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ハーゲン復活談をば

1超初心者:2003/04/20(日) 20:37
〜問いかける夢〜

およそパラレルな歴史展開は、互いにその存在知り得ない方が面白い。それは
運命の悪戯とばかり、ただ翻弄される代物ではなく、さりとて、ムキになって互いに
干渉するSF世界、という飛躍した位置付けでもない。言うなれば悠久の時空と同じく
元来そういうものとしてあり、これからも、そうありつづける自然、そして調和
なのである。今、時間軸が、あの犬吠島の顛末から半年を経、新たに惹起される道筋に
ついても、それは同じ。一言加えれば、そこに居する人々の心との響き合い、
織り成される心象風景がそのまま実存と称するものなのかも知れない。
郷造の復帰と頑張りによって再建なったKKコーポレーションの面々同様、時は
平等に、あのデルモたちにもチャンスを与え、今日に至っている。司令と副官が
一身を投げ打ち、懸命に働いた成果を、社会は応分に評価した。彼女たちが興した
会社組織は、かつてのデルモ組織に備わっていた高度な科学技術を有効に活用した
研究開発センター。デルモたち全員の再雇用も果たし、これからの社業発展に
充分な手応えを感じる社長と副社長である。無論その活動は、かつてのハーゲンの
野望を引き継ぐものではない。しかしながら、これから繰り広げられる出来事は、
どこまでも人の業なせる技か、幾つかの転変避けられぬ、いささか皮肉な筋書きと
いえそうである。

80超初心者:2003/04/20(日) 22:02
「もう一度聞くわ、りおんをどこにやったの…?」今度の声は真上から聞こえてくる。
いつの間にか白デルモはスーツの女に、のし掛かられていた。既に大半の力失われ、全くの
無抵抗に近い女。その下腹部まわりにどっかりと腰をおろし自分を見おろしている顔…
激苦の中でも懸命に目を見開けば、漸くに焦点が定まってくる。そこからは早い、
彼女にとっても忘れられない顔である。「お、おまえは…藍華…!」不意の攻撃に対し
当然の反応と思えるこの一言も、今の藍華にはまるで気に入らない返事だった。
ドスウッ「あうッ…うぅ」女の鳩尾と臍の間あたりか、突き入れた拳をそのままえぐるように
押し付けている。「質問に答えなさい、りおんはどこなのッ…!?」これもまた、
気絶すれすれで留めおく絶妙の当て身である。最早、自由意志の殆どを剥ぎ取られ、無意識の
うちに言葉を紡ぎだす白デルモ。「…う…うぅ…し、知ら…な…い…」ここで微かな意識が
深層に残っていたとしよう、りおんという女が藍華の側にいたあのメガネ娘ということまでは
思い至るかもしれない。が、その女がどこにいるかなどと…自律の意思があろうが
無かろうが、知らないものは知らない、としか言いようがない。一方で藍華が、まだ不十分な
責めと判断するあたり、白デルモの不幸が一つ付け加わる。相手の腹にめりこませている拳を
藍華は、ぐいと捻じるのである。「うぐあッ!…ああうう…」「さ、言いなさい…!」
だが何度聞いたところで女の答えは同じだった。そして、満足出来る答えを引き出せなかった
藍華が次にとる手段も明確そのもの。一旦拳を引き抜くその直後。満を持す剛速の突きが
白デルモの臍へ飛び込んでいく。ズボオオッ!「はぐううぅぅッ…!」瞬間、痙攣が走った
かのように四肢が震えるが、すぐに動かなくなる。実に哀れな気絶だが、それまでいつ
終えるともなく襲い続けていた苦痛からはさすがに解放され、静かに横たわる褐色の裸身と
美しくも苦悶に歪む寝顔だけが今、彼女の存在全てを代弁するのである。

81超初心者:2003/04/20(日) 22:03
均整のとれた全身を引き立たせる、肉感的な褐色の肌。色合いもさることながら、端正で
エキゾチックな顔かたち。それが両の目尻からとうとうと流れ出る涙や、半開きと
なったままの口元から涎が垂れ放題となれば、ある種の美的アンバランスと共に一層の憐憫を
誘うものである。それでも、眼下に倒れている女の腹部から拳引き抜き、ゆっくりと
立ち上がる藍華は無理に繕うような、毅然とした表情のまま。相変わらず、りおん救出を
旗印として掲げた厳格な信念の下、私情一切を挟まず着々と目的貫徹を目指しているように
見える。けれどもその内心、奥の方のそのまた片隅にほんの小さな、染みのような点が
付着していることに気付く藍華。いつの間に付いたのかミッション遂行には邪魔なだけと、
拭い去ろうとするがそれは決して消えることがない。これこそが人間として本質的に
持ち合わせているもの、良心というものだ、ということくらい、藍華にもわかる。見かけは
小さくとも、彼女の全身にずしりと課される大きな十字架。この宿命を抱えたまま強引に
突き進む藍華が、最終局面でどのような情景を目の当たりにするのか。残念ながら今そこまで
は知り得ようもない。
シャワー・ブースのところへ戻り扉を開けると、先ほど倒した青デルモが壁沿いに崩折れ、
床面に尻もちをつく格好で気絶している。足を大きく投げ出し、顔を俯けている女に無情の
水流を降り注いでいるシャワーノズル。藍華はハンドルを回し、シャワーを止める。ここで
改めて部屋一帯を見渡せば、まさに産まれたままの崇高な裸身を晒す女が3名。決して好奇の
目で見るべきものではないだろう、白・青・ピンクと夫々階級は違うが着衣を全て
脱ぎ去れば、何れも秀麗なる女性の華美が競い並ぶのである。この時点の藍華が如何に
デルモたちを犯罪者扱いしていようとやはり後ろめたさが残るのは、裸女たちの放つ神格にも
等しい清廉な輝きが藍華の頑なな心をも洗い清めるからなのか。部屋の隅に積んであった
バスタオルを3人の下肢にそっとかけてやるのも、それこそ藍華無意識の所為なのであった。

82超初心者:2003/04/20(日) 22:04
その後再び更衣室を通り、廊下へ戻る。あのアメニティスペースが大きいせいか、地下1階は
全体に部屋数が少ない。あと3つあるドアのうち2つは無人の資料室、残る1つも物音は
聞こえてこないが、プレートには救護室とある。念のためドアを開け中を覗くとそこには
パイプベッドに寝かせられた4人の黒デルモたちが並んでいた。そっと近づくと、全員目を
つぶり眠っていることがわかるが、どれも口を少し開け、僅かに苦痛に歪んだ表情を
湛えている。何度もデルモたちを倒してきた藍華には一目でわかる、この女たちは気絶して
いるのだ、と。しかし一体誰が?藍華は今回この4人に出会っていない、ということは誰か
別の者に当て落とされたということである。しかもここは彼らデルモの救護室。きっとどこか
別の場所で倒され、ここへ運ばれたのだろう、そう考えると益々デルモたちの活動が胡散臭く
思えてくる。昼間はもっともらしい会社組織に見せかけていても、夜陰に紛れて非合法な闘い
を繰り広げているのではないか、と、当初からの疑念をより強固なものにレベルアップ
させている。その時。「…う…ん…」小さく呻く一人の黒デルモの手指の先がぴくりと動く。
4人の中では比較的眠りが浅かったのだろう、それは漸く目覚めが近づきつつある徴し
だった。そのベッドの傍らに立った藍華は、しばし女の寝顔を凝視する。しかし右の手に一旦
拳を作ってからは何の躊躇もなかった、やや下からか、女の下腹部めがけ突き入れる藍華。
ドボウッ「うぐッ…!」再び深い眠りに落ちる黒デルモ。彼女にとって、自由に活動する
明るい生活は強制的に延期された。もうしばらく眠ってて頂戴…藍華の意思がここでも全てに
優先するからである。地下1階の捜索を終え、1階にあがるとそこは広々としたラウンジ。
ありがちな受付カウンターが置いてあるが、フロア全体として人の気配はない。昼間は大勢の
デルモ社員たちが、ここを通過してエレベーター・ホールへ向かうのだろう。だが、そんな
企業活動はみんな嘘だ、暗黒の企みを覆う隠れ蓑なのだ…藍華の心はまだまだ融和に
向かわない。鉄の意志をもって、2階へと駆け上がっていくと、何人かの所在が感じられ
廊下の隅で腰を屈め身構える。

83超初心者:2003/04/20(日) 22:05
2階、それは出版・広報事業本部のフロア。もう午前3時になろうとするのに熱心な残業に
勤しんでいるのは4名のデルモたち。本部長の白デルモと、部下である3人の黒デルモで
ある。こういうメディアに携わる部門は一見派手そうに見えるが、地道な編集や
素材チェック、入稿締め切りや販売ルート開拓などなど、やる事は沢山あり中々に大変
なもの。特に今夜は、記事集稿の遅れにより締め切りとのマッチレースとなってしまった事が
こんな深夜にまでもつれ込む原因となっていた。それでもこんなことは慣れっこなのか、
ディスプレーに向かう黒デルモたちは時折目をこすりながらてきぱきと編集を進めていく。
一方白デルモの方は、節目節目に原稿データの転送を受け、自分の部屋で全体イメージを
最終確認する、という役どころのようである。PC内臓のマイクとスピーカーを通じ適宜
部下との間で交わす会話も、ダレそうな雰囲気をたて直し鼓舞する名マネージャーぶりを
発揮している。「このページはいちばん後ろに回せ。それから3番のカットをセンターに」
「はい、ミス・ナターシャ」黒デルモが呼ぶ上司のファースト・ネームである。
出版・広報事業本部長、そのフルネームはナターシャ・エヌスカヤ。セミロングの黒髪の
下にきりりと備わる美人顔、胸はデルモ随一と言われる程の巨乳が実る、豊満ボディが
自慢である。更にいえば、頬にひとつあるほくろも彼女のシンボル、いや、チャームポイント
と言っていいだろう。そんな魅力満載のナターシャだが、仕事熱心な余り、つい顔つきや
言葉がきつくなりがちなのが玉に傷。

