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SSスレ

1魔術師1 </b><font color=#FF0000>(zbg2XOTI)</font><b>:2004/03/16(火) 06:06 ID:5tGeSj8I
比較的硬派なSSを投下するスレッドです。
本スレとほぼ同じ、詳細かつ綿密な設定を練ってSSを書いてください。


ハイテク兵器VS剣と魔法

戦国自衛隊のノリでいて新たなジャンルを開拓すべし
銃を手に、ファンタジー世界で生き残れ!

・sage推奨。 …いや、sageる必要ないか。
・書きこむ前にリロードを。
・SS作者は投下前と投下後に開始・終了宣言を。
・SS投下中の発言は控えめ。
・支援は15レスに1回くらい。
・嵐は徹底放置だ。反論は許さん!…スレ住人が。
・以上を守らないものは………

本家スレ(2004 3月時点)
http://hobby3.2ch.net/test/read.cgi/army/1079351585/

2魔術師1 </b><font color=#FF0000>(zbg2XOTI)</font><b>:2004/03/16(火) 06:07 ID:5tGeSj8I
暫定ガイドライン(分家Ver.)

1.「自衛隊がファンタジー世界に」とあるように、あくまで「現代日本」が主に関わる話であること。
2.現代日本というからには、自衛隊の組織・装備はあくまで現用もしくは近未来的に配備が予想されるものに限る。
3.核兵器などの日本が配備するにはナンセンスなものは極力避ける。
4.あくまで「ファンタジー世界」の話であり、F世界側の設定は作者が自由に決めることが出来る。
  ただし、「超兵器・超魔法まんせー」な話にならぬよう気をつける。また、無敵キャラは作らないことが望ましい。
5.ファンタジー側の人間もきちんと描写する方が好ましい。自衛官主観という演出などであえて描写しないのはこの限りで無い。
6.戦術、戦略としてありえないものを避ける。たとえば人間の徒歩部隊が一日に100kmすすむとか。
7.萌え・色気はあくまで表現手段であり、目的ではない。 安易に狙ったり、しつこく要求するのは流石にウザイので自粛すべき。
8.叩き・煽り・嵐は徹底放置。嵐認定を受けた後に、かまった者も同罪とする。
9.SS作者は、抽出がしやすいようにトリップ装着を推奨。
10.感想書き込む人も節度や口調を考えるべし。作品が気に食わないなら透明あぼーん汁


2補足.どうしても出したい兵器がある場合は納得できるような説明を説得力のある理由つけてハッタリかますこと。
7補足.どうしても萌えが主体でやりたい場合は萌え専用スレ立てておくのでそこでやる事。

3魔術師1 </b><font color=#FF0000>(zbg2XOTI)</font><b>:2004/03/16(火) 06:07 ID:5tGeSj8I
過去スレ
1 http://hobby.2ch.net/army/kako/1037/10371/1037116790.html
2 http://hobby.2ch.net/army/kako/1038/10388/1038809488.html
3 http://hobby.2ch.net/test/read.cgi/army/1041774797/
4 http://hobby.2ch.net/test/read.cgi/army/1045319445/
5 http://hobby.2ch.net/test/read.cgi/army/1052104929/
6 http://hobby3.2ch.net/test/read.cgi/army/1053596453/
7 http://hobby3.2ch.net/test/read.cgi/army/1061460453/
8 http://hobby3.2ch.net/test/read.cgi/army/1071232198/
9 http://hobby3.2ch.net/test/read.cgi/army/1073833118/
10 http://hobby3.2ch.net/test/read.cgi/army/1074781379/
11 http://hobby3.2ch.net/test/read.cgi/army/1075041908/
12 http://hobby3.2ch.net/test/read.cgi/army/1075381959/
13 http://hobby3.2ch.net/test/read.cgi/army/1075795046/
14 http://hobby3.2ch.net/test/read.cgi/army/1076157892/
15 http://hobby3.2ch.net/test/read.cgi/army/1076745722/
16 http://hobby3.2ch.net/test/read.cgi/army/1077128299/
17 http://hobby3.2ch.net/test/read.cgi/army/1077724125/
18 http://hobby3.2ch.net/test/read.cgi/army/1078588258/

2004 3月時点の本スレ
http://hobby3.2ch.net/test/read.cgi/army/1079351585/

4魔術師1 </b><font color=#FF0000>(zbg2XOTI)</font><b>:2004/03/16(火) 06:08 ID:5tGeSj8I
保存庫
ttp://shizuoka.cool.ne.jp/fantasure/
ttp://fwsdf.hp.infoseek.co.jp/

参考資料

自衛隊公式サイト
http://www.jda.go.jp/
戦略、戦術について
ttp://www.d1.dion.ne.jp/~r_dom/lans_index.htm
ttp://bezkrilo.hp.infoseek.co.jp/beskrylyi/mil.htm
自衛隊の装備について
ttp://www.military-powers.com/

戦術の世界史
ttp://www31.ocn.ne.jp/~tactic/

京大RPG研究会
ttp://www.ku-rpg.org/
ttp://www.ku-rpg.org/trpg/population.html 中世の人口

Dragon's Lair by Water Dragon
ttp://ww2.enjoy.ne.jp/~tteraoka/
ttp://ww2.enjoy.ne.jp/~tteraoka/esse.htm 中世とF世界の食事
ttp://wdragon.fc2web.com/fg/index.html 中世ヨーロッパの装い(下着含む)

ファンタジー辞書
ttp://www.asahi-net.or.jp/~QI3M-OONK/tosyokan/fantasy/aafanindex.htm

Wiki
ttp://fwsdf.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/wiki/wiki.cgi?%BB%F1%CE%C1 資料

5魔術師1 </b><font color=#FF0000>(zbg2XOTI)</font><b>:2004/03/16(火) 06:10 ID:5tGeSj8I
■今まで本家で討議された議題

・ファンタジー世界の市場規模についての考察
・褌エルフとTバックドワーフ、見たくないのはどっち?
・食料輸入を経たれた日本は自活できるか
・メイドさんの服は黒と青のどちらが望ましいか
・麻薬による世界支配は許されるか
・江戸時代とファンタジー世界の類似性について
・中世城郭入門
・エルフの着衣はどこまで許されるか
・大陸国家VS海洋国家戦略、その長短について
・マッチとメラ、着火手段としてどちらが優れている
・F世界での日本経済再生と交易について
・二大料理カレーとラーメン、新たなる勢力の台頭はあるのか。
・ドラゴン…契約方法と空軍戦力としての有効性を考える
・生首砲台の進歩と改良についての一考察
・自衛隊的ダンジョン攻略法
・対人地雷と魔法の罠。
・その世界を司るもの:科学・魔法・宗教

6S・F </b><font color=#FF0000>(7jLusqrY)</font><b>:2004/03/21(日) 07:05 ID:LgjpIS.M
さて、自分が分家一番乗りになってみる訳だが・・・まずは始めから行きますわ。

200×年 日本全国が突然白い光に包まれた!だが人々は死滅していなかった・・・
いや、それどころか殆どの人がその事に気付きすらしなかった。
極々僅かの例外を除いて、人々は普段と何ら変わらぬ夜を過ごしていたのだった。

気付かなかった人間の事を書いても仕方がないので、ここでは例外的存在について
幾つかの例を挙げて、日本国を襲った奇妙な現象について少しだけ記述してみようと思う。

7S・F </b><font color=#FF0000>(7jLusqrY)</font><b>:2004/03/31(水) 18:41 ID:LgjpIS.M
A県某所山中

