したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

生体実験、下書き(2)

2作者:2009/05/26(火) 09:45:09
2009年5月、女性科学者のデメテール(29歳)は、時間エンジンの設
計図を前に、苦渋の汗を流していた。いくら考えても父クロノス博士の4次
元理論を形のある動力機関に応用する事が出来ない。時空戦艦アルゴーの艦
体は既に完成し、通常エンジンで飛行するだけなら可能である。しかし、肝
心の時間航行が出来なくては話にならない。植民地総督であるピタゴラス博
士からは、何度も何度も催促され、デメテールは、ノイローゼ寸前に追い込
まれていた。
(時空砲は、すでに完成している。そのエネルギーをフィールド状に展開し、
艦体全部を包み込むようにすればいいのだけれど・・・)
父クロノス博士の作った時間航行機ですら、アルゴー程の大きさではなかっ
た。エネルギーを制御し、なおかつ操縦者の意図する時間ポイントに、正確
に移動させなくてはならない。しかも、常に発生を続けるパラレルワールド
を無視し、元いた世界へ戻る時空ナビゲーションシステムとも連動させなく
ては意味がない。デメテールは、試作品として卵型の時間転送機を作ってみ
た。
「試してみたいけど、危険だわ。地球人の実験体を使おうかしら」
デメテールは、資材調達部に、実験体の提供を依頼した。アンドロイドに連れ
て来られたのは、久保田道康(22歳)だった。道康は、専門学校卒業後、
派遣社員として自動車工場で働いていたのだが、3月にリストラされ、ぶらぶ
らしていた所を、ネオガイア人に拉致されたのだった。
「俺をどうしようってんだ!」
「簡単な実験よ。この装置を実際に使ってみて、正常に作動するかどうか、試
して欲しいだけ」
デメテールは、卵型の装置にネックストラップを付けた時間転送機を、アンド
ロイドに両脇を押さえ付けられ、動けない道康の首に掛けた。
「そんなもん、自分で試せばいいだろ!」
「試作品なのよ。失敗したら危ないでしょ」
「くそっ、離せ!」
道康は暴れた。得体のしれない実験で、自分の命を落とすかも知れない。
「一時間後の未来へ移動するように、セットしておいてあげる」
デメテールは、道康の首にかけられた装置のボタンを押し、液晶画面に表示さ
れているメモリを動かした。一時間後の同じ場所に、被験者が実体化するかど
うかという簡単な実験である。
「じゃあ、一時間後の未来で会いましょう」
デメテールは、スイッチを押し、離れた。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板