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【咲SS】愛したシロへ【百合】
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「私、胡桃の事が好きなんだけど」
いつもの放課後、シロに教室に残って欲しいと言われ、
椅子に座りながらいつもの軽いノリで話を聞いていると、これだ。
「は?……え?」
目をパチクリさせているとシロが私の表情に苦笑しながらも話を続けた。
「それで塞にちょっと相談したくて……」
頬を赤らめ、目を潤わせながらシロが呟く、こんな顔はあまりみないから思わずドキリとする。
内心驚きながらも私は平常を保った振りをして話を聞く。
「へ、へぇ……どこが好きなの?」
「胡桃は厳しいけど……本当は凄い優しいんだよね……おもいやりがあって」
「う、うん……幼馴染だし分かる……」
「それで小さくて……猫……猫じゃないよね子犬みたいで」
「あはは……私はリスだと思うな」
「この前、私が風邪で寝込んだ時なんてわざわざ家に来て看病してくれて……」
「(私だって……お見舞いに行ったけど……)」
「相性も良いと思う、胡桃が私を引っ張ってくれて……」
「……」
「あと……」
「ね、ねぇシロ!」
「っ……なに?」
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嬉しそうに幸せそうに胡桃の事を語るシロに、ここにいない胡桃に嫉妬してしまい
私は思わず話を遮ると、シロは顔を顰めた。
「長話してるけどダルく……ない?」
「……なんだかダルくない」
机の下で拳を握りしめる、歯を食いしばり涙を流さないようにシロを見る
「どうしたの塞? もしかして調子悪かった?」
数分前までは調子は良かった、だって好きな、大好きなシロと二人っきりだったのだから。
「……ごめん」
「なんで謝るの?」
シロは答えなかった、しばらくしてから「ダルい……」と言って教室から出て行った。
……シロはああ見えて鋭い所がある、きっと今日の事で私の好意に気づいたはずだ。
ならどうなるんだろう、私の好意に気づいたからって……今更だよね。
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もう始まってる!
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ヌッ!
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帰り道には雪が積もっていて私の足を余計に重くする、
いまだに慣れない寒さはいつにも増して私を心の底まで冷やす。
雪が降りそうな雲は顔に影を落とす。何もかもが私を悲しませる気がする。
「サエ!」
今では聞き慣れた声にハッと後ろを振り向く、
視線を少しばかり落とせばエイスリンが真剣な顔をしてこちらを見つめていた。
「あっエイスリン……」
私が声を掛けるとエイスリンがボードを見せてきた、そこには私が泣いてる姿が描かれていた。
慌てて手を目元に当てるが濡れてなんていない。
「急にどうしたの、エイスリン?」
作り笑いをしながら言うけどエイスリンはまだ青い瞳でジッと私を見ている。彼女は口を小さく開けて呟く。
「サエ、ナイテル」
「……泣いてないよ」
「ゲンキナイ」
「どこが?」
「……」
エイスリンは答えなかった、だけど元気が無いのが傍からみれば分かるっていうのは
自分でも想像に付く。
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改行した方が見やすいですかね…?
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このままでも十分見やすいですよ
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「カエロ?」
エイスリンが白く暖かな手で私の冷えた手を握りしめる。強く握り返すとエイスリンも握り返す。
帰り道、エイスリンとまったく話さなかったけどエイスリンの絵が何度も脳内で浮かんだ。
涙を見せないようにしてるけど心の中で泣いてる。
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今日が休みで良かった、もし今日が学校だったらどんなに気まずかったか。
布団に包まりながらぼんやりと考える、そして今日は何をするか考える。
「あっ……」
布団から起き上がりがり思わず声出す、暖かな布団から出たせいか一瞬体がブルっと震える。
「シロと勉強するんだった」
起きたばかりで乱れた髪の毛を手で掻き回しながらため息混じりにボヤく。
連絡をして断るのもなんだか気まずいし、連絡もなしにすっぽかすのも嫌だし……
枕元の携帯を手に取りながら、頭を捻っていると唐突に携帯が鳴った、
「なっ……!」
素っ頓狂な声を上げながら携帯を落としてしまい、恐る恐る携帯の画面を見ると。
「今日はダルいから勉強中止」
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思わず笑ってしまう、その後に自分の情けなさとシロに会えないという悲しさで視線を落とす。
憂鬱な気分に浸っているとまたしても携帯が鳴った、シロからだと思い視線を携帯にずらすと。
「サエ、遊ぼう」
今度はエイスリンからだ、すぐに返信する。
「いいけど……どこにする?」
「サエの家」
「分かった、じゃあ待ってる」
手短なメッセージのやり取りを終えると私は再び毛布に包まった。
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しばらくすると家のインターホンが鳴った、布団の中から近くに畳んで置いてある袢纏に手を伸ばし、
毛布の下でそれを着るとゆっくりと立ち上がり玄関に向かう。
「サエ、オハヨ!」
「うん、おはよう……」
朝からエイスリンは元気だ、でもその元気の良さが今の私には必要だと思う。
「入りなよ、外は寒かったでしょ」
寒さのせいか鼻を少し赤くしたエイスリンは数回ほど頷く、
「オジャマシマス」
「今日は私だけだから問題ないよ」
クスリと笑いながらエイスリンに言うと、エイスリンはどこか腑に落ちない顔をしていた。
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リビングで黙々と勉強をエイスリンとする。
分からない所……特に英語に関してはエイスリンがいると助かる。
「ツカレタ……」
小さな溜息を付いてエイスリンがシャーペンを机に置く、時計を見るとすでに12時を回っていた。
「あっもうこんな時間だね、お昼ごはん準備するよ」
お昼ごはんと言っても簡単な物だけど。
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私がお昼ご飯を作るのをニコニコしながらエイスリンは見る。
そんなに作ってる所が楽しいのかな? 作ってる最中に何度も目が合う。
「はいどうぞ、ごめんねあんまり良い物じゃなくて」
苦笑しながら料理を机に運ぶとエイスリンは目を輝かせた。
「オイシソウ!」
「そ、そうかな……」
実は料理には自信がある、まぁちょっと地味な料理ばかりだけど……
「それじゃあ食べよっか」
「ウン、イタダキマス」
「いただきます」
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「……サエ、シロト……」
ビクッと肩が震わせ箸をとめ、苦笑しながらエイスリンの方を向いた、
「な、なに?」
もしかして…気づいているの……?