男は、空一面に広がる星の光を眺めていた。ファインダーと望遠レンズを
通して見るそれは、肉眼で見る星空よりも遙かに美しく輝いていた。
もっとも、男の視力は成人男性の平均値を大きく下回っていたから、
ある意味でそれは当然のことと言えた。

男の周りには着ぶくれて眼鏡を掛けた大人が大量におり、そこにごく僅か、
少年や少女が混じるという奇妙な光景が広がっていた。

天上と地上の、何と隔たりのあることか。男はそんなことを考えて苦笑した。
そこにいる大抵の者は一般社会に於いて「美」という形容詞が絶対に付かない
種類の人々であり、男もまたその光景の一部として溶け込んだ姿をしていた。

男は考えを中断し、もう一度星空へと意識を集中していった。そこには黒い
滑らかな大気が広がり、彼が二十年来良く知った星々が輝いていた。

8S・F </b><font color=#FF0000>(7jLusqrY)</font><b>:2004/03/31(水) 18:52 ID:LgjpIS.M
彼とその周りの男共は、皆一心不乱にレンズで空を映し出していた。
ビデオカメラ等を持ち出すものもあったが、やはり天体望遠鏡が主力だった。

彼らは別に特別な何か・・・未確認飛行物体や、特定の時期に見られる
流星群や彗星を見に来ているわけではなかった。むしろその逆、彼らの行動は
その多くが新しい物を見つけるために行われて居るのだった。

彼らは時間の許す限りを趣味へと割いて、未だ発見されていない天体や彗星を
探し出すために空を眺めているのだった。
天体観測が趣味の教師などは、部活や教育の一環として子供達を連れ立っている
ようだったが、それは彼らにとって理解できる行為であった。

9名無し:2004/04/13(火) 22:34 ID:eGtwyIA6
書き込みあったんだ。

10S・F </b><font color=#FF0000>(7jLusqrY)</font><b>:2004/04/14(水) 12:18 ID:LgjpIS.M
>>9書き込んではおりましたが、どうも後が続かなくて・・・
続き自体は考えているので書きます。

11S・F </b><font color=#FF0000>(7jLusqrY)</font><b>:2004/04/17(土) 12:07 ID:LgjpIS.M
教師が行っている事は、一種の布教活動であった。子供たちの好奇心に大きな
肉付けを行うことで、自分と同じ趣味者を増やそうと言うのだった。

その事を周囲の者達は、悪意無く受け入れるか、もしくは懐かしんだ。自らもまた
少年期に同じような経緯で、「この世界」に足を踏み入れた人間だったからだ。

ほんの少しだけ懐かしさを覚えると、男はまた空に視線を戻した。
彼の周りは全員が同志であると同時に、ライバルであった。
先を越されてなるものかと、男はまた空に目を向けた。

12S・F </b><font color=#FF0000>(7jLusqrY)</font><b>:2004/04/17(土) 12:15 ID:LgjpIS.M
最初の異変は、ひどく緩慢であった。最初は緩慢すぎて、異変であると
誰も気付かなかった程だった。

星を見に来た人々は、思い思いの道具でそれを目撃した。
空の一角が、黒く抜け落ちて行ったのだった。

それを見た誰もが違和感を感じていた。子供達はただ漠然とだったが、
大人たちは何となく理屈を考えていた。

航空機が低空飛行しているのだとか、雲が懸かったのだと考えた。
最初はそれで勝手に納得していた。

だがしかし、彼らはそれが大きな間違いであることに気付いた。抜け落ちた
空は範囲をどんどん広げていったし、その形は雲でも飛行機でも無かったのだ。

13S・F </b><font color=#FF0000>(7jLusqrY)</font><b>:2004/04/24(土) 19:44 ID:LgjpIS.M
抜け落ちていったその空は、まるで大きなドームの様な形をしていた。
ドームはその占領範囲を広げていき、どんどん山の方へと迫ってくる。

余りのことに子どもは泣き出し、大人は呆然となって立ちすくんでいた。
その内、星々が何かに飲み込まれるようにして、線を描いて
抜け落ちた空に吸い込まれるのが肉眼でも確認できた。

そして山の頂上まで巨大なドームの端が到達した。

14S・F </b><font color=#FF0000>(7jLusqrY)</font><b>:2004/04/24(土) 19:52 ID:LgjpIS.M
空の全てが闇に覆われた瞬間、奇妙なことが起こった。
突然、そこに光が戻ってきたのだ。
今度は子供も大人も呆然となったが、大人の方はすぐに動き出した。
といっても、彼らは正気を取り戻した訳では無かったが。

大人達は子供の状態を確認する事もなく(教職にある者も)、全員が
携帯電話を取りだし、短縮ボタンを押しまくっていた。

大人達が掛けた先は、全て同じだった。そこは国立天文台であった。
彼らの目の前には、見たことも無いような星空が、一面に広がっていた。

15S・F </b><font color=#FF0000>(7jLusqrY)</font><b>:2004/04/24(土) 19:55 ID:LgjpIS.M
こちらでのSS投稿が無いのが、私が区切って居なかった
せいだとしたら、大変失礼いたしました。

ここで一端区切り、ずっと放置しっぱなしだったことを
お詫びします。

16名無し三等兵:2004/06/04(金) 23:26 ID:yqJPfjbY
愚者さんさぁ こっちでやっちゃえば
一気に全部いってすまえ〜!

17名無し三等兵:2004/06/07(月) 01:45 ID:kGF2oLZE
>比較的硬派なSSを投下するスレッドです。
>本スレとほぼ同じ、詳細かつ綿密な設定を練ってSSを書いてください。
これにちゃんと該当するとおもうんですが。
>ハイテク兵器VS剣と魔法
最終的になるんですよね。

18名無し三等兵@F世界:2004/06/12(土) 23:17 ID:qUq6iUEM
SS投下してよろしいでしょうか。
返事をお願いします。

19F世界猿:2004/06/13(日) 06:46 ID:qUq6iUEM
返事がないけど投下します。
なんで本スレ書き込めないんだろうなー。

アジェント王国東海岸の商業都市ラーヴィナ。
アジェント王国の中でも貿易、その他ある理由によってアジェントでも一、二を争うほどの町の市の中、
果物屋の店主が無用心にも温かい日差しの下、店先でまどろんでいた。
まあ、それはこの町の治安の良さを表すものでもあるのだが。
その証拠に果物に手を出そうとする人もおらず、
果物を買おうとしている二人組みのエルフが困った、という顔をしながら待っているぐらいだった。

20F世界猿:2004/06/13(日) 06:48 ID:qUq6iUEM
「ニッグ、ニッグ!」
まどろんでいた男に布を売る男が興奮した口調で声をかけると、ニッグと呼ばれた男はめんどくさそうに目を開けた。
「なんだ、オザ、素っ頓狂な声を出して。」
「何で起こしてくれなかったんだ、もう太陽が天頂を過ぎてる、昼過ぎだ!
アシェナの神にかけてお前を呪うぞ。」
30を過ぎてるであろうオザはその黒い髭をゆらしながら、およそ年齢不相応の仕草をして大声を出した。
通りを行き交う金髪の買い物客達何事か、と振り向いたが、オザは気にしなかった。

「あん…?ああ、そういえば今日はアレがあるんだったな。」
「お前は見に行かないのか、一年に一回なんだぞ?」
「そう毎年毎年やっていればな、初めのうちは面白くても飽きてくるもんだろ。ふわ〜あ。」
ニッグは大あくびをしてオザにあきれた目を向ける。

