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Baby!Baby!Baby!

1名無しAKB:2010/07/19(月) 22:03:06
男×メンバーです。青春恋愛漫画的な軽いノリで書きます。

オープニング動画(ようつべ)。
ttp://www.youtube.com/watch?v=ZH7AKMQf6kw

21.キスの前で目が覚めた:2010/07/19(月) 22:09:13
赤い日射し。公園のベンチ。
傍らに揺れる向日葵は、絵に描いたような夏の景色だ。

遠い昔に過ぎ去ったように感じる時間。
夏休みの子供たちがお母さんに手をひかれて帰る頃、
辺りは一瞬静寂に包まれる。

子供の時間でもなく、大人の時間でもなく、
中途半端だけど誰よりも精一杯な僕たちが、
唯一主役になれる時間。

左肩に感じる質量は俯いた彼女。
夕暮れの儚さに誘われ、僕は思わず髪をなでる。

不意に太陽は眠りについて、月が世界に現れた。
街灯は僕たちのためのスポットライト。
ゆっくりと顔を上げた少女は、僕に視線を寄せると、
ぎこちなく微笑み、目を伏せる。

僕は当然そうするように彼女の肩を引き寄せ、
二人の距離が、近づいて、


◆◆

31.キスの前で目が覚めた:2010/07/19(月) 22:26:37
耳元に流れる大音量の音楽。
ぼんやりと感じる朝の眩しさに、
さっきまでの出来事は夢だったのだと気付く。

不思議な夢だった。
片方が自分だったのは記憶しているが、
目覚めたばかりだというのに女の子の顔が思い出せない。
でも相手の子が自分にとって大事な人だということだけは、
何故かはっきりとわかっている。

遠ざかった断片を取ろうと足掻いてみるが、
耳元で鳴りやまないノイズに邪魔をされるから、
とりあえずこの音を消そうと思い立った。

そこでふと気付く。
耳元のメロディーは目覚ましの音ではなく、
確か、最近流行ってる何とかってアイドルの曲。

そこでようやく意識が覚醒して、
大原がうっすら瞼を開くと、目の前には影。

「うおっ!」
「いたっっっ!!!」

直後に衝撃。
慌てて起こした頭が、真上にいた物体に直撃する。

「いたい…。陽くんが急に起きるから頭がいたい…」

真っ白になりかけた意識を必死に現世に留めて、
大原は目の前でうずくまってるモノを見る。

指原梨乃。お隣さんだった。

41.キスの前で目が覚めた:2010/07/19(月) 22:28:19
「何やってんだ…。朝から二人のテンションを下げる意義を教えてくれ…!」

大原は頭を押さえながら枕元の時計を見る。八時十分。当然AMです。

「は?」

事体をうまく飲み込めず、大原は目覚まし時計を手に取る。

「陽くんが遅刻しないことですかね…」

指原は律義に大原の質問に答えると、ふらふらとドアに向かう。

「八時十分ってまずいだろ!」
「はい、まずいよね…知ってるよ…。いたい…。いってきます…」
「いや、待てって! 一緒に行こう、な!」
「やだー…」
「昨日は板藤くんにニケツで送ってもらったから自転車ないんだって!」
「やだー…」

こちらを振り向こうとしない指原を諦め、
大原は近くにあるワイシャツをはおる。
そしてタンスから制服を引っ張り出すと、一階に向け叫ぶ。

「母さん! 莉乃確保して!」
「おばさんはいないよー」

指原の声が聞こえると同時、玄関のドアが開く音。まずい。
とりあえず出なければならないと瞬時に判断し、
ベッドに置いてある携帯に手を伸ばす。
そのとき、携帯が二つあることに気付いた。

