Uui4UO
このバトルロワイアルにて、おかしいのは世界なのか?
それとも自分なのか?
はたまたおかしな事自体起きていないのかもしれない。

ただ最低であっても俺やその仲間をバトルロワイアルに混ぜる事自体が不自然だ。

何故なら、俺達は既に死んでいて、死んでも死んでもすぐに蘇ってしまうのだから……。

―――――

俺は街を歩いている。
普通、こんな街なら人は賑わいがあるだろう。
だが、このバトルロワイアルというゲーム内だからなのかはわからないが、人以前に猫一匹居ない。

こんなに静かなところの方がよっぽど死後の世界みたいだけどな。

死後の世界以上に死後の世界みたいな場所という印象を持った。
地図にて大きく表記された主要場所らしき寮を通り、街中を歩いているが全然人が見当たらない。

名簿を見る限り奏、ゆり、日向、直井、椎名が俺の知り合い。
それと顔だけ知っている相手と言えばさっき反抗を見せたルルーシュ・ヴィ・ブリタニアという外国人だけだ。

そして俺が生前には握る事は絶対になかろうと思われた拳銃も死後の世界に続きまたこの地で渡されていた。
拳銃には詳しくはないが、使った事のあるタイプなのかそれとも似たのを使った事があるのかはわからないが、支給された拳銃は使い方だけはマスターしてある。

「あ……」

なんて考えていると遂に俺は知り合いではないが、人と出会える事が出来た。
俺と同じぐらいの年頃の学生だ。

―――――

「俺の名前は相沢祐一だ」
「音無結弦だ、よろしく」

相沢は俺を見かけても襲いかかってくるわけでもなくこうして話し合える事が出来た。
話を聞く限りバトルロワイアルに怒りを感じており、殺し合う気はないと言う。

「ただ俺と音無が殺し合うつもりはないというだけでみんながみんな襲ってこないわけじゃないからな」
「そうだよな」

と既に死んでいる俺が自分の生死の方針を考えている事に驚いていた。
ただ未知なる力とかがあるなら本当に俺の存在を絶てるかもしれないな。
そんな答えがあるのかないのかわからない様な事を考えていると、相沢が普通の生きている人間が言うはずのない事を言及していた。

「いやぁ、音無は信じないかもしれんが、俺も最近魔物となんて戦っている奴を目の前にしていたからそういう事件に巻き込まれたのかもな」
「魔物……?」

相沢達も、もしかしたら俺達とは別世界の死んだ世界の住人なのかもしれない。

俺達も奏と対立していた頃を思い出す。
奏が天使だとみんなに言われてきての戦いの日々。
相沢達もその魔物と呼ばれている者のわかりあえない時期に直面しているだけなのだろう。

それは俺がどうこう口を挟む事情じゃないな。

「まぁそんなの日常茶飯事なんじゃないか?俺達は天使と戦っている生活を送っていたさ」
「お前はそんな非日常を日常茶飯事と言えるんだな……」

72その男ら、凶暴につき ◆WzpMn05TJA:2011/12/18(日) 19:53:43 ID:Eq7Uui4UO
別の死後の世界か……。
天使や魔物以外にも魔王や悪魔、死神となんて戦っている世界だってあるかもしれないんだよな。
俺が行き着いた死んだ世界とは別に死んだ世界があるのは驚いたが。

非日常を日常茶飯事と言えない相沢はただ、そういうのにまだ慣れていない最近来たばっかりの死んだ人なのだろう。
しばらくすれば慣れてしまうものなんだがな……。

「まぁ俺も最近になって結弦って名前を思い出したんだがな」
「名前が思い出せないなんてどんな日常茶飯事だよ!?それにしても結弦って女みたいな名前をしてるな」
「うるせーよ。バカにしてんのか!?」
「全然そんな事ないぞ」

と悪びれた風もなく笑う。
つい最近自分名前をやっとを思い出せたというのに心外だ。

なんて俺と相沢との距離が縮まってきたところだったのだが、最悪な出来事が俺達を待っていた。

―――――

「こんなところに贄が2人も居るなんてラッキーですよ」

結弦と祐一の話し声を聞いて辿り着いた者が居た。

大きな眼球が特徴的で、黒い格好。
見た限りでは人間に近いというだけで全然人間ではない者であった。

名をジル・ド・レエ。
そして仮の名はキャスター。

「怖がらなくてもいいんだよ?坊や」

と2人に近付くキャスター。
祐一はその辺に落ちていて空き缶を拾いあげそれをキャスターに投げつけると同時に結弦は祐一を引っ張る。

出会っては間もない2人だったが見事な協力プレーではあった。
だが、それは人間相手に通用するのでありサーヴァントである彼には避ける価値すらなかった。

キャスターは結弦に狙いを定めていた。
理由は魔力が高そうに感じたからだ。
結弦は死んだ人物で、言うならばサーヴァントと辿った道は同じである。
人間の霊体なままでサーヴァントではないにしろ結弦の方が一般人より若干魔力は高く感じられるのだ。

そしてキャスターが魔力を欲しがるには理由があった。
書物には何故か無限の魔力がなくなっており、術が使えなくなっていたのだ。
その為に彼には魔力が必要なのだ。

「こんな攻撃なんかどうですか?」

触手が結弦を襲う。
結弦が走ってもそれ以上の力で。

「クソッ!」

結弦がこんな事もあろうかと用意をしていた銃をポケットから取り出そうとした時だった。

――バンッ!
建物から爆発した様な音と共に触手を斬りつける男が居た。

「ハハハァ!俺も混ぜろよ!」

眼帯を付けて、固そうな髪がツンツンとしていて、その髪に鈴を付けている男であった。
急に乱入してきた男はキャスターに対してだけ敵意を向けていた。
結弦と祐一には全くと言っていいほど興味を示さない。

73その男ら、凶暴につき ◆WzpMn05TJA:2011/12/18(日) 19:55:05 ID:Eq7Uui4UO
「来いよ、破面(アランカル)」
「……アランカル?」

キャスターはそんな英雄が居るのか考えたがそんな英雄に心当たりはなかった。

「私はアランカルなどではありませんが?」
「そうか?まぁなんでも良い。お前強いんだろ?」

殺気でキャスターは気付く。
この男は大きな魔力になると。

「良いでしょう、相手になりますよ」
「へへっ!」

乱入者、更木剣八は戦える事が嬉しく笑いながら剣を構えていた。
片目だけでも楽しそうな表情なのが読み取れる。

【E-6 学生寮周辺/未明】

【キャスター@Fate/Zero】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:たくさんの参加者を贄にして魔力回復。
2:眼帯の男からはたくさんの魔力が得られそうだから贄にするつもり。
【備考】
※龍之介により召喚される前からの参戦ですので、サーヴァントの事に関して1人も知らない様な状況です。



【更木剣八@BLEACH】
【装備:10年後山本武の刀@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:強者と戦いたい。
2:ザコ相手には興味自体ない。
【備考】
※破面編終了後からの参戦です。
※キャスターの事を破面だと思っています。

―――――

「な、なんだあいつ!?怖っ!」

相沢が急に現れた髪がツンツンし過ぎの眼帯の大男の登場に驚いていた。

「あの大男は俺達には全く興味がないらしい。見ろよあいつの目」

74その男ら、凶暴につき ◆WzpMn05TJA:2011/12/18(日) 19:56:18 ID:Eq7Uui4UO
―――俺達を助けたのに、俺達の事なんか全く見えていないみたいじゃないか―――

「そうだな……。よし、こんな危険なところ逃げるぜ音無」

相沢が先に走り、俺が相沢より5歩程遅れてその後ろ姿を追う。

――こんな化物みたいな参加者がまだ他にも居るかもしれないのか!?

俺はどんなにどんなに遠ざかっても、2人が見えなくなっても、しばらくはあの2人がまだ目の前に居るかの様な恐怖心みたいな物から来る錯覚を覚えていた。

時間が経ってその錯覚が消えた時、俺は遅すぎる安心をようやく得る事が出来たのであった。

【E-6 学生寮周辺/未明】

【音無結弦@Angel Beats!】
【装備:CZ75@現実】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:披露(中)、健康】
【思考・行動】
1:殺し合うつもりはなく、このゲームからの脱出を考えている。
2:というか俺は死ねるのか?
3:相沢と行動。
4:化物2人から逃げ切れて良かった。
【備考】
※ユイ消滅より少し前からの参戦。
※祐一を別世界の死後の世界の住人だと思っており、祐一の言う魔物を奏の様な人間だと思っております。



【相沢祐一@Kanon】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:疲労(中)、健康】
【思考・行動】
1:殺し合うつもりはなく主催者に怒りを感じている。
2:音無と行動。
3:あの2人怖っ!?
【備考】
※舞ルート確定直前からの参戦。



【10年後山本武の刀@家庭教師ヒットマンREBORN!】
10年後の山本武がリングとの相性が悪かった為に時雨金時の変わりに使っていた変形しない刀。

【CZ75@現実】
実践向けなコック&ロック可能なセイフティ、命中精度の高さ、人間工学を考慮したグリップは『まるで手に吸い付くよう』と評された。

75 ◆WzpMn05TJA:2011/12/18(日) 20:00:21 ID:Eq7Uui4UO
投下終了

元ネタは映画『その男、凶暴につき』より


次回の予約
井ノ原真人、アストレア、中嶋直美

76 ◆vQfaAFC7Cg:2011/12/18(日) 20:15:43 ID:D8aono360
今日、編集していただいた方ありがとうございます


それで今日、新ページを皆さんが書ける様に設定致しました


なかなか時間が取れない自分でありますので、自分が更新しない場合は本当に申し訳ないです

77 ◆SENAs8NCE2:2011/12/20(火) 13:46:24 ID:Os28t/Gc0
大変申し訳ありませんが、推敲した結果致命的なミスを見つけてしまったので予約を破棄させて頂きます。
代わりに別のメンバーで予約させて頂きます、待たせてしまって申し訳ありませんでした

アーチャー、竜宮レナ予約します

78バカと筋肉と未確認生物 ◆WzpMn05TJA:2011/12/21(水) 03:38:30 ID:KJq9u49UO
私は夢と現実どちらの世界に居るのだろう?

確か昨日は私の通っている如月学園の文化祭だったはずだ。
ウチのクラスはおしるこ屋をする事にして「その一杯に愛を込めろ」とスローガンにコスプレをしたり大はしゃぎの接客など盛り上がった。
そしてそれが終わるとクラス委員長である篠崎さんが『幸せのサチコさん』というおまじないを、鈴本さんと別れになるからとそれを行った。
『サチコさんにお願いします』と私を含め、みんなで唱えてそれを――千切った。

それを行った瞬間、外では雷が落ちて、それが合図とばかりに机が倒れる程の強い地震が起きた。

そして目が覚めるとそこに広がっていたのが、このバトルロワイアルの舞台であった。
シャルル・ジ・ブリタニアたる者達が見せしめとして選んだ少女。
その片方に見覚えがあった。

私の好きなクラスメート、持田哲志の妹である由香ちゃんであった。

体内の胃から何か吐きそうになる様な衝動を私は耐えて、耐えて、耐えて、耐えて耐えて耐えて……。

次に目が覚めるのは夢?現実?

―――――

目を覚ます。
そこは真夜中で路上で寝かされていた。

起きると若干の息苦しさを感じた私は首に手を回すとやはり夢で見た首輪が今の私に装着されていたらしい。

――ここは、夢であり、現実であった。

「……ふぅ」

深呼吸をする。
由香ちゃんの死に激しく動揺していたが、眠らされた今落ち着きだけは持っていた。

こんな小さな事ですら主催者側に踊らされた気分で良い気はしない。

デイパックも律儀に置かれており手を伸ばす。
まずはどんな事より名簿を確認する事しか頭に入っていなかった。
他の果物ナイフやテストプリントが数枚などのランダム支給品と呼ばれる物をどかして名簿を引っ張る。

「哲志、岸沼君、篠崎さんの3人もこのバトルロワイアルに巻き込まれたのね」

他にもおまじないをしたメンバーはどこに行ったのか?
それはわからない。

でも私以外にも巻き込まれたというのならば1つは確実に言える。

――これは非常な現実である。と……。

―――――

デイパックを漁り支給品の確認やノートにまず起きた事を整理しながら書き込んでいた。
ノートにはこれからの方針も考えていた。
そして私がくだした方針は『殺し合いには乗らない事』であった。
ここで殺し合いに乗ってしまえば犠牲になってしまった由香ちゃんが浮かばれないと思ったからだ。

「よぅ、やっぱりあんたも巻き込まれた参加者って事かい?」

誰か人と協力する事を決めてここから動こうとした時、タイミング良く人の姿が見え、向こうから話しかけられた。

背の高い男だった。
赤いハチマキをしていて、体も大きい男。多分筋肉とかすごいのだろうと初対面からそんな事を考えてしまう。

いや、話しかけられたのが1人の男だっただけでもう1人の女が居た。

長い金髪の可愛らしい人であった。
そして何故か白い羽根が生えている。
コスプレ?

79バカと筋肉と未確認生物 ◆WzpMn05TJA:2011/12/21(水) 03:39:22 ID:KJq9u49UO
「うん。私は中嶋直美ね。よろしく」
「俺は井ノ原真人、そしてこっちの女はアスパラガスだ」
「違うって、アストレアだからー」
「どっちでも良くね?」
「良くない」

井ノ原真人とアストレアと名乗った2人の自然な自己紹介を聞いて驚いたのは2人はついさっき知り合ったばかりという事らしい。
まぁ自然なやり取りにびっくりしただけで、最初から知り合いに会える人など絶対少ないのだろう。

「俺達は殺し合いをするつもりはないから安心しな。お前もバトルロワイアルなんかに乗らないだろ?」
「うん。それに乗ったら私の親友の妹さんが浮かばれないよ」

井ノ原君とアストレアさんがそこは察した顔をしてくれた。
少し悪い空気が流れ始め、それを変えようとしたのかはわからない。

「はい!ところで質問あるんですけど良いですか?」

アストレアさんが手を挙げていた。

「ん、何だ?」

井ノ原君がアストレアさんに視線を移すと自信満々にアストレアさんがみんなの口をポカンとさせる一言を口に出した。

「バトルロワイアルってなんですか!!」

―――――

「よし、これから動いて仲間になってくれそうな奴を探すか?」
「待って、それならここで待機していた方が良いと思うわ」
「え?どうして?」

井ノ原君の意見に私は反対をする。
因みにアストレアさんは周りに任せる事にさせた。

「まだ先は長いのよ?動いて体力を使ったら、殺し合いに賛同する人から襲われた時に逃げるのに一苦労すると思うの。だからここで人を待っていた方が良いわ。あなた達みたいに仲間になる人だって居るかもしれないし一石二鳥じゃない」
「なるほどな。『石の上にも当たる』って事だな」
「なんか混ざってるよ?」

石の上にも三年、犬も歩けば棒に当たるの2つがごっちゃになってる。
初めて見たよ、そんな人。

「ところでアストレアさんのその背中の事聞いても良いかな?」
「背中?」

アストレアさんは背中を見る。
私は誰も突っ込まない羽根の事を聞きたいと思う。

「え?アスファルトの背中になんかあるのか?」
「アストレアだってば!でも何も変な物なくない?ねぇ真人もそう思わない」
「あぁ、確かにこいつの背中には何もないぜ中嶋」
「いやいやいや……」
「お前理樹みたいだな」
「いや、誰よそれ?」

そういえば名簿にそんな名前があった気はするが……じゃなくて羽根の事だよ羽根。

80バカと筋肉と未確認生物 ◆WzpMn05TJA:2011/12/21(水) 03:41:36 ID:KJq9u49UO
「井ノ原君は不思議じゃないの?アストレアさんの羽根」
「羽根?そんなの生えて……た!お前その羽根はなんだよ!?天使なのか!?はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。4わけわからんポイントだぜ!」
「いや、本当にわけわからんよ」

井ノ原君のその反応を含めて。

「私は地蟲(ダウナー)じゃありませんから。局地戦闘用エンジェロイドタイプΔ(デルタ)、アストレアですから」

聞き慣れない単語が多すぎる。
でも聞き慣れない単語が多いからこそアストレアという変わった名前なのではないだろうか?

「つまりお前は未確認生物ってわけだな」
「はい。ただ制限とからしくて飛べないみたいですけどね」

普段は飛べるらしい。
もしかしたら彼女は異次元の世界とかから来たのかもしれないわね。

「他にもそのエンジェロイドっていう知り合いは参加しているの?」

カタカナの名前をざっと思い出してもウルキオラ・シフォーとかキョンとかライダーとか居た気がする。

「イカロス先輩とニンフ先輩が参加しています。あとは知り合いで……桜井智樹って奴も居ます……」

何故かアストレアさんは『桜井智樹』という名前を出した瞬間赤くなった。
好きな相手だろうか?

「お前顔赤いぜ?その桜井って奴が好きなのか?」
「うるさいわよ真人」

というか井ノ原君も気付いていた。
そういうの鈍そうなんだけど。

「因みにみんなの知り合いを聞いとこうぜ。俺の仲間には棗恭介、宮沢謙吾、直江理樹、棗鈴、来ヶ谷唯子って奴だ。中嶋は?」
「篠崎あゆみ、岸沼良樹、……持田哲志」

うわー。
哲志の名前を出しただけなのになんか恥ずかしいー。

「お前顔赤いぜ?その持田って奴が好きなのか?」
「うるさい井ノ原君」

というかそんな無駄な鋭さを冴え渡らせないで良いから。

―――――

81バカと筋肉と未確認生物 ◆WzpMn05TJA:2011/12/21(水) 03:42:28 ID:KJq9u49UO

「ただ待っているのも暇だなー……。筋トレでもしてっか」
「それ体力温存している意味ないから」

「はい!筋トレってなんですか!!」
「おっ!?お前も筋肉に興味があるのか」
「人の話聞いてる!?」

なんというか……。
2人共頼もしいんだけど……。

――ただのバカだよね?



【B-7 野原/未明】

【中嶋直美@コープスパーティー】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 果物ナイフ@現実 テストプリント@Angel Beats! ランダム支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:殺し合いに乗らない。
2:ここで待って体力温存しながら仲間勧誘。
3:ゲームに乗った人が居たらすぐに逃げる。
【備考】
※おまじないをした直後からの参戦です。
※アストレアと真人をバカと認識しました。


【アストレア@そらのおとしもの】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:真人と直美の方針に従う。
2:殺し合いには乗らない。
【備考】
※カオス戦(1回目)からの参戦です。


【井ノ原真人@リトルバスターズ!】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:殺し合いには乗らない。
2:ここで待って体力温存しながら仲間勧誘。
3:待っているのが暇だから筋トレしたい。
4:アストレアを筋肉仲間に誘えるかも!?
【備考】
※Refrain開始直後からの参戦です。


【果物ナイフ@現実】
家庭様の果物の皮を向く小さなナイフ。

【テストプリント@Angel Beats!】
ゆり達が罠を仕組む時に使用されたテスト用紙。奏が生徒会長を辞めさせられるぐらい相当ふざけた事を解答欄に書かれる。

82 ◆WzpMn05TJA:2011/12/21(水) 03:47:42 ID:KJq9u49UO
投下終了

眠れないから書き上げてしまった…

タイトルの元ネタはライトノベルの『バカとテストと召喚獣』より


今日が恋物語の発売日だからなー
物語シリーズ書きたいな〜、というわけで

予約
千石撫子

83 ◆SENAs8NCE2:2011/12/21(水) 08:38:36 ID:nmYiiBFo0
投下乙です。
やっぱり真人が出てると何か和むなあ。

では、アーチャー、竜宮レナ投下します

84 ◆SENAs8NCE2:2011/12/21(水) 08:41:35 ID:nmYiiBFo0
「…………こんなのって、ないよ」

呆然、といった風な様子で竜宮レナはうわごとのように呟いた。
彼女とその仲間たちは、つい先日一つの大団円を迎えたばかりだ。
大切な仲間・北条沙都子の叔父・北条鉄平が雛見沢村に帰還して、沙都子を監禁に近い状態で虐待を始めた。一度は仲間たちの間で不和に見舞われながらも、村のトップの『園崎家頭首』をも口先で抑え込み、自分たちに賛同させた。
児童相談所に村一丸となって直談判して、沙都子も助けを求めた。
短いけれど長い、一つの戦いが終わったばかりなのに。

北条沙都子は殺された。
ただの見せしめに、余りにも無惨な最期を遂げた。

雛見沢村という小さな寒村で、レナには多くの大切な仲間ができた。
たった一つの、学年も性別もごちゃ混ぜになった小さな分校。
そこでレナ達は一つの『部活』に所属し、日々熱い戦いに明け暮れる。
毎日違う『ゲーム』により勝負し、一位の座を競う―――――これだけなら簡単そうだが、敗者には『罰ゲーム』が科されるのだ。それは楽しみであり恐怖でもある。
メイド服や猫耳などの恥ずかしい格好をさせられることが多いか。
しかも『部活』には運も絡んでくるのだ。
高度な戦略を以てしても勝てるかは分からない、スリリングな勝負。
そんな余りにも『濃い』内容の部活に所属していながらも、そのメンバーから退部者が出たことは一度もない。メンバー達がよく厳選されたこれまた『濃い』面子ばかりだということもあるのだろうが、一番の理由は他にある。
少なくとも、竜宮レナは部活に入って人生が変わったと思っていた。
楽しいのだ。罰ゲームなど苦にならないほどに楽しい。
死んだ沙都子も、部活がつまらないとは思っていなかったとレナは断言できる。

レナが雛見沢にやってくる前に起こしたとある『事件』。
彼女は父親の離婚を皮切りに壊れてしまっていた。
やがてその『事件』をきっかけに、雛見沢村に越してくることになる。
もし部活の仲間達に出会えないでいたら、竜宮レナは破滅していたかもしれない。疑心暗鬼に走り、独りよがりすぎる独善で全てを引っかき回した挙げ句、一人で勝手に死んでいく。そんな絶望と不幸に満ちた生涯の終わりに、レナは一人自らの生涯を呪う。
―――そんな世界があったかもしれない。

だが今の彼女は違う。
信頼できる何物にも代え難い仲間を得た彼女は、絶望などには屈しない。

「許さない」

瞳に確かな闘志を宿らせながら、彼女は言った。

85 ◆SENAs8NCE2:2011/12/21(水) 08:43:02 ID:nmYiiBFo0
『青い炎』と呼ばれた少女の怒りは、主催者達に向けられていた。
それは殺意を超越した、もはや怒りですらない『何か』かもしれない。
しかしレナは止まらない。必ずこの悪辣なゲームを止める。
仲間の、沙都子の仇を必ず取ってやる――――――!!

レナはその有り余るだけの感情を抑え、参加者名簿に目をやった。
前原圭一、園崎魅音、園崎詩音、古手梨花。
誰もが北条沙都子の無念を晴らすために行動できる熱い仲間達だ。
弔い合戦、なんて言葉を使う日は来てほしくなかったけれど。

「見ててね沙都子ちゃん。必ず、私達勝つからね」

今の竜宮レナは、希望に満ちていた。


【G-6 街 /未明】

【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に】
【装備:なし】
【支給品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:健康、強い決意】
【思考・行動】
1:沙都子ちゃんの仇を討つためにこのゲームを潰す。
2:圭一くんたちを探す。
※『皆殺し編』、綿流し祭開始直後からの参加です
※雛見沢症候群に関しては後の書き手さんにお任せします



しかし、竜宮レナは知らない。
現在、赤い外套の男が彼女を狙って弓を引いていることを。
しかもその弓も担い手も生易しい代物にあらず。
この世の理から外れた存在、サーヴァント。かつてどこまでも正しくどこまでも愚かな理想を掲げ、その過程で絶望した男、『守護者』。
彼の執る道は救済。
いつもの通りに、多くを救うために少数を斬る茨の道。
シャルル・ジ・ブリタニアは殺す。しかし参加者たちも殺す。
どれだけの罵りを受けようが、この世界を正しく導くために。

―――悲痛な面持ちで、弓兵(アーチャー)は弓を引き絞る。


【アーチャー@Fate/stay night】
【装備:赤原猟犬@Fate/stay night】
【支給品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:健康、次の投影可能まで後30分】
【思考・行動】
1:『守護者』として行動する。
2:参加者を殺し、最後には主催者たちも殺す。
3:衛宮士郎は必ず殺す。セイバーには……?
※凛ルート、召喚直後からの参加です
※投影は一度の使用につき30分のインターバルが発生します。また、弓の射程距離が短くなっています
※固有結界は発動できますが、膨大な魔力を消費します


【赤原猟犬@Fate/stay night】
アーチャーにより投影。
ベオウルフが振るった魔剣で、アーチャーは矢として用いる。

86 ◆SENAs8NCE2:2011/12/21(水) 08:47:32 ID:nmYiiBFo0
投下終了です。とりあえず死亡フラグを立ててみた

続いて、篠崎あゆみ、マリア、戦場ヶ原ひたぎを予約します

87 ◆SENAs8NCE2:2011/12/21(水) 09:43:06 ID:nmYiiBFo0
失礼、題名を忘れていました。
題名:皆の世界をまもるヒト
元ネタ:ラノベ『僕のセカイをまもるヒト』より

88 ◆SENAs8NCE2:2011/12/21(水) 10:40:19 ID:nmYiiBFo0
完成したので投下します

89 ◆SENAs8NCE2:2011/12/21(水) 10:40:43 ID:nmYiiBFo0
殺し合い―――――、それは日常の終わりを、あまりにもあっさりと告げるのでした。
今まで楽しく過ごしてきた日常が、壊れてしまう。
人殺しは絶対に許されていいことではありません。その人の人生を奪ってしまう、尊い命を摘み取ってしまう。それが『人間』という生物にとって絶対的なタヴーだということくらい、幼稚園児でも知っています。
しかし、あの三人はきっとそんな道徳は持っていないのでしょう。
あんなにも簡単に三人の人間を殺したのですから。
お嬢様よりも年下の女の子たちが、首を吹き飛ばされて殺された。
そんな情景を見て、心が痛まないほど私は冷徹ではなかったようです。

可哀想だと、あんまりだと思いました。
ですが、私の心は禁断の道を選ぶことを決断していたのです。


私の名前はマリアといいます。
三千院家にメイドとして仕えさせていただいています。
毎日を、お嬢様――――三千院ナギお嬢様や、執事のハヤテ君と穏やかに―――、でも楽しく、何よりもかけがえのない大切な時間でした。
その日々は、きっともう二度と帰ってこないでしょう。
運動神経が皆無に等しいあのお嬢様がバトルロワイアルなんてものから生還できる確率は限りなく零に近いでしょう。主催者たちを打倒するという道を選ぶ可能性が一番高いでしょうが、それもまた現実的ではありません。

首に巻かれているこの『首輪』。
これがある限り、私たちに勝ち目はない。
解除するにも、それを可能にするだけの技術者が居なければならない。
確率は低い。
正直に言って、私は生き永らえようと思ってはいません。
お嬢様やハヤテ君たちを殺してまで、生きていたいとは思いませんから。
ですが、私はメイド。

三千院家に仕える、お嬢様を守る使命を帯びた人間です。
なら、主が危機に晒されている以上黙っているわけにはいきません。
必ず、生きていて貰わなければならない。―――いや、生きて帰っていただかなくてはならない。それが、私のさだめなのですから。
私が、お嬢様を守る。
お嬢様を優勝させるために、全てを殺し尽くして。
ごめんなさい、ハヤテ君、皆さん。
私は、貴方方も殺さなければならないようです。
――――――――――――――お嬢様の、為に。


デイパックから取り出したキャリコ短機関銃を携えて。
―――これだけの武器があれば、きっと殆どの敵を殺害できるでしょう。
格闘技を心得た強敵だろうと、蜂の巣にしてしまえる。

私は今、病院のロビー下に身を潜めています。
姑息な手段ではありますが、ここで病院に入ってきた無防備な参加者を狙うという魂胆です。
防弾服などを支給されていたら厄介ですが、その時はその時。


―――私は、修羅になる。

90 ◆SENAs8NCE2:2011/12/21(水) 10:41:02 ID:nmYiiBFo0


「何で…………こんなことに…………」

瞳に涙を浮かべて、篠崎あゆみはふらふらと歩いていた。
その顔には、恐怖というより『絶望』の表情が貼り付けられている。
あゆみは今、絶望していた。
そして、自らの運命を呪い、悲観してもいた。
無理もない。彼女たちはつい先日、ひとつの惨劇から抜け出したばかりなのだから。

『天神小学校の呪い』―――『幸せのサチコさん』。

一つのお呪いが招いた悲劇。
多くの友人を失い、一生分の恐怖を味わった。
しかし奇跡的に、『逆打ち』という方法を用いて脱出することが出来たのだ。
失ったものはあまりにも大きかったが、それを乗り越える決意もした。
その矢先に、殺し合い(これ)だ。

「怖いよ……持田君、岸沼君……」

歯ががちがちと奇怪な音を立てる。
背筋を冷たい何かが駆け抜けていく。
怖い。死にたくない。
怖い。死にたくない。
怖い。死にたくない。
怖い。死にたくない。
怖い。死にたくない。
怖い。死にたくない。
怖い。死にたくない。
怖い。死にたくない。

死にたくない死にたくない死にたくない――――――!!


「あ、そっか。殺しちゃえばいいんだ」


彼女はもう正気ではなかった。
口元を不気味に歪ませ、奇怪な嗤いを漏らす。

「あ、――――はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははァ!!」

次の瞬間。激しい音がして、彼女の近くの長椅子が吹き飛んだ。
ひっ!?という短い悲鳴をあげ、あゆみは別の椅子の背後に隠れる。

「………大丈夫ですよ。一瞬で楽にしてあげます」

待合室に、機関銃の銃声だけが響いていた。
狂気に満ちた少女には為す術もない。
殺される。そんな恐怖だけがあゆみを支配し、突き動かしていた。
しかし篠崎あゆみという少女はまだ幸運であったといえるだろう。
これだけの掃射をされながら、位置的にぎりぎり掠めもしていない。

焦りながら、涙と鼻水と涎を流しながら、デイパックを開く。
その時、彼女は完全に壊れた。

そして、デイパックを開いたままで、走り出した。


「逃がし――――ませんよ!!」


マリアもそれを追う。
顔を見られた相手を生かしておくのはこれからの行動に支障が出かねない。
ここで殺す。マリアに迷いはもはや微塵もない。


何処に逃げた。
病院の廊下を静かに歩き、あゆみの姿を探す。
機関銃をあえて発射し、威嚇をしたりもしたが効き目はない。
しかし、逃げた場所など限られている。
あゆみの逃げた方向から考えれば、行きそうな場所などかなり限定されてくるだろう。
これはただの詰め将棋。
必ず勝ちの目が存在する勝負。
なら、焦る必要はない。ゆっくり、確実に殺していけばいい。

91 ◆SENAs8NCE2:2011/12/21(水) 10:41:42 ID:nmYiiBFo0
診察室のドアが僅かに開いていた。
マリアが一度通った時には、ここのドアは閉まっていたと記憶している。
見つけた―――と、マリアは確信した。


ドアを開ける。
そして、知った。
自分が、完全に『ハメられた』のだと。


爆音が響き渡る。
鼓膜が破れるほどの、爆音。
そしてこの瞬間、篠崎あゆみの勝利とマリアの『ゲームオーバー』が確定した。


マリアの半身が、消失していた。
下半身が完全に爆散して、内臓が撒き散らされている。
神経が断絶しているのか、全く痛みがないのが返って不気味だ。
この傷はどうにもならない。
あと数秒と保たない命だろう。


「ごめんなさい――――」


それが、彼女の最期の言葉だった。



【マリア@ハヤテのごとく!  死亡】





「あ、は…………勝った、勝った…………!!」

マリアの爆散死体を見て、篠崎あゆみは笑っていた。
心の底からの笑い。そこに、罪の意識などは何もない。
今の彼女には、理性というものが消失している。

逃げながら、支給されたクレイモア地雷を診察室に設置した。
そして、少し離れたトイレの中に彼女は身を潜めた。
診察室のドアを開けておいたのも、罠だ。
篠崎あゆみは勝利した。
――――――――自らが、絶望の権化となって。


【B-2 病院/未明】


【篠崎あゆみ@コープスパーティー】
【装備:キャリコ短機関銃(45/100)@現実】
【所持品:支給品一式、キャリコ短機関銃予備弾薬(200/200)、ランダム支給品×1、マリアのデイパック】
【状態:健康、精神汚染(大)】
【思考・行動】
1:生き残る。
2:もう誰にも容赦しない。
【備考】
※クリア後からの参加です
※マリアのデイパックの中身は後の書き手さんにお任せします


【キャリコ短機関銃@現実】
マリアに支給。
1986年にアメリカのキャリコ社(Calico Light Weapons)が開発した民間用カービン。.22LR弾を使用する他、9mmパラベラム弾を使用するモデルや、フルオート射撃可能な公用向けのサブマシンガンがある。


【クレイモア地雷@Fate/Zero】
篠崎あゆみに支給。
衛宮切嗣がケイネス・エルメロイ・アーチボルトとの戦いにおいて使用。
『月光髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)』に防がれてしまったが、かなりの威力がある。

92 ◆SENAs8NCE2:2011/12/21(水) 10:41:57 ID:nmYiiBFo0

「………あの子はもう行ったかしら?」

惨劇の跡。
そこに、一人の少女が訪れていた。
彼女の名は戦場ヶ原ひたぎ。かつて『蟹と行遭ってしまった』少女。
彼女は殺し合いに乗る気はない。
殺し合いから出来るだけ穏便に、最愛の恋人と脱出する為に行動する。
危なかった、とひたぎは思う。
このメイドには悪いが、あの時最初に自分が病院に入っていたらまず間違いなく殺されていただろう。あの狂った少女と出会っていたら逆に殺していたかもしれないが。

「………ごめんなさい」

物言わぬ無残な死体に黙祷を捧げ、ひたぎは診察室に背を向けた。



【戦場ヶ原ひたぎ@物語シリーズ】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:阿良々木くんを探して脱出する。
2:人は極力殺さないようにする
3:女の子(あゆみ)には注意する
【備考】
※つばさキャット終了後からの参加です。
※篠崎あゆみの外見・声を記憶しました。

※病院内一帯に爆音が響きました

93 ◆SENAs8NCE2:2011/12/21(水) 10:47:55 ID:nmYiiBFo0
投下終了です。
題名:汚染残留
元ネタ:空の境界第三章『痛覚残留』より

続いて
伊吹風子、古泉一樹、一方通行、棗恭介
を予約します

94 ◆WzpMn05TJA:2011/12/21(水) 15:01:20 ID:KJq9u49UO
投下乙です

2作品の投稿ありがとうございます


レナの死亡フラグが果たしてどうなるか…
まだ死亡確認がないから生存の可能性があるのだが


マリアさん無念…
ひたぎさんに期待


今マーダー化したのが春原、宗像、謙吾、キャスター、アーチャー、あゆみ

ジョーカーが足立

スタンス不明なのが朋也と雲雀と球磨川

そろそろロワイアルっぽくなってきましたね

95 ◆jEaHSufpKg:2011/12/21(水) 23:32:08 ID:GTLwgWVQ0
直枝理樹、持田哲志で予約します。

96幻物語 ◆WzpMn05TJA:2011/12/22(木) 18:06:20 ID:V62wBfaUO
彼女を見た人なら彼女をこうイメージするだろう。

『可愛い』と。

でも彼女は本当に可愛いくて、可愛いくて、可愛いくて、ただ可愛い。
その可愛いさが異常に見える人は本当に異常に見えてしまう。

―――――

「バトルロワイアルだってクチナワさん。どうして昨日暦お兄ちゃんの家で寝ていたのに起きたら撫子はこんな事に巻き込まれなくちゃいけないの?
撫子はクチナワさんの体を見つけなくちゃいけないのにね」

「しゃしゃしゃ!」と撫子の右手に巻き憑いている蛇の通称クチナワさんが変わった笑い声を上げる。

「撫子ちゃんはこんな状況下においてでも俺の神体を探してくれるのかい?」

「うん、いいよ。だって撫子の償いだもん」

クチナワさんは北白蛇神社で祀られている神であったらしい。
忍野忍さんが私達が住んでいる街に現れたせいもあり、神社の溜まったエネルギーで復活を果たした。
だが結局そのエネルギーをくだらない事に使われてしまったらしく瀕死になり、それで少し前に撫子が行った蛇惨殺の償いによりクチナワさんの体を探さなくてはいけなくなってしまった。

「でもクチナワさんにその事に聞かなくちゃいけない事を忘れちゃてたよ」
「ああん?」
「そのクチナワさんの体ってこの島にあるのかな?」

「しゃしゃしゃ」と数少ない笑い声を上げ(というかこれしかない)、心配無用との声を上げる。

「ここだったんだよ」
と少し興奮気味に言っていた。

「クチナワさんの急所?」
「誰がそんな話をしていたんだよ」

撫子は、わけがわからず頭に?を浮かべる。
いや、これは表現でそれぐらい疑問だったって事。

「この島に俺様の体がある」
「えぇ!?だから撫子達もここに呼ばれたのかな?」
「そうかもな」
「じゃあ早く見つけないとね」

ここに来て一気に大収穫。
そんなドラクエみたいに探していたキーアイテムが入った洞窟にたまたまあったみたいな都合良さは否めないけど。

「武器の刀とか持って本当にドラクエみたいだねクチナワさん」
「ドラクエは刀じゃなくて剣だぜ撫子ちゃん」
「なんで神様なのにドラクエ知ってるの」

やっぱり神様の世界にもドラクエってあるのかな?
ドラクエしてる蛇の神様。
不可能だね。

「良いじゃないかそんな事はよ。
ところで撫子ちゃんはあんなに人が死んだのに怖くなかったのかい?」

都合が悪くなり話題を変えるクチナワさん。
でも話を続けるあたり、本当に話をするのが好きなんだね。

「怖かったけど怖くなかったよ」
「ああん?どういう事だい撫子ちゃん?」

納得の出来なかったクチナワさんから不満の声が上がる。
どうやら共感はしてもらえなかったらしい。

「だって知らない人だったんだもん。これが暦お兄ちゃんだったら怖かったね」
「いや、今の撫子ちゃんの答えの方が怖いよ。まるであの3人の事なんてどうでも良いみたいだね?
いや、撫子ちゃんは見ないだけなのかもね」
「どういう事?」
「しゃしゃしゃ、こっちの話さ」

97幻物語 ◆WzpMn05TJA:2011/12/22(木) 18:06:58 ID:V62wBfaUO
楽しそうに笑うクチナワさん。
現在私は1人なのだけれどクチナワさんという話し相手が居ると自然とお話ししてしまう。

楽しいから良いんだけどね。

「じゃあもし暦お兄ちゃんがあの時に死んでいたり、このバトルロワイアルの中で死んじゃったらどうするんだい?」

クチナワさんはいじめっ子の様にニヤニヤと楽しそうに聞いてくる。

「何言ってんのクチナワさん?」

撫子は笑ったよ。
多分人には見せなかった笑顔で。

だってクチナワさんは神様なんだし。

「暦お兄ちゃんは死なないよ♪」

―――――

彼女――千石撫子。
彼女は一体誰と話しているのだろうか?

参加者?
いや、彼女はまだ誰とも合流出来ていない。

主催者?
いや、彼女はただのゲームの参加者だ。

では彼女の言う『クチナワさん』とは誰なのだろうか?

神様と言うぐらいなのだから、端から見たら空気と話しているのか?
否。
彼女は下を向いて、左利きの人の様に右手首に巻いた腕時計がありそうな位置を向いていた。
いや通信機能の付いた腕時計の向こう側の誰かか?

でも彼女が巻いていたのはそんな通信機能の付いた腕時計なんかじゃなく――、

ただの白い白い、本当に白いだけのシュシュであった。

千石撫子、彼女は戦場ヶ原ひたぎに嫉妬し、神に祈った撫子の「神の声を聞いている」という妄想に取り憑かれていた。


彼女はこれからどう動くかはわからない。

そして、どこかにあるクチナワの体を見つける事が出来るのか。

もし、体を見つけてしまった場合に起こる悲劇はまだ誰も知らない。



【B-7 野原/未明】

【千石撫子@物語シリーズ】
【装備:神鎗@BLEACH】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:クチナワさんの体を探す。
2:暦お兄ちゃんは死んでほしくない。

【備考】
※囮物語の暦の家で寝泊まりした直後からの参戦です。
※彼女は右腕にある白いシュシュをクチナワという神になっているという妄想に取り憑かれています。しかし、人前ではこの妄想は発生しません。
※クチナワの体は蛇のお札で、撫子がお札を食べてしまうと神様になり同時に怪異になります。
※その蛇のお札はこの島のどこかにあります。誰かの支給品なのかどこかに貼られてあるかなどは次以降の書き手さんに任せます。


【神鎗@BLEACH】
市丸ギンの斬魄刀。封印時は脇差しの形状になっている。解放すると伸縮を自在にする刀。
解号は「射殺せ『神鎗』」であり脇差し100本ぶんまで伸びる。

98 ◆WzpMn05TJA:2011/12/22(木) 18:12:11 ID:V62wBfaUO
現在位置の記述ミス
【E-4 森/未明】

投下終了

タイトル元ネタは物語シリーズのタイトルである『○物語』より


予約
高山浩太、手塚義光

99 ◆jEaHSufpKg:2011/12/22(木) 19:54:42 ID:95LrksKo0
投下乙です。
撫子怖いなぁ…阿良々木君死んだらどうなるのか…。
では、持田哲志、直枝理樹で投下します。
題名は 闇に濡れたCatastrophe

100闇に濡れたCatastrophe ◆jEaHSufpKg:2011/12/22(木) 19:55:13 ID:95LrksKo0
直枝理樹は立っていた。
焦点が定まっていない目で。
見つめるのは、虚空――――。

「……鈴」

棗鈴―――――彼が守れきれなかった、大好きだった人。
しかし、彼女は壊れてしまった。
自分も、壊れてしまった。
弱い自分では、彼女は守れなかった。

「…………」

これからは強く生きようと―――その先の彼が考えようとも。
彼は、今弱いのである。
弱いままなのである。
そんな彼がどう足掻こうとも、主催に対抗できる術はない。
優勝しても、得られるものは虚しい『孤独』のみ。
鈴がいるのに自分が優勝するなんて、ありえない。

では、鈴を優勝させてはどうだろうか。
―――それも却下だ。
彼女が帰ったって、さらに壊れるだけだ。
僕はそんなこと、認めたくないし、させたくない。
じゃあ、どうすればいいんだろうか。


________ 
|皆を探す   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
________
|自殺する   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
________
|主催に対抗する|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



「……僕は」

そこまで言ったところで、直枝理樹は止まった。
考えているのかは分からない。
だが、彼の口から赤い『何か』が流れていた。
腹には穴があいて、そこからも赤い『何か』が流れていた。

101闇に濡れたCatastrophe ◆jEaHSufpKg:2011/12/22(木) 19:55:33 ID:95LrksKo0


■        ■


持田哲志は普通の少年である。
普通に怖がりで
普通に明るくて
普通に素直で
普通に芯が強くて
普通に意識する人がいて




普通に、妹思いなのである




彼は、眼前で妹を殺された。
その事実は、普通の高校生の彼には耐えきれない事実であった。
彼は今、泣いていた。

「由香っ……ごめん………助けれ、なくて」

死者は生き返らない。
そんな事、重々承知だ。
優勝しても、人は生き返らない。
由香は―――――帰ってこない。

「……絶対に、許すものか」

彼は、支給品を探る。
手に当たった物体…それは紛れもない、銃だ。
こういう場にとっては当たりである。

「……皆には悪いけど、僕は―――由香を殺したあいつらが許せない」

彼は銃を持って、立ち上がった。
体から出る、黒い『ソレ』には気づかずに。


■        ■

102闇に濡れたCatastrophe ◆jEaHSufpKg:2011/12/22(木) 19:56:16 ID:95LrksKo0
持田哲志が直枝理樹を見つかるのに時間はかからなかった。
ただ空を見ている少年…それが哲志の抱いた印象だった。
殺すべきなのか、見逃すべきなのか。
良心が、一瞬だけ働いた。
だが―――――それはあくまで一瞬である。
『黒化』した彼には、思考力はあってもその通りに動くわけではない。
持っていた銃、デザートイーグル50AEを直枝理樹に向ける。
そして、引き金を――――――引く。









優しかった少年は、闇へと堕ち












強くなろうとした少年の命は、無へと還った




【直枝理樹@リトルバスターズ! 死亡】




【H-3/未明】
【持田哲志@コープスパーティ】
【装備:デザートイーグル50AE(6/7)@現実】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:『黒化』、精神的疲労(極大)、反動による手の痺れ】
【思考・行動】
1:由香の敵をとる
2:みんなには…会いたくない
【備考】
※文化祭後びクラスでの会談中からの参戦です
※『黒化』により目的のために無差別に行動するようになっていますが、思考はある程度残っています


※直枝理樹の死体及び直枝理樹の支給品(基本支給品、ランダム支給品×3)がH-3に落ちています


【デザートイーグル50AE@現実】
米国のマグナムリサーチ社が1987年に開発に着手したが、上手く行かなかった為にイスラエルのIMI社が作動構造を考案し、再設計されて完成した物。
拳銃の歴史上で類を見ない大口径拳銃で、護身用や軍用などの目的で開発された銃ではなく、熊やイノシシなどを狩猟する為の猟銃として販売されている。
だが、その迫力のある外観からハリウッド映画やテレビゲームなどに数多く対人用の拳銃として登場している。
生産は数年前にIMI社からマグナムリサーチ社に移った。威力が非常に高く、反動が大きい事でも有名。

103 ◆jEaHSufpKg:2011/12/22(木) 19:57:18 ID:95LrksKo0
投下終了です。
タイトルの元ネタは コープスパーティーブラッドカバーリピーティッドフィアーの挿入歌の題名より

104 ◆WzpMn05TJA:2011/12/22(木) 20:10:59 ID:V62wBfaUO
投下乙です


哲志ぃ…
やっぱり黒化してしまったか…


見せしめを由香を選んだ自分が言うのもなんだがこういう話が出されると心が痛むな…


っていつの間にかスレ100越えか。まだ開始1ヶ月してないんだが投下スピードが早くて嬉しい限りです^^

100突破なので久し振りに死者スレでも

105 ◆WzpMn05TJA:2011/12/22(木) 20:32:43 ID:V62wBfaUO
佳乃、上条さん、マリアさん、理樹が死者スレにログインしました


マリアさん「皆さん紅茶でもどうぞ」
上条さん「ありがとうございますマリアさん……ってマリアさんも今ログインしたばっかりですよ!?」
沙都子「そうですわよ、それはわたくしの仕事ですわマリアさん」
マリアさん「あらあら」
沙都子「関係ありませんけどログイン寸前のレナさんが気がかりですわ」
マリアさん「信じる事も大事ですよ沙都子さん」
上条さん「そうだぜ北条。仲間を信じろ」
沙都子「そうですわね」

渚「佳乃ちゃんは春原さんにですか」
佳乃「あの親友はなんなんですかね?仲良く1、2でマーダーになって」
渚「しかも両方keyヒロインって何の恨みがあるんでしょうか…」

由香「理樹君ごめんね。先に私が死んじゃったからお兄ちゃん黒化するなんて」
理樹「謙吾も真人も活躍してるのに…。そんなのってないよ」
由香「……その名言は恭介さんに言ってくださいよ」

シャルル「ギアス勢は黒化ならぬ空気化か?」
郷田「シークレット勢も予約しかないから空気ですわ」
涼子「ハルヒ勢は人気ですよ?」
シャルル「長門はワシの嫁だが予約はないらしいな」
涼子「年齢考えてください」
郷田「何人子供と孫居ると思ってんですか」
シャルル「ジョークじゃ」

チャド(あれ?また俺空気!?)

106 ◆WzpMn05TJA:2011/12/22(木) 20:36:08 ID:V62wBfaUO
そういえば死者を蘇らせる事が出来る球磨川が居るんだった

制限は回数制限だからなー…
復活するチャンスはまだあるぜ死者スレ組!

107 ◆xR8DbSLW.w:2011/12/22(木) 20:45:08 ID:nxorFVUE0
そんな氏の嫁を、予約させていただきます。
人吉善吉、坂上智代、長門有希を予約します。

近い二つの感想を

>>幻物語
怖い、撫子ちゃんマジラスボス。
さてこのバトルロワイアル内に札があるとな。
撫子は死ぬまでに神になるのか、否か。
なったらなったでカオスけどね

>>闇に濡れたCatastrophe
理ぃぃぃ樹ぃぃぃぃ!! 乙…。
ここからリトルバスターズ一同がどう動くのかなあ。
謙吾は乗っちゃってますし、これからに期待。

108 ◆wG50kLoBJg:2011/12/22(木) 23:04:28 ID:fznqvhkM0
セイバー、グリムジョー、花村陽介を予約します

109 ◆WzpMn05TJA:2011/12/22(木) 23:13:24 ID:V62wBfaUO
参考にどうぞ

予約リスト
伊吹風子、小泉一樹、一方通行、棗恭介
高山浩太、手塚義光
人吉善吉、坂上智代、長門有希

未予約リスト
3/4【AIR】
○国崎往人/○神尾観鈴/○遠野美凪

3/6【Angel Beats!】
○立華奏/○日向秀樹/○椎名

3/4【家庭教師ヒットマンREBORN!】
○沢田綱吉/○六道骸/○古里炎真

4/5【Kanon】
○水瀬名雪/○川澄舞/○倉田佐祐理/○北川潤

0/5【CLANNAD】


5/5【コードギアス 反逆のルルーシュ】
○ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア/○C.C./○枢木スザク/○ロロ・ランペルージ/○ユーフェミア・リ・ブリタニア

2/5【コープスパーティー】
○岸沼良樹/○刻命裕也

4/6【シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
○御剣総一/○姫萩咲実/○北条かりん/○長沢勇治

1/5【涼宮ハルヒの憂鬱】
○キョン

3/4【そらのおとしもの】
○桜井智樹/○イカロス/○ニンフ

2/5【とある魔術の禁書目録】
○御坂美琴/○アウレオルス=イザード

4/5【ハヤテのごとく!】
○綾崎ハヤテ/○三千院ナギ/○桂ヒナギク/○瀬川虎鉄

3/5【ひぐらしのなく頃に】
○園崎魅音/○園崎詩音/○古手梨花

4/6【Fate/stay night】
○衛宮士郎/○セイバー/○アサシン/○真アサシン

3/4【Fate/Zero】
○衛宮切嗣/○ライダー/○バーサーカー

3/4【BLEACH】
○黒崎一護/○グリムジョー・ジャガージャック/○ウルキオラ・シフォー

4/6【ペルソナ4】
○鳴上悠/○花村陽介/○天城雪子/○巽完二

1/4【めだかボックス】
○黒神めだか

3/6【物語シリーズ】
○羽川翼/○神原駿河/○忍野忍

2/6【リトルバスターズ!】
○棗鈴/○来ヶ谷唯子

58/100

110 ◆WzpMn05TJA:2011/12/22(木) 23:19:36 ID:V62wBfaUO
>>108さんの予約更新

予約リスト
・伊吹風子、小泉一樹、一方通行、棗恭介
・高山浩太、手塚義光
・人吉善吉、坂上智代、長門有希
・セイバー、グリムジョー・ジャガージャック、花村陽介

未予約リスト
3/4【AIR】
○国崎往人/○神尾観鈴/○遠野美凪

3/6【Angel Beats!】
○立華奏/○日向秀樹/○椎名

3/4【家庭教師ヒットマンREBORN!】
○沢田綱吉/○六道骸/○古里炎真

4/5【Kanon】
○水瀬名雪/○川澄舞/○倉田佐祐理/○北川潤

0/5【CLANNAD】


5/5【コードギアス 反逆のルルーシュ】
○ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア/○C.C./○枢木スザク/○ロロ・ランペルージ/○ユーフェミア・リ・ブリタニア

2/5【コープスパーティー】
○岸沼良樹/○刻命裕也

4/6【シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
○御剣総一/○姫萩咲実/○北条かりん/○長沢勇治

1/5【涼宮ハルヒの憂鬱】
○キョン

3/4【そらのおとしもの】
○桜井智樹/○イカロス/○ニンフ

2/5【とある魔術の禁書目録】
○御坂美琴/○アウレオルス=イザード

4/5【ハヤテのごとく!】
○綾崎ハヤテ/○三千院ナギ/○桂ヒナギク/○瀬川虎鉄

3/5【ひぐらしのなく頃に】
○園崎魅音/○園崎詩音/○古手梨花

3/6【Fate/stay night】
○衛宮士郎/○アサシン/○真アサシン

3/4【Fate/Zero】
○衛宮切嗣/○ライダー/○バーサーカー

2/4【BLEACH】
○黒崎一護/○ウルキオラ・シフォー

3/6【ペルソナ4】
○鳴上悠/○天城雪子/○巽完二

1/4【めだかボックス】
○黒神めだか

3/6【物語シリーズ】
○羽川翼/○神原駿河/○忍野忍

2/6【リトルバスターズ!】
○棗鈴/○来ヶ谷唯子

58/100

111 ◆WzpMn05TJA:2011/12/22(木) 23:21:44 ID:V62wBfaUO
>>110
数字
55/100やったorz

112名無しさん:2011/12/23(金) 15:08:27 ID:8bA1sWMA0
>>110
ウルキオラ・シファーじゃね?

113 ◆WzpMn05TJA:2011/12/23(金) 15:35:15 ID:GLXZ/JzsO
>>112
ウルキオラ・シファーでした^^;

114 ◆RmIe4rjRnw:2011/12/23(金) 17:53:48 ID:jxyLDCNg0
はじめまして。
衛宮切嗣、六道骸で予約します。

115男はつよいよ ◆WzpMn05TJA:2011/12/23(金) 20:06:05 ID:GLXZ/JzsO
「へっへー、俺はそんな簡単にこの橋は通らせないぜおっさん」

橋に待ち伏せをしている男が居た。
身長が高く、体も大きく、金髪でどこか西洋劇を傍観させるカウボーイの様な帽子を被った男だった。
名を手塚義光といい、自分では会社員とは言ってはあるが本当かどうかはわからない。
明らかに会社員とはかけ離れた姿をしている。

そして義光の手には大きな剣が握られてある。
楽しそうな表情。
誰が見たって絶対にゲームに乗っているとわかる男だった。

「そこをどけ。怪我なんかしたくなかったらな」

普通はこんな男を見たら怖じ気づいてその場で震えるか、腰を抜かしてその場で倒れるか、一目散に逃げるなどをする人が多数であろう。

しかし、この対峙している男は違った。
彼は元傭兵であり、こんな男やそれ以上の男と戦ってきた。
高山浩太はこの目の前の手塚義光に負けないと絶対の自信を持っていた。

「いや、やっぱり退く必要はない」

浩太は自分のスタンスを思い出す。
20億円なんか要らず、ただ首輪を外してゲームから脱出出来ればそれで良い。

だがそれは出来ないみたいなので参加者全員を殺す必要があった。

「さぁ、かかって来い」

浩太は義光と本当に相反する様に拳銃を持っていた。

「やるってんなら……」

義光は勢いよく走り浩太目掛ける。

「――やってみなっ!」

手の中の剣はまるで空気や風を切り裂いている様な速さである。

だが浩太は動じない。
剣が振るわれ、腹目掛けての斬撃。

浩太は数歩急に後ろに引く。

「速いなっ」

義光に大きな隙が生まれる。
浩太はその瞬間を見逃すはずがなかった。

――バキュン!

一発の銃声が鳴る。
もし近くに鳥がたくさん止まっている木があれば全羽が飛び出して逃げるくらいの音の大きさ。

「へっ、運は俺に味方したってね」

義光が銃が撃たれる瞬間、たまたま崩れた体制になった時に心臓の位置にあったのが大きな剣の柄に当たっていた。
しかも、あと少し下に銃弾が当たっていたら手が使えなくなっていただろう。

1つの偶然が2つの奇跡を起こしていた。

116男はつよいよ ◆WzpMn05TJA:2011/12/23(金) 20:07:15 ID:GLXZ/JzsO
「次は当てる」

浩太が次の弾の安全装置を外す。
次はその一瞬の隙を付いてくる義光。

「なっ!?」

そんな短すぎる隙を狙う者だと今まで見たことなかったから、逆に対策がわからなくなっていた。
熟練者はスタンダードな相手には『慣れ』で通用するが、
逆に初心者はスタンダードな相手には弱いが、『慣れ』がないぶん色々な異常をあの手この手と考えられる。
つまり熟練し過ぎた腕が仇になったのだ。

「俺は一瞬すら呼吸する間も与えねぇ」

次は義光の剣が浩太の心臓を狙う。
だが咄嗟に銃を握っていない左手で心臓を守る様に胸の真ん中の辺りに手を抑える。

浩太は知っていた。
一般では心臓は左にあると言われてはいるが、実際は左寄りになっているというだけで本当は真ん中に心臓がある事を。

その左手には浩太が偶然付けていた指輪があった。

その指輪から赤い炎が燃えており、それが心臓を狙う剣を止めていた。

彼には義光とは逆で2つの偶然で1つの奇跡を起こしていた。
まずは嵐属性の赤い炎を発生させるボンゴレリングが支給されていた事。
もう1つは高山浩太という男にはたまたま嵐の死ぬ気の炎が流れていたのだった。
その2つの偶然が、心臓を守るという奇跡が起こった。

そこで初めて2人は相手側に興味を抱く結果へと繋がったのだ。

「なかなかやるなお前。若いのに大した判断力だな」
「あんたは年を感じさせなかったぜ」

両者共武器を下ろす。
戦いは終わった事を告げていた。

「俺は手塚義光ってんだ。あんたの名前は?それとただの一般人じゃないだろあんた」
「高山浩太。そしてお前の言う通りただの一般人じゃない。いや今は一般人だが元傭兵だ」
「いやー、こんなご時世に元傭兵ね。怖い世の中だねぇ」

皮肉が混ざっている様に笑う義光。
それを何とも取らずに聞き流す浩太。

「怖い世の中なのは今じゃないか?」

浩太は自分の首を親指で指差す。
そこには無機質な爆弾首輪が巻かれている。

「そうだな。ははっ」

バトルロワイアル。
確かに今が怖い世の中の象徴であった。

「高山さん。俺と協力しないかい?」

支給されたタバコに火を付ける義光。
浩太は考える素振りを見せてはいないが、だが脳みその中では深く考えていた。

117男はつよいよ ◆WzpMn05TJA:2011/12/23(金) 20:07:59 ID:GLXZ/JzsO
「協力を要求したその理由を問いたい」

決断して出した結論は役立たずか役立つかを審査する。
そういう事だった。

「試そうって魂胆かい。まぁ良い試されるとするかい」

義光は浩太とはここでも逆で考える素振りを見せる。
あえて見せているだけかもしれないが。

「敵と戦う時には何より強いのは最強の武器以外でなら何が必要か?罠か支配力か行動力か運動神経か口達者な言動か?どれでもない」
「ほぅ。ならお前の答えはなんだ?」
「数に決まってんじゃないか。数あればどれも倍なんだぜ」
「なるほどな」
「それにバトルロワイアルの参加者がロボットじゃなく生きた人間ってのも生き残るキーだぜ」

義光はタバコの箱からタバコを1本だけ出し浩太へ向けながら持論を述べる。

「人間は生物である以上睡眠やトイレをする時の見張りだって必要だぜ高山さん」
「どうやら俺が考える以上に有能らしい」

浩太がタバコを1本手に取り義光がそれにライターで火を付ける。

「だがいつ俺がお前を殺すかはわからないぞ?」
「それはお互い様ってね」

2人は馴れ合うわけでもなく、ただ肩を並べ橋を渡りはじめた。

―――――

この2人のタッグは誰が相手でも絶対に強力と認められるだろう。
その2人が協力をしてしまった。
このバトルロワイアルは着々と破滅の未来へと向かって行っている様であった。



【F-1 橋/未明】

【高山浩太@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:ブラックホール15/15@ペルソナ4】
【所持品:支給品一式 ブラックホールの弾丸30/30 嵐のボンゴレリング@家庭教師ヒットマンREBORN! ランダム支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:首輪を外す為優勝する。
2:手塚と協力し参加者を殺害していく。

【備考】
※本編開始前からの参戦です。



【手塚義光@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:舞の剣@Kanon】
【所持品:支給品一式 タバコ10箱@現実 ライター3本@現実】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:優勝する為全参加者の殺害。
2:高山さんと協力し参加者を殺害する。

【備考】
※本編開始前からの参戦です。


【ブラックホール@ペルソナ4】
白鐘直斗の最強の装備武器。ゲーム中では高確率で全バッドステータスを付着させる効果がある。このロワオリジナルで装弾数15発(原作では不明)。

【嵐のボンゴレリング@家庭教師ヒットマンREBORN!】
ボンゴレの嵐の守護者に渡される嵐属性のボンゴレリング。嵐属性の死ぬ気の炎が流れている人物のみ、嵐の炎を出す事が出来る。

【舞の剣@Kanon】
大きな剣で川澄舞が魔物と戦う時に使用される舞愛用の武器。

【タバコ@現実】
普通のタバコ。

【ライター@現実】
火を付ける普通のライター。

118 ◆WzpMn05TJA:2011/12/23(金) 20:11:41 ID:GLXZ/JzsO
投下終了

元ネタはドラマ『男はつらいよ』より


予約
岸沼良樹、園崎詩音、ユーフェミア・リ・ブリタニア予約

ちょうど参加者半分の50人目の予約でついにギアスキャラの登場!
嫌な予感がするキャラ2人いるが…

119 ◆wG50kLoBJg:2011/12/23(金) 20:39:09 ID:8bA1sWMA0
投下乙です。
短いですが、投下します。
題名:破面の告白

120 ◆wG50kLoBJg:2011/12/23(金) 20:39:34 ID:8bA1sWMA0


「ったく、どうなってんだよぉ!!!」


臆病な声が、ただ広いだけの教会内に響き渡っている。
声の主はただの高校生。
ついさっき目が覚めたが、彼はまだルールを理解できていないようだ。
彼の名前は花村陽介。
デパート「ジュネス八十稲羽店」店長の息子で見た目は、ヘッドホンをつけているただの高校生。
ただ、ペルソナを使用できると言う以外は────


(どうすればいいんだよ!?)


彼の頭の中は、混乱しきっている。
ついさっき、目の前で、3人が殺されてた。
二人は何もしていないのに、殺された。もう一人は、勇敢に立ち向かって死んだ。
そして、勇敢に立ち向かって殺された男の腕は奇妙に変形していた。
つまり、化け物みたいな奴が普通にいるということだ。

デイパックからはみ出ているのは、木製の野球のバット。
一目見るだけで分かる。─────これで、人は殺すことは不可能に近い。


ガタン


彼から見て、背後。
そこから奇妙な音が聞こえた。
戸惑う、彼の前に現れたのは青髪の男。
男の腹部にはパックリと穴が開き、片腕は無かった。
──────つまり、もうこの近くで、殺し合いが起きている



「おい、アンタ!!!何が起きたんだよ!!!」



だが、彼の返答は意外なものだった。




「うるせぇ。ガキ。」




青髪のリーゼント頭の男は、花村陽介の頭を鷲掴みにする。
花村陽介は理解できていない。
男が、何故、腹部に穴が開いているのに生きているかと言うこと。
そして、自分が今から何をされるかと言うことと。
もう一つ、今から、何が起きるかと言うことと。


声すら出せなかった。


男の手の平がわずかに光る。
そして、花村陽介の上半身は閃光に包まれていく。





【花村陽介@ペルソナ 死亡】

121 ◆wG50kLoBJg:2011/12/23(金) 20:40:09 ID:8bA1sWMA0




―――――




下半身だけとなった、花村陽介の死体。
破面の能力。虚閃(セロ)によって、上半身は吹き飛ばされている。
花村陽介を殺した男───元第6十刃(セスタ・エスパーダ)グリムジョー・ジャガージャック。



(黒崎一護は何処にいやがる?)



黒崎一護。死神代行。
現世進行の際に、付けられた傷の跡は彼の身体に刻み込まれている。
グリムジョーにとって、黒崎一護と決着をつけないと気が済まない。



「貴様、何故この少年を殺した?」



教会の影から、青いドレスを着た少女が現れる
金髪の少女。名前は――騎士王アーサー・ペンドラゴン。
片手には、自分の斬魄刀を持たない死神が使う斬魄刀、浅打。



「死神‥‥じゃねぇな。」
「何故だと聞いている。」



まだ誰も知らない。
今から始まる戦いが、史上最悪のシナリオを引き起こすということに。



【C-2 教会/未明】

【グリムジョー・ジャガージャック@BLEACH】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:手当たりしだい、参加者を殺していく
2:黒崎一護と決着をつける。
【備考】
※片手が無い時期からの参戦です。
※虚閃(セロ)は半日に一発と言う制限です。(本人は気づいていません。)

【セイバー@Fate/stay night】
【装備:浅打@BLEACH】
【所持品:支給品一式 】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:士郎を保護する。
2:何故‥‥!?
【備考】
※参戦時期は他の書き手さんにお任せします。
※Fate/ZEROのメンバーが参加していることに気づいていません。


※花村陽介の支給品一式は虚閃(セロ)によって消し飛ばされました。
※教会の一部が吹き飛びました。


【浅打@BLEACH】
自らの斬魄刀を持たない下級の死神に渡される、名前のない斬魄刀。

【木製のバット@現実】
硬式野球用の木製バット。

122 ◆wG50kLoBJg:2011/12/23(金) 20:41:37 ID:8bA1sWMA0
投下終了です。

元ネタは、ドラマ『相棒 Season1「仮面の告白」』より

123 ◆WzpMn05TJA:2011/12/23(金) 21:35:15 ID:GLXZ/JzsO
投下乙です

最悪のシナリオに期待してしまいますね

アニロワ3rdで人気のBASARA VS Fateの方程式ですがこのロワではBLEACH VS Fateになりそうですね

まさに王道ロワのチート枠
ウルキオラVSバーサーカーが個人的には見たいところですね

124 ◆xR8DbSLW.w:2011/12/23(金) 22:11:33 ID:REE9nagw0
皆様投下乙です。
自分も投下します

125バトルロワイアル狂奏曲 ◆xR8DbSLW.w:2011/12/23(金) 22:13:21 ID:REE9nagw0

とりあえず。
先に言っておこう。


人ってものは何時でも狂うことが出来る。


いくら正義を貫こうと。
いくら王道を歩もうと。
いくら良心が働こうと。
いくら公正で在ろうと。
いくら正しく、より正しく生きたところで、狂うこと自体は容易いのである。

ただ、ここで狂うという言葉を使うと。
このバトルロワイアル内で「狂う」という単語を使うとどうしても負のイメージが先行してしまうものだが。
ここで言う「狂う」は別に負のイメージとは限らない。

要するに。
今までの「存在証明」という名の志から逸れることを「狂う」と使わせてもらおう。
例えば、今まで軽犯罪を繰り返してきた男が真っ当に生きているのも一つの「狂い」だろう。
例えば、ずっと引き籠って不登校生活していた学生が学校に行こうとするのもまた一つの「狂い」。

ただ一つ。
一つの切っ掛けにおいて、人間は良くも悪くも変わることが出来る。染まることが出来る。
友情。恋愛。使命。責任。勘違い。罠。
種ならば幾らでもある。
だからこそ。
人というものは変わるのだろう。


この「バトルロワイアル」という促進剤を前にして、より健やかに。


まあ。
そしてここに。



どういった意味でかはさて置いて。
この一件を境にしてかはいざ知らず。
それでも「狂った」人間が数人。


そんな人たちの物語を見てゆこう。

126バトルロワイアル狂奏曲 ◆xR8DbSLW.w:2011/12/23(金) 22:13:33 ID:REE9nagw0



 × × ×



「情報統合思念体にこの件についてコンタクト開始――――コンタクト失敗」

長門有希は、言うまでもなく宇宙人だ。
正確には対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイスというのだが、ここは宇宙人と統一させてもらう。
ともあれ彼女は宇宙人というだけあり、人ではない。人に擬態した人外。
何て言い方を言うと害あるものかと思われるとこちらとしては思うことがあるのでここにきっぱりと言っておく。
少なくとも普段の彼女は害あるものではない。

彼女はいわば監査員だ。
対象者は、『神』涼宮ハルヒ。

「………どうして」

涼宮ハルヒは『願望を現実に変える能力』をその身に秘める。
今回の件、「バトルロワイアル」においては尤もな流れとして封印されてはしまったのだが。

ともあれ、その力は言うまでもなく膨大だ。
影響力、強制力ともに使う本人の如く傲慢だ。
その力に、通称キョンを始め彼女も振り回されている。
かつての八月の件なんて最もな例だろう。

それでも。
せめてもの救いを言うのであれば、彼女がその力を存じていないこと。

たとえ唐突に桜が変色しようとラッキーで済ませ、
たとえ突然灰色の空間に招かれ青色の怪人に襲われたのも夢オチで済ませる。
そんなこんなで今までその力を知らずして過ごしてきたのが、救いだ。

そして――――彼女らの成果ともいえる。

人間。
そんな力を自分がもっていると知ったらどう動くか分からない。
信じようにも信じ切れなくなる。
故に彼女らは、その力を隠匿しながら平穏で波瀾なが苦戦生活を今までは送っていたのだ。

「再度情報統合思念体にこの件についてコンタクト開始――――コンタクト失敗」

さて、そんな紹介も程々にしておいて。
今現在の彼女を見ていこうと思う。

彼女が先ほどから行っているのは、言葉通りに情報統合思念体コンタクト―――接触だ。
先ほどから専門用語が多くて困るが、情報統合思念体とはいわば彼女ら宇宙人の元締め。親玉とも言い変えられる。
彼女が文字通り宇宙人並みにいかれた力を使えるのはこの存在あってこそと言い変えても差支えは無い。

まあ、ともあれ。
彼女は先ほどからずっとそのように接触を試みていた。
しかし、結果はことごとく失敗の一路を辿っている。
いや正しく言うならば、接触は出来る。最低限の要請もできる。

だが。
このバトルロワイアルの壊滅を許してはくれない。

許してくれなければ、何もできないのが彼女の能力。
それは彼女としても理解しているし、無論のこと彼女はそれを由としている。
されど、場合が場合。


この場に置いて、情報統合思念体が、要請を拒否する理由などあり得ない仮定の一つを抜きにすると、そもそも皆無なのだ。


朝倉涼子というバックアップといえる存在ならいざ知らず。
この長門有希となればそうはいかない、いかせない。
けれども現実では、接触に滞る。

幾ら相手側に、「朝倉涼子」という存在があろうとも、というよりかは在ること自体がおかしいのだがさておいて。
「朝倉涼子」にはそれだけの力は、情報統合思念体に関する力は先の通り長門有希の方に分がある。

127バトルロワイアル狂奏曲 ◆xR8DbSLW.w:2011/12/23(金) 22:13:46 ID:REE9nagw0
けれども、何故だか。

この「バトルロワイアル」が始まって以降、ずっと不調なのだ。

理由は分からない――――わけでもない。
しかしそれはあり得ない仮定なのだ。


「涼宮ハルヒ――――?」


そう、その一つのあり得ない仮定。
考えるまでもない、一つの可能性。


それは、涼宮ハルヒがこの状況を望んだという可能性。


理由は別に思い返せば幾らでも思いつける。
元々なにかしらに感化されやすい涼宮ハルヒのことだ。
サバイバルゲームをやってのことから発展していったのもかもしれない。
テレビの特集で戦場についてのことをやって何かに期待して胸躍らせていたのかもしれない。
ふとして、唐突に突拍子に思いついただけなのかもしれない。

しかしそれでも。
それだけの切っ掛けにおいても、涼宮ハルヒを前にすれば実現する。

けれど彼女なりにそれは無いと見込んでいた。
普段の彼女の生活を見ると、そんなことはねじ曲がっても考えないだろう。
そういう評価を下し観察していた。
少なからず、昨日までの彼女にはそうした挙動などは見受けられなかったのだから。


ただ。


この、情報統合思念体との滞りを受けると。
彼女の中で、その可能性は徐々に肥大化していった。

元々、情報統合思念体とは、彼女の意思が最優先といえるべき個所が見受けられる。
つまりそれが意味するのは、彼女の意思の尊重。
そんな性質を有する概念。

だから彼女はこう考える。
だから彼女はこう思った。


それが、「バトルロワイアル」を打開できない理由なんじゃないのか、と。
この一件には、涼宮ハルヒの意思が一枚買ってるのではないか、と。


だとすると。
長門有希。彼女が思うことはただ一つ。


ある種の失望。


仲間思いで、それ相応の人格者で、太陽の様な彼女。
そう認識していたのも改めなければなるまい。


かつて誰かは涼宮ハルヒに対しこう言った。


神―――と。


しかし、違ったようだ。

128バトルロワイアル狂奏曲 ◆xR8DbSLW.w:2011/12/23(金) 22:14:11 ID:REE9nagw0
と。

彼女は、ふと呟く。


「悪魔………」


その声は、静かに木霊する。



 × × ×



こうして、彼女の中で、歯車は少しずれた。
だから彼女は、この「バトルロワイアル」において


「狂った」。



 × × ×



坂上智代と言えば、元不良の優等生だ。
文武両道の才色兼備。
その銀に煌くなびく髪は、このバトルロワイアルに置いても健在である。

しかし、その目に映るのはいつもの希望に満ちた瞳ではない。
映るのは――――絶望。

「………願い」

一言、静かに呟く。
主催は言った。何でも叶えよう、と。



話変わるが、彼女には叶えたい望みがある。

学校の前に続く長い坂道に咲く、綺麗な桜の花を守りたい。

そんな望みがある。そんな願いがある。
弟と、また再びあの坂の桜の花を。


「――――ふう」

と、考えたところで思考を中断する。
首を大袈裟に横に数回振った後、両手で両頬をパンッと小気味の言い音をたててはたく。

「これでは、朋也の奴へ顔向けできんな」

岡崎朋也。
彼女の――――彼氏。
まあここにいる彼は、違うのだけれども。

129バトルロワイアル狂奏曲 ◆xR8DbSLW.w:2011/12/23(金) 22:14:37 ID:REE9nagw0
言うなれば、この場に置いては彼女は独りなのだけれど、ここではおいておこう。

「…………まあ、惜しくないと言えば嘘にはなるがな。朋也を殺してまで手に入れるものでもない」

自分に言い聞かせるように、独り呟く。
そして、再度決心する。

「………」


殺し合いには乗らない、と。



 × × ×


彼女の場合は、既に「狂っていた」という描写が適切だろう。
人を傷つけるのに躊躇いなどなかった、やさぐれていたかつての日から。
彼女は正義の人に、成り上がった。


だから彼女も「狂った」という言い方をさせてもらおう。


 × × ×



そして、そんな少女らが、邂逅した。



 × × ×


人吉善吉。
彼の体は今は自然と軽かった。

「…………カッ」

が、溜息を吐かざる負えなかったのがこの現状。
ようやくのことで、自身のやりたいことがはっきりしたというのにもかかわらず、この仕打ち。



やっと、自分が、黒神めだかへの恋慕に自覚することに達したのに。



その結果が、バトルロワイアル。

130バトルロワイアル狂奏曲 ◆xR8DbSLW.w:2011/12/23(金) 22:14:53 ID:REE9nagw0
意味が分からない、不条理過ぎる。

そんな事を思いながら、彼は歩いていると。


彼は遭遇した。
二人の人間と。



長門有希と、坂上智代に――――。




 × × ×



長門有希のこの件の対応とすれば、俗に言うところのマーダー化だ。
情報統合思念体が望むのであれば、逆らう術などない。


涼宮ハルヒがそう望むのであれば―――――。


無論好きでやっている訳ではない。
むしろそう言った行動しか取れない自分に苛立ちにも似た感情しか取れない。

けれど、やらなければ。


そう決意したのち、直ぐ様彼女は出会った。
別の色をもった、決意を宿す心強い瞳を。



だから、多少のためらいの後。




彼女は殺戮を始めようと試みた。




 × × ×



「―――――くっ」

坂上智代は、長門有希が自身の姿を発見する数秒後にその姿に気付いた。
大人しそうなその風貌と、武装なき姿を見て、始めは話を掛けようと、近づいた。

そこまでは何の問題もなく進んだのだが、次の瞬間その考えは無下にも抹消される。
何時の間にか握ったのか、ナイフを片手に、ゆっくりとこちらに近づいてきた。

対し智代の元には何ら武装は無い。

131バトルロワイアル狂奏曲 ◆xR8DbSLW.w:2011/12/23(金) 22:15:07 ID:REE9nagw0
まだ確認すらしていなかった。それほどまでにこの現実を受け入れるのに時間をかけてしまったのだ。


それでも敵は待ってくれなかった。
一瞬の空白の間の後、一気に間を詰められる。


上からナイフが振りかざされる。だが、ここまでなら、智代だって場馴れ自体はしている。
辛くも腕を取り、背負い投げの要領で投げ飛ばす。
長門の身体は軽々と投げ飛ばされ、近くにあった木に激突する。

しかし、長門の方はさしてダメージは食らっていない。
さもありなん。なにせ彼女には――――制限はあれども防御壁自体は創れるのだから。


そして、彼女は走って逃げだした。とてもじゃないが、敵う相手ではない。そう本能的に察知したから。
長門有希の方はそれをただ静かに見つめているだけだった。



 × × ×


人吉善吉は考える。
ここで、どちらの方について近づけばいいのか。


人を蹴り飛ばして逃げた彼女を追えばいいのか。
人を殺そうとして返り討ちにあった彼女に近づけばいいのか


前者には害意は無かった。
後者には殺意があった。



さて、選択の刻。
彼が、選んだ選択肢とは――――――。




【一日目/深夜/C-4 森】

【坂上智代@CLANNAD】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:朋也たちと合流
2:とりあえずは逃げておく
【備考】
※智代ルート、卒業式直前からの参戦です

【長門有希@涼宮ハルヒの憂鬱】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康、本当に乗るべきかの悩み】
【思考・行動】
1:殺し合いに乗る?
【備考】
※参戦時期は今後の書き手様にお任せします

【人吉善吉@めだかボックス】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:どちらの少女と接触するか
2:みんなと合流
3:めだかちゃんに惚れてもらう
【備考】
※めだかと付き合いたいと自覚した直後からの参戦です

132バトルロワイアル狂奏曲 ◆xR8DbSLW.w:2011/12/23(金) 22:15:22 ID:REE9nagw0
まだ確認すらしていなかった。それほどまでにこの現実を受け入れるのに時間をかけてしまったのだ。


それでも敵は待ってくれなかった。
一瞬の空白の間の後、一気に間を詰められる。


上からナイフが振りかざされる。だが、ここまでなら、智代だって場馴れ自体はしている。
辛くも腕を取り、背負い投げの要領で投げ飛ばす。
長門の身体は軽々と投げ飛ばされ、近くにあった木に激突する。

しかし、長門の方はさしてダメージは食らっていない。
さもありなん。なにせ彼女には――――制限はあれども防御壁自体は創れるのだから。


そして、彼女は走って逃げだした。とてもじゃないが、敵う相手ではない。そう本能的に察知したから。
長門有希の方はそれをただ静かに見つめているだけだった。



 × × ×


人吉善吉は考える。
ここで、どちらの方について近づけばいいのか。


人を蹴り飛ばして逃げた彼女を追えばいいのか。
人を殺そうとして返り討ちにあった彼女に近づけばいいのか


前者には害意は無かった。
後者には殺意があった。



さて、選択の刻。
彼が、選んだ選択肢とは――――――。




【一日目/深夜/C-4 森】

【坂上智代@CLANNAD】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:朋也たちと合流
2:とりあえずは逃げておく
【備考】
※智代ルート、卒業式直前からの参戦です

【長門有希@涼宮ハルヒの憂鬱】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康、本当に乗るべきかの悩み】
【思考・行動】
1:殺し合いに乗る?
【備考】
※参戦時期は今後の書き手様にお任せします

【人吉善吉@めだかボックス】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:どちらの少女と接触するか
2:みんなと合流
3:めだかちゃんに惚れてもらう
【備考】
※めだかと付き合いたいと自覚した直後からの参戦です

133 ◆xR8DbSLW.w:2011/12/23(金) 22:17:28 ID:REE9nagw0
ウゲ、投下失敗してやがる。前に引き続きなんやねん自分。
……まあなんてわけで投下終了です。
さっぱりした感じもありますが。
感想等くれると幸いでございます

題名元ネタ。
(ピアノ等)協奏曲から

134 ◆jEaHSufpKg:2011/12/23(金) 22:48:15 ID:Xwe3jvWU0
鳴上悠、御坂美琴、来ヶ谷唯湖で予約します

135 ◆WzpMn05TJA:2011/12/23(金) 22:54:26 ID:GLXZ/JzsO
投下乙です

表現が上手くて自分には真似出来ない……

とまぁそれは置いといてと、

善吉がまだスタンスが不明なのが気がかりだなー

ゲームに乗るなら智代かなと予想していただけに長門マーダーで良い意味で裏切られました

今の朋也と智代が出会ってほしくないと切実に願ってしまった…
智代が渚ルート参戦だったらどんなに良かったか。
智代好きの自分が苦しい

136 ◆xR8DbSLW.w:2011/12/23(金) 23:32:49 ID:REE9nagw0
なんと。
氏の嫁二人を背負ってしまったのか。
ともあれ感想ありがとうございます

まあ描写ミスとかしてたので一応。

>>132

人を蹴り飛ばして 〜



人を投げ飛ばして 〜


に。
ちなみに長門のナイフですが情報操作で出したものでよろしくお願いします。
で、最後に装備したのは消失させたから。描写不足すいません
ダメでしたら、ランダムに入れときます。

137俺の救世主さま ◆WzpMn05TJA:2011/12/24(土) 00:18:39 ID:ufyN1vF6O
――どうなってんだよ、こりゃ!
今、自分はどんな状況なのか整理をしろ俺!

肩で息をしている俺はぼんやりだが大体の事を思い返してきた。



おまじないを俺達9人が行ったんだ。
だがそこで俺達は友人を何人も亡くしてしまい最終的には5人で『逆打ち』という方法で脱出をした。
戻ってきたのはもちろん学校。

だが、俺達がおまじないを行った自分の学校ではなく、室内でもない屋外に戻ってきた。

そこはグラウンドだった。
脱出をして俺達が見た最初の色は見慣れた赤色、『血』の色であった。

赤色の景色からまた赤色の景色へと移り変わり、また1人死んでしまった。

――どこまで俺達は死と隣り合わせなんだよ!

眠らされた俺は目を覚ますと砂浜。
制服に付いた砂浜の砂を落としていると、髪の長いおしとやかな女性が話しかけてくる。

「あなたもあの光景を見た人ですか?」

あの光景。
彼女の言うあの光景とは、子供が実験と称してただ乱暴に動物を殺す様な、中身も意味もないくだらない殺しに巻き込まれた3人が死んだ事件の事だろう。

また、人が死ぬのは心が痛むな。

おそらくこの島には篠崎あゆみ、持田哲志、中嶋直美も来ているんだろう。
哲志なんか妹を殺されている。
今回は怒りの矛先があるぶん主催者にかなりキレているところなんじゃないか。
――それは主催者の思うツボなんぜ、哲志。

「あぁ。しかも死んだ奴の中に知り合いが居たんだ。やり切れないぜ」

主催者に対して憎しみが湧き出る。
俺のこの考えもきっと主催者に踊らされているんだろうな。

「私にも知り合いが居ました。私が好きな人の妹さんです」
「……ぁ」

あの由香ちゃんと一緒に死んだもう片方の子の知り合いか。

「くっ……、ぐぅ……」

下を向き、歯を食いしばり、憎しみをさらけ出しての声が響く。

「死んで当然なんだよ、あんな奴!」

全てを見下す目だった。

「あ、あんた死者をバカにするんじゃねーよ。そういうのは卑怯だ!」

今の言葉は聞き捨てならなかった。
死んだ者への侮辱。
返される事のない仕返し。
卑怯だ。
そんなの卑怯じゃないかっ!

「なんで?だってあいつが悟史君がしてきた事の方が卑怯じゃない!」

サトシ……。
由香の兄貴の名前もサトシだったな。

じゃあ死んだ2人の子達の兄貴は両方サトシって名前なんだったんだな。
偶然にしても気持ち悪い偶然だぜ。

―――――

138俺の救世主さま ◆WzpMn05TJA:2011/12/24(土) 00:19:39 ID:ufyN1vF6O
沙都子がすぐに泣くから。
助けて、にーにーって。
それを悟史君が助けて。

沙都子が新しい親に対して反抗しては泣くから。
助けて、にーにーって。
それを悟史君が助けて。

沙都子がご飯をこぼしては泣くから。
助けて、にーにーって。
それを悟史君が助けて。

沙都子が村の人に悪口を言われては泣くから。
助けて、にーにーって。
それを悟史君が助けて。

沙都子が転ぶと泣くから。
助けて、にーにーって。
それを悟史君が助けて。

沙都子が悪い事をしては怒られて泣くから。
助けて、にーにーって。
それを悟史君が助けて。

沙都子が怖いと泣くから。
助けて、にーにーって。
それを悟史君が助けて。

沙都子が、沙都子が、沙都子が、沙都子が、沙都子が、沙都子が、沙都子が、沙都子が、沙都子が、沙都子が、沙都子が、沙都子が、沙都子が、沙都子が、沙都子が、沙都子が、沙都子が、沙都子が、沙都子が、沙都子が、沙都子が、沙都子が、沙都子が、沙都子が、沙都子が、沙都子が、沙都子が、

にーにーって、にーにーって、にーにーって、にーにーって、にーにーって、にーにーって、にーにーって、にーにーって、にーにーって、にーにーって、にーにーって、にーにーって、にーにーって、にーにーって、にーにーって、にーにーって、にーにーって、にーにーって、にーにーって、にーにーって、にーにーって、にーにーって、にーにーって、にーにーって、

すがりつくから。

悟史君が優しいのを誰よりも知っている沙都子だから。
沙都子をいくらでも守ろうとする悟史君だから。

何度も何度も悟史君が沙都子を守り、悟史君が傷付く。
悪循環の無限ループ。

そして、悟史君は……。

――消えた。

―――――

な、なんだよ。この女。
完全に狂っているじゃねーか!

俺は出来る限り彼女から逃げ出したく――逃げた。

「あいつらは言った。元の世界に返して、20億円を渡すって。その金を使えば望みを叶えると」

むしろこのゲームに喜んでいるとしか思えない。

「だから死ね!」

何故かは知らんが彼女は『止まれ』の標識を持っている。
だが破壊力だけはありそうだ。

「止まれ、トまれ、止マレ、トマレ、止まれっ、止マれ、止まれっ!」

まるでこの標識が見えないのかと言わんばかりの止まれコール。
だが止まった瞬間死んでしまうじゃないかよ!

俺は後ろを振り返らずに逃げる。
チクショ、砂浜という地形が悪い。

走るにも砂で埋もれるので上手く走れないのだ。

139俺の救世主さま ◆WzpMn05TJA:2011/12/24(土) 00:20:45 ID:ufyN1vF6O
――バーンッ!

だが、俺から見れば救いの神が現れたのだ。

―――――

「お止めなさい」

そこには如何にも貴族という格好をした女性が居た。
日本人には見られない気高さや気品さがあった。
それもその筈。
彼女はこのゲームの主催者のゲームマスターであるシャルル・ジ・ブリタニアの娘、反抗を見せたルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの異母妹であるのだから。
世間知らずで、純粋で行動力のあるお姫様だ。
名はユーフェミア・リ・ブリタニア。
通称ユフィである。

その手には自分の因縁のある銃、竹とセラミックで出来たニードルガンを持っていた。
充分に威力だけはある。

ユフィはそもそもゲームには乗っておらず、父親を止めるつもりだ。

―――――

バン、バン。
2発彼女は銃を放つ。

それはあくまでも威嚇の為であり。

「ちっ、覚えていなっ!」

彼女を撤退させた。



【A-7 砂浜/未明】

【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に】
【装備:止まれの標識@めだかボックス】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:健康、雛見沢症候群】
【思考・行動】
1:優勝して悟史君の元に帰る。
2:みんな殺す!

【備考】
※目明し編からの参戦です。
※彼女は雛見沢症候群にかかっていますがどの程度なのかは次の書き手さんにお任せします。



「ありがとうございます」

俺は助けてくれた少女に駆け寄った。
その少女はあまりにも可憐でキレイだった。

(い、いやっ、俺は篠崎が好きで……)

助けられてしかもこんなにキレイだと惚れてしまうのはしょうがないというか……。

「……ナィと」
「ん?」

140俺の救世主さま ◆WzpMn05TJA:2011/12/24(土) 00:21:24 ID:ufyN1vF6O
何か呟いたかと顔を見る。
目が赤くなっているだけでなにもおかしな事はない。

「アナタ……は、日本人ですか」

少々歯切れが悪い。
それにどうしてそんな事を訊ねるのか?
深く考え過ぎか?

―――――

「あぁ、日本人だが?」
「日本人はコロさないと」

頭を銃に突きつけられて……。

バーン!

彼女のニードルガンからトゲが出された。

彼女の意志とは関係なく日本人を根絶やしにしてしまう呪い(ギアス)が彼女を蝕んでいる。

彼女――ユーフェミア・リ・ブリタニアが追いかけっこに割って救ったのは岸沼良樹なのか、園崎詩音だったのか。
その答えは誰にも答えられない。



【岸沼良樹@コープスパーティー】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:???】
【思考・行動】
1:???

【備考】
※本編クリア後からの参戦。
※生死不明です。



【ユーフェミア・リ・ブリタニア@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【装備:ニードルガン2/6@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【所持品:支給品一式 ニードルガンのトゲ12/12@コードギアス 反逆のルルーシュ ランダム支給品×2】
【状態:健康、ギアス】
【思考・行動】
1:父親を説得し、バトルロワイアルを終わらせる。

【備考】
※死亡後からの参戦です。
※彼女は現在『日本人を殺す』ギアスの呪いにかかっています。このギアスは人を強制させるものなのでユフィに抑える事は不可能です。



【止まれの標識@めだかボックス】
牛深柄春の武器(?)。本人が弱すぎていまいちよくからない。標識だからってデュラララ!なわけじゃないんだから。

【ニードルガン@コードギアス 反逆のルルーシュ】
ユフィが日本人殺害に使った竹とセラミックで作られた銃。装弾数不明なので装弾数の6発というのはこのロワイアルオリジナル。

141 ◆WzpMn05TJA:2011/12/24(土) 00:27:57 ID:ufyN1vF6O
投下終了

元ネタはマンガ『私の救世主さま』より


タイトルと内容がまるで逆とか
王道からかけ離れた鬱話でしたorz

というか見せしめの沙都子と由香の兄貴が両方『サトシ』だった事に関しては狙ったわけじゃなくて偶然でした
この話を書いてる途中で気付いた

予約
キョン、ニンフ、姫萩咲実の予約

142ラブコメディーは突然に ◆WzpMn05TJA:2011/12/24(土) 08:23:45 ID:ufyN1vF6O
そりゃあ、いきなりのバトルロワイアルは理不尽に急だがな。
世の中の異常に慣れてきたといっても限度があるだろ。
閉鎖空間、終わらない夏休み、涼宮ハルヒの消失。

と今まででも涼宮ハルヒと関わってきただけでたくさんの非日常に巻き込まれ、耐久力は付いた。
だが自分の生死に関わる事なんかに慣れているほど俺は心は広くない。

というかなんなんだこの世界は?

それともハルヒがこれを望んだ結果か?
そんなバカな話があるか!

それに何故彼女、『朝倉涼子』がこのバトルロワイアルに絡んでいる?

「あぁ、わからん……」

無い頭を使うべきではない。
頭が痛くなり、疲れるだけだ。

「つーかここでもキョンかよ!?」

いや確かに明らかに本名じゃない名前もたくさんあったよ?
バーサーカーとかC.C.とか一方通行とか。
でも俺の『キョン』って明らかにしょぼいだろ!
せめて『ジョン・スミス』とかなら格好良いけどさ。

整理しよう。
親友に定着したアダナの『キョン』をここでも名乗らなくてはいけないらしい。
本名言ってもこの名簿がある限り信じてもらえないのだから。

「はぁ……。まぁ俺の本名とか期待はしないけどさ」

名簿をしまい込み、そのままデイパックを担ぎフラフラと歩く。

SOS団の誰かに会えれば。
特に事情を知っていそうな長門か小泉だとなお心強い。

本当にバトルロワイアルなんか始まってんのか?
また夢とかパソコンの世界とか閉鎖空間とかいうオチじゃないのか――ってウワッ!?

ここで俺は知らない女の人とぶつかってしまう。
これがラブコメの始まりだった――となればどんなに嬉しい事か。

―――――

「なによ、あんた!ちゃんと前向いて歩きなさいよ!」

中学生みたいな人に説教されている俺。

いやはや格好悪い。

「ちゃんと聞きなさいよバカ!」
「ぐはっ!」

蹴られてしまった。
初対面の人なのに。
ただ俺は年上だからキレたりはしない。

ツインテールで子供っぽい顔。
可愛らしい高い声で身長は低め、胸は……朝比奈さんと比べたら天と地ほどの差がある。
それこそ、絶壁!まな板!ピンポン球!塗り壁!ブラ要らずの貧乳!

「死ねっ!」
「うわぁ!?」

冗談にしろ、バトルロワイアルが行われている中で「死ね」は冗談きついぜ。

―――――

「私はニンフよ」
「いや子供居る体には見えないぜ」
「妊婦じゃなくて電子用エンジェロイドタイプβのニンフよ!あんた地蟲(むし)のクセに生意気ね!」

これはハルヒ並みに濃いキャラクターだな。

「エンジェロイド?……虹色の羽根があるがそれはコスプレじゃなく本物か?」
「当然じゃない。これはあなた達地蟲にはない物なんだからね」

偉そうな態度だがそんなに偉いのか?

というか宇宙人、未来人、超能力者、そして第4の異常者の未確認生物(エンジェロイド)まで俺は出会っちまったのか。

しかし、こうなると本当にハルヒがバトルロワイアルを望んでいたのかいなかったのか怪しくなるな。
ハルヒが聞いたら喜びそうだ。

「あんたの名前は?」
「俺か俺の名前は……」

本名を言おうとしてやめた。
名簿の名前で名乗らなくてはならなかったな。

「キョン」
「はぁ?……バカ?」
「しょうがないだろ!」

自分の名前がキョン扱いをされた事を説明する。
いや、されたも何もみんながキョンとしか呼ばないからだけだけど。

143ラブコメディーは突然に ◆WzpMn05TJA:2011/12/24(土) 08:24:49 ID:ufyN1vF6O
「あんた苦労人ね」

お前も原因入ってるからなー……。

「キョン!?」

と急にニンフが俺を押し倒す感じになる。

押し倒されてニンフの吐息が当たるぐらい近付いていて、俺は恥ずかしくてじたばたしてしまう。
上のニンフの反応は右手の人差し指で『シーッ』ってしている。
顔を上げると、その理由がすぐにわかった。
誰かの人影が向こう側から来ていたのだった。
ただ顔を上げるとニンフの小さい胸が頭に当たってしまっていた。

「…………」
「な、なにしてんのよ!き、キョン!頭下げなさいよ」

強制的に頭を下げられる。地面に顔を叩きつけられながら今見た少女を思い出す。
黄色いリボンが特徴である女の子であった。
弱々しく臆病そうな子、どこか朝比奈さんを傍観させる。

「あの子は話し合えそうじゃない?」
「ニンフもそう思うか。よし、じゃあ話しかけてみるか」

ニンフの手を退け、俺が一回ごろんと転がり立ち上がり彼女に近付いた。

「あんたも参加者かい?」
「ひっ!?」

いきなり俺が現れたせいで驚かせてしまったみたいだ。
この子が普通の子だったら良いんだけど。

「怖がらなくて良いよ。うーんと……。ほら深呼吸〜」
「すぅ、はぁ。すぅ、はぁ」

お腹に手を当て、1回2回と深呼吸をする。3回の深呼吸でようやく落ち着いたらしい。

ハルヒに絡まれた朝比奈さんみたいで可愛いな。

「どうやら落ち着いたね。じゃあそんな君にマフィンをあげよう」
「あ、ありがとうございます」

少女はマフィンを手に取り、一口小さい口でそれを食べる。

「あっ、おいしいですよ」
「そう?そりゃあ良かった」

マフィンをデイパックに戻すと……。

「キョン!私それ貰ってない!」
「おわっ!?ニンフ居たのか!?」
「居たわよ!」

144ラブコメディーは突然に ◆WzpMn05TJA:2011/12/24(土) 08:26:10 ID:ufyN1vF6O
マフィンをニンフが引ったくり、顔を赤くする。

「私、お腹空いたから」

そう言いながらマフィンを摘んでいた。

「?」

デイパックに食料が支給されているはずなんだけどな……。
何故マフィンを引ったくって顔を赤くしてマフィンを食べているのかわからない。

「ぅん、おいしい」

単に喧嘩してた俺からマフィンを取ったから恥ずかしいのか?
気にしなくて良いんだけどな。

「私は姫萩咲実です。キョンさんにニンフさんよろしくお願いしますね」

彼女はどうやら会話で名前を聞いていたらしい。
よくキョンとかニンフなんて名前信じられたな。

―――――

名前。
そう名簿である。名簿を見てカタカナの短い名前だったからキョンもニンフも記憶出来ていたらしい。

「え?姫萩さんの知り合いってこの島に居ないんですか?」
「はい……。でも仲のよい親友に殺されたりすると嫌だったから逆に良かったかもしれません」
「確かに……」

というか俺は主催者にすら既に知り合いなんだが……。

「でも感謝している人は居るんですよ?」
「え?」

知り合いは居ないのに感謝している人?

「キョンさんです♪」

女の子はよくわからん。
隣のニンフは赤い顔のまま俺の背中に指を食い込ませていた。

……痛い。
なんで俺こんな事されてんだろうな。
ただ格好悪くて声に出さない、そこだけ格好付けていた。

ずっとつねりっぱなしのニンフの手は果てにツメを立て始め、時間が経つにつれそれがどんどん深く入り込むのであった。

【D-6 街/未明】

【キョン@涼宮ハルヒの憂鬱】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 マフィン@リトルバスターズ! ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:ニンフと姫萩さんと行動。
2:SOS団と合流。特に長門か小泉と合流したい。

【備考】
※涼宮ハルヒの消失からの参戦です。
※ニンフと咲実の気持ちに全く気付いていないです。


【ニンフ@そらのおとしもの】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:キョンと姫萩さんと行動。
2:キョンのバカ……。

【備考】
※カオス戦(1回目)からの参戦です。
※キョンに対して色々な気持ちが生まれ始めています。


【姫萩咲実@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:キョンさんとニンフさんと行動。
2:キョンさんの事気になる……。

【備考】
※本編開始前からの参戦です。
※キョンに対して色々な気持ちが生まれ始めています。

【マフィン@リトルバスターズ!】
三枝葉留佳の手作り。

145 ◆WzpMn05TJA:2011/12/24(土) 08:28:56 ID:ufyN1vF6O
投下終了です

タイトル元ネタはドラマ『ラブストーリーは突然に』より

前回病んでたので雰囲気を変えたのがリア充なキョンでした

予約
黒神めだか、桂ヒナギク

146 ◆SENAs8NCE2:2011/12/24(土) 16:23:15 ID:5K0CDJvU0
皆様投下乙です。
クリスマスにリア充のキョンマジ羨ましい

では、予約分投下します

147 ◆SENAs8NCE2:2011/12/24(土) 16:24:51 ID:5K0CDJvU0
「何てこった」

一人の青年が、未だ漆黒に包まれた空を仰いで呟いた。
その言葉には恐怖の色などは微塵もなく、あるのは自嘲と諦めだけだ。
彼の名前は棗恭介。
小さな友人グループ―――『正義の味方』リトルバスターズのリーダーだ。
個性派揃いのメンバーたちだが、その全員から慕われているということから、彼のカリスマ性が伺える。そして彼もその期待に応えてきた、まさに『理想のリーダー』だった。

そう。どこまでも彼は、リトルバスターズのリーダーだった。

繰り返される一学期。
リトルバスターズの物語は、修学旅行道中のバス事故に収束する。
だが、妹の棗鈴と親友の直枝理樹の心は弱すぎた。『俺達の居ない世界』で生きていけるだけの強さを得てもらうために、ただただ延々と一学期を繰り返し(リフレイン)。
虚構の世界で、いずれ終わらせる物語を引き延ばして。
そうまでして、恭介は親友を守ろうとした。
しかし、世界は無情にも崩壊を始めたのだ。
一人の仲間の心を土足で踏み荒らし、大切な妹の心を壊した。
もう、駄目だ。
そう思わざるを得ないほど恭介は追い詰められていた。

だが、彼を救ったのは他ならぬ守るべき者・直枝理樹。
理樹が変えた。
彼が壊してきた仲間達を救い、最後に恭介を救う為に、世界を変えた。
ああ―――こいつらはもう、大丈夫だ。
全てを終わらせる筈だったのに。物語は更なる悪性によりかき乱される。

「バトルロワイアル………ふざけやがって………!!」

心の中はごちゃごちゃだ。
どうせ結末には破滅しか待っていないという諦めと、自分がもっと早く二人を前に進ませていれば良かったという激しい後悔。そして何より、とてつもない怒り。
自分のかけがえのない仲間達を殺し合いなどという悪趣味極まりないゲームの『駒』として扱う行為が彼には何より許せない。今の彼の頭には、主催者への確かな敵意があった。
直枝理樹も棗鈴も井ノ原真人も宮沢謙吾も来ヶ谷唯湖も、大切な仲間だ。
いずれ終わりの時には別れなければならないが、それでも守りたい。
いや、自分が守らなければならないのだ。
リトルバスターズのリーダーとして、虚構世界のゲームマスターとして。

――――上等だ、シャルル・ジ・ブリアニア、郷田真弓、朝倉涼子。
――――お前等は今から晴れてリトルバスターズの敵だ。

必ずこのふざけきったゲームを潰してやる、と心中で宣言する。
支給された一本の槍を携える。

148 ◆SENAs8NCE2:2011/12/24(土) 16:26:05 ID:5K0CDJvU0
『海軍用船上槍(フリウリスピア)』。
槍を扱った試しなどないしこれから扱う予定もないが、護身用には上等だ。
慣れない手付きで突く動作を数回、虚空に向けて行う。
彼は理解していないだろうが、彼の持つ槍には1500回もの樹脂コーティングが為されている。樹木の年輪を象徴し、『植物の繁殖力』により硬度は増幅を続けるという代物だ。
とある少女が怒りに任せて作り出したこの仕組み。
恭介のように不慣れな人物でも、最悪盾として機能してくれる。

「うっし、行くか」

『リーダー』としての顔つきにすっかり戻った恭介は前方を見据える。
建っているのはまだ真新しい学校。この中になら誰かしらいるだろう。
志を同じくするなら良いが、道を違えた人物ならかなり危険。しかしここで怖じ気づかないのが×恭介だ。むしろ敵は撃破して仲間にする、くらいの心構えだった。

彼は、校舎の中にゆっくりと足を踏み入れる。



「やれやれ。本当に――――困ったものですね」

青年は誰にともなく呟く。
『困った』などと言いながらもその端正なマスクには微笑みが浮かぶ。
彼は古泉一樹。とある機関を創設して所属する、『超能力者』だ。

突拍子もない。

『超能力者』なんて話、普通の人間なら大概はその一言で切り捨て、古泉一樹という青年は頭が残念な痛い人、などと不名誉なレッテルを貼り付けるのがオチだ。
が、しかし。今彼の右腕に浮かんでいる赤い光球を、どう証明するのか。
手品でなければCGでもなく、立体映像などでもない。正真正銘本物の、常人の理解の範疇を超えた力・『超能力』により生み出された理解不能の物体だ。
こじつけた理論でなら説明できるかもしれないが、古泉一樹は『本物』。
涼宮ハルヒを原因として発生する『閉鎖空間』内に進入し、内部で破壊活動を行う『神人』と呼ばれるモノを倒す能力を持ち、とある『機関』に所属する能力者。
その彼は、不測の事態に頭を悩ませていた。

「(やれやれ……涼宮さんの力がこんな事を引き起こすとは……予測していませんでしたね、特に不可解な様子は見られなかったので………不覚でした)」

涼宮ハルヒ―――神にも等しい力を持つ、世界を無意識に狂わす少女。
彼の考察では、ハルヒの力がマイナスに働いた結果この『バトルロワイアル』が発生した、というのが結論だった。故にあの主催者、シャルル・ジ・ブリタニアと郷田真弓、そして朝倉涼子も仕立て上げた悪。

149 ◆SENAs8NCE2:2011/12/24(土) 16:26:58 ID:5K0CDJvU0
少なくとも既に長門有希に敗北し、抹消された朝倉の存在は有り得ない。
『朝倉涼子』がどういう経路を辿ってどうなったのかを涼宮ハルヒは知らない筈、つまり『いきなり転校した』ということになっている朝倉が適当に選ばれた。
他の二名が生み出された存在か彼女の見た・聞いた存在なのかは分からない。しかしとにかく、このバトルロワイアルは涼宮ハルヒが望んだ非日常が最悪の形で実現したということ―――だが、まさか異世界なんてモノを作り出すとはさすがに思っていなかった。

「(さて………案の定この殺し合いにはSOS団の皆さんも巻き込まれている。彼女が望む非日常には我々のような存在も含まれるのはもはや必然ですね。
ともなれば、彼らが死んでしまうことで涼宮さんがこの世界そのものを放棄してしまう可能性も無きにしも有らず。この殺し合いで彼らが死んでしまうことは避けた方がいい)」

特に、ある人物が命を落とすことだけはあってはならないだろう。
涼宮ハルヒが無意識に支えとする人物―――名簿の名を借りて『キョン』。
彼が万一命を落とすことがあれば、支えを失った彼女が暴走することも考えられる。何せ観測上これほどの事態は一度たりとも無かった。
この空間そのものが彼女の生み出した空間なのだ、閉鎖空間に限りなく近いこの空間内において『神人』を発生させられでもすれば終わりだ。――――いや、そこまでせずとも彼女がこの世界の『破滅』を望みでもすればそれだけで終わる。
厄介な力だ。本人が自覚していないだけに、尚更。
まあ自覚されたとしてもこれまた更に厄介な事態を生むだけだろうが。

「(キョン君が死ぬことはあってはならない。涼宮さんが『世界の破滅』を望まないように支えてくれる人物が現れればいいのですが、極少の可能性に賭けるのは少々気が引けますからね。とすれば、残念ながら解決策は一つしか残っていないようです)」

その甘いマスクをまた笑顔の形にして、古泉は決めた。

「(殺し合いに乗らせて貰いましょう。尤も、生き残るのは涼宮さんただ一人ですが。彼女が『殺し合いが起きなかった未来』を望むことを願って、ね)」

涼宮ハルヒを優勝させる。
それが、古泉一樹の本当につまらないいつも通りの決断だった。
だがもう二つ、彼は考えている。
『片手間』の策と『最悪の事態』の策。

まず、殺し合いをする片手間に。
殺し合いに乗っていない者に、涼宮ハルヒについて説明する。

150 ◆SENAs8NCE2:2011/12/24(土) 16:28:06 ID:5K0CDJvU0
そして、涼宮ハルヒ以外の参加者を殺させる。
殺し合いに乗るような野心家は賞金を欲するだろうが、殺し合いに反対する平和主義者は全てが救われる終わりを望むだろう。それは人間としてとても正しい。
無論、話に乗ってこなかったなら問答無用で殺害させて貰うが。

もう一つは、『涼宮ハルヒが万一何者かに殺害された場合』だ。
彼女は文武両道の優等生だが、自らの力を自覚しない限り普通の人間。
いざ彼女を殺害するとなれば、物陰からの狙撃で十分に事足りる。そう考えれば涼宮ハルヒという少女がこのバトルロワイアルで死亡する可能性は決して低くない。
そうなった時、古泉一樹はどう動くのか。そんなものは決まっている。

SOS団の人間以外を殺し、SOS団の団員のみで脱出する。

古泉は今、あのSOS団を『機関』に次ぐ自らの居場所と捉えている。
その『居場所』の人間を殺してしまうのはどうも忍びない。
第二の守るべき存在として、責任を持って彼らを守る。
最悪の事態が起きた時、古泉一樹は『機関』としてではなく、SOS団の人間として行動することを決意していた。あくまで『最悪』の場合であったが。

「さて、ではそろそろ行きましょうか」

殺し合いをしに、と付け足していつもの笑顔で彼は教室を出た。



話は打って変わって美術室。
ショリショリという木を彫る際の独特の音だけが静寂の中響いていた。
蛍光灯の明かりに照らされて、一人の少女が木を星の形に彫っている。

「失礼ですね、どこから見ても可愛いヒトデですよ」

………失礼。一人の少女が木を本人曰くヒトデの形に彫っている。
その行為をバトルロワイアル中に行う意味が分からない人が大半だろう。
むしろその彫刻刀を武器にして護身なり殺人なりするのが普通か。
だが彼女―――伊吹風子にとってはその行動こそが『普通』だった。

まあそれは置いておいて、伊吹風子という人物にとってこの状況は異常だ。
本人は気付いていないが、今ここに居る伊吹風子は『実体』を持っている。
風子はいわば『昏睡状態』に陥っている人間だ。
高校の入学式に交通事故に遭ってから現在まで意識を取り戻していない。
風子の存在は幽霊に近かった。
それが今此処に実体を持って存在している―――不可解。


「………ちょっといいですか?」
「ひゃぁっ!?」


風子が椅子から転げ落ちる。
おやおや、と言って。声をかけた一人の青年は微笑む。

151 ◆SENAs8NCE2:2011/12/24(土) 16:30:54 ID:5K0CDJvU0
「な、なんですか貴方はっ!!風子に忍び寄る謎の男ですかっ!?」
「そこまで驚いて下さるとは、背後から近寄った甲斐がありました」

ははは、と頭を掻く。
ただし、右腕には真っ赤な光球を浮かべたままで。
青年・古泉一樹の中で、既に伊吹風子をどうするかは決まっていた。
『処分』―――つまり、利用価値が無い。
また古泉一樹には、罪のない少女を殺す事への躊躇いなど存在しない。

「突然ですがクイズです。僕は一体、何者でしょうか」
「わっ、クイズですか!風子こう見えてもクイズは大得意ですよっ」

だから、これはただの暇潰し。
圧倒的優位な状況で、ちょっと遊び心を出してみただけ。
籠の中に閉じこめた小鳥に話しかけるような気軽さで。
反逆も逃亡も出来ない相手に、余裕の笑みで。
たった一つの問いかけを。
正解しようがどうしようが、結末は決まっている問いを。
右手には絶対の力を。
伊吹風子を確実に抹殺するだけの力を。
振るえばこの愛らしい顔面を肉塊に変えられる力。
さあ後は答えを待つだけ。
そしてその小さな口が緩やかに開いた――――


「―――その子から離れろ、超能力者!!」


ダァン!!という破裂音。
熱い。
そう思った時には、古泉一樹の左肩から血が溢れ出していた。

「くっ!!」

光球を襲撃者に向けて放つ。しかしその時にはもうその座標には居ない。
古泉一樹に向けて―――ではなく、伊吹風子を逃がす為に、走っていた。
尤も素直にそんな事を許す古泉ではない。
再び出現させた光球を、美術室の入り口に向け放つ。
激しい音がした。一時的ではあるが、逃げ道を塞ぐことが出来た。

「参ったな………お前は何だ?何故こいつを狙う?」
「そうですね……何故、と問われれば世界の為、と言う他ない」

古泉はいつも通りの、普段と何も変わらない柔和な笑顔でこう言った。


「お察しの通り、超能力者です。そう呼んだ方がいいでしょう」


襲撃者・棗恭介は間髪入れずに古泉一樹に発砲した。勿論同じ手を二度食う古泉ではない。机と椅子を巧みに利用して弾丸をかわすことに成功する。
海軍用船上槍を用いるのはこの場では適切ではない、という理由で、もう一つの支給品を使うことにした。
次には彼が再び光球を出現させ―――また、放つ。
風子の手を引いて転がるようにそれを避けるが、まさにギリギリだった。
長期戦に持ち込ませれば明らかに分が悪い、と恭介は悟る。
更にこちらには風子が居る。守りながら戦うには限界があった。

「何が起きてるんですかっ!?」

152 ◆SENAs8NCE2:2011/12/24(土) 16:31:55 ID:5K0CDJvU0
「黙ってろ、舌噛むぞ!!」

慣れない銃、FN Five-seveNを古泉の方向に向ける。
しかしそこには既に古泉一樹は―――居ない。

「遅いですよぅっ!!」

完全に不意。光球の爆発がすぐ近くで起き、銃が吹き飛ばされる。
チェックというところですか、と古泉が言い、再び光球を生む。
恭介は顔をしかめる。そして、渾身の力で風子を突き飛ばした!
きゃっ、という短い悲鳴。

「とにかくここから離れろ!!お前の命まで保証できねえ!!」

未だに状況を理解していない風子の反論を遮り、古泉に向き直る。
圧倒的な不利。あの破壊力を連発されては生身の恭介がジリ貧になるだけだ。
速やかに銃を回収し、最悪射殺も止む無し。恭介には古泉一樹という人間が話し合いに乗り、共に主催を打倒しようとする未来がどうしても浮かばなかった。
こいつには、躊躇いがない。
恐らくあの場、発砲するのがあと数秒遅ければ風子の頭は弾けていた。
だから、こいつはここで倒す。

「さあ、続きを始めましょうか!!」

赤い光球が古泉の掌に浮かぶ―――しかし。
古泉一樹は、一つの可能性を完全に失念していた。『逃した獲物』を。
気付くのが遅すぎた。
「使ってくださいっ!!」

カラン、という音。床を滑って丁度恭介の足元に、光沢を放つ物が現れた。
その意味を理解した時恭介はそれを掴み取り、古泉は光球を放つ。
足元の床が抉れたが、抑えられた威力は恭介を殺すには至らない。
掴み取った『それ』は長かった。
長さ五尺余りにして、歴史的価値のある代物だと誰もが理解する。
刀。日本元来未だ誰も成し遂げぬ秘技を生み出した無名の剣士の愛刀。
名を物干し竿。

「っ、この!!」
「お前の力は確かに上等だ。だがな、それが必ず勝利をもたらす訳じゃねえ」

リトルバスターズ。日々幼い頃から繰り広げてきた『遊び』『ミッション』の中で鍛えられてきた戦いの経験。長刀など扱ったことはないが、彼の身体能力はそれを使いこなすに足る。
『ありとあらゆる日常をミッションにするリーダー・棗恭介』にして『学園で暗躍する闇の執行部部長・時風瞬』。虚構の世界を創り出した彼は、肉体的にも精神的にも強い。
物干し竿を振るう。古泉が光球を放つが、絶妙な間合いが当たらせない。
厄介なのは物干し竿の扱いにくさを象徴するその長さだ。
間合いを読み違えればその時点で致命傷になりかねない。
不味い。

153 ◆SENAs8NCE2:2011/12/24(土) 16:33:16 ID:5K0CDJvU0
今更になって科されたこの制限とやらを呪う。せめて本気の十分の一の力が出せれば、たとえ当たらなくとも棗恭介の命を奪うことくらいは容易かった筈である。
仕方ない―――古泉一樹は、静かに右のポケットから何かを取り出した。

「残念ですが不利な戦いを何時までも続ける道理はありません。それでは」

次の瞬間、恭介と古泉の頭上で激しい光と爆音が解き放たれた。
スタングレネードか――やられた、恭介は視界不良の中刀を闇雲に振るう。
しかし手応えはない。逃げられたか、距離を取られたか。
が、攻撃が来る気配はなく、古泉は逃げたらしかった。

「はぁ……ったく、疲れたぜ本当……」

痛み分け、そんな言葉が頭に浮かぶ。
美術室の、ドアと床が抉れた入り口から自分が逃がし、そして助けられた少女が駆け寄ってくる。恭介はそれに、爽やかな笑顔で応じることにするのだった。



「ふぅ……まさかいきなりの事実上敗戦になるとは」

撃たれた左肩が熱い。血の量は大したことないし腱も切れてはいないようだ。
だが処置をせずに化膿されてしまうのも面倒なので、彼は保健室を目指している。
あの局面。
視界を封じたのだし攻撃する選択もあった。

しかし、彼は攻撃をしなかった。別段情けをかけた訳でもないのに。
『古泉一樹』本人の意思で、攻撃しないことを選んでいた。
まるで、棗恭介との戦いを続けることを恐れたかのように。

「(………全く、僕も堕ちたものですね)」

自嘲じみた心の声を漏らした時、古泉は一人の人間をまだ眩む視界に捉えた。
白い髪。横顔からでも分かる紅く輝く瞳。
そして何より、肉体から放たれる突き刺すような殺気。
形容するなら『堕天使』『破滅』。
古泉一樹を滅ぼすか、もしくは恩恵をもたらすか。

学園都市230万人の学生の頂点・『一方通行』がそこにいた。


【G-5中学校 保健室付近/未明】

【古泉一樹@涼宮ハルヒの憂鬱】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:疲労(小)、左肩に銃創】
【思考・行動】
1:涼宮さんを優勝させる。
2:対主催思想持ちの強者は上手く利用していきたい
【備考】
※『涼宮ハルヒの暴走』終了後からの参加です
※超能力は使えますが、威力が抑えられています

【一方通行@とある魔術の禁書目録】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:?????
【備考】
※?????

154 ◆SENAs8NCE2:2011/12/24(土) 16:34:38 ID:5K0CDJvU0

「ってことは、棗さんは風子を狙ったロリコン男ですね!!最悪ですっ!!」
「うるせえ!!俺はロリじゃないやいっ!!」

いきなりの口喧嘩が勃発していた。
事の発端は、恭介が風子を小学生と間違えたこと。そこから風子が高校生と発覚し、『小学生らしき少女にどさくさに紛れて抱きついていた疑惑』が浮上。
それを否定する恭介と、一人想像を始める風子……後は分かるな。

「まあ待てよ伊吹。知ってたか……(21)って寄せ気味に速攻で書くと……どうだ、『ロリ』って見えるんだぜ。………っておい何だその目は。そんなに驚いちまったのか、玉筋に……無言で後ずさりすんじゃねえ!?」
「そんな事より、最初はこれからどうするかの話でしたよっ!!」

風子を知る者なら『風子が珍しくまともだ……』と驚いたろう。
暴走した恭介のノリは俗に言う『バカ』さえ凌駕する。
やれやれと呟き恭介は参加者名簿を取り出し、支給された赤ペンでいくつかの名前を囲む。最後に『伊吹風子』の名前を赤マルで囲み、その名簿を床に置いた。

「今丸をつけた奴等は安全だ。間違っても殺し合いなんかしない。今度は、伊吹が信頼できる奴の名前を囲め」

岡崎朋也。
春原陽平。
古河渚。
坂上智代。

の順で名前を囲み、これくらいです、と呟いた。

「良し。じゃあこれから名前を囲んだ奴等を探すぞ。………いや、出会った奴はたとえどんな奴でも仲間に出来ないか誘ってみるくらいの心構えだ」

名簿をデイパックにしまい、転がっていたFN-Five seveNを風子に持たせる。護身用だ、と付け足して、恭介は物干し竿を背負う。海軍用船上槍よりも、どうもこちらの方が向いているようだ。
やがてすっ、と立ち上がり、風子の方を見て言うのだった。

「打倒バトルロワイアルに向けて、まずは信頼できる連中でチームを組もう」

白い歯をにやり、と見せて。
いつかと同じように、棗恭介は言うのだった。


「チーム名は、リトルバスターズだ」

155 ◆SENAs8NCE2:2011/12/24(土) 16:37:50 ID:5K0CDJvU0
【G-6中学校 美術室/未明】

【棗恭介@リトルバスターズ!】
【装備:物干し竿@Fate/stay night】
【所持品:支給品一式、海軍用船上槍@とある魔術の禁書目録】
【状態:疲労(小)、視界不良(小)】
【思考・行動】
1:リトルバスターズを結成して、バトルロワイアルを打倒する。
2:理樹と鈴は優先的に保護したい。
【備考】
※Refrain、理樹たちが助けにきた直後からの参加です

【伊吹風子@CLANNAD】
【装備:FN Five-seveN(6/10)@現実】
【所持品:支給品一式、FN Five-seveN予備弾薬(20/20)、ランダム支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:棗さんについていく。
2:岡崎さんたちを探す。
【備考】
※風子ルート終了後からの参加です
※実体で存在しています

【スタングレネード@現実】
古泉一樹に支給。
起爆すると激しい光と音で近くに居たものの視界と聴覚を封じる。
今回の威力は小さめ。

【物干し竿@Fate/stay night】
元は伊吹風子に支給。
五尺余りの刀で、アサシンこと佐々木小次郎の主武装。

【FN Five-seveN@現実】
元は棗恭介に支給。
SS90を用いるFN社の自動拳銃。

【海軍用船上槍@とある魔術の禁書目録】
棗恭介に支給。
ヴェネツィアの隣にあるイタリア北東部の都市国家フリウリで生まれたコルセスカの一種。
15〜17世紀のヴェネツィアやフリウリなどの海洋都市国家の海軍で使用されていた。
1500回ほど樹脂のコートを重ねることにより『植物の持つ繁殖力』の術式を付加し、
更に刃先に『冷たい夜気』を利用した術式を付与することで、
聖人のメイスによる一撃に耐えるほどの耐久力を持ち、その一撃が破壊的な攻撃力を撒き散らす霊装へと変貌した。

156 ◆SENAs8NCE2:2011/12/24(土) 16:42:35 ID:5K0CDJvU0
これにて投下終了。
題名:LIttle Busters!(正義の味方)
元ネタ:PCゲーム『リトルバスターズ!』のOP、『Little Busters!』より

続いて
アウレオルス=イザード、バーサーカー、棗鈴を予約します

157 ◆WzpMn05TJA:2011/12/24(土) 17:13:18 ID:ufyN1vF6O
投下乙です

恭介キター
ロリネタで風子を引っ張って笑いました

ボリュームもあり読み応えがありました

そして最強のロリの登場などたくさん伏線が出されてワクワクしてます

風子ルートからの参戦の風子
確か智代も自ルート…
つーか朋也本人何やってんだよ!?(自分でしょっぱな急展開出した俺が何言ってんだか…)


次回も期待しています
ついにハルヒの力を持ったキョンの登場!

158 ◆vQfaAFC7Cg:2011/12/24(土) 17:45:49 ID:nmK.N4jU0
管理人から言えば音無とルルーシュを主人公にするからOPに出したって君は言ってたが、完全に朋也が主人公だよな

159生徒会の一存 ◆WzpMn05TJA:2011/12/24(土) 20:51:29 ID:ufyN1vF6O
桃色の髪の少女が1人バットを握りながら怒りを抑えている。
――あんな小さな女の子達が何したっていうのよ!
――こんなゲームになんの意味があるっていうのよ!

その怒りの数は1つ1つと増えていき、やがてその数は手の指で数えられる10を越した。

「ふざけんじゃないわよ!」

そのバットで怒りをぶつける為、八つ当たりで木に叩きつける瞬間バットは刀に変形し、『サクッ』と気持ち良い音をたてて木に突き刺さる。

「驚いたわ……。まさかこんなバットがあるなんて」

すぐに刀はバットへと戻り、突き刺さっていたバットが刺さらなくなり、重力に沿って下に落ちる。

と、今の科学では作れそうにないバットを見て彼女は少し未知の力を信じ始める。

―――――

「そういえばこんなくだらない事をしている場合じゃなかったわね」

どうやらこのバトルロワイアルには知り合いが多数巻き込まれている。
自分のクラスメートで親友で付き合いナギ。
そのナギの専属のメイドのマリアさん。
あまり接点はないけど親友の泉のお兄さんの虎鉄君。
――そしてナギの執事で、私の好きな……ハヤテ君。
どうやら4人もこのバトルロワイアルに巻き込まれてしまったみたいね。

もしかしたらまたハヤテ君の不幸に巻き込まれただけかもしれないけど。

「さて、これからどうしようかしら」

ハヤテ君、ナギ、マリアさん、虎鉄君に信頼出来るという印に丸を付ける。
いや、これからなんて考える必要もないか。

「人を殺してまで生き残る?」
そうね、死にたくないもの。

「20億円の賞金?」
お姉ちゃんに恩返し出来るわね。

「その20億円を使えば願いを叶えてくれるですって?」
人間、願いを叶えたい事ほど死ぬ気になれるものね。

――そうね。人を殺すだけで幸せになれるってわけね。



「乗るわけないじゃないのよっ!」

誰かに聞こえてしまうというのも忘れて叫んでしまっていた。

だけど、いくら自分が生き残る為だからってあんな人間をゴミの様に殺すあいつらと同じ事をするなんて考えられないわよ!

「私は白皇学園生徒会長、桂ヒナギク!絶対に悪には負けないわ!」

いつだったか私はヒーローショーでヒーローになった(公演はされなかったけど)。
だから正義になるというわけじゃないんだけど……。

「そんな困っている人を助けたいっ!」

「ならあなたと私は同志ってわけだな」
「っ!?」

女の人の凛とした声が貫く様であった。

「話は聞いていたぞ。私は箱庭学園生徒会長、1年黒神めだかだ」

会長と書かれた赤い腕章が左腕に付けられてあった。
長い黒髪、扇子で優雅に扇ぎ、鋭い目つき。声と姿が本当に『凛っ!!』としている。胸は……相当大きくて比べ物にならない。

美しく、彼女は輝いていた。
私もよく怪力や化け物と呼ばれるけど多分私のそれより遥かに凌駕しているたろう。

「私は白皇学園生徒会長、2年の桂ヒナギクよ」

これで私より年下なんだ。

―――――

160生徒会の一存 ◆WzpMn05TJA:2011/12/24(土) 20:52:36 ID:ufyN1vF6O
「綾崎二年生は童顔で執事服を着ている人、三千院二年生は金髪のツインテールの人、マリア殿がメイド服の茶髪の人、瀬川二年生は美形な執事服を着ている人だな」
「な、なんで名前を聞いただけなのにそこまでわかるんですか!?」

因みに私が聞いためだかさんは人吉善吉、球磨川禊、宗像形の名前を聞いたが全然イメージが付いていない。

「うむ。私にこんな物が支給されていたからな」
「うわっ!?」

参加者らしき100人の体全身の写真(もちろん服は着ている)が1枚1枚名前込みでまとめられていた。
私のこんな写真撮られた記憶すらないんたけど。

「私は全員覚えたからな。桂二年生にそれをあげよう」
「え?良いの?」

会った事も話した事ない人、それに既に知っている人含めて99人全員覚えたってどんな記憶力よ。

深く考えないけど、これの知り合いの顔は全員合っている。
正確な証拠ね。これは良い手がかりね。

バーサーカーさんとか真アサシンさんとか人間なのか疑う人はいるけど。
そういえば3番目に亡くなった人も見た目は人間だったけど部分的に化け物みたいに変化する人とかもいるのかもしれないわね。

「ところでめだかさんはこのバトルロワイアルの事本気だと思う?殺し合いとかなんとかって……」
「ふむ……。私はよく殺し合いみたいな戦いはするが桂二年生の様な一般生徒は普通は混ざらないな」
「……」

殺し合いしてるんだ……。
どんな学校だそれは!?

「しかしそれはあくまで戦いだ!弱い者を爆弾で殺すなんてそれはただの虐殺だ。赦せるわけなかろう……」

めだかさんが手をグーにして握りしめ、あの時何も出来なかった自分にすら嫌悪している様であった。

「急ごうめだかさん、もう既に死んでいる人が居るかもしれないわ」

私は自分の手に支給されたバットが刀になる山本のバット(私も良く言われるが、どんなネーミングセンスだ)を右手で握りしめる。

「うむ、そしてシャルル主催者に全員に謝らせようぞ」

扇子を使い慣れているかの様にそれを閉じた。

「桂二年生しか居ないから少々締まりが悪いが言わせてもらおう!」

めだかさんが目を閉じ、深呼吸。
演出過剰な気もするけど。

「これより、生徒会を執行する!!」

そして、また『凛っ!!』とするのだった。

161生徒会の一存 ◆WzpMn05TJA:2011/12/24(土) 20:53:06 ID:ufyN1vF6O

【D-4 野原と森の境目/未明】

【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
【装備:山本のバット@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【所持品:支給品一式 参加者全員の全身写真@その他 ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:めだかさんと行動。
2:このゲームを止める。

【備考】
※アテネ編終了後からの参戦です。
※めだかの知り合いの事を教えてもらいました。
※参加者のある程度の顔と名前を一致しました。



【黒神めだか@めだかボックス】
【装備:原初の海@ペルソナ4】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:桂二年生と行動。
2:主催者から参加者全員に謝らせる。

【備考】
※オリエンテーション開始直前からの参戦。
※参加者全員の顔と名前を一致させています。
※乱神モードは3時間待って10分、改神モードは制限で1日1回の制限です。


【山本のバット@家庭教師ヒットマンREBORN!】
山本武の初期の武器。普段は野球バット型望遠鏡だがヘッドスピードが時速300kmになると刀に変わる。


【原初の海@ペルソナ4】
雪子最強武器で高確率で敵に衰弱を与える。

【参加者全員の全身写真@その他】
王道ロワイアル参加者全員の名前と参加している服装で1人1人立っている姿を移した写真。誰がどの世界から来たかは表記されていない。

162 ◆WzpMn05TJA:2011/12/24(土) 20:56:32 ID:ufyN1vF6O
投下終了

元ネタはライトノベル『生徒会の一存』より

あまりサーヴァントの戦いの描写は苦手ですが頑張ってみます

予約
真アサシン、ライダー、北川潤

これは予約破棄の可能性がありますが頑張ります(^^;)

163 ◆jEaHSufpKg:2011/12/24(土) 21:30:09 ID:YfCz9ku20
投下乙です。
めだかちゃんは基本的に超優秀な対主催ですからね、期待。
では自分も 鳴上悠、御坂美琴、来ヶ谷唯湖 で投下します。
題名は 夢想曲

164夢想曲 ◆jEaHSufpKg:2011/12/24(土) 21:30:52 ID:YfCz9ku20
夢、とは何だろうか。

人によっては幸せなものを見るものであって。
人によっては不幸なものを見るものであって。
人によっては何も感じないものであって。
人によっては数少ない居場所であって。
人によっては自分を追い詰めるものであって。

人によってとり方は違う。
では――――彼女はどうだろうか。
彼女にとって夢は、どうなのだろうか――――。




■         ■




「……」

御坂美琴は物陰に隠れていた。
頬にわずかに流れる汗を拭い、物陰から周りを覗く。
周りを覗き一息吐くと水を一口飲む。

「なんなのよ…あの人間、いきなり襲いかかってくるなんて」

この殺し合いの場にとって闇討ちは乗るもので常人にとって当然の行動。
しかも時間は夜中である。
闇討ちに最適の時間帯なのだ。

「よし……今のうちに離れよう、今なら戦うことも……ッ!」

動きだした瞬間、自分がほんの少し前までいた場所に刀が刺さっていた。
もし移動しなかったら、自分はこの刀により貫かれていた。
一瞬恐怖を覚えるが、落ち着く。
そして、電撃を武器にする彼女は電気を上に飛ばす。
一瞬周りが光る、だが人はいない。
御坂はすぐに前を見る。
そこにいたのは、さっきまで刺さってた刀を持った女性だった。

「ッ――――!」

御坂は再び電撃を放つ。
力を抑えて、気絶させるくらいの電撃を。
刀を持った女性はその電撃を避けれず、喰らう。
―――――だが、気絶するどころかあまり変わっていない。
普通なら、気絶するくらいの力でああったはずだ。

「ウソ……?」
「電撃使いが出るとは…今までの夢より面白いな」

夢―――という単語に御坂美琴は反応する。
いまこの女は「夢」と言った。
それはいったいどういう意味なのか。
それを理解するまでもなく、女性はこちらに向かってくる。
速い――――そう思う暇も与えられず急接近される。
斬られる、と思ったその瞬間、声が響いた。

165夢想曲 ◆jEaHSufpKg:2011/12/24(土) 21:31:06 ID:YfCz9ku20








「ペルソナッ!」








巨大な刀を持った巨大な武人が現れる。
その巨大な武人が女性に襲いかかる。

「……甘い」

だが、それは簡単に避けられてしまう。
それとともに、巨大な武人は消えてしまった。
その代わり現れたのは、灰色の髪の高校生のような男。

「すまないが、退いてくれないか」
「何故、そちらの意見を聞かなくてはいけない」
「…聞かなくてもいいが、こっちは二人の上に、さっきのを見ただろう。
 退いた方が身のためだとは思わないか?」

そのあらわれた高校生が強気のまま説得する。
それを聞いて、刀を持っていた女は刀をしまった。

「…ここは私の負けということにしておいてやろう、ではさらばだ」

その女は、振り返ってすぐさま走って消えた。
そして残ったのは二人だけとなった。

「…大丈夫か?」
「ええ、おかげさまで…私は御坂美琴、あなたは?」
「鳴上悠だ、よろしく」

差し出してきた手を握る。

「……さっきの巨大な奴は…何?」
「ああ…あれはペルソナって言って…召喚獣みたいなものだと思ってくれれば良いよ」
「……」

ペルソナと言われる物、先ほどのあの巨大な武人。
御坂美琴の頭の中には思い当たる能力が無かった。
召喚能力など、思い浮かばない。

「……立ち話もなんだし、どこかにでも入ろうか?ちょうど住宅街のようだし」
「ああ……そうね」

166夢想曲 ◆jEaHSufpKg:2011/12/24(土) 21:31:16 ID:YfCz9ku20

鳴上が民家のうちの一つに入って行った。
御坂もそれを追いかけるように、民家に入った。

【E-5民家内/未明】
【御坂美琴@とある魔術の禁書目録】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:身体的疲労(小)】
【思考・行動】
1:殺し合いの打倒
2:鳴上から話を聞く
3:上条当麻、白井黒子を探す、一方通行を危険視
【備考】
※原作3巻終了後より参戦です
※制限により御坂妹達と同じ程度の威力しか出せません
※来ヶ谷唯湖の容姿のみを把握しました
【鳴上悠@ペルソナ4】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:ペルソナ召喚による疲労(小)】
【思考・行動】
1:殺し合いを止める
2:御坂との情報交換
3:仲間との合流、足立はどうにかする
【備考】
※ゲーム版、足立戦後より参戦です
※ペルソナはイザナギ(初期)と言った低レベルの物しか出せません
※ペルソナの攻撃の威力は低下しています
※来ヶ谷唯湖の容姿のみを把握しました







■        ■








「……今までになく面白い夢だな」

刀を持った女―――もとい来ヶ谷唯湖は笑っていた。
電撃使いに召喚師…今までではありえない状況だ。
これは今までになかった――――彼女の夢だ。

「面白いな、存分に…楽しませてもらうとするか」

【E-5街/未明】
【来ヶ谷唯湖@リトルバスターズ!】
【装備:宗像形の日本刀@めだかボックス】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:身体的疲労(中)、愉快】
【思考・行動】
1:今までにないこの『夢』を楽しむ
【備考】
※参戦時期は不明です
※御坂美琴、鳴上悠の容姿のみを把握しました


【宗像形の日本刀@めだかボックス】
宗像形の暗器のうちの一つ。
特に変わった仕掛けもないただの日本刀。

167 ◆jEaHSufpKg:2011/12/24(土) 21:31:51 ID:YfCz9ku20
投下終了です。
タイトル元ネタはペルソナ4の作中BGMの夢想曲より

168 ◆WzpMn05TJA:2011/12/24(土) 21:46:37 ID:ufyN1vF6O
投下乙です

一般人枠の姉御ですがやっぱり強いですね
そういう強い女は格好良かったです


番長が早速美琴とフラグ建ててニヤニヤしてしまいました

万能メンバー同士の戦い面白かったです

169 ◆RmIe4rjRnw:2011/12/25(日) 00:07:11 ID:meB2oHQk0
皆さん投下乙です

それにしても投下するペースが速いですね^^;
自分もやっと出来たので衛宮切嗣、六道骸で投下したいと思います。

170神のみぞ知るセイカイ ◆RmIe4rjRnw:2011/12/25(日) 00:12:03 ID:meB2oHQk0
「…僕がこんな所に招かれるとはね…」

地図上で【G-8】に当たる場所。
周りが海に囲まれた、この殺し合いの舞台の端にある市街地。
殺し合いの舞台には似つかわしくない程の綺麗な海を見ながら、男、衛宮切嗣は呟く。
一羽の鳥が、海の彼方へと飛んで行った。
それを見た切嗣は、何かを断ち切るように、勢いよく海に背を向けた。


◆◇◆◇◆◇◆


「…僕をこんな所に招くとは…不愉快です」

地図上で【G-8】に当たる場所。
奇しくも衛宮切嗣が最初に立った場所の近くで、少年、六道骸は呟く。
学校の制服、オッドアイ、特徴的な髪型、どれをとっても、少年は『不気味』と言えた。
なんというか、見た者に不安感を与える雰囲気が、彼にはあった。
少年は海を見ることに飽きたようで、そのまま踵を返し市街地へと歩き出した。


◆◇◆◇◆◇◆

171神のみぞ知るセイカイ ◆RmIe4rjRnw:2011/12/25(日) 00:13:22 ID:meB2oHQk0


人通りのない市街地を歩きながら、僕は考えた。
第四次聖杯戦争が終結してから五年後のことだ。
僕――衛宮切嗣という人物は、病で死んだはずであった。

けれども、僕は今確かにここにいる。
そして、名前も知らない人たちと共に、殺し合いを強要されている。
シャルル・ジ・ブリタニアといったか、彼の道楽に付き合わされるのは御免だ。
だとすれば、僕がするべきことは主催者に対抗することだろう。

しかし、頭ではそう冷静に分析していても、僕の中には迷いがあった。

殺しをしたくない、というわけではない。
僕は今までに何人も人を殺してきているし、『魔術師殺し』という異名も持っている。
このゲームとやらにおいても、僕は襲われたら反撃をするつもりはあったし、それが女や子供であろうと容赦をするつもりも無い。
殺すしかない状況で、殺した方が良い人間が居るとすれば、躊躇いなく殺せると自負している。
――――ただ一人を除いて。

172神のみぞ知るセイカイ ◆RmIe4rjRnw:2011/12/25(日) 00:14:04 ID:meB2oHQk0
衛宮士郎。
僕が猛火の中から助けて、養子にした少年だ。
こんな僕にも懐いてくれて、初歩的な魔術を教えたこともある。

その名前を見つけたとき、僕はまず主催者を憎もうとした。
しかし、名簿には他にも「アーチャー」「アサシン」「キャスター」など、自分にとっては馴染み深く、また、軽蔑する存在でもある、『サーヴァント』の名前があった。
僕は、サーヴァントが居るのであれば、マスターもいるだろう、と予想したのだが。
御三家である【遠坂】、【間桐】、【アインツベルン】の内、どの名前も無かった。
それだけじゃない。第四次聖杯戦争時に戦ったケイネス・エルメロイ・アーチボルトや言峰綺礼、相棒であった久宇舞弥の名前すら無かった。

では何故、士郎が呼ばれることになったのか。
導き出される答えは一つ。

――――衛宮切嗣と関わったから、衛宮士郎はこのバトルロワイアルに呼ばれたのだ。

ならば、自分は士郎にどう責任を取るべきか。
その答えも、一つしかない。


◆◇◆◇◆◇◆

173神のみぞ知るセイカイ ◆RmIe4rjRnw:2011/12/25(日) 00:15:21 ID:meB2oHQk0

まさかまた、僕が道具のように扱われることになろうとは。
悲しいというよりは憎いですね。
かつてエストラーネオファミリーで人体実験の被検体として扱われていた頃のことを思い出してしまう。
……いや、考えすぎるのはよくないでしょう。
その時に得たこの忌むべき能力も、今では自分の力として使いこなせているのですから。
……考えすぎるのは……よくないでしょう。

さておき、この場に呼ばれた僕の知り合いは3人ですか。
この場にボンゴレやシモンの血を継ぐ者も呼ばれているということは、無論僕の過去……心的外傷《トラウマ》を知っているということでしょうね。
知っていてなお、その傷を抉るようにこのバトルロワイアルとやらに呼ぶ…。
どうやらあのシャルル・ジ・ブリタニアとやらは、相当外道のようです。

174神のみぞ知るセイカイ ◆RmIe4rjRnw:2011/12/25(日) 00:15:51 ID:meB2oHQk0
クフフ…まあ僕は人のことを外道などと言えませんが。
いずれにしても、このような殺し合いに乗って、主催者の思惑通り動くのも気に食わないですね。
ここはやはり、使える仲間を集めることとしましょう。
最初に主催者に立ち向かったあの青年、彼は自分の力に自信があったようです。
幸い、ここにはボンゴレやシモンもいることです。
力を持つ者同士が集まれば、主催者に対抗することも可能でしょう。

さて――おや、丁度良い所に参加者がいますし、話しかけてみますかね。


◆◇◆◇◆◇◆

175神のみぞ知るセイカイ ◆RmIe4rjRnw:2011/12/25(日) 00:16:31 ID:meB2oHQk0


そして二人は出会った。
と、同時に、片方にとっては当然の、片方にとっては予期せぬ戦いが始まる。

まず少年が、両手に持ったヨーヨーを持ち上げようとした。
その瞬間、男が手にした拳銃を発砲する。

少年はそれを間一髪避けると、ヨーヨーを振り下ろす。
するとヨーヨーから、無数の針が飛び出し男を襲う。

男は驚いたようだが、転がるようにして避け、もう一発撃つ。
無理な体勢から放たれた弾は少年に当たることは無かった。

そして、二人はほぼ同時に体勢を立て直した。


◆◇◆◇◆◇◆


実際の所、骸は男に対して敵意が無いことを示そうとしただけだった。
そして切嗣は、少年が拳銃の射程距離に入ってくるまで待っていた。

思考も生き方も全く違う二人の邂逅。
彼らの心には、様々な感情が入り混じり、揺れ動く。
それは憤りか、悲しみか、憎しみか、戸惑いか。
何が正しいのか、何が間違っているのか。そしてこの先どうなるのか。
全ては神のみぞ知る。


◆◇◆◇◆◇◆

176神のみぞ知るセイカイ ◆RmIe4rjRnw:2011/12/25(日) 00:17:30 ID:meB2oHQk0
【G-7東側/市街地/未明】
【衛宮切嗣@Fate/zero】
【装備:ワルサーP38(残弾6/8)@現実】
【所持品:支給品一式、ワルサーP38の予備弾(残弾24/24)ランダム支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:少年(六道骸)に対処。
2:衛宮士郎を優勝させる。その為にはどんな手段をも厭わない。
3:士郎……。
【備考】
※死後からの参戦です。
※「時間操作」は使用できますが、通常時よりも負担がかかるかも知れません。

【六道骸@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【装備:ヘッジホッグ@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:男(衛宮切嗣)に対処。
2:主催者に対抗する。その為に仲間を集めたい。
3:考えすぎるのは…良くない…?
【備考】
※継承式編終了後からの参戦です。
※能力の制限等は不明です。

『ワルサーP38@現実』
1938年にドイツ陸軍が制式採用した自動拳銃。ルパン三世の使用で有名。

『ヘッジホッグ@家庭教師ヒットマンREBORN!』
六道骸に忠誠を誓う仲間の一人、柿本千種の愛用する武器。
毒針が出てくる特殊なヨーヨー。

177神のみぞ知るセイカイ ◆RmIe4rjRnw:2011/12/25(日) 00:19:21 ID:meB2oHQk0
投下終了です
初めてだったので誤字脱字などあるかもしれません
指摘・感想等あれば是非お願いします

178 ◆RmIe4rjRnw:2011/12/25(日) 00:38:35 ID:meB2oHQk0
失礼しました。
元ネタは漫画「神のみぞ知るセカイ」です。

179 ◆WzpMn05TJA:2011/12/25(日) 01:00:04 ID:9bEWvqhAO
投下乙です

骸と切嗣の2人の経緯を並べると感慨深い物が感じられました

骸が対主催、切嗣がマーダーな展開に驚きした
自分は骸がマーダー、切嗣が危険派対主催になると予想していたので完全に裏切られてしまいました
手の平に踊らされたのは誰でもない自分でした

こういう自分の予想とは遥かに違う裏切りがあるからパロロワに読みふけってしまうんですね

180散りゆくものへの子守唄 ◆WzpMn05TJA:2011/12/25(日) 17:59:53 ID:9bEWvqhAO
それはそれは、キレイな夜。
真っ赤な血で汚された夜とは思えない程それは静かな夜。

「な、なんで俺はこんな意味不明な展開に巻き込まれているんだか……」

金髪の少年がその静かな夜、キレイな月から照らされていた。
元は無人島なのかはわからないが海に囲まれている島。
その海面に移る月は波打つ水面でぶれている。

「キレイだなー……」

人が傷付け合い、地面が血で染まり、服を汚している者すら居るだろうとわかってはいるのだがその珍しい水面に心を奪われてしまった。

少年は座り海は呆然と眺める。
本来は寝ている時間ではあるのに今はまったく眠たくない。
人の死を目撃したショックや今のキレイな海。
その2つが少年の眠気を取っ払っていた。

「お前らは無事だよ……な……」

クラスメートの相沢祐一と水瀬名雪も俺と同じ状況に巻き込まれているのはわかっている。
だが俺1人ではこの広い島は探索仕切れないのだ。
だから無事を祈る事しか出来ない。

俺はまだ何も起きちゃいないから心配するな、少年は伝えたかった。

「フハハハハ。貴様なかなか見る目があるではないか小僧」
「え……?」

バシッ、バシッと強い衝撃が少年の体に響く。
6回程叩かれてようやく開放された少年は叩いた主を見た。

巨大な体で赤い髭がインパクトが大きかった。
朗々とした声は非常にインパクトが大きかった。

「貴様の名はなんだ小僧?」

大きな目で見られると睨まれている気さえする。
少年は逆らってはいけないと素直に名前を出す。

「お、俺の名前は北川潤です」
「…………」

と名乗ったのに何故か不機嫌な顔になっている。
北川は自分の何がいけなかったのか頭の整理をはじめた。

「うむ。お前アーチャーではないよな?金髪だし声がどことなく似ている気が……」
「ち、違いますよ」

北川は弓道などやった事もない。
それをすぐに否定した。

「まぁ、良いか」

大男はまた「フハハハハ」と笑いだす。
北川もそれに合わせ愛想笑いを浮かべる。

「聞けぃ、小僧」とせっかく名乗ったのにまた小僧呼ばわりをされてしまった。

「我が名は英雄王イスカンダル!」
「い、イスカンダル!?」

北川はその有名過ぎる男の伝説を思い出した。
遥か古代のギリシャ地方の小国マケドニアで生を授かり、20歳という若い年齢で国王となり、ギリシャを僅か2年で統一し、ペルシア、エジプト、中央アジア、インドも統一。僅か13年で大帝国を作った漢の名である。

181散りゆくものへの子守唄 ◆WzpMn05TJA:2011/12/25(日) 18:00:48 ID:9bEWvqhAO
「だが便利上名簿ではライダーになっておるがね」

北川はそのライダーという名は名簿で確認済みだ。
北川が最初に思い浮かんだ仮面ライダーとはイメージも遠かった。

「小僧、あまり余を名前では呼ぶなよ。嫌っているわけじゃなく秘密なだけだぞ」
「え、……えっとわかりましたおっさん」

北川がおっさんと呼んでも特に怒られはしなかった。

「おっさんも大変だよな殺し合いなんて」
「いや、これは聖杯戦争だよ」
「戦争!?」
「いや、昔の戦争とは違う。今は英霊であるサーヴァントが戦う時代じゃ」

北川はもう着いて行けなかった。
聖杯、戦争、英霊、サーヴァント。
ふだんの自分なら一言も口にしない様な単語がズラズラ出てくる。

「名簿とやらにもあったであろう」

――セイバー
――アーチャー
――ランサー
――ライダー
――キャスター
――アサシン
――バーサーカー

「この7人のサーヴァントで戦う事が聖杯戦争だ。そして1人生き残った者が聖杯を手にし……」

―――願いを叶える事が出来るのだ!―――


北川はポカンと口が開いたままになる。
そんな戦いがあったなら普通は世の中にドーンと公表されるのではないか?

北川は嫌な予感のする聖杯戦争というものをどうしても否定したかった。

人間社会の裏側を見ている気分になった。

「そんなの有り得なくないおっさん?大体願いなんて叶うわけないじゃん」
「お前はあの主催者の言葉を聞かなかったのか?」
「主催者……」

――20億円を賞金に、その20億円を使えば願いを叶える。

ぼんやりではあるが確かそんな事を言っていた気がする。

――金が欲しければそのまま。
――金より願いを優先したければその多すぎる金を使う。

「じゃあ聖杯戦争って本当なのかよ……」

このキレイな島も、海も、街も、草も、木も、砂も、土も、水も、空気すらも……。
殺し合いの為だけに作られたみたいじゃないか?

キレイな自然も、作られた風景、『絵』としてしか北川の目に映らなくなった。

「多分小僧ら一般人はそれを見届ける為か……」
「為か……?」
「サーヴァントの魔力のエサの為か」

ライダーの手が北川に伸びる。
エサの為?
それってつまり……?

タベラレル?
タベラレル?
タベラレル?
タベラレル?
タベラレル?

182散りゆくものへの子守唄 ◆WzpMn05TJA:2011/12/25(日) 18:01:37 ID:9bEWvqhAO
「フハハハハ。余が小僧を食べるわけないじゃろ」

最初に叩かれた時以上の強い痛みがまた北川に走っていた。

「俺はおっさんに聞きたい事がある」
「さっき真名は答えたぞ小僧」
「いや、違くて……おっさんの聖杯の望みだよ」
「聞きたいか。それはな――」

―――――

それからは2人雑談を始めていた。
ライダーは最初だけ北川を怖がらせようとしただけで案外話してみると普通であった。
王とはなんたるなんとかと覚えてはいなかったが北川がグッと来る言葉がライダーの言葉にはあった。
そしてライダーの王から北川の交友関係の話に発展していた。

「その小僧の友達の小僧に会ってみたいのぅ」
「俺か相沢なのか区別してくれよ」
「フハハハハ」

結構長い時間話してしまっていただろうか?
それは計測をしていた者が居なかったのでわからない。

「会えるかもしれないっすよおっさん。ほら相沢の名前が名簿にもあるし」

あいうえお順だと普通に考えて相沢祐一が一番最初に来ると考えていたのにアーチャーが先であった。
学校の出席番号順だったら万年1番だろうとどうでも良いふざけた事を考えていた。

「アサシンの名前も早いよな……」

北川は聖杯戦争の事を聞いて改めて見る名簿は学校での名簿より高い価値がある様に感じる。

「ん……?これは一体どういう事なんだ?」
「どうした小僧?」

読んでいた名簿を引ったくるライダー。
サーヴァントである7人の名前しか確認していなかったからだ。

「何!?もしかして小僧、こやつの事か?」

ライダーが指を差す。
そこには5文字。
北川は言う様にこれはおかしい。
というか不可解だ。
なのに何故か当たり前の様に名前があった。

『真アサシン』

聖杯戦争に同じクラスのサーヴァントが居るはずはないのだ。
ではアサシンと真アサシン。
区別されしこの2つの名は……。

「――っ、避けろ小僧!?」

ライダーが北川を力いっぱい押した。

転がる北川。

「何すんだよおっさん!?」
「元居た場所を見ろ小僧」

恐る恐るライダーの言うとおりにする北川。

そこで見たのは深く突き刺さっている銀色のナイフであった。

183散りゆくものへの子守唄 ◆WzpMn05TJA:2011/12/25(日) 18:02:43 ID:9bEWvqhAO
「気配遮断か……。姿を現せ、アサシン!」
「アサシンって暗殺者じゃん!恐っ!」

アサシンには必ず備わっているクラススキル『気配遮断』。
完全に気配を断ち、感知はほぼ不可能になるアサシンの十八番のやっかいな能力。
だが、これにはある弱点がある。
それは攻撃の瞬間のみ効果が薄まってしまうのだ。

「やるな、何者かは知らぬが……」
「うわっ!?骸骨だ!」
「呼ばれたから出たわけだが」
「来なくていいわ!」

北川の怯える声が情けなく響く。

薄暗い風景。
なのにそこだけは白いそれだけがくっきりと見える。
骸骨の面。
それだけが浮いている様にも見えるがそうではなかった。
見えにくいが黒いローブもわずかながら目視出来る。

――真アサシンの登場であった。

「余は王であるライダーなり」
「私はアサシン。貴様……本当にライダーか?」
「貴様こそ本当にアサシンか!?」

それはお互いがお互いに言える事であった。
ライダーが知るアサシンは確かに髑髏の面を被り黒い格好だ。
因縁の相手だし間違うはずがない。だが髑髏の面の形状も違うし、ローブなど着ていなかった。

対して真アサシン。
自分はライダーと戦った、しかもこちらも因縁の相手である。
だが真アサシンの知るライダーは小柄で目隠しをする様なアイマスクをしていた。
いや、それ以前に女性であった。

ライダーは第五次聖杯戦争を、真アサシンは第四次聖杯戦争の事など知るはずはないのだ。

「私はこの聖杯戦争を勝ち抜き聖杯を手にする。貴様に邪魔はさせないライダー」
「貴様など臣下に値せんわ」

話合いの失敗。
それを意味するのはただ1つ――戦いである。

「1つだけ聞かせろアサシン」
「内容にもよるがな。答えてやろうライダー」

元々アサシンクラスはどのサーヴァントのステータスに劣る。
真アサシンはまともに相手をすれば確実にライダーに負ける事はわかっている。
その間に策を考えている。

「何故この名簿にはアサシンが2人居る」
「知るわけがなかろう」

元々第五次聖杯戦争のキャスターが禁じ手を使い召喚されたアサシンを核に自分が現れたのだ。
当然元のアサシンは死んでいるはずだ。

184散りゆくものへの子守唄 ◆WzpMn05TJA:2011/12/25(日) 18:03:35 ID:9bEWvqhAO
「だが私の方が名簿でいう真アサシンだろうな。思い当たりがある」
「ほぅ。普通ではあり得ぬ事だなそれは」

もっとも元々冬木の聖杯戦争はサーヴァントとして召喚されるアサシンクラスは全員がイスラム教の伝説の暗殺教団「山の翁」の長であるハサン・サッバーハしか召喚されない様になっている。

そう考えれば元々のアサシン『佐々木小次郎』の方が例外。
あちらも真アサシンと呼ばれてもおかしくはないのだが。

「話は済んだな」
「あぁ、いつでも来いよ」

真アサシンが投げナイフを投擲する。
普段なら黒いダークを使うのだが没収され変わりなのか銀色の投げナイフがたくさん支給されていた。

それをなんなく避けるライダー。

「おっさん、これを使うんだ」

武器が持っていなかったライダーに北川が武器をと自分の支給品の中にあった日本刀を投げ渡した。

「これが剣ではなく日本刀か。風情があるのぅ。王には合わない気がするが」

なんて冗談混じりに言うライダーだが日本刀を両手で構える。

「かっ……!?」

『かっけぇ!』と叫びたかったが邪魔になると思い自重する。

「ふん」

ライダーの心臓を狙う3本の投げナイフ。
だが子供騙しと、なんなく日本刀ではたき落とす。

   ギルガメッシュ
流石はアーチャーに認められた漢の中の漢、イスカンダル王である。

このまま投げナイフを投げ続けてもいつぞやのセイバーとの戦いの時みたいに無くなってしまうだろう。
ナイフは有限。
しかも全て避けたりはたき落とされる。

真アサシンは悟る。
やはりアサシンクラスである自分が1対1の戦いには不向きであると。

では自分が向いている戦いにすれば良い。
自分にはまだ最強の宝具の右腕が残っている。

アサシンは殺し屋ではない。
アサシンの名は暗殺者。

1対1で不利なら1対2にしてしまえば良い。

―――――

185散りゆくものへの子守唄 ◆WzpMn05TJA:2011/12/25(日) 18:04:27 ID:9bEWvqhAO
「どうしたアサシン、貴様もうへばったか?」

おっさんは強すぎた。
アサシンなんて名前に怯えていたけど流石イスカンダル王。
同じサーヴァントを圧勝している。

「へ、減らず口はそれまでにしろライダー!」

同じ様にまた数本の投げナイフ。
さっきから攻撃がくらわないってのに何故ずっと同じ技しか使わないのか。

単に別の技が使えないのか?
――それとも……?

「投げ切ったが最後だぞアサシン」
「なら、それまでに決着を付ければ良いだけ」

投げられる投げナイフ。

「え……?」

頬、右足、左腕、俺の体から血が噴出していた。

「――貴様っ!」

ライダーの激しい叫びが響く。
あれ……?
おかしいな……。

立ってられないや……。

血を失ったから貧血かな……?

―――――

「卑怯だぞアサシン!」
「私は暗殺者だぞライダー。生前は私はこういった人間を殺すのに長けていた。その特技を生かしたに過ぎん」

間違ってはいない。
聖杯戦争はサーヴァントは殺せないとなると魔力供給となるマスターを殺す。

魔力を蓄える為に人を殺す。
イタズラに人を殺す。

「そう睨むなライダー。まだ私は小僧を殺してなどいない」

ライダーが北川の姿を見る。
確かに指が微かに動いている。

首をライダーを見つける様に探している。

「では小僧を生かすも殺すも貴様次第だライダー」

真アサシンの狙い通りに事は動いた。

「貴様の命と小僧の命。助けたいのはどちらだ……」
「……フハハハハ!」

狂った様に、面白おかしく笑うライダー。
当然決まっているとでも言いたげに。

―――――

「おっさん……」

自分の声を出すが弱々しい。
『俺はもう死んでも構わない』と叫びたかった。
だが今の一言呟くだけで脳に酸素が行き渡っていかないぐらいに視界がぐらぐらする。

おっさんは良い人だから、おっさんは楽しいから、おっさんは優しいからそう言いたいんだ。
なぁ、伝わってくれよ……。

「余は聖杯を求める王!答えなど既に決まっておるだろ」

おっさん格好良いよ。
それで良いんだ……。
生きてくれよ。
応援してるからさ。

―――――

186散りゆくものへの子守唄:2011/12/25(日) 18:06:01 ID:9bEWvqhAO
「余は王!人と人の絆を大事にする。余を殺せ!」
「お前ほどの者なら聖杯だって手に入れられたであろうよ」

真アサシンがその宝具を隠す為に巻いていた長い長い包帯を剥がしにかかる。

「えげつのない手だな」

憐れみの王の呟きが北川と真アサシンの耳に聞こえた。

「最初の脱落のサーヴァントは貴様だライダー!」

 ザバーニーヤ
「妄想心音」

       ザバーニーヤ
ライダーの知る妄想現像とは発音だけが同じの似ても似つかない宝具であった。

自らの手の中に敵の心臓の模造品を作り、――心臓(それ)を潰す事で本物の心臓も破壊するのであった。

真アサシンにとって人間であれ、サーヴァントであれ、王であれ、心臓(命)の強さは同じであった。

「では約束通り、私は消える。助かったな小僧」

既に動けるぐらいまでには回復した北川の目はライダーばかりに向けられて、もはや真アサシンには向けられていなかった。

「次はキャスター辺りでも狙うか……」

真アサシンはナイフだけ素早く片付け、黒いローブが闇に混ざる様に消えた。


【H-8 堤防/黎明】

【真アサシン@Fate/stay night】
【装備:ベルフェゴールの投げナイフ30/30@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:疲労(小)】
【思考・行動】
1:この聖杯戦争で優勝し、願いを叶える。
2:次はキャスター辺りでも狙う。

【備考】
※桜ルートの真アサシンVSバーサーカー終了後からの参戦。
※ダークは全て没収されています。
※投げナイフは全て回収しました。
※妄想心音は半日に1回しか使えません。
※バトルロワイアルを聖杯戦争と勘違いしており、サーヴァントを全員殺すだけで良いと思っています。



「なんで自分の命を優先しなかったんだよ!?」

苦しそうな声を上げるライダーに責める様に声を上げる北川。
会って少ししか経っていないライダーの為に涙を流す北川。
北川に取ってはライダーは親友であり、仲間であり、憧れになっていた。

おっさんはまだ生きているよな!?

何回でも叫んでしまいたかった。

ただの一般人のこの少年の傷口が開いてぬるい赤が下に滴る。
関係ない、もはや痛みは感じない。

「こ……ぞう……」

真アサシンと戦う前からは信じられないほど弱々しい声。

「治るよな、おっさんなら」
「むり、……だ」

嘘でも良い。
『なおる』とたった3つの平仮名を言うだけで良いんだ。

「大体おっさんが死を選ぶなんて願いと矛盾しているじゃないか!」

―――――

『余は二度目の生を聖杯に託す』

―――――

そう言ったじゃないか!?
叶える事を捨てるな!

187散りゆくものへの子守唄 ◆WzpMn05TJA:2011/12/25(日) 18:06:51 ID:9bEWvqhAO
言いたい事がいっぱいあるのに上手く言葉にならない。

「王とは……誰よりもせん明に、生き、諸人ヲみせるコト葉を指す言葉……。だが人を守れぬ者……は、王ではない…………のだ」

そして体が段々体が透けていき……。

―――生きろ、潤……―――

小僧としか呼ばなかった少年の名を呼びながら――
――消えていった……。

「おっさぁーん!」

少年の声はライダーの体と共に天に昇っていくのであった。

「ちくしょう……ふざけんなよ……。こんなのってねぇよ……」

――散りゆくものへの子守唄。



【ライダー@Fate/Zero  死亡】



【北川潤@Kanon】
【装備:日本刀@現実】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2 ライダーのデイパック】
【状態:傷(多)、精神的大ダメージ】
【思考・行動】
1:おっさんの意思を受け継ぎ生きる。
2:みんなと脱出する。

【備考】
※共通ルートからの参戦。
※聖杯戦争の事についてたくさんの説明を受けました。
※ライダーのデイパックを回収しました。


【ベルフェゴールの投げナイフ@家庭教師ヒットマンREBORN!】
ベルフェゴールの手作りの投げナイフ(らしい)。ワイヤーなどを付けるとトリッキーな罠を張れるなど万能だが部下のフランからは「趣味が悪い」など酷評される。

【日本刀@現実】
その昔有名なサムライが使ったとされる刀。誰かまでは不明。

188 ◆WzpMn05TJA:2011/12/25(日) 18:12:16 ID:9bEWvqhAO
鳥の付け忘れorz

投下終了
元ネタは『うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄』より
別に聖上は出ないけど

予約破棄とか言ってたのに長文になってもうた…

書いてて切なくなった…
ライダー……

予約
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、立華奏

189 ◆jEaHSufpKg:2011/12/25(日) 18:21:11 ID:2CP5wTOY0
投下乙です。
さすがイスカンダルさん…生き様にあこがれる。
微力ながら未予約リストなるものを作ってみました。

【予約リスト】
◆SENAs8NCE2氏 アウレオルス=イザード、バーサーカー、棗鈴
◆WzpMn05TJA氏 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、立華奏

【未予約リスト】
3/4【AIR】
○国崎往人/○神尾観鈴/○遠野美凪

2/6【Angel Beats!】
○日向秀樹/○椎名

2/4【家庭教師ヒットマンREBORN!】
○沢田綱吉/○古里炎真

3/5【Kanon】
○水瀬名雪/○川澄舞/○倉田佐祐理

0/5【CLANNAD】


3/5【コードギアス 反逆のルルーシュ】
○C.C./○枢木スザク/○ロロ・ランペルージ

1/5【コープスパーティー】
○刻命裕也

3/6【シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
○御剣総一/○北条かりん/○長沢勇治

0/5【涼宮ハルヒの憂鬱】


2/4【そらのおとしもの】
○桜井智樹/○イカロス

0/5【とある魔術の禁書目録】


3/5【ハヤテのごとく!】
○綾崎ハヤテ/○三千院ナギ/○瀬川虎鉄

2/5【ひぐらしのなく頃に】
○園崎魅音/○古手梨花

2/6【Fate/stay night】
○衛宮士郎/○アサシン

1/4【Fate/Zero】
○ライダー

2/4【BLEACH】
○黒崎一護/○ウルキオラ・シファー

2/6【ペルソナ4】
○天城雪子/○巽完二

0/4【めだかボックス】


3/6【物語シリーズ】
○羽川翼/○神原駿河/○忍野忍

0/6【リトルバスターズ!】


34/100

間違いなどあるかもしれません、すみません。

190 ◆jEaHSufpKg:2011/12/25(日) 18:34:00 ID:2CP5wTOY0
すみません、Fate/zeroのライダーは消して33人です、申し訳ありません

191 ◆WzpMn05TJA:2011/12/25(日) 19:24:50 ID:9bEWvqhAO
ロワ開始が今月の10日で、わずか15日でこんなに出揃うとは正直驚いています

これもたくさんの人の協力のおかげですね

残り25人前後で2周目解禁予定です

動かしたいキャラがたくさんいるので楽しみですね

192 ◆RmIe4rjRnw:2011/12/26(月) 07:35:09 ID:XBeGU7lk0
ライダーかっこいいな…さすがとしか言えない

長沢勇治を予約します

193 ◆SENAs8NCE2:2011/12/26(月) 12:36:08 ID:7ZIZR8ZE0
まだ完成してないですが感想を。
ライダーが……ギャルゲロワとは違いこっちのハサンは乗ったか
あと誤字発見。
>>180
「我が名は英雄王イスカンダル!」
のところ、『征服王』ではないでしょうか?

194 ◆WzpMn05TJA:2011/12/26(月) 15:59:19 ID:0MOsyjdkO
>>193
本当ですね

収録時に直してもらいます

英雄王って明らかにギル様……

ギャルゲロワのハサンと理樹は最高のコンビだった

球磨川が理樹を復活させて、罪滅しのK1の様にハサンと理樹が過去を思い出してタッグになる展開………ないな

死者スレでなら見れるかもしれませんね

195 ◆vQfaAFC7Cg:2011/12/26(月) 16:35:47 ID:lffVqcig0
了解、直しておきます

ギャルゲロワ2の理樹アサコンビ懐かしい

確か今月の最初に王道ロワとギャルゲロワ外伝どっちを開始させるか2人で悩んだの思い出した


そういえばリトバスの男勢って1回放送待たずに1人欠ける法則がこの王道ロワで完全化しちゃったよな
しかも理樹、恭介、真人、謙吾みんな1回ずつ犠牲したってところに因縁感じるよな

神は非常なり(/_;)

196 ◆WzpMn05TJA:2011/12/26(月) 16:53:16 ID:0MOsyjdkO
>>195
気付かなかった…
けどさ
なんだよその見せしめ2人の兄貴がサトシだった並みのよくわからん法則は

ガンダムのReasonの歌詞にあったじゃん
偶然は運命になるって

このロワ、俺が1人でリレーした時の展開より面白い方向に向かってるよ
それだけは絶対に言える

197Angel Meets! ◆WzpMn05TJA:2011/12/26(月) 17:16:04 ID:0MOsyjdkO
――シャルル・ジ・ブリタニア。
他者の記憶を書き換えるギアスを持つ神聖ブリタニア帝国第98代皇帝。

普段は「黄昏の間」と呼ばれる空間に存在する、思考エレベーター(アーカーシャの剣)にその身を置いている。
志を同じにしたマリアンヌとV.V.のみを信頼し「嘘のない世界」を作る事を目的し、最終的に「神を殺す、ラグナレクの接続」を最終目的にし、たくさんの行動を続けた。
そして、ラグナレクの接続を成し遂げようとしたが、シャルルらの理想を拒否したルルーシュが集合無意識にギアスをかけ、思考エレベーターが崩壊、最期はマリアンヌとともに消滅。

それが世界を変えようとした男の最後であった。

―――――

「どうなっている?……パラレルワールドでは俺が奴に負けた?……ふざけるな!」

夢を見ていた。
思い出したくもない自分の父の事。

その怒りで少年は目を覚ましたのであった。

―――――

「これから俺はどうしようか……?」

あの父親が人を3人を殺してまだ数十分しか経っていないのだろう。
人をゴミにしか見ない。
パラレルワールドなんて物があるなら奴はやはりそんな男か……。

そんな奴の血が流れている事にすら嫌悪感がある。

「って考えても仕方ないか……。これはきっと死後の世界なんだろうさ」

シャルルとマリアンヌを消滅させた俺は、妹であるナナリーとまで敵対し、シャルルに変わり独裁者を演じ、人々の憎しみを俺に集めさせ、

     スザク
――親友のゼロに殺させた。

そう、俺は死んだ世界に来たが、その世界でも奴が支配していたに過ぎない。
ただそれだけ……。

「んなわけないだろ……。人間死んだらそれでチェックメイト(終わり)なんだよ」

焼きが回ったな俺も。

「いいや、あなたの答えは正しいわ。今の回答の方が外れ」

答えがくるはずのない問いに、答えなわけがない問いが返ってきた。

「誰だ貴様っ!?」

小柄な少女であった。
自分を主張する様なタイプにはとても見えない。
俺の声にも驚かない無表情な顔。

「みんなは私の事を天使って呼ぶわ」
「いや、知らねーよ」

確かに天使みたいに優しそうではあるのだが……。
可愛いそう過ぎるだろ、それ。

いや、確かに俺も女に『魔女』とか呼んでいたから人の事は言えないが。

「本当の名前はなんて言うんだ?」

天使は言った。
「私の名前は立華奏。よろしく」と。

「あぁ。俺はルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだ。よろしく」

世界中の人に嫌われて死んだ俺にわけ隔たりなく彼女は名乗ったのであった。

「あなたには見覚えがあるわ」
「やっぱり覚えられていたかい」

多分半数くらいの人物に顔も名前も知られてしまったであろう。
俺はまだ知らない人だらけなのにな。

「だからあの主催者と敵対するあなたに言うわ。私と協力してほしい」
「敵対しているだけで俺はゲームに乗らないわけじゃないぞ天使」
「いや、あなたはゲームには乗らないわ」
「な、なんで何も知らないお前が断言出来るんだよ!?」

彼女の着ていた制服の首元を抑えつける。
全て見透かされている様で……。

「……だってあなた優しいもの」

―――――

198Angel Meets! ◆WzpMn05TJA:2011/12/26(月) 17:17:48 ID:0MOsyjdkO
あなたが反逆をした時からずっと観察していたわ。
最初は怖い人の様に思えた。

あなたは2人の女の子が死んだ時、誰よりも早く駆け寄ったわ。
まったくの知らない赤の他人なのに。

そしてみんなが混乱しているなか1人悲しんで……。

あなたは1人の青年が反逆した時、誰よりも早く止めようと駆け寄ったわ。
それが間に合わなかった時、自分の無念さを悔しんでいたわ。
まったくの知らない赤の他人なのに。

1人、1人がバタバタと倒れていった時、誰よりも屈してたまるかと言わんばかりに耐えていたわ。

そんな人の死を悲しみ、悔やみ、怒り、耐えて、反逆する。

そんなあなたは絶対にゲームに乗らないわ。

――何より優しい目をしているもの。

あなた、生前も人々に恨まれながら、誰よりも人々の事を考えていたのでしょう?

そんなの誰にも出来ないわ。
いや出来たのはあなただけよ、ルルーシュ。

―――――

「そうでしょ?ルルーシュ」
「……」

俺は本当に彼女を天使だと思ってしまった。

「天使……、お前が言う死後の話について教えてくれないか?」
「良いわ。少し長くなるかもしれないけど」

そう言って天使はまるで絵本の内容でも語る様な口調で説明をはじめた。

―――――

そこは死んだ人が報われない人生をおくった者のたどり着く場所。

そこには1つの大きな学校がある。
そこで生前には体験する事の出来なかった青春を楽しむところなの。

いいえ、そこには学生しかいないわ。
だから青春なのかしらね。
話を続けるね、ルルーシュ。

その世界では死んでしまっても少し時間が経てば蘇ってしまうの。
だから私達は不死身……みたいなものかしら?

その死後の世界で、成仏して消える。
そんな場所ね。

え?
さっきも言った通りその世界で死んでも蘇る。それは成仏ではないわ。

成仏の方法?
考えればわかるわ、報われない人生をおくった者のたどり着く場所なのよ?

ご明察。
ルルーシュは理解が早いわね。
そう、その世界で報われた人が成仏して消えちゃうの。

199Angel Meets! ◆WzpMn05TJA:2011/12/26(月) 17:19:16 ID:0MOsyjdkO
話はそこからよ。
最近私達はその世界に長く居すぎたわけなの。
それで世界にたくさんの異変が起きているわ。
多分このバトルロワイアルはその成れの果てとでも言うのかしら?
成仏出来ないのなら、このバトルロワイアルで死んだら成仏させてやるっていう世界の意志表示なのかもしれないわ。

確証?皆無よ。

だから主催者なんてのは飾りなのかしらね?
本当は誰でも良かった。
そんな風に今なら思えるわ。

―――――

「到底信じられん」

俺の結論。
あいつの言葉など鵜呑みにする事自体イヤだがそれこそ未知の力かもしれん。

便利な力だな。

あくまで魔法とは魔の方術。
その魔法と表現しないのだからやはり未知なのかもな。

「じゃああなたの死んだ知り合いがいるかもしれないわ。知っている死んだ人の名前誰か出してみてルルーシュ」

まだ俺は読んでいない名簿を天使は持ちながらそんなふざけた事を言う。

「因みにお前の知り合いはいるのか?」
「いるわ」
「…………」

それだけかよ!?
口数の少ない奴だ。

「シャーリー・フェネット、ユーフェミア・リ・ブリタニア、ロロ・ランペルージ、クロヴィス・ラ・ブリタニア、V.V.……どうだ居るわけないだろ」

自分の付き合いのある人物を挙げた。
いるわけないだろうが。

200Angel Meets! ◆WzpMn05TJA:2011/12/26(月) 17:20:38 ID:0MOsyjdkO
「……2人」
「は?」
「ユーフェミア・リ・ブリタニア、ロロ・ランペルージの2人が見つかったわ。V.V.って名前の人は居なかったけどC.C.って人なら見つかったわよ」
「……なんだと?」

ユフィ、ロロ、C.C.……?
確かにC.C.は何回も死んでいるがあいつは不老不死の様なもんだ。

嫌な予感がする。

「天使、俺にも名簿を貸せ」

何故だ!?何故、スザクの名前が入っているかもしれないなんて思ったんだ!?

「枢木スザク……」

名簿を見た瞬時にその名前を見つけてしまった。

「何故だ、何故スザクがこの場に居る!」

死んだにせよ。
このバトルロワイアルに巻き込まれて死んで良い奴じゃない。

スザクにはナナリーを護ってもらわなくてはならないんだ。

「わかった、協力しよう天使。その変わり枢木スザクの探索も入れろ」
「良いわ。私は音無結弦という人物に合流したいから協力してね」

どうやら俺は死んだあとも安らかに眠らせてはもらえないらしい。



【A-1 街/未明】

【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:スザクを優勝させるつもり、だが殺人はしたくない。
2:天使と行動する。

【備考】
※死後からの参戦です。
※ギアス制限あり。人の目を見て3メートル以内。『死ね』や『自殺しろ』の命令は無効です。



【立華奏@Angel Beats!】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:結弦を探す。
2:ルルーシュと行動する。

【備考】
※最終話直前からの参戦。
※ハーモニクス(コピー能力)のみ制限。

201 ◆WzpMn05TJA:2011/12/26(月) 17:32:12 ID:0MOsyjdkO
投下終了

元ネタアニメ『Angel Beats!』より

楽屋ネタに華咲かした結果が投下忘れるorz

予約
川澄舞、椎名、御剣総一、国崎往人

202 ◆SENAs8NCE2:2011/12/27(火) 08:59:02 ID:vfNp/q7Y0
予約していた
アウレオルス=イザード、バーサーカー、棗鈴を投下します

203 ◆SENAs8NCE2:2011/12/27(火) 08:59:53 ID:vfNp/q7Y0

おきろ、なんでこんなところでねてるんだ。



「う、ぇ………」

啜り泣く声が、静かな夜の街に聞こえていた。
その声にあるのは恐怖と不安よりも、深い深い悲しみが大半だ。
やり場のない不安定な感情と、自分の仲間たちへの心配。そして、この『バトルロワイアル』に招かれる前に見た、世界の秘密。終わってしまう楽しいユメ。
願い星に誓って、大切な親友と苦難の丘を越えることを決意した。
暖かかった毎日、友と過ごした時間。
全てがユメでも、嘘だったとしても、一緒に歩んでいこうと決断させた友。自分たちの中では弱い方だと思っていたのに、本当はいつの間にかすごく強くなっていた少年。
直枝、理樹。
自分の手を引いてくれた人。
ユメから覚めて、やがて来る過酷を乗り越える決意をさせてくれた人。
なのに。なのに。なのに。なのに。なのになのになのになのに――――。

「こんなの、あんまりだ」

泣きながら、大きな瞳から大粒の涙をぽろぽろと流しながら。
少女、棗鈴は『それ』を、握り拳を作って叩く。
力は入っていなかった、入らなかった。入れられなかった。

彼女の前にある、かつて一人の人間だった『死体』。
直枝理樹の変わり果てた姿。

腹に穴を開けて血を流し、その瞳はすっかり虚ろな、死人のそれとなっている。
誰よりも優しくて誰よりも仲間想いで、皆が大好きだった少年。
勿論例に漏れず鈴だって理樹のことが大好きだった。
その彼は、もう動かない。

あの優しい笑顔で笑うことも。
馬鹿たちにツッコミを入れることも。
バトルをすることも。
野球を一緒にすることも。
猫たちに餌をやることも。
みんなでわいわい遊ぶことも。
ミッションをやることも。
一緒にご飯を食べることも。
真面目に勉強することも。
楽しく話をすることも。

リトルバスターズを誰よりも愛していた理樹には、もう出来ないんだ。


「おきろ、りき」


揺さぶる。しかし起きない。


「おまえが死んだら、きょーすけが悲しむぞ」

「真人も、馬鹿に付き合ってくれる奴がいなくなってすっごく悲しむ」

「謙吾だって、理樹がいなくなったらきっと泣く」

「こまりちゃんとクドなんて、もうくちゃくちゃ泣く」

「はるかはそれでも笑わせようとして、でも途中で泣いちゃうんだ」

「みおはきっと泣かない。でも、くちゃくちゃ悲しむ」

「くるがやも泣かない。でもやっぱり悲しむ」

204 ◆SENAs8NCE2:2011/12/27(火) 09:01:51 ID:vfNp/q7Y0
「大体理樹が居なくなったら、あたしたちだけじゃくるがやを止められない」

「な?みんな、くちゃくちゃ悲しいんだ」

「お前の居ないリトルバスターズなんて、間違ってるんだ」


理樹は、それでも目覚めない。


「なあ、いい加減に起きろ」

理樹が目覚めることはない。
彼は完全に生命活動を停止している。
鈴もそんなことは理解していた。
ただ、認めなくないだけ。
大好きな親友の死を、認めたくないだけ。

「あたしだって」

すぐに認められる筈がなかった。
誰か一人が居ないリトルバスターズなんて、嫌だ。
目からとめどなく涙を流し。
棗鈴は感情の堰を決壊させた。

「あたし、だって………くちゃくちゃ、悲しいんだからな……!!」

そこから先は声にならなかった。
泣き声だけが、夜の街の静寂を切り裂いて響き渡る。
もう殺し合いなんて関係ない。
ただ―――親友の死に、悲しんでいた。




私は、何をしていたのか。
哀れで無様で惨めな空回りをして、一つの真実に辿り着いた。
それは本来喜ばしいこと。だが私の中には、妬みに近い負の感情が沸き上がった。
結果あの不可思議な右手に、私は無様な敗北を喫したのだ。
錬金術師・アウレオルス=イザード。それが私の名だ。

神の采配にさえ等しい力『黄金錬成(アルス=マグナ)』を手にして、魔導書の速記などではかなり有能な人材だとか随分と持て囃されたものだ。馬鹿馬鹿しいことだが。
そんな私は一人の少女と出会い、やがて彼女を救おうとする。
『魔導書図書館』と呼ばれた少女を救う為に奮闘した。
『吸血殺し』の少女を手に入れ、科学崇拝の頂点に立ち。
ようやく準備を整えた時に、現れた二人の少年。
そして私は彼女―――インデックスが『救われていた』ことを知る。
後は余りに蛇足で惨め。
黄金錬成を以てして尚、私は敗北した―――記憶にあるのはそこまで。

「……………必然。これもまた当然の報いか」

バトルロワイアルという悪趣味な催しに、私は参加させられている。
だが、特に私は生き残りたいと思わない。いや、思えない。
全てを失い、挙げ句の果てには狂乱に近い状態で力を振るったのだ。
この私に救いなど、用意されている筈もない――――必然。
ならば適当に足掻いて適当に死すのみ。
精々優勝を目指してみるのも悪くない。

デイパックの中身など探らずとも、私には『黄金錬成』がある。
弱体化こそしているが、それでも下手な近代武器よりはよっぽど手に馴染む。

205 ◆SENAs8NCE2:2011/12/27(火) 09:02:48 ID:vfNp/q7Y0
別に策など用意してはいない。ただ運命に身を任せるのみ、だ。

「り………きぃ………ぐしゅっ、ひぐっ……おきろ、りき……!!」

む。
まだ幼さの残る甲高い泣き声。
少なくとも今の私にとっては幸運なことに、泣き声はそう遠くない。
いや、不運にも成り得るのかもしれないが。
まあ良い。ただ殺すだけだ。


地面に染み込んだ血が乾いて、染みになり始めた。
それでもあたしの目から流れてくるしょっぱい水は、全然止まらない。
こんなところをくるがやなんかに見られたら、大変な事になる。
理樹は。くるがやの暴走を止められる奴はもういないんだから。
馬鹿兄貴とか、馬鹿二人にこんなに会いたいと思ったのは久しぶりだ。
あたしはとっても弱いんだって、よくわかる。
猫でもいい。レノンにファーブル、ドルジでもいい。

誰か、そばにいてくれ。


「時に少女よ。貴様は何故泣いている?」


びっくりした。
知らない男の声で、すぐそこで理樹が死んでるのにまったく動じてない。
こいつは悪いやつだ―――なんて、いつものあたしなら睨んでやった。
けど、今のあたしはとっても弱気で情けなくて、そんなこと出来なかった。
ただ、顔を向けた。

涙と鼻水でくしゃくしゃになった顔で、そいつの方を見るのが精一杯。
きっと目の下なんかは赤くなってるんだろう。

そいつはでかかった。
真人ほどの筋肉ダルマじゃないけど、真人よりもでかい。
緑の髪をオールバックにしてて、『きざ』な白いスーツなんか着てる。
悪いやつなのかどうかは、あたしには分からなかった。
でも、やっぱり………人が死んでるのに、ちっともびっくりしない。

「理樹………友達が、死んだ」

絞り出すように声を出した。でもこれしか言えなかった。
ふむ、なんてでか男は息を漏らして、何故か理樹のことを見下ろした。

「蘇れ―――――駄目か。『黄金錬成』が万全なら死人の一人や二人、蘇生することくらいは朝飯前だったのだが……済まないな、残念だが私にはどうにもできない」

何を言ってるのか分からない。
なんだ、こいつ魔法使いなのか?でも理樹は生き返らないのか……。
次の瞬間、でか男の目があたしに向いた。
怖い。やっぱり、でかい男をあたしはまだ完全に克服できちゃいない。
でも、こいつの目はちがう。
こいつは、あたしを殺そうとしてるんだ。でも、殺したくなさそうにも見える。
何故だかあたしは、こいつのことを。

206 ◆SENAs8NCE2:2011/12/27(火) 09:03:44 ID:vfNp/q7Y0
『かわいそう』って思ったんだ。

「一つ問おう。貴様はこれからどうする気だ?その少年の死を乗り越えるか?それともこの場で私に殺されることを望むか。………尤も、死した方が楽であるのは確かだが」

あたしは答えられない。
いつものあたしならきっと、何も答えなかった。
理樹が居ない日々なんていやだし、あたしはまだ死にたくなんかない。
多分困ったように目を泳がせて、理樹や馬鹿兄貴に助けてもらうんだ。

でも。
もう理樹はいない。どんなに泣いても、帰ってこないんだ。
きょーすけの馬鹿兄貴も居るみたいだけど、今ここにはいない。
あたししかいない。
こまりちゃんたちもいない。馬鹿二人だって助けてくれないんだ。
もう甘えていられる時間はおしまいなんだって、あたしはようやく分かった。
理樹がどんなに強くて、強くなるのがどんなに苦しかったかも分かった。
強くなることはとってもつらい。心が、もうくちゃくちゃに苦しくなる。
だけど、行かなくちゃいけない。
あたしは結論を出さなきゃいけないんだ。

「あたしは――――――」

あたしは確かにはっきりでか男に自分の口から言った。
それが、あたしが理樹の強さを手に入れた瞬間だった。

◆  ◇

猛る。黒いフルプレートに身を包んだ怪物が、夜の街を往く。
見る者に恐怖と威圧を与える、その不気味かつ威厳漂う姿。
体表から発生している黒い霧のようなそれは、彼という存在のありとあらゆる詳細を秘匿していた。『己が栄光の為でなく(フォー・サムワンズ・グローリー)』と呼ばれるそれは確かに、街を往く狂戦士の『宝具』であった。
生前の彼を知る者が彼の正体を知れば、きっと誰もが驚き嘆いたろう。
元は誇り高き騎士であった『彼』。しかし今は見る影もない。

「………ar……ur………」

人智を超えた存在・サーヴァント。
契約者(マスター)不在でもその力は人間では相手にならないほどに高く、強い。
そしてサーヴァントについて知識を持つ者が彼を見たなら、総じて言うだろう。
もしサーヴァントなど知らぬ者が彼を見ても、きっとこう言うだろう。


――――――――『バーサーカー』と。



◇  ◆


「―――――あたしは生きたい。あたしが、理樹の代わりに強くなる。きっとあたしはそうしなくちゃいけないんだ。だからあたしは、お前に殺されてやることはできない」


なっ、とアウレオルスは声を漏らした。
予想外だった。

207 ◆SENAs8NCE2:2011/12/27(火) 09:05:16 ID:vfNp/q7Y0
泣きじゃくっていた鈴は、直枝理樹と共に死を選ぶと思っていた。
なのに、この少女は敢えて苦難の道を選択したのだ。
理解出来なかった。アウレオルス=イザードの脳で、疑問符が反響する。
目は泣きじゃくった後なのがよく分かるほどに充血して。
頬も感情の高まりによって紅潮している姿は強さとはあまりに遠い。
しかしアウレオルスは、自分が鈴だったなら同じ選択は出来なかったと思っている。棗鈴という少女は、親友の亡骸を間近で見て『強さ』を得たのだ。
死んだ親友の為に、辛くても生き続けたいと確かに、毅然と言い放った。

―――――私は。


―――――私は、何をしているのだ?