「ケンカシタ?」
「そ、そんな所かな」
半分合ってて、半分違う。
「……ワタシガイルヨ」
「ありがとう……嬉しいよ、でも私側に付いちゃうと
シロとエイスリンも仲が悪くなるんじゃ……」
「ソレハ……」
エイスリンが慌てて考えこむ、私は微笑しながら箸をすすめた。
……困ってるエイスリンには悪いけど、気持ちが暖かくなった。
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それからシロと絡むことがなくなった、学校外では5人で遊びに行く時ぐらいしか会わない。
5人で遊ぶ時も私がエイスリンとシロが胡桃と話し、豊音は……困惑しながら皆と話す。
勉強するのも遊ぶのも基本的にエイスリンと、シロは……幼馴染だったはずのシロは、
もう遠くの存在になってしまった気がする。
でも、でも、未だに好きな気持ちは変わらない、けど不思議と寂しくない。
エイスリンのおかげだ、いつも側にいてくれる……
ほぼメッセージを送ってくれないシロの代わりに、
エイスリンからのメッセージがスマホの通知に来る。
家にいてメッセージが来ない時は寂しくて、一人ぼっちな気がする、
だけどエイスリンのメッセージ1つで私は幸せな気持ちになる……けど、
自己嫌悪感が私の中をめぐる時がある、
私はシロの代わりにエイスリンに依存して、心地よさに浸ってるだけではないかと。
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「サエ、明日会おう サエの家が良い」
推薦入試が終わり、のんびりと暮らしていたある日、エイスリンから家で遊ばないかとメッセージが来た。
「もちろん」
「うん」
「分かった、それじゃあそろそろ私は寝るね」
「おやすみ」
「おやすみ、エイスリン」
エイスリンと会える、それだけで心は少しばかり弾む。
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早めに起きてエイスリンの来るのを待つ、
エイスリンの好きなお茶とお菓子を用意して。
インターホンがなると私は駆け足で玄関に向かった。
「オハヨ!サエ!」
いつみてもエイスリンの笑顔には癒される、私も自然と笑みを浮かべながら家に入れた。
用意していたお茶とお菓子を持ってくると、またエイスリンは微笑んだ。
……もしシロだったら……なんて考えないようにしないと。
「サエ、チョットイイ?」
私がよそ見をしてると不意に話しかけられたので、向いてみれば
エイスリンが真剣な顔でこちらを見ていた。
「ど、どうしたの?」
いつもはニコニコと笑っているエイスリンの真剣な表情に私は息を飲んだ。
「サエ、スキナヒトイル?」
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咲SS嬉しいなぁ
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私は心の奥が締め付けられる気がした。
好きな人……それは……
本当に……シロなのかな……
「サエ?」
「……いるよ」
「ダレ?」
「ふふ、教えない」
私が作り笑いをして誤魔化そうとするが、エイスリンは顔色一つ変えない、
私をジっと見つめて答えを聞こうとしている。
「逆に聞くけど、エイスリンはいるの?」
「ウン」
「誰?」
エイスリンは一瞬俯き、一呼吸置いて答えた。
「サエ」
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あら^〜
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不思議と驚きはしなかった、だけど嬉しい気持ちが奥底から湧いてくる。
「いちおう聞くけどloveの方?」
「Yes…」
エイスリンはクスリと笑い英語で返す。
「そっか……」
でも私はシロが……ううん、エイスリンも好き。
だけど……だけど……どうしたら良いんだろう。
2人とも大好き、だけどそんなのは勝手過ぎる。
シロも好きだけどエイスリンと両思いだから彼女と付き合う、っていうのは駄目だと……思う。
シロにも失礼だし、エイスリンにも失礼だ……
「悪いけどさ……返事はまた今度で良い?」
私が苦笑しながらそう尋ねると、エイスリンは寂しそうな顔をしながら頷いた。
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その夜、毛布に包まりながら考えた。
私が本当に好きな人って誰なんだろう、エイスリン、シロ……
……選べないよ……
突然携帯の通知音が鳴り、私は飛び起きてしまった。
「今度サエと遊べる? エイスリンさんもクルミもシロも駄目だって」
豊音からだ……私は誰もいないのに、自分の慌てかたに恥ずかしがりながら
返事を打った。
「もちろん! どこで遊ぶ?」
「公園でのんびりしたいなー」
「OK」
豊音と二人きりか……久しぶりかも。