51.キスの前で目が覚めた:2010/07/19(月) 22:29:47
「おや…? もしかしてこれは莉乃さんの携帯なのかな」

大原はうっすらと笑みを浮かべ、部屋の窓を開ける。そして叫んだ。

「莉乃ー、携帯見るからなー」
「え? あ…ちょ…返して!!」

それには何も返さず、窓を閉める。
とりあえず、顔を洗おう。その後のことはその後考えよう。

そう思い立ってベッドから立ち上がると、勢いよくドアが開く。

「ケータイ! 返せっ!」
「おお…早いなお前…」
「返せっ!」
「わかったから、顔洗うの待て」
「無理! 遅刻する!」
「じゃあ先行っとけよ」
「見ない?」
「見る」
「返せっ!」

ぎゃーぎゃー騒ぐ指原を横目に、大原はしっかりと顔を洗う。
ワックスも念入りにつけ、さて出るかーと思ったら、
指原が疲れた顔で玄関に座っていた。体育座りだった。

「終わった…?」
「おう。八時二十分か。飛ばせば十分間に合うな」
「陽くん置いてけば歩いても行けたっつーの!」
「ほら、とろとろすんなよ。行くぞ」
「ひどい…。ケータイ…」

そんなこんなで、二人は家を出ました。

61.キスの前で目が覚めた:2010/07/19(月) 22:30:48
◆◆


自転車を飛ばせば、家から学校まで五分くらい。
ただ、曲がり角が多かったり信号が多かったりするので、
いつもは音楽を聴きながらゆっくりこいでく。
指原と一緒に登校する時はだらだら喋りながら行ったりもする。

今日は何度か轢かれそうになりながらも
指原を後ろに乗せて、五分で学校に着いた。
まだまだ始業までは時間があるようだった。

「あー疲れた…。でも、いい記録出たな!」

満足げに汗をぬぐう大原だったが、指原は一向に自転車を降りようとしない。
カゴから指原の鞄を取り出すと、訝しげに後ろを振り返る。

「どうした、莉乃、降りろ」
「めちゃめちゃ…」
「え?」
「めちゃめちゃ怖かったんですけど!」

指原は、ハンドルに掛けてある鞄を振りかぶると、
全力で大原に投げつけた。
勿論、大原の鞄です。

71.キスの前で目が覚めた:2010/07/19(月) 22:31:38
「うわっ! 馬鹿!」

大原はそのままバランスを崩すと、
莉乃と自転車を巻き添えにして地面に転がった。

「いたい…最悪…」
「だからな…朝から言ってるけど、二人でテンション下げる理由はないだろ…?
なあ莉乃…」

涙目の莉乃と、なんだかもらい泣きしそうな大原。
すると、近くから笑い声が聞こえてきた。
涙を堪え、強打したすねをおさえ振り返ると、見知った顔。

「相変わらず仲いいなあ」

そう言って笑うのは、虹岡健吾。大原のクラスメイトであり、
よく一緒につるんでいる悪友だった。

「そう見えますか…?」

大原はそう言いながら、二人の姿を俯瞰して見る。

早朝の駐輪場に、一緒に登校する幼馴染二人。
ついつい喧嘩をしてしまって、お約束のようなハプニング。
そんで、その後、ちょっとどこ触ってんのよーなんつって。なんつって。ねーよ。

81.キスの前で目が覚めた:2010/07/19(月) 22:34:06
「ねー…」
「仲良くないです!」

指原に先手を打たれる。
大原も思っていたこととは言え、先に言われるとちょっとしゃくだ。

「いやいや、だって今日も一緒に来てるでしょ」
「それは、こいつが寝坊したからです!」
「こいつってお前…、先輩だぞ」

指原はもう一度バッグで大原を殴る。

「今度、健吾くんも起こしに行こうか?」
「ほんとに? でも家も遠いし、悪いから遠慮しとく」

虹岡は笑いながら指原の申し出をさらっと受け流す。

「えー、こいつを起こすよりずっと楽しいのに」
「言いすぎだろお前…」

それを聞いた虹岡は更に笑いだす。
大原はもう正直どうでもよくなってきていて、
それよりむしろ時間が気になった。

「あと五分くらいしかないな…。ってあれ、健吾君、朝補講は?」

大原と虹岡は二人とも特進クラスに在籍しており、
そのクラスだけには七時半から朝補講という制度がある。
要は、ゼロ時間目から授業がスタートするのだ。
そして、今は八時三十五分。
大原は起きた瞬間に朝補講はなかったことにしていた。

