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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第113話☆

582ざふぃーらならだいじょうぶ:2012/05/09(水) 17:48:33 ID:Ixxa6/Y2
 怒っているのかと思えば、さにあらず。完璧な笑顔でこちらを見つめていた。その笑顔はまるで聖母のよう。だれもが、安心してその胸に飛び込んでいくだろう。

 その背中から漂う、どす黒いオーラさえ無ければ。

「シャッハ?」

 自分の名前が呼ばれた瞬間、恐怖で体が震えてしまう。
 極限状態の中どうしたら自分が生き残れるのか、フル回転でシュミレートをし続ける。

「このようなことはやめなさいって、そう言っておいたわよね?」

 顔を上げちゃダメだ。顔を上げちゃダメだ。顔を上げちゃダメだ!
 頭の中で、千の言い訳が生み出され―

 ―そのことごとくが、たった一言で一蹴される。

(「そう、それじゃあ懲罰房へ行きましょうか」)

 もうだめだと、頭の回転も止まり、ただこの天災が過ぎ去るように伏していた。




「はあ、困った人ね。司令の執り成しもあったことですから、懲罰房行きは勘弁しておきます」




 奇跡が起こった。
 耳に届いた言葉が信じられない。果たして、そこにいる人物は本物のカリム・グラシアなのだろうか?

 顔を上げ、感謝と、畏敬に満ちた眼差しを己の上司に差し向ける。

 そして、そのまま私の顔は固まってしまった。

 さっきはチラリと見ただけだったので、気がつかなかったが、カリムさんの後ろには、二人の女性が並んでいた。
 小説の中では、ヴィヴィオに殺された設定にしていた、養母たちが…。

「ただ、この方たちが、あなたに摸擬戦を手伝って欲しいらしいの。今日のあなたは、有給休暇だし、いつまでも付き合ってあげても大丈夫よね」

 笑うしかなかった。
 向こうも、ただただ笑顔だった。

 襟首をつかまれて引きづられていく途中、そう言えば、遺書を書いてなかったと漠然と考えていた。









「大丈夫でしょうか、シャッハさん」

 心配そうに、オッドアイの少女が問いかけてくる。

「んー、まあ、非殺傷設定にはするやろし、間違いはないんやない」

 もっとも、さっき見た、二人の表情から察するに、危険な予感はあるが。
 とりあえず、カリムも傍にいるだろうし、死ぬことはないと思う。

「それにしても、ひどいなあ」

 ヴィヴィオが、小説を手にとって頬を膨らませる。
 当然だろう。なにせこの作品の中では、自分が正気を失った殺人鬼なのだ。
 と言うか、これを平然と手にとっていることが、驚くべき事態である。



「ザフィーラ殺しちゃったら、子供作れないのに」

「………」



(拉致監禁までならありなんか?)



 ヴィヴィオの何気ない一言に、そこはかとない不安を感じる。

(ヴィヴィオとは二人きりにならんように言うとこ)

 ザフィーラに忠告することを決めて、ふと空を仰ぎ見る。
 雲ひとつ無い青空に、燦燦と太陽が輝いていた。




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