2人になった新生w-inds.を語るスレ～Beautiful Now～

1：名無しさん：2020/12/02(水) 02:13:42: w-inds.としての活動は色んな意味で厳しい状況だけど、こんな状況だからこそこっちも新たに1から純粋に応援したい訳よ

ダメ？
15：名無しさん：2020/12/03(木) 13:57:54: pvはやくみたい
16：名無しさん：2020/12/04(金) 01:17:20: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
17：名無しさん：2020/12/04(金) 01:19:09: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
18：名無しさん：2020/12/04(金) 12:57:18: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
19：名無しさん：2020/12/04(金) 21:13:51: やぱ1人いないとさびしいね
20：名無しさん：2020/12/04(金) 21:36:27: アップの時は違和感ないけど、全体的にみるとやっぱバランス悪いというかなんだかなぁ・・19年間慶太ファンだけどやっぱり龍一いないのは寂しい
21：名無しさん：2020/12/04(金) 23:14:27: 再生回数あがれ～
22：名無しさん：2020/12/04(金) 23:54:46: 曲だけ聞くとツインボーカルでもいい感じだけど、龍一がいないのを動画として見るとやっぱり寂しいね
23：名無しさん：2020/12/05(土) 08:17:41: 動画を見ると物足りなさを感じるね
24：名無しさん：2020/12/05(土) 10:25:56: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
25：名無しさん：2020/12/05(土) 10:37:56: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
26：名無しさん：2020/12/05(土) 14:13:38: いざ踊ってるとこ見てみるとパッと見w-inds.じゃない違う人達みてるみたいだよねw
27：名無しさん：2020/12/05(土) 14:15:00: 龍一の存在は大きかったのね。
それぞれ音楽活動を続けるんなら頑張ってほしいね
28：名無しさん：2020/12/05(土) 14:35:54: 曲として成立してもパフォーマンスはどうなるんだろう
29：名無しさん：2020/12/05(土) 19:12:59: >>28
今までの曲どうなるか気になるよね
30：名無しさん：2020/12/07(月) 06:44:15: >>26
それな
20年近くファンでいたのに誰？現実？って感じだｗ
31：名無しさん：2020/12/07(月) 12:34:38: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
32：名無しさん：2020/12/07(月) 12:36:21: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
33：名無しさん：2020/12/07(月) 13:42:43: あの数のダンサーいる？いつも思うけど多くない？本人達よりダンサーのが上手いから見劣りするし
34：名無しさん：2020/12/07(月) 14:23:33: >>33
ダンサー増やさないと絵にすらならんだろ
1人欠けてるんだし
35：名無しさん：2020/12/07(月) 14:58:50: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
36：名無しさん：2020/12/08(火) 00:28:53: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
37：名無しさん：2020/12/08(火) 00:29:33: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
38：名無しさん：2020/12/08(火) 11:36:15: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
39：名無しさん：2020/12/08(火) 11:41:54: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
40：名無しさん：2020/12/09(水) 11:51:47: 涼平の歌声きれいでいいなぁ

自分二人でもぜんぜん違和感ないわｗ
こういう綺麗な歌声のソロパートいっぱい聴けるほうが嬉しい
41：名無しさん：2020/12/09(水) 12:43:18: >>40
私もw
逆に、あの曲と歌詞の中に龍一に居る方が不自然じゃない？
2人で踊ってる姿みて寂しく思うとこだけは分かるんだけどさ。
42：名無しさん：2020/12/09(水) 17:55:18: 逆に龍一がいたら表現出来なかった面もあるよね
43：名無しさん：2020/12/09(水) 18:31:37: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
44：名無しさん：2020/12/09(水) 18:32:13: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
45：名無しさん：2020/12/09(水) 18:34:05: >>42
それな
龍一が居ないから成り立ってる
あの歌の中のどこにも龍一パートなんて無いのに
46：名無しさん：2020/12/09(水) 18:50:51: >>41 あの曲って龍一からしたら複雑だろうしね
完璧今の二人視点の歌じゃん
47：名無しさん：2020/12/09(水) 20:07:39: とはいえYouTube伸びないね
48：名無しさん：2020/12/09(水) 21:42:19: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
49：名無しさん：2020/12/09(水) 21:46:06: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
50：名無しさん：2020/12/09(水) 21:53:04: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
51：名無しさん：2020/12/10(木) 03:09:50: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
52：名無しさん：2020/12/10(木) 14:59:11: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
53：名無しさん：2020/12/10(木) 15:00:40: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
54：名無しさん：2020/12/11(金) 21:31:55: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
55：名無しさん：2020/12/11(金) 22:35:36: 丸1週間で8万足らずか
YouTubeは元々弱いけどこんなもんだったっけ
56：名無しさん：2020/12/12(土) 10:07:22: 終戦か…
57：名無しさん：2020/12/12(土) 18:14:13: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
58：名無しさん：2020/12/14(月) 04:02:50: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
59：名無しさん：2020/12/14(月) 13:00:32: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
60：名無しさん：2020/12/16(水) 17:13:44: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
61：名無しさん：2020/12/17(木) 21:08:36: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
62：名無しさん：2020/12/17(木) 22:14:30: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
63：名無しさん：2020/12/18(金) 16:54:45: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。
64：名無しさん：2020/12/19(土) 13:34:48: 当時は高校生が携帯を持ち始めたくらいの頃で、１８歳のその子は携帯を持っていなかった。
今のうちからバイトをして、大学生になったら自分で買うんだと言っていた。

