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F世界との交流その6

1 reden :2013/01/14(月) 20:24:19 ID:Gpzc7RXM0
異世界と接触して起きそうな事態を、日常のレベルから適当に
妄想してみるスレです。

エルフ〜癒しの森の音楽集〜とか、コロポックルの「ご家庭用
フキノトウパック」とか、そんなもんが売られたらどうなる
だろ。ってな感じでネタや議論・考察してみませんか?

・荒らしは華麗に異世界へ転送。
・SSでもネタカキコでもなんでもあり。
・息抜きが目的のスレなので、リアルを求めずともよし。

80 名無し三等陸士@F世界 :2016/03/30(水) 17:29:36 ID:gAbJokYQ0
  7.
 岡部の目の前で積み上げられていく金貨。
正確にはアルスベルラーヌ金貨という。アルスベルラーヌ金貨10枚で、アルスベルラーヌ大判金貨1枚の価値があるといい、アルスベラーヌ大判銀貨はアルスベラーヌ銀貨10枚分の価値があるという。それゆえに、アルスベラーヌ金貨、および銀貨には計数通貨にありがちな、金や銀の含有量と貨幣価値の一致が完全にはなされていない。
というよりは、大判金貨・銀貨で価値を保証しているのだ。金貨10枚で大判金貨1枚、銀貨10枚で大判銀貨1枚という風に。

「もともとは、我々の敵、ウニヴェルスム神聖連合帝国の経済政策によって、ここ20年ほど流通している主要通貨」
「は、はぁ……」  「いかに、敵と言えど、連合帝国の力はすさまじく、そして先進的。学ぶべきとこ、学ぶ必要ある」
すぐそばの場所で、日本が誇る官僚集団とその医師団、そしてメイド集団と近衛兵の集団がいろいろともみくちゃになっていたりするが、岡部はそれを無視して、目の前の人物に集中する。
岡部が必死に集中を切らせまいと奮闘するすぐ横で、厚生労働省所管の医官で占められる衛生班はあきらめない。
必ずしや、あの女の身体検査を成し遂げて見せる! お姫様だろうと特別扱いせず、必ずしや検疫検査を行って見せると燃えに燃えていたところで――――
――やはり、メイド集団と近衛兵集団がそれを押しとどめようとする。
特に、メイドの中でも特に目立つ銀髪に小さなサーベルを何本も腰に差している人が強烈だ。
銀髪を含めるメイド集団や近衛兵たちも自分たちの目の前で自分たちを検査することは認めても、よりによって岡部が自衛隊駐屯地に連れてきてしまった『お姫様』の検査は認めようとしない。
そう、岡部が必死に周りの官僚団たちの白い視線の中、集中しようとする人物は、ウルクゥ公国第2皇女。日本的な皇室用語でいう内親王殿下である。
いろいろあって……というよりは、現地権力者層とのコネや顔を広げようとあれこれ、動き回った結果、領主の館で出会い、領主の館に商談に毎度訪れること、ここ1か月の間に、彼女とそれなりに仲良くなってしまったのだ。
本来ならば、素晴らしい成果なのだが、ここで予想外。
なんと、皇女殿下が反対を押し切ってついてきてしまったのだ。商品を乗せた車両は商品を下したことでスペースが出来てしまったことも運のつきかもしれない。

「……ドうら、私ガ来たことデ……いろいろと大変とお見受け、、sした。私は何をすれバいいノだろう?」  
「えっと……すいません、疫病とかが船に、そして本国に持ち込まれるのを避けるために医学的な検査をしてもよろしいでしょうか?」
「そうか、わかった」  「「「!?」」」
厚生労働省が誇る新世界衛生班の努力が天に通じた瞬間であった。

81 名無し三等陸士@F世界 :2016/03/30(水) 17:32:05 ID:gAbJokYQ0
「私はそれほド、大事な身ではない。とっくに商品価値も下ガっている」  「はぁ……」
「これでも20を超えているのダ。婚姻の適齢期は過ギている。大公の地位は兄様が継グことや、次女デあることからいろいろとお目こぼしをもらっていたガ、そろそろ限界ダろう」
そう言い、検査を終えながら出てくるお姫様。

「もとは連合帝国ノ帝立魔道学院デ『導師号』を取りたかったガ、見ての通り、今や我ガ公国にとって、連合帝国は憎き敵国となってしまった。もう限界」
「何を言いますKA 殿下 あなたは公国のために日夜魔術研究に励MI――」  「よい、爺や。ここはそういうやり取りをする場デはない」
岡部としては愛想笑いを浮かべ、嵐が過ぎ去るのを待つしかない。
そもそも、何故こんなことになったのだろう。
確か、この美人さん(お姫様)に自衛隊の船や高機動車をはじめとするそれらが、『どうやって動いているのか』を手始めにタオルを『どうやってこれほど白く、たくさん生産しているのか』だったりなんだったりを延々と質問されたのが始まりだ。

「連合帝国ノ通貨ガすゴい勢いデ減っていると減ってると聞く。書記*長ガ最初、高笑いしてた。……我ガ国ノ保有金貨まデガ減った勢いには倒れたようガ」
何だろう、激しくクレームをつけられている気がする。
岡部は長谷川さんに目線を向けるが、目をそらされた。

「連合帝国ガ、新たに、アルスベルラーヌ貨幣を発光する前は、『ルチューラランス』や『ディポーンアス』といった貨幣ガ大陸デは普遍的な通貨ダった。青銅や黄銅デ作られた奴のほうが多かったこともあって、ルチューラランスの大判金貨は、我が公国の大公家でも年に数十枚程度見る程度ダったりした。
それガ、もう……『無い!』」
やっぱり、クレームをつけに来たのではないだろうか。岡部はクレーム係りになったつもりは毛頭ない。

「まっ、まぁ……牛丼でも食べましょうや。僕らの国の料理でしてね。おいしいですよ! お腹が減ってもよい話は出来ないでしょう!」
何故牛丼だと岡部は自分でも言ってて怒鳴りたくなったが、今すぐ用意できて手軽で、自腹が出来て安全なもの、すなわちレトルト食品のうち、カレーは見た目が悪い。ラーメンは下手をすればあのズーズー音が失礼に当たるかも知れない。
5分以内に用意できそうなものは電子レンジでチンな牛丼くらいしか思い浮かばなかったし、そもそもこの状況を打開したかったが故の食事である。
が、これが地雷であることに気が付いたのはメイド軍団の「テメェ殺すぞ」視線が突き刺さってから。

82 名無し三等陸士@F世界 :2016/03/30(水) 17:32:40 ID:gAbJokYQ0
「……これ、骨ガ付いていない」  「岡部。現代の様に骨が付いてない肉が当たり前になったのは第2次世界大戦後、アメリカの食文化が世界に広まる様になった結果だったりするぞ」
「長谷川さん! 気が付いていたなら言ってください!!」  「そんなこと言っても、ここに、骨付き肉なんてあるか?」
「つか、どうして骨付きじゃないとダメなんですか!?」
岡部の涙声に対し、長谷川はだって、骨がついてないとどんな肉かわからないだろと答える。
何でも、第1次世界大戦が勃発する前まで、アメリカでも骨がついてない肉は『安全が保障されていない労働者階級のゲテモノな食べ物』とされ、避けられるものだったという。
だが、1回目の大戦で、最前線に肉……つまり良質なたんぱく質を補給する手段として、アメリカは国家予算をつけて軍事研究の一つの画期的な成果を出したのだという。

「それが、『成型肉』。骨から肉を削り取って、内臓肉やくず肉をひとまとめにブロックにしたような肉だ。そして、2回目の世界大戦でアメリカは勝利した。そしてその頃には米軍の兵士として成型肉を食った連中が当たり前の用に社会に出ている。
もう、そいつらにとって、肉を選ぶ基準に骨なんて関係ないし、実際スパミーはおいしいだろ?」
「別に沖縄県民心の味とやらに興味はないので」
ともかく、そうした事情があるからこそ、現代では骨付き肉とやらにこだわる世の中ではなくなった。
だが、旧世界と違い、そうしたバックグラウンドを持たない、新世界の人間たちにとって、牛丼は明らかに骨が付いていない『安全かどうかも知らない下層民の肉』をどう扱うか。
「せめて、ソーセージ類にしとくべきだったかも……」
長谷川が思わずそういう中、
「……おいしい」
お姫様はメイド軍団の視線の中、匙でそれを本当においしそうに食べていた。
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。

「…………おかわりは?」
!?

「……研究中は格式バった食事なドあまり出来ないから」  「あはははは……」
そう笑いながら、岡部はスマホを取り出し、すごい勢いでメッセージを入力する。
いわゆるSNSという奴だ。画面に流れる無数のチャットメッセージ。
> 岡部『長谷川さん、これって、サンドイッチのレシピが売れませんかね!?』
> 長谷川『そういえば、サンドイッチ伯爵の子孫がベガスでサンドイッチ屋さんを開いているぞ。さっきのはなしじゃないが、知的財産権は大丈夫か?』
> 岡部『えっ?』
※とっくに切れてます。
※2:というか、時代的にそんなもんは最初からない。
※3:ベガスの奴は閉店した。

83 名無し三等陸士@F世界 :2016/03/30(水) 17:33:50 ID:gAbJokYQ0
「あの、で……本題は……」
「……クレーム半分見学に来た。やはり実物を見ないとドのような魔道デ動いているノか、判別デきない。それと、やっパりクレームに来たハズ」
…………ハズ?
「あの、あなた、大公家の御息女であってますよね?」  「間違いない。家は兄上ガ継ぐ、姉上はとっくに輿に乗っていった。ダから、私ガお父様ノ娘で間違いない」
……日本語を頑張ったおかげで、御領主様より話せる人であるが、それでもなんだか、隔絶したものを感じるのはなぜだろうか。
「で、クレームとは?」  「さすガに流通した金貨をまとめて持っていくような取引は少し控えてほしい。またいくらそちらにも事情ガあるとはいえ、我ガ公国の敵との取引は出来れバやめてほしい」
「は?」
流通金貨の件はわからないでもない。だが、我が公国の敵?

「また、膨大な量ノ『魔道資源』を連合帝国の商会から仕入れているようダガ、用途は?」
「い?」
「仕入れている『魔道資源』ノ内訳、私ガ把握した限り、、みたとこ……これは戦争において、よく使われる資源類。貴国、旧世界とやらデ戦争中と聞く。これは、そのためノ資源?」
いきなりなーんのお話をしているのかわからないという経験の中で苛立つ事になるのはこれが一番だ。岡部はのちにこの場面についてこう回想したという。
「これらノ資源とこれほドの量を見るに、貴国は国内デ、これらを自活出来ないのかと問いたダす必要ガあると同時に用途を聞かねばならない。そして、直ちにこれらノ資源を我ガ公国に変換し、私ノ研究ノ役に立てるべき」
「ファッ!?」
どうやら、話がきな臭い方向に進んでいるようだ。

「失礼を殿下HA 要するに敵国と膨大な魔道資源を取引するくらいなRA 時間をかけてでもこっちで用意するのDE 一度魔道資源を返還……いE 我が公国の方に引き渡してはいただけないかとというお話でSU」
「は、はぁ……」  「何しRO 戦争中ですのDE どこもかしこも魔道資源の消費量などが跳ね上がっておりまSU 我が国としてもこれ以上の価格高騰は避けたいのでSU」
「可きゅ的速やかなさしせまた理由ガないノデあれバ、我ガ国に返還をお願いする」
「殿KA 返還ではありませんYO 我々が渡したわけではないのDE」
言葉は難しいと現地語でぼやくお姫様をほっといて、岡部はスマホであれこれと連絡を取るが
(……本当に、何の話だ?)
いや、わかるのだ。おそらくは
(密輸業者……どこぞの貿易業者、あるいはヤクザやマフィア関係……)
だが、『何のために?』
王手総合商社ですら、こうして勇み足を踏んでいる新世界との交易。密輸にまともな利益が一体どれだけあるのか……?
国家のまともな支援も受けられず、ましてや国家から時に目の敵にされ、当局から追われる。
そういう状況にあるからこそ一般国民からの支持はもちろんの事、表の明るい世界では決してまともな取引が期待できない。
それでも、闇にまみれた取引の利益が得られるうちはいい。だが、闇の世界だからこそ、表の世界では起こりえない異常な価格競争や暴力の切り売りが行われ、はっきり言って長期的な利益を見込めるようなことじゃない。
それが、安定した法治国家における密輸という物だ。
最も安定とは言い難い状況では時にそうした非合法取引が国民生活を支えることとなってしまったりするのだが。
そう、たとえば第2次世界大戦後初期の混乱期において、闇市は文字通り一部の人間たちにとって生命線だったように。

