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【なんでも】ネタ投稿スレ【あり】

1管理者:2007/10/12(金) 22:49:42 ID:FxVKFmMU
本スレでは投下できないようなネタを投稿するスレです。

「本スレに投下する自信がない」
「エログロネタで、本スレにはちょっとやばいかも」
「限りなくカオスで収拾がつかない」

などと言ったネタを投稿していきましょう。
あまり人がいないので反応が少なくても泣かないように。

2べにばな1号:2007/10/15(月) 01:33:49 ID:rOGAdBFM
本スレでの指摘を受け避難所に投下変更することにしました。
つたない文章ではありますが、よろしくお願いします。

3べにばな1号:2007/10/15(月) 01:35:16 ID:rOGAdBFM
世界観は省略します。痛いので。

=退屈=
この日俺は常識を外れた
某月某日
「暇だな、まったく……」
転校生こと「シン・アスカ」は退屈だ。
泉家に居候を始めてはや二ヶ月半。学校にも慣れ、それなりに友達も増えた。
だが、
「やっぱり、テスト明けってダリぃわ……」
この町に移ってきて始めての中間考査。彼なりに手ごたえはあったのだが、
やはりどこの学校に移ろうとテスト明けからテスト返却までのインターバルは
耐え難いものであるらしい。
「……こなたの部屋にでも行くか。」
いつもは騒々しいこなたであるが、こんな暇なときは役に立つ。シンはベッドから起き上がると、自室を出る。

コンコン
こなたの部屋のドアを心持ち軽くノックする。
「おーい。こなたー。今いいか?」
扉越しに聞こえる、軽快なキーボードをたたく音が止まる。
「ん?チョイ待ち、今ちょうどセーブポイント見えたトコ……」
一体何のゲームをしているのだろうか、こなたの声からは興奮とせっぱつまったような成分が含まれていた。
「ああ、終わったら呼んでくれ。部屋にいるから。」
「あいさー」
手短な返事が聞こえた後、すぐにまた芸術的とも言える旋律が扉越しに聞こえてきた。
本当に分かってんのかな……と疑問に思いつつ、
シンは速やかに自分の部屋へと戻った。
「ったく……いいよな。こなたはいつもすることがあってさ。」
ベッドに寝っ転がり、勝手に拗ねてみる。

4べにばな1号:2007/10/15(月) 01:35:54 ID:rOGAdBFM
正直な話、彼には趣味が無い。
それもこれも運動も勉強も人並み以上にこなすことが出来る世に言うところでのコディネーターであるからか、
本人の性格からかが原因であるかは分からないが、つまるところ、飽きっぽいらしい。
当然、転入当初部活の勧誘が盛んに降りかかった訳であるが、
「暇だな。」
という理由で一蹴してしまっていた。
こうして彼は今、帰るべき家を持つ誇り高き帰宅部に所属している訳である。
と、

「シン〜。終わったよ〜。どったの?」
セーブポイントとやらに到達したのか、シンの部屋に侵攻してくるこなた。
ノックもせずに部屋に入ってきたのは気にもとめず、シンは口を開いた。
「ああ、こなた。悪いな。ちょうど今暇を持て余しているんだ。一緒になにかやらないか?」
退屈紛れにネタを振るシン。
「そうだねぇ、う〜ん……」
腕を組み、考えてますのポーズをとるこなた。だが、答えを出すのにさして時間は必要なかった。
「ならさ、久しぶりに連ザでもやる〜?」
にんまりと営業には不向きのスマイルをかますこなた。この顔のこなたはたちが悪い。
いや手に負えない。と言った方が的を射た表現だ。
「こなたさ…… 俺が連ザ弱いの知っててわざと言ってんだろ。」
当然、格ゲーも一般人に劣らずこなすシンだが、どういうわけか、
連ザは苦手らしい。デスティニーの壁際での横格闘2段目のはずれやすさが、それを助長していた。

5べにばな1号:2007/10/15(月) 01:38:08 ID:rOGAdBFM
「んむぅ〜」
「あー。もっとさ、ゲーム初心者でも楽しめそうな奴をだな……」
「じゃさぁ、近くのゲーセンにでも行く?」
「……まあ、たまにはゲーセンもいいかな。まだ五時過ぎだし。ところでこなた、お前さ」
「んー?」
「この前貸した金はこの機会にちゃんと返してくれるんだよな?」
一瞬、はっと目を見開き反応するこなた。シンの放った渾身の反撃は、見事にヒットした。
「えとですね。わたしさ、こう見えてもお姉ちゃんな訳でして、その……ね?
 お前って呼ぶのは感心しないな、うん。」
「ひとつ違いだろ。てかお姉ちゃんとか言うんならさ、少しは姉らしくしてろよ。
金は無心するし、ネトゲ廃人予備軍だし、とどめに小学生並の」
「あー、あー、あー、まだテープ回してなかったから今のオフレコねー。」
目と耳を隠し頭を振り回す奇怪な高校生がそこにいた。
その身長と行動は、傍から見ると小学生のものなのであるが。
「今度返せよな。仕方ないから今日は俺の貸しでいいよ。俺から誘ったんだし。」

また財布から金が消えていくな、と少し憂慮するシンだが、どの道そう使い道のない金だ。甘やかすのはよくないな、と思いつつ、つい甘やかしてしまっていた妹のことを思い出す。

「じゃあ、貸しじゃなくておごりでもいいジャンさー。けち〜。」
「ほら、日が落ちるのも早くなってきてるんだ。小学生お断りで締め出される前に
 さっさといくぞ。」
「ひどいなー。こう見えても私、ちゃんとバイトとか雇ってもらえるんだよ?」

いつまでも減らず口をたたくこなたを無視して部屋を出るシン。
彼女はこれ以上突っついてもどうにもならないと踏み、彼の背を追った。

6べにばな1号:2007/10/15(月) 01:39:25 ID:rOGAdBFM
=変動=

ゲーセンに来てはや1時間半。軽い暇潰しのつもりで赴いたシンだったが、
予想以上に時間を浪費しすぎた、とは言っても元からするべきことなどありはしないため
心には広く余裕が出来ていた。

そんな遊び疲れた二人は凄まじい喧騒の中で、
「こなたー。もう俺ゲーセン飽きたよ。もう七時も過ぎてるしさ?そろそろかえらないか?」
 うん。そだね〜。おそくなるとお父さんが警察に連絡入れかねないし、
 今日はバイトって言っとけば良かったー。」
「そうじろうさんならソレやりかねないから怖いよ。
 この前こなたが、かがみ達と遊びに行った日もおさえつけるのに苦労したんだからなー?」
「悪いねぇ〜。わたしケータイ持ち歩かないし時間がさあ?」
「携帯電話は携帯するからこそのケータイなんだろ?常時鞄にでも入れとけよ…」
「善処するっス〜。ところでシン〜。」
またもや発動する非営業向きスマイル、
前述の通り、この顔をした時のこなたに益をもたらす事など決まってありはしない。
冷える背筋と意識に軽く喝を入れ、悟る。

つまり彼女は、
「また金か…」

シンはがくりと肩を落とした。
先ほど、アレだけ嫌がった連ザを、無理やりやらされて、挙句23連敗。
どうやらシンは、先ほどの予想から寸分もたがわずにシンの財布を侵食するつもりであると、
いつもの彼女の輝く目を見て自らの溜め息ともに確信を深めた。
「あー。早とちりしてー。べつにまだゲーム続けようって訳じゃないよー。ア・レ。」
彼女の指の先には、
ゲーセンはもちろんのこと今では大型ショッピングセンター・百円均一店でさえも良く目に止まる『アレ』
旧態依然とした四角いシルエット、ならびに理解しがたい容姿をした珍妙なキャラクターを写した垂れ幕を
確認できる、
「プリクラぁ?こなた、お前さ?こういうのしたりするワケ?」
プリント倶楽部よろしく佇む、『激撮!!プリント小僧!!』
熱く深い名前とともに訪れるこの心象は何か、開けてはいけない扉を開けてしまった時のソレを思い起こさせる。
傍らにぶら下げられたハサミはこの様な所でさびを生むために作られたのではあるまいと、
シンは彼の境遇に自分の末路を見た気がした。
「うん、よくかがみ達と撮ったりするんだ〜。ねえ?シン〜。」
 一回さ、お試しキャンペーンってことで、どう?」
「かまわないが…ソレは俺の金なわけで…」
ここで無駄にお金を取られてはかなわない、とGパンの後ろポケットに手を回してみたが、
無い。いや、ソレこそありえない。いつもここには適度な貼り、財布の上半分を感覚できるはずであったハズだ。
…こなたの右手に財布を確認。勝手に左手でコインを投入するこなた。
小気味良い電子音とともに機械に貯えられるシンの100円。
彼は弔うことも出来ずに燃え尽きた友人を見る目でその様を見続けていた。

7べにばな1号:2007/10/15(月) 01:39:56 ID:rOGAdBFM
「フレームどれにするー?」
「この青いのとかいいな。…あ、まだ全部見てない…」
「えい!」

カシャッ
「あぁーっ。まだちゃんとカメラの方向に向いてもいなかったのに…しかもこれ一回撮りかよ…」
「残念だったね〜。つぎー。取りあえずお絵かきタイム〜。ひげ書いちゃえ。」
「ば、ばっか。てんめ、ちょんまげにしてやる!!」
「あー。でもそれなんかちょんまげってよりポニーテールだし。」
「んなっ、んむむむむ。」
「まだまだスペースあるよ〜?悔しかったらもっと書けばいいじゃん。」
「言ったな?こうしてやるっ。」
「あー。ソレはなし、無効、反則〜。消しゴム渡せー。」
「言付けどおりにやってるじゃん、邪魔すんなよなー?」
どちらが先に動きだしたのか、ただでさえ狭いスペースでもみ合う二人、

『いっっ…』
頭をぶつけたらしい。
二人の視界が軽くフェードアウト、
その後、再びフェードイン、片手で頭を押さえる二人。
まあこの絵は仲睦まじい兄妹の図にみえなくもない。
「っつ、痛いな。畜生…」
「こっちの台詞だよ!もう…」

『え?』

きょとんとした顔で見つめ合う二人、焼きあがったプリクラがコトリと音を立てて落ちる。


―――この日、彼と彼女の精神は入れ替わった。

8べにばな1号:2007/10/15(月) 01:40:31 ID:rOGAdBFM
=沈む夕日=
日の沈みかけたアスファルトに影法師二つ。
シンとこなたは帰路についていた。片道30分の道のり。心なしか会話は少ない。
沈黙を破りシンが口を開く。
「なあ、こなた、どうするよ?」
と、遠目で見ても高校生にはとても見えない「シン・アスカ」
「わたしとしてはさ?面白いからいいんだけどね。いやぁ、なんと言ってもこの目線は…」
容姿不相応なオーラを放つ高校生(仮)の「泉こなた」
「だから周りの人に怪しまれるような口調で話すのは止めてくれ…
  帰りにレイやかがみに鉢合わせたらどうするんだよ。」
「シンもそういいながらさ、女の子口調じゃないじゃん。
 もっと女の子らしいしゃべり方じゃないと案外わたしよりばれちゃうの早いかもだよ?
 ほらぁ、言ってみて『わたくしこう見えても淑女なのでしてよ。おほほほほ。』みたいにさぁ。」
「頼む、その声でその口調は止めてくれ。脳がゲシュタルト崩壊を起こしそうだ。」

「・・・って、雑談してるうちに家に着いちゃったねぇ。お姉ちゃんは残念だよ。」
「…取りあえず一安心だな。ご飯でも食べて明日からのことをよくよく話し合おう。」


こなたを先頭にして泉家の扉をくぐる二人、日は落ちて時計はもうそろそろ八時を指そうとしていた。
取り乱すことは無いものの驚きを隠しきれないシン。
やや諦観気味なのか、はたまた単に楽天家なだけなのかは分からないが比較的落ち着いたこなた。
紡ぎの糸は裂かれ新たに道を紡ぎだす、運命の言筋を離れ、現実は真実を紡がんと動き始めた。

9名無しさん:2007/10/17(水) 01:10:34 ID:51XCbKts
見た目がシンで中身がこなただと…唯のオタ少年になってしまうではないか…!
何気にこなたもコーディ級に身体能力が高いので入れ替わった状態でも普通に
活躍できそうだがどうなるシン?

10べにばな1号:2007/10/20(土) 00:20:52 ID:mjCzM5mU
>>9
近いうちにまた続きをうpするので良かったらまた見ていってやってください。

11名無しさん:2007/10/20(土) 03:23:57 ID:yPlRr9bw
了解。楽しみに待ってますよw

12べにばな1号:2007/10/23(火) 22:54:59 ID:CoSDmEvM
お久です。
受験生なんで投下ペース遅ですが勘弁してください。
取りあえず投下。

-第一話-

=空谷跫音=

『ただいまー』

何はともあれ、シンとこなたは無事に泉家に帰還を果たした。
シンは未だに自分の境遇を受け入れられないでいる。
楽天的な思考回路を持つこなたと違い、夢ならば早くさめてほしいと
帰宅の折に何度も頬や脹脛をつねってはみるものの、
残るのは後悔と疼痛だけ、不安が募るばかりであった。

「ご飯、ご飯っと、あ、お父さん。ただいまー。」
毎日、何気なく交わす帰宅な挨拶。
(ばっ、ばかっ!)
帰宅できたことへの安堵感から、つい、いつも通りのパターンを踏んでしまったことを
激しく後悔するシンだが、今はそうも言っていられる状況ではないらしい。
慌ててフォローに入ろうとシンは口を開いた。

「た、ただいま。そう…ぉとうさん!!」
「あぁ、ただいま、こなた。…ところでシン君。お父さんて…」
時既に遅し。とはこのことであろうか、一縷の望みに賭けて
聞こえていないことを願ったが、どうやら作戦は途中放棄をせねばならないようだ。
「お父さん。実はね。さっきまでシンと・・・」
必死でこなたの失態を取り繕おうとするシンを尻目に、
ニヤニヤと笑みを浮かべる黒髪の少年の姿が見て取れる。
そうじろうは始めこそ不思議な顔をしていたが、
「そんなことはどうでもいいんだよシン君!」
今や彼の目は、小学生低学年女児を追い回すアレな趣味を持った大きなお友達のものに
初めておこづかいを貰った子供のうれしさあふれる瞳エッセンスを
30gほど含んだものへと変貌していた。
「いやぁ、いつかいつかと待っていたが、ついにシン君が私のことを『お父さん』と
 呼んでくれる日が来るとはねぇ・・・
 この喜びはこなたが初めて一人で立って歩けるようになった時に匹敵するよ。」
恍惚とした顔でセピアの世界へ遡行をはじめたそうじろう。
なんだかんだでシンの心情は青信号へと変わり、ホッと一息ついたのもつかの間。
諸悪の根源、将に字のごとく泉と名に関する少女は目の前の小さな少女の肩に自らの手を
軽くパットして。
「二人ともご飯さめちゃいますよ?こなたもお父さんも早く食卓についてゆっくりと
 食事を取りましょう。」
「お父さん・・・あぁ、なんと長かった三ヶ月・・・シン君これからもそう呼んでもらえると嬉しいよ。」
あまりの嬉しさからかシンを抱き寄せ、頬ずりをはじめるそうじろう。その姿は
奇怪という言葉を除いて他に表しようが無い。
「はい。お気に召したようで良かったです。これからも『お父さん』と呼ばせていただきますね。」
シンの皮をかぶったこなたの非営業向きスマイル、なぜ体の入れ替わりだけで
あの悪夢の前兆とも呼べる笑みがああも変化するものなのか、シンには不思議でならない。
反論するに出来ない自分の身の上にもどかしさをかんじつつ、彼は食卓に就いた。

13べにばな1号:2007/10/26(金) 23:14:40 ID:0O3FculY
今作は長くなりそうなので
取りあえず、冒頭部分だけ曝します。

=初夜=

夕食を終え、テレビを見てすごすも、時計の針はもう十時を指している。
突然、リビングの扉が開く。
「お風呂上がったぞー。シン君、こなた。今日はどちらが先に入るんだい。」

泉家では、シンがやってきて以来、毎晩のように『お風呂じゃんけん』が開催されている。
先鋒は家主そうじろう、その次に誰が風呂に入るのか。ソレを決める泉家恒例の行事の一つである。
いつもはそうじろうが入浴しているうちにCMの合間を狙って開催されるのであるが、
この状況、そうはいくまい。こなたは始めのうちこそ『見られてもかまわない。』と言を発していた。
しかし、ほんのりと赤く頬を染めている以上、冗談と受け取るのが礼儀であろうとシンは踏んだ、のだが。

『一緒に入る!ます!!!』

二人して声を上げる二人。多少語尾に違いはあるものの、つまるところは
『一緒に入浴』するらしい。というのも先のお風呂会談で野決定事項であり、
双方の条件付降伏、譲歩なのであるが…

―それは数分前の話

14べにばな1号:2007/10/26(金) 23:22:06 ID:0O3FculY
ID:0O   ニヤリ

訂正です。『お風呂会談での決定事項であり、』の間違いでした。
どうもすみません。

15名無しさん:2007/10/28(日) 20:30:21 ID:jwfZbEuM
何故かアクセス規制されてたので

あやの「今日は和風と中華どっちにしようかな」
みさお「しいたけ入れるなよ」
あやの「次はお肉、っと」
みさお「しいたけ入れるなよ」

みさお「しいたけ入れるなー!」
あやの「ちょ、みさちゃん」
シン「おまえら何やってんだ?」

16名無しさん:2007/10/30(火) 01:13:20 ID:9X1xsZ5E
新スレが立とうというのに規制に巻き込まれるとはこれも運命
とりあえずこちらに投下。初書きSSなんで物足りないのは勘弁