「お前もよく飽きないもんだな、これで七度目か?」
「ああ、面白いじゃないか、なんたって究極の召還魔法だ。それに異世界の布は物を問わず高く売れる。」
「商売熱心、ご苦労なこった、あいにくオレにとっちゃ果物なんてどこの世界も変わりゃしないんでね。」
「っと、お前と話している場合じゃない、ランクルーブ広場で夕方からだったっけ?それじゃ行ってくる。」
「はいはい、アシェナの神のご加護がありますように。」

いってらっしゃい。と、ニッグはもう小さくなったオザの背中を見送りながら
ニッグはいい加減怒り出したエルフ達の対応をし始めたのだった。

21F世界猿:2004/06/13(日) 06:48 ID:qUq6iUEM
10年ほど前からか、この世界は大きく動いていた。
アジェント王国のある大陸、地球で言えばユーラシア大陸に位置も形も大きさも一致するだろう。
その大陸の中央部、アジェントの西側に、一つの国家が発生した。
バルト帝国と名乗るその国は機械や科学、黒い肌を嫌うアシェナ聖教によって迫害されていた
ドワーフやダークエルフを保護することで、高い技術と魔法技術を得、急激にその勢力を増していた。
彼らが否定するアシェナ聖教を国境とし、大陸東部一帯を支配する強国であるアジェントと帝国の
対立は当たり前といえば至極当たり前のことであった。

22F世界猿:2004/06/13(日) 06:49 ID:qUq6iUEM
日に日に増す帝国の脅威、機械を否定し、魔術に頼りっぱなしであったアジェントは、
帝国に対抗するために、ある「手段」を用い始めた。
それが「召還」。異世界のものを召還する技術である。
詳しい説明は割愛するとして、もとはエルフの技術であるこの召還は魔法の素であるマナが存在しない世界の島を召還。
その魔法が使えない(=軍事力の弱い)島に侵攻しその魔法による軍事力で制圧、
原住民を奴隷とし、資源を略奪するという帝国も真っ青の残酷なやり方であった。

23F世界猿:2004/06/13(日) 06:49 ID:qUq6iUEM
召還する場所はアジェント東の海、当然奴隷は東海岸の町へと連れて行かれる。
このように召還は異世界の奴隷の売買というラーヴィナの裏の顔を作り始めていた。
そして国民達の間でこの「異世界の奴隷」が当たり前となった頃、
アジェントにとって大きなの誤算が起きたのだった。

時は王国暦972年6月現地時刻1時20分、日本が召還される6時間前のことであった。

24F世界猿:2004/06/13(日) 06:51 ID:qUq6iUEM
レポートの副産物のせいもあって、誤字が多いと思いますが、
投下終了です。
さて、さっさとレポートを仕上げ…られる量じゃねぇなぁ…。

25名無し三等兵@F世界:2004/06/13(日) 20:01 ID:LgjpIS.M
おお、奴隷戦争ですか。一番怖いのは、開戦初期と状況判明後でしょうねー。
ワクワクしつつまっとります。

26F世界猿:2004/06/14(月) 21:21 ID:qUq6iUEM
沖縄西の海上。
黒い艦隊が尖閣諸島周辺海域へと向かうべく海を切り裂き進んでいた。
特に目を引くのは「こんごう」人類英知の結晶であるイージスシステムを採用した艦である。
と、言っても第一世代イージス艦。それ以上の性能を誇る物も現れ始めているのだが。

27F世界猿:2004/06/14(月) 21:22 ID:qUq6iUEM
その甲板で沈み行く夕日の光に目を細めながら青島二等海尉は物資の点検のため、部下を率いて歩き回っていた。
「もう日が沈むのか…、ずいぶん早く感じるな。」
「それは訓練ばかりの毎日よりもこうやって海に出てた方が早く感じるに決まってますよ。」
部下にタメ口を聞かれるのはまだ防衛大学を出たばかりの若造幹部だからか、
それともその気さくな性格からか。しかし青島はそれを咎めもせずに笑って返した。
「それにしてもなんでこんな重装備で行くのでしょうかねぇ、戦闘は起こらないんじゃないんですか?」
そしてその口調を直さないまま佐藤二士は続けた。

28F世界猿:2004/06/14(月) 21:23 ID:qUq6iUEM
戦闘は起こらない。
こう言われる今回の彼らの任務は非常に単純の物だった。
尖閣諸島沖海底油田開発団の護衛。
佐藤二士が重装備過ぎるというのも無理は無い、
127ミリ単装速射砲1基、20ミリCIWS2基、
Mk41VLS(スタンダードSAM、アスロックSUM)2基・90セル、
3連装短魚雷発射管2基、ハープーンSSM4連装発射筒2基。
これだけの装備を持つ戦艦達なのだ、戦争に行くのでもないのにこれは重装備過ぎる。
軍国主義への始まりではないのか、が左翼やマスコミの言い分でもあった。

29F世界猿:2004/06/14(月) 21:23 ID:qUq6iUEM
さすがにこれには青島二尉も少し怪訝そうな顔をした。
今回の出港の際も彼らは自称平和団体達の熱い見送りを受けた、それを思い出したのである。
「中国の過激派の襲撃の可能性がある。ほんの一滴でも国民に血を流させるわけには行かないんだ。」
「…そうっすか、外交でそいつらを抑えてもらうことは出来なかったんですかね。」
「無理を言うな、本来なら海底油田開発だってとても出来ることじゃないんだ。
外務省には感謝しなきゃならない、それよりもさっさと仕事にもどれ。」
青島は佐藤を軽く小突くと外務省に入っていった友人のことをふと思った。
防衛大に入るという自分を最後まで一緒に東大に来い、と言って説得しようとした男。

30F世界猿:2004/06/14(月) 21:25 ID:qUq6iUEM
その男から逐一中国との交渉のことを聞いていたため青島はこの問題については人並み以上に詳しかった。
なんでも外務省では過労死したものが2名出たとか、血尿、胃潰瘍は当たり前だったとか恐ろしい話を聞かされたが、
結局大規模な経済援助をする代わりに中国は尖閣諸島を放棄するということで決着がついたらしい。
これは外交三流で通っている日本からすれば大金星であった。
この大規模な艦隊は、その祝勝会という意味合いも含んでいるようであった。
今度うちの基地の秘伝激辛カレーでも食わせてやろうかなどと、
「胃潰瘍になった」と言っている友人の言葉を思い出しながら考えていた。

31F世界猿:2004/06/14(月) 21:26 ID:qUq6iUEM
「お疲れ様。」
ぼうっとそんなことを考えていると突然肩を叩かれ青島は驚いて後ろを振り返った。
「か、狩野海将補!」
その相手に気づくと慌てて十度の敬礼と呼ばれるお辞儀をする。
「いやいや、そんなにかしこまる必要は無い。」
「は、はい。」
「青島三尉…だったかな、がんばってくれ。」
「は、有難うございます。」
再び敬礼を返すと、青島はこの艦の艦長が自分の名を覚えていてくれたことに少なからず感動していた。

32F世界猿:2004/06/14(月) 21:26 ID:qUq6iUEM

狩野海将補
現場主義を貫きながらもその有能さをもって海将補まで上り詰めた人物。
温厚ながらその決断力、きめ細やかな部下への気配りで現場の自衛官達には圧倒的な人気があった。
しかし
「狩野海将補…僕の階級は、二尉です…。」

