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文芸投稿

3とらすく:2017/05/17(水) 23:30:35
「おじさん…… イチゴみるくが好きなの?」
 正門の外を通ったその子の声が私に向けられたものであることを刹那に認識せず、門扉の間に切り取られたスナップ写真かのようにしてランドセルの赤が浮かび上がった時、女の子から問いを受けているのだと理解した。
 ごみ箱の口へ触れていた缶を顔の位置に戻しながら彼女を見つめて首を傾げる。彼女は即座に頷いた。休憩時間の終わりが迫る。彼女の視線は動かない。同僚達が出てくる気配がする。目線を外せない。彼女は返答を待っている。私は会社の敷地にいる。小さな子を見つめている自分の姿が脳裏に映った。
「そうだよ」
 チャイムが返答の半分を掻き消した。缶を捨てたその動きのまま現場へ戻ろうと振り返った時、視界の端に休憩所の窓が映った。同僚の顔は私にとって見慣れたものだ。チャイムが鳴っても彼らが出てこなかったことを除いては。


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