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英国(第二次世界大戦勃発直前)がファンタジー世界召喚されますた。

277HF/DF ◆e1YVADEXuk:2018/03/24(土) 20:06:41 ID:xcVmLF4g0
隣のブラウンに注意を促し、続いて停車を指示しようとするがその前にブラウンがブレーキを踏む。見る間に落ちる速度。
だが人影は直後に身を翻し、背中を向けて一目散に逃げ出した。そのまま垣根に繋がれていた四足獣――馬のような見かけだがそれよりは小柄――に飛び乗り、すさまじい勢いで走り去る。
この国の住民から話を聞く最初のチャンスは失われた、思わず漏れるため息二つ。

「なに、そう落ち込む必要はありませんよ」

停車し、揺れが止まった車内で口を開いたのは後部座席のウールトン、かつて同様落ち着いた声で現状を分析する。

「これからあの御仁が先触れよろしく私たちのことを皆に知らせてくれるんです。それに畑があるって事は人里が近いって事ですよ」

この次出くわした相手をつかまえて話を聞けばいい、そうじゃありませんか。

その一言に気を取り直す私たち、私は彼に感謝の頷きを返し、ブラウンは車を発車させる。窓の外の風景がまた流れ始め、中古のトヨタは畑が点在する草原の中を再び走り始める。
ただその速度は相変わらず遅い。非舗装路上を走るのだから致し方ないのだが、これではさっき逃げ出した人物が乗っていた四足獣に追いつくことは到底無理だろう。
中古とはいえ仮にも自動車、それが獣に追いつけぬとは、などと考え、思わずため息を漏らしそうになるが気を取り直して再び周囲の観察に専念する私。他の二人もそれぞれの仕事に集中する。
再び静けさを取り戻した車内にトヨタのエンジン音だけが響き、我々は無言のまま時を過ごす。そしてダッシュボードに備え付けられた時計が出発から約二時間が過ぎたことを示した頃、我々は小高い緑の丘の裾に沿って走っていた
一面青草に覆われ、あちこちに灌木や低木が生い茂る丘、だがそれはかつて私がウールトンと二人で登った丘に間違いなかった。
かつてはこの向こうに彼女がいたオアシスがあり、そこで私たちは短いが生涯忘れられない一時を過ごしたのだ。
今はどうなっているのだろうか、心の中で期待と不安が膨れ上がる。
そんな想いを他所に走り続ける車、丘に遮られていた視界がゆっくりと開けてゆき、とうとうその時が来る。

「見えた!」「……昔よりさらに大きくなってますな、枝ぶりも凄い」
「……ああ…………」

最初に反応したのはブラウン、声は弾んでおり、その皺だらけの顔には喜びが表れている。続いて口を開いたのはウールトン、相変わらず落ち着いた口調であり、観察もまた的確だ。


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