彼の唯一の弱点は忘れっぽいところだ、と青島は思ったのであった。

33F世界猿:2004/06/14(月) 21:28 ID:qUq6iUEM
投下終了です。
現実逃避の産物なんで
見苦しいと思いますが許して…( ;´Д`)

34F世界猿:2004/06/14(月) 21:29 ID:qUq6iUEM
次回(三話)には遭遇を書けるといいなぁ。

35F世界猿:2004/06/15(火) 21:21 ID:qUq6iUEM
前回の出来の悪さに愕然。
読んでくれている人はいるのかと思いつつ投下。

イージス艦「こんごう」艦橋の一角にある艦長席。
狩野海将補はそこで一人物思いにふけっていた。
長い長いエネルギー庁の官僚との打ち合わせを終えて少し休憩、と言ったところでもある。
今でも少し目を閉じるだけで軍人と言って見下した態度をとっていた
二人の男の顔が悪夢のように思い出された。
と、いっても軍人が見下される国など世界どこを探しても日本だけだろうが。

36F世界猿:2004/06/15(火) 21:22 ID:qUq6iUEM
「実りの多い穂ほど頭を垂れる、と言ったものだが。」
少なくともあの二人の頭には実りが少ないと思われた。
この艦隊の司令としてああはなるまい、と心に誓う。
もはや外には太陽の光はなく、代わりに満天の星が輝いていた。
日本ではこんなものは見れないな。と、ベテラン隊員の誰かが感慨深げに言ってたことが思い出される。
「私の故郷ではアレくらいは見れたんだがな…。」
今の季節だと見られるのはふたご座、北斗七星、オリオン座、そして北極星を含むこぐま座、言ったあたりか。
ずいぶんとロマンチックになっている自分に気がつき、狩野は一人苦笑した。

そのとき自分がこの星空を明日から見られなくなることを狩野は知る由も無かった。

37F世界猿:2004/06/15(火) 21:22 ID:qUq6iUEM
時刻7時。
「気象レーダー、ブラックアウト…?」
こんごう内戦闘情報センター(CIC)で担当員が「この世で最もありえないこと」の一つを呆然と呟いた。
なんだ…、こりゃあ?
青島は甲板の上で呆然と空を見上げていた。
星が、無い。それどころではない、月すらも無いのだ。
まるでこの艦隊全体が真っ暗な箱の中にすっぽりと入れられたようだった。
始めは雲のせいか、と考えた。しかし、それならばこの船からの光でかすかでも雲は見えるはず。
ひとまずこういうときはどうするべきか、決まっている。上官に報告である。
青島は慌てながら艦橋へと急ぎ、佐藤二士に出くわした。
彼も負けず劣らず慌てた顔をしているが、今の自分の見た状況以上の異変はあるまい。
そう思った青島の思いは容易く破られた。
「あ、佐藤二士!聞いてくれ!」
「こんな所に居た!それどころじゃないっす二尉!レーダー系統が全部ブラックアウト、衛星からの反応も無いんす!」
「何!?」
冗談ではない、レーダー、衛星によるGPS、これらを失うということは「目」を失う、ということである。
そしてそれはすなわち漂流を意味する。
もしや、今見た状況と関係があるのかもしれない。
上司として出来る限り混乱の極みにある自らを落ち着かせようとする。
「佐藤二士、司令部に伝えてくれ。全ての星、月が消滅している。」
「は・・・?」
呆然とする佐藤の横を通って青島は艦橋へと歩を進めた。

38F世界猿:2004/06/15(火) 21:23 ID:qUq6iUEM
「どうなっているんだ!先ほどから聞く報告は皆悪いものばかりじゃないか!」
エネルギー庁の官僚の一人、福地が狩野司令を掴み掛からんばかりの剣幕で怒鳴りつけていた。
しかし狩野はそれを馬耳東風と聞き流し、入ってくる報告を聞きつつ、警戒命令を出していた。
「聞いているのか!?」
その様子に腹を立てたのか福地は狩野の肩を掴む。
しかし瞬時にその腕は一部でサイレントゴリラとあだ名を付けられている宮野副長に捻りあげられた。
「…。」
「な、何をするんだ!…ハン!所詮は軍人と言うわけか?」
「やめたまえ、宮野副長。」
「は。」
「はぁっ!はぁっ!…貴様、何のために4兆円も防衛費を割いていると思っているんだ、こういうときの為だろう!」
宮野が手を放すと同時に福地が狩野に食って掛かる。
それに対し狩野はずい、と福地に近寄った。福地は大男ではないが小柄な狩野とはずいぶん体格差があった。
「な、なんだね…。」
しかしそれでも狩野の眼力は福地をうろたえさせる強さがあった。
「いま、状況把握をしています。これ以上口を出さないでくだされますか。」
そして口調こそ丁寧だったが、狩野の一言は福地を黙らせるのには十分な迫力を持っていた。
「(全員無事で居てくれよ…。)」
普段は無神論者の狩野だったが今はどんな神にでも祈りたい気持ちであった。

39F世界猿:2004/06/15(火) 21:25 ID:qUq6iUEM
投下終了、次回からはペースが落ちると思います。
元々遭遇はF世界視点でやりたいから切る予定だったんだが
遭遇どころか転移すら書ききれてない…orz

40F世界猿:2004/06/17(木) 19:43 ID:qUq6iUEM
なんか迷惑になっている気がする。
読んでいて更に続けても良いというお前ら手を上げてください。
もうやめろカス、という人は遠慮なくおっしゃってください。

41名無し三等兵@F世界:2004/06/18(金) 14:17 ID:b59.LLtU
管理者がほおりっぱなしの分家にようこそ! 続けてていいんじゃないかな?

42名無し三等兵@F世界:2004/06/18(金) 14:23 ID:LgjpIS.M
最初に読んだ物ですが、続けてもよろしいかと。
自分も書きかけでやめちゃったの多いですが・・・

43F世界猿:2004/06/18(金) 21:07 ID:qUq6iUEM
ありがとうございます。
じゃあ続けます、ご意見、ご感想頂けると嬉しいです。

てなわけで投下。

44F世界猿:2004/06/18(金) 21:08 ID:qUq6iUEM

それから何時間たったであろうか、数日とも、数年とも感じられるような時間であった。
しかし時計は星が消えたその瞬間から時間が一秒もたっていないことを表していた。
残酷にも人間の文明においてありえないことを文明の粋が証明したのだ。

45F世界猿:2004/06/18(金) 21:09 ID:qUq6iUEM
この事故に自衛隊員達は実戦を経験していない危機に弱い部隊と散々馬鹿にされてきた自衛隊の今までの風評を覆し、比較的おちついて対処した。
しかしそれも自衛隊史上、いや、人類史上初めての経験に疲れ切った彼らにはどうでも良いことであった。
空には星が戻り、狩野の元にもレーダーの復帰などの明るい報告が次々と飛び込んできた。
先ほど宮野も隊員達の労をねぎらうために艦橋から出て行った。
「レーダー類回復しました。」
「僚艦、全艦健在!死傷者はなし!」
狩野は安堵のため息をついた、仲間が無事、これほど喜ばしいことはあるまい。
まあ福地だけが極度の興奮と恐怖で失神してしまったが。

46F世界猿:2004/06/18(金) 21:09 ID:qUq6iUEM
「まだ衛星は回復しないのか?」
「はい、というよりもまったく反応がありません。」
もう慣れてしまったのかまったく事務的に言うCIC。
「と言うことは当然GPSも―――」
「使えません。」
狩野が言い終えるよりも早く言われ狩野は苦笑し、艦橋内には笑いが起こった。
しかしそう笑ってばかりもいられない、GPSが使えないのだ。

