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長編置き場

1噛みこ泉:2007/11/23(金) 23:21:39 ID:txoKB9cc
ラジオ中に読むような長編を置いておきます。

2噛みこ泉:2007/11/23(金) 23:23:47 ID:txoKB9cc
涼宮ハルヒの憂鬱Ⅲ

キョン:古泉、お前も涼宮の事で話があるんじゃないのか。
古泉:(不敵な笑み)

古泉:お前も、と言うからには既にお二方からアプローチを受けているようですね。
キョン:あぁ。
古泉:どこまでご存知ですか?
キョン:涼宮が只者ではないって所くらいか。
古泉:それなら話は簡単です、その通りなのでね。
キョン:まずお前の正体から聞こうか。
古泉:お察しの通り超能力者です、そう呼んだ方がいいでしょう。
   本当はこんな急に転校して来るつもりはなかったんですが状況が変わりましてね。
   よもや、あの二人がこうも簡単に涼宮ハルヒと結託するとは予定外でした。
   詳しい事はまたいずれ、お話する機会もあるでしょう。
   百聞は一見にしかず、是非お見せしたい物もありますし。
   今は掻い摘んでご説明しましょう。
   僕が所属する機関には他にも超能力者がいます。
   実はこの学校にも何人ものエージェントが潜入済みです。
   そして我々は三年前の発足から涼宮さんを監視している。
   事の発端はその三年前、その時何かがあった。
   僕の身に超能力としか思えない力が芽生えたのもその時です。
キョン:三年前とハルヒが、どう関係あるんだ。
古泉:実はこの世界はある存在が見ている夢のような物なのではないか、というのが機関のお偉方の考えです。
   そして、それはなにぶん夢ですから
   その存在にとって我々が現実と呼ぶこの世界を創造し改変する事は時宜に等しい。
   そんな事を出来る存在を我々は知っています。
キョン:それがハルヒか?
古泉:人間はそのような存在の事を神と定義しています。
キョン:(とうとう神にまでされちまったぞ、ハルヒ。)
古泉:考えても見てください、我々のような超能力者や
   朝比奈みくる、長門有希のような存在が都合よく一堂に
   会するかのように登場するでしょうか。
   涼宮さんがそう願ったからですよ、おそらく三年前に。
キョン:三年前にハルヒが世界を作り変えたって言うのか。
古泉:作り変えたと言うよりも、三年前に世界は始まった
   とでも言うべきでしょうか。
   ま、あくまで我々の仮説ですが。
キョン:ぉーっ・・・
    まぁいい、でお前らはハルヒをどうするつもりだ。
古泉:この世界が神の不興を買って、あっさり破壊され
   作り直されるのを防ごうと言う訳ですよ。
   僕はこの世界にそれなりの愛着を抱いているのでね。
キョン:ハルヒに直接頼んでみたらどうだ。
古泉:そう主張する者も確かに機関には存在します。
   それ以上の刺激を与えようとする強行派もね。
   ですが、大勢(たいせい)は軽々しく手を出すべきではないと言う
   意見で占められています。
   彼女はまだ自分の本来の能力に気づいていない。
   ならば、そのまま気づかぬよう生涯を平穏に送ってもらうのがベターだと考えているわけです。
キョン:触らぬ神に祟りなし、か。
古泉:その通りです。
キョン:夢を見続けているのは、お前らの方じゃないのか。
古泉:ええ、その可能性も無くは無い。
   しかし、我々は今もっとも危惧(きぐ)すべき可能性を前提に行動しているだけです。
キョン:なら試しに、超能力者とか言ったな
    何か力を使って見せてくれよ。
    そうしたらお前の言う事を信じてやる。
    例えば、この珈琲を元の熱さに戻すとか。
古泉:そういう分かりやすい能力とは、ちょっと違うんです。
   それに普段の僕には何の力もありません。
   幾つかの条件が重なって、初めて力が使えるんです。
   最初申し上げた通り、いずれお見せする機会もあるでしょう。
   長々と話したりしてすみません。
   今日はこれで失礼さして頂きます。
キョン:(溜息)
古泉:そうそう、一番の謎は貴方です。
   失礼ながら、貴方について色々調べさせてもらいましたが保障します。貴方は普通の人間です。