84超初心者:2003/04/20(日) 22:07
周囲の方も彼女を誤解しているのである。社内のデルモたちの多くはナターシャのことを
有能だけれどコワイ女と思っている。この時間まで共に働いている編集デスクの黒デルモたち
ですら、上司に抱く本音は畏怖の念が先に立つ。同格の白デルモたちの間では、さすがに
恐れられるなどということはなく、司令や副官も彼女の勤勉を高く評価する、むしろ良好な
関係にあったのだろう。が、それでも内心突き詰めていえば、あまり係わりたくないと感じる
者がいたくらいであった。そんな、彼女にとり不本意な境遇にあって一人、稀有な理解者が
いる。研究開発本部の白デルモ、あのニナ・エスコである。と言っても彼女がナターシャ
に打ち解けるまでの道は決して平坦ではない。当初は彼女もナターシャの強面に近寄りがたい
雰囲気を感じていたものである。しかしある時、ニナ・エスコは業務連絡で立ち寄った
ナターシャの部屋の片隅、本棚の上に1冊の分厚い雑誌があるのを目にとめる。近寄って
もっとはっきり見ようとすると、デスクにいたナターシャが慌てて小走りに駆けてきて、
それを恥ずかしそうに机の引き出しに仕舞い込む。どうしてですか?と聞けば、これは部下に
内緒だから、という。いつも厳しく指導する立場の自分が、こんなところを見せられない、
という訳である。あなたも、このことは秘密よ、と固く口止めされるが、そんな彼女が却って
可愛く見えてしまうニナ・エスコ、それからはナターシャの気に入りそうな雑誌を自分でも
手にとり読むようになった。ところが趣味の世界はデリケートなもの、自分で良かれと思った
アプローチが大失敗に終わることもしばしば。ナターシャの愛読誌が正確にわからないまま
当てずっぽうで差し出すと怒りの蹴りと鞭が飛ぶのである。何度か痛い目にあって、漸く
ニナ・エスコは結論に到達する、ナターシャは「花とゆめ」をこよなく愛する純粋な乙女
なのだ、ということを。ニナ・エスコに被虐嗜好があったかどうかは別として、それからの
二人は急接近。実はさっきも内線でナターシャは上階のニナ・エスコと長電話、監修作業
そっちのけで乙女チックな話題に花を咲かせていたのである。

85超初心者:2003/04/20(日) 22:08
今日はニナも遅いのね。じゃあ帰りは一緒、私んちへ来てお話しの続きをしましょう…。
受話器を置いたナターシャは、胸一杯にラブリィなファンタジーを思い描いている。その
幸せな幻想に包まれうっとりと目を閉じている時…「あうッ…!」「な、何っ…うぐッ」
「えり!どうしたのっ…きゃうッ…」突如スピーカーから流れる部下の悲鳴や呻き声に、
はっと目を開けるナターシャ。さすがに編集のトラブルでこんな声は出すまいと、弾かれる
ように席を立ち、戸口の方へ走る。ドアを開けるなり大声で呼びかける白デルモ。
「どうしたッ!?」その時の彼女は次の言葉も用意していた、何を騒いでいる、と。しかし
その前に割り込んできたものがある。視野の及ばない真横から自分の脇腹に突き入れられる
拳の閃光が一つ。ズズンッ「うッ…く」身体の中心を走る激痛に思わず身体捻じ曲げ
よろけるが、そこからはポーラの時と同じ、一気の気絶に陥るまでには至らない。この一撃で
抵抗する力は大半が失われたが、気丈なナターシャにはまだ言葉を発する余力があった。
「だ、誰…何を…するの…?」「りおんをどこに閉じ込めたの?教えなさい!」
前かがみになって呻き続けながらそれでも、まだ立ち尽くしている。押し寄せる苦痛に
溢れ出す涙がぽろぽろと床に落ちる。つい先ほどまで味わっていた甘美な思いから急転直下
苛酷な現実に向かい合いながらも、きっと目を見開けば、そこには忘れもしない藍華の姿が
ある。「お、お前は藍華!ど、どうして…うぅ…わ、私が何を…?」確かに少女雑誌ファン
だけあってポーラよりはまとまった意思表示である、藍華の方も話が早い。「ここに連れて
きた女の子がいるでしょう?今どこにいるのっ!?」胸倉を掴まれ背後の壁に押し付けられた
白デルモ。苦しい息に喘ぎながら、しかし彼女にはある程度思考を紡ぐ能力が残っていた。
眼前の女は藍華。かつては敵だったが今は互いに関わりない筈。それがこんなことをするには
何か理由がある。少なくとも自分に向けられる攻撃は勘違い以外何物でもない。りおん?
ああ、あの藍華にいつもくっついている女。それがここにいるというのか?馬鹿な!…

86超初心者:2003/04/20(日) 22:09
いくら怒り心頭の藍華が相手であっても、ここで身の潔白を主張すれば或いはこの苦境から
脱せられたかも知れない。身の証しをたてる材料を論理的に提示する才能もチャンスも
あったのである。しかし。彼女はほんの少し素直でなかった。常に虚勢を張る癖がついていた
ナターシャは、こんな時でも強がってしまうのである。
「…ううぅ…そ、そんなの知らないわ。し、知ってたって…教えないっ…!」
ここまでである。ドスッ「ぐうッ!…」臍の下へ深く沈む藍華の左拳。涎を垂らしながら
虚空を仰ぐ目はゆっくりと閉じられていく。壁を背にずるずると崩れ、お尻を床につけた
ところで止まる白デルモ。眩しい純白パンティが開かれた股間に覗くのは勿論のこと、
投げ出した両脚もすらりと長く伸びているが、何より上から見下ろす胸の隆起が改めて女の
優美を誇らしげに物語る。少しジェラシーを感じる藍華だが、もうこのフロアに用はない。
ただ一点、手がかりの一つもないかと、立ち入った白デルモの部屋である物を見つけている。
それは「花とゆめ」…執務机の上で開けられたページがメルヘンの世界真っ只中であることを
一瞥で分かった時、藍華の十字架は更に重くなるのである。

87超初心者:2003/04/20(日) 22:09
〜オルタネート・メタル〜

そのころ、張本人であるニナ・エスコが何をしていたかといえば…際限なく長くなりそう
だったナターシャとの電話をうまくきりあげた後、4人の黒デルモたちと共に、ビスチェの
到着をひたすら待ち続けている。確かに今度の事のような重要案件がなければ、まだ彼女と
長電話の最中だったろう、花ゆめ派の契りの深さは知るひとぞ知る。しかし2時間ほど前、
公園を出る時点で電話をよこした部下から、ビスチェ入手の報告を受けているニナ・エスコ。
今や時間的にはもうそろそろか、いや少し遅いくらいである。心配顔の黒デルモが堪らず、
迎えにいってきましょうか、と申し出るが、大丈夫、もう少しすれば必ず戻ってきます、
と落ち着かせるのは上司の努め。それからしばらく経ったであろうか、押し黙った重苦しい
時間は、勢いよく開けられるドアの音で破られる。戸口に背を向けていた黒デルモたちが、
はっと振り向くとそこにいたのは…。
「あッ!」ただ驚きの一言しか発せない黒デルモたちに比し、白デルモの方は黙って、ドアの
前に佇む女を見据えていた。「あなたたち、りおんをどこへやったの、返しなさい!」
相変わらず怒りの炎燃え盛る藍華が、迫力の視線で女たちを睨んでいる。気おされる
デルモたちの中から一人、一歩前へ出て、静かに語りだすニナ・エスコ。「ミス藍華。
あなたが来るかも知れない、と思っていました…」「ということは、心当たりがあるのね、
りおんのこと…」漸く手がかりを掴んだと思う藍華、ドアから一歩二歩、前へ進む。と、
黒デルモたちは一旦前へ出たニナ・エスコの面子など構わず、白デルモを守るように
後ずさる。上司の身を案ずる部下としては当然の対応である。

88超初心者:2003/04/20(日) 22:10
「ええ…。あの人は無事ですし、ちゃんとお返しします。ですから、あなたのそのビスチェを
ちょっとの間、貸して欲しいの…」白デルモがそこまで言った時、藍華のボルテージが一段
上がる。「ふざけないで!こんな重大な罪を犯しておいてよくそんなことが言えるわね。
どうしてこんな事をするの…!?」ナターシャのいた2階を押さえてからこの5階に上がって
くるまで、りおんの姿求めてくまなく探し続けてきた。途中3階4階にいた黒デルモたち
5人を気絶させたが、毛頭それで済む話ではない。眼前の白デルモが犯行を認めたとならば、
早々にもりおんを取り戻し、この悪だくらみの全貌を問い質す必要があった。ただこれは
あくまで藍華の視点である。翻って倒された黒デルモたちの立場で見ればとんでもない
濡れ衣の極致。遅くまで真面目に働きクタクタだった彼女たちの前に忽然と姿現した藍華が、
それこそ問答無用に拳を、エルボーを、キックを放つ。こんな深夜のこと、それぞれ大きな
部屋に一人きりで残業していた女たちばかり、それがいきなり飛び込んできた烈火の攻撃を
無防備な身体に受けたのである。「ううッ」…「おおうっ…」…「んぐッ!」…「えうぅッ」
…ひとたまりもなく昏倒気絶していく黒デルモたち。その中には慌てて柱にある警報スイッチ
を押す者もいたが、システムは既に解除されており当然作動などする訳がない。藍華の顔を
覚えているだけ余計パニックに陥っている黒デルモ。そんな哀れな女に力を振るうという
のも、傍目から見れば如何なものかと思うは自然。どちらが犯罪者か知れたものではない。