俺は彼女より年上で、二年長くそのバイトをやっていたので、会うとよくバイトや勉強のことで話しかけられていた。

ある日バイトを終えて控室に戻ったら、先に上がっていたはずの彼女が、まだ椅子に座っていた。
それも一人で。

時間も時間だし、なんだか思いつめたような感じだったから声をかけた。

「最近夜にバイトあがると、誰か後ろからついてくる感じがするんです」
「一人でお店出るの怖くて・・・・・・もしよかったら、途中まで一緒に帰ってくれませんか？」

なんか適当に明るいことを話しながら家まで送った。
男の俺がいるせいか、今日はついて来られてる感じがなかったとお礼を言われた。

その一週間後、同じ時間にバイトをあがると、また控室に彼女がいた。
先週と同じか、もっと暗い顔をしていた。

「窓から部屋を覗かれてる気がするんですけど、怖くて確認できないんです」
「先輩と一緒に帰った日に後をつけてこなかったのは、もしかすると、もう私の部屋の外で待ってたからかも」

彼女の家は一軒家で、部屋は二階。
そんなところからどうやって覗くのかというと、塀から隣のマンションの物置？みたいな小さな建物によじ登れる。
そもそも地面の高さが違うので、その上からなら木の枝に身を隠しつつ覗けそうだという。というか、その辺りから見られている気がすると言っていた。

一応その日も同じように家まで送った。
彼女が言っていた場所には、誰もいなかった。（下から見ただけだから、確実じゃないけど）
俺は今ある貯金で携帯を買ったらどうかと勧めた。
夜道で家族と話しながら帰るとか、いざとなったら俺や友達を呼べるようにって。

それからは、その子は日に日に窓や人影に怯えるようになった。
明るくて可愛い子だったんだけど、笑わなくなって身だしなみを気にしなくなって、別人みたいだった。

ある日俺が出勤すると、控室にバイトを終えた彼女がいた。
幽霊みたいでギョッとした。

「先輩、ベランダに、いるんです。ストーカー。家族にカーテンを開けてもらうと、いなくなってて。家族が出ていくと、上からにゅっと覗くんです・・・・・・」

上から。
そんな所、誰もいないはずだった。

彼女の家の屋根に登るなんて、それこそ長いはしごが必要だろう。
帰るためにはかけたままにしておかなきゃならないだろうし。
ずっといるって言うなら、俺だって人影を見ているはずだ。

「あと、わたし携帯買ったので、先輩の番号とメルアド教えてくれませんか」
とりあえず連絡先を交換した。

その晩さっそくメールがあった。

「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか？もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか？」

「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。

すぐに着信があった。
ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。

「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」

そのときは夜の０時だった。

「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」

そこまで言って黙る。
泣いているみたいだった。

「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです・・・たぶん、『いるんだろ』って・・・・・・」

ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。
窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。

カーテンには大きな男の影がかかっていた。
ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。

「いるんだろ」と。

その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください・・・。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか？もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」

すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。

それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。
でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。
屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

だってストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。
いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。

2人になった新生w-inds.を語るスレ ～Beautiful Now～