「……失礼ですが、その取引者から、名刺をもらってはいませんか?」  「品詞?」

84 名無し三等陸士@F世界 :2016/03/30(水) 17:34:28 ID:gAbJokYQ0
  8.
 事務所で、彼はそれを広げていた。
羊皮紙とかいう紙は非常に使いにくいが実際、それをもらったのだから仕方ないことだ。
タングステンやプラチナ。これらの鉱物資源はある一定の文明レベルを持たないとそもそも加工すら難しく使う当てに困る鉱石だ。
そればかりか、戦争という異常状況の旧世界では、下手すれば軍事介入(という名の開戦)の口実になりかねないほどの代物だ。
何しろ、現代文明の根幹たる化学触媒や様々な最先端の軍事兵器など、様々なものや軍需品に使用される素材だからだ。
プラチナを『偽の銀』と日本語ではない言葉で書いてあるらしい羊皮紙。
そう、これは新世界との取引で手に入れたプラチナ関連の契約書。

「……やはり、正規ルートでは思うようにさばけないな……。金銀を鋳つぶしてインゴットに変えても正規の手続きで作られたインゴットではない以上、まともな業者には納品できない」
彼はため息をつくしかない。広域指定暴力団……つまりヤクザの手を借りなければまともに動かない現状に。
日本国内最王手『川花組』。そして、その『川花組』の執行政権へ反逆したことで誕生した『新撰川花組』。
その抗争はしばらく休戦中だというが、それは表向き。彼らの影響はじわじわと組織を悪い方向に傾けている。

「……立て直しの一時的な応急策の一つだったが――」
(――もう、これ以上は無理かな)

(――無理そうやな)
いかにもな、怖い顔した坊主頭の男が、部下からの報告書を見ながらそう判断する。
『黄金三角地帯(ゴールデン・トライアングル)』が合法勢力による経済的政治的軍事的攻勢を受け、徐々に衰退していた時期があった。
それは問題ない。北朝鮮の『39号室』がいる限り商品のルートは少なくとも一つ、常に確保できたし、ロシアと取引すればいいという話でもあった。
ただ、第3次世界大戦の影響で、『39号室』とまともに連絡が取れない。そもそも北朝鮮では『メタドン』という元々はモルヒネに変わる鎮静剤としてドイツが開発した麻薬が大流行しており、民衆が薬漬けで腐っていっていた。
元々外貨獲得の国策で大量の麻薬を作り続けていた為か、住民たちの麻薬に対する認識が日本人と比べると甘かったこともこの状況に拍車をかけた理由だろう。
そのためなのか、第3次世界大戦の混乱でまともに接触すら出来ないのだ。互いに燃料不足な北朝鮮軍と韓国軍の射撃ゲームの的にはされたくない事もあって、直接出向いて接触する……という事が出来ない。いや、覚悟と事前調査したうえで進めば直接接触は可能かもしれないが……。
そして、ロシア……。例のクーデターの影響なのか、取引先との連絡が取れない。
そんな状況下、その存在感が急復活してきた『黄金三角地帯(ゴールデン・トライアングル)』。だが、肝心の今までの密輸ルートが使えない。
裏社会にも第3次世界大戦や日本本土転移をめぐる地政学的変化が洪水のように押し寄せている。
彼の横で、小さな音がする。誰かがライターを使っているようだ。回転するフリントロック式の着火音。
煙草に火をつける部下を睨み付ける。変な話だが、彼は煙草が大嫌いだった。非合法な中毒物質を売りまくっている肝心の彼は酒や煙草が好きではなく、煙草に至っては激しい憎悪を感じてしまう。だが、それでもこの業界にいる限り、煙草と縁が切れることはないだろうとも思っている。
諦めだ。それでも、せっかく煙草から離れられる状況をある程度なら用意できるというのに、部下がこれでは話にならない。
彼の視線を受け、出ていく部下。起動される空気清浄器。
報告書を放り投げて出てくる溜息。溜息も清浄されりゃいいのに。
新世界に新たな『黄金三角地帯(ゴールデン・トライアングル)』を人工的に作り出すことで生産ルートを抑え、可能であればそれを新旧両世界に売りさばく……。
という壮大な夢のためにも『農場(プランテーション)』と貿易、その両方のノウハウを持つ、彼らの力がほしかったが、彼ら側が及び腰だ。

85 名無し三等陸士@F世界 :2016/03/30(水) 17:35:51 ID:gAbJokYQ0
「……ヤクってーのは、小さな組織が手を出していいもんやない……。だから、ヤクだけは売りさばかんとか、漫画任侠みたいなもんが出てくるときは出てくる……あればかりは合法非合法関係なしにあらゆる勢力と利害関係を無尽蔵に広げてしまう上に、当然お上が黙ってへん。女子供ハジキは売りさばいても言い訳することはいくらでも可能やが……ヤクはそうはいかんからな」
麻薬戦争で有名な国々の麻薬関係マフィアの重武装っぷりは平和な第3国にとってネタの領域に達しているといえるだろう。
曰く、逮捕に向かった警官たちは、その日のうちに家族が人質に取られた。
曰く、制圧しようとした警察署が、逆に制圧された。
曰く、今度こそ制圧に向かった陸軍特殊部隊が奴らの側になった。
Etc.etc...
だが、逆に言えばそれだけの武装をしないと自らの権益を守り、そしてその生存を維持できないという事でもある。
『麻薬』という物は、力を持った大組織だけが扱える代物……という事だ。

「…………あかんなぁ……」
計画はつぶしたほうがよさそうだ。新世界に人為的に『黄金三角地帯(ゴールデン・トライアングル)』を作る計画は……現地の権力機構との軋轢が現状では想定できない。
彼は報告書をシュレッターにかけながら、スマホを取り出し電話を掛ける。
そろそろ、現在進めている物品搬送が完了するころだ。あの変な『依頼』の。状況はどうなっているのだろうか?

固定電話で呼び出す。
事務所で羊皮紙を広げていた彼は、事務所の固定電話で相手を呼び出す。
新世界側から頼まれたあの案件。
『最大10日間ほど、人とモノを日本で預かってほしい。報酬は払う。10日過ぎてこちらから何も言わない場合処分してよい』
あの変な案件。最終便がそろそろ到着するはずだが、どうなっているだろうか? しかし、電話に出てこない。
おかしいな、電話に出ないなんて……

((この大事な時に、何をしている?))
離れた2人の人間の心の声が重なった。

86 名無し三等陸士@F世界 :2016/03/30(水) 17:37:38 ID:gAbJokYQ0
  9.
 警察密着取材。
こうしたTVプログラムは古今東西、それなりの人気と視聴率を確保できる。
誰だって勧善懲悪な物語が好きだ。少なくとも嫌いと言い張る人間はそう多くはない。
それどころか、こうしたTV番組で映し出される場面は本物なのだ。一定の支持層が出てこないはずがないのだ。
にもかかわらず、毎日のように放送しないのは、そもそもこれは警察の協力がないといけないという点。そして、映像映えするド派手な事件など毎日起きるわけではないからだ。
結果として年に数度の特番という形で放送される。少なくとも日本においてはそうであった。

「『移動後』と『移動前』……。今年初の放送になるな」  「ですね、先輩」
番組スタッフたちは迫る放送日に向けて本格的に編集を行っていた。とはいえ……まだまだ映像が足りない。
何故ならば今回の放送のメインディッシュがまだ取れていないのだ。
「ヤクザと取引する不正な企業グループ……!」
日本移動後初の大規模広域捜査にして厚生労働省地方厚生局麻薬取締部と財務省関税局長崎税関の職員まで参加する連合での一斉取り締まり……が行われるのだという!
おまけに支援組織として、農林水産省水産庁がかかわっているのだという。
日本国家機構がこれほどまでに勢ぞろいしている。それだけじゃない。まだまだある。
関連法を1000ほど改定してようやく通した、第3次世界大戦化していく世界に対応するべく制定された『治安維持と後方防衛作戦要員のための自治体戦力保持許可法』こと、『自治体戦力法』によって全国の都道府県が10〜100人規模の武装した特別警備員をおいている。
今回はそれの初の実戦配備である。30人規模のサブマシンガンとゴム弾を詰め込んだ上下二連式散弾銃、ガス弾、盾で武装した彼らがすぐ近くで待機している。
ひょっとしたら、機動隊の大規模な出動風景まで見られるかもしれない。

「オーラ真実教以来の、大規模操作の取材になるかもしれないぞぉー!」
さすがにそれはないのだが、取材班のテンションは天元突破なのだった。

「あれですね。捜査員たちが動いていますよ、先輩。たぶん、あれが例の最後の積荷?」  「よし、10分後、強制捜査開始や! 最高の絵が取れるぞ!」
その言葉と共に、カメラを構えて――――

「――え?」
これは何だ? 矢?
何故、矢があるのか。なぜそれが突き刺さっているのか。そして、何故――――
――自分は、倒れている?

「量や種類から推察されるに、これらノ魔道資源は主に『転移術式』に使われると思われる。このことに貴国側は何も知らないと申すか」
王女殿下のご質問。
しかし、誰もそのことには答えられない。当たり前だ、だって――――。

「踏み荒らせ、蹂躙せよ。われら『ウニヴェルスム神聖連合帝国未明征夷先遣軍団』。未知の蛮夷に我らの偉大さを見せつけ文明の光を照らせたもう!」
勢ぞろいするは、槍と剣の軍勢。
この日、九州地方全域で吹き荒れる、『同時多発テロ』は数時間と立たないうちに被害を拡大させていった。

87 そらのいくさ第1部 第1章 :2016/03/30(水) 17:42:33 ID:gAbJokYQ0
第1章「スタンド・オフ・ディスフェンサー ――202X.08前編」
はこれで終了と言う事になります。

第2章では、時計の針を戻して、第1章のような状況が成立するまでの間に行われた様々な事柄を取り上げた前編と
(まぁ、1章ラストの急展開を強引にでも成立させるための言い訳回的な?)
第1章ラストの状況が発生した事で巻き起こる各所の大混乱の後編……の前後編? を思わせる構造のお話となっています。

自衛隊の活躍は……えーと……第3章に出番がちょっとで……うん本格反攻が第4章なので、第4章をお待ちください!
以上です。

88 名無し三等陸士@F世界 :2016/04/08(金) 01:49:56 ID:gAbJokYQ0
そらのいくさ 第1部:からっぽのたたかい
第2章 「ウォールアイ ――202X.09後編」

