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幻想郷の女の子に愛されて眠れない(東方ヤンデレ)スレ第21夜

1 : ○○ :2015/05/29(金) 07:39:31 19zX.5lM
ヤンデレ――――それは純愛の一つの形。
ヤンデレが好きで好きでたまらない人の為の21個目のスレです。
短すぎてうpろだ使うのはちょっと……な人はここを使うといいかも。


さぁ、帰りましょう

※注意書き
・隔離されているとはいえ、此処は全年齢板。
 過度のエロ•グロはここでは禁止。
・ヤンデレに関する雑談やシチュ妄想などもこちらで。
・このスレの話題や空気を本スレに持ち込まないこと。
 苦手な人もいるということも忘れずに。
・隔離スレであることの自覚を持って書き込んで下さい。
・馴れ合いは程々に。 突っ込みも程々に。

・パロやU-1等の危険要素が入るssはタイトルに注意事項を書いた上でロダに落としてください。
・スレに危険要素のあるssのリンクを貼る時は注意事項も一緒に貼ってください。
・危険要素のあるssをWikiに保管する際は保管タイトルの横に注意事項を明記してください。
・危険要素は入っていないもののスレを荒らす危険性のあるssは
グレーゾーンのssとして作者の自己判断でロダに落とすようにしてください。
・グレーゾーンのssは作者と読者が議論して保管方法を決定してください。

まとめはこちら ttp://www26.atwiki.jp/toho_yandere/


2 : ○○ :2015/05/29(金) 08:00:39 19zX.5lM
あぷろだはこちら
ttp://www22.atpages.jp/icha/yndr/upload.html


3 : ○○ :2015/05/30(土) 15:52:26 liAdz.fE
スレ建て乙です


4 : ○○ :2015/05/31(日) 01:11:47 FOAGpAeM
ここだな?


5 : ○○ :2015/05/31(日) 01:25:43 ohr2DeNo
ここが新しいハウスね!


6 : ○○ :2015/05/31(日) 09:06:21 BZL2MInA
スレ立て乙


7 : ○○ :2015/05/31(日) 17:03:08 WRn9F506
スレ立て乙です!


8 : ○○ :2015/05/31(日) 17:49:40 b4XEjtIo
ここかぁ、祭りの場所は


9 : ○○ :2015/05/31(日) 19:29:07 b4XEjtIo
リハビリに一本行きます

咲夜は○○が好きだった。
否、今も彼を好いている。
○○が館の同僚である美鈴と恋仲になった今でも、その気持ちは些かも衰えることは無かった。
勝負は既についてしまっている。
彼女は、負けたのだった。
しかし、負けてなお諦めることは出来なかった。
むしろ、遠ざかれば遠ざかるほどそれは強くみなぎり、燃え盛った。
視線が自然と○○を追ってしまう。
ーー肩。そこへと頭を預けたい。
ーー腕。強く抱き寄せられ
ーー胸。掌を乗せて鼓動を悦しみ
ーー背。やがては自らも腕をまわし抱き合いたい。
その唇を、お互いに求めながらそうしたい。
したい、したい、したい! だって、だってだって、だって!! 私だって愛していた!
愛しているんだもの! 当たり前でしょう? それが、それがもう二度と叶わないなんて……ッ
咲夜は悶えるほどに○○を求めていた。
何度も何度も、自分の指先を彼に見立てた。
○○がそうしてくれたなら……ううん、これは彼の指、これは彼の掌……そう思うだけで咲夜は何度も切なく鳴いた。
そんな彼女がついにはこうして禁忌を犯すのは正しく時間の問題だったのだろう。
静止した、いや「させた」時間の中、満願叶った恍惚の眼差しで咲夜は○○の手をとった。
ゆっくりと、それを自分の頬へと導く。

「あぁ……はああああアアアァァァ…アア」

長く感極まった吐息が長く尾を引いた。
恍惚であった。
○○は美鈴のもの。
それは分かっている。
二人は愛し合っている。
分かっている。この館の誰よりも、この郷の誰よりも!
しかし、私は誰にも知られない。
この気持ち、この胸の高鳴り、これから起こることを誰にも知られない。
咲夜はこの静止した世界ではたった一人の王。
たった一人の司祭なき神だ。
この世界の中でなら、誰一人彼女を咎めるものはいない。
そも、これから自身がすることは「起こった」と言えるのか?

「1秒にも遥かに満たない、刹那よりなお短いことなのよ? 少し……少しだけ何かあったかもしれなくても其れがなんだって言うの?」

無意識に封じていた、彼女だけが持つことの出来る理屈を、咲夜は謳うように唱えあげた。
何も、何も彼には起こらない。
○○が穢れることなどない。
ただ自分の世界の中の事象なら、毎夜行う慰めと何も違わないではないか?
そう違わないのだ。
彼は、私は、誰も裏切ってなど居ない。

「ねぇ、そうでしょう○○?…………そう、私も嬉しい」

咲夜は彼の頷く声を聞いたようだった。
拒まれることなど全く想定しない動きで、○○の首に腕をまわす。
鼻筋を擦り付けながら、うっとりと目を細め感触を楽しむ。
そさてほんの一瞬もだけ○○の瞳を覗いてからゆっくりと唇を合わせた。


10 : ○○ :2015/05/31(日) 19:36:20 KFe6RqQk
wikiのスレへのリンクを修正しました。


11 : ○○ :2015/05/31(日) 19:39:17 83k5C0SE
>>9 咲夜さん好き


12 : ○○ :2015/05/31(日) 20:22:08 b4XEjtIo
つづき

咲夜の触れたところだけが動くことを許されるこの世界で、○○の唇は彼女の形に歪んだ。

(ああ……嬉しい…嬉しい! はは、はははやった! キス、キスした! ああ素敵……!)

閉じた瞳の奥で世界が新に色付いたようだった。
どこかモノクロめいた印象の合った世界が極彩色々に息吹を取り戻していくように。
それは自分を祝福するかのような、素晴らしい命の脈動に感じられた。
唇を触れあわせたまま、より深く悦ぶ為に○○の腕をとり自らの胸へと導く。
既に固く喜んでいた先端が待ち望んだ刺激にビクンとうち震える。
咲夜は頬を染め上げ、涙を溢れさせながら、より深く○○を侵食する。
ンフと女の匂いがする鼻息を浴びせ、○○の舌先へと自らの其れを絡めーー

その瞬間。咲夜の脳裏にある映像が割り込んだ。
紅い髪、豊満な胸と見事にくびれた腰……
それは誰よりもよく知る女。
今この時誰よりも何よりも見たくないビジョン。

(な!? め、美鈴邪魔をす……)

高電圧がショートしたような、流れ弾が鉄の扉に弾かれたような高く激しい音。
それと共に七色の光は弾け、同時にその極彩の爆心地にいた咲夜は強かに弾き飛ばされた。

「あ、あがぐ……っ ぎ、 ふ、ふぉぐ……えいふぃん…っッッ」

咲く夜の世界は解け落ち、平等な世界が再び時を刻みだしていた。
覚えのある激痛だった。
彩光蓮華掌……ゴッコ遊びのなかでだが、この内側から熔けて爆ぜるような感覚はこれに相違なかった。
はその激痛が遥かに強いことを除けば、まさに。
咲夜は薄れ行く意識の中、全てを悟った。
そして、何故か悔しさ怒りに混じって嬉しさが込み上げてくるのを自覚した。

ははは! ふぉは! こんなこと。ここまでのことを!
何よ美鈴。あんたも、貴女も私と同じだったのね
狂ってるわ! 私の想いは、貴女のそれと同類だったなんて!
ふふふふぉふぁははは! ○○、○○が愛した女は私と同類だった!
二人とも愛しているわ!

十六夜咲夜が意識を失うまでの僅かな時間。
彼女は、彼女達にだけ分かる狂気にうち震え、嘶いていた。


ギスギス紅魔館 番外編



13 : ○○ :2015/05/31(日) 20:57:47 FOAGpAeM
>>10
リンク修正乙


14 : ○○ :2015/06/01(月) 00:39:43 R942lEWU
濁った瞳、淀んだ瞳、曇った瞳という安直な表現に逃げない努力をするスレにしたいです。
というわけで頑張る。

 これほどまでに、はらわたが煮えくりかえしそうになった事は、過去になんて一度も無かった。
 誰に対しての憤りか、それとも不甲斐無い自分に対しての叱責か。
 ああ、そうだ。今目の前で、ただ泣きじゃくるしかない彼女を抱きしめる事も、触れる事も、声をかける事も、見る事ですらも出来ない自分への怒りだ。



 眩しい、そう呟いたのは誰だったか。ああ、そうだ、目の前の真黒な球体だ。
 夏季のこのくそ熱い日差しに対して誰もが苦言を漏らすのも仕方が無いと言えるが 丁度太陽の光が俺に掛からないようにする様に付き纏う、黒い球体。
 触れる事は出来ないのか黒い球体に手を伸ばしてもすり抜けるばかり。それが顔にかぶされば視界は黒一色何も見えやしない。太陽が眩しい事よりも視界が見えない事に苦言を漏らす。

「光の下に生きて何が楽しいの?」

 そうは言われても、光が無ければ人間はなにも見えんと反論すれば「でも眩しい」とのこと。どうしろと、どうしようもない。

「お前はそうやって付きまとって、何か楽しいのか?」
「君の反応が面白い」
「帰れ」

 「私が帰るのは貴方の元だよ。」その言葉にはいまだに実感が持てない。もうすぐ一年、この黒い球体と過ごす事になって。
 初めて遭ったのが夜の屋根上。月を見ていたら急に月蝕が起こり始めた、かと思えばコレが落ちてきた。真っ直ぐ俺の家に向かって落ちてきたおかげで屋根に穴が開いた。その屋根を修繕させるまでの付き合いだった筈。
 次に逢ったのは昼間の屋根の上。日向ぼっこをしていたら今度は日蝕、かと思えばまたこれが落ちてきた。再び屋根を修繕させるまでの付き合いだった筈だ。
 どちらの時も黒い球体。初めて目にした時、自分はビビりにビビってそのまま失神したことは思い出したくない。目を覚ました時、目の前にやっぱりソレがいて再び失神した。
 何もしてこない事を気になりどうしたのかと鼠のように怯えながら訪ねてみたら屋根を直したいとの事。それは願ったりかなったりと俺はそれを頼んだ。そこからの付き合い。

 コレの、彼女の正体を見たのは何時だったか、最初の時もその次も絶対に見せてはくれなかった。ああ、今からちょうど一年前か。新月の夜に、再び落ちてきて、偶然闇が晴れてしまった時か。
 手元の消そうと思っていた蝋燭の灯火が黒い球体の正体を暴いた。それが間違いだった事ははっきりと言える。

「これからもよろしくお願いします」
「だまれ」

 今思えば、こいつはそれよりずっと前から自分の事を見ていたのだろう、ピンポイントでウチの屋根を壊してくるのもおかしな話だ。
 この前日記を書いているのを見かけて、それをある日にこっそり覗いてみれば日記の始まりは7年前、しかも俺を見かけた時から始まっていた。怖い。

「ずっと一緒だよ」

 その言葉に一体どんな意味が込められているのか。以前の教訓から俺は何も返答せずにただその黒い球体の中心部をじっと見据える。


15 : ○○ :2015/06/01(月) 15:02:53 L8NQAQoo
宣言通り、橙で短編を書いた
前スレの最初の方に書いた、紫と藍の恋人たちが出てくる奴。アレと同じ世界観です
ノブレス書くべきなんだけど、寄り道してしまった


○○は薄暗い森の中で立ちすくむ、そう言う風に表現する他は無かった。
その日その時の○○は、目の前の惨状を目の前にして。そして、その惨状がかもし出している臭い、もっと言えば腐臭に対して……○○は絶句する他は無かった。

だが、○○が絶句して立ち尽くす材料と言う奴は。それだけでは無かった……ある意味では最後に残った、こいつが、○○を絶句させて立ち尽くさせる最大の材料、根幹の部分なのだ。
それは、この惨状と腐臭を作り出した。八雲藍の式である、橙が。主人である八雲藍、そして主人の主人である八雲紫を前にしても。
それら、自らよりも遥かに上位の存在を前にしても。憮然として、前を見据えて立っていたからである。

○○の場合は、立っているだけで実のところは何も見ていない。
橙の場合は、確固たる意志で八雲藍と八雲紫の前に立ちはだかっていた。

「なぁ、橙」
「これが、悪いんです」
しばらくの間、目線を左右に散らしながら八雲藍は辺りの惨状を確認していた。そして意を決したように、自らの式である橙に何事かを聞こうとしたが。
「私は悪くありません。自信を持って、そう断言できます」
万事がこの調子であった。主を前にしても自らの主張を表に立たせる事が出来るのは……素直に成長と思いたかったが。
しかしながら、眼を閉じていても誰の鼻先にも突き刺さる。この腐臭のせいで、今の橙は成長したのではなくて酷く我を忘れている……そう言う風にしか捉える事が出来なかった。

「これ……ねぇ?」
割と自分の式を甘やかす気のある八雲藍に代わって。今度は橙にとっては主人の主人である、八雲紫が声を出した。
「確かに……余りこういう表現は使いたくないけど。こんな細切れになっちゃったら、腐臭のする変な物、“これ”と言う表現しか使えないわね」
しかし○○に取って残念なのは、八雲紫の声色。それが非難めいた物では一切無かった事である。
興味が無い、ならばまだよかった。橙伝いやそれ以外の又聞きとは言え、○○も八雲紫が癖のある性格をしているのはそこそこ知っていた。
だがその前知識を使ったとしても、今のこの声色から察せられる感情と言う奴は……
「取りあえず、“これ”がこんな風になっちゃう前の名前とかわかる?橙」
あらこの子ったら、結構やるじゃない。と言った、むしろ誇らしいような感情すら嗅ぎ取る事が出来る……どちらにせよ、深刻そうな色と言うのは何も見えてこなかった。


「うっひゃあ……話に聞いていた以上に派手にやったなぁ。それ以上に、酷い臭いだ」
「香霖堂に寄ってビニール袋や手袋、それにマスクなんかをかき集めてよかった」
橙から動機と言う奴を聞き取る前に、男性が二人この現場にやってきた。
1人は八雲藍が来ている物に似通った服を、もう1名は男が着るにはちと少女趣味を想起させるような紫を基調にした服。

「とりあえず、手で掴めるような大きいのは全部回収しよう」
「それは良いが、飛び散った液体……って言って良いのか?それはどうする」
「これが家屋の中だったら……解体して焼き払ってしまうんだが。実際問題、それが一番楽だから」
「おえ……なんだこいつ……マスク越しにも腐臭が突き刺さる」
「あ……気持ちの悪い話になりますけど。今貴方が持ってるの、臀部……お尻の方の肉だから…………」
「おええ!?だから特に臭いのか!」
八雲藍の様な導師服の男も、八雲紫の様な紫色の服を着た男も。
どちらもが軽めの口調で、周りの惨状と臭いに気おされずに手袋やマスクを装着して、やっぱり軽いままの口調で辺りに散らばった“モノ”を掃除して行った。


16 : ○○ :2015/06/01(月) 15:03:37 L8NQAQoo
「前々から“コレ”には、はっきりと言っていたんです。迷惑だと。それでも、何が目的なのかは知らないけど、ずっと。だから今日、遂にやるしかなくなったんです」
「――おまけにコレの奴、どうやら○○さんの事を見下していたんです」
「もしかしたらそうなんじゃと言う疑惑は、ずっと持っていました。でも今日、遂に口を滑らしましたよ。だったらもう、やるしかないじゃないですか」

声高にと言う訳では無いが、しかしながら橙は力強く。自らの行為を正当化どころか、○○の身を守るためだと言い切った。
その橙の声色からは、○○の身を守る為と言う部分については。決して恩着せがましい何かと言うのは感じ取る事が難しかったが……
しかしだ、橙が心底親身に○○の事を考えて今回の凶行を起こしたことを前提にするとしてもだ。
この凶行の原因が、実は○○の側にも、しかもそれなり以上の比率を持っている。そんな事を仲良くしている橙の口から暴露されれば。
“今はまだ”身も心も全ての部分で、ただの人間でしかない○○にとっては。意図せざるとは言え、自分が今回の事の原因と知れば、顔面の1つや2つは蒼白となってしまう物である。

「大丈夫!大丈夫だから!!」
蒼白となった○○の顔面を見て、急いで彼の下に駆け寄ったが。
しかしながら、猫又なうえに九尾の狐の式として働く橙は。人間とは明らかに違うのである。
この場合は肉体的な強さだとかそう言った部分では無い、内面の部分に置いての話である。
「大丈夫よ!これあけやれば、例え相手が永遠亭だろうと、もう絶対に復活なんてしないから!!」
「当然よ!コレは、何を考えているのか知らないし知りたくも無いけど、○○の事を随分見下していたわ!こうなってしまうのは当然、自業自得よ!!」
「ああ、でも……嫌な気分にはさせたわね、ごめんなさい。こんな奴の事、○○に知られずに始末したかったんだけど……ちょっと、やり過ぎてしまって」

橙と○○の間には、大きな大きなズレが。思考のすれ違いと言う物が存在していたが。
幸か不幸か、橙はその事にまるで気づく余地が無い。
○○は視線を右往左往させながら。橙の主人である八雲藍、その更に主人の八雲紫。
腐臭のする肉片を軽い調子で片づけている2人の男にまでも目をやったが。
全員が、○○とは殆ど目を合わせてくれなかった。藍と紫は橙の方向にすぐ戻ってしまったし。
2人の男は……“今の”○○には何故だか分からなかったが、この2人の男に至っては少し以上に厳しい、非難と思わしき目を向けた。

しかし、この非難と思わしき目線。それに対して○○が確信を持ちきる前に、2人の男はまた軽い調子で掃除に戻った。

「何となく、事情は飲みこめたよ。そうか、よくやったな橙」
そして間の悪い事に。八雲藍は今回の橙がやらかした事について処分を下さない所か、よくやった等と言って褒めだした。
○○は絶句しながら藍の方を見たが、一瞥されただけでその視線は橙の方向に戻った。
むしろ一瞥だけでもしただけ、まだよかった方ですらあったかもしれなかった。


17 : ○○ :2015/06/01(月) 15:04:24 L8NQAQoo
「……実はね、橙には1つだけ謝らなきゃならない事があるのよ」
場面を見計らった様な調子で、八雲紫は声を出して、慣れた調子で彼女独特の能力であるスキマを展開した。
「紫、調査書ならいつも使ってる机の上に置きっぱなしにしてるから」
「分かったわ」
この、八雲紫がスキマを開くのを見ただけで。紫色の服を着ている男は、八雲紫が何を考えているのか理解していた。
そして男の言葉があったからなのか、八雲紫がスキマの中に手を入れて何かを探すと言った風な様子は。たったの数秒で終わってしまった。
「里にいる慧音から、妙な野郎が橙に限らず色々と……って報告を受けたから。あの人にも手伝ってもらって、少し調べてたの」
そして八雲紫は、一冊の帳面を取り出した。

「お前、そんな事してたのか」
「ああ、すまん。紫があまり大事にしたくないと言ったから」
「まぁ、そっちにはそっちの都合があるか……良いよ、別に。むしろお疲れ様だな」
奥の方では2人の男が何か会話を繰り広げていたが。どちらも仲が良いらしく、随分少ない言葉でお互いの事を分かりあっていた。


「橙だけじゃないわね……藍にも謝らなくちゃ。あまり大事にしたくなかったし、こっそり始末出来るならそれが一番だから。もちろん、事後とは言え報告はするつもりだったわよ」
そう言いながら紫は藍に対して、持っていた帳面のある箇所を開いて手渡した。

「……なるほど、こいつは色々と拗らせてたようですね」
「ええそうなの。才能はあったかもしれないけど、なまじ才能がある分、カサに来てたようなの。下手くそなやり方でお金も巻き上げる様に稼いでたみたい」
「ああ……酷いな。解決所か、下手に刺激して余計に酷くした事例ばかりだ」

帳面を読み進める藍は、急速に紫の言いたい事を理解して行っていた。
その頃には辺りに散らばった、腐臭の原因である赤黒い欠片たちも。2人の男たちの手によって殆ど片付けられてしまった。
まだ腐臭は残っているが、大元の原因が取り除かれた以上、そう長くは続かない。今この時でさえ、徐々に薄くなっていた。

「橙を踏み台にしようと考えていたようだな……見かけだけで私達妖怪を判断するとは、それ以上に橙を踏みにじろうとしたこいつの考えが許せん」
報告書を読み進めるごとに、藍は体が小刻みに震えだした。
「はーい、もう大体わかったでしょ。これ以上は体に毒よ?大体、その原因さんはもう橙が細切れにしちゃったでしょ?」
藍の声にどす黒い物が掛かり始めた所で、紫は帳面を藍の手から取り上げた。
「もうこの問題は解決したの、細切れの後始末も私達の恋人が殆ど終わらせたでしょ?」


18 : ○○ :2015/06/01(月) 15:05:20 L8NQAQoo
「……そうでしたね」
紫に事実を指摘されて、少し以上に頭が冷めたのか。藍は顔をゴシゴシとこすりながら、ウンウンと言った風に頭を何度も上下させていた。
「そうだな……うん、二回目にはなってしまうが橙、よくやった。随分とんでもない奴だったんだな」
心の底から、藍は橙の事を褒めた。そんな言葉を貰えば、橙の顔は大きく弾けた花火の様に輝かしい物になる。

「はい!ありがとうございます、藍様!!」
「こっちはもう……ああ、大分終わったな」
橙の喜ぶ顔を見ながら藍は穏やかに微笑み、そして導師服を着させた恋人の方に目をやった。
「こっちはもう殆ど終わり、このゴミ袋を人様の迷惑にならない場所に捨てたら後始末も完了かな?」
導師服を着させた恋人も、穏やかな声と表情で藍に向いた。

「……そうだ、○○さん」
だが、○○の方に向いた時。穏やかそうな表情も声もそのままであるが、言葉と言葉の間に明らかに何かが存在していた。
「どうか、仲良くやって行ってくださいね」
「……橙ちゃんとか?」
「よかった、解ってたんですね。さっきから黙ってたから、ちょっと心配だったんです」
藍から導師服を着させられた男は、明らかに皮肉を○○に投げつけていた。
蒼白となった表情と頭でも、それが解った。紫色の服を着た男は、険しそうな表情でゴミ袋の口を結んでいた。

明らかにおかしな空気である。
しかし藍は、皮肉を投げつけている恋人を止めなかった。
藍の主人である紫も、なんらこの空気に苦言を呈さなかった。

「ううん!お2人とも、それに藍様に紫様も!!気にして下さってありがとうございます!私は○○が大丈夫なら、それで私も大丈夫ですから!!」
橙は何かを察したようで、慌てて○○と紫や藍、それらの恋人たちである4名の間に割って入った。
「じゃあ、行こう!○○!」
ヤバそうな空気と言う物から逃げたいからなのか、橙はまだ蒼白なままの○○の腕を引っ張って、何処かに行ってしまった。



「……褒めてあげればいいのに。橙の事、あの○○とかいう男は」
橙が○○を連れて行ってしまって、いくらかの時間が経った時。八雲紫がボソリと呟いた。
「全くだ、甲斐性が無いとはあの事だな」次いで紫色の服を着た男が、その顔は先ほどよりも険しかった。
「月並みな言葉だけどあの子が、橙がかわいそうですよね。折角頑張ったのに、○○の奴、何もなしだなんて」導師服を着せられた男も、堰を切ったように。
「何、いずれ解らせるさ。あの子が、橙がどれだけ正しい事をしたのかって部分をな」
こうなってしまうともう、誰にも止める事は出来なかった。そもそも4名が4名とも、火の勢いを煽る方に回っている。
最後に藍が不穏な言葉を残して、その不穏さを藍以外の3名も同調して……この場はお開きとなった。


19 : ○○ :2015/06/01(月) 20:06:45 o.6fqphk
いいね!
新しいスレの祝いだよ。
新人さんも俺そんな上手く書けないしってモジモジしてた人もドゴドコ花火上げていこうよ


20 : ○○ :2015/06/01(月) 21:30:07 R942lEWU
>>14 の続きっす。
ちまちまかいていく。頑張る。

 屋根から、灯火の明かりも無い空を見上げて、綺麗だなと口の中で言葉を転がして、自分で柄にもないとそれを笑う。
 森の中の、小さな一軒家。木の板を繋いだだけの様な質素とすら言えないような小屋が今の、そして昔からの住まいだ。
 親は、母が"外"からやってきた人間らしい、父は"中"にいたタダの農夫。
 そんな父が母に一目惚れして、幾度の求婚に遂に母が根負けして、挙句の果てに二人の間に出来たのが、自分。

 一見これだけを訊けばタダの幸せな惚気話の一つに過ぎなかった。けれど、そうじゃなかった。
 自分は、父の顔も母の顔も、知らない。物心ついた時から、二人は既にいなかった。
 死んだのかと聞かれても答えられない、捨てられたのかと言われても断言できない。
 まるでそれは神隠しのようで、だから自分はそうであると、だからどうしようもなかった、そう思っていたいから、そう信じている。

 両親は死んだんじゃなくて生きている、両親は自分を捨てたんじゃなくて帰ってこれないだけ、そう信じる方が幸せだから。

「そうじゃなきゃ、やってらんねえ」

 吐き捨てるように出した弱音は、夜空に誰に聞かれる筈もなく消えていく。
 こんな森の中に、自分以外の誰かがいるわけが無いのだから。

「ぐわー」

 そんな気の抜けた、演技としか思えないような悲鳴?が空から落ちてくるまでは。
 なんだと空を見続けても、星々が見えるばかりでなにも…、いや、一か所、まさに一点だけ妙な…。
 そうしてやばいと思った時には、即座に屋根から飛び降りた。

 数瞬遅れてグワシャンっと、あっさりと住処は倒壊し、頭痛の種が設立された。

「またお前か、またお前なのか…」

 絞り出すように誰に向けた言葉は返事は返らず、妙に思って散乱した用具の中から火元と提灯を掘り出して、照らし上げる。
 提灯に照らされた、小屋の残骸の下で何やらモガク存在。これが住処を破壊した悪魔の正体かと思ってれば、内心は"またか"と、呆れと苛立ち。
 おい、と声をかけるが「むがー」だの「もげー」だのわざとらしい悲鳴ばかり。

「ぷはっ、ちょっとは心配してくれもいいんじゃない?」
「明日から何処で寝ればいいのかが心配だ」
「私の事を心配してよね」

 ぷんぷんと口に出してあざとく起こるが、そこから先、自分の言葉は出なかった。
 いつも出あれば黒い球体、今までも、そしてこれからもそうであろうと思っていたのに、今目の前にあるのは、黒い球体では無かった。


21 : ○○ :2015/06/01(月) 21:44:10 UYWjtL3.
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/22651/1432634050/l50
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/22651/1432535250/l50
誰かが立ててくれたけどスレタイに難ありということで新スレにならなかった↑のスレって
そういえば削除依頼とか出さないといけないかね


22 : ○○ :2015/06/01(月) 22:23:21 o.6fqphk
長編さんの橙かーこれは良いものを拝見した。
親の夫とおばあちゃんの夫が仲良くていいですよね。
なんか二人だけで温泉とか行きそう。

ルーミアのひと
ガッツがあって好き。頑張って!
ルーミアが可愛くていいね。
でもなんなどす黒いもの秘めてそうで……楽しみにしてます。


23 : ○○ :2015/06/02(火) 03:08:46 tYNYbLpE
しばらくサボってたせいで危うくこのスレにたどり着けないところだったぜ


24 : ○○ :2015/06/02(火) 22:14:33 HlFnzRJA
ルーミアの人、今までにない感じのルーミアですこぶる期待


25 : ○○ :2015/06/03(水) 10:08:43 d1.reArg
流れは決まっているけど語録が無くて大変。頑張る。

 明かりは手元の提灯と星明かりだけというのにこれはどういうことか。
 月明かりに照らされるような金の髪をひとつまみ、金糸に映える紅は、髪をひとつまみ束ね結んだ髪飾り。
 口元から垣間見える白金の様に綺麗な並び揃った小さな歯に、此方を射抜ぬく二つの双眼は鮮血の紅。

 これが黒い球体の正体か。
 暴く気も無ければ知る気も無く、しかし目の前にはいまその正体が暴かれている。

「それがお前の正体か」
「惚れた?」
「幻滅した」
「どういう意味?!」

 これまたあざとくうっふんとか言い出しやがったから、表現できる限り最大限の落胆したリアクション。
 あり得ないとこの世の全てに裏切られたような表情で慄き嘆く姿は、その言動こそ知ったものであるが、その素顔に正直自分が驚いている。
 口上では平然と軽口を叩いておきながら、その実声音、表情、態度全てがビビっている自分は、失神だけは免れる。

「お前、子供だったのか」
「大人ならよかったのかコノヤロウ、あと数万年したら男も腰が砕ける絶世の熟れた美女だよ。首洗って待ち焦がれて悶えるといいよ」
「カラカラの骨になって首の骨まですり減りなくなるな」

 言葉を交わして改めて、この子供が、あの黒い球体だと実感する。
 妖など、その外見など信用出来るモノではない。自在に姿を、言葉を変え、人間を誑かし、喰らう。そんな奴らばかり。
 信頼はしても信用はしてはいけないのだ。

「で、正直なとこ、どうなのよ。アリ?ナシ?」
「ムリで。名前も知らない相手と付き合えません、この話は無かった事に。きっと良い相手が数万年後に現れます。どうかそれまでお元気で」
「これってもしかしてフラれた?」
「もしかしなくても」
「つまり押しかけオーケー?」
「アウト」

 この黒い球体とのやり取りは、これで何度目だったか。
 初めての会話、初めて出会って最初の言葉は「私と暮らそう。」過程をどこまで飛ばしている?