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

放課後、陵桜学園2年C組の教室に柊かがみは一人残っていた。
担任から体育祭に向けての掲示物その他諸々の雑用を押し付けられていたのだ。
「まったく、何で学級委員でもないのにこんなことやらなきゃいけないのよ…」
なんだかんだ言いつつもきっちりと片付けてしまうのは優等生の悲しい性だろう。
気づけば教室には誰もいない。妹のつかさには先に帰るように言ってある。
「……帰るか」
吹奏楽部の練習する音だけが響く中で力なく呟き帰り支度を始めた。

そこへ言い争うような男女の声が聞こえてくる。
「だから次の大会だけでも出てみなって!」
「だが断る」
近づいてくる騒音の元はクラスメイトの日下部みさおと隣のクラスのシン・アスカだ。
みさおは中学以来の腐れ縁なのでかがみもよく知っている。
かたやシンは3ヶ月ほど前に突然現れた正体不明の人物。
かがみの親友である泉こなたの家に居候としてやってきたそうだがそれ以外の、例えば
泉家との関係や居候の目的などことはまったく知らない。泉家へ遊びに行った時は彼は
自室に篭っていて姿を見せなかったし、先月この学校へ転入してからもあいさつ程度は
するがそれ以外にはほとんど交流がない。彼は基本的に無愛想だし休み時間も教室に
いないことが多い。一度だけこなたに連れられて柊家に来たことがあるが、神社を
物珍しそうに見物した後一人で帰ってしまった。こなたに言わせれば
「貰われてきた子犬が怯えてるようなものだよ〜。そのうち慣れるって」
とのことだが別に無理して仲良くする必要もない、とかがみは考えていた。
ちなみにみさおは体力測定や授業でで高校生離れした身体能力を見せたシンを陸上部に
熱心に勧誘している。先ほどの発言も恐らくその類だろう。

17名無しさん:2007/10/30(火) 01:13:59 ID:9X1xsZ5E

「あれ? 柊ィ、まだ帰ってなかったのかよ」
かがみの姿を見つけたみさおが教室に入ってきて陽気に尋ねる。
「先生に雑用押し付けられてね、もう終わったから帰るけど。アンタは何してんの」
「いや〜部活行く前にウサ目を捕まえたから陸上部の練習ちょっと見せてたんだけど。
コイツすぐ帰ろうとするから追っかけてきたんだよ。」
ウサ目とはみさおがシンにつけたあだ名で、目が赤く色白だからという彼女らしく
直線的な発想だ。但しみさお以外にそのあだ名で呼ぶ者はいない。
「他に用がないなら俺は帰るぞ?」
「ああっ、待てってば! 一回練習に出るだけでもいいから!頼むよ兄貴〜!」
「…………いや俺にこんな妹はいない」
シンは何故か一瞬逡巡したがすぐにまた帰ろうとする。
「どうせ暇なんだろ〜?なあ、柊からも言ってやってくれよ!」
「目立ちたくないんだ。ほっといてくれ」
暗に目立つほどの活躍ができると言っているようなものだ、案外自信家なのかも
しれない。そう思いつつもかがみは巻き込まれない内に退散しようとする。
「ハァ……私は疲れたから帰らせてもらうわよ」
実際、この日は朝から体調が悪かった。さっさと帰り支度を続ける。
「おい柊、顔色が悪いぞ。熱でもあるんじゃないか?」
そう声をかけたのは意外にもシンのほうだった。他人に興味がなさそうに見えるが
そういうわけでもないらしい。
「疲れが溜まってるのよ。世話が焼ける妹みたいのがいっぱいいるから」
「お? その妹みたいのには私も入ってるのかな〜?」
「できれば入ってほしくないんだけどね」
「いいじゃないか、慕われてて」
初めて聞く穏やかなシンの言葉にかがみとみさおは目を丸くする。
「だけど具合が悪かったら妹達を守れないだろ…ちょっと動くなよ」
「え? アンタ何を――」
シンは座っているかがみの顔を覗き込むようにすると手で頭を押さえて額を合わせる。
「うひょー!」
「おい! やっぱり熱があるじゃないか!」
「今時そんな熱の測り方する奴がいるかー!」
歓声をあげるみさお、何故かキレるシンに突っ込むかがみ。異性の顔が未だかつてない
距離まで接近した事実にかがみの頬が急激に紅潮する。
「大体そんなことされたら熱がなくても熱くな……」
かがみは立ち上がろうとするが興奮して大声を張り上げたせいか眩暈がしてよろける。
「あ、おい柊! 大丈夫か!?」
倒れそうになるかがみの身体をシンが咄嗟に横から手を伸ばして支えようとする。
しなやかで力強いその掌の槍は思いのほか豊かな双丘の一つを見事に制覇していた。
「「あ」」
「な……何やってんのよアスカ! アンタって人はー!」
「ご、ごめん……アッー!?」
電光石火の肘がシンの鼻柱を直撃すると同時にかがみの意識は途絶えた。
「おおっ! これが噂のラッキースケベってやつかー!」というみさおの声は彼女には
届かなった。

18名無しさん:2007/10/30(火) 01:15:05 ID:9X1xsZ5E
かがみは夢を見ていた。金髪の少年と少女、そして黒髪の少年。立ち去ろうとする
金髪の二人を黒髪の少年が追いかけるが何故か距離が縮まらない。やがて二人が
立ち止まって振り返り黒髪の少年に何事か言った後、姿が見えなくなる。残された黒髪の
少年は泣いていた。その少年の顔は――


白い天井が見える。
「あれ……ここは……?」
「あら、目が覚めたみたいね。アスカ君、柊さんが起きたわよ」
かがみが周囲を見回すとどうやらそこは保健室のようだ。
「アスカ君が血相かえてあなたを抱えてきたから何事かと思ったけど……風邪と疲れで
弱ってるところに興奮したからちょっと意識が飛んじゃったみたいね」
保健の天原ふゆき先生が状況を説明する。みさおは部活に戻ったらしい。そして
付き添いに残ったのが――
「柊! 良かった、目が覚めたのか!」
「お、大袈裟ね……もう平気よ。っていうかアンタすごい顔になってるわよ」
主人の帰りを待っていた犬のように駆け寄ってきたシンの顔はというと鼻にティッシュを
詰めている。顔立ちが端正な分、妙な間抜けさがあり普段のとっつき難さが薄れている。
先程見た夢とは関係ないかもしれないが彼も黒髪だ。
「あ、ああ、これ位はなんともない。俺のせいでアンタに何かあったら……俺は……
こなたに何をされるかわからないからな」
「なんでそんなに慌ててるのよ……っていうか普段こなたに何されてんの」
「そんなことどうだっていいだろ! それより迎えに来てもらおうと思ってアンタの家に
電話したんだが誰もでないぞ?」
言葉を濁しつつ話をそらすシンにかがみは溜息をつく。
「今日は両親とも遠方で仕事だから遅くなるし姉さんたちもまだ学校でしょ。つかさは
こなたと寄り道でもしてるんじゃない? 大丈夫よ、一人で帰れるから」
「そういうわけにはいかない。俺が家まで送る。道も覚えてるしな」
「いやホントに平気だから……」
そう言いつつかがみはベッドから降りて歩こうとするがまだ少しふらついてシンに
支えられる。
「無理だね。こんな状態で放っておけるわけないだろ」
「……ぅぐぅ……」
「柊さん、無理しないで送ってもらったほうがいいわよ? かなり熱もあるし」
とりあえずシンが保健室に駆け込んできた時かがみをお姫様抱っこしていた事は黙って
おこうとふゆきは思った。なんとなく、ではあるが。

19名無しさん:2007/10/30(火) 01:16:00 ID:9X1xsZ5E

結局かがみが折れてシンに送ってもらうことになり、そして駅から家までの道のり――
なぜかかがみはシンの背中に乗せられていた。
「うう……この年になっておんぶされるとは…」
「年は関係ないだろ。あんなフラフラされたら周りに迷惑だ」
年頃の女子にとって男子におんぶされるなど抵抗があるのだがシンはまったく気に
した様子はない。教室での件もそうだが、感覚がズレている上に空気が読めないのだ。
いちいち意表を突いてくるシンにかがみはペースを崩されっぱなしである。
ちなみにタクシーという選択肢が二人の頭に浮かぶのは当分先の話になる。
「はぁ……なんか今日はアンタに迷惑かけてばっかね……ゴメン……」
「一応、その、原因の一部は俺のせいだからな」
少し恥ずかしそうに言うシンにかがみも”アレ”を思い出し赤くなる。
「あ! そ、そうよアンタ、人の胸触っておいてどう責任とるつもりよ!」
「うわっ、背中で暴れるなよ! 髪も引っ張るな!」
ひとしきり暴れて疲れたのか、かがみが再び大人しくなるとシンが溜息をつく。
「まったく、病人なんだから最初から大人しくしてろよ」
「アスカ……なんかイメージと随分違うわね」
「ハァ? それは今まで喋ったことなかったからだろ」
「もっと冷たくて、他人に興味ないって感じかと思ってたんだけど案外お節介なのね。
別に親しくも無い相手にここまでするなんてちょっと意外」
「べっ別に意外ってほどでもないだろ! それに目の前で人が倒れたらアンタだって
そうするんじゃないか? こなたが言ってたぞ。かがみはなんだかんだで良い人だって。
こっちの言葉ではツンデレって言うんだってな」
「ア、アイツは何を勝手に……っていうかアスカ、間違った言葉教えられてるわよ」
良い人と言われて照れつつも微妙な突っ込みドコロは見逃さない。どうやらシンは
良い人イコールツンデレと認識しているようだった。
「違うのか? くそっ、またやられた!」
「アンタ達の普段の会話が気になるけどとりあえず私はツンデレじゃないからね。」
一概には間違いとは言えないのだがかがみとしては否定しておかねばならない。シンは
以前にも同じような事があったのだろうか何かブツブツと呟いていた。それからバツが
悪そうに少し笑ってかがみの方に振り向く。夕日を受けて紅い目が輝きを増していた。
「そ、それはいいとして……とにかく早く元気になれよ。こなた達も心配するだろうし」
「そうね、手のかかる子ばっかりだから私が面倒見てやらなくちゃ」
「そうだな。でも今日みたいな時は、俺で良ければ力になるから無理はするなよ?
なんか妹よりしっかりしなくちゃとか思ってがんばりすぎてそうだからな」
「無理なんかしてないわよ!」
「そうか? それならいいけど」
「けっこうあっさり引き下がるのね……」
「どっちなんだよ! ああ、なんかよくわかんなくなってきたけど! とにかく!
何かあったら俺が守ってやるから。一人であんまり色々抱え込むなってことだ!」
守ってやる――どちらかと言えば守る側であることが多いかがみにとってそれは新鮮な
響きだ。それを今日初めてまともに会話した相手は大真面目で言っている。しかも話が
大袈裟になっているというかズレてきている。それでも彼の不器用だが真っ直ぐな
優しさはかがみに伝わって重い気分を軽くしてくれた。
「……ありがと、シン」
「んあ、何か言ったか?」
「別に!」
「何なんだよ一体……あ、おい柊。この道で……」
「……かがみ。私の名前、知ってるんでしょ?」
「ん?ああ、そうだな。かがみ、この道こっちでよかったか?」
「そうよ。よく覚えてるわね。それから……」
かがみの、シンの肩を掴んだ手に少し力が入る。細身だがその背中はがっしりしていて、
身体を預けるとなんだか安心できるような気がした。
「ま、たまにはこういうのも悪くないわね」
「また何かいったか?」
「何でもない!」
「変な奴だな……」
「アンタもよ。とりあえず今後ともよろしくね」
「そうだな、こちらこそヨロシク頼む」

幾つかの偶然が重なったことでこの日本当の意味で出会い
しばしば喧嘩しつつも笑いあう二人の姿はこの時と変わらない。

20名無しさん:2007/10/30(火) 05:40:43 ID:PfeE3qP2
>>19
GJ!
こういうちゃんとフラグ立つ話が読みたかった。これで初書きか…

21名無しさん:2007/10/30(火) 18:08:11 ID:mdal1gXs
本スレに投稿したけど、荒らしがひどいのでこっちに投稿しなおします。
シン対SOS(白石みのる)団 最終局面

白石「また君か…やっかいな奴だよ、君は!!」
シン「白…石?」
白石「やってはならない行為だと言うのに…」
シン「何を!?」
白石「見れば誰もが望むだろう、君のようになりたいと!君のようでありたいと!!」
シン「そんなこと!!」
白石「ゆえに許さない、君という存在は!!」
シン「パルマだけが、俺のすべてじゃない!!」
白石「それが誰に分かる、何が分かる、分からぬさ!誰にも!!」
シン「ッ!!」
白石「これが運命さ、知りながらも突き進んだ道だろう?」
シン「何を!?」
白石「偶然と信じ、分からぬと逃げ…(告白を)言わず!聞かず!!その果ての終局だ。もはや止める術などない!!」
シン「それは…」
白石「そして滅ぶ、フラグは…滅ぶべくしてな!!」
シン「そんな事…そんなお前の理屈で!!」
白石「それが女子だよ、シン君。他者より早く、他者より先へ、他者より上へ!妬み、憎み、その身を食い合う!!」
シン「違う!!彼女は、彼女達はそんな人じゃない!」
白石「何が違う、何故違う!あの嫉妬の目と心と、(喧嘩の)引き金を引く指しか持たぬ彼女達に、何を信じる!何故信じる!!」
シン「パルマすら知らないお前が!!」
白石「知らぬさ!所詮俺は、あきらの八つ当たりしか知らぬ!!まだ苦しみたいか。いつかは、やがていつかはと…そんな甘い毒に踊らされ、いったいどれだけの胸をパルマしてきた!!」
シン「くぅ…!!」
白石「それだけの業を…重ねてきたのは誰だ!!君がその中心だろうが!!!」

シン「それでも、立てたいフラグがあるんだぁぁあああああああぁあ!!!!」
白石「何!?うぉおおおおおおお!!???」

22名無しさん:2007/10/30(火) 20:27:23 ID:YQpmhiA6
シライシクルーゼ・・・かっこいいw

23:2007/10/30(火) 21:54:50 ID:Iw0KEVIE
コーラサワーで投稿したいのに…


どうしたらいいんだよ…

24名無しさん:2007/10/30(火) 22:18:00 ID:mdal1gXs
コーラサワー…楽しみにしてたのに
うぐぅ

25名無しさん:2007/10/30(火) 22:48:41 ID:pfRcRajg
>>19
GJ!初めての出会いネタは久しぶりで新鮮だった!
初めて書いたとは思えないほどキャラが「らしく」てよかった!

26名無しさん:2007/10/30(火) 22:52:12 ID:YQpmhiA6
シン「なぁこなた」
(=ω=.)「ん〜?」
シン「お前は普段からフラグフラグって言うけどさ」
(=ω=.)「うんうん」
シン「そう簡単にフラグって立つのか?」
(=ω=.*)「さぁ、どうだろうねぇ〜・・・誰か立てたい人でもできたのかい!?」
シン「いや!別にそういう意味じゃないけど・・・」
(=ω=.*)「ふぅ〜〜ん・・・ま、もう立てる必要はないもんね!」
シン「どういう意味だよ!」
(=ω=.*)「さぁ〜ねぇ〜♪」


(=ω=.*)(はたから見てると、この鈍さが逆に萌えるね!)

27名無しさん:2007/10/31(水) 06:43:54 ID:rZN457p6
勝手に初めての出会い考察(主要4メンバー除く)
 
 
ゆたか→危ない人に絡まれてるところを助ける(デパートの迷子センターとか……)
みなみ→入試の日にぶつかりみなみの進願書を無くしてしまい一緒に探す(本屋で同じ本を一緒に取ろうとしてしまったり……)
ひなた→…………
パティ→こなたの紹介で知り合う(日本に来たてのパティに盛大なパルマで一晩留置所とか……)
ななこ→ななこの乗ってる車に轢かれて介抱したり〔ナイチンゲール症候群?〕(パルマ!パルマ!パルマ!!)
みさお→ドーナッツ屋で隣りの席になる、シンのドーナッツが一つ多く入ってたりする、みさおが足りないと呟く、シンがみさおにドーナッツをあげる

28名無しさん:2007/10/31(水) 18:49:49 ID:G5yAiFl2
あやのの彼氏がいる設定で書いてみたぜ

みさお「zzz……」
かがみ「また寝てるなー」
あやの「上着かけてあげなきゃ……」
かがみ「本当に峰岸は日下部の面倒よく見るわねー。
 やっぱり、彼氏つながりかー?」
あやの「もぅ。柊ちゃんまで……からかわないで」

みさお「あ…兄貴……。と、何だ、ウサ目いたのか…」

あやの「あら?」
かがみ(日下部のお兄さんって、確か峰岸の……ってか、また寝言かよ)

みさお「… … う わ … … え ろ っ 」

あやの&かがみ「…………」

あやの「ねぇみさちゃん……今、二人の男の人の尊厳を踏みにじる夢見てなかった?
 ものすごく根も葉もない類の……」
みさお「な、なぁ……なんで二人とも怒ってんの!?」
かがみ「良いから謝れ。土下座で」

29名無しさん:2007/10/31(水) 19:10:54 ID:hPwwZBzA
>>26
立てる必要がない……もう全員たったってことか?w
そしてこなたがシンに毒されたww

30名無しさん:2007/10/31(水) 21:12:36 ID:uXguJ5IQ
<昼休み>

こなた「きのう種死を見てたんだけどねー」
かがみ「あら珍しいわね。あれだけボロクソに叩いてたくせに。」
こなた「いやーやっぱり同居人の活躍を確認しておこうと思ってねぇ〜。」
かがみ「で、どうだった?」
こなた「うん、かがみって結構シンの好みのタイプかもよ〜(=ω=.*」
かがみ「え!?ちょ、何でそうなるのよ いきなり!!///」
こなた「いや〜、なんとなくそう思っただけさ〜♪」
こなた(怒ると怖いところがステラちゃんに似てる・・・とは口が裂けてもいえないよ♪)
かがみ(もうちょっと突っ込んで聞きたい・・・けど聞けない・・・)

31名無しさん:2007/11/01(木) 00:27:17 ID:5SaqISCg
>ω<「やっほー、こっなった。遊びにきたよーん」
シン「あ゛」
こなた「あ゛」
注:お互い裸で一つになろうとしてるときにきました。
>ω<#「逮捕するぅぅぅぅぅ」
シン「わーーーーー」

32名無しさん:2007/11/06(火) 23:16:29 ID:Duml9lUU
とりあえず11スレ現在での呼称表

3年組
こなた→シン、シン君
かがみ→シン
つかさ→シンちゃん、シン君
みゆき→アスカさん、シンさん
みさお→ウサ目
あやの→シン君、アスカ君
白石→アスカ、シン

同級生組
こう→???