今度に日曜日に投下しまーす

89 名無し三等陸士@F世界 :2016/04/08(金) 11:31:25 ID:tk6H77NE0
乙です。

90 そらのいくさ第1部 第2章 :2016/04/10(日) 23:40:11 ID:gAbJokYQ0
やっべ、そろそろ今日が終りそう。

そらのいくさ第1部 第2章「ウォールアイ ――202X.09後編」
の投下を始めまーす。

91 そらのいくさ第1部 第2章 :2016/04/10(日) 23:40:50 ID:gAbJokYQ0

  そらのいくさ
  第2章 「ウォールアイ ――202X.09後編」

  1.
 ウルクゥ公国軍には大きな問題点がいくつも存在する。
たとえば、補給組織がないといった点。そもそも地球におけるヨーロッパの中世では、補給という行為に重大な意義を見出した者たちは実に少ない。
プロイセンのフリードリッヒ大王が大国、オーストリア帝国やフランスと戦えたのはイギリスの支援もそうだが、それ以上に彼が、近代的な補給組織と制度を構築したからといえる。
それまでの、補給制度は各地の街に蓄えられた倉庫から運び出したり、御用商人がその場その場で買い集めたり、民間の商業業者の隊列を流用というものだった。
こうすれば、前線を進む軍勢にわざわざ補給用の大部隊を用意する手間がいらないし、そもそも、略奪したり、商人を引き連れ、兵隊を並べたうえで小銭を使って進むのが当たり前の時代だ。
相手の街に入れば、兵隊用の倉庫がある。もしくは味方の町に入れば味方用の兵隊用倉庫がある。そこに兵糧は蓄えられているはずで――。
ローマ帝国の歩兵が全部工兵かといいたくなるほどの高度な土木技術をもち、最前線を突き進む兵士たちの最大の任務が道路建設だったり、その道路をまた敵地侵攻軍第2陣が補強して、第3陣という名の大規模な補給部隊が道路を走って――というのからだいぶ退化したものである。
だが、フリードリッヒ大王はそこまでのものではないが、大規模な補給部隊とその効率運用をローマ帝国崩壊以後のヨーロッパ世界において最初に確立させたといえなくもない。
そして、それと同じことが起きようとしていた。いや、すでに起きていたのである。
ウニヴェルスム神聖連合帝国4人の竜王。
『火の竜王(イグニス)』 『水の竜王(アクア)』 『土の竜王(テッラ)』 『風の竜王(ウェントス)』
その一人、謀略王『火の竜王(イグニス)』。彼は有り余るウニヴェルスム神聖連合帝国の国力を使い、効果的、効率的な補給制度と補給部隊を配置、旧来の貴族たちと徴兵された農民たち、そして傭兵という名の山賊どもからなる貴族軍を上回る文字通りの『国軍』を創設した。
もちろん、以前からウニヴェルスム神聖連合帝国には国軍組織が存在した。何しろその始まりは当時の軍事超大国『空の帝国(カウエル)』の第1次大陸統一戦争において、4つの大国が手を結んだ軍事同盟がもとになった連合国家である。
だが、それも長い歴史とともに形骸化していく。そもそもウニヴェルスム神聖連合帝国の現在の政治体制は封建制で、地球の歴史でいう『神聖ローマ帝国』の様な存在である。
選帝侯たちが強い権力を握り、歴代の皇帝たちはその権限を弱らせていた。
4か国の王統、皇統と有力な大諸侯や竜王たちから構成される選帝侯は、お互いの中から、誰が一番皇帝にふさわしいのかを判断する。
皇帝になれるのは選帝侯の身分を持っているものであり、選帝侯たちによって選ばれたもののみ。
それが、ウニヴェルスム神聖連合帝国の帝位。
にも関わらず、選帝侯にして、竜王イグニスは圧倒的な権力者として君臨する。数多の政敵を駆逐し、自らの閥を作り、派閥内部で無数の政略結婚を仲人という形で結びつける形で派閥の力と結束を強化し、時に、別の派閥に恩を売り、政略結婚を仲人し……。
いつしか、軍権はイグニスに掌握され、連合帝国内部の最大の商会が掌握され、連合帝国の帝位を持つものが彼の閥の一員になり、今日、この日がある。
だが、そんなことウルクゥ公国軍の人間にとっては知ったこっちゃないという奴だ。
精々、イグニスという男のせいで、ただでさえ巨大だった連合帝国がより進化し挙句の果てに大陸統一というバカバカしい大義名分を掲げて、東進、西進、南進をしているという事だ。
やるべきことはただ一つ。

92 名無し三等陸士@F世界 :2016/04/10(日) 23:41:43 ID:gAbJokYQ0
「命に従い、連合帝国に立ち向かう! ……事が出来そうな奴らはどれくらい確保できそう?」  「はい、ランスが200を超えればいいほうかと!」
封建制社会万歳。国家なんぞクソくらえ、自分大好き自己中万歳。
そんなのがある意味当たり前の時代である。国家の危機とやらで立ち向かう正義の兵士たちを確保することから公国軍にとっては戦いであった。
ちなみにランスとは、西欧封建制社会で用いられてきた軍事単位だ。似たような単位がこの世界にもあるらしい。
騎馬1つに対し、2〜5の武装従者が引っ付いている状態をランスと呼び、このランスをいくつ確保できるかがウルクゥ公国にとって勝負の分かれ目であった。
なお、鎌倉時代から戦国時代初期にかけての日本においても似たような単位が存在しており、これを「一騎」と評した。
一騎打ちなどと呼ぶ言葉は言ってみれば一対一の勝負とかではなく、最小の軍事単位たる、騎馬1、武装従者2〜5の激突の事を言うのであり、たった1人同士がぶつかるわけではない。
まぁ、一騎という単位はたいていの場合、一個の「家」単位でぶつかるわけだから、ある意味では一対一なのだが。

「とまぁ、こんな感じですね」
通訳から説明され、てんてこ舞いの公国軍人たちの風景を見た新世界に派遣された自衛官、坂上は思わずつぶやく。

「……で、俺にどうしろっていうのよ」
所詮はただの陸士長に何を求めているのだろうか。
商社の岡部がこっちを見ている。

「プロの視点からいろいろとみてこっちの質問に答えてほしくてですね」  「あの、自衛官だからって戦略単位の事があれこれわかるわけじゃないんですよ!? 幹部でもないし!」
「それでも、所詮はただの民間人に過ぎない俺よりは見方を知っているだろ? どこに注目とか、あれはたぶんこういう事だろうとか。俺がほしいのはそこらへんなんだよ」
「だとしても、俺に言えることは、一つです。こいつら、たぶん使えません」
近代国民国家の軍人と、封建制社会の騎士たち。
『基礎戦略・戦闘教義(ドクトリン)』どころか、何もかも根本から土台が違う。
武器も心構えも、そして、戦術から戦闘の仕方まで何から何まで。
戦列歩兵が当たり前時代の人間に、そんなものは無意味だ、散開しろと言ったところで耳を貸すはずがない。何故ならば戦列歩兵にするだけの理由がその時代にはあるから。
どんなドクトリンにもその成立には必然的かつ合理的な理由がある。
ましてや、銃のないのが当たり前だった人々だ。彼らの戦い方には彼らなりの必然性と合理的理由がある。
それを無視して、動いたところで、膨大な時間と資源のロスであり、大量出血以外の結果が出るはずもない。
だから――

93 名無し三等陸士@F世界 :2016/04/10(日) 23:42:22 ID:gAbJokYQ0
「――――何をどう考えても、こいつらと俺たちは違う。無理やり混ぜようとしたら大流血だ。使い物にならない」
その結論に行きつくのだ。

「ですけど、彼らも一応軍人ですよ? 助言とか」  「そんなのは無理です」
陸士長、坂上は己が持つライフル、89式小銃を簡単に掲げる。

「たとえば、こいつには弾倉という技術が使われています。薬莢が使われています。セミオートが出来て、フルオートが使えます。有効射程は100メートルを超えます。万が一に備えて突撃できるナイフ、銃剣が付けられます。ライフルグレネードが使えます」
続いて、現地の言葉でごめんなさいと一言言いながら、そばに騎士たちがおいている短剣を手に取る。

「こいつのは切ることができます。叩くことができます。打つことができます、投函することができます」
そして、ライフルと短剣を一度手放し、テーブルに両者をおく。

「俺に、短剣は使えません。何故ならばそのための訓練も受けてなければ技も見たことない。そして、それはここの人たちにとっての小銃がそうです。俺は小銃を使うための訓練を受けている。小銃をどうやれば使い物になる武器になるか、そういう訓練を日常的に受けているし、今や映画とかでも匍匐前進で進むシーンとかは普通に出てくる。
一般人でさえ、形だけでも見たことはある……。でも、ここの人たちにはそういうのがない。そして、その逆で俺たちも短剣を持った相手にどうすればいいかなんか知らない。精々、必死に引き金を引くことだけ。
つまり、俺たちはライフルで戦う事を前提に訓練を受け、敵もまた同種の武器を使う事を前提に戦術を組み立てる……教育を受けた。彼らは彼らで短剣で戦うことが前提の訓練に戦術の中で……生きてきたんです。そもそも、俺は剣を持った相手に戦う方法を知りません」

「えっ、剣で銃を相手なんて――――」  「――その剣を持った相手に、明治政府軍は一度敗退したんですぞ? 西南戦争と日露戦争で」
突然会話に参加してきた男の名は、石川というとある大学で政治学を教える准教授だ。
新世界の政治構造や政体研究のために高名なとある教授先生がねじ込んだといわれる悪名高い人だ。

「岡部さん探してましたよ」  「えっ、あっ、はい。ごめんなさい。で、その……剣を持った相手にって……」
「……よく、大日本帝国陸軍を現した話で、銃剣突撃万歳な連中という話がありますでしょう? あれって、帝国陸軍にとっては必然的かつ合理的、そしてそれ以上に選択肢がないという結果なんですよ。そう――――たとえば、日露戦争で、帝国陸軍はロシア軍の『銃剣突撃』で文字通り壊走寸前まで追い詰められたことが何度かあるというトラウマがあるんですよね」
「はい!?」  
「銃の性能の問題もあるが、それ以前に西南戦争で反乱を起こした侍たちの突撃に徴兵されたばかりの兵士たちは簡単に戦線を維持できなくなった……。まぁ、もちろん、そういう事が今の陸自に起こるとは思えないけど……。その陸自の『性能』や『特性』を異文化・別文明の人間に当たり前のように求めるのは違うんじゃないかねぇ」
石川の言葉。
仮にも准教授を名乗るのだから、少なくともあからさまな嘘ではないのだろうなと思いながら、岡部は考える。
つまるところ、色々と違いすぎて、お互いお互いが使えない。
(今はよくても将来、ウルクゥ公国を拠点に新世界の新大陸への商圏大進出が始まったとき、この違いは困ったことにならないか?)
もっと言えば、公国の敵、連合帝国相手に公国は戦いになるのだろうか?
正直言った話、公国の主権とやらはともかくとして、連合帝国と反連合帝国同盟の戦争とやらの結果には全く興味がない。
新世界の遅れた国同士勝手にやってろというのが基本スタンスである。何しろ、旧世界事情というまさに別世界の事情があるのだから。
つまり、新世界とやらには旧世界の核攻撃から守ってくれたことは感謝するが、それだけであり、壮大な邪魔者に過ぎない。
少なくとも今現在は。というのが、基本的なスタンスである。
だが、その後は? 旧世界の騒乱が終わり、日本の状況が安定化したらどうなるか。新世界は文字通りフロンティアだ。

94 名無し三等陸士@F世界 :2016/04/10(日) 23:43:27 ID:gAbJokYQ0
「ところで、岡部さん。ちょっとだけ、付き合ってもらえます?」 
岡部と石川が場所を少し離れ、石川が懐に手を入れて「はぁ……」と、あからさまに溜息をつき、あと2本しか入っていない煙草を取り出す。

「……今更でしょうけど、禁煙……したほうがいいんじゃないですか? 今、とんでもない値段でしょ?」
移動現象とも呼ばれる新世界への転移によって価格が暴落したり以上に高騰したものは数多い。特にそういった値段の乱効果の直撃を受けた代表格は各種嗜好品だろう。
特に、禁煙や分煙が進み各種規制や税金がかけられた煙草はすさまじいスピードでその直撃を食らった。

「ニコチンガムさえ、数が足りてないの……。このままだと煙草欲しさにいろいろとやらかしそうでよ……」
石川の弱った表情。おっさんの本当に弱った表情は正直気持ちいいものではないので、若者日本男性岡部としては、早く話を進めてほしいところである。
とはいえ、煙草について話題を振ったのは自分であるため、はっきり言ってその手の批評は的がずれているといえるだろう。

「それで、話とはなんでしょうか?」  
「んー。新世界の主流政体についての研究をしているんだが、ウルクゥ公国のお姫様に聞きたいこと……というかそっちにお願いしたいことがあるんだ。お前さん、お姫様と仲がいいんだって?」
家系図から、公国の独立に関する正確な歴史書などなどの注文。

「あとは、こっちの世界で高名な政治、歴史、経済学者の皆様を2、3人ほど」
それが、石川の望み。

「別にいいですけど、具体的に何を研究しているんです? それによっては集める資料の性質とか違ってきません?」
「んー? 比較制度……比較政治学って言う分野の研究だよ。だからこの新世界の新大陸……えーと暫定呼称ゴンドワナだっけ? この大陸の政治制度に関する代物なら何でもいいぞ」
「……はぁ……そういう事を研究なさって……そういえば、一ついいですか?」
ちょうどいいので、岡部は彼にいろいろな事を聞く。気が付けば一つのはずが二つ、三つと四つと増えていく。
旧世界勢力の進出がこの世界に与える影響から、商圏拡大の際に最大の問題点。
そして、旧世界と新世界の……もしもの衝突。

