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あ艦これ文藝部

253 風流提督 :2017/07/09(日) 21:55:33 ID:br1hyuhI
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盛り付けも器も非常に綺麗で非の打ち所がなかった。
一口食べたら、身体に染み渡るような味。
本物の抹茶で、しかも上等なものを使っているのは味からしても見てくれからしても明らかだった。
「あ、あの…お味の方は如何でしょう…か?」
「とても美味しい…心がこもっているのが分かるよ。
せっかくのカキ氷が解けてしまうから、先に食べさせてくれないか?
何か話もあるようだが、すまんね。」
「い、いえ…」
ゆっくり味わうように食べ、一服した。
「とても美味しかったよ、本当にありがとう。
で、何か話したいことがあるようだが?」
「あ、あの…その…」
「遠慮は無用だよ。で?」
「重ね重ねあの子の非礼をお詫びします…あの子は実の弟ではなく、私が引き取ったのです。」
「…続けてくれ。」
「一ヶ月程前の爆撃で親を亡くしたようで、怪我もしておりました。
生きるか死ぬかの境目だったのですが、お医者様のご厚意で助かりました。」
「それは私に言うべきことではないよ。」
「いいえ、貴方様でございます。」
「なぜ?」
「そのお医者様は<提督からこれ以上1人も死なせるな>との厳命を受けて鎮守府から来ている>と。
沢山のお医者様が街に来ていました。」
「………」
「その時の鎮守府の提督は貴方様でございます。」
「…済まない…私の索敵指示が遅かったせいだ。
亡くなった一般市民の命は帰ってこないが…申し訳なかった。」
「とんでもございません! 貴方様のそのご指示がなかったら、もっと犠牲者が出ておりました!! 
生意気申し上げるようですが…」
下を向いて黙ったままの提督。
伊良湖は続けて言った。
「私はその大勢のお医者様方に指示をする貴方も見かけました。
貴方様は大勢の命を救って下さったのです。
一部の焼け落ちた場所の修復でも私は貴方様を見ました。
私のお店も同じでございます。」
「貴方様は大勢のお命を救って下さったのです。私も…私も……」
「続けてくれ。」
「私は、私は…あの時…貴方様に応急処置を施された者の内の1人でございます。」
「覚えていない…覚えていることが在るとすれば、あの時私は必死だっただけだ。」
頭を振って否定した提督。伊良湖はいつの間にか涙を流していた。
提督は黙ったままハンカチを差し出して聞いていた。
伊良湖が落ち着くまでじっと待っていた。
暫くして落ち着いた彼女はそのハンカチを大事に折りたたんで、両手で持っていた。
「貴方様は…あの時と全くお変わりになられておられないのですね……
疲れた時はいつでもここに立ち寄ってお休み下さいね。」
「そのハンカチはだな…その…そうさせてもらう…そうだな…証拠みたいなものだ。」
そう言って、立ち上がって鎮守府に戻ろうとした瞬間に後ろから強く抱き付かれた。
「あ…あ…あ………あぁあああ!!」
顔を見ずとも溢れ出ている涙には直ぐに察せられた。
何を言おうとしているかも。
提督は立ったままじっとしていた。
その涙に救われている気がしたからでもあった。
受け止めてやりたいとも思ったからである。
「私はどこにも逃げたりはしないよ、伊良湖。大丈夫だ。」
伊良湖はパッと離れて、自分の取った行動に顔を真っ赤にしていた。
「は…い……あの、このハンカチは綺麗に洗って…」
彼女の正面に軍人らしく振り返り、笑顔で敬礼した後、鎮守府の方向に歩いていった。
伊良湖はずっとその姿を焼き付けるように見送っていた。


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