「とりあえず球体さん」
「いきなり他人行儀になった」
「小屋、直してください」

 それが、初めて黒い球体の、黒い球体の姿以外を初めてみた時の、何度目かの接触。


26 : ○○ :2015/06/03(水) 22:25:44 uCmlskjY
流れを壊すようで申し訳ない


丑三つ時もとうに過ぎ、間も無く夜が明けるというところ
○○は紅魔館の一室から外を見ていた
「いやぁ、いつ見てもここからの眺めはいいなぁ」
「ええ、本当にね」
館の主である、レミリアと共に

「もうすぐ眠る時間だな、レミリア」
「あら、もうそんな時間だったの。貴方といると時の流れは早く感じるわね」
「時なんてそんなものさ。いつの間にか現れて、いつの間にか消えるもの」
「まるで貴方みたいね、○○」
「…なぁ、レミリア」
先程まで笑っていた顔から笑顔が消え、重い顔付きなった○○を見て、レミリアは少し戸惑う
「何かしら?」
「君は、こんな俺の何処が気に入ったのかい?」
「あら、何を聴くかと思えばそんなこと」
「済まない、俺は冗談で言ってる訳ではないんだ」
「……そうなの?」
「ああ」
「なら、そんなことを聴く理由でも教えて欲しいわね」
○○の顔は更に重くなる
まるで何かに縛られ、怯えてるかのよう
「……怖いんだ、俺は。夜が来る度、朝が来る度、昼が来る度、1日が終わる度、自分が此処で過ごしてきたこと全てが夢だったと考え込んでしまう。人間を辞め、この館でしか暮らせない吸血鬼となった今でも。俺はまた、あの世界に戻ってしまうのではないかと。あの、残酷で終わりのない絶望しかない世界に」
「……。」
「レミリア、君は何故俺を愛する?振り切った筈の世界に怯え、いつ来るか分からない消滅に怯える俺の何処が良いんだ?頼む、教えてく……」
最後まで言い切ることなく、○○の口はレミリアによって塞がれた
「……ぷはぁ、貴方がそこまで思いつめていたなんて……ごめんなさい」
「いや、良いんだ」
「いいえ、素直に言えなかった私の所為だからね。……大丈夫、ちゃんと説明するから、もう怯えないで」
○○は自分で気づかない内に震えていた
「ああ、いつの間に」
「大丈夫よ。少し落ち着きましょ。紅茶でも如何かしら」
レミリアはポッドを手に取り、カップへと紅茶を注ぐ
いつもの通り、変わることのない香りが部屋に行き渡る

続きます


27 : ○○ :2015/06/03(水) 22:26:08 0JFI6D4s
本格的にスレが稼働し始めたか?
ここで行くって確定でいいんだよな
>>21であげてる使わないスレの削除ってもうしてもいいと思う?


28 : ○○ :2015/06/03(水) 22:27:32 uCmlskjY
↑の続き
「私は、いいえ、妖怪は貴方が思っているよりも精神的な生物なの。認められれば存在は確固たるものになるし、拒まれればそれまでのものになってしまうの。無論私も」
月は間も無く沈み、太陽が代わりに姿を現わそうとしていた
窓を背にしてカップを持つレミリアは窓からの微かな光を受けていた
この僅かな隙間に入り込む光が、レミリアをより美しく引き立てていた
「あの時、私が貴方を拾った時から既に精神は左右されていた。だって、私は貴方に興味を抱いていたから。私、幻想郷では偉そうに踏ん反り返っているけども、本当は臆病であることを知られたくないだけなの。夜の王なんて偉そうな肩書き、私には似合わないの」
つぅ、と頬を伝って流れる涙は、レミリア自身の不安を表していた
「貴方は、そんな私を気にせずに受け入れてくれた。それが嬉しくて嬉しくて堪らなかった。それと同時に悲しかったの」
「俺が、人間だったからか?」
「ええ、そう、その通り。私は吸血鬼で貴方は人間。種族の違いは決して避けられるものではなかった。それに、貴方が外に帰りたい、と言い出すのも怖かった。外に帰れば私を忘れてしまうのでは、と。私を分かってくれるのはもう、貴方だけだったの。咲夜もとうに死に、美鈴も少し寿命が長いだけで死は訪れた。パチェは魔法が失敗して永遠に帰ってこなくなり、フランは暴走の果てに自らを壊してしまった……。私の知る霊夢も彼岸の人間に…私の親しかった者は皆この世を去ってしまい、残ったのは私だけだったの」
今まできかせれることのなかった真実
それは、決して興味本意で踏み入れてはいけない領域であった
「私にはもう貴方しかいなかったの。私を理解し、隣に寄り添ってくれるのは。でも貴方はいつか消えてしまう存在だった。だから…………」
レミリアはそこで言葉を区切ると俯いた
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい貴方を殺してしまって貴方を吸血鬼にしてしまってごめんなさいごめんなさいごめんなさいでもこうするしかなかったのごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいお願い拒まないで見捨てないで独りにしないでもっと私を見てもっと私と生きて私の孤独を埋めて私を理解して私と添い遂げて私を、私から消えないでお願いもう貴方しかいないの」
パリンとレミリアのカップが割れる
中身は入っていなかったので服が濡れることはなく、幸いにして手を切るということもなかった
「……レミリア」
カップの音で目が覚めたのか、○○はレミリアは抱き寄せ、唇を重ねた
それはまるで、従者が主を思ってのことか、はたまた純粋な恋人同士としての接吻かは分からなかった

「…どうやら俺たちは、互いのことを思いすぎていたようだな」
「○……○……」
「安心しろ、レミリア。君が十分俺のことを思ってくれていたのはよく分かった」
「…うん」
「だからこそ、俺と一緒に最後まで生きてくれないか?」
「…え?」
「君が思うように、俺も君なしでは生きていけない。俺も大分君に依存してしまったようなんだ」
「え、……え……」
「だから、俺と一緒に、いつまでもいて欲しい」
「ま、○○ぅぅぅ!!!」
レミリアは○○に抱きつき、泣いた
そこにはかつて恐れられていた夜の王の姿はなく、臆病でそれでいて美しい少女の姿があった
「○○、○○、○○!!」
「ああ、俺はここにいるよ」
「もう私は貴方を離さない!例え貴方が逃げ出してもすぐに捕まえるわ!もう貴方は私のものよ!」
「ああ、望むところさ。俺は元来そのつもりだ。ずっと一緒に居よう、レミリア」
かつて、悪魔として恐れられていた一人の吸血鬼
しかし、今ではただ一人の恋を叶えた少女としてその姿を保ち、そこに以前のような姿はなかった




ーそうして、時は流れて
巫女とメイドと門番と魔女と吸血鬼が死んだのはとうに忘れられ、
新たに魔法使いと白沢が死んで
幾つもの季節が流れる中
幻想郷は相変わらずの、平和な日々が続いた

そうしてまた時は流れ
外の世界の、極東の巨大都市が流れ着き
地底と地上が一つになった時、
二人の吸血鬼が死んだ
誰にも気づかれることなく
ひっそりと
しかし、二人の表情に曇りはなく
笑顔のまま、死んでいったそうな
《了》



流れを無視し、駄作の投下すみません
前スレのナズーリンの続きの前に一つ、と思い書いてみました
あんまり病んでないなぁ……やっぱり難しい……


29 : ○○ :2015/06/03(水) 22:28:35 uCmlskjY
>>27
私は一向に構いません


30 : ○○ :2015/06/05(金) 02:02:38 KUeN.J06
レミリアが可愛いのはともかくとしてパチュリーwww


31 : ○○ :2015/06/05(金) 11:17:16 d82j8Ye6
>>25 の続きです。 あと >>25>>20の続きです。頑張る。
あと無駄に長くなりそう…すまぬ。

 昼が明ければ月、夜が明ければ日が昇る。
 コッコッと木に鎚を叩く音が一定の間隔で、止まっては鳴り、止まっては鳴る。
 所詮用途を失っただけの木材を集めて束ねて小屋の形に仕立て上げていただけ、雨風なんぞ完全に防げるわけではないし、それがどれだけ小さい子供であっても、屋根の上に落ちれば穴があき倒壊する。
 利点と言えば、そんな薄い板ばかりであるため、例え倒壊しようとも下敷きになって圧死するという事が無いくらい。身体を退かす程の風が吹いてもばらばらだ。

「こんなものかな」

 簡易的、質素、大いに結構。雨風を防げるだけで少なくとも今の季節、凍死だけは免れる。
 少女が小屋を直す姿を見るのはこれが初めてだが、少女にしてみれば何度目かの作業、手なれた手つきで小屋は以前よりも一回り大きく、そして心なしか頑丈になったように見える。
 腰に手を当て額を拭うと、まるで良い仕事をしたと言わんばかりに「ふぅ」と息をついた。

「起きているんでしょ」
「こんな指示を出した覚えは無いな」
「出来る女は夫の意向を聞かずと汲むモノだよ」
「文句は言わんが謝礼も言わん」
「男は背中で語るんだね、大胆なんだから!」

 「ぽっ」と口に出しては困惑させる言葉をつらつらと並べ立て、一睡もしていない自分ははっきり言って眠くてこれ以上言い返す気も起きやしない。
 少女が小屋を二夜にして再建させている間に自分は散乱した生活用具を風呂敷に纏めていたのを、完成した小屋の中に無造作に放り込む。

「どうしてそんなぶっきらぼう嫌うのよー」
「嫌いじゃないさ」
「突然の愛の告白だなんて、ドッキリラブロマンス?」
「ライクの方向で」
「残念」

 少女の言葉は嘘か真か、舌をチロリと出してあくびを一つ。
 手に持つ鎚をクルリと回して空へと投げると、重力に従って少女の手元へ。その片手には息絶えた野鳥が一匹、お見事。
 
「朝ごはんにしようか」
「捌こう」
「もちろん。木の実でも見つくろってくるわ」

 まるでドライな会話、けれども悪くは無い。一人暮らしの身なれば、たまにであらばこんな趣も良いものだ。
 木の実を集め戻ってきた少女と共に迎えた朝は、心穏やかであった。
 素焼きの鳥に齧りついては味のしなくなるまで骨までしゃぶり、木の実を一つ二つと口に運んで終わり。

「そんなわけで今日からよろしく」
「いやちょっと待て」
「ごめんね、木の実はこれだけしか近場に無かったの」
「違う。なんで一緒に住む事になった」
「私が建てた家だから私が済むのに問題が?」
「新しい小屋建ててくる」

 食後の運動とばかりにすぐさま立ち上がり、鉞を手にしていざ森の中。
 後ろから少女がふよふよ漂ってくるが振り向く必要は無い。
 「手伝ってあげようか」と言われるが、手を貸せばやはり一緒に住みつこうとしてくるんだろう。
 人はこれを妖に魅入られた、取り憑かれたと言うのだろう。

「自分はお前の名前も知らないし、お前も自分の名前を知らない。お互い見知らぬ関係。オーケー?」
「うんうん、草木の影で互いの体液が交わるほどに身体を重ねて絡め、熱く長い一夜を一緒に過ごした関係だね、オーケー!」
「言葉とは難しいものだ」

 真夏の暑さに耐えつつも、野獣や妖から身を隠すために草木の陰に隠れて眠っていれば、身体に妙な重さを感じて目を覚ませばコイツが涎を垂らしたのしかかるように眠っていただけのこと。
 おかげで少女と自身の汗が交わり、正直起きていたほうがましだったと思うほどじっとりとしており、ぜめて川で身体を洗い流したい気分だ。
 はっきり言って気分最悪、早いところ身体を洗い流して気分を一新したい。


32 : ○○ :2015/06/05(金) 11:56:57 A8CZuvoQ
前半でちょっとわずかにレミレアに母性を感じたと思ったら後半にはさみしんぼの吸血鬼が一匹だった!
そうそうこう言うんでいいんだよこういうので。
王道いい……
全部レミーの台詞で説明してたんで、個人的には地の文ももっと使うと更に好みだと思いました。


33 : ○○ :2015/06/05(金) 12:09:28 A8CZuvoQ
スレの活性化には活発な乾燥が不可欠だと思った。
だので、ルーミァの感想。

どこか懐かしい書体で味があるね。
ルーミアが全然余裕のある様子なんで、どんな病み方するのか楽しみにしてます。
ライト病みでも、うええ?!っとなるド級病みでもどっちも行ける感じなので、先が読めない。
屋根の上で膝つきながらトンテンカンテンと釘打つルーミアは想像するとスゲー可愛い。
しかし、幻想郷でひと食いと言えばルーミアってくらいのイメージだったんで、そいつがそばにいるのに寝てる○○太いな……
きっと寝てる○○の頬っぺたを、れえーわはーって舐めるくらいはしてるよな
少な


34 : ○○ :2015/06/05(金) 12:13:11 A8CZuvoQ
ごめん、途中送信です。
少なくとも○○の体温と匂いを感じながら寝てるのは確かなわけで、犬っぽくてイイ


35 : ○○ :2015/06/07(日) 00:50:26 c/QBJ3eU

遅レスだが>>12
咲夜さんの自己正当化の心情描写が上手くてビビった
が、ふぉは!ってなってるところでこっちも吹いてふぉは!ってなった


36 : ○○ :2015/06/07(日) 23:20:24 fiqJiyvs
ルーミアは話を聞かずに一緒にいることだけ考えている。
そういう病みかたなのかな?
純粋で可愛らしくて読んでいてほっこりした。
ふたりの会話のリズムも好み。
明るいストーカー美少女とかいいよね。

そういう系ってまずまっさきに早苗を連想する


37 : ○○ :2015/06/07(日) 23:27:08 ejIzVUS6
感想ありがとう!
ふぉは!は咲夜さん舌を気で火傷してるんで、そういうのをイメージしました。
ネタバラシというか、描写が不足してるので補わせて貰うと、「他の女避け」に美鈴は毎日キスで○○に気を送っていました。
それは電池のようなもので、生物(気を持つもの)が舌と何処かに同時に触れると通電する、という仕組み。
対生物……対他の女とは言っても、ぶっちゃけ対咲夜用の罠です。
美鈴もこんなことしちゃうくらい、ちょっとオカシクなってます
咲夜さんとの仲はすごくよかったです


38 : ○○ :2015/06/09(火) 15:00:22 TX3OBpfQ
>>31 の続きです。亀更新で済まない…。頑張る。

「なんでついてくる」
「このあたりは野獣が多いのだ、がおー」
「野獣のほうがオマエよりかわいいな」
「なんと…」

 実際ここらにいる野犬などは、既に餌付けしてある程度は慣らしてある。が、そうでない獣が多いのもまた事実。安心などは出来ない。
 犬畜生以下な事実を突き付けられて「なんということだ」と膝から崩れ落ち地面を凝視する少女の姿は滑稽である。

「でも実際、なんでついてくるんだよ」
「怖ろしい野獣から守るためだよ」
「野獣よりオマエのほうが怖ろしい。ほら、お前の方がアイツらよりも格が上だぞ、よろこべ。」
「わーい!…あれ?」

 一体何を隠しているのか、はやり妖は信用は出来ない。たとえどんな事があっても、信用はしてはいけない。
 小川で身体を洗い流している間に、少女は姿を何処かへ消して、戻ってきた時には鉄錆を撒き散らしたような臭いに僅かに咽る。

「近づくなよ?血の臭いが移るだろうが、余計な事で害敵誘き寄せるようなことすんな」
「そうしたら私が守ってあげるよ」

 身体の至る所に獣か妖か、または人か。赤黒い血を満遍なく滴らせた少女が戻ってきても、驚く事は無い。
 少女は妖、その事実だけで十分だ。人が野菜を食べて驚かれるだろうか?犬が骨を齧って怯えられるだろうか?つまりそういう事。
 確かに初めて会った時は、自分が襲われるのかと思い、生存本能の値が振り切って失神したが、そうでないと分かればそんなもの。
 危険だろうと、恐ろしかろうと、自分に害をなさないなら、必要以上の警戒はするだけ無駄。

「君に害なすモノは、私が許さないよ」
「おかげで自分は里にいられなくなったんだろうが」

 少女に何度か出会って、それからの事。
 妖怪憑き、と指を差され、陰口を叩かれ、そして暴力沙汰が起きて、そしてソレは起きた。
 突然黒い弾が見えたと思ったら、喧嘩を吹っ掛けてきた相手が喰われた。それだけだ。
 少女と会う事は少ない、が、少女が自分をみている時間は長い。会ったのは未だに両手で数えられる程度だけれど。
 …妖怪は信用できない。どうしてそんなに自分を見る。自分の何がそんなにお前を引き寄せる。

 ただ分からない事が怖い、知る事が怖い。だから、妖怪が怖い。

「どっせー」

 小川に全身から飛び込む事によって小規模な津波飛沫を撒き散らして少女は笑う。
 全身から赤い滴を滴らせていなければまるで可愛い人間の少女と見間違えてもおかしくは無いだろうに…。
 もっとも、人間らしからぬその綺麗さ、美しさ、可愛らしさが、時折ひどくイビツに見えて、気持ち悪い。


39 : ○○ :2015/06/09(火) 17:45:19 Y2yvPiW2
やけに子供っぽくないルーミアぐう好き


40 : ○○ :2015/06/09(火) 18:43:43 s6uuuSwg
ケンカしてたら横からガオン!とか恐ろしすぎる
のんびりした口調のせいで見誤りそうになるが、徐々に狂気がみえかくれしてきたね
しかし野獣ルーミァか……いい


41 : ○○ :2015/06/09(火) 21:10:41 2qqwiMg6
素直じゃない奴らってめんどくさいよねと一筆。

休日前の一人飲み屋。
一週間の終わりを見送りつつ、だらりと焼鳥を齧るのが俺の決まり。
かったるい人間関係やら仕事やら、反吐がでる。明日明後日なんぞもう知らん、俺は休日を世捨て人するつもりで呑んだくれていた。

気の合う話相手なんぞ、そうそういないもんだ。くだらない馴れ合いやら健全ぶった会話やら、そんなもんは日常生活の演技で手一杯だ。
だったら仕事の無い時ぐらいは、孤独にまったりと過ごしたい。

さあ、明日をドブに捨てるつもりで呑む………

「相席いいかしら?」
「ん…………?ああ、なんだ、お前か。」

………と意気込んでいたのだが、今日は久々な顔に出会った。

赤蛮奇。
人里で細々と暮らすろくろ首だ。

俺は掴み所が無いだの冷めてるだの散々言われがちな性格なのだが、こいつもこいつでなかなかいい根性をしてる。
本来ならお互い他人なんぞ知らんふりなのだが、ひねくれ者同士話が合うのか、数少ない飲み仲間と化していた。

「明日明後日はもうクズんなるぞ、俺は。」
「出た出た。まあ気持ちはわかるけど、あんまり引きこもってるとお尻に根が生えるわよ?」
「寧ろ生えたい。なんなら土から養分を取って生きたい。
ツラを見たい奴なんてたかが知れてんだ。一生の付き合いなんて、せいぜい2.3人いりゃいいんだよ。」
「………その中に、私はいるかしら?」
「さてねー。」

……言えるわけねえだろ、ばかやろ。
所詮俺は人間様、こいつと並んで歩くには、少々ひ弱過ぎる。

そこそこに男前な男妖でも現れて、俺の前から蛮奇を掠め取ってくれりゃ、俺もすんなり諦めがつくんだがなぁ……。
俺が素直になった所で、こいつを幸せに出来る気がしない。

あーあ、こいつと飲む酒は旨えなぁ……ちくしょうめ。

散々酔っ払って家に帰れば、がらんどうの我が家。
俺にとっちゃ一人の時間は寧ろ天国……なのだが、今夜ばかりはダメだ。どうにもこうにも、あいつの顔ばかり浮かぶ。

誰も見てねえしなぁ………たまには、男泣きしたっていいよなぁ………。





泣いてるあいつなんて初めて見た。
さっきカマを掛けてみたけど………やっぱり、好きな人がいるのね。

人も妖怪もくだらない輩だらけだし、馴れ合いも好きじゃない。
似たような思考回路をしてるだけかもしれないけど、そんな中でも、あいつだけは居心地が良かった。

全く○○にあんな思いさせて、どこの女かしら。
……あーあ、誰かわかるんなら、シバきたいわね。さっさと私の前から○○を奪ってくれれば、まだ諦めが付くのに。

今だって諦めきれなくて、こうして夜毎頭を天井裏に忍び込ませて、彼を覗いてる。

そりゃ男の独り暮らしを覗いてるのだから、すけべな事に使ってる春画の女とかも見ちゃうわけで。
町中でそれに近い部類の女を見かければイラっと来るし。あいつがさっき言ってた2〜3人に好きな人がいるのかな、と思うと、何だかやりきれなくなる。

嘘でもいつもの調子で、「まあお前もそうだなー」とか、適当に返してくれても良かったのに。

いっそあいつの首でも撥ねちゃえば、私と同じになるかな……なんて思うけど、あいつはそんな事したらお陀仏だもの。所詮世の中甘くない。

だけど。

ねぇ……誰を想って泣いてるの?私だったら、いつでもここにいるのに。
いつでもあんたの事、誰よりも見てるのに。

胴体は家の裏に隠してるし。
首だけで今ここに現れてやる事も、胴体を呼んで抱き締めてやる事だって出来る。

それでも驚かないでしょう?あんたは私が首を外してる所なんて、見慣れてるんだから。
どんな時でも、“私そのもの”しか見やしないんだから。

教えたよね?私は頭を9個まで増やせるって。
この部屋だけじゃない。風呂場にも台所にも、天井裏にはいつも私がいるの、知ってる?

こんな気持ち悪い事をするぐらい、もう押さえられないの。あんたの心が欲しくて欲しくて、たまらないの。

……だから早く、その人と幸せになってよ。
それでも私がそばにいたら、あんたは幸せになれないんだから。

さっさと勇気を出して、その人の元に行って。
早く、この気持ちを殺して……。


42 : ○○ :2015/06/09(火) 23:36:40 G000P9g6
いい病み具合の赤蛮奇ですね
たまりません


43 : ○○ :2015/06/10(水) 04:35:31 r4ZbQ4Dw
いつかこの下地で長編を書きたい。



2ヶ月前、3年付き合った彼と別れた。

振られたのは私の方で。妖怪と人間の壁とは別の事で、ごくごく自然に、距離が離れてしまった。
仕方ない事と思ってしまうほどに、ただの気持ちのすれ違いが原因だった。

妖怪にしたら3年なんて3日?そうでもないわ。
結局時の流れは、生けるものには平等だもの。それはそれは、とても鮮やかな日々だった。

今日も屋台を引いて、明るい歌を歌う。
私はここの女将。落ち込んでなんかいられないの。
さて、そろそろ遅くなってきたわね……。

「やってるか?」
「あら妹紅さん、いらっしゃい。」

そう言えば、妹紅さんが来るのもしばらくぶり。
彼女が好きなお酒は仕入れてたから、今日はこれがお勧めね。

「はい!あのお酒入れておきましたから。」
「ああ、ありがとう。………なぁ、ミスティア。」
「どうしました?」
「この前里で、○○に会ったよ。」
「……………!」

そうだ、妹紅さんも知り合いだったっけ……。
この2ヶ月、あいつの顔も見てないや。

「………元気そうでしたか?」
「ああ、相変わらずあくせくやってるみたいだ。」
「なら、良かったです………。」

そう……元気なら、それでいいんだ。
…………たまには私の事、思い出してくれてるかな。

「………ミスティア、今日は随分侘しい曲を口ずさんでるじゃないか。
“さくらんぼの実る頃”、だったか?前に香霖堂で聴いたな。」
「あ……すいません、何だかふと口ずさんでしまって。」
「そろそろ店仕舞いだろ?お代は出すよ、お前も一杯付き合え。」
「………はい。」

妹紅さんには敵わないな………別れてから、ずっと泣くのを我慢してたのも、きっと見破られてる。
全く、どっちが持て成してるんだか……。


44 : ○○ :2015/06/10(水) 04:37:14 r4ZbQ4Dw
続き



「忘れられない風だな。」
「……そりゃそうですよ。私、いつか二人でここをやろうと思ってましたし。」
「……キツい酒は飲む時こそ喉が焼けるが、それを過ぎれば酔えるだろう?
今は飲みきる時さ。せいぜい喉の痛みに泣けばいい。
そうしたら、後はいい思い出として酔える。」
「……でも、悪酔いだってしますよ。」

ばかだなぁ。この人の言ってる事の方が正しいのに。
私、何噛みついてるんだろ……。

「あいつも、少し無理して笑ってた気がするよ。
それでも悪酔いも、いつかは覚める。
喉元過ぎれば何とやらじゃないが………離れて逆に許せる事も、あるのかもな。
酔いから覚めるにしろ、酒に強くなって、ちゃんと向き合って飲めるようになるにしろ。お前の自由なんだ。」
「………はい……ありがとうございます。」
「いつか友達連れて、ここに飲みに行きたいって言ってたよ。
その時は、いい歌を歌ってやれ。」



「…………ただいま。」

玄関を開けても、返事は無い。
2ヶ月前までは、週の半分はここに彼がいた。
だからお店の後でも、「おかえり」って迎えてくれて……彼のいない日だって、明日を楽しみにしていられた。

“まだ取れないや、あいつの匂い。”

別れてから、それまでの家具は仲間に譲って、新しい物に替えた。
布団だって替えたのに、それでもまだ感じる匂い。
きっと記憶の中の匂いを、今もそこにあるように感じてるせいなんだ。

毎晩眠る前、宛名の無い手紙を書くようになった。
出したい人はいても、出す事もないもの。

もう六十何通とそれは溜まって、全部籠に入れてある。

“ぽた……”

妹紅さんの言葉で、やっと泣けたんだ。手紙も今日で最後にするつもりだった。
泣くだけ泣いて、後はスッキリするはずだった。

なのに何でだろう。紙が濡れて、先が書けないよ。

これを書けば終わりなのに、ペンが突き抜けてしまって、最後まで書けない。

「う………ふ…ぅ………○○……○○……。」

無理に蓋をしていた悲しみは、グズグズに腐ったまま溢れて、私をズタズタに引き裂いていった。
それはまるで長く残る、悪いお酒みたいで。

いつまで私は、あなたに酔えばいいのだろう。

いつか、一人でもお店に来てくれる?
そしたらね、取って置きのお酒を出して、私の好きな歌を歌ってあげる。

やがて酔いしれて、その内視界も揺らいで。
そうしたら膝枕をして、優しい歌を歌って。

そしてこの手で、あなたの目を塞ぎたい。

もう私の声(うた)しか、聞こえないように。


45 : ○○ :2015/06/10(水) 07:32:53 3XwjUtCc
>>41
いい赤蛮奇だ……
これついうっかり独り言でばんきちゃんのこと呟きでもしたら一気にドババーってなだれ込んでくるよね
でもいいんだろうな。だって二人は相思相愛。
ヤンデレの恋人は愛することにかけては最強だもんな……お幸せに!


46 : ○○ :2015/06/10(水) 07:37:27 3XwjUtCc
>>43
ミスチー大人だな
と、思ったら全然諦めてねー!
なんかきれいな感じだけど意訳すると「今度は逃がさねえ」って感じでいいな
でも、待ちに徹するあたり奥ゆかしい日本の若女将ぽいですね(錯乱)


47 : ○○ :2015/06/10(水) 18:52:20 rpw0vfq2
>>41
ばんきっきがここまで追い詰めてるってのはあまり見たことなくて新鮮でした
思ってることは二人とも同じだけど中々言い出せない展開は素晴らしいですね

>>43
割り切れなくて遂に気持ちが溢れた、って感じのミスチーですね
吹っ切れた感じが益々思いを強くしてるなぁ……


48 : ○○ :2015/06/10(水) 19:24:12 b9gj4KDA
すでに感想書いたけど、>>47の感想見て更に感想持ったわ
これミスチーさ、男側に新しいパートナーできても絶対割り切れないよね
それどころか、そんなの聞いたら手紙の束をグググメシャアーッてするよね?
俯いて、なんでなんでなんでどしてどしてどしてどおおおしてってしてクワッて顔あげたら血涙流してる……
そんな元カノをみて「ひっ」てなる○○まで妄想してホッコリした。


49 : ○○ :2015/06/10(水) 22:29:17 .tpxyfHU
そういや、前スレで過去スレが見れなくなった問題って解決したんだっけ…


50 : ○○ :2015/06/10(水) 22:54:01 vJVE.FuY
>>43
これは新しい。元カノがヤンデレ化するという生々しい感じが意外と今まで無かった。
別れたと思ってても幻想郷の少女たちが未練たっぷりだったらと思うとかなりクるもんがあるな。
相手にもう新しい彼女がいたりなんかしたらと思うと更に恐いな。是非長編で書いてくれ。

>>49
いやまだそのままだと思うよ。


51 : ○○ :2015/06/10(水) 23:20:23 .tpxyfHU
>>50
そうか…dat形式のファイルならいくつかあるけど(多分そういう人も多いだろう)
どうするかねぇ。


52 : ○○ :2015/06/11(木) 02:42:16 AIArdCRg
前スレの、日付でいうとかなり前の奴の続きですが。
エタらないで終わらせられました。

(赤ちゃん)天狗の文と人間○○、天狗の椛と人間××の話です。


53 : ○○ :2015/06/11(木) 02:46:23 AIArdCRg
天狗と人間 最終話

「ありがとうございました」

酒場にて、○○からその妻との昔の話を聞かせてもらった椛の意中の相手××は○○に普段の口調よりもやや丁寧に礼をいった。

「別に礼は良いよ。それよりも……」
「わかってる。あの天狗ととりあえずもう一度会えばいいんだろう?」

××の家の場所を聞き、約束を取り付けることに成功した○○はこの日は××と別れた。


後日。
幻想郷の重鎮も使用することのある人里での料亭にて会食が行われた。
椛側には文・○○夫婦が。××側には慧音が付添いとして参加していた。

「××さん!」

全員が席につくと、椛は××に向かって深々と土下座を行った。

「この度は、××さんの気持ちも考えず、失礼なことをしてしまい申し訳ありませんでした」
「まぁ、天狗の常識の話は聞いたし、未遂だったから。二度としなければ今回のことは許そうかなと思う」
「ありがとうございます!あの……それで……」

椛は土下座の体勢から顔だけあげ、××の表情を覗いながら何かを聞こうとした。
××は事前に謝罪後のことも○○から聞いていたためなんとなく何を言おうとしているかの察しがついた。
だから、椛が言い終わるよりも前にさきに答えを返す。

「まぁ、謝罪から誠意は伝わって来たし。あまりお前に対して今は恐怖感とかないし。
今後もまずは友人としてなら、付き合っていってもいいと思ってる」
「ほ、本当ですか!?」
「聞いた話じゃ、妖怪とかの知り合いがいれば安心して山菜とか取りに行けるっていうしな」
「何処へでもお供いたします!」

とりあえず、当人たちは和解するかたちになっているようだった。
一応××は、何かあったら○○や慧音にすぐ相談すること。三日に一回は慧音に顔を見せるということになった。


その日の会食の帰り。
○○と文の夫妻はふたりの家に帰りながらも今日のことについて話し合っていた。

「文の時もそうだが、椛は随分と変わったな」
「ええ。彼女も想い人への思いは本物でしたし。
私よりも性格が真面目なのが、人間への理解にうまく作用したようです」
「とりあえずは大丈夫そうだったな。彼もまた会ってくれるといっていたし一件落着だ。お疲れ様、文」
「いえ、あなたも大変だっでしょう」
「俺は酒飲みながら昔話しただけさ」


その後も○○と文は、××と椛の動向を気にしてはいたが、特に問題なく交友関係を続けている様だった。
そして、交友関係が始まってから4ヶ月ほどたったある日。
椛が突然文と○○の家を訪れた。
事の発端の時も突然の訪問ではあったが、今回は招き入れられるよりも先に勝手に侵入してきた。


突然の訪問に、○○の膝の上で抱かれていた文は顔を真っ赤にしながら飛び降りた。
慌てて今の今まで自分たちが行っていたことを見たのか、理解したのかと焦る文だったが、それ以上に興奮した椛はそれどころではなかった。

