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仮投下・修正用スレ

1 ◆iMRAgK0yqs:2009/02/16(月) 02:28:33 ID:Wr6mKbKA0
投稿規制された時の代理投下、またはSSの内容に関して
意見を伺いたい時にご使用下さい。
wiki登録済SSの修正を行いたいが、wikiの操作が判らない
という方も、こちらに投下して頂ければ随時対応します。


※ 旧スレは過去ログ倉庫に保管しております。

2 ◆MjBTB/MO3I:2009/02/20(金) 17:32:18 ID:BSwnWNBk0
Wiki収録時の為に急遽切り詰めた部分の原文を載せておきます。
本スレでは削っていた箇所もそのままの為、少々長くなっております。

3本スレ356に相当(1/2) ◆MjBTB/MO3I:2009/02/20(金) 17:35:13 ID:BSwnWNBk0
受付のテーブルに伏せ、銃口の先から姿を消す事に勤めた刹那に轟音が響く。
後ろを振り返ると、丁度頭があった位置に幾つもの弾痕が出現していた。
あのまま回避を選択していなければ、あっという間に消滅させられていた。
銃声は消えている。相手は対策を練っているのか動きはない。よし、まず第一波は避けた。

だがこのまま伏せていても同じだ。やられる前にやる、を実践するためにデイパックから刀を取り出す。
進行方向を右に設定し、隠れ家にしていた机から脱出した。だがそれを見逃さずに敵の放つ銃弾が襲い掛かってきた。
銃口はぶれずにこちらを向いている。走る速度は並の人間レベルではない筈の自分が、P90の照準内に納められてしまっている。
並の人間ならこのままお陀仏だ。体を穿つ小さな穴が体中に出現し、あっという間に死へと誘われるであろう。
だが自分はそんな脆弱な存在ではない。ただの有機生命体とは訳が違う事は一番よく理解している。

走行時の瞬発力のみで、死を運ぶ銃弾共をどうにか回避し方向転換。リロード中を狙って肉薄し刀で袈裟斬りを叩き込む!
相手はその一連の流れと速度に少しだけ驚いた顔をしていたが、予め持っていたであろうナイフでそれを受け止めて見せた。
だが勢いばかりは殺しきれない。怪我こそ負わせられなかったが、その体は衝撃で少し後ろに下がる。
破った。均衡状態を破る事が少しでも出来た。朝倉は自分に運が向いてきた事をじわじわと感じ取り始めていた。

朝倉涼子は、人間ではない。
人間なのは見た目だけであり――その体は人間離れした力を秘めている。
それはひとえに地球外で作られた存在である故の事なのだが、それはまた一旦脇に置いておこう。
朝倉涼子が人間ではないのは説明した通り。だが、相手の女はそうであろうか。
答えは否。先程の一瞬の鍔迫り合いなどから察するに、敵はただの人間だ。自分と同じ存在ではない。故に勝てぬ道理などない。
長門有希の介入が無かった状態での"彼"との戦闘を思わせる、種族差での圧倒的有利。それを確かに噛み締めていた。

だがそれと同時に、その高慢さと油断を抱いたままでは敗北も必至である事も感じ取っていた。
種族差による有利は先程感じたとおり。だがそれ以上をひっくり返す何かを相手が持っている事は確実なのだ。
理由は三つ。
一つ、最初の時点でかなり危うかった。奇襲をかけられたことを相手の殺気によってようやく気付かされた。
二つ、受付の机から走って脱出する際に、この自分が"どうにか避ける"という選択肢しか選べなかった。
三つ、これが最も解せぬ事実だが……これ程までに人間離れな筈の自分の力を見せておきながら――女は全く動じていない。

4本スレ356に相当(2/2) ◆MjBTB/MO3I:2009/02/20(金) 17:35:52 ID:BSwnWNBk0
P90というマシンガンが人間工学に基づいて造られた良品であると言えど、ここまで使いこなせるものか。
最初の奇襲で確実にヘッドショットを決めようとし、走る自分を捉えるばかりか回避しか選択できぬ状況にまで追い込む緻密な動作。
そう、ただ自分は人間ではないから有利であると言うだけ。戦闘の力量に関しては敵の方が少しばかり上回っている。
種族差をいとも簡単に埋めるその銃の腕前。相手の行動に対する瞬時の判断。力押しだけでは勝てぬ相手だ。
異常なまでの身体能力と情報改竄の力を持ち、弾幕を創り波状攻撃を行う自分が所謂"パワータイプ"であるとするならば
相手はこの極限まで磨き上げた戦闘技術と戦略に戦術、環境適応能力で相手から勝利をもぎ取っていく"テクニックタイプ"だ。

今の自分は、度し難い程のテクニックを持つ相手を仕留める事が出来ない。
だが相手は、理解し難い程のパワーを持つ自分を仕留める事が出来ない。

何が"均衡を破った"だ、馬鹿らしい。勝負はこれからであり、そのこれからが大事かつ難儀ではないか。
自分は刀を右手だけで正眼に構えて動けない。だが相手もP90を構えたまま動かない。
戦闘に使える支給品は刀がひとつ。けれど相手にはまだ腰に挿したナイフがある。
武具に関する有利不利は明らかになった。さて、ならばどうする。

簡単だ、武器を増やせば良い。

朝倉は空いた左手を、近くにあった休憩用の小さな椅子に掲げた。そして、念じる。
最初に確認した通りにやれば良い。自分の制御空間ではないものの、それでも近くの物質ならば!
片手を掲げられた椅子が瞬時にその形を歪め、遂に原形を留めぬ槍と化す。
椅子という物体の持つ質量はそのままに、生物一体は難なく貫ける凶暴な獲物が姿を現す。
冷静な女もこればかりは面食らったようで、目を見開く。だがそんな事をする時間は彼女にとって致命的であった。
その間に近くにある椅子の情報を次々に改竄。近くにあった椅子の四台全てが同じ形の槍へと変化を遂げる。
計五本の槍を宙に浮かせ、朝倉涼子はにっこりと微笑んだ。

5 ◆MjBTB/MO3I:2009/02/20(金) 17:37:00 ID:BSwnWNBk0
以上、本スレ356の原文です。
スペースをお借りいたしました。

6人間臨終図巻 ◆F0cKheEiqE:2009/02/20(金) 22:45:08 ID:0/jagKdE0

(朧に小四郎、よりにもよってこの二人か・・・)
薬師寺天膳は名簿を見ながら軽く呻いた。

伊賀鍔隠れ衆の重鎮、薬師寺天膳は、
色白でのっぺりとした肌、切れ長の目をした、
女のように柔らかな線の見えるやや太りかげんの身体の男である。

年齢は三十前後であろうか、
髪は黒々とした総髪だが、
その反面肌にはまるで艶が無く、唇も紫で、
ひどく老人めいた印象を人に与える。

兎に角、年齢がいまいち解らない不気味な雰囲気の男であった。

天膳がいまいるのは、A-3地区の森の何処かだが、
周りが背の高い木ばかりで、
天膳にはこの地図の北西部にいることぐらいしか解らない。

ただ、木々から覗く星と月の動きから方位と時刻だけは知ることが出来た。

天膳は、良く効く忍者の夜目で、
明かりも無い闇の中で名簿に眼を戻した。

名簿にある名前は五十。
記されて無い名前がさらに十あると言う。

この中で見知った名前は三つ。
甲賀弦之介、朧、筑摩小四郎の三人。

内、朧と小四郎は同じ鍔隠れ衆の者、言わば味方なのだが…

(朧は足手まとい、小四郎は手負い、か。
まあ小四郎は、あれはあれで役に立つから良いとして朧は…)

「破幻の瞳」が開いていたならばまだ役にも立ちようが、
「七夜盲の秘薬」によりその瞳すら塞がれいる今となっては…

(あの狐面、生き残れるのは一人だけなどとぬかしておったが…
真実ならば朧一人を何とか生き残らせねばならぬと言う事か)

正直、この主を主と思わぬ謀反人は、
自分の命を捨ててまで朧を救おうなどと言う気持はさらさら無い。

7人間臨終図巻 ◆F0cKheEiqE:2009/02/20(金) 22:45:54 ID:0/jagKdE0

(だが、あの小娘自体がどうなろうが知ったことではないが、
あ奴の持つ血、お幻の血統は何としても守らねばならぬからなぁ)

朧自体に恋着は無いとは言わぬが、命をかけるほどの女とは思わない。
が、伊賀の旗印として、
またいずれ自分がなるであろう鍔隠れの頭領の地位を正統化する為の錦の御旗として、
朧には生き残ってもらった方が彼には非常に都合がいいのだ。

(暫くは朧、小四郎を連れて何とかここから抜け出せる方法を探るのも手か?
兎に角、まずはこの山を抜けねばな)

名簿を鞄にしまい、支給品の刀を腰に差す。
「九字兼定」と言う銘の業物らしいが、
なるほど、確かにいい刀である。

(やれやれ、面倒な姫君よ。とりあえずわしが行くまで生きておれば良いが…
まあ死んだら死んだ時であろう。小四郎は放っておいても問題あるまい。甲賀弦之介は…)

憎っくき甲賀の若き頭領。
八つ裂きにしても飽き足らぬ奴だが…

(奴もまた目は塞がれていたはず。
目の見えぬ「瞳術」使いなど塵芥に等しい。
放っておいても勝手に死ぬじゃろう。
出来ればわしの手で朧様の眼前で弄り殺しにしてやりたかったが…
ちと、そんな余裕はないわい)

そんな事を考えつつ、山を降りるべく歩き出したその時であった。
天膳の優れた感覚が、背後に出現した気配を捉えた。

「・・・・・・誰じゃ?何か用か?」
兼定の鯉口を切りながら背後の気配に声を掛けた。

「ゆっくりと両手を挙げてから振り返ってもらえますか?」
「いやじゃ・・・・と、言うたら?」
「おかしな動きをしたら撃ちますよ」

若い声だ。少年の様にも聞こえるが、
恐らく少女であろうことを天膳は見抜いた。

「撃つ、と言うたが、と言う事は手に持っているのは短筒か何かか?
その割には火縄の臭いがせんようだが?」
「“タンヅツ”?・・・・もしかしてハンドパースエイダーの事ですか?
だとすれば、これはやや古い回転式ですけど、
火縄なんて使うほど古臭いモノじゃありませんよ」
「何?“はんどぱーすえいだぁ”?」
(何を言っておるんじゃこいつは?ひょっとすると南蛮人か何かか?)

聞き慣れぬ単語に、頭に疑問符を浮かべる天膳だっが、

(ええい、まだるっこしい!気配からすればさして体も大きくない小娘、
なんぞ恐れることがある。力押しでよかろう。
人を脅したお礼に、体に色々聞いてくれよう)

少し嫌な予感がしないでも無かったが、背後にいるのが小娘だと解って、
天膳は相手を侮った。
銃器に関する知識が、十七世紀当時のものしかない事が、
それを後押していた。

8人間臨終図巻 ◆F0cKheEiqE:2009/02/20(金) 22:46:35 ID:0/jagKdE0
故に抜き打ちに振り返りながら相手の懐に飛び込まんと…
「小娘ぇ!なめるな!」
独楽の如く身体を捻らせた。
それ自体は恐るべき速さであったが、

ぱん

豆を炒る様な乾いた音が響き、

「ぬっ?!」
「警告はしましたよ」

天膳は胸を撃ち抜かれ、
大の字を描きながら地面に仰向けに倒れ込んだ。

忍者の反応速度を上回る見事な射撃。
銃弾は一発で天膳の心臓を貫いていた。



天膳が確かに死んだ事を確認すると、
死体から刀を剥ぎとり、自分の腰のベルトに差した。

余り背の高くない小柄な少女である。
年のころは十の半ばを越えたぐらいか?
顔立ちは可愛らしいが、髪を短く切っている事もあって、
一見少年のように見えない事も無い。

ゴーグルを付けた耳当て付きの帽子に、
茶色のくすんだコートを着ている。
その下に動きやすそうな黒い装束を着ている。
良く見ないと解らないが、胸に膨らみが微かだが確かにある。

ベルトにはホルスターが付けられ、
中には天膳を射殺したリボルバーが入っていた。

エンフィールドNo2。
かつて英国陸軍で使用されていたリボルバーの一種で、
三八口経、装弾数6の中折れ式である。

この殺し合いに参加している
トラヴァス少佐の故国(本当は違うが)である
スー・ベー・イル軍制式採用銃に形が似ているが、
単なる偶然だろう。

(ひょっとするとパースエイダーの無い国のひとだったのかもしれない)
少女、旅人キノは天膳の死体を見ながらそんな事を考えた。

9人間臨終図巻 ◆F0cKheEiqE:2009/02/20(金) 22:47:06 ID:0/jagKdE0

見なれない格好だが、彼の国の民族衣装であろうか?

色々な国を旅してきたが、
中にはほとんど原始時代と同じような生活を送る人々もいなかったわけでは無い。
そういう国の出身者だったのかもしれない。

「エルメスもこっちにいるのかな」
天膳の鞄の中身を、自身の鞄に移し換えながら、
良く喋る旅の相棒を思い浮かべた。
が、考えたのも一瞬、
目と思考は天膳の遺品に戻っている。

どうやら武器の支給品はこの刀だけらしい。
本当はナイフの方が使いなれているからそっちの方が良かったが、
まあ贅沢は言えまい。

(弾の数もそんなに多くないし、パースエイダーが欲しかったんだけど)
鞄の中身を移し替え終わると、
天膳の死体に一瞥もせずにキノはその場所から立ち去った。

山族に襲われたり、
亡国のかつての英雄達の部隊に襲われたりと、
旅の途中の障害は多い。

この殺し合いも、そんな障害の一つなのだろう。

最後の一人になるか、
あるいは逃げ出す方法を見つけるのか、
何れにせよ兎に角生き残って。
またいつもの旅路に戻るだけである。

10人間臨終図巻 ◆F0cKheEiqE:2009/02/20(金) 22:47:52 ID:0/jagKdE0

彼女に殺人嗜好はないが、
殺人を忌避する事も無い。

「国」と「国」の間は基本的に無法地帯だ、
躊躇っていれば死ぬのは自分である。
他人を躊躇い無く殺すのは、言わば生活の知恵である。

さっきの男も妙な真似をしなければ、
べつに殺すほどの事でもなかったのだ。
まあ、殺されたのは、不用意に動いたあの男が悪いのだ。

これからもそうやってきたし、
きっとこれからも死ぬまでそうやって生きて行くのだろう。

ふと、名簿に「師匠」と言う文字があったのを思い出したが、
「でも、あの人、「師匠」は名前じゃないって言ってたし、
たぶん別の誰かなんだろうなぁ…」

と、一人の老婆を思い浮かべると、
すぐに脳裏から消して、キノは歩き始めた。

ちなみに、かつてコロシアムで戦い、
その父上を盛大にぶっ殺した犬を連れた刀使いの事は、
キノは完全に忘れていた。

【薬師寺天膳@甲賀忍法帖 死亡】

【A-3/森の何処か /一日目・深夜】

【キノ@キノの旅】
[状態]:健康
[装備]:エンフィールドNo2(5/6)@現実、九字兼定@空の境界
[道具]:デイパック、支給品一式×2
[思考・状況]
基本:生き残る 。手段は問わない。
1:エルメスの奴、一応探してあげようかな?
[備考]
※参戦時期は不詳ですが、少なくとも五巻以降です。
※「師匠」の事を、自分の「師匠」の事だとは思っていません。
※シズの事は覚えていません。

※キノがどちらに向かったかは、次の書き手にお任せします。

11人間臨終図巻 ◆F0cKheEiqE:2009/02/20(金) 22:48:34 ID:0/jagKdE0





――――――キノが森から去ってから、一時間あまりして、
ただ死と闇の静寂ばかり残っているはずの森の中で、かすかな物音がした。

虫であろうか、否。
獣であろうか、否。
風であろうか、否。

確かにそれは、

「あァあ!」

眠りから覚めた人間の、あくびの様な声であった。

ぬっと、突如闇の中に出現した影がある。
それは、誰であろう。

それは、ほんの一時間前、キノが確かに射殺したはずの
薬師寺天膳ではなかったか!

天膳は、頭を二、三度振ると、ニヤッと笑った。

「いあや、油断した。見事に『殺されてしもうた』」

なんたる奇跡、天膳は死の淵から蘇ったのである。

しかし、これはどういう現象か。
実に不可思議ではあるが、有り得ぬことでもないのだ。

蟹の鋏はもがれてもまた生じ、蜥蜴の尾はきられてもまたはえる。
ミミズは両断されてもふたたび原形に復帰し、
ヒドラは細断されても、その断片の一つずつがそれぞれ一匹のヒドラになる――――

下等動物にはしばしばみられるこの再生現象は、人間にも部分的にはみられる。
表皮、毛髪、子宮、腸、その他の粘膜、血球などがそうで、
とくに胎児時代はきわめて強い再生力をもっている。

薬師寺天膳は、下等動物の生命力をもっているのか、
それとも胎芽をなお肉のなかに保っているのか…
彼は、再生力のまったくないといわれる心筋や神経細胞ですら、
見事再生させ復活したのである。

彼を完全にあの世に送るには、首を刎ねるか、
重火器などを用いて頭部を完全に吹き飛ばすか、
爆薬で粉微塵にしてしまうか――――
いずれの方法を採るにせよ、彼の肉体を壊滅的なまでに破壊しなくてならないだろう。

「あの小娘め、俺の物を全部持って行きおったな…次あったらタダでおかぬ」

天膳は憎々しげに呟いた。

12人間臨終図巻 ◆F0cKheEiqE:2009/02/20(金) 22:49:10 ID:0/jagKdE0

【薬師寺天膳@甲賀忍法帖 蘇生確認】

【A-3/森の何処か /一日目・深夜(一時間経過)】

【薬師寺天膳@甲賀忍法帖】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:生き残りを優先するが、出来るなら朧を助けて脱出したい。
1:朧を探しつつ、情報収集。
2:あの小娘、今度会ったら!
[備考]
※キノの名前を知りません。



以上です

13名無しさん:2009/02/20(金) 23:25:47 ID:6vpT0ojA0
>ただ、木々から覗く星と月の動きから方位と時刻だけは知ることが出来た。
これはロワの会場が「地球の日本」にあることに限定されますし、ついでに季節も限られてきます。
寧ろ、星や月の位置は出鱈目なほうがロワに関して言えば自然かも知れません。

あと恐らく一番まずいのは、「蘇生」ですね。
過去にも強靭な生命力や回復能力を持っていたり、首をはねても心臓を破壊しないと殺せなかったり
といったキャラがロワに出てきたことはありますが、そういう能力には大抵原作に比べて重い制限が課せられます。

平たく言えば、「死亡確認」→「蘇生」→「健康」は余りにも強力すぎるということです。
よって
・蘇生に時間がかかる
・蘇生に回数制限がある
などの制限が必要ではないかと思います。

14名無しさん:2009/02/20(金) 23:34:04 ID:6vpT0ojA0
失礼。見落としていました。
蘇生に一時間かかっているなら、私としては問題ないと思います。
尤も先に述べたように「殺し合い」において「蘇生」はかなり強力な能力なので、
気軽に使えるものではないということを知っておいてください。