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豊音と公園に来たけど気分は晴れない。
こうしている間にもエイスリンは返事を待ってる……
「サエ、楽しい?」
「うん……」
力なく私が答えると、豊音はベンチに座り私も並んで座った。
「悩みがあるなら聞くよー?」
豊音はニコっと笑いながら私の顔を覗きこむ。
豊音に相談して良いのかな……
……同じチームメイト、信頼しないと。
私は豊音にシロに告白したこと、シロと気まずいこと、エイスリンに告白された事を話した。
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「さ、サエは……シロが好きなの?」
こういう恋愛話には慣れてないのか豊音は頬を紅くしながら聞いてくる。
「うん……」
「エイスリンさんは……?」
「好き……」
「だったらエイスリンさんにちゃんと返事したらどうかなー?」
「でもシロも好きなのに……失礼でしょ」
「……一番好きなのは誰なの?」
一番好きな人……一番は……
「エイスリン……」
私はエイスリンを愛してる……もちろんシロも愛してるけど……けど。
「大丈夫! シロは気にしないと思うよ!」
「なんでそんな事言えるの?」
「だって……幼馴染なんでしょ? きっと分かってくれてると思うよっ
サエはきっと悩んだ末でエイスリンさんと付き合ったんだって」
「……」
「一番失礼なのは返事をしないことだと思うよー」
「辛辣だね」
「そ、そうかなー……」
私は立ち上がり深呼吸して、呟く。
「……返事、してみる」
豊音は笑みを浮かべ私を見ていた。
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次の日、返事をしようと思い早速連絡をすると、すぐに来ると言われた。
私の家にエイスリンが来ると思うと胸が高鳴る。
彼女が来れば適当に挨拶をして、自室に迎え入れる。
「……返事してもいいかな」
エイスリンは小さく頷く、私はエイスリンの手を無意識のうちに握りしめ、
「私も好きだよ、エイスリン」
「……」
私が瞳を見つめると涙が流れている事に気づいた、
指を伸ばして溢れ出る涙を拭い取れば、エイスリンは笑みを浮かべた。
「…キス」
「うん……」
エイスリンに聞こえそうなぐらいに心臓が音を鳴らす、
彼女の手を握っていた手で真っ白な頬に触れ、見つめ合う。
目を瞑り、唇を重ねあわせるとピリっとした甘い刺激が脳を刺激する。
長く長く重ねていると、刺激は強くなり、さらに刺激を求めて私はエイスリンを押し倒してしまった。
「……サエ……?」
「エイスリン……」
深く、熱く、強烈な刺激を求めて私たちは絡み合う。
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エイスリンと付き合い始めてさらに日々が経つのが早くなった、
……とうとう今日は卒業式。
校門の前にみんなで集まる、私も含めて目には涙を浮かべて。
「わああああん ちょーさびしいよー…」
前言撤回……豊音は号泣しちゃってる。
「……サエ、ちょっといい」
前はよく聞いた声に後ろを向けば、シロが昔と変わらずダルそうにしながら立っていた。
「……なに?」
「元気そうで良かった」
……案外シロは気にしてくれる、だから好きだった……
「ふふ、シロも クルミとはどう?」
「……ダルい」
「どうみても照れ隠しね」
クスっと笑いながら指摘すると、シロは視線を逸らしながら頭を掻いた。
「サエ!シャシントロ!」
「ちょっとーシロ! 写真撮るよ!」
ほぼ同時にお互いに愛してる人に呼ばれて、思わずクスっと笑ってしまう。
シロはダルそうだけど。
「ほら、呼んでるよ 行きなよ」
「うん……シロも」
私は去ろうと背中を向けて歩き出したが、すぐに立ち止まり振り返った。
「シロ!」
私がシロの名前を呼ぶと、シロはこちらを向いて怪訝そうな顔をした。
「……どうしたの?」
これで最後……私の愛したシロへ……
「ありがとう、また会おうね!」
シロは珍しく微笑みながら頷いた。
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おわり
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乙ゥ〜!
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乙
いい出来やこれは…
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宮守ほんとすき
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あら^〜
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乙しゃす!
イイゾ〜これ
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