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三国志Ⅸ 公孫度伝

139野に咲く一輪の花:2014/04/30(水) 00:01:37
☆☆☆☆衆心7☆☆☆☆

「兄者、どうされたというのか」
男は一人月夜を見ながら呟く。
男の名は、関羽と言う。
劉備の将にして、情においては兄弟同然である。
関羽は、劉備が益州を制覇してからずっと永安を中心に防衛の任に当たっていた。
その権限は、劉備から兵の指揮権及び統治まで委託されており、独立した権限を与えられていた。
先程先程関羽が呟いた兄者とは、劉備のことである。
劉備は益州に入り、漢中の実権を勝ち取り、涼州・雍州(ヨウシュウ)の曹操軍と戦った。
ここまでは、よかった。
武都も攻略してまさに曹操と相対すところまで来た。
しかし、その後は静観の構えを取った。
関羽が苛立ちを見せたのは、そのことではない。
秘かに益州南郡に兵を集めた劉備は、同盟相手である劉表の背後を脅かす交州を攻めた。
交州は、孫堅が実効支配している土地である。
『確かに同族である劉表の援護に入るのは、情を重んじる兄者らしい。だが大義を疎かにしていないか』
関羽ほど理想に邁進していく将はいない。
それも頑なと呼べるほどに・・・。
関羽の理想を追い続ける姿勢は素晴らしいものがあった。
だが、理想を追う者は、時に周りが見えなくなる傾向に陥ることがある。
関羽もその一人である。
関羽は、曹操軍を倒し、漢再興の夢を突き通した。
ゆえに、漢津港を曹操軍が劉表から奪取した時に迷わず軍を派遣して曹操軍を追い払った。
問題はその後である。
関羽はそのまま漢津港に居座り続けた。
本来であれば、同盟相手に返上すべきところである。
この事は、後に大いなる軋轢を生むことになる。
関羽は、月夜を見ながら、なお想いを連ねる。
『そもそも益州の重臣である張松殿などがなぜ兄者を益州に招いたのか?
そして、兄者はその求めにあれほどすんなりと応じたのか』
月夜を眺める関羽の心に自身すら認識しない寂しさが募っていた。
その心を癒すがごとく今日の月は優しく照らしていた。


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