「聞いてください、文さん!○○さん!」
「どうしたの?まぁ、落ち着いて」

慌てたとはいっても。切羽詰まった感じではなかったので、聞く側の○○も落ち着いて対応できた。
自分たちにわかるよう話をするように促す。

「実は、私、××さんと恋人としてお付き合いすることになったんです!」
「へぇ……良かったじゃないか」
「はい!私、あんなことをしてしまって、××さんとの恋人になることは諦めていたんです!
自分から告白する気はなくて、お友達のままでいられたらいいって……でも、今日××さんのほうから……」
「そういえば、彼こっちに永住するとか言ってたっけ。
なにはともあれ、恋人となってもいいなと思えるほど彼と仲良くなれたってわけだ。おめでとう」
「ありがとうございます!」
「まぁ、今後も何か質問があれば聞きに来てくれていいから。問題ないよな、文?」
「ええ。私は問題ないですよ。きちんとノックして了承を得てから家のなかにはいるのであれば」


54 : ○○ :2015/06/11(木) 02:47:28 AIArdCRg
報告を終えた椛は
「できるだけお世話にならないように頑張ります」
と言い残して文と○○の夫妻の家を後にした。

「椛はあんなことを言っていましたが、恐らく相談に来ると思いますよ」

椛が来るまでは○○に甘えていた文だったが、椛に見られたかと思い、恥ずかしかった後のせいか、続きはせずに○○にお茶をいれていた。
そんな文が呟いた一言が気になり、○○は文に質問した。

「どうしてそう思うんだ、文?」
「正確や誘拐行為の結果など、細部は異なりますが状況が似ているのでわかるんですよ。
一度否定された分、嫌われないか不安になるんですよ。付き合いたては特に」

価値観うんぬん以外にも、気を遣わせてしまっていたかと○○が思っていると。

「まぁ、こっちが勝手に悩んでいただけですから気にしないでください。私の場合はほとんど杞憂でしたし」

と文がフォローしてきた。

「あれ、俺まだ何も言ってないよな?」
「表情を見ればなんとなくわかりますよ」
「悩まずに俺に直接色々言ってくれていいぞ?」
「前に同じことを言われてからは気をつけていますよ」
「そうだったな、まぁ、でももっとと言うか……」
「○○さんがそういうのなら、気を付けますよ」





後日。
椛が深刻そうな顔をしてふたりを訪ねて来ていた。
文が淹れたお茶をまずは飲むように進め、落ち着かせてから○○は話を促した。

「××さんにプレゼントを渡したんです。ですが、反応が嬉しいという物ではなく若干引き気味のようでした。
一応受け取ってはくれたのですが……」
「それで○○さんに原因を聞きたいと。一体何を渡したんです?」
「……手編みのマフラーです」
「おかしいな。人間とっても恋人からの手編みのマフラーってのは嬉しいものだぞ?」
「ですよね。椛なにか心当たりはないんですか?」
「ないです!わからないんです!どうしましょう……××さんはいったい何が嫌だったのでしょう……私は一体何を彼に……」
「落ち着きなさい椛!」

××と同じ人間である○○に概要を話しても問題が解決しなかったことで椛は激しく取り乱した。
××に引かれた原因がこのまま解らずじまいになり嫌われてしまうのではないかと不安になっていた。
それでも長年の付き合いであり一応上司という関係性である文に強めに諭され、席につける程度には落ち着いた。

「椛ちゃん。詳しくどういった物を渡したのか教えてくれる?」
「はい。えっと、私の毛でマフラーを編んで渡したんです。ですから、白いマフラーです」
「ああ。もしかしてそれかもしれない……」
「どういうことですか?教えてください○○さん!」
「落ち着いて。多少、人間の中でも個人的なものがあると思うんだけどな。
まず、先程も言ったけど、毛皮のマフラーってのは嬉しいものだ。動物の毛皮の編み物も高級品として問題はない」
「じゃあ、どうして?」
「それが……許容範囲は個人的な意見で違うんだろうが……自分の毛を恋人に渡すっていうのは引かれる可能性はある」
「そんな……」
「毛とはいっても狼のものだからな……そこは××の個人がどう思うかだ」
「じゃあ、引かれたことはダメってことですか?」
「いきなりで驚いたからっていうのもあると思うぞ。仮にも君の恋人として今までやってきたんだ。大丈夫だよ。
でも、一度今回の話を頭に入れたうえできちんと話し合ってみたらどうだい?」
「そう……します」

考えられる原因を教えてもらい、本人同士で話し合うように言われ、椛は帰っていった。


55 : ○○ :2015/06/11(木) 02:48:08 AIArdCRg
「××さん、あの、ご相談したいことがありまして」
「なんだ?椛」

○○と文の家から出た椛は、その足で××の家を訪ねた。
すでに家にはいつでも来てよいと言われていた。
訪ねてすぐに椛は渡したプレゼントについての話をきりだした。
まず、○○に話を聞いてきたことを話、そして自分の毛を異性にプレゼントしたことについて浅慮だったと謝罪した。


「驚いただけで、それ程気にしていないから大丈夫だよ」
「本当ですか?嫌だったら、正直に言ってくださいね」
「落ち着いてみたら、あったかいし、とても良い贈り物だったよ。ありがとう。……今回の件は、俺も謝らないとな」
「どういうことですか?」
「椛の話を聞いた感じだと、露骨に表情に出てたみたいだから。せっかくプレゼントをくれたっていうのに悪かったなって」
「いえ!私がもっと気にかけていればよかったんです」
「この際だから、もっと普段の生活について話し合っておく?」
「そう……ですね」



今回のプレゼントの件は、××は毛とはいえ「狼の毛皮」という認識で××の中で解決しているらしく、早々にかたがついた。
とはいえ、椛は驚かしてしまったこともあって今後自身の毛でのプレゼントはやめようと思ったが。
とにもかくにも今回の「毛」についての事案をいい機会として、ふたりの認識合わせを今日しっかりとしておこうということになった。
嫌われておらず、今では本当に嬉しそうと見てわかる表情でマフラーのことについてお礼を言ってもらえたので椛は気が楽になっていた。

「××さん。改めて、私に対して要望や改善してほしいところがあったら言ってください」
「そうだなぁ……むしろ椛はどうなんだ?」
「どういうことですか?」
「今回の時みたいに、俺の表情でなんか気づいたことはないか?自覚せずにそれ程嫌でもないのに表情ではお前を焦らしているかもしれない。
それだけじゃなくて、付き合う前にお前が色々したからって俺に気を使う必要はないぞ。むしろ溜めこんでしまうのが心配だ」
「そ、そうですか……?」

××が逆に自分に対して要望はないかと聞いてきたので、椛は少し思考した後××に答えた。


「その、茶店のとこの娘さんとあまり長く話したりしないでもらえますか?」

××はふと何のことかと考え、仕事帰りに時々立ち寄る茶店のことだと気付いた。
そこの看板娘はちょうど××と同い年ぐらいだった。
幻想郷外から来たとはいえ、こちらに来てそこそこ立つのでこちらの情勢の理解や住んでいて思うところはこちらの人間と共通の認識がないではない。
その上で、同い年としてそれなりに話がはずんだ。
看板娘自体も明るい性格と客商売ということで特に他に客がいない時は団子などを食べ終えるまでは話し相手になってくれていた。

××としも誰かと話しながら食事を取るのは嫌いではないし、他の客からの情報を交換できるのでよく話をする。
相手は恋人などはいないとはいえ、××に恋人がいる知っているので話をするだけなら問題はないと××は思っていた。
だが、価値観の違いを気にしている椛は一般の恋人以上に同じ人間の女性と××が談笑することを嫌がった。
話をしているうちに自分より価値観の近い人間の女性に気持ちが移ってしまうのではないかと不安になってしまうのだ。

××は椛の話を聞いて、以後気を付けようと思った。
本人としてはもし仮に看板娘に惚れたりしたとしても椛がいる以上浮気などはしない気でいたから問題ないと考えていた。
だが、椛がそれで不安になるというのであれば、その旨を伝えて、看板娘とは会話をしないべきだろう。

この件に関してはそれでいいだろうと××は思った。
しかし、新たな問題がこの時すでに発生していた。
それに向き合っていかなければならない。

「あのさ……椛」
「なんでしょうか?」

看板娘と会話しないことを伝えたあと、××は椛にあることを聞くことにした。


56 : ○○ :2015/06/11(木) 02:48:59 AIArdCRg
「あの、人里の中の団子屋で普段から女性と話しているを何で知っている?
家にきたりすることもあるし、人里に全く来ないというわけではないが、時間帯や位置的に知っているのは違和感がある」
「それでしたら……私の能力で見たんです。私の力は『千里先まで見通す程度の能力』なんです」
「そういや気にしてなかったけどお前の能力ってそういうのなんだ……あのさ、椛」
「なんでしょう?」
「人間と言うか……外来人からするとそれちょっと盗撮っぽいんだよな……」
「え……駄目でしたか……?」
「付き合っている以上は、他の女性と関係は持たないと誓うし、誤解されやすい状況になることも控えるからさ、頼むよ」
「はい……わかりました……えっと、以後、能力を使っての××さん見るのは、やめます」


椛は××の言った、「千里眼によって見張るというと言う行動をやめること」に了承した。
しかし、××の目から見ても不服とは言わないが、それによって不安定な精神状態になっているのが見てとれた。


椛としては2度と自身の欲の為に××に害を為す気はなかった。
だから、人間の女性に××の気が移るとい事態への不安はあったがそれが理由で監視を続けるのはやめることに迷いはない。
ただ、椛にとってその能力によって××を見ていたのは、他の女性と関係を持つことが不安なだけではなかった。

××を好きになる前は気にならなかったが、スペルカードルールが広まった現在でも理性の低い妖怪に普通の人間が襲われて死ぬという事象はゼロではなかった。
その事象が、最愛の××に降りかかると思うと胸が張り裂けそうになった。

××のことが心配だった。
自分から離れて行ってしまうというのもそうだが、なによりも彼が傷つくのが心配だった。
自身の能力で××を遠くからでも見守って行けば万が一の時に手遅れになる前に××の元へ行けるかもしれない。
だから、できうる限りの時間××のことを能力で見ていたのだった。

だが、××はそれが嫌だという。
ならば、続ける訳には行かない。見張ることをやめることを了承する。するべきだ。
以前、嫌われることをした自分と恋人関係になってくれた××にこれ以上嫌われるようなことをしたくない。
でも……もし千里眼で見るのをやめた明日、なにかの間違いがあって人里に人を襲う妖怪が立ち入り××を殺害したら?
そんな考えうる最悪の想像をしてしまう。
椛は自分が××に嫌われることよりも××が傷つくことのほうが嫌なことに気付いた。
ふと、××に嫌われても、たとえ別れることになっても××に危険が迫らないように見張るべきなんじゃないかという気がしてきた。

しかし、すぐにその考えを自身で否定する。
そんな、最悪の想像を押し付けるのこそ、相手側の気持ちにならずに行動する以前の自分の行動ではないかと。
××がいなくなってしまうという自身の不安を解消したいだけの自己満足の行動ではないかと。

それとも、××が無事でいるという結果が全てなのか?それは自己満足か?
思考がぐるぐると何度も同じ疑問にたどり着く。
答えを出したはずなのにそれは正しいのかと悩み前に進めない。


57 : ○○ :2015/06/11(木) 02:49:56 AIArdCRg

「椛!」
「え……?あ……××さん……私」

××は、椛を抱きしめた。

「悪い。そんなに思いつめちまうとは思わなかった。
俺に気を使うなって言ったばかりなのにな。いいよ、気にするな。能力で俺を見てていいからさ」
「いいん……ですか?」
「今回は俺が妥協するさ。千里眼ってのは特殊だが、似たような束縛的な恋愛は人同士でもなくはない」
「でも、嫌なんでしょう?」
「本音はな。だが、お前がそんな辛い思いするなら我慢できるさ」
「私は……あなたに嫌な思いしてほしくないです!それで嫌いになられるなら……」
「いいか椛」

なおも××は椛を抱きしめ続ける。

「俺は前、お前に誘拐された。その時お前は人間は天狗の思い通りに生きるべきみたいな考えだったな」
「……はい」
「俺が拒否して、お前は文さんからいろいろ教わって、俺のことを第一に考えるようになったな」
「……はい」
「俺がそれで、俺や他の人間のことをきちんと考えられるお前が俺のことを想っていてくれて、だから付き合ってもいいかなと思って。
えっと、言葉にするとうまく言えないな」

抱きしめたまま言葉をきって少し思考して再開する。

「俺らは恋人だ。人間と天狗だが。恋人にどっちが上もない。まぁ、それはカップルによって違ってくるのかもしれないが。
俺はどっちかが上になるとは思わないし、したくない」
「××さん?」
「何が言いたいかっていうとだな。今のお前は俺のことを優先して考えてくれてる。でも無理はしなくていいんだ。
同じ種族だって他人なら色々あるんだ。お互い、妥協点を見つけてうまくやってるんだ。
どちらかがずっと無理する必要はない。人間も天狗も関係ない。恋人なんだから対等だ。今回は俺が妥協するだけさ。
だから、無理してさっきみたいな苦しい思いをする必要はない。させたくないんだ」
「××さん……××さん!」
「うまく伝えられたか自身がないんだが……えっとだな」
「いいんです!わかりましたから……ありがとう……ございます……××さん……う、うわぁぁぁぁん!!」

安心したからか、椛は××に抱きしめられたまま大泣きした。



翌日。
人里の酒場。

「へぇ、そんなことがあったのか」
「ええ」

いつか、文との馴れ初めを話した酒場で○○と××のふたりが杯を交わしていた。
たまにこうして人間ふたりで飲む。
××の○○への口調は年下ということもあって初対面の時とは違い敬語になっていた。

「じゃあ、今も俺と飲んでるとこを椛ちゃんは見てるってことか」
「そうなりますね」
「そっか。じゃあ、今ここで誰かをナンパして浮気したら文に告げ口されてばれんのか」
「心にもないことを言わないでくださいよ。そんな気ないくせに」
「男が浮気するのはオスとしての本能らしいぞ」
「奥さんが深刻に考え過ぎないように常に気を張ってるくせに。浮気なんてする人の考えることじゃないです」
「まぁな。あー……俺も君のセリフ丸パクリしようかな。もっと文は俺に主張するべきだし俺は文の為に妥協するべきだ。一回俺らは対等だとビシッと言っとくか」
「使いたいならご自由にどうも。お互い、一度完全に拒否してしまっていますから我がまま聞いてあげるのに苦労しますね」
「それにしても君の方から椛ちゃんにそんなことを言うとは。大事に想っているな。
そこまで言えるんならさ。もう、恋人までじゃなくて結婚しちまえよ」
「そのつもりですよ?」
「……マジで?」
「ええ。さっきの話のあとプロポーズしまして。今日はその報告をかねて飲もうかと。そうそう、文さんと○○さんに仲人をお願いしたいんだけど」
「仲人って具体的に何すればいいの?外でもしたことなかったから解らん」
「博識の慧音さんにでも聞いてください」
「そういや今でも慧音さんに3日に一回顔見せてるの?慧音さんにそうするよう椛ちゃん許した日に言われてたじゃん」
「いえ?だいぶ前にもう大丈夫だろうと慧音さんに言われてそれはなくなりました」
「え?俺それ聞いてないんだけど」
「そんな重要なことじゃないんで良いかと。……そんな顔しないでください。重要な結婚のことはすぐ言ったじゃないですか」


数日後、椛と××の結婚式が開かれた。

文と○○、椛と××。
2組の天狗と人間の夫婦はお互いに夫婦間の関係向上の為、その後もちょくちょくと情報交換やアドバイスをし合いながら暮らしていった。


<了>


58 : ○○ :2015/06/11(木) 06:38:31 AtTgtbUg
よかったなもみもみ!
狼の毛のマフラーって作るのスゲー大変そうだけど、もみもみの良い匂いしそうでいいね!
先輩アカチャン天狗はアカチャンになることでバランスとってたけど、彼女はどんな感じで甘えるんだろう
きっと獣みたく××の膝の上でナデナデ催促して丸くなったりするんだろうなぁ…
ともあれ完結おめでとう! 次回の話にも期待してます。


59 : ○○ :2015/06/12(金) 19:28:13 cwX7EZK2
ここのスレって○○がヤンデレの話書いてもおk?


60 : ○○ :2015/06/12(金) 19:46:10 FTdi1Qdc
>>59
別に悪くは無いが、好きじゃない人もいる。
俺は一向にかまわんが。


61 : ○○ :2015/06/12(金) 19:49:48 I7/5/Gqg
ルーミアの人です。皆感想ありがとう・・・、けど一つごめん…。
メインPCがバグったので、少し更新遅れます。すいません、頑張りたい…。
とりあえずPC復旧まで即興で別のを書きます。復旧できなかったら…そのとき考える。

 紅葉が風に遊ばれ空を舞っていたのを、儚いと思ったのはいつの事だったか。
 山が染まるたび、紅葉が乱れるのを見るたびに、散っていくたび、色を失うたびに、ずっと感じていた。
 幼い頃から「ずっとこのままであればいいのに」だなんて子供らしくもなく、しかし今となっては子供染みた想いを飽きるほど抱いていた。

 子供の頃に、まだ存命していた両親とそのまた親に連れられて初めて通ったあの道。
 紅葉で溢れた並木を、手を引かれて見た時のことを今もずっと覚えている。

 降り注ぐ紅葉のその合間に、一目だけ見た、女の子のことを。感じた事を。


 パタンと読んでいた本を閉じると、革作りの手提げ鞄へ入れと、まるで吸い込まれるように一枚の紅葉が本と共に鞄の中へ。
 長らく腰掛けていた木の幹から身体を持ち上げて、歩き出す。

「会える訳が無いのに、我が身ながら暇な事だ」

 青年は自嘲気味に小さく口の中で言葉を転がすと緩やかな坂を下っていく。
 紅葉の溢れる並木は風に揺られ、サワサワと耳をくすぐる音を優しく奏でながら、時折パキリとどこかで小枝が折れる音を響かせる。
 両親が無くなってから、始めは寂しさを思い出で紛らわすために訪れていたこの場所も、毎年毎年と繰り返しているうちに、今では山が染まると日課のように通っていた。

 最初は本当に、ただ両親が死んだことを認めたくなくて。
 事実を認めてからは、しかし自身をごまかすため。
 完全に受け入れた時には理由を失い、しかし通い続けて。
 後付のような理由が、あの日見た女の子に、一目惚れしていたのだと。

 胸の内に生まれたこの感情。
 言葉を交わした事も、視線を交わした事もない少女の姿に、勝手な幻想を抱いている事は自覚している。
 この場所で誰かと出会っても、それがその女の子だなんてきっと気付けないし、相手は自分のことを知るはずも無い。

 そう思っていたからこそ、言葉が出なかった。
 美しく、儚く、綺麗で、寂しく、切ない。

「―――。」
「………。」

 ありえるはずの無い、記憶の中の少女との、一方的な再会。


62 : ○○ :2015/06/12(金) 19:50:39 0avMgVmE
厳しく言う気はないけども、とりあえずスレタイ読んでみてそれでもここで書きたいならやってみればいい。


63 : ○○ :2015/06/12(金) 20:28:01 OnV.NAMs
ヤンデレ嫁に影響されて、○○の方もかなりぶっ壊れてるね、だったらそれなりにある

阿求の人とか、長編さんとか


64 : ○○ :2015/06/12(金) 20:37:23 BxYtHANA
ここでいう過度のエロ禁止ってそれ主体の内容は当然禁止だとしても、
嬌声部分はカットしたり、している最中のことは一行程度に収めておけば大丈夫なのかな

別にエロが書きたいんじゃないけど○○を思って一人でしている最中に
ヤンデレ化に走るキッカケが出てきたらどうすればいいかと思って


65 : ○○ :2015/06/12(金) 21:56:06 I7/5/Gqg
定義が難しいですね。アレだけで規制に引っかかると流石に書きづらくなりますし・・・。
それはそうと>>61 の続きです。即興なのでおかしい所は多分にあると思いますがご容赦を。

 記憶の中にある少女は、現在と"何も"変わらずに降り注ぐ紅葉の合間を縫うようにして歩いていた。
 敷き積もる紅い絨毯を優しく歩き、その髪に一枚の紅葉を飾り付けたその姿は、間違いようが無かった。
 およそ十五年も経ったのに本当に何一つ変わらないその姿は、青年の絶え間ない願望をまさしく体現していた。

 言葉をかけるべきかどうか。一瞬の躊躇いを吹き飛ばすように一陣の風が吹き、一層舞い散る紅葉が激しく踊る。
 風に揺られその身を一歩だけ、後押しされた事によって、パキリと聞きなれた小枝の音が、風の中でも確かに聞こえた。

「あなたは」
「あ、いや…」

 音に気付いた少女は、驚くようにこちらへ振り向くと、小さく何事かを呟いた。
 だが、風の中でも小枝の割れる音は響いても、少女の言葉を拾う事はできなかった。

 なんと声を掛けるべきか、ずっと心待ちにしていたはずなのに、たった一言すら言葉に出来ず、青年はうろたえる。
 五秒、十秒、三十秒と、少女と青年は何も語らず、語れずに過ぎ去り、ようやく青年の口から零れる。

「久し、ぶり」

 青年は自分を殴りつけたい気持ちでいっぱいになった。相手にとってはじめて会うというのにソレは何だと。
 時を巻き戻すことなどできるはずも無く、やってしまったという後悔と恥ずかしさが一瞬にして山のように積もった。
 きっと少女は、自分のことを不振な輩と、すぐにも逃げ出してしまうかもしれない。
 そう絶望していると、クスリと、眼前の少女が小さく笑った。

「えぇ、こんにちは」

 山吹色の髪を揺らしながら少女は慈しむように、ささやくように返答した。
 あれ?と思い、少女が聴き間違えたのか、口に出した言葉を自分で聞き間違えたのか?そんなふうに考えるも、少なくとも怪しまれているようではなかった事に少し安堵する。
 しかしそれでも、積もった恥辱の念は青年をはやし立てるばかり。

「じ、じゃあね」
「はい、また」

 結局はその場から青年は逃げ出すように走り出してしまった。
 少女は特に気にした様子も無く、そのまま彼を見送ったが、青年は振り返る余裕すらなく、紅葉に隠れた木の根に足を引っ掛け盛大に転んでしまった。
 積もりに積もった山のような恥ずかしさが遂に雪崩を起こしそうになり、ようやく青年は振り向くが既にそこに少女の姿は無く、安堵と共に小さな落胆を感じた。


66 : ○○ :2015/06/12(金) 23:41:24 FcGA0ljk
久しぶりの再会からのヤンデレは正直大好物
ルーミアのほうも気長にまってるよ


67 : ○○ :2015/06/13(土) 17:55:13 jWcl9tjE
いいね。
文体から秋らしい乾いて冷えた空気が感じられる。
静葉お姉ちゃんを想定して読んでるけど、ヒロイン力高い。
……静葉だよね、神奈ーンじゃないよね


68 : ○○ :2015/06/15(月) 03:14:36 zgDbtv8Y
>>64
あー前の板とその前の板でもそんな議論がちょっとあったんだよ
結局消えちゃったけど一応結論は出てたと思うよ
性器そのものや挿入行為の詳細で直接的な描写、からアウトみたいな感じで
なんか前もこんな事書いたような気がするんだけど思い切り露骨に本番行為バリバリのエロSSを書こうとしなきゃまず引っ掛からないラインだから書き手のみなさんはあんま心配しないでいいと思う


69 : ○○ :2015/06/15(月) 04:03:36 t2u5GlxA
>>65 の続きです。
なんだか若干……。頑張る。

 青年は、その日は家を出る気になれなかった。
 先日の醜態が尾を引いて、しばらく誰とも顔を合わせたくなかった。
 食事をする度、食器を洗うたび、洗濯をするたび、トイレに行く度、何をするにもあのときの醜態が頭を過ぎり、悶え苛立った。
 外を歩く気にはなれない、誰かと話す気にもなれない。今日はずっと本を読んでいよう。そう思って本を開いた途端にまた脳裏に蘇る失態。

 上の空。
 何も手が付かず、振り払うように拳を床に叩きつけても、もやもやとやるせない感情が胸のうちに燻り続け深々とため息。
 戸を叩き大家が自分を呼ぶ声が聞こえるが部屋から出る気も、ましてや歩く気力すら湧かない。
 だらりと壁に背を任せて、ぼーっとして居留守を決め込んでいるうちに、遂に戸を叩く音が止み、静寂が訪れた。
 だが、静かになればなったで再び蘇る失態。これは重症、もはや呪いのようだ。

「早く忘れてくれ」

 あの子も、自分も。あの失態を忘れてそしてもう一度やり直したい。
 今日初めてまともに口に出した言葉は、静かな部屋にはただ消えて、ぐったりと畳に身を任せる。
 天井の染みを数える柄ではないが、今くらいはそれに興じてみるのも良いかと、一つ…二つ…。

 ―ガチャ―
「っ?!…え?」

 三つと数えようとしたところで、その音に全身の毛が驚きで逆立った。
 まさか大家か?と思ったが一向にその後扉を引くような音は無く、猜疑心と、どこからか来る恐怖心から忍足で玄関へ向かう。
 しかし玄関の鍵はしっかりと掛かったままで、きっと先ほどの音は大家が扉を叩いてずれていたのが戻っただけなのだろう。

「……。なんだ、ただの気のせいか。」
―ガチャリ―
「うあぁ!?」

 唐突に開かれた扉。
 思わずしりもちをついて情け無い声を上げてしまい、指の先がじりじりとしびれる感覚が走る。

「なんだい、いきなり大きな声出して。いるならいるって言ってくれなきゃ」
「な、なんだ。大家さんか。」

 扉の向こうから現れたのは部屋の鍵を持った大家だった。
 なんでも今月の家賃を受け取って無いとか。そういえば払い忘れていたとその言葉で気付き、すぐさま財布から受け渡す。
 ひーふーみと大家は金額を確認したところで何かに気付いたように「ちょいちょい」と指で耳を貸せという。

「ま、まだ何かあるのか?」
「あんた、彼女さんいるのかい?」
「は、はぁ?いないよ」

 大家は「ふぅん」と言ったきり何も言わず、家賃のごまかしが無いことを確認し「確かに」と言って大家はそそくさと部屋を出ていった。
 我ながら小心者だなと、未だに若干震えている足を軽く叩いて、部屋に鍵をかけて、その日を終えた。


70 : ○○ :2015/06/15(月) 15:50:50 wY4V32wo
居留守使ってると即鍵あけて入ってくる大家のババアこええー!
これはアレだな。ドアの外に静葉がいて「イッヒッヒ、聞いたかい、居ないとよ」「おK」「うまくやんなよぉーっ イヒーッヒッヒ!」みたいなやり取りあるな


71 : ○○ :2015/06/15(月) 18:57:31 L9DgDL9E
静葉も神様の一柱だからな
老婆一人を手駒にするぐらい容易いだろう、と思いながら読んでた


72 : ○○ :2015/06/15(月) 23:57:42 0E8uFDW2
20夜分をまとめてくれてる人お疲れ様です〜。
青蛾みたいな腹黒いキャラに大事にされたい


73 : ○○ :2015/06/16(火) 06:04:04 HXBSzl9Y
移動のごちゃごちゃで散らばった21夜に作品はあったのだろうか


74 : ○○ :2015/06/17(水) 13:38:44 YNc2P5/2
>>69 の続きです。頑張る。

 紅葉の並木に顔を出したのはそれから七日後の事。
 長いというべきか、それでも自分にしては短かったと言うべきか。どちらにせよあのまま転がって腐れているよりは気もマシになるはず。
 相も変わらず地面には紅葉の絨毯がしかれており、変わり映えの無いその光景が少し懐かしく感じた。

「流石に、いないか」

 八日も前に出会った少女の姿は流石にそこには無く、本当に後悔だけが心に残ってしまった。
 けれども少女がそこにいなかったという事実だけでも幾分か諦めがついてしまったのか、荒れていた感情が妙にストンと収まった。
 いつものように適当な木に腰掛け、鞄から文学本を取り出して読みふける。

 一冊、二冊、三冊…。6冊目を読破し終えたところで流石に体が冷えてきた。冷たい秋風が体温を少しずつ奪っていく。
 見上げれば紅葉の天幕の隙間から覗く空は既に茜色に染まって、もう数刻もすれば真っ暗になってしまうだろう。
 今日はもうこれまでと、読書を切り上げて本を鞄へ戻し始めた所でふと違和感を感じて振り返ろうとする。

「もう、帰るので?」

 強く吹いた風の音に紛れるように、静かな、水面に波紋が広がるような印象を受ける声が耳をくすぐった。
 心臓が飛び出すかと、思わず立ち上がりかけていた身体が硬直しそのまま尻餅をつき、その声の主に驚愕する。
 手に持っていた本をズルリと足元に落とし慌てて回収しようとすると、横から自らのものではない白い手が先に本を拾い上げた。

「どうぞ」
「え、あ…えっと」

 あまりの状況になんと言葉にすれば良いのか。
 山吹色の髪をした少女は拾い上げた本を青年に手渡すと「どうかしました?」と、首を僅かに傾けて疑問符。
 「ありがとう」、「ごめん」。そんな二言もうまく口に出せずにしどろもどろにうろたえる姿を、少女には次第に面白く見えたのかクスッと笑い。

「ごめんなさい、おかしくて」
「あ、いや…。こっちこそごめん、本を拾ってもらって」

 不幸中の幸いか、少女の言葉に流されるようにして、ようやくまともな事を言えたことに、達成感を感じる。
 渡された本を落ち着き無く慌てて鞄の中へ納めて礼を言う。

「文学がお好きなのですか?」
「え!あ、いや…。」

 不意に問いかけられた言葉になんと解答すべきなのだろうか。
 確かに文学は嫌いでは無いが、されど好きというほどでもない。
 どちらかといえばその、読んでいるときの雰囲気が好きなだけだ。そんな感じのことを言葉を噛みながら何とか伝える。

「そうなのですか」
「文学が、好きなんですか?」

 鸚鵡返しに、問いかけられた質問をそのまま返す。
 少女は少しだけ頭をかしげると、「いいえ」と言って自分と差して変わらないと言う。

「あの…その…、なんていうか…」
「はい」
「お名前を伺っても…?」

 自分は一体何を口走っているのだろうか。
 少女はきょとんとした表情でこちらを見ている。きっとすぐに逃げて言ってしまうんだろうな。
 いや、きっと逆に自分が聞かれる立場だったら、先日のようにまた逃げ出してしまっていたかもしれない。

「えぇ、良いですよ。」

 しかし少女の反応は違った、青年の希望を快諾してくれたのだ。
 自分で期待しておきながらいい返事が返ってくるとは思っていなかった青年は、逆にきょとんとしてしまう。
 
「私は、―――。」
「え?」

 しかし何たる不幸か、あるいは神の悪戯か。
 少女が自らの名前を口に出そうとしたと単に一陣の風がざわめき、少女の言葉をかき消してしまった。
 当てて聞き直そうとするが、それは流石に失礼ではないかと言葉を詰まらせる。

「よろしくおねがいします。貴方は…、なんというお名前なのですか?」
「あ…」

 もう、聞き返せる空気ではなくなった。
 青年は焦燥感に駆られながらも勤めて冷静に取り繕いながらも自らの名を口にして、心臓の早鐘を感じる。
 少女は何度か青年の名を何度か小さく、噛み締めるよう反芻している。

「覚えました、素敵なお名前ですね」
「ど、どうも…」

 どうしよう。
 一言会話が繰り返されるたびに、焦りが募る。
 日は既に暮れ始め、少女は「また、会いましょう」と一言残して、歩いて何処かへ行ってしまった。
 本当に…、どうしよう。


75 : ○○ :2015/06/17(水) 19:36:53 mymyzKlQ
この風さぁ
狙ってふかせただろ
そう思うのはここの住人の癖なのだろうか


76 : ○○ :2015/06/18(木) 18:54:28 sAlSSsrs
焦らしますねぇ……
益々目が離せなくなってきました


77 : ○○ :2015/06/18(木) 19:38:21 9dUFbW9M
まとめてくれた人おつかれさまです


78 : ○○ :2015/06/18(木) 20:43:55 9dUFbW9M
ギスギス命蓮寺

寅丸星は所謂、デキル女である。
寺を預かるものとして、偶像足るべく存在として、組織の運営たる長としてもデキル女だった。
運営の実権は勿論彼女も愛する聖白蓮であるが、屋台骨は星なくして成り立たない。
理想、情熱、引き付ける力、受け止める力は白蓮そのひとのもつタレントであるのは間違いないが、維持ということにかけては彼女をおいては成り立たない。
それは、財をもたらす宝塔を使いこなす力であったり、毘沙門天という御題目であったりもするが、しかしそれとは別にひとに「支えたい」と思わせる魅力が彼女にはあった。
それは、完璧な存在にはもつこと叶わぬ素養だ。
彼女、寅丸星は確かにデキル女ではあったが、失敗も多かった。
一言で言えば、うっかりした女でもあったのだ。
やれば出来る力を誰しも認めながら、回りの存在に「しかし自分の助けも必要」と思わせる絶妙のバランス。
それは聖白蓮のカリスマとは別種のカリスマ。
より稀有な才能であった。
誰しも、星を、この優しい寅柄の毘沙門天(代理)を愛した。

が、それが彼女を蝕んでいった。

彼女は、贅沢な話と思われるだろうが、愛されることに慣れてしまっていた。
だから、それが素直に受け入れられなかった。
彼女が目指したのは白蓮のような強い存在。
間違わない。
決してうっかりなんかしない、決然たる姿。
膝を汚し、四つん這いになり、涙目で「なんでこんなことに」なんて泣きながら失せ物を探す……
こんな惨めにならない。
迷惑を掛けない。
こんな、皆に、しようがないなぁ、なんて苦笑いさせない。
なんて、ダメな、女……わたしは……

「星はよくやってくれてくれていますよ」

聖、それはどういった意味で……?
星は頬の肉を噛んだ。
初動は怒りで。そして、はっと気付くと悔恨でより深く歯を軋ませた。
聖が、聖そんな「嫌味な」ことを言う訳がない。
私の考えたような、嫌らしい、傷付けるような酷いとこを……例え、私のようなどうしようもない粗忽者にすらそんなマネはしないんだ! それを……私は ……っ……

星は、白蓮になりたかった。

うっかりなんてしない。
毅然として、一人でも強くあれて。
大勢を引き寄せる。
それでも決して揺るがない。
そんな存在に……
そんな。
そんな聖だから、○○にも愛されるんだろうなぁ……
いいなぁ……
羨ましい。
○○は私にも優しいです。
痛いところには決して触りませんし、それでも見える範囲にいてくれて、私を案じてくれて、でも、見ないで欲しい時には一人にしてくれる……
優しいですよ。優しいです。


でも聖のとは違うんです!!!

