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"傷だらけの手記"
6
:
ライア
:2023/01/21(土) 17:24:33 ID:myyZEdwU0
[Birth ob Riar](5)
11歳になって迎えた冬。
越冬の際、豊かな王都に比べて貧しい農村地帯はライフラインが断たれるケースが多い。
雪が降り積もり命の危険まで及ぶ気温の中、多くの荷物を運搬するのはリスクの高い仕事。
だが地下からの就業者にとっては、命を天秤に掛けた格好の稼ぎ時。
無論スラムも同じかそれ以上に酷い環境ではあるが、雪が積もらない事を口実に一切手当てが入らないのはいつもの事だ。
今回は遠方110km近く、王都へ多くの野菜や工芸品を収める山奥の村へ支援物資を送ることになった。
元々温暖な地域なのだが、今年は非常に強力な寒気により吹雪が発生し、交通の便が止まる程の異常気象。
特例的に輸送の依頼が来たことで多くの住民が以来すると予想していたが、例年以上に厳しい環境という事で依頼を受けたのは俺だけだった。
面倒なのは距離や環境もそうだが、支給される防寒具にスラム出身であることを示す一種の烙印が押されている事。
結局の所、何処までいっても嫌われ者でなければならないようだ。
最低限の物資と食料をちびちび消費し、本来なら何日もかけて進んでいく。
だがその時は足が張り詰める痛みで睡魔を飛ばしつつ、最低限の休息で予定よりも早く歩を進めていった。
自身の疲労よりも、孤児院に残してきた子供達のほうが気がかりだった。
手足の感覚も薄れ、息も絶え絶えになりつつ辿り着くも、村人たちの態度は普段と変わらない。
"汚らしい"と身体に触れぬ様布袋を手に纏い、泥を払うように荷物を取り出し硬貨を籠へ入れていく。
それを尻目に村外れの凍った河原で食事を摂ったはいいものの、
凍り付いた干し肉と川べりで死んでいた雑魚を白湯に入れただけのスープでは、特段腹も膨れなかった。
スラムへ帰る最中、到着まで凡そ道半ばといった所。
雪が降りしきり視界が歪む中、不自然に凹んだ何かが視界に入った。
荷台から手を離し駆け寄ると、木の根の様に武骨な突起。その下には、黒く何重にもなった線の束が積雪によって埋もれつつあった。
「...おい!大丈夫か....!!」
温度以上に背筋が凍り付く。疲れを感じさせぬ、張り裂ける様な声で叫ぶ。すぐさま雪を掻き分ければ、悪魔のような容姿をした少年の姿が露わになった。
辺りには薪らしき樹木が散らばっている。作業中に倒れて動けなくなってしまったのだろうか。
温かそうなコートを着てはいるがそれも水分に溢れ、すっかり凍えてしまっている。明らかに低体温症の兆候だ。
「......ぁ....」
小さく漏れた声にはっとし、掘り出し終えればそっと口元へ耳を宛がう。
微かに息はあった。うっすらながら意識もある。
今ならまだ間に合う。
種族がどうとか、外の人間を何故助けるのか等は全く頭に無かった。
何度も目の前で見殺しにしてたまるか。
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