「あー、朝辛いし、さぼった」
「ですよねー…」

虹岡は爽やかな笑顔で返す。
こういう適当なところが、
高校三年間ずっとつるんでいられる理由なのかもしれないと大原は思った。


◆◆

91.キスの前で目が覚めた:2010/12/20(月) 00:08:08
普通科の学生に交じり当たり前のような顔をして学校に入る。
さすがに特進クラスの学生は誰もいなくて、大原はちょっとだけ焦った。

「なんかみんなに遅刻がばれてる気がすんな」
「そう? 意外とみんな気にしてないよ」

そう言えば、虹岡がいつも八時三十分過ぎに
何食わぬ顔で教室に入ってくるのを思い出した。
朝補講中も毎回何人かは休んでいるので、
特に虹岡がどうこう言われているわけでもない。

「俺も明日から朝補講さぼろうかな…」
「そうしなよ」

そんな話をしながら教室のドアを開けると、
黒板の辺りに人だかりができていた。

101.キスの前で目が覚めた:2010/12/20(月) 00:08:44
「なんだこれ…」
「さあ…?」

よくよく見ると、黒板のど真ん中には「クラス旅行」
と大きな文字で書かれている。
大原は、前田の字だな、と思った。
一年のとき、前田と仲良くなろうと、
何度もノートを借りに行ってたのでよく覚えている。
前田は華やかなルックスとは裏腹に結構人見知りなのだが、
大原の努力もあってか二年に上がったくらいから仲良く話すようになった。

「あ、陽一君、虹岡君!」

前田は二人を見つけると、人だかりをかき分け、近づいてくる。

「おはよう!」
「おーおはよ」
「おはよう…」

笑顔で挨拶を返す大原とは裏腹に、虹岡はまっすぐに自分の席に向かう。
前田もそれに続いて虹岡の席に向かう。

111.キスの前で目が覚めた:2010/12/20(月) 00:09:21
「虹岡君、夏休みにクラスで旅行行こうって言ってるんだけど、どう?」
「いや、もう三年だし、そんな先のことわかんない」
「日程はまだ決めないし、とりあえずだから!
ゆきりんも虹岡君がいた方がいいって言ってるし、ね」
「だから、わかんないって」

虹岡が機嫌悪そうに対応しているのを見て、大原が慌てて話に割り込む。

「あっちゃん、クラス旅行あるんだ。夏休み?」
「うん、夏休みなら部活も大体の人終わってるし、
受験もまだだしいいかなーって。陽一君は行くでしょ?」
「おお、行く行く、どうせ暇だしね」
「やったー。ねーだから虹岡君も…」

そう言いかけた前田の間に入るように大原が虹岡に向き合う。

121.キスの前で目が覚めた:2010/12/20(月) 00:10:45
「健吾君、せっかくだから行こうぜ。
高校生活で馬鹿なことすんのも夏ぐらいまでだろうし」
「んー…考えとく」
「ってことだから。締め切りいつ?」
「今まだ話してるとこだから、またはっきり決まったら教えるね」
「おけー。多分二人とも参加するわ」
「わかった、じゃあ一応数には入れておくね」

そう言って、前田はチラリと虹岡の方を見るが、
虹岡は授業の準備をしたまま前田とは目を合わせない。
前田は少し目を伏せると、また黒板の方に向かっていった。

131.キスの前で目が覚めた:2010/12/20(月) 00:11:17
それを確認して、大原が口を開く。

「なー、健吾君、あっちゃんに当たり強くない?」
「…意識してはいないんだけど、何か生理的に苦手なんだよね」
「健吾君にしては珍しいな」
「僕もそう思う」

話しながら、虹岡の機嫌が未だに直っていなさそうだったので、
大原もとりあえず授業の準備に入った。

これからまた長い授業の時間だ。
でも多分、後で高校三年間を振り返ったときには、
ほんの一瞬の出来事にすぎないんだろうな、大原はそう思った。

14名無しAKB:2010/12/20(月) 00:21:42
1-3話投稿了

151.キスの前で目が覚めた:2011/01/15(土) 18:56:48
六時間目の終了を知らせるチャイム。
この音が鳴ると、学校の中の空気がいっぺんに変わる。