15 ◆F0cKheEiqE:2009/02/21(土) 00:07:21 ID:4suimwI60
>>13>>14

指摘感謝します。

ただ、「蘇生」に関しては原作における彼の持ち味なんです。

甲賀忍法帖は10対10の忍者のチームバトルなのですが、
各々の忍者が大概一つの「忍法」を持っています。
これはジョジョなどにおけるスタンドの様なもので、
例えば、
・食道に30センチの刃物を隠し、それを凄まじいスピードで吐き出す。
・塩に溶けて縮む。
・全身の体毛を自在に動かす。
・全身の色を変えて周囲の景色に溶け込む。
などです。
この薬師寺天膳の忍法が「蘇生」なんです。
甲賀忍法帖に登場する「忍法」は「初見殺し」が多いのですが、
彼の必勝パターンは
「敵の忍法を食らう」→「死亡」→「蘇生」→「再対峙」→「同じは二度食わぬ」
で、逆に言うと天膳は「死ぬことで初めて役に立つ」キャラなのです。

ちなみに原作だと5回死亡、蘇生し、6回目でやっと地獄に落ちました。

16 ◆F0cKheEiqE:2009/02/21(土) 00:12:51 ID:4suimwI60
追記

でも「蘇生能力」に漫心した挙句あっさり死ぬのも彼らしいと言えば彼らしいか。
原作でも5回ともさんざん油断した挙句殺されてましたし。

17二人の選択 修正案 ◆oUz4tXTlQc:2009/02/21(土) 23:01:33 ID:G9E/hwzM0
実の所俺はクルツが最後に見せた銃がほぼ間違いなくフェイクであることも見破っていた。
あいつの殺気は本物だったし、銃器が支給されていたのなら最初に使わない理由は全く無い。
それでも敢えてあいつの交渉に乗った理由は一つ。
少しでも俺の生存確率を上げるためだ。
生き残るのはただ一人というルールがある以上、複数で行動している人間はそれだけで殺し合いに乗っていると判断されにくい。
それならば恐らくたいした武器を持っていないクルツと戦うよりは仲間にしておいたほうが得策、というわけだ。
とはいえ俺とクルツの二人ではどうしても玄人臭さがにじみ出てしまい怪しまれてしまう可能性も高い。
(ま、そこらへんは早いとこ可愛い女の子が仲間になってくれることを祈るしかないにゃー)
あるいはそれが御坂美琴のような能力と容姿を兼ね備えた存在ならば申し分ないが、現状の戦力では超電磁砲が殺し合いに乗っていて問答無用でこちらに襲い掛かってきた場合に対抗するすべが無い。
クルツを盾に逃げるにしてもおそらく時間稼ぎにもならないだろうし、超電磁磁砲単独で行動していた場合にはこちらからの接触は出来るだけ避けておいたほうが賢明だろう。
土御門の中で一番の優先事項は己の生存、その為に他人を使い捨てることに躊躇は無い。
恐らくは相方のクルツも同じ考えだろう。
この殺し合いで一番重要な事は生き残ることだ。
正直な所この状況で主催者に歯向かった所で勝ち目は全く無い、というよりもそもそも反抗する手段の見当がつかない。
確かに禁書目録の知識があればこの状況についての何らかの仮説は立てられるかも知れない。
主催者がどんな異能の力を用いた所でそれが異能の力である限りかみやんの右手があれば打ち消すことは可能だろう。
だが、その二人をこの殺し合いの場に連れてきたのもまたあの狐面の男とその背後にいる黒幕なのだ。
もしその二人にこの殺し合いを打破しうる要素があるとして、そんな二人をわざわざ連れて来るだろうか?
答えはNOだ。
少なくともかみやんや禁書目録単体では主催者に対抗しうる可能性は皆無だろう。
当面のところは主催を打ち破る、などといった発想はただの幻想と捉えておく方が賢明だろう。
かといって最後の一人になれば無事に帰れるというのも眉唾物だ。
結局のところ現状で取れる選択肢はとりあえず生き残る、というなんとも消極的なものしか残らない。
元より盤面の駒がどのように動いたところで盤面の外に居る主催者に影響を及ぼすことは不可能に近い。
可能性があるとすれば、主催者と同じく盤面の外から居るものによる救援。
上条当麻が巻き込まれている以上アレイスターも何らかの動きを見せるだろうし、禁書目録がここに居る以上イギリス清教が傍観しているわけも無い。
仮に学園都市とイギリス清教が同盟を組んでこの殺し合いを仕組んだのだとしても、こんどはローマ正教が黙っていないだろう。
仮にそれら全てが協力して居るとしても、一枚岩の集団にはなり得ない。
それぞれの思惑が絡み合い不和が発生することはほぼ間違いないだろう。
主催者に対して唯一勝ち目が発生するとしたらそういった盤面の外の出来事が盤面の中に影響を及ぼした瞬間。
だからこそ今は何よりも保身。
どんな手段を使ってでも生き残り盤面に変化が起きるのを待つしかない。
それでも盤面に何ら変化が起こらなかった場合、その時は。
(嘘つき村の住人、背中刺す刃こと土御門さんの本領を発揮するしかないかもにゃー)
学園都市でも最高ランクの能力者である御坂美琴が参戦させられていることからも、この殺し合いの場には自分などより遥かに強い能力者が何人も居ることだろう。
だがどんな強者も背中からの一撃には脆いもの、勝敗を決める要素は能力の強弱だけではない。

「どんな手段を使っても生き残らなきゃなんないってのが帰りを待つ義妹をもつ義兄ちゃんのつらいところだにゃー」
「あ?」

突然の独り言に対してクルツが不思議そうな顔をしたが無視しておく。
そう、最悪かみやんやステイルを殺してでも生き残らなければならないってのが辛い所だ。

【D-5 1日目深夜】
【土御門元春 @とある魔術の禁書目録】
【状態】額が少し痛い
【装備】
【道具】デイパック、不明支給品1〜3
【思考】1.生き残りを優先する。
    2.宗介、かなめ、テッサ、当麻、インデックス、ステイルとの合流を目指す。
    3.可愛いい女の子か使える人間と会えば仲間に引き入れる(ただし御坂美琴に関しては単独行動していたら接触しない)
    4.その他の人間と会えば殺して装備を奪う
    5.最悪最後の一人になるのを目指すことも考慮しておく。
【備考】クルツと情報交換を行い“フルメタル・パニック!”の世界についてある程度情報を得ました。

18 ◆h3Q.DfHKtQ:2009/02/25(水) 16:19:49 ID:0jrLLSzs0
修正版を投下します。

19女怪 ◆h3Q.DfHKtQ:2009/02/25(水) 16:20:24 ID:0jrLLSzs0

彼女、黒桐鮮花がこの殺し合いに乗ったのは、
非常に意外性を帯びていながら、同時に限りなく必然であった。

彼女は非常に負けず嫌いだ。
何せ、明らかに堅気で無い恋敵に対抗するために、
魔術という闇の世界に自ら飛びん込んでいくぐらいだ。
だから、普段の彼女ならば、毅然と真っ向から立ち向かっただろう。
まだ半年とはいえ、確かに境界の向こう側の世界に足を踏み入れた彼女ですら、
「異常」と断じる事が出来る悪趣味な遊戯、正体不明の「人類最悪」…
だがそんな「異常」も、彼女を止める足枷にはならなかったはずだ。
彼女はそう言う人間なのだ。

故に、本来、彼女はこの殺し合いに乗る筈など無かったのだ。

もし名簿にその名前が無かったなら。

黒桐幹也

彼のたった一人の、唯一無二の愛しい兄の名前。
自分の全てを投げ打っても、救わねばならない人。

その名前を見た瞬間、彼女は殺し合いに乗る事を決意した。
それは彼女にとっての必然だった。

一瞬、彼女の脳裏に過った一つの人影がある。
男みたいな恰好をした、いけすかない泥棒猫の事。
一瞬、全身に煮えたぎった鉛を流し込まれるような悪寒を、鮮花は確かに感じた。

眼をとじ、頭を振って、無理やりその女の影を脳裏より追放する。
『あの女の事は、会ってから考えればいい』、そう彼女は自分に言い聞かせた。

何故、あの女の事を気にかけるのか、鮮花自身にも判然としなかった。



ここに黒桐鮮花、第一の不幸がある。
もし彼女が殺し合いに乗っていなかったなら、
ひょっとすると彼女の名前がこの忌まわしき選手名簿から、
永遠に抹殺される事だけは避け得たかもしれなかった。



彼女が今いる場所は、地図の上では「E-5」と呼ばれる市街地のど真ん中である。
すぐ東側には大きな川が流れ、対岸には月を貫く魔天楼が屹立している。

「AzoLto―」
彼女がそう呟くと、右手に持った紙片はズブズブを煙をあげながらただの灰になった。

長い髪、引き締まった知性を感じさせる美貌の、
修道服のような礼園女学院の制服に身を包み、
両手に茶色の革手袋―火蜥蜴の皮手袋―をはめた鮮花は、
不敵に微笑んだ。

支給品とやら、コレだったのは幸運だろう。
魔術も問題なく作動している。

この時彼女は、彼女すぐ背後、路地裏へと続く、
ビルとビルの合間を縫うように走る真っ暗な小道から、一つの影が現れたのに、
その瞬間は気が付かなかった。

20女怪 ◆h3Q.DfHKtQ:2009/02/25(水) 16:22:06 ID:0jrLLSzs0



これが、彼女の第二の不幸。
彼女の武器ともいえる、火蜥蜴の皮手袋が、すんなりと彼女に支給されてしまった事。
そして、彼女自慢の魔術が、何の問題も無く作用してしまった事。

もし、支給品が別の、もっと役に立たない物だったなら、
あるいは魔術の作動に、なんらかの異常があったなら、
彼女はもっと用心深く動けていたに違いないのだ。

二つの幸運が、彼女の心に僅かながらも余裕を与えてしまった。
その事が、刹那の、しかし絶対的な隙を産んでしまったのだ。



不意に、全身の毛が逆立つような悪寒を背骨に覚えて、
鮮花はハッとして振り返った。
果たして、いつの間に出現したのか、10メートルほど後方に、
一人の女が立っている。

髪を乱し、小袖を着た、自分とそう年齢が変わらないであろう少女。
顔のつくり自体は、非常に可憐な印象を相手に与える物であったが、

右手には白刃を下げ、その双眸には異様なまでの殺気が籠っているのを、
鮮花は瞬時に認識した。

即座に、鮮花の体は弾丸の如く駆けだしていた。
相手もこちらに向けて駆けだしている。

先に仕掛けて来たのは相手。
右手の秋水は、逆袈裟に、鮮花へと向けて放たれる。

これを、体を鮮花から見て右前方に背を屈めるようにして回避する。
そしてすれ違いざまに、左手でボディーブローを叩きこむ!

「かはっ!?」
白椿を散らしながら、目をむき、体をくの字に曲げる相手。
咄嗟に体を逃がそうとするが、逃がさない!
左手は即座に相手の胸倉を掴む。

「終りね」
鮮花は激痛の為か焦点のぶれる瞳でこちらを見つめる少女に、
冷笑を送りながら、必殺の言霊を紡いだ。

「AzoLto−!」



ここに彼女第三の不幸がある。
この時、鮮花は、魔術を使わず体術だけで、彼女を屠るべきだった。
そうすればこの華奢な少女は、鮮花の豪快な体術により難無く地に伏していただろう。

鮮花にとって、この少女に対峙した時、
真に認識すべきだったモノは、右手の白刃でも、その目に籠った殺気でもなかった。
殺気が籠ったその双眸自体を、闇夜にあってなお、炯々と蒼く輝くその瞳自体を、
さらに言えば、その両眼から迸る恐るべき太陽風を!

21女怪 ◆h3Q.DfHKtQ:2009/02/25(水) 16:22:39 ID:0jrLLSzs0



「なっ!?」
魔術は発動しなかった。
つい先ほど、確かに作動した必殺の炎は、今や火花すら上がらなかったのだ。

ここで彼女が驚愕し、一瞬動きを止めてしまった事を誰が責められよう。
しかし、それは、相手に唯一無二の反撃の機会を与える事になってしまったのだ!

少女はキッと双眸に殺意を再燃させると、
右手にかろうじてまだ握っていた刀を、
左脇より斜めに突き刺したのだ!

「がっ!?」
今度呻いたの鮮花の方であった。
綺麗に彼女の体を刺し貫いた刃は、肋骨の隙間を通り、
肺を貫通し、切っ先は右肩より飛びだしていた。

鮮花の穢れ無き美しい肢体を灼き金が貫いた。

「・・・・・ッ!」
口から血泡を吐き、声にならない咆哮を挙げた鮮花だったが、
最後の一撃とばかり、相手の鳩尾に拳打を放った。

今度は声も無く、相手は人形の如く吹き飛んだ。

鮮花はそれでも追い討ちをかけるべく、
さらに二、三歩進んだが、それが限界だった。

「・・・・・・」
天を仰ぎ、声無き声で何か呟くと、
どうと前のめりに倒れ臥した。

そして、そのまま動かなくなった。



「魔術」とは、「魔ノ術」である。
「魔」とは「闇」の物である。
「神秘」の闇に覆われている限り、魔術は術として意味をなす。

そして、如何なる闇であろうとも、
太陽の光には雲散霧消する。

魔術とはフィルムに印された陰画の如きもの。
神秘の闇をはがし、白日に晒せばその力を失う。
故にそれが如何なる妙技であろうとも、それが闇の世界の技である限り、
この人の形をした太陽を前にすれば、紙の如く破れるほかない。

黒桐鮮花にとっての最大の不幸、それは、
この太陽のごとき伊賀の聖女が、
愛するただ一人以外を悉く焼き尽くす黒い太陽、
己が傷つくことも辞さず、遮二無二に相手を屠る女怪に変貌していたこと。

22女怪 ◆h3Q.DfHKtQ:2009/02/25(水) 16:23:19 ID:0jrLLSzs0



伊賀鍔隠れの姫君、朧は血へどを吐きながらようやく立ち上がった。

よろよろと鮮花の死体に近づくと、
地に倒れ伏した少女より苦心して血刀を引き抜いた。
刀は血にべっとり濡れ、所々刃こぼれしていた。

アスファルトの上に血の池を作りながら、
それ自ら沈む少女の死体へは、もはや一顧だにしない。

朧は本来、深い影を落とす睫毛、愛くるしい小鼻、やわらかな薔薇の唇、
白くくくれたあごの世にも稀な美少女であり、
幼女の如き天真爛漫さを持った鍔隠れの麗しき姫君であった。

しかし、今の朧にその面影は無い。

髪留めより解けた美しい髪は、風にばさと棚引き、
顔面は蒼白で頬は心なしかこけて見えさえする。
いつ切ったのか、唇が切れて、口元は血まみれだ。
それでいて、目にだけは異様な精気があり、
その恐るべき蒼い光の中に、名状しがたい妄執が渦を巻いている。

右手に提げた忍者刀には血がべったりと付き、
それは彼女の身にまとった振袖にも同様であった。

(私が…)
朧は心の中で独白する。

(私がちゃんと死んだのに…)
思い起こすは、慶長十九年五月七日の夕暮れ。

(弦之介さま…)
思い浮かべるは、自分の命と引き換えにした愛しの甲賀の主の姿。

(あなたを今度こそ…)
助けなくてはならない。あの愛おしい人の命だけは。
そのためには、わが身を八つ裂きにしてもいい。
他の誰もを犠牲にしてでも、彼だけは助けなければいけない。

(そう、私は愛する伊賀者を手にかけることだって構わない)
天膳、小四郎…
確かに死んだ二人の伊賀者。
今の私は彼らだって殺せる。

(そして最後は…)
鮮花に負わせらたダメージは決して小さくない。
ボディーブローは内臓にダメージを与え、肋骨にはヒビが入っている。
しかし朧は、その激痛を感じないのか、
フラフラと夢遊病者の様に、化け物の様なビルの立ち並ぶ、
夜の街へと一人歩きだす。

(あの人に斬られるのだ…)
愛しい人の手にかかる事を夢想するこの堕ちた伊賀の聖女の微笑みは、
ある種の妖艶な淫靡さすら感じさせた。

彼女は知らない。
彼女が全てを犠牲にしてまで生かそうとする愛しの若君は、
すでに冷たい躯になっているという事を。

彼女はまだ知らない。

23女怪 ◆h3Q.DfHKtQ:2009/02/25(水) 16:24:02 ID:0jrLLSzs0

【黒桐鮮花@空の境界 死亡】

【E-5/川の西岸/一日目・深夜】

【朧@甲賀忍法帖】
[状態]:内臓にダメージ、肋骨にヒビ、精神錯乱?
[装備]:弦之介の忍者刀@甲賀忍法帖
[道具]: デイパック、支給品一式
[思考・状況]
基本:弦之介以外皆殺し
1:獲物を探す。
[備考]
※死亡後からの参戦

※E-5の川の左岸の何処かに、黒桐鮮花のデイパックが放置されています。

【破幻の瞳】
見るだけで如何なる忍法、妖術の効果をも破る瞳。
他人に化ける忍者は正体を暴から、不死の忍者はその再生力を失う。
如何なる忍法をも修めることが出来なかった朧唯一の武器。
原作においては、弦之介の瞳術を真っ向から打ち破れる唯一の存在であると言われる。
「忍法」ではなく、ある種の特異体質。
完全に無意識に発動しており、敵味方関係なく、見るだけで無差別に忍法を無効化する。
早い話が、効果範囲がべらぼうに広い反面、対象を限定できない「幻想殺し」。


以上修正版でした。

24 ◆EA1tgeYbP.:2009/02/28(土) 19:15:20 ID:v5F3VIus0
現在本スレがああいうふうになっているのでとりあえずこちらに投下しておきます

25魔女狩りの王 ◆EA1tgeYbP.:2009/02/28(土) 19:16:26 ID:v5F3VIus0
 禁書目録ことインデックス、上条当麻、そして土御門元春。
 以上が参加者名簿に載っている彼、ステイル=マグヌスの知人達だった。

「……さて、どうするかな」
 何気なく呟いてしまった言葉に思わず苦笑する。

 ステイル=マグヌスはイギリス清教第零聖堂区『必要悪の教会』に所属する魔術師であり、そうである前に一人の少女、インデックスに全てをささげた身でもある。本来、いや少し前の彼ならばこの状況下においても自らの行動をどうしようか、などと迷うことはなかっただろう。彼の魔法名である『我が名が最強である理由をここに証明する(Fortis931)』の通りこの場にいる者全てを自らの魔術をもって焼き殺し、彼女に勝利をささげ自らはその命を絶つ。
 それだけの行為を成し遂げるだけの力を彼は身につけたのだから。
 では、どうして今彼は迷っているのか。

「……どうにも毒されているね、僕も」
 無意識に懐を探り、身につけていたタバコさえ没収されていたことに苛立ちつつも、「彼」のことを考える。今現在のインデックスのパートナー。ステイル自身は二度と立つことができない場所にこれからずっと立ち続けるであろう少年上条当麻。
 
 仮に先の考えのままインデックス一人を生き残らせたところでその途中で彼が失われたことをインデックスが知ればどうなるか。そのときの彼女の心境など二重の意味で考えたくはない。
 ……そんな考えが浮かんでくること自体、とある少年と関わって以来の「毒されている」ということに他ならないのだが。

 ――では、ステイル=マグヌスとしてはこの場所においていかなる行動をとるべきなのだろうか。
 彼は考える。
 先の皆殺し案は確かに乱暴な手段ではあるが同時にこれ以上ないほどにこの舞台のルールに則したベストとはいかなくともベターな案であることも事実だ。その案が今のところは使用できない以上、ステイルはどのようにするのがベストなのだろうか?

