したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.15

1名無し三等陸士@F世界:2016/10/03(月) 01:41:59 ID:9R7ffzTs0
アメリカ軍のスレッドです。議論・SS投下・雑談 ご自由に。

アメリカンジャスティスVS剣と魔法

・sage推奨。 …必要ないけど。
・書きこむ前にリロードを。
・SS作者は投下前と投下後に開始・終了宣言を。
・SS投下中の発言は控えめ。
・支援は15レスに1回くらい。
・嵐は徹底放置。
・以上を守らないものは…テロリスト認定されます。 嘘です。

169外パラサイト:2017/01/23(月) 19:24:59 ID:lbvRe/9E0
あけましておめでとうございます(今更)
投下させていただきます

170外パラサイト:2017/01/23(月) 19:26:15 ID:lbvRe/9E0
ニポラ・ロシュミックが司令官から呼び出しを受けたのは新品のドシュダムの慣らし運転を済ませた直後だった。
ニポラが所属する第653飛行戦隊は12月9日から断続的に続いた首都防空戦で搭乗員の半数と機材の3分の2を失う損害を出した後、人員と飛行挺の補充を受けて再び最前線拠点に派遣されていた。
ちなみにドシュダムの配備数は定数の八割強、補充されたパイロットの大半は養成所を出たばかりのヒヨコである。
実際あらゆる物資の補給が滞っているなか、いくら生産効率を重視した簡易飛行挺とはいえドシュダムだけはなんとか損失に追いつくペースで補充の機体が―しかも改良型が―供給され続けているというのはちょっとした奇跡である。
「どうですか調子は?」
「悪くないわね」
寄ってきた機付き整備員に手渡された書類に書き込みをしながら答えるニポラ。
彼女がテストしていたのは補充として届いたドシュダムの中でも最新モデルのタイプ31で、この型は性能向上よりも生産工程の省力化に主眼が置かれている。
言うなれば“大概な安物”から“究極の安物”への進化。
あえて言おう、シン・ドシュダムであると。
具体的に説明すると、従来のドシュダムは金属フレーム―金網で編んだネズミ獲りのカゴを連想していただきたい―に合板製の外殻を貼り付けるという方法で製造されていた。
この方式なら機体だけなら町の家具屋レベルの設備で充分製造出来るワケだが、タイプ31では機体の外板に更に安価で加工の容易な段ボールに似た厚紙を採用している。
紙といっても魔法で強化されているので耐熱・耐過重性能において合板に比べさほど劣ることはない。
そのうえ構造材の変更によって機体重量が10%ほど軽減されているので機動性もいくらか向上している。
引き替えに曳光弾で簡単に火が着くという弱点が追加されてしまったが。
「残りの機体の試運転をお願いね」
「了解しました」
「了解しました」
ニポラは新しく配属されたちょっと―というかかなり―特殊な生い立ちをした二人の部下に、滑走路に並んだ最新式“紙飛行機”の試験飛行を代行するよう言いつける。
どちらも15〜6歳にしか見えない初々しさと枯れた雰囲気が奇妙に同居した二人の少女飛行兵のうち、茶髪のショートカットで変なヌイグルミを集めていそうなのが「55号」、灰色の髪をセミロングにしたハンバーグが好きそうなのが「69号」という。
二人とも元は捨て子であり、物心ついた時には軍の特務兵養成機関に居た。
そして飛行挺部隊に出向を命じられるまでひたすら殺しの訓練と上官の“夜の接待”をやらされていたという。
新しい部下と打ち解けようと身の上話を振った際にそんなエピソードを聞かされたニポラはかなり真剣に(もうやだこの国)と思ったものだった。