89超初心者:2003/04/20(日) 22:11
そして5人目の女は、瓶底メガネを近づけていた机からふと目を上げた時、藍華が自分の
間近に迫っているのに気付き、絶望の悲鳴をあげている。「いやあ!た、助けてえっ…!」
動転している黒デルモとしては、藍華のことをオフィス強盗と勘違いしたのかも知れない。
それは藍華にとってどうでもいいこと、この場も相手を倒すことだけに専念する彼女である。
が、恐怖に引き攣るメガネ顔に向け、短い一言を添えるくらい良かろうと考えるのは単なる
気まぐれだけとも言い切れない。「大丈夫、苦しいのは一瞬よ」ドブウッ「うぐうぅッ…!」
椅子から転げ落ち、仰向けに倒れたその場で気絶する黒デルモ。コトリと瓶底メガネが
外れれば、そこには、愛くるしくも苦悶に歪む寝顔…力なく投げ出された四肢、股間へ鋭角に
食い込む白のハイレグパンティなども、藍華にとって、もう何度となく見飽きた光景である。
それでもこのたびは、その回数が増えるにつれ、胸の奥に引っ掛かる例の染みが着実に
大きくなっていく…どうにもできないジレンマに気付かされる藍華なのであった。

90超初心者:2003/04/20(日) 22:12
今、5階研究開発本部のメイン研究室内。5人のデルモたちに対峙している藍華は、少しの
間、白デルモの動向に注目している。彼女が鍵を握る者なら、こうした不慮の事態を想定して
何かの罠でも仕掛けている可能性があると思ったからである。警戒怠らない藍華へ向かい、
ニナ・エスコの方も落ち着いた口調ながらきっぱりとした返事。「理由は…言えません…」
「じゃあ…無理にでも教えてもらうしかなさそうね…」意気込みのセリフを口にしながら
如才なく室内を見渡す藍華。メインルームだけあって、かなり広い空間である。広い、という
より奥が深いという表現が正確か、ずらり並んだシステム機器群の威容は壮観。遥か最も奥の
方には、巨大な石らしいものも見える。しかし、一通りの注意を払った限り、近くに罠らしき
気配は感じられない、藍華としてはずんずん前へ歩み出る。つられて何歩か後退したデルモ
たちも、緊張の糸には限界がある。藍華が更に一歩を踏み出した時。「やああっ!」
「はあああッ…!」一斉に飛び掛る4人の黒デルモ。数の上では4対1だが結果はといえば
歴然。あの駐車場で、ハーゲン艦で、ペロロンガホテルで、白銀基地で、犬吠島で…何度も
何度も敗れている黒デルモたち、しかも現在の彼女たちは格闘の現場から半年以上も
遠ざかっているのである。まさに赤子の手をひねる、という言い方がぴったりか、藍華は
先ず飛び込んで来た女の拳を頭を下げてやり過ごすと、下から強烈なアッパーを叩き込む。
次いで二人目、三人目が同時に繰り出す膝蹴りを今度は飛び上がってかわすと、突き出した
開脚を回転させながら二人の腹部へ蹴り入れる。最後の一人が必死に放つハイキックは肘で
がっちり受け止めたあと、がら空きの鳩尾へ正拳の一撃である。ドブッ「あぐううッ!…ん」
先に気絶していった仲間の後を追うように倒れ込んでいく黒デルモ。このビルに入り込んで
初めての抵抗らしい抵抗も、数秒とかからないあっけない幕切れであった。

91超初心者:2003/04/20(日) 22:13
「さ、これであなただけよ。先ずりおんはどこ?」最後に倒した黒デルモのコは確か5度目の
気絶ね、と内心しっかり数えながらゆっくりと迫る藍華。都度、距離を保とうとする
白デルモ。後ずさりするその女が平静を装ったところで、顔面に表れる蒼白の相は、やはり
隠しおおせるものではなさそうである。それでも、この質問への返事は比較的素直だった。
「彼女は、このフロアの突き当たりにあるデータルームにいるわ…」それが嘘かどうかは
すぐわかる。今は先に全容解明を進めようと藍華はさっきの質問を繰り返す。「何故こんな
ことをするの…?」「……」口を真一文字にしながら、それだけは何とか守り通そうとして
いるらしい白デルモに対し、藍華も瞬時考える。ここで拷問に持ち込むことは容易だが、
眼前の華奢な女はこちらが期待する答えを返す前に気絶してしまいそうな気がするのである。
その時ふと思い出す、この白デルモとあの白銀基地で会ったことがある、名前をニナ・エスコ
と言っていた、と。彼女を肘うちで気絶させた記憶も甦ってきた藍華は、少し質問を
変えてみることにする。
「あなたが首謀者なの…?司令や副官の命令なんじゃないの?」すると、それまで押し黙って
いた白デルモが途端に目を大きく開き、堰を切ったような多弁に転ずるのである。
「いいえ!司令や副官は関係ないわっ!これは私一人が決めたことなの。司令や副官にも
秘密のこと。それどころか、私の部下数人以外はこの会社の誰も、このことを知らないわ。
司令やみんなに黙って…でも…でも、私がやらなければいけないのよぉっ…」

92超初心者:2003/04/20(日) 22:14
その必死の訴えに見え透いた嘘もなさそうだと感じる藍華。司令や副官を心のどこかで
信じていた彼女としてもご同慶の展開である。しかし同時に背中がヒヤリとするのを覚える。
だとすれば、このビル内で気絶させた多くのデルモたちは無実…!?この甚だしい勘違いの
後始末をどうつけるか、一瞬くらっときたところでいや待って、そもそもの責任はこのコに
あるんでしょ、謝るにしても一緒に回ってもらわなきゃ、と早くも現実的な算段である。
とにかくも事の真相はまだ不十分、もう少し会話を続け糸口を拡げようと藍華は思う。
「もし、あなた一人の計画だというなら…それなりの覚悟は、あるんでしょうね…」
この一言の凄みは、取り繕ってきた白デルモの平静を内側から打ち崩し、全身震え上がらせる
に充分だった。言葉の随所に動揺が混じる。
「え、ええ…覚悟してる。ど、どんな責めでも負うわ…」「あなた、ニナ・エスコって名前
だったわね。あの白銀基地で、あなたも懲りたんじゃなかったの?もう一度私の当て身を
食らいたいの?今度はあんなもんじゃ済まされないわよ…」「わ、私をどうするの…!?」
「そうねえ…もう二度とこんなこと思いつかないように厳しいお仕置きをしてあげる…」
「お、お仕置き…!?」○×△□…ここで藍華が並べる言葉は、とても原語で表現するなど
憚られる、ニナ・エスコの弱みを完膚なきまでに押さえる代物。だから、と藍華は続ける、
そんな風になりたくなかったら、この企みの目的や狙いを話しなさい、と。

93超初心者:2003/04/20(日) 22:15
「それは…言えない…どうしても…」女の足元はがくがくと震えているが、これから自分に
降り懸る責めをいよいよの覚悟で待ち受けるつもりか、返事にも頑とした姿勢が貫かれて
いる。ホント余程の秘密をしまい込んでいるのね、と思いながら詰め寄っていく藍華。
先ほどから後退に後退を続けていた白デルモも、ある時ドン、と背中が突き当たる。
いつの間にかあの巨大な隕石を背にしているのである。これ以上後ろがない女に対し、藍華は
もう一歩を進め、ゆっくりと、しかし引導を渡すように重い言葉を投げていく。
「これが最後よ。どうしてこんなことをしたの…?」藍華としては、もしこれでも返答がない
場合、ナターシャやポーラに行ったのと同じ責めを与え、多少の片鱗なりと聞き出すつもり
だった。○×△□…などとは言ったものの、あれは単なる脅し文句。今回も例の一撃から
入ろうと、右手にゆっくりと拳を作っていく。「あ…あぁ…」隕石に張り付くように直立
しながら、藍華の挙動をただ呆然と見守るニナ・エスコ。小刻みな震えは全身にまわり、
色を失った顔は、びっしょり噴出す汗だけでなく既に両の目尻からこぼれる涙の洪水に
のまれていた。「答えないの…ね…」最終確認と共に右腕をきりりと後ろへ引き絞る。
あとは狙い定めた部位へ突き入れるだけ…どうしてこんな馬鹿なことをしたの、と今でも
心の中で念じながら、いよいよの動作に入りゆくところ。時間にして、そう、コンマ5秒後
にはあの特製の責めが開始されるのである。右腕に貯めた力が一気に開放され、拳の先端が
唸りをあげて白デルモの腹部めがけ発射される間際。ついに。これも、ついに堪えきれなく
なったのか。ただ震えるだけで済まされぬ精神の臨界を越えたのか。作為など微塵も無い、
ただ身体が命ずるままに。魂が最後の一滴まで絞り出されるように…まさに秒の流れを超えて
発せられる悲鳴がある。「い、いやあああぁぁぁっ…!!」

94超初心者:2003/04/20(日) 22:15
泣き叫ぶくらいなら、こんな大それたこと最初から手を染めるんじゃないわ、と藍華は思って
いる。今までもそうだったように、私はあなたたちを傷つけはしない。でも、いい加減
反省して。これはいわば愛の拳なのよ…刹那の心境にしては気がきいていそうだが、まだ
この時点で自分の過ちと反省に触れられていないのが知らぬが仏というものである。
だが、ひそかにご満悦のこの想念も、標的到達のコンマ1秒前で驚愕の中断を余儀なくされる
とは思わない。驚愕…いや、超自然という方がふさわしいのか。何故なら藍華自身、この瞬間
への対応を、そして次なる瞬間の認識を、平素の意思に依存していない。既に藍華であって
藍華でない…となれば只今の事象は容易に類推できる。かつて何度となく経験したあの
プロセス。そう…あれ、である。但し。あくまで一等最初にこの場を牛耳るのは極めて陳腐な
材料に過ぎないもの。それは、音。この事象が彼女自身によって自覚される前にいち早く
具現化される要素であり…また、唐突な中断の原因となった外部の存在を想起させるものと
して…。ピシイイイイイィィン…高周波で振動する機械音、又は金属音というべきだろうか。
絶え間なく連続する音が広い研究室内の壁を細かく震わせている。これが一体どのような現象
を指し示すのか、常人が俄かに理解するのは難しい。先ず一目、間近に向かい合って立つ
藍華とニナ・エスコは共に微動だにしない直立不動に見える。極限ぎりぎりに追い詰められ
半ば失神状態の白デルモの事情はわかるが、さっきまで拳繰り出そうとしていた藍華までが
何故?一言でいえば、これは人間の裸眼で見ることそのものに無理がある。特殊被写体用
撮影機材でのみ隙間見れるその実像は、いわば分子運動にも匹敵する超高速の律動。未だ人類
の解明し得ていない神秘の営み、接触とも衝突とも交合とも異なるのか、いやそうして安易に
断ずる人智こそを嘲笑うのか…。いたずらな巨神とも違う、ただそこに凛としてあるもの、
それがオルタネート・メタル…