 選択肢その一、今すぐにこの舞台でインデックスを探し出し、守る。

(……論外だな)
 この案を彼は即座に切って捨てる。ただでさえステイルは若さに似合わぬ強大な魔術を身につけることと引き換えにして自身から戦闘のプロとは思えぬほどに体力・格闘能力を失っている。
 それに引き換えインデックスの逃走技術は極めて高い。

26魔女狩りの王 ◆EA1tgeYbP.:2009/02/28(土) 19:17:08 ID:v5F3VIus0
 一切の記憶を無くした状況下にあっても彼や神裂火織といったネセサリウスでも屈指の使い手たちの追撃を数ヶ月にわたって逃れつづけたという実績がある。
 仮に彼がインデックスの姿を探したこの舞台中を追いかけたところで、彼女からこちらに接触してくれる気になるまで彼女に会うことは敵うまい。

 選択肢そのニ、この舞台から脱出しようとする集団を作る、もしくはそのような集団にもぐりこみ数の力を持ってインデックスとの接触を図る。

(……愚策にも程がある)
 この案にも価値はない。
 確かに先の案に比べると、この案はインデックスと合流できる可能性は高い。しかし、それはあくまでも集めたメンバー全員が純粋に脱出を目指す場合の話だ。一人でも集団にまぎれて優勝を目指す暗殺者が混じってしまえばメンバー間の疑心暗鬼によって集団は崩壊し、残された結果は危険人物に彼女の情報が渡ってしまうというだけとなる。

 選択肢その三、ひとまず彼女のそばで彼女の身を守ることを諦める。

(……やはり腹は立つけど現状ではこれがベストなのだろうね)
 ステイルは自嘲する。そう、今となっては彼女のすぐそばで彼女を守るナイトの役目を請け負っていいのはただ一人。彼にはできなかった本当の意味で彼女を守りきった一人の少年だけの栄誉だ。
 ステイルに許されるのは彼女に害が降りかからないように、彼女の目に止まる前に彼女に害成す全てを殺す。
 そう考えるならばと、ステイルは彼に支給された「武器」を見た。そう、好みに彼女の敵を全てひきつけることを目的とするのならばこれは大当たりの分類に入るだろう。

 それは武器というにはあまりに異質。
 そもそもが人に害成す為の使い方なぞ想定されていない。

 あまりに日常的なその「武器」の名前は拡声機という。

「……これを使えば」
 確実に彼の居場所を他の参加者に知らせることができるし、積極的に優勝を狙うたぐいの危険な参加者を集めることにもなるだろう。
「それが、どうした」
 迷うことすらない、なぜなら彼は全てを彼女にささげるとそう決めたのだから。
 そして彼は拡声機をもって会場へと語りかける。

27魔女狩りの王 ◆EA1tgeYbP.:2009/02/28(土) 19:17:39 ID:v5F3VIus0

『――この舞台に呼ばれた者達よ、聞こえるか? 我が名は『我が名が最強である理由をここに証明する(Fortis931)』とでも記憶しておけ。
 この声が聞こえた者もそうでない者も関係無しに僕は貴様達に対して宣言する。貴様達のような愚かな者たちにその名を聞かせるのも憚られる為に、あえて名前までは伝えることはしないが、この僕が命に代えても守り抜くべき存在もこの舞台へと呼ばれている。
 よって僕はここに宣言する! 万が一この先彼女の名前が呼ばれるようなことがあれば僕は貴様達を一人残らず地獄へと叩き落そうと!
 脱出を願う多少は賢明なる者達よ、貴様達の奮闘を僕は期待しよう。貴様達が一刻も早くそして一人でも多くこの舞台から脱出できる方法を見つけ出せることを。
 タイムリミットはかの存在の命が尽きるまで、貴様達が戦う意思があろうとなかろうと関係ない。そのときがきたのなら僕は貴様達が無抵抗であろうがなかろうが、区別無しに殺す。
 そしてあの男程度の口車に乗せられて殺し合いを肯定してしまった愚劣極まりない矮小な微生物にも劣る存在たちよ。正直この瞬間にも貴様達と同じ空気を吸っていると思うことすら耐えがたい。
 すぐにここに来い! 僕のこの言葉が身の程知らずな大言壮語ではないことを、貴様達の苦痛と絶叫と死をもって証明してやろう。
 僕の所在地はD-4のホールだ。
 繰り返…いや、貴様達のような愚か者は先の言葉全ては覚えきれないか。簡潔に伝えてやろう。優勝したいと願うような愚か者はエリアD-4ホールへ来て己が愚劣さをあの世で後悔せよ!』



 ◇ ◇ ◇

28魔女狩りの王 ◆EA1tgeYbP.:2009/02/28(土) 19:18:25 ID:v5F3VIus0


 拡声器をおろしてステイルはふう、と息をついた。
 これを聞いた彼の知人達がどう動くであろうか考える。

 ――インデックスにとって今の自分はあくまでも「上条当麻と一緒に動いたことがある魔術師」でしかない。あの放送をする前ならともかく、今となっては上条当麻と合流でもしない限りはこちらに近付こうとさえ思わないだろう。それでいい、と彼は思う。
 では上条当麻はどうだろう。あの少年がゲームに乗るところなどステイルには想像さえできない。まあ、もし仮に万が一そのような事態が起きているとするならば。

(遠慮なく、いつもの君のようにその間違った考えは叩き直させてもらおうじゃないか。まあ、僕は拳ではなく魔術を使わしてもらうがね)
 こちらの暴挙を止めるためにここへ来るかもしれない少年のことは草々に頭から追い出す。万が一インデックスよりこちらを優先させてここにくるようなら口先三寸、適当な理由をつけて追い払うつもりだ。彼には彼の仕事がある。
 そして最後の一人、土御門元春。
 荒事という点に関しては彼が最も信頼できるが、人格的には最も信用できない。そんな彼に対して、ステイルが下す判断とは……。

(ま、放っておけばいいさ)
 それだけであった。確かに人格的に裏切りさえ平気でおかすダブルスパイな彼は信頼するには値しない。だが、リアリストな彼の知性に関しては信用してもいい。
 今は学園都市、上条当麻の保護下に置かれているとはいえ、インデックスが魔術の世界における超VIPであることに変わりはない。
 それを傷つける心配は今のところしなくていい。ならば今のところは彼は泳がしておくが一番だ。

 ――そして最期に彼、ステイル=マグヌス自身の今後に関して。
 
「さて、来るならこいよ愚か者達」
 拡声器を使わずホールの中で一人きり彼は再び宣言する。
 ここホールに飛ばされたのはルーン魔術を扱うステイルにとっては最高の幸運だった。何せ筆記用具や印刷機具には事欠かない。
 すでにホール内のいたるところにはルーンを刻んだ紙があるいはばら撒かれ、あるいは貼られている。
 ここはすでに彼が裁きを下す処刑場。のこのこ飛び込んでくる愚か者達にはその愚かさに対する報いを与えよう。

「世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ(MTWOTFFTOIIGOIIOF)
それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり(IIBOLAIIAOE)
それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり(IIMHAIIBOD)
その名は炎、その役は剣(IINFIIMS)
顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ(ICRMMBGP)」
 
 ――彼の宣言とともに魔女狩りの王が顕現する。

 紅蓮に燃える処刑場、王を従えし魔術師は愚かな獲物を待ち受ける。

29魔女狩りの王 ◆EA1tgeYbP.:2009/02/28(土) 19:19:09 ID:v5F3VIus0
【D-4/一日目・深夜】
【ステイル=マグヌス @とある魔術の禁書目録】
[状態] 健康
[装備] ルーンを刻んだ紙を多数。筆記具少々
[道具] デイパック、支給品一式(未確認ランダム支給品1個所持ただし武器ではない) 、拡声器
[思考・状況]
1、インデックスの名前が呼ばれるまでしばらく(崩壊が3、4エリアあたりに迫るくらい)待ちつづける。
2、インデックスがここに来たら即座に保護。上条当麻、土御門元春ならば適当に追い返す(怪我等で休息が必要ならそれくらいは許す)
3、その他の参加者が来たら問答無用で殺す。
4、万が一インデックスの名前が呼ばれたら優勝狙いに切り替える。

【魔女狩りの王(イノケンティウス)】
魔術師ステイル=マグヌスが使用する魔術のひとつ、その意味は『必ず殺す』。
形状は炎の巨人を象る重油の人型で、
真紅に燃え盛る炎の中に重油のような黒くドロドロした人間のカタチをしたモノが芯になっている。
この炎の塊自体を攻撃しても意味は無く周囲に刻んであるルーンの刻印を消さない限り何度でも蘇る。
教皇級の魔術であり3000℃の炎の塊が突撃するその威力は凄まじいの一言。
強力さに相応の、結構な規模の下準備が必要であるのが欠点といえば欠点。

30 ◆h3Q.DfHKtQ:2009/03/02(月) 10:41:01 ID:bRXOBly.0
改稿版、投下します

31女怪(改稿版) ◆h3Q.DfHKtQ:2009/03/02(月) 10:41:58 ID:bRXOBly.0

地図上で「E-5」と呼称されるエリアには、
背の高いビルがまるで林の様に乱立している。

このエリアは、エリアの中央部を北から南へ流れる一本の川により
東西に分断されていたが、果たして、
東側のエリアには文字通り天を突く一つの摩天楼が立っていた。

この摩天楼の内部、地上から遠く離れた最上階の展望台に、
一人の少女が屹立している。

長い髪、引き締まった知性を感じさせる美貌の、
10代後半と思しき少女だ。
修道女を連想させる黒い装束に身を包んでいるが、
これは彼女が通う礼園女学院の制服である。

少女はしばらく思いつめた表情で、
窓から覗く下界の景色を眺めていたが、
不意に天上の月を見上げ、キッとそれを睨みつけると、
パッ、と翻るように踵を返す。

そして、この展望室の中央にあるエレベーターの前に立つと、
鉄の箱がここまで上がって来るまでの合間に、
右手に握っていた茶色の革手袋―火蜥蜴の革手袋―を、
キュッ、キュキュッと左右に着ける。

厚い鉄の扉が開き、鉄の密室の内部が晒される。
そこに確かに誰もいない事を確認するや否や、
彼女は即座に中へと入り込む。

鉄の扉は閉じられ、
彼女の背中はすぐに見えなくなった。



下へと移動する密室の中で少女、
黒桐鮮花は考える。

まずは守衛室に向かおう、と。
見たところ、このビルにはあちこちに監視カメラがあるが、
それを管理をしているのは恐らく守衛室だろう。
このビルに誰か他にいるのか、それとも自分一人だけなのか…
先ずそれを確認すればなるまい。

黒桐鮮花は考える。

支給品が火蜥蜴の革手袋だったのは幸運だった、と。
彼女の魔術の行使には、これは必要不可欠なのだ。
これから『戦場』に赴くのだから、
武器は使いなれた物の方がいいに決まってる。

『戦場』…
彼女はこの悪趣味なゲームの会場を戦場と呼んだが、
彼女にとってはここは戦場以外の何物でもない。
自分と『兄』以外、全て『敵』の戦場だ。

彼女は殺し合いに乗っていた。

32女怪(改稿版) ◆h3Q.DfHKtQ:2009/03/02(月) 10:42:43 ID:bRXOBly.0



彼女、黒桐鮮花がこの殺し合いに乗ったのは、
非常に意外性を帯びていながら、同時に限りなく必然であった。

彼女は非常に負けず嫌いだ。
何せ、明らかに堅気で無い恋敵に対抗するために、
魔術という闇の世界に自ら飛びん込んでいくぐらいだ。
だから、普段の彼女ならば、毅然と真っ向から立ち向かっただろう。
まだ半年とはいえ、確かに境界の向こう側の世界に足を踏み入れた彼女ですら、
「異常」と断じる事が出来る悪趣味な遊戯、正体不明の「人類最悪」…
だがそんな「異常」も、彼女を止める足枷にはならなかったはずだ。
彼女はそう言う人間なのだ。

故に、本来、彼女はこの殺し合いに乗る筈など無かったのだ。

もし名簿にその名前が無かったなら。

黒桐幹也

ああ、彼が、兄が、幹也が、
自分が殺し合いに乗ってしまったと知れば、
どれほど悲しむか。
それを考えると鮮花は心が潰れそうになる。

(でも…)
彼女は思うのだ。
(だって、しょうがないじゃない…)

彼のたった一人の、唯一無二の愛しい兄の名前。
自分の全てを投げ打っても、救わねばならない人。

その名前を見た瞬間、彼女は殺し合いに乗る事を決意した。
例え、鬼畜外道と蔑まれようとも、
それは彼女にとっての必然だった。

ふと、彼女の脳裏に過った一つの人影がある。
男みたいな恰好をした、いけすかない泥棒猫の事。
全身に煮えたぎった鉛を流し込まれるような悪寒を、鮮花は確かに感じた。

眼をとじ、頭を振って、無理やりその女の影を脳裏より追放する。
『あの女の事は、会ってから考えればいい』、そう彼女は自分に言い聞かせた。

何故、あの女の事を気にかけるのか、鮮花自身にも判然としなかった。

33女怪(改稿版) ◆h3Q.DfHKtQ:2009/03/02(月) 10:43:29 ID:bRXOBly.0


黒桐鮮花がエレベーターに乗り込んだのと、ちょうど同じ頃、
一人の少女が摩天楼の正面玄関から外へと踏み出した。

本来ならば、彼女が奇怪と気にかけるであろう自動ドアにも、
今の彼女は一顧だにしない。

鮮花とそう変わらない年齢だと思しき少女である。
殺気のこもった眼は闇夜にあって燦々と輝き、
右手に閃く白刃が月影を照らす。

伊賀鍔隠れ衆頭領、お幻が孫娘、朧である。

朧は本来、深い影を落とす睫毛、愛くるしい小鼻、やわらかな薔薇の唇、
白くくくれたあごの世にも稀な美少女であり、
幼女の如き天真爛漫さを持った鍔隠れの麗しき姫君であった。

しかし、今の朧にその面影は無い。

髪留めより解けた美しい髪は、風にばさと棚引き、
顔面は蒼白で頬は心なしかこけて見えさえする。
それでいて、目にだけは異様な精気があり、
その恐るべき蒼い光の中に、名状しがたい妄執が渦を巻いている。

(私が…)
朧は心の中で独白する。

(私がちゃんと死んだのに…)
思い起こすは、慶長十九年五月七日の夕暮れ。

(弦之介さま…)
思い浮かべるは、自分の命と引き換えにした愛しの甲賀の主の姿。

(あなたを今度こそ…)
助けなくてはならない。あの愛おしい人の命だけは。
そのためには、わが身を八つ裂きにしてもいい。
他の誰もを犠牲にしてでも、彼だけは助けなければいけない。

(そう、私は愛する伊賀者を手にかけることだって構わない)
天膳、小四郎…
確かに死んだ二人の伊賀者。
今の私は彼らだって殺せる。

朧は、フラフラと夢遊病者の様に、化け物の様なビルの立ち並ぶ、
夜の街へと一人歩きだす。

(あの人に斬られるのだ…)
愛しい人の手にかかる事を夢想するこの堕ちた伊賀の聖女の微笑みは、
ある種の妖艶な淫靡さすら感じさせた。

ああ、哀れなるかな伊賀の姫君。
汝の愛する若君は、既に冷たい躯になっていると言うのに。
彼女は知らず、愛しの男の為に、一人夜を行く。

34女怪(改稿版) ◆h3Q.DfHKtQ:2009/03/02(月) 10:44:28 ID:bRXOBly.0



月下の摩天楼に、二人の女殺人鬼が生まれた。

ああ、情深き女の執念よ。
気をつけよ世の男ども。
多殺一生是非も無し。
女は怖いぞ、女は怖いぞ…


【E-5/摩天楼のエレベーター内部/一日目・深夜】

【黒桐鮮花@空の境界】
[状態]:健康
[装備]:火蜥蜴の革手袋@空の境界
[道具]: デイパック、支給品一式
[思考・状況]
基本:黒桐幹也以外皆殺し
1:守衛室に向かう。
2:両儀式については会ってから考える。
[備考]
※「忘却録音」終了後からの参戦


【E-5/摩天楼のすぐ傍の道路/一日目・深夜】

【朧@甲賀忍法帖】
[状態]:健康、精神錯乱?
[装備]:弦之介の忍者刀@甲賀忍法帖
[道具]: デイパック、支給品一式
[思考・状況]
基本:弦之介以外皆殺し
1:獲物を探す。
[備考]
※死亡後からの参戦

【破幻の瞳】
見るだけで如何なる忍法、妖術の効果をも破る瞳。
他人に化ける忍者は正体を暴かれ、不死の忍者はその再生力を失う。
妖術、忍法の効果自体を打ち消すのではなく、
その発生源たる術者の体質を、常人と同じ位置に引きずり落とす能力。
如何なる忍法をも修めることが出来なかった朧唯一の武器。
原作においては、弦之介の瞳術を真っ向から打ち破れる唯一の存在であると言われる。
「忍法」ではなく、ある種の特異体質。
完全に無意識に発動しており、敵味方関係なく、見るだけで無差別に忍法を無効化する。

35女怪(改稿版) ◆h3Q.DfHKtQ:2009/03/02(月) 10:44:59 ID:bRXOBly.0
投下終了

36 ◆hwBWaEuSDo:2009/03/08(日) 18:30:02 ID:P/CJ3AB.0
規制中なのでこちらに投下します。

37あの夏は終わらない ◆hwBWaEuSDo:2009/03/08(日) 18:30:53 ID:P/CJ3AB.0

 宇宙人の仕業だ。
 
 きっとあの狐のお面を被った奴は宇宙人の手先かなんかなのだ。
 そして、地球人の中から優秀な人種を選別するためにこんなことを仕出かしたんだ。
 最後まで残ったら、あの男は恐らくヘリウムを飲んだ後みたいな声で「キミヲワレワレノナカマニシヨウ」とかなんとか言ってUFOで連れて行くに違いない。


 そんなこと、どうでも良かった。


 周りでは森がざわざわ、と揺れていてまるでひとつの生き物のようだ。
 深夜であることも相まってか、その場はとても不気味な様子をかもし出している。
 どうして自分がこんな所にいるのか見当も付かなかったが、それもどうでもいい。
 この現象が宇宙人の仕業だろうと、悪の秘密結社の野望だろうと、大魔術師召喚のための大いなる儀式だろうと何だって構わなかった。
 全てがどうでもいいのだ。
 
 そんな果てしない虚無を感じながらぼく――浅羽直之は絶望して、地面に膝をついた。

 思う。さっきまでぼくはあの島にいた。
 あの夏の終わらない南の島で、ぼくは伊里野に会っていた。
 そして、世界を犠牲にしてでも伊里野を助ける、そうぼくは宣言した。

(……なのに、伊里野は行ってしまったんだ)

 ぼくのせいだ、と深く後悔する。
 あの伊里野に対する告白。
 あんなことしなければ彼女は行かなかった。
 ぼくのことなんかを守りには行かなかった。

「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 感情を暴走させ、隣にあったデイパックを地面にたたき付ける。
 バシン、という音を立てながらデイパックが土の上に転がった。

38あの夏は終わらない ◆hwBWaEuSDo:2009/03/08(日) 18:31:50 ID:P/CJ3AB.0
 ぼくはただ泣き続ける。
 恥も外聞も無く、伊里野が行ってしまったことがただただ悲しくて、ひたすら泣き続けた。
 あの五月蝿さかった蝉の音が、今はとても恋しい。

 



  〇





 しばらく泣いていると大分落ち着いてきた。
 それでも周りが静かな為、ぼくのむせび泣く声が周りに響いた。

(……どうしようか?)