「ニポラ・ロシュミック少尉、出頭しました」
「ご苦労さま、ちょっと待ってて」
第653戦隊司令フラチナ・カルポリポフ中佐は机の上を占拠した書類の山陰から顔を覗かせ、トレードマークの瓶底メガネを光らせながら手近な椅子を指さした。
まだ二十代前半でかなりの美人といっていいフラチナは、積み重なった心労と睡眠不足の相乗効果で奇妙な色気を発散している。
もとはケルフェラクのエースパイロットだったフラチナは被弾した愛機から脱出する際に頭部を強打し、後遺症として空間認識力に深刻な障害が残ってしまった。
今は感覚補正の魔法が掛けられたメガネのお陰で日常生活には支障ないが、それでもちょっと気を抜くと何も無いところで転んでしまう。
そんな訳で再編された653戦隊に新指揮官として二週間前に着任したばかりのフラチナとニポラ以下古参搭乗員の関係は、幸いなことにおおむね良好である。

171外パラサイト:2017/01/23(月) 19:27:12 ID:lbvRe/9E0
「よっこいせっと」
書類との戦いに一区切りを付けたフラチナは年寄り臭い動きで机から離れると部屋の中央に置かれたテーブルに地図を広げ、ニポラを呼び寄せた。
「新しい任務があるんだけど」
「今度はスモウプみたいな事はないでしょうね?」
そう言い返されてフラチナは、“チーズと思って口に入れたら黄色いチョークだった”と言わんばかりの表情になった。
4日前、ニポラ率いる小隊はカレアント軍が侵攻したスモウプの街を爆撃した。
事前情報では街には敵軍しかいないはずだったが、実は味方の第108師団の一部が後衛として街に残っていただけでなく、情報の混乱からドシュダム隊に攻撃目標として指示されたのは味方の立て籠もっていた工場だった。
そして昨日、街を脱出した生き残りが私用で基地を出たニポラを襲い、あわやというところで駆けつけた55号と69号が初代プリティでキュアキュアな二人組のごとき大立ち回りを演じて暴徒と化した敗残兵の一団を撃退したのである。
「ホント二人が来なかったら埋められて殺されて犯されてましたよ」
「正直スマンカッタ」
頭を下げるフラチナ。
「まあいいです、済んだことですから」
負けが込んで来てからのシホールアンル軍は万事につけ余裕が無い。
朝出された命令と正反対の命令が夕方に下されるなんてことは当たり前。
司令部の理不尽な命令に理路整然と反対意見を述べた前線指揮官が抗命罪に問われて裁判抜きで処刑!なんてケースも少なくないことを知っているだけに、ニポラも中間管理職の重圧に身が細る思いをしている―実際顔は良いが顔色はあんまりよくない―飛行隊司令をそれ以上追求する気にはならなかった。
「それで任務というのは?」
ニポラが話題を変えたことで露骨にホッとした顔になるフラチナ。
「目標はミウリシジの鉄橋よ、ここを取られると北部戦線の側面に大穴が空いてしまうの」
両軍の配置が書き込まれた地図で見てみると、なるほど敵にとっては格好の侵入路である。
「攻撃目標の鉄橋ですがドシュダム用の小型爆弾で破壊できますかね?」
「まず無理ね、そこで今回は海軍の対艦用爆裂光弾を使うわ」
ニポラは露骨にイヤそうな顔をした。
ドシュダムはそれなりの出力を持つ魔道機関と小型軽量な機体の組み合わせによって比較的良好な運動性能と加速性能を持ち、アメリカ製の戦闘機と互格とまではいかないがある程度は戦える実力を有している。
が、所詮は間に合わせの簡易飛行挺であり、対艦爆裂光弾のような大型兵器を搭載して飛び上がった場合、妊娠した雌牛のように鈍重になってしまう。
「わかってるわ、本来ならケルフェラクかワイバーンがやる仕事だけどケルフェラクの123飛行隊もワイバーンの99空中騎士隊も連日の防空戦闘で大損害を出しているうえに新しい部隊を手配する余裕は無いのよ」
いかにも済まなさそうにフラチナが言う。
「やるしかないワケですか」
「そゆこと」
司令官はハアッと重い息をつくと自分に気合いを入れるかのようにパンと膝を叩いて立ち上がった。
「今度の作戦では私も飛ぶわよ!」
「でも司令は……」
「大丈夫、ケルフェラクに比べればドシュダムは乳母車みたいなものよ」
ちなみに戦後ドシュダムをテストした米軍パイロットは「サルでも飛ばせる」と証言している。
「書類仕事はもうウンザリ!大空が私を呼んでいる♪」
フラチナは両手を広げてクルリと一回転し、次の瞬間、盛大にコケた。