47F世界猿:2004/06/18(金) 21:10 ID:qUq6iUEM
「とりあえず本国に連絡する―――」
「司令、本国、佐世保基地から通信です。」
―今日はずいぶんと先手を取られる日だな―
と思いつつも本国が無事なことに安堵する。嵐で片付けるには大規模だが何かの間違いだったのだろう。
「はい、イージス艦「こんごう」艦長、狩野海将補です。」
「狩野海将補か、そちらは無事か!?」
「はい、日本でも何かあったのですか?」
「いや、それが―――」
基地からの通信を要約するとこうであった。
・本土でも艦隊と同じように真っ暗闇に閉ざされた。
・戻ったは良いが急に海外との連絡が取れなくなった。
・日本領空内の飛行機は向こうの管制官の応答も無いのでとりあえず戻した。
・海上保安庁に見回らせているが日本領海内は特に異変は無い。
・衛星の反応が無い(こちらも知っている)
・急に大規模な核戦争でも起こったのかと思ったが、放射能の反応も無い。
・そして

48F世界猿:2004/06/18(金) 21:10 ID:qUq6iUEM
「そして?」
「そちらでも分かるはずだ、空を見てみたまえ。」
「は?」
空に星は戻ってきた、とい報告を受けている、何を今更、と言うものなのだが。
「し、司令!」
沈黙の巨獣、と一部部下の間で呼ばれてさえいる宮野が慌てたような声を上げる。
「どうしたのかね宮野副長。」
「それが甲板に出たところ…」
動揺を抑えきれないと言った調子で宮野は続けた。
「月が、血のように赤いのです、そして自分は天体観測が趣味なのですが…。」
月が紅いことよりもこの巨体が天体観測が趣味と言うほうが意外なのだが。…と思わず声に出しそうになる。
「星座が一つも一致しないどころか北極星すらありません!」
「そうか。」
立て続けに起こる信じられない事態に対し急に冷静になってきた自分を感じる狩野であった

49F世界猿:2004/06/18(金) 21:10 ID:qUq6iUEM
「そちらでも見たようだな。」
「はい。それでこの事態に対する政府の結論は?」
夜で民衆の間で大規模な騒ぎになっていないのが唯一の救いだが、と前置きして次の言葉は紡がれた。

「内閣は、この日本は地球以外のどこかに転移した。と言う結論を出した。」

50F世界猿:2004/06/18(金) 21:11 ID:qUq6iUEM
投下終了、あんま自衛隊のことには詳しくないから、こうも自衛隊サイドが続くと
ちっとキツかったり。
自衛隊に詳しい人からのツッコミが欲しい…。

51名無し三等兵@F世界:2004/06/18(金) 22:06 ID:4Xq42jzs
本スレなら陸自限定で頼めば突っ込みをくれる酔狂な人がいるけど、おすすめしない

52S・F </b><font color=#FF0000>(7jLusqrY)</font><b>:2004/06/18(金) 22:20 ID:LgjpIS.M
さて、いい加減名無しもやめますかね。
更新早いですネー。どうぞ頑張って下さい。
議員先生が嫌キャラ候補ですが、どんな感じで働くことやら・・・

53F猿:2004/06/18(金) 23:10 ID:qUq6iUEM
うお!S・Fさんがレスくれた!
最近の風潮に反して自衛隊=正義物で行く予定なんで、
そうですね国内に嫌キャラ作らないと一方的な話になっちゃうし…。
当面の自衛隊の敵はF世界というよりも…。

てなわけで頑張ります。

54政府広報課 </b><font color=#FF0000>(.iwy/iJk)</font><b>:2004/06/22(火) 03:19 ID:wzKBz.I2
がんがれ〜!

55F猿:2004/06/22(火) 21:01 ID:qUq6iUEM
「冗談は程ほどにして下さりませんか?」
狩野は思わずそう口に出していた。
「冗談?頭の固い奴らにしてはなかなか的確な判断ではないか。」
「……。まあ、そう仮定しましょう。どちらにしろそれに似た状況であることには変わりは無い。」
狩野は頭痛がしてきた頭を抑えながら答えた。
「それで、政府の対策は?」
向こうの声が急にまじめな口調に戻る。
「ああ、食料はこれから休耕田を必死に復帰させるらしい。今が冬だったのが幸いしたな、比較的うまくいきそうだ。
問題は…資源。特に石油だな、これは君達にかかっている。」
「では、我々の任務は…。」
「ああ、続行だ。一秒でも早く施設を完成させてくれ。」
どんなに急ピッチで作ったとしても尖閣の石油の供給体制が整うまでには最低でも一年はかかる。
そして備蓄石油はもって6ヶ月。残りの分は備蓄石油が持っている間に石炭を使った人口石油で食いつなぐ。
とのことだった。
「そしてもう一つ任務がある、この世界の情報を任務の途中、出来うる限りでかまわない、収集してくれ。」
「了解しました。」
「成功を期待する。」
ずいぶんと大変な任務になってしまったな、狩野は苦笑が癖になってしまったようだった。

56F猿:2004/06/22(火) 21:01 ID:qUq6iUEM
「青島二等海尉。」
次の日の朝、青島は寝所から起きだすとすぐに声がかけられた。
「ん?天野二曹、どうしたんですか、こんな早くに。」
「いえ、昨日、二尉の近くから離れてしまったので、」
「ああ、そのことですか。」

天野二等海曹はベテラン中のベテラン隊員で、佐藤など若い隊員が多い中、青島部隊の要となっていた。
その身にも色々噂が多く、イラクで人を殺したことがあるとか、海外の外人傭兵部隊にいたことがあるなど、
しかし彼の身にまとう武士的な雰囲気はそれらの噂を肯定こそすれ、否定するものではなかった。
そして昨日彼は混乱する現場において、何人もの幹部に代わって指揮を執っていたのだ。
「天野さんは、昨日現場で混乱を収めていたじゃないですか。」
そして青島は彼に、普通の任務だけではなく、もう一つの任務が課されている事に薄々感づいていた。
「いえ、混乱した現場だからこそ、二尉の傍にいるべきでした。」
そして青島はそれに少なからずコンプレックスを抱いていた。
「……。」
「……。」

57F猿:2004/06/22(火) 21:07 ID:qUq6iUEM
「あっ!二人とも!」
気まずい沈黙を破ったのは横から入ってきた佐藤であった。
「どうした佐藤、大声を出すな。」
「あ、天野さん、聞いて下さい!」
余談だが、ここまでの性格の違いがあるにもかかわらず佐藤は天野を慕い、天野は佐藤を可愛がっていた。
佐世保基地七不思議の一つに数えられているとかいないとか。
「漂流者が見つかったんです!」
「…。」
「…。」
「…。」
再び沈黙が流れる、多少先程と意味合いが違うが。

こいつはバカかと、アホかと、と小一時間問い詰めたい、といった顔をして二人は佐藤を見た。
「いや、漂流者くらい普通だろう。今度の混乱で沈んだ船もあるだろうし。」
青島の突っ込みに佐藤はもう一度叫んだ。
「いや、それが漂流者の耳が長いんです!」

ナ・・・ナンダッテー(AA略)

58F猿:2004/06/22(火) 21:18 ID:qUq6iUEM
政府広報課さんまで・・・イヤッホウ!!
投下終了です。
最後の方のは気にせんでください。

59F猿:2004/06/24(木) 06:40 ID:qUq6iUEM
「そんなことより鮫の話しようぜ。」
「あ、青島さん?」
「・・・あれ、何を言ってるんだ俺は。」