「基本は旧世界側の圧勝とみていいだろう。戦闘だけに限定すれば」  「つまり、戦闘以外なら圧勝にはならないと?」
「我々はこちらの世界について、何も知らな過ぎるという事ですよ。今のところわかっているのは火薬のない14世紀中世ヨーロッパを思わせる世界観をしている新大陸があるという事だけ。それに本当に火薬がないのか確証はどこにもない。
おまけに、我々はこの世界の生態系について何も知らない。確かに人口規模でいえば旧世界のほうが大きいがゆえに様々な病原体を持っているのは旧世界サイドと言えるだろうさ」
そのうえでと一言だけと前置きして――――

95 名無し三等陸士@F世界 :2016/04/10(日) 23:44:08 ID:gAbJokYQ0
「――――エイズの様な病気は人が今までいなかった自然いっぱいの空間を開発した結果人に広まったんだぞ」
人はいまだ、エイズの特効薬を作れてはいない。治療薬は作れても、ほぼ確実にエイズを完治出来るような方法や薬剤はまだ見つけていない。
石川が、煙草の火を消して、大事そうにまたとっておくのを見ながらも岡部は、石川のセリフがなぜか強く心に響く自分に驚いていた。
自分たちは新世界について、知ってることは少ないのだと。
そんなこんなで、 岡部たちがあれこれ悩んでいる中、一人の美女が自室でお茶をたしなんでいた。
まぁ、美女というよりは少女に近いのは彼女の体系の問題として、ここはわきに置いておこう。
ちなみにこのお茶は日本側がお近づきのしるしに渡した嗜好品(本国では超貴重品になりつつある)である。
紅茶らしきものもあることはあるのだが、本家本元の王族(正確にはウルクゥ公国の支配階級氏族である大公家)は絶対に飲むことはない。
誰が、馬糞や人糞、藁で水増しされた紅茶(笑)を飲むというのだろうか。
ちなみにこのことを石川が知ったら、「そんなとこまで旧世界の中世か!」と叫んだだろう。
中世期から近世にかけて、ヨーロッパで出回った紅茶とやらは商売人たちがいろいろ混ぜ込んで水増ししたものである。
なお、現代人が飲むことは断じてお勧めできない。
そんなわけで、日本から供給された正真正銘の高級茶葉は今や王族ご用達(なお、供給量と友好関係からウルクゥ公国に限る)である。
そして、彼女は贅沢にもそれをふんだんに使っていた。
彼女宛に、送る人がいたからである――例えば、賄賂もどき間隔で岡部が自腹で出すとか――。

「大河ベルトレスを利用した運河河川交易とゴンドワナ多島海との中継貿易……公国はそれで成り立っている」
彼女が思い浮かべるのは、日本との取引で得られる『損失』の事。

「にほんとの取引は考えなおすべきかもしれない」
正直言った話、日本はやたら『食料』にこだわって請求する。それでいて、いざ食料取引となれば途端に要求したものと違うだの水準がどうのこうの規格外だのうるさいのだ。
それどころか、最近は魔道資源を大量に買いあさってる日本人が出没している。
確かに日本がもたらすものは非常に高価に売れる素晴らしいものばかりだ……今が戦時でなければ。
戦時の時、食料は黄金よりも誰もがほしがるものだ。
それを望む日本は戦争でもしているのだろうか? だが、特に彼らの言う『旧世界』なる空想の様なお話は意味がよくわからない。
奇しくも、この時、岡部とお姫様は同一の結論を出さざる得なかった。
『世界のごたごたが収まるまではお互い、不用意な接触はただの邪魔者に過ぎない』と。
とはいえ、日本との取引において気が付いたことがあった。
彼らは高度な度量法を持ち、さらには統一単位でもって商品を製造、販売しているという事実だ。 
それに関する技術は間違いなくウルクゥ公国の将来の……そして、今の戦時の補給体制完備に重要な事だ。問題なのは

「……どうすれば、原器を分けてもらえるだろうか?」
お姫様がそんなことを考えているとはつゆ知らず、そこから数百メートルほど離れた場所で、岡部は庭園のきれいな花々を見る。
そして、一言。

「……そういえば、この花の名前一つ、何も知らないんだな」
花の種……はすでに確保している。重要な『遺伝子資源』だ。だが、安易に持ち帰っていいものでもない。
何らかの形で、話を公国側とつけておかねば、後々面倒なことになる可能性はいくらでもある。
けれども、公国側はこのことを説明されても認識できるだろうか? 理解できるだろうか。
そこら辺の話をきちんと詰めないといずれ旧世界の騒乱が終了し、旧世界資本が大量に入ってくれば大いなる面倒事になるだろう。
長谷川に言われたあの言葉が、そして石川との会話で得られた話が……岡部に新世界交易のめんどくささを広げていた。

96 名無し三等陸士@F世界 :2016/04/10(日) 23:44:40 ID:gAbJokYQ0
  2.
 旧世界の日本新列島にて、一つの観測所から2人の人物が出てきた。2人はいわゆる制服自衛官。ほとんど開発の進んでいない領域に建てられた気象観測所という名称の――『自衛隊情報本部(D.I.H.)』の支部がここだった。
シギントと呼ばれる偵察衛星をはじめとする電子的偵察手段やらなんやらは旧世界で無いと行えない。
それゆえに公安調査庁や公安警察と違い、DIHは新世界に居場所がない。故に彼らが求めた活路は旧世界での諜報活動(インテリジェンス)だった。
何しろ、軍隊とは究極の官僚機構といった側面がある。いかに憲法解釈で軍隊ではないと言い張っても諸外国から見れば自衛隊は立派な軍隊だ。
むろん軍隊ではないという方便のために自衛隊は厳密には軍隊といいにくいいくつかの組織的欠陥を抱えていると見える人もいたりするが、そういうのを抜いても戦車に戦闘機、軍艦を運用し非常時には真っ先に動員される彼らを軍人と外の人間たちが見るのはある種あたりまえかもしれない。
DIHはその自衛隊の一部機関であり、アメリカ合衆国でいうNSAである。ただ、本場のNSAが実は何をやっているのかよくわからない組織であるように、DIHも徐々にその傾向を帯び始めている。
特に転移以降は。
もともと国内防諜に特化していた公安調査庁――北朝鮮関連は除くが――や公安警察と違い、DIHは積極的に、そう、物理的に国境線を超えようと動き始めているのである。
…………とまぁ、ここまでは真面目な話なのだが

「やはり、潜入部隊の名称は『FOX』で!」  「ゲーオタが……ここは007に決まってるだろ……」
建物から出てきた2人の制服自衛官の話なんぞこんなものだ。
真面目な話なのか、それとも自衛隊に蔓延る謎の流行病『OTAKU化』の影響なのか……。
さらにはこの2人の後姿を見ながら建物の中に入っていく一人の左官クラスの自衛官は

「馬鹿者が……ダイスに決まってるだろ」
……ゲーオタ、イギリス映画オタの次は小説、あるいは特定の小説作者オタの登場である。
だが、そんな2人の会話も徐々に真面目方面に行くにつれて声が小さくなっていく。曰く
『新世界で妙な電波を発見した』  『新世界ではUFOの目撃情報が相次いでいる』
『そして、それらは全部事実である』

「……だが、新世界には電波を使う文明なんてないんだろ?」  「無線なんか知らない国が圧倒的だ。少なくとも報告書にはそう書いてある」
「じゃぁ、どういう事だ?」  「公安調査庁やら警察やらは……正直、何もしないようだ。どうも、それどころじゃないという事らしい」
「なるほど……」
だから、DIHが介入する。官僚組織において、優秀な官僚とは多くの予算をぶんどってくる人間の事だ。これに官僚組織特有の組織病、『セクショナリズム』が結びついた結果縦割り行政だの無駄な出費だのが行われる。
かつての旧帝国陸軍と海軍が同じ兵器に対して別々にライセンス生産の料金を払うように。
むろん、縦割り行政は悪だとは言ってはいけない。ただ、問題が多い事が多いという話であり、縦割り行政が時に人を助け守る役割を果たすこともある。
たとえばの話、市立病院と県立病院。同じ地域に2つの病院。これは代表的な縦割り行政である。
縦割り行政=悪であると断罪するならば、どちらかの病院を閉鎖するのが予算的に善であるはずだ。
だが、患者にとって、そして地域にとって、病院が減るという事はいいことだろうか? そりゃぁ、多すぎるのは問題だろうが、安易に減らせばいいものだろうか。
とはいえ、まさにそれが発揮されようとしている。
『公安がやらないのなら』  『我々がやる』
『仕事が増えることはいいことだ』  『何故なら予算が取れるから』
DIHは旧世界どころか新世界にも一定のプレゼンスを発揮しようとしつつある状況だった。最悪なことに日本の新たな統合インテリジェンス・コミュニティーである『日本内閣府国防戦略情報庁(N.I.N.Ja)』の設立がDIHの巨大化に一役買っているという笑えない話がこれに追加されている。
縦割り行政とセクショナリズムの競争相手が増えたのだ。

97 名無し三等陸士@F世界 :2016/04/10(日) 23:45:47 ID:gAbJokYQ0
「で、どうすんだ?」  「うちの課長は……エス連中を使って新世界の新大陸に上陸させて、電波の発信源を特定するべきだといってるよ」
「そっちではそうか……こっちでは、E-767を新世界で使って、電波送信言を特定するべきだとよ」
どちらも自衛隊の誇る能力を使おうとしている事がいえる。
そんな2人の話をパラボラアンテナの様な集音マイクを用いて聴く者たちが――。
……実のところ、日本のおける情報組織というのはいくつも存在する。
組織規模的かつ能力的に関して公安調査庁と公安警察が二本柱として君臨しているが、その上で別組織として次の組織が存在する。
それが――いわゆる内調、内閣情報調査室と呼ばれる組織だ。
日本における公式上の『情報機関』の総元締め。それが内調の立場である。
内調に情報を上げる部署・機関という意味では日本にはこれって、意外と多くない? と言いたくなる程度には優秀な情報組織が無数に存在する。
例えば、IAS(外務省・国際情報統括官統率組織)を近年拡大再編した『外務省・国際情報統括本部(I.A.S.S. 通称:「国情」)』、そして形式上警備警察に属する公安警察。
自衛隊情報保全隊という『影の部隊』などとたたかれた米軍CIC(ガーゲット機関)由来の自衛隊公安組織。
公安調査庁に『自衛隊情報本部(D.I.H.)』。そして、陸自情報部と別班や中央情報隊、海自情報部に空自情報部。
そして、それぞれの組織内に無数の部署、部局が控えている。
諜報の世界で有名なイスラエルが『モサド』、『IDI』、『ISA』の3つでほぼ統一・統合されている事とかを考えると一丁前に組織と人員をそろえた十分にそろえた情報大国である。
であるはずだ……でも、現実は?
内調は日本の情報組織の元締めであり、でも、元締めとしては予算及び人員が足りておらず、また警察関係者の人事上の独断場。
国情はDIHによる介入行動を危険視している。外事課警察からすれば同組織である公安警察以外で対外諜報を担う組織は全部組織の敵というような価値観がどこかにあってもおかしくはない。
ここら辺のセクショナリズム前回なのが日本の組織の特徴なのかもしれない。
だが、それが常に悪いことではない、セクショナリズムが健全な競争の範囲、あるいは互いの暴走阻止のための監視活動に従事するのなら問題はない。
何しろ、諜報部隊やら情報機関が絶賛本気大暴走を始めれば、誰も止めようがない。政治家に止められるだろうか? 官僚になら止められるのだろうか?
最終的には権限を持った政治家の指揮のもと、官僚によって勝利が飾られるかもしれない。だが、逆に言えばそういう状況が作られなければ勝利は出来ないのではないだろうか?
予算などでいう事を聞かせるったって、限度はある。諜報機関がもしも、法律も組織の枠組みも何もかも無視すれば終わりだ。
だから、競争させる。諜報機関同士で監視させる。諜報機関だろうが軍隊だろうが結局は官僚機構だ。
その官僚機構の暴走を防ぐ最善の手立ては同じ官僚機構と競争させ、監視させればいい。
だから、セクショナリズムは絶対に無くならない。

