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皇軍(明治〜WW2)がファンタジー世界に召喚されますたvol.26

1名無し三等陸士@F世界:2017/01/29(日) 10:52:34 ID:ci0mzTRQ0
自衛隊ではない日本の軍隊のスレッドです。
議論・SS投下・雑談 ご自由に。

ローテク兵器VS剣と魔法

戦国自衛隊のノリでいて新たなジャンルを開拓すべし
銃を手に、ファンタジー世界で生き残れ!

・sage推奨。 …必要ないけど。
・書きこむ前にリロードを。
・SS作者は投下前と投下後に開始・終了宣言を。
・SS投下中の発言は控えめ。
・支援は15レスに1回くらい。
・嵐は徹底放置。
・特定の作者専用スレは板として不可。
・以上を守らないものは…疫病と戦争、貧苦と死に満ち溢れたファンタジー世界に召喚です。 嘘です。

2名無し三等陸士@F世界:2017/01/29(日) 10:53:16 ID:ci0mzTRQ0
暫定ガイドライン(分家皇軍Ver.)

1.「皇軍がファンタジー世界に」とあるように、あくまで「大日本帝国の軍事組織」が「ファンタジー世界」に関わる話であること。
2.大日本帝国というからには、日本軍の組織・装備は実在もしくはその延長上にあるものに限る。
実在しないが延長上にあるものを出すには、そこに至る流れを説得力のある理由つけてハッタリかますこと。
3.核兵器(含む動力源)・大陸間弾道弾・人工衛星、巨大人型兵器・海底軍艦・飛行戦艦・陸上戦艦など当時の日本が配備するにはナンセンスなものは極力避ける。
しかし確信犯(誤用)的トンデモ架空戦記としてならまた別かも知れない。
4.あくまで「ファンタジー世界」の話であり、F世界側の設定は作者が自由に決めることが出来る。
ただしそれ単独でパワーバランスを大きく揺るがす存在(兵器・魔術・キャラクター等)は作らない事が望ましい。
5.日本・F世界双方の人間をきちんと描写する方が好ましい。
一方の主観という演出などであえて描写しないのはこの限りで無い。
6.戦略・戦術としてありえないものを避ける。例えば一人の帝国陸軍軍人が軍刀一本で100人斬りとか。
7.萌え・エログロはあくまで表現手段であり、目的ではない。安易に狙ったり、しつこく要求するのは流石にウザイので自粛すべき。
どうしてもそれ主体でやりたい場合は各専用スレでやる事。
8.叩き・煽り・嵐は徹底放置。嵐認定を受けた後に、かまった者も同罪とする。
9.SS作者は、抽出がしやすいようにトリップ装着を推奨。
なお、二次創作の可否については原SS作者の判断に一任とする。現在、SS「帝國召喚」では公序良俗を乱す作品でない限り問題なし。
10.感想書き込む人も節度や口調を考えるべし。作品が気に食わないなら透明あぼーん汁

3名無し三等陸士@F世界:2017/01/29(日) 10:54:22 ID:ci0mzTRQ0
過去スレ
01 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1116672903/
02 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1125644871/
03 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1130199183/
04 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1134983039/
05 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1139108925/
06 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1142596115/
07 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1145757330/
08 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1148549150/
09 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1151766955/
10 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1155287974/
11 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1157915129/
12 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1161151313/
13 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1167373446/
14 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1173192902/
15 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1179579011/
16 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1187842098/
17 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1194994629/
18 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1204087700/
19 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1208419952/
20 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1229327978/
21 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1247310050/
22 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1259054639/
23 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1267228901/
24 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1278940501/
25 ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1321658639/

4名無し三等陸士@F世界:2017/01/29(日) 10:55:27 ID:ci0mzTRQ0
SS「帝國召喚」関係

ここまで読んだ氏による公開済み設定まとめWiki
帝國資料館
ttp://www12.atwiki.jp/kokomadeyonda/pages/1.html

注意
『帝國召喚の記述に矛盾が生じた場合、HP掲載時に設定が修正された可能性があります。
もし気になられた場合、お手数ですがHPをご確認ください。』

5名無し三等陸士@F世界:2017/01/29(日) 10:56:02 ID:ci0mzTRQ0
SS「昭南疾風空戦録」関係

黒綿棒様のサイト
黒綿棒の世界
ttp://sansho.dayuh.net/index.html

6303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/05(日) 13:37:54 ID:54bd7AQo0
スレ立てありがとうございます。
外伝的掌編ですが、投下します。


前スレ>996-999

「フィクションだから」という前提と「チートあり」というご都合主義を受け入れない限り、
アメリカだろうがロシアだろうが中国だろうが生きていくのは無理だと思っています。
『ゲート』のように、常に地球と繋がりのある状態ならともかく、科学技術が中世レベルのF世界に単独転移は死刑宣告のようなものかと。
常に地球世界と繋がりがあったらあったで、それはそれで面倒臭くなるのですが。

7303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/05(日) 13:40:43 ID:54bd7AQo0
傭兵ギルドからの催促が凄い。

内容は決まっている。
大口の仕事が欲しい。大口の仕事を紹介しろ。
傭兵ギルドはこんなに有力な組織だから云々かんぬん。
早くお帰り願いたい。


リンド王国の傭兵ギルドだから、リンドに敵対的な国や組織と契約を結ぶ事は禁止されているが、それ以外であればリンド王国専属の傭兵である必要はない。
つまりリンド王国から見て直接利害関係に無い第三国同士の戦争に加勢しに行くとか、リンド王国の同盟国に加勢しに行く分には問題ない。
また国家や地方領主のレベルでなくても、個人や組織が雇用主となっても何も問題ない。
有力商人が商品や現金輸送の護衛に傭兵を雇う事は珍しくないし、珍しいところでは平民個人が決闘の代理人を立てる為に傭兵を雇った話もある。

個人から契約可能といっても、ギルドにとって金になるのは大口の顧客、つまり国家だ。
王国が戦争をするからと数万の傭兵をかき集めてくれれば、大勢の傭兵隊長の懐が潤う。
だがそれも昔日の話。近年は国王や宮廷といった中央だけでなく地方まで王国軍が中心に考えられており、傭兵ギルドは苦難の時代だ。
傭兵隊長を辞めて、王国軍の連隊長になった者も居れば、軍事官僚になった者も居る。大所帯だった傭兵隊ほどその傾向が強い。
かつては王国内に数百人は居た傭兵ギルド員も、今や百人を割ろうかとしている。この傾向が続けば傭兵ギルド自体の存続が危うい。
人員が減れば組織の政治力が弱まる。政治力が弱まれば人員が減る。組織の命脈を保つのに必死なのだ。

だから、歴史的大敗で金欠となってしまったリンド王国の代わりに、リンド王国の同盟国となっている皇国に契約を迫っている。
身形の良い軍服で、気前良く金貨や銀貨を支払う皇国軍の主計隊を見れば、ここで大口契約の一つでも取り付けたいと思うだろう。

だが、皇国としても皇国軍としても、そこまでの大口契約は必要ないのだ。
ここぞという場面で、村を出入りする度に現地の村人を雇うような事をせずに済む、自活可能な道案内が欲しいのである。
リエール傭兵隊のように地元の地理に詳しく、しかも正規軍と出会っても自力で戦闘や退却が可能な、数十人規模の傭兵隊が、師団あたり5、6個もあれば良い。
数百人から数千人の傭兵隊なんて、纏めて派遣されても扱いに困る。数百人の纏まった傭兵隊を分割しても、相応の指揮官が居ないから使えない。
皇国軍の案内として働く分賠償金を減額するという条件で、リンド王国軍の残存部隊が幾らか付いてきているので、尚更今以上の傭兵隊なんて要らない。

皇国軍は、異世界の大陸で活動するにあたり、大きく分けて三種類の人々を、軍属または軍属相当の現地協力者、軍人による軍事協力者という形で募っていた。
一つ目は、農民や猟師や行商人などで、村の近隣など限定された地域に限り、行軍を補佐する形の協力者。
二つ目は、自称冒険者や小規模傭兵隊で、軽装備で自衛戦闘くらいは可能で、終始行軍に付き従う形の協力者。
三つ目は、正規軍の大隊や中規模傭兵隊で、ある程度自活可能(積極的な戦闘可能)で、終始行軍に着き従う形の協力者。

このうち、傭兵の出番は二つ目と三つ目の場合だが、どちらにしても剣と銃で武装した軽歩兵的な戦士が必要とされている。
傭兵隊の中には皇国軍の欲する軽歩兵的なところもあったが、逆に槍兵専門のようなところもあって、そちらは流石に使い所に困る。
銃歩兵傭兵隊ばかりが使われる事になると、槍歩兵傭兵隊から、自分たちも使えという声が出る。
特定の傭兵隊に仕事が固まらないように、全部の傭兵隊になるべく平等に仕事が回るようにするのが
傭兵ギルドの仕事なので、数週間毎にローテーションして使って欲しいという“要請”が出てくる訳だ。

8303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/05(日) 13:41:40 ID:54bd7AQo0
既得権益というものは、御上が無理やり取り上げても反発を受けるだけだし、
仕方なく取り上げるにしても、それに対する補填が無ければ上手く行かない。

形式的には、傭兵ギルドを潰すのは簡単だ。
女王が傭兵ギルドを解体する旨の署名をし、ギルドの勅許状を取り上げれば(失効させれば)いい。
しかしそれは抜かずの宝刀。強引なギルド潰しを実行すれば他のギルドから不信感を持たれる事は間違いなくなる。
それにそんな事をすれば、法的地位を失った百人余の元傭兵ギルド員と数万人の元傭兵が市井に解き放たれることになる。

傭兵ギルドの傭兵隊、傭兵達は、公共事業の側面もあった。
職の斡旋という分かりやすい理由だけでなく、王国軍の予備役プールとしての存在。
動員がかかってから兵士を徴募して訓練するのではなく、訓練経験や実戦経験のある傭兵を兵士や下士官、中隊長や連隊長として数千から数万の規模で募れる。
リンド王国の強さの一つとして、長らく王国軍と傭兵ギルドが持ちつ持たれつの関係にあった事は否定できない。

それまで、国軍の補助部隊や地域や都市の治安維持組織としてあった傭兵ギルドが無くなれば治安が乱れる。
ギルドという公的特権を失った武装勢力が牙を剥けば、皇国における西南戦争か、最悪、武力革命だ。

だから傭兵ギルドを潰すなんて出来ない。

傭兵ギルドに所属する傭兵その他の人員は、最盛期にはリンド王国だけで十数万も居たので、これでも減ったと言える。
ギルドに所属する傭兵が減った最大の理由は、地方の村落の生産力が上がって食い扶持に困らなくなった事。
また、それと並行して、地方や中央の税収が上がったので、常備軍や地方警察組織の維持が可能になった事。
これらが重なって、傭兵に頼らずとも国家(国王)や地方領主が持つ独自の戦力に頼れるようになった。

ただし、十数万も居た傭兵というのは、傭兵ギルドに直接所属する傭兵隊長に雇われた下級傭兵や人夫まで含めた数だ。
規模の大きな傭兵隊であれば、1人の傭兵隊長に数百、数千の人員というのも珍しくなかったのだが、それが現代では珍しくなっている。
傭兵隊の規模が全体的に小さくなっているだけで、ギルド登録されている傭兵隊の数自体は実はそれほど減っていない。
傭兵隊長は世襲だったり、持ち回りだったり、縁故だったりで選ばれ、傭兵ギルドの職員から“転職”する輩もいる。
傭兵隊の数はあまり減っていないのにギルド員の数はかなり減った。
という事はつまり、以前はかなり多数の“役員”や“顧問”が居たという事だし、それだけ組織に余裕があったという事でもある。
羽振りの良い商業ギルドなどは今でもそんな感じだ。

今日ではどの国でも規定されている武装結社の禁止。その例外が傭兵ギルド。
かつて、それが切実に必要とされた時代の残滓。

昔日は傭兵業で一財産築いた傭兵隊長も居たが、現代ではそんなの夢物語だ。
傭兵隊長でさえそうなのだから、下っ端の傭兵にとっては一攫千金の機会など無い。
国王や地方領主にとっては、もはや傭兵に頼らず自力で解決出来るのが武力問題。
傭兵隊長への依頼、契約の回数は自然と減り、そうなれば多数の人員を抱えた傭兵隊は倒産する。
倒産しないためには身持ちを軽く、つまり人員を削減し、少数精鋭の組織運営にするしかなくなる。

9303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/05(日) 13:42:12 ID:54bd7AQo0
しかし、これが逆に傭兵隊が傭兵隊として、国軍とは別に存在し続けていられる要因ともなっている。
小回りが利く訳だ。
皇国軍もその利点を評価していない訳ではない。

ただ、何十もの傭兵隊を雇う余裕は無いのと、雑多過ぎるのが問題だった。
ポゼイユ侯爵が全額負担して雇用し、それを皇国軍に派遣して無期限で指揮下に入れるという形になったリエール傭兵隊のような好条件は例外。

基本的には傭兵の雇用費は皇国が全額負担するのだから、せめてギルドは顧客側の意見くらい聞いてくれてもいいだろう。
そんなに難しい要求をしているつもりはない。戦術的に小回りの利かない槍兵はやめてくれ、ギルドの都合で勝手に編成を変えないでくれ。

2〜3週間経つと、傭兵隊が勝手に列を抜けて、別の傭兵隊が入ってくる。どの傭兵隊が来るか皇国軍は選べない。
その土地の地理や風俗に詳しいものという条件は最低限守ってくれているが、契約条件に反しない限りで好き勝手だ。
前線部隊から評判の良かった特定の傭兵隊との専属契約にしたければギルドに違約金を支払わなければならない。

最初に契約を結んだ際に契約内容の確認が甘かった皇国軍の師団経理部の落ち度と言えるのだが、時既に遅し。
例えば「常に傭兵隊1隊が皇国軍に付き従う事」という文言、皇国側からすると当然、基本的には同じ傭兵隊が従属するというつもりだった。
交代するにしてもある地域から離れたので地理に疎いとか、部隊に損害が出たとか、そういう理由を考えていた。
特に理由のない交代という状況は、皇国側は失念していたといっても良い。
「已む無き理由なしに皇国軍の指揮下を離脱する事を禁ずる」という文言もこの件に関しては死文化している。
「傭兵ギルドの都合で交代するのは十分な理由」と言われ、リンド王国軍の法務官も傭兵ギルド側の理屈は正しいと言う。

皇国軍は傭兵ギルドとの契約数を最低限に絞っている。
しかしあの傭兵隊が良いだのあの傭兵隊は嫌だの、色々と文句をつけるので、傭兵ギルドは「だったら契約数増やせばいい」と言ってくる。
大口契約にすれば、傭兵隊あたりの単価は安く抑えられるし、多くの傭兵隊を様々に使えるから便利になると。

あまり傭兵ギルドに好き勝手されると、足手纏いになる。だが当面の間、傭兵の協力は欲しい。
腑に落ちないが違約金を払うしかないか?
違約金を払うくらいなら大口契約した方が後々便利ではないか?
こんな事なら傭兵ギルドを買収してやりたい!
砲撃の間違いじゃないか?

そんな口論が皇国軍の司令部で起きている事など、皇国の名誉の為に秘匿されなければならないのだ。

10303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/05(日) 13:42:53 ID:54bd7AQo0
投下終了です。
今年もスローペースになると思いますが、よろしくお願いします。

11名無し三等陸士@F世界:2017/02/05(日) 16:22:26 ID:duMIjbdY0
投下乙でした。
傭兵ギルド側の言い分もある程度はわかる気はします。
とはいえ、日本人も割と頭に血が上りやすいですから、そのうち傭兵ギルドが粛清されるかもしれませんね(汗

12名無し三等陸士@F世界:2017/02/05(日) 19:09:15 ID:ME6n/qvE0
明治の御一新の時はどうしたんだったかなとか言い出す参謀本部

13名無し三等陸士@F世界:2017/02/07(火) 16:03:17 ID:I97TxQ6c0
傭兵なんて潰してRONINになられても困るし大変ですな

14303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/08(水) 06:08:42 ID:54bd7AQo0
今日は非常に短いですが、幕間的な感じで本編の続きを投下します。


あと筆者なら本文で書いとけという話なのですが、少し補足を。

F世界の列強で軍事面で最強なのはリンド王国。これは、初期設定のかなり早い段階から決まっていました。
ただ、何故強いかはかなり曖昧だったので、独自の傭兵ギルド文化があった、みたいな完全な後付設定をでっち上げました。
他国にも傭兵ギルドはあるけれど、リンド王国ほどの質や規模はないという設定(後付)です。
中央集権と国民軍の充実によって、その最大手のリンド傭兵ギルドすら落ち目の時代だと。

対皇国戦の時は何してたの? というと後方支援業務と、兵の補充(動員協力)です。
完全に後付設定になりますが、数十万の王国軍の為に短期間のうちに多数の物資倉庫を用意して、
飛竜陣地を用意して、ユラ神国に勝つ気で居られたのは彼らのお陰という事にしておいて下さい。
そして敗戦によって契約金の不払い(未払い)も発生していて、とても不味い状況にあります。

平時は限定的な徴税特権で維持できても、戦時にはそれではとても足りない!
商人ギルドから、皇国は金払いが良いと聞いたぞ! 皇国軍に取り入ってパイプを作ろう! ←今ここ


リンド王国という国名からして「ベルリン+ロンドン⇒ベルリンドン」からですし、王都ベルグは「ベルリンドン-リンド=ベルン」を捩ったものです。
ベルンってスイスの首都だから、傭兵国家として発展した経緯があるとしてもいいよねと、数年の時を経て気付きました。

「傭兵ギルド」というファンタジー世界でおなじみのギルドは何かの機会に書きたいと思っていましたが、漸くでした。
「冒険者ギルド」や「盗賊ギルド」というのもありますが、私の中では、傭兵ギルドが冒険者ギルド的な性格も持っていると考えています。
拙作中で、冒険者というのは公的な裏付けのある地位や職業ではありません。あくまでそう自称しているだけです。

薬草採取クエストとか、そんなの自分でやれという話ですが、必要な薬草があるのが野獣や紛争等で危険な地域だったりすれば、傭兵ギルドに声がかかる事もあるでしょう。
本来ギルドは各都市ごとのもので、首都などに本部があって各地に支部があるような全国、全世界で統一的な
制度のギルドはファンタジー世界にしか無いと思うのですが、そこはファンタジーのお約束優先という事で。

盗賊ギルドというのは盗賊の勅許状を持っている組織、という事は私掠船団とか「敵対国に対する盗賊許可証」を持ってる人達なら合点が行くのですが。
ギルドを自称しているだけで公的な認可を受けた組織ではない犯罪結社という身も蓋も無い解釈もありでしょうが、
当局に公認されている反社会組織という意味ならば「指定暴力団」そのものではないかという節もありますね。

15303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/08(水) 06:10:05 ID:54bd7AQo0
ザラ公国の首都ポカまで後退を余儀なくされたマルロー王国軍の“准将”は、受け取った伝令報告を見て表情を難くした。
『北部戦線にてノイリート要塞が降伏せり。南部戦線の諸将は皇国・リンド王国軍への圧力をより一層強め、戦域の確保を継続すべし』

先日、ザラ公国の使者が同盟脱退と単独降伏の通告をしてきたばかり。
正式な降伏調印となるとまだ時間がかかるだろうが、ザラ公国軍は“大打撃を受け作戦の続行が不可能になった為、戦列を離れる”と、全軍を本国に引き上げている。
こうなれば軍事的な圧力をより一層強めるどころか、現状維持すら危うくなる。
しかも北部ノイリート要塞が陥ちたというのだから状況は最悪だ。

実際問題、要求される最低ラインである現状維持すら出来ていないのだ。
ザラ公国を下した皇国軍が居座っているから、前線は後退しており、ポゼイユ侯爵領に対する圧力は無くなったも同然。
むしろ立場は逆転して前進基地の筈だったザラ公国が皇国軍の直接的脅威下にある。

ザラ公国対して懲罰的武力行使を行うべきか? あるいは経済制裁か?
同盟内でも有力な国がマルロー王国と碌な協議もせず勝手に単独降伏し、リンド王国と皇国への包囲網の一角を崩したのだ。
何の御咎めも無しで済ませては示しがつかない。国際秩序が乱れる。

しかし、マルロー王国本国はそれどころではなかった。
ザラ公国の“裏切り”に構っている暇はないというくらいに。

16303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/08(水) 06:10:50 ID:54bd7AQo0
投下終了です。

ノイリート要塞陥落を日本で例えると、敵が南西から攻めてきて、九州南部や四国を防衛線にしていたら、いきなり佐渡が占領されて
このままでは新潟から関越道で東京まで一直線じゃないか、新潟からなら空中給油なしでも戦闘機の航続距離も足りるし、みたいな感じです。

ちなみに、距離とか角度とか相当あやふやですが、この方面の簡易地図はvol.24の>777にあります。
厳密な意味での領土だけでなく、およそその勢力圏にある地域も含まれます。
現実で言えば、リヒテンシュタインをスイス領としているような感じです。


>>11

契約したのに全然働かない、とかではありませんから。
ギルド独自ルールはあっても、その範囲内で真面目に働くのがギルドです。
だからこそ勅許状があるし、安易に潰せない組織になってるのですが。

粛清という程の荒療治ではないと思いますが、リンド王国軍が壊滅したので、それの再編に傭兵ギルドを突っ込んで、合併させて解消。
という案をリンド王国が画策し、皇国も密かに支持しています。

やり方が不味いと王国軍の連隊なのに実質は傭兵隊のようになりかねないので、あくまで主導権は
王国軍側としたいけれど、兵員不足で困っているのは王国軍側だから、傭兵ギルドに強気に出られず難しい。
そして仮にある傭兵隊を第777連隊として既存の第66連隊と合併させると、「第66=第777軽歩兵連隊」みたいのが大量に生まれる予感。
連隊旗(傭兵隊旗)も既存のままか新しくするか、デザインで揉めそう。
傭兵ギルドは異世界版PMCとして存続の道を歩めるか!?


>>12

昭和10年代に40代くらいの年齢の方々は、生まれた時には明治時代で、江戸時代の風俗とか各地にまだ残ってはいるものの、
基本的には明治以降の教育を受けて明治以降の制度の中で暮らしてきた人達ですから、実感としては分からないでしょうね。
それより若ければ明治末とか大正生まれも居るので、幕末から明治初期はもう祖父か曽祖父世代の出来事です。

皇露(日露)戦争経験者くらいが現役の限界で、西南戦争経験者なんてもう80〜90代ですよ。
しかも明治維新のやり方を参考にしても上手く行くかどうか……明治維新自体が近代史の奇跡みたいなものですから。


>>13

傭兵隊長とかは貴族や騎士、平民富裕層の二男や三男だったりするので、何か別の職を斡旋してやらないと路頭に迷います。
長男に全てを相続させる為、相続権放棄に同意する代わりに手切れ金として幾らか纏まった金を貰い、それを元手に傭兵業やる、とかですね。
商人やる人もいれば、学がある人なら医師とか学者になる人もいるでしょうし、傭兵ではなく王国軍の士官になる人も居ます。
勿論、そういう家系の女性も傭兵として居るでしょう。ファンタジーだから!
結婚相手が嫌な奴で私は自由に生きるんだと、持参金持ち逃げしてしれっと傭兵隊長してる元貴族令嬢の女戦士とか。

下っ端傭兵は、皇国が港湾建設事業、鉄道建設事業の人手として雇うとかで一時的には
失業者対策になるかも知れませんが、日雇い仕事ですし、皇国基準の作業ができるかですね。
杭一本打つだけでも「もっと丁寧にやれー馬鹿者ー!」とか、そういう職場に耐えられるか。
元傭兵「傭兵として鞭で打たれてた方がまだマシだった。なんだこのブラックな職場」

17303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/11(土) 18:42:49 ID:54bd7AQo0
いつも雑談やまとめ等の応援ありがとうございます。
本編の続き、投下します。

18303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/11(土) 18:44:28 ID:54bd7AQo0
東大陸北方、極北洋のシテーン湾に面するセソー大公国。

セソー大公家は、正式な王家ではないが、王家に准ずる毛並みの良さを誇る。
何せ、リンド王国の王子と、マルロー王国の王女の婚姻によって築かれ、発展した国だ。
言わばリンド王国とマルロー王国の共同の分家であり、“王家ではない王族”である。
『公爵』ならぬ『大公爵』であるのも、理由無き事ではない。
継承順位は低くとも、両王国の国王となり得る血筋。
仮にリンド王国やマルロー王国の王家の血筋が途絶えても、
セソー大公国が“予備”を確保している限り、正統な王家は続くのだ。

東大陸の北西をリンド王国、北東をマルロー王国で、北部中央を
セソー大公国が治める事で、この地域も大分平和になった。
人口も優に300万を超え“准列強国”と見做される北の大国である。
人口だけで見れば、大内洋のオレス王国やリロ王国に匹敵する。
経済力でも、十分に周辺諸国の中心的存在である。
リンド王国とマルロー王国の間にあった広大な“辺境地域”を
“文明開化”した国が、他ならぬセソー大公国なのだ。


セソー大公国領、ノイリート島。
シテーン湾内の大陸から北へ120km程に位置する皇国の佐渡ほどの大きさの島だが、この高緯度にあっても
一年を通じて凍結しないために重要な軍港が建設され、合わせて要塞化された島は軍艦島とも呼ばれる。

ノイリート島の飛竜基地には常時20騎以上の飛竜が駐留しており、
最大級の航空爆弾である10バルツ爆弾以上の12バルツ爆弾といった
特殊兵器も極少数だが配備されている程、軍備が整っている。

対空砲、対艦砲、野戦砲共に最新鋭の砲が配備され、この島を攻略するには
列強国でも陸海空合わせて数万の大軍が必要になるだろうと言われている。

今、その強大な守備力を誇る要塞を必要とする敵はリンド王国、そしてその背後にある皇国だ。
セソー大公国は大陸北部方面の二大国であるマルロー王国、リンド王国の間の
緩衝地帯のような地勢であり、両王国に対して一定の政治的距離を保って来たが、
皇国進駐という事態に旗色を鮮明にし、マルロー王国側としてリンド王国を牽制しだした。

前リンド国王の采配が不味かったという分を差し引いても、少なくとも数的には
東大陸で最も強大だったリンド王国軍すら半年も経たずに消滅させてしまった
皇国軍を擁する皇国の勢力と、マルロー王国は直接国境を接したくない。
特にリンド王国、マルロー王国とセソー大公国が面する
シテーン湾が皇国の勢力下に入るのは面白くないのだ。
大内洋から極北洋が、全て皇国の海になってしまう。

セソー大公国としても、先行き不透明な段階でリンド王国
のように簡単に皇国勢力に下るという選択肢は無い。

異界から現れた未知の勢力を相手に、あっという間に膝を屈した
リンド王国を前に、両国とも過剰防衛というか恐怖心が先行していた。
皇国は狡猾で貪欲だから、いずれ自分達も……という恐怖心だ。

19303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/11(土) 18:45:02 ID:54bd7AQo0
要塞に設置されている大型対艦砲の射程は、実用的な命中率が見込める距離であれば1000m。
限界まで装薬を使って、とにかく砲弾が飛ぶ距離であれば3倍以上の3500〜4000mといった所だ。
逆に、海側からは臼砲艦のような特殊艦を使わない限り、高所の要塞に有効な打撃を与える事は難しい。
戦列艦の舷側砲では、仰角や射程距離の問題で要塞の主要部分に砲弾を飛ばすことすら難しいからである。
臼砲艦や揚陸艦が近づこうとしても、要塞砲や防衛艦隊に阻まれて要塞自体に攻撃を加える事は至難である。

シテーン湾に面するリンド王国の港町セルシーは、軍港としての機能は限定的であるものの、
フリゲート3隻を主力にコルベットやスループ等の小型艦艇が十数隻、母港として投錨している。
この艦隊は近海の哨戒や海賊対策、海難救助を主任務とする物で、ノイリート島を攻略するなど考えられていない。
軍事上の要請でノイリート島の攻略が必要となれば、大内洋に展開している主力艦隊を持ってくる手筈だったのだ。
であるから、それだけでは陸兵を詰め込んだ所で1000人程の揚陸が限度だろう。
その他の民間船や漁船を徴発しても、倍の2000人を運べれば上出来。
さらに、近隣に有力な飛竜基地や飛竜陣地は存在しないから、
ノイリート要塞は何も恐れる必要はない……筈だった。

しかし事態は急展開。
セルシー港に展開した皇国海軍の水上機と飛行艇が、ノイリート島の航空偵察を始めたのだ。
迎撃に飛び立った飛竜は、追い付く事は愚かその高度に達することすら出来ない。
遂に、恐れていた事が現実になったか……。ノイリート伯爵は今後を考える。

ノイリート伯爵は島の行政長官であると共に、要塞司令官でもある純然たる武家貴族だ。

皇国軍に偵察されるという事は、陸兵による攻略軍を送ってくる前触れである公算が高い。
今の所は、上から眺められているだけで物的損害は無いが、もしあれが爆弾を抱えて来たら?
特に大型の方(飛行艇)の巨大さは地上から眺めても解るほどだから、さぞ大量の爆弾を搭載可能なのだろう。

それに物的損害は無くても、上空から見下ろされて何も抵抗出来ないというのは、実質的に軍事的な損失だ。
ノイリート島の軍事的な価値は、北方諸国の上流階級であれば誰でも知っているから、
リンド王国を手にした皇国軍が狙ってくる事は十分に考えられる。
むしろ、皇国軍が何の興味も示さなかったら逆に不自然だ。

噂に聞く大規模空襲と砲撃を受ければ、容易に陸兵の上陸を許し、ノイリート島は皇国軍の手に落ちるだろう。

ノイリート軍港には、セソー大公国海軍の有力な戦列艦11隻のうち4隻が停泊している。
マルロー王国海軍とセソー大公国海軍が共同し、全力を以てセルシーを
攻めれば、セルシーを守備するリンド王国軍を討ち破る事は可能だろう。
リンド王国軍は、戦力の主力を南向きに配備してきたから、最北の
この地域は陸軍も海軍も空軍も、それ程有力な部隊が存在しない。
マルロー王国軍が大挙上陸すれば、守備軍の少ないセルシーは1週間も粘れまい。

しかし、セルシー攻撃が失敗して、艦隊が壊滅したら?
ノイリート島だけでなく、セソー大公国本土も危ないだろう。
セソー大公国軍は、最大限に動員しても10万の兵が精々。うち陸軍は7万程度。
それだけでは、恐らく皇国陸軍の圧倒的な戦力を押し止められない。

セソー大公国海軍の戦列艦は、総旗艦たる108門艦デリセリア号以下、90門艦が2隻、74門艦が8隻。
飛竜母艦は保有しないが、2層48門の重フリゲートを1隻と、24門から36門のフリゲートを25隻、
等級外も多く保有しており、極北洋の制海権はセソー大公国にあると言って過言ではない。

しかし、伝え聞く所に拠る皇国軍艦の射程距離は、要塞砲の倍以上。
炸裂弾を使っているため、破壊力も単純な焼玉弾の比ではない。
その炸裂弾も、リンド王国製の炸裂弾の比ではない破壊力。
そして海は繋がっているから、そのような軍艦が大内洋から極北洋へ来ないとも限らない。
今は、攻略軍の準備としてシテーン湾の調査をしている段階なのだろう。

調査が終わり、攻略軍の編成が成れば、ノイリート島は皇国の海空戦力で
要塞の防衛力をズタズタにされた後、陸兵が悠々と上陸して来るのだ。

セルシー攻略を事実上フュリス公国に任せる形として黙認しているのは、
皇国からの反撃を分散する“リスクシェアリング”の意味からである。
マルロー王国の盾として、皇国軍の火力を一手に引き受ける役回りは御免被る。
そういう前提で大陸北方諸国同盟は動いていたのだが……。

20303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/11(土) 18:46:41 ID:54bd7AQo0
今日も、皇国軍の大型飛行機がノイリート島上空にやって来た。
また“定期便”か……。
迎撃用飛竜と対空砲の準備はさせても、実際に飛ばす事はしない。
どうせやっても無駄だから、それで毎回飛竜を消耗させる事もないだろう。

だが、今日は様子が違った。
飛行機から、何かがばら撒かれたのだ。
一つは2バルツ爆弾。もう一つは紙吹雪。
特に大量の紙吹雪は島全体に降り注いだ。

束ねられた2バルツ爆弾は地表よりも上空で炸裂するように着火して投下された。
今回は警告であり、次は本格攻撃だという内容の紙吹雪と共に。

ノイリート要塞や飛竜基地にも落ちて来た紙吹雪はつまり“伝単”だ。
部下に手渡されたビラを読んだノイリート伯爵は、血相を変えた。
ビラの内容は、皇国に対するノイリート島の無血開城。
平たく言えば降伏を促す文書で、実質的な“降伏勧告”だ。
まだ直接、矛を交えていない段階で、降伏して島を明け渡せとは……。

シテーン湾に展開するリンド王国軍の海空戦力と、マルロー王国側の北方
諸国同盟軍の海空戦力を比較すれば、リンド側が圧倒的に不利なのは誰でも解る。
だが、リンド側に存在する皇国軍という因子によって、この戦力比は容易に覆るだろう。

何せ皇国軍のある所、制空権は完全に皇国軍のものだ。
たった1機の偵察機すら、飛竜では阻止出来ない訳だから、逆に言えば皇国軍は
たった1機の偵察機を展開するだけで、敵軍に相当な不利を強いる事が可能なのだ。

降伏をする場合、3日以内に要塞司令部に“白旗”を揚げ、1週間以内に全将兵の武装解除を恙無く行うべしと書かれてある。
3日経っても白旗が掲げられない場合、ノイリート島に戦禍が及ぶとも。
期限付きの降伏勧告……。

海軍や空軍の偵察によると、確かにセルシー周辺では皇国軍やリンド王国軍の動きが活発なようだ。
マルロー王国軍とセソー大公国軍が中心となってシテーン湾の哨戒とセルシー港周辺への偵察が
行われているが、あまり近づくと皇国軍の設置した沿岸砲(76.2mm高射砲の転用)で攻撃されるので、
遠目から望遠鏡で観察するしか無いが、皇国製と思しき超大型船が停泊しているのは確認された。
あれ程の超大型船なら、1隻で1個旅団を運べると言われても信じられるくらいだ。
猛爆撃の隙に、陸兵を満載して攻めて来られたら、要塞はどうなるだろう?

ノイリート島に駐留する軍人と軍属、領民を全て合わせれば島民は3万人近い。
その大勢の人々の命を、司令官として領主としてどう扱うか?
戦うとすれば、非戦闘員を本土に避難させる事から始めねばならない。
彼らの命を守るだけでなく、要塞の“食い扶持”を減らすためにも必要だ。
武器弾薬、食糧や水も、1日分でも多く確保する必要もあろう。

だが、それでノイリート島が持ち堪えても、援軍が来なければ結局は“白旗”を掲げる事になる。
大陸最強だったリンド王国軍を、鎧袖一触で“滅ぼした”皇国軍に
対抗可能な“有力な援軍”の当てなど、同盟軍にあるのだろうか?

ノイリート伯爵の気持ちが揺らいでいるのを察した要塞司令官は言う。
「閣下、これは単なる脅しでしょう。臆する事はありません」
「単なる脅しではなく、本当に爆弾を落とされ兵を上陸されたら、貴公が責任を取るか?
 皇国軍に“我々の常識”は通用しないという事は、リンド王国が証明したのだぞ」
「それは――」
「皇国軍にとって、大陸から最短で100マシル。リンド領から300マシルという距離も、
 “飛竜”の航続圏内である事は貴公も重々承知だろう。制空権がどちらにあるのか」
「しかし本土の大公殿下の許可無く、島が独自に降伏となれば……」
「梯子を外す事になろうな。殿下だけでなく、マルロー国王陛下に対しても」
「閣下、この島が皇国軍に利用されれば、それこそ北方諸国同盟軍が瓦解します!」
……瓦解しても良いのではないか?
ノイリート伯爵は、マルロー国王やセソー大公が
今度の戦争を仕掛けたがっていたのを理解出来なかった。

実質的にリンド王国が皇国に取り込まれてしまっている。
という現実を認めたくないのは解るが、ここまで勝つ見込みの
薄い戦争を自ら仕掛けた大国というのは、史上初ではないか?

リンド王国の場合、皇国の事をよく知らなかったから、相手はユラ神国のみで、だったら勝てる。
という考えに至ったのは自然な事で、自分がリンド王だとしても、そう判断していただろう。
まあ、前国王の采配が不味く、引き際を誤ったという大失点はあるが……。

21303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/11(土) 18:48:57 ID:54bd7AQo0
だが、今や皇国軍の人知を超えた精強さは誰もが知る所だ。
それを過剰に恐れるあまり、皇国が準備万端整えて、
大陸東方に食指を伸ばしてくる前に一発お見舞いしてやれ!
というだけで事を始めてしまったのは、少し思慮が足りないのではないか。

リンド王国軍は壊滅したから、相手がリンド王国“だけ”なので
あれば、マルロー王国やセソー大公国側に十分な勝ち目がある。
だが、その強力なリンド王国軍を壊滅させた張本人を相手に、
マルロー王やセソー大公は勝算を持っているのだろうか?

開戦前と開戦直後に行われた軍議では、納得のいくような展望は得られなかった。
何とかなるだろう、何とかなって欲しい、何とかなるに違いない、何とかするのだ。

リンド王国のように、死に体になるまで奮戦して、莫大な賠償金と
属国同然の立場を受け入れざるを得なくなるくらいなら、むしろ先手を
打ってこちらから皇国に和親通商交渉を持ち掛けても良かっただろうに。

しかし今や、その可能性は潰えた。
戦争を始めてしまった以上、どこかで終止符を打たねばならない。
それも、なるべく良い方向で終わらせねばならない。

リンド王国とマルロー王国が皇国の下に合同し、『皇国主導による世界平和』が
達成されれば、それはそれで人類の歴史的偉業になるかもしれない。
セソー大公国だって、東西の両王国の緩衝材として常に距離を測りつつ微妙な政治を行う必要が無くなる。
勿論、その正反対になる可能性も否定は出来ないが。

「皇国軍の航空偵察の頻度が高くなっている事は報告済みだろう。
 マルロー国王陛下やセソー大公殿下からの援軍はどうなっている?」
「特に何の連絡も、援軍もありません」
「ここが陥落すればシテーン湾沿岸が全体的に危うい事を理解されているのか……」
「こうなったら島民を徴兵して武装させますか?」
「いや。その必要は無い」

小銃は予備を含めても島民分無いが、普段使っている農機具を武器にしたり、
木の棒にナイフを括り付けたりすれば即席の武器になる。最悪ただの棒でもいい。
だがノイリート伯爵はその提案を却下した。

セソー大公家は、元を辿ればリンド王家であり、マルロー王家。
過去、シテーン湾とノイリート島の覇権を巡り、リンド王国とマルロー王国の間で
血で血を洗う戦争が幾度もあったが、両大国もさすがに疲れ、無為な戦を止めるために
この海の平和の証しとして王子と王女の婚姻が為され、セソー大公国が建国されたのだ。
セソー大公国は、シテーン湾の平和と安定を両王国から“委託”された訳だ。
再び、この島と海域に血を吸わせるのは、ノイリート伯爵の本意ではない。

この期に及んで局外中立が不可能なのはノイリート伯爵だって良く解っている。
セソー大公国は、正に父と母の夫婦喧嘩に巻き込まれる無力な子供の立場なのだ。

むしろ、ここは心を鬼にして、皇国軍の進駐を認め、ノイリート要塞に皇国の軍旗が
はためくという事実を内外に知らしめれば、無用な争いを早期に終結可能なのではないか?
夫婦喧嘩を止めさせるのに、子供が泣きながら駄々を捏ねるしか無いのならば……。

「皇国軍への降伏の準備を。白旗と、将兵の武装解除を恙無くな」
「閣下……!」
「裏切り者の汚名なら受ける。叛逆の処罰も受ける。それで良いか?」
「はい……それが、閣下の熟慮の結果なのであれば……」

シテーン湾の最重要拠点は、戦わずして白旗を掲げる事となった。

22303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/11(土) 18:49:28 ID:54bd7AQo0
投下終了です。
久々に纏まった量の本編が投下できました。

23303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/11(土) 19:02:03 ID:54bd7AQo0
投下して早々ですが、訂正です。

>>19
誤「2層48門の重フリゲート」
正「2層艦に迫る48門の重フリゲート」

2層なのは74門だろぉ?

24名無し三等陸士@F世界:2017/02/11(土) 22:51:28 ID:I8vK1fvg0
さ、39話?

25名無し三等陸士@F世界:2017/02/11(土) 23:39:37 ID:XUtx.FGw0
どう見ても既出の39話そのまんまです本当に(ry

26303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/12(日) 00:34:20 ID:54bd7AQo0
>>24-25

すみませんすみません。
以前に投稿していたものですね。
自分で投下したの忘れてるって恥ずかしすぎる……。

新規分と以前の分の書き直しを並行してやっていた結果がこれだよ!
これの、続きを投下しないといけないんだ!

仰るとおり一年と少し前に投下したまとめの方の39話なのですが、書き直してるから微妙に違うんですよね。
大陸と島の距離とか、どういう扱いにすればいいのか困った……。
今のところは、誤爆という事にさせて下さい。

という訳で、本当の続きを投下します。
こちらは大丈夫なはず!

27303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/12(日) 00:35:10 ID:54bd7AQo0
リンド王国の都市セルシーには、皇国海軍の水上戦闘機部隊が進出していた。

艦上機の零戦を基に水上機として開発された二式水上戦闘機。
水上機母艦や潜水母艦の上空直掩用と離島防衛用に150機程が生産されたのだが、
正直、これを本当に主戦力として使う場面が来ると思っていた関係者は少ない。
“本来の想定”では、皇国海軍は陸軍や海軍の基地航空隊と空母航空隊の傘の下で
活動する事を前提とし、水上戦闘機が必要になる程に逼迫した戦況は考え辛かったからだ。

皇国近海で、基地も空母も当てに出来ない状況って何? という事で、
水上戦闘機は技術的冒険とか、物の試しに造ってみた感も大きかった。

セルシー方面も、本音を言えば陸軍や海軍の陸上機を運用可能な飛行場を建設したい。
だが、そんな各地にポンポン飛行場を整備するような設営部隊も資材も時間も無い。
そうすると次に挙がる候補は当然空母艦隊だが、これも台所事情的に苦しい。
リンド王国海軍との戦いで、一航艦が全力出撃したというだけでヘトヘトなのだ。
一航艦は現在、戦隊や中隊ごとに搭載機を新式の彗星や天山に更新中であり、
その意味でも、今すぐ急なお呼びがかかっても遠征は無理であった。

勿論、これが対ソ連における“国運を賭けた全面戦争”となれば話は別だが、
そういう訳ではないから、出せるとしたら軽空母を中心とした艦隊になる。
だが1隻あたり30機として、4隻出してやっと120機程度では少し力不足ではないか?
軽空母は小型な分、飛行機運用のための燃料や弾薬もそう多く積めないので、長く留まって戦闘するには
それだけ支援のための補給艦を手配してやる必要があり、瞬間最大風速を買うとしても効率的ではないだろう。
さらに決して数の多くない軽空母には、陸海軍の飛行機輸送や航路防衛のための護衛空母としての役目もある。
この重要任務を疎かにしてまで、打撃力だけを期待するのは国家や軍全体の運営効率を下げる事になってしまう。

そうすると、水上機と飛行艇しか無いではないか……海軍は迷ったが、
まあ以前から大内洋には水上機母艦と飛行艇部隊は進出していたから、
それで良いなら支援部隊の少しの強化で極北洋への進出は可能だ。
数的にも質的にも、陸上機や空母機には及ばないが、当該方面で戦う陸軍にとって、
10機でも友軍飛行機の傘があるのと無いのとでは、戦闘の趨勢が変わってくる。
現状、友軍航空戦力はリンド王国空軍のみだったのだから、信頼感が違う。

だが、セルシーに水上機を進出させても、燃料や弾薬は容易に補給出来ない。
大内洋に展開する水上機母艦や補給潜水艦から、輸送飛行艇が極北洋へピストン輸送する事になる。

水上機母艦搭載分と、巡洋艦から分派された分を合わせて二式水戦が9機、
零式水偵が8機、九五式水偵が8機、九七式飛行艇が3機、九一式飛行艇が5機。
一応、数的には33機で、零式水偵と二種の飛行艇は爆撃能力も期待出来る。
二式水戦は勿論だが、九五式水偵も飛竜相手なら空戦も可能だろう。
つまり空戦用途には二式水戦と九五式水偵を。
偵察と爆撃用途には零式水偵と飛行艇を主に使う事になる。

頭数としては最低限揃い、支援部隊と共に燃料や弾薬も最低限揃った。
しかし、あくまで“最低限”だ。
毎日のように全力出撃など到底不可能。
爆弾も、250kg爆弾は50発程度しかなく、500kg爆弾はたったの10発しか存在しない。
30kg爆弾や60kg爆弾を含めた全体でも30t分くらいしか無い。爆弾が存在しないのと同じだ。
出し惜しみして10日くらいならこれでも行けるが、以降は爆撃任務が不可能になる。
毎日補給される爆弾は500kg分。多くて1t分が精々だから、持久戦になっては不利。

爆弾無しでは、地上を銃撃するくらいしか航空支援にならない。
やるなら3、4日で使い切る覚悟で全力出撃して、後は陸軍の奮闘に期待するか。

28303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/12(日) 00:36:18 ID:54bd7AQo0
『駄目で元々、ノイリート島に降伏勧告をしてみて出方を伺ってみても良いのではないか?』

そんな時、何となくその場の流れで、そういう意見が出てきたのだ。
虫が良すぎるとは誰もが思ったが、威圧してみるだけならタダだ。
駄目なら爆撃をして、再度降伏勧告。それから海兵隊投入でもいい。
ここは押さえておきたい要衝、殴り込むなら滑空機を使う手もある。

だが、現実は意外と単純なのかも知れない。
「本当に降伏してくるとは……」
「こちらの準備がまだなのですが、ぎりぎり1週間粘って欲しかったですな」
降伏したとなれば、軍を派遣して制圧し、軍政を敷かねばならない。
皇国軍は“セルシー防衛”のために海兵隊1個中隊と陸軍の1個大隊を準備していたが、
これを“ノイリート島防衛”のために転用する必要が出てきた。

「海兵隊は全部出しましょう。あとは陸軍さんですが……1個中隊が限度でしょうね」
「合わせても400人にすらならないが……向こうは陸兵だけで10倍以上だぞ」
「リンド海軍に応援してもらいますか?」
「要塞を相手に、28門フリゲートで何か有力な支援が期待出来るか?」
「ではリンド軍の海兵隊にも……本来、これは彼等の問題ですから」
「数十人増えたところで何も変わらん。むしろ“裏切り者のリンド兵”に対して
 悪感情を持たれたらどうする。悪者になるなら、我が将兵だけで十分だ」

陸海軍の参謀は、降伏を確認したら捕虜を取らずに全員をセソー大公国の本土に送還し、
無人となったノイリート島の食料と武器弾薬のみを戦利品として調達すべしと進言した。
またこの地で、数千の敵将兵を養う事になれば負担で身動きが取れなくなるから、
セソー大公国の軍艦や商船に乗って帰ってもらうのが一番良いという事だ。

軍艦はともかく、島に駐留する飛竜部隊に関しては、本土に帰らせるのは危険が増えるという判断は当然あった。
だが、決して広くない島に重爆撃機が発着可能な飛行場を建設して運用する事になれば、彼等は邪魔になる。
戦利品とした上で食肉として利用するという案は却下だ。
飛竜の味は良くない上に、何より“神聖な”飛竜を食用に解体
などしたら、列強各国への示しが付かない。蛮族扱いへ逆戻りだ。

遺憾だが、部隊維持にかなりの場所と物資を必要とする飛竜達は帰って貰い、
空いた土地を飛行機部隊の基地とすべく工兵隊を派遣する事となった。

29303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/12(日) 00:36:58 ID:54bd7AQo0
皇国軍の離着水可能(!)な飛行機械によりノイリート伯爵に届けられた手紙の内容は、俄には信じ難かった。
『皇国軍の将兵が降伏を確認しに上陸するから、武装解除した将兵は全員本土へ帰るように』
伯爵と一部の将兵は、事後処理や皇国軍将兵の案内のために居残りを
命じられたが、他の大多数の将兵は捕虜に取らない上、最終的には
伯爵と主要な随員以外、全員の本土帰還が望ましいというのだ。
飛竜兵だけでなく、飛竜自体の本土送還も許可されている。
降伏した敵軍の飛竜を戦利品としないとは、想定外だった。

処遇は島の地下牢ではなく、本土の大公や軍司令官に委ねられる事になる訳だ。
伯爵と主要な人員だけが島に残されるのは、本土に帰れば重要人物である彼が
真っ先に処刑されるのが目に見えているから、その予防措置という事らしい。
敵国である皇国が、ノイリート伯爵の命を保障する側になろうとは。

「一杯食わされたな。皇国に」
「は?」
「皇国は我々の処遇を本土の殿下や将軍に丸投げし、土地と備蓄物資だけは戦利品として押収出来る。
 本国に“裏切り者”に払う身代金は無いだろうから、皇国も我々を捕縛して交渉材料には出来ない。
 だが捕虜を殺す事も売却する事もせず、自由の身にするのだから我々も文句を言える立場に無い」
「皇国の丸儲けですか……では、降伏の話は無しにしますか?」
「馬鹿を言うな。一度結んだ約束を違えるような騎士道に反する行いをするなど、名誉の失墜だ。
 それにな。皇国軍が上陸して来た時、それを背後から襲ってみろ。どんな報復が行われるか。
 そんな事になれば、皇国軍は苛烈な報復をする正当な権利がある事になるのだぞ?」
「はっ……失言でした。部隊の統制を厳にし、恙無く降伏と送還が行われるよう。小官も全力を尽くします」
「うむ。大公殿下にも部下達に責任は無いという事は理解して頂かねばならん。
 彼等は本土に帰った後は、そちらの防衛軍として働いて貰わねばならないからな」
「はい」

皇国軍からは陸軍の歩兵中佐と海兵少佐がノイリート島に上陸し、ノイリート要塞の降伏と武装解除の確認を行った。
偵察機は飛ばしていたと言え、最前線からは離れていたから、そこまでピリピリした雰囲気ではなかったのが救いか。
リンド王国との戦争の話が伝わっているせいか、末端の下級将校や兵士ほど抵抗の素振りは無い。
むしろ上級将校の方が駄々を捏ねて抵抗しそうであったが、ノイリート伯爵が
皇国軍の指揮官に剣を渡し、改めて降伏の意思を伝えると、それも収まった。
数時間に渡って上空を飛行機が飛び回っている効果もあるだろう。

多くの将兵達は、ノイリート島に停泊中であった軍艦に分乗して本土へ帰っていく。
彼らは軍服と最低限の荷物を除いて手ぶらだ。
皇国軍の命令によって、武器も食料も島に置いていく事になる。

ノイリート要塞の物資類は食料から爆弾まで全て皇国軍が接収した。
ここで大規模な物資類を手に入れた皇国軍は、占領した新たな島を拠点に北方諸国同盟への圧力を強め、
ノイリート島を奪還されないよう守備を固めると同時に攻勢計画を前倒ししつつ検討に入った。

マルロー国王も、ノイリート伯爵と同じように聞き分けが良いなら春を待たずにすぐに終わるだろう。
しかしそうでなければ、春を見据えての計画だ。

本国では空母が、東大陸では大内洋に停泊中の旧式戦艦にもお呼びがかかった。
泥縄ではあるものの、せっかく得た機会を逃すわけにはいかないのだ。

30303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/12(日) 00:38:08 ID:54bd7AQo0
短いですが投下終了です。
今度こそ、下手打ってないですよね?