172外パラサイト:2017/01/23(月) 19:28:22 ID:lbvRe/9E0
その日の正午過ぎ、第653戦闘飛行隊から選抜された6機のドシュダムが前線飛行場を飛び立った。
対艦爆裂光弾が6機分しか用意できなかったのだ。
最近のシホールアンル軍は何事もこんな具合である。
「遅すぎる、そして少なすぎる」そう恨み言を吐いて死んでいく兵士が一日に何人いるかは神のみぞ知るといったところか。
よたよたと離陸する飛行挺の主翼には一斗缶を連結したような爆裂光弾の発射筒が吊り下げられている。
今回は鉄橋が標的なので生命探知魔法の術式は解除してあり、使い方は無誘導のロケット弾と変わらない。
6機の特別攻撃隊は第一小隊の3機をフラチナが、第二小隊の3機をニポラが指揮し、小隊長機を先頭にした二つの逆V字隊形を上下に重ねた形で進撃する。
ニポラの小隊で一緒に飛ぶのは55号と69号である。
ドシュダムでの飛行時間は55号が7時間、69号が10時間しかないが、適正を認められて暗殺部隊から転属してきただけあって、二人とも無難にドシュダムを乗りこなしている。
フラチナが指揮する第一小隊には公認撃墜3機と4機のベテランがいて、撃墜数は二人を足した数より多いものの、イマイチ飛びっぷりが心配な戦隊司令に寄り添っている。
樽めいた太短い胴体にほとんど上反角の無い分厚い主翼を組み合わせた飛行挺が特徴的なエンジン音を唸らせて飛ぶ様は、航空機の編隊というよりは羽虫の群れを連想させる。
幸い―と言っていいのかどうか―敵の航空隊は東部で行われているバルランド軍の攻勢にまとめて投入されているらしく、敵戦闘機との遭遇はない。
特別攻撃隊がミウリシジの鉄橋に到着し、攻撃の前に上空を旋回して周囲の確認をしていると、普段はぽややんとしているくせにここぞという時にはニュータイプ並に勘が働く55号が線路上を南下してくる列車を見つけた。
高度を下げて列車の上空をフライパスすると、その列車は前線から負傷兵を後送してきたものらしく、無蓋貨車に寿司詰めにされた包帯姿―赤い染みが広がっているもの多数―の兵士たちが盛んに手を振っている。
特別攻撃隊のドシュダムを自分たちの上空援護に来たものだと思っているのだろう。
『司令――』
『分かっている、列車が通過するまで攻撃はしない』
だが現実は非情である。
『敵です!』
69号が反対の方角から道路を北上してくる戦闘車両の一群を見つけた。
「ドチクショーッ!」
品の無い罵声が口を突いて出るのも致し方なし。
傷病兵で満杯の貨車を引いてノロノロと線路上を進む列車より、道路上をすっ飛ばす機械化部隊の方が鉄橋に先に到達することは確定的に明らか。
彼らは戦線に突破口を穿つため快速車両で編成されたカレアント軍の偵察/襲撃部隊であり、全員が某狂せいだー乗りに勝るとも劣らないスピード狂である。
『第一小隊、敵車列を攻撃!第二小隊は上空で待機!』
三機のドシュダムはV字編隊を解き、緩やかな角度で降下しながら道路を爆走する車列に襲いかかる。
フラチナのドシュダムが先頭を走るM18戦車駆逐車に狙いを定めて射撃開始。
タイプ31の装備する重魔道銃は実体弾換算で25ミリ級の威力がある。
対して高速だが軽装甲のM18は主砲防楯の厚さが1インチ(≒25.4ミリ)であり、その他の主要部は0.5インチしかない。
あわれM18はブリキ缶のごとく撃ち抜かれて爆発炎上!