5噛みこ泉:2007/11/30(金) 22:59:25 ID:tHUyOkuA
涼宮ハルヒの憂鬱Ⅴ(車の中での会話 前)

キョン:えらく良いタイミングで、タクシーが着たもんだな。
古泉:こないだ超能力者ならその証拠を見せろと、おっしゃったでしょう。
   丁度良い機会が到来したもんですから、お付き合い願おうと思いまして。
キョン:わざわざ遠出する必要があるのか?
古泉:僕が超能力者的力を発揮するには、とある場所とある条件下でないと。
   今日これから向かう場所が、良い具合に条件を満たしていると言うわけです。
キョン:まだハルヒが神様だとか思ってんのか。
古泉:人間原理という言葉をご存知ですか。
キョン:ご存知でないな。
古泉:煎じ詰めて言えば、宇宙があるべき姿をしているのは人間が観測する事によって、
初めてそうである事を知ったからだ、という理論です。
キョン:ちっとも分からん。
古泉:我観測す、故に宇宙在り。とでも言い換えましょうか。
   要するに、この世に人間なる知的生命体が居て物理法則や定数を発見し、宇宙はこの様にしてなっていると
観測できて初めて、宇宙そのものの存在が知られたわけです。
ならば、宇宙を観測する人類がもし地球でここまで進化する事がなかったら、観測するものがない以上
   宇宙はその存在を誰にも知られる事が無い。
つまり、在っても無くても同じ事になってしまう。
   人類が居るからこそ、宇宙は存在を知られているという人間本位な理屈の事です。
キョン:そんな馬鹿な話があるか。
    人類が居ようが居まいが、宇宙は宇宙だろ。
古泉:その通りです。
   だから、人間原理とは思索的な理論に過ぎない。
   しかし、面白い事実がここから浮上します。
   何故宇宙はこうも、人類の生存に適した形で創造されたのか。
   重力定数が、あるいは粒子の質量比がわずかでも違っていたなら
   宇宙がこの様な世界になる事は無かったでしょう。
キョン:何か科学被れした、変な宗教のパンフレットにありそうな文句だな。
古泉:何も僕は、全知全能たる絶対神が人間の造物主であるなどと信仰しているわけでは在りません。
   ただし、疑ってはいます。
キョン:何をだ?
古泉:僕達は、崖っぷちでつま先立ちしている道化師の如き存在なのではないかとね。
キョン:(呆れた感じで)

7噛みこ泉:2007/11/30(金) 23:09:41 ID:tHUyOkuA
涼宮ハルヒの憂鬱Ⅴ(車の中での会話 後)