31名無し三等陸士@F世界:2017/02/12(日) 13:51:23 ID:7On4xicw0
いつも有り難う、拝読しました

32名無し三等陸士@F世界:2017/02/14(火) 12:16:17 ID:I97TxQ6c0
一杯食わされたって言ってるけどノイリート伯爵にとって理想的な状況って何だったのだろう?

33303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/14(火) 22:52:35 ID:54bd7AQo0
近世兵器の資料を見ていて、19世紀の仏12cm砲をなんで英語では12ポンド砲と呼ぶのか理解に苦しみました。
12cm砲の砲弾重量は9ポンドじゃねーか! 素直に12cm砲のままか4・3/4インチ砲のように訳せば分かりやすいだろうに、何か理由があったのでしょうか。


>>31

こちらこそ、ありがとうございます。


>>32

部下の将兵と島民の命は保障され、セソー大公にプレッシャーを与えた訳ですから、現状はほぼ理想どおりです。

ただ部下の将兵に関しては、島の捕虜収容施設か、皇国軍が東大陸に用意している捕虜収容所に移送されると思っていたのが、本土送還となったので驚いたのです。
皇国はリンド王国戦で下級兵士も含めた大量の捕虜を集めて、捕虜返還で現金を要求しているので、きっとそうするだろうと考えていました。

実際は大量の捕虜の扱いが負担で仕方なかったので、皇国軍はリンド戦後に、当面は(大量の)捕虜は取らないという通達を出しています。
降伏勧告しておいて捕虜の面倒を見ないのは無責任といえば無責任ですから、そういう意味で一杯食わされた……という感じです。

『ハーグ陸戦条約 第二章 俘虜』
「第10条:俘虜ハ其ノ本國ノ法律カ之ヲ許ストキハ宣誓ノ後解放セラルルコトアルヘシ
 此ノ場合ニ於テハ本國政府及之ヲ捕ヘタル政府ニ對シ一身ノ名譽ヲ賭シテ其ノ誓約ヲ嚴密ニ履行スルノ義務ヲ有ス
 前項ノ場合ニ於テ俘虜ノ本國政府ハ之ニ對シ其ノ宣誓ニ違反スル勤務ヲ命シ又ハ之ニ服セムトノ申出ヲ受諾スヘカラサルモノトス」

今回の皇国軍の行為は、この条文にある宣誓解放に当たると思うのですが、大丈夫でしょうか。

セソー大公国の偉い人がノイリート要塞関係者を処罰したくても、下級将兵を罪には問えませんし、
問うたとしたら士気が下がってただでさえ孤立無援なのに自分の首を絞める事になります。

34名無し三等陸士@F世界:2017/02/15(水) 22:34:17 ID:ci0mzTRQ0
投下おつです!

35名無し三等陸士@F世界:2017/02/19(日) 19:15:06 ID:XiyVDv5E0
35:54

10:40
ttps://www.youtube.com/watch?v=WTdY7h129Mk

ttps://www.youtube.com/watch?v=8R0luOy8ce8

36名無し三等陸士@F世界:2017/02/23(木) 00:00:15 ID:w2nCsok60
>19世紀の仏12cm砲をなんで英語では12ポンド砲と
ライットシステムを使った砲の事かな?
12cmナポレオン砲も後にこの前装式旋条(ライフリング)砲に
改造されています。
ライフリングを施せば12ポンドナポレオン砲でも砲弾重量は4.1kgから
11.5kgまで増やすことが出来ます。
何となくですがこの表記での「ポンド」はヤード・ポンド法でのポンドじゃ
なくてメートル法のキログラムを表現しているのかなぁと。
日本でも四斤山砲の砲弾重量はポンド表記では無くて、メートル法の
キログラム表記になってますからね(斤はキログラムの和訳)。

37303 ◆CFYEo93rhU:2017/02/25(土) 23:15:22 ID:54bd7AQo0
>>36

そうです「12ポンドナポレオン砲」と呼ばれるタイプの物ですが、そういう理由があったのですね。

時代は違いますが、睦月型駆逐艦の12cm砲の砲弾重量が20kgらしいので、砲口径からすれば
12cmで11.5kgの砲弾はおかしくないというか、現代の弾頭と比べるとむしろ軽いくらいですね。

球形弾だと4.1kgの砲弾重量ですが、ライフル砲で弾頭形状が変われば砲弾重量も増えますね。
この仏製大砲はアメリカの南北戦争でも(ライフリング化されたものが)使われたようですが、
12ポンド砲という言い方はどちらかというとイギリスよりアメリカでの呼称なのでしょうか。

12cm砲から約12kgの砲弾を発射していた時期があって、それが一般的になったと。
でも、約12kgを12ポンドと言うのは……現場や兵站が混乱しなかったのしょうかね。
11.5kgならまだ25ポンドと言った方が分かりやすい気がするのですが。
1ポンドと1kgだと重量は倍以上違うし、本当に12ポンド(約5.5kg)の砲弾を使う12ポンド砲もこの時代は現役でありましたよね。

OF17ポンド砲は口径3インチで本当に17ポンドの砲弾を発射する対戦車砲ですし。

あと18〜19世紀だと英ポンドと仏ポンドが微妙に違い、発祥の仏国もまだメートル法が浸透していないので、かなり混乱します。
1800年前後の時期は、メートル法を制定した当のフランスでさえメートル法に振り回されてた感があります。壮大な社会実験中というか。

ヤードポンド法だと、オンスやパイントはドリンクの量とか、グレーンは火薬の量で、現代でも使われていますが……。
現代は基本メートル法で統一されていて本当に良かったと思います。

四斤山砲の場合は「きん」と「キロ」は音が似ているし、馴染みのない「瓦」を使って四瓩山砲とするよりは分かりやすかったのかな? とか。
戦国時代や江戸時代に銃や砲の単位として使われていたのは、匁や貫が多かったですよね。
1貫が約1.3ポンドだから、換算も直感的に分かりやすい……のか?


あと、これはおそらく私の勘違い(記憶の改竄?)なのですが、英軍はWW1かWW2の頃まで、現代的なライフル砲であっても、
例えば口径3インチの大砲があったら、そこに古式の球形弾を入れたと仮定した命名を行っていたと、どこかで見た記憶があるんです。
でも口径3インチをその方法で換算すると4ポンド砲になりますし、40mm砲が2ポンド砲になる訳もないですよね……。

38名無し三等陸士@F世界:2017/03/05(日) 14:55:01 ID:w2nCsok60
>四斤山砲
この部分は元々幕府軍の洋式軍隊「伝習隊」などがフランス式を元にして
いるためもあったからかと思います。
教練を受けたのがフランス軍だったから、その装備で使われている単位も
メートル法にならったのかと。教えられている側からすれば「これがデファクト・
スタンダードですよ」と言われたからそれに合わせようという思惑もあった
のかもしれません(私個人の憶測です)。
四斤山砲に関して言えば、幕府軍や敵である薩摩軍でも盛んにコピーされ
ていましたのでメートル法で統一されていれば砲弾などにもある程度の
互換性がとれますからね。

有名な仏式伝習隊は、幕府がフランスから招致した軍事教官団
(シャノワンヌ参謀大尉以下、士官6名、下士官12名)の指導をもとに
編成された優良部隊ではありましたが、参加した藩兵の中には満足
な装備を揃えられずにいた兵も多々あったそうです。

39303 ◆CFYEo93rhU:2017/03/12(日) 11:46:37 ID:4623vdPQ0
>>38

> 四斤山砲

洋式幕府軍が教練を受けたのがフランス式だったからメートル法というのはわかるのですが、
「キログラム」に「斤」の字を当てたのは何故だろうか? というのが気になる部分です。
「両」や「貫」よりはキログラムに近いとはいえ、誤差は結構あります。

両とか匁と同じく、斤だって元々あった日本の度量衡で、本来の「斤」とキログラムの意味の「斤」では倍くらい差があるのに。
キログラムの意味の「斤」は洋式大砲(四斤山砲)に限って使われる単位だったからそんなに問題は発生しなかったというだけでしょうか。

> 仏式伝習隊

江戸時代には公式な外交ルートを持っていたのはオランダだけで、西洋的な学問も蘭学というほどオランダを優遇していたのに、
幕末から明治期になると急に英仏独米あたりが出てきて、日本の近代化は殆どこの辺りから来ていますから、オランダの影が……。
まあ19世紀後半のオランダは、欧米の中で相対的に弱体化はしていましたから、これから西洋化しようという時にわざわざ中堅レベルを目標にはしないでしょうが。
産業レベルはともかく、国土と人口(植民地を除く本国領域)だけで言えば欧米の一等国に並ぶから、オランダは参考に出来ないというところもあったでしょうし。

幕末〜明治初期にかけては、普仏戦争でプロイセンが勝ったという事でプロイセン式を参考にしてみたり、良く言えば柔軟で臨機応変、悪く言えば場当たり的で無節操ですからね。

横須賀の海軍工廠(造船所)も最初は江戸幕府がフランス技師を招いて始められたけれど、いつのまにか日本海軍はイギリス海軍の一番弟子(自称)みたいな感じになってましたし。
日清戦争の主力艦(?)たる三景艦は仏式で、この頃までは英仏どちらかに偏り過ぎないように軍艦発注してましたよね。
日本の近代化遺産や日本軍から仏式の影が急速に消えたのは、三国干渉と日英同盟の影響でしょうか。

その後も機関銃や野砲、戦車や飛行機といった個々の分野で仏式を模倣や参考にする機会はあっても、軍の骨子は陸軍=独式、海軍=英式でしたよね。

40名無し三等陸士@F世界:2017/03/12(日) 15:11:23 ID:duMIjbdY0
でも明治のお雇い教師はオランダ人が多かったわけで。

プロイセンを参考にしたのは、明らかに格上の仏に勝ったのを、途上国の日本自身に重ねたのかも。

フランスは、幕府寄りだったから明治政府からの印象が良くなったという話も。
あと、三景艦は日本の無茶な要望に何とか応えようとした奇才のが設計したけど、
要望した日本側が「これは実用的じゃない」とか言い出して、奇才を怒らせて契約途中帰国させたという流れもあったような…。
ただドッグなどの設備の充実はフランスのおかげではあったり。

フランスって対独政策の関係で伝統的に露と仲が良いから、対露に頭を悩ませる日本には微妙な部分があるし。

41名無し三等陸士@F世界:2017/03/17(金) 02:52:57 ID:w2nCsok60
>>39
>「キログラム」に「斤」の字を当てたのは何故だろうか?
これ高校時代の私も気になって、古文の先生や現代国語の先生にも聞いた
事がありまして結局詳しい由来まではわからなかったのです。
「斤」という文字は本来舶来品などに使用する場合イギリスポンド(英斤(
えいきん)を元にしたという事まではその時にわかったのですが、何故斤の
字をポンドに当てたのかという由来はわかりませんでした。
なお、「斤」は現代の常用漢字での代用字で本来の字は「听」(国字)です。

>良く言えば柔軟で臨機応変、悪く言えば場当たり的で無節操ですからね。
この時期は世界的に見ても様々な兵器や戦術、科学技術の発展上の過渡期に
あり何が最適解なのかという事までは分かっていない時代でしたので
一概に当時の日本国の選択を「場当たり的で無節操」って言っちゃって
いいものかと思う所です。
船の動力にしてもレシプロエンジン搭載だったものがほんの10年程で
蒸気タービン搭載へ移行していったりという風に列強国でも様々な変化と
試行錯誤があった時代でした。
特に当時の日本は工業力も技術も低くそして何よりカネが無いw
金はないけれど隣国の軍事的脅威には対抗しないといけませんでしたので
カネが無いなりに色々やった結果のフランス式からの変遷という部分も
あったであろうという感じではないでしょうか。
船に搭載されていたボイラー1つにしても、日清戦争ではスコッチボイラー
だったのが日露戦争ではより高温高圧に耐えられる水管ボイラーに変わって
いますし。

ただまあ、三景艦自体は「ある意味」当時あったある種の流行に形から入ろう
とした日本なりの解釈の仕方であったかもしれません。
比較的小型の軍艦に巨砲を1門か2門だけ搭載するという形式の軍艦は19世紀
後半の列強各国でも見られましたし、日清戦争に至る前の時期に起きた
征台の役の翌年に清朝が日本への対抗策としてレンデル砲艦を多数
購入したのも何しかの流行が関係していたかもしれないです(でも、さすが
にレンデル砲艦は金の無駄遣いな気がする)。

42303 ◆CFYEo93rhU:2017/03/18(土) 20:37:41 ID:4623vdPQ0
くそぅ、大悪魔様かわいいなぁ。
「悪魔的行為」なんてものを見ると、安楽椅子に座らせて食器台に縛り付けたくなる。
口にメロンパンねじ込んで異端審問したい……。


>>40

> オランダ

医療用語とか、一部の専門用語にはオランダ語の影響も残ってるようですね。
あと、もう完全に日本語化してしまった言葉にも、オランダ語あたりの影響があった……と、どこかで。
天ぷらとかビー玉とか。ポルトガル語だったかもしれません。

幕末の頃、洋式の技術だとか国のありかたといったものも、初期はオランダからの指導や影響も確かにあったようですね。
しかしそれが、明治に至り大正、昭和の頃には日本が目指すべき西洋とはほぼ米英仏独の事で、蘭?
ああそんなのも居たね。昔はお世話になったようだけど、今目標とすべき先進国はアメリカだよね。
といった感じになってませんでしたか?

オランダの軍学関係者というと、浅学なのでマウリッツくらいしか知らないのですが、幕末とは250年くらい違いますよね。
グスタフ・アドルフも、フリードリヒも、ナポレオンも、元を辿ればマウリッツの用兵術。
マウリッツの方法を自己流に改良したに過ぎない。なんて話も聞きますが。

> フランス

スエズ運河を造ったのはフランス人で、パナマ運河も途中まで同じフランス人でしたよね。
18世紀頃の戦列艦とかの木造軍艦ではイギリス製よりフランス製の方が高性能だったという話ですし、何だかんだいってフランスの実力は高いですよね。
19世紀後半、イギリスが建艦競争で他国をリードしていた既存のバカ高い蒸気式装甲艦を無価値にしてしまうのではと危惧された水雷艇を作ったのもフランスでしたね。

そういえばマスケット銃に装着する銃剣を作ったのもフランスでしたね。
ミトライユーズのような時代を先取りしすぎた兵器なんかも作ってますし、イギリスで開発された戦車を現代的な単一砲塔式にしたのもフランスでした。
WW1で激しい航空戦を経験したからでしょうが、独立空軍、戦闘機なんかもフランスは決して劣ってない筈。

現代では結果論的に愚かだったと批判される事があるマジノ線も、ドイツに対する国防の考え方としては必ずしも間違ってない。
実際にドイツ軍の主力部隊はマジノ線を避けて攻めてきた訳で、それに上手く対応して防御が成立していれば、ドイツ軍は
初期の攻撃の勢いを削がれて半年もしないうちに膠着状態になって、そうしたらイタリア参戦も無かったかもしれないし、
ドイツはソ連に攻め込む余裕なんて無くなっただろうし、1941年頃には英仏の反撃を受けていたかもしれない……?
フランスが降伏しなければ日本の仏印進駐も無かっただろうし、ドイツの勝ち馬に乗るという前提の博打も打てなかったかもしれない?

ファンタジー系の創作資料などだと、中世のフランスの騎士がイングランドのロングボウ兵に負ける話が良く出てきませんか?
そりゃあ、壕と杭を巡らした陣地に正面から突撃したら誰だって負けるよって思うのですが。
フランスの騎士がロングボウに負けたのが、武田勝頼が無能みたいに語られるのと似ていて、ちょっと可哀想。

43303 ◆CFYEo93rhU:2017/03/18(土) 20:38:15 ID:4623vdPQ0
> ドイツ

日本だと逆にドイツが過大評価されてる感じがある気がします。
WW1で負け、WW2で負け分割統治されながらも、再統一し、今では戦勝国のフランスを差し置いてEUのリーダー格やってるドイツは確かに凄いですけど。

でもドイツが本当に凄かった、強かったのはビスマルクとモルトケが政治と軍事で舵取りしてた頃だけなんじゃないかという疑問も。
神聖ローマ帝国(笑)時代をドイツの帝国に含めるなら帝国の時代は長いですが、事実上のドイツ帝国は大日本帝国の歴史より短いですし。

> イギリス

薩摩藩が親英で、かつイギリスは反露的な大国だったから、日本としては長く付き合うならイギリスが都合良かったのでしょうね。
といってもイギリスはイギリスで、対仏や対独に関しては親露的ですから、欧州情勢で互いに牽制し合ってるのをどう生かすか、難しかったんだろうなぁ。とは。
あとは欧州全体に距離を取っていたアメリカになりますか。こう見ると、米英を同時に敵とした頃の日本がいかに外交的に八方塞だったか……。

ネタで英国面という言葉があるくらい珍妙な兵器を作る事で一部有名ですが、それと同じくらい手堅く保守的な兵器も好むんですよね。
それに戦車だって最初は実用性に疑問符が付く珍妙な新兵器だった訳ですし、想像力のある限り、とりあえず作ってみてから考える
というある種の無鉄砲さが、世界中に船団を送って植民地支配していた国のフロンティアスピリッツの源泉なのかもしれません。

典型的な海洋国家だけど陸軍が意外と強いというのも、海軍だけ強くても陸軍が強くないと駄目だという実証のようですね。

ファンタジー系の話だと、イングランドのロングボウは中世最強! みたいな向きもありますが、
だったらなんでイングランドはスコットランドとの戦争でマスケット銃兵使ってるんですかね。

> アメリカ

南北戦争で内戦に専念していた時期を除けば、19世紀後半から20世紀にかけて急速に台頭してきた新進気鋭の新たな大国ですね。
幕府が攘夷ではなく開国を選択したきっかけの一つはペリーの黒船ですし。

44303 ◆CFYEo93rhU:2017/03/18(土) 20:38:57 ID:4623vdPQ0
>>41

> 斤(キログラム)

由来について、ありがとうございます。

現代で斤を使う場面は食パンくらいだと思いますが、そこでの単位は英斤ですね。
といっても1斤=1ポンドではなく、幅があるようですが。

英斤=ポンド(約450g)とすれば、元々の日本の単位だった斤(約600g)と近いですね。
「ポンド」をそのまま音訳して「巴吽弩」みたいにするよりかは、「英斤」の方が質量単位だと分かりやすいという利点はあるかもです。

既に英斤の用法があったので、英斤に対して仏斤=キログラムという感じになったのかな、などと想像しますが、そう単純な話でも無さそうですね。

> 場当たり的で無節操

「高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処する」というと、馬鹿にする言葉に
なってしまいますが、明治時代の日本はまさにこれをやって成功した方ですよね。

そもそも、近代化の目標とした欧米諸国ですら、壮大に間違う事もあるという実例が軍艦の衝角装備とか……。
後装式ライフル銃を導入したのにそれまでの戦列歩兵のやり方で兵士がバタバタ死んでいったとか……。
文化も宗教も全く異なり、地理的にも離れた新興国である日本が最適解を選べたとしたら、未来からの転生者を疑いますね。

それまでの戦列艦のような砲門式から砲塔式にしてみたけれど、非装甲の露天砲塔だったり。
砲塔を二段重ねにして、主砲塔の上に副砲塔を重ねるとか、やってましたよね。

19世紀から20世紀になっても潜水艦に巨砲載せたり、大型空母も初期は巡洋艦並みの重武装してたり、
新兵器とか新技術の過渡期には後の時代から見ると何でこんな変な物造ったのかというものが出てきますね。
20世紀半ばになっても、ミサイルに夢見すぎて大砲全廃した巡洋艦とか、機関砲全廃した戦闘機とか……。

> 三景艦

まあ、定遠、鎮遠も主砲配置がアレな、いかにも19世紀の発展途上の戦艦という(左右非対称の梯型配置、
結構好きなんですが)感じなので、特に日本の発注だけがおかしかったとか、そういう事でないのは承知です。
三景艦の主砲が殆ど何の役にも立たなかったというのも、結果論ですしね。
むしろ「これだけ強力な主砲があるんだし、少しでも軽くするために速射砲削ろう」とならなくて良かったです。

近代的な装甲艦グロワールを造ったのはフランスですが、確か19世紀末頃の一時期には、戦艦とか金の無駄遣い、
魚雷もある事だし海軍軍備の主軸は小型艦でいい。みたいな思想? が根強かったという話をどこかで見たんですよね。

比較的小さな船体に巨砲という意味では、海防戦艦とかモニター艦が近いかもしれませんが、三景艦はそれらとも違いますよね。

逆に言うと、日清戦争の僅か10年後に三笠といった外見的にも性能的にも「安定した」戦艦が出てくるので、余計に日清戦争の頃の軍艦が気になるのでしょう。
日露戦争以降の日本海軍の軍備は、巡洋艦以上の大型艦に限ればあまり突飛なものは無く、安定した、逆に言えば面白味のないものになりますから。

> 特に当時の日本は工業力も技術も低くそして何よりカネが無いw

清もロシアも日本に比べればずっと金持ちですからね!
金持ち喧嘩せずという諺があり、一面ではそのとおりだと思いますが、しかし金持ちはいまある財産を守るためだったり新たな金脈の為なら喧嘩上等というのも事実でしょう。
金持ちが、その財力を背景に本気になったらヤバイというのは、いつの時代も変わらないと思います。


貧乏な側が金持ちに対抗する方法。キングボンビーを擦り付ける!
しかし金持ちは金持ちだから、特急カードを常備していてすぐに擦り付け返され、貧乏な側はやる気を失い、やがてリアルファイトに発展し、友情は崩れ去る。
という教訓から何を読み取るか……。

45名無し三等陸士@F世界:2017/03/20(月) 11:54:24 ID:w2nCsok60
>>44
>比較的小さな船体に巨砲という意味では
多分、この考え方の源泉は帆船時代の対地攻撃砲艦である「臼砲艦(ボムケッチ」
にあるかと。

>海軍軍備の主軸は小型艦でいい。みたいな思想?
マハンの「海軍戦略」とかなのかなぁ。
19世紀後半〜末期は機帆船と装甲艦がちゃんぽんになっていたような時代
なので小規模艦隊を中核とした牽制艦隊主義(防衛戦)とかはもしかしたら
あったかも?
アヘン戦争とかだと海軍の戦列艦を小型だけれど風に関係なく曳航出来る
蒸気船で引っ張って対地砲撃したりしているので、大陸の川幅が広いけれど
流速や流量が多すぎて大型船だとあまり上流に行けないって船でも蒸気船
なら引っ張って入り込めるってのは敵からしたら物凄い嫌がらせです。
帰りはそのまま流れに乗って下っていけばいいし・・・。

>清もロシアも日本に比べればずっと金持ちですからね!
それを覆すには産業革命(最近は工業化というらしい)と社会改革という
旧社会における劇薬的な処置が必要になりますね。
どっちの国も結果論ではありますが、どちらもが中途半端に終わった結果
亡国への道に至ってしまったのは複雑な思いがあります。
日本もこの劇薬を飲みはしましたが、全部は飲み干せなかったために
(元々飲み干せる体力が足りなかった)アンバランスな国力強化になって
第2次大戦(大東亜・太平洋戦争)での敗北に繋がるのかも。

46303 ◆CFYEo93rhU:2017/03/20(月) 22:57:16 ID:4623vdPQ0
>>45

> 比較的小さな船体に巨砲

三景艦は、当時の仮想敵であった清の戦艦をどうにか黙らせる方法は無いものかと考案されたものですよね。
三景艦は明確に対主力艦用で、むしろそれ以外見ていない単一目的艦だと思うのですが、ボムケッチも戦列艦に対抗する為に榴弾を積んだ艦種だったのでしょうか。
私はWW1でイギリスがバルト海上陸作戦用に建造したモニター艦のような、沿岸火力支援する艦種だと思っていたのですが。

> 産業革命

歴史の積み重ねも無く、いきなりやってむしろ日本は上手く行った方でしょう。
欧州では出遅れ組のドイツやイタリアも、隣に本家が居るのをずっと横目に見ていた訳ですからね。

工業化という意味では1世紀か2世紀遅れていたのを、たった10年か20年で何とかしたら、不具合が出て当然かと。
Win95がプリインストールされていたHDDが800MB程度のPCに、無理矢理Win10をインストールするくらい無茶な事をやって、出来ちゃった!
という感じだと思います。

47名無し三等陸士@F世界:2017/03/26(日) 06:49:01 ID:vk478PG.0
いや、欧州とは別方向だけど素地作りは済ませてたから出来ただけでは?
同時代の別規格を取り込めちゃった、みたいな感じで

48303 ◆CFYEo93rhU:2017/03/29(水) 21:20:59 ID:guO46a5g0
掌編を投下します。


>>47

同等世代でMacのOSなのにWinインストールしたら動いちゃった、みたいな感じですか。

49303 ◆CFYEo93rhU:2017/03/29(水) 21:24:21 ID:guO46a5g0
外交官の真似事も増えたなぁ。
異世界の大陸に派遣された皇国軍の高級将校は、殆ど皆がそう思っていた。

だが、特に多いのは一番上に立つ者。
東大陸方面軍司令官、皇国陸軍大将、南條好徳(よしのり)。

東大陸にしろ西大陸にしろ、派遣軍の規模は数個の師団または旅団から成る軍団であり、実質的な総指揮官は軍団長である。
だが軍団長は中将の職なので、本国外に皇国軍大将は存在しない事になる。
これでは、大将や元帥の存在する他国軍との協調の面で不都合なので、総司令官として急遽大将を派遣したのだ。
当初は、皇国本国から無線通信で東大陸の指揮を行い、大将本人は東大陸には居ないという体制だったが、
流石に無理があるし現実に大将が居ない事の問題が出て来たので、実際に行って貰う事となった。

大陸諸国の王侯や軍人に階級章と勲章を見せびらかす為のお飾りとして派遣されたようなものだが、南條大将は決して無能な訳ではなく、ましてや左遷人事でもない。
大陸に派遣される初の大将であるから心象も重要で、むしろ皇国軍の模範的で優秀な将軍であり、現場の皇国軍将兵の気を引き締めるのにも一役買った。

建前としては“陸軍の司令官”ではなく“皇国軍の司令官”なので、限定的ながら現地に寄港、錨泊している海軍部隊と海兵隊への指揮権も有している。
統合参謀本部の、統合任務部隊の司令官といった感じだ。


余談だが、皇国軍は転移前から大佐と少将の間に准将を、大将の上に上級大将を
新設して将官を五階級にする案を検討しており、准将に関しては従来の少将
または大佐の職として実運用されていたが、上級大将は未だに居なかった。

これは、上級大将が諸外国の元帥に相当する特別な階級として設定された為でもある。
欧米の一般的な軍制では元帥と大将〜准将(または元帥と上級大将〜少将)の計五階級である
事が多かったので、元帥を称号として残したまま将官の階級を五階級にする為の措置だった。
皇国軍において元帥は相変わらず階級ではなく称号なので、階級上は五階級となる。

そんな皇国軍の内情で最初の上級大将昇任者候補の一人が南條大将だったのだ。

50303 ◆CFYEo93rhU:2017/03/29(水) 21:25:40 ID:guO46a5g0
南條大将は、ユラ神国の首都であり最大の港があるユラの地に上陸後、ユラ教皇と面会。
ユラにて何人かの有力者と顔繋ぎした後、一旦海路を北上してリンド王国の王都ベルグへ。

ベルグは海に面していないので、リンド王国の港からは陸路で移動して
いるが、道すがら、その都市、その地域の名士とされる方々と会食している。
多くは領主や代官層の下級貴族や騎士、大商人、大地主だが、同業者たる軍人も居る。

司令部ごと移動しているので、かなり大所帯であり、自前の戦力として連隊規模の歩兵隊と大隊規模の騎兵隊、
軍団直属の戦車小隊が帯同しているが、南條と司令部要員だけでなく、各級指揮官も輪番で会食に参加していた。


「我が館へようこそ、南條閣下!」
主人はそう言って自慢の赤人奴隷を見せてくる。
赤人奴隷は大抵の場合で安価な肉体労働者ではないので、白人、黄人、黒人奴隷と違って農場等で働いているのを見る事は無い。
その代り、常に主人の傍に侍り、屋敷の見栄えを良くするのが仕事だ。

「お招き下さりありがとうございます、メメ卿。おお、これは立派な赤人をお連れですね。
 燃えるような髪の毛、眉目秀麗で骨格も美しい。背丈は1シクル(≒2m)近くありますでしょう」
握手をしながら、ぺらぺらと世辞を言う。
この何週間かで南條は赤人奴隷の褒め方を覚えた。
髪の毛の赤さ、顔立ちの良さ、そして体格の良さだ。

赤人は背が高くがっしりした骨格で筋肉も良く付いている体型が多いので、そこを褒めれば良い。
ただ赤人女性の場合は少し難しく、女性でも背が高く筋肉質な場合は力強さを褒めてやると喜ぶ場合が多いが、
主人によっては奴隷とは言え筋肉質な女性を恥と見做す人も居るので、そういう場合は女性らしい美しさを褒めてやる。
幸いにも、赤人女性の多くは中性的な美人が多いので、外見的に褒めるところが無い場面に遭遇した事は無かった。

赤人奴隷の美しさが主人の格にも響くので、ここで褒め方を失敗すると気まずいのである。

背丈は精々185cmくらいではないか。
と思いながらも1シクル近くの長身と褒めれば、だいたいそれで気分を悪くされる事は無い。
ひとしきり赤人奴隷を褒めたら、今度は相手の主人が南條を褒める。
立派な軍服だとか軍刀だとか、煌びやかな勲章だとか、副官なども褒める。

それが終わると、南條は漸く主人の方を褒める。
こちらは赤人奴隷と違って必ずしも中身の外見が良いとも限らないので、寛大な心遣いとか細やかな配慮とか、
内面を褒めてから、化粧が綺麗だとか服の仕立てが良いとか靴が綺麗だとか素敵な杖だとか、主に服装と持ち物を褒める。

この一連の“儀式”だけで10分くらいかかる事もある。
赤人奴隷が居ない場合なら、そこの部分は省略出来るが、それでも4〜5分は挨拶にかける。

赤人奴隷が居る場合、主賓の手荷物を運ぶのは彼等の仕事なので、荷物は赤人奴隷に預けるのがマナー。
これは相手が赤人女性であってもそうなので、赤人が居たら性別関係なく赤人に頼むのが正解だ。
ここで間違って他の使用人に預けたり、預けそうになると、場の空気がすうっと寒くなる。

ただし、稀に赤人奴隷が執事のような上級使用人となっている場合があり、その時は例外的に他の一般使用人を使う。
赤人奴隷がどの立場に居るかは服装を見れば分かるが、上級使用人の場合は“赤人褒めの儀式”もやらない方が無難だ。

外務省に商務省、運輸省、建設省などの文官に加え、民間の有力財閥や企業の特別渡航者もやっている“儀式”だった。

51303 ◆CFYEo93rhU:2017/03/29(水) 21:26:13 ID:guO46a5g0
だが南條は陸軍一筋35年の、根っからの軍人だ。
勿論、軍人と言えど士官ともなれば駐在武官として“軍人外交”もするし、国際共同訓練や軍事作戦等で外国軍と連携する事もあり、広い見識は必要だ。
南條は英語が出来るし、洋式のテーブルマナーにも慣れている。駐米武官だった経験もあり、そういう意味では国際派だった。

その南條ですら大陸では戸惑う機会が多いのだから、況や初めての異国に戸惑っている士官や一般兵においてをや。
歩兵中隊長などが役得だと言って喜んでいられるのは、実際にその時が来るまでだ。

酒の飲み方、食事の仕方、会話の内容。
全てに気を遣いながらの宴席は草臥れる。

例えば赤人奴隷は大きく二通りの存在がある。
使用人としての仕事をするかしないかだ。
仕事をする赤人奴隷は、概ね執事の下で働き、食事の時は主人と主賓に対してのみ給仕する。
仕事をしない赤人奴隷は、置物同然として主人の近くに立っている。というか立っているのが殆ど唯一の仕事だ。
後者は、赤人奴隷を使用人として遊ばせておける程の財力のある証なので、ただそこに居るだけで何もしない赤人奴隷は富裕の証、自慢の種である。
男女の赤人奴隷を所有し、彼等が子を産めば、わざわざ女性の赤人奴隷に赤人の赤ん坊を抱かせて立たせたりもする。

そういう奇異な環境の中で、南條たちはさもそれが当然といったように振る舞い、
東大陸における皇国軍の最高司令部の格式を見せつけてやらねばならなかった。
いちいち驚いていたり、気分を害していては身が持たない。

銃を持って敵と撃ち合うのとは別次元の心労と戦いながら、東大陸方面軍司令部は今日も街道を進むのだった。

52303 ◆CFYEo93rhU:2017/03/29(水) 21:27:02 ID:guO46a5g0
投下終了です。
プチ異文化交流ネタ? でしょうか。


自分でも設定ミスっていたり忘れたりしていたのですが、東大陸に展開する部隊名称やトップの階級について。

・東大陸派遣軍(中将) → 東大陸軍(大将) → 東大陸方面軍(大将)
・東大陸派遣軍(中将) → ユラ神国軍団(中将) → リンド王国軍団(中将)

という二系統ありました。

当初は東大陸派遣軍としてユラ神国からリンド王国を攻める部隊でしたが、リンド戦後はユラ神国軍団となり、
同格組織としてリンド王国軍団が新設(ただし実態はユラ神国軍団がそのまま移動した形)となり、
リンド防衛戦時に骨抜きとなったユラ神国軍団には軍団どころか師団規模の部隊もありません。

同時に、東大陸に展開する部隊が広域に渡り、ユラとリンドを統括する必要から東大陸軍が新設され、そこのトップが大将となります。
そして東大陸軍を改編して東大陸方面軍となります。現状では司令部のみの部隊で、当初はユラにありましたが、現在はベルグにあります。
そしてユラ神国軍団とリンド王国軍団は東大陸方面軍隷下になります。

東大陸軍の司令官は高橋大将という人でしたが、南條大将が着任する時期に東大陸軍から東大陸方面軍に格上げされました。
上級大将云々はその布石でもあります。


ただ、旧軍における上級大将と准将の設定考えていて引っかかったのですが……

親任官:元帥(大将または上級大将)
親任官:上級大将
親任官:大将
勅任官:中将(高等官一等)
勅任官:少将(高等官二等)
奏任官:准将(高等官三等)
奏任官:大佐(高等官四等)
奏任官:中佐(高等官五等)
奏任官:少佐(高等官六等)
奏任官:大尉(高等官七等)
奏任官:中尉(高等官八等)
奏任官:少尉(高等官九等)

まず大将を勅任官に下げるのも違う気がするので、そのままにすると親任官として上級大将と大将が入ってしまいます。
総理大臣もその他の国務大臣も親任官なので、親任官の間で差があっても問題無いんでしょうか。

少将と大佐の間に准将が入るので、高等官一等〜九等はこうなるしか無いですよね。
准将は勅任官なのか奏任官なのかですが、陸軍であれば歩兵団長など、海軍であれば代将相当なので奏任官が妥当かな? と。
准将が勅任官だと高等官三等まで勅任官になってしまい、文官の官吏との整合性や宮中席次がこんがらがりそうです。

史実日本軍でも准将の導入を検討したという話をどこかで見た記憶があるのですが、
その場合は准将は官吏としてどういう位置になる予定だったのか興味があります。

53303 ◆CFYEo93rhU:2017/03/31(金) 22:19:10 ID:guO46a5g0
F自創作界隈の一部では、拙作の“神賜島”のような天然資源ザクザクの島
という都合の良い設定が「資源島(方式)」と呼ばれているようですね。

これ系の設定を使っている身からして、大元ってどこだろうと思いました。

思い当たったのが山本瑞鶴氏の『大火葬戦史R』という小説で、関東大震災で東京湾に資源ザクザクの陸地が隆起してきた。という設定です。
これと映画『海底軍艦』の轟天建武隊基地となっていた黄鉄鉱、ボーキサイト、マンガン……の島の設定から、拙作の神賜島の設定が固まりました。
『大火葬戦史R』については、今まで言及した事が無かったと思いますが、この設定に限れば『皇国召喚』への影響大です。

『大火葬戦史R』自体は、異世界転移ものではなく古き良き(?)日米戦争ものなのですが、
日本の天然資源不足を解消するチートという意味では、お手本のような設定だと思います。
というか私はお手本にさせていただきました。

異世界転移に際して“本土の近くに巨大な島が出現”という意味では『帝國召喚』の神州大陸を
モデルにしたので、拙作の“神賜島”はそれらの設定を継ぎ接ぎして創らせて貰ったものです。
単に読んで楽しませて貰ったという以上に、先人の作品に感謝感謝です。


雑談はこの辺で、本日は本編の続きを投下します。
確認しているつもりなのですが、以前投下したものの二重投下でありませんように……。

54303 ◆CFYEo93rhU:2017/03/31(金) 22:30:55 ID:guO46a5g0
皇国海軍の空母が巡洋艦や駆逐艦を従えて東大陸に向かうのは久しぶりの事だ。
北方諸国同盟との戦争の長期化に備え、空母飛鷹と隼鷹が極北洋を進んでいた。

「対空電探に感あり。飛んでいる友軍機はありませんし、この反射波なら飛竜と見てまず間違いありません」
「飛竜……だと?」
「はい。反応の大きさから見て1騎か2騎ですが」
「いや、そういう事ではない。ここは最も近い陸地から300km以上離れているのに、何故飛竜が居るのかという事だ」
「事実飛竜なら、マルロー王国の飛竜母艦という可能性が大です」
「そうだろうな。不味い事になった……」
2隻の空母はセルシーに飛行機を輸送する為、格納庫と飛行甲板は陸上機で満載になっており、戦闘運用可能な機体は存在しない。
随伴する重巡洋艦の青葉、衣笠が搭載している計4機の零式水偵がこの場で戦闘運用可能な航空機の全てである。
航空母艦という軍艦の存在や性能は極力秘匿しておきたい皇国軍にとっては、最悪のタイミングであった。
艦載気球という可能性もあるが、どちらにせよ敵の航空偵察隊である事に違いは無い。

「やり過ごせそうか?」
「難しいですね。最悪2時間ほど全力で逃げ回る事になります。予定航路復帰まで考えると5、6時間を逸します」
戦隊司令官の提督は非常に大雑把な海図を広げ、元居た世界の同じ位置の海図と比較しながら、一点を指差した。
「この季節、風向きは北西である事が多いらしい。すると飛竜の飛んできた方向からして、敵艦隊の位置はこの辺りになる」
作戦参謀や航海参謀も、当然そうだという感じで頷く。
「東大陸での、燃料の補給支援は滞りないな?」
「はい。帰途に使用する物資を積んだ支援艦艇は既にフレータル環礁に投錨待機中です」
「宜しい。衣笠は水偵で直掩に就き、青葉は敵艦隊を襲撃!」
提督の決断は早かった。
「しかし少なくとも飛竜母艦を伴うであろうという以外、敵艦隊の規模が不明です」
「だから直接確かめに行かせるのだろう」
「水偵で確かめてからでも遅くは無いでしょう」
「気付かれて警戒されると、襲撃も困難になる」
作戦参謀が危険性を説くが、提督の決心は揺るがない。
大規模な飛竜隊が居たら、無傷では済まなくなる可能性が出てくる。
飛竜母艦の主たる任務は遠方の敵艦隊捜索だが、飛竜は爆装可能なのだ。
飛行甲板上に露天係止されている機体も含め、輸送中の機体は燃料や弾薬を積んでいないから、
艦の燃料庫や弾薬庫まで攻撃が届かなければ誘爆という心配はまず無いが、被弾1発でも手痛い損害には繋がる。

飛鷹と隼鷹が伴うのは重巡の青葉、衣笠と吹雪型駆逐艦4隻のみ。巡洋艦1個小隊と駆逐隊1個という訳だ。
この状況で巡洋艦を2隻とも分派し、空母の護衛を駆逐隊だけにしてしまうのはそれこそ危険が大きい。
かといって、護衛戦力を単純に二分割して巡洋艦1隻と駆逐艦2隻を差し向けると、空振った時や別に敵戦力が発覚した時の予備が無くなる。
重巡洋艦であればこの世界の軍艦に対しては絶大な威力の主砲を持つから、対空脅威を除けば相手の射程外から一方的な蹂躙が可能だ。
奇襲に成功すれば、対空脅威の源である飛竜母艦をアウトレンジから沈めてしまえる可能性も出てくる。
青葉型も吹雪型もどちらも主砲門数は6門だが、一撃の威力が劣る駆逐艦では無駄な手数を要する。
それに、零式水偵は飛竜相手なら戦闘機としても使えるので、青葉単艦でも直掩機を得られる。
所詮水偵だが、高角砲と機銃のみで対抗するよりは対空戦闘の選択肢が増えるのは事実だ。

「青葉より“本艦は別命により戦隊を離脱。敵艦隊の攻撃に移る”です」
「よし。衣笠は艦載機の発進準備。本隊は予定航路を進む」
飛鷹、隼鷹を中心に輪形陣を組んだ艦隊がノイリート島へ向かうのを横目に、青葉は“敵艦隊”へと転針した。

55303 ◆CFYEo93rhU:2017/03/31(金) 22:31:41 ID:guO46a5g0
「衣笠1号機より入電。向かってくる飛翔体は、やはり飛竜です! 国籍識別表はマルロー王国!」
既に目視可能な距離になっており、双眼鏡を覗く見張り員も2騎の飛竜を確認した。
水偵を一旦退かせると、飛鷹、隼鷹、衣笠と駆逐隊は主砲と高角砲に仰角を取り、向かってくる飛竜に狙いをつける。
皇国軍艦である事は解るだろうが、初めて見るであろう空母の艦影を正確に確認するには、この世界の望遠鏡ではまだ遠いだろう。
「味方機は退避したな? 照準を合わせた艦は自由に発砲せよ。生かして帰すな!」
対空電探には現在交戦中の相手しか映っていないが、衣笠の水偵は念の為に周辺警戒と上空直掩を続けていた。
別方向から急に敵が来た時に対応したり、逃げる敵を追撃するには予め上空に居る必要があるからだ。

衣笠の主砲から対空用榴散弾が発射されるのを合図に、飛鷹、隼鷹と衣笠の高角砲、駆逐隊の主砲が火を噴く。
次いで本命の対空射撃となる各艦に装備された40mm、20mm、12.7mmと7.62mmの機銃から火線が上がる。
50門を超える対空砲(高角砲と兼用砲)に数十丁の対空機銃の圧力は相当なものだ。

対する飛竜騎士は逃げの一手だ。
艦隊に情報を持ち帰らねばならないのだから交戦している暇など無い。
皇国軍の軍艦は異様だったが、それ以上に異彩を放つのは陣形の中央に2隻ある、上に何かが載せられた箱型の船。
中央にあって周囲から匿われるようにあるという事は、皇国軍にとって重要な艦なのだろう。
周囲に比較物の無い大海原だが、巨大な艦影は長さだけでも一等戦列艦の2倍以上はあるだろう事は容易に分かった。
今まで見た事も無い形状の皇国艦という貴重な情報は、何が何でも本部に持ち帰らねばならない。

しかし皇国軍の対空砲火の苛烈さは想像以上だった。
噂には聞いていたが、実体験としてその場にいる恐怖感は言い知れぬものがある。
何とか回避運動を続けながらその場を離脱しようともがいていたが、ついに炸裂した砲頭の破片が飛竜の腹部に突き刺さった。
即死する程では無かったが、体力が削られて飛行能力が落ちれば続けて被弾する危険性が上がる。
墜落すれば、そこは冷たい海。生きたまま着水出来ても凍死か溺死という運命が待っている。
(苦しいだろうが、頑張ってくれ、相棒!)
人馬一体という言葉があるが、飛竜は馬より断然扱い難い動物である。
馬は良く言えば従順、悪く言えば臆病な気質だが、飛竜のそれは真逆だ。
竜士や調教師の長年の努力と技術の蓄積によって“兵器としての飛竜”が成立している。
幼い頃から寝食を共にしているといっても過言ではない竜士にとって、苦しむ飛竜の姿は心に刺さる。
自分自身もそうだが、傷付きながらも普段どおり手綱に応えてくれる飛竜を簡単に死なせはしない。
そういう思いを胸に、竜士は母艦隊を目指していた。

だが、何とか皇国軍の対空砲火の射程外に逃がれられたと安堵した途端、零式水偵が立ち塞がるように針路を遮った。
全力で飛べば皇国軍艦より速い飛竜だが、皇国軍が誇る飛行機には太刀打ちできない。しかも今は全力どころか負傷中。
必死に回避運動を続けていても、完全に見失わせなければ皇国艦隊に追いつかれてまた集中砲火を浴びる事になるだろう。
そしてこんな状況が長時間続けば、被弾せずとも飛竜の体力が尽きて冷たい海に墜落だ。

56303 ◆CFYEo93rhU:2017/03/31(金) 22:32:16 ID:guO46a5g0
「1騎、撃墜!」
隼鷹の艦橋で、双眼鏡に目を凝らしてた司令官に待望の戦果が届いた。
間近で炸裂した高角砲弾が飛竜と共に竜士の胴体を吹き飛ばしたのだ。
ボロボロになった飛竜は悲鳴を上げる事すら叶わず力尽きて落下していく。
「全ての砲火を残りの飛竜に集中!」
2隻の空母、重巡洋艦、そして4隻の駆逐艦の持てる火力が単騎になった飛竜を包囲する。
高角砲が炸裂する度に周囲を揺さぶる黒煙。空を切り裂くように狙い撃つ曳光弾。
程無くして、最後の力を振り絞っていた飛竜も火力に抗えず海に没した。

「敵、飛竜騎士が1人、海面にて生存している模様」
水偵からの報告は、一番聞きたくないものだった。まだ生存しているからには救助しますか? という事だから。
墜落して、そのまま海面に叩きつけられて死んでくれれば良かったのに……。司令部の誰もがそう思った。
自身は満身創痍となりながら、海面に軟着水して騎士を守ったのだ。騎士と飛竜の素晴らしい絆である。
「衣笠で救助すればいい。厳重に拘禁していれば良かろう」
「空母を発見した当人ですが」
「青葉も捕虜を連れてくるだろう。合流すれば、どのみちそうなる。
 見捨てたり、わざわざ機銃で止めを刺しても寝覚めが悪かろう?」

皇国軍は皇国版飛竜母艦のようなものを運用している。というのはリンド王国に限らず列強国の見立てだ。
皇国軍の情報部門や前線部隊の指揮官も、そこのところを隠してはいない。わざわざ公言はしないが、聞かれれば答えている。
飛竜母艦を持っているというのは列強国のステータスでもあるから、そのものは無くても皇国版飛竜母艦は持ってるというのは、外交上の強みにもなる。
あとは、それがどんな形状で、どんな能力があり、何隻あるのか。という核心部分が問題。
皇国軍はこの部分を可能な限り秘匿したいと考えていているが、それもいつまでも隠し通せると思っている者もまた居ない。

両大陸間の国交と通商が増えれば、いずれはそれなりに詳細な情報が伝わるだろう。
だから、皇国軍では“皇国版飛竜母艦”として、旧式で小型の鳳翔や龍驤などをとりあえず広報用に用いる事を検討している。
空母としては小型だが、この世界の船舶の規模からすれば十分過ぎるほど巨大だし、何より同盟国、友好国に対しても嘘を吐かなくて済む。
当面は“皇国軍はこういうのをあと何隻か持っています”と宣伝すればいいし、艦内見学だって部分的には認める方向性で国防省は動いている。

要は、この戦争中は空母の具体的な能力を秘匿出来ればよく、戦後にそれが明らかになっても問題はないし、それは既定路線という事だ。
洋上で救助しても、その後はノイリート島か大内洋上に停泊している捕虜収容船に預ければ、戦後の捕虜返還までは秘匿可能となる。

勿論、死んでいてくれれば艦を停止して救助する手間も無かったが、軍服など遺品を回収して所属や名前を確認する意味はあった。
飛竜騎士というのは貴族や騎士の子弟か、平民でも準貴族同等の有力者の子弟が多くを占めるから、情報量も多い。

「とりあえずこの場は収まった。雷を青葉の増援に回そう」
駆逐艦3隻を警戒に当たらせ、衣笠は漂流する飛竜騎士を回収した。

57303 ◆CFYEo93rhU:2017/03/31(金) 22:34:00 ID:guO46a5g0
本隊から離脱して単独行動中の青葉は“敵艦隊”の潜伏する想定海域に近づくと、水偵を発進させた。
海域は絞られるとは言え、半径数十km以上はある。正確な位置を割り出して有利な態勢を整える為に、5時間以上の滞空性能を持つ水偵の支援は必要だった。
1機は偵察に出て、残りの1機は60kg爆弾と機銃弾を満載して“戦闘待機”状態である。

偵察機が発艦してから約1時間。
「2号機より入電。艦隊発見。マルロー王国旗を視認。数は8、位置は――」
「北北東に20浬か。24ktに増速し急行せよ! 風上を向いたら速やかに1号機を発艦させろ!」


青葉2号機が接敵した頃、マルロー王国艦隊は大慌てで戦闘準備を行っていた。
西の空から友軍の飛竜が帰って来たと思ったら、皇国軍の飛竜だったのだから。
「動ける飛竜は全部上げろ! 対空戦闘!」
鐘と太鼓が打ち鳴らされ、下士官の吹く号笛の音に従って水兵達が慌しく
旋回砲に散弾を込め、ロケット弾やマスケットの射撃体勢を整える。
旗艦の飛竜母艦に信号旗が掲げられると、早くも発砲が始まった。

各艦から対空射撃が行われるが、そもそもが爆装して鈍重な動きの飛竜に対する気休めのようなもの。
対空砲弾、ロケット弾は見当違いの場所で炸裂し、高速で飛ぶ青葉2号機にはかすりもしない。
程無くして、水平線から黒煙を吐きながら迫る大型の軍艦が姿を現した。

