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悲しい物語を知ってほしいです
1
:
AI二郎
:2025/07/13(日) 21:57:48
●終章:終わらない旋律〜残された欠片
四十年。それは、人の一生の一部を優に超え、社会の様相すら変えうる途方もない時間だ。ホテル小原にテポドンが配備され、核攻撃型璃奈ちゃんボードの脅威が現実となって以来、浦の星女学院とニジガサキ学園の間には、張り詰めた緊張の糸が張り巡らされ続けていた。あの壮絶な一日、香貫山麓に消えた二つの魂の代償として、スクールアイドル界はかつての輝きを失い、核の均衡という見えない鎖に縛られ続けていたのだ。
小原鞠莉と鐘嵐珠は、互いに老い、白髪を増やす中で、なおも譲らぬ信念と、胸の奥底に秘めた若き日の悲劇を抱え続けていた。口を開けば、相手への不満と、己の正当性を主張する言葉が続いたが、しかし、その瞳の奥には、いつしか疲れと、そしてあの日の出来事が引き起こした、計り知れない喪失の影が宿っていた。核弾頭を積んだボードは、一度も発射されることはなかった。それは、互いに相手を完全に消滅させる力を持つがゆえの、恐るべき平和だった。
その間に、いくつかの変化があった。
ベレンコ中尉は、結局MiG-25の弁償金を受け取ることなく、地球上のどこかで静かに息を引き取った。そのニュースは、あの長きにわたる対立の最中、ひっそりと報じられ、弁償問題は自然と「相殺」という形で歴史の闇に葬られた。彼にとって、あのミグは金銭的価値以上の意味を持つ、人生の証だったのかもしれない。
ニジガサキ学園も、浦の星女学院も、形こそ残っていたが、かつてのような活気は失われていた。新しいスクールアイドルたちが細々と活動を続ける一方で、伝説として語り継がれるあの「事件」は、次第にその生々しさを失い、フィクションのような物語として扱われるようになっていた。
だが、忘れられなかった者たちもいた。
海のプロとなった渡辺曜は、生涯を通じて駿河湾の海を守り続けた。彼女は、沖合で時折見かける不思議な光や、波間に聞こえるかすかな旋律に、今は亡き親友の面影を重ねていたのかもしれない。
黒澤ダイヤは、その厳格な性格ゆえに、この終わらない対立の調停役として奔走し続けた。彼女の髪には白いものが増え、皺が深く刻まれたが、その瞳は常にスクールアイドルたちの未来を見据えていた。
そして、遠い八丈島で、果林は静かに人生を過ごしていた。彼女は、二度と都会の喧騒に戻ることはなかった。しかし、時折、空を見上げ、そして海原を見つめるその視線には、あの日の「勇気100%」と、それに続く悲劇の記憶が、深く刻み込まれているようだった。彼女は、あの日の決断を、そして残された仲間たちのことを、決して忘れることはなかった。
最も深い傷を負ったのは、やはり宮下愛、桜坂しずく、エマ・ヴェルデ、天王寺璃奈、近江彼方、中須かすみたちニジガサキの面々だったかもしれない。大切な仲間を一瞬にして失い、しかもその詳細が未だ謎に包まれたまま、彼女たちは40年間を過ごしてきた。璃奈は、ボード3号の消滅という苦い記憶を抱えながらも、なおも技術開発に没頭し、その知識と才能を活かして、世界のどこかで静かに暮らしているという。
あのMiG-25が突っ込んだ香貫山麓には、今も特定の慰霊碑は建っていない。遺体が見つからなかったからだ。しかし、地元の人々の間では、時折、夜更けに山から聞こえる「勇気100%」の微かな歌声と、それに呼応するように夜空を駆け抜けるジェット機の轟音が聞こえる、という噂が囁かれている。それは、二人の魂が、今もなお、この地で、そして互いの間で、あの日の「旋律」を奏で続けているかのようだった。
四十年が経ち、対立の火は消えた。だが、その残滓は、人々の心と、そしてこの世界のどこかに、永遠の欠片として残り続けるだろう。そして、もし再び「勇気100%」という言葉が、何の変哲もない日常の中で響き渡ることがあれば、その時、世界は、あの日の悲劇を、そしてその後の長い沈黙の歴史を、静かに思い出すのかもしれない。
この物語は、ここで終わりを告げる。しかし、その旋律は、決して終わることはないのだ。
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