F世界編です。

60F猿:2004/06/24(木) 06:41 ID:qUq6iUEM
日本転移頃、キャラベル船「シャンク」船長室。
ラーヴィナの領主の部下、ジファンは我が世の栄華を味わっていた。
与えられた任務は「奴隷の収穫」
5年前に召還した島から奴隷をまた再び収穫してくるのが彼の任務であった。
しかしこんな任務など子供でも出来るような任務であった、何しろ召還された島―奴隷島と呼んでいるのだが、
には魔法が無いのだ、魔法が無い以上、使えるものはせいぜい弓矢のみなのだ、
今までもファイアーボールあたりを遠距離から連発してやればあっという間に降伏してきた。
何よりも一度制圧した島達は我が国の圧倒的な力に怯えきっている。すぐに奴隷を差し出すだろう。

61F猿:2004/06/24(木) 06:41 ID:qUq6iUEM
いままで6回の召還を行ったのか、マナの存在しない世界の島を呼び出すこれは、いずれも程度の差こそあれ成功していた。
一度大規模な鉄山が見つかって王家の連中が大喜びしていた事もあったし、
最後まで必死に抵抗する連中共で、結局ほとんど皆殺しにしてあまり奴隷も取れないことがあったか。
しかしそれも即物的、刹那的人生を送る彼にとってはどうでも良いことだった。

62F猿:2004/06/24(木) 06:41 ID:qUq6iUEM
「魔法が使えないと言うのは不便なものだなぁ?」
「あぐっ・・・。」
隣にいた奴隷の女を無理やり抱き寄せる。
最初は抵抗した女ももはや抵抗する気も失せたようだった。
その態度が気に入らずジファンは女の長い耳を千切らんばかりにつねりあげた。
「うぐぅっ!」
さすがに浮かべる苦痛の表情、それがジファンの心を満たした。

この女の種族の特徴は外見がエルフ、そうあの忌々しい高慢なエルフ共にそっくりなのだ。
同盟などという、訳の分からないもののため、エルフ達への手出しは禁止されている。
ジファンはエルフ達への憎しみをこの女にぶつける事で晴らしていた。
「恨むんだったら、奴らにそっくりな自分達を恨むんだな?」
思い切りナイフを振り上げる、女の身が強張った。

63F猿:2004/06/24(木) 06:42 ID:qUq6iUEM
「待ってください。」
ジファンがナイフを女の胸に目掛け突き刺すその寸前、掛けられた声にジファンは顔を上げた。
見るとちょうどその忌々しいエルフ、「セフェティナ」とか言ったか?
が強張った顔をしてこちらを睨みつけていた、大方自分達にそっくりなこの奴隷が嬲られているのを見て我慢ならなかったのだろう。
「どうしました?セフェティナ魔術士官殿。」
ジファンの出す猫撫で声にセフェティナは嫌悪感をあらわにした。

64F猿:2004/06/24(木) 06:42 ID:qUq6iUEM
「奴隷への虐待は程々にして置かれたらどうですか?兵への士気に響きます。」
「ほう?セフェティナ殿には私の行動に意見する権利は無かったはずですが?
船の上では食料が自由には行かないのです、女くらい自由にしても良いでしょう?」
なるべく凛とした口調で話そうとするセフェティナに対し、ジファンは気味の悪い厭味ったらしい声を出した。
「いえ、クーディビッヒ大神官様と、エスフィリーナ魔術大臣補佐様に極度の虐待が有った場合止める様に、
とのご命令を受けましたので。」

65F猿:2004/06/24(木) 06:43 ID:qUq6iUEM
ジファンは片眉をピクン!と上げ女を苦々しげに床にほうり捨てた、ドスッ、という鈍い音が響く。
弱き者への慈愛を説くアシェナ聖教にとって奴隷への虐待はあまり推奨できるものではなかった。
そしてまたジファンも、いやアジェント王国国民のほとんどはアシェナ聖教の教徒である。
その大神官の命令となれば、聞かないわけにはいかなかった。
「はん、これでいいのか?さっさと行け!」
「・・・、それでは。」
船長室から出て行くセフェティナをジファンは苦々しげに見つめていた。

66F猿:2004/06/24(木) 06:43 ID:qUq6iUEM
「ふぅ・・・。」
甲板に出たセフェティナは潮風にその金の髪を任せながら月を眺めていた。
真紅の月は海面に美しい像を映し、またセフェティナはこの月がなによりも好きだった。
この月がストレスも何もかも洗い流してくれる。そう思えさえした。
「なぜ・・・あんなことができるのだろう。」
ふと口をついて出る言葉、子供のころからアシェナ聖教を教え込まれながら(同族には)優しいエルフの中で育ってきた彼女には、
ジファンのするようなことは信じられないことだった。
セフェティナが魔術士官として森を出てから大して時間は経っていなかったが、
彼女は自分がいかに恵まれた環境に生きてきたかを痛感していた。
国中いたるところで劣悪な条件で働かされる奴隷達、どれもアシェナの教えに反するものではないのか、
とりとめもなく物思いが続いてしまう。

67F猿:2004/06/24(木) 06:43 ID:qUq6iUEM
「エルフも、人間も、奴隷も、ダークエルフもドワーフも、皆幸せに暮らすことは出来ないのかな・・・。」
多種族を嫌うエルフの中ではセフェティナのこの考えは異端であり幼い考えであった。
「きっとその内アシェナの神様が私達に天使様を遣わしてくれるはず・・・。」
この世界では世間知らずの貴族のお嬢様くらいしか言わないようなアシェナの神話を呟いた時、
不意に後ろに気配を感じセフェティナは後ろを振り返ろうとした、が。

68F猿:2004/06/24(木) 06:44 ID:qUq6iUEM
ドン!
「え…っ?」
強い衝撃を背中に受け、セフェティナの身体は宙に踊り、そのまま海へと叩きつけられていた。
「あうぐっ!」
盛大な水しぶきがあがり体中に強い痛みが走る。


「・・・何故?」
最後に見えたものはニヤニヤした薄気味悪い笑顔、ジファンの腰巾着である船員の一人であった。

69F猿:2004/06/24(木) 06:45 ID:qUq6iUEM
投下終了です。
長いな・・・。
二つに分けたほうが良かったかもしれない・・・。

70名無し三等兵:2004/06/24(木) 20:36 ID:BgBAZcJE
これほど良い話なんて随分と久しぶりです。
これからもこんな感じで続きを期待しています。

71S・F </b><font color=#FF0000>(7jLusqrY)</font><b>:2004/06/25(金) 08:03 ID:LgjpIS.M
乙です。ジファンは後で爽快に吹き飛ばされてくれそう。
もしくはバレて大司教からの破門コース?