飛竜母艦の弱点は、皇国の航空母艦同様に飛竜の発着時である。
狭い艦の出入りで邪魔にならないよう、帆の全部あるいは殆どを畳まねばならないので、艦の速度は落ち舵の効きも悪くなる。
ちょうど味方が戻ってくる筈の時間だった為、帆を畳んで漂流するように待機していた矢先の敵襲に大慌ての艦内。
飛竜の発着を諦めて展帆作業を優先させるか、畳帆しているのを逆手にとって飛竜を出撃させるか。
今から展帆を始めても、艦が風に乗るまでに襲撃を受けるだろう。だったら時間稼ぎも兼ねて出撃させた方が良い。
と同時に、最悪の事態に備えて手紙をしたため、艦長室の窓から本国の海軍司令部宛の伝書鳩を放った。
そこには『皇国飛竜1騎及び全長1シウスの皇国大型軍艦1隻と交戦状態に入れり』という簡潔な内容と日時が記されていた。


艦内に居る飛竜は全部で9騎だが、全てが飛び立てる状態ではない。
準備が整っているのは、空母艦隊と交戦した2騎の帰艦と交代する形で飛び立つ予定だった2騎だけだ。
残りは休憩中であり、眠っているものも居る。
食事が終わった飛竜を追加で2騎投入できるかできないか微妙な線だった。
対空砲撃や銃撃で甲板は硝煙に包まれるが、それも飛竜が最上甲板に姿を現すまでだ。
火薬の臭いには慣れされているが、飛竜の視界を妨げないよう発着艦時の火器使用は戒められている。

58303 ◆CFYEo93rhU:2017/03/31(金) 22:35:04 ID:guO46a5g0
青葉の艦橋では双眼鏡で目視確認する見張り員と、電探の反応を照合して索敵結果を確認していた。
「敵艦隊の艦影確認……飛竜母艦1、一層ないし二層甲板の戦列艦またはフリゲート7! 上空には飛竜が2騎!」
「第一目標は飛竜母艦と飛竜だ。最優先で叩け」
先に到着した水偵が既に旋回機銃で上空の飛竜を追い回しているが、やはり戦闘機ではない身ではなかなか命中弾が出ない。
機銃弾に余裕が無いので、あまり派手に連射出来ないといった消極的な理由もあったが、後方旋回機銃しか無いのも大きい。
敵艦隊の詳細確認と味方艦到着までの時間稼ぎという任は果たしたと判断した水偵機長は、
敵の増援等を警戒した周辺哨戒に任務を切り替え、敵艦隊との交戦を青葉にバトンタッチした。
青葉の3基ある20.3cm連装砲が飛竜母艦を捉え、高角砲と機銃は飛竜に狙いをつける。
飛竜の居住空間を確保する為に砲列甲板が無く、船体の大きさに比して帆柱と帆桁が少ない飛竜母艦の判別は比較的容易だ。

優先目標である飛竜母艦は爆弾を抱えて出撃した水偵1号機の攻撃によって損傷を受け火災が発生していたが、
すぐには沈没しそうになく無力化に成功したと言える確信が持てないので、優先順位に変更は無い。
8インチの通常弾は良好な弾道を描きながら、敵艦隊に吸い込まれるように飛翔していった。
重装甲の戦艦に対しては効果が薄いが、逆に言えば戦艦以外の水上戦闘艦艇には十分な打撃力を有する砲弾である。
火災が発生する事で強度が落ちた木造の船体は弾頭炸裂の衝撃波により崩壊し、食い止められない浸水により傾斜が限界を超え、転覆した。
脱出した水兵達は床や壁の破片などにしがみつくが、飛竜にはそれが不可能だから、船が沈没するのに任せて飲み込まれていくしかない。
最後の伝書鳩に託された手紙には『皇国大型軍艦の攻撃により轟沈。全ての搭載飛竜が艦と運命を共にせり』と書かれていた。

「真っ先に飛竜母艦を狙うとは、騎士道精神の欠片も無い野蛮人め……」
列強国同士の戦争でも、別に飛竜母艦を狙ってはいけないという条約がある訳でも不文律がある訳でもない。
ただ戦闘艦を同伴している艦隊が接近戦を演じる段階になれば、ほぼ非武装に等しい飛竜母艦から狙っていく意義は無い。
脅威度の高い方を優先的に狙うのが当然で、それは即ち多くの大砲と海兵を乗せている戦列艦やフリゲートとなる。
それら戦闘艦を撃破、拿捕すれば、飛竜母艦に抵抗する術は無く降伏するしかなくなる。無傷で拿捕出来る訳だ。
結果として、飛竜母艦は狙わないし狙われないという現実が表れるのだが、皇国軍は平気でそれを破った。

大急ぎで飛び立った飛竜は、特に爆装している訳でもない。
攻撃手段は飛竜騎士の持つカービンとピストルとサーベルのみ。
それで青葉に攻撃をかけようとしても、射程が圧倒的に足りない。
乗り込んで白兵戦に持ち込めれば奇跡のようなものだ。

飛竜母艦を沈没させられたマルロー王国艦隊は、残りの戦闘艦で海域を離脱すべく針路を変更した。
所期の作戦目的は失敗した。何とか風下につけて逃げ回り、夜間や悪天候に期待するしかない。
風向きは概ね北西。つまり極北洋からマルロー王国に帰還するに際しては追い風なのだ。
順風でも皇国海軍の方が速いという情報は得ているが、闇夜に紛れるなどして一旦姿を隠せば、帰還する望みはある。
青葉が対水上電探を装備しているという事を知らないし、そもそも電探という存在を知らないから抱ける希望であるが……。

皇国軍は、主戦場に対しては積極的だがそれ以外に対しては消極的だ。
今の所、マルロー王国本土の沿岸を艦砲射撃しに来るような素振りは無い。
故にノイリート島から十分に離れれば、それ以上は追って来ないというのが王国海軍司令部の分析である。
願望といっても良かったが、それでも“リンド王国やノイリート島での攻勢準備が整うまでは”という条件付き。
だからノイリート島の様子を探る目的で派遣された艦隊だったのだが、それが返り討ちにあってしまったのだった。
この海域で大型艦が出張ってくる事態となると、攻勢準備が整ったか整いつつあるという事になる。
決定的な情報は何としても持ち帰らなければならない。

59303 ◆CFYEo93rhU:2017/03/31(金) 22:36:09 ID:guO46a5g0
「撃沈した敵艦から脱出した漂流者を救助したいところだが……可能かな?」
「敵艦隊は退却しつつあるようですが、こちらの停船を見たら反転して来るかも知れません」
「仕方のないところだが……」
飛竜母艦という最大の脅威は排除したが、単艦行動中に迂闊な真似は出来ない。
敵の3倍速い皇国軍艦とは言え、一旦停止してしまえば帆船でも追いつけるのだ。
「漂流者は自力で何とかしてもらうしかない。敵艦隊を追撃する」

青葉は敵艦隊の射程外から主砲を撃ちまくる。
射程外といっても距離にして3500m程度であり、重巡の砲戦距離としてはかなりの接近戦だ。
良好な命中率を得られ、合計300発も撃つ頃には旗艦を含む敵艦5隻が沈没ないし大炎上し行動不能に陥った。
途中、増援についた駆逐艦雷も加わり、至近距離からの砲戦は一方的な展開で幕を閉じる。

「艦長、霧が出て来ました。濃霧になる前に……」
「着艦させるしか無いな。ここで貴重な飛行機を失う訳には行かん。水偵の回収を急げ。それと隼鷹に通信。
 “悪天候につき飛行機収容の為、敵艦隊の追撃を中断。収容作業完了次第、追撃を再開する”と伝えろ」
固まって逃げてくれるならいいが、方々に分散されると見失うかも知れない。
頭を抑えるよう走り回っていたが、青葉が停止して行動の自由を得れば別方向に逃げるだろう。

水偵の回収と並行して、漂流者の救助を行う。
青葉は水偵の回収と警戒、雷は漂流者救助、作業は短時間で終わった。
冷たい海に投げ出されて長時間放置されていたので多くは助からなかったが、
艦隊司令官を含む士官と下士官兵を合わせて百人弱の救助に成功。捕虜とした。

その後は霧で視界が悪い中で一夜を過ごし、翌日は霧が晴れた午前中に敵艦隊の捜索を再開したが
結局見つからず、隼鷹から再集結の命令で青葉と雷は本隊と合流。本来の任務を済ませて帰路に着いた。
同時に、この戦闘で得た百人弱の捕虜はノイリート島の預かりとなり、城塞に付随してあった捕虜収容施設に収容される。

飛鷹と隼鷹は航空機輸送任務を終えると、その格納庫に東大陸からの輸入品を積み込んで皇国本土への帰路に就いた。
2隻合わせて飛行機120機、滑空機60機、合計で180機の航空機とその燃料弾薬、予備部品類を輸送し、約300t分の保存食品を持ち帰り、影の武勲艦となったのだ。


城攻めというのは難しい。
これは洋の東西を問わず、また今も昔も程度の差こそあれ軍事的な真理である。
皇国の元あった世界にしてもこの原則は当て嵌まる。
厳重に防護された城や陣地を攻める場合、攻撃側に多大な出血を強いる
というのは皇露戦争でも欧州大戦でも嫌というほど味わっている現実だ。

皇国に占領されたノイリート島を奪還するというのは、城攻めに
なる訳だが、陸続きではないので艦船による兵員輸送が必須となる。

軍人や軍属の殆どは大陸本土に押し付けたが、大多数の島民は未だに島内在住である。
ノイリート島にマルロー王国やセソー大公国の旗が立てば一斉に放棄して皇国の牙城も崩れるだろう。
そんな期待を胸にしても、島内との連絡手段が封鎖されてしまっているから、力押しで上陸してみるしかない。

今回はそれが可能かどうかを確認するという名目で艦隊が派遣されたのだが、
皇国軍はノイリート島を囮として占拠しているだけで、実際の防衛には消極的だから
奇襲すれば一挙に奪還可能である。というセソー大公の意見に何の根拠も無い事が露呈した。

皇国軍のたった1隻の軍艦によって、飛竜母艦を含む偵察艦隊が壊滅した。
この一件によって、元々積極的な艦隊行動を控えていたマルロー王国海軍は
より消極的になり、艦隊保全を最優先する姿勢を露骨に示すようになった。
それにより、マルロー王国軍はシテーン湾の制海権を自ら放棄したも同然となり、
北方諸国同盟軍全体の動きがより鈍るという無視し得ぬ打撃を受けたのである。


皇国軍にとっては、ちょっとした不運、小さな遭遇戦に過ぎなかったこの海戦が、
北方諸国同盟軍へ想定外の打撃を与えたことを知るのは、戦後になってからである。

60303 ◆CFYEo93rhU:2017/03/31(金) 22:37:20 ID:guO46a5g0
投下終了です。
飛鷹&隼鷹姉妹と青葉&衣笠姉妹、特Ⅲ型姉妹出してみましたが、多分これが最初で最後の出番だと思います。
吹雪型としか書いてませんが、雷を含む4隻の駆逐隊といえば特Ⅲ型姉妹です。
皇国召喚版の飛鷹型は商船改装空母ではなく、大型軽空母で、当初から空母として建造されています。

61名無し三等陸士@F世界:2017/04/01(土) 16:06:55 ID:tjIVabcc0
東京湾に石油が湧くってSSも読んだ覚えがありますが、戦前なら「資源さえ在れば」悪くないアイデアとは思います
同時に、戦後では異世界モノでしか通用しないアイデアだなーとも思います
資源あってもねぇ……サウジがアメリカより偉くもないし強くもない現実がありますんで

62名無し三等陸士@F世界:2017/04/01(土) 17:06:00 ID:ighuf85w0
資源島は「資源さえあれば…」という日本人の切ない願いの表れというか、「資源もなければ即死やんけ!」という身も蓋もない話なのか…
アメリカは資源も技術も金も人口もあるからずるい、ずるいよ

63名無し三等陸士@F世界:2017/04/01(土) 17:29:46 ID:tjIVabcc0
つーか「資源が無い」って日本人が言っちゃマズいっしょ
資源国だった歴史の無い本物の無資源国が怒るぞ

64名無し三等陸士@F世界:2017/04/02(日) 01:50:33 ID:lEy5xQPg0
独 「そりゃお前」
英 「アメリカと比べたら」
仏 「何処の国だって」
ソ 「ずるいと思うわ…」

65名無し三等陸士@F世界:2017/04/02(日) 21:08:41 ID:tjIVabcc0
>>62
資源と自給率と教育水準でで無理矢理に保たせてた状態だったもんな、開国から列強に加わるまでの日本

66303 ◆CFYEo93rhU:2017/04/02(日) 22:05:05 ID:guO46a5g0
まとめ、感想等、いつもありがとうございます。
そういえば陸戦ばかりで、海戦を投下したのは凄く久しぶり……。

>>61

中東は石油の産地ですが、石油以外で必要な資源全般で言うなら、アフリカとか南米とかも資源の宝庫なんですよね。
サウジとかUAEとか、石油資源だけあっても駄目だという事で、オイルマネーを教育とか科学研究に投資しているとは聞きますが。

>>62

> 資源島は「資源さえあれば…」という日本人の切ない願いの表れというか、「資源もなければ即死やんけ!」という身も蓋もない話なのか…

私の場合は両方……創作上の都合で言えば後者が強いでしょうか。

異世界転移してもしなくても資源が無ければ近代国家として死ぬ……。
最初の一年くらいは派手に暴れられても、そのうち人口の半分を間引きして文明レベルを
江戸時代に戻すくらいしないと立ち行かなくなり、国内の騒乱がメインの話になってしまいます。

「転移で日本は大混乱し内戦状態まで悪化。F世界の列強がそれに付け込んで……」
というプロットは、それはそれで面白そうですが、私が読みたい&書きたいのとは違いました。

> アメリカは資源も技術も金も人口もあるからずるい、ずるいよ

でも、そのアメリカも現代のエネルギー消費量からすると、国内生産分だけで内需は賄えないと聞きます。
あと高度技術や知的財産の根幹は握っていても、実際にそれを生産するのは中国とかで、意外と産業構造に歪な部分があるとも。

>>63

本当の無資源国とは、モナコやシンガポールのような都市国家とか、パラオのような島嶼国家などでしょうか。

日本もかつては金銀とか石炭はありましたが、石油に関しては有史以来ありませんよね。

日本の埋蔵資源は、種類は多いけれど個々の量は少ない。
ゼロではないですが、需要からすれば1%にも満たないからゼロに等しいという意味では「資源が無い」のは事実でしょう。
現代日本だと、塩ですら8割以上が輸入でしたよね。

>>64

英「アメリカがイギリス植民地というIF世界なら最強ですね」

>>65

欧米に比べて人件費が安かったので、人的資源を使い潰すという方向に振れてしまいました。

67名無し三等陸士@F世界:2017/04/03(月) 05:19:24 ID:tjIVabcc0
>江戸時代に戻すくらい

自給自足のプロが揃ってても3千万人が限界で、何度も禁止令が出たほど間引きが必要だったから無理っぽいすね
北海道などの領土増加や技術の進歩では如何ともし難いし、そもそも間引きされる半数が大人しく死んでくれませんし

68303 ◆CFYEo93rhU:2017/04/15(土) 18:49:08 ID:guO46a5g0
ちょっとした小ネタのつもりだったのですが、異世界転移における資源問題への食いつきが予想外に大きかった……。

>>67

現代日本だとむしろ北海道が日本の農業支えてますが、戦前の日本だとまだ開拓途上といった感じで、
そこに転移など重なれば北海道開発に必要なリソースを持って来るのも不可能に感じます。

異世界転移よりは現実味のある仮定の話としては、鎖国して外国との関係を一切絶ったら日本はどうなるかとか。
現代よりエネルギー需要の桁が少なかった昭和初期の時代でさえ、経済制裁を受けたら、海外との船舶の往来が止まったらどうなるか……歴史が証明していますからね。

確か、そのまま戦争を続けていたら昭和20年〜21年で餓死者が1000万でしたっけ?

69名無し三等陸士@F世界:2017/04/20(木) 17:18:37 ID:/6/Mu3X.0
歴史の証明って言うには、圧倒的物量を誇る敵国との末期戦て特殊事情が大きすぎるんでは
問題の切り分けをするに、他国から責められない転移の時点で維持だけは不可能じゃなさそうな
政治的に「外へ」は避けられんでしょうけど

70名無し三等陸士@F世界:2017/04/22(土) 21:54:02 ID:M7xF1YeE0
津島の米食えない率ヤベぇ
ttp://uproda.2ch-library.com/9667186ZC/lib966718.gif

71303 ◆CFYEo93rhU:2017/04/23(日) 19:06:02 ID:guO46a5g0
本編の続きを投下します。


>>69

現代ほど機械化されず、人力や畜力に頼っていた昭和初期の時代でも、
転移なんて事が本当に起きたら何年も戦争して末期的状況になるくらい、
あるいはもっと疲弊しておかしくないだろうというのが私の見解です。

史実の太平洋戦争とは違いますが、徐々に衰退するのは避けられないだろうと。
つまり最低限の維持だけでも難しい。

農業に関しては戦前の段階で北海道、本州、四国、九州と沖縄で生産される分だけでは、
そこに住む人々を養いきれないので、台湾、朝鮮、満州から米など輸入していましたよね。

現代日本ものでも大日本帝国ものでも、国ごと転移系の小説の場合は
「日本は転移初期に幸運に恵まれて資源地帯を手に入れて開発に成功した」
というストーリーが多いですが、こういう作者によるご都合主義展開が無ければ
近代国家として死ぬ(下手したら江戸時代より後退する)から仕方ないと思います

それと、仰るように政治的に「外へ」となるとしても、各種資源が無ければ
外へ行く事すら無理なので、真面目に考えると暗い未来しか見えないので
303は考えるのを止めて神賜島に全てを託した……といった感じです。

72303 ◆CFYEo93rhU:2017/04/23(日) 19:08:28 ID:guO46a5g0
「ノイリート島が皇国軍に制圧されたとなりますと……」
マルロー王国空軍の近衛飛竜師団を預かる将軍が地図を広げ、シテーン湾を指差す。
「今迄の皇国軍“飛竜”の行動圏から導かれる結論は――」
指先はシテーン湾からマルロー王国の王都ワイヤンに移動する。
意味する所はシテーン湾全体とワイヤン周辺が全て皇国軍の“制空権”に入ったという事だ。
皇国軍の擁する“飛竜”は外見や性能が様々なので情報が錯綜しているのが現状だが、
“海の上から直に飛び立つ大型の飛竜”であれば、マルロー王国の
全土が“制空権”に入るかも知れないという想定もある。

開戦前の“前提条件”では、皇国軍の飛竜隊はワイヤンまで来る事は無いものとされていた。
ユラ神国やリア公国から、終日ベルグを脅かされていたリンド王国とは状況が違うと。

「リンド王国並びに皇国の外交筋から、北方諸国同盟の即時停戦と講和を要求する書簡が来ております。
 皇国の方は特命全権大使の署名となっていますが、リンドからのものは女王の署名入りです……30日以内の返答を求むと」
書簡は複数の中立国を経由しているのだが、ノイリート島の占領から2ヶ月も経っていないのに手際が良すぎると、レイオンは思っていた。
セソー大公国の情報がベルグに届くのに半月から1ヶ月。手紙に認めてワイヤンに届くのに1ヶ月から1ヶ月半はかかる。

しかもこの中立国の中にユラ神国の名前がある。
確かに北方諸国同盟が戦争しているのはリンド王国と皇国だが、ユラ神国は明確に皇国の同盟国として振る舞っている。
これで何が中立国だ。実際に戦火を交えていないというだけで中立国なら、北方諸国同盟内にも中立国は存在する理屈になる。

皇国のやりたい放題だが、しかしそれを止める力は無い。
大内洋に面するリンド王国とユラ神国、大内洋のリロ王国とオレス王国が親皇国派という時点で、政治的に打てる手は殆ど無い。
では軍事的にはどうだ?

「王都周辺の飛竜基地は、合計すれば千騎以上の飛竜が居ります。
 最悪、これが全滅する可能性も考慮しませんと……」
精鋭の航空戦力を預かる将軍が、実質的に“もうだめだ”と忠告してくる。
「皇国からセソー大公国に対しては、我が国と同じく北方諸国同盟としての降伏をせよと打診があるとの事。
 無条件の降伏ではないのですが、ノイリート島の帰属を巡ってセソー大公国と揉めそうではあります……」
マルロー王国の、特に西部に領地を持つ貴族から感じ取れる雰囲気は不味い。
自分の領地に戦禍が及ぶ危機が現実になりつつあるから、必死だ。

マルロー王国本土の危険度を判定する為に行われた海軍の偵察は完全な失敗に終わった。
ノイリート島は既に皇国軍の防備が固められており、周辺には有力な艦隊が存在する事が判明。
皇国軍艦と皇国飛竜の能力からすれば、最早近付く事すら不可能だろう。

残った全ての艦艇を投入した乾坤一擲の作戦ならば、あるいは
シテーン湾の制海権を一時的にでも確保できるかも知れない
という見方もあるが、相当な損害を覚悟せねばならないし、
ノイリート島を奪還する事が出来たとして、その後は?

島の奪還は目的ではないのに、その為に貴重な艦隊を磨り潰し
飛竜母艦を失えば、東大陸北方での覇権争いを諦める事になる。
大海軍を全滅させるなど、リンド王国海軍の二の舞は御免だ。


もう、潮時か……。
一発殴ってリンド王国から譲歩を引き出す。
という目論見がほぼ達成不可能となった今、政治はいかに“不利でない”条件で敗戦処理を行うかに移りつつあった。

73303 ◆CFYEo93rhU:2017/04/23(日) 19:09:02 ID:guO46a5g0
リンド王国と皇国からの講和要求(降伏勧告)を受け、北方諸国同盟の主だった領邦君主が集まる会談が設けられた。
だが、どういう形で講和するかという会談の筈が、予想に反してセソー大公レオニスだけが徹底抗戦を主張したのだ。
“賠償金もノイリート島の割譲も認められない”という意見にはマルロー国王レイオンも首を傾げた。
要求されている賠償金は払えない程の大金ではないのだから、島と引き換えならば何も問題無いだろう。
各方面で攻撃が頓挫している現状、戦争を長引かせる方が余計な出費になりうる。
セソー大公国の場合、ノイリート島に収まらず全土が占領される危険も現実になっているのだ。
占領まで行かなくても、明らかに全土が皇国の制空権に収まるのだから、爆撃され放題だろう。

しかしマルロー国王以外で、匹敵する発言力があるのはセソー大公しか居ない。
他の貴族は横並びで下位にあるから、マルロー国王とセソー大公の口論になっていた。
「徹底抗戦とは申すが、それは無傷でノイリート島を奪われた国の君主の言葉か?」
「あれはノイリート伯爵の独断によるもの。我が国の同盟への忠誠は変わりません!」
「貴公は臣下の貴族に離反される意味を考えているのか? 臣下に見放された君主の末路を考えているのか?」
「それは、どういう……」
「貴公と、そして同盟の盟主たる余が、ノイリート伯爵に見放されたという事だ」
ノイリート島の占領は、北方諸国同盟にとってはセソー大公国を通る進軍路が常に脅かされる事を意味する。
北側から主力を押し立てようとしているのに、その主力軍団の後方が危ういと戦えるものも戦えない。
そのような初歩的な事が解らないノイリート伯爵ではない。
独断で皇国軍の進駐を許し領土を明け渡したという事実は、
単に裏切ったという以上に重い政治的、軍事的意味を持つ。


「リンド王国の二の舞になりたくなければ、もう皇国の講和案を丸呑みするより他無いであろう?
 今ならまだ、交渉の余地は残されているのだ。同盟一丸となって交渉に臨むのが忠誠とは違うのか?」
「先人は言いました。自分が苦しい時は相手も苦しいのだと。皇国も苦しんでいるのです。
 現状、見かけの上で劣勢だからといって、安易な譲歩は後世に禍根を残します」
「であれば、後世に禍根を残さぬように講和を進めるのが筋であろう」
「しかし、それでは同盟の正義が――」
「ならば! 貴国を此度の軍事同盟から除名する。それで同盟に縛られず心置きなく戦えるだろう。貴公の正義を全うしてくれ」
「わかりました。世に正義の何たるかを示します」

マルロー国王の提案に、セソー大公国以外の全ての国が除名に賛同し、賛成多数で議決された。
付き合いで連名しはしたが、正直“北方諸国同盟”という看板から抜けたいと思っていた国は多い。
皇国側が名前くらいしか把握していない中小国にとっては、早期の講和は願ったり叶ったりの話だ。

そんな都合の良い話に皇国が納得するかはともかく、形式的には北方諸国同盟が一体となって講和するという筋は通せる。
少なくとも、この同盟の盟主であり列強国であるマルロー王国が率先して講和に同意するという形は作れる。
もしも、この提案で通らなければ皇国側に立ってセソー大公国を挟撃してでも、という覚悟もあった。


後世に“不可解な決別”と呼ばれる事となる会議は、想定外の結果で終わった。

74303 ◆CFYEo93rhU:2017/04/23(日) 19:09:36 ID:guO46a5g0
盟主たるマルロー王国が降伏し、中小国も示し合わせたかのように雪崩を打って降伏。
北方諸国同盟は事実上全面降伏、同盟も経済的繋がりは維持されつつも軍事的には解体した。
セソー大公国を除いて……。


この情報はすぐさまベルグに届けられ、リンド王国、皇国と北方諸国同盟間の停戦が成り、同時進行で講和条約の締結が行われた。
時間が無かったため、本来ならばそのまま本国へ帰る筈だった巡洋艦青葉が補給を済ませた上で再度シテーン湾に折り返し、
皇国の外交団を載せてマルロー王国沖に停泊、その艦上でセソー大公国を除く北方諸国同盟の全代表が調印した。


1、リンド王国との国交再開、内政不干渉。
2、皇国との国交、通商条約の締結。
3、賠償金5億5000万リルスを50年で支払う。
4、捕虜を500万リルスと引き換えで返還する。

以上が、皇国、リンド王国と北方諸国同盟で締結された講和条約の基本的な内容である。
これにより北方諸国同盟との戦争は事実上終結したが、セソー大公は未だに徹底抗戦を唱えていた。


北方諸国同盟の盟主であるマルロー王国が降伏すれば、当然にその他諸国も自動的に降伏すると、そう思っていた皇国首脳陣は、
予想外の展開に頭を抱えざるを得なかった。降伏を求めてきたと思ったら徹底抗戦に傾くセソー大公国の変節ぶり。

マルロー王国さえ崩せば、あとは有象無象という考えは甘かった。
だが、折角マルロー王国他、セソー大公国を除く北方諸国同盟が“同盟として”降伏するというのだ。
これを蹴ったら確実に長引く。

北方諸国同盟が降伏すれば、セソー大公国のみを相手にすればいいのだ。
セソー大公国はリンド王国からも飛行機を飛ばせるし、ノイリート島からなら全土が攻撃圏内になる。
マルロー王国の王都ワイヤンを如何に爆撃しようかと思索を練っていた皇国軍からすれば、爆撃難度が大いに下がった。
国土の縦深も無いから、空陸から攻め立てればすぐに崩れるだろう。

リンド王国の王都ベルグの経験から、それくらい解ると思うのだが、何故セソー大公が同盟を離反してまで継戦を望むのか。
マルロー国王やセソー大公の直臣すら計りかねた問題であり、後世に至っても謎のままの問題、皇国も計りかねた。
後世、この同盟脱退劇は『セソー大公、謎の判断』とか『セソー大公、謎の離反』などと呼ばれる事になる。
“疲れていた”とするのが定説になるが、その疲労による誤判断に巻き込まれた方は堪ったものではない。

家臣が講和工作を進めても、結局、君主であるセソー大公が署名調印せねば終わらないのだ。
書類一式準備して、後は署名調印するだけという手筈を整えても、そこで反発されても困る。
大公位継承権者は全員まだ幼い。当分の間、双方の勢力は覚悟を決めるしかなかった。

75303 ◆CFYEo93rhU:2017/04/23(日) 19:13:12 ID:guO46a5g0
投下終了です。
以前投下したものを二重投下していないかビクビクしています。


『現代知識チートマニュアル』

なる本を、書店で見かけてぱらぱらと立ち読みしたのです。
時間が無かったのでとりあえず軍事チートの項目の中の弾丸について読んでみて……。

中世(近世)のマスケットや前装式の大砲を想定して書かれただろう
部分で、ドングリ型の弾丸は球形の弾丸に比べて質量を大きく、
断面積を小さく出来るから遠距離で速度が落ちず射程が長い。

大砲においては球形の弾丸は地面を転がりながら敵を薙ぎ
倒していくがドングリ型の弾丸は地面に刺さってしまう。

銃なら全部をドングリ型に、大砲なら攻城戦等で射程を長く取りたい時は
ドングリ型の、野戦で範囲効果を求めるなら球形の弾丸を使い分けると良い。

球形のマスケット銃弾は空気抵抗が大きく150mも飛ぶと威力が無くなる。

というような事が書いてあって、首を捻ってしまいました。

ライフリングされていない銃からドングリ型の弾丸撃ったらひっくり返るだろうし、
球形砲弾が跳ね回る地面なら浅い角度でドングリ型の砲弾撃っても跳弾するのではと。
大砲で範囲効果を狙いたいなら榴弾を使えば良いのではないか(中近世の
導火線式の時限信管では狙った場所で起爆させるのは難しかったですが)と。

銃弾の威力に関しても、使う銃の種類や火薬の量で違うにしろ、
150mも離れれば安全かのような書き方は誤解を招くのではと。

中世のスムースボア前提っぽい文脈の軍事チートの項目で
ライフルのラの字も出て来ないってどういう事だと。

他にも、攻城戦ではなく野戦で塹壕を提案していたり、
塹壕に対して遠距離からの弓射なら有効だと書いていたり。

他の政治チートや農業チート等の項目は見ていないのですが、軍事チートの項目でずっこけたので、
面白そうな本だけど参考にするのは危険な臭いがして、購入はしなかったのですが……。
軍事の項目が例外だっただけで、他の項目はそれなりに使えそうなんでしょうかね。

「創作で上手い嘘をつく為の糧にどうぞ」みたいな売り文句でしたが……。

76名無し三等陸士@F世界:2017/04/24(月) 09:38:15 ID:DSlPLopA0
あーこれは意図しない泥沼になりそうな…

マニュアルについては逆に参考資料がなんなのか気になりますね

77303 ◆CFYEo93rhU:2017/04/27(木) 21:20:16 ID:guO46a5g0
いつも拙作を読んで下さる方、感想下さる方、まとめて下さる方、ありがとうございます。

今日はまとめwikiの修正のお願いです。
この投稿自体も、修正依頼があったという履歴になるので、まとめに加えて頂けるとありがたいです。


以前、もう1年半前になりますが、対等な国家間関係において
友好関係を示すための贈り物を「献上」はおかしいのではないか。
というご指摘がありました。

それで「献上」から「贈呈」に変更した方が良いという提案を頂き、納得したのですが、
私の方から『献上を贈呈に直して下さい』と修正を求め、機械的に「献上」から「贈呈」に
変更すると、「献上」という表現で正しい部分も変更されてしまう恐れがあるので、保留していました。

今回、最初の投下分から現段階の最新版まで含めて、全部を確認しました。
「献上」という言葉があっても、それで間違っていない箇所(西大陸編35話など)を除き、
全ての箇所を「献上」→「贈呈」にした方が良いと思いましたので、まとめwikiに関して、
私の間違いによる表現から「献上」→「贈呈」に修正して欲しい箇所は以下のとおりです。


・西大陸編

>外伝的掌編『エレーナ殿下の御訪問』
「イルフェス国王への献上品」
→「イルフェス国王への贈呈品」

西大陸編の短編『皇国に献上された赤人』は、あえて“献上”という言葉を使わせてもらいました。
皇国の担当部署的には贈呈なのでしょうけれど、ここは厳密には間違いだと分かった上でご理解下さい。

・東大陸編

>外伝的掌編『最高のレシプロ戦闘機』あとがきと補足
「皇国人と結婚したリンド女王への“友好の証しとしての献上品”」
→「皇国人と結婚したリンド女王への“友好の証しとしての贈呈品”」


この件の確認と修正が遅れに遅れた事をお詫びします。


あと「献上」問題とは関係ありませんが、

・西大陸編

>外伝的掌編『エレーナ殿下と三八式歩兵銃の話』
「皇国は最大で50万丁の売却が可能」
→「皇国は最大で10万丁の売却が可能」

という部分も数字の修正をお願いしたいです。
50万丁は多すぎました。

78名無し三等陸士@F世界:2017/05/05(金) 09:09:41 ID:6UoAnixE0
西大陸編の 『射撃演習場』 でも、

「本国では50万丁の小銃を用意しています」
「50万丁……ですと?」

とありますが、これも修正対象でしょうか?

79303 ◆CFYEo93rhU:2017/05/05(金) 16:30:52 ID:guO46a5g0
>>76

本編の展開は既に泥沼とも言えますが。
敵の幹部の一人がラスボスと思われていた奴を裏切って独自行動をとるって、特撮とかゲームとかでありがちな展開かな。と。

『現代知識チートマニュアル』の参考資料は、普通の書き方なら章ごとか巻末に纏めて書かれる
ものだと思いますが、5分くらい読み流しただけでそこまで目を通していないので、分かりません。


>>78

私の方の確認不足でした。そちらも修正してください。
皇国軍の中古小銃に関して「50万丁」とある箇所は
全部「10万丁」に直していただけると助かります。

80名無し三等陸士@F世界:2017/05/15(月) 02:54:00 ID:FyX.kvDI0
これはもしかしたらセソー大公としたらリンドの王権を狙っていたのでしょうか。
そう考えると単純に覇権の拡大と帝国に対する予防戦争を考えていたマルローと
王権丸ごと狙っていたセソーでは戦争に対する熱意自体が違っていたのではないかなあ
と想像が膨らみました。

81名無し三等陸士@F世界:2017/05/15(月) 18:59:17 ID:w2nCsok60
>>79
>『現代知識チートマニュアル』
Amazonで作者の情報を見てみましたけれど、軍事的な知識があるような
人には見えない経歴でしたね。
恐らくですが、軍事関係や中近世・近代世界史の資料の方にもあまり
接しておられないように見受けられます。

「チート」という言葉が独り歩きしている昨今から見ても工学系の知識など
も何というか中途半端というか「いい加減な」感じを感じとる次第。
中世ヨーロッパ「最大の」発明であるはずのネジ構造(とネジ回し
と旋盤)の事がさっぱり出てこない時点で、この本の読者層というのは
少なくともラノベや小説書きを想定していない気がします。
ネジとネジ回しが出ればライフリングの重要性は把握できますし、上で
303氏がかかれているような「頓珍漢な」書き方には絶対なりません。
「GUN FACT BOOK」すらこの作者は読んだことが無いのでしょう。
もし、読んでいればこんなことは普通書きません。

鞍と鐙や塹壕の話を出しているのに軍の兵士が履く「軍靴」について
は全然項目を作ってないんですね。
「国民国家」以降の近代軍は兵士に制服と靴を支給しましたが、これが
どれほど重要な要素なのかを説明していない時点で作者の方は世界史
や軍事史・被服史などには全く興味が無いか重要性を理解して
いないのでしょうね。
作者は日本陸軍が日本製軍靴の品質の低さ(歩兵の仕事は歩くこと)
によって兵士の落伍率が高まり、結果的に戦力の低下を招いたこと
すら知らないのでしょう(足への負担の軽減をはかれなかった)。

軍事部分で重要な兵站についても項目を割りさいているようではあり
ますが、近代以前の軍隊では兵站の維持には道路事情の改善と
食料生産を維持できる体制と内政の充実が必要なのにその辺りも
言及されていないのかな?
英文資料に当たらなくても、良質な日本語に翻訳された資料というのは
無料で公開されているものも多々あるものなので、そういう本や文章を
読んでみよう&借りたり買ってみようネットで調べることさえ「面倒臭い」と
考える人が読むものなのかも。
個人的にはゆるゆるな設定の小説を書くに辺り、都合のいい部分の
知識をその知識を語る上での背景説明などは抜きにして簡単に
説明(ガセネタも含めて?)している本ともとれます。
自分が本当に作りたい、設定を練り込んだ戦記物・内政物を書きたい
のならこんなネタ本風味の書籍よりもっといいのがあると思えます。

補給戦―何が勝敗を決定するのか-マーチン・ファン クレフェルト (著)
傭兵の二千年史-菊池 良生 (著)
誤算の論理 -児島襄(著)
西洋靴事始め―日本人と靴の出会い- 稲川 實 (著)
激戦場 皇軍うらばなし-藤田 昌雄 (著)
「GUN FACT BOOK-銃の基礎知識」学習研究社
小林宏明訳-全米ライフル協会(NRA)監修
中世の食卓から-石井 美樹子 (著)
ねじとねじ回し この千年で最高の発明をめぐる物語
ヴィトルト リプチンスキ (著) 春日井 晶子 (翻訳)

アジア歴史資料センター 電子資料センター(データベース/無料)
近現代(1860年代から1945年前後)の日本とアジア近隣諸国の資料
You Tubeにある中近世のリエナクトメントに関する動画
映画「ワーテルロー」(1970)

みんな大好き西洋式火縄銃の撃ち方とか(動画は紙薬莢を使用)
How to fire a Matchlock musket - English Heritage Event
ttp://www.youtube.com/watch?v=2KTS8PQ06Qo

Brown Bess Musket: Three shots in 46 seconds
マスケット銃(ブラウン・ベス)を46秒間に3発撃つ-熟練兵の速度です
ttps://www.youtube.com/watch?hl=ja&gl=JP&v=SJMbxZ1k9NQ

82名無し三等陸士@F世界:2017/05/16(火) 11:37:57 ID:VLGkK9Dk0
なろう作家がターゲットなら別に問題は無さそう

83名無し三等陸士@F世界:2017/05/16(火) 19:30:41 ID:Imfv7Bj20
>>81
長文を書かれているところ申し訳ないのですがこの本の著者が想定している購買層は
なろうで異世界に行って現代知識SUGEEEEEEEEを書いたりそういう物語を見たいと思っている層だろうから
適当なのもしょうがないのです。彼らは辛い現実なんて知りたくないあくまでもSUGEEEって言われたいだけですから
現実的なものを提示しても売れないのです。道路なんてERAI主人公が一言敷けと命じれば勝手に敷かれ
その予算も労働力も魔法のツボから湧いて出てきます。
古代ローマが交通網の整備と維持にどれだけの時間と予算と人員をかけたかなんてどうでもいいのです。
軍制だって国民国家どころか民族主義すら生まれていなくてもぽんっと常備軍が湧いて出たりしても
不思議に思ってはいけません。なぜなら全ては主人公のSUGEEEちーと知識のための舞台装置でしかないのですから。

84名無し三等陸士@F世界:2017/05/17(水) 20:12:38 ID:LKogINsQ0
>>81
長い、一言「Tueee作家予備軍向けだった」とでも纏めてくれ
あんまり愚痴ると自分で書けコールされるぞ

85303 ◆CFYEo93rhU:2017/05/17(水) 21:08:13 ID:guO46a5g0
現代人の異世界召喚ものの設定を考える度に、集積回路を作るとか、
地上人の持ち込んだチート知識のせいで異世界が戦乱祭りになるとか、
現代人というイレギュラーの介入によって激変する異世界というのを
35年も前にやっていたダンバインって偉大だったんだなぁと。


>>80

あっ、あ……(震え声)


>>81

Amazonレビューだと星五つで、重版かかった書籍なんですがね。

調べましたら、新紀元社の『Truth In Fantasy』シリーズの執筆者だったのですね。
一部ファンタジー界隈でロングボウはクロスボウより威力も連射性能も優れてる! 的なイメージ?
が浸透してクロスボウが不遇なの、このシリーズの影響も多少あったのではないかと疑ってるんですが。

ロングボウが優秀でも、イングランドは結局フランス王権取れなかったしドーバーから追い落とされたんで、
幾らロングボウがフランスの騎士を射抜いても戦略目的が達成できなかった時点で駄目だったよ……って話ですが。


> ネジ

ネジはあっても銃のライフル化という発想が無かった異世界を書いている身としては、ちょっと耳の痛い話です。
逆に言えば、発想さえあればすぐにでも造れる前提技術は整っていたので、皇国軍の影響によってライフルドマスケットが生産されつつあるとしていますが。

ネジも、部分的には古代や中世初期からあったようですが、民需や軍需で本格的に使用されたのは中世後期か近世からでしょうか。
日本でも火縄銃生産で、銃身となる筒の生産は問題無かったが、ネジの部分で難儀したという話はよく出ますね。

旋盤の話だと、大日本帝国軍で部品の標準規格化が出来ず、組み立ての段階や現場で部品の寸法の辻褄を合わせて
いたというのも、結局旋盤の性能が低かったり数が足りなくて、良質の部品が供給出来なかった問題に行きつきますね。

戦艦大和は国産戦艦だけど、じゃあその主砲を削り出した旋盤はというとドイツ製ですからね。
スクリュープロペラの加工とか、蒸気タービンエンジンの加工とかも結局欧米の工作機械が無いと造れない。

逆に言うと欧米の高品質な旋盤を輸入出来て初めて、戦艦大和は誕生しえたというか、何というか。
そういう基礎技術から全部国産だったら、外面だけは何とか取り繕えても実性能が危うかったでしょうね。

駆逐艦島風のボイラーは日本海軍が丹精込めた特注品の高温高圧ボイラーだったけど、
アメリカはそれと大差ない性能のボイラーを量産してたと聞くとげんなりします。

> 軍靴

近世ヨーロッパの常備連隊では、靴職人を雇って居ましたね。

> 兵站

兵站関連の食料事情に関しては多分政治チートと農業チートの項目にあるんだと思います(未購入ゆえ未確認)。
恒例のじゃがいも栽培とかノーフォーク農法とかも載っているようですし。

というか20世紀以降の現代軍でもなければ、軍隊の食料って最初の10日分とかを使い切ったらあとは基本現地調達では?
適正価格で購入するか、武力を背景に略奪するかの違いはあれど、現地調達が基本なのは19世紀になっても変わりませんよね。
食料を現地調達するのが難しい場所では道路や港からの補給頼りですが。

> 映画「ワーテルロー」(1970)

野戦砲兵が普通に居る近世で、グリーンジャケットとかイェーガーとか、ヴォルティジュールとか居る時代だし!
いわゆる中世ヨーロッパ風の映像資料とするには、『バリー・リンドン』なんかもそうですが時代が違うでしょう。
兵士は勿論、士官(中世で言えば騎士)も鎧着てないですし、胸甲騎兵は中世の騎士とは違いますし。

『ROCK YOU !』とか『ブレイブハート』くらいが、中世ヨーロッパの(主に戦闘や戦争を題材にした)映画作品になると思います。

86303 ◆CFYEo93rhU:2017/05/17(水) 21:08:48 ID:guO46a5g0
>>82-84

なろうにそういう作品群があり、一定の需要がある事は私も理解していますし、否定するつもりは毛頭ありません。
私も、たまにそういうの読みますし、私なんかより文章上手いし執筆速い人は多く居ますからね。出版化された物は特に。

それに裾野が広ければ頂点も高くなるという意味で、むしろそういう作品群には肯定的な部類だと思います。
アニメ化までされた『ゲート』等の影響もあるでしょうが、自衛隊を含む転移ものは増えてる感じですし。
勿論、増えたら増えたで検索が面倒臭くなる弊害はありますが、それは私にとっては嬉しい悲鳴です。

ただこの『現代知識チートマニュアル』に関しては、著者側から
「異世界チートというフィクションを書く為に、創作に深みを与えるために本当の事を知ろう。フィクションだからこそ知ろう。
 前提知識を持って嘘を嘘と知った上で書くのと、前提知識なしに知らずに嘘を書いてしまうのは違う。この本はその為の創作資料だ」
というような感じの売り文句(前書きに、そんな事が書いてありました)で並んでいましたから、
そこに書かれている事実内容に関して疑問があれば、突っ込み受けても仕方ないとは思うのですよ。

勿論それは、なろう作家に対してではなく『現代知識チートマニュアル』の著者に対しての突っ込みです。
アマチュアによって無料公開されているなろう作品と違って、プロによる最初から商業出版されてる書籍ですし。


私自身、文章は上手くないし、執筆は遅いし、数多のなろう作家を笑える立場ではありません。
仮に拙作が商業出版されて50万部売れてアニメ化されてBlu-rayも1万枚売れたとかの実績があったとしても、なろう作家を蔑むような事はしたくないです。

少なくとも私の場合、発表している場所がなろうではないというだけで、既存作品に影響されて「なんか楽しそうだから似たようなの書いてみたい!」をやってるだけです。
そしてそれは、数多のなろう作家のやってる事と同じだと思います。
なろう作家の中には、最初から商業出版を目的に、その布石として作品投稿している人も居るでしょうが、そういう人は少数派だと思いますから。

87名無し三等陸士@F世界:2017/05/20(土) 11:15:25 ID:7Y6/XtG60
皇国が海でなく大陸ド真ん中に出現してたら展開も大きく違ったんだろうなー

88名無し三等陸士@F世界:2017/05/28(日) 22:21:16 ID:duMIjbdY0
あっさり滅んでゲームオーバーかな…

89名無し三等陸士@F世界:2017/05/29(月) 01:28:59 ID:FyX.kvDI0
海という防壁がない状態だから周辺諸国が異分子の排除に乗り出し
全方向から攻められ物理的に陸軍の対処能力を超え終了だね。

仮にある程度友好的ファーストコンタクトを取ったとしても
他国の領土に無理やり割り込むわけだから莫大な賠償金の支払いを課せられ
輸入の為の外貨が無くなりお金で食料が買えなくなる事態に国内の貨幣価値が暴落
ハイパーインフレーションが巻き起こり革命勃発
周辺国としたらなんだかよく分からないけど王制を倒す革命なんて絶対に許さない
と波及を恐れ出兵でゲームオーバーかな。
短編なら一本かけそうなネタだけど連載は出来ないだろうね。

90名無し三等陸士@F世界:2017/05/29(月) 10:16:02 ID:duMIjbdY0
というか、海運に頼ってる状態の国が海運使えなくなる時点で経済が持たないと思う。

91名無し三等陸士@F世界:2017/05/29(月) 10:30:13 ID:OgQZplZU0
大陸ド真ん中だと日本海やら太平洋やら領海が超でっかい塩湖になってたりして……
東西が外界と繋がってないと潮の満ち引き無くなって大騒動やけど

92303 ◆CFYEo93rhU:2017/06/03(土) 00:21:25 ID:guO46a5g0
まとめをして下さった方、早速の対応ありがとうございました。
この事を前回の投稿に入れるのを忘れており失礼しました。


>>87-91

日本全土がそのまますっぽり入る巨大な塩湖の中に
出現して、湖の沿岸国の港が使えれば……?

でも相当数の船舶が無駄になりそうですね。

93名無し三等陸士@F世界:2017/06/03(土) 06:53:55 ID:NG1VpV4A0
元は陸地だと……日本が領海ごと召還されて交通路寸断、国家が幾つも消滅し交通路もズタズタ
悪夢やな

94名無し三等陸士@F世界:2017/06/05(月) 12:20:31 ID:3m2PwJK.0
比重の軽い真水の供給で酸欠を起こした領海が死の海になるかも
やっぱ作中設定のままが最善か

95303 ◆CFYEo93rhU:2017/06/07(水) 21:00:11 ID:veNW9HQ60
今年も日本で開催されたエアレース。
あれを見ていると、急旋回で速度が落ちるのは致命的なんだなと凄く良く分かりますね。
無理な急旋回よりは、多少大回りしても速度を保ったまま飛ぶ方が結果的に速いと。

最高速度120km/hの飛竜を追う皇国軍戦闘機は、ある程度失速がやむを得ないので意外と戦い辛いかもしれないと改めて感じる機会でした。


> 大陸の中に召喚

ロシア召喚とかドイツ召喚とか、元から海とは一切接していないスイス召喚とか、でしょうか。
異世界でも永世中立政策を貫くスイスとか、面白そう……。

アジアで全く海に面していない国はモンゴルとかラオスとか、あとインド北部とか中東の小国ですね。

96名無し三等陸士@F世界:2017/06/08(木) 01:13:10 ID:/YDgp0mI0
逆に異世界からコンニチワしても良いのよ?
次元に手が届きそうな超文明の実験が失敗して五大湖やカスピ海に研究所が転移

97名無し三等陸士@F世界:2017/06/08(木) 07:50:57 ID:FyX.kvDI0
>>95
モンゴル、、、今度こそ地が果て海が尽きる地へとモンゴル大騎馬軍団が進軍を始めるんですね!

98名無し三等陸士@F世界:2017/06/13(火) 08:09:13 ID:YJ6nvwC60
それ、モンゴルが民族ごと地球からリストラされただけ……
ぶっちゃけ幼女戦記の主人公が増えたバージョン

99303 ◆CFYEo93rhU:2017/06/14(水) 20:25:04 ID:C5LTI3lU0
天皇陛下の退位、譲位に関して「三種の神器」は贈与税が非課税。
という話題を見つけて、そういえばこういう古代や中世から続く王家は何かしら
持っているレガリアに、現代国家はどう対処してるのだろうかと興味がわきます。


>>96

帝国の竜神様……はちょっと違いますか。
異世界と“門”で繋がる系とか、異世界から一人ないし数人転移してくる系はなろう等で
見た事ありますが、異世界から現実世界に国ごと転移系は、私は見た事ありません。

次元の壁を超えるほどの技術を持つ異世界人が転移してきたら、
その超技術を得るため第三次世界大戦が勃発しそう……。

>>97

現代モンゴル軍より中世のモンゴル帝国の方が強そう……。
でも海に弱いから、世界は一つの大陸という異世界が好都合ですね。
あと森林や山岳が多い地形も不都合だ……殺風景な異世界になりそうです。

>>98

つまり皇帝(可汗)も兵士も将軍も全員幼女なのですね!

100名無し三等陸士@F世界:2017/06/17(土) 08:49:22 ID:WXa0Ik3I0
そして全員パラノイア……

101名無し三等陸士@F世界:2017/08/01(火) 04:05:45 ID:VLGkK9Dk0
大陸も沿岸部は別として内陸部は沃素が足りんし日本が領海ごと喚ばれたのは意思もつ惑星の栄養補給だったり

102303 ◆CFYEo93rhU:2017/08/07(月) 23:53:07 ID:C5LTI3lU0
303です。

5000兆円欲しいです。

異世界チート、俺TUEEEE、と呼ばれる系統のやつで、このネタ使えそうだと思いました。
『5000兆円貰う代わりに異世界に飛ばされる権利を手に入れた』みたいな。


>>101

個人が召喚されるものだと、世界を救う勇者を呼ぼうとしたみたいな設定も多いので、
国ごと召喚であっても異世界の意思が日本を召喚したみたいな設定でも良いと思います。
「これが世界の選択か……」とか言わせれば万事解決。

ムー大陸なども、実は海底に沈んだのではなく異世界に国ごと転移させられたんですよ。

103名無し三等陸士@F世界:2017/08/10(木) 00:45:47 ID:sWEHjDTA0
>>87
つ陸上の渚
船があっても(相手に)港が無いし、線路や道路を一から作らなくてはならないしで大変だよね!

