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ジョルノ・ジョーベェ&タカ
7
:
名無しさん
:2018/01/07(日) 21:04:45
2.
「親に救われたわね」
意識を失う直前に響いたのはそんな言葉だった。
ジョーベェがブロントさんの一番弟子と認められアノスで研鑽を積んでいた頃、ある日ブロントさんがラムリアースからきて悪行を繰り返していた貴族を成敗した。
そして何を考えたのかその悪徳貴族はブロントさんに深く感じ入って弟子の名乗りをあげ、数日後にジョーベェに向かって「すぐにこの国から出ていけ」と言った。
弱いジョーベェが自分を差し置いて一番弟子と自他共に認められていたのがどうにも許せなかったらしく、命だけは助けてやるという傲慢な態度で指図してきた。
そこからは、激闘だった。ジョーベェが覚えているだけでもまず「女だから顔は殴らないでおいてやる。だからお前も金的をするな」とルールを作った直後に膝蹴りでアゴを割ってやった。
膝を蹴り砕いた。転ばせて鼻を踵で踏みつけた。腕の骨を外した。鼻とアゴが砕けて呼吸がし辛そうだったから親切に喉を潰してやった。追いかけっこの末に崖から突き落としてもやった。
そしてそのことごとく、その女――ヒナナイ・シバシ・テンコは受けて立ち上がってきた。立ち上がり、ジョーベェを痛めつけた。あと一撃で死ぬというところまで。
そして、従者として連れ添わせていたブランカ193に「こいつを殺して、後始末はできるか」と聞いた。
「無理です! うちじゃ始末はできません! ジョーベェの母親はコーマカンメイド長のサクヤ・ブランド―です! ジョーベェを殺せばコーマカンは報復に動きます!! ヒナナイ組が潰されてしまいます!!」
従者の悲痛な叫びを聞きながらテンコは笑い、拳を振りかぶった。
「許して下さい。殺さないでください。お願いします」
それは誰の言葉だったか。とぼけようもない、ジョーベェ自身が発した言葉だった。
命の危険に際し、涙で頬の血を落としながら。ズタズタになった舌で、欠けた歯で、潰れかけた喉で命乞いの言葉を発していた。
足元には漏らした小便で水たまりができていた。もう指一本動かせない状態でありながら、ガタガタと膝が震えていた。
暴漢に襲われて道端に倒れているところを保護され、神父の治癒魔法を受けたジョーベェはその夜のうちに姿を消した。
絶対に言ってはいけない言葉だった。
言わずに死んでいれば、自分の世界は黄金色のままだったのに。
黄金色に輝いていたはずのジョーベェの世界(プライド)は、メッキになって剥がれ落ちてしまった。
つまりは、自尊心の話である。
このままでは、もうジョーベェは二度と自分で自分を尊敬できなくなる。
長い年月をかけて取り戻せた本物の人生が、また偽物になってしまう。
それを避けるためには、もう一度取り戻さなくてはいけない。テンコを殺してでも取り戻さなくてはいけない。
だからジョーベェは「必ず戻る」と尊敬する恩人にだけ手紙を出して、完治していない身体を引きずって去っていった。
「今はゴールにいるらしい」と言う話を直前に噂で聞いていた。
自分に新しい強さを教えてくれそうな、自分が頼れる限り一番強い相手。
喧嘩のやり方を教えてくれた、強さと言う自信をジョーベェにくれたもう一人の恩人。
シーマ・ブンキチから得られるものを全て得て、もう一度テンコに挑むのだ。
絶対に諦めない。自分が自分として生きるために。それだけを、もう絶対に諦めない。
つまりは、黄金の鉄の塊の話である。
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