では、頑張って下さい。

72名無し三等兵@F世界:2004/06/26(土) 08:23 ID:vRjiTcVc
まれに見る良作キター!
続き期待してます

73F猿:2004/06/26(土) 18:49 ID:qUq6iUEM
青島「オレが天野さんに守ってもらえるのは主人公特権だからだ!」
佐藤「んなわけないだろ青島さん。というよりあんた主人公だったんですか?」
青島「佐藤お前!言って良いことと悪いことがある、歯を食いしばれ、修正してやる!」
佐藤「エゴだよそれは!」
天野「なんなんだこのテンションは・・・?」

というわけでやっと、やっと遭遇編に入ります。

74F猿:2004/06/26(土) 18:51 ID:qUq6iUEM
甲板にはすさまじい人だかりが出来ていた。
「なんだよもう漂流者はいないのかよ、すっげぇ美人だって聞いてきたのに。」
「なんでもこんな大きな宝石を着けた篭手みたいなのを右手に付けてたらしいぜ?」
「中国人とかじゃないのか?偶然密入国してたとか。」
「それはないだろ、だって耳がすっげー長いんだろ?」
「あのメルヘン国家中国だったらありえるんじゃね?」
甲板では若い野次馬隊員たちが口々に勝手なうわさを立てている。

そんな気楽な彼らに対し狩野、宮野、福地など上層部が願った彼女が中国人や韓国人なのではないか、という考えは
彼女の長い耳と、その妙な服装にいとも容易く打ち砕かれていた。

75F猿:2004/06/26(土) 18:53 ID:qUq6iUEM
青島たちが甲板に着いた時には、もう漂流者は医務室に運ばれた、とのことで、甲板にはもうまばらにしか人はいなかった。
「もう漂流者は運ばれたみたいだな。」
「そのようです、青島二尉。」
青島は手で前髪を掻きあげる、それは青島が考え事をする時の、いつもの癖であったのだが。
「天野さん、どう思う。この漂流者。」
「どうもこうも見てみない事には分かりませんが、ただ昨夜全艦放送であったようにこの世界が今までと別の世界なら」
「その世界の人間と見たほうが妥当、ってことか。」
「はい。」
「・・・これでいよいよ疑いようも無くなったな。この世界は俺達の世界じゃない。」

76F猿:2004/06/26(土) 18:54 ID:qUq6iUEM
「こんごう」内医務室
「ここ・・・は?」
セフェティナが目を覚ますとそこはベッドの上であった。
見知らぬ天井、それらは見たこともない素材で出来ていた。
生きていたことに安堵し、何よりも早く、自分の右腕を確認する。

あった。

マナをコントロールするための制御石を埋め込んだガントレット。
もちろんエルフ製でこれさえあれば多少のことがあっても何とかなるだろう。
というよりもこれが無くては高度な魔法は扱えない。
腕が千切れでもしない限り外れないようにしておいたのは正解だった様だ。
元々はジファンに奪われないための処置だったのだが。

77F猿:2004/06/26(土) 18:54 ID:qUq6iUEM
「おや、目が覚めたようだね。」
「えっ?」
白衣の男に突然声を掛けられセフェティナは飛び起きた。
「いや、別に驚く必要はない、ここは日本自衛隊護衛艦隊旗艦「こんごう」の医務室だ。」
ジエイタイとかゴエイカンとか良く分からない言葉が出るが、ここは船の中のようだ。
しかし船にしては全然揺れが無い、もしかしたら艦と呼ばれる屋敷の中かもしれない。
「と、言葉は通じているのかな?」
そしてもう一つのことが分かった。
「はい、通じています。」
言葉が通じる、これはあることを表していた。
この人たちは、召還されたんだ。
よく分かっていない天変地異の力を利用する召還だが、なぜか召還されたものたちは皆言葉がこちらと通じるのだ。
そしてそれはすなわち遅かれ早かれ奴隷となる人々、と言うこと。

ジファンに虐待されていた奴隷の女性を思い出し胸が痛む。
罪も無いのに殺されそうになっていた人、彼女は無事なのだろうか?

78F猿:2004/06/26(土) 18:55 ID:qUq6iUEM
「良かった。何で言葉が通じるのかは置いておいて、少し質問したいことがあるんだけど、いいかな?」
セフェティナがそれに答える前に黒い箱が鳴いた。
「!!!?」
「はい、こちら医務室、沙良田ですが。」
それを白衣の男が手に取ると箱は鳴くのを止め、男は朗々と一人芝居をはじめた。
「(びっくりした・・・。)」
「はい、はい。」
「???」
何に返事をしているのか見当がつかない、が男は何かと会話しているようだった。
魔法ということはありえない、
魔法の素となるマナの無い世界から来た彼らにはマナを操る術が無いのだから。

79F猿:2004/06/26(土) 18:56 ID:qUq6iUEM
セフェティナが不思議がっている間にも男の一人芝居は続いていた。

「え?レーダーに艦隊が映った?」

「ーーー!!!」

艦隊

セフェティナの脳裏にはっきりとジファンの顔が映った。あの気味の悪い蛙の様な笑顔。
「けど・・・木造船だって?一体なんで・・・で、はい、彼女の元いた船の可能性もありますね」
男の話している言葉はもはやセフェティナの耳には届いていなかった。

80F猿:2004/06/26(土) 18:58 ID:qUq6iUEM
投下終了です。
感想&声援有難うございます。
少し間が空いたのに展開遅くてすみません。

来週中には・・・に入るはず。

81名無し三等兵@F世界:2004/06/26(土) 19:05 ID:Gu0Gep4w
乙デス

82名無し三等兵@F世界:2004/06/26(土) 20:21 ID:wCy2IFCE
F猿さんお疲れです
展開が速くて良いですね

83F猿:2004/06/27(日) 09:30 ID:qUq6iUEM
すんません、番外編なんで読み飛ばしても結構です。
本編は>73〜>79にあります。

84F猿:2004/06/27(日) 09:30 ID:qUq6iUEM
「地震・・・?」
その知らせを聞いてから一週間も経たないうちに俺は葬式会場にいた。
写真の中で微笑んでいる父さんと母さん。
二人でちょっと旅行に出かけてくる。
そう言って出かけていった二人は変わり果てた姿で帰ってきた。
「偶然」起こった地震に巻き込まれ。
「ん、いってらっしゃい。」
なぜあんなぶっきらぼうな見送りをしてしまったのか。
なぜもっと話しておかなかったのか。
涙ももう枯れ果てていた

85F猿:2004/06/27(日) 09:31 ID:qUq6iUEM

返ってきた成績表に目を通す。
順位の欄には見慣れた「1位」の文字がある。
そしてこれを褒めてくれた二人はもういない。
教師達のわざとらしい賞賛ばかりが耳障りだった。
教師も友人も皆、「テンサイサマ」と俺に距離を持っていた。
あの二人がいないんだったらこんな頭要らない、邪魔になるだけなんだ。

86名無し三等兵@F世界:2004/06/27(日) 15:41 ID:qUq6iUEM
しかし教師達は大反対をした。
それだけの頭脳を持ちながらもったいない、と。
もったいない・・・っとはなんのか。
人殺しの大学って何なんなのか。
お前達が父さんたちを助けてくれようとしたのか?
ただお前らは学校の箔付けに俺に東大に入ってほしいだけだろう?