 はぁはぁと息を整えた後、ぼくは涙を流しながらもこれからのことについて考える。
 さっきの空間のことに対して、ぼくはぐちゃぐちゃになってしまった頭を頑張って働かせた。

(生き残れ、とか言っていたけど一体何をすればいいんだろう?)

 さっきのあのお面の男が言っていたことをよく聞かなかったのは痛かったと思う。
 とりあえずやることが無かったし、ぼくは先程地面に叩きつけたデイパックを拾いあげた。
 結構丈夫な造りになっているらしく多少汚れてはいたが、どこも破れてはいなかった。

(そういえば、これ何が入っているんだろう?
 お面の男がなんか言っていた気がするけど……)

 ぼくは何となく気になってデイパックを開けてみることにした。

「うわっ」
 最初に出て来たのは銃だった。
 あの島でぶっ放した物とは違う奴だったが、黒光りしていて、重く、紛れも無く本物の銃だということは分かった。
 マシンガンとかいう奴だろうか。
 
(こんなものを渡して生き残れって、つまり……殺し合えってこと?)
 
 殺し合い。
 ぼくはその言葉に恐怖を感じつつ、中から別に名簿と書かれた冊子を取り出す。
 そこである名前を見つけた時、ぼくは驚愕した。

 伊里野加奈。

 そう記されてあったのだ。
 何度も読み直したが間違いなくそこにはその名前が記されていた。
 同姓同名の別人だろうか、と思ったがそこで気付く。

39あの夏は終わらない ◆hwBWaEuSDo:2009/03/08(日) 18:32:53 ID:P/CJ3AB.0
 

(さっきまでぼくはあの島にいたんだ。
 それが今は何故か此処にいる。
 そんなことが出来るのなら、行ってしまった伊里野を呼び出すこともできるんじゃ
 ないか?
 もしそうなら……伊里野を行かせるのを阻止することができるんじゃ……)

 そう思った途端、ぼくの心臓が鼓動を早めた。
 伊里野を生きさせることができる。
 これは今のぼくにとって余りにも魅力的な言葉だった。

 ちら、とさっき取り出した銃に目をやる。
 あれがあれば人を殺すことが出来るだろう。
 あんな物を渡して生き残れということは、要するにあれで皆を殺せってことらしい。
 勿論ぼくはそんなことはしたくはない。

(でも、ぼくは……伊里野の為なら世界だって敵に回してみせる!
 ぼくは伊里野を生き残らせるんだ!
 あの夏を、UFOの夏を終わらせなんかしない!)
 
 ぼくは涙を拭って銃を持ち上げ動き出した。
 銃は先程より不思議と軽く感じる。
 夏用の制服が少しだけ寒かった。




【A-2/山の中/一日目・深夜】

【浅羽直之@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:精神高揚。
[装備]: ミニミ軽機関銃@現実。
[道具]:デイパック、支給品一式(確認済みランダム支給品1〜2個所持)。
[思考・状況]
 0:伊里野を生き残らせる。
 1:伊里野以外は殺す。
[備考]
※参戦時期は4巻『南の島』で伊里野が出撃した後、榎本に話しかけられる前。

40 ◆hwBWaEuSDo:2009/03/08(日) 18:34:09 ID:P/CJ3AB.0
投下終了です。

41 ◆76I1qTEuZw:2009/03/10(火) 21:39:11 ID:dW3lkBbM0
後2つのところで、さるさんを喰らってしまいました。
誰か転載お願いします。

42 ◆76I1qTEuZw:2009/03/10(火) 21:40:54 ID:dW3lkBbM0
っと、支援のお陰でなんとかいけました。失礼しました。

43 ◆NQqS4.WNKQ:2009/03/17(火) 07:27:30 ID:q1mKismU0
『人間考察』


「お前…・・・『何だ?』」

橙色の着物に、赤いジャンバーというミスマッチな格好をした女の人の声が、僕に投げかけられる。
その酷く冷静な声は、僕が何度も繰り返してきた自問を、再び思い起こさせた。

……僕は、何なんだろう?

この世には、『紅世の徒』という、名の歩いて行くことのできない隣の世界、『紅世』からの来訪者達が居る。
彼らは、人間や徒が存在するのに必要なエネルギー『存在の力』を求めてこちらの世界にやって来る。 そして、存在の力を求めて……人を食らう。
いや、ある意味ではもっと酷い、彼らが食べるのは、肉体ではなくて、文字通り存在するための力であり、その力を食われた人間は、この世から『欠落』する。
彼らは元々そこに居なかった事になり、家族の居ない子供や、住む人の痕跡すら無い空家といった歪んだ欠落のみを残して消え、その事を誰一人気にも留めない。
この世からの完全なる喪失、それが紅世の徒に食われた人間の、末路。

ただ、彼ら徒も、こちらの世界で好き勝手に人を食らえるという訳では無い。
彼らの住む紅世と、僕たちの世界は、隣り合い互いに支えあっている二つの家のようなものらしく、片方が崩れれば、もう片方も滅び行く、という構図らしい。
その事に気がついた徒たちは、こちらの世界に現れた徒たちに、存在の力の乱獲を止めるように忠告した、けれどこちらの世界で自遊気ままに力を振るうことを覚えた徒たちは、その言葉には従わなかった。
そうして、世界のバランスに思い悩む徒たちは、ある決断をする。
自分たちも世界を渡り、自遊に力を振るう徒たちを討滅する、という苦肉の決断を。
ただし、弱い徒が世界を渡っても意味が無い、行くならば徒の中でも『王』と称される強い徒が行かなければならない。
だが、強いという事は相応に大量の存在の力を必要とする事であり、それは結局は世界のバランスを崩してしまう。
そこで生み出されたのが、彼ら王が人間の内に宿る、という方式だ。
人間が、自らの全ての可能性たる存在の力を捧げ、王がその人間の器に宿る。
王自身は紅世にあり、彼らと契約した人間が、自身の存在の力を消費してその力を借り受け、徒を討滅する。
人と徒の間のゆらぎのような存在『フレイムヘイズ』の誕生であった。

44 ◆NQqS4.WNKQ:2009/03/17(火) 07:28:23 ID:q1mKismU0
フレイムヘイズは徒が存在の力を食らえば、その反応たる世界の歪みを感知出来る。
存在し、力を振るうには人を食わねばならず、食えば敵を呼び寄せる、そこで、徒たちは一つの方法を編み出す。
食らった人間の一部、『トーチ』という食いカスのようなものを残すのだ。
トーチは残されたわずかな力しかなく、当然遠からず消滅するが、元々そこにあったものが緩やかに消滅するというプロセルを経る為、世界に大きな歪みを生み出しにくい。
無論大量に食らえばその限りではないが、それでも世界の歪みを感知するフレイムヘイズには感知され難い。

そして僕、坂井悠二は……そのトーチだ。
世界の真実など知らず、己が食われた事にも気がつかず、遠からず消滅していくだけだった筈の存在。
そうあの日、全てが静止した空間の中で、彼女、フレイムヘイズ、『炎髪灼眼の討ち手』に出会うまでは。
名前はシャナ……僕が、名づけた。

あの静止した空間、フレイムヘイズと紅世の徒が、自分たちの存在を世界から隠す為に展開する結界、『封絶』の中で、僕は消えかけていた。
正確に言うなら、その時すでに僕という存在自体は食われ、トーチが残されていただけのだけど、その僕の中に、ある『秘宝』が転移してきたのだ。
秘宝とは紅世の関係者など、存在の力を操ることの出来る者が作り出す、力を持つ道具の事で、それらの内幾つかは持ち主が奪われそうになったときに、とっさにトーチの中に隠される事がある。
そのトーチが自然消滅した時にはまた何処か別のトーチの中に、と延々と流転していくという仕組みで、僕が食われた時に、その一つが偶然、僕の中に転移してきたという訳だ。
そうして、封絶の事を認識できるようになった僕だけど、その時にはまた別に危機が迫っていた。
何しろ、封絶の中で動く存在という異常故に、僕を食べた怪物、『とある紅世の王』が作った僕に、再び食われそうになり、そこをシャナに助けられた。
その後は僕の中にある秘宝を放っておく訳にはいかないという事で、僕の事を食べた王を討滅するまでの間、シャナと彼女に力を貸している『王』、アラストールに保護(?)される形になって、そして僕は紅世に関する事実を知った。
そうして、紆余曲折の末、その王はシャナとアラストールに討滅され、僕はその時の戦いで残り少ない存在の力を消費して、消え去る……とはならなかった。
僕に宿った秘宝は『零時迷子』という名前で、その能力は『午前零時に前の日の午前零時の状態にまで存在の力を回復する』というもので、その力によって僕は未だにこの世界に存在し続けている。

その後にも色々な出来事があったのだけど、その中で僕は自問する事になる。

僕は、人間か、否か。

零時迷子は、確かに僕を消滅の危機から救ってはくれたけど、同時にもう一つの問題を残していた。
つまり、僕の身体は、永遠に同じ一日を繰り返している状態、わかりやすく言うと、不老の存在になったのだ。 紅世の徒や、フレイムヘイズと同じ。
僕は、短時間の消滅に怯える事は無くなった代わりに、いつかは人の世界では暮らしていけなくなる存在になった。
だから、僕は少しずつだけど、シャナ達と同じような存在のような自覚を得始めていた。
でも、ある時クラスメイトの一人、吉田さんは、僕の事をが好きだと、人間だと言ってくれた。
いや、吉田さんだけじゃなくて、ひょんな事から紅世に関わった佐藤や田中も、僕の事を坂井悠二だと受け入れてくれた。
いずれ捨てなければならない筈の、当たり前の生活、それを捨てなくてもいいんじゃないかと、そういう考えも、浮かんできた。

45 ◆NQqS4.WNKQ:2009/03/17(火) 07:29:10 ID:q1mKismU0
だから、僕は悩む。

僕は人間か、否か。




人一人居ない街。
居心地の良さを感じなくもない空間の中で出会ったそいつは、最初何なのか判らなかった。
死体に宿った悪霊というものを昔に見たが、それに近い『人の姿をした壊れやすい何か』であり、それでいて間違いなく生きた人間。
中身が普通じゃないモノは色々見てきたけど、外見からして異常極まりない、生きた普通の人間、というのは初めてお眼に掛かった。

「へえ、トーチにミステス、か」

そいつ、外見に特に特徴のない、坂井悠二というヤツの話はまあ面白かった。
微妙に信じにくい話ではあるのだが、目の前に実物がいるのだから本当なのだろう。
何となくだが、興味を引かれる。 紅世の徒というのは、『この世界』の存在ではないという事だ。
前にトウコはこの世界には外があり、そこを目指すのが全ての魔術師の目的だと言っていたが、あるいはソコからの来訪者、という事なのかもしれない。

「君は、紅世の関係者じゃないの?」
「さあな、少なくともオレにはその存在の炎とやらは見えない。
 判るのは、お前の見た目が普通の人間とは違うという事くらいだ」

悠二が色々と聞いてくるが、オレはその紅世とやらとは関係無い。
オレはただ、『見える』だけだ。
トウコ曰く、根源と繋がっているとかいうこの目は、あらゆるものの『線』を見通す。
それが人であれ、物であれ、形無い物であれ、そこにあるものなら何でも『壊せる線』
この世に誕生した時から内包しているという『死』そのものを見ているとか、まあ理屈はどうでもいい。
ようは、この目はあらゆる存在の死が見える。

46 ◆NQqS4.WNKQ:2009/03/17(火) 07:29:57 ID:q1mKismU0
「けど、そういう風に見えるって事は、やっぱりここにいる僕は幽霊みたいなものなのかな」
「幽霊? そんなものはそこいらじゅうに居るがお前とは違う。
 連中には、生きているものに介入する力なんて無い。 何故って死んでいるんだからな。
 お前はこうして現実に生きて喋っている、だからお前は幽霊とは違う」

オレの見た坂井悠二像に、コイツはこんな感想を返して来た。
人間のようで、壊れやすいのだから意味的には近いが、近いだけだ。
『死んだ』モノは、もう『生きている』モノに戻る事は無い。
たまに間違えて動き出したり、死んだまま存在しているモノが居たりはするが、それは断じて『生きた』人間では無い。

「けど、僕は運よくこうしていられるけど、元々はそのまま消滅する筈だったモノで」
「別に世の中余命何ヶ月なんてヤツは山ほどいる。
 寿命が何年あろうが事故で死ぬヤツはもっと山ほどいる、それだけの話だろ」 
「違うよ、全然違う、トーチの最期は死じゃなくて消滅なんだって。
 誰の……紅世の関係者以外の記憶に残らずに、この世から零れ落ちるんだ」
「奇特なヤツだなお前、自分が死んだ後に他人にどう思われるか何てどうでもいいだろ」
「……え?」
「死んだ後に自分がどう思われるか何て、『そんな事』確認仕様も無い。
 なら、別に死ぬのも消滅するのも本人からすれば一緒だろう」

そう、死というのモノは二度と戻れない、捕まれば這い上がる事も出来ずに引きずり込まれる。
ああ、あれに捕まる事を思えば、生きているというのはどれだけ光溢れていることだろう。
生を失うという点では、死だろうが消滅だろうが、本人からすれば何一つ変わらない事象でしかない。
そういう意味でいうなら、悠二は間違いなく今ここに存在している。

「え、いやそれはそう……だけど。
 でも、自分の事を誰も覚えていてくれないと言うのは、怖いと思わない?」
「さあな、悪名だけ残すよりはむしろマシな死に方かもしれないぞ?
 どちらにしろ、おまえ自身にはどうしようも無い事だろ、なら考えても仕方が無い」
「…………」

47 ◆NQqS4.WNKQ:2009/03/17(火) 07:30:41 ID:q1mKismU0
悠二のが呆然とした感じでオレの事を見てくる。
けど、そもそもオレは普通の人間て訳じゃない。
オレの中はとうに伽藍堂で、人間としてどうのこうの何てモノは存在していない。
人間として壊れてるヤツに人間的な感覚を問うなんて間違いだ。

「ああ、確かにお前という器は人間では無い別の何かだ、だけどそれが何だって言うんだ?
 肉体的にはヒトでなくても、人間として生きているヤツだっているし、人間の姿形をしたまま、人間を止めるヤツだって山ほどいる。
 結局、普通の人間というのは生物でなくてあり方なんだよ。 
 他者を何十人と殺せば、殺人鬼と、あたかも人間とは違うものとして扱われる、肉体自体がどうとか関係無くな。
 そういう連中に比べれば、トーチだとかは関係なくお前は普通の人間だ」

そして、違うものとして扱われるオレから言わせれば、悠二はどこまでも普通の人間だ。
何かしらの人間には無い力くらいは持っていそうではあるが、それだけ。
殺しても面白くない、普通で無い身体の、普通の人間でしかない。

「……僕は、人間でいて、いいのかな?」
「わからない奴だな。
 お前は人間としての生を詰め込んで来て、そうして周りの人間も、お前を人間と、同胞として扱っている。
 ならそれでいいだろう。 トーチだとかそんなものは、それとは全く別の事柄でしか無いんだよ。
 お前が考えるべきなのは人間で『いていいのか』じゃなくて、人間で『いたいか』どうかだ」

だから、悠二というかミステス、いやトーチか、が人間か何て、決めるのは本人以外の何者でもない。
魔術師なんていう胡散臭い連中が人間として折り合い付けて普通に暮らしているし、どこまでも普通の人間が、どこかネジが外れて人間をやめたりする。
入れ物がどうとかじゃなくて、決めるのは本人の心持ちだ。
……そして、コイツは多分そんな事はとっくに理解している、理解して、それで答えに迷っている。
その答えによっては、オレはコイツを殺したくなるのかもしれない。




48 ◆NQqS4.WNKQ:2009/03/17(火) 07:31:30 ID:q1mKismU0
もう用は無いと思ったが、向こうはそうでは無いらしい。
そして、そういえば名乗ってもいなかった事を思い出す。

「オレは式だ、両儀式」
「そう、両儀さん、僕はさっきも名乗ったけど坂井悠二」
「式でいい」

悠二の方が年下なんだろうが、それで呼び名を変える理由も無い。
多分悠二はオレの事同じくらいの年だと思っているだろうが、訂正する必要も無い。

「そう、式さん。
 式さんはこれから、どうするつもりなの?」
「オレの目的? そんなの決まっている、あの変なのを殺す」

ああ、オレの目的なんて、最初から決まっている。
トウコのところで割と長い間仕事を手伝わされてきたが、実際に人を殺せたのは数えるほど。
元々相手が人間でなかったり、殺したいと思える相手がいなかったりと満足できない状態だった。
そして、今回のあれは、今までに無いくらい殺したい相手だ。
だから、アレはオレが殺す。

「えーと、何か心当たりでもあるの?」
「そんな物ある筈無いだろ。
 オレは視る事しか出来ない、なら視て周る以外にする事なんて無い」
「力技だなぁ……」
「そうだな」

別に何時もの事だ。
オレの役割は視ることで、捜したり考えたりするのは別のヤツの仕事だ。

49 ◆NQqS4.WNKQ:2009/03/17(火) 07:32:13 ID:q1mKismU0
「オレの知り合いに、黒桐幹也っていうフランスの詩人みたいな名前の奴が居る。
 あいつは探し物に関してだけは一流だから何とかなるだろ」

そうか、そうなるとまず幹也を捜さないといけない。
そういうときに頼りになるのはトウコの奴なんだが、果たしてアイツはいるのか。
後は鮮花は出来れば会いたいとして、浅神藤乃は……今更興味は無い。

……それはそれとして、だ。

「お前、まだオレに何か用か?」
「用って訳じゃないけど、目的としては一致しているのだし、一緒に行動しても良いんじゃないかな……?」

目的の一致、か。
悠二の言う、フレイムヘイズ達もアレを倒したいと思うのは間違い無いそうだが。
ただ、オレは殺したいから殺す、悠二達は世界のバランスを守る為に殺すと、手段は同じだが目的には大きな開きがある。
まあそのくらいは別に大した違いでも無い。
ただ、そのフレイムヘイズという連中が殺したいと思える相手だとすると困るが。

「僕を力づくで止める?」
「いや、別に好きにしたらいい。 一緒にいて特に不快になるわけでも無いしな」

言いながら、先ほど悠二が告げたように、オレも鮮花と幹也の特徴を告げる。
シスター服を除いても鮮花は基本的に人目を引く。
対して、幹也は黒い眼鏡で多分黒い服を着ている事くらいしか特徴の無い奴だ。
まあ悠二もどこかの制服くらいしか特徴の無い奴ではあるが。

「……ああ、そうか」

要するに、悠二も幹也並みに普通な、変な奴だ。
そう考えると、オレについて来ようとするのも変では無いのか。

50 ◆NQqS4.WNKQ:2009/03/17(火) 07:37:06 ID:q1mKismU0
【B-6/一日目・深夜】

【両儀式@空の境界】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:デイパック、支給品一式、不明支給品1〜3個
[思考・状況]
基本:主催者とやらを殺す。
1:黒桐幹也、黒桐鮮花を捜す。
2:坂井悠二が付いてくるなら好きにさせる。
3:フレイムヘイズというのに興味、殺せるならば……?