後輩組
ゆたか→アスカさん、お兄ちゃん
みなみ→アスカ先輩、シン先輩
ひより→シン先輩、アスカ先輩
パティ→アスカ

保護者、先生
そうじろう→シン君
ななこ→アスカ
ゆい→シン君
ゆかり→シンちゃん
みき→シン君

33べにばな1号:2007/11/07(水) 23:40:37 ID:.ujM9S/s
>>16->>19

GJです。キャラの出し方ウマーで憧れます。自分gdgdになりやすいんで。

久しぶりに覗きにきました。本スレ崩壊してますね。
スクリプト荒らし凄かったし。
取りあえず、長くなりそうなんで中途半端ですが投下します。
再度修正版をうpすることになるかもしれませんが、流れだけでもつかん
でいただけると幸いです。

34べにばな1号:2007/11/07(水) 23:42:49 ID:.ujM9S/s
>>13
『―そう、真犯人は別にいる、それは……公彦さん。あなたです。』
『ふん。どんな理由があろうと公彦さんが殺人なんかするワケないだろう!』
『そうだ!そもそも動機が無い。公彦さんには不可能だよ!』
『そこですよ。僕は始めてこの館に招待されたときから不思議に思っていた……』
『始めてきたときからだと?』
『そうです。始めてこの館に来たとき、二階の被害者の部屋のカーテンは閉まっていましたよね?
 しかし、弟、哲夫さんの叫び声を聞いて、ドアを突き破り部屋の中に入った時、カーテンは閉じられていた……
 ずらされていたカーテン。あれこそがこの事件のキーアイテムなんですよ。』
『カーテン?新田市。それとこの事件に何の関係があるんだ?』
『剣串警部。それはこれから実際にやって見せます。美咲。そこのカーテン、思いっきり横に引っ張ってみてくれ。』
『え、私?…うん。分かった。引いてみるね。』
『…この細い糸、これは、ピアノ線か?』
『警部。そのピアノ線には血液が付着しているはずです。調べてみてください。』
『…ああ。付いている。柏田君、鑑識に回してくれ。』
『はい。剣串警部。』
『そもそも、このピアノ線を使ってどうやって密室がを作り上げるのか……』

『CMの後も、‘新田市青年の事件録〜時計塔の殺人鬼〜,を引き続きお送り致します。』


静かにディスプレイを見つめていた二人はCMにはいるのを確認し
今まで肺に溜めていた空気を吐き出した。
「体が入れ替わっても、これだけは見逃せないよね。シン。」
「まあ、そうだけどさ。そうじろうさんが居ないからって素で話をしていたら
 ひょっとした拍子にバレちゃうぞ?さっきも危なかったんだから。」
「ほかに人がいない時くらいイイじゃん。案外疲れるモンでしょ、こういうのって。」 
「まあ。そのことも含めてよく話し合わないとな。」
「その前に『お風呂じゃんけん』しようよ。早くしないと始まっちゃう。」
「そうだな。今後の事は夜にでもゆっくりと……って、お風呂!?」
「そだよ。いつもやってんじゃん。」
「ちょちょちょ、ちょっと待て、風呂がどうしたって。」
「忘れちゃったの?お風呂、どっちが先に入るかのじゃんけんだよ。」
シンは今になってようやくこなた、いや、今はシンの顔なのだが、
その顔の頬が緩み目尻に皺がよっていることに気が付いた。
そういえばシン化したこなたの笑みは彼女の思考の邪悪さを表しがたい、
もとい、シンはまだ把握できるまでに見慣れてはいなかったのだ。

35べにばな1号:2007/11/07(水) 23:44:20 ID:.ujM9S/s
>>34
(もう少し笑う練習でもしておけばよかったか……)
鏡の前で両手の人差し指でほっぺを指し、首をあからさまに30°右に傾け、
エンジェルスマイルの練習をするシン。も、4つ星程度にレアなので見てみたくもあるが、
いかんせん、不気味なことに変わりはなかろう。
しかし、今夜、『お風呂じゃんけん』がシンにとって最大の難関になりそうなのは言う甲斐無しだ。
頬筋の鍛錬についてはまた今度検討しておくことにしよう。
「シン〜。始まるよー?」
「ちょっと持て、こなた。俺たちが今日とんでもない事になったのを忘れた訳じゃないよな。」
「うん。こんなビックイベントを忘れるわけ無いじゃん。」
「じゃあ、それに関する問題点、特にお風呂については、よおぉく話し合わないとだめだな。」
「うん。一緒に入ろう?」
「さて、テレビを消すか……」
「うん。つけよう?」
この手のやり取りはもう慣れている、なにせ居候を始めてからというもの、
ほぼ毎日繰り返してきたやり取りだ。
どんなにトリックを知りたくても、これだけは譲れない。
唐突だが彼は冷めた風呂が大の苦手だ。やはりお湯は熱々に限るのだという。
彼にとって二番手に熱々お風呂入浴権を取得するのは至上目的でありコーランの戒律に等しい。
それよりも、彼はこのスルースキルを日常生活に反映させる事にこだわる方が、
幾分マシに過ごせるであろうことは内緒なのである。

36べにばな1号:2007/11/07(水) 23:44:59 ID:.ujM9S/s
>>35
「まず、正直に言わせて貰うけど、俺はこなたに自分の体を見られるのが恥ずかしい。」
「じゃあ、わたし、お風呂は入れないじゃん。…大丈夫、シンならいいよ、、、?」
「頼むから俺の声でそういうことを言うのは止めてくれ。悪いがこなたの体を好んで見ようとは
 …まあ、思わない。」
「なにさ。さっきの間はぁ。もしかしてシンちゃん……ロリk」
「ち、違う。そうじゃない。単純に恥ずかしいだけだ。こなたも高校生なんだからいろいろと、
 なんだ、あるだろ!!」
「高校生って言ってもねぇ……服とか小学生サイズだしブラとかも、」
「だあああぁ!やめろ、言うな。恥ずかしくないのかお前は!!」
「いまさらだしねー。いつも見てるんでしょぉ?お風呂上りのあ・で・す・が・た。」
「しょ、小学生がなに生意気言ってんだよ。ぜんぜんどうってこと無いし、いつも見ているワケじゃない。」
「スケベぇ。」
「自分の声で言われるとさらに罪悪感が深くなるのはなぜなんだ?」
「まあそれはそれとして、お風呂の件なんだけどさ。まあ、わたしも恥ずかしくないと言えば、
 そうでもないワケで……そこで提案なんだけどさ?お互いに水着で入ってさ、洗いっこするのが
 お互いにアレだと思うんだけど。」
「ちょ、洗いっこって、しかも水着!?いや、それ、なんて……」
「ねえ、シン、ここは現実世界だよ?二次元の話じゃないんだからさぁ……」
「てか、なんでさっき俺はこんなことを考えて……。
 もしかして、入れ替わったことで多少、お互いの記憶が混同してるとか
 そういう類の話なのか?」
「え、気が付いてなかったの?回想しようとしたら何となくだけど、
 わたしの記憶とかが溢れてくるでしょ?」
シンはそっと胸の上に両手を重ねて、こなたの中心を探す。
白と青の光の渦に自分をねじ込むように、そのまま彼は記憶の遡行を始めた。
終点の白い壁を打ち破る、いや、すり抜けたというべきだろうか、不思議な感覚。
全身で感じる自分とは別の脈動、そして跳躍。
シンはどこまでも大きく広がり世界と一体化する。
それは小さい、しかしながら、暖かくもある心象風景。こなたの心のカケラ。
控えめの日差しの中に甘く芳しい香りを織り交ぜた桜色の風。
飛び交う花弁のなかにシンは二つの影を見た。
ひとつはこなたくらいの背丈か、もう少し高いくらいだろうか、
麦藁帽子に赤い靴、大気を纏い地上を舞う、その軽やかなステップは春を模した天使。
もしかするとこれこそが春と言うべき―――その傍らにそうじろ―――笑って―――?

「ぜ、全裸のそうじろうさんが知らない少年とアッー。」
「それ、妄想違いだよ。そんな記憶は無いって。そういう妄想に至る素材が無いことも無いけどさ。
 もしかしてまだ安定してないのかな?わたしは数回シンの心を覗こうとして三回ははっきり覗けたよ?
 さすがに始めはぐちゃぐちゃだったけど。なんか人に見られたくない記憶とかは鮮明には読み取れないみたい。」
「おい。人に黙って心の覗き見とかするなよ。たちが悪いな……」
「ちょっと、気になることとかがあってねぇ。今後は控えますでっす。」
ほんのりと頬を朱に染めるこなた。見られたら困る記憶と言えば、まあ、人並み、
いや、それ以上にあるシン。その一つ一つを思い出し、彼もまた頬を染めあげた。
「まあ、この件についてはまた今度ね。お風呂の件だけどさ、どうなの?」
「俺はその……それ以外に案が無いならそうするしかないというか……
 でも、俺が洗ってやってるとき目を開けたりはなしだからな!」
頬が赤くなるのを感じる。なんだかんだでシンもまた一介の少年、男の子にすぎない。
負け惜しみ、減らず口を叩きつつも年相応のテレは生じるものだ。
まして普段近くに居たにもかかわらずあまり意識しなかった少女のカラダ、
案外、それなりに女性的な……
(イカンイカン)
フルフルと憑き物を払うかのように首を振り、かつて自分のものであったはずの顔を見つめる。
心なしか頬を染めているようにも見える。こうして自分の顔を観察することはあまり無い。
(普段は気が付かないけど俺って意外と中性的な顔つきしてたんだな。)
そして、ふっと笑みを漏らす。
こなたは、なぜ自分の顔を見て笑われたのかは分からなかったが小さな温かみを感じて微笑み返し、言った。
「まあ、わたしは別にシンとお風呂に入る分は構わないから。」
多少、シンの成分がにじみ出ているが、これはこれでいいと密かに納得したシンであった。

37べにばな1号:2007/11/07(水) 23:45:46 ID:.ujM9S/s
>>36
=インターローグ=

「暑い……」
すでに泉家には橙色の光が灯っていた。
大き目の敷布団に赤と白の横長いタオルケットを掛け布団にして横たわるその図は川の字を思わせる。
突然、同じ部屋で寝ると言い出したシンとこなたに付き沿い寝息を立てるそうじろうは、いつに無く快適な睡眠時間を得ていた。

これは約二時間前と数ヶ月前にあった、とある二人の話。

「目ぇ、つぶってて。」
ごくごく普通のどこの家庭にもありうる脱衣場。
一日の大半、静謐とした雰囲気を漂わせるこの場も、八時を過ぎた頃からはどこも騒がしくなる。
「――だから、瞑ってるってば!イタっ!もっとゆっくり脱がせよ。自分の体なんじゃないのか!?」
それは泉家も例外ではなく、四角い窓のふちから影絵劇のようにシルエットと一致しない会話が漏れていた。
服が擦れ合って立てる音など普段は気にもせずに聞き流すものなのだが、目を瞑り、他人に脱がせて貰うという
スチュエーションはなかなかに人間の妄想を掻き立てるようだ。
こなたは彼の体に大き目のバスタオルを巻く。客観的にみた自分の肢体のあまりの華奢さに自分自身、
寂しさを覚えている。
「悲しい……、って言うべきなの、かな……?」
ふと漏れたよく知る少女、いや、自分の声を発することの出来るカラダを持ったよく知っていたハズの少女の声。
普段、こなたが弱気になる事など予約時期を誤り初回購入特典を取り逃した時や通常版と限定版に加え豪華版が出ていたことを
発売後に知ってしまった時くらいだ。
まだ馴れないこなた仕様の自分の声でもその位の感情を聞き分ける事くらいは出来る。
彼自身、のんべんだらりと17年を生きてきた訳じゃないという事だけは自信を持って言える自信があるからだ。

38べにばな1号:2007/11/07(水) 23:46:24 ID:.ujM9S/s
>>37
彼にはひとつ年下の妹がいる。
『マユ・アスカ』
小学校低学年時に原因不明の肺疾患を患い、一時は持ち直したのではあるが、その後は、小康状態が続くばかりで
ちょっとしたことが原因で突発的に再発症、そして持ち直す。という、あまりに体に対する負担の大きい事態を繰り返し続け、
ついに今年の春、ちょうど春休みの初頭に入院、時間を掛け精密検査をこなし治療に専念することを医師から薦められた。
中学校入学を後数日に控えていたマユは家族にこう言った。
「私、そろそろかなって、自分でも感じてたの。前よりも発症の間隔が短くなってきてたしほんの些細なことで
 症状が出るようになってるんじゃないか、って……。
 三週間くらい前からかな、眠っても眠っても疲れが取れにくくなってるのに気が付いて、学校から早退する度合いも
 どんどん増えていって、たくさんの人達に迷惑掛けてたんだなって、実感したわ。
 クラスメイト、ルナさん、ディーノ先輩、お父さんにも、お母さんにも、お兄ちゃんにも……。」
いつまでも幼く見える自分の妹が自分の前で初めて一筋の涙を見せた時、彼は本気で世界を呪った。
なぜマユが、よりにもよって自分の妹であるマユがこんなにも思い悲しみと病を背負わなければならないのか、
もちろん、それが他人ならば……とまでは言わない、だが彼は思う。
なぜ、すべての人が幸せを享受することができないのか?
なぜ、絶えず続く幸福が存在しないのか?
なぜ、自分はこんなにも無力なのか?
「でもこれでいいの!病院だったら看護婦さんがいつもも一緒に居てくくれるし、私の大切な人達に迷惑を掛けないで済むから。
 お父さんは遅くまで会社で仕事に携われるし、お母さんもいつも携帯を気にしないで皆の為に家事が出来るわ、
 お兄ちゃんだって部活に入れるし、友達とも遊びに行けるし、彼女だって作れるんだから。」
マユはいつも見ていた。自分を思うあまりに部活にも入らず学友との親交も深めず、愛の告白をも断り続けていた事。
自分の存在はいつも周囲の人々の自由を奪う。
いつも回想していた、自分の居ない日常。
兄は学園を誇る人気者で、友達もたくさん居て、頭も良くて、スポーツも何でも出来て、でもちょっと優柔不断で……
「私ってどうしてここに居るんだろ……」

彼はあまりにも深く傷つきすぎた心の行き着く先を知っている。
悲しみの感情は負の連鎖を生み、周囲の人間に伝播する。
ヒトはもともと感情の変化に弱い。特に矜持を保てなくなったり、自分の薄汚れた心と直面したりした時に生まれる、
『負の感情への変化』いわゆる、『鬱』の状態に陥ることが怖い。
だからアイデンティティを必死で保とうとする。それさえも妨げるのが『悲壮感』である。
『自己犠牲の精神』とでも言い換えられようか。
それは自分を侵し、遂には他人を冒す。それは自分を引き裂くよりも遥かに痛みを生じる。
だから人間は最終的には大切なものの価値の存続の為に自己を犠牲にする。
彼の理念は『万物の永久的な平和的価値の保存』とも言える。
それは、幼い頃から家族の、妹の価値を知っていたからこそ、生まれてきた、
彼の優しさそのもの、そして彼の生き方。
すべての幸福を祈る切実な彼の願い。
だが、彼も理解してはいた。
『すべての者に幸福を分け与えるのは独力では不可能である』
だからできるだけ、数多くの人達に笑っていて欲しかった。

「マユ。お前には笑う権利があるんだよ?すべてを背負って気に病むことはないんだ。
 誰もマユに迷惑を掛けられたなんて思っちゃいない。それは、好きでやってることなんだ。
 皆、お前に笑って欲しいんだよ。元気を見せて欲しいんだ。だから、今も皆でお前と一緒に飛んでる。
 いつだって傍にいるし、いつだって手助けする。お前も俺たちの群れでいつまでも飛んでいてくれよ。」
彼は再び言葉を紡ぐ。
「――今、お前は笑えるか?」
「うん。お兄ちゃん。」

これは月が6度程満ちる前の話。一人の少女は再び大地を蹴る決意をした。今度こそ自分の群れに混じって飛べるように。


「こなたは今、幸せか?」
いつか、聞いたその言葉を目の前の少女に掛ける。
「サイアク。」
「あんまり、悲観的になりすぎるともっと良くないことになるぞ。」
「それはつまり、収斂するってことですかね?」
「は?」
この時になって始めて彼は気が付いた。
「この境遇のことじゃ無かったの?悲しいって……」
「――私の胸の話……」
正直、彼は言葉を失った。
「まっ、今更だけどね。」
彼の瞼ははいまだ閉じられたまま裏に闇のみを映し出している、しかし、その表には柔和な目をした顔が映し出されていた。

39名無しさん:2007/11/19(月) 20:54:45 ID:YP..WOVE
〜金曜の放課後〜
ななこ「今日もこれでおしまいやなぁ〜」
スウェン「そうですね。」
ななこ「どうや?一杯」クイクイッ
スウェン「いいですねぇ、皆さんはどうです?」
ひかる「さんせい!」
ふゆき「お邪魔でないのでしたら…」
サトー「まぁ、たまには…ナタルさんはどうです?」
ナタル「では私も……」

