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ここだけ禁書世界ロールスレ

8朝馬統亘:2015/07/29(水) 00:22:36 ID:3WxNzPtA
>>7
「筆里桜、か」

高水準、強能力者の進学先としてはポピュラーでありながら、それと同時の良くないことも聞く様な女子高。
だが、朝馬には、目の前の彼女は随分とまともであるように見えた。少なくとも、朝馬が敬意を払ったその勇気は決して嘘では無い物だと、思っていた。
そして、朝馬は少しだけ遠い目をした。遥か彼方を見るような、遠い羨望を覗くようなものだった。何のことは無い、彼女が唯の学生であることが羨ましいだけだった。
朝馬はそれをむざむざと口に出すような、愚かな人間では無かった。だが、沸き上がる感情は理性だけでは、どうしても抑えきれぬものであった。瞳の色を変えられぬように。
雌衣良綯慮と少女は名乗った。朝馬は、出来ることならば誰かに自分のことを必要以上に知られたくなかった。人が嫌いなわけでは無く、それは朝馬の誓いの一つだった。

「俺の名は、朝馬統亘」

ただ一つだけ、そう言った。それ以外には何も言わなかった。
詫びを入れる、という言葉に朝馬は疑問を持った。悪事を働いたのは十割で朝馬の方であり、彼女の方には何の非も無いのだから、そんな事を考える理由も無い筈だ。
響き渡る自動販売機の警告、それに続いて目の前の、雌衣良綯慮は笑い始めた。その理由は、分からない訳では無い。その笑いどころだって、分かっている。
彼女へと怒りの感情を抱くことも無かった。むしろ微笑ましくあるし、自分だって、つられて笑い出したかったが、『今の』朝馬統亘には、そうする事は出来なかった。

「雌衣良、綯慮」

ただ話の取っ掛かりとしてではあったが、彼女の名を呼んだ。
楽しそうに笑う彼女へと水を差すのは気が引けたが、一つだけ。それを一度遮ってでも、言わなければいけない事があった。

「詫びはいらない。この件で全面的に悪いのは、この俺だ。お前は、立派なことをした。何も詫びることは無い」

至極当然の事だった。
自販機を蹴って、警報機を鳴らして、それを放置して去ろうとした人間を呼び止めて、説得した。それのどこに詫びる要素があるか、と。
朝馬側の苛立ちなど、関係の無いことだ。無遠慮も何もないのだから、それは必要なく、またそれも彼女の勇気に対する敬意の一つであった。
それに。"必要以上に自分に関わって欲しくなかった"。少なくとも、今の自分には。

「俺は、お前のことが嫌いな訳じゃない。だが、俺はお前と一緒に笑うことは出来ない。それは俺の、俺自身の勝手な誓いを破る事になる。
 理由は言えない。だが……一つだけ、言えるとすれば。"俺のことは信用しない方が良い"」

―――――――――――― 朝馬統亘は、暗部の人間である。
朝馬に対して思うことは、人それぞれであるから、別にそれに対して何か言うつもりは無かったが。それでも、そんな風に自分に気を許した彼女に対して、そう言った。
仕事ならば人を殺す。目的の為ならば人を殺す。そう言う人間である、ということは、彼女は知らないだろうし、そのことは隠す事としている。
だが、やはり朝馬には我慢ならなかった。こんな風に、薄汚れた人間である自分が信頼されることが。

「だが俺も楽しくはあった。お前の笑い顔は、悪くはない」

ただ、それも言っておきたかった。何時か自分もそんな風に楽しそうに笑う事が出来たならば、それはとても幸せな事だろう、と思った。
そろそろ、管理会社が来ても可笑しくは無い頃合いだろう。「時間を取られたくなければ、此処から立ち去ったほうがいいだろう」、と彼女へと促した。


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