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文芸投稿
1
:
とらすく
:2017/04/24(月) 04:49:07
文芸学部用です
つくった文芸を置く場所としてご利用ください
2
:
とらすく
:2017/05/17(水) 23:29:31
いちごみるく的な流れになった時に作った奴
内容は気持ち悪い
====
線路沿いの金網に浮かび上がる街中の自販機は、スポットライトめいた街灯に照らし出されてその怪しさを引き立たせる。仕事あがりに通り過ぎる住宅街の中にあって、その明るすぎる主張が無機質さを感じさせるのだ。何の計算もなくそうした演出が生まれることこそ、自販機の持つ魅力だろうか。
整然と並ぶ商品に違和を覚えること自体に、その日の特別が現れていた。常連のコーヒー群に一つ混じって売られる昭和の趣を残した桃色の缶「イチゴみるく」を目にしながら、私はそのまま帰路に向かい、昼間の出来事を思い出していた。
およそ現場の喫煙所というものは酒と競馬と風俗の話で埋まると相場が決まっている。そこにはコーヒーとタバコが王道の舞台装置として据えられる。私はいつも「イチゴみるく」だけを持って入った。そこでしか休めないからだ。彼らのからかいに無機質な返答をすることにも飽きてしまった。
部屋を出て路外の自販機に据えられたごみ箱へ向かった時、私の目に兎が飛び込んだ。いや、正しくはランドセルに引っ掛けられたウサギのキーホルダーだ。
「おじさん…… イチゴみるく好きなの?」
3
:
とらすく
:2017/05/17(水) 23:30:35
「おじさん…… イチゴみるくが好きなの?」
正門の外を通ったその子の声が私に向けられたものであることを刹那に認識せず、門扉の間に切り取られたスナップ写真かのようにしてランドセルの赤が浮かび上がった時、女の子から問いを受けているのだと理解した。
ごみ箱の口へ触れていた缶を顔の位置に戻しながら彼女を見つめて首を傾げる。彼女は即座に頷いた。休憩時間の終わりが迫る。彼女の視線は動かない。同僚達が出てくる気配がする。目線を外せない。彼女は返答を待っている。私は会社の敷地にいる。小さな子を見つめている自分の姿が脳裏に映った。
「そうだよ」
チャイムが返答の半分を掻き消した。缶を捨てたその動きのまま現場へ戻ろうと振り返った時、視界の端に休憩所の窓が映った。同僚の顔は私にとって見慣れたものだ。チャイムが鳴っても彼らが出てこなかったことを除いては。
4
:
とらすく
:2017/05/17(水) 23:31:09
手のひらサイズの赤いバルブを閉めた。そうして私の欲望は正しく抑えられる。人間は物事をあまりに単純化して捉えようとする。逃げ場のないわだかまりは何れにせよ破裂するものであると。蒸気配管は閉じられた経路に圧を高め、計器の針は0.6MPaを指している。ペットボトルロケットなんてものは誤差のような数値だ。破裂するのは風船だけだというのに。
それらは己心の外骨格を強化するという発想に至らぬ者達の言い訳にすぎない。私は工場の三階の窓から公道を見下ろしながら、使用を終えたボイラーの経路を閉めたのだ。あの子の下校時間と、通学路が眼前に存在していることは一切の関係がない。適切な剛性と、適切な設計によって制御されたものは、例えその欲望がいかに高圧であろうと、何も変わらぬ姿で存在できるのだ。
だが見上げた視線と鉢合わせた時、フランジの隙間から白く噴出したそれは、百度以上に加熱された生の蒸気のそれであった。私は正しくバルブを閉めていた。私は正しく欲望を制御していた。白く加熱されたそれは、私の足元へ漏れ出したままで。
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