ムルタ「バジルゥゥゥルゥゥ!!!」バタンッ
ナタル「どうかしたんですか?理事長。」
ムルタ「あの三馬鹿共はどうした!校庭に呼び出したと言うのにまったく来ないじゃないか!!」
ナタル「さあ、知りませんが…この時間ではもう帰ったのではないですか?」
ムルタ「あいつらぁぁぁぁ!!」

サトー「何だか忙しそうですな。」
ひかる「どうしましょうか?」
ムルタ「こうなったら!飲みに行くぞナタル!!」
ナタル「えっ!?しかし先客が……」
ムルタ「なぁにぃ先客だとぉ!?」
ふゆき「ビクッ…えっえ〜っと、理事長も一緒に行きますか?」
ムルタ「いいだろう…ただし店は僕が選ばせてもらいぞ!」
ななこ「あっあんま高ぁ店は……」
ムルタ「心配ない!激安の焼鳥屋だ!!」


ムルタ「ナタルゥゥゥ!飲んでるかぁ!」
ナタル「はっ!飲んでいるであります!」
サトー「家に帰ると妻は愚痴は言うはぁ、娘は反抗期だわぁ〜」
ななこ「なにぃ言うとる!うちなんか、家に帰ってもだぁれもおらんのだぞぉ!」(泣)
スウェン「俺が……俺がななこさんの支えになってあげますよ。」ボソボソ
ななこ「なんやぁ!?スウェン、小声じゃあなぁんもわからんぞぉ〜」ギュウ〜ッ
スウェン「なっななこさん、むっ胸が当たってます。」////
ななこ「当ててんやで。」(笑)

ひかる・ふゆき「お騒がせしてすみません、すみません!」(平謝り)

40名無しさん:2007/11/20(火) 04:13:56 ID:jFa6b45.
「……かがみが失踪?」
 冬の足音。そんなモンが聞こえ始めてきた今日この頃。
学校で、いきなりつかさが俺に相談事を持ちかけてきたことから話は始まる。
その話とは、かがみが突然…何も言わずにいなくなってしまったということだ。
「ふーん…!」
 とはいえ、俺はそれをあまり問題視していなかった。
あの食い意地はったヤツのこと。どうせお腹を空かせたので、メシを求めてどこかにいっただけ。
そんなに心配することは…!
「どうしよう、シンちゃん…! お姉ちゃん…お姉ちゃんが…!」
「…………!」
 つかさの目に、涙が溜まっている。かがみに大事はないだろうが、こりゃあ…手を貸してやるほかない。


 ってわけで、オレはさっそく…校内でかがみの捜索に乗り出した。
オレは無断で作った焼き芋を持って、かがみがそのおいしそうな匂いに釣られて出てくるのを期待したが…
「…出てこないな」
全く現れる気配はなかった。捜索は…難航を極めそうである。
ってか、よく考えれば手がかりゼロだということに今、気づいた。

 その後もオレは根気強くかがみの姿を探したが、やはりその姿はどこにも見当たらない。
気が付けば、陽は真っ赤に。
この焼き芋の匂いに釣られないとなると…かがみは学校にいないと考えるのが妥当だ。
「まぁ、いっか…」
 オレは、かがみは早退したんだろうという勝手な結論を出す。
そうと決まれば、話は簡単。部屋に積んであるプラモを作るべく…とっとと帰ることにした。

「シ…シン。待って…!」

 だが、その時。オレが校門から出ようとした瞬間、どこからか囁くような…そんな小さな声が聞こえてきた。
この声。…オレはこの声を何度も聞いたことがある。聞き間違えるはずは…ない。
「かがみ…か。近くにいるのか?」
 オレは右手に握り締めている焼き芋を見つめる。なんで隠れてたのかは知らないが…
やはりかがみのヤツ、この焼き芋の放つ誘惑にとうとう耐えられなくなったらしいな。
「違うわよッ! 勝手な解釈しないで! ちょっと…困ったことになって…!」
 …近くの茂みの中から声は聞こえる。
その小さな声には…ホントに困っているのだろう、どことなく焦りの感情が交じっていた。
「アンタ…茂みの中にいるのか?」
「う…うん」
 オレは近くの茂みに近づいて、そっと掻き分けてみる。
そして、葉を少し掻き分けた…その中に“地球外生命体”がいた。

41名無しさん:2007/11/20(火) 04:16:11 ID:jFa6b45.
 オレはしばし、唖然となる。見たことのないような小さくて四角い生き物が…そこにいた。
確か…モノブーと言ったか。それに薄紫の髪の毛を取ってつけたような外観。
そのヘアースタイル?は両側で髪をくくっているという…かがみのものに酷似している。
オレは少し不気味に思いながらも、その顔?についている特徴的な豚鼻を触ってみると…
「ぶー」
 …いきなり変な音を出した。まさか、…オ●ラ? 
「ば…バカッ! オ●ラなんてするわけないでしょッ///」
 …しかも今喋ったぞ、コレ。とりあえず一言、言わせてほしい。
「何だ、コレ…?」
 オレはその小さくて四角い生き物?を見つめながら呟く。
なんとなくだが、その疑問は永久凍土のように解けることはない。そんな気が…した。

 それから。オレはその人語を解する奇妙な生物?の話を一通り聞いて…とりあえずこう解釈した。
「なるほど、アンタ…かがみなのか。アンタ自身もどういうわけはよくわからないけど
突然…こんなワケのわからん気持ち悪い姿になってしまった。そうだな?」
「気持ち悪い言うなッ!」
 …このツッコミ。間違いない、こいつはかがみだ。
こんな奇異な姿とはいえ、それは信じざるを得ないだろう。
「しかし、なんでまた…!」
 オレは思わず、変わり果てたかがみの姿をじーっと眺めていた。
何がどうなったらこんな姿になるんだろう。一種の進化みたいなもんか?
それとも…これは退化してると言ったほうが正しいのか?
「ちょ…ちょっと! そんなにジロジロ見ないでってば…///」
 かがみがオレの視線に、ぶーぶーと文句を言い始める。
どうやら怒っているらしいが…その姿で怒っても全然迫力ないな。

 ま、これ以上考えても仕方ないので話をまとめるとしよう。
「何でそうなったかは知らないけど…かがみ。そんな姿でも、強く生きていけよ。じゃあな」
 とりあえず、かがみは生きていたし。それがわかっただけで充分だ。
新しい姿での、新しい生活。それが上手くいくことを、オレは陰ながら祈tt
「ど…どこ行くの? ま…待ちなさい! 私を…このまま放ってく気!??」
「ん…何言ってるんだよ? せっかくそんな姿になったんだし、野生に帰るんじゃないのか?」
「アンタが何を言ってるのよ!? そ…その…、私はアンタに……///」
 そう言って、かがみはその小さな体をオレの靴に摺り寄せる。
…でも、弱ったな。かがみなら厳しい野生の世界でも生きていけると思ったのに。
いや、むしろ食物連鎖の頂点にだって君臨できるかもしれない。
「それに…今の私、すっごく足が遅いんだからッ!」
 だが、そんなオレの考えを遮るかのように、かがみは自身の短い4つの足を一生懸命動かし始める。
自分自身で言った通り、確かに…ノロイ。まぁ、見方によっては可愛いとも言えるかもしれないけど。
で、問題なのは…! ノロイのは伝わったが、それで何が言いたいんだ?
「だ…だから! 私を……って、キャッ!」
 体が小さいせいか、両側でくくった髪の毛の毛先が地面に付いている。
その毛先を自身の足で踏んでしまったかがみは足を滑らせ、盛大にコケていた。
かがみのあまりのマヌケっぷりに、…悪いとはわかっていても思わず吹き出すのを抑えられない。

42名無しさん:2007/11/20(火) 04:17:52 ID:jFa6b45.
「わ…笑うなッ///」
「それは…悪かった。でもな…!」
 笑うなというほうが無理だ。いや、むしろ微笑ましくもある。
…って、ダメだ。その横になった姿を見るとまた笑いがこみあげてくる…。
オレはその小さくて面白い姿をいろんな方面から注意深く観察していると、
「シ…シン! ス…スカートの中なんか…覗くなんてサイテーッ///」
「へ? あ、ご…ゴメン」
 そう言われて気づいたが…まがりなりにもちゃんと制服は着ているのか。
しかもスカートの中覗いてたって…! なんか妙な罪悪感が湧いてきたぞ…。

 そして、オレはさらにかがみの動向を観察していた。いつまでも横になったままで起きる気配がない。
「なぁ、かがみ。早く起きたらどうだ…?」
「………………///」
 かがみは横になったまま、頬?を赤く染めている。なおかつ沈黙を保ち続けていたので、オレは事態を把握した。
ああ、そういうこと。まさか自分で起きることもままならないとは…四角い体と短い足は不便なものだ。
ちなみに、笑っとこうかなとも思ったが…流石にそこまで空気が読めないわけではないのでやめておいた。

 で、さらに数分後…。オレが無言で彼女を見やっていると
「…お、起こして…///」
 やっとかがみが助けを求めてきたので、俺は彼女を起こしてやる。
案の定、かがみはオレがすぐに助けなかったことにぶーぶー文句を言うが、
それをBGMにしてオレはあることを考えていた。それは…
(このまま、コイツを野生に帰していいものだろうか…)ということ。
 なにせ、走るのは遅いわ…コケたら自分で起きられないわ…と不安要素がいっぱいだ。
しかも、もう冬も本番。寒い思いも…することだろうし。

43名無しさん:2007/11/20(火) 04:19:01 ID:jFa6b45.
「よし、わかった」
 意を決したオレは、足元でノロノロと走って?いるかがみを両手で抱きかかえた。
「キャッ…! ちょ…変なトコ触らないで…///」
 だからそんなこと言うなよ。また変な罪悪感が湧くだろう?
「罪悪感って…! 実際にアンタは今悪いことを…って、どこに行くのよ?」
 オレはかがみを抱きかかえたまま歩き出す。行き先は…
「泉家だ、かがみ。正確には…オレの部屋だけど」
「ええ? な…ななななんでアンタの部屋に? ま、まさか変なことするつもりじゃ…///」
 心配するな。アンタはなんら不安に思うことはない。
「オレに任せとけ、かがみ。アンタがこれから野生でも生きていけるよう…訓練してやる」
「へ? く…訓練?」
 そうだ。今のアンタでは…間違いなく厳しい自然に淘汰されるだけ。
だからオレがみっちり鍛えてやるさ。その分、厳しくはなるがな…!
「シ…シン? 何よ、その怪しげな笑みは?? 
ってか、そんなことより私を元に戻す方法を一緒に考えt」
「さぁ、早速…今日から訓練だ。腕立て50回、3セットからな!」

こうして、オレと変わり果てたかがみとの…奇妙な共同生活がスタートした。

44名無しさん:2007/11/20(火) 19:07:16 ID:PoRhZj7.
>>43
GJだ!
シンがドSになっとるw

45名無しさん:2007/11/20(火) 19:55:42 ID:YoW.CtGo
>>43
GJ!靴に擦り寄るかがぶーが可愛いw

46名無しさん:2007/12/16(日) 02:41:29 ID:n8e95Yi6
ベリー・クルシミマス

 これはクリスマスの前日。即ち、クリスマスイブのことであるが。
その朝の…身の毛がよだつような寒さの日に起こったことであった。
まだ薄暗い中、起きてふと枕元の携帯を見てみると
「ん…?」
 オレがコチラの世界で買った赤い携帯。内臓の時計が朝の6時半を示すと共に、ランプが虹色に光っていた。
オレは横になったまま携帯を手にとって画面を見てみると…着信履歴の文字が出ている。
「誰かが電話…くれてたのか。ん…高良?」
 どうやら高良が電話をくれていたようだった。オレは早速、彼女に掛けなおそうとした――
その時である。オレがやっと…異常に気づいたのは。
「……きゅ…99件…!?」
 それは…高良からの、着信履歴の件数。午前0時から、午前5時にかけての間にである。
しかも、その一つ一つに…メッセージまで付けて。

(ピー)
『シンさん…。クリスマス…何かご予定はございますでしょうか…?』
(ピー)
『クリスマス、良ければ私と一緒に過ごしてはいただけませんか…?』
(ピー)
『シンさん。お返事の方、早くお願いいたします…』
(ピー)
『…シンさん? どうして、電話に出てくれないの…? 私のこと、嫌いですか…?』
(ピー)
『ふふ…ふふふふ…! ふふふふふ…!』

 順番にメッセージを聞いていくごとに…どんどんと高良の様子がおかしくなっていくのがわかる。
寒さのせいではない、別の意味で背筋が凍りつくのを感じながら…最後の二つのメッセージを…聞いた。

(ピー)
『シンさんに、会いたいです…。 今から…会いに行きますね…!』
(ピー)
『シンさん、寝ていらっしゃったんですね…! 寝顔、とっても…可愛いですよ』

 これで、メッセージは途切れた。そして…
「え…?」
オレがふと…この部屋にもう一人、誰かいることに気づく。
ひんやりとした手が…オレの背中を確かに触っていたのだ。
オレは恐る恐る後ろを振り返ると…


「お早うございます。シンさん」

47名無しさん:2007/12/16(日) 18:51:25 ID:PiguSE1w
>>46
こえーよみゆきさんww

48名無しさん:2007/12/16(日) 19:58:05 ID:1w9stARM
>>46
なんというホラーw
でも怖いような怖くないような…

49名無しさん:2008/01/23(水) 11:12:28 ID:KjrpWdB6
いや、いや、
そこはたまたまシャワーを浴びてたゆたかあたりが、みゆきさんを迎えるべきではw

50名無しさん:2008/01/28(月) 02:35:13 ID:lO90soiE

これは、オレが教室の窓から…赤々と茂る紅葉を見ていた時のことだ。
紅葉が散っていく寂しげな風景を見ながら、…熱いお茶でも飲みたいものだなぁと、
自分でも妙にジジ臭いと思えることを考えていた…その時。
「シーンー! これ見てー!!」
 ドドド――と効果音が聞こえてきそうな勢いで、オレの元へと走ってくる少女…泉こなた。
普段はやる気なさげな瞳が、いつもと違って爛々と輝いており…手には何かビラのようなものも持っている。
うっとおしいので、あちらのスピードを利用してカウンターパンチでもおみまいしてやろうとも思ったが
「ふぎゃ!」
 その前にこなたは何もないところで見事にズッコけていた。こなたにしては珍しいドジっ娘ぶりだが…どうしてだろう?
つかさや高良ならともかく、アンタがそんなドジをやっても全然可愛く思えないのは。
「ふふん♪ 強がり言っちゃってさ! 実は結構、私に萌えてたりするんでしょ?」
 それはない。絶対ない。悪いが、地に這いつくばってアホ毛を揺らしてる今のアンタはどう見ても…
きっと突然変異してしまったのであろう、デカくて青いゴキブリにしか見えない。
 間違いなく人類に害を及ぼすだろうから、サ●ックスあたりに駆除依頼でもしてみようか…と本気で考え込んでいると

「それよりこれ見てよ、これ!」
「…ん?」
 『こなた駆除計画』というオレの思惑など知ったこっちゃないまま、ダルマのごとく手も使わないで起き上がったこなたが
オレにさっきから持っていたビラを手渡す。気が乗らないままに読んでみると、それには…大きな文字でこう書いてあった。
「第一回…ハルヒ杯? なんだよコレ?」
 オレが文を読み上げ疑問の声をあげると、こなたがニヤリと笑みを浮かべる。
その笑みにイヤな予感を感じつつ、オレは事情を聞いてみると
こなたの突拍子もない…ある企みが明らかとなったのである。

51名無しさん:2008/01/28(月) 02:37:22 ID:lO90soiE
「――――…どう、シン? 結構、面白そうでしょー?」
「…どこがだよ」
 あぁ、一体何がコイツをトチ狂わせたのか。いや、それとも元から狂っていたか。
「いいじゃん。シンってば、一緒に野球大会出ようよ。や・き・ゅ・う♪」
 いきなりこなたはハルヒ杯とかいう、軟式の野球大会に出るなんてことを言い出してきた。
普段はスポーツ中継がイヤだとか言ってるくせに…自分が運動すること自体は嫌いではないのか?
「ううん。嫌いだよ♪」
 にこやかなこなたの返答に俺はがっくりと肩を落とす。じゃあ、なんでこんな大会に出るんだよ?
わかりやすく説明してくれ。できるならば今すぐ、大会に出ようなんていうその血迷った考えを改めてほしいのだけど。
「いやさ、最近…若者だろうと運動不足じゃん? だから野球で爽やかな汗でも流そうかなって思ったのだよ」
「………」

 ウソ付け。笑顔に全く爽やかさがない。こなたとはまだ1年にも満たない付き合いだが、
コイツがそんな爽やかな考えに至るわけがないということは充分に承知している。
どうせ、なんらかの目論見があるに決まってるのだ。優勝商品狙いだとか、そんなもんが。
「それに出場たって、メンバーが圧倒的に足りないだろ? いっとくが、オレはこんなモン――」
「あ、シンはもうメンバーに入ってるから。ちなみにあとのメンバーも決定済みだからそこは心配しなくていいよ」
 いや、そんな心配は微塵もしてないからそれこそ心配するな。心配してるとすれば、
オレと同じく勝手に野球のメンバーに選ばれてしまった可愛そうな人たちぐらいだ。
 まぁ、アンタの勝手な行動に振り回されるのはゴメンだから…オレがこの場でこなたを論してやれば万事解k―――
「それじゃー、私は残りのメンバーに声かけてくるからさ。出場登録もしとくからねー!」
「――…って、おい! オレの返事は断じてイエスじゃないっての! …こなたッ!」
 しかし、時は既に遅し。こなたはオレの声など初めから聞こうともしてない素振りで去っていく。
まさに力技だ。メンバーを決めていると言っても、きっと本人からの賛同は得ていないのだろう。
だとすれば、アイツはオレと同じように…他のメンバーも問答無用で集める気だ。
はっきり言って、誰もこなたの進撃を止められない。

