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普段狼を見ていないリゾスレ住民が昨今の騒ぎに
15
:
名無しリゾナント
:2017/02/26(日) 11:03:34
― ふふ、相変わらずね。さゆちゃんは ―
「お、おねえちゃん!?」
洗い物の皿を落としかけてしまうほどの衝撃。
何故なら、ここのところずっと。さゆみは姉人格のさえみの声を聞くことができなかったのだから。
― ほんと、りほりほってかわいいよね。さゆちゃんに変わって抱きしめちゃいたいくらい ―
「りっ、りほりほはさゆみのものなの! いくらおねえちゃんだからって渡さないんだから!!」
― 冗談よ。でもりほりほが聞いたら「私は道重さんのものではありません」とか言っちゃうかもね ―
「もう、おねえちゃんのいじわる」
普段は自分より抜けているくせに、人格のみの存在が優位性を与えるのか、たまにこうやってさゆみのことをからかう。
だが、そんなやりとりは改めて、さゆみに姉が戻ってきたことを実感させる。
「でもよかった…本当に…だっておねえちゃん、もしかしたらいなくなっちゃたのかとか思って」
― そんなわけないじゃない。ただね。私の声が届きにくくなってたのは確かだよ ―
薬の影響。
さゆみの脳裏に、不安が過る。
それまではさゆみ自身に生命の危機が訪れない限り、決して表に出すことが出来なかった姉人格の「さえみ」。
それを、さゆみの自由意思で切り替えられるようになったのが、つんくから渡されたあの薬だった。
揺り戻しは、相当きっついで?
かつてつんくがさゆみに告げた、薬の副作用。
ただ、そのリスクを考慮するにはリゾナンターは忙しすぎた。
かつてダークネスだったという蟲使いとの戦いや、元ダークネスの構成員という触れ込みの女が率いる一団との、博多での決戦。その中でさゆみは幾度となく、薬を使い続けた。
もちろん、つんくの言う「揺り戻し」についてある程度の覚悟はできていた。
ただ、姉の声が聞こえなくなったという事実は、さゆみの心に暗い影を落とす。
今日だって、もし敵の襲来があったら。
薬を飲んだ時、もし現れるはずのさえみが現れなかったら。
後輩を送り出す手前、不安を表に出すことはできなかったものの。本当は、心細くて仕方なかったのだった。
聖に言われた通り、さゆみ以外のリゾナンターが長時間別行動を取る件について愛や里沙や愛佳に連絡を取ろうとしたものの、生憎仕事が忙しいのか電話を繋ぐことができなかった。それだけに、突然のさえみの登場はさゆみにとって心強いサプライズでもあった。
「でも、こうやってまたお話できるってことは。もう、大丈夫なんだよね?」
― わからない。ただ、薬の耐性ができてきてるのかも ―
薬が効きにくくなっている、のだろうか。
試しに薬を飲んでみたい気もするが、それこそあの薬はさゆみのいざという時の「切り札」。
実験如きに使う訳にはいかない。
― それにね。もしかしたら面白いことができるかもしれない ―
「面白い、こと?」
もったいつけたような、さえみの言葉。
しかしそれを遮るのは、カウンターに置かれた携帯の着信音だった。
画面を見ると、「愛佳」の名前が。
何でも屋の仕事にひと段落ついたのだろうか。
そう思いつつ携帯を手にしようとキッチンを出ようとした時のことだ。
不意に走る、嫌な予感。
リゾナンターの能力の一つに、互いの心の声を聞くことができるというものがある。
もちろん、愛佳はリゾナンターを離れて久しい。しかも彼女はもう能力者ですらない。
それでも。
恐る恐る、さゆみは電話に出る。
予感は。当たっていた。
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