「ゼロはどうなっている?」  「イズの連中のほうが今じゃ支配的になってきてるよ」
「クソッ、つかえねーな。俺らは、ゼロの方にはコネがあるが、イズの連中には正直なんもないからなぁ……」  
とはいえ、セクショナリズム全快でそれぞれの組織・機関、部署や部局が分断され重要情報の共有化がなされなければそれはそれで大きな無駄とトラブルしか招かない。
だから現場で、あるいは幹部級で、非公式な横の繋がりが生まれることがある。 
こうした横の繋がりが上下左右あらゆる方面に伸びて、一塊のグループになったとき、それは一種の『秘密結社』の様な集団となる。
日本における情報系の公的秘密結社……その一つ『ゼロ』。
母体は、公安警察……正確には警視庁警備部警察と警視庁公安部、そして都道府県警察警備部に属する警察官僚たちの秘密の指揮系統だ。
秘密の任務とかをする際、表だった指揮系統を使うのは、出来れば避けたいという人間的な欲求と、すべてを記録に残す官僚機構最大の特徴にして短所長所を避けようとすればそうするのが一番だ。通常とは違う秘密の指揮系統を構築することが。
そして、通常とは違う秘密の指揮系統だからこそ、時に組織や部署の垣根を超えることがある。
そうして出来上がったのが『ゼロ』。
もっとも、時に組織や部署の垣根を超えるといっても、完全には超えられないのが、秘密のつながりの限界点。
ましてや、世代が変われば世代交代を組織全体で図らねば、新勢力に取って代わる。いや、そうなりかねない。
そうして、再び公安警察内部の警察官僚たちを母体として出来上がった新世代の新勢力、それが『イズ』だ。

98 名無し三等陸士@F世界 :2016/04/10(日) 23:46:25 ID:gAbJokYQ0
「ゼロ連中はもう頼りになりそうにないなぁ……」  
「だが、イズは正直俺らが望むような連中じゃないぞ? ゼロは良くも悪くも国内防諜専門だが、イズは政治家共の権力闘争用に作られた連中だ」
ゼロは良くも悪くも国内防諜のための秘密の指揮系統が始まりであり、ある意味国防を最優先目標として生まれたつながりだ。
けれど、イズはそういうのとは別だ。
元々は政治家の周辺を調査し、場合によっては政治家を守るために動く部署の人間たちが中心になって出来た組織だ。
そう、何時しか政治家の動きを監視する組織へと変化した。
理由は簡単。政治家の情報を握るという事がどれだけ大きなことが出来る様になるか……。
そして、それを一番欲する人間もまた、政治家であるという事と、官僚とは政治家に使われる存在であること。
政権与党の政治家たちはそうやって『 』に求める。権力闘争において自らが有利に働く情報の収集と分析を。
当然苦しめられた野党、あるいは敵対派閥の政治家たちは逆の立場になれば、『 』への復讐を考えて――――逆に彼らを利用することを優先する。
政治家ならば、有益なほうを選ばなければならないから。
それは、政治屋でも然り。
こうして、時間が過ぎて――『 』は『イズ』と呼ばれる組織となった。
言ってみればそう、こういう簡素な事実。
『ゼロ』は国防の盾。
『イズ』は権力闘争の刃。
「イズは俺たちの目的とはずれている……そして、ゼロはかつてと違ってその力を弱らせている」  「役立たずが……」
「やっぱり、俺らが……DIHとして最初から最後まで全部やるのが一番か」
我らは護国の担い手。国民の生命と財産を守りし守護者の任を与えられしもの。  
やらぬというのなら我らがやる――――やれば、仕事になる。仕事は出世と給与となる。
いびつな使命感と野心。

「――お前らがそうやって、偉い顔してやれるのも今のうちだぜ……」
小さなつぶやき声。
集音マイクで集められたこれらの会話音声を集める人間たちの一人がそうつぶやく。
彼らの名前は――――『法務省外局公安調査庁・調査第1部』

「公調ごときが、偉そうに動いてんじゃねーよ」
公安調査庁のこの動きを完全に把握するもう一つの組織が存在した。
公安調査庁が使う暗号回線を完全に解読し、そのまま盗聴しているのだ。
彼らはこう呼ばれている。
――『警察庁警視庁公安部・公安第2課第8係』……通称『マルジ』と。

99 そらのいくさ第1部 第2章 :2016/04/10(日) 23:47:48 ID:gAbJokYQ0

連投規制的な物が怖いので、続きは明日!
明日で第2章は全部投下終わりたいと思いまーす

100 名無し三等陸士@F世界 :2016/04/11(月) 23:47:35 ID:gAbJokYQ0
すいません
そらのいくさ 第2章続き

投下遅れそうです。明日の10時半ごろに投下する事で時間をずらさせてください

101 名無し三等陸士@F世界 :2016/04/13(水) 00:59:30 ID:gAbJokYQ0
やっべ、寝るまでが今日だよ! と言う超理論を駆使させてもらおう!

そらのいくさ 第2章続き投下します。

102 名無し三等陸士@F世界 :2016/04/13(水) 01:00:15 ID:gAbJokYQ0

  3.
 およそ1か月半もの期間。連合帝国の進撃は停止されている。
岡部はそう聞いていた。

「…………」  
最前線が見てみたい。そう公国の役人に言ったところ、条件付きでそれが認められることになったのだ。

「ウニヴェルスム神聖連合帝国という国は、ゴンドワナ大陸において、最大ノ存在。
非常に発達しており経済も軍事も政治も進んでいる……。我らはそれを見習わなけれバ連合帝国に文字道理飲み込まれかねない」
だが、まさか、例のお姫様がついてくるとは全く思ってもおらず、自衛隊の護衛分隊でも頭を抱える。

「連合帝国を学ビ、連合帝国に対抗する姿勢を作らねバならない」
連合帝国が大陸を統一するべく始めた大戦争は、東西南北あらゆる領域へと大軍を進めることになった。
普通に考えれば、二正面作戦ってレベルじゃないこの戦争だが、連合帝国の圧倒的な国力とそして国力に似合わないほど慎重な姿勢と先進性でもって次々と小国や、軍事大国を名乗った国々が飲み込まれていっているのが、実情だ。
何しろ、戦争が始まって2年がたつというのに、国力に合わないほど牛歩の歩みでしか進軍しないのだ。
一応地域などに進軍速度が由来するようだが、西方では比較的に破竹の勢いで進撃しているのに対し、当方では非常に歩みが遅い。
最もゆっくりと、だが、確実に大陸を飲み込もうとしている。
だからこそ、ウルクゥ公国の様な小さな国がまだ、飲み込まれずにいる。
一応、ヴァルハレンの残骸がウルクゥ侵攻の障害物になっているのも理由だろう。

「かつて、『非公式』ノ大国であったヴァルハレン王国ガ王位継承をめグって割れに割れてしまった。その時ノドさくさに紛れていろいろな国ガ独立していったガ、我ガウルクゥもそんな1国に数えられる。元ヴァルハレン王国ノ領土だった分離独立地域。
そして、ヴァルハレン王国の継承国家を名乗る勢力が2つ、今も激しくやりあっている。それが王政ヴァルハレンと王政アジシアの2勢力」
(――『非公式』の大国?)
岡部が、お姫様の言葉に違和感を覚える。大国に公式も非公式もあるものだろうか。
ともあれ、王政ヴァルハレンと王政アジシアの2つの勢力は、ヴァルハレン王国の残骸として周辺諸国に知られており、この2つの勢力が連合帝国によるウルクゥ侵攻への最大の障害物として機能している。
要するに、緩衝地帯となっているのだ。 
ちなみに「なんとか王国」ではなく「王政なんとか」なのは、この新世界(というよりゴンドワナ大陸?)の流儀では、国家承認が降りていないが、君主制っぽい「何か」の事をそう呼ぶのだ。
それゆえに、つい最近まで日本もまた「王政にほん」とかあるいは「帝政にーほん」、「評議ニホン」とか呼ばれていたりした。
なお、これらの事を考えると、かつて大国として名をはせたらしい、ヴァルハレン王国の継承国家を名乗る2つの国家は周辺諸国から国として認められていないかわいそうな勢力。 
かつての大国がこのありさま……という事になる。悲しいものだ。祇園精舎のかねの……何たらという奴である。

「あれが……大河ベルトレスですか? 都市の近くで見た奴とは違うな……」
岡部たちの目の前に広がるのはまるで湖を思わせるほど、巨大な川。
同時に巨大な森林地帯に囲まれたそれはまるでアマゾン川の様に見える。
これが、大河ベルトレス。
無数の支流があり、ゴンドワナ大陸北東部における巨大な自然運河。
当然それは、ウルクゥ公国の領域外のほうがはるかに巨大な広がりを見せている。

103 名無し三等陸士@F世界 :2016/04/13(水) 01:00:48 ID:gAbJokYQ0
「ウルクゥは、こノ大河ベルトレスとゴンドワナ多島海、そして南部ノ大河トラフィックを利用した河川交易、運河貿易なドで反映している。
それゆえに、騎士こそ少ないガ、それなりに信用の出来る海賊衆を連れている」

「か、海賊衆!?」  「……ああ、いわゆる水軍の事か……。ちゃんとした近代海軍が整えられる前の状態ってわけね」 
海賊という言葉に大げさに反応した岡部に対して、なんだかんだでベテランの商社マンである長谷川は今の会話だけでウルクゥの戦況や状況を把握する。
おそらく、連合帝国は大河ベルトレスの大部分のエリアを制圧しているわけではないのだろう。
大河ベルトレスは巨大な運河でありながら、ウルクゥを守る海の防壁の役割を果たしているのだ。
連合帝国がウルクゥを侵攻するにはベルトレスを越えねばならない。ベルトレスの支流は無数にあり、その支流の一つがウルクゥ公国の首都へとつながっていたり、あるいはウルクゥ公国の沿岸部の港町、スタッフラーズ半島にあるバーミンガム(なお、日本側拠点がある)近くへとつながっているのだ。
こうした無数の支流は置いておくにせよ、本流と呼べる巨大な河川。
それこそが、ウルクゥ公国の防衛線であり、北から押し寄せる連合帝国の軍隊を押しとどめるラインなのだ。
そして、同時に、ウルクゥ公国を長年貿易で富ませてきた運河であり、連合帝国にとっても重要な補給線となっている。

「もしも、連合帝国軍ガ渡河を強行するならバ、我々は応戦する。今なら海賊衆たちガ、渡河を強行する敵部隊を撃破出来る」
「艦隊決戦ってわけね……」  「……けれドも、連合帝国軍はそういう無理をせズ、要所要所に補給用兼大河封鎖用ノ要塞を建設する戦略をとっている」
「「「…………」」」
思わず護衛の自衛官たちが思い浮かべるのは第2次世界大戦において、米軍の機雷封鎖によって食糧危機が発生した日本の様子。

「……我ガ公国は少しズつ、その富を減らしていっている……海賊衆を雇い入れる富ガ……消えていく。連合帝国によって脅かされた王政アジシアや王政ヴァルハレンは分離独立した、いわバ旧ヴァルハレン王国ノ裏切り者デある我々にさえ、頭を垂れ、助けを求めている……。
大河ベルトレスがなくても、大河トラフィックと多島海がある。でも、その多島海もまた、連合帝国に飲み込まれようとしている。北も東も……奴らの世界に……」

「…………」
小国の悲哀と言ってしまえばそれだけだ。

「ああ、そうそう……あなたノにほんでも指折りノ大商会ノ人間と聞く」  「えっ? はぁ……そういう事になるらしいですね」
「……あなた方ガ使用している度量法ノ原器を頂きたい。よろしいか?」  「はい?」
いまいち話がよくわからないが、よく聞いてみるともともとそれを要求したくて、今回の岡部たちのわがままにわざわざお姫様がついてきたようであった。
メートル原器やキログラム原器がほしい……というお話なのだが……。