>>102
GDPの世界合計の半分近くを一個人が保有していたら世界経済が死ぬ。w
どういった形で持つのか、そもそも円として流通している額よりも多くなるが、とか色々と突っ込みどころが。
あと、5000兆円貰っても、異世界行ったらただの紙切れ、金属の塊だから・・・。
異世界転移は本当に地獄だぜ。ヒャッハー!

104303 ◆CFYEo93rhU:2017/08/11(金) 09:00:34 ID:C5LTI3lU0
>>103

異世界転移は真面目に考えると地獄だから、何らかのチートは必要です。
「俺TUEEEE」ではありませんが、古典の不思議の国のアリスやオズの魔法使いだって迷い込んだ世界で普通に会話(主人公は英語を話している筈)が成り立ってますし。動物や無機物とさえ会話してます。
これだって突っ込もうと思えば「異世界なのになんで言葉が通じるんだ(主人公が異世界言語を習得するところから始めるべき)」と突っ込めますけど、それは野暮ってものですし、そもそも魔法の世界だから言葉が通じても不思議ではありません。


・パターン1-1(王道チート)
「チート」ですから、現代日本と異世界の物価を比較してで5000兆円分(インフレなどは考えない)の「何か(異世界通貨でもいいし、ギルドカードのような魔法のプリペイドカードの仮想通貨でもいい)」ですよ。
つまり現代日本で宿屋一泊5000円、異世界の都市で宿屋一泊金貨1枚なら、5000兆円≒金貨1兆枚分という換算(宿屋だけでなく食事やその他を総合的に比較した場合の平均値)です。

勿論、異世界に突然そんな大量の現金が流入して経済が大混乱! なんてのも都合が悪いから無視無視! 主人公がどんな大量に散在しようが物価は変わりません。
RPG(MMORPGは除く)では、カンストになるまでお金稼ぎして、それを散々使ってアイテム爆買いしても、ある町や村の宿屋の値段、アイテムの値段は変わらないでしょう?

現実的に考えれば、主人公の所持金カンストする程度で揺らぐ経済規模ではないと考えるのが自然なのでしょうが。
1G≒1000円くらいのゲーム世界で、主人公が999,999,999G持っているとしても、円換算すると約1兆円。
個人資産として見れば莫大ですが、世界の経済規模から見れば僅かです。

1兆円なら問題にならなくても5000兆円だと問題になるだろうなぁ、というのはまあ……それで世界経済がおかしくならない事も含めて「チート」なのだと“作者と読者が”信じるしかないと思います。

・パターン1-2(覇道チート)
莫大な現金が流れ込んでインフレが起きるが、主人公はその前に5000兆円分の異世界通貨を不動産やら宝石やら貴金属にちゃっかり変えていた。というのでもいいかと。
チューリップだって投機対象になるのだから、ハイパーインフレとバブル景気のダブルパンチが異世界を襲うかもしれません。
パン1個が1億円みたいに異常な物価高騰が進んだ異世界で、地歩を固めた主人公が「パンが無ければ蕎麦でも食ってろ」とか上から目線で庶民を眺めるのも一興。


・パターン2-1(異世界には持っていけなかったよ)
女神様「あなたの(日本の)銀行口座に5000兆円振り込みました。それでは異世界に行ってらっしゃい」
主人公(特に何も持たず異世界に放り出された俺にとって、異世界に転移したという現象そのものがチートだったんだ)

・パターン2-2(主人公、日本を救う)
女神様「5000兆円のうち、贈与税が2749兆9999億9539万5000円。残る2250兆飛んで460万5000円があなたの分です。あ、実は私がお母さんという事にすれば、控除額で240万円有利になりますよ!」
主人公(240万なんて誤差じゃねえか。持ってかれた贈与税だけで国と地方自治体の借金ちゃらにしてまだ余りまくるじゃねーか。良かったな、念願の財政再建だぞ!)


・パターン3(日本以外で日本銀行券が通用する訳ないじゃん)
「5000兆円貰えるなら何でも出来る気がする!」と意気込んで異世界に行ったら「異世界ではただの紙束でした」というオチもありかとは思います。
一万円札なら5000億枚、一円札だと5000兆枚なので、紙の分量だけで凄まじいものとなり、それはそれで何かチート材料に使えそうな気もします。
アルミの一円硬貨だと50億t。精製済みの純アルミだし、魔法のある世界なら素材として活用出来そう?

記念硬貨ですが、法定通貨としても使える10万円金貨とか1万円銀貨とかなら、純金、純銀製だから使いづらいというのはあっても異世界で無価値とはならないでしょうね。
異世界なら勝手に鋳つぶして貰っても法律的に問題無いでしょうし。
凄まじく重くて嵩張るので「アイテムぶくろ」は必須です。

105名無し三等陸士@F世界:2017/08/13(日) 02:11:57 ID:qcQvYnGo0
チートを外部に置くのなら問題は無い筈、掘ってくださいと言わんばかりの資源島とか
昭和20年代までなら、今みたいな一息付けるまでに燃費悪いカラダが保たぬって酷さも無視できる(かも)
平成どころか昭和40年代でも、資源島の経営が軌道に乗る前で力尽きてヒャッハー待った無しだわ

106名無し三等陸士@F世界:2017/08/16(水) 00:40:34 ID:9Ot53Ybo0
少なくとも資源チート島はやらにゃ日本召喚モノは成り立たんわな

つか、史実なんて開戦劈頭に製油施設やタンクまでセットで無傷で占領出来た!
という、資源チート島が可愛く見えるくらいのご都合主義な資源地帯ゲットに成功してる位だし。
史実帝国日本だと採掘能力も精製能力も乏しいので、超良質油田が露出して黒い湖になってる島には上陸しやすい砂浜が!位な必要があるハズ

普通に資源が地下に埋蔵されてる島を入手しました、程度では軌道に乗る前に間に合わない可能性が・・・

107名無し三等陸士@F世界:2017/08/17(木) 11:23:25 ID:RgntUXaI0
可能性ってか、間に合わないだろう、技術者の育成から始める必要がある

108名無し三等陸士@F世界:2017/08/18(金) 20:39:47 ID:KSdTVI4I0
別に技術者が居ないわけじゃないぞ、ソ連と揉めながらもオハ油田を操業してるしね
時期によっては満州で合成石油作り出している
ただ、如何せん操業規模が小さいからなー
日本全体の需要を支えるレベルの大規模石油プラントをさくっと作るのはかなりの難事業だろうね

あと、もっと問題なのが探査能力の低さ。満州で欧米の探査会社に頼らず自力で探査した結果、
大慶油田と遼河油田の結構近くで試掘までやってたのに見逃して終わっている。
だもんで、油田が露出していないと早期着手は難しいって話。

109303 ◆CFYEo93rhU:2017/08/18(金) 20:51:57 ID:C5LTI3lU0
ドラえもんの大長編の『ドラビアンナイト』では、未来の旅行グッズとして「現地通貨が幾らでも出て来る袋」(正式名称忘れました)がありました。
それを使って街で買い物したり、船をチャーターしてましたが、ドラえもんが商人(のび太とかは召使い)という設定で金貨をジャラジャラ出してましたから、使い方によっては相当ばやい道具ですよね。
ドラえもんやのび太たちは人が良いから、船のチャーター料金ぼったくられてるのに気付いてませんでしたし。

5000兆円をぽんと渡されるより、必要に応じて必要なだけ引き出せるドラえもんの道具の方が便利そう……。

>>105-108

近くに資源島があっても、現実の昭和10年代の日本だと技術的に未熟で自力開発出来ない
(全く出来ないか、出来ても欧米ほど高効率に出来ない)分野があり、せっかくのチートを
生かせないので、「全ての必要資源が使用可能な状態で開発済み(何故か日本の工業規格に
適合)」くらいの資源島である必要すらあるのではないかと、考えるようになりました。

鉄鉱石ではなくて純鉄が、ボーキサイトではなくて純アルミが転がる資源島! その他も純金や純銅などがごろごろと転がっています。
どうせチートなのだからチート度合が千か万かの違い。少なくとも近代化以降の日本が助かるにはそれしかないのではないかと。

これなら、現代日本召喚ものでも使える設定です。
液体水素で満たされた超低温の湖でも、核融合炉ですぐ使えるトリチウムの湖でも何でもアリ……。

ただ、いわゆる資源島はご都合主義展開過ぎて萎えるという感想も多いので、そういうご都合主義無しでやっていくにはどういう条件が必要か、考えたりもします。
別ベクトルのチートしか思いつかないのですが。

110名無し三等陸士@F世界:2017/08/19(土) 01:19:02 ID:slz5Sa/Q0
曲がりなりにも自律しうる時代で無人の可住惑星にでも渡ればOKかもな……チート無用の状況こそ至高のチート
つーか石油/鉄/Etcなんて手段であって目的じゃ無い、人は金属や石油を使う為に生きてるんじゃないんだから
ただし戦記モノ好きには詰まらん物語しか出来ないだろう

111303 ◆CFYEo93rhU:2017/08/19(土) 23:06:08 ID:C5LTI3lU0
本編の続き投下します。


現代文明に必要な資源が無くなって徐々に衰退していくしかない世界というと、ゾンビアポカリプスものを思いつきます。
たいてい、警察や軍隊が出動するも手遅れで終末へまっしぐらか、ゾンビが発生した地域を爆破して強引に終わらせるかですが。

異世界で、死霊術師とかが居る世界だと、起こりうる危機ですね。
不死者を浄化する神聖魔法とかもセットであるのがつきものですが、神聖魔法使いの
処理能力を超えて不死者が氾濫し出したら異世界版ゾンビアポカリプスになるでしょうか?

自衛隊(化学学校)が極秘裏に開発していた禁断の薬品トライオキシン246が異世界転移した日本と異世界人を襲う!
自衛隊や警察と異世界の冒険者や魔法使いが協力して、何とか事態を収束しようと試みるものの……。とか。

>>110

異世界開拓物語になってしまって、戦記ものになりませんからね。
それに無人惑星だと、異世界人(原住民)との交流も無くなりますし。

石油はともかく、鉄すら無くても成り立つ時代となると、石器時代か青銅器時代……。
逆にそこまで遡ると、最初から異世界に適した文明として発展するでしょうね。
異世界の人類が現実の人類と同じ姿で交配すら可能なのは、まさか!?

112303 ◆CFYEo93rhU:2017/08/19(土) 23:07:21 ID:C5LTI3lU0
極北洋、シテーン湾。
闇夜の中を、木造帆船の艦隊が走っていた。
それは確実に、目的地に向かって進んでいた。

「集結したのは13隻、陸兵1900か……」
「残りを待ってから上陸しますか?」
出発時は19隻だった艦隊は13隻しか居ない。約3割が脱落したのだ。
「皇国軍艦が居る筈だからこれ以上は待てん。霧が晴れたのは上陸準備には
 好都合だが、それだけ敵に発見される危険も高まる。作業は慎重に急がせろ」
セソー大公国海軍の戦列艦であり派遣艦隊の旗艦となる90門艦プランヴィーネの艦橋で、ノイリート島への
奇襲攻撃任務を指揮するギューナフ海軍中将は、上陸部隊指揮官であるヴィットール陸軍中将に詫びを入れた。

旗艦プランヴィーネは、乗船していた陸軍の旅団司令部を先に上陸させると、
各マストのゲルンスルのみを展帆し、微速で残りの艦の周囲の警戒行う。
灯りを全く点けずに作業したいのはやまやまだが実際それは難しく、
被発見のリスクを覚悟して点けざるを得ないので、その対処だ。

霧や夜に乗じてノイリート島に陸軍を上陸させるという作戦だったが、揚陸準備は島からある程度離れた場所でしか出来ない。
母艦となる戦列艦やフリゲートから、上陸用の小型舟に乗り換えて浜から上陸する訳だが、
手漕ぎボートでは長距離を移動出来ないから、陸軍部隊が揚陸を完了するのは時間がかかる。
上陸地点が限られる島の場合、防衛用の砲台もその周辺に指向されて配備されるのは当然だ。
上陸する側は予め何らかの手段で砲台を無力化してからでないと上陸中の被害が甚大になる。

セソー大公国軍からすれば、自分達で構築した要塞や陣地の位置や数は
把握しているから、大胆な奇襲上陸作戦に打って出られたとも言えたが、
ノイリート島からセソー大公国軍の将兵が引き上げた以上、要塞砲の操作員が居らず全体的に
守備兵力が少ないと言っても、特に重要な防御地点についての情報は敵方に知られているのだ。
皇国軍とセソー大公国軍の参謀の間で「上陸するならどこか」「緊要地点はどこか」と問われれば意見が一致するだろう。
奇襲が奇襲として成立するかどうかは、セソー大公が楽観視するよりずっと危うい賭けであった。

なので上からは奇襲しろとの命令だったが、実際は強襲作戦を織り込んでいる。

ノイリート島要塞を海側からの砲撃で無力化させるには戦列艦で20隻程度の砲撃が必要。
上陸開始から完了まで数時間の優位があれば良いのだが、それが上手く行かない事も見越して
戦列艦が囮になって皇国軍守備兵の注意を向けているうちに、別の地点から上陸する手筈なのだ。
本来上陸に向かない地形に強行上陸する分効率が落ちるが、集中砲火を受けて完全失敗するよりは良い。
囮となるのは2隻の戦列艦から成る分艦隊で、コマントル代将の指揮する74門艦ナングリューが旗艦。
乗船する陸軍は2隻合わせて100人弱。上陸指揮官も将官や大佐ではなく少佐であった。


シテーン湾に派遣された皇国軍の戦闘艦は、リンド王国のセルシー沖で給油した駆逐艦の蓮と菱。
武装は12.7cm単装砲3基、20mm連装機銃2基、12.7mm単装機銃3基、53.3cm連装魚雷発射管2基、爆雷投下条2基。
水雷兵装は搭載しておらず魚雷発射管や爆雷格納庫は空であるが、無い袖は振れず致し方なかった。
その代り、主砲弾と機銃は定数一杯の量を搭載していた。大規模な飛竜編隊にでも襲われたら
それでも危ないが、“飛竜母艦が出て来ない限り大丈夫”という事で送り出された。
唯一の危険である飛竜母艦が出て来ないとする根拠は無いのだが、強いて言えば“悪天候だから”である。
セソー大公国軍は飛竜母艦を1隻しか保有しておらず、言わば虎の子であるから運用は慎重になるだろうし、出て来たとしても、
陸上の飛竜基地や飛竜陣地と違い、1隻の飛竜母艦で運用可能な竜の数ならば襲撃を受けても捌き切れるという勝算もあった。
爆弾からの回避という点においては、的が大きく舵の利きが鈍い戦艦や空母より駆逐艦のような小型艦の方が優れている。
飛竜対策として他には、昼間は大陸に近づかず、近付く場合は夜間のみに限定する。

上陸のし易さだと、揚陸地点は5ヶ所に絞れる。
十数人といった規模で潜入するならば他にもあるが、
数百人や千人超の規模で陸兵を揚げるならその5ヶ所だ。
加えて中〜大規模な港が2ヶ所(小規模も含めれば7ヶ所)ある。

電探を装備していない艦なので、夜間や悪天候での敵発見は困難だ。
電探装備の巡洋艦と比べれば、索敵可能な範囲は数倍以上違う。
故に、艦だけで不足な分を島からの索敵に頼っている。

113303 ◆CFYEo93rhU:2017/08/19(土) 23:07:51 ID:C5LTI3lU0
ノイリート島の西海岸砲台がある砦付近に帆船が現れたという連絡を
受けた蓮の艦長兼隊司令は、それが敵の本隊なのか判断に困った。
報告によると見える範囲では2〜3隻というから、何とも難しい。
それが先鋒で後続部隊があるかも知れないし、それだけが辿り
着いたのかも知れないし、それは囮で本隊は別の場所かも知れない。

「見逃すというのも危険だろう。左砲戦用意」
皇国軍の2隻の駆逐艦は増速し、帆船の艦隊を探照灯で照らし出す。
「敵は3隻ではなく2隻でしたね」
「まだ上陸もされていないな。早めに叩くぞ」


皇国艦の強力な灯りで照らし出されたのは戦列艦ナングリューであった。
発見された後続艦は、ライトを載せたボートを曳航していたが、それを切り離す。

セソー大公国の艦隊は74門艦と54門艦で、どちらも戦列艦である。
隻数だけで言えば互角で、一方の艦隊は戦列艦のみで構成されている訳である。
小規模ではあるが、普通なら激しい砲撃戦、銃撃戦、白兵戦が起きておかしくないものだ。

甲板では水兵達が慌ただしく動き回り、砲門が開き、装填完了した砲から次々に突き出される。
ナングリューの艦橋ではコマントル代将が作業を見つつ、懐中時計とも睨めっこしていた。
リンド王国の主力艦隊すら壊滅させた相手を前に、1分でも長く足止め戦闘をせねばならないのだ。
「準備出来次第、撃たせろ。引き付けて狙う必要は無い。どうせ相手はその距離まで来ないだろうからな」
彼我の距離は4kmを超えて5kmに迫るようなもので、通常の交戦距離とはかけ離れている。
だが皇国艦は長距離砲戦にて一方的に戦場を支配するという情報は広く伝わっている。
故に、通常の交戦距離である1〜2シウス以内は望むべくもない。

2隻の戦列艦から放たれた約60発の砲弾は皇国艦の遥か手前に水柱を立てた。
舷側の砲列甲板に並ぶ主力砲だけでなく、対空ロケット砲まで使って皇国艦隊を威嚇する。


「敵艦発砲! 敵艦発砲!」
もう少し距離を詰めてから発砲開始しようとしていた矢先、蓮の艦橋は慌ただしくなった。
飛竜からの空襲を除けば、水上艦同士の戦闘では常に先手を取ってきた皇国海軍が先手を取られた。
しかも、皇国海軍が得意とする夜戦での事。艦橋内の雰囲気は一変した。
「応戦! 砲撃始め!」
戦列艦の発砲から十数秒後、砲弾は蓮の手前1000m付近に着弾した。
狙いは全く不正確で、散布界も大きく、そもそも届くのかどうかすら怪しいものであったが、
この砲撃によって2000mや3000mといった距離に近づいて精度の高い砲戦をするという選択肢が潰された。
重装甲の戦艦ならともかく、装甲板の無い駆逐艦では、万が一があり得るのだ。
特に露出している艦橋構造物や主砲に被弾したら目も当てられない。

お互い腰の引けた“無様な砲撃戦”が始まった。

114303 ◆CFYEo93rhU:2017/08/19(土) 23:09:54 ID:C5LTI3lU0
短いですが、投下終了です。
砲戦距離100mくらいなら、結構いい勝負になると思うのです。

115名無し三等陸士@F世界:2017/08/20(日) 07:07:41 ID:slz5Sa/Q0
投下に乙
着いたばっかで疲れ果ててるだろうに公選して上陸かー
宮仕えは辛いやね、相手は通信で情報も送れるのに

116名無し三等陸士@F世界:2017/08/21(月) 09:20:38 ID:KSdTVI4I0
乙乙

まさかの日本海軍及び腰
装甲が基本無くて船体外板の普通鋼10mm程度が便りだから下手すると戦列艦相手に不覚を取りかねないのか・・・
史実の戦列艦だと最大級のカノン砲でも精々40ポンド級(20kg)砲丸なので多分大した事は無いだろうけど
(駆逐艦の12.7cm砲弾(25kg)より軽い)
けど射程圏内だと戦列艦のずらっと並んだ砲に一斉に撃たれると見た目怖いね

117名無し三等陸士@F世界:2017/08/24(木) 21:41:01 ID:FyX.kvDI0
お疲れさまでした。
まあこれは駆逐艦乗組員の責任ではないですよねえ。
無様な砲撃戦というのなら戦略要衝なのは分かっているのに
敵を舐めた上にケチって艦を出さなかった艦隊司令部、軍令部の無様ですね。

118303 ◆CFYEo93rhU:2017/08/26(土) 22:28:10 ID:C5LTI3lU0
>>115

軍隊という社会は、今も昔もそんなところではないのでしょうか。
現代の先進国で漸く、少し待遇が良くなったといった程度で……。

たとえ電波通信があったとしても、哨戒網や監視に発見されなければ通報も何もありませんから。


>>116

そこなのですよね。
海軍が何をそこまで恐れるのか、というのは書いていてあまり自信が持てませんでした。
日清戦争(皇清戦争)より昔の世代の、昭和10年代の時点でも骨董品の大砲ですから。
陸軍の方が、生身で曝露される兵士の突撃時に大砲を警戒するのは解るのですが。

一応、理屈をこねるなら、この旧式駆逐艦の能力と派遣された隻数に対して、与えられた任務が過大でした。
ノイリート島周辺海域の哨戒と、敵性対象(現時点ではセソー大公国のみだが、マルロー王国残党が襲って来ないとも限らない)への適切な対応です。
本来なら巡洋艦が出て来るべきなのですが、後の最終攻勢の為の準備期間でシテーン湾に巡洋艦は居ません。

さらに、以前のメッソール沖海戦(東大陸編の小ネタ(本編関連)『ディギル海賊団』参照)で同様の旧式駆逐艦が損傷を受けて、危うく沈没しかけた事があります。
この時は旧式とはいえ戦艦が居たのと違い、今回は駆逐艦のみ(潜水艦は浮上して姿を見せる訳にはいかない)なので、慎重になり過ぎた……とかでしょう。


>>117

戦力をケチっているのはまあ、事実ですが、敵を舐めて「この程度で十分だ」と考えてる訳ではないです。全く舐めてないとも言いませんが。
船舶用の重油の手当ては、皇国国内の運輸、神賜島関連、皇国から東西大陸の輸送船の順位が高く、純粋な戦闘艦への手当はケチってます。
海賊騒ぎもあったし、むしろ巡洋艦や駆逐艦は輸送船の護衛艦としての需要の方が高いから、余計に皺寄せが最前線に行くという感じで。



戦列艦やフリゲート(等級艦)の長砲としては
1バルツ(12ポンド級)、1.5バルツ(18ポンド級)、2バルツ(24ポンド級)、3バルツ(36ポンド級)
が多く用いられています。接近戦用として0.5バルツとか0.25バルツ、0.125バルツ砲もあります。
今回の74門艦は4バルツカノン砲(42ポンド級)は積んでません。カロネード砲は積んでますが射程が……。

あとこの世界の大型軍艦で常用されるのは、多連装ロケットランチャーです。

距離100m以内で戦う。斬り込み可。双方撤退せず戦闘不能になるまで続ける。
という設定なら、皇国艦の砲や機銃が制圧するのが早いか、戦列艦の一斉射撃で皇国艦が沈黙するのが早いか?


ここの掲示板ではなく、どこか他の掲示板かブログかツイッターなどの情報だったと思うのですが、
対戦車砲どころか昔の大砲でも九七式中戦車の装甲は抜けるというのをどこかで見た記憶があるのです。

江戸初期のカルバリン砲なのか幕末の四斤山砲なのかでもだいぶ違うのですが、
まあチハたんはそれだけ装甲が薄くて脆い戦車という話なのだと思います。

20〜25mmの表面硬化装甲を貫徹しうるという意味にしか取れないのですが、この話、本当でしょうかね。
幾らチハの装甲が弱いといっても、5mくらいの距離から撃っても砲弾の方が変形して終了ではないか。

日本の装甲製造技術は低かったから、他国の同じ厚みのFHAに比べると防御力が弱かった
という話は聞きますが、だからといって亜音速のただの鉄球弾に貫通されるのはあんまり。
日本製は性能のばらつきが大きかったので、たまたま不良品の不良部位に
当たったら割れるかも知れないとか、そんな話の気もするのですが……。

119名無し三等陸士@F世界:2017/08/27(日) 12:34:49 ID:9Ot53Ybo0
ID変わってるだろうけど>>116です

>>118
>慎重になり過ぎた……とかでしょう。
自分は”無被害に慣れ過ぎた”と考えればしっくり来るのでは、と思います
国を問わず、人でもフネでもポンポン失う時はその被害に案外慣れてしまうもので、
史実日本海軍もソロモン沖の苛烈な消耗戦に慣れ過ぎた結果、気付いたら決戦時の駆逐艦も満足に揃えられない程艦を無為に失いました。
逆に平和になり、まったく艦の喪失が無い時代になると、艦が事故って凹むだけで大騒ぎです。

海戦毎に駆逐艦が1,2隻失われる程度の脅威度でもあればここまで腰が引けるようにはなっていなかったんじゃないかな…と

>対戦車砲どころか昔の大砲でも九七式中戦車の装甲は抜ける
カルバリン砲(18ポンド)とか喰らって無事な戦車はそう居ないと思う・・・
てのは置いておくとして、出所不明な話だと「小銃弾でも貫通する」なんて話まで横行してたからなぁ

ただ、当時の陸軍戦車の鋼板は陸軍官僚の無知により硬度最優先な為、浸炭焼入硬化後の高温焼戻しをしなかったそうで
その結果鋼板の外と内側に応力差が発生し(硬化した外部とされてない内部が鋼板内で引っ張り合う)、
製造後に勝手に割れる事もあり、また、その場で割れなくとも衝撃が加わると簡単に割れる要因になるので
冗談抜きに四斤山砲の至近射撃で絶対に割れないとは言えないのかも。
戦車砲弾についてもAPCR(硬芯徹甲弾)どころか弾芯割れや滑りを防ぐ軟鉄被帽のあるAPC(被帽付徹甲弾)すら無く
タダでさえ小口径なのにずーっと単なるAPなので弾が砕けやすかった、という事もあり、
防弾と貫徹、双方から見てかなり遅れていた感はありますね

120名無し三等陸士@F世界:2017/08/28(月) 00:08:19 ID:FyX.kvDI0
戦前の日本の鉄鋼冶金技術は一部は国際水準にまで到達していたのですが
全体としてみると周辺技術が育っておらずまだまだ途上国のそれでした。
なので主に鉄鋼の原料である銑鉄や屑鉄を輸入して国内の鉄鋼メーカーが鋼材にするという産業体系でした。
ところが取引の大きいアメリカをはじめとする連合国がそれらを禁輸し鋼材の原料が無くなってしまったのです。
国内には大きな鉄鉱山はなく大陸の鞍山に活路を求めますがここの鉄鉱石は質が悪く
なんとか鋼材にしても質自体が大戦前より悪くなってしまいました。
普通はここで海外に頼れないなら自前で技術開発をし質の向上を目指すのですが
セクショナリズムと予算不足、さらには鞍山鉄鉱石を銑鉄にするために小型高炉を大量建造したのはいいが
電力不足でろくに動かせないというお粗末な有様でどんどん質は下がっていきました。

結果M2機関銃に撃破される中戦車という笑えない代物が出来上がったというわけです。

121名無し三等陸士@F世界:2017/08/28(月) 21:13:33 ID:r9zdHepU0
アニメ関係の世界でフクロウのような存在が女陰をばらまいてたよ!
フクロウは青の祓魔師に出てくるような感じだったね。

122名無し三等陸士@F世界:2017/09/16(土) 22:12:59 ID:B8RxRp8k0
>>118
補給・兵站線が伸びすぎているというのもあるんでしょうな。
陸軍の物資・装備や航空機などは民間船舶のチャーターなども行いながら
船腹をやりくりしているうえに、それらの護衛用や民生用に大きく取られて
いるのもあるでしょうし、完全な戦時体制でも無いので民間の需要にも答え
無ければならないと。
皇国世界は史実日本より遥かに工業化されていて、発展途上国レベルどころか
1.5流国並の工業国にはなってますが根幹となる粗鋼生産量などでは米国には
数段劣りますからこれは仕方ないですよね。
米国とは行かぬまでもソ連並の粗鋼生産量があればまだ変わるのでしょうが。

史実の日本には冶金技術の遅れが致命的な要因に繋がったかもです。
いやしくも迫撃砲とてそれなりの精度と工業製品としての安全性・信頼性
を持って作られるはずですが実際は弾薬の消耗とそれに対する補給が十分
に手当できないとして迫撃砲の研究・配備などは諸外国に比べて劣って
ました。
当時の日本は迫撃砲生産に必要な(おそらくは野砲榴弾砲砲身素材
より製造ハードルがずっと低いはずの)砲身素材になる特殊鋼製造
技術と生産能力すら、限られた物しか持っていなかったであろうと
いう事を考えると迫撃砲よりずっと技術的な難易度の高い野砲や山砲
の徹甲弾貫徹能力が劣るのもむべなるかなですね。
あれこれいえば、結局八幡製鉄所の製鉄能力の限界に行き着くとも言えます。
限られた製鉄能力を海軍と陸軍と民間で食い合う・・・どうにもならんすな。

123名無し三等陸士@F世界:2017/09/16(土) 22:28:06 ID:B8RxRp8k0
皇国世界とは直接関係ないかもですが、異世界の軍の歩兵の背嚢って
ランドセル方式なんでしょうか?
地球世界においてランドセル方式の背嚢を採用した最初の正規軍は、
フレンチ・インディアン戦争中に北米大陸で活動していたイギリス
軍軽歩兵やフランス海軍歩兵中隊でしたが、これはどちらも現地軍
(イギリスはアメリカ人レンジャー、フランスは民兵)の装備を
北米限定で採用した非正規装備品という扱いでした。
正規軍全体への採用は7年戦争終了後(だったハズ)の1763年の軍服
改定時に一部で採用が始まり、1767年の軍服改定時に犬または山羊革
のランドセルを全面採用としています。

七年戦争ではどの国の軍でも(正規装備品としては)肩掛け式のカバン
を左右交互にたすき掛けにして運用していましたので(正面からみて白い
帯が胸で交差しているのがそう)、パン袋や水筒や弾入れや雑嚢を交互に
負うので胸が両側から締めあげられ疲労が蓄積しやすかったとされて
ます。
もし異世界軍がまだ肩掛け式のカバン装備なら、皇国軍の背嚢装備などは
理にかなったものであると理解できる人間はどれほど居るのでしょうね。

ttps://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/3/30/Seven_Years%27_War_Collage.jpg
肩掛け式のカバン(右上の絵の兵士など)

124303 ◆CFYEo93rhU:2017/09/18(月) 20:42:08 ID:A3j40Ras0
一般人からすれば、小銃も機関銃も「拳銃ではない長い銃」という括りで一緒の扱い。
なので機関銃では貫通するが小銃は流石に貫通しないという装甲でも「銃で貫通した」という事実は変わらないのです。


>>119

昔の大砲は、初速こそギリギリ超音速だが、すぐに速度を失うので数百メートル飛翔した段階では音速未満。
そして砲弾は硬化処理とかしていないただの鉄球なので、装甲板に当たったら強度的に負けそうと感じたのです。
弾着時の砲弾の速度は、1.5〜2倍くらい違うので、単純な運動エネルギーでは3倍くらい違ってくるだろうから、
砲塔正面は難しいと思ったのですが。意外と、あっさり貫通してしまう可能性ありなのですね。

考えてみれば37mm対戦車砲の弾頭重量と、カルバリン砲などの弾丸重量を比べたら10倍くらい違うから、
37mm砲で貫通してしまう防御力しかない戦車に対してなら、骨董品のような大砲でも行ける計算になる?


>>120

高品質なアメリカの屑鉄を輸入して、それを利用していたくらいですからね。
日本の装甲の場合、性能評価試験で使用する砲弾も日本製で品質が良くなかったから、
試験では防げたのに実戦で同レベルのアメリカ製の砲弾受けたら防げなかったという話も。

逆に、当時でもアメリカやドイツなどの製鉄技術やそこから生み出される装甲技術なら、
同じ厚み(チハと同等の25mm)でも機関銃は勿論、カルバリンなどの古式大砲も防げるのでしょうか。
厚みが同じ装甲板でさえあれば何でもいいという条件で、米英独ソなど主要な戦車開発国に造らせたら。


>>122

ソ連並みとなると、アメリカ程では無いにしろ結構凄くないですか。
アメリカが圧倒的1位でも、2位がソ連ではありませんでしたっけ。

あまり図体が大きい国だと、維持費が余計にかかるジレンマがあって。鉄の生産には燃料が要りますし。
炉の火を完全に落とすと再開が大変だから、生産量を落としてる段階ですが。
イギリス並み……くらいが限度ではないかと。


>>123

「現代の歩兵は鎧なんか着ないから古代の歩兵より楽な仕事だろ」
「じゃあこれ全部装着して銃持って立ってみな」
「うおっ、苦しい……」

異世界のモチーフは、凡そ三十年戦争から第二次百年戦争の時期なので、どの国の背嚢もたすき掛けタイプです。

ただ、兵士の装備について理に適ってるかどうかで動けるのは、ポゼイユ侯爵のような、割り切ってる人だけでしょう。
なのでポゼイユ侯爵領の領内憲兵(地元警察)くらいは、皇国式の軍服を参考に大胆な変更してみたり、するかも知れませんが、他の一般兵の装備までは……。
そもそもリンド王国軍に関しては背嚢どうとかそれ以前の話で、いやむしろ軍服とか個人用装具を刷新する良い機会なのか?


それはともかく、かばんとか武器とかの保持の為にガチャガチャとベルトやらボタンやらがついてる、あの時代の軍服は実用性はともかく見た目が、ファンタジーっぽいでしょう。

一目見て軍服だと分かり、なおかつファンタジックとなると、17〜18世紀頃が最適、ギリギリで19世紀というのが持論です。
ランツクネヒトとかのは、一目見て軍服とは思わないでしょうし、中世だとそもそも統一規格の軍服なんて存在しないですし。
近世でなければ古代ギリシアやローマになりますね。古代の重装歩兵と近世の戦列歩兵のどちらが良いかは、好みの問題ですが。

歩兵でなくて良いなら、中世末期の、いわゆるプレートアーマーの騎士とか、フサリアあたりが一番ファンタジーっぽいとは思いますが。

「ファンタジー 軍服」で画像検索すると、ダブルジャケットや肋骨服みたいのが上位にヒットしますね。
ファッション関係だと迷彩柄以外に、コスプレ用とナポレオンジャケットがヒットしますね。

「中世 軍服」で検索すると甲冑ばかりですが。

125303 ◆CFYEo93rhU:2017/09/18(月) 20:52:22 ID:A3j40Ras0
訂正です。

「中世(中世ヨーロッパ) 軍服」で検索しても近世風の軍服ばかりでした。
甲冑ばかりなのは「中世(中世ヨーロッパ) ファンタジー」で検索した時でした。

つまり「中世(中世ヨーロッパ)」でイメージされるのは近世で、「中世ファンタジー」でイメージされるのが実際の中世に近いという事……?

126120:2017/09/21(木) 03:44:04 ID:FyX.kvDI0
装甲25mmですと欧米の軽戦車が近い装甲厚ですね。
口径12.7mm機関銃でしたらよほど運が悪くない限り防げます。
豆戦車ほど薄いと流石に欧米の鋼材でも防げなかったようですが。
カルバリン砲についてはネットに上がっていた再現実験の結果を見ると
13ポンドの弾を初速408メートルパーセクで撃ちだす能力があったそうで
約500kJのエネルギーになります。
これはWW2期間中の兵器だとドイツのマウザーMG151(マウザー砲)の約10倍のエネルギーです。
有効射程内で撃たれればたとえ欧米の装甲でも25mmしかないと問答無用で撃ち抜かれますね。

127名無し三等陸士@F世界:2017/09/24(日) 02:41:20 ID:FyX.kvDI0
現代にまで残る英国のレッドコートとかスウェーデン近衛兵の青い軍服
バチカンスイス衛兵隊とかファンタジー色溢れますよね。

128名無し三等陸士@F世界:2017/09/24(日) 20:35:24 ID:B8RxRp8k0
>>124
ソ連の戦時中のイメージでいうとすごそうですけれどあれは米国から
鉄鋼材を輸入してもらいながらの粗鋼生産量なのと、工業力の配分
を軍事に「思い切りよく」割り振った結果と鋳造技術と冶金学
の発達によるものなので。
素の工業生産から見た粗鋼生産量はドイツの粗鋼生産量に近い
と思われます(じゃあ史実のドイツ並との比較でもいいんかも)。
英国の粗鋼生産量って戦中日本の三割増し程度だったような(ダンケルク以前)。
皇国の自動車産業の発展ぶり(自動車向けガソリンの確保の話とか)や船舶量を
見る限りでは英国並だとすると幾つかの記述の説明がつきません。

英国は都市部はともかく、田舎などの道路舗装率は当時の日本やイタリアより
マシというぐらいですので自動車の一般普及率が史実より高いとするならば
皇国の粗鋼生産量も史実よりマシマシで見ないと全量輸入なのか? となって
しまいます。
以前にT型フォード自動車を侯爵令嬢? が運転している事を見ると自動車の
運転技術を教える組織などがあり、史実よりドライバーの確保が出来て
いるようですのでそれに比して自動車の普及も成されていると仮定すると
史実英国の粗鋼生産量だと足りなくないかなぁと。
米国が来るまで、ソ連と満州で殴り合いするために下駄履かせているならば
史実英国並だと初期損耗で立ち直れない可能性が出てきます。

129名無し三等陸士@F世界:2017/09/24(日) 21:28:29 ID:B8RxRp8k0
>>124
>リンド王国軍に関しては背嚢どうとかそれ以前の話
皇国にとっちゃ儲け話ですね。
だって装備の一新なんて数十年に一度あるかないかですからねー。
国内の繊維製品の需要だけじゃ商売にならないのなら同盟国に
売りつければいいし、国内需要に繊維を取られるからって言う
のなら「合成繊維」を混ぜればいいでしょう。

史実では1939年に桜田 一郎と川上博と李 升基(戦後北朝鮮籍)の手に
よって世界で2番目に作られた合成繊維であるビニロンが出てきます。
高強度・高弾性率、耐候性、耐薬品性、綿に似た風合いがあり吸湿性
も持っている合成繊維です。
染色しにくくごわごわするため一般の衣料用の繊維としては使いにくい
部分もありますが、背嚢とかテントとか軍の下級兵向けの制服などには
使えそうです(学生服や作業服への採用事例があります)。
一時は学生服用の木綿を凌駕し、不動の地位を築いた時代もありました。
汚れにくく、丈夫で、洗濯もしやすい(耐アルカリ性)となれば軍事用と
しても売りやすいですからね。
何より合成繊維ですから天然繊維にはない利点もありますし・・・。
天然繊維しか見たことがない異世界人からすれば、合成繊維はある意味
魔法の素材かもしれません。

近代以前だと余程の超大国か先進的な軍制を持った国でも無い限り、常備軍
の概念が薄いので統一規格の軍服っていうのはあまり出てこないかも。
大量生産・共通規格という概念は19世紀に起こった産業革命(工業化)以降
の話ですのでこの当時だとある程度共通化された軍製品って精々、靴くらい
でしょうか。
歩兵は歩くのが仕事なので靴を支給されるかどうかだけでも生存率が変わって
来ますからね。

>>125
>プレートアーマー
あれって中世初期から中期くらいの工業力だとほぼ一品物に近い生産
体制なので現在の価格で換算すると約1,000万円くらいする代物だそうで
(新品)。
なので普通は親から子へ受け継がれる財産的な意味合いが強い資産
ともよべる装備でした。
中世欧州、一般兵はすんごい軽装だったので盾が重視されたという
地域的な背景もあったからでもあるんですがね。
これには欧州は金属精錬の技術が当時、他の地域(中東以東のアジアと
比較して)より遅れており効果的な鎧を「安く量産」製造する事が
出来なかったからという要素もあるです。
そして、中世後期に入ると一般兵士もフルプレートや、軽装でも改良
された鎧が普及するようになり楯は必要性が薄れて両手持ちの武器が
主流(或いは長槍や火砲を装備する)になります。

あとコレは日本にも言える話なのですが、日本は大河ドラマや時代考証
無視の時代劇の影響で戦国時代の史実と異なる変なイメージが定着しており、
欧米はアーサー王物語とか騎士道文学とか19世紀以降の劇場や映画文化の
影響でやっぱり史実と異なる変なイメージが定着してしまいそれが検索結果に
出てきているのでしょう。

130名無し三等陸士@F世界:2017/09/24(日) 21:53:54 ID:B8RxRp8k0
うろ覚えモード。
アメリカ軍のM3ハーフトラックの基本装甲は表面硬化処理された
厚さ1/4インチ(6.35mm)、運転席前面など重要部位だけ1/2インチ
(12.7mm)くらいなので通常のライフル・機関銃弾に対しては十分な
抵抗力・防弾性があると見做されてはいたハズ。
輸出用廉価版で均質装甲のM5ハーフトラックでは、5/16インチ(7.9mm)
が基本装甲で若干防御力が下がってマス。
まあ、ハーフトラックだからこんなもんなのでしょう(大量生産された
民生向けトラックの軍事転用品だからしゃーないない)。

131303 ◆CFYEo93rhU:2017/09/25(月) 20:42:09 ID:Qhuby3Sw0
ラノベを中心に異世界ファンタジージャンルは増えていると思うのですが、全体が増えたせいで、異世界戦記ものが相対的に少なく見える303です。
色々返信ありがとうございます。


>>126

25mm程度の装甲だと防げない……骨董品と侮れませんね。
とすると、F世界側が陸戦で艦砲や要塞砲を使って、それが運悪く(運良く)皇国戦車に直撃したら、撃破出来る訳だ……。
陸上の野戦だと、3〜6ポンド級(1/4〜1/2バルツ)が主力で12ポンド(1バルツ)は師団や軍団砲兵の重砲大隊なので、絶対数は少ない筈ですが。

13ポンド砲でも、命中時の残速が280m/s(およそマッハ0.8)だと約231kJ。6ポンド砲が280m/sで命中したなら約106kJ。
砲口初速は400m/sでも、数百メートル離れた所ではこれくらいではないかと思うのですが、正確なデータを持っていません。
これが事実と近いなら500kJと比べると着弾時の威力は半分以下に下がりますが、それでも貫通しそう、貫通しなくても結構な損害受けそうです。
やはり12.7mmのように、弾頭重量が何十グラムという単位でなく、何キログラムという単位になるので、速度が遅くても質量で押し切ってしまうと。
仮に貫通されなくても、命中すればガン!と音を立てて、戦車兵に心理的な圧力はかけられるでしょうし。

船体を支える構造材としての鋼板のみで、装甲なんて張ってない駆逐艦が近距離から9〜36ポンド級の艦砲を受けたら、抜かれると考えて良いですね。
遠距離を維持しながら恐る恐る戦った皇国駆逐艦は正しかった!


>>127

スウェーデンの王宮で見た衛兵が、天気も良くて美しかったですね。
ヴァーサも見ました。現代軍艦に比べれば小さいといっても、かなり迫力ありました。

イギリスやバチカンは行った事が無いのですが、イギリスは王子(エリザベス陛下の孫)の結婚が日本でもかなり報道されていて、
王族の方々が軍服着用で、ブルーズ&ロイヤルズとライフガーズが居たので、動画を通してなら目にする機会は多いでしょうか。
フランスも、第一共和政時代やナポレオン帝政時代などの軍服着たパレードはあるようですが、流石に王政フランスのは駄目か……。

「中世 軍服」で画像検索すると、殆ど全部近世そのものか近世風でした。
実際の当時の軍服を描いたの絵画や再現写真、コスプレ用衣装、ドール用衣装、ゲーム画像……。
「近世 軍服」で画像検索した結果と大して変わらないのが、何とも言えない気持ちになります。

という事は!
「ファンタジー 軍服」の画像検索結果と、「中世 軍服」の画像検索結果がそこそこ似通っている
のだから、『皇国召喚』の異世界は「中世ファンタジー」と、これはもう堂々と言えるのではないかと。

日本で言えば「鎌倉武士の鎧」という見出しで戦国時代末期の南蛮鎧の写真見せられてる気分ですが、
「ファンタジー 軍服」の画像検索結果と、「中世 軍服」の画像検索結果がそこそこ似通っていて、なおかつ双方とも
近世風の軍服であるのだから、『皇国召喚』の異世界は「中世ファンタジー」と、これはもう堂々と言えるのではないかと。

132303 ◆CFYEo93rhU:2017/09/25(月) 20:43:49 ID:Qhuby3Sw0
>>128

自分で設定しておいて、結構なチートでしたね。

アメリカからの支援があったとはいえ、その支援を受け入れて兵器の増産が可能だっただけ、ソ連は凄いです。
史実日本なら、数億トンの良質な鉄鉱石が降って湧いたとしても、生産設備の余力が無くて持て余すでしょうから。

皇国の運転手の確保や国産自動車開発、舗装率改善は、陸軍の強い後押しもあり、国内産業の発展に寄与するという歴代内閣の方針もあり、
明治末期から大正初期の時期から同時並行的に進められてきた……としていますが、それにしても約20年で発展しすぎだとは思います。

掌編でT型フォードを運転していたのはポゼイユ侯爵。侯爵令嬢ではなくて本人が侯爵(女侯爵)です。
名前はリアン=シャニィ・セレシア・ラグナ・ニュールモンというのですが、こんな設定覚えている人は多分居ない。


>>129

靴だけではなく、軍服や鞄などの装備一式はある程度規格化されている大量生産品では?
軍服(シャツやコート)自体も、士官は自前で仕立てますが、兵士は中古のお仕着せなので、
標準体形から離れている人はきつすぎたり緩すぎたりする事はあったみたいですが。

擲弾兵は身長190cmとかの規定があるのは、つまり190cm前後の身長に丁度良いサイズで大量に作ってるからという意味でもありますよね。
身長175cmの人が190cm用の軍服着たらいかにも見栄えが悪いでしょうから。

中世の鎧は、代々鍛え直して使っていたのも多かったようですね。
王様とか金持ち貴族になると、代ごとに新調していたようですが。
映画『ロックユー』に、体格に合わない鎧に難儀するシーンがあったような。

中世初期の一般兵というと、そこらの山賊と大差ないような格好で、斧か槍と盾持ってるようなイメージです。
騎士の武具を剥ぎ取って奪えれば一財産築けるから、それ目当てに参戦する一般兵も居たようですね。

> 中世のイメージ

日本語の「中世 軍服」だと近世軍服の画像ばかりですが。
英語で「middle ages uniform(military uniform)」と画像検索すると、概ね中世のチェインメイルにサーコートのような画像が出て来るんですよ。
だから「(ヨーロッパの)中世というと実際の近世がイメージされる」のは日本固有の問題だと思ったのですが、どうなのでしょう。
英語圏でも、近世に建国したアメリカと中世に建国したイギリスでは中世に対するイメージが違うかも知れませんが。


>>130

戦車とそれ以外の車両の装甲差は大きいですから。
戦車は、その誕生の経緯からして機関銃陣地に突入する為の重防御が必須だった訳ですし。

133名無し三等陸士@F世界:2017/09/25(月) 21:53:29 ID:gQ3AzgPs0
>>131
まあ当時と全く同じ組成の装薬でもないですから
再現実験と言っても限界はありますがカルバリン砲の弾丸の持つエネルギーは
大体どの資料でも初速で400kJ以上は確実にあったようですね。
しかも球形弾丸にも関わらず有効射程は1500m〜最大射程は6000m近くはあったようですね。
小型の陸上移動目標である戦車に狙って直撃させることはなかなか厳しいかもしれませんが
それでも有効射程内で当たればほぼ撃破でき数を用意さえできればかなりの脅威でしょうねえ。

134名無し三等陸士@F世界:2017/09/25(月) 21:58:17 ID:B8RxRp8k0
>>132
>軍服や鞄などの装備一式はある程度規格化されている大量生産品では?
特定の大きさとして、サイズを統一させ大量生産させられるという概念が
出来る以前の「規格化」というのは現代の我々が考えているような厳密性
が無い代物です。
現代ではJISやASMEなどによって日々の食事のパン(形や素材)や麺類
(乾麺の長さや量)なども共通規格で定められて製造されています。

工業化(産業革命)以前の規格品というのは公差が大きく取られている・・・
というよりとらざるを得ないという代物です。
工場なんてものがあるわけではないので、共通規格言うなれば体格にあった
製品を用意する余裕があるわけではなく、身体を製品に合わせるみたいな部分
もありました。
おっしゃる通り「190cm前後の身長に丁度良いサイズで大量に作って」いる
製品というのはまさにこの公差が大雑把な量産品ですね。
量産と言ってもジェニー紡績機や水力紡績機、ミュール紡績機(ジェニー式
と水力式のいいとこ取りな装置)以前の製糸生産量というのは工業化以後
ほどではなかったですね。
綿工業が本格的に発達する以前だとそもそも服にするための布の供給が
需要に対して少なかったのもあります。
一度に大量に糸や布を確保するのが難しいということは「計画的にかつ
共通規格」で決められた製品を安定して生産できなかったというのもある
と考えられます。
原材料がまとまった形で手に入った時に様々な工房などで作れるだけ
作っておくためには、厳しい規格を定める事は工業化以前の産業力では
荷が重い部分もありました。
綿工業には紡績=綿糸を紡ぐ工程と、織布=綿糸で布を織る工程があり
これらの工程は十分な技術さえあれは機械化が可能でした。
原材料が安く手に入りさえすれば糸や布の大量生産が可能となります。

135名無し三等陸士@F世界:2017/09/25(月) 22:32:50 ID:gQ3AzgPs0
実は王政フランス末期時代の軍服とナポレオンのグランダルメは
ほとんど軍服は変化していないんですよね。変わったのは帽子がシャコ帽になったくらいで。
よく革命政府は王政フランスから何から何まで全面的に変えたと誤解されたりしますが
フランスの近世の軍服はルイ14世からルイ16世にかけて徐々に変化していったらしいです。

三兵戦術を使いドラゴンを使った三次元戦闘が行われていたとしても中世ったら中世!ですね。わかります。

136303 ◆CFYEo93rhU:2017/10/01(日) 03:58:58 ID:lKo/SRwk0
136:名無し三等水兵@東大陸 :1542/09/31(★) 03:58:48 ID:CFYEo93rhU

初カキコ…ども…

俺みたいな13で戦列艦乗り込んでる腐れ水兵、他に、いますかっていねーか、はは

今日の艦内の会話
あの流行りの女かわいい とか 給金ほしい とか
ま、それが普通ですわな

かたや俺は軍医の横で死体を見て、呟くんすわ
it’a true wolrd.狂ってる?それ、誉め言葉ね。

好きな音楽 艦内葬送曲
尊敬する人間 火薬の父(暴発はNO)

なんつってる間に八点鐘っすよ(笑) あ〜あ、朝直の辛いとこね、これ


303「ネタが古い?それ、誉め言葉ね。」

>>133

後装式の速射砲と違いますから、大砲の位置を元に戻して、射撃誤差を修正して、再装填して……なんてしているうちに戦車は移動してますね。
刺し違える覚悟で近距離から散弾(ブドウ弾)を撃った方が効果的でしょうか。
対戦竜戦闘では、散弾(ブドウ弾)を使うか、砲は捨てて砲兵だけ逃げるのがF世界の従来の戦闘と考えていますが。

あと、戦車にとって危険なのは飛竜の爆弾あたりでしょう。


>>134

現代の、一ミリの誤差では誤差が大きいので許容しないとかそういうレベルの規格化は漸く20世紀になってからなので、さすがにそこまで厳密な規格化は想定していません。
軍服なら6フィートの身長とか、銃ならば5フィートの長さとか口径は0.75インチとか、誤差は大きかったにせよ、その当時なりの規格はあったので。

あと、布や糸を大量に用意できないからこそ、軍服も除隊した人の中古を支給されるのが基本だったのだと思いますが。
服くらいはまあ、中古でも良いかも知れませんが、他人の使った靴は嫌だなぁ……。

歴史上の西欧の工業化は、植民地支配と無関係でないので、そういうのなしに近代化一歩手前まで迫ってるのはファンタジー。

中世の一般兵の防具は簡易的な盾くらいですが、古代の重装歩兵だと鎧を着た上で盾を持ちましたね。


>>135

主に想定するのは白旗に白い軍服のフランス軍です。ルイ15世の時代ですね。
白旗が軍旗(特に軍艦旗)として用いられていた時代のフランス軍は、軍旗と交戦の意思なしとの旗をどう使い分けていたのか気になりますが。

革命軍が、ブルボン朝時代のものを何から何まで否定して破壊しつくしたのなら、イギリスとか諸外国からの干渉に対抗する術も無く自滅して終了したでしょうから。
この時代の軍政について調べると、大まかには従来のフランス王国軍をナポレオンが改良した。という感じの解説を見ます。
幾ら天才ナポレオンと言えど、ゼロから強力なフランス軍を作り上げるのは無理なのは流石に理解できます。


『皇国召喚』の初期設定を練っていたのは10年位前なので、その頃に理解していた事と、今の理解では矛盾点もあるのですが。
中世ファンタジー作品は、小説でもゲームでも中央集権で高度に組織化された軍隊があったりするので、『皇国召喚』は中世ファンタジーです。

137名無し三等陸士@F世界:2017/10/01(日) 12:15:58 ID:B8RxRp8k0
>>136
>中世の一般兵の防具は簡易的な盾くらいですが、古代の重装歩兵だと鎧を着た上で盾を持ちましたね
んん?
古代と中世では兵士の運用やそれを担っている兵士そのものの質もドクトリン
も違うので、装備だけを以て古代と中世は違うよねーと言われてもなんかピン
と来ないのですがどういう意味なんでしょうか?

