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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第115話☆

240不変愛〈カワラズノアイ〉:2013/02/01(金) 23:20:32 ID:UmgXroS2
不変愛〈カワラズノアイ〉


 それは一体いつからそこにいたのか、それ自身にすら分からなかった。
 ぬばたまの闇の中に潜み、静かにただ時を過ごす。
 意識は鮮明で、生み出された時から一寸の切れ目さえなく自身と周囲を認識し続けていた。
 もし人のような情緒があったのならば、長すぎる孤独と闇、広大な空間を前に狂してしまっただろう。
 幸か不幸か、それには人並みの感情的な起伏は存在しなかった。
 代わりにある程度の知能、自身の存在目的だけは把握していた。
 しかし目的を達しようにも『対象』がいないのではどうしようもなかった。
 ゆえに、それは待つ。
 いつか自身の生み出された目的を達する為に。
 暗黒の中で粘液を纏う体をくねらせながら。
 そんな風に過ごして幾星霜。
 静寂の待機が破られたのは唐突だった。



 魔力で作られた微かな光源の照らすそこは、埃と黴の混じった臭いに満ちていた。
 地下深くに埋まった深遠な遺跡の園。
 四方を囲む石には細緻なレリーフが施されており、先史時代の高度な文明のほどを思わせる。
 そこを行くのは二人の男女だった。
 手元で魔法陣を展開し、探査魔法を行うブロンドの青年が、連れの女性に視線を向ける。

「これは、本当に凄い遺跡だよなのは」

「そうなの?」

「うん。ここまでこの年代の遺跡が完璧に残ってるなんて初めて見たよ」

「へぇ」

 ユーノの言葉に、なのはもちらりと周囲の壁面に視線を移す。
 考古学に疎い彼女には皆目検討もつかない不可思議な模様や絵、文字の羅列が凄まじい密度で左右の壁に床、天井までひしめいていた。
 なのはからすればある種不気味な様であるが、古代に栄えた今は亡き人の英知に想いを馳せるユーノからすればまったく反対に見えるのだろう。
 遺跡の中に入ってからというもの、彼の声がいつもより活力に満ちているのを感じる。
 
「ユーノくん、なんだか嬉しそうだね」

「まあ、ね」

 改めて指摘され、ユーノは少しだけ照れくさそうに笑った。
 彼のこんな顔を見れるだけでも、貴重な休日を潰してまで付き合った甲斐もあると、なのはは思う。
 こんな風に、管理局の仕事を離れた時にも遺跡を巡り過ごすのも、悪くはない。
 一応、形式的な理由といては無限書庫司書長の護衛という名目ではあるが。
 漫然とせんなき事を考えながら、なのはは照明用の魔力球をまた一つ生み出した。
 事前に探査した時トラップの類は何一つ見つからなかったから、特に警戒する事もない。
 だからだろう、なのはは天井から音もなく落ちてきたそれに気付かなかった。
 
「いつッ!」

 首筋に感じた痛みに、思わずなのはは声を上げた。
 そっとうなじに手を当てる。
 血は出ていない、指先で痛みの生じた肌に触れるが、特に跡らしい跡も感じなかった。
 筋でも違えたのだろうか、なのはは疑問に首をかしげた。

「どうかした?」

 前方を行く青年が振り返り、心配そうな視線を向ける。
 心配させぬようなのはは首を振って、ぱっと笑顔を見せた。

「ううん、大丈夫。なんともないよユーノ君」

「そう。なら良いんだけど」

 それきり、二人の間でその話題は終わった。
 もし体に起こった異変をすぐさま察して適切な治療をしていれば、その後起こる全ての悲劇は回避されただろう。
 だがそれは仮定の話で、なのはの脊髄の中を這い進むそれを知る術は、どこにもなかった。



 最初の変化は一週間後の話だった。




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