173外パラサイト:2017/01/23(月) 19:29:49 ID:lbvRe/9E0
攻撃を終えたフラチナ機が機首を引き起こすと同時に二番機が射撃開始、さらに三番機が後に続く。
第一撃でM18二輌とハーフトラック三台、機関銃と装甲板を追加した強襲用ジープ一台が炎に包まれた。
だがカレアント軍は諦めない、燃える車両を体当たりで道路から突き出してひたすら橋を目指す。
『列車は!?』
上空で旋回を続けるニポラが答える。
『いま鉄橋を渡り始めたところです!』
『くっ!』
フラチナは唇を噛んだ。
すでにカレアントの車列は川に沿った堤防上の直線道路に達している。
「あああもう!」
フラチナは堤防に向けて対艦爆裂光弾を発射した。
爆発によって路肩が崩れ、カレアントの戦車は急停車を余儀なくされる。
堤防の右側はかなり流れが急なカナリ川、左側もぬかるんだ湿地になっている。
道路を迂回して橋に向かうには1マイル近くバックして回り込むしかない。
そのとき一人の兵士がM6装甲車から飛び降りた。
堤防道路は川側が長さ6メートルに渡って崩落しているが完全に不通になったわけではなく、陸側にギリギリ車一台通れるだけの道幅が残されている。
徒歩の兵士に誘導され、旋回砲塔に37ミリ砲を装備した重装甲車はそろそろと今にも崩れそうな土手道を進んでいく。
『続けて攻撃!』
フラチナの命令を受け、第一小隊二番機が降下していく。
当然カレアント軍もやられっ放しではなく、車両に搭載された火器だけでなく、ライフルや拳銃まで動員して撃ちまくる。
激しい対空砲火が浴びせられるが、両翼にかさばる荷物を吊り下げたドシュダムの動きは鈍い。
二番機を仕留めたのは砲塔を失ったスチュアート戦車に不時着したP-39から取り外したオールズモビルのM4機関砲を載せた改造自走砲だった。
37ミリの榴弾が魔道エンジンを直撃し、パイロットが脱出する暇も無くドシュダムは爆発四散!
『三番機逝け!』
非情なる命令!
だが兵士は黙って従うのみ。
三番機は撃ち落とされる前に対艦爆裂光弾を発射し、堤防道路は完全に不通となった。
『列車が渡り終えました、これより鉄橋を攻撃します』
ニポラ率いる第二小隊は横一線になって川下から接近し、それぞれ右端、中央、左端の橋桁を狙って対艦爆裂光弾を発射する。
発射された6発のうち2発が橋を直撃、残りも至近弾となって鉄橋は大きく揺らいだ。
だがそれだけだった。
『……ダメみたいですね』
『まあ最善は尽くしたわ、引きあげましょう』
軍用列車の通過に耐えられるよう特に頑丈に作られた鉄橋を完全に破壊するには、ドシュダム三機分の爆裂光弾では火力が足りなかったのだ。。
橋に到達したカレアント軍はまず軽装備の歩兵を渡らせて対岸に橋頭堡を築くとともに橋の修理と補強を迅速に行い、翌朝の日の出とともに最初の戦車がカナリ川を渡った。
飛行場に戻ったフラチナとニポラ、55号、69号はドシュダムから降りると同時に武装した兵士に取り囲まれた。
「貴様等を叛逆罪でタイホするのである」
ハゲでヒゲで脂ぎった中年太りの大佐が横柄な口調で宣言した。
「待ってください話を――」
一歩踏み出し小石一つ落ちていない滑走路でコケるフラチナ。
その背中をハゲヒゲ固太りが踏みつける。
「黙れ罪人」
それを見て飛び出そうとした55号と69号が鳩尾に銃床を叩き込まれて膝を折る
「司令部に連行してじっくりねっちょり尋問するのである」
どこか背徳的なポーズで緊縛された四人は囚人用の馬車に乗せられ、基地を後にした。

その後、特別攻撃隊が渡河を援護した列車に皇族の親戚筋に当たる某陸軍大将の跡取り息子が乗っていたことが判明し、あっちこっちで圧力の掛け合いやら裏取引やらがあって最終的に四人は放免されるのだが、監禁されている間ナニが行われていたのかはご想像にお任せする。

174外パラサイト:2017/01/23(月) 19:30:26 ID:lbvRe/9E0
投下終了

ttp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=61077160


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板