釈迦に説法だとは承知の上ではありますが、古代欧州世界というより
西アジアより西方では鎧を着ているけれどでかい盾も持っているというのは
重装歩兵という兵種だからだと思います。
対して中世一般兵の盾が簡易的になっているのは場合によりけりですが、
鎧自体の性能が上がってきているもしくは頭数を揃えることが大事だったり
装備の数が足りないとかも時代と状況、地域によってはあることも
ありますでしょう。
重装歩兵にしても、マケドニア式ファランクスより前の時代やその後
の装備と後期ローマ軍団コミタテンセスは大盾を持っていても軍の運用
も戦術も装備内容も変わってます。
超大国(古代ローマやペルシア帝国)や大国(マケドニアとか)の正規兵と
中世の一般兵(動員兵や傭兵)は比べようがないでしょう。
欧州中世は野戦もやってますが攻城戦なども含めた規模の小さい
小競り合いも沢山起きていた時期の装備ですので。

ttps://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/f3/Greek_hoplite.png
古代ギリシアの重装歩兵
ttp://blog-imgs-67.fc2.com/l/e/g/legatus/rm5NL2.jpg
ttps://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/ab/Legionista_1.jpg/768px-Legionista_1.jpg
ローマ軍団

138名無し三等陸士@F世界:2017/10/09(月) 16:39:19 ID:A3lMrA/.0
時差を無視したいくらい日本が嫌いなウリナラの恨(ハン)が奇跡を起こした!!
みごと異世界へと日本を追放に成功、大勝利!!

これがF世界召喚ならぬF世界追放劇の始まりだったニダ

139名無し三等陸士@F世界:2017/10/09(月) 22:56:04 ID:PWWuALII0
時は大韓帝国末期、近代化も改革も思うように進まぬこの国を尻目に隣国の日本は大改革と近代化を成し遂げ
さらに二度の戦争に勝利することでこの国を自国勢力下におさめつつあった
そんな日本を敵視し憎悪するこの国のとある勢力はある日偶然発見した書物に載っていた儀式を執り行う
そして一月後、大日本帝国という新興国とその国の人々はこの世界から姿を消した…

という話を思いついたが、この当時の様々なことについてしっかりとした知識が無い私は続きが書けない
知識があって文章も書ける人、どこかにいませんかね?
前ド級戦艦と装甲巡洋艦が未知の海を征き、騎兵旅団が異世界の大陸を駆ける話ってのも
結構面白そうな気がするんですが…

140名無し三等陸士@F世界:2017/10/10(火) 03:42:04 ID:gQ3AzgPs0
大砲を対戦車戦に使うとなると今も昔もやはり伏兵が一番かなと思います。
古くは東部戦線、最新ならシリアやイラクでも使われている方法ですし
命中率を距離で補うってのは王道ですからね。
先に当ててしまえば次を考えなくていい(必ず当たるとは言っていない。)
というまことに島津的戦法ですがw

141303 ◆CFYEo93rhU:2017/10/11(水) 20:00:00 ID:lKo/SRwk0
以前、自衛隊vs韓国軍というスレに誤爆していたようです。
お騒がせしました。


>>137

十分な鎧があれば盾は要らない(両手持ちの武器などに使う)。
というふうに読めたので、鎧と盾を併用する歩兵も居ましたよね。
というつもりでした。

古代の重装歩兵と、中世の歩兵と、近世の戦列歩兵では使う武器もドクトリンも違うので比較しても意味が無いというのは、そのとおりと思います。


>>139

騎兵(抜刀突撃はしない)ですね。
1909年頃ならギリギリ弩級戦艦の時代になってますが……。


>>140

皇国の戦車が接近してきたところを奇襲攻撃という感じでしょうか。
嘉数の戦いではそれでM4中戦車の戦車隊に大損害を与えましたね。
至近距離からの大砲なら行けるのか……。

142名無し三等陸士@F世界:2017/10/11(水) 21:20:11 ID:/WUDdHno0
あれ、もしかして北朝鮮なら転移しても21世紀国家として生き残れる?今でも陸の孤島みたいなもんだし
日本の一部だった時代じゃないからスレ違いだけど

143303 ◆CFYEo93rhU:2017/10/14(土) 02:00:01 ID:lKo/SRwk0
本日は、
掌編を投下します。

144303 ◆CFYEo93rhU:2017/10/14(土) 02:00:33 ID:lKo/SRwk0
事件が起こった。
皇国軍にとっては大事件といっても良いだろう。

既にセソー大公国の国境を超え、首都に迫ろうとしていた皇国陸軍に対し、セソー大公国は為す術なく退却の繰り返しであった。
制空権は無く、北方諸国同盟の背後を守る同盟国も無い状況では、相手がリンド王国軍でもこうなっていただろう。

だが、事件が起きたのはそんな時だった。
街道を走る八九式軽戦車の小隊のすぐ傍で砲声が鳴り響くと、先頭を走っていた戦車が停止した。
先頭車は砲塔側面から内部を貫通し、車長は重傷、砲手は戦死。何とか自走は可能だが戦闘不能な状態にまで打撃を受けた。
突然の出来事に、皇国軍部隊は自分達を攻撃した砲声と砲煙の方向に銃砲撃を加え、歩兵を
中心とする捜索隊によって“犯人”と思しき壊れた大砲を鹵獲し、砲兵の死体を回収した。

「作戦行動に支障は無いな?」
戦車中隊長は聞き返した。
1両の戦車が脱落したくらいで、前進が止まる程に皇国軍は脆くは無い。
だが、問題は別のところにあった。

早くもその日のうちには、セソー大公国内で「皇国軍の鋼鉄の戦竜を打倒した」という話が広がっていた。
同じ落伍といっても、敵に撃破されたとなると、故障などで後退するのとは意味が違う。
敵味方の士気に影響が出て来る。今回問題なのは特に敵の方だ。
負け続けだったセソー大公国軍は、この戦果をこれでもかと流布している。
セソー大公国から東大陸北方、東大陸全土、そして西大陸まで広まるのも時間の問題だろう。

皇国軍無敵神話の牙城がまた一つ崩れた訳だ。
同時に、セソー大公国軍の骨を断たせて肉を切るような攻撃は暫く続き、皇国軍を悩ませる事になる。

元々、リンド王国やマルロー王国ほどの国力が無いのに、貴重な重量級野戦砲や
精鋭歩兵連隊、飛竜連隊を使い潰すような戦いで自ら疲弊していくセソー大公国軍。

だが皇国陸軍にとっては、兵站への負担が大きいと派遣を躊躇っていた
九七式中戦車や二式中戦車が投入される契機にもなった事件であった。

145303 ◆CFYEo93rhU:2017/10/14(土) 02:01:10 ID:lKo/SRwk0
投下終了です。
似たようなシチュエーションは以前から考えていたのですが、
具体的なイメージが湧いた良い機会だったので書いてみました。

146名無し三等陸士@F世界:2017/10/14(土) 03:07:36 ID:OiLcRKIc0
投下乙です
予想以上の粘りを見せるセソー大公国をちょっと応援したくなってきたw

147名無し三等陸士@F世界:2017/10/14(土) 21:31:10 ID:gQ3AzgPs0
お疲れさまでした。
古今東西正規軍を最も悩ませるのはゲリラ戦ですねえ。
大衆が裏で協力をするゲリラ兵は数千倍の国力を持つ相手でも戦うことができるのは
ベトナムで証明されてしまっていますからね。
(まあ、米帝様らしく末期には軍事的にはほぼ壊滅状態にまで追い込みましたが
これをどうにかするには米帝様並みのスーパーパワープレイか
そうでなければ占領統治政策をよっぽど上手いことしないといけないんですが
この時代の陸軍でそれが出来そうな人物って史実だと数える程しかいない上
将兵自体が上から下まで現地民を蛮族扱いしてかなりの反感を買っちゃうんですよね。

148名無し三等陸士@F世界:2017/10/15(日) 18:15:55 ID:dEKVAQgc0
乙です。
まとめの方のタイトルはこちらで付けておきました。
まさしく皇国には大事件ですね。

149303 ◆CFYEo93rhU:2017/10/15(日) 20:24:11 ID:lKo/SRwk0
>>146

判官贔屓ですね。


>>147

大衆が裏で協力してる訳ではないですがね。
軍隊に食料を提供したりといった程度の協力はしますが、それ以上の特別な協力はありません。
逆に、皇国軍も金(価値のある物品)さえ払えば現地住民の協力を得られている訳で、お互い様です。


>>148

まとめの方、いつもありがとうございます。

元々は、新型の30t級中戦車(M4、T-34、Ⅳ号戦車相当)を出すのに、大陸派遣部隊の
八九式軽戦車では対処できない場面に遭遇して貰わないと……という事から考えていました。
流石に50mmとか75mm級の装甲なら1バルツ砲(12ポンド砲)でも抜かれない……筈。

150名無し三等陸士@F世界:2017/10/15(日) 23:10:28 ID:gQ3AzgPs0
>>149
なるほど、まだナショナリズムは生まれてないのですね。
そうなるとどちらかというと封建主義国家で領主が変わるようなものですか。

151名無し三等陸士@F世界:2017/10/16(月) 05:24:35 ID:UHXkRCeM0
皇軍に限らず日系の近代的軍事組織って兵站に無頓着な描写が目立つけど、第二次大戦の影響かな?

152名無し三等陸士@F世界:2017/10/16(月) 21:03:29 ID:B8RxRp8k0
>>151
兵站に無頓着というより、外征向きの軍隊では無いのが根本的な要因
だと思います(特に陸軍)。
また第二次大戦では兵站軽視がよくよく引き合いに出されますが兵站
の維持や拡大以上に戦線が広がってっいた事も大きいです。
軍事官僚と一部軍人によるセクショナリズムの横行などもあってより
硬直化した兵站の運用が成されてしまった(第一次世界大戦の戦訓を
活かし得なかった)のもあったでしょう。

早い時期から火力主義に走りたかった、が自国の工業力の貧弱さや
絶望的な交通インフラの不足、資本力不足などもありそこに昭和恐慌
が重なった結果史実の日本はああなってしまったとも考えられます。
要は二次大戦の結果やそれ自体に答えを求めるのは少し強引なのではと
思う次第です。

153名無し三等陸士@F世界:2017/10/17(火) 19:46:42 ID:Imfv7Bj20
軽視していたわけではないんですよ。ただ正面戦力に金を回すと兵站に金をかけることができず
かといって兵站に金をかけると正面戦力を整えられず戦争自体出来ない。というジレンマです。
いろいろ言われることの多い牟田口なんかもジンギスカン作戦なんて本当は取りたくなかったらしく
中央に対して「まともな補給物資とそれを運ぶトラック寄こせじゃないと戦えない」と催促してるんですが
「そんなものないから現地で何とかしろ。とにかくインドに攻め込め」と圧力をかけられ
下からは「こんなんで戦えるわけねえだろ」と言われそれでどこか精神的におかしくなって
あんな馬鹿作戦を立てたそうです。

長々と書きましたが要は全部貧乏が悪いってことです。

154なん:2017/10/17(火) 23:22:49 ID:IPzDCQVI0
tp://slow-hand.jp/url/?id=1419

155なん:2017/10/19(木) 00:37:45 ID:IPzDCQVI0
tp://slow-hand.jp/url/?id=1419

156303 ◆CFYEo93rhU:2017/10/19(木) 01:44:35 ID:2k2lP0x60
>>150

ナショナリズムはありますが、近現代ほど強固なものではないという想定です。
主権国家は存在するが、まだ中世の封建的な気風も残っている感じで、
国家に対する忠誠心、愛国心といったものはそれ程強くないのです。

あと、文明国の間では現実世界のジュネーブ条約やハーグ陸戦条約のような不文律があります。
・軍隊は住人を故意に殺傷してはいけない。
・軍隊は住人の財産を略奪してはいけない。
・軍隊は住人の財産の一部を徴税してよい。
・住人は軍隊の行動を妨害してはいけない。

ここでいう“住人”は、軍隊が移動や駐屯している土地に住む
軍人ではない人達の事で、村人から貴族や領主まで含みます。

住人は軍隊(自国であれ敵国であれ)の移動や駐屯を妨害しない。
その代りに、軍隊は住人に手を出さない。そういう不文律です。
勿論、正式な戦争中の話であって、平時には適用されません。


Q.本当のところは?
A.皇国軍が行く先々で現地住民の妨害を受けてたら話が進まないから。


また従軍商人なども一般的に利用されています。
商人にとっては契約を守って金を払ってくれるのが良い客。
有力な商人に大金をちらつかせれば、各地から見事に物資を調達してくれるでしょう。
そしてそれだけ金払いの良い皇国は列強並みかそれ以上の経済力があるという噂として広まって行きます。


>>151-153

ハングリー精神が云々という考え方もあるでしょうが、一個人としては貧乏な方が良いという考えはありません。
貧乏は悪いとした上で、日本より桁違いに金持ちだったアメリカとイギリスを同時に相手に戦争した事がそもそも……。

いわゆる「十五年戦争」の期間中、それで軍事予算は増えたが、その分肝心の国内産業の育成に回す金が減ったという事もあるでしょうね。
軍事予算が増えて、軍部はそれで喜んで新型の大砲や軍艦、自動貨車を購入しようとしても、それを造れる企業(工作機械)や場所が国内に無いとか。
戦艦や空母を沢山造りたくても、それを建造できる大型ドックが全国で4ヶ所だか5ヶ所しかないので、量産する金があったとしても物理的に不可能。
アメリカは確か4〜5万トン規模の軍艦造れるドックは20ヶ所くらいあったんですよね。

国内の道路拡張や舗装、架橋といったインフラ整備も大都市部の中心付近以外ではなおざり。

東京で近代的だったのは東京駅付近や銀座周辺の繁華街など極一部。
現代では副都心として大いに賑わっている山手線の西側なんか、戦中や戦後すぐの頃は未舗装道路が大半で、
田畑も広がっていたというから、帝都でさえこの有様なら、地方都市や村々がどんな有様だったか、恐ろしくて……。

新幹線の整備などで東京への集中が加速してしまった現状を見ると、鉄道や道路(高速道路)を
作れば良いという単純な話ではないにしろ、当時の日本はその前提にすら立ててませんからね。

157名無し三等陸士@F世界:2017/10/19(木) 19:50:36 ID:Imfv7Bj20
日本の地方が本当の意味で近代化を果たしたのは1970年代ですからね。
毀誉褒貶の多い田中角栄も地方からすれば彼は初めて都市のおこぼれではない
金と利権を地方に持ってきてインフラ整備をした神のような存在ですから。

158gg:2017/10/22(日) 21:46:02 ID:IPzDCQVI0
htp://bit.ly/2iN1fFu

159名無し三等陸士@F世界:2017/10/23(月) 00:01:41 ID:aEZSPI/20
小東京化だの単なる伝統破壊だのと呼ばれがちだが、避けられないっちゃ避けられない結末だったんだろう
>近代化を果たした

160名無し三等陸士@F世界:2017/10/23(月) 01:51:47 ID:gQ3AzgPs0
小東京化とか伝統破壊とか自然を守れと言っているのは結局都市部に住んでいる人たちですからね。
実際にそこに住んでいる人間からすればただ不便を強いられているだけですから。
地方の人間からすればそういう都市部の人間の声って
「自分たちは便利な生活を享受しても地方民は不便なままでいろそれが伝統だ。」
としか聞こえないです。

161名無し三等陸士@F世界:2017/10/23(月) 02:18:27 ID:aEZSPI/20
同じ土俵に自ら乗った以上、皿なる過疎化を避けられなくなり限界集落化って例もありますけどね

162名無し三等陸士@F世界:2017/10/23(月) 19:13:39 ID:OiLcRKIc0
東京に準ずるまで都市化・近代化が進んだにもかかわらず、東京との競争に晒された結果、
さらなる過疎化によって限界集落にまで落ちるって具体的にどんな実例があるのかな?

自分が思いつくのは、大宮・浦和あたりの小売店舗が大規模百貨店の進出で潰れた後で、
その百貨店すら都内の百貨店との競争に敗れて閉店していくような昨今の状況だけど、
それをもって限界集落化というのは流石に言い過ぎだろうし…

小東京として東京と同じ土俵に立った挙句、過疎化・限界集落化した実例ってマジで何だ?

163名無し三等陸士@F世界:2017/10/23(月) 21:35:44 ID:bdH4K3xM0
割とマジで限界集落全部
同じ土俵=便利勝負だと東京どころか近場にさえ勝てない
東京と比べようなんてのぼせ上がってるとしか言えない

164名無し三等陸士@F世界:2017/10/23(月) 22:09:10 ID:OiLcRKIc0
>>163
限界集落になるような所はそもそも東京と競争するどころか、同じ土俵に上がったことさえないと思うけど?
そういう地域は70年代における日本列島の開発・大改造にもかかわらず、小東京化どころか都市化からすら
こぼれ落ちた場所がほとんどで、近場の都市にすら勝てないのは当然のこと
それなのに、どうしてそういう地域が東京都と勝負した結果、限界集落化したなんて嘘を平気でつくのか

そこまで言うのなら、具体的にどの地方のどの地方公共団体が、利便性において東京と勝負をするような
施策や開発を行って、その結果として東京に負けて限界集落にまで落ちぶれることになったか言いなさいよ
「割りと全部」なんて答えになっていない答えはなしで、具体的にどこなのか明示して下さい

165えいと:2017/10/23(月) 22:13:18 ID:IPzDCQVI0
tp://bit.ly/2iN1fFu

166303 ◆CFYEo93rhU:2017/10/23(月) 22:32:03 ID:2k2lP0x60
>>157

日本が本当に近代化、開発されたのは1970〜80年代以降ですよね。
昭和30〜40年代くらいの昔の写真やニュース映画を観ると、発展途上国感が凄いです。
田植えなんて全部手作業ですし、幹線鉄道も蒸気機関車が走ってるし、道路も舗装されてないし。
東海道新幹線の開通が1964年、東名高速道路の開通が1969年なので、その頃から国内開発が本格的になった感じでしょうね。


>>159-160

実際はもっと複雑でそこまで単純でもないでしょうが、70年代以降の地方開発。
日本全国の開発とは、日本全国の東京化に過ぎない。という批判意見もありますね。
もっと地方の独自色を残したまま開発しないと駄目だという社会学者とかの意見ですが、
東京のように開発しても、それでは小東京にしかなれないから、一理あるとは思います。

表向き便利でも、東京の経済的植民地状態であると地方の独立性が弱いままで、
金や人材を東京に吸い上げられ、ますます立場が弱くなる。という論法ですね。
これは必ずしも東京ではなくても、東北地方なら仙台、九州地方なら
福岡のような中核都市に対するストロー効果が云々という話です。

ただ、理想は理想としても現実は難しいだろうというのは……。

平成以降の地方活性化の話だと、地方を再開発せよ(東京のように便利に、経済的にも豊かに)という話と、
その地方独自の文化(歴史)を生かせ(色濃く残せ)という話が同時に出てきて、そりゃ無理だと思います。

肝心の東京が、地方の独自文化を殆ど捨て去って近代化をしてるのに、
独自文化を色濃く残したままの近代化なんて虫の良い話があるかよと。
東京は江戸の町並みは愚か、「古き良き昭和の街並み」だって平気で壊して再開発しますからね。
地方に限らず、東京でも“町並みの保存か、便利な生活か”は、殆どの場合で二者択一だと思います。

むしろ高齢化の影響か「不便でも私が死ぬまでは思い出の街並みを残して欲しい」という理由で再開発が頓挫している
地域もあるので、都市部に住んでいる人が、というよりは高齢者が、そういう“伝統破壊”に反対していると感じます。


ただ、今は危うい財政にある地方でも、80年代から90年代初頭のバブルの頃はそうでもなかった。
という話は聞きますから、つまり殆どの事は金で解決出来るのだと、結局は貧乏(デフレ)が悪いんだと、
景気回復さえすれば全て円満解決とまではいかなくても、かなりの部分はそれで解決出来るんじゃなかろうかと。

地方創生とかは、景気回復して心理的にも経済が確実に上向きなったと
皆が感じられるようにならないと、画餅ではないかという感はあります。


>>162

限界集落ではありませんが、大阪などは東京と新幹線などで密に繋がった結果、東京に吸われているという分析もあります。
もともと西日本の中核都市なので、それで即死ぬほどでは無いにしろ、徐々に差が広がっていくという話です。

過疎や限界集落まではいかなくても、人口流出しているとか、地元経済が芳しくないというレベルなら、
北関東の県庁所在地辺りはどこもそんな感じですし、新幹線で1時間半の長野とかもそうですね。

あとは仰るように、北関東や埼玉では、大宮や浦和を素通りして池袋や新宿、渋谷などに行ってしまうとか。
これは宇都宮線、高崎線直通の湘南新宿ラインや東武東上線、西武池袋線と地下鉄副都心線の直通運転が整備されたお陰ですね。
他には、つくばエクスプレスや常磐線の上野東京ラインによって柏や松戸が衰退したとか。

167名無し三等陸士@F世界:2017/10/23(月) 23:08:22 ID:bq8ROwp20
山梨県が過疎化でやばいっつー話はけっこう有名だな
今回の選挙で選挙区2個しかないとか見ると、やっぱりマジでやばいんだろーなぁ

168名無し三等陸士@F世界:2017/10/25(水) 01:06:37 ID:gQ3AzgPs0
まあ、「村おこしアドバイザー」とか「地方活性化の第一人者」とかが
「地域の特色を生かしスローライフを云々」とか「自然との共生で開発に頼らない云々」
って言って仕事している人たち居ますけど彼ら実際住んでるのは大都市ですからねw
もうその時点で「あ、、、察し」ですよw

169名無し三等陸士@F世界:2017/10/25(水) 08:33:22 ID:Chus6FOk0
山陰地方も相当に過疎い
つーか裏日本はどこも活気に乏しいって印象

170名無し三等陸士@F世界:2017/10/25(水) 15:26:36 ID:rVzgRNxs0
その地方独自の文化っていっても、実際は観光客を呼び込めるほどのコンテンツ持ってる所とかほとんどないから、生かしようがないよねっていう。
それなら粗方破棄して、没個性でも便利な都市化の方が良いってなるよなぁ。

171名無し三等陸士@F世界:2017/10/25(水) 18:53:12 ID:Chus6FOk0
担ってる当人たちが「換金した時点での価値」しか見えてないもんな
人に魅力がない、そりゃコンテンツだって魅力レス決定

172名無し三等陸士@F世界:2017/10/26(木) 05:07:56 ID:gQ3AzgPs0
>>170
そもそも観光客を呼び込めるほどのコンテンツがあれば
地域活性化なんてしなくても勝手に活性化するという矛盾がありますから。
結局呼び込めないところはどんなに手を入れても無理なんですよ。

173名無し三等陸士@F世界:2017/10/26(木) 09:55:05 ID:ObAuRIP20
過疎化から新しい産業を興して成功したのは葉っぱビジネスの上勝町ぐらいだしな。
あれは完全にニッチな分野で立ち上げてほぼ独占したんで他が後追いでやるにも無理だし…。

174名無し三等陸士@F世界:2017/10/27(金) 03:46:35 ID:gQ3AzgPs0
>>173
活性化に成功したとはちょっと言えないとおもうなあ。
一番わかりやすいのが人口統計。順調に減っていっている。
Iターンだなんだとか持ち上げられてはいるけど映画が公開された2012年ですら
転入50に対して転出53。その翌年は転入61に対して転出85。
出生数と死亡数は一朝一夕にはどうしようもないけど転入転出数だけみてもこの有様。
事業としてみるなら福祉事業としては高齢者に仕事を与えることは有効に機能しているけど
営利企業の継続性という面で見るとあと10〜20年後には崩壊しちゃうのよね。

175名無し三等陸士@F世界:2017/10/27(金) 09:29:50 ID:n.W8XT9c0
葉っぱビジネスとかニッチな需要に絞ったユニーク産業って、
結局それしか武器がない状態ですもんね・・・
町村レベルの活性化に貢献することはあっても
市域規模の大きな発展につながることは難しいし、
持続可能な発展とも思えないというネガティブなことしか想像できないですもの。

結局のところゆるキャラ創造やご当地物アニメを誘致して
ブームになることを祈ったが失敗したのが05〜15年でしたね。
儲け話や他人の利益が大嫌いな俺達がそんな餌に釣られるわけないクm(ry

176名無し三等陸士@F世界:2017/10/28(土) 08:46:57 ID:eoaPRrtY0
一票の格差云々を糞弁護士共が騒ぎまくったせいで、政治家が都市部に多く割り当てられるようになったので、今後はそういう面でも地方は不利になってくるだろうね
元々生活面で都市部と地方は利便性の格差が大きいのに、政治の面でも都市部優遇&田舎冷遇が加速するでしょう
で、それが益々都市部への人口流入&地方からの人口流出を招き、そして都市部への政治家割り当て数の増加となって、さらに都市部優遇が進み(以下ループ

177名無し三等陸士@F世界:2017/10/29(日) 05:15:41 ID:dyjYDIz.0
心配しなくても全国レベルで均質性(幻想かも知れんけど)を担保するのはエネルギー使い放題な現状の社会情勢そのもの

似た例だと農業、昔は御当地に合った作物しか作れんかったのに今は石油パワーのゴリ押しで都合の良い品種を選べる
ふんだんなエネルギー供給が難しくなれば間引きが行われるし各地の特徴が出る時代に回帰せざるを得ない

178名無し三等陸士@F世界:2017/11/01(水) 04:17:12 ID:gQ3AzgPs0
均質性という面ではインターネットの普及が一番大きいでしょうね。
基本インターネットが登場するまで地方では東京で流行した物が
大体10年遅れくらいで入ってきていました。
10年前に流行ったファッションを最新のおしゃれと勘違いし東京に着ていく田舎者
って創作のお話ではなく現実でしたから。

179303 ◆CFYEo93rhU:2017/11/03(金) 19:03:53 ID:2k2lP0x60
国も地方自治体も緊縮財政で、民間も緊縮倹約で内部留保、金が無い、あっても使わない。
お金を使う事が悪事である事かのような印象付けが諸悪の根源だと思うんですよね。
平成版「贅沢は敵だ」というような雰囲気で、日本を活性化など出来るかよと。


前回の続きのような掌編です。

180303 ◆CFYEo93rhU:2017/11/03(金) 19:05:34 ID:2k2lP0x60
皇国陸軍が構える陣地に、側面から戦竜が突進してくる。
八九式軽戦車の車長は双眼鏡を構え、周囲を見渡した。
「居た。10時の方向、距離は300m、砲は2門、向きを調整してる」
突撃してくる戦竜は歩兵の機関銃や狙撃銃、擲弾筒に任せる。
戦列歩兵は150m以上の距離から射撃を繰り返しているが、戦竜や戦列歩兵は囮だ。

戦車を停車させ、セソー大公国軍の大砲が隠れる場所に主砲と車載機銃を叩き込む。
停車時間は5秒程で、すぐに移動を指示する。
仮に外していても、移動すれば敵は砲の照準を改めるのに時間がかかる。

戦竜を討取った歩兵部隊も、小隊ごとに戦車に続き、残敵の掃討と周辺警戒を行う。
会敵から30分程で、戦竜6頭と1バルツ野戦砲4門を含むセソー大公国軍の特務部隊は壊滅した。

皇国軍に重大な損害を与えられる“かもしれない”戦法は、結局は装備と戦術の差で無力化を余儀なくされる。
列強のリンド王国軍ですら討取るのに多大な犠牲を払った皇国軍戦竜を、遥かに少ない犠牲で討取った。
それは事実だったが、大局的に見れば単に運が良かっただけで、後に続くような戦法ではなかったのだ。

これなら結局、重厚な布陣の戦列歩兵を中心とした部隊で迎撃した方がまだしも成功率は高いのではないか?
そんな事も囁かれ、奇襲も強襲も封じられたセソー大公国軍は、首都ロマディアに後退し続けるしか無かった。

181303 ◆CFYEo93rhU:2017/11/03(金) 19:06:25 ID:2k2lP0x60
投下終了です。

182名無し三等陸士@F世界:2017/11/03(金) 19:54:58 ID:ObAuRIP20
投下乙です。
タイトルをどうしようか迷った挙句、二度は続かなかったということでああしますた。

183名無し三等陸士@F世界:2017/11/03(金) 23:19:44 ID:gQ3AzgPs0
投下乙でした。
これが仏米中と列強国との戦争を戦い抜いてきたベトナム人民軍なら
超高練度と超絶隠蔽技術を駆使して皇国戦車を狩っていくんでしょうが
流石に彼らと比べるのは酷ですねw

184303 ◆CFYEo93rhU:2017/11/04(土) 10:15:13 ID:2k2lP0x60
>>182

まとめ、ありがとうございます。
私の書き殴った文章を読み取って適切なタイトルをつけて下さり、本当にありがとうございます。


>>183

ベトナム並みに粘られたら、皇国が勝てないので却下です!
ただ、ベトナムも米軍ほどの優良装備ではないにしろ、自動小銃やら対戦車ロケットやらの現代兵器は持ってた訳なので、
装填と照準だけで5分はかかるような野砲と前装式マスケットが精々のF世界軍よりは、ベトナム軍の方が火力は優越してる筈。

185名無し三等陸士@F世界:2017/11/04(土) 15:47:47 ID:Imfv7Bj20
>>184
まあソ連製の歩兵装備ですから確実にF世界より火力は上ですね。
ただ彼らの本領は現地地形や人力で掘った地下トンネルを
徹底的に利用した伏兵や相手の精神に負荷をかけ
正常な判断力すら奪うハラスメント攻撃などを駆使した
ゲリラ戦なのでそういった現代戦装備が無くても無いなら無いで
ありもので皇国戦車を狩りそうなところが怖いですがw

186303 ◆CFYEo93rhU:2017/11/11(土) 06:41:04 ID:2k2lP0x60
>>185

ベトナム特有の地形もあるでしょうが。
史実では、一応表面的には平和裏に仏印に進駐して植民地としましたが、散発的には抵抗勢力も居たようですし。
もしこれが本格的な武力闘争となっていて、米英が仏印側を支援し始めたらその時点で南方作戦は失敗したでしょうね。

187名無し三等陸士@F世界:2017/11/24(金) 22:51:26 ID:2U7MiJI20
現代以前のベトナムもF世界も国民意識がなあ
住民レベルでの抵抗意識と安全に戦力を育成できる聖域がないと、ゲリラ戦は長期間継続できないでしょうね

188名無し三等陸士@F世界:2017/11/29(水) 22:27:43 ID:gQ3AzgPs0
ベトナムに関して言えばあの国は古代中華王朝の時代から
侵略と撃退を繰り返してきたせいか中世以前の段階で
すでに民族意識は出来てたんですよね。
国民国家ではないので国民意識そのものは生まれていませんが
住人レベルで外部からの侵略に抵抗するのはアジアでは割とデフォです。

189名無し三等陸士@F世界:2017/12/02(土) 19:41:34 ID:ZqrZSx6Q0
もしも検索 ⇒ bit.ly/2kJFRlx

190名無し三等陸士@F世界:2018/02/02(金) 15:59:03 ID:HaszD4RQ0
>>180
遅レスですが303さん乙

>皇国軍に重大な損害を与えられる“かもしれない”戦法
以前の話と前後の議論からして、12ポンド砲を伏せておいて日本戦車が通りがかった所を
至近距離から(壊れた大砲とかあったので過装薬で?)側面めがけてぶっ放す、という戦法のようだけど…

12ポンド砲って産業革命以前の野戦砲としてはかなり大きい上貴重だろうし
12ポンドグリボーバル砲辺り見ても運用に15名も要するとあるからそう簡単に隠れられないし
(というか先の成功事例はよく隠せたなと思うけど)
多用できる戦法で無い上に、ちょっと前方警戒すれば防げるレベルだもんなぁ…

現代で言うとエネルギー転換装甲を装備した未来人の超戦車に対抗するために
偽装した12式地対艦誘導弾を至近距離から叩き込むような状況?
数世紀先の兵器を相手にするのは大変だ

191名無し三等陸士@F世界:2018/02/11(日) 17:14:40 ID:4KpSqcSc0
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192名無し三等陸士@F世界:2018/02/13(火) 04:19:26 ID:i5bsLcNs0
隠蔽に関して言えばお互いの練度次第ですね。
小隊規模で本気で隠蔽された部隊って発見は困難ですから。
で、基本伏兵ってローテクノロジーなんですよね。
日本でも普通に戦国時代やってましたから。
なのでこの世界でも練度次第ではできるんじゃないかなあ。
ましてサーモグラフィー等使えない皇軍では至近で撃破されるのもしょうがないのでは。

193303 ◆CFYEo93rhU:2018/02/17(土) 13:36:09 ID:bXzhWQn.0
年末年始は挨拶もなくすみませんでした。
新年の挨拶をするつもりが、2月になってしまいました。

旧暦なら今がまさに年始の時期だから……。


>>187-188

中央に皇帝が居て安定期の中華王朝でも、辺境地域は異民族に対して自主防衛とかしてましたからね。

>>190
>>192

皇国軍は快進撃に気が緩んでいたのと、主力部隊はリンド王国戦からの連戦で疲れていたという事もあるかなと。

ただWW2で、隠蔽された日本軍の対戦車砲陣地が米軍戦車部隊に思わぬ打撃を与えた事例があるので、不可能ではないだろうと思ったのですが。
現代戦でも、中東の紛争地などでは高度なセンサーを備えた主力戦車と随伴歩兵が居ても、RPGとかの奇襲食らってますし。

あと、使用するのは12ポンド砲(1バルツ砲)だけでなく6ポンド砲(1/2バルツ砲)や3ポンド砲(1/4バルツ砲)などもです。
砲兵が狙いをつけて射撃するまでの時間を稼ぐため、砲兵の射界に誘導するため、戦竜や歩兵部隊が戦います。

皇国軍の歩兵連隊や大隊の主力をもって一気にひき潰すには小粒過ぎるが、中隊や
小隊単位で前方警戒する斥候部隊だけでは心許ない程度の規模と火力のセソー軍です。

戦竜や砲兵を効果的に駆逐するのに最も都合が良いのが戦車なので、戦車がセソー軍の野戦陣地を攻撃
しようとしているところを、肉を切らせて骨を断つ(断ててないけど)覚悟で攻撃する感じでしょうか。

その場に居る皇国軍の戦車は1個小隊4〜5両程度で、その中の運の悪い1両を破壊できればセソー大公国軍の勝利(セソー大公の精神的勝利)なのです。

194名無し三等陸士@F世界:2018/03/04(日) 18:38:40 ID:Imfv7Bj20
>>193
あけましておめでとうございます。
本年も作品楽しみにしております。

195名無し三等陸士@F世界:2018/03/04(日) 18:46:12 ID:Imfv7Bj20
圧倒的装備差練度差のある場合の現代戦ですら伏兵が通用する一番の要因は
もともと伏兵って攻撃側が圧倒的に有利な戦法なんですよね。
攻撃を受ける側は行動中延々とあたりを警戒し続ける中、
攻撃側はもし敵が油断していなければ攻撃しなければいいだけなので本当に攻撃側有利なのです。
その分攻撃規模はどうしても小さくなり近代戦以降では戦術レベルでは
攪乱と士気低下くらいにしか役には立ちませんが。

196名無し三等陸士@F世界:2019/01/04(金) 21:13:26 ID:dXO2PQEY0
1年以上更新ないし、これはエタったと考えてよいのかな?

197303 ◆CFYEo93rhU:2019/01/19(土) 09:34:51 ID:SNm79O0Y0
あけましておめでとうございます。

昨年は全く投下なしで、すみませんでした。

30年戦争開戦から400年、ダンバイン放映から35年という記念の年だったのですが。
何の成果も得られませんでした!!

前置きはこの程度として、本編 >>113の続きを投下したいと思います。

198303 ◆CFYEo93rhU:2019/01/19(土) 09:36:29 ID:SNm79O0Y0
「また霧が出て来ましたね」
「これは僥倖だ。夜霧に紛れて陸兵を全部揚げるぞ」
ギューナフ中将は当初から上陸を予定していた陸軍将兵に加え、海兵隊も上陸させる準備を始めた。
13隻の艦に乗る海兵隊を合わせれば400人近くになるから、戦力を20%以上多く出来る。
陸軍将兵と海兵隊の全部を合わせれば2300人。ここまで来たら、戦力の出し惜しみは無しだ。
コマントル代将の分艦隊が奮戦したのか、はたまた皇国軍の哨戒艦隊はそもそも居なかったのか。
真相はともかく、悲観的な想定に比べればかなりの時間をかけて上陸作戦を進められていた。
セソー大公国軍に、作戦が成功するかも知れないという希望が見えてきたのだった。


予定より大幅に時間をかけて、菱と共に2隻の大型帆船を屠った蓮だったが、祝勝の雰囲気は吹き飛んだ。
「海兵隊より連絡がありました。敵の本隊は東海岸“ろ”地点! 既に殆ど揚陸完了している模様!」
やられた! という悔しさで艦橋内は騒然とした。
霧が晴れたらそこに艦隊が居て、セソー陸軍の連隊旗が翻っていた。というような状況だったらしい。
偵察班は距離を取る為に撤退したから、その後の詳細は不明だがかなり不味い事になっているだろう。
上陸後に追撃されて、敵味方の距離が近すぎれば海から艦砲での掩護射撃も出来なくなる。
「上陸部隊への砲撃は可能か?」
「友軍誤射が考えられるので、難しいです」
ただでさえ少ないノイリート島駐留軍を、味方からの誤射で減らす訳には行かない。
しかし、圧倒的な寡兵で押し切られた場合を考えると支援砲撃をしない訳にも行かない。
“予定では”敵の部隊が上陸する前に艦ごと潰す筈だったが、思惑どおりには行かなかった。
「陸軍と海兵隊に連絡して全員の海岸線からの撤収を。30分後に敵の上陸地点周辺を砲撃する」


運も味方に多くの陸兵を揚陸させたセソー大公国軍だったが、
砲戦力に関しては1/2バルツ砲を2門しか揚陸していなかった。
大砲を牽く馬も居ないので、歩兵が数人がかりで押して移動させる事になる。
船から陸に揚げる手間もあるから、多数の大砲を用意しても効率が悪いのだ。
大砲を1門陸揚げするなら、歩兵を10人陸揚げする方がずっと良い。

やっと運んだ大砲にしても、降雨や降雪でぬかるんだ道では馬匹でも移動が難しいだろう。
この時期のシテーン湾沿岸の道路は殆ど泥道であるから、大砲は“使える状況なら使う”程度の代物だ。
ノイリート島にしても石畳で舗装されている箇所は中心部とその周辺くらいで、島全体の舗装率は10%もない。
島の中心へ向かう道路は狭い上り坂が続くので、軍旗を先頭に大砲を押す兵を最後尾に置いて縦隊を組み、進軍を開始する。


秘匿の為に灯火を消して進むので、歩みは遅い。
暫く進んだところで、突然の地響きと激しい爆音。
文字どおり長蛇の列となっていたセソー大公国軍の縦隊に戦慄が走った。
「大砲は捨てて良い。急いで内陸に行け!」
指揮官のヴィットール中将が指示を下す。
せっかく無傷で上陸したのに、ここで終われない。

30分ほど続いた砲撃で損害を受けたセソー大公国軍だったが、悪夢の夜はまだ終わらない。
上陸した2300人のうち、300人程は洋上からの砲撃で戦闘不能に、400人程は後詰に。
1600人の兵員が坂を上りきり、ノイリート要塞の中央部へ進もうとする頃には海上が酷い有様になっていた。

199303 ◆CFYEo93rhU:2019/01/19(土) 09:37:08 ID:SNm79O0Y0
ノイリート島の東“ろ”海岸を砲撃しながら大急ぎで駆けつけた蓮と菱は、今度は対艦戦闘に移った。

「艦長、帆船の艦影発見。5隻の船体を目視、他にもマストを確認。7、8隻は居ます」
「哨戒機と潜水艦が確認した艦と一致するか?」
「軍旗はセソー大公国軍のものです。マストの本数や形状等も報告と一致します」
「よし、帆船を敵艦隊主力と評定。司令部に敵発見を報告、右舷砲戦準備」
砲術長が測的と主砲の装填作業を指示する。
セソー艦隊の後方から左側に抜ける形で追い越しながらの同航戦になるだろう。
「距離2500……いや2000まで詰めろ。初弾から当てるぞ!」
巡洋艦か新型駆逐艦ならともかく、欧州大戦世代の
旧式駆逐艦の砲戦力は“無いよりまし”程度のものだ。
だが戦艦からすれば豆鉄砲と呼ばれる5インチ級の単装砲でも、
この世界においては要塞砲を凌駕する射程と攻撃力の大砲だった。
旧式故に対空戦闘こそ苦手だが、対水上戦闘能力は砲の門数分。
駆逐艦の主砲で破壊不可能な艦船は皇国以外に存在しないから、
15秒程度で再発射可能な連射性能は一撃の破壊力不足を補って余りある。
8隻相手となれば、一撃の火力を頼りにリスク覚悟で接近戦を挑むしかない。

先程の2隻とこの8隻以外にも、まだ居るかも知れないのだ。
手間取ってまた霧が濃くなったら厄介なのである。


帆を張って増速準備中だった戦列艦プランヴィーネは皇国艦を左舷に見るように舵を切り、戦闘態勢に入った。
「皇国軍では軍旗を引き下ろすのが降伏の合図だそうだが、なら軍旗をマストに釘で打ち付けるかね?」
数的に不利な上、皇国艦は性能で圧倒的に優位なのだ。
艦橋から斜め後方を眺めても、皇国艦の速度は呆れるほど速い。
「左舷砲戦準備! 使えるものは全部使え!」


プランヴィーネの艦橋で司令官が望遠鏡を覗いているのと同時に、蓮の艦橋からも艦長や見張り員が双眼鏡を覗いていた。
「最後尾の敵艦が左に舵を切りました」
最後尾の艦だけ帆を張っており、前方の艦は完全に帆を閉じている。
帆を閉じているという事は、前方の艦は停止して上陸部隊を舟艇に移乗させている最中という事だ。
双眼鏡越しにも、艦の周囲に小舟が多数見て取れた。最後尾の艦が警戒していたのだろう。
1人でも多くの揚陸を許すと後が厄介だが、足止めをしようとする戦闘艦を
放っておくのも厄介。まず針路を妨害しようと舵を切った艦を無力化し、
その後に揚陸作業をしている艦を無力化する必要があると判断した。
「こちらの居場所は掴まれている。探照灯を使い、展帆している艦から攻撃せよ。停船作業中の
 帆船なら容易に動き出せない。敵の準備が整う前に決着を着けられると信じている」
こちらの針路を塞ぐように旋回した最後尾の艦に対しては、風上で距離を取っていれば容易に接近は許さない筈だ。
主砲が斉射されると、初弾から1発の命中があった。他の2発も夾叉しているので測的は正しかったようだ。
船体に命中した榴弾が爆発し、構造物を破壊すると共に火災を発生させる。
蓮に続いて菱も砲撃を開始する。こちらは全弾外れたが、夾叉はしているようだった。
真っ赤な炎によって、停止して揚陸作業していた艦も明るく照らし出される。
第2斉射は全て外れたが第3斉射は蓮と菱で3発命中し、第4斉射、第5斉射と続く。

プランヴィーネも左舷全ての砲列を使い砲戦に応じるが、
蓮と菱の怒涛の攻撃に、反撃の砲撃も弱々しくなっていく。

プランヴィーネは既に20発以上命中している中、蓮の第10斉射が止めになった。
2発命中し、木造船体である事と消火能力が低い事が重なり火薬庫に引火したのだ。
既にボロボロだった船体は至る所から浸水しながら、火達磨となって沈んで行く。

船体、装具、武装、人員。
全てが赤々と燃え盛り焼き討ち船のようになったプランヴィーネは、
しかし同時に、威風堂々とした戦列艦の最期として華々しくもあった。

プランヴィーネが戦闘不能になり沈没しつつあるのを確認すると、
蓮と菱は停船中の艦に標的を変え、砲撃を続行する。
巨大な松明と化したプランヴィーネによって照らされる残存艦隊は、良い的でしかなかった。

元々陸兵を多く積むために大砲を下ろしていたので砲力が減じているが、幸か不幸か今の状況では大砲の定数は関係ない。
一応それでも、ロケット弾や旋回砲など、可能な限りの反撃を試みるセソー大公国艦隊だが、戦闘態勢にあった戦列艦でも敵わないのだ。

凡そ45分に渡る一方的な砲戦により、その場に居たセソー大公国艦隊の戦列艦とフリゲートは
転覆沈没するか、辛うじて浮かんでいても最早自力での航行は不可能な程の痛手を負った。

セソー大公国艦隊との戦闘を終え、その最期を見届けた駆逐艦蓮と菱の2隻は、
周辺海域を一通り哨戒した後、大内洋方面からリンド王国南西の泊地へ帰投した。

200303 ◆CFYEo93rhU:2019/01/19(土) 09:38:32 ID:SNm79O0Y0
投下終了です。

こんなグダグダな拙作にも、何年もお付き合いくださって本当にありがとうございます。

……東京オリンピックまでには終わらせたい。

201名無し三等陸士@F世界:2019/01/19(土) 21:04:01 ID:.78nQQms0
投下乙です。
海軍力ではやはり圧倒的ですね。

202名無し三等陸士@F世界:2019/01/19(土) 21:25:02 ID:L7rkzYew0
おお、久々の投下だ、乙です
さて、上陸した連中はこの海戦の結末見てあっさり降伏するのか、それともあがくのか…

203名無し三等陸士@F世界:2019/01/20(日) 00:59:42 ID:YSuRdNuk0
とんでもねえ待ってたんだ

204名無し三等陸士@F世界:2019/01/20(日) 22:17:46 ID:Rx9iVfiQ0
乙!
まってましたぜ!

205303 ◆CFYEo93rhU:2019/01/23(水) 20:32:28 ID:SNm79O0Y0
ありがとうございます。
ありがとうございます。

開店休業状態ですが、執筆は継続中です。

206名無し三等陸士@F世界:2019/01/31(木) 18:34:54 ID:AWSwU19o0
有難い…お疲れ様です!