95超初心者:2003/04/20(日) 22:16
しかも下衆の視点では、メタルが伸縮自在の金属程度にしか映らない。いま変形した
触手同士、至るところで激突しているというあたりが精々の受け止め方である。いや、敢えて
その視点に特化してみよう。限りないスローモーションで一連の動きを再現すれば、まず
藍華が拳を突き入れようとしていた時、ニナ・エスコがその全てを込めた叫び声をあげた時…
白デルモ背後の隕石から無数の触手が飛び出し、藍華めがけ殺到するのが見えたであろう。
それに呼応するのが藍華のビスチェ、これまた瞬時の変貌で多くの触手を形作り、押し寄せる
側の触手を完璧にガードする形になる。隕石と藍華のちょうど中ほどの空間で両者は数限り
なくぶつかり合い、まるで測ったような均衡を生む。実際恐ろしい程のエネルギーがこの地点
に集中している筈である。ところが凝縮された高密度反応は決して暴発することなく、而して
衰えることもなく延々と火花を散らしている。ミニサイズではあるが色とりどりに光眩い円弧
を描くエネルギーの輪…これに似た光景を実は藍華もニナ・エスコも知っている、それは
ラグ爆発によって宇宙に咲いた華。ただ違うのは、望みのない破滅でなく不易の存続であると
いうこと。普遍の摂理がこの小さな空間にもしっかり息づいていることを感じさせられる
のである。それにしても。ニナ・エスコはここまでの超次元を見越して、藍華を隕石の方へ
誘ったのか。メタル同士の反応を意図していたのか。そうすることによって自分の安全が保障
されると踏んだのか。答えは全てノーである。白デルモはまさに覚悟していた。藍華の拳を
甘んじて受ける覚悟だった。藍華の気の済むまで責めを受け続け、そのあとでビスチェ拝借を
願い出るつもりだった。当初の目論見が外れ、藍華自身がデルモ・コーポレーションに
姿現した時点で最早言い逃れなど出来ない、洗いざらい自分の罪をさらけ出し、相応の償いを
したあとで許しを乞うつもりだった。自分がどうなろうとそんなことは問題でない、この
ひとつ身を犠牲にすることが藍華のめがねに適うのか、ビスチェを借り受ける要件を満たす
のか、それこそが問題だったのだから。

96超初心者:2003/04/20(日) 22:17
しかし注目すべき点は他にもある。あくまで後になってこの場の人間に明かされる構図では
あるが。粗雑な解釈ながら先に暴露すれば、隕石の変形したメタルが必ずしもニナ・エスコの
意を受けて反応した訳でないということ。確かにあの瞬間彼女が責めを負うのを庇ったの
だろう。しかしそれは末節に過ぎない。ここで重要なことは、メタルからメタルへの濃密な
メッセージが、居合わせる人間たち全ての心を媒介としてこそ、的確に伝わるということで
ある。今、追い詰められているニナ・エスコの精神を引き続き安定状態に置かなければ効果的
でない、そのために更なる圧迫を加えようとする藍華の攻撃を妨げた、というのがありのままの
真相らしい。これは力の行使に優先するメタル自身の意志。明快な主体の発露でもある。
こうして藍華と白デルモ、共に能動の制御が及ばないところでメタルによる
コミュニケーション・モデルが構築されていく。先ほどの繰り返しだがこれは衝突という
言葉で表現するのが妥当と言い切れない。メタル自身が意義を見出す活動、それは思念の交流
を伴い、またその先にある様々な五感を発展的に追体験するもの。となれば、その過程は以前
ニナ・エスコが享受した体験に近似する。今、藍華の思念にも直接流れ込んでくるもの。
勿論その多くは彼女にとって未知なるもの、意外な情報が満載ではあろう、がメタルを介する
ことにより、決して取り乱さず整然と受け止めることが出来るのもニナ・エスコの時と同様
の展開なのである。藍華が察知する確かな存在。図らずもかつて大きな関わりをもった相手。
彼女の脳裏に浮かぶイメージとて間違えようもない、間近に感じられるのはあの、ハーゲンと
ネーナの二人なのだ…。

97超初心者:2003/04/20(日) 22:19
これも繰り返しになるが、メタルは神の分身ではない。あくまでも地球に由来する普遍と
して存在するもの。しかも、この星の誕生から生命の隆盛に至るまで多くの事象が元素レベル
の記憶として内包されているだろうに、ここに集う人間たちの個性との共鳴が多くを占めると
いうのも面白い。一個人の重みなど悠久の歴史の中で本来僅かなシェアしか主張できない筈と
考えるのもメタルからすれば浅薄な決めつけに過ぎないのであろう。それは或る意味人間以上
に人間的な交流である。藍華はハーゲン兄妹に語りかける。今までいろいろな事があった。
大変だった。多くの危機があった。しかし、その責任を問うのではない。もし二人がここに
いるというなら、人間として何を思い何を見ようとするのか…単純でもあり味わい深くもある
問いである。二度とあのような暴挙を起こさないで、などという野暮な内容は思念ですら
持ち出すまでもないこと。対するハーゲン兄妹の答えも淡々としたものである。決して言い訳
でなく、強弁でなく。綺麗事ではない、人間誰しも持つ光と闇の両面を朴訥と語りゆく。
実際、メタルを通した伝達は人間の持つ様々な側面を余すところなく赤裸々に照らす。
オルタネートの文字通り、どちらがどう、ということもない相互の交流を何らの脚色なく
シンプルに実現する。そこでは敢えて、聞き上手、などと力を込める程の事も無い。嘘偽り
なく、という但し書きなど付言するまでもない。だからであろう、藍華の方も自分が一方的に
裁く立場でないことをより一層痛感する。更に言えば、ハーゲン博士が当初構想した地球浄化
の概念すら、藍華は一旦受け止める。どこまでも人間である彼の考え方を、同じ人間である
彼女がメタルを支点として向き合った時、自分でも驚くほど冷静に見据えることができる。
それは、ハーゲン兄妹にとっても同じ。何故メタルがあれほど藍華と相性が良かったか、
彼女の考え方がメタルを通し如何に魅力的に輝くことか。素直に羨ましいと思う。価値観の
安直な敵対や迎合ではない。ゆったりと、そして泰然と見合う互い同士なのである。

98超初心者:2003/04/20(日) 22:19
勿論既に明らかになっているように、今やハーゲン兄妹には地球上の生命を脅かすような野心
はない。メタルによって生命の尊厳を、共生の意味を骨の髄まで教えられた二人。彼らの根底
にあるのが地球への純粋な思いであり、その延長線上にラグの平和利用やデルモたちのエデン
を描いていると知れば、藍華としても反駁する理由はない。美女たちを囲い込むのが高邁な志
とまでは思いたくないが、大災害の回避やラグの活用という点では高く評価もされるべき
だろう。二人のここまでの変貌に際し1年以上にも及ぶメタルとのやりとりがあったこと、
その中で決して薄っぺらな強制によるものでない、自身の根源的な得心に基づき現在の彼らが
存立する、という事実に藍華は過去の確執などと対極にある、敬意のような感覚すら覚えるの
である。そうなると、次に浮上するのがニナ・エスコの位置付け。彼女は白デルモの一人と
して、メタルが放つ予兆のメッセージを夢の中で受けていた上、唯一ハーゲン兄妹の思念に
触れていた人物である。その彼女が何を感じ抱いたか、ここで藍華の前に再現という形で
示されるのも、メタル交流の変幻自在。あの時のこと…幾つかの交誼を経てハーゲン兄妹が
ニナ・エスコに打ち明けた時。以前の計画を素直に放棄した二人を彼女自らの心を持って祝福
同意した一瞬があった。それとほぼ同じ瞬間か、敬愛するハーゲン兄妹をメタルの繭から
出し、人間としての再会を果たしたいという思いが昂じていたのも当然と理解する。

99超初心者:2003/04/20(日) 22:21
ところが、そのためには藍華のメタルとの反応が必要だ、と告げられたニナ・エスコ。
今、藍華にもはっきりとその時の情景が浮かぶ、彼女が深い葛藤の隘路に迷い込み、悩み
苦しむさまを。藍華との決着を秘める司令の一途な思いを推し量り、自分ひとりで大きな汚点
を背負おうとしていたことを。確かに臆面も無く、ビスチェを貸してくれ、それでハーゲン
兄妹が復活できるから、などと藍華に向けて直言することは到底出来なかったろう、もし自分
がニナ・エスコの立場であっても同様である。これほど誤解材料の多い申し出もない、人間の
絆は深いと同時に脆くもある、ということである。そう、彼女は悩み、そして決断した。
たったひとり…その悲しい決意が我が事のように思えたとき、続いて藍華に押し寄せる
イメージは、反転して投影される自分自身の行為そのもの。眼前の白デルモを責め、彼女が
非力ながら懸命に封印した理由をこじ開けようとしていた自分。このビルで多くのデルモたち
を気絶させた行ない。それが完全な勘違いであったこと。その責任の一部をニナ・エスコに
転嫁しようと、うすうす思っていたこと…あれこれ思い至れば忸怩たる旋律の連なり。それは
決して単調でなく平板でもないままに、来るべきアクセントの瞬間へとつながっていく。

