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物語スレッド
264
:
ロズロォの懺悔(14)
:2008/01/06(日) 02:37:13
翌日、囚人棟でまた一人囚人が死んだ。
自分の皿の盛りが他の囚人より少なかったとか、そんな些細な理由が原因の喧嘩で命を落としたのだ。
「全く、少し暖かくなったと思ったらすぐこれだ」
私が囚人を診察してその死亡を告げると、牢名主は頭を掻きながら溜息混じりに言った。
「そんなに運河で魚の餌になりたいのかね、全く」
「運河で?」私は牢名主の言葉に首を捻る。「死体は牢獄の地下の川に捨てられるんじゃないんですか?」
「あぁ、医師(ロズロォ)さんは知らないんだったな」牢名主は死体を入れる死体袋を他の囚人に取って来させながら言った。「あの川は運河に通じているって噂があるんだ。ここにいる囚人達の何人かが戦時中にこの牢獄、当時は要塞だったんだが、に篭って殺された兵士の死体が運河に浮かぶのを見たって言っている。当時要塞は草の民に包囲されていたから死体を遠く離れた運河にわざわざ捨てに行ったというのは考えづらいしな。だから、そういう可能性がある、というわけだ」
「しかし、要塞の外で死んだ敵兵を草の民が運河に捨てたのかもしれませんよ」
私が言うと、「それはねぇよ」と牢名主は答えた。
「ここから運河までどれだけ距離があると思ってるんだ?。俺が草の民だったらそんな手間とるよりさっさと穴掘って埋めるかそのあたりに晒すよ」
なるほど彼の言う通りだ。だが、それなら……
「でもあくまで可能性だ」私が何かを言う前に、それを遮るようにして彼は言った。「いくらあの地底の川の水温が見た目よりは暖かいからと言って、その川から脱走しようとは思わないな。普通に考えて、運河に辿りつくまでに水没して溺死するか、結局運河には通じていなくて地底湖あたりで藻屑だろうからな」
そう言うと、牢名主は他の囚人に死体袋を奥の部屋に持っていくように言い、別の囚人に牢役人を呼びに行かせた。
「ところで医師(ロズロォ)さんよ」
唐突に牢名主は言った。
「あんた、最近血の匂いがするぜ」
「……」
私はその言葉に心臓が止まるほど驚き、暫く黙った後に「囚人達の治療を日々行っていますから」と半ば言い訳になっていない言い訳の言葉を口にした。
「死臭もするんだがな」
「それは……」
私は必死になって言い訳を考え付こうとしたが、「まぁ、良いんだがな」と言って牢名主は立ち去った。
……助かった
そう思いながらも私は、この「実験」は完成を急がなければならない、と考えた。
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