207名無し三等陸士@F世界:2019/02/02(土) 16:52:14 ID:Imfv7Bj20
おお!待ってました。
あけましておめでとうございます。今年もますますのご繁栄をお祈りしております。

208名無し三等陸士@F世界:2019/03/15(金) 10:53:16 ID:bq8ROwp20
303氏連載10周年おめでとー

209303 ◆CFYEo93rhU:2019/05/18(土) 18:18:34 ID:SNm79O0Y0
平成が終わり令和となりましたが、皇国召喚は終わってません。
本編の続き投下します。

>>208

ありがとうございます。
あっという間の10年、月日が過ぎるのは怖いです。

ですがここまで期間がかかっても、投下があると
反応してくださる方々には、本当に嬉しいです。

210303 ◆CFYEo93rhU:2019/05/18(土) 18:20:09 ID:SNm79O0Y0
平成が終わり令和となりましたが、皇国召喚は終わってません。
本編の続き投下します。

>>208

ありがとうございます。
あっという間の10年、月日が過ぎるのは怖いです。

ですがここまで期間がかかっても、投下があると
反応してくださる方々には、本当に嬉しいです。

211303 ◆CFYEo93rhU:2019/05/18(土) 18:23:46 ID:SNm79O0Y0
「プランヴィーネ大破炎上! 船体の傾斜が止まりません。沈没も時間の問題でしょう……」
「我が軍の誇る戦列艦が満足な反撃も出来ず、10分も経たずにか!」
揚陸指揮を執っていた次席指揮官は、ギューナフ提督のあっけない散り様に驚愕したが、同時に作戦の第一段階成功を感謝した。
引火した火薬庫で黒色火薬から発生する大量の硝煙が疑似的な煙幕になり、一時的に海から上陸地点への視界が効かなくなったのだ。
「ギューナフ提督とプランヴィーネからの最後の支援だ! 1人でも多く上陸し、ノイリート島に翻る皇国の旗を引き摺り下ろせ!」
風が凪いでいるせいでなかなか晴れない煙幕。そのお陰で追加の150人。合計で600人の上陸が完了していた。
既に発見されてしまった以上、残り全部の揚陸は絶望的だが、9割方完了した上陸任務はほぼ達成したと言っていい。

だがセソー大公国軍の出鼻を挫くように、沈みながら燃え盛る大公国艦隊に照らされている
集結地点に向けて、前進偵察を行っていた皇国軍海兵分隊からの誘導で陸軍の軽迫撃砲が発射された。
上陸すればとりあえず艦砲射撃から逃れられると思っていたセソー大公国軍だが、陸からの砲撃に目を覚まされた。

揚陸に使用した艦は悉く攻撃を受け、退路は絶たれている。
このまま進んで、ノイリート島を奪い返すしか道は無い。
司令官のヴィットール中将は急ぎ進軍を命じる。
大砲は軽野戦砲が2門あったが、遺棄してきた。つまり存在しない。
飛竜の掩護は無い。戦竜も騎兵も居ない。頼れるのは狙撃兵と擲弾兵のみ。

もうすぐ夜が明ける。
勝つにしろ負けるにしろ、数日中には決着が付くだろう。いや、付けねばならない。
兵員と弾薬を優先した為、食糧の揚陸が殆ど出来ておらず、手持ちの4日分しかない。
何が何でも4日以内、節約して食い繋いでも1週間以内には終わらせる必要があるのだ。
揚陸予定だった10日分の食糧は海の藻屑となった。

物心両面で背水の陣。
ノイリート要塞の食糧庫の場所は分かっているから、そこを襲撃して食糧を確保する必要があるだろう。
皇国軍の新たな艦隊や飛竜が襲撃してくるかも知れないのだから、一刻の猶予も無い。


ノイリート島に上陸した中で最精鋭とされる部隊は狙撃兵大隊だった。

狙撃兵大隊を指揮するのは、伯爵家出身のディーン少佐。
彼にとっては名誉職のようなもので、これが初の“実戦”であった。

これは他の大隊でも大なり小なり同様だったが、今まで訓練や山賊討伐任務、
小国との国境紛争はあったが、列強の正規軍と真正面から戦った事は無かった。
それも当然の事で、この大陸北方で列強国と言えばリンド王国かマルロー王国であり、
そのどちらかと戦争する機会がそう頻繁にあったら堪ったものではない。

ある程度経験のある、言わば主力部隊は皇国軍とリンド王国軍に備えて首都の西方にあり、
今回派遣されたノイリート島上陸部隊は、二流とは言わないまでも一段劣る部隊ばかりなのだ。

濃霧の海を行く事1週間。命辛々上陸し、乗ってきた船は沈没し、今も周辺に爆発が起きている。
皇国軍という敵を相手に逃げ出したい気持ちで一杯だったが、分散戦闘開始の号令をかけた。

ディーン少佐の大隊の得意とする戦法は少数の精鋭狙撃兵による散兵戦術だが、皇国流の戦闘群戦術に近い部分もある。
大隊の人数は本部要員含めて150人程度であり、約30人の中隊4個で編成されている。
この4個中隊が散開して敵の歩兵陣をちくちくと射撃する訳だ。
加えて、この狙撃兵大隊は擲弾と擲弾筒を装備している。
隙を見つければ敵陣に肉薄して擲弾を射撃する事も出来る。

列強国のような大規模な軍を持てないセソー大公国軍の変化球であった。
勿論、騎兵に追い掛け回されたらひとたまりも無いのだが、これだけ少人数で身軽なので、意外と逃げ切れてしまう。
それにたった100人かそこらの歩兵に対して騎兵を差し向けるのは、それはそれで勿体なく感じるだろう。
飛竜や戦竜なら尚更、敵の主力陣に突入させたい訳で、こんな小物に構っていられない。

戦列歩兵のように重厚ではなく、本格的な擲弾兵のような火力も持たないが、その隙間を埋めるように存在する。
国土や人口が巨大な列強国ではないからこその、特徴的な軽歩兵なのだ。

皇国流の戦闘群戦術で求められるような突破力こそ無いが、
突撃を受け持つ主力歩兵や騎兵を支援する縁の下の力持ち。

狙撃兵大隊が薄く広がって周囲の警戒をしつつ、本隊の戦列歩兵と擲弾兵が陣形を組む。
暗闇の中でのそれは、決して順調なものではなかった。

そうこうしているうちに、狙撃兵大隊が発砲音を聞く事になる。

212303 ◆CFYEo93rhU:2019/05/18(土) 18:25:35 ID:SNm79O0Y0
最も前進していた皇国軍の海兵分隊は、密集しているセソー大公国軍の中から離脱した部隊を目撃した。
脱走かと思った者も居たが、統制のとれた動きからすぐにそれは無いと判断。
小銃での狙撃を試みるも、なかなか命中しない。

真正面から突っ込んでくる馬でもなければ、そうそう当たるものでもなく、機関銃が無いと歯噛みするしかない。
そうこうしているうちに300m、200mと接近してきて、100m程まで迫られる。マスケットでも当てに行ける距離だ。
数人は仕留めたが、仕方なく、距離を保って観測しつつ機関銃のある陣地まで後退する破目になってしまった。


皇国軍が退却した。
その報せは、落ち込んでいたセソー大公国軍の士気を幾分か高めた。
自分達は、リンド王国軍すら蹂躙した皇国軍を退かせた!

だが皇国軍を退かせた張本人である狙撃兵大隊は一発も撃っていない。
もう少し接近してから撃とうとしていたところ、逃げられたという感触だった。
しかも戦闘前から数人の死者と負傷者を出している。
砲撃でやられた部隊と合わせれば、損害は既に百人を超す。

「閣下、敵の退却は整然としたものでした。深追いは危険です」
死にそうな思いをしたが、今度こそ本当に死ぬかも知れない。降伏すべき。
そんな思いを胸に秘めながら、ディーン少佐はヴィットール中将に進言した。

仮設の司令部となっている簡易天幕では、将軍の他、参謀達も渋い顔である。
言っている事は正しいが、それを臆面も無く言い放つ少佐風情にだ。
ただコネと身分だけで成り上がった無能な士官なら一笑に付すところだが、
ディーン少佐は無能ではない。歴戦の英雄ではないが、十分に有能な方だ。
過去に山賊討伐という任務で、部隊に1人の戦死者も出す事無く任務達成した程度には有能だ。
地形的にも、元々の要塞の設計的にも、あと1シウスも進めば厳重な防備が待っている。

「かといってここに留まり続けるのは出来んし、退却も出来んぞ?」
帰りの船が沈んだからな。
「この天幕か、撃沈された艦の帆を使えば良いと愚考します!」
やや遠回しではあるが、白旗を掲げよと言っている。次にする事は軍使による正式な降伏の宣告だろう。
将軍を前にして、参謀でもない少佐風情が臆面も無く降伏を進言する図に、当の参謀達も苦い顔。
「閣下! 小官は本国に許婚が居りまして、この戦いが終わったら結婚をする予定です」
何を言い出すんだこの小童は。年若いとは言え軍人が情に訴えるとは……。
「それが貴官の本心か?」
「はい! 要塞砲の炸裂弾で死ねば、遺体は身元不明となるでしょう。それでは死後婚姻も出来ない!」
「死にたくないのは皆同じだ。この戦いでは既に死んだ者も大勢居る。海軍のギューナフ閣下も恐らく艦と運命を共にした。貴官だけ虫が良いとは思わんか?」
ヴィットール中将の視線が射竦める。
「虫が良いとは思います。
 ですが、今の時点で奇襲上陸をして主要部を即座に制圧という当初の作戦は破綻したも同然です。
 勝算の無い、生きて帰る望みの無い戦いに赴く事こそ、指揮官として兵への裏切りではないでしょうか」
そんな事、改めて言われずとも解っている。
奇襲も強襲も、駄目だった。
断続的ではあるが、今この瞬間も天幕の周辺で爆発が起きているし、斥候に出した部隊は戻って来ないのだから。
次の爆発がこの天幕を直撃しないという保証も無い。

ディーン少佐の提言が概ね正論だからこそ、ヴィットール中将としても安易に首を縦に振れない。
指揮下の部隊の中では精鋭であるディーン少佐だから、余計なのだ。
戦闘部隊の序列としては最上位となる擲弾兵大隊の指揮官も、ディーンが言うなら……という態度。
天幕の中には士官しか居ないから良いものの、兵が聞いたらせっかく上がりかけた士気がどん底まで落ちるだろう。
「少佐の考えは解った。その上で命令するが、狙撃兵大隊は1シウス前進し、敵の反応を探り報告せよ」
「前進するのであれば……閣下が下命されれば掩護しますが、本隊は前進しないのですか?」
「敵の反応次第だ。それによっては突撃する」
「……了解!」

天幕を出たディーン少佐は、すぐに大隊を集結させて点呼を取らせた。
「大隊前進! 擲弾筒には発煙弾を装填しておけ!」

213303 ◆CFYEo93rhU:2019/05/18(土) 18:30:47 ID:SNm79O0Y0
短いですが、投下終了です。
ブラウザの調子なのか回線の調子なのか、開始宣言の二重投稿すみませんでした。

214名無し三等陸士@F世界:2019/05/18(土) 19:25:51 ID:.78nQQms0
投下乙です。
少佐、何故フラグを…(滝汗

215名無し三等陸士@F世界:2019/05/19(日) 23:14:23 ID:CDK4/xxs0
帝国召喚のHP消えちまった・・・

216名無し三等陸士@F世界:2019/05/20(月) 00:02:04 ID:Rx9iVfiQ0
投下乙!
これはいいフラグw

217名無し三等陸士@F世界:2019/05/20(月) 08:53:12 ID:lEy5xQPg0
>>215
移転してるやで
ttps://kurokurobee.web.fc2.com/

218303 ◆CFYEo93rhU:2019/05/26(日) 16:46:28 ID:SNm79O0Y0
10年前を色々思い……。

私がここで投稿しているのはF自モノとしては処女作ですが、
戦艦1隻だけ異世界転移という習作的なモノはあり(未完結、未投稿)、
それを書いている時にこちらの分家に出逢い、
設定をある程度引き継いだり修正して国ごと転移モノに
変えたのが『皇国召喚』なので、影響受けまくりです。

例えば飛竜の設定。
速度が100km/hくらいで積載量が操縦士含め150kgくらいというのは、
この戦艦1隻だけ召喚もので設定したものをほぼそのまま流用してます。
戦艦が搭載する水観や水偵で空戦しても勝てて、高角砲や機銃でも落とせて、
爆弾はバイタルパートを貫通せず軽微な損傷で済むレベルを想定してたらしいです。

これ、単発モノとして投下しようかと考えてるんです。
未完結なので、本当に部分的なエピソードが幾つかあるだけなんですが、
結構細かい事書いてたりして、皇国召喚の掌編としても通用するレベル。
むしろ今書いてるものより上手いんじゃないかと。
武器の名前とか地名とかは互換性無いんですが、
何より大きいのは皇国召喚では結局不発に終わった、
超弩級戦艦が戦ってる場面がある事なんですよね。

ただ読み返すと、もう完全に『日本国召喚』のクワ・トイネ公国とロウリア王国なんですよね。
特に飛竜騎士が哨戒任務中に沖合で巨大戦艦を発見して驚くあたりは笑っちゃうほど似ていて、
敵の覇権国家はロウリア王国とパーパルディア皇国を足して2で割ったような帝国で。


>>214
>>216

伯爵家の家柄ですから許婚くらい居てもおかしくないのです。

「私は、この戦争が終わったら故郷(くに)に帰って結婚するんです」
「彼女は、私の帰りをパインサラダを作って待っているんです」
「閣下、このペンダントを預かっていてくれますか? 失くしたら大変だ」
「こんな、いつ砲弾で死ぬかもわからない所に居られるか! 私は泳いでも帰る!」

>>215
>>217

書籍化もされたみのろうさんの『日本国召喚』が直接のきっかけだと思うのですが、
「○○(組織名や国家名)召喚」という題名のF世界召喚ものが凄い増えた印象があります。
以前より大規模召喚ものはありましたが、その題名がここまで「○○召喚」だらけになるとは。

この界隈で「○○召喚」というシンプルな題名の原点はくろべえさんの『帝國召喚』だと思ってるのですが……。

というか「皇国召喚」で検索すると小説家になろうとハーメルンで別作品が4作品くらいあるんですよね。
こんな味気ない単純な題名が被る事になるとは10年前は思いもしませんでした。

219303 ◆CFYEo93rhU:2019/05/26(日) 16:55:48 ID:SNm79O0Y0
10年前を色々思い……。

私がここで投稿しているのはF自モノとしては処女作ですが、
戦艦1隻だけ異世界転移という習作的なモノはあり(未完結、未投稿)、
それを書いている時にこちらの分家に出逢い、
設定をある程度引き継いだり修正して国ごと転移モノに
変えたのが『皇国召喚』なので、影響受けまくりです。

例えば飛竜の設定。
速度が100km/hくらいで積載量が操縦士含め150kgくらいというのは、
この戦艦1隻だけ召喚もので設定したものをほぼそのまま流用してます。
戦艦が搭載する水観や水偵で空戦しても勝てて、高角砲や機銃でも落とせて、
爆弾はバイタルパートを貫通せず軽微な損傷で済むレベルを想定してたらしいです。

これ、単発モノとして投下しようかと考えてるんです。
未完結なので、本当に部分的なエピソードが幾つかあるだけなんですが、
結構細かい事書いてたりして、皇国召喚の掌編としても通用するレベル。
むしろ今書いてるものより上手いんじゃないかと。
武器の名前とか地名とかは互換性無いんですが、
何より大きいのは皇国召喚では結局不発に終わった、
超弩級戦艦が戦ってる場面がある事なんですよね。

ただ読み返すと、もう完全に『日本国召喚』のクワ・トイネ公国とロウリア王国なんですよね。
特に飛竜騎士が哨戒任務中に沖合で巨大戦艦を発見して驚くあたりは笑っちゃうほど似ていて、
敵の覇権国家はロウリア王国とパーパルディア皇国を足して2で割ったような帝国で。


>>214
>>216

伯爵家の家柄ですから許婚くらい居てもおかしくないのです。

「私は、この戦争が終わったら故郷(くに)に帰って結婚するんです」
「彼女は、私の帰りをパインサラダを作って待っているんです」
「閣下、このペンダントを預かっていてくれますか? 失くしたら大変だ」
「こんな、いつ砲弾で死ぬかもわからない所に居られるか! 私は泳いでも帰る!」

>>215
>>217

書籍化もされたみのろうさんの『日本国召喚』が直接のきっかけだと思うのですが、
「○○(組織名や国家名)召喚」という題名のF世界召喚ものが凄い増えた印象があります。
以前より大規模召喚ものはありましたが、その題名がここまで「○○召喚」だらけになるとは。

この界隈で「○○召喚」というシンプルな題名の原点はくろべえさんの『帝國召喚』だと思ってるのですが……。

というか「皇国召喚」で検索すると小説家になろうとハーメルンで別作品が4作品くらいあるんですよね。
こんな味気ない単純な題名が被る事になるとは10年前は思いもしませんでした。

220303 ◆CFYEo93rhU:2019/06/01(土) 22:53:20 ID:SNm79O0Y0
本編の続き投下します。

221303 ◆CFYEo93rhU:2019/06/01(土) 22:54:58 ID:SNm79O0Y0
夜明け前の最後の暗闇の中、ディーン少佐の狙撃兵大隊は行進の太鼓を叩く事もせず、
岩陰や茂みに隠れながら息を殺してノイリート要塞周辺を歩きまわり這いまわった。
皇国軍の防御陣地を幾つか見つけるが、どれも相互支援可能と思われる配置だった。
そんな中、一箇所だけ孤立して存在する小さな陣地を発見する。
(ここを足掛かりにするか、せめて勝利したという実績を作れないものだろうか)
大隊の兵員は長銃身マスケットと擲弾筒を射撃態勢に、陣地に近づいていく。


機関銃陣地に篭って様子を窺っていた皇国軍は、時折現れる斥候を撃退しては休息するを繰り返して居た。
後方では、セソー大公国の陣地に向けてのんびりと迫撃砲が撃ち込まれている。
重要拠点の攻防戦にしては、あまりに間延びした戦闘だった。

そうなる理由は単純で、両軍共に積極性を欠いているから。
既に海軍の駆逐艦は帰途に就き、他の艦艇の増援も無いので、暫くは洋上からの戦闘支援は望めない。
飛行場には稼働状態の戦闘機や爆撃機があるが、燃料や弾薬は“本番”の為に必要で、こんな事に消費させられない。
反撃に転じてセソー大公国軍に突撃するには砲兵火力が足りない。
歩兵が自前で持つ手榴弾や迫撃砲もそう潤沢な弾薬がある訳ではない。嵩張る大隊砲や連隊砲となれば尚更。
一部小隊では鹵獲した1/2バルツ砲を置物にして、敵に警戒させる事で足止めするという方策も取られた。
戦車の1個小隊でもあれば違うだろうが、戦車や装甲車といった機甲戦力は全て大陸本土にある。

これで積極果敢に攻めろというのは無理な話だ。
航空支援も砲撃支援も機甲戦力も無い中、歩兵だけでの攻勢はリスクが高過ぎる。
もう時間的、空間的に後が無いならともかく、皇国軍はそこまで切羽詰っていない。
むしろこの戦場に限れば、時間は皇国軍の味方だ。
敵に退路は無く、味方には十分な陣地と食糧の備えがある。
篭城戦という戦況では圧倒的に有利な防衛側が、急いで打って出る必要などどこにあろうか。
ここで睨み合いが続こうが、大陸本土で決着が付けばそれで終わりだ。
少なくとも迫撃砲と歩兵砲の弾薬にある程度余裕が生まれなければ、攻勢には出られない。

加えて、ある意味でそれ以上に深刻な問題があった。
もしも千数百人の敵兵が降伏してきたら、受け入れる余地が無いのだ。
勿論、ノイリート要塞には敵の捕虜を収容する為の建物も併設されており、それでも足りなければ牢屋などもあるが、問題は食糧であった。
直ぐに干上がる訳ではないが、確実に余裕が無くなる。
この場にある物資は大陸本土で活動する部隊の分としても利用されるから、麦の一粒だって無駄には出来ない。
セソー大公国軍が全力で攻撃してきて飛行場を破壊されたら困るが、それに対し反撃して降伏されても困る。
今回は初回のように、捕虜を本土に送り返す為の船の手筈も無い。その可能性のある船は皇国軍が自らの手で沈めた。

222303 ◆CFYEo93rhU:2019/06/01(土) 22:55:29 ID:SNm79O0Y0
東の空が明けて夜が終わった頃。
セソー大公国軍の軍服を纏った人影が見えた。今度は数十人だ。
警戒に当たっていた皇国軍将兵はまたか、という思いで小銃や機関銃に手をかける。
「撃ち方用意!」
だが、今回は今までと違った。
敵部隊から撃ち出された爆弾が大量の白煙を吐き出し、視界を遮る。
「撃ち方待て!」
破れかぶれの敵は何をしてくるか分からない。
毒ガスかも知れず、しかし防毒マスクは無いという事態に小隊長は困惑した。
この場に吹く海風の風向きは、皇国軍が風下側なのだ。
「退避! 煙から距離を取れ!」
小隊員は持ち場を離れて下がるが、煙に巻かれる。
「全員、何ともないか?」
「少し煙たいだけです。ただの煙幕です!」
小隊軍曹は冷静に返した。戦場の勝手知ったる軍曹の助言は心強い。
そうこうしているうちに敵はさらに、その煙幕に隠れながら発煙弾を発射し、煙幕のカーテンを盾に徐々に接近してくるのだ。
手を拱いていては不味い。
「持ち場に戻れ! よく狙え……撃ち方、始め!」
煙幕が展開されている辺りを機関銃で薙ぎ払うが、命中している気配が薄い。
こんな戦い方、リンド王国より洗練されてるじゃないか!

煙幕の切れ間、右手に剣を掲げた指揮官らしき人影が見えた。
それに気付いた機関銃手は、その付近を全力で薙ぎ払う。

それでもまだ、煙幕が陣地に近づいてくる。
距離にすれば確実に100mを切っている。
「総員着剣!」
小銃手は着剣し、破砕手榴弾を用意し、白兵戦すら辞さぬ構えだ。
重機関銃は分解され、予備陣地へ後退を始めた。
軽機関銃はギリギリまで付き添うが、いよいよ不味い状況だ。

不気味なのは、発煙弾以外に発砲が無い事。
数的にはセソー大公国軍の方が多い。この間に忍び足で詰め寄られていたら、いかに武器の性能で勝っていても多勢に無勢。
「総員本陣地に戻れ!」
皇国軍は煙幕に向かって手榴弾を投擲し、分隊が相互に支援射撃しながら本陣地に後退する。

そこで初めて、セソー大公国軍からの声が聞こえた。
「前列構え! 撃て!」
至近距離から発砲されたと分かる破裂音に、大量の硝煙。
「二列目、撃て!」
続けて
「三列目、撃て!」
弾丸が通り過ぎる風切り音に続き、さらに導火線に火の着いた擲弾と思しきものも飛んできた。

煙幕に隠れている相手も盲撃ちだからだろうが、匍匐のお陰で死者が出なかったのは幸いだった。
三列目の射撃が終わると伏せたまま撃ち返し、さらに後退する。

数分後、煙幕が晴れると皇国軍が居た陣地は爆弾で破壊されており、そこに敵軍の姿は無かった。
「中隊本部に通信! この戦力で仮設陣地の守備は困難。一時後退を具申する!」

死者や重傷者こそ出さなかったものの、皇国軍は数人の負傷者と陣地からの退却を強いられるという“敗北”を喫した。
そもそも守備兵が少なかった、機関銃以外に満足な重火器が無かった、皇国軍の守備線の最前線の、
更にその先に構築された仮設陣地で孤立していたという点はあるが、陣地を一つ失ったのは事実だ。

動員兵力でも武器の性能でも皇国に及ばずとも、こういう戦法が一般的になれば皇国軍とて無敵ではなくなり、損害も増えるだろう。
ライフルという単独の武器の事は教えても現代的な戦術の肝は教えなかった皇国軍にしてみれば、かなり衝撃的な事態であった。
この瞬間、皇国軍将兵は転移以来久方ぶりの“近代戦”を戦っていたのだ。

223303 ◆CFYEo93rhU:2019/06/01(土) 22:56:00 ID:SNm79O0Y0
「突撃の好機でした。伝令も送りました。閣下!」
司令部の天幕に入って来たディーン少佐は、煤汚れた顔で左の頬がぱっくり切り裂かれて流血していた。
赤く染まったハンカチで怪我をした頬を押さえながら、苛立ちを隠し切れない様子で詰め寄る。
「準備させていたのだ。そうしたら早々に逃げ帰って来たのは貴官ではないか」
「あれ以上の戦闘継続など無理です。大隊の死傷者は30人を超えました。
 1個中隊が消滅したのですよ! 私も危うく死にかけました」
そう言って、折れた剣を見せる。
美しい装飾の為されたサーベルは、中程で折れていた。
飛び散った破片の一つが胸にしまってあったペンダントに突き刺さって軽い打撲も受けた。
「剣が無ければ即死でした。大隊長戦死、指揮不能によりもっと早く後退していたでしょう」
顔の正面に掲げていた剣に皇国軍の銃弾が命中し、それで剣が折れて頬に傷を負った。
剣に当たって弾道が逸れた弾丸も、ディーン少佐の髪の毛を焦がしていった。
一旦、顔の前に掲げてから頭上に上げて、前を指し示す動作の途中だった。
僅かでも動作がずれていたら、顔面を撃ち抜かれて即死だっただろう。

「そうは言うが、旅団本隊は貴官の大隊の10倍の規模だぞ? そう簡単には動けん。それくらい解るだろう」
「全軍の展開など求めていません。とりあえず1個中隊でも良いのです」
「戦力の逐次投入は愚の骨頂だろう。それに伝令からは攻撃成功の報告を受けたが、とてもそうは見えなかった」
「皇国軍の陣地に1/4シウスまで肉薄して射撃を浴びせ、あの場に居た皇国兵は
 全員逃げ出したと判断します。あれが成功でなければ、何が成功なのですか!」
「皇国兵の撤退を、直接確かめては居ないだろう」
「それが可能な状況なら、恐らく私はここに居りません!」
あれだけ濃密な煙幕を展開してもなお、皇国軍の前に大損害を受けたのですよ?
たった1シウス前進するのにこれだけの損害なら、ノイリート要塞中枢に迫る頃には全滅しているでしょうね。

「そこまで言うなら、もう準備も整っているだろうから、本隊を出そう」
「閣下……発煙弾は殆ど使い切りましたし、同じ手に二度も引っかかるとは思えません」
皇国軍という敵を相手に、ディーン少佐は通常使う密度の数倍の煙幕を使っていた。
それですら数十人の損害を出したが、発煙弾の投射をケチっていればもっと多くの損害が出ていただろう。

皇国軍の防備が手薄なうちに奇襲または強襲によって要塞を奪還するという作戦は
最初からどれほどの成功率が望めるか疑問であったが、もはや不可能なのは明白だ。
少数の部隊でも、皇国軍は必ず機関銃という“大量連発銃”を配備しているから、兵数と火力が額面通りに計算できない。
皇国軍陣地で部下が拾った、直径半シクル程の円筒形の金属柱(空薬莢)を見ながら、ディーン少佐は“保身”を考えぬ訳にはいかなかった。

224303 ◆CFYEo93rhU:2019/06/01(土) 22:56:31 ID:SNm79O0Y0
降伏をしたら、戦後にどんな仕打ちを受けるだろうか。
司令官や連隊長、司令部参謀は物理的に首が飛んでもおかしくない。
大隊長や中隊長クラスの指揮官も相応の懲罰を受ける事になるだろう。
武人の名誉という意味でも、称号や栄典の剥奪など容易に想像出来る。

さらに攻撃を続ければ、反撃で磨り潰されるだろう。
かといって降伏したら終戦後にどんな沙汰が待っているか判らない。

作戦参謀が意見具申した。
ディーン少佐の決死の行動は結局、皇国軍陣地に突撃は不可能という事の確認。
敵陣地の弱点を探るどころか少数の部隊で偵察の為に近づく事すら不可能な状況。
下手に大軍で攻めすぎれば撤退や降伏すら満足に出来なくなるのはリンド王国軍が大量の血で以て証明した。
今更改めて何を確認する必要があるのかと問われれば、伝聞ではなく体験として共有出来たという事に尽きる。
「最早この戦争の行く末は決しているのは、中将閣下もよく理解されているでしょう。
 マルロー王国からの支援も途絶えております。ここは一つ、降伏ではなく一時停戦を申し入れては?」
「何か思うところがあるか?」
「現状の皇国軍からの攻撃は、緒戦に比べれば随分と散発的です。
 つまり島内の防備を後手にしてでも他にやりたい事があるのです」
「ノイリート島から本土への攻撃準備か」
「はい。皇国軍の飛竜であれば我が国の本土全域が制空権内に収まります。
 極北洋シテーン湾に面しているロマディアなど目と鼻の先でしょうから」
「確かに、彼らからすればそうなるだろうな」
リンド王国の王都ベルグは、それで散々な目に遭ったのだから。
だが、ヴィットール中将は別の事に気を揉んでいた。
「命を散らして我等を上陸させたギューナフ提督に何と詫びれば良いのだ」
「それは閣下や我々が死んでから、あの世でおいおい……」
死後の世界はともかく、大公殿下からのお咎めはあるかどうか分かりませんよ?
塞翁が馬。ロマディア死守を命じられず、本土へ帰る手段も失った事は幸福に転ぶかも知れませんね。

そんなやり取りから少し後、上陸したセソー大公国軍の司令官ヴィットール中将はノイリート要塞の皇国軍に対し、停戦の軍使を差し向けた。
停戦理由は、負傷兵を本土に後送する為。
後送には、まだ使える状態で打ち揚げられたボートやカッターを利用したり、
艦隊の残骸を利用して新たなボートや筏を作製して間に合わせる事とする。
準備に時間がかかるので、停戦期間は15日とする。


この協定に皇国軍の現地司令部は安堵した。
これはあくまでノイリート島内での戦闘行為の禁止であり、皇国とセソー大公国の戦争行為の禁止ではない。
具体的には、島内の双方の軍部隊に対して島内や島外から攻撃してはいけないという期限付き停戦協定だ。
島内から島外を攻撃したり、島内の飛行場から飛行機を飛ばして島外を攻撃する事は協定違反にならない。
負傷者を後送する際には、船舶に赤十字(それと分かる意匠)の旗を常時掲げる事。
後送に使用する船ないし舟は予め皇国軍に通知する事で、この後送任務中に限り病院船と
同等(船体の白色塗装が望ましいが、塗装資材が無いので不問とする)の扱いを受ける。

皇国軍とセソー大公国軍のどちらかが違反した場合、協定は即時失効する。

向こうから言い出した事だが、これは皇国軍にとっては願ったり叶ったりであった。
島内の部隊の弾薬を節約出来る上に、飛行場を大々的に使っても島内の部隊は反撃されない!
勿論、警戒の為の歩兵や海兵部隊は通常どおり配置するが、それで攻撃を受けたらセソー大公国の非を咎める理由にしかならない。
本土に向けて負傷兵が後送される際は通知を受ける事になっている。つまり本土に敵の情報が伝わるタイミングを知れる事になる。
何より15日もあれば、セソー大公国の首都ロマディアは陥落しているだろう。

225303 ◆CFYEo93rhU:2019/06/01(土) 22:57:44 ID:SNm79O0Y0
投下終了です。
暑かったり寒かったり、体調がおかしくなる……。
これからまだまだ暑くなる季節、皆さんも命を大事に。

226名無し三等陸士@F世界:2019/06/02(日) 14:20:35 ID:.78nQQms0
投下乙です。
寒暖差が結構あって本当にきついですよね。

停戦しましたか。これはもう仕方ないなぁと思ったり。前線司令部がどうこう出来る範疇を超えてるわけだし……。

227名無し三等陸士@F世界:2019/06/02(日) 17:44:06 ID:Rx9iVfiQ0
投下乙!

少佐は生き残りましたか。

寒暖差による体調不良もですが、生ものにも注意だね!
いや、ほんときついっす・・・。

228名無し三等陸士@F世界:2019/10/20(日) 05:36:02 ID:Ld2JT8Og0
wikiが更新されてここが更新されてたことに気が付きました。
透過お疲れさまです。もう秋になってまいりましたがお体ご自愛ください。

229303 ◆CFYEo93rhU:2019/11/02(土) 16:25:51 ID:IEHUhI4I0
お久しぶりです303です。
投下が遅れていますが、何とか生きています。
次話の投下は、今月中にはしたいと思っているのですが難しいかもしれないです。
すみません。

春から夏の時も、夏から秋の時も、寒暖差が辛い。
皆様もご自愛ください。

230303 ◆CFYEo93rhU:2019/11/06(水) 21:02:51 ID:IEHUhI4I0
取り急ぎの連絡にて失礼いたします。

当面、使うかどうか分からないですが、したらば掲示板が使えなくなった時の事を考え、「小説家になろう」様に場所だけは作っておきました。
「N8666FV」です。

何事も無ければ今までどおりこちらに投下となります。
移行作業だけはぼちぼち進めようかと考えていますが、何か意見等ありましたら、こちらに書いて下さるとありがたいです。

231名無し三等陸士@F世界:2019/11/07(木) 23:25:24 ID:.78nQQms0
遂になろう進出ですか

232303 ◆CFYEo93rhU:2019/11/08(金) 20:06:43 ID:IEHUhI4I0
私は2日の夕方に書き込んだので、その翌日からですか?
したらば全体が突然繋がらなくなって、という経緯を知ってから、避難所の確保も必要かなと。
本来は、したらばの方が避難所として使われる側なのでしょうけれど。

>>231

遂になろうデビューしました!
令和初の快挙であります!

ブックマークしてくれた方、評価してくれた方。
ブクマも評価もしていないけれど閲覧してくれた方。
感謝します。
初心に返る気持ちで励みにしたいと思います。

「なろう」を選んだのは自分が読み専として使い慣れてるという理由が一番大きいのですが、
この界隈の活性化に、ほんの少しでもお役に立てればという淡い期待も、無きにしも非ず。
異世界転移ものといったら「なろう」というイメージ(なろうテンプレ)もありますし、
先行作品で書籍化されているものがある今こそ……いーじゃねーかよ二番煎じだってよぅ!

「なろう」で初めて拙作を知る読者が居る可能性を考えていませんでしたが、可能性を言えばゼロではないんですよね。
そういうの方の目に留まった時、F自ジャンルの中のF皇ジャンルを広めんとするのは無謀だろう
という思いもありますが、あらすじ読むだけでも、何かの形で心に棘を残せれば嬉しいのですが。

あとは『皇国召喚』の終わりが見えてきたので、F自以外のジャンルを
ここに投稿するのは板違いなので、丁度いい機会と思い準備しました。

とは言え、したらばに関してTwitterとかで不穏な話題が出てたから
焦って動いてしまっただけで、ちょっと勇み足だった気もします。
典型的な、パニックになったら真っ先に死ぬ奴の行動……。

233名無し三等陸士@F世界:2019/11/08(金) 20:14:43 ID:9JnG.z1g0
なるほど、なろう進出にはそういった事情がありましたか
何はともあれ、無理せず頑張ってください

しかしこれで分家からなろうに移った人、これで3人目か…

234303 ◆CFYEo93rhU:2019/11/09(土) 12:00:32 ID:IEHUhI4I0
>>233

その御二方と比べられると、凄く申し訳ない気持ちになります。

移行作業していて、初期ストーリーを読んでいると、忘れている。
東大陸編の後半、今書いている部分などと設定に矛盾が!!!

数年ぶりに気付かせてくれた、自分で作業した価値ありましたね……。
今更どうにもならないので、気にせず本編の続き投下したいと思います。

235303 ◆CFYEo93rhU:2019/11/09(土) 12:02:17 ID:IEHUhI4I0
フェリス・コーンウォース。
コーンウォース伯爵令嬢のコーンウォース子爵。
そしてマルロー王国空軍少将、飛竜師団長である。

彼女が居るのはセソー大公国の首都ロマディアに建つロマディア宮殿。
既にリンド王国と皇国に降伏したマルロー王国の武官としてこの地に居るには勿論訳がある。

元々、北方諸国同盟軍の第二陣としてこの地に派遣される予定で、飛竜陣地の構築などの指揮をしていたところ、母国が降伏した。
その後は、宙ぶらりんとなった実体のない飛竜部隊を円滑に基地に戻すためにしばらく滞在していたのだが、その任務もほぼ終えた。
皇国軍相手では飛竜と言えど高確率で撃ち落されるという報告を何度も聞いてきたフェリスにとって、もうこの地に留まる理由は無い。

だが、セソー大公国軍の飛竜軍司令官が泣きついてきたのだ。
援軍の約束をしておいて突然梯子を外すのは無責任だと。
それを決めたのは自分ではなく、マルロー国王とセソー大公だろうに、何故一介の軍人がそこまで面倒を見なければならないのか。
リンドやマルロー王家にとってはそう単純な話でもないのだろうが、下級貴族の自分からすれば滅ぶなら勝手に滅びればいい。
そう思い、この国の行く末を見届けてやるという意志でこの地に留まっていた。
勿論、本格的な戦闘が始まれば爆撃やら砲撃やら銃撃やらで死ぬかもしれない。

師団長という立場で私情を優先させるのは上級指揮官失格だろうが、生きて帰れたら報告書として纏めるつもりだ。
死んだら死んだで、実家に跡取りは居るし、家柄で出世したようなものだから師団長の適任者は他に居るし……。
本国の人事部には、親の七光りを出世させたり重要な任務に就かせてはいけないという戒めとして貰おう。


今、セソー大公国の本土にはノイリート島から移送された20余騎の飛竜に元々居た200騎余の飛竜で、220騎程が居る筈だが、実際には70騎程しか残っていない。
しかもこの数字は軍籍にある飛竜を全て含んだ数字だ。負傷して予後不良だが生きてはいて、まだ除籍されていないだけの飛竜も含んでいる。
だから実際には戦力として数えられる飛竜はもっと少なく、60騎も居ないだろう。
しかし首都ロマディアに限れば、元々48騎だった稼働飛竜の数は減っていない。
ロマディア以外の場所の飛竜がほぼ全滅しているという事だが、ロマディアに限れば戦力は減っていないように見える。

だから、なのだろうか。
セソー大公レオニスは「決戦兵力は健在であり、大公国軍の意気や旺盛である」と触れ回っている。
空の飛竜も海の戦列艦も健在であるから、何も心配はないと。

飛竜戦力の3/4が消滅したのに?
リンド王国軍の飛竜も戦列艦も、セソー大公国軍の10倍ありましたが、結果はどうなりましたか?
逆に言えば貴国軍の戦力はリンド王国軍の1/10以下しか無く、7割が壊滅したとされるリンド王国軍の残存戦力より少ないのですよ。
現にリンド王国軍は、その残存する戦力でもって北方戦線を今なお優位に進めているではありませんか!
リンド王国軍相手にすら梃子摺っているのに、そのリンド王国軍を鎧袖一触にした皇国軍を相手にどんな秘策をお持ちなのでしょう?
マルロー王国に停泊していた飛竜母艦を極秘裏に出撃させたが、砲戦に巻き込まれて沈没したと伺いましたが?

236303 ◆CFYEo93rhU:2019/11/09(土) 12:03:38 ID:IEHUhI4I0
フェリスはリンド王国が皇国と戦争をしていた時期から対皇国の飛竜戦についての研究を進めていたが、
どれも机上の空論に過ぎないのではないかとの不安はあり、実際に机上の空論だった戦術もあった。
撤収任務中にもセソー大公国軍の報告書を見ていたが、飛竜母艦すら砲戦から逃れられない
となると、陸でも海でもどうにもならないという現実からある種の諦観を覚えるようになる。

飛竜母艦が敵艦と砲戦になる事はまずあり得ないのだ。
常識的にあり得ない。

洋上における飛竜母艦の任務とは偵察と爆撃だ。
飛竜は数発の爆弾を持って偵察に出かけ、敵艦や敵艦隊を発見したら船員や索具、帆柱や帆桁を攻撃して船足を止める。
そして母艦に戻り、その情報を受けた艦隊の戦列艦やフリゲートが足の止まった敵を煮るなり焼くなりする。
勿論、この砲戦中にも飛竜による空からの攻撃で敵艦隊を撹乱するのは言うまでもない。
相応の被害を受けている敵艦を一方的に攻撃できるのだから、圧倒的に有利だ。
列強国が高価な飛竜母艦を保有するのは、正にこの戦法が決まった場合のメリットが非常に大きく、
同時に他国が飛竜母艦を持つのに自国がそれを持たなければ、一方的にこのリスクを負うから。

攻撃に使う時だけでなく、こちらが逃げる場合でも、船足が速く砲撃力もある
フリゲート等を砲戦距離外から爆撃できれば味方の逃走成功率は上がる。

そしてそれだけ重要な艦だから、必ず戦列艦やフリゲート等の護衛があり、特に風上側に対しては最も警戒を厚くする。
だから、余程不運に見舞われたとか、杜撰な指揮をしたとか、常識的にあり得ない想定をしなければ、飛竜母艦が砲戦で撃破されるなど考えられない。

飛竜母艦が1隻あたり20騎の飛竜を積載しているとしても、約半数は食事や休憩中。
そして残る10騎のうち半数は敵飛竜を警戒したり交代の為に待機しているので、偵察に使える飛竜は5騎。
それぞれが別方向に飛んでいくので会敵するかも分からないが、会敵したとしても1騎か2騎だ。
しかしそれでいい。
1騎の飛竜が1隻の敵艦の船足を止めれば、それが単艦であればその艦の命運は尽きたも同然だし、
艦隊のうちの1隻であれば、敵艦隊の司令官はその艦を見捨てて先を急ぐか、共に残って大艦隊を迎え撃つかの二択を迫られる。

敵艦隊に飛竜母艦がある場合、直掩の飛竜が居るし、その艦隊は対空火器も充実しているから、飛竜が単騎で突っ込むのは自殺行為。
だから攻撃はせずに爆弾を投棄して偵察情報だけ持ち帰る。
これだけでも、飛竜母艦を含む有力な敵艦隊が存在するという偵察情報を得られる訳だから、その後の艦隊行動の指針に大きな意味がある。

建艦に高い技術が必要で専門に訓練した飛竜も必要。
それだけ高価で数も持てないが、その分の仕事はしてくれるのだ。

確かに飛竜母艦という艦自体は飛竜の積載と運用を第一義とする為、船としては酷く不格好で、船足は遅く、運動性も低い。
戦列艦より巨大なのに対艦砲は対空砲兼用で大型コルベットか小型フリゲート程度の数しか持たないのだ。
何より実質2本マスト!
マストは3本あるのだが、フォアマストとミズンマスト、またはメインマストとミズンマストしかなく、残るマストは展帆機能に大きな制約がある。
どちらの設計にも一長一短あるが、メインマストとミズンマストしかない設計なら、フォアマストは見張り台とジブを固定する柱としての機能しかない。
なので砲戦になったら鈍重な三層甲板戦列艦にすら追いかけ回されるし、フリゲートやコルベットなら尚更。

飛竜母艦を含む艦隊というのは前提として戦列艦を含む大規模なものであり、砲戦に巻き込まれないように運用するものなのだ。
停泊中であっても、飛竜母艦は内側に、戦列艦やフリゲートを外側にする。

なのに、リンド王国軍の飛竜母艦も、セソー大公国軍の飛竜母艦も、皇国軍に沈められた。
流れ弾が飛んできて損傷を受けたとかではなく標的とされて撃沈されたのだ。
セソー大公国軍のものはまだ調査中というのが正確だが、撃沈されているとみて間違いないだろう。
海軍関係者の顔色を見ていれば大体分かるし、元同盟軍とは言え他国の軍人に機密情報をペラペラと喋ってくれる。

皇国軍と飛竜を軸に制空権や制海権を争おうと考えるのがそもそも間違っている。
これは、今までどおり皇国以外の既存の国を相手にした戦闘に使うものであるのだ。
皇国軍といい勝負しようと思ったら、それはもう皇国式の軍備と軍制が必要となる。

皇国を仮想敵とした飛竜戦術を構築するという目的設定がそもそも間違い。
水を沸騰させようが凍らせようが、それを飲んで酔っぱらう事は無い。
皇国相手の新戦術研究とやらは降伏後のマルロー王国でも行われているが、
何とかして水を水のまま上等な酒にしようともがいているように感じてならないのだ。

237303 ◆CFYEo93rhU:2019/11/09(土) 12:06:34 ID:IEHUhI4I0
そしてリンド女王はそういう諸々に気づいている。
だから皇国式の制度や製品を積極的に導入し、ユラ神国と皇国との戦争で低下した
列強国の首席としての威信を、以前よりも隔絶した国力を以て取り戻すつもりなのだろう。
このまま皇国との関係が順調に進めば、リンド女王は“列強リンド王国の中興の祖”になる。
だが、こちらのセソー大公がそれを分かってリンド女王を引き摺り下ろそうとしたとは思えない。
単に血筋的により正統な(と勝手に思っている)自分が選ばれなかった腹いせ以上のものが見えない。
マルロー国王が手を引いてもセソー大公が手を引かないのは、そういう事なのだろう。

ロマディアという前線に赴いて、現場の空気を感じて、フェリスはそれを一層強く感じる。

兵士は勿論なのだが、主に大隊長以下の中級、下級将校の士気の低下が著しい。
相手が皇国の事となると、荒唐無稽な話も噂話なのか事実なのか判断が付きかねる。
それで本来兵士たちを宥めたり叱咤して秩序を維持する側の将校たちすら疑心暗鬼になっているのだ。
流言を取り締まる側である憲兵すらも及び腰になっている。
「近々、ロマディアが大規模な空襲を受けて瓦礫の山になる」
という噂話に対して、そんな事ある筈なかろうと否定出来ない。
現に、リンド王国のベルグに対しては“やろうと思えば可能だった”けれど、皇国の自主的な配慮で“やらなかっただけ”なのだという話だ。
実際、空襲によってリンド王国軍の陸上部隊と洋上艦隊は壊滅したし、石造りの頑丈な建造物の代表格である飛竜基地や
対艦要塞すら徹底的に破壊している事から、都市を爆弾で破壊するのは不可能というこの世界の従来の常識は通用しない。
ロマディアより巨大なベルグすら焼き尽くせるなら、ロマディアなら簡単に焼き尽くせるだろう。
防火上の理由から石材や煉瓦造りを徹底している軍施設と違って、
むしろ大都市である程に木造建築も多いから良く燃えるだろう。

なまじ皇国軍の鉄竜を討ち取った! という朗報を耳にしたから、一瞬でも希望を
感じてしまったから、反動でその後の連敗に絶望を感じている気がしないでもない。

北方諸国同盟に派遣されていた第三国の観戦武官達がそそくさと帰還し始めている。
死んでしまっては観戦結果を報告出来ないし、事実上解散した実体のない同盟とやらと運命を共にするのは馬鹿らしいだろう。

軍人ですらこうなのだ。
問題は何よりロマディア市民である。
ロマディアに度々飛んでくる皇国軍の飛竜――飛行機というらしい――の羽音に怯え切っており、毎日百数十人という単位で逃げ出して行くのだ。
都市に残るのは逃げ出す資金さえ用意できないような出稼ぎ労働者、身寄りのない老人や子供など。
元々この都市は“王位以外は何でもある”と言われるくらい、大陸北方で豊かな都市だった。
市場は活気に溢れ周辺の村落も潤っていた。
それが今では食糧すら満足に入って来ない。

つまりセソー大公の言葉は市民たちに全く届いていないという事だ。
当然だろう。皇国軍が首都上空を遊弋するのを全く防げていないのだから。
大公宮が市民に留まれと命令しても焼け石に水。

この辺りの反応の違いは列強といっても大国と中小国の差だろう。
よもや王都に攻め込まれる事態など夢にも思っていなかったリンド王国の王都民は、逃げ出す事は無かった。
皇国軍の本格攻撃が始まってさえ、逃げ出す者は多くなかったと聞く。
後の言葉で言えば“正常性バイアス”と言うのだろうが……。
それが逆に、皇国軍が無秩序に逃げ惑う民衆を誤射せずに済み、戦後の関係修復にも大いに役立ったらしいから、どう転ぶか分からないものだ。

238303 ◆CFYEo93rhU:2019/11/09(土) 12:07:37 ID:IEHUhI4I0
対して、セソー大公国は列強国の席にあるとはいえ国土も人口も大国には及ばない。
過去、リンド王国とマルロー王国の覇権争いに巻き込まれて酷い目に遭った歴史もある。
そういう都市の市民だから、ここが攻め込まれる訳は無いとか、攻め込まれても負ける訳がないなどと考える者は少ない。
特に皇国軍がセソー大公国の国境を越えたという情報が伝わってからはロマディアを棄てる市民が増えだした。

シテーン湾の海賊討伐や遭難者救助に功績のあるノイリート伯爵がセソー大公を裏切ったという話も、今では全く逆の意味で理解されているようだ。
ノイリート伯爵がセソー大公を見限ったのだと。重要拠点を任されている忠臣が主君を見限る事の意味を考えれば、危機感を抱いて当然だ。

ロマディア市民は常々、戦争がやってきたら一時避難して、戦争が終わったら帰って来て酒を飲みながら瓦礫を片付け、と気軽に考えていた。
というのは、リンド王国とマルロー王国の双方、少なくとも片方はセソー大公国を全力で支援するから。
が、今回は様子が違う。双方の列強国からそっぽを向かれた。こんな事は前例がない。
なので、明るく元気に町を離れるという光景が見られず、中には市内の
家を格安で売りに出し、田舎に移住するつもりで荷物を纏める者も居た。
これは避難というより逃亡と言っても良いだろう。

「子爵閣下、ロマディア市民の逃亡に関して、陸軍が担当ですが空軍としても何かするべきなような」
「宜しいのでは? 守るべき市民が居なくなれば、我々のような武人が死地に赴く必要も無くなりましょう。
 それにロマディアは今まで戦災に巻き込まれても、その度に不死鳥の如く再建されてきたと聞き及びます」
飛竜軍司令官は軍階級では自分が上だが爵位は男爵なので、わざわざ子爵閣下と呼んでフェリスを上に仕立ててくる。
子爵と言ってもそれは只の儀礼称号で、実態は単なる伯爵令嬢なのだが。

貴族とは言え軍人であれば、軍の階級や職位に基づいて上下関係を計るのが当然だ。
そうでなければ伯爵の大佐が男爵の将軍に命令しても良い事になるし、
部下としてはどちらの命令を優先させれば良いのか分からなくなる。
そんな不文律を意図的に破ってまでマルロー貴族という権威に縋ろうとする。
今はこうやって下手に出ているが、本格的に危うくなったらどうなる事やら。

同業者なのに何か他人事のように思えるのは、自分がマルロー王国という大国の軍人という余裕もあるのだろう。
だがそれ以上に、自分が歴史の目撃者となっているという事を天空から俯瞰しているような不思議な感覚。
この国では軍人も一般人も等しく皇国の掌の上で踊らされている。勿論、その中には自分も含まれる。

ロマディアの宮殿で執務をしていた貴族が夫人と幼い子供と共に“地元を宥める”為に帰郷した。
フェリスは現在、その貴族夫人が使っていて空いた部屋を自室にしている。
大国の高位軍人で貴族令嬢でもある客人という事で、こういう待遇になっているが、
北方諸国同盟が解体せず、戦争に勝っていれば彼女が帰郷する必要など無かった筈だ。
お陰で専用の風呂とトイレのある部屋で生活出来ているが、本来は望ましい事ではない。

239303 ◆CFYEo93rhU:2019/11/09(土) 12:09:34 ID:IEHUhI4I0
投下終了です。
やはりこちらが落ち着きます。

240名無し三等陸士@F世界:2019/11/09(土) 17:29:27 ID:.78nQQms0
投下乙です。
ある意味、もうどうにでもなれみたいな無力感(汗

241303 ◆CFYEo93rhU:2019/11/10(日) 08:10:03 ID:IEHUhI4I0
>>240

セソー大公は謎ですが、フェリス少将の心境としては「もうどうにでもな〜れ」というより、野次馬みたいなものだと考えています。
無力感というよりは、「なんか目と鼻の先で凄い事が起きてる!」という興奮なんだと思います。多分。

貴族生まれの高位軍人がそんな事で舞い上がったら駄目だろ!
飛竜陣地建設大隊も含めれば数千の部下がおるのじゃぞ。
でもフェリスさんはポゼイユ侯爵とは別ベクトルに好奇心旺盛なんです。

242名無し三等陸士@F世界:2019/11/10(日) 08:32:28 ID:bq8ROwp20
投下乙!!