分かりますよ……分かっちゃいますよ。
馬鹿じゃないんです。だから、○○が聖を見る熱と余裕の無さは私にも、皆にも、伝わってきました。嫌でも。
きっと遠くない未来、二人は結ばれるのでしょうね……
これ以上ない、似合いの夫婦となるでしょう。
聖は○○という伴侶をえたことにより、更なる強さを得て、理想を邁進するでしょう。
○○も、その愛情をいかんなく与え、分かち合い、聖を支えるでしょう。
私は祝福するでしょう。
そうするしかないです。
だって。
私がよしんば、この情けない姿で恋すがったとして、それが万が一受け入れられたとして、それは違うでしょう。
きっと、○○は本当の幸せになれない。きっと、私はそれでもより醜く○○を縛り付ける。すがり付く。
我慢しないと……駄目。
私のようなものが、二人の輝くような目映い未来を邪魔してはいけない。
そう、それでいいんだ。
それで。
私はフラレた訳じゃない。
○○も私を捨てたわけでもない。
勝手に私が秘するだけの話なんだ。

だから、その証に。


「……もし……もしも、貴方が傷付き、膝を付きそうになったときにはきっと私が支えようって
貴方の痛みを、誰よりも癒そう。それがたとえ、貴方の目に留まらなくとも。
……ふふ、そう思ってたんですよ?」

星は眠る○○の頬を撫で、そう回想の筆を置いた。
今や、○○を誰よりも包むことを○○自身に認められた女の、独白であった。
○○の頬を撫でた指をそっと頤(おとがい)から鎖骨、胸板、腹をへて自らへと繋がるところへと辿る。

「愛してます。○○」

寅丸星は
今はもう、聖が羨ましくなんてない。

つづく


79 : ○○ :2015/06/18(木) 22:39:25 csDQaG7U
命蓮寺のヤンデレは素晴らしいね
ギスギス命蓮寺の続き楽しみにしています!


80 : ○○ :2015/06/19(金) 02:34:22 SsaUFNE2
>>74 の続きです。
あまり長々と書くと、何かしら言われそうなので少し巻きました。頑張る。

 目が覚めたのは翌日の夕方だった。
 結局そんなどうしようもない不安に駆られ続けて、眠ったのは月がその仕事を半分終えた頃だった。
 眠りすぎて気だるい身体を、質素な布団から出す気力も沸かずだらだらと数時間。きづけは再び外は暗くなっており出歩くような時間ではなくなってしまった。
 半分に欠けた月は、それでも雲ひとつ無い空では十分な光で夜道を照らすのだろう。
 青年は、ただ気まぐれで光源を持たず、ただ月明かりだけを全面的に頼りによるの世界へ踏み込んだ。

 いつもなら賑わう広場も、普段ならごった返す道行も、今このときだけは人っ子一人居やしない丑三つ時。
 ふらふらと当ても無くさ迷い歩いてはいるものの、こんな時間では開いている店も無く、語り合う隣人もいない。
 月が昨日と同様再び傾き始めた頃、青年はふと歩く足を目的を持ってその進路を変えた。

「やっぱり…」

 そう零した言葉は、眼前の紅葉の並木への感想だった。
 太陽の明かりは無けれども、欠けた月明かりに照らされた紅葉もまた、鮮やかに彩られていた。
 思えばこんな時間にこの場所へ来るのは初めてで、だからこそこの光景を見たのは初めてだ。
 はらりはらりと、時折舞い落散る赤の色は、やはり儚く、寂しい。

「美しい。そう思いませんか?」
「………、え?」

 風が、青年を中心につむじを巻いた。
 散り積もった紅葉は鮮やかに空を泳ぎ、月明かりを赤い天幕のように遮った。
 暗い視界、風の唸りの中に誰かの声を知った。

「あるいは、儚いと」

 赤の天幕が羽のようにゆっくりと下げられた。
 月明かりは再び青年を、世界を、そしてそこにいる筈の無い山吹色を映し出した。
 青年は我が目を疑い、自らの正気を訝った。
 しかし、それでもそこに在るのは紛れも無い、見間違えるはずの無い存在。

「君は…」
「また、会いましたね」

 山吹色の髪に紅葉を飾った少女の姿は、青年は見紛う事など出来やしなかった。
 記憶と寸分の違いも無いその姿、昨日にも出会ったその姿。十何年も前から知っているその姿。
 青年は息を飲み、そして少女が鮮やかに微笑んだ。


81 : ○○ :2015/06/19(金) 07:09:04 uDwTY/4.
ノブレス・オブリージュに囚われて(74)
ttp://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=39700&n=64
久しぶりの更新です


82 : ○○ :2015/06/19(金) 22:09:34 k/v6C0nA
ちょいと駄文を


ー長い長い、夢だった
見渡す限り青い空が続き、側には何もなかった
先ほどまで自分は電車に乗っていた筈だった
6月の終わり頃、終わらないと思っていた仕事にもある程度目処がつき、そろそろ有給でも取ろうかと考えていたところだった

車内から見える景色を目で追いつつうとうととしていた、とまでは何とか覚えていた
「……電車、降りた覚えはないんだけどなぁ」
確かに言えることだけを呟き、もう一度空を見上げる
夢、にしてはやけに感覚がはっきりとしている
そして、どこか懐かしくも感じ、心地よくも感じるのは何故だろうか

「それはね、貴方がずっと探してたことなんだよ」
背後からの声だった
あまりにも突然すぎたので驚きもしなかったが、一応後ろに振り向く

「や、また会ったね」
そこに居たのは灰色に近い髪色をした少女であった
「また?」
「うん、また」
おかしい。少なくとも知り合いにこんな髪の色の少女は居なかった筈だ
なのに目の前の少女は『また会ったね』、と言っている

「親戚の子かな?だとしたら名前は……」
「もぉ〜、忘れちゃったの?何度も遊んだんだよ?」
「……それって、いつ頃の話?」
「え?えっ〜とねぇ………君にとっては大分前なんだけど、私にとっては昨日のことの様に思い出せるんだぁ〜」

何だかこの少女と話していると自分まで彼女のペースに巻き込まれていくのは気のせいだろか
彼女が話しているのは聞く限りでは日本語
俺が使っているのも日本語
同じ言語の筈なのに何処か違和感を感じる
これは日本語特有の地域の差、とも考えたが話し方的には俺が住んでいた所とほぼ変わらなかった
……なんてことを考えていると目の前には誰も居なかった
今度こそ慌てて見渡すと彼女は少し離れた所で遊んでいた
ともかく俺は此処が一体何処なのか知りたい為彼女に近づき声をかける

「あのさ、此処って何処なの?夢なのかな?それとも現実?」
「ゆめ?あはは〜おもしろ〜い」
果たして通じているのだろうか
「でもね、此処は表の世界と裏の世界を繋ぐ場所なんだよぉ〜」
私が見つけたんだ〜、と彼女は続ける
表と裏?何を言っているのだろうか

「ねぇねぇ、私達の世界に言ってみたくない?」
「はぁ?わ、私達?」
「うんうん!えっとね、何だか最近大きなものが落っこちてきて皆大騒ぎしてるの〜。だからさ、貴方も一緒にいこ?」
困ったな……さっきから完全に向こうのペースに巻き込まれてるな
質問してもそれがちゃんとした答えなのか判断も出来ないし……
第一なんだ?表と裏?私達?

「沈黙は肯定〜じゃあ行きますよ〜っと!」
「え!?ちょ、ちょっと!!」
振り解こうとしたが、思ったよりも彼女の力は強く、解けない
彼女に引っ張られるままついていくと青い空が段々と避けていき、眩しい光に包まれていった
ー最後に見たのは紅く、白い電波塔であった


83 : ○○ :2015/06/19(金) 22:29:54 k/v6C0nA
続き

目を覚ますと辺りは真っ暗であった
何処かの山にでも迷い込んだのか、回りは木に囲まれていた
……先ほどまでの夢?といい、此処といい、今日はなんなんだ……
すると後ろからガサッと音がした
山の中なのだから小動物、あるいは熊か何かだろう
どちらにせよ下手に動いたらまずいのでその場で身を固める

「……あ、人間」
出てきたのは黄色い髪に茶色い服を着た少女であった
「こんな時間に山に入るって結構危険だよ?早く降りなきゃ」
「あ、ああ……って、貴女も人間なのでは?」
俺の質問に彼女は思い切り首を傾げる
暫くすると彼女はあー、と何だか納得し、やれやれと言った顔でこちらをみた
「貴方、外来人だったのね。ようこそ、幻想郷へ」
「げ、幻想郷?」
「そ、此処は忘れられたものが行き着く所。ある意味では理想郷。ある意味では地獄。まぁ地獄は別であるんだけどね」
言っている意味がよく分からないのは病気のせいではないな、うん
「そうそう、私はヤマメ、黒谷ヤマメ。私こう見えて蜘蛛妖怪なの」
「へ?蜘蛛?」
「そう、ほら」
ヤマメと名乗った少女は自分のスカートを捲り上げた
そこにあったのは人間の足と蜘蛛の足であった
……どうやら本当に彼女は妖怪らしい
「で?貴方名前は?」
「え、ああ。俺は○○」
「○○、ね。宜しくね。取り敢えず里に行こっか。此処だと本当に危ないし、着いてきて」
「ご丁寧にどうも」
「いいのいいの、これが今の私の仕事みたいなもんだし」
ヤマメの後ろに着いていき里を目指す
ーー私達の世界に行ってみたくない?
不意にあの銀髪の少女の言葉を思い出す
もしかしたら此処が例の世界なのかもしれない


84 : ○○ :2015/06/19(金) 23:08:02 Fg00Pu9o
20スレをまとめました。抜けている箇所があったらごめんなさい。
それと、まとめの間隔が何度も開いてしまい申し訳ありませんでした。
次まとめる機会があったときは気を付けます。


85 : ○○ :2015/06/20(土) 02:53:07 I/i3sIpc
とんでもない。俺のSSもまとめてもらって嬉しかったよ。ありがとう。


86 : ○○ :2015/06/20(土) 03:35:02 vO1JqGuo
>>81
おつおつ
こんだけ長く続いてるのに破綻せずに読めるってすげえ


87 : ○○ :2015/06/20(土) 14:17:41 zqiCTqiE
まとめてくれた人ありがとうございます


88 : ○○ :2015/06/20(土) 21:05:38 lzDfgGOc
駄文投下 2、3レスぐらい使います。

「ここって美人が多いよな」
目の前の青年は唐突にそんな事を言い出した。
まだ、冬の寒さの抜けきらない日の事だ。
自分と彼は昼間から縁側で将棋をしていた。
彼との付き合いは2ヶ月ぐらいになるだろう。
特に友人という訳ではない、たまに仕事の愚痴につきあってるだけだ。
そういうのが友人だと言われればそうなのかもしれないが。

「どういう意味だ?」と自分は彼に言った。
「ふと思っただけさ」
彼はそういって笑った。
「好きな人でもいるのか?」
と聞いてみた。
「……」
彼は顔を赤くして黙り込んでしまった。
ずいぶんと分かりやすい。

確かに、幻想郷の女性はレベルが高いだろう。
容姿はもとより、人柄も差はあれど外の世界と比べれば良い。
人で無い事を除けば。

相手は人外だ。生半可な気持ちで付き合えるものじゃない。
自分はそういった事をやんわりと彼に告げた。
「……俺は、人をそういう目で見たくない。
人だとか人じゃないとか、そういうのは問題じゃないんだ」
彼は強い気持ちの籠った目で自分を見た。
……正直、うらやましい。
自分にあるのは恐れだけだ。
こうは言いきれない。


89 : ○○ :2015/06/20(土) 22:01:24 lzDfgGOc

「で、誰なんだ? 八雲 藍か?」
「え?」
図星か。
「ど、どうしてそこで藍さんの名前が出るんだよ!」
ずいぶん、分かりやすい動揺の仕方だ。
「仲が良さそうだったからな」
とりあえず、当たり障りの無い言い方にしておいた。
……実際、あれを“仲が良さそう”で済ませるのは無理があるが。
「で、どう思ってるんだ?」
「そ、そりゃあ……」
こんな質問がくるとは思ってなかったのだろう。
「……好きだけど……でも、俺じゃあ無理だ、不釣り合いだよ」
……確かに、彼の気持ちはわかる。
美人で性格がよいそんな人間(妖怪だが)、外じゃなかなかいない。
そして、自身を省みて釣り合わないと思うのも無理は無いだろう。
だが、重要なのはそこではない。

実は、ある目的があって彼と話をしようと思っていた。
むこうから話してきたので、わざわざ話題を作る手間は省けたが。
反応も良さそうだ。そろそろ、向こうに連絡していい頃かもしれない。
自分は茶を淹れに行く体で右隣の部屋に行った。


90 : ○○ :2015/06/20(土) 22:49:51 lzDfgGOc
そこにいるのは一人の女性だ。
尻のあたりに生えている九本の尾は、彼女が妖怪である事を示している。
彼女が先程の話に出てきた八雲 藍だ。
「な、な、ど、どう言ってた? 私の事?」
我慢ならないといった感じで聞いてきたので、“好き”と言っていた事を述べる。
「えへへ、そうかぁ、△△は私のことが好きかぁ……」
心底幸せだと言わんばかりの笑みは、大妖怪の威厳の欠片も無い。
「ふふふふふふふふふ…やはりコレは運命だ……△△……」
そんな不穏な独り言を呟き、彼女は隣の部屋に突撃していった。
自分はそろそろ退散しよう。

自分が彼女の仕事を受けたのは一週間程前。
内容は△△の身辺調査。
調査の理由は知らない、というか知りたくもない。
あくまで、人外とは一線を引きたい。
本音を言うと受けたく無かったが、受けなければ酷い事になりそうだったので仕方ない。
彼を売るようだ。
気分が悪い。

二週間程たった後、人里から少し離れた自分の家に一枚の写真が届いた。
どこか痩せた気のするかつての友人と、本当に幸せそうな笑顔で彼に寄り添う九尾の女性の写真だった。
あまりよく知らないが、結構大規模な結婚式だったようだ。
何にせよ、幸せそうでなによりだ。
少なくとも女性の方は。


しまった、ヤンデレ成分が足りない。


91 : ○○ :2015/06/20(土) 23:55:08 DZ05tqRo
>>90
いやいや、いいと思う
是非とも続きをわっふるわっふる


92 : ○○ :2015/06/21(日) 09:05:17 pmBipU62
いいじゃないか。……というか、結婚式呼んでやれよ!
一番の功労者なんだから
あと、謙遜は美徳なのもわかるけど、駄文とかつけなくていいって大丈夫だっていけるいける


93 : ○○ :2015/06/22(月) 00:38:15 NMp90Frg
>>90
で?
語り手の妖怪は誰なんだい?


94 : ○○ :2015/06/22(月) 21:31:06 EQtalaww
>>82
投稿お疲れ!
これは……多分イマジナリーフレンドこいしのことかな
夢のなかっぽい布あ布明日感じがいいな。

>>90
藍さまいいよね!
ふと思ったんだけど、この○○みたく「美人で性格もよい妖怪ディするとか俺の島じゃノーカンだから」って外来人は阿求にとっては頭痛のたねだろうね。
妖怪は敵(として扱わないと駄目)だっ!ってんだろアッキュー!(中指立てながら)
とか思ってそう。


95 : ○○ :2015/06/24(水) 09:27:02 9HnVTISQ
例えば嫁の御誘いを辞退した場合

八雲藍

「ごめん、藍……今日は疲れてるから……」

と、○○が言ったのは梅雨も最中の六月の末の事である。
季節の変わり目というのはとかく体力を消耗しがちで、かつ、○○は文明華やかなりし外の世界につい昨年までいた外来人である。
クーラーなどあろうはずもないこの幻想郷の夏は、その恩恵に浸りきっていた彼にとって厳しかった。
だから、疲れていたというのは紛れもない事実である。
……正直を言えば、副次的な理由として、彼の妻……八雲藍の閨の作法は些かダイナミックであり、アクションであり、流麗かつ華麗で、朝までコースであったので……、その、なんだ、大袈裟に言うと、ほんと大袈裟に、いうと、少し辛い。
斯様なゆえあって、勿体無くも申し訳なく、御誘いを辞退した訳である。……が、その○○の頬を雫が叩いた。

「……ん? おおおい! 何故泣く!」

何かの雫は涙であった。
藍の宝石も霞むような蒼い瞳からはらはらと、止めどなく流れては形のいい頤を滑る雫が、ひたひたと責めるように○○の頬を叩いていた。
○○は彫像のように瞬きひとつせず、ただ落涙する愛妻の姿に肝を抜かれ、上掛けをはねあげて愛妻の肩を抱いた。
藍が外の世界に用事で出ている場合を除き、ほぼ毎日肌をあわせている○○だが、まさか泣かれるとはつゆほども思わなかったのだ。
抱いた肩をよせ、顔を除き混むと、びくりと身を震わせ恐る恐る上目遣いで○○を伺うも、すぐに拗ねたようにふいと顔を反らしてしまった。
なんてこった……
藍は外の世界でも超有名な大妖怪、九尾の狐である。
魑魅魍魎のばっこするこの幻想郷でも支配する側の存在だ。
そんな強い存在が、ただひとたび閨の褥を袖にされたぐらいでこれほど心を乱すとは……

「○○は……い、嫌なの……だろう? わ、わたしを抱くのは」

肩を抱く程度では文字道理話にならないと踏んだ○○は藍の顎を自らの肩に乗せ、ほとんど一方的な抱擁でもって彼女をあやした。
その窮屈な姿勢のなか、やっとのこと鼻声で応えてくれたのがその一言だった。

「いやその、なあ、嫌なわけないじゃないか」

すっかり弱々しくなってしまった愛妻の様子に、なにか今まで感じたことのない背徳的な興奮を○○は感じていた。
しかし、それではあまりにも動物すぎると押し込める。
今のところ大人しく抱かれている藍の背を、子供をあやすように撫でるのは、我知らず父性でそれを封じる為だろうか。

「……だって」

藍は不満げに溢すと、すんと鼻をならした。
それは、先程断崖絶壁のような悲しみとは違う、いうなれば「とりつく島」のある心待のように、○○は感じた。
肯定、囁き、愛の言葉……そういったものなら聞きます、そしたら許してあげるかもしれませんよ? そう言っているかのように。

「あぁ、聞いてほしい、藍。俺はーーー、ーーー、ーーだよ、今までも、これからも」

藍の尖った狐耳に、彼女以外には聞こえぬよう○○は囁いた。
それは藍だけに聞こえればいい、愛の言葉であるので、ここでは略す。例え、主の隙間妖怪にすら聞かせたくない藍への、藍だけの言霊であった。
藍は抱かれるままの姿から、そっと○○の背に腕を伸ばした。
そして、こちらはその艶めいた声を確かな形とするように、あるいは誇示するように「私も」と応えて、○○の耳朶に軽い口付けを落とした。

「私達は……いや、私のような愛を知った妖怪はな……」

藍は語り始めた。
語りつつも口付けを耳から頬へ、そこからは鼻と言わず額と言わず顔中に雨のように降らせ続ける。
それは、ある種動物的ともいえる愛情の標(しるし)つけ。
それでいながらたっぷりと女性的な湿った意味をもつキスの霰だ。

「それを喪うのは最早存在の意味を棄てるのと同じなんだ……ん、舌、出して……」

んっふ……と、普段の藍ならもっと手順を踏んで求めてくるのだが、テンションの谷間から急浮上しようとする勢いに煽られてか、辛抱堪らないと言わんばかりに吸い付いた。

「あぁ……ん、ふきぃ……らいふきぃ……」

元より閨では情熱的な藍。
しかしその行為のセクシャルさと裏腹に、すがり付く子供のような余裕の無さを○○は感じていた。


96 : ○○ :2015/06/24(水) 09:39:08 9HnVTISQ
「お願い……私を、………………私を拒まないで」

途端、1オクターブ低い声。

あ、マズイ、と。
そう、藍の悪いスイッチが入ってしまったのを、○○は察知したがすでに遅かった。

「ん……本当は、本当は……ああ、私の○○……私だけの、私だけの! 閉じ込めたい! 朝も夜もなく私という結界の中で、私の声だけ、私の匂いだけ、私の肌だけ、私の味だけ、私の感触、体温! 私だけで溺れさせたいの! 私だけにすがって欲しいの!!」

がばっ、とやおら弾き飛ばすように唇を遠ざけた。
そして、恨めしいとすら言わんばかりにぎっとねめつける視線を○○にぶつける。
肩を掴む藍の手にも力がこもり、ぎちと寝間着に爪が食い込んでいく。
白い甚平に赤いものが滲む。……が、ここで痛みを顔に出してはいけない、○○は本能的にそう感じていた。
少なくとも、藍が大事なら、平然としてこれを聞き届けなければ、と。

「溺れて、溺れさせて、そして、そして………………また、駄目にしてしまう……
  あぁぁ、御免なさい○○、○○! 見せたくなかった、言うんじゃなかった! 分かってるの、これを見せれば貴方が離れるかもしれないことっ
  でもお願い、私のあなたでいて、居てくださいっ その為なら、わた、わたしの……むぐっ?!」

分かった。○○は愛妻の口をふさいだ。
藍が自分を傷つけ始めたからだった。
これ以上は言わせても、聞いても駄目なのだなと、○○は思った。
藍の業、それは深く、千年以上の重さがある。
この豊潤な体と、灼熱の情に歴史があるのも分かっている。
その分、深い痕があることも。
もしかすると、その傷ゆえに那須の地で死ぬつもりで、石へと封印じられたのかも知れないな、と○○は妄想を逞しくした。

「ん、んむ……」

一瞬だけ驚いたように固まっていた藍は、しかし押さえ付けられるよう後頭部を掌で捕らえられるとむしろ安心したかのように身を委ねた。
舌を絡めることもない、ただ柔らかいところを与え合うだけの口付け。
控えめに時おり鳴る水音。はぁ、と途切れ途切れに聞こえる吐息は情欲よりも心底からの安堵の響きであった。
まるで、家族待つ家に帰った幼子のような。

「藍、分かった……」

ちぴ、と名残惜しげに柔らかな唇を開放すると、「あん…」と不満げに藍が鳴いた。
細い糸がゆったりと二人に橋をかけ、途切れた。
今までの狂乱を忘れたかのように、平静を取り戻した藍が視線で問う。と、○○は返答とばかりに藍の襦袢の襟を割った。
すらり、とそれは衣擦れを残して肩を割り、鎖骨をのぞかせたかたかと思うとそのまま豊満な乳房を外気に晒した。
ふるん、とまろびでた膨らみは何よりも美しい放物線を描き佇んでいる。
幻想郷一の胸である。
○○はその幻想郷一の胸の柔らかさ、肌触り、そしてその味……全てを藍に教わっていた。
同時にそれが全て、○○のモノだということも併せて。

「あ、あなた……」

藍の瞳に若干の驚きと、そして徐々に大きくなる期待とが溢れてくる。
○○は頷くのも面倒と、そのまま藍を夜具の結界へと沈める。
藍の円い肩が布団へと捕らわれると、剥き出しの胸がたゆん、と揺れた。
藍の胸は豊満である。
すると、これからへの期待にいよいよ藍の瞳は熱く潤み、頬は桜よりなお艶やかに色付いた。

「今夜もしたい。藍」

できうる限り直球で○○は宣言した。

「あなた……でも、お疲れでは」

「………………したいんだ。俺の藍だから、藍の俺だから……だから」

「あなた……!」

藍は感極まったとばかりに落涙すると、その細い腕を伸ばして夫を抱き寄せた。
蒸し暑い幻想郷の湿度と、気温が3度ばかり上がった。
そしてそれは、夜、と呼べるギリギリの範囲まで続いたという。

おしまい。


97 : ○○ :2015/06/24(水) 18:54:13 2tfkHa4I
投稿お疲れ様です
やっぱり独占欲の強い藍様はいいですね!


98 : 避難所管理人 :2015/06/25(木) 00:50:43 ???
ちょっと失礼します、板管理人です。

幻想郷の想郷の女の子に愛されて眠れない21夜みつけたよ
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/22651/1432535250/l50
幻想郷でイチャつくスレ21夜目【見つけたよ】
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/22651/1432634050/l50

上記の2スレについては、こちらで新スレ候補として立てられ
使わなくなったスレッドかと思いますが、間違いないでしょうか。
その場合は、こちらの判断で削除してしまっても構わないのですが、
削除依頼を出すひと手間をあえてお願いしておきたいと思います。
(運営・削除依頼スレ 
  ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/22651/1432392839/l50)

スレ数も少ないことから、ある程度最新レスに目を通してはいますが、
管理人は板内全スレの住民を兼ねてはいないことから、
何かあれば管理人へ、という体制を確認・確立しておきたいと考え、
(例えば荒らしの発生時などに、つついて膨らますことなく通報いただきたい)
今回のお願いとなった次第です。
お手数ですが、御協力をよろしくお願いします。


99 : ○○ :2015/06/25(木) 18:21:33 GVXSaMJw
削除依頼出してきました。
管理人さま、御足労お掛けしまして申し訳ありません。
宜しくお願いします。


100 : ○○ :2015/06/25(木) 18:27:39 GVXSaMJw
>>97
感想ありがとうございます。
投稿したあとになって、あそこ言葉足らずだったなぁ、とか色々考えてしまいます。
でも、時間たつと全部消したくなってしまうので至らないところは許してください。

狸のおねえさんが活発に動いてるなか、全然露出がないのが藍さまのファンとしては歯痒いです。


101 : ○○ :2015/06/26(金) 17:26:59 XxRm4TX6
このスレって絵を貼るのはありなんです?


