4) 開発に繋がる実験は条約の破棄前に行われており、KoopとSchmolkeは『Battleships of the Scharnhorst
Class: Warships of the Kriegsmarine』で1928年、標的艦「プロイセン」の艦体を用いた実験とその結果に言及してる。
またGarzkeとDulinも『Battleships: Axis and Neutral Battleships in World War II』で標的艦「ヘッセン」を利用した
射撃実験とその結果に触れてる。
またWikipediaでも直接引用されている『Unterlagen und Richtlinien zur Bestimmung der Hauptkampfentfernung und der Geschoßwahl, Heft a』
は翻訳されていない部分でダンケルク級とネルソン級の防御様式及びその意図に触れる一方、もしそれらの主装甲甲板が砲撃の命中で崩落した場合、
下部のより薄い装甲甲板がその重量を支え切れないことを指摘し、この点でドイツ側の装甲配置の方が有利であると結論づけている。
つまりビスマルク級の防御は、第一次世界大戦中の考え方を引きずっているどころか新戦艦の装甲配置が抱えるデメリットを考慮した上で、意識的に
選択されたものと言える。
ビスマルク級の水中防御がどの程度の量の炸薬に耐えるか、という点についてはティルピッツの残骸を
調査した米軍の報告書があり、「the torpedo defense system on "Tirpitz" being designed to
withstand only about 660 pounds [300 kg] of German hexanite.」、すなわち
「『ティツピッツ』の水雷防御は300kgまでのドイツ製ヘキサナイトに耐えるよう設計されたのみである。」
と書かれている。この表現は、当時のアメリカにすでに潜水艦用の魚雷として、ヘキサナイトより強力な
トーペックスを303kg搭載した魚雷、Mark 14Mod3が存在するからだと思う。アメリカ海軍の場合、
ノース・カロライナ級の水中防御がTNT換算300kg、サウス・ダコタ級が同317.5kgと、ビスマルク級の水雷
防御と比べて著しく多いわけではない。