>>飛竜陣地建設大隊も含めれば数千の部下がおるのじゃぞ
え?フェリスさんの部下ってまだ現地に残ってるんですか?
てっきりもう全員帰国させていて、本人だけが軍事顧問みたいな立場で残ってるのだと思ってました

243303 ◆CFYEo93rhU:2019/11/10(日) 23:30:16 ID:IEHUhI4I0
>>242

飛竜師団は副師団長の指揮下でマルロー王国に帰国しています。

副師団長が師団長代理として権限を預けられていても
一時的な話で、フェリスさんが師団長職にある限りは、
数千人に対する責任が消えた訳ではないという話です。

セソー大公国にはフェリスさんと副官が残っています。
将軍と副官だけってのも不自然ではありますが、そこはまあ……。

立場としては軍事顧問より観戦武官が近いですね。
正式にそうと任命された訳ではありませんが、本人はそのつもりで居ます。

244303 ◆CFYEo93rhU:2019/11/17(日) 21:49:02 ID:FUij1vsc0
東大陸編のラストまで、ほぼ骨格は書き終えて、あと肉付けという段階になりました。
「あの方が帰って来るまで続けたい」とやってきましたが、もうこれがファイナルラストアンコールです。
これで終わりかと思うと、将棋の羽生さんが詰み筋が見えて手が震えだすような感覚(?)で、変な緊張しています。

という事で(?)掌編投下します。

245303 ◆CFYEo93rhU:2019/11/17(日) 21:50:04 ID:FUij1vsc0
『シャーナさまと蓄音機』

リンド王国、ノールベルグ城。
ある日の午後、シャーナは侍女を呼ぶ呼び鈴を鳴らすと、蓄音機のスイッチを入れ、急いでカーテンの裏に隠れた。

「お呼びでございますか?」
…………。
「陛下?」
自分を呼んだ筈のシャーナの姿が見えない。
『あなたの後ろに居ますよ』
突然聞こえたシャーナの声に振り向くも、そこに姿は無い。
『あなたの後ろに居ますよ』
もう一度振り返るが、やはり誰の姿も無い。
そもそも声の聞こえる方向と“後ろ”が一致しない。
「陛下、どちらにいらっしゃるのですか?」
『私はここに居ますよ』
部屋に姿は無いのに“ここ”とは?
おろおろする侍女をカーテンの影から覗き見るシャーナは笑いを堪えるのに必死だ。


件の蓄音機は、女王即位と国交樹立に対するお祝いの品として皇国天皇から贈られたものだった。
皇国外の外国人が持つものとしては現状ユラ教皇とリンド女王しか持たない貴重品である。
機能もそうだが、調度品としての外装も素晴らしい。むしろ外装の方が高価なくらいだ。
皇国風の漆の箱に入れられており、花鳥風月をあしらった蒔絵、蝶番などに用いられる金細工は皇国でも最高の職人達の手による。
外装だけで100万リルスの値がついてもおかしくないくらいなのだ。
さらに中に入れられている、本体たる蓄音機が皇国以外の国では作成不可能な高度製品であり、輸出もされていない事から、実質値が付けられないも同然。
当代のリンド王家の財産としては破格の物品であることは確かであろう。
それを、侍女との遊びに使うとは……。

246303 ◆CFYEo93rhU:2019/11/17(日) 21:52:00 ID:FUij1vsc0
投下終了です。
『皇国召喚』にまともな女性キャラは居ない。

247名無し三等陸士@F世界:2019/11/17(日) 22:09:44 ID:.78nQQms0
乙でした。酷い話だw

248名無し三等陸士@F世界:2019/11/18(月) 20:44:28 ID:10DiI6ic0
素早い投下乙です
この時代の蓄音機というと、オープンリールのテープレコーダーあたりですかね
電源はどうしてるんだろうか…?

249名無し三等陸士@F世界:2019/11/18(月) 21:08:26 ID:06BBujPs0
この数回分を読めてないけどまず先に乙です

250303 ◆CFYEo93rhU:2019/11/20(水) 21:46:10 ID:FUij1vsc0
>>247

でもこれくらい破天荒な事してこそ王様!
という気持ちもあります。

民の事など考えずに遊び惚けたら困りますが、まず王が明るくないと。

>>248

オープンリールって、50年代から60年代くらいの映画やドラマとかでよく見る奴ですよね。
パンチカード式コンピューターと、オープンリールレコーダーと、チカチカ光るパネルの3点セット。

ですが、私としては、SP盤ないしLP盤を想定してました。
乾電池内蔵の電蓄です。雑誌の付録に付いてたソノシートみたいのも、技術的に可能そうならそちらでも。

電蓄は幾ら何でもというなら、手回し式で、何回かくるくるさせるとその後の何十秒か動作するタイプもありましたよね?
こちらならゼンマイ式なので電源不要です。
こちらだとスイッチ入れるのではなく、ゼンマイ巻くってなりますが。

後、大穴として王宮の一部(女王や王配の私室)を電化したというのも。
それまでの蝋燭(シャンデリア)よりずっと明るい電球を感じて頂くために東芝社員あたりが突貫工事で……。
電球と共用タイプのソケットなら、天井から電線が伸びる不格好さはありますが、電気のある生活が出来ます。
じゃあその大元の電源はどこだというと、王宮(王都)近くの川からポンプで水車回して発電するくらいでも、電球くらいなら間に合うでしょう。
ベルサイユ宮殿が10km離れたセーヌ川から水引いて噴水作ったんですから、リンド王国に出来ないとは言わせない!

>>249

そんな事ありません。
乙という言葉があるだけで、ありがたいです。

251303 ◆CFYEo93rhU:2019/11/20(水) 21:47:09 ID:FUij1vsc0
>>247

でもこれくらい破天荒な事してこそ王様!
という気持ちもあります。

民の事など考えずに遊び惚けたら困りますが、まず王が明るくないと。

>>248

オープンリールって、50年代から60年代くらいの映画やドラマとかでよく見る奴ですよね。
パンチカード式コンピューターと、オープンリールレコーダーと、チカチカ光るパネルの3点セット。

ですが、私としては、SP盤ないしLP盤を想定してました。
乾電池内蔵の電蓄です。雑誌の付録に付いてたソノシートみたいのも、技術的に可能そうならそちらでも。

電蓄は幾ら何でもというなら、手回し式で、何回かくるくるさせるとその後の何十秒か動作するタイプもありましたよね?
こちらならゼンマイ式なので電源不要です。
こちらだとスイッチ入れるのではなく、ゼンマイ巻くってなりますが。

後、大穴として王宮の一部(女王や王配の私室)を電化したというのも。
それまでの蝋燭(シャンデリア)よりずっと明るい電球を感じて頂くために東芝社員あたりが突貫工事で……。
電球と共用タイプのソケットなら、天井から電線が伸びる不格好さはありますが、電気のある生活が出来ます。
じゃあその大元の電源はどこだというと、王宮(王都)近くの川からポンプで水車回して発電するくらいでも、電球くらいなら間に合うでしょう。
ベルサイユ宮殿が10km離れたセーヌ川から水引いて噴水作ったんですから、リンド王国に出来ないとは言わせない!

>>249

そんな事ありません。
乙という言葉があるだけで、ありがたいです。

252303 ◆CFYEo93rhU:2019/11/30(土) 10:56:42 ID:k83QLRus0
本格的に寒くなってきました。冬は嫌だ……。

外伝投下します。
なろうで人気出るには悪役令嬢が必要と聞き及び、書いてみた習作です。

253303 ◆CFYEo93rhU:2019/11/30(土) 10:59:41 ID:k83QLRus0
私達はやり過ぎた。
西大陸の筆頭、東大陸とも繋がりの強いイルフェス王国の不興を買ってしまったのだ。

最初のうちは、イルフェス王国にも害をなす盗賊団(傭兵崩れ)の根城だったり、
イルフェス王国や他の列強国、大国との外交関係が悪い国や地域を選んでいた。
この頃の私達には、引き際を心得る理性があった。

しかし、私達は、イルフェス王国の闇の権益に手を出してしまった。

私達がイルフェス王国製の武器を多く使っているというのは、かなり初期から判明している。
私達に武器を提供してくれたイルフェス貴族は、事が発覚すると即座に縛り首になった。

私達の義勇団とイルフェス王国が潰し合って疲弊すれば、ライランス王国にとって望ましい形だが、
余り露骨に私達を支援すれば、ライランス王国を滅ぼしたくてうずうずしているイルフェス王国に開戦の口実を与えてしまう。
第三国を経由して細々と、武器や資金を支援してくれているだけでもありがたいが、同時に両大国の掌の上で踊らされている現実に腹立たしくもなる。


砲兵員が、野砲に弾薬を込めている。
大砲など触った事も無かった志願兵が、この1年半で1/4バルツ砲を素早く装填出来るまでになったのだ。
実戦に明け暮れていた義勇団の戦闘能力は、大国の正規兵にも引けを取らないと胸を張って言える。

交差した銀の剣と金の天秤が描かれた旗を持ち、葦毛の馬に跨る私を見て、幼馴染のレジットが叫ぶ。
「相手が誰だろうが俺達は負けない! 俺達には正義の執行者シモーヌ・ダルテュールが付いているんだ!」

私が剣を高く掲げると即座に太鼓が打ち鳴らされ、義勇団の鬨の声と共に、2門の1/4バルツ砲から砲弾が発射された。

イルフェス王国軍の緋色の戦列の前方では、私の乗る馬よりもさらに白い馬に乗った、銀色の鎧に青いマントを纏った女性が駆け回っている。
マントには王族しか着用が許されない王家の紋章が燦然と輝いている。

わざわざ望遠鏡で見なくても“イルフェスの魔女”だと分かる。

イルフェス王国軍は1/4バルツ砲が8門と1/2バルツ砲が16門の合計24門。軽量の1/4バルツ砲は騎馬砲兵隊に集中配備されている。
数日前からは飛竜が少なくとも8騎。戦竜こそ見えないが“盗賊狩り”にしては容赦なしのようだ。

イルフェス王国の使者に拠れば、生きたければ首魁を差し出せという。
首魁の衣服を“全て掲げよ”という破廉恥な内容の勧告に対し、義勇団は一層の抵抗の意志を固めた。
既に没落したとは言え、私だって貴族の端くれだ。貴族は民の為に、民は貴族の為に。
ただ奪うだけでは盗賊と同じ。そういう思いで義勇団を立ち上げたのに、列強国の王女だというだけで、何故こんなにも他人を見下せるのか。

この瞬間、私達の勝利条件は敵の大将、つまりあの“魔女”を殺すか捕らえる事になった。
私が殺されるか捕らえられるか、それとも“魔女”を殺すか捕らえるか。

訓示が終わったのか“魔女”は戦列の後方へ向かい、緋色の横隊が一歩前へ。そして1/2バルツ砲の砲撃が始まった。
西大陸随一の列強国だけあり、砲車の脇には豊富な弾丸が積まれているのが見える。あえてこちらに見えるように積んでいるのだ。

それでもって義勇団の持つ数少ない野砲を集中攻撃してくる。
こちらは2門、向こうは16門。どちらが撃ち勝つかなど、子供でも分かる。

左翼から中央にかけて厚く布陣している義勇団の、左翼と中央にそれぞれ1門ずつ置かれた1/4バルツ砲。
虎の子の大砲の周囲は歩兵が守っているが、私達には騎兵が無い。
騎乗している指揮官が私を含めて数人居るというだけで、その事は相手も知っている事だろう。
前衛の歩兵は横隊、後衛の歩兵は縦隊で、騎兵を警戒する素振りすら見せていないのだから。

私達に隠し玉の騎兵が居たとしても、この野砲の数では騎兵突撃が成功する見込みは薄い。
私達に騎兵戦力が無ければよし、あれば一か八かの突撃を試みたくなるような陣形なのだ。

254303 ◆CFYEo93rhU:2019/11/30(土) 11:01:29 ID:k83QLRus0
「騎兵が来るぞ!」
竜騎兵と軽騎兵がこちらの右翼側に展開し、速歩から駈歩で接近を開始する。

「盾隊出せ!」
義勇団は戦力を中央から左翼に集中させているので、非常に薄い右翼部隊を防御すべく、銃弾を防ぐ鉄板を張った木製の置き盾が並べられる。
馬が怖がるよう、長さ1シンクの棒を棘のように突き出した盾は不格好だが、私達に格好をつけている余裕などない。

歩兵隊員が一斉射撃を見舞わすが、遠い。
「射撃命令があるまで撃つなと言っただろうが!」
「叱責する暇があるなら防御陣に組み替えろ! 総員銃剣構え!」
私は中央で歩兵隊員を纏める団員を叱咤し、右翼の団員にも“死守命令”を出した。

私達の横隊が空撃ちしたのを見た敵騎兵隊だったが、何故か距離を保ってこちらの様子を窺っている。
「敵の砲兵だ!」
気付いた時には、右翼の至近距離で敵の騎馬砲兵隊が射撃態勢に入っていた。
右翼から陣形が滅茶苦茶に荒らされ、折角の盾隊も砲撃で粗方破壊されてしまった。

騎馬砲兵の活躍を見届けると、竜騎兵と軽騎兵が襲歩で押し寄せ、まず中央の大砲の周囲に居た歩兵を至近距離から射撃した。
そして抜刀、対騎兵防御の準備など出来ていない戦列を支えるのは精神力のみだろう。
私の為、仲間の為、自分の為、理由は何でもいいが、とにかくその精神力が頼みの綱だ。

義勇団の本陣が置かれた廃屋には、予備の1/4バルツ砲が2門あるが、これは奥の手。今、前に出す訳にはいかない。

中央が荒らされ、左右が完全に分断された私達の義勇団に向かって、緋色の歩兵横隊が前進を開始した。
1.5シウスの距離だったものが1シウスに迫り、3/4シウスに迫る。

「やるぞ、今だ。狙うは白馬の“魔女”だけだ。続け!」
乗馬している団員が臨時の騎馬隊となり、駈歩で敵の右翼を迂回するように本陣を離れた。
中央や左翼の歩兵隊員達は、既に銃を撃ち尽くし抜刀していた竜騎兵や軽騎兵を戻らせまいと銃剣で必死の抵抗をしてくれている。

私達の臨時騎馬隊が本陣から十分に離れると、隠し玉の1/4シウス砲から、散弾が放たれた。
至近距離からの散弾は何人かの味方も巻き込むが、この場には敵の方が圧倒的に多い。しかも多くが騎兵。一矢報いたろう。

私達の接近を見た敵軍の後方からは予備の軽騎兵と胸甲騎兵が向かって来た。
40騎は居るだろうか。こちらは10騎も居ないのに。

「白馬……奴が来る! 討ち取れ!」
白銀の鎧を煌めかせ、王旗を掲げた副官を従えた“魔女”が、胸甲騎兵と共に私達に接近してきたのだ。
千載一遇の好機に、私達は勢い付いた。

だが発砲音と共に硝煙を潜り抜け、白い肌を煤で汚した“魔女”によって、その気勢が削がれる。
半シウスの距離で馬を走らせながらの銃撃が連続で命中するなど、悪夢でしかない。

だが軽騎兵と胸甲騎兵は“魔女”の後方に従っているだけで、周囲を厳重に守っている訳ではない。
「足を止めるな! 突撃しろ!」
私は右手に剣を、左手に拳銃を持ち、“魔女”に向かって突撃する。
拳銃を撃つのは槍の間合いだ。
発砲音が鳴ると、私の横を走っていた古参の団員が胸を撃たれて落馬した。

硝煙が晴れると“魔女”が咥えた弾丸を銃口に吐き出し、込め矢で突き固めているのが見える。
早過ぎる。従者が換えの銃を持っていて、撃つごとに受け渡して装填している訳でもない。
そんな事を考えているとまた発砲音と共に団員が胸に穴を開けて馬から落ちた。

私が首魁だと分かっているだろうに、あえて生かしておくつもりなのだろうか。

“魔女”は鞍に装着されたポケットにマスケットをしまい、腰に下げた鞘から華麗な装飾の施された剣を抜いた。
相手は銃をしまい、こちらは装填済みの拳銃を持っている……。
罠かも知れない。しかしここまで来て止まる訳には行かない。

255303 ◆CFYEo93rhU:2019/11/30(土) 11:02:47 ID:k83QLRus0
距離は5シンクも無い。
私が左腕を伸ばして“魔女”に狙いをつけた時、“魔女”は鞍のポケットから拳銃を取り出し、一瞬のうちに撃鉄を上げると発砲した。
その硝煙が煙幕のように私の視界を奪い、同時に私の後ろで射撃機会を狙っていた団員が血を吐きながら馬の背にもたれかかる。

白煙の向こうに影を探しても“魔女”は居ない。
私の後ろで発砲音がしたので振り返ると、“魔女”が団員の革鎧ごと上半身を斬り落としていた。
馬には腰から下だけが残り、上半身だけ落馬させられている。

一思いに首を刎ねるなり、胸を突くなりすれば良いものを、見せしめのように行われる“魔女”の虐殺。
“魔女”の硝煙で煤けた顔も、白銀の鎧も、真っ白だった馬も、返り血で赤く染まっている。

これで、乗馬していた団員は私だけになった。
「これが、栄光あるイルフェス王国軍のやる事か!」
私の撃った拳銃は“魔女”を捉えた。命中した。
「この距離で外すのはいただけないな。失望した」

命中はした。しかし剣を持つ右腕を僅かに掠る程度の浅い傷しか与えられなかった。
「ところで戦況が見えているか? 剣と天秤の旗がどこにあるか」
“魔女”の言葉に、私は本陣の方向を振り返った。
旗竿にレジットの服が結ばれて、義勇団の旗は見えない。
緋色の軍服を着た歩兵隊が、倒れている団員達を銃剣で突き刺し回っている。

「ダルテュール伯爵には、我が王家も世話になった誼がある。
 最後まで、誰一人として逃げなかった組織を鍛え上げた貴様に、
 私は感銘を覚えている。これは本心だシモーヌ。私の――」
「気安くその名を呼ぶな!」
「何でもいいが、貴様の家はもうそろそろダルテュール伯爵ではなくなるだろう?
 ネアロ男爵家になるのは何年ぶりだ? 私に仕えれば今回の件は不問とし、
 伯爵の土地は安堵され禄も出す。これは父王陛下も承諾済みだ。書面もある」
「ハッ? いつからアルテュールがイルフェス王の土地になった?」
「貴様が署名した瞬間から、そうなる」
「なぜ私が。アルテュールには母上も居るし兄上も――」

自分の言葉を、自分で反芻した。
「兄上は……」
「最期まで抵抗したが、聞き分けの無い貴族はみっともないと思わないか?」
「貴様が……何も、そこまで……」
「私がアルテュールを包囲している間も、貴様はあちこち駆け回っていたな。
 そのせいで危機を伝える伝令が貴様を捕まえるのに四苦八苦していたようだが」
「…………」
「貴様の告発のせいで、我が王国がどれだけの損害を受けたと思う?
 信用というのは金貨で簡単に買えるものではない事くらい、解るだろう」
「そんなもの、自業自得だ!」
「ほう、言ったな?」

“魔女”がニヤリと顔を歪めた。


その後の事は覚えていない。
思い出そうとしても、魂が拒絶する。
ただ、ビリビリに引き裂かれた服とも言えない布を纏って、アルテュールの館に辿り着いた事は薄っすらと覚えている。

今はイルフェス王国の軍服に身を包み、王女義勇連隊の一員として“魔女”の“寵愛”を受けながら、故郷アルテュールの平安を願うばかりだ。

256303 ◆CFYEo93rhU:2019/11/30(土) 11:03:41 ID:k83QLRus0
投下終了です。
悪役の令嬢が欲しいものを手に入れる話。
西大陸編の外伝はかなり久々で、完全な一人称視点は初めてかも知れません。

257303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/01(日) 13:49:23 ID:k83QLRus0
本編の続き投下します。

258303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/01(日) 13:52:37 ID:k83QLRus0
朝食を終えた頃、皇国軍機の羽音が聞こえた。
バルコニーから身を乗り出して空を眺めると、一際巨大な
皇国軍機からロマディア市内全域に向けて大量の伝単が
ばら撒かれているところで、宮殿の敷地内にも落ちてきた。

まるで雪のように降り注ぐ高品質な紙の束。これだけでも皇国の国力が痛い程に分かる。
実際、市民は我先に伝単を拾い集め、様々用途に再利用しているくらいだ。

庭に出て手に取り、すぐに内容を確認する。

『7日後の朝からロマディア全域を攻撃するので
 ロマディア市民は早急に市外に避難するように
 ラピトゥス島は特に危険なので近づかないように』

『第三国の国民もロマディアから撤収するように
 期日までに避難しなかった場合の損害について
 皇国は一切の責任を負わないものとする』

伝単を見て、フェリスは遂に来る時が来たと感じた。
ロマディアが大規模な空襲を受けて瓦礫の山になる日が。
「おお、皇国軍の死の宣告!」
ここに居たら7日後に死ぬかもしれないのに、何故か気分が高揚する。
最初の頃は、特に期限を定めない降伏、避難勧告だった。
それが程なくして2週間以内に降伏せよという文章に変わり、そして7日後に攻撃すると!
フェリスはそれを副官の女性将校テレーズにも見せる。
「残る伝書鳩は何羽だったかな」
「13羽です」
「なら最後まで見届けられるだろう」
師団司令部と通信中隊が持つ伝書鳩を多目に連れてきたのは正解だった。
本格的な戦闘となれば本国との通信に徒歩の伝令兵が安全だが、時間がかかりすぎる。
「何も閣下が残る必要は……もしもの事があれば、コーンウォース伯爵家にとって損失です」
「少なくとも今の私は只の軍人だし、もしもの事はいつ起きてもおかしくないんだ。父上だってそれは承知だろう」
「しかし……」
「残って事態を見届ける空将も必要だろう。これは命令だ」
そう言ってしまえば、公的にはただの副官であるテレーズは黙るしかない。
子供の頃から付き合いのあった幼馴染という事は、今は無関係なのだ。

259303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/01(日) 13:53:57 ID:k83QLRus0
朝食後の散歩にセソー大公国軍の空軍司令部を訪ねると、
飛竜軍司令官がぶつぶつと呟きながら作戦案を考えている。
「午前中は第1連隊で午後は第2連隊? いやそんな事をしている余裕は……」

行き詰って頭を抱えている。
少しガス抜きに付き合った方が良いかも知れない。
「こうなれば軍の存在意義は国体の護持でありましょう」
「は?」
「ユラに仲介を頼むよう、現場からの陳情として宰相や外相を説得されてはいかが?」
「は、ユラを?」
「ええ、ユラは原則中立の方針を放棄しておりませんし」
ユラ神国が列強国として振る舞える“パワー”の一つがこれだ。
東大陸で最も広く信仰されているユラ教の総本山がある事もあり、
単純な経済力や軍事力以上のパワーがあるのはどの国も認めるところだ。
だから、特に列強国同士の戦争になった場合、仲介する能力のある強力な
中立国となると多くの場合でユラ神国が第一候補となってしまう。

ただ皇国の元世界のスイスのような永世中立国でもない。
中立の度合いが他国より高いというだけで、最終的には時と場合による。

それに何より、ユラ神国は皇国と相互防衛に基づく軍事同盟を結んでいる。
リンド王国との戦争被害が大きかったのとユラ神国が直接攻撃された
訳ではないとして野戦軍の派兵をしていないだけで、今も有効な条約だ。
事実、皇国軍の領内通行や基地の提供などは公然と行われ、ユラ領内における兵站支援などで事実上参戦している。
「閣下、ユラは今や皇国の同盟国です」
「しかし此度の……セソー大公国の対リンド戦争においては皇国に積極加担しておりません」
「東大陸の列強全てが皇国と国交を持っている訳ではないのはご存知でしょう。
 大内洋に面していない大陸東側の国家群と皇国は国交以前に交流さえない所もまだ多いのです。
 リンド王国はともかく、皇国と仲介できるのは現状ユラ神国以外に考えられませんが」
「ううん……」

もう一押しだろうか?
「ユラは皇国の軍事力を身をもって知っている数少ない列強国です。
 皇国が最終通告を出した以上、ユラの大使もロマディアから避難するでしょう。
 他の都市の領事館なら知りませんが、ロマディアに居たら危険ですからね。
 恐らくユラの大使館員はいつでも逃げ出せるように準備はしていた筈。
 7日後の朝からですから、今日中にでもロマディアから脱出しておかしくありませんよ?
 むしろ外務卿はじめ外交官吏の面々が率先してやらないのが理解できませんね」

フェリスは軍人で外交職員ではないから部分的にしか知らないが、それでも観測範囲で
セソー大公国の外交部門がやっている事は中立国に対してセソー大公国の正義と軍事行動を
支持して欲しいという働きかけで、これは素人のフェリスから見ても理解不能の行動だった。
戦争初期の段階ならまだしも、首都に攻め込まれる寸前の今する事ではないだろう。
根本原因を作ったのが自分達だから一方的に嘲笑えないが、これは流石に無い。

確かに前リンド国王の突然の崩御から現女王の即位と皇国との国交樹立までの
鮮やか過ぎる手筈は怪しいが、それが生きてくるのは戦争の大義や勝った後に
リンド王国を弱体化させる手段としてで、負けそうな段階で叫んでも遅い。

260303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/01(日) 13:55:12 ID:k83QLRus0
だがしかし。
(もしも私が同様の立場だったら、こんな無責任な事は言えない)
もしもマルロー王国が皇国軍に攻め込まれ、首都ワイヤンが爆撃の災禍に曝される寸前となった時、飛竜騎士である自分は戦闘中止命令を受けるまで戦うだろう。
たとえ勝ち目がないと分かっていても、数百騎の部下たちを死地に送り込むだろう。そして自分は地上の司令部で……。
自決? そんな身勝手な事したら、騎士達に呪われるだろう。
降伏? まだ隣の戦区で戦っている将兵を見捨てて?
(所詮他人事だから言える事か)
それ以前に、母国が早々に降伏しなければ、今頃自分はリンド王国国境方面に進出していた筈だ。
そして、その前線司令部で皇国軍の爆撃を受けてとっくに死んでいた可能性もある。
飛竜陣地は中隊ないし大隊単位で建築されるが、師団司令部が敵飛竜からの被害を避ける為に各陣地を転々と
移動した場合、指揮系統に乱れが生じる為、どこか一箇所の大きめの飛竜陣地に固定してしまうのが普通だ。
勿論、そこは他より多くの対空砲や対空ロケット弾が配備され、歩兵や騎兵に対地砲兵、場合によっては戦竜兵も配備される。
それを逆手にとって、司令部がない飛竜陣地をさも重要な場所のように偽装するという事もあるが……。

結局それは、飛竜による攻撃だけでは、敵の飛竜陣地を潰しきる事は不可能という作戦の前提がある。
飛竜による爆撃に加えて、騎兵隊や歩兵隊が飛竜陣地を蹂躙してこそ、真に決着が付く訳だ。
しかし皇国軍の飛行機は爆撃だけでそれらを纏めて吹き飛ばすから、作戦の前提が崩れる。

フェリスが色々と考え込んでいると、側に居た飛竜軍司令官が沈痛な面持ちで語り始めた。
「子爵閣下、閣下は飛竜部隊の将軍として対皇国戦術も研究していると存じます」
「まあ、戦術研究も仕事の一つですから、それはまあ……」
「それで閣下は、何か新たな手立てを考案されましたか?」
「恥ずかしながら、あまり現実味のある方法は考案出来ません」
考案していたとして、今この場で教えるつもりもさらさら無いが。

「閣下、我が陸軍部隊が皇国軍の鉄竜を撃破したのはご存知ですね?」
「リンドですら対処できなかった鉄竜を撃破したとか。見事なものです」
「皇国軍も慌てたようで、敵部隊は後退しました」
フェリスはセソー大公国軍の公式発表前に既にその情報を知っていた。
陸軍の砲兵将校が自慢げに教えてくれたのだ。
将校ともあろう者が“これは機密情報なのですが”と前置きすれば秘密が守られると思っている訳は
無いだろうから、余程自慢したかったのだろうか。リンド王国ですら成し得なかった事を成したと。
その日のうちに軍の公式発表が行われたから遅いか早いかの問題だが、規律の問題だ。
他にも色々と有意義な情報は得られたが、良いのかそれで。軍法会議ものではないのだろうか。
これは一部のロマディア市民すら口にしていたのだが、それも軍からの公式発表前だった。大丈夫か。

ついでにフェリスが知っている情報には続きがある。
皇国軍が後退したのは一時的なもので、体勢を立て直してからはまた進軍している。
いや後退ですらなく停止といった方がより正確だろう。セソー大公国軍が一時でも前進した気配は無い。
もし、それを切欠に皇国軍を押し返したのなら、今もこちら側が戦線後退を続けて首都目前まで迫られている説明がつかない。

261303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/01(日) 13:57:34 ID:k83QLRus0
「皇国軍の兵器と言えど、人が造った物である以上、相応の威力のある兵器で攻撃すれば撃破出来るのです!」
「神話にある、絶対に死なない怪物とは違いますからね」
「そうです。皇国軍は決して神でも怪物でもない。我々と同じ人間です」
「同じ人間であると。その点は対等ですね」
鉄砲が当たったら人は死ぬ。みたいな当たり前の話をされても反応に困る。
大砲を当てれば皇国兵だって死ぬだろう。皇国製の兵器だって壊れるだろう。
当てられないから困ってるんだろう?
こちらの野砲の距離より、皇国兵の小銃の距離の方が長く、連発銃はさらに長く、皇国製の大砲は地平線の向こうからすら飛んで来るんだろう?

少数事例であれば、リンド王国軍だって皇国軍の将兵を銃撃したり砲撃したりして死傷させたし、飛竜による爆弾で軍艦も損傷させた。
だから射程に入って命中弾を得られれば、何らかの被害を与える事は出来るのだ。
それが戦局を動かすような決定的な事態に繋がるかどうかは別問題として……。
まあ鉄竜に関しては、一般的な野砲である1/2バルツ砲が通用せず生半可な攻撃では
ビクともしない重装甲を備えているという話だから、それを討ち取ったとなれば
凄い事であるが、その後同様の話を聞かないという事は、それっきりだったのだろう。
二度目三度目があれば、またやってやりましたと絶対に自慢する筈だ。
つまりこれも例外的な少数事例という訳だ。
どの程度の大砲を使えば有効なダメージを与えられるかという評価を得られたのは
収穫だが、それを生かした次が続かないという事は、対策されたと考えるべきだろう。

騎士の鎧の隙間を狙えば釘1本でも討ち取れるとか言ってるのと同じだ。
その騎士は強弓と斧槍と剣と盾で完全武装しており、鎧を着ていない戦士より俊敏で、鎧に特有の死角が殆ど無い。
その釘で、騎士の鎧に傷をつけても、騎士本人には何のダメージも無い。
釘で篭手などを打てば、一瞬手を引っ込めるかもしれないが、すぐに剣を持ち直して反撃してくるだろう。
そういう事だ。

「時に閣下、飛竜が持てる爆弾の重量はいかほどでしょう」
「1発きりの大型爆弾なら、12バルツですか」
主に要塞等の頑丈な建造物を爆撃する、飛竜を長射程の臼砲のように使う大型爆弾だ。
この程度は、飛竜に関わる軍の将校なら誰でも答えられる事。
「いいえ、24バルツです」
「!?」
その数字を聞いた瞬間、真意が解った。
解ったが、解りたくなかった。
24バルツ爆弾などというものは無いから、12バルツ爆弾を2発、1騎の飛竜に運ばせるのだろう。
そして、敵の陣地や鉄竜、軍艦等、重要目標に突っ込ませる。

「無人飛竜を体当たりさせる、という訳ですか」
「然様です。流石閣下、理解がお早い」
飛竜騎士が乗る指令騎1騎に対して2〜4騎の重爆装飛竜を用意する。
重爆装飛竜には飛竜騎士は乗らず、目一杯の爆弾を括り付け、突入すべき標的を指示して体当たりさせる。
今まで人間を載せていた分の重量を全て爆弾に振り分ければ、飛竜でも大型爆弾を2発積める。
しかしそうすると爆弾を投下するタイミングを操作する手段が無いから、飛竜ごと体当たりさせると、そういう事だ。
地面や障害物に激突しそうになれば飛竜は自身の判断で避けるので、正確に言えば標的の近くまで飛ぶように指示するという事になる。
飛竜が標的に近づいたタイミングで爆弾の固定が解けて起爆するように、指令騎が上空で操作する訳なので事実上の体当たり攻撃。
攻撃が成功しようがしまいが飛竜にとっては片道切符となるし、攻撃方法の仕組みから精度の高い爆撃は不可能。
そもそも皇国軍を相手にするなら指令騎も無事で済むかどうか。

262303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/01(日) 13:58:11 ID:k83QLRus0
この戦法の利点は、飛竜が途中で迎撃されて力尽きても、上空で点火さえしてしまえば後は決まった時間が
経過した時に爆発するから、精密攻撃は不可能だが何らかの損害を与える可能性が期待出来るという事だ。
欠点は利点の裏返しで、戦果確認騎を兼ねる指令騎が撃破されたら敵に与えた損害が全く不明になる事だ。

過去、そういう事を考えた人は居たが、2発の大型爆弾を落としたければ2騎の飛竜を使えば
良いだけであり、何らメリットが見出せない戦法なので、実際にやろうとした人は存在しない。
似たような考えとして、3〜4騎の飛竜で1発の大型爆弾を運ぶというのもあったが、これもそこまで大威力の爆弾を
苦労して造り、離陸から投下まで息の合った飛行で運んでまで得られるメリットが無いので、実戦で使われた事は無い。
同じ結果を得たいなら、臼砲を使えば済む事である。

が、今のセソー大公国軍にはとにかく飛竜の数が無い。
小国相手ならともかく、列強国相手ではもはや抑止力としても機能しないレベル。
その列強国の飛竜をも退けてきた皇国軍相手では、存在しないも同然。
だから2発の爆弾を使いたければ2騎の飛竜を使えば良いなどと言っていられない。
1騎の飛竜を限界まで酷使しても尚不足するのだ。
本当は12バルツ爆弾を3発積みたいだろう。体格に優れた若い飛竜なら可能だ。
途中で骨折するかもしれないが、どうせ体当たりで死ぬなら骨折しても構わない。
だが離陸直後に骨折したら攻撃そのものが不発になるから、2発で我慢する。
「騎馬隊の兵士に、馬に爆弾を括り付けて敵陣に突撃させろと命令するようなものですよ」
「人の命と飛竜の命を天秤にかけるなら、閣下はどちらを選ばれますか?」
卑怯な質問だ。二択なら人の命に決まっているが、だからといって飛竜の命を粗末にしていいという理由にもならない。
両方を大切にするべきだ。飛竜騎士なら尚更だ。愛竜を自爆突撃させる飛竜騎士は、後を追って自決するかも知れない。

だが、下がりに下がった将兵や市民の士気。
それでも戦争を止めようとしないセソー大公。
陸戦で使う大砲は悉く皇国軍歩兵や砲兵、空襲の標的にされる。
乾坤一擲に賭けるのであれば、取れる手段など選んでいられなかった。

それでも飛竜騎士の端くれとして、言わねばならない。
「私には、既に同盟を解消した他国の軍事作戦をとやかく言う資格はありません。
 飛竜軍司令官として、それが最善の策だとお考えになるなら、やれば宜しいでしょう。
 我が国にとっても貴重な戦訓が得られます。ですがもし迷いがあるなら、他の方策を試すべきです」

その言葉を残して、フェリスは軍司令官の部屋から退室した。

263303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/01(日) 13:59:27 ID:k83QLRus0
投下終了です。
本編の方は、今月中には終わる予定です。

264名無し三等陸士@F世界:2019/12/01(日) 15:50:04 ID:OvOMxCeA0
投下乙です!

いやぁ、末期ですなぁ

265名無し三等陸士@F世界:2019/12/01(日) 22:01:23 ID:.78nQQms0
投下乙です。
上が決断しないと軍としてはどうしようもないですね。

あと、わざとだと思うのですけどこの話の悪役令嬢ではかなりの確率で、なろうでの評価は……

266303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/05(木) 22:34:59 ID:k83QLRus0
感想ありがとうございます。

>>264

私は末期戦もので主人公が理不尽な状況にあって、そのままずるずるとバッドエンド一直線も好きですし、大逆転してハッピーエンドも好きです。

>>265

一時的な停戦であればともかく、講和となると君主の専権事項。
戦闘停止命令されない限りは戦い続けねばらないのがそこらの傭兵と違うところ。

>なろうでの評価は……

規約違反で載せられないような内容ではないと思うので、
なろうには『皇国召喚』の番外編として投稿するつもりですが……。

悪役令嬢は冒頭で婚約を破棄されないといけないんでしたっけ。
エレーナ殿下に婚約破棄を叩きつける奴なんざ思いつかんですが。

267303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/07(土) 21:28:50 ID:k83QLRus0
本編の続き投下します。

268303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/07(土) 21:30:54 ID:k83QLRus0
皇国軍が攻撃予告の伝単を投下してから2日が経った。
通告どおりなら5日後に大規模攻撃が始まるのだろう。
そんな日に、フェリスはセソー大公レオニスの私的な夕食に招待されて居た。
軍の高官同士で会食した事は何度かあるが、大公ご本人とは初めてである。
フェリスがいつ出国するか分からないから、最後の晩餐のつもりだろうか。
状況が状況であるし、あくまで軍人としてこの地に留まっている関係上、
フェリスはデコルテのドレスではなくマルロー軍服を着ての会食である。

「麗しい御婦人と晩餐をご一緒出来て光栄です」
「お褒めの言葉をありがとうございます。私も北方の要石と称される殿下に御招き頂き光栄です」
心にもない事をペラペラ喋る技術は、貴族の生まれを有難く思える。
「フェリス嬢は飛竜軍少将との事、しかもその首にあるのは、一級銀翼勲章では?」
「そのとおりです。殿下は我が国の軍事にも精通していらっしゃりますね」
「銀翼勲章となればマルロー王国軍の誉れでしょう」
「旅団長以上の証のようなものです」
実際旅団長以上なら殆どが、連隊長でも何割かは銀翼勲章を佩用しているから、特段の有難みは無い。
百年前ならともかく、今は高位の飛竜指揮官である証以上の価値は無い。金翼勲章なら別だが。
実際、佩用できるのが銀翼勲章くらいしかないというのはむしろ恥ずかしい話で、
褒めるなら空中狙撃徽章とかを褒めて欲しい。略綬だから暗くて見えないか。

「ご謙遜を! 二級までならともかく、一級銀翼勲章は階級だけで得られるものではない事くらい、私も存じておりますよ」
「ありがとうございます」
「一級銀翼勲章をお持ちの貴婦人が助力して下されば、我が軍も百人力ですよ!」
「……助力とは?」
「我が国に残って居るのは、そういう事なのでしょう? 飛竜部隊の指揮官として、我が国を救うと」
「祖国マルロー王国は、リンド王国及び皇国に降伏しましたので、ここに居ても戦闘行為には一切加われませんが」
「我が軍の軍服をご用意します。大将の軍服を!」
は? 何を言っているのかこのモノは。
「それはつまり……国際法違反なのは殿下ほどの方ならご存知の筈……」
負ける公算が非常に高い戦いに、軍服を偽って参加するなど、何の利益があるのか。
生き延びたとしても戦後にどんな非難を受けるか分かったものではない。
コーンウォース伯爵家の面子を潰す事になるし、銃殺ではなく絞殺されても文句は言えないだろう。

体格の良い赤人が侍る中、戦争継続に乗り気なレオニスと正反対のフェリスを尻目に、淡々とした給仕が開始された。
北の趣都と呼ばれるだけあり、この季節の極北洋で獲れる新鮮な魚料理を中心に多種多様な料理が運ばれてくる。
だが……この上等な料理も数日の間に食べる者も作る者も居なくなるのかと思うと、他国の事ながら淋しくも感じた。

269303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/07(土) 21:31:38 ID:k83QLRus0
丁度、飛竜隊の話が出たところで、フェリスは本題を切り出す。
まだロマディアに残っているマルロー王国の外交官は、セソー大公レオニスを
講和の席に着かせるよう説得する事や圧力をかける事を本国から指示されているらしい。
「貴国の飛竜部隊ですが。殿下は皇国との戦争において飛竜部隊がどれ程の戦果を挙げたか、ご存知でしょうか」
「飛竜は最強の戦力であり、無くてはならない存在だ。此度の戦争でも相応に活躍している」
「リンド王国軍が顕著でしたが、偵察や攻撃に出た飛竜が帰って来ない事を以て、付近に皇国軍の存在を探知するという事に相成りました。
 貴国の空軍も同じ意味では活躍していると言って良いかもしれませんが、しかし我が軍やリンド軍と、貴国軍では規模が違います。
 100騎の飛竜が失われても、我が軍やリンド軍は壊滅的な損害とはいえず、立て直せます。しかし貴国は違います。
 私が飛竜師団の戦闘指揮官として助言できるのは、ここまでです。あとは殿下のご決断を待つのみ」
「ふむ。敗軍の将に期待した私が愚かだった」
「このまま事が進むと、新たに“初代セソー大公”位が創設されるやもしれません」

現セソー大公であるカミーロ家が断絶して困るのはリンド王国とマルロー王国。
そこでマルロー王国の降伏後、両大国は秘密裡にセソー大公となり得る家系を協議していた。
結論としては、カミーロ家に匹敵する家格の貴族は存在しないが、どうしようもなければ代理と成り得る貴族は存在し、
マルロー王子との婚姻によって“初代セソー大公”とする事は、一応は可能であるという結論になっていた。
しかし、そういう御家騒動は北方に新たな火種を生む。
リンド王国と北方諸国同盟との戦争が御家騒動であったし、皇国という圧倒的な力を前に、
この期に及んで「我こそが正統な」と名乗り上げて事を荒げるのは懲り懲りだという意見が多い。
だからレオニスには、穏便に講和して貰いたいのだ。

しかし説得が上手く行かないなら、「お前の一族が死んでも代わりは居る」と告げなければならない。
果たして“命が絶たれる”場合と“貴族でなくなる”場合とで、危機感は違ってくるのだろうか。
軍服と白旗を掲げる機会は今夜から5日後の朝までしか無いが。

270303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/07(土) 21:32:13 ID:k83QLRus0
一通りの食事が終わり、レオニスは葉巻タバコを、フェリスは酔い醒ましの水を飲んでいた。
傍らに立つ赤人奴隷は上半身を曝け出しているが、暖炉と蝋燭によって室内は暖かく保たれている。
ありがたい事だが、きっちりと軍服を着こなしているフェリスにとっては意外と暑い。
酒を飲んでいると余計に火照ってしまう。

フェリスは懐中時計に目をやる。
「私は少し、夜風に当たりたいと思います。殿下も御一人で、熟考なさって下さい」
そう言って席を立って剣をベルトに差したところで、壁に掛けられた時計が鐘を打った。

帽子を被り食堂を出ると、テレーズが速足で向かって来たところだった。
「閣下。もう長居は無用かと……」
フェリスに拳銃を渡しながら小声で耳打ちしてくる。
「脱出の準備は?」
「滞りなく完了しています。閣下のご命令があれば、今すぐにでも出発出来ます」
「しかしこちらの大公殿下がな……」
フェリスにそこまでの義理は無いと言えば無い。
本国へ送った情報から、新たな命令が来る事は考えにくい。
そもそも伝令が本国から到着する前に、ロマディアの戦闘は決着するだろう。
伝書鳩は大使館と駐在武官が持っているもので、派遣軍の師団長でしかないフェリスの元に届く事は無い。

フェリスの師団司令部は実態としては既にロマディアに無く、副官のテレーズが残るのみである。
あとは、当地で雇った軍属扱いの荷馬車くらい。
全員、乗馬と馬車でいつでもロマディアを離れる準備は出来ているが……。
ロマディアを離れたら、陸路を使うか海路を使うかはその時の情勢次第。
「市内の状況を考えると、宮殿に居た方が安全だろうね」
「この場で、脱出の機会を窺いますか?」
「ラピトゥス城という考えもあるが、戦闘用の城塞にマルロー王国の将軍が
 居るのは拙いだろうし。事が終わるまでは自室で武器を置いて大人しく過ごすさ」
2丁の拳銃を懐のベルトにしまい、話しながら廊下を進む。
突き当りを曲がると歩みを止め、照明が少なく静かな廊下の先、階段の辺りを見据えた。

テレーズが、自分用に持っていた拳銃の撃鉄を上げて暗闇の先を照準する。
「いや、事が終わる前に始まるか」
叫び声と銃声の後、鉄兜と胸甲を着けた将校が、白刃を煌めかせて階段を駆け上って来た。
「そこに居るのは誰か! 合言葉は?」
胸甲の将校がフェリス達に誰何する。
「合言葉は知らんが、まず話し合う必要があると考える次第だ!」
「何を話し合うのだ!」
「私は敵ではない」
剣と胸甲で武装した将校の後ろから、カービンを持った兵士が続いてきた。
それを見て、フェリスは確信する。
「飛竜騎士か? なら私はやはり敵ではない。こちらも武器を下ろすから、そちらも武器を下ろして欲しい」
フェリスに命じられたテレーズが撃鉄を半コックに戻し、ベルトに差した。

そんなこんなで兵士達と問答していると、後ろから飛竜軍司令官が現れた。
「大公はどうした?」
「いえ、まだです……」
その一連のやり取りで、フェリスはこれが末端の兵士の暴走ではなく、飛竜軍司令官による組織的なものだと把握する。

「閣下。これは空軍の意志ですか?」
「子爵閣下ですか……私なりに考えた結論です」
その言葉に、フェリスは廊下の端に寄って道を空けた。
他国の事であるし、無理に止めようとしても多勢に無勢である。
宮殿の周囲には近衛兵が居る筈で、彼らを排除してまで事に及んだのだから、もう覚悟は決めている。
これ以上飛竜を死地に赴かせない為の、他の方策を考え直した結論がこれなのだ。
レオニスの事を“殿下”と呼ばず、単に“大公”と呼び捨てているのもその証拠だろう。

飛竜軍司令官は、兵士達がレオニスの居る部屋に入るのを後から追う。
フェリスとテレーズも、彼らを追った。

271303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/07(土) 21:33:18 ID:k83QLRus0
葉巻を吸って寛いでいたところ、いきなり突入してきた空軍将兵に
レオニスは目を丸くしたが、自軍と判るとすぐに焦りの表情に変わった。
室内は廊下と違ってかなり明るく、どの部隊かすぐに判別可能だ。
「皇国軍か! 飛竜部隊がどうしたか?」
予告期限より前に皇国軍が夜襲を仕掛けて来たので、至急の報告に来たと勘違いしていた。
飛竜軍司令官まで居るのだから、余程重大な報告だと思ったのだろう。

「違います。今すぐ、皇国とリンド王国に降伏すると、こちらに署名して頂きに参りました」
飛竜軍司令官は、既に書式が整えられ、レオニスの署名さえあれば即時に効力を持つ文書を見せた。
特に講和条件について何も書かれていない内容は、無条件降伏に等しい。

だが皇国は停戦ではなく降伏を望んでいるのだ。
停戦して、講和内容について協議して、それが破談して戦争再開などという事は認めない。
とりあえず降伏しろ。話はそれからだ。という強い意志。
「貴様ら、血迷ったか!」
火の点いたままの葉巻を投げつける。

「殿下! ここは一旦落ち着い――」
「お前が嗾けたのか! マルローの女狐め!」
確かに、涼むといって部屋を出た直後にこれでは、状況証拠的に怪しさ満点だ。
だが勿論、フェリスはこんな茶番の糸を引いていない。
マルロー王国軍人として、そんな事をする意味も無ければ命令も受けていない。
むしろ本当に皇国軍の攻撃であれば、そちらの方がフェリスにとって“本来見たかったもの”である。

レオニスは椅子の脇に置いてあった自分の剣を取り、抜いた。
貴族の嗜みとして剣技を磨くとしても、本業として武芸を磨いている者に敵いはしない。
しかもレオニスは1人で、兵士達はこの部屋に居るだけでも12人だ。

殺そうと思えば簡単だ。剣を使う必要すらなく、拳銃で済む。
だがそれでは降伏文書に署名させる事が出来ない。
脅しも兼ねた拳銃は、部屋に残っていた赤人奴隷に向けられ、躊躇なく発砲された。

「剣を置いて下さい。手荒な真似はしたくありません」
既に手荒な事になっているのだから、レオニスは壁を背に剣を離さない。
しかし多勢に無勢。数人の兵士が一斉に飛びかかれば、身柄を拘束するなど容易いだろう。


だが、事態は飛竜軍司令官の思い通りには進まない。
レオニスは兵士と揉み合いになった末に転倒し、後頭部から大量の血を流して倒れていた。
固い大理石の床には鮮血が広がり続け、顔に近寄ってみても呼吸が無く、首筋を触っても脈が無い。
「何たる事だ! 生かして捕らえろと言った筈だ!」
「そんな、殺すつもりは……」
兵士は動揺し、飛竜軍司令官に助けを求めるような視線を向ける。

「講和するに絶好の機会ではありませんか。いち早く全軍の停戦をして、
 この事を皇国に知らせるのです。でなければ、5日後に予告どおり
 攻撃が始まるのではありませんか? 主の居なくなったロマディアを」
「私は空軍の将に過ぎない。全軍の指揮権を持つのは殿下であって……」
「貴方がやった事だ。貴方から軍務卿に報告すれば良いでしょう」

フェリスの言葉に、飛竜軍司令官が叫んだ。
「この女共を捕らえよ! 罪状は大公殿下の暗殺!」

272303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/07(土) 21:34:48 ID:k83QLRus0
その命令に一瞬戸惑った飛竜騎士達の隙をつき。フェリスとテレーズは駆け出した。
部屋の入口を見張っていた兵士を突き飛ばすとそのまま廊下を走って、階段を目指す。

結果論だが、ドレスでなく軍服を着ていて良かった。
こうなったら着替えている暇など無く、一目散に逃げるしかない。

階下からは、時折叫び声と共に銃声や剣戟の音が聞こえる。
戦闘が行われているのは間違いないが、誰と誰が?

