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"傷だらけの手記"
4
:
ライア
:2023/01/21(土) 14:42:58 ID:myyZEdwU0
[Birth of Riar](3)
そうして7年の月日が流れ、11歳となった。
ある日の出稼ぎの帰り道。
爺さんは、孤児院へ続く裏路地の一角で事切れていた。
年端もいかない少女を、護る様に覆い被さって。
そして小脇に転がっていたのは紙袋に包まれ、まだ湯気の立っている形の悪いパンだった。
「たったこんだけか...稼ぎありそうなジジイだったと思ったのによ、イライラするぜ」
「あ˝ーもうこのガキも中々良さそうだったんだけどなぁ...まぁ向こうの娼館なら安くてイイ子いますから、今晩はそこで続きにしましょうや」
古びた財布と凹んだパイプを手にした大男。そして薬混じりの醜悪な匂いを漂わせる細身の男が、二人を嘲笑しながらその脇に立っていた。
助けなくちゃ
もう、二人の命の灯が消えているのは明らかだった。
だが、最後の最期まで意志を貫いた爺さんに、恥ずかしい姿を見せたくなかった。
おずおずと弱気な態度を装い、腰に両手を回し歩み寄る。
「あぁ...?せっかくのお楽しみを邪魔された後なんだよぉ!!何様のつもりだコラァ!!!」
「...んだよガキが....何か文句でもあんのk」
その刹那。大男に向かって小さく跳びつつ、思い切り逆手で鉈を振り抜く。
最初に狙ったのは力づくでは勝てないから。何より爺さんを侮辱されたからだ。
大男は掠れた息を吐きながら、ズシンと音を立て地に伏せる。
「...ッ...あ˝、ぁ!?テメェ何してくれてんだァッ!!!」
激高する細男が、後ろに大きく跳びながら銃を抜く。乾いた破裂音と共に走る灼熱感。
肩口と脇腹に1発ずつ貰うが、痛みは然程感じない。足先に力を込め、懐へ一気に踏み込む。
男怯えた表情で銃を此方に投げ捨て、短刀を抜いた。
「ヒッ....来るな、くるなァッ!!!!!」
俺の瞳は、悲痛な表情と錆びついたナイフを射殺す様に、しっかりと見据えていた。
男は叫び声を上げながら、迫りくる自分の袈裟へ無造作に刃を振り下し.....
それを鉈で流す様に弾き上げ、時間を逆再生したような鋭い返しで男の胸を一突きにした。
嗚咽を浴び、顔をしかめながらも地へと叩き伏せる。
醜く怨嗟の言葉を浴びせ続けるも、それを最後に男は動きを止めた。
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