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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第114話☆

614「否」:2012/10/02(火) 22:26:40 ID:KmayIiXE

「忘れてはくれませんか?」

 男の耳元でシャマルは囁く。
 答えを否と知りながらの問いかけは、これが初めてではない。それでもシャマルは待っている。
 男が「忘れよう」と答える瞬間を。
 それはあり得ない、と知りつつも。

「条件による」

 恒例となった分岐。
 問いかけ数回につき一回、男はこう答える。その続きの言葉もシャマルは既に記憶していた。

「八神はやてと引き替えなら」
 
 今度はこちらが否と答える番。
 互いに否としか答えられない……答えてはならない問いかけを、シャマルと男は続けていた。

「その条件には応じることは出来ません」

「知っていたよ」

 含み笑いすら聞こえてきそうな男の口調に、シャマルの心が疼く。
 二人がかつて睦まじく交わしていたのは、こんな殺伐とした言葉だっただろうか。
 痛みすら覚えながら、それでもシャマルは自らの心の疼きを愛おしく思う。
 それは闇の書が夜天の書となり、ヴォルケンリッターの四騎士がシグナムであり、ヴィータであり、ザフィーラであり、
そしてシャマルであることを始めた頃から芽生え始めた心。
 だからこそ、疼き、痛んでいるのだと知っているから。それが、心なのだから。

「忘れては、くれませんか?」

 何度目の問いだろうか。
 視線すら向けず、男は答える。

「絶対に忘れない」

 シャマルから見えるのは男の横顔。かつて、シーツにくるまれながら見た横顔。
 短く刈り込んだ頭髪。細い指を絡め、かきむしらんばかり掴み果てたときの手触りを、この手はまだ覚えている。
 四角張った耳。うっすらと生えた頬髭。接吻を浴びせ、頬髭の感触を味わいながら嬌声をあげた夜。
 確かに愛し合った男が、そこにいる。
 主、八神はやてを殺そうとした男が。




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