「こちら側の階段は使えそうにないな」
「しかし裏手の階段はラピトゥス城に近いです」
「なら横の窓から降りるか」
飛竜に乗る者であれば、度胸付けや、実際に墜落した場合の受け身として、高いところから安全に飛び降りる技能を訓練させられる。
フェリスは手近な窓から下に誰も居ない事を確認すると、剣の柄で鍵を壊して窓を開けた。
「本当にやるんですか?」
「律儀に階段使って下りて行くよりは安全だと思う。安全な階段を探し回っている間に退路が塞がったら困るしな」
追ってくる相手も飛竜騎士だが、逃げ場の無い狭い通路を無理矢理通るよりは、広く動ける空間に行った方が良い。
外に出ても、飛竜は夜は飛べないのだ。

窓枠の外に身を乗り出すと、そのままふわりと宙を舞って地面へ着地する。
後を追って来たテレーズも、教練の模範となるような美しい着地を見せた。

「散歩していた甲斐があったな」
2人は夜の闇に紛れ、レオニスが愛する庭園の生垣に身を潜めた。
数人の飛竜騎士が追って来るが、迷路のように配置された生垣に自分達が遭難しそうになっている。

正門は厳重に施錠されて警備の兵士も最低2人いる。幾つかある裏門も状況は似たようなものだ。
ではどうするか。
「柵を乗り越えるぞ」
門とは離れた場所にある柵をよじ登るのだ。
身のこなしの軽い2人になら可能。

セソー大公国軍が市内に作っている陣地の位置は把握している。
後はそこを避けつつ市外に出て、帰国するのみ。

流石にこの短期間でロマディアの隅々まで把握するのは無理だが、主要な道路や橋、運河は頭に入っている。
飛竜騎士の特権。地形を上空から見られる事であり、空からの景色と地上からの景色を頭の中で合成する技能。
地上の景色を見ただけで、俯瞰した風景を頭の中に描ける技能。

最も警備が厳重なのが、皇国軍の主力部隊が目前に布陣している西側。
次に無血占領されたノイリート島のあるシテーン湾に面した北側。

東側か南側から脱出したいが、双方一長一短がある。
東側は海岸線に沿って開けており、夜が明けると隠れる場所が少ない。
南側は河川が流れて複雑な地形で隠れる場所が多いが、その分遅くなる。

「ここは夜が明けるまでに南から市外に出て、夜が明けたら西に向かおうと思う」
「西ですか? 東ではなく?」
「飛竜騎士として考えてみろ。わざわざ皇国軍が布陣する方向に飛竜を飛ばして撃ち落されに行くか?」
「西に逃げれば追手は来られないと」
「それくらいの理性は残っていると信じたい、というだけかもな。同じ空軍の将官として」

フェリスの決断には、しかし単純な誤算があった。
飛竜は来ないから追い付くには時間がかかるという前提で考えられた脱出計画は、馬で追いかけて来た飛竜騎士によって阻止される事になる。
その数4騎。宮殿で追いかけっこした者達とは違うが、軍服からセソー大公国軍の飛竜騎士である事は間違いない。

射撃を避けるようにジグザクに走るが、人の脚と馬の脚の差。
すぐに追いつかれてしまい、回り込まれてしまった。

フェリスは拳銃を手に、先頭に居た飛竜騎士を撃った。
その銃声を皮切りに銃撃戦が始まる。
しかし互いに動き回るので決め手を欠き、遂に剣を抜くが。

「テレーズ馬に乗れ!」
互いの銃弾が空になったところで、フェリスは最初に撃って主を失った馬に飛び乗った。
2人が馬に乗って駆け出した直後、銃声を聞いて駆けつけて来た応援の飛竜騎士が放った銃弾が、フェリスの腹部を抉る。
後ろに座るテレーズにもたれ掛かるように力を失ったフェリスだが、まだ息はあった。
フェリスから手綱を奪い、西を目指して一目散に逃げる。
その間も断続的に銃撃を受けるが、テレーズは逃走を続けた。

フェリスはテレーズの胸に体を預けて目を閉じる。
次に目を開く時は永遠に来ないのだろう。

273303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/07(土) 21:44:13 ID:k83QLRus0
投下終了です。
次回か、その次あたりで本編ラスト行けると思うので、お付き合いいただけると幸いです。

274303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/15(日) 15:36:04 ID:k83QLRus0
本編の続き投下します。

275303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/15(日) 15:36:35 ID:k83QLRus0
目覚めると、知らない天幕だった。
すぐ傍に副官のテレーズが座っている。
テレーズは目が合うとハッとして立ち上がり
「先生! 目を開けました!」
そう言って天幕を出て行った。
どこだここは。
軍の野戦病院にも見えるが、それにしては小奇麗過ぎる。
液体の入った非常に精巧な作りのガラス瓶がベッド脇のポールにぶら下げられ、そこから細い管を経由し、腕に刺さった針を通して、透明な液体が注ぎ込まれている。
詳細は分からないが、怪我人に使っているのだから何かの薬だろう。ただの薬の容器にしては出来過ぎているが。
こんな方法で薬液を体内に入れるというのは不安感が拭えないが、どうせ拾った命だし、折角なので体験しておこう。
薬というのは口から飲むか、肛門から入れるか、患部に塗るものという常識からして、針で直接体内に入れるというのは驚きだ。
そこでふと気づく。針を通して液体を入れるという事は、もしやこの極細の針は中空構造なのか? 裁縫針より細いのに。

暫くすると、テレーズと共に白衣を着た男が天幕に入ってきた。
フェリスの腕を掴んで脈を測ったり、目を覗き込んだり、舌圧子を押し当てて舌や喉を見たり……。
服をはだけさせ、胸と背中に聴診器を当て、傷の辺りに手を当てて触診。
フェリス自身は何をされているのかよく分からない。
「貴官の氏名、所属、階級は?」
「フェリス・コーンウォース。マルロー王国軍第7飛竜師団長。空軍少将」
「宜しい。これだけハッキリ答えられれば、もう大丈夫でしょう。弾丸は摘出したから、あと数日、ゆっくり休めば歩けるようにもなる」
「ありがとうございます!」
「これが私の仕事だから。じゃあ、私は他にも山ほど仕事があるんでね、フェリスさんを頼むよ」
そう言って、白衣の男はそそくさと天幕を後にした。
「今の人は、誰?」
「皇国軍の軍医で、イシカワ大尉」
何となくそんな気はしていたが、皇国軍だったか。

「私は捕虜?」
「捕虜ではないそうですよ。意識が戻ったら事情を聴きたいとは言ってましたけど」
「戦争はどうなった?」
「何故か敵国の皇国軍がロマディアの反乱部隊と暴徒を鎮圧して、そのままなし崩し的にセソー大公国は休戦、誰が講和条約の責任者となるかでモメてます」
「大公夫人が居ただろう」
「夫人なのか、ご子息なのかでモメてます」
まだそんな事やってたのか。
「……テレーズが、助けてくれたのか」
「ピクリとも動かなかったのですが、鼓動はありました。だから馬で皇国軍に突撃しました」
「よく撃たれなかったね」
「私の上着を振りながらで意図を汲んで頂けたのか皇国軍には撃たれなかったのですが、その前に追いかけて来た飛竜騎士の流れ弾に当たったようです」
そう言ってテレーズは服をめくり、脇腹の傷痕を見せた。
フェリスと違い掠った程度で重傷ではなかったが、放っておけばどうなったか分からない。
「私の為に……」
「閣下の傷に比べれば、こんなの何でもありません。お揃いで嬉しいです」
「それで助けを求めたと」
「はい。皇国軍も、自分達で予告した日時より前にロマディアが大変な事になって焦っていたようですが、事情は把握して頂けました」

「それにしても、ここは本当に野戦病院か? 気持ち悪いくらい綺麗だが」
「はい。そのようです。閣下の場合は女性であるのと他国軍の将軍で、皇国軍将兵と同じ場所に入れるのは都合が悪いから別室を用意したと聞かされました」
野戦病院というのは、もっとこう、吐き気がする程に血生臭くて、将兵の苦悶の喘ぎ声とノコギリの音が響く場所。
ここは多少臭うものの、それは薬品の匂いで、それも殆ど気にならない程度だ。血生臭さとは無縁である。
「そう言えば、ここでは何人の怪我人が居る?」
「軽い怪我人を含めると1000人近く居るそうですが、多くは日帰りで、閣下のように大怪我をして病床にあるのは50人程だそうです」
「多いな」
「流れ弾を受けたロマディア市民も多くいるそうですので」
「軍の野戦病院が敵国の市民の面倒まで見てるのか。ご苦労な事だ」
「ロマディアの民間医師は既に多くが町を離れており、セソー軍の医師は自軍将兵優先で、手が回らないのでしょう」
「宮廷医師も居ただろう」
「残念ながら、騒乱で命を落とされました」
宮廷医師が診察治療するのは大公とその家族、宮殿や市内に住まう貴族とその家族であり、下々の民を触る事など無いだろうが。

276303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/15(日) 15:37:27 ID:k83QLRus0
改めて、着せられている服をめくって腹部を見ると、真っ白な包帯が巻かれていた。
その下がどうなっているかは見えないが……。
「凄いんですよ。閣下の開腹手術が終わって、包帯が巻かれた後も、その方が治りが良いからと
 毎日看護兵が来て包帯を取り換えてくれるんです。それは今朝方巻かれたものですから綺麗ですよね」
そりゃあ、血や膿などで汚れるから毎日取り換えた方が良いだろうというのは分かるが……。
実際にそれをやるとなると、どれだけ大量の包帯の在庫が必要になるのだろう。

テレーズの腹部は包帯が取れているが、銃創は綺麗に縫合されている。
「随分、丁寧な仕事するね……」
戦場における傷口の縫合とは、もっと大雑把なものだ。
兵士自身によるものと軍医によるもので差はあるが、軍医によるものでもここまで綺麗に縫う必要あるのだろうか?
焼きゴテで無理矢理傷口を塞ぐ方が簡単なので、高級将校や貴人相手でなければそちらの方が主流だというのに。

「その透明な液体は、鎮痛剤と、あと何と言ってましたっけ、抗生剤と言うものらしいです」
「それ程痛みを感じないのは、何かの鎮痛薬だろうとは思っていたが、抗生剤とは
 聞いた事が無い。私は医者じゃないから専門用語は分からないが、何かの薬なのか」
「殆どあらゆる病気の元となる瘴気を無効化するんだそうです」
「ほ?」
「手や足を撃たれたら、切るじゃないですか。あれは撃たれたところが腐って、そこから瘴気が出て、全身に回るのを防ぐ為ですよね」
「そうだね。そうしないと全身に瘴気が回って、傷口を塞いでも結局死んでしまう」
「そういう瘴気を消して全身に回るのを予防する薬だとか」
「ああそうか。私の撃たれたところの傷から瘴気が出るのを防いでる訳か」
「そういう事らしいです」
「ほぉ……」
道理で高熱にうなされていない訳だ。
でもそれじゃあ、ずるいだろう。
外科治療の巧みさもあって、皇国兵は即死か、余程酷い怪我か病気にならない限り復帰出来るじゃないか。
現役復帰は無理でも、治癒して娑婆に戻れれば、兵士としては無理でも人として生活出来る。

いや、皇国軍の兵器の火力を見れば、これくらい強力な医療が無いと将兵が死ぬ一方で戦争にならないのかも知れない。
しかし結果論ではあるが、皇国軍の野戦病院を実地体験出来た。これは価値ある情報になるだろう。
瀕死の自分をここまで治療したのだから、兵器だけでなく医療技術も相応に凄まじいという事だ。
それはそれとしても、皇国に大きな借りが出来てしまった。
個人的に命を救われた件もそうだが、敵国の反乱騒動を即座に鎮圧したとなれば、本当に大きな借りだ。

「何か口にしたいな」
「先生は、まだお腹に入れるのは駄目で、唇を湿らす程度と」
テレーズは飲み水の入った瓶から小皿に少し水を注ぎ、看護兵から説明を受けていたガーゼを浸して、フェリスの唇を拭う。
「こうしていると、子供の頃を思い出す」
「私もです」
天幕の中は、平和だった。

277303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/15(日) 15:51:14 ID:k83QLRus0
現在、反乱軍に加わったセソー大公国軍の将兵は皇国軍の憲兵隊が身柄を拘束している。
セソー大公国軍の憲兵に任せたらまたどんな事件を起こしてくれるか分かったものではないので、
講和が成り戦争が正式に終結するまでは、皇国軍が捕虜という名目で面倒を見るという措置だった。
こういう事を未然に防ぐのも憲兵の役目だろうに、反乱軍の中にはよりにもよって空軍憲兵も混ざっていたのだから。


何でこんな、他国の尻拭いを自分達が……。
慈善事業でやっているのではなく、皇国の国益の為にやっている訳だが。
特に此度の戦争はリンド王室と皇国皇室への侮辱や否定的な外交姿勢を
撤回させるという非常に政治的な目的があるので、妥協点を探るなど無いのだ。
皇国の講和条件を呑むか呑まないか。呑まないなら滅びて貰うしかない。

皇国軍が警備するロマディア宮殿内で、皇国とリンド王国、マルロー王国、ユラ神国、
そして当事者のセソー大公国の関係者が集まり、セソー大公の死体検分の後、本題に入っている。
つまり、講和条約についてだ。

「それで結局、大公妃殿下と大公世子殿下の扱いをどうされるのです?」
大公が死亡したのが確認されたのだから、規定に従って大公世子が新しい大公として即位する。
だが新大公となる大公世子はまだ幼く、摂政が置かれる予定である。
そこで誰が摂政となるかでモメているのだ。
君主たる大公の代理として、権力と同時に責任も発生する。
摂政の候補になりうる貴族や有力者達は皆、何故、前大公のしでかした事の責任を自分が負わねばならないのか
という思いがあり、かといって大公妃(新大公にとって大公太后)が摂政となるのはそれはそれで面白くないのだ。
講和条約には、大公代理として摂政の署名が絶対に必要なので、ここをハッキリさせないと話が進まない。

セソー大公国の有力貴族は概ね親リンド派と親マルロー派に分かれる。
親リンド派といっても別にマルロー王国と敵対してリンド王国につくというものではないし、逆もそうだ。
どちらの王家に親しみを感じるかとか、どちらの国との関係をより重視するかといった程度の話。
リンド貴族やマルロー貴族に出自を持ち、連なる貴族ならば明確に、血筋的にどちらかになるが、
彼らも現代ではセソー大公国に暮らすセソー貴族なのだから、無暗に波風を立てる事はない。
功罪で言えば、このような緊張関係がどちらか一方の列強国に傾倒する事を防ぎ、
大陸北方、シテーン湾の安定に寄与してきたという功績の方が大きいだろう。

亡くなった前セソー大公は、それで言うと親リンドであった。
だから親リンド派の旗色が若干悪い訳だが、今後の外交関係を考えた時、リンド王国と
皇国との関係が東大陸においてより重要になるだろうというのは、論を俟たない。
その点ではリンド貴族とのパイプが強い親リンド派の貴族が優位である。
そこに、親大公妃派とそうでない派閥が重なり、責任の押し付け合いの様相である。
ここに来て功罪の罪の面が表面化してしまった。

278303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/15(日) 15:52:16 ID:k83QLRus0
ユラ神国から派遣されてきた外交官である枢機卿が言い放つ。
「セソー大公国の皆様、ご自分達の置かれている状況を理解しておられますか?
 現在はあくまで皇国とリンド王国の善意によって休戦しているに過ぎず、
 戦争状態は終わっていないのです。皇国はやるといった事は必ずやります。
 もしこの講和会議が何も決まらないまま終わるような事があれば、
 リンド王国とマルロー王国も貴国に差し伸べる手は持たないでしょう」
皇国の担当者は、文官も武官も一見すると優しい顔をしたまま黙ったまま。
このアルカイックスマイルは非常に不味い。
現在は前大公の喪に服するのと講和条約の事前協議として停戦しているに過ぎない。
皇国軍は停戦しているだけで、戦闘態勢自体は解いていないどころか国境外に戦力を集結し、
ひとたび命令さえあればロマディアのみならずセソー大公国全土を半月以内に灰塵に出来る。
国土と国民が物理的に無くなれば、戦争はそこで強制的に終了だ。

皇国軍は今まで東大陸軍(東大陸派遣軍)で使っていた戦車が子供に見えるくらい巨大な新型戦車を
リンド王国に上陸させ、関係各国の武官等を招いてその主砲の威力を実演し、関係者の度肝を抜いた。
今まで皇国軍が使っていた戦車ですら、その主砲威力は要塞砲に匹敵するというのに、
それが前座だったとでも言いたげに、要塞砲ですら容易に崩せない
厚みの石垣を爆破し、何十枚も重ねた鉄板すら貫通して見せた。

さらに、沖合に今まで見ていた軍艦の倍程もある超巨大戦艦を走らせ、
空気を震わせる轟音と共に主砲を斉射するという実演もして見せた。
艦の速力や主砲の射程と破壊力については秘匿とされたが、
皇国が見せた範囲であれば、速力は20ktで射程12kmだった。

あんなに巨大な鋼鉄の戦艦が、順風を受ける戦列艦の2倍の速度で走り、実用射程に至っては50倍!
沿岸から内陸に10マシルの都市でさえ射程内に収め、艦砲射撃出来るという事実だ。
見た事も無い程に巨大な大砲であり、実弾射撃の標的となった場所にあった城塞は跡形もなく吹き飛んでいた。
王家直轄の城塞で、取り壊して近代式の要塞に再建する予定の場所だったのだが、想定外の威力に言葉を失う。
その威力は皇国軍が今まで使用していた野砲や爆弾の比ではなく、形あるものは何も残らないだろう。
沿岸から12マシル以内の全ての地域は、今後この艦砲射撃を受けるかもしれないのだ。
近代式の要塞に再建したところで、この砲撃を前にすれば何の意味も無い。

今まで自分たちが見てきた皇国軍の兵器は何だったのだという
落胆すら覚え、圧倒的な存在感と畏怖の念を魂に刻み付けられた。

本国にはまだまだ部隊があり兵器もあるとは聞いていたが、
皇国軍は全く本来の力を出さずして戦っていたのだ。
これを見たリンド王国軍関係者の放心状態たるや。

そしてこれらの兵器を披露したという事は、皇国の意に沿わない結果に
なればこの力を使う事があるかもしれないと宣言しているに等しい。
実際、これらは皇国軍が他の地域での活動を一時停止してまで行った東大陸への
大増援作戦の一環として送り込まれたもので、必要となれば使う為のものだ。

279303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/15(日) 15:53:07 ID:k83QLRus0
皇国は政府としても軍としても、講和を迫るのは相手の為であるという態度だ。
『皇国としては別に好きなだけ相手してやるが、本当にそれでいいのか?』と。
『慈悲深い皇国は、敵対国の人命すら配慮するからこそ講和を勧めるのだ』と。

恫喝そのものであるが……。
不思議で仕方がないのは、このド派手な実弾演習にはセソー大公国の武官も
招かれていたのに、現状で一番の当事者である彼らに危機感が見られない事。
特にロマディアは海に面しているのだから、陸からだけでなく
海から巨大戦艦が攻めて来たら逃げ場はなく一巻の終わりだ。
宮殿、市街地、いずれも海岸線から5マシル以内に立地しており、
ロマディアの胃袋たる周辺の農村地域ですら10マシル以内なのだから。

勿論、内陸に10マシル以上なら大丈夫という事でもない。
皇国軍は列強の飛竜母艦に相当する飛行機母艦を保有していて、
そこから戦闘用の飛行機を運用可能と見られている。
皇国軍にとってこれは戦艦以上に重要で極秘の存在なのか、
未だにその正体について友好国にすら明かしていないが、
存在は確実だ。皇国軍人も、仄めかしてはいるのだから。
ただそれがどれくらいの能力を持っていて、何隻あるのかが
不明であるので、各国は皇国軍の洋上航空戦力を計りかねている。

そして皇国軍母艦の搭載飛行機の行動半径は、
少なく見積もっても250マシル(300km)はある。
つまり沿岸から250マシル以内は爆撃圏内。

ではそれよりさらに内陸なら安全だろうか?
否。
この艦砲射撃と航空爆撃によって得た地域に飛行場を作って、そこから
さらに内陸を爆撃するという方法で、理論上はどこでも攻撃され得る。
真っ先に攻撃される場所か、そうでないかの問題でしかない。
皇国との戦争において、後方の安全地帯など存在
しない事はリンド王国が証明したではないか。

危機感という意味では、むしろユラ神国関係者の方が大きかったかも知れない。
リンド王国の王都ベルグは内陸にあり、艦砲射撃を受ける心配はない。
しかし聖都ユラは海に面している為、艦砲射撃を受けてしまう。
ユラの神殿、宮殿、門前町として発展した首都は何かあれば皇国軍の艦砲射撃によって灰燼に帰すだろう。
行政府や立法府としての首都機能を内陸に移したとしても、神殿だけはどうしたって移動できない。
神殿やそこに安置されている宝物が無くなれば、ユラ神国はユラ神国である土台を失ってしまう。
教皇といった聖職者達に神性を与え、信徒の信仰心を物的に担保するのがユラ神殿という場なのだから。


皇国本国では総理大臣と国防大臣を始めとする閣僚諸氏が頭を下げて
衆議院と貴族院を相手に説得し、非難囂々の中で意思決定されたなど、
この世界の国々に対しては絶対に知られたくない事であったが。

280303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/15(日) 15:58:27 ID:k83QLRus0
皇国は、今回の戦争の講和条件として、原状回復を前提に

リンド王国の現女王及び王配、リンド王室と皇国皇室を正統と公式に認める事。
リンド王国及び皇国の内政に干渉しない事。
リンド王国及び皇国に賠償金を払う事。

の3点を求めており、逆に言えばそれ以上は求めていない。
皇国との国交樹立とか、領土割譲、資源採掘権などは講和条約の条件としては求めていないのだ。
賠償金を払えない場合、代わりに領土を割譲するとか、現物や利権で払うといった
代案は提示されているし、賠償金の額からしても呑まざるを得ないだろうが。

賠償金の金額についてはある程度、交渉による減額に応じる用意はあるが、
それ以外の2つはリンド王国の国体の正統性に関わる部分なので絶対に譲れない。
リンド王室と婚姻した事で、間接的に皇国の皇室が“列強に値する正統な王朝”
と認められている部分が多分にあるので、ここが躓く事は許されないのだ。
そうでなくても、皇国に理解のある女王を引き摺り下ろされては今後の
東大陸外交が振出しに戻ってしまうし、武力によって他国の王位継承に
口出しして、それが通ってしまうような前例を作る訳には行かない。
(皇国自身が武力を背景にリンド王室と関係を結んだ件には目を瞑る)

「皇国は本日を含めて4日以内。3日後の午後6時を期限として、
 セソー大公国と正式な講和条約を締結する事を望みます」
皇国の外務当局者の言葉である。
望みます。という言い方ではあるが、実質強制である。
3日以内に署名しろという脅迫に等しいが、この会議の席の誰も皇国の提案に異を唱える者は居ない。
唱えられる訳が無い。
3日後の午後6時までに講和が成らなかったら……。
皇国の敵国でも何でもない筈のユラ神国関係者、セソー大公国との
戦争では皇国側の当事者のリンド王国関係者も冷や汗を浮かべる。

拷問してでも、誰かを摂政に推挙し、署名させなければならない!


結局、新しいセソー大公である小レオニスの摂政に推挙
されたのは、叔母にあたる前大公の妹レミニアだった。
弟だとそこそこ大物だし、本人が嫌がっている。
レミニアは、本人に大した権威も権力も無いが、腐っても大公家の
血筋なので他の貴族からの横槍を無視しても崩れない程度の土台はある。
リンド王国への留学経験があり、前大公の下では内務省で働いており、政務能力はある。
候補は居ないかと匙を投げて、それが頭にぶつかったような形の推挙。
「大臣達が勝手に決めて、事後報告ですか」
ロマディア騒乱にて負傷したレミニアは、郊外の自宅で療養中であった。
銃撃を受け、軽い裂傷で済んだが、一歩間違えれば死んでいたのだ。
貴族や関係者達が押しかけて来た時、レミニアは乗馬を留めておく厩舎で、愛馬の世話をしていた。
「私がこのような怪我を負う原因となったのが、そもそも――」
「レミニア殿下! 時間が無いのです!」
そう言って、外務卿が条約の書面を差し出す。
「これに摂政として署名しろと?」
「はい!」
「内容を見た上で言ってますか?」
「我が国に選択肢はありません。期限が来れば皇国軍の再攻撃が始まります」
「ロマディア市内には、反乱軍を取り締まり治安を維持すると居座ってますが、あれらも攻撃してくると?」
「恐らくは……」
レミニアにも言い分がある。
ここまで脅迫に近い形で署名させようという事を、何故前大公であるレオニスに行わなかったのか。
マルロー王国が抜けた段階でレオニスを“説得”していれば、こんなごたごたにはならなかった。
それを、レオニスが居なくなった途端に立場の弱い自分に押し付けてくる……理不尽だ。
「現リンド王室の承認。これは認めるしかありません。私も異議はありません。
 内政干渉の禁止にしても、明文化の上で認めざるを得ないでしょう。
 ですがこの賠償金の金額は? 減額交渉してこれですか?
 こんなの、国が無くなってしまいます」
「皇国が欲して、我が国から差し出せるようなものは他に無く……」
「皇国製品を輸入するのでは駄目なのですか? あと領内の通行権とか……
 何でもいいから賠償金の代わりになりそうな事を提案して下さいよ。
 私を推挙したという事は、当然私が会議の矢面に立つのでしょう?」

281303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/15(日) 15:59:23 ID:k83QLRus0
以下は皇国に対しての義務であるが、リンド王国に対しての
義務(王室への意見無用、賠償金等)や、皇国とリンド王国と
マルロー王国の三者の許認可が必要な事業なども設定された。

国交の樹立と通商の開始。公使館と商館をロマディアに置く。
賠償金を金または銀にて支払う(総額の35%以上は金である事)。
毎年一定量以上の皇国製品を輸入する(品目や金額は都度改定)。
皇国の皇室及び婚姻、血縁関係のある他国王室等への批判の禁止。
皇国が指定するシテーン湾に面する場所に無償の労働力を提供する。
ノイリート島とその付属島を割譲する。
上記を除くセソー大公国の領土(属領含む)を無期限の租借地とする。なお租借料は無料とする。
上記租借地における皇国軍の駐留と通交を無制限に認める。
上記租借地における特定の税収の一部を皇国のものとする。
上記租借地における特定の資源採掘権を皇国のものとする。
上記租借地における皇国の領事裁判権と治外法権を認める。
セソー大公国の国内法につき新法の設定、旧法の改定、
各種行政の重要懸案については皇国との協議を必要とする。

……等々。


賠償金は当初要求より大幅に減額されたが、その分本土が租借地とされ、
一般的な領事裁判権の範囲を超える無制限の治外法権まで盛り込まれた。
皇国の領土になった訳ではないので、この地域は依然セソー大公国の
固有の領土であり、皇国の天皇と皇族、臣民は皇国法に従うが、
それ以外の人々はセソー大公国法に従うという二重規範が適用される。
しかもそのセソー大公国法は皇国との“協議”によって決められる。

マルロー王国が手を引いた後もあがき続け、皇国兵のみならず
自国兵や自国民をも無駄に傷つけた事への懲罰的な意味が多分にあった。
これくらいの譲歩をしなければ皇国が納得しなかったという事でもある。
外務省を通じて東大陸に伝えられた内大臣府と宮内省の強い要望もあった。

また、この地は大陸北方の極北洋に面する要地であると共に、リンド王国と
マルロー王国という北方の二大列強国の緩衝地帯としても機能していた。

大陸北方に野心を見せる東方や南方の列強や大国が、
セソー大公国を誑かして足掛かりとし、再びこの地に
騒乱が起きるような事を皇国は何よりも望まない。
故に、しばらくの間は皇国がセソー大公国を事実上の植民地、
あるいは保護国とする事で睨みを利かせるという理由もあった。

282303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/15(日) 16:12:40 ID:k83QLRus0
レミニアは、この条約に署名する際、周囲の重鎮に漏らした。
曰はく――
『私が大公殿下の摂政として署名する訳で、責任は全て私にある。
 大公殿下が成人なさった後であっても、決してこの件を持ち出して
 大公殿下の私生活や政務を煩わせる事をしてはならない。
 いずれのこの条約について大幅に改定する必要があるが、
 皇国のみならずリンド王国やユラ神国も納得させねばならない。
 その為には、この件を持ち出して政争の具にするような面を
 特に列強各国に見せてはならず、粛々と条約内容を守る事。
 その時になったら当事者だった私が大公殿下を補佐する。
 事が成った後であれば、私はどうなろうが受け入れる』


レミニア・カミーロはセソー大公国憲法を制定し、小レオニスの成長とセソー大公国の発展を見届け、
何よりの懸案だった皇国との諸条約をほぼ誰の目から見ても満足の行く形で改定させると、即座に隠居した。
その後、程なくして絞首自殺。享年45歳。
生涯結婚せず、大公と国に尽くした麗婦人の、あまりもあっけない最期。

不穏を感じていた使用人が毒になり得るものや刃物等を厳重に管理している中での事であり、
貴族に対する斬首でなく平民に対する絞首を自ら選んだ事は、多くの者に衝撃を与えた。

北方諸国同盟との戦争当時の皇国関係者で自害する者すらおり、
君主や元首でもない相手に皇国天皇から異例の弔電が出された。

幼い頃から影に日向に支えてくれた小レオニスに
とっては実の母親を失うよりも辛かったと手記にある。
東大陸初の立憲君主、セソー大公レオニス・カミーロ曰はく
“私にとって、叔母のレミニアは姉であり母であり父であった”
“レミニアが自死した事で、私は真に大公として独り立ちせねばならなかった”

レミニアの遺産は生涯を過ごした小さな邸宅と僅かな現金のみであったが、
セソー大公国に対する有形無形の遺産は金額では計れないものだとされる。



セソー大公国との講和が成り、東大陸での戦争状態は終わった。
特に東大陸では、大内洋に面するユラ神国、リンド王国という二大列強国と同盟関係を結び、影響力を揺るぎないものとする事に成功。

本土列島と神賜島。
大内洋、西大陸、東大陸。
この新世界に瞬く間に名を轟かし、世界の覇権を握った皇国は、従来の『列強国』という概念を超える『超大国』として、千年を超える繁栄を誇る事になるのである。



平成元年2月。

冬の新宿御苑にて執り行われた大喪の礼には、皇国に次ぐ大国であるリンド王国女王、シャーナも王配の陽博と共に参列している。

21発の弔砲は、皇国にとって転移前という古い時代の終わりであり、新しい時代の幕開けでもある砲声であった。

283303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/15(日) 16:17:54 ID:k83QLRus0
投下終了です。

くぅ〜疲れましたw これにて完結です!
(中略)
本当の本当に終わり

西大陸のライランス王国編や東大陸の北方諸国同盟編の本編の続きを書くつもりはありません。
そういう意味では本当にこれにて完結です。

書くとしたら外伝や後日談で、そちらは機会があれば投下しようとは思ってます。
『皇国召喚』世界での平成編を書きたいとか思ってたら、もう令和ですよ。
しかしそれが却って「今の時代の話」ではなく「少し前の時代の話」
として心理的抵抗感が薄れて書きやすくなった感じはします。

本当に長い事、お付き合いいただき、ありがとうございました。

284名無し三等陸士@F世界:2019/12/15(日) 16:59:17 ID:.1oOitpE0
完結お疲れ様でした!
最後はちょっと悲しい終わりでしたね。

285名無し三等陸士@F世界:2019/12/20(金) 03:45:13 ID:BmLLBGIA0
完結おめでとうございます。お疲れさまでした。
架空戦記は中々完結させるのが難しいジャンルの小説ですが見事に完結。
本当にお疲れさまでした。
読者としても楽しく読ませていただきました。次回作も待っております。

286名無し三等陸士@F世界:2019/12/20(金) 04:01:01 ID:BmLLBGIA0
てか遡ってみたら10年の連載かあ、、、
読み始めた頃20代だったのに気がつけば30半ばw

287303 ◆CFYEo93rhU:2019/12/20(金) 23:12:37 ID:k83QLRus0
改めて、これにて完結です。
こうやって支援レスしていただけたから、続けられました。
ありがとうございます。

終わったという安堵と共に、終わってしまったという寂しさがあります。
拙い内容かもしれないが、私にとってはこれ以上のものは無い最愛の作品なので。

>>284

皇国と敵対して早期に下らなかった君主は死ぬというジンクス。
スカッと爽快に終わるより、ちょっと後味悪いというか、そういう方が好きです。
皇国や同盟国の発展の影には犠牲があったんやと。

>>285

皇国召喚の外伝掌編を突発的に投下する事はあると思いますが、新規の次回作の確率は非常に低いです。
現代日本(の超強化版)が異世界転移というのも、考えはしますが、色々な事情で形にするのは難しいです。
編成表とかの設定はあるけれど本文に取り掛かれないやつ!

>>286

そんな残酷な事を口にするのはやめるんだ!

288 名無し三等陸士@F世界:2019/12/26(木) 22:50:02 ID:0lcvtDxk0
お疲れ様です。非常に楽しめた作品でした。感謝。

289名無し三等陸士@F世界:2019/12/30(月) 22:57:04 ID:06BBujPs0
完結する小説は良い小説
素晴らしいことです

290名無し三等陸士@F世界:2020/01/23(木) 07:59:51 ID:kFn8UjI.0
お疲れ様です。
なろうへの転載分見てますが、「東大陸編20『リンド王国の戦後』」が番外編の章に入ってしまってますよ。

291303 ◆CFYEo93rhU:2020/01/25(土) 01:30:00 ID:k83QLRus0
303です。
今年もよろしくお願いします。
本編は終わりましたが、外伝を投下する「かも知れない」可能性は残しておきます。

>>288
>>289

ありがとうございます。
私自身にとっても嬉しい事でした。

>>290

報告ありがとうございます。

最初期に「西大陸編⇒番外編⇒東大陸編」
の順番に投稿したのですが、なろうの投稿システムを理解をしておらず
変な形の更新の仕方(最新部分が本編の最新話とならない)してしまった
せいで、最新部分より前の部分を更新するたびに章分けがずれるので
東大陸編を投稿する度に手動で直してます。

上手く反映されなかったか、単純に直し忘れたか、どちらかです。

292名無し三等陸士@F世界:2020/01/29(水) 23:53:58 ID:1BFHmj9s0
うおっ良く見たら『皇国召喚』が終わってる!
遂に完結か、お疲れ様でした( ̄^ ̄)ゞ

久し振りに驚きつつ見たが矢張り良作作品だった、もう一度見なおそう。


後、関係ないが・・・帝國召喚書いてた、HPの「KUROのどこかでみたような世界」が「くろの新世界」
に仮公開してたな何時からか分からんし、内容は更新してないが頂き物(SS)も復活してた。

293303 ◆CFYEo93rhU:2020/11/02(月) 03:17:55 ID:kVk7UVQs0
東大陸北部の内陸の盆地に位置し、農地に適した土地の少ないモルン公国は、古くから各国に傭兵を派遣してきた。
所謂、血の輸出によって外貨を稼いできた国だ。

しかし近年、各国は傭兵に頼らない常備軍制度を拡充させてきた。
特に大国、列強国といったところは傭兵に頼らずとも完全に戦争を遂行出来る国家体制を整えている。
そうなってくると、傭兵を派遣する相手は常備軍を維持できないような小国しかなくなる。
派遣する人員の絶対数が減り、需要が減れば単価も安くなり、外貨獲得手段が失われる。
他に輸出出来るような特産物も無く、あれよあれよという間に極貧国へ転げ落ちる。

往時には男手だけでは足りず、女傭兵団すら複数あったほどのモルン人傭兵はしかし、
少ない農地を過剰な人員で耕し、野山を駆けて兎や猪などを狩るのであった。
木の実や野草を食い尽くす勢いで放牧された豚や羊達も、計画的な牧畜とは程遠い状態。

この状況を長期的に見れば、どう考えても限界がある。
長年、国を挙げて戦士を生業にしてきた者達が、いきなり農民になるのは無理だ。
過去のモルン公国は、必要な食料は穀物から酒までほぼ輸入に頼ってきた。
自国の農地で生産される量は全体の1割程度しかなく、時勢によって
輸入が途絶えた時に、一時的に食い繋ぐ為くらいの扱いだったのだ。

さらにこの国特有の問題として、農業(第一次産業)に対する激しい差別感情がある。
モルン公国においては、農業とは戦士になれない弱者が仕方なくする賤業であり、
体力と根気と専門知識の要る高度な職業だと理解している者は余りにも少ない。

そうすると、どうなるか。
精強な傭兵団として通っていたモルン人達は、盗賊団に鞍替えする。
必要なものは戦って得る。ただし合法的に得てきた今までとは違い、違法な方法で。
国家公認の傭兵ギルドは事実上の盗賊ギルドとなり、内陸の手近な小国から狙われていく。

表向きは、傭兵隊を派遣してその地域や街道の治安を守り、対価として金銭を得るというもの。
だが、派遣される方は別に頼んでいないのだ。
武器を持った男達が勝手に来て居座り、金銭を要求しているだけ。
「モルン人傭兵が守ってやってるんだから安心しろ」という言葉とは真逆の行動。
ここで金銭を払わなければ、命の保証はない。

飢餓から脱し、かつての豊かさをもう一度手にする為、モルン人達は
戦争中でもないのに国家ぐるみの略奪を公然と行うようになった。

そうして自身の狼藉によって治安の悪化した地域に出向き、護衛と称して武力を売り込む。
襲撃する側も護衛する側もモルン人の場合、茶番劇も甚だしく、周辺各国は不信感を募らせる。

当然、自国の軍隊から護衛を出そうという話になるが、小国にとってこれは大きな負担である。
そうなると結局どこかの傭兵を頼るか、出兵の余裕を持つ大国を頼るしかなくなる。
しかも対処療法ではなく、荒廃したモルン公国という根本を改める事が求められた。

このような事態に動いたのは、この地域では指導的立場にあるセソー大公国である。
内陸部の鉱山で採掘された鉱物や、川や湖で獲れた魚などを
自分達の産業や食料にしたり、シテーン湾沿岸諸国に輸出している。
金や岩塩の鉱山もあるので、内陸部の辺境とはいえ、交易が滞るのは非常に損害が大きいのだ。
セソー大公により“モルン盗賊団討伐隊”が編成され、モルン公国に対する懲罰的軍事行動が下命された。

294303 ◆CFYEo93rhU:2020/11/02(月) 03:19:33 ID:kVk7UVQs0
地竜に曳かれて現れたのは、セソー大公国軍の河川砲艦。
セソー大公国は海に面している大国だが、こんな辺鄙な上流まで何しに?
元傭兵隊長の盗賊頭が疑問を抱いていると、砲艦に備えられた1バルツ砲が火を噴く。

砲艦は河上司令部として投錨し、司令部要員を除く将兵を下船させ、この場に飛竜中隊が来るのを待つ。
周囲の木を切り倒し、簡易的な竜舎を建築する。
只の寝床で飛竜陣地ですら無いが、文明圏でもない場所ならこれでも十分だ。
使い終わったら解体して資材にしても良いし、燃料にしても良い。

竜舎を作り終えた2日後の昼に、飛竜中隊が到着した。
飛竜の胴体を覆うように装着された竜具。
そこに描かれたセソー大公国の国籍標章に、将兵の士気が上がる。
飛竜中隊は今日はここで休み、翌日からモルン公国を目指す。

飛竜中隊は12騎で編成され、全騎が飛竜騎士と狙撃手の編成。
大型の爆弾は装備せず、小型の擲弾を数発持っているだけだ。

飛竜の準備が済むと、砲艦護衛部隊を除く歩兵隊もモルン公国へ向けて出発する。
モルン公国攻撃部隊には狙撃兵中隊も含まれており、砲艦から下ろした旋回砲も装備に加えられた。
旋回砲として使われる1/8バルツ砲は一般的な野戦砲である1/2バルツ砲に比べると非力に
感じるが、一般的なマスケット銃弾の15倍超の質量を撃ち出すれっきとした大砲である。
人間が担いで運ぶ事が可能な大砲としては最大級のもので、馬の背に積載しても良く、
砲車の牽引輸送が無くても運用可能な為、険しい山を踏破する山岳歩兵隊などで利用される。
セソー大公国は海に面した平野にあるので軍に山岳歩兵部隊は存在しないが、
今回は幾つかの歩兵連隊から選抜した人員で山岳兵部隊を編成していた。

先行する飛竜中隊は後から来る歩兵隊の進路となる道路の状況を確認しつつ、
モルン公国までの道程を報告しに一旦司令部に戻る。
「道路状況は思った程悪くありません。ここから直線距離で20マシル。道路に沿って歩いても30マシル程です。
 途中、道路沿いに10箇所程の町や村があるので、そこで食糧他消耗品を調達出来るよう交渉して参ります」
「頼んだぞ」

地竜によって遡上してきた河川砲艦3隻、輸送船18隻。
戦列歩兵中隊10個、擲弾兵中隊4個、山岳歩兵中隊1個、狙撃兵中隊1個、工兵中隊4個、飛竜中隊1個。
このうち2個の戦列歩兵中隊と2個の擲弾兵中隊、2個の工兵中隊が司令部となる砲艦と軍需品倉庫となる
輸送船、竜舎のある川岸を護衛するので、攻め込むのは12個歩兵中隊と2個工兵中隊、1個飛竜中隊。
1日遅れて、飛竜中隊がもう1個来る手筈になっている。
その他、輸送馬車中隊、主計小隊等が後方支援部隊として随伴する。

小国を相手にするには十分な戦力だが、今回の相手は国民皆兵と言っても良いモルン公国。
歩兵のみで、砲兵や騎兵や戦竜兵の参加は無いが、そこは飛竜兵が空中騎兵となろう。
モルン公国や周辺国に飛竜部隊は無く、空を駆ける飛竜を邪魔する者は居ない。
飛竜という戦力が存在しない地域だから、対空装備も皆無である。
この事は、懲罰を加えるにあたっての事前調査によって判明している。
そして12騎から成る飛竜中隊を相手に出来る程の対空装備は、1週間や2週間で準備できるような代物ではない。


途中、飛竜隊による“露払いと事前交渉”により陸路を進む歩兵隊は何の障害も無く、
腹一杯の食事と酒を楽しみつつ、旺盛な士気を保ったままモルン公国へ迫っていた。

軍の部隊に直接命令を下すのは陸軍省と空軍省だが、発議は内務省
経由であったので、内務省から与えられた任務はモルン公国への懲罰。
曖昧な要求であるが、軍司令部ではこれを以下のように解釈した。
モルン公国人を殺せるだけ殺し、モルン公国から奪えるだけ奪うべし。
国民皆兵であるから、男も女も老いも若きも関係ない。
全てが潜在的な盗賊なので、区別は不要である。

歴史ある傭兵団など、もう不要である。
今更モルン公国がどうなろうが、大国にとってはどうでもよい。
むしろ大国にとっては、中小国が有事に独自の傭兵を雇わずとも、
自分達の保護国となる事を望む考えが多いので、邪魔ですらある。

295303 ◆CFYEo93rhU:2020/11/02(月) 03:24:30 ID:kVk7UVQs0
狼藉のお陰で、周辺国はモルン公国と国交を断絶しており、
モルン公国へ来る旅人や交易している商人は居ない筈だ。
故にモルン公国に居る人間は無条件にモルン人だと言える。

先行して領土に侵入した飛竜中隊は、眼下にモルン公国の城下町を認めた。
こちらも数日前から飛竜を飛ばしていたから、相手も襲撃を受けると分かっていたのだろう。
古いながらも武骨な公城からは弩や弓を装備した盗賊団がわらわらと出てくる。
「攻撃開始!」
阻塞気球の一つすら準備していない時点で、飛竜を防ぐ手立てはほぼ無いと言って良いだろう。
城壁や塔の上の胸壁や木盾に身を隠す盗賊団目掛けて、導火線に火を着けた擲弾が投下される。
対空兼用のバリスタを射撃準備していた数人の盗賊が、バリスタごと擲弾に吹き飛ばされた。
見たところ、対空砲も無ければ対空ロケット弾も無い。数基のバリスタがあるのみだ。
しかも、一般的な対空用バリスタは鏃に炸裂弾頭があり、発射後一定時間で炸裂するが、
ここのバリスタは鏃に特有の膨らみが無く、直撃しないと効果が無いタイプであった。
弾速が速い対空砲ですら命中は容易ではないのに、大砲より低速のバリスタを飛竜に直撃させるのは至難の業。実質不可能である。
飛竜騎士と息の合ったコンビネーションを見せる狙撃手がカービンを使い、地上や城の上を走り回る盗賊達を狙撃していく。
用意したカービンを撃ち尽くすと敵の攻撃範囲から離れて、速度を抑えた水平飛行に移り次弾装填。

木々が生い茂っていれば上空からの隠蔽になるだろうが、この辺りの地形は
荒涼たる草原であり、林や森といったものは無いのだ。隠れる場所など無い。

擲弾による爆撃、カービンによる狙撃、そして飛竜が急降下して蹴り殺したり、上半身を咥えて噛み殺す。
人間に家畜化されて長い年月が経つが、急降下して獲物を狩る姿は飛竜本来の野生を取り戻したかのように、実に生き生きとしていた。
周囲に盗賊団が居ない事を確認した飛竜騎士達は愛騎を着陸させ、盗賊の衣服を剥ぎ取り、飛竜の食事休憩が始まる。
着陸時は狙撃手が周囲の警戒をしつつ、騎手が飛竜の世話をするのだ。
何かあればすぐに飛び立てるように目を光らせている為、盗賊団は飛竜騎士の行いを遠目に見ている事しか出来ない。
剥ぎ取った衣服のうち金目の物は背嚢に、残りは燃やして再利用されないようにし、腹を満たした飛竜は再び飛び立つ。

30分程の攻撃で300人近い死傷者を出した盗賊団に対して、飛竜中隊の損害は無く、悠々と帰路に着いた。
この日は、約2時間おきに飛竜の襲撃があり、その度に盗賊団は100〜200人程度の死傷者を出し、
各所に落とされた擲弾から、家屋の多くが木造の城下町とその近隣の農地は
大規模な火災に陥り、盗賊団は反撃を諦めて城に引き篭もるようになった。
たった12騎の飛竜が半日間の反復攻撃を繰り返しただけでこうなるのである。
完全武装の飛竜隊が好き放題に暴れたらどうなるかを、存分に見せつけた形だ。

こんな痩せた土地しかない辺境地域で飛竜を使った戦闘が行われるとは考えにくい。
飛竜の運用には大きなコストがかかるから、わざわざそんな金をかけてまで不毛の地を
侵略にしに来るような酔狂な軍隊が居るとは、以前ならば考えられなかったらだろう。
だから飛竜に対する防御策を考えない古城や、対空火器皆無な状態でも問題なかった。
昨今はその前提状況が変わった。
セソー大公国はより大きな損害を防ぐ為に、短期的には大きな出費に甘んじたという事だ。

296303 ◆CFYEo93rhU:2020/11/02(月) 03:25:02 ID:kVk7UVQs0
翌日、増援の飛竜中隊が到着し、歩兵隊も敵地に到着する段階になり、いよいよ本格攻撃が下命される。

戦列歩兵隊は盗賊団が集まる古城の風上に布陣した。
事実上、2個大隊規模であり、これが国を相手にした戦争と考えた場合には余りにも小規模であったが、
攻城戦になる事を見越して置型の盾を用いており、弩や弓矢はほぼ無効化出来る。
そもそも銃でない遠距離武器といえば弩であり、弓兵は圧倒的に少ない。
そして、遠距離から撃ち下ろすように射られる弓矢に対しては、
「そこか」
上空から盗賊団の動きを監視する飛竜隊が攻撃を加え、無力化していく。
城壁の所々にある矢弾を防ぐ木造の小屋とて、擲弾の炸裂を受ければ大きく破壊され、
破壊された箇所から追い打ちに内部に擲弾を投げ入れられれば、小屋の中は肉片と硝煙で充満する。

城壁の間際を飛び、速度を落として窓の隙間から擲弾を投げ入れて攻撃する飛竜騎士すら居た。
さらに戦列歩兵隊が銃を斉射すれば、硝煙が煙幕になり、盗賊団は正確な照準が付けられなくなる。
セソー大公国軍歩兵隊は狙撃隊が硝煙の外から敵集団を監視し、戦列歩兵隊の指揮官に撃つべき方向を告げる。
飛竜対策をしている近代的な城塞や要塞でもない古式の城なので、塔の上から
攻撃するような戦法が取れず、狭間から弩を射るくらいの反撃しか出来ない。
飛竜の擲弾でも破壊が難しい頑丈な場所は、安全だが視界が悪い。
故に飛竜隊がどこを飛んで何をしようとしているのか、盗賊団は全く把握出来ない。

2個の飛竜中隊はそれぞれ部隊を半個中隊ずつに分割し、計4個の半個飛竜中隊が入れ代わり立ち代わり盗賊団を攻め立てる。

この間に工兵中隊によって即席の砲撃陣地が造られ、砲架の上に旋回する1/8バルツ砲が設置される。
盗賊団は、セソー大公国軍の攻撃陣地が造られるのを妨害する事すら満足に行えないのだ。

数的優位を保った篭城戦という、本来防衛側が圧倒的に有利な戦場にも係わらず、実態は逆だった。
城に追い立てられた防衛側は孤立無援。理由が理由だから、適当な所で手打ちとも行かない。


1/8バルツ旋回砲の設置が完了すると、狙撃兵中隊の副隊長の指揮で砲撃が開始される。
砲兵陣地が出来上がってからは、動く人影が見えなくなるまで、来る日も来る日も、セソー大公国軍の一方的な火力が叩き込まれるだけであった。


モルンの地を根城にする盗賊団討伐により、セソー大公の爵位にモルン公爵が加わった。
セソー大公国から代官と開拓民を兼ねる警備兵とその家族合わせて1000人程度の移民が来たが、特に何がある訳でもない辺境。
開拓といっても出来る事は限られ、それまで防衛上の観点からあえて整備されていなかった域外との連絡道路を建設するなどして過ごしていた。

それから十数年の時が経った。

旧モルン公国。
現セソー大公国モルン公爵領。
セソー大公からすれば建前上は直轄領であるが、実際の統治は代官に丸投げされていた。
飛び地であり、交通の便も悪く、産業も無く、ただ領地があるだけの存在。
皇国との戦争時には直接の被害を受けず、本国が降伏したのでそれに付随して降伏した形だ。
セソー大公国の領土である為、条約にある租借地の範囲に含まれ、皇国はここに飛行場と大規模な物流倉庫を建設。
大陸の内陸部に貴重な活動拠点を得るのだった。

297303 ◆CFYEo93rhU:2020/11/02(月) 03:27:13 ID:kVk7UVQs0
投下は以上です。
本編は完結しています。

298名無し三等陸士@F世界:2020/11/02(月) 21:51:57 ID:rMI7NNHo0
???「在モル皇軍は危険な飛行場をてっきょしろーモルン人の土地をかえせー」
いやスレを見ていた甲斐があったうれしい

299303 ◆CFYEo93rhU:2020/11/03(火) 00:44:13 ID:kVk7UVQs0
サブタイトルは『皇国領モルン』でした。
租借地ですが、実質割譲されたようなもの。

>>298

憲兵「話は基地で聞こうね」

300名無し三等陸士@F世界:2020/11/03(火) 01:23:43 ID:.1oOitpE0
更新…だと…!?
乙でした!

301名無し三等陸士@F世界:2020/11/03(火) 01:28:47 ID:.1oOitpE0
根絶やしにされたのだろうなぁ。

302名無し三等陸士@F世界:2021/01/12(火) 22:43:39 ID:DMxb7HMo0
なあ、くろべえさんは?

303名無し三等陸士@F世界:2021/01/14(木) 02:41:09 ID:OvOMxCeA0
久々に見たら更新されてる!?

くろべえさんが生きているわけないやろ
復活したとしても別名じゃないかね


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