「決めるのは僕……か」

いや、それは判っていた事かもしれない。
ただ、選べなかった、選びたくなかったんだ。
シャナと一緒に戦うか、吉田さんを守るか、
自分自身でも情けなくなるほどに、僕は決めかねていた。

……けど、そう遠くない、僕はその選択をしなければいけない。


【坂井悠二@灼眼のシャナ】
[状態]:健康。
[装備]:無し
[道具]:デイパック、支給品一式、不明支給品1〜3個
[思考・状況]
基本:シャナ、吉田一美、マージョリーを捜す。
1:当面は他の参加者と接触しつつ、情報を集める。
※清秋祭〜クリスマスの間の何処かからの登場です(11巻〜14巻の間)

51 ◆iMRAgK0yqs:2009/03/17(火) 22:58:14 ID:59/hUhdQ0
>◆NQqS4.WNKQ氏
本スレ規制中なので、こちらで。
予約スレ>>70の書き込みですが、メール欄に謎の文字列がありました。
間違えてトリップをメール欄に記載してしまったのかと思い、言葉を濁して
書き込み削除したのですが…深読みさせてしまい申し訳ないです。

52 ◆EA1tgeYbP.:2009/03/18(水) 10:21:14 ID:WdGbbllk0
現在本スレ規制中なのでどなたか代理投下お願いします。

53Sleeping Beauty ◆EA1tgeYbP.:2009/03/18(水) 10:23:22 ID:WdGbbllk0
 エリアB-5の飛行場。
 夜間飛行に備えるためか、深夜という時間帯にもかかわらず明るいその場所に、一人の男が座り込んでいる。
 頭をがしがしと掻きつつ、紙を、参加者名簿を見ている男の名前は榎本。……いや、この言い方は正確ではない。正しくは、男は今のところ榎本と呼ばれているとでも言うべきだろう。

 ――閑話休題。

 彼はある任務に向かう途中、ちょっとした仮眠から目覚めるとこの状況下に投げ込まれていた。たいていの人間にとってはどれほどの混乱を引き起こすかわからないこの状況、彼も外見はともかく内心はかなり激しく動揺していた。
 ――最もその理由は普通の人間のようにパニックによる物ではなかったが。

 ――突然の拉致。

 ――次の瞬間には、自分の命が奪われていてもおかしくはない状況。

 これらに関しては実は男の動揺を誘うとまではいかないものだ。彼の日常からすれば、これらの問題は非日常的なものではなく、普通に日常の延長線ともいえるもの、「厄介なことになった」という感想を抱きこそすれ、それ以上の感想を抱くことなどはない。
 だが、今はその例外といえる状況となっていた。

 その理由は二つ。
 名簿に載っている都合3つの名前のせいだ。

「……何をやってるんだ、木村のあほは」
 理由の一つ、水前寺邦広。

 ……正直なところ榎本にとっての水前寺とはあくまでも年齢の割りには頭が切れる、まあ、そんじょそこらのマスコミなんぞよりはよほど警戒するに値するレベルのガキ、という程度の存在であって、それ以上でも以下でもない。
 普段ならば彼の名前が乗っていようと榎本を動揺させるには至らない。

 ……そう、普段ならばだ。

 今、水前寺が置かれている状況、いや、置かれていた状況。そこから彼が連れてこられたと考えると、自分が拉致された以上に園原基地――ひいてはディーン機関やブラックマンタといったトップシークレットにかかわってくるセキュリティの問題だ。
 断じて見過ごせる事態ではない。

54Sleeping Beauty ◆EA1tgeYbP.:2009/03/18(水) 10:24:12 ID:WdGbbllk0
 ――だが、今はそれ以上に彼にとって見過ごせない名前が名簿に載せられていた。

 浅羽直之。
 伊里野加奈。

 少し前までならばともかく、今となっては彼や水前寺が拉致されたことと比べると、彼ら二人が攫われた事、それ自体は驚くには値しない。
 ――しかし。

「何をやっていやがる、浅羽のあほが」
 窺い知れないほどの感情を込めた疲れた声で榎本はふう、とため息と共に呟いた。

 ……伊里野加奈には世界の命運がかかっている。
 冗談のような、これはどうしようもない事実でもある。はじめからたった五人しかいなかった、今となってはただ一人きりのブラックマンタのパイロット。地球の、人類の未来を守る最後の希望。
 彼女はその特殊な資質ゆえに普通の生活とは程遠い生活を、否応無しに歩むこととなり、四人の仲間を全て失った結果、守るものさえなくなった。
 ……そんな彼女に守るべきものを与え、それを奪われないように彼女に戦意を呼び起こす。正式名称ではなく俗称「子犬作戦」と呼ばれるそれを考えたのは他でもない榎本だ。

 彼、あるいは彼らの目論見どおり伊里野は与えられた子犬……浅羽直之を大事に思い、彼を守るために戦おうというようにその気持ちを変えていき、……当たり前のように人間としては壊れていった。

 ――そんな伊里野を守るために、浅羽が伊里野と共に逃亡したのが少し前。 

 ……榎本としては無理に彼らを連れ戻すつもりはなかった。

 確かに伊里野がいなければ世界が破滅するかもしれない。
しかしだ、榎本に言わせれば世界の危機なんてダイエット商品とさほど変わらない。
元々五人いた子供達の内の、生き残ったたった一人がいなければ滅んでしまう世界など、たとえ無理やり伊里野を連れ戻して戦わせて、先延ばしをしたところで、滅びてしまうのは時間の問題だ。
ならばせめて彼らの好きにさせてやろう、そんなつもりだったのだ。

 ――だというのに。

55Sleeping Beauty ◆EA1tgeYbP.:2009/03/18(水) 10:25:19 ID:WdGbbllk0
「浅羽のあほが……」
 もう一度榎本はため息をつく。
 状況は極めて悪かった。彼の立場からすれば何が何でも伊里野を生き残らせる、それが正しい。
……だが、それは最終的には浅羽を殺すということと同義である。あそこまで浅羽に入れ込んでいる伊里野が浅羽を犠牲にして生き残ったとしても、はたしてその後まで世界を死んでも守ろうという意思を持つことができるだろうか? 

……正直最後まで生き残っていた伊里野の仲間、エリカが死んだ時以上にひどい精神状態になっているところしか榎本には想像できない。
 
「……ってことはこれはない」
 極めてあっさりと、榎本は伊里野優勝案を破棄する。
……それにできればこんなくだらないゲームなんかで彼自身も死にたくはない。そうなると残る手段はただ一つ。何とかしてこの会場から脱出を目指すしかない。

 自分と伊里野、浅羽が脱出することそれが最低目標だ。
ただ問題として、ある程度の裏事情を浅羽が知っている今となっては、浅羽が簡単に自分が信用されるとは思えない。何せ自分は無理やり伊里野を戦わせていた人間の一人だ。

「やはり、ある程度の人間か……それかできれば水前寺あたりを上手く味方につけれりゃあ何とかなるか」
 どの道、水前寺も記憶を消すつもりでいたわけだし、ある程度の事情、トップシークレットの一つ、ブラックマンタのことなどを奴は知っている。そこにもう少し教えてやったところで不都合はない。いざとなれば水前寺の奴をこちらに取り込んだって構わない。
榎本はそう判断する。

「――基本的にはこんなとこか」
 そう言うと、榎本は立ち上がり視線を少し先にある格納庫へと向ける。小さな音だったが間違いはない。先程確かにあの中から物音が聞こえた。
 この施設の名称が飛行場である以上、おそらくあそこには飛行機やヘリなどが並んでいることだろう。仮にそれらが使用可能なら脱出派、優勝狙い派のどちらにとっても極めて有用な道具となりうる。
 ――だが、榎本は格納庫内にあるであろう飛行機の類は使うことはできないだろうと踏んでいた。あの狐面がこちらに期待しているのはあくまでも「殺し合い」だ。例え優勝狙いの奴が飛行機を手にしたところで、行われるのは反撃することさえ許されない一方的な「虐殺」であって「殺し合い」ではない。

「さて、できれば乗ってないやつなら良いが」

56Sleeping Beauty ◆EA1tgeYbP.:2009/03/18(水) 10:25:59 ID:WdGbbllk0
 そう気楽に呟くと榎本はそちらに歩みを進める。

 できれば殺したくはない、それはまったくの本心だ。向かう先にいる相手がどんな相手かはわからないが、殺さずに話し合いで仲間になるならそのほうがはるかに良い。
 そもそも、浅羽や伊里野が今どういう相手と行動しているかさえわかった物ではないのだ。例えば榎本が誰かを殺し、そいつの知人が伊里野と同行中。放送で知人の死を知ったそいつがトチ狂って皆殺しを企て、真っ先に同行相手だった伊里野を殺害。……そんなことにでもなったら目も当てられない。
 ……まあ、仮にこれから向かう先の相手が殺し合いに乗っていても負けるとは彼は思っていなかったが。
 手には何も持たぬまま、油断も慢心もなく男は格納庫へと歩みだす。


 ……数分後。

「……おいおい」
 気の抜けた溜息を榎本は漏らしていた。

 ――ステルスやらゼロ戦やら飛行機であるという一点を除けば共通項がほとんどない無作為に飛行機が並ぶ格納庫。少し調べてみたが、榎本の予想通りそれらには一切、燃料などは入っておらず動かすことはままならない。そんな動かぬ内の一機のコックピットの中にその女性はいた。

 ……もう少し正確に言おう、少し前まではコックピットの中でデイパックを抱き枕のように抱きしめて口からは涎さえ流して寝こけている女性がいた。
 今も女性は寝こけているが、デイパックは抜き取られている。
 無論、抜いたのは榎本だ。そしてそこまでされても女性は一向に起きようという気配は見せない。 

「……おーい、起きろ」
 デイパックを抜き取って、不意打ちに備え後部からぺちぺちと女性の顔をたたくが。

「……むぅ、うーん。大丈夫だってばぁ……」
 こんな調子である。ちなみにこれで三回目。
一向に起きる様子がない女性を見下ろし榎本はもう一度溜息をついた。

「……本当に殺し合いがおきてんのか?」
思わず榎本は愚痴り

57Sleeping Beauty ◆EA1tgeYbP.:2009/03/18(水) 10:26:32 ID:WdGbbllk0
「……大丈夫だってば。リリアぁ」 
 ……女性の返答とも聞こえる寝言に榎本はもう一度大きく息を吐き出した。


【B-5/飛行場内/一日目・深夜】



【榎本@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイパック×2、支給品一式(未確認ランダム支給品2〜6個所持)
[思考・状況]
0:とりあえず目の前の相手が起きるのを待つ。
1:浅羽、伊里野との合流。
2:水前寺を見つけたらある程度裏の事情をばらして仲間に引き込む。(いざとなれば記憶はごまかせばいい、と考えているためにかなり深い事情までばらしてしまう可能性があります)
3:できるだけ殺しはしない方向で
[備考]
※原作4巻からの参戦です。
※浅羽がこちらの話を聞かない可能性も考慮しています。

【アリソン・ウィッティングトン・シュルツ@リリアとトレイズ】
[状態]:健康  睡眠中
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
1:Zzz……。
[備考]
※一応、西東天の説明は聞いていました。ただ、会場内で目を覚ましていないだけです。


※格納庫の中に数台の飛行機がありますが、全て燃料がまったく入っていないために動かすことはできません。

58 ◆hwBWaEuSDo:2009/03/22(日) 21:11:46 ID:/iMSr92g0
規制中なのでこちらに投下します

59VSサイキッカー ◆hwBWaEuSDo:2009/03/22(日) 21:12:45 ID:/iMSr92g0

 ブルルルルルルルルルルルルルルルル――

 軽快なエンジン音が街に響く。
 水前寺はバギーの運転のコツを掴んだらしく、運転の速度は初期と比べて大分上がっていた。
 だが、周りが暗い為速度変わっても景色の見え方は特に代わり映えしない。

「落ち着いたかね、島田特派員?」。
「……一応」 

 水前寺の問いに対し彼の同行者―――島田美波は不機嫌にそう答える。
 先程から降ろして、と暴れていた島田も水前寺を説得するのは不可能だと悟ったのか、もはや何も言わなくなっていた。
 しかし、不安はまだ残っているようでバギーが少し揺れる度に島田はビクッと肩を震わせている。
 そんな彼女の様子を意に介さず、水前寺は先程から上機嫌そうに運転を続けていた。
 その様子を見た島田は思わず不満を漏らす。 

「はぁ、何でこんな奴にこんな物を支給したのかしら?」

水前寺本人が無免許で運転して事故るのならば自業自得もいい所だが、それに自分が巻き込まれるのは迷惑以外の何者でもないと彼女は思う。

「ん?島田特派員、何か言ったかね」

 小声だったのにも関わらず水前寺は彼女の呟きを聞き漏らさなかったようで、そう島田に尋ねてきた。
 このneugierige Ohren(地獄耳)め、と彼女は内心で思ったがそれを言うとまた何か変なことを言い出す気がしたので何も言わないでおいた。

「いや、なんでアンタにこんな物が支給されたのかなぁって思って」
「ふむ、それは俺も分からないな。完全にランダムなのか、はたまた何か意図があるのか。
 まぁ、俺にバギーとライターなんぞ支給するのに意味があるとは思えんがな」
「ライター?」
「ん?ああ、俺のもう一つの支給品だ。使い道がなかったからデイパックにしまってあるがな」
「ふぅん」

60VSサイキッカー ◆hwBWaEuSDo:2009/03/22(日) 21:13:41 ID:/iMSr92g0
(……ライターねぇ)
 島田は何か脱力感に見舞われる。
 あのお面の男が言うにもっと銃とか剣みたいな武器が支給されると彼女は思っていた。だが、出てきたのはバギーにレーダーにライター。
 当りに分類されるとは思うが、ちょっと殺し合いの装備として配るにはイマイチ迫力に欠けると思う。

「島田特派員の支給品は確かレーダーだったな」
「そうだけど」

水前寺はそれを聞くと何かを必死に考えているらしく、今までの饒舌が嘘のように黙ってしまった。 
島田は今までに無いリアクションだな、と感じた。
彼女の周りには基本的に物事を深く考えない人が多いため、水前寺のこの反応は彼女にとって新鮮だった。

「ん?」
 島田がレーダーを確認すると自分と水前寺以外に反応があった。

「ねぇ近くに誰かいる」
 もしかしたら高須かもしれないと思い、島田はそれを水前寺に伝える。

「おお、そうかね。早速接触して……おぅわ!」
「え……きゃあ!」

 二人は突然悲鳴を上げる。

 何故なら、突如バギーに向かって赤い球が飛来して来たからだった。
 次の瞬間、そこは爆炎に包まれた。


  @

61VSサイキッカー ◆hwBWaEuSDo:2009/03/22(日) 21:14:42 ID:/iMSr92g0


「やりましたか?」

 赤い球を放った張本人―――古泉一樹は半壊状態のバギーを眺め、そう呟いた。
 学校で青年と別れた後、彼は行く当てもないのでとりあえず西に向かうことにしていた。
 その際、途中で水前寺達のバギーを見かけて攻撃を仕掛けたのだ。

(相手が移動していて少し外した可能性がありますね。大丈夫だとは思いますが、一応確認しておきましょう)

 例え生き残っていても無傷という訳ではないだろうと判断し、古泉は念の為近づいてみることにした。


  @


「痛ててて」
「大丈夫かね、島田特派員?」
「なんとか……」

 水前寺と島田は無事だった。
 二人は傷こそ負ってはいるが五体満足であり行動にはそれ程支障はないだろう。
 古泉の攻撃が命中する際、水前寺は咄嗟にハンドルを切り直撃を免れていたのだ。
 そして煙に包まれながら二人はバギーを脱出し、近くの建物の陰に隠れ今に至る。

「何よ、アレ?」
 島田は膝に負った傷を触りながらそう言葉を漏らした。
 アレ、とは先程古泉が放った超能力のことだ。
 無論、彼女がそのようなことを知る由も無く彼女にとって全く未知の攻撃だった。

「さぁ分からん」
 水前寺は堂々と答える。
 当たり前だが彼にとっても先程の攻撃は未知の物だった。

「どうすんのよ、逃げる?」
「いや、それは止した方がいいな。レーダーで敵の動きは大体予測できるが相手が遠距離から攻撃する手段を持っている以上、少しでも視界に入れば狙い撃ちされるだろう。
 しかも我々は手負いだ。追いつかれる可能性が高い」

 島田の提案に水前寺は冷静にそう答える。
 この危機的状況下においても彼は自分のペースを崩すことは無かった。

62VSサイキッカー ◆hwBWaEuSDo:2009/03/22(日) 21:15:40 ID:/iMSr92g0

「じゃあ、どうすんのよ!?」

 しかし、当然のことだが島田はとても水前寺のように落ち着くことが出来なかった。
 昨日まで平和な日常を送っていた者が急に訪れた命の危機に対応できる訳がないのだ。
 むしろ水前寺のように冷静に対処できる方が異常なのだ。

「まぁ待ちたまえ、島田特派員。今、作戦を練る」
「待てって……」

(今から考えたって間に合う訳がないじゃない!) 
 島田はそう心の中で悲鳴を上げた。

 レーダーを見ると敵は爆発したバギーに向かって来ていた。
 彼女は不安になりそちらを向く。
 そこには半壊したバギーが倒れており、燃料が漏れ出していた。

「島田特派員!」
「なっ何?」

 水前寺の突然の呼び出しに島田は驚きつつもそれを聞く。

「まず、君に囮をやってもらう」

 水前寺はそう切り出した。




    @



「これは……」

 古泉は残されたバギーを見て、困惑しながらそう呟いた。
 バギーは能力の着弾点とは微妙にずれた位置にあり、運転席を覗き込むとそこには何も無かった。

(どうやら逃げられたようですね。とはいえ相手も完全に無傷ではないでしょうし、近くを探せばすぐに見つかる筈……)

 古泉は冷静に状況を判断していく。
 彼も伊達に閉鎖空間で神人と命がけの戦いをしている訳ではないのだ。

 ガサッ!

(!?)

 突然、何かが擦れる音が響いた。
 古泉は驚き、音源の元を見る。
 そこにはポニーテールの一人の少女がいた。

「こっ……こっちよ!」

 少女―――島田美波は古泉の姿を確認するなり、突然そんなことを言い出した。
 無論、古泉はそのような言葉に惑わされる訳も無く、彼女の行動の真意を落ち着いて探る。

(これは……恐らく彼女は囮ですね。あの車にはもう一人乗っていた筈。
 となれば次に相手が取る行動は……)

 次の瞬間、

「うぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁ!」

 そんな雄たけびと共に後ろから大男――水前寺が古泉に向かって飛び出してきた。

63VSサイキッカー ◆hwBWaEuSDo:2009/03/22(日) 21:16:40 ID:/iMSr92g0

(やはり奇襲攻撃ですか!
 ですが、その程度の戦法では……)

 古泉は咄嗟に超能力を使い小さな赤い球を形成し、水前寺に向かって放り投げた。
 赤球は直撃し、水前寺は吹き飛ばされる。

 しかし、その顔にはニヤリ、と怪しげな微笑が浮かんでいた。
 それを見た瞬間、古泉はとてつもない嫌な予感がした。

「今だ、島田特派員!」
「分かってるわよ!」

(一体何を……?)