102 : ○○ :2015/06/26(金) 18:54:00 KxLlXV4k
いち住民の意見としては、だけどいいんじゃないかなと思う。
幻想郷の少女(?)たちのヤンデレで盛り上がれれば、SSでもこねたでも絵でも感想でも。
でもまあ、今のところ割りと閑散としてるからリアクションはそう貰えないかもね。


103 : ○○ :2015/06/26(金) 22:21:29 628drFMk
ありありありあり
ありですよ、むちゃくちゃありですよそんなもん


104 : ○○ :2015/06/26(金) 22:59:09 XxRm4TX6
貼ってみようとしたところしたらばではURLを貼り付けることができないと表示されてしまいました
まさかそんなルールがあったとは…


105 : ○○ :2015/06/26(金) 23:41:16 XxRm4TX6
ttp://i.imgur.com/xvClULy.jpg

調べてみたところURL先頭のhを消すことで貼ることができるようですね、無知ですみませんでした
東方キャラのヤンデレ姿を可愛く描けるよう精進したいです


106 : ○○ :2015/06/27(土) 00:01:24 1A6VyhLM
犬の十戒を思い出すな
グッショブ


107 : ○○ :2015/06/27(土) 23:06:29 RJVtJvvg
うおおお絵の投下きてるじゃん!
いいねえ涙で顔ぐしゃぐしゃにしながら縋りつく姿超素敵


108 : ○○ :2015/06/28(日) 02:45:29 xL054/Mc
影狼にいったい何があったのか想像すると夢が広がるな
見て楽しめるし誰かの閃きに繋がるかもしれないからぜひまた何か書いてほしいものだ


109 : ○○ :2015/06/28(日) 14:36:45 8lUCEhZg
梅雨なので小傘

例えば小傘が○○の持ち傘だったら
急な雨にも虚空に向かって「こーがーさー!」って叫べば鬼○太郎どーんって感じで飛んでくるんだろうな。
小傘は耳がいいよね、って腕組ながら小傘(本体)をさして雨の道をあるくんだけど、違うんだよね。
雲ってくるとご主人の足音聞いた犬のみたく、○○の家の玄関から出て声掛かるの待ってるんだよ。健気だね。
たまに、寺の山彦も「こがさー」って鳴くから案外聞こえるんだよ。
それで、小傘(本体)をシャバババって高速回転させながら「あーい、アチキをお呼びでありんすかー」って小傘なりのカッコイイキャラ作ってやって来るんだ。
自分使ってくれることが多いから小傘は梅雨時が好きなんだ。道工の鑑だね。
○○に喚ばれてから家に帰るまでの道のりも小傘は大好きなんだ。
肩を寄せあって、小傘は傘なのに○○は濡れないように肩を抱いて、心持ち小傘よりに傘をさすんだ。
そんな○○の心遣いと体温に、濡れないようにしてたのに濡れてきちゃうんだ。
ところで、家に傘がひとつしかない家ってないよね。
普通は少なくとも人数分、さらに何本か余分にあるよね。
でも、○○の家にはないんだ。
なんで、って?
そんなの小傘が壊すからに決まってるよね。
誰かお客さんの忘れ物でも、取りに来ないって分かったらへし折っちゃう。
だって、困るもん。もし、九十九神になりでもしたら、
もしかしたら自分よりそっちが使われちゃうかもしれない。
少なく見積もってもあの帰り道のドキドキわくわくを味わうのが半分の頻度に減っちゃうからね。
要らないよね、小傘以外の傘なんて。

「だから、ゴメンね」

みしみしみし……ベキッ

その分、大事にしてもらう積りなんだ、小傘は。
一途だよね


110 : ○○ :2015/06/28(日) 18:31:19 9ht4jCPY
まだ家の中で済んでるから、可愛いものじゃないか


111 : ○○ :2015/06/29(月) 02:59:28 drTJuhHw
小傘は健気で一途な姿が似合いますね
理解のある○○と末永く幸せにいてほしいものです


ttp://i.imgur.com/MieGYSE.jpg

前の絵を見ていただいてありがとうございます
今後も何か描けたら貼ろうと思うのでよろしくお願いします
ということで今回は藍様を描きました
藍様は○○に近づく女性を排除しつつ自分の美貌を全力で活用して○○を悩殺してしまいそうですね


112 : ○○ :2015/06/29(月) 13:09:42 6i1TzmhA
>>111
色を塗れ。


早く


113 : ○○ :2015/06/29(月) 19:05:55 F2NJWcG6
塗ってくださいだろこの野郎お願いします。


114 : ○○ :2015/06/30(火) 21:00:16 0nM.IR0o
>>110
感想あり
でも、これベキッてする標的が傘から○○の彼女とか
に及ぶの時間の問題だと思うんだ……
いや、俺が「この話の小傘は○○と死ぬまで愛しあいました!」って言えばこの世界線ではそうなるんだけどね

>>111
曇らせたいという気持ちと、笑顔でいて欲しいという気持ちがせめぎあいます。
でも、原作で小傘がヘビーシッターしてたっての見たときはちょっと涙出るほど感動しました。
超良い子だよね


115 : ○○ :2015/06/30(火) 21:45:31 f.P/o7sA
>>111
超グッジョブ
これが露出のないエロスというものか


116 : ○○ :2015/06/30(火) 23:37:47 ajGl2J8o
>>83の続き

銀髪のあの娘のことを思い出しているとふと、あの眩い光に飲み込まれる前のことも思い出した
(あの時、微かに何か見えた……よな)
あの時に見えたのは赤と白。そしてやけに高いものだった
「なぁヤマメ、この世界。幻想郷って最近何か落ちてこなかったか?」
「え、な、なんでそんなこと知っているの!?」
突然の問いだったからか、はたまたドンピシャだったのか、ヤマメはびっくりしたかのように声を上げる
「いや、こっちに来る前に誰かがそんなことを言っていてな」
「へぇ、誰なの?」
「それがさっぱり思い出せなくてな。一回どこかであった気はするんだがな……」
「それって結構失礼じゃない?」
「そうかもしれんな。で、その落ちてきたものって何だか赤くて白い、高いものか?」
「それだけじゃないわよ。もっと色々落ちてきてるのよ。まぁ、説明するよりかは見てもらったほうが早いわね」
そう言って少し足取りの早くなったヤマメに着いて行く
数分ぐらい経った頃、例のものが落ちてきた場所に着いた
「着いたわよ。ここね」
ヤマメの隣に立ってその先を見る
「……!?」
目の前に広がる光景
まさしくそれはーー
「東京……」
誰もが忘れていた光景だった
《続く》
駄文投下申し訳ないのですが、まだ続かせて頂きます


117 : ○○ :2015/07/01(水) 00:00:34 5LJjaLiQ
>>116の続き

「東京?」
隣にいるヤマメが首を傾げる
疑いようの無い、本物の東京であった
「な、なぁヤマメ。これはいつ頃からここに降ってきたんだ?」
「何時って、だいたい二日前ぐらいからこの辺にあってさ。妖怪の賢者達も驚いて今必死に調査してるところだよ」
「とにかく、もう少し近寄ってもいいか?」
言葉よりも先に足が出た
「え?あぁ!危ないよ!そっちは!」
気がつくとヤマメの言葉が遠くなるほどにまで走っていった


「驚いた……まさか、この目で見るなんて……」
山から降りてきた所は品川駅の周辺だった
人だけがいない状態、という言葉がまさしく当てはまっており、何もかも外と同じ風景であった
「…もう、勝手に動いたら危ないよ!」
背後から声がする。ヤマメだ
大分走ったらしく、息が荒い
「あ、ああ、すまない」
「全く……君みたいなのは初めてだよ。……そんなにこれが凄いの?」
ヤマメが呆れ混じりに問う
「凄いなんてもんじゃないさ、外ではもう二度と見れない風景なんだから」
半分目を輝かせて言う
と、こっちに近づいてくる人がいるのに気づく
「あ、慧音さーん!」
ヤマメが手を振りながら呼びかける
(あの人が里の守護者か…)
水色に近い色をした髪を腰の近くまで伸ばし、四角く、羽の生えたような帽子を被っている
「やぁ、ヤマメ。見回りご苦労様。それと、そちらは…」
「俺は○○って言います。どうやらこっちの世界に紛れ込んだみたいで」
「そうだったのか。こんな夜更けの中よくぞ無事だったな。普通だったらその辺の下級妖怪に食べられているかもしれなかったのになぁ」
するとヤマメは声こそ出さないが目を『私のお陰!』と言わんばかりにしてこちらを見つめる
「…まぁ、この通り。ヤマメが里まで案内してくれていたので、なんとか」
「そうなんですよ!いやぁ〜本当にあの時私が見つけなきゃどうなっていたことか〜」
「そうかそうか。ともかく、無事で何よりってことかな」
明らかに現金なヤマメを気にせず慧音さんは安心した様子だ
「さて外来人○○。ようこそ、幻想郷へ」
二度目の歓迎の言葉。そして眼前の古都
今更ながら俺は確信した
ーーここは、裏の世界、幻想郷なのだと
《続く》


118 : ○○ :2015/07/01(水) 19:37:27 WAi1Z7cs
秘封倶楽部の時代かな?
日本の首都が東京じゃなくなってるのは何か深刻な理由がありそう


119 : ○○ :2015/07/01(水) 20:14:01 lMAE3Dzc
なんか壮大な話になってきたなー。オラワクワクスッぞ
やっぱヒロインはこいしでいくのかな。けーねも活躍できるといいな


120 : ○○ :2015/07/02(木) 04:24:45 BnAIhq0Q
投稿サイト使いたくない人間には、やっぱりロダが死んだのは痛いな。


121 : ○○ :2015/07/02(木) 18:30:45 Dg62mMro
ああそういえばそのままだったな


122 : ○○ :2015/07/03(金) 02:50:17 CeX3zgB6
曲がり者エレジー1

以前投稿した短篇を下地に、リメイク。
ロダが使えない為、捨てIDのブログでの投稿となります。

ttp://blog.livedoor.jp/toukouyo/archives/1033038714.html


123 : ○○ :2015/07/03(金) 02:53:10 CeX3zgB6
URLに誤りがあった為訂正。
ttp://blog.livedoor.jp/toukouyo/


124 : ○○ :2015/07/03(金) 07:22:20 K49f.Q46
素晴らしいです
続きが気になります


125 : ○○ :2015/07/03(金) 11:47:17 gbGfNnyM
ここに来てばんちゃんに風が吹いてきたな
ここからどう病むのか楽しみ


126 : ○○ :2015/07/03(金) 17:35:10 3W8d9LiY
第二夜以前が消えてない理由って誰か把握してる?


127 : ○○ :2015/07/05(日) 10:25:48 kH1A2kjY
蛮鬼良かった、期待。


128 : ○○ :2015/07/05(日) 23:12:44 et/o2kqQ
ノブレス・オブリージュに囚われて(75)
ttp://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=39700&n=65

>>86
やっぱり感想がつくと物凄く嬉しい
ねだるようで格好が悪いとは思っても……やっぱり感想は欲しいですね。それが正直なところ


129 : ○○ :2015/07/05(日) 23:15:59 sw5jGc8w
俺も欲しい(正直)


130 : ○○ :2015/07/06(月) 19:55:36 nJ1RNn3I
素朴な疑問なんだが、今少しでも書く気のある人ってどんくらいいるんだろう
小説やSSとかでなくても、こういうの良いよねみたいな単文でも。
いくらかいるなら、なんかコンペみたいのやらない?


131 : ○○ :2015/07/06(月) 22:47:44 WGrZhODA
ちょこちょこ考えてはいるがここんとこ形にしたりする時間が無いんだ…


132 : ○○ :2015/07/07(火) 00:34:56 dDGPXRBo
久々にかけたので
私としてはちまちまながら続けさせてもらおうかなぁと

というわけで>>117の続きを

明け渡された一室の障子を開け、外の景色を見る
ここから見える月は自分のいた世界とは違う、不思議な光を放っていた
そして、その月よりも奥で微かに光るものもここから見えた
ー失われし古都、東京
四度に渡るの世界大戦により、日本国内はあらゆる方向でダメージを受けていた
国家機能においても例外ではなく、むしろ真っ先にダメージを受けた。いや、それは当然か
そのため、首都機能を維持するのが困難になった東京は遷都を余儀なくされた
しかし、遷都後の京都も京都市民による『首都京都反対運動』により長くは続かず、続いての遷都先の大阪も過密化の急激な進行により首都以前に都市として完全に機能しなくなった
そうして大戦が終わった頃、政府は首都機能を一箇所に集中させるのではなく分散させる
ことを決定し、実質的な首都は大阪のままに、機能としては札幌、名古屋、福岡に分けられた
分散された頃には既に東京など忘れられており、かつての巨大都市としての面影もとうに消え去り、今や立ち入り禁止区域まで出るほど落ちぶれてしまった
「(そんな東京を、かつての姿で見ることになるとはなぁ)」
遠くで薄っすらと、月の光を浴びて輝く古都に一瞥をし、寝室へと戻る


133 : ○○ :2015/07/07(火) 00:35:44 dDGPXRBo
品川駅前で慧音先生と出会った後、ともかく休むべきだという先生の言葉に甘え、人里の空き家で一夜を過ごすこととなった
ヤマメにもお礼を言いたかったが、まだ見回りをするとのことで直ぐに山へと戻って行ってしまった
先生曰く、普段は甘味屋で働いているので会おうと思えば会えるそうなのでなるべく早いうちに顔を出したいところだ
そう考えながら布団に入る。すると微かな違和感に気づく
「やっほ〜、びっくりしたかなぁ?」
微かどころではない、寧ろ気づかない方がおかしいくらいである
「ねぇねぇ、どうかな?気に入ったかな?私達の世界は」
「そうだな、一刻も早く布団に入って寝たいかな」
「もぉ〜ちゃんと質問に答えてよぉ〜」
質問以前に目の前にいる彼女、こいしがどうやってこの家に入ったのかが気掛かりで仕方ない
外の景色を見ていた縁側は誰もいなかったし、玄関だって戸締りはしてある
そんな半密室状態なこの家にどうやって入っったのだろうか?
「それはねぇ〜無意識で、入ったんだよぉ〜」
借り物の布団で足をぱたつかせるこいしが笑顔で答える
だがその笑顔が一瞬不気味に見える
今だって口に出してすらいないのに自分の問いに対して彼女は答えた
本当に彼女は一体何者なんだろうか?
「もぉ〜また考え込んじゃって〜、えい!」
「う、うぉ!!」
またも予想外の力で布団の中へと引っ張られる
「えへへ、添い寝〜」
「こらこら、俺はそんなことをするつもりは無いからな、離せ。そして出て行け」
「そんなこと言ってぇ〜、本当は期待してたんでしょ?」
「んなわけ無いだろ、ほらほら、ここは俺の布団だからさっさとお家に帰りな」
「え〜やだぁ、私もここで寝るぅ〜」
「ダメだって、家の人が心配するだろ?」
「お姉ちゃんはいいって言ったもーん」
「お姉さんは良くても俺はダメなの」
「むぅ〜」
談義(?)はほぼ平行線、どちらかが折れるまで眠りはない
そう悟った俺は観念した
「わかった、ここで寝ていい。ただし添い寝は無しだ」
「え!?いいの?」
「ああ、それと、朝はなるべく早く帰れよな」
「やったぁ!!ささっ、早く寝よ!寝よ!」
子供のように無邪気に喜ぶこいし
そこには先ほど感じた不気味さは無く、一人の少女としての笑顔があった
「(…やれやれ、先が思いやられるな……)」
添い寝は無しと言ったにも関わらず、目の前で寝だしたこいしの頬を撫で、自分も目を閉じる
どうやらここは、一筋縄ではいかなさそうだ

《続く》


134 : ○○ :2015/07/08(水) 00:26:08 AUz/xnM6
ぶつ切り投稿失礼します


幻想郷の人里
そこには外来人を含めた人口の殆どが集中し暮らしている
そこの守護者である上白沢慧音には一つの悩みがあった

「おい、てめえ!何ガンなんか飛ばしてんだ!殺されたいか!」
「ひっ、何なんだよ急に…」
「口答えしてんじゃねえ!」
人里に暫く前から居着いた〇〇という男、彼は非常に乱暴で激しやすい性格であり人里の厄介者であった
彼は日に何度も村人と衝突し揉め事を起こし、暴力行為もいとわない。それを慧音が諌めるのは最早日常的だった

「こら、〇〇止めないか!」
「ちっ、また邪魔すんのか」
「なぜお前はこうも揉め事ばかり引き起こすのだ、あれほど言って聞かせているじゃないか」
「うるせえ!」

〇〇は肩を怒らせて去っていく
慧音はその後ろ姿をやるせない想いで見つめた

「慧音先生、〇〇をどうにかしてくれ。このままでは俺たちまで殺されちまうよ!」
「すまん、よく言っておく。だから彼を許してやってくれ、あいつは居場所がもうここしか無いんだ…」
「どうして先生はあんな化け物手前のやつをそんなに…」
「…すまん」
「あっ、すみません…」
「いや、いいんだ。しかしあいつは…」

一方〇〇は怒りに身を震わせながら人里外れの自宅に戻っていた
「なんだってあの雑魚どもは…。誰のお陰で安全だと思ってるんだ!誰の力のお陰で生活してると思ってるんだ!」
「俺が下級の妖怪を殺してるからだろうが!もっと俺に感謝してろよ!雑魚どもが!!」

〇〇は妖力を身に宿していた
〇〇は人並み以上の身体能力、回復力、そして妖気を感じる力を持っていた(もっとも山の天狗や博麗の巫女、慧音には遠く及ばないが)

彼はその力を生かして人里や人里からやや離れた新しい畑(主に外来人の物)で働く人々を襲う妖怪を殺し、人が入っていきたがらない所で薬草や食料を集め生計を立てていたのである

人々は〇〇を恐れた
彼が異形であったからだ
〇〇もまたそのような人々を憎み、軽蔑し、恨み孤独に暮らした
たまに給与として送られる多少の食料や衣服を受けとる時と薬草を売り渡しに人里に現れるが、それ以外は家に籠っていた

そんなある日の事
〇〇は日課である下級の妖怪数匹を片付け、妖怪の山の麓でかき集めた薬草数束に釣ってきた川魚数匹を持って帰宅し、夕食の準備をした。
今日の献立は人里から配られた米に根菜の味噌汁、川魚の塩焼きという質素なものであった。

そしていざ食事を始めようとした時
(…デカい妖気だ、しかもすぐそこにいやがる!)

〇〇は命の危険すら感じた。
下級妖怪を倒せる○○と言えども幻想郷の権力者の前では形無しである。
だから〇〇は慧音に逆らえない。
彼女の機嫌を損ねて弾幕とか言う物を食らえば、生きてはいられないと言うことは重々承知し彼女を恐れていた。(彼女が〇〇に弾幕を放つなどあり得なかったが…)

○○は包丁を構えて妖気の元を慎重に探った。
しかしその妖気の正体は意外にもすぐに見つかった。

「おい、人の魚を人の目の前でつまみ食いするとは良い度胸だな!」
「あれ?お兄さん私が見えるの?」
「何を言ってるんだ?てか、俺の貴重な飯を食べるな!この野郎!」
〇〇は幸か不幸か、飯を奪われた怒りで前の小さな盗人が放つ強大な妖気を忘れていた。

ゴツン!
〇〇は女性にも遠慮はしない。
しかし…

「いたーい!うっ、うえーん…」
「あ、泣くな!ちょっとならいいから!」

子供の涙は苦手である

これが心を歪めた〇〇と心を閉ざした 古明地こいしの出会いであった。


135 : ○○ :2015/07/09(木) 22:06:11 4.AXik0.
>>134
続き

「お兄さん、この魚おいひいね!」
「そうか、まったくムシャムシャ食いやがって…」

結局〇〇はこいしに夕食を食べさせる事となった。
ここはとりあえず食事をさせて追い返せば良いと考えたのだ。

「ところでお兄さんの名前は?」
「〇〇だ」
「〇〇かー、私はこいしだよ」
「…そうか」
「なんで〇〇には私が見えるの?」
「何いってんだお前?俺に目玉があるからに決まってんだろ。それにお前の妖気までもきっちり感じてるからな」
「〇〇もちょっと妖気があるね」
「まあ、俺ももう妖怪だしな…くそっ」
「?」
「ああ、なんでもねえ。お前ももう家に帰れ。もう暗いしな」
「はーい、御飯ありがとー」

こいしが家を出てから数分後、〇〇は片付けをしながらふとあることに気づいた。
「ありがとうなんて久しぶりに言われたな…」

数日後、〇〇は人里の開拓地で汗を流していた。
〇〇の開拓地に於ける基本的な仕事は身体能力を生かした下級妖怪の排除である。しかし、毎日妖怪が山のように襲撃にくるわけではない。そこで〇〇は開拓地に彼の畑を持ち、農作物を作って配給の足しにしていた。

作業も一段落し、持参した昼食を広げたところでまた〇〇は妖気を感じた。

「ああ、こいしか。」
「〇〇、何してるの?」
「ここで畑作業してんだよ。お前が来て楽しいところじゃないから帰れ帰れ」
「〇〇、その御飯美味しそうだね」
またしても〇〇の食事は減ったのだった。

「全くなんでお前はこう飯時に来るかなあ」
「ごちそうさまです。ふう!」
「やれやれ…ん?」
「おい〇〇、妖怪の襲撃だ何とかしろ」

〇〇は食事とこいしに気をとられて妖怪の接近に気づかなかった。
同じ開拓地で働く人里の男はそれだけ告げて去っていった。妖怪の襲撃の際には〇〇を除く開拓者は逃げる事になっている。

「しかたねえな…。ほらこいしも帰れ、俺は仕事だ」
「え?〇〇は逃げないの?」
「あれを片付けるのも俺の仕事なんだよ。邪魔だからもう行け、しっし」
「えー、つまんないの」

〇〇は妖気を多数感じる方向に走って行った。他の人間はもうとっくに逃げている。だから遠慮はいらない。

(そうだ、こっそり追いかけちゃえ)
こいしもまたひっそりと後を追った。


136 : ○○ :2015/07/10(金) 02:59:31 LYAKQLTE
こういうのいいよなって短文なら割とあるなぁ

ゲスだとは思うが、ヤンデレ物を見るならその一途さというか
自分しか愛せないことを自覚して利用するやつが見たいね。


137 : ○○ :2015/07/10(金) 22:53:34 xIubdqxc
感想いくぞぉ
……と、思ったけどヤンデレ成分がまだ出てないとこなので、保留。
ちゃんと毎日見てるから頑張って。奇しくも二人ともこいし書きなのでたまに混乱するが気にすんな!

>>136
それだったらwikiの神奈子のやつがいいよ。
これ、書き慣れてる感じで凄く読みやすいし、主張する主人公だけどなんというか臭みがなくてウザくないから俺大好き。

修羅場とかいいよね。
特にビンタ大会とかイイ……。
クロスオーバーものだけど、ミスチー、いくさん、ぷりずばー姉妹のビンタ大会SSはすげえよかった。


138 : ○○ :2015/07/11(土) 00:27:26 ao5zvlWY
>>135
続き

〇〇は襲撃してきた妖怪の集団を視界に捉えた。
(10匹ちょいってとこか、余裕だな)

〇〇は武器は使わない。弾幕も使えない。己の肉体のみで妖怪の攻撃をかわし、妖怪を打ちのめしてきた。

「まずは一匹…!」

やや大型の犬程度の妖怪どもを地面に叩きつけて頭を殴り潰す。背骨を叩き折る。首をへし折る、引きちぎる。一匹片付ける度に体が汚れるがそんなものを気にする余裕はない。多数相手には一秒の油断も致命的だ。こちらが頭を潰され兼ねない。

「やれやれ、やっと終わったか…」

十数匹の妖怪を撃退した後で〇〇はすっかり疲弊していた。
一匹の妖怪がまだ陰に残っているとも気づかないのも当然であった。


(え?〇〇何してるの?)

こいしは衝撃を受けた。
こいしは弾幕ごっこには慣れていた。先日の宗教戦争の時にはこっそり乱入して弾幕ごっこを何度もやった。
しかし、このような「殺し合い」を見るのはほぼ初めてだった。

(これが〇〇の仕事?)
(他の人を逃がして〇〇だけがこんな事をしてるの?)

こいしは唐突に理解した。
なぜ〇〇に救助を要請した村人があんなに嫌そうな態度を取っていたか。なぜ〇〇だけが一人人里の外れに暮らしているか。

「〇〇!」
「ん?こいしか。来るなって言っただろうが…」
「何でこんな危ない仕事なんかするの?私ならこんな奴ら一瞬で…」
「…これ以外に仕事がないのさ。人間なんて俺みたいな化け物には冷たいもんさ。こうやってしか俺は生きられないんだ」
「〇〇…」
「やれやれ、俺は畑に戻るぜ。そっちもまだ作業が残って…ぐおっ!」

突如〇〇の背中に激痛が走った。
妖怪の生き残りに背後から奇襲されたのだ。

「〇〇!?しっかりして、〇〇!」
「畜生…、まだ一匹残してたか…。くそっ、動けねえ…」
「うっ、ああああああ!」

こいしは激しく動揺した。
無我夢中で弾幕を乱射し即座に妖怪を塵にした。

「はあっはあっ…。〇〇!誰か助けて!誰か!」


139 : ○○ :2015/07/11(土) 00:44:49 pWwTPUAo
ぬぉ、もう一人のこいしちゃんが
楽しみに待たせてもらいつつ、私も書かせて頂きます

翌朝

目を覚ますと隣で寝ていたこいしの姿はなかった
もう既に家に帰ったのだろうか?
壁掛け時計に目をやる。今は七時を過ぎた頃
一先ずは着替えてからこれからのことを考えようと布団の横に置いておいた服に着替える
すると玄関から音がした
『○○、居るか?』
音の主は慧音であった
「はい、居ますが」
『よかった。朝早くで申し訳ないんだが、ちょっと頼まれてくれないか?』
(なんだろう……慧音先生が俺に?)



「やぁすまない。もう少し寝ていたかったか?」
「いえ、普段からこれぐらいの時間に起きてるので問題ないです。それより、頼まれごととは?」
「ああ、それなんだが……昨日こっちに来たばかりの○○に任せるには……」
先生は少し苦い顔を浮かべる
「…実はな、昨日○○と会った場所。その、東京とやらに住みたいっていう奴がいてな」
「え、東京に、ですか?」
「そうなんだ。私としてはあの辺りは下級の妖怪達が生息している地域だから反対したんだが、どうしてもって聴かなくてな…。それで急遽博麗と守矢それぞれから軽い結界の役割を持つ札を用意してもらったんだが、札を貼る場所がなかなか決まらないんだ」
「そんなに広いんですか?」
「ああ。少なくとも私が纏めている幻想郷の歴史の中でも、あれだけの規模のものが幻想入りするのはかなり稀なことだ」
なるほど、確かに外でもかなりの大都市と言われていたからな
「つまり…だなぁ。外の世界の君に手伝いをして欲しいんだ」
「…俺なんかよりも、東京に詳しい奴は里にいるのでは?」
「それが、詳しそうな移住希望者はみんな揃って引っ越しの準備を始めてしまってな。声を掛けられなかったんだ」
「へぇ…其処までして里から移りたいんですか、彼らは」
「まぁ、な……。それで○○、現金なようですまないが頼む、君の知恵を貸してくれないか!」
そう言うと先生は思いっきり頭を下げた
「ま、待って下さい!頭を下げなくても大丈夫ですよ!お、俺は初めからやるつもりでしたから」
「ほ、本当か!?」
「先生相手に、ましてや恩人に嘘なんて付いてどうするんですか」
「あ、ありがとう!助かるよ!」
少し涙を零した先生は俺の手を掴んだ
そんな、大袈裟な……
ーーちっ、忌々しい…
一瞬寒気がする
誰かに睨まれた。誰とは分からなかったが
「…ど、どうした?○○?」
「あ、いいえ、なんでもないです」
其処で俺の腹が鳴った。先生を目の前にして少し恥ずかしく、自分でも分かるように頬を赤らめた
「おっと、そうか。○○は朝飯がまだだったようだな。どれ、今から一緒に食べに行かないか?いい店があるんだ」
「え、ええ…悪いですよ」
「遠慮しなくても大丈夫さ。さ、行こう」
先生に手を引っ張られ、里を目指す
ーー里にたどり着くまで、あの不気味な睨みは消えなかった
《続く》
少し会話が長いなぁ……


140 : ○○ :2015/07/11(土) 01:36:57 QObMNL.s
文面で誰がどれ書いてるのか何となくわかるが酉でもつけてくれた方がいいかも。


141 : ○○ :2015/07/11(土) 08:16:56 YSDShsG.
もういっそ夏だし地底組フェアでも開くか
そしたら俺嫁の(勇儀)ヤンデルやつなんか書くよ


142 : ○○ :2015/07/11(土) 22:56:09 jA/zrn9g
病みの方向を変態性に極振りしたタイプの話ってあんまり見ない


143 : ○○ :2015/07/12(日) 22:06:09 0s6kXLsY
>>138
続き

こいしは必死に助けを求めた。
しかし、誰も現れない。それは誰もこいしの存在に気づかなかったからだった。〇〇が倒れてから十数分後、やっと逃げていた村人たちが様子を見に戻ってきた。

「おい〇〇、今日はずいぶん丁寧にやったもんだなっておい!しっかりしろ!」
「誰か荷車持ってこい!〇〇の野郎倒れてやがる!」





「うっ、ここは…」
「慧音先生、〇〇が起きたぞー」
「ここはお前の家だ。倒れてたお前を皆でここまで運んで薬師まで呼んだんだぞ。感謝しろよな」
「…」

〇〇は自宅でなんとか意識を取り戻した。と、同時に体中に痛みが走った。

「痛え、畜生…」
「〇〇、無事だったんだな」
「ああ、慧音先生。こんにちは」
「竹林の薬師からの伝言だ。お前は10日ほど自宅で休養だ」
「はあ。で、その間の給与は?」
「お前なあ…。」
「俺はあの仕事で食ってんだ。貯蓄もない。だからいつもの現物給与が何よりも大事なんだよ!」
「…給与はいつもの8割だ。注意を怠った罰だと思え」
「はいはい、じゃあ俺は10日間ずっと寝てますわ。皆様はどうぞお帰りください。」
「待ちなさい、〇〇。何か村の皆に言うことがあるだろう」
「お前ら、俺が死ななくて残念だったな。妖怪ってのはしぶといんだ。まあ8日目辺りであの開拓地が全滅するのに賭けてやるよ」
「いい加減にしろ!」

慧音はついに〇〇を怒鳴り付け張り手を見舞った。

「お前は人間の恩に感謝することもできなくなったのか!」
「あいつらの助けが無かったらお前はのたれ死ぬところだったんだぞ!」
「それなのにお前の態度はなんなんだ!今すぐ発言を撤回しろ!」
「これ以上私は〇〇を…」
「だまれえええ!」

〇〇は怒りを爆発させた。
「ここに俺が来てからこいつらが何をしてきたか知ってるのか?」
「俺に危険な労働をさせておきながら化け物扱いして、人里からそして人里の経済から俺を締め出したんだぞ!」
「今日もこいつらは一目散に逃げやがったんだ!時間が経ってから様子見だけに戻って来たんだ!」
「まずは俺に謝罪しやがれ!」

「しかし〇〇…」
「もう良いです、慧音先生…」
村人の一人が話を遮った。
「あいつの言い分も一理あります。今日は戻りましょう」

かくして村人たちと慧音は〇〇の家を後にした。

「畜生…畜生…」
〇〇は怒りと痛みでその日は眠れなかった。
そして近くをうろつく大きな妖気にも気づかなかった


144 : ○○ :2015/07/15(水) 01:15:12 u99o2Sk2
>>130>>141
いいじゃん面白そう
俺はやってみたいね もちろん地底組じゃなくてもいいよ
>>142
変態方向の病みってどんなの?