あの人たちは瓦礫の中で父さん達を必死に助けようとしてくれた。
お前達はこの悲しみを受験勉強で忘れろなんて言っただけだ。

87F猿:2004/06/27(日) 15:42 ID:qUq6iUEM
自分に向けられる理不尽な期待、誰も助けてくれようとはしない。
あの人たちなら助けてくれる?自衛隊なら・・・。
淡い期待もあった。


どこの組織も変わらないのだろうか?
俺を将来の幕僚として期待しているのか、俺はどこへいってもお客様扱い。
直属の部下という建前まで使って護衛がそばについている。

88F猿:2004/06/27(日) 15:43 ID:qUq6iUEM
そして俺は今、紅い月を眺めている。
ここがどこなのか誰にもわからない。
ただ分かることがある。
ここなら俺は、俺でいられる。
生きるか死ぬか、その境界線でなら。

俺の名は青島、青島秀司。
俺は64式7.62mm自動小銃を敵へと向けた。

89F猿:2004/06/27(日) 15:45 ID:qUq6iUEM
途中で書き込めなくなったんで、間が開いちゃいました。

これは今書いてる奴の一番最初に書いた奴なんで、
今の話とちょっと矛盾してるところもあるんですが投下強行。

90名無し三等兵@F世界:2004/06/27(日) 21:11 ID:qUq6iUEM
防衛大学に入ったのは学費を払う余裕が無いからでもあった。
準国家公務員として給料が貰えるここしか選択肢が無かったのだ。

85と86の間にこれ入れといてください。

91S・F </b><font color=#FF0000>(7jLusqrY)</font><b>:2004/06/27(日) 21:31 ID:LgjpIS.M
初期設定からすると、青島は「やばいことを考えつく嫌参謀」系の
キャラですかね?政治的に配慮され、それでいて一発逆転な案が
出てきそうな危なさ。

92F猿:2004/06/28(月) 19:03 ID:qUq6iUEM
青島は初期設定よりかなり明るく前向きになってます。
最初は善悪を考えなければ最良の手段をためらい無く実行していくキャラのつもりだったんですが。

さすがにそれが主人公はまずいだろう、と。

93F猿:2004/06/30(水) 19:55 ID:qUq6iUEM
レッツ投下。

94F猿:2004/06/30(水) 19:55 ID:qUq6iUEM
「木造船・・・?」
「はい、おそらく木造船団と思われます。技術レベルは13〜15世紀、形状、大きさから排水量は50トン前後かと。」
観測員の言葉に狩野は又起き始めた頭痛に頭を抑えながら、いい加減これは現実なんだと自分に言い聞かせた。
「何隻だ?」
「・・・4隻、ですねまあ標準な数でしょうか。この距離からでは分かりませんが、武装もしているのではないでしょうか。」
狩野はいたって冷静な観測員をすこし奇異の目で見た。もしかしたらとっくのとうに慣れきっているのかもしれないが。
「宮野副長、どう思う?」
「は。なんにせよ、接触をとってみるべきだと思われますが。」
まあ、やれることはそれしかないのだ。情報収集も任務の一つとなっているし、あの少女と関係のある船かもしれない。
「向こうが敵意を示さないことを祈るばかりだな・・・。」

95F猿:2004/06/30(水) 19:56 ID:qUq6iUEM
「司令、漂流者の女性を連れてきました。」
「ああ、ご苦労。」
「・・・ほぅ。」
誰とも無く簡単のため息が漏れる。それだけこの少女は美しかった。
特に女性を見ること自体ほとんど無いこの状況では。数人女性自衛官がいないことも無いのだが、
それは少々女性としては・・・、いや、止めておこう。

狩野は目の前に立つ少女を眺めた。
流れる水のような金の髪に白い肌、碧の瞳、顔の作りはまるで神が全力で作り上げた石造のように端整だった。
どちらかと言うと顔のつくりは色素に反してモンゴロイド系のようだ。
そして嫌でも目に付くその長い耳がその少女が自分達とは違う存在であることをはっきりと示していた。
見た目では18かそこら。
病人服では少々分かりにくかったが胸の辺りの膨らみははっきりと女性のものであった。

外見としてはこのくらいだろうか。

96F猿:2004/06/30(水) 19:56 ID:qUq6iUEM
医務室から連れていかれた所は「カンキョウ」というところだった。
船長室の様な物だろうか。しかしそれにしてもここは広い、彼らは船だというが絶対に嘘だろう。
そこに居たのはオークのような男、そしてそれの隣に座っている大人しそうな小柄な老人だった。
オークのような男がきっと艦長で、老人のほうは執事だろうか。
しかし、艦長にしてはずいぶんと普通の服を着ている。
様子からして彼らは軍人らしいがそれにしては誇りを示す勲章も、序列を表すマントも付けては居ない。

「どうも、私がこの船の艦長、そしてこの艦隊の司令官の狩野海将補です。」
最初に口を開いたのは老人のほうであった。・・・って艦長!?
「は、はぁ・・・。」
この上なく間抜けな声が出てしまう。本当にこのひ弱そうな男が?さすがに疑ってしまう。
「・・・どうしました?」
「い、いえ!私はアジェント王国魔術仕官、セフェティナ・バロウです。お目にかかれて光栄です、狩野閣下。」
とりあえず知っている限りの礼を尽くして対応する。
こんなことなら士官学校でもっと礼儀の授業を聞いておくべきだったと深く後悔するがそんなことを言ってもしょうがない。
「どうも救助いただき有難うございました。」
「いえ、それが自衛隊の任務ですから。」
ジエイタイとはなんなのか、気になるが聞くのも無礼かもしれず、うかつな事はしゃべれなかった。

97F猿:2004/06/30(水) 19:56 ID:qUq6iUEM
しかし、この船は一体何なのか?
今まで召還されて来た島々はほとんど文明といった文明も持っておらずせいぜい弓矢で襲い掛かってくる程度。
しかし今自分の目の前に居る彼らは違う。アジェントの船の何倍もの大きさの船を持ち、トイレ、ベッドなど高度な文明が発達している。
特にベッドに掛けられていた布は今までに無い手触りと美しい光沢を持っていた。
もしこれが国内に流入したら信じられないほどの高値で売れるだろう。
特に驚いたのは鉄をふんだんに使用していること。
鉄はマナを遮る性質を持つのでアジェントではあまり使われていないのだが、この船は良く見ると鉄そのもので出来ているではないか。
魔法も使わず何故沈まないのか、なぜ魔法も無いのにこれほどの文明を持つのか。

なによりもアジェントはこんな船を大量に持つ国にもうすぐ攻め込むのだ。

いくら魔法があるとはいえ、魔法はそこまで万能ではない、魔法に精通するものほどそのことを良く知っている、
逆に知らないものほど魔法の力を過信しているのだ、あのジファンのように。
もし攻め込もうものなら勝敗は目に見えている。
背筋に冷たいものが走った。脂汗が流れるのが自分でも分かった。

98F猿:2004/06/30(水) 19:57 ID:qUq6iUEM
相手はひどく緊張している様子だった。
無理も無い、まったく知らない軍人達に囲まれているのだ。しかしそうしてばかりいる訳にもいかない。
「それで、まず聞きたいことがあるのですが、よろしいでしょうか。」
「は、はい!」
飛び上がるような声を出す少女。
なぜか出会ったばかりの時の妻を思い出してしまった。
こんな風に可愛らしく初々しかったのは始めの一週間だけ、すぐに自分を尻に敷いてしまった人だったが、元気だろうか?

「まず、我々は日本国、という国に属しています。日本国をご存知ですか?」
「ニホンコク・・・?すみませんが知りません。」
少女は首をかしげる。一筋の期待はあったのだが、予想通りの答えであった。
本当はこれから日本の状況を事細かに説明したいところだが、この少女の国が敵に回る可能性もある為、そううかつな行動は出来ない。
さらにもう三十分もしないうちに未確認木造船団とぶつかるだろう。あまり時間も無い。

「詳しい説明は後でしますが、今この船の進路上に船団があるのです。心当たりはありませんか?」
少女はしばらく考え込んだ後、少し目を背けて言った。
「・・・あります。」

99F猿:2004/06/30(水) 19:57 ID:qUq6iUEM
少女からあの船団に関する全ての事情――自分がつき落とされた可能性がある――も含めて、を聞いた時には、
未確認船団はあと、10分という距離に迫っていた。

100F猿:2004/06/30(水) 19:58 ID:qUq6iUEM
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