 古泉は急いで先程の少女の方を向く。
 そこには火が点いたライターを放っている島田の姿があった。
 ライターは軌道を描きながら古泉の方へ向かって来る!

(この程度!)

 古泉は身を捻ってライターを回避する。
 しかし、彼の後ろには半壊のバギーがあり――――――――――

(しまった、まさか彼らの狙いは!)

――次の瞬間ライターの火がバギーの漏れ出していた燃料に引火し、バギーは爆発した。

「なっ!」

 古泉は爆炎に包まれた。





   @


「やった……の?」
 
 島田は爆発したバギーを呆然と見ながら、そう呟いた。
 バギーは未だに燃え盛っており、モクモクと煙を上げている。

64VSサイキッカー ◆hwBWaEuSDo:2009/03/22(日) 21:17:23 ID:/iMSr92g0
「ああ」

 水前寺は島田の問いにそう静かに唱えた。
 その顔には先程までとは打って変わって真剣な表情が浮かんでいる。

「すごいじゃない!
 あんな化け物みたいな奴を倒したのよ!」

 島田は水前寺に賞賛の言葉を掛ける。
 とてもじゃないが自分一人ではあの男を倒せなかっただろう。

(変な奴だけど頭の良さは本物ね)


 水前寺の作戦はこうだ。

 まず島田が敵の気を引き付ける。つまりは囮だ。

 次に水前寺が奇襲を掛ける。
 出来ればこれで仕留めたいが、大した武器を持っていない水前寺では大したダメージは与えられないだろうし、最悪奇襲に気付かれる可能性もあった。
 実際、古泉は水前寺の奇襲を気付き、咄嗟に超能力で迎撃をしてきた。

 そこで奇襲が失敗した場合には最後に島田がライターでバギーを爆破する。
 水前寺も巻き込まれる可能性があったが、本人は「その程度のリスクは犯さなければ勝てない」と延べ作戦を決行した。

 作戦は成功し、古泉はバギーの爆発に巻き込まれた。
 二人の危機は去ったのだ。

 しかし、水前寺の顔に喜びの色は無かった。
 島田がそれに気付き、不思議そうに尋ねる。

「どうしたの?成功したのに喜ばないの?」
「いや、確かに助かったが人間を殺すのはやはりあまり……な」
「あっ……」

 そう言われて島田は気付く。
 さっきまでは無我夢中で相手のことなんか考えもしなかったが、相手の容姿は普通の人間だった。
 変な力を持っていたが、あれは紛れも無く人間だったの

65VSサイキッカー ◆hwBWaEuSDo:2009/03/22(日) 21:17:53 ID:/iMSr92g0
 そう言われて島田は気付く。
 さっきまでは無我夢中で相手のことなんか考えもしなかったが、相手の容姿は普通の人間だった。
 変な力を持っていたが、あれは紛れも無く人間だったのだ。
 
(そうか……ウチ、人殺したこと喜んでたんか)
 そう思うとさっきまでの自分が島田は恥ずかしく思われた。

「何、気にすることはないぞ、島田特派員。あれは紛れも無く正当防衛だった」
「でっでも、ウチ……」
「とにかく生き残ることには成功したんだ。それを喜ぶことは何も間違ってはいないさ」

 水前寺は島田が落ち込んでいるのを見てそう語りかけた。
 彼なりの励ましなのだろう。

「さて、島田特派員。早くこの場を離れるぞ。
 これだけの爆発だ。周りの参加者が集まってくるぞ。
 武器がほとんどない我々がこの場に留まるのは危険だ」
「わ、分かったわ」

 そう言って二人はその場を後にした。

 バギーは未だ燃えていた。



【E-2/路上/黎明】


【島田美波@バカとテストと召喚獣】
[状態]:全身が少し煤で汚れている。軽傷(行動に支障なし)。
[装備]:レーダー(電力消費小)
[道具]:デイパック、支給品一式
[思考・状況]
基本:水前寺邦博と嫌々ながら行動。吉井明久、姫路瑞希の二人に会いたい。
1:この場から離れる。
2:高須竜児が逢坂大河、川嶋亜美、櫛枝実乃梨の三人を狙っていた事を伝えるのは保留。
3:水前寺のことを少し信頼。
[備考]
※E-2の路上に爆音が響きました。近くの参加者は気付くかもしれません。また、バギーから煙が上がっていて目の良い参加者なら視認できるかもしれません。

66VSサイキッカー ◆hwBWaEuSDo:2009/03/22(日) 21:18:43 ID:/iMSr92g0





「……ふぅ」

 水前寺は島田に気付かれないように静かに息をつく。
 その声には疲労の色が見えていた。

(あの赤い球の直撃……あれは流石にキツかったか)

 水前寺は腹部をさすりながらそう思う。
 彼の脳裏にあるのは先程受けた古泉の超能力。

(あれ程の爆発を引き起こす程の威力だ。恐らく、もう少し相手に力を溜めることのできる時間があれば危なかった)

 また、水前寺の知らぬことだが古泉の能力には大幅には制限掛けられており、彼は受けるダメージがかなり少なく済んでいたのだ。
 しかし、元々神人と呼ばれる異形の存在を狩るための力。
 一つに一つにかなりの威力があり生身の人間には十分な脅威となっていた。

(下手をすれば骨までやってしまったかもしれんな。どこかで手当てをしたい所だが……)

 水前寺をそう考えながら隣にいる島田を見た。
 正確には彼女の持っている支給品のレーダーを。
 
(今、我々にある装備はあれだけ。ある程度は他の参加者との遭遇を避けられるが、先程のように遠距離から攻撃されれば我々などひとたまりもないだろう。
 どこか拠点となりえる場所を探す必要があるな。
 しかし、あのレーダー一体何を感知しているのだろうか?)

 水前寺が先程考えていたのはそれだった。
 レーダーというからには何かを感知して位置を表示している筈なのだ。
 しかし、水前寺の持ち物はここに来る直前と完全に同じであり、何か特殊な物など持っていない。

(となるとやはり我々は何かを埋め込まれていると見ていい……だとすると脱出が難しくなるな。うっ!)

 水前寺が考えを巡らせていると腹部に鈍痛が走る。

(どうやらダメージが予想以上に大きいらしいな。とりあえずどこかで休もう)

 彼は腹部を抑えながらも歩き続けた。



【水前寺邦博@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:全身が少し煤で汚れている。腹部に怪我。
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式、
[思考・状況]
基本:島田特派員と共に精一杯情報を集め、平和的に園原へと帰還する。
 1:この場を離れ、どこかで休む。 
 2:その後、学校へ移動。高須竜児の一連の真偽を確かめる。
 3:何か武器が欲しい。
[備考]
※水前寺の怪我の程度は後の書き手さんにおまかせします。

67VSサイキッカー ◆hwBWaEuSDo:2009/03/22(日) 21:19:14 ID:/iMSr92g0






 そして、その場には誰も居なくなった。
 そこでは相変わらずバギーが燃え盛っており、その存在を主張していた。 

「ハァハァ」

 否、そこにはまだ人間が残っていた。
 その存在は全身が焼け焦がれており、苦しそうに息を吐いている。

(……失敗しましたね)

 古泉は生きていた。
 あの爆発の中、超能力を咄嗟に全身に展開することで即死を免れたのだ。
 とはいえ超能力は著しく制限されており、完全に防ぎきることは出来ず、彼は全身に火傷を負ってまさに満身創痍だった。

(まだ……死ぬ訳にはいきません…….
 彼女を、涼宮さんを絶望させるまでは……)

 古泉はノロノロと地面を這い回る。
 その目には強い決意があった。

「流石に今回はハードですね……」

(けれども、諦める訳にはいきません……)

 古泉はそう決意を固めて、立ち上がった。
 そして、






【古泉一樹@涼宮ハルヒの憂鬱 死亡】

68VSサイキッカー ◆hwBWaEuSDo:2009/03/22(日) 21:20:13 ID:/iMSr92g0


 

 そして、次の瞬間古泉の身体は弾丸で貫かれた。
 古泉はそのまま倒れ、もう動かなくなった。

(殺したな)

 古泉を殺した男――高須竜児は古泉が確かに死んだことを確認した。
 彼は古泉と同じく殺す相手を追い求めて学校から出た。
 途中、爆音を聞いてその場に行ってみると瀕死の古泉がおり、トドメを刺したのだった。

(さぁ、次の参加者を探そう)

 もう古泉に興味の無くなった高須は燃え盛るバギーを後にした。


 そして、バギーの周りには誰も居なくなり、そこには哀れな超能力者の屍が残された。


【高須竜児@とらドラ!】
[状態]:健康
[装備]:グロッグ26(10/11)
[道具]:デイパック、支給品一式、
[思考・状況]
1.逢坂大河、川嶋亜美、櫛枝実乃梨の誰か一人を最後の一人にするために他の人間を殺す。
[備考]原作7巻終了後入院中からの参戦です。
 ※壊れたシズのバギーの近くに古泉の死体とデイパックがあります。

69 ◆76I1qTEuZw:2009/03/24(火) 00:40:33 ID:G7tEG0Es0
先日投下した「忍法 魔界転生(にんぽう しにびとがえし)」の最後2レス分を、以下のように差し替えます。

70忍法 魔界転生(にんぽう しにびとがえし)(修正版) ◆76I1qTEuZw:2009/03/24(火) 00:42:37 ID:G7tEG0Es0

もっとも、これが容易ならざる道であることは、左衛門自身もよく分かっている。
如月左衛門の忍法では、対象の容姿は写せても、その忍法までは写し取れない。無敵の瞳術は、演じられない。
これより先は、弦之介の瞳術もなく、また自慢の変形もなく、ただ己の腕ひとつで生き延びていく必要がある。
もとより闘争向きの忍法をそなえていない分、剣術や体術には長けていた彼ではある。
それでも、不安を覚えずにはいられない。
なんとなれば、忍法を封じたその状態で伊賀の忍びのみならず、弦之介をも倒せし凶手をも屠らねばならないのである。
かの瞳術をも打ち破ったような相手に、いかにすれば勝ちを収められるのか。未だ妙案はない。

「その意味では、ここに背嚢が残されていたのは幸いであった。
 最初に与えられたまきびしのみでは、打てる手も限られるでな」

惨劇の現場に残された荷物はふたつ。
片方は弦之介のものであろうと推測して、はて、さらにひとつここにあるのは、どういったいきさつによるものか。
あるいは弦之介の瞳術は不完全ながらも効果を発揮して、手傷を負った敵はほうほうのていで逃げ出したのやもしれぬ。
いささか真相からは外れていたものの、如月左衛門はそんな風に考えた。

ふたつのうち片方は、水筒や地図といった共通支給の品々のほかには、ただ説明書が一枚あるきりであった。
白金の腕輪、というから、これは弦之介の背嚢に相違あるまい。形状外見ともに、死体の傍にあった腕輪と一致する。
血をぬぐった腕輪を己の腕にしかとはめると、彼は続いてもうひとつの荷物から抜き出した武器を手にとる。

「ふむ――これはまた変わった刀よな。
 『ふらんべるじぇ』……南蛮人の武器であろうか。しかし、いまはありがたい」

それは、炎を思わせる刀身をそなえた、奇妙な白い刀、いや剣であった。
どうやら金属ではないようだが、さて、では何でできているかと問われれば答えに窮す。ただ不可解の材質と言うほかない。
その波うつ刀身は、しかし伊達は酔狂ではあるまい。如月左衛門はすぐにその本質を見抜く。
そう、これは鋭い刃をこのように配置することによって、斬られたものの傷口を、さらにひろげる工夫なのだ。
柄が長いゆえ、両手で振るってもよし。また多少重くはあるものの、片手打ちにても振るえるであろう。
重さよりも鋭さでもって敵を斬るその剣は、実に、日本刀とさほど変わりない使い勝手なのだった。

片腕には、白金の腕輪。
懐には、投げれば飛び道具、撒けば足止めともなる、まきびし。
そして手のうちには、この波うつ刀。
背嚢内のほかの荷物もひととおり調べあげると、ひとつにまとめて肩にかついだ。
瞳術もない。不可思議の忍法もない。
頼れるものは己の身のこなしと、これらの武器。
そしてこればかりは泥の死仮面とは別個に身につけた、千変万化の声帯模写術。
決して楽な道行とはいえぬが、しかし絶望にも自暴自棄にもまだはやかろう。十分に勝算はある。
そう信じる彼が、この期におよんで、なおもおそれるものは、たったひとつ。

「……しかしこうなってしまうと、伊賀の朧姫にだけは出くわすわけにはゆかぬであろうな。
 弦之介さまのこの顔が、いっしゅんにて崩れてしまうがゆえ」

何としても持ち帰らねばならぬ弦之介の顔を、ひとめ見ただけで崩してしまうであろう、おそるべきもうひとつの魔眼。
怨敵たる、そして甲賀弦之介の許婚たる、伊賀鍔隠れ衆が頭目、朧の破幻の術ばかりであった。――

71忍法 魔界転生(にんぽう しにびとがえし)(修正版) ◆76I1qTEuZw:2009/03/24(火) 00:43:33 ID:G7tEG0Es0

【C-1/草原/一日目・黎明】
【如月左衛門@甲賀忍法帖】
[状態]:健康。甲賀弦之介の顔。
[装備]:フランベルジェ@とある魔術の禁書目録、マキビシ(20/20)@甲賀忍法帖、白金の腕輪@バカとテストと召喚獣
[道具]:デイパック、支給品一式×3、不明支給品0〜2(本人確認済み)
[思考・状況]
基本:自らを甲賀弦之介と偽り、甲賀弦之介の顔のまま生還する。同時に、弦之介の仇を討つ。
1:朧と遭遇してしまわないよう注意しつつ、最後の1人を目指して生き残りを図る。
2:弦之介の仇に警戒&復讐心。甲賀・伊賀の忍び以外で「弦之介の顔」を見知っている者がいたら要注意。


[備考]:
深夜の時間帯には甲賀弦之介の死体の所に居た浅上藤乃は、
少なくとも黎明のこの時間帯には、ここから見える範囲には居ないようです。
浅上藤乃が残していったデイパックは、如月左衛門が回収しました。


【フランベルジェ@とある魔術の禁書目録】
元は浅上藤乃の支給品。
天草式十字凄教の教皇代理、建宮斎字の武器。
波打つ刃を持つ、全長180センチを越える両刃の剣。
金属製では無いようだが、材質は不明。ちなみに真っ白。

72 ◆RC.0aa1ivU:2009/03/27(金) 12:42:50 ID:i6fbp7Us0
さるったー!
こっちに残りを投下しておきます

73 ◆RC.0aa1ivU:2009/03/27(金) 12:43:24 ID:i6fbp7Us0
【B-1 天文台 一日目 深夜】



【御坂美琴@とある魔術の禁書目録】
【状態】肋骨数本骨折 
【装備】なし
【所持品】支給品一式  確認済支給品1〜3
【思考】
基本:この世界からの脱出、弱者の保護
1:知り合い(白井黒子、インデックス、上条当麻)との合流
2:当面は基本方針優先。B-1消滅の半日前ぐらいには黒子、当麻との合流を優先する。
3:助けてくれた相手(人識)と行動する?


【備考】
マップ端の境界線は単純な物理攻撃では破れないと考えています。
この殺し合いが勝者の能力を上げる為の絶対能力進化計画と似たような物であるかも知れないと考えていますが、当面のところ誰かに言う気はありません。


【零崎人識@戯言シリーズ】
[状態]:健康 
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式、礼園のナイフ9本@空の境界、七閃用鋼糸6/7@とある魔術の禁書目録、少女趣味@戯言シリーズ
[思考・状況]
1:《死線の蒼》はいそうにねえなあ
2:ぶらつきながら《死線の蒼》といーちゃんを探す。
3:子犬っぽい姉ちゃん(美琴)を治療する。頼まれたら一緒に行動しても良い?
4:両儀式に興味。
[備考]
※とある約束のために自分から誰かを殺そうというつもりはありません。ただし相手から襲ってきた場合にまで約束を守るつもりはないようです。

74 ◆RC.0aa1ivU:2009/03/27(金) 12:43:57 ID:i6fbp7Us0

「くくっ、ははははっ! カシム以外にもあんな面白い奴がいるとはなあ! 楽しくなってきたぜ!」
 月明かりの下、男は笑う。
 男の喉、その左からはべっとりと血が流れ出している。
 ―――先の一瞬。人識が刃を止めていなければ間違いなくガウルンの頚動脈は断ち切られていた。

「主食がカシム! デザートにあのガキ! まだまだほかに面白い奴がいるかもなあ!」
 どうせ自分は長くない。
 地獄への道連れはなるべく多く、派手なほうが良い。
 悪意の塊のような男は闇へと消える。
 闇の中でもなお薫る血と死の匂いを漂わせ。


【B-1とC-1の境界 一日目 深夜】


【ガウルン@フルメタル・パニック!】 】
[状態]:膵臓癌 首から浅い出血
[装備]:銛撃ち銃(残り銛数3/5) IMI デザートイーグル44Magnumモデル(残弾8/8+1)
[道具]:デイパック、支給品一式
[思考・状況]
1:どいつもこいつも皆殺し
2:カシム(宗介)とガキ(人識)は絶対に自分が殺す
3:かなめは半殺しにしてカシムの目の前で殺す

[備考]
癌の痛みは行動に影響を及ぼすことはありません。
2巻から3巻の間ぐらいからの出典です。

75 ◆RC.0aa1ivU:2009/03/27(金) 12:46:22 ID:i6fbp7Us0
s援してくれた人には感謝。
以上です

76名無しさん:2009/03/27(金) 12:51:02 ID:9uZ5PchY0
投下乙っす
支援になってなくてごめんね

77 ◆EA1tgeYbP.:2009/04/09(木) 21:27:15 ID:WOLRkbxo0
 八つ当たりとしかいえない身勝手な感情と共に、白純里緒は吉田一美に対して嘲るような笑顔を見せる。

「久しぶり、とでも言えばいいかな? ん、ああそうか。ぼくがここにいるということは黒桐君に何かあったんじゃないのかと心配しているのかい? くっ、ははははははっ、ははははははっ。いや、本当キミはおめでたいねえ。少し考えればわかるだろ? 僕がこんなにも早くここに、キミがいるところに来れたのはちゃんとした理由があるってことぐらいはさあ」
「…………」
「ああ、そうさ。君は幹也に売られたのさ。君がいなくなったすぐあとに幹也が僕に言ったのさ。君と君に渡したにもつは全部差し出すからどうか、僕の命は助けてくださいってね。
 何? 幹也がキミなんかのために命がけで僕をくい止めてくれたとか思っちゃったの? 見ず知らずの存在だったキミを助けるために命をかける馬鹿なんていないさ。何をいい気になってるんだか。本当自意識過剰もいいところだよ、あははははっ」
 そうして白純里緒は返答できない吉田一美を一方的に嘲笑う。

 この虚言には何の意味もない。ただ、白純里緒は吉田一美を許せなかったのだ。
 ――たとえこれから死に逝く相手だとしても、彼女の記憶に黒桐幹也が彼女のことを守ったという事実が残ることさえ許せないというだけ。嫉妬を晴らす、ただそのためだけに彼は彼女の心を踏みにじる。