アウレオルス=イザードの狂いかけた心に、彼女の強さは勢いよく刺さった。
理由を失った錬金術師の心を揺さぶるだけの価値がある強さ。
頭の中に投影される、自らの生涯。
走馬燈にも等しい、自己回想。

最初は、先生だった。
生きる意味だった少女の先生になったところから、人生が変わった。
彼女を救うために何冊もの魔導書を書き、やがて自分が彼女に救われていたことに気付く。それから、筆が進められなくなってしまった。
ただ、一人の少女を救うために。

最大宗派・ローマ正教に離反を起こし、『世界』を敵に回した。
しかし、やっとのことで救う準備を整えた時には彼女はもう救われていた。自分などとは全く違う、正真正銘の『ヒーロー』の手によって、彼女は救われていたのだ。積み重ねてきた努力も、綿密な計画も、何もかもが報われることはついになかった。
後は堕落。
やり場をなくした怒りを叩き付け、あまりに哀れで無様な敗北を喫した。

―――――私は、大馬鹿者ではないか。

彼女が救われたことを、喜ばなかった。
その時点で自分は、何かを決定的に間違ってしまったのだ。
彼女を助けて幸せにしてやりたかった。それが最初だったのだ。

―――――あの子の笑顔が見られれば、それだけで良かったんじゃないか。


「お前」

少女の声が、自分の真実に気付いたアウレオルスの耳に入る。
それは毅然とした、とても真っ直ぐな呼びかけだった。

「お前、あたしについてこい。何を迷ってるのか知らないが助けてやる」

ああ。私を助けてくれ。代わりに、私が責任を持って君を守ろう。


アウレオルスに比べればちっぽけな少女は、彼に手を差し伸べる。
その小さな手は、握手の意味で差し出されたのではない。

208 ◆SENAs8NCE2:2011/12/27(火) 09:06:27 ID:vfNp/q7Y0
手を取れ。
この手を取れば、アウレオルス=イザードは正しい道に戻れるかもしれない。
だが、良いのか。
強さを得たからといって、彼女はまだとても脆い。
自分の分の重荷まで背負わせてしまっていいのか。
葛藤がアウレオルスの胸の中で繰り返される。今の彼は、心の底から棗鈴という少女を心配していた。――――彼は気付かない。もう、彼は正しい道に戻れているのだと。

「なんだ。お前強情だな!………じゃあ、決め台詞をつけてみるか」

泣き腫らした目で。親友の死を越える決意をした少女は。
心の底からの笑顔で、言った。



「助けてやる。あたしたちはリトルバスターズだ。一緒に行こう」



もう、迷わなかった。
アウレオルス=イザードはその小さな手を、取った。
理樹の強さを背負ったから『あたしたち』。
一人が辛いから、二つの手を繋いだ。
二人じゃ寂しいから、輪になって手を繋いだんだ―――。


□ ■ □

「そうか。あうれおるすは本物の魔法使いなんだな!すごいな!」
「正確には錬金術師だよ、鈴」

二人は、より深い路地裏を歩いていた。
先程鈴の泣き声がかなり響いていたのだから、殺人者も集まってくる筈という案だ。
『鈴のリトルバスターズ』を作る為にも仲間は多いに越したことはない。
ゲームに乗った者も説き伏せていくくらいの心構えだった。
だがさすがに、複数の敵に囲まれたりしては目も当てられない。
『黄金錬成』が万全なら一国を相手にだって出来たが、相当制限されている。
今の力では―――いや。弱気な考えは捨てるべきだろう。

そんな時。
アウレオルス=イザードと棗鈴の全身に、同時に怖気が走った。

魔術に心得のあるアウレオルスはすぐにその意味するところを理解し。
魔術など知らない鈴も、走る寒気とアウレオルスの様子から只事ではないと知る。

「鈴、下がっていろ。アレをどうにかせねばならないようだ」
「出来るのかっ!?何かあいつ鬼こわいぞっ!?」

心配は無用だ、と鈴に言い聞かせつつも、内心では冷や汗をかいていた。
今自分たちの前に立ちはだかる存在が、魔術的観点から見ればどれほど脅威的な存在かをアウレオルスの知識は即座に理解し、そして覚悟を決めた。
英霊。『神の子』の特徴を持つ『聖人』にさえ匹敵する途方もない怪物。


「………ur」

「暗器銃を右手に。その刀身を回転射出!!」

右手に突如出現する暗器銃。

209 ◆SENAs8NCE2:2011/12/27(火) 09:07:30 ID:vfNp/q7Y0
その鋭利な刀身が回転射出され、狂戦士を両断せんと迫る。
普通なら、甲冑を刀で斬り裂き、その内部の人間を両断するなど不可能だ。
しかし『黄金錬成』にはそれが適用されない。外敵の抹殺を命じれば、法則などの事項を全て無視して外敵を抹殺する………いわば『思った事を実現させる』ことに等しい。
まず防ぐ術など存在しない力だった。それは制限を科されようともとても強力な力。人間と英霊の絶対的な力の差を埋め、勝機すら作り出す。

が。バーサーカーは放たれた刀身を掴み取る!
すぐにその輝きは失われ、黒く染まり、本来の効力さえ失った。
アウレオルスは眉を顰める。バーサーカーの保有する何らかの力は、どうやら掴んだモノを何であれ自らの武器『宝具』にしてしまうのか―――厄介だ、と思った。
バーサーカーの怪物じみた力で投擲されれば、防御が間に合うかは微妙だ。


「撲殺」

空中から現れるは金属の槌。
しかしそれをバーサーカーはまたも掴み取り、更に先の刀を投擲した。
不味いな、と思うが、あれをまともに食らう訳にはいかない。
『黄金錬成』への制限の中で最も厄介と思われるのが『回数制限』。
五回の使用につき、三時間のインターバルが発生する。
つまり後三回しか使えない。バーサーカーとの相性はどうやら最悪。
これをたった三回の『黄金錬成』で倒し切るのはほぼ不可能に近い。

「守れ」

黄金の膜が生じて投擲された黒い刀を受け止める――――が。膜には罅が入り、後少し威力があれば間違いなく貫通されていただろう。
『命令』の威力の弱体化。これもまた、相当に面倒な代物だった。
しかもただ『死ね』と命じても何も起きることはない。

「■■■■■■■――――!!」

黒く染まった槌を片手に、バーサーカーが迫る。
背後の鈴の怯えが伝わってくるようだった。だから彼は選んだ。
およそ格好いいとはいえない『逃げの一手』を。

「道を閉塞。外敵を決してこちらに通すな!」

路地を挟むように建っていた小さなアパート二件が、アウレオルスの眼前で倒れ、文字通り『道を塞いだ』。そしてアウレオルスは鈴を抱え、最後の『黄金錬成』を使う。

「脚力強化」

ただ、走る。
迫る黒騎士から離れるために、ただただ、駆け抜けた――――。

210 ◆SENAs8NCE2:2011/12/27(火) 09:11:08 ID:vfNp/q7Y0
【H-3 街/未明】


【棗鈴@リトルバスターズ!】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:健康、強い決意】
【思考・行動】
1:理樹の強さを受け継いで、生きていく
2:アウレオルスと逃げる。
【備考】
※Refrain、虚構世界脱出直前からの参加です


【アウレオルス=イザード@とある魔術の禁書目録】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:疲労(小)、黄金錬成使用可能まであと三時間】
【思考・行動】
1:鈴と共にバトルロワイアルを駆逐する。
2:バーサーカーから逃げる。
【備考】
※上条当麻に敗れた直後からの参加です
※『黄金錬成』について
・五回の使用につき三時間のインターバルが発生する。
・思うだけでの使用は出来ず口にする必要がある。
・規模、威力が大幅に制限されている。
・生み出した物は数分で消滅する。
・相手の攻撃の軌道を逸らすことは出来ない。

■ □ ■ □

狂戦士は一人路地の裏、瓦礫の山を吹き飛ばす。
手にしていた槌は既に消滅し、今は何も持ってはいない。
また、アウレオルスらを追う、という選択肢もまた彼にはなく。
彼は再び、威圧と殺意を放ちながら街を往く。
憎み、もはや呪いに近いほどの感情を抱く一人の騎士王を探して―――。


【バーサーカー@Fate/Zero】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、無毀なる湖光@Fate/Zero(封印中)、ランダム支給品×2】
【状態:健康、狂化(永続)】
【思考・行動】
1:■■■■■■■■■―――――
【備考】
※間桐雁夜に召喚される前からの参加です。
※戦闘能力が抑えられています。
※セイバー@Fate/stay nightを視認すると、全ての行動を放棄して彼女に襲いかかります

【無毀なる湖光@Fate/Zero】
バーサーカーの宝具で支給品扱い。
使用すると全てのステータスが1ランク上昇する。また原作通り、使用している間は『己が栄光の為でなく』『騎士は徒手にて死なず』を封印する必要がある。

211 ◆SENAs8NCE2:2011/12/27(火) 09:13:35 ID:vfNp/q7Y0
投下終了。
題名:澄み切った強さを手に

続いて
沢田綱吉、古里炎真を予約します。

212 ◆WzpMn05TJA:2011/12/27(火) 09:35:41 ID:Z1FtMll2O
投下乙です

予約キャラから鈴の死亡フラグだと思ってしまっていた

やりたい放題のバーサーカー大好きです
もう片方のやりたい放題出来るアウレオルスも原作は悪い人だったけど、本来はインデックスの記憶の為に行った歪んだ正義だったんだよな…

考えさせられました

バーサーカー対アウレオルスの戦い読んでいて最高に燃えました
改心アウレオルス、理樹の死を乗り越え人と向き合う事を決めた鈴の2人には頑張ってもらいたいです

213少女の戦 ◆WzpMn05TJA:2011/12/27(火) 17:58:16 ID:Z1FtMll2O
タッ、タッ、タッ。
ダッ、ダッ、ダッ!

2つの足音が野原を掛ける足音が響く。

1つは逃げる音。
1つは追いかける音。

しかも明らかに速度が追いかける音の方が早く、逃げる音と重なるのは時間の問題だ。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

少年の足は既に限界だった。
ほぼゲーム開始時から逃げ、追われていたのだから。

「な、なんで追われなくちゃいけないんだ……。しかもまたこんな殺し合いをさせるゲームかよ!?」

―――――

彼、御剣総一は少し前に殺し合いのゲームに巻き込まれた事がある。
13個のPDA、13人の参加者、巻き付けられた首輪。
そして解除条件の通りにすると晴れてその人物はゲームを抜け出せるのだ。
全員は助けられなかったものの、ゲーム内では3人だけ脱出する事が出来た。

だが今回のゲームは規模が違う。
100人もの参加者。
なのに1人しか生き残れないサドンデスマッチ。
前のゲームの首輪にはコネクターもあったがそれもない。

「それにしても郷田さんがこのゲームの進行役なんて」

このゲームには参加していない総一の彼女、八幡麗佳と一緒に郷田の生還を喜んだが結局は主催者側だったという事。
今更ながら総一は全て主催者側に踊らされた事に気付く。
しかも参加者には総一と同じくゲームに巻き込まれて亡くなった北条かりん、長沢勇治、高山浩太まで混ざっていた。
しかも、前者2人には麗佳も総一も何回も殺されそうになった。
もしかしたらあの金髪のあの男まで混ざっているのかもしれない。

「…………」

考え、思い出していると問題の女子高生ぐらいの少女がただこちらを見ていた。

「な、何か……?」
「……知らない?」
「…………」

会話が噛み合わない。
でも次の呟きでようやく意味を理解する。

「倉田佐祐理か相沢祐一……知らない?」
「い、いや知らない」

――バキューン!

「……は?」

わけがわからない。
どこからか来た銃弾は総一の頬に血のラインを付けて過ぎ去る。

「…………」

変わった様子のない彼女は無口なまま、また引き金を引く。

「うわっ!?」

支給された袋に入った甲子園の土を、口を開けて投げつける。
それと同時に総一は逃げ出したのだがしつこく彼女は総一を狙うのであった。

―――――

こう何度も殺し合いが起きると頭がおかしくなりそうだ。
それは一般人の御剣総一の当たり前の感情である。

「それにしても足速すぎるだろ……」

総一は知るはずないが、川澄舞は毎夜学校にて魔物と戦っている。
その身体的能力の高さは女子高生を逸脱している。いや、一般人でも高すぎるくらいだ。

214少女の戦 ◆WzpMn05TJA:2011/12/27(火) 17:59:20 ID:Z1FtMll2O
そんな舞に追いつかれるのは当然だ。

「……追い詰めた」

ついに少年の足は棒の様なもんだ。
足はピークで立っていられない、呼吸が苦しい、頭に酸素が行き渡らない、目が霞む、顔の血の気がない。
全てが最悪の状態だ。

容赦なく舞が引き金を引く。

――バキューン!

総一の頭を今、貫通するたろう。
脳みその一部が弾け、思考すら止まるだろう。





「浅はかなり」





総一を抱きかかえたくノ一――椎名の登場であった。

「……邪魔」

椎名が勢い良く舞に武器のサーベルを構えて走り抜ける。
舞はお構いなしと、無表情のまま引き金を引こうと指に力を込めるが、

「ハァッ!」

ガンッ!

忍者の足のスピードが勝った。
瞬時に右手と銃を蹴り上げた。
それと同時に銃はくるくると回りながら舞の後ろに飛ばされ、未明の暗さの闇に消えた。

「殺してやる、なに死んでもすぐに蘇るからな」

死後の世界。
椎名も既に何回も命を落としては蘇っている。
そんなのは日常。
だから椎名には遠慮はない。

舞の細い首の首輪の上にサーベルの刃を当てる。

――そこを思いっきり引く。










――バキューン!

引かれたのは引き金だった。

椎名は一瞬にしてサーベルを下に落として、舞を蹴り上げる。
その反動で舞と椎名の両人が地面に叩きつけられ、同じ様に背中に激痛が走る。

銃弾は離れた舞と椎名の間合いの真ん中を猛スピードで翔て行く。

「対したくノ一だな」

舞の銃を握った銀髪の目つきの鋭い青年だった。

「……って、もう居ねーし!?」

くノ一の椎名は漁夫の利を恐れ、襲われた少年の総一と共に逃げ出した後であった。
そしてこの場には武器を青年に取られ、丸腰のマーダー独りが地面に倒れていた。

「これはチャンスだな……」

青年は勝ち誇った顔で銃を持ちながら舞に近付く。

「佐祐理を……祐一を……護って…………日常に……」

先程の無表情を失い、今は銃に怯える少女。
もはや勝利は決まったも当然である。

215少女の戦 ◆WzpMn05TJA:2011/12/27(火) 18:00:18 ID:Z1FtMll2O
「俺と協力しないか女?」
「…………目的は……?」
「俺は観鈴って奴を生き残らせたい。あいつの為に頑張りたい。だが1人じゃ助ける以前にまず生き残るは無理だろう」
「つまり私を仲間に入れて勝率を上げる……」
「あぁ」
「それじゃあ佐祐理と祐一は……?」
「まぁ、聞け。俺だって死にたくないし、お前も嫌だろ?」

つまり……。
男の答えは。

「優勝じゃ1人しか生き残れないから主催者を殺すんだ」
「……うん」
「でも主催者を探すまでには時間がかかるし、助けたい奴が殺されるかもしれない。だから参加者の皆殺しだ。俺は本当はそんな事したくないし、優しいあいつには責められるだろう。だがそれしか思いつかない苦渋の策だ。むろんお前の仲間の命は保障してやる」

参加者の皆殺し。
悪魔の選択だが、自分だけ手を赤く染める犠牲でみんなハッピーエンドになる。
主催者を殺せばゲームも中止。
望む結末には悪くなく、むしろ良すぎるぐらいだ。

「その提案、悪くない」

自分なんか元々どうでも良い。
舞を動かす源は佐祐理と祐一だけだった。

「戦闘を見る限りお前は銃向けではない。もっと力任せの武器だ」

銃は青年が手にし、舞に往人は三節棍を投げ渡す。

「俺は国崎往人、さすらいの人形使いだ。お前が前、俺が後ろをお互いに護るんだ」

青年は鋭い眼差しで名乗りながら戦闘のポジションを決めるのだった。
全ては俺がゲームの勝者だとでも言うみたいに……。



【E-4 祠/未明】

【川澄舞@Kanon】
【装備:三節棍@リトルバスターズ!】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:怪我(小)】
【思考・行動】
1:佐祐理と祐一と共に日常に帰る。
2:往人の提案に乗り、佐祐理、祐一、観鈴以外の全参加者と主催者を殺す。

【備考】
※舞ルートからの参戦です。
※魔物を呼び出す力は制限されています。



【国崎往人@AIR】
【装備:ニューナンブ2/5@現実】
【所持品:支給品一式 ニューナンブの弾丸35/35 ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:観鈴を生き残らせる。
2:舞と共に観鈴、佐祐理、祐一以外の全参加者と主催者を殺す。

【備考】
※観鈴ルート確定直前からの参戦。
※法術は制限されていません。

216少女の戦 ◆WzpMn05TJA:2011/12/27(火) 18:01:19 ID:Z1FtMll2O
―――――

「た、助かった……」

一方、往人の登場を見る事なく逃走した椎名と総一。
総一はやっと体を休める事が出来る。

「俺は御剣総一、君の名前は?」
「…………」

参加名簿の椎名の名を指差す。
何故か名乗らない。

「うわー……、支給品外れだ……」

羽根の付いたランドセル、こけしが総一のデイパックから出てくる。
もう1つはさっき投げた甲子園の土だ。

「浅はかなり」
「……何してるんですか椎名さん?」

サーベルの柄を立てた指の上に立てていた。

「意味がわからない……」

自分が再び殺し合いに巻き込まれた事、椎名の今の行動、全ての事に対しての呟きであった。



【E-4 森(祠周辺)/未明】

【御剣総一@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 羽根の付いたランドセル@Kanon こけし@そらのおとしもの】
【状態:怪我(中)、疲労(大)】
【思考・行動】
1:椎名さんと行動。
2:殺し合いはしない。

【備考】
※麗佳ルート(EP2)終了後からの参戦です。



【椎名@Angel Beats!】
【装備:サーベル@ハヤテのごとく!】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:御剣と行動。
2:殺し合いはしない。
3:ゆりと合流する。

【備考】
※ユイ消滅前からの参戦。



【ニューナンブ@現実】
日本の警察が所持するリボルバー拳銃。


【甲子園の土@リトルバスターズ!】
ゲーム本編では武器扱いされている。


【サーベル@ハヤテのごとく!】
ハヤテとアテネが決闘時に使ったサーベル。


【三節棍@リトルバスターズ!】
ゲームが始まってすぐの鈴と真人のケンカの時に鈴が絶対に掴み取る武器。うなぎパイを持った真人と三節棍を持った鈴。勝敗は……察してください。


【羽根の付いたランドセル@Kanon】
メインヒロインのうぐぅこと月宮あゆの愛用のランドセル。羽根はあれど飛べません。


【こけし@そらのおとしもの】
OP時とかちょいちょい出る。多分桜井智樹の家の物。

217 ◆WzpMn05TJA:2011/12/27(火) 18:06:27 ID:Z1FtMll2O
投下終了

元ネタはKanon、川澄舞のテーマ曲『少女の戦』

未予約が26人になりましたので今回から2周目解禁です
本腰のリレー開始!

予約
白井黒子、園崎魅音、竜宮レナ

218 ◆WzpMn05TJA:2011/12/27(火) 18:09:05 ID:Z1FtMll2O
>>217
元ネタミス
少女の戦→少女の檻

219 ◆WzpMn05TJA:2011/12/27(火) 19:55:13 ID:Z1FtMll2O
2周目解禁記念!





ガッカリ王子、征服王イスカンダル様がログインしました

陽介「扱いが露骨に違うじゃねーか!」
ライダー「ワハハハハ」

沙都子「陽介さんとイスカンダルさんの活躍を見れば露骨に扱いを変えたくなるってもんですわ!」
陽介「……セリフ一言もなく散ったガキに言われたかねーよ!しかも誰にも名前呼ばれずに出たの死亡確認だけの奴!」
由香「……う」
理樹「いやいやいや、由香ちゃんも該当しちゃうからそれ。大人気ないって陽介」
陽介「大体支給品がマリアさんとかと違って差が激しいじゃないですか」
マリアさん「これも運ですわ」
渚「あれ?前の回の『少女の戦』を見ると御剣さんの支給品の方が酷くないですか?」
佳乃「甲子園の土に羽根付きのランドセル、こけしですよ?」
上条さん「ランサーのブーメラン、柔道着、ミニカーも相当酷いよな」
陽介「つーかなんで俺だけ死者スレ全員からこんな扱いなんだよ!?おっさんにもなんか言えよ」


沙都子「イスカンダルさんは格好良かったですわ〜。死亡なんて冗談だと思ったぐらいですわ」
上条さん「俺の死も評判良かったって作者言ってたけどおっさんも相当だぜ!」
理樹「アサシンさん、ギャルゲ2ndと別人で怖かったよ。改心してほしいな」
ライダー「ワハハハハ、次のロワでは余は大活躍じゃ」
陽介「やっぱり扱い違うのな…。みんなしておっさん、おっさんって!死者スレ全員酷いぜ……。みんな嫌いだ……」



チャド「え?」

何も言ってないのに陽介に嫌われた人

220Island Days ◆WzpMn05TJA:2011/12/28(水) 00:16:15 ID:sj6vwzM2O
彼女が親友を見つけるのにそう時間がかからなかった。

竜宮レナ。
少し変な子でいつもぼーっとしている女の子。
行動も少し変で、近所のゴミ山で本人曰わく『かぁいい』物が好きなのだがセンスが良くわからない。
でも普通に可愛い物も好きで、毎日毎日お持ち帰りしようとしては周りに止められる。

「レナ……。良かった……」

親友の無事な姿が見えて安心する。
園崎魅音は同じ仲間であった北条沙都子を見せしめで失っている。
命に変えても前原圭一、竜宮レナ、古手梨花、そして双子の妹の園崎詩音を護らなくてはいけない。

一番の年上で、部活動の部長である自分園崎魅音が、と……。

だが安心出来たのもレナを見つけて10秒のみ。
声をかける暇すらない。

レナに弓を向ける赤い外套の男の姿が見える。

アーチャーの赤原猟犬の一撃が竜宮レナのその心臓を一直線に狙うが、本人が気付かぬまま。

また親友を失うのか?
また何も出来ないまま……。
ただ見ているだけか?

「レェェェナアアアァァァァァ」

無我夢中。
今ほどこの言葉が相応しかった体験は始めてであった。

グチャリ……。

盾となった魅音の体を赤原猟犬が突き破り、先端にぐちゃぐちゃになった心臓と一緒に背中から剣が貫通した。

地面のアスファルトは水が染み込んでいく様に血を吸っていく。
そんな残酷な絵なのにどこか風情が感じる。

腹に小さな貫通した穴の開いた体の少女は動く事もしゃべる事も笑う事もなかった。
ただ死んだだけであった。


【園崎魅音@ひぐらしのなく頃に  死亡】


―――――

なんだこれは?
どうして魅ぃちゃんが私の目の前で、飛んできた剣に突き刺さって死んでいる?

周りを見渡しても犯人らしき奴はいない。

『天気予報では剣が降ります』
ふざけんな……。

私に怯えて逃げ出したんだろ、ゴミがっ!

どうして私はまたこんなに早く親友を失ってしまう。

魅ぃちゃんが……、沙都子ちゃんが……。
殺された理由は何?

神様に問いたい。
「どうして毎日、毎日、私の大事な物ばかりを盗んでいくのか?」

答えは……、決まっているよね?
うん、決まっている。
だってそんなの考えれば当たり前だもん。






「神様なんか居ないんだっ!」





私の声だけで街中が震えているのが聞こえるよ?

何、今更神様が私に脅えちゃったのかな?

――ふゅぅ。
風が弱く吹く。
まるで私に許しを乞う様に。

今更の同情?
要らない!

神様が今からその不幸ぶんを私に幸せにする?
要らない!

221Island Days ◆WzpMn05TJA:2011/12/28(水) 00:17:19 ID:sj6vwzM2O
神様が今からその不幸ぶんを私に幸せにする?
要らない!

「神様はバカなんじゃないかな……?『青い炎』の私はその『青い炎』を触媒に『青鬼』になるよぉ……」

喉の痒みが走る。
うん、この自分の喉を引っ掻いてストレス発散するよ。

痒い。
痛い。
ストレスが溜まる。

痒い。
痛い。
ストレスが溜まる。

痒い。
痛い。
ストレスが溜まる。

痒い。
痛い。
ストレスが溜まる。

痒い。
痛い。
ストレスが溜まる。

痒い。
痛い。
ストレスが溜まる。

痒い。
痛い。
ストレスが溜まる。

痒い。
痛い。
ストレスが溜まる。

痒い。
痛い。
ストレスが溜まる。

「さぁ、魅ぃちゃんもこのまま負けていられないヨネ、部活動でもよく言うもんね」

『負けたらやり返さないとね』

「魅ぃちゃん、私を見てて。魅ぃちゃんの無念も沙都子ちゃんの無念も晴らさないとね」

魅ぃちゃんの形見になったデイパックをもらい中身だけを私のに移し替える。
魅ぃちゃんのデイパックには何か大切な物を入れておきたいな。

いつも持ち歩いている魅ぃちゃんのバックは当然ない。
いつも入れているモデルガンとかを残したかったんだけど……。

「ん……?」

そういえばアレが消えてるね。
魅ぃちゃんを殺した剣。

「あれは幻?……じゃあ私は魅ぃちゃんが剣で貫いた幻覚を見ていて、本当はただお腹が開いただけなんだ」

あはははははははは。

笑えるね。
笑えないね。

あはははははははは。

「トリックだね。犯人見つければわかるか」

喉を掻き毟りながら魅ぃちゃんの形見を考える。

「魅ぃちゃんに見せたいなー……。私の敵討ち」

じゃあ、あれにしよう。



―――――

「ふぅ……。なかなか島は広いですわね……。お姉さまも見つかりませんし……」

常盤台中学のエース、御坂美琴に恋する乙女、ジャッジメントこと白井黒子ですの。

さっきは戦闘マニアの殿方に負けて少し落胆してましたけど今はそんな事も言ってられませんの。

あれから誰とも出会っていませんし、ずっと歩いていて疲れ始めましたわね。

「おや?」

どうやら人を発見。
同い年ぐらいのデイパックを2つ抱きながら持っていて可愛らしい女の子ですの。

222Island Days ◆WzpMn05TJA:2011/12/28(水) 00:18:19 ID:sj6vwzM2O
拾ったりしたのかしら?ゲームには多分乗ってないと思いますけど。
もしかしたらお姉さまを知っているかもしれませんの。

「そこの可愛らしいお嬢さん、ちょっと話をしてくださらないかしら」
「お前が魅ぃちゃんを殺した犯人だろ!」

抱いていたデイパックに手を突っ込み刀を向ける少女。
あら?ゲームに乗っている?

いや、言動からすると死んだ友達を見つけてデイパックを受け継ぎ犯人探しといったところかしら。

「私は知りませんわ、殺しなんかしませんの」
「嘘だっ!」

耳を防ぎたくなるくらい大きな声。
怒りの大きさがハンパではありませんの。

「人を殺した奴は殺したとは言うもんか!隠すに決まってる」
「疑っても事実ですわそれは」
「えっと……使い方……確か……」

何かの呪文かしら?

「咆えろ『蛇尾丸』」
「え……?」

刀が分断し、伸び始め、私目掛けて蛇の様に不規則に私を襲ってきましたの。

「交渉どころか会話すら無理ですのね」

私は刀が届かなくなる位置までテレポートで逃げ出す。

「罪から逃げるなっ!」

だから罪なんておかしてませんの。

「がああぁぁぁ」

彼女の怒りの叫びが、空気の振動がわかってしまうくらいに強く、憎しみがわかる。
彼女には構えないですわ。
テレポートで逃げますの。

―――――

「さっきから私はロクな目に逢いませんのね」

雲雀恭也。
竜宮レナ。

今日の白井黒子には人物運が低い様だ。
これから彼女はどんな人物に会えるのか。

「おや、人が倒れていますの?」

と、すぐに人と出会った。
いや見つけてしまった。

周りにデイパックはない。
恐らく先程の少女が持っていた物であるのは容易に推理出来る。

だが、そんな事はどうでも良い。
人が死んでいるのだ。

「な、……なんなんですの……これは……」

ただ人が倒れて死んでいるだけなら彼女はこんなに怯えなかっただろう。
今や彼女に竜宮レナを軽くあしらった冷静さはもうない。
床にビンを落とした様にそんな余裕さはバラバラに元に戻らない様に砕けてしまった。

「……ぁぁぁ」

悲鳴にすらならない。

白井黒子の目に映ったのは、倒れていて腹に穴が貫通していて、首より上がない死体だった。

周りのどこにも首がない。

――月明かりが首輪をキラリと照らした。

223Island Days ◆WzpMn05TJA:2011/12/28(水) 00:19:14 ID:sj6vwzM2O
【G-6 街/未明】

【白井黒子@とある魔術の禁書目録】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:動揺、精神的大ダメージ】
【思考・行動】
1:お姉様を捜す……。
2:なんですのこれ……。
【備考】
※夏休み終了後からの参戦です。
※『空間移動』は制限されています。移動は10メートル以内で連続の使用は体に負担が大きくなり、また物を体内や柱に入れる事は出来ません。



―――――

「今の人逃げ足速かったなー。まぁあの人が犯人って決まったわけじゃないし追う意味はあまりなさそうだね、まぁ挫けないで頑張ろうね、魅ぃちゃん」

魅音から受け継いだデイパックに魅音の形見を入れたレナはその形見に顔を向けていて、まるで形見と話しているみたいだ。

何故かその形見の入っているデイパックは赤く染まり、血が滲み、地面に点々と水滴の様に垂れて地面を染めていた。



【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に】
【装備:蛇尾丸@BLEACH】
【支給品:支給品一式、ランダム支給品×5】
【状態:健康、精神不安定、喉元に掻き毟った痕、雛見沢症候群】
【思考・行動】
1:魅ぃちゃんを殺した犯人を、形見の目の前で残酷に殺す。
2:魅ぃちゃん、沙都子ちゃんの仇を討つためにこのゲームを潰す。
3:圭一くんたちを探す。
※『皆殺し編』、綿流し祭開始直後からの参加です
※魅音のデイパックを受け継ぎました。
※雛見沢症候群L3末期〜4に発症しました。



【雛見沢症候群について】
L3末期で幻覚や幻聴を見聞きしてしまいます。
L4では、まだ理性は残っている。異常な行動、極度な疑心暗鬼、人間不信が目立ちはじめる為圭一、梨花、詩音ですら信じられないかもしれません。



【蛇尾丸@BLEACH】
阿散井恋次の斬魄刀。刀が分断して伸びて蛇の様に不規則な動きで相手を斬りつける。解放は「咆えろ『蛇尾丸』」。

224 ◆WzpMn05TJA:2011/12/28(水) 00:24:59 ID:sj6vwzM2O
投下終了です

元ネタはゲーム『School Days』より

今回のは本当に謝りたいぐらいです

異色過ぎました

魅音もレナも黒子も救いはありません、はい

予約
岡崎朋也

225 ◆vQfaAFC7Cg:2011/12/28(水) 01:05:15 ID:BP27jsLA0
怖いし、鬱るわ

異色すぐる

カワイソス四天王結成か?
竜宮レナ、白井黒子登録
あと渚を自分で殺した朋也、日本人虐殺ギアスを持ったまま参戦したユフィといったところか

予備軍
黒化して妹が見せしめになった哲志、殺人衝動しか残っていない宗像、神化フラグ撫子、ライダーを死なせてしまった北川

何故王道ロワなのに序盤でこんなに鬱展開ばっかり仕込まれているのか…

すげー投下楽しみにしてます
頑張ってください!

226 ◆RmIe4rjRnw:2011/12/28(水) 02:48:19 ID:XPnvPaYQ0
お二方投下乙です

どちらも面白かったです
特に竜宮レナの発症が見れて個人的に感動しました(

それでは遅くなりました&未熟な文ですが投下したいと思います

227こわしや勇治 ◆RmIe4rjRnw:2011/12/28(水) 02:52:24 ID:XPnvPaYQ0



ここは、電気店である。
しかし、店内に足を踏み入れただけでは、ここが電気店だとすぐには認識出来ないだろう。
散乱した細かい電子部品、
液晶が割れた薄型TV、
靴跡の付いた扇風機、などなど。
嵐が過ぎ去ったよう…とまではいかないが、まったく、それにしても酷い有様だった。

その状況を作り上げたのは、ある一人の人物。
そしてその状況を作り上げた人物は現在、休憩中であった。


◆◇◆◇◆◇◆


時は、この殺し合いが開始された直後へ遡る。
少年はこの電気店のトイレで目を覚ました。
何故トイレなのか、判断する術もないが、少年はすぐに外に出た。
ここから逃げる。そう考えたためだ。

しかし、少年を待っていたのは暗闇。
ただ暗闇。
あえて形容するならば、
凶暴な猛獣でも居そうな、
全ての音が消えてしまうような、
立ち止まっていては呑み込まれそうな、
暗闇。

そして、追い討ちを掛けるように、少年の耳に微かな銃声が聞こえた。

「く…くそっっ!!」

少年は電気店へと踵を返した。


そして十分後、場所は再び、なぜかトイレの中。
といってもトイレしか電気が付かなかったので仕方がなかった。


「くっそおぉ!ふざけんなよ!あのクソ野郎!」


こんな所に呼び出された怒りからだろうか、少年からは汚い言葉が飛び出す。
否、彼を動かしている感情は『怒り』ではなく『混乱』だろう。
少年の顔には、何が起こるか分からないという恐怖がありありと見て取れた。
いつ襲われて死ぬかもわからない。
そんな状況で、少年はただ悪態をつくことしか出来なかった。


少年―名前を「長沢勇治」という―は、ただの学生である。
普段は家に引きこもってインターネットに興じている。
まあ、『殺人をしてみたい』という、ちょっと危険な思考を持っていたりするが。
それでも長沢勇治は、ただの学生であった。


◆◇◆◇◆◇◆

228こわしや勇治 ◆RmIe4rjRnw:2011/12/28(水) 03:00:42 ID:XPnvPaYQ0

そして数分後、少年は「壊して」いた。
殴って、蹴って、叩きつけて、投げて。
あるいは自らの支給品であった、何の変哲も無い、金属バットを振り回して。
ひたすら「壊して」いるその様は、鬼気迫る物があった。
何を「壊し」ているのか、と言われれば、店内にあった電気機器などの商品だ。
―いや、もしかしたら少年は、「自分を壊して」いたのかもしれない。



「壊す」という行為は、快楽に繋がる場合がある。
お城の形のブロックや、高級な花瓶などを、「壊し」たいと思ったことがある人は居るだろう。
戦隊ヒーローなどに毎回爆発シーンがあるのも、人々が「壊す」という行為を無意識に肯定しているからである。
他人の不幸は蜜の味というが、他人の不幸に直結するのが「壊す」ことなのである。
時間をかけて作られた物を「壊す」ことで、人々は一種の爽快感が得られる。


しかし、今の少年はそんなことまで考えていない。
気を紛らせるために物を「壊し」ているだけである。
「壊し」て―
「壊し」て―
「壊し」て―
狂ったように、「壊し」ていた。


◆◇◆◇◆◇◆


はぁ、はぁ、はぁ……
結構、「壊し」たな。
でも、「壊し」足りない。
もっと沢山、「ブッ壊し」たい。
どうせなら人間も、「壊し」てみたい。
いや、人間は「壊す」じゃなくて――


【殺す】か。

はは、ははは…
そうだな。ここは殺し合いが『許される』場所だったな。
「壊そう」が、【殺そう】が、何をしても良いんだよな。
はは、ははははははは!!


◆◇◆◇◆◇◆

229こわしや勇治 ◆RmIe4rjRnw:2011/12/28(水) 03:06:22 ID:XPnvPaYQ0

そうしてさらに数十分後。
殺し合いが始まってから、既に二時間が経とうとしていた。
暗闇の中、少年がベンチに腰掛ける。
店内にあった自動販売機を壊した少年は、壊したついでに缶コーヒーを数本デイパックに入れてきた。
数瞬悩んでから、一本を取り出して開ける。
口に含んで、冷静な思考を取り戻そうとした。
無論、その程度で取り戻されるはずも無く。
本人は全く意識せず、しかし口元には笑みが浮かぶ。
今は一先ず休憩をするつもりだった。
と同時に、ある決意をしていた。

『殺し合いに乗る』と。


殴って「壊し」、蹴って「壊し」、最後には「ブッ壊す」。
それがこの【殺し合い】のルールだろう?
いやいや、これは【殺し合い】じゃなく―「壊し合い」だ―。



殺し合いに巻き込まれたこと等のストレスから、少年は「壊れ」ていた。
そして「壊れ」ていた少年の心は、さらに「壊れ」始める。



【F-7電気店/黎明】
【長沢勇治@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:金属バット@ひぐらしのなく頃に】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2、Keyコーヒー×4@Angel Beats!】
【状態:疲労(小)、精神異常】
【思考・行動】
1:皆ブッ壊す。
2:いったん休憩。
【備考】
※本編開始前からの参戦。
※精神異常は、何かきっかけがあれば戻る可能性もあり。


※電気店の店内は品物が散乱するなど酷い状況です。
※電気店の店内に置いてある自動販売機が壊されました。大量の飲み物の缶が辺りに散らばっています。

『金属バット@ひぐらしのなく頃に』
長沢勇治に支給。前原圭一が使用することで有名な金属バット。

『Keyコーヒー@Angel Beats!』
電気店に備え付けてあった自販機から、長沢勇治が奪った物。
死後の世界で人気がある、ブランド物のコーヒー。

230 ◆RmIe4rjRnw:2011/12/28(水) 03:13:07 ID:XPnvPaYQ0
投下終了です 短いですかね?
元ネタは漫画「こわしや我聞」です

あと、二週目解禁おめでとうございます!
続いて綾崎ハヤテ、神原駿河、足立透を予約します。

231 ◆WzpMn05TJA:2011/12/28(水) 08:36:29 ID:sj6vwzM2O
投下乙です
このロワのコンセプトは自由なんで短文になろうが長文になろうが関係ありませんよ^^

では感想を

長沢はシークレットゲーム本編では毎回ゲームに乗るマーダーとして登場しますね
ただマーダーに乗る描写が無いんですね
そのマーダーになるまでの経緯がすごく新鮮でした

あの狂った長沢をまた見れるとは楽しみの一言です


そしてジョーカー足立
ハヤテと神原にイヤな予感しかしない
期待しています

232 ◆eQhlNH2BMs:2011/12/28(水) 08:53:53 ID:NFeoRlqA0
衛宮士郎、古手梨花で予約します

233 ◆SENAs8NCE2:2011/12/28(水) 09:59:34 ID:zd.OU8aQ0
投下乙です。
では自分も、少し短いですが投下します

234歪曲スル正義 ◆SENAs8NCE2:2011/12/28(水) 10:00:27 ID:zd.OU8aQ0



「どうしよう………殺し合いなんて、めちゃくちゃ怖いよ……!!」


頭を抱えて嘆く少年。
傍から見れば、無力なただの少年が殺し合いに怯えるように見える。
沢田綱吉という少年は、臆病で何をやらせてもダメな通称『ダメツナ』とさえ呼ばれるどこにでもいそうな、クラスに一人は居るダメダメな少年。
そんな彼が、殺し合いに呼ばれて恐怖しない筈がなかった。
彼は知っている。
この世の中には、人を殺すことさえ躊躇しない輩が確かに存在すると。
何故なら――――彼はイタリアンマフィア『ボンゴレファミリー』の十代目ボスなのだから。

数多くの戦いを踏んできた。
幻術使い、六道骸を筆頭とする『黒曜ファミリー』。
プロの暗殺部隊『ヴァリアー』とも戦い、何度も死にそうになった。
未来で、未来を支配する男とも戦って勝利を収めた。
一番最近では、悲しい誤解から敵対してしまった『シモンファミリー』と戦い、真実を知り。
そして、まさに最恐ともいえる男と戦った。

この場に呼ばれている自分の知り合いは三人。
雲雀恭也。
彼は戦闘狂の気がある危険な男だが、ツナの仲間の一人である。
単純な『強さ』でなら、どんな強敵にも匹敵するほど、強い。
それにあの雲雀が誰かに強制されて殺し合いをしている姿などツナには到底想像が出来なかった。
六道骸。
マフィアに強い憎しみを抱く、かつての強敵。
現在だって立場上『仲間』となっているが、正確に言えば味方なのか敵なのかもよく分からない。
けれど、あいつはこんな殺し合いになんて乗らない―――――と、ツナは直感のようなものでなんとなく感じ取っていた。
古里炎真。
ついこの前まで敵対していた、でも今は友達になった少年。
普段は内気で気弱だが、いざという時は力を発揮する、シモンファミリーのボス。
彼は殺し合いには乗らない。
他の二人と比べても、圧倒的な確実さでそう言えた。

「とりあえずみんなを探そう……」

そしてこの沢田綱吉。
彼は怯えても、凹んでも、決して殺し合いなどには乗らない。
ボンゴレファミリー10代目ボスとして、ではなく、『沢田綱吉』という一個人がそんなことを許さないほどに『善』に傾いているのだ。

235歪曲スル正義 ◆SENAs8NCE2:2011/12/28(水) 10:01:28 ID:zd.OU8aQ0
「(だけど、シャルル・ジ・ブリタニアたちはオレが倒す)」

そう、心の中で強く決意して、彼は歩き――――


そして、最高の人物に出会った。



「エンマ!!」

その気弱そうな見かけとは裏腹の強い闘志。
纏う強者の雰囲気、もはや見紛うなど有り得ない。
ついこの前和解したばかりだったが、だからこそここで彼―――古里炎真に会えたことが素直に嬉しかった。

炎真は驚いたように目を見開き、走ってくるツナを凝視している。
不安というものもあったのだろうな、とツナは安心したような感情に包まれた。

「ツナ君」

その声はどこから聞いても古里炎真の声そのもので。
そして―――――その手に持つ黒光りするそれが凄く不釣合いで。
だから、反応が出来なかった。


パァン


乾いた音が一つ、響く。


「ぁ………?」


しかし沢田綱吉にそれを回避する術はなく。
撃たれた、と実感したのは胸に何か熱いものが飛び込んだ瞬間だった。
肺を撃たれた。もはやこの場から助かる術も、彼にはない。
走馬灯のように駆け巡る今までの日々。
が、炎真は憎々しげな表情で倒れたツナの頭に、鉛弾を放つ。
脳漿が飛び散り、走馬灯を中断させて一人の少年の人生を終わらせる。

「……………僕はツイてるな。いきなりこいつを殺せるなんて」

古里炎真。
彼が沢田綱吉を殺害した理由はたった一つだ。
『彼の時間軸は、ボンゴレファミリーとの戦いの最中』だったから。
真実を知らぬ少年の憎しみはあまりにも深く。
もはや、殺人という行為に何一つ躊躇いなどはない。

「皆殺しだ、ボンゴレファミリー」

ボンゴレファミリーを皆殺しにする。
殺し合いは打倒したいが、彼らと共闘する気など露ほどもない。
ボンゴレの人間と、それを援助する人間を殺す。
それ以外なら、たとえ殺し合いに乗った相手でも殺さずに済ませる。
あまりにも歪んだ、壊れて捻じれた正義感。

何かが致命的に破綻した少年は、気付かない。
自らの掲げる憎しみが、どうしようもなく間違っていることに。
気付かずに堕ちていく。

―――――今度こそ、這い上がれない闇の底に。


【沢田綱吉@家庭教師ヒットマンREBORN!!  死亡】


【C-4 森の中/未明】


【古里炎真@家庭教師ヒットマンREBORN!!】
【装備:グロック17(15/17)@現実】
【所持品:支給品一式 グロック17予備弾薬(33/33)@現実、ランダム支給品×1】
【状態:健康、ボンゴレファミリーへの強い憎悪】
【思考・行動】
1:バトルロワイアルを打倒して元の世界に帰る。
2:ボンゴレファミリー及びそれを援助する者は皆殺しにする。
3:ボンゴレと関わりがない人物は出来るだけ殺したくない。
【備考】
※継承式編、ボンゴレとの戦闘開始直後からの参加です
※リングを見つければ大地の炎は使用できますが、威力は大分抑えられています

※C-4エリアに銃声が響きました

【グロック17@現実】
古里炎真に支給。
グロック社が開発した拳銃で、オーストリア軍制式拳銃トライアルにて制式の座を射止める。

236 ◆SENAs8NCE2:2011/12/28(水) 10:10:07 ID:zd.OU8aQ0
投下終了です。
元ネタ:『空の境界』に出てくる結界名より

続いて
朝比奈みくる、前原圭一、三千院ナギ、アサシンを予約します

237 ◆eQhlNH2BMs:2011/12/28(水) 10:16:04 ID:NFeoRlqA0
投下します

238運命に抗うもの ◆eQhlNH2BMs:2011/12/28(水) 10:18:20 ID:NFeoRlqA0
「う〜…ひっくなのです」

目の前の光景に、衛宮士郎は呆然としていた。
10歳くらいと思われる女の子が、顔を赤くしながらへらへらと陽気に笑っている。
その手に持っているのは…酒瓶。

「っておい、子供がそんなもの飲むんじゃない!」

我に返った士郎は、少女の手から酒瓶を奪い取ると、投げ捨てる。
投げ捨てられた酒瓶は、木っ端みじんに砕け散る。

「…何するのよ」

酒瓶を割られ、少女は士郎をぎろりと睨み付ける。
子供とは思えないその雰囲気とドスの利いた声に士郎は一瞬びびる。

「…まあいいわ。十分憂さ晴らしは出来たし。それじゃあさようなら」

そういった少女は、懐からナイフを取り出し、自らの胸に…

「させるかぁ!」

…突き立てようとしたところへ、士郎が少女の腕をつかみ、それを止める。



「放してよ!私は沙都子のいないこの世界には興味はない!もう一度昭和58年の6月をやり直すんだから!」

少女…古手梨花は、自分を止めようとする男に対して暴れていた。
苦難の末、北条沙都子を意地悪な叔父の手から救い出した。
そして、全員そろった明日の綿流しを楽しみにしながら、眠りについたはずだった。
それなのに目を覚ますと…そこに待っていたのは唐突な殺し合いの開始の宣言と、北条沙都子の死だった。

239運命に抗うもの ◆eQhlNH2BMs:2011/12/28(水) 10:20:11 ID:NFeoRlqA0
どうして…どうしてなの!
沙都子を救い出して、惨劇を回避できたと思ったのに!
その先に、幸せな未来が待ってると信じてたのに!
どうして…どうして!

「自殺なんて馬鹿な真似はやめろ!その沙都子って子だって、あんたが死ぬのを喜ぶはずがないだろ!」

男は、相変わらず自分を止めようとしていた。
別に死ぬわけじゃない。もう一度やり直すだけだ。
沙都子が…仲間がそろわない未来を生きるなんてごめんだ。

しかし、所詮は10歳程度の女の子の力だ。
ナイフはあっさりと男の手によって奪い取られる。


「…どうして止めたの」
「目の前に命を捨てようとするやつがいて、止めないわけがないだろ!」

梨花の言葉に、士郎は迷いなく答えた。
その熱い言葉に梨花は、どことなく前原圭一の面影を感じた。

「あんたが死ねば、きっとあんたの親や、友達が悲しむ。悲しむ人が増えるのを、俺は見過ごすわけにはいかない」

正義の味方として、と士郎は付け加えた。

「私が死んで…悲しむ?」

一方の梨花は、士郎の言葉にぽかんとしていた。
自分が死んで、誰かが悲しむ。
圭一が、レナが、魅音が…?
今までいくつもの死を経験してきたが、自分が死んだあとの世界のことなんて、考えたことがなかった。

240運命に抗うもの ◆eQhlNH2BMs:2011/12/28(水) 10:21:18 ID:NFeoRlqA0
「あ……」


そこで、梨花は気づいた。
そうだ。どうして気づかなかったんだろう。
沙都子は…自分が死ぬのをいくつもの世界で経験し、そのたびに悲しんできたのだ。
それなのに今の自分はなんだ。
同じ立場に立たされて、自暴自棄になっている自分はなんなのだ。


「あ……ああ!」


そもそも自分は沙都子を叔父から救う決意をしたとき、この世界を最後の世界とする覚悟でいたはずじゃなかったのか。
それなのに自分は…自分は……



「うわあああああああああああああん!!!」



あふれ出る感情に耐え切れず、梨花は士郎の胸に向かって号泣していた。




「私は…どうしたらいいの」

どうにか自殺を思いとどまった梨花だったが、その心にはまだぽっかりと穴が開いていた。
とりあえず現在は「あんたを殺させはしない!俺が守ってみせる!」という士郎の言葉に従い、彼と行動を共にしている。
似たようなセリフを吐いた東京の刑事は肝心な時に役立たずだったが、とりあえず信用は出来るだろう。

241運命に抗うもの ◆eQhlNH2BMs:2011/12/28(水) 10:22:39 ID:NFeoRlqA0
それよりも自分の方針だ。
とりあえず自殺することは今はもう考えていない。
沙都子が何度も経験してきた悲しみに目を背けたまま死んでは、彼女に合わす顔がない。
しかし、最後の一人まで殺しあうというこの場所で、いったい自分はどうすればいいのか。


「…士郎。あなたはこの殺し合いの場で、どうするつもりなのですか」
「決まってるだろ!一人でも多くの人を救って、主催者を倒してこのゲームをぶっ潰すんだ!」

士郎の決意の言葉に、やっぱり圭一に似ている、と梨花は思った。
いや、その正義感はある意味圭一以上かもしれない。
あまりにも純粋な理想を語る士郎の姿は、どことなく危なっかしくもあるが…同時に頼もしかった。


「主催者を倒す…か」

それはきっと困難な茨の道。
それでも、この衛宮士郎という男は止まらないだろう。
そして、おそらく圭一も今頃同じ道を進もうとしているのだろう。

「…面白いじゃない」

圭一は言った。
運命なんて簡単に変えられるのだと。
そして彼は、何度も奇跡を起こしてきた。

それなら自分も、この殺し合いという運命に抗ってみようじゃないか。
この程度の逆境で諦めていたら、たとえ何度やり直そうとも昭和58年6月を越えることなんて出来るわけがない。
なにより彼らは許せない。
沙都子をあっさりと殺し、私や私の仲間たちをこんな目に合わせた主催者達に一泡吹かせなければ、死んでも死に切れない。


「私は…負けない。たとえどんな困難が待っていようと、最後まで戦う!」

242運命に抗うもの ◆eQhlNH2BMs:2011/12/28(水) 10:24:33 ID:NFeoRlqA0
【F-4 森/未明】

【古手梨花@ひぐらしのなく頃に】
【装備:サバイバルナイフ】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×1】
【状態:酔っ払い(小)】
【思考・行動】
基本:主催者を倒し、沙都子の分まで生きる
1:士郎についていく
【備考】
※皆殺し編の沙都子救出後からの参戦です


【衛宮士郎@Fate/stay night】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本:正義の味方として一人でも多くの人を救い、主催者を倒す
1:梨花を守る


※F-4に酒瓶の破片が飛び散りました

243 ◆eQhlNH2BMs:2011/12/28(水) 10:25:21 ID:NFeoRlqA0
投下終了です

244 ◆WzpMn05TJA:2011/12/28(水) 11:35:51 ID:sj6vwzM2O
投下乙です
では、感想を

歪曲スル正義
予約から嫌な予感がしてました
ツナと炎真、時系列の違いからの惨劇
やり切れないですね

次回も楽しみにしてます
ハヤテとナギお嬢様の予約入りましたね
この2人ハルヒ、Fate、BLEACH、ギアス、ひぐらしキャラクターを把握してそうで怖い

ナギ「うわ、SOS団のみくるちゃんとひぐらしの圭一!?圭一の手にエクスカリバー!?」
ハヤテ「涼宮ハルヒ?なんというDQNネーム」
こんな展開になったら……なんというカオスロワ
いや、冗談です。ただの独り言です


運命に抗うもの
士郎はやっぱり士郎だ
自分で書くなら桜ルート参戦の優勝狙いマーダーにしようとしたけど、やっぱり士郎は正義の味方が最高だ
梨花ルート(?)に期待

245DEAD or ALIVE ◆WzpMn05TJA:2011/12/28(水) 14:24:50 ID:sj6vwzM2O
1つの人間であった亡骸があった。
既に息はなく、死臭がするぐらいこの体は機能していなかった。

その亡骸に泣いて詫びる少年が居た。
岡崎朋也。

亡骸になった彼女、古河渚を本人の両親並みに愛していた男。

理不尽なバトルロワイアルに巻き込まれ、自分や親友達の命を踏みにじってでも彼女を生かして帰らせようとした直後に自分で犯した罪。

「……渚」

彼女の手を永遠と握っていた。
冷たい手にまたぬくもりを与えて蘇らせようと。

彼女の死を誰より理解しながらも、その手は離さない。

「俺がみんなを売ろうとしたから……、……こんな罰が待っているなんて」

因果応報。
自業自得。
わかってはいるのに……。
やり切れない自分が居る。

朋也は渚を撃ったライフル、ドラグノフを手にする。
結構な重量だが人の体重よりはない。

「……人、1人こんな軽い物で死ぬのか」

人間の命はそのドラグノフ以下。
主催者のシャルル・ジ・ブリタニアにそう言われた気がする。
ただ朋也の脳内ではそれがリフレインしていた。

―――――

「殺し合い?バトルロワイアル?どうでも良いや……」

俺は渚の手を握りながら、野原に倒れ込む。

草が気持ち良い。

俺の罪を癒やしてくれてるみたいだ。
俺の過去を癒やしてくれてるみたいだ。
俺の責任を癒やしてくれてるみたいだ。
俺の傷を癒やしてくれてるみたいだ。
俺の行いを癒やしてくれてるみたいだ。
俺の赤く染めた手を癒やしてくれてるみたいだ。
俺の弱さを癒やしてくれてるみたいだ。
俺の脆さを癒やしてくれてるみたいだ。
俺の悪さを癒やしてくれてるみたいだ。
俺本人を癒やしてくれてるみたいだ。

――俺の全てを癒やしてくれてるみたいだ。

「ははは……、何都合の良い事を……」

自虐。
これでしか自分を保てない。

次はずっと先の空を見上げる。

絵で描いた様な星空。
普段から夜型行動のクセに見上げる事のない夜空。

「星……こんなにキレイだぜ渚……」

渚ならなんて答えるかな?
『はい、とってもキレイです』
『朋也君がそんな事言うなんて珍しいです』
『だんごみたいです』

いや、最後のは無いだろ。
でも渚だからわかんないな。
もっと変化球なものがくるかもしれない。

『朋也君……とってもキレイなの』
『何それ?気取ってんの?朋也君きも』
『朋也君、星ってヒトデのパクリみたいな形してます!渚はもうプンプンですよ』
『朋也君、私も星キレイだと思う。それと便座カバー』


……明らかに今の4つは誰かが乗り移ってんじゃねーか。

もはや返される事のない答え。
本人が居ないなら答えは存在しない。

それは願望でしかない。

星はキレイな目の様に見える。
全てを許してくれそうな目。

246DEAD or ALIVE ◆WzpMn05TJA:2011/12/28(水) 14:25:55 ID:sj6vwzM2O
俺の罪を許してくれそうだ。
俺の過去を許してくれそうだ。
俺の責任を許してくれそうだ。
俺の傷を許してくれそうだ。
俺の行いを許してくれそうだ。
俺の赤く染めた手を許してくれそうだ。
俺の弱さを許してくれそうだ。
俺の脆さを許してくれそうだ。
俺の悪さを許してくれそうだ。
俺本人を許してくれそうだ。

――俺の全てを許してくれそうだ。


「癒されても許されてもダメだ」

ドラグノフを手に取る。
その銃口を頭に向ける。

「……渚と同じ武器で死ねるなら本望だ」

引き金に力を込める。










――バーン。

銃声が耳元で煩く響き、容赦なく俺の頭を貫通する。
立つ事を維持出来なくなり倒れ込む。
血が頭から流れ、目から見える視界が赤くなり霞み出す。
そのまま何も考えられなくなりやがて闇に落ちる。
静かな死――。










「死ねない……」

指は動くのに、引き金に指が触れると指が石化する。
脳内シュミレートでは何回も何回も銃声が響き死んでいる。

でも現実はシュミレート通りにはいかない。

この世界は全てが思い通りにはいかない。

247DEAD or ALIVE ◆WzpMn05TJA:2011/12/28(水) 14:26:15 ID:sj6vwzM2O
「今更俺は死を恐れるのか!?結局俺はヘタレなのか!?春原に散々ヘタレと言い続けてきたのに結局俺もヘタレなのか!」

あああああぁぁぁ。

「なんで今更ビビるんだよっ!」
「撃てよ岡崎朋也!」
「俺はもう死にたいんだよっ!」

『ビビったって良いじゃん』
『撃ちたくない』
『死にたくない』





―――――

死にたいという口。
生きたいと願う本心。

罪を犯そうとし、因果応報で自分の彼女を死なせた彼に救いはない。

「俺は生きて戦いたい……」

やがて朋也は生きる事を誓う。
いや、生きる事を選ぶ。

「罪は償わなくてはいけないよな……。このゲームを終わらせる為に俺は命を賭ける」

罪は許されない。
だけど罪は捨ててはいけない。

罪は背負い込み、その罪を忘れない事。

それがこの男、岡崎朋也の下した結論であった。

「……待ってろよ、みんな」

少年は少女の死を乗り越え、逃げる選択を完全に捨て去った。

「力を貸してくれ、渚……」

少女のデイパックを持った少年は、この島に来た時より、逞しくなった目をしていた。



【F-4 森と野原の境目/黎明】

【岡崎朋也@CLANNAD】
【装備:ドラグノフ(9/10)@現実】
【所持品:支給品一式 ドラグノフの弾丸×20 ランダム支給品×5】
【状態:健康、精神的大ダメージ、決意】
【思考・行動】
1:渚を殺した罪を償い、背負い込み、捨てない。
2:このゲームを終わらせる。
【備考】
※渚ルートの卒業の少し前くらいの参戦です。
※渚の支給品は回収しました。

248 ◆WzpMn05TJA:2011/12/28(水) 14:27:53 ID:sj6vwzM2O
投下終了
元ネタはゲーム「アイドルマスター」のラジオ番組「THE IDOLM@STER STATION!!!」のオープニング『DEAD or ALIVE』より

もう朋也主人公で良いよ


予約
戦場ヶ原ひたぎ、ランサー

249 ◆RmIe4rjRnw:2011/12/28(水) 15:01:46 ID:XPnvPaYQ0
投下乙です

朋也、決意したか…うん、がんばってほしい

予約のキャラからして場所がかぶらないか心配ですが投下します。

250するがの法則 ◆RmIe4rjRnw:2011/12/28(水) 15:03:54 ID:XPnvPaYQ0


「メイド服について、どう思いますか?」


唐突に、そう聞いてしまった。
殺し合いの最中に、それも見ず知らずの少女の背中に。
思えば、ぼくは少し気が動転していたのかもしれない。
自分が三千院家の執事であることさえも、一瞬忘れていた。
まったく、常に主人の下で、沈着冷静であるべき執事として、何たる失態だ…。


いや、そんなことよりも、まずは謝罪が先だろう。
目の前に居る少女に、不快な思いをさせたことを詫びるべきだ。
今ならまだ間に合う、少女はまだ振り返ってもいないのだから。


そう考えた僕は彼女が口を開こうとしたのを遮るようなつもりで、謝罪の言葉を―


「す、すみ―」
「うむ、思考するまでもなく至高だな。しかし、私はそういった類の服装を真似て作られた物ならば見たことはあるが、本物と言われるとさすがに無いな。やはり、リアルでメイド服を着ている人など超豪邸お抱えの家政婦でもなければいないだろう。いやはや、それほどの豪邸ならば、恐らく箱入り娘などが居るのだろうな。大事に育てられた彼女は、なぜだか平凡な男性に恋をする。二人はお互いに思い合っていて、皆に祝福されて結婚―が、しかし。そううまくは行かないものだろう。おそらく彼女の両親が決めた許嫁が存在するはずだ。そして許嫁との結婚を強要されて駆け落ち―。そのまま二人は愛を確かめ合う―と思いきや、許嫁と自らが愛した平凡な男性は既に禁断の関係にあり、傷心した彼女は悲しみを癒すために、自らも同性愛の道へと走ってゆく…とまあ、昼ドラ的なストーリーとしてはこんな感じかな。どうだろう。どう思う?」



―掛けられなかった。
というか、言葉を遮られたのは僕の方だった。
それでも、どうにか理解し、言葉を返すことはできた。


「…斬新なように聞こえるけど最後以外はありきたりじゃないかっ!」
自分でも、なかなかのツッコミだったと思う。

251するがの法則 ◆RmIe4rjRnw:2011/12/28(水) 15:07:24 ID:XPnvPaYQ0
◆◇◆◇◆◇◆



さて、とにかく初めて会った参加者だし、話をしよう。
現在、二人は病院近くの茂みに隠れていた。
先程の奇妙な出会いを意識してか、二人は黙ったままだった。
しかし、黙ったままでは時間も惜しいから、とにかく話しかける。


「立ち話というのもなんですし、貴女はそこにお座りください」
少女が少し考えてから、「ふむ、君は私をずっと立たせる放置プレイをしたくはないか?」などと言ったがスルーした。
まあ、割と素直に従ってくれているから、どうやら不審に思われていることは無いようだ。
ひそかに胸を撫で下ろした。


「では、自己紹介でもするとしようか」座ってすぐに少女が言った。
「そうですね、では貴女からどうぞ」
そして少女は自己紹介を始めた。「私は神原駿河。私立直江津高校二年だ」ここまでは良かった。だけど、続きがあった。
「そうだな、私のことを説明するならば、自他ともに認めるBL好きで同性愛者でマゾヒストな上に露出狂だ」
再びの沈黙。語られても困る。
「…は、はは…すごいですね」
「ちなみに知り合いは二人いる。阿良々木暦先輩と、戦場ヶ原ひたぎ先輩。二人とも私の敬愛する人物だ。殺し合いに乗るような人達じゃない」
「…そうですか」
その名前は確かに確認している。って、そうじゃなくて。
話の流れを全く考えないのか、神原さんは。
いや、本当に、キャラクターが濃すぎるでしょうが。


「えっと、じゃあ僕ですね。僕は綾崎ハヤテ、三千院家の執事です」
つい、いつもの癖で執事ということを言ってしまった。
別に困る事でもない筈だが、なぜだか嫌な予感がした。
「ほう!執事なのか…じゃあメイド及びメイド服も見慣れているのだろうな。うむ、正直羨ましいよ。はっ、では最初のあの質問も、私の歩く後姿を目にして、ああ、彼女にメイド服を着せたらさぞや美しいのだろう、と思ってのことか!?」

「違いますよ」
否定はしたものの、ほとんど予想通りの反応に辟易する。
どうやら神原さんは、そうとう素直におかしいようだ。
でも、ある意味この反応が「普通」なのかも…僕だって、自分が執事になるなんて思ってもみなかったのだから。
おっと、話の途中だったな。


「あとは知り合いの名前ですよね。三千院ナギお嬢様、マリアさん、桂ヒナギクさん、瀬川虎鉄さん。この…四人だけです。」
四人だけ、というよりは、四人も、という気持ちの方が強い。

なにより、ここにお嬢様が居ることが信じられない。
お嬢様は確かにアニメや漫画大好きな少女だけど、戦闘力は皆無だ。
こんな所に呼ばれて、殺人者の標的にならないはずも無い。
支給品の一つ、「黒鍵」という剣を強く握りしめた。
速く、お嬢様の下へ行かなければ―。

「ほう、それでは―」
神原さんが何かを言おうとした。



嘘みたいな爆発音が聞こえたのは、その時だった。

252するがの法則 ◆RmIe4rjRnw:2011/12/28(水) 15:09:06 ID:XPnvPaYQ0

◆◇◆◇◆◇◆



「ふむふむ、この近くにいるのは、と…」
足立透は【C-2】に来ていた。
この殺し合いを、より白熱した、混沌としたものにするための『ジョーカー』として。


「B-2に戦場ヶ原ひたぎ、篠崎あゆみで、ここ、C-2にグリムジョー・ジャガージャック、セイバー、あとは綾崎ハヤテ、神原駿河か。あとはD-2にランサー、と。」
手にしたPDAからは、多くの情報が入ってきていた。
そして足立は、得た情報から「より面白い展開」を作るために画策するのだ。


「まあ、この近くではもう二人死人が出てるし…」
篠崎あゆみが病院で爆発物を使用、マリアを殺害。
グリムジョー・ジャガージャックが虚閃(セロ)を使用、花村陽介を殺害。
そのような情報も入ってくるのだから、かなり有利である。


「グリムジョーとセイバーが臨戦態勢、ってコトは教会から動きそうにはないなあ」
自身が今居るところから、そう遠くない場所の教会。
あそこでは、今まさに「死神」と「サーヴァント」の戦いが起きようとしている。
多少興味も残るが、今はそれよりも―。


「おやおや、あそこに居るのは…綾崎くんと神原くんだね」
視界に捉えたのは、執事服の少年と左手に包帯を巻いた少女。
恐らくあちらもこっちに気付いたのだろう、手を振ってくる。
手を振りかえしながら、僕は獲物がかかった事への喜びを隠せなかった。

253するがの法則 ◆RmIe4rjRnw:2011/12/28(水) 15:11:02 ID:XPnvPaYQ0

◆◇◆◇◆◇◆



病院の中から爆発音が聞こえた後、私は綾崎君と一緒に南下していた。
二人で歩いているなんて、阿良々木先輩に見られたら嫉妬してくれるだろうか。
そんなことを考えながら、早足で。

そして【C-2】に入ってもなお、南下を続けていると、一人の男性に出会った。
「君達、この殺し合いに乗るつもりはあるかい?」
第一声は物騒だったが、話すとこの足立という刑事は悪人ではないようだった。


しかし、出会った人が執事や刑事とは、全く運がいいのか悪いのか。
そもそも殺し合いに巻き込まれているのだから、それだけで運勢は最悪と言えるが。


とはいえ、実際刑事に会えたのは心強い。
頼り無げにも見えるが、この男性、割と正義を貫くタイプのようだ。
「この殺し合いを止めたい」と語るその顔にも声にも、嘘は感じられなかった。
疑ってかかっていた綾崎君も、この言葉に動かされたようだ。


そして、私たち二人は足立刑事と共に行動することにした。
どうやら足立刑事は、戦闘やそれに準ずることが起きている所へ積極的に近づくらしい。
どうしてそんなことを、と聞くと、
「戦闘に巻き込まれただけの、一般人もいるはずだからね。そういった人たちを守るのが警察官なんだよ」
と、まるで正義のヒーローのお手本のような回答が返ってくる。
この意見には綾崎君も賛同した。
よほどお嬢様が大事なのだろう。私もそれくらい思われたいものだ…。
確かに阿良々木先輩は後先考えずに突っ込むような人だから、戦闘が起きていたらその場所に行こうとするかもしれない。
戦場ヶ原先輩は…わからない。


そして話し合った結果、足立刑事はこれからの行き先を私たちに委ねるそうだ。
私たちと足立刑事の情報を共有したところ、選択肢は2つとなった。
先程爆発が起きたために私たちが離れることにした病院か。
足立刑事が言うには今戦闘が起こっているらしい教会か。

どちらにも「巻き込まれた一般人」がいる可能性はある。
さあ、どちらへ行こうか―。



「それより、足立刑事は受けに見えて実はバリバリの攻めだと思うのだがどうだ?」
「「知らないよそんなの!」」

254するがの法則 ◆RmIe4rjRnw:2011/12/28(水) 15:12:21 ID:XPnvPaYQ0



【C-2路上/未明】

【神原駿河@物語シリーズ】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:綾崎君と足立刑事と行動。
2:教会か病院に向かう。
3:阿良々木先輩、戦場ヶ原先輩、綾崎君の知り合いと合流。
【備考】
※「するがモンキー」終了後からの参戦です。
※足立をある程度信用しました。

【綾崎ハヤテ@ハヤテのごとく!】
【装備:黒鍵@Fate/zero】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:神原さんと足立さんと行動。
2:教会か病院に向かう。
3:お嬢様や知り合いの人たちを探す。
【備考】
※アテナ編終了後からの参戦です。
※足立をある程度信用しました。

【足立透@ペルソナ4】
【装備:不明(武器は持っている)】
【所持品:支給品一式、PDA@シークレットゲーム-KILLER QUEEN- 、意図的支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:ロワイアルをかき回す仕事をしつつ楽しむ。
2:この二人を戦いに巻き込む。
【備考】
※直斗救出後からの参戦です。


『黒鍵@Fate/zero』
綾崎ハヤテに支給。
神父・言峰綺礼が戦闘に使用する投擲剣。

255 ◆RmIe4rjRnw:2011/12/28(水) 15:22:58 ID:XPnvPaYQ0
投下終了です。
タイトル元ネタは漫画「うえきの法則」
誤字脱字など、訂正箇所があればご指摘お願いします

続いて天城雪子、桜井智樹で予約します

256 ◆WzpMn05TJA:2011/12/28(水) 16:40:16 ID:sj6vwzM2O
投下乙です

神原の暴走は止まりませんね
安心してしまった

ただジョーカーとの遭遇に暗雲が漂う…

平和にはいかないんだろうなぁ

257おまもりらんさー ◆WzpMn05TJA:2011/12/28(水) 22:17:15 ID:sj6vwzM2O
「さてゲーム開始2時間、変わった事はなしか……」

未明から黎明の時間。
だが暗闇の空はまだ明るさを見せない。

「あの変な奴しかまだ会えていないとは……」

足立透。
呟く青い戦士のランサーは名前も知らない。
しかも格好は警察の者。
だが英雄でもあり戦士のランサーには勘や鼻が聞いていた。

「幸運はEで最低な俺だからか支給品は最低だしな……」

ブーメランを悔しい顔をして睨むランサー。

「まぁ良い。それよりサーヴァントが出たら対抗出来ないぜ」

全サーヴァントと引き分けをマスターに強制させられたランサー。
サーヴァントとの戦いを想定しているがランサーは第四次聖杯戦争のサーヴァントであるバーサーカー、ライダー、キャスターの事を知らない。
もしかしたら出会う事はないかもしれないが第五次聖杯戦争のサーヴァント対策だけでは足りないのだ。

「ん?なんだ?あいつも参加者なのか……?」

方針を頭で考え、危険なサーヴァントやシャルル達と戦闘を考えていると参加者らしき女性を見つけるランサー。

「…………」

赤いマウンテンバイクに乗っていて何やら楽しそうにも見える。

―――――

「オイ、そこの乗り物に乗ったあんた」

先ほど男とは話す気にはなれなかったが今回見つけた女は信頼出来そうだ。
若干クール系で冷たそうだが美人なのは誰から見ても明らかだ。

女は乗り物に乗りながらこっちに気付いたらしく顔を上げて目が合う。

「……」

そして何事も無かったかの様に素通りした。

「ちょ、おまっ、待てって。ちょっと話があるんだよ」
「そんな風に新聞勧誘されても私の家は貧乏だから新聞は取れないわ」
「バトルロワイアル中に新聞勧誘して働く奴なんか居ないだろうがよ!」
「そんな全身青タイツ男、全国探しても新聞勧誘の人しか居ないわ」
「居るわけねーだろーが!」
「あとこの赤いマウンテンバイク阿良々木君のやつよ。しかも壊される前の状態」
「嬉しそうだな」

くだらない話をし合いながらなんとか女を妥協させた。
10分近く潰した事がプラスになれば良いんだが。
見た目通り口が悪い一般人だこいつは。

「まるで私を『見た目通り口が悪い一般人』とかいう目で見てるわね」
「なんでわかんだよ!?」
「あんた女運なさそうだし」
「…………」

なんでわかんだよ!?
クソッ、こいつと居ると変になりそうだ。

「あんた名は?」
「戦場ヶ原ひたぎよ」
「勇ましい格好良い名前だな」
「ありがとう。因みにあんたの名前はネーミングセンスがないわね。下の名前に『勇』を付けると最高よ」
「俺、まだ名乗ってすらいねーじゃねーか」

クー・勇。
そっちの方がネーミングセンスないじゃねーか。

「因みに俺はランサー」
「あははは。……あらごめんなさい。本当にネーミングセンスないじゃない」
「いや、本名じゃねーし」

つーかランサーで笑われたの初めてだぜ。
なんか傷付くな。

「ごめんなさいダンサー」
「お前俺とまともに話す気ねーだろ?」
「え?今更気付いたの?」
「ぶっ殺すぞてめぇ」

だめだ……。
英雄なら心広く。
まだ奴は子供じゃねーか。

258おまもりらんさー ◆WzpMn05TJA:2011/12/28(水) 22:18:46 ID:sj6vwzM2O
「俺の本名はクー・フーリン。お前も知ってるだろ?有名な名だしな」
「確かに有名ね」
「だろ」

流石にそこはバカにされなかった。
英雄の名をバカにする奴はいないよな。

「あれでしょ?昔ジュースのCMでやってたマスコット。ジュース飲んだあとに自分の名前『クー』って名乗る子。私好きだったわ」
「それ俺じゃねーよ」
「え?『クー』が成長したダンサーじゃないの!?」
「もう止めだこの話」

結局知らなかったらしい。
なんだよ、こんなオチ。

まぁ日本じゃマイナーか。

「ダンサー、ダンサー言ってけどランサーだぞ俺は?それでだ。俺に『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)』っていう槍を持ってたら譲ってくれないか」
「ゲイ!?そんな槍(もの)で掘るの!?」
「そんな卑猥な槍じゃねーよ。あと趣味じゃねぇ」
「そういえばマウンテンバイクが出て『ウッヒョー』ってなってまだまともに支給品見てないのよ」
「バカじゃねーのお前!?」

なんでさっきからこんな中身のない話しかしてないんだ俺は?

「槍はあったけど……これはあなたの槍じゃないわ」
「何!?つーか俺のじゃないっていう根拠は?」
「赤いのだからよ。あんたは全身青なんだから槍も青のなんでしょ?」
「なんだその偏見?つーか赤いので良いんだよ、見せてみろ」

彼女から赤い槍を出してもらう。

「……マジかよ」

本当に赤い俺の呪いの槍が彼女のそれであった。

「真面目な話だ戦場ヶ原、俺にそれを譲れ」
「はぁ?渡すと思うの」

そりゃあ無理だよな。
誰が数少ないかもしれない武器をほいとくれる奴がいるんだか。

「因みにあんたの支給品を見せなさい。全部よ。出し惜しみなしでね」

小娘に命令させられるのは癪だがゲイ・ボルクの為だ。

俺はデイパックの中身を全て見せた。支給品一式、ブーメラン、ミニカー、柔道着。

「なんか私のマウンテンバイクとゲイ・ボルクだけで普通に私の方が大当たりよね」
「……」

幸運Eは伊達じゃないな俺……。

「良いわ、わかったわ」

と潔く戦場ヶ原はゲイ・ボルクを俺に投げ渡した。

「なっ……良いのか?」
「私はさっき女の人の死体を見たわ。それ見てわかったわ。私には人を殺す事は出来ないってね」

欲しかったがこんなにあっさりくれるともらいにくいって感じなんだが……。

「でも戦場ヶ原」
「もう煩いわね、殺すわよ」
「お前今人殺せないって言ったばっかじゃねーか」

なんか格好良いじゃねーか。

「私は護身用の文房具をさっき病院からたくさんくすねてきたしね」

ジャギッ、と体の色んな場所から文房具が出てくる。
なんか暗鬼みたいだな。

259おまもりらんさー ◆WzpMn05TJA:2011/12/28(水) 22:19:40 ID:sj6vwzM2O
「私には人の口にホッチキスを閉じるくらいしか出来ないわ」
「…………いや、俺はそっちの方が出来ねーよ」
「案外してみるとすごいわよ」
「した経験あるのかよ!?」
「私はした相手が運命の相手で彼氏になったわ」
「…………」

彼氏ドンマイ。
俺そいつの事なら英雄と認めても良いな。

「ところでアイルランドの大英雄『クランの猛犬』さん」
「お前絶対俺(クー・フーリン)の事知ってただろ」
「まぁね。それより次はこっちから大事な話よ」
「あぁ、わかってるぜ戦場ヶ原」

義理はちゃんと果たすってのよ。

「私と阿良々木暦、神原駿河を守ってください」
「当たり前だ、人情は果たしてやる」

俺の方針は決まった。
これより戦場ヶ原ひたぎ、阿良々木暦、神原駿河を守る守護者だ。



【D-2 路上/未明】

【ランサー@Fate/stay night】
【装備:ゲイ・ボルク@Fate/stay night】
【所持品:支給品一式 ブーメラン@現実 ミニカー@リトルバスターズ 阿久根高貴の柔道着@めだかボックス】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:戦場ヶ原ひたぎ、阿良々木暦、神原駿河を守る。
2:戦場ヶ原と行動。
【備考】
※Fate全編の全サーヴァントとの戦い終了後からの参戦。
※足立を危険視。



【戦場ヶ原ひたぎ@物語シリーズ】
【装備:たくさんの文房具@現実】
【所持品:支給品一式 阿良々木暦のマウンテンバイク@物語シリーズ ランダム支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:阿良々木くんを探して脱出する。
2:ランサーと行動。
3:女の子(あゆみ)には注意する。
【備考】
※つばさキャット終了後からの参加です。
※篠崎あゆみの外見・声を記憶しました。



【ゲイ・ボルク@Fate/stay night】
ランサーの宝具。『刺し穿つ死棘の槍』。突けば必ず相手の心臓を貫く呪いの槍。

【阿良々木暦のマウンテン@物語シリーズ】
化物語のするがモンキーにて神原駿河に大破したマウンテンバイク。このロワにて壊される前の物が支給。

【文房具@現実】
ホッチキス、カッター、ボールペン、定規などたくさんの文房具。病院内にて現地調達。

260 ◆WzpMn05TJA:2011/12/28(水) 22:28:17 ID:sj6vwzM2O
投下終了

元ネタ、マンガ『おまもりひまり』より

文房具に戦場ヶ原の宝具って入れたかったり…

数無限の文房具(ホッチキス)
ごめん嘘


予約
セイバー、グリムジョー・ジャガージャック

前話に予言されている最悪の展開を繋ぎで考えてはいるのですがもしかしたら書けないかもしれません
これは予約破棄の可能性がある事を明記、または投下に時間がかかるかもしれない事、また登場人物の増加の可能性がある事をお伝えします

261 ◆WzpMn05TJA:2011/12/29(木) 00:13:52 ID:TD7DU9PoO
>>260
予約追加
セイバー、グリムジョー・ジャガージャックに日向秀樹、篠崎あゆみを追加します

262 ◆RmIe4rjRnw:2011/12/29(木) 01:08:58 ID:2c/Oseag0
投下乙です
戦場ヶ原はいい味出してますね、ランサーのツッコミが似合ってます
最悪の展開、期待しています

それでは自分も天城雪子、桜井智樹で投下します

263 ◆RmIe4rjRnw:2011/12/29(木) 01:09:29 ID:2c/Oseag0


俺は桜井智樹。ごく普通の中学生だと思う。
いつの間にかバトルロワイアルとやらに巻き込まれてしまっていた。
よく分からないが、シャルル・ジ・ブリタニアが言うには、これは「殺し合い」らしい。
(ふざけんな、人の命をゲームの駒のように扱いやがって!)
怒りが湧きあがってくる。
俺は決して殺し合いに乗る気はない。
名簿に名前のあった、イカロス、ニンフ、アストレアを探す。
そして必ず、元の世界に帰るんだ。


俺はさっきから、この寮にあるドアを片っ端から開けていた。
同じように巻き込まれた人が居るかもしれないからだ。
今まで人が居たことはなかったけれど。

(まあ、そう都合よくもいかないか)
そう思いながら、何度目か、ドアノブを回す。
しかし、今までとは違って、ドアは開かなかった。

「え?」

「誰かいるんですかー?」
鍵が掛かっているということは、誰かが居るということだ。
希望を持って、さらに話しかける。

「俺は桜井智樹といいます。あなたもこの殺し合いに巻き込まれた人ですか?」
相手が誰だかわからないので、つい丁寧な口調にしてしまう。
すると、答えが返ってきた。

「ええ、私は天城雪子。よろしくね」
うっ、と呻きそうになるのを堪えた。か、可愛い声だ…。
いやいや、そんな場合じゃない。

「天城さん、俺はこの殺し合いを打倒してやろうと考えています。協力してくれませんか?」
少し急いだかもしれないが、仕方ないだろう。
今この時も、殺し合っている人が居るかもしれない。
だったらそんなことは、すぐに止めさせなくちゃならない。

「…わかりました、今鍵を開けるので少し待ってください」
カチャカチャ、と鍵を開ける音が聞こえる。
(よし、これは幸先がいいぞ)
女性の味方が出来るというのは心強い。
この調子で仲間を増やしていけば、この殺し合いを打倒することも出来るに違いない。


そして、部屋のドアが開いた。
―と同時に。

「アギ!」

264 ◆RmIe4rjRnw:2011/12/29(木) 01:11:05 ID:2c/Oseag0

直後、俺の体は後方に吹っ飛ばされた。
壁に背中を強打して、そのまま廊下に倒れ込む。

「痛ってぇぇ!!?なんだよこれ?」
身体を襲った痛みから、つい叫んでしまった。

(な、何が起きたんだ?天城さんがやったのか?なんで?)
様々な考えが頭をよぎるが、結論は出ない。
百聞は一見にしかず。かろうじて動く首を上にあげると、目の前に天城さんらしき女性が立っていた。
美しいが、冷めた瞳で此方を見つめている。

「ごめんね。でも、私は人を殺さないといけないの」
寂しげに、天城さんが言葉を発した。

なんで、こんなことを―。
そう言おうとしたのもつかの間。

「アギダイン!」

再び爆発が起きた。
爆風で、俺の体が吹っ飛び、壁に背中を強打した。

嫌だ、まだ死にたくはない。
まだ何もしていないのに。死んでしまうなんて嫌だ。
(誰か、俺を守ってくれ―)



そして、俺の意識は途絶えた。

265 ◆RmIe4rjRnw:2011/12/29(木) 01:12:12 ID:2c/Oseag0
◆◇◆◇◆◇◆



「マハラギダイン!」
コノハナサクヤが、寮の中で大規模な爆発を起こす。
少年の生死は確認していないが、今の爆発で生きているとは思えない。

どさくさに紛れて盗っておいた少年のデイパックを取り出し、その中身を自分のデイパックに移す。
そしてひとまず、先程まで自分が居た部屋に入り、再び鍵を掛けた。


「ゴホッ、ゴホッ…」
爆発によって起きた風にむせながらも、私はいやに冷静だった。
(これで一人…)
支給品のPDAに書いてあった「首輪の解除条件」。そこには『自分以外の参加者の皆殺し』とあった。
これを満たせば、この首輪が外れて自由になれるという。
それを信じて、私は一人、何の罪もない少年を殺してしまった。
今更ながら、罪悪感が出てきた。


だけど、仕方がないのだ。
私は、早く千絵のいる元の世界に戻りたい。
千絵や、鳴上君、花村君たちと、また楽しい時を過ごしたい。
その為なら、他人を犠牲にしたって構わない。
身勝手だとは思うけど、
それは私にとって、とても大事なものだから。


それを守るためなら、私は人殺しにだってなる。



【E-6学生寮の一室/未明】

【天城雪子@ペルソナ4】
【装備:干将・莫耶@Fate/stay night】
【道具:支給品一式×2、ゼロの仮面@コードギアス 反逆のルルーシュ、
9のPDA@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-、ランダム支給品×2】
【状態:疲労(中)】
【思考・行動】
1:PDAの首輪解除条件に従って行動する=皆殺し。
2:休憩も兼ねて外の様子見。
【備考】
※足立戦終了後からの参戦です。
※名簿を見ていません。
※桜井智樹を殺したと思っています。
※桜井智樹のデイパックの中身を回収しました。
※ペルソナはコノハナサクヤ。スキルは威力の大きいものほど体力を消費する。

266 ◆RmIe4rjRnw:2011/12/29(木) 01:13:28 ID:2c/Oseag0
◆◇◆◇◆◇◆


「ううん……」
あれ、ここは…そうだ、今はバトルロワイアルの最中で…。
俺はいつの間にか寮みたいな所に居て…。
それで、確か、確か、確か…。

「そうだ!天城さんは!?」
ここに来て、初めて会話を交わした美人な女性。
あの人は、一体どうしたのだろうか。
いや、それよりも、何故自分は気絶していたのだろうか。

周りを見渡す。焼け焦げた壁が目に入る。
その瞬間、俺はなにもかも思い出した。


―――マハラギダイン!


先程、天城さんの『コノハナサクヤ』とやらが起こした爆発を。
その爆発によって、彼は全身に火傷を負い、壁に全身を強打し気絶していたのだ。

(さて…どうしよう)
どうやら天城さんはこのバトルロワイアルに積極的であるらしい。
『平和が一番』をモットーに掲げる彼としては、残念だった。
あのような美人な女性が殺し合いなんてもったいない…とまあ、そちらの意味でだが。

(ともかく、体を休めよう)
体中に火傷などを負っていることは間違いない。
それならば、一息つこうと考え、デイパックから水を出そうとしたが、妙に手ごたえが無い。
天城さんに中身を全部持って行かれたようだ。

(くそっ、どうする…?)
武器も道具も、イカロスもいない。その上すぐには動けない。
こんな状態で襲われたら、と思うと、さすがに怖くなった。

と同時に、彼の眼にあるモノが映る。
銀色の、つけもの石のような、あるいはメタルスライムのような物体。
それこそが、彼の最後の支給品で、『月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)』と呼ばれる魔術礼装だった。

彼は気付いていない。
コノハナサクヤの「マハラギダイン」を受けたにも関わらず、自身が軽傷で済んだ理由に。
それが実は、試験管が偶然割れて出てきたこの魔術礼装のお陰だった。

(誰か、俺を守ってくれ―)
この思いに反応した月霊髄液が、彼を守る盾となったのだった。

「……気持ち悪いな」
彼が思ったのは、ただそれだけだった。


【E-6学生寮廊下/未明】

【桜井智樹@そらのおとしもの】
【装備:月霊髄液@Fate/zero】
【所持品:なし】
【状態:疲労(中)、全身に軽い火傷や裂傷】
【思考・行動】
1:バトルロワイアルを打倒する。
2:休息を取りつつ、どう動くか考える。
3:天城雪子を危険視。
【備考】
※カオス戦(一回目)からの参戦です。
※智樹を主人とし、意に従うようになりました。


【月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)@Fate/zero】
桜井智樹に支給。ケイネス・アーチボルトの切り札である魔術礼装。
ケイネスの魔力によって意のままに操れる水銀で、攻撃・防御・索敵を可能とする。
本ロワ内では以下の制限を持つ。
・主人とした人物以外の意には従わない。
・主人が死んだ場合は、新たな主人を探そうとする。
・魔力が無くとも操れるが、その場合は使用者の体力を削る。
・防御等、自律的に行うことはない。「こうしろ」という意思の元でしか動かない。

【干将・莫耶@Fate/stay night】
桜井智樹に支給。
アーチャーの投影宝具である、陰陽二振りの短剣。互いに引き合う性質を持つ夫婦剣でもある。
二つ揃いで装備すると、対魔力・対物理が上昇する。

【ゼロの仮面@コードギアス 反逆のルルーシュ】
天城雪子に支給。
ルルーシュが、テロリスト「ゼロ」として行動するときに身に着ける仮面。

【9のPDA@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
天城雪子に支給。
「ゲーム」に使用されるトランプを模したPDAの一つ。
首輪の解除条件として「自分以外の全参加者の死亡。手段は問わない」とある。が、勿論このロワ内では適用されない。

267 ◆RmIe4rjRnw:2011/12/29(木) 01:18:10 ID:2c/Oseag0
投下終了です。
誤字脱字、原作との矛盾、
月霊髄液の制限について、指摘があればお願いします

あと、タイトル忘れ申し訳ありません
タイトルは「天城雪子は笑えない」
元ネタはライトノベル「ブギーポップは笑わない」です

268 ◆WzpMn05TJA:2011/12/29(木) 01:55:54 ID:TD7DU9PoO
投下乙です

智樹やっぱり悪運強いな
みんなにG智樹と呼ばれるのは伊達じゃないな


そして雪子がPDAに踊らされてる勘違いマーダーか
なかなか新しいコンセプトですね
勘違いに気付き対主催になる日は来るのかどうか期待です

269 ◆RmIe4rjRnw:2011/12/29(木) 02:57:33 ID:2c/Oseag0
読み返してみると説明不足がありました
申し訳ないです 
wiki収録後に直しておきます

そして、涼宮ハルヒ、黒崎一護、ロロ・ランペルージを予約します

270 ◆SENAs8NCE2:2011/12/29(木) 11:00:14 ID:ZL4tZjG20
申し訳ありませんが現在の予約を一度破棄して
三千院ナギ、アサシンで再予約します

271悪がもう一人の自分をつくる ◆WzpMn05TJA:2011/12/30(金) 16:37:27 ID:AJWXoGssO
暗い暗い部屋。
灯りという灯りはなく並べられたモニターの薄暗い灯りのみ。

「ゲーム開始2時間の経過ね」

全ての参加者を映し出す100個のモニター。
その100個のモニターの内消えているモニターは9つ。
消えたモニターの順番は古河渚、霧島佳乃、上条当麻、直江理樹、マリア、花村陽介、沢田綱吉、園崎魅音、ライダー。
このバトルロワイアルで散っていったゲームの駒。
この部屋で観察し、足立さんに情報を送っている。

それはともかく今、私はとても頭を悩まされている。
今は確かに順調に数は消えているが問題はマーダーである。
マーダーの数はむしろバランスが良い。

だが、質の問題だ。
せっかくシャルルが色々な世界から集めた駒の選りすぐりな中、人間じゃない超人枠も設けた。
サーヴァント、死神、破面、未確認生物、宇宙人。
魔術師やペルソナ使い、能力者などではなく、完全に人間ではない者達を。
だがその超人マーダーが不足している。
キャスターはゲームに乗っているが延々と更木剣八と戦っている。
バーサーカー、長門有希は取り逃がし。
まともな成果を上げたのはアーチャーのみ。

「そういえば真アサシンもライダーは殺したけど聖杯戦争と勘違いしているバカでしたわね。バトルロワイアルと何回も言ったのに。むしろ真アサシンがサーヴァントを殺し過ぎると進行に困るし……
役に経たない英雄達ですね。もう真アサシンは首輪爆発させたいぐらいですわ」

未確認生物のニンフとアストレアに至ってはただ遊んでいるだけ。

ウルキオラとイカロスは動きなし。

「いつもみたいに私が動くしかないのかしらね」

いつもは参加者に混ざってジョーカーを務めているけど、その役割は足立さんが務めている。

「本当は早朝か1回目放送ぐらいに使いたかったんだけど、まぁいっか。シャルルさんに止められてないし、好きに使えって言われたし質の高いマーダー作り♪」

いや、質が高いところが最強のマーダー作りね。

私は2つのモニターに目をやる。
そこには少女の騎士と片腕の戦士の姿が見えていた。


―――――


セイバーとグリムジョー。
そもそもこの2人には交渉の余地はない。


セイバー
秩序が善のイングランドの伝説的英雄。
――アルトリア・ペンドラゴン。

グリムジョー
『破壊』の死を司る破面であり元・第6十刃。
――グリムジョー・ジャガージャック。


セイバーは人間の正の英雄であるなら、グリムジョーは死の負の英雄。
それは言わば永遠に平行線の混ざり込む事自体有り得ない。
分かり合えるはずなどない。
いや、分かり合おうとも両者はしない事であろう。

272悪がもう一人の自分をつくる ◆WzpMn05TJA:2011/12/30(金) 16:38:25 ID:AJWXoGssO
「お前……、人間の女の分際でこの俺を殺せると思ってんのか?」

グリムジョーはセイバーがサーヴァントという存在など知るはずがない。
知らない人が見ればセイバーは身長154cm、体重42kgの小柄な女性でしかない。
グリムジョーは身長186cmと約30cmというものさし1本以上高く、体重は約2倍の80kg。
筋肉もグリムジョーは鍛えられたガチガチの胸板で対し、セイバーは見るからに一般人。

いくら左腕がなかろうと普通はグリムジョーに軍配が上がるであろう。

そう、普通なら。

「――風王結界」
「何!?なんだそれは?」

セイバーの宝具『風王結界(インビジブル・エア)』が惜しみなく使われる。
本来は自分の有名過ぎる武器の宝具、光の剣『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』の姿を隠す為に使う能力。

だがそれ以外にも使われる意味はある。
武器を不可視に能力である。
武器全体に風を纏い光の屈折率を上げ、元の武器の形状を見せなくするのだ


そんな光景を見てグリムジョーが顔を変える。
刀身が見えなくなる斬魄刀の能力か?
いや、彼女の持つ斬魄刀は階級の低い死神に渡される解放も何もない、名もなき斬魄刀『浅打』なのはグリムジョーは知っている。
だが彼女は死神ですらないのに斬魄刀を握っている。
これが制限や未知の力ってか。
虚閃はもう撃てなくなっちまっている。

だが見えないだけで能力が強くなる様なのは皆無だ。

「ははっ、そんなんで勝てるかよ!」

グリムジョーがセイバーに走り翔る。

――ザクッ。

グリムジョーの鼻近くに斬られた感触が走った。
斬られ口から勢い弱く血が放出され、下に垂れ落ち口元を赤く汚した。

「ぐっ……」
「油断しただろ男、普通剣や刀は見えて当たり前だ。だが刀身が見えないと自分で長さを考えて当たりにいかなくてはいけない。
見えない刀を元の長さより短過ぎず長過ぎずの距離を把握しながら戦うなんてのは誰にも出来ないさ」
「こ、このガキがぁ!」

273悪がもう一人の自分をつくる ◆WzpMn05TJA:2011/12/30(金) 16:39:20 ID:AJWXoGssO
グリムジョーの目に映るのは片腕を切り落とした憎き男、黒崎一護。
今のセイバーの戦う目があの男と同じ目に見える錯覚に陥った。

「刀が見えなくなったからか、目が変だな」

それにグリムジョーにはもう1つ油断していた事がある。
あのセイバーの武器『浅打』。

本来ならグリムジョーの高すぎる霊圧から触れる事すら出来ない棒切れみたいなあってもないみたいな刀であったから。

だが霊圧も制限されていたらしく、本来は卍解すら耐えられるグリムジョーの体は『浅打』如きに出血すら許したのだ。

「制限、制限ってうんざりなんだよっ!カスが消えやがれ」

八つ当たりの力がグリムジョーの動きを早めた。

霊圧がグリムジョーの右腕に溜まっていく。
セイバーはさっき少年を殺した光線を警戒する。

「さっきの虚閃(セロ)を警戒してんのか?この攻撃は威力は落ちるが速さは20倍だ」


   バラ
―――虚弾!!


「ぐぅ……」

警戒はしていたが直接くらったわけではない。20倍なんて予想出来ないし、しかも攻撃の瞬間に攻撃はセイバーの体に命中していた。

「まだ耐えられるのか?」
「私は王だ。こんな攻撃に耐えられないわけがないだろう」

グリムジョーの怒りが溜まっていく。
今の一言がグリムジョーの戦闘意欲を見せはじめる。

「さっきのガキみたいに普通は消し飛ぶんだがな。名を名乗れ女」
「セイバーのサーヴァント、アーサー・ペンドラゴン」

普通は名乗るはずのない真名。
だがセイバーが名乗った理由は1つ。

この男の力をセイバーが認めたからであった。

「俺は元6番十刃(エスパーダ)、グリムジョー・ジャガージャック

――そして

俺が王だ!」

ダンッ!
ダンッ!
ダンッ!
衝撃波の様な光弾が放たれる。

それは先程の攻撃の虚弾。一度に3連発のそれがセイバーを襲う。

274悪がもう一人の自分をつくる ◆WzpMn05TJA:2011/12/30(金) 16:40:21 ID:AJWXoGssO
「クソッ……」

既に一度見て、命中を許してしまった攻撃。
アーサー王に二度の同じ攻撃の命中は許されない。

「はぁ!」

風王結界を纏った浅打で虚弾を1度、2度と斬られる。

そして最後の虚弾も一閃。
セイバーの握る刀は見えない。

まるでセイバーの目の前で虚弾が消滅させられた様に見える。

――美しき正義の青い騎士・セイバー。

「ふはは……ふはははははは!おもしれぇ!おもしれぇぜセイバー!
黒崎一護にセイバー。殺したい奴が増えるから戦い(破壊)はやめられないぜ」

セイバーとグリムジョーの力は互角。
どちらが勝ってもおかしくない。
このロワイアルの名試合と挙げられても不思議ではない拮抗した戦いになるだろう。

だが主催側の進行役兼調整役の郷田真弓がそう問屋を降ろさなかった。

―――――

「いくら名試合だからって戦いが伸びて良い理由にはしないわ
それは両者共ゲーム終盤の参加者が居なくなったらやってなさい」

元々セイバーが対主催になるのは火を見るより明らかであった。
参加者の意志を曲げ、殺し合いを強制させる。
卑怯な方法。

「事故って事にしておこうかしらね」

今、全参加者にとってイレギュラーな最悪なシナリオがSTART(開始)する。

―――――

275悪がもう一人の自分をつくる ◆WzpMn05TJA:2011/12/30(金) 16:41:23 ID:AJWXoGssO
「オイ、セイバー」
「どうしたグリムジョー」
「なんだぁ、それは?」

異変に気付いたのはグリムジョーからであった。
最初にセイバーの足元に黒い何かが広がっていた。
それを彼は風王結界の様な特殊な能力だと思った。
だか黒い何かは浸食を徐々にセイバーの足元から膝辺りまで伸びていた。
そこでようやくセイバーと黒い何かは別々の存在である事を察知した。

「こ、これは……わからない。けど、逃げろグリムジョー!これは危険な物だ!」
「あぁ!?セイバー、貴様今更になって俺にびびったか?何かはわからんが試合続行だ!」
「貴様も危険な物だぞこれは!?」
「危険にびびって逃げる?バカか貴様!」

ライバルと認めたからこそ逃げてほしいセイバー。
ライバルと認めたからこそ戦い抜きたいグリムジョー。
話し合いは終わらない。

「私はこんな状況では動けない。万全を期して貴方と戦いたい」
「何!?そんな効果があったのか!?」

だがもう遅かった。
グリムジョーの指摘が遅く、逃げる時間をグリムジョーと言い合うのに使ってしまうという2つの不幸があった。

「今からの脱出はもう無理だ!でも、私の勘だが死にはしないだろう。でもそんな状況で戦いたいのかグリムジョー?」
「ちっ!?」

グリムジョーはセイバーに背中を向ける。
今戦って勝っても嬉しくもなく自慢にすらならない。

「絶対私は死なないからな!だからグリムジョー!貴様も生きて必ず決着するぞ!そして貴様の虚閃とかいう技で私を殺してみろ」
「虚閃だと?俺にはまだ『王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)』っていう切り札が残ってる。虚閃で死ぬ方が情けないぜ」

グリムジョーは教会から一歩踏み出す。
もう後ろは振り向かない。

「死ぬんじゃあねぇセイバー。殺して良いのは俺だけだ」

ライバルにのみ許される言葉を残しグリムジョーは跳んで消えていった。

「ごめんグリムジョー……。本当は死ぬかもしれない……」

全身が黒く覆われたセイバーに自分の意志はもうない。

276悪がもう一人の自分をつくる ◆WzpMn05TJA:2011/12/30(金) 16:42:42 ID:AJWXoGssO




アルトリアという少女が選定の剣を抜き、男と偽った王が生まれた。
国の為、身を粉にして誰もが理想とする王であり続けた。
だがあまりに私情を殺した王に騎士から『アーサー王は人の気持ちがわからない』と疑問を抱かれ、1人1人忠誠心のあった名のある騎士が王から離れ、孤立し、最後は部下の騎士達に裏切られ、護りたかった国に裏切られその生涯を終える。
――そんな自分は『選定の剣は自分を間違って選定したのではないか?』と疑問を持ち、王の選定のやり直しの為聖杯を求める事を誓い、死の寸前で聖杯を手にする条件に世界と契約しサーヴァントとなった。
切嗣から召喚され女だとびっくりさせられた事。
アーチャー(ギルガメッシュ)と聖杯を巡って死闘を繰り広げた事。
切嗣の命令で聖杯を破壊した事。
前マスター切嗣の息子の士郎に召喚されすぐにランサーとアーチャーと戦った事。
凛と協力しバーサーカーと戦うと決めた事。
アーチャー(ギルガメッシュ)と因縁の再戦。
――そしてだんだん正義の味方の衛宮士郎に惹かれていった事。
グリムジョーと敵同士交わした約束。
全ての過去が闇に消え、黒に消え、力に消え――



やがて『 』になった。



【C-2 教会周辺/黎明】

【グリムジョー・ジャガージャック@BLEACH】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:セイバーと決着をつける。
2:黒崎一護と決着をつける。
3:死なない様にはする。ザコ(一般人)には興味自体無くなった。
【備考】
※片手が無い時期からの参戦です。
※虚閃(セロ)は半日に一発と言う制限です。
※虚弾(バラ)は五発撃って半日回復制限。一般人を大怪我させるくらいの威力で無傷の一般人相手には、最低三発喰らわせないと死には至らないくらい威力制限されています。

277悪がもう一人の自分をつくる ◆WzpMn05TJA:2011/12/30(金) 16:43:42 ID:AJWXoGssO



―――――

「これは予想以上に素晴らしい出来ね」

郷田は100個のモニターの1個、セイバーのモニターをまるでドラマを見る感じで監視をしている。
郷田がセイバーに気付かれないまま画面越しに放射した『この世全ての悪(アンリマユ)』に全体を覆われたセイバー。

これの入手はとても難しかったらしい。
とある世界の聖杯『間桐桜』から入手したとてつもない『悪』。
これの入手など1つの世界の技術では不可能。
だから色々な世界の技術を総出でようやく入手。
それをこんな1人の参加者の為に使われるのだ。
ゲームが盛り上がるという理由だけで使用される。
どうにかしている。

「このバトルロワイアルに参加しているサーヴァントにマスターは居ないわ。それはセイバーにも例外ではない」

セイバーを抑えつける事はもはや誰にも不可能。

セイバーの全てが反転し、礼儀正しい性格も暴君となり、属性の秩序も善から悪に変わるであろう。
能力は制限されているがそれでもトップクラスの参加者、トップクラスのマーダーになるであろう。

「すごい……。あんな少量でセイバーをこんなにも変えてしまうなんて……」

画面に移ったセイバーの目は全てを見下す目、禍々しく形状の変化した鎧、青白くなった肌。
先程のセイバーと同一人物であるのが見た目でもわかるのにも関わらず、今のセイバーは本当に別人であった。

――バトルロワイアルの参加者の全ての役者は出揃った。



―――――



時は少し遡った話。
街の病院を訪れた男が居た。
死んだ世界戦線メンバーの二番の古株の男、日向秀樹。
一番最初にリーダーの仲村ゆりの仲間になった日向は今まで数々の無茶をやってきた。
死ぬわ、殴られるわ、死ぬわ、襲われるわ、死ぬわ、飛ばされるわ、死ぬわ、落ちるわ、死ぬわ、撃たれるわ、死ぬわ、死ぬわ、死ぬわ……。
とりあえず彼は何回も死にまくった。

「ってよくよく考えれば死にまくりだな俺!?」

バトルロワイアルなんて事に巻き込まれ、ようやく死の事を日向は考えていた。

278悪がもう一人の自分をつくる ◆WzpMn05TJA:2011/12/30(金) 16:44:40 ID:AJWXoGssO
「死んで蘇る奴ほどバトルロワイアルに不必要な参加者は要らないよな……。能力制限……とか言ってたけど俺らが何回も蘇るのが能力と見なされていたら……。こえー、命粗末に出来ないじゃないかよ!?」

普通はしないのが当たり前なのだがリーダーのゆりはそういうのに執着心がない為、事あるごとに殺されている。

「でも殺し合いとか言ってもこんなのじゃ死なないしな。俺はてっきり銃や剣で殺し合うもんだと思っていたんだが、まさか食料を取り合って餓死するのを待つなんて地味な殺し合いだな」

日向は1つアホな勘違いをしていた。
何故こんな思考に思い当たったか、理由は支給品にあった。
チーズ君というキャラクターのぬいぐるみ、新聞紙ブレード(ただ新聞紙を丸めただけ)、花びらという殺し合いとは無縁な小道具ばかり出たのが理由だった。
つまり、みんなはこんな小道具で食料を取り合って飢え死にしないかのゲームと勘違いしていた。
そして、ルールを守れない奴は首輪で爆発させられるというだけだった。

「眠くてなんとかさんの話も聞き流したし、人死ぬのもなんか最近ネタみたくなってたからそんな気してたし」

まず、いくら人間の死に慣れていてもいい加減な解釈をしたのは多分この男のみであろう。
リーダーのゆりや天使の奏、親友の音無、人を見下す直井、人の話をまともに聞いているのかわからない椎名ですら話をまともに受けていたというのにである。

「自給自足ゲームなんだな」

思考が意味不明である。
だが、死んだ世界戦線メンバーは基本はこんなバカな者ばかり集まる組織なので仕方ないと言えなくもない。

そんな日向はとりあえず自給自足でも誰か協力出来る仲間が居ないかと他の参加者を探していた。
ゆりか音無か椎名、天使だったら良いなと願望を持ちながら。
直井は勘弁だった。

だが……。
「誰も居ねー!」
広すぎる島探索は疲れただけであった。

地図を広げ、デバイスを見る。
現在【B-3】の位置に自分は居たらしい。

「なら主要な場所なら誰か居るだろ」

一番近いのは病院であった。
病院なら自給自足で怪我した人も勝手に集まるだろうと病院に向けて歩く事にした。

―――――

279悪がもう一人の自分をつくる ◆WzpMn05TJA:2011/12/30(金) 16:45:32 ID:AJWXoGssO
「結構時間かかったな……」

病院が目の前にそびえたっていた。
キレイそうで施設も整っていそうな病院だった。

「病院なんて生前ぶりに見たなー」

そもそも死んでいるし、行くとしたら保健室でどうにかなる死後の世界。
日向は少しばかり生前を思い出した。

「ん?あの女の子参加者じゃね?」

日向は参加者=被害者だと思っていた為、人に話しかける事に躊躇いがなかった。
それに誰とも壁を作らない性格というのもあった。

日向が話しかけたのは長い髪を2つに結った女子高生で、先程マリアに罠を引っ掛けマリアを撃退した精神崩壊者の優勝狙いマーダー篠崎あゆみであった。

「おーい、そこの彼女!」

あゆみが日向の声に驚いたもののすぐに状況を理解する。

「あの人、私がゲームに乗っていると思っていないんだ、バカみたい……」

小さな声で呟き、彼女の口は右上につり上がる。
殺せる、あの女の人よりも簡単に。

マリアから奪い取ったキャリコ短機関銃を隠しながら日向に近付く。

「あんたも参加者だろ、自給自足ゲームに巻き込ま……」

ダ、ダ、ダ、ダ。

サブマシンガンの銃声が響いた。

ようやく日向は自給自足ゲームではなく本当に殺し合いのゲームだと理解する。

日向は当たる前にたくさんの花びらをヒラヒラと投げ、視界を狭めて逃げ出す。

「なんで俺ぬいぐるみと新聞紙と花びらしか渡されなかったのにあいつキャリコなんか持ってんだよ!?」

逃げる、どこへ?
遠くならどこでも良い。

「あははははははははは。逃げてもダメですよ。時間の問題だから」

走りながら笑っている。
『気持ち悪い』、日向は始めて人間にそんな感情を抱いた。

「ウォーッ!足鍛えられていて良かったー!」

あゆみは足の速さは一般な女子高生のもの。
日向は生前から野球をしており、死後も天使から逃げたりしていたし、ミッションでも逃げていたので足はとにかく速い。

だがサブマシンガンを持っている相手に逃げられるのだろうか。

280悪がもう一人の自分をつくる ◆WzpMn05TJA:2011/12/30(金) 16:47:06 ID:AJWXoGssO
「なんで諦めないんだよぉ!」

目は血走り、口からは涎を垂らし、傷だらけ。
足は日向が速いといっても、あゆみに会う前から無駄に歩いており、体は疲労している。

マリアを仕留める為に疲労はしたが狂乱している為、疲労という物を彼女は失っていた。
体は壊れそうなのに自覚がないのだ。

徐々に差は追いついている。

「こっちに逃げんじゃなかったー!」

日向は病院からの逃走劇を思い出した。
街に逃げれば障害物はたくさんあった。
今逃げているのは木1本ない草原。

今日の日向は全てがついていない。

「確か近くには教会があったはずだ!」

日向は地図を思い出す。
思い出したのは偶然であった。

「逃げられるか……」

教会に逃げられればそれで良い。
だがまた後ろの彼女の様な狂人が居たら……。

「ゲームオーバー……」

やり直せる死後の世界なら諦めて殺されたであろう。
だが、やり直せるかわからないこんな世界では死ねない。

日向は手に力が籠もる。

そして、吉が出るか凶が出るか教会が見えてきた。
ものすごい距離を走りきった日向とあゆみ。

「うわっ!?明らかにヤバい奴居るじゃねーか!?」

日向が教会入り口で見た者。
黒い鎧姿の青白い女騎士、セイバー。

「あんな奴に構ったら殺されるじゃねーか!」

嫌な予感しかしなかった。
まだ追いかけられるしかないのか……。

「あははははははははは」、彼女の笑い声が不気味で頭に響く。
日向は悔しそうに歯を食いしばる。

「逃げ切ってみせる」

と、決意した時、日向の耳からは彼女が自分から遠ざかる足音がした。

「ん?」

後ろを振り向く。
なんと彼女は日向から離れて、教会入り口の騎士目掛けて方向転換していた。

「ば、バカかあの女!?殺されるだけだぞ!?ユイ以上のアホなのかあいつは!?」

追いかけられ、殺されそうになっても相手を気遣う。
日向はお人好しであるのだ。

――結果なんて見る必要はない。

複雑な気持ちのまま日向は女の子を見捨てて彼女を見捨てた。

「死んだ世界戦線の仲間だったら……助けていただろうな……」

ゆりっぺ、音無、ユイ、直井、椎名、野田、高松、ひさ子、藤巻、岩沢、大山、松下、TK、遊佐、入江、関根、竹山――そして天使。

彼ら、彼女らと戦い、遊んだ日常は楽しかったから……。

281悪がもう一人の自分をつくる ◆WzpMn05TJA:2011/12/30(金) 16:48:12 ID:AJWXoGssO



【日向秀樹@Angel Beats!】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 チーズ君のぬいぐるみ@コードギアス 反逆のルルーシュ 新聞紙ブレード@リトルバスターズ!】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:逃げる。
2:仲間に会えたら良いな。
3:バトルロワイアルって本当だったのかよ!?
【備考】
※奏と和解後からの参戦。
※セイバーを危険視。



―――――



あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは。
あはははははははははははははははははははははは。

わざわざ逃げる人を追ってたんじゃ疲れるだけだし時間もかかるだけだし。

あそこにただぼーっとしている女を殺した方が手っ取り早いじゃない。

「あははははははははは、死んじゃえ、死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ」

私がこんなに堂々としているのに逃げる気配が全くない。

「あはははははははははははははははははははははは、次で2人目っ……!?」

なんで……?
……おかしいよ、どうして?

なんで私の目の前に私が履いていたスカートが見えるの?
あ、そっか私が履いていたスカートじゃなくて同じスカートなんだ。
確か直美ちゃんもこの島に居たんだっけ?
なんだ、直美ちゃん私より先にリタイアしていたんだ。

「死んだ感想はどう?」

あれ?死んだのって直美ちゃん……なんだよね?


【篠崎あゆみ@コープスパーティー  死亡】


―――――

「頭がいかれていただけか」

騎士はキャリコ短機関銃の引き金を引く瞬間に近寄り体を左肩から斜め下に振りかぶって真っ二つにした。

殺した女はまだ自分の死がわかっていないらしい。

だが別にわからせる必要はないと、女には興味なさそうに、デイパックすら拾おうともせずに騎士は離れた。

282悪がもう一人の自分をつくる ◆WzpMn05TJA:2011/12/30(金) 16:48:46 ID:AJWXoGssO
「殺し合いか……。それは楽しそうだ」

セイバーであった者。
アーサー・ペンドラゴンが真名の黒い悪のセイバークラスのサーヴァントは楽しそうに呟いた。

「エクスカリバーがあれば良かったが、まぁ強い武器の殺戮などつまらない。この安い刀だからこそ面白い」

セイバーは人格、思考も別人のそれだけであった。
セイバーオルタと呼ばれるこのサーヴァントはどんな影響を及ぼすだろう。

まだ誰にもわからない。



――BAD START



【セイバーオルタ(セイバー)@Fate/stay night】
【装備:浅打@BLEACH】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:バトルロワイアルを楽しむ。
【備考】
※Fate編のギルガメッシュ戦終了後から参戦していました。
※記憶はまだ覚えているかもしれません。


※【C-2】にマリアとあゆみのデイパック(キャリコ短機関銃(45/100)@現実支給品一式、キャリコ短機関銃予備弾薬(200/200)、ランダム支給品×3)が落ちています


【チーズ君のぬいぐるみ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
ピザ屋のマスコットキャラクターでC.C.のお気に入り。


【新聞紙ブレード@リトルバスターズ!】
ただ丸めた新聞紙。名前負けしてるぜ。


【花びら@ハヤテのごとく!】
タイガ坊ちゃんがヒムロの登場の際に演出として撒いてもらう。


【セイバーオルタについて】
セイバーが『この世全ての悪(アンリマユ)』に囚れた姿でマスターは本来の衛宮士郎から聖杯である間桐桜に移った姿。
性格が暴君に、秩序が悪になり、本来のセイバーより強いですが風王結界が使えなくなるなどデメリットもあります。
だがこのバトルロワイアルではマスターなしで他サーヴァント同様能力が制限されています。
その能力制限は次以降の書き手さんにお任せします。

283 ◆WzpMn05TJA:2011/12/30(金) 17:02:01 ID:AJWXoGssO
投下終了

元ネタはアニメ「遊戯王」OP「渇いた叫び」の歌詞『闇がもう一人の自分をつくる』より


しばらくこんな長い話は書きたくないです

この話書く為、1から桜(HF)ルートやったけど長かった…
何回鬱要素あんだよ
桜は超好きだけどアーチャー、ランサー、キャスターが活躍する凛ルートのが1番好き

予約
刻命裕也、遠野美凪

284 ◆WzpMn05TJA:2011/12/30(金) 17:15:13 ID:AJWXoGssO
あと予約してないのに郷田真弓を動かしてしまいもうしわけないです

あとアニロワのセイバー無双や21世紀深夜アニロワみたいなやたらキャラが死にまくる展開だけは控えてください(書いた自分が言えませんが)
とりあえず1回放送の死者数は14〜18人ぐらいで調整をするつもりではいるんですが、こういうのはロワイアルだから難しいんですよね…


お詫び(?)の小ネタ

郷田「そういえば真アサシンもライダーは殺したけど聖杯戦争と勘違いしているバカでしたわね。バトルロワイアルと何回も言ったのに。むしろ真アサシンがサーヴァントを殺し過ぎると進行に困るし……
役に経たない英雄達ですね。もう真アサシンは首輪爆発させたいぐらいですわ」

ハサン「……解せぬ」

優勝候補を破った者の扱い

285クールになれ、刻命裕也! ◆WzpMn05TJA:2011/12/31(土) 03:17:57 ID:Pp.PdP6kO
白壇高校2年4組所属・刻命裕也。
普段は穏やかな物腰故人気者。
だがその彼の本音を知る者は少ない。

優等生の姉と兄にコンプレックスを抱き、物心がついた時から人間らしき感情が欠如し、問題ばかり起こし、親に見捨てられた。
それから良い子を演じる事になった。
『生命の終わる瞬間』に強い興味を抱くという歪んだ思考が彼にはあった。
だから、バトルロワイアルのこの出来事に彼はゲームに乗らないわけがなかった。

「はははっ、ようやく姉さんからも兄さんからも両親すら俺は解放されたんだ」

彼にとっては笑い話。
先に死んだ3人の事など彼にはどうでも良かった。

100人の参加者の中で誰よりもこのバトルロワイアルの参加に喜んだだろう。

殺しも許された世界。
それを考えるだけで今までの人生全ての事がこの瞬間の為に生き抜いてきたとさえ錯覚していた。

「知り合いはいないな……。殺りやすいこの上ないな」

『黒崎』という知り合いと同じ名字はあったが刻命の知る『黒崎』は『黒崎健介』であり、名簿の『黒崎一護』なる人物は知らなかった。

「じゃあ俺にはどんな武器が支給されているんだ」

ワクワクする気持ちが抑えられない。
緊張の一瞬。
優勝すれば20億という今後の生活には充分過ぎる賞金すら手に入る。
全てが彼にとって人生を変える出来事がそこにはあった。

「一気に出していったらつまらない。1つ1つ中身を見ずにデイパックから取り出していこう」

まだバトルロワイアルは始まったばかりだ。
ゆっくり楽しむのもまた一興だった。

―――――

「ん?なんだこのメガネ」

最初に見つけたのは普通のメガネだった。
なんの変哲もないただのメガネ。

俺は外れの支給品かと思ったがどうやら説明書がついていたからとりあえず読んでみた。

「『これは見た感じただのメガネですが実はすごい能力があります』……ふむふむ。暗視ゴーグルか!?」

なんだ暗視ゴーグルだとしたらすっげぇ当たりじゃないか。
俺は続きの文を続けた。

「『メガネかけると霧が晴れて見えます!』……いらねー」

まずこの島に霧なんかない。
霧がある舞台なら使えた支給品だが残念だがこの殺し合いには不向きだ……。

「一発目から銃なんか出たら出たでつまらないけどな」

自分で口にしてそう言い聞かせた。

「次は……ボードゲームか?」

どうやらすごろくらしい。
しかも手書き。

「『これはSOS団特製すごろくです。あの涼宮ハルヒと小泉一樹が頑張って1マス1マス手書きした世界に1つだけのすごろくです』…………その努力を俺に認めろと?」

286クールになれ、刻命裕也! ◆WzpMn05TJA:2011/12/31(土) 03:18:52 ID:Pp.PdP6kO
そういえば小泉一樹なんて名前、俺の名前のすぐ下にあった気がする。
そういえば上が漢字で下がカタカナの名前に涼宮ハルヒも居た気がするな。

ゲーム参加者はすごろくを手書きする幼稚な奴しか居ないのか?

「無駄に『キョン』って奴だけの単体の嫌がらせマスが多いな。悪意しか感じない」

さて、メガネとすごろくなんかで2つの支給品を見てしまった。
武器なきゃどうすんだ俺?
それこそすごろくの『キョン』並みに悪意のある事じゃないか。

「クソッ!クールにCOOLにKOOLになれ刻命裕也!…………クールの英語ってあれ?CとKどっちだっけ?」

腹立ってど忘れしてしまった。
もう刻命のKでいいや。

「ふぅー……。次の1つで俺のゲームの進行度が変わる……」

武器が出れば晴れて殺人。
武器が出なければ生きる事すら困難だ。

「いざ!」

デイパックに手を突っ込む。
1つの希望が1つの形になる事を願って。

「これは……!?『探して下さい。わん、わん』……ふざけんな!」

犬を探して下さいという紙だった。
説明曰わく『秋月先輩』が約半年行方不明になった犬の捜索願いらしい。『秋月先輩』の趣味スイーツ作り、将来の夢はお嫁さん、挨拶はごきげんようらしい。

「もう誰か武器探して下さい」

最後に言えた皮肉だった。
KOOLになれ、刻命裕也!

「チクショー……、絶対生き残ってやる!主催者も参加者も全員俺が片付けてやる!……それより武器だな」

引っ張るが武器がなきゃやってられない。

「まずは行動第一!安全第一?そんなのは不要!」

若干頭がおかしくなりはじめたが、キャラを直すにはちょうど良い。
デイパックを担ぎ立ち上がる。
時間は有限。
力はそれなりにあるが所詮は高校生だからな。

「あのー……」
「うわっ!?ビックリした!?」

いつの間にか女子高生が後ろに居た。

「……痛い1人突っ込み芸人?」
「違います……、あの……どこから見てました?」

もしこいつが「主催者も参加者も全員俺が片付けてやる!」っていうのを聞かれていたら……?
両手の手を見る。
首締めて――殺る。

「『まずは行動第一!安全第一?そんなのは不要!』っていうところからです」
「……」

それは痛い。

この女子高生は口調がゆったりした人であった。
薄い茶髪の長い髪でリボンが目立つ。
こう、なんていうか周りには居ない感じの優しそうな美人の人だった。

「見苦しい事をお見せしてすいません。僕は刻命裕也です。高校2年生です。よろしくお願いします。ゲームに乗る気は0で主催者に対抗したいと考えているところです」
「私は遠野美凪です。刻命さんとは同い年です。私もあんな可愛い子を殺した主催者に対抗するおつもりです」

ゆったりとした口調は変わらなかった。

287クールになれ、刻命裕也! ◆WzpMn05TJA:2011/12/31(土) 03:19:36 ID:Pp.PdP6kO
「お米券進呈〜」
「……え?」
「したかったんですが生憎没収されてしまいました……。仲間のお近づきにと思ったんですが……」

残念です、と呟く遠野。
こいつには全くといって良いほど敵意がない。
殺すのは容易いな。

「遠野さん、頑張って僕や他の参加者の皆さんと脱出しましょう」
「そうですね刻命さん」

容易いな。
1人や2人俺に泳がせるのなんか楽勝だぜ。

心の中の俺はあまりの楽しさに大笑いしていた。



―――――



私は隣で仮面を被る刻命さんを知っていた。
支給品確認前からずっと見てました。

1人の時は一人称は『俺』、私と出会った瞬間から『僕』に変わっていました。

いつから見ていたか聞いた時に彼は自分の両手を見ていた時は、私を締めようと考えていた事でしょう。

人を殺す事に躊躇いもないでしょう。

とても怖いです。

怖いですがそれ以上に可哀想な人です。

刻命さん。
あなたの歪んだ心を治してあげたい。

そう思わずにはいれませんでした。

「暗い内に襲われたら怖いですね。僕結構怖がりなんですよ」
「そうなんですか?でも私は仲間の刻命さんといるだけで安心してしまいます」

本性を知ってしまうと演技ってバレバレですね。

国崎さん、神尾さん。
あなた達を探す前にこの刻命さんの心を入れ替えないといけないみたいです。



【C-7 野原/未明】

【刻命裕也@コープスパーティー】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 テレビの世界のメガネ@ペルソナ4 SOS団特製すごろく@涼宮ハルヒの憂鬱 犬の捜索願いの紙@めだかボックス】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:優勝する。
2:人を殺すのに躊躇いはないが武器がない。
3:遠野を利用する。
4:クールになれ、刻命裕也!
【備考】
※本編開始前からの参戦。



【遠野美凪@AIR】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:刻命さんの歪んだ思考を治したい。
2:国崎さんと神尾さん、他仲間と脱出。
【備考】
※美凪ルート確定寸前からの参戦。



【テレビの世界のメガネ@ペルソナ4】
テレビの世界の霧を晴れた様に見せるメガネでパーティーメンバー全員にクマが渡していく。特に名称がない為こんな名称になった。


【SOS団特製すごろく@涼宮ハルヒの憂鬱】
涼宮ハルヒの動揺に収録された短編猫はどこに行った?にてハルヒと小泉が作った1マス1マス手書きしたすごろく。特にキョンにだけ格別に悪意がある。


【犬の捜索願いの紙@めだかボックス】
目安箱に投書された依頼。依頼人は秋月先輩。

288 ◆WzpMn05TJA:2011/12/31(土) 03:24:44 ID:Pp.PdP6kO
投下終了

あれ?もっとお互いが腹黒くなる展開にしようとしたらギャグになってる様な…


元ネタはひぐらしのなく頃にの前原圭一の名言『クールになれ、前原圭一!』より


予約
巽完二、イカロス、北条かりん

289名無しさん:2011/12/31(土) 07:58:24 ID:HQebrdqM0
どのタイミングで放送ですか?

290 ◆WzpMn05TJA:2011/12/31(土) 08:17:31 ID:Pp.PdP6kO
そうですね

今がやっと黎明の開始ですからね
投下数70〜80前後になると思われますかね

大体1回放送までで同じキャラの登場数2〜3回ですのでこれくらいでしょうか

今が1回目放送の約半分くらいの区切り良いところですね

291名無しさん:2011/12/31(土) 08:42:22 ID:HQebrdqM0
どうもありがとうございます。
スゴイ夢のタッグばかりなので、今後の展開を楽しみにしています!

292fallen down ◆WzpMn05TJA:2012/01/01(日) 12:22:09 ID:38G5FFTcO
殺し合いのゲームに巻き込まれた不幸な参加者はここにも居た。

大きな体、図太い声、悪い目付き。
端から見たら彼は恐ろしい不良にしか見えないだろう。

「バトルロワイアルだとぉ!?ふざけんじゃねぇ、人の命を奪い取るだ!?バカか!」

巽完二は地元の稲羽市、八十神高校1年の見た目通り不良だと思われている。
何人もの不良と揉めて喧嘩して地元のテレビで報道され騒ぎにすらなった事がある。

だが、それは本来は母親が煩くて眠れないという事情がありやり方が悪いが成敗したに過ぎなかった。
悪く見えるだけで子供にも優しい、本当はそんな少年である。
強き力を正しき事に使う。

バトルロワイアルに怒りを感じるのも当たり前である。

「本当は俺はこんなふざけた事している場合じゃねぇんだ!」

街で騒がれ、起きている行方不明殺人事件。
この事件で2人が亡くなった。
完二は自分は関係ない事だと思っていたが、その自分が誘拐された。
周りでは行方不明扱い。
思い出したくもないがテレビの世界に入れられて死にそうになったのだ。
いや、死にそうになった事以外でも思い出したくない事はあったが彼の威厳の為にも伏せておこう。

だがそんな彼を助けたのは学校の先輩達であった。
そして先輩達は完二という自分を見つけ、理解してもらえた。
そこが今、自分の居場所だった。

「もしかしたらここもテレビの世界なんじゃねーの?」

霧が晴れているがテレビの世界なら現実世界ぐらいの島くらい作られるだろう。
誰かの奥底で島を思い描いた者ならば。

「んなわけねぇよ。どうせテレビの世界と関係ある奴なんか俺しか居ねーよ」

名簿には100個の名前がずらずら並んでいる。
足立透、天城雪子、白鐘直斗、鳴上悠、花村陽介。

「聞いた事ある名前がズラッと並んでいる気が……って先輩達まで来てるんすか!?先輩達が何か悪い事したってのかよ!?」

自分だけが巻き込まれたのならまだ納得出来る。
自分は人に恨まれすぎた。

だけど自分を助けた鳴上先輩、花村先輩、天城先輩。
自分も先輩達のパーティーに混ざって助けた直斗。
よく知らんけどドジな警察官。

「なら次は俺が助ける番だっ!待っててくれ先輩方!」

力は強かったが心が臆病だった少年は成長をしていた。


―――――

293fallen down ◆WzpMn05TJA:2012/01/01(日) 12:23:11 ID:38G5FFTcO


「賞金が20億円……。確かに、確かにあいつらはそう言った……。優勝すればその金額を渡すって。こんな首輪までさせて武器まで私に支給している。つまり嘘偽りなく賞金の大金の話も間違いなく本当だ!……フフフ、あっはははははは」

時を同じくすぐ近くではバトルロワイアルの賞金に目が眩む少女が居た。
――北条かりん。
彼女は賞金が出ないゲームならむしろゲームに乗る事はなかったであろう。
賞金が出ると知らなくてもそれは変わらない。対主催として生き残る事を望み、手を紅で染める考えもなかったであろう。自分に大切な人の前にそんな手では前には出れないのだから。

彼女は中学生の一般人の少女。
彼女は一般人だからこそ救われない人生を送っている。
両親は少女には居ない。
家族は自分の大切な妹である『北条かれん』1人だけ。
そのかれんの為にかりんは生きている様なものであった。

だが、そのかれんが生死に関わる重い病気にかかり、今もその短い人生を終わらせる為、その病気がかれんを蝕んでいる。
あと数年の命。
時間も足りない。
手術費は4〜5億円。
両親が生きていたとしても払えるわけがない大金。
働けない年齢。
お見舞いしかしてあげられない無力な自分。
日に日に弱るかれん。

耐えられなかった。

諦め半ばの自分にようやくチャンスが現れた。
バトルロワイアルというゲームの参加資格。
始めは自分や妹のかりんぐらいの子が殺され、抵抗した青年も死亡した事に恐怖と怒りを覚えた。
でもそれ以上に妹が助けられるチャンスに喜んだ。

欲に負ける自分。
醜い。
でもたった1人の妹の為に体を張って何が悪い。

幸せな人生を歩んだ者ならば、その幸せな人生で満足してくれ。
だから不幸な人生の自分にどうか幸せをください。

「よし、殺す」

彼女が見つけたのは体の大きな学生。
不良そうな風貌に、着方がめちゃくちゃな制服。
怒りが走る。

グレられるのもそれでも自分を育ててくれる優しい親が居るからだ。
好きな様に生きられてるだけ満足な人生だろう。

――死んでくれ!

黒光りして、ずっしりと重い回転式拳銃S&W M37 エアーウェイトの引き金を躊躇いなく引いた。


―――――

294fallen down ◆WzpMn05TJA:2012/01/01(日) 12:24:29 ID:38G5FFTcO


「ん?」

銃声が響いた音に気付き、完二は狙われた事に気付く。
すぐさま横に避けると弾が腕を掠めた。

「あぶねぇ。左腕一本持ってかれるところだったぜ」
「チッ!」

舌打ちを聞いた。
明らかな故意的射撃。

「死んで、お願いだから幸せを私と妹に譲って!」

弾が放たれるが次はただ空を切っただけで命中にはほど遠い。

「クソッ!人間相手に使いたくなんかなかったがよっ!」





ペルソナっ!





巨大な黒いペルソナ『タケミカヅチ』が完二の目の前に現れた。
完二の命令を今か今かと待っている様だ。

「マハジオ!」

ジオという雷属性の攻撃である。
これが完二のペルソナ『タケミカヅチ』が使える一番弱い攻撃だった。

「ぐぅ……」

攻撃は予定通り少女には命中しなかった。
ただの威嚇が目的の攻撃。

「予想外……。ただの幸せ者だと思ったのにまさかのスタンド使いなんて。撤退……」

漫画に登場するスタンド使いなんかが自分に叶うわけもなく、素手ですら勝てない。
逃げる以外彼女に残された道はない。

「ったく……。ガキだから良かったけど参加者には大人だって混ざっていたはずだ」

周りには色々な年齢の人が居た。
ただ学生が多かったというだけ。
彼女なんか多分参加者でも10番行かないぐらい幼い子であろう。
それを考えると頭が痛くなる。

「頭狂ってるだろうがよシャルルっ!」

完二に鋭い怒りが走った。



【D-5 森/黎明】

【巽完二@ペルソナ4】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:主催者をぶっ飛ばす。
2:先輩達や直斗と合流。
【備考】
※菜々子救出直後からの参戦。
※ペルソナはタケミカヅチで、スキルは威力の大きいものほど体力を消費します。



「何よ今の!?ふざけんじゃないわよ!スタンド使い!?ずるいじゃないのよ!こんな小型拳銃よりよっぽど強いじゃない」

またここでも自分は一般人というハンデが付いてしまった。
金がない。スタンドが使えない。

自分はただ主催者に希望だけ持たせられてくたばるだけなのか。
こんな可能性の低いゲームならまだ呼ばれない方が良かった。

295fallen down ◆WzpMn05TJA:2012/01/01(日) 12:25:15 ID:38G5FFTcO
「い、いややっぱりダメ……。このゲームに参加しないのはかれんを見捨てるという事……」

かれんを失う以上に怖い事なんかない!

「そう誓ったじゃない……」

怖かった。
スタンドの巨大さ、骸骨みたいな奴、感電死するかもしれない電撃。

助けて、助けて、助けてっ!
誰か1人くらい私とかれんを護って!

「私がアナタを護ります」
「え……?」



『インプリンティング』開始。



「何よ、これ……?」

剥がそうとしても勝手に右手に巻かれる鎖。
ただ呆然と見る事しか出来なかった。

「初めまして、私は戦略エンジェロイドタイプα(アルファ)『イカロス』です。アナタを優勝させてあげます『私の鳥籠(マイ・マスター)』」
「私が、マスター……?私を優勝させてくれるの?かれんのところへ返してくれるの……?」
「武器は没収、この羽根で飛ぶ事が出来ない制限付きですがそれでも戦う事は出来ます。なんなりとご命令くださいマスター」

頭を下げるイカロス。
飛べないのに羽ばたきそうなその羽根に見とれた……。
まるで彼女は天使の様だ。

「あ……、あっはははははははははは」

彼女は感謝した。
全てが上手くいく夢の様な展開に。

『ありがとうございます神様。必ず私は生き残ってみせます!』

神からの、不幸な私への贈り物。

『今まで神様を信頼していなくてすいませんでした』

私からの、チャンスをくれた神への謝罪。

「命中よイカロス!私とアナタ以外の参加者全員を皆殺しにしましょう」
「かしこまりしたマスター」

私の幸せの銀の鎖。



【北条かりん@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:S&W M37 エアーウェイト@現実】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:優勝してかれんの元に賞金を持って帰る。
2:イカロスと共に参加者を皆殺し。
【備考】
※本編開始前からの参戦。



【イカロス@そらのおとしもの】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:マスターの命令に従う。
2:命令通り参加者の皆殺し。
【備考】
※本編開始前からの参戦。
※桜井智樹ではなく北条かりんがマスターです。
※武器は没収、羽根で飛ぶ事は制限です。
※馬鹿力は制限されていません。

296 ◆WzpMn05TJA:2012/01/01(日) 12:34:35 ID:38G5FFTcO
今年初投下
あけましておめでとうございます

最初はこんな具合からスタートです
書いていて自分でもびっくりしたイカロスの登場でした
かりんには生き残って優勝させたいと自分で思ったぐらい多分今までで一番感情移入した話でした

元ネタはそらのおとしもの劇中曲『fallen down』より

予約
鳴上悠、御坂美琴、ウルキオラ・シファー

297 ◆WzpMn05TJA:2012/01/01(日) 12:45:02 ID:38G5FFTcO
状態表ミス


【北条かりん@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:S&W M37 エアーウェイト3/5@現実】
【所持品:支給品一式 S&W M37 エアーウェイトの弾丸45/45@現実 ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:優勝してかれんの元に賞金を持って帰る。
2:イカロスと共に参加者を皆殺し。
【備考】
※本編開始前からの参戦。



【イカロス@そらのおとしもの】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:マスターの命令に従う。
2:命令通り参加者の皆殺し。
【備考】
※本編開始前からの参戦。
※桜井智樹ではなく北条かりんがマスターです。
※武器は没収、羽根で飛ぶ事は制限です。
※馬鹿力は制限されていません。



【S&W M37 エアーウェイト@現実】
回転式の小型拳銃。装弾数5発。

298 ◆WzpMn05TJA:2012/01/01(日) 17:10:17 ID:38G5FFTcO
魅ぃちゃん、ダメツナ、あゆみがログインされました

陽介「新年早々死者スレかよ!?」
理樹「縁起が悪いね」
上条さん「そのふざけた縁起をぶち殺す!」
イスカンダル「おっ!?そえぶだな。新しいスタイルじゃな」
沙都子「それにしてもわたくしの登場は回想シーンの見知らぬ幼い子供扱いじゃありませんの」
由香「同じ中学生なのに出番のあるそらおと勢やひぐらし勢やかりんさんズルい」

渚「なんかみんな新規の人放置してないですか?」
上の渚以外「みんな俺(僕、余、わたくし、私)と関係ないもん」
マリア「沙都子さんは魅音さん、由香さんはあの狂人の知り合いじゃないですか」
佳乃(マリアさん、篠崎さんに殺されたの恨んでる……)

シャルル「まぁ、良い。新年あけましておめでとう諸君」
みんな(お前が締めんのかよー!?)



魅音「どうするー?混ざれない」
あゆみ「あはははははは(死んだのに気付いていない)」
ツナ「あれ?新入者3人だよね?なのに待機1人多くない?」
チャド「…………」

299エンドブレイカー! ◆WzpMn05TJA:2012/01/02(月) 22:27:26 ID:YtB0/ZBkO
「ねぇ……、ちょっと……」
「どうした御坂?」
「なんであんたはそんなに落ち着けるのよ……。あんたさぁ、私もあんたも殺されかかったのよ?それなのにこんなに堂々としてる?怪しさ挽回の人じゃない」
「……そっとしておこう」
「あぁ!ムカつく!」

  ■  ■  ■

先程、殺し合いに乗った謎の女と交戦になった2人、御坂美琴と鳴上悠は民家に入り込みお互い話をした。
テーブルに向かい合い沸かしたコーヒーを飲みながら話をしていた。

自分は超能力者である事、ペルソナ使いである事。
上条当麻と白井黒子、花村陽介と天城雪子と巽完二と白鐘直斗は信頼出来る事。
一方通行と足立透は信頼出来ない事。

お互いとお互い。
2人は自分達がわかる有益な情報の1つ1つを出し合った。
こんなふざけたバトルロワイアルを生き抜き、ゲームをぶっ壊す為に。

「んで鳴上は街で起きていた殺人事件がテレビで行われたっていうの?」
「あぁ」
「いや、自信満々に言われても信用しないわよそんな話」
「……ですよねー」

因みに俺の方が年上で高校生なのに何故中学生からタメ口なんだろうか?

「ペルソナ使いなんてそんな能力すら見なければ信用しなかったし」
「それはお互いじゃないかビリビリ」
「ぶっ殺すわよあんた……」

いや、冗談とはわかるんだけどそんなビリビリとした電撃俺に向けんな……。

ビリビリは禁句。
悠は軽口を反省した。

「しかし鳴上は番長みたいね。あのさっき見たペルソナとかいうのも番長みたいだったし」
「え?」

初めて言われた……。
悠は番長という響きがからかわれているみたいで、悪そうな名前に少しがっかりした。

「では真面目な話をしよう御坂」
「よくあんたこの流れで『真面目な話をしよう』なんて言えるわね……」
「あの女と交戦になった原因はなんだ?」
「うわっ、スルー!?」
「真面目に話をしろって言ってんだろ!」
「キれるタイミングがそこっ!?」

お互いが積極的な性格なので冗談の言える仲にまで発展していた。

「急な闇討ち。私がのんびりした性格だったら多分やられてたわ」

何故か美琴の頭には親友の初春飾利が思い浮かんでいた。
誰ものんびりしているなんて言ってないのに。

「そうか……。それは危なかったな。俺が止めなかったら戦闘が続いていたわけだし。確かにお前はのんびりしている様な奴には見えないしな」

何故か悠の頭には仲間のクマが思い浮かんでいた。
誰ものんびりしているなんて言ってないのに。

「とりあえず注意して信頼出来る様な奴を仲間にしていこう」

花村陽介、里中千枝、天城雪子、巽完二、久慈川りせ、クマ、白鐘直斗。
悠は今までの冒険も信頼出来る仲間が居たからこそ足立を追い詰められたんだとわかった。
自分だけなら全員命を失っていてもおかしくはなかっただろう。

と。
――ガチャ。
誰かが民家に入る音がした。

300エンドブレイカー! ◆WzpMn05TJA:2012/01/02(月) 22:28:59 ID:YtB0/ZBkO
「ちょっ!?誰か来たわよ鳴上!?」
「そっとしておこう」
「バカ!隠れるわよ!」
「うわわっ!?」

美琴に引っ張られながら悠は引きずられていった。

  ■  ■  ■

「ここも誰も居ないか……」

白くて黒い戦士が民家に入り込んだ。

「既に30件ぐらい入ったんだがな」

ゲームの参加者の破面の十刃No.4ウルキオラ・シファーであった。
ウルキオラはとある目的の為参加者を探していた。
それは誰でも良かった。
腰にぶら下げた剣の鞘がとにかく怪しく見える。

「だが来たのは無駄ではないらしい」

コーヒーの入ったマグカップが2つ向かい合う様に置かれていた。

「それにイスには体温が残っている」

先に美琴が座っていたイス、悠が座っていたイス、その隣の誰も座らなかったイスの順で触っていく。

「これは寸前に行き違いになったか、それとも――」

「俺達と話をしないか?」

誰かが隠れたのかとウルキオラが呟こうとした時、鳴上悠が自ら姿を現した。
そして後ろには怒った茶髪の少女、御坂美琴の姿も見えていた。

そして2人の反応は冒頭に遡るのであった。

  ■  ■  ■

「明らかにあいつ怪しいじゃない!人間ですらないわよ!」
「でもあいつだって参加者だ。だよな?」
「確認を求められても困る」

ウルキオラは予想していなかった振りを冷たくあしらった。

「普通なら俺の近くに寄ると人間の魂魄が保たないのだが……。これが能力制限か」

もっともOP時で、ウルキオラの近くに居た者がピンピンしていたから理解は出来ていた。

美琴と悠に出会いその答えが確定された。

「男、お前に問う。何故堂々と姿を現した?言っておくが俺は人間でもないし、元の世界ではたくさん人間も殺している化け物だぜ」
「え?化け物なの?」
「…………」
「…………」

美琴もウルキオラも口をポカンとしていた。

「でも俺に似た声だったから興味が出ただけだ」
「バカかお前?」

と言いながらウルキオラは悠に腰の剣を鞘ごと投げ渡した。

「なんだこれは?」
「俺を殺せ」

ウルキオラは無抵抗のまま両手を挙げた。
嘘、偽りなく死ぬ気だと美琴と悠は目を見て理解出来た。

301エンドブレイカー! ◆WzpMn05TJA:2012/01/02(月) 22:35:13 ID:YtB0/ZBkO
「バカかお前?」
「お前曰わく『俺に似た声』の奴と同じセリフを真似するな。あと早く俺を殺せ」
「…………。自分で殺すのはイヤだ」



「ペルソナっ!」



「ほぅ。そのスタンドの持った刀で俺を殺せ」

悠のペルソナであるイザナギが刀を奮ってウルキオラの首を狙う。

「ちょっと鳴上!?」

美琴の制止も虚しくイザナギは刀を振り下ろした後であった。

  ■  ■  ■

俺は黒崎一護に敗れた。
完全虚化して暴走した黒崎一護の攻撃をまともにくらい、超速再生すら無効になるまでの巨大な力に圧され敗れた。

俺は戦いに満足した。
今更このバトルロワイアルで優勝して願いを叶える気にすらならない。

――俺はこの男の謎の能力のスタンドに斬られてお終いさ。






  ■  ■  ■

「何故殺さん、スタンド使い」
「え?」

ウルキオラの突然の言葉に美琴が驚き、悠は無言で立っていた。

「……いいや、殺したさ」

ペルソナであるイザナギの姿がゆっくりと空気と同化し、見えなくなった。

「殺した。お前は俺が殺した参加者と同じ場所に居た新手だ」
「……なんだよ、それ」

ウルキオラは悠の都合良い解釈に笑った。

「俺は鳴上悠、こっちは御坂美琴、お前は誰だ!?俺達と協力しゲームをぶっ壊してくれないか」

「ウルキオラ・シファー。お前の好きにしてくれ」

黒崎一護。
井上織姫。
そして鳴上悠。

どうして人間はこんなに面白くてわからない奴らなんだ。





こいつらの辿り着く先が見たいと本気で思ってしまったではないか。

302エンドブレイカー! ◆WzpMn05TJA:2012/01/02(月) 22:37:47 ID:YtB0/ZBkO
【E-5 民家内/黎明】

【御坂美琴@とある魔術の禁書目録】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:身体的疲労(小)】
【思考・行動】
1:殺し合いの打倒、ゲームをぶっ壊す
2:鳴上とウルキオラと行動
3:上条当麻、白井黒子を探す、一方通行を危険視
【備考】
※原作3巻終了後より参戦です
※制限により御坂妹達と同じ程度の威力しか出せません
※来ヶ谷唯湖の容姿のみを把握しました



【鳴上悠@ペルソナ4】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:ペルソナ召喚による疲労(小)】
【思考・行動】
1:殺し合いを止めて、ゲームをぶっ壊す
2:御坂とウルキオラと行動
3:仲間との合流、足立はどうにかする
【備考】
※ゲーム版、足立戦後より参戦です
※ペルソナはイザナギ(初期)と言った低レベルの物しか出せません
※ペルソナの攻撃の威力は低下しています
※来ヶ谷唯湖の容姿のみを把握しました



【ウルキオラ・シファー@BLEACH】
【装備:朝風家の剣@ハヤテのごとく!】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:鳴上悠の行き先を見る
2:御坂美琴もついでに見る
3:2人に協力してゲームをぶっ壊す
【備考】
※死後からの参戦
※能力制限は次以降の書き手さんにお任せします



【朝風家の剣@ハヤテのごとく!】
朝風理沙の家に伝わる剣。神社なのに刀じゃなく剣が伝わっているのがポイント。珍しいな。

303 ◆WzpMn05TJA:2012/01/02(月) 22:41:04 ID:YtB0/ZBkO
投下終了

元ネタは『トミーウォーカー』3作品目のPBWより

まぁぼちぼちな更新

予約
瀬川虎鉄、水瀬名雪

なんか想像しにくいコンビだな

304 ◆RmIe4rjRnw:2012/01/03(火) 02:37:50 ID:4cttkrzY0
あけましておめでとうございます
今年もこの企画についていきたいと思います
どうぞよろしくお願いします

投下します

305僕は/俺は友達が少ない ◆RmIe4rjRnw:2012/01/03(火) 02:50:14 ID:4cttkrzY0
森の中で、僕は/俺は、覚醒した。

周りをぐるりと見渡すと、僕の左に/俺の右に、少年が居た。

その少年に、声を掛けられた/声を掛けた。

どうやら彼も/こいつも、このバトルロワイアルの参加者の様だ。

バトルロワイアル。まさか僕が/俺が、殺し合いに巻き込まれるとは。

だけど、僕は/俺は、殺し合いなんてするつもりはない。

そう、僕には/俺には、しなければいけないことがある。

兄さんを/みんなを、守らなければいけない。

そのためには―



◆◇◆◇◆◇◆



息が苦しい。脇腹が痛い。心臓が早鐘を打つ。
立ち止まり、息も絶え絶えに後ろを振り向いた。
今の所、誰かが後を追ってくる様子はない。が、用心はしておくべきだろう。


ここがどこかはわからないけれど、周りは野原で、見通しもいい。
それは人を見つけやすいということであると同時に、人から見つかりやすいということだ。
そんなことは百も承知なので、近くの大木の陰に身を隠すことにした。
そして、息を整えてから、冷静に考える。
襲撃者からは逃れたものの、安全な状況であるとは言い難い。
が、この島には100人もの人々がいる。当然、危険な思想の持ち主もいるだろう。
その中で、女子が一人で動くというのは、心細いのにも程がある。
―ではどうすべきか―


考えた結果、一つの結論に行き着く。いや、そもそも初めから変わっていない。
『生きて、みんなと元の世界へ帰る』
あたしの命は、上条くんによって守られたものだ。
今のあたしは、彼の命、そして志を背負っていることになる。
これからも、この先も。
だから、あたしは生きて、この殺し合いを打倒しなくちゃならない。


そのためにまず、支給品を確認しなくちゃいけない。
有言実行、即断即決、其疾風如。
あれ?最後は違うっけ。
そして、あたしはデイパックを開けた。



◆◇◆◇◆◇◆

306僕は/俺は友達が少ない ◆RmIe4rjRnw:2012/01/03(火) 02:51:11 ID:4cttkrzY0



出会った少年が、日本人/聞いたこともない国の人、だと言うので驚いた。

話を聞くと、彼の/こいつの、元いた世界は、僕の/俺の、知る世界とは違うようだ。

だが、彼が/こいつが、嘘をついているようにも見えない。

だとしても、彼が死神である/こいつが一度死んだ、というのは簡単に理解できるものではないのだけど。

とにかく、僕たちは/俺たちは、他の参加者とコンタクトを取るために歩いていた。

僕は/俺は、この殺し合いの中で、殺人は仕方ない/殺人はしたくない、と考えている。

兄さんにとって邪魔な人物は殺害するべき/たとえ敵であっても説得を試みるべき、だろう。

だけど、『乗った』人物が強者だった場合、僕は/俺は、どうしたらいいのか。

もちろん、答えは決まっている。

隣で共に歩く少年を、おとりにしてでも逃げる/身を挺してでも逃がす。

それが、僕の/俺の、生き方だと思うから。



◆◇◆◇◆◇◆



結果的には、支給品はあまり良い物ではなかった。
いや、『あたしにとっては』良い物でなかった。

まず、最初に出てきたのは、あたしの身長よりもだいぶ長い日本刀。
説明書によると『七天七刀』という、聖人である神裂火織という人が使用する刀らしい。
業物なのだろうけど、あたしにはとても使いこなせそうにないので、丁寧にしまっておく。
…どうでもいいけど、「聖人」って偉そうね。
それにリアルじゃないわ。未来人とか超能力者とかなら、まだ分かるけどね。
「神裂火織」は名簿に載っていないから、この場で指摘することもできないけど。
…まあいいわ。

次に出てきたのは、妙な形のナイフ。
説明書によると『破戒すべき全ての符』で、宝具というものらしい。
宝具についての説明はないのでよく分からないが、名前からして貴重で希少なのだろう。
刀よりは軽いから、あたしでも使えるだろう。これもひとまずしまっておく。
ここに書いてある「キャスター」という人物は名簿にも載っていた。
でも「破戒すべき全ての符」と書いて「ルールブレイカー」と読むのはかなり不自然よね。

そして、最後に出てきたのは、ボロの板きれだった。
名前もそのまま「ボロの板きれ」である。説明書には「説明は特になし」と書いてある。

「………なんでよくわからないものばっかりなのよー!!!」
つい叫んでしまった。
くっ、と言いつつ爪を噛む。先程と同じ轍を踏むのでは仕方ない。
危険な人物が来ないうちに、逃げなければいけない。
焦ってデイパックを持ち上げて、そして―――。



後ろに二人の少年が立っていた。



◆◇◆◇◆◇◆

307僕は/俺は友達が少ない ◆RmIe4rjRnw:2012/01/03(火) 02:55:30 ID:4cttkrzY0



僕たちは/俺たちは、叫んでいた少女とコンタクトを取った。

少女は涼宮ハルヒといって、殺し合いに乗った人物に襲われて、逃げてきたそうだ。

僕たちが/俺たちが、殺し合いに乗っていないことを伝えると、彼女は喜んだ。

おもむろに彼女は、支給品なのだろう、妙な形をしたナイフ/やけに長い刀、を渡してきた。

そして、「あたしと一緒に、この殺し合いを潰しましょう!」と言ってきた。

やけに強気なので、気に入らなかった/頼もしく感じた。

しかし兄さんを助けるためにも/それに殺し合いを止めるためにも、人手は必要だと考えて、承諾した。

その後は、みんなで自己紹介をすることにした。

彼女は学校で、SOS団というクラブのようなものを作り、活動しているらしい。

その団員たちも、この殺し合いに巻き込まれているということを、彼女は急に落ち込んだようだ。

感情の起伏が激しいのだろうか、その次の瞬間には立ち直っていたが。

自己紹介で、僕が/俺が、一度死んだ人間である/死神である、ということを言うと、彼女は驚いたようだ。

まあ当たり前だろう。そんなことを言われて、信じるわけもない。

と思っていたら、彼女は目を輝かせて、「あなたたち、SOS団に入りなさい!」と言ってきた。

―――遠慮しておこう。





【G-3 野原/黎明】

【黒崎一護@BLEACH】
【装備:七天七刀@とある魔術の禁書目録】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:健康、憂鬱】
【思考・行動】
1:チャドの遺志を継いで、殺し合いを止める。
2:ロロ、ハルヒと行動。二人の知り合いを探す。
【備考】
※破面編、藍染との最終決戦前からの参戦です。
※涼宮ハルヒ、ロロ・ランペルージの関係者の名前を記憶しました。

【ロロ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ」
【装備:破戒すべき全ての符@Fate/stay night】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:兄さんを探す。
2:とりあえず涼宮さんについて行く。
【備考】
※死後からの参戦です。
※涼宮ハルヒ、黒崎一護の関係者の名前を記憶しました。

【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ボロの板きれ@コープスパーティー】
【状態:疲労(小)、強い決意】
【思考・行動】
1:SOS団の皆を守り、バトルロワイアルを打倒する。
2:黒崎くんと、ロロと行動する。
3:上条くん、黒崎くん、ロロの知り合いも探す。
【備考】
※『涼宮ハルヒの暴走』終了後からの参加です。
※『願望を実現する能力』は完全に封印されています。
※上条当麻、黒崎一護、ロロ・ランペルージの関係者の名前を記憶しました。


【七天七刀@とある魔術の禁書目録】
涼宮ハルヒに支給。
聖人・神裂火織の使用する、2m近くある日本刀。

【破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)@Fate/stay night】
涼宮ハルヒに支給。
第五次聖杯戦争に参加した、キャスターの宝具である。
攻撃力は普通のナイフと変わりないが、「あらゆる魔術を初期化する」という特性を持つ。

【ボロの板きれ@コープスパーティー】
涼宮ハルヒに支給。
ゲーム内で手に入るアイテムの一つ。特に説明は必要でない。

308 ◆RmIe4rjRnw:2012/01/03(火) 02:56:43 ID:4cttkrzY0
投下終了です
誤字・脱字あれば指摘お願いします

タイトル元ネタはライトノベル「僕は友達が少ない」です

309 ◆WzpMn05TJA:2012/01/03(火) 07:43:58 ID:iZ5VTBMoO
投下乙です

すぐに返事書けなくて申し訳ないです

一護とロロの心理描写を重ねて見せる書き方すごく格好良かったです
ロロがマーダーになるのではないかとハルヒの安否を心配していました


あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします

310這い寄る混沌 ◆WzpMn05TJA:2012/01/03(火) 20:59:21 ID:iZ5VTBMoO
私、『水瀬名雪』は復讐をしたい。
このゲームに私を巻き込んだ主催者。
このゲームに私の恋人の『相沢祐一』を連れ込んだ事。
――そして、私を殺した相手にも。

私は知った。
殺される前に殺さなくてはいけない。
先程1度油断して殺されてしまった。
もう生き残りと祐一の守護だけを、私は守り通したい。

―――――
――――
―――
――


  ◆  ◆  ◆

「祐一……怖いよ……」

彼女は怯えていた。

殺し合いに?
人が死んだ事に?
暗闇に?
武器に?
非現実が始まったから?
命を失う可能性があるから?
敵と味方がわからないから?
参加者を信頼しても良いかわからないから?
自分はただの女の子だから?
この場が危険だから?
頭の整理が落ち着いてないから?
『自分』の『死』が怖いから?
『相沢祐一』の『死』が怖いから?

わからない。
全部当たりだし、全部外れ。

「ぅぅぅ……人なんか殺せるわけない……。お母さんのところに帰りたいよ……」

日常に帰りたい。
そこには香織、北川君、あゆちゃん、お母さん、祐一達との楽しかったあの日常に帰りたい……。

「お母さんじゃなくてすまないが少し良いか少女?」
「ぇ……?」

顔を上げると背の高い執事服を着た人物が立っていた。
中々の美形で女からはモテそうな容姿である。

「落ち着きたまえ、私は殺しをする気はない。だから安心して構わない」
「……はい」
「ほらハンカチで涙を拭きたまえ」
「……ありがとうございます」

男の支給品であった白いハンカチを名雪に手渡すと、すぐに彼女は涙を拭くとそれで落ち着いたのか泣かなくなった。

「ようやく落ち着いたか?」
「はい」
「まず君の名前はなんて言うんだい?」
「私は……、水瀬名雪です」

男が名雪の顔をじっくりと見て名前と顔を一致させる。
よし、と次は男が名乗りを挙げた。

「私の名前は岸沼良樹だ。見ての通り執事だ」
「本当に執事なんているんだぁ」

名雪の頭には広いお屋敷にお嬢様の隣で座っているイメージが浮かんでいた。

「じゃあ岸沼君が仕えているお嬢様って上品で頭が良いお金持ちのお嬢様?」
「ん?いやお嬢様というか双子の妹なんだが……、残念ながら上品でもなければ頭もすこぶる悪い……」

疲れた顔をして岸沼は答えた。
その表情から岸沼の苦労がわかる様であった。

「じゃあ知り合いの話をしようか水瀬」
「うん。えっと……祐一と北川君が私の知り合いだから信頼出来るよ」
「つまりこの2人は信頼出来る、と?」
「うん。ばっちりだよ〜」

311這い寄る混沌 ◆WzpMn05TJA:2012/01/03(火) 20:59:57 ID:iZ5VTBMoO
気の抜けた返事が岸沼の声に響く。
まるで自分の主に似た様なところがあると思った。

「ゲーム開始から既に3時間ぐらい経ってしまったわけだが誰か見つけたりはしたか?」
「ううん。まだ岸沼君だけだよ」
「そうか」

岸沼が少しがっかりした様な顔をして下を向く。

「まぁ頑張っていこうよ岸沼君」
「……そうだな」

と、彼女の右手が無くなっていた。

「……え?」

本来あるはずの5本指やそれが繋がっている掌。
全てが無くなっており、それがあった部分はただ血が流れ出ているだけであった。

「イヤ、イヤ、イャ、ィヤイヤィャ、イャイヤイヤィャィ」

死にたくない。
彼女の必死の目の前の男、岸沼良樹に訴えている死への許しの乞いだった。

「すまんな水瀬。だが私は愛する者を生かす為ゲームを生き残らなくてはいけないんだ」

パン、パンと無機質な銃声が辺り一帯に響き渡った。

「死ニたァぐなぃ」
「まだ生きているのか……。次で楽にしてやる」

4発目。
倒れた名雪の頭に銃を突きつけ引き金を引く。

イヤな感触が手に広がった。

  ◆  ◆  ◆

「はぁ、はぁ、はぁ……」

人間に手をかけた。
人間の超えてはいけない一線を私は超えてしまった。

――名前まで偽装してまで私は罪を犯したのだ。

水瀬には適当に名簿で見つけた『岸沼良樹』と名乗った。
殺すつもりの人間なのだから本名を名乗ったって構わないのだが、誰かが隠れて見ているなんて状況になっていた事や殺し損ねたなんて状況になっていた時の保険だ。

もっとも……水瀬は脳を直接貫通したし、目も上を向き、白目を見せていた。
無くなった右腕ではなく、無事だった左腕の脈を取ったが止まっており、冷たくなっていた。
素人の私でさえ間違いなく死んだと断言出来る。

「それでも私はハヤテを護りたい」

男だって構わない。
私は『綾崎ハヤテ』が好きだ。
彼を生き残らせてやりたい……。

参加者にはハヤテの主である『三千院ナギ』、そのメイド(だっけ?)の『マリア』。
お嬢の親友で私の学校の生徒会長『桂ヒナギク』。
奴らと敵対しようと私は止まる事はもう許されなくなった。

「待っていろハヤテ!」

今すぐ私が全力を尽くしてお前を見つけてゲームが終わるまで護ってやるからなっ!

312這い寄る混沌 ◆WzpMn05TJA:2012/01/03(火) 21:01:30 ID:iZ5VTBMoO
【A-5 砂浜/黎明】

【瀬川虎鉄@ハヤテのごとく!】
【装備:宗像のS&Wマグナム44@めだかボックス】
【所持品:支給品一式 S&Wマグナム44の予備弾30/30 ランダム支給品×1】
【状態:身体的疲労(小)】
【思考・行動】
1:ハヤテを優勝させる
2:偽名を名乗りながら行動
【備考】
※アテネ編終了後からの参戦。
※偽名に関しては『岸沼良樹』と名乗り続けるか別の名前で名乗るかは次以降の書き手さんにお任せします。





  ◆  ◆  ◆

『岸沼良樹』いや『瀬川虎鉄』は最後の最後で詰めを誤ってしまっていた。
もし、彼が彼女のデイパックを回収していたとしたらこんな混乱は巻き起こらなかったであろう。

『水瀬名雪』であった者の死体が無残に砂浜に転がっていた。
だが、それを待っていたかの様に彼女のデイパックは光り出し、やがて『水瀬名雪』の死体を包み込み、最終的にその死体は息を吹き返した。

それどころが無くなった右手さえ治っていた。

支給品であった物の1つ『月神の突羽根』。
死んでしまった者を完全回復して蘇らせるアイテムであった。


「殺す、殺す、殺す!」

息を吹き返した死体は憎しみの感情を背負ったかの様に彼女を動かしていた。

「そうだ。これは生死をかけた戦いなんだ……。参加者の言う事なんか聞いたらいけないんだ!」

全てに憎しみと怒りが比例して湧き出る。
彼女はそれに快感、共感すら抱いた。

「祐一と私以外生きている必要はない!殺してやる!参加者も主催者も!」

そして彼女が一番憎しみを持ったのは言うまでもなく彼であった。

「岸沼良樹だけは私が直接に残酷な方法でぶっ殺してやる!」

瀬川虎鉄から渡された時は優しく見えた白いハンカチであったのに、今見える白いハンカチは憎しみしか湧き上がらないドーピングの様になっていた。

313這い寄る混沌 ◆WzpMn05TJA:2012/01/03(火) 21:02:06 ID:iZ5VTBMoO



――優しかった少女は憎しみの塊となって蘇った。

彼女は瀬川虎鉄に本当は殺されていて、別人となった誰かが蘇ったのかもしれないと思う程、彼女は別人となり狂ってしまっていた。

「待っていてね祐一……。私が助けてあげるから。
そして次会った時があなたの最後ですよ岸沼君!」



偽名と死者の蘇り。
この2つの異常事態がどの様に影響してしまうのか。
バトルロワイアルはどんどんと混沌に巻き込まれていくのであった。



【水瀬名雪@Kanon】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:健康、憎しみ】
【思考・行動】
1:祐一と自身の生存
2:参加者を殺す。特に『岸沼良樹』だけは自分が殺す。
【備考】
※名雪ルート後からの参戦。
※瀬川虎鉄を岸沼良樹と誤認しています。



【白いハンカチ@現実】
普通のハンカチ。


【宗像のS&Wマグナム44@めだかボックス】
宗像形の二丁拳銃の片方。ちなみにもう片方はデザートイーグル。装弾数6。


【月神の突羽根@ペルソナ4】
主人公(鳴上悠)が死んだ際に使用されるアイテム(ビギナーモードのみ)。死んだパーティーを蘇らせて体力を全回復する。

314 ◆WzpMn05TJA:2012/01/03(火) 21:08:01 ID:iZ5VTBMoO
投下終了

今回は伏線にこだわってみました

元ネタはH.P.ラブクラフトの創造のした神の一柱の「ナイアルラトホテップ」の二つ名『這い寄る混沌』より


予約
宗像形、枢木スザク

315 ◆RmIe4rjRnw:2012/01/04(水) 07:02:58 ID:.n1FTeI60
投下乙です
死者の復活ですかー
岸沼はいろいろと苦労しますな

手塚義光、高山浩太、羽川翼、忍野忍で予約します

316名無しさん:2012/01/04(水) 11:12:45 ID:13.3UOdsO
気になったんだが、悠の使える「レベルが低いペルソナ」っていうのは、
初期レベルが低いって意味?それとも各アルカナの中でレベルが低いって意味?
どっちの意味かで、使えるペルソナの幅が大きく変わると思うんだが。

317 ◆WzpMn05TJA:2012/01/04(水) 12:10:05 ID:mlB.GMf2O
自分としましては、各属性で1番弱いアルカナのペルソナが使える事だと認識していましたのでその様に追記しておきます

因みに最低のレベルが59(アヌビス)である審判属性のみ使えない事とし、強いスキルほど体力を減らす事とします

318名無しさん:2012/01/04(水) 17:05:48 ID:13.3UOdsO
返信サンクス。閣下やトランペッターのイメージが強いから忘れがちだけど、
最低ランクのアヌビスでもそんなに高いんだな。まあ終盤にコミュ解禁するアルカナだから
当然っちゃ当然なんだけどな。

まあ最低ランクだけでも、そのペルソナをつかいこんでれば、それなりのスキル覚えるし、
全属性に対応できるけど、ダイン系まで使えないってバランスとれてるしいいな。

319白騎士物語 ◆WzpMn05TJA:2012/01/04(水) 18:55:51 ID:mlB.GMf2O
参加者の中でも主催者であるシャルル・ジ・ブリタニアの知り合いはそう多くない。

日本人でありながら名誉ブリタニア人になり、ブリタニア軍の兵士になった。
そして、『行政特区日本』設立を目指したユーフェミア・リ・ブリタニアの騎士になった。
だが、ユーフェミアはゼロのギアスの呪いにかかり日本人の虐殺を命じられ、『行政特区日本』の設立に失敗しゼロに射殺された。
ゼロに復讐を誓った彼はブラックリベリオンにてゼロを捕獲。
そしてこのゲームの主催者シャルル・ジ・ブリタニアから『ナイトオブセブン』の称号を手にした。

「まさか僕がこんなバトルロワイアルなんてのに巻き込まれるなんて」

枢木スザク。
彼は先程シャルル・ジ・ブリタニアに反抗して見せたルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの親友であり、仲間であり、敵であった。

そしてルルーシュが言っていた通りに彼もまたシャルル・ジ・ブリタニアの最後を知っている。

「まさかルルーシュまでが生きているなんて……」

      ルルーシュ
自分で殺した親友の最後もまた知る者である。
自分が右腕となり『ナイトオブゼロ』の称号を渡した男。
そして、日本人とブリタニア人なら彼が死んだ事はほぼ全員知っているだろう。

だがあの場に居た者はみんなルルーシュの事を知っている様には見えなかった。

「本当なら今すぐに体力のないルルーシュに着いてゲーム打倒をしたい……。でもこれはなんだっ!?」

名簿のとある名前に目が行く。
『ユーフェミア・リ・ブリタニア』。
自分が騎士であり、そして――。

「僕の初恋だった人……」

そもそもルルーシュと戦う事を決意した僕はルルーシュに着くべきだ。
いや、ユフィの剣になると誓ったんだ。その為にルルーシュとも敵対をした。ならユフィに着くべきだ。

「僕はどうすれば良いんだ……」

どちらも死んでしまった僕の大事な人。

スザクの中ではどちらを優先に護るべきか、拮抗していた。
既に悩んだ時間は4時間を越そうとしていた。

「僕はっ――」
「人を見つけた、だから殺す」
「――なっ!?」

悩み、苦しんだスザクは簡単に敵からの攻撃を察知出来なかった為避けるのが遅くなってしまう。
そして、振られていたハルバードが肩にかする。

「ぐぅ……」
「君は相当鍛えられているね。普通なら殺されていてもおかしくないんだけど」

相手。
スザクの目に映るのは、エサの命を取ろうとしている鷹の目をした剥き出しの敵意を醸し出す男だった。

「君は名乗らずに闇討ちをするのかい?騎士として反する行いだ」
「そうか――





僕は騎士ではない、狂人だ!」

320白騎士物語 ◆WzpMn05TJA:2012/01/04(水) 18:56:29 ID:mlB.GMf2O
間合いを一気に踏み込んだ相手の斬撃。
スザクはあえて前へ出て行きそのハルバードを手で止めた。

「確かに君は狂人だね」
「こんな攻撃を受け止める君の方が狂人だよ」

お互いが後ろに飛び退き、長い間合いが出来る。

武器を持った相手に、未だスザクは丸腰であった。

「君は狂人と言ったが僕は騎士だから名乗らせてもらう
ナイトオブゼロの枢木スザクだ」
「じゃあ僕も騎士に習おう。僕の名前は宗像形。――だから殺す!」

ハルバードはスザクの目の前に落ちた。
宗像の威嚇行動であった。

一般人が武器を持ってこんな速さなのかっ!?

スザクはこのゲームの主催者、シャルルがどんなに鍛えられた人物をチョイスして参加させたのかこの男を見て、恐怖すら覚える。

「圧倒的に君の不利だ」

宗像は力でスザクにハルバードを向ける。
ハルバードの刃はスザクの頭を真っ二つにしようと振り下ろされる。

「でも僕は死ねない」

スザクの目が赤く光り出す。
ルルーシュのギアス『生きろ』という呪いを受け取っていた。
つまり彼の体を保護するリミッターが剥がれた。

スザクの手には支給品の武器であるスタンガンを持っていた。

ハルバードを器用に跳びながら避けて、後ろに周り首筋にスタンガンの電撃を浴びせた。

「しばらく眠っていてくれ……」
「…………――それは叶わないよ!」
「っ!?」

スタンガンを浴びせられていてもフラフラとなっている体を立ち上がらせる宗像であった。

「だから殺す!」

弱い力ながらもハルバードが横に払われる。

「ぐっ!?」

足に肉が削られる嫌な痛みが走りだす。
どうやら少し肉を削られてしまったらしい。

「なんだこれは……!?」

スザクの「生きろ」というギアス(呪い)が逃げろと体に命令しているのだ。
それほど目の前の男、宗像形は危険で強いのである。

「どうしたの棒立ちになって、だから殺す」

宗像がスザクに向けて突進をしてくる。
無意識にギアスの影響を受けたスザクはスタンガンをしまい込み違う武器を手にしていた。

321白騎士物語 ◆WzpMn05TJA:2012/01/04(水) 18:57:21 ID:mlB.GMf2O
「クソッ!」

ピンを口で素早く抜き取り宗像にそれを投げつけた。

――BOM!

「げほっ、げほっ……」

咳き込みながらスザクはこの場から離れた。
もちろんこんな手榴弾の1個や2個を投げつけられただけで死ぬ相手だとも思っていない。

「煙が邪魔だ、だから殺す」

ハルバードの振る風圧で煙を晴らす。
そこには何も無かったかの様に野原しか無かった。

「逃げられた、だから殺す」

スタンガンを首筋に当てられ、手榴弾を直撃ではないにしろ当たってしまった宗像の服は若干ボロボロ、傷もいくつかある。
だが目の闘志だけは失われてはいなかった。

「このままだと僕は体力が尽きるだろう、だから殺す」

宗像はこの場に座り込んだ。

いくら自分が殺人衝動のみ残り、それによる衝動で戦闘力が上がるにしろ体が保たなくなるのは時間の問題である事はわかった。

他人が来れば殺すだけ。

宗像は1回放送を目処に休息を取る事を決めた。

夜の空はだんだんと明るくなってきていた。



【C-5 野原/早朝】

【宗像形@めだかボックス】
【装備:野田のハルバード@Angel Beats!】
【所持品:支給品一式 壊れているストーブ@Fate/stay night 防犯ブザー@現実】
【状態:服が若干ボロボロ、傷(小)】
【思考・行動】
1:休息を取る、だから殺す。
2:誰か来たら殺す。
【備考】
※戦挙編〜次世代育成プログラムの間からの参戦です。
※人間が好きな感情がなくなり、殺人衝動だけが残る人間になりました。



「たった1人だけの戦闘に怪我を負いすぎだ……」

フラフラな足を無理矢理に歩かせたスザク。
最初に戦った宗像と自分とでは相性が悪過ぎた。

野原の草に流れ出た血が零れてしまっている。

「こんな戦いをするつもりじゃなかったんだが……」

ルルーシュ、ユフィ。
どっちを護るかの方針を立てなければならない。

どっちも、なんていう都合良い答えはおそらく存在しない。
二者択一であろう。

322白騎士物語 ◆WzpMn05TJA:2012/01/04(水) 18:57:40 ID:mlB.GMf2O
「まずは休息を取ろう……」

騎士として心得ている止血を足にしていく。
その止血をしながらもスザクは考察していく。

「くそっ、今更こんな事決められるかよっ!?」

優柔不断な自分を切り捨てたかった。
自分で自分を殴りたかった。

「あと2時間しない内に放送が流れるはずだ……。この放送を聞いたあとに動いてみようか……」

どちらの死を願っているわけではない。
だが自分はわからなくなっているのだ。

誰の騎士で誰のスタンスでこの島に居れば良いのか……。

――結局、枢木スザクという人間は自分で動く事の出来なくて、誰かに着いていないと行動出来ない。
そんな弱い負の部分が大きくなっていた。



【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【装備:詩音のスタンガン@ひぐらしのなく頃に】
【所持品:支給品一式 手榴弾14/15@現実 ランダム支給品×1】
【状態:足に怪我(深い切り傷)】
【思考・行動】
1:1回放送を聞くまで休息を取る。
2:ルルーシュとユフィ、どちらに着くか迷っている。
【備考】
※R2最終話からの参戦。
※宗像を危険視。



【詩音のスタンガン@ひぐらしのなく頃に】
目明し編にて詩音(魅音)の持っていた普通のスタンガン。


【手榴弾@現実】
ピンを外すと爆発する小型爆弾。

323 ◆WzpMn05TJA:2012/01/04(水) 19:01:30 ID:mlB.GMf2O
投下終了

元ネタはゲーム『白騎士物語』シリーズより

予約
神尾観鈴、倉田佐祐理

324 ◆RmIe4rjRnw:2012/01/06(金) 17:29:43 ID:RXCjO9EI0
少し長い…というか、長ったらしいかもしれませんが投下します

325傭兵とリフレイン ◆RmIe4rjRnw:2012/01/06(金) 17:31:46 ID:RXCjO9EI0
時計を見る。殺し合いが始まってから、もう一時間半ほど経っていた。
周囲を警戒しつつ、まだ他の参加者に遭遇していないことに焦りを覚える。
さっさと優勝して首輪を外して貰わねばならない。
しかし、隣にいるこの男は、全く焦った様子は無い。
「ところでよぉ、高山さん」
共に歩く青年が、まるで友人に電話してくるような気楽さで話しかけてくる。
緊張感の欠片もないその声に、少し苛立ちを覚えながら反応する。

「どうした、何か問題が発生したか」
「いやぁ、カタいねぇ、やっぱ」
「………?」
何を言いたいのかが分からない。固い?硬い?難い?
脳内で手塚の発した単語を変換しようと試みるが、どれも意味がしっくりこない。
考えている内に、手塚が続きを言う。
「オレの事は呼び捨てでかまわねぇからさ、アンタもあだ名とかあれば教えてくれない?」
ああ、そういうことか。と納得する。
自分の態度が堅苦しい、と言いたいのだろう。
そんなつもりも、そんな態度を取る理由も無いのだが。
やはり傭兵だった頃の習慣が抜けていないのだろう、と推測する。


高山浩太は元傭兵である。
傭兵と言われても、およそ一般人には馴染みの薄いものだろうが、現在でも存在する立派な職業である。
普通、金銭などの利益により雇われ、直接に利害関係の無い戦争に参加する兵のことを傭兵と言う。
傭兵として生きる者は、より良い傭兵として評判を上げようとするのが常である。
良い傭兵の条件は腕が良いこともあるが、それ以上に信頼できることが前提だ。
しかし、軽口な人間ではまず信頼は得られず、「良い傭兵」という評判も付かない。
そして、自分は元とはいえ金銭目的の傭兵であり、根っからの職業軍人だった。
会話を交わすのは重要な時のみ、その際も出来るだけ感情を入れずに。
そうして生きてきた自分が寡黙なのは、当然であると言える。
そんなことを考えていると。


「なぁ、聞いてるか?高山さん」
焦れた声が、高山の思考を「殺し合い」の世界へと引き戻す。
今、自分と手塚は、F-1に架かる橋を渡り終えた所だった。
周りには民家が点在しているが、生活感は全くしない。
本当に殺し合いの為だけに作られた舞台なのだろう。


「たーかーやーまーさーん」
いい加減しつこい。
数分前の戦闘を経て、手塚は自分にやたらと話しかけるようになった。
最初、馴れ合うつもりは無い、と一蹴したが、手塚からは
「馴れ合いじゃない。戦闘で巧く連携するためにも、互いを知ることは大切だろう?」
と言われ、一瞬言い返すことが出来なかった。


確かにそうだった。
戦争の際には、傭兵とはいえ、他の兵士とある程度の連携が求められる。
戦争中とはいえ勝手気ままな行動をすることは、結果として他の兵士に迷惑を掛けることになってしまう。
それを考えると、手塚の「巧く連携するために互いを知る」というのは的を射ている発言だ。
だからと言って、この場で無神経に面倒な会話をすることもないだろうが。

326傭兵とリフレイン ◆RmIe4rjRnw:2012/01/06(金) 17:33:54 ID:RXCjO9EI0

橋を渡っている間にも、手塚はやれ身の上を教えてくれだとか、
やれ人生の目標はあるか、等としつこいくらいに話しかけてきた。
途中、こちらが無視を決め込んでいるのが分かったのか、呆れたように仰仰しく肩を竦めた。
しかし、諦めることはなく、今度は手塚自身の話を始めた。
「俺は今が楽しけりゃあいいのさ。この今一瞬を最高にエキサイトできりゃあな」
「俺はこの場で何が起きようが構わないが、楽しくないのだけは勘弁なんだ」
それをも無視をし続けていた所で、あの質問である。


「好きなように呼んでくれて構わない。俺はそういったものに頓着はしないからな」
適当に答えておいた。これで手塚も満足するだろう、と考えたのだが。
「んじゃあよ、俺はアンタをコータと呼ぶから、アンタは俺をヨシミツって呼んでくれ。
ああ、もちろんその他に俺様をこう呼びたい名前があればそれで呼んでくれてもいい」
隣の男は、まるで友達を相手にするように、実に楽しそうに喋っている。
「……なぜだ」
口から疑問の声が漏れる。
この男は現状を理解しているのか、と疑念を持つ。
「あぁ?互いを知って巧く連携をとる為だろ?」
手塚は先程の言葉を繰り返した。
「これは一時的な同盟だ。いずれ殺し合うことになるんだぞ」
ここはあくまで「バトルロワイアル」。殺し合いの場所。
生き残ることが出来るのは一人だけ。そのことだけを考えるべきだ。


そう、人間を殺すとき一番邪魔になるのは「情」である。
親しく過ごした時間が長い人ほど、いざという時も「情」が生まれて殺害を拒絶してしまう。
あるいは心の優しい者ならば、相手の「情」が移って殺害を躊躇ってしまうだろう。
しかし、それではダメなのだ。
話していて分かる。手塚は頭の悪い男ではない。
この殺し合いの場で一番にすべきは、「疑う」ことだと理解しているだろう。
ならばなぜ、手塚は自分に親しく言葉を掛けてくるのか。
邪魔になると分かっている「情」を育てるような真似をするのか。
元傭兵の自分には理解できなかった。
だから、つい聞いてしまった。


手塚は話を中断されて少し不機嫌そうだったが、立ち止まって、当然とばかりに言う。
「コータが気に入ったからさ」
しばしの沈黙。目の前の男はにこやかに笑っている。
気に入っている?元傭兵の自分のことを?何を言っているんだ?


逡巡しつつも、自分の中で反論の言葉を組み立てる。
「…だとしても、俺がお前を呼び捨てにする必要性は無いだろう」
こう言えば、手塚も諦めるかと思ったのだが。
言われた手塚は人差し指を立て「ちっちっち」と言い。
「甘いねぇコータ。もうこの時点で、オレはコータの一歩先にいるんだぜ」
呼び捨てをやめろ、と言いたかったが、それよりも「一歩先にいる」というのが気になった。
訪ねると、手塚は自分との距離を縮め、デイパックを地面に置き、両肩に手を置いてきた。
急にこんなことをされるとは思わなかったので、少し驚くと共に混乱する。


「何をするつもりだ。何度も言うが、今は殺し合いの最中だぞ」
そうだ。ここは殺し合いの舞台だと、再確認する。
だからこそ冷静に、沈着に、思考を殺し合いへと向け―、
「コータ」
―られなかった。
俯いた自分に、手塚が肩に手を置いたまま話しかける。
「……なんだ」
「今から言うことを、よく覚えておけよ」
先程から一転して真剣な声だった。
ゴクリ、と喉が鳴っていた。自分の知っている、戦争中、生死の係った緊張感とはまた違った緊張感が、そこには在った。
なんだ?こいつは何をしようとしているんだ?いや、俺は何をしているんだ?
疑問符が脳内に押し寄せる。それを消すことが出来ない。


そして、
手塚の口が、
今まさに、開こうと―――。

327傭兵とリフレイン ◆RmIe4rjRnw:2012/01/06(金) 17:35:59 ID:RXCjO9EI0
◆◇◆◇◆◇◆


眼鏡で三つ編みの少女、羽川翼が目覚めたのは、民家のベッドの上だった。
殺し合いが始まった直後に、ベッドの上に居たことに驚きつつ顔を赤らめていた。
――あ、え?え、ちょ、やめっ、くぁwせdrftgyふじこlp――


―ふぅ、これでよし。
今の説明では読者の方々に語弊を招くので、私が代わりに説明するわね。
まず、私が目覚めたのはベッドの上ではなくて、トイレの中だったの。
その方が恥ずかしいって?なぜ?
そういったことに過敏に反応する方が恥ずかしいと改めたほうがいいわよ。
それは置いておくとして、とにかくその時の私は混乱したわ。
当たり前よね。目の前で二人の少女と、一人の大柄な男性が死んだのを見た後だもの。
でも、私は割とすぐに立ち直れた。
何はともあれ状況確認をしようとして、名簿を見たおかげだと思う。
私はそこで、名簿に記載された、ある名前を確認した。

【阿良々木 暦(あららぎ・こよみ)】

―私のクラスメイトで、友達で、そして―。
そう、まあ、一言では表せないような、そんな人だけど。
とにかく私は立ち直った。『阿良々木くんに会う』という目標が出来たおかげで。
え?それだけで立ち直れるものかって?
甘いわね、人間が動くのは目標があるからに他ならないのよ。
目標が無ければ、進むべき道も分からずに迷ってしまうもの。
動くことが出来れば、立ち直ることも出来るのよ。


とにかく、私は殺し合いに乗らずに、阿良々木くんを探すことに決めた。
ひとまずトイレから出て、リビングの椅子に腰掛けた。
そのまま、デイパックの中身を机の上に撒き散らした…と言うとちょっと変ね。
デイパックを引っくり返した、という方が分かりやすいかも。
中には色々な物が入っていたけど、一番気になったのは「ランダム支給品」だった。
恐らくそれであろう一つを手に取って、説明書を読もうとした。


バタン!


