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118メクセトと魔女 2章(2):2007/02/20(火) 01:36:15
 少女はそれの足元に泣き崩れる。
 それは、このような時にやさしく彼女を抱きとめることも、その肩に手を置いてやることもできない不甲斐なさに唇を噛んだ。
「あの男は予想外の存在だ。おそらく人間という種が幾億の世代を経て一人産まれるか産まれないかの存在だろう。しかし、その実力が『キュトスの姉妹』を凌駕するなどとは考えてもいなかった。改めて人間という種が恐ろしくなった」
 それは言った言葉は、決して冗談から口にした言葉ではなかった。
 今まで取るに足らなかった、その気になればいつでも滅ぼせると考えていた人間という種族は、今や確実に彼女達の脅威へと変化したのだ。
「あの男をこのまま生かしておくことは、我々『キュトスの姉妹』にとって、いや世界にとって脅威になりかねない。いかなる手段をもってもあれを殲滅しなければならない」
「はい」
 少女は答えたが、それは決して姉の心や考えを理解しての言葉ではなく、姉への絶対の忠誠心と信頼から出た言葉だった。
 それほどまでに少女は姉に対して絶対の忠誠心と信頼をもっていた。
「もし直接的な力で滅ぼせない場合には暗殺という方法も考える」
「……」
 だというのに、なぜか少女には姉が「暗殺」という言葉を口にしたときにそれに対して肯定の言葉を返すことが出来なかった。
 メクセトの死……それは彼女の望むところのはずだ。
 なのに、「暗殺」という方法を用いてのメクセトの死を彼女は何故か受け入れることが出来なかった。何故なのかは分からない。だが、その方法は間違えている気が彼女にはした。
「どうした?」
「いえ……」
 彼女は軽く頭を振り、自分の中に湧き上がったその考えを消そうとした。
 どのような方法を用いようと、メクセトの死は自分の望むことのはずなのだ。それに姉の思慮は絶対のはずではないか……
「今後の行動は追って伝える。必ず君を救い出してみせる。だから、それまで可愛そうだが耐えておくれ、愛しい妹よ」
 そういうと、それの姿は夜の闇へと消えていった。
「メクセトの死……暗殺による死……」
 少女は、呆然とそれの消えた後を眺めていた。


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