古泉:んふっ、冗談です。
キョン:お前の言ってる事は何一つとして理解できん。
古泉:人間原理を引き合いに出したのは、物の例えですよ。
   涼宮さんの話がまだです。
キョン:だから、どうしてお前も長門も朝比奈さんもハルヒがそんなに好きなんだ。
古泉:魅力的な人だとは思えますが、それは置いときましょう。
   覚えていますか、世界は涼宮さんによって作られたのかもしれないと、僕が言った事。
キョン:忌々しい事に記憶には残ってるようだな。
古泉:彼女には願望を実現する能力がある。
キョン:そんな事を大真面目に断言するな。
古泉:涼宮さんは、宇宙人が居るに違いない、そうであってほしいと願った。
   だから長門有希がいる。
   同様に、未来人も居てほしいと思った。
   だから朝比奈みくるがここにいる。
   そして僕も、彼女に願われたからと言う、ただそれだけの理由でここにいるんですよ。
キョン:だーかーら、何で分かるんだよ。
古泉:三年前の事です。
キョン:三年前の事はもういい、聞き飽きた。
古泉:ある日突然、僕は自分にある能力とどう使うべきかを何故か知っていた。
   僕と同じ力を持つ人間が、僕と同様に力に目覚めた事もね。
   ついでに、それが涼宮ハルヒによってもたらされた事も。
   何故かは説明できません。
   分かってしまうんだから仕方が無いとしか。
キョン:一億万歩譲ったとしてハルヒにそんな事が出来るとは思えん。
古泉:我々だって信じられなかった。
   一人の少女によって世界が変化。
   いやっ、ひょっとしたら創造されたかもしれないなんて事もね。
   しかも、その少女はこの世界を自分にとって面白くない物だと思い込んでいる。
   これはちょっとした恐怖ですよ。
キョン:何故だ?
古泉:言ったでしょう、世界を自由に創造できるなら今までの世界を無かった事にして
   望む世界を一から作り直せばいい。
   そうなると文字通り、世界の終わりが訪れます。
   もっとも、僕達がそれを知る術は無いでしょうが。
   むしろ、我々が唯一無二と思っているこの世界も
   実は何度も作り直された結果なのかもしれません。
キョン:だったら自分の正体をハルヒに明かしたらいい。
    超能力者が実在すると知ったら喜ぶぞ、アイツ。
    世界をどうにかしようと思わないかもしれん。
古泉:それはそれで困るんですよ。
   涼宮さんが、超能力なんて日常に存在するのが
   当たり前だと思ったなら世界は本当にそのようになります。
   物理法則が全て捻じ曲がってしまいます。
   宇宙全体がメチャメチャになりますよ。
キョン:ハルヒが望んでお前達が居るなら何故ハルヒ自身はそれに気づいてないんだ。
    おかしいだろう。
古泉:宇宙人や未来人や超能力者が存在してほしいという願望と
   そんなものが居るはずがないと言う常識論が涼宮さんの中ではせめぎあっているのですよ。
   彼女の言動は確かにエキセントリックです。
   しかしその実、涼宮さんはまともな思考形態を持つ一般的な人種なんですよ。
   中学時代は砂嵐のようだった精神も、ここ数ヶ月は割りに落ち着いて
   僕としてはこのまま落ち着いてほしかったんですけどね。
   ここに来てまた、トルネードを発生させている。
キョン:どういう訳だ。
古泉:貴方のせいですよ。
キョン:俺がどうしたって?
古泉:怪しげな倶楽部を作るように吹き込んだのは貴方です。
   貴方との会話によって、彼女は奇妙な人間ばかりを集めた
   倶楽部を作る気になったのだから。
   責任は貴方に帰結します。
   その結果、涼宮ハルヒに関心を抱く三つの勢力の末端が一同に会する事になってしまった。
キョン:濡れ衣だ。
古泉:ま、それだけが理由ではないのですが。

8噛みこ泉:2007/11/30(金) 23:14:20 ID:tHUyOkuA
涼宮ハルヒの憂鬱Ⅴ(閉鎖空間での説明 前)