 思わず溜息を付きたくなったが、もう一度こなたが持ってきたビラを見つめ直す。
なんだかんだで、こなたが自分の意見を曲げることはそうないことから察するに、
…不本意ではあるが野球をやらざるを得ないようだ。今週の日曜に。


 で、ちなみに大会決行の日というのがちょうど3日後の日曜であるということに気づいたのは…そのすぐ後だった。

52名無しさん:2008/01/28(月) 02:40:11 ID:lO90soiE
 そして…! こなくてもいいのに、あっという間に3日は過ぎた。
「ああ、絶好の野球日和だなチクショー」
 全く練習などせぬまま、決戦の日…日曜を迎える。雨が降ってくれますように…と、自作のテルテル坊主を
反対に吊り下げてみるという最後の抵抗も…この晴れやかな天候が示す通り、効果は全くなかった。
「仕方ない…!」と面倒くさく思いながらも――観念したオレは学校指定のジャージを着て
こなた、そして何故ゆたかも連れて共に戦場となるグラウンドへと赴いたのだが…!
 グラウンドへと着いた瞬間、オレは勝負の前から早速…絶望を抱くこととなった。 
「なんだ、コレ…!」
 それは、オレと一緒に野球大会に出るというそのメンバーである。
正直、そいつらを見てると…アホみたいに口をあんぐり開けて…愕然となるほかない。
「な、何よ? アンタ、なんか文句あるわけ?」
「…いや、かがみ。特に文句というわけではないんだけど…!」
 オレ以外のメンバー全員が、見知った女の子だった。皆、仲良く準備運動をしているところを見るに
やる気はありそうだが…男はチームにオレ一人。全員知った仲とはいえこれは少々、…気まずい。
つーか相手チームからすれば、俺はかなり浮いて見えることだろう。
 なら、ここはアレだ。チームには控えもいるみたいだし、オレは出場辞退したほうが――――
「あ、シンちゃん! 私…一生懸命、頑張るね。 だからシンちゃんも頑張れー!」
「………………!」

 ああ、ダメだ。つかさの笑顔を見ていると、とても辞退だなんて言えない…!
女の子が頑張ろうと言ってるのに、オレがこう逃げ腰なのは情けなさすぎじゃないか…。
「ええい! こうなったら…どうにでもなれだ! いくぞーーーッ!」
「フフフ…んじゃー私たちでこの野球場への武力介入を開始するよー! 目指せ、優勝!」
 もはや、ヤケクソ気味なオレを知ってか知らずか…バリバリにアニメの影響を受けまくってる
こなたの呼びかけの元…練習が行われることになった。
  
 だが…なんとかなるだろうと希望的観測を抱きながら練習がスタートして僅か3分後。
オレは人並程度には野球のルールを知っているが、皆はどうなのだろうと考えていると
「ところで、シン先輩? 野球って、どうやるんスか?」 
「……………ハハハ…ハハ…!」 
 …オレの懸念は悪い方向で的中し、かなり根源的な問題が発生していた。
練習中となって、田村ひよりを筆頭とするメンバーの半数程度が放ってきたこの一言に…オレは絶望したのである。
こなたが強引だったんだろうけど、よく野球をやる気になったもんだなと漏らさずにはいられなかった。
 オレはひよりのメガネをカチ割りたいという衝動を抑えつつ 
「なるほど。打って走って…守ればいいんスね? 簡単じゃないスか!」
「……・まぁ、そんなところではあるんだけど…」
 とりあえず、基本的なルールは説明したが…田村のヤツ、本当に理解できてるのかはよくわからない。
ってか、こんな状態で勝算などあるのだろうか? いや、ない。
「ああ…! さっさと負けて帰ったほうがよくないか、コレ…?」


 あえて本心を言うが、元ZAFTのエースたるオレが…ここまで戦いの場から逃げ出したいと思ったことは、未だかつて…ない。

53名無しさん:2008/01/28(月) 02:41:45 ID:lO90soiE
 ちなみにだが、まぁせっかくなのでハルヒ杯…一回戦プレイボールの合図が行われる前に。
とりあえず、こなたが選んだ最強軍団(こなた曰く)を紹介しておこうと思う。

1番 サード     泉 こなた         (左投げ・両打ち)  控え  背景コンビ
2番 ピッチャー  柊 つかさ         (左投げ・右打ち)  
3番 ファースト   田村 ひより       (左投げ・右打ち)
4番 ライト     小早川 ゆたか      (左投げ・右打ち)  
5番 レフト     パトリシア=マーティン  (右投げ・右打ち)  主将  泉こなた
6番 セカンド   岩崎 みなみ       (左投げ・右打ち)  
7番 ショート    高良 みゆき       (左投げ・右打ち)   副将  柊かがみ
8番 キャッチャー 柊 かがみ        (左投げ・右打ち) 
9番 センター   シン=アスカ       (右投げ・両打ち)   助手(笑) シン=アスカ


 以上。大会ルールである男女混合の規則は守られているが、いかんせん女性が多いのはよく分かることだろう。
更に、打順とポジションはこれまたハルヒ杯の大会ルールに則ってあみだくじで決められたという
大変適当なものであり…とりあえずツッコミどころも多い。
特にピッチャー・つかさのアウトローっぷりと4番・ゆたかの体調面が心配ではあるが…
はい、プレイボール! ちょっと変則な野球大会…その戦いの火蓋が切って落とされた。


「しまっていくよーーー↓」
 サードで主将兼監督のこなたがダウナーな声を張り上げる。裏の攻撃ゆえに守備についた
俺たちの士気をあげるためなのだろうが、いかんせん声に迫力が欠けすぎているので思わず力が抜けそうになる。
「でも、この試合…勝てるのか?」
 オレは力が抜けそうな膝を抑えつつ、外野から相手チームである『其巣侘流・美射印愚』のほうを見やる。
ハルヒ杯なんていうワケのわからん大会にマトモなチームが出場するのか怪しいと踏んでいたのだが…
相手チームは全員、いろんな意味でマトモな集団ではなさそうだった。
無論、オレたちと同じく男女混合のルールに則ったチームではあるが…男の数はアチラの方が断然多い。
男の数が多いほうが有利なのはもちろん、やけに美形ばかりが揃っているのが無性にムカつくところだ。
 そして、その中の一人である筋肉質な男が今…風を切る音がコチラまで聞こえてくるほどの豪快な素振りを終えると
ゆっくりとバッターボックスへ入っていく。
 どう考えても相手はハイレベルな野球経験者のようだが、迎え撃つのは我らが柊姉妹バッテリー。
姉妹パワーでどのように相手と戦うのか…なんとなく結果が読めてる気もするけど注目だけはしておこう。
「つかさ。とりあえず落ち着いていくのよ。私のミットめがけてボールを投げなさい」
「う…うん。こなちゃんとの約束のためだもん。やってみる…」
 つかさはこなたとの友情を感じさせるようなことを言ったあと、意を決したようにボールを握りなおすと
下手投げからミットめがけてヒョロヒョロしたボールを投げた。

 
 ………その結果、オレたちは一回にして一挙5失点を喫するという無残な結果に終わったのだった…。

54名無しさん:2008/01/28(月) 02:52:01 ID:lO90soiE
「ご…ごめんね。いっぱい打たれちゃった…!」
 一回表終了後、マウンドから帰ってきたつかさは皆に申し訳なさそうに謝っているが…全くの素人なのだ、責める気などない。
というよりこの素人集団で…、むしろ5点で済んだだけマシだと思うべきなのだろう。
それにピッチャーだけが悪いのではなく、守備だって…内野にもエラーはあったが外野はよりザルだ。
レフトを守るパトリシアはフライが飛んでくると「ボールってナンデスカー?ワッカリマセーン!」とか言って混乱してたし…
ゆたかも「はぅぅ…」と狼狽した声を出しながらひたすら戸惑っていた。その声がとんでもなく可愛らしかったというのは
置いとくとして、二人とも守備は無理そうだ。ゆたかに至っては、あまり激しい運動だってさせたくない。
 と、いうことは…オレ一人でなんとか外野を死守するしかないのだ。

「まぁまぁ、皆。まだ一回だし、私たちも点取ればいいじゃん! さぁ、攻撃に移るとするかねー」
 ベンチに吹き荒れる暗雲を吹き飛ばすように明るく言うと、こなた主将自らが右バッターボックスへと入っていく。
結構、というかかなり絶望的な状況だというのに…まだこなたは余裕綽々だ。
 しかも、こなたがその余裕を持て余しているのかは知らないが…
「さぁ、きやがりたまへー!」
 ニヤニヤ笑いながら相手ピッチャーに挑発までしてやがるこなた主将。舐めきったその声色で、んなこと言われたら
オレはブチ切れること間違いなしだが
「………………」
 少し小柄な相手ピッチャーはひたすらに寡黙であり、オレと同じ赤い眼はただミットだけを見据えているようだった。
さっきの挑発も聞いているのかいないのか。相手が少女だとはいえ、油断を微塵も感じさせない表情のまま振りかぶると
「ピッチャーだ。オレがピッチャーだ…!」
 謎のセリフと共に、綺麗だが…やけに機械的なフォームからボールを投げた。
その中々に鋭いボールが相手キャッチャーのミットに納まるかと思われた――――

カキーン。

 その時、快音が響く。こなたが打った打球はなんと相手セカンドの上を超え、右中間を破っていた。
さらにはその俊足を生かして一塁を踏み、あっという間に2塁に到達。…2ベースだ。
「………………ガ、ガンダァァム…ッ!」
 相手ピッチャーが口を開けて呆けたまま、叫んでいる。上記のセリフで何が言いたいのか全くワケがわからないが
声の調子からショックを受けたんだろうことは分かる。まさか、あんなチビッ娘に打たれるとは思ってなかったのだろう。
っていうか、かくいう俺も全く思ってはいなかったが…! とにかく、こちらのベンチが歓喜に包まれた。
 そう、一回にして早くも反撃の狼煙である。ゲームが…動くかもしれない。
「よーし! つかさー! 私に続けーい!! こんなヘナチョコ球ならダイジョーV♪」
「………………!」  
 やはりこなたはいろんな意味でタダ者ではないと改めて思い知った瞬間だったが…! 続く2番。
「はい、それまでよ…!」
 つかさ、奇妙なセリフを残して三球三振。さらには
「こ…これはッ!! なんてSプレイッ…!!」
 クリーンナップの一角、3番の田村は併殺打という最悪の結果に終わって…スリーアウト。
うん、やはり現実というものは厳しい。それに夢ってのは大抵夢のまま、終わるもんなんだよな。
 
 とりあえず、失態を犯してベンチに帰ってきたひよりからメガネを取り上げた後…オレは前途多難さに溜息をこぼした。
まぁ、仕方ないとは思うがチームの全体的な打力不足…いや実力不足は決定的だ。
ならばもうこれ以上点はやれないと、オレはこれまた守備力不足な…
まさに月面の如く穴だらけな外野地帯の守備についたのだった。

 現在、1回裏…終了。得点は現在…0−5。

 続

55名無しさん:2008/01/28(月) 14:10:13 ID:L/wna/MI
>>54
凄く面白かったぜ!GJ!
つーかいろんなところにネタ仕込みすぎだろwwww何度も噴いたわww
って言うかシン、お前が投げろよww
更にやっぱり刹那弱ぇなww

56名無しさん:2008/01/28(月) 23:07:18 ID:0NMK6QdQ
>>54
GJ!!!!
ツッコミどころが多過ぎるwwwだが、それをしたら負けという気にさせられたぜ!
後こなたとシンのS●S団の2人張りの会話はワラタ

57名無しさん:2008/01/30(水) 17:49:58 ID:PfLskWs.
>>54の続き
 
 ここで突然だが、勝負の世界とは…つくづく非情である。
弱き者は自然と強者に淘汰され…消えていく。
これはある意味、世の真理でもあるが…だからこそオレは言いたい。
気まぐれなる野球の神よ、オレに力を――――と。


 前説はこんぐらいにしておいて、ゲームは2回表に突入。相手側『其巣侘流・美射印愚』の攻撃。
飄々とした相手バッターに、つかさは臆せずヒョロいボールを投じた。
「えいッ!」
 その『どんだけ〜』なボールが相手バッターの内角をえぐる…なんてことはやっぱりありえない。
つかさのボールがキャッチャーミットに入ったなんてことはこのゲーム、一度たりともないのだから。
「狙い打つ…! 狙い打つぜ…!」
 それは今回も同じことで、相手バッターが言葉どおりに狙いすました鋭い打球が三遊間を襲う。
「フフフ…やっと喋れました…! 悪いですが、させませんよ?」
 だが、ここはショートの高良。いつもと雰囲気が違う気もするが、迅速な動きで胸を揺らし…
じゃなくてボールを捌き一塁へ。その送球も…まるで矢のように鋭い――――
――――と、ここまでは良かったのだが問題は…
「グホォ!」
 ボールをグローブもとい腹でダイレクトキャッチするファーストのドM田村。
田村がMすぎるプレイを発揮したがために、高良のナイスプレイは無駄になり
また、先頭打者を出してしまったのである…!

 その後も…
「オホォ! ゲブシッ! あべしッ! アガペーッ!!!」
 他の内野陣からの送球をグローブで捕らえることができないために、体全体を使ってボールを止める田村。
その度にグラウンドに響き渡る悲鳴が痛々しい。が、その芸人顔負けのリアクションには感服させられる。
まぁ、彼女がここまで送球を取れないのもメガネをかけていないのが原因だろうが…!
田村、どうしたんだろう? 見えないんならメガネ、かければいいのに。

 それから、オレが田村のメガネを取り上げていたということに気づいたのは…この回が終わってからだった。

58名無しさん:2008/01/30(水) 17:51:18 ID:PfLskWs.
「うう…バルサミコス…!」
 マウンドからションボリと帰ってきたつかさの溜息?をベンチで聞きつつ、オレもまた溜息を付いた。
なんとか、この回は内野陣の踏ん張りもあり2失点で抑えたものの…点差は7点に悪化。
このままでは、次の回で10点コールド負けなんて展開もありえなくない。
 いっそこのままコールドになっちまえばいいんじゃ…なんていうヘタレな考えを押し込めながら
オレはこのマズイ状況を打破する突破口を考えつつも…
「せ、センパ〜イ! 早くメガネ返してくださいっスよ!(泣)」
 メガネ外したの●太くんみたいな目で、ゼェゼェ言ってる田村に…メガネを返してやることにした。
「ゴメンな。でも、田村…。今日のアンタ、少し輝いてるぜ。
ガッツあるプレイはなかなか見所あったしな。正直、今のアンタはメインキャラより目立ってるぞ」
「え? そ…そうっスか? 今の私…輝いてますか?」
 オレは田村の問にコクリと頷き返してやった。今までは腐女子だからと敬遠して…
オレもアンタにはあまり関わろうとしなかったが、見直したよ。
 アンタ、気持ち悪い漫画を書いてるわりには見所あるじゃないか。
「そ…それを先輩が言ってくれるなんて……すっごくうれしいっス! 
よ…よっしゃァァァ!! なら、ここで恋する腐女子のパワー…見せるっスよーーッ!!」
「ああ。更なる活躍、期待してるようでしてないからな」

 オレがそう言って話を締めると、田村はよほど興奮したのか…話を聞いていなかったのか
鼻息激しくベンチからバットを持って飛び出し…ブンブンとバットを降り始めた。奇怪な叫びを挙げながら
バットを降りまくる田村に若干引きながらも、オレは年若い後輩の元気っぷりに…思わず笑みを漏らしたのだった。

 が、オレはこの時点では気づく由もなかった。田村に…あるフラグが立っていることに。
そう、普段は影が薄い脇役が目立つようになってくると発動するという伝説のフラグ…『死亡フラグ』に…。

59名無しさん:2008/01/30(水) 17:52:10 ID:PfLskWs.
そして、回は2回裏へと入る。
「フフフ…。ついに反撃の時がきたね…!」
 流れが完全に向かい風となってる中でも不敵な笑みを浮かべるこなた主将。
この回は、我がチームの主軸に打順が回ってくる。
「さぁ、我がチームの4番よ! ドカンと一発打ってきてねー!!」
「……………………おいおい……」
 こなたの4番への期待はかなり大きいらしい。そりゃ、4番ってのは大体チーム一番の打者が
務めるもんだから期待をかけるのも当然だが、我がチームの4番は別の意味で一番の打者だとオレは思う。
「えぃ! とぉ!」
 見ろよ、こなた。ベンチ外で弱弱しくバットを振ってる可愛さNo.1の4番の姿を。
ぶかぶかなヘルメットを被ったその姿で、オレの廃れたココロを癒してくれるのはいいが
打撃力では全くアテになりそうにない。そんな4番に何を求めてるんだ?
「んー? ホームランに決まってるじゃん」
「……………………」
 ダメだコイツ、早くなんとかしないと…!