145 : ○○ :2015/07/15(水) 05:13:23 HahN4oAI
「○○ー!」

台所の方からそんな嬉しそうな声とパタパタという足音が聞こえて来たので、俺は団扇を扇ぐ手を止め寝転がっていた体勢から起き上がり事に備えて構える。
するとすぐに襖を勢いよく開けて満面の笑みの藍が俺に飛びついてきたので、体を反らしてぎりぎりの所でそれを躱した。

「なぜだ…なぜ、私を拒むんだ○○」

避けられた藍は勢い余って床に倒れ込み、それまでの笑顔が消え信じられないという表情でそんな事を言ってきた。
しかし、俺も意味なく藍を悲しませるためにそうした訳ではなく、ちゃんとした理由あるのだ。

「あのな藍、梅雨の蒸し暑い時期にべたべた抱きついて来る奴がいたら普通拒むだろ。ていうかお前の場合その九本もあるモッフモフの尻尾で包んでくるから余計暑いんだよ」

寝転がっていた時と同様に汗をかきつつ団扇を扇ぎながらそう返す。
そう、暑いのだ。
梅雨だというのに中途半端な降水量のせいで、湿度と温度が上がるだけという非常に過ごしにくい環境が作り出されている。
ゆえに夜だというのにまるで気温は下がらず、俺は暑さを凌ぐために腕を必死に上下させるというほぼ無駄な徒労にさえ手を出してしまっている。
そうでもなければ恋人のスキンシップを無碍にしたりはしない。

「………」

そんな俺の言葉に藍は押し黙ってしまっていた。
普段なら食い下がって来るのだが、妖怪である彼女の身体的な特徴を嫌がってしまったせいだろうか。
少し言いすぎたかと思い、謝ってやろうと思った所で藍が口を開く。

「じゃあ…尻尾を切り落とせばいいか?」

「なんでお前はそう極端なんだよ!」

言いすぎたなどと考えた俺が馬鹿であった。
まさかの珍回答に思わず謝罪の言葉が突っ込みに変わる。
藍は普段は非常に頭の良い奴なのだが、俺が絡むとその知能ががくんと下がるようである。
前に『紫さんに仕えているならあんまり会えないな』と冗談で言った時は、本気で紫さんの暗殺を試みようとしてそれは大変だった。
そんなこともあり、それ以来つまらない冗談を言わないよう心がけていたのだが、まさかこんな事でもその発作が出るとは思わなかった。

「○○、私はお前と抱き合うためなら尻尾の有無など意に介さないぞ」

「そこは介せよ九尾の狐!お前の愛は重すぎるんだよ!」

「ふふ、そう褒めるな。まだまだ私の愛はこんなものではないぞ」

「褒めてないしこれ以上があるとか勘弁しろ!」

俺関連の話の時は頭の螺子が全部吹き飛んでいるんじゃないかと真剣に思う。
まるで突っ込みが追いつかない。
まあ、それが全て俺を想っての事であり、こんな美人が真剣に言っているのだから悪い気はしないのだけど。

「あー、なんだ、藍。そうじゃなくて…なんかこう、妖術か何かで涼しくしたりは出来ないのか?暑くなけりゃ別にお前の事を避けたりはしないぞ」

本当に尻尾を切り落とされても困るので代わりの案を出してみると、藍は顔を輝かせた。

「そ、そうなのか!?あるぞ○○、この一室に結界を張れば結界内の温度など自由自在だ!」

じゃあもっと前から提案しろよ、とはもはや言う気にもならなかった。
疲れた顔でそれじゃよろしく、と言うと藍は嬉々としてその結界とやらを張る準備を始めた。
少し時間がかかるとの事なので、俺は縁側の方へと移動し、そこで藍の作業を横目に団扇を扇ぎ始めることにした。



恋の障害になるなら自分の体の一部でも簡単に切り捨てられるって娘に好いてもらいたい


146 : ○○ :2015/07/15(水) 20:00:30 1ZYV9j66
>>144
やっと乗ってくれるひと来てくれた!
普段なかなか書かないひとも〆切あると書くことがまれによくあるし、できれば気軽に書いてほしい
とりあえず、このスレで活動的なひとたちは
114さん、長編さん、ギスギス命蓮寺さん、東京のこいしちゃん、人外のこいしちゃん、ばんきちゃんのひと、今結界張るので忙しい藍のひと……
くらいかな。もしかすると何人か被ってるかも。


147 : ○○ :2015/07/15(水) 20:33:43 1ZYV9j66
>>139
東京のこいしさん
いよいよヤミ方向に動いてきた……のか?
ぐいぐい来るけーねがなんか応援したくなるなあ
しかし、東京が幻想入りするとかなりヤバイあの方とかも来ちゃうんじゃないか…………あ、もっとヤバイ祟り神がもう山にいたね(安心)

>>145
ああー、やっぱり藍さまイイわぁ……
短いながらも明るいほんわかヤンデレでよかった。
紫をぶっもふそうとしてたときの藍はきっと恐ろしく妖艶な顔してたんだろうな……


148 : ○○ :2015/07/15(水) 23:18:09 HahN4oAI
>>146
コンペってのが何かは分からないけど皆で何かするっていうのは楽しそう
私みたいな拙い文章しか書けない人間でもいいなら参加するよ

>>147
感想ありがとう
ヤンデレって暗いイメージがあるけど私はヤンデレちゃんにも正しく幸せになってもらいたいんだよね


149 : ○○ :2015/07/16(木) 00:31:05 USTIjIcI
コンペなんていうと大層なもんみたいだけど、ここは別にSS掲示板ってわけでもないし、お題決めてそれをお出しすればいいんでないかな。
勿論ヤンデレってのは外さないで、それプラスでキャラ縛りとか勢力縛りとか、シチュしばりとか……
勿論SSでもいいし、わっとやれば楽しくなるんでないかな。

>>148
俺は結ばれるのを諦めて終る話が嫌いなんで、貪欲に結ばれようってグイグイくるヤンデレはほんと好きです。
それに、ちゃんと手綱握ってあげればヤンデレは真のヤマトナデシコとして輝く逸材だと思いますしね。


150 : ○○ :2015/07/16(木) 19:58:34 TqDoJhNw
>>143
続き

こいしは〇〇が家に運ばれていくのを眺めていた。(もっとも姿は見られていないが)
自分が〇〇の言う通りにおとなしく帰っていればこんなことにはならなかったのに。
自分の行いを悔やむこいしだったが、とりあえず〇〇の自宅に向かう事にした。

こいしが〇〇の家に辿り着いたとき、中で騒ぐ声が聞こえ、慧音と村人がぞろぞろ家から出てくるところであった。


「慧音先生、〇〇はどうすれば…」
「あいつは暫く頭を冷やさないとだめだ!今回ばかりは擁護できん!」
「でも、やっぱり俺らにもある程度責任はありそうです」
「それにしても畑の防衛はどうしようか、やつがいないとなると…」
「魔除けの札でも神社で買うかあ」




こいしは〇〇と村人の関係をなんとなく把握した。
(〇〇は村人とはあんまり仲がよくないのね。でもそれならなんで人里にいるのかな?地霊殿に呼んだらお姉ちゃんは怒るかな?)

〇〇の様子をこいしは窓から覗いてみた。〇〇は酷くうなされていた。
(入ったら怒られるかな、今日は帰ろ)


翌日、〇〇は痛む体に鞭を打ち起き上がって自分の手当てをしていた。
「くそっ、かなり酷くやられたもんだな。これは時間がかかりそうだ」
「〇〇、おはよ」
「ん?なんだ、こいしか」
「怪我はどうなの?」
「ああ、これくらいならどうにかなるって。大丈夫だ」
(本当はかなり酷いのに…)
「〇〇、ご飯は?」
「あー、暫くは粗食になりそうだ。作る気力と体力が湧かないからな」
「私が作るよ、待ってて!」
「おい、出来るのか?」
「やればできるよ!」
「…」

案の定こいしの料理は失敗し、二人で焦げ付いたモノを食べる事になった。

「〇〇、ごめんね」
「まあ胃には入るから気にするな。俺は今日は寝るよ」
「うん、また来るね」

こいしは地霊殿に帰り、すぐにそこの厨房に向かった。勿論料理の腕を上げるためだ。
(今度は失敗する訳にはいかないんだからね。次こそおいしい料理を作らなきゃ!)

〇〇はその後ずっと横になっていた。
怪我の介抱をされたのはいつ以来だっただろうか、そんな事を考えるうちに〇〇は眠りについた。


151 : ○○ :2015/07/16(木) 22:18:02 AohPEIEw
ふーむ、閉じた恋の瞳、古明地こいし
甲斐甲斐しいな


152 : ○○ :2015/07/17(金) 00:01:24 BX8L7Hvc
感想ありがとうございます
>>139の続きです

謎の視線に少し怯えつつ、慧音先生に着いて行く
だが里に近づくにつれてまた新しく、厳しい視線が自分に向けられる
視線はどれも里の住人からのもののようであり明らかにこちらを警戒していた

新参が、若造が、一体ここに何しに来た?

どの視線もそう言っているように聞こえる
こんな状況では、自分と同じようにこの世界に迷い込んできた人も落ち着こうにも落ち着けないだろう。危険だと分かっていても無理して東京に引っ越そうとする人の気持ちがよく分かる
自分が居た世界でもここのように外からの来訪者を受け付けない、といった集落はあった。自分の生まれ故郷も山奥の小さな農村であったため殆どと言っていい程来訪者はなかった。それに嫌気がさして自分から外に近づこうとして村を出て行ったのはよく覚えている
しかし、好きでもない、ましてや全く面識のない人物がいきなり自分の土地に踏み行ったらどうするか?物好きでもない限り先ずは警戒するだろう
来訪者が利益を齎しに来ることは無いとは言い切れないが、ほぼ無いに等しいといっていい。自分へ利益を齎してくれるのなら警戒心は自然と緩む。しかし、ここは外界から切り離された世界であり尚且つ一見して見れば外来人や来訪者の入る隙間など無い様にも見える
ということはこの世界の人間は自然とグループを作ってしまい、その中でやっていこうとする心理が自然と働いてしまっているのだろう
ふと、前を見ると慧音先生が大分前に居り、不思議そうにこちらを待っていた
長いこと考え込んでしまっていた様なので少し早歩きで追いかける
視線はまだ、痛いものであった


「さぁ着いたぞ。何、安心するといいさ。ここは私の友人が経営しているから味は保証できるぞ」
先生に案内されたのは集落の入り口の近くにある店だった
「へぇ、中々立派な作りですね。現代ではあまり見かけませんよ」
「褒め言葉なら主人に言ってやってくれ。きっと喜ぶからな。おぉーい、妹紅!」
先生の呼びかけと共に眼前の扉が開く
出てきたのは先生と同じ様に長い髪を持ち、紅と白の大きめのリボンが目立つ少女であった
「なんだ慧音か、今日は随分と早いんだな」
「済まないな、妹紅。まだ営業時間では無いのに。少し紹介ついでに朝飯を奢らせたい奴がいてな」
「なるほどね。さっきからそこに立ってる奴、かな?」
見た目は少し幼げが残る少女ではあったが、想像とは裏腹の声に話し方で驚いた
「あ、ああそうなんだ。彼は○○。昨日幻想入りした外来人さ」
「は、初めまして。○○ですっ」
「あっはは!そんなにかしこまらなくていいさ」
緊張から勝手に固くなってしまう自分の声を聞き、少女は陽気に笑う
「私は藤原妹紅。妹紅って呼んでくれ。○○」
「よろしく……も、妹紅」
「さて、自己紹介も済んだところで朝飯といこうじゃないか」
「慧音、そういうからには少しは手伝ってくれよ?」
「いいけど妹紅よりかは上手くないぞ?」
「うわぁ……それはなぁ……」
「何だ?何か文句でもあるか?」
「い、いやぁ無いさ!あ、○○も早く入って入って!お茶を出すからさ!」
完全に逃げる出しとして使われた気分であるが、折角のお誘いなので素直に入る
「な、面白い奴だろ?これからもあいつのこと、気にかけてやってくれ」
逃げる様にして店内に駆け込んだ妹紅を尻目に先生が俺に小声で囁く
「妹紅は、何か有ったんですか?」
「ああ、あいつ、今までずっと一人ぼっちでな。何せ、老いることも死ぬこともない蓬莱人で周りの人間は気味悪がって近づこうとはしなかったんだ」
「え、妹紅はいわゆる不老不死なんですか?」
「そうさ、それもかなり前からのな」
驚いた。ただの自分と同じ人間だと思っていたが、まさか不老不死だとは……
「まぁ、なんだ。あいつにもいいところはあるのだからそこは認めてやってほしい。……まぁ、既に下の名前で呼んでいるのだから問題はないかな?」
あっ、と気づく。確かに自分は既に下の名前で呼んでいた
「…そうですね。俺も彼女と、なんとかやっていけそうですね」
「そうか!それはありがたい。是非とも仲良くしてやってくれ。さぁ、早く入ろう。妹紅がお茶を用意してくれてるぞ」
先生の後に続いて店に入る
目に入った厨房では、妹紅が一生懸命駆け回っていた。その光景を微笑ましく見守りながらお茶のある席に着く
お茶は先ほどの視線とは打って変わって温かかった
《続く》


153 : ○○ :2015/07/18(土) 14:52:31 Prasg3UE
>>150
続き

妖怪の奇襲によって怪我をしてから四日、妖怪の回復力と蓬莱人の薬師の薬の力により〇〇の怪我は確実に回復に向かっていた。背中に痛みこそ残るものの、〇〇は身の回りの事は何とか済ませられるようになっていた。
家のまわりを散歩しつつ食糧をさがすのもリハビリには丁度良いだろう、そう考えていた頃に〇〇の家を訪ねてきた者がいた。

「〇〇、いるか?」
「ああ、慧音先生」

慧音は〇〇の様子を見つつ先日の事件について説教をしに来たのであった。
慧音曰く、先日の〇〇の村人に対する態度は許容できない、恩人に対するものではない、だから休養が終わった後に村人に謝罪しろとの事であった。
しかし、それは〇〇には到底受け入れ難いものである。〇〇はこれまでの村人の〇〇に対する迫害への謝罪が最低条件だと考えていたからだ。

「〇〇、それとこれとは話が別だろう。」
「あんたは全く嫌な思いをしてない他人だからそう言えるんだよ!」

話は平行線をたどるだけであり全く進展がない。この時〇〇の家にもう一人の客が来た。

「〇〇、入るよー!」
「ちょっと待て、こいし…」
「〇〇?あっ…」

こいしは部屋に入った瞬間、自分が邪魔者になっていると悟った。

「私、帰るね…」

こいしは家から走り去ってしまった。状況が状況なだけにこいしは何かしらの勘違いをしたかも知れない。引き留めて説明するべきであっただろうか。しかし、〇〇は呆然とその背中を見送ることしかできなかった。その時慧音が声をかけてきて〇〇は我に帰った。

「〇〇、お前いつからあいつと知り合いなんだ?」
「暫く前にこいしがこの家に寄ってきて以来だな」
「そうか。実はな…」

慧音は〇〇にこいしの詳しい事情を教えた。地霊殿に住んでいること、よくこの辺りをうろついていること、こいしの能力のこと、そして閉じた第三の目のこと。〇〇はこいしがかなり強い妖怪であるということしか知らなかっただけに、それらの情報に驚いた。

「お前も気を付けた方がいい。彼女は精神的にも危ういからな」
「ああ、分かった。」

慧音は寺子屋の時間が近いということで帰ることとなり、本題の議論は先送りになった。しかし、〇〇は今は何よりもこいしの素性が気になっている。あのこいしがあんな存在だとは考えていなかったのだ。これからこいしにどのような顔で会えばよいのだろうか、それよりも先にこいしにさっきの状況を説明するべきか…。
〇〇は取り敢えずこいしがもう一度来るのを待つことにした。

一方その頃こいしは人里の外れにある森の中にいた。
(〇〇の家にいたあの人は誰なのかなあ。この前も来てたよね、うーん…)
こいしが〇〇の家に入った時、何か真面目な話をしていた事だけは分かっていたがそれ以上の事はこいしには何も分からなかった。力こそ強大であるが、精神はまだ子供だったのである。

(せっかく料理の練習したからまた行こうかな、でもあの人がまた家にいるといやだなぁ…)
こいしは悶々と悩み続けた。


154 : ○○ :2015/07/22(水) 13:23:40 YA1zODT.
東京のこいしは、まだどうなるか分からないなぁ。誰が病むのか、はたまた全員どうかしちゃうのか

荒くれ○○のこいしは、慧音が危ない?
先生は性格的に親身そうだから、あらぬ嫉妬を被りそうではある


155 : ○○ :2015/07/22(水) 21:17:28 IlPuD3DY
こいしブームか。


156 : ○○ :2015/07/24(金) 02:20:59 G0uPDJFs
こいしちゃんしこしこ!


157 : ○○ :2015/07/24(金) 06:44:57 4m.4gQog
ノブレス・オブリージュに囚われて(76)
ttp://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=39700&n=66
セミがよく鳴きます


158 : ○○ :2015/07/24(金) 07:57:10 FdKdRFis
>>157
投稿乙です
夜中から通して読んでたけどやっぱり面白いですね
セミの声を聞きながら続き待ってます


159 : ○○ :2015/07/24(金) 22:22:36 Te1lOBCY
投稿乙。毎回読んでますよー。


160 : ○○ :2015/07/25(土) 10:18:24 RVkZaXyw
>>153
続き

暗闇の中をさまよい、歩き続ける。
異形な姿の動物の目を避けて歩き続ける。
化け物の追跡をかろうじてかわす。
動物を捉えて生き血を啜る。
周囲を見渡してから川の水を飲む。
やっと普通の人の姿を捉えた。
これで自分は助かる。
家に帰る事ができる。

その望みは巫女の非情な一言で絶たれた。

「理由は分からないけどあなたの体には妖気が宿っている。向こうにはもう戻れない」

「あああああああああっ!」


〇〇は飛び起きた。
あれは定期的に見る悪夢であった。

「はあ…」

自宅での休養が始まってから7日目。〇〇の体はかなり回復していた。朝の軽いリハビリも楽々こなせるようになり、少しずつ激しい運動に体を慣らしてきた〇〇であったが、この悪夢はかなり堪えた。これで朝から気分は最悪である。
だらだらと起床し軽い朝食を食べ薬を飲んだ。いつにも増して無気力である。

そう言えばこいしもあの一件以降は姿を見せていない。こいしはまだ精神的には幼く思えるし、この家に来るのにも飽きたのだろうか。最も来たところで慧音の話を聞いてしまった今、かえって気まずいところもある。

そんな事を考えながら〇〇は二度寝を始めた。


一方こいしは地霊殿で悶々としていた。
〇〇の家に行ってみたい、しかし慧音がいるとちょっと困る。でもせっかく料理の練習もしたんだし…。
こいしは料理の練習だけはずっと続けていたのだった。
(今日こそ〇〇の家に行って、全部聞いてみよう)
こいしは地霊殿を出発した。

こいしが〇〇の家に到着した時、ちょうど〇〇はリハビリを始めようとしていた。そして慧音も来ていなかった。

「あっ、こいし…」
「私ね、〇〇に聞きたい事があるの」

〇〇は動揺した。こいしは何か勘違いをしているのでは?そして自分の返答によっては酷いことになるのでは?

「〇〇、落ち着いてよ」

こいしは〇〇の動揺を見抜いていた。しかし、その発言はより〇〇を動揺させてしまった。

「…何を聞きたいんだ?」
「あの女の人って何者なの?」
「あの女の人?」
「ほら、この前いた何か青い人だよ」
「ああ、慧音先生のことか。あの人は人里の守護者的な人だな」
「なんで〇〇の家にいたの?」
「この前の件の説教だよ。あの人は揉め事も処理してるんだ」
「なんだ、そうだったの」

こいしは至って冷静だった。疑問が解決してほっとしていた。

その一方〇〇は慧音の指摘したこいしの危うさをようやく把握した。こいしの声は妙に冷たく聞こえた。やはりこいつは危険な妖怪なのではないか?

「〇〇、今日こそちゃんと料理作ってあげるよ!練習したんだよ!」
「えっ?ああ、分かった…」

先ほどとはうって変わってこいつは笑顔で明るくなった。
その変わり身の速さも今となっては不気味だった。


161 : ○○ :2015/07/27(月) 19:41:27 KlpqZCSA
>>160
続き

〇〇は完全に理解した。自分がこいしに対して恐れを感じていると。
そしてこいしの強大な妖気とこいしの精神面の危うさが合わさった時、こいしはとてつもなく恐ろしい存在になると。
質問の返答に満足したのか、今はこいしは機嫌が良いようだ。鼻歌を歌いながら料理に取りかかっている。今回は焦げ臭さもない。今は下手に〇〇の感情を露呈しない方が身のためだ。
〇〇はこいしの背中を不安げに見つめていた。


一方その頃、慧音は自宅で考え事をしていた。
今後いかに〇〇と村人の間を取り持つか。このままでは〇〇と村人の開拓地における仕事に悪影響を及ぼしかねない。どうにかしなければ。

「ごめんください」

戸を叩く音がした。
慧音が戸を開けるとそこには開拓地で働く村人たちが揃っていた。

「おや、何のようかな?」
「〇〇の事についてです」
「まあ、上がりなさい」

慧音は先日〇〇の家を一人で尋ねた時の話をした。〇〇は相当村人を憎んでいる。このままでは仕事に支障がでるだろうから早いうちに和解の場を設けたいと。

村人たちはもう既に話し合いを済ませていた。
「慧音先生、今回は我々が譲歩して〇〇に頭を下げようと思います。だから今の条件のままであいつに仕事を続けさせてください。俺たちの安全の為にもこれが良いと思うんです。」
村人の代表格の男はこう提案した。
しかし、慧音は〇〇にも謝罪をさせるのにこだわっていた。
「今回は〇〇にも非がある。今あいつに頭を下げさせないとあいつは駄目になってしまうから…」

その時一人の男が口を挟んだ。
「今更ですけど、なんで先生は〇〇にそんなに構うんですか?確かにあいつみたいな半妖はここでは少数派ですけど…」
それに対する慧音の答えは、村人たちにとって衝撃的なものだった
「実はあいつは元々外来人なんだ」
「えっ…」

慧音は〇〇の過去について語った。
〇〇がある日ボロボロになって発見されたこと。最初は人当たりの良い人物であったこと。ちょっとした事情でそのまま元の世界に送り返そうとしたら結界に阻まれたこと。
そして、帰還が不可能になったあの日から〇〇が歪んでしまったこと。

村人たちには〇〇の性格が歪んでいる理由がよく分かった。
それと同時に自分たちの〇〇に対する態度がどれ程罪深いものかも理解した。
しかし、一つ分からない事もある。
何故彼は妖気を身につけてしまったのか?
元来妖力を持つ人間も少数いる。しかし、それなら結界には阻まれる事はない。となると、〇〇は幻想郷で後天的に妖力を手に入れた事になる。でも〇〇はいったいいつ妖力を手に入れたのだろうか?
それは慧音にもはっきりとは分からなかった。ただ、思い当たる節はある。

発見される前に、〇〇は何らかの形で妖怪に触れたのだろう。

そして、彼は最近古明地こいしという非常に強大な妖怪に触れている。彼の妖気はこいしの強大な妖気に呼応して更に膨れあがるかも知れない。
そうした時に彼は今の彼のままでいられるのだろうか。
慧音の一番の心配はそれだった。


162 : ○○ :2015/07/29(水) 03:55:50 4IDgyeUM
ttp://blog.livedoor.jp/toukouyo/

曲がり者エレジー2

ちょっとゆっくりやっていきます。


163 : ○○ :2015/07/29(水) 10:07:23 riWnYApc
>>162
お疲れ様です。とても読みやすいですね。蛮奇ちゃん、可愛いです!
次の更新ゆっくりと待ってます


164 : ○○ :2015/07/29(水) 23:15:10 9DPOcBIw
>>161
>>162
投稿乙!


165 : ○○ :2015/08/01(土) 14:47:16 98ndrZPw
ノブレス・オブリージュに囚われて(77)
ttp://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=39700&n=67

年々暑さがヤバい事になってる気がする。
それに夏は、PCが変なエラー吐きやすいからヒヤヒヤする

>>158
>>159
ありがとうございます。やっぱり読んでくれる人がいると確信できると、嬉しくて嬉しくて


166 : ○○ :2015/08/01(土) 23:58:48 an6D1h.U
>>162
>>165
乙です
他所に間借りして長編書いてくれる作者さんのことを思うと、ロダが消えたのがつくづく残念
便利だったよなあなんだかんだで


167 : ○○ :2015/08/05(水) 15:30:21 Kg5blttg
ヤンデレ娘に罪悪感は、皆はいる?いらない?
キャラによって、映える方ってのはありそうだけど


168 : ○○ :2015/08/05(水) 18:15:24 Jhiu0/3o
いる派。そっちの方がサイコパスやメンヘラと差別化出来るしなにより欲望と嫌われちゃうって感情の葛藤が見れて切ない恋って感じだから


169 : ○○ :2015/08/05(水) 18:24:09 6ImdUr4k
>>152の続き

少し軽めの朝食を終えて妹紅に礼をし、再び慧音先生と共に東京へと向かう
しかし店を出ても視線は相変わらず重たいものであった
里を通らなければ東京には着かないのでなんとも言えなかった

そんな様子に先生は気づいたらしく、少し苦い顔をして話始める
「やっぱり、里の皆には受け入れ難いのか……○○の様な外来人は」
「そりゃ、最初は警戒しますよ。俺の故郷でだって半分そうでしたもの」
「最初だけならいいんだがな……それが何日も続けば誰しも嫌になるのは当然、か……。彼らが必死で里から離れたがったのも無理はないな」
思い詰める先生の顔がより苦くなる
なんとかしなくてはと思い、今度は自分から話始める
「……俺はここの世界のことは分かりませんが、少なくとも先生だけの責任ではないと思います」
「え?」
「だって仕方がないことなんです。人の考えってものは難しそうに見えて実は単純なんですよ。自分が嫌だと思えばそれは自然と外面に出てしまうんですよ、幾ら抑えたとしても。抑えるのは自分だけが考えを振りまくのは少し幼いから止めよう、って考えが働くんですがそれがもし周りが同じことを考えていたとしたら今度は抑えるのは馬鹿馬鹿しいと思い始めます」
「それは、どうして何だ?」
「集団心理というやつですよ。周りがやっているのを見ると自分も真似しなくてはならないのでは?と思わせる、厄介なものです。これは規模が小さければ小さいほど、尚且つ同じ考えを共有してればしているほど発生しやすいんですよ」
「な、なるほど……」
ここまで話してはっとする
これ以上話すと唯の知識の押し売りみたくなってしまうので切り上げる
「つまり、俺が言いたいのは先生は少し抱え込み過ぎじゃないかなぁって……。いや、詳しく事情を知らない俺が言えた義理ではないんですがね」
苦笑いして先生の顔を伺う。今度は笑っており、先程よりかは少し軽くなった様子である
「…………いや、すまない。今まであまりそんなことは言われたことがなくてな。反応に困ってしまったよ」
どうやら効果あったようだ
「別に無理して反応しなくて大丈夫ですよ。 半分独り言のようなものですし」
「いや、お陰で少し気が楽になったよ。ありがとう」
すっかり笑顔が戻った様子で何よりだ
この後もしばらく雑談を続けた
会話をしていると、あれほど気になっていた視線は頭に残らなくなった


170 : ○○ :2015/08/05(水) 18:24:58 6ImdUr4k
「先生、着きましたよ」
「ああ、みたいだな」
里から数十分、眼前に広がるのは昨晩遠くから眺めた巨大都市であった
「俺はなにをすればいいですか?」
「取り敢えず、根本的な調査は私達がやるとしてだな……。どの辺に札を貼ればいいのかを○○に教えてほしい」
「どの辺に、ですか」
そこでふと思った。どのくらいの範囲で東京が幻想郷に来たのかを
「先生幻想郷の地図とかってありますか?」
「?ああ、あるぞ」
手渡された地図を広げ、眺めながら妖怪の山を探す。自分が初めにいた場所は『妖怪の山』であり、山の麓、人里とは反対側に『品川駅』があった
「先生、東京ってどれ位の範囲でこっちに来たか分かりますか?」
「ええとだな……天狗が空から撮った写真だと、南北は妖怪の山から三途の川までの間、西は丘から人里に向かう道で東は太陽の畑まで伸びていることになるな」
幻想郷の地図と自分が持っていた東京の地図を重ねる。大雑把ではあるが、これで大体の目星は付く。ほぼ同じ縮尺で本当に良かった
「……大体分かりました。大体南北に20キロ、東西に
12キロの範囲。分かりやすい目印ですと南が品川駅、北が赤羽駅、西が東中野駅、東が浅草駅です」
正確に測れば少しずれるだろうが、ともかく大まかなことが分かっただけでもよしとする
「そんなにあっさりと分かるのか?」
あまりに簡素にやっているからか、先生は不思議に思ったようだ
「俺の世界じゃ大体の人はできますよ。こういう専門職だってありますし」
「しかし、なんで駅を起点にしているんだ?」
「俺の故郷で古くから言われてたことなんですけど、妖怪や幽霊って鉄がダメみたいなんですよ。だからそれを上手く使えないかなぁ……と思いまして」
「…………なるほど、大体分かった。無数に広がる鉄道路線にそれぞれ札を貼る、ってことでいいのか?」
先生がニヤリと笑う
「俺の考えとしてはそうですが、先生はどうするつもりでしたか?」
「いや、実を言うと何も考えてなかったんだよ」
先ほどの笑顔で笑いながら先生は言う
「しかし、聞く限りでは○○の意見は中々良さそうだな。それでいってみよう」
「いいんですか?こんなので」
「妖怪や幽霊の弱点として鉄は確かにあっているからな。特にこの辺に多い下級妖怪には効果覿面なのだから反対する理由がないのもあるからな」
元々どうしようもなかった、というのも私の中ではあったしな。と先生は付け加えた

《続く》


171 : ○○ :2015/08/05(水) 20:38:31 cHPuUf7Q
>>167
どっちもオイシイよね。
罪悪感あると、悲哀を帯びてきて愛しさがムクムクしてくるし
罪悪感ないと「あー、もう壊れちゃったんだなぁ……ひゃー、オラわくわくすっぞ」ってなるし。
東方は人間以外が山盛りいるし、むしろ直球できが触れてるって明言されてる子すらいるからね。
価値観の相違はやり易いと思う。
個人的に罪悪感ありで見たいのは妖夢
罪悪感なしで見たいのは小傘とわかさぎ姫


172 : ○○ :2015/08/06(木) 20:59:48 BtuC0WPU
東京のやつ、慧音に暗雲が見えてきたような
幻想郷に落ちてきた旧東京が台風の目なんだろうな


173 : ○○ :2015/08/07(金) 03:24:18 8RjvwePo
短文を一つ。


生きるも死ぬも、心が止まれば大して変わらない。

外界に帰る気も起きず、人里にも愛想が尽きた。
そうして目的もなく竹林に掘っ建て小屋を構えたのは、いつの日だったのか。

いつの間にやら何の希望も絶望も抱かなくなった俺は、いつ適当な妖怪に喰われても良いような腹づもりで日々を転がした。
欲望らしい欲望も、もはや無い。
死ぬまでの暇つぶし程度にしか、ここでの生活を捉えていなかった。

ここで知り合った妹紅と体だけの関係になったのも、やはり暇つぶしでしかなかった。
付け加えるなれば、それはお互いにとっての暇つぶしであったが。


そう、ただの暇つぶしなのだ。
一時の快楽に気をやってしまう間は、少なくとも、互いに余計な事を考えずにいられた。

生きている事を、暇つぶしと捉える余裕すら無くせる時間。
眠って思考をシャットアウトするような事と、俺達の関係は同じだった。

お互い、愛もクソも無い。
抱えた虚無の潰し合いをするには、互いに都合が良かっただけだ。


「不老不死なんて、死んでるのと大差ないよ。」


いつかの情事の後、あいつはそう吐き捨てて。
そして、笑いながら耳元で囁いた。


「だけど、あんたも似たようなものだ。」と。



例えば死んだ後にあの世に行ったとして、そこに話し相手などいるだろうか?