100超初心者:2003/04/20(日) 22:23
「ううッ…!」全く突然に見える。腹部に激痛を覚え、思わず身体を折り曲げる藍華。
正面から向かってきたメタルが彼女の急所を直撃した訳ではない。それでもこの痛覚は
まさしく現実、夢でも幻でもない。腹に手を当てながら歪めた顔を持ち上げる藍華も、通常
ならばこの事態の意味を理解するのに困難を伴おう。が、今はメタルを介して全体の状況が
概括できる。何故自分がこのような痛みを感じるのか、何が自分の身に起きているのか、
比較的速やかに受け止めることが出来る。一言でいえば、これは藍華の潜在意識が命じた
もの。何と自分のメタルを通して、無実のデルモたちの苦しみを自らの肉体に追体験させよう
としているのである。心の隅に宿っていた呵責の膨張が遂に一線を超えたのか。仕事などでは
至って要領良い藍華も、この瞬間は自分への安易な妥協を良しとしない。どこからどう見ても
これは過ち。心をごまかすなど、この空間では何の意味もない。ここで出会ったデルモたちは、
みな模範的という程でなくとも、普通に健やかな生活を送っている者たちばかりだった。
それを殆ど問答無用で気絶させていったあの破天荒。藍華は自分を恥じる。自分が許せない。
その思いがそのまま自分の身体を被うメタルの物理的な力となって藍華の腹部を襲うので
ある。「…うぐッ…ああっ…くッ…あう!…ぐふッ…」当て身とも違う、厳密には、腹部を
強く刺激する、という表現が近いのだろう。自分の脳裏にデルモたち夫々の顔が思い浮かぶ
たび、苦悶の呻き声を発し続ける藍華。それが累積20回にもなろうとすれば、如何にタフな
彼女でもとうに気絶しているところである。が、メタルの側もそのあたりの事情や背景は
充分にわかると見え、悉く寸前で加減するあたりも心憎い。今更ながらにわかる、ポーラや
ナターシャの激苦。度重なる痛撃にきりきりと身をくねらせ、尚倒れることを許されぬ過酷。
しかも、メタル同士でぶつかり合うエネルギー負担は引き続き極大なまま。まさに八方塞りの
体。悶絶の嵐に苛まれる小舟の如く今、藍華にはたどたどしく抱く思いがある。
それは償い…。自分が課す只今のお仕置きは、あくまで自身の為す最低限のけじめ。今後
彼女たちの許しが得られるまで、どのような責めでも厭わず甘受する、それこそニナ・エスコ
の心境が痛いほどわかる藍華なのであった。

101超初心者:2003/04/20(日) 22:24
ここまでハーゲン兄妹、ニナ・エスコ、藍華それぞれの感覚を並べてきた。では4人の交流を
現出するメタル自身はどうなのか、改めて1人称形で表わす余地がありそうである。
ニナ・エスコを含む3人の心情を描き、藍華のメタルとの再会にも充分満足するハーゲン兄妹
のメタル。片や彼らの今日的有様に同様の感慨を抱く藍華のメタル。いや、些末なレベルで
付け足せば、このビル内に入ってから、胸の肌身に接するビスチェとして藍華の行ないを
つぶさに見てきたメタルというべきか。打撃の瞬間、藍華が倒していくデルモたちの心までも
見通しているメタルという言い方がふさわしいのか。何れにしろ、誤解の連鎖が進行している
ことを早くから気付いていたメタル。それだけに、この紆余曲折も大いなる普遍に基づいて
その織糸を紐解き客観に見据えるメタルの立ち位置は、穿った見方を好む者からすれば、結構
オイシイ役どころである。

102超初心者:2003/04/20(日) 22:24
もともと人間との交わりについては藍華のケースが初めての、そして最高の成功例だった
メタル。その藍華の心が漸く長大な地平を見据え、メタルの真意に気付いた時点で、
メタル自身の意志としても機が熟したと判断するのは想像に難くない。暫時のお仕置きも
その一環だが、この場のシメは別にある。一通り藍華の責めが終わった頃合は、今まで
膨れ上がる一方だったあの心の染み、呵責の重荷が、ようやくに縮小に転じる待望の
ターニング・ポイント。更に連なる節目の到来は彼女にとってアニメと同じくらい荒唐無稽
というべきか。その中央を1本の割れ目が走ると、見る見る左右に空洞が拡大していく
巨大隕石。全体が岩石だとばかり思っていたものが実は薄い金属状の皮膜に過ぎず、それが
空洞の肥大化に反比例してどんどん面積を縮小させていく。今までたっぷり思念の奔流を
浴びてきたニナ・エスコや藍華にとって中にいるものは勿論想定の範囲内だが、改めて
直視すればやはり再度、驚異の字句を用いなければならないだろう。あの内巻きカールも
そのまま、以前どおりの容姿で現れた男。寄り添うように佇むロングヘアの美しい女。いや、
服が消滅しているのは仕方がない。それでも、コンパクトに凝縮したメタルはハーゲンの
下肢を、ネーナの胸と股間を覆う気づかいを、さり気なくまた如才なく演じているのである。

103超初心者:2003/04/20(日) 22:25
〜救いそれぞれに〜

ついさっきまでの轟音が嘘のように静まり返った部屋。あれほど激突を続けていたメタル
の触手が、ひとたび依拠する人間へ戻るその引き際も見事なものである。糸を引くように、
という表現でも不十分、それこそ瞬時のうちに二人の下着へ、藍華のビスチェへと変じる
さまは、何度となく変身を経験している藍華ですら舌を巻く。とはいえ、彼女に関していえば
自ら課した責めのダメージをそれなりに引き摺っており、還元するメタルの動きを感心して
見やるだけの余裕などないのが実情か。現れたハーゲン兄妹の前に晒す藍華の表情は再びの
血色を取り戻しつつあったが、まだ苦痛による涙や涎の痕も生々しい。それでもこれは、
恥ではないと思う。先ほどのメタル交流によって、何故藍華が自身に痛みを強いたか、
ハーゲン兄妹やニナ・エスコにも重々周知のことだからである。少し足はふらつくが大丈夫、
ちゃんと相対することは出来る。それはニナ・エスコも同じようなもの。彼女も、藍華の
プレッシャーには相当参っていた。メタルの仲裁を受けて事なきを得たに等しい現状も、まだ
その有難味を自分の心に整理し収めるところまでは至っていない。立っていることは出来るが、
すぐにもあの利発を再開せよというのも酷なのであろう、やや目もまどろんでいる。
となると悠然と構える余力があるのはハーゲン兄妹だけということになるが、これも一連の
交流によって身の処し方はわきまえているのか、居丈高に言葉を急ぐ様子もなさそうである。
間近に揃う4人。ここまで主役の働きを生してきたメタルも、今は借りてきた猫のように
大人しい。お膳立てはした、ここから先は生身の人間同士、交流の効率はさぞかし
悪いだろうがそれとて一興と踏んでいるのかも知れない。

104超初心者:2003/04/20(日) 22:26
「ハーゲン様、ネーナ様…」少し弱弱しくはあるが、はっきり声に出すことは出来る。
白デルモの目から止め処ない涙が溢れ出すのを暖かな視線で包み返す二人。大役果たした
ニナ・エスコへ向け小さく頷き微かな笑みを浮かべるハーゲンを、藍華も以前の彼と同一視
したりなどはしない。勿論、変わらないところもいくつかある。先ずは藍華へのセリフ。
「また会えると…思っていましたよ…」あの、もってまわった言い回しは健在ということ。
ようやく息が落ち着いてきた藍華も、あっさりした受け答えが戻る。
「ホント、久しぶりね…」彼女にとって無条件に懐かしいとは思わないが、これもメタルの
お蔭というべきか、因縁の相手であっても抵抗なく受け入れるのがこの場の自然。その自然
ついでに衣裳までもが開けっぴろげなのはご愛嬌の部類であろう、変身が解けた藍華は例に
よってビスチェ以外全くの全裸姿に転じている。以前であればさすがに下半身を露出するに
ためらい、思わずしゃがみ込んだものだが、今は平然としたもの。加えていえば、かつて
自分を棚に上げて、彼女のことを恥知らずな格好と罵倒したネーナも別人のようである。
「きれいネ。私と同じくらい…」言葉に少し棘があるのは相変わらずだが底流には優しさが
感じられる。兄との絆が成就したことによる変化もあろう、がネーナ自身がメタルによって
自己の在りようを、愛の行方を俯瞰出来たことが大きい。それは藍華の側から見ても
素直に喜べる状況である。それどころか自分の参考にすらなるかも知れないと思う、まだ
独身の身としては。そう、りおんや自分は勿論のこと、今まで多くのデルモたちが登場したが
実にその全員が処女というのも、メタル交流を通して明らかになった事実。りおんによって
ハーレム創設者の烙印を押されたハーゲン博士が実際にはデルモたち個々の人格や生き様を
尊重し、結局手をつけずじまいだったという情報も同時に伝わってきたからである。

105超初心者:2003/04/20(日) 22:27
勿論ハーゲンとネーナの愛が全てではない。同性の愛、異性の愛、人間の愛、生命の愛…
夫々に育む情愛の煌きを遥かな桃源の彼方に見据える時、福与かな香りとしてこの胸に
流れ込むものがある。ゆっくりと…深呼吸する藍華。覆うもの無いこの身体を誇りに
こそ思えるひと時である。とはいえ、このままずっと裸身を通す訳にはいかない、それは
ハーゲン兄妹も同じ筈。今このビルで動ける唯一のデルモとしてニナ・エスコが二人の衣服を
調達すべく奔走するが、いつも薄い上っ張り1枚に下着姿で通すネーナはともかく、ハーゲン
に合う男物のスーツがない。またも泣き顔のニナ・エスコだが、ハーゲンの気障なセリフが
こういう時には奏効するまぐれもあるということか。
「スーツは後でいい。今はキミの愛さえあれば…」シャワールームから持ってこさせた
バスローブに身を包み、常にポーズだけでデルモたちを口説くというのも、変わり映えしない
スタイルだが、それを至高の愛と受け止め、目を潤ませて一層の忠誠と従属を誓う
ニナ・エスコもニナ・エスコ。やれやれ、と思う藍華もメタルによって取り去られた真紅の
スーツ着用を完了し、とにかくりおんを連れてくるわ、と告げる。すると、ハーゲンは、
その後でいいが、と前置きした上で、良かったら多少のこぼれ話に付き合ってくれないか、
と、ソファのあるニナ・エスコの部屋へ誘うのである。藍華は了承した。この上何を警戒する
こともない、フロア奥のデータルームでまだ気絶から覚めずに眠りこけていたりおんを
抱きかかえると、そのまま白デルモの部屋へと入る。