 ならば…と、オレはこなたの脳みそに味噌汁でも流し込んでやろうかと考えていると
「あの…よろしくお願いします…!」
 世界最萌の4番バッター、ゆたかがバッターボックスへと入っていた。
バットの方が大きく見えなくもないその体は…ものすごく頼りない。あまりにか弱すぎる。
 できるならば、速いボールでゆたかを怯えさせたりすることのないように…
俺は相手ピッチャーのせめてもの情けを信じたが
「相手チームの4番を確認………! 駆逐する」
 相手ピッチャーは鬼だった。ゆたかを見ても顔色ひとつ変えず、ただ淡々と内角攻め。
っていうか、あわやデッドボールではないかという球さえあった。
そしてゆたかが怯えてる間に、あっという間の2ストライクを取ったあと…
「ファーストフェイズ…終了」
 
 瞬く間に、ゆたかは三振に切って取られたのだった。


「ゆたかぁぁぁぁぁッ!!!」
 オレはベンチから飛び出すと、怖かったのだろう…フラフラと帰ってくるゆたかを抱きしめた。
かわいそうに…ゆたかは目を涙で潤ませている。
「お兄ちゃん…」
「ああ…、何も言うな! もう大丈夫だからな。ゆたか、仇は…オレが取ってやる!!」
 オレはキッとマウンド方向へと睨みを効かせると…そこにはあの電波ピッチャーの姿がある。
野郎…あの野郎だけは許さん! こんな可愛くて健気で、最近ちょこっと胸が膨らみかけてきた
ゆたかになんてことをするんだろう。つーか、ゆたかがバッターボックスに入ったのなら
即刻に投球を中止して愛でてやるのが普通だろうに。少なくとも、オレならそうする。
 オレはゆたかから手を離すと、退場を覚悟しながら
「あの電波のくるくるパーが…ッ! オレが直々に…リアルファイトで沈めてやr――――」
『――――ちょーっと待つデース!! シン、あんまりカッカしちゃいけないデスヨ??』

 だが、オレが台詞を言い終える前に…片言の交じった、どこかムカつく声がオレを呼び止めた。

60名無しさん:2008/01/30(水) 17:53:13 ID:PfLskWs.
突然の声で出鼻を挫かれたことに内心怒り狂いつつ、オレは声のした方に振り向くと
この非常事態によくニコニコしてられるなってくらい…明るい栗色ヘアーの少女がいた。
「アンタは確か、パトラシア=マーチン」
「……! アノ、ビミョーに間違ってますケド…まぁいいデス。シン、ケンカは××デス!
皆、仲良くするのが一番なんですカラ」
「………あのな」
 そりゃそうだ。理想から言えばオレだって…できることなら穏便に事を運びたい…それは同じだ。
だがな、パトラッシュ。男ってのは戦わなきゃいけないときもあるんだ。わかってくれ。
「………! でもですネ、シン。これだけは言っておきマス。
仇を取りたいというのなら、このベースボールで決着をつけるべきですヨ?」
「……………ハッ!」
 オレはこの言葉を聞いて、真っ赤に燃え上がっていた思考が一瞬で沈下された…そんな気がした。
それも…そうだ。オレは頭に血が上りやすい体質であることは自分が一番知っている。
だからこそ『常に冷静であれ』…これはオレが普段から心がけていることだというのに…!
そうだ、仕返しするなら堂々と野球で行うべき…だ。野球らしく、オレが履いてるこのスパイクと金属バットで
野郎の頭を粉々にしてやればいいというのに。まさか…こんなフェアプレーの精神を後輩に教えられるとは…!
 オレは、思わず彼女に握手を求めていた。
「ありがとな、パキスタン。おかげで、目が覚めた…!」 
「………………」

 結局、彼女に手を握り返されることはなかった。


 その後、さっきまでの元気はどこへやら…どこか意気消沈した5番があっさり三振したのを見送ると
オレは精鋭を集め…独自の作戦会議を始めた。
「あの、先輩…??」
 その精鋭とは岩崎・高良・かがみの3人だが…高良以外の両者は怪訝な顔でオレを見ている。
オレはそれを承知で、さっさと話を始めた。
「アンタらを呼んだのは他でもない。さっき、あの外人が三振したことによって…今は2アウトだ。
けど、これはピンチでもなんでもない。野球は…2アウトからだからな」
「…そ、そりゃそうだろうけど…! 今の状況がどうにかなるとでも…!」
 かがみが渋そうな表情で同意しつつ…やはりどこか不安な表情は消えない。気持ちは…分かるけどな。
「確かに…オレたちは素人だ。だが、今ここに集まっている俺たちなら、
ヤツらに一泡吹かせることだって可能なはずだ…!」
「…………………(ゴクッ)」
 3人が一緒に唾を飲み込む。オレはそれを見計らい、さらに畳み掛ける。
「それと、これは個人的な感情だが…オレはあの電波ピッチャーが許せない。
アイツは…オレの心に火を付けた。まだ、どこか本気になりきれなかったオレの心に。
それは…岩崎、アンタだって同じだろう?」
「………あッ」
 岩崎の体が、ビクッと震えたのをオレは見逃さなかった。岩崎の大親友であるゆたか、
それをあの電波は傷つけたのだ。普段はクールな岩崎とて、内心に思う所があるのには違いない。
「オレは、あの電波(命名)を倒したい。けど、オレ一人ではできない。それでもッ!
オレたち4人でなら…あの電波を潰せる! そう、オレたちで…反撃の狼煙をあげてやろう」
 
 オレは3人の前に手を差し出す。高良以外の両者は初め…戸惑い気味だったが
「…わかりました、先輩。やれることを、やってみます…」
「元より、私はシンさんのためでしたら何だってします。例え火の中水の中…墓の中だって付いていきますから…」
「…仕方ないわね。私も負けるのはイヤだし…!」
 3人とも、がっしりとオレと手を組んだ。これにて『下位打線カルテット』の…完成である。
「よし、そうと決まれば…作戦を展開する。と、言っても…これは個人個人の実力が試されるが…
作戦の根幹にあるのは“絶対に打順をオレまで回すこと”だ」

 
 オレは審判にタイムを求めた後、3人に作戦を説明した。
古来、この日本という国に吹いたという神風。その奇跡という名の風を自分で吹かすべく…
オレはありったけの憎悪を燃やして相手の電波ピッチャーをもう一度睨みつけた。


さらに続

61名無しさん:2008/01/30(水) 18:08:34 ID:Ti1Tvvxk
>>60
GJ!今回も凄く面白かったぜ!
見事にシン壊れたなww こういう意味でのこなたの4番への期待だったのかな。
つーかこれシンに打順を回したらSETUNA殺されるだろww

62名無しさん:2008/01/30(水) 18:19:03 ID:hLQbeTzE
>>60
GJ!
堂々と野球でピッチャー交替→刹○に剛球デッドボールのフラグか?w
シンのゆたかの愛で具合っぷり噴いたw

63名無しさん:2008/01/30(水) 19:13:02 ID:4NErSn..
それよりもひよりが野球下手なのはありえんな。
奴はゴールデングラブ賞をもらった事が
ひより「だからひちょりじゃないっす!!」

64名無しさん:2008/01/30(水) 22:59:20 ID:Z5opgwpY
みゆきさんが意外とノリノリだなw

65<削除>:<削除>
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671/5:2008/02/02(土) 13:48:08 ID:DOS.gjL2
本スレ>>206氏のヤンデレゆたかを見て不意にこのシチュエーションを形にしてみた
…けど、幾らギャグタッチとはいえゆーちゃんの性格が崩れ過ぎた気もする…
そういう本音と、アクセス規制食らった建前によってこちらに投稿させて頂きます


(=ω=.)「いやー、ゆーちゃんが料理を習いたいなんて言い出した時はビックリしたよ。
    これも花嫁修業ってヤツかな?だが、やるからには情け無用のJ9、ビシビシ行くよ〜」
ゆたか「ありがとう、お姉ちゃん。…それと、このことはシンお兄ちゃんには…」
(=ω=.)「わかってるよ。上手くなるまで内緒にしといて、後でビックリさせたいってコトでしょ?
    確かにシンには美味しい御飯を食べさせてやりたいもんねぇ〜。
    うむ、ゆーちゃんの気持ちは良くわかるよ。この件は他言無用!二人だけの秘密ってコトで」
ゆたか「えへへ。私、頑張るからね!」
(=ω=.)「…やれやれ。恋敵に花を持たせるなんて、私もとんだお人よしだーね」

(#=ω=.)「…むむう。今日はシンの奴はひよりん達のアシで泊まりか。
    どーせあいつにパルマ以外に女の子をどーこー出来るような甲斐性は無いと思うけど
    それでも女の子と一夜を明かすと思うとベリッシモ(非常に)ムカつくぜい。
    折角連日の厳しい特訓によってレベルアップしたνゆーちゃんによる
    『おはよう!晩御飯Episode.1』作戦が台無しじゃないか…まったくシンの奴め」
ゆたか「あはは……仕方が無いよ。折角作っちゃったんだし、お姉ちゃん、一緒に食べよう?
    お姉ちゃん程上手じゃないかもしれないけど、結構自信あるんだよ?」
(=ω=.)「うう、ゆーちゃんは健気やのぅ…」
そうじろう「おお!今日の晩御飯はゆーちゃんが作ってくれたのかぁ!
      シン君も一緒だったら良かったのになぁ。今日のこと教えてやったら驚くぞぉ」
(#=ω=.)「ダディクーキ読め!」

682/5:2008/02/02(土) 13:48:55 ID:DOS.gjL2
(;=ω=.)「……シン、今日は柊家で御相伴に預かるってさ…。
     なんかみきさんが異様に張り切って食材買い込んでる姿を私も目撃しちゃったよ…」
ゆたか「え…そうなんだぁ……そっかぁ、残念だなぁ…」

(;;=ω=.)「………今日、シンがななこ先生に手伝いの名目で強制連行されてったよ…。
     んでその後は『その働きたるやまさに生徒の鏡、真に天晴れ!褒美をつかわす!』
     とか何とかで、ひかる先生やふゆき先生と一緒に居酒屋直行だそーで…」
ゆたか「……ふぅん……お兄ちゃん、未成年だから…お酒飲まされてなきゃいいけど…」
そうじろう「見るがいいポセイダル!グラス一杯にビールを注げる者は何処にでもいるということを!」
(;;=ω=.)「マイファーザー…あんたある意味スゲェよ…」

(;;;=ω=.)「…………さて、今日のシン・アスカの夕食は…高良家から始まるぞ」
ゆたか「……お昼はボーイフレンドと喧嘩した峰岸さんがつい作っちゃったって言うお弁当食べてたね…」
(;;;=ω=.)「あー…アレ、みさきちも一緒だったよねぇ…皆揃って仲良さそうにさぁ…」
ゆたか「……………」
(;;;=ω=.)「ところでゆーちゃん、一つ聞いていいかな?」
ゆたか「なーに?こなたお姉ちゃん?」
(;;;=ω=.)「その…さっきから何だってまた、お鍋なんて掻き回してるのかなぁー?」
ゆたか「ああ、これ…?シンお兄ちゃんがいつ帰って来てもいいようにお夜食作ってるんだ。
    お兄ちゃんが美味しいって言いながら御飯食べてくれるのが、ゆたかの夢なんだぁ。
    うふふ…ゆたか頑張ってるもん…きっとお兄ちゃんだって美味しいって言ってくれるよ…」
(TωT.)「(い、言えない!『ソレ単なる空の鉄鍋ジャン!』なんて私には言えない!
     しかも今日もシンはみゆきさん家にお泊りで今が午前二時だなんて益々ツッコめねェー!
     ゆーちゃんってば思いっきり目が死んでるし、シンのヤツはよう帰って来んかぁい!)」

693/5:2008/02/02(土) 13:50:00 ID:DOS.gjL2
シン「ただいまー」
(;;;;=ω=.)「おおおお、お帰り、シン…珍しいね、今日はウチで御飯食べるんだ…?」
シン「ん?そういや最近は外食ばっかりだったな…それにしても、どーしたこなた?
   顔色は悪いし体は震えてるし…風邪でも引いたのか?」
(#=ω=.)「ちゃうわい!あんたが何時まで経っても家で夕飯食おうとせんのが悪いんじゃあ!
     いつもいつもいつもいつも外で食って来やがって…アンタは一体何なんだぁー!!」
シン「な、何故怒る!?つーかソレは俺の台詞……」
みなみ「――あ、あのう…私、もしかしてお邪魔なんでしょうか…?」
Σ(;=ω=.)「げぇっ!みなみちゃん!も、もしかしてユー、マイハウスに何か御用事がッ!?」
シン「だからなんでそんな驚くんだ…いや、こいつが最近、ゆたかが元気が無いって言うからさ。
   それでどうしても気になるからってんで、俺が一緒に相談しながら連れて来たんだ」
みなみ「突然押しかけてごめんなさい…あの、それでゆたかは…」
(;;;;=ω=.)「マズい!みなみちゃん、来ない方がいい!ナニとかソレとかの詳しい事情は省くけど
      今キミがシンと一緒にウチに来るってーのはもォヤバイ!すンばらしくヤバイ!
      どうか今日だけは超攻速で逃げておくれ!レスキュー!ソルジャー!もっと早くゥ!!」
シン「……こなた、お前さっきから変だぞ。一体何を言って――」
ゆたか「お兄ちゃん…?」
Σ(TωT.)「ヒィィ、ゆーちゃん!」
シン「あ、ゆたか。ただいま。ほれ、わざわざお前に会う為に、みなみがウチまで来てくれたぞ」
ゆたか「……みなみ…ちゃん…?」
みなみ「ゆたか…どうしたの?最近誰とも口を開かないし、話し掛けても上の空だし…」
ゆたか「…………」
みなみ「何か心配事とかあるんだったら、私や先輩達もあなたの力になるから…だからゆたか…」
ゆたか「………って」

704/5:2008/02/02(土) 13:50:58 ID:DOS.gjL2
みなみ「えっ…?」
ゆたか「かえって…帰って……帰って…」
シン「おい、ゆたか…?お前、一体何を…」
ゆたか「帰って!帰って帰って帰って!この家にまで来ないでぇぇっ!!」
みなみ「……っ!?」
シン「ゆ、ゆたか!?お前っ、どうしたんだ一体!?」
ゆたか「私、待ってたのに!私、こんなに頑張ったのに…お兄ちゃんの為に一生懸命ご飯作って待ってたのに…
    お兄ちゃんはいっつも帰って来てくれなかった!みんなが私からお兄ちゃんを返してくれなかった!
    なんでみんなは私の邪魔をするの!?どうして私から、お兄ちゃんを取り上げようとするの!」
みなみ「ゆ、ゆたか…」
ゆたか「どいてよみなみちゃん!お兄ちゃんの側に近付かないで!
    お兄ちゃんの側には私だけがいればいいんだ!お兄ちゃんは私だけを見てくれればいいんだよ!
    シンお兄ちゃんに纏わり付くような女なんか、みんないなくなっちゃえばいいんだぁっ!」
シン「ゆ、ゆたか……おいこなた、何がどうなってるんだ!?一体ゆたかはどーしちまったんだよ!?」
(#TωT.)「やっかましいわぁぁぁ!自分の胸にパルマぶっ放してよーく考えてみぃや!
     ゆーちゃんをここまで追い込んで、私の神経までゴリゴリ削ってったのは全部お前のせいだろーがぁ!」
ゆたか「みんな…みんな大嫌い!みんな死んじゃえばいいんだぁぁぁぁ!!」
シン「おわぁぁぁ!ゆたか危ない!部屋ん中でそんなモン振り回したら――って、ウボァー!」
みなみ「せ、先輩ーっ!」
Σ(TωT.)「ゆーちゃんダメぇー!刃物はあかんて!刃物は刺さるととっても痛くて人が死んじゃうぞぉ!
     このままじゃ鮮血の結末でNice boat.でゆい姉さんに逮捕されちゃうかもから!
     だからやめてゆーちゃん落ち着いてぇぇぇ〜〜〜!!」

715/5:2008/02/02(土) 13:52:45 ID:DOS.gjL2

(;=ω=.)「って言う、恐ろしい悪夢を見た…」
シン「(((;゚Д゚))))」
(;=ω=.)「シン…私が言うのも何だけど、フラグの乱立も程々にしておきなよ…」
シン「(;゚Д゚)ハイ…キヲツケマス…」
(=ω=.)「まあ、たまには一日たっぷり使ってゆーちゃんとも遊んであげなよ。
    それだけでも結構違うんだからさ…ところでシン、今日の晩御飯は一緒だよね?」
シン「…………」
Σ(;=ω=.)「ま、まさか…」
シン「…今日は次のバイトで使うコスチュームの合わせとかでパティと約束入ってる…
   大分遅くなるだろうから、俺は外食して皆には先に食べてて貰うつもり…だった…」
(;=ω=.)「おぉい!この後に及んで貴様とゆーヤツはまぁーだそんなことを…!」
ゆたか「…お兄ちゃん、今日お夕飯いらないの…?
Σ(゚Д゚;)(TωT.)「「げぇっ!!ゆたか(ゆーちゃん)!!」」
ゆたか「そっかあ。うん、それじゃあしょうがないよね…。
    私、今日はお姉ちゃんとお留守番してるよ。頑張ってね、お兄ちゃん」
シン「あ、ああ…ガ、ガンバリマス…」
(;=ω=.)「…シン。明日はとっとと帰って来なさい。ヤンデレゆーちゃんは単なる私の夢だけど
     ゆーちゃんが料理勉強してるのはマジ話だから…
     あ、一応これあんたには内緒ってコトにもなってるから、そのつもりで驚いてやってあげて…」
シン「((;゚Д゚)))Yes,master!All Hail Yutaka!」
ゆたか「……?さっきから二人とも、変なの」


ゆたか「……そっかぁ。今日はお兄ちゃん、今日はお夕飯いらないんだ。
    残念だなぁ、今日こそはお兄ちゃんに私の作った御飯を食べて貰おうと思ってたのになあ…
    約束があるならしょうがないよね……女の人と…約束が…うふ、ふふふふ…」

72名無しさん:2008/02/02(土) 14:21:58 ID:KtQxPV6I
>>71
おもしろかったぜ!……だが
KOEEEEーYO!!ガクガクブルブル
でも覚醒後も鈍感なシンに和んじまったよw

73名無しさん:2008/02/02(土) 17:38:07 ID:ZGqfmftc
おまw
ゆーちゃんテラコワスw

74名無しさん:2008/02/03(日) 21:59:04 ID:2Qn.gdj2
ちょっwww空鍋化wwww?
それに>>71氏!アンタって人はーーーー!!!!
俺の中でゆたかのキャラがこれで確立しちまったじゃねぇかwwww
どうしてくれるんだ!!?