次の瞬間、私はお腹にナイフを突きつけられていた。
ドアを壊すくらいの勢いで入ってきた、金髪金眼の8歳ぐらいだろう少女に。
少女の首にも、当然の如く首輪が嵌められている。
こんな小さな子が、殺し合いに巻き込まれ、しかも自分にナイフを突きつけている。
その現状が、私にはどうしても信じられなかった。
だからだろうか、混乱して自分でも訳の分からないことを言っていた。


「ほ、ほら、『けろぴー』だよ〜」
支給品の一つ、カエルのぬいぐるみの「けろぴー」とやらを、少女の眼前に突き出した。
…そのまま数秒。何の反応も無い。
「あ、あのー…」
再度話しかけるが、反応が無い。
仕方がないので、小さな体を軽く揺すってみる。
軽い。少ししか力を入れていないのにも関わらず、その体は床に倒れ伏した。


「って、えぇぇ!?」
私のせい…じゃないだろう。いくら少女とて、ただ揺すっただけで倒れるわけがない。
それにしても、今の倒れ方は普通じゃない。
「大丈夫?」
三度、話しかける。ついでに体も揺する。
少女はだるそうに「うぅー」と呻きながら、予想外の言葉を発した。


「……血が…足りない……」

328傭兵とリフレイン ◆RmIe4rjRnw:2012/01/06(金) 17:39:07 ID:RXCjO9EI0
◆◇◆◇◆◇◆


同行者である高山の両肩に、自分の手を置く。
「……なんだ」
「今から言うことを、よく覚えておけよ」
なーんて、真剣な顔を作って言えば、大抵の奴は黙り込む。
高山はと言えば、まさに狙い通り、黙り込んで緊張したような顔をしている。


俺はワザと、会話の中で「間」を開けて話すようにしている。
相手に考える時間を与えることで、より相手を混乱させることが目的だ。
橋を渡っている間にしつこく話しかけたのも、
自分の主義思想の話を淡々と話して聞かせたのも、
急にお互いを呼び捨てにしようなどと提案したのも、
嫌がらせたのも、侮らせたのも、惑わせたのも、疑わせたのも、全てはこの男を「揺さぶる」為だ。


手塚義光は、高山浩太と戦闘をした後、ずっと考えていた。
『この男を利用するだけ利用して、最後は俺が優勝する術』を。
手塚は優勝できればそれでよかった。
だから、高山と協力してより多くの人を殺す、という話を持ちかけた。勿論、自身の優勝が確定したら裏切るつもりだった。
だが、考えてみると、元傭兵の高山には、真向勝負で敵わないことは明白だ。
不意打ちならば殺すことは可能だろうが、双方が傷を負うことは間違いないだろう。
加えて、手塚の獲物は剣だが、高山の獲物は拳銃である。
優劣で言えば、明らかに手塚の方が劣っていることになる。
それでは、その優劣をどう引っくり返すか。
数分考えた結果、こういった場に慣れた男ならば、「疑う」ことは必須だと認識しているだろう、と思い、
ならば逆に、高山を「信じている」かのような言動を繰り返し、困惑させて揺さぶろうと考えた。
その後で、高山のデイパックを奪い、無力化する。
手塚は、我ながら機転が利くなと思いつつ、その時を待っていた。。


そして今がその時だ。
「俺の眼を見てくれ」
高山に真剣な声で話しかける。
高山は予想通り困惑している様で、分かりやすく目を泳がせている。
「コータっ!」
最後の一押しとばかりに、肩を一層強く掴む。
高山は驚いたように、こちらを見つめてくる。
はっ、キスする前の女じゃあるまいし、んな顔されても気味悪いだけだぜ。
もういいだろう。俺は行動を起こすことにした。


「ばぁ〜か」
言いながら、高山の腹部に強烈な膝蹴りをかます。
鍛えられているとは言え、防具も何も無い状態での蹴りはなかなか効いた様だ。
高山がぐっ、と呻いた一瞬の隙を狙って、デイパックと拳銃を奪う。
数瞬後には、高山は降伏せざるをえない状況となっていた。
奪われた拳銃は、正確に高山の頭部を狙っている。


「くそっ…全て演技か…」
高山が小さく呟く。その言葉は手塚よりも自分に向けたものが多いだろう。
素人の演技を見抜けなかったことを相当悔しがっているようだ。


「はっ、そういうことだ。んじゃ、荷物を俺のデイパックに移し替えな」
拳銃で自分のデイパックと高山のデイパックを交互に指し示す。
逆らうことも出来ず、高山はデイパックに荷物を移し替え始める。
食料、地図、拳銃の弾薬と、ほぼ全てを移し替えさせた。


「…ん?」
と、一番奥から箱が出てきた。気になったので開けさせる。
注射器だ。褐色の液体が入った注射器が、10本入っている。
説明書には「違法薬物、中毒性有、取扱注意」とだけ書いてある。
手塚は意味を理解すると同時に、その顔に凶悪な笑みを浮かべた。


「高山さぁん、コレ、使ってみてくれない?」
高山は心底悔しそうに、歯軋りをしていた。

329傭兵とリフレイン ◆RmIe4rjRnw:2012/01/06(金) 17:42:06 ID:RXCjO9EI0
◆◇◆◇◆◇◆


私は、食べ物を探していた。
自分が食べる物ではなく、少女に食べさせる物だ。
数分前に、「血が足りない」と言って倒れた少女をどうにか起こした。
水を飲ませたが、調子が良くなる気配は無かった。
食べる物は無いか探したが、支給品の食料は決して「美味しそう」ではない。
少女が喜ぶ食べ物、と思って自らのランダム支給品を探すと、紙製の箱が出てきた。
箱を開けると、甘い香りが鼻をくすぐった。ドーナツのようだ。
甘い物といえば、子供が喜ぶものの代名詞だ。
そう考えて、私は少女の眼前で甘そうなドーナツをちらつかせた。
すると。
「ドオォーナッツじゃあぁぁぁ!」
少女は飛び起きて、ポンデリングにかぶり付いて来た。


「ぷはぁ、食べた食べた」
十数分後、私は、目の前にいる少女に驚いていた。
ドーナツを驚くべき勢いで食べていった少女は、今や元気満タンといった様子だ。
民家のテーブルの上に残っていたのは、ドーナツの箱だけになっていた。


「いやあ、ミスドのドーナツはマジでまいうーじゃな」
妙な喋り方だな、と思いつつ、私は事情を訊こうとした。
まあ、「やっぱミスドは聖地じゃ」とか「ぱないの!」とか言ってほぼスルーされたけど。
やっとこちらを認識した時には、さらに十数分が経っていた。
「ん?お主、どこかで会ったような…」
少女はそう呟いていたが、気のせいだろう。


とりあえず、互いの名前を確認することにした。
金髪少女は名前を忍野忍というそうだ。
珍しい名前だな、と思いつつ自分の名前も告げた。
忍ちゃんは「やはりどこかで…」と首を傾げていたが、とにかく話を先へ進めた。
殺し合いに乗る気はないということは共通しているようだ。
けれども、忍ちゃんの言った、
「まあ、儂を殺そうとする身のほど知らずがいたとすれば、そいつは即殺すがな」
という言葉には、さすがに違和感があるのだが。


羽川翼が知らないだけで、実際に忍野忍は吸血鬼であり、「怪異殺し」と呼ばれる怪異の王でもある。
とはいっても、現在の忍は紆余曲折を経て「吸血鬼のなれの果て」となり、力をほぼ失っている。
姿も本来ならば外見は27歳なのだが、今では8歳程度である。
そのことを知らない者は忍を「ちょっと不思議な少女」くらいに思うのも無理はない。


ドーナツを沢山食べたせいか、忍ちゃんは少し眠そうだ。
一段落ついたことだし、次は何をしよう…と、私が思索していると。
「ぐっ」
外から、それもだいぶ近くで呻き声が聞こえた気がした。
窓から外を見ると、橋の近くに二人の男性が居た。
暗い為に顔は良く見えないが、決して仲良くしている様子はない。
帽子を被った男性が、もう一人の男性の頭部に拳銃を突き付けている。
拳銃を突き付けられた男性は、デイパックの中身を移し替えているようだ。
この時点で、どちらが悪人かなど一目瞭然だった。

330傭兵とリフレイン ◆RmIe4rjRnw:2012/01/06(金) 17:46:01 ID:RXCjO9EI0
「あの男、殺し合いに乗っているな」
急に発せられた声に驚く。隣にはいつの間にか忍ちゃんがいた。
眠そうな顔はどこへやら、真剣な顔つきで二人の男性を見ている。
どうする、と訊くと、
「助けてもかまわんが、今の儂たちではまず無理だろう。」
と、無常とも取れる言葉が返ってくる。


確かにそうだった。
帽子の男は拳銃を持ち、剣のようなものも携えている。
しかし、此方に武器と呼べるようなものは、忍ちゃんの支給品のナイフしか無い。
今私たちの居る民家と、男たちの居る場所の距離を考えると、奇襲も出来そうにない。
正攻法でも不可、奇襲も不可。
私たちに残された選択肢は、傍観のみ。


私が強ければ、阿良々木くんが居れば、などと、つい「もしも」を考えてしまう。
そんなことを考えても意味が無いと知っていても。
その度に自分には力が無いということを認めることになるとしても。

「何でもは知らないわよ。知ってることだけ」

そう、私は弱いということを、私は知っている。
だから、悪行を目の前にしているのに何もできない。
帽子の男は、抵抗できない男に何かを注射しようとしている。
私は気付かぬうちに唇を噛んでいた。



【F-1橋付近民家内/黎明】

【羽川翼@物語シリーズ】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、けろぴー@Kanon】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:殺し合いには乗らない。
2:阿良々木くんを探す。
3:私は何も出来ない…。
【備考】
※「つばさキャット」終了後からの参戦です。
※ストレスが溜まれば、ブラック羽川が出現する可能性もあります。
※帽子の男(手塚)を危険視しています。
※黒髪の男(高山)のことは帽子の男の被害者だと思っています。
※忍野忍とは名前以外に情報を交換していません。
※忍野忍にどこかで会った気がしています。


【忍野忍@物語シリーズ】
【装備:スペツナヅナイフ@現実】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:やや血液不足】
【思考・行動】
1:殺し合いなど詰まらん。
2:暦を探して血を吸わせて貰う。
3:儂を襲おうと言うのならば、覚悟をしておけ。
【備考】
※少なくとも「かれんビー」終了後からの参戦です。(明確な参戦時期は後の書き手さんに任せます)
※暦から吸血すれば、外見、能力などが戻る可能性があります。制限は後の書き手さんにお任せします。
※羽川翼とは名前以外に情報を交換していません。
※羽川翼にどこかで会った気がしていますが、思い出せません。

※ドーナツ詰め合わせ@現実 は消費されました。箱はF-1の民家に放置されています。

331傭兵とリフレイン ◆RmIe4rjRnw:2012/01/06(金) 17:48:22 ID:RXCjO9EI0
◆◇◆◇◆◇◆


「…見た目じゃどんな薬かなんてわかんねぇが…」
手塚は空になった注射器を放り投げ、呟く。
「効き目は充分みてぇだな」
高山は呆けたように中空を見つめている。


違法薬物、というからどんなものかと期待していたが、見事に答えてくれた。
中毒性がある薬は、即ち依存しやすい薬ということだ。
高山の様子からして、この「リフレイン」という薬は依存性も強いだろう。
つまり、この薬をエサにすれば、高山を意のままに操ることも可能ということだ。
高山に、俺に従わなければ「リフレイン」を与えない、と言うだけでいい。
薬欲しさに高山は俺に従うはずだ。
命令次第で、俺の盾にも、俺の剣にもなる。


「ははははははっ!」
奴隷を手に入れたような気になり、俺はこみ上げて来る笑いを抑えられなかった。
上手く行きすぎではないか、などとの疑問は、少しも抱かずに。





【高山浩太@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:なし】
【所持品:なし】
【状態:気絶】
【思考・行動】
1:?????
【備考】
※本編開始前からの参戦です。
※リフレインを摂取しました。今後は過剰にリフレインを求めるようになるかも知れません。
 あるいは、精神力により中毒を克服するかも知れません。詳細は後の書き手さんにお任せします。


【手塚義光@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:舞の剣@Kanon、ブラックホール14/15@ペルソナ4】
【所持品:支給品一式×2、タバコ10箱@現実、ライター3本@現実、リフレイン×9@コードギアス 反逆のルルーシュ
     ブラックホールの弾丸30/30、嵐のボンゴレリング@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【状態:健康、気分高揚】
【思考・行動】
1:優勝する為、全参加者を殺害する。
2:高山を引き連れて行動する。
3:高山は利用するだけ利用してボロ雑巾のように使い捨てる。
【備考】
※本編開始前からの参戦です。


【リフレイン@コードギアス 反逆のルルーシュ】
高山浩太に10本セットで支給。
主にイレブンが使用する違法薬物。中毒に陥ると、やがて発狂に至る。
不幸な現実から幸せな過去に逃避する手段だという。常温では褐色の液体で、注射器を使い摂取する。

【スペツナヅナイフ@現実】
忍野忍に支給。
刀身の射出が可能なナイフ。パロロワではよく見かける。

【ドーナツ詰め合わせ@現実】
羽川翼に支給。
ミスタードーナツのドーナツ10個の詰め合わせ。

【ぬいぐるみ「けろぴー」@Kanon】
羽川翼に支給。
水瀬名雪が大事にしているカエルのぬいぐるみ。

332 ◆RmIe4rjRnw:2012/01/06(金) 17:52:37 ID:RXCjO9EI0
投下終了です
お手数ですが
手塚と高山の現在地を【F-1橋付近/黎明】として下さい

タイトル元ネタはライトノベル「狼と香辛料」です

333 ◆WzpMn05TJA:2012/01/06(金) 18:40:57 ID:/YHDRUPQO
投下乙です

忍と羽川がお互いを知っている様で思い出せないところに歯痒さを感じてしまうところが良かったです

そして高山さんは毎回ながら不憫過ぎる
手塚の『まさに外道』が見れて久しぶりにシークレットゲームをやりたくなってしまいました(今貸しててプレイ出来ない…)

ep3、4の最強マーダーコンビの高山リーダーから手塚リーダーに変わった展開に驚き、続きが非常に楽しみな話でした

334名無しさん:2012/01/12(木) 18:05:11 ID:xvfofRPs0
まあ氏の俺ロワだから、そう細かくとやかくいう気はないが、期限きれてないか?

335 ◆WzpMn05TJA:2012/01/12(木) 18:35:50 ID:gDBaEfLQO
すいません

リアルの都合上少し長引いています
完成次第挙げさせてもらいますが、予約したい方がいたら遠慮せずに予約してくださっても良いです

336 ◆yh7ZRuETBw:2012/01/12(木) 23:10:24 ID:jgr98n7g0
雲雀恭也、伊吹風子、棗恭介で予約します

337名無しさん:2012/01/13(金) 09:49:19 ID:3LkuQEIw0
特に報告がないようだから言っておくと、ナギとアサシンの予約も切れてるね

338Lの殺意 ◆WzpMn05TJA:2012/01/13(金) 18:35:55 ID:8Yxw.bGgO
少女。
髪が長い。
友達を大事にする。
声がとてもよく似ている。
――そして心が優しい。

そんな共通点を持つ2人はバトルロワイアルが始まって一番最初に出会った人物なのであった。

  ◆  ◆  ◆

「うわ、びっくりした」
「あははーっ、すいませんびっくりさせてしまいました」

金髪の長い髪をポニーテールにしている少女の神尾観鈴は急に現れた髪が長くてリボンが目立つ少女である倉田佐祐理に驚きの声を上げた。

事前に観鈴を見えていた佐祐理と、佐祐理が見えていなかった観鈴。
落ち着き具合を見れば当然のごとく佐祐理の方が落ち着いていた。

「はじめまして、倉田佐祐理です」

バトルロワイアルという場には相応しくないくらい笑顔が輝いていた佐祐理。

「……私は神尾観鈴です。よろしくお願いします佐祐理さん」

観鈴はその笑顔に往人の顔が思い浮かんだ。
普段は無愛想であまり笑わないけど、本当は優しい。
佐祐理の笑顔は似ていないながらも往人に似ていた気がした。

「あははーっ」
「にはは」

お互いで笑いあった。
どちらも初対面であったが2人には関係なかった。

2人共気にしていないからであった。



  ◆  ◆  ◆



「観鈴さんも大変でしたね」
「はい。昨日までは夏休みでいっぱいしたい事がありました……にはは」
「夏休みだったんですか?佐祐理のところは雪の降る冬でした」
「冬も楽しいですね」

お母さん、往人さんで雪合戦や雪だるまを作ったりもしてみたいな。
夏じゃなくても秋、冬、春とくる。
それぞれの季節に応じて色々な遊びが出来る。

「観鈴ちん、怖かった……」

首輪の爆発で亡くなった可愛い女の子達。
勇敢に誰よりも素早く立ち向かった男の人。

みんな友達になれるかもしれなかった。

そんな人達が意味なく散っていく姿が怖かった。
笑顔で人殺しが出来る3人が怖かった。

「佐祐理も怖かったです。こんな殺し合いなんか無かったら楽しく過ごせたのに」
「佐祐理さんの知り合いも来てたりするんですか?」

さっき名簿を見た時に往人さんとクラスメートの遠野さんの名前があり、参加させられている事を知った。
だから佐祐理さんの知り合いが居る可能性も高い。
そして、今の佐祐理さんの表情。
――大事な人が居るのではないかと、私は思った。

339Lの殺意 ◆WzpMn05TJA:2012/01/13(金) 18:36:43 ID:8Yxw.bGgO
「舞と祐一さんです。佐祐理の大事な親友です」

先程の笑顔と悲しい表情。
顔に出さない様に努力していたのがわかる。

「まだ死んでいないのに……、巻き込まれただけなのに……、なんで涙が止まらないんだろう……。観鈴さんと会えて安心出来たと思ったのに、ぐすっ……」

無理した仮面が剥がれていた。
佐祐理さんの目は涙いっぱいに溢れていた。

「その、……舞さんと祐一さんを探しましょう」

私は駆け寄った。
同情もするし、共感もする。

私も泣きたいぐらい悲しい。

(……ん?)

あれ?
駆け寄ったらなんでこんな物が目に入るの?

佐祐理さんのポケットから変な形の金属が見えるよ?

見たらダメ、見たらダメ、見たらダメ、見たらダメ、見たらダメ、見たらダメ、見たらダメ、見たらダメ、見たらダメ、見たらダメ、見たらダメ、見たらダメ、見たらダメ。

――見たらダメ!

あれって……銃?
鉄砲?拳銃?マシンガン?

わからない。
どうして佐祐理さんはこんな物をポケットに忍ばせているの?

私を油断させて殺す為?
ただの護身用?

なんで、なんで、なんで?

私は佐祐理さんに――……。

「さ、佐祐理さん……、その銃は何に使うんですか……?」

自分でも声が臆病風に吹かれているのがよくわかる。
不安定なトーンの、動揺の声。

「……これですか?」

佐祐理さんは涙を拭き、何事もなかったかの様に笑う。

「あははーっ、これはですね脅し用ですよ♪」

笑顔で銃を私に向ける。
今のは嘘泣き。
私を殺す為の演技。

私の中で全てが崩れ始めた。
佐祐理さんの人間像が崩れた。
この場は本当にバトルロワイアルなんだ……。

340Lの殺意 ◆WzpMn05TJA:2012/01/13(金) 18:37:35 ID:8Yxw.bGgO



  ◆  ◆  ◆



「はぁ、はぁ、はぁ……」

女性の人間が倒れている。
いや、既に大量の血を流して死んでいる。
そして、殺害者の人間がすぐ隣に立っていた。
こちらも女性。

――それは一瞬の出来事であった。

女の額に一発。
呆気なく人間が死んだ。

彼女にとってはどんな映画よりも、リアルで嘘くさい現実であった。

「さ、佐祐理…………さん?」

恐怖のあまりに無意識にデイパックの中に収められていた鎌を抜き取り、近付き、振り下ろしていた。

観鈴が我に帰った時には額に鎌の刺さった佐祐理の死体が転がっていた。

自分で殺しを行い、自分で心配をする。
矛盾した行為に気付かない。

「観鈴ちんが……やった……?」

そして、ようやく記憶が追い付く。
まるで徒競走をしていて差が離れすぎたランナーの様に遅いゴールであった。

「あ……?」

そして恐怖の触媒になった銃を彼女は回収しようとする。
本当は触りたくもない物。
でも勇気を振り絞った。
銃を拾う。

「え……?」

そして彼女は気付かなければ楽になれる事があった。
気付いてしまったから、それは自分が悪者で悪人という事がわかってしまった。

「どうして?……弾入ってない……よ?」

観鈴の手に握られた銃には弾が入っていなかった。

どういう事だ?
彼女の頭に何回も何回もそれが襲ってくる。

「佐祐理さんは……私を殺すつもりがなかった?」

彼女は脅し用に使うと言った。
観鈴は自分に当てられた言葉だと思った。

だが、それは襲ってくる参加者に対しての脅しという事であり、――。

「ああ、ぁぁ……」

完全に佐祐理は善人であったのだ。
よき仲間で親友としてこのバトルロワイアルで生きていけたのだ。

そんな彼女を殺してしまった。

彼女の手や体や服には、佐祐理の殺した罪という赤い血がこびり付いていた。
もう二度と取れる事のない赦されない罪。



【倉田佐祐理@Kanon  死亡】


【】

【神尾観鈴@AIR】
【装備:トカレフTT-33 0/8@現実】
【所持品:支給品一式 トカレフの弾丸24/24 ランダム支給品×4】
【状態:動揺、不安定】
【思考・行動】
1:佐祐理さんを殺してしまった……。
2:……。
【備考】
※観鈴ルート確定寸前からの参戦。
※無意識に佐祐理のデイパックを取りましたが、まだ動揺していて精神的に動けません。



※佐祐理の死体には頭に鎌が刺さっています。



【トカレフTT-33@現実】
装弾数8発のソ連軍制式拳銃として第二次世界大戦〜1950年代まで広く用いられた。
【鎌@現実】
尖った鎌。ステンレス製。

341 ◆WzpMn05TJA:2012/01/13(金) 18:44:20 ID:8Yxw.bGgO
埋めるの忘れてました
【B-1 街/黎明】

投下終了
元ネタはゲーム『Lの季節』より

久し振りの投下で、埋めるのを忘れる致命的なミスまでしてしまい申し訳ありません
反省しますm(_ _)m


予約ですが◆SENAs8NCE2さん、すいません
三千院ナギを予約させてもらいます

342名無しさん:2012/01/14(土) 14:25:12 ID:jNkpmXlk0
未登場はどんな感じだっけ?

343 ◆WzpMn05TJA:2012/01/14(土) 15:13:15 ID:iFlrdzhoO
残りはC.C.とアサシンの2人だけですね

344三千院ナギの驚愕 ◆WzpMn05TJA:2012/01/14(土) 17:41:22 ID:iFlrdzhoO
「こ、これはどういう事なのだー!」

ゲームの参加者の1人。
金髪で髪を2つ結いのいわゆるツインテールにして、小柄な体、高い声。
三千院ナギの目覚めの一声であった。

「なんなのだこれは!?人が死んだ夢を見たのだ……」

ナギの記憶に思い出されたのは人間の首が飛ぶという誰も見たいと思うわけのない夢の事であった。

何もしていない自分と同じくらいの女の子2人。
マンガで見た事がある様な男。
そして夢の中にも関わらず催眠ガスを嗅がされたみたいに沈み落ちていく。
そして夢は『自分が起きて夢から覚めた』わけではのに不自然に途切れた。

「ハヤテ〜、マリア〜、クラウス〜、タマ〜」

ここは自分の家。
呼べば駆けつけてくれる召使いやペットが居る。
だが今日に限り足音すら近付いてこない。

「おーい、ハヤテ〜」

目を凝らす。
そしてナギは自分が知らない広い建物で寝かされた事に気付く。

「ちょ、ちょっとなんなのだここは!?」

広い建物は自分の屋敷も同じ。
だがここは明らかに違う。
同じスロットやカード台、それはカジノ内の景色であった。

「ゆ、誘拐……?いや、私は昨日はちゃんとマリアの隣で寝たのだ」

外に居て意識がなくなったのならわかる。
だがしっかりとナギの記憶にはマリアの隣で寝た記憶がある。

「なんか息し辛いな……、ん?首輪かなにかか?」

首に触ると首全体に捲かれた何かがある。
すぐに首輪だと思い当たる。

「ちょっと待て、首輪?」

先程の夢で死んだ人の原因はなんだった?
首輪が爆発し、首が飛んだ。

「ば、爆弾だー!?」

ナギは無理矢理外そうと手にかけるが、犯人側が言ってた事を思いだす。

「ショックを与えたらダメだったはずなのだ」

辺りを見渡す。
ただ自分が寝ていた近くにデイパックが置かれてある。

そこでようやく、夢ではなく現実に起きていた事だったと気付いた。

  ◆  ◆  ◆

「なんで私がこんな事に参加しなくてはならないのだ……」

ハヤテやマリア達が側に居てくれればそれで良い。
20億円なんてお嬢様の自分には必要ない。
願いなんて物もない。

「ふざけるでないのだー!」

怖い。
泣きたい。
ハヤテとマリアに会いたい。
それをぐっと堪えた。

「よくわからんが中身はなんなのだ!?」

デイパックに手をかけながら主催者の言葉を思い出す。
食料1日ぶん、水、デバイス、地図、参加者の名簿、筆記用具、ノート、ライトとランダムに配られるランダム支給品を3つを渡すと言っていた。

345三千院ナギの驚愕 ◆WzpMn05TJA:2012/01/14(土) 17:42:01 ID:iFlrdzhoO
「むむ、なんなのだこれは?なんか怪しい本なのだ?」

本が数冊まとまっていた。
その一冊を手に取る。

巨乳の女の人が寝ながら誘惑している目でポーズをしている本であった。

「エロ本ではないかー!?」

顔を赤くして叫んでしまった。
周りには誰も居なくただカジノに声が響いただけであった。

「けしからん、けしからん!ハヤテには絶対見せられないのだ!マリアには秘密だな!うわっ、デカッ!?」

捲るページ、捲るページが女性なら誰でも憧れるボン、キュ、ボンのナイスバディの人ばかりが写っていた。

「こんな裸に近い水着があるのか!?こっちは露出の少ないメイドなのにマリア以上にエロいのだ」

結構長い時間読んでいたがナギの手はエロ本を離さなかった。

「むむ、私やヒナギクには無理なのだー……って呑気に読んでいる場合か!?全く、子供にエロ本なんか渡すなよ全く」

集中して読んでいた自分が恥ずかしくなりエロ本をしまい、次の支給品を取り出した。
しまい込む辺り、また読む気があるのがうっすらとわかってしまう。

「これは目安箱?なんかめだかボックスにでも出てきそうな形をしているな」

興味がなく、それもしまい込み、最後の支給品を取り出した。

「これは……剣の鞘?」

刃が出る部分だけがないのに疑問がる。
その疑問を晴らす為、デイパックにあった説明書を読む。

「これは超振動光子剣『クリュサオル(chrysaor)』です。普段は刃は閉まってありますが持ち主の意志で刃を出せます。強力な武器ですので取り扱いには気をつけてください……か」

物騒な説明にバトルロワイアルの実感が沸いたナギ。
自分にこんな物が支給された以上、他の人にも刀や銃が支給されたのは想像がつく。

「護身用にしては物騒だがただ持っておくのはなー」

運動能力皆無の自分が堂々と持つと簡単に盗まれるだろう。
だがデイパックに入れるとデイパック自体を盗まれるかもしれない。

扱いが難しい。
自分の力の無さが情けない。

「ちょうど私は制服を着ている。腰に隠しておこう」

これですぐにクリュサオルを取り出せるし、デイパックを盗まれてもこれだけは盗まれない。

「ところで名簿見てないや」

今更ながら名簿を見ていない事に気付く。
ハヤテやマリアやクラウスやクラスメートが居れば協力出来る。
ヒナギクが居れば最強だろう。
だがもし、知り合いが居なければ1人でこの島で生きていなくてはならない。
そう考えながら名簿を見る。

「ハヤテとマリアとヒナギクが居たが……、なんで変態執事まで居るのだ」

瀬川虎鉄の名前を見つけた。
瀬川泉の双子の兄でハヤテにストーカーするホモ執事。
ナギは彼からも誘拐をされた身である。

346三千院ナギの驚愕 ◆WzpMn05TJA:2012/01/14(土) 17:42:35 ID:iFlrdzhoO
「誘拐犯が誘拐されるとは皮肉だな〜」

なんて愉快な事と思っているとナギの目が変わる。

「む?涼宮ハルヒ、セイバー、黒神めだか、ルルーシュ、黒崎一護?こいつらアニメやゲームのキャラクターではないのか?」

そういえば主催者側にもシャルルとか朝倉涼子も居た。
死んだ男はBLEACHのチャドに似ていた。
そういえばシャルルに反乱した男はルルーシュではなかったか?

「すごいのだ!現実の世界がアニメの世界と融合したのだ!未知の力はすごいな!まるでス○ブラだ」

無意識に手にノートとペンを持っていた。

「サインもらえないかなー?」

キラキラした目になっていた。
だが肝心な事を忘れてはならない。

「だがそう考えたらもし彼らがマーダーになってたらハヤテですら適うわけないのだ」

アニメで見る必殺技が現実で起きたら?
一般人なんかすぐに死んでしまうだろう。

「とりあえずしばらくは動かない方が良さそうなのだ」

ナギはカジノに留まる事を選んだ。
ハヤテ、マリア、ヒナギクに会いたいが危険過ぎる。
協力者が現れるまでここで息を殺していた方が良い。
窓からなら街を歩く信頼出来そうな参加者が来たかどうかも見渡せる。

自分が長時間動けないからこその方針であった。



【A-3 カジノ/黎明】

【三千院ナギ@ハヤテのごとく!】
【装備:クリュサオル(chrysaor)@そらのおとしもの】
【所持品:支給品一式 大量のエロ本@そらのおとしもの 目安箱@めだかボックス】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:しばらくは動かないで様子見なのだ。
2:アニメのキャラクターは本人?
【備考】
※アテネ編直前からの参戦。
※ある程度の参加者の特徴を知っています(基準は今までハヤテのごとく!の原作、アニメ、劇場版、OVAでパロディまたは伏せ字にされた事のある作品のキャラクターが該当します)



【クリュサオル(chrysaor)@そらのおとしもの】
アストレアの持つ最強の矛。近接戦最強の武器らしい。

【大量のエロ本@そらのおとしもの】
桜井智樹の所持しているエロ本。捨てたり持って行かれても減る事のないエロ本。

【目安箱@めだかボックス】
箱庭学園の生徒が相談する事がある時に紙に書いて入れると直々に解決しに生徒会が動く。

347 ◆WzpMn05TJA:2012/01/14(土) 17:46:07 ID:iFlrdzhoO
投下終了です

元ネタはライトノベル『涼宮ハルヒの驚愕』です

ナギのカオスなオタクっぷりが炸裂しました
何故こうなった?

予約
C.C.


残りアサシン1人ですね

348 ◆RmIe4rjRnw:2012/01/15(日) 06:39:39 ID:hRHiImTg0
投下乙です
ナギがオタクすぎる…
良い方向に動くか悪い方向に動くか見物ですね

白鐘直斗、直井文人、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、立華奏を予約します

349魔女の惨劇会 ◆WzpMn05TJA:2012/01/15(日) 17:53:21 ID:gZJLmnbMO
月夜に照らされ輝く女が1人立っていた。
ただ怖がるわけでも、笑うわけでも、怒るわけでもなかった。
ただ無表情にただその場に居るだけの様に。
C.C.は立っていた。

「ゲームか。あいつもまたよくわからん事を始める」

月の光で首輪を照らす。
C.C.にはどの様になっているかはわからない。
上から見るそれは不釣り合いにキラキラと銀色の首輪がキレイに輝いていた。
人の血を求める様にわざとキレイにしていると感じさせる。

「久し振りな面子を見た。相変わらず変わらない2人だなぁ」

常に上から見下ろすシャルル。
常に父親や権力を嫌悪するルルーシュ。

どちらも良く知る人間で、死んだ人間。

「しかし私はまだ呪いに縛られているはずだ。そんな私でも死ねるのかシャルル?」

元々生や死にはもうこだわらない。
既に死に、生きたから。

C.C.には不死の呪いに縛られ、それをギアスの暴走した者に不死の能力を渡さなければ自分はまた何回でも蘇ってしまう。
そんな体質の魔女は何年、何十年、何百年と生きた。
その過程で何人にも不死を渡そうとしたが全て失敗をしてきて今に至っている。

「問いは返らぬかシャルル」

昔の協力者への問いは闇に消えていった。
誰にも聞こえる事もないまま言葉は消滅する。

「首が爆発する首輪、意味なく参加者を殺して脅した見せしめ、ランダムに渡される武器、24時間以上人が死ななければ終わる制限時間、金や願いを叶える報酬、海に囲まれ出れない島(フィールド)、時間が経つにつれ狭くなる島、6時間ごとに発表される死亡者、1日ぶんしかない食料、摩訶不思議な未知なる力……本当に極限にまで人を殺す為だけに縛ったルールだな」

1本1本と指を折っていく。
そしてちょうど指が10本折り終えた。

「自由度が高そうでかなり低いゲームなのではないかこれは?」

地図を見る。
まるでルルーシュへの当てつけの様にチェス盤を傍観させるなと、彼女は思った。

「名簿の知り合いのメンバーには笑わざるをえないな」

声を高くするだけ。
顔は笑ってはいなく、また無表情であった。

「ルルーシュ、スザク、ユフィ、ロロ。参加者を見ると嫌らしいチョイスだな」





ルルーシュはもちろんナナリーの騎士であるスザクを護ろうとするだろう。
ユフィとロロなんかは邪魔でしかない。

だがスザクはどうだ?
親友のルルーシュを護ろうとするだろう。
これだけなら面白くもなんともない。
だがスザクが忠誠を誓い、初恋の相手であったユフィを混ぜる。
これだけでスザクはどちらを護るか苦悩する事になる。

350魔女の惨劇会 ◆WzpMn05TJA:2012/01/15(日) 17:54:07 ID:gZJLmnbMO
ロロとルルーシュなんか真逆だな。
ルルーシュはロロの事が嫌いで邪魔な弟役の存在。
ロロはルルーシュに懐き過ぎている。

知り合いの人間関係を見ると複雑過ぎるな。
本当にこの人選はシャルルが面白がって入れたのだろうな。

死んだルルーシュとシャルルの姿を見たんだ。
きっとユフィとロロだってどうせ本人だろうしな。





「おそらく他の参加者にも5人ぐらいずつ知り合いを入れているのではないのか?そういう葛藤をシャルル達は嘲笑っているのだろうな」

C.C.は他の参加者達とは違い、動くつもりがない。

それは方針というわけでもなく、本能に近い感情であった。

「まぁ良い。このゲームどの様になるのか私が見届けよう」

これから起こるであろう惨劇。
それはわからないし自分に降りかかるかもしれない事。
だがこのC.C.は他人事の様に言った。

それなのにC.C.はこの島に連れられ、始めて妖艶に楽しそうに笑うのであった。



【E-3 川周辺(北側)/未明】

【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:ゲームを傍観する。
2:まだ行動を起こすつもりはない。
【備考】
※本編最終話後からの参戦。

351 ◆WzpMn05TJA:2012/01/15(日) 17:55:58 ID:gZJLmnbMO
投下終了です

元ネタは西方Projectの音楽『魔女達の舞踏会』より

最近は登場人物が1人の繋ぎの話が多いかもなー

予約
春原陽平

352 ◆ku.ISI1Z2Q:2012/01/15(日) 21:16:38 ID:dqUyqrXQ0
予約を破棄します、大変申し訳ない

353 ◆MFKn59eM9c:2012/01/16(月) 19:10:23 ID:mKK/WV0I0
古里炎真、柩木スザク、園崎詩音 で予約します

354にげないで 過ちも 真実も 嘘も 全て赦す魔法へと変えよう ◆WzpMn05TJA:2012/01/16(月) 19:32:07 ID:PhuL7PiUO
金髪の小柄な学生の男が野原を走っていた。

その走っている姿は移動している為でも、誰かを追っている為のものでもなかった。
逃げている走りであった。
だが彼を追う者は居ない。
では何から逃げているのか?

人を殺してしまった少女の罪からであった……。



僕の視界は今、ぐにゃぐにゃしている。
走って駆けている野原の草、地面、全てが曖昧で歪に見えてしまっている。

それの原因は僕の目から溢れている涙のせいである。

後悔はないと誓ったのに。
大事な妹の為なのに。
――たった1人の人間を殺しただけで精神が落ち着かない。
これから何人も殺さなくてはいけないのに、今くよくよしていたらいけない。

「くそっ、だから僕は岡崎にバカにされるんだ!」

制服の袖で涙を拭く。
袖が涙を染み込み視界が直る。
だが完全な視界にはなっていなく、まだ歪みがある。

まるで僕が佳乃ちゃん殺しの罪を認めるまで視界を奪ってやるという神の意志に感じてしまう。

「はぁ、はぁ、はぁ……。佳乃ちゃんの死体からは遠く離れたかな……?」

辺りを見渡す。
そこには真っ直ぐなはずの地形がぐにゃぐにゃと狭い視界しか見せない。
佳乃ちゃんの姿はないが、もしかしたら不自然に途切れた視界の境目に倒れているのかもしれない。

正直走った距離なんかわからない。
全力疾走で走ったつもりでも、普段の歩くスピードより遅く感じてしまっていた。

「落ち着け陽平。僕は走った、間違いない。僕の体感時間がズレただけなんだ」

言い聞かせる。
だがそれはただの自分の励ましにしか聞こえなかった。

どんなに真実を並べても嘘に塗り替えられている様だった。
全てがおかしかった。

「おかしいのはこの状況だ……。おかしいというのならここに連れて来られた時点でおかしいんだ」

もっと言うなら僕がこのサバイバルナイフを持った瞬間からだ。

「僕は正しい人間じゃない!今までだって不良の春原とか言われてきたじゃないか」

自分が悪者なのはさっきから始まったわけじゃない。
あの高校のサッカー部を辞めさせられた瞬間から色んな人から嫌われてきた。
それと同じだ。

「なんで自分で自分を説得してんだよっ!」

支離滅裂。
僕の脳みそにその4字が思い浮かんだ。

「そうだ……。僕は犯罪を犯しているわけじゃない。これは緊急避難とかに適用されるはずだ」

たまたま公民の時間に授業が終わらないかと時計を見ながら聞いた話にそんな話があった気がする。
民法の第何条とかなんとか。

そうだ!
僕は赦されるんだ!
これは認められた正義なんだ!

―これが彼にとっての吹っ切れる魔法の言葉―
―歪んだ正義の在り方を見つけた―
―全て赦された事―

355にげないで 過ちも 真実も 嘘も 全て赦す魔法へと変えよう ◆WzpMn05TJA:2012/01/16(月) 19:32:38 ID:PhuL7PiUO
「それに僕は死にたくない……」

首輪に手を付けて思い浮かぶは悪魔の15分。
一生で一番長く、気持ち悪い濃密な時間。

「……そっか。芽衣の為?確かにそうだ。表向きだなこれは」

今自分で演技していたところに『素』が出てきたな。

僕は今『死にたくない』と口にした。

「うん。死にたくない。所詮自分の為だな」

自己中だ。
智代が居たらバカだと言って思いっきり蹴られるだろう。

僕はバカだ!

否定はしない。
自分で認めてすらいる言葉。

「ヘタレを直すチャンスだ、これで僕はもう杏にだってヘタレ扱いされない。むしろあいつをヘタレ扱いをしてやれるぐらいさ」

今の僕には全てが上手くいく気がする。

・まだ見ぬ参加者の心臓に突き刺すナイフ。
・騙して頭を撃ち抜く銃。
・優勝し、芽衣の元に帰って兄貴として見守る自分。

「その為には僕は親友をも裏切らなくてはならないな……」

出来れば自分で手をかけたくない。
あいつらだけは他の参加者の手にかかる事を願うしかない。

「最低だ……。渚ちゃん、風子ちゃん、智代、それに岡崎の死を考えている僕……」

最低な僕にも優しく接してくれた渚ちゃん。
意味わかんないけど仲良くしてくれる風子ちゃん。
僕が悪い事をする度に怒ってくれる智代。
僕の高校の悪友で最高の親友、岡崎。

「僕はあいつらにすら情けをかけられないのかっ……」

既に佳乃ちゃんに手をかけた。
全ての参加者に平等でなければならない。
それが正義の責任だろ?

「ボンバヘッ!」

僕が大好きなヒップホップの一言を叫んでやる気を起こす。

迷ってはいけない!
必ず生きて帰るんだっ!



―春原陽平―
―彼の視界は元の世界を映す正常な物になっていた―
―それが出した結論であるなら信じた道を歩めと言ったメッセージが込められてある様であった。―



【G-1 野原/黎明】

【春原陽平@CLANNAD】
【装備:サバイバルナイフ@現実】
【所持品:支給品一式 赤いビー玉@Kanon 便座カバー@現実 そうめん@AIR 鍋@現実 ベレッタM92(15/15)ベレッタM92の弾丸×15@現実】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:優勝してこの島から帰る。
2:生き残る為ならどんな事だってする……が親友に対して迷いがある。
【備考】
※渚ルート終盤からの参戦。

356 ◆WzpMn05TJA:2012/01/16(月) 19:35:06 ID:PhuL7PiUO
投下終了です

元ネタはアニメ「うみねこのなく頃に」OP『片翼の鳥』の歌詞より

うみねこもロワに出したかったなと呟く
そしてずっと短文が目立ちますな

予約
音無結弦、相沢祐一、アサシン

357 ◆Wf0eUCE.vg:2012/01/17(火) 14:42:36 ID:/vTnyzpI0
古泉一樹、一方通行で予約します

358ああっ、侍さまっ ◆WzpMn05TJA:2012/01/17(火) 22:34:26 ID:D1qm4FEQO
「落ち着いたか音無」
「あぁ、なんとかな」

俺と相沢はあの化け物2人から死に物狂いで逃げ出した。
まぁ、俺も何度か死んだのだから死に物狂いなんてのも変だが。

「しかしこれからどうしような音無」

相沢の提案に考える俺。
無闇に逃げているだけじゃまた危険な奴と出会ってしまうかもしれない。
ただ動かないのも敵を待つ様なものだし……。

「まずは仲間探しじゃないか音無?」
「それが一番か……」

だが奏や日向や椎名は大丈夫だろう。
直井は人殺しはしそうだが、俺の事を慕っている。
奴は俺相手なら問題ないが相沢が若干やばいかもな。

だが一番の悩みの種はゆりだ。
『どうせ私達は生き返るでしょ?』とか言いそうだ。

どうせ反論しても、『何よ、日向君や大山君ならすぐに死んでくれるわよ!』とか言うんだ。
いや、死ぬわけねーだろ。

んでゆりが死ねば良いじゃんとか言っても、『なんの為の駒よ?』ってもう扱いが面倒そうだ。

『もう良いから死ねーっ!』って銃で撃たれて俺死にそうだなー……。

やばい。
想像が当てはまりそうで嫌だ……。

「おい、どうした音無?顔青いぞ?」

相沢にはまだ早い。
この事は秘密にしといた方が良いかもな。

「いや、なんでもない。だが仲間集めは大事だと思う」
「だな。俺の親友で信じられるのは川澄舞、倉田佐祐理、水瀬名雪、北川潤だ。……ん?北川の名前潤っていうのか」
「…………」

あれ?
今の北川って奴本当に信頼出来る?

いやそんな事いったら俺だって下の名前知らない奴多いけど。
椎名、野田、高松、藤巻、遊佐、大山、竹山、岩沢、関根、入江、。

上の名字を知らない奴。
ユイ、ひさ子。

名前かどうかすらわかんない奴。
TK。

つい最近まで名前忘れてた奴。
俺。

「…………」
「どうした音無?」
「だ、大丈夫だ」

本当に仲間と呼んでいいのかわからなくなってしまった……。

「んでお前の仲間は参加させられているのか?」
「ん、あぁ……。だが俺の仲間は一癖も二癖も変わった奴しか居ないんだけど……」
「お前も苦労人だなー」

共感してくれた。
確かに苦労人みたいな顔付きはしているのだが、逆にこちらも苦労させる側にも見える。

「立華奏、日向秀樹、椎名はおそらく大丈夫。直井文人は俺以外にはちょっと喧嘩腰になりやすい。仲村ゆりはー……まぁ大丈夫じゃないか?」
「何故俺に問いかける!?」

ドSなリーダー気質の事を言おうと思ったが辞めておいた。

「なんか釈然としないがその仲間の事を中心に仲間になれる奴を探していこう」
「あぁ、そうだな」

俺と相沢。
とりあえず方針は決まった。

これで行動に移す――はずであった。

359ああっ、侍さまっ ◆WzpMn05TJA:2012/01/17(火) 22:35:02 ID:D1qm4FEQO
「なるほど。なら貴様らは戦うつもりはないと……」

渋い声が響く。
そして……。

「ぐはっ……!?」
「相沢っ!?」

相沢の体に斬られた跡が付けられた。

「ならば戦わせようとするのみ」

影が形を作り上げる。
そして1人の男が浮かび上がる。

「な、何者だ……」

相沢がうつ伏せになりながら斬った主まで顔を上げている。

その目線の先には、紫の羽織姿の侍の格好をした人物が刀を構えこちらに向いていた。

「アサシンのサーヴァント佐々木小次郎」

暗い空が彼の登場を喜び明るくなった気がした。

「さ、佐々木小次郎だと!?」

日本の中でも有名な侍。
剣豪である宮本武蔵と巌流島で戦ったとされる剣士。

「でも……?」

それは確か実現したかどうか曖昧な人物なはず。
いや、彼が佐々木小次郎本人であるわけがない。

俺は拳銃を構える。

「顔付きは良し、では参る」

と、素早い移動で俺に向けて走ってくる。
人間の速さじゃない。

俺の拳銃は先程眼帯男が乱入した時に撃ちそこねていた為に安全装置が外れていた。
それが運良くすぐに引き金が引ける状況となっていた。

「はぁっ!」

銃弾が放たれる。
だが佐々木はそれを体を傾け、優雅に受け流す。

そしてまたこちらに迫る。
間合いも先程より短く、安全装置は今外れていない。
佐々木は刀でこちらを斬る気満々だ。

「危ない!音無!」

――キンッ!

おもちゃのナイフが佐々木に投げられたのを弾く。

すぐにおもちゃのナイフを投げたのが誰か想像がついた。

「無理するな相沢!」
「いや、傷が浅いから大丈夫だ」

本当に大丈夫らしく相沢が木刀を構えながら立ち上がる。

ただの木刀なら頼りなく思えたであろう。
だが相沢の持つ木刀はしっかりと研がれていて、『風林火山』と彫られていて歴史を感じさせる。
それに口では言えないが多分相当力のある木刀だ。

「む?貴様その木刀は宝具か?」
「知らねーよ。だがお前を倒す木刀だ!」

自信満々に笑う相沢。
彼の闘志は激しく燃え上がっていた。

「よし!協力だ相沢!」

俺は拳銃を佐々木に向ける。
……が、相沢がなんのリアクションも起こさない。

「どうした相沢?戦うぞ?」

そう言ったのだが相沢は微妙な顔をしていた。
目を深く閉じ、何かを深く考えて悩んでいる優柔不断な顔。
だが、目が開かれた瞬間にそれは決意の顔へと変貌した。

「逃げろ相沢、この侍野郎は俺がぶっ倒す!」

今、こいつは何を言った?
反論するに決まっている事を言わなかったか?

360ああっ、侍さまっ ◆WzpMn05TJA:2012/01/17(火) 22:35:56 ID:D1qm4FEQO
「待て、お前死ぬ気か!?」
「死ぬわけねーだろ!ただ追い払うだけだ!だから逃げて俺と後で合流だ」

どうする俺は?
このまま相沢を見殺しにすれば良いのか?
だが逃げないと相沢の命を無駄に無くしてしまうし、俺も多分殺されるだろう。
相沢の行為自体が無駄になる。

それなら俺は―――。

「良いんだな相沢?」
「あぁ、舞に佐祐理さんに名雪に北川に会えたらよろしく言っておいてくれ」
「……あぁ」

走る。
先程は相沢と肩を並べた逃走。
仲間も居た。

だが今回は違う。
1人で、この相沢が繋いでくれた命を繋げて仲間に伝えていかなければ……。

後ろは振り向かない。
相沢の無事を祈りながら俺は1人背中を向けた。



【E-5 野原/早朝】

【音無結弦@Angel Beats!】
【装備:CZ75@現実】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:披露(中)、健康】
【思考・行動】
1:殺し合うつもりはなく、このゲームからの脱出を考えている。
2:今は逃げて仲間を探す。
3:相沢……無事でいてくれ。
【備考】
※ユイ消滅より少し前からの参戦。
※祐一を別世界の死後の世界の住人だと思っており、祐一の言う魔物を奏の様な人間だと思っております。
※水瀬名雪、川澄舞、倉田佐祐理、北川潤の名前を知りました。



◆  ◆  ◆

音無の背中が見えなくなる。
一番最初にした俺の行動は――。

「ありがとうよ、佐々木小次郎」

敵へ感謝する事であった。

「敵に礼か?おかしな奴だ」
「音無を狙わないでくれただろ?」
「武士の情けだ、私にかかればそなたらなどすぐに片を付けられる」

佐々木小次郎は再戦とばかりに力を放出している様だった。

こりゃあ舞が戦っている魔物より見えるのはマシだが、魔物より遥かに強い奴じゃねーか。

俺と佐々木小次郎が強く向き合う。

「そなた名は?」
「相沢祐一」
「勇ましい名前だな」
「そんなに気に入っている名前でもないんだがありがとうな」

そういえば真琴と名前の話をしたっけ?
こないだの話なのに随分と前にした会話の様な気がする。

いや、こんな状況だから懐かしく感じるのか?

俺が死んだら、俺を嫌う真琴含め、両親と秋子さん、あゆ、香里、そしてこのゲームに巻き込まれた名雪、北川、佐祐理さん、音無。
そして俺が今一番気になっている舞も悲しんでくれるかな?

361ああっ、侍さまっ ◆WzpMn05TJA:2012/01/17(火) 22:36:51 ID:D1qm4FEQO
(弱気になるんじゃねぇ!)
無理だ、勝てるわけない……。

(死ぬわけねぇだろうが!)
無理だ、殺される……。

「負けるかよぉ!」

木刀の刃を地面にこすりつけながら佐々木小次郎に踏み込む。

「おりゃあ!」

砂をばらまく形にする。
が、上手く砂は広まらない。

「そんな小細工など用心に値せず」

一閃。
一筋の切り傷が首に走る。

「ぐああっっっ!?」

首輪の若干上辺りから血を流し、首輪に溜まっていく様が気持ち悪いながらわかる。
拭き取りたい。
だが時間もなければ、拭き取る道具すらもない。

「そなたはまだ逃げぬか」
「お前に背中を向けられるわけがねぇ!」

音無の様に俺が逃げたら背中へ一撃。
すぐに殺されるだろう。

「はじめて使う刀だか忘れたが使ってみよう」
「佐々木小次郎だからって燕返しってか?」
「残念ながらそなた相手に使う様な燕返し(技)ではない」

刀を縦に持つ。
ただ不用心に立っているだけ。

それなのに何故こんな嫌な予感が離れないのか?
何故一瞬で殺されると思ったのか?

すぐ答えはわかる。

「散れ、千本桜」

刀の刀身が消えた。
いや、バラバラに別れた。

それは俺を殺す技(攻撃)とはわかっているのに……。

「キレイだ……」

ただ褒め言葉しか浮かばなかった。
侮辱をさせない、そんな風に俺は言われた気がした。

  ◆  ◆  ◆

「散ったか……」

ふむ。
はじめて使った斬魄刀とやらの解放であったがどうやら我々サーヴァントの宝具の様であった。

桜の花びらの様に美しい刀は私とてはじめて見た。
生前の花を眺めながらの酒を飲んだ光景が思い浮かぶ。

本来私は佐々木小次郎などという名前ではないただの剣術に長けたという農民に過ぎない。
それがこのバトルロワイアルとやらの参加者である女狐(キャスター)に呼ばれたに過ぎん。

「相沢祐一だったか、お主との戦いもう少し楽しめると思ったが残念なり」

せめて逃げ出したあの男も居ればもう少し楽しめたであろうか。
私は優勝する為ではなく、女狐に捕らわれぬ今、強者と思う存分戦いたいだけだ。

その強者とは思ったのだが所詮はケツの青い少年達ではあったのだが。

362ああっ、侍さまっ ◆WzpMn05TJA:2012/01/17(火) 22:37:32 ID:D1qm4FEQO
「もう少し楽しめると思った?まだテメェは勝ってすらいないのにか?」

もはや聞き慣れた声。
その声は散ったはずの少年、相沢祐一のものであった。

「なんだと……?」

ありえん。
そんなはずはない。
あの桜吹雪に全身を切り刻まれたはず!?

「驚くなよ佐々木小次郎?」

この男、化け物なのか?
いっそう深く刀を構える。

「化け物なのは貴様なんじゃないのか?」

先程よりケガが増えた程度。
相沢祐一という男はまだ戦える体力、折れぬ心を持っていた。

  ◆  ◆  ◆

花びらが俺を襲う。

首を切り刻もうと。
手を切り刻もうと。
指を切り刻もうと。
腕を切り刻もうと。
肘を切り刻もうと。
胸を切り刻もうと。
腹を切り刻もうと。
脚を切り刻もうと。
足を切り刻もうと。
顔を切り刻もうと。
――全身を切り刻もうと。

全てが包み込む様に襲う花びら。

だが木刀がそれを許さぬと潜在能力を引き出すかの様に勝手に体が動いた。いや、動かされた。

気づけばほとんどの花びらを叩きつけた光景が広がっていた。

  ◆  ◆  ◆

「フフフ、面白いなそなた」

佐々木小次郎が今まで俺や音無を斬りつける時以上に楽しそうな表情で見上げていた。

「いや、刀の能力だとしてもそれでも立ち向かう心良しとする」
「天才の剣士に言われると照れるぜ」

全然嬉しくはないんだがな。
照れるのもだいたい嘘である。

「では正々堂々と」
「あぁ!」

佐々木小次郎と俺。
素早く駆けつけ佐々木小次郎は刀を、俺は木刀を振るう。

ガンッ!

普通は折れるであろう木刀。
だが強度は相当強いらしく、本物の刃を使っている刀と同格の硬さを誇っていた。

「くらえっ!」

振るう木刀。
避けられる一撃。

「はっ!」

振るわれる刀。
避ける一撃。

剣士と高校生。
火を見るより明らかな戦いは平行線を辿っていた。
だが体力と経験。
サーヴァントか人間。

先にダメになるのは言わずもがなである。

363ああっ、侍さまっ ◆WzpMn05TJA:2012/01/17(火) 22:38:22 ID:D1qm4FEQO
「はぁ、はぁ、はぁ……。はぁ……はぁ……」

脳みそに酸素が行き渡らない。
目の前は真っ白。
揺れる視界。
限界の体。
棒の様な脚、腕。

俺は何をしているんだ。

……舞だったら。
普段から戦っている舞が俺の立場であったらどうするんだろうな。

「限界の様だな」

佐々木小次郎。
未だに体力は減ってはいなく、ほぼ無傷。

俺の負けだ……。

「倒してはおきたいがつまらん」

刀を鞘にしまう侍。
もう充分とその表情は言っていた。

「待てよ、佐々木小次郎……」
「勘違いするな相沢祐一、このままそなたを回復させて、貴様がもっと強くなったところを私が殺すまで。生かされたと思うなよ、死が伸びただけだと思え」

死が伸びただけ。
彼はまた俺を殺すつもりでいる。

「私もまだまだ甘い」

どこまでが本当で、どこが嘘かはわからない。
だが彼は今は逃がしてはくれるらしいのは察しられる。

「そうだ、どこかに強者は居ないか相沢祐一?」

また彼は俺と戦ったみたく誰かと戦うのであろう。
だから教えてやった。

「……【E-6】に強い2人が戦っているはずだ」
「ほぅ」
「片方が目玉の大きい化け物みたいな奴で触手を出したりする奴、もう片方も化け物でツンツン頭の眼帯男だ」
「なるほど。強そうな予感がするな」

佐々木小次郎は俺から離れて行く。
これからも彼は戦い続けるのだろう。

「お前なんかどっちかにやられちまえ!」
「そなたと再戦するまで私は死なないさ。因みに名簿では佐々木小次郎ではなくアサシンと書かれてあるから私の死の報告が聞けるかどうか試してみればよかろう」

俺はいずれこの男、佐々木小次郎と決着をつけたい。
はじめて少年マンガの主人公の気持ちがわかった。

既に侍の姿はない。

364ああっ、侍さまっ ◆WzpMn05TJA:2012/01/17(火) 22:39:00 ID:D1qm4FEQO
【アサシン@Fate/stay night】
【装備:千本桜@BLEACH】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:披露(小)、健康】
【思考・行動】
1:強い者の為に刀を振るう。
2:相沢祐一といずれ決着を付ける。
3:相沢祐一の手がかりを元に強い者と戦う。
【備考】
※セイバールートのセイバー戦以後からの参戦。
※一応燕返しは出来ますが物干し竿がないと本来の力は使えません。



  ◆  ◆  ◆

「引き分けか……?いや、これは負けだ……」

その場に倒れ込む。
首輪に溜まった血が気持ち悪い。

「だが生きているだけまだマシか……」

ゲーム開始からどのくらい経っただろうか?
よくわからない。

ただ佐々木小次郎と戦ったさっきの時間はすごく濃密な時間だと思わされた。

「音無……。俺は死んでねーからな!……せっかく逃がしてやったんだから死ぬなよ!」

もはやどちらに向かったかすら覚えていない。
これから音無を探すにも手がかりは0。

「まぁ、良い。とりあえず動けるぐらいまで休んでいても罰は当たらないよな」

音無に追いつきたいのは山々。
だがそれも今は出来ない。
まぁ、のんびり探せばいずれ見つかるだろう。

こんな島なのだから。

「絶対佐々木小次郎は俺がぶっ倒して屈伏させてやりてぇ……」

仲間探し。
それ以上に俺は妥当佐々木小次郎の事から頭が離れられないでいた。



【相沢祐一@Kanon】
【装備:木刀正宗@ハヤテのごとく!】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×1】
【状態:疲労(大)、傷(大)】
【思考・行動】
1:佐々木小次郎を屈伏させたい。
2:殺し合うつもりはなく主催者に怒りを感じている。
3:音無と仲間を探す。
【備考】
※舞ルート確定直前からの参戦。



【千本桜@BLEACH】
朽木白哉の斬魄刀。解号は『散れ、千本桜』。解放すると刀身が花びらの様に別れて鋭い刃と化する。

【おもちゃのナイフ@リトルバスターズ!】
本編では武器扱い。名の通りただのおもちゃの為、殺傷能力は0。

【木刀正宗@ハヤテのごとく!】
潜在能力を極限まで引き上げる鷺ノ宮家に伝わる宝具。『風林火山』と彫られている。

365 ◆WzpMn05TJA:2012/01/17(火) 22:42:43 ID:D1qm4FEQO
投下終了

元ネタはマンガ『ああっ、女神さまっ』より

何故かOP主役の音無が空気、祐一が主役みたいな展開になっていたのに今更気付いた(あれ?)

音無2話続けて逃げてばっかりだけどこれから頑張って主役になるんだよね!……だよね?

予約
六道骸、衛宮切嗣

366 ◆WzpMn05TJA:2012/01/17(火) 23:25:45 ID:D1qm4FEQO
全員登場しましたので参考に作りました
書く時の参考にしていただければ幸いです

因みに死者スレは佐祐理のみしか増えていないのでまた別の機会にでも


対主催(46人)
遠野美凪、音無結弦、仲村ゆり、立華奏、日向秀樹、
椎名、六道骸、相沢祐一、北川潤、岡崎朋也、
伊吹風子、坂上智代、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、ロロ・ランペルージ、中嶋直美、
岸沼良樹、御剣総一、姫萩咲実、朝比奈みくる、桜井智樹、
ニンフ、アストレア、御坂美琴、白井黒子、アウレオルス=イザード、
綾崎ハヤテ、三千院ナギ、桂ヒナギク、前原圭一、古手梨花、
衛宮士郎、ランサー、黒崎一護、ウルキオラ・シファー、鳴上悠、
巽完二、白鐘直人、黒神めだか、阿良々木暦、戦場ヶ原ひたぎ、
羽川翼、神原駿河、忍野忍、棗鈴、棗恭介、
井ノ原真人


マーダー(31人)
・奉仕マーダー(8人)
国崎往人、水瀬名雪、川澄舞、小泉一樹、イカロス、
瀬川虎鉄、衛宮切嗣、宮沢謙吾

・強者マーダー(3人)
アサシン、更木剣八、グリムジョー・ジャガージャック

・無差別マーダー(15人)
春原陽平、持田哲志、刻命裕也、北条かりん、長沢勇治、
手塚義光、竜宮レナ、園崎詩音、セイバー、アーチャー、
バーサーカー、キャスター、天城雪子、宗像形、来ヶ谷唯子

・その他マーダー(5人)
古里炎真、ユーフェミア・リ・ブリタニア、長門有希、真アサシン、足立透


???(9人)
神尾観鈴、雲雀恭也、C.C.、枢木スザク、高山浩太、
一方通行、人吉善吉、球磨川禊、千石撫子



結構バランスが良いですね
意外にAB勢が全員対主催だったり、
サーヴァントの対主催がランサーだけだったり、
めだかボックスはキャラクターの登場時系列もスタンスもほぼみんな違うなど
なかなか興味深いですね

367 ◆WzpMn05TJA:2012/01/18(水) 01:29:39 ID:73h4tB6sO
>>366
直井忘れてたorz

対主催は47人ですね

368名無しさん:2012/01/18(水) 22:22:08 ID:0yIRvI3Y0
>>366 >>367
生存者は89人なのに、何度数えても87人しかいないな〜おかしいな〜と思ったら…
キョンとハルヒがセットで忘れられてるww
よりにもよって有名タイトルの主人公ヒロインを忘れてやるなよw

369 ◆WzpMn05TJA:2012/01/18(水) 22:37:31 ID:73h4tB6sO
>>368
あら、ついうっかり

報告ありがとうございます

370 ◆t40EAJSI/s:2012/01/19(木) 22:33:19 ID:xKqnAJtA0
白井黒子、アーチャー、バーサーカーを予約します

371名無しさん:2012/01/20(金) 19:21:42 ID:.fZtckAg0
SENAさんはもう来てくれないのかな…
あの人の作品凄い好きで尊敬してたんだがなあ

372 ◆MFKn59eM9c:2012/01/21(土) 11:03:57 ID:0nBxnjlM0
予約分の古里炎真、枢木スザク、園崎詩音を投下します

373 ◆MFKn59eM9c:2012/01/21(土) 11:04:18 ID:0nBxnjlM0
■□

殺した。
殺した。殺した。
殺した。殺した。殺した。

成し遂げた。
成し遂げた。成し遂げた。
成し遂げた。成し遂げた。成し遂げた。

目的だった復讐、シモンファミリーの悲願を首尾よく遂げてやった。
しっかり死体は確認した。間違いなく、あいつ―――沢田綱吉の頭をぶち抜いて、殺したんだ。
もしも大空のリングを持っていたら危なかったけれど、間抜けなことにあいつは丸腰で、敵対している僕に向かってきた。そして、すぐに殺した。
ああも拍子抜けする程あっさり殺されるとは、ボンゴレの呪われた名が泣いているだろうな。
ざまあみろ。お前等のボスは死んだ。
誇りも何もない、どうしようもなく無様な最期だったぞ。
心配するな、残った奴らもすぐにボスの元へ逝かせてやる…………。
ボンゴレに肩を貸す者も当然皆殺し―――――1人だって、生かしてやるものか。


しかし、ここはバトルロワイアルなんて異色の場でもある。
ボンゴレだけを闇雲に追っていては、きっと身を滅ぼすことになるだろう。
大地のリングがあれば大抵の人間なら一方的に倒せるだろうけれど、目当ての代物が現状では何処にあるのか分からない以上、慢心はせずに細心の注意を払って行動するのが得策。
いや、そもそも探し物がこの会場にあるのかも分からない。
リングの力は強大だ、自己の力の自慢をするわけではないが、下手をするとこの殺し合いを崩壊させる可能性にさえなる、主催者側から見ればかなりの危険因子。
リング自体がシャルル達の手中にあったとしても何ら不思議はない。
だから、この場では大地のリングの力は借りられないと思っていた方がいい。
慎重に立ち回って、女子供だろうと決して油断しない。
それだけを肝に銘じて、それを踏まえてボンゴレへの復讐を目指す。

勘違いしないでほしいけど、僕は殺し合いを潰そうとしている。
殺すのは忌まわしきあいつらだけで、何の罪もない人が死ぬことは僕だって望んでなんかいない。
殺人対象とそれを擁護する連中を皆殺しにして、その上で殺し合いを潰す。
きっと仲間たちも心配してくれているだろうし、もう動き始めていてもいい頃だ。

そろそろ、行こうか。
闇雲に歩いて疲れたから休憩をしていた、体力がなくていけない。

そういえば、ひとつだけ気になったことがある。
さっき殺したあの忌々しき男、沢田綱吉。
あいつがたとえ取り返しのつかない程の馬鹿だとしても、あの反応にはちょっと違和感があった。
自分達を狙う敵に対して、あまりにも不用心すぎる反応。
まるで、『親友』と合流できたとでもいうかのような喜び方。

―――所詮、気のせいだろうけど。

374 ◆MFKn59eM9c:2012/01/21(土) 11:04:46 ID:0nBxnjlM0
◇◆

枢木スザクは、未だに自分の取るべき方針を決定づけられずにいた。
『親友』か、『初恋の人』か。
ルルーシュに付けば、バトルロワイアルを打倒できる可能性は格段に上がるだろう。彼の頭脳と『ギアス』、そしてスザク自身の運動能力とかけられた『ギアス』が合わされば、敵は居ないといっても過言ではない。
敵に回せばこれ以上ない難敵になるだろうが味方なら百人力。
より多くの人命を、より確実に救うことが出来るなら間違いなく彼に着くべきだ。
しかし、一度『剣』になると誓ったユーフェミア・リ・ブリタニアを見捨てる―――それは、あまりに『騎士』から逸脱している、暴挙と罵られるべき所行である。
すぐにでも彼女の元に駆けつけて、今度こそ騎士として彼女を守りたい―――。
初恋の女(ひと)を守りたいというその意志を、誰が責め立てられるだろうか。
枢木スザクの中で、彼の『正義』が揺れていた。

より多くの命を確実に救う。
大切な人の命を確実に救う。

第三者の観点から考えれば、ルルーシュに着くことが一番良い選択だといえるだろう。
愛にうるさい人なら、ユーフェミアを守る道を選ぶかもしれない。
例えば、同じくこの殺し合いに呼ばれた一人のフリー暗殺者だったなら、より多くの人命を助ける為に少数を切り捨てる、『天秤の計り手』であろうとしたかもしれない。
尤もその彼は殺し合いに乗ってしまったのだが、とかく男は迷わなかったろう。
枢木スザクは、騎士だった。
どこまでも騎士で、だからこそどちらかを選ぶことが出来ない。

今こうしている間にも、バトルロワイアルは進んでいる。先の殺人衝動を具現化したような危険人物が、罪のない救われるべき命を奪い取っている可能性は十分にあるのだ。
もしも自分が迷うことなくすぐに誰に着くかを決められていたなら、守れた命があったかもしれないと思うと―――自分の不甲斐なさがつくづく嫌になる。

「…………僕は」

はっきりさせる。
自分が胸を張って進める、決して後悔だけはしないと断言できる道を、選ぶ。
迷っている時間はもうない。
今まで迷い続けてきた時間が長すぎたのだ、これ以上時間を無駄に浪費してしまうのは他ならぬスザク自身が許せないことだった。
いや――――もしかしたら、スザクの心が選ぶ道は最初から一つだったのかもしれない。


「僕は、ユフィを優勝させる。それが―――彼女の剣として一番正しいことだ」


彼の選んだ道は、修羅。
ユーフェミア・リ・ブリタニア以外の全てを抹殺する、正義に反する悪の道。
世界の全てが、ユフィの敵になるなら―――ユフィの敵を、ただ殺すだけの、道。
もう人を悪人呼ばわりすることは出来ない。
親友にして殺し合い打倒の最大の可能性、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアも殺す。

騎士から剣へ。澄み切った正義の心を、錆び付かせて修羅を往く覚悟はとうに決まっていた。

そして同時に、前方からやってくる一人の少年を殺す決意も、固まった。


◇◆

古里炎真の抱いた感情は、驚愕だった。
やっと人を見つけたのだ、声を掛けてみようと思った時に、スザクが突進してきた。
その速度は生身の人間としてはどう考えても異常、リングのない状態で対処するのは厳しいと思われた。
というより、無理だ。
古里炎真の普段の身体能力は並より低い、とてもじゃないがまともに相手は出来ないだろう。
懐のグロック17を取り出すにも、ここまで距離を詰められていては遅すぎる。
混乱する頭が何かしらの結論を出す前に、炎真の腹に強い衝撃が響いた。

「がはっ!!」

腹を殴られて胃液が口から吐き出され、間髪入れずに回し蹴りが炎真の脇腹に叩き込まれる。
体が真横に吹き飛び、勢いよく地面に叩きつけられた。
グロックに手を伸ばそうとするも、スザクの足がそれを弾き飛ばす。

殺せる。枢木スザクは手榴弾を用いずとも、この少年を殺すのは容易だと判断した。
グロックを拾い上げ、その安全装置を外して炎真の頭に銃口を向ける。
何と皮肉なことか。
自らの復讐相手を殺した凶器が今、他ならぬ炎真に向けられているのだ。
その事実が―――古里炎真に、力を与えた。

375 ◆MFKn59eM9c:2012/01/21(土) 11:05:06 ID:0nBxnjlM0
突然スザクに飛びかかり、グロック17を奪い取ろうとする。
星が消え始めた空に、空砲が放たれた。
腹に強烈な膝蹴りをもらうが、掴みかかった体勢のまま離れようとはしない。

「くっ」

スザクがデイパックより取り出したそれから、青白い火花がバチバチッ、と音を立てる。
スタンガン―――それを炎真の腹にでも押し当ててしまえば、スザクの勝ちはもう完全に決まったようなものだ。
改造が施された一品を、リングの力なしで耐えきるなど不可能だ。

だが――――そこに、一人の乱入者が現れる――――


緑髪の、標識を持った少女。


「ぶちまけられてえかぁぁぁぁぁあああああああ!!」


三つ巴の戦い、制するのは一体誰なのか。



【C-5 野原/早朝】


【古里炎真@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 グロック17予備弾薬(33/33)@現実、ランダム支給品×1】
【状態:全身にダメージ(小)、腹部にダメージ(中)】
【思考・行動】
1:バトルロワイアルを打倒して元の世界に帰る。
2:ボンゴレファミリー及びそれを援助する者は皆殺しにする。
3:ボンゴレと関わりがない人物は出来るだけ殺したくない。
4:目の前の二人をどうにかする。
【備考】
※継承式編、ボンゴレとの戦闘開始直後からの参加です
※リングを見つければ大地の炎は使用できますが、威力は大分抑えられています


【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【装備:詩音のスタンガン@ひぐらしのなく頃に】
【所持品:支給品一式 手榴弾14/15@現実 グロック17@現実 ランダム支給品×1】
【状態:足に怪我(深い切り傷)】
【思考・行動】
1:ユフィを優勝させる為に殺し合いに乗る。
2:目の前の二人を殺す。
3:ルルーシュには………会いたくない。
【備考】
※R2最終話からの参戦。


【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に】
【装備:止まれの標識@めだかボックス】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:健康、雛見沢症候群】
【思考・行動】
1:優勝して悟史君の元に帰る。
2:目の前の二人を殺す。
【備考】
※目明し編からの参戦です。
※彼女は雛見沢症候群にかかっていますがどの程度なのかは次の書き手さんにお任せします。

376 ◆MFKn59eM9c:2012/01/21(土) 11:06:54 ID:0nBxnjlM0
投下終了です。
題名は 剣ツルギ物モノ語ガタリ です。
元ネタは『化物語』より

377 ◆WzpMn05TJA:2012/01/21(土) 11:23:32 ID:E1CCfOFYO
投下乙です

スザクVS炎真VS詩音ですか
とても楽しみな熱い展開になりましたね
続きが楽しみです

唯一一般人の詩音なのに何故か彼女が一番強いのではないかと思ってしまう今日このごろでした

では自分も投下します

378偽善正義 ◆WzpMn05TJA:2012/01/21(土) 11:24:34 ID:E1CCfOFYO
「(よし、射程距離にヨーヨーを持った少年が踏み出した)」

ワルサーP38を構えた、全身を黒く着飾っている男―衛宮切嗣―はまさに暗闇の中の暗殺者といった風貌であった。
真っ暗闇な黎明な空に溶け込んでいる様でもあるのであった。

彼の目の前の男―六道骸―の先程のヨーヨーから針を出した攻撃を切嗣は威嚇判断捉えた。
皮肉にも骸の先程の攻撃は敵意が無い事を示すはずの攻撃が、逆に切嗣の神経を逆撫でさせてしまっていた。

だが結局切嗣にとって威嚇してくる者に問わず、怯える者、助けを請う者、仲間に勧誘する者、無条件で息子の衛宮士郎以外の参加者は敵と見なされるのではあるのだが。

「そんな銃を構えないでくださいよ」

一方、切嗣の心理を知るはずのない骸。
交渉をする者ではあるのだがその目は圧伏させる様な鋭い目つきで、どんな者に対してもこの警戒心は解かないであろう。

「僕の名前は六道骸です。以後お見知りおきください」

骸は自らの名を名乗る。
まずは信頼。
その信頼を得る順序をなぞる。

「…………僕は衛宮切嗣。よろしくね六道骸」

順番をわざと踏ませて油断をさせる。
案の定、骸は少し警戒心を落とした。

「(――恰好の獲物だ!)」

切嗣はワルサーを降ろすどころが、堂々と少年に狙いを定めた。



【COUNT-3】

僕の脳内に葛藤が生まれる。

今まで僕は命の天秤は1人でも重い皿が傾いた方を救う救済をした。
つまりは多数を生かす為に少数を殺すのだ。
生前の聖杯戦争においてもケイネス・エルメロイ・アーチボルト、雨生龍之介を自ら手を下した。
だが僕は今までの自らの行動に反してしまう行為をするのだ。

本来戦うべき相手は目の前の六道骸でも僕と士郎以外の98人ではない。
103人の人生を変えてしまったシャルル・ジ・ブリタニアの方であろう。
それが、今までの僕であったなら。

だが、今は違う。
僕が助けた子供、衛宮士郎を生かす為に多数を切り捨てる。
僕の生き方全てを批判する行い。
だがそれでも僕は戦うんだ!



【COUNT-2】

――衛宮切嗣。
いまいち信頼は出来なさそうですが、彼は多分僕が見てきた憎むべきマフィアから見てもベスト3に入るぐらいの人物であるでしょう。

そんな人物を仲間に出来れば、主催者への対抗も渡りあえるはずでしょう。

本当は沢田綱吉、雲雀恭也、古里炎真など仲間に率いれたくはないのですが実力は本物。
出来ればこのバトルロワイアル内だけでも利害の一致で協力した方が良いのかもしれませんね。



【COUNT-1】

衛宮切嗣。
六道骸。

2人の思考は交わるどころが永遠の平行線を辿っていた。

それぞれの思いを胸に切嗣はワルサーの引き金を慣れた手付きで、自分の手足を扱う様に引くのであった。



【SHOT!】

銃声がなり、撃たれた側が倒れる。
そして撃たれて倒れた者は頭を撃ち抜かれピクリとも動かなかった。

「よし、まずは1人目だ」

低く、年季の入った渋い声。
切嗣の声であった。

地面にくっついた様に動かない屍の骸。

調べるまでもない。
六道骸は死んだ。

379偽善正義 ◆WzpMn05TJA:2012/01/21(土) 11:25:11 ID:E1CCfOFYO
切嗣は少年を殺した事に、もはや罪悪感はなかった。

自分はもはや人間を手にかけ過ぎた。
もう洗っても落ちないほどの血、そして鉄の様な血のにおい。
全てが手遅れであるのだ。

生き方を決めた人間は引き返せない。
『死』と隣り合わせの戦いを繰り広げた切嗣にとってはどこでも戦いの場であり、抜けられない『宿命』でもあった。

「クフフフフフ……。僕を殺したとは思わない方が良いですよ」
「何っ!?」

先程に消えた声の主。
いや、ありえない。
彼は先程頭を撃ち抜かれた。
では誰だ?

    ショウネン
いや、六道 骸のはずがない!

横たわって動かなかった屍。
だが全てが霧に囲まれ、やがて霧は少年の姿を象った。

「なんだこの魔術は?見た事も聞いた事もないっ……」

死んだ体が霧になる魔術?
いや、そんなの魔術と例えられても良いのだろうか?

「いやはや、僕はなかなかしぶとい性格でしてね。因みにこれは魔術などではありません」

相手に不快を思わせる『クフフ』と笑う骸。
切嗣の警戒心は最高潮に達した。

「これは六道輪廻の戦闘能力です」
「な、なんだと!?」

六道輪廻。
人間は死ぬと地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人間道、天界道のいずれかへいくと言われている。
それが戦闘能力となっている。
完全に異常(アブノーマル)な話だ。

「今のは第一の道『地獄道』です。相手に幻覚を見せて精神を破壊していくスキルです」
「ふざけているのか……?」
「どうなのでしょうね?」

六道輪廻はどうであれこんなの対処出来るものであるのか?
幻覚なのに幻覚濃度が強すぎる。

「本当は協力を仰ぎに来たのですがそれも交渉決裂みたいです」

相変わらずに「クフフ」と笑いを止めない少年。
切嗣はやっとこの少年の危険さが伝わってきた。
恐らくあの言峰綺礼に匹敵する厄介さかもしれない。

「第三の道『畜生道』」

突如、右目に『三』の字が浮かぶ。
切嗣は深くワルサーを持ち直す。

「毒蛇か!?」

切嗣の周りに10匹相当の毒蛇に囲まれる。
うじゃうじゃと絡み、絡み、絡みあった蛇の大群。

「これも幻覚か?いや、これは危険な毒蛇本物だ。」
「クフフフフ、気付いたみたいですね。こちらは本物の毒蛇ですよ」

「(こんなの魔術なんてものを通り越している。確かに六道骸は天才な様だ。……だが若すぎた天才故にまだ彼はけつが青い。)」

切嗣はニヤリと勝利の笑みを浮かべた。
下を向いての笑みの為、骸はその余裕さに気付いていない。

380偽善正義 ◆WzpMn05TJA:2012/01/21(土) 11:25:53 ID:E1CCfOFYO
「君は油断のし過ぎだ!」

毒蛇に関わらずに少年へ銃弾を放つ。
予想していなかったのか冷静な骸の態度が若干乱れた。

「クフフフフ……。流石に経験の差というものが見えましたね」

少年の左肩に銃弾は掠っていた。
油断していた割に骸の反射速度は早かった。
というのも、たまたま骸が歩こうとした瞬間だったから逃げられた運でもあったのだが。

「……わかりました。あなたがマーダーであるなら僕が倒します」

ヨーヨーを構え先程の様に大量の針が放出される。
恐らくこれも経験上毒針とでもいったところであるのだろう。
切嗣は素早く次の有利な展開を作り上げる。

「だが僕にはまだ能力がある」

『時間操作』
衛宮家の魔術であり、体内の時流を操作する能力。
僕は体内時間を早め、高速移動で逃げられる様にした。

「遅いっ!」

毒針から素早く避ける。
地面に次々と突き刺さる毒針の雨。

「(さて、僕は選ばなくてはいけないか……)」

ここで危険な少年を殺してしまうか。
それとも危険などせずに『時間操作』をしながら逃げて、また装備を整えてからや、偶然会ったら殺すべきか。

今、考えている時間もそうない。

――よし、僕は行動に移す。

僕は大きく跳んだ。



  ◆  ◆  ◆

「逃げられてしまいましたか」

部下の武器であるヨーヨーを器用に回しながら武器をしまい込んだ。

戦いの跡というものも特にないまま、切嗣の撤退という結果にこの戦いは幕を閉じた。

「しかし、これはこれである意味助かりました……」

骸の顔色が悪い。
制限により六道輪廻の戦闘能力の体力の減少がいつもの何倍以上取られてしまったからであった。
いずれ無理も出来なくなるとただの少年化してしまう骸にとって長時間は戦っていられない。
流石に自分が都合良くは動かないらしい。



「はぁ、はぁ、はぁ……」

切嗣の脚はふらついていた。
こちらのふらつきは骸との戦いには起きなかった現象。

「くっ!?『時間操作』の負担か……」

こちらの切嗣も骸同様能力制限の対象であった。
だが今起きた事はポイントになる。

悔しがる事はせず、むしろ能力制限を知れた事に安心した。

「よし、負担の量は大体計算出来た。使い過ぎは良くないなこれは」

これからの先も長い。
切嗣はまだまだ戦い続ける事を――やめない。

381偽善正義 ◆WzpMn05TJA:2012/01/21(土) 11:26:34 ID:E1CCfOFYO



  ◆  ◆  ◆

「クフフ。しかしスタンスは変えた方が良さそうですね」

骸の予想通り、ある程度力のある人間が参加者であるという考えを思い出す。
切嗣の『魔術』という言葉を繰り返し使ったのを見ると、魔術師であるらしいと結論に至る。

またそういった参加者に自分は狙われるかもしれない。
だから骸はスタンスの変更を考えた。

主催者に対抗する仲間を集める。
このスタンスは絶対。
だが次からのスタンスは大きく異なる。

「話の通じないゲームに乗った人物(マーダー)に会ったら僕は躊躇いなく殺しましょう」

敵には容赦しない。
間違った正義。



「待っていろよ、士郎。必ず僕が父親として君をゲームで優勝させてやるからな」

また僕が怯える君を助けてやる。

彼の表情は未だに自分の息子の衛宮士郎を助ける為に参加者を全員殺すという闘争心が揺らぎなく見える。

助けるのは正義の味方じゃない、士郎の味方だ。
間違った正義。



切嗣と骸。
両者の掲げる正義は死人を出しても良いと考える悪の混ざった偽善的な正義を象っていた。

「「でも、それが僕の正義だ!」」

考え方が似て異なる2人の誓いがシンクロされた一瞬の出来事であった。



【G-7 市街地/黎明】

【六道骸@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【装備:ヘッジホッグ@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:健康、疲労(中)】
【思考・行動】
1:主催者に対抗する。その為に仲間を集めたい。
2:敵は躊躇いなく殺す。
3:沢田綱吉か雲雀恭也に頼みたくはないが頼る必要になるかもしれません。
【備考】
※継承式編終了後からの参戦です。
※六道輪廻の能力は使えますが普段より激しく負担が大きいです。
※衛宮切嗣に用心。



【衛宮切嗣@Fate/Zero】
【装備:ワルサーP38(残弾4/8)@現実】
【所持品:支給品一式、ワルサーP38の予備弾(残弾24/24)ランダム支給品×1】
【状態:健康、疲労(中)】
【思考・行動】
1:衛宮士郎を優勝させる。その為にはどんな手段をも厭わない。
【備考】
※死後からの参戦です。
※「時間操作」は使用できますが、通常時よりも負担がかかります。
※六道骸を危険視しています。

382 ◆WzpMn05TJA:2012/01/21(土) 11:29:11 ID:E1CCfOFYO
投下終了です

元ネタは初音ミクオリジナル曲『偽善正義』より

次は結構キャラクターを動かしてみようかなーと思いました

予約
キョン、ニンフ、姫萩咲実、長門有希、川澄舞、国崎往人、球磨川禊

383 ◆RmIe4rjRnw:2012/01/21(土) 16:55:05 ID:6hfrwUfs0
期限は明日ですが、予約の延長をして頂きたいです
よろしくお願いします

384 ◆WzpMn05TJA:2012/01/21(土) 17:25:17 ID:E1CCfOFYO
>>383
了解しました

◆RmIe4rjRnwさんの作品毎回楽しみに待っています
楽しみにしています

385 ◆SENAs8NCE2:2012/01/22(日) 00:18:15 ID:hcdrPMBQ0
前回は何の告知もなく予約を反故にしてしまい本当に申し訳ありませんでした。
PCの故障とリアルの都合でどうしても執筆ができず、告知もできませんでした。
予約させていただきますが、駄目なら駄目と言ってくださって結構です。

雲雀恭也、伊吹風子、棗恭介 を予約します

386 ◆WzpMn05TJA:2012/01/22(日) 00:36:35 ID:N4VJKAsoO
>>385
ダメなんて事はないです
いつでも大歓迎です

◆SENAs8NCE2氏さんの作品を久し振りに読めると思うと自分かなりワクワクしています

387 ◆SENAs8NCE2:2012/01/22(日) 15:45:12 ID:hcdrPMBQ0
では投下します

388 ◆SENAs8NCE2:2012/01/22(日) 15:45:30 ID:hcdrPMBQ0
棗恭介と伊吹風子の二名は、校内の探索を開始していた。
先の超能力者のように殺し合いに乗った人物と出会ってしまうことも有り得る話ではあったが、もし運良く志を同じくする同志に出会えたなら殺し合いへの反逆は大分楽になる。
一人より二人、二人より三人の方が心強い。
単純明快な理由であったが、勿論一刻も早く大切な仲間や友人と合流しておきたいというのも理由の一つである。亡くすには余りにも惜しい人達ばかりなのだから。
さて、少し話は変わるが。
恭介は仲間を探すにあたり、一つ最悪の可能性を頭に浮かべていた。
リトルバスターズの結束は余りにも強く、そしてその強すぎる結束が生み出すかもしれない事態を脳内で想定してみて、恭介には杞憂と笑い飛ばすことができない最悪。
ある意味では、棗恭介のIF。バトルロワイアルにて、守りたいものを守るために道を踏み外す可能性だって彼にはあった。むしろ可能性はかなり高かったとさえいえる。
正しい道を歩めたのは、単純に彼が誰よりも『二人』を見てきたから。

直枝理樹と棗鈴の二人の成長を。
最初はとても弱く、脆かった二人。
リトルバスターズが終わった時、間違いなく壊れてしまうくらいに。
だから繰り返した。
決められた結末に向かい同じ道を繰り返して、そして答えを得た。

恭介は信じる。
二人がどんな困難と出会おうと、決して折れないことを。
たとえ二人を待つのが終わり、『死』だったとしても、彼らは絶対に希望を捨てることだけはせずに最後まで立派に人生を歩んでいくと、今は心から信じられる。

が、例えば宮沢謙吾。
彼は『虚構世界』での暮らしを誰より望んでいた。
無論、理樹と鈴を大切に思う気持ちも恭介と同じくらいに強い。
謙吾は、考えたくはないが道を誤ってしまうかもしれない。
少なくとも恭介には、謙吾を責めることはできそうにもなかった。
繰り返す世界の中で、謙吾の心を土足で踏み荒らしたのは他ならぬ自分自身。
彼が道を踏み外したとしても、責められない。いや、元より責める気だってない。
あれだけの物語を繰り返し続けて、その苦労が全て水泡に帰すかもしれないと言われて。最善の選択として誰かのために誰かを殺す道を選んだとしてもそれは至極当然だ。
殺す道と、運命に逆らう道。
どちらを選んでも人間としてとても正しい選択である。


「(くそっ………何で俺は親友の事を信じきれねえんだよ)」


自分がリーダーなのだから、仲間を信じてやらなければならない。
だというのに、無駄に達観した脳は最悪の可能性ばかりを紡ぎだす。
分からない。
自分がどうすればいいのか、分からない。
親友をも疑ってかかり、正義以外全てを倒すのか。
分からない。

389 ◆SENAs8NCE2:2012/01/22(日) 15:46:13 ID:hcdrPMBQ0

「どうしたんですか棗さん。さっきまでの『キリッ』はどこいったんですか」
「別にどうもしねえよ。ちょっと考え事をしてただけだ」


嘘ですね、と風子は恭介の顔を見上げて言う。
しばらく見つめ合う時間が続いたが、恭介が先に根負けしたようだ。
参ったな、と頭を掻きながら恭介は薄く笑って見せた。

「なあ、伊吹。お前は自分が絶対に信用したい大切な奴が殺し合いに乗っているかもしれないとしたら
どうする?ちょっと御教授願いたいんだ」

薄い笑顔のまま、風子に聞く。聞きながら、さっきまで偉そうにエスコートしていた男が情けねえもんだと口には出さずに自嘲した。
風子は少し考え込むように目を閉じる。
無理もない。いきなりする質問にしては配慮が足りなかったことは重々承知。
だが、嘘でも何でもいいから自分を導く答えが欲しい。
それさえ得られれば、自分はきっと芯にすがり付くことができるだろうから。


「………皆さんは殺し合いには乗っていませんよ」
「いや、もしも乗っているかもしれなかったら、だ」


しかし風子は恭介の返答を聞いて不適に微笑んでみせた。
かかった、とでも言わんかのような笑顔が、まるでいつもの『遊び』での中で誰かの策略に嵌められた時のような『やられたな』という感覚に陥らせてくる。
笑顔を崩さずに風子は恭介の目を見て『答え』を口に出すのだった。


「信じてあげればいいんですよ。『俺の仲間たちは絶対に殺し合いになんて乗らない』って信じていればいい。『もしも』なんてことを言っていたらきりがないですから」


本当にやられたな。
棗恭介は敗北の感覚に支配されていた。
しかしそれは悔しさ溢れるものではなく、最高の戦いの後のようにどこか清々しくさっぱりとした、いつまでも感じていたいような敗北の感覚。

「そうだな。信じてやらなきゃ何も変わらねえよな」

行こう。
棗恭介の迷いは、今度こそ欠片も残さずに消えた。

390 ◆SENAs8NCE2:2012/01/22(日) 15:47:11 ID:hcdrPMBQ0


屋上。
早くも恭介は、ここに来たことを後悔していた。

前方には、明らかに不機嫌そうな顔をした一人の少年。
トンファーなんて物騒なものを装備しているし、どうやら寝起きらしい。
嫌な予感しかしないとはまさにこういう事だろう。
苦し紛れの爽やかスマイルをくれてやり、背を向けて逃げようとする。
風子を引っ張っていこうとしたが、何故か手応えがない。

「どうぞ。ヒトデですっ」
「伊吹てめえ!人が穏便に済ませるとこだったんだぞ!?」
「誰も済まされてやるとは言ってないんだけど」

少年は木製のヒトデをデイパックにしまうと、徐に立ち上がる。
何の疑問も抱かずに受けとる辺り何処かずれたやつらしい。だが放つのは殺気。先程の超能力者とは少し違う、ただ戦いたいと言うような殺気だ。
さて、どうするか。
風子に攻撃しない辺り、どうも殺し合いに積極的と言うわけではないようだが。


「君はなかなか強そうだ。僕の眠りを妨げたことも、君を咬み殺すことでチャラにしてあげよう――――ただし、身の安全は保証できないけどね」


少年が翔る。トンファーを装備したままで、かなりの速度で接近してくる。
物干し竿で斬る訳にもいかないが、恭介とて普通の不良などでは相手にもならないレベルの身体能力を有している。少なくとも、学園に潜入した諜報員を組伏せたり、銃弾を回避したりすることは『虚構世界』で経験している。
しかし………この少年は只者ではない。
勝ち目はそう高くないだろうことはよく分かっている。
ならば。一番穏便に、損害を少なくするのみだ。




「うわー!何だこいつめちゃくちゃつえー!」


トンファーの一撃をわざと食らい、吹き飛ばされてやった。
ダメージはなかなか大きい、やはり正面から激突しなかったのは正しかった。
風子が『棗さん弱っ!?最悪ですっ!!』なんて目を><の形にして慌てふためいている様子を見る限り、彼女の目からしても『ただ吹き飛ばされただけ』だったのだろう。

「興が削がれたな。でも君、トンファーが当たるほぼその瞬間に受け身を取るだなんてなかなか面白い。是非とも咬み殺したくなってきたよ」

さあ、問題はここからだ。
目的は一つ、『少年を仲間に引き入れること』。

「(ミッション、スタートだ)」

【G-6 中学校屋上/黎明】

【棗恭介@リトルバスターズ!】
【装備:物干し竿@Fate/stay night】
【所持品:支給品一式、海軍用船上槍@とある魔術の禁書目録】
【状態:疲労(小)、視界不良(小)】
【思考・行動】
1:リトルバスターズを結成して、バトルロワイアルを打倒する。
2:理樹と鈴は優先的に保護したい。
3:こいつ(雲雀)を仲間にする。
【備考】
※Refrain、理樹たちが助けにきた直後からの参加です




【伊吹風子@CLANNAD】
【装備:FN Five-seveN(6/10)@現実】
【所持品:支給品一式、FN Five-seveN予備弾薬(20/20)、ランダム支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:棗さんについていく。
2:岡崎さんたちを探す。
【備考】
※風子ルート終了後からの参加です
※実体で存在しています

【雲雀恭也@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【装備:仕込みトンファー@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:………?
【備考】
※継承式編終了後からの参戦です。

391 ◆SENAs8NCE2:2012/01/22(日) 15:52:06 ID:hcdrPMBQ0
投下終了です。
題名:「ミッションスタートだ」
元ネタ:『リトルバスターズ!』より

続いて
遠野美凪、刻命裕也、キャスター、更木剣八、巽完二の五名を予約します

392 ◆WzpMn05TJA:2012/01/22(日) 17:18:15 ID:N4VJKAsoO
投下乙です

恭介と風子コンビは和むし、シリアス面でも最高のコンビですね

恭介が雲雀相手にどんな事をやってのけるか楽しみな話でした


では、自分も投下します

393かみのおとされもの ◆WzpMn05TJA:2012/01/22(日) 17:19:53 ID:N4VJKAsoO
このバトルロワイアルの会場の島ではたくさんの参加者の人間ドラマが繰り広げられようとしていた。

今回はそのドラマを【D-6】にだけ絞って見ていこう。



【START】



「はぁ?」
「……キョンさん?」
「ちょっ、俺をそんな可哀想な目で見るなっ!」

仲間。
戦うつもりがないらしい、普通の女子高生の姫萩咲実さんとエンジェロイドだが未確認生物かは知らんがハルヒが喜びそうな存在ニンフ。
それがこのバトルロワイアルが始まって運良く見つけた仲間。

「あんた脳みそ浮いてんじゃない?」
「…………」

いや、こいつは要らなかったな。
姫萩さんだけで充分だったな。
そんな姫萩さんからも、今は怪しまれているんだがな……。

こうニンフはハルヒ、姫萩さんは朝比奈さん的な雰囲気があるよな。

このまま行くと長門的な無口キャラか読書キャラが出てくるのではないかと思ったり。

むかつく男キャラとかも入れての偽SOS団とか誰か言い出すかもしれないな。

今、2人から怪しまれているのはそのSOS団のせいだったりする。

「宇宙人?未来人?超能力者?世界を実現化させる神の様な存在?しかも主催者の進行役の朝倉涼子も宇宙人ですって?
信じられないわよっ!」
「キョンさん……人死んだショックでおかしくなったりしません?」
「だからないっての!これ、マジだし!
大体ニンフがそういう存在否定すんの!?」

羽根生えた未確認生物なんてのもバリバリのイレギュラーな存在であるじゃないか。
自分の異常は信じるが、見てない異常は信じないってか!?

「とりあえず涼宮ハルヒ、長門有希、朝比奈みくる、古泉一樹がそれに該当すんの!朝倉涼子に至っては殺されかけたんだからな!」
「……わかったわよ、信じるわよ」

それでも半信半疑なニンフと姫萩さん。
俺もそういう風に疑う側に居たかったよ。



◆◇◆◇◆◇

先程自分と同じくらいの女子学生を襲った少女―長門有希―はナイフを構えながら森を抜け出した。

いつも親友達の集まりであるSOS団に居る時の様に無表情。
どんな心境であるのか、外からではわからないであろう。

「情報統合思念体にこの件についてコンタクト開始」

バトルロワイアル開始から何度も試した情報統合思念体のコンタクト。
何度もめげずに彼女は頑張っていた。

それは戦闘を終えてからも続いていたのだった。

「――失敗」

だが結果は変わらず。
いや、長門はもう成功する事に期待はしてはいなかった。

もはや、意地や0.1%以下の可能性に賭けるといった感じであった。

「もしかしたら涼宮ハルヒがこの殺人ゲームを望んでいる?」

考えられる可能性は低い。
むしろ望むはずがないと涼宮ハルヒを観察していた長門が判断をする。

しかし、どうしても彼女の存在だけがわからない。

「――朝倉涼子」

自分自身のバックアップ的存在。
長門と同じ組織『情報統合思念体』という宇宙組織のメンバーである宇宙人。
長門と同じく涼宮ハルヒを観察する者。

394かみのおとされもの ◆WzpMn05TJA:2012/01/22(日) 17:20:27 ID:N4VJKAsoO
「彼女の事は重要だけど置いておいて……」

朝倉涼子が何かに干渉した形跡がない。
つまり泳がせても良いと判断した。

「涼宮ハルヒを生かしておかなければならない」

涼宮ハルヒの無意識の力。
願望を実現化させる神にも匹敵する力。

彼女が生きていて、こんな殺し合いなんか起きなければ良いと思い込ませるだけで良い。
元の平和な日常に戻りたいと思わせるだけで良い。

重要なのは涼宮ハルヒを生かす事。

「そして涼宮ハルヒが誰より興味を持ち、彼女の暴走を食い止めるブレーキ役の彼を死なせてはいけない」

涼宮ハルヒのSOS団に所属する唯一の普通の少年のキョンはハルヒの心を動かす大きな存在だ。

彼女の方針は決まった。
涼宮ハルヒ及びキョンを生かす事であった。
それ以外の参加者を殺す。

「大丈夫、涼宮ハルヒの力があればこの出来事すら無かった事にし、103人にまた平和な日常が戻る」

それが全ての人々にとってのハッピーエンド。
全員が望む結果であろう。

「その為なら私は……SOS団とも敵対する」

ナイフを強く握り締める。
一時とはいえ、他の人全員を殺さなくてはいけない事に戸惑いはあった。

決意と戸惑い。
揺れ動く思考での中、彼女は無謀な参加者3人を見つけた。

しかも1人は長門が護るべき相手と判断したキョンも混ざっている。

彼女は近付かないわけがなかった。



◆◇◆◇◆◇

「キョンさん、ニンフさん、誰か女の人がこっちに向かっていますよ?」

キョンとニンフが隣同士、咲実がそれに向かい合う位置になっていた。
そして咲実に見えたその参加者はキョンとニンフの後ろから向かってきていたので2人は気付いていなかった。

「首輪も付いています。おそらく参加者で、制服も着ています」
「何!?」

キョンとニンフが後ろを振り向く。

「あ、」

キョンの瞳には見覚えのある少女の姿があった。
ショートカットで無表情な顔。

ほとんど毎日顔を合わせては色々な事件に巻き込まれて助けてくれた少女。
同じSOS団の宇宙人の少女。

「長門!」

嬉しさが広がった。
昨日も会ったというのにひどく懐かしい親友を目にした気分であった。

「えっと……長門ってどれだっけ?宇宙人?未来人?」
「宇宙人の奴」
「それにしては普通の人じゃない」
「お前(ニンフ)が言うな……」

キョンとニンフが漫才まがいな事をしているとやがて3人の目の前に長門有希が現れた。

「長門!探していたぞ」

キョンが前に出て長門の肩を叩く。
嬉しさの現れだった。

「私もあなたの事を探していた」

と、あまりにも自然な反応の為、キョンは気付かなかった。

キョンから素早く離れ握ったナイフを2人の少女に向かい斬りつけた。

395かみのおとされもの ◆WzpMn05TJA:2012/01/22(日) 17:21:03 ID:N4VJKAsoO
「キャッ!?」
「ァン!?」

2人とも服が破れた一直線の傷が出来た。
キョンの親友という事で、襲う事はないと思っていた為、警戒心も0であった。

「何してんだ、バカっ!」

キョンが長門を背中から抑えつけ、ナイフを持った右腕を動かせなくした。

「彼女達は悪くないんだ!だから襲わなくても良いんだっ!」

冗談だと言ってほしかった。
親友がゲームに乗っているなんて信じたくなかった。

でも、彼女は冗談を言う様な人ではないのはキョンは知っていた。

「なぁ、嘘だよな長門?」
「大丈夫、あなたは殺さないわ」
「そんな話はしてない!」

長門の目は本気だった。
見た事もない長門の本気にキョンは背中からぞくりとした悪寒が稲妻の如く走った。

「邪魔」

と強い力で左腕でキョンの胴体に叩きつける。

「ぐぅ!?」

朝倉涼子と戦いにった時に思い切り蹴られたシーンがキョンの頭に再生されながら地面に倒れ込んだ。

「まずは1人」

ナイフを握った右手が、怯えた咲実に襲う。
咲実は動揺していて動けない。

ただナイフを待つ形になっていた。

「させるか長門!」

倒れたまま長門の両足に抱きつく。
これで全体を歩けなくする。

「はぁ!」

そして、力を出しながら立ち上がる。
キョンには問いただしたい事がたくさんあった。

どうして殺し合いをする?
こんな事をして何になる?
意味なんかないだろ!
日常にお前は戻れなくなるぞ!
ふざけんなよ長門!
殺し合いに乗るな!

言いたい事は万を越える程ある。

だが何を訪ねれば良いかわからない。

「これは全員にとって必要な事」

長門が訪ねる前に口を開いた。
いつもと同じ口調なのにキョンは悲しみという名のナイフで心が刺されていくのを感じた。

「涼宮ハルヒが居ればこのゲームは無かった事に出来る。私があなたを生かすのは涼宮ハルヒを動揺させない為だけ」
「っ……!?」

泣きそうになった。
長門から言われた拒絶に近い言葉。
自分はハルヒの為の道具として生かされる対象になった。

情や親友の為だという意味ではなかった。

「やめてくれ長門……。そんな事、お前はしなくて良いんだ……」
「……涼宮ハルヒが暴走してしまったのなら私の責任にもなる。だからあなたのお願いでも今回だけは……」

最後まで話そうとはしなかった。
そこで長門は話を終わらせた。

「お前のせいでもハルヒのせいでもない!シャルルや朝倉涼子達の仕業なんだよ!」

キョンは立ち上がった。
あんな長門をこんなにまで決意させる主催者に怒りが込み上げてくる。

「そんな主催者なんて役者、いくらでも準備出来る」

396かみのおとされもの ◆WzpMn05TJA:2012/01/22(日) 17:21:40 ID:N4VJKAsoO
抑えていたキョンが手を離していた為長門は自由になっていた。
自分と話していれば危険がないと思った甘い考えのキョンの考えを裏切った。

長門はナイフを持ったまま次はニンフに向き合う。
羽根の付いた人間の姿を見て目が少し驚きに変わる。

だがただのイレギャラーな人間と判断しその胸に突き刺す様にナイフを差し込む。

「がぁぁぁぁぁ……」

だがナイフが差し込まれた体はニンフの小さい体ではなく、キョンの左腕であった。

「ぐぅ……。ナイフで刺されたのは2度目だからって……耐久がつくわけじゃ……ないんだな……」

ハルヒが居ない寂しいつまらない世界。
SOS団がバラバラだった世界。
そこでもナイフを刺された事があったなと今更思い出した。

「あ、あなたは死んではダメ……。涼宮ハルヒが……」
「ハルヒの為だけかよ……」

キョンは涙を流していた。
もう自我は止められなかった。
長門は止められないともうわかっているのに……。

「お前は……、お前は俺が死んでほしくないって思わないのかよ!……チクショウ……」

長門は何も言わない。
ただ、刺さったナイフを無言で抜いた。

「がぁっ!?」

細胞に、血管に傷付けるナイフ。
削られていく様な感触。

「私は……」

長門から答えを出される。
だが聞きたくなかった。

聞いたら最後、彼女との関係は崩れてしまいそうで……。

「退いてくれ……。長門……。でないと俺がお前を許せなくなる……。……俺達は仲間だ。次会う時は……そんな考えやめてくれよな……」

前を向けない。
血の出血が口を動かせてくれない。
キョンは地面に足を着いた。

「……ごめんなさい……」

長門はキョンの目の前に救急箱を置いた。
これが長門がキョンにかける情けだと言う様に。

「……ありがとうな長門……。だから俺はお前が殺し合いに乗っている事が不思議なんだ……。俺……が大好きな親友だから……」

長門はもう目の前に居ない。
敵対してしまった長門。
殺されかけては助けてくれる長門。
何回も救われている。

「今、こうして居られるのも長門のおかげじゃないか……。許せないわけないだろぅ長門……。頼むからさ……、殺し合いなんかせず、またいつもみたいに俺とハルヒと朝比奈さんと古泉を助けてくれよ……」

長門の置いていった救急箱に懇願する様に無様に叫んでは心から祈った。

397かみのおとされもの ◆WzpMn05TJA:2012/01/22(日) 17:22:58 ID:N4VJKAsoO
「またあのSOS団に戻りてぇよ……」

キョンの言葉は無残にただ流されていくのであった……。



◆◇◆◇◆◇

「私は……あなたに死んでほしくない」

意外だった。
そんな感情が自分にあった事に驚く長門。

でも、もう戻れない。
彼は絶対に私を許してはくれないだろう。

「涼宮ハルヒを優勝させる為、……参加者を皆殺しにする」

だって、彼女はもう戦う道を選んでしまったのだから……。



◆◇◆◇◆◇

「キョンさん……」
「キョン……」

泣き崩れるキョンをただ眺める事しか出来ない咲実とニンフ。
正直声を駆け辛い。

たった数分前まで面倒くさそうにする元気な少年というイメージをガラリと変えられてしまったのだから。
親友で命の恩人とまで言っていた長門有希と敵対し、落ち込み、悲しんでしまったから。

だがここはバトルロワイアルを強制させる為の舞台。
休める場所などない。

「殺しやすそうな3人が残った……。あれなら楽に完殺出来る」

暗闇からずっと少女とのいざこざを一部始終はっきりと見ていた鷹が傍観していた事は誰も気付いていない。

鷹は武器を持ち、3人を殺そうと立ち上がる。



◆◇◆◇◆◇

「キョンさん、まずは手当てをしましょう」

救急箱を開け様と手を伸ばす咲実。





だが――、

「ちょっと、何よあんた!?」

休む間もなく、三節棍という棒の様な武器を持った少女―川澄舞―の登場であった。

「佐祐理と祐一の為、私は戦う!」

素早く走り込み持っていた三節棍でニンフを叩き込む。

「キャッ!?」

横腹が叩かれる。
中の機械やら何かに大きなショックが走り込む。

「……」

無言での二撃目。
一撃目より重そうな攻撃がまたニンフを襲う。

398かみのおとされもの ◆WzpMn05TJA:2012/01/22(日) 17:23:31 ID:N4VJKAsoO
「あぁ!?」

軽い体のニンフは跳ばされてしまう。
だが運良く、その目の前に咲実が看病をしようと降ろしたデイパックがあるところに飛ばされた。
自分が掛けてあるデイパックは取り出しにくい為、そのまま武器を取り出す。

「木彫りの星?メダルの束?違う、こっち!」

竹刀。
ごく普通に、剣道で使われる武器。

「ここより近付いたらこの竹刀で叩くんだからね!」

怯えた声で、目の前の少女に竹刀を向ける。
だが誰が見ても今、彼女は戦える様な精神力は持っていない。

「はぁぁっ!」

弱々しい掛け声、全然使いきれていない弱々しい武器の振るい方。
毎夜、見えなく素早く強い魔物と戦っている彼女にとってもはや弱い以前の話であった。

「竹刀……。そんなんじゃ勝てない」
「ぇ……?」

一撃を手に払われる。
ツボを抑えられた様に手が使えなくなりそのまま竹刀を地面に落とされてしまった。

ただコロコロと竹刀が転がる。
ニンフが取りに行きたくても時間がかかる場所へ飛ばされた。

絶望。
しかも、追い討ちするかの様に不幸が永遠と続く。











「何やってんだ、舞。早く決着を付けろ」
「……え?」

キョンの看病をしようとしていた少女、姫萩咲実の胸に穴が飽き、血が出ていた。

「ど……して、どう……て」

いや、出ないで。
溢れないで。
なんで、今に限ってこんなに見た事がないくらい血が滝の様に溢れるの?
どうして手で抑えても、その隙間を縫う様に血が溢れるの?

「どうしてって、お前はこれから死ぬからさ」

乱入者、川澄舞の協力者国崎往人の登場は放たれた弾丸の様な登場だった。

「じゃあな、お前はゲームオーバーだ」

ニューナンブの引き金を咲実に押し付けて発射。
結果は言うまでもない。

既に胸からは血が流れ続け、頭からは弾丸が貫通。
脳みその欠片らしきものがこびりつく様に広がる。

399かみのおとされもの ◆WzpMn05TJA:2012/01/22(日) 17:24:17 ID:N4VJKAsoO
100人中、100人が死んだと口を揃えるほど、彼女はもう既に動かない。



◆◇◆◇◆◇

姫萩咲実は下校途中を最後に元の世界の記憶は無かった。
つまり彼女は下校途中にゲームに巻き込まれたのだろう。

そんな咲実は実はキョンとニンフには話していないが、肉親を失っている過去を持つ。
そして親戚を転々としたが酷い生活、酷い生活の転々とした暮らしでもあった。

人の信じる事にかけた彼女は学校でも良い生活とは言えなかった。

そして、皮肉にもこのゲームに巻き込まれたキョンとニンフが彼女の支えとなった。
わずか数時間としか話せなかったがそれは確かに彼女を強くさせようとする事であった。

だが、それは急遽殺人者の乱入続きでついに自分の死が決まってしまった。





こんなゲームで何がしたいのだろう?


私の価値とは?

人として生まれて幸せじゃなかった!
生   と   せ
っ   は   に
て   な   なきたいな……。
結   ん   り
局   な   た
な   の   かなしむ人なんて。
ん   だ   っ   な
だ   ろ   た   ん
っ   う   な   て
た   ?   …   嫌
の       …   い
だ       。   。

うーん……絶望。
?    対
     に
     狂
     っ
     て
     い
     た
     私
     の
     物
     語る事はもうない……。
     に
     幕
     。





どうせ……。
私なんて……。
ツイていない憑かれた人生だったなー……。

そうだね、私は……。
神様から落とされた子供なんだ……。



◆◇◆◇◆◇

「姫萩さん!……姫萩さん!」

彼女は最後に何を思ったのか?
絶望した様な……。
全てを諦めた様な……。
そんな可哀想な死に顔だった……。

キョンは目を背けたかったが、咲実の死に顔が忘れられなく……とても印象的であった……。

「おい、悲しみに暮れている時間はないぞ小僧」

往人のニューナンブがキョンに向けられる。

400かみのおとされもの ◆WzpMn05TJA:2012/01/22(日) 17:24:59 ID:N4VJKAsoO
「(自分も姫萩さんと同じ運命を辿るか……。仲間と同じ運命を辿れるなら……
――俺は本望なんだよっ!)」
「さっきの少女にはお別れの時間すらなかったが、お前はもうお別れは済んだといったところか」

キョンは目を瞑る。

(どうせ何回か死んだ様な命なんか奪いやがれよ……)
(長門……ごめんな結局殺されちまう……)
(朝比奈さん……もう一回メイド姿見たかったな……)
(古泉……なんでお前と会えないとなると毎回微笑みフェイスが見たいと思ってしまうんだ?……)
(ニンフ……ごめんな、さっきに逝ってるよ……)
(ハルヒ……すまん。特にお前には言う事ないみたいだ。だけど、俺お前の事……)

「諦めるんじゃないわよー!キョン!」
「は、ハルヒ……か?」
「は?完全に頭イかれたのキョン?」

口調がハルヒだと思ったらどうやらニンフであった事にキョンは驚いていた。
どうやらあの男と女は追って来ていない様だった。

ニンフが俺を引きずっていた。
今にも折れそうな細い手で。

「すぐに……、街に戻って……民家に連れて行くから……」
「……ごめんなニンフ。色々巻き込んじまったな……」

数十分前まではキョンもニンフも咲実も笑っていた。
初対面には思えないほど親しくなれた。

だが、今はもう長門とも敵対し咲実という犠牲を出してしまった……。

「生きてるのが辛いよニンフ……」
「キョンのくせに死ぬなんて許さないんだからね!」

(嗚呼、やっぱりニンフってハルヒにどことなく似ているかもな……)

キョンの意識はニンフに引きずられたまま民家に入った瞬間に途切れたのだった。

「良かった……。危ないけどまだ生きてる……」

長門が渡してくれた救急箱、それに今から入る民家にも救急箱ぐらいあるだろう。
ニンフはボロボロの傷だらけの笑みをこぼした。




◆◇◆◇◆◇

「しかし、なんだあの小娘の技」

羽根の生えた少女の口から放たれた『超々超音波振動子(パラダイス=ソング)』という、周囲に音波を放つ技に往人も舞も足止めをくらってしまっていた。

そしてようやく、動けるぐらいまで回復をした。

「まぁ、最初の戦いにしては充分だろうな」

ニューナンブに新しい弾を込めながら満足そうに語りかける往人。

「……そう」

一人の少女を殺し、武器といえば一応武器である竹刀を手に入れた。
二人ぐらい逃がしてもどうせあんなにボロボロ。
どうせすぐに死んでしまうだろう。

「行くぞ舞、次の参加者を殺しに」
「……わかった往人」

本当は殺人などしたくはない二人の殺人劇はまだ開幕をしたばかりであった。

401かみのおとされもの ◆WzpMn05TJA:2012/01/22(日) 17:25:41 ID:N4VJKAsoO










◆◇◆◇◆◇

『いやー……さっきの爆発みたいな音すごかったなー』

興味津々。
無駄なところに今更出遅れた不幸の塊の男(球磨川禊)がやって来た。

数時間前、宗像形を狂人にした男は目的なくブラブラと歩いていた。
だが、みんな不幸を避けるかの様に誰とも出会えない。
しかし、さっきニンフの放った『超々超音波振動子』の高い音を耳にキャッチした球磨川は走ってその場に向かった。
球磨川の好きなジャンプマンガなどの主人公が言うところの『戦いが俺を待っている』という様な感じだ。
――だが実際音源となった場所に来てみると惨劇のあと。
血、血液、血痕。
この周辺の野原の葉は大体が赤く染まったものでたくさんであった。
そして、球磨川の求めていた戦いは既に終わった後。
変わりに1つのその戦いを告げたものを見つけた。

『うわっ!?人が死んでる!?』

本気なのか冗談なのかわからないリアクションをする球磨川。
横たわっている少女。
彼女の周りだけ血が濃い。
そっと、そっと、意味もなく彼女に近付きその顔を見てみた。

『うーん……良い顔で死んでるなー……』

全てに絶望した表情。
胸と頭にそれぞれ一発ずつの銃痕。
なんとも惨い死に方だと球磨川は思った。
さて、球磨川にとって予想外な事になってきた。

『……』

球磨川は自分の両手を見る。
自分の生まれつきの不幸、過負荷の力を発揮させる力を持つ。

『さて、こんな力を使ったら彼女は喜ぶのかな?
それともやっぱり絶望するのかな?』

考える素振りを見せる球磨川。
だが、答えは出ない。

『まぁ、いっか。僕ってつくづく甘い性格だよなぁ。
人類は僕のこの慈悲深いこの行いを尊敬するべきだね』

死んだ少女の胸に手を当てる球磨川。
流れの止まった血が球磨川の両手を汚す。
染み込む様に、呪う様に、乗り移る様に、その真っ赤な血が触れた物を汚す。

『――大嘘付き(オールフィクション)』
現実(全て)を虚構(なかった事)にする球磨川十八番のスキルが発動する。

すれと先程までに死に絶えていた少女の2つの銃痕は消え、穴や傷の開いた服装すら復元する。

全て一瞬の出来事だった。

「ぅ、ううん……」
『起きたね♪』

それから少し眠っていた彼女も5分くらいしたら目を覚ました。

目を覚ました少女、姫萩咲実は知らない男の声をした方向を向く。

「ひぃ、だ……誰……?」
『僕の名前は球磨川禊
安心して良いよ、僕は君を助けたんだよ、喜んで良いよ
アシュラマンみたく「カーカッカッカッ」って笑っても良いよ』
「……アシュラ、マン?」
『やっぱり今の子にキン肉マンは伝わらないか……』

ジャンプマンガの大好きな球磨川のジャンプ知識にぽかんと見ている彼女になんか自分が滑ったみたいで少し恥ずかしくなったりした。
それ以前に球磨川は『今の子に』と言っていたが、球磨川と咲実の年齢は対して変わらない。
どちらも高校生である。

402かみのおとされもの ◆WzpMn05TJA:2012/01/22(日) 17:26:25 ID:N4VJKAsoO
『君、名前は?』
「え?あぁ、すいません名乗っていませんでしたね。姫萩咲実です
……で、球磨川さん話があります」
『?』

咲実の表情は少し強張っていた。
大体球磨川はその表情から言いたい事がわかった。

『「どうして私を蘇らせたの?どうせ私なんて死んだままで良かったのに……」なる程ね咲実ちゃん』
「っ!?」

馴れ馴れしく球磨川は咲実を既に名前+ちゃん付けで呼んでいた。

『どうやらこの場で何かあったみたいだね?もしかしたらこのバトルロワイアルの開始よりずっと、ずっと前から……』

見透かした目で球磨川は見る。

球磨川は思った。
不幸な人生を送ってきた少女を助けられないか?
自分もたくさん不幸を送ってきた故に、彼女には幸せななってほしくなってきた。

「……その……、……」

本来、人に言うべきではない話。
咲実はカウンセラーに話す様に球磨川に自分の生い立ち、さっき閉じた自分の人生の話をした。

球磨川は茶化した様子はない。
球磨川を知る人物なら全員、こんな球磨川は有り得ないと言われるだろう。

『うん。ありがとうね咲実ちゃん』

球磨川は『大嘘付き』で彼女のその様な記憶だけ消そうとしたが制限されている上、どの様な記憶変化になるか想像がつかない。
根元の記憶すら虚構にしてしまうかもしれない。
それに根本的な話『大嘘付き』はあと1時間は使えない。

『記憶の事ならあれがあったじゃないか』

デイパックを漁りながら球磨川は長い刀を取り出した。
武器の取り出しに怯える咲実。
当然先程殺されたので武器にトラウマがあるのは球磨川だって承知の上だった。

『これはね「ブック・オブ・ジ・エンド」っていうの。咲実ちゃん、これは人を殺す武器じゃないんだ、だから1回刺されてみて』
「……え?」

殺す武器ではない?
おもちゃなのかと疑う咲実だが真剣に近い。
球磨川の言う事に理解しかねる。

『どうせ死んでも良いなんて考えているなら良いじゃん。これに刺されてからでも。恩返しって事でダメかな咲実ちゃん?』
「……わかりました」

ギブアンドテイク。
それを言われたら断るに断れない。

早いところ効果を確認したい球磨川は許可と同時にブック・オブ・ジ・エンドで胸を刺した。

「ぁれ?」

――咲実の記憶が改ざんを始める。



◆◇◆◇◆◇

403かみのおとされもの ◆WzpMn05TJA:2012/01/22(日) 17:27:35 ID:N4VJKAsoO
「あれ?いつも1人の私を支えてくれた球磨川さん?」
『ん?』
「学校でのいじめを助けてくれた球磨川さん。親戚で私と一緒に着いて来てくれた球磨川さん。バトルロワイアルが始まってキョンさんとニンフさんと一緒に仲間だった球磨川さん」
『……ちょっと効果強すぎないこれ?』

球磨川にとって調子の良いポジションに咲実の脳内の中で居た事になっている。
有りもしない記憶が次々と沸く様だ。

「私の初恋で、今も好きな―――さん」
『え?こ、これはない……これはない』

案外すぐに人を好きになるクセがある球磨川。
咲実の恥ずかしがる態度に球磨川は目も当てられなかった。

「着いていて良いですか球磨川さん?」
『……ぅ、うん、良いんじゃないかな?』

球磨川の顔も相当赤くなっていた。
普段は人には嫌われる球磨川のウブさが若干目立っていた。

『(確かもう一回あれで刺せば元に戻るらしいけど……なんかおいしいポジションだからもらっておこう)』

好き勝手に物事を進める球磨川。
彼がこのバトルロワイアルでやりたい事、したい事自体が未だ闇の中である。

◆◇◆◇◆◇

「キョン……。大丈夫だからね……」
「…………」

戦いを止めさせる為に今から回復をしていく者。



「涼宮ハルヒの優勝の為に……」

戦いに身を投じる者。



「舞、次は西の方へ行ってみるか?それとも北にするか?」
「……どっちでも良い」

協力し、大事な人物を守る為、鬼となる者。



『ハハハハハ……』
「球磨川さんが好きなアシュラマンみたく笑っても良いんですよ?」

全てを『嘘』に染める者。



様々な人間ドラマがそこでは繰り広げられていた。

――では、次はどの人間ドラマを照らしあわせようか。
カメラは1人1人の姿を捉えていた。



【D-6 街/早朝】

【キョン@涼宮ハルヒの憂鬱】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 マフィン@リトルバスターズ! ランダム支給品×2】
【状態:気絶、疲労(大)、傷(多)】
【思考・行動】
1:ニンフと行動。
2:SOS団と合流。
3:殺し合いはしない。
4:……長門……、……姫萩さん……。
【備考】
※涼宮ハルヒの消失終了後からの参戦です。
※ニンフの気持ちに全く気付いていません。



【ニンフ@そらのおとしもの】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 救急箱@シークレットゲーム-KILLER QUEEN- 木彫りのヒトデ10/10@CLANNAD ゲームセンターのメダルの束50/50@とある魔術の禁書目録 ランダム支給品×3】
【状態:疲労(大)、傷(多)】
【思考・行動】
1:キョンと行動。
2:殺し合いはしない。
【備考】
※カオス戦(1回目)からの参戦です。
※キョンに対して色々な気持ちが生まれ始めています。
※咲実のデイパックを回収しました。

404かみのおとされもの ◆WzpMn05TJA:2012/01/22(日) 17:28:45 ID:N4VJKAsoO
【D-6 野原/早朝】

【長門有希@涼宮ハルヒの憂鬱】
【装備:ナイフ@現実】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:健康、揺らぎ】
【思考・行動】
1:涼宮ハルヒを優勝させる。
2:……皆殺し。
3:……あなた……。
【備考】
※涼宮ハルヒの暴走終了後からの参戦。



【川澄舞@Kanon】
【装備:三節棍@リトルバスターズ!】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:怪我(小)】
【思考・行動】
1:佐祐理と祐一と共に日常に帰る。
2:往人の提案に乗り、佐祐理、祐一、観鈴以外の全参加者と主催者を殺す。
【備考】
※舞ルートからの参戦です。
※魔物を呼び出す力は制限されています。



【国崎往人@AIR】
【装備:ニューナンブ5/5@現実】
【所持品:支給品一式 ニューナンブの弾丸30/35 虎竹刀@Fate/stay night ランダム支給品×2】
【状態:怪我(小)】
【思考・行動】
1:観鈴を生き残らせる。
2:舞と共に観鈴、佐祐理、祐一以外の全参加者と主催者を殺す。
【備考】
※観鈴ルート確定直前からの参戦。
※法術は制限されていません。



【球磨川禊@めだかボックス】
【装備:ブック・オブ・ジ・エンド@BLEACH】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:『目的なんて無いよ』
2:『咲実ちゃん可愛いな〜』
3:『安心院さんでも絡んでんじゃない?』
4:『めだかちゃんか善吉ちゃんにブック・オブ・ジ・エンドで斬りつけたい』
【備考】
※戦挙編の庶務戦終了後からの参戦です。
※大嘘憑きは回数制限です。自身の回復は5回まで、死者の復活も5回(残り4回)、自身の復活は3回、普通に能力として使うなら1時間に1回です。



【姫萩咲実@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:なし】
【所持品:なし】
【状態:健康、記憶改ざん】
【思考・行動】
1:球磨川さんと行動。
2:球磨川さんは命の恩人。
3:球磨川さんは良い人。
4:球磨川さんは優しい人。
5:球磨川さんは初恋の……秘密♪
【備考】
※本編開始前からの参戦です。
※ブック・オブ・ジ・エンドの効果により球磨川の事を信頼しておりますが、もう一度斬られると元に戻ります。



【救急箱@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
傷や風邪を治す薬などがたくさん入っている。
EP2にて御剣総一のPDA破壊の事故の時に主催者側から意図的に渡された。

【木彫りのヒトデ@CLANNAD】
風子が1つ1つ丁寧に彫って作ったヒトデ。よく星に間違われる。

【ゲームセンターのメダルの束@とある魔術の禁書目録】
御坂美琴の武器。普通のメダルだが、これに美琴の電撃を付加すると最強の技『超電磁砲』となる。

【虎竹刀@Fate/stay night】
藤村大河愛用の竹刀。

405 ◆WzpMn05TJA:2012/01/22(日) 17:31:10 ID:N4VJKAsoO

長ったらしい話でしたが投下終了です

本当は2人くらい死者が出る話になるはずが…、また書いていての展開が…

元ネタはマンガ『そらのおとしもの』より

予約
来ヶ谷唯子、C.C.、御剣総一、椎名

406名無しさん:2012/01/22(日) 18:17:13 ID:A0ERbbZ.0
投下乙…なんだが。
死者蘇生ってありなのか?
まあ、氏の俺ロワなんだし深く突っ込む気はないけど

407 ◆vQfaAFC7Cg:2012/01/22(日) 18:26:04 ID:rK3mc1aU0
影の全体の管理人です

これは球磨川というキャラクターを生かす手段ですからね
原作には忠実にしたいというコンセプトがあります
それに登場話『嘘の境界』にて既に明記されてありましたしね


一応球磨川禊の『大嘘付き』の死者蘇生について、放送で死亡が告げられた人物のみ蘇生不可という事にしておきましょう

408名無しさん:2012/01/22(日) 19:01:08 ID:FhxNENAs0
確かに原作には忠実で弱い者の味方な球磨川らしい話だよな

球磨川は西尾ロワでもキャラを復活させている話が適用されているしな

放送のフラグが建てられるし俺はすげー面白かったな
咲実の死の描写も斬新で好きだったな


ただ蘇生ってのはやり過ぎはいけないってぐらいだな


キャラの蘇生って古いアニロワの長門もあったし、今に始まったわけじゃないしな

409 ◆WzpMn05TJA:2012/01/22(日) 19:25:53 ID:N4VJKAsoO
そうですね

これからは多分あまり蘇生をする展開はないとは思うのですが自重していきます

ただ球磨川本人の蘇生というstay nightのバーサーカーの様な能力がありますので、この辺の展開だけはご理解していただきたいです


原作に忠実にし過ぎてのご都合主義の連発という事だけは避けようと努力しています


こんなダメダメな書き手管理人のゆる〜いロワですがお付き合いしてくだされば幸いです

410 ◆RmIe4rjRnw:2012/01/22(日) 19:50:25 ID:uZm5P10A0
投下乙です
どちらの作品も続きが気になる話でした。

…球磨川は本当においしいキャラですね。いや、本当に。


自分も投下させていただきます

411魔神が 目覚める 日 ◆RmIe4rjRnw:2012/01/22(日) 19:54:22 ID:uZm5P10A0
街路灯も無い道を、直井君と二人で並んで歩いている。
「それでその時、音無さんは……」
直井君は自分の話はせず、歩きながら延々と『音無さん』の話をしている。
『音無さん』への尊敬の念がありありとわかる話し方だが、何分も聞いていると流石に飽きてしまう。
適当な相槌を打ちながら、デバイスを取り出して時間を確認する。
[02:07]という表示を見て、思わず立ち止まり溜息をついた。


「どうした?白鐘」
数歩前の直井君も、立ち止まって話しかけてくる。
もう2時間が経っていることを伝える。
「ふむ、2時間も経つのにまだ音無さんと遭遇できていない。これは不味いな」
また『音無さん』か。言いたかったのはそういったことではない。
2時間近く、二人でA-2の街中を細かく捜索したものの、誰一人見つからなかった。
その間に犠牲者はどれほど出ているだろうか、ということだ。
「犠牲者?確かに、もう争いが起きていてもおかしくはないですね」
彼の口から出た言葉に、素直に驚く。
意外とまともなことも考えて―
「まあ、音無さんが死んでいなければ僕はそれでいいのですが」
―いなかった。
あくまで『音無さん』が中心ということか。
名簿にあった『音無結弦』という人によっぽど心酔しているのだろう。
それとも、死後の世界から来たせいで感覚がずれているのかな、と考えていると。


「手を上げろ!」
後ろから、鋭い声が聞こえた。
振り向くと、一人の少年がこちらに銃を構えていた。
しまった、と舌打ちをしたくなる。完全に油断していた。
今自分たちが持っている、武器と呼べるものは、せいぜい螺子ぐらいのものだ。
此方は既に相手の銃の射程距離に入っている。
ここはひとまず従っておくべきか、それとも抵抗すべきか?
自分にはペルソナ能力がある。不意を突けば形勢逆転も可能だろう。
よし、今だ!
「ペルソ「動かないで」」
叫ぼうとした矢先、少女の声が聞こえて、同時に喉元に鋭い刃があてがわれていた。
目の前には少女が居る。少年の仲間なのだろう。
これで、ペルソナの召喚は封じられてしまった。
諦めて、デイパックを少年の方向へ投げる。直井君もそれに従った。


少年はそれを確認すると、銃を構えた手を下ろした。
「急に驚かせて済まない。俺はルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだ」
近付きながら、自己紹介をする少年。
相手の警戒を解こうとしているのか、先程の様な鋭い声では無く、優しい声だ。
そして気づく。この少年は、シャルル・ジ・ブリタニアに食って掛かったあの少年だ、と。
「その少女は立華奏。君なら知っているんじゃないか?…直井文人君」
驚いて、隣を見る。直井君の名前を知っているということは、彼の関係者か?


「…ええ、知っていますよ。…僕の学校の生徒会長です」
直井は渋々といった様子だった。ルルーシュの上から目線が気に入らないのだろう。
それより本当に関係者だったとは驚いた。
ルルーシュは気にした様子も無く続ける。
「だったら話は早い。俺たちは殺し合いに乗るつもりは無い。ぜひ協力をしてほしいのだが…」
直井を見るが、我関せずと言った様子だ。
とりあえず了解の意を伝えると、ようやく『生徒会長』とやらが離れて行った。
刃が一瞬で消えたように見えたが、一体どういう仕組みになっているのだろうか。


「感謝する。立ち話もなんだから、あの喫茶店で話そう」
ルルーシュは言うが早いか、僕たちのデイパックを拾い、喫茶店へと向かっている。
生徒会長とやらは、店内に入るつもりは無いらしい。
逃げるべきか?いや、デイパックが無いのに動くことは危険。
ここは素直に従うしかない。
直井に目配せをして、喫茶店へと入る。
心の中では、さあ、何が始まるのかと、期待と不安とが混じっていた。

412魔神が 目覚める 日 ◆RmIe4rjRnw:2012/01/22(日) 20:00:28 ID:uZm5P10A0
◆◇◆◇◆◇◆



そして、喫茶店の店内で、一つの声が響く。

『――枢木スザクを守れ――』

誰が発した言葉なのか、知る者は一人だけ。



◆◇◆◇◆◇◆



私が外の見張りをしていると、喫茶店のドアが開いて二人が出てきた。
直井文人と白鐘直斗は、彼らの来た道と反対方向へと歩き去って行く。
私たちを振り返ることもなく、ゆっくりと、さながら操り人形の様に。


私は喫茶店の中に入ると、ルルーシュは丸テーブルの近くに立っていた。
満足そうな笑みを浮かべているルルーシュに近寄り、先程のことを尋ねる。
「…彼らに何をしたの?」
勿論、先程の二人のことだ。
「島を探索しながら枢木スザクを捜すことを『頼んだ』だけだ」
平然と言うルルーシュ。
枢木スザク。先程その名前を見つけた時は動揺していたようだが、よほど大切な人なのだろうか。
そんなことも考えたが、それとはまた別の、湧いてくる疑問を優先させた。


「素直に言うことを聞いてくれたの?」
白鐘直斗は知り合いではないので、性格は知らない。
だが、少なくとも直井文人はそんな人物では無かったはずだ。
彼は結弦君たちと行動しているが、結弦君以外へ向ける態度は決して良いものではない。
そんな彼が、この島で会ったばかりのルルーシュの言葉を信じ、それに従うことなどあるのか。
「ああ、俺が主催者に対抗することを言ったら、快く承諾してくれたよ」
再び口元に僅かな笑みを作り、ルルーシュは答える。
疑問が更に湧いてくる。本当に?絶対に?


「…そう」
だが、私はそこで追及を緩める。これ以上は無意味だ。
彼らが操られているとしても、それを証明する術は無い。
いや、そもそもルルーシュの言っていることが本当か嘘か、判断する術も私には無い。
疑う必要など無いのだ。
それに…どうにも…眠い。
「ガードスキル」の使用には、普段よりも僅かだが負担がかかるらしい。
ルルーシュの言動に、能力の使用。注意すべきことが多い、と考えながら、私はソファに腰掛けて目を閉じた。

413魔神が 目覚める 日 ◆RmIe4rjRnw:2012/01/22(日) 20:05:24 ID:uZm5P10A0
◆◇◆◇◆◇◆



会話を終えた白鐘に促されて、喫茶店から出る。
白鐘が、歩きながら会話の内容を教えてきた。
と言っても、情報交換は殆どせず、スタンスとこれからの行動を確認し合っただけのようだ。
ちなみに僕は、ずっとルルーシュの眼を見ていた。なんだか気になったから。
ルルーシュとかいう男から頼まれたのは、以下のようなことだったらしい。
・島の東側のエリアを探索する。
・枢木スザクを最優先に捜索する。
・24:00ごろに島の南側の街で合流する。


大雑把だなと思ったが、あの男曰く『行動方針を細かく決めすぎるのは危険』なのだそうだ。
確かにこれならば、自由な時間も多く取れる。
だが、一つ気にかかるのは、枢木スザク―名簿にもあった、あの男の知り合いらしい男。
この男は騎士で、戦闘能力も高いらしい。味方につければ百人力と言っても過言ではないとか。
白鐘はあの男に、スザクとやらの容姿や特徴をこと細かに教えられたそうだ。
どうやら是が非でも捜させたいらしい。
本来ならば、『神』である僕は生意気な発言など聞いてやる必要もないのだが。
認めたくはないが、あの男は賢い。
主催者のシャルル・ジ・ブリタニアとも関係があるようだし、あの男が居れば脱出も可能かも知れない。
そう考えて、『神』である僕はあの男の頼みを聞いてやることにした。
デバイスを見ると、[03:41]の表示。
1時間半近く潰してしまったが、これからの行動も決まった。
とにかく早く、音無さんを捜しに行こう。



【A-2 喫茶店付近/黎明】


【直井文人@Angel Beats!】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:健康、ギアス】
【思考・行動】
1:音無さんと合流したい。
2:音無さん以外の世界戦線メンバー、直斗の仲間。
3:島からの脱出。この島に不吉を感じている。
4:とりあえず、ルルーシュに言われた通りに行動してやる。
【備考】
※ユイが消える少し前からの参戦です。
※現在『枢木スザクを守れ』のギアスにかかっています。
ギアスの効果は、枢木スザクを見つけたときに発動します。



【白鐘直斗@ペルソナ4】
【装備:球磨川禊の螺子@めだかボックス】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:健康、ギアス】
【思考・行動】
1:先輩方または戦線メンバーとの合流。
2:打倒主催者、多くの人を集めて島からの脱出。
3:直井と共に地図を端から探索していく。
4:今はルルーシュに言われた通りに行動する。
【備考】
※自称特別捜査隊に加わった後からの参戦です。
※枢木スザクの容姿を教えられました。
※現在『枢木スザクを守れ』のギアスにかかっています。
ギアスの効果は、枢木スザクを見つけたときに発動します。

414魔神が 目覚める 日 ◆RmIe4rjRnw:2012/01/22(日) 20:09:41 ID:uZm5P10A0
◆◇◆◇◆◇◆



「………ふぅ」
あの二人が喫茶店から見えない位置まで離れたことを確認して、ソファに戻る。
銀髪の少女が椅子に座って、目をとろんとさせている。
実に不思議な印象を受ける少女だ。
シャーリーのような純粋さ、カレンのような強さ、C.C.のような妖しさ、そのどれでもない印象。
あえて言えば『無』だろうか。
表情が少ない…というかほぼ無い。口数も少ない。まるで作られたロボットのようだ。
全く持って、この物静かな少女が『天使』だというのは信じがたい。


「疲れたのか?無理もないな、少し休むといい」
そう声をかけながら、近くにあった布を天使の小さな体に被せる。
大丈夫、寝ないわ、と口では言いながらも、そのまぶたは徐々に徐々に閉じられていく。
やがて天使の目は完全に閉じた。
細く寝息を立てる少女を見ると、今この状況を一瞬忘れることが出来る。
だが、俺にはそれよりも心配なことがある。


「あの二人への細工は上手くいったが…」
二人には、最初に『枢木スザクを守れ』というギアスを掛けた。
その後に、もう一度島の探索と、スザクの捜索を頼んだ。
白鐘とかいう男にスザクの特徴を細かく教えておいたから、見逃すことはないはずだ。
絶対遵守の力を持ってすれば、あの二人は必ずスザクを守ろうとするだろう。
そうすれば、スザクの生存率は格段に高くなるといえる。
しかし、と俺自身も椅子に腰掛けて考える。一抹の不安も残っている。


「…お前は、ユフィを救おうとするのだろうな」
ユーフェミア・リ・ブリタニア。
神聖ブリタニア帝国第三皇女で、俺とは異母兄弟の女性。
俺の初恋で、俺が原因で日本人の大量虐殺を起こした上に、最後は俺が…殺した女性だ。
そんな彼女が生きていて、この殺し合いに参加させられているのだ。
彼女の騎士だったスザクなら、十中八九、否、確実に彼女を守ろうとするだろう。
それだけならば問題は無い。そう、守ろうとするのみならば。


「ユフィを優勝させようなどと、考えていないだろうな…」
ユフィを守りながら対主催を目指すのならまだしも、俺と同じように、他人と自らを犠牲にする道を行ってほしくはない。
スザクらしいと言えばそれまでだが、殺そうとして逆に殺されては困る。
元の世界に戻り、ナナリーを守って貰わなければいけないのだから。
そう、ナナリーとスザクと、また――。
そこまで考えて、自分が甘い考えを抱いていたことに気付く。


「フッ…俺は何処かで、ナナリーにまた会えると思っていたらしい」
例えこの場がバトルロワイアルとはいえ、死した自分がここに生き返ったという事実。
そのことに、気付かなかいほど僅かに、だが確実に浮かれていたらしい。
そのため、甘い考えを捨てきれずにいた。
『スザクを生き返らせる』だけでなく、『生き返ってナナリーと会う』ことを無意識に考えていた。
故に、まだ迷っていたのだろう。


「…スザク、お前は当然理解しているのだろうな…撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだと…」
懐から出した銃を握って呟く。
騎士であり、軍人であるために死と隣り合わせであるスザクは、覚悟などとうに出来ているだろう。
ならば俺も、それ相応の覚悟を決めておくべきだ。
どうせ俺はゼロレクイエムで死んだ人間だ。また死のうが構わない。
だが、スザクを生還させる為、利用できる人物は利用する。無用な人物は――殺す。
たとえ俺が死のうが、スザクだけは――。
ふぅ、と息を付き、椅子から立ち上がる。そして、

415魔神が 目覚める 日 ◆RmIe4rjRnw:2012/01/22(日) 20:13:02 ID:uZm5P10A0
「我が名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア!
スザク、俺はお前の為、そしてナナリーの為ならば、この銃を撃つことも辞さない!」
高らかにそう宣言し、覚悟を決めた。



【A-2 喫茶店店内/黎明】


【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【装備:デリンジャー@現実】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:健康、覚悟】
【思考・行動】
1:スザクを優勝させる。
2:1のため利用できる人物は利用し、無用な人物は殺害も辞さない。
3:天使と行動する。
4:島の西側を探索し、24:00ごろに南側の街であの二人と合流する。
【備考】
※死後からの参戦です。
※ギアス制限あり。人の目を見て3メートル以内。『死ね』や『自殺しろ』の命令は無効です。
※白鐘直斗の知り合いの名前を記憶しましたが、今のところ探す気はないようです。



【立華奏@Angel Beats!】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:疲労(小)、睡眠中】
【思考・行動】
0:・・・・・・
1:結弦を探す。
2:ルルーシュと行動する。
3:ルルーシュの言動に注意。
【備考】
※最終話直前からの参戦。
※ハーモニクス(コピー能力)のみ制限。


【デリンジャー@現実】
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアに支給。
装弾数2発、手に収めることが出来るほどの小型の拳銃。


【球磨川禊の螺子@めだかボックス】
白鐘直斗に支給。
大きな螺子で、球磨川禊が武器としてよく使用する物。

416 ◆RmIe4rjRnw:2012/01/22(日) 20:18:56 ID:uZm5P10A0
投下終了です。
元ネタはコードギアス 反逆のルルーシュR2の第一話「魔神が 目覚める 日」より

続いて前原圭一、朝比奈みくるで予約します

417 ◆WzpMn05TJA:2012/01/22(日) 20:31:17 ID:N4VJKAsoO
投下乙です

さり気なく死亡フラグをバラまくルルーシュに驚きました

こう、奏ちゃんとだけ両立な立場として優しいルルーシュが好きでした

学ラン組の動向も楽しみです

418 ◆MFKn59eM9c:2012/01/24(火) 17:58:40 ID:k.DAGaQE0
申し訳ないですが、期限をオーバーしていながら完成の目処が立っていないので予約を破棄します

419名無しさん:2012/01/24(火) 19:28:12 ID:9QvgGEjs0
>>418
前回のスザク達の投下の後、なんか予約してたっけ?

420堕ちないネイロ ◆WzpMn05TJA:2012/01/25(水) 18:02:06 ID:voyxjeHUO
 

――ざわっ。

音を殺したかの様な素早い音が風と混ざり合い、弱々しい音となる。
本来なら聞き逃すくらいの小さい音。
だがただ戦いを傍観する者の耳にはしっかりとその音をキャッチしていた。
それからはしばらく変化という変化がない。
つまり、それは誰かが自分を監視しているという事。
なかなかに計算高い者といえる。

「参加者のご到着か」

問いかける。
そんな口調で女は隠れた人物に投げかける。
そこの木に隠れているのはわかる。
そんな表情で女は問題の木を眺めていた。

「まさか私の接近に気付く者が居るとはな」

降参とばかりの女の声。
だが……。

「貴様は無警戒の様で警戒を誰よりもしておるのだな」

黒くて長い髪に鋭い目つき、長身の女であった。

その女が右手で、ぶら下げていた鞘から取り出す日本刀。
その刃先を女目掛けて突き出す。

「流石、変わった夢の住人とでもいうのかな?」

態度は降参する気など微塵も見せない。
闘争。
彼女の瞳には強くそれが浮かび上がっていた。

「ゲームに乗っている参加者だな。シャルルの駒め」
「……貴様はあの主催者と知り合いという口振りだな」
「察しが良いな。私はシャルル・ジ・ブリタニアの共犯者だった女だ
――そして、魔女だ」

前髪に影がかかって表情は読み取れない。
真偽が読み取れない。

来ヶ谷唯湖は目の前の女の言った言葉の意味を整理していた。

「(うむ、お姉さんでもこの女の事は読み取れんな……。でもやはりこの夢は面白い。遊び場の宝庫だな)」

電撃使い、スタンドの召還師、果ては魔女とまできた。
もはや一般人である自分自身の方の人間の方が少ないのではないだろうか?

「魔女か……。しかし、貴様は何も魔女らしい事などしないではないか。ただの電波か?」
「電波……?この何百年と生きたC.C.を電波扱いか」

詳しく言えばC.C.はコードの所持者であり、不老不死である。
死んでは蘇る。
何度も何度も、もはや数え切らぬほどその数は膨大だ。
長い年月をかけての人間の歴史の移り変わり、様々な人間を彼女は見てきた人生をおくっていた。

名簿にC.C.とだけ書かれてあったはただのイニシャルでしかない。来ヶ谷はそう思っていたのだがどうやら違ったらしい。

「だから私の方が年上だと言っている。それになんてお前を呼べば良いかわからん。お前も名ぐらい名乗れ」
「どうせ殺す参加者なのだがな。まぁ良い。私の名は来ヶ谷唯湖だ」
「その名前だと日本人(イレブン)だな。覚えたぞ唯湖」
「……名前で呼ぶな……」

来ヶ谷唯湖は海外生まれの純日本人である。
そして彼女は『エリザベス』というミドルネームを持ち、海外では『リズベス』との愛称で呼ばれている。
その為、名前である『唯湖』と言われるのには慣れていないのだ。

「おしゃべりは終わりだC.C.。私はお前を殺すぞ」

とそこで刀を抜く。
だがC.C.は慌てた様子もなく「まぁ、待て」と制止する。

本来は不老不死。
だが今回は恐らく殺されればそこで自分が死ぬ事はC.C.はわかっていた。
だが、それ故の命の懇願の為の制止ではなかった。

421堕ちないネイロ ◆WzpMn05TJA:2012/01/25(水) 18:03:31 ID:voyxjeHUO
「私を共犯者にしないか?」
「……共犯者?」

わけがわからない。
来ヶ谷の本心であった。
何を突然にこんな事を言うのか?

「お前はゲームの優勝ではなく楽しむ為にこのゲームで遊んでいるのであろう?
なら私が貴様に面白い力を授けよう」
「面白い力?」

とても魅力的な事を言う。
ただ殺し合いに乗るだけでなく、それ以上の事があると彼女は続ける。

「少し危険な力ではあるがあの主催者のシャルル・ジ・ブリタニアらが持つ力でもある」
「ほぅ」

危険など承知の故。
既に自分は戦闘を行ってしまっている。

「契約するんだこの私と。
この力は王にもなれる力だ」

C.C.の額に赤く輝く紋章が浮かび上がる。
来ヶ谷はその光景をずっと眺めているのであった。

―━―━―━

ゲームに乗った参加者から逃げ出し、未だ森を探索する2人の影があった。

1人は普通の少しがたいの良い男の学生であった。このバトルロワイアルの進行役である郷田真弓を知る参加者の中でもたった1人の知り合いである。というのも彼は、少し前にも殺し合いの舞台に招かれた者である。つまり、この様なゲームの体験者という様になる。

もう1人は忍者の様な格好をしている女性であった。彼女はとっくに死んでいる者であり、死後の世界にて『死んだ世界戦線』のメンバーとして活躍している。普段は無口で彼女は今もこうして無口を通しており、少年と少女の間には気まずい雰囲気が流れていた。


「椎名さーん?」
「……」

というのも少年、御剣総一がいくら話かけても同行者である椎名はまったく返事を返さない。
だが、急に彼に襲いかからずにいたり、先ほどの襲撃者である川澄舞と国崎往人から総一を逃がしたりと信頼は出来る相手である。

「(椎名さんが無口なのはよくわかった)」

総一は何度か話しかけても反応1つしないので諦めた。
なので彼は別の事を考える。

「(今回のゲームだって、絶対に殺し合いはするもんかっ!)」

第一の事であった。
前のゲームの参加者にて脱出を果たした彼であるがゲームに乗った事どころか、乗るという揺らぎすら彼にはなかった。
ただ真っ直ぐに、出来るだけの参加者との脱出を目指していた。

「(俺には麗佳さんが居る。だけどあいつの約束だけは絶対に守り通す)」

総一の幼なじみにて元彼女である『桜姫優希』との約束。
『卑怯な事はしない』。
ゲームに巻き込まれる少し前に事故で他界した今でもそれだけは突き通している。
なお、総一は知るはずもないがこの元彼女である『桜姫優希』とそっくりな参加者が実はこのゲームにも参加している事を知らない。
いや、その人物は前のゲームの参加者でもあるのだが総一と遭遇する前にゲームのルールを破り亡くなった人物である。
『姫萩咲実』。
さて、彼はその『姫萩咲実』を目の前にしたらどんな反応を起こすかはわからない。
だが、今はその元彼女に似た『姫萩咲実』と遭遇する事になるのか、ならないのかはまた別の話である。

422堕ちないネイロ ◆WzpMn05TJA:2012/01/25(水) 18:04:29 ID:voyxjeHUO
「む……」
と、遂に助けた直後以降まったく口を開かなかった椎名に異変が起きる。
何かを警戒したかの様に立ち止まり辺りを見渡しだした。

「どうしたの椎名さん?」
「……人だ」

椎名が木の影を睨み付ける。
総一もそちらに目を向けるがそんな気配はまったくしていなかった。

「だ、誰も居なくない?」

そう言った直後木の影から2人の人物が顔を出す。
総一は驚くと同時に誰も居ないと判断した自分が恥ずかしくなった。

「さっきから気配を察知出来る者が多過ぎるな」
「唯湖の気配などすぐにわかる」
「……だから唯湖と呼ぶな」

どちらも女性であった。
2人共髪の長い、ミステリアスと表現出来そうであった。

だが、2人は協力し合っているしやり取りからも仲が良さそうだった。
故に総一は2人に気を許すのであった。

「私はC.C.。こちらは唯湖だ」
「お嬢さん、だから名前と呼ぶな。私は来ヶ谷唯湖だ」
「だから私の方が年上だ」

自己紹介だけでもなかなか揉めている。
そんなやり取りがバトルロワイアルに相応しくなく、自然と総一の顔に頬が緩んでいた。

「俺は御剣総一、こちらは椎名さん。よろしくお願いします」

無口な椎名の変わり。
彼も自己紹介を終えた。

「そうか。君は椎名さんというのか」
と来ヶ谷は椎名と目を合わせる。

椎名はこの2人の人物からは不穏な何かをキャッチしていた。
来ヶ谷は隙がある様に見えて、ものすごくガードが堅い、C.C.は何かわからない力で溢れている様な感じであった。

「椎名さん」

来ヶ谷が目を閉じ、下を向く。
急にどうしたのだろうか?

「来ヶ谷唯湖が呪う」

左目に紋章が浮かび上がり椎名に向かって黒い光りが通過した。

―━―━―━

ギアス。
『王の力』と呼ばれる他者の思考に干渉する力。
その力は個人差によってギアスの効果はあり方によって変わる。

「思い通りにならない世界を思い通りにしたい」と願った『絶対遵守の力』のギアスの持ち主ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。

「人の心が分かりたい」と願った『人の思考を読み取る力』のギアスの持ち主マオ。

「今のままでありたい」と願った『絶対停止の結界』のギアスの持ち主ロロ・ランペルージ。

「過去・歴史を変えたい」と願った『記憶を書き換える力』のギアスの持ち主シャルル・ジ・ブリタニア。

――では来ヶ谷唯湖は何を願い、何のギアスを発動させたのだろうか……。

423堕ちないネイロ ◆WzpMn05TJA:2012/01/25(水) 18:06:20 ID:voyxjeHUO
―━―━―━

「お姉さんはな、この夢を楽しむ為に「人々を狂った様に私の手の平で泳がせたい」と願ったのだよ」

C.C.と共にギアスのかかった椎名と総一をほっといてそのまま元来た道を歩いて引き返していた。

「あれはルルーシュの力に少し似ている能力だな。『強制狂人』とでも言ったところか。だがあのギアスの力は弱いな。おそらく持って30分から1時間くらいだろうな」
「ははは。この手の平で泳がせた感が気持ち良いな」

最初のギアスの力に喜ぶ者。
はじめは誰もがそうであったが慣れてくるとつまらなくなっていく者を何人も見てきたC.C.。
実際に自分も「愛されたい」と願った『愛される力』の持ち主だったC.C.。
王の力は人々を孤独にする。
この来ヶ谷唯湖もそれに該当するのか、C.C.は来ヶ谷の姿を良く瞳に映していた。


【E-4 森/黎明】

【来ヶ谷唯湖@リトルバスターズ!】
【装備:宗像形の日本刀@めだかボックス】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:愉快】
【思考・行動】
1:今までにないこの『夢』を楽しむ
2:お嬢さんと行動し、人々を手の平で泳がす
【備考】
※参戦時期は不明です
※御坂美琴、鳴上悠の容姿のみを把握しました


【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:ゲームを傍観する
2:唯湖を傍観する
【備考】
※本編最終話後からの参戦。


―━―━―━

「し、椎名さん!?やめてくれっ」

来ヶ谷と向き合った後に、狂った様にこちらにサーベルの刃を向け始めた椎名。
総一の体にはサーベルに斬られた痕があった。

「操られているのか……。なら、俺が食い止めてやる」

武器など何1つない。
羽根の付いたランドセルとこけしのみ。

それでも自分を救った椎名の為、総一は椎名を救ってみせると決意をした。

「!?」

と、決意と同時にサーベルが総一の頭を狙っていた。



【椎名@Angel Beats!】
【装備:サーベル@ハヤテのごとく!】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:健康、ギアス】
【思考・行動】
1:……。
【備考】
※ユイ消滅前からの参戦。
※ギアスの影響により総一に刃を向けています。30分から1時間くらいでギアスは解けます。


【御剣総一@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 羽根の付いたランドセル@Kanon こけし@そらのおとしもの】
【状態:???】
【思考・行動】
1:???
【備考】
※麗佳ルート(EP2)終了後からの参戦です。


【来ヶ谷唯湖のギアスについて】
このロワイアルオリジナル能力で目を合わせた人物を狂わせる能力。狂い方は人により千差万別で30分から1時間で解けてしまう。

424 ◆WzpMn05TJA:2012/01/25(水) 18:08:55 ID:voyxjeHUO
投下終了です

元ネタはアニメ「クイーンズブレイド 玉座を継ぐ者」OP『堕ちない空』+アニメ「コードギアス 反逆のルルーシュR2」ED『シアワセネイロ』より

予約
長沢勇治、北川潤

425 ◆SENAs8NCE2:2012/01/25(水) 18:56:46 ID:qed01yQo0
申し訳ないのですが、キャスターの制限について質問があります。
『無限の魔力が大幅に減っていて、術が使えない』のなら、触手を使うことは出来ないと思うのですが。
キャスターは宝具の力なしでは海魔を呼び出せないはずですし、ジル・ド・レェの魔術師適正はそう高くないので。
『大海魔化することが出来ない』くらいがいいのではないかと意見してみます。
現在の予約でキャスターを執筆しているので、お早めに返答願います

426 ◆WzpMn05TJA:2012/01/25(水) 19:38:42 ID:voyxjeHUO
>>425
そうですね

今読み返してみたらバリバリ違和感がありましたね

逆にその様な変更にしていただいてもらった方がありがたいですね

未熟な者でもうしわけないです

427 ◆SENAs8NCE2:2012/01/25(水) 19:41:36 ID:qed01yQo0
ご返答ありがとうございます。早く対応してくださってとても助かります。
ではそのような形に変更して書いていこうと思います

早めに、予約の延長を申請します

428 ◆SENAs8NCE2:2012/01/26(木) 19:43:49 ID:dCAh33wU0
では、遠野美凪、刻命裕也、キャスター、巽完二、更木剣八を投下します。

429 ◆SENAs8NCE2:2012/01/26(木) 19:44:41 ID:dCAh33wU0
地獄絵図が、広がっていた。
むせ返りそうな程の腐臭と、そこかしこに散らばる得体の知れない生物の屍。
巨大なオニヒトデのような生物は現代の科学では有り得ないサイズと、余りにもショッキングな外見をしており、まさしく『海の魔物』と呼ぶに相応しい。
そんな魔物が、幾十もの屍を積み上げている。
いや――もしかすると既に百を超えていたかもしれないが。

『触手』がうねる不気味な音と共に、屍から更に生まれ出てくる魔物。
それらが一斉に獲物に喰らいかかり、そして切り散らされる。
ずっとその繰り返しだった。終わりも進展もない、只同じ場面だけが続いていく。
殺戮を殺戮し、暴力を暴力し、蹂躙を蹂躙する。
普通の人間になら捌ききれないだけの魔物――『海魔』を、眼帯をした如何にもな風貌の男が次から次へと散らして、そして少し退屈そうに顔をしかめている。
そして、海魔どもを生み出す魔力炉となっている一冊の古書を持ったこれまた奇抜な、不気味極まりない風体の巨漢もまた、忌々しげに顔を憎悪に歪めていた。


「おのれおのれおのれェッ!!我が涜心を邪魔立てするかァ!!」
「……ラチが明かねえじゃねえか」


攻め続けるのは英霊キャスター、真名をジル・ド・レェ。
それを捌き続けているのが死神、更木剣八。
互いに、人の手では余るだけの怪物。
二体の人の形をした人外が、既にかなりの時間こうして戦っていた。

端から見ればキャスターが押されているように見えただろうが、状況はまさに膠着状態。
剣八の持つ一振りの刀は相当な業物だし、勿論こうして使いこなせている。
が、いわばそこまでなのだ。
これがいつも使っている斬魄刀だったなら、もしかすれば現在キャスターを斬り伏せ、見事殺し合いの始まりに相応しい勝利を勝ち取っていたかもしれない。

――――決め手がない。

何せ敵の持つは無限の魔力炉。
衰えることなく生まれ続ける海魔を一気に蹴散らして距離を詰めなければ、勝てない。

430 ◆SENAs8NCE2:2012/01/26(木) 19:45:46 ID:dCAh33wU0
剣八の人間離れした体力があるからこそ、ここまで戦い続けているのだが。
このまま永遠に戦っていてはいずれ体力の枯渇が来るのは必然だ。


(あの青瓢箪を斬るにはこの『虚(ホロウ)』を突破しなきゃあいけねえ……チッ、つまらねえ戦い方をしやがる破面だな。虚閃の一つも撃ってこねえとはな)


そろそろ決めなきゃあ殺られる。
更木剣八は遅い来る海魔を斬り払い、刀を構え直した。
屍から新たな海魔が生まれ出でてくる――――その時に、地面を強く蹴った。

海魔どもが襲い来る前にキャスターとの距離を詰め、まさに捨て身で斬り伏せる。
背後の海魔に傷を負わされる危険も勿論あるが、彼にとっては所詮些事。
より確実にキャスターを斬り伏せるには、省みないことが必要だし――――そもそも更木剣八という男に『慎重さ』なんてものを求める方が間違いというものだろう。
迫る剣八。
キャスターは自らの持つ古書を逃亡の為の魔術に使おうとする。
果たして間に合うのか。いずれにせよ未来は二つに一つだ。

キャスターが斬られて散るか、剣八が喰われて散るか。

二つの影が、戦闘の終わりを――――


告げなかった。




「マハジオ」


雷属性を持つ『それ』が、いざ接触せんとするキャスターと剣八の間の地面に撃ち込まれた。
二人の視線が、攻撃の主である少年に注がれる。
そこに立つのは少しばかり息を切らしているまだ幼さ残る少年の姿。
だが、その傍らの存在は余りにも異質すぎた。

ペルソナ、タケミカヅチ。
攻撃の意図で放たれたにしては威力が低かったことを一早く察知した剣八は、つまらなそうに息を吐く。


「…………チッ。面白くねえな」

431 ◆SENAs8NCE2:2012/01/26(木) 19:48:10 ID:dCAh33wU0
興が削がれちまった、と呟くと剣八は二人に背を向けて歩いていく。
彼は殺し合いに乗っているわけではない――――ただ、戦いたいだけ。
一度冷めてしまった戦いなど、彼にとってはもはやどうでもいい些事だった。

そして、二人だけが残された。


【E-6 学生寮周辺 /黎明】


【更木剣八@BLEACH】
【装備:十年後山本武の刀@家庭教師ヒットマンREBORN!!】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:疲労(中)】
【思考・行動】
1:強者と戦いたい。
2:戦うに値する相手を探す。
※破面編終了後からの参加です



「俺は巽完二。勿論殺し合いなんざする気はねえ」

「私はジル・ド・レェ――そうですね、『青髭』とでもお呼びください、カンジ」


腐臭漂う戦闘の跡地から少し離れた場所で、巽完二は情報交換に応じていた。
『青髭』の言い分では、自分が子供を助けようとしたら急に襲撃されたらしい。
で、仕方なく『宝具』とやらを用いて対抗したと。
完二も大分常識離れした日常を送ってきたが、英霊なんて存在は知らなかった。
かの聖処女、ジャンヌ・ダルクの同胞だったらしい。

「私も『ペルソナ』などというものは全く存じ上げませんでしたよ。ウフフ、この世にはまだまだ私の知らぬ神秘が有るのですね」

ペルソナ。
巽完二にとっては日常で、青髭にとっては非日常の存在。
真っ向からぶつかればサーヴァントである青髭の方が圧倒的だが脅威には変わりない。
窮鼠猫を噛む、だ。

サーヴァント。
『青髭』にとっては常識で、巽完二にとっては非常識の存在。
ペルソナだけでは対抗することが難しい強力な宝具を保持している。
しかも、切り札はまた別にあるらしい。


「で、なんだけどよ――――」


はい?と青髭が疑問符を浮かべた瞬間。
ヒノカグツチが、顕現した。
『ペルソナっ!』という声を、確かに聞いた。
それはつまり、敵対の意思を示すということである。

「おやおや……カンジ。これはどういうことでしょうか?」
「ふざけてんじゃねえぞ、『青髭』。俺が騙されるとでも思ったか」

これはこれは、と青髭――否。『キャスター』は静かに笑った。

「私は踊らされていた訳ですか。やってくれましたねえ」
「動くなよ。この距離でなら、宝具なんてモンが使われる前に終わらせられんだぜ」

そう。この間合いで海魔を呼び出そうと、ヒノカグツチの攻撃が通ってしまう。サーヴァントであったとしても、ペルソナの全力をもし直撃すればかなりの痛手になるだろう。
完二もまた、キャスターが此処で逆らうことなく素直に拘束でもされてくれればどうこうする気はなかった。幾ら殺し合いに乗った相手だとしても、生きている人型の生物なのだ。
もし激情に任せて殺してしまったら、咎として一生完二を苛んだかもしれない。
少なくとも、憎むべき悪魔、シャルルに敗北したことになる。

「……何もしなきゃ危害は加えねえ、縛らせてはもらうけどな」
「……分かりました。私とてジャンヌの復活を成すまでは死ねませんのでねえ」

わざとらしく両手を挙げ、降参の意を示すキャスター。
ジャンヌの復活を成すまでは、という部分に不安はあったが、拘束すれば所詮は無力だ。
宝具の古書もこの際預からせて貰えば、もうキャスターは只の人間も同然。
デイパックから、支給された手錠を取り出すと完二はキャスターの両腕に触れる。





ぐちゃっ。







「は……?」





油断していた。
敗因はたったそれだけ。
侮っていた。
サーヴァントという存在を。
宝具さえ封じればいいと、思ってしまった。
そんなものは大きな間違いだったのに。

432 ◆SENAs8NCE2:2012/01/26(木) 19:49:54 ID:dCAh33wU0
胸が熱い。
肺を綺麗に貫かれているようだ。
霞む視界には、邪悪な笑顔で微笑むキャスター。
そして、自らを貫き射止めた腕。



「……ッ……ァ……ぺ……ルゥ……ソ……」

「おっと、そうはさせませんよ」



一際激しく、鮮血が飛び散った。
肺を破壊されて瀕死の彼の最期の抵抗も虚しく。
抉り出されたぐちゃぐちゃのナカミが、キャスターの手で握り潰された。

尤も、その地獄を巽完二はもう見ていなかったのだが。


視界はもう消えている。
人生が終わるまで、きっと後十秒もないだろう。
走馬灯というには短すぎる思い出が脳裏を駆け抜けていく。
でも、それはかけがえのない日々で。

だから彼は、死に際に一つだけ、思った。


――――ありがとう。



【巽完二@ペルソナ4 死亡】





巽完二の死体を見下ろして、キャスターは邪悪に笑う。
完二は知らなかった。英霊ジル・ド・レェは確かに宝具なしでは力を発揮できないサーヴァントだったが、それでも腕力などの桁は人間とは余りに違いすぎるのだ。
少なくとも、人間の頭蓋を片手で握り潰せるくらいには。
完二の腕を振りほどき、反応する前にその胸を貫いた。
キャスターからすれば、只それだけのことでしかなかったのかもしれないが。


「まずは一人といった所ですねえ……おお、我が愛しの聖処女よ………待っていてください、必ずやこの不肖ジル・ド・レェ、貴女を甦らせてみせましょうぞ!」


次は――と、思った時に。

二人の少年少女を、その大きな眼球が捉えた。


殺すか、否か。決まりきった選択肢を脳裏にもう一度描き出す。
またペルソナなんてものを使ってくる相手なら厄介だが、こちらには宝具もある。
打ち負けることはない――――と、確信。

『螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)』を静かに開き、そして気付く。
前方の二人、その少年の方が――――恐怖ではなく、感動したような表情をしていることに。

「アンタ…………一体何者なんだ」

狂っている。
この少年は滅茶苦茶に汚染された、壊れ物だ。
キャスターには理解できなかったろうが、とにかく少年の目は異常。

「ジル・ド・レェ――『青髭』とでもお呼びください」

言葉はそれきり。
もはやそれは本能だったのかもしれない。
刻命裕也という少年とジル・ド・レェという英霊は――余りに狂いそれ故に共鳴している。


少女、遠野美凪に、二人の視線が同時に向かい。


二人の壊れ物が、壊れすぎた笑顔を浮かべた。

433 ◆SENAs8NCE2:2012/01/26(木) 19:51:22 ID:dCAh33wU0
【キャスター@Fate/Zero】
【装備:螺湮城教本@Fate/Zero】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2、手錠@現実、巽完二のデイパック(支給品一式、ランダム支給品×2)】
【状態:返り血(大)、高揚感】
【思考・行動】
1:たくさんの参加者を贄にして魔力回復。
2:あの少年と協力してみるのもいいかもしれない。
3:少女を――――?
※『プレラーティーズ・スペルブック』での大海魔化はできません。
※『ペルソナ4』の世界の情報を得ました。
※龍之介に召喚される前からの参戦なので、サーヴァントのことを一人も知らない状況です


【遠野美凪@AIR】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:健康、キャスターへの恐怖】
【思考・行動】
1:刻命さんの歪んだ思考を直したい。
2:刻命さん………?
※美凪ルート確定寸前からの参戦。

【刻命裕也@コープスパーティー】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、テレビの世界のメガネ@ペルソナ4、SOS団特製すごろく@凉宮ハルヒの憂鬱、犬の捜索願いの紙@めだかボックス】
【状態:健康、キャスターへの畏敬】
【思考・行動】
1:優勝する。
2:大男(キャスター)への感動、畏敬の念
3:遠野を――――?
※本編開始前からの参戦です。


【手錠@現実】
巽完二に支給。警察からその手の趣味の人まで幅広く用いる拘束具。

【螺湮城教本@Fate/Zero】
キャスターの宝具、支給品扱い。
この本自体が巨大な魔力炉となっており、ジルがキャスターに据えられた所以の一つ。

434 ◆SENAs8NCE2:2012/01/26(木) 19:56:13 ID:dCAh33wU0
投下終了です。
題名:終わりのクロニクル
元ネタ:ライトノベル『終わりのクロニクル』より

435 ◆WzpMn05TJA:2012/01/26(木) 20:09:51 ID:keHZUm5wO
投下乙です

刻命の龍之介ポジションにwktkが止まらない
支給品の話ではっちゃっけただけに今回のシリアスに驚きました

完二南無
相手が悪過ぎだったけど最後まで戦いぬいた彼は漢でした

そして相棒と後輩を失った番長が心配だなー…と思ってしまいました

436 ◆SENAs8NCE2:2012/01/26(木) 20:49:41 ID:dCAh33wU0
岡崎朋也、白井黒子、宮沢謙吾を予約します
期限が切れているようなので黒子を予約しましたが、もしもただ投下が遅れているだけだったなら外しますので一言下されば幸いです。

437名無しさん:2012/01/26(木) 21:41:24 ID:Et/ijVbwO
投下乙。物理耐久高い完二があっさり?とも思ったけど、ペルソナ持ちで普通の人間より
身体能力が高いのは初代と罪罰だけだったな。そして旦那の腕力すげぇw
英霊基準で軒並みステが低いだけで、一般人からしたら充分チートなんだよな。こりゃ宝具なしでも結構スコア稼げそうな気がする。

438中二病でも殺したい! ◆WzpMn05TJA:2012/01/27(金) 02:13:07 ID:XcHxdfUoO
「おっさん、俺は必ずみんなと脱出してみせるから……」

ライダーの体が消失し、天へ召されたのを見送る少年、北川潤。

俺はおっさんの事を忘れない。
だからおっさんも俺の事を忘れないで王の生きた証として俺を刻んでくれ。
そして、安らかに死後の世界を征服を果たして俺がいずれそこの住人となるから。

拳を握り決意を固める。
相沢と水瀬を助け、かつ困った参加者を助ける。

ライダーと出会う前まではまだ呆然としかわからなかった自分。
既に参加者に手をかけた今なんて事もあったかもしれない。
だが、それはライダーとの邂逅により、その可能性は0になった。

「待ってろよ、俺が今困っている奴らを助けてやるから」

涙は見せない。
あの時流した涙は彼を弱くするどころが別人の強くなった。否、別人の様に強くなった。

※※※

「クソッ、参加者は誰か居ないのかよっ!」

現在、設置されていた赤いポストに殴りかかっていた中学生ぐらいの若すぎる少年が居た。
だがその必死に血走りながら、憎しみながらポストに当たる彼の目は中学生のものにしては恐ろしく、破壊心が大きく目立ち人間の目なのかすら危うい。

長沢勇治。
壊れた彼は街中の物を壊しまくった。
掲示板、自転車、ゴミ箱、店前の人形、植木鉢。
様々な物に全てを押し付けていた。
その破壊活動に貢献している彼のバットは未だ健在だった。
本来なら寿命を超えた働きをしたのだが、彼の為だけにその寿命を苦しみながらもまだ生きている様な不思議なバットであった。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

ポストももはや原型がない。
それが四角い物だったのかと問いかけたくなるぐらいに。

「チクショー、みんな俺をバカにしやがって!」

長沢は参加者と遭遇しない理由を「自分は子供だから相手にする価値がない」とバカにされた気分であったからだ。
なら、バカにされないぐらい恐怖心を参加者に思い知らせるんだ!

長沢が気合いの一撃を放つ。
もうポストは砂になっていた。

※※※

「次はどいつだぁー!」

長沢が街をかける。
普段なら誰かが居てもおかしくない街中。
だがそんな光景はまるでドラマの撮影のセットと言わんばかり、人々以外は元々の場所に決まった何かがしか設置されていない街(セット)だった。

「ん……?」

長沢の目に遠くから人が見える。
金髪で自分よりいくつか大きく見える男性。
その目は優しそうで、長沢にとってつまらない人間に見えた。

バットを強く握る。
物を壊しながらの人を殺す練習は終わり。
長沢は決意する。

439中二病でも殺したい! ◆WzpMn05TJA:2012/01/27(金) 02:14:13 ID:XcHxdfUoO
※※※

「待ってくれよそこの金髪の兄ちゃん」

自分が呼ばれているのかと前を向くと護衛用に持つバットを持った少年だった。
肩で息をしてたりしているので誰かに終われたのだろうか?
それ以前に自分より年下だ。
ゲームなんか乗るはずがない。
これが北川の結論だった。

「僕――俺の名前は長沢勇治、ただの学生だよ」

まだ声変わりがまだなのか幼い声でそう名乗った。
先に僕と言いながら俺と訂正した辺りが大人びたいという表れが見え隠れする年頃であった。

「俺は北川潤。俺もただの学生だよ」
「うん、北川の兄ちゃんだね」

記憶したとOKのマークであろうか?
笑いながら指で丸を作る。
OKのOであろうか。

「俺はこのゲームに巻き込まれてからずっと隠れながら逃げていてやっと兄ちゃんに会えたところなんだ」

自分が今まで何をしていたかという問いにそう答えていた長沢。

「そっか、この島の広さだし誰にも会えない参加者なんてのもまだ居るんだな。俺はライダーと真アサシンに会った」
「あ、アサシン!?」

ゲームが趣味の長沢はアサシンという単語に驚きが隠せなかった。
暗殺者の意味を持つアサシンが出るRPGのキャラクターを思い浮かべていた。

「真アサシンは名前の通り暗殺者だ。それでライダーのおっさんはアサシンに殺された。だから真アサシンには気をつけろ長沢」
「わ、わかった」

端から見れば兄弟か先輩後輩に見える関係が築かれてきていた。
だが、それはあくまで……。

――ガンッ!

長沢の演じていたキャラクターに過ぎなかった。

「な、何を……する、長さわ……」

堂々と振り下ろされたバット。
あまりにも自然な不自然に北川はバットをもろに頭に一撃くらわされた。
そして床に倒され、足で踏まれる。

「ぐぅ……」
「うわっ、兄ちゃん傷だらけだねぇ」

先ほどの真アサシンに投げられたナイフの傷が今更ポッカリと傷口から血が流れる。
足りなくなる血。
遠くなる意識はまるでカメラからピントがドンドンズレていく様な感覚に近かった。
そしてすべてが曖昧な色から白か黒だけのよくわからない色に染まるのだ。
今回こそ北川を助ける者は居なかった。

※※※

「へへっ、北川の兄ちゃんライダーとか言う奴のデイパックまであんじゃん。大丈夫だよ北川の兄ちゃん支給品に満足したら殺さないであげるからさ」

「本当は殺したいけどね」と付け足す長沢。
長沢は北川を人間を見る目ではなく、食物連鎖として家畜の命を刈る目をしていた。
いや、家畜の命を取るのは生活をしていくのに深く意味する慈悲深い行為であるのだが、今回の長沢の件は意味のないただの暴力に過ぎない。

440中二病でも殺したい! ◆WzpMn05TJA:2012/01/27(金) 02:15:12 ID:XcHxdfUoO
「日本刀だ!すげぇ!」

修学旅行にて木刀を買ってくる学生の気持ちがほど良くわかる長沢だった。
「これは確かに欲しくなるかも」と。

「こっちはクロスボウかラッキー♪」

日本刀とクロスボウ。
これにより接近戦から遠距離戦まで自分はする事が出来る。
自分の意味のない2つの支給品よりはマシだと思った。

長沢のデイパックには金属バットと雲のマーレリング、蛇のお札が入っていたがほぼハズレの支給品だろう。
北川のデイパックには日本刀とアリクイのぬいぐるみと腕時計が入っており、ライダーのデイパックにはクロスボウとステゴサオルスのTシャツに謎の注射器が3本入っていた。

「おやおや、北川の兄ちゃんは死なないで済みそうですな」

ケラケラ笑いながら長沢は北川の首に向けてその注射器を注入する。
中に入った液体はわずか数秒で北川の体全体に流れていった。

「じゃあ北川の兄ちゃんに優しい俺から贈り物をしてあげよう」

ステゴサオルスのTシャツ、蛇のお札、そして今まで長沢が愛用して破壊活動を共にした金属バットを北川のデイパックに移し変えた。

「ありがとうね兄ちゃん。俺兄ちゃんのぶんまで戦うから」

誰の敵討ちでもない意味のない言葉を残し長沢は明るくなりはじめた道を歩き始めた。


【G-8 街/早朝】

【長沢勇治@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:日本刀@現実】
【所持品:支給品一式 クロスボウ1/1@シークレットゲーム-KILLER QUEEN- クロスボウの矢10/10 雲のマーレリング@家庭教師ヒットマンREBORN! アリクイのぬいぐるみ@Kanon 阿良々木暦の腕時計@物語シリーズ H173の注射器2/3@ひぐらしのなく頃に Keyコーヒー×4@Angel Beats!】
【状態:疲労(小)、精神異常】
【思考・行動】
1:皆ブッ壊す。
2:バイバイ、北川の兄ちゃん。
【備考】
※本編開始前からの参戦。
※精神異常は、何かきっかけがあれば戻る可能性もあり。



※※※

「畜生、まさか長沢がゲームに乗った者なんて――あれ?」

気絶させられ、15分くらいしてすぐに目を覚ました北川だったが自分は死んだとばかり思っていたのだったが、何故か生きていた。
いや、あんな殺意を持った少年の目つきを見た今となるとほぼ何かされたのは確実にわかる。

「クソッ!デイパックの中身がすり替えられてやがるっ!」

中でも一番に目を引いたのは金属バットであった。
自分を気絶させた武器がデイパックに入っているのなら当たり前であった。

441中二病でも殺したい! ◆WzpMn05TJA:2012/01/27(金) 02:15:41 ID:XcHxdfUoO
「長沢の野郎!いや、俺はまだ生きていて日本刀は失ったけど武器があるならまだ良い」

だが北川は知らない。
H173の注射器を体に打ち込まれている体になっている事など。
長沢は効果はわかっていなかっただろうが、これは雛見沢症候群という人々を疑心暗鬼にさせて、首を痒くさせて最終的には首を思いっきり掻いてしまい死んでしまう悪魔の病気であり、完全に治る方法などない。

しかも長沢は『不必要な物』とみなした蛇のお札があった。
これはいっぱいの喰わせ者で、参加者の1人である千石撫子の探し求める物であり、彼女を神様としてしまう言うならば死亡フラグの塊のお札である。

雛見沢症候群、蛇のお札。
2つの危険を伴っているこの男はすぐそこの危険に未だ気付く気配がない。


【北川潤@Kanon】
【装備:金属バット@ひぐらしのなく頃に】
【所持品:支給品一式 ステゴサオルスのTシャツ@AIR 蛇のお札@物語シリーズ】
【状態:傷(多)、精神的大ダメージ、雛見沢症候群】
【思考・行動】
1:おっさんの意思を受け継ぎ生きる。
2:みんなと脱出する。
3:真アサシンと長沢は危険。
【備考】
※共通ルートからの参戦。
※聖杯戦争の事についてたくさんの説明を受けました。



【雲のマーレリング@家庭教師ヒットマンREBORN!】
白蘭の部下である真6弔花の桔梗のマーレリング。

【蛇のお札@物語シリーズ】
名称不明。クチナワさんという妄想が取り憑いた千石撫子が探し求めるお札。食べたら最後神になる。

【アリクイのぬいぐるみ@Kanon】
倉田佐祐理が川澄舞に一番大きなぬいぐるみをと選んだ誕生日プレゼント

【阿良々木暦の腕時計@物語シリーズ】
阿良々木暦の右利きなのに右腕に巻く腕時計。

【クロスボウ@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
弓矢と銃が合体した様な武器。長沢勇治のクロスボウを構えている姿がシークレットゲームのOPにて確認出来る。

【ステゴサオルスのTシャツ@AIR】
神尾観鈴の愛用。ステゴサオルスのプリントにガオガオと描かれている。

【H173の注射器@ひぐらしのなく頃に】
雛見沢症候群を引き起こす注射器。

442 ◆WzpMn05TJA:2012/01/27(金) 02:26:43 ID:XcHxdfUoO
投下終了

元ネタはライトノベル『中二病でも恋がしたい!』より

シークレット勢は1番スカッとするぐらい書いていて楽しいです
総一もサクミンもかりんもngswも高山さんも手塚も
次点はだんだん好き放題騒ぎだしたギアス勢も好き

予約
坂上智代、人吉善吉

443 ◆RmIe4rjRnw:2012/01/27(金) 07:44:57 ID:WXiqeQPw0
投下乙です

旦那!やっぱあんたKOOLだよ!
完二はご愁傷様、英霊じゃさすがにかなわないってことですな

長沢は壊れてますな―北川も不幸で泣けてきた
アサシンにナイフで切られて長沢に殴られるなんて…波乱万丈(

投下します

444Departure ◆RmIe4rjRnw:2012/01/27(金) 07:48:36 ID:WXiqeQPw0

殺し合いの舞台となった島の、【E-8】にある民家。
そこで少年、前原圭一と、少女、朝比奈みくるは出会った。
そして、圭一をリーダーとして、この殺し合いから脱出する、もしくは主催者を打倒するチームを作ることに決めた。

しかし、二人はすぐには行動しなかった。
これからどこへ向かうか、そしてどう仲間を増やすかを考えるためだ。
圭一はテーブルに地図とノートを広げ、何やらノートに書き込んでいる。
みくるはキッチンにあったティーバッグを使い、お茶汲みの準備をしている。

「(私は…殺し合いなんてできない。だからせめて、自分の身を守らなくっちゃ)」

朝比奈みくるは、特殊な能力も無いただの少女である。
前原圭一は「俺が朝比奈さんを守りますよ」と言ったが、中学生に頼るだけではいけない、と彼女が考えたのは当然だと言える。
しかし、みくるのデイパックに彼女が扱える武器は無かった。
だが、例えば拳銃などがあれば、ひ弱な自分でも身を守れる。
そう考えて、やかんを火にかけながら、みくるは圭一に尋ねた。

「前原さんの支給品に、拳銃か何かありませんでしたか?」

聞かれた圭一は、「ええと…」と言いながらデイパックを漁る。
みくるが見た圭一の支給品は、エクスカリバーという剣だけだった。
説明書には「アーサー・ペンドラゴンの宝具・約束された勝利の剣」と書いてあった。
しかし、運動神経も人並みかそれ以下、特別な訓練も受けていない少女のみくるは、剣など使えない。

「剣よりも良い支給品が入っていればいいけど…」

圭一はデイパックを漁り始めた。
そうして、まず圭一がデイパックから出したのは、バイオリンだった。
説明書には「一ノ瀬ことみのバイオリン」とあった。
一ノ瀬という人物が使用していた物なのだろう。しかし武器としては使用できない。
鈍器として使うにしても、石や花瓶などのほうがよほど手ごろだ。

「これは…ダメですよね。じゃあ…」

バイオリンをテーブルに置き、再びデイパックを漁る…と、その手が不意に止まった。
圭一は、デイパックの中をまじまじと見ている。

「どうしたんですか?」

みくるが呼びかけるが、答えは返ってこない。
圭一はデイパックの中を凝視しながら、ころころと表情を変えていく。
驚愕、困惑、そして興奮といった表情が見て取れる。
圭一がデイパックから出したのは、緑色のカメレオンだった。

「え…?」

くりくりとした愛らしい目。なめらかな身体。形容するならばこんな感じだろうか。
デイパックから出てきたカメレオンは、するりと圭一の頭の上に登った。

「(身軽だなぁ…)」

と感心したのもつかの間、次の瞬間、カメレオンは帽子に変わっていた。
比喩や冗談ではなく、実際に圭一の帽子になっている。
緑色がかった箇所があるが、それがカメレオンの名残だろうか。

「コイツ、姿を変えられるカメレオンみたいです」

圭一が説明書を読んで言う。
姿を変えられるカメレオン…信じられない。
思考が表情に表れていたのか、圭一がこちらを見て、

「俺も信じられないですよ」

と、苦笑いしつつ呟いた。
時計の針が、かちゃっ、と鳴った。

445Departure ◆RmIe4rjRnw:2012/01/27(金) 07:50:07 ID:WXiqeQPw0

◆◇◆◇◆◇◆


ところ変わらず、民家の同じ部屋。
テーブルの上にはティーカップが二つ、僅かに湯気が立っている。
その片方を手に取り、少し口に含んで飲み下す。
壁に掛けられた時計は、3時半を過ぎていた。

「みくるさん、レオンは大丈夫ですか?」

圭一の支給品であるカメレオンの「レオン」は、現在みくるさんに面倒を見てもらっている。
『形状記憶カメレオン』であるレオンは、一言で言えばとても不思議だった。
その名の通り、レオンは炊飯器だろうが鏡もちだろうが一度見た物に変化することのできるカメレオンだった。
レオンは何故か銃にも変化できたので、みくるの武器代わりになった。
みくるさんはレオンを肩に乗せ、「はい、大丈夫です」と答える。
レオンのおかげで、みくるの緊張も解けたように見える。

「(緊張しているのは、むしろ俺だ)」

自嘲めいた言葉を、朝比奈さんに聞こえない程度の声で呟く。
打倒主催者の心構えは変わっていない。だが怖い。
殺し合いの中でどんな人間が襲ってくるか分からない、それゆえの恐怖。
怖い。怖い。怖い。怖い。今すぐにでも雛見沢へ帰りたい。
感情が脳を支配する。



「(クールになれ、前原圭一!!)」

前原圭一は、脳内で何度も叫んだ。
自分を落ち着かせるために。冷静に考えるために。

「(俺は朝比奈さんを守らなくちゃいけない。そのためにも、クールに動くんだ!)」

少女、朝比奈みくると出会って、彼女の身を守ると宣言した。
仲間と合流して、あるいはより多くの仲間を作って、脱出する。
自分の目的を再確認して、より細かい行動を決めにかかる。

「(まず、これからどこに行こう…)」

地図には様々な施設が記されているが、この近くとなると三つ。
E-7の高校。E-6の学生寮。そしてF-7の電気店だ。
一番近いのは電気店。だが、この殺し合いの中で、電気店に行きたがる人は少ないだろう。
二番目は高校。これは自分たちの様な学生が参加者に多い場合、集まる可能性も高い場所だ。
三番目は学生寮。これも高校と同様、参加者が集まる可能性は高い。

「(高校が無難か…?)」

ここから一番近い施設。
人が来る可能性が高い施設。
そこで仲間集めをすれば、大きなチームをつくることも夢ではない。

そう結論付けて、眼前の朝比奈さんを見る。
朝比奈さんも、こちらを真剣な目で見ている。
「私は心配しないでください」と、そう言っているように感じた。
そして互いに、強く頷き合った。


◆◇◆◇◆◇◆


デイパックを担ぐ。
進む道は決まった。
その道は極楽行きか、はたまた地獄行きか。
それは俺たちで決めるんだ。
さあ、行こう。

446Departure ◆RmIe4rjRnw:2012/01/27(金) 07:51:04 ID:WXiqeQPw0

【E-8 民家/黎明】


【前原圭一@ひぐらしのなく頃に】
【装備:エクスカリバー@Fate/stay night】
【所持品:支給品一式、バイオリン@CLANNAD】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:朝比奈さんを守る。
2:仲間との合流。
3:島からの脱出か主催者の撃破。
4:高校へ向かう。
【備考】
※皆殺し編の沙都子救出後からの参戦です。




【朝比奈みくる@涼宮ハルヒの憂鬱】
【装備:レオン@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【所持品:支給品一式、黒神くじらの包帯@めだかボックス、圭ちゃん専用メイド服@ひぐらしのなく頃に、10年バズーカ3/3@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:前原さんに着いて行く。
2:仲間と合流。
【備考】
※涼宮ハルヒの消失後からの参戦です。
※レオンは肩に乗った状態です。


【バイオリン@CLANNAD】
前原圭一に支給。
一ノ瀬ことみのバイオリン。ちなみにことみはバイオリンに関しては下手である。

【レオン@家庭教師ヒットマンREBORN!】
前原圭一に支給。
沢田綱吉の家庭教師、リボーンのペット。
形状記憶という特殊能力を持つカメレオンであり、目にしたことがある物ならば自分のサイズで変身できる。
変身した物は拳銃、ダウジング棒、ハンマーなどさまざま。
何気に作品内では重要な役割だったりする。

447 ◆RmIe4rjRnw:2012/01/27(金) 07:55:37 ID:WXiqeQPw0
投下終了です
元ネタはAngel Beats!の第一話「Departure」より

とにかくレオンが出したかったのです

448 ◆WzpMn05TJA:2012/01/27(金) 09:59:16 ID:XcHxdfUoO
投下乙です

ほのぼのとした感じが最高ですね
みくレオコンビに大期待です!