「……どうします? 長谷川さん……うちで予備保管されてます?」  「……いや、聞いたことない。困ったな。今の時代だとメートルはレーザーで地球を測定して産出するし」
キログラム原器も2018年に制定されたCGPM26新SI規定で今ではブランク定理なる方程式を用いて産出されている。
そんな日本勢のざわつきに、お姫様サイドでも、困った表情をしてしまう。これは予想外だ。ひょっとして、自分たちは大変な間違いを犯したのだろうか?
『原器を持たぬ野蛮なる小国』と手を組んでしまったのかと。
つまりは双方で悲しい勘違い。
技術が発達したことで、原器を持たなくてもよくなった文明と原器がなければまともな文明生活を送れぬ2つの文明の擦れ違いである。
と、同時に、長谷川は気が付く。そして岡部に自分の懸念を口にする。

「……なぁ、今日本本国は新世界に移動したことになるわけだろ? レーザーで地球を測定して産出するメートル法は……この新世界でも通用しそうか?」
「あっ」
なお、この後いろいろあって誤解は解けるが、ウルクゥ公国側も日本側も大変慌てふためくことになる。  
何故ならば――――

「――私はにほんに行く予定なノダガ……」
ウルクゥ公国側は日本の国力を図り、そしてもしも可能であれば連合帝国との戦争に引っ張り込もうと考えていた。 
公国にしてみれば、1国でも味方がほしい。ましてやそれが『大国?』と思わしき国であればだ。
が、それが、まさか原器も持たぬ蛮国だなんて……という嘆きだったり。

「レーザー? 何やら興味ガわく。新たな魔道か何かか?」
お姫様が、技術おたくで助かった。

104 名無し三等陸士@F世界 :2016/04/13(水) 01:01:54 ID:gAbJokYQ0
  4.
 新左翼系過激組織『前進』。

「つまり?」  「学生運動時代に端を発する過激派……要するにテロリストですよ」
あの有名な『腹腹時計』を書いてばら撒いた「狼の牙」などは、あえて学生運動を由来にしてはいなかったが、実態として『過激派』はどこも似たようなものである。

「その『前進』のアジトが市内に出来たようなんです」
福岡市の公務員である但馬はそういわれて「はぁ……」と小さく相槌を打つしかなかった。
ネット上の遊びじゃないが、福岡はなんだかんだでヤクザなどが多い。人口も増えまくったりするので、今更過激派組織が一つ増えましたなどと言われたところでそう答えるしかないのだ。
ただの小役人の感覚として。
県警の偉い人たちが怖い顔してやってきたと思えばそういう話である。

「それが、何か?」  「強制捜査を狙いますので、ご迷惑をおかけします。具体的には――――」
――何やら書類仕事が増えるらしい。
彼が話を聞きながら見た時計の針は2時31分。


「急げ! 急げ! 新世界から要人が本国にはじめてくる記念すべき時だぞ!」  「ええ、ですから検疫の手続きを――――」
「――検疫なんざやって外交問題になったらどうするんですか!?」  「検疫しねえほうが外交問題でしょ!」
外務省 VS 厚生労働省 ファイ!
何せ、新世界関連での検疫はいろいろと厳重となっている。
手続きも複雑だ。
だが、その基準を仮にもウルクゥ公国第2皇女殿下に当てはめようとすれば。

「仮にもお姫様の体を……それもこちらの常識が通用しない世界の体をまさぐると……?」  「まさぐるとか、その言い分何考え点だ。血液検査と体温を測るだけってことでもあるんだよ」
「でも、実際にはそうならないんでしょ?」  「…………だって、人種とか……そもそも俺らの知ってる人間かどうかも知れないし……」
「じゃぁ、やっぱだめじゃん!」
困った話である。

105 名無し三等陸士@F世界 :2016/04/13(水) 01:02:56 ID:gAbJokYQ0
そして、ここでも困った話し合いが――――

「――姫様ぁ……本当に? 本当に行くのですかぁ?」
ウルクゥ公国側にしてみれば、大切なお姫様を出すのだから、相手にもそして自分たちにも失礼や威厳を損なわないようにしないといけない。とはいえ……  

「相手は、姫様に何のお肉がわからない下級肉を提供するような蛮国ですよ! 本当に行くんですか?」
銀の髪色。そして、サーベル。
一人のメイド『ヘンリエッタ・ライッエ』は、にほんとかいう国にお姫様が旅立つことに反対だった。
彼女たちは儀式場にいた。お姫様の研究用に用意されている奴だ。
魔力炉から供給される魔力は伝達系の魔道資源の代表格である『魔法銀(ミスリル)』で形作られた魔法円の効果によって増幅される。
厳密には物理学だのなんだのの化学法則に基づく加速器の原理に似た効果によって増幅されているように勝手に魔法使いや魔術師たち、魔導師たちが思っているだけなのだが。
粒子加速器には様々な方法があるが、よく加速器といわれて多くの人が思いつくであろう円形のあれは磁場によりローレンツ力を発生させて……まぁ、特定の層、SFとかが好きな人向きにいうとレールガンやらコイルガンといったガウスカノンみたいな原理で加速している方式が多い。
まさにあんな感じで『魔力』なる粒子なのか波動なのかわからぬエネルギーを加速させているのがこの魔法円の本質だ。
ただし、メイドである彼女にはそんなことはわからない。
お姫様もおんなじだ。いかに彼女が研究者と言えど、ただ、古来より研究されてきた魔法、すなわち魔道の技。
その研鑽の果てに導き出された一つの『結果』を利用しているだけなのだから。とはいえ、魔術師である以上いつかは、この原理を解き明かさなければならないのかもしれない。
姫様が行おうとしている魔道の技、すなわち魔法。
魔道の原理法則の事を魔法と呼び、それを操るすべの事を魔の術。魔道の原理原則をただ使う事しか知らない魔法使いどもと違って彼女は良くも悪くも誇り高かった。
この大規模な設備の目的はただ一つ、彼女の魔法研究に公国の祖国防衛がかかっているからだ。彼女は一気に連合帝国軍相手に痛手を与えると同時に反撃の糸口を生み出す大魔法を完成させようとしていた。具体的に言えば、彼らが使用している補給人員運搬用に使われている敵の転移術式に干渉して、転移術式を暴発させること。
それが狙い。いわば転移術式への干渉魔法。
転移術式に規定量以上の魔力を注ぎ込んで暴発させる。ではどうやって魔力を注ぎ込むか。転移術式が起動した瞬間の空間のゆがみを経由して転移術式に大量の魔力を流し込む。
余剰エネルギーの暴発を狙っての設備。それでもって連合帝国軍の足を少しでも鈍らせるとともに大きな一撃を与えるというものだ。だけれども……

106 名無し三等陸士@F世界 :2016/04/13(水) 01:03:46 ID:gAbJokYQ0
「……そんな機能は……もう無理か……」
実現不可能、少なくとも姫様の持つ能力や魔道技術では到底無理であり、そればかりか彼女は失敗している。
だから、前回の攻勢が行われた。いかに彼らが運河としても利用されている大河バレントレンスを利用しているといっても一気に20万の軍勢が丸3日間も休まず進軍できるわけがない。本当は20万ではないのだ。
もっと多くが参加している。ただ、20万と誤認するのは戦闘のために最前線で戦う兵士たちの数が大体、そのくらいだろうという事である。
となれば、いったいどれだけの組織的、国家的戦争動員が行われている事だろうか! とんでもないことだ。もはや――
『――連合帝国は時代が違う』
そう多くの国に言わしめるほどだった。連合帝国の総人口は、6千5百万。その時点で自力が違うのだ。それに時代の違いまでプラスアルファされれば、所詮は弱小国家でしかない祖国、ウルクゥは滅ぼされるしかない。
彼女は――彼女なりにこの祖国の危機を救わんと研究してきた。だが、タイムオーバーだ。
この設備はもう壊すべきだろう。
そして、この設備に使われている魔力炉や魔道資源はこんないつになっても結果を出さない研究などよりも祖国防衛のための資材として使われたほうがはるかに有意義だ。
祖父が作ったこの国。私たちの国は――これから滅びることになるだろう。
連合帝国は発達した国だ。ある意味、この国の民草たちもそのほうがいいのかもしれない。ウニヴェルスム神聖連合帝国のもとにひざまずいたほうがはるかに――民草にとって有意義なことになるかもしれない。
どのみち、彼らの軍勢が攻めてくるのはもう目に見えている。何故ならば彼らが目指さんとしている場所はわかっているからだ。そしてその場所はこの国を通った向こう側にある。そう
『聖都:ウル・イール』がある。
大陸の統一を望む彼らは必ずあの場所をとらなければならない。大陸の中心にして、四大宗教の2大宗教の一大聖地。そして交易の中心。
何よりも大陸を支配しようとする者はあの場所の権利を持たねば誰も認めない。
いかに力があろうと、教皇猊下と枢機卿たち、そして――法印大僧正と僧正たちを支配せねば竜王だって供給されはしないのだから。
そんな気概を持つお姫様だったからこそ日本行きの話を承諾し、可能であれば日本の力を戦争に利用できないかと画策する。
ただし、もしも日本が戦争に参入すれば――――

「――私が考えたあまり関わりにならないほうがいい……とはいかないか」  「そうですよ! 姫様が行く必要は!」
ヘンリエッタは何としてもお姫様の日本行を阻止したかった。
日本から提供された時計が2時31分を指し示す……。

107 名無し三等陸士@F世界 :2016/04/13(水) 01:04:19 ID:gAbJokYQ0
  5.
 外事課。公安警察の中にある外国のスパイやテロリスト対策の部門である。
そして、その外事課が潜ませたスパイが捕まった。
公安調査庁に。

「なぁにしてんだ、あのクソどもがぁぁぁ!」
ちなみに逆のパターンもあったりするため、五十歩百歩である。
自衛隊情報本部のスパイもこの件に関わっていたりとカオスな状況になっていくのだが、このカオスの状況を何とかするために双方の高級官僚たちがそれぞれの省益をかけて熾烈な交渉を始めることになる。
だが、厄介なことにこの交渉ごとに首を突っ込む省庁が増えた。
一つは厚生労働省、一つは外務省、一つは国土交通省、最後は農林水産省の4つの省庁である。

「なんでそいつら? 外務省はわかるけど」
これが、この事件にかかわった公安警察に属する多くの人間たちの疑問である。
だが、この話にヤクザや過激派組織、さらには新世界までかかわってくるとは、この時は誰も思わかなった。
そんな混乱をしり目に裏稼業とは別の部署、刑事警察や厚生労働省の麻薬取締部は動き出していた。

「白峰への強制捜査――――」  「――『前進』への強制捜査」
「「「いけます」」」
彼らが踏み込もうと最後の準備を固め、TVカメラが付いてくる中、歩き出す時刻は2時31分。

  6.
 食われた。喰われた。食い殺された。みんな喰われた。食い殺された。食われた。喰われた。食い殺された。みんな喰われた。食い殺された。食われた。喰われた。食い殺された。みんな喰われた。食い殺された。
なんでだろう? 痛い。痛いっ! 痛い――! でも、叫んでもその咀嚼をやめてくれない。
体全身に這い上がる嫌悪感。
何かが、体内に侵入してくる。血が、大量に…………。
どうして、どうして――――?
                ――『ゾンビ』なんて、そんな馬鹿な事が起きているんだ……?

動員された兵士はおよそ三千ほど。たった三千で一つの未知の国家を蹂躙する。
それが――

『――ああ、なんて、素晴らしい感覚だ! 魔物どもを放て! 放て! 足りぬ兵力は現地で調達する! 死蟲を放て!』
強制捜査に訪れた刑事が聞いた最後の言葉は意味不明な外国の言葉だった……。

108 名無し三等陸士@F世界 :2016/04/13(水) 01:05:01 ID:gAbJokYQ0
  7.
 目の前に広がる大海原。そしてそれを背に向けて振り向いてみれば、灰色の大地。

「自由都市連合体……」
派遣された先遣軍団の将軍の一人、エミル・ライオーノフはそうつぶやく。
見たことがない……までに発達した謎の都市。城壁らしきものも見えず、どこまでも続く街道。

「いや、違うな……これは、我々が目指すべき……いや、我々の子孫が到達すべきウニヴェルスム神聖連合帝国の形だ……」
数十年単位では達成できない百年単位の未知の大国。
将軍というより、学者であるエミル・ライオーノフは震えた。
そんな国相手に三千で戦い、あろうことかそんな国家をこれより蹂躙するのだと……。
不安も高揚感も何もかもを内包した奇妙な思いを胸に体が震えた――――――。
――そして、それはきっと軍団の兵士たち皆に共通する何か……。

109 名無し三等陸士@F世界 :2016/04/13(水) 01:06:58 ID:gAbJokYQ0

 そらのいくさ 第1部
 第2章 「ウォールアイ ――202X.09後編」

 全部の投下を終了しました。
ちょっと意表をついて、ゾンビパニック風味にしています。
自衛隊の本格参戦は第4章となりますので、第3章で描かれる大混乱の様子、
そして、連合帝国がこんな事態を引き起こした手段についてはそちらにて!