古泉:ここまでお連れして言うのも何ですが、
   今ならまだ引き返せますよ。
キョン:今更だな。
古泉:しばし、目を閉じて頂けませんか。
   ほんの数秒で済みます。
キョン:(んんっ?(疑問)そして溜息。)
    (手を触られてビビる。)
    (何の真似だ、気持ち悪い。)
古泉:もう結構です。
   次元断層の隙間、我々の世界とは隔絶された閉鎖空間です。
   丁度この横断歩道の真ん中が、この閉鎖空間の壁でしてね。
   半径はおよそ5km。
   通常、物理的な手段では出入り出来ません。
   僕の持つ力の一つが、この空間に侵入することなんですよ。
   地上に発生したドーム場の空間を想像して下さい。
   ここはその内部です。
   今この時でも、外部では何ら変わらない日常が広がっていますよ。
   普通の人がここに迷い込む事は、ま、滅多にありません。
   閉鎖空間は全くのランダムに発生します。
   一日おきに現れる事もあれば、何ヶ月も音沙汰なしの事もある。
   ただ一つ明らかなのは、涼宮さんの精神が不安定になると
   この空間が生まれるって事です。
   閉鎖空間の現出を僕は探知する事ができ、そこに入る事も出来る。
   さらに僕の能力は、それだけではありません。
   言うなれば、僕には涼宮さんの理性を反映した能力が与えられているのです。
   この世界が涼宮さんの精神に生まれたニキビだとしたら
   僕はニキビ治療薬なんですよ。
キョン:お前の例えは分かりにくい。
古泉:っ、よく言われます。
   しかし、貴方も大したものだ。
   この状況を見てほとんど驚いていませんね。
キョン:既に色々あったからな。
古泉:始まったようです、後ろを見てください。
キョン:ん、ぬわっ。
    っは・・・・(驚いた感じで)
古泉:涼宮さんのイライラが限界に達するとあの巨人が出てくるようです。
キョン:ぅあっ・・・あぁっ・・・ぉっ・・・はあぁ・・・
古泉:ああやって周りをぶち壊す事でストレスを発散させているんでしょう。
   現実世界で暴れさせるわけにもいかないから
   こうして閉鎖空間を生み出し、その内部のみで破壊行動をする。
   中々理性的じゃないですか。
   物理的には自分の重さで立つことも出来ないはずなんですがね。
   如何なる理屈も、あれには通用しません。
   例え軍隊を動員しても、あれを止める事は不可能でしょう。
キョン:じゃあ、あれは暴れっぱなしなのか。
古泉:見てください、僕の同志ですよ。
   僕と同じように涼宮さんに、力を与えられた巨人を狩るものです。
   さて、僕も参加しなければ。
キョン:うわっ・・・っぐ・・・あっ・・・わっ・・・
    デタラメだなぁもーう

9噛みこ泉:2007/11/30(金) 23:14:52 ID:tHUyOkuA
涼宮ハルヒの憂鬱Ⅴ(閉鎖空間での説明 後)

古泉:お待たせしました、最後にもう一つ面白い物が見れますよ。
キョン:これ以上何があるんだ。
古泉:あの怪物の消滅に伴い、閉鎖空間も消滅します。
   ちょっとしたスペクタクルですよ。
キョン:っはぁっ・・・・・

古泉:分かっていただけましたか。
キョン:いいや。
古泉:あの青い怪物を我々は神の人、神人と呼んでいます。
   神人は涼宮さんの精神活動と連動している。
   そして、我々もそうなんです。
   閉鎖空間が生まれ、神人が生まれるときに限り僕は異能の力を発揮できる。
   それも、閉鎖空間の中でしか使えない力です。
   例えば、今僕には何の力もありません。
   何故我々にだけこんな力が備わったのか。
   多分誰でもよかったのですよ、
   たまたま選ばれただけなんです。
   神人の活動を放置しておく訳にはいきません。
   何故なら、神人が破壊すればするほど閉鎖空間も拡大していくからです。
   さっきの空間は、あれでもまだ小規模なものなのです。
   ほおって置けばどんどん広がっていって、
   そのうち、全世界を覆い尽くすでしょう。
   そうなれば最後、あちらの灰色の空間が我々のこの世界と入れ替わってしまうのですよ。
キョン:何故そんな事がわかる。
古泉:分かってしまうのだからしょうがありません。
   僕達機関に所属している人間は全てそうです。
   僕達が何とかしなければ、確実に世界は崩壊するのです。
   困ったものです。

古泉:涼宮さんの動向には注意しておいてください。
   ここしばらく安定していた彼女の精神が
   活性化の兆しを見せています。
   今日のあれも、久しぶりの事なんですよ。
キョン:俺が注意してても、
    どうこうなるもんでもないんじゃないのか。
古泉:さあ、それはどうでしょうか。
   僕としては貴方に全てのゲタを預けてしまっても
   いいと思ってるんですがね。
   我々の中でも色々と思惑が錯綜(さくそう)しておりまして。
キョン:(古泉はハルヒの動向に注意しろと言う。)
    (長門も何だか知らないが、気をつけろと言っていた。)
    (それでも俺は、今すぐ何かが
    起きるのだろうとは思っていなかった。)
    (もし俺に予知能力があって、翌日あんな途方も無い
    自体が到来する事が分かっていたとしたら
    とても暢気にしてはいられなかっただろうが。)


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