751/5:2008/03/07(金) 15:50:43 ID:oQRuzhTA
  『漢たちのリベリオン』

 ある日の深夜、午前0時。黒より暗い暗闇の中で。
 事態は密かに進行している。
 陵桜学園高等部の一室。つまり、ある一つの教室の中で30人近い男達がむさ苦しくも集まっていた。
狭い教室の中で円陣を組むように並んだ男達はひたすらに寡黙であり、かつ全員が…阿修羅像のようなポーズをとったその様は非常に不気味である。
「我々は断固として戦う」
 その中でリーダー格と思われる男が一人、灯り一つ点していない部屋の中で勇壮なる戦いの決意表明をすると…
誰かが教室の中央に置いてあるろうそくに火を点した。その燃え上がる火のごとき激しさで
「ついに我々男子の妄想…いや、悲願を実現させる時がきたのだ。ならば、その障害となるであろう…シン・アスカには無慈悲なる死をッ!」
 突如、静寂の教室に野太い漢達の叫びが巻き起こる。これは紛れもなく、場にいる全員が賛同しているという合図だった。
黒のベールに包まれたリーダー格の男がそれを確認したように頷くと、さらにこう続けた。
「では、明日…我々はこの計画を実行する。さすれば神は必ず、我々に絶対なる勝利をもたらすであろう!!」

 叫び声がやんだあとの、さらに不気味な沈黙。教室に集まっていた男達は意を得たりと言わんばかりに次々とその場から出て行った。
 この奇妙な集会は誰にも気づかれぬまま……終わりを迎えたのである。
このことが明日、陵桜学園を密かに揺るがすことになる…決して後世に語られることない史上最低の珍事件の発端となった。


                φ
 
 …空を覆う、いやに分厚くて黒い雲から無数の雨粒が落ちてきている。今日は…朝から雨が振っていた。
 と言ってもオレが学校についた途端に振り出した雨だったので、幸いにも登校中に雨の被害は受けずに済んだが
問題はこの後だった。
「止まないね〜、雨」
 窓際の後ろの席に座るオレの、さらに後ろ。つまり最後尾に座る泉こなたがいう通り、雨がシトシトと降り続けていた。。
もう時は昼を少し過ぎた辺りだが、いつもならこの時間にはウザったいくらいに光っている太陽も…今日ばかりは分厚い雲に阻まれている。
それから察するに今のところ、雨が止む様子はなさそうだが…これには正直、困ったところがあった。
「シンって今日…傘とか持ってきてたっけー?」
「……うっ」
 オレはニヤニヤと笑みを浮かべるこなたに痛いところをつかれ、押し黙る。ある日を境に天気予報を信じなくなった俺は、
今日の降水確率70%の報も信じることなく学校へとやってきたのだが……そのザマがこれだった。
これでは帰りが心許ない。なんというか、オレの行動はつくづく裏目に出る運命にあるらしい。
 それに……この気持ちはなんとなくなんだけど。
この黒く分厚い雲を見てると、今日はイヤな日になりそうな…そんな予感が俺の胸中に渦巻いている。

762/5:2008/03/07(金) 15:51:45 ID:oQRuzhTA
「ねぇ、今日の帰りは私と相合傘ケテーイだね」
「……なんでそうなるんだよ?」
「だって、一つ屋根の下で住んでるんだから帰るとこ一緒だし。別にいいじゃん」
「最もらしい理由だけど、死んでもそれだけは断る」 
 オレは、そんな胸中に生まれつつある黒いモヤモヤをはねのけるべく…こなたをも相手にしないよう試みた。
だが、こなたはオレに置き傘すらないことを知っているのか、彼女のその顔はますます意地悪げな笑顔満開。
それなのに何故か、そんな笑顔でも眩しく感じられたので…気分を変えるべく
「ちょっとテルテル坊主作ってくる」
「え? ちょ…待ッ!」
 貧相な白いハゲ頭を作ることを口実に、後ろからオレを引きとめようとするこなたの声も聞かず速やかに教室を出ようとした…
『3年D組所属、シン・アスカ。至急…学園長室まで来てくれたまえ』

 ――――その時だった。何の前触れもなく、オレの胸騒ぎをさらに大きくさせる事態が起こったのは。
品性がありながらも力強い調子の男の声。美声と言ってもいいそれが教室のスピーカーからオレの名を繰り返し呼んでいる…。
まず頭に?マークが浮かぶも、この学校の最高権力者…直々の呼び出しとあれば行かないわけにもいかなかった。
「やっぱり、今日はヤバイ日なのかもな…」


           φ

「やぁ、シン。久しぶり…というのは変かな?」
 呼ばれるがまま学園長室に入ると、校内放送でオレを呼んだ声の主……30代前半くらいの長い黒髪を持つ男が目の前にいた。
なるほど、どうやら彼が学園長らしいが…容姿といい声といいその存在感といい…学園長に相応しい気品のようなものを感じ取れる。
腑に落ちないのは、初対面のはずなのにヤケに馴れ馴れしく喋りかけてくることと…なんだかオレはこの顔を
どこぞで見たことがあるような気がしてならないということだが、そんな疑問を知る由もない学園長は
「久しぶりに再会したのだし…昔話にでも花を咲かせたいところではあるが、今は状況が状況でね。早速、本題に入らせてもらう」
「…状況? 何の事でありますか?」
 柔和な表情を若干崩して話始めた。その表情の変化を見たオレは…とりあえずデジャブとか胸騒ぎは置いといて、学園長の話に耳を傾ける。
「うむ。実はだね、つい先ほどのことなのだが…『セバスチャン』と名乗る人物から我が陵桜学園に一枚の脅迫状なるものが送られてきた」
「脅迫……状?」とオレ。それはあまりに信じがたい話だった。
「…そうだ。まさか本校にこのようなものが送られてこようとはね。これは由々しき事態だよ」
 学園長は座ったまま顔の前で手を組むと…少しだけ顔をしかめた。この話が本当であることと、事態が切迫していることが表情で感じられる。
まさかの話の内容に…この張り詰めた雰囲気。オレも思わず緊張気味のかすれた声で聞いてみる。
「それで、その脅迫の内容というのは…?」
「ああ、その内容なのだが。これが実に恐ろしいものだったのだ」
 学園長の言葉に反応したのか、オレの喉が勝手にゴクリと鳴っていた。なんだって、この陵桜学園に恐ろしい脅迫文を送ってきたというのか。
平和だと思っていた世界。とりわけ、この陵桜学園という場はオレにとって憩いの場でもあったのに…!
 オレは心中の抑えきれない悲しみを抱いたまま…次に明かされるであろう脅迫の内容に備えると、学園長は静かに内容を告げた。

773/5:2008/03/07(金) 15:52:43 ID:oQRuzhTA
「セバスチャンは『校内の女子の体操服をブルマーにしろ。さもなくば、我々は学園に多大なる不利益をもたらすだろう』と言ってきている。
どうだね、全く持って…恐ろしい内容だろう?」
「……………え?」
 一瞬で張り詰めた空気がぶっ壊れた。そんな気がした。
ってか、話の内容が理解できなかった。いや、あまりに予想斜め上の内容すぎて理解したくないと言ったほうが正しいかもしれない。
ただ、学園長は恐ろしいと言ってはいるが…確かにこの要求は男の本能に忠実というか、いろんな意味で恐ろしいとは思える。
 そのバカらしい内容に、オレはイタズラではないかと提言してみたが…それでも学園長は大真面目にこう語った。
「シンよ。確かに、イタズラという可能性を考えるのもわかる。だが、もしこれがイタズラではなく本気だとしたら?
彼らは何をすると言ってきている?」
「そ…それは、学園に不利益をもたらす…と」
「そうだ。物事というのは常に最悪の事態を考えて動かねばならん。このような『男の欲求丸出しの脅迫』をしてくるワケのわからない連中だ。
何をされるかわかったものではない。それに、私は既に『セバスチャン』と名乗る人物が行動に出ているということも把握しているのだよ」
 そう言って学園長は指をパチンと鳴らすと、背後のカーテンが動き出して巨大なモニターが現れる。
そこに映っていたのは、雨の中…顔を包みこむようにブルマーを被って走っている数十人の男達。
見たら十人中十人が納得するだろう…見紛うことなき変態達の姿だった。

「ヴ……ッ!」
「どうだ、シン。思わず引いてしまう光景だろう。これは私の部下が撮ってくれた映像なのだが、どうやらその部下の情報によると
この『セバスチャン』とその仲間と思われる彼らは、まっすぐこの陵桜学園に向かっているということだ」 
 それを聞いて、オレは思わず彼らが学校に侵入した風景を想像した。もし、そんなことを許してしまえば…陵桜学園は終わりだ。
風評だとか、そんな面でいろいろと。そこは学園長も同じことを考えていたのか、やはり渋めの表情で
「彼らはもし、我々がブルマーの案を受け入れなければ自身の存在そのものを嫌がらせにして…陵桜に突っこんでくるだろう」
「そ、そんな! じゃあ、学園長はこいつらにどういった対応を? まさか要求を飲んだりなんかは…!?」
「うむ。女子の体操服にブルマー…か。確かに男としては魅力的に感じることもあるだろうが、私は学園長という身だ。
そんな彼らのふざけた要求を呑むわけもない」
 学園長は目を細め、表情を断固といわんばかりにキツくすると…彼らには譲歩しないという姿勢を確かにした。
オレはそのことに安堵しつつも、頭には新たなる懸念が浮かぶ。
彼らは、今…雨の中をブルマー被って暴走しているのだ。しかも、こちらに向かって…!
「そう、彼らは本気だ。私が彼らに敵対する姿勢を取れば…彼らは武力を以て学校に介入してくるのが目に見えているのは
先ほど言ったとおりだ。ならば、こちらも少々手荒ではあるが…変態には変態をぶつけるという方法を取る。それしかない」
 ここで学園長は言葉を切ると、目がキラリと光った。その目線は…真っ直ぐにオレを見据えている。
そこに爛々と輝くオレへの期待みたいな光を宿しているのに感づいたのは良かったが……その時には全てが遅かった。
「……時にシン。私は君の能力を高く評価している。ならば、なぜ私が君にこのような話をしているのかは…
君自身もよくわかるはずだ。そうだろう?」
 学園長が今度は不敵な笑みを浮かべると、オレが感じていた胸騒ぎは…本日の最大値に到達することとなった。

784/5:2008/03/07(金) 15:53:50 ID:oQRuzhTA
  
     φ

 最悪だ。
 結局、学園長室を出た俺には…しっかりと任務が言い渡されていた。
どうやら、学園長としてはこのようなことを表沙汰にしたくないらしく
生徒はおろか、学校に深く関わる関係者たちにさえこの事態を秘匿するつもりのようだった。
よって…オレの任務とは変態一味が学校へとやってくる前に彼らを掃除し…以下何事もなかったようにすること。
つまりは、かのブルマを被った変態達を密かに捕獲…場合によっては駆逐することがオレに課せられた使命である。
(――――これはきっと君の助けとなるだろう。我が陣営の科学力で開発したとっておきの武器だよ。
彼らとの戦いで、是非役立ててくれたまえ――――)
 そして、オレが学園長室を出て行く際に渡された…大そうな名前を持つ二つの武器。
衝撃鋼とかいう特殊な金属で出来ている篭手『ギルガメス』とやらに、一見はスーツケースのように見えるが、
数々の形態に変形するという兵器『パンドラ』…どちらも渡されたマニュアルを斜め読みした限りでは
とても高校生が持つようなものではない強力すぎるものが揃っている。
 これにより、対変態迎撃において不備はないが……やはりどうも気が乗らない。
なんだってオレがあんなブルマー被った男達と戦わなければならないのか…、それに尽きる。
正直、あんなヤツラと相対したいとは誰もが思わないだろう。
(――――君がやらねば誰がやる? 君は、この陵桜のエースなのだから――――)
 またも脳裏に学園長の言葉が浮かぶ。いつからエースになったのかは知らないが
やはりオレは学園長に見事担ぎ上げられたようなのは間違いない。
学園長もオレの力を見込んでのことだろうが…さっきから口からこぼれるのは溜息ばかりだ。

 それでも任務というのは果たさなければならないのが辛いところ。やるせない気持ちながら、オレは廊下を経て
「まだ止んでないのな、雨は」
 誰もいない靴箱までくると、雨は…行く手を遮るように教室で見た時よりも激しさを増していた。
どうせなら…雨よ。できることなら、このままオレを拒むくらいに振り続けてほしい。
それが叶わぬのなら、これから始まるであろう自身と変態達の『血で血を洗う戦い』
を掻き消すぐらいのことは期待したいものだ。
「――――じゃあ、行くとするか」
 これが地獄への片道切符だとしても、迷いは…ない。倒す覚悟に…倒される覚悟。
制服の上から緑色のやつれた軍用コートに身を包むと、靴箱から汚い靴を取り出す。
こうして、オレは力強くあろうとする足取りで…孤独な雨の中に一歩を踏み出そうとした。
  
 
 その刹那――――

795/5:2008/03/07(金) 15:54:53 ID:oQRuzhTA
「どこ行くの? もしかしてサボり〜?」
「う……」
 ヤケに気の抜けるような女の子の声が背後からかかり、俺は思わず呻き声を漏らした。
なんだか背後を見たら負けかなって思えたので、そのまま雨の中へ進もうとするが 
「待ったー! 質問にくらい答えようね?」
 彼女…泉こなたはオレの腕を掴んで離してくれなかった。
まぁ、確かにこんな昼休み時に学校から出て行こうとすれば…サボりと疑うのも無理はない。
「こなた。オレはさっき、学園長直々にサボりの許可を貰ったんだ」
 オレは言い逃れるための言い訳をついたが、それはあまりに下手すぎた。ある意味、本当のことではあるけど。
というよりオレが今からしようとしていることをありのまま喋ることは命令に反する。っていうか、こんなこと話したくない。  
そう、オレは学園の誰にも知られることなく…あのブルマーの変態狩り任務を遂行しなければならないのだ。 
「何も聞かずに離してくれ。男ってのは、ワケもなく雨に打たれたくなる時もある」
「ダ〜メ。ホントのこと言ってくれないと離さないよ?」
「…ならアンタは、オレが嘘を言ってるとでも?」 
「うん。シンってウソつくの下手だしね。バレバレだもん」
 こなたはオレの心の内を完全に見透かしているようだった。オレはやはり口ごもるしかなく、
ただそのまま…幾分かの沈黙が続いたのだが
「ほい、これ貸したげる」
「え…?」
 彼女は突如として、オレに傘を差し出してきた。何事かと問うてみると
「雨の日に傘使うのは当たり前でしょー? いくらシンがバカだからって、こんな土砂降りの中に出ると風邪引くよ」
「こなた…」
「どこ行くのか知らないけど、早く帰ってきてね。今日は私と相合傘するんだしさ」
 こなたはあくまで笑みを浮かべていた。その小っこい体が、なんだか頼もしく見えてくる。
今から戦いに行くというのに、心が温まってくるなんて思わなかった。とりあえず、オレは誓わなければなるまい。
「…いいだろう、この傘…きっと返してやる」
「うん、それでおk」
 オレは傘を受け取ると、こなたに背を向けた。もし帰ってこれたら、相合傘とか…してみてもいいかなって思えてくる。
そのままスーツケース『パンドラ』を手に取り、傘を広げると…こなたの見送りを受けつつ雨の中へ飛び出した。
 
 ここに史上、最も下らない戦い。互いの意地と存亡を賭けた、絶対にやってはいけない戦いの幕が今…切って落とされたのである。


  [続くっぽい、これ]

80名無しさん:2008/03/07(金) 18:27:01 ID:jIwd/b.2
GJ!!あれ、学園長ってもしかして専用機の人ですか?w
あ、いえ、どっちかっていうとプランの人ですね。

81名無しさん:2008/03/07(金) 20:07:31 ID:xrDVmXmM
GJ!
相手恐ろしすぎるだろw 死んでも関わりたくねぇよww
シンとこなたが凄くシリアスに見えるけど詳細考えると笑いがとまらんww

82名無しさん:2008/03/07(金) 22:03:39 ID:uiWWbel2
GJ!
シンとこなた王道シリアスやってんじゃねぇw 不覚にも格好いいと思っちまったじゃねぇかwww
つか敵自重www

83名無しさん:2008/03/23(日) 02:10:06 ID:8PVv9SqE
本スレでヤンデレゆたかを書いた者ですが、あちらでご指摘があったので
ナイスボートなゆたかをこちらで書かせていただきます。