110 名無し三等陸士@F世界 :2016/04/13(水) 01:23:23 ID:uM3pHPRI0
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111 名無し三等陸士@F世界 :2016/04/18(月) 00:38:16 ID:Htiy0goUO
うお乙です!
投下に気付かなかった…

112 名無し三等陸士@F世界 :2016/04/22(金) 12:58:53 ID:rgKk31xs0
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113 名無し三等陸士@F世界 :2016/04/28(木) 12:57:38 ID:rgKk31xs0
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114 名無し三等陸士@F世界 :2016/05/09(月) 22:01:57 ID:Y3GSVRLE0
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115 名無し三等陸士@F世界 :2016/05/12(木) 06:31:25 ID:DRqsEcc20
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116 名無し三等陸士@F世界 :2016/07/10(日) 22:48:32 ID:A.D1FtvU0

 そらのいくさ 第1部「からっぽのたたかい」
 第3章 「九十七式重爆――202X.10第1週目・前編」

 7月12日 投下予告!

 ウニヴェルスム神聖連合帝国 VS 日本 開幕!

 なお、旧世界では人民解放軍との死闘が待ち受けている模様。以上予告でした。

117 名無し三等陸士@F世界 :2016/07/13(水) 00:04:00 ID:A.D1FtvU0
ほい、投下を始めます。

ちなみに遅れております。
Civ6がでると聞いて、久しぶりにCiv4BtsとCiv5BNW
ついでに、発売したHoi4をやってたら(ry

118 名無し三等陸士@F世界 :2016/07/13(水) 00:04:53 ID:A.D1FtvU0

  そらのいくさ
  第3章 「九十七式重爆――202X.10第1週目・前編」

  1.
 次々と、光の粒が膨らんでいく。
膨らむ光の粒の分だけ、弾けたとき、激しい光に包まれていく。
光の渦。光の泡。
中心点に輝く光の柱。

「おおおおおっ!」
誰かが、そう口にした。誰かがつぶやいた。誰かが――――

「――皆の者! 動いたぞ! 飛び込め!」
ウニヴェルスム神聖連合帝国の軍勢が光へと流れ込む。
『転移術式』。距離も時間も関係なく移動する『最高の長距離連絡手段』として利用される世界最高至高にして至上の大魔道工学の結晶。
膨大な魔道資源を稼働している限り消費し続け、おまけに転移物の質量によって、消費する資源量がさらに増える。
おまけに、送信側と受信側、双方に巨大な魔法施設と燃料である魔道資源を大量に用意してなければ稼働しない。
その性質とコストパフォーマンスから、通常の大国でも自国内での城塞都市防衛戦に限ってのみ、軍勢の移動に使用するそれ。
軍勢といってもせいぜい、転移物質量の関係から多くても千人ほどのそれ。
にもかかわらず、プラスアルファをつけたうえで三千の兵員を送り込む。それも侵攻作戦に使用する。
それが示すことはただ一つ――――!

「圧倒的な国力! 圧倒的な戦力! 圧倒的な敵の油断! 圧倒的に我らの方が敵地を調べている!」
これこそが! ウニヴェルスム神聖連合帝国!
ゴンドワナ大陸の覇者! 世界秩序の管理者! 
我らはその先兵なり! 覇者の軍勢なり! 王者の兵隊なり! 我らは大陸の統率者!

119 名無し三等陸士@F世界 :2016/07/13(水) 00:07:04 ID:A.D1FtvU0
「さぁて、行きましょう。我らが全力出して暴れることが出来るのはせいぜい3日。現地での略奪がそれ以上の行動を可能にする唯一の方法です。故に、2日で一定の目的が果たせるようにお願いしますよ」
「分かっている」
今回の軍団は、混成部隊だ。連合帝国に属するいろいろな軍隊の『はみ出し者』が集められた混成部隊。
エミル・ライオーノフ。
ザスティン・ハフレリオ・ダー・グジュラナード。
グラディス・フラドベラーグ・ラーフ・シュタインブリュック。
3人の将軍たち。2人は同格、1人はまとめ役。
ただし、エミル・ライオーノフは間違いなくいわゆる平民階級出身故に、結果的には一番下っ端の将官ということになる。
たった3千の軍勢に3人の将軍。それこそが、軍団の内情をきわめて簡潔に示しているといえるのかもしれない。
そもそも、連合帝国という国はもとが、4か国の大国を中核に出来た巨大な軍事同盟が一つの連合国家となったのが始まりである。
それゆえなのか、ウニヴェルスム神聖連合帝国の軍制は――なかなかにいびつだ。
5人一組の『伍』、その主である『伍長』、10人一組である『火』とその主である『火長』、そして100人一組である『百人隊』と『隊長』そして、3個以上の百人隊を『軍団』と表現し、軍団を指揮するものを『軍団長』と呼ぶというのが――連合帝国の「一部地方軍制」だ。
そもそも連合国家であるがための欠点といえるのかもしれない。地域ごとによって軍制に違いがあるのだ。
あるところでは10個の『大隊(コルホス)』からなる5000〜7千人規模ので1個軍団となるくらいである。
同じ『1個軍団』でも300人から軍団と呼ぶ地域があれば、5000人の兵力でもって軍団とする地域。これほどまでに違いがある。
それでもなお、連合帝国が大陸諸国すべてを相手に戦争を行えるのはバカみたいな過剰な国力とそれ以上に、軍師組織『軍配府(ウィクトール・ヴィア)』という名の参謀本部的存在によるものの影響がきわめて大きいといえるだろう。
『勝利者への道(ウィクトール・ヴィア)』はもともと、軍師たちを育成し、そして軍師たちの考えた作戦実行のサポートを行う組織だった。
かつての時代、世界を相手に覇を唱えた軍事超大国『空の帝国(カウエル)』。そして、それに立ち向かった軍事同盟。
カウエルとの10年以上にわたる大戦争で統一された指揮系統や補給体制、そしてそれを支える根本的な生産力と適切な交通管理の有無が戦争の勝利につながると理解した対カウエル軍事同盟だったが、所詮は同盟軍。ではどの国の指揮官が統一指揮官になるのかともめにもめた。
言葉だって違えば、長年の係争を抱えた者同士というパターンだってあるのだ。そういう選定は厳密に行わないといけない。
とりあえず1か月交代で統一指揮官を各国が務めることになったのだが、いきなりこれでうまくいくはずないという事は各国ともにわかっていたのである。
そういう事から、将軍の選定以上に必要とされたのが恒常的に組織だった作戦計画立案集団である。それが『勝利者への道(ウィクトール・ヴィア)』と名付けられた軍師組織、軍配府である。
それゆえに『軍配府(ウィクトール・ヴィア)』の本義は、多種多様な違いを当たり前としたうえで効果的かつ合理的に勝利得るために準備を行う事。すなわち補給戦の実施と遂行。
そして、将軍たちの補佐と確実な勝利を得るための計画性。
何時しか、作戦の軍師、決断の将軍と呼ばれるようになる体制がここに完成した。

120 名無し三等陸士@F世界 :2016/07/13(水) 00:08:43 ID:A.D1FtvU0
『軍配府(ウィクトール・ヴィア)』の軍師は必ず2つ以上の選択肢を将軍に提示し、提示したときにはどんな選択肢であろうとも実施に必要最低限の準備をすべて終えている。
将軍はそれを選ぶという決断を行う。そして、軍師の作戦道理に物事は進められ、もしも軍師の作戦にない事態が発生すれば軍師ではなく将軍が事柄を決断する。
それこそが、連合帝国。ウニヴェルスム神聖連合帝国という巨大な戦争機械を動かす仕組み!
庶民でも将軍となりえる国。貴族を将軍とする国。ただの貴族ではなく領主貴族、可能であれば大諸侯と呼ばれる者こそが軍事の本懐であるとする国。
エミル・ライオーノフ。
ザスティン・ハフレリオ・ダー・グジュラナード。
グラディス・フラドベラーグ・ラーフ・シュタインブリュック。
3人の将軍。それらにあてがわれる軍師たちもまた内情を示してるような身分階級であったり出自であったりと様々だ。
『多様性』。それは制御できれば巨大な力となる。繁栄をもたらす唯一無二の種となる。
だからこそ、多様性を尊ぶ声は尽きないのだ。純粋性は確かに強靭だが、何か別の力が外から加われば脆い。
とはいえ、多様性とやらは制御を間違えればただの混沌に過ぎない。
秩序を尊び、純粋性を選ぶか、そして硬直化と外圧の脆さに苦しみながらも繁栄を謳歌するか。自由を尊び、多様性を選ぶか、そして軟弱性と内圧の混沌に苦しみながら繁栄を謳歌するか。
それぞれのお国事情とは深いものがある。
新旧両世界、どこの世界に限らず。

「ライオーノフ卿……と言って大丈夫かな?」  「ハフレリオ卿、お戯れを。ライオーノフでよいですよ」
「ふむ、では、セノー・ライオーノフ。君とはこの作戦に参加するにあたって色々と話をしていたが、それでも立場の違いというのは大きく、色々と見識の違うところがあったからね。だが、今は少しばかし仲良くやっていこうじゃないか。こうも未知の大地だとな」
彼らが見るのは灰色の大地。広大な都市。
『軍配府(ウィクトール・ヴィア)』から派遣された女軍師の一人、エレナ・アビラは覚悟はしていたが、あまりにも現実的とは思えぬ風景にめまいを感じてしまう。
報告は受けていた。常識が通用しないと。だが、こうして建物一つ見ただけでそれを実感してしまった。
だから――――

「――これより、この地を蹂躙し、一時占領地を得るのだ。本国が本格的に動くまで、さて、我らはどこまでやれるかな?」
将軍ザスティンがジョッパーブーツで踏みつけるもの。血に汚れた髪。かつて、この国に秩序を守るものとして存在した命。
刑事さんと皆に呼ばれ、憧れる人。
その、頭蓋――――――――