106超初心者:2003/04/20(日) 22:28
こうしてゆっくり話すことになるというのも不思議な巡り合わせである。互いにこれまでの
経緯を軽い口調でなぞらえば、つい笑みもこぼれてくるのが不思議なもの。眼前のハーゲンを
見据えながら藍華はふと、あの寝室での事を思い出す。果たしてこの男が自分の身体を
どこまで求めていたのだろうか、と。あの時は処女喪失の危機かと覚悟していた藍華だが、
ただ大勢集めたデルモたちに囲まれただけで満足している実態が明らかになった今、あれも
ポーズに過ぎなかったのではと考えることがある。確かに性の衝動自体に無縁ということは
ないだろう。しかし彼は、ハーゲンは、一体どこに愛の帰結を望んでいたのか。ネーナや
自分が試験管ベビーであるという生い立ちが、愛情の礎となるアイデンティティ確立のうえで
辛いハンディを背負わせたことは想像できる。遺伝子という語句にまぶして専ら模索の日々を
送っていたのかも知れない、と思う。その中で憩いとしたものがあのデルモたちということ
なのだろうか。ただあの美しい姿態を眺め、答えの出ない苦渋の日々への癒しと
していたのか…。いや、詮索はこれくらいにしよう。今はネーナへの慈愛が彼そのものと
言えるほど、豊かに満たされているのだから。そこまで考えをまとめた時点で、傍らの
りおんが薄っすらと目を開ける。「…う…ん…あ?…え、えぇーッ!?」あまりの光景に
お決まりの騒ぎが勃発するのは止むを得ない、が今の藍華はなだめ役。激高して立ち上がった
数分後には曲がりなりにも席に戻るりおんである。この場にハーゲン兄妹がいることなど
普通、口頭で説明を受けても中々信じられないところだが、アニメ好きの彼女にとっては
限度を越えた飛躍になると逆に理解が早い。
「そうっか、メタルってカッコいー、アニメみたい〜♪」この一言で先ずりおんへの手続き
第1段階はめでたくクリアとなる。

107超初心者:2003/04/20(日) 22:29
多少の四方山話がひと区切りついた後、これからの計画を藍華たちに話して聞かせる
ハーゲン博士。ラグの平和利用によって地球の災害要因を取り除き、併せて月を開発すると
いう、かねてよりの構想を熱く語る彼はどこか少年のようにも見える。これがラグやメタルの
軍事利用を画策する某国などには決して明かすことない超極秘であるにも拘わらず、他ならぬ
この二人にならいいだろうと、全幅の信頼を置く博士。この雄弁も以前は単なる自己顕示欲
から来ていたが今は違う。メタル同士の厚い信任があればこそ、ここまで思い切った発言が
出来るということを彼自身も認識しているのである。聞き手の方も、これが俗人であれば
まさに狂気乱舞の垂涎情報、やれ特許だの利権だので欲深い頭の中は旧式の電卓が大爆発して
いることだろう。ところがそんなことにはまるで無縁の藍華、まあ無理をしないでね、と実に
あっさりしたものである。メタル交流で既に大枠を知り得ていたこともあり、そんな口角泡を
飛ばさなくっても、と苦笑い。

108超初心者:2003/04/20(日) 22:29
では、初めてこの話に接するりおんの場合はどうか。壮大なテーマに最初びっくりするのは
当然といえる。が、こちらも地球再生計画の時ですら果敢に反発の意を唱えた彼女である、
どんな話を持ち込まれても驚きは一瞬のこと。少しの間訝しがるような顔をしていたが…次の
瞬間ぱっと明るくなる。「うん!この話いいと思う!」いいも悪いも、りおんが決める話では
ないのだが、彼女にも直感的に閃くものがある。少なくとも計画推進者であるハーゲンへの
見方はぐっと変わった。相変わらずの内巻きカール、昔のグループサウンズばりの長髪に…
あれ?サージェント・ペッパーみたいな上着はどこかしら、バスローブなんて着て何勘違い
してるのよー、とあれこれ勝手な品評を胸の内でしているが、以前のような嫌悪感はない。
しかしそれで充分だった。藍華のみならずもう一人の理解者が得られたことをハーゲン兄妹は
素直に喜ぶ。兄妹といえばネーナの方も変わったもの。今更ながらにりおんへの詫びを
入れると、今度はりおんの方からじゃれつくのである。笑いのこぼれる女たちを見ながら、
これが藍華のメタルが伝えてきたささやかな幸せなのか…と改めて感じ入るハーゲン。
人間として帰還出来たことに加え、早速藍華たちとの交流に花が咲くさまを嬉しく見つめる
彼は、じっと只今の至福を噛みしめる。

109超初心者:2003/04/20(日) 22:31
命ながらえて今日に至ったこと、人間としてあの繭から出られたこと…勿論、自身のメタルが
為し得た成果であり、藍華のメタルが許容したお蔭の賜物である。その意味でメタル自身の
意思、あくまでも普通を貫くその存在に親しみにも似た思いを馳せるのは当然だろう。が、
それ以上に彼の身に沁みるもの。メタルの意思の更にその先へと広がるもの。つくづく胸を
うつのが藍華の寛容、そしてネーナの愛と暖かさなのである。あの繭が形成された当初は
暴走するネーナの激情そのままに、ハーゲンを取り込もうとしていたメタル。
あのままでいけば、彼の肉体は朽ち、空しく残った思念だけが、それも頑強に固定化した
ネーナの思念とべったり心中する形で永遠の迷宮を彷徨うことになったろう。当のネーナに
したところでその肉体は大半がメタルと同化し、もはや人間の原型を留めない怪物と化して
いたに違いない。しかし1年余にわたる過程で彼女は実に無償の愛、与える愛、へと転じて
いき、自らも救いの愛に包まれていく。それを主導したのがメタルではないか、という言い方
にはメタル自身がNGを出すだろう、あくまで相互の交流に基づくものだ、とする基本に
忠実だからである。逆に彼女の意志に呼応する形をとったのだ、といえば満足なのか、自在に
変質するメタルは、ネーナから一部が離脱しハーゲン博士の肉体に取りつくと二人の肉体を
個別に守るという結果を残した。と言っても、もとはネーナに付与されていたメタルである、
実はもうひとつ、交流に隠された秘密がある。こうして人間の形で地に降り立った二人には
独立してメタルが付随しているように見えるし、生活の大半はそれで何らの支障ない。
着脱も自由である。ところが二人が睦みあうアノ時それは、メタル同士融合し二人の情交に
絶妙のシンクロを見せる。この人類最高の快感をして、ポテトチップス以上にやめられない
とまらない関係になったという裏事情は如何な藍華に対してですらあくまで内緒ということ
なのである。

110超初心者:2003/04/20(日) 22:32
闊達な会話が弾む最中、水を差すようで悪いけど、と一言を加える藍華。自分には残された
課題がある。誤解とはいえ、よく確かめもせずに力を振るい気絶させた多くのデルモたちに、
償いをしたいというのである。その意が極めて固いのはこの場の全員にひしひしと伝わる
もの、純然たる被害者であるりおんさえ、ぐっと言葉を飲み込んでいる。少しして、いえ、
責任は私にあります、私から説明してみんなの許しを求めますというニナ・エスコ、
いやいや、私の姿を見れば一挙に解決しようとハーゲン、何いってるの、一言因果を含めて
それでも分からないようならお仕置きをすればいいのよ、とネーナ。しばしの侃侃諤諤が
盛上るが、いいえ、気持ちは有難いけど、いたずらな弁解より先ず謝罪がしたい、という藍華
に再び沈黙してしまう。とにかく気を失っているデルモたち一人一人にメッセージの紙を
残すことになり、藍華とニナ・エスコ二人でそれを倒れている女たちの胸元に置いていく。
置いていくのだが、それにしても…気絶しているデルモたちの姿態はどれも壮観の一語。
皆倒れた拍子にスカートがめくれお尻に食い込む純白パンティが丸見えである。中には大きく
はだけたコスチュームの下から柔肌のお腹全体が露出し、可愛いお臍が覗いている者数名。
パンティがずれ、もともときわどかった部位が危うく晒される寸前の者もいる。

111超初心者:2003/04/20(日) 22:33
更衣室やシャワールームのデルモたちについては言うに及ばず。形よく盛上るブラや乳房は
当然のこと、シャワールームの3人に藍華が添えたバスタオルも、その内ピンクデルモの
それはぞんざいに置いたせいか穢れない局所の表情までが覗かれてしまう。それでも慌てて
廻る藍華たちには好奇の対象でもなんでもなく、アフターケアも疎かなまま放置されるのみ。
それよりも情報の伝達こそが第一と配布した書面には、今度の一件に関して重要な説明が
あるので至急5階の研究開発本部長室に集まって欲しい旨の内容と、ニナ・エスコのサインが
とりあえずとばかりコピーされていた。これも幸いに、というべきであろう、デルモたちが
気絶から目覚めた時分は午前7時ころ。通常始業時刻が午前9時で、まだ社員は出勤して
きていない。当て落された当人には無論の重大事、血相変えて集まってくるが社内全体の
騒ぎにならないのが一安心というところである。部屋に入るなり「えっ!!」一声叫んだあと
一様に絶句するのも当然、目に映りこむハーゲン兄妹の姿など余りにも想像を絶する光景
だからである。