それでは・・・





※ヤンデレ注意※


最初はちょっと怖かった。


その紅い目は攻撃的に見えたし、その態度は無愛想に思えた。


でもすぐにその印象は変わった。


私が保健室に行った時、必ず休み時間に来てずっと側にいてくれた。

家でも本当の妹のように優しく接してくれた。
攻撃的に見えた紅い目は優しさに溢れ、無愛想に思えた態度は不器用さだということに気づいた。


その人が大好きになった。


大好きな親友の良さも理解してくれた。

他の人と違う、「強さ」を感じる優しさが心地よかった。

おじさんとお姉ちゃんとその人と、4人で暮らす毎日が本当に愛おしかった。

84名無しさん:2008/03/23(日) 02:13:54 ID:8PVv9SqE



でも、ある時から、自分の気持ちの変化に気づいた。

大好きなはずのお姉ちゃんと、大好きなはずのその人が一緒にいると、胸が痛くなった。

大好きなはずの親友と、大好きなはずのその人が一緒にいると、胸が苦しくなった。

その人と一緒にいると、病気じゃないのに体が熱くなって、心臓がどきどきした。

そしてその人と一緒にいる時間が、何にも代え難い愛おしい時間に思えた。



でも・・・これは本当に病気だったんだ。

私はいつの間にか、恋の病にかかっていた。

そう、私は・・・シンお兄ちゃんのことを、本気で「好き」になってしまっていたんだ。





だからね



「ゆたか・・・なん、で・・・?」



この想いは



「ゆー・・・ちゃん?・・・どうして・・・」



もう止められない



「ゆたか!どうしてみなみやこなた達を!?」



だって、私はシンお兄ちゃんが好きだから


ダカラネ・・・





オニイチャンハダレニモワタサナインダカラ



『病的な妹』

〜Fin〜

85名無しさん:2008/03/23(日) 20:19:20 ID:qa/9k0yE
>>84
GJ! ゆーちゃんこえぇw
ゆたかはどうもヤンデレ化することが多いような気がするw

86黒某:2008/03/25(火) 04:50:22 ID:1yR6TbiM
ちょっと眠れなかったので、何気なく書いたら………
 
本スレで投下してる某のSSとは別物と思ってお読み下さると幸いです。
 
※ヤンデレ・鬱系統です。
 
 
  『ジャマ』
 
 
 
「…なんだよ…これ………」
 オレが呻くように呟いた時、外は雨が降って来ていた。
 
 
 つかさからのメールが来たのは昨日だった。
 文面には短く「ああした日の日日曜日、B組のきよう室にききてね」とあった。
 
 
 教室に入り黒板の前にいたのは………
 
『大丈夫!シンはわたしがゆる〜くしてあげるよ!』
 オレをゆるくした張本人こなた
 
『何でいつもそうなのよ……少しは話してよ…あんたのこと』
 口は悪いが優しいかがみ
 
『私も何か力になれませんか?なりたいんです。シンさんの力に』
 
 いつもオレを気づかってくれたみゆき
 
 オレの大切な人達の変わり果てた姿だった………。
 雨はますます強くなってきていた。
 
 
「もう来たんだ、早いね〜」
 つかさは教室の端っこにいて窓の外を見ていた。手には赤いナイフを持っていた。
 
「これをお前が………?」
 わかりきった答え。でも否定してくれることを信じて、オレは聞いた。
「うん、そうだよ」
 つかさは振り返っていつもどうりの口調で絶望的な答えを口にした。
「…な…んでだ……?」
 掠れた声でそう問うのが精一杯だった………。
 遠くで雷鳴が聞こえた。

87黒某:2008/03/25(火) 04:56:55 ID:1yR6TbiM
「だってこの人達、ジャマだったんだもん」
「……じゃ……ま?」
「そう。だから消えてもらったの」
 外はもう豪雨になっていた。
 
 
「な、何言ってるんだ!?お前達親友だっただろ!?」
 つかさの言ってることがわからずオレは喚き散らす。
「親友?アハハ、そんなわけないよ〜。親友だったら私とシンちゃんの仲、ジャマするわけないもん♪」
「オレとお前の仲……」
「そう!シンちゃんもウザかったよね?あの人達がベッタリして来るの」
「…………」
 つかさの言ってる意味がわからなかった。
「だから、私がシンちゃんの変わりにやってあげたの」
 
 わかるのは目の前にいるつかさが、オレの知ってるつかさではないということ、それと………
 
「あの人達、みんな信じられないって顔してたよ。私をバカにしすぎだよね〜アハ、アハハハハハハハハハ――」
 
 つかさがこうなってしまったのは、オレが原因ということだ………やっぱりオレは血塗られている………。
 オレがこの世界に来たばっかりに…こなたは…かがみは…みゆきは………つかさは…………

 ソイツの哄笑は、雨に負けることなく、続いていた………
 
 
〜『ジャマ』〜
     Dead End

88名無しさん:2008/03/25(火) 22:51:59 ID:a7AlZ4g2
>>87
GJ!
このスレだとこなた、つかさ、ゆたか辺りのヤンデレ化率が高いなぁ。
意外なヤンデレ化ってのがあまりないねぇ。

89名無しさん:2008/04/04(金) 08:32:53 ID:Nb3q8jxY
本当だったら軽い表現に留めて本スレに送ろうと思った物の
何だか書いてる内に段々ヤバくなって来た気がするのでこちらに投稿させて頂きます
これまたヤンデレネタですので、御注意下さい!


ひより「ウーム。少しネタが煮詰まって来たッスね…
    ここは普段描かないようなキャラでも描いて、気分転換でもした方がいいかもしれんス
    さてさて、となると…描くのは今流行りのヤンデレキャラとかにしてみますかねぇ」
ゆたか「ねえ田村さん、その『やんでれ』ってなぁーに?」
ひより「ブフゥゥゥッ!?こ、小早川さん、聞いてたんスか!?」
ゆたか「うん…何だか盗み聞きするみたいになっちゃってごめんね。
    それで田村さん、その『やんでれ』って言うのが何なのか、ゆたかに教えて欲しいの。
    この間もこなたお姉ちゃんが漫画を見て『やんでれ』がどうこうって言ってたんだけど
    意味を聞いても教えてくれなかったんだ。ゆーちゃんにはまだ早いからって」
ひより「あー。え、えーと…そいつはッスね…(汗)」
ゆたか「ゆたか、もう子供じゃないもん。何を聞いたって驚かないから、だから田村さん…(純真な目)」
ひより「はうっ!?そ、そんな目で私を見ないで欲しいッス!
    なんか答えない方が正解っぽいのに、逆に答えなくちゃいけないよーな気分になるッスから!」
ゆたか「(じぃ〜っ)」
ひより「……そ、その、小早川さん…本当に聞きたいッスか?」
ゆたか「(こくこく)」
ひより「じ、じゃあ、要点を掻い摘んで、例え話で説明させて頂くッスけど…」

902/3:2008/04/04(金) 08:33:56 ID:Nb3q8jxY
「うふふ…シン君、大丈夫ですか?」
 ベッドに横たわる少年を見下ろしながら、天原ふゆきは薄い微笑みを浮かべた。
 少年の体には至る所に包帯が巻かれており、それに滲む赤い染みからは如何に彼の傷口が深い物なのかが

窺える。
 全身に傷を負った痛々しい少年の姿を、しかしふゆきは愛しそうな表情でじっと見つめている。
「シン君はいつでも元気いっぱいですから…あまり私の所に来てくれなくて寂しかったんですよ?
 でも、今日は特別。たっぷりとあなたのことを看病することが出来て、私、とても嬉しかったです」
 包帯越しにふゆきは少年の体をそっと撫でる。
 その感触に少年がビクリと全身を震わせたように見えるが、ふゆきは構わずに言葉を続ける。
「だけど駄目じゃないですか。他の女の子とあんなに仲良くしてしまったら…
 幾ら私だって、ヤキモチの一つも焼いてしまいますよ?
 シン君、とっても素敵ですから…今日みたいに、他の女の子に言い寄られてしまうんじゃないかって、私

いつも心配してるんです」
 そこでふゆきは、もう片方の手に持っていた眼鏡を強く握り締める。
 既にひび割れている眼鏡のフレームが、彼女の手の中でギリギリと悲鳴のような音を立てながらひしゃげ

て行く。
 見るべき人間が見れば、それがふゆきの親友である桜庭ひかるが常用している眼鏡であることがわかった

ことだろう。
「ひかるちゃんってば、ずるい子。私の見ていない所でシン君に近寄ろうとするんですから…
 そんな悪い子には、ちゃんと言い聞かせなくちゃいけませんよね。
 シン君は止めましたけど、やはりこういうことはきちんとしておかないと」
 そう言って、手の中の眼鏡を無造作に床に叩き付けた後、ふゆきは更にそれを目一杯に力を込めて踏み躙

る。
 自分の足元で、ひかるの眼鏡が原型を留めぬまでに砕けるのを確認してから、ふゆきは再びベッドの上に

横たわる少年に視線を向ける。
「…でも、ひかるちゃんには感謝しないといけないかもしれませんね。
 シン君が怪我をすれば私が手当て出来るっていう、すごく当たり前のことを教えてくれたんですから。
 怪我が治ったら、シン君にはまた新しい怪我をして貰って。
 そうすれば、シン君はずっと私の側にいてくれる。いつまでも私はシン君と一緒にいられるんですもの。
 どうして私は今まで、こんな簡単なことに気付かなかったのかしら」
 熱の入った表情で少年の姿を見つめながら、ふゆきは彼の頬に手を当ててそっと撫でる。
 物言わぬ少年が拒絶の意思を示すようにゆっくりと首を横に振ったように見えるが、ふゆきはそれに気付

かない。気付こうともしなかった。ただ愛しそうに、慈しむように、少年の姿を見つめるだけだ。
「大好きですよ、シン君。私とあなたはずっと一緒です。私はもう、ずっと…何があっても永遠にあなたを

離しませんから」
 少年から浴びた返り血で、白衣を真っ赤に染めたふゆきの声は、しかしどこまでも優しいままであった。

913/3:2008/04/04(金) 08:35:40 ID:Nb3q8jxY

ひより「…と、まあこんな風に、相手に惚れ込むあまりに心を病んでしまったり、
    あるいは思い余って流血沙汰まで起こしちゃうようなキャラが、今はヤンデレと呼ばれてるッス。
    デレっデレだけど病んでいる、即ちヤンデレって訳なんスけど…」
ゆたか「………」
ひより「あのー…小早川さん…」
ゆたか「う…うわあああん!シンお兄ちゃんが天原先生にぃーっ!!
    お兄ちゃんが死んじゃうよぅ!天原先生恐いよぉぉ!!(ガクガクブルブル)」
ひより「あああ!違うッス、誤解ッス、ごめんなさいッス!
    今の話はフィクションであって、実在の人物とは何も関係が無いッス!
    つーか実はコレ、前にチョロっと考えたことのあるネタだとか
    下手したらアスカ先輩はいつかこーなるんじゃないかとか、いやそんなことはどうでもいいッス!
    とにかくごめんッス、色々な意味で申し訳ないッス!
    特に天原先生には名誉毀損レベルで謝んなくちゃいけない気分ッスよぉー!」

〜数日後〜

ゆたか「あうぅ……」
みなみ「ゆたか、大丈夫…?」
ゆたか「うん…ごめんねみなみちゃん、ちょっと気分が悪くなっちゃっただけだから…」
みなみ「一緒に保健室へ行こう。天原先生に診て貰わなくちゃ…」
ゆたか「(ビクッ)」
みなみ「…ゆたか?」
ゆたか「い、いやあぁぁぁ!!天原先生の所はやだぁっ!ヤンデレはダメだよぉぅっ!!」
みなみ「え…え!?」


ぐわあ!改行の部分を修正するのを忘れてた…なんかもう、色々な意味で申し訳ないです…

92名無しさん:2008/04/04(金) 11:13:33 ID:bWnCKcf2
>>91
GJ!
ひより・・・ゆたかにトラウマ埋めつけんなw
ふゆきヤンデレ表現がうまくて想像しやすくて噴いたw

93名無しさん:2008/04/05(土) 22:27:12 ID:wORBMmoE
あの人が好き−

「お、おい。もう・・・やめろって」

気付けばあの人が私の心の中に住み着いていた。

「無茶はやめて下さい!もう限界ですよ!」

だから私はあの人に気にいられるように−

「頑張った!お前は頑張ったよ!だからもう」

(あーたしかに痩せてる子の方が好き・・・かな?)

「お姉ちゃん!!」

「シ、シン。理想の体重まであと・・すこ・・し」

「「「「かがみ(さん)〜〜〜〜〜〜!!」」」」

痩せる少女
BADEND

本スレに投下した方よかったか?

94名無しさん:2008/04/06(日) 01:17:09 ID:OjtnPhkQ
>>93
GJ!
かがみー!!!?
本スレはギリギリアウトラインってとこかなww

95愚某:2008/04/07(月) 15:36:06 ID:.4JpPgFw
漢の誓いに撤回はない!
というわけで先日言っていた、らき☆れぼ愚某Verの予告編を投下したいと思います。
なお本編投下予定は四月中を投下しております。
 
 
 
 突如開催されることになった『ミス陵桜コンテスト』
 それに参加することになったのは………。 
「うちのクラスの代表は柊がいいと思うんだ〜」
「なっ!おまっ!?ふざけんな!!」
 
「かがみさんも出られるんですか!?」
「えっ私は―――」
「かがみさんが一緒だと心強いです。頑張りましょう!」 
 
「えっ、黒井先生も出るの〜?」
「らしいよ。まあ、『ミス』には違いないけどね〜」
 
 しかし乙女達に試練が!!
「様するに用意してる衣装とサイズが合わないんだな」
「お願いだから要約しないで………」
 
そしてデスティニー上、手伝いをすることになったシン・アスカ。
「あかん、アスカ。柊はお前が見張り……アレは失敗フラグや」
「ですよね。………仕方ないか」
 
 接近する(?)2人の仲………。 
「ねえ、教えてくれない?あんたの過去………」
「…聞いても、楽しいもんじゃないぞ?」
 
 様々な苦難を乗り越え
「バカ!痩せるとヤツレるは違うぞ!!」
「…だって、だって………。」
 
 『ミス陵桜コンテスト』の日を迎える………。
『ミス陵桜は………――』


 てな感じです。(全然わからないという声が聞こえなくもない)
 今の所本スレに投下予定ですが、投下する時にはゲームネタが本スレでは禁止になってる場合があるかもしれないのでこっちにしました。
 
どこに投下するにせよ生暖かい目で見守って下さったら幸いです。 
それでは!

96名無しさん:2008/04/10(木) 21:16:42 ID:0f35WpPY
>>95
思ったより深いとこまで突っ込みそうな予告w
どこであろうが楽しみに待ってますよ!

97名無しさん:2008/04/13(日) 21:38:14 ID:6gKSAuNg
>>91
これはw
ふゆき先生とヤンデレ好きな俺にはたまらないwww

98名無しさん:2008/04/16(水) 10:39:32 ID:0C087X1M
せっかくの専用ロダを利用しようと思ったら容量オーバー
パスは「konashin」
ttp://www10.axfc.net/uploader/12/so/O_48648.zip.html
前よりちょっとだけ先に進めます

9917-309:2008/04/18(金) 22:02:44 ID:h8/heEZw
おおw ゲーム作ってる人とかいるのか。
GJです。
>>98さんに付くレスがこれが初めてなのに申し訳ないけど、60時間経過してるし
ネタ投下よろしいでしょうか?

全3回に分けてて、一応初回はシン本スレに投下したのですが
独自設定が濃くなりすぎててネタSSと化してるので
こっちに引っ越してみました。


●つかさメイン格闘物
●視点は特に固定無し
●みゆき 一部SSでたまにある、格闘技経験あり設定

●今回はMOBキャラDQNありで、シンの出番あんまりないかも;

●デスティニー見始めたのは後期の方で、シンのキャラ少しおかしかったりしたら申し訳ないです。
●こんなのつかさじゃNEEEって人もスマソ

100格闘少女 その2 1/14:2008/04/18(金) 22:05:26 ID:h8/heEZw
ttp://www29.atwiki.jp/konashin/pages/1683.html
の続き

「いやぁ〜思わぬ観光だったね〜」
「何だか修学旅行してるみたいで新鮮だったよ〜」

ここは日が傾いてきた、栃木県のとある終着駅そばの大きめの公園。
何故制服姿の4人がこんな所に居るのかというと……単純に4人揃って寝過ごしてしまった為である。

学校も半日で終わりの休日前だったので、お泊り道具一式を準備してきたみゆきさんと共に
みんなでこなたの家にお泊り込みで遊びに行こうと電車に乗り込んだまでは良かったものの…
こなたとつかさは速攻で寝入ってしまい、かがみとみゆきももたれ掛られる感じが気持ちよくて
気づいた時には栃木の終着駅に着いてしまっていたのだった。

「それにしてもかがみとみゆきさんまで寝すごしてしまったのは意外だったよー」
「私とした事が、くっ付いて来るこなたさんが暖かくてつい……」
「……同じく……一生の不覚」
「お、お姉ちゃんごめんね」


また長い時間をかけて戻るのかとみんな憂鬱になっていたら、ポジティブなこなたが
折角だから栃木を日帰り観光しようと言い出して
携帯の情報を頼りに市内の寺や滝等の観光地を周って戻ってきた訳である。

ちなみにみんなの帰りの電車代節約のために、居残り補習だったシンに連絡して
家に余ってるsuicaを持って来てくれとパシらせてるこなた。
「『うん…うん、分かった、それじゃあ駅の西にある少し大きい公園でみんなで待ってるから』(ピッ)
 シンが今駅まで到着したんだって〜。順調に行ったらここまで来るのにあと10分ちょっとかな?
 みんなの帰りの電車代は私のおごりだよ♪」
「あんたの家のでしょう! いくらおじさんが仕事で用意したけど使わなかった余りだからって
 こんな事に使っちゃっていいの!?」
「それにシンちゃんが可愛そうだよぉ〜」
「まぁまぁ、野暮な事は言いっこ無しで。シンもお父さんも今晩は可愛い女の子三人が家に泊まり来て
 一つ屋根の下過ごせるんだし、これ位お安い御用だって」

「か、可愛いだなんて…」
「はうぅっ…」
「あ、あんた…自分で言ってて恥ずかしくないか…?」
「真っ赤になってるみんな可愛い♪」
みんなの反応が思ったより良いのに味を占め、ここぞとばかりにからかって来るこなた。


「も、もう! 私ちょっとジュース買って来る!」
「わ、私もー」
このままだと更に何言われるか分からないと思ったかがみは逃げ出してしまい
つかさもそれについて行った。


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