余談ですが次回に意志持ち支給品を出そうとしていたのでタイミング的に驚きました

449ぜんきちタイガー ◆WzpMn05TJA:2012/01/28(土) 09:25:40 ID:jRfgZj8wO
「ところでよ……、俺はいつまでこんなせまっ苦しいところに閉じこめられてんだよ!」

辺り一面真っ黒な場所だった。
光など一切差し込まない、暗闇で猫目で少しわかるぐらいだった。

「腹減ったなー……。お嬢がこんな暗いところに居るわけないしな」

自分の飼い主である三千院ナギは暗いところや1人が苦手であった。
つまりこんなところに居たら絶対にメイドのマリアや執事の綾崎ハヤテに泣きつくであろう。

「おっ!?パンがある。見た目すげーな」

虹色に輝くパン。
それは動物の本能が神秘を求めた結果に彼は見えた。

「いただきマズッ!?」

「いただきます」と言い終える前に噛みついたパンの味はそれはもう、マズいのなんのって。
こんなの人間すら食べられたものではないだろう。
その事故により暴れ出すと閉じこめられていた何かから脱出出来た。

「うわっ!?俺のデイパックから変なトラが出やがった!?」
「あん?」

暗いながらもそこは先ほどの暗闇より光が差し込む場所であった。
声がする向きが上からであり、上を見ると可もなく不可もない顔付きで若干冴えない感じで、印象は普通なイメージの少年であった。
そして周りを見てようやくトラは気付く。

「俺がまさかバッグに入れられていただとぉ!?」
「なんだよこのおっさん!?着ぐるみでも着たエスパー伊藤か!?デビルすげぇ!?」
「誰が着ぐるみじゃあ!?」

―――――

「何がどうなってやがる……?」

少年、名を人吉善吉という。
彼は箱庭学園に通う1年生の高校で普通の少年である。
その箱庭学園にて生徒会長である黒神めだか、副会長である球磨川禊、会計である喜界島もがな、書記である阿久根高貴、そして庶務である人吉善吉(自分)というメンバーでの生徒会に所属していた。
彼は今まで黒神めだかに着いて来たが、オリエンテーションにて喧嘩をしてしまった。
それから彼は気付いた。
――自分は黒神めだかに好意を寄せていた。

「まさか安心院さんの試練か!?」

あの安心院さんだ、考えられる。
善吉はそう思いついたがシャルル達のメンバーに安心院さんは居なかった。
いや、黒幕で居るかもしれないし、未知の力の正体が安心院さんのスキルかもしれない。

「オイ、ヒトキチなんなんだよこの状況!?」
「お前がしゃべっている状況を一番説明したいよっ!しかもなんで二足歩行出来んだよ!?」

トラであり三千院ナギという者のペットらしい。名前はタマというらしいが突っ込みどころが満載であった。
しかもチャックもなければ触り心地もフカフカな毛並みに肉付きに獣のにおい全て本物。
まるでおとぎ話に出てくるご都合主義な動物の登場人物みたいだと善吉は少しひねくれた事を感じた。

最初に善吉はめだかの姉で名瀬夭歌(黒神くじら)の動物改造をした動物の一匹だと思ったが、そもそもそんな改造なんかあるわけがない。
自己紹介にて出た名前も名瀬夭歌と関わりがある様な名前でもない。

「それにしてもタマが俺の支給品なのか?……デビルありえねぇ」
「なんで俺様がお前の支給品なんだよ!?つーか支給品ってなんだよ支給品って!?サバゲーかよおいっ!?」
「なんでトラがサバゲーなぞ知っている?」

450ぜんきちタイガー ◆WzpMn05TJA:2012/01/28(土) 09:26:16 ID:jRfgZj8wO
このトラは急に記憶が寝はじめた以後から途切れた事は理解していたが、バトルロワイアルに巻き込まれた事は知らないらしい。
善吉は全ての説明をした。

自分達103人が学校らしきところに呼び出された事。
バトルロワイアルの主催者がシャルル・ジ・ブリタニアと郷田真弓と朝倉涼子である事。
首輪が爆発して人が3人死んだ事。
善吉が眠らされここで目が覚めた事。

「なんじゃそら。嘘も大概にしろよお前」
「本当だよ、ほらこれが名簿だとよ」

善吉が見た限りめだか、球磨川、宗像の3人が自分の知り合いであった。
全員強い仲間となりうる人物だけであった。

「ちょっと待てよ、なんでお嬢が入っている!?しかもマリアさんに借金執事にお嬢の親友まで」
「文字も読めた!?」

ここまでくるとヘタな人間より人間らしく見えてしまう。
タマの1つ1つの言動がトラという次元を超越していた。

「畜生、お嬢……。俺が絶対お嬢を助けてやるからな」

捨てトラであった自分をネコだと思い込んでいたが可愛がり長年一緒に居た自分の主。
なんの為に自分は強い力を持っている?

「それは主を守る為だ!」

タマの心には主、三千院ナギを助けてこのゲームの主催者を屈服させる事が自分の役目・恩返しと思い至る。

「仲間を集めて主催者に対抗する!……でだヒトキチ」
「つーかヒトキチって呼ぶな!都城先輩の二番煎じなんだよ!」

と強く突っ込む善吉であったが、今回ばかりは目の前のトラは真面目な顔をしてそれを聞き流した。

「お前、ゲームに乗るつもりじゃないよな?」
「!?」

善吉は即答出来なかった。
――バトルロワイアル。
今までは殺し合いの様な戦いをしてきたがあくまで異常や過負荷などの特別な人間。
普通の人間を混ぜたバトルロワイアルなどとは意味合いがグッと変わってくる。

だがあの自分がよく知る黒神めだかが死ぬ可能性もある。

ゲームに乗るべきか。
ゲームに乗らずに主催者の相手をするか。

「俺は……、俺はっ!」

トラに見守られて答えを出そうとしたその時、善吉の目に2つの人影が見えた。
少し騒がしい。
もしかしたら殺し合いの最中かもしれない。

「行くぞタマ!」

答えを保留し、善吉はタマを連れながらその2つの影の場所まで走った。
余談だが当然トラの走りに善吉は追いつくわけがなかった。

―――――

当然の如くそこには平和な事など無かった。
どちらとも女性。
だが髪型はショートヘアーとロングヘアーと対照的であった。
片方がナイフを持ち殺意がビンビンと善吉の肌に触れる。
もう片方の女からはその女を追い払う為に自己防衛だけであり、しかもナイフ相手に素手であった。

451ぜんきちタイガー ◆WzpMn05TJA:2012/01/28(土) 09:27:05 ID:jRfgZj8wO
どちらが殺し合いに乗り、どちらが戦うつもりのない対主催なのかは一目瞭然であった。

そして、戦いは髪の長い女が勝てないと見て逃げ出した事で呆気なく幕を降ろした。

「どうするよヒトキチ?ゲームに乗るか乗らないか決意したか?」
「……あぁ、決意したぜ」
「どちらを選んだとしてもお嬢の敵になるなら殺すからな」

善吉は走りながらその決意を固めていた。

―――――

「待ってくれ、あんた」

善吉が選んだ相手は髪の長かった少女の坂上智代であった。
襲われて逃げたばかりの智代。
彼女の警戒心が弱いわけがなかった。

「なんだお前らは!?貴様もゲームに乗った参加者か!?」
「違う、俺はゲームになんか乗らない!このゲームを壊してやるんだ!だからあんたも協力してくれないか!?」

―――――

善吉は智代が襲われている時、1つの事が思い出されていた。

俺はめだかちゃんが好きだ。
そのめだかちゃんならどうする?
自分を省みずに他者を助ける為だけに戦い抜いた彼女の姿を何回も見てきたはずじゃないか!
それをめだかちゃんの為にと人を殺してしまったらめだかちゃんに次こそ幻滅させられてしまうだろう。
めだかちゃんに惚れられる漢になるには、めだかちゃんと同じ事をしてそれ以上の結果を出す事じゃないか!

それに俺も困っている奴なんかを見捨てられない!
それが箱庭学園の生徒会で、めだかちゃんの右腕であり続ける俺だ!

俺が今まで鍛えてきた事をこの日以上に生かす事なんかあるわけねぇ!

それが俺、人吉瞳の息子の人吉善吉だっ!

―――――

「本当に殺し合いに乗っていないのだな?」
「あぁ、俺の名前は箱庭学園1年生の生徒会庶務人吉善吉だ」
「私は光坂学園2年生徒会会長坂上智代だ」

智代は熱く決意したその目を信じられると判断した。

人吉善吉というこの男は、必ずゲームの主催者達に参加させた事を後悔させてやれるのではないか、と智代は感じ取った。
本当に参加者達の救世主になり得ると信じて。

「ところでその動物はなんだ?」
「なんだってトラだ。名前はタマでしゃべったりするトラなんだ」
「は?」

智代は理解出来ないという目をしていた。
それもそのはず。
ずっと二足歩行していたトラはいつの間にか四足歩行になっており、ずっと「ニャアニャア」と鳴いていたのだから。

「少し怖くて大きいがただのネコじゃないか。しかもしゃべるはずがないだろう」
「ニャア、ニャア」
「……」

こちらを向くタマは人をバカにした目であった。
そもそもタマは『少女の夢を壊したくない』という理由で、夢を壊しても良い男にしか本性を見せないのだ。
現に主の三千院ナギですら知っていない事で、綾崎ハヤテと橘ワタルしか知らない事実となっている。

452ぜんきちタイガー ◆WzpMn05TJA:2012/01/28(土) 09:27:35 ID:jRfgZj8wO
「結構可愛いし、懐くネコではないか」
「ニャアニャア♪」

智代に抱かれて嬉しがるタマ。
だが智代は気付かないが善吉だけは気付いていた。

「こいつ坂上先輩に抱かれて『はぁ、はぁ』欲情してる顔じゃねーか」
「ん?どうかしたか人吉?」
「な、なんでもないっす坂上先輩」

あのネコ被りのトラ野郎め、俺に向かって勝利のVサインをしやがった。
うらやm……じゃなくムカつく奴だ。

「お前可愛いな〜」
「ニャア!」

駄目だこいつ……早くなんとかしないと……。



【C-4 森/未明】

【坂上智代@CLANNAD】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:朋也たちと合流
2:善吉と行動、ゲームをぶっ壊す
【備考】
※智代ルート、卒業式直前からの参戦です



【人吉善吉@めだかボックス】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 タマ@ハヤテのごとく! レインボーパン@CLANNAD ランダム支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:智代や他の参加者と協力し、ゲームをぶっ壊す
2:みんなと合流
3:めだかちゃんに惚れてもらう
4:駄目だこいつ……早くなんとかしないと……
【備考】
※めだかと付き合いたいと自覚した直後からの参戦です



【タマ@ハヤテのごとく!】
意志持ち支給品扱い。トラなのだが、何故か二足歩行や人語を話す、2ちゃんねるにて数々の名スレを生み出した(自称)などトラなのかすら不明。『少女の夢を壊したくない』という理由で人語を話せるのを隠すなどちゃんとした意志もある。そんな彼だが主への忠誠心は本物である。

【レインボーパン@CLANNAD】
古河早苗の作ったパン。見た目は虹色に輝くパン。味はご察しください。

453 ◆WzpMn05TJA:2012/01/28(土) 09:30:32 ID:jRfgZj8wO
投下終了です

元ネタは「物語シリーズ」風サブタイトル『人名+動物』より

久し振りに未明の話を書いたのでかなり時系列が前ですね

もしかしたらレオンやタマにも状態表作った方が良いのかもしれませんね


予約
三千院ナギ

454 ◆RmIe4rjRnw:2012/01/28(土) 19:51:05 ID:kxC9jlK.0
気になったのですが、「終わりのクロニクル」の中で完二のペルソナが
「ヒノカグヅチ」と記されているのは誤りではないですか?
間違っていたら申し訳ありませんが、ご確認よろしくお願いいたします。

衛宮切嗣、真アサシンを予約します

455この島に1人、――がいる! ◆WzpMn05TJA:2012/01/29(日) 13:20:10 ID:Au.uR1L.O
 明るく派手なカジノ。
 だがカジノ内にはそんな派手さとは温度差が激し過ぎるぐらい来客は1人しか居なかった。

「誰も来ないではないかー!?」

 放送まで残り1時間もない。
 既に何人も被害者が出ている中、目覚めてから誰1人とも出会っていなく、惨劇という惨劇にも巻き込まれていない。
ラッキーでもあり、アンラッキーでもある参加者の1人である。
 だが臆病である彼女にはアンラッキーな面の方にばかり傾いていたのであった。

 そのアンラッキーの中で彼女はどの様な行動へと移すのであろうか。

「こうなると暇だなー……」

 ただ少しずつ明るくなっていく窓の景色を眺めて2時間以上。
 疾うに随分と前から見慣れた景色でバトルロワイアル中に言うのは不謹慎だが面白くないのだ。

「ハヤテ〜、マリア〜、ヒナギク〜」

 この島に来ている執事、メイド、親友の名前を呼んでも来てくれるはずがなかった。
 こちらも外の景色と同じく、飽きるほど何回も呟いた単語であった。
 そろそろナギの声は元気を失いつつ、涙声になりつつあった。

 本気で泣き出すまであと何回だろうか?
 そんな弱い自分が嫌だ。

「頼りっきりはいけないのだっ!」

 弱々しい声でも勇気を振り絞って出す言葉。

「(私が今まで読んできたマンガやアニメやゲームの主人公だったら無力でも何かしているのだ!)」

 自分の大好きな作品の数々。
 その主人公に自分は成れるのではないかとナギは少しずつ勇気が湧き上がった。

「ただカジノに居るだけでなく何かを調べたり、武器を探したりしてみるのだ」

 そう言ってカジノの探索へと乗り出すナギ。
 広すぎるカジノは景色を眺めるよりずっと退屈と臆病を紛らわせる事が出来るであろう。

「よし、頑張ってみるのだ!」

 ナギの頭には『頑張ってくださいお嬢様』と笑顔で拍手をしながら応援するハヤテの声が聞こえた気がした。

†††††

「この飲み物も飲めそうなのだ」

 最初に探したのはバーであった。
 そこには飲み物が貴重であるだろうと水やジュースを手に取ってはデイパックに入れていく。
 角砂糖なども手に入り、もし食料が底を尽きた時などには重宝するであろう。

「ふむ。バー探索は終わりだ」

 次はどこを探そうか?
 スロット、テーブル台、ルーレットなどたくさんの種類のカジノに必要な物が設置されている。

「む?なんだあのパソコンみたいなのは?」

 大型スクリーンの目の前に置かれたノートパソコン。
 もしかしたらインターネットを通じて助けを呼べるかもしれないとパソコンに近付き、慣れた手付きでマウスとキーボードを叩いていく。

456この島に1人、――がいる! ◆WzpMn05TJA:2012/01/29(日) 13:21:02 ID:Au.uR1L.O
「む?インターネットが開けないのだ」

 アイコンをクリックしてもインターネットは開かない。
 まぁ、当然そんなのは不可能であろう。

「おそらくケータイがあっても圏外だろう。そんなヘマは流石にするわけないか……」

 良くあるパターンだ。
 閉じ込められた場所にケータイはあるが圏外で助けを呼べないまま殺人事件に巻き込まれる事など。

「なんだ?この明らかに変なファイル?」

 そこには『バトルロワイアルの参加者についての生き残り予想ランキング』と書かれたファイルがあった。
 罠の様な気もするが、もし本当ならこれは大きな手がかりになるはずだ。

 ナギは右手で左クリックをしてそのファイルを開いた。

 ――結果論で言うとそれは本物であった。

†††††

『バトルロワイアルの参加者についての生き残り予想ランキング』
こちらはゲームの参加者についての生き残り予想をバトルロワイアル開催前に行われたBETされたランキングです。生き残り予想であり、強いランキングではない事をご了承ください。
参加者の皆様にはご参考にしていただき、危険視するも良し、協力を仰ぐのも良し。
生き残りをかけて頑張ってください。

1位 球磨川禊
2位 セイバー
3位 ウルキオラ・シファー
4位 一方通行
5位 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア
6位 アーチャー
7位 ライダー
8位 黒神めだか
9位 バーサーカー
10位 棗恭介
11位 ランサー
12位 枢木スザク
13位 キャスター
14位 アサシン
15位 イカロス
16位 立華奏
17位 鳴上悠
18位 真アサシン
20位 来ヶ谷唯湖
21位 グリムジョー・ジャガージャック
22位 坂上智代
23位 忍野忍
24位 手塚義光
25位 御坂美琴
26位 雲雀恭也
27位 長門有希
28位 六道骸
29位 上条当麻
30位 前原圭一
31位 阿良々木暦
32位 仲村ゆり
33位 竜宮レナ
34位 直井文人
35位 涼宮ハルヒ
36位 アウレオルス=イザード
37位 衛宮切嗣
38位 宗像形
39位 更木剣八
40位 白鐘直斗
41位 花村陽介
42位 岡崎朋也
43位 高山浩太
44位 黒崎一護
45位 ニンフ
46位 沢田綱吉
47位 宮沢謙吾
48位 井ノ原真人
49位 衛宮士郎
50位 戦場ヶ原ひたぎ
51位 巽完二
52位 椎名
53位 天城雪子
54位 アストレア
55位 千石撫子
56位 園崎詩音
57位 国崎往人
58位 刻命裕也
59位 川澄舞
60位 春原陽平

457この島に1人、――がいる! ◆WzpMn05TJA:2012/01/29(日) 13:21:51 ID:Au.uR1L.O
61位 白井黒子
62位 キョン
63位 古泉一樹
64位 綾崎ハヤテ
65位 北条かりん
66位 持田哲志
67位 羽川翼
68位 直江理樹
69位 相沢祐一
70位 倉田佐祐理
71位 神原駿河
72位 マリア
73位 C.C.
74位 音無結弦
75位 朝比奈みくる
76位 ロロ・ランペルージ
78位 古手梨花
79位 瀬川虎鉄
80位 長沢勇治
81位 御剣総一
82位 人吉善吉
83位 遠野美凪
84位 古里炎真
85位 中嶋直美
86位 足立透
87位 ユーフェミア・リ・ブリタニア
88位 篠崎あゆみ
89位 伊吹風子
90位 棗鈴
91位 園崎魅音
92位 水瀬名雪
93位 桜井智樹
94位 北川潤
95位 姫萩咲実
96位 古河渚
97位 神尾観鈴
98位 岸沼良樹
99位 霧島佳乃
100位 三千院ナギ

あなたは何位でしたか?
では優勝頑張ってください。

†††††

「ふざけんなぁぁぁぁぁ!」

 ランキングの結果に怒りの雄叫びを挙げたのはもちろんこのランキングを読んだ100位(三千院ナギ)である。

「しかも球磨川のコメントなんか『どうせ死ぬだろwww』とか『あの人ならなんかするw』みたいなふざけた書き込みばっかではないか!」

 人の名前はリンク式になっており、それをクリックするとコメントが読めた。
 因みにナギに寄せられたコメントというと……。

「『絶対即死』、『応援したいけど多分無理』、『大穴狙いw』……こんな書き込みだけか!?しかもこれだけ!?」

 球磨川やセイバーへのコメントには1000越えに対して自分には3つのみのコメントであった。

「なんなんだよ!?むかつくー!絶対に生き残ってバトルロワイアルをぶっ壊してこのコメント書いた奴とか主催者を驚かせてやるのだ!」

 主催者達を自分とハヤテとマリアや他の参加者とが協力し合い、最後に格好良くクリュサオルでシャルルを屈伏させる自分を思い描いた。

「(いや、そんなの無理なのは誰よりわかってはいるが、それに近い活躍をしてみたいのだ)」

 ナギがそう思う。
 そうだ、弱いならこれから自分が強くなれば良いではないか!

「なんて私は当たり前ながらすごい事を思いついたのだ♪」

 そう上機嫌になり騒ぐナギであったがナギは気付かない。
 ナギの事を観察する様に眺める目を……。

458この島に1人、――がいる! ◆WzpMn05TJA:2012/01/29(日) 13:22:28 ID:Au.uR1L.O

「うむ!このゲームは天下の三千院ナギが終わらすのだ!」

 楽しそうにヒーローを気取りながら一言一言話していくナギ。

「はっははは……!?」

 そしてナギはついにその観察する目の持ち主に気付く。

「お、お前……なんだよお前……?」

 その観察していた者は目が合うとズカズカとナギに向かって歩いてきた。
 ナギはただの知らない人であってもこんなに取り乱したりはしなかったであろう。

 でも、その者に関してだけはまずルールすら適用されていない。

「お、お前……なんで首輪をしていないのだ……?お前ゲームの主催者でもないだろう……?じゃあ何者なのだ……」

 ナギは困惑しながら怯える。

 首輪をしていない奴の意図は?
 何故自分に接触をした?
 しかも、怯える理由はこれだけではない。

「け、けけけ、拳銃ぅ……」

 銀光りする首輪がない。
 だが右手に持つそれは確かに黒光りし、自分が昔に命を狙われた事のある武器―拳銃―であった。



【A-3 カジノ/早朝】

【三千院ナギ@ハヤテのごとく!】
【装備:クリュサオル(chrysaor)@そらのおとしもの】
【所持品:支給品一式 大量のエロ本@そらのおとしもの 目安箱@めだかボックス 水@現実 ジュース@現実 角砂糖@現実】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:な、何者なのだ……?
2:ゲームを終わらせるのだ。
3:アニメのキャラクターは本人?
【備考】
※アテネ編直前からの参戦。
※ある程度の参加者の特徴を知っています(基準は今までハヤテのごとく!の原作、アニメ、劇場版、OVAでパロディまたは伏せ字にされた事のある作品のキャラクターが該当します)



【???@???】
【装備:詳細不明の拳銃@???】
【所持品:???】
【状態:???】
【思考・行動】
1:???
2:???
3:???
【備考】
※首輪をしていません。
※名簿に名前が載っていません。
※三千院ナギの知り合いではない様です。


【水@現実】
カジノで調達。ミネラルウォーター。

【ジュース@現実】
カジノで調達。普通に市販されているジュース。

【角砂糖@現実】
コーヒーに入れる砂糖の塊。

459 ◆WzpMn05TJA:2012/01/29(日) 13:28:45 ID:Au.uR1L.O
投下終了……?

元ネタはライトノベル『この中に1人、妹がいる!』より

それとリレー企画のこの王道ロワイアルですが、『この島に1人、――がいる!』の続きの予約のみ非リレーにさせていただきます
いずれ自分が書きたいと思います
本当にもうしわけないです

放送直前的な描写ですが1回放送まではもう少し時間かかります

予約
涼宮ハルヒ、黒崎一護、ロロ・ランペルージ、バーサーカー、春原陽平

460 ◆WzpMn05TJA:2012/01/29(日) 13:39:16 ID:Au.uR1L.O
ランキングは最初の10位ぐらいまではこんな感じかな〜って書いたもので特にこれがロワイアルに影響する事は多分ないです

あと19位が抜けていたりしたのでwiki収録の際に訂正しておきます

461名無しさん:2012/01/29(日) 19:46:23 ID:xW7VSN.Q0
投下乙。
100位までのランキング…カオスだな。
ていうかナギの話で抜けてる一人がヒナギクって何故だ…
非リレーで次話書くならお早めに
他の方に???を予約されるという可能性もありますからね

462 ◆WzpMn05TJA:2012/01/29(日) 20:19:18 ID:Au.uR1L.O
>>461
実は77位も抜けていました

19位 桂ヒナギク
77位 日向秀樹

こんな感じですかね


説明がわかり辛いなと思いましたので詳しく訂正させてもらいます『この島に1人、――がいる!』の続きとは
三千院ナギと???を非リレー状態という事ですので改めて訂正しておきます

???は5人ぐらいの候補があるんで、投下まで考えておきます

予定としまして1回目放送の次の投下ぐらいをメドにしています

463 ◆SENAs8NCE2:2012/01/30(月) 22:46:53 ID:zamO1HqQ0
すいません 予約破棄します

464決意と殺意が交わる時 ◆WzpMn05TJA:2012/02/01(水) 16:11:07 ID:EJ0eslUgO
男女3人のメンバーがバトルロワイアルの会場となった無人島を歩いていた。

1人は涼宮ハルヒという少女。
1人は黒崎一護という少年。
1人はロロ・ランペルージという少年。

何も接点のない3人が知り合うきっかけとなったのがこのバトルロワイアルにて協力して殺し合いを止めるといった事であった。

だが1人、本当は別の目的を持つ者が巻き込まれていた。

「(気に食わない……。この涼宮ハルヒも黒崎一護も……)」

ロロであった。
彼は最初からの目的は兄を優勝させる事である。
殺し合いを止めるメリットなどほとんどない。
むしろ殺した方が安全だ。

「(どうせ危険が訪れたら真っ先に逃げ出して殺す偽善者のくせに)」

ハルヒと一護はそれなりに仲良くなっている。
だが彼の目にはお互い腹の探り合いをしている様にしか見えなかった。

それに2人には自分は無口だからと伝えており、あまり会話には混ざらない。
隙を見せたら殺される可能性だって捨て切れない。

「待っててね、兄さん。兄さんと敵対する枢木スザクも、一度兄さんが殺したユーフェミアも殺すからね」

前を歩く2人はお互いに会話をしていて、そんな物騒な言葉など聞こえていなかった。





「涼宮を襲った奴っていうのが袴姿の長身の奴なんだな」
「そう、名前まではわかんないけど多分上条君はもう……」

上条当麻。
上条君はとにかく熱くて正義の塊の様な人だったわ。

「言うな涼宮……。お前は生かされたんだ。その親友って奴にもどんな最期であったか教えてやって彼の誇りを称えてやるんだ。その活躍を伝えて生き抜かなくてはいけないんだお前は!」
「そうね」

上条君が出した名前。
御坂美琴、白井黒子、一方通行。
その方々達にお礼とお詫びをしなくてはならない。
そして、上条君を報わせてあげないとね。

「チャドだって格好良く反乱したんだ。……やり切れないぜ」

首輪が爆発して殺された1人。
筋肉質な肌黒の青年は茶渡泰虎という名前であったらしい。
黒崎君はチャドと呼んでいたらしかった。

「黒崎君の仲間とかは居ないの?」
「仲間と呼んでいいのかわからんが強者と戦う事に命を賭ける更木剣八って奴が居る。あとはウルキオラは敵だがあまり襲う奴じゃない。グリムジョーって奴には気をつけた方が良い」

黒崎君曰わく更木さんは死神で、ウルキオラとグリムジョーは死神とほろうとかいう力が混ざったあらんかるって存在らしい。
上条君の時もあったけど全然名前から顔を想像出来ないのよね。

「私にはキョン、有希、みくるちゃん、古泉君が私の親友のSOS団!どう黒崎君もSOS団に入らない?」
「さっき断ったよな」
「むー……」

考えるつもりすらないらしい。
諦めよう。

「ところで黒崎君の髪の色のオレンジって染めているの?」

とにかく黒崎君は名字とは全然ほど遠いくらいのオレンジ色をしていた。
不良なのかもと思ったが、彼の口振りや行動はあまり不良らしくないと考えた。
思考はとにかく上条君並みに熱血的な考えの人ね。
最高の仲間を持ったわ。
ロロは無口だけど悪そうな顔には見えない。

465決意と殺意が交わる時 ◆WzpMn05TJA:2012/02/01(水) 16:11:40 ID:EJ0eslUgO
ここに上条君も居たらと考えると残念でならない。

「この髪か?」

と右手の指で髪を触る。
よく質問される、そんな口振りであった。

「……待て涼宮、ロロ」

急に真面目な顔つきになる黒崎君。
約5秒間、静寂が走った直後――。

「■■■■■■■――――!」





殺意、威圧、恐怖、破壊、混乱。
その様な負のものを一斉にバラまく様な叫び声が響く。

「くそっ、なんだよこの狂った様な声は!?」

狂った様な。
いや、実際に狂った騎士、バーサーカーの登場であった。

今まで一護は狂った相手とは何人とも戦ってきた。
更木剣八、グリムジョー、ヤミー、ノイトラ。
だが、そんな苦労して戦ってきた奴ら以上の強さがこの騎士からは感じる。
いや、『己が栄光の為でなく(フォー・サムンズ・グロウリー)』の能力にてバーサーカーからはまったく強さが図れない。
なのに強いのだけはわかってしまう。

「戦うぞロロ!」

涼宮になんか戦わせるわけにはいかない。
ここは俺とロロの2人で戦うしかない。

そう思い一護は後ろに呼びかける。
だが返事がない。
おかしい、無口な奴だが返事だけはあるはずだ。

「そ、それが黒崎君……」

ハルヒの慌てた声。
嫌な予感が新幹線以上の速さで一護の勘が走り出す。

「ロロが一瞬で消えちゃったの」
「は……?」

一瞬で消えた?
一護は彼女の言った意味が理解出来なかった。

「何言ってんだ、逃げたんじゃないのか!?」
「逃げたと思ったんだけど……、瞬間移動みたいに消えたの」
「……瞬間移動?」

瞬歩か?
いや、ロロは死神ではないただの一般人だ。
では何故彼は消えたというのか。

「■■■■■――――!」

考える暇など与えない。
理性のないバーサーカーは『騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』により掲示板を宝具としていた。

それを躊躇いなく戦おうと2人を襲う。

「くそっ!?」

改造魂魄。
黒崎一護の死神化の際に使われる丸薬の様な物。
それを1つ口に飲み込むと黒崎一護の体が2つに分離した。

466決意と殺意が交わる時 ◆WzpMn05TJA:2012/02/01(水) 16:12:14 ID:EJ0eslUgO
「なに、これ……?これが死神?」

分離したといっても姿が違う。
元の制服を着ていた一護と、黒い死覇装を着た一護であった。

「涼宮と一緒に退いてろコン」
「わ、わかった」

一護の姿をした者はハルヒに掛けよりながら一護と戦っている場所から巻き込まれず、見える位置に逃がされた。

「あんた何者なの?」
「俺はコン様さ。……お前スレンダーだが出てるとこは出てるな」

胸を見ながらセクハラ発言をするコン。
当然ハルヒから右手で思いっきり叩かれたのは言うまでもない。





「涼宮と一緒に退いてろコン」

俺は死神化をして目の前の敵(名前がわからないからバーサーカーで通す)と対峙する。

「斬魄刀ではないが、涼宮からもらったこの武器を大事に使わせてもらう」

2mぐらいある日本刀『七天七刀』を構える。

ギリギリまでバーサーカーの持つ掲示板が俺を狙うまで待つ。

「よしっ!」

ザシュッ!

掲示板は真っ二つに割かれて地面に落ちる。
だがお構いなくと足を蹴り上げるバーサーカー。

1つを器用に避けたあと、3つを両手でキャッチするバーサーカー。
するとただでさえ黒かった投げナイフは汚染される様に黒く染まっていく。

「何……だと……?」

まるで自分の武器に染め上げる様に浸食されたそれを2本投げた。

「ぐぅ!?」

体に血が二カ所から流れ出す。
右足と腹。
部分が悪ければ即死していたかもしれない。

だがまだ終わりではない。
もう一撃。
俺の心臓を狙っているのだろうか?





「させないわよー!」





目の前に走ってきた涼宮が七天七刀で投げナイフを斬りつけた。
それによりナイフは地に落ちる。

467決意と殺意が交わる時 ◆WzpMn05TJA:2012/02/01(水) 16:12:55 ID:EJ0eslUgO
「掴まってな」

コンが間に割り込み俺と涼宮を背負い高くジャンプする。

――そういえばコンの奴ジャンプ力ハンパなかったんだったな……。

「撒くかっ」

それからバーサーカーは追いつかないと知ってかすぐに追って来なくなった。

「ナイスな判断でしょ黒崎君、私が提案した逃走が成功したわね」
「ありがとな」

俺が戦っている間にコンは自分の改造魂魄の話をして、涼宮がこの作戦を決行したらしい。
涼宮が七天七刀で投げナイフを叩き落とさなければ失敗の事であったが。

「私は頭が良くて、運動神経も良いの。これは貸しね黒崎君。あなたをSOS団に入れる為のね」
「……参ったな」


【G-2 祭り会場/早朝】

【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
【装備:七天七刀@とある魔術の禁書目録】
【所持品:支給品一式、ボロの板きれ@コープスパーティー】
【状態:疲労(小)、強い決意】
【思考・行動】
1:SOS団の皆を守り、バトルロワイアルを打倒する。
2:黒崎くんと、コンと行動する。
3:上条くん、黒崎くん、ロロの知り合いも探す。
【備考】
※『涼宮ハルヒの暴走』終了後からの参加です。
※『願望を実現する能力』は完全に封印されています。
※上条当麻、黒崎一護、ロロ・ランペルージの関係者の名前を記憶しました。
【黒崎一護@BLEACH】
【装備:ダーク36/40@Fate/stay night】
【所持品:支給品一式 改造魂魄(コン)@BLEACH ランダム支給品×1】
【状態:健康、憂鬱】
【思考・行動】
1:チャドの遺志を継いで、殺し合いを止める。
2:ハルヒ、コンと行動。
【備考】
※破面編、藍染との最終決戦前からの参戦です。
※涼宮ハルヒ、ロロ・ランペルージの関係者の名前を記憶しました。


【バーサーカー@Fate/Zero】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、無毀なる湖光@Fate/Zero(封印中)、ランダム支給品×2】
【状態:健康、狂化(永続)】
【思考・行動】
1:■■■■■■■■■―――――
【備考】
※間桐雁夜に召喚される前からの参加です。
※戦闘能力が抑えられています。
※セイバー@Fate/stay nightを視認すると、全ての行動を放棄して彼女に襲いかかります

468決意と殺意が交わる時 ◆WzpMn05TJA:2012/02/01(水) 16:13:24 ID:EJ0eslUgO





ロロのギアスは心臓を止めるデメリットの変わりに体内時間を止めるギアスが使える。
これによりハルヒ、一護、バーサーカーの動きを止めて逃げ出した。
これにより瞬間移動した様に見えたのだ。
バーサーカー相手に適うわけがないと判断した行動の結果であった。

「やっぱり僕は兄さんの為に殺す!あんな奴がうじゃうじゃ居たら兄さんだって」

ハルヒにもらったルールブレイカーを手に持つ。
ロロは戦う決意を固めた。










瞬間、










頭に何かが貫通した。










「……これで2人目だ」

春原陽平。
このゲームの優勝を狙う参加者であり、遂に彼は霧島佳乃に続く2人目の参加者をベレッタM92で撃ち殺したのだ。



命を優先し、仲間から逃げ出し、保身に走ったロロに救いはなかった。

結局バーサーカーと戦った一護達は無事に逃げられながらも、逃げたロロの方が命を落とす事になったのだから。
彼には懺悔する時間すら与えられない。
春原に武器とデイパックを取られて、それで終わりであった。


【ロロ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ  死亡】


【春原陽平@CLANNAD】
【装備:サバイバルナイフ@現実】
【所持品:支給品一式 赤いビー玉@Kanon 便座カバー@現実 そうめん@AIR 鍋@現実 ベレッタM92 14/15 ベレッタM92の弾丸×15@現実 ルールブレイカー@Fate/stay night ロロのデイパック】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:優勝してこの島から帰る。
2:生き残る為ならどんな事だってする……が親友に対して迷いがある。
【備考】
※渚ルート終盤からの参戦。



【ダーク@Fate/stay night】
真アサシン愛用の投擲用武器。

【改造魂魄@BLEACH】
黒崎一護の死神化の際に身代わりに動く意識的な物を丸薬にした物。
支給品扱い。

469 ◆WzpMn05TJA:2012/02/01(水) 16:17:57 ID:EJ0eslUgO
投下終了

元ネタはありません
はじめてだなー
ネタ切れとかではありません


予約
仲村ゆり、阿良々木暦、井ノ原真人、アストレア、中嶋直美、瀬川虎鉄

最近物語シリーズの話を書いていないから久し振りだー

470悠久の旅人〜Dear boys ◆WzpMn05TJA:2012/02/02(木) 20:53:25 ID:BCs86bUMO
001

――僕は死んでしまったらしい。
それは僕と今一緒に同行している仲村ゆりの言うぶんには、である。

これに関しての僕の結論はNoである。
これが僕と忍のみだったら多分信じていた。
『僕の死=忍の死』であるのだから。
だが、そこに戦場ヶ原、羽川、神原、千石の4人がこぞって死ぬのか?
しかも八九寺が参加しているのなら決定的な証拠になるのだが、成仏したから参加出来ないのかはわからないが残念ながらそうはいかないらしい。
くそー、八九寺が入れば俺がそのまま八九寺のところにすっ飛んで――おっと、話の方こそすっ飛んでいるではないか。

「阿良木君、他に聞いておきたい事はもうないのかしら?」
「ちょっと待て仲村、僕の名前は阿良々木暦だ」
「そうだっけ?ごめん、間違っちゃたわ」
「違うわざとだ」
「……」

無言で蹴られました。
うはっ、ご褒美ありがとうございました。
セーラー服のスカートが捲れたパンツは二度と忘れません。

「くそっ、八九寺のネタの振りじゃなかったのか!?」
「頭大丈夫なの阿良々木君?」

僕の同行者仲村ゆり。
死んだ世界戦線のリーダーらしい少女。
僕と同じか少し下といった感じの子でセミかショートぐらいの長さの若干赤髪の少女である。
初対面の凍てつく様な目から僕は初期のドSな戦場ヶ原のイメージがついていた。

「質問の答えだったな」

これだけは有り得ない。
それを口にする。

「僕は、――いや、僕達はまだ死んでいない」
「…………」

そんなドSな仲村も今回の質問だけは頭を悩ませた。
またそんな事か、とでもいうべき表情だ。
もしかしたら僕は羽川に殺された世界、数日後に世界が滅亡した世界から来た阿良々木暦かもしれない。
いや、そんな記憶違いの時系列なんて有り得ない話だが。

「だから阿良々木君は死んだのよ」
「違う、僕は確かに死んだ様なものだが一般人は死んでいるわけがない」
「……何よ、死んだ様なものって?」

僕は黙っていようと思ったがもしかしたら仲村が何か答えを導くかもしれない。
そんな気がした。

「僕は吸血鬼もどきなんだ」

002


「阿良々木君……、もう少し現実見て生きなさい」
「そんな残念そうな顔で見るなー!」
「うん。自称吸血鬼ね。死んだ世界戦線には忍者の格好をした人や外国人みたいな風貌して英語がダメな人などが居るから気が合いそうね」
「ちょ、やめて!?俺が電波みたいだろ!」

いや、戦場ヶ原みたいにその吸血鬼性を見せないと信じないと思うけど、今僕は吸血鬼性が薄い。

「参加者に居ただろ『忍野忍』って」
「確か居たわね。漢字がサンドイッチになっていてたまたま覚えていたわ」
「そいつが吸血鬼だ」

忍野忍。
真名は……いや、この名前は出してはいけないな。
彼女は吸血鬼で、僕は彼女から吸血鬼の力を得たわけなんだけどどっちが主で従なのかは事情が重なりよくわからなくなっている。

471悠久の旅人〜Dear boys ◆WzpMn05TJA:2012/02/02(木) 20:54:20 ID:BCs86bUMO
「本気で言ってんの?」
「お前だって天使とか言ってたよな?」
「……わかった信じるわ。そんな事誰だって嘘だってわかるけど、逆に堂々と言われたらそれは真実なんでしょうね」

ようやく仲村は信頼してくれた。
僕の理想よりは理解が早くて助かった。

「で、話は教えてもらえるのかしら」
「当然教えるさ」

怪異の事。
僕が忍野や忍、貝木や陰縫さんや斧乃木ちゃんなどに教えてもらった知識を教えてやった。
鬼、蟹、蝸牛、猿、蛇、猫、蜂、しでの鳥。
僕が春休みから夏休みの間の冒険からすぐ帰っての八九寺のお別れ。
簡単にまとめて話をした。

「……もしかしたら私達の死んだ世界というのも怪異という存在が関与して、それの集まりとか?まさかこんなところであの世界の考え方を別視点から考えさせられるなんて」

長年の考察は間違っていたの、そんな顔であった。
そして仲村が出した結論は……、
「他の参加者と会ってみましょう、また何か変わった話が聞けるかもしれない」
そんな結論であった。

さて、一応バトルロワイアルという場に居る僕達だが、果たして穏便に話が済む様な奴と接触出来るのだろうか?


003


「ところで阿良々木君の知り合いはその忍野忍って人以外は居るのかしら?」
「あっと……、僕の彼女の戦場ヶ原ひたぎと僕の憧れの羽川翼と僕のエロい後輩の神原駿河と僕の慕ってくれる妹の親友の千石撫子が僕の知り合いだ」
「……見事に女だらけね」

うっ、僕に男友達なんか居ないんだ。
情けなくて言えなかった。

「というかあんた女に囲まれて優しくされているみたいだけど、私は数に含めないでね」
「含めるか!?」

流石に初対面な奴だし、というか優しくされているみたいって全然そんな事はなかったりする。


004


それから少しして僕らは参加者を見つけた。
まだ話しかけていないので見つけたと表現する。

それを細い木の陰から僕と仲村は眺めている。

「向こうは男女混合の3人組ね」
「……そうだな」

細い木から隠れている為仲村と僕の位置ははかなり近い。
その時に僕は思った。
『あれ、こいつ案外胸あるくね?』

くぅー、良いシャンプーの匂いまでするしこうやって見るとなかなか可愛い顔立ちしているじゃないか。

「阿良々木君から見てどう思う?」
「……なかなか大きい」

胸にしか目が行かなくなっている。
薄いセーラー服万歳である。
こう湧き上がる衝動、萌えとは無関係そうな仲村自体が萌え要素だ。
口調がSなのも興奮するな。

472悠久の旅人〜Dear boys ◆WzpMn05TJA:2012/02/02(木) 20:55:01 ID:BCs86bUMO

「そうね、なかなかあの男の人大きいわね。阿良々木君が少し小さい気もするけど」
「小さい!?」

いや、そんな謙遜すんなって。
確かにわかりにくいけどまだ成長の見込みだってあるって。
羽川みたいになるのは無理でも神原くらいまでならいけるって仲村。

「さっきからなんか阿良々木君と話噛み合ってない気がするんだけど?」
「……え?」

おっと、胸にしか目と思考が行かなくなっていた。
忍とペアリングされていたら危険だったかもしれない。
最近あいつ女の事考えると邪魔しかしないもんな。

「一応武器は隠しておきましょう」

仲村は僕を殺そうとした鉈をデイパックに既に隠してある。
僕も一応武器はずっとデイパックにあるんだけどな。
見て確認しただけで、仲村にも見せてないのだけれど実は銃が入っていたが怖がらせると悪いと思ったので見せていない。

「行くわよ阿良々木君、ミッションスタート」
「…………」

大袈裟過ぎるではないだろうか?
まさか死んだ世界戦線って毎回こんな事やっているのか?
すごい言い慣れている感があった。
リーダーの器とでもいうのかな。
羽川でいうところの委員長の器や天才の器の様なものだろう。


005


「あなた達はゲームに乗っているのかしら?」
「……どうも」

ノリノリの仲村の横でなんと声を掛ければ良かったかわからなかった僕はアドリブが聞かない人間だなぁって思う。

「お前達こそ殺し合いに乗っているのかよ!?」

その中で一番体が大きく、すごい筋肉のある男が立ち上がった。
多分不良なんかでは相手にならないくらいの強さを感じる。
横の仲村は涼しい顔をしてそれを否定した。

「冗談。私はあんな主催者共の命令に聞くはずがないじゃない」
「……そうか、俺達も殺し合いなんかする気はねぇ、誰か仲間を待っていたところなんだ」

そこでお互いが名乗りはじめた。
がたいの大きな筋肉青少年の名前は井ノ原真人というらしい。
そしてショートの髪の学生は中嶋直美というらしい。
金髪で髪の長い巨乳な女はアストレアといった。


006


「こんなに集まってもみんなバラバラな世界から来たんですね」
「なかなか仲間とは会えそうには出来ていないんだな」
「気を落とさないで阿良々木君。私の見込みだとまだゲームに乗った者は少ないと思うわ」

僕、仲村、中嶋を中心で話合いをしていた。
その中嶋が井ノ原とアストレアをまとめていたらしい。
何故一番普通な少女がまとめているのか疑問だったのだが……。

473悠久の旅人〜Dear boys ◆WzpMn05TJA:2012/02/02(木) 20:55:48 ID:BCs86bUMO
「おい、阿良々木も筋肉すげぇだろ!見せてみろよ!」
「見込みってなんですかー!食べ物ですかー」

話から追い出された2人はうるさいだけのバカらしい。
なんとなく中嶋がリーダーなのは頷けた。

そして、3人の知り合いの情報を聞き出した。
僕、仲村、井ノ原、アストレア、中嶋の仲間を含めれば21人であった。
なんと参加者の1/5の数の知り合いを知れた。
これはものすごい情報源になるだろう。

「ところで仲村さん、どうしてゲームに乗った人が少ないなんて思えるんですか?」
「それはあくまで予想。だけどもう少しで殺し合いに乗る人は増えるんじゃないかしら」
「!?」

僕と中嶋は耳を疑った。
騒がしくしていた井ノ原とアストレアでさえその時ばかりは煩くしていなく、話を真面目に聞いていた。

「放送が開始されるわ。その放送で敵討ちに走る人だって出てくるかもしれない。つまりもう少しで地獄が加速するわ」
「……」

みんな暗い顔をして落ち込んだ。
つまり主催者達はバトルロワイアルにおいて死んだ参加者の名前を呼ぶという冷静に考えれば無駄な事をそんな事の為に行うのだ。

もしかしたら僕の名前が呼ばれたら戦場ヶ原が暴走してマーダーに走るかもしれない。
そういう事なのだ。

「それは私達にも言える事なのかもしれないわね」

と仲村が僕を凝視する。
凝視、凝視、凝視……?

「って僕が疑われるのかよ!?」

仲村に一番信頼されていなかった人物はどうやら僕らしい。
……確か一番僕と行動してきた仲だよな?


007


「ところであなた達に聞きたい話があるわ」

仲村が実は一番聞き出したいであろう内容の質問である事を僕は感じとった。
恐らく彼女は今から会う人会う人全てにあの話をしていくのだろう。

――どれだけ気の長い話なのだろう?
それは今までもこれからもずっとずっと言ってきた内容なのだろう。
死んだと気付かない者達に、『死』を自覚させるそんな誰もやりたがらない仕事を。
彼女はいくらしていくのだろう?

「あなた達が死んだ、と言ったら信じるかしら?」

そして仲村はその本題へ切り出した。
中嶋は少し取り乱し、アストレアは少し疑問な顔になり、井ノ原は深く考えていた。

「……私は死んでいませんよ」

アストレア。
羽根の生えた未確認生物がそう答えた。
今更怪異の話や仲村の死んだ世界の話を聞いた僕だ。
彼女の正体に驚きはしたが、衝撃までは受けなかった。

474悠久の旅人〜Dear boys ◆WzpMn05TJA:2012/02/02(木) 20:56:32 ID:BCs86bUMO
「……そう。中嶋さんか井ノ原君は?」
「死んでは……いないと思います」
「俺は信じるぜ」

中嶋が否定、井ノ原は肯定をした。
仲村はこの問いに関して自分が間違っているのではないかと自信を無くしてきていただけに今の答えにポカンとなっていた。

「俺と恭介、謙吾、来ヶ谷の4人なら俺は死んだと言われても驚かねえ。なにせ俺達は事故に遭ったんだからな……」

修学旅行。
学生であったら誰もが浮かれてしまう学生最大のメイン行事であるだろう。
井ノ原達の顔のわからない親友達を思い描く。
きっと1ヶ月ぐらい前からずっと計画をしてはここをまわる、次はここをまわるとしていたのだろう。
修学旅行の間だってきっと盛り上がっていただろう。
授業などは名ばかりなこの行事に。
そして、バスの転落が起きるその直前まで――……。

そんな話の内容だった。
仲村は一言。
僕だけしか気付かないくらいの一言。
『充分に青春を贈れなかった1人ね』と呟いていた。

「あ、あの……」

次は中嶋が井ノ原の話が終わって数分の沈黙を破ったのであった。
それを聞いた井ノ原が「わりぃ」と謝っていた。

「私達は……おまじないをしてしまったんです……。それが原因だったりするのでしょうか?」

井ノ原に続きどうやら厄介な出来事に巻き込まれているのであろう。
中嶋も自分の話を告げた。

『幸せのサチコさん』。
その場に居た全員とずっと離れずにいつまでも友達でいられるおまじない。
親友が転校する為にそんなおまじないをしたらしい。
『サチコさんにお願いします』と心の中で九回唱える。
それをみんなで引っ張って千切る。
都市伝説に近いおまじないである。

この話に僕は1人の詐欺師を思い出す。
貝木泥舟。
偽物の詐欺師。
彼ならやりかねない。
千石の蛇のおまじないを僕は思い出す。

「仲村……」

仲村だけを僕は呼び出し耳元で「怪異の類の話かもしれない」と伝えた。
仲村に既に話してあっただけにすぐに理解していた。





僕は怪異の話を、仲村は死んだ世界の事をみんなに伝える事になった。
アストレアだけは特に語る話はなかったらしい。

―――――

475悠久の旅人〜Dear boys ◆WzpMn05TJA:2012/02/02(木) 20:57:13 ID:BCs86bUMO
「ねぇ、井ノ原君にアストレアさんに中嶋さん。そして阿良々木君……。
よく聞いてほしいの」

その中で仲村が導いた答え。
この世界の考察。

「この世界は混合された世界かもしれない。
乱れた生と死の世界。
もう、こんな世界は狂っているだけの死の世界なんだわ。
……これは未知の世界。
つまり主催者達が作った世界なのではないかしら」


008


「これから少しまわってみましょう」

情報集めに仲間探し。
仲村のアイデアであった。

現在位置は【B-7】。
【A-7】と【C-7】に別れてそれを収集しようという考えである。
そして第1回定時放送から2時間をメドにこの【B-7】に集まるといった内容である。
探しも助けもいける良い作戦だと僕は参戦した。

そしてどちらかが帰って来なかったらすぐにそちらへ向かう、といった内容だ。

「その方法良いですね」
「それなら俺達がここで待っている作戦より上手くいきそうな方法だな。お前なら恭介に対抗出来るんじゃねーか?」

井ノ原の親友の棗恭介。
彼はそういった作戦のリーダーや軍師的な役割をこなすらしい。
「ミッションスタート」という辺り仲村と同じ類の人間らしい。

「じゃあチーム割りはどうすっかな」

井ノ原が地面にあみだでも書こうとしたのか木の枝を拾おうと歩きだしたが仲村が制止させた。

「どうしたんですかゆり先輩?」

因みにアストレアは仲村をゆり先輩と慕っていた。
僕の事は暦と呼び捨てである。











「私1人で【C-7】に行くわ。だからあなた達4人で【A-7】に向かいなさい」


009


「直美と真人と暦とゆり先輩の仲間を確認するよ」

直美、真人、アストレアの3人は【A-7】に向かっていた。
ゆりの作戦を実行する為に肩を並べている。

そしてアストレアは誰が誰の仲間なのか名を挙げていく。

直美の仲間は持田哲志、岸沼良樹、篠崎あゆみ。
真人の仲間は棗恭介、宮沢謙吾、直江理樹、棗鈴、来ヶ谷唯湖。
暦の仲間は戦場ヶ原ひたぎ、羽川翼、神原駿河、千石撫子、忍野忍。
ゆりの仲間は音無結弦、立華奏、日向秀樹、直井文人、椎名。
アストレアの仲間は桜井智樹、イカロス、ニンフ。

476悠久の旅人〜Dear boys ◆WzpMn05TJA:2012/02/02(木) 20:57:44 ID:BCs86bUMO

アストレアの支給品一式のノートに平仮名で書かれた事を音読した。

「うん。その人達に会えると良いね。特に仲村さんと阿良々木君の親友達を見つけてあげたいね」


【B-7 野原/早朝】

【中嶋直美@コープスパーティー】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 果物ナイフ@現実 テストプリント@Angel Beats! ランダム支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:殺し合いに乗らない。
2:仲間探し。特に井ノ原君、アストレアさん、阿良々木君、仲村さんの親友を探す。
3:ゲームに乗った人が居たらすぐに逃げる。
【備考】
※おまじないをした直後からの参戦です。
※アストレアと真人をバカと認識しました。
※死後の世界と怪異の事を知りました。
※おまじないを怪異関係があると認識しました。


【アストレア@そらのおとしもの】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:仲間探し。特に直美、真人、暦、ゆり先輩の仲間を探す。
2:殺し合いには乗らない。
【備考】
※カオス戦(1回目)からの参戦です。
※死後の世界と怪異の事を知りました。

【井ノ原真人@リトルバスターズ!】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:殺し合いには乗らない。
2:仲間探し。特に中嶋、アストレア、阿良々木、仲村の知り合いを探してやる。
【備考】
※Refrain開始直後からの参戦です。
※死後の世界と怪異の事を知りました。
※この世界を死後の世界の可能性を考えています。


010


アストレア、直美、真人の3人を隠れて見守る影が1つ。

「ふむ。向こうは3人か……。完殺など成功するわけがないか……」

そんなに拳銃の弾が間に合うかもわからない。
殺し合いに乗っている瀬川虎鉄であったが、マーダーの中では一番慎重に行動をしていた。
目の前に格好の獲物が居たとしても数には負けてしまう、虎鉄は3人を見送った。

「だが偽名が名乗りやすくなった。全員は覚えてはいないが『岸沼良樹』か『篠崎あゆみ』か『持田哲志』が名乗りやすい」

目の前の3人の1人であるアストレアの仲間確認を虎鉄は聞いていた。
目の前のショートカットの少女『中嶋直美』と『篠崎あゆみ』と『持田哲志』と『岸沼良樹』が知り合いという事は逆に言えばこの4人以外には名前と顔が一致していないのだ。

『中嶋直美』は明らかな女の名前だが『篠崎あゆみ』ならまだ男でも通じる名前だ。
ちょうど良い。

「水瀬名雪に名乗った様に一応は『岸沼良樹』で通す事にしよう」

放送で『岸沼良樹』の名前が呼ばれるまで。
虎鉄は誰よりも慎重に、この島を掛けるのであった。


【瀬川虎鉄@ハヤテのごとく!】
【装備:宗像のS&Wマグナム44(2/6)@めだかボックス】
【所持品:支給品一式 S&Wマグナム44の予備弾30/30 ランダム支給品×1】
【状態:身体的疲労(小)】
【思考・行動】
1:ハヤテを優勝させる
2:偽名の『岸沼良樹』を名乗りながら行動
3:状況に応じて『持田哲志』、『篠崎あゆみ』を名乗る
【備考】
※アテネ編終了後からの参戦。
※『中嶋直美』、『持田哲志』、『岸沼良樹』、『篠崎あゆみ』が元の知り合いだった事だけ盗み聞きしました。

477悠久の旅人〜Dear boys ◆WzpMn05TJA:2012/02/02(木) 20:58:57 ID:BCs86bUMO


011


現在の【B-7】から【C-7】へ向かう2つの影があった。
――というか僕と仲村の2人である。

「さぁ、行くぞ仲村!お前の作戦の成功の為に」

僕が先に足を一歩前に進ませるが何故か仲村が反応しない。
どうしたというのだろうか?

「仲村ー?」

仲村の顔は僕に対して不機嫌そうに睨んでいる。
興奮するじゃねーか!……いや、口には出さないけど。

「どうして?」
「何が?」
「どうして阿良々木君はさっきの3人と行動しなかったのよ!私は基本単独行動に慣れているからそれで良かったのよ!」

そういえばさっき仲村は自分1人で【C-7】を探索すると言った。
だが、僕が頑なにそれだけは拒否したのであった。

「女の子1人で任せられるわけねーだろ」
「だから実戦なら私はあんたよりも経験を積んであるのよ!」
「そうだとしてもだ!お前は僕の妹と同じで強い力を過信し過ぎて突っ走って失敗するタイプなんだよ!」

貝木の件で妹である火憐ちゃんは返り討ちにあった。
仲村の影がそんな火憐ちゃんと重なって見えた、気がしたのだ。

「それに僕はお前と一緒に行動する事が好きみたいだ」
「なぁっ!?」

仲村が顔を驚かす。
普段の顔からは想像出来ないくらいに驚いている。

「こう1人で抗って戦う姿とか1人で格好良く推理している姿とか応援したくなってくる」

初対面の時、殺されかかったけど実は鉈が振り下ろされる瞬間すげー格好良いと思った事もあった。
そんな仲村と行動している今がバトルロワイアルをしている今に言うのもなんだが楽しい。

「バカじゃないの阿良々木君は!?」

478悠久の旅人〜Dear boys ◆WzpMn05TJA:2012/02/02(木) 20:59:25 ID:BCs86bUMO

そう言って仲村は僕の横を歩いて抜かした。
抜かされた瞬間の横顔がりんごの様な朱色き染まっていた気がした。
いや、多分恥ずかしがっている顔が見たいなと思った僕の妄想だろう。

「まぁ、それは良いとして私の事は『ゆり』って呼びなさい。死んだ世界戦線のメンバーはみんな『ゆり』か『ゆりっぺ』ってしか呼ばないから歯がゆいの」
「わかったゆりっぺ」
「なぁ!?」

ははは。
恥ずかしいみたいな声出して。
やっぱり大人ぶって鉈を振っていたり、ミッションとか言って作戦実行したり、交渉したり、死んだ世界の事を語ったり、推理したのを見せたところで彼女はやっぱりまだ少女なんだ。

「行こうゆり、仲間探しだ!」
「そ、そうねっ!行くわよ阿良々木君!」

そう言ってゆりが走り、僕がその後ろを着いて行く。

「ミッションスタート!」



【阿良々木暦@物語シリーズ】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3(拳銃が入っているらしい)】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:ゆりと行動、殺し合いには乗らない
2:仲間探し。特にゆり、中嶋、アストレア、井ノ原の仲間探し
3:みんなとの合流、特に忍野忍、戦場ヶ原ひたぎを最優先
【備考】
※鬼物語で八九寺真宵が成仏してからペアリングが戻る前までのどこかからの参戦
※ペアリングが切れているため、吸血鬼性は限りなく低いです
※死後の世界について凡そ聞きました


【仲村ゆり@Angel Beats!】
【装備:鉈】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:阿良々木君と行動
2:仲間探し。特に阿良々木君、中嶋さん、アストレアさん、井ノ原君の仲間を探す
3:気にいらないから主催どもを殺す
【備考】
※ユイが消えるまでのどこか
※ここが主催者達が作りあげた未知なる世界だと推理しました

479 ◆WzpMn05TJA:2012/02/02(木) 21:01:02 ID:BCs86bUMO
投下終了

元ネタはアニメ「アイドルマスター XENOGLOSSIA」のED『悠久の旅人〜Dear boy』より

阿良々木さんはいつの間にかゆりっぺルートに突入してました
なんでー?


予約
一方通行、古泉一樹

480 ◆RmIe4rjRnw:2012/02/03(金) 03:18:41 ID:.mPPvOjM0
申し訳ないのですが、予約を破棄させていただきます

481とある最強の一方通行 ◆WzpMn05TJA:2012/02/05(日) 12:04:40 ID:Xvu710jAO
学園都市には7人の超能力者(レベル5)が存在する。
その超能力者の集う学園都市内にて最強である超能力者。
未だ存在していない絶対能力(レベル6)に到達出来る者は1人。

その唯一絶対能力に辿り着ける者を『一方通行』と呼ぶ。



「くだらねぇ」

漆黒の暗闇を染める建物、どうやら学校らしき施設で目を覚ました細身で髪は全てを白に染まった青年の一言であった。

「殺し合いねぇ。まさか連中がこんな最終手段を使うなんてなァ」

妹達。
一方通行が虐殺を続けて自分が無敵(レベル6)になる為の進化実験が続けられていた。

だが彼は今年の夏、最弱(レベル0)である上条当麻との戦いにて負けたのである。
やがて一方通行の敗北により絶対能力進化実験は凍結したのであった。

彼自身、もう実験が進められる事はないだろうと思った矢先にこの殺し合いに参加をさせられた。
強制的にである。

「参加者は100人なぁ」

一方通行の握る薄っぺらい紙の参加者名簿。
『超電磁砲』と『最弱』の名前が刻まれていた。

「これなら確かに有り得ない話じゃねぇなァ……」

一方通行は1つの推測をたてていた。
この殺し合いは『絶対能力進化実験の再開』なのではないかと。

考えられない話ではない。
見せしめとして殺された少女は決め手に欠けるが3番目に殺された青年の事であった。
彼には肉体変化の能力があった。
それなりに強そうな能力であったし、最低でも妹達よりは強かったであろう。
それで彼は思ったのだ。

もしかしたらここのバトルロワイアルは別世界の強い能力者達を集めさせ、最終的に無敵に進化させる為のバトルロワイアル実験なのではないのかと。

その絶対能力に進化出来る者を判断したのは自分だけか、もしくは別に判断したのかはわからない。
もしかしたら御坂美琴、上条当麻も絶対能力に成れる見込みがあるから呼ばれたのかもしれないし、他何十人も集めたのかもしれない。

「能力制限とやらでデフォにしている反射は無くなっているしなぁ」

銃の弾丸すら跳ね返す『向き』変換も多用出来なくなっている。

この制限も彼にとって、力を大幅に下げる事による経験の向上として100人殺すだけで絶対能力に成れる計算結果だと思い至った。

「まぁ、それは連中が絡んだらの話。一般人のみのバトルロワイアルなら俺は進化なんか出来ねぇだろうしなァ」

だから一方通行は参加者を待つ。
・もし能力者集いのバトルロワイアルなら自分はその実験に従う。
・もし一般人集いのバトルロワイアルならむかつく主催者共を叩きのめす。

やがて、一方通行の前に参加者が現れる。


左肩を銃かなにかで撃たれた様な怪我をしていて、つらそうに顔を歪める青年。
その青年の名前は古泉一樹である。

482とある最強の一方通行 ◆WzpMn05TJA:2012/02/05(日) 12:05:16 ID:Xvu710jAO
●●●

「なんですか、あなた……?僕の邪魔をしないで、いただきたい」

古泉は一方通行に話かける。
が、一方通行はなんの反応を見せない。

互いと互いが睨み合う。
一方通行は出方を伺う為。
古泉は今はあまり戦いたくない為。
無言のままただ時間が流れる。

「(このままじゃぁ拉致があかねぇなぁ)」

一方通行が先に見せた退屈の表情が始まった。
その表情の変化に古泉が一層警戒心を強める。

「お前、……能力者か?」

はじめて古泉に発した言葉であった。
古泉は顔を強張る。

Noという強張りか?
Yesという強張りか?

「さっき僕は青年と少女と争いました。その戦いをあなたは見ていましたか?」
「見てねぇ」

古泉は普段通りの丁寧語のままその答えを一方通行に見せた。

「ならあなたもその類の人間なのですね」

彼の所属する機関にこの様な男は居ない。
おそらく涼宮ハルヒを狙う勢力だろうと古泉は敵と判断する。

「涼宮さんに手は出させませんよ」

古泉の手に光球が浮かび上がる。
本来は閉鎖空間内でしか扱えない超能力。
疑問を持っていた古泉であったがその能力を古泉は使用する。

「はぁっ!」

一方通行に向かう光球。
先ほどの2人は逃がしたが今回は命中させられる。

逃げようともしない相手に古泉は勝ちを確信していた。

「確かにつえぇ能力かもしれんがレベル4止まりだろぅが!」

演算能力をほぼ一瞬で終えた一方通行は命中の寸前光球を反射させた。
その反射された光球は当然古泉に跳ね返ってくる。

「なにぃ!?」

このまま何もしないと命中する。
だが逃げる瞬間に命中にするかもしれない。

古泉もほぼ反射的にもう一発の光球を右手から放って相殺させた。

辺りに煙が上がる。

古泉と一方通行の視界が見えなくなり、その間にお互いがこのバトルロワイアルの考察をするのであった。

「(涼宮さんを狙う奴らまでバトルロワイアルに参加しているのかっ!?)」
「(やっぱりこいつは絶対能力進化実験!?)」

お互いが大きな誤解をしながら、煙はゆっくりと晴れていくのであった。


●●●


「はァン!」

一方通行は廊下に設置されていた消火器を手にし、それを下に落として地面落下の直前に蹴り出し、古泉目掛けて消火器が変に曲がりながら襲う。

「その程度まだまだですっ!」

光球を放ち消火器を破壊する。
すると辺り一面に消火器の粉が散らばる。

483とある最強の一方通行 ◆WzpMn05TJA:2012/02/05(日) 12:05:50 ID:Xvu710jAO



「はははははぁぁぁぁ!」


一方通行は狙っていたとばかりにその粉が散らばったところに駆けつける。
あとは彼に触れて血の向きを逆流させればそれで終わりであった。

「ァン?消えたぁだぁ?」

だがそこには人影らしき人影がない。
そんな一方通行の目をすり抜ける様に一粒の光球がこの場を離れていた。


●●●


「上手くいきましたね……」

古泉の予想通り一方通行は粉が舞い散った瞬間攻撃を仕掛けてきた。
古泉はその間に自ら光球となり逃げ出したのだった。

「まさか神人を倒す為に使われる能力が逃走用に使われるとは皮肉ですね」

古泉は目的地の保健室に辿り着く。
そこで自分の怪我やこれからの怪我の事を考えてたくさんの量の薬や包帯をデイパックに仕舞い込む。

「ここでは敵が多すぎます。この学校から逃げましょう」

棗恭介、伊吹風子、一方通行。
名も知らない3人と既に敵対しては逃がしてばかりいるのだから。

古泉はこの学校から逃げ出す為、そして誰も居ない民家に隠れる為、また自ら光球になって窓から飛び出したのであった。



【G-5 中学校、保健室付近/黎明】

【古泉一樹@涼宮ハルヒの憂鬱】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:疲労(小)、左肩に銃創】
【思考・行動】
1:涼宮さんを優勝させる。
2:対主催思想持ちの強者は上手く利用していきたい
3:民家に逃げる
【備考】
※『涼宮ハルヒの暴走』終了後からの参加です
※超能力は使えますが、威力が抑えられています



「ちぃっ、まぁつまんねぇ間引きだがしゃぁねぇなぁ……」

頭をボリボリと掻きながらつまらなそうに呟く最強。
まるでいつだって殺せるという様な余裕が彼からは見える。

「まずはぁ、この建物を出てから参加者を殺していくか」

自らが最強のレベル5から無敵のレベル6になる為。
一方通行は実験を続けるのであった。



【一方通行@とある魔術の禁書目録】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:不本意だがこの実験に付き合う
2:レベル6になる?
【備考】
※このバトルロワイアルを絶対能力進化実験だと思い込んでおります。
※能力は制限されています。反射はデフォルトは出来ません。また向きの変化能力も制限されていますが、どのくらい制限されているかは次以降の書き手さんにお任せします。

484 ◆WzpMn05TJA:2012/02/05(日) 12:07:30 ID:Xvu710jAO
投下終了です

元ネタはライトノベル『とある魔術の禁書目録』より


予約
岸沼良樹、ユーフェミア・リ・ブリタニア、水瀬名雪

4851人の逃走劇/暴走劇/復讐劇 ◆WzpMn05TJA:2012/02/09(木) 10:58:54 ID:.1eq/oesO
黒い何かを当てられる。

瞬間、額から物特有のひんやりとした無機質な冷たさが波音の様に広がっていく様な感触が広がる。

広がる、広がる、広がる、広がる、広がる、
広がる、広がる、広がる、広がる、
広がる、広がる、広がる、
広がる、広がる、
広がる、

体全体に確実に広がる冷たさだ。
この冷たさは体のどの位置まで伝わっただろうか?



「うわああああぁぁぁぁぁぁ」



銃から逃れる様に俺は彼女から遠ざかる。
しかし、当然主導権を握っているのは彼女であり……、
引き金を引く指を止める事は出来ない。



バーン!



「ぐぁ……」

腕からは今までの人生で何度見たかわからない血の色がまた流れていた。

「……いてぇ」

頭を狙った一撃であったのだが、離れたおかげで隙が生じ、なんとか腕でガードくらいは出来た。
よってなんとか右腕の流血程度で済んだ。

「日本人は……殺さないと……、殺さないと、殺さないと」

しかし未だ彼女の催眠術の様なものは消えない。
おそらくこれは彼女の意志での攻撃ではない。

先ほど髪の長い少女からの攻撃を助けてくれた時。
今の暴走して日本人を殺すと呟いている今。

別人の様な人格だ。

「殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと殺さないと日本人、日本人、日本人、日本人……、ダメ殺しちゃ……、守らなくちゃ日本人は。守る、殺す、守る、殺す殺す殺す」

彼女からは2つの意志が見える。
殺すか守るか。

「ただの悪人ではないみたいだな……」

それなら良かった。
ただの悪人なら恐らくもう死んでいただろうしな。

「日本人は……」

そして彼女の葛藤。
恐らくよほど強い催眠術なのだろう。

細い体の肉体には、どれだけ強い意志が混ざっているのだろう。
俺達一般人には計り知れないほどの強い意志だろう。

「まも……殺さないと!」

そして完全に目が赤く浸食する。
くそっ、だが予告があったぶんなら対抗出来る。

彼女は銃を構えるので、俺は目の前に立つ。
弾切れは多分次かその次くらいだ。

それまで耐えられれば……。

「来いっ!」
「……」

彼女は無抵抗の様に立つ俺を警戒している。
ただ暴走するだけでなく知能まである暴走だ。

やりにくいったらないな。

「殺さないとぉ!」

引き金が放たれる。
俺は横に飛ぼうと両足に力を入れる。
人生最大の力で。

「しまっ……!?」

だがそれがアダになった。
力が強過ぎて砂浜に埋まりそうになりタイミングが失った。

足場が悪い砂浜はさっきからマイナス面にしか働かない……。

4861人の逃走劇/暴走劇/復讐劇 ◆WzpMn05TJA:2012/02/09(木) 10:59:24 ID:.1eq/oesO
「ちくしょぉぉぉぉ」

砂浜に倒れようとする。
動けないならば倒れる。
こちらは逆にアスファルトよりも衝撃を和らげる砂だ。

ようやくプラス面に働く。



が。
銃弾はそこまで俺を待ってはくれなかった。

「がぁぁ!?」

脇腹に命中。
血がまばらに吹き出され、辺りを少量の血がばらまかれる。
しかも2発、同じ場所を抉られる。

着ていた制服も防弾チョッキの様な役割を果たす事なく、見る影のない形に風で流された。

「日本人は殺さないと!」

また銃を構えられる。
倒れている俺はもはや逃げられない。

「ジ・エンドか……」

既に俺は死んでいてもおかしくない目に合っていた。
現にクラスメートや先生も殺された。
みんな、みんな惨い死に方だった。

生き残れたのがたまたま哲志、中嶋、篠崎、由香ちゃん、俺であっただけ。
しかも由香ちゃんは既に見せしめの役割でまた惨い死に方で命を経った。
首が飛んだのだからな。

「次は俺か……」

ごめんなみんな……。
篠崎……、お前を守って、死にたかったな……。

また銃口を当てられる。
広がる冷たさは未だに慣れてはいない。
多分何回当てられても慣れるはずないな。

「日本人は殺さないと……」

――引き金が引かれる。
ようやく俺は死んでしまうらしい。





―――――


「……」

岸沼良樹とユフィ。
勝敗はユフィの勝利となるはずであった。

だが、その勝利は未だに勝ち取ってはいなかった。

「弾が……」

カチカチと彼女が引き金を引くがどうやらニードルガンの弾である針が無くなったらしい。
これはユフィにはどうする事も出来ない。

弾を詰め替えていたら彼女は岸沼を逃がしてしまうのだから。

「き、奇跡だ……」

岸沼は冗談なのではないかという疑問が沸いていたがどうやら杞憂であった。
岸沼はその場から逃げ出す。

貴族の少女である自分は追いつけない。
ユフィはわかっていた。
なのでユフィの選択肢に岸沼を追う行動はなかった。

「……あれ?私は一体?」

そして岸沼が居なくなってようやくギアスが解ける。

自分が殺し合いに乗った髪の長い少女を金髪の少年を助けてからの記憶が曖昧であり、しかもその金髪の少年は居なくなっている。

「……やっぱり私は最近、変だなぁ」

ギアスの影響に気付いていない。
ユフィは疲れた顔をして何故か弾切れになっていたニードルガンの弾を詰め替えた。

「待っててルルーシュもスザクも。必ずお父様の暴走を食い止めましょう」

自分の暴走に気付かない少女は父親の暴走を止める為、立ち上がった。

4871人の逃走劇/暴走劇/復讐劇 ◆WzpMn05TJA:2012/02/09(木) 11:12:42 ID:.1eq/oesO
【A-7 砂浜/黎明】

【ユーフェミア・リ・ブリタニア@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【装備:ニードルガン6/6@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【所持品:支給品一式 ニードルガンのトゲ6/12@コードギアス 反逆のルルーシュ ランダム支給品×2】
【状態:健康、ギアス】
【思考・行動】
1:ルルーシュやスザクと共に父親を説得し、バトルロワイアルを終わらせる。
【備考】
※死亡後からの参戦です。
※彼女は現在『日本人を殺す』ギアスの呪いにかかっています。このギアスは人を強制させるものなのでユフィに抑える事は不可能です。


―――――

「さっきから踏んだり蹴ったりじゃねぇかよっ!クソッ!」

一度は諦めた命。
だが、助かってしまった為にまた命が惜しくなってしまう岸沼であった。

「俺も武装とかしていた方が良いかもしれないな」

デイパックを漁る。
先ほどは名簿しか見ていなかった岸沼なので中身はまだよくわからなかったのだ。

「なんだこれ?長ドスか?」

中からは細い刀の様な長ドスが出てきた。
この長ドスを片手に持っていつでも襲われても良い様に準備をした。

「篠崎を見つけてやらねぇと」

殺し合いなんかはしたくない。
もう血を見るのはごめんだ。見せるのも嫌だ。
だから篠崎を俺が護ってやらねぇと。
無意識に岸沼の手に力が籠もり手汗が出てくる。

「っと、また参加者だ」

開始2、3時間ぐらいしか経ってないはずなのだが既に岸沼はこれで3人目との邂逅であった。
しかもまた女性。
岸沼は声をかけるのを躊躇った。

(あいつは信頼出来るのか?……しかし今日の俺は女難の相があるしな……)

これぐらい不幸が続くと流石に自分の不幸に気付く岸沼であった。

(クソッ!あぁ、どうすれば良いんだよっ!)

と、彼女に振り向かれ気付かれてしまった。
女性の名は水瀬名雪。
先ほど『岸沼良樹』に殺された女である。


―――――


「あと……、どうも」

岸沼が頭を下げる。
まずは自分から刺激をしない様にである。
彼女は長ドスに目が行っていたが、急に襲いかかる者ではなかった。

「私は水瀬名雪だよ」
「お、俺は……岸沼良樹だ」

名乗った瞬間。
名雪の眉がピクリと動く。

4881人の逃走劇/暴走劇/復讐劇 ◆WzpMn05TJA:2012/02/09(木) 11:13:35 ID:.1eq/oesO
彼女にとっての『岸沼良樹』は執事服を着たちょっと美形の人。
彼女はこの岸沼良樹が偽名を名乗っている事にすぐに気付いた。

(また岸沼良樹か。この人は信頼出来ないけど……、襲うつもりはないみたいだね。ならこの人と行動して必ず殺しチャオ♪)

名雪の心の中で目の前の『岸沼良樹(偽)』に対し憎悪の炎がメラメラと燃え上がる。

(利用するだけ利用して必ずこの『岸沼良樹(仮)』を殺してオリジナルの『岸沼良樹』も殺す)

名雪は岸沼を心の中であざ笑った。

「俺は殺し合いをするつもりはない」
「私も殺し合いなんかしないよ〜」

間延びした様な声。
そんな声を出された時には岸沼の中では水瀬名雪は信頼出来る人物と認識していた。

「俺は篠崎あゆみって奴を探しているんだ」
「私は相沢祐一を探しているんだよ〜」

お互いがお互いの探し人を聞く。
この探し人なら信頼出来るという証にも繋がるのであった。

(よし、仲間が出来たぜ!こうやって順調に仲間を集めていこう!)

信頼する者。

(利用出来る人は出来るだけ利用して祐一の探索に付き合ってもらう。岸沼良樹(仮)は嘘を付いた罰で利用するだけでなく目の前で篠崎あゆみを殺してあげるよ)

信頼しない者。

両者が顕著に現れていた。

(バトルロワイアルを終わらせてやる!/祐一と私だけがこのゲームで生き残る!)

お互いが心の底で笑いあった。
本当に笑う時がくるとすればどちらが笑う瞬間がくるのか、この段階ではまだ誰にもわからない。

誰にも、誰にも、誰にもである。



【岸沼良樹@コープスパーティー】
【装備:長ドス@Angel Beats!】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:右腕、脇腹に銃痕】
【思考・行動】
1:篠崎を探して護る
2:殺し合いには乗らない
3:水瀬と協力する
【備考】
※本編クリア後からの参戦。
※ユフィになんらかの催眠術がかけられていると思っています。
※名雪に信頼されていない事に気付いていません。


【水瀬名雪@Kanon】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 白いハンカチ@現実 ランダム支給品×2】
【状態:健康、憎しみ】
【思考・行動】
1:祐一と自身の生存
2:参加者を利用して殺す。特に『岸沼良樹』だけは自分が殺す。
3:『岸沼良樹(偽)』は誰より利用して、目の前で篠崎あゆみを殺す。
【備考】
※名雪ルート後からの参戦。
※瀬川虎鉄を岸沼良樹と誤認しています。
※岸沼良樹本人を偽物だと思っています。



【長ドス@Angel Beats!】
死んだ世界戦線の藤巻の武器。普段は木の棒みたいだが、実は刀になっている。

489 ◆WzpMn05TJA:2012/02/09(木) 11:14:38 ID:.1eq/oesO
投下終了です

予約
持田哲志、宮沢謙吾

490朱く染まれ、すれ違い綺羅の夢を ◆WzpMn05TJA:2012/02/13(月) 09:40:00 ID:N13ZE29gO
すいません
今回は何故かNGワードらしきものが入っていて投下出来ないみたいなので直接wikiに収録させてもらいます

特に問題はない(と思う)普通の話のつもりではあったのですが

元ネタはアニメ「刀語」OP『冥夜花伝廊』の歌詞より


予約
岡崎朋也、古手梨花、衛宮士郎

491ひぐらし/CLANNAD night ◆WzpMn05TJA:2012/02/16(木) 20:53:22 ID:gLNpwpZYO
「……待ってろよ、みんな」

俺はもう……。

「力を貸してくれ、渚……」

迷わない!

「絶対にゲームなんか終わらせてやるっ!」

罪を背負って生きる。
それは調子の良い事だっていうのはわかっている。
でも、……このゲームは命を掛けてでも、止めさせてやる事が俺の使命だ。

「まずはどうする?森に入るべきかどうか……」

未だゲーム開始時から俺はほとんど動いていない。
ずっと森と野原の境目に居ただけであった。

迷っていると森の方から高い、男の声が聞こえてくる。
まだ幾分か遠いか、耳を澄ませる。

「こんのぉぉぉぉっ!てめぇぇっ!」

二刀流の黒と白の短剣を握って俺に走る男がやって来た。
俺と同い年ぐらいの少年が殺気を見せつけてくる。

「くそっ、ゲームに乗った参加者か!?」

俺もゲームに乗った者。
人の事は悪く言えないが、止めてやるっ!

「はぁっ!」

両手の剣を力任せに振ってくる。
だが、俺は軽く後ろに避けて剣の斬撃を避けて、まずは右手目掛けて蹴り上げる。

「このっ!」

バキッ!
鈍い拳が少年に走ったであろう。
そのまま右手に握った剣を落とす。
俺はその剣を野原の方向へ蹴り飛ばした。

「なかなかやるな、だがまだだっ!
  トレース オン
――投影開始」
「んなっ!?」

また同じ剣が手の中で精製されていた。
なんだこれは!?、こいつらもまさか主催者達と同じく未知の力を使える者か!?

本当はドラグノフは使いたくはないのだが相手は武器を使っていて、しかも無限かはわからないが精製出来る様な奴だ。
俺は後ろに跳ねる様にジャンプして間合いを広げてドラグノフを構える。

狙いは右肩。
右肩の使えない俺が右肩を狙う事に皮肉さを感じてしまう。

「くそっ!?このマーダーが!?」

おかしな事を言う。
自分から襲った少年は自分のマーダーを棚に上げて俺をマーダーと呼ぶのだから。
確かに俺もマーダーであった者だがな。

「それでも今は違うんだっ!」

引き金を絞る。
瞬間であった。



「やめてっ!」



春原の妹の芽衣ちゃんに似た幼い女の子の声が響いた。
襲ってきた少年はその声を聞いて困惑した顔となった。

「士郎、勝手に突っ走らないで」
「ご、ごめん梨花ちゃん」

女の子相手に頭が上がらない。
まさかロリコンなのかと疑ったが今はそんな事はどうでも良い。

「あんたがこの少女を殺した殺人者ね?」

梨花ちゃんと呼ばれた女の子はそう言いながら渚に近寄った。

「……そうだ、俺が殺したんだ」
「この野郎っ!」

また少年が剣を構える。
『なんで、そんな馬鹿げた事をする』とでも掴みかかってきそうであった。
むしろ、俺にそうしてくれればどんなに楽だったか。

492ひぐらし/CLANNAD night ◆WzpMn05TJA:2012/02/16(木) 20:53:58 ID:gLNpwpZYO
「士郎は黙って!」
「……」

結局は女の子には逆らえなかったらしい。
女の子は俺に歩きながら近寄る。
当然ながら少年は俺に近寄っている事を止めるが女の子はスルーしていた。

「あんたゲームに乗った参加者のくせに様子が変ね?襲ってくる闘志が見えないのよ」
「…………」

俺は強く言われたわけでもなく自然に本当にごく自然にナチュラルに黙ってしまう。
何故か全てを彼女に見抜かれているのではないか、そんな瞳を彼女は持っていた。

「みー、教えてはくれないですか?」
「うっ……」

急に子供みたいな口振りに変わって少しポカンとしてしまったが、思考だけは止めなかった。

どう言えば良いだろうか。
というか話してしまっても良いのだろうか?
いや、こいつらがゲームに乗っている可能性だって。
でも他人である渚の死に怒った奴らだ。
その可能性は低いのかもしれない……。

あぁ!もう、良いかな……渚。

「俺はこのゲームに乗ったんだ。それがこの結果なんだよ」
「それがこの結果?人を殺せば人は死ぬ。当たり前なのです。言っている事がわからないのですよ」
「……わかったよ」

まずは自分の名前から。
岡崎朋也と名乗った。
芽衣ちゃんみたいな子は古手梨花、俺にいきなり襲いかかった少年は衛宮士郎と名乗った。

そして、俺が島で目覚めてからの過程を辿りながら教えた。
大切な人をこの手で殺し、そして罪を償う覚悟をした事を。

「朋也……」
「そう、そんな事情があったのね」

2人は責めてはくれなかった。
責めて襲ってくれれば良かったのに。
複雑な顔しかしていなかった。

そんな俺に2人は察したのかはわからない。
だが衛宮と梨花ちゃんは口を揃えて言った。

「「でも俺(私)は、朋也の事は責めないからな(わよ)!!」」
「!?」

なんなんだこの2人は……。
調子が狂う……。

「ここでお前を責める事は出来ないんだよ」
「責められたら報われるとでも思っているのかしら?」
「……そうだな」

見事に心を読まれている。
こうなると自分が惨めに感じてしまうな……。

「でもあなたは罪滅ぼしの……、恋人の死を乗り越えた……、力と強い意志を感じるわ。
あの時、奇跡を起こした私の親友の前原圭一の様に。
あなたからはこのゲームを終わりにさせる力が見えるわ」

前原圭一という人物はわからない。
俺は弱い人間だ。
渚を護る為に殺し、ウジウジと悩む弱い人間なんだ。

でも、
どうして梨花ちゃんからそう言われると本当にゲームを終わりにさせる力が自分にあるとさえ思わされてしまうのだろうか。

「お前は責められる。
でも誉められる奴でもあるんだ。
俺と梨花ちゃん、朋也の3人でこのゲームを終わらせよう」

手を伸ばす。
大きな傷だらけの手と小さな華奢な手。

「――ありがとう」

両方の手を、取った。

493ひぐらし/CLANNAD night ◆WzpMn05TJA:2012/02/16(木) 20:54:47 ID:gLNpwpZYO
◇◆◇◆◇◆


「んでだ、衛宮のその剣を出すあれはなんだ?お前は普通の人間じゃないのか?」
「そういえば僕も士郎が支給品に手を付けた瞬間を見なかったわね」
「これは投影といって自らの手で武器を精製する魔術だ。
そういえばこれの話で言っておきたい事があった聞いてくれ」

朋也、梨花ちゃんと名を読んで衛宮は言っておきたいという事を口にした。

「俺はこのバトルロワイアルで殺し合うつもりはない。
……けど参加者の1人であるアーチャーって奴だけとは俺は決着を着けなくてはいけないんだ。
だからもしアーチャーと出会ってしまったら朋也が梨花ちゃんを護ってくれ」

衛宮は俺に梨花ちゃんを託した。
彼からは燃える炎の様なものを感じとった。
死ぬ気の力がみなぎっているのがわかる。

「わかった。衛宮の頼み受け取った」

それからみんなの知り合いを教え合った。
衛宮の知り合いはほとんどが人間では適わない相手であるサーヴァントという存在らしい。
当然梨花ちゃんも聞いた事がなかった。

「ところでお前の知り合いはセイバー、ランサー、ライダー、アサシン、アーチャー、バーサーカー、キャスターで、もう1人のアサシンの真アサシンは知らないんだな。
けど衛宮切嗣って奴は知らないのか?兄弟とかじゃないのか?」
「俺の親父と同じ名前なんだ。でも有り得ないんだそんな事。
いや、ライダーとキャスターも死んではいるがこいつらは召喚されただけかもしれないが親父は5年前他界したんだ。
だから同一人物なんて有り得ない」

確かに衛宮の言う通り他界した人物が参加など出来るわけがない。
つまりこの人物は同姓同名の別の人物という事だ。
衛宮なんて名字珍しいけどな。

「待って士郎。他界した人物だって参加出来るわ」

が、納得をしなかったのは梨花ちゃんであった。
他界という意味を知らないだけか?いや、知ったかぶりをする意味がない。
では、梨花ちゃんのいう意味は?

「待て梨花ちゃん。他界っていうのは死んだって意味なんだぞっ!」

衛宮も同じ考えに行き着いたらしい。
だが梨花ちゃんは「知っているわ」と頷いた。

「私だって何度も他界しているもの。圭一もレナも魅音も詩音も沙都子も……。私は同じ時間を何回も死んでは繰り返してきた。
つまり死んだ士郎の父親の可能性は高いし、十中八九同じ人物でしょうね」
「なっ!?」

梨花ちゃんが何度も他界している人間?
しかし、衛宮が言うには魔術があるんだぞ?
シャルル・ジ・ブリタニアが言うには未知の力があるんだぞ?
なら、梨花ちゃんの同じ時間を何回も死んで繰り返してきたのも真実なのか?

――俺はもうバトルロワイアルに巻き込まれた時点で常識も世界も人生も全てが破壊されてしまった様だ。

「因みに私は昭和58年を時間換算にして100年以上繰り返しているのだから精神的には私の方がずっと年上なのよ」
「「……昭和58年?」」

衛宮と声が重なる。
おそらく衛宮も俺と同じくらいの年代からきたのだろう。
次は梨花ちゃんがポカンとしていた。
というか、俺が生まれてくる以前の人であった。
それから考えられる事は……。

494ひぐらし/CLANNAD night ◆WzpMn05TJA:2012/02/16(木) 20:55:58 ID:gLNpwpZYO
「つまり衛宮の親父さんも過去から来た人物なんじゃないか?最低でも5年前ぐらいに」
「あ……!?」

それなら辻褄が合う。
梨花ちゃんが過去の人なら衛宮の親父さんも過去の人という事。
どうやら未知の力というのは信憑性が高くなってきたな。

「みー……、僕が過去の人ってどういう意味なのですか?全然理解出来ないのですよ」
「梨花ちゃん。俺と朋也はそれより未来の人物なんだ」
「そうだ。今は平成といって昭和天皇が亡くなっている時代なんだ」
「えぇ!?朋也と士郎は未来人だったのですか!?」

なんて良い反応をするのだろうか。
確かに梨花ちゃんから見れば未来人になってしまうのか。

◇◆◇◆◇◆

「では早くこのゲームを終わらせて、みんなを平和な世界へ返してあげましょう」

「あぁ!」
「そうだな」

俺ら3人。
このゲームを開催させた主催者達を倒す事を目標に。
俺、梨花ちゃん、衛宮は3人の決意を1つにした。



【F-4 森と野原の境目/早朝】

【岡崎朋也@CLANNAD】
【装備:ドラグノフ9/10@現実】
【所持品:支給品一式 ドラグノフの弾丸20/20 ランダム支給品×5】
【状態:健康、精神的大ダメージ、決意】
【思考・行動】
1:渚を殺した罪を償い、背負い込み、捨てない
2:梨花ちゃんと士郎と行動してゲームを終わらせる
【備考】
※渚ルートの卒業の少し前くらいの参戦です。
※渚の支給品は回収しました。



【古手梨花@ひぐらしのなく頃に】
【装備:大型ナイフ@現実】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×1】
【状態:酔っ払い(小)】
【思考・行動】
1:主催者を倒し、沙都子の分まで生きる
2:朋也、士郎とゲームを終わらせる
【備考】
※皆殺し編の沙都子救出後からの参戦です


【衛宮士郎@Fate/stay night】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:疲労(弱)】
【思考・行動】
1:正義の味方として1人でも多くの人を救い、主催者を倒す
2:朋也と梨花ちゃんと行動してゲームを終わらせる
3:切嗣は本人……?
【備考】
※凛ルートのキャスター戦終了後のアーチャー戦前からの参戦
※サーヴァントを全てsnのサーヴァントだと思っています
※剣の投影は出来ますが投影をする度に体力が減っていきます


【干将・莫耶@Fate/stay night】
詳しくは天城雪子は笑えないもしくは支給品まとめ参照。衛宮士郎の投影による武器。

495 ◆WzpMn05TJA:2012/02/16(木) 20:57:58 ID:gLNpwpZYO
投下終了

元ネタはゲーム『ひぐらしのなく頃に』+ゲーム『CLANNAD』+ゲーム『Fate/stay night』より

予約
足立透、神原駿河、綾崎ハヤテ

496ぼくらの ◆WzpMn05TJA:2012/02/21(火) 12:52:40 ID:.amaBQygO
「やっぱり病院の方が良いのではないのだろうか?足立刑事の言う教会で戦っている者が居るという事はどちらも殺し合いに乗っている可能性が高くないだろうか?
それに病院だと爆発に巻き込まれた人が生きていた場合治療をしてあげられるのではないかな綾崎君」
「そうですね、病院の方が確実ですね」

ジョーカーである足立に巻き込まれている2人はつゆ知らずに行き先を決められていた。
そして、2人が出した病院という選択に笑ったのは当然足立であった。

(ククク……。綾崎君達は実に面白い選択をしてくれたよ)

とっくにグリムジョーは戦場離脱、セイバーはアンリマユに取り込まれた。そして篠崎あゆみはセイバーにより惨殺。日向秀樹は必死で教会周辺から離れて行っている。
病院には参加者は居なくて、マリア1人の死体があるだけ。

マリアと篠崎あゆみ。
どちらも死体1つしかない場所だが面白いのはマリアの死体の方だ。
当然ながらハヤテの知り合いであるマリアの死体である方が揺さぶる事が出来る。

(見事に君は不幸な方を選んでしまったわけだね綾崎君。君が不幸体質なのは報告通りらしいね)

見事なペルソナを纏った足立が距離的には近い2人を、実は遠くからでも眺めている様であった。

+++++

「綾崎君の事は果たして君付けで良いのだろうか!?」

脈絡がなく急に出した一言にハヤテと足立は驚き、立ち止まった。
駿河は難しい顔をして、真剣に悩んでいた。

「どうしたんですか神原さん?」
「うむ。今急に思ったのだが綾崎君とは馴れ馴れしくはないだろうか?」
「同い年ですし呼び方は特にこだわりませんよ」
「そうかなー?……ハヤっちとかどうかな?」
「……そっちの方が馴れ馴れしいじゃないですか」

神原は明るく周りをやたらと元気にさせていた。
が、巻き込まれるハヤテと足立は疲れた表情をさせている。

「なんか綾崎君と足立刑事を見ていたら執事系と刑事系のを読みたくなってきたぞー!」
「因みに神原さん。それはどういった物語のやつかなー?」
「足立刑事も興味があるのか?なら、私のBLを今度貸そうではないか」
「……聞かなきゃ良かったよ」

ジョーカーである足立も彼女だけは別の意味でマークをしていた。
踊らしているのは自分なのに、彼女の手の平に居る感覚で正直に自分とは相性が悪く感じた。

「というか涼宮ハルヒとかルルーシュとか完全にこれアニメの世界ですよね?神原さんや足立刑事もそう思いませんか?」
「「いや?」」
「あれ?」

オタクであるハヤテにとってある程度知っているアニメのキャラクターがある。
シャルルもハヤテにとっては知っているキャラクターであり、彼にとってアニメやゲームの世界と混合した世界と思っていた。

(ナギお嬢様ならはしゃいでいそうだなー……)

ハヤテは苦笑していた。
今お嬢様は1人で怯えていないか、既に殺されていないか?
執事の悩みの種は尽きない。

「そろそろ見えてきたね」

足立の声でハヤテはようやく気付く。
既に病院が目の前にあった。

「どうしたのだ綾崎君?ぼーっとして」
「いや、少し考え事をしていて」

ハヤテはまだ知らない。
お嬢様である三千院ナギはまだ生存しているがマリアが既に亡くなっている事に。
その遺体がこの病院に、しかも半身を失った形で置いてある事に。

それを見る事になるのはそれからすぐの出来事であった。

497ぼくらの ◆WzpMn05TJA:2012/02/21(火) 12:53:30 ID:.amaBQygO








+++++

「うっ……」
「…………」
「これは僕が今まで見てきた遺体の中でも酷いね……」

3人が3人違う反応を見せる。
神原は口を押さえ、ハヤテは立ち眩みが起こり、足立は警察の様に遺体へ駆け寄る。

「死後1、2時間といったところかな……」

死後硬直、血の色などを見て刑事の勘の様なものを見せた。
が、これは既にPDAで知っている情報であったので足立は特に遺体を調査した気にはならなかった。

「マリアさん……」

とハヤテがマリアに近付く。
マリアの手を握る。
ひんやりと冷たい手はハヤテの忘れかけていた自分がバトルロワイアルに巻き込まれていたという事を思い出させた。

「マリアさん、マリアさん、マリアさん、マリアさん、マリアさんマリアさんマリアさん……」

ハヤテの脳裏に浮かぶマリアの姿。
料理を作るマリア。
世間知らずなマリア。
紅茶を入れるマリア。
叱るマリア。
着替えをしているマリア。
――お嬢様と笑顔で微笑むマリア。

「嗚呼、あああアァア゛アァ゛ァアアア、あ゛ああああア゛ア嗚呼嗚呼、ア゛アア」

ウソだ。
嘘だ。
なんだよ、これは!?

夢 で あ る な ら 冷 め て く れ !


「……綾崎君っ!」

絶叫するハヤテに駆け寄ろうとする神原。
だがそれを制止する足立であった。
今は彼をそっとしていてあげよう、そんな風に伝わった。



+++++

マリアさんですらこんなにも速く亡くなってしまったんだぞ?

それなのに自分は何をしていた?

お嬢様やマリアさんやヒナギクさんを探す?
口だけで結局僕は神原さんと足立さんと話していただけじゃないか……。

「足立刑事、神原さんをお願い出来ますか……?」
「ちょ、綾崎君!?」

神原さんが僕を制止させる。
足立刑事も神原さんと同じ反応を見せたが、僕の考えはもう揺るがない。

「僕はこれからお嬢様を探さなくてはいけない……」
「なら一緒の方が……」
「僕はっ!……君達を殺さなくてはいけなくなる……」

震える僕の手。
震える僕の声。
悲痛な僕、綾崎ハヤテの決断であった。

498ぼくらの ◆WzpMn05TJA:2012/02/21(火) 12:54:20 ID:.amaBQygO
「まさか綾崎君!?君は……?」
「速く逃げてくれ神原さん……。僕の自我がある内に……」

お嬢様の為、このゲームで必ずすぐに脱落するであろうお嬢様の優勝を目指して。

「……行こう神原さん」

足立刑事に引っ張られながら神原さんと2人は病院から去って行った。

「ごめんね神原さん、足立刑事。
そして、マリアさんあなたの敵は僕が果たしますっ!
必ずお嬢様だけは生き延びてみせますからっ!」

ヒナギクさん、虎鉄君。
知り合いまで僕は殺す事を誓う。

「お嬢様っ!……お嬢様!」

あーたんとかに知られたら怒られるだろうな。
でも、これが僕に果たせる恩返しだから。

既にお嬢様を誘拐して犯罪者になる可能性があった僕だ。
もう今更そんな犯罪行為なんて僕を止めるストッパーにはならない。

「マリアさん……」

僕は病院の深くにマリアさんの遺体を寝かせてから置いて手を合わせた。
お嬢様を護ってくださいとお祈りしながら。



【B-2 病院/黎明】

【綾崎ハヤテ@ハヤテのごとく!】
【装備:黒鍵@Fate/Zero】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:健康、揺らぎ】
【思考・行動】
1:お嬢様を優勝させる。
2:それ以外の人物は知り合いですら殺したい……けど……。
3:マリアさんの敵も取る。
【備考】
※アテナ編終了後からの参戦です。
※足立をある程度信用しました。



(恐らく綾崎ハヤテの心を揺り動かせる事に成功しただろう)

神原を引っ張りながら足立は計画通りに参加者を動かせた事に喜んでいた。
苦痛に歪む顔が彼にとっては面白いドラマに見えておかしかった。

「足立刑事……、私達はどうすれば良いんだ……」

神原は警察である足立に助言を求める。
ハヤテを止められるなら止めてほしいと言わんばかりの勢いであった。
だが足立は何も口に出さない。
わざと、神原を苦しめる為に口に出さない。

「綾崎君……。わ、私は止めに行くべきなのだろうか……」

神原の心では止めたい心と止めに行ったら襲われるという葛藤があった。
どうすれば良い。
どうすれば良い。
どうすれば良い。
どうすれば良い。
どうすれば良い。
どうすれば良い。
どうすれば良い。
どうすれば良い。
どうすれば良い。

499ぼくらの ◆WzpMn05TJA:2012/02/21(火) 12:55:43 ID:.amaBQygO
「ここで命だって落としたくない……」

自分の尊敬している戦場ヶ原ひたぎにも阿良々木暦とも再会したいし、彼らと脱出も果たしたい。

「足立刑事……、私は……」

神原は顔を上げる。
が、そこには誰も居ない。
あるのは人の呼吸させる為に必要な空気だけであり、何者も消えていたのであった。

「どうして……、足立刑事!!」

叫んでも見渡しても新人刑事の姿は無く、神原の心を不安にさせる。

「お、襲われたのか……、それとも私を1人にさせて考えさせたかったのか……?」

いずれにしても神原の答えに足立は悪者という考えには至ってはいなかった。

足立刑事を探すか、ハヤテを止めるか、別の参加者を探すか。
神原の起こそうとする行動はこの3つに絞られた。

「ならば、私は……」



【神原駿河@物語シリーズ】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:足立刑事を探すか、綾崎君を止めるか、仲間を探すか。
2:阿良々木先輩、戦場ヶ原先輩と合流。
【備考】
※「するがモンキー」終了後からの参戦です。
※足立は悪者という考えはありません。





「よし、これで2人をかき混ぜる事は終わったね」

出会った参加者はランサー、神原駿河、綾崎ハヤテ。
周辺を行けばランサーと戦場ヶ原ひたぎと出会えるが警戒しているランサーには不用意には近付けないね。

「まぁ、他の参加者だってまだまだ居るんだ
時間だってまだまだあるしね」

足立はPDAを慣れた手付きでいじりながら次なる仕事へ、ジョーカーの役割を果たす為の探索を始める。



【足立透@ペルソナ4】
【装備:不明(武器は持っている)】
【所持品:支給品一式、AのPDA@シークレットゲーム-KILLER QUEEN- 、意図的支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:ロワイアルをかき回す仕事をしつつ楽しむ。
2:次は誰に会えるかなー?
【備考】
※直斗救出後からの参戦です。

500 ◆WzpMn05TJA:2012/02/21(火) 12:58:13 ID:.amaBQygO
投下終了

元ネタはマンガ『ぼくらの』より

予約
千石撫子

501幻想会話 ◆WzpMn05TJA:2012/02/21(火) 13:53:45 ID:.amaBQygO
私はまだまだ人に会えない。
寂しいのかな?
いや、撫子の今の心境は寂しいじゃないかな。
なんだろうねー?

「しゃしゃしゃ、撫子ちゃん。
君はまた不思議な事を言うんだね。
では撫子ちゃんはどんな心境なんだい?」

うーん……。
最初はそれなりに不安みたいなだったけどね、今は違うかな?

「俺はずっと撫子ちゃんと居たわけだけど不安だったのかいと問いたいくらいだった気がするぜ?」

失礼だねクチナワさん。
撫子は隠してただけだよ。
すごいでしょ。

「……別にすごくはねーよ」

ほら、このデイパック見てよ。
なんでも入りそうだよ。
きっとドラえもんの四次元ポケットってこんな感じなんだろうね。
これ作った人すごいね。

「支離滅裂じゃないか撫子ちゃん。しかも撫子ちゃんがすごいわけじゃなくなっているしね」

話を脱線させないでクチナワさん。
脱線するのは暦お兄ちゃんと話す時だけだよ。

「仲良いんだねー、相変わらず」

また脱線しようとしてるから戻すねクチナワさん。

「……今のは撫子ちゃんのせいだよね?というかさっきの脱線も撫子ちゃんが原因だし」

撫子の今の心境は"む”かな。

「堂々の無視ありがとうね撫子ちゃん。
それより、ああん?む、む?、む?
あぁ、『無』ね。
いや、怖いよ撫子ちゃん」

なんかね、何も起きないし誰も来ないし飽きちゃったんだよクチナワさん。

「しゃしゃしゃ、君の神経は太過ぎるんじゃないかい?
いや、でも何十匹の蛇を惨殺してきた撫子ちゃんだったね。普通の中学生よりは神経は太いだろうね」

えへへー。

「褒めてねーよ」

えへへー。

「撫子ちゃんは俺の話を聞いてるのかわかんないな」

えへへー。
それよりクチナワさん、蛇で思い出したけど未知の力って怪異に関係あるのかな?

「そういう可能性もあるわけだったね。それは盲点だったよ」

なんだっけ?暦お兄ちゃん達の吸血鬼の力みたいなのとか

「確かに暦お兄ちゃんと忍ちゃんは過去に行ったりはしてたね。
でも今回は怪異という感じがなかった気がするな。」

そうなの?

「なんか混ざってる力みたいなのかな?
よく覚えてねーし、知らねーけどよ
ただ主催者だかのシャルルとかいう奴と郷田とかいう奴は普通の人間だ」

あれ?
もう1人の朝倉涼子って人は?

「あいつからは人間じゃない気配がしたな。こう……、わかんねーけど」

怪異かな?
月火ちゃんみたいな『しでの鳥』みたいな?
暦お兄ちゃんの『吸血鬼』みたいな?

「あれは怪異だけど、朝倉って奴は怪異でもねぇな。でも普通の人間じゃねぇ」

宇宙人とかかな!?

「何ワクワクした目で見てるんだよ!?居るわけないだろ宇宙人なんか」

ろまんがないねクチナワさん。
撫子はろまんを求めているから宇宙人も幽霊もドラえもんも信じるよ!

502幻想会話 ◆WzpMn05TJA:2012/02/21(火) 13:54:13 ID:.amaBQygO
「ロマンというよりただの願望だよそれ」

おとめには難しいお年頃だよね?

「いや、俺は別に乙女じゃないから」

そうだね。
それにしても本当に何もないね。

「歩き疲れちゃって休んでいるのにマジで誰も来ないな。」

暇だよークチナワさん。
暦お兄ちゃんに会いたいよー。

「しかし急に拳銃で撃たれる可能性すらあるのによく暇とか言えるもんだね撫子ちゃん。
俺は撫子ちゃんが怖いし、なんか撫子ちゃんは死にそうにないね」

えへへー。
クチナワさんも死にそうにないけどね。
クチナワさんの体も見つかると良いねー。

「体が見つかれば俺はハッピーさ撫子ちゃん」

みんな幸せのハッピーエンド。
撫子はそんな物語が好きだなー。
そんな物語を描きたいなー。

「ん?」

い、いやなんでもないよクチナワさん。
ほら、見てクチナワさん。
だんだん空が明るくなってきたよ。

「早いんだか遅いんだか……」

朝まではまだ2時間以上はかかるけどね。
まぁ、のんびりしてようクチナワさん。
ふぁ〜あ。
少し眠くなったから誰か来たり、放送10分前ぐらいになったら起こしてねクチナワさん。

「わーったよ」



  -◆-◆-◆-



木を背にし、白いシュシュとの謎の会話を果たした撫子は軽い眠りについたのであった。



【E-3 森/黎明】

【千石撫子@物語シリーズ】
【装備:神鎗@BLEACH】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:健康、睡眠】
【思考・行動】
1:クチナワさんの体を探す。
2:暦お兄ちゃんは死んでほしくない。
3:眠たい……。
【備考】
※囮物語の暦の家で寝泊まりした直後からの参戦です。
※彼女は右腕にある白いシュシュをクチナワという神になっているという妄想に取り憑かれています。しかし、人前ではこの妄想は発生しません。
※クチナワの体は蛇のお札で、撫子がお札を食べてしまうと神様になり同時に怪異になります。

503 ◆WzpMn05TJA:2012/02/21(火) 13:56:38 ID:.amaBQygO
投下終了
今日は2本書いてみました
こちらは短編ですね


予約
遠野美凪、刻命裕也、キャスター、天城雪子

504朱より赤し ◆WzpMn05TJA:2012/02/25(土) 22:26:16 ID:9dRMzJ3cO
キャスターであるジル・ド・レェは、自分が人を殺した直前をその目に焼き付けながらも臆する事がないどころか、興奮しながらわくわくとした感情が沸く目をした少年に目を惹かれた。
その目はまるで先程殺した巽完二には見る事の無かった自分を鏡合わせをした目であったのだから。

「僕――、いや俺の名前は刻命裕也だ」

そして殺人者、しかも人間から見たら化け物に近い自分を目にしながらも堂々とする態度にキャスターは刻命を気に入ったのであった。
マスターであるならば理解の出来るマスターが欲しい、それはサーヴァントも人間も当たり前の感情であった。

「よろしくですユウヤ、この私ジル・ド・レェはアナタの様な理解ある者を探しておりました
アナタと出会えるまでは臆病なエサにしかならない少年2人に戦闘狂の騎士、私を騙す愚か者にしか出会えないのでした
この出会いはサーヴァントとして我が召喚されてから決められた必然的な出会いなのでしょう」
「青髭にそう言われたらなんか俺もそんな気がしてきたぜ」

仲良く組む握手。
それはお互いが認め合う者同士の友情の芽生え。
それがこの場で生まれたのであった。


刻命の同行者であった遠野美凪は当然ながらそんな反応はする事が出来なかった。
理解出来ない、人を殺したキャスターに恐怖を抱く。

そして人殺しをする事に躊躇いがない事がわかっていながらも、わかってくれると信じていた刻命にもキャスターと同じくらいの恐怖があった。
何故そんなに殺しに胸を躍らせるのか、何故そんなに人殺しを許容出来るのか、何故あんな化け物を受け入れられるのか。

――何より同じ人間ながらこの理解の差に一番の恐怖があった。

「刻命さん!!」

今ならまだ止められるかもしれない。
今ならまだ届くかもしれない。
バトルロワイアルの場で始めてあったその人の名前を呼ぶ。
刻命が青髭という鬼に、死という闇へ捕らわれる前に――。
刻命が美凪に振り返る。
良かった、まだ刻命の耳に自分の声が届いた事に美凪は安堵した。
歪んだ思考を断ち切らせて、真っ当に生きてもらう事を未だ満たしていないのだから。
これが人間の在り方という事を思い出してもらいたいが為に。

「ん?あぁ、邪魔だこの女は」

しかし刻命の出した返事は美凪をきっぱりと拒否する冷たい言葉であった。
このバトルロワイアルという場を2人でまわった情などなく、本性をただ剥き出しにしただけの目と顔、つまり表情であった。
その目に美凪は人間はこんなにも恐ろしい目が出来るものなのかと疑った。

「おお、ユウヤ!アナタは短い時間ながらも共に冒険をした仲間をいとも容易く裏切れるのですか!その非情さ!私のマスターに相応しき度量ですねっ!」

キャスターは刻命の返事にとても喜んだ。
自分の理想のマスターがまさに目の前に現れたのだから。
完全にキャスターにとって刻命はこっち側の人間というのを感じ取った。

「サンキュー、青髭」

刻命が当然とばかりにキャスターに手を振り合図をする。

(刻命さんの事はもう無理なのでしょうか……?)

もう声は届かない。
目の前の青年とは既に日本と地球の裏側のブラジル並みの距離が開いている。
美凪とキャスターに至っては日本と太陽以上の距離が開きがあるのでまず耳を貸さないであろう。

505朱より赤し ◆WzpMn05TJA:2012/02/25(土) 22:27:02 ID:9dRMzJ3cO
「……」

逃げ出さないと。
美凪の心にはじめてその選択が浮かんだ。
が、刻命には武器はないがおそらく強い力を持っているであろう。
キャスターは見知らぬ青年を素手で殺す力に、化け物を呼び出す術が使える。
美凪にはどちらにも勝つ事はおろか、逃げる事でも刻命には負けるであろう。

しかし刻命にはなく自分には未だ有利なものがある。

(デイパック……。でも……)

刻命の支給品には拳銃の類はないただのガラクタ同然の物しかないのは美凪は知っている。
だがキャスターの支給品はどうだ?
自分のデイパックどころがそこに転がっている青年のデイパックすらその手にある。

(私のデイパックには確か……)

刻命と出会う前。
支給品を確認した時に中にあった物を思い出す。
棺と人の名前が書かれた複数の名札。これは特に役に経ちそうにはない。
だが、22口径ゴム弾拳銃という武器が美凪には支給されていた。
アンチスキルの使用する暴徒鎮圧の為に使われる銃であり、人を殺す威力はなく助骨が折れる程度の武器であった。

(あれは弾がゴムだから人を殺せるわけはないけど脅しぐらいには使えますね)

デイパックに手を伸ばす美凪。

いくらあの化け物でも刻命さんを狙おうとすれば盾になり隙があらわれるだろうと計算をしながら。
慎重に素早くデイパックに手を突っ込み、拳銃を手に取る。
どのくらいの時間がかかるだろうか?
開ける時間を含むと3〜5秒といったぐらいだろうか?
いや、焦って1秒ぐらいのタイムロスを許すかもしれない。

美凪は今緊張の真ん中であった。

そして、緊張の中デイパックを開ける。
さりげなく、さりげなく、さりげなく。
見られない様に祈りながら。










「何をしている小娘風情がっ!」

手を突っ込む瞬間。
キャスターの怒声が響く。
キャスターにとって美凪はエサでしかない。

そのエサが抵抗しようとするのだ。
エサが自分を襲おうとするのだ。
怒りのボルテージが噴火の勢いで湧き上がった。

「我が手先に喰われなさい!」

親友から譲りうけた魔本『螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)』を開く。
魔本が黒く光り、力が溜まる光景が目に付く。
美凪がしまったと思った時には背を向けて逃げ出していた。

「はぁ、はぁ……、はぁ」

振り返ると深海の水魔の触手が美凪を襲っていた。

506朱より赤し ◆WzpMn05TJA:2012/02/25(土) 22:27:50 ID:9dRMzJ3cO
触手の速さは自分が走る速さより幾分か速い。
鬼ごっこであったならば、すぐに追いつかれていたであろう。
しかも振り向いた瞬間は当然速さが遅くなるわけだ。
人間ならば当たり前だ。





だが美凪にとってはそれが幸運であった。
キャスターと刻命にとってはそれは小さな誤算だった。
本当に小さなもので、キャスターにとっては誤算にも入らないのかもしれないが。

「ぁっと」

振り向き様に足がもたれて体制が崩れる。
一瞬体が宙に浮き、体がアスファルトと接触した。
デイパックが開いた瞬間、中身が何か1つだけ落ちた。
膝には怪我が出来た感触があった。
皮膚が破れて流血する。
やがてそれはかさぶたとなる。
彼女がかさぶたになるまで生き長らえるかはわからないが。

しかし怪我と引き換えに触手は空を切った為、触手は何も捕まえずに消滅した。

「運の良い小娘がっ!」

だがこんな偶然は1度のみだ。
しかもデイパックから飛び出たのは棺。
22口径ゴム弾拳銃が出ていたなら抵抗は出来ただろう。
だが棺は重くて女の子1人で持ち上げる事は不可能だ。
別に持ち上げるわけではないのだが。

「ごめんね遠野さん、お詫びといっちゃあなんだけど俺は真っ当に参加者と主催者を青髭と殺っていくからその犠牲になってくれよ」
「ユウヤの優しさにこのジル・ド・レェ感激です!あぁ、ジャンヌよこの世界は人々に優しさという感情があるのですねぇ」

狂った会話を続ける2人。
既に2人の間では美凪は死んだも同然なのだ。
逃げても無駄、デイパックに手を付ける隙すらない。

美凪は悟る。
これは将棋でいうところの『詰み』であると……。










「え?」

しかし美凪は幸運に恵まれていた。
確かに22口径ゴム弾拳銃がデイパックから出ていたら抵抗は出来ただろうがおそらくそれだけ。
深海の水魔に襲われるなり、腹を貫通させられるなり、刻命に首を締められたりする結末しかなかっただろう。

しかしデイパックから転がったのは棺。
棺というのは同然ながら『死体を収める箱』だ。
この死体がもし特別な死体だとしたら?

「…………」

棺からはユラユラとした男の様なミイラが姿を現す。
誰がこんな事態を予測出来たであろう。
美凪も刻命もキャスターも謎の第4者の出現にポカンとしていた。

507朱より赤し ◆WzpMn05TJA:2012/02/25(土) 22:28:45 ID:9dRMzJ3cO
「ミイラさん……?」

最初に我に帰ったのは美凪であった。
ミイラの意図はわからない。
だがミイラは美凪を護る様に、壁の様に立ちふさがっていた。

「逃げろって、事ですか?」
「…………」

ミイラは振り返って美凪を見る。
表情は青白い。
だが、手はグッとポーズをしている。
『ここは俺に任せろ!』とでも語るかの様であった。

「でも……」
「…………」

ミイラはしゃべらない。
だがミイラの言いたい事は伝わってくる様であった。
『どうせ俺は既に死んだ人間だ』と。

「ご、ごめんなさいミイラさん……」

美凪はデイパックを握る。
自分を守ったミイラの為にも生きてこのバトルロワイアルで主催者に対抗しなくてはいけない義務を強くしっかりと抱きながら。

危機一髪。
美凪は、――というか誰も予想もしなかった救世主の登場に命を助けられた。
偶然は二度続き、美凪は刻命裕也とキャスターから膝の怪我という代償だけで逃げられたのであった。



【E-6 学生寮周辺/黎明】

【遠野美凪@AIR】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 たくさんの犠牲者の名札@コープスパーティー 22口径ゴム弾拳銃@とある魔術の禁書目録】
【状態:膝に怪我】
【思考・行動】
1:ミイラさんの行為を無駄にしない為、生き抜く。
2:仲間を探して主催者へ対抗する。
3:刻命さん………。
※美凪ルート確定寸前からの参戦。



「ちっ、なんだよあいつつまらねぇ」

刻命は『生命の終わる瞬間』に強い興味を抱いている。
だが、どうせなら人間の生命をという気持ちがこのバトルロワイアルの開始から大きくなっていた。
それなのだが、遠野美凪を逃がし残ったのはミイラなどという既に死んだ人間だ。
死体が立っているだけなのだ。
死体の死なんかに興味など抱かない。

「不愉快だ!あんな死体風情がエサを逃がすなど死に値する!」
「…………」

キャスターが頭を掻きながら暴れる。
先ほどからキャスターが美凪といい、ミイラといい上手くいかない事ばかりが続いていたのだった。

だが驚かされたのはキャスターであった。

「ぐぁぁ!?」

ゾンビはハリセンを手にし、キャスターへ強い力で叩きつけた。
予想しなかった攻撃に予想しなかった威力にキャスターは大きく怯んだ。

「この野郎!」

刻命がハリセンでキャスターを叩いたばかりのゾンビの背中を蹴りあげる。
体が若干『く』の字になり、地面に叩きつけられる。

「…………」
「はん、殺し直してやるよ」

頭を何回も踏みつけ続ける刻命。
ミイラは最初こそ抵抗する様に頭を上げようとしていたが、だんだんと気力も蹴りと共に地へ落ちていったのであった。

508朱より赤し ◆WzpMn05TJA:2012/02/25(土) 22:29:34 ID:9dRMzJ3cO

「血が出ないとかつまらねぇなこいつ」
「ユウヤ、このミイラはどうしましょう?我が使い魔にでも殺させましょうかね?」
「いんや、皮肉に殺してやるよ」

と刻命はミイラの入った棺を引っ張ってきた。
キャスターは刻命の考えに頭を?にしていた。

「それがなんなのですかユウヤ?」
「青髭がこれでミイラでぶっ叩いてやれよ。
自分が眠った棺で撲殺なんて皮肉混じりで面白いと思わないか?」

キャスターは理解する。
同時に刻命の考えと自分の思考はやはりそりが合うと共感を抱く。

自分を生かすマスターは刻命だけだ、キャスターはこの男と共に戦い、ジャンヌを復活させる事を望んだ。

「それは面白いですねユウヤ、では棺を渡してくださいユウヤ。一撃でこのミイラをやりますぞ!」

キャスターはサーヴァントの力で棺を持ち上げる。
ミイラの抵抗はなし。
刻命とキャスターは共に笑い合った。



――ガンッ!!



撲殺の音にしては大きすぎる音。
ミイラは棺により頭を殴られ、変に跡が付いていた。
やはり血は流れない。

「皮肉だなぁ青髭」
「素晴らしい光景ですねユウヤ!」

刻命の言う通り、ミイラが眠っていたその棺によって、ミイラは完全に眠ったのだから。
それは皮肉以外の言葉では表せなかった。

「くっくっくっ、よし青髭!」

刻命はキャスターに向き合い手を出す。

「改めて刻命裕也だ」
「私はキャスターのクラスのジル・ド・レェ、青髭と呼んでくださいませ」

2人はお互いを尊敬し合っていた。
それは確かに大きな絆が生まれた瞬間だった。

「ジャンヌ、あなたの復活はこのユウヤと共に必ずや成し遂げてみせましょうぞ!」
「良いぜ青髭、俺は人を殺せればそれで良い。願いはあんたが叶えれば良い」
「器も大きいですねユウヤ」

2人は長年付き従ったパートナーの様に仲良くこのバトルロワイアルの地を歩くのだった。
信頼マーダータッグ。
この2人はこれからどの様な行動をし、どの様な活躍を見せるのか。


巽完二とミイラの死体がこの地に2つ転がって約6時間に渡る戦いは幕を閉じた。



【ミイラ@リトルバスターズ!  死亡】

509朱より赤し ◆WzpMn05TJA:2012/02/25(土) 22:30:34 ID:9dRMzJ3cO
【刻命裕也@コープスパーティー】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、テレビの世界のメガネ@ペルソナ4、SOS団特製すごろく@凉宮ハルヒの憂鬱、犬の捜索願いの紙@めだかボックス】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:青髭と共に参加者を殺していく。
※本編開始前からの参戦です。



【キャスター@Fate/Zero】
【装備:螺湮城教本@Fate/Zero】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3、手錠@現実、巽完二のデイパック(支給品一式、ランダム支給品×2)】
【状態:返り血(大)】
【思考・行動】
1:ユウヤと共に参加者を殺していきジャンヌを復活させる。
2:たくさんの参加者を贄にして魔力回復。
※『プレラーティーズ・スペルブック』での大海魔化はできません。
※『ペルソナ4』の世界の情報を得ました。
※龍之介に召喚される前からの参戦なので、サーヴァントのことを一人も知らない状況です





寮にて桜井智樹に攻撃を与えた天城雪子は寮から少しずつ離れていた。
一応雪子は智樹を殺したと勘違いをしているが、もう少しで発表される放送でまだ殺していない事に気付くであろう。
今はそんな話は関係ないのであるのだが。

「早く、早く皆殺しをしないと」

9のPDAを持つ雪子は震えていた。
皆殺しをしなくては自分が死んでしまう。
だから自分が何人もの人物に手をくださないと脱出出来ないと思い込んでいるのであった。
いくら最後の1人になっても人を殺さなかったから自分も死ぬなんて事は雪子にとって恐怖でしかなかったのだから。

自分は先ほど男の子を殺した。
だからもう人を殺し続けないと償いが出来ないのだと思い込んで。

本来はシャドーと戦う時にしか使わないペルソナを自分が生きる為に人間を殺す私利私欲に使うのだから。
赦されない事だろう。
人を護る力を人を殺す力として使っているのだから。

「鳴上君や花村君まで来ている。しかもあの足立刑事までいる」

雪子の仲間である自称特別捜査隊と戦うのは嫌であったが、あの強敵の足立刑事まで参加している。
あの時はみんなで力を合わせて戦ったから勝てたものの、自分1人なら適わないだろう。

「千枝とりせちゃんとクマ君ばっかりズルいよ」

雪子は仲間のこの3人を恨んだ。
特に仲の良い千枝が来ていない事には一番雪子にとっては不服なところであった。
どうして自分がまたこんな事に巻き込まれなくてはいけないのだと。

「それはともかく誰にも合わないな……」

雪子が自分が狙う標的を探しているが誰も居ない。
しかし突然、大きな音が響いた。

510朱より赤し ◆WzpMn05TJA:2012/02/25(土) 22:31:43 ID:9dRMzJ3cO





――ガンッ!!

キャスターのミイラを撲殺させた音。
それなりに離れた位置の雪子の耳まで響いた。

「寮の近くから?もしかしたら怪我した人が居るかもしれない」

そして自分がトドメをさせればそれで良い。
雪子は寮の周辺へ足を戻らせて走りだした。



  ◆  ◆  ◆



「な……?」

怪我をしてトドメをさす様な人物など居なかった。
居た、いやあったのは既にトドメをさされたミイラと――そして仲間の巽完二の死体が転がっていた。
しかも完二の体からは血が溢れるほど流れていて体の中身が浮き出ていた。

「完二君っ!?」

完二もペルソナを使ってシャドーと戦う者。
しかも自分よりも完二の方が強いし頼りになる。
そんな彼が既に殺されていた。

恐怖、絶望。
雪子の精神が追い込まれていく。

「化け物?鬼?怪物?……ミイラが居るんだ!有り得ない事じゃない!」

薄暗くて参加者全員の姿など知らない。
だが、こんなグロい死に方をさせた人物が同然あの中に居たはずなのだ。

「ごめんね完二君、本当は埋葬とかしてあげたいのだけれどごめんなさい」

仲間であり、親友だった男に涙を流して頭を下げる雪子。
自分もこんな風に殺されるのは怖くて怖くて……。
しかも自分は今は殺す側に居るのだ。

「それでも私は生きたいから……」



【天城雪子@ペルソナ4】
【装備:干将・莫耶@Fate/stay night】
【道具:支給品一式×2 ゼロの仮面@コードギアス 反逆のルルーシュ 9のPDA@シークレットゲーム-KILLER QUEEN- ランダム支給品×2】
【状態:疲労(中)】
【思考・行動】
1:PDAの首輪解除条件に従って行動する=皆殺し。
2:完二君……、みんな……。
【備考】
※足立戦終了後からの参戦です。
※桜井智樹を殺したと思っています。
※桜井智樹のデイパックの中身を回収しました。
※ペルソナはコノハナサクヤで、スキルは威力の大きいものほど体力を消費します。


【棺@リトルバスターズ!】
地下迷宮に眠るミイラが入った棺。何故か中のミイラはハリセンを持って直江理樹を叩いたりする。ミイラの正体は不明。


【たくさんの犠牲者の名札@コープスパーティー】
天神小学校で亡くなった人達の名札。


【22口径ゴム弾拳銃@とある魔術の禁書目録】
アンチスキルの使用する暴徒鎮圧の為に使われる銃であり、人を殺す威力はなく助骨が折れる程度の威力の武器。

511 ◆WzpMn05TJA:2012/02/25(土) 22:32:44 ID:9dRMzJ3cO
投下終了です

元ネタはマンガ『藍より青し』より



予約
アーチャー、衛宮切嗣

512 ◆SENAs8NCE2:2012/02/28(火) 19:44:12 ID:HfjVleFA0
前原圭一、朝比奈みくる、アサシン、バーサーカーの四名で予約します

513アーチャー時を越えた遭遇 ◆WzpMn05TJA:2012/03/01(木) 18:16:52 ID:fsrdWL26O
素早く駆ける朱。
その朱をよくよく辿っていくと赤い外套の男である事がわかる。

特徴的な肌の褐色。
白に染まった頭髪。
大きな大きな背中。

その姿は弓兵らしくない弓兵(アーチャー)の姿であった。
『守護者』として活動し、衛宮士郎を1番に全ての参加者を皆殺しを決意した兵隊であった。



――数時間前、彼は赤原猟犬で参加者の少女を殺した。
正確には彼はその殺した光景を見ていない。
いや、見る必要がなかったのだ。
その赤原猟犬の能力は弾かれようが射手が健在な限り標的を狙い続ける黒くて赤光する魔弾である。
とっくのとっくに狙われたあの少女はあの刃の錆となっているはずなのだから。

「だが能力制限とはまたやっかいな……」

人間とサーヴァントの実力差を埋める為に、主催側が我々の人ならざる者に能力を厳しく制限したのは容易に推測出来る。
他のサーヴァントはどんな制限をくらっているのかはわからない。
だが、投影魔術を基本にする自分にとって投影の時間設定は非常にやっかいだ。
その為、アーチャーは少女を殺す為に放った赤原猟犬を創ったあとからは支給品の『熟練スパナ』を手にしていた。

「こんな武器使いにくいにもほどがあるな」

そもそも自分の愛用する弓か剣の武器では当然剣寄りの武器であるだろう。
しかし、こんなものは剣などではなく、おそらく自分なら一度も投影をしてこの武器を出そうとは考えないだろう。

「支給品に武器が入っていただけまだ恵まれてはいるのだろうな」

そう思い込みアーチャーは心許ない武器を両手にし、参加者を探しに出たのであった。
参加者名簿には目を通していない。

何故ならどうせサーヴァントも人間も殺すのみ、衛宮士郎の姿は見せしめの前にとっくに発見済みであった。
つまり、アーチャーにとってはこのバトルロワイアルはただ殺す者しか居ない催しに過ぎないのだ。





―――――

街の民家の屋根から見える人影は未だなし。
時間が無駄に過ぎていく1秒。

「ふむ、流石にそんな簡単に殺させてはくれぬか」

屋根からアーチャーはジャンプして降りる。
方針という大袈裟なものではないが、屋根など高い位置からまた弓で狙おうとしていたが効率の悪さに苛立ちを感じた。
自分の足で参加者を見つけて殺した方が手っ取り早いと……。



◆◆◆◆



「念の為にも武器は多いに越した事はない」

黒いもの身を包んだ魔術師殺しの異名を持つ衛宮切嗣はとある建物で武器を探していた。
考えたくもないが先程の戦闘で相手になった六道骸に対抗出来たのはワルサーP38と時間操作の為であった。
時間操作はどうにもならないとしてワルサーがもし無かったとしたら既に殺されていたであろう。

「銃やライフルは当然見つかるわけがないか……」

見つけられて包丁やドライバーといったホームセンターなどで簡単に入手出来るものぐらいであった。

「……こんな行動は正義でもなんでもないな」

自分の手の包丁を見ながら思い浮かべるのは死の直前の出来事。
衛宮士郎に正義の味方になりたかったと語って、それなら自分が正義の味方になると言ってくれた士郎の姿であった。
アイリを失い、イリヤと離れた自分にとって残された希望。
――護らなくてはいけない。
封印していた事を解放しなくてはならない。

514アーチャー時を越えた遭遇 ◆WzpMn05TJA:2012/03/01(木) 18:17:53 ID:fsrdWL26O





「ようやく参加者を見つけた。無防備な相手だ」

アーチャーは熟練スパナで簡単に殺せると判断。
両手にスパナを持ち、気を殺して気配を伺う。





「さて、また六道骸の様な強敵の相手を見つけた時はどうしようか?
僕が適うはずがないしね」

切嗣は一筋縄でいかない事はとっくに感づいていた。
いや、本能であろう。
血や戦いを寄せ付ける自分の性である。



「そう、例えば君の様な相手とかね!」



二本のスパナを突き出すアーチャー。
脳みそを守る様に包丁を構える切嗣。
切嗣はアーチャーが襲いかかる事など既に察知していた。
自分は敵を誘き出すプロなのだ。
逆に襲ってこないはずがない。

「……人間にしては対した力だ」

人を見下す口調で話すアーチャー。
『人間にしては――』と言った事や明らかに人間じゃないその外見の赤い外套の男の登場にどう対応するか悩ませる切嗣。

「ぐっ……、なんだこいつは……?」

と、自分から襲ったアーチャーは頭を痛ませた。
何故かはわからない。
目の前の男を目にした瞬間から懐かしさの様なもの、自分が生前守り通した正義が揺さぶられたのがわかった。

(何者だこの男……)

まるでこの感じ、『■■■■』を目の前にした様な感覚であった。

「なんだい?急に頭を悩ませて」
「な、なんでもない」

そう言って男から間合いを離すアーチャー。
反撃はされない程度、男と話せる程度の距離の間合いを取って。

「もしかして君はサーヴァントかい?」
「っ!?」

アーチャーは自分の存在『サーヴァント』を知っている男を前に言葉を失った。
自分を見てサーヴァントなど口にするのはサーヴァント同士、もしくは何者かのサーヴァントのマスターになった事のある人物ではないと出るわけがない。

「そうだ。俺は冬木の第五次聖杯戦争の遠坂凛のサーヴァント。
アーチャーのクラスを得て限界して参った」
「……第五次聖杯戦争?」

おかしな事を言う。
冬木の聖杯戦争はまだ四次しか開戦していないはずだ。
なにしろ自らが聖杯を壊して冬木市の大災害を起こした人物でもある自分なのだから。
逆に頷ける事実でもあった。
自分の知るアーチャーとは似ても似つかない存在。
しかもマスターの名前である遠坂凛は、アーチャーのサーヴァントの元マスター遠坂時巨の娘の名前であったはずだからだ。

515アーチャー時を越えた遭遇 ◆WzpMn05TJA:2012/03/01(木) 18:18:44 ID:fsrdWL26O
「もう第五次聖杯戦争なんてのが始まっているんだね」
「……おかしな口振りだな?」
「僕はね冬木の第四次聖杯戦争のセイバーのマスターをしていた男さ」

アーチャーの頭にジェット機の様な速さで疑問が走った。
第四次聖杯戦争のサーヴァントのセイバーは自分の知るアーサー・ペンドラゴンである。
だがその時のマスターは確か――。
いや、有り得ない。
確かにそのマスターは存在するはずがない。
凛の世界から見ても5年も前に亡くなっていたはずだった。

「貴様の、名を知りたい」
「僕の名前かい?」

と目を閉じてぼそりと。
――――『衛宮切嗣』。

忘れるはずがない、自らが一番尊敬するその男の名前であったのだから。
死ぬはずだった自分に希望と未来を与えた男の名前。

「嘘を付け貴様っ!貴様が衛宮切嗣のわけがない!」

辞めろ!
その名前を簡単に口にするな!

アーチャーの怒りが走った。
この偽物を殺す。
偽物の剣を創って偽物を殺す。

「僕の事を知っている口振りじゃないか」

顔を上げるアーチャー。
その姿は確かに自分の救世主、忘れるはずがない『衛宮切嗣』。
自分のじいさんであった。
衛宮士郎(自分)を嫌おうと、彼だけはどうしても嫌いにはなれない。
なるはずがなかった。

「じいさん……。貴様、いや本当にアナタは衛宮切嗣なのですか?」

確かめるまでもなかった。
まさしく古き自分の頭に過ぎるのはその切嗣で間違いないのであるから。

「僕は君にじいさん呼ばれされる筋合いはないな。……が、君はどうにも他人の気がしないな。はじめて会った未来のサーヴァントなのにね」
「それは俺の真名に関係あるかもな」
「…………」

自分の真名。
正義の味方であり続けて殺された男の名前。

「幼き時、冬木で起きた大災害の話だ。両親も誰もかもが亡くなったあの日、俺はとある人物に助けられた少年だ」
「……まさか、君は……?」
「真名を――『エミヤ』」

時を越えた親と息子の再会であった。
息子の姿は遥かに自分の体よりも大きな頼もしい姿であった。

「本当に……、君は?」
「つまり俺は過去ではなく未来から現れたサーヴァントという事だ」

切嗣もアーチャー。
どちら共、もう会えないと思った再会。
嬉しくないわけがなかった。

「そうか、君があの小さかった少年なのか」
「じいさん、久し振り」

お互い武器を降ろしてそのまま話をする為民家へと入って行った。
当然両者共、手を出すつもりは毛頭無かった。



◆◆◆◆

516アーチャー時を越えた遭遇 ◆WzpMn05TJA:2012/03/01(木) 18:19:31 ID:fsrdWL26O



「大きくなったもんだな士郎」
「違う。俺はエミヤであり、衛宮士郎とは別人だ」

切嗣には話してしまった方が良いだろうとアーチャーは考えていた。
おそらく彼は士郎を護ろうとするだろう。
自分は士郎を殺そうとする者なのだから。

「でだ、じいさん。俺は今でもじいさんを尊敬している。英雄となり、サーヴァントとなった今でもだ」
「嬉しいね。僕との約束の通り正義の味方になったなんてね」
「あぁ。だが俺はその正義の味方になって激しく後悔をしている」
「……やはり、そうなったのか」

切嗣は自らの過去とエミヤの影を重ねる。
人々を救う為、人を殺す。
それを幾度となく繰り返して繰り返して数え切れないくらいになるのだ。

「だから俺は衛宮士郎を殺して俺が生まれない為にタイムパラドックスを起こす。おそらくじいさんは衛宮士郎を護ろうとするのだろう」
「…………」

切嗣は複雑な表情となる。
護りたかった少年、未来の少年。
互いが互いと敵対しているのだ。
だからといって少年を殺させるわけにもいかないのも事実。

「俺は全力を尽くして衛宮士郎を殺す。
だからじいさん。あんたは全力で衛宮士郎を守り抜いてみろ」

アーチャーは民家の出口に向かう。
切嗣は止めない。
嬉しかった再会だが別れる再会でもあったのだから。

「エミヤ……。なら僕は次に会った時は全力で君を止める。その強い力を僕に見せてもらいたい
最後に質問だエミヤ」
「……」

アーチャーは振り向かない。
切嗣と敵対という信じたくない出来事が直視させられるのだから。

「君は正義の味方になって嬉しかった事はなかったのかい?」

アーチャーは振り向かない、答えない。
民家のドアに手を付け、大きくなり過ぎたその息子の背中を見送った。
小さかった少年の背中と比べながら……。


【H-6 民家/早朝】

【アーチャー@Fate/stay night】
【装備:熟練スパナ@ペルソナ4】
【支給品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:『守護者』として行動する。
2:参加者を殺し、最後には主催者たちも殺す。
3:衛宮士郎は必ず殺す。セイバー、切嗣には……?
【備考】
※凛ルート、召喚直後からの参加です
※投影は一度の使用につき30分のインターバルが発生します。また、弓の射程距離が短くなっています
※固有結界は発動できますが、膨大な魔力を消費します


【衛宮切嗣@Fate/Zero】
【装備:ワルサーP38(残弾4/8)@現実】
【所持品:支給品一式、ワルサーP38の予備弾(残弾24/24)、包丁@現実、ドライバー@現実、ランダム支給品×2】
【状態:健康、疲労(中)】
【思考・行動】
1:衛宮士郎を優勝させる。その為にはどんな手段をも厭わない。
2:エミヤは……?
【備考】
※死後からの参戦です。
※「時間操作」は使用できますが、通常時よりも負担がかかります。
※六道骸を危険視しています。

517 ◆WzpMn05TJA:2012/03/01(木) 18:22:27 ID:fsrdWL26O
投下終了
元ネタはアニメ「ポケットモンスター」劇場版『セレビィ時を越えた遭遇』より


予約
棗鈴、アウレオルス=イザード、宮沢謙吾

518 ◆SENAs8NCE2:2012/03/04(日) 15:23:46 ID:.epNeNQk0
時間が取れなそうなので破棄します

519たとえバラバラになろうとも ◆WzpMn05TJA:2012/03/06(火) 15:05:27 ID:gsqA.ODIO
1人のか弱かったが強くなると誓った少女。
1人の強い力を持ったが、強くなれなかった青年。

そんな2人は邂逅を果たし、先程バーサーカーに襲われていたのだが、現在はそういった危険な参加者とは会わないで済んでいた。
そして、敵襲をされた時には詳しく話せなかった事を対面しながら話していた。
本当は人見知りな性格の鈴はどこか遠い世界で積極的になった力を発揮させながら……。

「あうれおるすも私と同じくばとるろわいあるとやらに巻き込まれたわけなのだが知り合いは居たのか?」
「知り合いというのかはわからないが……、たった1人だけ知っている者が居たな」

上条当麻。
1年毎に記憶を消される儚く優しい少女インデックスを助けると誓ったのだが、アウレオルスよりも先に、短時間で助けた最弱で最強の少年。
彼の正義感はこのバトルロワイアルでも参加者を助ける為に翻弄しているであろう少年の名であった。

「あうれおるすはそのかみじょーとかいう奴に悪い事をしたんだな」
「必然。決められていた運命だったのかもしれないね。私がインデックスを助けられなかったのもまた自然なのかもね」
「インなんとかはあうれおるすにとっては大事な少女だったんだな」

インなんとか。
アウレオルスは苦笑したが、そんな鈴の影がインデックスと重なった気がした。
似ても似つかない顔、髪、声であるのだが。
理由はアウレオルスにはわからなかった。

「よし、あうれおるす!」

と鈴は何かを思い立った様に立ち上がった。
アウレオルスは急な鈴の行動をただぼんやりと見ているだけであった。

「悪い事する奴は、めっだ!」
「……?」

怖くはないが怒った顔になる鈴。
アウレオルスは何故に自分が起こられたのかよくわからなかった。

「だからー、悪い事をしたら謝るんだあうれおるす。
そのかみじょーとかいう奴に一言『ごめんなさい』って言ってやるんだ」
「いや……、せ、正論ではあるのだがな鈴……。会いにくいというかなんというか」
「ふかーっ!」

険しい顔になる鈴。
どうやら反論は聞き入れる気がないらしい。

「……わかったよ鈴。今から上条当麻に謝りに行こう」

妥協した。
いや、妥協する選択しか彼には無かったわけなのだが。

「よし、まずは仲間のリトルバスターズとかみじょーと他に仲間になれる奴を探してしゃるる達からみんなに『ごめんなさい』と言わせるぞあうれおるす」

大事な人を失ったはずの鈴が強くあれた事を頼もしく感じる。
もし、自分もそれくらいの強さがあれば上条当麻に勝てたかもしれなかった。

「鈴の仲間のリトルバスターズの仲間の事を聞いておいていいかな?」
「うん。理樹に恭介に真人に謙吾、こまりちゃんにはるかにくるがや、クドにみおだ」
「え?そんなに鈴の仲間が参加させられていたのか?」
「いや、理樹と恭介と真人と謙吾とくるがやの5人だ。うん、間違いない」

となると亡くなったのは直江理樹であるから現在の鈴の仲間は4人だ。
顔は想像出来なかったが名前だけは確認するアウレオルスであった。

520たとえバラバラになろうとも ◆WzpMn05TJA:2012/03/06(火) 15:06:18 ID:gsqA.ODIO
「あうれおるすの声は恭介の友達みたいな声をしているな」
「恭介の友達?そういえば棗恭介とは君の弟なのかい?」

名前が棗鈴の上に書かれた棗恭介の3文字。
ただ親友同士同じ名字なのか、呼び捨てにしているから弟なのか。

「なにぃ?私には弟が居たのか?……知らなかった」
「私が知らない鈴の姉弟を私は知らない。」
「恭介は私の兄貴だ。バカ兄貴だ。すごくバカだ。とてつもなくバカだ。恐ろしいバカだ。真人と謙吾もバカだが恭介はそれに勝るとも劣らないバカだ。」
「わ、わかった」

鈴の仲間の情報はバカという事しかわからなかったアウレオルスであった。



◇□◇□◇□◇



それから2人の行動は速かった。
「G-6辺りの中学校やG-7の商店街、G-5の高校辺りが人が多いな。間違いない。私の勘がそう言っている」と言った鈴により大体の行動する場所が決まった。
元居たH-3からG-3に渡り、G-4へと入って行った。

「なんか疲れたぞあうれおるす」
「そうだね。結構歩いたからね」

参加者という参加者とは敵、味方問わず遭遇する事は無かった。
やがて鈴が時計を見ると放送まで約30分を切ったところであった。

「ふむぅ、理樹が死んだのを知った恭介や真人や謙吾が暴走しないか心配だ……」

ただ、リトルバスターズのメンバーはそれだけ絆が強く優しい。
そんな仲間が果たしてこれから理樹の死を知られてしまうのが怖かった鈴なのであった。

「ちょっと鈴、参加者だ」
と、休ませていた鈴の変わりに見張りをしていたアウレオルスが手招きをする。
鈴がこちらへ向かいながらの時アウレオルスは鈴に「背の高い男だ」と特徴を言ってきた。
鈴の頭に思い浮かんだのは真人と謙吾、そしてアウレオルスであった。
アウレオルスが見張りをしているからアウレオルスは絶対に該当するはずがないのだが。

「あ……、やっぱり」

侍の様な袴姿。
立てられた頭の髪の毛。
背の高い。

鈴の幼なじみの誰よりもリトルバスターズを大事にしている宮沢謙吾であった。
毎日会っていた青年の姿が懐かしく見えた。

「あいつはリトルバスターズで私の幼なじみの謙吾だ」

鈴の顔に喜びの顔が浮かぶ。
理樹は死んでしまったが、まだリトルバスターズは全滅したわけじゃない事がわかったのだから。



◇□◇□◇□◇



「オーイ、謙吾〜。私だ私」

手を振りながら、バトルロワイアルなんて出来事を数瞬だけ忘れて駆け寄った。
アウレオルスは鈴より少し後ろを歩いているのであった。
その声に謙吾はビクッと反応をするが、声は聞き覚えがある過ぎる声と同じな事に気付いた。

521たとえバラバラになろうとも ◆WzpMn05TJA:2012/03/06(火) 15:07:13 ID:gsqA.ODIO
(ま、まさか鈴か……?)

嬉しそうな鈴。
複雑な謙吾。
傍観のアウレオルス。
皆が違うポジションへと当てられていた。

「私、私と言われてもわからん。わたしわたし詐欺かもしれない」
「何言ってんだ謙吾?」

やはり鈴本人であった。
本来は恭介、真人、そして自分で守るべき相手であった理樹と鈴。
いくらリトルバスターズを終わらせない為とはいえやはり親友を撃つのは躊躇われた。

「鈴か。その後ろの男は仲間か?」
「あぁ、そうだあうれおるすだ」
「アウレオルス=イザードだ」

オールバックの外国人はそう言って自己紹介をする。
アウレオルスの事は信頼出来る様な相手かはわからないが、鈴が他人と一緒に行動出来ている事に驚いた。

「ふむ、恭介の友達に似た声の奴が居たな」
「な、言っただろあうれおるす」
「…………」

冗談を言って少しバカを言ったが心中穏やかでは無かった。

(人見知りでクラスの女子とすら話せなかった鈴が成長している。……やはり無意識とはいえあの世界での鈴の成長は現実の鈴の成長にも繋がっていたか……)

やはり自分は鬼にはなれないのか?
どうする?
殺すか、鈴やアウレオルスと行動を共にするのか。
謙吾は悩まされると鈴がいきなり真面目な声になり謙吾の名を呼んだ。

「ど、どうした鈴」

「聞いてくれ謙吾……」

鈴は親友の理樹の死を謙吾に伝えた。
恭介が弟の様に可愛がり、真人が寮のルームメイトと親友として仲が良く、自分は理樹から親友として頼られる。
そんな仲間が失った事が語られた。

「…………」

ショックであった。
自分が殺そうとした相手でもあるのだが、胸が痛む。
だが、自分はどうだ?
相手が理樹では無かっただけで結局は人を殺した。
その報いであると考えた。
でも、恭介なら世界をリセット出来る。
理樹が居ない世界でも、バトルロワイアルに参加させられない世界を創造出来るのだ。

「そうか鈴……。理樹の事は残念だ。俺は理樹を殺した奴が憎いっ!
――が、やはり俺はお前を殺さなくてはならない」
「……え?」

意味がわからない。
何故謙吾の口から殺すという単語が出るのか。

S&W M19を懐から取り出す謙吾。
その行動の意味がわからない。

「鈴っ!?伏せろ!」

『黄金錬成』。
自分の錬金術師としての能力として世界を歪めて、自分の思った通りの出来事を現実化させる。
そして、鈴を強制的に伏せさせたお陰で弾はスレスレに鈴の茶色の髪を5本ほど千切られたぐらいの程度で済んだのであった。

522たとえバラバラになろうとも ◆WzpMn05TJA:2012/03/06(火) 15:07:46 ID:gsqA.ODIO
「お前はわからないかもしれない。
が、理樹が死んだのならやはり恭介の力が必要だ。
だから鈴、俺は恭介の為に銃を持ち続けるっ!」
「ば、バカなのかお前!?恭介に何かをする力なんてないっ!それともお前はやっぱりあっち系なのかっ!?」
「違うわっ!……だが、鈴は知らないし知る必要もないが恭介には出来るのだ」

銃をまた鈴に向ける。
次は反応出来ないぐらいの速さと角度を狙って。

「それに俺は既に人を殺した身だっ!」

告白。
同時に謙吾は引き金を――引く。





















◇□◇□◇□◇



「なんだこれはっ!?」

倒されていて立ち上がれない。
しかも銃は地面を抉っただけであった。

つまり銃を向けた鈴にも、アウレオルスにも命中はしなかったという事である。

だがわからない。
何故俺がこんな無様に這い蹲り、立ち上がれないのか。

俺は思いだす。
引き金を引いた瞬間に何かの声が聞こえた事を。
なんであったか。
確かバカみたいな内容の声だったはずだ。

鈴の声にしては低すぎる。
つまりアウレオルスの声だったはず。

内容は確か――「倒れ伏せ、宮沢謙吾」と。

従うはずのない命令。
だが体が素直にその命令に従い、あろう事か立ち上がれない。
つまり、これはアウレオルスの能力かなにかであろう事は察しが付く。

「何をしたアウレオルス!?」
「当然、宮沢謙吾の体を伏せさせただけだ。私の錬金術師としての力を使わせてもらったよ」

錬金術師。
普段なら笑い飛ばす単語。
だが俺には既に世界に常識はない。
バトルロワイアルに巻き込まれる前から、恭介の力で1学期を繰り返せる事を知った時から俺はなんでも受け止まられる性格になっていたからだ。

「当然、普段なら私はお前を殺したであろう。
射殺や窒息死、圧死。
だが、鈴の親友という事だ見逃してはやるつもりだ」
「あ、ありがとうあうれおるす」

鈴はほっとしていた。
俺に殺されかけていながらさっきからこいつは俺の心配をしていた。

(あぁ、だからこいつらは俺の最高の親友なんだ……)

523たとえバラバラになろうとも ◆WzpMn05TJA:2012/03/06(火) 15:08:20 ID:gsqA.ODIO
鈴を殺そうとした自分が恥ずかしい。
こんな自分を気遣ってくれる子を自分で手にかけようとしたのだから……。

「おい、謙吾っ!」

鈴は倒れた俺の目線まで近付いた。

パチンっ!!

頬を強く叩かれる。
普段から剣道で鍛えた体。
痛くはない。
だが、この頬の痛みはジンジンと痛み、浸食する様な痛みであった。

「やっぱりお前はバカだっ!
人の命は戻らないものなんだぞ謙吾!」

頭に思い浮かぶは直江理樹と古式みゆきと上条という殺した少年。
更に浮かぶのはバスで死にかける俺、恭介、真人、他のクラスメート。

(嗚呼、誰よりも俺は命の重さを知っていたのではないか……。)

それでも、俺はやはりリトルバスターズは捨てられない。

恭介からバカな命令をされ、
真人のバカに付き合い、
理樹に突っ込みを入れられて、
鈴からはバカにされ、
来ヶ谷からは色々と不思議な目に合わされ、
小毬からお菓子をもらい、
三枝のはしゃいだテンションを聞いて、
能美の間違った英語を聞いて、
西園の独特な雰囲気に入り込み、
その中に謙吾(俺)が混ざって野球をする。
大好きな俺達の居場所。
こんなバトルロワイアルで消すわけにはいかないのだ!

「おい謙吾、お前が殺したというのは誰だか名前はわかるか?」
「上条とかいう奴だ」

上条、その名字にアウレオルスが反応をして、鈴はアウレオルスを向いていた。
どうやらアウレオルスは上条の関係者かなにからしい。

そんな事を想像していると鈴が俺に見せる様にアウレオルスを促しながら目の前に自分が座り、アウレオルスも座らせたのであった。
それから鈴の話が始まった。

「良いか謙吾、あうれおるすは元の世界でかみじょーという奴と戦ったんだ。インなんとかを救う為に。
そのお前を今苦しませている様な力を持ってな
だが、かみじょーはインなんとかを助けていたらしく、あうれおるすはそれに自暴自棄になり一方的に攻撃を仕掛けたんだ」

さっきからアウレオルスはインなんとかをインデックスと訂正していたが鈴は毎度の通り直す気が0であった。

「悪い事をしたんだ。
だからあうれおるすに私は謝らせる為にかみじょーを探しているんだ」
「……ふっ」

鈴らしいな。
鈴はどこまで行っても鈴で、自分をそのままに保てるこいつは強いと思った。

「レンタルビデオ店だ。……そこで上条は死んでいるはずだ」
「そうか、レンタルビデオ店だな。…………そんなのあったか?」
「鈴はちゃんと地図を見なさい」

524たとえバラバラになろうとも ◆WzpMn05TJA:2012/03/06(火) 15:09:06 ID:gsqA.ODIO
アウレオルスは地図を渡しながらここがレンタルビデオ店であると指差していた。

「よし、私はこのゲームに乗るつもりはない謙吾
だからお前もいつでもゲームに乗らない事になるまで待つからな」

鈴はゆっくりと目を閉じながら立ち上がった。
レンタルビデオを目指そうとするのであろう。
アウレオルスも続いて立ち上がった。

「謙吾も……あうれおるすみたいに罪に意識を感じたらかみじょーに謝れよ」

幼なじみはそれだけ言って俺から離れた。
アウレオルスは鈴ほど冷たくなく、優しくもない。

一言。
「必然、私の『黄金錬成』の能力は5分くらいで自然に治るであろう。
好きに行動しておけよ宮沢謙吾」

「…………」

目を閉じて、思い浮かぶのは……。
嗚呼、ごめんな上条。
嗚呼、ごめんな鈴。
嗚呼、ごめんな理樹。

「でも俺は立ち止まるわけにはいけないんだ……」



【G-4 街/早朝】

【宮沢謙吾@リトルバスターズ!】
【装備:S&W M19(5/6)@現実】
【所持品:支給品一式、S&W M19予備弾薬(12/18)、ランダム支給品×2、上条当麻のデイパック】
【状態:健康、倒れ伏せている】
【思考・行動】
1:恭介を優勝させる為に殺し合いに乗る。
2:理樹、鈴、恭介、真人、来ヶ谷……。
3:少年を生かして参加者を減らしてもらう。
【備考】
※Refrain開始直後からの参加です
※涼宮ハルヒの外見を記憶しました。
※上条当麻のデイパックの中身は後の書き手さんに任せます



◇□◇□◇□◇

「良かったのかい鈴?」
「…………」

鈴は無言でアウレオルスより数メートル前を歩いている。
声をかけるアウレオルスの声は聞こえているであろう。
しかし、反応は見せない。

「ふぅ……」

アウレオルスはため息を洩らす。
そういえば彼女は自分と同じくらいの年齢のはずだ。
強がりである事を悟る。

「鈴、……悲しいんだろ?何故、我慢するんだ?」
「…………なぃ」

立ち止まって、小さい声。
下敷き一枚でも隔たれただけでも遮られて無音になりそうな声で。

「悲しく……ない……」
「当然、なんで涙声なんだい?」

鈴は振り返った。
涙が頬を通過し、重力に従い地面を濡らす。

525たとえバラバラになろうとも ◆WzpMn05TJA:2012/03/06(火) 15:09:29 ID:gsqA.ODIO
「謙吾は誰よりも優しかったんだっ!!それが……、なのに……殺し合いを決意させる主催者を怒りたいっ!なぁ、間違ってないよなあうれおるす!?答えてくれ……理樹」

バラバラになったリトルバスターズ。
最低でも理樹だけはもうどうしようもない。
小さな体に受けた心の傷は既にオーバーヒートしていた。

「わかるかあうれおるす!?
1つでもピースを無くしたパズルは絵を完成させられない。
1つでも足りない土台はピラミッドを崩壊させる。
1人でも欠けたリトルバスターズはもう戻らない。
…………そうだろ?」
「……当然。ピースの無くしたパズルはただのバラバラな絵、崩れたピラミッドはただの砂の塊。
……だがリトルバスターズはリトルバスターズじゃないのかな鈴?
戻らないならば、鈴達がいつまでも直江理樹を忘れなければ……リトルバスターズは終わらない……と私はそう思うがね」
「……あうれおるす」

そうだ。
リトルバスターズは全滅してしまっても、人々の記憶にリトルバスターズを刻み込んでいけばそれは私達が生きた証になる。

みんながリトルバスターズを忘れなければリトルバスターズはいつまでも在り続ける。

「そうだな、あうれおるす。
主催者を止めて、謙吾を元に戻してやろう!
そして巻き込まれた参加者にリトルバスターズは強い救世主、みんなのヒーローとして戦っていくんだ!」
「そうだね鈴。既に私にとってリトルバスターズは……、鈴はヒーローなんだから自信を持つべきだ」
「そうだ!
よし、ではかみじょーの元へ」

罪を犯したら謝る。
そういう事が出来るのもリトルバスターズなんだから。

さぁ、ゲームなんか終わらせよう。
みんなのヒーローのリトルバスターズが頑張るから……。



【棗鈴@リトルバスターズ!】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:健康、強い決意】
【思考・行動】
1:理樹の強さを受け継いで、生きていく
2:ゲームを終わらせる為、私達リトルバスターズが主催者を謝らせる
3:あうれおるすにかみじょーを謝らせる
【備考】
※Refrain、虚構世界脱出直前からの参加です


【アウレオルス=イザード@とある魔術の禁書目録】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:疲労(小)、黄金錬成使用残り3回】
【思考・行動】
1:鈴と共にバトルロワイアルを駆逐する。
2:バーサーカーから逃げる。
【備考】
※上条当麻に敗れた直後からの参加です
※『黄金錬成』について
・5回の使用につき三時間のインターバルが発生する。
・思うだけでの使用は出来ず口にする必要がある。
・規模、威力が大幅に制限されている。
・生み出した物は数分で消滅する。
・相手の攻撃の軌道を逸らすことは出来ない。

526 ◆WzpMn05TJA:2012/03/06(火) 15:12:45 ID:gsqA.ODIO
投下終了です

ヘタレ錬金術師がまさかキレイな錬金術師になろうとは…


予約
手塚義光、高山浩太、羽川翼、忍野忍、日向秀樹

527名無しさん:2012/03/08(木) 08:51:54 ID:9YfYMqTk0
予約します

グリムジョー・ジャガージャック、神尾観鈴

528 ◆vQfaAFC7Cg:2012/03/08(木) 08:53:35 ID:9YfYMqTk0
鳥忘れでした

グリムジョー・ジャガージャック、神尾観鈴を予約します

529錯乱、・・・ ◆vQfaAFC7Cg:2012/03/10(土) 11:20:18 ID:hFbsgXi20
逃げて。
  逃げないと。
ここからどこか遠くへ。


隠れて。
  隠れないと。
こことは違う別の場所へ。



「ここなら誰も来ないかな……」

自分は絶対にしないと思っていた。
人殺しなんてしたくないし、するわけがないと思っていた。

佐祐理さん。
ごめんなさい。
謝っても謝っても……許されない事はわかっています。

佐祐理さんの親友の祐一さんや舞さん、別の参加者に殺されても文句は言えないです。


泣く資格はありません。
怒る資格はありません。
言い訳をする資格はありません。

佐祐理さんを大事に思っていた人に殺される資格しかありません。


それでも、、、私は嫌です。
醜い思考ですが、私は死にたくないです。

「ここは……、ゲームセンター?」

目に入った大きな建物に入ってみるとそこにはUFOキャッチャーや見た事のある太鼓のゲームが置かれてありました。
両替機や自動販売機といったものもそこにはありました。


「佐祐理さんのデイパックまで盗んできちゃったな……、観鈴ちん悪い子……」

往人さんに怒られちゃうな。
往人さんは優しいからゲームに乗っているはずがないのに……。

「でも、ゲームに乗っている人が私に襲いかかってきたら……」

私は友達が出来なく、友達と遊んでゲームをしたいなと往人さんが来るまでずっと思っていました。
でも、こんなバトルロワイアルなんてゲームで遊びたいとは思いません。

「どうしてこんな事になったのかな……」


▲▼▲▼▲▼



「クソッ、邪魔ばっかりしやがってよクソがっ!」

セイバーとの戦いを邪魔しやがってよ!!
誰か強者は居ないのかよっ!

クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!
クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!
クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!クソッ!

「ささっと誰かかかって来いよ!カス共がっ!」

強い奴だ。
黒崎一護か!?
セイバーか!?
ウルキオラか!?

「主催者のじじい共も強い奴だけ集めれば良いのによぉ」

暴れ足りねぇ!!
破壊を司る王だぞ俺は!
誰にも負けるわけがねぇんだからよ!



▲▼▲▼▲▼



グリムジョーは怒りを発散させる為、周りにある物を壊し始めた。
電灯、ポール、標識。
強い奴をおびき寄せる為。
『止めろ!』と自分を制止させる様な強い奴。

だが周りに参加者は居ない。
グリムジョーは1回舌打ちをしながら風の様に駆ける。

530錯乱、・・・ ◆vQfaAFC7Cg:2012/03/10(土) 11:22:15 ID:hFbsgXi20
「ん?」

3分ほど駆けた時であった。
彼の目を引く少し大きな建物を見つけた。

それなりの大きさの建物。
ポスターがベタベタ貼られてあり、少々店から洩れるBGM。
看板には『ゲームセンター』の現代風の文字。

「こういうところの方が誰か居るのかもな」

ゲームに引かれたわけではない。
ただ強い者を求めての侵入であった。

「誰か居ないのかっ!?強い奴は居ないのかっ!」

入り口の自動ドアを蹴り1つで360゚にガラスが飛び散る。
そのガラスから突撃な登場をグリムジョーは演出する。

「ひぃっ!?」
「ぁん?」

格闘ゲーム機近くの陰から臆病な女の子の声がした。

           カス
グリムジョーにとっては虫の価値しかない人間であった。

怯える目。
自分が生きている事すら萎えてくる様であった。





観鈴はグリムジョーを見た瞬間、気持ちがわからなくなった。

逃げたいの?
隠れたいの?
助けを呼びたいの?
戦いたいの?
このままやり過ごしたいの?

「あ゛あ゛ぁぁあぁああああ゛あ゛ぁぁぁ゛あ」

錯乱。
ストレスが爆発いや噴火した勢いで観鈴は狂った。

怖い!
目の前の男が!
目の前の化け物が!

「ぁ?」

グリムジョーの目に映るのは突進してくる少女。
小さく、弱い体での体当たり。

「相手になるわけがねぇ」

グリムジョーは相手をする気は無かったが、敵意を向ける喧嘩なら買う事を決めていた。



「あ














あああああああああああああぁぁぁぁ」



奇声を発する少女。
覚めた目で見る破面。

531錯乱、・・・ ◆vQfaAFC7Cg:2012/03/10(土) 11:22:40 ID:hFbsgXi20



▲▼▲▼▲▼



「はっ」

どちらが発した声なのかはわからない。
グリムジョーが腹目掛けて蹴り、観鈴のお腹にはその足がめり込んでいた。

「…………」

観鈴はスローモーションになるわけでもなく、ただバタリと倒れた。
よくわからないまま観鈴の記憶はそれからプツリと切れた。

「なんだよ……、弱いクセに襲いかかってきやがってよ」

死んでいても生きていても構わない。
これ以上追撃するつもりは毛頭ない。

ゲームセンターに倒れた少女1人を残して、静さだけが残った。



【B-1 ゲームセンター/黎明】

【グリムジョー・ジャガージャック@BLEACH】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:セイバー、黒崎一護と決着をつける。
2:強者と戦う。
3:ザコ(一般人)には興味自体無い。
【備考】
※片手が無い時期からの参戦です。
※虚閃(セロ)は半日に一発と言う制限です。
※虚弾(バラ)は五発撃って半日回復制限。一般人を大怪我させるくらいの威力で無傷の一般人相手には、最低三発喰らわせないと死には至らないくらい威力制限されています。



【神尾観鈴@AIR】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 トカレフTT-33 0/8@現実 トカレフの弾丸24/24 ランダム支給品×4】
【状態:気絶】
【思考・行動】
1:???
【備考】
※観鈴ルート確定寸前からの参戦。
※無意識に佐祐理のデイパックを取りました。

532 ◆vQfaAFC7Cg:2012/03/10(土) 11:24:23 ID:hFbsgXi20
投下終了です

アサシンを予約します

533繰り返し ◆WzpMn05TJA:2012/03/12(月) 15:30:16 ID:NmM01hnQO
「お主はなんだか悔しそうに見えるのぅ」

忍ちゃんが横目で私を見ていた。
その目は見透かした様な目。
とても見た目の8歳くらいの目ではなく、私の人生の何倍も生きていた様な鋭い目にも見える。
そこに重なるのは1人の吸血鬼の姿。

キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード。
私の住む街に現れた透き通る様な白い肌、誰もが目を惹く金髪と金眼の最強の吸血鬼。
私の親友の阿良々木君が吸血鬼になった原因で、私もその事件に巻き込まれた、――いや違うか。
巻きこまれに自ら足を踏み入れた春休みの事件であった。
吸血鬼ハンターのエピソード君に殺されそうになった事もあった。

「それは……、ただ見てるだけなんだもん……」

人助けをしたいわけではない。
ましてこのバトルロワイアルだ。
利用されかねない事であるのは承知である。
でも、あの様な人に好きにさせられているのをただ黙って見ているだけなのはとても悔しいのであった。
だが、もし阿良々木君なら自ら危険に飛び込むだろう。
赤の他人に近かった戦場ヶ原さんを含め、八九寺ちゃん、神原さん、千石ちゃんも助け出した。
忍野さんも協力したけど彼は「自分は助けない。君が勝手に助かっただけ」と突き放すのであろう。

「カカッ、ドーナツの恩もあるのぅ。よし、お主に力を貸そうではないか」
「え?」
「なぁに、ワシは吸血鬼じゃ。ただの人間には負けんわい」

にやぁと彼女は笑った。
いや、それより今彼女は吸血鬼と言った。
やっぱり阿良々木君の出していた吸血鬼の名前って……。



  ・◆・◆・◆・



「ちっ、ささっと目が覚めろよおっさん」

高山のおっさんの倒れた体を見てつまらなくて呟いていた。
既に30分近く目が覚めない。
わけもわからない変な注射をしたのだ。
当たり前ではあるのだが。

「つまらねぇ……」

おっさんが倒れて3本目のタバコに火を付ける。
やはりこのまま利用するだけ利用して足手まといならぶっ殺した方が良かったかもしれねぇな。

「なんでもかんでも上手く行き過ぎたら痛い目を見やすいものなのだからむしろこれぐらいの運で今は待機していた方が良いのかもな」

しかし最高だなここは。
遊ぶだけ遊んで金をくれるとは気前が良すぎだろシャルルの親父。

「ククク、クク……」

可笑しくて笑ってしまうね。
もう笑ったあとなんだけどな。

「クククククク……ん?」

と、そこで俺の目の前に金髪・金眼の幼女が見えた。
作られた様な美しさとはまさにこの様な女の子だろうか。
おそらく日本人ではないな。
参加者が捲かれているキラリと光る銀色の首輪が彼女に似合い過ぎた。

「どうしたんだい嬢ちゃん?」

タバコを地面に落とし、踏みつけて弱い火を消す。
子供と話す時のマナーに近いのかもしれない。

534繰り返し ◆WzpMn05TJA:2012/03/12(月) 15:31:24 ID:NmM01hnQO
「カカッ、貴様に嬢ちゃん呼ばわりされる覚えはないわい小僧」
「オイオイ、小僧って……。明らかに目上の者に対する言葉遣いがなっていないじゃないか?
それとも俺が体で教えてやろうか?」
「ふん、ワシは500年を生きた吸血鬼じゃぞ。口がなってないのはお前様の方じゃろが!」
「ほぅ、吸血鬼ねぇ」

吸血鬼。
血を吸って生きる不死身の鬼。
でも確かに尖った歯や金髪を見る限りその容姿で吸血鬼と言われたら信じても良い。
男はつまらない世を生きるんだ。
夢が欲しいよな、やっぱりさ。

「その吸血鬼が何用だい?」
「その男を離してやってはくれんかのぉ?」
「何故?このおっさんは吸血鬼と知り合いなのか」
「いや、ワシもそんな小僧は知らん
が、ワシの目の前でその様な事をされると不愉快なのじゃ」

殺意に似た視線。
こんな幼女に怖じ気付くわけではないが確かに人間の出す殺意にしては重い。

「この男は俺の奴隷なのさ嬢ちゃん」
「今その男を逃がせばワシはお前を見逃してやる
……が、ワシは吸血鬼じゃ!
人間を食べてしまう事なんてあり得るぞ?」
「けっ!」

俺が高山のおっさんから離れる。
それを吸血鬼がおっさんの元まで歩き、担ぐ。
軽々、とまでは行かなくても普通の人間の様な力はあるらしい。

「…………」

あんまり女の子で将来有望なガキだか吸血鬼は知らんが殺したくはないのだがうざったらしいな。

「死ねっ!」

パン、パン。
吸血鬼に向かってブラックホールを二発発砲する。
目で追えないくらい素早い弾丸は嬢ちゃんの背中を狙う。











「そんなオモチャでワシは殺せんよ」
「な……?滅茶苦茶だなあの吸血鬼……」

吸血鬼は高山のおっさんの体を担いだまま5メートルぐらい高く跳んだ。
地面が抉られている。
純粋な力だなこれは。

「ちっ、しゃーねー。高山のおっさんはくれてやるよ
人間として活動出来るかどうかは保証出来ないけどな
だが、そいつは俺と出会う前は普通に俺を殺そうとした乗った人間だぜ!
扱いには気をつけな」

優しい俺からの忠告。
奴隷は失ったが手に入れたのは支給品一式、銃、炎の出る指輪、完全に違法な注射器。
大収穫じゃねーか。

「出来れば次は嬢ちゃんとは出会いたくはないもんだよ」
「ならワシはまた絶対貴様の邪魔をしてやるぞ」

吸血鬼は追っては来なかった。
強い上に幼女だから手を出しにくい。
相手が悪すぎるな。
でも吸血鬼なんて興味があるなぁ。

「ククク、世の中は不思議だらけだよ」

未知なる力。
吸血鬼。
次はネッシーとか現れたら笑いもんなんだけどな。

535繰り返し ◆WzpMn05TJA:2012/03/12(月) 15:32:43 ID:NmM01hnQO



  ・◆・◆・◆・



「ふむぅ、助けてきたぞ小娘」

忍ちゃんが気絶している男の人を担ぎながら一仕事終えた達成感が見える表情で私の目の前に男を寝かせた。
デイパックの中身はやはりあの金髪の男に奪われていたが、空のデイパックのみは残されていた。

とりあえず寝かせておかないとと思い、布団をおじさんにかけてあげる。
そこで忍ちゃんが金髪の人と交わした会話の話をここで話してくれた。
内容はこのおじさんがゲームに乗った人という事であった。

「それでも私は人を見捨てておけないから」

そう答えると忍ちゃんは私を「お人好し」と称した。
忍野さんや阿良々木君に比べれば私なんてお人好しに入るのかな?

「ところで忍ちゃんってもしかして阿良々木君のところの吸血鬼じゃないのかな?」
「ん?阿良々木?あぁ、なんじゃお主はやはり主様のお気に入りの委員長か」

『メガネに戻っていて髪が伸びていて気付かなかったわ』と謎の言葉を私に残した。
コンタクトレンズにしたつもりも髪を切った事もないのだけれど……。
でも1つ驚いた事がある。
私はこれからメガネをはずし、コンタクトにして髪をばっさりと切る予定をしていた。
しかも私の知る忍ちゃんはもっと無口なはず。
未来、もしくはパラレルワールドの忍ちゃんなのかな?
確かにそういった事は絶対に起こらないわけがないし、そういった怪異も存在するかもしれない。
そういえばシャルル・ジ・ブリタニアさんとルルーシュさんがそういった世界観のズレの言い合いをしていたのを思い出す。

そう考えると恐ろしくなるのは知り合い達だ。
阿良々木君達が私を知っている時系列の人達かということだ。
未来の阿良々木君だとしたらどんな阿良々木君なのだろう?
それは良いとして、もし春休み以前の阿良々木君だとしたら私の事は優等生だと皮肉に語る男の子となる。
……もし、友達だと思われていなかったとしたら……。



ソレハ、
  コ ワ イ ナ 。


「猫が再発する気配がするな……」

忍ちゃんが小さく聞こえない声で何かを呟いた。
口の動きから見ると『猫』という単語が出た気がした。



【F-1 橋付近民家内/早朝】

【羽川翼@物語シリーズ】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、けろぴー@Kanon、ランダム支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:殺し合いには乗らない。
2:おじさんが起きるのを待つ。
3:阿良々木君に会いたいけど……。
【備考】
※「つばさキャット」終了後からの参戦です。
※ストレスが溜まれば、ブラック羽川が出現する可能性もあります。
※帽子の男(手塚)を危険視しています。
※知り合い達の参戦時期に不安を抱いています

536繰り返し ◆WzpMn05TJA:2012/03/12(月) 15:34:00 ID:NmM01hnQO


【忍野忍@物語シリーズ】
【装備:スペツナヅナイフ@現実】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:やや血液不足】
【思考・行動】
1:殺し合いなど詰まらん。
2:暦を探して血を吸わせて貰う。
3:儂を襲おうと言うのならば、覚悟をしておけ。
4:小娘と行動する。
【備考】
※少なくとも「かれんビー」終了後からの参戦です。(明確な参戦時期は後の書き手さんに任せます)
※暦から吸血すれば、外見、能力などが戻る可能性があります。制限は後の書き手さんにお任せします。


【高山浩太@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:なし】
【所持品:空のデイパック】
【状態:気絶】
【思考・行動】
1:???
【備考】
※本編開始前からの参戦です。
※リフレインを摂取しました。今後は過剰にリフレインを求めるようになるかも知れません。
 あるいは、精神力により中毒を克服するかも知れません。詳細は後の書き手さんにお任せします。






「なかなか殺しがいのありそうな嬢ちゃんじゃないか!」

俺はわくわくした衝動を笑いながら橋から離れた。
さて、高山さんの変わりの奴隷を見つけないとなぁ。

「体力の有り余っていそうな学生なんか欲しいなぁ」

見つけた参加者の男の背中に蹴りつける。
コソコソと俺を遠まわしに見つけてからすぐに逃げて隠れていた男だ。
頭はバカそうだが、体力だけはありそうな普通の少年だ。

「ち、ちくしょー!やっぱりお前はゲームに乗った奴だったのかよ!?」
「遠くから見ただけのおじさんをゲームに乗った奴なんて言わないでくれよ少年〜。
俺はただバトルロワイアルに巻き込まれた普通の会社員さ」

さて、この少年をどうしようかね?



【F-1 川付近/早朝】

【手塚義光@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:舞の剣@Kanon、ブラックホール12/15@ペルソナ4】
【所持品:支給品一式×2、タバコ10箱@現実、ライター3本@現実、リフレイン×9@コードギアス 反逆のルルーシュ、ブラックホールの弾丸30/30、嵐のボンゴレリング@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【状態:健康、気分高揚】
【思考・行動】
1:優勝する為、全参加者を殺害する。
2:この少年を?
3:吸血鬼の嬢ちゃんに興味。
【備考】
※本編開始前からの参戦です。


【日向秀樹@Angel Beats!】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 チーズ君のぬいぐるみ@コードギアス 反逆のルルーシュ 新聞紙ブレード@リトルバスターズ!】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:クソッ!?どうする俺!?
2:バトルロワイアルって本当だったのかよ!?
【備考】
※奏と和解後からの参戦。
※セイバーを危険視。

537 ◆WzpMn05TJA:2012/03/12(月) 15:36:43 ID:NmM01hnQO
投下終了

予約
前原圭一、朝比奈みくる、鳴上悠、御坂美琴、ウルキオラ・シファー、桜井智樹、音無結弦

538 ◆RmIe4rjRnw:2012/03/15(木) 23:28:43 ID:wMlO/m6E0
お久しぶりです
椎名、御剣総一、黒神めだか、桂ヒナギク、北条かりん、イカロス
で予約します

539セッキン ◆vQfaAFC7Cg:2012/03/16(金) 10:37:21 ID:RftlhUWg0
イレギュラーな存在である剣士のサーヴァントであるアサシンの気持ちは高揚していた。

本来は山門を仮の依り代にしている為、アサシンは移動する事に制限がかけられている。
ただ、侵入者を殺す為だけにキャスターに召喚された存在であるのだから。
強者と戦いたい血を持つアサシンには退屈な日々であったがそれも解放させられた。

「相沢祐一は再戦相手、セイバーとも再戦相手と……
なら私は誰と戦おうか」

一応サーヴァントは全員揃っている。
自分とわざと引き分けを狙いに戦いを挑んできた赤い槍遣いの青い騎士ランサー。
キャスターが最も警戒をする最強の英雄のヘラクレスが正体のバーサーカー。
違反行為を起こし、自分を召喚させたアサシンにとっての『女狐』のキャスター。

他アサシンの知らぬサーヴァントにライダーとアーチャーのサーヴァント。
そして謎のサーヴァントらしき名を持つ真アサシン。

この辺の相手はアサシンとて納得の出来る対戦を出来る強者であろう。

「ただここの参加者は皆が強いわけではないらしい」

浮かぶのは相沢祐一が逃がした音無という少年。
名簿の音無結弦という名であろう。

あやつは完全な一般人であった。
いや、相沢祐一も一般人であろう。
ただ手に持つ宝具はサーヴァントのそれであろう。

「この刀とて宝具に近い刀の様だがこれは宝具ではないな
刀というよりとても生き物に近いな……」

アサシンは本能的に手に握る斬魄刀である千本桜がただの武器ではなく、宝具でもない事に直感的に感じ取った。

普通であるなら人間に宝具なんか扱えるのか?
宝具と持ち主が離れる事などあるのか?

「私が召喚された世界とは随分違うおかしな島だな」

アサシンの脳内に1つの考察に至った。

この島のバトルロワイアルは聖杯戦争で人間も混ぜたものなのではないかと。

1人1人に能力や宝具を用いる人間が集められている殺し合いになるのではないかと。

相沢祐一にはあの木刀が、

音無結弦にはあの銃が、
アサシン
自分にはこの刀が。

宝具無き者に宝具を与えて殺し合うのではないかと。

「つまりこの刀は宝具からは遠い宝具という事か
どんな者でも扱える簡略的な宝具という事であると」

540セッキン ◆vQfaAFC7Cg:2012/03/16(金) 10:37:39 ID:RftlhUWg0
それを主催者が望み、その為に自らが喚ばれたのだとしたら。

「なら、私はこの刀と共に行く先を見つけよう」

それが摂理であるのなら。

適わなかった聖杯戦争での自らの満足の行く戦いを行おう。

  ・・・・・・
この佐々木小次郎が。



【D-5 森/早朝】

【アサシン@Fate/stay night】
【装備:千本桜@BLEACH】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:披露(小)、健康】
【思考・行動】
1:強い者の為に刀を振るう。
2:相沢祐一といずれ決着を付ける。
3:相沢祐一の手がかりを元に強い者と戦う。
4:自分の行く先を見つける。
【備考】
※セイバールートのセイバー戦以後からの参戦。
※一応燕返しは出来ますが物干し竿がないと本来の力は使えません。
※このバトルロワイアルを特集な聖杯戦争だと思っております。

541 ◆vQfaAFC7Cg:2012/03/16(金) 10:39:24 ID:RftlhUWg0
投下終了です

元ネタはアニメ「アマガミSS」2話『セッキン』より

六道骸、真アサシンを予約します

542学園黙示録 ◆WzpMn05TJA:2012/03/16(金) 13:48:07 ID:xdX96GvoO
「朝比奈さん、良いですよ〜」

案外小さい言葉というものは届きやすいものであった。
少年が高校の目の前で小さくそう答えて同行者を手招きすると、ゆっくりと怯えながら少年に近付いた。

「無事に高校にたどり着きましたね」
「そうだな……、けど俺は未だにまだ誰も会えないと逆に不安になります」

前原圭一は自分達が動いているのではなく、動かされているのではないかと不安になっていた。
自分が朝比奈みくると出会って、支給品を確かめ、高校に足を運ぶまで。

「魅音がいきなり言いそうな事だな」
「ん?どうしたんですか?」
「いや、ただの独り言です」

圭一は高校に向き直し、震える右手を左手で抑えようとするが、一緒に左手を巻き込むだけであった。

「……行きましょう、朝比奈さん」

未だ参加者が足を踏み入れていない施設。
だが、この時間から高校を舞台にした誤解の物語が始まっていた。



―――……



「疲れていませんか朝比奈さん?」
「大丈夫ですよ前原さん」

そう言って笑うみくるであったが無理をした笑みなのが圭一にしみじみと伝わる。
大丈夫なわけがないのだ。
職員室のイスに座りながら圭一は悩む。

自分が人殺しをした記録のあるどこかの世界。
いつ殺されてしまうのか、無いものに怯えて大丈夫なわけがない。
それを誰よりもわかっていた。

「ごめん朝比奈さん」
「え?前原さんが謝ることなんかないじゃないですか」

実際に圭一は足手まといになるみくるに合わせて行動をしている。
本来なら走っていけるところも自分に合わせ歩いたり、武器になるレオンを譲ったり。
謝るのはむしろ自分だとみくるは年下を頼りにする自分が嫌であった。

「俺がもし強かったら……
朝比奈さんを護れるくらい強かったら……
俺が不安にさせてしまって本当にごめんなさい」

申し訳なさでいっぱいであった。
女の子を不安にさせる、それだけで男失格だと自分を責めた。

「謝らないでください前原さん、私が弱いんです
側に居るだけで私は嬉しいですよ
ありがとうね前原さん」

みくるは目の前の年下である少年の圭一にただの同行者、仲間とは別の感情の芽が浮かぼうとしていた。
もやもやとした感覚。
心の中が霧で覆われて、居場所がわからなくなる様なそんな感じ。
何故か嫌な気はしない。

「なぁ、君達もやっぱり参加者なのかい?」

圭一とみくる。
男の声に反応をし、その声がした位置は職員室の入り口。
そこに立っていたのは圭一より3つぐらいは年上ぐらいの頼りがいのある男が居た。

「いや、別に君達を殺そうとするわけじゃない。ただこのゲームを終わらせたいだけなんだ」

少し慌てながら男は圭一とみくるに話すが証拠がない。
圭一はみくるを護る様にみくるを自分の胸に抱いて庇おうとしていた。

「あれ?信じてもらえない。どうしよ?」
「まずは名前を名乗りなさいよあんた……」

と男の同行者の短髪で元気が良さそうな少女が現れ、それに続く様に人間に近いがよく正体がわからない男も現れた。

「そ、そっか。俺は鳴上悠」
「御坂美琴よ」
「ウルキオラ・シファーだ」

敵意はない。
圭一とみくるは安心のため息を洩らしながらイスにもたれかかった。



―――……

543学園黙示録 ◆WzpMn05TJA:2012/03/16(金) 13:49:20 ID:xdX96GvoO



「圭一達はまだ誰も会ってないと言ったが俺と御坂はゲームに乗った参加者と一度遭遇した」
「…………」

悠の話に怯えたのはみくるであった。
ゲームに乗った刀を所持した参加者が居る。
それだけで恐怖する。
当たり前の感情であった。
100人も参加者が居る。
1人、2人の参加者しかゲームに乗った参加者が居ないわけがない。
これから先の事は誰にもわからない。
自分の知り合いすら殺し合いに乗っているのかもしれないのだから。

まだ知るはずのない事だが既に圭一の親友のレナと詩音、みくるの親友の長門と古泉、悠の親友の雪子、ウルキオラの仲間のグリムジョーは既に人を襲っている事実があるのだから。



この圭一らの会話を隠れて見ている参加者が居た。

(この感じはゲームに乗っていないと見て良いのか?)