                   ――守るべき秩序は破られた。
後に残るのは、反秩序の権化たる征服者の雄たけび…………ただ、それ……のみ。

121 名無し三等陸士@F世界 :2016/07/13(水) 00:09:25 ID:A.D1FtvU0
  2.
 中華人民共和国、人民解放軍北海艦隊。
中国海軍の事実上の主力は前々から南海艦隊と南海第2艦隊であるといわれていた。確かに首都北京を守る様に控える北海艦隊には毎年莫大な予算が与えられ最新の艦影も次々と出ている。だが、中国初の空母――といっても廃棄予定の中古以上のボロ、ワリャーグ――は南海艦隊に配備されたし、そのあとに続く国産空母も真っ先に南海艦隊に配置された。
中国が海洋で起こす国境紛争のあれこれはほぼすべてが南海艦隊が受け持つ範囲である。故に――事実上の主力は南海艦隊と、国産空母を中核に新編成中の南海第2艦隊であるといわれていた。
だが、そんな言葉を言われて黙っている北京軍区と北海艦隊ではない。中華思想というのは大雑把に説明すると中央から離れれば離れれるほど文明の光は薄れ、野蛮な世界が広がっているという価値観だ。
その価値観がまだ強く息づく中華人民共和国。
別にこういう中央万歳な価値観は世界中で見かけるものだ。中には国単位でそういう価値観や偏見を持つものだっている。
一昔のフランス人にしてしまえばフランス文化こそが文明であり、そこから離れれば離れるほどフランス文化という文明の光が薄れ世界は野蛮になっていくという考え方がよくあるものだったし、平安時代の日本を見れば京の都より遠い東北地方の人たちは悪鬼呼ばわりである。
さらにさらに、今の日本国内においてもそうした、価値観が絶対に欠片も残っていないと、誰が言えるだろうか?
首都東京が大都会であり、その経済力やその他さまざまなものがいかに優れていようと、東京の外の人間にとって全国放送、都内でレストランめぐりがどうのこうのゴールデンウィークで都内から距離が云々と、どーでもいいことと、周りの都道府県民は思っていないだろうか。そんな都道府県民の考えを知ったことかと東京都民は持っていないと絶対に言えるだろうか。
他にも都道府県の県庁所在地とそこから離れた小さな村落。さて、彼らを田舎者と言い出す地方都市人。これは自らが優位な存在だという思いだといわれて、どこまで強く否定できるだろうか。
こうしたものは、どこの国でも大なり小なりあるものである。だが、同時に時代や文明の進みによっておおむね都会と田舎の区別程度に収まっていく。
だが、その価値観の強さが中華人民共和国の現指導部は半端ではない。彼らには華夷秩序を再びという野望がどこかにあるのかもしれない。
中国内部の政争は今や銃撃戦が日常的に行われるようになりつつある。ある者が曰く、共和国は事実上の内戦状態だという。中国は今では台湾、ベトナム、インド、インドネシアにフィリピンを敵に回し下手をすればオーストラリアにロシアも中国の敵になりかねない状況になりつつある。
日本ともすでに交戦している。
まさに全方位が敵となり、彼らが目指していた『真珠の首飾り』は明らかに破綻していた。
中国は決定的な弱点を保持している。そう――石油と食べ物がないのだ。
一応油田が全くないわけではない。有名な大慶油田をはじめにカラマイ、勝利、遼河、タリムなど様々だ。だが、それらを一生懸命とっても今の中国には油が足りない。そもそも、それらの油田は質が悪いが故に精製にひと手間かかったり、掘りすぎて出る量が、もう少なかったりとしている。
そのために中国は2010年ごろにはすでに世界でも有数の石油輸入国となっていた。石油だけではない。飢餓は革命を呼ぶ。
今の中国に13億人の人口を抱える食料生産能力はない。
だからこそ、中国は油と食べ物を求めて海の進出を図り、様々な国との軋轢を発生させたわけだが――――。
――――さながら、18世紀、19世紀の植民地帝国主義全快のヨーロッパ諸国のように……。

「だからか……」
転移現象にも巻き込まれず、星の海に取り残された日本による日本国のための日本国の人工衛星から送られてきた画像を前に防衛省の人間はそうつぶやく。

122 名無し三等陸士@F世界 :2016/07/13(水) 00:10:53 ID:A.D1FtvU0
「三等国(無主地)は先に力で制圧したものが己の領土となるッ! 大昔の国際法理屈を振りかざすつもりかっ!」
「――それだったら、先に発見した我が国のものだ、奴らは何を考えている?」
分かっている事だ、奴らの狙いは新列島の自噴するほどの大油田と肥沃な大地。

「……所詮、野蛮人共か! 中国人どもは!」
人工衛星には、それが移っている。
北海艦隊の揚陸大部隊の姿が――――。
――既に陸上自衛隊西部方面隊の12式地対艦誘導弾を運用する第5地対艦ミサイル連隊が新列島には展開しつつある。新列島は今までの日本列島と若干形状が異なり、「く」の字を逆に、そして3つほど重なったような形状をしている。
そこに様々な付属の島々が並んでいる形状だ。
とはいえ、今までの日本列島を考えるとちょうど中国地方と新潟のエリアに中国軍は上陸を図っている。
既に上陸第1陣が降り立っているが、そこから先は既に現場に到着していた陸上自衛隊の奮闘によって何とか食い止めている。だが、この状況で第2陣が降り立てば拮抗は崩れることはだれの目にも明白だった。

123 名無し三等陸士@F世界 :2016/07/13(水) 00:12:36 ID:A.D1FtvU0
「分かっていると思いますが、いったいいつになったらいつも威張っている人たちは活躍するんでしょうかね?」
「…………」
何処の国でも陸軍と海軍というのは仲が悪いのが結構ふつうである。それでも国防のために団結し、優秀な数々の政治家たちの導きにより陸海空は祖国を守るために邁進する――というのがあるべき形のはずであるのだが……

「すでに第4護衛隊群が出発いたしました。問題はないはずです」
旧帝国陸軍と旧帝国海軍の再来かといいたくないほどの険悪なムードが陸自と海自の幕僚たちの間に流れていた。
最もすべての陸海幹部がそういう状況というわけではないが、それをおいてもという奴である。
その間をおろおろする空自幹部の幕僚が1人。ほかの空自幕僚はもうどうにでもなれ〜といった態度で溜息をついていた。
旧世界の海ならともかく新列島周辺の海底地形やらなんやらの情報は急ピッチで進められているが、それ以上に、赤いオーロラの向こうに広がる旧世界と新世界と2つの世界で詳細かつ安全な海図を作るのには少々手間暇がまだかかる。
そもそも海上自衛隊第1護衛隊群は中国の潜水艦が跋扈する東南アジアを経由して入ってくる日本のタンカーを防衛するために出払っている。第1護衛隊群に所属する艦船はローテーション? 何それ、食えんの? といわんばかりに横須賀より出払っている。
というよりも、新世界の未知の海、新列島以外は既存の知ってる海である旧世界のアジアの海。どちらが安心して航海出来るか――という問いに対し旧世界という答えが真っ先に出るが所以である。
それが結果として、旧世界の外洋では積極的に活躍するくせに、日本国領土にはなかなか近寄らない海上自衛隊といういびつな構造が発生した。
そもそも、海軍の役割は現代においては大雑把に三つ。
一つ目は『沿岸防衛』、二つ目は『上陸作戦』、最後に『核抑止力』。
日本が非核保有国なので、三番目の核抑止力に関しては仕方ない。日本には海外領土があるわけでも大規模な海兵隊的組織があるわけでもないので上陸作戦に関してもある程度限定的な規模であるのは仕方ない。
となれば、必然的に海上自衛隊が目指すものは一つ目、『沿岸防衛』。
だが、

124 名無し三等陸士@F世界 :2016/07/13(水) 00:14:09 ID:A.D1FtvU0
「あなた方はいったいいつになったら、日本領土の海を守ってくれるんでしょうかね?」
その嫌味な陸自幕僚のセリフが海上自衛隊側の自衛官たちに突き刺さる。もしも、これが第3次世界大戦の真っ最中でなければ、おそらくそんな責め立てるようなセリフは出なかっただろう。
だが、あいにく今は戦時であり非常時であり有事なのだ。
新列島の海域はまだわからないことだらけだ。自信満々に出港して座礁などしたくない。新世界の海は何があるかわからない。本当の日本列島を取り巻く海がちゃんと安全な海底地形をしているのかもわからない。
何もかもがわからないからこそ、海上自衛隊は動けない。
というより、自衛艦隊よりも地方隊所属の掃海艇やミサイル艇以外ろくに使い物にならないのが現状である。海上自衛隊の花形であった自衛艦隊などよりもはるかに国民の目には地方隊の頑張る姿が映っている。
だからこそ――――活躍が――――
――千葉県の鉄道車両基地から、続々と出発する電車があった。それらに乗せられているのは国内の精製プラントで持って生成されたガソリンやガス、そして大量の5.56mmNATO弾。
アメリカが役に立たない今、日本の補給は日本がやるしかない。鉄のレールの上を走る鉄の車両が向かう先――そこには赤いオーロラに覆われた場所。
地上にまで降りてきて、いまだに消えぬ赤いオーロラは太平洋北半球に広がっている。
しかし、一部のオーロラが房総半島太平洋側に突き出ているのだ。常時。
それを利用した。本当は鉄道などではなく、アスファルトの舗装道路を通すべきなのだろうが、あいにく2か月で新列島への道のりのすべてを舗装する事など、かなわず、ましてや戦時の影響で資源統制が加わっている現状。
新列島そのものの舗装だってまだまだ進んでおらず、砂利道レベルなのだ。
そもそも、まだまだ未踏エリアのほうが圧倒的に多い。全体の90%はいまだどんな空間なのか把握できていない。
そういう状況下、軍事的な物資やらなんやらを鉄道という安くそして確実性の高い手段での輸送に行きつくのはある意味仕方ないのかもしれない。
だが、遠からず舗装は行われるだろう。それまでの代替手段だ。
そして、鉄道車両に行先は決まっている。
そう――『反撃の補給所』だ。
陸上自衛隊は新領土に侵入してくる愚か者どもを撃破するために牙を磨く――――。
――ところで、今、日本が相手をしている戦線はいくつあるのだろう?
東シナ海や南シナ海におけるシーレーン防衛と台湾海峡、そして、旧宮古海峡防衛のために活動していた、第4護衛隊群に属する艦艇が次々と北上を開始する。
松島で、百里で、横田で航空エンジンが唸り声をあげ、その独特な金属音を振り撒きながら、飛び立っていく。
『空自補給本部(AMCH)』のおかれた十条では、次々と幕僚や幹部たちが書類を持って走り回る。日本全体が、戦争を遂行するべく動き回るその中で……。

「失礼します。九州各地で異常事態が発生したという一報が――――」
――武力攻撃事態法。日本国有事の法律でありそれに基づき、中国軍の新列島への侵入を排除する。
それが閣議決定したのとほぼ同時刻に交わされた会話はのちに情報公開された議事録によって国民から大きな失笑を買うことになる。
あきれ半分、戸惑い半分といったものだ。
同時に、当時は仕方なかったという援護の声もいっぱい出ることになった。その会話というのがこうである。

125 名無し三等陸士@F世界 :2016/07/13(水) 00:14:45 ID:A.D1FtvU0
「謎のコスプレ武装集団ごときに、自衛隊の派遣など! 何の意味があるのですか! 第一彼らは外国の武装勢力と決まったわけではない」  「しかし、彼らは刀剣類で武装し!」
「銃に大砲! 戦車に軍艦と戦闘機! 下手をすれば何万の兵士がやってくる! ゾンビメイクの群衆、武装といっても、弓矢と剣! 精々数百程度! 早急に対処すべきなのはどちらか、明らかでしょ! みょうちくりんなコスプレ連中なんて警察で対応が十分可能なはずです!」
そう、この時点では連合帝国軍の軍勢は、『謎のコスプレ武装集団』という扱いでしかなかったのだ。
実際、目の前に強盗がいる状態で遠くの場所で妙な伝染病に苦しんでいる人が倒れている風景など気に留めることは出来ない。
潜在的な脅威度では伝染病のほうが高くてもだ。
だが、そんな理屈。真正面切って戦う警官たちにしてしまえばクソ食らえだろう。
村松巡査部長は赤黒く染まっていく鮮血の海に沈むかつての部下の姿を発見する。

「……ッ…………」
だが、どうすることも出来ない。何故ならば彼自身、腹に大穴をあけろくに呼吸もできないからだ。
村松の睨みつける先には――――全長2メートル以上はある真っ赤な目をした真っ黒い犬の様な生き物が鎮座していた。
『死を告げる妖大犬(ヘルハウンド)』。
連合帝国軍の妖術師が操る魔物たちが、そのつながれた鎖のくびきからすべて放たれようとしていた――――。
――旧世界の摂理に従い、旧世界の戦いに動く日本。しかし、足元に新世界の戦理が転がっている……。

126 名無し三等陸士@F世界 :2016/07/13(水) 00:17:30 ID:A.D1FtvU0
今日はここまで! 日本VS連合帝国と言いながら、本格交戦とはまだ言えない状態ですねぇ……

ちなみに最後の瞬間は派手に吹っ飛ばすつもりですので……






民主主義大東亜共栄圏で対ソ戦プレイをしようと思って、経験値稼ぎに軍閥殴ったら予想外に泥沼化してんじゃねーよ!
少し、次回遅れます。

127 名無し三等陸士@F世界 :2016/12/18(日) 15:44:52 ID:ZAkhsEYY0

ttp://ux.nu/BUXbG

ねばっくさいこう

128 名無し三等陸士@F世界 :2017/02/10(金) 15:34:35 ID:PYGWWUS20
h ttp://ux.nu/zxhL2

129 名無し三等陸士@F世界 :2017/02/19(日) 19:15:37 ID:XiyVDv5E0
35:54

10:40
ttps://www.youtube.com/watch?v=WTdY7h129Mk

ttps://www.youtube.com/watch?v=8R0luOy8ce8


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