「苦痛ですら慣れるものさ。」と、いつか妹紅は言っていた。

やがて苦しみも、退屈と演技に変わるなんて事もありえるな、と。その時に思った。


今夜もまた、暇つぶしに体を重ねた。
布団で眠る妹紅に後戯もせず、俺は縁側で、呆然とタバコを吹かす。

やがて半箱吸い終えた所で、俺の肩にしなだれかかる腕を感じた。


「死んでるのと大差ないよ。生きてる事なんて。」


なら、どちらを選んでも結果は同じか?


「暇つぶしが、あるかないか。
あるのはどの道退屈なんだよ。それを潰せるか潰せないか。

……あんたも暇でしょう?だったらさ……。

私の暇つぶしの玩具になってよ。永遠に。」


腹を裂く音。
鮮血のにおい。

血の泡を吐きながら。
「酒の肴さ」と、妹紅は嗤ってそれを取り出した。


死ぬも生きるも、もはや俺達には色の失せた事。
ならば、永遠に暇つぶしを繰り返そうか。

退屈に染まったこいつは。
俺と言う暇つぶしの玩具を、手放す気は無いようだから。


それは俺にとっても、同じ事。


……ああ、まずい肝だことで。
酒の飲み過ぎじゃねえか?


「煩いな。」


その時見た妹紅の目は。
随分と、ご満悦なようだった。


174 : ○○ :2015/08/07(金) 14:06:02 Jm1JQwAk
これ拒否っても口にねじ込んでくるだろうなぁ
最近てるもこの死闘が、蓬莱人にとっちゃ数少ない救いなんだと理解できた


175 : ○○ :2015/08/07(金) 22:54:41 eINyCeZo
蓬莱の薬の効果を消去する方法がそのうち発見される可能性はないとは言い切れないよね
妹紅みたいに蓬莱の薬の効果が本物だと信じるに足りる経験をした人物はその時どうなるか気になる


176 : ○○ :2015/08/09(日) 17:42:44 RGhG9dy6
夏だというのにリグルの話がないのはおかしいのでリグル!

例えばリグルとナイトのバグをみたら

キレイだね、そう言って○○は隣に座る少女の片を抱いた。
うん、と頷くと、彼女ーーリグル・ナイトバグは無防備に○○の肩へとその身を預けた。
二人が今いるのは小川のほとり。
そこにごろんと転がる丸岩に腰掛けて、夏の風物詩を堪能していた。
二人の視線の先には踊る小さな光……それが瞬きながらいくつも乱舞し、音の無い舞踏会を催していた。
小さな光は、そのまま小さな命。
その煌めく姿に○○の視線は吸い寄せられていた。

「良かったねお前達、キレイだってさ」

そう言ったリグルの言葉こそ、蛍達には何よりの褒美であったろう。
○○が自然とそう思う程に、彼女の声には慈愛が溢れていた。
そうだった。彼女こそはこの幻想郷で唯一の虫の王女。小さきもの達を統べる女帝だった。
○○はすっかりと忘れていた事実を思い出した。
普段のリグルは甘えん坊で、可愛がられるのが好きで、ちょっとだけ泣き虫な可愛い恋人であったから。
少しだけ勘が良いところはあるけど、概ねリグルはか弱く、男の保護欲をそそる女の子である。
それは閨のときでも変わりなく、むしろより一層そうした面が強くなる。そんな可愛いひとだと、○○は思っていたから

「おとうさんが誉めてくれて、ほんとによかったね」

………………なん、だと? と
その言葉は全く慮外のことだった。

「ふふ、ねえ、○○……」

言葉の意味を受け止められない○○に、リグルは甘い声で頬を擦り寄せた。
いつもそうしているように。
なついた猫のように頬を○○の甚平に擦り付け、時折ふふっと堪らないとばかりに微笑む。
いつも聞く、幸せが吐息となって溢れたような声であった。

(おとうさん、というのはどういう意味なのだ?)

と、聞いて良いのだろうか……
○○は滑る、不快な汗を流していた。
虫の、父、ということ。
己の血を分けたものが、虫だということ。
足は六本、瞼はなく、唇もなく、皮膚は硬質で、つまり人ではない。虫だ。
○○は不快に思っている自分を自覚した。
しかし、更にその一歩先には更におぞましい可能性が控えていた。

(もし、もしこの虫達に、蛍に、人のなにがしかがついてしまっていたなら……っ)

それらの人でなく、虫でなく、○○が知る妖怪というカテゴリーにもはまらない。
○○は目を閉じた。
見たくなかった。
確かめたくなかった。

「大丈夫だよ、○○」

リグルの声は、甘えたそれではなかった。
しかし、慈愛に溢れ、許すものの声だった。
それはまるで、誰しもが最初に触れる女性……大雑把な言葉でいうと、ーーのような。

「この子達を怖がらないであげて……」

瞼をきつく閉じた○○は、胸板に預けられた重さ、そして無意識に撫でていた髪の手触りを慎重に吟味した。
それは、変わらずなめらかで、しっとりとして、さらさらで……いつものリグル・ナイトバグのものだった。

「うん、大丈夫大丈夫。ははは、あははは」

「あ、ああ……ああ」

最早○○には「何が?」と問うことなど出来なかった。
大丈夫っていってんだから大丈夫なんだ。と盲信する他心の落ち着けようが無かった。
救いなのは、まだ、リグル自信のことは愛していたこと。
それだけはまだ温度を失ってなかったこと。

「ね、蛍が一番輝くのは、求愛しているときなんだ。
だから私も、○○と居られるときが一番輝ける。一番幸せ……」

「リグル……」

「だから、○○といられれば、何月だって私には夏の夜だよ」

「……」

「あんまり頭よくないから、難しいこととかは どうでもいいけど 」

「でも、○○が好きだって、この気持ちだけで、私は生きていられるの。
○○のこと、大好き……きっといつまでも」

夏の夜の中。
彼女と彼がどんな姿に見えるのか分からない。
ただ、○○は一つ、諦めることに決めた。
そうすればきっと、昨日までの安寧は続いていくのだろうから。
幻想郷の夏、そのむしあつさはまだまだ陰る兆しもない。


177 : ○○ :2015/08/09(日) 18:51:31 qCbSNmuE
>>176
これをヤンデレとは思わず、甘甘だと感じた時点で
大分感覚がいっちゃった気がする。

投稿お疲れさまです。


178 : ○○ :2015/08/10(月) 09:33:53 Dd9TIPWE
読んでくれてありがとう。
リグルにとって、一番大事なことは○○に愛されること。
虫の知らせサービスなどで人と関わる機会を得ていた彼女には、人間が虫をみてどう思うかも知っている。
彼女の心の闇は深いかもしれませんし、深くないかもしれません。


179 : ○○ :2015/08/10(月) 15:24:19 vuVNyL5g
>>161
続き

慧音は確信していた。
半妖と化し絶望に浸っている〇〇を放っておいたらその内に本当の妖怪になってしまう。だから人里に置いて監視しつつ保護する必要があると。
だから慧音は今まで〇〇を人里に置く事に拘ってきたのだ。

しかし、最近は古明地こいしが〇〇の近くにいる。
ひょっとしたら彼はまた妖怪に近い存在になるかも知れない…

慧音は村人たちと相談し、〇〇の休養期間の最終日に〇〇の家を訪ねる事にした。


一方その頃〇〇の家ではこいしが料理を完成させていた。
見た目はやや崩れているが、中々の物が完成した。焦げ臭さもない。
「やった!かんせーい!」
「おお、出来たのか」
「ほら、食べて食べて!」
「じゃあ、いただきます」

味も中々のものだった。料理の一つ一つにこいしの努力が感じられる。〇〇は久方ぶりの旨い食事を堪能した。怪我をして以降、基本的に食事は簡単なもので済ませていたのだった。

「ふう、ごちそうさま」
「お粗末さまでした。どうだった?」
「うん、前よりずっと美味しかったぞ」
「そうでしょ!家で練習頑張ったんだよ、えへへ…」

こいしははにかんだような笑顔を浮かべた。それは桜の花のように可憐で安らかなものであった。

「ところで〇〇は最近何してるの?」
「最近はずっとリハビリするか寝てるかだな」
「え、外には行かないの?」
「行っても何も面白いものはないしな。畑にも今は急ぎの用は無い」
「ふーん」
「まあ、この体ももうすぐ治るしな。そうすれば畑の警備で忙しく…」
「だめだよ、そんなの」

こいしは唐突に〇〇の発言を遮った。

「あんな仕事したらまた怪我しちゃうよ。今回は助かったけど次はもっと酷い怪我になるかもしれないんだから。だからそんな仕事しちゃだめだよ」

こいしの声は暗く冷たかった。


180 : ○○ :2015/08/12(水) 07:33:49 s33D52mY
こいしちゃんの絡むお話しって、なにかほの暗さを感じ取ってしまう

たしか設定上は、フランより危ない娘なんだよな


181 : ○○ :2015/08/14(金) 23:28:06 QliAYIb6
ああああああああああああああ!!!!!!
死ね純狐おおおおおおおおおおおおお!!!!!
ノーマルの癖にルナみたいな弾幕張ってんじゃねぇよおおおおおおぁぁぁぁぁぁぁぁ!


182 : ○○ :2015/08/15(土) 01:06:09 bGRQ9mjQ
しね!と聞くと某東方ローグライクゲームの実況で
しね、しねと言いながらアリスに殴りかかったというZUN氏の事をふと思い出してしまうわ


183 : ○○ :2015/08/15(土) 14:44:05 u83JOntI
新作お楽しみなのは分かったからここなんのための場時か考えて欲しい
せめて委託始まってから頼む


184 : ○○ :2015/08/15(土) 17:37:07 8VHd59UU
>>170の続きです

暫くすると先生を呼ぶ声が聞こえた
しかし、振り向いても声の主は分からなかった
「先生、いま誰か先生を呼んでませんでしたか?」
すると先生はようやくとでも言いたいような顔をした
「ああ。もう来てくれたみたいだな」
再び声がした。今度は上からだ
上を向くと大きく羽を広げた人がこちらに向かっていた
「上白沢さんおはようございます!清く正しい射命丸です!」
「て、天狗!?」
「驚かなくていいぞ。彼女は味方だ」
先生の前に天狗、もとい射命丸は降り立った
「この度は調査のご同行のお誘いありがとうございます!」
「とんでもない。こちらこそありがとう」
満面の笑顔を浮かべる天狗の少女がこちらを見た
「ところで、こちらの男性は?」
「ああ○○だ。昨日幻想入りしたばかりの外来人さ」
「ほぉ、外来人ですかぁ。詳しい話が聞けそうですな……」
笑顔が少し怪しくなる。一見すれば唯の変質者である
「ちょうど新しい記事が書きたかったところでしたし、後で取材させて頂けませんか?ついでに新聞の契約も」
最後の方の語尾が強くなるのは分かった。若干引きながらも首を縦に振る。彼女はその様子を見ると先ほどよりも輝かしい満面の笑顔を浮かべ、自分の手を振った
「いやーありがとうございます!取材に加えて私の新聞の契約まですんなりと引き受けてくださるなんて感謝しきれませんよ!!」
「その辺にしておいてやってくれ。○○も少し驚いてしまってるからな」
彼女のコロコロと変わる態度に動揺している自分を見かねて先生が助け船を出してくれた
すると射命丸は「あ、すいません」と言い苦笑いしながら手を離した
「どうもすみません。なんせまともな外来人なんて我々としては久しぶりでしたから」
まとも、という言葉に引っかかるが悪い様は見受けられない
「射命丸殿には札張りの手伝いをしてもらおうと思ってな。無理言って来てもらったのだよ」
先生の言葉に射命丸は「いえいえ」と返す
「紅魔館への取材が出来なくなってネタに困ってた所でしたから、寧ろこちらが感謝したいくらいですよ」
けらけらと笑う彼女は本当に興味本位で来たようだった


185 : ○○ :2015/08/15(土) 17:37:38 8VHd59UU

夕暮れ時
二日近く、下手したらそれ以上かかると言われた東京調査も一日で終わった
かくいうのも射命丸だけでなく後に手伝い(というのは名目で殆ど勝手に)として諜報部の天狗達が来たからであった
我先にと紙と筆を片手に飛び回る天狗達のお陰で東京のほぼ全域を纏めることが出来た
更に後押ししたのは東京各地に散らばる店の中にある地図であったりもしたのであった
札に関しても、幻想郷最速を誇る射命丸に掛れば文字通り一瞬にして終わってしまった
詰まる所自分と先生のやることはほぼないに等しかった
「我々諜報部には上から此処の調査はするなって、通達が来てましたからね」
帰り際、先生と並んで里に戻る自分に射命丸は話す
「それを聞いて皆んな不満だらけでしたよ。絶好のネタがあるのに記事に出来ない、って。」
「八雲殿によればあんなのが幻想入りするなんて思ってもみなかった、とのことだ。流石の賢者でも少し驚いたそうで、自ら先見調査するとのことで大天狗に諜報部へ釘を刺すよう命じたらしい」
先生が淡々と付け加えるように言った。少し不思議に思いながらもそれだけで射命丸は十分理解したようだ
やがて里の入り口が近づく
「今回はありがとうございました。お陰でいい記事が書けそうです」
「ああ、気をつけて帰ってくれ。新聞楽しみにしているからな」
「はい!……それと、○○さん。取材の件、忘れないでくださいね!」
それだけ言うと射命丸は羽を広げ瞬く間に飛び去っていった。衝撃波に耐えながらも彼女を目で追うとその姿は見えなかった
「さて、我々も帰ろう。今日は本当にありがとう」
お礼を言う先生は夕陽独特の黄金色が重なり、美しく見えた


「先生はどうして自分のことを気にかけてくれたんですか?」
その夜
慧音先生に誘われ妹紅の店に訪れた
妹紅の本業は焼き鳥屋らしく酒と焼き鳥目当ての客もちらほらいた
そうなると当然此方も周りに連れて酒を飲むことになり(半分は妹紅の勧めだが)その肴として自分の話をしていたのであった
そこでふと疑問に思ったことを思い切ってぶつけたのだった
すると先生は暫く俯き細々と話し始めた
「なんとなく、だがな。○○が昔里に居た男に似ていたからだな」
淡々と始まる話に合わせて先生の顔が少し暗くなる
「そいつは外来人でな、なんと言うか周りと打ち解けやすかったというのが印象的だ。それに私とよく話があって○○見たくこうして呑んでいたのも覚えてる」
「その人はもう里には居ないんですか?」
先生は頷く
「ある日突然血相を変えて私の所に来てな。落ち着いた後に話を聞いたら『誰かが此処の所ずっと自分を監視している』って話したんだ。それからはあっという間だったよ。気づけばあいつは里からいなくなって元の世界に帰ったみたいだった。私は寂しかったなぁ、話相手がいなくなって」
妹紅が『私は?』という顔で此方を見ているが、先生は気にせず話す
「けどその人、多分先生のことは忘れてないと思いますよ。外じゃ先生みたいに手厚く保護してくれる人中々いませんもの」
俺も忘れるつもりはありませんからね、と付け加える。すると先生は少し笑った
「そっくりだなあいつに、そういう所」
どうやら喜んでもらえたようだ
「へー、慧音もそんな風に笑うんだね」
妹紅が茶々を入れる
「なんだと?こう見えても私は立派な人間だぞ?」
「半人半獣がなに言ってんのさ。……けど慧音が笑ってくれて良かった。此処の所ずっと落ち込んでたみたいだったからさ。ね、○○」
妹紅が言う所までは詳しくは知らないが確かに暗い部分はあったので妹紅に同意する形で頷く
すると先生は少し涙を流した
「……そう、か。ははっ、私は本当に良い友人を持ったもの、だ……」
そしてそのまま崩れるようにしては先生は眠ってしまった
その様子を見て妹紅はまたかという表情になる
「ちょっと待ってて、毛布取ってくるから。後で家に送りに行かなくちゃ」
そういうと妹紅は店の奥に消えた
自分はそのままグラスに残った酒を飲み、先生の顔を見る
すやすやと眠るその表情はどこか幼さが混じっていた


186 : ○○ :2015/08/15(土) 17:38:44 8VHd59UU


妹紅が先生を送るのに付き添った後
酒に酔いながらもなんとか帰宅した
が、きっちりと閉めた筈の扉が開いていた
恐る恐る入ると漁られた形跡はなく、人の気配は感じられなかった。筈であった
「お帰りなさい、遅かったね」
目の前に居る少女。自分を此処に連れて来た犯人であるこいしであった。そこで違和感を感じた
明らかに雰囲気が違うのであった。昨晩自分の布団に入っていた時よりも。重苦しく、嫌なオーラをまとっていた
「ねぇ、君にとって私はなに?」
不意を突いた質問であった
「幾ら何でも酷くない?普通は招待者のとこで過ごすよね?けど私はこんな家用意した覚えはないよ?あんな人たち紹介した覚えはないよ?ねえねえどうしてかなぁ?」
今すぐにでも逃げ出したかった、此処から
気づかれぬように扉に手を掛ける。だが先ほどとは違い扉は開かない
「ねえなんで逃げようとするの?」
手を握られた。振り向くと前にいた筈の彼女が後ろにいた
「分かるよ、逃げ出したくなるの。すっごく。でもね失礼じゃない?そんなの」
「勝手にいなくなっちゃうのはそっちだろう?」
空気に押しつぶされぬよう声をなんとか出し、自我を保つ
「ふらっと現れてふらっと消えてるのはそっちだろう?俺は少なくともそんなことはしてないぞ」
絞り出すようにして出した声を聞き、彼女はふぅんと言って手を離した
「それって無意識のことを言ってるの?」
意味が分からなかった
それでも彼女は言葉を続ける
「無意識ならそっちもだよね?だって心の中で私の名前を自然と呼んだもん。私知ってるよ?だって聞こえてるもん。私は私の名前を教えてないのにそっちは無意識に呼んだ。ほらおあいこだね」
暴論だ。だが何か引っかかる
確かに自分は彼女の名前を知らない。……筈なのに『こいし』と呼んだ。しかも何度も
それに何故彼女はこのことを知っているのだろうか
そして自分はどこで彼女の名前を知ったのだろうか
「だから、私も勘弁してあげる。お兄ちゃんはしかたがなかったもんね」
だけどこれだけだよ、とこいしは其処だけ低く言った
それも無意識であって欲しかった。でなければ身が持たなくなってしまう
「まぁそれは置いといて、ほらほら上がって上がって。今日も一緒に寝よ!」
先ほどとは違い昨晩のように明るい声で自分を寝室に連れて行く。その表情は宛ら普通の少女であった


187 : ○○ :2015/08/15(土) 19:47:46 6WjWJhGY
東京のこいしキタな
家に帰ったら怒った女がそのオーラが見えそうになるくらい不機嫌で待ってるって超怖い
それも、上位者として自覚がある相手とか……震えてきやがったコワイです。


188 : ○○ :2015/08/19(水) 00:42:11 .6k5pBt6
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え?私は自力で夫を転生できる?
それならこれだ!
「命縛りの秘薬」
もしあの人が自分を置いて先に逝ってしまったら?
もし自分が先に逝ってしまったら、あの人はどうするのだろうか?
まさか新しい女に目が行ってしまうのでは?

そんなもしもの未来の不安を解消させる秘薬がこちら。
愛する相手の寿命を、貴方の命と同期させる効果があります。
わかりやすく言うと、貴方の寿命が尽きるまで愛する人は死ぬ事が無くなり、
貴方の寿命が尽きる時、全く同時に相手の逝けるようになります。
※注意※こちらの秘薬に限り、四季映姫様との面談で正式な夫婦であると白黒はっきり
判定してからの許可販売制となっております。


ん?私の種族は一応人間なんだけど?そんな方にはこちら!
「延命の秘薬」
「若作りの秘薬」
前者は人間のまま寿命を更に伸ばす効果があります。
後者は寿命が尽きるそのギリギリまで、その命を若く保つ効果がございます。
最後の一瞬まで、常に激しい夜を迎えたい貴方にぴったり!


その他にも、
オーダーメイドでその御夫婦専用一点物の秘薬の製造も承っております。

少しでも興味が沸いた方は、お気軽に永遠亭の「裏口」へ。
合言葉は「妙薬が欲しい」
皆さまのご来店を心よりお待ちしております。

-了-

ヤンデレばかりの幻想郷で永遠亭の需要を考えたらこんなんが出来たw


189 : ○○ :2015/08/19(水) 00:45:58 .6k5pBt6
なお、だったら手っ取り早く「蓬莱の薬」売ってよと言ってくるお客さんも多い模様


190 : ○○ :2015/08/21(金) 19:12:36 kV6YcoLc
駄文を少々

いつもと変わらない、筈の事故であった
轢いてしまったのは一匹の猫。柵の隙間から入り込んでしまったようだ

勿論自分も気をつけていた。制限速度は守っていたし信号もちゃんと見ていた
轢いてしまう直前には警笛を鳴らして警戒した

なのに、なのに、起こしてしまった

指令に連絡し引いてしまった猫を確認しに行く。だが猫の姿はなかった
念のため床下を見るがなんら問題はない

おかしい。自分は確かに一匹の猫を轢いた筈なのに、その跡が見当たらない

これ以上は無駄と考え運転に戻った



猫などの動物を轢いてしまうことはよくある
だから今回も後処理をして直ぐに忘れるつもりでいた
しかし、どうやっても忘れられず頭にこびりついていた
あの猫が、轢く直前のあの表情がどうしても忘れられないでいた

まるで、自ら轢かれるのを待っていたかのような表情が

その後乗務を足早に交代し早退した
酒に溺れてでもあの表情を忘れたかったからだ


191 : ○○ :2015/08/21(金) 19:13:09 kV6YcoLc
結局、酒でも忘れることができずただ気分をより悪くしただけだった

吐き気をぐっと堪え、家に入る
敷きっぱなしの布団にそのまま倒れた
まだ頭にこびりつく
あの猫が、あの表情が

あの目が



暫く猫にうなされながら眠っていると音がした
布団の上の窓からだ
どうせ鳥か何かだと思い、頭を上げると

猫がいた。あの時轢いた猫がいた

「あ、ああああ……!!」
声にならなかった
自分が轢いた猫が、今まさにあの表情でこちらを見ていたのだ
逃げたしたくなり、後ずさる
すると誰かに後ろから抱きしめられた
「ようやく、貴方に認められたね」
声から察するに少女だ
どこから入ってきたのかは考えている暇はない
「ねぇこの傷は、貴方がつけたんだよね?ということは私と一緒にいてくれるんだよね?」
恐る恐る振り返る
少女の腹には大きく、赤い傷があった
傷はよく見ると電車の車輪の形をしていた
「俺は……知らないぞ、そんなの!第一、誰なんだ君は……!!」
「誰かだって?酷いなぁ今日会ったじゃない」
クスクスと笑う彼女
「ま、まさか」
「その通り、そのまさか」
少女の目つきはあの時の猫のように鋭く澱んでーー

「猫はね、気に入った雄には自分を殺してもらうの。霊や妖怪になって雄にまとわりつく為にね」
「これからずっーーーと、一緒だよ貴方」
少女の舌が自分の頬を舐める
窓から視線がなくなったと思うと、猫は既にいなくなっていた


192 : ○○ :2015/08/21(金) 19:13:49 kV6YcoLc
翌朝か、翌日か

自分は猫を轢き猫に魅入られた
そういう認識で間違いないのだろう
何より布団の隣で眠る彼女がそう物語っている

しかしここは自分の家ではなかった
何処かの立派な屋敷のようで、昔にタイムスリップしたかのような場所であった
少女を起こさぬようそっと布団を抜け出し、部屋を出た

部屋の外はほぼ真っ暗であった
空に点々と輝く星と蛍が辛うじて灯となっていた
廊下を歩き、他の部屋を確認していく
何処も同じ作りで迷っているのかと錯覚してしまう
暫く歩き続けると目の前に少女がいた
自分の横で寝ていたのとは違うが、彼女と同じく、

猫、猫であった

「う、うああああ……ああああ」
視界が歪む、足がふらつく、手が震えだす
まただ、またあの表情だ
鋭く澱み、こちらを逃がさないと睨むあの表情
少女が近づく
今のままではまともに逃げることはできず呆気なく捕まる
彼女もまた、抱きしめてきた
「おにーさん、本当に轢いちゃったのは私だよね」
訳がわからない
「おにーさんが轢いた猫は私だよ。あの娘じゃなくて私。だから私が一緒にいなくちゃいけないんだよ」
彼女もまた化けて出てきたということだろうか
しかし、自分が轢いてしまった覚えがあるのは一匹で二匹ではない
すると後ろから足音が聞こえた
「何やってるの……貴方?」
布団の少女だ
「何って『おにーさんは私のものだよ』
自分が答えるより先に彼女が答えた
「おにーさんは私を轢いたって認めたからね。私が一緒にいることになったのさ」
「何言ってるのよ。轢かれたのは私よ。だから私がずっと一緒なのよ」
すると少女は後ろに抱きついた
前後に抱きつかれ、倒れたくても倒れられない
彼女達が何か言い争っている
逃げ出そうにも彼女達の力は強く、逃げ出せない

「ねぇ」「おにーさんは」
「「どっちを選ぶの?」」
更に締め付けられ益々逃げ出せない
終いには先程よりも澱んだ目で見てきた


193 : ○○ :2015/08/21(金) 19:14:29 kV6YcoLc
重い沈黙が続く
目線を逸らそうとも逸らすことができない

「……俺は、轢いてない」
沈黙に耐え切れず声を溢す
最早責任転嫁であったがそんなことはどうでもいい
「俺は轢いていない。確かに猫は轢いてしまったが君たちのような少女を俺は轢いてない!」

ーだから帰してくれ、と続けようとした口が塞がれる
口付けされていた

「ぷはぁ、いきなりそんなこと言うのは卑怯じゃないかいおにーさん」
「そうよ貴方。轢いた猫は私達だってどうして分かってくれないの?」
「そ、そんなこといったって……」
言い訳しか出てこない自分の口を尻目に彼女達は顔を合わせる

「どうやら、おにーさんには少し"お勉強"してもらわないといけないね」
「そうみたいね。まだちゃんと私達のことを理解できていないみたいだしね」
「じゃ、お勉強が終わってから」
「どっちを選ぶのかを聞こうか」
それまでは休戦ね、という声とともに自分は引きずられていく

声はもう出なかった
ただ無気力に顔を上げると今度は違う、それでもあの怪しい光の目つきで二人は自分を見ていた

ー殺さないし、殺させない。私を選ぶまで
そう言ってるかのように思えた

〈了〉
橙とお燐の言動がおかしいですが、ここが限界なので許してください


194 : ○○ :2015/08/21(金) 20:26:20 J.btTEzE
北海道だと、電車と野性動物との衝突が多いらしいね
だが、当たりに来るのはトラウマだな、間違いなく

橙とお燐、そしてこの男
どういう因果があったのか妄想が享ね


195 : ○○ :2015/08/22(土) 00:04:47 rDylaoYI
駄文ですがどうぞ。

 部屋の外から入る光と鳥の鳴き声で、俺は目が覚めた。
体をゆっくり起こしてから、寝起きの目を擦りながら外を見ると、外で雀がじゃれ合っている
そんな光景を見ていると、隣の部屋から声が聞こえる
「○○〜?いつまで寝てるの〜。ごはんできたわよ〜」…少しやる気のない声とはいえ、呼ばれたので一応行く

隣の部屋に行くと、焼き魚や味噌汁といったものを、この家の主の博麗 霊夢が食べていた
「霊夢、ごはんできたとか言って呼んでたくせに何一人で先に食ってんだよ…」
霊夢は少しだるそうに
「だってお腹空いてたんだから、しょうがないじゃない」
とか言いやがった。俺の分にまで手を出してるし
「おいおい、普通来る時まで待っているんじゃないのか?後、俺の白飯を取るな」
ったく、ただでさえ腹減ってんのに。飯の量減らしてんじゃねえ
「こーゆーのは早い者勝ちよ」
飯食うのに早いも遅いもないだろ・・・あの冥界の大食漢もいないのに。
「まあいい、飯を食おう」
そういって、俺も飯に手を付けていく
「まったく、○○のせいで朝ごはんの時間が長くなったじゃない。味噌汁冷めかけてるし」
誰のせいだ、誰の
「うるさい。いいから食うぞ」
半ばヤケクソ気味に言い、飯を食べていく


「「ごちそうさま」」
あぁ〜、うまかった。特に味噌汁が良かった
「なぁ、霊夢?」
「ん?何?」
俺は何時もと変わらない態度できいた。 
「里に出かk「駄目」・・・まだ最後まで言ってないんだが」
霊夢は無表情に、重い声で聞き返す
「じゃあ、○○はどうして里に行きたいの?」
「そりゃあ、甘味を食いたいし、里の様子を知りたいかr「嘘!」霊夢?」
説明しているときに、霊夢は突然、声を荒げて俺の事を責め立てて来た
「そんな事言って!○○は私に飽きたからって、私を捨てて、他の女の所に行く気なんでしょ!?」
「そんなことはないぞ?」
俺はとりあえず、なだめようとした
「嘘よ!この前宴会で、慧音にお酌し合ってたり、
魔理沙や咲夜にプレゼントおくってたでしょ!?
橙やチルノとかと遊んでたときなんか、ニヤニヤしてたじゃない!!」
「お前なぁ・・・」
「お願い!捨てないで!私を一人にしないで・・・」
俺は、色々言いたいことがあったが、その言葉を聞いた時、言えなくなった
(今仮に『そりゃあ、お酌されたのに何もなしは駄目だろう?
それに魔理沙や咲夜に渡したのは、毎回、神社に来たときにくれたお土産のお礼だし、
そもそも子供(の姿の奴)と遊ぶときにずっと真顔の男とか、絵的にアウトだし、怖いわ!』
なんて言ったとしてもこの様子じゃ聞かないだろうし、どうすれば・・・そうだ!)

「なあ、霊夢」
「何よ・・って」
俺は、荒ぶってた霊夢を、思いっきり抱きしめた
「な、何?こんなので許すとでも思うの?」
口では平然としているが、顔が少し赤くなって、照れているのが分かる
「別に、許してほしいからとかじゃない。ただ、霊夢に俺のことを信用してほしいんだよ
霊夢が俺をしてくれてるように、俺は霊夢を愛している。」
ああ、何か凄い恥ずかしい。きっと俺の顔は真っ赤になっているだろうな
「・・・よくそんな恥ずかしいこと言えたわね。聞いてる方も恥ずかしかったわよ?」
言うな、後悔してるんだから
「いいわよ?里に行っても。だけど、約束して」
・・・女性と話したら死んでとかじゃないよな?
「里では、ずっと私と手を組んでること。
私と話してるときに他の女を見ないこと。いい?」
「・・・もういい、好きにしてくれ」
俺は渋々ながらも了承すると、霊夢が上機嫌になって腕を組んできた。
「ふふふ、じゃあ行きましょうか」 「ああ」

「ああ後、万が一約束を破ったら
ゼッタイユルサナイワヨ?」

(・・・これは、買い物するだけで一苦労しそうだな)
そんなことを思いながら、俺たちは里に出かけに行った。


病み成分薄めの上、長文&面汚しですまん。


196 : ○○ :2015/08/22(土) 16:13:52 s5Eu2VKg
霊夢さんて独り身の印象が強いから仲がある程度良くなると相手に段々依存していく、って感じの話が多いですね
一部分だけの話でも妄想が捗ります


197 : ○○ :2015/08/22(土) 21:31:40 XZJINNMs
猫の話もレイムの話もスッキリまとまっててスゴくいいな!
あとでまた感想かきにくるよ。グッジョブ!