「はははははっ! あー、笑った笑った。さて、ここまで笑わせてくれたお礼だ。死ぬ前に他の知り合いに伝えたいメッセージがあるって言うなら聞いてやるぜ。ああ、あとはもちろん幹也の奴への恨み言でも構わないけどな。とはいえ、幹也の奴を殺してくれとかそういうのは無理だぜ」
 そして最後に彼は告げる。あえて幹也への敵愾心をあおる言葉を言うことで、最期に彼女がどのような恨み言を残していくのか、それを想像してこっそりと白純里緒は笑みを浮かべる。
 もちろん、彼女の死に際の言葉は一字一句残さず幹也へと伝えてやる。彼の懐には支給品のひとつ、ボイスレコーダーがある。

 きっと幹也はもう少し後になって、この場所をを突き止めてやってくる。そして彼は発見するのだ。すでに事切れた吉田一美と、その死体の傍らに転がるボイスレコーダーを。そして自らに向けられた少女の理不尽な悪意を知ることになることになるのだ。
 そのときの彼の様子は想像するだけで身震いするほど素晴らしいものとなるだろう。

「――――」
「……え?」
 そんな想像に集中しすぎたせいか、白純里緒は最初少女が何といったのか聞き漏らした。

「…………シャナちゃん、坂井君、……黒桐さん。生きて、絶対に死なないで。それと、ありがとう」
「…………は?」
 それだけを少し震える声で言うと吉田一美は言うべきことは全て語ったというかのごとく口を閉ざした。

78 ◆EA1tgeYbP.:2009/04/09(木) 21:27:45 ID:WOLRkbxo0
 だが、それで収まらないのは里緒のほうだ。

「おかしいだろ! 何で、何でお前を裏切った黒桐への恨み言が出てこないんだ!?」
「――恨んでなんていませんから。裏切ってもいない人を恨むなんてできません」
 だん、と壁に押さえつけて問い詰める白純里緒に、少女は痛みに顔をしかめながらも静かに答える。

「おかしい、おかしいってば! ついさっきであったばかりの他人なんだぞ! 何でそんなに簡単に信じられるんだ! 普通は……!」
「信じたんです、だから」
 彼女の返答が白純里緒を激昂させる。

「黙れ……! お前なんかに黒桐のことがわかるわけがないだろう! 訂正しろ、謝れ、何でもいいから恨み言の一つでも言って見せろよ!」
「……っ!」
 白純里緒の叫びに吉田一美は答えない。いや、もう答える事ができなかった。白純里緒に激情のまま振り回される彼女は、何とか自分の意識を保つことで精一杯だったのだ。しかしそんな状況にも関わらず、彼女の心は奇妙なまでの落ち着きと安心感があった。……あるいはそれは避ける事のできない死を目前とした諦念が生み出した物であったのかもしれない。

(……やっぱり、嘘だった)
 目の前の彼の激昂ぶり振りを見ればもう、疑いようはない。出会ったばかりの彼のことを信じぬく以上のことしかできなかったとはいえ、信じ抜いたのはやっぱり間違いなんかじゃなかったのだ。そんなことがただただ、嬉しいことと思える。

「聞こえないのか! 黙ってないで何とか言え! 言えよオオおおおおおっ!」
 激怒した白純里緒が爪を振りかざすのを彼女はただ見つめる。
(――悠二君、死なないで)
 
「え?」
 首から血を流し、倒れたまま動かない吉田一美を白純里緒は呆然と見下ろした。
「なんだよ、それ。ふざけるな! あそこまで好き勝手に言ったくせに何でこんなにあっさり……!」
 だが、ピクリとも動かない目の前の少女は誰がどう見たところで死んでいる。

79 ◆EA1tgeYbP.:2009/04/09(木) 21:28:19 ID:WOLRkbxo0
 ……たっ
 少し先のほうから響いた足音に、せめてもの腹いせに少女の遺体を無残に喰い散らかそうとした白純里緒の動きが止まる。足音は少しずつ、だが確実にこのビルへと近付いてきている。今、ここに近付いてくる人物は一人しかいない。
「……くそっ」
 今はまだ、幹也には自分が喜んで人を殺しまわっていることを知られるわけには行かない。
 そうしてケモノはビルの影へと身を躍らせる。

(幹也、きちんと生き延びろよ?)
 今はまだ、彼を自分のそばに置くことはできない。だが自分がここへ連れて来られた以上、そのために必要な道具、ブラッドチップもきっとこの舞台のどこかにあるはずだ。
 だから今は一人でも多く殺そう、食べよう。
 今度こそ彼は北へと向かう。まずは身の程知らずの愚か者をこの爪と牙で引き裂くために。


【E-4/雑居ビルの一つ/一日目・黎明】



【白純里緒@空の境界】
[状態]:健康 、強い苛立ち
[装備]:なし
[道具]:デイパック、基本支給品(未確認支給品0〜2個所持。名簿は破棄)
[思考・状況]
1:両儀式を探す
2:黒桐を特別な存在にするためにブラッドチップを入手する
3:拡声器で呼びかけを行った馬鹿を殺しに行く
4:それ以外は殺したくなったら殺し、多少残して食べる
[備考]
※殺人考察(後)時点、左腕を失う前からの参戦
※名簿の内容は両儀式と黒桐幹也の名前以外見ていません
※全身に返り血が付着しています

※ブラッドチップ@空の境界
荒耶宗蓮特製の大麻を白純里緒の血液で栽培した強力な麻薬。本編中では自分の意思で人間を捨てる覚悟と共にこれを摂取すれば起源覚醒者に変えることができると白純里緒は思っていたが、黒桐幹也はこれを拒否したためにその真偽は不明。

80 ◆EA1tgeYbP.:2009/04/09(木) 21:28:53 ID:WOLRkbxo0
「……今の声は」
 近くのビルから聞こえてきた聞き覚えのある声に、僕は言い知れぬ不安を感じた。
 そんなわけはない。確かに先輩は人を殺す側に立っているのかもしれない。けど、あの人は確かに北に向かって走っていったはずなんだ。
 必死になって自分にそう言い聞かせながら、僕は吉田さんの痕跡を追ってたどり着いたビルの前で立ち止まった。
「……吉田さん?」
 小声で呼びかけるも返答はない。
 ここにはいないのかもしれない、そんな気持ちとは裏腹に僕の足は吸い込まれるようにビルの内部へと向かう。
「吉田さん、返事をしてくれるかい?」
 階段を上る僕はいつか感じたことのある匂いを感じ取っていた。
 
 ――鉄っぽい、むせ返るような匂い。

 知らず、動悸が激しくなる。
 吉田さんの返事はない。

「ここにはいないの?」
 うっすらと埃が積もったビルの中、小さな足跡はその一室へと消えている。……出た痕はどこにもない。

「……吉田さん」
 一瞬気が遠くなる。
 首から部屋を真っ赤に染めるぐらい血を失った彼女はどう見ても生きてはいない。

 不意に胃の中に、塊のような異物感を感じた。
 口の中いっぱいに、みるみるうちに嫌な味がする唾液が広がっていく。

「……!」
 胃がすくみ上がるように動き、内にこもる物を一気に押し上げようとする。
 喉元まで上がってくる嘔吐感。
 ……それでも、いつかのようにもどさずには済んだのはきっと彼女を汚しちゃいけないという……意地と罪悪感のせいだと思う。
「う……!」
 ごろりと動く胃を何とかなだめる。

「……ごめん、吉田さん」

 君を探し人と再会させてあげられなくて。
 きみのそばにいてあげられなくて。
 君を守ってあげられなくて。

81 ◆EA1tgeYbP.:2009/04/09(木) 21:29:24 ID:WOLRkbxo0
 荒い息をつきながら、それでも何とかそれだけを搾り出す。そして血の海となった部屋に入ると、むせ返るような匂いに再びこみあがってきた吐き気をおさえながら、すぐそばに転がっていた血に染まったデイパックを拾い上げる。

「……ん? これは……」
 その時、影になるように転がっていた何かに気が付く。それは黒い小型のボイスレコーダーだった。
 ――あるいはこの中には彼女の遺言が入っているかもしれない。僕は覚悟と共に再生ボタンを押した。

 ――――――

 落ちた時の衝撃か、それとも血がおかしなところにまで染み込んだせいなのか機械は沈黙を保ったままだった。……あるいは聞けなかったのは幸いだったのかもしれない。彼女を守れなかった僕に、これを聞く資格はないだろうから。
 けど、これを届けなくちゃいけない相手がいることもわかっている。

「……さよなら、そしてごめん」
 僕は、最後に、そう言い残して部屋を後にした。

【黒桐幹也@空の境界】
[状態]:健康 、罪悪感、強い悲しみ
[装備]:なし
[道具]:デイパック、血に染まったデイパック、基本支給品×2、壊れたボイスレコーダー(メモリつき)@現実、七天七刀@とある魔術の禁書目録、不明支給品1〜3個
[思考・状況]
基本:式、鮮花を探す。
1:吉田さんの知り合いを見つけ、謝罪とレコーダーを渡す
2:浅上藤乃は……現状では保留
3:先輩ともう一度話をする
[備考]
※吉田一美の殺害犯として白純里緒を疑っています
※白純里緒が積極的に殺し合いに乗っていることに気がついています

【吉田一美@灼眼のシャナ  死亡】

82 ◆EA1tgeYbP.:2009/04/09(木) 21:30:38 ID:WOLRkbxo0
以上です。大変申し訳ないのですがタイトルは今のところ未定
Wiki収録の際まで待っていただきたい

83修正版 ◆EA1tgeYbP.:2009/04/13(月) 12:15:18 ID:m1DUgmvw0
 ……たっ
 少し先のほうから響いた足音に、せめてもの腹いせに少女の遺体を無残に喰い散らかそうとした白純里緒の動きが止まる。
 足音は少しずつ、だが確実にこのビルへと近付いてきている。そして今、ここに近付いてくるであろう人物は一人しかいない。

「……くそっ」
 今はまだ、幹也には自分が喜んで人を殺しまわっていることを知られるわけには行かない。
 そうしてケモノはビルの影へと身を躍らせる。

(幹也、きちんと生き延びろよ?)
 せっかく見つけた黒桐幹也。しかし今はまだ、彼を自分のそばに置くことはできない。
 なぜなら特別な自分のそばに在る人間は、やはり特別な人間であるべきなのだから。
 故に本来ならばそのための道具、特別な大麻を彼の血で栽培した特製品、ブラッドチップを白純里緒は用意して、使うつもりでいた。
 だが自分がここへ連れて来られたといって、アレまで絶対にここにあるという前提で動くのは少々危険だ。……しかし、心配することはない。
 
 ――確か荒耶は言っていた。起源覚醒には双方の同意が必要であると。
 だから……黒桐の心の底からの同意さえ得られれば、他の劇物と白純里緒の血液を混ぜ合わしたものや、あるいは白純里緒の血だけでも黒桐の起源は呼び起こせるかもしれない。
 もちろん、そんな方法は他の奴で実験してからになるだろうし、それ以前にブラッドチップが見つかれば何の問題もない。
 だから今は一人でも多く殺そう、食べよう。
 今度こそ彼は北へと向かう。まずは身の程知らずの愚か者をこの爪と牙で引き裂くために。


【E-4/雑居ビルのある一角/一日目・黎明】



【白純里緒@空の境界】
[状態]:健康 、強い苛立ち
[装備]:なし
[道具]:デイパック、基本支給品(未確認支給品0〜2個所持。名簿は破棄)
[思考・状況]
1:両儀式を探す
2:黒桐を特別な存在にする
3:そのためにブラッドチップを探す
4:見つからないようなら、思いついた他の起源覚醒の方法を適当な奴で試す
5:まずは拡声器で呼びかけを行った馬鹿を殺しに行く
6:それ以外は殺したくなったら殺し、多少残して食べる
[備考]
※殺人考察(後)時点、左腕を失う前からの参戦
※名簿の内容は両儀式と黒桐幹也の名前以外見ていません
※全身に返り血が付着しています

※ブラッドチップ@空の境界
荒耶宗蓮特製の大麻を白純里緒の血液で栽培した強力な麻薬。本編中では自分の意思で人間を捨てる覚悟と共にこれを摂取すれば起源覚醒者に変えることができると白純里緒は思っていたが、黒桐幹也はこれを拒否したためにその真偽は不明。

84修正版 ◆EA1tgeYbP.:2009/04/13(月) 12:16:45 ID:m1DUgmvw0
「……今の声は」
 近くのビルから聞こえてきた聞き覚えのある声に、僕は言い知れぬ不安を感じた。
 そんなわけはない。確かに先輩は人を殺す側に立っているのかもしれない。けど、あの人は確かに北に向かって走っていったはずなんだ。
 必死になって自分にそう言い聞かせながら、僕は吉田さんの痕跡を追ってたどり着いたビルの前で立ち止まった。
「……吉田さん?」
 小声で呼びかけるも返答はない。
 ここにはいないのかもしれない、そんな気持ちとは裏腹に僕の足は吸い込まれるようにビルの内部へと向かう。
「吉田さん、返事をしてくれるかい?」
 階段を上る僕はいつか感じたことのある匂いを感じ取っていた。
 
 ――鉄っぽい、むせ返るような匂い。

 知らず、動悸が激しくなる。
 吉田さんの返事はない。

「ここにはいないの?」
 うっすらと埃が積もったビルの中、小さな足跡はその一室へと消えている。……出た痕はどこにもない。

「……吉田さん」
 部屋の扉を開け、中に入ったその途端一瞬気が遠くなる。
 首からの流血。部屋を真っ赤に染めるぐらい血を失った彼女はどう見ても生きてはいない。

 不意に胃の中に、塊のような異物感を感じた。
 口の中いっぱいに、みるみるうちに嫌な味がする唾液が広がっていく。

「……!」
 胃がすくみ上がるように動き、内にこもる物を一気に押し上げようとする。
 喉元まで上がってくる嘔吐感。
 ……それでも、いつかのようにもどさずには済んだのはきっと彼女を汚しちゃいけないという……意地と罪悪感のせいだと思う。
「う……!」
 ごろりと動く胃を僕は何とかなだめる。

「……ごめん、吉田さん」

 君を探し人と再会させてあげられなくて。
 きみのそばにいてあげられなくて。
 君を守ってあげられなくて。

85修正版 ◆EA1tgeYbP.:2009/04/13(月) 12:20:05 ID:m1DUgmvw0
 荒い息をつきながら、それでも僕は何とかそれだけを搾り出す。
 そして血の海となった部屋に入ると、むせ返るような匂いに反応し、再びこみあがってきた吐き気をおさえながら、すぐそばに転がっていた血に染まったデイパックを拾い上げた。

「……ん? これは……」
 その時、彼女の影になるように転がっていた何かに気が付く。それは黒い小型のボイスレコーダーだった。
 ――あるいはこの中には彼女の遺言が入っているかもしれない。そう思った僕は再生ボタンに指を掛け……。

 ――――――

 ……ボタンを押すことはできなかった。
 たしか彼女の支給品の中にこんな物はなかったのだし、これは間違いなく彼女を殺した…………誰かが残していった物だろう。
 この中にはきっと彼女が探していた坂井君やシャナさんへのメッセージが入っている。せめてこのメッセージだけは何があっても、僕は彼らに届けなくちゃいけない。そして彼女を守ることができなかった僕に……彼らよりも先に彼女の最期の思いを聞く資格はない。
 ……あるいはこの中には、彼女を守ることができなかった僕の罪を裁く内容も含まれているかもしれない。だとすれば、彼らの前でその罪を曝け出すことも僕の罪滅ぼしだ。

「……吉田さんさよなら、そしてごめん」
 僕は、最後に、そう言い残して彼女の眠る部屋を後にした。

【E-4/ある雑居ビルの一室/一日目・黎明】

【黒桐幹也@空の境界】
[状態]:健康 、罪悪感、強い悲しみ、使命感
[装備]:なし
[道具]:デイパック、血に染まったデイパック、基本支給品×2、ボイスレコーダー(記録媒体付属)@現実、七天七刀@とある魔術の禁書目録、ランダム支給品(確認済み)1〜3個
[思考・状況]
基本:式、鮮花を探す。
1:吉田さんの知り合いを見つけ、謝罪しレコーダーを渡す
2:浅上藤乃は……現状では保留
3:先輩ともう一度話をする
[備考]
※吉田一美の殺害犯として白純里緒を疑っています
※白純里緒が積極的に殺し合いに乗っていることに気がついています

【吉田一美@灼眼のシャナ  死亡】

86名無しさん:2009/04/26(日) 13:01:51 ID:p7fT/hVg0
しまった、こっちだった・・・
死者紹介ネタこんなもんでどうでしょう

87名無しさん:2009/04/26(日) 13:02:28 ID:p7fT/hVg0
高須竜児

登場作品【とらドラ!】
登場話数 2
殺害者 紫木一姫
最期の言葉「いけぇ! 島田ぁ! 大河を、みんなを、頼…………!!」

【本編の動向】
登場話は003「彼と彼女の歩む道」 退場話は042「ドラゴンズ・ウィル」
参戦時期は原作7巻終了時点。
ロワ開始前はその誤解を招く見た目から、周囲に誤解フラグをばら撒くことを期待されていた彼だが、参戦時期が時期であり、逢坂大河、川嶋亜美、櫛枝実乃梨の誰か一人を最後の一人にするために他の人間を殺す事を決意する。

そんな彼が最初に出会ったのは古泉一樹。彼の「全員が助かるかもしれない方法」に半信半疑ながらも、彼が守りたい三人の情報をあっさりと知られたことからも彼と同盟関係を組むことに。……結果としてそれが彼の命取りとなった。

同盟を組んだ直後に学校にやってきたのは、多少誤解はしていたが一方的に彼を目撃し、竜児が殺し合いに乗ったことを知っている島田美波と園原電波新聞編集長の水前寺邦博のSOS団。
古泉さえ手玉に取る水前寺の話術にとことんペースを乱されるも、武器を持たない島田美波と一対一になることに成功する。学校で入手した使い慣れた武器である包丁で彼女を殺害しようとするも、「大事な人達を助けるために他人を殺す」という考えに怒った美波の反撃を受ける。

その反撃によって多少頭の冷えた竜児は気が付く。古泉の話が本当なら誰も殺さなくてもいいかもしれないということに。

……が、そこにやってきたのは危険人物姫ちゃん。
飛べない豚はただの豚。殺し合いに乗る気のない参加者や、無駄な希望を抱くだけの参加者は要りません、とばかりに彼らを襲撃。裁縫用の糸を使った曲弦糸の練習として、竜児を切り刻む。
両手を失い、反撃さえ封じられたこの状況。しかし何もかも諦めるのには早すぎた。
竜児に残されたたった一つの武器。彼のコンプレックスの源だった目つきの悪さ、ただそれだけでほんの一瞬、姫ちゃんをひるませ、自分の目を覚まさせてくれた美波だけは逃がすことに成功する。

彼は、最後の最期に、竜となったのだった。

知り合いを守るために殺し合いに乗ることを決意した彼だが、古泉一樹、島田美波と本人が気付かぬ間に二人にその知り合いの名前をばらしてしまうなど結局、殺し合いにはむかない性格だったのだろう。
とはいえ、没ネタになった話の中では違和感なく、冷酷に古泉を殺害したりしたこともあり、マーダーとして成長した彼が知り合いに出会うところも正直見てみたかったものではある。