112超初心者:2003/04/20(日) 22:34
ハーゲン兄妹、ニナ・エスコそして藍華、りおんが平然と並び立つ有様に驚き目を見開く
デルモたち。やがて気絶していた29人の女たち全員が部屋に集まると、そこそこ広い筈の
ニナ・エスコの部屋も人いきれでムンムン。いや、それにも増してどよめきで騒然として
いる。それでも最初にハーゲンが口を開けば一斉に静寂が戻るのはさすがデルモ組織の
カリスマというところか。冒頭、彼が復活の経緯を話し、ネーナが補足し、ニナ・エスコが
この1日の顛末を説明する。そして藍華である。さらわれたりおんを助け出す為とはいえ、
多くのデルモたちに手を上げたことを深く反省している。この上は、あなたたちの気の
済むまで自分を責めて欲しい、と、うな垂れながら申し出るのである。きょろきょろ顔を
見合わせるデルモたちだが、その視線は、どうしてもポーラとナターシャの方へ向いて
しまう。白デルモの受けた屈辱を考えれば、何をするにも自分たちの順番は後回し、という
ことなのだろう。確かにポーラとナターシャの顔は真っ赤だった。雰囲気を察した藍華は先ず
白デルモ二人の前に立つ。もうどうなってもいい覚悟だった。実際今、二人の鉄拳が夫々の
腕に作られ、勢いよく飛び込んでくるところ。手をだらんとおろし棒立ちの藍華は目を
つぶり、全てを受け入れようとしていた。が。ピタリ。意外や意外の寸止めである。
「…?…」か細く目を開ける藍華に対し、交互に口を開く白デルモたち。
「今更お前を責めるなど生ぬるい、何かメリットがなくては」
「お前も花ゆめ派になるなら許してやる」ポーラやナターシャ夫々の言に、そうだ、一言を
忘れていた、とフォローのアイデアを紡ぎはじめるハーゲン。

113超初心者:2003/04/20(日) 22:37
白デルモの返答でデルモたち全員のスタンスは定まった。誰も藍華に手を出す者はいないと
いうことである。今や恐縮至極、消え入りそうな藍華の小さな肩を見て密かな優越感に浸った
部分はあるのかも知れない。しかも、この時点で口挟んだハーゲンの言葉がなんとも魅力的。
曰く、今回の件で倒された黒デルモたちは全員青デルモへ昇格。青、ピンクの4人には
特別ボーナスを支給。そして白デルモの二人には…ボーナスに加えて1ヶ月のバカンス休暇を
与える、というものである。正式には社長である司令から通達させるとしているが、今や
実質的なオーナーである彼のコメントに皆すっかり機嫌が直るちゃっかりぶり。ニナ・エスコ
配下の黒デルモたちだけは実行犯としてまだばつが悪そうだったが、ここでもネーナが
くだけた合いの手を入れるあたり、変われば変わったものである。
「いいじゃないの、こんなときは甘えとくもんだよ」
お仕置き専科だった彼女からこんな猫なで声で言われると却って背筋がゾクッとするが、額面
どおり受け止めることにする黒デルモたち。白デルモの方も条件に不足はない。ポーラは
レジ―ナと一緒にプロヴァンスのプチ・ホテルでグルメとワイン三昧のゆったりライフを
夢見ているし、ナターシャはニナ・エスコとデンマークへ赴き、のんびり童話の里巡りと
決めている。あの苦しみも過ぎてしまえば一瞬のこと、怪我をした訳でもないし、
まあいっか、という割り切りである。

114超初心者:2003/04/20(日) 22:37
夫々に満足したデルモたちを、今日はもう休みにせよ、と帰宅させるハーゲン。確かに当て身
を受けた身体を癒す一日は必要である。その入れ替わり、1時間程もすれば、ぽつぽつと出勤
のデルモ社員たちが現れるだろう。その前に、と彼はニナ・エスコに案内させ、
藍華とりおん、そしてネーナを最上階の社長室へ連れていく。これから社員全員へ周知徹底
するには先ず社長から、という典型的なトップダウン方式の採用である。ところが、いつもは
早く出勤してくる司令が今日は始業時刻を過ぎても到着しない。もう10時近くになろうか
という頃合になって漸く、副官と共に顔を見せる司令。受付ホールを通り過ぎる表情は上辺の
元気を装いながらもどこか疲れた面持ち、エレベーターを降り自分の部屋のスライドドアの前
へやってくるまで終始副官がぴったりと寄り添っている。ドアを開ける前、立ち止まって
間近に副官の顔を見つめる司令。廊下に人がいないのを幸い、手をつなぎ熱い口づけを交わす
二人である。これとてもう何度目だろう、マンションの部屋でたっぷり濃厚な交わりを持った
というのに。

115超初心者:2003/04/20(日) 22:38
昨夜、藍華との決着の末、深い気絶の眠りに落ちた司令。その彼女にも早朝に目覚めの時は
訪れた。副官が運び込んでくれたベッドの上で気がつけば、自分も、そして傍らに添い寝して
いる副官も一糸纏わぬ姿となっている。映り込む天井をぼんやり眺めながら、司令はあの闘い
を振り返る。藍華…勝ちも負けもないって言ってたわね。欲のない女だこと…ふふ、と口に
出して笑おうとしたところで「…うッ…」意図せず洩れる呻き声。それはそうだろう、
あれだけ激しい闘いを繰り広げたのである、全身の痛み、特に腹部を支配する鈍痛はすぐに
引くものでなく司令の伸びやかな動きを妨げる。その時、司令の声に目を開ける副官。
「司令、そのまま楽になさっていて…。私が自分の全てを捧げ司令をお助けいたします…」
横たわったままの耳元で優しく囁いてくれる彼女の労わりはこんな時何より嬉しいものに
違いない。近づける唇をそのまま重ね合わせ、小首を少し傾けるようにしたまま副官はじっと
動かない。それからしばらくして…そっと、しずしずと、両の手のひらを司令の全身に
這わす。彼女の込める精一杯の気を掌に集め、司令の身体を癒そうとしているのか。それとも
絡ませる下肢と共に内側からとろける愛の奇跡を起こそうというのか。互いに知り尽くした
情を交わしながら程なく二人は果てていく。そしてこれがまた次の高まりへの入口という
もの、この先続く数限りない頂きが司令の苦しみを和らげ、副官の献身に優美な花を
添えていく。時を忘れる二人が藍華の手紙に気づき目を通すのはそれからしばらくたっての
こと。満たされた心身のままに文面を見やる司令は、つくづくあの女らしいわね…と
微笑むのである。

116超初心者:2003/04/20(日) 22:39
そういう訳で、目覚めてからマンションを出るまでの時間はずるずると拡大し、出勤時刻も
べた遅れ。とはいえ同じ夜気絶の憂き目にあった他のデルモたちが本日休みとしているのに
比べれば、遅刻ながらも出社するのはさすが責任ある代表幹部というところである。それが、
戸口でしばしの抱擁を終え、さあ、これから一日頑張るわよ、と気合の二人がスライドドアを
開けたときの驚きといったら!「え!?えぇーっ!!…」まさに驚天動地、藍華とりおんが
いるというのも驚きだが、それより何よりの別格はハーゲン兄妹の悠然たる立ち姿。
「あ…ああ…ハ、ハーゲンさま…ネーナさま…」僅かに引き摺っていた苦しみなど掻き消す
ようになくなり、司令のつぶらな瞳から大粒の涙がこぼれだす。それは副官も同じだった。
小さく打ち震える身体には、どんな言葉でも言い表すことの出来ない感動が込められている。
引きこまれるように駆け寄り、思わず二人の足元に跪く白デルモたち。即座てきめんに
表される忠誠のしるしにハーゲン兄妹も頬ゆるむ様子が見て取れる。あれから1年以上にも
なる空白を全く感じさせない、健気にして一途なる従順。兄妹にとっても、もっと感激の
様相を露にしたいところだが、藍華たちの手前あまり相好を崩す訳にもいかない、少し肯く
くらいがカリスマの地位にふさわしい、ということなのだろう。もっとも、厳密にいえば
ハーゲン博士の方は更に微妙である。自分の足元にひれ伏す女たちを見下ろす格好となる
彼は、そのつややかな髪や、可憐なうなじ、背中から腰にかけて流れるラインを見ることは
出来る。が、惜しむらくは魅惑のパンティが、そこからカモシカのように伸びる美脚と
パンプスの輝きが今ひとつはっきり見据えることが出来ない、ということ。決して明かすこと
ではないが、彼の嗜好とは即ち、デルモたちの眩しい肢体をローアングルからしげしげと、
そして露骨に眺めることに尽きるのだから。

117超初心者:2003/04/20(日) 22:40
それでも再会の時は、ただ純粋に美しい。情報としては少し出遅れた司令と副官も、ハーゲン
兄妹やニナ・エスコからの話を速やかに理解する叡智は充分、ここまでの数奇な転変も
ようやく報われる、と満ち足りた思いに浸るのである。次いで視線向ける先は藍華。あの
決着の闘いを話題にする前に先ず最初、りおんのことを詫びる司令の度量はハーゲン兄妹が
復活したことによる心の余裕がなせるわざか。そのあとは転がりだした笑顔のままに、明るく
屈託ない会話が続く女たち。一見事務的で素っ気ないけど、よーく読めばわかるわね、と
軽口まじりで手紙のことを触れる司令と副官に対し、あら、見ればわかるでしょう〜などと
副官の常套句で切り返す藍華である。だがその白デルモたちも最後には感謝の言葉を
忘れない。「でも、ありがとう。私もあのことは…」「もういいっこなし!」藍華の
あっさりとした一言は司令の言葉を厭味っけなく遮るにはまさに最適。確かにこれ以上
あれこれの腐心は無用、ハーゲン兄妹が復活し新たな発展を遂げることを今や藍華としても
是認しているからである。りおんも今更ながらに司令と藍華の華麗なる闘いの存在を知り、
またそれがここに至って望ましい結末を迎えていることに、何かうるうるとしてしまう。
私に黙ってたなんて水くさいです藍華さん、とか、私だって4人も倒したんです藍華さん、と
元気がいいのは相変わらずだが、それはこの場の照れ隠し。内心はデルモたちと胸襟を開ける
間柄になったのが理屈抜きで嬉しいのである。