職員室の入り口から見える5人の人物。
銀色に光る首輪は参加者の証。
それを身に付ける者達が音無結弦に見えた。
相沢祐一から逃がしてもらった結弦はゲームに対抗する仲間を探していた。
祐一の敵、そんな気持ちも結弦にはあった。

(会話はよく聞こえないな……)

会話が聞こえない。
これでは敵意があるのかわからない。
結弦は銃を手に握り机の下に隠れながらコソコソと5人に近付く。
コソコソする事に関しては不本意ながら死んだ世界戦線ではしょっちゅうの事であり、慣れていた。

「――それで御坂がその女を追い払おうとして……」

隠れて5分くらいは盗み聞きをしただろうか。

5人の名前である前原圭一、朝比奈みくる、鳴上悠、御坂美琴、ウルキオラ。
その名前は聞き出せた。
そして殺し合いに乗る人物ではない。
そう判断し、結弦は名乗り出ようと机の下から出る。

――が、ここで思わぬミスが発生した。

ガンッ!!

……結弦が腰に掛けていたデイパックが机に当たり音が鳴り響いた。

「やばい……」

結弦は自分の犯したミスに冷や汗をかくと男の声が机の向こう側からしてきた。

「ちっ、参加者か」

ウルキオラが剣を構える。
問題の音の震源の机にウルキオラが斬りかかると結弦の姿が現れた。
それだけなら良かったかもしれない。
が、結弦は一応に握っていた銃が災いした。

「お前もゲームに乗った参加者か」
「え?」

悠がそう言うと圭一がエクスカリバーを、みくるがレオンの銃を、悠がペルソナを、美琴が電撃を、ウルキオラが剣を構えていた。

「な、なんだよこの殺人集団!?」

結弦の負けは決まっていた。
いや、戦ってすらいないし実はこの中にゲームに乗った者など皆無だ。

「容赦はしない」

ウルキオラが結弦に接近し剣を振るう。
結弦は反射的にそれを避けるが、スレスレで制服だけ切れてしまった。

544学園黙示録 ◆WzpMn05TJA:2012/03/16(金) 13:50:30 ID:xdX96GvoO
「くそっ、お前等も死んだ世界の住人なってまでゲームに乗るのかよ!?」
「っ!?」

ウルキオラが信じられない事を耳にし、動きが止まった。
死んだ世界、確かに今そう言った。

パン、パン。
結弦の放った銃声でウルキオラは目を冷ます。
剣で銃弾をはたき落とす。
人間には無理だが、この程度なら破面のウルキオラにとっては造作もない。

「逃げたか……」

職員室の入り口が開けっ放し。
結弦はそこから逃げ出したのであろう。

「死んだ世界……」

ウルキオラは結弦の言った言葉に疑問を持っていた。

―――……



「ぅ……、天城さんといいゲームに乗った参加者揃いじゃねーかよ」

桜井智樹は職員室に繋がる校長室から今の流れを見ていた。
ゲームに乗った参加者が5人揃って、1人のゲームに乗った参加者を襲う一方的な出来事。



もはや外道。



智樹は逃げた結弦を見届けた後、自分も危険な溜まり場であるこの高校から逃げ出そうとコソコソ走り逃げ出した。
智樹の側にはどこまでも水銀が付いて来るのであった。



―――……



誤解は誤解の悪循環を始め、そして……。


【E-7 高校/早朝】

【前原圭一@ひぐらしのなく頃に】
【装備:エクスカリバー@Fate/stay night】
【所持品:支給品一式、バイオリン@CLANNAD】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:朝比奈さんを守る。
2:仲間との合流。
3:島からの脱出か主催者の撃破。
4:悠達を信じる。
【備考】
※皆殺し編の沙都子救出後からの参戦です。



【朝比奈みくる@涼宮ハルヒの憂鬱】
【装備:レオン@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【所持品:支給品一式、黒神くじらの包帯@めだかボックス、圭ちゃん専用メイド服@ひぐらしのなく頃に、10年バズーカ3/3@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:前原さんや鳴上さんに着いて行く。
2:仲間と合流。
【備考】
※涼宮ハルヒの消失後からの参戦です。
※レオンは銃の状態です。



【御坂美琴@とある魔術の禁書目録】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:身体的疲労(小)】
【思考・行動】
1:殺し合いの打倒、ゲームをぶっ壊す
2:鳴上とウルキオラと行動
3:上条当麻、白井黒子を探す、一方通行を危険視
【備考】
※原作3巻終了後より参戦です
※制限により御坂妹達と同じ程度の威力しか出せません
※来ヶ谷唯湖の容姿のみを把握しました

545学園黙示録 ◆WzpMn05TJA:2012/03/16(金) 13:50:56 ID:xdX96GvoO
【鳴上悠@ペルソナ4】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:ペルソナ召喚による疲労(小)】
【思考・行動】
1:殺し合いを止めて、ゲームをぶっ壊す
2:御坂とウルキオラと行動
3:仲間との合流、足立はどうにかする
【備考】
※ゲーム版、足立戦後より参戦です
※ペルソナはイザナギ(初期)と言った低レベルの物しか出せません
※ペルソナの攻撃の威力は低下しています
※来ヶ谷唯湖の容姿のみを把握しました



【ウルキオラ・シファー@BLEACH】
【装備:朝風家の剣@ハヤテのごとく!】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:鳴上悠達の行き先を見る
2:4人に協力してゲームをぶっ壊す
3:死後の世界……?
【備考】
※死後からの参戦
※能力制限は次以降の書き手さんにお任せします



【音無結弦@Angel Beats!】
【装備:CZ75 12/15@現実】
【所持品:支給品一式 CZ75の弾丸30/30 ランダム支給品×2】
【状態:披露(中)、健康】
【思考・行動】
1:殺し合うつもりはなく、このゲームからの脱出を考えている。
2:今は逃げて仲間を探す。
3:相沢……無事でいてくれ。
【備考】
※ユイ消滅より少し前からの参戦。
※祐一を別世界の死後の世界の住人だと思っており、祐一の言う魔物を奏の様な人間だと思っております。
※水瀬名雪、川澄舞、倉田佐祐理、北川潤の名前を知りました。
※前原圭一、朝比奈みくる、御坂美琴、鳴上悠、ウルキオラ・シファーをマーダーと誤認しました。



【桜井智樹@そらのおとしもの】
【装備:月霊髄液@Fate/zero】
【所持品:なし】
【状態:疲労(中)、全身に火傷や裂傷、背中を打撲】
【思考・行動】
1:バトルロワイアルを打倒する。
2:高校から離れる。
【備考】
※カオス戦(一回目)からの参戦です。
※月霊髄液は智樹を主人とし、意に従うようになりました。
※前原圭一、朝比奈みくる、御坂美琴、鳴上悠、ウルキオラ・シファー、音無結弦が殺し合いに乗っていると誤認しています(上記の者の名前は不明)。

546 ◆WzpMn05TJA:2012/03/16(金) 13:59:17 ID:xdX96GvoO

投下終了です
元ネタはマンガ『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』より

棗恭介、伊吹風子、雲雀恭也を予約します



◆RmIe4rjRnw氏
椎名、御剣総一、黒神めだか、桂ヒナギク、北条かりん、イカロス

管理人
六道骸、真アサシン


ここまでの投下で生存キャラが2回以上投下されましたので1回目放送までの予約とさせていただきます

次回の予約からは放送終了後という事にさせていただきます


ここまで協力してくださった皆様ありがとうございました

547名無しさん:2012/03/19(月) 16:11:48 ID:CXvxbHYE0
余計なお世話かもしれないけど。
wikiのことで、あれって1ページ30KBくらいの容量だから、少し分割範囲広い気がする。
1ページに収まるやつは1ページに収めた方が見やすくなると思うよ。
勿論スルーしてくれても構いません

548 ◆vQfaAFC7Cg:2012/03/19(月) 16:23:26 ID:0phe.Ia60
>>547さん
これは自分も気付いてはいるのですが、自分のPCが古くて多く文字を打ったりする事が出来ない為こんな形になってしまっています

もう少ししたら新しいPCに買い替えるつもりですので、その時に一気に修正するつもりです


放送を機に少しずつ編集していくつもりです

549 ◆RmIe4rjRnw:2012/03/23(金) 07:31:09 ID:/RQj/h8k0
予約を延長させていただきます。

550 ◆vQfaAFC7Cg:2012/03/23(金) 19:26:21 ID:zB3thMy.0
今回は本当に迷惑をかけてしまいすいませんでした

投下作品の『仮面は微笑む。』は後にこっそりと収録させてもらいます

551 ◆WzpMn05TJA:2012/03/23(金) 21:37:06 ID:svQGdsGEO
予約延長します

552 ◆RmIe4rjRnw:2012/03/24(土) 16:46:06 ID:Z7lEUrYs0
遅れて申し訳ありませんでした。
予約していた分の話を投下します

553運命は、英語で言うとデスティニー ◆RmIe4rjRnw:2012/03/24(土) 16:50:26 ID:Z7lEUrYs0
と、決意と同時にサーベルが総一の頭を狙っていた。

「うわぁっ…!」

総一はそれを後ろに吹っ飛ぶようにして避け――実際は転んだだけだが――事なきを得た。
しかし脅威は終わっていない。
狂った椎名の標的は、未だ総一のままだ。
総一は起き上がって、椎名からの攻撃に備える。
椎名は、サーベルを大上段に構えて勢いよく振り下ろそうとしている。
そして、幸運の女神が微笑んだのか。
総一は今度の攻撃も避けることができた。

「…っくそ!」
それが分かるとすぐに体勢を整え、総一は椎名に背を向けて走り出す。
椎名も遅れはしたが、素早く総一の背中を追い始める。
森の中、2人だけの追いかけっこが始まった。



◇◇◇



森の中を横に並んで歩く影が2つ。
黒神めだかと、桂ヒナギク。
眉目秀麗、才色兼備、文武両道といった言葉が良く似合う、2人の見目麗しい女性がいた。
2人は殺し合いには乗らず、参加者を集めて主催者に対抗することを考えている。

「めだかさん、あれ!」
「…ふむ、参加者か」
そんな彼女たちは、森の中で走っている2人を発見した。
めだかは2人の名前を確認し、悠然と総一たちに近付いて行く。
常識人のヒナギクはそんなめだかを急かすのだった。



◇◇◇



森の中を縦に並び歩く影が2つ。
北条かりん、そしてイカロス。
ボーイッシュな少女と、おとなしげな少女の、似合わないとも言えるコンビ。
しかして2人は、この島においては主従関係を結んでいた。

「マスター。参加者です」
「…2人ね」

殺し合いに乗っている彼女たちは、獲物となる参加者を発見した。
かりんは慣れない手つきで手元の銃の残弾を確認して、男の元へと駆け寄ろうとする。
イカロスはあくまで従者として、かりんの後から歩いて行った。



◇◇◇

554運命は、英語で言うとデスティニー ◆RmIe4rjRnw:2012/03/24(土) 16:55:16 ID:Z7lEUrYs0



俺は椎名さんから逃げるために、必死に走っていた。
これまで同行して、彼女の強さはよく分かっている。
年は近いのだろうが、少なくとも戦闘に関しては俺よりも数段上だ。
出会ったとき、俺が襲われたときのことを思い出す。
拳銃を持った少女の元へと恐れずに走っていき、俊敏な身のこなしで少女を無力化。
そして第三者が介入するや否や、俺との逃走を瞬時に選択した。

まったく、信じられなかった。
まるで映画のアクションシーンを見ているかのようで。
流れるような、ともすれば美しくも見える戦闘だった。
あの男も言っていたが、本当に彼女は「くノ一」と呼ばれる、本物の忍者なのか。
でなければ、格闘技でも習っているのだろう。
どちらにしても、俺みたいなごく普通の高校生では相手にもならない。
さらに、正気に戻す方法もまったく考えつかない。
…くそっ、どうすればいいんだ!
なんて考えた次の瞬間にも、サーベルが背中を掠める勢いで向かってくる。
今は逃げることに集中した方が良い。そんな単純なことに今更気づく。
そして、もう何度目になるか分からない全力疾走をしようとして――
突然、4人の女の子が出てきた。



◇◇◇



「……」
互いに予期せぬ人たちが表れたため、6人は固まってしまった。
椎名は現れた4人に戸惑いサーベルを構えもせず。
かりんは拳銃を誰に向けるかを考えて。
ヒナギクは全員の挙動に目を光らせ。
総一は椎名が攻撃をしてこないことに安堵し。
イカロスは2人の女性の戦闘能力を推し量っていた。
そんな硬直した場を崩したのは。

「私は箱庭学園生徒会長、黒神めだか。24時間365日、私は誰からの相談でも受け付ける!!」

という、分かる人にしか分からない言葉だった。
もちろんめだかとしては、総一を攻撃する椎名への発言で。
攻撃をやめて、悩みがあるなら私が聞こう、という意思表示だったのだが。
予想外な所から、声がかかった。


「…だったら相談です、黒神さん」
と言いながら、拳銃を取り出す。
「む?貴方は…北条かりん殿か」
「…はい」
そしてめだかの方を向く。
「ああ、何故名前を知っているのか不審に思われたなら申し訳ないな。
しかし勘違いしないでくれ、支給品に参加者の詳細名簿が入っていただけだ」
「…そんなことは、どうでもいいから…」
ゆっくりと拳銃をめだかに向け。
「…死んでくれる?」
引き金を引いた。



◇◇◇

555運命は、英語で言うとデスティニー ◆RmIe4rjRnw:2012/03/24(土) 16:55:57 ID:Z7lEUrYs0



発砲音が聞こえても、めだかさんは動かなかった。
撃たれたのかと思ったけど、そうではないらしい。
「…くそっ、イカロス!」
北条かりんが外しただけのようだ。
拳銃にも慣れていないところを見ると、ただの少女なのだろう。
「全員、殺して!」
――かなり、精神面が危ないようだけど。

「はい、マスター」
イカロスと呼ばれた少女がめだかさんに向かっていく。
手には波打つような刃の剣――確か、フランベルジェといったはず――を持っている。
大きく振りかぶって、薙ぎ払う。
ぶうん、と風を切る音。
身の丈以上の長さがあり、かなり重いはずの剣を、少女は軽々と振る。
しかし、めだかさんはそれを扇子で止めていた。
2人とも、相当な馬鹿力らしい。
(…どんなアクションゲームよ!)
心の中でツッコミを入れる。どうやらこの島では常識は通用しないようだ。

例えば。何もしていないのに、斬りかかられたりする。
サーベルの一撃をバットを構えて防ぎ、跳ね返す。
「まったく、早く知り合いと合流したいっていうのに!」
多少の怒りも含ませながら、ヒナギクは山本のバットを振って刀にする。
狂った忍者との戦いが始まった。



◇◇◇



追われていたはずの総一は、いつの間にか置いてけぼりにされていた。
現実主義者だったなら、助かる為にすぐに逃げただろう。
けれども総一は、その場から逃げようとはしなかった。

(北条かりん…やっぱりあの子だったのか…)
同じゲームの参加者『だった』、総一を襲ったこともある少女。
死んでしまったはずの少女が生きていることは不思議だったが。
少女が再び殺し合いに乗っていることが、総一にはショックだった。
(止めさせないと!)
少女に再び道を間違えさせるわけにはいかない。
ある種の使命感すら持って、総一はかりんに近付いた。



◇◇◇

556運命は、英語で言うとデスティニー ◆RmIe4rjRnw:2012/03/24(土) 16:56:38 ID:Z7lEUrYs0



(くっ…うまくいかない…)
かりんは内心、舌打ちをした。
(運がいいと思ったのに…)
数時間前のスタンド使いもそうだが、この島には強い人間ばかりだ。
この2人の女性は、とても楽に殺せる相手じゃない。
イカロスの馬鹿力でも敵わないのだから。
(どうする!?)
焦りが心を支配する。
自分だけが逃げれば、イカロスは捕まってしまうだろう。
そうなると1人きりになって、最初に逆戻りだ。
かといってイカロスと共に逃げれば、間違いなく女――黒神めだかは追って来る。
修羅場を潜り抜けてきたわけでもないかりんは、機転を利かせることもできず。
今の状況は、まさに八方ふさがりだった。


(どうする?どうする?どうする?)


「大丈夫?」
「!?」
唐突に声をかけられて、背筋が凍る。振り向くと、最初の標的だった男がいた。
「…どういうつもり?」
「君を助けたい。俺は君を知っている。殺し合いに乗るような子じゃない」
早口で話す男の真意が分からなかった。
こんな男は知らないし、分かったような事を言われるのも腹が立つ。
「私は妹を助けるために乗ったの。あなたにどうこう言われる筋合いはない!」
拳銃を男に向ける。脅しと本気が半々だ。
しかし男は動じない。
「…死にたいの?」


「君は撃たない」
断言される。拳銃を持つ手が震えた。
なんで、なんで拳銃を怖がらないんだろう。それが不思議で、怖かった。
「君は撃たない。優しい子だから」
男は子供をあやすように、私に優しく声をかける。
殺し合いだということを感じさせないその声が、なんだか、とても、心に響いた。
「殺し合いに乗ったのも、誰かの為なんじゃないのか?」
男が聞いてくる。
そうだ、かれん――。私はかれんの為に。
「そうよ!私はかれんの為に、優勝しなきゃいけな」
「だったら!」
言葉を遮られて、うっ、と詰まる。それくらい、男の声には有無を言わさぬ迫力があった。
「俺が協力する。元の世界に戻ったら、妹を助けるために何でもする」
力強く、言葉を続ける男。その目は真剣そのもので、そして――


「だから――人殺しなんて、やめてくれ」
男は泣いていた。
情けない、と思う反面、かっこいい、とも思った。
今まで、私のことをここまで考えてくれた人はいなかった。
「わ、私、は…」
泣きそうになる。拳銃を持つ手は震えまくっている。
この男が、怖かった。私の事を知らないくせに、心配してくる男が。
「人殺しをして、そのかれんちゃんは喜ぶのか?」
男は私の心を覗き込んでくる。ズカズカと、遠慮なく。
けれど、と心が揺れる。つまりこの男は、本気で心配しているんだ。
初めて会った、名前も知らない筈のこの私の事を。


「…銃を渡してくれないか」
男は再び、優しく声をかける。
その言葉で決心した。今はこの男を、信じてみよう。
この人なら、どうにかしてくれる。そんな期待を込めて、銃を渡そうとして。



男の胸から、剣が生えた。



◇◇◇

557運命は、英語で言うとデスティニー ◆RmIe4rjRnw:2012/03/24(土) 16:57:13 ID:Z7lEUrYs0



「大丈夫ですか、マイマスター」
後ろから、そんな声が聞こえる。
この声はイカロスと呼ばれた少女か、と激痛に耐えながら考える。
視線を下に向けると、自分の血に染まった剣が見えた。
自分の胸から剣が生えているところを見るなんて、夢にも思わなかった。
あるいは、今この瞬間が夢なのか。


いや、夢じゃない。俺の前には確かに――北条かりんがいる。
泣きそうな顔をして、俺を見ている。信じられない、といった顔だ。
「……気に、しないで、くれ」
どうにか言葉を発する。気にするな、君のせいじゃない、そう伝えたかった。
しかし、その言葉を聞いたかりんは、余計に顔を歪ませた。
そして俺に背を向けて走り出す。何かを吹っ切るように、何かから逃げるように。


「マスター!」
かりんを追おうとしたイカロスは、しかし黒神めだか、生徒会長に遮られる。
「邪魔をしないでください!」
イカロスは俺の体から、剣を引き抜いた。
「ぐっ、あああ!!」
強引に引き抜かれたせいで、筋肉が、脳が、悲鳴を上げる。
地面に膝をつく。力を入れようにも、入らない。そのまま前に倒れ込んだ。
分かる、自分はもう死ぬのだと。血と共に力が無くなるのを感じる。


ああ、北条かりんは、大丈夫だろうか。殺し合いに、乗ることはないだろうか。
自分はこのバトルロワイアルで、何一つ達成しないまま死ぬ。
麗佳にも二度と会えない。
主催者に対抗することも叶わない。
椎名さんも、結局正気に戻せなかった。後悔ばかりが頭をよぎる。
そういう運命だったなんて、割り切ることは出来ないけど。
いまさら何を言っても遅いのだろう。もう、眠くなってきた。
つまり、これは。
「……ゲームオーバー、ってことかな。はは…」
自嘲めいた笑いと共に、少年はその一生を終えた。




【御剣総一@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-  死亡】



◇◇◇

558運命は、英語で言うとデスティニー ◆RmIe4rjRnw:2012/03/24(土) 16:57:50 ID:Z7lEUrYs0



「…ふう、やっと倒れた」
桂ヒナギクは、自分にサーベルを向けてきた少女を見下ろす。
忍者のような身のこなしには苦戦させられたものの、相手も疲労が溜まっていたようだ。
激しい戦闘の末、少女は電池が切れたように倒れて気絶した。
狂ったように攻撃してきたことも含めて、この少女には聞きたいことが多くある。
だがそれも、少女の目が覚めてからになるだろう。


「さて、と…」
周りを見ると、未だにめだかさんはイカロスと闘っていた。
そのそばには、少年――詳細名簿には御剣総一とあった――が倒れている。
「あれって…死んでる!?」
戦闘に巻き込まれないよう静かに近付いてみると、確かに死んでいた。
胸には酷い傷があり、そこから大量の血が流れ出ている。
おそらくは、イカロスの剣によるものだ。よく見れば、今も血が付着している。
許せない。けれど、今はめだかさんと闘っているから手出しは出来ない。
一応、御剣総一の物だろうデイパックを回収しておく。


「…あれ?」
そういえば、イカロスがマスターと言っていた、北条かりんがいない。
いきなり発砲するあたり、彼女もそうとう精神が参っているに違いない。
話を聞きたかったが、いったいどこへ行ったのだろうか。
そして、一番の問題は、この先どうするか。
めだかさんとイカロスの闘いに、どう決着がつくかにもよるのだが。
あと数十分もすれば、放送が始まるはずだ。それを聞いてから決めるのもいいだろう。
戦闘音が響く中、桂ヒナギクは今後のことについて思考することにした。





【E-4 森/早朝】

【北条かりん@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:S&W M37エアーウェイト3/5@現実】
【所持品:支給品一式、S&W M37の弾丸45/45@現実、ランダム支給品×2】
【状態:健康、精神的ショック】
【思考・行動】
0:?????
1:優勝してかれんの元に賞金を持って帰る?
2:イカロスと共に参加者を皆殺し?
【備考】
※本編開始前からの参戦。
※黒神めだかの名前と容姿を記憶しました。

559運命は、英語で言うとデスティニー ◆RmIe4rjRnw:2012/03/24(土) 16:58:30 ID:Z7lEUrYs0


【イカロス@そらのおとしもの】
【装備:フランベルジェ@とある魔術の禁書目録】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:マスターの命令に従う。
2:命令通り参加者の皆殺し。
3:めだかを殺して、マスターと合流。
【備考】
※本編開始前からの参戦。
※桜井智樹ではなく北条かりんがマスターです。
※武器は没収、羽根で飛ぶ事は制限です。
※馬鹿力は制限されていません。



【黒神めだか@めだかボックス】
【装備:原初の海@ペルソナ4】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:桂二年生と行動。
2:主催者から参加者全員に謝らせる。
3:イカロスを捕える。
【備考】
※オリエンテーション開始直前からの参戦。
※参加者全員の顔と名前を一致させています。
※乱神モードは3時間待って10分、改神モードは制限で1日1回の制限です。
※北条かりん、イカロスを危険視しています。



【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
【装備:山本のバット@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【所持品:支給品一式×2、羽根の付いたランドセル@Kanon、こけし@そらのおとしもの、
サーベル@ハヤテのごとく!参加者全員の全身写真@その他、ランダム支給品×2】
【状態:疲労(小)】
【思考・行動】
1:めだかさんと行動。
2:このゲームを止める。
3:少女(椎名)が目を覚ました後、話を聞く。
【備考】
※アテネ編終了後からの参戦です。
※めだかの知り合いの事を教えてもらいました。
※参加者のある程度の顔と名前を一致しました。
※北条かりん、イカロスを危険視しています。



【椎名@Angel Beats!】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:気絶、疲労(大)】
【思考・行動】
1:……。
【備考】
※ユイ消滅前からの参戦。
※ギアスは解けたようです。






【フランベルジェ@とある魔術の禁書目録】
イカロスに支給。
一八〇センチを越える巨大な剣で重さも相当。
両刃の刀身は波状に作られており、肉を引き裂き、止血しにくくする。
治りづらい傷を作るため、「死よりも苦痛を与える剣」として知られる。
天草式十字凄教に所属する建宮斎字は、これを片手で振りまわしている。

560 ◆RmIe4rjRnw:2012/03/24(土) 17:00:41 ID:Z7lEUrYs0
投下終了です。
タイトル元ネタはアニメ「ハヤテのごとく!」第一話より

561つぎへの方向 ◆WzpMn05TJA:2012/03/24(土) 18:51:13 ID:X38R2G..O
「タイム!」

目の前に立ちふさがる番犬『雲雀恭也』に対峙する棗恭介は手を上げながらそう叫んだ。
タイム、つまり恭介は恭也に『待ってくれ』と頼んだのであった。
トンファーで殴られ、しかもタイムを頼んだ恭介だ。
当然同行している伊吹風子からは「どれだけ格好悪くなれば気が済むんですかっ!最悪ですっ!」と呆れられた。

「そんなの僕が許すとでも思うの?」

ただでさえ低い声の恭也がそれ以上に低い声で睨みながら恭介のタイムは無しで戦闘を続行させようとトンファーを構える。
『戦闘は出来る時に全力でやり合いたい。』
恭也の言動で思考が読み取れた。

「まぁ、待てお前。ここで俺がタイムを取る事によって俺はパワーアップしてお前と全力で戦えるだろう。ただの地球人からスーパー地球人へと変わるぐらいになっ!
どうだ、タイムを取らせる気はないか?」
「…………10分以上は認めないからね」

単純に強い奴と戦い事を読み取った恭介の計算通りであった。
案外こいつを仲間にするのは簡単なのではないかと恭介は思った。

「それとお前の名前を知りたい」
「並盛中風紀委員長、雲雀恭也」

余程大事な襷なのか『風紀委員長』と書かれたそれを強調させる。

「よし、どうする伊吹」
「そして私に来るんですか!?なんでですか!?」

大きい口を叩いて自分のところにきた恭介の行動に風子は突っ込まずにはいられなかった。
普段、朋也や春原を振り回す風子が振り回される珍しい図がこのバトルロワイアル内にて何回も確認出来た。

「支給品だよ、支給品!お前の残りの支給品になんかないのかよっ!」
「棗さんにだって支給品があったはずじゃないですか!?」
「スイカなんだよ!スイカっ!イカロスとかいう参加者が愛情込めて育てたスイカなんだよっ!」

スイカを投げつけるか?
いや、そんなスイカ事にスイカを使ったらイカロスとかいう奴に殺されるのではないだろうか?
説明書きにも扱い危険とか書かれてあるし。
爆弾や刀にじゃなくスイカが扱い危険ってなんだよっ!?
いや、いずれスイカ割りしてやるけどよ!

「風子の残りの支給品はすごいですよ!」

中から出してきたのは女物の黒い制服であった。
黒の騎士団、その様な組織の制服らしい。

「どう?あたいこれ着たら大人の女でしょ?」
「……多分ブカブカになると思うよ」

サイズは確かに大人の女サイズかもしれないが、風子は中学生、いや小学生にも見える体なので絶対にサイズが合うとは思わない恭介であった。
これも役立たず。

「棗さん、あなたはスーパー地球人になるとか大見得切ってなんなんですか!?
大体あなた中学生相手に負けてるんですよ!?完全にあなたより年下じゃないですか!?」
「……(多分雲雀も伊吹には年下とか言われたくないだろうなぁ……)」

実際、実年齢よりも上の年齢不詳であるのだが、それは別の話である。

(いや、絶対中学生じゃないだろあいつ……)

案外気が付かないわけでもなかった。

「確かあと1個何かあったよな伊吹?」
「そういえばこれでまだ2つですね」

風子の元々の支給品は今恭介の手にある物干し竿、そして黒の騎士団の制服(女物)であり、もう1つなにかあるはずであった。

562つぎへの方向 ◆WzpMn05TJA:2012/03/24(土) 18:51:53 ID:X38R2G..O
「な、なんですかこれはっ!?気持ち悪いですっ!最悪です、最悪です、最悪です!棗さん以上の気持ち悪さです」

風子がデイパックを開けるといきなり素っ頓狂な声を上げた。
その声に一緒に居た恭介は当然だが、傍観を決め込んでいた恭也すら一瞬風子の方に視線を向けたほどだ。

「なんで俺が気持ち悪い事に分類されてんだっ!」
「自覚ないんですか!?恐ろしい気持ち悪さです!」
「ヒトデに比べたらマシだっ!」
「ひ、ヒトデをバカにしますか棗さん!?救いようがないバカだと思ってましたが、あなたは救いようがない男です」
「……そっちの方が良くね?」

あーだこーだと約5分こんな子供みたいな喧嘩を続けた。
待ってもらっている半分をこんな事に費やしている事には気づかぬままではあったが。

「これはあまりの気持ち悪さで触りたくもないのですが」

ゴソゴソと漁って中から出るのは変な意味でデザインが凝っていて、子供が見たら泣き出してしまうのではないかと思われる大きなマスク。
お世辞にも格好良いとは言えないマスクではあるが恭介には見た事のあるものであった。

「ま、まさかこんな隠し兵器が伊吹のラストの支給品とはな……。これは俺達憧れである最強の証のマスクだ伊吹!!」
「ってこれは棗さん知っているんですか!?」
「理樹に負けてこれを授けたのだがまさか再び俺の手に渡るとは……」

恭介がランキングにてわざと1位からビリに落とした理樹であったが、それをものともせず理樹は再び頂点になり1位を取り戻し、ついにマスク・ザ・斉藤を倒しその座を理樹に譲ったという経緯がある。

「お前は最高に運が付いているな、よしスーパー地球人がお前を護ろう!」
「もうその設定には風子は飽きました」
「ならお前にも設定を作ってやろう。お前はヒトデ魔術師とでも呼んでやろう」
「ヒトデ魔術師!?風子魔術師じゃないのになんでこんなに惹かれるのでしょう!?」
「魔術師じゃなくてヒトデに惹かれたんだろう」

嬉しそうに笑顔になりながらポワ〜ンとなっている伊吹をほっといてマスク・ザ・斉藤のマスクを右手に持ちながら恭也に戻って行った。
恭也は待ちくたびれた態度を露骨に顔に出して睨んでいたが恭介は怯まずにキッと構える。

「ちょうど10分、タイミングを見計らったみたいだったね」
「へへっ、俺は時を操る力を無意識の内に風の様に放出する魔法遣いさ!通称『時風』」
「変な厨二設定作らなくて良いですから!!因縁の対決でもない対決に時間かかり過ぎなんですよ!」


○―○―○―●―●―●


「よし、俺は今から斉藤化するぜ」
「強いなら別に炎とかリングも使って良いからタイムさせたのを喜ばせてよ」

炎、リング。
恭介は何を言っているのかわからないが、恭也の世界にはそういうのがあったという事だけを受け止めながら、マスク・ザ・斉藤のマスクを付ける。
躊躇い、そんなものは恭介にはない。
マスク・ザ・斉藤、物干し竿。
心強い武器が2つ、恭介の手に渡った。

563つぎへの方向 ◆WzpMn05TJA:2012/03/24(土) 18:52:27 ID:X38R2G..O
「な、棗さーん?」

斉藤になった恭介は動かなくなった。
もし動かなくなったら風子と恭也が場に残るという勝敗がわかりきったバトルが行われる事になる。
心配になり恭介に話かけた風子。

「棗?誰だそれは?俺はただの斉藤さ!うまうぅーー」

棗恭介の姿がなかった。
マスク・ザ・斉藤の姿がこの場におり、恭介は跡形もなく消えてしまった。
――斉藤の正体が恭介なだけなのだが……。

「良いね、ものすごく強くなったみたいだね。これがスーパー地球人か」
「雲雀さんが茶番に乗りました!?」

風子は茶番とは言ったが恭也にとっては大マジであった。
あのマスク自体が匣兵器(ボックスへいき)なのではないかと恭也は疑う。

「(相当彼は――強い!)」

恭也は両手に握るトンファーを振り回しながら斉藤に襲う。
斉藤の目がキラリと光る。

「はりゃほれうまうー!」

ガキンッ!!

鞘に収まったままの物干し竿を突き出してトンファーの回転を強引に食い止める。
そして食い止めながらその突進する斉藤。

「ふんっ、甘いっ!」

しゃがみ込み物干し竿を避けながら跳んでトンファーを斉藤の顔を目掛けて叩きにくる。

「うまうぅぅぅー!」

寸除け。
先程恭介は技をくらいながら避けたが、我ら斉藤は技を受け流す。
恭介と斉藤の力の差は歴然とステータスを激増させていた。

「本当にあれは棗さんなんですか!?風子の知る変な人じゃないです!全部が変な人に退化してます」

風子は斉藤になった恭介をも斉藤とは呼ばなかった。
ただ単に嫌なだけである。

「よし、居合い斬りっ!」

鞘から物干し竿を取り出し、峰が恭也の体目掛けて向かってくる。
長過ぎる間合いは恭也に避ける場所がない事を示していた。
         ・・
そう、避ける場所がないだけだ。
避ける場所だけが。

「ふん」

トンファーで受け止める事は容易い。
戦闘狂でトンファーを愛用している恭也でなければ斉藤は今の一撃で勝てたであろう。
相手が本当に悪すぎただけであった。

564つぎへの方向 ◆WzpMn05TJA:2012/03/24(土) 18:53:02 ID:X38R2G..O
「君、終わりだね」

片方のトンファーで物干し竿を止めながら進撃し、斉藤に一直線。
斉藤に為すすべなし。





「首取った」

トンファーが斉藤の首元スレスレで停止した。
恭也が自らの意思で、止めた。

「僕が君の首にショックを与えただけで君は肉塊に変わるんだ」

微笑みながらトンファーを降ろす。
忠告、そして戦いは終わる。

「すごいね君、全然驚いていない」

斉藤のマスクを外す恭也。
勝負に負けたのに清々しい顔をした恭介の顔が現れた。
風子は恭也の行動もだが、恭介の態度にも驚かされていた。

「いや、お前がこの学校で死人は出すはずはないと思ってな」
「堂々と意味不明な事を棗さんがほざいてます!」
「…………正解」
「なんでですか!?」

恭介は恭也の事を初めて見た瞬間から観察していた。
並盛中学風紀委員長と名乗った雲雀恭也。
この舞台はさっき学校名を確認した時、自分は知らない学校の並盛中学なのを知った。
普通学校は嫌う傾向にあるものだが、この恭也からは最初の目的地、そして気持ち良さそうに眠る姿に愛着があると判断した。

そんな男が愛着のある場所で人を殺したがるか?
答えはNo.。
つまり結果はどうあれ、死なない自信はあった。

「大体君、手抜き過ぎ。咬み殺したくなるよ」

恭也は恭介が手を抜いている事に対して苛立ちを覚えていた。
鞘に収めた刀、峰打ち、わざと遅く突く技術。
完全に舐められていた。

「俺は殺されるわけにはいかない。このゲームを終わらせるミッションを実行させるまで!
だから雲雀、俺達リトルバスターズに入って対抗してくれないか?」
「嫌だ」
「棗さん良いところ0です」

群れる事が嫌い。
どんな信念でもこれだけは揺らぐ事のない。
故に彼は、誰よりも強い。

「ただ僕はゲームには乗らないからね。棗と伊吹だっけ?ゲームに乗っていない参加者が居たら仲間が探している事だけ教えておいてあげるよ
だから僕の目の前から消えてよ」
「……わかったよ」

恭介は仲間には出来なかったが、最低限協力させる事までは持ち込み恭也を妥協させた。
それだけで今は満足であった。

565つぎへの方向 ◆WzpMn05TJA:2012/03/24(土) 18:53:35 ID:X38R2G..O
「暇ならまた相手をお願いしたいね」

屋上への扉が締められ、恭也1人が屋上に残された。
屋上の扉の向こうは戦いがあった事など感じさせない普通の学校の風景であった。



【G-6 中学校屋上/早朝】

【雲雀恭也@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【装備:仕込みトンファー@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:疲労(中)】
【思考・行動】
1:特に目立った行動はしないが、棗達に人を回す。
2:斉藤と再戦希望。
【備考】
※継承式編終了後からの参戦です。



「棗さん、次からはどうするんですか?というか風子をいつの間にかリトルバスターズのメンバーに加えてませんか?」
「さて、次はどうしようか」

後半は聞こえない振り。
既に恭介の仲では風子はリトルバスターズのメンバーの1人で、理樹と鈴と真人と謙吾と来ヶ谷と同じく助ける仲間の1人に加えられているのだから。





『ご機嫌いかがですか皆さん?では今から放送が始まります』

学校中に響き渡った。
いや、島中に響き渡った郷田真弓の声。

「おい、伊吹!?」
「こ、これから放送が始まるのですね……」

6時間が経過した……。



【棗恭介@リトルバスターズ!】
【装備:物干し竿@Fate/stay night】
【所持品:支給品一式、海軍用船上槍@とある魔術の禁書目録、イカロスのスイカ@そらのおとしもの、マスク・ザ・斉藤のマスク@リトルバスターズ!】
【状態:疲労(中)、視界不良(小)】
【思考・行動】
1:リトルバスターズを結成して、バトルロワイアルを打倒する。
2:仲間は全員助けてやりたい。特に理樹と鈴は優先的に保護したい。
【備考】
※Refrain、理樹たちが助けにきた直後からの参加です



【伊吹風子@CLANNAD】
【装備:FN Five-seveN(6/10)@現実】
【所持品:支給品一式、FN Five-seveN予備弾薬(20/20)、黒の騎士団の制服(女物)@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:棗さんと行動。
2:岡崎さんたちを探す。
3:風子はリトルバスターズなんですか?
【備考】
※風子ルート終了後からの参加です
※実体で存在しています



【イカロスのスイカ@そらのおとしもの】
いわゆる地雷。イカロスの目の前でスイカを壊すなり食べたりするならば死亡フラグです。


【黒の騎士団の制服(女物)@コードギアス 反逆のルルーシュ】
黒の騎士団の女性に渡される制服。当然色は黒。


【マスク・ザ・斉藤のマスク@リトルバスターズ】
学園の中でも最強に渡される証。ステータスを底上げさせる。語尾には「うまうー」を付けなくてはならない。

566第1回定時放送 ◆WzpMn05TJA:2012/03/24(土) 18:56:17 ID:X38R2G..O
ご機嫌いかがですか皆さん?
では今から放送が始まります

今回の放送は進行役の郷田真弓が努めさせてもらいます。

みんなが憎む主催者の言葉ですが、一言一句聞き間違えない方が良いですよ。
絶対に嘘なんかありませんから。

禁止エリアと死亡者の発表をしますわ。
最初は禁止エリアの話からしますね。
そう慌てないでみんな。
死亡者も大切な友達が居るかもしれないけど禁止エリアはあなたの命を狙うのだから聞き漏らさないでね。

では禁止エリアの発表です。
改めていうとそのマスに入ってから30秒が経つとあの時の北条ちゃんや持田ちゃんの様になりますから入らないでください。
こちらもこんなしょうもない事で死んでほしくはないので。


禁止エリアはー……、

8時からの禁止エリアは
10時からの禁止エリアは

解除なんてありませんよ。
永久にこのエリアには入らないでください。



次はお待ちかねの死亡者の発表よ。
といきたいけどここでエクストラゲームよ。
エクストラゲーム、まぁおまけのルールよ。
大丈夫、あなた達に損はさせないルールよ。

支給品が不遇な人と優遇な人が居るわけよ。
ですのでそんな人達に最初に死んだ3人のデイパックを島中のどこかにバラまくわ。
拾ったらラッキーね。
まぁ、優遇されてる人が拾ってしかもゲームに乗った人なら危険過ぎますかね。
それはそれで楽しみですわ。



次こそは死亡者の発表よ。
あなたの親友、恋人、ライバル。
誰の名前が挙がるかしらね。
ではいきますわね。


古河渚
直江理樹
霧島佳乃
上条当麻
マリア
花村陽介
沢田綱吉
園崎魅音
ライダー
篠崎あゆみ
倉田佐祐理
巽完二
ロロ・ランペルージ
御剣総一

以上14人がこの6時間以内に死亡致しました。



悲しいですか?嬉しいですか?何も感じませんか?

脱出を目指しているあなたに問います。
あなたは大事な人を失ってでもその理想を掲げられますか?

ゲームに乗っているあなたに問います。
この結果にあなたは満足出来ますか?









◇◆◇◆◇◆◇


「お勤めご苦労様でした郷田さん」

567第1回定時放送 ◆WzpMn05TJA:2012/03/24(土) 18:56:42 ID:X38R2G..O
放送を終えた郷田の前に現れたのは同じ進行役の朝倉涼子であった。
仲間ではあるが特にお互い干渉はしない者同士ではあるのだけに郷田は涼子の行動に疑問を持った。

「いや、特に何もないんですけど首輪の反応と生命反応がおかしくないですか?
いや、意思持ち支給品ではなく人間の方の生体反応が」

郷田は慌てて確認すると首輪の反応は86人。
だが人間の生命反応は87人を表示していた。
誤作動などあるはずがない。
つまり1人多くの人間がこの島に居るのだ。
首輪をしていない者が。

「実は三千院ナギの目の前にその反応が余計にあるんですね」
「っ!?――この者はっ!?」

気付かなかった。
三千院ナギの目の前に、確かにイレギュラーな存在が存在していた。

「どうするのでしょうね?
面白そうですし、このまま監視しません?」
「そうね。これくらい想定内だわ」

イレギュラーが混ざってしまったままゲームは継続される。
当然誰にも止める事など出来やしない。
そして次の犠牲者は――?

568 ◆WzpMn05TJA:2012/03/24(土) 19:01:19 ID:X38R2G..O
2作品連続投下終了
無事に1回放送終了を迎えられました
因みに第1回定時放送のタイトルは
第1回定時放送【『脱出を目指しているあなたに問います。』『ゲームに乗っているあなたに問います。』】となります


◆RmIe4rjRnw氏
番狂わせな展開に驚かされました
まさかイカロスに阻まれるとは総一無念…
めだかちゃんとイカロス戦とか考えるだけで楽しみでした



では早速前に予告していた通りに
三千院ナギ、???を予約します

569 ◆WzpMn05TJA:2012/03/24(土) 19:13:43 ID:X38R2G..O
うっかりが2つありました

つぎへの方向の元ネタはマンガ『あさっての方向』より


禁止エリア記載していませんでした

8時〜B-7が禁止
10時〜E-1が禁止となります

570 ◆SENAs8NCE2:2012/03/24(土) 20:08:00 ID:85vQvgJs0
お久しぶりです、放送突破おめでとうございます

立華奏、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、足立透 の三名を予約します

571名無しさん:2012/03/24(土) 21:50:39 ID:q7Xw.6n20
???、気になるな…
頼りになる奴だと良いが…

572名無しさん:2012/03/26(月) 18:56:56 ID:iupHabX60
???のヒントとか貰えますか? 気になりすぎる!!

573名無しさん:2012/03/26(月) 20:25:43 ID:G6edU2Sw0
待て待て、逸る気持ちは十二分に分かるが、もう予約が入ってるんだから遠からず招待は明かされるだろうよww

574おまえのような乱入者がいるか ◆WzpMn05TJA:2012/03/29(木) 19:50:32 ID:9UI6JY9oO
「なんなんだよお前!?」

カジノ内にて謎の人物に叫んでいた金髪のツインテールをした小柄な少女は三千院ナギであった。
その三千院ナギの視線の先に見えるは自分より明らかに年上の女であった。
5歳くらいは上ではないかとナギはその彼女を見て思った。

彼女はナギと同じく金髪にしている長い髪なのだが、ナギの様にツインテールにしているわけでもなければポニーテールやお団子にしているわけでもない。
髪を結わないで長いその髪に整った顔は男性はもちろん、女性にすら目を惹くほどであるいわゆる美人である。
胸もナギの様に貧相ではなくそれなり大きかった。

ただ明らかにナギと違うのは首輪の有る無し。
この島に居る人間は皆首輪をしている。
参加者が全員集められた者達もきちんと首輪が巻かれてあったのは確認済み。
つまり、彼女は主催者の回し者の可能性がぐっと高い位置にあるはずであった。

「う、うわわー……」

ナギは彼女から離れ様とカジノのスロットなどの障害物に隠れようと足を動かそうとする。
しかし、彼女は「安心して」とナギを制止させた。
微笑んではいるが両手に握る黒い銃。
いつ撃ってくるかなどわからない。
ナギが相手でなくとも十中八九信じられず逃げるか戦うかしていただろう。
当然力のないナギは前者を選択する事になるのだが。

「大丈夫よ、この私の拳銃は本物だけど細工が施されており、人に当たっても致命傷にならない銃だから安心なさい。それにあたし達はシャルル達に反乱する者よ」
「何ぃ!?」

普通ならそんな怪しい話は信じられないであろう。
だがナギは臆病な性格だ。
こんな状況でそんな事を言われたら安心するであろう。
だからナギは彼女を信頼する事が出来るのであった。



――そして、この場合はこの判断が一番の当たりであるのであった。



――◆◆◆――



「あなたが三千院ナギさんね」
「うむ、ナギで良いのだ」

ナギが最初に名乗ったのであった。
話してみるとなんであんなに彼女に怯えてしまっていたのだろうと思わされるを得ない。
首輪をしてはいないが、確かに信頼出来て、自分を殺そうとする者ではなかった。

「そしてお前の名前はなんなのだ?」
「私?そういえばまだ名乗っていなかったわね」

彼女がナギに向き合ってその自らの名を明かす。
本名ではない、その名前で。

「あたしの名前は朱鷺戸沙耶よ」
「沙耶だな。うむ、わかったのだ」

先に右手を出した沙耶に答える形でナギも右手を差し出し握手をする。
首輪をしていない謎の人物だが今は信頼出来るとナギは思った。
それに握った手からは殺意などは感じなく、優しさが感じられた。

「沙耶は参加者ではないのだろう?では、一体何者なのだ?」
「あたしの正体については聞かないでくれるかしら。スパイとかバレたら面倒だから」
「…………今沙耶が自分でスパイと言わなかったか?」
「…………あぁ!?」

スパイ。
沙耶は自ら正体を隠しておきながら、その2秒後には既に正体を明かしてしまっていた。
ナギからは初めてこの場で怪しい目で見られていた。

沙耶はナギから目を離して黙り込んだ。
そして徐々に徐々にその顔は赤くなっていった。
まるで効果音としてカーッとでも聞こえてくる様であった。

575おまえのような乱入者がいるか ◆WzpMn05TJA:2012/03/29(木) 19:51:17 ID:9UI6JY9oO
「ああそうよあなたの言う通りよ、自分で面倒とか言う前に正体を簡単に教えていたのよ!
普通こういう正体っていうのは物語とかの後半で『えぇ!?お前そんな正体だったのかよ!』と意外な展開を見せる時の伏線に使われるべきよね。
惨めよね、滑稽よね、それが私のうっかりで緊張感の欠片もなくさらりと言ってのけたんだから!
アホよね!?アホでしょ!
ほら笑いなさい、笑えば良いじゃない、笑ってみなさいよあーっはっはっはっ!」

自虐ネタだった。
自分で自分を下に下げるまで下げて笑う。
濃い人々の知り合いが多いナギですら沙耶にはどの様に接して良いのかわからないでオロオロしてしまっていた。

「あなたも笑いなさいよ!」
「あ、あはは……」

危険な電波なのかなんなのか……。
ナギが沙耶をその様な個性豊かなキャラクターな人々の仲間へ入れておこうと思った瞬間であった。





『ご機嫌いかがですか皆さん?』

定時放送が流れた。
なんのお知らせのBGMや音楽を流す事なく、淡々とした郷田真弓の声だけがその知らせであった。


――◆◆◆――


「嘘なのだっ!マリアがそんなわけがないのだっ!」

小さな頃からナギのメイドであり、親友であり、教師であり、母であったマリアが死んだ。
そんな嘘の様な内容が郷田真弓の放送で伝わった。
ハヤテやヒナギク、変態ストーカーは死んでいない。
ただ、マリアだけが無事ではなかった。
日常は既に壊れていた。
自分がエロ本を読み、ランキングが最下位で怒って、沙耶の自虐を聞いているどこかの間に日常という名のパズルのピースをバラバラにさせ、燃やされ復元が不可能の形になった。

「なぁ沙耶、違うよな。嘘に決まっているよな……」

聞いた情報なんか嘘の集まりで出来ている。
全て聞いた情報が正しかった事がない。
科学が進歩した現代においても天気予報は外れるのだ。
それと同じだ。
見て、触るまで、それは真実には至らない。
つまりこれは信憑性のない都市伝説や噂話だ。
マリアはまだ生きている。
ナギはマリアの死は信じない、信じたくない気持ちで埋まっていた。
たとえ、それが真実であろうと、なかろうと。



――◆◆◆――



「……嘘。…………そんな……理樹君……」

直江理樹の名前が呼ばれた。
主人公での理樹。
ヒロインのあたし、沙耶。

あたしの顔と正体を知って殺しにきたあたしを許して、パートナーになって、恋人になった理樹君が死んだ。
あたしの今回のミッションはこのゲームを終わらせる為に派遣されたスパイ。
参加者達の命は平等でも理樹君だけはあたしの中では絶対に護るべき対象であった。

576おまえのような乱入者がいるか ◆WzpMn05TJA:2012/03/29(木) 19:52:04 ID:9UI6JY9oO

多少は犠牲者が出る事は覚悟していた。
だが、あんなに強くて悪運が強くて優しい理樹君が既に亡くなっていた。

なんの為にあたしは自ら進んでこのミッションを受けたのだろう……。

「嘘ではないわナギ。奴らは卑怯でどんな嫌らしい事だってするけど……、放送で流す内容に嘘はないわ……」

何も知らないナギの立場ならあたしもナギみたいに嘘だと主催者達に怒りを向けるかもしれない。
でもあたしはそんな立場に居るわけではない。
助ける立場でいなければならない。

「そんな……」

ナギは落ち込み、泣いていた。
あたしは強い、どんなミッションもこなしたスパイ。
並大抵な事では泣かないし、弱音も吐かない。

「り、理樹君……。
うっ、うっ、うわぁぁぁぁぁん」

泣いてない。泣いてない。泣いてない。
笑わなくちゃ、笑わなくちゃ、笑わなくちゃ。

「あ、あーっはっはっはっ……ぅん……」

笑いなさいよ。
惨めよね?
滑稽でしょ?
みんなあたしを見て笑うが良いわ。
この際だから指を指しながらでも良いわよ。
あーっはっはっはっ、って。
こんな役立たずなあたしを笑うが良いわ。

「こんなの許せるわけないじゃない……」

どうせ主催者達は人が死んでいく様を見ながら笑っているんだろう。
あーっはっはっはっって。

1人1人が生存の為、大事な人の為、裏切られ殺されていくのを黙ってみながら。
理樹君の死をもクスクスと笑いながら。

「ナギ、絶対にあたしはあんな主催者達を許せないわ。必ずスパイの誇りをかけてこのゲームを終わらせるわ」
「沙耶……」

目が赤いナギ。
いや、あたしの方が絶叫しちゃったしたくさん泣いていたからあたしの方が赤い目になっちゃっているか。

「ナギの大切な人達を、理樹君が大事にしていたリトルバスターズの仲間をあたしが絶対に助けるわ……」

理樹君。
あたしは多分このゲームを生きては帰れないでしょう。
長い間あなたとは居る事が出来なかったけど、あたしが死んだらずっと一緒に居られるね。
――その時はあたしを隣に置いてもらえるかな。
また、その口で『好き』って言ってくれるかな。
またあたしのパートナーで恋人で居てくれるかしら。
あたしと理樹君は絶対に繋がっているんだから、当然だよね。
なんて、理樹君の周り可愛い子多いから不安だなぁ。
たまにはあたしから理樹君に虐めさせてもらうわよ。

「うむ、私は沙耶を信じるぞ。私は三千院ナギとして沙耶をサポートする役回りを手伝わせてくれ」
「ふふ……、ありがとうねナギ」

577おまえのような乱入者がいるか ◆WzpMn05TJA:2012/03/29(木) 19:52:29 ID:9UI6JY9oO
今まであたしは学園などではミッションの為に友達とかを作っていたけど、今回のナギはそういう関係じゃない。
本当の親友として、あたしは頑張ろうと思うわ。

「ミッション、スタートね」

          リキクン
さよなら、あたしの主人公。
           ナギ
よろしくね、あたしの親友。



【A-3 カジノ/朝】

【三千院ナギ@ハヤテのごとく!】
【装備:クリュサオル(chrysaor)@そらのおとしもの】
【所持品:支給品一式 大量のエロ本@そらのおとしもの 目安箱@めだかボックス 水@現実 ジュース@現実 角砂糖@現実】
【状態:悲しみ、決意】
【思考・行動】
1:沙耶をしっかりサポートするのだ!
2:ゲームを終わらせるのだ。
3:マリア……。
【備考】
※アテネ編直前からの参戦。
※ある程度の参加者の特徴を知っています(基準は今までハヤテのごとく!の原作、アニメ、劇場版、OVAでパロディまたは伏せ字にされた事のある作品のキャラクターが該当します)



【朱鷺戸沙耶@リトルバスターズ!】
【装備:沙耶の拳銃(7/7)@リトルバスターズ!】
【所持品:なし?】
【状態:悲しみ、決意】
【思考・行動】
1:理樹君、あたし頑張るから。
2:ナギや理樹君のリトルバスターズなどを全力で護る。
3:命なんて惜しくない!
【備考】
※首輪をしていません。
※名簿に名前が載っていません。


【沙耶の拳銃@リトルバスターズ!】
コルトコンバットコマンダー(M1911)がモデル。真偽は不明だが、細工が施されており致命傷にはならない安心(?)な銃らしい。

578 ◆WzpMn05TJA:2012/03/29(木) 19:57:01 ID:9UI6JY9oO
というわけで新キャラを明かして投下終了

元ネタは「北斗の拳」の名言『おまえのようなババアがいるか』より

予約
古里炎真、枢木スザク、園崎詩音、アサシン、セイバー、国崎往人、川澄舞


あと報告です
これからは自分が忙しくなり、投下が遅れたり、予約なしのゲリラ投下になる可能性も否めません
ゲリラ禁止といってゲリラになるかもしれない自分を許してください
ぼちぼちに進めていくつもりであります

579 ◆WzpMn05TJA:2012/03/29(木) 22:03:45 ID:9UI6JY9oO
国崎往人と川澄舞の予約を取り消します
すいませんでした

580名無しさん:2012/03/30(金) 00:02:30 ID:Hjol69WI0
投下乙
リトルバスターズはほとんど知識が無いから沙耶が強いのかどうか分からんwww
そんなファンタジー成分の強い作品では無さそうだからすごく頼りになる助っ人、とはいかなそうだな

でも、ナギの決意にはグッと来たな
漫画ロワのかっこいいナギが脳裏にちらついたよ
頑張れナギ!

581 ◆SENAs8NCE2:2012/03/30(金) 13:32:37 ID:udUAZn/M0
少し早いですが予約延長します

582 ◆SENAs8NCE2:2012/03/31(土) 19:42:10 ID:O.vtaur60
すいません 予約メンバーから足立透を削除します

583 ◆SENAs8NCE2:2012/04/02(月) 10:26:35 ID:WhgZG5HI0
投下します

584 ◆SENAs8NCE2:2012/04/02(月) 10:26:57 ID:WhgZG5HI0
『以上14人がこの6時間以内に死亡致しました。



悲しいですか?嬉しいですか?何も感じませんか?

脱出を目指しているあなたに問います。
あなたは大事な人を失ってでもその理想を掲げられますか?

ゲームに乗っているあなたに問います。
この結果にあなたは満足出来ますか?





「…………ロロ」


死者を告げる定時放送が響き渡り―――ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアはそれを聞いた。
知る名前は幸い一つだけ、最も危惧すべき事態だけは避けられたが、彼の心に何ももたらさない訳ではなかったようだ。
ロロ・ランペルージ。
自分を兄と慕い、盲目的なまでの信頼を寄せてくれた少年。
彼へ抱いていた感情は『利用の対象』と『級友の仇』、到底仲睦まじい兄弟間で生じる感情ではなかったが、ロロは最期の最期までルルーシュの為に戦い続けて、そして死んでいった。
たとえそれが仮初めの兄弟関係であっても、憎むべき仇であったとしても――無感情ではいられなかった。
勿論表面上こそ平静を装ってはいたが、どうしても彼の死に際が脳裏をよぎってしまう。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの為だけにただでさえ反動の大きなギアスを酷使して、果てには自らの命までも使い切り、それでもルルーシュの為に戦い続けた。
彼が居なければ、ルルーシュはあの窮地を潜り抜けられなかったろう。

ロロ・ランペルージの兄への愛情は凄まじく盲目的で、時に暴力的でさえあった。
最初こそルルーシュに敵意を向けていたが、何だかんだで彼もまた孤独だったのだ―――だから、仮初めの兄であってもルルーシュを慕い、盲目の愛情を向けた。
級友のシャーリーを殺した一件からロロのことはボロ雑巾のように使い潰して、利用するだけして殺してやろうとさえ考えていたのに、彼が死んだとき、喜ぶことはできなかった。
そして今も――ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの心に小さな突っかかりを残している。


「…………俺らしくもない」


自嘲的な微笑を浮かべ、残留する何とも言えぬ虚しさに近い感情を振り払う。
最早自分に、『皇帝ルルーシュ』に歩んできた道を振り返り、名残惜しむような行為は赦されない。
今の自分がすべきことは、弟の死を嘆き悲しむことではなく、厄介なギアス能力者、いずれは殺すことになるギアス能力者が死んだことを喜ぶことだ。
枢木スザクを生還させる為に、一つの不安因子でも消えてくれたのは有り難かった。

その他には死人なし―――未だ眠り続けている『天使』の探し人である音無とやらの名前も呼ばれることはなく、ルルーシュが優勝させんとする枢木スザクもまた、生きている。
もしもここでスザクが死んでいたなら、ルルーシュの行ってきたことは全てパーになっていた。
皇帝ルルーシュとして行った暴虐も、全ての集大成たるゼロレクイエムも、水泡に帰す。
失われてきた多くの命が無駄になり、ルルーシュの相貌に宿る王の力も無用の産物となるだろう。
そんなことだけは絶対にあってはならない。
たとえ何を犠牲にしてでも、スザクだけは生還させる。
自らの意志をより強く固めて、ルルーシュは静かに名簿の、死者の名前に赤いマーカーで色を塗った。


「…………ルルー、シュ」


透き通った、爽やかささえ感じさせる声がして、視界の片隅で静かに立華奏が起き上がる。
放送は丁度聞き逃してしまったらしかったが、『音無結弦』の名前は呼ばれなかったし、特に気にすることもないだろう。


「起きたか。放送がさっき流れた、死人の数は十四人……もう殺し合いを始めた奴ら、結構いるようだ」
「………そう」


文面で見るなら興味なさげな色が滲み出ていたが、寝起きということを抜きにしても少し消沈の色が窺えた。
成程、如何に『天使』と名乗っていても、人間の死にまで無感情で応じることは難しいらしい。
ルルーシュは少し安堵したような心境になる。


「音無とやらは生きている」


もう一度『そう』とだけ呟いたが、今度は安堵の色が窺えた。
どうやらこの人物、『天使』にとって相当大事な人物らしい。
しかし、いずれはこの少女も、その音無という人物も利用し、切り捨てる時が来るかもしれない。
その時にこの白い少女がどんな顔をするのか考えると少し心が痛んだ。
天使と名乗ってこそいるものの、こいつは確かに人間だとルルーシュは確信している。
今は仲間だが、いつかは敵対する時がやってくる――覚悟を決めておかなければならない。

585 ◆SENAs8NCE2:2012/04/02(月) 10:27:14 ID:WhgZG5HI0
殺し合いは終わらない。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは、自分のこのスタンスさえもあの忌まわしき実父の掌の上なのかと考え―――拳を握りしめた。



【A-2 喫茶店店内/朝】



【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【装備:デリンジャー2/2@現実】
【所持品:支給品一式、デリンジャーの残弾10/10ランダム支給品×2】
【状態:健康、覚悟】
【思考・行動】
1:スザクを優勝させる。
2:ロロ………
3:1のため利用できる人物は利用し、無用な人物は殺害も辞さない。
4:天使と行動する。
5:島の西側を探索し、24:00ごろに南側の街であの二人と合流する。
【備考】
※死後からの参戦です。
※ギアス制限あり。人の目を見て3メートル以内。『死ね』や『自殺しろ』の命令は無効です。
※白鐘直斗の知り合いの名前を記憶しましたが、今のところ探す気はないようです。




【立華奏@Angel Beats!】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:疲労(小)、睡眠中】
【思考・行動】
0:結弦を探す。
1:結弦……よかった
2:ルルーシュと行動する。
3:ルルーシュの言動に注意。
【備考】
※最終話直前からの参戦。
※ハーモニクス(コピー能力)のみ制限。

586 ◆SENAs8NCE2:2012/04/02(月) 10:33:00 ID:WhgZG5HI0
短いですが投下終了です。
題名:The Butterfly Effect
元ネタ:カオス理論の一つ『バタフライエフェクト』より。

長沢勇治、一方通行を予約します

587 ◆RmIe4rjRnw:2012/04/02(月) 17:20:31 ID:3Y/2CzDY0
投下乙です。
久々に見ましたけど、やっぱり書き方が上手いですね

古泉一樹、白井黒子、天城雪子を予約します

588 ◆WzpMn05TJA:2012/04/03(火) 13:02:06 ID:SI6WUfaMO
ルルの無意識な葛藤がよく伝わる話でした
ただ寝ているだけの天使ちゃんもかわゆす



自分も上手く書ける様になれたらな…と思う今日この頃

手直しもしなくてはいけないとwikiの放置に謝る次第です


では投下します

589光と絶望の境目 ◆WzpMn05TJA:2012/04/03(火) 13:03:01 ID:SI6WUfaMO
(ユフィの為なら僕は誰であっても躊躇いなく殺せる)
(悟史君、悟史君、悟史君、悟史君、悟史君)
(僕はボンゴレを倒せればそれで良いのに……)

3人、別の思惑を見せながらの交戦を繰り広げる森の中。
1人1人がこの戦いに背負うべきものを体に秘めていた。
枢木スザクは死んでしまったはずの愛する者を生存させる為。
園崎詩音は愛する者の元へ帰る為。
古里炎真は家族を皆殺しにしたボンゴレファミリーに復讐をする為。
それぞれ、負けられない気持ちは誰よりも高いと自負していた。

だが、皆どの様に動くかわからないので詩音の乱入後、睨み合いが続いていた。
下手に動くと自分以外の2人が襲うかもしれない。
誰もが襲う2人でありたいと思うのは当然であった。

『……そうだ、これなら無駄な時間は過ごさずに決着が着くかもしれない』

一番にこのバトルの前提が間違っている事に気付いたのはナイトオブゼロであり、ルルーシュの騎士である枢木スザクであった。
確かに勝つ為には1人を2人で襲い殺して、残り2人になったところでまた戦った方が勝率が上がるのは当然だ。
だが、これが当てはまるのは皆が武装をしている場合である。
炎真の武器であったグロック17をスザクが奪い取り武器を持っていないのである。
つまり炎真は現在武器の持っていない丸腰の中学生に過ぎない。
詩音には誰もが振り返る程大きな『止まれ』の標識。
つまり炎真は戦力なんか皆無であった。
スザクにとってただの一般人だとわかれば恐れるはずがない。

(この女を先に殺した後なら少年をゆっくりと殺せるな――よし、勝てる!)

スザクの作戦は単純であった。
戦力のある詩音に手榴弾を投げつけて最初に殺す。
そして自分と炎真が2人になったところを殺せば良い。
騎士の経験、ギアスの力。
自分に負ける要素はない。
スザクの目が一瞬にして鷹の目に変わる。

「はぁっ!」

スザクは素早く手榴弾を取り出し、ピンを外し詩音に投げつける。
念には念を。
それと同じ行動をもう1回行い2つの手榴弾が詩音を襲う。

「な、なんだとぉぉ!?ふざけんじゃないわよっ!」

僅か5秒経つか経たないかの時間だ。
目で見ても体が追いつかない。
詩音が叫んだからといって手榴弾の動きが止まるわけでもなく、時間が止まるわけでもない。

起こり得るはスザクの行動の結果。

ボン、ボン。

「               」

詩音が何か叫んだのかもしれない。
だがその詩音から発した声は爆音にかき消されて何も聞こえない。
叫び声かもしれないし、悲鳴かもしれないし、もしかしたらスザクに対する呪いの言葉であったのかもしれない。
だが、動かない血塗れの彼女は何と言ったのか、もうリピートはしてくれない。
武器にしてずっと握っていた止まれの標識すら半握りの手の上に乗っているだけであった。

「君は確かに強かったけどそんな偶然で僕は倒せない」

マフィアのボスの中学生。
騎士の高校生。
口にすれば互角な戦いの様な気はする。
だが、マフィアのボスと騎士の戦闘力の差は離れすぎていた。
もし、炎が使えていたなら炎真が圧勝であったであろう。
しかし、これは1対1の白兵戦。
誰かを護る為に鍛えたスザクの力に炎真が適うはずがなかった。
スザクが炎真の溝を狙って蹴り上げると炎真のお腹から不自然な音を発して痛みが一緒で波紋の様に広がった。
そして無様に転がる。
森の土が接触した部分全体を染め上げる。

590光と絶望の境目 ◆WzpMn05TJA:2012/04/03(火) 13:03:45 ID:SI6WUfaMO
「ぁわわ」

勝てるはずがない。
沢田綱吉を殺したのと同じ男であるのが嘘の様であった。
今の炎真は不良に醜く素直に財布を差し出すカッコ悪い男子と同じ姿であった。
スザクが殺す為の武器、グロック17を向ける。
引き金が指に掛かる。

「散れ、千本桜」

と、桜の花びらであろうか。
キレイな形をした刃が炎真とスザクの頭から足のつま先までの体全体を襲う。

「まだ――死ねないっ!」

スザクの鷹の目が赤く宿り、ロボットの様な目へと変貌する。
本来であるならば炎真を殺す立場のスザク。
だが炎真がこの刃を喰らう=自分もこの刃を喰らう事になる。
つまり自分が助かれば、炎真を助ける行動にもなり得る。

ボン。

手榴弾を刃の塊に投げつけると爆発し、花びらの様な刃は周りに飛び散る。
スザクと炎真は無事に千本桜から身を守れたのであった。

「フフフ、良いな小僧。是非私と戦ってはくれぬか」

アサシンのサーヴァント佐々木小次郎。
刃の如き殺気を放ちながらスザクに立ちはだかる。

そして、既にスザクの刈りし獲物であった炎真の姿は消えていた。


◆◆◆◇◇◇


『ご機嫌いかがですか皆さん』

郷田真弓の声が響き、炎真はようやく長かった6時間が過ぎた事に気付いた。
そこで炎真は呼ばれる名前に耳を傾ける。
(おそらく先ほど死んだ女の名前も呼ばれるはずだが名前がわからない。……けどっ)

沢田綱吉。
この名前が出てくればこの放送は真実を語っているという証拠になる。
それに沢田綱吉が万が一にもないが、生き延びている事などあってはならないのだ。

名前は古河渚の名前からはじまる。
順に直江理樹、霧島佳乃の名が呼ばれる。
まだか、沢田綱吉の名は。
早く呼ばれろ沢田綱吉と祈る炎真。
そして沢田綱吉の名は7番目に呼ばれたのであった。

(よし、この放送は真実だしあの沢田綱吉は確実に僕の手で葬ったぞ)

炎真は喜んだが、未だボンゴレファミリーである雲雀恭也と六道骸が呼ばれていない事には不機嫌になるのであった。

(あんなザコとは違ってまだあの2人は殺されるわけがないか)

炎真はスザクとアサシンの場から離れて行っていた。
この時炎真は気付いていなかった。
自分のスタートした位置のルートを辿っているという事は。


◆◆◆◇◇◇

591光と絶望の境目 ◆WzpMn05TJA:2012/04/03(火) 13:05:01 ID:SI6WUfaMO
「なんだよお前……!?」

見事な刀裁き。
見慣れている刀裁きであるがアサシンである男の刀裁きは目で追えないスザクであった。
そして、その危険の察知でスザクの目にギアスが宿る。

(ユフィは死んでいないというのに……)

禁止エリアとユフィの生存。
スザクはアサシンと戦闘しながら放送で必要な情報だけを頭に記憶する。

「スタンガンだけでなんて勝てる相手じゃないな……」

手榴弾にグロック17。
自分は3つの武器に恵まれている。
それにギアスの戦闘強化。
アサシンは強いサーヴァントであるが、この状態のスザクはアサシンとでも充分な戦いを繰り広げられるであろう。

「いざ、尋常に!」
「勝負!」

ギアスの力を持ったスザクとサーヴァントのアサシン。
騎士と侍が銃と刀を向けながら戦闘が開始される。


【C-5 野原/朝】

【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【装備:詩音のスタンガン@ひぐらしのなく頃に グロック17(15/17)@現実】
【所持品:支給品一式 手榴弾11/15@現実 ランダム支給品×1】
【状態:足に怪我(深い切り傷)】
【思考・行動】
1:ユフィを優勝させる為に殺し合いに乗る。
2:侍を殺す。
3:ルルーシュには………会いたくない。
【備考】
※R2最終話からの参戦。



【アサシン@Fate/stay night】
【装備:千本桜@BLEACH】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:披露(小)、健康】
【思考・行動】
1:強い者の為に刀を振るう。
2:目の前の騎士と戦う。
3:相沢祐一といずれ決着を付ける。
4:自分の行く先を見つける。
【備考】
※セイバールートのセイバー戦以後からの参戦。
※一応燕返しは出来ますが物干し竿がないと本来の力は使えません。
※このバトルロワイアルを特集な聖杯戦争だと思っております。



◆◆◆◇◇◇




「へっ、私が死ぬわけがないだろぅ」

スザクとアサシンの戦闘をしているすぐ側の爆発の向こう。
詩音は未だに健在であった。
手榴弾を投げられた詩音は急いで場から離れていた。
離れてはいたが手榴弾の爆発や破片を喰らって出血はしてしまったが、跳んでいた為に後ろへと跳ばされて倒されただけであった。
出血よりむしろ跳ばされて空中から地面に墜落した痛みの方が痛いくらいであった。
そして、倒れている振りをしただけで男2人は死人扱いをしてまた殺し合う。
実に滑稽な話で詩音は出来すぎた事を笑っていた。

592光と絶望の境目 ◆WzpMn05TJA:2012/04/03(火) 13:05:49 ID:SI6WUfaMO
「こんな馬鹿げた事には私は退散するよ」

炎真は逃げ出し、スザクは強そうな侍を相手にしている。
人は殺せなかったが充分に負けたという気はしないだろう。

「お姉が死んだって別に私が殺した相手だし興味ないね」

姉の死は彼女にとってはどうでも良し。
彼女を止められる者は誰も居ない。
雛見沢症候群の意識せずに彼女は首を少しだけ掻いていた。
そして、殺すべき相手を探す。
詩音の目は既に人間の目より、獣に近い目であった。
この獣には知識があるのであろうか。


【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に】
【装備:止まれの標識@めだかボックス】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:怪我(中)、雛見沢症候群Lv.3】
【思考・行動】
1:優勝して悟史君の元に帰る。
2:参加者全員を殺す。
【備考】
※目明し編からの参戦です。



◆◆◆◇◇◇


「あれ、まさかこんな位置にまで戻る事になるなんて」



そこには沢田綱吉の死体が転がっていた。
進むべき方向や景色を覚えていなかった炎真は道を戻っていた事に気付いていなくて、綱吉の死体を見てようやくその事を理解した。

「ふん、僕はもうお前の顔なんか見たくなかったんだけどな」

綱吉の死体に足を置く。
せっかく殺して満足したと思ったのだが、綱吉の死体を見たらまた憎しみがぶり返した炎真であった。

「ざまぁみろよボンゴレ!」

獄寺隼人や山本武に直接自分が沢田綱吉を殺した事を教え、絶望させてやりたくなった。
本当に沢田綱吉を前にしている時だけは別人格の様な炎真であったが、その表情はとある影を見つけて青ざめた。

「そうか、貴様がこの男を殺したのか」

黒い女騎士刀を構えていた。
炎真自身に襲いかかった刃を向けた者と同じ様な危険な感じがそこにある。

逃げなくてはいけない。
本能が告げる。
この女騎士にだけは近付いてはいけない。
そんな本能。

「さぞ強いだろうし楽しいのであろうな」

セイバーオルタは斬魄刀の浅打を握り炎真に斬りかかる。
最初に殺した一般人の女よりは楽しめるであろうと思いながら。

593光と絶望の境目 ◆WzpMn05TJA:2012/04/03(火) 13:07:03 ID:SI6WUfaMO
だが、セイバーオルタの考えとは裏腹に炎真のお腹に刀が抉られる。
大地のリングを持たない炎真は普通の弱い少年。
確かに強い少年は確かに弱い。

「ぐぅ……」

焼けていないのに焼けた様な痛み。
自分が大好きであった家族達も同じ苦しみを味わいながら死んだと考えると、やっぱりやりきれない事が脳裏に浮かぶ。
強いと思った自分ですら泣きたくなるくらい痛い。
地獄というのは死んだ後に行くというよりは、殺される瞬間が地獄なのではないだろうか?
炎真の頭には数々の事が思い浮かぶのに、既に口は動かせない状況。
セイバーオルタの殺気が本物のナイフの様にズキズキと炎真の体に突き刺さる。

「ゃ、やめて……」

少年は霞む声でセイバーオルタへ懇願する。
これだけは許してほしい。
そんな気持ちがよく伝わる弱い言葉であった。

「ふん、貴様ダメダメだな」

弱すぎる気力に弱すぎる言葉。
セイバーオルタにとって戦闘をこんなに萎えさせる言葉はなかった。
酷すぎる、炎真の事を弱い虫として見ていた。
気力も貫いてみせた。

――しかし、炎真の心の中ではそれを否定させる為に体が、脳が、全てが覚醒した。

(ダメダメだと……?こんなダメツナと僕とは違うんだ!僕は……僕は……ダメなんかじゃないっ!)

死ぬ気。
実際は炎なんか出ていない。
だが、今の炎真はどんな死ぬ気モードよりも死ぬ気であった。

「僕は違うんだぁぁぁぁぁ!」

叫び声を上げながらセイバーオルタの体目掛けて走り出す。
前に立ちはだかる物や者を薙ぎ倒させる、そんな強い体当たりであった。

「なっ!?貴様っ!?」

セイバーオルタはあんな弱々しく、立ち上がるのも無理そうな少年が自分に立ち向かう事に目を見開いた。
そして気力すらも貫いたはずの少年がより強く蘇っていたのだから。
その瞳の炎真の闘志はセイバーオルタの殺意より勝っていた。

「確かに僕は弱い!沢田家光に復讐も果たしていないダメダメだっ!
でも死ぬ気になったら僕はなんだって出来るんだぁぁぁーっ!」

待っててアーデル、みんな。
シモンファミリーのボスの僕は必ず帰って復讐をやり遂げるからっ!

セイバーオルタ一直線にバイクの如き一撃の突進が狙っていた。





◆◆◆◇◇◇

594光と絶望の境目 ◆WzpMn05TJA:2012/04/03(火) 13:07:46 ID:SI6WUfaMO





「がはっ……」

吐血。
服を真っ赤に染め上げた自らの血。
自分の闘志の様に真っ赤な血は自分の敗北の証となる。
いや、『敗北の証』どころか『死そのもの』である。

「……次は気力と一緒に貴様を貫通させた」

斬魄刀の浅打はしっかりと一直線に炎真のお腹を突き刺した。
臓器に変な感触が蝕む様に炎真を包む。
終わりとは終わりでしかない。
終わりは始まりというが終わりでしかない。
始まるものがあるとしたら『終わりが始まる』。
その終わりは唐突に始まるのだ。
だが1つ言えるのはendのクレジットもなくただ終わるのだ。

「嫌だ……嫌だ……」

終わりが始まった。
それだけならまだ許せる範囲内。
どうせ生き残れるのは1/100の確率でしかないのだから。

でも同じ1/100だとしても沢田綱吉の横で倒れてなんて死にたくない。

「…………」

信じられないものを見た目でマヌケに倒れ伏す綱吉。
その横に仲良く横たわる自分。

沢田綱吉と同じ場所でなんか死にたくない。
さっきの茶髪の男に手榴弾で殺された方がマシだ。
いや、まだグロック17で殺された方がマシだ。
だからこんな男と一緒の場所では嫌だ。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。

「せ、せめて、、」

違う場所で死にたい。



【古里炎真@家庭教師ヒットマンREBORN!  死亡】



「貴様はなかなか面白かった人間だったぞ」

崩せなかった壁のセイバーオルタは古里炎真を見下げながらそう呟いていた。
本当は殺すつもりはなかったのだが、覚醒した炎真と戦いたくなり殺した。

「どうせだったら人間で戦うとしたら士郎と戦いたいもんだ」

元マスター、衛宮士郎。
古里炎真の覚醒は士郎の火事場の馬鹿力によく似ていた。
髪の色といい似ているところも多かった。

「士郎かグリムジョー。いや、誰でも良い。強き者は私に集まって来い」

満足のいく戦い。
心の底からの戦い。
セイバーオルタは強き者と戦う事に思いを馳せていた。



誇り高き騎士の意志を失いし1人の少女はだんだんと殺戮の道へ歩み始めていた。



【C-4 森/朝】

【セイバー(セイバーオルタ)@Fate/stay night】
【装備:浅打@BLEACH】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:バトルロワイアルを楽しむ。
【備考】
※Fate編のギルガメッシュ戦終了後から参戦していました。
※記憶はまだ覚えているかもしれません。

595 ◆WzpMn05TJA:2012/04/03(火) 13:10:17 ID:SI6WUfaMO
投下終了

元ネタは「裏切りは僕の名前を知っている」6話サブタイトル『光と絶望の境目』より


涼宮ハルヒ、黒崎一護を予約します

596 ◆SENAs8NCE2:2012/04/04(水) 12:00:54 ID:GXQ2NC9Y0
投下乙です。
炎真死んじゃったかー……、スザク対アサシンとか燃える

では自分も投下します

597 ◆SENAs8NCE2:2012/04/04(水) 12:02:26 ID:GXQ2NC9Y0
第一回目の放送が鳴り響いてから数分後。
白い怪物は、静かに会場を闊歩していた。
純白の髪の毛と素肌の中でよく目立つ真っ赤な相貌は、嫌でも相手に恐怖を叩きつけることだろう。
しかし、何と因果なことだろうか―――この事件が無ければ、彼、一方通行(アクセラレータ)は、とある最終信号の少女と出会い不格好ながらも光の道へと歩み始めていたというのに。
絶対能力進化実験を止めるヒーローは既に没し、この死神を止める者は誰も居なくなった。
歴史が書き換わった。


「――――つゥかよォ」


一方通行は心の底から、もう既にこの『実験』に退屈と不満を覚え始めていた。
あれだけの時間があって、脱落した人間はたった十人弱ときた―――舐めているのか、と彼は思う。
学園都市最強の超能力者が本気を出せばこのゲームはたった数分で崩壊するというのに、他の実験動物はどこまで甘いのか。
まあ退屈な実験など慣れっこでもあった。一万人もの『妹達』を虐殺する実験に参加していた頃から感じていた。
最強の力があっても、退屈というものには勝てない。
しかもここまでの時間があって一方通行が出会えた他の実験動物はたった一人だけ。
何らかの能力者ではあったようだが、最強たる一方通行からすれば弱者もいいところの。
無敵に到達する為の実験を拒む理由はなかったが、それにしてももう少し手ごたえのあるやり方はないのか。
かつ、かつ―――と。
わざとらしく靴の音を響かせながら歩く怪物は、不満を抱いていた。

大体、この実験とはどんなものなのか。
学園都市が企画した『表沙汰に出来ない実験』であるとは理解していた一方通行だが、そんな彼でさえも今回の実験は理解不能な点が多い。

まず、何故こんなまどろっこしい手段を取るのか。
わざわざバトルロワイアルの建前を用意してまで、隠し通すことなのか。
これが実験である以上、最後に勝ち抜くのは一方通行だ―――ならば、焚き付ける必要はない。
『一方通行を殺せ』と指示して九十九の敵対分子を用意すればいい。
超能力者の頭脳で思考する少年は、訝しげに眉を顰めた。
 
参加者名簿にある知り合いの名は一つ、『第三位の超能力者』御坂美琴。
実際の所これも不可解なことである。
科学の街、異能の街である学園都市とはいえ、超能力者クラスの化物はそうそう生まれてこない。
現に超能力者とされる者は一方通行含めたったの七人―――二百三十万人の学生の中で、たったそれだけの人材。
もはや人間の枠を超えた、化物と形容するに相応しい力を振るうことの出来る、兵器にも相当するような貴重な存在。
まして第三位ともなれば、とんでもない逸材。


(オカシイよなァ、ああ、最高にオカシイぜェ、クソッタレ)


たった一人の『絶対』を作り出す為とはいえ、貴重な超能力者、それも汎用性の高い『発電能力者』を切り捨てるような真似をするか?
あの『統括理事長』が、そんな愚行を犯すとは思えなかった。
量産能力者計画に絶対能力進化実験と、傍から見れば頭のおかしいとしか思えない理論を考えるあいつらはそこまでの馬鹿ではない。
そしてもう一つの突っかかりは、主催者―――『シャルル・ジ・ブリタニア』の存在だ。

そんな人物は、聞いたことがない。
彼はまだ堕ちきっていないとて、学園都市の裏の話にも少しは精通している。
第三位を使うような実験ともなれば、一般の科学者クラスを使うとは思えない。
統括理事会のメンバークラスでなければ役不足なくらいなのだが―――シャルル・ジ・ブリタニアなんて統括理事は存在しないのだ。
郷田真弓、朝倉涼子の二名についても、聞いたことがない。
高位の、能力の便利さを買われたと見るが妥当だろうが、それでも何か腑に落ちなかった。


「ッ――――あァ、苛付くねェ」


怒りこそ現さなかったが、一方通行は内心かなりの苛立ちを覚えている。
上の連中の都合で勝手な実験に参加させられ、それでいてどうも何やら裏がありそうときたではないか。
そんな都合のいい話があるか、と一方通行は思う。

598 ◆SENAs8NCE2:2012/04/04(水) 12:03:07 ID:GXQ2NC9Y0
少年は、無敵になりたかった。
誰も傷付けぬことを望み、誰も向かってこない―――そんな理想を実現したかった。
だからわざわざ狂気の実験に身を落とし、言われるがままに同じ顔をした少女たちを虐殺した。
奴らは人形だと言った。
単価十数万、ボタン一つで製造可能な紛い物の少女。
実験過程で彼女らの『お姉様(オリジナル)』の第三位とも戦った。
 
彼女は激昂していた。
必殺の雷撃も、十八番の超電磁砲も通らなかったが。


幼い自分を取り囲む駆動鎧と兵器の数々。

この力を不用意に使えば、いつか世界を滅ぼしてしまうかもしれない。
だけど『無敵』へと進化すれば何かが変わるはずだった。
圧倒的な力が争いを生むのなら、戦う気も起きなくなるほど強くなればいい。

そうすればもう誰も傷つけない。

最初はそんな望みから始まったのだと、一方通行は潜在的ながら記憶している。
無敵になればいい。
最強の意識の片隅の記憶が彼に苛立ちをもたらしていた。



――――その時、音を最強の鼓膜が捉えた。


何かが周囲を破壊するような音。
不良集団が暴れているかのようなそれ。
巻き起こす本人の苛立ちが窺えるような、暴力的な破壊音。
その音に一方通行は目を細め、そして直後に口を三日月のような笑顔の形に歪めてみせた。
 

白い怪物は、実験遂行の為に、今度こそ逃さずに始末すると決めて音の中心に向かう。
自分の苛立ちを発散させてくれる相手には―――案外、力の無い三下が丁度良いのかもなァ、と考えて。
純白の死神が、暴れる少年の元に近付いていく。






「はぁ、はぁ、っ、ふざけんなよ」


長沢勇治は、再び破壊行動に戻っていた。
日本刀を振り回して、またも町中の物を壊して、壊して、壊して、壊す。
そんな使い方をしていればすぐに駄目になってしまうことくらいは流石の彼でも察し、ボロボロのバットで物を破壊し、日本刀を誰に威嚇するでもなく振り回す、なかなか器用な真似をしている。

告げられた死人の数は十数人。
しかし長沢が殺せた人数は零―――役立たずの、殺人者もどき。
その事実を認めたくなくて、許せなくて、長沢勇治はやり場のない怒りを再び発散する。
先程とある少年に暴力を振るったばかりだというのに、彼の中の衝動はどんどん蓄積していき、そろそろ限界を超えようとしていた。


「次だ……次に会った奴、北川の兄ちゃんと同じなんかじゃ済ませない……ぶっ殺してやる!!」


自分の居場所を知らしめてしまう危険性にも気付かぬまま、長沢は叫び、壊す。
むしろ参加者がやって来てくれれば、その分彼の衝動が発散される時が近付くとさえ考えていた。
言ってしまえば、危機感が足りなかった。
このバトルロワイアルを、彼もまた舐めていたのだろう。
自分でもすべてを殺せると、楽観視していた。
一番してはいけない、慢心。
自分の常識の中でしか物事を考えず、そう、まるでこれが『ゲーム』と同じであるかのように、彼は驕っていた。
そんな彼の為には、良かったのかもしれない。


かつ、かつ、かつ、かつ。


足音が響く。
破壊に勤しむ長沢は気付かない。
遠くからでも分かる、触れれば折れてしまいそうな華奢なシルエット。
男性か女性かも一目では分からない中性的な容姿をしているが、その相貌に宿るぎらぎらとした光は、優しさというものが無い。


「あは」


押し殺した笑い声が漏れる。
その音を聞いてやっと長沢は一方通行の接近に気付き、彼もまた野獣のような笑みを浮かべるのだった。


「へへっ、運が悪いね。今の俺は機嫌が悪いんだ」
「おォ、そォか。じゃあ存分に発散してみろ」
「―――ッ」


完全に自分を舐めた、馬鹿にするようなその態度―――長沢勇治を激昂させるには十分だった。
訳のわからない絶叫をしながら、日本刀を掲げて白い少年に突撃していく長沢。
走りながら彼は考える。
あの華奢な体をどうやって痛めつけようか。
直ぐには殺すものか。痛めつけて、泣き叫ぶ面を眺めて愉しんで、じっくりと嬲り殺しにしてやる。
舌なめずりさえして、長沢は日本刀を、微動だにしない一方通行の右肩に向けて振り下ろし―――

599 ◆SENAs8NCE2:2012/04/04(水) 12:04:53 ID:GXQ2NC9Y0
べきっ、という音を聞いた。


「は?」
「あァれェ〜? どォしたのかなァ」


日本刀が、綺麗なまでに中心で砕け散っていた。
これには長沢も、怒りも何もかもを忘れてしまう。
何が起きた。
日本刀を振り下ろしたのに、どうしてこんなに簡単に、壊れた?


「は………っ、死ね!!」
「無駄なンだねェ、それがよォ」


折れた日本刀を槍のように突き出すが、それもまた一方通行の華奢な身体に触れた瞬間に砕け散る。
バットに持ち替え、なりふり構わずその頭に向けて薙ぎ払っても、砕けるのはバットの方だ。
何が起きているのか分からないといった様子の長沢の首根っこを掴むと、一方通行はその肉体を近くの建物に向かって投げつける。
勿論ベクトル変換込みの、しかし『人体を死には至らしめない』レベルの威力で。
その貧弱な身体からは想像も出来ない威力の投げ。
長沢の体はあっさりと建物の外壁に衝突し、鈍い激痛が走る。


「………おいおい、無能力者かよ。ったく、ますます意味が分かンなくなってきたねェ」


はァ、と溜め息を吐いて空を見上げる一方通行―――今なら、隙がある。
相手に気付かれぬように攻撃すれば、あの不可解な能力は働かない筈―――そう踏んで、長沢が持ったのは注射器。
H173―――雛見沢症候群を引き起こす悪魔の薬品を、あのムカつく野郎にぶち込んでやる。
クロスボウでも良かったが、矢を装填している時間があれば対策されてしまうかもしれない。
そんな暇を与えず、驚愕しているところを叩く。
長沢の暗い瞳が、一方通行を見据え。
一方通行が視線を長沢に戻す間も与えずに、注射器片手に駆け出した。

もはや振り下ろすように、乱暴に注射器をその柔肌に突き刺そうとして――少年は絶望を知る。
注射器は、その肉体に触れる間もなく破砕した。
これで、長沢勇治の命運は今度こそ尽きる。


「なっ」
「おォ悪ィ悪ィ、言ってなかったっけな」


悪魔の腕が、長沢の首に触れる。
それが、死刑宣告だった。


「――――なぁンでか能力が抑えられてンだけどな、こちとら一万回はこンなこと繰り返してンだよ―――舐めんなよ、チンピラ」


びちゃっ。
大量の血液が長沢勇治の肉体から吹き出し、断末魔の悲鳴をあげる間も与えずにそのちっぽけな生命に終止符を打つ。
血流操作―――全身の血流を逆流させ、相手を殺す術。
只触れただけで、生命は散る。
口元に付着した返り血を拭い、一方通行は笑う。

「っく、あはははァ」

最強の超能力者の前に散った、衝動に身を任せた少年。
その屍には見向きもせずに、彼は笑う。嗤う。


「あぎゃははははははははははははははははァ!!!!」



【長沢勇治@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-  死亡】

【G-8/街/朝】


【一方通行@とある魔術の禁書目録】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:健康、返り血(中)】
【思考・行動】
1:不本意だがこの実験に付き合う
2:何を隠してやがる……舐めやがって
【備考】
※このバトルロワイアルを絶対能力進化実験だと思い込んでおります。
※能力は制限されています。反射はデフォルトは出来ません。
※反射の威力に関しては普通通りですが、建物を投げつける、気流操作で会場全体に攻撃する、などは出来ません
※この『実験』の裏には何かあると気付きました

600 ◆SENAs8NCE2:2012/04/04(水) 12:08:17 ID:GXQ2NC9Y0
投下終了です
題名:白色 の 最強
元ネタ:アニメ『コードギアス』のタイトル方式

姫萩咲実、球磨川禊 予約します

601名無しさん:2012/04/05(木) 01:51:44 ID:85o6C.lg0
一方通行、早く間違いに気付いてくれ…

602 ◆jZCpcbFowc:2012/04/06(金) 19:32:16 ID:xTY9Doh20
投下乙です。
一方通行は本当になあ。本当は誰も傷付けたくなくて目指した無敵の座なのに……
上条さん亡き今、これからの彼がどう動くか期待しています!

ではこちらで書くのは初めてになりますが、
伊吹風子、春原陽平、持田哲志、棗恭介の四名を予約します。

603名無しさん:2012/04/07(土) 00:34:40 ID:qrckrtYY0
放送を境に死亡話が多いなー
好きな作品とかキャラが多いしあまり死んでほしくないんだけどなー

2話連続のセイバーと一方さんが強過ぎる


たくさん予約があるから楽しみだ

604 ◆WzpMn05TJA:2012/04/07(土) 16:35:51 ID:lg.apCowO
『ご機嫌いかがですか皆さん?
では今から放送が始まります』

淡々とした郷田真弓の定時放送が開始された。
シャルル・ジ・ブリタニアと朝倉涼子は登場せずに郷田のみでこの放送は終わった。

「やっぱり死んでしまったのね上条君、ロロ……」

ハルヒと出会ったのは上条当麻、宮沢謙吾、黒崎一護、ロロ・ランペルージ、バーサーカー。
5人と出会い既に2人亡くなってしまっていた。
仲間のキョン、朝比奈みくる、長門有希、古泉一樹が呼ばれなかったのは不幸中の幸い。
一護の知り合いの更木剣八、ウルキオラ、グリムジョー。
しかもウルキオラとグリムジョーに至っては敵である。
化け物揃いの3人は死ななくて当然だと3人共苦労しながら戦った一護は思うのであった。


◆◆◆◆◆


辛い顔をした一護の決断でハルヒと一護とコンは少し遠く離れた。
そして、ハルヒはうなだれた。

「私のせいだ……。私は疫病神なんだ……」

仲間になる人物の1人1人が着実に消えている。
もしかしたら次は一護が消えるかもしれないし、キョン達も消えるかもしれない。
仲間が消されるならリーダーの自分が消えた方が、ハルヒは苦悩を覚える。
神にも等しい力を持つ少女は、いまはただのチェス盤のポーンにしか過ぎない。
無力で弱い、そんな駒。

「主催者を倒すって言ったお前はそれで良いのかよっ!」

一護は弱くなっていくハルヒに喝を入れた。
無力で、心すら弱くなる者を一護は死神になってからたくさん出会った。
朽木ルキアや井上織姫、阿散井恋次。
そして誰よりそれは自分自身もである。

「お前がSOS団とかのリーダーなんだろ!?リーダーだったらみんなを引っ張って行けよ!さっきコンを利用して鎧野郎から逃げたみたいに引っ張って行けよっ!」

虚、死神、破面などたくさんの場数を踏んだ一護でさえあのバーサーカー相手に殺されそうになったのを助けたのはコンとハルヒの連携プレイであった。
なかなか普通の人には出来ない事だ。
初対面の、しかも人間ではない者と組んだのだから。

「なぁ、ハルヒお前俺にSOS団に入れって言ってくれたよな」
「……?入ってくれるの黒崎君?」
「入るつもりはねぇ」

黙って聞いていたコンはガクンと驚き、ハルヒは当然一護に対して不機嫌に睨む。
が、一護にとってハルヒの睨みは特に意味も効果もない。

「お前達の学校の仲間とやらには無理だ。けど今からお前が作るSOS団なら加入しても良い」
「意味わかんないんだけど?」
「お前が――対主催メンバーとしてSOS団を結成するんだ」

対主催を目指すSOS団を作る。
ハルヒには思いもつかない話であった。
確かに本来のSOS団は部活のメンバーである。
一護はどうやっても部活メンバーには入れない。
しかし、新しく作るとしたら対主催の仲間としても覚えやすい。

605 ◆WzpMn05TJA:2012/04/07(土) 16:36:45 ID:lg.apCowO
「良い案だわ黒崎君、それ採用♪」

即決。
ハルヒに迷いはなく、その決断の早さにコンは「すげーなこの女」と呟いた反応を見せた。

「ところでSOSって助けを呼ぶ事なのか?」
「違うわよコン」

S世界を
O大いにに盛り上げるための
S涼宮ハルヒの


「ひでーなそのネーミングセン――」

ハルヒに顔面を蹴られたコン。
怒りが混ざった蹴りは鼻血を流させていた。

「おい、コンはどうなっても良いがそのコンの体は俺の体なんだから怪我させんなよ」
「俺様がどうなっても良いなんてどういう事だ一護!?」


◆◆◆◆◆


「よし、新SOS団が出来たわよ」

S主催者のバカ野郎共に
O大いに抵抗して脱出するための
S涼宮ハルヒの


「だ、か、らっ!」

涼宮ハルヒは要らねーんだよ!と叫ぶコン。
再びハルヒに顔面を(ry

「でも対主催というスタンスのチームを作るからリーダーの名前というのもわかるがもう少し何か出来ないか涼宮?」
「黒崎君がそう言うんなら……。そうね」

S主催者のバカ野郎共に
O大いに抵抗して脱出するための
S素晴らしき仲間達の


「これが最大の妥協かしらね」

素晴らしき仲間。
SOS団に付き合ってくれた仲間。
キョン、みくるちゃん、有希、古泉君。
行動を共にしたけど命を散らせてしまった仲間。
上条君、ロロ。
そして今自分を支えてくれる仲間。
黒崎君。

「これなら俺様は許せるぜ」
「あら、あんたは仲間に入っていないわよ」
「なんでだよっ!?」


◆◆◆◆◆


ギャーギャーと口喧嘩をする2人はとても仲が良いなと一護は眺めていた。

そしてこの島を脱出してそんな事をずっと言い合える様な仲間に囲まれて元の世界に戻りたいと思った。

「主催者のバカ野郎共に大いに抵抗して脱出するための素晴らしき仲間達の団か……」

長いし、涼宮ハルヒという単語は無くなっても変なネーミングセンスだとは思う。
それでも……。
涼宮の気持ちがとても伝わるネーミングだなと一護は思う。

「ぜってー負けねえ……」

仲間と協力と信頼。
これまでも、これからも、強大な相手をする時には絶対に必要な事だ。
救えなかった命を無駄にはさせない。

606 ◆WzpMn05TJA:2012/04/07(土) 16:37:01 ID:lg.apCowO
◆◆◆◆◆


(上条君、ロロ……。あなた達も精一杯頑張ってくれたんだから新SOS団の仲間なんだからねっ)

1つしかない命。
そしてこのゲームが続く限りその1つしかない命はどんどん取られ続けられるであろう。
これ以上命を無駄にはさせない。



【G-2 祭り会場周辺/朝】

【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
【装備:七天七刀@とある魔術の禁書目録】
【所持品:支給品一式、ボロの板きれ@コープスパーティー】
【状態:疲労(小)、強い決意】
【思考・行動】
1:SOS団の皆を守り、バトルロワイアルを打倒する。
2:黒崎くんと、コンと行動する。
4:新SOS団のメンバー探し。
5:上条くん、黒崎くん、ロロの知り合いも探す。
【備考】
※『涼宮ハルヒの暴走』終了後からの参加です。
※『願望を実現する能力』は完全に封印されています。
※上条当麻、黒崎一護、ロロ・ランペルージの関係者の名前を記憶しました。


【黒崎一護@BLEACH】
【装備:ダーク36/40@Fate/stay night】
【所持品:支給品一式 改造魂魄(コン)@BLEACH ランダム支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:チャドの遺志を継いで、殺し合いを止める。
2:ハルヒ、コンと行動。
3:新SOS団のメンバー探し。
【備考】
※破面編、藍染との最終決戦前からの参戦です。
※涼宮ハルヒ、ロロ・ランペルージの関係者の名前を記憶しました。

607 ◆WzpMn05TJA:2012/04/07(土) 16:48:42 ID:lg.apCowO
投下終了
何故か最初の部分がNGワードに引っかかったのであとからこれの最初に丸1個ぶんの文章が追記される予定です

タイトルは
主催者のバカ野郎共に大いに抵抗して脱出するための素晴らしき仲間達


◆SENAs8NCE2氏さん投下乙です
一方通行のチート感がすごいです
上条さんが居ない今誰がこいつを倒せるんだと思った話でありました
楽しみです


>>603
楽しみと言ってもらえるととても嬉しいです
死亡話は第1回放送の時に未明時点で既に結構な数を死亡させてしまった失敗があるので少しバラ付かせていきたいですね
7話時点で渚と佳乃の2人は多かったなと今更ながら反省…



予約ですが、来週は投下は無理になると思うので予告通りゲリラ投下になると思われます

608名無しさん:2012/04/07(土) 18:24:36 ID:PwRwloqE0
久しぶりに読みに来たけど、皆さん投下乙!
そっか、ナギのとこに現れた???って名簿外の新キャラだったんだ
名簿内の誰かだと勘違いしてたよ

609名無しさん:2012/04/07(土) 19:39:37 ID:cow/ScPUO
投下乙
おー、正統派対主催チームの結成か
やっぱハルヒの集団はSOS団がしっくりくるなw

610 ◆SENAs8NCE2:2012/04/10(火) 22:07:51 ID:sfc3Tr2.0
期限までに仕上げられそうにないので破棄します

611 ◆RmIe4rjRnw:2012/04/10(火) 22:22:40 ID:VUCpORnw0
予約を延長させていただきます

612 ◆WzpMn05TJA:2012/04/12(木) 17:28:04 ID:dYEL75WcO
阿良々木暦、仲村ゆり、戦場ヶ原ひたぎ、ランサー、中嶋直美、アストレア、井ノ原真人を予約します

613 ◆WzpMn05TJA:2012/04/12(木) 17:33:17 ID:dYEL75WcO
>>612
戦場ヶ原ひたぎ、ランサーの予約を削除します

何故入れたのかよくわかりません

614 ◆jZCpcbFowc:2012/04/12(木) 22:42:14 ID:X5MKCo3w0
予約を延長します

615 ◆RmIe4rjRnw:2012/04/13(金) 05:46:09 ID:juVF6P6Y0
申し訳ないですが、予約を破棄します

616 ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 22:47:28 ID:eJt.VrQ60
長くなりますが、予約分を投下します

617Oath Sign ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 22:48:21 ID:eJt.VrQ60
◆ ◆

定時放送が響いて、殺し合いは加速する。
結論から言えば、棗恭介と伊吹風子にとってその放送は、意気を消沈させるものでしかなかった。
恭介のあの飄々とした態度はすっかり影を潜め、風子も騒ぎ立てることをせずにしゅんとしている。
互いに―――特に棗恭介の失ったものはあまりにも大きく、風子の悲しみよりも更に深いものだった。

長年、時間を共にした最高の親友、直枝理樹。
他の仲間達のようにずば抜けた個性は持っていなかったものの、バスターズ一の良識派として、誰からも愛される人間性を持った、こんなところで死んではいけない少年。
修学旅行の悲劇を乗り越え、未来へ進むべき存在だった。
彼にならば妹を託せる。彼と自らの妹、鈴に強さを与えるために、仲間の想いを踏みにじりもした。
愛すべき親友にありもしない幻を見せて暴走させ、愛すべき親友との勝負を卑怯な手段で制した。
そんな、憎まれてもおかしくないことを次々と犯した自分にまで、彼は手を差し伸べてれたのだ。


(あと、ほんの少しだったのに)


訪れる過酷な運命を乗り越えて生きていける強さを手にした二人の仲間に、別れを告げようとした。
結局それは叶わず仕舞いだったが、もはや何が起きたとしても、どんな奇跡があっても、あの優しい親友は戻らない。
再会さえ出来ないままに、彼は一人、このバトルロワイアルの中で没した。


「こんなのってねえよ………訳分かんねえよ、畜生っ!!」


びくっと身体を震わせる風子の姿が視界の片隅に写り、溜め息と共に沸き出た怒りを鎮める。
その怒りは、勿論この事態そのものの元凶たる主催者・シャルル達や、理樹を殺したどこの誰とも知れない人間にも向けられていたが―――他ならぬ自分自身への怒りもまた、大きかった。
だらだらと、事態を軽視してもいた自分が憎い。
馬鹿みたいな話をして、あの中学生と邂逅した際の行動も思い返すと自らの無能さにヘドが出る思いだ。


こんなことなら、一刻も早く行動を起こして、どんな手段を使ってでも理樹達を守ろうとするべきだった。
どんな手段を使ってでも―――たとえこの賑やかな少女を、永遠の眠りに陥れてでも。
主催側に反抗して正義の味方気取りなんて真似をしてしまったことが、既に間違いだったのだ。
物干し竿の柄を握る力が自然と強くなり、目線は風子の小さな身体に向く。
恭介の心は、親友の死を受けて、表面上のそれよりも遥かに動揺している。
弱った心に、悪魔が囁く。


鈴、と。


(鈴まで、失うかもしれない)


リトルバスターズの未来に必要な二人がどちらも死んでしまえば、それは最悪の終わり方だ。
繰り返した奇跡も、思い出も、親友の心も、何もかもが無駄になってしまう。
たとえこの物語の結末が、皆が笑える終わり方じゃなくとも、そんな悲しい終わり方だけは御免。
刀の刀身に映る自分の顔は酷いものだった。
思っていたよりも焦燥の色を隠せていないし、目の色はまともな人間のそれとは異なっている。

風子を見る。
先刻、放送が響く前まで当たり前のようにふざけていた少女が、心配そうな目で見ている。
自分でも分かるほど様子のおかしい自分への恐怖も少なからず含まれているのだろう、恭介の目から視線を逸らそうとせずにじっと見つめている。
それでも逃げ出そうとしないのは、彼女が自分とは違う人間であることの証明だ。

物干し竿を、見る。
異常に長い刀身。
これでなら、人間の首を一撃で切り落としてしまうことだって可能だろう。

618Oath Sign ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 22:48:49 ID:eJt.VrQ60


◇ ◇


なあ、理樹。

俺達とお前が出会ってから、もう随分になるよな。

目に見えるほど塞ぎこんでたお前も、強くなった。

お前なら、鈴を守れると思ってたんだぜ。

奇跡という細いパイプで円環する世界を抜け出して生きていける。

そう思ってたのによ、どうしてだ。

どうして、お前が死んじまう。

ははっ、こんなこと言ったってお前が帰ってくる訳じゃないのは分かってるさ。

それでも、俺は言わずにはいられねえよ。

何で、こんなに理不尽なんだ。

この世界ってのは、どうしてこんな――――悲劇ばかりを引き起こす。

なあ、鈴、真人、謙吾、来ヶ谷。

俺は、どうすればいい?

俺達が繰り返した世界はもう崩れた。きっと奇跡は二度と起こらない。

そして理樹も、もういない。

お前らが大好きだったあいつは、死んじまった。

俺は、リトルバスターズのリーダーとして何をすべきなんだ?

『棗恭介』として―――どうすればいいんだ。

なあ、理樹。

お前なら、分かるか?

幾多の試練を超えて、俺を助けに来てくれたお前なら、俺がどうすればいいか答えてくれるか。

今ここで、俺はすぐにでも再スタートを切ることができる。

この伊吹風子を殺して、リトルバスターズの為に、鈴だけでも生き残らせる。

最悪、俺だけが生きて帰れば世界はもう一度、奇跡によって繋がるかもしれない。

バトルロワイアルの起きない未来に、物語をあるべき形に繋げられるかもしれない。

そうすれば、お前にももう一度会える。

リトルバスターズは終わらない。

なあ、答えてくれよ。どうしてそんな目で俺を見るんだ、理樹。

………そんな顔するなよ。

俺だって、もう疲れた。

何度も何度も一学期を繰り返して、その果てにこんなことになったんだ。

正直、泣きたいぜ。

619Oath Sign ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 22:50:00 ID:eJt.VrQ60
俺達のやってきたことは、無駄だったってことになるんだからな。

真人。お前なら、意地でもこの殺し合いなんてしないだろう。

お前は馬鹿だからな。だがそれ故に、俺や謙吾とはまた違う強さを持っている。

謙吾。お前なら、覚悟を決めるだろうな。

お前はクールを装っているが、人一倍の熱いものを秘めている。

誰よりもリトルバスターズのことを想い、それを維持するためになら何だってする。それがお前の強さだ。

鈴―――お前は、怖いだろう。

お前は弱い。

リトルバスターズを失えば、すぐに壊れてしまう。

そんなお前は、理樹が死んだことを知ったらどうする?

………まぁ、泣くだろうな。鼻水垂らして、恥も外聞もなく泣き喚く。

その後、お前は――――どうする。

理樹のいない世界で、お前はどんな風に生きていく。

っはは、俺って奴はとことん情けねえな。

あれだけ大口叩いといて結局は人任せ。仲間がいないと生きていけない、弱い人間だ。

それで理樹と鈴のことを弱いなんて、よく言えたもんだぜ。

早く決めろよ、棗恭介。

お前はリトルバスターズのリーダーだろうが。

振り返ることなんてお前には許されない。

お前に出来ることは、進むことだけだろうが―――――――!!


……………………俺は。


――――――――――――――――――――――――――――――

『優勝して奇跡を繰り返す』


『鈴を優勝させる』


『伊吹と主催に立ち向かう』


――――――――――――――――――――――――――――――

620Oath Sign ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 22:50:41 ID:eJt.VrQ60

ああ。そんなもん、考える方が馬鹿だった。

棗恭介もヤキが回ったもんだぜ。

リトルバスターズの為に俺が出来ることなんて最初から一つしかない。

奇跡を、繋ぐ。

幾多の命を奪ってでも虚構の世界を取り戻し、物語をあるべき形に。


考えるまでもねえ。

俺はリトルバスターズのリーダーだ。

なら、やるべきことはそれ以外に何もない。

文字通り骨身を削って戦って、誰も彼も構わずこの刀で袈裟斬りにするのみだ。

伊吹と主催に立ち向かう?論外だ。そんな綺麗事で現実はどうにもできない。

甘くねえんだよ、世界ってのは。

………らしくなかったな。この俺が、嘘の世界を繰り返してきた棗恭介が一時とはいえ綺麗事に身を委ねるなんて。

理解できた。棗恭介のすべきことは――――――





「――――あぁああ、まどろっこしい!!」


突然、恭介は物干し竿を床に投げ捨てて叫んだ。
『最悪の可能性』に身構えていた風子はその行動に目を白黒させるしかなかった。
てっきり、恭介は仲間の死を受けて修羅の道を往く決意を決めてしまったものだと思っていたのに。
目の前で悶絶するように顔を覆い隠している青年を見て、目をぱちぱちと瞬きさせる。
その様子はすっかりいつもの恭介のそれであり、先の影のある表情はすっかり消え去って、最初に出会った時からずっとそうだったように、話しやすい雰囲気を醸している。
しばらく、目を隠して天井を見上げる青年とそれを気の抜けたような顔で見つめる少女、という若干シュールレアリスムを感じさせる光景が続いたが、恭介は何事もなかったかのように手を下ろした。


「よし伊吹。行くぞ」
「ふざけないで下さい。風子一瞬覚悟しちゃいましたからね。いいからとっとと言いたいことを話してください」
「………はは。お前は優しいな、伊吹」


参ったな、と頭をボリボリ掻いて話を濁そうとする恭介。
しかし恭介は、内心風子の言葉に救われてもいた。
自分は一度、一瞬だろうとこの少女を殺そうと考えた。この細い首を、そこに転がっている長い刀で斬り飛ばしてやろうと考えた。
風子にもその殺意は伝わっていた。それなのに、彼女は恭介を責め立てようとしない。
『ふざけるな』と言っていながら、自らの抱えている問題を、話してほしいとも言ってくれている。
好奇心なんかではなく、心の底から恭介のことを案じてくれていることが伝わってきた。
それに応えられない自分の弱さに、恭介は苛立ちを覚える。

621Oath Sign ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 22:51:27 ID:eJt.VrQ60
『殺し合い』に乗らないことを改めて決めた彼にとっては、風子の思いやりはすごくありがたい。


リトルバスターズのリーダーとしてなら、殺し合いに乗って、奇跡を繋ぐために生き残ることこそが最善、使命だ。
だが恭介は―――棗恭介という一人の人間は、それを良しとしなかった。
親友であり弟分のような存在だった少年との永遠の別れを知って、だからこそ殺し合いを否定する。
理樹は、誰かが犠牲になることで得られる結果を喜ぶような人間ではない。
誰からも直枝理樹という少年が好かれる所以を挙げるとすれば、そこなのだ。
理樹は優しい。
仲間には勿論、それがどんな人間であっても思いやりをもって接することが出来る優しさ。
今のリトルバスターズの人員だって、他ならない『普通の少年』と呼ばれる直枝理樹が集めてきた人間がかなりの割合を占めている。それだけ彼は、優しい。
その理樹が、他の誰かを犠牲にして幸せになって―――それを、素直に喜ぶ筈がない。

理樹に隠していればいい話だが、無二の親友を騙すことは恭介の良心が許さなかった。
散々仲間を傷付け、土足で踏み荒らしてきた自分が言うのも何だが、もし仮に全てを殺して奇跡を繋いだとして、それで他ならぬ棗恭介は満足できるのか。
そんなものは穢れた奇跡だ。
穢れた奇跡の果てに待つのは、ハッピーエンドじゃない。


何も残らない、無機質な終焉だ。


それを、恭介は認められない。
たとえリトルバスターズが崩れてしまっても、自分達の幸せだった時間に泥を塗ることは出来ない。
かけがえのない時間を汚してしまうことは、許されない。


リトルバスターズのリーダーとしてでなく、棗恭介としての結論だった。
胸を張ってこれが正しい選択だと言える自信はまだなかったが、きっと、そう言えるようにしてみせる。
このふざけた茶番を終わらせ、あの見慣れた風景に帰って―――そう、言えるように。
恭介もまた、強くなろうと決めた。


だが、まだ心の中にはいろいろな感情がごちゃごちゃと混在している。
理樹の死はそれだけ、棗恭介にとって大きな衝撃であった。
格好つけることは、まだ出来ない。
長い時を共にしてきた親友を失い、それをすぐに乗り越えられる程恭介は、強くない。
風子に話せば―――自分達リトルバスターズが立ち向かってきた過酷と、今の自分がどのような存在なのかを打ち明ければ、確かにもやもやとして感情は晴れ渡るかもしれない。
しかし、この感情は、自分自身で乗り越えなければいけない、そんな気がしていた。
誰かに委ねていいものじゃなく、自分が確かな強さを得るために、打ち倒すべき最初の敵(ステップ)。
こんなものも超えられないようじゃあ―――自分は本当に、駄目になってしまう。


「でも悪い、伊吹……今は聞かないでくれないか。お前に刃を向けようとしたことについては謝る。俺は二度と殺し合いに乗ろうなんて考えない、約束する」
「うー……本当ですね? 約束ですよっ」
「ああ―――約束する」


いつもの棗さんにようやく戻りましたね、と風子は子供のような笑顔で笑う。
殺されかけた相手にこんな風に笑えることを、恭介は凄いと思った。
この少女もまた、心に確かな強さを持っている。
井ノ原真人のような力強さや宮沢謙吾のような気高さとはまた違う、言うならば優しい強さ。
今は亡き親友のものにどこか近い優しさに、自然と恭介の顔も笑顔に綻ぶ。
リトルバスターズの一員として、伊吹風子という少女を加えてやるのはーー本当に、悪くない話だ。

もしも全てが終わったなら、正式にリトルバスターズのメンバーとして歓迎会を開いてやるのもいいな―――住んでいる場所がどれほど離れているかは分からないが、そこは何とかなるだろう。
考えるだけでワクワクしてくる。
同じような一学期の時間を延々と繰り返してきて、久しく忘れていた感情だ。
鈴は最初こそ借りてきた仔猫のようにびくびくするのだが、すぐに打ち解けて仲良くなる。
真人あたりは彼女と意気投合するかもしれない、それに突っ込みを入れるのが謙吾。
来ヶ谷の目に留まればセクハラ行為をされ、それが他のメンバーにも飛び火して……目に浮かぶようだ。
そこに―――そこに、一人の姿がないことだけが悲しいが、笑おう。

622Oath Sign ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 22:52:26 ID:eJt.VrQ60
空の向こうの親友にも、新しいメンバーを紹介してやる。


(そいつは、最高に気持ちがいいな)


野球も、まだまだやり足りない。
勝ち取ってやろうじゃないか。
諦めていたハッピーエンドに、事故からの生還に―――そして、まずはバトルロワイアルに。


「何にやけてるんですか棗さん。気持ち悪いです」
「ひっど!? お前な、俺にだって笑う自由くらいあるわ!」
「えっ………!?」
「信じられないって顔を……お前は俺を何だと思っているんだ」
「頼れるロリコン変人ですっ!」
「頼れるという誉め言葉が後の二つのせいで霞んでいるーっ!!」


つい数分前の若干険悪な雰囲気など何処へやら、二人の会話は弾む。
おちょくられる恭介が突っ込み、時に墓穴を掘り時に風子に反逆の一手を打つ。
とても出会ったのが数時間前とは思えぬ会話は、端から見たなら兄妹か友人同士のようだった。
ここが殺し合いという極限の状況を忘れさせる程ヒートアップする掛け合い。棗恭介と伊吹風子、この二人が如何に『ノリが合う』二人だったかがよくわかる光景だ。
親友を失った恭介にはとてもありがたい慰め。


風子は、相手は覚えてこそいないものの、自分の願望を叶えてくれた優しい少女の死を知って、悲しんだ。
付き合った時間はそう長くない。
そして、相手は自分のことを覚えていない。
それでも、自分の為に行動してくれた『友達』が死んだのは―――悲しいことだった。
矢先に恭介が道を踏み外しそうになって、それから自らの力で持ち直した。
短い数分間にどれだけの感情の動きがあったか分からないが、今の自分に出来ることといえば、この沈んだ空気を晴らすことだけだと理解していた。
親友を亡くした恭介と、優しい友達を亡くした風子。
少女の気遣いは確かに、二人の間に漂っていた陰鬱な空気を吹き飛ばしていた。




しかし――――そこに、一発の銃声が轟く。




それは、幸運にも恭介、風子に当たることはなかった。
ちっ! という襲撃者の舌打ちが聞こえた時には、風子の手を引いて恭介が駆け出していた。
迂闊だった―――もしも相手が慎重な奴だったなら、自分と風子のどちらかが傷を負っていたかもしれないのに。恭介は内心で自分の無防備さに辟易する。
バン、バンと連続する銃声。しかし相手も焦っているのか、一発が恭介の肩を掠めた程度に止まった。
熱い、痛いというよりはただジリジリという熱さ。
生まれて初めて銃弾の痛みを知ったが、ここで怖じ気づいて止まることなんて出来る訳がない。
物干し竿を回収しそびれていることなどどうでもいい。
今は、この襲撃者を撒くことをしなければいけない。


一度目は救援だった。
二度目は交渉。
そして三度目は―――追い掛けっこ。



◆ ◇


「はぁっ、はぁっ………! あいつら、どこへ行った!?」


息を切らして、焦燥の色をありありと浮かべて、金髪の青年は怒気のこもった叫びをあげる。
春原陽平。二人の人間を殺害し、優勝することを目指す彼もまた、当然放送を聞いた。
そこで、彼の心にわずかな揺らぎが生じた。
知り合いの名前は一人だけだったが、それでも自分の知る人間が死んだという事実は大きい。
これまで殺してきた二人はいずれも見ず知らずの他人。だからこそ容赦なく、呵責の感情も無い訳ではなかったが、まだ耐えられるだけのそれだった。
放送で呼ばれた名前、古河渚。
親友たる青年、岡崎朋也の恋人。
関わりがそこまで深かった訳じゃない。
岡崎に比べればとても短い間だったが―――岡崎の心境を想像するだけで、胸が痛んだ。

恋人が死ぬ。
岡崎にとってかけがえのない存在――それが、古河渚だ。
一番大切な人を亡くすということは、どれほど悲しいのか。
春原は思う。
もしもこのバトルロワイアルに妹が、春原芽衣が参加させられていて、芽衣が死んだと知ればどうなるだろう。
きっと、自暴自棄になる。

623Oath Sign ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 22:53:02 ID:eJt.VrQ60
妹一人守れないヘタレな自分を心の底から憎み、アホみたいなミスを犯して自滅するのが落ちだろう。
今頃あいつはどうしているだろうかと、考えていると突然、自分のしていることがとてもとても、罪深いものだという意識が急に起こったのだ。

春原の殺した二人も、誰かに大切に思われていたのかもしれない。
残された人がどんな想いを抱くのか。
ふと、そんな基本的なことを考えてしまった。
殺し合いに乗ると決めたその時から、捨て去った筈の感情。
堰を切ったように溢れ出す罪悪感が、彼の心に大きな苛立ちをもたらし―――冷静さを、失わせた。


ヘタレを脱却できない自分へのどうしようもない苛立ちを抱えて歩き、歩き、歩き、そして人の声に立ち止まる。
普段自分と岡崎がしているような、遠慮の無い会話の応酬。
とてもこの状況にはそぐわない賑やかな音声を聞いた春原は、狙いもつけず苛立ちに任せて引き金を引いた。
苛立ちがあった。どうして僕だけがこんな思いをしなきゃならないんだよ、という、やり場のない苛立ちと確かな罪悪感が同時に春原の心を責め立てる。
撃つ。撃つ。撃つ。しかし闇雲な射撃が逃亡者達にヒットすることはなく、銃口から空しく白煙が立ち上るのみ。
自らの不甲斐なさに、思い通りになってくれない現実に―――募る、苛立ち。


(何でだ)


春原は頭を抱える。そこだけ見ればギャグ漫画のように、大袈裟な仕草で金髪を掻き乱す。


(何で僕ばっかりがこんな目に遭わなくちゃいけないんだよ)


訳がわからないまま連れてこられて、見せしめのように二人が殺された。
その光景には、春原とて胸糞悪いものを感じていた。
霧島佳乃と出会って、それでも初めの内は殺し合いなんてするものか、という意志があった。
それが、突然崩れた。芽衣の為に殺さなければならないと、佳乃との何気ない会話で、そう思ってしまった。柄にもなく、覚悟を決めてしまったのだ。
佳乃を殺した。
最期まで春原に刺されたことに疑問を抱きながらの、虚しい死。
名も知らぬ少年を殺した。
彼は見た感じ危なげだったし、危険人物だったのかもしれないが、自分が殺したことに変わりはない。

まさに一時の思いつきで、突発的な使命に駆られてしまった。
もしもあの時自分がヘタレの春原陽平でいられたなら、こんなことにはならなかっただろう。
こんな―――こんな気持ちには、ならなかっただろう。


「あははは。僕には結局ヘタレで生きるしか道はないんですね―――――って」


春原は息を深く、深く吸い込んだ。
普段学校で親友の青年としているコントじみたやり取りのように、しかし絶大な怒りに任せて、春原陽平は声を張り上げる。用心だとか、春原の中にそんな細かいことを気にしている余裕はなかった。


「ふざけんじゃねえよ、この野郎ぉおおおおおおぉおっ!!!」


理不尽なこの世界に、狂いきった神様の采配に、春原陽平は激怒する。
その往く道が殺人の道だとしても、彼にはその怒りを押し殺すことなど出来なかった。
こんなことさえ起きなければ、何一つ歯車は狂わず―――古河渚が死ぬことも、なかったのだ。
十三人の人間が死ぬことはなかったし、自分のように手を汚すものだって現れなかった筈だ。
決して届くことのない怒りをぶちまけ、春原は荒い息を吐く。

少しだけクールダウンした思考を回らせ、何よりまずはここを離れることにする。
あれだけ叫べば、それを聞き付けた他の参加者がやって来てもおかしくない。
それに、さっき逃した二人も―――みすみす逃がしてやる気はなかった。


「………だけどさ」


足を、二人の逃げていった方向に向ける。
覚悟の証として銃の柄を強く握り締め、打って変わって悲しげな顔で、ぽつりと呟く。


「もし最初にお前に会えてたら、きっとこんなことにはなんなかったよなぁ、岡崎」


何処かで悲しみに暮れているだろう親友の名前を呼んで、少しだけ胸が痛んだ。
彼はどうしているだろう。

渚の死を知って冷静を保てているとは思えないが、何やかんや上手くやりそうだと、勝手ながら思う。
頭の中はごちゃごちゃ、整理なんてとても出来ちゃいない。
それでも、自分の役割に従う。
二人を殺さないと―――春原は、疲弊の色を隠すことなく表し、歩き出すのだった。


□ □


「棗さんっ! どうしますか、きっとまだ諦めてないですよ」
「だろうな……あいつは冷静じゃなかった。諦めるなんて利口な判断をするとは思えない」

624Oath Sign ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 22:53:34 ID:eJt.VrQ60
肩のかすり傷に軽く応急処置を施しながら、恭介は苦笑した。
はっきり言って、その笑いの中には自分への嘲笑が混じっている。
リトルバスターズのリーダーにあるまじき失態。自分と風子のどちらか、もしくは両方が死んでいたかもしれない。
やはりまだこんな状況には適応できないようで、風子は焦燥の色を滲ませている。
物干し竿を失ってしまった彼に残っている武装は海軍用船上槍(フリウリスピア)のみ。
風子には一応護身用にFN-Five Sevenを持たせているものの、彼女に戦わせるのは避けたかった。
危なっかしいだとか、そういう以前に、棗恭介の意思だ。
光の中で暮らしていた女の子に銃を使わせて人間を殺傷させるのは、スマートな手段とは言えない。
いざとなれば彼女に頑張ってもらう時が来ないとも限らないが、出来るだけ避けて通りたい道ではある。


(………逃げるか戦うか、二つに一つだな。しかし、戦えば否応なしに危険が付き纏う。逆に逃げたとしても、相手は銃だ、無防備な背中を向けるのも得策とは言い難い……。
クソッ、せめてもっと遠くに走っておくんだったな。伊吹の体力の心配をしたつもりだったんだが)


どうすべきか。いくつかパターンは想像できるが、どれも納得のいくものではなかった。
こんな時こそ、リトルバスターズの仲間たちが居たなら、まさに無数の作戦が講じられるのだが――どう文句を言ったところでここには二人しかいない。
二人で出来ることを考えるのは難しい。まして風子はほぼ、言っちゃ悪いが戦力外の存在だ。


(こっちは一人、相手も一人。ただしこっち側にはか弱いお姫様が一人……難しいな)


しかし、不謹慎ではあるがやり甲斐のあるミッションだとも、思えた。
条件は厳しい。
クリア難易度は低いが運に左右される。
運が良ければあっさりとクリア出来るが、運が悪ければその場でゲームオーバーだ。
このミッションを攻略する手段を、棗恭介は思考する。


「棗さん、ここは逃げましょう。鉢合わせてしまわないように、賭けるしかありませんよっ」
「いや……少しだけ待ってくれ。絶対にお前には傷を付けさせない。いざとなったらお前だけでも逃がす」
「国民的アニメの大長編みたいに都合よく作戦が思い付くわけないですよっ! 最悪ですっ」


――――――――ん。


その何気ない会話の中で、何かが恭介の頭の中に突っかかった。
国民的アニメ。
子供の頃から見てきたアニメなんかでは、こういう危機的状況を乗り越える為にどうする?
単純だが、多くの場合は身代わりとなる何かを用意して敵を撒くだろう。


「それだ」
「はい?」
「行くぞ伊吹。ミッション、スタートだ」


白い歯を覗かせて、棗恭介はにやりと笑った。
耳打ちでその概要を聞かされた風子は最初こそ何か言いたげだったが―――すぐに、もうどうにでもなれの精神に目覚めたらしい。
それでこそリトルバスターズの一員だ、と恭介は思う。

制限時間は不明。
十秒かもしれなければ、もしかしたら永遠かもしれない。
成功確率は不明。
零かもしれないが、百かもしれない。
そしてそれを必ず百にする、それがリトルバスターズだ。
『リーダー』は、静かにミッションの開始を告げる――――――。


■ ■


「あぁ……くそっ! どこに行きやがったんだ、あいつら!!」


誰の目から見ても冷静とはとても言えないような心理状態で、春原は足音を隠そうともせずに校内を闊歩する。
二人の人間を仕留めた凶器を片手に、苛立ち任せで無駄撃ちをしないように必死に堪えていた。
何も喋らずに歩いていると、春原の記憶、何だかんだで楽しかった学園生活の思い出が去来する。
殺し合いの何処かで深い哀しみに暮れているであろう岡崎朋也。
坂上智代は、こうしている間にも生徒会長として正義を執行しているのだろうか。彼女ならば、同じく殺し合いを善しとしない面子を束ねていそうだ。
古河渚は、あの大人しい女の子は、もういない。

625Oath Sign ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 22:54:10 ID:eJt.VrQ60
そう考えるだけで春原の心は、岡崎への同情めいた感情に包まれる。

こんなもの、ただの甘えでしかない。
自分の犯した罪から逃げるために、親友を案じるという善の行為に身を預けているだけ。
自分の尻拭いも出来ないヘタレを脱しようとして、むしろ悪化させてしまったような気さえ、する。


(………物音?)


自己嫌悪に陥りかけていた春原を唐突に引き戻したのは、下の階から響く物音だった。
何かを運搬しては設置し、運搬しては設置し―――というような、単純作業を連想させる音。
時折挟まる教室のドアの開閉音に、更に耳を澄ませば僅かながら人の話し声さえ聞こえる。
春原は、不敵な―――だが、やはりぎこちない―――笑顔を浮かべ、出来る限り足音を潜めて歩く。

見つけた、間違いなくさっきの二人だ。
何をしているのかは知らないが、どんな対策を講じたところでこちらは銃。
その威力は、先程の少年で実証済みである。
もはや袋の鼠。そのささやかな対策すら撃ち壊し、ここで確実に二人の参加者を減らしておく。
『春原陽平』ではなく、『殺人犯』の心で考えた。
大分手慣れた手付きでベレッタM92を弄び、静かに静かに、下階の二人の元へと向かう。
小綺麗な階段を降りて行く。物音が止んでいたが、ここまでくればもう気付かれても構わない。
さてどんなことをしてくるのかね―――、と、階段を降りきって廊下の先を見据えた瞬間。


「な、何だこりゃ? ははは、子供のお遊びかよ」


――――廊下の至る所に、大量のゴミ箱が設置されていた。


意気込んでやって来た春原からすれば拍子抜けもいいところだ。
ゴミ箱の中に隠れてやり過ごそうとするなんて、あまりにも安易な手段。
春原は笑いながらベレッタM92を構えると、手近なゴミ箱を一つ、銃撃した。
耳をつんざくような破裂音から一瞬遅れてゴミ箱が倒れる―――中には誰もいない。
風穴を開けて倒れたゴミ箱を乱暴に足で蹴り飛ばし、手近なもう一つにぶつけた。ゴミ箱は動かない。

当たりだ、と思い春原はベレッタM92の引き金を何の躊躇もなく引く。
しかし、その中に人の姿はない。
中に入っていたのは段ボールを丸めて、ガムテープで床に固定したダミーのみ。
こんな子供騙しに引っ掛かった事実に確かな怒りを覚えながらも、春原は三発目の弾丸を放つ。しかしその中身はまたも空。人どころか物の一つもない。
弾丸の残りは既に七発を切っている。


「ちっ! また外れかよ!?」


いい加減にしてくれ、と春原は思う。
残っているゴミ箱の数は三個。
近くに『器具室』と書かれた教室がある為、恐らくはそこから持ってきたのだろう。
こんな小細工にそれだけの手間を掛けるぐらいなら少しでも遠く離れておけばいいものを―――。
引き金を三度、引く。
狙いも定めない闇雲な射撃ではあったが、それらは全てゴミ箱に命中。
そして、春原陽平は―――驚愕した。


「いない………!?」
「いざ、覚悟ぅっ! うまっうー!!」


呆然としている春原の背中に、丁度彼が素通りした器具室から飛び出してきた人影が勢いのある飛び蹴りを喰らわせた。
綺麗に入ったその一撃の衝撃に春原は跳ね飛ばされ、ベレッタM92を思わず取り落としてしまう。

626Oath Sign ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 22:54:52 ID:eJt.VrQ60
人影―――顔面を趣味の悪い奇抜なマスクで覆い隠した不審な人物―――は素早くそれを拾い上げると、自分のディパックに詰め込んでしまった。
圧倒的な一瞬に春原はしばらく呆けた面をしていたが、自分が一杯食わされたことに気付く。
廊下一面にゴミ箱が置かれていれば、状況が状況なだけに、中に誰かが隠れていると思うだろう。
しかしそれはブラフ。
本命は、殺人犯をノックアウトするための一撃を完璧に決めること―――!


「て、てめえ! 銃を返しやがれ!」
「返す馬鹿がいるか! うまうー……っと。へっ、俺達の勝ちみたいだな」


マスクを外すと、端正な顔立ちの青年の姿が露になった。
何であんな変な格好をしていたのかと不思議に思ってしまう。
本当はあのマスクは、装着した者の身体能力を格段に向上させるアイテムであったことなど、春原には知る由もない。

ディパックにはまだ、一本のサバイバルナイフが入っている。
これを使って突進でもすれば、運が良ければあの青年に刺さってくれるかもしれない。
マスクを外した青年、棗恭介と春原の視線がぶつかる。
どうするか。先の動きを見るに、彼のよく知る生徒会長と同等クラスの身体能力を持っているとみていい。
春原の葛藤を見透かしたような恭介の眼が腹立たしい。
だが、同時に隙だらけでもある。
今なら、闇雲な突進でも十分ナイフを刺せるだろう。
未だ逃げたもう一人の所在が分からないのが気がかりだったが、ここで排除しておくのもいい。
どうせ、いずれ死んで貰う命だ。
覚悟を決めた春原が、そのディパックから一人の少女を殺めた刃を取り出し、構える。


「春原さん………どうして」


開け放されたままの器具室から、幼い声がした。
聞き覚えのある声だった。

「伊吹っ! 今は危険だって―――」

慌てて静止しようとする恭介の隙も、春原の眼には入らない。
姿を現した少女。
小柄で童顔、春原の同学年に比べれば随分と幼く見える。
春原陽平は彼女を知らない。

627Oath Sign ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 22:55:24 ID:eJt.VrQ60
記憶の中から消え去っていて、忘れ去っている。
伊吹風子の記憶にだけは残っている、一方通行の思い出。
彼女からすれば、彼もまた大切な友人だ。
春原は、何故だか進めずにいた。
この見知らぬ少女を殺してはいけない、そんな観念に捉われてしまう。
潜在的に眠る『忘れ去った筈の記憶』が、風子との思い出を盾に春原を止めていた。
つまり、春原陽平には、知り合いを殺す度胸が、欠けている。
そんなことにも気付けず、棗恭介に組伏せられるまで、何か行動を起こすことさえ忘れてしまっていた。


「っく、離せ! 僕は―――」
「いいから大人しくしておけっての。別にお前の首を獲ったりする気はない」
「そうですよ春原さん」
「…………ふざけんなよ、ほんと」


自分の不甲斐なさに歯噛みしながら、春原は奇妙な感覚を必死に拭い去る。
伊吹風子。彼女の姿を見てから―――どうしても、あれだけ強く固めた覚悟が揺らいでいるのだ。
殺してはいけない、と思ってしまう。
殺したくない、ではなく殺してはいけない。
春原の中の最低限の道徳心が、殺意を良心で圧迫していた。
さっきだって、無理をしてでも突撃すべきだったのだ。
そうすれば、この厄介な男を殺せずとも、傷は負わせられたろう。
ベレッタM92もサバイバルナイフも、既に春原の手にはない。
これでは優勝どころか、まともに生き延びることさえ難しい。
 
恭介は、春原を押さえ込みながら、一つの疑問を懐いていた。
ひとえに、風子と襲撃者―――春原の、温度差。
記憶に齟齬が生じている。
だが思い出は微かに春原の中に残っている。
これではまるで、『永遠の一学期』のようだ。

628Oath Sign ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 22:55:52 ID:eJt.VrQ60
ごく僅かな人間だけが記憶を持ち続け、他の者は記憶を失う。
そしてそれが断片的に残ることもある。潜在意識だ。
今の二人の様子は、それに酷似していた。
尤も風子があんな過酷を背負っている風には見えなかったが、それでも疑問は残る。


「……あーもう! 分かったよ! 分かったから離せって」


観念したのだろうか、春原は抵抗の一切をやめる。
武器も取り上げられて、そして二対一のこの場では、暴れたところでどうにもならない。
春原は素直に、観念したのだ。
敗北を認めた、とも言える。
それでも殺し合いを止めるという考えはない―――あくまでこの場は従うだけである。


「……良いだろう。その状態じゃ何も出来ないだろうしな」
「ん。……聞いてもいいかな、君」
「なんですか、春原さん」
「君と、さ……どっかで、会ったことあるよね?」


ぴたり、と風子の動きが一瞬完全に停止した。
表情が一瞬寂しげなそれになり、だがすぐにまた笑顔になる。


「………今は、思い出せなくてもいいです。いつか、思い出してくれたら風子は喜びますよ」


それっきり春原は腕を組んで黙り、うんうんと唸っている。
大袈裟なまでの『思い出そうとしている』仕草を見て恭介はふと、この春原陽平という青年はひょっとしたら『バカ』に分類される人間なのだろうか、と思った。
思わず笑った。
こいつ、面白え奴だな―――と、心から笑った。
ついさっきまで殺気ビンビンで襲い掛かってきていた人物と同一人物とは思えない。
ここが殺し合いのゲームであることが惜しい。


「棗……とか言ったな。お前今すげえ失礼なこと考えたろ! 主に僕が馬鹿だとか!!」
「よく判ったな……ひょっとしてお前、エスパーか」
「なんですと! 春原さんはエスパーでしたかっ!? 最悪ですっ!!」
「何で!?」


端から見たなら、あまりに平和ボケしたバカ騒ぎ。
ここが殺し合いであることさえ忘れてしまいそうになる。
あまつさえ三人の内一人は殺し合いに乗っているだなんて、信じられるだろうか。
風子は向日葵のような笑顔で笑っている。
恭介も、堪えきれなくなったのか時折爆笑する。
春原は怒って反論するが、それでも先程の殺気はすっかり消えていた。


「やっぱいいな、こういうのは」


恭介が笑いながら溢したその言葉には、少し違う意味合いがあった。
無限に世界を廻る内に、素直に心から楽しむという行為を大分、忘れてしまっていた。
こういう賑やかなバカ騒ぎこそが、自分達の本領だ。 
ぎゃーぎゃー言い合っている二人を眺めて、ふとそんなことを思う。
遠い彼方の、親友にも見せてやりたいくらいだ。


「あんたも何とか言えよ!」
「そうだな……春原が便座カバーを食べたって話だったか」


「そんな話僕ら一瞬でもしましたかねえ!? ……そして便座カバー」
「ぶはっ」
「春原さん……自宅の便座カバーを携帯しているなんて……きもいですっ」
「支給品だったんだよ! 僕はそんな趣味嗜好を持ってねえよ!!」



便座カバー片手に怒鳴る春原。
しかし、刻限は刻一刻と迫っていた。
精神を蝕まれ、壊れてしまった一人の少年。
妹の死を受けて『黒化』し、棗恭介の親友を殺めた張本人である。
少年は今、少年であって少年ではない。 
いや、そう言うと少しばかりの語弊がある。
『黒化』を超えて、更なる異物に汚染され、もはや人間とは呼べない存在になっているのだ。
怪異―――『レイニーデヴィル』。
三つの願いと引き換えに人間でなくなってしまう『腕』。
どんな願いをかけたのかは最早知る術はない。
全てはもう手遅れで、彼はもう破壊を尽くす、それだけの化け物と成り果てている。

彼は、もうすぐ近くまで迫っていた。

629Oath Sign ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 22:56:25 ID:eJt.VrQ60
◇ ◇


「 」


持田哲志という名前だったその生物は、異形と言わざる他なかった。
虚ろな瞳に、人間とは思えぬ『化け物』の腕。
腕が、人間のものから『猿』のようなそれへと変貌している。
黒化し、狂いきった少年のなれの果てであった。
これからどうするかの行動方針さえ、今の哲志にはたった一つしかない。
目についた参加者を全て薙ぎ倒し、破壊し―――皆殺しにすることだ。
願いの対価として変貌した少年。
彼は確かにレイニーデヴィルの怪異に願った。


あまりにも歪んでいて、それでいて一人の『兄』としてはとても正しい願望を、かけた。
その結果がこれだ。自我の殆どを消失した怪物。
何の変哲もない学校の廊下を、異形の人型が歩いている姿は、恐怖を通り越してシュールですらある。
辺り構わず全てを破壊し尽くす愚行こそ犯さねど、只標的を探し求めている。
妹の仇討ちのように、間違った復讐の為に。
かん、かん、かん、かん。階段を緩やかに下りていく。

その先にある三人の存在には気付かずに、しかし無情にも哲志は歩を進める。
手摺など使わずに、足音を隠そうともせずに。
悪魔に願い、自分を失った少年の破壊が、すぐそこまで迫っている。



■ ■


静寂が、吹き荒れた。
伊吹風子が、目を見開いた。
春原陽平は静かに冷や汗を流し。
棗恭介はマジかよ、と苦笑いするしかなかった。
異形のシルエット。
静かに近付いてくる人の形をした何か。敵対の様子が嫌でも分かるほどの殺気を放っている。
次の瞬間、まさに刹那的に、その異形、持田哲志だったものが、転がるゴミ箱を掴み上げた。
べき、べきと音を立てて罅割れたゴミ箱を、哲志は片手で恭介達に投げつける。


「避けろ、春原っ!!」


片手で投げつけられたとは思えぬ速度で飛んでいくゴミ箱を間一髪で避ける。
喰らえば死ぬことはなくとも、ダメージが少なからずある。
あの怪力の前に隙を作れば、まず間違いなく命取りになってしまうだろう。


あれが何なのかは分からない。
猿らしき腕をした、元々は人だったもの―――そんな漫画みたいな存在が実在するとは。
屋上のあいつを呼んできたいくらいだ。 あいつは相当強いだろうし、自分の近くで暴れる輩がいれば鎮圧しにかかる筈。しかし、如何せん距離が遠い。



「おい棗っ! 何なんだあいつは!?」
「俺に言われても分からん……只一つ言えるのは、なかなか不味い状況だってことだ」


そう、この状況はかなりまずい。
人かどうかも分からないようなものが相手では、常識の範疇の対抗策が通ずるかも分からないのだ。
正体不明の敵。銃器を持たずとも、あれの強さは測れる。

630Oath Sign ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 22:57:08 ID:eJt.VrQ60
春原に使った作戦はもう使えないし、そもそもこれは押さえ付けられない。


いわば乱入クエスト。
伊吹風子は戦えない。
春原陽平は、殺人者だ。
残る自分でも、あれを倒しきれるかは分からない。
ハッキリ言って相手をしたくない、というのが本音だ。
例のマスクを使っても、あれに追い付けるかどうか。
春原から奪ったベレッタM92の柄を強く握る。
やるしかない。
逃げようとして誰かが殺されるよりかは、戦った方がマシというものだ。


――――たとえ、殺してしまってでも。
そんな覚悟は、風子と出会う前から完了している。
殺すか殺されるかの試合を、勝たねばならない。
持てる力を全て使い、ありとあらゆる戦略を駆使して乗り越えねばならない関門だ。
マスクザ斎藤のマスクを勢いよく被る―――それだけで、溢れんばかりの力がみなぎるのを感じた。
手にはベレッタ。
あの敵を討てるかは不明。効果があるかどうかもまだ実証できていない。


「棗さん!」
「春原、今だけでいい、伊吹を頼む」
「いいけどさぁ……本当に戦る気かよ?」


マスク越しの笑顔でそれに応答する。
ベレッタM92を右手に握り締め―――持田哲志に、突撃する。
遠くから無駄撃ちを重ねる方がリスクは低いが、短期決戦で済ませるなら距離は近いほどいい。
哲志が恭介を視認する。
猿の腕を振り上げて、人間とは思えぬ速さで恭介に迫った。


「チィッ!」


異形の腕の間合いから逃れようとしながらも、ベレッタの引き金を引く。
しかしそうは問屋が卸さない―――哲志はそれを、横への跳躍で避けてみせる。
銃弾への対応速度もまた、どう考えても人の業ではない。
こうまでくると笑いしか出ない―――それほどまでに、この少年の姿をした怪物は、異様だった。
二発目。避けられる。
苦笑しか出ない。
迫ってくる怪物に、至近距離から銃弾を叩き込もうとするが、それも通じない。


恭介の懐に潜り込まんとした怪物の腹に容赦のない膝蹴りをかます。
流石に怪物も仰け反ったが、不完全ながらも振るわれた腕は、恭介のマスクを、見事に破壊した。
ベレッタの弾丸は、またも当たらない。



「棗さんが……あのままじゃ」


一方的すぎる戦いを遠くから眺める風子は、春原に押さえられていた。

631Oath Sign ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 22:57:40 ID:eJt.VrQ60

棗恭介は一度どころか、何度も風子の窮地を救っている。
その彼が死んでしまうなんてこと、絶対にあってはならないと風子は思う。
恭介に持たされていたFN-Five seven。これでなら、自分も戦えると思ったのだ。
だが、春原はそれを止める。分かるからだ。

ここで風子が参戦しても、それはあの青年にとって足手まといだ。
怪物の攻撃の矛先が風子に向く可能性だって最悪あるだろう。
それを、勝利のためとはいえ恭介が望むとは思えない。
風子を任せられた自分は、何としてもそれを全うする。
今ならば、誰も春原をヘタレとは蔑めなかったろう。
いや―――これもまた、一つの変化だったのかもしれない。


「離して下さい春原さんっ……! あのままじゃ、棗さんが死んじゃいますよっ!!」



そうだ。
勝率零とは言わないが、それは相当低い。
棗恭介の勝利は絶望的だ。



ここであの青年が死んだなら、この小さな少女はどうするだろうか。
絶望はしないだろう。ただ、彼の死が自分のせいであるという責任を感じるのは間違いない。
春原陽平は思う。
妹の為に人を殺す人間と、全てと引き換えにでも人を守る人間―――どちらが、正しいのだろうか、と。


(僕は……どうすればいいんだよ………)


戦況はどんどん悪化していく。
悪魔と生身の人間の戦いなんて、最初から分かりきっていることだ。
来たる終幕を待つ春原は、きつく奥歯を噛み締めた。



◆ ◆

やばい―――恭介は分かりきったことを独白する。
自分とて容易くどうにかできる相手でないことは承知していたが、これほどとは。
弾丸を避け、凄まじい剛力の腕を振るう。それだけなのに、攻略できない。
銃弾は残り三発。下手な鉄砲数撃ちゃ当たると言うが、これは素直にまずい。
悪魔のような腕の一撃を避ける。
その瞬間、哲志がもう片方の拳を恭介の胸板に叩き込んだ。
がはっ、と息を吐き出す。
あばら骨が折れたかと思う衝撃だったが幸運にも、咄嗟の受け身が功を奏したようだ。


(どうする)


怪物から距離を取る。
この距離なら体勢は立て直せるだろう。
あの怪物、持田哲志に一発喰らわせるには、精々零距離の密着した状態が必要だ。

632Oath Sign ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 22:58:11 ID:eJt.VrQ60
しかし、それは間違いなく捨て身の一撃になる。
強烈な一発をかませるかも分からない賭けでありながら、こちらの被るリスクは莫大。

これがリトルバスターズのリーダー、棗恭介最後の戦いか。


弱気なことを考えて、彼は苦笑しながら首を横に振る。
死ぬわけにはいかない。リトルバスターズのリーダーが、こんな下らないところで死ねる訳がない。
必ずこいつを倒す―――と、改めて恭介は決意した。
まさか、銃弾を撃ち込んでもびくともしないなんてことはないだろう。心臓に撃ち込めば、間違いなく勝てる。


(心臓を破壊する。だが、どうやって当てる)


零距離でもなければ攻撃を避けられる相手を、どうやって仕留めるか。
しかし怪物は待つことなく、毛むくじゃらの腕を振り上げて、恭介に突進する。
バンッ、と一発の銃弾を放つ。
頭を目掛けたそれは首の一振りで回避され、怪物の動きを静止させるには至らない。
絶望的。希望は残り二つだけ。
五発を外してきて、残りの二発で的中させられるとは思えない。
物干し竿という刀があれば、まだこいつへの対処も数段楽だった。
刀と銃の両方があったなら、こいつを翻弄してやった。
しかし、無い物を願っても意味はない。

真っ直ぐに、今は歩を止めている哲志の胸に向けてベレッタを構える。
狙うは心臓。腹を破っても動きは止められるだろうが、確実性が高い方が望ましい。
チャンスは二度。致命的な隙をあの怪物が見せたその一瞬がチャンスだ。
一度でも外せば、残るは一つとなる。
必ず当てる。


「さあ、やろうぜ化け物」


挑発的に哲志を煽る。
恭介は何の恐れもなしに、哲志の突撃に備えて銃を構えていた。


哲志が何度目かも分からない突進をする。
恭介はそれに向かい銃の照準を目見当でつける。
距離が近くなり、恭介の緊張も最大限の高まりを見せていた。
チャンスは二度と言ったが、本来は一度しかないと言っても過言ではない。
引き金を引けば、当たったにせよ外したにせよ隙というものが必ず生まれる。
そこを突かれれば、ひとたまりもない。
引き攣る口元を無理矢理の笑顔に変えて、恭介は化け物を待ち受ける。

飛び掛かるような体勢から放たれる打撃を軽く避ける。
隙を生ませるまで、こうやって紙一重の戦いを続けなければならない。
一発でももらえば、その時点で『作戦』は崩壊する。
大きく異形の腕を振りかざした哲志の顔を見て、恭介は言った。


「そうだ、来い―――お望み通り撃ち落としてやる」


挑発なんて行為が通じるだけの理性が残っているかは分からない。
だが、こうでもしなければ気が休まらなかった。
一歩間違えば即・死が待ち受けている。

633Oath Sign ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 22:58:38 ID:eJt.VrQ60
ここだ)



好機。
哲志の振るう剛力をかわしつつ、そこに生じる僅かな隙を見つける。
棗恭介の一世一代の大勝負の時は、刻一刻と迫っていた。
逸る思考を押さえつけ、必死に確実な一瞬を待つ。
いい加減に体力も厳しい―――これ以上の長期戦は望ましくない。

しかし、現実は無情にも恭介の予測の範囲を超える。
哲志が、真上に飛び上がったのだ。
毛むくじゃらの腕を、落下しながら恭介に向けて叩き込まんとする。
たまらず一発の銃弾を放つ。
それは確かに異形の腕を捉えた。やっとまともな当たりをかますことができた。
それでも、持田哲志だった怪物の動きが止まることはない。
一瞬だけ怯みこそしたが、決定的な一打にはなり得なかった。
攻撃を受けた床は皹が入り、氷の板の上に大きな石を落としたかのようだ。


哲志が腕を振るう。
本当に体力がまずい。これだけ連戦していれば疲れくらい感じないとおかしい。
あと一発チャンスは残っているが、確率はもっと低くなった。
集中力というものがある。どれだけ集中しているつもりでも、少しずつ蝕まれていく。


(畜生………終わり、なのか?)


走馬灯のように蘇る生涯。
リトルバスターズの仲間たちのことばかりが脳裏に去来し、恭介の戦意を削ぐ。
今は亡き親友、直枝理樹の元へ逝くのも悪くないと、らしくない弱気さえ生まれていた。
哲志はその隙を見逃すほどの理性を持っていない。
唇を噛み締めて哲志の隙を窺う恭介に、介錯と言わんばかりに腕を振り上げる。
引き金を引くがもはや狙いすら正常に定まらない。恭介の身体は攻撃に晒され破砕する


「避けろ棗っ!!」


―――――ことはなかった。
別角度からの銃弾が、その脇腹を僅かだが確かに抉ったのだ。


哲志の注意が、銃弾の飛んできた方向に反れる。
恭介はその瞬間を利用して距離を取り、援護した人物の顔を確認した。
特徴的な金髪。どことなく馬鹿っぽさを表している髪の毛。
伊吹風子のものであった銃――FN-Five sevenを構えている。
あまりにも都合のいい、だが最高としか思えない展開に、恭介の中の消えかけていた闘志が再度沸き立った。


春原陽平が、そこにいた。


最初は恭介達を殺しにかかってきた。
だが今は、心の中にうじうじと蠢いていた弱気を拭い去り、立っている。
棗恭介が為せなかったことをたった一手で為し遂げて。


「棗、てめえ! あれだけ偉そうな口叩いといて殺されかけてんじゃねえよ!」

634Oath Sign ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 22:59:07 ID:eJt.VrQ60
しっかりと持田哲志の方を見据えて、銃を構えながらそう言った。
流石に二発目は当たらなかったが。
行動を根本から抑制することは出来なくとも、あの傷は決して無意味じゃない。


「っぷ、ははは!! 悪いな春原、ちっと油断しちまった!!!」
「棗さん、これ!」


風子が、最初の時と同じように―――銀色の光沢を放つ刃を、渡してくれる。
やけに長い刀、失った筈の武装、物干し竿。
これがあれば棗恭介はまだ戦える。
これを偶然とはいえ拾っていてくれた春原に感謝しつつ、彼は再び前線へと赴く。
ただし、今度は少し違う。 今度は春原もいる。
春原陽平は恭介ほどの運動神経は有していないだろうし、あれと至近距離で戦わせるのは無理だ。
あくまであれと真正面から張り合うのは、自分。


長刀を片手に、疲労など忘れて飛び出す。
春原には援護を任せ、自分はあれと正々堂々正面から殺し合うのだ。
死ぬかもしれない。だが恐れてはいられない。
真っ直ぐに駆けていき、持田哲志のシルエットに向けて容赦なく振りかざす。
止められる。
掴み取られた、というべきか―――だが、ここまでは予想通りの展開である。


「せいやぁぁああああぁぁあっ!!」


春原の掛け声と共に、哲志の頭をゴミ箱が直撃した。
春原の投げたそれは大したダメージにはならなかったが、動きを一瞬だけ止める。
そこに飛び込んでいき―――今度は、突く。
生身の方の肩に切っ先が刺さり、怯んだところに春原が銃弾を放つ。


連携攻撃でなら、これを翻弄することはとても容易い。
破壊しか考えていないような奴だ。
赤い赤い炎と敵を称するなら、こちらは策を弄する青い青い炎となればいい。
奇策でも、愚策でも、力だけの馬鹿を翻弄するには十分すぎた。
戦況は、刻々と恭介達の側に傾き始めていた。
春原がこれ以上の進撃は厳しいと判断し後退する。


「やるじゃねえか、春原」
「がむしゃらにやってるだけなんですけどね」
「何でもいい。まずはこいつをどうにかするとこから始めようぜ」


肩を刺され、脇から血を滴らせていながら、怪物の動きは止まらない。
刺されたことなど意にも介さずと言うように、片腕だけでも背水の陣さながらの強さだ。
風子を狙うという考えがないのがせめてもの救いか。
春原の目的は不明だ。
本当に改心してくれたのかどうかは分からないし、信頼してしまうのは浅はかなのかもしれない。



「棗さーん! 春原さんも! 頑張ってくださいっ!!」


他力本願などではない。自らの実力を弁えているからこそ、二人の邪魔をしないために。
少女は、応援という手段で恭介達と共に戦場に立つ。

635Oath Sign ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 22:59:35 ID:eJt.VrQ60
矛先が変わるかもしれないのに、気にせずに。
春原陽平は、そんな愚直な気持ちを裏切れるような人間ではないと思う。
少年漫画的な考えであるが、棗恭介は心からそう信じることにした。


(そろそろ終わりにしないと、流石に俺も―――春原も、やばいだろうな)


全体を見渡すリーダーの視点で戦況を冷静に測る。
確かに戦況は好転しつつあるが、それでも身体は嘘を吐かない。
棗恭介の体力はもうじきに限界に到達し、休憩を欲するだろう。
戦闘経験など皆無に等しい春原なら尚更、溜まるストレスは大きいはず。
バトルで鍛えている自分とは違うのだ。
この戦闘を終わらせる。
何としてでも生きるために作戦を講じる。
綺麗な勝利でなくとも、こちらが誰一人死ななければそれで勝利だ。


そして二人の少年は、たった十数秒の休息を終える。
片や限界直前、バトル経験は多いリーダー。
片やまだ余裕があり、こういったバトルの経験は少ないヘタレの不良生徒。
互いの欠点を互いに補って戦ったが、恐らく次の休息はない。
―――次がある前に、勝負を決めるからだ。
風子の応援を受けて、言葉はなくとも二人は同じことを考える。

春原が構える。
恭介も構える。
そして持田哲志も―――異形の腕を、構える。

哲志が先に足を一歩前に出し、狂った瞳で突進する。
標的は銃を持ち、尚且まだ余裕がある春原。
その突進の射線上に恭介は飛び出し、異形の拳の重い一撃を物干し竿で受け止めた。
駄々を捏ねる子供のように何度も何度も物干し竿を拳が打ち付けるが、傷一つつきはしない。


恭介は内心、その予想以上の強度に驚いていた。
止められても二、三度が限界だと思っていたのに、これ程とは。
彼には知る由もない話だが、それは単なる長刀ではない。
伝説の剣豪、佐々木小次郎の振るった名刀である。
たかが怪物一匹の猛攻で砕かれるような柔な作りなど、していないのだ。
それでも衝撃はしっかり恭介に注がれる。
全身に蓄積していく小さなダメージに目を細めながらも、哲志の腹に再度靴底を叩き込むことで状況を打破した。
春原が間髪入れずに引き金を引く。しかし当たらない。

こんなものは予想通りだ。
あれだけ攻撃を避けてきた奴に、そう易々と攻撃が当たるとは思っていない。
だが、その避けた隙を突けば、話は別。
物干し竿を構え、疲労を訴える肉体に鞭打って恭介は駆ける。


それを容易く受け止める哲志だが、彼の右腕は今使用できない。
物干し竿を止めているその時間こそが怪物、持田哲志の最大の隙となる。
が、そう簡単に仕留められてくれる程怪物は甘くなかった。
教室のドアを勢いよく異形の拳で破り、適当な机を恭介に向けて投げつける。
当然防いで見せる恭介だが、その威力はやはり、大きい。
何せ金属だ―――頭に当たりでもすれば、生命の危機さえある。
あの力で遠隔攻撃をされると、最もまずい展開になる。
春原はやけくそといった風に銃弾を放つが、やはり空間が広がった教室の中ではもっと容易く避ける。

636Oath Sign ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 23:00:21 ID:eJt.VrQ60

次の瞬間、春原に向かい机が飛ぶ。
ギャグのような光景。しかし春原はそれを防ぎきれず、誤って左の腕で防いでしまう。


「があっ!」

呻く春原に、追撃を放とうとする哲志。
だがそれより早く哲志に斬撃を放つ恭介の猛攻でそれは遮られる。
あの入り方では、折れはせずとも罅くらい入っているかもしれない。
もうあまり激しくは戦えない―――状況は一気に悪くなった。
机を薙ぎ倒して暴れる哲志を押さえるように物干し竿で食い止めるが、このままではじり貧。


「―――ぐ、っ………春原、一度ここから出るぞ」


無言で頷き教室を出ていく春原に続いて、恭介も何とか脱出する。
あの中では分があまりにも悪い。
机を飛び道具として放り投げて来られては接近さえままならない。
それ以外にも。
春原の負傷。
より早く決着をつけねば、本当に危険だ。


「……休む暇もなしか」


ドアのあった場所から姿を現す、怪物。
手には机の折れた『脚』―――それでも、あの力で使ったならば立派な槍となる。
いよいよ、最終局面だ。
脳を必死に回転させ、一つの正解を掴み取らんとする。
FN-Five sevenの残弾もいつまでもある訳ではない。
凭れていた壁から身を剥がし、物干し竿を水平に構えて見せる。
不思議とそれは、本来の持ち主たる剣士の必殺によく似た構えであった。


「行くぜ」

剣道さながらの、真剣での突き。
刃を降り下ろすよりも防ぐことは容易ではないし、上手く入れば威力だって相当なものになる。
直進していく刃を止めようとはせずに、真横に身を反らし掠り傷に止める哲志。
このままでは、生じた大きな隙をいとも容易く突かれ傷を負うだろう。

しかし、そうはいかない。
銃弾が、毛むくじゃらの異形の腕を掠め、ほんの僅かだが軌道を反らした。
そのおかげで、物干し竿の防御範囲の圏内へと、収まる。
重い。
無理な体勢だけに、今までの攻撃より体感重量が増す。
並の俗刀であったなら、確実にその刀身は砕けていただろう。
そして、春原陽平もまた動き出す。
傷ついた腕を庇うようにしつつ、恭介を援護するために丸腰で駆け出したのだ。
迎撃しようとする哲志だが、それを許す恭介ではない。


体力の限界を超えて、ただ哲志を押さえる。
そして、春原陽平の横薙ぎの蹴りが―――持田哲志の顔面を、捉えた。
竹蜻蛉のように舞い、転がる哲志。 凶器となり得る机の脚を春原が奪う。
―――体勢を立て直すが、頭を打ち付けたことで鈍痛でも走っているのだろう。 僅かだが、苦しそうにも見えた。


「来やがるか……気絶してくれればいいんだが」


降り下ろされる拳を今度は受けず、転がることでかわした。
床のタイルが剥がれ無惨な姿となっている。それだけの、威力である。


「くそっ……どんだけ怪物なんだよっ!?」


春原が悲鳴を漏らす。
だが、その頃棗恭介はとある事実に行き当たっていた。
獣さながらの身のこなしで攻撃を避けてくるこいつが一番隙を生むのは、避けた瞬間だ。
そこが、持田哲志の弱点。

一切の衰えを感じさせぬ狂暴さで、哲志はまたも拳を振り上げる。
避ける。しかし次の瞬間には、回し蹴りの一発が飛んできて、恭介を跳ね飛ばした。

637Oath Sign ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 23:00:52 ID:eJt.VrQ60
物干し竿をあいつに取らせてはまずい、と思うが、この距離では取り返すのも厳しい。
無情にも持田哲志の腕は物干し竿の柄を掴み取ろうとし――――、


突然飛来した銃弾に反応して、怪物はその行動を放棄する。


伊吹風子だった。
すっかり眼中の外にあった予想外の人物の攻撃は、持田哲志の不意を突くには十分だった。
春原は確かに銃を置いていった。
片手で扱うのは難しいと思ったからだ。
まさかその行為が功を奏することになるとは―――夢にも思っていなかった。


「おおおおおおおおおおッ!!」


恭介が駆けた。
文字通り、体力の限界に達しながらも、物干し竿を奪取することに成功する。
そして、振る。
型も何もあったものではない、闇雲な一撃。
哲志の体勢からこれを止めることはまず不可能だ。
たまらず斬撃の範囲から逃れる為後退するが―――それは、持田哲志の痛恨のミスだった。


行く手を阻むものは何もない。
ただし後退した箇所の丁度真横には、丸腰の春原陽平の姿があった。
悪魔の腕で一撃を打ち込めば間違いなくノックアウト出来る。
だが、哲志は春原に気付くのが一瞬遅れた―――それが、運の尽きである。


「おらぁああああ! ぶっ飛べ怪物――――!!」


ゴガン! という壮絶な打撃音が響き、持田哲志の身体が勢いよく階段を転がっていく。
床に叩きつけられてからは、未練がましく足掻くこともなく―――動きが止まった。
この瞬間、棗恭介、春原陽平、伊吹風子―――三人の勝利が確定した。



「………ミッションコンプリート、ですねっ」




「ああ、俺達の勝ちだ」
「はっ、はっ……二度、と……っ、戦いたくないね」


怪物は意識を失っているようで、死んではいないが当面の安全は確保できた。
普段からこういったことに恭介ほど慣れていない春原は荒い息を吐き出している。
それよりも最も長く前線に立っていた恭介は、もう滅茶苦茶な疲労に包まれていた。


「だー……疲れた」


大きく脱力し、大の字になって寝転ぶ恭介。
しかし、あまり長いことこうしている訳にはいかない。
気絶しているとはいえあの化け物が近くにいるのだ、少なくともこのエリアからは早々に離れるべき。
それでも、勝利の余韻を味合わざるにはいられなかった。まさに快勝といったところである。

638Oath Sign ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 23:01:20 ID:eJt.VrQ60

「……そういえば、春原。お前……これからどうするんだ? まだ、殺すのか?」
「ああ。僕は芽衣の為に生き延びなくちゃいけないんだ。そこだけは譲れないね」
「そうか、残念だよ」
「残念です………」


消沈ムードになるべき会話なのに、三人の表情はどこか晴れやかだった。
激闘を制した余韻が、立場も何もかも関係なく、三人の心を満たしていた。
しばらくそんな雰囲気を楽しむと、春原はおもむろに立ち上がった。
その行動が意味するのは、僅かな間ではあったが共闘した仲間との別れである。


「行くんだな」
「ん。僕から先に行った方がいいだろ」


春原は背を向ける。
名残を惜しまないために、迷いを切り捨てる為に、潔い別れを選んだ。
風子は寂しげに春原の背中を見つめていたが、恭介は彼を改心させられなかった不甲斐なさを感じていた。
出来ることならこのまま共闘して、共にバトルロワイアルを打倒してやりたいと思った。
しかし、春原の背中は小さくなっていき―――ただの一度だけ、その足を止めた。


「ま、こういうこと言うのはおかしいけどさ。お前らのこと、嫌いじゃなかったぜ。棗、風子ちゃん」


その言葉を最後に、春原陽平の姿は廊下の向こう側の階段に消えていく。
彼がどんな結末を辿るのかは分からないが、死んでほしくはない―――二人は同じことを思っていた。
次に会ったときはきっと、正真正銘の敵同士。
春原は何の容赦もなく殺しにかかってくることだろう。


「……改めてお疲れさまでした、棗さん」
「いやいや、お前のナイスなアシストのおかげだよ、伊吹」
「そうなんです。風子、近所ではナイスな高校生として評判です」
「ナイスな高校生……? あ、ロリ体系的な意味でか」
「黙りましょう棗さん」


少しだけ笑顔が戻る二人。
またそんな馬鹿話を少しの間して―――春原と大分距離が離れただろう頃合いを見計らって、恭介は立ち上がった。
腕を伸ばし、体をほぐすようにする。
疲れは全く抜けていないが、とりあえず派手に動かなければまだ行動は出来そうだ。



「よし、行くか伊吹。お前は傷とか負ってないよな?」
「はいっ。はっ、今なら棗さんにだって勝てそうですよ」


苛烈にして熾烈な怪物との戦いを終えた二人は、学校から出るために歩き出す。
手には長刀物干し竿。風子の手にはFN-Five seven。
反逆の道を往く二人は、それぞれの揺るがぬ意思を持って、新たな仲間の獲得に向け動き出した。

【G-6 中学校 二階廊下/朝】

【棗恭介@リトルバスターズ!】
【装備:物干し竿@Fate/stay night】
【所持品:支給品一式、海軍用船上槍@とある魔術の禁書目録、イカロスのスイカ@そらのおとしもの】
【状態:疲労(大)】
【思考・行動】
1:リトルバスターズを結成して、バトルロワイアルを打倒する。
2:仲間は全員助けてやりたい。特に鈴は優先的に保護したい。
3:理樹の死を乗り越えて生きる。
4:春原と次に会ったら――――?
【備考】
※Refrain、理樹たちが助けにきた直後からの参加です
※マスクザ斎藤のマスク@リトルバスターズ!は破壊されました



【伊吹風子@CLANNAD】
【装備:FN Five-seveN(3/10)@現実】
【所持品:支給品一式、FN Five-seveN予備弾薬(20/20)、黒の騎士団の制服(女物)@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:棗さんと行動。
2:岡崎さんたちを探す。
3:風子はリトルバスターズなんですか?
【備考】
※風子ルート終了後からの参加です
※実体で存在しています

639Oath Sign ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 23:01:52 ID:eJt.VrQ60
【持田哲志@コープスパーティー】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 デザートイーグル50AE(5/7)@現実 デザートイーグル50AEの弾丸(28/28)@現実 ランダム支給品×1】
【状態:気絶、全身にダメージ(中)、『黒化』、レイニーデヴィル化】
【思考・行動】
1:由香の敵をとる為に皆殺し。
2:敵討ち後、自分も自殺して由香の元に逝く。
【備考】
※文化祭後クラスでの会談中からの参戦です
※『黒化』により目的のために無差別に行動するようになっています
※悪魔の手@物語シリーズに何かを願い、その果てにレイニーデヴィル化しました。理性はほぼ消え去っています
※願いに関しては後続の書き手さんにお任せします


◇ ◇


予期せぬ激戦の舞台となった学校を出て、春原陽平はベレッタM92を片手に歩いていた。
まさか棗恭介が、わざわざ没収した武器を返してくれるとは思わなかったが、あれは彼なりの、共同戦線を張った戦友への流儀だったのかもしれない、と彼は思う。
覚悟はもう決まった。
自分の意志を曲げずに、春原芽衣の、妹の下へ帰るために生き延びる。
誰に蔑まれようが、誰に否定されようが―――もう、迷うことはしたくない。
どんな手段を使ってでも生き延びる、それが春原陽平の選んだ道なのだから。

春原は今、一つの漠然とした作戦を持って動いていた。
作戦というにはあまりにも単純すぎるが、それでも自分が生き延びる可能性を上げる手段だ。

――――主催への反逆思想を持つ者達の集団に紛れ込むのだ。
表向きは善良な一般人を装っておき、頃合いを見計らって一網打尽にする。
恭介と風子には素性が割れているが、あの二人は自分の悪評をばらまくような奴らではないだろう。
それに、もし次に会ったら、心苦くはあるが彼らの敵だ。
不穏な発言をするようなら、殺害することに躊躇はしない。
そして、頭の良い―――自分の素性を見抜くかもしれない人間も、出来る限り消していく。
春原は、自分が決して頭のいい、詭弁の達者な人間でないことを自覚している。
だから余計な心配をしなければならない邪魔者に関しては、非常に危険な存在だと言わざるを得ない。


首尾よく交ざることが出来たならこちらのものだ。
どうにかして、このベレッタM92よりも更に強力な武装を獲得しておきたい。
あの怪物のような出鱈目極まる相手を円滑にかつ安全に処理するための武装が。
そのためにも、相手から信頼を得て、違和感が一切無いほどに確実な潜入者となる必要があるだろう。
岡崎や智代まで騙すのは胸が痛む思いだが、もう迷わないと誓ったのだ。
極悪人になってでも、自分の目的を全うする。
そのためなら、知り合いや親友を陥れることに―――もう、何の躊躇もない。



「そうだな、僕は間違ってるさ」


春原は自らの中に残る僅かな良心に言った。


「でもな、間違ってでもやらなくちゃいけないことがあるんだよ」

640Oath Sign ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 23:02:13 ID:eJt.VrQ60
【春原陽平@CLANNAD】
【装備:サバイバルナイフ&ベレッタM92 15/15@現実】
【所持品:支給品一式 赤いビー玉@Kanon 便座カバー@現実 そうめん@AIR 鍋@現実 ルールブレイカー@Fate/stay night ロロのデイパック】
【状態:疲労(中)、右腕に鈍痛(回復中)】
【思考・行動】
1:優勝してこの島から帰る。
2:生き残る為ならどんな事だってする。もう迷わない
3:対主催チームに紛れ込み、強力な武装を獲得する
【備考】
※渚ルート終盤からの参戦。



【悪魔の手@物語シリーズ】
持田哲志に支給。
願いを叶えることの出来る怪異レイニーデヴィルの腕。
ただし願いの叶え方は暴力的な手段になる。

641 ◆jZCpcbFowc:2012/04/14(土) 23:02:56 ID:eJt.VrQ60
投下終了です
題名はアニメ『Fate/Zero』1stシーズンOPより

642名無しさん:2012/04/17(火) 21:26:04 ID:yVcOD7ac0
投下乙!ボリュームたっぷりなおかつ中身も濃い、凄い一作でした。
恭介と春原の共闘には燃えたが、春原はマーダーとしての覚悟決めちゃったか。
哲志がやばいことに……マスクザ斎藤の恭介でも倒せないとか、また強いマーダーが出来たな
そして風子のヒロインっぷり。どうして恭介はこうもフラグを立てるのか

643 ◆WzpMn05TJA:2012/04/17(火) 22:26:21 ID:qii3Xb/6O
投下乙です
内容、ボリュームに楽しませていただきました
初の対主催とマーダーの共闘に読んでいて熱くなってきました
恭介の心情がとても良かったです

哲志はリトバスメンバー全員と会える事を望んでいます
鈴、姉御、真人、沙耶も哲志に会わないかなぁ


自分も投下します

644例外の方が多い法則 ◆WzpMn05TJA:2012/04/17(火) 22:32:53 ID:qii3Xb/6O



    アンリミテッドルールブック
――『例外の方が多い法則』



・◆・◆・◆・◆・

仲村ゆりは1つのくだらなくて嘘っぽくて有り得ない、それなのに信憑性の高い推理を建てた。
答えは2の次。
ただ、自分の置かれた状況のみを考えれば今は良いのだから。

「もしかしたら本当に私達はゲームの中の住人なのかも知れないわね。なんかのテレビゲームのシュミレーションみたいなね」
「僕達がゲームの世界に入れられるなんて信じられるか!」

いきなりわけのわからない事を言うゆりに同行者の阿良々木暦は大声で突っ込みを上げた。
この突っ込みだけはどこへ行っても彼は変わらない。
しかし、ゆりは暦の言葉を無視する様に推理の言葉を並べていった。

「ゲームのキャラクターだって自分の住む世界がゲームなんて気付いていないものなのよ?住む世界を現実だと思わされているのよ」
「っ!?」

誰かが駒(プレイヤー)を操り殺していく。
そして弱者から消えていく。
そんな非現実が認められるものなのか?

「あなた言ったじゃない吸血鬼だって。それに私達は死んだ世界の人間。中嶋さんはおまじないをした。井ノ原君も修学旅行で事故に遭い死んだかもしれない。アストレアさんは羽根が生えている
ほら、非現実な事だらけじゃない。非現実的な事が何個も起きるならこの世界はフィクションよ。物語のクライマックスは決まっているのよ」
「…………」

否定出来なかった。
誰もが誰もが非現実的問題に関わっている。
もしかしたら羽川と運命の出会いを果たすのも、忍と出会って吸血鬼になるのも、戦場ヶ原と彼女になるのも、八九寺と迷うのも、神原に恨まれるのも、千石と再会するのもこの為の伏線であったかもしれない。

「でも、もしそんな<物語>のゲームや小説の世界だったとしても僕が変えてやるさ。ハッピーエンドに」

暦の顔は軽く笑っていた。
それが自分の使命だからだとでも言う様に。

「そう、まぁそれなりに期待しているわよ阿良々木君。そしてこれからが始まりかしらね」

ゆりが頭を上げた瞬間、郷田真弓の声の放送が始まった。

「ゆり、お前超能力者か!?」

タイミングの良さに暦は驚愕した。
だが、そんな呑気さを壊す様な内容ばかりが郷田の口から吐き出された。
禁止エリア、エクストラゲーム、死亡者。
良い報告などない。



・◆・◆・◆・◆・



「ふざけんなよ……、なんだよそれ……」

阿良々木暦は放送が終了した瞬間の反応であった。
自分の彼女や親友の名前が呼ばれたわけではない。

阿良々木暦の大事な彼女の戦場ヶ原ひたぎ。
阿良々木暦の大事で赦されざる吸血鬼の忍野忍。
阿良々木暦の大事で憧れなクラスメートの羽川翼。
阿良々木暦の大事で楽しい後輩の神原駿河。
阿良々木暦の大事な慕ってくれる妹の親友の千石撫子。
誰1人まだ失っていなかった。

だが、誰かがなんらかの理由で亡くなった事が悔しかった。
すべてが思い通りに事が進んでいる事が悔しかった。

「本当に武器持って襲う奴が居るとは……、狂ってやがる……」

支給されし拳銃――FN ブローニング M1910――を右手に持ちながら彼にしては珍しく嘆く形で怒りを露わにしていた。
敵であり、自分を死闘を演じたギロチンカッターの死ですら赦せなかった暦はそれ以上に主催者達に、人を殺した参加者達を赦せないと決意する。

「いや、私も阿良々木君に対して鉈を振ってたけどね」
「…………」

そういえば自分の周りにも文房具を振り回す彼女や悪魔にまで願う後輩、人を捕食し続けていた吸血鬼が居た。
そんな彼女らが暴走をしていないかがとても不安であった。

645例外の方が多い法則 ◆WzpMn05TJA:2012/04/17(火) 22:33:45 ID:qii3Xb/6O
「そんな事より最悪よ阿良々木君……」

ゆりは嫌な汗を流しながら辛い表情で暦に告げた。



・◆・◆・◆・◆・



「ざっけんなよクソ野郎っ!理樹を返しやがれっ!」

近くに立っていた木に悔しさというストレスを拳でぶつけていた大柄な男の井ノ原真人は放送を聞いてから3人の中で一番大きな反応を示していたのだった。

拳一撃で木が激しく揺れる。
真人の力と悔しさがよくわかる一撃であった。

「……絶対ゲームを俺達リトルバスターズが終わらせてやるからな理樹」

殺し合いに乗って参加者を減らす事は考えなかった。
自分がこんなに悔しいのだ、他の人間には与えたくない心だ。
現に同行者の中嶋直美もクラスメートの篠崎あゆみの死にショックを受けていた。

「みんなは……ゲームにやっぱり乗るなんて事はありませんよね……?」

アストレアは今までは仲良く話していた相手なのによそよそしく問う。
さっきまでは真人とギャーギャーとバカをしていた賑やかな人物であったのに一瞬でそれは影を潜めた。

「うん大丈夫。哲志が心配だけど私は大丈夫」

「俺も今更殺し合いをする気もねーよ」

アストレアは2人がそう言ってくれた事に安堵した。
仲良くなった親友と争いたくなかったから。
――人間の心を持った機械はそう願っていた。

「よし、とりあえずさっき聞いた禁止エリアと死亡者をするぞ中嶋」

メモを直美に任せていた真人。
直美は頷いてまずは「禁止エリアから言うよ」と返事をして禁止エリアのエリアを読もうとしたそこから口が動かなくなった。
先程は誰が亡くなったのか気になっていて急かす心があったから禁止エリアは呆然と聞いてメモをしていただけであった。
だがよく今見返すと最悪の禁止エリアの配置に直美はどうすれば良いのか考えさせられた。

「直美ー?どーしたの?」

アストレアが動かなく青い顔をする直美に肩を揺らす。
真人も直美が何を見てその表情をしたのかもわからない。

「あ、アストレアさんに井ノ原さん……。私達はね仲村さんの作戦を実行出来なくなってしまったの」



・◆・◆・◆・◆・



「本当に最悪だよ」

暦は呟いた。
確かにそうだった最悪だよ、暦の心境であった。

「ゆり、お前初対面の人間に鉈を振るうのは止めろよ、怪我しちゃうかもしれないから」
「そっちの話は終わったのよ!バカじゃないの!?」
「え?」

僕の周りには狂っている女しか集まらない話をしていたんじゃねーのかよと突っ込んでいた。
ここで暦はゆりは真剣で僕達の話をしようとしている事を察した。

「んで、なんだよゆり?最悪な事って」
「阿良々木君は理解していないみたいね……」

『やっぱりか』、ゆりの表情はそう言っていた。
暦には何故自分がそんな言われをするかわからなかった。

646例外の方が多い法則 ◆WzpMn05TJA:2012/04/17(火) 22:34:34 ID:qii3Xb/6O
「あんた2時間後と4時間後の禁止エリアを言ってみなさい」

ゆりが自分でメモしたノートを暦の両手に無理矢理握らせる。
何故ゆりがそんな事をさせたのかわからない。
暦がそのゆりのノートを音読し始めた。



・◆・◆・◆・◆・



「んーと……2時間後がB-7、4時間後がE-1だな」

ゆりが書いた丁寧な字をそのまま読んだ。
ゆりが書いたにしたは丁寧だが、僕に言わせると羽川の方が圧倒的に上手い。
いや、僕が羽川信者だから羽川寄りの考えとかではない。
おっと、羽川の話に行ってしまいそうなんでここは打ち切ろう。

「んーとじゃないわよ、バカ!まだ気付かないの!?ヒントは井ノ原君と中嶋さんとアストレアさん。これでわからなかったら私阿良々木君と行動するのやめようかしら」
「うっわ酷い悪魔だー!そんな悪魔の様なキャラは初期の戦場ヶ原だけで充分だー」
「あんたは音無君と似ている声のクセにキャラクターが真面目じゃないのよ!」

どちらも自分の知り合いで相手側は知らない名前しか出していない為ゆりは戦場ヶ原を知らないし、当然僕は音無という人物も知らない。
確か初対面の時も僕は音無と似ていると言われていた気がする。

「まさか井ノ原達と合流するはずだったB-7が禁止エリアになるなんて状況が最悪じゃねーかよっ!」
「ってか気付いてたのかよ!」
「とっくにな」

因みに気付いていたのは1分ぐらい前なのは秘密だ。
あえて前から知っていましたよって顔で居てやる。

「この私が仮の作戦を作らなかったなんて……、リーダー失格ね」
「別に良いじゃねーかよそれくらい」

特に僕はゆりの事を無能やリーダー辞めろなどとやかく言うつもりはない。

  アンリミテッドルールブック
「例外の方が多い法則だよゆり」
「アンリミテッドルールブック……」

斧乃木ちゃんの必殺技の名前ではないけれどこれは仕方がない。
この首輪があったり、参加者である以上常に最悪の状況を作りだすのが主催者の役割じゃないか。
僕の戦いで最悪じゃなかった戦いの時なんて1度もなかった。
つまり毎度の事。
僕はとっくにそんな事慣れっこだ。

「お前はさっきゲームの中の世界とか言っていたけど本当なのかもしれないなゆり」
「ど、どうしたの阿良々木君?急に熱くなりはじめて?」
「せっかくゲームの主人公になれるかもしれないってんなら僕とゆりで主人公とヒロインになってバトルロワイアルなんか終わらせてやろうぜ」

吸血鬼もどきの僕でさえいつ死ぬかなんてわからない。
なら最後まで抵抗するのが僕の役割だ。
大丈夫だ。常に最悪を生きた僕だ。

「頼もしいわね阿良々木君、最近は私も天使の脅威が小さくなってて暴れたくなっていたのよ」

この頼もしいパートナーのゆりがいるなら僕は最高だ。

戦場ヶ原、羽川、神原、千石、井ノ原、中嶋、アストレア、そして僕の不幸のはじまりの忍。
仲間だって散らばっている最強メンバーだ。

「さてどうするゆり?井ノ原達と再会の確率が大分下がってしまったが」

647例外の方が多い法則 ◆WzpMn05TJA:2012/04/17(火) 22:36:00 ID:qii3Xb/6O
「そうね、これからどう動きましょうね」

ゆりは腕を組んでこれから僕達がどう動くのか考える。
動くし作戦も考える、立派なリーダーだと僕はゆりを尊敬するよ。

―――頼りにしてるからなゆり。

「ところでさっきの話は私が主人公で阿良々木君がヒロインなのよね」
「誰得!?」

え、僕がヒロインなの?



