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SSスレ(ラノベ)6

13名無し三等陸士@F世界:2017/11/12(日) 14:59:59 ID:2k2lP0x60
掌編その七

『嬉しくなるとついやっちゃうんだ』

今日は海上自衛隊の基地で、装備品の一般公開がある。
目玉は名物の海自カレーと新型護衛艦だ。

セキュリティチェックを受けて、基地内へ……。
と、検問していた自衛官から制止の言葉がかかった。
「失礼ですが、ヴァンパイアの方ですよね」
「え?」
なおも自衛官が詰め寄ってくる。
「身分証はお持ちですか?」
「はい……」
しぶしぶ健康保険証を見せる。
「種族はヴァンパイアですね。ではあちらで防護服を着てから入場して下さい。
 防護服を着用しない場合、基地内への入場は許可できません」

自衛官の塩対応。何故ばれたのだろう。


検問所の裏では、先程ヴァンパイアを詰問していた自衛官が話をしていた。
「ふぅ、水際で防げて良かったな。この間なんて3時間狂いっぱなしだった」
「やろうと思ってやってる訳じゃ無いんだろうが、あれじゃあテロだよ」
「生体イージスシステムなんて言われてるからなぁ……」
「まあこの電子社会での行き辛さには同情するが」
「この前なんて、電車の中でスマホゲームしてたら、電車が止まったなんてあったよな」
「彼らの生態を有効活用できないものかね……」



掌編その八

『エルフ奴隷』

――とある新聞の時事記事より。

奴隷と言えば、何を思い浮かべるだろうか。
古代や中世の社会には、世界各地に奴隷が存在した。
リンカーン大統領の奴隷解放宣言を思い浮かべる方もおられるだろう。
この世界に転移した後、奴隷が公然と売買されている事に驚いた方もいるかも知れない。
何にせよ多くの日本人にとって奴隷とは遠い過去、あるいは日本国外の話と思われるだろう。

しかし最近、奴隷を買う日本人が増えているのだ。
主な購入者は富裕層の男性で、奴隷の多くはエルフ族の女性。
そして両者は結婚までしてしまう。
通常は出会いの無いエルフ女性と結婚する為に奴隷を買うのだ。
本邦の法律では、非合法な手段によって結ばれた婚姻は無効である。
誘拐や人身売買で“手に入れた”異性との結婚は、本来は無効な筈だ。

だが、そんな法の穴を突くような方法で奴隷と結婚してしまう。
手口はこうだ。
日本人購入者が奴隷商と知り合い関係を持ち、日本国内でも合法な物品を購入する。
この物品というのは日本国内でも大陸でも大して価値の無い代物だ。
そうしているうちに奴隷商から“養子”を紹介され、結婚に至る。

形式的にはお見合いあるいは自由恋愛による結婚だ。
だが実質的には、奴隷商から奴隷を買っての結婚であるのは明白。
大枚を叩いて奴隷商に貢いだ挙句に逃亡される日本人もいると聞く。
自業自得だが奴隷商を肥え太らせる行為は笑うに笑えない。

規模こそ小さいものの立派な奴隷貿易が成立してしまっている事に、
警察庁、検察庁、法務省、総務省、裁判所は違法性の啓蒙を行っている。

だが、このような問題は明確な犯罪行為に限らない。この世界の原住民への差別的で尊大な態度が目につく。
同じ日本人として嘆かわしい事だが、最近の日本人は異世界という新天地で羽目を外し過ぎではないだろうか。
およそどこに行っても日本人というだけで尊敬され、あるいは畏怖されるような環境を当然と考えていないだろうか。
そのような態度は、異世界の多くの国や地域、民族と良好な関係を築き上げた先人たちへの冒涜だと思い直して欲しい。
エルフ族という、わが国でも人権を認められた異種族の奴隷を購入する心理は、そのような心理の延長線にあるのだから。


※写真は『奴隷制にSTOP! 人身売買にNO!』デモが行われた都内の繁華街。


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