118超初心者:2003/04/20(日) 22:41
ここでビジネスベースの話題にも触れられるのが一応社長室の雰囲気というもの。ひと通りの
交歓が一段落して全員ソファに腰掛けると、ハーゲン博士の構想を実践する白デルモたち
によって忽ちに基本計画が策定されていく。今回、ラグを軸とした地球と月の連携
プロジェクトはそのままデルモ・コーポレーションの事業拡大につながるもの。先ずもって
司令は社長職をハーゲンに、と申し出るが彼の返事はノー。自分は月に本拠を置く、月本部長
でいたい、と言う。デルモ・コーポレーションの本社機能は地球に置き、君は引き続きその
代表者たれ、と命ずるのである。このやりとりを傍目で見ている藍華が、まあ何て遠慮深いと
思ったか、地球に本社拠点を残すということは、これで本当に以前の悪だくらみから足を
洗ったのねと思ったかは定かでない。ただ、その真相を知っているのはネーナだけ。藍華の
想像も全くのハズレではないが、ネーナに言わせれば別の答えが飛び出すだろう、お兄様は
誰にも邪魔されないデルモたちとの空間に浸りたいのよ、と。勿論、事がアレ、となれば
既に明らかになっているようにハーゲンとネーナだけが唯一の情交を持つ。単に鑑賞の対象
として多くのデルモたちを囲う、お決まりのパターンではあるのだが。

119超初心者:2003/04/20(日) 22:41
それは置き、では不肖私からいくつかお話致します、と司令。先ほどハーゲンが示した、
受難のデルモたちへの恩賞を通達するのがひとつ。全社内にハーゲンさまネーナさまのご帰還
と新事業の発足を伝えることがひとつ。月本部設立の責任者にラグのエキスパートである
ニナ・エスコをあてることがひとつ。そして、土台となる地球で展開される月への
ラグ転送計画を当面最大のテーマとする、ということがひとつ…。そこで、と司令は言葉を
継ぐ。是非、KKコーポレーションの皆さんにこの事業へ参画していただきたい、と。今度は
信じて下さい、眉唾のマトリョーシカなどでは決してありません、と申し出るのである。
大災害対策に躍起となっている国や都市が世界中到る所にあり、且つ、そのどこに於いても
少なからず防災予算を計上している今日。司令が口にする受注額も腰を抜かすほどに莫大な
もの、当然KKコーポレーションへの発注額も連動して巨大になる。「すご…い…」計算の速い
りおんも口をあんぐり。これだけあれば、もう一生遊んで暮らせるどころか、ちょっとした
国なら一国まるごと買い取れる程の天文学的数字である、が、ここでにっこり返す藍華の
セリフがまたあっけらかん。「いいわ。お引き受けします。社長の借金が返せる額でネ♪」

120超初心者:2003/04/20(日) 22:42
ムーンベース構築に向けた第1陣が、それから数ヶ月後には出発していったのだから、やはり
ハーゲンの才能は並大抵でない。自分たちの夢実現の第一歩とばかり勇躍するハーゲン兄妹に
付き従うはニナ・エスコ以下数十名のデルモたち。そのニナ・エスコも先遣隊の現場リーダー
として、崇拝するハーゲン兄妹と行動を共にする光栄に浴し感激の思いで一杯。ここぞという
ところで自分の能力を高く評価してくれたハーゲン博士に報いるため、また、ここまでの
ドタバタの失点を挽回するため、華奢な身体ながら頑張るぞー、と気力十分である。実際
彼女の優秀な頭脳は月面に於いて如何なく発揮され、短期間のうちに
デルモ・コーポレーション月本部が創設されるに至った。彼女の生きがいは研究と仕事。
事業拡大の先鋒を担う喜びも人一倍だが、陣頭に立つハーゲン兄妹から理解のある助言や援助
をふんだんにもらえる彼女はこの上なく幸せである。次々と新技術を導入し、ムーンベースの
機能を飛躍的に拡充していくニナ・エスコ。何年かたって後、デルモ・コーポレーションの
田中さんとしてプロジェクトXの取材を受けることになるのも容易に肯けるというもの
である。

121超初心者:2003/04/20(日) 22:44
日々是好日。この日が大安かどうかは別として、本日は司令と副官が
デルモ・コーポレーション月本部へ初の出張に赴く記念すべき日である。常々気付かされる
ことだが彼らの技術力、実行力は相当なもの、ハーゲン兄妹やニナ・エスコたちが月へ発って
左程の間も開いていないというのに、早くも立派な宇宙船を新造している。今、滑走路に
スタンバイした流麗なフォルム。ラグ・エンジンを搭載し最新鋭のスペックを誇るその機の
名は「ホーリー・エクスタシー号」という。乗り込んでいく多くのデルモたちを背景に
滑走路上佇むのが司令と副官、そして…藍華たち。りおん、郷造、道草、更にはガストや
バンドラ、メイピアまで打ち揃うオールスターキャストである。巨大なラグエンジンの
巻き起こす気流で、機体の周辺は若干の強い風。藍華、りおんやデルモたちのミニスカートが
はだけるさまも、今爽やかな空気を印象づける。藍華たちがここへ来たのは、
何も仕事を回してくれたからというお義理ではない、ハーゲン兄妹、司令や副官以下
デルモたちへの憎からぬ思いがその根底にはある。雨降って地固まるの例えどおり、いろいろ
あったが今では却って親しみを感じる仲。お互い、日常と非日常の境目もわからない程
とんでもない応酬を経験してきたが、そのお蔭でデルモたちのこの旅立ちを日常の一環として
すんなり捉える土壌もできた。大勢で見送りに来てくれたことを感謝する司令は、
図らずもハーゲン兄妹復活に力を貸してくれた藍華に対し、もう一度手を差し伸べる。
「ありがとう。月に着いたら連絡しますね」気をつけていってらっしゃい、と笑みを返す
藍華は、今回のもうひとつの主役であるビスチェを身に着けている。ハーゲン兄妹や
デルモたちの門出にはこれ以上ふさわしい演出もないだろう、と敢えて着用してきたもので
あった。

122超初心者:2003/04/20(日) 22:44
固い握手に次いで更に一言を付け加える司令。「あの…その時に、カラオケをしません?」
「カラオケ…?」およそ司令のイメージに似つかわしくない唐突な提案に少し面食らう藍華。
司令の方はきょとんとする相手の表情に構わずノリノリである。「私たちは、伝送補正
シンクロ装置を既に開発しています。これを使えば月と地球同時リアルタイムに通信や
画像処理が出来るのです。カラオケなんかは、もうお手の物…」とはいえ何故いきなり
カラオケの話題になったのか。何故司令が急に望んだか。実は当の彼女にもよくわからない、
ただ何となく言ってみたくなった…それだけである。いや、司令自身見落としている微かな
きっかけがあるのか…いつかそんな事があったような、どことなく懐かしさを覚える幻想の
ようなもの。それをデジャブ、と人は言うのかも知れない。それが平行する世界、直訳した
ところで面白くも何ともないパラレルワールドから届けられたことも、司令自身は意識する
術がない。但し今浮かぶイメージはあの演歌ではなく。「Dance with me tonight」…それは
女性ユニットによる軽快なダンス・ミュージック。司令は月で、藍華は水没した東京を思い
ながらも止む無く埼玉のカラオケボックスで。立地も環境も設備も違うが、デュエットの
世界には大した問題でない、二人の相性これまた抜群であることが程なく立証されることに
なるのだろう。

123超初心者:2003/04/20(日) 22:47
いよいよ発進の時。コックピットに並んで座る司令と副官が、一つのメインレバーに互いの
手を置いている。期待に胸ふくらませる二人、頷きつつ見交わす視線は吸い込まれるほどに
魅力的である。「マイコントロール」「ユアコントロール」息ぴったりの確認動作が進み、
程なく機は離陸段階へ。「ウイアー」と副官が告げれば「ローテーション」と続く司令の
声も弾んでいる。地を離れてから一気の上昇加速まではそれこそあっという間の最新鋭
ロケット。万感の思いで遠ざかる機影をじっと見上げる藍華。高く澄みきった天空の下、
降り注ぐ陽光に胸元のビスチェはキラキラと輝いている。思念の世界では饒舌なくせに、
この節目には終始寡黙なメタル。今、デルモたちの将来を思い、司令とのカラオケを
想像してみる藍華の心を邪魔せぬようとの配慮なのか。メタル自身が藍華にも気付かれぬ程に
そっと抱くもの、そこには…。実に面白い女たちだ…ここまでの展開を見届け、まんざらでも
ないという思いと、藍華少し太ったんじゃないか、という思いが混じる。これも普遍という
ものであろう、周囲見渡せば何事もなかったかのようないつもの春。ささやかな祝福は
甘酸っぱい香りと共に。ありふれた光景が遊ぶ、うららかな春の一日が今日もゆったりと
そして光彩豊かに過ぎていくものなのである…。
       
       〜これまた、おあともよろしいようで御座います〜

124藍華さん</b><font color=#FF0000>(........)</font><b>:2003/04/20(日) 23:04
超初心者様

ご苦労様でした。
素晴らしい力作を頂戴し、有難うございます。
纏まった形で改めて拝見し、その分量に圧倒されます。
これからゆっくりと再読させて頂きます。

125名無しさん:2003/08/06(水) 00:40
コマネチッ!

クソデルモ! クイコミレオタード着てみろよ!
着る勇気ねぇーのかよ! このアホ!

126名無しさん:2003/08/06(水) 00:41
あ、間違えた。スミソ。

127625番:2006/04/01(土) 19:21:13
★寂しい人は是非これを見てね!!!
http://moder.web.fc2.com/

128625番:2006/04/01(土) 19:23:51
★寂しい人は是非これを見てね!!!
http://moder.web.fc2.com/

129エビちゃん:2006/07/06(木) 02:30:48
ちょっとヤバイ写真が友達経由で回ってきました。
エビちゃんこと蛯原友里さんのほぼ全裸写真。なんでも撮影時にスタッフが盗撮したものらしいです。マガで配信する予定なので、見たい人は空メ送って待っててね。
空メ⇒613022s@agw.st
説明⇒http://66.160.206.49/maga/


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