【C-7 野原/朝】

【阿良々木暦@物語シリーズ】
【装備:FN ブローニング M1910@現実】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:ゆりと行動、殺し合いには乗らない
2:仲間探し。特にゆり、中嶋、アストレア、井ノ原の仲間探し
3:みんなとの合流、特に忍野忍、戦場ヶ原ひたぎを最優先
【備考】
※鬼物語で八九寺真宵が成仏してからペアリングが戻る前までのどこかからの参戦
※ペアリングが切れているため、吸血鬼性は限りなく低いです
※死後の世界について凡そ聞きました


【仲村ゆり@Angel Beats!】
【装備:鉈@ひぐらしのなく頃に】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:阿良々木君と行動
2:別の作戦を考える
3:仲間探し。特に阿良々木君、中嶋さん、アストレアさん、井ノ原君の仲間を探す
4:気にいらないから主催どもを殺す
【備考】
※ユイが消えるまでのどこか
※ここが主催者達が作りあげた未知なる世界だと推理しました。またゲームの世界という案が一番強く感じています。





・◆・◆・◆・◆・



「さてこれからどうする中嶋」
「そうだね……」

B-7が禁止エリアになる前だからといって入りたいとも思わない。
考える頭脳ポジションの直美は地図を見ながらどうすれば良い対処を取れるか。
ゆりと暦の2人とは行き違いになるかもしれないが。

そして行動に移す。



【A-7 砂浜/朝】

【中嶋直美@コープスパーティー】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 果物ナイフ@現実 テストプリント@Angel Beats! ランダム支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:殺し合いに乗らない。
2:仲間探し。特に井ノ原君、アストレアさん、阿良々木君、仲村さんの親友を探す。
3:ゲームに乗った人が居たらすぐに逃げる。
【備考】
※おまじないをした直後からの参戦です。
※アストレアと真人をバカと認識しました。
※死後の世界と怪異の事を知りました。

648例外の方が多い法則 ◆WzpMn05TJA:2012/04/17(火) 22:36:15 ID:qii3Xb/6O
【アストレア@そらのおとしもの】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:仲間探し。特に直美、真人、暦、ゆり先輩の仲間を探す。
2:殺し合いには乗らない。
【備考】
※カオス戦(1回目)からの参戦です。
※死後の世界と怪異の事を知りました。


【井ノ原真人@リトルバスターズ!】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:殺し合いには乗らない。
2:仲間探し。特に中嶋、アストレア、阿良々木、仲村の知り合いを探してやる。
【備考】
※Refrain開始直後からの参戦です。
※死後の世界と怪異の事を知りました。
※この世界を死後の世界の可能性を考えています。



【FN ブローニング M1910@現実】
服の下から取り出す際、極力引っかからない様な設計をされている為、露出部分を減らされているシンプルな形をしている。

649 ◆WzpMn05TJA:2012/04/17(火) 22:42:52 ID:qii3Xb/6O
投下終了です
元ネタは
斧乃木余接の技『例外の方が多い法則』より

阿良々木さんのヒロインは誰得?
俺得です


千石撫子、相沢祐一、坂上智代、人吉善吉、更木剣八を予約します

撫子ちゃんと智代も登場とか俺得過ぎる

650名無しさん:2012/04/17(火) 22:55:24 ID:DUbglxME0
投下乙です
ゆりっぺと阿良々木さんのコンビは好きだなぁ
阿良々木さんと音無の違いとか比べるとなかなか面白い
若干ゆりっぺが安心院さんみたいで俺得

そして阿良々木さんのヒロインも俺得ですw


それと次回の予約メンバーでの話がまったく想像付きません
最近すごく注目しているロワで話の展開がぐっと面白くなってきて、参加作品も稀に見るほど俺得なので主には頑張ってほしいです

651 ◆jZCpcbFowc:2012/04/20(金) 23:30:16 ID:4Fa68pHE0
投下乙です。阿良々木さんとゆりっぺのコンビは安定してていいなあ。
理樹が死んでも早まらない真人はやっぱり漢だ

C.C.、来ヶ谷唯湖を予約します。

652撫子の唄 ◆WzpMn05TJA:2012/04/21(土) 22:57:08 ID:nCKx/Qt2O
「起きなよ撫子ちゃん」
「……なぁにクチナワさん?撫子はまだ眠いよ」

目を擦りながらいかにも寝起きな撫子はクチナワの煩い声により起こされた。
何故撫子は起こされたの?
口にしたい言葉だったが眠たくて呂律がまわらない。
だが流石撫子の幻覚だからか撫子の心を汲み取ったクチナワはその質問に簡単に答えた。

「しゃしゃしゃ、放送の時間だぜぇ撫子ちゃん」



◆◆◆◇◇◇



静かな自然の塊の森の中。
そんな場で放送という人工的な声が機械を通して聞かされる様は森に居た者は誰もがそう思わせたであろう。

「良かった……、音無はまだ死んではいなかったんだな……。けど佐祐理さんは……クソッ!」

アサシンにこてんぱんにやられた相沢祐一は放送に聞いて安心と怒りを感じた。
自分が命懸けで助けた親友の生存。
自分に優しい先輩の死亡。
喜べば良いのか怒れば良いのか祐一にはわからなかった。
ついさっきまで立てなくなっていた自分が憎い。

「でもバトルロワイアルを終わらせなくてはいけない信念に揺らぎはないぞ」

アサシンにも対等に渡り合った木刀正宗を強く握りしめる。
この強い剣はヒーローにも悪魔にもなれる。
なら自分は最後までヒーローとしてこの戦いを乗り切ると祐一は覚悟をより一層強くしたのであった。
そして舞を、名雪を、北川を救ってやる覚悟を見せて。



◆◆◆◇◇◇



「まさか14人も人が死ぬなんて……」
「あぁ……。まさか古河さんも亡くなったなんてな……」

坂上智代は古河渚とは仲が良いわけではなくあまり話した記憶もない同じ学校の先輩。
だが、他人だからといって怒りを感じないかと言われたらそうではなかった。
それは隣に居る同行者の人吉善吉にも言える事であった。

「赦せねぇ!殺した奴も、ゲームを開始させたシャルルの野郎も!どうして助け合わないんだよっ!」

善吉の怒りの声は途切れない。
ゲーム開始すぐに智代を襲ったあの髪の短い女の顔が人を殺している姿を想像して嫌な気分になる。

「めだかちゃんが、球磨川先輩が、宗像先輩が死んでいないから怒らない。
そんな事あるわけねぇだろ!」
「私も朋也や春原が死んでいないからといって怒らないわけではない!」

善吉と智代。
2人は一層この殺人ゲームを終わらせる事を誓う。
犠牲者を出さない為に、その為に自分の長年鍛え続けた力を使おうと決めた。

(マリアさんが死んだ……。冗談だろ、そんな事……)

2人の横を歩くトラのタマもマリアの死には動揺していた。
だが嘘を言う意味はない。
嘘であるならゲーム自体が嘘であるから。
つまりは真実。
タマも理解していた。
そしてマリアですら脱落したゲームだ。
お嬢様で運動神経もないわがままな少女――三千院ナギ――は生き残るのはとても難しいだろう。

(赦せねぇ!お嬢だけは絶対殺させねぇ!俺が見つけて命を懸けて護る!)

3人が強く決意を固める。
だが、そんな決意を揺さぶる様な乱入者が現れた。

653撫子の唄 ◆WzpMn05TJA:2012/04/21(土) 22:57:56 ID:nCKx/Qt2O
「なんだお前ら、ガキのクセに強そうな構えをしてんじゃねぇかよ」

硬そうな筋肉。
恐ろしい形相。
鋭く禍々しい殺気。
――戦闘狂の死神の更木剣八であった。

「っ!?」
「む?」

今までたくさんの強敵との戦いや不良達を相手にしていた2人はそれなりの戦いではやっていける気にはなっていた。
だが、目の前の剣八を見ていると経験さなどはあってない様なものに見えてくる。
2人は体中から嫌な汗と相手にしてはいけない本能が湧き出てきていた。

(なんだよあいつ……。宗像先輩や都城先輩、球磨川なんかも確かに強かったがあれは能力や性格だ……。
だがあいつの強さは力だ。力の塊なんて表現しか出てこねぇ。これはデビルやべぇな……)
(何者だあの男?鬼か、悪魔か、それとも死神なのか?)

とりあえず剣八は刀を向けている。
善吉はいつ襲いかかってこようが対処出来る様にいつもの十八番の構えで剣八を構える。
智代も剣八を相手に勇敢に立ちはだかる。

「良いなぁお前ら。黒崎一護みたいなガキでも強かったんだ。楽しませろよ」

剣八は鬼の様な形相なのに実は楽しんだ笑いを浮かべていた。
先程は破面――勘違いをしていただけだが――の化け物相手に割り込む邪魔のお陰と相手がまともにやりあわない相手だということもあり剣八はいつも以上に暴れたい心境であった。

「お前みたいな奴が居るから人が死んでいくんじゃないか!」

智代は剣八相手に善吉以上に敵視していた。

智代も長門有希に襲われた身である。
武器を向けて殺そうとしてくる相手はバトルロワイアルが始まり2人目の相手。
他人だからと殺す人間の心境なんかわかるわけもなく、わかりたくもなかった。
弟の鷹文も命を落としかけた。
もう命が亡くなる関係はうんざりであった。
智代は自分と善吉を護る為武器を取る。

剣八が戦うバトルだとしたら智代は護るバトルであった。

「おい、善吉は武器は要らぬのか?」
「俺はめだかちゃんの敵相手に拳と足だけで戦ってきた。今更武器なんざ要らねぇ!」
「それは頼もしいな」

智代も確かに戦いでは拳と足しか使ってこなかった。
だがそれはあくまで不良達や春原相手だけであり目の前の男に丸腰は不可能だろう。
智代には薙刀と巨大な十字架の2種類の武器が支給されていた。
本来強い武器は十字架だ。
吸血鬼相手に鋭い威力を持つ武器だが、それ以外でも充分過ぎる武器だ。
だが長さは2、3メートルもあり扱いにくいのは目に見えている。

だから智代は同じく長い武器ではあるが、長いのがデフォルトの薙刀を手に取った。

「良いか坂上先輩」
「大丈夫だぞ善吉」

拳を構える善吉、薙刀を構える智代、刀を構える剣八。
3人がそれぞれの敵を確認する。

「んじゃあ、始めるかよっ」

剣八が笑いながらその戦いの開始の声を上げた。
それが合図となる。



◆◆◆◇◇◇

654撫子の唄 ◆WzpMn05TJA:2012/04/21(土) 23:00:21 ID:nCKx/Qt2O
「うわっ、なんだよありゃあ……」

善吉、智代、剣八から離れたところで待機するのはトラのタマであった。
タマは考えていた。

「俺は狙われるわけがないだろ」

不本意ながら元々は善吉の支給品扱い。
ここは全速力でナギを探すなり、ハヤテを探すなりをする行動を取る事を自分は許されている。

「だが俺はあいつらを見捨てるのか?」

口煩いがなんやかんや行動してくれた善吉と可愛がってくれた智代。
タマの中で天秤が傾いていた。



◆◆◆◇◇◇



めだかちゃんに認められる男になるんだよ俺!!

俺はまず誰より自分に攻撃をする。
別に自滅ではない。
自分の頬を叩き気合いを入れる。

目の前に集中だ。
俺は今まで色々なタイプの人間と争ったじゃねーか!
結局あいつだってどうせ『異常』の人間だろ!
『異常』が『普通』より強い方程式なんかねぇんだからな!

「んじゃあ、始めるかよっ」

眼帯男からの試合開始の声が発せられた。

「来いよ!」

俺は大声を出して1歩前へ歩み寄る。
相手の武器は刀だ。
刀を使う奴とは経験済みだ。

宗像先輩との戦いを思い出せ。
振られる刀を蹴り飛ばす自分。
――感覚よ、蘇れ!

飛んでいく刀。
蹴り上げる感触。

よし、思い出してきた。

「へへっ、威勢だけは確かってな」

男は先に強い相手を狙ったのか、挑発したからなのか、ただランダムだったのかはわからない。
俺の頭を目掛けて刀を振ってきた。





振り下ろされる勢いと殺気と力が籠もった刃。

「大丈夫だ……、宗像先輩は何十本の攻撃だったが奴は一本だけじゃないか」

呟いたか呟いたのかわからない声で善吉は見定める。
角度、スピードの計算。

(そこだっ!)

善吉は刀を跳ばそうと右足を上げる。
ちょうど奴の刀の握りの甘い部分を狙って余所へ跳ばそうと。

(よし、良い感じに足が入ったぜ!)

だが、善吉の思った結果と現実の結果はまったく違う展開が起きていた。

「来いよ!」

俺は大声を出して1歩前へ歩み寄る。
相手の武器は刀だ。
刀を使う奴とは経験済みだ。

宗像先輩との戦いを思い出せ。
振られる刀を蹴り飛ばす自分。
――感覚よ、蘇れ!

飛んでいく刀。
蹴り上げる感触。

よし、思い出してきた。

「へへっ、威勢だけは確かってな」

男は先に強い相手を狙ったのか、挑発したからなのか、ただランダムだったのかはわからない。
俺の頭を目掛けて刀を振ってきた。

655撫子の唄 ◆WzpMn05TJA:2012/04/21(土) 23:01:19 ID:nCKx/Qt2O





振り下ろされる勢いと殺気と力が籠もった刃。

「大丈夫だ……、宗像先輩は何十本の攻撃だったが奴は一本だけじゃないか」

呟いたか呟いたのかわからない声で善吉は見定める。
角度、スピードの計算。
めだかを護る為の力を存分に発揮させる。

(そこだっ!)

善吉は刀を跳ばそうと右足を上げる。
ちょうど奴の刀の握りの甘い部分を狙って余所へ跳ばそうと。

(よし、良い感じに足が入ったぜ!)

だが、善吉の思った結果と現実の結果はまったく違う展開が起きていた。

「確かに雑魚なら飛ばせたかもしれんが生憎俺はそんな修羅場を何十回も超えてきているんだよ!」

力で蹴り上げた足ごと善吉は体制を崩され、もろく地面に転がる。
受け身を取ったものの、右足は強い痛みが残る。
怪我はなんとかしていないが痛さはジリジリと蝕む。

「ぐへっ……」

善吉の敗因は宗像形との攻撃と同じに考えていた事であった。
しかも宗像の武器の扱いが下手であった頃の時とだ。
いつも誰より強者と戦う為に刀を振ってきた男の刃はそこらじゅうの人とは比べものになるわけがない。
そして、これが十一番隊隊長と箱庭学園の生徒会庶務との力の差であった。

――最強の剣士の証『剣八』の名は伊達ではない。

「大丈夫か善吉!?」

智代が善吉へ駆け寄る。
確かに大事に至る様な怪我はなく安心したが今はその安心だけではいられない。

「本当は大した蹴りだぜお前、俺じゃなければ普通は武器なんか飛んでっただろうな」

なにが面白いのか。
笑いながら智代と善吉の方向へ走って向かう。
鬼。
今の彼を表現するには的確過ぎる一文字であった。

「負けるか」

善吉はすぐには立てそうにはない。
ならここは年上の自分が食い止めるしか方法はない。

薙刀を両手に握り、智代も剣八に向かい走っていった。

「まだ殺されるわけにはいかないんだぁぁぁ!」

剣八とすれ違い際に斬りつける、誰もがそう思った。
だが智代は善吉の先程の一件を見て正面突破では勝てないだろうと思った。
そこで智代は思い切り、槍投げの様に、薙刀を一直線上に投げた。

「ぁ?」

肩に突き刺さり出血する。
その事に剣八は嬉しさを感じた。

「いいねぇ、俺を出血か。こりゃあ大物じゃないか」

普段は自分の霊圧の高さ故斬りつける事すら不可能な相手だっている。
現にあの黒崎一護ですら斬月を持ってしても傷1つ付けられなかった事があったぐらいだ。
当然そんな高過ぎる霊圧はこのロワでは制限に入っている。
だが、力しか知らない剣八はそんな事は知らない。
出血させた大物の認識であろう。

656撫子の唄 ◆WzpMn05TJA:2012/04/21(土) 23:02:02 ID:nCKx/Qt2O
「は、は、は、は、は、は、は、は、は」

彼は満足して力を上げていく。
目の前の2人を屈伏させようと。

「なんだあれは……?」
「ば、化け物め」

智代、善吉はそんな光景を見て絶望を知った。
絶望という意味を知った。
顔が青くなっていく様が無意識にわかってしまった。

なんと剣八は突き刺さった薙刀を思い切り引っこ抜いたにも関わらず力は上がり、より楽しい表情でこちらを見ている。

「最高だなここは」

破面、そしてガキ。
戦いが至高の宝である剣八は嬉しく、子供みたいに笑った。

「ふん」

しかも引き抜いた薙刀は智代の目の前にまで投げつけた。
「それを使ってまだ俺と戦え」、目は語る。

「勝てるわけがねぇ……」

善吉は余裕な彼と絶望の自分達を見てそう思った。
めだかちゃんなら、球磨川ならどうこの戦いを制するか。

(めだかちゃんなら確実に力でねじ伏せるだろう。だが、めだかちゃんはこんな化け物に勝てるのか……?)
(球磨川はどうだ?まだヘラヘラ笑っては絶対に負けるであろう。しかもまだ『大嘘憑き』を使えると安心院さんが宗像先輩との戦ってわかったと言っていたしな)

「そんなjoker並みの強さの奴なんか宛てにならなねぇ!デビル無理だ!」

(なら俺は正面からやり合うだけだ!)

「俺流の戦いでてめぇを倒す!」

次はもう全力。
剣八へ走り智代の開けた傷穴を狙うソバット。
剣八は避ける事すらせずにその攻撃を傷の真ん中で当たる。

ぐちょ……。
嫌な血の音と感触が響く。

「ゲヘヘ……へへ」

腕を使い善吉をはたき落とす。
この男は剣は当然強いが、殴る、蹴る、投げる、落とすだって一流の威力だ。

「は……」

善吉は倒れゴロゴロと智代の元へ転がる。
まるで人間がボールにされているみたいであった。



「あいつら終わりじゃないのか……」

近くから見ていたタマは尋常な強さの前に足が竦んでいた。
野生の本能。
野生とは程遠い虎は皮肉にもそんな事が湧き上がっていた。
その時目に入る。
虎の横を誰かが走り抜けるのを。



◆◆◆◇◇◇



「あいつみたいな奴が居るからだっ」

あの眼帯を付けた男みたいな奴が居るからっ!
音無は逃げなくちゃいけなくなったり、佐祐理さんが殺される事になるんじゃないかっ!
次の相手もまた剣士だろうと関係ない。
自分は佐々木小次郎を屈伏させる為にもまだまだ負けられないのだから。

「はあああああぁぁぁぁぁ!!」

木刀正宗を握り、男を吹き飛ばした隙が出来た瞬間を狙って斬りつけた。

シュ。

空気を切り裂く音と共に男の体へ刀が吸い込まれる。
ブシュ!
血が俺の顔へ少量飛び散る。

「は?」

657撫子の唄 ◆WzpMn05TJA:2012/04/21(土) 23:03:44 ID:nCKx/Qt2O
だが肉を切らせて骨を経つ。
確かに男は俺の攻撃に気付いていた。

「……そ……」

こちらも肩を痛めた。
ただでさえ小次郎との戦いでボロボロの俺にはしんどい。
だが、戦いだけは収めなくてはならない。

「あんた戦いなんかやめてくれよっ!」
「ぁん?こんな楽しい事やめるわけがねぇ!お前だって強そうだ3対1だなこりゃあ」

しかもこいつはさっきあの触手を出してきた奴と戦っていた眼帯の男じゃないかっ!
あいつは完全に俺の事忘れているっぽいが。
やっぱりあの時俺達は逃げてきて良かったんだな。

「助けてくれてありがとうな」

銀髪の長い少女がお礼を言って俺に駆け寄った。
金髪の男も俺が奴を食い止める行動を取った俺にお礼を言った。

「俺は相沢祐一だ。あんたらの名前は?」
「私は坂上智代、こっちは人吉善吉だ」

智代さんがそう言った。
この戦いを終わらせたら仲間になれるかな。

だがそれはまだ後。
この男をどうにかしなくてはならない。

「なぁ相沢さん、早速で悪いんだが簡単な作戦が今思いついた。ここは俺の作戦を一緒に行動してくれ」
「わかった。それとさんは要らないぜ」

人吉が作戦を口にする。
                ノーマル
その作戦は確かに簡単で当たり前の普通の作戦であった。



◆◆◆◇◇◇



「まだ俺は負けないぜ眼帯」
「ふん、小賢しい真似をするみたいだなぁ」

当然コソコソとする姿は剣八に見えていた。
目の前で同等としていたのだ、気付かないわけがない。

「やっぱり剣は収めないか?」
「あぁ、当然だな」
「どうしてもか?」
「言わせるつもりか?」

平行線であった。
剣八は戦いで死ねるなら本能である。
故、戦いは死ぬまでやめるつもりはないのだ。

(よし、時間は稼いだ!)

善吉が剣八へ突進を仕掛ける。
それが合図に智代と祐一が剣八のそれぞれの斜めから現れる。
ライトに智代、レフトに祐一。
善吉は単純に囮作戦と挟み撃ち作戦をしたに過ぎない。

(結局はそんな程度かよ)

だが剣八はそんな行動を取る事は承知済みであった。
弱い人間が群れになってする行動。
いつの時代だって戦いの戦法は変わらない。

正面の善吉の突進、右斜め後ろの智代の薙刀、左斜め後ろの祐一の木刀正宗。
一斉の攻撃を剣八は対処しようと反撃をしようとした瞬間だ。





「ぁん?」

ハプニングが起こった。
誰も予想していなかったハプニングとはまさにこれであった。

剣八の体に刃が貫通していた。

ビューーン。

そして、伸びる刀は剣八の前に居た善吉をも狙っていた。

(俺……死ぬのか?めだかちゃんに惚れられる事もなく?ただのモブキャラとして……?安心院さんの言う主人公になる事もなく?)

658撫子の唄 ◆WzpMn05TJA:2012/04/21(土) 23:05:04 ID:nCKx/Qt2O
死ぬ瞬間。
瞬間なのに思う事はたくさんあった。
生徒会の阿久根高貴、喜界島もがな、球磨川禊にも知られぬまま終わるのか?
瞬間って長いんだな……。
刃が心臓を貫くまであと――。



「危ないヒトキチっ!」

タマが突然のハプニングにも対処して善吉へ体当たりして両者転がるのみでこの場は収まった。
刃は倒れた善吉の目の前にあった。

「んだよ、これ?」

長い刃に善吉は顔面蒼白となった。
タマも心臓をバクバクいわせていた。

そして長過ぎる刃は剣八のみを貫いていた。
普通ならこれでならどんな人間であろうと死んでいたであろう。

「へ、へ……最高だぜ……。市丸の野郎は、居ないはずなんだが……」

剣八はこの伸びる斬魄刀に覚えがあった。
元三番隊隊長の裏切り者の市丸ギンの顔が脳裏に浮かんだ。
が、奴は居るはずがない。

「でもこれだから戦いはやめられないぜ」」

口から血を吐こうと剣八は倒れない。
心臓はギリギリ命中しないで済んだのが幸いであった。
この程度で倒れる剣八は居ない。

「俺を殺そうとした奴は、……一体どんな奴だ……」

引き戻された刃はとある人物の目の前に小さい刀に戻されていた。
神槍。
それを握っていた人物は髪の長くまだまだ背の低い可愛らしい少女であった。

「…………」

彼女は何も語らない。
ただ短い刀を剣八や善吉の方へ向けたまま。
刀を貫く様はまるで唄の様、刀を汚す赤い血は唄の楽譜の様。

剣八、善吉、智代、祐一。
誰もがこの距離からは遠すぎて彼女――千石撫子――の表情はわからなかった。
どんな表情を、どんな思いで神槍を伸ばしたのだろうか?
答えは神のみぞ知るという言葉はあるが死神の剣八はわからない。
答えは撫子のみぞ知る。

元の世界では撫子は神にもなっている時間がある。
その神の撫子が取った行動であれば答えは神のみぞ知るとなっていたのかもしれないが。

それはただの言葉遊びである。



【E-4 森/朝】

【坂上智代@CLANNAD】
【装備:薙刀@現実】
【所持品:支給品一式 巨大な十字架@物語シリーズ ランダム支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
0:一体何が?
1:朋也たちと合流
2:善吉と行動、ゲームをぶっ壊す
【備考】
※智代ルート、卒業式直前からの参戦です

659撫子の唄 ◆WzpMn05TJA:2012/04/21(土) 23:05:27 ID:nCKx/Qt2O
【人吉善吉@めだかボックス】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 タマ@ハヤテのごとく! レインボーパン@CLANNAD ランダム支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
0:は……?
1:智代や他の参加者と協力し、ゲームをぶっ壊す
2:みんなと合流
3:めだかちゃんに惚れてもらう
【備考】
※めだかと付き合いたいと自覚した直後からの参戦です



【相沢祐一@Kanon】
【装備:木刀正宗@ハヤテのごとく!】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×1】
【状態:疲労(大)、傷(大)】
【思考・行動】
0:なんだって……?
1:智代さん、人吉と協力する
2:殺し合うつもりはなく主催者に怒りを感じている。
3:音無と仲間を探す。
4:佐々木小次郎を屈伏させたい。
【備考】
※舞ルート確定直前からの参戦。



【更木剣八@BLEACH】
【装備:10年後山本武の刀@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:疲労(中)、傷(大)】
【思考・行動】
0:楽しくなってきたぜ!!
1:強者と戦いたい。
※破面編終了後からの参加です



【千石撫子@物語シリーズ】
【装備:神鎗@BLEACH】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:???】
【思考・行動】
0:???
1:クチナワさんの体を探す?
2:暦お兄ちゃんは死んでほしくない?
【備考】
※囮物語の暦の家で寝泊まりした直後からの参戦です。
※彼女は右腕にある白いシュシュをクチナワという神になっているという妄想に取り憑かれています。しかし、人前ではこの妄想は発生しません。
※クチナワの体は蛇のお札で、撫子がお札を食べてしまうと神様になり同時に怪異になります。



【薙刀@現実】
主に平安時代に使われていた武器。槍の様に長く、刃は刀の様なのが特徴。


【巨大な十字架@物語シリーズ】
エピソードの使用武器。吸血鬼相手には焼ける様な痛みを与える武器。普通に大きいので武器にしても威力は相当大きい。

660 ◆WzpMn05TJA:2012/04/21(土) 23:11:50 ID:nCKx/Qt2O
投下終了です
元ネタはゲーム『沙耶の唄』より

あと前回の追記
阿良々木暦の支給品の事について記入漏れがあったので変更させていただきます

【阿良々木暦@物語シリーズ】
【装備:FN ブローニング M1910(7/7)@現実】
【所持品:支給品一式、FN ブローニング M1910の弾丸(42/42)、ランダム支給品×2】


岡崎朋也、古手梨花、衛宮士郎を予約します

661 ◆9hJQr3//3o:2012/04/29(日) 11:20:51 ID:zVo8bQkk0
初投稿です
黒神めだか、桂ヒナギク、イカロス、北条かりん、椎名を予約します

662 ◆jZCpcbFowc:2012/04/29(日) 18:12:54 ID:lY89j8Kg0
ごめんなさい、遅れましたが予約の延長を申請します

663一人じゃないから ◆WzpMn05TJA:2012/04/30(月) 07:54:11 ID:s2ZS4gpkO
俺、梨花ちゃん、衛宮は俺の彼女の古河渚を埋葬する事は道具がない事、時間がない事などの理由にて不可能だったので森の葉をかき集めて、その葉で誰にも見つからない様に隠して出来る限り手厚く葬った。
祈りながら俺は絶対に知り合いや仲間達と脱出する事を誓いながら……。
心の中で泣きながら……。

そしてそれからは俺達3人殺し合いを終わらせる為、歩き出していた。
目的地などはない。
ただ自分達の本能で場を切り抜いていくという意味が込められている。
そんな事は知らないが……。

先頭を衛宮、真ん中を梨花ちゃん、殿を俺が務めている。
これをはじめてもまだ俺達は誰にも会っていない。
見渡してみても今のところは異常はない。
殺し合いに乗った参加者も、俺達の様に脱出を試みる参加者も、襲われている参加者も誰も見つからない。

このまま異常無しでずっと続いていくなら平和で良いのだがここはバトルロワイアルのフィールドだ。
おそらく誰かしら今後接触する事になるはずである。

6時間が経過しそうだが俺は現在自分のこれまでの状況を出来る限り鮮明に思い出していた。

名簿を見なくても既に知り合いだけの情報なら覚えた。
100人が居る島の中で知り合いは古河渚と坂上智代と伊吹風子の3人だ。

『って、高校時代のほとんどを一緒に費やした僕の事を完全に忘れてないですかね?』

……金髪の親友の突っ込みが聞こえた気がしたがうん、気のせいだな。

そして俺がこの島で会えたのも3人だ。
古河渚。
古手梨花。
衛宮士郎。

俺が殺してしまった渚を含めても未だこの人数しか出会えていない。
ここで考えてみよう。
何人の参加者が殺し合いに乗り、人を殺しているかを。
そもそも俺を基準に考えるなら3人と出会った俺は他の参加者から見ても遭遇率はどのくらいなんだ?
たまたま良い奴らが俺の周りに居て、危険な奴らは俺達からは遠くに散らばっているというのだろうか?
おそらくだが俺達は他の参加者達よりも出会った人物は少ない方なのではないだろうか。

「なぁ、朋也に梨花ちゃん。ちょっと聞いてみても良いかな」

そんな事を考えていると前方の衛宮は立ち止まり俺と梨花ちゃんに質問を投げかけていた。

「不謹慎な発言だとは思う、……けど6時間の間で何人が殺されているかな……」
「みー、僕にはわからないのですよ」

そうだな。
俺だって梨花ちゃんの答え同様わからない。

先に渚を殺していたが、もしこれが知らない奴だったとしよう。
そしたら俺は渚を護る為に今も殺し合いに乗っていたであろう。
ウジウジして動かなかった俺だが、もしかしたら早く参加者を皆殺しにしようと大幅に動いていたかもしれない。
当然梨花ちゃんと衛宮だって殺せるかはともかくとして襲っていただろう。
これは偶然と偶然が重なった結果であろう。
つまり平均とか云々ではないと俺は思っている。


「ん?なんか聞こえないか?」

小さい電子音らしき音が耳に届いた。
他の参加者の罠や攻撃という可能性が体に駆けめぐり少し睨む目になったがどうやらそうではなかったらしい。

『ご機嫌いかがですか皆さん?』


そういえば放送なんてのがあるとか言ってたな。
少し暗く、頭が良さそうな知的な声。
それは確かに俺達の記憶にも新しい声だ。

664一人じゃないから ◆WzpMn05TJA:2012/04/30(月) 07:58:19 ID:s2ZS4gpkO
1度しか聞いていない声であるのにもうすっかり彼女の声は覚えてしまった。
おそらく主催者の進行役とか言っていた郷田真弓の声で間違いないだろう。
そして、短い内容であったがその内容はとてつもなく重かった放送が終わる。



◆◆◆



「クッ……」

古河渚。
その名前を自分で殺したとは言え、その死は信じたくはないものであった。
何を言っているんだ俺は?
自分がやってしまったクセに……。
しかも名前が呼ばれたのは一番最初であった。
あいうえお順では無かった事を考えると殺された順番であろう。
つまり一番最初に殺し合いに乗ったのは俺って事なのか、チクショー……。

しかも梨花ちゃんの親友とか言っていた園崎って人や、衛宮が言っていたサーヴァントなんていう戦闘力の高い奴らのライダーという奴でさえ倒されていた。

「慎二のサーヴァントのライダーには殺されかかった俺だがあんな奴まで死ぬなんてな……」

衛宮は悔しさよりも驚きの方が大きかったらしい。
伊達な凶器ではダメージを与える事すら難しい相手が死んでいるというのだから驚きであろう。
だが、俺にはどの様な強さなのか検討も付かなく、まだピンと来ないのが正直なところである。

665一人じゃないから ◆WzpMn05TJA:2012/04/30(月) 08:23:02 ID:s2ZS4gpkO

NGワードが出てしまった為に一部省略
すいません



◆◆◆



「崩れていくのです僕の世界は……」

疲れた顔で梨花は呟いた。
前原圭一が暴走する世界。
園崎詩音が暴走する世界。
竜宮レナが暴走する世界。
鉄平が帰っては沙都子に酷い事をする世界。

崩壊しない世界はない。
数々の世界を旅して理解した事であった。

いずれ崩壊を直せても完全には直せない。
崩壊した跡には崩壊の綻びがどこかしらに残る。
その綻びは永遠にあり続ける歪みへと変わっていくのだ。
悠久の時間の間をだ。

「そして僕も力を失って……」

抗う力を失う。

「やめようぜ梨花ちゃん。俺を君達が責めなかった様に梨花ちゃんにだって誰も責めないよ」

朋也の頭が微笑みながら梨花を撫でていた。
自分の世界は崩壊したのは梨花だけではない。
朋也もまた世界は崩壊して戻れない身だ。
痛い程朋也は梨花の気持ちがわかる。

「朋也。ありがとうなのです」
「本当にこんな風な弱さは年相応なのにな」
「なんか言いましたか朋也?」
「……別に」

何故かはわからんが梨花の顔に黒さが見えた気がした朋也はとりあえず突っ込まない様にした。

「お前等は仲が良いのな」

士郎が朋也と梨花の話している場面を見て笑っていた。
まるで兄妹の様なやり取りをこの2人は行っていて微笑ましかったから。

「年相応なのにって朋也は僕をおばさんにでも見ていたんですか?」
「は……?いやそんな事ないぞ?」

さすがにそんな年上には見ていない。
朋也は手をいやいやと振りながら否定する。

「じゃあ大人のお姉さんに見ていたのです。見る目があるなとロリコンの目で見てました」
「な、なんでそうなる!?」
「お兄ちゃ〜ん」
「ぐっ……」

少し顔を赤くして恥ずかしがる朋也。
兄弟の居ない朋也にとって少しこそばゆい気持ちが出てきた。

「やっぱり朋也は僕相手に恥ずかしがっているのですね」
「だから違うっての!」

朋也と梨花。
ギャーギャーとそんな子供っぽい話をしていた。
どこか平和な絵がバトルロワイアルに不釣り合いに見える。

「……お兄ちゃんかー」

この男も兄弟の居ない男であり、そう呼ばれた事など居ない。
間桐慎二の妹の間桐桜は先輩と慕ってくれているがそういうのとも違う。
なんか年の差が激しすぎて恥ずかしさが時間が経つ程爆発していくのだ。

666一人じゃないから ◆WzpMn05TJA:2012/04/30(月) 08:23:44 ID:s2ZS4gpkO
「…………はっ!?」

朋也と梨花からはニヤニヤと笑われていた。
このロリコン。
目がそう物語っている。

「ここにはロリコンの高校生しか居ないのですよ〜」
「「って待てや!」」

暗くなってはダメだ。
後ろ向きな考えしか浮かばなくなる。
だからこうやって笑いあって絆を深めていける事が生き残るコツなのではないだろうか。

「良い話に持っていったってダメなのですよ。朋也も士郎もロリコンなのです☆」

みんなと楽しんだ部活メンバーと重ねながら。
人は違えど楽しい時はみんな楽しく、協力する時はみんなで協力していくのであろう。

「梨花ちゃんって……狸だよな」
「だよなー……」

無意味にロリコンの称号を与えられた2人は苦笑しながら楽しそうな表情の梨花を眺めていた。
そしてお互いが顔を見せあって、笑った。

「「お前ってロリコンなんだな」」
「「んなわけあるかっ!!」」

息ぴったりとした怒りが瞬く間に展開されていた。
この姿はつい先ほどに殺し合った仲には見えない程に。



◆◆◆



沙都子に魅音も見ているかしら?
必ず敵は取るから。
これが私の崩壊した世界の新しい仲間。
強い力を持つ頼もしい仲間。
話しやすく、楽しい仲間。
そんなメンバーなのよ。
私は2人が見ているであろう空を見上げる。
あと朋也の恋人という渚も一緒に見ているかもしれないわ。
そんな空からは朝日が見えてきたわね。
本来は今日が始まるという希望の光が、絶望を迎える始まりの光なんて最悪だわ。
いや、でもこの光は朋也と士郎を現しているのかしらね、フフッ。



梨花はこの2人を見て本当にどうにかしてくれるのではないかという期待というか心がそう自分に訴えてきていた。
まるで運命を次々と変えて沙都子を助け出したあの前原圭一の様な強い意志がひしひしと伝わってきていたのであった。
ただ1つ、本当に小さくて些細な心配があった。

「でも、何故か僕の立場がヤバいのですよ」

667一人じゃないから ◆WzpMn05TJA:2012/04/30(月) 08:24:07 ID:s2ZS4gpkO
【F-3 森と野原の境目/朝】

【岡崎朋也@CLANNAD】
【装備:ドラグノフ9/10@現実】
【所持品:支給品一式 ドラグノフの弾丸20/20 ランダム支給品×5】
【状態:健康、精神的大ダメージ、決意】
【思考・行動】
1:渚を殺した罪を償い、背負い込み、捨てない
2:梨花ちゃんと士郎と行動してゲームを終わらせる
【備考】
※渚ルートの卒業の少し前くらいの参戦です。
※渚の支給品は回収しました。



【古手梨花@ひぐらしのなく頃に】
【装備:大型ナイフ@現実】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×1】
【状態:酔っ払い(小)】
【思考・行動】
0:何故か僕の立場がヤバいのですよ
1:主催者を倒し、沙都子の分まで生きる
2:朋也、士郎とゲームを終わらせる
【備考】
※皆殺し編の沙都子救出後からの参戦です


【衛宮士郎@Fate/stay night】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:疲労(弱)】
【思考・行動】
1:正義の味方として1人でも多くの人を救い、主催者を倒す
2:朋也と梨花ちゃんと行動してゲームを終わらせる
3:切嗣は本人……?
【備考】
※凛ルートのキャスター戦終了後のアーチャー戦前からの参戦
※サーヴァントを全てsnのサーヴァントだと思っています
※剣の投影は出来ますが投影をする度に体力が減っていきます

668 ◆WzpMn05TJA:2012/04/30(月) 08:27:07 ID:s2ZS4gpkO
投下終了

元ネタはアニメ「ストライクウィッチーズ」第3話サブタイトル『一人じゃないから』より


省略されたところは後々にwikiにて収録させていただきます

戦場ヶ原ひたぎ、ランサー、綾崎ハヤテ、神原駿河を予約します

669 ◆jZCpcbFowc:2012/04/30(月) 11:43:52 ID:1HOhR6HI0
投下乙ですー。
この三人も安定しているなー。戦闘が出来るのが士郎だけとは思えない安心感だ

C.C.、来ヶ谷唯湖投下します

670朝霧の幻影殺人鬼 ◆jZCpcbFowc:2012/04/30(月) 11:44:34 ID:1HOhR6HI0
来ヶ谷唯湖という少女は、本来こんな人物ではない。
たとえば『リトルバスターズ』が存在する世界では姉御肌の個性的な人物になるし、気になる男子に告白されれば心が揺らぐ、そんな普通の少女の一面だって持っている。
こんな風に殺し合いに身を投じ、進んで殺人を犯そうとするような人間ではないのだ。

しかし来ヶ谷唯湖はこうして狂人顔負けの行動をして、更には王の力―――ギアスさえ手に入れた。
科学の街の超能力者の高圧電流を受けてもびくともしないその姿は、化け物のようですらあったろう。
彼女がそんな人外じみた真似をやって除けたのはひとえに、彼女が信じていたからだ。
――――この世界が『ユメ』であることを、ひた向きに信じていたから、たったそれだけの話。
夢の中で怪我をしたって、実際に身体が傷付くわけがない。
子供でも判るような当たり前を、彼女はこの立派な現実に当てはめてしまっていた。
狂った彼女にとってそれが幸運なのかはたまた不運だったのかは本人すら預かり知らぬ話だ。


だが来ヶ谷唯湖は確かにこの瞬間、動揺を見せていた。
所詮現実には届かない儚い夢だと信じているのに、それでも彼女の心を不気味な感覚が襲う。
こめかみに手を当てて目を見開くその姿は、つい数時間前に一人の少女を狂わせた狂人の動作とは到底思えない。
それは紛れもなく、予期せぬ悲劇に動揺する一人の少女の姿だった。


「唯湖。お前、どうしたんだ? えらい変わりようだぞ?」


C.C.が心配しているような言葉をかけてくるが、その声色にそんな優しさは欠片も見当たらない。
これが彼女の平常であったのだが、それを警告――共犯者としての――と受け取った来ヶ谷は、可能な限りの平静を装って応答する。


「いや、何でもないさ……少し意外な名前が呼ばれたものでな」


そうか、と表面上はつまらなげに答えるC.C.だが、その瞳は来ヶ谷を見透かしているかのようだ。
彼女は知っている。
世界へ反旗を翻した一人の少年、ルルーシュ・ランペルージ。
悪を名乗り、世界の敵意を一点に集中させて、絶好の好機を逃さずに全てを達成した改革者。
必要とあらばどこまでも非情になることの出来た彼でさえも、大切な人間の死には心を動かした。
人間という生き物は、結局のところ非情に徹することは出来ないのかもしれない。
このバトルロワイアルの世界を自らの『夢』と断じ、誰の目から見ても明確な『狂人』っぷりを見せていた来ヶ谷唯湖でさえも、狂いきることは出来ていないのだ。


(人間ってのは……わからないな)


不死故に、多くの人間を見てきた彼女でさえも、未だ人間という生物の本質は見抜けていない。
外道としか呼べないような所業を涼しい顔でやってのけても、一人の人間の死がそれを揺るがす。
逆に、つい先刻まで紛れもない善人だった人間だろうと、変貌するのは僅か一瞬。
彼女に『不死』を与えた一人のシスターの、突如豹変した表情が脳裏を過り、慌てて幻影を拭う。
とにかく人間はわからない―――負の思考に陥らぬ内に、緑髪の少女は結論付けた。

C.C.にそんなまどろっこしい思考を意図せず強いた来ヶ谷唯湖は、自分の記憶を手繰っていた。
この可笑しな夢に辿り着く前に見ていた、願望の塊の世界のことを、少しずつ思い出していく。

瞼の裏に再生される、見慣れた風景。
夏の日射しが燦々と照りつけ、爽やかな風が吹き抜けていく感覚が甦ってくる。
空はもうじきに暮れようとする頃を示す茜色、しかし日光の強さは未だ健在だ。
ここは、グラウンド。来ヶ谷の所属している野球チーム『リトルバスターズ』のホームグラウンド。

部活動のキャプテンが連合した化物チーム相手に見事勝利をもぎ取り、目標は達成された。
勝ち目はかなり低い勝負であったが、勝敗を分けたのは仲間との結束だとか、そんな少年漫画的要素だ。
何せここは来ヶ谷唯湖の夢。
夢の中でなら、どんな奇跡だって起こるのだから。

671朝霧の幻影殺人鬼 ◆jZCpcbFowc:2012/04/30(月) 11:45:09 ID:1HOhR6HI0

少しずつ生じている綻びは、近い内に致命的な崩壊へと繋がるだろう―――夢の終わりに。
そんな時、来ヶ谷唯湖は彼と出会った。
正確には、彼――直枝理樹という少年を、初めて恋愛対象として見た。
彼から告白されて、どこか達観していた彼女の心とて、確かに揺らいだのだ。
しかし無情にも、そんなにも幸せな夢は終幕を迎えようとしていた―――奇跡は起きなかった。
夢は終わり、自分は現実に戻る筈だった。しかし目を開いてみれば、今度は随分と趣味の悪い悪夢ときた。

夢なのだから、面白い夢は楽しまなければ損だ。
そう思って、きっぱりと『幸せな夢』に見切りをつけて『悪夢』に身を投じた。
電撃使い(エレクトロマスター)の少女だの、王の力(ギアス)だの、ファンタジックな要素も増えた。
自らも『強制狂人』のギアスを手に入れ、これからいよいよ本格的に殺し合いを楽しんでいこうと思っていた―――それなのに、放送で彼の名前が呼ばれた時、狂人の心が確かに、凍ったのだ。
たかが夢の世界の、それも『前回』の夢のキャラクターの死に、何かを感じた。
直枝理樹が死んだ報せを受けて、一瞬全てが馬鹿馬鹿しいとさえ思ってしまった。


(理樹くん、か)


個性派揃いのリトルバスターズの中では、一際普通で、だからこそ皆の中心にいた少年。
誰とでも別け隔てなく接することの出来る優しさこそ、彼が好感を持たれる理由だったろう。
来ヶ谷もまた、最初から彼を『面白い』と思った。
それが俗に『恋』と呼ばれる不可思議な感覚に変わってからも、その妙な感覚にどこか納得がいった。

そして今もまた、不可思議な感情に囚われている。
『夢のキャラクター』に向けるべきでない、恋ともまた違う攻撃的な感情が、来ヶ谷唯湖を苛む。


(ほほう―――私は今、怒っているのか)


理樹を殺した何処の誰とも知れない輩のことを考えるだけで、激しく感情が昂る。
表面上こそ出さないが、つい数分前までは狂人だった少女と同一人物とはとても思えない、無念の死を遂げた『好きな人』の死に憤る―――そんなごく当たり前の感情が、来ヶ谷を支配していた。
仲間に向けて嫌がらせが行われた時にも怒りを露にした来ヶ谷だが、今回はその比ではない。
殺意なんて生易しい言葉では表現しきれないほどの復讐心が、呪いのように沸騰している。
泥のように粘っこく、狂乱の心は悪意へと変わっていく。


(……ああ、認めよう。私は理樹くんが好きだ)


こんな自分を愛してくれた、たった一人の男の子を、来ヶ谷唯湖も愛していた。
夢だとか現実だとか、そんなものはもうどうでもいい。
来ヶ谷唯湖という一人の人間の意思で、直枝理樹を愛することを誓う。
たとえ罪深い決断を強いられようが、畜生の身に貶められようが、絶対に見失うことはしない。


だから、来ヶ谷の役割は狂人なんかではなく――――彼の愛した世界の守護。


仮にこれが夢の世界だろうが、直枝理樹という少年はキャラクターの一人一人を、愛していた。
リーダー、棗恭介のことは頼れるリーダーとして。
その妹、棗鈴は放っておけない幼なじみとして。
筋肉馬鹿、井ノ原真人は大切な親友として。

硬派ながら本質は馬鹿である青年、宮沢謙吾もまた親友として。
来ヶ谷唯湖には愛を伝えてくれたが、きっと彼は誰一人として、貶められることを望まないだろう。
来ヶ谷だけを特別扱いするような人間でないことは、彼を知る者ならば誰もが知っている。
理樹を愛している。だからこそ、彼の願望をどんな手段を用いてでも守護すること。

672朝霧の幻影殺人鬼 ◆jZCpcbFowc:2012/04/30(月) 11:45:40 ID:1HOhR6HI0
「C.C.」
「………む? どうした、何かを決めた目をしているな。さっきまでとは大違いだ」
「ああ、少し思い出したものでね―――幸せな夢をな」


C.C.には、今の来ヶ谷の瞳に見覚えがあった。
質と覚悟こそ違えど、それは彼女の最初の共犯者、ルルーシュ・ランペルージのそれによく似ている。
何かを守り、何かを得るために何かを犠牲にして戦う―――そんな瞳だ。


「これから私は少しばかりやり方を変える。『目的』を目指すことにした」
「ほう。聞かせてみろ」
「リトルバスターズ―――私の"ユメ"を守る。その為に私は誰でも殺す。いくらでも殺す」


狂人の瞳から、確かな覚悟を秘めたそれに変化していた。
来ヶ谷唯湖の出した答えは、結局のところ鮮血の舞い散る殺人鬼の道。
最後に行き着くところこそ変わっているが、本質的には然程変わっていないのだ。
だが、彼女は変わっている。
夢―――非現実の世界で、非現実の恋人の望みを成就させるために、非現実の存在を殺す。
全く以て無意味な話かもしれないが、これが来ヶ谷の出した結論だった。


「……随分な変わりようだな、唯湖。ただしお前は分かっているのか?」


思い出されるのは、予想もしない奇策・謀術で不利を覆していった少年の姿。
彼の台詞を、使う。


「――――――撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ、ということを」


引き返すことなどありえない。
C.C.の言葉には確かに重みがあったし、ただの小娘に過ぎない来ヶ谷よりも、彼女の方が世界を知っている。
だがしかし、来ヶ谷はその言葉を敢えて―――振り切った。


「そのくらいのこと、この夢が始まった瞬間から弁えていたさ。私は、このバトルロワイアルが始まった瞬間から――、この世の全ての悪を担うくらいの覚悟をしていたのだからな」


口から出任せだった。覚悟なんてつい先刻したばかりだし、バトルロワイアル開始直後は確かに狂人だったのだから。
それを見抜いたのかどうかは定かではないが、険しい顔をしていたC.C.は、笑いを溢した。
来ヶ谷唯湖のあまりの変わり様に。
まるでどこかの誰かさんのように、本当に高校生か分からなくなるほどの決意の速さに。
笑わずにはいられなかった。


「いいぞ、乗ってやる、来ヶ谷唯湖―――お前はなかなか、面白い」
「誉め言葉として受け取っておこう、魔女」


狂人を脱して、守護するための殺人鬼。
流れ行くままに、身を委ねる魔女。
少しだけ距離の近付いた二人は、やはり歪んだ方向でバトルロワイアルを馳せる。
――――朝霧が、心地好い。

673朝霧の幻影殺人鬼 ◆jZCpcbFowc:2012/04/30(月) 11:45:58 ID:1HOhR6HI0
【E-4 森/朝】


【来ヶ谷唯湖@リトルバスターズ!】
【装備:宗像形の日本刀@めだかボックス】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:リトルバスターズの面々を生還させ、理樹くんの望みを叶える
2:C.C.と行動し、人々を惑わしつつも人数を減らしていく
【備考】
※来ヶ谷ルート、夢が覚める前からの参加です
※御坂美琴、鳴上悠の容姿のみを把握しました
※直枝理樹への恋心を思い出し、狂人思考から脱しました


【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:このゲームを傍観する
2:唯湖を傍観する
3:ただし、唯湖から何か指示された場合は可能なら従うのも吝かではない
【備考】
※本編最終話後からの参戦。
※来ヶ谷唯湖に漠然とした興味を抱きました

674 ◆jZCpcbFowc:2012/04/30(月) 11:46:58 ID:1HOhR6HI0
投下終了です。

675HEROES ◆9hJQr3//3o:2012/05/05(土) 15:49:28 ID:xfcml28Q0
「こんなにも全力で戦える者がいるなんて私は嬉しいぞイカロス後輩!別に貴女が後輩かどうかはわからないがな!」
「……別に私は嬉しくなんかない。ただマスターの命令だから殺すだけ」

私の最初の同行者で仲間のめだかさんは原初の海という扇子の様な物を持ちながら、イカロスという参加者の持つ大きな刀相手に互角以上の力を見せていた。
おそらくこれが拮抗しているという状態なのであるのだろう。
どちらともあまり武器よりも素手で戦っているようなものだが……。

私、桂ヒナギクは本当であるなら仲間のめだかさん相手に助太刀したいのはやまやまだ。
私が乱入すれば少しは戦局を変えられるであろうか、足手まといになるかはわからない。
しかし私の横には気絶している椎名さんという参加者がいるので戦いの巻き添えや北条かりんさんや他の殺し合いに乗った人が現れた場合恰好の獲物になるだろう。
それだけはあってはならない。
それにあの御剣総一という少年は襲われているというのに戦ってはいなかった。
むしろ『護る戦い』という表現の方が合っている気がした。
対峙した時も催眠術にかかった感じの目をしていた。
……別に催眠術にかかった人の目など知らないが。
ただ大したダメージも与えてはいないのに、バッテリー切れのロボットの様に眠る様に気絶したのはなんだか妙なことではある。

「かりんさんならイカロスさんを止められると思うのだけど……」

かりんさんをマスターと慕い奉仕をして総一さんを刺したのであるから考えるのは容易だ。
ただそのかりんさんは行方不明だ。

「ハヤテ君……。あなたなら私の立場になったらどうするのかしら」

不幸体質なハヤテ君だ。
もしかしたら私以上の危険をこのバトルロワイアルで体験したかもしれない。
それでも私は聞きたい。

『ハヤテ君の声が聴きたい!』

だが、聞こえてきたのは違う声。
みんなの人生を狂わせた声。
私の人生を。
めだかさんの人生を。
椎名さんの人生を。
御剣さんの人生を。
かりんさんの人生を。
イカロスさんの人生を。
ナギの人生を。
マリアさんの人生を。
瀬川さんの人生を。
ハヤテ君の人生を。
他の参加者達の人生を。

郷田真弓の声の放送だ。
6時間毎に郷田真弓や朝倉涼子、シャルル・ジ・ブリタニアの声を聞くことになるのは苦痛だ。



◇◇◇◇◇

676HEROES ◆9hJQr3//3o:2012/05/05(土) 15:50:33 ID:xfcml28Q0



聞いた放送の内容を整理してみよう。
参加者の名簿とノートと地図、筆記用具を使ってまとめた放送の内容をチェックだ。
8時からの禁止エリアは【B-7】。
10時からの禁止エリアは【E-1】。
確かこの位置は【E-4】のはずだ。
8時からの禁止エリアはあまり私達には影響は少なそうだ。
だが10時からの禁止エリアは若干影響があるかもしれない。
少し頭に入れておこう。

次に追加されたエクストラゲームの存在は厄介ではないだろうか。
確かに参加者同士のデイパックの中身の差は激しいだろう。
めだかさんの支給された参加者全員の全身写真なんかは大当たりだろう。
これにより私達は椎名、御剣総一、北条かりん、イカロスの名前を知れたのであるから。
そして武器の存在。
私には山本のバット、めだかさんには原初の海、イカロスさんには刀、かりんさんには拳銃、椎名さんには天王州さんの家で見たサーベルをそれぞれ持っていた。
だが御剣さんの支給品はろくなものがなかった。
羽根の付いたランドセルにこけしだ。
武器なんてものが彼にはなかったのであろう。
それがゲームに乗った参加者であるなら喜ばしいことだがそんな好都合はそうそうないであろう。
だが武器ありの状態で更に強い武器がマーダーの手に渡るなら最悪だ。
そうなる前にも私が早く手に入れて悪用されない様にしなければ。

そして犠牲者は14名。
1/10以上の数の者達が亡くなった。
マリアさんの死は一緒に住んでいるハヤテ君とナギが心配だ。
特にナギは弱いからマリアさんの死に泣いているかもしれないわね。
ナギの悲しみを癒してくれる仲間を見つけられたら良いのだけれど。

それにしても殺し合いを止めると誓ったのにまだ何も成し遂げられない自分に嫌気がする。
所詮は口だけ。
既に目の前で御剣さんは殺され、放送を聞かずに未だ戦っているめだかさんの手助けも出来ないなんて。

自分の無力さを自虐しながら拳を作り木に1回拳をぶつけた。
とても痛い。
しかしこんな痛みは亡くなった14人に比べたら……。

677HEROES ◆9hJQr3//3o:2012/05/05(土) 15:51:27 ID:xfcml28Q0
「ぅ……。なんだというのだ……」

と近くから人が動く気配がした。
弱々しくよろよろとした動き。
頭痛がするのか頭を抑える手。
現状がわからないのか少し首を回して辺りを見渡す。
椎名さんの目覚めであった。
その目は狂った様な目ではなく、年相応な少女の目であった。



◇◇◇◇◇



どうして、この世界には救いはないの?

なにも考えられない。
人の死とはこんなにも気持ちが悪かったものだったなんて……。
私に救いを渡してくれたあの男の人を直接じゃないにしても『皆殺し』なんてことをイカロスに軽はずみに命令した私が馬鹿だったのだ。
人に絶望した自分をこんなにも信じさせたのに……。


『またあの人が私の事を助けてくれるって元気な姿で言ってくれたらいいのに……』


虫のいい話だ。
誰もこんな私を助けてなんかくれない。
忠誠してくれたイカロスだって私は見捨ててしまったのだから。


もう私は人殺しの道しか歩めない。
もう私は汚れてしまった。
服にべたりと浸食するそれはとても朱くて、とても鉄のにおいがして、
とても重かった。
これが人1人分の命の重さと尊さなのだろう。

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

今にも倒れてしまいそうな程、この命の大きさはとても大きく私独りで抱え込むには多分無理なのではないだろうか?

しかも既に14人の犠牲者。
放送からはどのくらい経ったのか既に覚えていないがそれでも1人ぐらいの犠牲者は出ているのではないか?

郷田真弓が先ほど参加者に問ったあの言葉を思い出す。

『脱出を目指しているあなたに問います。
あなたは大事な人を失ってでもその理想を掲げられますか? 』

私にはかれんの居ない世界はありえない。
そんな事になるなら私が死んで変わりになっても良い。


『ゲームに乗っているあなたに問います。
この結果にあなたは満足出来ますか? 』

けれども私にはもうこのゲームは耐えられない。
ごめんねかれん。
お姉ちゃんはもう……。

私は渡すことすら出来なかったあの武器を取り出す。

S&W M37エアーウェイト。
最初は想像していた拳銃の重さよりも軽いと思っていたのだがとんでもない。
狂っていたのは私。

最初に私自らが殺す相手は、
誰より私を知っていて、
誰より私を知らなかった、
――北条かりん。



◇◇◇◇◇

678HEROES ◆9hJQr3//3o:2012/05/05(土) 15:52:24 ID:xfcml28Q0



「椎名さん、あなたはどうして御剣さんを襲っていたのですか?」

椎名さんはぼーっとした態度で私の話を聞いているのかどうかよくわからない。
元々あまり話すのが好きというようには見えないのだが。

「…………御剣?」

ぼそっと呟く。
何が起きていたのか一部始終を知っている椎名さんだけが頼りなのだ。

「あの目を見てから……、それから思い出せないとは」

彼女は私にではなく自分で自分に言い聞かせているらしい。
あの目とは気になるがあまり非現実なことが関わっているとは考えたくはないものだ。

「浅はかなり……」

悔しそうに呟く椎名さん。
彼女は今無防備な私を襲おうとしたり、殺気は全く見せない。
彼女はゲームには乗ってはいないだろう。

ガンガン。
それから10メートル先ぐらいで行われているめだかさんとイカロスさんの決闘は未だ熱い叫び声とよく響く殴り合いは終わりそうにない。
その2人からまた椎名さんへ向き直った。

「椎名さん、あなたはゲームに乗ってはいないと思うのでこのサーベルを返します」

丁寧に両手に持ち、怪我をさせないように刃を向けずにそれを渡した。

「ん、あぁ……」

見知らぬ私からそんなものを返されたのだから少し警戒していた。
少しずつ、少しずつと手を伸ばしそれから素早くこのサーベルを持っていた。
なんだこの人4の動き?
全く私には取られたのがわからなかった。

「ここで何があった?」

それからは鋭い顔と目つきになり私に詰め寄る。
私の勘がそこで告げた。
さっきは操られたのかはわからないが、意志のある今のこの素でオリジナルの彼女が一番遥かに強いと。
放送前に戦った時にこの椎名さんが相手だったら瞬殺だったかもしれない。
この彼女がゲームに乗っていない人で心底安心した。

「実は椎名さんが御剣さんを襲っていて……」
「私が御剣に……?」

私は御剣とは敵対してはいないぞ?
そんな事を思っている気がする。

「結局私とめだかさんが助けたんだけど、あのイカロスさんに御剣さんは殺されたわ」

視線の先の羽根が生えている方がイカロスさんだと伝えた。

679HEROES ◆9hJQr3//3o:2012/05/05(土) 15:53:10 ID:xfcml28Q0
「御剣の死体はどこだ?」
「え?」

よくわからない。
だが次の言葉で真意が理解出来た。

「仲間に挨拶ぐらいはな」

そうかと納得してその御剣さんの遺体が置いてあるところへ移動した。
だがそこには想像のしていなかった光景が目に広がった。

「どうして……?」

あれ?
惨劇のあと。
惨劇の傷痕は嫌でも残る。

だが足りない。

「御剣総一さんの、遺体がない……」



◇◇◇◇◇



「だから人殺しなんてやめてくれって頼んだだろう北条かりんさん」
「なんで……?」

私の握る拳銃に臆することなくその人は私の腕を掴んで私の自殺を静止させた。
なんでこんなにもこの人は私が求めていること全てを口にしてくれるのだろう。
その懐かしさなのか、悔しさなのか、嬉しさなのか、彼の瞳にはどんな心境が混ざっているのだろうか。

死んだはずなのに、私を助けてくれた。
幽霊ではなく実体で。
貫かれた跡もなく、私のヒーローの様に。

「俺……、御剣総一は絶対に君を救うから。今の君にはわからないとは思うけどさ……。二度と君を孤独にはさせないよ」



【E-4 森/朝】

【イカロス@そらのおとしもの】
【装備:フランベルジェ@とある魔術の禁書目録】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:疲労(小)】
【思考・行動】
1:マスターの命令に従う。
2:命令通り参加者の皆殺し。
3:めだかを殺して、マスターと合流。
【備考】
※本編開始前からの参戦。
※桜井智樹ではなく北条かりんがマスターです。
※武器は没収、羽根で飛ぶ事は制限です。
※馬鹿力は制限されていません。

680HEROES ◆9hJQr3//3o:2012/05/05(土) 15:53:55 ID:xfcml28Q0
【黒神めだか@めだかボックス】
【装備:原初の海@ペルソナ4】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×1】
【状態:疲労(小)】
【思考・行動】
1:桂二年生と行動。
2:主催者から参加者全員に謝らせる。
3:イカロスを捕える。
【備考】
※オリエンテーション開始直前からの参戦。
※参加者全員の顔と名前を一致させています。
※乱神モードは3時間待って10分、改神モードは制限で1日1回の制限です。


【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
【装備:山本のバット@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【所持品:支給品一式×2、羽根の付いたランドセル@Kanon、こけし@そらのおとしもの、
参加者全員の全身写真@その他、ランダム支給品×2】
【状態:疲労(小)】
【思考・行動】
0:御剣さんの死体は?
1:めだかさんと行動。
2:このゲームを止める。
【備考】
※アテネ編終了後からの参戦です。
※めだかの知り合いの事を教えてもらいました。
※参加者のある程度の顔と名前を一致しました。
※北条かりん、イカロスを危険視しています。


【椎名@Angel Beats!】
【装備:サーベル@ハヤテのごとく!】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:疲労(大)】
【思考・行動】
0:御剣の死体は?
1:殺し合いはしない。
2:ゆりと合流する。
【備考】
※ユイ消滅前からの参戦。
※ギアスは解けたようです。


【北条かりん@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:S&W M37エアーウェイト3/5@現実】
【所持品:支給品一式、S&W M37の弾丸45/45@現実、ランダム支給品×2】
【状態:健康、精神的ショック】
【思考・行動】
0:どうして?
1:かれんの元に帰る
2:この御剣さんは本物?
3:イカロスと参加者を皆殺し?
【備考】
※本編開始前からの参戦。
※黒神めだかの名前と容姿を記憶しました。


【御剣総一@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:なし?】
【所持品:なし?】
【状態:???】
【思考・行動】
1:???
【備考】
※何者なのか、本人なのかは不明です。

681 ◆9hJQr3//3o:2012/05/05(土) 16:00:11 ID:xfcml28Q0
投下終了です
元ネタはドラマ『HEROES』より

このロワイアルでの急展開が好きだったのでこんな話になりました
しかしボツになってしまっても仕方ないかもと思います
もしボツだとしても遠慮なくいってくださって良いので管理人さんお願いします

682名無しさん:2012/05/06(日) 01:34:55 ID:aLJ263ls0
これはこれで面白い
けど、ちょっと曖昧過ぎるかな?

683名無しさん:2012/05/06(日) 06:39:06 ID:P6SI455w0
とりあえず、総一の件についてちゃんと説明しないと誰もリレーできないのでは

684 ◆WzpMn05TJA:2012/05/06(日) 10:40:59 ID:JKNyNNXkO
予約を延長します


感想を書きます

◆jZCpcbFowc氏
とても姉御のキャラクターを魅力的に読ませていただきました
前回の春原や恭介を見ても本当に呑み込まれていきます



◆9hJQr3//3o氏
ラストの展開への持っていき方が上手いと感じました
総一の登場は感動を覚えました
多分ボツにはするつもりはありません
ただ御剣総一、北条かりん、桂ヒナギク、黒神めだか、椎名、イカロスはしばらく非リレー状態にしておきたいと思います
後々自分がこの続きを描かせてもらいます
物語的に少し訂正されるかもしれませんが作品1つ1つを大切にしていきます

685 ◆9hJQr3//3o:2012/05/06(日) 11:54:06 ID:RALqeGXM0
>>684
ありがとうございます

しかも直々に続きを描かれてくださるとは嬉しいです

686 ◆RmIe4rjRnw:2012/05/06(日) 14:38:08 ID:tLWC/YiA0
投下乙です

なんだかすごく面白いことに・・・
続きが気になってしかたないです

足立透、グリムジョー・ジャガージャック、神尾観鈴で予約します。

687名無しさん:2012/05/07(月) 00:21:37 ID:awuM466Q0
非リレー状態か…ますます面白いな

688アケルソラヘ ◆WzpMn05TJA:2012/05/09(水) 19:49:12 ID:Qzvl8Z56O
「私はあなたの事をなんて呼べば良いのかしら?」

俺の同行者なのかマスターの代理なのかは知らないが(というか同行者はともかくマスターとは認めたくねぇ)戦場ヶ原ひたぎが突発的にどうでも良い事を真顔で言ってきた。
正直どうだって良い。
ただそれを言うと戦場ヶ原は絶対何か毒舌を吐くであろう。
短い時間だが大体の事は予想が出来てしまう。
嫌な予感がビンビンと勘が告げる。
……無難に普通で良いと素直に言っておこう。

「普通で良いんじゃないか?」
「わかったわ青」
「誰が青だよ!明らかに俺の全身しか見てねーじゃねーかよ!」

ダメだコイツ……。
何言っても悪口で返される。
明らかに俺を舐めていやがる……。

「つーか今は良いとして敵が出たら俺が戦うだろ?その時お前はどうする?俺から逃げて戦闘を離脱するのか?それとも俺と共闘するか?」
「当然あなたを刺すわ」
「なんで俺の敵になってんだよ!」
「冗談よ冗談。私は強い方の味方よ」
「俺より強い奴が出たら裏切る気満々じゃねーか!」

なんでこいつはただこんな事を口走るだけであんなに生き生き出来るんだろうか。
正直こいつを慕っている神原とか彼氏の阿良々木とかいう奴もまともじゃない奴なんじゃないか?


そんなくだらない話を出会ってからずっとずっと話していた。
殺し合いの事は忘れていたわけではない。
現に怪しく不吉な刑事を見たし、戦場ヶ原だって人が死ぬところを目撃したらしいしな。
なんで戦場ヶ原がこんなに輝いているかは俺には理解不能なんだがな。
無理に明るく務めて忘れようとしている無意識な逃げなのかもしれないな。
そう考えると戦場ヶ原だって女、少し可愛く感じてしまうな。

「何ニヤニヤしてるのこのドM英雄?」
「ちょっと待てや!?」

前言撤回!

心で叫んだ時であった。
俺や戦場ヶ原、他の参加者全員に聞こえるであろう郷田真弓の声が響いた。

「…………」

戦場ヶ原も黙り込んでしまった。
嫌でも殺し合いしている状況を思い出させるってか?
最悪で胸くそ悪い話だ。

死亡者の発表。
戦場ヶ原は死亡者は14名と聞いて柄もなく緊張していた。
幸い阿良々木と神原の名前は出なく戦場ヶ原は少し堪えた様な安心した様な表情を浮かべた。
俺には知り合いなんか居ない。

サーヴァントは全員敵同士。
俺は言峰の令呪を使った命令で戦ったサーヴァントと同一人物だとしたらあのライダーが死んだ。
サーヴァント同士で殺されたか。
それとも別の存在かもしれない。
だが考えてみろ。
サーヴァントを倒せる存在がもしかしたらこの100人に居る可能性。
これは結構厳しい殺し合いになるかもしれねぇな。

愛用の朱くて呪いの槍――ゲイ・ボルク――を握り締める。



◇◇◇◇◇



「お嬢様の名前だけは出るなよ……、お嬢様の名前だけは出るなよ……、お嬢様の名前だけは出るなよ……」

執事は郷田真弓の放送を聞きながらずっと『お嬢様の名前だけは出るなよ……』とお経の様に呟いていた。
禁止エリアにエクストラゲーム。
大事な情報ではあるのだが、どうしても死者の発表のばかりに気が行ってしまう。
そわそわして集中出来ない。

もう少し早く進めて雑談なんか混ぜるなよ。
いつもはこんな口の悪い言葉にはならないのだが気の焦りか自分がわからなくなる。

「マリアさん……お嬢様はそちらには逝ってませんよね?」

689アケルソラヘ ◆WzpMn05TJA:2012/05/09(水) 19:49:55 ID:Qzvl8Z56O
返事は――当然ない。
強く、強く歯を食いしばり死者発表の放送に耳を傾けた。

僕の知り合いの中ではマリアさんの名前のみ現れた。
もしこれがマリアさんの遺体を見る前だったらうだうだと悩んでいたかもしれません。
だがこの目で目撃してたくさんショックという名の電撃を受けた僕は耐えられた。
そして放送は真実の内容を告げたものだと理解した。

お嬢様は幸い生きている。
これだけで僕はまだ自分を保っていられる。
三千院家の執事として、僕は参加者を殺していく。
人間の誇りは失っても、執事として主を護る誇りだけはこの胸に秘めて。

「守り抜いてみせますよお嬢様」



◇◇◇◇◇



「完全に私は見失ってしまったではないか……」

足立刑事も綾崎君も私は歩いて探し回ったが行った方向もわからないまま迷子になってしまった。
足立刑事は手掛かりがないからと病院に籠もった綾崎君を探したのだがそちらも多分外に出てしまっていたのだろう。
グズグズと悩んでいた自分がバカだ。
放送の間に立ち止まらずに走れば見つかったかもしれないものを。

こんな時には脳内で阿良々木先輩にでも罵ってもらおう。
『そんな事の為にわざわざ僕を脳内に呼ぶなや!』
『チッ、つまんない先輩だ』
『舌打ちすんなや!』

いつの間にか脳内で阿良々木先輩といつもの雑談をしているノリになっていたので辞めにする。
どうしても先輩が居るとシリアスになれない。

『じゃあ呼ぶなよ』

うむ、その通りだ。
いつも聞いた突っ込みなのに久々に聞いた気がする。
やっぱり阿良々木先輩の突っ込みは私の脳内だけだとしても気持ちが良い。

「関係ない事に10分費やしていたではないか!少し走りながらの探索としよう」

足立刑事か綾崎君を探す為に私は今の1歩から出来る限りに足を早く動かし走り出す。
前の文の『足を早く動かし』なんて部分だけ取り出すとなんかエロいな。
変態パワーが上がった。



◇◇◇◇◇



「結構広いわねこの島」

歩くのに疲れたひたぎは岩に座り込む。
そこから下を覗き込むと川が流れていた。
その川はこの島を囲む海へと繋がっている事が地図からわかる。
この島を脱出した先に本当に自分達の生活に帰れるのか、それは誰にもわからない。

「それにしても全然阿良々木君に会えないじゃない」
「阿良々木というか俺達は誰にも出会えていないんだがな」

正確にはひたぎはマリアとあゆみ、ランサーには足立と出会ってはいるが目撃しただけという感じだ。
どちらも遂には接触しなかったという有り様である。
だが、そういう事もありこの2人は出会えたのかもしれない。

690アケルソラヘ ◆WzpMn05TJA:2012/05/09(水) 19:50:31 ID:Qzvl8Z56O
「阿良々木君は私を探していないのかしら?殺したくなるわね」

苛立った表情で雑にホッチキスをバチバチとプッシュしていくひたぎ。
重力にしたがってヒラヒラと落下していくホッチキスの針。

(顔がマジだ……)

仮にも好きな相手を殺したくなると言うひたぎに引き気味になっていたランサーであった。

「おそらく私達はこんなところに居るから阿良々木君に出会えないんだわ。街に戻りましょう」
「脈絡がないな……」

やれやれという様子で川から離れて一度は飛ばされたスタート地点周辺の街を目指す。
賑やかな場の方が人は集まりやすい、ひたぎの考えにランサーは否定もせずに頷いた。


そして約15分後。
ついに街に入る手前、ひたぎとランサーは参加者と出会う事になる。
だが、その人物は阿良々木暦ではない。
参加者の皆殺しを決意した綾崎ハヤテである。



◇◇◇◇◇



(参加者か……、男と女の1人ずつか)

ハヤテはこの2人をどうするか悩む。
不意打ちで男(ランサー)を殺して、混乱した女(ひたぎ)をも殺す。
些か上手く行き過ぎたシュミレーションの様だがハヤテはこの方法が一番良いと判断した。

理由として男は明らかにハヤテより強いだろう肉体や身のこなし、そして使い慣れていそうに握る槍。
非常にシュールだ。
女にしても頭がとても切れそうだ。
つまり普通に襲ったところで一筋縄ではいかないという決断だった。

支給された黒鍵の8本の内4本を取り出す。
元々は投擲用の武器らしく数本纏めて使用するらしい。
だが数はあまりない。
2本を投げて男を殺す用、2刀流で女を殺す用という計算で隙を伺う。

そして完全に後ろを向き、背中がハヤテに向けられた。
ここで焦ってトチらない様に大きく深呼吸。

はぁ、はぁ、はぁ。

なるべく邪心を捨てて――黒鍵を投げつける。

シュッ。
この時、ハヤテには失敗があった。
1つはランサーは兵士であり音や危険の察知を捕らえやすい。

ランサーは投擲された黒鍵の風を斬る音で反応し、振り返りハヤテを視界に入れる。

そして2つの失敗はランサーには矢除けの加護のステータスがある。
狙撃手を視界に入れている限りランサーには遠距離攻撃は当たる事がない。
ハヤテの投擲した黒鍵とて例外ではない。

「なんだ坊主?」

ランサーはハヤテに睨みつける。
真後ろから襲ってきたハヤテは敵。
容赦はしない事をその目が語っている。

691アケルソラヘ ◆WzpMn05TJA:2012/05/09(水) 19:51:23 ID:Qzvl8Z56O
「なんだあなたの方が強そうね、あなたの味方をするわ」
「おい戦場ヶ原、まだそれが続いていたのかよ」
「仲間の振りをしているだけなんだから当たり前じゃない」
「格好良い顔で何言ってんだよ!?」
「…………」

完全に目の前のハヤテ相手に油断をしている2人にハヤテはどうするべきか考えるが、青い戦士が女の方を呼んだ名前に聞き覚えがあった。

せんじょうがはら?
センジョウガハラ?
戦場ヶ原?

「なんだ、神原さんの先輩か」

ハヤテの目の前に駿河の慕っていた噂の戦場ヶ原先輩が居た。
先輩後輩からか駿河のノリとひたぎのノリがどことなく似ている事を感じ取る。

「神原……?」

当然探し人の名前である神原の名が出たのだ。
ひたぎは聞き取らないわけがなかった。

「あなたなんで神原を知っているのかしらね?」

文房具を両手にたくさんに持ちながらハヤテに敵意を見せる。
殺し合いに乗っている相手が神原を知っていた事。
ひたぎは駿河が彼に襲われた、最悪放送直後に殺されたと推測を建てる。

「さぁ?そんなの会って話をしたからに決まっているからじゃないですか。BLがとても好きなんだね神原さんは」

絶対にハヤテは駿河に遭遇している。
ハヤテはその事を隠すつもりすらない。


「ランサー、あなたは手出ししないで」
「今はじめてまともに呼ばれたな」

それほど今のひたぎは真剣である。
可愛がっている中学からの後輩の安否がかかっている。
彼にはどうしても話を聞き出さなくてはならない。

「私があなたの相手をするわ」
「殺すつもりで行きますよ」

文房具のひたぎ。
黒鍵のハヤテ。
武器を見ると圧倒的にハヤテが有利だ。
だが使い慣れない黒鍵のハヤテと使い慣れた文房具のひたぎ。
実は互角に近くはなっているのである。

2本の黒鍵を持ちながらひたぎに狙いを定めて走り黒鍵を振りかざす。
その攻撃をひたぎはペンをダーツの様にハヤテをターゲットに投擲する。
勢いがあり逃げられないハヤテはそのペンを頬に斬りつけられながらも怯む事なく攻撃体制に入る。

「……っ」

転がりながらひたぎは攻撃を受け流す。
黒鍵はただ空を斬るに留まる。
だがこれはハヤテにとって今の攻撃は当てる目的ではなかった。

「剣は返してもらいました」

ランサーを狙った際に避けられてしまった黒鍵の2本。
ハヤテは敵に悟られる事なくこれを回収する目的であったのだ。

「少ない武器は大事にしないとね戦場ヶ原先輩」
「気持ち悪いわ、この童顔執事」

本気で嫌に表情を引きつらせる。
だがハヤテはお構いなく距離を縮める。
常にお嬢様のナギを護る為に鍛え上げた体は素早い動きだ。
いやナギを護るずっとずっと前から見た目からは想像つかない程この男は俊敏なのだ。

ひたぎはハヤテの素早さには当然着いて来れるはずはないが距離が縮められたら離れる。
それくらいの反応なら返せる。
中学の時の陸上部で鍛えた足はまだまだ動かせる範囲内だ。

692アケルソラヘ ◆WzpMn05TJA:2012/05/09(水) 19:52:11 ID:Qzvl8Z56O
(でも私が勝てるわけないわね)

使い慣れた文房具で互角にはなっているかもしれないがそれは体力差などを考えなければの話だ。
ハヤテの運動神経はその不幸体質で隠れがちだが高校生での範囲なら著しく高い。

「行きます!」

ハヤテは黒鍵の1本をひたぎの心臓を狙い投擲する。
当然ながらひたぎはそれを当たらない様に必死に避ける。
その隙を大きく回り込み横から1本を投擲、そしてまた回り込みもう1本。
そのハヤテの動きに無駄はない。

2方向の黒鍵はひたぎを串刺しにする為に襲う。
血に引きつけられる様な野生動物に見える刃は意志を持っていそうで避けられそうにない。

「戦場ヶ原っ!」

ランサーはあの気が強い戦場ヶ原ならどうにかするのではないかと見ていたがやはり男には勝てなかった。
まだ未成年の少女をこのまま見たまま死に引きずり込む様が自分を後悔させる。
無理矢理にでもあの少年を殺していれば。

そんな念が籠もった声が情けなく届く。

「なんだありゃ?」

その時ランサーは見えた。
ひたぎに近付く影が1つ……。



◇◇◇◇◇



「やめてくれ戦場ヶ原先輩に綾崎君も」

包帯を巻いた大きな左手は黒鍵の2本を軽々と手に納め、おもちゃの様に黒鍵を握りつぶした。
悪魔の力で壊した様なものなのだろうか。

「ふー、このバスケ部のエースの私でなければ戦場ヶ原先輩の死を目の前で見せられるトラウマ物語になっていたところではないか」
「神原さん、あなたって人は……」

目の前には同行していた仲間の神原駿河だ。
ひたぎとハヤテの衝突の引き金が今目の前に居る。
折角仲間の情けで見逃してあげたのに、口から出かけて止めた。

「やめるんだ綾崎君、そんな事をするくらいならあの青い人と綾崎君とのBL小説のモデルになってくれ
あの人の槍が竿になって責めで……」
「暴走はしないでくださいっ!」

駿河にはまったくハヤテに向けての敵意がない。
それどころが心開いた親友と接する態度なのだ。
ひたぎは駿河の反応によくわからないでいた。

「綾崎君は受けにも責めにも両方使える逸材じゃないか。君に悪役は似合わない」
「煩いなー、僕はお嬢様を護るんだ。……勝たなくちゃいけないんだよ……」

「違うだろうがよ」と、ランサーがハヤテに向けて歩み寄った。

「勝たなくちゃいけないんじゃねぇ、生きなきゃならねぇんだよ、わかっているのか坊主」
「出番が無いからってでしゃばらないでよ」
「戦場ヶ原は茶々を入れるな」

嫌われているのかバカにされているのか、ランサーはやれやれって顔をしている。

「お前がお嬢様とやらを護る為とか言いつつ俺らみたいな殺し合いに乗ってない奴と戦って死んでも彼女の為に奉仕した事にはならねぇじゃねぇかよ」
「ぅ……」

戦いの心。
人々の思い。
英雄はたくさんの散る命を見てきた。
彼とて、それは体験してきた過去だ。

ハヤテは間違いに気付く。
ナギの認める自分とはこんな自分なのかと問うが自答するとそんな為じゃない。
お嬢様は自分を助けた優しさに僕を執事にしたのではないか。

「すいませんでした皆さん……」

そしてハヤテは頭を下げる。
自分の負けを認めた。

693アケルソラヘ ◆WzpMn05TJA:2012/05/09(水) 19:52:54 ID:Qzvl8Z56O
◇◇◇◇◇



「あまり綾崎君を責めないであげて戦場ヶ原先輩。この人小説のモデルになってくれるんだよ」
「……いや、ならないけど」

先輩の機嫌を取り繕うのが後輩の仕事。
機嫌の悪い戦場ヶ原の機嫌取りになっていた駿河。

「神原の後輩じゃなければ殺していたわ」
(殺されそうになっていたのは戦場ヶ原先輩じゃないか)
「なんか言いたげね綾崎君?」
「と、とんでもありません戦場ヶ原先輩」

そしてハヤテも殺そうとした相手の機嫌取りをさせられていた。

「そもそも仲違いをした原因はなんなの?」

ひたぎとランサーは2人の話を聞いた。
他に警察の足立という人とパーティーを組んでいた事は。
ランサーは警察官と言われて思い浮かべたのはロワイアル開始直後に目撃したヘラヘラ笑った男だ。
二度と遭いたいとすら思わない。
それを口にはしなかった。

「綾崎君が病院である知り合いの遺体を見つけてしまったんだ」
「マリアさんは……家族の様な姉の様な存在でした」
「病院……?」

病院。
遺体。
ひたぎはその2つの関連していた事を知っている。
被害者でも加害者でもない、ただの目撃者としてだが。

「もしかしてあのメイドさんかしら?」
「その通りだが戦場ヶ原先輩、何故その事を知っているのだ?」

駿河はメイドの説明まではしていなかった気がすると思い口にした。
ひたぎはその反応ですぐに確信した。

「なら私は綾崎君に謝らなければならないわね
――ごめんなさい」
「え……?」

ハヤテもマリアの事を知っていたひたぎにぽかんと口を開けて見ていた。
ひたぎはランサーにしか説明していなかったあの話をした。
人殺しに乗ったメイド、錯乱した少女、見捨てた自分。
あの病院には罪深き人しか居なかったあの出来事を。

「……そうですか」

ハヤテはひたぎの事は責めなかった。
ただ、マリアの最後だけは知れて良かったと思っている。
お嬢様のナギの為であろう。
自分以上にナギの為に行動したマリアに感謝をした。

(僕が必ず、お嬢様を保護して見せますから)

ナギのパートナーであり、長年付き従ったマリアに誓った。
二度と悲劇は起こさせない。



◇◇◇◇◇



「残りは阿良々木君ね。あいつ私に姿を見せるつもりはないのかしら?殺しても良いかしら」
「ちょっと暴走してないですか戦場ヶ原先輩!?」

心機一転。
仲間を4人へと増やした一考は護る人の為、愛する者の為、英雄の誇りにかけて殺し合いを終わらせる為にまた進んで行く。

(つーかさっきからガキばっかり増えていってねーか?しかも探し人が1人減ったのにまた1人増えているし)

阿良々木暦。
三千院ナギ。

(しかしまだ綾崎は常識の持つ奴で神原と仲間だったから説得出来たと言っても戦場ヶ原は危なかったな
次なんか考えたくねーが護って満足した戦いで散っていけるなら俺は本能だ)

徐々に明るくなる空。
平和に終われる日は来るのだろうか。


このお話しはここで一端幕を降ろす。

694アケルソラヘ ◆WzpMn05TJA:2012/05/09(水) 19:53:33 ID:Qzvl8Z56O
【D-3 路上/朝】

【ランサー@Fate/stay night】
【装備:ゲイ・ボルク@Fate/stay night】
【所持品:支給品一式 ブーメラン@現実 ミニカー@リトルバスターズ 阿久根高貴の柔道着@めだかボックス】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:戦場ヶ原ひたぎ、阿良々木暦、神原駿河、綾崎ハヤテ、三千院ナギを守る。
2:戦場ヶ原、神原、綾崎と行動。
【備考】
※Fate全編の全サーヴァントとの戦い終了後からの参戦。
※足立を危険視。



【戦場ヶ原ひたぎ@物語シリーズ】
【装備:たくさんの文房具@現実】
【所持品:支給品一式 阿良々木暦のマウンテンバイク@物語シリーズ ランダム支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:阿良々木君を探して脱出する。
2:ランサー、神原、綾崎と行動。
3:女の子(あゆみ)には注意する。
【備考】
※つばさキャット終了後からの参加です。
※篠崎あゆみの外見・声を記憶しました。



【神原駿河@物語シリーズ】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:戦場ヶ原先輩、ランサー、綾崎君と行動し殺し合いを止める。
2:阿良々木先輩と合流。
【備考】
※「するがモンキー」終了後からの参戦です。
※足立は悪者という考えはありません。



【綾崎ハヤテ@ハヤテのごとく!】
【装備:黒鍵(6本)@Fate/Zero】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:健康、揺らぎ】
【思考・行動】
1:お嬢様を生還させる。
2:神原さん、戦場ヶ原先輩、ランサーと行動して生還する手がかりを探す。
3:マリアさんの敵は取りたい。
【備考】
※アテナ編終了後からの参戦です。
※足立をある程度信用しました。

695 ◆WzpMn05TJA:2012/05/09(水) 19:56:27 ID:Qzvl8Z56O
若干遅れましたが投下終了です

元ネタは
アニメ「sola」SP2のサブタイトル『アケルソラヘ』より
一方さんの中の人のデビュー作、かなり最高だったね


天城雪子、桜井智樹で予約します

696 ◆jZCpcbFowc:2012/05/10(木) 21:30:22 ID:qhxgBtgY0
投下乙です!
ハヤテは何とか元の道に戻れたか……またひとつ対主催チームができたな

一方通行、アーチャーを予約します

697 ◆RmIe4rjRnw:2012/05/13(日) 20:21:51 ID:y6zUJl5M0
予約を延長します。お詫びに死者スレを書いてみました


倉田佐祐理、戦慄のガチムチ皇帝、ロロ雑巾、ミイラがログインしました

佐祐理「皆さんどうぞよろしくお願いします」

上条さん「こ、こちらこそ(笑顔が可愛いな)」
沙都子「見るからにデレデレですわね」
ダメツナ「よ、よろしく(京子ちゃん並みだ)」
マリア「あらあら、だらしない顔ですね」
シャルル「ふむ...(将来が期待できるやもしれん)」
ほぼ全員(ダメだこのおっさん...早くどうにかしないと...)

陽介「完二、オメーこんな早くに脱落してんじゃねーよ!」
完二「んなっ、センパイだってそうでしょーが!」
陽介「てゆーかガチムチ皇帝ってなんだよ!?やっぱそのケがあるのか!?」
完二「ふ、ふざけんじゃねえっ!!」
理樹「にぎやかだなぁ」

ロロ(くそっ、馴れ合いやがって...死んだんだぞ、こいつら分かってるのか!?)
渚「あなたも春原さんに殺されたんですね」
佳乃「私に続いて二人目なんて、運がいいんですね」
由香「どんどん人が死んでて怖い...」
魅音「詩音も暴走してるし、なんか殺伐としてきたねー」
あゆみ「あはははははは」
ロロ(この女共、なんで僕の周りで話を始めるんだ!?)


チャド「......はぁ」
???「トントン」
チャド(誰かが肩を...?)クルッ
ミイラ「......」
チャド「!?...ミイラ!?」
ミイラ「......グッ」
チャド「......グッ」

【チャドとミイラ 意志疎通確認】

698輝きのトモキ ◆WzpMn05TJA:2012/05/14(月) 20:44:17 ID:Ha3N7f32O
本来なら私は死んでいたのだろう。

街を騒がせていた殺人事件の第3の被害者として私は殺されるはずであった。
それを鳴上君、花村君、千枝が助けてくれた。

助けられたからこそ、
  この私のたった1つの命は、
    亡くしたくない。

いいや、
  これはただの言い訳だ。
    死にたくない、
      そんな感情のみが、
        私を支配する。

「だから私に悲しむ資格はないなぁ……」

空に手を伸ばす。
もし、空へ逃げる事が出来たなら私は元の日常のある世界へと真っ先に帰るだろう。
千枝達の待つ、あの世界へ。

「私は屍を越えなくてはならないの……」

完二君の死に動揺したのを隠さなくてはならない。
私がいざ人を殺す時になり動揺して逃げてしまうかもしれないから。

「シャドウを倒す感じに……、やれば良いのよ……」

ただ、仲間であり親友である人の死を越えた決断であるならば、私はどんな修羅にだって慣れるはず。
どんな人であっても躊躇いなく殺せると信じて。



◇◆◆◆◇



「俺が何か悪い事をしたって言うのかよー……」

今まで起きた事は命が狙われ続けた事だ。
確かにイカロスやそはらにニンフにアストレア、他には守形先輩に会長と命の危険なデンジャラスな成敗をくらうがそんなのは遊びである。
しかし俺のこの島で起きている事は明らかに違う、最低な殺し合い。
騙され、
集団で、
殺されていくゲームだ。

寮では天城さんに騙され、学校では男の人が集団で襲われている光景を目撃。
なんでそんなに殺し合いをしろと言われてすんなり受け止められるんだよ!

「俺は毎日毎日女のパンツや裸の事やエロ本の事、イカロスのカードを使って何かエロい事を考えるくらいしか悪い事はしてないじゃないかよ!
あ、これが悪い事をしているというのか!?」

バカな……?
エロが許されないのか?

俺に衝撃が走る。
殺し合いの事で忘れていたがエロがないじゃないか!
誰かの胸を揉んだり、パンツの香りを楽しんだり出来ないという事なのか!?

「死より恐ろしいじゃないか!」

わかってしまった。
エロい事をしない、出来ない俺って死んでるって事なんじゃね?

よくテレビとかで見る『走り続けなければそれは俺じゃねぇんだよ!』とかいうイケメンの俳優しか言う事の出来ないあのセリフの意味が良くわかってしまった。

「エロが無ければそれは俺じゃねーんだよ!」

挫けるな俺!
また再びエロが楽しめる日常へ帰る為にもこんな事でバカやっているわけにはいかないんだ。

「そうだな水銀」

永遠とどこまでも、トイレまでにも俺に着いて来る水銀に話かけた。
よくわからない奴でイマイチ着いて来る意味や仕組みがまったくわかんないんだよなー。

「まぁいっか」

エロい事して襲われる時にでもこの水銀の影とか中に隠れれば役にたつしな。

「なんかお前喋ったりしねーの?」

生き物みたいな水銀に冗談半分で話かけてみた。
なんか暇で、喋ったらすげーなくらいなノリで。
しかし返事は――

『ご機嫌いかがですか皆さん?』
「って喋った!?」

返事があった!?
と思って水銀を凝視したが別にそういう意味ではなかったらしい。

『では今から放送が始まります』



◇◆◆◆◇

699輝きのトモキ ◆WzpMn05TJA:2012/05/14(月) 20:45:22 ID:Ha3N7f32O



「そんな……花村君まで……?」

貧血の様な立ち眩みが起きそうな感覚に陥る。
花村君と完二君が亡くなった。
完二君の遺体は見ていたから覚悟はあったけどまさか花村君にまでそれが及んでいようとは。

足立さんは案の定というか名前は呼ばれない。
彼も自分の本能で悪さをしている予感はあったが、それは私は責められない。
悪さをしているのは私もだから。

「……でもこれはおかしくない?」

桜井智樹の名前が挙がらない。
あの攻撃を受けてもまだ生きているというの?
……信じられない。

「考えられる事は3つね」

1つは桜井智樹が本名を偽り、偽名を使った。
 しかしこれは仲間を探している人がする事にしてはおかしい行動であり、限りなく可能性が低い。
 だがこの仮説が当たりだとしたら結局は桜井智樹を名乗った人物は死んでいる事に繋がる。


2つは未だ寮で死にかけ、或いは大怪我を折った。
 この可能性は1番考えられるだろう。あんな爆発を直撃したのであるから。

3つは運が良くてピンピンしている、もしくは私達みたいなペルソナ使いでガードさせた。
 これだけは無いと信じたい。

「しかし、桜井智樹。彼の辿っている道だけは知りたいわね」

しかし、彼だけの為に冒険は出来ないし再び会ったら敵意剥き出しで襲い殺してくる可能性は充分ある。
警戒しなくてはいけないわね。

花村君、完二君の死。
足立さんの動き。
桜井智樹の行方。

そんな事を考えていたらいつの間にか額にはたくさんの汗をかいていた。
いや、この状況でむしろ汗をかかない人の方が居ないであろう。

「……お風呂に入りたいな」

実家の天城温泉が頭に浮かぶ。
文化祭終了後にみんなで泊まった思い出と今を比べてみる。
楽しかったあの時、怯える今。
天と地の差がある。
いや、天と血の差という方が正しいかもしれない。



◇◆◆◆◇



「14人の死亡者か……。喜んではいけないんだが安心する俺が居る」

それはとても最低だ。
最初に死んでしまった俺と同い年かそれより少し下の年齢の女の子2人やムキムキな肉体をした青年、呼ばれた名前の古河渚から御剣総一の死はよく知らない人物であっても悲しい。
同じ人間でわけもわからないままこんな殺人遊戯に巻き込まれたわけである。

悲しみの中に潜む安心感。
安心感に纏わりついた悲しみ。
それが俺の胸に疼き、かき混ぜられている。

理由と言えばイカロスとニンフ、アストレアの名前が呼ばれなかった事にとても安心している俺も居るわけだ。
エンジェロイドなんか居なくなれと日々思っているが、どうやら俺は彼女らに対して愛着を持ちすぎた。
みんな最初は敵だったとしても、拒むわけにはいかない。
だからあの天城さんや集団で襲いかかっていた彼ら彼女らが改心した時には拒まずに協力していけたら良いと思っている。

俺ってお人好しだな。
バカにされるくらいのお人好しだが、それが俺。

まぁ警戒する相手でもあるわけだが。

「しかし俺って今の持ち物って水銀だけなんだよなー。腹減ったー……」

後ろを着いて来る水銀を持ち物扱いで良いのかはわからないが。

「もしかしたらお前もまさかエンジェロイドか!?」

んなわけない。

700輝きのトモキ ◆WzpMn05TJA:2012/05/14(月) 20:45:57 ID:Ha3N7f32O
「とりあえず身を守る物なり食料を集めるかな」

まばらに建つ民家。
流石に何も置いていないわけはないであろう。
普通に水やバナナなどは置いているであろう。

「……お邪魔しまーす」

不用心に俺は民家へ足を入れる。
泥棒にでもなった後ろめたさがある。
そうやって考えると泥棒ってすごいんだな。

「造りは普通といった感じか?」

違うところがあるとすれば民家にある人の気配がなく、またアメリカの民家の様に土足で入り込む民家であった事だ。

「ん?なんか聞こえるな?」

歩くと近付く弱い音。
水銀を振り返るが水銀は足音なく俺に付きまとうだけで音源ではない。
ただ、足音がなく付きまとうって表現すると怖いストーカーの様だ。

「水の音?」

シャア、シャア。
一定のタイミングで聞こえる音は間近でよく聞くある音にとても似ている。
いや、間違いない。
水なんかじゃなくあの音だ!

「シャワーの音だ!」

頬が綻ぶ。
遂にキタ―――――(゚∀゚)―――――。
ずっと俺のターン!!

「うひょひょひょひょ」

ニヤニヤが止まらない。
まだシャワーを浴びている人が男か女かもわからないのに俺の脳内では勝手に女になっていた。
大人のお姉さんかな?
幼い女の子かな?
巨乳の娘子かな?
ゴスロリ少女かな?
ピチピチのメイドさんかな?
清らかな巫女さんかな?

やばい。
みwなwぎwっwてwきwたwww

「もう我慢出来ない」

俺はたまらずに扉を開ける。
そこに目が入ったのはキレイに畳まれた制服。
しかも女子用である証であるスカートが目に入り、パンツとブラまで発見。
いや、これはもう宝具である。
最強、最高の悪魔の宝具だ。

「うわーい、天国だ」

『呼んだ?』
毎度の通り俺の男の子が成長した。
当然呼んでいない。

「うひょひょひょひょ」

パンツとブラを鼻に押し付ける。
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ……くんくん。

彼女は現在進行形でシャワーを浴びているはずなのにシャンプーの匂いがするよ?
なんでかな?
なんか見覚えのある特徴的な赤いカーディガンがあるのには……この時点では気付いていなかった。

「このパンドラの箱を開けちゃおうかな?」

俺の選択肢は1つ。
開ける!

ガラッ。

「え?……だ、誰?」

振り向く少女。
キレイなボディライン。
スベスベで汚れ無き皮膚。
髪の長い美少女。
きっと大和撫子とはこういう人の事を言うのだろう。

――そのパンドラの箱には希望が残っていた。
……なんだか見覚えのある気がする顔で嫌な予感のする絶望もあるのだが……。

「さ、桜井君!?」

しかも俺の名前知られているよ。
俺も彼女の名前は知っている気がするよ……。

701輝きのトモキ ◆WzpMn05TJA:2012/05/14(月) 20:46:32 ID:Ha3N7f32O
「あ、天城さんじゃないか!?なんでこんなところに」
「こんなところって桜井君が覗いたんしゃない」

天城さんは俺に体ごと振り返った。
あえてもう一度表現しよう。
体ごと振り返った。

「「あ……」」

みるみる内に赤くなる天城さん。
みるみる内に男の子が育つ俺。

呼んだ?
そういう場面じゃない。

「こ、殺すっ!」

手の平に浮かんだガードを空中に浮かびゲームにでも出てきそうなモンスターが現れる。
いや、俺は一度それを目撃しており彼女はこのモンスターに炎とか出させていた。
俺はその時それをエンジェロイドではないかと疑った時がある。

「それはエンジェロイドなのか!?」
「アギ」

俺の問いには答えずに裸のまま俺に炎の弾を投げつける。いや、飛ばしてきた。

「うわぁぁぁ……」

本物の炎だ。
俺の体から肉の焼ける良い匂いと焦げる煙が一斉に溢れ出した。

確かに腹減ったけど自分の肉の焼き肉なんか食べられるわけがない。

「まさかあなたのその水銀もペルソナなのっ!?」

天城さんは俺の近くの水銀に怯えた。
よくわからん。
なんだ『ぺるそな』って?
確か仮面って意味だったか?
ただ怯えているなら肯定するしかないな。

「そうだ、これは俺のぺるそなだ!」

強がり。
はったり。
もちろんそれに乗るか乗らないかはわからない。

「……そっか、君もペルソナ使いなんだ。ならもっと早く殺さなくちゃ」

炎の弾が5発。
避ける隙、タイミング、すべてが俺にはなかった。
しかも今回はあの水銀は助けてはくれなかった。
やっぱりエンジェロイドでもぺるそなとかではないのか……?



◇◆◆◆◇



「はぁ、はぁ、はぁ……」

真っ黒焦げ。
桜井智樹は黒こげで倒れてピクリとも動かない。
2度目はあっさりと殺したのだ。
しかも裸を見られたのをきっかけとした混乱で。
真面目に殺そうとした時は殺せなくて、今回は事故の様なもので容易く。

こんなに火傷しているし死んでいると思う。
脈とかも測るどころか触れられそうもないので生死は確かめられないが。

「……着替えなきゃ」

混乱して周りが見えていなかった。
桜井智樹の死体を見つめて私はまだ裸であった事に気付きあまり死体を見ないまま制服姿へと着替える。

「それにしてもペルソナ使いが私達や足立さんの他にも居たなんて」

桜井智樹は既に死んだし脅威にはならないが、ペルソナ使いがこの島にうじゃうじゃ居るとしたら見過ごせない事だ。

「絶対に、生き延びてみせる」

私は桜井智樹の死をきっかけに、
人を殺すという事を知った。

それは生き延びられる可能性が伸びた嬉しさと人を殺した後悔が二重に満たされた。
このジレンマを糧に私は――帰る。

702輝きのトモキ ◆WzpMn05TJA:2012/05/14(月) 20:47:01 ID:Ha3N7f32O
【F-7 民家/朝】

【天城雪子@ペルソナ4】
【装備:干将・莫耶@Fate/stay night】
【道具:支給品一式×2 ゼロの仮面@コードギアス 反逆のルルーシュ 9のPDA@シークレットゲーム-KILLER QUEEN- ランダム支給品×2】
【状態:疲労(中)】
【思考・行動】
1:PDAの首輪解除条件に従って行動する=皆殺し。
2:人は殺したいけど殺したくない。
3:花村君……、完二君……、みんな……。
【備考】
※足立戦終了後からの参戦です。
※桜井智樹を殺したと思っています。
※桜井智樹のデイパックの中身を回収しました。
※ペルソナはコノハナサクヤで、スキルは威力の大きいものほど体力を消費します。
※桜井智樹をペルソナ使いと認識しました。
※仲間と足立以外にもペルソナ使いが居ると推測をたてました



◇◆◆◆◇



「あっちぃんだよ!」

服はボロボロ、体のあちこちに怪我と火傷のあと。
今回だけは俺も死ぬかと焦った。
しかしこれも日常のおかげで助かった感じだ。
イカロスや会長、そはらの攻撃に耐え抜く力と経験がなかったら俺はおそらくこの破壊された真ん中で倒れて肉塊に変わっていただろう。
少し裸が見たいと欲を出した結果がこの様だ。

ゴキブリ桜井たる異名を持つが、まさかこんなところでもゴキブリ桜井の能力が出てしまうとは。

しかし、今回は100%天城さんだけが悪いわけではない。
80%は俺の責任と言える。

「俺は自重を覚えよう」

あ、でもエロに自重だけは死ぬまでやめない。
男として、これだけは守ろうと誓った。



【桜井智樹@そらのおとしもの】
【装備:月霊髄液@Fate/Zero】
【所持品:なし】
【状態:疲労(大)、全身に火傷や裂傷、背中を打撲、黒焦げ】
【思考・行動】
1:バトルロワイアルを打倒する。
2:エロは自重しない。
【備考】
※カオス戦(一回目)からの参戦です。
※月霊髄液は智樹を主人とし、意に従うようになりました。
※前原圭一、朝比奈みくる、御坂美琴、鳴上悠、ウルキオラ・シファー、音無結弦が殺し合いに乗っていると誤認しています(上記の者の名前は不明)。
※天城雪子のペルソナをエンジェロイドと認識しました

703 ◆WzpMn05TJA:2012/05/14(月) 20:52:40 ID:Ha3N7f32O
◆RmIe4rjRnw氏
死者スレ投下乙です

久し振りの死者スレに笑わされました
変態扱いのシャルルがもはや主催者の欠片も見当たりませんね
だから主催者なのに郷田真弓か朝倉涼子しか出ないのかも



投下終了です
元ネタはゲーム『STAR DRIVER 輝きのタクト』より

つーかマジか智樹!?

バーサーカー、白井黒子を予約します
次回多分シリアスかなー?

704名無しさん:2012/05/15(火) 22:47:30 ID:Ka9nIhl60
王道ロワ月報一位おめでとう!

705 ◆jZCpcbFowc:2012/05/17(木) 20:53:03 ID:ImDa20H.0
すいません、予約を破棄します

706騎神咆吼バーサーカー ◆WzpMn05TJA:2012/05/19(土) 17:09:16 ID:kdySJ7RYO
■■■■■■■■―――――――!



木霊する音。
振るわせる地。

湖の騎士にして裏切りのナイト――ランスロット――。

面影すら残っていない狂った1人の騎士の英雄であった者の雄叫びは一体何を意味する?

自らの勝利か?
それとも、自らの敗北か?
それとも、自らの死か?
答えは――――?





対峙するはツインテールの髪型をした幼き少女が1人。
これは狂った騎士と1人の少女の戦いの結末の<物語>。





―――――――――――――――――――――――――――





「お姉さまは死ななくて、わたくしのお姉さまの恋路を邪魔するあの男の名前が呼ばれたのにどうして心の中がこう、……もわっとするのでしょうね……」

中学生のジャッジメントの白井黒子は放送の死亡者で数少ない知り合いの名前を聞かされた。
心に残るのは渦。

それはおそらく今まで人が死んだ事を無理矢理に忘れようとしていたが現実がそれを拒む。

3人の人間が首を飛ばされた。
黒子はまず最初にお姉さまである御坂美琴を探そうと行動。
美琴と再会しても脱出出来ないとわかっているのに。
美琴を優勝させる為に殺し合いに乗っているわけではないのに。
並盛中とは知らない学校であったが、それの風紀委員長と名乗る雲雀恭也とは戦いを繰り広げたが黒子にとっては無意識にいつもの不良と戦う日常と変わらないと思っていた。
ただ、結果が負けたという事で。

逃避をしていたのだ。
そうやって人殺しなんか起きていないと目を逸らしていたが、名も知らない少女――竜宮レナ――に本物の刀を持って襲われた。
憎しみが限界を越した人間の表情を見た事が無かった。
怒りが限界を越した人間の声を聞いた事が無かった。

そして見てしまった首が無く、心臓が貫かれた死体。
殺し合いは行われていた。
自分の居た同じ島の数キロ近くの位置にて。

それからは忘れようと、死体から目を背けようと美琴を探した。
ただ声が聞きたかった。
ただ一緒に歩きたかった。
ただ美琴に抱かれたかった。

そうやって自分の能力の空間移動や、自らの足を使って。
ただ立ち止まらずに美琴だけを探す目となりて。

だが目を逸らすだけではいけなかった。
人が死んだ事を告げた郷田真弓の声が耳から入り込んだからだ。

目は閉じていても、耳は塞いでいなかった。

突きつけられた現実。
狂った現実。
狂った末の現実。

そして、
  バトルロワイアルの意味を知る。

自分も、誰も、
その命は儚くて、壊れやすくて、
そして大事にされる。



「いやですわね、わたくしったら。柄にもない事を考えてしまって。あんな男の事などわたくしには関係のない事ですわ……」

ただ真っ直ぐで、正直で、誰をも受け入れる、強いのに弱くて、弱いのに強い男の事が離れなかった。
ライバルが居なくなった。
なんてつまらない事だろう。

黒子は名簿の『上條当麻』と書かれたところだけをただずっと凝視していた。





―――――――――――――――――――――――――――

707騎神咆吼バーサーカー ◆WzpMn05TJA:2012/05/19(土) 17:10:12 ID:kdySJ7RYO





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■■■■、――■■。

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■■■■■■!
、■■■■。■■■■■■■■■■■■■。
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■■■■■■■■■■、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■。



「■■■■■■■■■―――――!!」



■■■■、■■■■■……。
■■■、■■■■■……。
■■■……。

「■■■■■■■■■■■■■■―――――――――!」

■■■■■、
■■■■■■■■■■■、
■■■■■■■■■、
■■■■■■■■■■■■■■、
■■■、
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■■■、
■■■■■■■、
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■、
■■■■■■■■■■■、
■■■■■■。



■■■、■■■■■■。
――――■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■。





―――――――――――――――――――――――――――

「な、なんですの!?」

何の音かはわからない。
だが黒子の耳にははっきりと雄叫びらしき大きな音を捉えた。

「幻聴……だとしたらわたくしの脳みそがおかしくなっているぐらいの音ですわね」

嫌な予感のする勘と反応する体が伝達する。
本当はここから逃げ出した方が良いのに。
わかっているのに。

「あ……」

動いた先に見えたのは負の塊を鎧の様に纏った騎士であった。
でたらめ過ぎる黒さ。
強いのはわかるのに何故かわからない彼の強さ。
黒子は今までの人生のどんな場面よりも危険を感じた。

雲雀恭也や狂った女の子なんかとは比べものにするのも次元のおかしな話であろう。
あれは人間としての強さと狂いさだ。

だが、あれは人間の強さと狂いさではない。
怪物に近い。
理性があるのかすら疑うほどの獣と騎士の融合した姿。
おそらく目の前の怪物にはバトルロワイアルなど理解していないだろう。

「■■■■■■■■■■■――――――!!」

何故なら本能だけで参加者を殺しに来る様な自我なんかあってない様なものなのだろう。
黒子が捉えた大き過ぎる音の正体が繋がった瞬間――、黒子目掛けて追いかけてくる。

708騎神咆吼バーサーカー ◆WzpMn05TJA:2012/05/19(土) 17:11:10 ID:kdySJ7RYO
「品がまったくありませんのよ」

空間移動を使い、バーサーカーの後ろへ座標点を移動させる。
バーサーカーは当然攻撃している間は気付かなかったが、すぐに後ろに黒子が居る事に気付いた。

「頭が良いのか悪いのか……」

転がった岩に手を置く黒子。
持ち上げる事は出来ないぐらい大きな岩。
何故黒子はそんな事をしているのか?

「■■■■■■■■■■」

こちらへ走るバーサーカー相手に岩を空間移動させるのだ。
黒子の空間移動は自分の瞬間移動の他、物も瞬間移動出来る。

その岩がバーサーカーの頭の位置に急にCGで現したかの様に浮かび上がる。
これであの妙な鎧の正体を探ろうとしていた。

ただの霧の様に実態のないものか。
力が具現化したものなのか。
あれもあれで金属に含まれたものか。

「さぁ、答えを見せなさい狂戦士」

いくら彼に名前を聞いたところで恭也の様に名前は答えないだろう。
彼の名前は参加者の『バーサーカー』だとは彼女も思っていたが、わからないので狂戦士と彼を呼んだ。

狂戦士の鎧の正体を見極める黒子の目。

その2つの眼に映像が再生される。





素早く岩の存在に気付くバーサーカーは雄叫びを上げながら跳び、両手で岩を握りしめて、破壊した。



「……もはや人間ではありませんのね」

黒子は狂戦士を見ていて少し哀れみを感じた。
自らの命の危険を忘れてまでの湧き上がる感情であった。

「あなたがもし人間だったとしたら……、そんな狂った格好を誰にも見せたくないのではないのかしら」





―――――――――――――――――――――――――――





自分がもしあんな格好になったとしたら……。
大切な人には見られたくない。
お姉さまにはいつもの、この姿の白井黒子として見てもらいたいですわ。

「わたくしが良かったらあなたを殺してあげますわ」
「■■■■■■■■■■――――――」

そんな醜い力の塊の姿となって誰があなたを認めてくださいますの?
確かにわたくしではこの狂戦士には勝てないでしょう。

でも、わたくしには負けるつもりはありませんのよ!
お姉さまに必ず会う、その時まで。

「白井黒子、行きます」

空間移動。
まばらに立っている木、木、木へと跳んでは狂戦士を足止めする様に障害物へと変えていく。

「■■■■■■■■■―――――!」

だが、それを軽くあしらい所詮は木だとは言わんばかりに素手と素足だけではたき落とされた。

木の肉塊。
まるでそんな表現がよく似合う。
木は粉々に破壊されていた。

ありえませんわ。

709騎神咆吼バーサーカー ◆WzpMn05TJA:2012/05/19(土) 17:12:20 ID:kdySJ7RYO
「状況を理解するのよ黒子」

岩や木などは簡単に破壊出来る力。
暴れまわる様な戦闘スタイル。
大きな体。
結局は彼もゲームの参加者、不釣り合いに首元の鎧に捲く様に付けられた銀色の首輪。

「……そういえば」

この島に来た時からの事を思い出す。
見せしめの3人。
雲雀恭也にわたくしが負けた戦い。
女の子から逃げたわたくし。
既にヒントは提示されていた。

「このわたくしが勝つ事の出来るヒントとこのわたくしが判断した状況分析とわたくしにしか出来ない最大の武器で」

わたくしは笑う。
これからわたくしは人間であれ、怪物であれあの狂戦士を殺すのだ。
気の狂った様なわたくしですが、あれは危険過ぎますわ。

「さぁ、わたくしに踊らされなさい狂戦士!」
「■■■■■■■■■■■――――――!」

わたくしと狂戦士の気と気、気合いと気合い、声と声がぶつかり合う。





―――――――――――――――――――――――――――





勝利の雄叫びを上げるのは――。





―――――――――――――――――――――――――――





シュン。
黒子がバーサーカーの目の前へと自らの意志で空間移動をする。
バーサーカーは捕まえようとか殴ろうとかはわからないが黒子へ手を伸ばす。
当たる瞬間。

シュン。
黒子の姿が空気に溶け合い、また別の場所へ現れる。
次は蹴ろうと足を伸ばすバーサーカーだがそれも避けられる。

シュン、シュン、シュン。
次から次へと捕まえられる瞬間に消えては現れてを繰り返す。
バーサーカーの動きは大きい割りに速いが、黒子からすれば瞬間移動に慣れた目だ。
反応する力があれば避ける事は簡単である。
ただ黒子には体力がどんどん削られていく。

「座標点の移動……、計算するのに疲れてきましたわ……」

足がふらふらだ。
そろそろ勝負を仕掛ける時間が近づいている。
負けられない。
黒子はバーサーカーへ向き合う。
疲れた体でヘトヘトであっても、目の対抗心だけは消えていなかった。
むしろ燃える火でも映すかの様な目。
黒子は作戦を実行させる。

「震えている……、いやこれは怯えなどではないのよ黒子」
「当然能力使用による疲労に決まっているのよ」
「わたくしは死ぬ気なんかまったくありませんの」
「この狂戦士を殺して、お姉さまを見つけて、他の参加者達と協力して……」
「主催者を屈伏させる」
「出来る、出来ないの問題ではないのよ」
「する問題、しなくてはいけない問題なの」
「だからこれは死ぬ戦いじゃない」
「…………」
「…………」
「…………」
「生きる戦いですのよ!」

710騎神咆吼バーサーカー ◆WzpMn05TJA:2012/05/19(土) 17:13:45 ID:kdySJ7RYO
小さな体で立ち上がる。
あの大きな怪物を倒す為、いや生きる為。
黒子の体に闘志の炎が燃え上がる。



「行きますわ!」

シュン。
静かに、黒子は空間移動をする。
現れたのはバーサーカーの目の前、しかも地面などのない空中に、だ。
この戦いをこの場所から見た者であれば何をしているのかと思われるかもしれない。
しかし、

(それで良いのですわ)

黒子は……、ニヤリと頬を緩ませる。
その顔は勝利を確信した者の、顔。

中学生、女、小さい体、弱った精神、限界の体力。
そんな不利しか見まわれない彼女は上手く頭を使った作戦で勝利をもぎ取ったのだ。

シュン。
この戦い最後の空間移動。
あらかじめ座標の位置は決まっていた。
空中の空間移動から1秒から2秒といった短い間の出来事。

――バーサーカーは自らの首輪をもぎ取り、爆発して死ぬ。
哀れな狂気に満ちた彼だからこその敗北。
彼は『バーサーカー』であったが故に死ぬ事になる。
英雄ランスロットここで朽ち果てる。





―――――――――――――――――――――――――――





『単刀直入に言うならこの首輪は爆弾です。
どんな人物であっても必ず死んでしまいます。この首輪が爆発する条件は3つです。
1つはこの首輪を外そうとする事。
2つはこの首輪に大きいショックを与える事。
3つは禁止エリアに侵入する事です』

郷田真弓の声がリフレインされる。
本来ならあんな相手の話などまともに聞きたくはないが、だが今回はそれが役に経った。
このバトルロワイアルにおいてみんなは爆弾を抱えている事になる。
わたくしも、お姉さまも、このバトルロワイアルの参加者である限りだ。
だからこんな人殺しを自ら積極的に皆が動くのだ。

だからわたくしは考えましたの。

『どんな相手であっても首輪を爆発させれば――殺せるであろうと』

岩や木々を粉々にする様な力の持ち主だ。
こんな首輪を力付くで壊せる相手だからこそ、この作戦は通用する。
何故なら壊すという事は首輪にショックを与えるという事にイコールで結べるのであるからだ。



だから無理矢理外させれば首輪を作動させられる。

自分の能力の空間移動。
それで自分は狂戦士の首より少し上へ座標を合わせる。
当然理性があってない様な狂戦士はバカの1つ覚えの様に捕まえようとその手を伸ばすだろう。
わたくしはそれに合わせて狂戦士の手が首輪に伸びるであろう位置へワープする。
正直これが一番難しかった。
だから体力ギリギリまで逃げまどいその速さを計算した。
それをなんとかクリアさせたわたくしは捕まる直前にまた避けられる様に空間移動をする。
狂戦士の伸ばした腕は空を切ってそのまま首輪へ一直線。
ぶつかるにしても、首輪を握るとしても勢いよく首輪にぶつかればショックと見なされる。

711騎神咆吼バーサーカー ◆WzpMn05TJA:2012/05/19(土) 17:15:35 ID:kdySJ7RYO
そして首輪が作動。
狂戦士の鎧や兜に纏われた首は鎧や兜を爆発させながら首を飛ばす。

これがわたくしの考えたバトルロワイアルのルールを最大に生かした作戦よ。
こんな作戦はこんな理性のない狂戦士にしか通用しないだろう事だと思うけど。





―――――――――――――――――――――――――――





バーサーカーの手は首輪にショックを与えようとしている。
勢いがあり、もうこの手を止める事は力を出しているバーサーカーにすら制止は不可能だろう。
黒子は疲れ切った様子でそれを眺めている。
いや、もう疲れ切って動けないのだ。
動けない少女の目の前で英雄はその儚いサーヴァントとしての存在が終わる。


首輪にバーサーカーの手が当たった。
バーサーカーは首輪を握った様子だが、これは当然ショックを与えた。

「わたくしの勝ちです……のよ」
「■■■■■■■■■■■―――――!」

咆吼。
その咆吼はどこか悲鳴に聞こえてくる。
英雄が少女に負けるなど騎士にとって屈辱でしかない。
バーサーカー故に理性がないのはまだ幸せなのかもしれない。





「あ゛゛゛■ヴァアア゛ア゛唖、亞ああああ。ああぁア吾■■■々※アあァアアアア■■■□□゛ア々ああぁ――――」

最後の咆吼。
いや咆吼というより絶叫。
白井黒子の左腕が消失した。

な……んで……。
黒子の口はそう開いているが聞き取れない。
爆発するのは狂戦士の首。
しかし爆発したのは首輪すら捲かれていない左腕。

「■■■■■■■■■■――――――!」

黒子の目には壊れかけ寸前のカメラの様に勝利の咆吼を上げる狂戦士が見える。
そこには、首輪の形が見当たらない。
完全な黒一色となっている。



騎士は徒手にて死せず。
バーサーカーは手に掴んだ物を宝具にする宝具を聖杯戦争のサーヴァントとして受け継いだ。
バーサーカーは握った爆弾の首輪を握り締めて爆発の寸前に首輪を宝具化。
宝具化した爆弾を壊してそれを疲れ切った『敵』に投げつけた。
狙って投げたわけではないその爆弾は、『敵』の左腕1本を飛ばしただけでその役割を終えた。

712騎神咆吼バーサーカー ◆WzpMn05TJA:2012/05/19(土) 17:16:20 ID:kdySJ7RYO





「■■■■■■■■■■――――――!」

もはやバーサーカーには制限を強制させる首輪など存在しない。
1人1人逆らえないロボット達の中で一番最初に感情の持ったロボットの様にもうバーサーカーには止められる者など居やしない。

マスターも居ない、理性もないサーヴァント『バーサーカー』は真のランスロットとしてこの世に現界したと言っても過言ではない。

「■■■■■■■■■■■■■■■――――――!!」

騎神咆吼バーサーカー。
高い咆吼を周りへ周りへと反響させなから『敵』になど目もくれずに立ち去った。



【G-4 野原/朝】

【バーサーカー@Fate/Zero】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、無毀なる湖光@Fate/Zero(封印中)、ランダム支給品×2】
【状態:健康、狂化(永続)、首輪解除】
【思考・行動】
1:■■■■■■■■■―――――
【備考】
※間桐雁夜に召喚される前からの参加です。
※セイバー@Fate/stay nightを視認すると、全ての行動を放棄して彼女に襲いかかります
※首輪が解除され、戦闘能力が戻りました。





―――――――――――――――――――――――――――





静寂。
声を出す者などもう居ない。

あぁ……、わたくしは狂戦士に勝つどころが蘇らせてしまったのね……。
左腕がなく、血ももう生きていられるぶんがあるかないかの量だろう。
お姉さまに害を成さない事を願って黒子はこのまま眠ろうと思います。
だけどこの近くにお姉さまが居るとしたらまだ死に切れません。

お姉さま、早く黒子を迎えに来てくださいませ……。
お姉さま、お姉さま、お姉さま。
わたくしはもう少しお姉さまを待っていても良いですわよね……?

次に目を覚まさせる相手がどうかお姉さまである様に。
このまま目を閉じたまま死ぬ可能性もある中、黒子は眠りますの。

お姉さま……。



【白井黒子@とある魔術の禁書目録】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3】
【状態:精神的大ダメージ、左腕消失、気絶】
【思考・行動】
1:お姉様……、黒子を起こしてくださいませ。
【備考】
※夏休み終了後からの参戦です。
※『空間移動』は制限されています。移動は10メートル以内で連続の使用は体に負担が大きくなり、また物を体内や柱に入れる事は出来ません。
※このまま気絶し続けると死ぬかもしれません。

713 ◆WzpMn05TJA:2012/05/19(土) 17:19:35 ID:kdySJ7RYO
投下終了
元ネタはゲーム『機神咆吼デモンベイン』より

せっかくニトロプラスのタイトルを使ったという事で燃えシナリオを

因みに最初の方に■■■のカオスな羅列がありますが、これは単純にバサカ目線という感じです

至らない描写不足もうしわけないです

714 ◆RmIe4rjRnw:2012/05/23(水) 04:08:12 ID:2EPmeEcY0
予約の期限が切れていたにも関わらず、
何の反応もせずに申し訳ありませんでした、以後気を付けます

715 ◆WzpMn05TJA:2012/06/01(金) 07:05:55 ID:vITFtcXwO
しばらく間が空きましたね

衣替えですな
心機一転に予約入れます


羽川翼、忍野忍、日向秀樹、手塚義光、高山浩太を予約します

716 ◆WzpMn05TJA:2012/06/08(金) 21:28:52 ID:ziDpiVGsO
予約延長します

717ブラッドチューン ◆WzpMn05TJA:2012/06/10(日) 21:05:39 ID:c0R45y1AO
「阿良々木暦、戦場ヶ原ひたぎ、神原駿河、千石撫子……。知り合いが1人も欠けていないなんて結構な確率なんじゃないかな。何人知り合いが居るかによるけどね少なくともみんなが5、6人ずつ知り合いと考えるとね……」
「わからんがわかった。ワシにそんな確率だとか興味ないわい」

放送を聞き忍野忍が最初に言った言葉は「やはり主様は悪運が強いのぅ」であり、二言目は「ところで主様の知り合いをワシら含めて誰1人死なない確率はどのくらいなんじゃ」と聞いたのであり、羽川翼はそれに答えようとしたに過ぎない。

「主様の悪運が周りにでも感染したのであろう」
「良い事のはずなのになんでそんな悪いものみたいな言い方をするのかなー……」

苦笑。
やはり忍は阿良々木暦の吸血鬼と言っていたがその節は多分に見つかる。

「しかしエクストラゲームの存在は黙っていられんな」

忍が恐ろしそうな表情でワナワナとしている。
上から顔、腕、胴体、足全てを震わせている。
とても吸血鬼の見せる余裕さがない。

(忍ちゃん何にそんなに驚いているのかしら……?)

翼の目にもそれは何か嫌な予感を感じさせた。
最強の吸血鬼であった者の怯え。
人間である自分、半吸血鬼の阿良々木暦ですら凌駕する何かを感じ取っているのだと翼は直感した。
吸血鬼の勘はどのくらい信頼出来るかはわからないが。

「どうしたの忍ちゃん?何かエクストラゲームの事で何かあるのかな……?」

翼がボソッとビー玉の様な小さな声で刺激を与えない声で話す。

「…………」

だが忍は翼の小さな声に気付かなかったか無視したのか答える事も恐ろしい何かがあるのか返答はなし。

「忍ちゃん!」

耳元で出来るだけ大きな声を上げる。
はっとした忍の幼い声が漏れる。
何もない壁を凝視していた忍の目が翼に行く。
その目はまるで――。

吸い込ませる様な、引き込まれる様な、人間ではないとわかるくらい神秘的な目をしていた。

忍はぐっと息を飲み込む。

「よく聞くのじゃ小娘」

小さな幼女は制服を着た少女を小娘呼ばわりして大きな声を叫びながら言い放った。

「そのデイパックとやらにまたミスタードーナツが入っているかもしれんのじゃ!」
「…………」

あまりにも生き生きした笑顔と期待を込めた声、嬉しそうに細める目を見た翼はなんとも言えなかった。

「小娘、少しデイパック探しを手伝うのじゃ」
「ち、ちょっと!?まだ男の人目覚ませていないよ。またあの帽子の男が襲ってくるかもしれないし」

ベッドで気絶している高山浩太に視線を向ける。
まだ目覚める気配もなく、体も動いていない。

「なーに、そんなん安心せい。簡単にワシに手出しはせんじゃろうよ」

ズルズルと翼は忍に引っ張られていきバタンと扉が閉まる音が聞こえてから、周りは無音。
寝息をしないまま気絶した高山以外音を出すものも無かった。
もし、このまま誰かが侵入してきたら高山は大変危険な状況になる。

「ふふふ……、まさかダメ元で見張っていたが簡単に外に出るとは軽率じゃないかい吸血鬼の嬢ちゃんに眼鏡の嬢ちゃん」

手塚義光の目がシマウマの群れを襲い攪乱させ、殺して喰らうライオンの瞳で翼と忍の外出を眺めていた。
狙うは高山の首。

718ブラッドチューン ◆WzpMn05TJA:2012/06/10(日) 21:06:56 ID:c0R45y1AO
「日向君の出番だよ〜」

バカにした声を出して振り向いた先には日向秀樹が縛られていた。
木にぐるぐるとロープで動けなくなって無様にもがく日向が哀れに見える。

「クソッ……バカにしやがって……」

手塚にそう吐き捨てたいが刺激するわけにはいかない。
銃、剣、注射器。
持っている武器全てを縛った日向の目の前で脅していた事が原因だ。
だから日向は呟きか口ぱくどちらかはわからないが悪態をつく。

「日向君に高山のおっさんの殺害お願いしても良いかなー?」
「ぐ……」

まだ日向が手塚から縛られただけで済んでいるのはとある話と条件からであった。



◆◆◆◆◆



「俺はさっき気絶させるというミスをしてしまってな。手荒なマネはする気はねーよ」

縛りながら手荒なマネはしない。
なんと信憑性のない話だろうか。
既に日向は縛られる前に数回蹴られて頬には貼られたばかりのかさぶたが数個出来ている。

「あんたはまだ抗うってのかよ」
「あん?よくわからん事を言うな坊主、抗うも何もこれがこのバトルロワイアルのルールってもんだろ」

手塚は右手の人差し指を日向に向けて親指を上に向けて――ピストルの形を作り日向のこめかみを狙う様にして笑う。
その目は楽しい笑いではなく、仮面の笑いだ。
殺人者。
彼の目は冗談の通じないそれに見えるのであった。

「もしかしてあんたわからないんじゃないか?」
「……言ってみろ」
「俺達はとっくに死んでんだよ、おそらくあんたもな」
「面白い事言う坊主だ。死んだ?ならこうして笑っている俺、縛られた坊主、気絶した高山のおっさん、人外の吸血鬼の嬢ちゃんとも俺は会ってんだよ」

死んだ。
そう言っても当然信じなかった。
確かに手塚が『死』に巻き込まれた殺人ゲームは存在した。
参加者の1人である御剣総一もそれに強制的に参加させられ手塚の死を知る1人だ。
あのゲームによってこのバトルロワイアルに参加する姫萩咲実、北条かりん、高山浩太、長沢勇治も亡くなっている。
彼がその世界から呼ばれたのなら納得したのかもしれないがこの手塚義光はそのゲームに巻き込まれる前の手塚義光だ。
日向の言葉は戯言と等しかった。

「ここは死んだ世界だ。俺は死んでいるし仲間だって全員死んでいる。このバトルロワイアルだって本当に生きている奴で開催したとしたら大問題じゃないか!死んだ人間で舞台があの世……地獄って事なんじゃないかよ……」
「ほぅ、そりゃあ確かに生きている奴でバトルロワイアルなんか確かに大問題だな。だからってあの世なんて厨二病なんじゃないかい?」

バカにしていた。
まるで頭の浮いたガキとでも言いたげな目で。

「知ってるか?死んだ世界では人間は死んでも蘇るんだぜ。バラバラになっても焼かれても、窒息してでもな。だからゲーム終了後に俺達全員蘇ってこのバトルロワイアルも無かった事になると思うぜ」
「矛盾は見当たらねえなぁ」
「参加者の仲村ゆりって奴に聞けば詳しく聞かせてもらえる。それに立華奏という女は天使だ。どうだ死後の世界みたいだろ」

719ブラッドチューン ◆WzpMn05TJA:2012/06/10(日) 21:07:57 ID:c0R45y1AO
仲村ゆり、立華奏。
日向の言っている事は信憑性はないが、嘘を言っているつもりはなさそうだ。
だから手塚は名簿を取り出しその2人の少女の名前にチェックを入れておいた。
念には念を。

このゲームで自分が優勝する為、手塚はどんな小さな情報でも逃すつもりはない。

(死んだら蘇るねぇ……、それはそれで興味深いな。ゲーム説明であんな大舞台を繰り広げておいて実は狂言でした、と。泣けてくるなそりゃあ)

そこで手塚は1つ日向を騙してある事をさせようと思いつく。
これが手塚の日向をまだ生かしている条件に当てはまる。

「じゃあ日向君に頼みがあるわ」

縛られた日向はピクリと反応し頭を上げる。
そこで見たのは金髪の人間が見せた悪魔の微笑みであった。

「高山のおっさんを殺したら君を自由にしてあげよう。君のくだらない物しか無かったデイパックの中身は返せないがそこは空のデイパックなら返してあげよう。エクストラゲームとやらのデイパックを探せば良いよ」

手塚は悪魔のペルソナを被っていた。
いや、ペルソナに乗っ取られた悪魔、もしくは悪魔本人にも見えた。

「わ……わかった……」

日向は何も知らない人間を殺したいとは思っていない。
しかし、ここは死後の世界だから。
それで納得した。
いや、納得せざるを得なかった。

「俺はあんたが嫌いだ」

縛られたロープを剣で切り裂く瞬間日向は手塚にそう呟いた。
せめての悪態。
ここで文句1つ言えなかったら一生後悔するのではないかと考えたからだ。
一生などとっくに終わった自分なのに――だ、

「俺は日向君みたいな子は嫌いではないんだがな」

――素直なバカな子は利用のしがいがあるからな――
背中を向けた日向に気付かれない様にほくそ笑んだ。



◆◆◆◇◇◇



「まず高山のおっさんって顔わかんねーよ」

『高山浩太』という本名らしい。
特徴は高い身長、がたいが良い、短髪。
それぐらいしか手塚に教えられなかった。

「武器を収集しないとな」

いやいや武器を探す。
軽くて威力のある武器、それが理想だ。

普段オペレーションで使っている様な拳銃は見つからないだろう。

「俺は殺しなんか向いてねーんだよ……。野田や藤巻や松下五段とかなら適任なのかもしれないのだけれどな」

死んだ世界戦線メンバーにも戦いに向く者と向かない者に区分される。
このゲーム参加者の椎名なんかは戦線メンバーでも1、2を競えるぐらいの強さだ。
日向や音無はその中間くらいに区分されるだろう。

「出刃包丁ぐらいしかないよな……」

キッチンにて見つけた出刃包丁。
数本見つけた中でも一番研がれてあり切れ味の良い物を厳選した。

「この民家で寝ている奴を探さないとな。不用心にしたおさげメガネちゃんや金髪の幼女ちゃんに感謝したら良いのか悪いのか……」

不用心にした変わりに開放する条件をもらった。
変わりに自分は人殺しをしなくてはいけなくなった。

果たしてこれが正しい選択だったのか。
拒否していれば良かったのか。
ただの死んだ少年にわかるはずもなく、悪魔の手塚にも天使の立華奏にもわかるはずがないだろう。

「…………」
「この人が高山浩太って人か……?」

720ブラッドチューン ◆WzpMn05TJA:2012/06/10(日) 21:10:10 ID:c0R45y1AO
気絶した男性は手塚の特徴に一致していた。
もし目が覚めていたら負けていただろう。
鍛えられた筋肉には歴戦で付けられただろう傷が見える。
元傭兵という職業を日向は思い出す。

自分達も天使に対抗して抗ってきた。
だがそれは命ありきだ。
死んでも蘇るリセットボタンがオートで反応するからだ。
しかし、この男はそんなリセットボタンなどない状態で戦場で戦い抜いた。
銃の扱いをかじったぐらいの自分とはまるで違う次元の強さだ、

「だが寝ていたら関係ねーよな……、赤ん坊だろうが誰だろうが」

出刃包丁を眠る高山に刃を向ける。
喉元を一瞬で切り裂くイメージを作る。

「……これで、終わりだ」

強い力で振り下ろす。
もはや自分が制止しろと脳が命じてもこの腕は止められない。

――カシュ。

喉元が切り裂かれ鮮血が真っ直ぐな直線を描きながら飛び散った。



◆◆◆◇◇◇



「はぁはぁはぁ……」

落ち着け。
落ち着け、俺。

息を整える。

周りの状況を見渡す。
横たわった喉を切り裂かれた死体。
いや、自分が握った出刃包丁で殺した死体だ。
血が飛び散っているが幸い自分は血で汚れていない。
これは幸いだ。

「くっ……、まだ手塚にやられたところが」

頭に痛くない痛みが走る。
違和感とでも言うか。
そうだ、俺は手塚に変な注射をされたのだった。

「この少年も俺同様デイパックがない。いや、俺には目の前に置かれた空のデイパックがあるがこいつにはない」

空のデイパックの中身は自分から手塚に渡してしまっていた。
おそらくこの少年も俺と同じく手塚からデイパックを取られたんだな。

「素人でまだやりやすかったな」

この少年は弱々しいが俺に殺気を見せた。

危険だと俺の本能が目覚めさせ、出刃包丁を持った少年の溝に俺が一撃の拳をぶつけて、その隙から出刃包丁を盗み喉を切り裂いた。

もし手塚だったなら銃で殺していただろうか。
とにかくバカな少年で助かった。

「こいつも手塚関係かっ」

手塚の野郎。
完全に俺を舐めていやかるな。

「殺してやるよ手塚、俺がこの手で手塚も参加者も主催者も全て殺してやる」

頭に手塚の野郎を思い浮かべて、歯を強く食いしばった。



◆◆◆◇◇◇



「ちっ、役に経たねえな日向め」

木に登り高山のおっさんと日向が争った戦いを眺めていた。
やはり高山のおっさんは人殺しに躊躇いもなく、技術も対したものだ。
間違いなく現代に生まれたのが間違っている野郎だ。

「しかしそれでこそ倒しがいがあるぜ高山さんよ。次また何かあったら会おうや」

ヒラリと木から飛び降りた。
今は吸血鬼の嬢ちゃんも高山のおっさんも殺すべきではない。
だが、機会なら俺が作っていくってもんさ。

721ブラッドチューン ◆WzpMn05TJA:2012/06/10(日) 21:11:29 ID:c0R45y1AO
【F-1 橋付近民家/朝】

【手塚義光@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:舞の剣@Kanon、ブラックホール12/15@ペルソナ4】
【所持品:支給品一式×2、タバコ10箱@現実、ライター3本@現実、リフレイン×9@コードギアス 反逆のルルーシュ、ブラックホールの弾丸30/30、嵐のボンゴレリング@家庭教師ヒットマンREBORN!、チーズ君のぬいぐるみ@コードギアス 反逆のルルーシュ、新聞紙ブレード@リトルバスターズ!】
【状態:健康、気分高揚】
【思考・行動】
1:優勝する為、全参加者を殺害する。
2:高山のおっさん、吸血鬼の嬢ちゃんはいずれ殺す。
3:今はここから離れる。
【備考】
※本編開始前からの参戦です。



◆◆◆◇◇◇



俺はデイパックに出刃包丁を数本ぶち込み走って民家内から出た。
近くに居るはずの手塚を殺す為に探すが姿はない。

「逃げられたか」

民家内から持ってきた目覚まし時計を見る。
少し前に放送が過ぎた時間。
大事な情報を俺は聞き逃した事になった。

「くそっ、何もかも上手くいかないっ」

民家の入り口に置かれた植木鉢を蹴り飛ばした。
民家の壁にぶつかり植木鉢は割れ中から土や植物がばらまかれる。

「っ!?なんだこれは!?」

その植木鉢から有り得ない物が見つかった。
いや隠されていた。

「デイパック、だとっ!?」

誰のデイパック――?
それはエクストラゲームの隠された見せしめのデイパックである。
北条沙都子のデイパックが高山浩太に見つけられた。

「中に3つの支給品がある。誰のかは知らんが助かった」

放送を聞き逃した高山は知るはずがないエクストラゲームの存在。
だがエクストラゲーム最初の恩恵を受けたのだった。



【高山浩太@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:不明】
【所持品:北条沙都子のデイパック、出刃包丁×5@現実】
【状態:気絶】
【思考・行動】
1:手塚含めた参加者、主催者を皆殺しにする
2:誰のデイパックかは知らんがありがたい
【備考】
※本編開始前からの参戦です。
※リフレインを摂取しました。今後は過剰にリフレインを求めるようになるかも知れません。
 あるいは、精神力により中毒を克服するかも知れません。詳細は後の書き手さんにお任せします。

722ブラッドチューン ◆WzpMn05TJA:2012/06/10(日) 21:15:44 ID:c0R45y1AO
◆◆◆◇◇◇



「見つからないのぅミスタードーナツ……」
「ミスタードーナツが入っているの前提で探さないで忍ちゃん」
「だが考えてみよ小娘、もしミスタードーナツが入っていたとしたら」
「ダメだこりゃ……。阿良々木君どうにかしてよー」

高山浩太からも手塚義光からも離れた翼と忍は民家の惨劇は知らされていない。
こちらは至って平和にデイパック探しをしていた。
誰よりエクストラゲームのデイパックの隠し位置に近くに居た彼女達は見つけられなかった事も知らずに。
これから彼女達はどう動くのか。
日向秀樹の死体があるのを知るのは、あと――――。



【F-1 野原/朝】

【羽川翼@物語シリーズ】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、けろぴー@Kanon、ランダム支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:殺し合いには乗らない。
2:おじさんが起きるのを待つ。
3:阿良々木君に会いたいけど……。
4:デイパックを探す。
【備考】
※「つばさキャット」終了後からの参戦です。
※ストレスが溜まれば、ブラック羽川が出現する可能性もあります。
※帽子の男(手塚)を危険視しています。
※知り合い達の参戦時期に不安を抱いています



【忍野忍@物語シリーズ】
【装備:スペツナヅナイフ@現実】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:やや血液不足】
【思考・行動】
0:ミスタードーナツ!
1:殺し合いなど詰まらん。
2:暦を探して血を吸わせて貰う。
3:儂を襲おうと言うのならば、覚悟をしておけ。
4:小娘と行動する。
【備考】
※少なくとも「かれんビー」終了後からの参戦です。(明確な参戦時期は後の書き手さんに任せます)
※暦から吸血すれば、外見、能力などが戻る可能性があります。制限は後の書き手さんにお任せします。



【日向秀樹@Angel Beats!  死亡】



【出刃包丁@現実】
普通の切れ味の良い出刃包丁。

723 ◆WzpMn05TJA:2012/06/10(日) 21:16:36 ID:c0R45y1AO
投下終了

元ネタはゲーム「CHAOS;HEAD」に登場する架空アニメタイトル『ブラッドチューン THE ANIMATION』より

724名無しさん:2012/06/12(火) 18:57:21 ID:2BgHPCnc0
投下乙。
エンジェルビートはよく知らないけど、日向やゆりの死後の世界説は確かに他人からすれば厨二病にしか聞こえんな
ところで高山の気絶って解けてるんだよね?

725 ◆WzpMn05TJA:2012/06/23(土) 19:43:36 ID:2p4MHeaMO
直井文人、白鐘直斗を予約します

この2人を自分で書くの最初以来だなー

726語られなかった想い ◆WzpMn05TJA:2012/07/07(土) 18:25:37 ID:9fx1Q6tMO
「まったく馬鹿馬鹿しいな……」

B-3と4を繋ぐ橋を渡りコソコソと行動していた直井と直斗。
しかしルルーシュと奏と出会ってからは参加者の遭遇は0。
彼らはこのロワイアルの中でも参加者と出会った数は少ない方である。
とりあえず出会う参加者が居ないのにコソコソとする自分。
プライドの高い彼はそれが情けなく思い直井は呟いた。

「参加者と出会わない事は良い事なんじゃないかな直井君」
「一概には言えんな。仲間を増やせないという事もある」
「まぁそうだけど。ただたくさんの仲間は集めたいところだね」
「いや、仲間はそんなにはいらん」

仲間が増やせないと言ってからの否定。
直井の意図がわからなく直斗は考えた。
しかし直井の言った意味に辿り着けなかった。
それを察してか直井が直斗に解説を語り出した。

「さっきルルーシュと会ったがあいつも同じ考えなんじゃないかと思っている」

ギアスにかけられた記憶はない。
だが直斗から聞いたルルーシュの話で本質は自分と似ていると感じた。

「どういう事?」

頭の回る直斗だが今回だけはわからない。
仲間と危険な戦いをしていた自分は鳴上悠、花村陽介、里中千枝、天城雪子、巽完二、久慈川りせ、クマそして自分。
8人という大人数で戦っているのを彼は否定しているし、直井の言う死んだ世界戦線メンバーも大人数居る事をも否定したのだから。

「ルルーシュは僕達と一緒に行動しなかったという事さ」
「あれは僕達と2つにわけて枢木スザクさんを探す為で――」

直斗が言いかけた事を直井の声が遮った。

「信頼してないんだよ、僕達の事」
「は……?」
「元々僕だってあんなシャルルとかいう奴と関わりがある奴を信頼してないが……、協力だけは出来ると思ったんだろう
利用し合うって事だろう」
「……」

本当にそうなのか?
ではどうやって天使――立華奏――は彼の側に居る信頼を得たのか?
自分はよく天使は知らないが直井は彼女の事や考えなどわかる気はするが。
だが整理する事が出来なくて口にはしなかった。

「あと仲間が多すぎると本当に信頼出来る奴なのかわからない。本当は殺人者の演技かもしれん。お前は信頼しているがな、しかし隠し事は辞めて欲しいな」
「え……?」

隠し事。
それは直斗に自覚はあるし隠している事。
自分の性別の事だ。
男に成りきった自分を女だと知られているというのか。

「ち、違うんだよ直井君」

変態とかじゃないんだと言おうとしたが、直井は聞いてはいないみたいだ。

「そんなにそれは慌てる事なのか知らんがお前あの時何をしようとした」
「……ん?」

あの時。
直井は直斗がルルーシュ相手にペルソナを出そうとしていたのを目撃していた。
結局天使の介入で不発に終わった事だが……。

727語られなかった想い ◆WzpMn05TJA:2012/07/07(土) 18:29:31 ID:9fx1Q6tMO





――――――――――





「ほぅ、ペルソナ……仮面か」

ただの人間だと思っていた直斗を特別な力を持つ人間の部類と知り、感心に近い感情が直井に沸き上がらせる。

「ただの少女だと思っていたがまさか本当に仮面なる力を持っているとは」
「ど、どうして?」

何気なくさらりと言われた言葉には自分の根本的な事を言い当てられていた。
いつからわかっていたのか。
もしかしたら最初から気付いていたのかもしれない。

直井文人。
彼の鋭さはまるでナイフの様に感じていた。
いや、ただのナイフではない。
コンバットナイフとでも言うのか。
直斗は彼が敵では無かった事に安心感を覚えていた。
自分を助けた鳴上悠達に頼もしさを感じていたとしたら、直井文人に対しては心強さを感じた。

「ふん。隠せているとでも?僕は神だ。それくらい見通せない神など紙でしかない」
「……」

よくわからない。
まるで空気を掴む様な不確かさ。
それもまた直井文人という人柄に思えた。




――――――――――





「でも直井君、脱出なんて出来るのかなって思うんだ……」
「さぁな、もしかしたら脱出なんて不可能かもしれないが、音無さんだけは死なせない」

音無結弦。
彼を動かす動力源になっている。
しかし、その動力源を失った場合彼は何をしでかすか。

まだ失われていない動力源。
しかし直斗の頼れる仲間の死を知らせる放送が橋で休めていた2人の耳に届く。





――――――――――





花村陽介。
巽完二。
他、自分は全く知らない12人の人間。

本来は100人全員と顔合わせているがそんなに覚えていられるわけがない。
微かに覚えているのだって数人くらいだ。

1人シャルルと因縁のあるルルーシュ・ヴィ・ブリアニア。
頭が少しトゲトゲした高校生らしき少年。
金髪の羽根が映えた(付けた?)少女。
青髪の少し人柄が悪そうな片腕を失った男。
覚えているのは少し印象が強かった人達で名前などは全員知るはずがなく、今挙げたルルーシュさん以外の3人は既に亡くなっているかも知れない。

1人1人の人生を歩んできた自分は主人公だと言える。
ただこの殺し合いでは自分は主人公(脇役)に過ぎない。
そんな事を考えてしまう。

「僕は……」

胸が締め付けられる。
僕なんかよりも強い2人は見事に6時間以内に亡くなったのだから。

「なんで僕は生き長らえて先輩達は……」
「白鐘に教えてやる、このゲームで生き残っている奴の特徴を」

彼は知り合いを失ってはいないはずなのに特徴なんかあるのだろうか?
落ち着く為の薬になればと半ば半信半疑で直井君の言葉を拾う。

728語られなかった想い ◆WzpMn05TJA:2012/07/07(土) 18:31:30 ID:9fx1Q6tMO
「生き残った奴ら全員はただ――――」













運が良かったに過ぎないんだよ。












――――――――――





「運……、なんですかそれ……」

まるで今生きている事を否定されたみたいではないか。

「実力とかデイパックの中身とか……もっとたくさんあるでしょう!」
「……やはり運だよ白鐘」

見透かした、神の様な事を言う。

「実力があったって複数に負けたかもな、実力があったって更に上の実力者が居たかもな、実力があったって支給品が最悪だった。これは白鐘の言うデイパックの中身にも繋がるな。全て運じゃないか
僕と白鐘が近くがスタート地点だったのも運だな」

生きている事を否定された。
だって彼は既に死んでいるから。





――――――――――





「ただ僕はその運に抗う、運命にもゲームにも屈しない!」

生きている事を肯定された気がした。
だって彼は神なのだから。
自称でしかないとしても、彼にとっては神らしいから。

「音無さん、待っていて下さい」

最後の一言が無ければもっと格好良く決められただろうに。





――――――――――





「そろそろ行こうか白鐘、休憩は充分取っただろうからな」

直斗が落ち着いた表情から約5分。
直井なりの配慮であった。
自分も尊敬する音無を失ったらと考えたら同じ、いや立ち直れないかもしれない。

729語られなかった想い ◆WzpMn05TJA:2012/07/07(土) 18:32:01 ID:9fx1Q6tMO
「うん、ありがとう直井君」

全てをさらけ出された気がした。
直井を理解出来た気がした直斗は好感に近い気持ちが上がっていた。






だが、結局は気がしただけ。

直井の1つの事だけはまだ晒して居なかった。



(白鐘は僕は殺しをしないと思っているみたいだが、相手が相手なら僕は殺しは止むを得ないと最初から思っているよ……)





【B-4 橋/朝】


【直井文人@Angel Beats!】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:健康、ギアス】
【思考・行動】
1:音無さんと合流したい。
2:音無さん以外の世界戦線メンバー、直斗の仲間。
3:島からの脱出。この島に不吉を感じている。
4:とりあえず、ルルーシュに言われた通りに行動してやる。
5:止むを得ない場合殺しに躊躇いはない。
【備考】
※ユイが消える少し前からの参戦です。
※現在『枢木スザクを守れ』のギアスにかかっています。
ギアスの効果は、枢木スザクを見つけたときに発動します。



【白鐘直斗@ペルソナ4】
【装備:球磨川禊の螺子@めだかボックス】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:健康、ギアス】
【思考・行動】
1:先輩方または戦線メンバーとの合流。
2:打倒主催者、多くの人を集めて島からの脱出。
3:直井と共に地図を端から探索していく。
4:今はルルーシュに言われた通りに行動する。
【備考】
※自称特別捜査隊に加わった後からの参戦です。
※枢木スザクの容姿を教えられました。
※現在『枢木スザクを守れ』のギアスにかかっています。
ギアスの効果は、枢木スザクを見つけたときに発動します。

730 ◆WzpMn05TJA:2012/07/07(土) 18:35:08 ID:9fx1Q6tMO
投下終了です

元ネタはアニメ「戦場のヴァルキュリア」の第16話サブタイトル『語られなかった想い』より


今回は投下送れて申し訳ありませんでした

731 ◆RmIe4rjRnw:2012/07/07(土) 18:42:25 ID:cBsGv7dY0
投下乙です
直井と直斗、やっぱり世界の違いから内面での温度差は生まれるか……
音無が死んだらホントどうなるんだろう

あと質問ですが、wikiは編集しても構わないのでしょうか?
【第○回放送までの本編SS】等、勝手にいじってはいけないような気もするのですが。
返答頂きたいです

732 ◆WzpMn05TJA:2012/07/07(土) 18:57:45 ID:9fx1Q6tMO
>>731

感想、コメントありがとうございます

wiki編集は特に制限はありません
最近は忙しく、wiki編集する時間がないのでむしろありがたいです

733 ◆RmIe4rjRnw:2012/07/07(土) 19:19:19 ID:cBsGv7dY0
素早い返信ありがとうございます
それでは機会があれば編集させていただこうと思います

あと、キョン、ニンフ、遠野美凪を予約します

734 ◆WzpMn05TJA:2012/07/11(水) 13:25:53 ID:DtGgBbk6O
wikiを更新していただきありがとうございます

自分も時間のある限り頑張っていく次第です


上條当麻、篠崎あゆみ、直江理樹、長沢勇治、マリアを予約します

735名無しさん:2012/07/11(水) 15:50:37 ID:PFBpAMnw0
この予約……つまり、どういうことだってばよ

736名無しさん:2012/07/11(水) 16:30:14 ID:S7h2MLGsO
なん…だと……

737名無しさん:2012/07/12(木) 22:03:32 ID:fM3CqbGs0
分かってると思うけど一応指摘。
×上條
○上条
だね

738 ◆jZCpcbFowc:2012/07/14(土) 20:09:35 ID:8oiQNNsM0
投下乙です。何やら不穏な空気…?

久しぶりに
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、立華奏、足立透の三名を予約します

739シャングリラ ◆WzpMn05TJA:2012/07/15(日) 05:10:06 ID:uFLkGFDcO
死は誰にでも訪れる。
気付けば自分は生きていた/死んでいた。

どれだけの英雄にも王にも偉人にも戦士にも正義の味方にも悪の魔王にも主人公でもヒロインにもサブヒロインにもモブキャラにも奴隷にも。

何より平等で平等で平等で平等で平等で平等で平等で平等で平等で平等で平等で平等で平等で平等で平等で……、
――なのに。
何より不平等で不平等で不平等で不平等で不平等で不平等で不平等で不平等で不平等で不平等で不平等で不平等で不平等で不平等で不平等な話だが……、
紛れもない真実であり、全ての者の旅の終着点だ。

例外はない。

『例外の方が多い法則』。
これには必ず該当しない特殊な話。

生み出された命と引き換えに、死する命。


こうして世界はバランスを保つ。





――――――――――――――――――――
なんだよ、ワタシの学校から逃げておいて、
――――――――――――――――――――
―――――――――――――――
もう2人くたばっているのかよ。
―――――――――――――――





◇◇◇◆◆◆





自分の死に納得のいかない正義の味方が居た。
正義の味方と言っていいのかわからないくらいの最弱な少年。

「俺はまだこんなところでは死ねないんだよ……、でも……」

死んだ。
仲間になったばかりの涼宮ハルヒの逃亡と引き換えに上条当麻の死を招いた。
自分はあの時どうすれば死の回避が出来た?

一方通行みたいな反射の能力が必要だったのか?

「違う、それは俺じゃない。俺には幻想殺し(イマジンブレイカー)がある」

だからと言って別に何もあるわけじゃないが……。

「まさか幻想を殺す俺が幽霊だと?ふざけた話だ」

しかしこうして自分の死体を前にして彼は口から何百回、何千回と口にした言葉がふと呟かれる。

「不幸だ……」

何故か毎度死にかけておいていざ死ぬと脱力感が湧く。

「まだお前にはやり残した事があるんじゃないの?」

ふと女の子の声が頭に届いた。
あまりに突然でシュール過ぎてその言葉を疑わずにやり残した事を思い浮かべる。

――やり残し。
なんかあったか……?
インデックスやビリビリや両親に別れの挨拶1つ言えないままくたばっちまった事か?
…………いや、それはそうだ。
しかしもっと大きな、大きなやり残しがあったはずだ。




そうだった。
あれの事じゃないか!

「バトルロワイアルだと……?最後の1人になるまで生き残れだと……?
従うかよそんな話!俺は死んじまったが言ってやる!
誰がこんな殺し合いをするかよ!
そのふざけた幻想をぶち殺す!」

彼女には目もくれずに霊体の姿で、少年上条当麻はバトルロワイアルの地を駆け出した。

「無駄な事をいくらでも突っ走っタら目的を遂げられるかもネ」

囁いておいて彼をバカ者とでも言う様な声。



『死ンでからも抗ったって何になるんだろうネ?』

740シャングリラ ◆WzpMn05TJA:2012/07/15(日) 05:11:28 ID:uFLkGFDcO





◇◇◇◆◆◆





「鈴、恭介、真人、謙吾、来ヶ谷さん……、僕は弱いままだったよ……」

自分の決断力の無さ。
それが彼の死に繋がった。
優柔不断な性格が災いしたといってもあながち間違いではないだろう。

恭介達が体を張ってバスの事故から救ってくれた命をバトルロワイアル開始30分以内に失った。
せっかく貰った物をいつの間にか落として無くなってしまったみたいな体験に近いがそれを命で例えるなら価値が違う。

(本当に価値が違うのか?ワタシには全て同じにしか見えないんだけどな)

女の子は理樹の背中をまるでテレビでも見ているかの如く他人事の様に静かに傍観していた。

「放送を聞いた限りならバスターズ内で死んだのは僕だけみたいだ……」

それに。
理樹の脳内に映るのは普段は強気なクセにいざとなると情けなく人見知りする幼なじみの少女で、向こうの世界でもずっと支えてくれていた茶髪で猫好きな少女が浮かんでいた。
恭介の妹――棗鈴。

「泣かせてしまったな……」

でもあのアウレオルスさんと打ち解ける鈴は強く、頼もしかった。
鈴は彼の死を乗り越え、成長を続けていくだろう。
それがあと短い時間だったとしても。

「僕も恭介達みたいにリトルバスターズを守り抜けたら……」

仲間達なら必ずそんな行動を取るだろう。
いくら間違った道へ向かおうと、リトルバスターズという目的は変わらないだろう。

仲間達みたいにそれさえ出来れば少年は後悔なく成仏出来るだろう。
出来ないからこうして幽霊になってここをさまよっているのだろう。
決断する間もなく、彼の視界は風景から朱、そして黒く染め上げ闇に落ちた。
冷めていく体温、まるで魂でも吸い取られたみたいに気付けば泣いた鈴の目の前に居ても気付かれない体になっていた。

「ヤってみろよ、それで満足ってなら。今のお前は幽霊だが実体ノある幽霊なんだゼ?」
「え……?」

そう言われ理樹は自分の遺体に触る。
氷より冷たくはないはずなのに、それは氷点下より冷たく響く。

「感覚まで?……さっきまでは触る事すら出来なかったのに……」
「でもこれでお前は親友達を助けられるはずだ、違うか?」

ニタニタと笑う女の子。
悪魔かもしれない異常な存在。
でも理樹は自然と彼女の言葉に聞き入っていた。





◇◇◇◆◆◆

741シャングリラ ◆WzpMn05TJA:2012/07/15(日) 05:12:28 ID:uFLkGFDcO





「チクショー、あの白髪野郎ムカつく!死ね死ね死ね!シャルルとか言うジジイめ、ふざけんじゃねぇよ!
誰があんなのに勝てるかよっ!
こんなクソゲー認めるか!リセットボタンのないゲームなんかゲームじゃないじゃねーかよ!」

憎しみ。
憎悪。
恨み。
怨み。

負の感情を撒き散らしていたのは長沢勇治であった。
死んでからまだ間もない。
恨みの強さはそれを物語っている。

「ムカつく、ムカつく、ムカつく!ゲームの主人公の僕は負けない!こんなゲームぶっ壊れろ!このクソゲーを作った奴はぶっ殺す!」

壊したい。
殺したい。
そんな感情を満たせぬまま死んだ自分が憎かった。
まだ自分はやる事がある。
壊せる物は壊して、人を殺して、このゲームをクリアしてエンディングを見て、ネットにクソゲーだったと書き込んで、ここの経験を生かし今まで自分を馬鹿にしてきた奴に復讐して、新しいゲームをする。
ほら見ろ、まだやるべき事は僕にはあって死ねない事がわかっただろう。
だからあと1度チャンスを。
次はもっと上手く出来るから。
優勝して、このまま2回戦だって開始させても構わない。

「死ね、死ね、全滅しちゃえば良いんだ!俺の手で壊してやりたい」

はぁはぁと細く小さい体は悲鳴を上げていた。
彼は気付かない。
握った実体のある石を握って地面に大きな傷を付けている事に。
思考能力は沸騰していた。

(こんなバカガキ程扱い易イ奴なんか居ないよナァ)

冷たい目をしながら彼女は長沢の後ろから現れる。

「ナらやってみろよ。チャンスなんかまさに現在進行形で現れていルゼ」

長沢に冷たい声を浴びせ、沸騰した脳みそは一気に冷静にさせた。
現実で火に水をかける行為にとても酷似している。
伝えたい事は伝えたと言わんばかりに彼女の姿はまるでない。

「ほ、本当なのか!?なぁオイッ!消えるなチビガキ」

しかし叫んでもお願いしても、怒鳴っても長沢の前に女の子は現れなかった。
見えた女の子。
都合が良いがこれはご都合主義だ。

「ははっ、やっぱり主人公は僕――じゃない俺なんだよっ!主人公補正は俺に力をくれたんだっ!」

へへっと長沢は自分の遺体には目もくれずデイパックを強引に引っ張る。
長沢にとってくたばった物、自分の遺体すら興味が無かった。

「クロスボウに注射器1本、まずは武器探しからしないとなぁ」

ゲーム感覚で考える長沢。
死んだ人間は人間ではない。
彼によく当てはまる言葉である。





◇◇◇◆◆◆

742シャングリラ ◆WzpMn05TJA:2012/07/15(日) 05:13:24 ID:uFLkGFDcO





「あはっ、あはははははは」

まるで自分が死んだ事には気付いていないツインテールな少女がふらふら歩いていた。

その姿を女の子は考え込みながら傍観していた。
上条当麻、直江理樹、長沢勇治。
3人ははじめて見た人間であったが彼女には見覚えがあった。
篠崎あゆみ。
持田哲志やその仲間達を天神小学校へ連れて来た元凶。
冴之木七星のブログを読んだ哀れな1人であった。

「アイツは元々狂う才能があったよな、わざわざ説明しなくともアイツなら暴走してくれるはずだ」

ほとんど彼女の事は熟知している。
そんな事もあり、女の子は篠崎あゆみに姿を現す事なく消えていた。





◇◇◇◆◆◆





「ナギ、あなたは生きるのよ」

放送を聞いたマリアは安堵した。
自分は死んだがナギは生きていた。
自分が命を捨ててまで戦いに赴いた相手で、自分の妹の様な彼女の生を祈る。

「ハヤテ君、ナギをお願いいたしますわね」

必ずナギを探してくれるであろう綾崎ハヤテ。
数ヶ月前にナギを助けてくれた不幸体質な執事。
彼がナギを助けてくれる事を祈るしかない。
だが、さっき彼は私の遺体を見てしまったが為に精神が少し不安だが、私の遺体を供養した事は優しさがあり、私は感謝しなくてはならない。


だがまだ心残りがあるのか引っかかりがある。
表の心は理解出来ても、裏の心には気付かないという事だろうか。

「一体なんだと言うのでしょうか?」

悩む。
悩むが、引っかかりは収まらなく、正体も未だわからず。

「ソれはやはり他人任せじゃなく自分でどうにかしたいんジャないのかイ」

そして突きつけられた裏の心。
ナギの顔、確かに私は自らの目で確かめたい。

「それは実体のあるオ前にはする事が出来る」

まるで私は夢を見ている、それを第三者が見ている。
私は今、その第三者に居た様な気がするのでした。





◇◇◇◆◆◆

743シャングリラ ◆WzpMn05TJA:2012/07/15(日) 05:14:18 ID:uFLkGFDcO





最初はタダ持田哲志達がいきなり天神小学校から居なくなったから見に来たに過ぎなかった。
持田哲志、持田由香、中嶋直美、岸沼良樹、篠崎あゆみ、刻命裕也の行方を見つけたらバトルロワイアル。
過程はよくわからんが奴らが苦しむのは最高だ。

この島に来るのには苦労したがワタシの力で入れないわけはなかった。

だがそれが影響したせいかこの島の死んだ人間、霊が実体化をした。
ワタシの天神小学校の様ニダ。

だからワタシはイタズラをしてやった。
その霊達が動くきっかけを教えてやった。

ある者は正義。
ある者は仲間。
ある者は狂気。
ある者は異常。
ある者は依存。

きっかけはバラバラだったが皆死しても尚抗う。
目的の為に。



…………。
………………。






「救いなんかあるわけないダロ」

ただ、バカみたいで、静かに寝ていた方が幸せだったろうに。

だが幸せなんか与えない。
だってワタシは誰より人間を憎むサチコだから。

「持田哲志の黒化など珍しい発見があって見ていたいものだがそろそろワタシはここを消えるか」

しかし考えればおかしな話だ。
黒化は絶望し心が弱ると校舎に取り込まれるものだがここに校舎はない。
天神小学校で死んだ者は閉じられた世界により永遠に味わい続けている――まさかこの島でもそれと似た事が起きている。

だが似た世界だからこそワタシはこの島にいつでも出入りが出来るのだろう。
興味深い話だがそんな事は探る気はない。

さて、最後に持田哲志らの参加者全員に聞こえているかは知らんが教えてやる。
バトルロワイアルだかの脱出方法の事ダ。














「知るわけナイだろ」



【篠崎サチコ@コープスパーティー  離脱】

744シャングリラ ◆WzpMn05TJA:2012/07/15(日) 05:15:03 ID:uFLkGFDcO
【H-4 レンタルビデオ店/朝】

【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【装備:なし】
【所持品:なし】
【状態:悪霊】
【思考・行動】
0:バトルロワイアルを終わらせる
【備考】
※新約開始直前からの参戦。



【H-3 街/朝】

【直江理樹@リトルバスターズ!】
【装備:なし?】
【所持品:なし?】
【状態:悪霊】
【思考・行動】
0:リトルバスターズを守る
【備考】
※Refrain終了後からの参戦。
※自分の遺体に転がったデイパックを拾ったか拾わなかったかは次以降の書き手さんに任せます。



【G-8 街/朝】

【長沢勇治@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:クロスボウ1/1@シークレットゲーム-KILLER QUEEN- H173の注射器1/3@ひぐらしのなく頃に】
【所持品:支給品一式 クロスボウの矢10/10 雲のマーレリング@家庭教師ヒットマンREBORN! アリクイのぬいぐるみ@Kanon 阿良々木暦の腕時計@物語シリーズ Keyコーヒー×4@Angel Beats!】
【状態:悪霊】
【思考・行動】
0:ぶっ壊す、ぶっ殺す
【備考】
※本編開始前からの参戦



【C-2 教会/朝】

【篠崎あゆみ@コープスパーティー】
【装備:なし?】
【所持品:なし?】
【状態:悪霊】
【思考・行動】
0:アッハァ!
【備考】
※クリア後からの参戦
※自分の遺体に転がった篠崎あゆみ及びマリアのデイパックを拾ったかどうかは次以降の書き手さんに任せます。



【B-2 病院/朝】

【マリア@ハヤテのごとく!】
【装備:なし】
【所持品:なし】
【状態:悪霊】
【思考・行動】
0:ナギと再会する
【備考】
※アテネ編直前からの参戦





【幽霊について】
上条当麻、直江理樹、長沢勇治、篠崎あゆみ、マリアは幽霊でサチコの影響になり悪霊になりました。
しかしコープスパーティー本編の様に悪霊は悪霊でも全員が悪い事をしていくわけではなく、1人1人の意志により固定されています。
しかし実体はあるので彼らは生きた者を殺害する事も可能になっています。
やり残しがなくなれば成仏、またロワ制限として生きた者でも彼らを殺害する事も可能です。
彼らのスタート地点は死んだ位置からのスタートとなります。

745 ◆WzpMn05TJA:2012/07/15(日) 05:19:27 ID:uFLkGFDcO
投下終了

元ネタはゲーム「コープスパーティー ブラッドカバーリピーテッドフィアー」OP『シャングリラ』より


ペルソナが使える、古泉が超能力が使える、黒化する
なんかよく考えればカオスなバトルロワイアル会場だな

746名無しさん:2012/07/15(日) 09:46:58 ID:r0BwlPFQ0
カ、カオスすぎっぞこれw

747名無しさん:2012/07/16(月) 15:54:24 ID:.A8LVM2Q0
でもこういう展開嫌いじゃない

748名無しさん:2012/07/17(火) 14:14:44 ID:NZQ9226I0
いいよいいよw

749名無しさん:2012/07/19(木) 17:55:29 ID:KSUVdQoA0
展開的に、番長が陽介達やそのペルソナを、自分のペルソナとして召喚しても受け入れられそうだ。

750 ◆WzpMn05TJA:2012/07/20(金) 00:25:08 ID:nmCVJtvoO
六道骸、真アサシン、アーチャー、アウレオルス=イザード、棗鈴を予約します


最近読み返すと放送終わってからもうすぐクライマックスが近いんじゃないかと思ってしまう今日この頃

751 ◆Zha5LP/1rU:2012/07/20(金) 19:37:21 ID:gvAIsQXY0
黒崎一護、涼宮ハルヒ、セイバーオルタ、バーサーカー、一方通行 予約します

752名無しさん:2012/07/21(土) 03:34:30 ID:ygPh2W8k0
何という胸熱な予約メンバー

753名無しさん:2012/07/21(土) 06:51:24 ID:6/pBEw.s0
どちら共サーヴァントメインか

アーチャーktkr


下は明らかにこのロワの最強No.3と対主催主人公格って重要な人物だからな
簡単に殺せないメンバー達の重要な話になりそう


登場しないと思うけど早速両方共
上条さんとngswの悪霊近いな

754 ◆jZCpcbFowc:2012/07/21(土) 17:45:46 ID:UON8VJE20
セイバーオルタ+バーサーカー+一方通行とかなにそれ燃える…
予約を延長します

755 ◆RmIe4rjRnw:2012/07/23(月) 15:12:04 ID:fKGottIs0
冬の朝は、離婚届を準備するまでに至ってしまった夫婦のように冷え込んでいるものだ。
まだ温めることが出来るぶん、そちらの方がマシかも知れない。
というかマシだ。
今現在、俺の思考は企業用の冷凍庫に突っ込まれてあとは調理を待つばかりのマグロのように、カチコチに冷え固まっていた。
溶かそうにもそれを行なえるだけのお湯ないしは熱い物が周りにない。
SOS団の女神こと朝比奈さんの淹れてくれたお茶がこれほど飲みたくなったことは未だかつてないな。
本当ならここで俺の置かれた状況を説明するべきだろうが……まあいいか。
とにかく、俺は平成不況だかオイルショックだかが起きた頃の一般市民のように、言い知れぬ不安を覚えていた。


目を覚まして最初に視界に入ったのは、俺の部屋の物ではない天井だった。
ニンフが心配そうに寄ってきてくれ、病気にかかったハムスターを見るような目つきで俺を眺めた。
その後俺にいくつかの質問をし、異常がないことを認めると湯呑みを渡してきた。
青春真っ盛りの高校生として言えば――良いひと時だった。
俺を心配する気持ちを茶葉に混ぜて淹れてくれたお茶は、朝比奈さんのものと比べても遜色のないものだった。
ゆっくりと飲み下すと、体が底から温まっていくのがわかった。
ついでに支給品だったマフィンを食べてから、改めてニンフに謝辞を述べた。
するとニンフは若干照れたように顔を赤らめながら、傷の程度を聞いてきた。
そういえば腕をナイフで刺された記憶があったが、休んだおかげで痛みはほとんどない。
ニンフは手当に慣れているらしく、腕には包帯がきれいに巻かれていた。
状況を聞くと、戦闘で気絶してしまった俺をニンフがかついでここまで来たとのこと。
いたいけな少女に過酷な労働をさせるなんて最低だぞと自分を戒めつつマフィンをほおばっていると、唐突に音が響いた。
デバイスを見ると、[06:00]の表示。放送の時間だった。
放送が流れるにつれて、ニンフの笑顔は少しずつ消えていった。
ろくでもないな奴等だ、と罵ってやりたかったが、無駄なことと悟って握り拳を固くするにとどまった。
ニンフと俺、互いに知り合いが呼ばれなかったことが唯一の救いだった。
それでも放送が終わる頃には、民家の中に笑顔を浮かべている者はいなかった。
俺は14人の犠牲者に黙祷を捧げてから思考を開始した。

756 ◆RmIe4rjRnw:2012/07/23(月) 15:12:46 ID:fKGottIs0
俺は長門に殺されかけた。
曲がりなりにも『SOS団の長門有希』を知る人物なら、そう聞いてどんな感想をもつのだろうか。
例えばハルヒ――まあ、あいつは信じそうにないな。
長門がそんなことをする筈がないと、どこかの総統閣下よろしく熱弁を振るうに違いない。
朝比奈さん――確か長門のことは苦手だったはずだ。
信じるでも疑うでもなく、百獣の王を目の前にした愛玩動物のように怯えてしまう姿が目に浮かぶ。
古泉――この軽薄超能力者に意見を求めるのは愚の骨頂だ。
薄ら笑いの仮面を着けたまま、白々しくも「それは御災難でしたね」とか言うのだろう。


そこまで考えて、変人揃いのSOS団員に意見を求めるのは筋違いだと気付いた。
やはりここは一般人かつ常識人の――誰だ?
鶴屋さん――ハルヒと仲良くなれる稀な存在は一般人と呼べるのだろうか。
谷口――あいつを常識人と呼ぶのは俺の中枢神経が拒否しているので却下する。
国木田――あたりさわりのない回答しか返って来るまい。


駄目だ。まともな感想は期待できない。
俺の周りには『一般人かつ常識人』という簡単な条件さえクリアできない奴ばかりだった。
そもそも長門を知る人物が少ないのだろうか。
谷口の話によれば北高内では朝比奈さんほどではないものの人気があると聞いているが、俺は今までそんな輩に出会ったことはない。
まあ、もし出会うことがあれば即刻諦めろと言ってやるね。
俺の雀の涙並みの経験から断言するが、長門と付き合うのは旧約聖書を丸暗記するくらい難しい。
会話の最中も能面で、交わすのは端的な言葉のみ――そんな彼女が欲しいか?
俺は間違ってもYESとは言えない。
「……やれやれ」
論点がずれていることに気付いて、深くため息をつく。
長門を彼女にしたらだとか、そんなことはどうだっていい、重要じゃない。
俺は心機一転して、長門有希という少女と俺との関係を思い返すことにした。

757 ◆RmIe4rjRnw:2012/07/23(月) 15:13:40 ID:fKGottIs0
未来人に超能力者、そして宇宙人。
大人しいとか照れ屋とかそんなギャルゲーの属性なぞ軽く超越しかねない存在。
サンタクロースと同じように、多くの子供たちは小学生でその存在を否定するのだろう。
宇宙人もどきみたいなあだ名を持つ俺もその一人だ。
高校に入ってからもその考えは変わることなく、神秘の世界とやらとは絶縁でいるのだろうと思っていた。
だが実のところ、俺は一滴の油が大海に跳ねるように、超常の世界へ足を踏み入れていたのだ。
何のとりえもない一般人兼涼宮ハルヒの精神的な支え。
そんな不名誉で不自然な肩書きを天の川に存在する星の数だけ貰ったとして僅かも嬉しくないが、生憎俺は物を無駄にしない主義だ。
ともかく、その肩書きを知るまでの過程で出会った3人の超常存在。
未来人の朝比奈みくる。
超能力者の古泉一樹。
そして、宇宙人の長門有希だ。
この3人は、ハルヒが世界にもたらしている影響について干渉ないしは観察を行っている。
とはいえ、『SOS団というお遊び集団の裏には、世界を守る者たちの孤独な戦いが』――というわけでもない。
当事者とはいえグッドスマイルこと古泉のように説明は上手くないので簡単に言わせてもらうと。
『ハルヒが世界を変えたいと望まないように努力する』――ニュアンスとしてはこんな感じか?
曰く涼宮ハルヒには世界を思い通りに変化させる力がある。
ここの細かい考え方は古泉も朝比奈さんも長門も微妙に違っているから何とも言えないが、傍若無人な能力であることは間違いない。
映画撮影の時を例に挙げてみるか。
喋る猫が欲しいと思えば三毛猫がふてぶてしく喋った。撮影に桜が欲しいと思えば秋だろうが桜が咲いた。
朝比奈さんにビームを出してほしいと思えば、実際に朝比奈さんは目からビームを出した。
言葉にすると今一つ伝わりにくいな。
極端な例を言っちまえば、ハルヒが「世界なんて要らない」と思えばそうなる。
世界は出来てから今まで長かったなーなどと感慨に耽る間もなくその存在を無くしちまう。
以前の俺を筆頭とする一般人は信じないだろうが、現在の俺は信じている。
神人やらTPDDやら情報操作やらを見て、触れて、感じてしまったからには信じるしかないだろう。
古泉も朝比奈さんも長門も、それぞれの思想で、それぞれの方法でハルヒを取り巻く環境を造っている。
ハルヒが世界のバランスを崩さないように、陰で東奔西走しているのだ。


――だけど、それは長門が殺し合いに乗る理由にはならない。
難しい単語を羅列したがるただの無口な高校生のように見えても、長門には感情がある。芽生え始めている。
それは改変された非日常的でない世界からもわかる。
無機質で無感動だった少女は、砂漠などの乾燥地に生えた植物のようにゆっくりだが確実に成長を遂げているのだ。
そんな長門のことを邪魔する理由なんてない。
断固として言おう。
ない。

758 ◆RmIe4rjRnw:2012/07/23(月) 15:14:38 ID:fKGottIs0
どこまでも冷静な長門のことだ。どうせハルヒを生き残らせて、世界を改変させようとでもしているんだろう。
ああ、俺も一瞬だがそれを考えたさ。だけどすぐに気付いた。
手を他人の血で染める方法なんざ、無意味にも程があるってことをな。
もし長門の努力の甲斐あってハルヒがこの殺し合いで優勝したとする。
その後に待っているのは、ハルヒが思惑通り世界を変えてのハッピーエンドなんかじゃない、むしろ人間失格も真っ青のバッドエンドだ。
ハルヒは恐らく、いや確実に世界に絶望する。
そして「世界なんて要らない」と思い、思うがままに世界は改変される。
あるいは超巨大な閉鎖空間が出現し、今この世界と入れ替わってしまうかもしれない。
長門一人が殺し合いに乗ろうが乗るまいが差異はないということだ。
結局のところ、殺し合いの根底そのものを引っくり返さなければならないのだ。
「くそっ」
やり場のない怒りが声となって漏れた。
今この場で、主催者の鼻っ柱をつまようじを踵で踏み砕くくらいの勢いでへし折ってやりたかった。


だが落ち着こう。
今必要なのは、戦況に応じて見方を切り捨てることも厭わない軍師のような冷酷なまでの冷静さだ。
先決するべきなのは、天上天地唯我独尊を地で行く女こと、涼宮ハルヒとの合流だ。
放送でSOS団員は誰一人欠けていないことが分かるだろうから、そこまでストレスは蓄積していないと思う。
それでも、他人の死に無感情でいられるほど非道でもないだろう。
となれば、善は急げではないがすぐにでもハルヒを探しに出たい。
逸る気持ちを抑えられず、俺はデイパックを無造作に掴み、ニンフに「行くぞ」と言い放ち、民家を出た。
そして俺が見たのは、道端にうつ伏せになって倒れた少女だった。


少女を俺とニンフの2人がかりで民家に運び込んだ。
俺が寝ていた布団に寝かせるのも不潔だと思ったので、新たに布団を敷いた。
こんな状況でも気遣いのできる男――それが俺だ。
なんてな。ただ気恥ずかしかっただけだ。
少女が目を覚ますまでには、ニンフの淹れたお茶が冷たくなるくらいの時間が必要だった。



■■

759 ◆RmIe4rjRnw:2012/07/23(月) 15:17:17 ID:fKGottIs0


ぼうっと目を開ける。霞んだ視界に天井が映る。

「お……目が覚めたか?」

ふと横を見ると、1人の男の人が私を覗き込んでいました。
制服を着ているので学生さんでしょう。風体は些か年寄りくさいように見えます。

「えーっと、大丈夫ですか?」
「……はい」

上体を起こそうとした私を、学生さんは支えようとしてくれました。
見ず知らずの私に丁寧な対応をしてくれるあたり、悪い人では無いようです。

「んじゃまあ、とりあえず……お名前は?」
「ナポレオン・ボナパルトです」

え?と困惑した顔を浮かべる学生さん。ボケに即答できる余裕はないみたいですね。

「キョン?あの女の人目が覚めたの?」
「ああ、お茶淹れなおしてきてくれ、ニンフ」

どうやらもう1人、女の人がいたようです。名前はニンフ……妊婦?
そして学生さんはキョンと呼ばれていました。……どちらもあだ名でしょうね。

「ええと、それで……ナポレオンさん?」
「遠野です」

え?と再び困惑顔のキョンさん。
そのときニンフさんとやらがお盆に湯呑みを3つ乗せて持ってきました。
妊婦さんには見えませんけどね。

「どうぞ、ええと」
「遠野美凪です。高校2年生です」
「ミナギっていうのね?じゃあそう呼んでもいい?」
「ええ、構いません」

どうやらニンフさんはとても気さくな人らしいです。
あるいは私が気を使わないようにしているのかもしれませんね。
会話をする私たちをよそに、ハテナマークが5つは浮かんでいるキョンさん。
助けてくれたのは事実ですし、これ以上ふざけるのも可哀そうですね。

「キョンさん、でしたか」
「え、ああ、そうです」
「助けて頂いてありがとうございます。このご恩は忘れません。お礼と言ってはなんですが、この拳銃をお渡しします」

そういって、デイパックから出した拳銃を押しつけるように渡しました。
キョンさんは心底ビックリしたようで、口をあんぐり開けています。

「ちょ、これって拳銃じゃないですか!?」
「私の支給品です。ですが非力な私よりもキョンさんが持っていた方が意味があると思ったので渡しました」

キョンさんもニンフさんも、黙りこくっています。
私が急に饒舌になったことを訝しんでいるのでしょう。でも構いません。

「それと、いくら私が倒れていたからといって、すぐさま助けようとするのはあまりに不用心です。危険人物だったらどうするんです?
 せめてデイパックを没収しておくなり、拘束をしておくなりするべきだと思います」

本意ではなかったが、2人の不用心な点を責めたてる。
それは自分と同じ過ちを繰り返さないようにするため。
刻命さんのように、一見普通に見えて実は危険な人物の犠牲者を出さないため。

「私は数時間前に、刻命裕也さんという高校生と行動をしていました。その道中で化物じみた大男に襲われて、逃げてきたのです。
 刻命さんは実は危険な考え方を持つ人でした。もし私がそんな人だったら、と考えましたか?」
「それは……」

黙ってうつむくキョンさん。表情を硬くするニンフさん。
これでもう不用意な行動は慎むでしょうから、責めるのはこれくらいでいいでしょう。
最後に言うことは決まっています。

760 ◆RmIe4rjRnw:2012/07/23(月) 15:18:52 ID:fKGottIs0
「けれど、助けてくれたことには本当に感謝しています。お米券進呈〜はできませんけど、一緒に主催者へ対抗しましょう」

はっとしたように、キョンさんが顔を上げました。ニンフさんも顔を緩ませています。
私が右手を差し出すと、ニンフさんが飛びつくようにして両手でしっかと握りました。
キョンさんもほっとした様子です。
どうやら、私は良い人たちと出会えたようです。
待っていて下さいね、国崎さん、神尾さん。
そして……刻命さん。


「そういえば、妊婦さん」
「違うっ!ニンフです!」



■■



おっとりしているのか、冷静なのか。遠野美凪と名乗った少女は掴みどころがなかった。
3人のコミュニケーションは放課後を控えたHRのようになあなあで終了した。
情報交換を終えても遠野さんのマイペースは変わらず、俺は困惑しっぱなしだ。
もしかして、この人も超常現象的な人なのか?
宇宙人とか未来人とか超能力者の類とか。あり得ない話じゃない――

――いやいや、そんなことより行動をしなければ。
出鼻を挫かれてはしまったが、心強い仲間ができたと思うべきなのだろう。
先程は当てもなく飛び出してしまったが、今度は行き先を決めてから進むとしよう。
となると妥当なのは――

「そういえばキョン、これ何?」

――ニンフの声で、思考がストップされる。
やれやれ、とため息をつきたかったが、ニンフを無視するのも忍びないのでとりあえずそちらを見やる。
ニンフが指差していたものは、俺に衝撃を与えるには充分すぎた。
TVや漫画でしか見たことのないような過去の遺物。
黒光りする魅力的な姿は、しかし只の調度品で納まるものではない。
身に刻まれた零から九までの数字を指定することで、遙か遠い異国の地とも通じ合える、文明の利器だ。
今現在こそ稀有な存在となってしまったが、その姿を知る者も少なくないだろう。


そう、それは“黒電話”だった。


物思いに耽ったり新たな参加者との邂逅をしたりで気付かなかったらしい。
俺とニンフと遠野さんの今居る部屋には、黒電話が鎮座しましていた。

「いまどき珍しいな、こんな年季の入った黒電話なんか」
「そうですね、私も初めて見ました」
「へえ、地蟲――じゃなくて、人間はこんな物を使っているの」

761 ◆RmIe4rjRnw:2012/07/23(月) 15:20:11 ID:fKGottIs0
黒電話を眺めつつ、俺達3人が閑談に時間を費やしていると。


――ジリリリリリン


けたたましい、と表現するのが相応しい音が鳴り響いた。
俺たちが黒電話に気付くのを、獲物に狙いを定めた猛獣のように待っていたとしか思えない程のタイミング。
渡りに船ともいえたが、手を伸ばそうかどうか迷った。
電話と言えば連絡を取るものだ。もしかしたらハルヒと連絡が取れるかもしれない。
だが、もしこれが罠だったとしたら?
例えば……。


――ジリリリリリン


……くそっ、ベルがやかましくって集中できない。
とはいえ女子2人は後ろで鳩が豆鉄砲を喰らったように呆然と黙っているだけだ。
電話のベルのせいかどうか知らんが、頭が痛くなってきやがった。
ハルヒを探しに行きたいし、ハルヒからの電話かも知れない。
いや、そんなまどろっこしいことは考えなくてもいいだろう。

電話を取るか、取らないかという簡単なことだ。
どちらかさっさと決めねばなるまい。


さて、どうしたものか。



【D-6 民家/朝】

【キョン@涼宮ハルヒの憂鬱】
【装備:22口径ゴム弾拳銃(6/6)@とある魔術の禁書目録、ゴム拳銃の弾丸(36/36)】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×1】
【状態:疲労(小)、左腕に刺し傷(処置済み)】
【思考・行動】
0:電話を取る?取らない?
1:ニンフと美凪さんと行動。絶対に殺し合いはしない。
2:SOS団、特にハルヒと合流。
3:姫萩さんが生きている!?
4:長門を見つけたら殺人を止めさせる。
【備考】
※涼宮ハルヒの消失終了後からの参戦です。
※ニンフの気持ちに全く気付いていません。
※ニンフ、遠野美凪の知り合いの名前を記憶しました。


【ニンフ@そらのおとしもの】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、救急箱(中身4割使用)@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-、木彫りのヒトデ10/10@CLANNAD
ゲームセンターのメダルの束50/50@とある魔術の禁書目録、ランダム支給品×3】
【状態:疲労(小)、傷(処置済み)】
【思考・行動】
0:どうするの?
1:キョンとミナギと行動。絶対に殺し合いはしない。
2:咲実が生きてる!?
【備考】
※カオス戦(1回目)からの参戦です。
※キョンに対して色々な気持ちが生まれ始めています。より強くなりました。


【遠野美凪@AIR】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、たくさんの犠牲者の名札@コープスパーティー】
【状態:健康、膝に怪我(処置済み)】
【思考・行動】
0:どうしましょうか。
1:ミイラさんの行為を無駄にしない為、生き抜く。
2:キョンさんやニンフさんと一緒に仲間を探して主催者へ対抗する。
3:刻命さんを改心させたい。
※美凪ルート確定寸前からの参戦。
※キョン、ニンフの知り合いの名前を記憶しました。



※マフィン@リトルバスターズ!は全て消費されました。

※D-6の民家で電話が鳴り響いています。
 誰からのどんな電話か、キョン達が電話を取るかどうかは後の書き手にお任せします。

762 ◆RmIe4rjRnw:2012/07/23(月) 15:22:40 ID:fKGottIs0
毎度毎度遅くなって申し訳ありません
ともあれ投下終了です

いつの間にか悪霊が発生してたりwktkな予約が入ったりしていて驚きです
もっと面白くなっていけばいいと思います

763 ◆RmIe4rjRnw:2012/07/23(月) 15:32:53 ID:fKGottIs0
タイトル付け忘れていました
「That is the question」でお願いします

ついでに予約を入れます
岸沼良樹、水瀬名雪、ユーフェミア・リ・ブリタニア、井ノ原真人、アストレア、中嶋直美

764 ◆jZCpcbFowc:2012/07/23(月) 17:10:27 ID:hPH0xf3U0
投下乙です!
キョンは格好いいなあ、美凪もどうにか対主催に拾われたか

申し訳ないのですが、自分の予約を破棄します

765この大地の果てで ◆WzpMn05TJA:2012/07/25(水) 13:47:32 ID:AgHcBWyYO
あうれおるすからかみじょーに謝らせるんだ。
本当は、私の親友のバカの謙吾からも頭を下げさせたいがそれはあいつが罪の意識を持ってから殺し合いに乗った事を後悔させたうえで謝らせるんだ。

それまで私は生きる。
弱い私だけど理樹のぶんも生きなきゃいけないから。

「鈴、そろそろ覚悟を決めた方が良い」

あうれおるすが辛そうに言う。
はて?なんの事だ?
あうれおるすの話は難しくて理解するのに時間がかかる。
これで本当に18歳なのか?