また、同じ戯言シリーズのキャラに同じ技で右手を切断されたり、立場は逆だったが、武器を持たない女子高生と銃を持つ男子、そして精神的な脆さから女子高生が勝つ展開など、奇妙なまでに彼の相方逢坂大河と似通った展開が多かった。
やはり竜と虎はワンセットということだったのだろうか。

88名無しさん:2009/04/26(日) 14:58:48 ID:ZaOYV.TMO
改行してくれればなおのこと良いのだが

89 ◆LxH6hCs9JU:2009/05/05(火) 03:47:51 ID:RtUDc5TI0
まだ規制中でしただ
浅上藤乃、こっちに投下します。

90凶る復讐心 ◆LxH6hCs9JU:2009/05/05(火) 03:49:01 ID:RtUDc5TI0
 ――1998年、7月のこと。

 不良たちがたまり場としていた元酒場の廃屋にて、四体の変死体が発見された。

 その変死体というのは、街でも悪評高い少年グループのものだった。

 揃って、四肢が捻じ切られるという奇異な死に様を晒していた。

 人間の仕業とも思えぬ猟奇殺人事件……犯人の正体は未だ掴めず、真相は闇に葬られた。


 ◇ ◇ ◇


 ――喧騒とは無縁の時間を刻む、深夜の街路。
 深々とした空気の中を、一人の少女が突き進む。
 整った顔立ちは小さく、鋭角的な輪郭が美を表出する。
 燃えるような内情とは裏腹な落ち着いた眼が、進むべき道を見据えた。
 一歩、また一歩、重い体を引き摺るかのように、靴底で大地の感触を確かめるかのように、真剣に。
 教会のシスターが着るそれに近しい、とある女学院の制服を纏った少女の名は、浅上藤乃という――――。


 ここ数日で、夜の街も随分と歩き慣れた気がする。
 きっかけはやはり、あの五人に連れ回されるようになってからだ。
 あれから無断外泊も多くなった。寮長の心象も日に日に悪くなっていくばかりだったろう。
 連れ添う彼らがいなくなった後も、いや殺した後も、一人で街を徘徊する日が何日か続いた。

 理由は彼だ。
 ひとつ、足りなかった物。
 逃げた、追っていた、者。
 復讐心を注ぐ唯一のもの。
 湊啓太。

 今と同じように、浅上藤乃は湊啓太を探し出すという目的で街を何度か徘徊していた。
 不良グループの一人であった彼を見つけるために、同類と見て取れる男性に幾度となく話しかけた。
 卑猥な目で見られること、気安く軟派な声を返されること、裏路地に連れ込まれること、多々あった。
 それでも、藤乃は湊啓太の居場所について尋ねるのだ――――そして。

 返ってきた答えが「知らない」だったならば。
 藤乃はその相手を、無知ゆえに殺してしまう。

 殺人は忌むべき行為だ。そんな常識は、小学生だって持ち合わせている。
 この浅上藤乃という人間とて、殺人を正当化する大儀は持ち合わせていない。
 しかし藤乃には、良識を凌駕する恨みと欲望……なにより『痛み』がある。

 湊啓太を含む五人の不良たちに陵辱されていた彼女はあの日、今さらとも言える痛みを知ったのだ。
 その痛みは、傷が完治した今でも残っている。藤乃が手で押さえる腹部に、あの日の痛みが残留しているのだ。

91凶る復讐心 ◆LxH6hCs9JU:2009/05/05(火) 03:49:44 ID:RtUDc5TI0
 一時間、二時間と街を歩き、ふと思い出す。
 先ほど殺害した、時代劇風の男についてだ。

 彼も藤乃の疑問には答えてくれなかった。
 よくよく考えてみれば湊啓太と親交がありそうな人物ではなかったが、状況が変わった今となっては対象は誰でもいい。
 ここは既に、見慣れぬ土地なのだ。深く考えたとて答えは出ないが、これだけはわかる。自分は拉致されたのだ、と。
 あの男も同じだったのだろう。されとて、ここにいる以上は訊かなければならない。大事なのは湊啓太との面識の有無だ。

 藤乃がこの催しについて思うことは、今のところはなにもない。
 それよりもまず、湊啓太への復讐を果たし、この痛みを解消するところから始めなければならなかった。
 だから――知らない者は殺す。
 それは無知を罪と断定し、自身を傷つけるかもしれない者への復讐の前払いを済ませる、という意味があった。

 もしくは、共感のためか。
 他人の痛みを知ることで、自分の痛みを知ることができる自分。
 他者を死に至らしめることで、他者より優れていることを自覚できた自分。
 誰かを殺すことで初めて、生の実感と愉しみを得ることができる――それしかない、自分。

 藤乃、傷は治れば痛まなくなりますからね――と幼き日の藤乃に母は言った。
 しかし自身を陵辱していた不良に刺された腹部は、傷が消えた後も痛みを残している。
 消えない――自覚してしまった痛みは、消えないのだ。復讐対象の最後の一人である、湊啓太を殺すまで。

 湊啓太を殺し、この痛みが完全になくなるその瞬間まで。
 浅上藤乃は、こんな生き方しかできない。
 こんな、殺人を重ねる生き方しか。


 ◇ ◇ ◇


 ああいう連中がいかにも寄り付きそうな場所を、虱潰しに探してみた。
 具体的に言えば、バーや娯楽場、地下階層に構えている店などだ。元々無人に近い街なので、人気の有無は考慮していない。
 結果を言えば、湊啓太はおろか、彼と繋がりがありそうな人間、無関係だろうと思える人間、誰一人として見つからなかった。
 まさしく無人の街だ。ここに集められている人間は少ないらしいが、それでも一人も見つからないというのはおかしい。
 ――いや、単に巡り合わせが悪いだけなのだろう、と藤乃は考えを改める。
 実際、あの時代劇風の男には一度会っているのだから。

 求めるのは湊啓太の居場所である。それ以外に探し人はいない。
 ならば、要は湊啓太の所在さえ掴めればいいわけである。それ以外の人間など情報源としての役割しか持たない。
 情報は巡るもの。だからこそ、他者に訊くのが一番の近道だと思った。しかし、それが望めないというのであれば――。


 ◇ ◇ ◇

92凶る復讐心 ◆LxH6hCs9JU:2009/05/05(火) 03:50:26 ID:RtUDc5TI0
 浅上藤乃は、一目でそれとわかる巨大な建物の前に立った。
 周囲に散らばる白黒の車を見渡した後、夜空に照らされる上階を見上げ、最後に玄関口を眺め据える。
 目の前に聳える建造物は、警察署――しかし街と同じく、中に人の気配はない。

 法律的には罪人としての資格申し分ないであろう湊啓太が、罪の意識を自覚し出頭するという可能性も、なくはない。
 ただ、その可能性は極めて低いだろう。そのような見込みがある人物ならば、逃げ出したその日に警察に駆け込むはずだ。
 湊啓太が逃げてから、今日で二日目、いや三日目だったろうか。消息は依然として掴めないが、声だけは昨日も一昨日も聞いていた。

 居場所は掴めないが、連絡は取れるのだ。
 湊啓太は、犯人グループのリーダーの携帯電話を持ち出している。
 番号は既に頭の中だ。決して忘れることはない、湊啓太との唯一の繋がり。
 彼が逃げ出した直後に、藤乃は電話をかけていた。そこで彼に、こう釘を刺したのだ。

 ――あなたを捜す。絶対に見つけ出す。もし携帯電話を捨てたら、殺す。

 怯える彼の声が、今でも容易に思い返せる。
 おそらく、彼はどこかに引き篭もって身を隠しているのだろう。
 そこまで推測できた藤乃は、電話越しに彼の恐怖を煽り、外に引きずり出そうとした。

 ――今日は昭野という人に会った。あなたの居場所を知らないと言うから殺した。
 ――良かったわね。見つからなくて。友達が大切なら、そろそろ会いに来ない?

 どんな口調を用いたかまでは思い出せないが、大体そんな感じだったと思う。
 今を思えば、彼の知人を殺すことは無知への断罪ではなく、見せしめのような意味もあったのだろう。
 自分はなんと惨いことを続けているのか、と客観的に捉える視点は、今の藤乃にはない。

 黒桐鮮花は言った。
 繰り返す言葉は呪いになる、と。
 電話という手段が、彼に呪いをかける唯一の方法だ。
 だからこそ藤乃は、今夜も湊啓太に電話をかけるべきだろうと思い至った。

 警察署の玄関口を抜け、署内に潜入する。
 電話はすぐに見つかった。受付に設定されていた白いそれの受話器を取り、藤乃は笑む。
 この笑みも、本人に自覚はないのだ。腹部の痛みに苛まれながら、湊啓太を追い詰める所業にひた走っているだけ。
 浅上藤乃から見た浅上藤乃の表情は、苦悶に歪んでいる――それは、殺人の瞬間とて変わらない、決定的な矛盾。
 気づく、気づかないといった話は見当違いのなにものでもない。今の彼女にとっては。

 記憶を呼び起こし、数字の刻まれたボタンを数回、リズムよく押す。
 間違えるはずがない。彼と藤乃を繋ぐ、唯一のナンバー。

 もし、本当に、いや万が一、この地に湊啓太の携帯電話が存在するのなら。
 浅上藤乃がコールする、殺意ある呼び出しには……誰かしらが答えるのかもしれない。

93凶る復讐心 ◆LxH6hCs9JU:2009/05/05(火) 03:51:23 ID:RtUDc5TI0
【D-3 警察署/一日目/黎明】


【浅上藤乃@空の境界】
[状態]:腹部に強い痛み※1
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:湊啓太への復讐を。
1:湊啓太が持っているはずの携帯電話に電話をかけた。そして――?
2:他の参加者から湊啓太の行方を聞き出す。街を重点的に調べる。
3:後のことは復讐を終えたそのときに。
[備考]
※1腹部の痛みは刺されたものによるのではなく病気(盲腸炎)のせいです。
※「歪曲」の力は痛みのある間しか使えず、不定期に無痛症の状態に戻ってしまいます。
※そもそも参加者名簿を見ていないために他の参加者が誰なのか知りません。
※「痛覚残留」の途中、喫茶店で鮮花と別れたあたりからの参戦です。
※「痛覚残留」ラストで使用した千里眼は使用できません。

94 ◆LxH6hCs9JU:2009/05/05(火) 03:52:31 ID:RtUDc5TI0
投下終了。
どなたか代理投下をお願いします。

95 ◆LxH6hCs9JU:2009/05/10(日) 02:18:36 ID:s08lbsAs0
未だ規制中……。
朝比奈みくると土屋康太、こちらに投下します。

96朝比奈みくると土屋康太のバカテスト ◆LxH6hCs9JU:2009/05/10(日) 02:19:41 ID:s08lbsAs0
 街全体で夜逃げでも敢行したのか、辺りには灯りの点った家が見当たらなかった。
 満遍なく行き渡っている闇の中に、一箇所でも光源があったならば、すなわちそこに人がいることは明白。
 自らの居場所を知らしめることは、この地では致命傷になりかねない。
 知恵の働く人間ならば、灯りを用いず、活動する上での制限が緩められる朝を待つだろう。

 しっかり者と見せかけてどこか抜けている部分もある未来人、
 紳士な態度の好青年と見せかけて頭は桃色なむっつりスケベ、

 このおかしなコンビ、双方共にそこまでの思慮は働かず、夜道を堂々とランタンで照らしながら進行していた。
 本人たちは誰かを見つけたがっていたのだが、出会いはまだなく、進む道先は静寂に包まれている。
 他者を見つけられなかったことは不幸としても、他者に見つからなかったことは不幸中の幸い。
 そんなことにも気づかず、朝比奈みくると土屋康太の二人は過ぎていく夜に、意気消沈のため息を零した。

 ――そういえば。

 と、クール系の美男子を装う土屋康太が話を振る。

 ――はい?

 と、可愛らしく小首を傾げて朝比奈みくるが返す。

 ――『それ』の他に、なにか人捜しに役立ちそうなものは入っていなかった?

 と、朝比奈みくるの着るメイドさん衣装を指して、土谷康太が問うのだった。

 ――これは元から着ていたもので〜

 と、注釈などを加えながら。


 ◇ ◇ ◇

97朝比奈みくると土屋康太のバカテスト ◆LxH6hCs9JU:2009/05/10(日) 02:21:44 ID:s08lbsAs0
 【第一問】

  問 以下の問いに答えなさい。
 『土屋康太に支給された黄金の鍵。これの正体を答えなさい』


  ■“逆理の裁者”ベルペオルの答え
 『デミゴールドという金塊を元にして作り出した宝具の一種。[仮装舞踏会]の捜索猟兵に勲章として渡したもの』

  ■教師のコメント
  正解です。あえて書かなかったのでしょうが、正式名称は非常手段(ゴルディアン・ノット)といいます。


  ■朝比奈みくるの答え
 『ゴルディアン王が結んだ複雑な縄の結び目を断ち切った別の王様の伝説で……よく覚えていません。ごめんなさい』

  ■教師のコメント
  博識ですね。そちらはおそらく名前の由来になった部分だと思われます。あと解答用紙で謝る必要はありません。


  ■土屋康太の答え
 『女子更衣室の鍵』

  ■教師のコメント
  欲望に忠実な解答ですが、不正解です。


 ◇ ◇ ◇

98朝比奈みくると土屋康太のバカテスト ◆LxH6hCs9JU:2009/05/10(日) 02:22:23 ID:s08lbsAs0
 無人の街は、どこもかしこも照明が消えてしまっている……というわけではなかった。
 二十四時間営業のコンビニエンスストアなどは店員がいなくとも電灯がつけっぱなしで、街にはそれなりの灯りがあったのだ。
 真っ暗になっている民家に押し入り、わざわざ灯りをつけることは愚の骨頂。
 利用するなら、こういった灯りがついていてもなんら不思議ではない施設が最適だ。

 と、考え至って手頃なコンビニに踏み込んだわけではないのが、朝比奈みくると土屋康太の二人。
 単に見慣れぬ人様の家よりは、近づくだけで扉が開かれるコンビニのほうが入りやすかっただけのこと。
 二人はやや広く取られた雑誌コーナーの前に座り込み、自身らの荷物、ランダムに分配される『支給品』の検証に取り掛かった。

 まず土屋康太が朝比奈みくるに披露したのが、紐のついた黄金の鍵。
 デザインは古風ながら、放つ色は鍍金とも思えない高級感がある。
 鍵といえば銀色が定番と捉える二人には、この品が値打ちものの貴重品に思えてならなかった。

「鍵……っていうことは、扉か金庫を開けるためのものなんでしょうか」
「……持ってて損はない」

 わかったことと言えば、付属の説明書らしき紙に書かれていた『非常手段』という名称のみ。
 使い方が記されていなかったのは意図的なものなのか、鍵の使い方など一つしかないということなのか、二人は考える。
 SOS団団長の涼宮ハルヒ、Fクラスのトップエースである姫路瑞希らがいれば他にもいくつかの選択肢が挙げられたのだろうが、
 お着替えするマスコット団員と認知徹底されたむっつりスケベたる二人では、保留、温存といったありきたりな解答しか求められない。
 方針はあくまでも人捜し、考え事に時間を費やすのはよくないから……と、黄金の鍵は土屋康太のデイパックに収納された。

 人類最悪を名乗る男が『武器』と称した支給品、これは一人につき一個から三個まで配られるという話だったが、土屋康太の所持する品はあいにくと黄金の鍵一つのみだという。
 実際のところは彼がいま装着している眼鏡も支給品に類するものなのだが、その事実が朝比奈みくるに告げられることはなかった。

 バレたら事――ムッツリーニこと土屋康太、否、土屋康太ことムッツリーニは元からメガネっ子だった、と嘘を貫き通す方針である。


 ◇ ◇ ◇

99朝比奈みくると土屋康太のバカテスト ◆LxH6hCs9JU:2009/05/10(日) 02:23:22 ID:s08lbsAs0
 【第二問】

  問 以下の問いに答えなさい。
 『朝比奈みくるに支給された猫の耳を模したアクセサリー。これの有用性を説明しなさい』


  ■某国家元首(焦げ茶猫耳男)の答え
 『我が国の伝統です。人間の可愛らしさを引き出し、見る者を和ませ、人間関係を円滑にします。あなたもどうでしょう?』

  ■教師のコメント
  素晴らしい伝統だと思います。ですが、先生は遠慮しておきましょう。


  ■朝比奈みくるの答え
 『わぁ……とってもかわいいと思います。つけて歩くと、耳のところがぴこぴこ動くんですね〜』

  ■教師のコメント
  先生も可愛いと思いますが、それは説明ではなく感想ですね。


  ■土屋康太の答え
 『メイド服+スク水+猫耳=三種の神器』

  ■教師のコメント
  他国の伝統を侮辱して怒られないように。


 ◇ ◇ ◇

100朝比奈みくると土屋康太のバカテスト ◆LxH6hCs9JU:2009/05/10(日) 02:24:03 ID:s08lbsAs0
 土屋康太の荷物には有益なものがないと判断され、検証は朝比奈みくるの鞄に移った。
 理想としてはGPSなど捜し人の位置情報が掴めるような機器が欲しかったのだが、二人とも籤運はそれほど強いほうではない。
 朝比奈みくるが手に取ったのは、辞典ほどの大きさの箱。開けて中を見てみると、シックな黒い猫耳セットが入っていた。

 なぜ、猫耳――?
 という当然の疑問に、両者は揃って首を傾げた。
 この催しは、ただ一つの椅子を巡って他者を蹴落としていくゲームなのだと理解している。
 人類最悪が『武器』が配られると言っていたのも、他者の殺害を企画の範疇に据えているからだろう。
 先ほどのような用途不明の鍵に加え、こういったアクセサリーまで与えられる実情、企画運営者は参加者たちになにをやらせたいのだろうか。

 それはそうと、この猫耳は実に可愛らしい。これは朝比奈みくると土屋康太、双方の評である。
 せっかくの品、このまま捨て置くというのも些かもったいないような気がしてならず、土屋康太が、

「…………(じー)」

 眠たげな眼差しを朝比奈みくるの頭頂部に向け、目だけで主張を訴えた。
 視線を感じた彼女は、眼鏡の奥から放たれる期待感と、胸の内から湧き上がってくる好奇心に誘導され、気づけば箱から猫耳を取り出していた。
 慎重な手つきで猫耳を運ぶ。頭の上にそっと置くようにすると、猫耳は元の鞘に納まったかのように自然に定着した。

「あの、どうでしょう……? に、似合いますか?」
「…………!(コクコク)」

 猛然とした勢いで頷くムッツリーニに、もはや言葉はない。満面の笑みを浮かべる朝比奈みくるは、今や太陽にも等しい存在となった。
 本職と思わせること容易なメイド服に、その下がスクール水着であることを踏まえ、さらにぴこぴこと動く猫耳に目をやれば、
 お近づきになれた男子としては光栄の極み、女体の神秘ばかりではなく女性の可愛らしさを探求するムッツリーニとしては、幸福の一言だった。

 結局、この猫耳にどんな意味があるのかはわからない。否、意味などなくても構わないのだ。
 スクール水着の上にメイド服を着込む朝比奈みくるの頭に、シックな黒の猫耳が装着されている。
 これだけで天下は統一したも同然。軽すぎず重すぎず、ムッツリーニの観察眼からしてもパーフェクトな按配と言えた。


 ◇ ◇ ◇


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