最上級生になると掃除の割り当ても比較的緩くなって、
今日はちょうど大原も虹岡も担当のない日だ。

大原は脇に掛けてあった鞄を手に取り、
虹岡に行こうぜ、と合図を送る。

これからは、楽しい楽しい部活の時間だ。
部活、と言っても、それは彼らがそう呼んでいるだけで、
実際は二人が作った、放課後の遊び場。
一応、研究会という名目で学校からも多少の配慮はもらっている。

場所は視聴覚室。
校舎のはるか奥で、合同講義のような特別な場合にしか使われていない。

ちょうど春から夏に変わるこの季節。
少しずつ夏の匂いが顔を出し始めるように、
視聴覚室までの廊下も木の香りが色濃くなったように感じる。

161.キスの前で目が覚めた:2011/01/15(土) 18:57:36
最後の渡り廊下を渡り、柔道場と剣道場の間に挟まれているのが、
大原たちの部室、視聴覚室だ。

誰もいないことを確認してドアを開けると、
二人はおもむろに鞄を放り投げる。
そして、椅子に座り、近くにあったギターを手に取る。

「クラス旅行とか初めてだな」
「そだね、三年生ならではって感じがする」

二人ともギターからは目を離さずに会話をする。
それに少しだけホッとして、大原は言葉を続ける。

「もうあと一年もないし、なんかそういう面白いことは、
もっとたくさんやりたいよなあ」
「何かやろうか」
「いいね、何する」

171.キスの前で目が覚めた:2011/01/15(土) 18:58:10
二人のいつもの会話。
あーだこーだと言い合って、それに満足するだけの会話。
でもそれもあと一年ないかと思うと、
大原は少しだけ高校二年間と卒業までの時間に思いを馳せる。
次に作る曲はそういう曲もいいかなと思った。
卒業式に映えるような、少し感傷的な言葉と、
とびっきり明るいメロディーの曲。
別れではなくて、再会を誓う曲。
感傷的な自分にそっと苦笑しながら、大原はギターを鳴らす。

「何それ、新しい曲?」

同じようにギターを鳴らしながら、虹岡は言葉だけを向ける。

「ああ、今思いついた」
「いい曲になりそうだね」

虹岡は初めて大原に視線を向け、小さく笑う。
それに少し照れくさくなった大原は、ギターに目を向け、弦をはじく。
その音に共鳴するように、ガラリとドアが開いた。

181.キスの前で目が覚めた:2011/01/15(土) 18:58:45
「お疲れ様です」

控えめに開いたドアから覗くのは、顔立ちのはっきりした少女。
二人の視線が一斉に集まったのを感じ、はにかんでぺこりと会釈をする。

虹岡はそれに軽く会釈を返すと、ギターを置いて席を立つ。

「ちょっと休憩しようか。二人ともお茶飲む?」
「あー飲む。コーヒーってまだ残ってたっけ」
「うん、多分」

虹岡は機材の入った戸棚の脇からポットを取り出す。
普段使われない場所だけあって、こういうのは割と自由だ。

「あ、私やります」
「いいよ、僕らが好きで飲むんだから」
「だめです」

やんわりと断る虹岡を更に制し、にっこりと笑う。

「これもマネージャーのお仕事ですから」

二人のやり取りを黙って見ていた大原は、
相変わらず美人だなーと思いながら、とりあえずまたギターに戻った。

19名無しAKB:2011/01/15(土) 18:59:32
1-4話投稿終了


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