「時間なんだ」
「時間……?」

私は忘れていた。
本当に時間が過ぎていっている事。
このバトルロワイアルが始まってからはショックの連続だったのだから。

『ご機嫌いかがですか皆さん?』

定時放送。
あうれおるすはペンをと名簿を取り出し必死に死んだ者に印を付ける準備をしている。
私はただ呆然と聞いていた。
いや、多分聞き流していたんだと思う。

目を逸らしたかったんだと思う。

『直江理樹』

「っ!?」

そして逃避していたと気付かされる。
嫌だ。
これ以上私からリトルバスターズの仲間を奪わないで。

確かに恭介は毎日毎日人に迷惑かけるし
真人は馬鹿で煩いし
謙吾も真面目な振りして馬鹿で頭のネジ飛んでるし
来ヶ谷は私をオモチャにしてくる。

でも、私はそんなみんなが好きなんだ!
好きなんだ、大好きなんだ。

『この結果にあなたは満足出来ますか?』

放送は終わる。
理樹以外のリトルバスターズはみんな生存していた。
そういえばあいつらみんな私や理樹より強い奴だったな。
それでも私は心配なんだ。



―――――



「…………」

14名、上条当麻以外は私の知り合いは居ない。
守りたかったあのシスターの少女も居ない。
今は守る対象は鈴に当てはまる。
この少女は私を成長させているのかもしれない。
歪んだ心を癒やしているのかもしれない。
彼女を見ていると生きたい気持ちがとても湧き上がる。

必然、とは言えないのだが。
不思議な感じだ。

今も彼女は強くなり続けている、1秒毎1秒毎と言っても過言ではないだろう。



そして私は気付く。





「鈴っっっ!?」
「な、なんだっ!?」

鈴の返事も聞こえていない。
無我夢中で私は鈴に駆け寄った。





◇◇◇◇◇

766この大地の果てで ◆WzpMn05TJA:2012/07/25(水) 13:48:25 ID:AgHcBWyYO





(サーヴァントのライダーが脱落か。サーヴァントがサーヴァントを倒したのならともかく一般人でサーヴァントを倒す者など居るのか?)

サーヴァントのアーチャークラスのエミヤもまた放送を耳にしていた。
先程武器を使って殺した少女の名前は知るはずもなく知る気もない。

アーチャーの目的は1つ。
自分を自らの手で殺す。

迷いも躊躇いもない正義の味方の果て。

(守るはずだったものを俺は壊す側か。ふん、考えるのも馬鹿らしい)

少し良心が疼くが一瞬。
今の彼は竜宮レナに弓を引いたあの目に戻る。
既に閉ざされた道に戻れるはずもないのだから。

(ふん、参加者か)

首輪をした男女が居た。

男は長身のオールバック。
衛宮士郎ではない。目的はここにはない。
女は身長が低い茶髪気味のポニーテールだ。

(見かける女は茶髪が多いな)

アーチャーはどうでも良い事を考える事をやめる。
目の前の2人は敵だ。

■せ、■せっ、■せ、■せ!
ころせ、ころせっ!コロセコロせコろせ
殺せっ、殺せ殺せ殺せ、殺せっ!殺せ!殺せ、殺せ!
殺せ!
殺せ、殺せ、殺せ殺せっ!
殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ!

アーチャーの体全体が殺意に包まれる。
敵を排除する為。
自らが剣となり、敵を裁く。

「恨みはないが――」

熟練スパナを投げつけて1人殺す。
上手くいかなくても怪我をして怯んだところをまた熟練スパナを拾って殺す。
熟練スパナを拾えなかったら剣を投影してしまえば良い。

こんなものはアーチャーにとって簡単な事だ。
1人で大勢を救う為に血塗られた自分に残されたのは戦闘の経験のみなのだから。

「――消えろっ!」

予定通り、計算と同じ動き、同じ筋肉の動き。
熟練スパナはアーチャーの戦士から離れ数メートル回転しながら名も知らぬ少女――棗鈴の脳みそを抉る様に吸い込まれていく。
あまりの吸い込まれていくキレイな動きは磁石で吸い付けられていくみたいに……。
これはドラマではない。
これは現実である。

つまりこの熟練スパナが頭に命中した瞬間人は簡単に死ぬのだ。

ただの無機質な死体へと成り果てる。

(今まで俺が見てきた光景となんら変わらない)

鮮血に染まるだけだ。





◇◇◇◇◇

767この大地の果てで ◆WzpMn05TJA:2012/07/25(水) 13:49:28 ID:AgHcBWyYO





「鈴っっっ!?」
「な、なんだっ!?」

アウレオルスはアーチャーの殺気、襲撃をいち早く気が付いた。
明らかに手慣れた強者の気。
それが戦闘経験のあるアウレオルスが気付く要因になっていた。

アウレオルスは鈴に駆けより2人同時に地面を転がる。
彼はともかく無防備かつか弱い少女は怪我をするかもしれないが、そこのスパナでグサリとやられるよりは100倍マシだろう。

ズサッ。

地面にはスパナが生えている様な光景が広がる。
しかもちょっとやそっとの力では抜けそうにない。
まるでセイバークラスのアーサーペンドラゴンの選定の剣を傍観させる。
断片的にだがセイバーの過去を知るアーチャーは懐かしさを思い出した。

(今のお前なら俺に何を言うんだろうな)

この地にセイバーが召喚されたらしいが、彼女という保証はどこにもない。
だが彼女なら間違いなく自分を非難するだろう。
関係ない人を巻き込むなと。

だがアーチャーは知らない。
その彼女は現在この世全ての悪に取り込まれ自らの手で2人の一般人を殺してしまっている事など。

「ちっ、外したか」

作戦は早速崩れた。
このまま逃げてしまっても構わない。
が、後々自分と衛宮士郎との決闘を邪魔される危険も無きに在らず。
それに……だ。

「粛然、何者だ貴様」

女と一緒に地面に倒れ込んだアウレオルスが顔を上げる。
そこには英雄といっても信じられるくらいの戦士が立っている。
明らかな人間を逸脱した様な存在。
アウレオルスには1人の狂戦士が想い浮かぶ。

自分の錬金術で編み出した武器を自らの手に触れた瞬間に所有権があちらに移ってしまう破綻した能力を持つ、バーサーカー。

見た目など似ていないが本能でアウレオルスは悟る。
あの騎士と同じ存在であると。

しかも、自らが扱う魔術が関わったとんでもない何かだ。

「見られてしまったな」

もはや引き返せない。
顔、姿を見られた以上始末するしか手段がない。
本格的に自分が戦場で決闘する最初のバトルに勃発した。

「ならば青年、この俺『アーチャー』がお前を全力で殺す。そこに転がった女共々な」
「誰が転がってるかー!」

シャーと鈴に怒りの表情が浮かんでいた。

「オイ、あうれおるす」

アウレオルスに対して。

「必然……、って私か!?」
「お前それ口癖なのか?必然とかなんたらって最初に『然』の付く言葉が?変な奴だな」
「いや、鈴その話はまずこの場をどうにかしてからだ」

アーチャーは蚊帳の外に居た。
あまりに呑気な態度とこれから戦闘が始まるのにこの緊張感のなさ。
殺意が加速させていく。

「大体お前」
「…………」
「お前だお前、無視するな」
「私か……?」

768この大地の果てで ◆WzpMn05TJA:2012/07/25(水) 13:50:28 ID:AgHcBWyYO
というか馴れ馴れ過ぎであった。
男はこちらを睨む様な表情、あちらも殺意やそれに近い視線だが、女はよくわからない表情だ。
そんなところや怖じ気づかない感じはマスターの遠坂凛に似たところがあるし、名前も同じく『リン』という名前らしい。


「ふざけた事言うところしてやるぞ」
「…………」

鈴が戦いの構えるポーズをしてアーチャーに対峙する。
しかしアーチャーにとっては無言になってしまうくらい彼女と自分の力量が離れているという表現すら疑わしいほど圧倒的に自分の方が圧勝している。
離れているどころが次元が違う。

「わ、私だって伊達に真人や謙吾と喧嘩なんかしてい、いないんだからな」

怯え。
意識していないのに鈴の体は震えが始まっていた。
人間としての危険予知。
逃げなくてはいけない本能が今更になって鈴に襲う。

(鈴の言う真人とはわからんが、宮沢謙吾は確かに強いかもしれないが人間としてだ。こんな化け物は比較にならない)

アウレオルスは鈴の一歩前へ出る。
自分は戦闘向けではないがそれでも錬金術師。
背を向けて逃げられない。

「当然、アーチャーとやら。鈴は君には勝てないだろう」
「だからとて君が戦うとでも?2人だから勝てるとでも思ったか」
「いや、……私だけで戦う」
「あうれおるすっ!?」

鈴の大声がアウレオルスのすぐ後ろから響き渡る。
あまりの大きさにすぐ前のアウレオルス、少し離れたアーチャーでさえ耳を塞ぐほどに。
だが、その大声の高さこそ鈴の『想い』であった。

1人が辛いから2つの手を繋ぐ。
これが鈴の兄のリトルバスターズの答えだ。
それが2人でも辛いのに1人でアウレオルスは抱えようとするのだ。

(なぁ、恭介……バカ兄貴、お前テレパシーとか使えないのか?それでアドバイスをくれないか?)

なんて普段は考えない事だ。
基本的に鈴はアドバイスをもらうなら理樹に頼む。
だが頼むべき相手はもう……。
考えるべきではなかった。

今は目の前の状況をどうにかしてからだ。

「鈴、わかってくれ。言いたくはないが足手まといなんだ」
「そうかもしれないけどそれはリトルバスターズの戦いじゃない」
「私はリトルバスターズじゃない」
「私と行動した時点でお前はリトルバスターズだ」
「入ってない」

あーだ、こーだ。
アーチャーと出会う前はあんなに協力し合っていたのに出会った途端から2人は言い争いばっかりになっている。
度々アーチャーの放置プレイである。

769この大地の果てで ◆WzpMn05TJA:2012/07/25(水) 13:51:40 ID:AgHcBWyYO
「お前らふざけているだろう」

熟練スパナを持つ手が怒りで手が震えていた。
その場面を見た鈴はようやく違和感がある事に気付いた。



―――――



なんだか変だと思っていたんだ。
なんだかおかしいと思っていたんだ。
どうして、って思っていたんだ。

恭介なら最初の最初で気付いていたかもしれないけど。


「お前、どうして私とあうれおるすの口喧嘩が終わるのを律儀に待っているんだ?」


確かにあいつ、名前はあーちゃん?
あーちゃん、あーちゃん?
寮長の顔しか思い出せないぞ。

とりあえずあーちゃん(仮)は怖かった。
怖かった奴を目の前で口喧嘩なんか出来るか?

私なら多分もう逃げるかあうれおるすの後ろに隠れていたかもしれない。

「おい、あーちゃん(仮)!」
「あーちゃん(仮)ではない、アーチャーだ」

あーちゃー?
なんか名前じゃないなそれ。
あーちゃんの方がめっちゃ可愛いのに。
新しいモンペチの話出来るのに。

「お前本当は良い奴だろう?
お前迷っているんじゃないか?
人を殺してまわるのに」
「ち、違う!」

焦り、なのか?
否定、なのか?
わからんが何かあーちゃーの心が乱れた気がした。
恭介の好きなゲーム風で言うなら隙だな。




「お前怖いけどおっかなくない。バカ兄貴みたいに『正義の味方』とか言っちゃうだろ」



―――――



正義の味方……?
正義、正義、正義?

『正義の味方になりたかったんだ』

これは誰の言葉だったか。
さっき会った、あぁ俺の尊敬する爺さんの言葉だ。


そして俺は正義の味方になった。
英雄……そしてサーヴァントとして過去に呼ばれた。

いつから俺は正義の味方になった事を後悔し始めたんだろうか。



――もう忘れてしまったよ。



「俺は……正義の味方なんかじゃない……」





◇◇◇◇◇

770この大地の果てで ◆WzpMn05TJA:2012/07/25(水) 13:52:47 ID:AgHcBWyYO





「オイ鈴」
「だな」

鈴はアウレオルスの言わんとした事がわかった。
口には出せないが同じ事を考えていた。

(俄然、地雷を踏んでしまったみたいだね)
(だな)

アーチャーの様子が変になった。
それは誰の目から見ても明らかな事であった。
狼狽え、決意、そして……。

「殺すっ!」

殺意。
口を出した瞬間には熟練スパナを振り上げていた。

「っ!?」

アウレオルスに向いた刃は一瞬反応が遅れたがなんとか避けられていた。
鈴ならおそらく運が無ければ命中していただろう。

「あーちゃん!」
「だから違うと言っている」

鈴に向き合う。
目標をアウレオルスから鈴に変えたか。
それともアウレオルスと鈴を同時に相手をするのか。

最低でも2人にとっては命の危険がある。
先程のバーサーカーと現在のアーチャーとの戦闘とは長所と短所がある。
バーサーカーの長所とアーチャーの短所。
それは圧倒的な強さだろう。
バーサーカーは戦闘能力だけならばサーヴァント中最強を誇る。
しかも言語が話せなく、会話が出来ないバーサーカーほどバーサーカークラスとしての能力が高い。
当然あのバーサーカーはランクも高い、真名ランスロットの英雄も高い能力だ。

アーチャーの長所、バーサーカーの短所。
それは敵に対しての執着心だろう。
バーサーカーもとある人物に対しては大きな執着心がある。
が、それ以外の敵にはほとんど暴れる様な戦闘しか行わない。
現にバーサーカーは鈴とアウレオルス以外にも涼宮ハルヒと黒崎一護とも戦闘を行ったが簡単に逃げられた始末だ。
が、アーチャーは違う。
敵を弓で狙い竜宮レナを、実際には庇った園崎魅音を一撃で仕留めた。
最低限の力でアーチャーは敵を殺せるのだ。
理性のあるアーチャーならば敵など簡単に逃がすはずもない。



「待て、君の相手は私がする……。鈴には手を出すな」
「……虫唾が走る」

昔の衛宮士郎ならば同じ事を言うだろう。
女の子には戦わせない。
そんな事を言ってセイバーに戦わせる事すら賛成しなかった自分だ。

その光景と今の光景が重なる。

(何故こんなにこいつらは俺を揺らぎさせる……?)

衛宮切継、棗鈴。
アーチャーの心がゲーム開始時から変化してきているがそれにはまだ気付かない。

「わかった、ならば彼女を逃がせ」

棗鈴が居なくなれば揺れなくなる。
彼女には早く消えて欲しかった。

「さぁ、鈴はここから早く逃げろ!君は足が速いんだから遠くへ、見えなくなるまで消えるんだ」
「だからっ、」
「私はリトルバスターズじゃない」

「ぐっ」と鈴が口を濁す。
そこでアウレオルスが続けた。

「私は守るべき者も帰りを待つ者も居ない」

インデックスの顔が思い出され消えた。

771この大地の果てで ◆WzpMn05TJA:2012/07/25(水) 13:53:40 ID:AgHcBWyYO
「なに、私は死ぬつもりはない。鈴また会おう」
「お前…………死亡フラグ建てんなバカ!」

鈴が思いっきりアウレオルスに蹴り上げた。

「ははは、指摘されたから死亡フラグなんて吹き飛んだよ。それにそんな元気なら大丈夫だ」
「そういう発言が死亡フラグなんだ」

逆に鈴は逃げなくなってしまった。

「では鈴に1つお願いしよう」



―――――



「では鈴に1つお願いしよう」

私は鈴に対して離れさせれば良い事に気付いた。
騙す事になるかもしれないが。
それでも鈴をここで死なせるわけにはいかない。
年齢はさほど変わらないが、自分は今まで悪い事をしてきたし、死と隣合わせの生活であった。

だからここで■んでしまっても。



「君は助けを呼んでくれないか?もちろん殺し合いに乗っていない者をチョイスするんだ」
「助けを……呼ぶ?」

鈴の体がピクリと動く。
おそらくその考えがなかったのだろう。

「1人は辛いから2つの手を繋いだ
2人は寂しいから輪になって手を繋いだ
それがリトルバスターズだ!」

だから私はリトルバスターズではない。

「わかったあうれおるす、そのミッション必ず成功してみせる」

鈴は簡単に私から離れた。
単純過ぎて将来が心配だが、その単純さが幸いした。

「絶対、絶対、ぜーったい死ぬなよあうれおるす!」

鈴が足を早く進め――走り出した。

「ミッションスタートだ!」





◇◇◇◇◇





「すまないね、待たせてばっかりで」
「別に待ってはいないさ」

鈴さえ離れてくれればアーチャー的にはそれで良かった。
これで全力で戦える。

「とにかく私は全力で君を倒そう。本当は死ぬ気だったがまだ生きなくてはまた鈴に蹴られそうだ」
「どうにもならない差を見せてやろう」

熟練スパナを構えてアーチャーは微笑む。
だが、アーチャーはまだアウレオルスの切り札を見せていない。

「――そのスパナよ、砕けろ」
「なんだお前は?ついに頭でもおかしくっ!?」

そこでアーチャーの右手から熟練スパナが砕け散ってしまい握っていた手はグーからパーに変わる形に変わっていた。

「なん、だと……?」
  アルス=マギナ
「『黄金練金』、私をただの一般人と思ったな」

アウレオルス=イザード。
元ローマ清教所属の錬金術師。
魔法名Honos628。
我が名誉は世界のために。

772この大地の果てで ◆WzpMn05TJA:2012/07/25(水) 13:54:39 ID:AgHcBWyYO
「10の暗器銃を両手に連続回転射出!」

口に出して右手に5本、左手に5本の計10本の暗器銃が出現する。
そしてアーチャーの体を切り刻み、血を奪おうと10本の剣が襲う。
不規則な回転。
それがまた避けられない事に拍車をかけている。

丸腰。
アーチャーがエミヤでなければサーヴァントとて大ダメージが与えられただろう。
しかしバーサーカーといいアーチャーといいアウレオルスは運が悪かった。





「武器を投影出来るのがお前だけだと思ったか?」

アーチャーの腕に握られているのは白と黒。
干将・莫耶。
アーチャーと衛宮士郎の愛用の剣。
その2つの短剣で襲いかかる10の剣をはたき落とされた。
アーチャー、弓と剣を操る戦士である。

「なんだと」

黄金練金。
普段なら無意識にでも発動出来るのだが制限がかかっていた。
5回使用後に30分のインターバルの発生していた。
先程宮沢謙吾の襲撃の際。
銃を避けさせる為に鈴を伏せさせた。
謙吾の動きを止める為に謙吾を倒れ伏せた。
そして今。
アーチャーの武器熟練スパナを砕いた。
暗器銃を造りだして射出した。
残り1回。

残り1回の黄金練金でどうにかアーチャーを倒さなくてはならない。
それは可能か。



「無理かな、鈴」





◇◇◇◇◇





「……………………」
「……………………」
「…………クフフ、沢田綱吉が逝きましたか」
「ムクロ殿」

放送が終わってからの暫くの無言から六道骸の第一声であった。
真アサシンはその骸に遠慮して声をかけるのを遠慮してしまっていた。

「ハサン、現在僕はどんな顔をしていますか?」

骸には感情がわからなかった。

邪魔な沢田綱吉の死。
彼に負けたせいで自分は復讐者に捕まってしまったのだ。
喜べないわけがない。

だが沢田綱吉が死んだら自分の野望、沢田綱吉の体を乗っ取る事は出来ない。
それに奇跡の様な沢田綱吉の成長をもう見る事はないのだ。

もう、伝説となったボンゴレⅩ世。
ボンゴレはどうなるか、そんなもの霧の守護者の自分であるが興味はない。

(僕はどこかで期待をしていたみたいです。沢田綱吉が死ぬ気になってシャルル・ジ・ブリタニアを倒してゲーム自体を壊してしまい英雄となる事を……)

「ムクロ殿は、」

骸は気付く。
真アサシンが自らの問いに答えようとしている事を。
表情のわからない、いや表情のない仮面が骸を観察する様に。

773この大地の果てで ◆WzpMn05TJA:2012/07/25(水) 13:56:08 ID:AgHcBWyYO
「わからない表情をしている」
「わからない……ですか」
「実際わからないのであろうムクロ殿」

真アサシンの言っていた事が的を射ていて納得する。

どうやら自分は沢田綱吉が嫌いではなかったらしい。

「さて、協力してくれる相手探しは振り出しからみたいです」

骸の知り合いは残り2人。
雲雀恭也と古里炎真。
雲雀恭也は強い実力があるが一匹狼で我が道を歩む者。
しかも自分は彼に狙われる側。
協力は難しいだろう。

古里炎真は沢田綱吉に似たダメダメなシモンファミリーリーダーだ。
いくら沢田綱吉と和解したからといって信じられるかと言われたら難しい。

つまり骸の仲間探しは真アサシン同様名簿に淡々とだけ並べられた参加者から選ばなければならない。

「ハサン、少し整理しましょう」
「うむ」

骸は現在出会ったのは2人。
真アサシンと衛宮切継。
だが衛宮切継はゲームに乗った参加者、協力は不可能。

真アサシンが現在出会ったのは3人。
六道骸、ライダー、北川潤。
だがライダーは殺した相手で北川潤も襲った相手。これも協力なんか無理だろう。
しかもサーヴァントはセイバー、ランサー、アーチャー、バーサーカー、キャスター、ライダー、アサシン全員が敵同士。
骸と争った衛宮切継の息子、衛宮士郎も真アサシンと敵対関係だ。

仲間候補は0に対し、敵対候補はうじゃうじゃ居る。
正直最悪な状況に近い。

「お互い悪さはあまり出来ませんな」
「クフフ、これは仕方ありませんよ」

しかしこのゲームを終わらせる事を考える者、殺し合いに乗らない者は半分以上は居るだろう。
その者達に協力を持ちかけるとおそらくは仲間になれるだろう。

それにはやはり参加者との邂逅しなくてはならない。

「しかしこの島は広い。100人が閉じ込められるのだから当然ですが……」
「うむ、こんなに地図は小さいのだがな」

移動手段は徒歩しかない。
島1周でどのくらいかかるか。
こればかりはわからないし、歩く体力に襲われた際逃げる体力に戦う体力。
体力がどれだけ必要か図り知れない。

「しかし願いを叶えるですか」
「それが聖杯ですぞ」

殺し合いで優勝した者の特権。
死者を蘇らせる事なども可能なのかもしれない。
これがあるから参加者への信頼が取り辛いネックになる。
現に真アサシンはそれでライダーを殺しているし、サーヴァントは皆殺しするつもりなのだから。
骸はその時は真アサシンに協力するつもりではある。

「ではまずは歩いてみましょう、いつまでも悩んでいたら重要な事を逃してしまうかもしれません」
「わかった」

774この大地の果てで ◆WzpMn05TJA:2012/07/25(水) 13:57:12 ID:AgHcBWyYO
骸、真アサシンは立ち上がる。
暗闇だった空は明るくなり始め光が見えてきた。
この光が希望の光になれば良い。
骸は目にこの光を収めた。



―――――



しかしどんな奴があの沢田綱吉を殺したのでしょうか?
興味がありますね。

ダメツナと呼ばれる普通の状態の彼だったら誰でも殺せるでしょう。
年下であっても小学生でさえ容易いでしょう。
頭も悪ければ運動神経もない、運もない。
にも関わらず優しいし、お人好し過ぎる。
そんな少年だからボンゴレⅨ世は彼を気に入ったのでしょう。

だが彼の本気、死ぬ気モードであった沢田綱吉が負けたとしたらそれは大変な事態である。
アルコバレーノであるリボーンの弟子、ボンゴレの血、無限の成長力。
そんな彼を倒せる強大な敵が居るとしたら。

「サーヴァント、ですかね」

真アサシン、真名ハサン・サーバッハをちらりと見る。
僕の呟きには気付かずに護衛をする様に前を歩いている。

「とにかく僕も用心深く行きましょう」

クロームの体ではなく僕本体の体であるのに関わらずに幻覚を使うだけで疲労感がいつもより酷いのだから。

「でもそんな強い相手ですか」

僕は雲雀恭也ではありませんが……。

「是非手合わせ願いたいものですね、クフフ」

でも、死ぬのは嫌ですかね。
あくまで僕はあの世界に帰らなくてはいけない。

僕のマフィア風情への復讐が果たされていないのだから。



―――――



ムクロ殿は考えておられる。
私にはよくわからない。

しかしサーヴァントでの脱落は私が殺したライダーのみ。
やはり一筋縄ではいかないか。

私ではない謎のアサシンを含めサーヴァントを殲滅しなければ聖杯は得られない。
ムクロ殿は知能も高く、戦闘力も高い。
彼に着いて行く事は私にとってもプラスであろう。
正規なマスターではないが、彼をマスターと認めても良いぐらいだ。

「必ず、成し遂げる」

呪いの右手ではなく、左手で拳をつくる。
必ず聖杯を我が手中に収める為に。





◇◇◇◇◇

775この大地の果てで ◆WzpMn05TJA:2012/07/25(水) 13:58:20 ID:AgHcBWyYO





無言の探索であった。
別に仲が悪いわけではない。
だが考え事をしている最中であるし、静かな方が異常事態――参加者の接近にいち早く対処出来るだろう。

幸い骸も真アサシンも戦闘に関して高い技術に高いスキル持ちだ。
それが2人で固まってあるのだ、並大抵の不良なんか相手にすらならない。
だが問題は強大な敵がこの島にうじゃうじゃではないがそれなりの参加者が居る事だ。

そんな探索が始まって1時間から1時間半くらい経過したあとからだっただろうか。



『ふにゃああああああああ!』



猫の様な声のする少女らしき悲鳴か雄叫びか泣き声か。
状況が2人にとっても良くわからない展開に真アサシンは後ろを振り返り骸と顔を合わせたのであった。

「ムクロ殿」
「うむ、当然僕にも聞こえました」

ここから数十メートルぐらいの近さではないかと骸はわからない状況をわかる範囲で頭を巡らせた。
ではこれは何か。
根本的な事はまだ予想すら立てられていない。

「私が近寄ってみよう」

真アサシンは気配遮断を使って素早く近付こうとする。

「いや、ここは念には念を入れましょう。
参加者を集めさせ一気に殺そうと企む罠かもしれない」
「ムクロ殿がそう言うならば」

真アサシンは気配遮断を使用しつつにゆっくりと音源に近付く。
骸は当然気配遮断スキルなどあるはずもなく、真アサシンの進んだ先をなるべく音を立てずにコソコソ歩み寄る。
あれからは音は聞こえなかった為、現在は勘に頼った行動である。

(念には念を、なんて言いましたがあの声の主からは悪意は感じませんでしたね)

音の正体も声とは決まっていない。
しかし骸は誰かの声と確信していた。
もしかしたらこれが超直感というのかもしれない。

「むっ!?ムクロ殿小娘がおらまするぞ」

先に見つけたのは真アサシンであった。
骸はその方向へ向かった。

「というかハサン、僕に報告する前にその小娘とコンタクトを取りなさい」
「そうであったな」

そう言って真アサシンは地面に倒れ込んだ少女に駆け寄り声をかけた。

「小娘殿、一体何がありましたのかな」
「小娘殿ですか」

骸が真アサシンの横に来ていた。
そこで見た少女は骸にとって同じか少し上といった印象。
とても長い茶髪をポニーテールに鈴が付いてある元気そうな少女。
彼女が地面に倒れていたのであった。

「返事がない、……私がやってしまったのでしょうか?」
「まずは生死を確かめなさい」

776この大地の果てで ◆WzpMn05TJA:2012/07/25(水) 13:59:44 ID:AgHcBWyYO

骸は地面に座り込み少女の脈、呼吸を確認する。
力強そうな脈、弱々しい呼吸。

(気絶?寝ているのでしょうか?)

直前に悲鳴を上げたのはさっき。
このまま起こして良いのかどうか。

「大丈夫なのですか」

このまま寝ていて足手まといになるよりは可哀想だがこんなバトルロワイアル。
遠慮せずに殺されるよりはマシだろう。

「ぅう……りきぃー」
「りき?……直江理樹でしたか」

確かさっき放送で名前が呼ばれた名前だ。
この子の知り合いや親友であったならそれは残念であっただろう。

「お前理樹を知っているのかっ!?」
「……おぉ、驚かせるでない」
「ってうわ骸骨!?お前の顔に驚かされたわ!」

起きた早々に彼女、棗鈴の元気の声が響き渡る――いやこれは絶叫か?

「お前めっちゃ怖いな。仮面外したらどうだ?」
「この仮面を外すと顔がない故にな」
「顔無し!?」

中身のない話を見かねた骸が口を開いた。

「そろそろ自己紹介に入りましょう」
「うわっ、パイナップル!?」
「…………クフフ、クフフフフフフ」
「ムクロ殿、落ち着いて」
「パイナップルが壊れた!?」



―――――



「僕の名前は六道骸、彼は真アサシンです。僕は呼びやすいハサンと呼んでいます」
(真アサシンが呼びやすいから『はさん』?よくわからん……)

あえて鈴は突っ込まなかった。

「私は棗鈴だ。リトルバスターズと言えば伝わるな」
「伝わりません」

リトルバスターズ。
骸は事情によりマフィア界に詳しい。
ボンゴレファミリー、シモンファミリー、トマゾファミリー、ギーグファミリーなどなど。
リトルバスターズなんてファミリーはないし異名も聞いた事ない。
おそらくサッカーや野球のチームの名前だろう。

「この参加者の棗恭介とありますがこれは棗鈴の兄とかですか?」
「よくわかったな。お前エスパーだったのか」
「…………」

段々と疲れてきた――棗鈴と会話にため息が漏れる。
ため息をすると幸せが逃げると言われているがため息は幸せでない時にしか出るものではない。
ため息をして幸せが逃げる、幸せが逃げてため息が出る。
つまり無限ループにしかならなくなる。

「ここに来るまでリン殿は何をしていたのであるか?」
「うむ、あうれおるすと行動してたんだ」
「そのアウレオルス殿はどうしたのであるか?」
「あうれおるすはだなー……あ」

気絶していた影響で鈴はアウレオルスがアーチャーと戦っていて自分が誰かを助けに呼びに来ていた事を忘れていたのであった。
鈴の顔が青くなる。
アウレオルスはまだ生きているのか。

「お願いだ、むくろにはさん。あうれおるすを、あうれおるすを助けてくれ」

777この大地の果てで ◆WzpMn05TJA:2012/07/25(水) 14:00:51 ID:AgHcBWyYO
涙。
忘れていた自分、役立たずな自分、助けると見栄張って助けられた自分。
悔しさが鈴に襲い、小さすぎる自分の体ではとても耐えられなかった。
少女はとても弱くて、とても優しかった。





◇◇◇◇◇





なんでそんなにみんなして殺し合うんだ。

そんなに他人が嫌いなのか。

仲良くすれば良いじゃないか。

なぁ、バカ兄貴?
お前はリトルバスターズのリーダーとしてどっちの行動をしている?
謙吾みたいにリトルバスターズの為に人を殺しているのか?
私みたいに昔みたいにリトルバスターズとして正義の味方として人を守っているのか?

お前いつもわけわからんところから出るのにさ。
窓からとかひょこり出るじゃないか。
毎日引いていたが、今日ばかりはそんなバカが見たいじゃないか!

そこの建物の中から
『おや?鈴じゃないか、何泣きそうになってんだ?理樹が居ないのは寂しいが必ず俺が脱出させてやるからな。まずは作戦からだ』
とか言って緊張感も何もない再会、街で出会った風に姿を現れてくれ。
私いつも邪険にしてるが別にお前が嫌いじゃないんだ。

恭介に聞こえていないから言うが好き――ではないな。
頼りにはしてるけどな。

「本当に100人も島に居るのか!?数え間違いで30人くらいしか居ないだろ!」

助けを求めているがあうれおるすから離れ過ぎたら助けが見つかっても間に合わない。
当てなんかもない。

謙吾は、難しいな。
まず別れてから結構時間が過ぎちゃっているし、頼れないな。

真人は殺し合いしてるのか?
あいつバカだからそんなわけないか。
殺し合いしていても勝手に自滅しそうだ。
バカだからな。

くるがやはどうなんだろうか?
可愛い女の子相手にはぁはぁ萌えているんだろうか。
あいつはまったく行動がわからん。

「オーイ、お菓子あるぞー。めちゃくちゃうまいぞ。それはもうくちゃくちゃだ」

嘘だ。
嘘はよくない、みんなに嫌われる。
でもお菓子好きな奴が近くにいるかもしれない。
こまりちゃんみたいな奴だな。

778この大地の果てで ◆WzpMn05TJA:2012/07/25(水) 14:02:20 ID:AgHcBWyYO
「…………」

シーーーン、だ。
何も擬音なんか発せられないがシーーーンだ。
シーーーン。
シーーーン。
シーーーン。
シーーーン。
シーーーン。

セミの鳴き声みたいでうざいな。
なんか腹立ってくる。
でもシーーーンだ。

「いざとなったら私1人であうれおるすのところに行くからな」

でもあうれおるす生きてるかな?
ケータイも無いから返事聞けないかー。
ケータイに出なかったらバトルしてるか死んでいるか。
不安材料でしかないな。

「歩いていたら時間がかかる」

よし、走って助けを探そう。
いきなり走ると体に悪いから準備体操からだ。

「いち、にっ。いち、にっ。いち、にっ」

軽く屈伸をする。
体があったまる程時間もないからすぐに準備体操を終わらせる。

「よーーーい、スターーーーート!」

猫の如く私は走る。

腕をかき、風を切れ。
前を向き、涙が滲むほどにまっすぐ。
この空を駆け抜けろ。



必ず私はあうれおるすを助けだすんだ!
ぜーったいだ!
無理ならたいむすりっぷするからな!
たいむすりっぷが無理ならもう諦めない!

何言ってんだか私もわからん。
でも本気なんだぁっっ!








「あ、」

やばい体が浮いてしまった。
なんかに躓いたか靴ひもを踏んだか。
地面が近い。

なんだ私死ぬのか……。
棗鈴死亡ってなるのか?



『ふにゃああああああああ!』



目の前が見えない。
我ながら情けない死に方だ。
まだ兄貴がロリコンの方がマシだ。

……やっぱり無理。



―――――

棗鈴の意識が途絶えた。
次に目を覚ますと死んでいない事に気付いた。
幽霊になったとかではないらしい。
そして見知らぬ2人が目に入った。

―――――

779この大地の果てで ◆WzpMn05TJA:2012/07/25(水) 14:03:37 ID:AgHcBWyYO



「アウレオルスを助けるですか」

おそらく名簿のアウレオルス=イザードという者だろう。
さて、彼を助けるか助けないか。

選択権があるのはあくまで六道骸、真アサシン。
鈴は選択肢を渡す側に過ぎない。

「鈴殿に聞いて良いか?」
「ん、なんだ?あとお前見た目の割りに普通に話せるんだな」
「襲ってきた者はどんな者であったか?」

真アサシンの大事な事であった。
相手がもしサーヴァントであったなら殺さないといけない。
骸は黙って鈴の言葉を待つ。

「めちゃくちゃ強そうだった。いや本当にくちゃくちゃ強いだろう」
「そんな事はどうでも良い。名前とかわからないのか?」
「名前?あーっ、あったな!あった、あった」

鈴が思い出す。
名乗った名前が――。

「あーちゃんだ!名前はあーちゃん」
「あーちゃん?ムクロ殿、わかるであるか?」
「あーちゃんですか?篠崎あゆみのアダナでしょうか?でも確か死んでますね」
「男じゃー!しかもあーちゃんで終わりだ」

説明不足である。
しかしあーちゃんで終わり。

「ふむ」

骸は1つ該当した答えを見つけた。

「なる程、喜びなさいハサン」
「どういう意味であるか?」
「わかりませんかハサン、彼女は間違っています」

「間違ってない!」と鈴の声。
ふかーっ、と奇声を上げて怒っている。

「あーちゃんではありません。アーチャーですよ」
「おおっ、それだ」

怒りが冷めた鈴。
驚く真アサシン。

「早く向かった方が良いでしょうねハサン」

アウレオルスが生きている間に。
鈴の前でそんな不謹慎な事は言えなかったが。

「うむ、参ろうかムクロ殿、リン殿」
「いや、ハサン。あなただけで行きなさい」
「どうしたムクロ殿?」

真アサシンはてっきり共闘してくれるものと思っていた。
が、骸の答えは真アサシンを見捨てる事ではなかった。

「こんな怪我の棗鈴を歩かせるわけにはいきません」
「私怪我してるのか?」

鈴は自らの両足を見る。
赤く、黒い血液が足にこびりついていた。
傷口はグロテスクに皮を破いてかさぶたになりかけかどうかみたいであった。

780この大地の果てで ◆WzpMn05TJA:2012/07/25(水) 14:05:11 ID:AgHcBWyYO
「ふにゃああああ、足痛い。こんなの走れないぞ」

傷に気付いた瞬間から痛みが走り出す。
まるで今まで止まっていた新幹線が時間になり急発進するみたいに。
気付かなかったら痛みなどなかったかもしれない。

「棗鈴を手当て次第すぐに向かいます、ハサン」
「それでは仕方ない。先に私だけで行かせてもらう」

真アサシンは明らかに骸と行動していた時より脚が速かった。
目を離せば気配遮断スキルで見失ってしまうだろう。
そして真アサシンは走り去った。否、消え去った。

「では鈴、民家に入ります」
「ありがとうむくろ」

ここが街で幸いした。
民家や店がゴロゴロある。

(怖い顔に変な髪型だけど良い奴なんだな)

骸に対しての印象が少しだけ良くなった鈴であった。





◇◇◇◇◇





「なかなかしぶといな錬金術師」
「……あぁ」

アウレオルスは支給品の武器をはじめて使用していた。
テロリスト『ゼロ』が皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアを殺した細い剣でアウレオルスは抵抗していた。
本当に抵抗にしかなっていなかった、とも言うのだろうか。
戦いとは言えない剣劇がずっとずっと続いていた。
だがアウレオルスは致命傷だけはすべて避けていた。
アウレオルスの意志でもなく、アーチャーがわざと外したわけでもない。
体が勝手に操作されていてアーチャーの動きよりわずかに早く対応するのだ。
アウレオルスはただ立っているかの如くな体験。
ただ、疲労はずっと溜まっていくだけであった。

「剣を未だ握る理由はなんだ?お前は苦痛と楽どちらが好きなんだ?」
「剣を握る理由?まだ私は負けていないからだ。
苦痛と楽どちらが好き?楽だな。『今私がお前の前に立っている』より『私が死んで鈴に延々と泣かれる』方が苦痛だ」
「くだらん言葉遊びだ」

アーチャーはあまりのバカバカしさに呆れ、彼を早く殺したくなった。

「くだらんだろう……。当然。私もそう思っている」

アウレオルスは反撃に興じる。
前に斬りつける為に剣を振るう。
が、剣の扱いに不慣れな攻撃を避けられない英雄など存在しないであろう。

「バカが、剣は突くものだ」
「ぐっ……」

アーチャーに疲労の色は見えない。
隠しているのだが疲労を見せない我慢強さはとてもである。

「何故倒れない?お前は生に興味の薄い人間だと思ったのだがな」
「確かにバトルロワイアル開始前まではな。でもね鈴と約束してしまったからな……」
「……」
「死ぬなよと、言われてしまってね」

体力はなく、傷だらけ。
いつ倒れてもおかしくない。

781この大地の果てで ◆WzpMn05TJA:2012/07/25(水) 14:06:12 ID:AgHcBWyYO

だが心は折れない。
倒れる自分は想像出来なかった。
また鈴と再会する光景しか想像出来なかった。
別に棗鈴の事を好きになったわけではない。
ただ、棗鈴から救われたかったのだ。

(正義の味方か……。ヒーローには出会ったけど正義の味方ははじめてだったな)

アウレオルスはもう既に自分の不安を打ち消す鍼は必要なかった。
こんなに精神力が強かったなら上条当麻に負ける事もなかっただろう。
インデックスを我が物に悪者になったままの未来を創れただろう。
もし、そんな未来があったら永遠に彼は救われぬ人生を歩む事になったのかもしれないが。

正史では顔を変えて、記憶を失ってしまい、名前も変わり別人の人生を歩むアウレオルス=イザード。

だが、今の強き意志の錬金術師アウレオルス=イザードもまた別人であろう。

過去のアウレオルス=イザードが変わるという事だけは変わらない。

「おい錬金術師、スパナを砕いた時や武器を投影したりと錬金を使って戦え」
「ふふ、愕然。今はもう錬金術は使えないんだよ」

全然愕然した風には見えなかった。
それもそのはず、最後の黄金練金はまだ未使用であった。

「自然。君も武器の投影が出来ないんじゃないかい?それと同じさ」
「なかなか勘が鋭いようだな錬金術師」

つまり2人共、互いに能力が制限されているのだ。

「だからといって俺は負けん」

右手の干将を振り上げるアーチャー。

「それは――私もだっっ!」

ガキン。
干将に突く。
衝撃がビリビリと伝わる。

アウレオルスはアーチャーではなく武器に攻撃していた。
相殺させて隙をつくる為だ。

油断か疲労か。
アーチャーの剣の威力が衰えていた。

「もう一撃!」

ビギッ……。
破壊音が1つ干将から鳴る。
バラバラバラ……。
ヒビがヒビをつくり出し干将が崩れる。

「なんだと?」
「そんな強度の剣同じ位置にダメージを与えたら砕けるだろう」
「ぐっ……」

干将・莫耶は強度が高くない。
そしてアーチャー、衛宮士郎は壊れても壊れても次々と投影していく。
しかし今のアーチャーは本来の戦闘スタイルでは戦えないのだ。

「その左の剣も砕いてみせるっ!」
「ふっ」

熟練スパナは砕け、投影は未だに制限で使えない。
莫耶は攻略されたようなもの。

アウレオルスはアーチャーを挑発し誘っている。

「ならやってみせろ」

莫耶を振り回し、アウレオルスの心臓を一突き狙う。
アウレオルスの体がまた無意識に避ける。
心臓には当たらないが横腹に切り裂かれた痕が出来た。
これはアウレオルスがわざと付けた痕だ。

782この大地の果てで ◆WzpMn05TJA:2012/07/25(水) 14:07:18 ID:AgHcBWyYO


「はぁっ」

アウレオルスはアーチャーの左手に飛びかかり、左手を掴む。

「このっ――!」

剣で左手を突き刺す。
アーチャーにはじめて血が流れ、アーチャーの顔が歪む。
突き刺された左手の莫耶は重力に従い地面に落下していくのをアウレオルスがキャッチする。

そして思いっきり街の建物に投げつけ莫耶もまた干将の様に砕いた。
アーチャーの武器はすべて消えた。

(鈴、やっぱり君と再会する光景は現実になるかもしれない)

希望が湧いた。
そして――希望も砕かれた。

「…………さて」
「がっ……」

アーチャーの拳がアウレオルスに直撃して数メートル先でアウレオルスが倒れてしまう。

「第2ラウンドとでもしゃれこもうか錬金術師」

正義の味方は剣と弓だけが武器ではない。
誰よりも強く正しくなる為に鍛え上げた肉体もまた武器なのだ。
どんな武器よりも扱いやすい武器だ。

「か、勝てるわけがない……」

ゼロの剣を杖変わりに立ち上がるアウレオルス。
先ほど見えた希望は幻だったのかなんだったのか。
アウレオルスの目に世界はどう映る――?




◇◇◇◇◇





「アーチャー、か」

サーヴァントでもいきなりの大物がかかってしまった。
だがチャンスは掴まなくては消えるのだ。

「アウレオルス殿だったか」

アーチャー相手に一般人がいつまでも相手に出来るとは思えないが、そのアウレオルスを今は信じなくてはならない。

真アサシンは長身で目立つ姿格好。
しかし気配遮断のスキルでまったく気配がない。

気配無き暗殺者の到着まで、あと――。





◇◇◇◇◇





「まだ痛むが大分マシだな。よしむくろ、いざあうれおるすのところまで、オーッ」
「少し静かにしてください」

棗鈴は僕が治療している時も元気だった。
僕的には未来のヴァリアー所属の弟子のフラン並みでしょうか?
とても煩く相手にしにくかった。

「むくろ、私を手当てした礼だ。喜べお前もリトルバスターズだ」
「喜びません、遠慮します」



ハサンはアウレオルス救出に間に合うか。
僕と棗鈴はハサンと合流出来るかどうか。
さて、これからどうなっていくやら。



「なにぃ、リーダーになりたいのか?しかしリトルバスターズのリーダーはバカ兄貴なんだ」
「聞いてません」

783この大地の果てで ◆WzpMn05TJA:2012/07/25(水) 14:10:10 ID:AgHcBWyYO
【H-4 街/朝】

【アーチャー@Fate/stay night】
【装備:なし】
【支給品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:『守護者』として行動する。
2:錬金術師を殺す。
3:参加者を殺し、最後には主催者たちも殺す。
4:衛宮士郎は必ず殺す。セイバー、切嗣には……?
【備考】
※凛ルート、召喚直後からの参加です
※投影は一度の使用につき30分のインターバルが発生します。また、弓の射程距離が短くなっています
※固有結界は発動できますが、膨大な魔力を消費します



【アウレオルス=イザード@とある魔術の禁書目録】
【装備:ゼロの剣@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:疲労(小)、黄金錬成使用残り1回】
【思考・行動】
1:鈴と再会する為、アーチャーをどうにかする。
2:レンタルビデオ店に行き上条当麻に謝る。
【備考】
※上条当麻に敗れた直後からの参加です
※『黄金錬成』について
・5回の使用につき三時間のインターバルが発生する
・思うだけでの使用は出来ず口にする必要がある
・規模、威力が大幅に制限されている
・生み出した物は数分で消滅する
・相手の攻撃の軌道を逸らすことは出来ない



【棗鈴@リトルバスターズ!】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:足に怪我(手当て)、強い決意】
【思考・行動】
1:理樹の強さを受け継いで、生きていく
2:ゲームを終わらせる為、私達リトルバスターズが主催者を謝らせる
3:あうれおるすと再会する
4:むくろと一緒にあうれおるすとはさんのところへ向かう
5:あうれおるすにかみじょーを謝らせる
【備考】
※Refrain、虚構世界脱出直前からの参加です



【六道骸@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【装備:ヘッジホッグ@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:健康、疲労(中)】
【思考・行動】
1:主催者に対抗する。その為に仲間を集めたい。
2:ハサン、棗鈴とアウレオルスを救出する。
3:敵は躊躇いなく殺す。
4:棗鈴、少し煩くてフランに似てますね
【備考】
※継承式編終了後からの参戦です。
※六道輪廻の能力は使えますが普段より激しく負担が大きいです。
※衛宮切嗣に用心。
※聖杯戦争のある程度の知識を得ました。



【真アサシン@Fate/stay night】
【装備:ベルフェゴールの投げナイフ30/30@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:疲労(小)】
【思考・行動】
1:この聖杯戦争で優勝し、願いを叶える。
2:サーヴァントは皆殺しにする。
3:ムクロ殿とリン殿でアウレオルス殿を救出する。
4:アーチャーを始末する。
【備考】
※桜ルートの真アサシンVSバーサーカー終了後からの参戦。
※ダークは全て没収されています。
※投げナイフは全て回収しました。
※妄想心音は半日に1回しか使えません。


【ゼロの剣@コードギアス 反逆のルルーシュ】
テロリストゼロの姿をした枢木スザクが、皇帝ルルーシュを刺した細い剣。

784 ◆WzpMn05TJA:2012/07/25(水) 14:25:19 ID:AgHcBWyYO
投下終了
元ネタはゲーム『永遠のアセリア-この大地の果てで-』より

アセリアといえば永遠神剣VS斬魄刀の戦いを書いてみたい


◆RmIe4rjRnwさん
投下乙です
毎回作品楽しみに待たせていただいてます
キョンの一人称最高でした
そらおとの新巻を読んだらニンフが可愛くて
ニンフの妊婦ネタ
アーチャーのあーちゃんネタでニヤニヤしてしまう

このロワでも末っ子バリアが見れますように

785 ◆WzpMn05TJA:2012/07/25(水) 14:59:38 ID:AgHcBWyYO
久しぶりに死者スレ

御剣総一、古里炎真、長沢勇治、日向秀樹がログインされました

炎真「やー、ツナ君僕も死んじゃったよ〜」
ツナ「セイバーさんは強いからね〜」
炎真「ツナ君と仲良く同じ場所で逝っちゃった」
陽介「ってお前ら!?なんでそんな仲良しなの!?」
ツナ「え?僕の友達だよ?」
炎真「ジャンプで今協力して復讐者と戦ってるよ?」
理樹「マンガなら恭介に聞くか。ケータイ繋がるかな?」
陽介「ちょっと待って!?今回突っ込みの理樹不在?大体ダメツナを倒したのお前じゃん」
理樹「今日の僕は沙耶ルートのバカ理樹だよ!」
炎真「ツナ君をよく知らないのにダメツナって言うなよ」
陽介「突っ込みが追いつかない。理樹はRefrain参戦時期だし、炎真もツナの事憎んでたじゃん」
炎真「ん?あぁ、シャルルに継承式編の記憶消されてた」
陽介「それがもしロワの真実だとしたらどうすんだ!?」
炎真「…………せっかくボンゴレ倒したのに死亡かよ」
陽介「もみ消しやがった……」

長沢「御剣の兄ちゃんばっかり復活してズルいぞ!」
総一「いや、まだ決まってねーし。もしかしたらルルーシュの母、マリアンヌがギアス使って俺の体使ってる可能性あるから」
陽介「お前らバカなの!?さっきの会話の二の舞じゃん。大体長沢も悪霊じゃん」
長沢「俺は主人公だからな!しかも放送が終わってからの2周目の投下は俺が一番最初なんだぜ!」
陽介「死んだ奴が最初に2周目来るのは前代未聞だな」

日向「つーかSSSって最初から死んでるんだからAB勢って死者スレに自由に出入り出来るんじゃね?なぁ音無」
音無「んぁ?」
陽介「お前が連れて来たんだろ、そういうのは無し」
音無「だって予約入んなくて暇だし」
陽介「音無の意志かよ!」

陽介「というか今日の死者スレは強制終了だ」
理樹「陽介に、……そんな資格あるかな?」
陽介「あるよ」



カオス過ぎたので強制終了

786 ◆RmIe4rjRnw:2012/07/26(木) 22:46:05 ID:702.wbjs0
死者スレ含めて投下乙です!

錬金術師とサーヴァントの闘い、普通に考えれば身体能力の高いサーヴァントの圧勝だけど
アーチャーはまだ迷っている所もあるし、援護もあるしでどうなるか分からないなあ

それといくつか質問させていただきます
・Wikiの地図にはC-6に施設があるようですが、何ですか?
・Wikiの【第2回放送までの本編SS】に場所を記載したのですが構いませんか?
・このロワではデイパックは四次元設定ですか?

787 ◆WzpMn05TJA:2012/07/27(金) 11:56:50 ID:wveaBc3.O
>>786
質問に答えます

C-6はただ抜けていただけだったのですが追加させていただきます
ジュネス@ペルソナ4


wikiの更新で詳しくなる機能なら歓迎です

デイパックについて
自分のイメージ的には中途半端な四次元なイメージでした
ぜんきちタイガーにてタマが狭いという描写から、
デイパックの中身(支給品など)の質量とデイパック内の面積がイコールで繋がれ、+αデイパック内の面積の方が大きくなる感じですかね
書いていてまったく意味がわからないので補足を入れてみます

補足
デイパックは四次元だが無限空間ではない。
※Island Daysにて内側に溜まった血が滲んできている描写がある。つまり3.5次元?
※破面の告白にて野球バットが飛び出ている描写もある。

デイパック内にはなんでも入れられるが、外からの攻撃では脆いらしいです
※破面の告白にて虚閃で消滅した程度の耐久力
※拳銃やサブマシンガンで傷付くぐらいの耐久力設定?(描写なし)

デイパック内の支給品の効果は取り出さなくても発動するらしいです
※天城雪子は笑えない、這い寄る混沌の描写にてデイパックに入ったままのものが発動していた描写あり。それにより桜井智樹、水瀬名雪は生存している

悪霊でもデイパックは持てる
※シャングリラの描写にて悪霊は実体がある。長沢勇治はデイパックを拾っている

デイパックの中身も重力に従う
※赤より朱しの描写にて遠野美凪が転んで支給が中から出てしまっている

デイパックは支給品の形に変形しない(デイパックの形から支給品を察しられない)
※支給品確認の話を見れば大体描写がわかる。明らかな外れを刻命裕也が見抜けないなど


近々大事な話にて、とある設定(禁書目録の事ではない)が使われる予定

788名無しさん:2012/08/03(金) 09:44:56 ID:TdUFN0es0
投下乙です

鈴の描写が良かったです
死者スレのネタがわかる自分爆笑しました
何故真面目な話からこんなばっさり変わるのか不思議だ

永遠神剣と斬魄刀とか燃える
すごく番外編希望です

789 ◆WzpMn05TJA:2012/08/03(金) 14:22:58 ID:BBesihegO
>>788
まさかの番外編希望に驚かされました
リクエストにはなるべく答えたいと思う次第です
どこまで行けるかはわかりませんが

見切り発車で先が見えないなぁ


王道ロワイアル番外編
本編と関連は不明(ない?)、参加者は未定(一部本編キャラ混ざり)、非リレーな感じで構想を練ってみます
話はwikiに直接投下する感じでやってみます
多分いつの間にか番外編のページが出来てるかもです

790 ◆WzpMn05TJA:2012/08/03(金) 17:00:18 ID:BBesihegO
参加者名簿?
※もしかしたら名簿が変わる場合があります
※こちらはまったりな更新になります
※地図はそのまま使用
※番外編の非リレーです。リレーのリクエストがあればこたえたいです
※wikiに直接投下します



6/6シークレットゲーム-KILLER QUEEN-
○御剣総一/○矢幡麗佳/○綺堂渚/○長沢勇治/○高山浩太/○手塚義光

6/6永遠のアセリア
○高嶺悠人/○アセリア/○エスペリア/○碧光陰/○岬今日子/○秋月瞬

6/6スパイラル〜推理の絆〜
○鳴海歩/○結崎ひよの/○アイズ・ラザフォード/○浅月香介/○竹内理緒/○カノン・ヒルベルト

6/6真剣で私に恋しなさい!
○直江大和/○川上一子/○椎名京/○風間翔一/○福本育郎

5/5ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生
○苗木誠/○舞園さやか/○霧切響子/○十神白夜/○戦場むくろ

5/5スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園
○日向創/○狛枝凪斗/○九頭竜冬彦/○辺古山ぺこ/○七海千秋

5/5物語シリーズ
○阿良々木暦/○戦場ヶ原ひたぎ/○神原駿河/○阿良々木火憐/○阿良々木月火

5/5恋する乙女と守護の楯
○山田妙子/○穂村有里/○真田設子/○桜庭優/○笹塚隆平

5/5リトルバスターズ!
○直江理樹/○棗恭介/○三枝葉留佳/○能美クドリャフカ/○来ヶ谷唯湖

5/5CHAOS;HEAD NOAH
○西條巧巳/○咲畑梨深/○蒼井セナ/○折原梢/○西條七海

5/5舞-HiME 運命の系統樹
○高村恭司/○鴇羽舞衣/○玖我なつき/○杉浦碧/○藤乃静留

4/4そらのおとしもの
○桜井智樹/○見月そはら/○守形英四郎/○五月田根美香子

4/4つよきす
○対馬レオ/○鉄乙女/○鮫氷新一/○伊達スバル

4/4ハヤテのごとく!
○綾崎ハヤテ/○三千院ナギ/○マリア/○天王州アテネ

4/4Fate/stay night
○衛宮士郎/○遠坂凛/○間桐桜/○間桐慎二

3/3ひぐらしのなく頃に
○前原圭一/○竜宮レナ/○古手梨花

3/3BLEACH
○黒崎一護/○朽木ルキア/○市丸ギン

3/3PHANTOM OF INFERNO
○ツヴァイ/○アイン/○ドライ

3/3とある科学の超電磁砲
○御坂美琴/○一方通行/○上条当麻

3/3IS<インフィニット・ストラトス>
○織斑一夏/○篠ノ野箒/○セシリア・オルコット

3/3Angel Beats!
○音無結弦/○仲村ゆり/○立華奏

5人未定


OPの主人公は当然……、

791 ◆RmIe4rjRnw:2012/08/04(土) 09:23:05 ID:daY2Fp1k0
質問に答えて頂いてありがとうございました
今後の参考にするところがあるかもしれません

まさか番外編が始まるとは……頑張ってください

期限を過ぎてしまったので予約は破棄ということにしてください

792名無しさん:2012/08/04(土) 09:36:57 ID:bbfvqrRs0
番外編なのに名簿がガチ過ぎる
OPの音無のスタンスが本編とガラリと変わりそう

793名無しさん:2012/08/09(木) 02:35:31 ID:IBzOaspU0
番外編もリレーやってみたいなぁ

794 ◆WzpMn05TJA:2012/08/09(木) 20:38:04 ID:eQZMnTzAO
番外編のコメントありがとうございます

リレーにするとなるとどんな形のリレーにするか考えないといけないですね
結構難しい問題ですね


球磨川禊、姫萩咲実、来ヶ谷唯湖、C.C.を予約します

795ある日 森の中 球磨川さんに出会った ◆WzpMn05TJA:2012/08/15(水) 09:11:05 ID:sZLCpNnAO
参加者が血を流し、命をかけている。
敗れし者に待つのは死。
死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死。
14の死。

普通では起こり得ない日常が、今は普通に起こり得る出来事になっている。

逃げても逃げても逃げられない。
それがこのバトルロワイアルの絶対である。
しかもそれを伝えるが如く放送が鳴り響く。



『咲実ちゃんの知り合いって参加者に居たっけ?』
「え〜、居ませんよ〜。球磨川さんは居るんですか?」
『知り合いと同じ名前があったな。そういえば知り合いと同一人物と会ったな。あれ?そういえば宗像君居なくなってるね』

あははー、あははーと語り合う男女2人。
過負荷であり最弱の球磨川禊。
ただの女子校生で力もない姫萩咲実。
普通なら襲いかかる参加者から身を守る為隠れたり逃げなくてはいけない参加者であろう。
咲実に至ってはデイパックすら無い状況だ。
だが彼らはバトルロワイアルに巻き込まれているのにのへへんと会話している。
別に彼らは戦いに巻き込まれない例外な参加者でもなんでもない。
チェス盤のポーンに過ぎない。

のだが……?

『まぁ僕は宗像君に嫌われているだろうからね』
「どうしてですか?球磨川さんは死んだ私を蘇らせた正義の味方じゃないですか?」

正義の味方。
それはとてもとても球磨川禊には似合わない5文字であった。

『…………』

球磨川はなんとも言えない気持ちになる。
というか彼女をこのままにしていいのかとも思っている。

「知り合い居るじゃないですか」
『本当に咲実さんの知り合いは居ないのかい?学校の後輩とかさ』

球磨川の頭によぎるのは黒神めだかと人吉善吉。
現在進行形で敵対している2年下の後輩。
宗像形含め未だ生き残っている球磨川の知り合い。
善吉はともかくやはりめだかは簡単には死んでいなかった。

「あ、1人だけ居ました」
『えー誰、誰?』
「球磨川さんです」
『……』

咲実の笑顔は作られた嘘の真実の笑顔であった。

『ところで咲実ちゃん、こんなところでのんびりしているけどさ』
「そうですよね、これ戦闘の跡ですよね」

傷付けられし木が1本。
血、または死体などはないが明らかな暴力なのか殴られた様な跡。
しかも刃物が刺さった様な跡。
木の破片が下にパラパラ落ちている。

球磨川が3つ4つ破片を手にし目に近付ける。

『色も変わらない、あまり汚れていない、妙にたくさんある。つまりこれは最近付いた傷だね』
「え……?」
『ゲーム開始前からこの跡があったという推理もあったけど違うねこれは』

それを意味するは参加者がここに居た事を示しているだろう。

『危険だよね』
「流石球磨川さんですね」

離れよう。
球磨川か咲実か。
どっちからの提案かはわからないがそんな流れになりこの場から離れるのであった。

因みにこの跡は主催者に怒りを示した桂ヒナギクがゲーム開始直後に付けた跡であり戦闘など行われていない。
むしろヒナギクが球磨川の因縁の黒神めだかと出会った場である。
当然知るはずもないし、球磨川がこの傷の原因を予想したとてわかるわけないだろう。

『もしかして誰かがここで怒りを爆発させただけかもね』

いや、まさか……。



◇◇◇

796ある日 森の中 球磨川さんに出会った ◆WzpMn05TJA:2012/08/15(水) 09:12:35 ID:sZLCpNnAO



『まずは森に入ってみよう』

E-6からE-5へと向かいやや早歩きの探索。
参加者の介入も特になく順調な足取りだ。
そして球磨川と咲実は森へと踏み入れる。
森独特の葉と木と自然の香りが鼻に付く。
今明るくなったばかりなのにまた薄暗く感じる。

(怖い、な……)

咲実は森の中に恐怖が湧いた。
何故、だろうか。
この森が外とは別次元の危険の溜まり場に映ったのだ。

それもそのはず。
この森は戦いを寄せる不幸の森。
御剣総一、森近くで古河渚が亡くなっている。
現在進行形で数々のバトルが繰り広げられている危険な場だ。
先程居た場の方が安全なのである。

『…………』

流石球磨川なのか。
不幸を呼ぶには誰よりも呼ぶ球磨川である。



◇◇◇



「C.C.、私は理樹君の死から殺人に乗った者だ」
「違うだろ。私を襲ったしあの忍者の女にギアスを使ったじゃないか」

C.C.と話合っているのはリトルバスターズの1人、来ヶ谷唯湖。
自分の、いや直江理樹のリトルバスターズを守る為彼女は殺人者となる。
リーダーの棗恭介、クラスメートの棗鈴、井ノ原真人、宮沢謙吾を守る殺人者。

「あれはゲームだ。ゲームに乗った。私は今殺人に乗ると言ったんだ」

前は自分の夢の中をただ遊ぶに過ぎない。
御坂美琴やC.C.を襲ったのも椎名にギアスをかけたのも殺すというよりは遊びに近かった。
激しく楽しい遊びが好き。
唯湖の性格の通りである。

「遊びは卒業したんだ」
「だからどうした?」
「だから……」

再び刀を抜き、C.C.に向ける刃。
長く美しいC.C.の緑色の髪がパラパラと切られ風で飛ぶ。

「私は君、C.C.も殺すぞ?」
「おぉ、魔女の私を殺すか。それはとても楽しみだな」

魔女の笑み。
少し狂乱に似た薄気味悪い顔であった。
普通の人なら警戒するほどに。

刃を向ける唯湖に反応しないC.C.。
C.C.の脅しに反応しない唯湖。
2人はもう普通の人間の域を超えている。

「だか遊びは卒業してもゆとりは欲しいものだ」
「この私をゆとり扱いだと?このゆとり世代めが」
「何を言う、君だってゆとり世代だろう」
「私は魔女だ。何個前の世代からこの終わった人生を歩んでいると思う」

見た目からは想像出来ない。
だが唯湖は別に驚きはしないし、C.C.の言葉は理解している。

「信じるよ」

ただ信じているだけだ。

「だってそっちの方が面白いからな」

リトルバスターズのリーダーのあの男の様な顔で述べた。

「君を殺す時は私が決める」
「では私は唯湖から逃げる準備をしなくてはな」

C.C.は言っている言葉とは逆の行動、唯湖と共に肩を並べる。

797ある日 森の中 球磨川さんに出会った ◆WzpMn05TJA:2012/08/15(水) 09:13:59 ID:sZLCpNnAO
「唯湖と呼ぶな……」

屈辱の言葉が1つ。

「ところで今ちょうどゲーム開始8時間、禁止エリアが発動するな」

B-7エリア。
2人が居るエリアからは距離がある。
これがどの参加者がどう影響していくかはわからない。

「ん……?これはおかしいな」
「……そうか?考え過ぎじゃないか?」

唯湖は怪しそうな目つきで空を睨んだ。



◇◇◇



『それにしてもこのバトルロワイアルって実は主催者側がかなり焦っているのかもしれないね』
「どういう事ですか?」
『主催者側がわずかバトルロワイアル開始8時間でルール違反をしたからだよ、僕達参加者じゃないよ?「主催者側」がね』

朝から午前になった直後であった。
他の参加者はどう受け取るかわからない。
主催者側が全参加者に対してある事をしてきた。

球磨川はそれを主催者側のルール違反だと言った。
咲実はこれは気にする事はない出来事だと思った。

『僕はひねくれているから、ね』

意味あり気に球磨川がくく、と何かを抑える様に笑う。

『今のでまたバトルロワイアルで煽られる人は煽られるんだろうなー』
「えー、まさか。でも今の真実ってわけじゃあ……」

『だよね、今のは嘘の可能性もあるよね?大事なのはそこなんだ』

球磨川が区切って次の言葉を選ぶ。
まさに主催者の考えを代弁するかの様に。

『今のが真実でも嘘でも真実と認識する、また嘘と疑う程余裕がない者が居たら狂った様にすぐに認識してしまうだろうねぇ』
「狂った……だと」
「え……?」

球磨川の言葉に反応したのは?
隣の咲実ではない。
知らない聞いた事のない声であった。

「貴様は人の死を侮辱するか?あれを嘘だと?……ふざけるな」

なかなかに長身な女であった。
可愛いより美人で凛々しいという表現がよく似合う。
だが、今は凛々しいという言葉が似合わないほど彼女は悲しみと怒りをその身に一身と背負っている。

「お前らはタイミングが悪すぎたな」
「だ、誰ですか……?」

咲実はもう1人の違う声に反応し振り返る。
無表情、そんな目の冷たそうな女だった。
おそらく長身の彼女の協力者か知り合いだろう。

「私はC.C.、彼女は唯湖。まぁ覚えられたらでいいから覚えておけ」

球磨川と咲実を助けるわけでもなく、唯湖と呼ばれた彼女を助けるわけでもなあい。
傍観者のつもりだろうか。
しかし2人から襲われるよりは大分マシだ。

798ある日 森の中 球磨川さんに出会った ◆WzpMn05TJA:2012/08/15(水) 09:15:30 ID:sZLCpNnAO


「先程の男女2人よりも楽だろうな」

電撃使いの御坂美琴。
ペルソナ使いの鳴上悠。
しかしこの平凡そうな2人はただの人間だろう。
リトルバスターズの為に彼女は刀を振るう。

『待て、彼女は参加者じゃない。戦うなら僕だ』
「は……?」

何をバカな、口にする前に球磨川の口が動く。

『彼女は僕の支給品だ。どうだすごいアンドロイドだろ。可愛いだろう』
「支給品だろうが――関係ない!」
『ごめん咲実ちゃん、作戦失敗したよ』
「そんな嘘誰も信じませんよ……」

呆れた咲実の声が届いた。

『安心して咲実ちゃん――君は僕が守るから』

球磨川の背中がとても逞しく目に焼き付く。
見ず知らずの自分を蘇らせ、優しくしてくれた男。
咲実は自分の体温がどんどん上がっていく事に気付く。
この感情は――。

「はぁっ!」

唯湖が刀を球磨川の心臓目掛けて突いてくる。
球磨川は寸前に右に体を傾ける。

『ぐあっ……』

しかし黒い学ランが破れ肌が露出し、血が微かだがびちゃと飛び散る。

『降参するよ……』
「ふざけているのか」

『そんなつもりないけど唯湖ちゃん強いよ。多分高貴ちゃん達と同じ特別(スペシャル)な逸材だよ』
「なにが逸材だ、それに私を唯湖と呼ぶな!」

唯湖が刀を強く握り締め走る構えを見せる。
降参はさせるつもりはないらしい。

『いつもみたいに螺旋伏せるにしても螺旋はないんだよな』

ブック・オブ・ジ・エンドは武器は武器だが戦う武器とはほど遠い。
だが咲実を守るには戦わなくてはならない。

『今日の僕は宗像君と縁があるなぁ』
「拳銃か。だがこのお姉さん相手に引き金を引けるかな」

宗像形の二丁拳銃の片方デザートイーグルを笑顔で構える。
その笑顔はどんな事があろうとヘラヘラ笑う球磨川禊の顔。
人間笑うと幸せが寄ってくると言われているがこの男の笑顔は幸せが逃げていきどんな不幸をもおびき寄せる笑顔にしか見えない。

唯湖の心臓を目掛けて、

『もっとも宗像君は嫌がるだろうけど、ね』
「……なっ!?」

カチ。
躊躇い無くデザートイーグルの引き金を引く。

『……君は僕を全く理解出来ていなかったね』



◇◇◇



(ほぅ、あの男は引き金を引ける男であったか)

傍観者C.C.はただ黙って成り行きを見守る。

「……なんだあの男?」

しかし次の予想しなかった展開にC.C.は目を丸くさせた。



◇◇◇

799ある日 森の中 球磨川さんに出会った ◆WzpMn05TJA:2012/08/15(水) 09:16:56 ID:sZLCpNnAO



『無理っ、デザートイーグルって引き金重いね』

引き金を引けなかった。
デザートイーグルは既に明後日の方向を向いている。
当然唯湖にダメージはない。

「ははっ、殺すタイミングを失ったな」
『じゃあ今殺すよ』

簡単にデザートイーグルの引き金を引く。
演技から球磨川は片手撃ちで唯湖を狙った。

「っ!?」

キンッ。
咄嗟に刀で銃撃を受け止めた。
反射的な行動がタイミングが良かった。

「くっ、あの男子は掴みどころがない」

わからない。
球磨川禊の全てがわからない。

「拳銃がやっかいだな」

刀と拳銃。
長所と短所があるが今の唯湖と球磨川の距離は約6〜8m。
拳銃が有利な間合いだ。

「ならこちらは……」



◇◇◇



「球磨川さん……」

泣きたいのを堪えて球磨川を応援する姫萩咲実。
自分の運の無さが惨めであった。
長門有希、川澄舞と国崎往人、来ヶ谷唯湖とC.C.。
キョンとニンフと別れ、ここでは球磨川が必死で戦っている。

「お願い球磨川さん」

自分の想いは挟められた記憶からのもの。
それを知らぬ咲実。

本当にそれは本心の願いなのか。

「勝って球磨川さん」

咲実は知らない。
球磨川禊の戦歴は0。
絶対に彼は勝てない。
負ける天才だからだ。



◇◇◇



『ぐあっっっ』

球磨川の腕が木に突き刺さってしまっていた。
原因は当然唯湖である。

唯湖は刀をなんと球磨川目掛けて投げ出したのだ。
目には目を。
歯には歯を。
飛び道具には飛び道具を。

拳銃という飛び道具に対抗し、槍投げの様に刀を投げ飛び道具に変えたのだ。
結果、球磨川の右肩を刺さり森のたくさんある1本の木に貫通。
デザートイーグルは地面に落ち、彼は身動きが取れなくなった。

『あはは、はは……はは……』

過負荷は笑う。
どんな如何なる苦しみにも負けなく笑う。
笑う、笑う、笑う、笑う、笑う。
笑い続ける。

「死んだ者の侮辱、リトルバスターズの為殺す」

球磨川のデザートイーグルを拾いあげ球磨川の頭に当てる。

「遺言はあるか?」
『ははっ。負けだよ負け。僕は勝てない星の下で生まれた球磨川禊だよ。はははは……』

800ある日 森の中 球磨川さんに出会った ◆WzpMn05TJA:2012/08/15(水) 09:18:30 ID:sZLCpNnAO


笑い続ける。
この命尽きるまで。

『だからこんないらない過負荷があるんだ。ははっ、こんなあってもなくても良いスキル』



現実(全て)を虚構(無かった事)にするなんて無意味な事さ。



「な……に……?」

唯湖の目撃した光景は傷1つない球磨川が自分に向かい刀を突き刺す姿。
何故?
自分の持っていた刀は足元にあるのに。
では彼の刀は一体?

『はは……、また僕は負けちゃったよ……』



◇◇◇



リトルバスターズとはそもそも何人だったか?
あれ、私はそんなに薄情な人間だったのか?
            ・・
リトルバスターズから既に2人亡くなっているのに。

全員でリトルバスターズは12人だったか。
恭介氏に理樹君、鈴君、小毬君、葉留佳君、クドリャフカ君、美魚君、真人君、謙吾君。
どうして私は禊氏に咲実ちゃんを忘れていたんだ?

リトルバスターズを守ると言っていた私はリトルバスターズに手を出していた。
あぁ、薄情だな私は……。
中途半端だったな。



『いいよ、僕が許すから』



◇◇◇



『唯湖ちゃん、僕は怒っていないよ
現実(全て)を虚構(無かった事)に僕がしてあげるからさ
彼らの事は残念だけどさ』

彼ら。
球磨川は亡くなった2人の事は知らない。
見せしめの3人の誰かか?
放送で呼ばれた参加者の誰かか?
それとも先程の出来事での誰かか?

『怒るべきは主催者だろ?僕と唯湖ちゃんとの記憶を操るなんてさ』
「すまない。こんな形の再会になってしまって……」

全てに嘘と偽りを混ぜて混ぜてぐちゃぐちゃにしていく球磨川禊。
そこには真実などない。

真実はいつも1つではない。



◇◇◇



「すまんなC.C.、私は仲間を忘れてしまっていたよ」
「らしいな。唯湖といい禊といい面白い奴らだ」

C.C.は球磨川と唯湖の戦いを一部始終見ていた。
そこでは驚くべき展開が繰り広げられていた事には変わりない。

(シャルル、まさか参加者にまでギアスを使っていたというのか?
仲間を仲違いさせる為なのか?
私にギアスは効かないはずだから記憶改ざんはないが……)

801ある日 森の中 球磨川さんに出会った ◆WzpMn05TJA:2012/08/15(水) 09:19:57 ID:sZLCpNnAO

記憶改ざんのギアス。
それの持ち主は主催者シャルル・ジ・ブリタニア。

(……どこまでお前は干渉しているんだ?)

勘違いの輪はどんどんどんどん大きくなっていく。
その輪の中心は……球磨川禊。

(しかし唯湖のギアスを自らの精神力で破るとは。いや禊の行動か?)

ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの最愛の妹ナナリー・ヴィ・ブリタニア。
ギアスは並み大抵の精神力では破れない。

現に枢木スザクは死なない呪いにかかったままなのである。

(ただの人間じゃないのかもな唯湖も禊も)

自分と同じく戦闘に混ざっていない少女、咲実だったか。

(あれはただの少女なのか?)



◇◇◇



『終わったよ咲実ちゃんってどうしたの?』

咲実が寂しそうな視線を向けていた。

「すごい仲が良いんですね……」
『何を言っているんだい?』

球磨川の耳には微かに何かが聞こえたくらいでよくわからない。

「ふはは、咲実君は可愛いな」
「えぇ?あれ、なんで?」

理屈はわからないが唯湖は咲実にも優しくなっていた。
敵視していた人物とは同じに見えない。

「とんだラブコメ野郎だな禊」
『え?』



【D-4 森/午前】

【球磨川禊@めだかボックス】
【装備:ブック・オブ・ジ・エンド@BLEACH】
【所持品:支給品一式 宗像形のデザートイーグル(6/7)@めだかボックス デザートイーグルの弾丸(35/35) ランダム支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:『目的なんて無いよ』
2:『咲実ちゃん可愛いな〜』
3:『安心院さんでも絡んでんじゃない?』
4:『めだかちゃんか善吉ちゃんにブック・オブ・ジ・エンドで斬りつけたい』
5:『よくわからないけどリトルバスターズになっちゃった』
【備考】
※戦挙編の庶務戦終了後からの参戦です。
※大嘘憑きは回数制限です。自身の回復は5回まで(残り4回)、死者の復活も5回(残り4回)、自身の復活は3回、普通に能力として使うなら1時間に1回です。

802ある日 森の中 球磨川さんに出会った ◆WzpMn05TJA:2012/08/15(水) 09:21:58 ID:sZLCpNnAO
【姫萩咲実@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:なし】
【所持品:なし】
【状態:健康、記憶改ざん】
【思考・行動】
1:球磨川さんと行動
2:球磨川さんは命の恩人
3:球磨川さんは良い人
4:球磨川さんは優しい人
5:球磨川さんは初恋の……秘密♪
【備考】
※本編開始前からの参戦です。
※ブック・オブ・ジ・エンドの効果により球磨川の事を信頼しておりますが、もう一度斬られると元に戻ります。



【来ヶ谷唯湖@リトルバスターズ!】
【装備:宗像形の日本刀@めだかボックス】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:リトルバスターズの面々を生還させ、理樹くんの望みを叶える
2:C.C.と禊氏と咲実ちゃんと行動し、人々を惑わしつつも人数を減らしていく
【備考】
※来ヶ谷ルート、夢が覚める前からの参加です
※御坂美琴、鳴上悠の容姿のみを把握しました
※直枝理樹への恋心を思い出し、狂人思考から脱しました
※ブック・オブ・ジ・エンドの効果により球磨川と咲実の事をリトルバスターズと誤認していますが、もう一度斬られると元に戻ります。



【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:このゲームを傍観する
2:唯湖、禊を傍観する。咲実は……
3:ただし唯湖と禊から何か指示された場合は可能なら従うのも吝かではない
【備考】
※本編最終話後からの参戦。
※来ヶ谷唯湖に漠然とした興味を抱きました
※シャルルが他の参加者にギアスを使った可能性を疑っています



【宗像形のデザートイーグル@めだかボックス】
宗像形の二丁拳銃の片方。ちなみにもう片方はS&Wマグナム44。装弾数7。

803 ◆WzpMn05TJA:2012/08/15(水) 09:26:56 ID:sZLCpNnAO
投下終了です
元ネタは歌謡曲「森のくまさん」歌詞『ある日 森の中 くまさんに出会った』より
球磨川の活躍が99話だったのはたまたまです

御剣総一、北条かりん、イカロス、黒神めだかを予約します

804奇跡――それはつくられた偶然―― ◆WzpMn05TJA:2012/08/15(水) 09:31:14 ID:sZLCpNnAO
北条かりんの幸運はゲーム開始前からつくられていた。

時は遡りゲーム開始時に戻る。



「かれん、私頑張るから。あなたは私の帰りを待っているだけで良いんだからね」

北条かりんの血の繋がった妹北条かれん。
彼女の家族は自分1人。
彼女を守れるのは自分1人。

自分の想い、かれんの想い。
かりんは最初から、いやずっと2人ぶんの想いを重ね生きている。
だからこのバトルロワイアルでも生き続けなければならない。
どんな汚い手段を使ってでも。
たとえ人を何人も殺す事になっても。

「私の命より優先させても必ず」

かりんは決意を固める。
人生で一番頑張らなくてはいけない瞬間が来たと言っても過言ではないだろう。
かれんの喜ぶ顔がまた見れると考えると自分が負けて死ぬ姿が思い浮かばない。
たとえ人殺しをかれんが許さないとしても。

(黙っていれば良いかな)

そう心に秘めて心を入れ替える。
自分は参加者全員を殺す修羅とならなければならない。
情け、容赦なく。
私利私欲の為。

「これがデイパックね。かなり軽いな」

この中に武器が入っているのかと疑問を抱く。
水筒1つしか入っていないと言われても信じてしまうほどに。

「わ、確かにごちゃごちゃ入っているみたい」

地図や参加者名簿を目に通す。
地図は無人島にしては街とかがあるらしい。
では無人島をバトルロワイアルの為に改造したのだろう。

「お金の話は本当みたいね」

小さなところから証拠に近い根拠を見つけていく。

「武器は何があるのか」

支給品が入ったデイパックを開いて武器を確認していた。
これが良いか悪いかで難易度がぐっと変わる。
祈る気持ちで取り出す。
幸運な事にかりんの支給品の中に役立つ支給品が2つに役に経たない支給品が1つあった。

S&W M37 エアーウェイト。
回転式の小型拳銃。装弾数5発。
初心者にも扱いやすい反動が少ない拳銃らしい。

そしてアゾット剣という短剣。
鋭い輝きを放っている。

最後の1つはカードが1枚。
デザインがまったく成されていない。

「拳銃に剣。私は武器に恵まれている」

だが自分ばかりが優遇されているわけではないだろう。
火炎放射機、サブマシンガン、毒ガス。
こんなものも支給されているとしたら?
そう考えた場合自分の拳銃も短剣もおもちゃ同然だろう。

もしかしたら効かない相手とかも居ないとは限らない。

慢心だけはせず、常に危険を確認する事は忘れない様にしよう。
何日こんな状態になるかわからない事もある。
1、2日くらいで終われば良いがこればかりはなんとも言えない。

「さて、殺す人を探さないとね」

そしてゲーム開始から2時間と少し。
北条かりんは最初の参加者、巽完二を見つける。
彼は雰囲気からゲームに乗ったマーダーではないだろう。
敵意がないなら殺すのは楽だろう。

「よし、殺す」
「ん?」

引き金を引く。
結果は完二が銃撃を避けてペルソナにより自らが撤退という酷い有り様であった。
その後、巽完二はサーヴァントであるキャスターに殺される事を彼女は知らない。



―――――

805奇跡――それはつくられた偶然―― ◆WzpMn05TJA:2012/08/15(水) 09:32:59 ID:sZLCpNnAO



「マスター、ニンフ、アストレア」

殺し合い。
平和が好きなマスター。
マスターは必ず殺し合いなんかしないだろう。

ニンフ、アストレアは地蟲(ダウナー)と呼んで見下している。

でもマスターの影響により数々の戦いと数々の日常に触れた。
あの子達は大丈夫。
殺し合いには乗らない、と思う。

「マスターは護る」

しかしマスターを害になる相手には。
力が溢れ出す。
が、それを抑える。

『空の女王』(ウラヌス・クイーン)。
今はその時ではない。

「銃声……?」

空の女王を解除した瞬間聞き慣れた音がイカロスの耳がキャッチした。
マスターの学校の生徒会長がよく扱う銃声にとても似ていた。

「羽根があるのに飛べない?」

もしマスターがあの場に居たら?
普段のマッハ24の空中移動は出来ないから走ってその場へ向かう。



―――――



「襲う側の少女不明、襲われる側の少年不明」

今すぐに私は少年を助ける為、戦いに乱入しようとする。
が、足の動きを止めてしまう。

「あれは……?」

少年がカード、タロットカードを空中に出し割った中からはエンジェロイドの様な戦闘能力が高い従者が現れた。

「マハジオ!」
「ぐぅ……」

電撃が少女近くを攻撃する。
少年に殺意がない。
威嚇攻撃という事に気付く。
マスターに近い考えの主かもしれない。

「予想外……。ただの幸せ者だと思ったのにまさかのスタンド使いなんて。撤退……」

威嚇が成功した。
少年は安心した表情。
少女は泣きたくなる様な表情。

「…………」

本来なら安全な少年と一緒にマスターを探すべきだろう。
私の脳もそう告げる。

「でも、マスターは……?」

マスターは優しい。
日和さんが車に轢かれ、そはらさんやマスターのマスター、会長の記憶から消える中、ニンフが泣きそうだからと忘れた振りをしたマスター。
そんな優しいマスターなら必ずあの少女を助けるだろう。
年もマスターとさほど変わらない。

「話を聞いてあげよう」

私は逃げ出した少女を追った。



―――――



「何よ今の!?ふざけんじゃないわよ!スタンド使い!?ずるいじゃないのよ!こんな小型拳銃よりよっぽど強いじゃない」

さっきまでの強い決意が揺らぐかりん。
嫌な予感がさっそく当たってしまった。
だがこのゲームクリアを諦めるという事は……。

「い、いややっぱりダメ……。このゲームに参加しないのはかれんを見捨てるという事……」

かれんを失う以上に怖い事なんかない!
かりんは手を握り締める。

806奇跡――それはつくられた偶然―― ◆WzpMn05TJA:2012/08/15(水) 09:34:21 ID:sZLCpNnAO
「そう誓ったじゃない……」

怖かった。
まだまだ彼女は幼い。
10と少しの年齢の少女は強いわけがない。
弱くて当たり前なのだ。

助けて、助けて、助けてっ!
誰か1人くらい私とかれんを護って!

願った。
かりんは自分と妹を護ってくれる存在を願ったのだ。
そしてその願いは聞き届けられる。

イカロスという参加者がかりんを護る様に必然が起こった。
かりんの側に居たイカロスの記憶を改ざんしてしまっていた。
そして、マスター『桜井智樹』のインプリンティングも壊された。
つくられた偶然によって。



―――――



マスター、マスター、マス……。

私を護ってくれていた――?

ニンフ、アストレア、カオス、日和、イカロス=メランの襲撃を体を張って助けて、くれ、……。

……、…………、……。
………………、……。
、…………、…………、………………。
……、……、……。
…………………………。

ザーーーーー。
――ザーッ。
ザッ、――。




―――――



「私がアナタを護ります」
「え……?」

インプリンティングを壊され30秒。
イカロスの記憶のデータも壊され、雑音に消えた。
そして新しいマスターとして北条かりんの鳥籠になる。

(新しいマスター?前のマスターは……)

ない。
そんな情報はイカロスのデータに存在しない。



―――――



北条かりんが引き起こした奇跡。
しかしこれはつくられた偶然。
つくられた偶然は『必然』である。

そして、かりんの『必然』は参加者の1人御剣総一を蘇らせる事にまで至る。

だがかりんは御剣総一の変わりに、奇跡の『必然』を失う事になる。
それがかりんにとっては良い事か悪い事に繋がるかわからない。

「あ、ありがとう。ありがとうございます、総一」

しかしこの彼女の嬉し涙を見ると良い事に繋がった事に思えてしまうだろう。



―――――

807奇跡――それはつくられた偶然―― ◆WzpMn05TJA:2012/08/15(水) 09:39:12 ID:sZLCpNnAO



「……ゲームオーバー、ってことかな。はは…」

崩れる少年の体。
イカロスは護る為、人殺しをした。
御剣総一は護る為、人殺しはしてはいけないと言ってくれた。

揺れる天秤。
御剣総一が死ぬ瞬間に傾いた天秤。
だが結果が遅かった。

「あ、あ……、あ……」

イカロスという凶器を使ってこの手を差し伸べた少年を殺したのは――私……?
人を殺す。
こんな事をして得たお金をかれんは喜ぶか?

むしろ、一生嫌われる。



―――――



「私が望んだ?こんなのを……?違う、嘘……」

なりふり構っていられなくただ走り逃げ続ける。
足元は森なので整理されていない。

「あっ!?」

逃げたくて足元がお留守だったらしい。
倒れる瞬間木の根っこが映る。

(あぁ……、もし御剣さんが死んだ事が夢だったら……)

私はぼやけて閉じる視界の中くだらない、覆し様のない事を考えて、気を失う。




「ぐっ……」

どこに私は向かっていた?
イカロスも黒神めだかさんも居ない。

森の中。
確かにそうだ。

でも違う。
私自身どこに向かっている?

人を殺す武器が2つに変なカードが1つ。
気を失った時間は5分か10分か。
もしかしたら30分以上超えたかもしれない。
だがもう関係ない話だ。

「最低な私はもうかれんに会う資格なんかない」

もう死のう。
剣で心臓を貫くより、拳銃で頭を貫いた方が一瞬で死ねそうだ。

この引き金を引くだけで……。

「俺はそんな事望んではいないっ!」

そんな声と私から銃を奪う手が来るのは同時だった。

「だから人殺しなんてやめてくれって頼んだだろう北条かりんさん」
「なんで……?」

あれ?
私名前名乗った?
いや、私の名前を知られていた。
黒神めだかさん。
そうだけど違う。

彼は御剣総一さんだ。
イカロスと私が殺してしまった罪の象徴。

「俺……、御剣総一は絶対に君を救うから。今の君にはわからないとは思うけどさ……。二度と君を孤独にはさせないよ」

808奇跡――それはつくられた偶然―― ◆WzpMn05TJA:2012/08/15(水) 09:40:58 ID:sZLCpNnAO
しかし実体だ。
幽霊ではないし、優しそうで強そうな声も同じ。
がたいが良い体も本人に間違いない。

「どうして、御剣総一さんは生きてるの……?」

泣いていた。
超えた私を優しい目で見てくれる事が。

「な、泣くなよ。麗佳さんに勘違いされるだろ」

慌てて頭を撫でてくれる御剣さん。
そんなに私に優しくしないで。

「罪とか気にするな。俺にも君に対して罪はあるんだから」



―――――



「いつの間にか復活していた……?」
「そうそう、ほら反復横飛びが出来るほど元気さ」

冗談混じりの御剣さん。
ずっと真面目な御剣さんの姿しか知らなかったからか意外な御剣さんが見れた。
もしかしたらこれが素の御剣さんかもしれないが。

「信じられないです……」
「ええー?説得力無かったかな?」

説得力が無い。
聞いた説明を整理すると急に目を閉じて、私が居なかったから死にながら消えた背中を思い出して走ってきたらしい。
同行者の椎名さんって人は気絶していたが桃色の髪の女の人に護られたからこちらを優先したとの事。

「説得力って……、死亡者の名前がありましたよ?」
「俺放送聞いてないからな。その時はまだ死亡者だったんだな」

しかし御剣さんの刺し傷がない。
血も全く出ていない。
これが妙だ。

「あなた本当に御剣総一さん?」

疑っている私が居る。
彼が生きていて嬉しいはずなのにこれのせいで素直に喜べない。

「…………」

御剣さんは真面目な表情へと戻ってこちらを見た。





「俺は――本物さ」

彼は言い切ってみせた。



―――――



「そんな事より俺も言いたい北条かりんさん」
「な、なんですか?」

御剣さんが私に頭を下げた。
わけがわからない。
これが御剣さんの罪?

「あの時は護れなかった。救えなくてごめん」

涙を流しながら彼は謝り続けた。

ごめん、ごめんと。
私はバトルロワイアル以前は御剣さんと出会っていないのに。

809奇跡――それはつくられた偶然―― ◆WzpMn05TJA:2012/08/15(水) 09:42:20 ID:sZLCpNnAO
「俺は少し前殺人ゲームに巻き込まれた事があった」
「え?」

普通の学生に見えた御剣さんの告白。
それは前にも殺人ゲームに巻き込まれた事であった。

「そこには13人の参加者が居た。全員の名前は知らないけど実はその内俺を含めないで最低4名がバトルロワイアルに関係している」
「4名?」

高山浩太、長沢勇治。
この2人は私は知らない。

「……郷田真弓」
「えぇっ!?」

主催者の郷田真弓!?
まさか御剣さんが知っていた?
驚きは大きすぎた。
次に誰の名前が出ても驚かないだろう。

「北条かりん」
「……は……?」

殺人ゲームに、私が関係していた?
しかも参加者としてであるらしい。

「そんな記憶……ない」
「だろうな。でも多分君本人だ。北条かれんという妹が病気をしている。ケータイの待ち受けは妹とツーショットの待ち受けがされていた」
「……」

彼は冗談は言っていないだろう。
こんな事自分しか知らない事だ。

「俺は君を護れなかった。救えなかったんだ。かれんちゃんの元へ返せなかったんだ……」

後悔の言葉。
さっき私が自殺してしまったらまた自分はかれんの元へ帰れなかったということだろう。

「北条さん、俺は君を助けたい」
「御剣さん……」

自分に修羅は似合わない事に今更気付いた。

「これがシャルル達が言っていたパラレルワールドなのかもな」

御剣さんはそう呟いた。



―――――



「俺の事さ、御剣さんとか畏まらないでくれ」
「私も北条さんなんて呼ばれなれてないから変えてよ」

お互い、総一とかりんと呼び合う事になった。

「総一、これを預けておく」

拳銃を総一に渡すかりん。
初対面の時の拳銃を預ける話を思い出したのだ。

「でも今考えるとかりんが襲われた時の武器がないか」
「大丈夫、短剣があるから。人は殺さないよ」

そう言ってかりんはアゾット剣を総一に見せた。

(あれ?カードが無くなってる)

デイパックの支給品のカードが消えていた。
おそらく気絶した時落としたのだろう。
剣か拳銃が落ちるよりはマシだが。

「俺の支給品は全部最悪だったのに」

甲子園の土、こけし、羽根の付いたランドセル。
何故こんなに差があるのか。

「私の命に変えてもかれんは護る」
「それはダメだ!」

総一はかりんの誓いに一番大きな声で怒鳴られかりんは驚いた。
総一はまたごめんと謝る。

810奇跡――それはつくられた偶然―― ◆WzpMn05TJA:2012/08/15(水) 09:44:14 ID:sZLCpNnAO
「日常に1人欠けても色褪せてしか見えなくなる。そんな苦しみはかれんちゃんに味わらせたくない。必ずかりんはかれんちゃんに再会するんだ」

自分の彼女、桜姫優希の死から麗佳と会うまでの自分。
誰にもこんな苦しみを知らせたくはないものだ。

「うん。絶対かれんのところに帰る」
「俺もまた麗佳さんに会わないと」
「その麗佳さんって総一の彼女?」
「…………」

かりんが女の目になっていた。
からかわれると総一は嫌な汗が出てきた。



―――――



必然の奇跡。
それはかりんの支給品に秘密があった。
新型の転送装置。
本来の世界では桜井智樹が夢にしてしまった存在しないもの。
これがこの奇跡の正体であった。

かりんとかれんを誰かが護ってとの願いをイカロスの記憶を破壊し、イカロスのマスターになる事。

そして2つの願い。
(あぁ……、もし御剣さんが死んだ事が夢だったら……)
これにより総一の死はかりんの気絶と共に夢落ちになった。
そして新型の転送装置も、正史通りに夢と共に消えた。

かりんは必然の奇跡は無くなった。
だが彼女はそれ以上の大切な者を得ただろう。



―――――



「マスター……?」

新型の転送装置が夢になった今、イカロスの記憶が戻される。
本来の桜井智樹がマスターの記憶と、自らのイカロス=メランを倒した記憶を取り戻す。

しかし問題は。

「私はインプリンティングをマスター(北条かりん)にしたまま……」

インプリンティングはマスターの許可がないと解除出来ない。

「イカロス後輩、戦いの途中は余所見は関心しないな」

楽しそうにイカロスと戦うめだか。
戦う理由を一方的に失ったイカロス。

「マスター、私は……」

(どうすれば良いでしょうか……?)



【E-4 森/朝】

【御剣総一@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:S&W M37エアーウェイト3/5@現実】
【所持品:S&W M37の弾丸45/45@現実】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:かりんとゲーム脱出し、麗佳さんとかれんちゃんの元へ帰る
2:殺し合いはしない
3:椎名さんと再会したい
【備考】
※EP2終了後からの参戦です

811奇跡――それはつくられた偶然―― ◆WzpMn05TJA:2012/08/15(水) 09:45:22 ID:sZLCpNnAO



【北条かりん@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:アゾット剣@Fate/Zero】
【所持品:支給品一式】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:総一とかれんの元に帰る
2:殺し合いはしない
3:イカロスを止める?
【備考】
※本編開始前からの参戦。
※黒神めだかの名前と容姿を記憶しました。



【イカロス@そらのおとしもの】
【装備:フランベルジェ@とある魔術の禁書目録】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:疲労(小)】
【思考・行動】
1:どうする?
2:殺しはあまりしたくない
3:マスター……
【備考】
※本来イカロス=メラン戦終了後からの参戦でした。
※記憶は戻りましたが桜井智樹ではなく北条かりんがマスターです。
※武器は没収、羽根で飛ぶ事は制限です。
※馬鹿力は制限されていません。



【黒神めだか@めだかボックス】
【装備:原初の海@ペルソナ4】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×1】
【状態:疲労(小)】
【思考・行動】
1:桂二年生と行動。
2:主催者から参加者全員に謝らせる。
3:イカロスを捕える。
【備考】
※オリエンテーション開始直前からの参戦。
※参加者全員の顔と名前を一致させています。
※乱神モードは3時間待って10分、改神モードは制限で1日1回の制限です。


【アゾット剣@Fate/Zero】
剣の形をしているが本質は魔術儀礼の杖。見習いを卒業した魔術師が師からおくられる。


【新型の転送装置@そらのおとしもの】
本来はシナプスにあるものを地上へ転送する装置。
だが透明になったりと転送以外の用途にも使える。
しかし現在は桜井智樹が夢にしてしまい存在しない。
作中に度々使われる転送装置はこれの旧式であり、こちらは1枚で色々使えるが旧式は1枚で1つの効果しか使えない。

812 ◆WzpMn05TJA:2012/08/15(水) 09:50:52 ID:sZLCpNnAO
100話記念にちゃっかり完二出てます

最終的にオチは付けます
書きながらイカロスが初期の愛玩用を語らなかった秘密がまさかこんな伏線とは…
偶然って怖いです


音無結弦、刻命裕也、キャスターを予約します

813 ◆JKafDIbYIA:2012/08/20(月) 21:31:08 ID:Db6jK1nc0
初めまして!これまでずっと読み手でしたが、参加してみたいと思います。

六道骸、伊吹風子、一方通行、アウレオルス=イザード、アーチャー、真アサシン、棗鈴、棗恭介

以上八名を予約します

814零れたカケラ達 ◆WzpMn05TJA:2012/08/25(土) 10:31:08 ID:ojre1e26O
「チクショウ、俺は一体この6時間何してやがった!」

放送を聞いた茶髪の少年は悔しそうに膝を地面に付け、大声で叫び、地面を叩きつける。
痛みが走るが痛みなど気にもならなかった。

それほど彼、音無結弦は自分の無力さを呪いながら悔やんでいた。

目の前で小、中学生くらいの女の子2人と筋肉質な男の犠牲から始まりもう14人。
いや既に15人目の犠牲者が現れていたとしても不思議ではない。

「脱出が目標だったとしても……」

だからといって自分以外の人達が次々と消えるのを我慢して見ている事は出来ない。

「しかし俺は殺し合いに乗った奴と勘違いされちまった……」

名前がわからない5人といずれ会った時自分は彼らに襲われる可能性がある。
自分がゲームに乗ったという偽りの噂を流す可能性も否めない。

あの場に居た鳴上悠、御坂美琴、ウルキオラ・シファー、前原圭一、朝比奈みくるとは再会しない事を願うだけだ。
因みに結弦は影から見守っていた桜井智樹の存在には気付いていない。

「信頼出来る奴は誰だ?」

仲村ゆり、結弦達SSSのリーダーだ。
彼女は絶対的に信頼出来る。

立華奏、敵対していたとはいえ今は助け合う仲だ。
日向秀樹、結弦と一番仲が良いメンバーで親友に近い仲。
椎名、ギルド降下作戦以降勘違いされているが仲間……なのだろうか。
直井文人、奏同様敵対していたが今は自分を慕ってくれる仲間。
元の世界の知り合い達で5人。

それからバトルロワイアルで出会った参加者で言うなら。
相沢祐一、結弦を助け侍の男から逃がしてくれた仲間。
しかも未だに死んではいなかった。
だが死んでいないだけで死にかけかもしれないし、最悪まだ戦闘中という可能性すらある。

「いや、まさかな……」

既に祐一と別れ3時間と少し。
未だに戦いの最中とは考えにくい。
となるとやはり前者かもしくは……。

「相沢があの侍を撃退した……しかしアサシンとか言う奴は死んでないしな……」

わからない。
祐一の探索を本格的にはじめて仲間を集めようと考える。

「だな。怪我していたら俺が手当てしてやろう」

結弦の生前目指していたものは医者である。
妹の死をきっかけに人を助けたいと勉強をはじめた。
電車の事故の際、生存者が絶望しきった中自らが励まし、手当てをし生き延びさせた。

自らの死と引き換えに。
人の命から命へと紡いでいった。

今回もそんな自分になろう、結弦は決心した。

「あぁ。やってやる!脱出だけじゃなくより多くの参加者を生き残らせて脱出してやる!オペレーションスタートしてやるっ!」

誓いながら叫ぶ。
はじめはあんなに嫌であった死んだ世界戦線の事がこんなに体に染み渡っていた。

815零れたカケラ達 ◆WzpMn05TJA:2012/08/25(土) 10:31:51 ID:ojre1e26O

「ゆり、今度は俺がリーダーとして頑張るぜ」

CZ75を握り、頑張りを誓う。
まずは持ち物を詳しく見よう。
最初は役立たずと決めつけた拳銃以外の支給品確認。

「ふん、ふん。……なるほどな」

少年は今までとは変わった目つきをしていた。



◆◆◆◆◆



「……へへ、はは。ははは……くく」

高ぶっていた感情が現在進行形で笑いとして出していた参加者が居た。
刻命裕也。

人の死に2度も立ち会えた。
今は人の形をした肉塊に過ぎない2つのものの光景が未だ離れられなかった。

同行者、青髭――キャスターが殺した2人。
次は自らの手で引導を渡したいと刻命は手を震わせていた。

「とても嬉しそうで私も頑張ったかいがありますよユウヤ」

キャスターはまだ子供と大人の境目ぐらいの少年が人の死にこんなに共感する人が居る事に関心があった。

「今の世界は平和らしいですがまだこんなに良い人材がいるとは素晴らしい。素晴らしい!ジャンヌと是非肩を並べて共闘する光景を私は待ち望みますぞ」

賛辞。
彼にとって刻命裕也は人柄と考え、惹かれるものをすべて持っている。
        マスター
そんな器を持った人間と感じた。

「いや、あなたはもう器では収まりませんよ」



◆◆◆◆◆



「よし、大体は把握した」

あまり使い道がないと思っていたものの支給品の説明を読むといかに決めつけが悪いかに気付く。
全ての支給品をデイパックにしまい込み立ち上がった。

「待ってろよ奏、ゆり、日向、直井、椎名、相沢」

救いの手を差し出す為、結弦は走り出した。

そして歩き出した結弦の近くに参加者らしき影を遠くから見つけた。
やたら普通の背丈くらいの影とやたら大きい影が1つずつ。

そのやたら大きい影に不安が宿り建物の影に隠れた。
しかも大きい影には不安と同時に見た事がある――デジャヴを感じる。

(嘘だろ……。確かあいつは眼帯の大男と戦っていたはずだろ……?)

違うだろうと首を振る。
さっきまで仲間を増やす事を考えていた矢先に襲われた危険な参加者と再び再会してしまうなんて。


(はは……。今日はバトルロワイアルに巻き込まれて襲われて、敵と勘違いされて……。ふざけすぎだろ……)


結弦は自分の運の無さに笑うしかなかった。
自分に抗う事など無理であるのだろうか。

(まさかあの眼帯男を殺したあとか?)

笑いながら鬼の顔をした『死神』という表現のよく似合うツンツンした頭に黒い眼帯の男の姿を思い浮かべる。
殺しても死にそうにもない、そんな化け物じみたそうなあの男を殺したと過程しよう。

(俺なんかはやっぱりザコなんだろうな……)

816零れたカケラ達 ◆WzpMn05TJA:2012/08/25(土) 10:32:36 ID:ojre1e26O
額から流れ出た汗を右腕で拭く感じで汗を落とす。
予想した量より流れていた汗が右腕を濡らす。

(でも奴は危険だ……。だが何故あの男は肩を並べて歩ける?)

キャスターの横を歩く学生ぐらいの青年に目をやる。
黒い髪に顔がなかなかに整っているぐらいの印象であった。

(確かめてみるか?)

しかしこのままキャスターから離れる事も選択肢の1つ。
殺し合いに乗るつもりではない参加者にとって人との邂逅か人から逃げるかは自らの意志に定められる。



◆◆◆◆◆



「つくづく俺って男は学習能力が0なのか」

結局俺はあの大男の隣の青年が気掛かりでまたコソコソと追尾してしまった。
これの原因で俺は高校で大変な目に遭ったのに、だ。

「それに騙されていたり催眠術とかされていたら救ってやりたい」

助けられる奴は出来る限り助けてやりたいと気持ちが湧いてくる。

耳を済まして2人の会話を聞く。
名前か呼び名か。
大男からは相手を『ユウヤ』と、青年からは相手を『青髭』と呼ぶ事を聞き取り俺は名簿を開く。

「ユウヤ、ユウヤ、ユウヤ……。こいつか刻命裕也」

珍しい名字だ。
しかし名字が珍しいだけに名前の裕也からは普通の名前を傍観させた。
珍しい名字と普通の名前。
対になったイメージだがおそらくはただの一般人。

それはわかりきった事ではあるな。

しかし大男の方、『青髭』。
誰だお前?
大声で叫びたくなった。

いやいやいやいや。
お前まず髭ないし、別に青ってイメージもないじゃん。
そんな不気味な見た目の割りに名前はなんか無機質なものを感じるじゃねーか!
しかも青髭なんて名前は名簿にないし明らかにこれ偽名じゃん。
詐欺じゃん。刻命裕也騙されてんじゃん。

「いや、マジで誰だよっ!…………あ……」

突っ込んで突っ込んで突っ込んでいた。
それは心の中だけで叫んでいたつもりであった。
だがそれは声となって突っ込みをしてしまっていた。

「オヤオヤ。確かお前はあの時に逃げられてしまった坊やではありませんか」

大きすぎる口から嫌な声が響いた。

「青髭、参加者だ。しかも首輪着いてる参加者だ。殺してやろうぜ」

青年の口からは悪態。
見下し虫を見る目。
自分の意志でこいつは殺し合いに乗っている!?

助けられる余地もなければ、仲間になど持っての他だ。
やっぱり俺は選択肢を間違えていたのかっ……!

817零れたカケラ達 ◆WzpMn05TJA:2012/08/25(土) 10:33:25 ID:ojre1e26O

「あなたには見覚えのあるこれを再びご覧に入れましょう」

禍々しいオーラ、なんか見えるわけないけどそんなオーラを発していてもおかしくない様な古くて大きい本を明けて何かわからない事を呟いている。
クソッ、なんだこの不快な感じは……!?

「あ……っ?」

マンガなどで見る触手がうにゃうにゃと地面に生えてくる。
いけない感じの事を想像させる触手とは違いこの触手は触れたものを飲み込む様な化け物の口を現している感じだろうか。
ヌルリ、先程も思った事。
何故こんなわけのわからない出来事がシュールに普通に起きるのか。
巨大なオニヒトデの様な形が現れる。

「さぁ、坊や。あなたの人間としての最後の抵抗を見せて輝きながら死を体験してください」
「ふざけんじゃ――ねぇよ!」

CZ75の引き金を思いっきり引いてやる。
こんな化け物相手にこんな拳銃はおもちゃみたいなものだろう。
虫がおもちゃを持っているみたいな印象なのだろう。

「だからって抵抗出来ないわけじゃねーんだよっ!」

実践向けなコック&ロック可能なセイフティ、命中精度の高さ、人間工学を考慮したグリップは『まるで手に吸い付くよう』と評される拳銃と俺がそこそこに得意な射撃を3発。

俺が奏にグロックで撃って「当たった、当てるつもりなんてなかったのに……」なんて感想は全然なかった。
むしろ今の俺は『当てるつもりで撃った』のだから。

「ああああぁぁぁぁぁぁ。貴様貴様貴様貴様貴様キサマァァァァ!この虫けらめがっ!この私を、この私を怒らせたな!」

右目から涙の様に溢れ出すは赤くて生暖かい血。
その目を抑えながら青髭なる大男は狂いの叫びを上げる。
その叫びに一瞬怖じ気づくがなんの事はない、相手がただ負傷しただけじゃねーか。

「青髭、あいつ殺すぜ」

青髭の返事も聞かずに刻命裕也は拳銃を構えて俺に躊躇いなく拳銃を撃つ。
しかしはじめて拳銃を撃ったのか避けるまでもなくどこかに弾が飛んでいった。

「……」

しかし命中率ははじめてだからともかくとしてどうしてこんなに簡単に何故引き金を引ける?
俺でさえ青髭には引き金は引けてもただの人間の刻命裕也には引き金を引けそうにない。

「こうして撃ってみてわかるんだが案外あんた手慣れてるんだな」
「まぁな」

刻命裕也が俺の事を銃を扱う人間だとすぐに理解したのかそんな事を言ってきた。
しかしこの頭の回転、かなりキレる。

「せっかく青髭からもらったアンリミテッドなんだから殺したいわけなんだが殺されない?」
「ふざけんな」
「じゃあさ、あんたは人を殺さないのか?」
「殺すわけねーだろ!」

818零れたカケラ達 ◆WzpMn05TJA:2012/08/25(土) 10:34:23 ID:ojre1e26O

根本的に俺とこいつの考えが違う。
性格がおかしい具合に歪んでやがる。

「そんな銃を扱う能力があるのにもったいない。生物ってのは死の間際が一番輝くんだぜ?」
「違う!死ってのはよ……終わりなんだよ!誰もが抗えない終点なんだよ!それを幾回も続けて続けて、うんざりなんだよ!」

人の死に触れて、命のありがたみってのがある。
何故こんなにも死の間際が輝くなんて戯れ言を言えるんだよ……。

「残念だ。あんたとは友達になりたかったな」
「俺は絶対にお断りだ」

相手が銃を構えている時には俺の銃が火を噴いていた。
当然殺すつもりはない。
威嚇用のわざとギリギリに外した弾だ。

「ちっ、逃がすかっ!」

俺は走り出す。
この男らから逃げ出す為。
まともな人間を探す為。

――既にまともな人間など居ないのかもしれないけど、な。



◆◆◆◆◆◆



「ふざけるなあのガキ!殺す、殺す、殺すっ!」
「まぁ慌てるなよ青髭」

刻命は余裕な顔をしながらキャスターを抑える。
その余裕な顔はなにかがある事を感じさせる。

「あいつの逃げ出した先は確か一直線。隠れるところなんざねぇよ」
「そういえばそうでしたねえ」

偶然な事に結弦が逃げ出した先は一直線の野原と街の境目の野原方向に逃げていった。
野原方向には数本の木ぐらいしかない。
隠れるにはまったく向かない地形だ。

「よし、行くぜ」



しかし刻命とキャスターは野原に入ったが結弦の姿はまったく無かった。
イリュージョンの様に消えてしまったみたいに。
時間もそう経っていない。
簡単に結弦の背中を見つけられると踏んでいただけにこれはハプニングであった。

「まぁ良いや。あいつはまた今度だ青髭」
「良いのですか?私はあの坊やを殺したいのはやまやまですがユウヤは今すぐに誰かを殺したいのでは?」
「あぁ、殺したいさ」

結弦の理論はまったく届かない。
子供の時から持つ危険な思考は捨てられるはずがない。

「だがあいつにはまた会って俺の考えで屈伏させてやりたいのさ」

結弦の死の理論と刻命の死の理論。
まったく逆の考えの主は決して交わる事のない平行線を辿る。
しかし刻命は……。

「俺は平行線を歪ませてみせる」

819零れたカケラ達 ◆WzpMn05TJA:2012/08/25(土) 10:35:24 ID:ojre1e26O
簡単に彼らは結弦の探索をやめる。
次はどこに向かうか。
結弦の事を忘れて彼らは歩きながら話し出す。

「ん?なんだこのくだらないこれは?」

そして時間は午前8時。
新たな展開が始まる。



◆◆◆◆◆



「ふーっ、やり過ごせたみたいだな……」

1本の木から何やら声がした。
しかしそれはどこから見ても普通の木であるし、スピーカーの様なものも取り付けられていない。
これの材質は本物の木だ。
しかし何故か結弦の声がする。

「逃げるばっかりだと思うなよ……」

1本の木が人間の形をつくりだす。
茶髪の青年、音無結弦である。

「量子変換器とかいう奴の効果は本物みたいで助かった……」

もし本物でなかったとしたらすぐに追い付かれ刻命かキャスターに殺されていただろう。

「よし、あいつらとは別方向へ行くか」

そう体を向けた時であった。
結弦の耳に声が聞こえた。

「誰も居ない……」

しかし既に2人は去ったあと。
しかも声は女の声。
あの2人とは無関係であろう。

「いや違うこれは――……」



◆◆◆◆◆



ごめんなさいね参加者の皆さん。
改めて進行役の郷田真弓です。
あなた達の姿は確認させてもらっているわ。

放送から既に2時間。

当然ながら14人目以降の脱落者もたくさん現れてきていますわ。

しかし今回は定時放送ではないの。
言うならば番外放送とでも言うべきかしらね。
だから禁止エリアもないし、死亡者の報告もなしよ。

どうしても死亡者が気になるならあと4時間必死に生き抜きなさい。

では本題に入るわ。

実は先程の放送で呼び上げた14名の参加者が居たけど、実は1人息を吹き返したみたいなの。
誰なのかどうかは……秘密にしておきましょう。
少しでも希望を持って頑張ってください。

放送には嘘、偽りはありませんので。

それと面白い話がもう1つあったわね。
実は今からどんどん明るくなってきたけど実は幽霊が出るらしいの。
何言っているのでしょうね私は。
まぁこれは予備知識的な感じで記憶しなさい。

ではこれからB-7が侵入禁止エリアになるけどその見せしめをあなた達に聞かせるわ。
大丈夫、名簿にある名前の者達から見せしめなんて野暮はしないわ。

820零れたカケラ達 ◆WzpMn05TJA:2012/08/25(土) 10:36:31 ID:ojre1e26O
あと聞かせる、と言っても私達が選んだ選りすぐりの俳優、いや声優の演技かもしれないけどね。
ではスタート。

―――――

「ちょーとー、ここどこだよー」
「あれれ?私は一体……?」
「誰か、居ませんかー?」

3つの少女の戸惑った声が聞こえる。
みんながみんな違う声である事はわかる。

しかしこのバトルロワイアルの参加者なら何度か聞いた電子音が聞こえる。

ピピピ、ピピッ。

そして一斉に電子音は途切れ、ボンっ、ボンっ、ボンっ。
爆発音がリズム良く3つ。
まるでショーの打ち合わせがなっていたかの様であった。

―――――

楽しかったわね。
あれ?もしかしてあなた達の知り合いが居たかしら?
ごめんなさいね。
まぁ死んだ3人の名前は伏せさせてもらうわ。
ではご機嫌よう。
また4時間後に……。



◆◆◆◆◆



「ふざけんな……、お前らは人の命をなんだと思ってやがる!」

今の放送が本当に殺したのかはわからない。
郷田の言う通り誰かが演技をしただけかもしれない。
しかし、参加者を煽るには充分であろう。

「絶対に俺はゲームを終わらせてやる。絶対に、絶対に……」

決意と怒りの声がずっと、ずっと、ずっと続いていた。



【C-6 野原/午前】

【音無結弦@Angel Beats!】
【装備:CZ75 9/15@現実】
【所持品:支給品一式 CZ75の弾丸30/30 ランダム支給品×2】
【状態:披露(中)、健康】
【思考・行動】
1:出来る限りの参加者達とゲームからの脱出。
2:仲間を探す。
3:相沢と再会する。
【備考】
※ユイ消滅より少し前からの参戦。
※祐一を別世界の死後の世界の住人だと思っており、祐一の言う魔物を奏の様な人間だと思っております。
※水瀬名雪、川澄舞、倉田佐祐理、北川潤の名前を知りました。
※前原圭一、朝比奈みくる、御坂美琴、鳴上悠、ウルキオラ・シファーをマーダーと誤認しました。



◆◆◆◆◆



「面白い事しやがる主催陣だよな、ははっ」

刻命の笑い声が響く。
あの放送を聞いてもなにも感じない。
人が終わる瞬間を音だけ聞いてもつまらない。
本当ならあの死が終わる瞬間も見ていたかった。

「どうせなら映像で流してくれたら良いのによ」
「ユウヤ、あなたの勇敢さは私も敬意を払ってでも見たくなりますねえ。それにしても本来の聖杯戦争よりもこのバトルロワイアルとやらの方が面白い。とても面白い」

歪んだ不気味な殺意の籠もる笑いが2つ。

821零れたカケラ達 ◆WzpMn05TJA:2012/08/25(土) 10:37:12 ID:ojre1e26O
【C-6 街/午前】

【刻命裕也@コープスパーティー】
【装備:アンリミテッド6/7@ペルソナ4】
【所持品:支給品一式×2、テレビの世界のメガネ@ペルソナ4、SOS団特製すごろく@凉宮ハルヒの憂鬱、犬の捜索願いの紙@めだかボックス、手錠@現実、アンリミテッドの弾丸35/35、ランダム支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:青髭と共に参加者を殺していく。
※本編開始前からの参戦です。
※キャスターから巽完二のデイパックをもらいました



【キャスター@Fate/Zero】
【装備:螺湮城教本@Fate/Zero】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3、手錠@現実】
【状態:返り血(大)、右目損傷】
【思考・行動】
1:ユウヤと共に参加者を殺していきジャンヌを復活させる。
2:たくさんの参加者を贄にして魔力回復。
※『プレラーティーズ・スペルブック』での大海魔化はできません。
※『ペルソナ4』の世界の情報を得ました。
※龍之介に召喚される前からの参戦なので、サーヴァントのことを一人も知らない状況です



◆◆◆◆◆



あら?
さっきの放送の真相?

当然真実よ。
俳優とか声優とか言ったのは希望に縋る参加者が居るか試してみたかっただけよ。

あの時の死亡者なら特別に教えてあげても良いわよ。

その変わり参加者には秘密、ね。



【里中千枝@ペルソナ4  死亡】
【篠原世以子@コープスパーティー  死亡】
【神北小毬@リトルバスターズ!  死亡】

822 ◆WzpMn05TJA:2012/08/25(土) 10:39:03 ID:ojre1e26O
投下修了

元ネタはアニメ「地獄少女」12話サブタイトルより


今回は遅れてもうしわけありません
神尾観鈴、グリムジョー・ジャガージャックを予約します

823 ◆JKafDIbYIA:2012/08/28(火) 17:54:03 ID:KfpN4VEM0
予約を延長させていただきます。

824<削除>:<削除>
<削除>

825 ◆JKafDIbYIA:2012/08/31(金) 17:55:07 ID:jlTFqyYc0
予約を破棄します
完成したら再度予約します

826 ◆RmIe4rjRnw:2012/09/15(土) 10:24:46 ID:oFLh7z9o0
久々に来ました、投下乙です
一応月報を記載します
王道 101話(+ 5) 83/100 (- 0)  83.0

以下1行感想
球磨川遊び過ぎw御剣本当に復活したのか頑張れ!音無やっと主人公らしいなw

古泉一樹、一方通行、衛宮切嗣、天城雪子、北川潤で予約します

827 ◆RmIe4rjRnw:2012/09/23(日) 03:43:22 ID:dYvonVkk0
予約を延長します

828 ◆WzpMn05TJA:2012/09/29(土) 15:24:51 ID:twsinEUA0
最近は忙しくて予約破棄の連絡すらなくて申し訳ありませんでした

岸沼良樹、水瀬名雪、阿良々木暦、仲村ゆり、白鐘直斗、直井文人を予約します

829 ◆fNONBETA4o:2012/10/14(日) 19:36:20 ID:/9UYCz660
立華奏、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、三千院ナギ、朱鷺戸沙耶で予約します

830 ◆fNONBETA4o:2012/10/20(土) 09:36:41 ID:tT/qCs2g0
投下します

831翼ある銃 ◆fNONBETA4o:2012/10/20(土) 09:37:29 ID:tT/qCs2g0
「ナギ、最初の目的地だけど。あたしは病院がいいと思うわ」

何の前触れもなしに沙耶が話を振ったので、ナギは一瞬びくっとして彼女の方を見る。
二人は何の目的もなくとりあえず歩いていたのだが、その間にも沙耶は地図をしっかり見ていた。
候補地はいくつかあったものの、中でも一番合理的だとして病院を目的地に選んだらしかった。

「怪我なんかをした時に、処置の道具はたくさんあるに越したことはないでしょ? まずは自分の装備を整える、スパイの基本よ。覚えておくといいわ」
「おおっ! そうなのか!?」

スパイ、という響きに格好よさを覚えてナギは大きな両目を輝かせた。
そこまでいい反応をされるとどうしても誇らしくなる辺り、この二人はやはり若干幼稚である。
ナギに戦闘を任せるのは無謀過ぎることは、これまでの他愛もない会話の中で沙耶は承知の上。
理樹のようにパートナーにするのは無理そうだと判断し、一層強く気を引き締めた。
彼女を守るのは、自分の役目なのだから。
イレギュラーの参加者として、命だって懸けてこのゲームをぶち壊す為に。

「それじゃ行くわよ。幸い、あたしの記憶が正しければあたし達は病院の近くに居るはずだから」

冷静なスパイとしての振る舞いを見せる沙耶だが、彼女もまた立ち直りきってはいない。
自分と共に学園の地下で死線を潜った相棒(パートナー)を失った悲しみはとても、深かった。
ナギを守らなければならない、そんな責任感が沙耶に力を与える。
朱鷺戸沙耶は学園で秘密裏に暗躍するスパイである。
隠された秘宝を巡り、夜の迷宮で闇の執行部と攻防を繰り広げてきた。
罠や銃撃戦にも慣れているし、突拍子もない話だが――死んだ経験だって何度かある。
それでも、彼女の精神(こころ)はまだまだ少女のそれを脱していない。
恋したかもしれない少年を失って、平常を保てるほど沙耶は強くはないのだ。

しかし、強いだとか弱いだとかの問題ではない。
こんなところで折れてしまうことの方が、朱鷺戸沙耶にとっては嘆かわしいことだった。
理樹が見ていたなら、きっと自分に戦ってほしいと言うだろう。
誰かの死を乗り越えられずに燻っている、『朱鷺戸沙耶』はそういうキャラクターではない。
それに、理樹を失って独りぼっちになったかと問われれば、断じてそれは否。
ちょっぴり、というかかなり頼れないけれど、一人の友達ができた。
彼女を守るための戦いと思えば、自分はまだ戦える。

「そうよ、あたしは学園の秘宝を狙うスパイ―――あたしは『プロ』よ」
「ん? 何か言ったか、沙耶?」

いえ、何でもないわ。そう言うと、沙耶は銃を握る力をより強めた。
――視界の先には、病院の姿が見えてきた。





その頃、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアと立華奏も病院を訪れていた。
内部には交戦の痕が色濃く残されており、バトルロワイアルの激しさをこれでもかと見せつける。
壁中に刻まれた銃弾の痕が、壮絶さを物語っている。
二人は取り乱しこそしない。しかし、殺し合いが着々と進行している事実はしっかり胸に刻む。
平和ボケした考えは身を滅ぼす――最善の注意を払わねばならないか。

(スザクのことだ、あいつはこのくらいでは死なないと思うが……)

ルルーシュがこの事態において、一番に心配する枢木スザクという人物。
彼はガトリングの弾丸を避けるほどの超人的な身体能力を有している。
敵としては最悪に厄介だが、味方とすれば最高の剣になってくれる、彼はそういう男だ。
だから余程のことがない限り大丈夫な筈ではある――急がずとも、いい。
ふと同行者の奏を見やると、彼女は視線に気付いて軽く小首を傾げた。
天使。彼女は見たところルルーシュと然程歳は離れていない筈だが、随分と冷静である。
それこそ、世界を敵に回して戦った自分よりも。
強い少女だと、皮肉も何もなしに心からルルーシュは思う。

832翼ある銃 ◆fNONBETA4o:2012/10/20(土) 09:38:11 ID:tT/qCs2g0
「どうかした、ルルーシュ?」
「……いいや。これを見ても驚かないんだなって思っただけさ」

奏が普通でないことは知っている。
それにしても、何の予兆もなしにこんな光景を見せられたらどうだろう。
人間の命を奪ったことも数多くあるルルーシュでも、驚くことは避けられない。

「――慣れてるから。こういうの」

奏はあくまで平淡な口調でそう言った。
ルルーシュは知らない話だが、彼女は以前まで『悪の天使』として忌まれていた。
銃を向けられ、爆薬を使われたことも何度も、数えきれないくらいある。
不器用が災いして、長い間誤解は解けぬまま戦ってきたのだ。
そんな硝煙臭い戦いの日々を送れば、自然と慣れてしまうのも無理はない。
それが良いことなのか悪いことなのかは、果たして定かではなかったが。

「だが、この病院で誰かが殺されているのか――これは問題だな」
「うん」

二人の意見が合致する。
これだけの痕跡があっても、血痕はどこにもない。
どちらかが逃走に成功したか、それとも戦いの場所を移したか。
そして誰かが死んだのか、どちらも生き延びているのか。
――生きているのは、殺し合いに乗っている者か。

(乗っているなら、覚悟はして貰うぞ……)

今は、まだルルーシュとて事を荒立ててはいない。
しかし、もしも殺し合いに乗った者が現れたなら、甘ったれたことを言う気は一切なかった。
容赦なく、この手で討つ。
今までだってそうやって戦ってきたのだから、今更良心の呵責が邪魔をするようなこともない。
優勝させるのは枢木スザク。
それ以外は、たとえこの白い天使であろうとも切り捨てる覚悟は出来ている。
自分を優しいと称した少女を今度は悲しそうな目で一瞥し、ルルーシュは彼女を先導した。
――その頃、新たな来訪者がやってきていることなど露知らずに。





暫く進んだ頃、ルルーシュと奏は地獄のような惨状を目撃することとなった。
うっすらと充満している死臭の中心で、無視できないほどの異物がそこに転がっている。
見たところその痕跡は、爆発のものに近いようだった。
地雷のようなものを使って殺害したのか、とルルーシュは極めて冷静に分析する。
かつて一人の女性『だったもの』は、下半身を無惨にももぎ取られて、体の中身をさらけ出していた。
尊厳も何も保証されない、これが『死』だということを嫌でも心に刻み付けてしまうような、そんな惨劇が、一つの小さな部屋の中に凝縮されているのだ。
恐らくこの女性が殺されたのは、殺し合いが始まってから然程経たぬ頃。
血液は乾いているし、何より火薬の臭いが相当に薄まっているのがその根拠である。

「……これをやった人間はもう、近くには居ないだろうな」
「……うん、そうね」

だとすれば、ひとまずルルーシュ達の先行きは安泰だ。
ギアスの力が規制されている以上、殺し一つにおいても命懸けとなってしまう。
――それに、奏から不信を買ってしまうのも避けたいところだった。
運動能力に乏しいルルーシュでは、奏の持つ『スキル』に対抗できるか怪しい。
敵対に繋がる一手を打つのは、どう考えても愚策にしか思えない。
隣でひとり静かに死体に向かって黙祷を捧げる白い少女は、現時点で最大の味方でありながら、同時に最大の危険因子でもあった。
「気は進まないが、ガーゼや包帯などを確保しておこう。その為にここに来たんだ」

奏に背を向けて棚の中を漁りつつ、ルルーシュは奏から聞いた話を思い出す。
死後の世界――その道理が通用するならば、彼女はほぼ不死者に近いらしい。
自分もゼロレクイエムで散った身、彼女が死人であることを否定は出来ない。
だが、不死なんてものを看過していては、まともなゲームにならないだろう。
聞いてみると、やはり死人も生者と同じ扱いにされているらしかった。
自分の知らないところで何が起きているのか。
"勝利を勝ち取って満足していた自分は、まだまだ甘かったということか――――"
ルルーシュはぎりり、と歯噛みした。

833翼ある銃 ◆fNONBETA4o:2012/10/20(土) 09:38:52 ID:tT/qCs2g0
「ルルーシュ」

医療品をディパックに詰めているルルーシュの耳元で、奏が囁いた。
予期せぬ動作に一瞬ドキリとしたが、その声色は不測の事態を告げるようなものだ。

「誰か来るわ。……ここを見られたら、まずい」

確かに足音がこちらへ近付いてきているのが、ルルーシュにも分かった。
殺し合いに乗っている相手だろうとそうでなかろうと、この状況は非常に良くない。
下半身を吹き飛ばされた死体の転がった部屋で、冷静に医療品を詰める姿。
現場をよく検証すれば、下手人はルルーシュ達でないと分かりそうなものだったが――素人がこの光景を見て最初に向かう矛先は、十中八九ルルーシュと奏だ。

(ぐっ、どうする!? 今から逃げても遅すぎる―――ならば!)

ルルーシュは奏に悟られぬように、口元を笑みの形に歪めた。
逃げる必要も隠れる必要もない。自分たちは堂々としていればいいのだ。

「大丈夫だ、天使。俺たちは何もしていない。正真正銘の無実なんだからな」

そう、自分達は無実なのだ。
疑われるなら、その疑念を晴らしてしまえばいい。
それが出来る『力』が、ルルーシュにはあるのだから。
命令一つでどんな相手だろうと服従させる――ギアスの力が。
余裕の笑みを浮かべたままで、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは部屋のドアが開く瞬間を見た。
そして―――ルルーシュの瞳が赤色に輝く。





「―――殺したのは俺たちじゃあない。『信じろ』」

瞳に浮かんだ鳥のような紋様が、二人の少女に向かって輝きを放つ。
だが、部屋の扉を開けた瞬間に少女の片割れ、朱鷺戸沙耶は既に行動を開始していた。
扉が開く刹那で死体を認識すると、目眩ましを防ぐために目を瞑って飛び込み、奏の背後を取る。
銃を後頭部に突き付け――そして沙耶は、一言警告した。

「下手な動きをすればこの娘を撃つわ。両手を挙げて、その場にじっとしていなさい」
「ッ……!」

ルルーシュとしては、完全な誤算だった。
確かに死臭は漂っているし、外からでも中に何があるかは薄々察することが出来たろう。
が、まさか扉を開けた瞬間に即断出来る程『場慣れした』相手だとは思わない。
ギアスの力に慢心していた彼は、二人をギアスに捉えることに失敗してしまった。
振り返ってギアスを使おうとすれば、奏は射殺される。
奏を見捨てたとして、ギアスの決まった小さな少女に命令の瞬間を見られては意味がない。
しかし、策士ルルーシュはまだ焦ってはいなかった。
このくらいの状況なら、打ち手次第でいくらでも巻き返すことが出来る。
かのシュナイゼル・エル・ブリタニアとの戦いに比べれば、相手の知能も底が知れている。
やれる――ルルーシュは顔に出さずに、そう確信した。

「………マリア………?」

小柄な方の少女・三千院ナギは無惨な死体の前にべたり、とへたり込む。
放送を聞いて、彼女が死んでしまったことは知っていた。
悲しいことだったが、乗り越えて戦う覚悟は出来たと思っていた。
なのに―――あの大好きなマリアが、こんな姿で死んでいる姿。
それを見ても冷静でいられるほど、ナギは大人ではなかったのだ。
彼女の精神はまだ幼い。だから、瞳に浮かんだ大粒の涙を流すことを堪えるのは、無理と言うものだった。

834翼ある銃 ◆fNONBETA4o:2012/10/20(土) 09:39:28 ID:tT/qCs2g0
「う、ああああああああああああっっ!! マリア、マリアぁぁぁぁああああああ!!!」

泣き叫ぶナギを見て悲痛そうに目を細め、沙耶は硬い声色でルルーシュを問い詰める。

「あなたがやったの?」
「いや、そいつらはやってない! 私は信じるぞ!」

この時、ルルーシュは自分が不幸に愛されていると思わずにはいられなかった。
無事にギアスがかかったことが、こんな形で裏目に出ると一体誰が思ったろうか。
愚直な少女の、あまりにも純粋な感性まで、ルルーシュは計算の内には入れていなかったのだ。
勿論、沙耶はそれを見過ごしはしなかった。

「……答えなさい。最初の一瞬、あなたは彼女に、――いえ。本来はあたしにも、なのかしら。『自分たちは殺していない、信じろ』と言ったわね。単刀直入に問うわ。あなたは、彼女に何をしたの?」

面倒なことになった。
こんなことなら早まらずに、頃合いを見てギアスを使うべきだった!
そうしていたならば、何の苦労もなしにこの二人を『手駒』に出来ていたかもしれない。
全てが空回りしている―――。
"糞っ、どうしてこうなったっ!! 俺はどこでミスを犯したんだ!?"
ルルーシュの動揺は幸い、顔の見えていない沙耶に感づかれはしていない。
だが、もはやルルーシュに選択肢はなかった。

「……私からもお願い。何をしたのか教えて、ルルーシュ」

これで、勝算は消えた。奏が抵抗してくれでもすれば、まだ起死回生の好機はあっただろう。
全ては自分自身の行動が裏目に出たことが悪い。自業自得だった。
奏はマイペース気味の天然な性格だったが、短い付き合いの中で彼女の性格は大分承知していた。
――少なくとも、状況を冷静に見られないほど馬鹿な奴ではない。
観念したようにルルーシュはため息を一つ吐いて、そして答えるのだった。

「分かった分かった、降参だよ。全部話そう――俺のことと、ギアスのことを」

優しい声で唱えられた言葉とは裏腹に、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの表情は激怒に歪んでいた。
それは朱鷺戸沙耶への怒りでもあり、同時にミスを犯した自分自身への怒りでもあった。





結論から言って、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアはギアスのことを白状する羽目になった。
この状況下では、真っ赤な嘘を吐くよりは真実を話した方が良さそうだと思ったからだ。
全てを話した。
自分が、神聖ブリタニア帝国を相手に立ち上がった反逆の皇子であること。
この殺し合いにも呼ばれている『魔女』からギアスの力を授かり、絶対遵守の命令権を手に入れたこと。
ただし、現在はどうしてかその力が満足に機能しない。
主催者のシャルル・ジ・ブリタニアが行った何らかの措置で力を封じられている。
ひとまず自分は、奏を守る為にギアスで不都合な展開を変えていくことを決めたこと。
ナギ達と交戦するのが嫌だったため、ギアスによって彼女たちの感情を操作しようとした。

「――信じられない話ね。あたしのいた場所にはブリタニアなんて国はなかったのだけれど……」

沙耶の表情は驚きに満ちている。
どうやら、想像していたもののあまりに斜め上を行き過ぎていたらしかった。
が、とりあえずルルーシュへの敵意は大分薄れたようだ。
ならば良い――状況を切り抜けることには成功した。

「ルルーシュだったか。お前優しい奴なんだな……」

泣きじゃくったままのナギも、すっかりルルーシュを信用している。
まあ、彼女の場合はギアスの力で『信じる』ことを強制されているからかもしれないが。
聡明な読者諸君ならお気付きのことと思うが、ルルーシュの語ったことには巧妙に一つの嘘が隠されていた。
ギアスや自らの素性について本音で語っておきながら、彼のバトルロワイアルにおける目的が、虚実である。
立華奏を守る―――否。正しく守るべき対象は、枢木スザク。
その為になら誰でも殺すし、いくらでも壊す覚悟はある。
甘ったれた感情を懐いたままで、世界を敵に回すことなど出来るわけがないのだから。

835翼ある銃 ◆fNONBETA4o:2012/10/20(土) 09:40:11 ID:tT/qCs2g0
(朱鷺戸沙耶……こいつには、早いところ手を打たなければな)

今この場でギアスを、奏もろともかけたって構いやしない。
ナギと同じようにこの二人にも自分を信じさせてしまえば、彼女たちは自分に忠実な駒となる。
使えるかどうかは別として、余計なことを考えずに使い潰すことだって出来るのだ。
その上で、当面最大の障害は沙耶だった。
タイミングを誤ってギアスにかけようとすれば、まず間違いなく自分は信用を失う。
最悪、殺されたっておかしくはない。

(俺は勝つ)

すっかり警戒を解いた奏に笑顔を見せつつ、彼はそう自らに言い聞かせる。
たとえ何を犠牲にしてでも、やるべきことは果たして見せよう。
悪逆皇帝ルルーシュ―――かつてのその名に恥じぬ暴虐を。

が、ルルーシュは一つの事項を無視してしまっていた。
彼が警戒を解いてくれたと思っている沙耶の心は、未だにルルーシュに対して強い疑念を抱かせている。
ギアスの話は本当だとする。
だが、それで彼が『善人』とするには少々根拠が足りないように思えるのだ。
はっきり言えば、信用できない。
少しでも隙を見せればギアスでこちらを縛ろうとするだろう―――傍に置くには危険すぎる。

(早いところ、どうにかしないといけないわね――)

沙耶もルルーシュと同じく、胸の内に感情を隠して微笑むのだった。
檻で銃を捕えようとする者と、翼で羽ばたこうとする銃。
どちらが最後に笑うのかは、未だ分からないままだ。


【B−2 病院/朝】


【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【装備:デリンジャー2/2@現実】
【所持品:支給品一式、デリンジャーの残弾10/10、ランダム支給品×2、病院で集めた医療器具】
【状態:健康、覚悟】
【思考・行動】
1:スザクを優勝させる。
2:沙耶には早い内に、何かしらの対抗策を打つ。
3:ロロ………
4:1のため利用できる人物は利用し、無用な人物は殺害も辞さない。
5:天使、沙耶、ナギと行動する。
6:島の西側を探索し、24:00ごろに南側の街であの二人と合流する。
【備考】
※死後からの参戦です。
※ギアス制限あり。人の目を見て3メートル以内。『死ね』や『自殺しろ』の命令は無効です。
※白鐘直斗の知り合いの名前を記憶しましたが、今のところ探す気はないようです。



【立華奏@Angel Beats!】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:健康】
【思考・行動】
0:結弦を探す。
1:結弦……よかった
2:ルルーシュ、沙耶、ナギと行動する。
3:ルルーシュの言動に注意。
【備考】
※最終話直前からの参戦。
※ハーモニクス(コピー能力)のみ制限。

836翼ある銃 ◆fNONBETA4o:2012/10/20(土) 09:40:33 ID:tT/qCs2g0
【三千院ナギ@ハヤテのごとく!】
【装備:クリュサオル(chrysaor)@そらのおとしもの】
【所持品:支給品一式 大量のエロ本@そらのおとしもの 目安箱@めだかボックス 水@現実 ジュース@現実 角砂糖@現実】
【状態:悲しみ、決意、ギアス】
【思考・行動】
1:沙耶をしっかりサポートするのだ!
2:ルルーシュを信じる。
3:ゲームを終わらせるのだ。
4:マリア……。
【備考】
※アテネ編直前からの参戦。
※ある程度の参加者の特徴を知っています(基準は今までハヤテのごとく!の原作、アニメ、劇場版、OVAでパロディまたは伏せ字にされた事のある作品のキャラクターが該当します)
※『信じろ』とギアスをかけられました


【朱鷺戸沙耶@リトルバスターズ!】
【装備:沙耶の拳銃(7/7)@リトルバスターズ!】
【所持品:なし?】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:理樹君、あたし頑張るから。
2:ルルーシュに不信感。早いうちに何か手を打ちたい。
3:ナギや理樹君のリトルバスターズなどを全力で護る。
4:命なんて惜しくない!
【備考】
※首輪をしていません。
※名簿に名前が載っていません。

837 ◆fNONBETA4o:2012/10/20(土) 09:41:51 ID:tT/qCs2g0
投下終了です。
タイトルは漫画『スパイラル〜推理の絆〜』に登場するキャラクター『カノン・ヒルベルト』の二つ名より

838名無しさん:2012/10/20(土) 14:53:52 ID:5rdVZ1.60
投下乙
ルルーシュは行動する仲間が増えたけど、完全に信用されてない以上どう転ぶかわかんないな
リトバスやってないからわからんけど、ルルーシュが驚くほど沙耶が場慣れしてたとは思わなかった
そういえばハヤテのごとくってギアスのパロディとかやってたよね

839 ◆fNONBETA4o:2012/10/20(土) 18:42:12 ID:tT/qCs2g0
予約が可能なのか分かりませんが
主催陣営を予約します

840 ◆fNONBETA4o:2012/10/20(土) 23:16:54 ID:tT/qCs2g0
作品が完成したので明日にでも投下するつもりなんですが、
主催陣営の面子が数名増えることになってしまいました。
もしかすると議論を起こしてしまうかもしれないとだけ

841名無しさん:2012/10/22(月) 07:38:52 ID:1/2gW6.60
別にいいと思うけど>主催陣営の面子が増える
最近のロワでは極端に珍しいわけではないと思うし

無責任かもしれないけど、読み手からすれば面白ければそれでいい、だし

842名無しさん:2012/10/23(火) 02:19:26 ID:MgPGsBzs0
主催の中にも対主催的な考えを持つ人間が紛れていると面白そうだね

843 ◆fNONBETA4o:2012/10/28(日) 14:17:11 ID:rT1W8zEA0
すみません、データが吹っ飛んだせいでどうしても投下できませんでした。
なのでこのSSは破棄します。申し訳ない。

844 ◆nkpn9y.ea6:2012/11/06(火) 20:56:54 ID:2CSQgDKY0
黒崎一護、涼宮ハルヒ、バーサーカー、羽川翼、忍野忍を予約します。

845名無しさん:2012/11/08(木) 20:04:48 ID:9g3ps3ys0
今更だけど雲雀って恭「也」じゃなくて恭「弥」じゃね?

846 ◆WzpMn05TJA:2012/11/24(土) 17:46:09 ID:xKutL6v60
今更ながら今日には投稿したいと思います

亀更新で申し訳ないです

847イキキル(非)日常編 ◆WzpMn05TJA:2012/11/24(土) 20:51:49 ID:xKutL6v60
022


後日談というか、今回のオチ。

この殺し合いには答えなんかない。
そんな当たり前のオチ。
面白くもなんともない、珍しくもなんともない、人間であった僕の最後のオチ。
まあ、落ち着いてくれ。
落ち着いて語るには酷いオチだが。
人間最後のオチがこんな笑えない昭和なくだらないダジャレで終えたのは悔しいが。


救いのないひとりの1人の一人の何回でも語るが――独りのある少年の人間が終わった『物語』。


【????@???  死亡】



000


今回の話を語るには僕だけでは語り尽くせない。
だって結局僕は僕の、例えば戦場ヶ原には戦場ヶ原の、ゆりにはゆりの。
物語の主人公は本人にしかわからないのだから。


001


直井文人と白鐘直斗は特に会話も無い探索が続く。
直井も直井で直斗に隠し事はしているものの特に直斗を襲う様な事は全く考えては居なかった。
スタンスはあくまで自分及び音無結弦の脱出。おまけ感覚でその他の脱出。
敵では無い限り切り捨てるつもりもない。

いくら人を嫌っていても仲間がたくさん必要なことが必須条件に近いと考えている。

「ん……?」

幾多の戦いを繰り広げた直井は顔を遠くへ見やるように上げて立ち止まる。
直斗はそれに気付かないまま2、3歩前に進んだが直井の態度が変わった事に戸惑いながらも直井に目をやった。

848イキキル(非)日常編 ◆WzpMn05TJA:2012/11/24(土) 20:52:42 ID:xKutL6v60

(どうしたんだ、直井君……?)

その疑問を口にはしなかったが直井はその直斗の返事をすぐ返す事となる。


002


2人には結局信頼関係は築けなかった。

「岸沼さんにはどんな物が支給されていたの〜」

言葉だけでは呑気を人に伝染させそうな少女の声が聞こえていた。
しかし心のなかでは疑心暗鬼、人を疑う目で睨む少女であった。
青い髪の、本来は優しさで満ちたただの高校生の水瀬名雪。

その傍らに、疑われていることすら気付かぬこちらもただの高校生の岸沼良樹の姿がある。
しかしこちらは、人の死と隣り合った体験のある、という点では普通ではなく異常な体験を持っている。

「こっちには、長ドスと銃。それにこれはスマホか?待ち受けは何故かトランプの3なんだが?」

実際には岸沼に支給された銃はコルト・パイソン357マグナムというリボルバー拳銃。
そしてスマホと勘違いしたそれはPDAである。
本来のシークレットゲームでは長沢勇治の首輪の解除条件に必要なものである。

「武器が2つあるには当たりなのかもな」

そう言って無愛想な顔から少しだけ頬が緩む。
目の前の水瀬名雪が襲わないから。
普通の人間は襲わないのだがこれまでに遭遇したのが普通ではない人間――園崎詩音――ユーフェミア――だったのだから。
そんな他愛な事で頬を緩んでしまうのだが、そんな他愛ない事が日常に溢れていたことを考えると日常とは異次元だったのではと思う岸沼であった。
天神小学校、バトルロワイアルが開始された無人島。
もしかしたら先に述べた2つの方が現実なのかもしれない。

849イキキル(非)日常編 ◆WzpMn05TJA:2012/11/24(土) 20:53:14 ID:xKutL6v60

「ふーん……。2つも武器入っているんだぁ〜。それは運がいいねぇ〜」
「まぁ」

岸沼は名雪の本音を皮肉と捉えていた。
だからであった。
名雪のどす黒い岸沼への嫌悪感を気付かなかった。


003


そして鳴り響く放送。
岸沼の支給品確認から10分かかったか、かからなかったかぐらい後の出来事であった。

死者の数は14名。
岸沼が天神小学校で発見した死体に比べれば圧倒的に少ない数。
だがそれとこれは別。
あの小学校でのサチコやヨシカズの様な理不尽な幽霊共がただ殺戮をしたわけではない。
哲史の妹の由香を誘拐した様な刻命の様な頭の狂った連中が殺したのだ。
たった6時間という睡眠時間としても少し短いくらいの時間で、だ。

(あの緑の髪の子や催眠術にかかったみたいな外国人の人も殺した人物もいるのか?)

そんな事が過る。

(岸沼良樹は当然死んでないか。チッ、もう少しでこの金髪の不良(笑)の嘘が破けたかもしれないのに……)

そんな事はともかく2人にとって『目的』の人物の名前が1つ流れた。
少年にとっては自分の命を優先してでも助けたかった少女。
少女にとっては嘘を付き隠そうとする少年の目の前で無様に殺したかった少女。
篠崎あゆみの名前が含まれていた。

岸沼は茫然と急に糸の切れたマリオネットの様に地面に脚が吸い込まれる。
握っていた3のPDAもするりと転がり岸沼の目の前に落ちる。
そこには淡くディスプレイの大きな画面でデザインの凝った3のトランプが表示されて、岸沼の目にそれだけが映りこむ。

850イキキル(非)日常編 ◆WzpMn05TJA:2012/11/24(土) 20:53:47 ID:xKutL6v60

(3、3、3、3、3、3、3、3、3、3333333333333333333333333)

わけのわからない3の数字に魅了されたみたいにそれだけが思考を支配する。
まるで自分は壊れたコンピュータと変わらないのでは無いかと、自嘲気味に、嗤う。

(今、俺が笑ったのは……本当にそれだけ、か……?)


004


(目の前で殺す計画は中止か……。あーあ、生かす価値が無くなったなぁ〜)

金髪の男を盗み見る。
本当の名前も知らない赤の他人。
茫然としている今その背中をぐさりと刺してやろう。
名雪は小型のナイフをデイパックから抜き取る。
なんの変哲のないナイフ。
だが殺傷能力は普通のナイフだからこそ信頼出来る。
シンプル・イズ・ベスト。
まさにそんな言葉のよく似合う一本のナイフ。
暗殺に使えるくらいの小ささなのも有利だろう。
本当に刺されてやっと気付く手遅れの時間。
既に自分は死んだのだと死んでから気付くだろう。

(死んだら気付くもなにもないか。アホらしい)

偽物の背中まであと1メートル。
『偽物』語のはじまりだ。



005


嘘だ。
ふざけんじゃねーよ!
ふざけんな。
俺は、俺は……!!
哲史に気がある事ぐらいわかっている!
だからって篠崎を諦めているわけじゃねーのによ!
なんで生還したかわかんねーじゃねかよ!

ちくしょう。
……畜生。

復讐してやる……。
俺が再び生還してやる。

スマホに手を伸ばす。
スマホは最新の情報ツールだ。
つまり殺し合いの情報が入っていると見て良いだろう。

(ん?首輪の解除条件だと……?)

851イキキル(非)日常編 ◆WzpMn05TJA:2012/11/24(土) 20:54:16 ID:xKutL6v60

そこにはこのような文章が書きこまれてあった。

『3名以上の殺害。ただし首輪の作動は含まない。』

3人の殺害……?
これはバトルロワイアルだぞ?
最後まで生き残るのが条件のはずだ。

つまりこれは、裏技なのか?
それか1人1人優勝の為の――俺の脱出条件が違うのかもしれない。
篠崎が居ないこんな世界だったら……。

「――ッ!?」

背中に食い込もうとするなにか?
水瀬の奴もか……?

俺のスイッチが切り替わった。
赤信号で停まっていたものが青信号に切り替わり、急発進する感覚。
これの正体は。

明確な。
遂行な。
駆逐な
残酷な。
最悪な。

――殺意。

馬鹿が――!
殺してやるよ。

覚醒。


006


「んなっ!?」

刺せると思ったナイフはわずか制服に穴に近い傷を作っただけで前にダイブして避けられた。
そして。

「うおおおおおおっっ!」

先程の人間とは思えない程のぎらついた燃える様な目。
名雪同様、岸沼もまた殺す事を目的とする鬼と変わらない者/物になった。
もう岸沼は安心した目を向けない。
それはすべての人物にも変わらない。
持田哲志と中嶋直美の仲の良いクラスメートにも変わらない。
生きる目的が変わった。

「てめえみたいな奴が居るから、篠崎はッ」
「それを言うならあんたのような奴も居るから篠崎さんは死んだんじゃないのぉ?」

馬鹿にした目、口調で話す名雪。
名雪を知る人間ですら、もう彼女は本当に名雪なのかと即答出来ないぐらい堕ちた。

852イキキル(非)日常編 ◆WzpMn05TJA:2012/11/24(土) 20:54:39 ID:xKutL6v60

「なんも知らねえ奴が篠崎を語るんじゃねー!」

長ドスを抜く岸沼。
ナイフを向ける名雪。


たった1つの放送という引き金でお互いを向ける顔つきが変わっていた。
親の仇を討つ武将の様にただ目の前の敵を殺す、そんな思考のなかで。


007


キン、キン、キン。
金属音は低範囲ながら当然鳴り響いていた。

「おい白鐘、音が聞こえるか?」

学ランに身を包む直井文人が最初に空気の振動から異常を感じとり、そして死んだ世界の経験からそれは戦った戦闘音だということに気付く。

最初は彼の同行者の白鐘直人は「音?」と気付いて居なかったが約3秒耳を澄ませると「聞こえた」と頷きながら肯定した。

「さて、困った事になったな……」

珍しく頭を悩ませ思考をフル回転させたのは直井であった。
バトルロワイアル。
巻き込まれ約8時間になるだろうか。
既に何人もの人が抵抗も虚しく犠牲者が出て、その生を終えている。
だが自分と直斗は全くと言って良い程その殺し合いから無縁の位置に居た。
例外があるならば主催者のシャルル・ジ・ブリタニアの息子のルルーシュ・ヴィ・ブリタニアと、自分達の生徒会長である立華奏の邂逅時のいざこざである。
だがあれは自分はともかく、直斗とルルーシュと奏には殺意のない消化試合のようなものであった。
1度戦闘に巻き込まれれば芋釣る式に戦闘に巻き込まれていくであろう。

「何言ってんだよ直井君、襲われている人が居るなら助けなくちゃ」
「確かにそうかもしれないが……」

853イキキル(非)日常編 ◆WzpMn05TJA:2012/11/24(土) 20:55:05 ID:xKutL6v60

どうも歯切れが悪い直井。
直斗はその様子が珍しいような新鮮」のように思えたのだ。
彼の性格や直斗から見て、創り出した『直井文人』の人物像は何者にも恐れない鋼の様に強い意志とどんな小さなことでも見逃さずに考察する観察力、全てを音無結弦を絶対とする価値観。
最後の音無第一が無ければ彼はクールな一匹狼という印象すら感じられる程に。
だが彼の音無第一な考えはとても人間らしい思考とも取れる。
直斗の印象はこれがあったこそ結構な好奇心や好人物的印象の1つの材料になっていた。

「ん……」

今は途切れがちだがしかし何かが大きく動いている様なそんな音は微かに耳に届く。
この音が早く助けないという直斗の心を突き動かす。

「お前はさっき『襲われている人が居るなら助けなくちゃ』と言ったな」
「それはそうでしょう、助けないとそれこそ主催者の思う壺ですよ」
「しかしだなその考えは片方が被害者、片方は加害者という時でないと通用しない論理ではないか?」

片方が被害者。
片方が加害者。
直斗は直井の言わんとしたことにようやく理解して追いつけた。

「どちらも殺し合いを肯定している者と言う事ですか?」
「そういう可能性があるということを理解してもらいたい」
「でもそんな事言ったらキリがないじゃないですか」
「それはわかっているつもりだ」

直井は尚考え、ようやく答えを導き出す。

「近づいてみるか」


008


「あんた、よくそんな短いナイフで俺の長ドスを受け止められるな」

2人の戦いを有利に進めていたのは言わずもがな岸沼であった。
元々が男で力は当然岸沼が上であった。
名雪は陸上部部長という肩書があるが、体力と脚が速いという逃走には有利というだけでこと戦闘では長期戦にもなっていない限り有利には傾かないであろう。
だが名雪も人間。

854イキキル(非)日常編 ◆WzpMn05TJA:2012/11/24(土) 20:55:30 ID:xKutL6v60
そんな計算だけだは殺されない。
意地、気合、根性、信念、怨恨。
それが人間として備わっている限り可能性は可能性でしかない。

現に名雪は自分の持つ携帯ナイフの何倍の間合いを誇る長ドスを数回受け止めている。
だが名雪の持つナイフは刃こぼれしていっていた。
長ドスは元々戦闘用の武器であり刃こぼれはしてはいるが名雪のナイフよりは大分マシである。

「君みたいな卑怯者の嘘吐きに負けられるわけないよ」
「だからなんで俺が卑怯者の嘘吐きなんだよ!わけわかんねーよ!」

未だシラを切る。
名雪は小さく「チィ」と舌打ちをする。

だが岸沼には身に覚えはまるでない。
当然瀬川虎鉄に踊らされている事を両者共わかっていない為であるのだが。

(コルト・パイソンを使うか?)

だが籠められた弾は6発。
予備弾は30発。
合計36発。

これから自分が優勝する為に何発必要になるか。

そう考えるとこのまま1人を殺すだけに引き金を引くのを躊躇わせた。
その点長ドスは折られない限り、研いだりするだけで使えるようになる。

「まあ良い、そろそろ決着を着けるか」

長ドスを名雪に突く。
心臓一直線に真っ直ぐに線が引かれるが如く。

「あ……」

今まで岸沼は斬る攻撃しかしてこなく、それをナイフで受け流していた名雪。
それが突如突く攻撃へと変わっていた。
斬る予想しかしていなかった名雪の敗北。
心臓を貫けば名雪の死で戦闘が終わる。
――貫けばの話である。

855イキキル(非)日常編 ◆WzpMn05TJA:2012/11/24(土) 20:55:57 ID:xKutL6v60





「弱い者いじめは関心しませんね」

岸沼を螺子伏せるが如く2本の巨大な螺子が白鐘直斗から投擲されていた。

「なんだと?」

1本は長ドスを折って、1本は岸沼の脇腹に、螺子がそれぞれ命中していた。

「イテぇ……」

脇腹は辺りどころが良く過度な出血はなく、制服が破れ、傷が出来る程度であった。
まだやれる。
岸沼はコルト・パイソンを素早く握り乱入者の直斗に向けた。

(反応が速い!?)

直斗は岸沼の自分に対する対処法が速すぎる事に驚きと恐怖心が襲いかかる。
しかし、次の瞬間には直斗の驚きと恐怖心は、安心と信頼に変換されていた。





「おっと、君はこの神である僕に背を向けてしまったね」

直井文人の刀の刃が岸沼の首に充てられる。
岸沼は銃口を名雪の方向に居る直斗に向けたまま静止している。

「……お前が貫いた瞬間あの2人を撃つ、ぞ」
「神相手に動じない、死が背中にあるのに諦めない。格好良い精神ですね」

神は、楽しそうに嗤う。

856イキキル(非)日常編 ◆WzpMn05TJA:2012/11/24(土) 20:56:49 ID:xKutL6v60
009


なんなんだ、この2人は……?

これは俺と水瀬の問題であり、第三者どころが第四者まで現れる始末。
しかも水瀬を庇っている。
奴らは大きく勘違いをしていやがる。
そいつは既に狂った人間なのに。

まぁ、俺も狂った側なのだがな。


「男に褒められてもなぁ」

自称「神」と名乗る少年は些かまだ幼く見える。
恐らく俺と同年代くらいだろうか。
だが俺を驚かせたのはその年齢には見られない本物の殺意とかよくわからないが、そんな感じのものを感じる。
やるといったらやる。
殺るといったら殺る。

天神小学校で見た狂っていく目とは同じようで、似ているようで、異なっている。

あれはもうとっくに……。

「僕も音無さん以外に褒められても嬉しくないですね」
「俺も篠崎以外に褒められてもなんとも思わないがな」

男の言う音無とかいう奴は確か参加者にそれらしき名前があったがビンゴかどうかは不明。
だが彼はその音無とかいう奴を探す気はあるのかわからないが他の参加者と協力して俺らとの殺し合いに積極的に混ざる精神。
人間としては強い。

だが人間は守らなくてはいけない人間が居なくなると変わるもんだ。
篠崎の死を知らなかったら水瀬の茶番に未だ付き合っていただろう。

「これは僕と似た発想で、どうだいここは撤退してみないかい?」
「はぁ!?」

有利過ぎるこの展開で俺を逃がす?
馬鹿なのかこいつは。

人殺しも躊躇わないような奴がおめおめと逃がすとは。

「ちょっと直井君、野放しにしちゃうの?」

857イキキル(非)日常編 ◆WzpMn05TJA:2012/11/24(土) 20:57:48 ID:xKutL6v60

相方の方も驚いている。
俺が相方でもこんな反応をするかもな。

「神の気まぐれです。さあ今すぐ逃げろ」
「わかったよ……」

刀を下して俺に道を作る直井とかいう男。
なんだったんだいったい。

俺はその作られた道を舌打ちしながら歩く。




「クソッ!?」

長ドスは既に折られた。
今の俺は跳んで逃げるしかなかった。

「卑怯者が」

直井とかいう奴が無防備な俺の背中を斬ってきやがった。
警戒していたが、だまし討ちで仕留めにかかるとか躊躇いがないのは予想道理だ。

「神の気まぐれだ、もうないさ」

信用出来るか!
跳んだ姿勢から走る姿勢へと変え、一目散で撤退していった。


010


「大丈夫?」

直斗が名雪に声を掛けたのは岸沼が見えなくなってからであった。

「うん、ありがとうだよ〜」

呑気な声であった。
ほっとする直斗。
そして直井に向き合う。

「どうしてあんな行動を……」
「気まぐれだと言ったはずだ」

そして直井の口は閉じていた。
今はなにも言うつもりがないらしい。

「私は水瀬名雪です。よろしく〜」
「僕は白鐘直斗。こっちが直井文人です」

直井の反応は無し。

858イキキル(非)日常編 ◆WzpMn05TJA:2012/11/24(土) 20:58:16 ID:xKutL6v60
いつも道理であった。



(まさか助けてくれるなんて嬉しい誤算。この2人は襲わないで盾になってもらった方が安全ね。あんな偽物よりよっぽど強かったしね)

望み以上の展開に笑う者1人。



(この女、信用出来ないな……。むしろあの男の味方につくべきだったのかもしれない。
最悪な展開に巻き込まれたかもな。白鐘、油断するな)

望みの展開どころが最悪な展開だと察す者1人。



【B-4 野原/朝】



【直井文人@Angel Beats!】
【装備:飛梅@BLEACH】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:健康、ギアス】
【思考・行動】
1:音無さんと合流したい。
2:音無さん以外の世界戦線メンバー、直斗の仲間と合流、脱出。
3:水瀬とは極力関わらない。
4:とりあえず、ルルーシュに言われた通りに行動してやる。
5:止むを得ない場合殺しに躊躇いはない。
【備考】
※ユイが消える少し前からの参戦です。
※現在『枢木スザクを守れ』のギアスにかかっています。
ギアスの効果は、枢木スザクを見つけたときに発動します。




【白鐘直斗@ペルソナ4】
【装備:球磨川禊の螺子@めだかボックス】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:健康、ギアス】
【思考・行動】
1:先輩方または戦線メンバーとの合流。
2:打倒主催者、多くの人を集めて島からの脱出。
3:直井、名雪と共に地図を端から探索していく。
4:今はルルーシュに言われた通りに行動する。
【備考】
※自称特別捜査隊に加わった後からの参戦です。
※枢木スザクの容姿を教えられました。
※現在『枢木スザクを守れ』のギアスにかかっています。
ギアスの効果は、枢木スザクを見つけたときに発動します



【水瀬名雪@Kanon】
【装備:刻命の回収したサバイバルナイフ@コープスパーティー】
【所持品:支給品一式 白いハンカチ@現実 ランダム支給品×2】
【状態:健康、憎しみ】
【思考・行動】
1:祐一と自身の生存
2:直井と直斗は襲わない
【備考】
※名雪ルート後からの参戦。
※瀬川虎鉄を岸沼良樹と誤認しています。
※岸沼良樹本人を偽物だと思っています。

859イキキル非日常編 ◆WzpMn05TJA:2012/11/24(土) 20:58:54 ID:xKutL6v60



011


そんなこんな僕が知らない展開が繰り広げられていただろう。
これは少し長かった前章とでも言うのか。

僕という人間が終わる物語。
阿良々木暦の物語である。


012


「C-7からC-5まで来たわね。もう少しでC-4ね」
「でもあっちも東側から合流して来るとは限らないけどな」
「でも言ったでしょう。こうなった以上再会するのは不可能に近いとね」

誰かが死ぬ事。
普段なら考えられない事なんだけど……いや僕は吸血鬼ハンターやら神原やら死と隣り合わせな事もあったがそんな事考えたくは無いな。
いずれ僕が死ぬ事になっても、死ぬ瞬間まで希望は持ちたい。

そんな事はただの寄り道であり、この話はA-7に居るであろう井ノ原達の話である。
確かに西側からの方が合流しやすいだろう。


『あっちだと禁止エリアから逃げて来る人が居るかもしれない』

マーダーが居る前提な話だがやはり危険な橋は渡りたくないのは物騒な仲村も同じらしい。
それを口にしたら睨まれた。

『こんな美少女を物騒とは酷い話だわー。それに結局仲村って呼び方に戻ってるじゃない』

なんだろうか。
フラグ建ててるくせにとかなんとか言われている気がするが、僕はあまり名前で呼ぶ習慣がないからな。

860イキキル非日常編 ◆WzpMn05TJA:2012/11/24(土) 20:59:23 ID:xKutL6v60
『綺麗なバラにはトゲがあるってね』

戦場ヶ原叱り、忍に叱り、仲村も例外でないと。

『生意気言うな、死ね!』
『横暴だな、オイッ!?』
『死んだ世界のジョークよ』
『性質が悪すぎる』


何故か半分以上本題と無関係な話の謎の回想終了。


「このまま墓地へレッツゴー!」
「なんで元気そうなんだよ」
「だって墓地とか正直誰も近づかないでしょう」

それでは仲間との再会出来ないのではないだろうか?
でも戦いたくもない。
このバトルロワイアルはジレンマとぶつかりにぶつかり合う選択に溢れ過ぎている。

「死んだ奴化けてたりするかもよ」
「んじゃあ、私も化けているって事か」

…………。
………………。

「そうだったな!?」

完全に生きた人間扱いしてた。
何回も死んだ世界の話をされていたのに。

「なんかこの辺殺気に満ちている気がしない?」
「わかるわけねーよ」

話に興味が無くなったとばかりに仲村は話を変えた。
というか殺気に満ちているってなんだよ。

「いや……」

キン、キン、キン。

嫌な音が、する。
嫌な予感。が。する。
嫌な。何かが。起き、て居、る。

日常的にも聞きなれた様な、音。

「これは、」

ガンッ!

壊れた。
何が。
わからない。

嫌な
音。
消えて。

861イキキル非日常編 ◆WzpMn05TJA:2012/11/24(土) 20:59:48 ID:xKutL6v60

「金属音よ」

仲村の声がした。
確かに金属音だ。
トンカチで螺子を打っているような金属同士の喧嘩しているような音。

「もしかしたら戦っているかもしれないわ」

方向は北のA地点から。
音が止んだ、という事は負けた人が殺されるかもしれないということ。

「助けなくちゃ……」
「逃げなくて良いの阿良々木君」

違う。
逃げたらだめだ。
忍野なら「自分は助けない、相手が自分で勝手に助かるだけ」と見透かした風に言うだろう。

「僕は助ける。相手を見殺しには出来ない」


013


「格好悪すぎるな、クソッ」

武器を失い見事な程に無様に逃げて朝の原を駆ける岸沼。
そこには焦り。
――そして復讐を遂げる意志があった。

「仇、待ってろよ」

篠崎あゆみが望んでいようが望まないだろうが関係なかった。
岸沼良樹が、自分がそれを望んでいるのだから。

そして目の前に獲物なる2人が見えた。
3人の殺害で首輪が外れるという。
ならば首輪を外しながら、その復讐を遂げるだけだ。


014


助ける意志。
復讐の意志。

2つの意志が重なる。

862イキキル非日常編 ◆WzpMn05TJA:2012/11/24(土) 21:00:19 ID:xKutL6v60
015



「おい、大丈夫か」

暦の声が心配そうな声だった。
いきなり敵意がない事に察知した岸沼。

ならば最初は敵意を見せない方が良いだろう。

「ああ、大丈夫だ」

疲れた表情(カオ)。
これは岸沼の本心の仮面(カオ)。

そこで暦は金髪の頭を見て1つピンとした名前が浮かんだ。

「あんた、岸沼良樹か……?」

中嶋直美の同級生という特徴に当てはまった、気がした。


016


「なんで、知って……」

その反応は当たっているのだろう。
これは大きな一歩だ。
後ろに居た仲村と目を合わせる。
喜びを分かち合おう。

「阿良々木君!!」
「え……」

後ろから痛みが飛んできた。
倒れて、突進された事に気付く。

「何する岸沼、僕達は危害を加える気なんかないぞ」
「黙れ、貴様拷問でもして篠崎を殺したか?」
「はぁ!?」

違う、そう言いかけたが言う間もなく黒い銃を僕に見せる。

「ならお前は俺の手で殺してやる」

一発。
見えない速度で空気が切り裂かれた。
こんな武器なのかよ。
銃って本当に簡単に人を殺せるではないか。

863イキキル非日常編 ◆WzpMn05TJA:2012/11/24(土) 21:00:51 ID:xKutL6v60

「――来いっ!」

僕が囮だ。
絶対に説得してみせる。
でも仲村は危険には巻き込めない。

女独り守れない男では戦場ヶ原に笑われてしまう。

「仲村、お前はここで待機だ!絶対に来るな!」
「阿良々木君!?」
「その変わり、戦場ヶ原と会った時僕の格好良さを伝えてくれよ!」

僕はキメ顔でそう言った。


017


もう道なんかわからなかった。
仲村に待機なんて言っちゃたが、もう会えないだろう。
命を軽くなんて考えているわけではないのだが毎回こんな事になるのだろうか。

僕が死んだら忍がキスショットに戻って、参加者を皆殺しとかしてしまうのだろうか。
そんな忍なんか見たくないな。
死ぬときは一緒とか言ったくせに情けない。

おい、妹2人。
僕はお前この姿を正義と言ってくれるか?
いや、強くない僕は正義ではないのかもな。

神原も千石はどうだろうか。
僕はあまり立派では無かった先輩みたに見られているか。

羽川のおっぱいで死ねたら最高だよな。
変態ですみません。

「仲村には手を出さないんだな」
「女を失う気持ちはよくわかるぜ。今の俺そのものだからな」
「ははっ」

根は良い奴みたいだな。
最初から殺し合いに乗っていたわけではないだろう。

「でも俺はお前の名前は中嶋に聞いただけだ。篠崎あゆみは殺していないし会ってすらいない」
「なら、優勝して蘇らせるだけだ」
「……そうなるよな」

僕だってあのとき親しい名前が呼ばれていたら、
絶対に今とは違う事になっていただろう。
運が良かったに過ぎない。

「僕だって武器はある」

FN ブローニング M1910を見せつける。

864イキキル非日常編 ◆WzpMn05TJA:2012/11/24(土) 21:01:16 ID:xKutL6v60

(いや、引き金なんか引くわけにはいかない)

持ってしまい引き金を引きたい衝動に駆られる。
大きな力は振るいたくなる悪魔がいると聞くがあながち嘘ではないらしい。

「ここで良いだろう」

岸沼がもう仲村から離れた位置にたどり着いたと言いたいのだろう。
脚を止め、辺りを見渡す。
他の場所よりひんやりしていた。
まるで焼かれてしまったあの廃塾のような『終わった』感覚のある地。
そこは墓地であった。

仲村と先程墓地に向かうなんて会話がかなり前に思える。

「お前の最後にふさわしいよな。もう眠れよ」

躊躇いなく僕に銃弾を飛ばす。
2発目の銃弾は僕の頬を掠る。

「ぐぅ……」

痛い。
掠っただけでこの痛さだ。
半吸血鬼ではなく人間である僕だ。
そう何発も耐えられないだろう。

「痛いか?だが怯みの隙が大きいな」

戦場ヶ原。
ごめんよ。
お前は僕の仇討ちなんて岸沼に殺意が湧くだろう。
どうか怒らないで。
このゲームに悪者なんか居ないのだから。
居るとしたら自分のエゴだ。
どうか、幸せに生きてくれ。


――――銃声が鳴った。
独りの少年の想いをかき消す様な壊す音。



「阿良々木君……」

少年の耳に聞きなれたばかりの待機をさせて居るはずのない女の声が聞こえた気がした。

865イキキル非日常編 ◆WzpMn05TJA:2012/11/24(土) 21:01:43 ID:xKutL6v60
018


「阿良々木君ごときに私が守られるわけないじゃない」

阿良々木と岸沼君が居なくなった私は悩んでいた。
助けるか、このまま帰るはずのない帰りを待つか。

答えは考えたのが馬鹿らしくなる答えだった。
リーダーが部下を見捨てるわけがない。

私はデイパックを強く握る。
体力も脚の速さも鍛えている。

私は戦線をしていて良かったと思う。

遠くから2人が見えなくならない様に追いかける。
速さは地味ながらも私の方が速い。





「あそこは、墓地ね」

そういえば阿良々木君との目的地はここだっけ。
こんな形でここに着くとは。

そして銃声が鳴った。
阿良々木君が掠っている。
速く助けないと。

「ちょっと、待って」

しかし走る私より早く岸沼君が銃声を鳴らした。
時間が一瞬でも止まったりはしなかった。
あと5秒も早ければ助けられただろう位置で阿良々木君が倒れる姿を見た。

「阿良々木君……」


019


「放送か?別にどうでも良いか。おや、そっちの女来たんだ」

岸沼君が私に気付く。
やれやれと言った感じ。
すごくムカッときた。
確かに今は定時放送じゃない放送なんかどうでも良いけど。
こんな奴に阿良々木君は。

「私は阿良々木君みたいに優しくないわよ、殺す」

鉈を抜く。
銃を持っていようがなんだろうがむかつくから殺す。
死んだ世界のジョークではない。
私の本心。

866イキキル非日常編 ◆WzpMn05TJA:2012/11/24(土) 21:02:15 ID:xKutL6v60

「そうかそうか。しかしお前最低だな」
「お前が言うな」

鉈なんかあまり使わないけど、ハルバードを扱う野田君をイメージして構える。

「だって、そうじゃね?だってこいつ銃向けても俺を殺さなかったんだぜ?俺を殺さなかったそいつの意志を曲げちまうのかよ?」
「――!?」

確かにこんな奴を阿良々木君は……。

「お前も隙だらけ」
「なっ」

考えなかったら振れたかもしれない鉈。
だが振られる事なく銃弾が放たれた。


020


守りたいか。
守りたいか。
守りたいか。
守りたいか。
守りたいか。
守りたいか。

守りたい。


021


「あ……、僕は何を?」

意識があった。
2度とこの世には戻れるとは思わなかった意識があった。
脇腹を撃たれ少し貧血気味になり倒れた、そんなところか。

だが、意識を取り戻した先の光景は何故か置いてきたはずの仲村。
脳みそをまき散らして倒れた岸沼。
これしか目に入らなかった。

時間が経ってもやもやとした視界が復元する。

「ん……?」

そして僕は気付いた。
僕の持つ拳銃から硝煙のにおいと煙が立ち込めていた。

「僕が、やったのか?」

自分を守るために?

「僕は、こんな事望んでなんかいない」

867イキキル非日常編 ◆WzpMn05TJA:2012/11/24(土) 21:02:57 ID:xKutL6v60
023


「僕はもう人間じゃないな」

人を殺した、そんな奴は人間の世界では生きていけない。
吸血鬼の時でも超える事のなかった一線を越してしまった。

もう戻れない。
僕は人間でも、吸血鬼でもなんでもない。
僕は何者なんだ。



「あなたは、人間よ」

抱きしめられた。
女の子らしくない性格の彼女でも石鹸の良い香りがした。

「違う。僕は、人間じゃなくなった」
「苦しめるからこそあなたは人間なのよ。
そんな人だからバトルロワイアルを生き残る資格があるの。それを理解しなさい阿良々木君」

そんな資格が僕なんかにあるかよ。

「それに見てなさい阿良々木君」

仲村は僕から離れ、落ちた鉈を拾う。
なにをするのか、問うても答えはない。

数歩歩き仲村は岸沼の心臓目掛けてその鉈を振り落す。
血がぐしょ、と溢れる。

「何してんだよ仲村!?」
「阿良々木君は岸沼君を殺してないわ」

仲村は僕に振り向いた。
優しく僕にあやす様に笑う。

「今、私が岸沼君を殺したの。だから阿良々木君は心を痛める事はないわ」
「仲村……」

僕はこんな女の子に罪を着させてしまっても良いのか。
いや、最悪だ。

「違う僕がやったんだ」
「私の手柄を横取りするな!」
「むしろ横取りしたのはお前だ!」

そんな子供みたいな言い合いをして僕は改めて、仲村ゆりのすごさを知った。

「罪を償って、バトルロワイアルを終わらせよう」
「そうね」
「偽善だとしても僕は……、負けない。着いて来てくれるかな仲村?」
「当然じゃない」

今まで以上に、僕は胸に刻む。
口だけではなく、必ずこんな悲劇は起こらせない。

868イキキル非日常編 ◆WzpMn05TJA:2012/11/24(土) 21:03:17 ID:xKutL6v60



【岸沼良樹@コープスパーティー  死亡】



【C-7 墓地/午前】

【阿良々木暦@物語シリーズ】
【装備:FN ブローニング M1910(6/7)@現実】
【所持品:支給品一式、FN ブローニング M1910の弾丸(42/42)、ランダム支給品×2】
【状態:腹部に貫通した銃痕(致命傷ではない)】
【思考・行動】
0:バトルロワイアルを終わらせる。
1:ゆりと行動、殺し合いには乗らない
2:仲間探し。特にゆり、中嶋、アストレア、井ノ原の仲間探し
3:みんなとの合流、特に忍野忍、戦場ヶ原ひたぎを最優先
【備考】
※鬼物語で八九寺真宵が成仏してからペアリングが戻る前までのどこかからの参戦
※ペアリングが切れているため、吸血鬼性は限りなく低いです
※死後の世界について凡そ聞きました
※午前の放送を聞いていません



【仲村ゆり@Angel Beats!】
【装備:鉈@ひぐらしのなく頃に】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:阿良々木君と行動してバトルロワイアルを終わらせる。
2:別の作戦を考える
3:仲間探し。特に阿良々木君、中嶋さん、アストレアさん、井ノ原君の仲間を探す
4:気にいらないから主催どもを殺す
【備考】
※ユイが消えるまでのどこか
※ここが主催者達が作りあげた未知なる世界だと推理しました。またゲームの世界という案が一番強く感じています。
※午前の放送を聞いていません



※岸沼良樹の支給品(コルトパイソン(3/6)@現実)とデイパック(コルトパイソンの弾丸(30/30)@現実、3のPDA@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-)は墓地に転がっています。



【刻命の回収したサバイバルナイフ@コープスパーティー】
本来は島田快の所持しているナイフ。ネット通販で買った物らしい。だが、刻命が使っているイメージの方が強いだろう。

【コルトパイソン@現実】
コルト社のマグナム弾対応型高級リボルバー。

【3のPDA@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
長沢勇治に支給されるPDA。解除条件は参加者3人の殺害。当然このロワにてこのルールは適用されない

869 ◆WzpMn05TJA:2012/11/24(土) 21:05:20 ID:xKutL6v60
投下終了です
約2ヶ月前の予約でした

あと雲雀恭弥でしたね
地道に直していきます

870名無しさん:2012/11/24(土) 22:26:33 ID:RX2zt7c20
投下乙
岸沼が死んだか……神の気まぐれ(笑)だな
その直々コンビも名雪という爆弾を抱えたし、どうなるかわからないな
そして殺人の苦しみを分かち合った阿良々木とゆりっぺ、この先楽しみ

871 ◆WzpMn05TJA:2012/11/25(日) 22:43:51 ID:vGmXbC9c0
昨日の投下で足りなかったぶん投下

【飛梅@BLEACH】
能力解放と共に七支刀のような形状に変化し、刀身から火の玉を放つ能力を持つ。
解号は「弾け『飛梅』」


タイトル元ネタは
ゲーム『ダンガンロンパ』の第一章『イキキル(非)日常編』と『イキキル非日常編』より

新しく作品が出来たので二日連続で投下します

872君達に届け ◆WzpMn05TJA:2012/11/25(日) 22:44:58 ID:vGmXbC9c0
――ジリリリリリン

なんでこんなにも昔の黒電話は必要以上な音量+音量が下げられない素敵仕様なのだろうか。
まるで朝の現実へと引き戻す目覚まし時計のようだ。
電話の取れる距離にまで近づくと一層音が大きい。
当然な事なのだけれど。

しかし、これはうざい。
目の前で谷口がよくわからん話を延々と聞かされている感じ。
これが一般家庭だった今と昔、やはり科学は日々進化していっている事だろう。

「この電話に出るの出るのならキョンがでなさいよね」

なんという理不尽なニンフの言葉だろう。
まあ、元々そんな空気にはなっていた。

「取るなら取った方が良いのではないのでしょうか」

遠野さんからそう言われ、もう少しでコールが途切れるのではないかと慌ててしまう。

――ジリリリリリン

約1分が過ぎようとしている。
1分も鳴らしても出なかったら大抵の人は電話を切ってしまうだろう。
タイムリミットは後3コールといった感じか。

「パンドラの匣……、そんな感じか」

いや、匣ではないな。
パンドラの電話か?
随分近代的な物になってしまったな。

悩んでいても仕方ない。
受話器を取った瞬間に爆発オチみたいなのではない限り大丈夫だろう。
殺し合いに乗った人物が電話番号からこの位置を割り出して狙ってくる可能性はあるがそんな可能性は低い気がする。

それになんとなくだが、この電話は危険が低い様な気がしていた。

よし、受話器を取ってみよう。
それを、右耳に当てて一言決まり事のように呟いた。

「もしもし……」

873君達に届け ◆WzpMn05TJA:2012/11/25(日) 22:45:39 ID:vGmXbC9c0
◆◆◆


『よ、良かった。繋がっているんだね』

男の声が電話越しから聞こえてきた。
知らない声だ。
当然の事だろう。
俺が声を知るバトルロワイアル関係者は涼宮ハルヒ、朝比奈みくる、長門有希、古泉一樹、ニンフ、姫萩咲実、遠野美凪、俺たちを襲った銀髪の男と長身な女の9人。
主催者含めてもそんなに大人数居るわけでは無い。

「知らない声ですね」
『僕も、……わからないです』

優しそうというか、温和そうな声であった。

「知らない声と言えば、キョンさんの声はとても刻命さんに似ていますねニンフさん」
「なんでその人の声を知らない私にその話を振った?」

女2人の声が後ろから聞こえた。
とても気になる話だが今は電話の向こうの男の人と話さないと。

『わかって、いると思いますけど……このバトルロワイアルで殺し合いに乗って、いる人が沢山居ます』
「そ、そうなんですか!?」

理解しているがそれはとても最悪な話だ。
しかし、それだけが電話をしてきた理由か?

『あぁ……、僕は多分もう少しで死ぬ、だろう。だから遺言を聞いて……くれないか』
「え、あの……」
『時間がないん、です。安心してください。この電話は私の支給品でこのバトルロワイアルの民家の番号がすべて入っていてたまたま繋がっただけです。……話だけでも聞いてもらいたくて、やっと繋がりました。』
「そうだったんですか」

874君達に届け ◆WzpMn05TJA:2012/11/25(日) 22:46:10 ID:vGmXbC9c0

もしこの電話を受け取らなかったらこの人は命尽きるまで電話をさまざまな場所へかけていくのだったのだろうか?
そうだとしたら電話に出れて良かったと思う。

『僕は、……名前、古里炎真と言います。おそらく、……つ、次の放送で呼ばれるでしょう。この、……体の、血が、無くなるだろうから』

銃で撃たれたか、刺されたか。
すでに殺人者はほっといても死ぬ者よりも次の獲物を狙っているのだろう。
もしかしたら、次の狙いは俺達かもしれない。

『話、……続けます。僕達は最初3人で行動、してました』
「3人か」

最初の俺達と同じ人数だ。

『1人は2人組の殺人者から僕達を庇い殺されました。さっきの名前の御剣君です』

御剣総一、名簿の中から御剣という名前を見つける。
確かに死亡者であった。

2人の殺人者、仲間の1人死亡。
ここも俺達の行動が共通している。
この境遇が俺達の未来の結末になるのではないかと不安になる。

姫萩さんの名前は死亡者に挙げられなかった。
そこはとりあえず保留の話題だが。

『イカロス、そう呼ばれた参加者がみ、……つるぎ君を刺しました』

苦しそうな古里さんの声。
今すぐ助けたいのに助けられない俺が無力だ。

「ちょっと、イカロスってアルファーじゃない!」

ニンフの驚いた大声が聞こえた。
確かにニンフの知り合いなんだったか。

「ちょっと待っていてください古里さん」

875君達に届け ◆WzpMn05TJA:2012/11/25(日) 22:46:34 ID:vGmXbC9c0

そう言ってニンフを直視した。

「お前電話聞こえていたんか?」

隣の美凪さんは全く聞こえないらしくふるふると首を横に振った。

「私は耳が良いのよ、それより話を詳しく聞いて。あとアルファーの特徴も!」

信じられないらしい。
確かに長門が襲ってきた事もあるのだから知り合いがこうなる覚悟はあっただろうが、事実だとわかると否定したくなる。

「イカロスの知り合いが居るんだが特徴を聞かせてもらって良いかな古里さん」
『確か、口数が少なかったかな。…………羽根生えていて人間じゃないみたいに力が強かった。そしてマスターと呼ばれた人が同行していたよ』
「嘘、……智樹まで、……否定したいけどそれはすべてアルファーの特徴だ」

確かマスターとか言う桜井って奴の命令には忠実らしい。
これは大きいショックだろう。

俺はニンフを遠野さんに任せて電話の古里さんとの会話を再開させた。

『だ、大丈夫か…………な』
「おい!」

一気に声が弱くなっていた。
そろそろ、古里さんの命が危機になってきた。

『気を、付けて。忍野と羽川、こいつらは最悪のマーダー陣営だ。良い人を演じて殺しにかかりる。羽川は、頭がまわる、……忍野は見た目に気を付けて、幼女みたいだが…………』
「な、なんだ!?」

俺の妹みたいに実年齢は見た目以上とかか。
そんな事はどうでも良いであろう事だが。

『キュウケ、ツキ』
「吸血鬼、そんな奴らが……」

不死身なだれもが知る西洋の鬼ではないか。
そんなフィクションな奴らまで。
いや、SOS団もフィクションみたいな奴らの集まりなのだが。

876君達に届け ◆WzpMn05TJA:2012/11/25(日) 22:47:01 ID:vGmXbC9c0
『もう1人の仲間、こいつはとても強い。……………………吸血鬼と互角以上の頼もしい味方だ。どうか…………かのじ、ょのチカラ。なって、』
「そいつの、名前は!?」

おそらくこれが遺言だろう。
あと一言、頑張ってくれ古里さん!

『セィバ…………――』

これ以上、古里さんから言葉からは紡がれなかった。
命の灯が消え去った。
悔しい思いと、彼の好意を無駄にしないよう決意しながら電話を切った。


◆◆◆


「たくさんの情報が手に入りましたね」

遠野さんの一言だった。
確かに古里さんの情報は俺達の知らない情報ばかりであった。
――聞きたくなかった情報も含めて。

「1つ良いでしょうか、キョンさんにニンフさん」
「なんですか遠野さん」

ニンフは何も言わず遠野さんに向いただけだった。

「私は1つ疑問な事があります」
「なんですか?」
「私は姫萩咲実さん、彼女も要注意な人物だと思っています」

姫萩咲実。
考えないようにしていたがやはり彼女の話題は出さなければならないらしい。

「咲実は……死んだはずなのよ」

ニンフが悔しそうに言った。
それなりに仲良くなりはじめていた頃であったあの悲劇。

「……それにさっき放送で1人息を吹き返したって言ってたじゃない。咲美がその可能性があるじゃない!」
「それは名前を呼ばれた参加者の事ですよニンフさん
もしかしたら彼女、偽名だった可能性があるのではないでしょうか?私は会っていないからわかりませんが……。名前を呼んで反応が遅かった事とかありませんでした?」
「……覚えてないな」

877君達に届け ◆WzpMn05TJA:2012/11/25(日) 22:47:44 ID:vGmXbC9c0

そういえば佐々木に言われた事があったか。
俺はキョンと呼ばれるより本名で呼ばれた方がコンマ2秒早いとかなんとか。

「咲実が、騙して実は私達を殺そうとしていたとか?……考えたくないよ、もう……」
「大丈夫だ、姫萩さんを信じようニンフ!騙されていたとしても大事な仲間だ!死んでしまった人を悪く言いたくない」

襲われても1人で逃げなかった彼女を信じようじゃないか。
それだけで十分じゃないか。

「とりあえず古里さんの言ったセイバーさんと、姫萩さんこの2人を探す事をしよう」

古里さんどうかごゆっくりお休みください。
ご冥福をお祈りします。


【D-6 民家/午前】

【キョン@涼宮ハルヒの憂鬱】
【装備:22口径ゴム弾拳銃(6/6)@とある魔術の禁書目録】
【所持品:支給品一式、ゴム拳銃の弾丸(36/36)、ランダム支給品×1】
【状態:疲労(小)、左腕に刺し傷(処置済み)】
【思考・行動】
1:ニンフと美凪さんと行動。絶対に殺し合いはしない。
2:SOS団、特にハルヒと合流。
3:姫萩さんとセイバーさんを探す。イカロス、桜井智樹、羽川翼、忍野忍は注意する。
4:長門を見つけたら殺人を止めさせる。
【備考】
※涼宮ハルヒの消失終了後からの参戦です。
※ニンフの気持ちに全く気付いていません。
※ニンフ、遠野美凪の知り合いの名前を記憶しました。



【ニンフ@そらのおとしもの】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、救急箱(中身4割使用)@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-、木彫りのヒトデ10/10@CLANNAD
ゲームセンターのメダルの束50/50@とある魔術の禁書目録、ランダム支給品×3】
【状態:疲労(小)、傷(処置済み)】
【思考・行動】
1:キョンとミナギと行動。絶対に殺し合いはしない。
2:咲実を探す
3:キョンと美凪の方針を取る
4:智樹、アルファーは……?
【備考】
※カオス戦(1回目)からの参戦です。
※キョンに対して色々な気持ちが生まれ始めています。より強くなりました。

878君達に届け ◆WzpMn05TJA:2012/11/25(日) 22:48:09 ID:vGmXbC9c0
【遠野美凪@AIR】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、たくさんの犠牲者の名札@コープスパーティー】
【状態:健康、膝に怪我(処置済み)】
【思考・行動】
1:ミイラさんの行為を無駄にしない為、生き抜く。
2:キョンさんやニンフさんと一緒に仲間を探して主催者へ対抗する。
3:2人の方針で動く。姫萩咲実に疑問。
4:刻命さんを改心させたい。
※美凪ルート確定寸前からの参戦。
※キョン、ニンフの知り合いの名前を記憶しました。



◆◆◆



「……本当に馬鹿は助かるよ」

笑いを堪えながら古里炎真は目を覚ます。
いや、彼は古里炎真ではなかった。
古里炎真と名乗っていただけの男であった。

「古里炎真とかとっくの前にくたばってるからさ、マジでさ!バトルロワイアルの展開をすべて把握している奴らからみたら『超展開キタコレ』だろ!ヤバイヤバイハライタァイ」

ついに我慢が出来なくなった彼は、腹を抱えて笑っていた。
先程の弱っていた様子は全く見られない。

「でも感謝しろよ、冗談は混ざっているが、約半分くらいの情報は本当なんだからよ!
君達に届け、僕のユーモアジョーク」

足立透は電話に使っていたPDAを右手に握りながらまた笑い出した。


【C-3 野原/午前】

【足立透@ペルソナ4】
【装備:不明(武器は持っている)】
【所持品:支給品一式、AのPDA@シークレットゲーム-KILLER QUEEN- 、意図的支給品×1】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:ロワイアルをかき回す仕事をしつつ楽しむ。
2:君達に届け、僕のユーモアジョーク
【備考】
※直斗救出後からの参戦です。

879 ◆WzpMn05TJA:2012/11/25(日) 22:51:39 ID:vGmXbC9c0
投下終了です

筆者の気まぐれ投下でした

元ネタは
マンガ『君に届け』より

880 ◆RmIe4rjRnw:2012/11/27(火) 06:58:50 ID:CoUlx6yg0
投下乙でした!
久々に来たら三作も投下されていてちょっとびっくり

翼ある銃>
ルルーシュ、今回は失策だったね……
腹の探り合いが必死な二人が今後気になる、あと天使ちゃんマジ天使

イキキル(非)日常編、イキキル非日常編>
岸沼ぁ……結構良いキャラだったのに死ぬとは予想外
直井と直斗はこの先もコンビ続けていけるかな?

君達に届け>
ヤバイヤバイハライタァイ

そして性懲りもなく予約します
天城雪子、北川潤、古泉一樹

881 ◆RmIe4rjRnw:2012/12/03(月) 19:09:08 ID:vdSWOOnk0
上記の予約に 一方通行 を追加します
同時に予約を延長します

882*〜アスタリスク〜 ◆WzpMn05TJA:2012/12/06(木) 22:53:33 ID:z2x88i7o0
††††††††††

奇声を放つ醜い怪物が居た。
それは死んだ人間の末路。
心残りは仮面へと姿を変える。

「姿は違えど、俺らの同胞の誕生だぁ!」

ただ1人笑う片腕の戦士。
ただ一匹の仮面の怪物。
ただひとつ再び消える命。



††††††††††



静かさだけが残ったゲームセンター。
そこから立ち去ろうとするグリムジョー・ジャガージャックは少女に転がった2つのデイパックを見つけた。
自分にも渡されていた、自分が消し飛ばした相手も持っていたもの。

「そういえば俺は中をろくに見ちゃいなかったか」

見る必要はない。
自分は何百年鍛え上げた力、霊圧それ自体が武器。
形ある武器など必要ない。
――ただの人間がこの霊圧を当てても消えない『制限』にはうんざりするものがある。

少女はいまだ形を保ち目の前で倒れている。

「ふん、どんなガラクタがあるんだか」

1つ少女のデイパックの中身を強引に引きずり出す。
バサッ、とあまり大きくない音を出しながらすべて床に落ちていく。

「本当にガラクタのみか」

自らの死の司る『破壊』。
その破壊衝動すら萎えさせるようにカエルと骸骨が遥か上に立つグリムジョーの姿を見るように転がっていた。
こんなので殺し合いをしろと言うのだから馬鹿な話だ。

「ウルキオラ、人間がわからねぇか?
ただのバカじゃねぇか」

883*〜アスタリスク〜 ◆WzpMn05TJA:2012/12/06(木) 22:54:05 ID:z2x88i7o0
ピキ。
ただ斬られていない右手で握っただけでカエルのフィギュアが壊れた。
おそらく人間もこの程度で死ぬ。
そして現在、この程度で死んだ死者を読み上げる放送が鳴る。
郷田真弓の声。
しかし、わずか放送開始30秒ゲームセンター内は放送が途切れていた。



「グダグダグダグダうるせぇ!」

設置されたUFOキャッチャーはスピーカーを壊した。
誰1人の名前を呼ぶ前にスピーカーはその役目を終えた。
この程度で死ぬウルキオラ、黒崎一護、セイバーだとしたら破壊する価値すらないのだから。

「黒崎、だぁ」

そして思い出す。
デイパックから出たカエル、では無く骸骨に見覚えがあった事を。

「たしかこいつは魂魄から魂を抜くんだったか、……ははっ雑魚は雑魚でもせめて骨のある雑魚にしてやるか」

楽しそうなその目の奥底に眠るものは、――『破壊衝動』。



††††††††††



骸骨の描かれた木彫りのお守りの形をしたそれをグリムジョーは意味なく巻きつけてあるデイパックと同じように腰に巻き、気絶した少女の神尾観鈴を右腕だけで軽々と持ち上げた。
まずはゲームセンターの中から外に出すこと、これが目的であった。

ふぅふぅと漏れる呼吸音はまだ生きていることのあかし。
これがもし停まっていたなら目的は達成されなかったであろう。
別に達成させなければならないわけではない。
ただの暇つぶし程度のお遊びに近いものがあった。


場所はどこでも良かったがグリムジョーは無意識に教会の位置に向かっていた。
なぜ教会側なのか。
もしかしたら彼はセイバーを探しているのかもしれない。



††††††††††

884*〜アスタリスク〜 ◆WzpMn05TJA:2012/12/06(木) 22:57:30 ID:z2x88i7o0



「この辺で良いか」

グリムジョーはパッと腕を離し担いでいた者を強引に下に降ろした。
口に砂が入ったかもしれない、そんな心配は当然ない。

「じゃあ始めるか」

骸骨の描かれた木彫りのお守りの形をしたそれ、初代死神代行が授かりし死神代行証を右手に握りながら観鈴の胸に押し当てた。

本来は魂魄から魂を抜くもの。
黒崎一護や銀城空吾が死神になるための者。
だがそれはあくまで選ばれた人間の話だ。
では普通の人間はどうなるか。
例えば、そう神尾観鈴のような普通の人間では――。



††††††††††



「……あれ、ここ」

私は目を覚ます。
今の今まで何をしていたか。
寝起きなのでそれを今思い出す。

「あれ?」

しかし思い出す前になにもかもを興味に移すものがある。
私の倒れた体。
それが私の胸から鎖が生えて繋いでいた。
私、死んだ。

そうだった、それで思い出した。
私は殺し合いをされていた。
私を殺され、今はあの世。

ならこれは死体。
ほかならぬ私の。
でも往人さんの死体であったなら泣き散らしただろうけど、自分の死体ではしょうがない気がした。
佐祐理さんを殺してしまったから。
生きている資格ないから。
罪のない男の人を襲って返り討ちにされたのだろう。

でも私は幸せかもしれない。
傷なく私は倒れている。
それは苦しくない方法で私を殺してくれたのだろう。

885*〜アスタリスク〜 ◆WzpMn05TJA:2012/12/06(木) 22:58:03 ID:z2x88i7o0



「お前は今から生きるんだよぉ」

青い髪の男の人が立っていた。
そびえ立っていたの方がしっくりくるかもしれない。
私が襲った人、でも何故か嬉しそうだ。

「っ!?」

嬉しそうな理由がわかった。
鎖を強引に引っ張り、抜いた。
多分これがしたかったのであろう。
なぜなら私は、、、


鎖が顔に集まり、何故か大切である往人さんを殺さなくてはいけないような気持ちになった。

あああ、往人さん。
苦痛だよ。
殺、して良いかな。

――どうして私正論化にしようとしてんだろう?



††††††††††



「くくっ、虚になりやがった」

死神の力を持った虚、破面の笑い声。

「ちょうど良いところに整(プラス)が居るぜガキ」

『整』
普通の幽霊であり、虚になれ・ならなかった者。

「あはっ、殺すよ!あははは」

悪霊になった篠崎あゆみであった。
自らを苦しめたサチコの手によって意識がまだここにあった者。

「アッハァ!」
「アオオオオオオオッ!!!!」

だが戦いというには一方的過ぎたものだった。
化け物の口は一口であゆみの首を捥いだ。
目がくるりと白目に変わる。

むしゃむしゃ。
嫌悪的な音が規則道理に鳴っていた。
実体がないのに音がした。
むしゃむしゃと、首から下を呑み、噛みながらの食事になっていた。

「姿は違えど、俺らの同胞の誕生だぁ!」

グリムジョーは観鈴を楽しそうに見ていた。
その興味心はまたいずれ他の人間をこうしてみようかと破壊衝動に似た感情が湧く。

観鈴は食事が終わるとすぐグリムジョーの側から消えた。
大切な人の命を狙う為、虚の苦痛から逃れる為、虚の本能で動きだした。

886*〜アスタリスク〜 ◆WzpMn05TJA:2012/12/06(木) 22:58:31 ID:z2x88i7o0



【C-1 野原/午前】


【グリムジョー・ジャガージャック@BLEACH】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×3 初代死神代行証@BLEACH】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:セイバー、黒崎一護と決着をつける。
2:強者と戦う。
3:ザコ(一般人)を虚にして楽しむ。
【備考】
※左手が無い時期からの参戦です。
※虚閃(セロ)は半日に一発と言う制限です。
※虚弾(バラ)は五発撃って半日回復制限。一般人を大怪我させるくらいの威力で無傷の一般人相手には、最低三発喰らわせないと死には至らないくらい威力制限されています。




【神尾観鈴@AIR】
【装備:なし】
【所持品:なし】
【状態:虚(苦痛)】
【思考・行動】
1:往人さんを殺す
【備考】
※観鈴ルート確定寸前からの参戦。
※無意識に佐祐理のデイパックを取りました。



【篠崎あゆみ@コープスパーティー  消滅】



※B-1のゲームセンターに佐祐理のデイパック(トカレフTT-33 0/8@現実 トカレフの弾丸24/24 ランダム支給品×2)が転がっています。


【ゲコ太のフィギュア@とある魔術の禁書目録】
御坂美琴がお気に入りのキャラクターのフィギュア。

【初代死神代行証@BLEACH】
銀城空吾の持つ死神代行証。魂から魂を抜くもの。また死神の仕事を代行する証となる。



【虚について】
虚(ホロウ)になると顔に仮面が付いて人外の力を得て化け物の姿になり、自分が大切な人を襲うようになります。
また大切な人を殺した後は無意識に人々を襲うようになります。
仮面が壊されるとその者は成仏します。
本来虚ほ死人ですがこのロワオリジナルで生存扱いとします。

887 ◆WzpMn05TJA:2012/12/06(木) 23:02:48 ID:z2x88i7o0
投下終了です
元ネタはアニメ「BLEACH」OP『*〜アスタリスク〜』より
悪霊ついに出たと思ったら…

888名無しさん:2012/12/10(月) 07:47:45 ID:Rd0d8qgs0
投下乙です
毎回斜め上を行く話をするロワも面白いですね
今日で王道ロワイアル一周年おめでとうございます

889名無しさん:2012/12/16(日) 20:01:17 ID:1BgFwFbM0
>>868
投下乙です。岸沼は犠牲になったのだ…。

>>886
投下乙です。篠崎ェ。まじで碌なめにあいすぎ。

890 ◆WzpMn05TJA:2012/12/29(土) 21:27:22 ID:v29eIX3Q0
2012最後になるか、2013最初になるかわからないですが一応予約します

直枝理樹、宮沢謙吾、棗鈴、六道骸、棗恭介、伊吹風子
以上6人

891 ◆WzpMn05TJA:2012/12/30(日) 12:15:21 ID:5U9MAOLU0
予約リストに
衛宮切継を追加します

さて、今からぼちぼち作品を作っていきます

892 ◆RmIe4rjRnw:2013/05/05(日) 21:47:40 ID:4d/G0ef60
お久しぶりです
宗像形、園崎詩音でゲリラ投下します
タイトルは「かぜ〜breeze〜」

893 ◆RmIe4rjRnw:2013/05/05(日) 21:56:01 ID:4d/G0ef60

番外放送が終わって数分後。
草原の真ん中で、宗像形はゆっくりと立ち上がった。
枢木スザクとの戦闘を終えた後、宗像は疲労回復に努めていた。
とはいえ既に二時間近く経過していたから、充分だと判断したのだろう。
準備運動をするように、腰や腕を中心に、身体をぐるぐると回す――ついでにハルバードも回す。
その動きは精巧にして緻密。
武器、あるいは凶器を扱うことに長けた人間のものだ。
数時間前に戦闘を行い、傷を負ったとは思えないほどである。
無論、殺人にもなんら不都合はないのだろう。
身体の調子を確認し終えた宗像は、ひとつ息を付いた。
そして誰に告げるわけでもなく、小さな声で呟く。

「死んだのは十四人。今の放送によると一人生き返ったようだし――つまり、僕はあと八十六人殺せるってことだね」

その言葉からは、宗像形という人間の中の狂気が窺えた。
放送を聴いて、宗像は自分があと何人の人間を殺せるかを考えていたのだ。
悲しみを抱くわけでもなく。
怒りを覚えるわけでもなく。
焦りを感じるわけでもなく。
喜びに震えるわけでもなく。
ただただ、殺したいという衝動に駆られていた。
宗像の抱える『殺人衝動』が、そう渇望していたのだ。
そう、異常なまでに。

「それにしても武器が――いや、暗器がハルバード一つしかないのは心許ないな」

再び呟くと、宗像の手からハルバードが消えた。
否、そのように見えただけであって、実際は『暗器収納術』によるものだ。
『暗器収納術』とは、黒神めだかの兄である黒神真黒に開発されたスキルである。
これにより、宗像は自身の着用している制服に大量の暗器――もとい凶器を携帯できる。
日本刀、ハンマー、拳銃、手榴弾、ブーメラン、狼牙棒。
その種類は多岐にわたり、その量は計り知れない。
しかしバトルロワイアルに招かれるにあたって、それらの凶器は全て没収されていた。
故に現在宗像は、凶器と呼べるものは支給品のハルバードしか収納していない。
ちなみにその他の支給品も収納はしている。
だが、それでは到底足りないと宗像は考えていた。

「さっきの――枢木スザクのような強者を殺すためには、銃器かそれ以上のものが必要だ」

語りかけるかのように独白する宗像。
第一回放送前に戦闘を行った枢木スザクと、その武器についてだ。
スザクが使用したのは、強力なスタンガンと手榴弾の二つ。
あの二つがスザクの支給品なのだろうと宗像は推測していた。
宗像の支給品であるハルバードと比べて、単純な殺傷力ではあちらの方が明らかに上だ。
つまり、支給品の優劣には個人差があるということだ。
宗像自身の支給品も然り。
防犯ブザーとハルバードでは、どちらが凶器として有用か――あえて問うまでもない。
それでは、より有用な凶器を手に入れるにはどうすればいいか。
自身の支給品にそれがないとすれば、取る手段は一つだ。

「他の参加者を殺して、支給品を奪う」

結局、ごく単純な結論に辿り着いた。
行動指針が決まったところで、宗像は袖口から防犯ブザーを取り出した。
ランドセルに付いているのを見かけることも多いであろう、ごく一般的な市販の防犯ブザー。
宗像は勢いよくそれのひも状のスイッチを引っ張り、適当に放り投げた。
途端に周囲に大きな音が鳴り響く。

「これで人が集まってくるだろう」

子供の悲鳴にも似た甲高い音は、非常に人の耳に入りやすい。
まして殺し合いの最中ともなれば、参加者たちは耳を含めた全ての神経を研ぎ澄ませているはずだ。
とすると、防犯ブザーを鳴らすことで参加者が集まってくる可能性は高い。
そして集まった参加者を殺すことで、新たな凶器を入手することができる。
これを繰り返していけば、人を殺し尽くすのも容易だ。
少なくとも、人がいるというあても確証もなく歩き回るよりはいい。
宗像はそのように考えていた。

894 ◆RmIe4rjRnw:2013/05/05(日) 21:58:01 ID:4d/G0ef60
「それじゃあ、しばらく待つとしようか――僕に殺される人間を」

そう言って宗像は息を吐いた。
案山子のように突っ立っている痩身からは、まるで殺意は感じられない。
だが実際は、何よりも人間を殺害することを考えている。
“人間が好きな感情”が無くなった異常、今の宗像は殺人機械も同然。
今の宗像にとって、人吉善吉を含めた全ての参加者、全ての人間はただの知り合い。
親愛も愛憎もなく――あるのは衝動のみ。

「斬って殴って嬲って刺して晒して垂らして殺して殺して殺して――殺す」

自制できない衝動が、呟きとなって漏れる。
果たして、誰が最初にハルバードの――殺人衝動の餌食になるのだろうか。
それはまだ分からない。
だが、吹き始めた風に乗った殺意が、誰かに届くのに時間はかからないだろう。


【C-5 草原/午前】

【宗像形@めだかボックス】
【装備:野田のハルバード@Angel Beats!】
【所持品:支給品一式、壊れているストーブ@Fate/stay night】
【状態:服が若干ボロボロ、傷(小)】
【思考・行動】
0:やってきた人間を殺す。それまで必要以上に動かない。
1:強力な凶器が必要だ。
2:凶器を手に入れて全員殺す。
【備考】
※戦挙編〜次世代育成プログラムの間からの参戦です。
※人間が好きな感情がなくなり、殺人衝動だけが残る人間になりました。
※『暗器収納術』を使用しているので、周囲から見ると徒手空拳の状態です。



防犯ブザーの音が鳴り響く中、宗像のことを観察する者がいた。
その名は園崎詩音。
既にこの世を去った園崎魅音の双子の妹であり、想い人のためにこの殺し合いに乗った少女である。

枢木スザクの手榴弾による怪我を負った詩音は、ひたすら逃げていた。
詩音の目的は優勝して北条悟史と再会すること。
唯一にして絶対の目的の為にも、犬死には御免だった。
だから強者は相手にせず、逃走を図ったという訳だ。

そんな詩音が次に人を発見したのは、番外放送を軽く聴き流した後のことだった。
その男は、何もない野原にぼうっと立っていた。
武器も道具も持たず、無防備なその姿を、しかし詩音は警戒した。

今までに詩音が遭遇した参加者は四人。
最初に襲った金髪の少年。
銃を撃ってきた桃色の少女。
続いて襲った赤い髪の少年と茶髪の少年。
その中で詩音が実際に殺害できた者はいない。

(優勝することは思っていたよりも難しい)

詩音自身が目にして来た参加者の姿を思い出す。
主催者に反抗した大柄な男は、理屈は不明だが腕が変形していた。
桃色の少女は拳銃を持ち、躊躇いなく発砲した。
茶髪の少年は手榴弾を持ち、殺意とともにそれを放った。
この島にいる人間の多くは、むやみに襲いかかるだけでは殺せない――そのことを、詩音は理解し始めていた。
だからこそ詩音は、観察することにした。
この男を殺すことは可能かどうかを見極めるために。

(……たぶん、無理だ)

名前も知らない男の、異様な行動。
何もない所からハルバードを取り出したこと。
身の丈ほどもあったそれを楽々と振り回したこと。
「殺す」という物騒な単語を連呼していたこと。
防犯ブザーのスイッチを入れて投げたこと。
それら全てを、詩音はずっと観察していた。
そう結論を出したのは、当然だったと言えよう。

(アイツは危険だ)

詩音が宗像を観察した結果は、その一言に尽きた。
行動も言動も挙動も、何もかもが身の危険を感じさせる。

(絶対にアイツには近付かない――近付きたくない)

それは宗像の殺人衝動を肌で感じた詩音が、本能で危険を感じ取ったからかもしれない。
あるいは宗像に負けず劣らず狂気に染まっている詩音が、生理的な嫌悪感を抱いたからかもしれない。
なににせよ詩音は、宗像には近付かないことを決めた。

(とにかくアイツに気付かれる前に、早くこの場から離れなきゃ。
……くそっ、アイツがブザーを鳴らさなきゃ、ゆっくり休んでいられたのに)

895 ◆RmIe4rjRnw:2013/05/05(日) 22:02:07 ID:4d/G0ef60
怪我の程度は軽いものの、休息はとっておきたかった。
何度も言うようだが、詩音の目的は優勝することのみ。
その目的の為には、詩音以外の八十六人をどうにか排除しなければならない。
排除する――と言っても、詩音は圧倒的な力を備えている訳ではない。
人を殺すにあたっては、万全の状態でいたかったのだ。

(一番近い施設は……墓地と廃墟、それに……ジュネス?)

休息を取るためにも、近くの施設を目指そうと地図を開く。
詩音が今居るC-5エリアには施設がないが、隣接する三つのエリアに施設があった。
しかし、墓地は休息を取るには些か気分の悪い場所だ。
できない、というわけではないが、休むにあたっては遠慮したい場所である。
では廃墟はどうか。文字を見ると敬遠したくなるが、同じ理由で他の参加者も避けるのではないかと予想できる。
休息を取るには適した場所かも知れない。
残る一つ、ジュネスはどうか。これは未知というほかない。
まず施設の概要が全く不明だ。
詩音がいた雛見沢には、ジュネスなどという場所は存在しなかった。
よって、どういった施設か推測することも、今の状況では不可能だ。

(でも……街の中にあるということは、ある程度は設備の整った施設なのかな?)

未知数と分かっていながらも、そう期待してしまう詩音。
廃墟で休息することを回避したいという思いがあるのか、はたまた未知なる施設への僅かな好奇心があるのか。
だが、逡巡したのも一瞬。
詩音は俯いていた顔を前へ向けると、デイパックを担ぎ直した。

(速く……速く速く速く、悟史君の元に帰るんだッ!!!)

心に刻むのは“絶対に帰る”という意志。
その意志の強さは、双眸に宿る光の強さからも見て取れた。
詩音はそのまま、傷を負った身体で、目的とする施設に向かって駆けていく。
幸運にも、風は追い風だった。


【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に】
【装備:止まれの標識@めだかボックス】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:怪我(中)、雛見沢症候群L3】
【思考・行動】
0:ひとまず男(宗像)から離れて、休憩できる場所(墓地か廃墟かジュネス)へ行く。
1:優勝して悟史君の元に帰る。
2:参加者全員を殺す。
【備考】
※目明し編からの参戦です。
※宗像形を危険視しています。
※どこを目的地にしたかは以降の書き手さんにお任せします。


【その他備考】
※C-5に防犯ブザーが落ちていて、鳴り響いています。半径1kmの範囲内であれば聞こえるかもしれません。

896 ◆RmIe4rjRnw:2013/05/05(日) 22:04:51 ID:4d/G0ef60
ゲリラ投下終了です、2013年初投下が短くて申し訳ない
この先もちまちま書いていくつもりですので、◆WzpMn05TJAさんも是非この企画を続けていって下さい

897 ◆WzpMn05TJA:2013/05/07(火) 18:40:01 ID:WKvTIRSA0
◆RmIe4rjRnwさんありがとうございます

これからの詩音と宗像の動きをどう結び付けるかが楽しみな作品でした
とても励みになりました
この作品のタイトルが無題なのですがどうすれば良いですか?

ここ最近スランプ気味でなかなか話が考えられていませんでした
いずれぼちぼち更新していけたらと思います

898 ◆WzpMn05TJA:2013/05/07(火) 18:41:54 ID:WKvTIRSA0
>>897
すいません
タイトル付いてましたね

本当に申し訳ないです…

899 ◆WzpMn05TJA:2013/05/07(火) 18:52:22 ID:WKvTIRSA0
◆RmIe4rjRnwさんの投下を読んで自分も話を投下しようと思いました

ルルーシュ、奏、ナギ、沙耶で予約します

900 ◆WzpMn05TJA:2013/05/19(日) 17:00:23 ID:WWtF2WTE0
今から投下します

901CODE:Revise ◆WzpMn05TJA:2013/05/19(日) 17:01:40 ID:WWtF2WTE0
ナギの泣き声、慟哭が止み静まり返った病室。
ルルーシュ、奏、沙耶は小さなナギの背中を見て、それぞれ口を閉じていた。
みんな最初に見た死亡者だ。
ルルーシュは人の死に見慣れているとはいえ、驚きは隠せていなかった。

「ナギを落ち着かせたいわ」

沈黙を破ったのはナギの同行者であり、このゲームのイレギュラーである朱鷺戸沙耶であった。
沙耶には思惑があった。
そして、恐怖が近くから生まれていた。

「そうか」

その恐怖の根源が沙耶の言葉に反応を示した。
整った口や眉、眼。
仕草を含めその全てがつくりものであるかのような男、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアであった。

今はまだナギからもそして自分からも遠ざけたい。
そんな感情が沙耶にはあった。

「天使、待合室で2人を待とう」
「……わかったわ」

無表情、無感情。
敵か味方なのか、彼女には奏という少女ですら信頼出来なかった。
彼女の目に映る世界が根本的に違う様なズレがある気がした。

(この2人、このゲームを物語とするならほぼ確実にジョーカー的役割をあてがわれる
ゲームを加速させるか、ゲームを終わらせるか。どっちか極端な方へ……)

沙耶の眼には協力する為に力を貸すか/反抗する為に力でねじ伏せるか。

自らの手に爆弾のスイッチが握られている、そんな予感がした。

902CODE:Revise ◆WzpMn05TJA:2013/05/19(日) 17:02:08 ID:WWtF2WTE0



病室をルルーシュ、奏の順で歩いて出てきた。
ルルーシュ、は顎に手を伸ばし思考を巡らせていた。
自分が動かす絶対勝利のチェスの采配をシュミレーションしていくように。

「――ッ」

だがどうしても1つのポーンが邪魔をするのだ。
ノーマルなチェスには自分、相手の陣地に8駒ずつ存在している。
が、沙耶が9駒目のポーンとなり常識が覆されている。
圧倒的不利を1人で跳ね返すエリア11の戦士、枢木スザクの様に邪魔であり、必要な駒でもある。

「ルルーシュ大丈夫?」
「……あぁ、気にするな」

奏が顔を覗き込んでいた。
自分の事など見ているのか疑わしいものだったが、そんな彼女からも指摘されるのが驚きであった。

「お前は俺の味方か?」

彼女に聞いた。
ルルーシュからも奏からも同行者と区分されていて、それ以上の2人の関係は皆無であり、沈黙の掟になりつつあった事を、プライドの高いルルーシュ自らそれを問いかけた。

「ルルーシュが私の味方である限り……」

言葉は続かなかった。
本来はこれ以降も言葉が続いたのか、それともこの言葉で終わりなのか。
心のうちは奏の中。
答えはルルーシュにも、監視している主催者側にも伝わらない。





「ぅう、……こんな現実、あんまりなのだぁ」

決意を持ったにしろ彼女は13歳。
あまりに無力、儚い。
いや、どんな人間さえ無力なのだ。
どんなに力を持っても現実の唐突さや理不尽さ、運命からみたらあってないようなもの。

「ナギ……」

見守る彼女は立ち上がる事を祈るだけであった。

今はまだ私が見ていてあげるから――。

しかし、時間は待たない。
イタズラのトリックは内側から。
徐々に無力なナギを見守っている無力な沙耶に対して浸食していた。

903CODE:Revise ◆WzpMn05TJA:2013/05/19(日) 17:02:33 ID:WWtF2WTE0



「――朱鷺戸沙耶」

後ろから声がした。
それは先程退出したルルーシュ・ヴィ・ブリタニア声。
後ろには立華奏の姿もあった。

「ハンドソニック」

瞬間、奏は沙耶の首元に刃を当てた。
体は奏の細い腕の力でがっしりと押さえつけた。

積んだ!?
沙耶は自分の弱さに唇を噛んでいた。

「な、なにしているのだお前達!?」

涙目で視線は歪んでいたナギ。
しかしはっきりと見た彼らの目はナギを心配そうに見た『目』でありナギはますますわからなくなった。
自分と沙耶を裏切りに殺しに来たのではなかったのだろうか?

「俺達はお前を助けに来た」
「あなたは今とても危険な人物の目の前にいるわ」
「そ、それは沙耶の事か……?」

2人は沈黙した。
それは肯定の意味と取れた。

「私が名簿に名前が無いからなのかしら?それはさっき話したじゃない」
「お前は何者だ」
「だから私はッ――」

「ねぇ、『学園革命スクレボ』って漫画知ってるよね?」

奏の手には漫画が握られていた。
ごく普通の単行本の漫画だ。
漫画が大好きなナギには聞き覚えのないタイトルではあったのだが。

「今度は私から聞くわ。あなたは何者ですか?」

沙耶の顔にいつもの余裕はなかった。
青ざめた顔。
この2人は自分が偽名であることをこの病室を去った後に知ってしまっていたのだ。

904CODE:Revise ◆WzpMn05TJA:2013/05/19(日) 17:02:58 ID:WWtF2WTE0



「なんの本を探しているのルルーシュ?」

2人と別れ、待合室に入るなりルルーシュは本を漁っていた。

「いや、少しでも時間は無駄には出来ないからな。怪我した時に処置する方法の本がないか確認しただけさ
ここにずっと籠りっきりなんて出来ないし、道具も限られているしな」

そういってルルーシュはパラパラと本を捲りデイパックに本を厳選して入れていた。

「真面目なんだねルルーシュは」
「お前が怪我した時は助けてやらんでもないぞ」
「ルルーシュなら助けてくれるよ、優しいから」

『お前に俺のなにがわかるんだ』
そう言いたい言葉を飲み込んだ。

別に喧嘩して言い争いをするつもりは毛頭無かった。

「♪〜♪〜」

奏は呑気に鼻声で歌いながらルルーシュが目も向けなかった棚から漫画を手にしていた。
本当に殺し合いの最中なのを理解しているのだろうか。
彼が彼女の頭が大丈夫なのか考えながら本を探していると、歌が終わったわけでもなく急に不自然に途切れた。

「ルルーシュ、金髪の彼女名前なんだっけ?」
「金髪?さっき会った2人か?……って両方金髪だぞ?」
「そうだったね」

ルルーシュが何を言うかと思えばと口にしようとした時。

「少し大きい方の子」
「確か朱鷺戸沙耶だな」

敵視している彼女の顔を思い浮かべ拳を握りしめていた。

「彼女、偽名かもしれない。そんな名前の人物存在しないかもしれない」




「なんだって、沙耶……?」

沙耶は居心地悪そうな顔をしていた。
あんなに懐いていたナギもショックを受けていたのだ。
とても心が痛かった。



最悪な方向へ物語が進んでいた。

905CODE:Revise ◆WzpMn05TJA:2013/05/19(日) 17:03:20 ID:WWtF2WTE0
【B-2 病院/朝】


【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【装備:デリンジャー2/2@現実】
【所持品:支給品一式、デリンジャーの残弾10/10、ランダム支給品×2、病院で集めた医療器具、怪我の処置本】
【状態:健康、覚悟】
【思考・行動】
1:沙耶を……?
2:スザクを優勝させる。
3:2のため利用できる人物は利用し、無用な人物は殺害も辞さない。
4:天使、沙耶、ナギと行動する。
5:島の西側を探索し、24:00ごろに南側の街であの二人と合流する。
【備考】
※死後からの参戦です。
※ギアス制限あり。人の目を見て3メートル以内。『死ね』や『自殺しろ』の命令は無効です。
※白鐘直斗の知り合いの名前を記憶しましたが、今のところ探す気はないようです。



【立華奏@Angel Beats!】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3、学園革命スクレボ@リトルバスターズ!】
【状態:健康】
【思考・行動】
0:沙耶を……?
1:結弦を探す。
2:ルルーシュ、沙耶、ナギと行動する。
3:ルルーシュの言動に注意。
【備考】
※最終話直前からの参戦。
※ハーモニクス(コピー能力)のみ制限。



【三千院ナギ@ハヤテのごとく!】
【装備:クリュサオル(chrysaor)@そらのおとしもの】
【所持品:支給品一式 大量のエロ本@そらのおとしもの 目安箱@めだかボックス 水@現実 ジュース@現実 角砂糖@現実】
【状態:悲しみ、決意、ギアス】
【思考・行動】
1:沙耶……?
2:ルルーシュを信じる。
3:ゲームを終わらせるのだ。
4:マリア……。
【備考】
※アテネ編直前からの参戦。
※ある程度の参加者の特徴を知っています(基準は今までハヤテのごとく!の原作、アニメ、劇場版、OVAでパロディまたは伏せ字にされた事のある作品のキャラクターが該当します)
※『信じろ』とギアスをかけられました



【朱鷺戸沙耶@リトルバスターズ!】
【装備:沙耶の拳銃(7/7)@リトルバスターズ!】
【所持品:なし?】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:この状況を……?
【備考】
※首輪をしていません。
※名簿に名前が載っていません。


【学園革命スクレボ@リトルバスターズ!】
普通の漫画。棗恭介の愛用の漫画でもある。物語のヒロインの名前が『朱鷺戸沙耶』であり、沙耶の偽名もこの漫画のヒロインから取っている。

906 ◆WzpMn05TJA:2013/05/19(日) 17:06:08 ID:WWtF2WTE0
投下終了です
元ネタはゲーム『シークレットゲームCODE:Revise』より

一応『リベリオンズ』のCルートタイトル『CODE:Revise』でもあります

907 ◆RmIe4rjRnw:2013/05/20(月) 22:12:58 ID:afdGivRs0
投下乙です!
さっそく病院組に亀裂が走るとは…
沙耶が巻き返すのか、ルルーシュがチェックをかけるのか
どう転んでも面白くなりそうだと思いました

それでは自分も、セイバーで予約します

908 ◆RmIe4rjRnw:2013/05/26(日) 21:08:18 ID:BDinM3Qg0
前回の話のタイトルの元ネタを記載するのを忘れていました。
「かぜ〜breeze〜」
アニメ「AIR」の第一話サブタイトルより。

そして、投下します。

909 ◆RmIe4rjRnw:2013/05/26(日) 21:10:35 ID:BDinM3Qg0



――もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ――







時刻は午前八時を少し回った頃、場所はD-4エリアの森の中。
鬱蒼と草木の生い茂る森の中、無言で立っている少女。
そこに居るだけで、他人に少なからず畏敬の念を抱かせる高貴な存在。
セイバーのサーヴァント、騎士王アルトリア・ペンドラゴンはそこにいた。
オルタ化したせいで、平常時とは属性が反転し、柔肌は青白く、碧色の瞳は金色に変化している。
しかし、それでも、少女が相当の実力者であることは、見る人が見ればすぐさま理解できるであろう。
総身から放出される魔力量は、並のサーヴァントでは遠く及ばない。
真っ黒に変色し厳めしくなった鎧も、並大抵の攻撃ならば、その強靭さを以て跳ね返してしまえそうに思えるほどだ。
“闇に染まった”という形容がこれほど相応しい者は、そういない。
そんな騎士王は、現在、三文芝居をそれと知らずに見てしまった観客と似た顔をしていた。


原因は、つい数分前に島中に響き渡った番外放送に在る。
進行役の郷田真弓が告げた内容如何に興味はなかった。
だが、言葉の端々から、騎士王を見下すかのような印象を受けたのだ。
そもそも、名高き騎士王を、無許可でこの場に召致した時点で、本来ならば許されざる狼藉だ。
しかし、主催者の悪辣な行動はそれ以上だ。
首輪を嵌め、優勝した場合の褒賞を提示し、殺し合いが始まれば、嘲笑うかのように放送を繰り返す。
それらの行動はつまり、騎士王を慰み物扱いしているのと同じこと。
誇り高き王として生きた少女が、怒りを覚えるのは至極当然だった。
例え主催者にそのつもりがなくとも、短時間で二度も、嘲笑を裏に秘めた言葉を聴いては、騎士王の憤慨は免れなかっただろう。
この世全ての悪に染まろうと、高潔な騎士王としての理想は、僅かに残っている。
その名を、地位を、力を、道具の如く軽んじるような扱いは許容できない。
主催者はいずれ一刀の元に切り伏せる。
それが、騎士王の出した結論だった。


しかし、それは飽く迄“騎士王”としての結論。
誇りや名誉などの私情を挟んでしまうそれは、理性的な判断とは言い難い。
ただ、聖杯戦争のサーヴァントとして召喚された記憶も存在する彼女は、感情のままに動くことはしなかった。
即ち“セイバー”としての冷静な思考も、同時に行っていたということだ。
セイバーは、英霊として与えられる時空を超えた知識を、諸々の理由から与えられていない。
ただそれでも、現代社会に召喚されてから今までの経験は、この状況を分析することに役立った。
そして判断を下した。
『主催者に自分ひとりで立ち向かうのは困難である』と。


この判断を下したのには原因がある。
それは『主催者は強大な力を有している』と、考察の結果、確信したことだ。
ここでいう力とは、魔力だ。より具体的にいうならば、魔術を行使する力だ。
主催側に『魔術かそれに準ずる力を有する者がいる』のは、まず間違いない。
セイバーの身にも掛けられている、能力制限。
それには確実に魔術的要因が絡んでおり、一般人には不可能だ。
そもそも“サーヴァント”自体、一般人にとっては、全くもって未知の存在である。
英霊を知るのは、神秘を探求する魔術師のような輩だけだ。


成程、百人の人間を集めるだけならば、財力があれば可能だろう。
しかし、その中に英霊が混ざるとなれば、英霊に対応できるエキスパートが必要、というわけだ。
そう考えたときに真っ先に候補となるのが、魔術師。
それも、七騎のサーヴァントを、彼らが気付かぬ内に一つの島に転移させるなどという離れ業を行えるほどの実力者。
そう考えれば“魔法使い”と呼ばれる者の可能性もある。
どちらにせよ、強大な力を持つ魔術関係者が主催側にいるということは確実。
よってセイバーは、一人で立ち向かうのは、些か無謀が過ぎる、と考えたのだ。

910 ◆RmIe4rjRnw:2013/05/26(日) 21:13:09 ID:BDinM3Qg0

そこまで考えて、セイバーは自身が弱気になっていることに気付いた。
悪に身を染めた暴君らしからぬ、消極的な思考をしている。
なぜだろうか。
考えても答えはでなかった。
そもそも思考するという行動そのものが自分らしくないと、セイバーは無理矢理に思考を断ち切った。
しかし、胸中に出来たわだかまりは、消えずに残ったままだった。


戦術や軍略とは異なる頭の使い方をしたセイバーは、少々疲れていた。
とはいえそれは、肉体的な疲労ではなく、精神的なもの。
食事を摂り、少しばかり休めば治る程度のものだと考えたセイバーは、デイパックから基本支給品の食料を取り出した。
そして、顔を顰めた。手には質素なパンが一つだけ。
結構な大きさのそれを、セイバーは僅か一分足らずで食べきった。
しかし、到底足りないと不満を漏らすかのように、鎧の下から音がした。
魔力の供給が十分な状態ではないのか、などと考えながら、セイバーは更にデイパックを漁った。
明らかに容量を超えている物でも入るデイパック。
この容器も魔術が絡んでいるな、などとも思いながら、中身を探り、そして発見する。
幾つもの平べったい箱。表面には妙なマーク。
濃厚なチーズの香りが、隙間から漂ってくる。
セイバーは確信した。これは自分の好きなモノだと。
そして、箱のふたを開けるや否や、目を輝かせてそれを食べ始めた。







――もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ――



吹く風にも、ざわめく木々にも、なんら関心を示さず、ただひたすらに食べる少女。
ジャンクフードを愛好するというのもまた、悪に染まったせいなのか。
黒き少女の優雅とはかけ離れた食事の時間は、まだ始まったばかりだ。
そして、バトルロワイアルもまた然り。


「せいぜい優越感に浸っていろ、主催者共。
 この騎士王を慰み物扱いしたこと、その身を以て償わせてやろう」


参加者の威勢がどれだけ良かろうと、まだまだ、終わりはしないのだ。


【D-4 森/午前】

【セイバー(セイバーオルタ)@Fate/stay night】
【装備:浅打@BLEACH】
【所持品:支給品一式(食料を消費)、ピザ×195@コードギアス 反逆のルルーシュ、ランダム支給品×1】
【状態:健康、食事中】
【思考・行動】
0:――もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ――
1:バトルロワイアルを楽しむ。
2:主催者はいずれ切る。
【備考】
※Fate編のギルガメッシュ戦終了後から参戦していました。
※記憶はまだ覚えているかもしれません。
※主催者側に魔術師かそれに近い存在がいると考えています。



【ピザ×200@コードギアス 反逆のルルーシュ】
参加者の一人であるC.C.の好物。200枚セット。
セイバーに支給。

911 ◆RmIe4rjRnw:2013/05/26(日) 21:23:26 ID:BDinM3Qg0
投下終了です。
誤字・脱字・矛盾点、あるいは改善点等ありましたら、是非指摘をお願いします。

タイトルは「Big mouth」です。元ネタは特にありません。

ユーフェミア・リ・ブリタニア、瀬川虎鉄、中嶋直美、井ノ原真人、アストレアで予約します。

912 ◆WzpMn05TJA:2013/05/28(火) 08:28:58 ID:XxDIwERI0
投下乙です

もっきゅもっきゅもっきゅ
オルタ化してもセイバーさんの可愛さはなくなっていませんでした
ギャップ萌えを感じました

913 ◆RmIe4rjRnw:2013/06/02(日) 19:44:32 ID:XB7AWSrs0
予約を延長します

914 ◆RmIe4rjRnw:2013/06/27(木) 16:45:11 ID:.x//NPc20
予約破棄の報告もなくすみません。
性懲りもなく
北川潤、天城雪子、一方通行、竜宮レナ、古泉一樹
以上の五人を予約します

915 ◆RmIe4rjRnw:2013/07/02(火) 21:46:28 ID:TvfYRsVs0


太陽がようやく暖かな光を地表に届け始めたころのことだ。
商店街を歩いていた雪子は、不意にその場に立ち止まった。

「クシュン!」

一拍置いて、くしゃみを一つ。
雪子は、髪をよく乾かさなかったことを後悔した。
シャワーを浴びてから一時間は経っているが、髪はまだしっとりとしている。

「タオルか何か、あれば良かったのに……」

水も滴るいい男、という表現があるが、それは女性にも適用される。
湿った髪をかき上げる仕草、そして僅かに窺える白いうなじ。
太陽の光も相まって、その姿は傍目から見ればかなり色っぽいものだった。

「はぁ……」

だが、それは飽く迄、傍目から見た場合の感想である。
本人からしてみれば、濡れた髪は外気に当たって冷たくなる上に、肌に纏わり付くため、非常に寒く感じるのだ。
ただただ不快なだけ、である。
急いでいたため乾かす間がなかったのも事実だが、それでも後悔せずにはいられなかった。

「それにしても、ここ、どこなんだろう」

気を取り直して辺りを見回す。
デバイスと地図によれば、ここは【G-7】エリア。全域が街のエリアのようだ。
街といっても大都会ではなく、かといって八十稲葉市のように田舎でもない。
多少の開発はされているが、まだまだ発展途上の街といったところか。

「あれ、日本語だよね……『○○銀行』とか『レストラン□□』とかあるし」

商店街のところどころにある看板は、日本語で書かれている。
よって常識的に考えれば、ここは日本で間違いない。

「でも、この日本で殺し合いなんて……」

しかし、その日本で殺し合いが行われているなどとは到底信じられない。
日本は、少なくとも反乱や紛争が日々引き起こされるような危険な国ではない。
むしろ平和と言えるだろう。
その国で、いきなり「殺し合いをしろ」などと言われるだろうか。

「戦争をするわけじゃあるまいし、やっぱり変よね……」

戦争に備えて、竹槍を突く練習をさせられているのとはわけが違うのだ。
人間を集めて殺し合わせる、なんてことが許されるわけがない。
シャルル・ジ・ブリタニアという人物がどれほどの力を有しているのかは分からない。
だが、こんなことをしている事実が発覚したら、すぐにでも警察組織が飛んできて、この殺し合いは中止になるはずだ。

「――なに考えているんだろう、私」

そんな、脳裏に浮かんだ考えを、必死に振り払う。
桜井智樹を殺して、もう数十分が経った。
もう既に、とっくに天城雪子という女は血も涙もない殺人犯なのだ。
そんな甘い望みを、今更抱いても遅すぎる。
雪子はそう結論付けて、思考回路を無理やりストップさせた。

「そうよ、私は人殺し……」

殺人犯。人殺し。
その単語が出た瞬間、雪子の頭の中で完二の死体がフラッシュバックした。
血みどろの身体。苦痛に歪んだ顔。
お腹の辺りに見え隠れした、ぐちゃぐちゃの臓腑。
忘れようにも忘れられない映像が、鮮明に浮かんできた。

「うっ……」

916 ◆RmIe4rjRnw:2013/07/02(火) 21:47:39 ID:TvfYRsVs0
雪子は強烈な吐き気に襲われて、口を押さえた。
なにしろ、人間の死体を――かつてヒトだったものを見たのは初めてなのだ。
ましてそれが親しい人物なのだから、ショックは何倍にもなる。
そんなものを見てしまったら吐き気を催すのは普通で、むしろ正常な人間である証だろう。
だが雪子は、吐きたいという感情を必死に抑えた。

「人を殺しておいて、自分だけ助かろうなんて……むしが良すぎ、だよね」

ここで全て吐いてしまえば楽になれるだろう。
警察が来てくれると思えば、気は楽でいられるだろう。
だけど、そんなことを考えるのは許されない。

「それは、逃げ……だから」

警察が来てくれるという望みも、吐いて楽になろうという思いも同じ。
今この状況から逃げているだけだ。
身勝手な理由で他人を殺した人間は、罪から逃避することは許されない。
そしてそれは、誰であろう雪子自身なのだ。

「そう……逃げられない……逃げない」

口に出して言うことで、雪子は自身をきつく戒めた。
きつく、きつく――自分の身体を縛り付けるかのように。
そしてもう一言、今度は戒めではなく、決意を口にする。

「私は、絶対にあの場所に帰る――っ!」

なにより重い罪を背負い、どれほど厳しい罰を受けてでも。
必ず、自称特別捜査隊のみんながいる八十稲葉市に帰る。
この両手を血に染めても、いくつもの死体を踏み越えてでも。
罪も、罰も、全てを背負って――最後には必ず元の世界に帰る。
その決意を言葉にした。

「だから、これを……」

雪子はデイパックから、ゼロの仮面と服、それにマントを取り出す。
例え誰が相手でも、仮面越しなら迷わないと考えたのだ。
それに、ボイスチェンジャーの付いているこの仮面なら、正体も分からない。
殺し合いに乗った人間には丁度いい。
長髪を纏めるのには苦労したが、フルフェイスの仮面に、小さな頭はするりと入った。
服の着替えは、手近な民家で行った。

「ふう……」

ピッタリとした服に着替え終えて。
慣れない仮面の中で、雪子は深呼吸をした。
もう二度と決意は揺らがせない。
そう考えながら、雪子は再び歩き出した。





日が昇ってきたが、街は閑散としている。
そんな寂しい街頭を、一方通行は返り血にまみれた姿のまま歩いていた。
狂気じみた笑いをし、悦に浸っていた数十分前とは正反対の、渋い顔をしていたが。

(……ったく、どうなってやがンだ)

その原因はもちろん、一方通行の置かれた現状のせいだ。
“絶対能力進化実験”と同系列の実験かと思いきや、そうとも言い切れない。
胡散臭い主催者からして、なんらかの“裏”があることは予想できた。
だが、考えてみればそもそもの前提が間違っているのかもしれない。
これが実験である、という前提が。
そう考え始めたのは、そう考えざるをえない理由が幾つかあったからだ。

まず一つ目は、一方通行が最初に邂逅した少年のことだ。
少年が手のひらから出した光球は、超能力とみて間違いない。
発火能力者かそれに近い系統の能力者だろう。
そして能力者であれば、何らかの経緯で実験に参加させられていても不思議ではない。
しかし、少年は実験の参加者であるとは思えなかった。
少年は出会い頭にこう言ったのだ。

917 ◆RmIe4rjRnw:2013/07/02(火) 21:48:15 ID:TvfYRsVs0

『――なんですか、あなた……?――』

これは“絶対能力進化実験”の実験動物としては不自然だ。
もしこの島で行われているのが“絶対能力進化実験”であるならば、少年は一方通行の顔を知っていて然るべきなのだ。
だが、少年の言葉はそれを否定している。
つまり、被験者の顔を実験動物に教えていないということ。
“超電磁砲”のクローンを用いた実験を経験している一方通行からしてみれば、それは違和感以外の何物でもない。

『――僕の邪魔をしないで、いただきたい――』

同様にこの言葉もまた不自然といえる。
あたかも、実験以外に優先すべきことがあるかのような物言いだった。
これが実験であれば、実験動物の優先順位はなによりも実験が上だろう。
少なくとも、目の前に被験者がいる状況で言う台詞ではない。

(どう考えても実験の内容を知って参加しているとは思えねェ……)

少年の行動原理は、言葉の中に出てきた『涼宮』という人物ありきだ。
“絶対能力進化実験”など、まったくもって眼中にないかのようだ。
――あるいは、本当に見たことも聞いたこともないのか。

(それでも、コイツ一人だけだったら例外ってことで片づけられるンだが……)

一方通行にとっては頭の痛いことに、理由はまだあった。
それが二つ目。ついさっき一方通行が殺害した少年のことだ。
最強の能力者に向かって、日本刀やバットを振りかざして、全て破壊された少年。
挙げ句の果てに全身の血液を逆流させられ、一瞬で殺害された少年。
その愚かな少年が、一方通行に新たな疑問を投げかけた。

(これが本当に実験なら、無能力者がいる理由が無ェ)

学園都市には、念動力や発火能力、空間移動など様々な能力を操る能力者が存在する。
この実験はそういった能力者を集めて戦わせ、その結果、一方通行をレベル6に進化させるものだと考えていた。
とはいえ、集める能力者は誰でもいい訳ではない。
実験の為には“一方通行と対峙するに相応しい能力を持った人間”を集めるべきなのだ。
そして少年がその条件に当てはまるかといえば――否だ。

少年の攻撃方法は、一方通行にとってはおよそ面白みのないものだった。
日本刀やバットといった凶器を、やたらめったら振り回すだけ。
猪突猛進――否、単なる無謀という言葉が相応しい。
凶器が通用しないと分かると、何やら薬品らしきものを注射せんと向かってきたが、結局はそれだけ。
終ぞ能力を行使しようとはしなかったのだ。

(俺と対峙して能力を使わずに勝とうなンざ、普通の能力者なら考えねェ。これが実験なら尚更だ。
となると残った可能性は……そもそもこれは実験じゃねェ、ってか?)

逆転の発想だ。
能力者の少年と無能力者の少年。
そのどちらも実験動物とは思えない行動をしている。
――そもそも、彼らは実験動物ではないのではないか。
――これは実験でもなんでもないのではないか。

(……まァ、想像の範疇を超えねェンだがな)

一方通行がしたことは、推察に過ぎない。
今考えたように、これは実験とも一方通行とも関係のない、単純な殺し合いかもしれない。
とはいえ例外的な実験で、最終的には一方通行を進化させることが目的であるという可能性も充分にある。
しかし、より深く考察し判断をするには、情報が圧倒的に足りていなかった。

(クソったれが……)

全ての元凶である主催者たちに、心中で悪態をつく。
――これは本当に“絶対能力進化実験”なのか?
そう問いたくとも問えない状況。
首輪を嵌められ、言いなりになるしかない実状。
そして、得体の知れない相手に対して自身が後手に回っているという事実が、何より一方通行を苛立たせていた。

「クソがっ!」

苛立ち紛れに石の壁を殴る。
能力を使わなかったせいで痛みが右手を襲ったが、おかげで頭は冷えた。

918 ◆RmIe4rjRnw:2013/07/02(火) 21:50:09 ID:TvfYRsVs0
「兎にも角にも、動くしかねェだろォな……」

冷静に考えれば、すべきことは明白だった。
今の一方通行には、明らかに情報が足りていない。
これが“絶対能力進化実験”であるか否か、判断しかねているのもそのせいである。
となれば誰かと遭遇し、情報交換をすることは必要不可欠だ。

「まずはそォだな、地図に載ってる手近な場所にでも行くか――ったく、めンどくせェ」

白髪をくしゃくしゃと掻きながら呟く。
考えなしに歩いてきたせいで通り過ぎていたようだが、今いる【G-8】の隣のエリアには商店街があるようだ。
商店街。様々な店が混在する場所。
参加者が行動の拠点にするとは考えにくいが、人がいる可能性は充分にある。

「さァて、とっとと行くか」

まるでコーヒーを買いに行くかのような気軽さでそうひとりごちると、一方通行は早足で歩き出した。





重い身体を引き摺るようにして、北川潤は歩いていた。
全身に受けた傷は決して浅いものではなかった。
だが、北川は必死に動いていた。
足取りはふらついているが、眼光はしっかりと前を向いている。
一体何が北川を支えているのか。
それは、生きるという強い執念。
今の北川にあるのは、ライダーに救われた命を無駄にはできないという思いだけだった。

ライダーこと征服王イスカンダル。
初めて見たときから、その大きさに圧倒されていた。
豪放磊落という四字熟語を体現するかのような、どこまでも大きな人物だった。
頼もしく光る双眸や力強い剛腕、がっしりとした体躯。
身には強大な覇気を纏っており、それでいて親近感を与える雰囲気もある。
外見、内面共に、王に相応しく豪快な人物だった。
元は『英雄』だった――そんな眉唾物の話も、今ならすんなりと信じることが出来る。
かくして短時間の間に、北川はライダーに対して憧れの眼を向けるまでになった。

だが、そのライダーは死んだ。
数分前に流れた第一回目の放送でも、その名前は確かに呼ばれた。
疑う余地はなかった。北川は、ライダーの死ぬ瞬間を、この目で見ていたのだ。
真アサシンの奇妙な技によって、征服王は死んで、消えていった。
北川からすれば、死の瞬間はあまりに呆気なかった。呆気にとられた。
信じたくなかったし、嘘であって欲しいと願った。
放送を聞くまでは“ライダーが死ぬわけがない”とどこかで思っていた。
いわゆる現実逃避というものなのだろう。
しかし、幾ら願ってもライダーは既にこの世にはおらず、北川自身は傷だらけだ。
それは紛れもない真実で、どうしようもない現実だった。

「俺は……」

現実を思い知らされた北川は、精神にも大きな傷が出来ていた。
殺し合いという舞台に放り出された自身が、心の拠り所とした王の姿。
その王の頼りがいのある巨躯は、永久に自身の目の前に現れることはない。
もう全ておしまいだ。
この島から脱出することなんてできない。
あとは無様に殺されるだけだ。
ならばいっそのこと――死んでしまおうか。
磨り減らされた精神は、北川自身も驚くほど弱くなっていた。

「いや、だめだ……死ぬわけにはいかない」

だが、その弱い心を、北川は自分の言葉で否定する。
ここで死んだら、ライダーの死が無駄になってしまう。
征服王イスカンダルを、犬死にさせることになってしまう。
そんな最悪の結末を回避する為にも、自殺なんて愚かな真似はできない。
王に助けられた身として、ここで死ぬわけにはいかない。
絶対に、この島から脱出しなければならない。
それがライダーの遺志を受け継いだ、北川潤の意志だった。

「死ぬわけにはいかない……」

強い意志を言葉にする北川の顔からは、しかし段々と血の気が無くなっていく。
北川には血液が足りていなかった。
真アサシンにはナイフで全身を傷つけられ、長沢勇治にはバットで頭部を殴られた。
結果として“鼻血も出ない”という表現が冗談にならないほどに、北川は血を失っていた。
それでも、北川は無理を押して歩き続けた。
ライダーの死を無駄にしない、という意志を、一歩一歩踏み締めながら心に刻みつけていくかのように。

「死ねない……絶対に……」

しかし、その一歩一歩も時間につれて弱々しくなっていった。
四肢の動作は少しずつ緩慢になっていき、呟く声は段々と途切れて聞こえるようになった。
これは仕方がないことだ。
北川は怪我の処置に必要な道具を何一つ、絆創膏一枚さえ持っていなかった。
つまり、応急処置さえ施さずに、今まで歩いてきたのだ。
そのせいで塞がりかけていた傷は開き、僅かながらも血が流れ出ていた。
誰が見ても危険な状態だ。
倒れずに歩いてきたことが、奇跡と言えるかもしれない。

「死ね、ない……」

919 ◆RmIe4rjRnw:2013/07/02(火) 21:51:03 ID:TvfYRsVs0
夢を食べても腹は膨れない、というが、北川の今の状況はまさしくそれだった。
強い決意も、深い執念も、肉体的な疲労には敵わない。
次第に手足の感覚は麻痺していき、脳のはたらきは鈍くなっていく。
意識が朦朧とし、言葉を発することさえ困難になる。

「死ね、ないん、だ……」

そして、ついに限界が訪れた。
両脚は自身の体重を支えることが出来なくなり、その場に膝を着いた。
一拍置いた後、上体は重力に従って、地面に鈍い音を立てて倒れ込んだ。
傷だらけでうつ伏せになったその姿は、まるで死体であるかのようだった。
もしかしたら、本当に死んでいるのかも知れない。
見た者がそんな最悪の想像をしてしまうほどに、北川は虫の息だった。
それでも、鼻と口からかすかに聞こえる呼吸音が、北川が生き延びていることを――死に損ねていることを示していた。

「…………」

殺し合いの最中に気絶し、あまつさえ無防備な姿を曝す北川。
完全に復活し目覚めるまでには、相応の時間がかかることだろう。





今の竜宮レナの心情を、まともに推し量れる人間は恐らくいないだろう。
殺し合いに呼ばれた。
大の親友を殺された。
言葉にすれば僅か数文字だが、受け止めるには負担が大きすぎる現実。
その現実は、確かにレナの心を蝕んでいた。

「…………」

それに加えて、疲労がレナを襲う。
自然が豊かな雛見沢で過ごしているために体力はあるレナだが、それでもまだ中学生。
五時間近く休みなしで歩き続けていれば、当然のように足は棒のようになる。

「…………」

無言で歩き続けるレナ。
目的地は定まっていない様子だ。
近くにある施設を覚えているようにも思えない。
自身が今どこを歩いているのかさえ分からないかのようだ。

『ご機嫌いかがですか皆さん?
では今から放送が始まります』

死者を告げる放送が流れる。
からかうように喋る郷田真弓の声が島中に響く。

「…………」

無言で辺りを見回すレナ。
放送に耳を傾けることもしない。
地図を開き禁止エリアを確認する気もない。
ただただ園崎魅音の仇を探す。

「…………」

手元のデイパックを見る。
底の部分は、変色した血で黒く染まっていた。
既に、頭部から流れていた血は止まっているらしい。
視線を前に戻して、無表情のまま、レナは再び歩き始めた。





古泉一樹はとある民家の居間にいた。
つい先程、肩の傷を処置し終えたところだ。
傷の処置のために脱いでいたブレザーを着直して、デイパックの荷物を整理する。
中身は基本支給品一式に加えて、ランダム支給品が二つ。
そして、学校から調達した医薬品だ。
消毒薬や包帯といった、どこの家庭にも常備してあるであろう物だが、持っていて損はない。
なにより、傷の手当てができる、という安心感を得ることができるのが大きい。

「少々勿体なかったという気もしますが、仕方ないですね」

しかし、それらの消毒薬や包帯は、その半分ほどを使ってしまっていた。
自分自身の傷に薬を塗り、包帯を巻くという動作に慣れていなかったため、無駄にしてしまったのだ。
古泉はそのことを少し残念に思ったが、かといって引き摺ることはなかった。

920 ◆RmIe4rjRnw:2013/07/02(火) 21:51:31 ID:TvfYRsVs0
「さて、とりあえず外に出るとしましょう」

デイパックを肩に担いだ古泉は、民家の玄関へと向かった。
小奇麗に整った玄関は、新築の家を思わせる。
昇ってきたばかりの太陽、その光が玄関越しに靴を照らしていた。

「……太陽を懐かしく感じるときが来るとは、予想もしていませんでしたよ」

古泉は呟きながら靴を履くと、玄関のドアを開けて外に出た。
途端にドア越しの比ではない量の光が古泉を照らす。
しかし、目を眇めたのも一瞬、古泉は後ろ手にドアを閉めてから、すぐに歩き始めた。

「さて、僥倖と言うべきでしょうか、涼宮さんを含めたSOS団のメンバーは全員が生きているようですね。
 とはいえ死亡者は十四人も出ています。いつ誰が危険な目に遭い、そして死ぬかは予想できない。
 となると、涼宮さんたちの安否に関しては希望的観測を持たない方が賢明でしょうね」

ぶつぶつと独り言をいいながら、古泉はデバイスを取り出して考察を開始した。
現在地はG-7、時刻は六時を十分ほど過ぎていた。
中学校から逃走したのが四時前なので、かれこれ二時間を無駄にしていることになる。
しかし古泉は、それを理解しても焦ったり嘆いたりはしなかった。
ただ微笑を浮かべただけであった。

「もうこんなに時間が過ぎているとは、少々ゆっくりし過ぎたのでしょうか……ん?」

デバイスを見ながら歩く古泉は、地面にあるものを見つけて立ち止まった。
屈み込んで確認したそれは、弾痕だった。
更に周囲を捜索すると、弾痕が三つ、離れた場所に銃弾が一つ、そして数十本の針らしきものがあった。
どれも、この場所で戦闘が行われていた証拠だ。
そのことを理解した古泉は、処置した肩の傷にそっと触れた。
数時間前に暗い校舎内で味わわされた、焼けるような痛みが、鮮明に思い出される。
頭か、あるいは心臓に銃弾を喰らっていたならば、確実に死んでいただろう。

「やはり……涼宮さんたちが死ななかったのは、運が良かっただけなのでしょうね」

穏和な超能力者は、いつになく厳しい顔で呟いた。
その呟きは、楽観的になってはいけないという古泉自身への戒めである。
とはいえ、いつまでも真剣な表情という訳ではなかった。
すぐに穏和な微笑を浮かべて、普段通りに戻る。
そして立ち上がると、注意深く辺りを見回した。
周囲に人の気配がないことを確認した後、そのまま独り言を始めた。

「死亡した参加者は十四人。百分の十四と考えると、そう多くはありません。
かくいう僕のスコアボードは真っ白――いやはや、試合終了(ゲームセット)までどれだけかかるのでしょうね」

そう言って、大仰に肩をすくめる。
バトルロワイアルの開始からかれこれ六時間が経ったが、古泉は誰一人殺害していない。
“ゲームに乗る”という決意をしたのは早かったのにも関わらず、である。

「ふう……」

古泉は俯いて溜息をついた。
今までに出会った参加者、そして自分の行動を省みる。
暗い校舎内という条件があったとはいえ、油断をしなければあのとき一人殺害できた“かもしれない”。
肩を負傷した状態だったとはいえ、逃走しなければ相手の超能力を知ることができた“かもしれない”。
ついつい“かもしれない”という可能性を考えてしまう。
それは思考の悪循環であることに気付いていながらも、古泉は唇を噛んでいた。
古泉が今までとってきた手は、最悪ではないにしても最良からは程遠かった。
その結果が、今の古泉の状況なのだ。

「肩に銃創、そしてスタングレネードという有用な支給品の無駄遣い……」

声に出して確認すると、改めて散々な結果だとわかる。
生き延びるために払った代償と考えるならば、これは少ない方なのだろう。
だが、生憎と古泉は“生き残る”ことを目標にしている訳ではない。
あくまで“涼宮ハルヒを優勝させる”ために行動しているのだ。
そう考えたとき、六時間で何の成果も挙げずにこの消耗具合というのはどうか。
非常によろしくない、といっていい。

「ふう」

古泉は再び、しかし今度は気を引き締めるように息を吐いた。
既に自身を戒めることは終えた。
涼宮ハルヒは死んでいないし、SOS団も崩壊していない。
ならば今まで通り、行動の全てを“涼宮ハルヒを優勝させる”ために費やすだけだ。
そう区切りをつけて、長いこと止めていた足を動かし始めた。

「足りなかったものは、勝利への貪欲さ、でしょうか」

最後にそう呟いてから、古泉は先を急ぐことに専念する。
その胸に、より強い意志を抱え――しかし顔には、相変わらず微笑を張り付けて。

921 ◆RmIe4rjRnw:2013/07/02(火) 21:52:12 ID:TvfYRsVs0





そして――少年少女は出会う。





「あれって……?」

黒髪の少女が、倒れた金髪の少年を見つけた。
まず見たのは首元。そこには確かに参加者の証があった。
少女は少年の元に駆け寄ると、息があるかどうかを確認する。
もしも生きているのなら――頭の片隅では、そんな思考をしながら。


「おっ、丁度イイじゃねェか」

白髪の少年は、二人の人間を視界に入れた。
そして、一瞬も躊躇わずに、二人の元へとゆっくり歩いて行く。
二人までの距離は、凡そ百メートル。
どうやって情報を引き出そうか――脳内にあるのは、そのことだけだ。


「……うぅん……」

金髪の少年は、周囲の状況に気付かない。
僅かに声を漏らすが、未だに目覚める気配はない。
ただただ夢を見ているかのように眠るだけ。
ライダー、俺はどうすればいい――散って行った王の名を、呼ぶ。


「……魅ぃちゃんの、仇……」

茶髪の少女は、ぽつりと呟いた。
少年が倒れている場所から少し離れた場所で、三人の少年少女をじっと見つめる。
あの中に仇がいるか否か、見定めているのだ。
…………――その心中が穏やかでないということは、いかに鈍い輩でも分かる。


「ほう……これはまた、面倒な状況ですね」

そして、それら全員を把握するのは超能力者。
茶髪の少女を発見し、後をつけてきた結果がこれだ。
目に見えて怪しい人物は二人。返り血を浴びた白髪の少年に、仮面を被った人物。
さて、どうしましょうか――状況から目を離さず、より良い選択肢を探す。





時刻は午前七時半。
殺し合いに召喚されるまでは、何一つ接点のなかった五人。
彼らの物語は、彼らが出会うことにより加速していく。



【G-7 街/朝】

【北川潤@Kanon】
【装備:ステゴサオルスのTシャツ@AIR】
【所持品:支給品一式、蛇のお札@物語シリーズ】
【状態:疲労(大)、傷(多)、精神的大ダメージ、雛見沢症候群、気絶】
【思考・行動】
0:――――
1:おっさんの意思を受け継ぎ生きる。
2:みんなと脱出する。
3:真アサシンと長沢は危険。
【備考】
※共通ルートからの参戦。
※聖杯戦争の事についてたくさんの説明を受けました。
※雛見沢症候群が発症しました。症状の進行は後の書き手さんにお任せします。


【天城雪子@ペルソナ4】
【装備:干将・莫耶@Fate/stay night、ゼロの仮面&服@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【道具:支給品一式×2、9のPDA@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-、ランダム支給品×1】
【状態:疲労(中)】
【思考・行動】
0:どうしよう……
1:PDAの首輪解除条件に従って行動する=皆殺し。
2:人は殺したくないけど殺さなきゃいけない。
【備考】
※足立戦終了後からの参戦です。
※桜井智樹を殺したと思っています。
※ペルソナはコノハナサクヤで、スキルは威力の大きいものほど体力を消費します。
※桜井智樹をペルソナ使いと認識しました。
※仲間と足立以外にもペルソナ使いが居ると推測をたてました。

922 ◆RmIe4rjRnw:2013/07/02(火) 22:04:48 ID:TvfYRsVs0

【一方通行@とある魔術の禁書目録】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:健康、返り血(中)】
【思考・行動】
0:どう話しかけるかねェ
1:不本意だがこの実験に付き合う
2:何を隠してやがる……舐めやがって
【備考】
※このバトルロワイアルを絶対能力進化実験だと思い込んでおります。
※能力は制限されています。反射はデフォルトでは出来ません。
※反射の威力に関しては普通通りですが、建物を投げつける、気流操作で会場全体に攻撃する、などは出来ません。
※この『実験』の裏には何かあると気付きました。


【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に】
【装備:蛇尾丸@BLEACH】
【支給品:支給品一式、ランダム支給品×5】
【状態:疲労(中)、精神不安定、喉元に掻き毟った痕、雛見沢症候群L4】
【思考・行動】
0:?????
1:魅ぃちゃんを殺した犯人を、形見の目の前で残酷に殺す。
2:魅ぃちゃん、沙都子ちゃんの仇を討つためにこのゲームを潰す。
3:圭一くんたちを探す。
※『皆殺し編』、綿流し祭開始直後からの参加です。
※魅音のデイパックを受け継ぎました。
※雛見沢症候群が悪化するかどうかは以降の書き手さんにお任せします。


【古泉一樹@涼宮ハルヒの憂鬱】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2、医薬品@現実】
【状態:左肩に銃創(処置済)】
【思考・行動】
0:この状況、どう動きましょうか。
1:涼宮さんを優勝させる。
2:対主催思想持ちの強者は上手く利用していきたい。
【備考】
※『涼宮ハルヒの暴走』終了後からの参加です。
※超能力は使えますが、威力が抑えられています。


【医薬品@現実】
古泉一樹がG-5学校で調達。包帯や傷薬など。数量はそう多くない。

【ゼロの服@コードギアス 反逆のルルーシュ】
テロリスト・ゼロが常に着ている服とマントのセット。
これと仮面を身に着けることで、ゼロは正体を隠している。天城雪子に支給。


―――

投下終了です
タイトルは「acceleration」元ネタは特にありません

923 ◆WzpMn05TJA:2013/07/07(日) 14:10:35 ID:LkBIxw1I0
投下乙です

この大人数の出会いからの展開、わくわくさせられます
この分岐点からいろんな話が考えさせられる話でした

924 ◆RmIe4rjRnw:2013/07/15(月) 18:40:24 ID:faWg1BuI0
月報集計の方、いつもお疲れ様です。

王道    109話(+ 3) 82/100 (- 0) 82.0

そして、坂上智代、人吉善吉、更木剣八、相沢祐一、千石撫子
以上五人を予約します。

925 ◆RmIe4rjRnw:2013/07/23(火) 18:22:50 ID:bzptYBsA0
たびたび申し訳ありません、予約を延長させていただきます。

927 ◆RmIe4rjRnw:2014/02/02(日) 14:50:35 ID:CR55oPSc0
何度となく予約を破棄してしまっていますが、今度こそは、ということで。

坂上智代、人吉善吉、更木剣八、相沢祐一、千石撫子

以上の五名を予約します。

928 ◆RmIe4rjRnw:2014/02/07(金) 05:55:09 ID:kDx92d0M0
投下します。

929 ◆RmIe4rjRnw:2014/02/07(金) 05:56:52 ID:kDx92d0M0
001


どうしましょう。
誰か助けてください。
撫子を救ってください。
目の前にいる悪鬼から。
初対面の人を悪鬼呼ばわりなんて失礼だと言うかもしれません。
ですが、だったら撫子のいるこの場に来てみてください。
ええ、判っています。解っています。
目の前にいるのは確かに人間です。
撫子の常識で捉えるならば、間違いなく人間です。
けれど、例え常識の上ではそうでも、感情が反発してしまいます。
認めたくない事実というやつです。
あの顔を、あの風貌を見てしまったら。
そして、あの目で睨まれてしまったら。
目の前の人間をまともな人間とは思えません。
なので、撫子は目の前にいるそれを、“悪鬼”と呼ぶことにします。敬称略です。
別にいいですよね。撫子がそう呼んでいるだけなのですから。
さて、その悪鬼ですが。
百歩譲っても『かたぎ』の人ではありません。
風貌から気配から、なにからなにまで厳めしいです。
そんな風に顔で人を判断するのは、本来失礼極まりないことなのでしょう。
けれど、怖いものは怖いのです。
心理的に――本能的に。
人間は第一印象ですべてが決まります。
だからこそ、他人から良く思われたい人間は、多少無理をしてでも、猫を被ろうとします。
仮面を被ろうとします。
ですが、それを否定する人間はいません。
仮面を被っている人間に対して、蔑むことも罵ることも憐れむこともしないのです。
当然でしょう――人は誰しも、仮面を被って生きているのですから。
他人を糾弾するどころか、否定すらできるはずがありません。
それが事実です。現実です。真実です。
たかだか十余年しか生きていない撫子が言うにはおこがましい台詞かもしれませんが。
それでも確信をついている――真理だと言っても過言ではないと思います。
長々と語ってしまいました。
要するに、撫子の目の前の悪鬼に対する第一印象は恐怖だけ、ということです。
何が怖いって、ただ顔が怖いというだけではありません。
傷を負っているにも拘らず、満面の笑顔なのです。
笑顔の仮面を張り付けたかのようです。
悪鬼の肩と腹部からは、血がどくどくと流れています。
かなり痛そうです。
ていうか痛くないわけがありません。
でも悪鬼は幸せそうです。ヒールックハッピーです。
今はやりの『どえむ』というやつでしょうか。
痛めつければ痛めつけるほど、それが快感に繋がる性格――性質でしょうか?
どちらにせよ、嫌悪感を抱かずにはいられません。
間違えました。
悪寒を感じずにはいられません。
がくがくぶるぶるです。
そうして体を震わせながら、撫子は立ちすくんでいます。
さっきから目の前といいつつ、悪鬼との距離は十メートル近くありました。
けれど撫子には、悪鬼がかなり近くにいるように思えました。
悪鬼の身体が大きく見えるのです。
プレッシャーというやつでしょうか。
あの吸血鬼の少女、忍ちゃんと似た空気を纏っています。
ヒトではない存在特有のそれを。
やっぱり人間とは思えません。
ぶっちゃけ超恐いです。
どうしてこんなことになったのでしょう。
どうしてこんな怖い思いを――しんどい思いをしなくちゃならないのでしょう。
ああ、誰か。
いえ――暦お兄ちゃん。
どうか助けに来てください。
悪鬼の魔の手から、撫子を救ってください。

930 ◆RmIe4rjRnw:2014/02/07(金) 05:57:31 ID:kDx92d0M0
002


状況が呑み込めない人もいるでしょう。
だから説明することにします。
正直に言うと、撫子の中でもぐちゃぐちゃしていたので纏めたかったのです。
この混濁した状況を。
この困惑した感情を。
撫子の中でどうにか纏めたかったのです。
ではいきますね。
――遡ること千年前。
なんて、もちろん嘘です。
事実無根です。根も葉もないです。でっちあげです。
撫子は嘘吐きなのです。
虚偽の発言で他人を欺いた女です。
悪逆非道です。生きている価値もありません。
とまあ、ちょっと『じぎゃくてき』になってみました。
深い理由も浅い理由もありません。
単なる気まぐれ、いえ、ただの気晴らしと言ったほうが正しいでしょう。
撫子流、ストレス発散術です。
巻き込んでごめんなさい。謝罪します。
本当は、正確な時間はわかりません。
これは嘘ではないです。
五分前かも知れないし、十分前かも知れません。
とにかく、数分前ということにしておきましょう。
数分前、撫子はクチナワさん――腕に巻き付いた神様に起こされました。
放送が始まる直前に起こしてくれるよう頼んでおいたのです。
文字通りの神頼みです。
神様に頼むことにしては小さいですが。
目を覚まして数秒後に放送が始まりました。
その正確さにおいては、クチナワさんは評価できます。
流石は神様です。
口煩くなければより神様らしいのですが。

「おいおい、神様に向かって口煩いとはあんまりじゃねぇか?」
「…………」
「それに、俺が全く喋らなかったら、撫子ちゃんだって不安だろう?
 殺し合いの中でも撫子ちゃんが平常心でいられるように、こうして喋っているんだぜ」

こんなふうに延々と喋りかけてくるので、煩くて仕方がありません。

「口が減らないなぁ撫子ちゃんは。そもそも神様ってのは人間を導く存在だぜ?
 そして導くためには言葉が必要不可欠なんだ――少々口煩くても我慢して欲しいね」
「……クチナワさんの言葉は人を導くものじゃなくて、ただの茶々でしょ?」

しゃしゃ、とクチナワさんは笑って口を閉じました。
様子を見るに図星のようです。
さぞかし耳が痛いでしょうね――あれ?

「クチナワさん、蛇って耳はあったっけ?」
「ああん?……鼓膜はあるが、耳たぶはねえよ。蛇は空気中の音を聞き取れない。
鼓膜や耳が退化しちまってるからな。その代わりに下顎で地面の振動を感知しているんだ」

やけに細かく教えてくれました。
そうですか、耳は退化してしまったんですね。
じゃあいくら苦言を呈したとしても、クチナワさんの耳は痛くも痒くもないのでしょう。
まあ、神様に苦言を呈することなどないでしょうが。
もしそんな人がいたとしたら、どれだけ怖いもの知らずなんだ、って話ですよね。

「撫子ちゃん、話が逸れまくってるぜ」
「え……?」

そうでした。
撫子は状況を纏めようとしていたのでした。
混濁した状況を纏めようとしたら、話が混濁していました。
さっさと話を進めましょうか。
これ以上だらだらと話していると、文字数稼ぎと思われかねません。
実際のところ、その通りなのかもしれませんけどね。
話は逸れまくりましたが、今度こそ回想シーンです。
撫子としては、思い出したくもない記憶ですが――見たいというのなら、どうぞ。


003


撫子はクチナワさんに茶々を入れられつつ、放送を聴いていました。

『悲しいですか?嬉しいですか?何も感じませんか?
脱出を目指しているあなたに問います。あなたは大事な人を失ってでもその理想を掲げられますか?
ゲームに乗っているあなたに問います。この結果にあなたは満足出来ますか?』

放送は、確かこんな問いかけで締めくくられました。
ですが撫子は、問いかけられて特に何かを考えることはしませんでした。
郷田と名乗った女の人の声は、あからさまに挑発をしていました。
『あおり』というやつです。
参加者の人々の心を揺さぶろうとしたのでしょう。
それくらい人生経験の貧しい、中学生の撫子でもわかります。
だからむやみに挑発に乗ろうとはしなかったのです。
――いや、実際のところは、考えるのがしんどかっただけなんですけど。

931 ◆RmIe4rjRnw:2014/02/07(金) 05:59:34 ID:kDx92d0M0
「しゃしゃ、正直だねぇ。まぁ、ああいう挑発には乗らなくて正解だと思うぜ」
「…………」
「ああん?どうしたんだい撫子ちゃん。蛇が蛙に呑まれたみたいな顔をして」
「クチナワさんと意見が合うなんて……」

まったくもって意外でした。

「そんなに驚かれるとは心外だな」
「だって、クチナワさんは良い神様には見えなかったから……」
「おいおい、それは流石に言い過ぎだろ。神権侵害だぜ撫子ちゃん」

人権侵害ならぬ神権侵害とは。
そんな恐ろしいこと、誰がしようと考えるのでしょう。

「そこまで大それたことをする気はないよ」
「というか俺様は撫子ちゃんが揺さぶられなかったことにびっくりだよ。
 十四人も死んでいるんだぜ?暦お兄ちゃんが死ぬ可能性だってあるぜ?」
「えっ!?」

揺さぶられました。
見事に揺さぶられました。
そうか、暦お兄ちゃんが死ぬ可能性も――。

「って、いやいやいやいや。それはないよ、クチナワさん」
「ああん?どうしてだよ撫子ちゃん」
「暦お兄ちゃんが死ぬ可能性なんて、漫画の長期連載でストーリーが破綻しない可能性くらい低いよ」
「なんでそこを漫画で例えようと思ったんだよ……」

クチナワさんはそういいますが、撫子は信じて疑いません。
長く連載を続けていれば、矛盾が出てきてしまうのは当然です。
その矛盾を抱えてでも話を進めることで、愛される作品になっていくのですから。
かの有名な、キン肉星の王子が主人公の漫画だって――。

「あー、いいかな撫子ちゃん」
「え……なに、クチナワさん。正義超人と悪魔超人の長きにわたる戦いの歴史を聞きたいのかな?」
「いや、興味ないから。それより暦お兄ちゃんのことだよ」
「……ああ、そっか」

そうでした、すっかり忘れていました。
撫子の様子を見たクチナワさんは、まるで溜息をつくように首をもたげました。
『へきえき』させてしまったのかもしれません。
そうですよね。いい加減、しつこいですよね。
それじゃあ本題に入りましょうか。

「暦お兄ちゃんがタッグを組むなら、アシュラマンだと思うよ」
「なるほど……って、なんでだよ!!」
「だって魔界の王子(プリンス)だよ?暦お兄ちゃんの相棒としてぴったりだよ!」
「いや、そこじゃなくて……」
「怒り、笑い、冷血の三つの顔を持つアシュラマンと、吸血鬼と人間の二つの顔を持っている暦お兄ちゃん。
 この上なくシンクロしているよ!まさに夢のタッグだよ!!」
「…………」

あれ、返事がありません。
ただのしかばねなのでしょうか。
それとも抜け殻なのでしょうか。
あるいは――ただの白いシュシュになってしまったのでしょうか。

「撫子ちゃん。仏の顔も三度まで、って知ってるかい?」
「えっと……仏様のご慈悲は三度までしか受けられないってことだっけ」

考えてみれば妙な話です。
何人をも救済する立場の仏様なのに、三度までしかその救済を受けられないというのは。
酷いです。不条理です。
でも、なんでクチナワさんは突然そんなことを言い出したのでしょう。

「俺様は神様だから、厳密には仏とは違うんだがな。
 まあ何が言いたいかっていうと、とっとと話を進めようぜってことだよ」
「話……?」
「ああん?まさか冗談でなく、ワザとでもなく、さっきの話をしてたってのかい、撫子ちゃんは?
 ……おいおい、大丈夫か?いやどう考えても大丈夫じゃあねえか……」

話とはなんでしょうか。
呆然とする撫子に対して、クチナワさんはなにやら呟いています。
何があったのでしょうか。当然あったのでしょうが。
まったく見当もつきません。
見当をつけようともしませんでした。
考えるのもしんどかったので、ぼんやりしていました。
すると、数分したころでしょうか、クチナワさんが口を開きました。

「……なるほど、どうやら少々壊れちまってるようだな」
「え?」
「いや、いいんだ。形ある物は必ず壊れて、いずれは滅びるんだからな。
 撫子ちゃん、受け止めるのは難しいかもしれないけど、それでも目の前の現実から目を逸らしちゃ駄目だ」

クチナワさんが真面目な事を言い出したので、撫子は反応が追いつきません。
どうしたというのでしょう。

「しゃしゃ、分かってるとは思うが、これはバトルロワイアル――純然たる殺し合いだ。
 そして殺し合いをさせるのが目的の主催者共は、参加者のパワーバランスを調整している筈だ。
 圧倒的で、理不尽で、桁外れな能力は、全部弱体化してると見ていい。
 例えば“死ににくい能力(チカラ)”なんてのも弱体化させられてるだろうさ」
「ど、どうしたのクチナワさん、急にそんなこと……」

932 ◆RmIe4rjRnw:2014/02/07(金) 06:01:31 ID:kDx92d0M0
やっと反応が追いついた撫子は、慌ててクチナワさんに向かって話しかけました。
けれど、クチナワさんは全く話を止める気配はありません。

「急に? 俺は最初から、至って真面目だぜ?
 この殺し合い――主催者曰く“ゲーム”についてもな。
 撫子ちゃん、ゲームで一番楽しい瞬間はなんだ?ああん?
 持てる限りの技術を総動員して勝負に挑み、その結果得た勝利だろう?
 所謂“劇的な勝利”だ。弱者が強者に勝つ瞬間を、主催者共は希求してやがる。
 だから弱体化の制限をかけるんだ――強者が弱者を嬲り殺しにしないように、ゲームが簡単に終わらないように。
 この島では不死性なんて意味がない。最強なんてただの称号だ。起こりうる可能性は無限大だ。
 もう解ったろ――この島では、大好きな暦お兄ちゃんが死ぬことだってありえる」
「…………」

勢いよく捲し立てるクチナワさん。
いつにも増して『じょうぜつ』になっているように感じます。
撫子はそれに対して何もしませんでした。
何も返せませんでした。
最後の部分は、聞くまいと両手で耳を塞ぎました。
これほどまでに、自分が蛇だったらよかったと思ったことはないというくらい。
強い力で、耳を抑えつけました。
けれど、そんなことに意味はなく。
しっかりと、はっきりと――クチナワさんの言葉は、撫子の耳に入ってきました。
心に刻み込まれた、といってもいいでしょう。

「と、とにかく……」

二の句が継げなければ、誤魔化しの言葉も、意味をなしません。
自分でも分かるほどに弱々しく呟いた瞬間、心――ではなく、腕が急激に震えました。
かなり痛いです。激痛です。
これと同じ痛みを、撫子はつい最近経験しています。

「これは……クチナワさん!?」
「ああ。例の反応だ……近いぜ!」

クチナワさんが興奮していることからも、間違いないでしょう。
撫子の償いの証となる、クチナワさんのご神体。
この震えは、それを感じたときのクチナワさんの反応です。
つまり、この近くにご神体があるということです。

「さあ撫子ちゃん、二時の方向だ!」
「に、二時……?こっちでいいのかな?」
「ああ、さあ速く!!」
「う、うん……分かったから、この震えを止められないかな?痛くて堪らないよ」
「ああん?……悪いが、ご神体が見つかるまでの辛抱だ」

撫子の提案はすぐに却下されました。
仕方がありません。
とにかく今は、クチナワさんのダウジングに頼るしかなさそうです。
撫子は二時の方向へと走りました。
また誤作動でなければいいな。
そんな希望と不安を、半々に抱きながら。


004


結局のところ、誤作動でした。
残念無念ということです。
ダウジングが示した場所、それは地図にも載っていた祠でした。
神社や神宮ではなく、小さな祠。
クチナワさんのご神体がある場所としては相応しい――そう撫子は思ったのですが。

「ふっ……お嬢ちゃん、どうやらまた誤作動しちまったようだ、すまねぇな」

祠を含めた周囲を探し尽くした後になって、クチナワさんはそう言いました。
いつもと声色を変えているのは、誤魔化しのつもりでしょうか。
そうはいきません。
十分弱とはいえ、撫子は頑張ったのです。

「……また、なの?」
「ああん?だから謝っただろうが、しつこい子は嫌われるぜ?」

なんということでしょう。
誤作動をしたのはクチナワさんだというのに、まるで悪気がありません。
天上から目線です。
神様だけに。

「……とにかく、これからどうするの?また当てもなく歩き回るの?」
「しゃしゃ、それしかねぇだろうな」
「えぇ……」

無慈悲なクチナワさんの言葉に、項垂れてしまいます。
さながら蛇の様に。
我ながら下手な例えですね。
ともあれ、これでクチナワさんの失敗は二度目です。
神様にだって失敗くらいあるでしょうが、それでも信頼度は大幅ダウンといっていいでしょう。

933 ◆RmIe4rjRnw:2014/02/07(金) 06:02:34 ID:kDx92d0M0
「おいおい、すべからく神様が全知全能で完全無欠だなんて、誰が決めたんだい?
 不始末を起こした神々なんてごまんといるぜ?――日本だけで八百万もいるんだからな、しゃしゃしゃ」

おや、今の発言はグレーじゃないでしょうか。
八百万の神に謝っておいた方が賢明ですね。
そういうクチナワさんですが、神に期待をしてしまうのは仕方がないと思います。
期待をしてしまう――押し付けてしまう。
人は何か、自分に成せないことを他人に押し付けようとする傾向があるように思えます。
その対象として――こういっては失礼でしょうが――最も手軽なのが、神様なのではないでしょうか。

「しゃしゃ、そうだなぁ……困ったときの神頼み、という言葉もあるしな」
「うん……。だから神様を名乗る以上、撫子がクチナワさんに過度な期待をしちゃうのは仕方ないよ」

そう、クチナワさんが撫子に無条件に信頼されたように。
撫子が笹藪先生から学級委員長の役目を押し付けられたように。
他人から重すぎる期待をされてしまうのは、仕方がないのでしょう。
神という、全知全能をイメージする相手ならなおのこと。
神と同列に自己を、撫子を語るのはおこがましいですが、それはそれとして。

「とにかく、もう誤作動は止めて欲しいな」
「善処するさ、しゃしゃ」

軽薄な態度を崩さないクチナワさん。
はあ、と撫子がこれ見よがしに溜息をついても、ただ笑っているだけです。
まったくもって不遜です。
本当に神様ですか、あなた。
本当なら文句の一つもいってやるべきなのでしょうが――撫子は早々に諦めました。
しんどいことは嫌いですから。

「……近くに、人がいる気配がするな」
「え?」

諦めた途端、クチナワさんがそう言いだしました。
あまりにも唐突過ぎて、妙な声を上げてしまいました。

「しかも一人や二人じゃねぇ……少なくとも五人はいるな」
「こ、暦お兄ちゃんは……いるのかな?」
「しゃしゃ、今居るここじゃ分からない、としか言えないな――近付いてみるかい?」

クチナワさんは、愉快そうに笑ってからそう問いました。
人と接触することが嫌な撫子を、その声は試しているように思えました。
つまり――お前にできるのか、と。
巫山戯るように。
嘲るように。
そして試された撫子は――躊躇わずに頷きました。

「うん。暦お兄ちゃんがいるかもしれないなら、行くよ」
「恋する乙女はこうも積極的になるものなんだな――あるいは、障害がなくなるかもしれないから、か?」
「……どういう意味?」
「気にしなくていい。それじゃ、行こうか」

撫子の質問には答えず、方向を指図するクチナワさん。
真意を見せないこの不遜な神様に対して、若干不信感を強めながらも、撫子は黙って歩きます。
暦お兄ちゃんと会えるかもしれない。
なんといっても、撫子の心を動かしていたのはその可能性です。
人がいっぱいいるという状況は悩みどころですが――我慢できないことはありません。
それよりも懸念すべきは、ある可能性です。

「もし暦お兄ちゃんがいなかったら、そのときは一目散に逃げるからね」
「あぁん?いいぜ、分かったよ」

クチナワさんは呆れたように、一応の了承をしてくれました。
そして、歩くこと一分弱。
今までは聞こえなかった音が、撫子の耳に響いてきました。
時代劇でしばしば耳にする、剣と剣がぶつかり合う効果音に似たそれ。
いわゆる剣戟というやつです。

「く、クチナワさん……これって、誰かが戦っているんだよね?」
「しゃしゃ。そうみてぇだなあ」

飄々とした態度を崩さないクチナワさん。
この神様は、何故こんなにも余裕があるのでしょうか。
余裕そうに見えて、その実、何も考えていないだけなのかもしれません。

「はぁ……」

項垂れてため息をついてしまいます。
太陽が昇って、周囲は充分明るくなったと言えますが、それでも木々に覆われた森の中にいると暗い気分になります。
さながら沢山の人間に囲まれているような。

「しゃしゃ、ビビりすぎだぜ」
「う、うん」

934 ◆RmIe4rjRnw:2014/02/07(金) 06:03:48 ID:kDx92d0M0
そんな考えも、クチナワさんにばっさり切り捨てられました。
ああ無情です。
神様らしからぬ残酷な物言いに、無性に腹が立ちます。
――いえ、神様なんて、いつの世も残酷なものなのでしょうが。

「さあ、早く行こうぜ、撫子ちゃん。文字数稼ぎも大概にしなきゃいけねぇだろ?あぁん?」
「……うん、そうだね」

さておき、とりあえずはクチナワさんの言葉に従います。
後半に何を言っていたのかは全く解りませんが(我ながら棒読みです)、時間を無駄にできないのは確かです。
覚悟を決めて、撫子は戦闘音のする方へと近づいて行きました。
そして、その現場に出遭いました。

「ひっ……!」

そこでは、四人の男女(プラス虎)が戦っていました。
構図としては、三人の高校生くらいの男女対、一人の大柄な男の人でしょうか。
その中でも一際撫子の目を引いたのは、大柄な男の人でした。
奇抜な髪型といい、着ている羽織のようなものといい、興味を引くところは幾つもありました。
ですが、それ以前にその男は、まるで化け物のような威圧感を発していました。
見ただけで、つい悲鳴を漏らしてしまうくらいの。

「い、いや……」

悲鳴を漏らしたということは、つまり恐怖を感じたということで。
殺し合いに現実感を持っていなかった撫子は、このとき初めて――死の恐怖を実感したということです。
目の前の、荒々しく剣を振るう大男に。
より詳しく言えば、男の背中が発する威圧感――そして、全身から溢れる殺気に。

「いやだよ……」

さて、考えてもみてください。
しんどいことが大嫌い、人間関係が大の苦手、そんな千石撫子という大人しい少女がいました。
大人らしい、じゃありません。大人しい、です。
むしろ精神は未熟です。
そんな撫子が、殺し合いという残酷な舞台に立たされて、あまつさえ日本刀を持たされて。
ストレスを微塵も感じないでいられると思いますか。

「嫌だよ、暦お兄ちゃん……」

当然答えはノーです。
ストレスも、ついでに死の気配も、ばりばり感じていました。
ただ、撫子は持ち前のスルースキルで、それらを回避してきたに過ぎなかったのです。
俯いて、黙って、事なきを得る。
撫子にとって、それがトラブルから逃げる常套手段だったのですから。

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ――――」

では、それが通じないことを知ったとき、撫子はどうしたのでしょうか。
化け物じみた大男から感じ取った強大な殺気。
比喩的に表現するならば、死の香り、とでもいうのでしょう。
しかも、暦お兄ちゃんが死ぬ可能性もあるとクチナワさんに言われた直後のことです。
精神がブレブレの状態でのことです。
無視は出来ません。
回避も出来ません。
反抗も出来ません。
この状況を改善しようにも、それだけの力を持ち合わせていないのです。
では、撫子は一体どうしたのでしょうか。

「――――――!!!!!」

正解は単純明快。
つまらないとも月並みであるともいえるもの。
膨大な量のストレスに押し潰されたせいで起きること。
それはいわゆる――発狂、でした。


005


さて。
これにて回想は一段落したことになります。
実際は、この後「ざんぱくとう」の解号を錯乱気味に叫んで、悪鬼に刀を突き刺すところまでですけれど。
尺の都合という名の作者の都合が――いえ、なんでもないです。
各自脳内保管を済ませて頂ければ嬉しいです。
発狂して叫びながら大男に向かって刀を突き刺す少女の画です。
………………。
…………。
……。
はい。
ご想像できましたでしょうか。
それでは、先に進ませて貰います。

935 ◆RmIe4rjRnw:2014/02/07(金) 06:05:04 ID:kDx92d0M0
006


「ほぉ……またガキが現れやがった」

悪鬼に突き刺した刀が撫子のもとに戻って来たとき(どういう仕組みなのでしょうか)、悪鬼はそう言いました。
三人の男女は言葉もなく、立ち尽くしています。
それが当然の反応だと思います。
異常なのは、刺されたのに平然としている悪鬼です。

「…………」

ひ弱な少女なら卒倒してしまう程のオーラを、目の前の悪鬼はこれでもかと向けてきます。
撫子が普段通りの撫子ならば、当然気絶していたでしょう。
ですが、発狂した今なら話は別です。
普通の精神状態ではないのですから。
最高に「ハイ」ってやつ――では、ないですけど。
似たようなものだと考えてください。
冒頭でやけに撫子が饒舌だったのも、発狂したのが原因です。

「おいおい、こじつけにもほどがあるぜ撫子ちゃん」

クチナワさんが何か言っていますが無視します。
いくら普通の精神状態ではないとはいえ、この状況で平然と返事ができるほど撫子は強くありません。
なにせ、目の前に悪鬼がいる、絶体絶命のピンチなのですから。

「……発狂しても、この状況がピンチだってことは分かるんだな」

クチナワさんがぼそっと言いました。
確かに、ピンチをピンチと思えるくらいには、平常心が戻ってきたということなのでしょう。
できれば戻ってきて欲しくなかった、とも思いますが。
ハイな状態なら何でもできる気がしますが、ロウな状態では何一つできない、それが撫子です。

「なんで市丸の刀を持っているのかは知らねえが……
 俺に攻撃してきたってことは、俺と戦いてえってことだよな?」

悪鬼はそう問いかけてきました。
ひどい勘違いです。どれだけ決闘が好きなんですか。
そう言ってやりたい気持ちでいっぱいでしたが、かといって言う度胸はありません。
結果、無言を貫き通すことにしました。

「どうなんだ?はっきりしろよ」

どん、という擬音が聞こえた気がして、悪鬼の発するプレッシャーが増しました。
撫子は、着ている服の裾をぎゅっと握りしめました。
無言を貫き通せるのか不安です。
このまま貫き通していたら、怒って斬りかかられそうです。
かといって「ついかっとなってやった」と言ったところで、状況が良くなるとは思えません。
いわば詰み状態です。
殺される未来しか見えません。
どうしたらいいのか、撫子には状況を打開する策が浮かびません。
とにかく、とか、さておき、とか、そんな単純な言葉で誤魔化せる状況でもありません。
悪鬼はゆっくりと、地面に草履の擦れる音をさせながらこちらに近づいてきます。
一歩。二歩。三歩。
威圧感はどんどん増していきます。
そして、とうとう撫子が膨大なプレッシャーに耐えきれず、気絶しかけたとき。

「おい、待てよ」
「ああん?」

撫子と悪鬼の間に、男の人が立っていました。


007


「お前の相手は俺だ。この女の子は関係ない」

目の前に立った男の人は、そう言いました。
まさか庇われるとは思っても見なかったので(期待をしていなかったといえば嘘になりますが)驚きました。
一先ずは助かったと考えて良さそうです。

「あぁ?……そうかい、そこまで言うんだから楽しませてくれよ?」

対する悪鬼は少し不満そうな顔をしましたが、すぐに笑みを浮かべました。
相手は関係なく、とにかく闘えればいいのでしょう。
生粋の戦闘狂――存外、悪鬼という呼び名は間違っていなかったかもしれません。
そんなことを考えていたとき、撫子の後ろから声がかけられました。

936 ◆RmIe4rjRnw:2014/02/07(金) 06:05:52 ID:kDx92d0M0
「人吉っ!無茶をするな!ここは一旦、体勢を立て直そう!」

声をかけた男の人は、木にもたれかかって、肩で息をしていました。
よく見ると体中傷だらけで、かなり疲れているように見えます。
もう一人、声は発しませんでしたが、女の人も近くにいました。
あ、あと虎も忘れてはいけませんね。

「いや……それをさせてくれる相手じゃない」

人吉と呼ばれた男の人は、振り返らずにそう言いました。
そして、勇敢にも悪鬼に近付いて行きました。
死すら覚悟した行動。
その行動を見た二人は、黙ってしまいました。
何も言えなかった、というのが正確かもしれません。

「へへ……わかってるじゃねぇか」
「行くぜ、眼帯野郎」

そう告げた人吉さんの眼。
強い覚悟をした人間の眼。
あれを見てしまったら、気軽に声をかけることはできません。

「さっさと始めようぜ。……手応えがねえなんてことは、許さねえからな?」

悪鬼は相も変わらず殺気を放っています。
けれども人吉さんは、それに臆することなく悪鬼の前に立ち続けます。
背中は泥で汚れていましたが、とても力強く見えました。

「言われなくても、俺は、お前を倒す」

人吉さんが返したのは、最小限の言葉。
殺気を受けても微動だにしない、その後ろ姿。
極限まで集中しているのが、傍目から見ていても分かります。

「……いいねぇ。強い闘気が滲み出ているぜ」

それに比べて悪鬼は、余裕そうに『しぎゃくてき』な笑みを浮かべています。
これから起こる決闘に興奮しているのか、とても楽しそうです。

「カッ!俺は強くなんかねぇよ――強く在りたいだけだ。
 誰よりも正しい、いや、正しすぎる女の子の為に、な」

なにごとか呟いてから、人吉さんはゆっくりと、格闘家のような構えを取りました。
ただ、撫子のような素人から見ても、肩に力が入りすぎています。
やはり緊張しているのでしょう。
それでも悪鬼の目の前に立ち続けていられるのには、尊敬します。

「おいおい、力むなよ――全力で来い」

悪鬼は人吉さんの緊張に、当然のように気付いているようです。
刀を構えることもせず、リラックスしたように立っています。
緊張した様子など、欠片ほども見受けられません。
果たして、人吉さんはこの悪鬼を打ち倒すことができるのでしょうか。

「…………」

さて――ここで、唐突にですが視点を変えさせてもらいます。
ずっと撫子の視点から紡いできたこの話を、人吉さんの視点へと変えます。
さながら、欲視力(パラサイトシーイング)のように。
やはり傍観者としての視点からでは、決闘にも臨場感がでませんしね。
不自然な変わり方かもしれませんが――まあ、原作者も同じですから問題はないでしょう。
それでは、続きをどうぞ。


008


人吉善吉という人間を説明するとする。

人吉瞳の一人息子で、
箱庭学園1年1組所属で、
箱庭学園第98・99代生徒会執行部庶務で、
格闘技・サバットの使い手で、
欲視力(パラサイトシーイング)の持ち主で、
並外れた服装センスの持ち主で、
「デビル」「カッ!」が口癖で、
普通(ノーマル)の人間で、
口調はぶっきらぼうで、
でも実は真面目で、
かなりの努力家で、
友情に厚くて、
実際は臆病で、
母想いの男。

たった一人の人間にも、これだけの情報がある。
だいぶ主観が入っているが、そのことを抜きにしても、一人の人間を説明するには事足りる情報量だ。

だがやはり、人吉善吉という人間を語るには、黒神めだかの存在は欠かせない。
二歳の頃から、めだかと常に一緒に過ごしてきた。
めだかに生きる意味を与え、また、めだかから傍に居る価値を与えられ。
少々歪とはいえ、二人は支え合いながら生きてきた。
そんな使い古した上に青臭い表現にも、なんら違和感がない関係。

善吉は、めだかの一番の理解者としてめだかの傍にいる。
目安箱の案件を解決するときも。
フラスコ計画を破壊するときも。
生徒会戦挙戦で決闘するときも。

937 ◆RmIe4rjRnw:2014/02/07(金) 06:07:00 ID:kDx92d0M0
そして、今このときも。
意図してか否かは関係なく。
善吉はめだかの傍に居続けるために、無謀ともいえる闘いに挑む。


009


絶対に倒す。
ただそれだけの思いを胸に、俺は眼帯野郎と対峙していた。

「うおおおおおっ!」

試合開始のゴングも待たずに、俺は眼帯野郎に向かって駆けだした。
先手必勝、攻撃は最大の防御だ。
一気に距離を詰めて、間合いを測ることもせずに踏み込む。

「おらぁっ!」

先制の一撃は、首を狙った蹴り。
だが、それは眼帯野郎が少し体を逸らしただけで、いとも容易く避けられた。
俺の右脚が風を切る音だけが、空しく聞こえた。
歯をむき出して笑った顔が見える。
脚を戻し、体勢を整えてから舌打ち。
こうも当然のように回避されるとは予想外だ。
実力差ってやつを見せつけられたようで気分が悪い。
鍛練は人並みに積んでいるつもりだが、どうやらまだ足らないらしい。

「おらあっ!」

勿論、先制攻撃を外したからといって諦めはしない。
眼帯野郎は、まだ蹴りが届く間合いにいる。
脚を素早く切り替えて、左脚でハイキック。
そこから続けざまに五本。
左右交互に、全て人に当たれば脳震盪を起こせるくらいの威力で蹴りを見舞う。
だが、しかし。

「へっ」

俺の蹴りは、一撃たりとも、掠りもしなかった。
如何に強力な攻撃だったとしても、当たらなければどうということはない。
そう言いたげな、眼帯野郎の余裕な表情が視界に入る。

「く……」

焦燥感が俺を支配する。
少女の前であれだけカッコつけておいて、傷一つ付けられないのか。
そんな囁きが、どこかから聞こえた気がした。

「くそっ!」

俺は次の手を考えるよりも速く、眼帯野郎へと足を繰り出した。
馬鹿正直に連撃したところで、全て避けられる。
ならどうする。
俺が考えたのは、月並みで申し訳ないがフェイントだ。
眼帯野郎の立っている位置と体勢から、攻撃が可能な箇所を探す。
そして先程と変わらない強力な蹴り――と見せかけて、身体を横にずらす。
見定めておいた、刀の防御が追いつかないであろう背中の一点に、蹴りを叩き込んだ――。

「がっ……は!」

――刹那の後。
肺が圧迫される感覚と同時に、俺は数メートルほど地面を転がっていた。
二転三転どころか七転八倒だ。
なんて、詰まらないボケをかましている余裕もない。
土が擦れる音で、眼帯野郎が近付いてきたと分かった。

「猛襲が通じねえなら奇襲。状況に応じて戦い方を変えるのは初歩の初歩だ。
 上手くできてるとは思うが――それだけじゃあ俺は倒せねえ」

そうして、俺を見下ろしながら指南めいたものを垂れた。
ご丁寧にどうも、と言いたいところだったが、胸の痛みがそれを拒否した。
ただ、黙って殺されるわけにはいかない。
俺はまだ満足に呼吸のできない身体を無理やり立ち上がらせると、落ち着くために呼吸を整えた。
ふと気づくと、手の平に汗が滲んでいた。動揺の表れだ。

「……読まれたってのかよ……」

口に出して確認するまでもなく、俺の攻撃は相手に予測されていたらしい。
蹴りが眼帯野郎に当たるか当たらないか、その一瞬の間に、俺は眼帯野郎に刀の柄で強烈な一撃を貰ったというわけだ。
初めて闘った相手に、フェイントを見破られた。
とても信じられないし、信じたくもなかったが、胸の痛みが証拠となっている。

「へっへっ……」

笑う眼帯野郎を見ると、手にした刀を未だに構えていない。
あからさまに舐められている。

「どうした?まだ終わりじゃあねえだろう?」

その眼帯野郎が、ふてぶてしい声で話しかけてきた。
闘いを催促するかのように、持ち前の鋭い眼光で俺を射竦めた。
そのとき俺は、自分の脚が、身体が、震えていることに気付いた。
それは肉体の痛みから来る震えではない――認めたくはないが、眼帯野郎の強さに怯えているということだろう。
まるで伝説上の鬼か、悪魔か、死神か、と思うくらいに。
鬼にも悪魔にも、もちろん死神にも出遭ったことはないけどな。

938 ◆RmIe4rjRnw:2014/02/07(金) 06:08:16 ID:kDx92d0M0
「カッ……俺は確かに普段からデビルとか好んで言ってはいるが、本物に会いたいとかそういう願望はないぜ」

俺は、目の前の眼帯野郎への絶望感と、自嘲を含めて呟いた。
実際問題、この眼帯野郎の戦闘力は、めだかちゃんにも引けを取らないかもしれない。
めだかちゃんレベルの相手を、俺がどうこうできるとは思えない。
それが今の俺の、正直な気持ちだった。

「おいおい、まだ始まったばかりだろうが」

そんな俺の弱気な心を読んだかのように、眼帯野郎が乱暴に言い放った。
低くドスの利いた、かつ僅かに落胆を含んだ声。
笑顔は消えて、鋭い眼光が残る。
俺には眼帯野郎が、失望させるなよ、と暗に言っている気がした。

「言われなくても、っ!」

身体の痛みを振り切るように、俺は叫んだ。
血と泥で汚れた制服の上着を脱いで、後ろに放り投げる。
そして、ズボンのポケットをまさぐる。

「……ああ?」

眼帯野郎が怪訝な顔つきをするが、構ってはいられない。
ポケットから取り出した小瓶を開けて、錠剤を取り出す。
『死ぬ気丸』。
俺のランダム支給品として入っていたそれは、文字通り、死ぬ気になれる薬らしい。
仕組みはよく分からないが、使うべきなのは今だと確信していた。

「なにしてる、人吉!敵が目の前にいるんだぞ!?」

後ろから坂上先輩の声がした。
だが、目の前にいる眼帯野郎は、先程から微塵も動いていない。
油断しているのか、余裕で構えているのか。
なんにせよ、薬を使うチャンスは――死ぬ気で闘うべきなのは――今だ。
そう考えた俺は、錠剤を一粒、口に含んだ。


010




調子が良い。
最初に抱いた感想はそれだった。
次に抱いたのは、頭が熱い、という小学生並みの感想だ。
額に掌を近付けると、炎らしきものの揺らめきが感じられた。
それは直接触っても熱くはなかった。
本当に熱いのは――そう、心の中に熱く燃え盛る炎。
死ぬ気の炎という未知の領域に踏み込んだ俺は、けれど困惑することなく、再び眼帯野郎に向かって行った。

さっきよりも速さと威力の増した蹴りを、眼帯野郎の胴に叩き込む。
その瞬間、眼帯野郎は「ぐうっ」と呻いた。
綺麗に蹴りが入った。この戦闘が始まって初めて。
そう思うと、高揚せずにはいられなかった。
この機を逃すわけはない。
頭へ、腰へ、再び胴へ。
俺は立て続けに蹴りを入れた。

全てがジャストミートした感触を得たとき、俺は思った。
倒せるのではないかと。
勝てるのではないかと。
眼帯野郎を打ち破る、一筋の光明が見えた気がした。








――しかし。
――現実は甘くない。
――死ぬ気の炎も、圧倒的な実力差の前には、大した意味を為さない。








「が、はっ……」

939 ◆RmIe4rjRnw:2014/02/07(金) 06:09:16 ID:kDx92d0M0
数分後、片膝を着いていたのは俺だった。
眼帯野郎への蹴りは、入ることは入る。
だが、そこからのカウンターの一撃の重さが、俺の蹴りの比ではない。
一撃を決めたところで、更に強い一撃で返されるのでは、どちらが先に力尽きるかは明白だ。

それに、眼帯野郎は、何故か刀で斬るという動作をしてこない。
攻撃方法は柄で撲る、刀の峰で打つなどに限定している。
何故かと考えれば、それは実力差があるからに他ならない。
俺は未だに、眼帯野郎に舐められているのだ。

(――足りないっていうのか)

死ぬ気で挑んでも、勝ちが見えない。
俺は再び、絶望感に押し潰されていた。
精神的な面か、肉体的な面か。どちらかは分からないが、もう、立つことも難しい。
いつの間にか熱さを失った身体は、すっかり重くなっていた。

(もう、駄目、なのか……?)
「……終わりか」

顔を上げることができない俺に、眼帯野郎はそう言った。
その声に含まれた明らかな失望も、今の俺にはなんの効果もなかった。
反駁する気力もない。

――死ぬ気の炎は、目的を果たしていない場合、五分で消失する。
――そして、このとき、死ぬ気丸の効果は切れていた。
――そうとも知らずに意気消沈する善吉に、悪鬼はゆっくりと近づき、刀を大上段に振り上げる。
――死神の鎌よろしく、命を奪わんとする鋭い刃。
――しかし、その手は振り下ろされずに止まった。


011


「待てっ!タイムだ、タイム!」
「……ああん?」

割り込んできた声。それは相沢のものだった。
俺が顔を上げると、相沢は俺と眼帯野郎の間に身体を割り込ませていた。
その身体は僅かだが震えており、相沢が必死であることが分かった。

「これからこの人吉善吉が、もっと強くなって、お前を倒す。だけどそれには準備が要る。だから時間をくれ」
「……五分だ」
「せめて五分くらい――って、は?」
「さっさとしろ。俺の興が醒める前にな」

相沢の説得に対して、横柄な態度でそう言ってから、眼帯野郎は俺と相沢に背を向けた。
それを確認した相沢は、悪鬼があまりに簡単に刀を収めたことに拍子抜けしたような顔をしていた。
だが、すぐさま我に返ったように真顔になると、即座に俺の胸倉を掴んだ。
そして一瞬の後、力任せに殴った。
ひどく痛かった。
どうやら口の中が切れたらしく、血の味がした。

「お前、あれだけ大見得切っておいて諦めちまうのか?」
「……だけど、そう言ったってよ……奴には敵う気がしない」

掛けられた言葉は、予想していたものだった。
俺は予定調和のように、弱気な心を曝け出す。
先程の闘いは、圧倒的な実力差は、死ぬ気になろうと埋められない、と教えられたようなものだ。
――お前じゃ俺には勝てない――そう言われただけだった。
今さらどう励まされたところで、この実力差は埋められないのだ。
だが、次の相沢の言葉に、俺は顔を上げた。

「確かに俺は、お前のことをよくは知らない。
 でもな、お前がここで挫けるような奴には見えないんだ」

沈み切っていた俺は、相沢のまっすぐな瞳に、言葉を失った。
まったく予想外の方面からの発破だった。

「俺自身、満足に戦えないから、こんなことを言うのは筋違いというか、完全に第三者としての言葉になっちまうけど」

そういえば、相沢自身、肉体的にも精神的にも、余裕があるわけではないはずだ。
だというのに、身の危険を冒して、俺を立ち直らせようとしてくれている。
真摯な眼差しを向けてくれている。
何故だろうか。

「お前は女の子を守るために立ち上がれるようなやつだ!
 一度立ち上がったんだ、そう簡単に諦めるのは……なんかこう、違うだろ!」

答えは単純だった。
相沢も、俺と同じ思いなのだ。
もしかしたら、それ以上に、俺と相沢は似ているのかもしれない。
眼帯野郎が女の子を襲おうとしたときも、俺が庇わなければ、相沢が庇っていたに違いない。
きっと相沢も、俺と同じで困っている人は条件反射で助けてしまう、そんな人間なんだ。
少しの親近感を覚えて、同時にあることに気付くことができた。

940 ◆RmIe4rjRnw:2014/02/07(金) 06:10:23 ID:kDx92d0M0
「そうだな、大事なのは彼我の実力差うんぬんじゃない」

それ以前の問題だった。

「思い出したよ、俺のすべきことを」

如何な内容でも。
如何な条件でも。
如何な困難でも。
如何な理不尽でも。

「全てを享受する、それが、箱庭学園生徒会執行部だ」

そしてそれが、俺の大事な居場所だ。
今の今まで忘れていたことを、相沢のお陰で思い出せた。
自分の中にある原点に、立ち返ったようなものだ。
そうだ、俺は負けるわけにはいかない。
どんなに強大な敵でも、必ず打ち破るのだ。
思いを再確認することで、心に立ち込めていた絶望感は晴れてきた。

「……大丈夫みたいだな」
「ん、何がだ?」
「人吉、お前の瞳はまだ死んでない」

正直この言い回しはいささかクサいように思えた。
喜界島あたりが聞いたら、ドン引きだろうな。
でも、俺は口角が吊り上がることを抑えられなかった。
そして、ニヤリとした表情のまま言った。

「……その台詞、デビルかっけえな」

相沢は少し不思議そうな顔をして、無視して話を続けた。
抱えていたデイパックから、装飾のされた靴と、その説明書を取り出して俺に手渡す。
「モーセの奇跡」と銘打たれたこの武器は、どうやら攻撃力やクリティカル率が上がるらしい。なんのこっちゃ。
わけが分からないと思いつつ、俺の履いていた靴よりは強そうだとも思った。

「これを履け。俺の支給品だが、足が武器のお前が使った方がいい」
「小さくないか?これ」

少し笑って「俺に文句を言うのは筋違いだ」と言う相沢。
俺もつられて、口もとが緩んだ。
そろそろ、五分が経つだろう。
靴を履きかえた俺は、膝に手を着いて、ゆっくりと立ち上がった。
そして、再び死ぬ気丸を口に含む。

「……じゃあ、行ってくる」

身体が熱くなるのを、冷えた頭で認識しながら、俺は相沢にそう言った。
相沢は、俺にゲンコツを向けた。
俺もゲンコツを作り、それに応じる。
すると少し笑って、相沢は言った。

「行って来い」

意識を入れ替えて前を向くと、悪鬼がゆっくりと振り向いた。
そのいかつい顔には、待っていたぞと言わんばかりに、満面の笑みを湛えている。
俺は、ふっと息を吐いて、覚悟を決めた。
覚悟を言葉に、強く刻み込むように宣言する。

「俺はっ!お前に勝つ!!」



012



「うっ……」

宣言した直後に、死ぬ気丸の効果が現れる。
身体が芯から熱くなるような感覚。
心の底から湧き上がる、ある強い気持ち。
それは、ついさっき薬を飲んだときよりも、なお強くなっていた。
戦いに挑む覚悟が、今度こそ完了したからだろう。

「見える」

目を閉じる。感覚が最大まで研ぎ澄まされているのを感じる。
鮮明に見えるのは、たくさんの顔。
阿久根先輩の不敵な笑みが。
喜界島の心配そうにする顔が。
不知火の無邪気で残酷な笑顔が。

「俺は……」

見えてくる。
宗像の無表情に応援してくる顔が。
名瀬師匠の心底呆れたような顔が。
江迎の人を殺してしまいそうな顔が。
真黒さんの落ち着き払った優しい顔が。

941 ◆RmIe4rjRnw:2014/02/07(金) 06:12:39 ID:kDx92d0M0
「俺は、いろんな人に支えられていた……」

更に目を凝らす。
日向の顔が、鍋島先輩の顔が、雲仙先輩の顔が、母さんの顔が。
都城王土の顔が、日之影先輩の顔が、安心院さんの顔が。
俺が箱庭学園で関わって来た、およそ考えうる限り全員の姿が。
みんなが俺を見ている姿が、見える。
ここで死ねば、俺は必ず後悔する。

「失いたくない……!」

そして、めだかちゃんの凛とした立ち姿が、はっきりと見えた。
めだかちゃんは、俺を見てはいない。
ただ、何も心配をすることはないとでも言うように、どっしりと構えている。
その姿に、何故だか俺は安心した。
ゆっくりと、目を開ける。
目の前にあるのは、死神の姿。
俺は、圧倒的な強さを持つそいつに言い放つ。

「俺は、死ぬ気でお前を倒す!!
 倒さなきゃ……死んでも死にきれねえっ!!!」

後悔を力に変える。
それが、死ぬ気の力――これが、死ぬ気の炎。

「生徒会を執行するぜ!」

これが、俺の居場所――そして、俺の誇り。


013


唐突ですが、再び撫子視点で進みます。

「な……?」
「……へっ」

ポタポタと、地面を緋色に染める鮮血。
それは、悪鬼のものであり、人吉さんのものでした。
二人が血を流している一番の原因は、言うまでもなく撫子です。
撫子がしたことは単純明快です。
持っていた武器、すごい長さに伸びる神鎗という刀を、伸ばしただけのことなのです。
撫子が最初に悪鬼を見たときにしたのと、同じことをしただけです。

違うのは、故意にやったか否か。
意図してやったか否か。
意識してやったか否か。
もっと言えば、殺意があったか否かです。

「な……」

人吉さんが、ゆっくりと後ろを振り向きます。
苦悶の表情を浮かべており、口の端からは血がたらたらと流れ出ています。
撫子が刺したことに気付いた人吉さんは、目を見開いて、すぐに力が抜けたような顔になりました。
それは少し寂しそうにも見えました。
人吉さんの寂しそうな顔を見るのは些か心が痛みます。
しかし、撫子が人吉さんを刺すことになった原因は、人吉さんの言葉です。

“――俺がアイツを倒すから、心配するな――”

こんな優しい言葉をかけてくれる人は、暦お兄ちゃんの他にはいませんでした。
自分の体を、命を張って、年下の少女を守ってくれる存在など、暦お兄ちゃんの他にはいませんでした。
完全無欠でパーフェクト、男として文句の付けようのない完璧人間であるところの暦お兄ちゃんの他にはいませんでした。

いえ、いてはいけないのです。

942 ◆RmIe4rjRnw:2014/02/07(金) 06:14:31 ID:kDx92d0M0
人吉さんのことを暦お兄ちゃんに似ていると、わずかでも感じてしまった撫子を消し去りたいです。
でもそれは自殺なので、そんなことをしたら暦お兄ちゃんは悲しむでしょうし、怒りもするでしょう。
それよりなにより、撫子が暦お兄ちゃんに会うことができなくなってしまいます。
だから、認めるわけにはいかないのです。
人吉さんは少しも暦お兄ちゃんに似ていません。
決して、絶対に、似ていません。
それを確定事項にするために、人吉さんには死んでもらうしかありませんでした。
人吉さんを殺し、人吉さんのことを暦お兄ちゃんに似ていると感じた、という既成事実を消してしまえばいいのです。
我ながら完璧なアイデアだと思います。

「はは、っ……デビル、かっこ、わりー……」

人吉さんは、両膝を地面につけると、そう独白しました。
そしてそのまま、力なく前のめりに倒れていきます。
死ぬときは前のめり。立派な男ですね。
もちろん、暦お兄ちゃんには遠く及びませんよ。



【人吉善吉@めだかボックス 死亡】



これでオッケー。
もう撫子が人吉さんのことを暦お兄ちゃんに似ているなどと考えることはなくなりました。
一件落着、いえ、まだでしたね。

「人吉いぃぃぃぃぃぃ!!!!!」

男の人の叫び声が聞こえましたが、無視します。
もっと面倒な悪鬼が、人吉さんの後ろに控えているのですから。

「ははははは!これだから殺し合いはおもしれえんだ……!」

悪鬼は、ふらつきながらも倒れることなく笑っています。
やっぱり怖いです。狂気の沙汰としか思えません。殺しておきましょう。
暦お兄ちゃんが殺されでもしたら困りますからね。

心臓を狙って伸ばした刀は、狙いは外れました。
ですが、撫子が最初に悪鬼に刀を刺したときとは比べ物にならない量の血が出ています。
独特な模様の羽織は、赤くない箇所の方が少なくなっています。
うまく内臓を突き刺せたのかもしれません。
それでもなお、刀を振りかざそうとする悪鬼に、撫子は再び刀を刺しました。
一回では不安だったので、もう一度。
出血量は凄いけど、でもやっぱり不安なのでもう一度。
手ごたえが今までと違って、かなり重たかったけど、念のためもう一度。

もう一度。
もう一度。もう一度。
もう一度。もう一度。もう一度。
もう一度。もう一度。もう一度。もう一度。
もう一度。もう一度。もう一度。もう一度。もう一度。
もういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちどもういちど。



【更木剣八@BLEACH 死亡】

943 ◆RmIe4rjRnw:2014/02/07(金) 06:15:57 ID:kDx92d0M0
「ふう……」

今度こそ、悪鬼は動かなくなりました。立ち往生です。
確実に死んだでしょう。
なんといっても、余すところなく、全身くまなく刺されたのですから。
まだ原型を留めているのが、不思議なくらいです。
まあ死んだからいいんですけど。
結果オーライというやつです。
さてと。
はた、と後ろを振り向くと、ぽかんと口を開ける男女がいました。
まるで自分たちの目にしたことが、夢であるかのような表情です。
撫子は、そんな二人を尻目に、血の付いた刀を持って、走り出しました。
たたたた、と。小走りで。
返り血を浴びない武器でよかった、なんて、他愛ないことを考えながら。


014


凶暴な悪鬼と勇敢な青年は、横槍によって死にました。
そんなことに関係なく、撫子の物語はまだまだ続きます。
ただ進むのではなく、加速していきます。
そんな中で、撫子はどう行動したらいいのでしょうか。
混乱した状況。
どこともわからぬ森の中に一人。
まずはこの状況において撫子がどう動くか、それを決めないといけません。

可能性は無限大――クチナワさんの言ったとおりです。
物語はあらゆる可能性を秘めています。
ヒーロー参上勧善懲悪の熱血王道展開にも。
主催者登場謎が謎呼ぶミステリー展開にも。
血みどろドロドロ残酷描写のグロ展開にも。
行動ひとつで、どんな展開にも成り得ます。

でも、やっぱり。
純真無垢な少女が望むのは、ベタなラブストーリーです。
結局のところ撫子は、すぐにでも暦お兄ちゃんと会いたいのです。
光の柱を見てかけつけてきた暦お兄ちゃんに、これでもかと抱き着く撫子。
そんな展開に、物語を傾けていくためにも。

『ごめんなさいね参加者の皆さん。改めて進行役の郷田真弓です。』

なにやら臨時の放送があるようです。
良い契機になるかもしれませんね。
ゆっくりと息を吐いて、体内の血液を循環させて、呼吸を整えます。
さあ、それではいきましょう。
しんどいけれど、やるしかないのですから。

運命を決める、と言っては大袈裟ですかね?
なにはともあれ、シンキングタイム、スタート。




【E-4 森/午前(番外放送直後)】

【千石撫子@物語シリーズ】
【装備:神鎗@BLEACH】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:疲労(小)、精神的疲労(大)】
【思考・行動】
0:しんどいけど、どうしようか考える。
1:クチナワさんの体を探す。
2:暦お兄ちゃんは死んでほしくない。
【備考】
※囮物語の暦の家で寝泊まりした直後からの参戦です。
※彼女は右腕にある白いシュシュをクチナワという神になっているという妄想に取り憑かれています。
しかし、人前ではこの妄想は発生しません。
※クチナワの体は蛇のお札で、撫子がお札を食べてしまうと神様になり同時に怪異になります。

944 ◆RmIe4rjRnw:2014/02/07(金) 06:17:48 ID:kDx92d0M0
【坂上智代@CLANNAD】
【装備:薙刀@現実】
【所持品:支給品一式、巨大な十字架@物語シリーズ、タマ@ハヤテのごとく!、ランダム支給品×1】
【状態:健康、呆然自失】
【思考・行動】
0:……。
1:朋也たちと合流
2:ゲームをぶっ壊す
【備考】
※智代ルート、卒業式直前からの参戦です


【相沢祐一@Kanon】
【装備:木刀正宗@ハヤテのごとく!、死ぬ気丸×8@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【所持品:支給品一式×2、レインボーパン@CLANNAD、ランダム支給品×2】
【状態:疲労(大)、傷(大)、呆然自失】
【思考・行動】
0:……。
1:智代さんと協力する
2:殺し合うつもりはなく主催者に怒りを感じている。
3:音無と仲間を探す。
4:佐々木小次郎を屈伏させたい。
【備考】
※舞ルート確定直前からの参戦。


【備考】
※モーセの奇跡@ペルソナ4は、人吉善吉の遺体に装備されています。
※人吉善吉の所持品は、相沢祐一が回収しました。
※更木剣八のデイパック、10年後山本武の刀@家庭教師ヒットマンREBORN!は付近に落ちています。
※ちょうど番外放送が始まりました。


【死ぬ気丸×10@家庭教師ヒットマンREBORN!】
服用することで死ぬ気モードになれる錠剤。
超(ハイパー)死ぬ気モードになるには二錠服用する必要がある。
作中ではバジルが最初に使用し、その後沢田綱吉も使用している。
人吉善吉に支給。

【モーセの奇跡@ペルソナ4】
里中千枝専用の最強の装備武器。ゲーム中ではクリティカル率が大幅に上がる。
女子の装備なのでサイズは男子には小さめ。
相沢祐一に支給。

945 ◆RmIe4rjRnw:2014/02/07(金) 06:22:53 ID:kDx92d0M0
投下終了です。
タイトルは「circulation」
元ネタは一応アニメ「化物語」の「なでこスネイク」主題歌「恋愛サーキュレーション」
また、この前の作品「acceleration」は「とある魔術の禁書目録」の登場人物(検体名)「アクセラレータ」
とさせていただきます。

946名無しさん:2014/02/07(金) 14:06:39 ID:8p6crbasO
投下乙です
善吉ぃぃぃぃ、まさに少年漫画の王道展開かと思ったら何という横槍☆神鎗…!
西尾キャラが西尾キャラを殺し、BLEACHキャラが斬魄刀で死ぬというのもなんか皮肉だね

947 ◆jBLJ5J6Rfg:2014/03/09(日) 18:13:11 ID:GCqnxCLY0
1ヶ月前の返信になり申し訳ありません
投下乙です
アニメ版の撫子の声でリピートされる物語でした
鳥肌のたつ作品でとても良かったです

948<削除>:<削除>
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949<削除>:<削除>
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950 ◆WzpMn05TJA:2014/03/09(日) 18:20:19 ID:1XwEt/MQ0
申し訳ないです
トリップ間違えでした

951 ◆WzpMn05TJA:2014/03/12(水) 21:19:17 ID:WVKkUqRU0
鳴上悠、御坂美琴、ウルキオラ・シファー、前原圭一、朝比奈みくるで予約します
投稿後に新規スレ建てます

952 ◆WzpMn05TJA:2014/03/18(火) 21:48:10 ID:qo6zN0VE0
すいません
予約破棄します
途中まで出来ているので、出来次第うpします

953 ◆RmIe4rjRnw:2014/04/06(日) 14:46:56 ID:PIU1aTpo0
感想ありがとうございます
時系列の確認の意味も込めて、表を作ってみました

・第一回放送以降書かれていない
衛宮切嗣、ユーフェミア・リ・ブリタニア、長門有希、川澄舞、国崎往人、瀬川虎鉄
雲雀恭弥、(鳴上悠、御坂美琴、ウルキオラ・シファー、前原圭一、朝比奈みくる)

・午前(番外放送)以降書かれている
球磨川禊、姫萩咲実、来ヶ谷唯湖、C.C.、坂上智代、相沢裕一、千石撫子、
セイバー、園崎詩音、宗像形、音無結弦、刻命裕也、キャスター、
グリムジョー・ジャガージャック、神尾観鈴、キョン、ニンフ、遠野美凪、足立透

()内は◆WzpMn05TJA氏が予約されたキャラで、死者は抜いてあります
放送以降書かれていないキャラの中でも、ユーフェミアは唯一黎明以降書かれていないので
このまま進めると帳尻合わせが少し難しくなりそうですね

954 ◆RmIe4rjRnw:2014/04/07(月) 13:23:33 ID:5bFrOmEg0
ついでに、参加者のスタンス表も、放送前から変わった箇所もあるので載せます


対主催(45人)
遠野美凪、音無結弦、仲村ゆり、立華奏、椎名、直井文人、六道骸、相沢祐一、北川潤
岡崎朋也、伊吹風子、坂上智代、中嶋直美、御剣総一、姫萩咲実、北条かりん
涼宮ハルヒ、キョン、朝比奈みくる、桜井智樹、ニンフ、アストレア
御坂美琴、白井黒子、アウレオルス=イザード
綾崎ハヤテ、三千院ナギ、桂ヒナギク、前原圭一、古手梨花、衛宮士郎、ランサー
黒崎一護、ウルキオラ・シファー、鳴上悠、白鐘直人、黒神めだか
阿良々木暦、戦場ヶ原ひたぎ、羽川翼、神原駿河、忍野忍、棗鈴、棗恭介、井ノ原真人

マーダー(29人)
・奉仕マーダー(10人)
国崎往人、水瀬名雪、川澄舞、枢木スザク、小泉一樹、長門有希
瀬川虎鉄、衛宮切嗣、宮沢謙吾、来ヶ谷唯湖

・強者マーダー(2人)
アサシン、グリムジョー・ジャガージャック

・無差別マーダー(13人)
春原陽平、持田哲志、刻命裕也、手塚義光、高山浩太、竜宮レナ、園崎詩音
セイバー、アーチャー、バーサーカー、キャスター、天城雪子、宗像形

・その他(特殊)マーダー(4人)
神尾観鈴、ユーフェミア・リ・ブリタニア、真アサシン、足立透

その他(6人)
雲雀恭也、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、C.C.、イカロス、球磨川禊、千石撫子


マーダーから改心した、かりんは対主催に
スザクを優勝させるのが目的である、ルルーシュはその他に移動しました

955 ◆WzpMn05TJA:2014/04/08(火) 21:22:40 ID:kywBQVvE0
>>953>>954まとめ乙です
見やすくて感謝してます

こうして見るとなかなか手を付けていないところがあってどうしようか迷ってしまいます
書きたい話もあるのですがぼちぼちに投下していきたいと思います

956 ◆RmIe4rjRnw:2014/11/17(月) 02:27:14 ID:k4O.N13o0
なんとなく男女比を確認してみました。
参加者全員 56:44
現在(例外除く)42:38
現在(例外含む)46:39

そして久しぶりに予約します。
瀬川虎鉄、桂ヒナギク、椎名、国崎往人、川澄舞の五名でお願いします。

957 ◆dM45bKjPN2:2014/11/23(日) 04:31:48 ID:pu2zWwjY0
失礼します。
初めてですが、アサシン、枢木スザクで予約します。

958 ◆dM45bKjPN2:2014/11/23(日) 06:28:43 ID:pu2zWwjY0
そして、投下します。

959「生きろ」 ◆dM45bKjPN2:2014/11/23(日) 06:29:48 ID:pu2zWwjY0
太陽が昇る。
僅かに肌寒い風が、二人の男の肌を撫でる。
方や、ブリタニア最強の騎士として名を馳せた男───枢木スザク。
方や、イレギュラーだが『暗殺者』のクラスとして現界した剣豪───アサシン。
戦士として飛び抜けた技量を持つ二人は、その場から動かない。
一度刀と銃を交えたその瞬間に互いの実力を把握した両者は、下手には動かない。
間合いを測っているのか、タイミングを合わせているのか。
そのどちらかはわからないが、両者は凛として見合ったまま、微動だにしなかった。
そして。
その沈黙を破ったのは、アサシンだった。

「───どうした。敵と見定めた者には容赦無く、そして誇りを持って戦に臨む獅子の類いかとお見受けしたが……私の見誤りだったか?」
「……君の間合いに入る訳にはいかないからね。此方の間合いで仕留めさせて貰う」
「ほう。其れならば結構、不粋なことをした。
その足捌き、身のこなしから判断して剣士と見たが、其方が飛び道具を使うというのならば此方も遠慮はいるまい」

あくまでアサシンの口調は軽い。
飄々としたその軽さは、スザクの勘に障っていた。
スザクの脳内では常にギアスが叫んでいる。
生きろと。
逃げろと。
その場から背を向け生存を得るために逃亡せよ、と。
それだけの強敵なのだ。
だが、スザクはそのギアスを意思の強さで強引に捻じ曲げる。
生きるためにはこの男を殺すしかない、と。
逃げろためにはこの男を殺すしかない、と。
この場から逃げても殺される、勝って生存を掴み取れ、と。
それにより『生きろ』というギアスは彼の身体能力、反射神経の強化として作用する。
その瞳は既に、紅く染まっていた。

「───」
「───」

両者の間に、沈黙が再び訪れる。
呼吸を。鼓動を。神経を。
全てを研ぎ澄まし、攻撃へと備える。
そして、次の瞬間。
スザクの頬を伝って地面へと、ポツリと汗の雫が零れ落ちる。
それが、合図だった。

ドンッ!!!、と。
グロックから弾丸が吐き出され、スザクそのまま左に跳ぶ。
前後は危険だ。追いつかれれば斬り伏せられる。
ならば左右へと飛び、複数の角度から弾丸を叩き込む───それが、スザクの作戦だった。
始動はスザクの方が速い。ギアスによるブーストの効果のおかげもあるだろう。
弾丸も既にアサシンの正面、左斜め、左に一発ずつ放っている。
複数の角度からの合計三発。避けられる筈がない。
───避けられる筈が、なかったのに。

「ほう、そのような小さき筒から玉を吐き出すか。確かに速いが───直線過ぎる、見切るのは容易いぞ」

960「生きろ」 ◆dM45bKjPN2:2014/11/23(日) 06:30:29 ID:pu2zWwjY0
キンキンキンと軽い金属音を響かせ、全ての弾丸を斬り伏せたのだ。
まるで空中に止まった物を切り捨てるような鮮やかさで。
それはスザクを驚愕させ、動きを止めるには十分だった。

「我が剣先は燕ですら逃れ得ぬ。直線に飛ぶだけの玉では、些か力不足であったな。
───では、次は此方から行くぞ」

その動きは、美しさすら感じた。
まるで川が穏やかに流れるような、静かで流麗な歩法。
普段なら思わず見惚れそうになるほどであったが、ギアスがそれを許さない。
強制的に生存へと結び付けられたその意思は、スザクの肉体を全力駆動させる。
脚部の損傷など気にしている暇はない───既に、アサシンは目前へと迫っていた。

「ふッ───!」
「くうッ……!!」

アサシンの横薙ぎを、地面に伏せるようにして躱す。
掠る程度ならいい。
しかし直撃したら最後、あの刃は此方の肉体を容赦無く切り離すだろう。
それが分かっているからこそ、ギアスは全力で躱すことを肉体に命じる。
恐怖や緊張すら感じている余裕はない。
全神経、全体力をただ生存のためだけに注ぐ。
だが、一回躱しただけでは収らない。
返す刃で首を刈り取ろうと、袈裟斬りにしかけてきたその斬撃を、地面を跳ねることで躱す。
その勢いのまま掲げられた刃が、スザクの首を狩らんと振り下ろされる。
それを地面に手を突き身体を横に逸らし、逆立ちの要領で回避。
しかし、完全には避けきれない。
浅く、スザクの首の皮を切った。
次は振り下ろされた刃をそのまま横薙ぎに振るう。
狙いは地面についた手首。その手首を切り落とし、行動力を削ぐ。
それを片手で地面を殴り、僅かに空中へと浮くことで回避。
超至近距離。
僅かに対空したスザクと、刀を振り終えたアサシンの目線が交差する。
そこからのスザクの行動は迅速だった。
このチャンスを逃すまいと、至近距離でグロックの銃口をアサシンへと突きつける。
直後、発砲。都合三発、アサシンの身体を食い破らんと接近する。

961「生きろ」 ◆dM45bKjPN2:2014/11/23(日) 06:31:04 ID:pu2zWwjY0
だがしかし、当たらない。
アサシンはその身をまるで風に揺れる柳の葉のように、力の流れに逆らわずその場で態勢をゆらりと変える。
それだけで、銃弾は掠りもせずに去っていく。
生前は、風の流れを読み飛び回る燕を斬るために研鑽を積み続けたアサシンだ。
ただ直線にしか飛ばない銃弾が、当たる筈もなかった。
そして発砲した直後隙を突き、アサシンがその刀を振るう。
その隙を狙われたスザクには、躱す余裕などなかった。

「ぁ、かぁ───ッ」

痛みに意識を手放しかけるが、ギアスが強引にその意識を手放すまいと引き戻す。
無様に地面に倒れ伏せるスザク。
しかし、両断されるには至っていない。
胴体に斜めに切り裂かれた傷はついたものの、スザクはまだ行動が可能だった。

「───まだ息があるとはな。首を飛ばし心の臓を両断するつもりだったのだが、存外丈夫らしい」

アサシンの言葉は、もうスザクへと届いていない。
───生きろ。
───生きろ。
───生きろ。
生存の意思のみがスザクの脳を支配し、会話に応じようとなどという余裕は既に残されていなかった。

「俺、は……ま、だ」

スザクは辛うじて動くその口を開く。
まだなんだ。
まだ、生きなきゃいけないんだ。
生きて欲しかった人がいる。
幸せになって欲しかった人がいる。
護りたいと願い───護れなかった人がいる。
だから、まだ死ねない。
彼女の───ユフィの騎士として。
彼女を傷つける、全てのものから護らなきゃならないんだ。
一度はこの手から零れ落ちてしまったれど。
再びこの手で救い出せる瞬間が来たのだから。
だからこそ。

「───俺は、死ねない」

───赤き輝きを瞳に携えた、白き騎士は再び立ち上がる。
しかし、その手にはグロックしか握られていない。
倒れた際に何処かに落としたのか、スタンガンは無くなっていた。
だが、構うものか。この銃一つでも、勝ち抜いてみせる───そう誓ったスザクの瞳を、アサシンは読み取った。

962「生きろ」 ◆dM45bKjPN2:2014/11/23(日) 06:31:44 ID:pu2zWwjY0
「……これを使うといい」

アサシンがデイパックから何かを取り出し、スザクの足元へと放り投げる。
手榴弾かと身構えたが、どうやら違うらしい。
スザクは放られたそれを拾い、それがなんなのかを把握する。
───これは、剣だ。
突きを主体とする細身の剣……レイピアと呼ぶべきだろうか。
しかし、振るうことでも中々の切れ味を持っているらしい。
その剣には装飾が施してあり、貴族用の剣だと予想できた。

「『ドレスソード』……という刀らしくてな。
私の支給品らしい。
だが煌びやかな装飾の西洋剣は私には合わぬ───この身には、この刀で十分」

その手に握った刀……千本桜を手に、アサシンは語る。
しかし、スザクは逆に疑問を浮かべていた。

「……何故武器を俺に?」
「何、其方も騎士なのであろう?ならば全力を出せずに敗北するのは不本意であろう、とな。
どうやら其方の身体から見て繰り出せるであろう反撃はもはや一撃程度、長く続ける時間もなかろう。
───ならば、その本気をこじ開けてやろうと思うただけよ」

獲物をやるから本気を見せてみろ、と。
アサシンはそう言っているのだ。
その言葉を聞いた瞬間、スザクの視界が驚くほどクリアになっていく。
生きろと命じたそのギアスが、スザクの全ての力をその一振りへと注いでいるのだ。
打ち倒せ、と。
斬り伏せろ、と。
そして勝利を掴み取れ───と。
ああ、ならばやろう。
ユフィの騎士として───ここは、負けられない。

「……良い目になった、其方のような誉れ高き騎士と刀を交えることができるとは、この催しも意味があったと言うものよ。
……其方、名前は?」

アサシンの問いかけに、枢木スザクは反応する。
名前は、と聞かれたのだ。
名前。
ラウンズの七番手、ナイトオブセブン。
ブリタニア最強のラウンズ、ナイトオブゼロ。
そして、仮面の男ゼロ。
既に、名乗る名など捨てたものばかりだ。
だが、しかし。
敢えて名乗る名があるとすれば、もう一度この名を名乗りたい。

「───ユーフェミア皇女殿下の選任騎士、枢木スザク」
「ほう、朱雀とな。雄々しい良い名だ。
───私はアサシンのサーヴァント、佐々木小次郎」

名乗り終わると同時に、両者は互いに刀を構える。
そして、再び訪れた沈黙。
だが今回の沈黙は、3秒と持たなかった。

963「生きろ」 ◆dM45bKjPN2:2014/11/23(日) 06:32:16 ID:pu2zWwjY0
「ハァッ───!」

スザクはその場で、駆け出したのだ。
ギアスの効力により身体能力を最大にまで引き出し。
その贅力を全て使った、跳躍。
そして次に行うのは、回転だった。
グルグルと、その場で回転し遠心力を働かせた一撃を放つための、跳躍。
凄まじい勢いでアサシンに迫るが、当のアサシンは刀を構えたまま、ひっそりと呟いた。

「───秘剣」

構えを崩さないアサシンの元へ、遠心力を味方に付けたスザクの剣が迫る。
しかし、アサシンは受け止めようとすらしない。
そして。

「おおぉぉぉォォォォォォォッ!!!」

「───『燕返し』」

両者の一撃が、互いの首を狩らんと激突した。




◆ ◆ ◆

964「生きろ」 ◆dM45bKjPN2:2014/11/23(日) 06:32:53 ID:pu2zWwjY0
ぼと、ぼとり、と。
地面に堕ちたその肉塊を見つめ───アサシンは一人立ち尽くす。

「全く……勇猛な獅子の類かと思えば、知恵を回す鴉であったか」

その地面に堕ちた肉塊───具体的に述べるならば、枢木スザクの『左腕』を眺めながら、アサシンは呟く。
最後の一騎打ちの、その瞬間。
アサシンの燕返しの一の太刀をその刀で受けたスザクは、左手に握っていたグロックを発砲したのだ。
しかし、それだけで止まる程度の技ではない。
同時に迫った回避を封じる二の太刀が発砲した直後の左腕を切断した。
しかし、同時に放たれた最後の三の太刀が首を切り取るはずが───慣れてない刀を振るった影響か、僅かに逸れ、スザクに躱されたのである。
そして放たれた銃弾は燕返しを放った直後の隙のアサシンを捉え、その左肩を貫通したのだ。
そしてアサシンが怯んだ隙に、枢木スザクは脱兎の如く、逃げ出したのである。

「まさか、我が秘剣を躱すとはな」

ふと呟いたその言葉に潜んでいるのは、僅かな苛立ちと尊敬の念だった。
次こそは燕返しでその身を断ち切るという決意と。
人の身でありながらこの秘剣を躱してみせたその技量に。

「───枢木スザク。その首、次こそは私が貰い受ける」

暗殺者の剣豪は、密かにその闘志を燃やす。


【C-5 野原/朝】

※どこかに詩音のスタンガン@ひぐらしのなく頃に が落ちています。

【アサシン@Fate/stay night】
【装備:千本桜@BLEACH】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×1】
【状態:疲労(中)、左肩に銃創】
【思考・行動】
1:強い者の為に刀を振るう。
2:枢木スザクとの決着を。
3:相沢祐一といずれ決着を付ける。
4:自分の行く先を見つける。
【備考】
※セイバールートのセイバー戦以後からの参戦。
※一応燕返しは出来ますが物干し竿がないと本来の力は使えません。
※このバトルロワイアルを特集な聖杯戦争だと思っております。

965「生きろ」 ◆dM45bKjPN2:2014/11/23(日) 06:36:04 ID:pu2zWwjY0
「ぁ、あ、はぁ、は───」

枢木スザクは、生きていた。
だが、そこに本人の意思はない。
最後の一撃の瞬間心身共に限界だった枢木スザクは、生きろというギアスに支配された。
勝つ道ではなく、強制的に生存のための逃走を選ばされた。
左腕という大きな犠牲を払いながら、それでも逃げ延びたのである。
もし、この場にナイトメアフレームがあったならば。
枢木スザクも、アサシンにここまでやられることはなかったであろう。
互角───またはそれ以上の戦いができたはずなのだ。
しかし、現実にはナイトメアフレームは存在しなかった。
パイロットとして、枢木スザクは全力を出せる状態ではなかったのだ。
重ねて戦闘前から脚部に深い傷を負っていた。
戦闘を振り返れば───枢木スザクの不利であった。
あそこは戦うべきではなかった。
枢木スザクは、逃げるべきだったのだ。

「俺、は、生きる───」

しかし。
現実は覆らない。
その瞳に赤き光を携えたまま、枢木スザクは生存のみのために生き続ける───。

【C-5(西) 野原/朝】

【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【装備:ドレスソード@とある魔術の禁書目録 グロック17(15/17)@現実】
【所持品:支給品一式 手榴弾11/15@現実 ランダム支給品×1】
【状態:足に怪我(深い切り傷)、胸に刀傷(致命傷ではない)、左腕欠損】
【思考・行動】
0:生きる。
1:ユフィを優勝させる為に殺し合いに乗る。
2:ここから逃げる。
3:ルルーシュには………会いたくない。
【備考】
※R2最終話からの参戦。
※生きろギアス発動中。


【ドレスソード@とある魔術の禁書目録】
天草式十字正教の浦上が使用する西洋刀。
細身のレイピアを金銀宝石で豪華に飾りつけた貴族用の西洋剣。
本来突きが主体の剣のはずだが、大抵の物は両断してしまう様子。
剣としては軽い部類に入り、重みで叩き斬る使い方はできない。
先端が球根のように丸く膨らんでいるのが特徴。
アサシンに支給。

966「生きろ」 ◆dM45bKjPN2:2014/11/23(日) 06:36:38 ID:pu2zWwjY0
投下終了です

967名無しさん:2014/11/23(日) 18:12:57 ID:L8DQmRjg0
投下乙!
燕を斬る技では朱雀は捉えきれなかったか!
侍と騎士の戦いによる久しぶりの投下面白かったです!

968名無しさん:2014/11/23(日) 18:13:21 ID:L8DQmRjg0
せっかくだし上げ

969 ◆RmIe4rjRnw:2015/03/15(日) 15:51:55 ID:rdlNgEAY0

陽の光を頼りに、衛宮切嗣は名簿に斜線を引いていた。
弓の英霊アーチャーと決別してから、およそ一時間。
アーチャーと対話をした民家とはまた別の民家で、切嗣は休憩がてら放送を聴いていた。
メモを取りつつ、冷静に情報の重要度を格付けしていく。
禁止エリアは、どちらも切嗣が今いるエリアからは離れているので深くは考えない。
エクストラゲームは、要するに不確定要素の追加あるいは補充であり、考えたところで詮無いことだ。
つまるところ、切嗣が重要視することになったのは、死亡者の発表だけだった。

とはいえ、最も心待ちにしたそれも、別段強い衝撃や影響を与えるということはなかった。
例えば、ライダーが脱落したことに、特別な驚きはない。
この島には、聖杯戦争における七騎のサーヴァントが顕現しているのだ。
ゲーム開始直後から、サーヴァント同士で潰し合いが起こっても何ら不思議ではない。
また、アーチャーは『第五次聖杯戦争』の存在を明らかにしていた。
アーチャーのように、この島に召喚された英霊は、切嗣の知る英霊ではないのかもしれない。
この島にいるライダーは征服王イスカンダルでなく、より弱い英霊だったのかもしれないということだ。

さらに可能性の話を言えば、ライダーが人間に殺されたということも有り得る。
ゲーム開始前に、主催者は個々の能力は制限されていると言っていた。
純粋な決闘で人間が英霊に勝つことは不可能なのだから、これがゲームなら当然の措置だ。
参加者の能力は――おそらくは首輪によって――制限されている。
「弱体化させるための措置」を取るのであれば、それが最も効率的であると切嗣は考えた。
少なくとも、この広い島の全域に措置を取るよりは確実だろう、と。

それが魔術によるものか、全く異なるものかはまだ不明にしろ、この島では奇跡が起こる。
人間が振るう刀剣が、人間が放つ弾丸が、人間が繰り出す徒手空拳が、英霊に通用する。
ただの人間が英霊に勝利する、そんな不可能が可能になっている。
都合のいい解釈が含まれていることは否めないが、戯言と決めつけることは誰にも出来ないだろう。

「いずれにしても、難儀な代物だ」

自身の「固有時制御」も制限を受けていると感じていた切嗣は、首輪を撫でながら呟いた。
逆に考えれば、英霊の首輪が外れたとき、ただの人間の負けはほぼ確定するのだ。
とはいえそのリスクを考えても、首輪の解除方法を模索するのは有益だと思われた。

いずれにせよ、ライダーが消滅した事実を、ただ受け止めるというのが切嗣の判断だった。
つまりは誰がいつ、どのように死んでもおかしくない。
そんな状況下において、切嗣は、愛用の銃などの装備は皆無であり、協力者は存在しない。
状況は、まさしく孤軍奮闘と言っていい。

自分の状況を再確認した切嗣は、ふと名簿に目を落とした。
視線が向くのは“アーチャー”――この地に呼ばれた英霊の一角にして、衛宮士郎の未来の姿だ。
つい先ほどの邂逅を思い出し、複雑な表情を作らずにはいられなかった。

――僕はね、正義の味方になりたかったんだ

追想されるのは、ある月夜に、切嗣が士郎に言った言葉。
ほんのつまらない独り言に過ぎなかったそれを、しかし少年は正面から受け止めた。

――うん、しょうがないから俺が代わりになってやるよ

幼い士郎が無垢な瞳で、切嗣に言った言葉。
衛宮士郎を正義の味方にしたのは、他ならぬ切嗣だ。
そのエミヤが士郎を殺そうとするのも、元を辿れば切嗣に原因があるのではないか。
だとすれば切嗣は、衛宮士郎にとてつもない「呪い」をかけたことになる。
その事実は、切嗣の心を締め付けた。

だが、と切嗣は過剰に悲観することを止めた。
放送で衛宮士郎の名前は呼ばれなかった。
目的はまだ潰えていない、そう思うだけでも、まだ立ち上がることはできた。
衛宮士郎を優勝させて、生き残らせる。

「その為ならエミヤ、君のことも――」

その先の言葉を継ぐことは、ある意味で矛盾をはらんでいる。
だが、切嗣の意志はもはや固いものとなっていた。
フリーランスの傭兵として何度となく死地に赴いていた頃の、鋭い眼光を見せて言う。

「――殺す」

エミヤは自分を殺すために、士郎を殺す。
切嗣は衛宮士郎を生かすために、エミヤを殺す。
どこか似ているようで決定的に違う決意を、切嗣は今この瞬間にした。




970 ◆RmIe4rjRnw:2015/03/15(日) 15:53:24 ID:rdlNgEAY0

棗恭介と伊吹風子の二人は、狂戦士の咆哮を耳にした。
響いてきたのはG-4エリアからで、そのすぐ後に爆発音と、そして絶叫も響いた。
それがおよそ人間の出せるような声ではないことに、二人とも恐怖を露わにした。
具体的には、顔が青ざめたり、手足が無意識に震えたり、といったことだ。
しかし、そんな中でも棗恭介という男は自分を持っていた。

「……声のした方へ行ってみよう」
「本気ですか、棗さん!?」

風子はすぐさま反対した。怪物との必死の戦闘はもうこりごりだ、とでも言いたげな口調である。
恭介はそれを見ても、躊躇う素振りも見せずに、頷いた。
どんなときでも決意は固く、揺るがない。
それがリトルバスターズを作った、棗恭介という男だった。
恭介は「行くぞ」とだけ言い、足早に歩き出す。
風子は呆れたように、でもどこか納得したように溜息をつくと、恭介の後を追った。





太陽が天高く昇っている。
降り掛かる火の粉を払ったバーサーカーは、幾分か落ち着いた様子で街中を闊歩していた。
黒き鎧を纏ったその姿は、異様にして異常。
鎧にも増して黒く禍々しいオーラを充満させ、剰え、それを周囲の空気中に漂わせている。
その為、狂戦士の姿を仔細まで観察できる者はいない。
唯一見ることのできる鎧の裏側、スリットから見えるその双眸は、赤く煌めいている。
だがしかし、その仄暗い光は、およそ英霊らしからぬ、憎悪に満ちたものだった。
その暗く燃える双眼で、彼は何を見据えているのか。
それを知る者は本人のみ。

「……ar…………」

漆黒の兜の下から、ふと呟きが漏れる。
そこからバーサーカーの意思を推し量るのは不可能だ。
そもそも、狂気の檻に囚われたこのサーヴァントには、思考するという概念がないのだ。
故に目的地や行動指針を定め、それに則って行動することもない。
六時間ごとに流れる定時放送も、彼にとっては雑音に過ぎない。
また、この会場には、第四次聖杯戦争においてマスターになるはずだった男もいない。
付け加えていうなら、今や狂戦士を縛る枷は無い。
ならば、バーサーカーという存在は、何に従って歩き続けているのか。
その総身から放出されている並々ならぬ殺意は、誰へと向けられたものなのか。
それを知る者も、また本人のみだ。

「……Ar……thur……」

注意深く聴かなければ認識できない程の、小さな呟き。
言語能力を失っても尚、その名前を忘れはしなかった。
かの有名な、アーサー王伝説の主人公、アーサー・ペンドラゴン。
遙か遠い過去、バーサーカーが清廉かつ強健な騎士であった頃の、彼の主君の名である。
このバトルロワイアルにおいても、参加者の一人、セイバーとして召致されている。
或いはそのことを、狂化されても尚残る記憶が、感じ取っているのかもしれない。
騎士王の高潔な姿は、常にバーサーカーの追憶に在る。





「……伊吹っ!」

二人が慎重に歩き始めてから十数分後、G-4の街と野原の境界にさしかかった頃だった。
突然恭介が、風子の身体を強引に物陰に引っ張ろうとした。
風子は驚いて、恭介へと非難の声を上げる。

「い、いきなり何をするんですか棗さん!物事には順序というものが……」
「シッ!静かにしろ。……たぶん、あれが怪物だ」

人差し指を口の前に置くジェスチャーをしながら、恭介は物陰から遠くを窺った。
風子は「怪物」という言葉に怯えつつも、怖いもの見たさからか、物陰から少しだけ顔を出す。
すると、そこには強大なオーラを放つ存在があった。
ひっ、と声を上げそうになる風子だったが、恭介がすんでの所で風子の口を押えて事なきを得た。

「……」

全身を甲冑で覆った怪物を、恭介と風子は無言で見送った。
やがて怪物の姿が完全に見えなくなり、さらに十分以上経ってから、恭介は風子の口から手を離した。
二人とも、額から頬にかけて冷や汗が流れていた。

971 ◆RmIe4rjRnw:2015/03/15(日) 15:55:19 ID:rdlNgEAY0
「棗さん、あれって……」

風子は恐らく、恭介に「あれってなんなんですか」と尋ねようとしたのだろう。
しかし、その次の言葉が継げないほど、疲労していた。
そのことを恭介も悟ったのか、壁に背をもたせかけ、俯いて言った。

「……あれが何かは、俺にも分からない……とにかく、今は近付かないほうが賢明だろう」

そう言いながらも、恭介はあの怪物の正体にあたりを付けていた。
名簿にあった“バーサーカー”という名前。ベルセルク、狂戦士とも言い換えられる。
近くのエリアに響き渡るような咆哮、そして強大なオーラは、バーサーカーと呼ぶのに相応しい。
学校で戦ったあの異形も、恭介たちからすると充分化け物ではあったが、先程の怪物は格が違う。
そういった理由から、恭介はあの怪物を“バーサーカー”と呼ぶことに決めた。

「……怪物は学校の方へ行った。今の内に、先へ進もう」
「でも、学校には雲雀さんがいますよ?」
「必ずしも学校に行くとは限らないし、それに――あいつなら心配ないだろう」

強いあいつならな。
恭介はそう言い切ると、再び歩き出した。
一方の風子は、やや不安そうな顔になりながらも恭介の後を追った。





「ふあ~ぁ」

G-5エリア、並盛中学校の屋上にて、ゆっくり欠伸をしたのは、雲雀恭弥。並中の風紀委員長だ。
かわいらしい欠伸をし終えた雲雀は、しかし一転してムスッとした顔になった。
白井黒子、棗恭介に伊吹風子といった参加者の訪問に、主催者の放送。
雲雀はこの島に来てから、満足に眠っていない。

「……」

雲雀は不機嫌な顔のまま立ち上がると、デイパックも掴まずに歩き出した。
雲雀のお気に入りの場所である、屋上の更に梯子を登った先にある場所。
そこから屋上の扉の前に飛び降りると、扉を一瞥してこう言った。

「何コソコソ隠れてるの?出てきなよ」

すると、金属製の扉が軋んだ音を出しながら開き、一人の男が姿を現した。
ワルサーを構え、油断なく辺りを見ながら、男は屋上に足を踏み入れた。
それを見た雲雀は、薄く笑いながら語り掛ける。

「心配しなくても、僕しかいないよ。それより、君……殺し屋かい?」

男の表情に変化は見られなかったが、雲雀は更に口角を上げた。
そして愛用のトンファーを構えながら、こう言った。

「君、あの赤ん坊と同じ気配がするよ」

唐突に出てきた赤ん坊という単語に、男は僅かに眉をひそめた。
そんなことはお構いなしに、雲雀は男へと近づいて行く。
学ランを風になびかせながら、雲雀は男に対して再び言った。

「丁度イライラしてたんだ……発散させてよ」

それは純粋な宣戦布告。誰から見ても凶悪な笑みが、雲雀の顔にはあった。





恭介と風子の二人は、怪物がやってきた道をそのまま逆に辿っていった。
岩や木の残骸らしきものが多数転がっている野原までやってくると、そこに一人の少女がいた。
しかも、その少女はよく見ると、片腕を失っていた。

「棗さんっ!あれ!」
「ああ!」

恭介と風子は急いで駆け寄った。恭介が少女を抱きかかえる。
少女の左腕は千切れたように無くなっており、火傷も身体のあちこちにあった。
爆弾。言葉を交わさなくとも、恭介と風子の脳内にはその共通の単語が浮かんだ。

「気絶している……出血も酷い。落ち着いて手当てできる場所が欲しいな」

恭介は思わず振り返った。学校には、当然ながら保健室がある。
そこならベッドは勿論、包帯も消毒薬もあるはずで、怪我人の手当てに適している。

「でも学校のほうには怪物がいますよ!?」

風子の指摘はもっともだった。バーサーカーが学校に向かっている可能性もありえる以上、怪我人を抱えてそちらに向かうのは得策とは言えない。
ならば、と恭介は風子に地図を開くように頼んだ。
地図を確認した恭介は、思わず歯噛みした。病院はB-2エリア。ここからでは遠すぎる。
逆にここから近い施設を探すと、G-5に例の学校、H-4にレンタルビデオ店。
落ち着いて手当てをするのに、レンタルショップに行っても仕方がない。

「仕方ない、あまり長時間動かすのもよくないだろうし、近くの民家まで運ぶぞ」
「はいっ!」

結局、手近な民家のベッドを拝借することにした。
少女が身体をよじらせるたびに、白いベッドに赤黒い染みが出来ていった。
それを見た恭介は顔をしかめながらも、次にすることを考えた。

972 ◆RmIe4rjRnw:2015/03/15(日) 15:56:38 ID:rdlNgEAY0
「できれば包帯が沢山欲しいところだが……この辺りの民家に入って探すしかないか」
「風子、急いで持ってきますっ!」

そう言うが早いか、風子は駆け出して行った。
恭介は風子が寝室を出たあたりで呼び止めたが。

「恭介さんはその子を見ていてくださいっ!風子にはコレがありますから!」

拳銃を取り出して、ぶんぶんと振る風子。
そう強く言われては、無下に断ることもできなかった。
結局、恭介はベッドの脇で椅子に座り、少女のデイパックの中身を検分することにした。
ちらとデバイスを見ると、時間表示は[07:55]だった。
定時放送から、二時間が経とうとしていた。





衛宮切嗣は、やっかいな相手に絡まれた、と後悔した。
切嗣がこの学校に来たのは、高所からこの島を確認したいという思いがあったからだ。
必ずしもしなければならない事柄ではなかったが、切嗣はあえてそれをした。
切嗣は英霊のように、圧倒的な力を有している訳ではない。
だからこそ、綿密に戦略を練った上で、戦争に臨むのが切嗣のスタイルだった。
聖杯戦争においても、ホテルを崩壊させたり、人質を取ったりと、勝利のためには手段を選ばなかった。

(島の全容とまでは行かなくとも、周囲の地形くらいは把握しておきたかったんだがな)

どの場所なら敵の襲撃を逃れやすいか、逆に敵を追い込むのに適した場所はどこか。
切嗣はせめてその程度のことは確認してから、戦闘に臨もうと決めた。
それが確認できる高い所となると、屋上がある学校が適当だと判断したのだ
そして、手当たり次第に民家に入り、小型の双眼鏡を見つけてからここに来た、という訳だった。
そこに不機嫌な先客がいるなどとは、切嗣は思ってもいなかった。

「ねえ、君もはやく本気を見せてよ」

うそぶく少年は、まだ中高生であろうに、トンファーによる攻めは苛烈なものだった。
トンファーは愛用なのだろう、棘などの仕込まれたギミックまで最大限に利用している。
そして何より、人を傷つけることへの躊躇がない。
嬉々として闘っている――そこが自分と似ているようで、違う。刹那、切嗣はナタリアを回顧した。

「……やる気ないの?」

切嗣は少年の攻撃を回避し続けた。「固有時制御」は使わず、経験と勘のみで。
もし反撃の意志でも見せようものなら、少年はより猛烈な攻撃を仕掛けてきただろう。
元々戦うつもりでここまで来たわけではない。無用な疲労は避けたかった。
攻撃に転じないのは、装備が心許ないという理由もあった。ワルサーの弾数も限られているのだ。
つい先程、牽制に二発撃ち、難なく避けられたので、使用を控えることに決めた。
現状で相手取るには厄介な敵だと、切嗣が少年を認めたということでもある。

「……つまらないな」

その言葉と同時に少年はトンファーを下ろした。切嗣は密かに安堵の溜息をつく。
切嗣は、少年は純粋に闘いたいだけと判断し、相手が疲れるのを待っていた。
実際には飽きられたようだが、この際細かいことは考えなくていいだろう。
切嗣がすべきことは、弁解と周囲の確認。その他は後回しだ。

「僕は闘うつもりは――」

口を開いたその瞬間、切嗣は猛烈な殺気に襲われた。
屋上の扉を背にしていた切嗣。目の前には少年。そして奥には落下防止のフェンスがある。
切嗣はそのフェンスに、腕のようなものが引っかかっているのを見た。
見間違いかと思い、目を凝らす。

「っ!?」

目を凝らしてみても、それは間違いなく腕だった。
黒い手甲のようなデザイン。切嗣はそれを遠目ながら見たことがある。
触れたものを自らの宝具にするという能力を持つ、あの腕ではなかったか。
二本になった腕は、フェンスをぎしぎしと軋ませて、消えた。

「上か!」

否、消えたのではなく、跳んだのだ。
切嗣は即座に意識を切り替えて、空中へと視線を彷徨わせる。
既にそのとき、狂戦士は両腕を振りかぶっていた。

「Time alter――double accel!」

詠唱、続けて響く破壊の音。
コンクリートを豆腐のように破壊する暴力を、切嗣はすんでのところで固有時制御を使い回避した。
衝撃までは避けきれなかったが、少し遅ければ死んでいたのだ、我慢するしかない。
屋上の扉に叩きつけられた切嗣は、体勢を立て直しながらバーサーカーの全身を見た。
バーサーカーは剣を装備しているが、切嗣の記憶からすると、あれは確かライダーのものだ。
ライダーを殺したのはバーサーカーである可能性が出てきた。
現状それはただの推理でしかない。だが次の瞬間、切嗣は恐ろしい事実に気付く。

973 ◆RmIe4rjRnw:2015/03/15(日) 15:57:24 ID:rdlNgEAY0
(――馬鹿な!?何故、コイツには首輪が無いんだっ!?)

参加者の証である首輪が、バーサーカーには認められなかった。
元々嵌められていなかったのか、それとも自力で外したのか。
切嗣が混乱と思考の極みにいる中で、バーサーカーは次の行動を開始した。
即ち、切嗣に向けて我武者羅に突進してきたのだ。
切嗣は再び、固有時制御を使用して充分な距離を取り、攻撃の線上から外れた。

(このままでは不利になるのは明白……どうする?)

反動でやってくる痛みに耐えながら、切嗣はバーサーカーへの対処法を考える。
固有時制御が無制限に使える技ではない以上、このままではいつか捕まる。
とはいえ英霊相手だと、拳銃では決定打はおろか、かすり傷ひとつ負わせることはできない。
打つ手なし――その言葉が切嗣の頭に浮かんだ。
突進を回避されたバーサーカーは、再び切嗣へと向き直り、獲物を狩る獣のごとき雰囲気だ。
冷や汗が切嗣の頬を伝った。

「僕の学校で好き勝手やらないでよ」

しかし、予想外の出来事は往々にして起こるものだ。
切嗣と闘っていた少年が、バーサーカーにトンファーを喰らわせたのだ。
バーサーカーにしてみれば、それは完全に不意の一撃だったのだろう。
側頭部への攻撃に、流石に倒れはしなかったが、たたらを踏んだ。

「僕の前で器物損壊なんて、いい度胸だよ」

呟いて、少年はそのまま追撃せんと走り寄る。バーサーカーもそこは英霊、ただ黙ってやられるだけの筈もなく、少年に向かって剣を一閃する。
しかし、この時点でバーサーカーは少年の力量を見誤っていたといえる。

「なっ……!」

驚きの声を上げたのはバーサーカーではなく切嗣だ。
バーサーカーの一撃を、少年は避けるだけでなく、その剣の上に飛び乗ったのだ。
必然、バーサーカーは少年を一瞬だけ見失うことになった。
次の瞬間、死角から放たれた少年のトンファーは、再びバーサーカーの兜を揺らした。
屋上の床に倒れ込むバーサーカーを、切嗣は呆然と見ていた。

「君は僕が――咬み殺す」

着地してそう言い放った少年の瞳は、どこまでも冷徹だった。
切嗣は驚いた。能力制限や、バーサーカーが油断したことを鑑みても、この強さは異常だった。
なにより、少年の一撃は、人間が英霊に太刀打ちできることの証明でもあったのだ。
切嗣が驚きに立ち尽くしていると、少年は切嗣の方を見て言った。

「そこに居られても邪魔だし……そうだ、棗と伊吹が仲間を探してたよ」

言葉に脈絡はなかったが、少年は切嗣が居ない方が闘いやすいと言っているのだと切嗣は判断した。
それは切嗣を思いやったわけではなく、ただ自分の都合のため。
闘いたいがためにかけた言葉であった。
だとしても、逃げるタイミングは今しかない。
そう結論づけると同時、切嗣は屋上の扉に飛び付いた。
周囲の確認は後回しにして、あの場を少年に任せる――大人気ないと言われればそれまでの行動だ。

(だが、僕はまだ死ぬわけにはいかない……)

この場を逃れても、バーサーカーを殺す機会が巡ってこないわけではない。
充分な装備と準備があれば、殺せる可能性はあると、あの少年が証明してくれた。
そうでなくても、時間が経てばサーヴァントの同士討ちが起きるかもしれない。
とにかく逃げて体勢を立て直してから考えよう――切嗣はそう思考を打ち切った。

『ごめんなさいね参加者の皆さん。改めて進行役の郷田真弓です』

ちょうどそのとき、番外放送が流れ始めた。主催者による番外放送は、切嗣を更に混乱させた。

(首輪の無いバーサーカーに、生き返った参加者?まったく、どうなっている)

なんでもありか、この島は。
心中で吐き捨てて、切嗣はこれからどう動くかを考えた。


【G-5 中学校 校舎内/午前】

【衛宮切嗣@Fate/Zero】
【装備:ワルサーP38(残弾2/8)@現実、双眼鏡@現実】
【所持品:支給品一式、ワルサーP38の予備弾(残弾24/24)、包丁@現実、ドライバー@現実、ランダム支給品×2】
【状態:疲労(大)】
【思考・行動】
0:バーサーカーから距離を取る。その後どうするか考える。
1:衛宮士郎を優勝させる。その為にはどんな手段をも厭わない。
2:エミヤも次に会ったときには殺す。
3:何故バーサーカーの首輪が無い?
【備考】
※死後からの参戦です。
※「固有時制御」は使用できますが、通常時よりも負担がかかります。
※六道骸、トンファーの少年(雲雀恭弥)を危険視しています。
※能力制限は首輪によってなされていると考えています。
※「棗と伊吹が仲間を探している」ことを知りました。




974 ◆RmIe4rjRnw:2015/03/15(日) 15:58:23 ID:rdlNgEAY0


衛宮切嗣が去ってから、両者の間に交わす言葉はなかった。
狂化により言語能力を失って、まともに言葉を発せないバーサーカーは当然のこと。
雲雀恭弥も、先程の宣言を境に発言をしていなかった。
しかし、言葉はなくとも、意思は共通していた。
目の前にいる相手を、完膚なきまでに叩きのめす。
互いにその一念のみを以て、相手をじっと見つめていた。

「■■■■■■■■■――――――!!!」
「……フン」

膠着状態に痺れを切らしたのか、あるいは自らを鼓舞するつもりだったのか。
バーサーカーが咆哮した。と同時に、それが試合開始のゴングとなった。
狂戦士はキュプリオトの剣を手にしたまま、獲物を狩る獣のように疾駆する。
雲雀は鼻を鳴らしてから、口元に笑みを浮かべ、愛用のトンファーを構えた。
そして刹那の後、二つの影は交差した。
G-5中学校の屋上。決戦の火蓋は、ここに切って落とされた。



【G-5 中学校 屋上/午前】

【雲雀恭弥@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【装備:仕込みトンファー@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】
【状態:疲労(小)】
【思考・行動】
0:狂犬(バーサーカー)を咬み殺す。
1:特に目立った行動はしないが、棗達に人を回す。
2:斉藤、と再戦希望。
【備考】
※継承式編終了後からの参戦です。


【バーサーカー@Fate/Zero】
【装備:キュプリオトの剣@Fate/Zero】
【所持品:無毀なる湖光@Fate/Zero(封印中)】
【状態:健康、狂化(永続)、首輪解除】
【思考・行動】
1:■■■■■■■■■―――――
【備考】
※間桐雁夜に召喚される前からの参加です。
※セイバー@Fate/stay nightを視認すると、全ての行動を放棄して彼女に襲いかかります
※首輪が解除され、戦闘能力が戻りました。





――雲雀恭弥とバーサーカーが衝突した、まさにそのとき。
――持田哲志は、鳴り響く番外放送で目を覚ました。


【G-5 中学校 二階廊下/午前】

【持田哲志@コープスパーティー】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式 デザートイーグル50AE(5/7)@現実 デザートイーグル50AEの弾丸(28/28)@現実 ランダム支給品×1】
【状態:全身にダメージ(中)、『黒化』、レイニーデヴィル化】
【思考・行動】
1:由香の敵をとる為に皆殺し。
2:敵討ち後、自分も自殺して由香の元に逝く。
【備考】
※文化祭後クラスでの会談中からの参戦です
※『黒化』により目的のために無差別に行動するようになっています
※悪魔の手@物語シリーズに何かを願い、その果てにレイニーデヴィル化しました。理性はほぼ消え去っています
※願いに関しては後続の書き手さんにお任せします





G-4エリアのごく普通の一軒家にて。

「……まあ、こんなものか」

そう安堵の溜息をついた恭介の前には、包帯で処置を施された少女の姿があった。
処置をする間に苦しそうに呻くこともあったが、今は寝息を立てていた。
命の危険はひとまず無くなったと言っていいだろう。

「この子、あれと戦ったんでしょうか?」

風子の言う「あれ」を「バーサーカー」だと受け取った恭介は、頷いた。
咆哮や絶叫が聴こえたタイミングからして、間違いはないだろうというのが恭介の考えだ。

「だが、そう考えると不思議なことがある」
「えっ?」

首を傾げる風子。恭介自身も、納得が行かない様子で頭を掻いた。
そして、ベッドの脇から少女のデイパックを持ち上げると、風子に渡しながら言った。

975 ◆RmIe4rjRnw:2015/03/15(日) 15:59:38 ID:rdlNgEAY0
「こいつはデイパックの中身を使っていない。生身で戦ったとしか考えられないんだ」

恭介がデイパックを検分したところ、デイパックの中身は使われた形跡がなかった。
恭介から見てもロクなものはなかったから、それ自体は不思議ではない。
だが、バーサーカーと戦うのに際して、なんの武器も無しに挑むのは無謀だ。
戦ったわけではない恭介がそう断じるのも妙な話ではあったが。

「もしかしたら、超能力者か何かかもな」

恭介の脳裏に浮かぶのは、この島に来て最初に戦った、超能力者の笑顔だった。
手から光球を放つ、そんな能力があれば、あるいはバーサーカーとも渡り合えるのかもしれない。

「何言ってるんですか棗さんっ!夢見すぎですっ!小学生じゃあるまいし」

そんな恭介の考察を、持ち前の毒舌で一蹴すると、風子は一転沈んだ声になった。

「そんなことより、さっきの放送……どう思いますか?」

これには「お前も襲われただろうが」と言おうとした恭介も、口を噤んだ。
番外放送で告げられたのは、死者蘇生に幽霊の存在といった荒唐無稽な話。
それと――新たな三人の犠牲者。その中には、恭介のよく知る少女もいた。
神北小毬。リトルバスターズのメンバーの一人だ。

「小毬は、誰かが幸せになると自分も幸せになる、と言っていた」
「?」
「自分が幸せになったら、また誰かが幸せになる。その繰り返し――幸せは繰り返すんだ、と」
「棗さん……」

恭介の呟きのトーンは、恭介自身が驚くほど落ちていた。
俯いた恭介を見て、風子も何かを感じ取ったのか、俯いた。
部屋の中には沈黙が訪れ、それは永遠に続くのではないかとさえ思われた。

「俺は主催者を許さない」

沈黙を断ち切ったのは、他ならぬ恭介だった。
風子は恭介の顔を見上げている。何かを期待するようなまなざしで。
すると恭介は、破顔一笑、明るい声でこう言った。

「……スイカでも切るか?」

風子は予想外の言葉に驚きながらも、笑顔で答えた。

「……はいっ!」

涙の跡は、見なかったことにして。


【G-4 民家/午前】

【棗恭介@リトルバスターズ!】
【装備:物干し竿@Fate/stay night】
【所持品:支給品一式、海軍用船上槍@とある魔術の禁書目録、イカロスのスイカ@そらのおとしもの】
【状態:疲労(中)】
【思考・行動】
0:少女(白井黒子)が目を覚ますのを待つ。
1:リトルバスターズを結成して、バトルロワイアルを打倒する。
2:仲間は全員助けてやりたい。特に鈴は優先的に保護したい。
3:理樹や小毬の死を乗り越えて生きる。
4:春原と次に会ったら――――?
【備考】
※Refrain、理樹たちが助けにきた直後からの参加です
※マスクザ斎藤のマスク@リトルバスターズ!は破壊されました


【伊吹風子@CLANNAD】
【装備:FN Five-seveN(3/10)@現実】
【所持品:支給品一式、FN Five-seveN予備弾薬(20/20)、黒の騎士団の制服(女物)@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【状態:健康】
【思考・行動】
0:少女(白井黒子)が目を覚ますのを待つ。
1:棗さんと行動。
2:岡崎さんたちを探す。
3:風子はリトルバスターズなんですか?
【備考】
※風子ルート終了後からの参加です
※実体で存在しています


【白井黒子@とある魔術の禁書目録】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×3】
【状態:精神的大ダメージ、左腕消失(包帯で応急処置済)、気絶】
【思考・行動】
1:お姉様……、黒子を起こしてくださいませ。
【備考】
※夏休み終了後からの参戦です。
※『空間移動』は制限されています。移動は10メートル以内で連続の使用は体に負担が大きくなり、また物を体内や柱に入れる事は出来ません。
※番外放送を聴いていません。

976 ◆RmIe4rjRnw:2015/03/15(日) 16:04:09 ID:rdlNgEAY0

【全体備考】
※G-5中学校の校庭に、バーサーカーのデイパック(支給品一式、ランダム支給品×1)が落ちています。


【双眼鏡@現実】
遠くを見る為の道具。ごく一般的なもの。衛宮切嗣が民家で調達。


【キュプリオトの剣@Fate/Zero】
第四次聖杯戦争のライダー、征服王イスカンダルが愛用する剣。
戦闘の他、宝具であるゴルディアス・ホイールを呼び出す際にも使う。バーサーカーに支給。


少々収まりが悪いですが、以上でゲリラ投下終了です。
衛宮切嗣、雲雀恭弥、バーサーカー、持田哲志、棗恭介、伊吹風子、白井黒子、の七人でした。
タイトルは「disillusion」
元ネタは、アニメ「Fate/stay night」の前期OPです。DEEN版ですね。

977 ◆RmIe4rjRnw:2015/03/15(日) 16:08:26 ID:rdlNgEAY0
月報の人、毎度集計お疲れ様です。
当日に申し訳ありません。よろしくお願いします。

王道    112話(+ 1) 80/100 (- 0) 80.0

978 ◆WzpMn05TJA:2015/03/21(土) 18:16:20 ID:ylogaqj20
投下乙です
一気に登場人物が動くと面白いですね
全然更新出来ていなくて、集計までありがとうございます

そろそろ2つめのスレ準備ですかね

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