198 : ○○ :2015/08/23(日) 14:28:18 GSdQbRyM
スレタイSS。テーマは「つかまえた」


誰かに尾行されている。俺がそのことに気付いたのは偶然だった。
あれは妖怪の出ない昼間のうちに竹林を散歩している時のことだ。
背後から物音が聞こえたので振り向くと確かに何者かがいたのだ。
単なる偶然かもしれないが、そいつは俺が目をやると同時に逃げてしまった。
まだこれだけなら驚いて逃げた、とも説明できる。
だがその何者かは幾度も俺のあとをつけ、時には家の近くにまでついて来ることさえあった。
ただの人間ならまだしも、もし妖怪の類であれば俺は今後迂闊に外を出歩くのを控えなければならない。それか手出しをされる前にこちらから先手を打つ。
悩んだ末に、俺は後者を選択した。

「……というわけで、怪しい奴が後をつけていないか探ってほしいんだ」
「本当に尾行されていたの?」
「ああ。この目で見たから間違いない」
目には目を。妖怪には妖怪を、と考えた俺は妖怪の中で比較的交流のある今泉影狼に怪しい輩がいないかを探ってもらうべく、彼女の住まいまで足を運んでいた。
「別に構わないけど、お礼は弾んでよね」
「恩にきるよ」
快く引き受けてくれた影狼に頭を下げる。すると影狼はある条件を付け加えた。
「今日からここに泊まること。その方が私も動きやすいから」
その言葉に少なからず動揺する。
影狼とは仲は良いが、そこまでの間柄ではないからだ。
力の差は言うまでもない。それでも男の俺を家に泊めることに抵抗はないのだろうか。
そのことを問うと影狼は笑いながら「両手両足を使わなくても返り討ちにできる」と答えた。

そしてそれから一週間が経ち、やがて一ヶ月、数ヶ月と時が過ぎていった。
結論からいうと追跡者はあれ以降姿を見せることはなかった。
自分を探る存在に気付いたのか、あるいは本当に俺の見間違いだったのか。
影狼は念のためと俺を留め続けたが、今後あの追跡者が俺の前に現れる可能性は低いだろう。
何せ、この数ヶ月間で何の痕跡も見つけることはできなかったのだから。

影狼とは随分親しくなった。
同じ家で過ごしているだけあって毎日顔を合わし、共に食事をとり、会話を弾ませた。竹林の中を何度も二人で散歩した。
妖怪であろうと外見は美しい少女であり甲斐甲斐しく俺の世話まで焼いてくれるのだから好意を抱くのに時間はかからなかった。
またそれは彼女も同じだった。
好きだと告げた時に涙を浮かべながら頷き微笑んだ彼女の顔を、俺はずっと忘れないだろう。
「何をニヤニヤしてるのよ」
回想に耽っているのを訝しんだ影狼にジト目で睨まれる。
告白した時の影狼が可愛かったことを告げると、頬を染めながら「バカね」とそっぽを向いてしまった。
彼女の何もかもが愛おしい。たまらずその長い髪に指を通すと影狼は安心したように額を俺の胸に預けた。
しばらくそうしていると、不意に影狼は顔を上げてこう言った。
「○○にいいこと教えてあげるね」
そして満面の笑みでこう告げたのだ。
「狼は狙った獲物を絶対に逃がさない」


199 : ○○ :2015/08/24(月) 14:28:19 tjqD07II
つけてたのが影狼だと気付いても、別に良いやとしか思えない


200 : ○○ :2015/08/24(月) 23:30:46 vDmkdIJE
妹紅かと思ったら影狼だったでゴザル。

でもまぁ、ずっとつけられるのが怖くて逃げた先がつけて来ていた本人だったって言うのは怖いよなー。
心のそこから愛していた人をそれからも愛すかどうかは人しだいだろうけどね。


201 : ○○ :2015/08/27(木) 21:58:41 PuthLPbw
業深い愛と言うか
嫌われる通り越して憎まれてすらいるけど、あの人の視界には私がいっぱい!!
とか、紫様はそんなこと言い出しそう


202 : ○○ :2015/08/28(金) 18:04:29 fbpdsyNo
>>179
続き

〇〇はこいしの強大な威圧感と妖気に圧倒された。
ここで機嫌を損ねられたら、何が起きるか分からない。しかし何とかしてこいしを説き伏せなければならない。

「そうは言っても、これが仕事なんだから仕方ないだろ。ここで生きるためには金がいる。金は仕事をしなければ入ってこない。俺には人間に無い力があるから俺はこの仕事をするんだ」

〇〇は思い付く中で最善の言葉を選び抜き、説得を試みた。
それだけに、それに対するこいしの返事は予想外だった。

「じゃあ、地霊殿に来てよ。地霊殿ならそんな事しなくていいんだから」
「…えっ?」
「お姉ちゃんにお願いすればどうにかなるよ、きっと!」

こいしはうまい打開策を見つけたとばかりに嬉々としていた。一方〇〇はまさかの提案に戸惑った。
本当に他の住民を説得して地霊殿で暮らせるならば、これは〇〇にとっても悪い話ではない。慧音に聞いて知っているが、どうせ地霊殿には妖怪しか居ないのだ、人里よりも居心地は良いかも知れない。
しかし、今の自分の仕事は誰がやるのだろうか?また半妖が流れ着くのを待つのだろうか?それまでどうやり過ごすのか?
〇〇が休養している間は妖怪の襲撃は無かったが、警備がいなくなると今度こそ村人が襲撃にあって本当に全滅しかねない。本格的に武装して対妖怪の為の戦闘訓練をすれば、まだどうにか対処できるかもしれないが…。

「いや、それは止めておこう…」
「どうして?」
「俺は食い物の好き嫌いが激しいし、地霊殿には俺の仕事も無いだろうしなあ」

とっさに口を出たでまかせだった。しかし、それでもこいしを悩ませるには十分だったようだ。

「うーん…」
「だから、俺はここに残って働く。これでもそこそこ俺は強いしな。」
「分かったよ〇〇。それじゃあ、今日は帰るね。」

〇〇は何とかこいしの説得に成功し、安堵した。

一方こいしは地霊殿に戻っていた。
「ねえ、お姉ちゃん。一つお願いがあるの。」
「何?お願いなんて珍しい…」
「新しくペットを飼いたいんだけど、いいかな?」
「余裕もあるし、危なくなければ構わないわ」
「じゃあ、今度連れてくるね!」


203 : ○○ :2015/08/29(土) 00:32:27 EtrbeTYM
全然説得できてなくて吹いた
でもそれがまた良い


204 : ○○ :2015/08/29(土) 23:48:53 paAJGS9I
唐突な投下

幻想郷で最も速く移動する種族は烏天狗である。これは幻想郷の常識だ。彼らが全速力で空を移動するのを人間は目で追うことすら出来ない。

では、その烏天狗の中でも最速の烏天狗はいったい誰なのだろうか?

今ははっきりとした答えは出ない。
しかし、暫く前なら答えはすぐに出た。
気分屋の〇〇に違いない、と。

〇〇は幼い頃より空を飛ぶのを好み、常日頃から幻想郷の大空を翔けめぐっていた。人間で言うところの成人になる頃には、もう既に最速の噂を響かせた。
〇〇は烏天狗にしては人間や他の種族との交流に積極的であり、人里や地底にまで赴いた。時には外来人の救助も行った。博麗の巫女の神社や大妖怪の畑にも姿を見せる事もあった。その都度、巫女や花の妖怪に弾幕を使われ追い返されたが自慢の速さで必ず逃亡に成功していた。

〇〇はよく口にした。
「俺は幻想郷の全てを感じたい、知りたいんだ」

その一方で〇〇は数日間も家に籠り続ける事もあり、彼を知るものは彼を気分屋と形容した。


そんな〇〇の飄々とした姿を追っていた少女がいた。
彼女は幼き頃に〇〇に出会ってからずっと彼を追い続けた。彼を追いかけるうちに彼女もまた飛ぶのが速くなった。彼女がカメラを手にした時、最初に撮ったのは〇〇の顔であった。それから何千何万と彼女は写真を撮ったが、一番の写真は初めて〇〇と撮ったツーショットであった。

やがて二人は交際し、ついには結婚した。結婚式は華やかであった。天狗たちは皆お似合いの夫婦だと思っていた。すぐに妊娠も発覚し幸せの絶頂を迎えていた、と思われていた。


結婚したあとに配偶者の性格が変わってしまい不幸な暮らしが始まる、と言うのは幻想郷でもよくある話である。
彼女は〇〇がいつどこで何を誰としているのか、が昔から気になって仕方なかった。結婚してからその傾向は更に強まりついには収まりがつかなくなると、夜半に〇〇が問いつめられることも多かった。奔放な質の〇〇にとってそれは生き地獄だった。
妻の妊娠以降、〇〇はめっきり外出しなくなった。二人で楽しくやっているのだろう、と思い知り合いは誰も不審に思わなかった。実際には〇〇は妻のヒステリーに家で耐えていたのだ。
家から一歩も出ないことで、浮気をしていない証拠を作ろうと必死だった。
それでも妻との衝突は絶えなかった。

ある日〇〇は限界を迎えた。
昼下がりに妻と喧嘩をしている最中に突然、窓からの逃走を図ったのだ。何も計画など無かった。ただ今の生活から逃げたかった。〇〇も半狂乱だった。
窓を開けて振り返り、妻の怒りの形相を見たところで〇〇の記憶は終わっている。


たまたま〇〇の家の近くを通った哨戒中の白狼天狗が見たのは、血まみれの〇〇と〇〇を抱いて泣き続ける妻の姿であった。


〇〇は今は情報屋のような仕事をしている。怪我の後遺症でまともに空も飛べないが、その分人間は彼に親しくしてくれ、人里の情報もよく入る。家に帰れば大切な家族もいるのだ。

「ただいま」
「お帰り、お父さん!」
「晩御飯出来てるよ!」

母親によく似た美しい双子の娘だ。
〇〇はあれから家庭を大切にしている。仕事の前と後には必ず家で食事を家族全員でとる。一人の外出の回数も極力抑える。男一人での子育ては大変だが、仲間に支えられ何とかやってきた。二人とも年のわりにはしっかりしているし、概ね関係も良好だ。この二人にはあんな悲劇は見せたくない…。


あの悲劇以降、〇〇には一つ習慣ができた。竹林の病院を訪ねることだ。

「〇〇…〇〇…」
「射命丸さん、お薬の時間ですよ」
「…ごめんね…ごめんね…」
「ほら、早くお薬を飲んで良くなりましょうね」
「……うん……あうっ…」

「あら〇〇さん、今日もお見舞いですか」
「…文は?」
「攻撃性もほぼ完全に収まり、たまには話もしてくれるようになりました。ただ、こっちの話は聞いてくれませんし話の内容も意味不明です」
「そうですか、面会は…」
「今は寝ていますし、大丈夫ですよ」

「文、二人とも元気にしてるよ。だからお前も早く戻ってきてくれよ、なあ…頼むよ文…」

なぜあの時もっと優しくしてやれなかったのか、なぜ守れなかったのか。
〇〇の悔恨はまだ尽きない。
射命丸文の病室の片隅には遠き日の写真が飾られていた。今となっては眩しすぎる笑顔であった。


205 : ○○ :2015/09/02(水) 07:31:05 AYoETfyU
もう秋姉妹の季節だな

二人一組のって、蓮メリもそうだけど
もし惚れられたら濃さが一人でやってってる連中の比じゃないと思う

ぜってーどっちかは常に隣にいそう。最低でも


206 : ○○ :2015/09/02(水) 23:01:37 OLghgZmE
長編になる予定の物を投下します。

蝉の鳴き声は少なくなり、変わって鈴虫が増え始めた頃。
上白沢慧音は人里にある寺子屋の一室で、
机に向かい寺子屋に通う子のテストに採点をしていた。
そして、丁度16人目が終った頃に誰かがやって来た。
「入っていいか?」
慧音には聞きなれた男の声だ。ただし子供の物ではない。
「……入れ」
少し考えてから、言った。
襖を開けて男が入ってくる。
「よお、姉さん」
この男は慧音の弟だ。名は○○。
○○は部屋に入ると、机を挟み慧音の前に座り込んだ。
顔が少し赤くなっており、酒気を帯びているように見える。
座ったのを確認すると、慧音はこう切り出した。
「○○、お前は何をやっているんだ! 酔ったまま寺子屋に来るなとあれほど……」
「酔って無ぇよ、呑んだのは少しだけだ。別にいいだろ? 会いに来ただけならさ」
この手の話は○○にしても不毛なだけな事は分かっている。
「用件はなんだ? まさか、また金の無心に来たんじゃないだろうな」
「……借りるだけさ、今は仕事あるから返せるし……」
目が泳いでいる。
「○○、ばれる様な嘘をつくな」
「……ちょろ〜ん」
「誤魔化すな!」
つい、語気が荒くなる。少し間を置いてから、
「○○よく聞け、お前はその日暮らしだ、貸した所で金はすぐ消えるだろう。
仕事を紹介してやる、寺子屋での雑務だ、だが」
と慧音は続ける。
「まずは、酒を止めろ。そうじゃないと紹介できない」
「分かってるっての、その程度はな」
止める気はさらさら無いという態度をとる。

しばし沈黙が流れた後、慧音はこんな事を言い始めた。
「なぁ○○……その……相談したい事があるんだが……」
「俺に? 俺は構わないよ」
慧音は非常に言いづらそうだ。
「……何というか、その……例えばだ、凄く近くに好きな人がいて、
でもその好きな人は他の女とも話すんだ、それが凄く嫌で……
その……でもその嫌だって思う事自体が……まるで欲望をさらけ出すようで……」
「自己嫌悪してしまうって事か」
「……その、どうしたらいいのか私には……」
○○と慧音の付き合いは長いが、素面でこんなしおらしい慧音を見るのは久しぶりだ。
「ただの嫉妬だろ。誰にでも有る事だぜ。別に気にしなきゃいい、
それが無理だったらそいつを自分の物にしちまえば早い……ん?」
襖の向こうから足音が近づいてきた。
そして襖の前で止まると、若い男の声が聞こえた。
「慧音さん、入ってもよろしいですか」
慧音は小声で、
「おい、誰にも言うんじゃないぞ!」
と釘を刺した。その後、外の人間に入室を促した。
若い青年だ。脇に書物を抱えている。

もう2レスほど続く


207 : ○○ :2015/09/02(水) 23:04:07 OLghgZmE
「会話の邪魔をしてすいません。明日の授業の事で話したい事がありまして……」
慧音と青年が話している間、○○はその青年を値踏みするように眺めた。
顔は悪くないだろう、平凡ではあるが。
どちらかといえば生真面目な印象を受ける。
○○を見た時に一瞬不快の表情が出ていたが、むしろ一瞬なだけ他の奴よりいい。
ただし、○○は青年と出会った事など無いので、
おそらく誰かから○○の噂を聞いたのだろう。
「××、こいつは私の弟の○○だ」
慧音が○○の事を紹介した。
「ええ、どうも初めまして○○さん」
「俺か? よろしく」
というと、青年××は慧音に向かって頭を下げ、
「すみません、また少ししたら戻ります」
と言って、部屋を出た。
○○はにやにやしながら話しかけた。
「さっきの相談は……そういう事か」
「いや違うぞ!別に××の事じゃ」
「分かってる、人には言わねぇよ」
というと、○○は立ち上がり、戸棚から幾らか青錆の浮いた金を勝手に取り出した。
「じゃ、また」
「本当だ、本当に違うんだ!」
「金は来週かえすからな〜」
○○は話を聞かずに出て行った。

昼頃、龍神像の前で○○は座り込んでいた。
銭はもう食べ物に変わった。
来週返すといってしまったので、仕方なく○○は仕事を探す事にした。
人里では随分悪評が広まっているので、出来るだけ遠くがいいだろう。
あと、なるべく早く、多く稼げる方がいい。
そんな事を思いながら、ゴミ捨て場に落ちていた今日の新聞を取り、
求人欄を広げた。
続く

1レスですんでしまった。毎週更新出来たらいいな。


208 : ○○ :2015/09/03(木) 19:32:25 U4Jnb3Io
>>207
来週を楽しみしてます


209 : ○○ :2015/09/03(木) 20:28:02 U4Jnb3Io
wikiはもう修復されないの?
保存してないから見れないorz


210 : ○○ :2015/09/04(金) 10:22:45 CNcl4uXE
久々に、ここのじゃないが、「ルナティック幻想入り」を読んできた。
滾る!漲る!!迸る!!!
これこそ、ここのスレタイにぴったりな作品だとやはり再認識したが。
最近こういったものが少ないのが至極残念である。


211 : ○○ :2015/09/04(金) 18:24:58 UTgZNQ.Q
期待の新人ttp://i.imgur.com/SJk6WPw.jpg


212 : ○○ :2015/09/04(金) 22:21:24 mcNJ6a8I
早く出来上がったので>>206>>207の続き

仕事を探すのが難しいのは幻想郷も外も同じだ。
むしろ、幻想郷の方が難しいかもしれない。
人里あたりでは、何をするにしても人との付き合いが必要になる。
しかし○○の人里での評価は最低に近い。
そのため、まず人里にある仕事は出来ない。
妖怪退治などもあり、これは金額が高くなおかつ早くすむ。
しかし、○○の戦闘力はせいぜい一般人より少し上程度。
そもそも妖怪が苦手だ、よってこの手の仕事も無し。
今日は無いのかもしれない。
(もう今日は諦めて明日にしようかね)
と、いつもの諦め調子に入った所で、足音がした。
いや、正確に言うと足音自体は往来があるのでずっとしているが、
その足音は○○に近づいてきている。
○○に向こうから近づいてくる人物を○○は数人ぐらいしか知らない。
その足音は目の前の辺りで止まったようだ。
しかし○○が顔を上げる事は無い。
(どうせ、自分にとって面倒くさい奴だろ)
ぐらいにしか思っていない。
そんな奴に一々顔を会わせる事も無い、とも思っている。
「誰だ、通りすがりならどっか行け」
新聞を読みながら話しかける。
こういう言葉が返ってきた。
「相変わらずですね…○○」


213 : ○○ :2015/09/04(金) 22:23:53 mcNJ6a8I
○○は苦手な人物は多いが、嫌いな人物は以外と少ない。
苦手な人物では真っ先に自身の姉〝上白沢慧音〟が出てくる。
○○の頭が上がらない数少ない人物だ。
そして、
「説法は聞かねぇぞ、聖白蓮」
目の前にいるであろう人物〝聖白蓮〟は○○にとって大嫌いな人物に入る。
いちいち構ってきてウザいとか、人望有ってムカつくなどと
殆どしょぼい理由ばかりなのだが、最も大きな理由がある。
上記の事も、その理由の副産物に近い。
「○○、貴方が何者であろうと、努力すればどの様な者でもやがては受け入れてくれます。
その為にもまず、わざと嫌われるような事はやめて……」
「嫌だ」
「○○……私は貴方を」
「俺は!里の連中も!山の連中も!そして何よりお前が嫌いなんだよ!」
新聞を地面に投げ捨て、柄にもなく語気を荒げながら答える。
○○が白蓮を嫌いな何よりの理由。
それは自分の秘密を知り、その上で自分を憐れみ手を差しのべてくる辺りだ。
その秘密故に人里の老人からは忌まれ、山の妖怪からは侮られる。
『何もしていないのに嫌われるくらいなら、自分から嫌われに行く』
それが○○の生き様である。
そんなデリケートな部分を偶然とはいえ見て、あまつさえ踏み込んでくる。
そこがなにより嫌いだった。
他の理由など、自分の弱い部分を隠す言い訳にすぎない。
○○は足早にそこを立ち去った。
人里の者が何か言っているが無視する。
白蓮は追ってこなかった。

続く

女性キャラのセリフが難しい。あと、何話目とかつけた方が良いかな?


214 : ○○ :2015/09/04(金) 23:32:27 .TP.dnEQ
別にいいんじゃないか?


215 : ○○ :2015/09/05(土) 14:21:04 U2nhQxN6
安価あれば十分


216 : ○○ :2015/09/05(土) 23:48:51 WcO6AGpU
魔理沙っぽい〇〇やな


217 : ○○ :2015/09/06(日) 03:02:41 Yol2mnjk
クラピの人を狂わせる能力ってのをみたときに
○○をクラピへの愛で狂わせるってのを思い付いた
よくよく考えるとちょっと無理やりな気もするが


218 : ○○ :2015/09/06(日) 11:38:36 LRu3Hlx2
初ですので、至らない所があるかもしれません。
 
「○○、来てください」
「なんでしょうか、四季様」
いつも通り、四季映姫が○○を呼ぶ。
「私を膝の上に乗せなさい」
「…しかし、それは四季様を侮辱しているようなものでは…」
「これは命令。上司の言うことを聞くのが部下なのでは?」
「…わかりました。」
○○は、命令と言えば何でも聞く。そう、何でも…
  
 
最初の命令は、肩を揉む、などといったものだった。
ただ近くに居て欲しい、それだけだった。
しかし、願望は欲望に変わり、自分のものにしたいと思い始めていた。
命令も、徐々にエスカレートしていった。
もう、自分を止められなくなっていた。
さあ、次はどんな命令をしようか。
他の女性との接触を禁じようか、
それともいっそ監禁しようか。
あなたが私の部下である限り、私はあなたに命令を下せる。
「○○」
「はい、なんでしょう」
さあ、どのようにして私のモノにしようか…
 
四季様は職権乱用しそうだなーと思い、かいてみました。命令してる細かい所も書きたいけど、自信がない…


219 : ○○ :2015/09/06(日) 12:38:28 Az8PLdVc
そういえばコンペの件どうなったんだろう
わりと新規の人も見かけるし、参加者0はないとは思うけど


220 : ○○ :2015/09/06(日) 13:32:34 LRu3Hlx2
そうですね…私も書きたいですし…


221 : ○○ :2015/09/06(日) 16:12:26 RPUJaCcY
ttp://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=39700&n=68

ノブレス・オブリージュに囚われて(78)
少し間が空いてしまった
話としてはもう、佳境に入っています
これが終わったら、秋姉妹で単発行くか。パチュリー編行っちまうか。
その前に少し休むか


222 : ○○ :2015/09/07(月) 02:01:31 eTe/Hbqs
とりあえず、菓子食ってたら思いついたから書く。(良い文とは言ってない)

昼の人里の中、甘味屋の中でドサッという音が響く
まったく、厨房が近いからって何で裏から小豆持って来ないといけないんだ。しかも一袋も
「・・・あぁ、疲れた」不意にそんな言葉が出る。正直、甘味作るのは面倒だ
すると、店の前から何かの声がする。なんだ?また白黒か?
ふいに気になっていくと、そこには生首・・・ではなく、ゆっくりがいた。こいつは・・・ああ、霊夢さんのゆっくりか
俺に見つかったのが分かると「ゆ!」と行って逃げようとした・・・こけたが
そして盛大に泣き出し、暴れだした。「痛いのおぉ!」「おいおい・・」
さすがに、周りの視線が刺さって痛いので助けておくか
「おーい、大丈夫か?」そういってオレンジジュース(自家製)を飲ませた
すると、ほんの数秒で傷が塞がった。どうしてなのかは分からんが
「ゆ!痛いの直ったよ!おにーさんありがとう!」「はいはい」
誰だろうと、感謝されるのは嬉しいもんだな
「お礼にここの手伝いをさせてね」「え?」
手伝い?まあ、人手が足りなくて困ってるが・・・
「じゃあ手伝ってくれるか?」「ゆ!了解!」
こうして、俺とゆっくりとの生活がはじまった

もう何スレか続く(駄文ならすまん)


223 : ○○ :2015/09/07(月) 07:19:47 A1IAh71o
スレを跨ぐ超大作とか期待


224 : ○○ :2015/09/07(月) 09:15:23 MFbwhPo.
>>218の続き
 
もういくつ命令しただろう。
この前は遂に人里に行くのを禁ずることが出来た。
相も変わらず、○○は全ての命令を受け入れてくれる。
きっと、今日の命令も受け入れてくれる…
 
「○○。ついて来なさい」
「はい」
私は、○○をある部屋へと連れて行った。
「今日から、ここの部屋から出てはいけません」
「…ずっと、ですか?」
「ええ」
「仕事は?」
「いいです」
「生活は?」
なんだろう、今日の○○は執拗に粘る。
「全て、私が保証します」
「…無理、です…」
え?
「○○?これは命令よ?」
「こればっかりは…駄目です」
○○が。命令を。聞かない。
なんで?どうして?なんでなんでなんで?いつもの従順なあなたはどうしたの?
 
私は、もうあなたを私のモノにすることができないの?
 
いやだ。
 
そんなの、いやだ。
 
「…理由は、なんですか?」
「…私は、これからここに一人きりなんですよね?」
「そうですが」
○○が、他の人や人外の手に渡らないように。
「…私には、好きな女性がいます」
え。
「ここにずっと一人きりで、会えないなど…つらすぎます」
○○には、愛する人が、心の拠り所があった。でもそれは、私じゃない。
「それは…だれ…?」
「…今は、言えません」
「命令」
「…あなたは、すっかり変わってしまった。昔は、そんな職権乱用のようなことなんてしなかったのに!周りに悪く言われても!涙を拭って立ち直ってたあなたは!どこにいったんですか!」
「……分からない。自分でも分からない。ただ、あなたを手に入れたくて…」
「なら、しっかり口で伝えてください!」
「…でも、もう遅いでしょ?」
そうだ、○○には好きな人がいると、聞いたのだ。
「…はぁ、……私の好きな人はですね、どんなことにでも一生懸命であり、一所懸命…[でした]」
「……?」
「いつも、慈愛に満ちた眼…[でした]」
「………」
「いつも、差別をせず、…白黒つける人…[でした]」
「……!……私は、嫌われましたね…」
「…でも、良い所も、悪い所も、全てひっくるめて私はその人を[いい人]だと思います」
「…○、○…さん」
「…私は、四季映姫そのものが好きなのです」
そのときの○○は、とても優しく笑っていた。
「良いものは良いままでいい。悪いものは悪いままでいい。変わってしまったものは変わってしまったままでいい。…私に、隣を歩かせてくれませんか」
私は、泣いていた。ありのままの私を、大好きな人に受け止めてもらったことが、嬉しくて。
今のままでいいじゃないか。○○がいいというならば。
○○は、全てを受け入れてくれるのだから…


225 : ○○ :2015/09/07(月) 18:48:44 9Gs3MjNs
とりあえず、ゆっくりの続きを少々・・・


さて、手伝ってくれとは言ったが・・・
「甘味を作れるか?」「ゆ?食べることしか出来ないよ?」
「じゃあ片付けは?」「洗うところまで届かないよ?」
おいおい・・・それじゃ意味無いだろ?
「それなら皿を運ばせたり、茶を出させたらどうだ?」
何が出来るかと考えていたら、外から誰かが声をかけてきた。
この口調、まさか!
「よう、××。おまえ甘味屋だからってとうとうゆっくりに手を出したのか?」
「やっぱりお前か○○!」
こいつは○○、俺の親友だ。今は霊夢さんと博麗神社に住んでいる
それはまだいいんだが・・・
「今日は霊夢さんはいないのか?」
「ああ、今日は特別に一人で来ていいんだとよ」
よかった〜。○○が霊夢さんと来たら、
6割近くの女性客に逃げられて大赤字確定だったからな・・・
「それにしても今日は早いな、まだ開店前だぞ?」
「ああすまん。他の用事が早く終わってな?甘味を食うついでに開店前に寄ってみた」
一言余計だが、まあいい
「まあ話はそれたが、要するにそいつに茶や甘味の運搬をさせたらどうだ?」
「運搬か・・・」
まあそれくらいなら出来る・・・か?
「ねえねえ、運搬って何?」
「何かを運ぶってことだよ」
それを聞くと、ゆっくりは誇らしげな顔をする
おい、良くこけないな
「ゆ!それならできるよ!」
「そいつは良かったな、××」
誰のせいでバイトがやめていったと思ってんだ?
「じゃあそろそろ、開店させますか」


ちょっと飯食って来る
後、ゆっくりってセリフを全部ひらがな・カタカナにしたほうがいいのかな?


226 : ○○ :2015/09/07(月) 22:23:02 wyhh6jg2
ゆっくりは原作で出てないからいかんだろと荒れたことがあったけどもう大丈夫なのかな?


227 : ○○ :2015/09/08(火) 01:43:54 9hDBPwVI
レミリア短編
寝取りもの注意
後、若干の自己設定あり

*****************

「まさか、あなた達が付き合っていただなんてね」


レミリアは自らの従者、十六夜咲夜と○○を呼びつけ、開口一番にそう言った。


別に彼女たちが宣言したわけではない。
ただ、咲夜から○○への極端な態度の軟化を見せられては色恋沙汰に鈍感ということがなければ察することはできた。


「お嬢様……もしかして不味かったですか?職場内恋愛禁止的な」
「別にそんなことはないわ。確認したかっただけ。そう、やっぱり付き合っていたのね」


恐る恐る確認する○○にレミリアが答える。
安堵する○○。
咲夜と付き合っていくことに問題がなかったことはもちろん、職場恋愛禁止と言われたら咲夜が何をしでかすかわからなかったので不安だった。
自分との恋愛が原因で咲夜とレミリアの主従関係に何らかの亀裂が生じることは避けたかったのだ。

「一応、確認しておきたかっただけだから。もう下がっていいわよふたりとも」
「はい、失礼いたします」


ふたりが退室した後、レミリアは考える。
自身のモヤモヤしたこの気持ちはなんなのだろうか?

ふたりが恋人同士なのではないかと疑った瞬間から生まれたこのモヤモヤは、咲夜と○○が恋人関係になっていることを確認してから激しさを増していた。
その正体がわからずに悶々としていると、気付けば○○のことを考えていた。

○○。少し前から使用人として雇った人間。
咲夜と比較し、弾幕はもちろんのこと、人間として見ても完璧とは程遠い存在。
そんな○○と咲夜が恋人になるなんて。
○○が咲夜に惚れるだけならわかる。それを咲夜が受け入れて恋人同士になるなんて。
そもそも先に惚れたのは本当に○○なのだろうか。咲夜から○○への極端な態度の軟化を考えると逆かもしれない。

どらかというと、人間としてもどんくさい○○をあの咲夜が。
考えてもみなかったことだ。そう、今は○○はもう咲夜の物。もう自分の恋人にはなってくれないのだろう。

「……え?」

レミリアは、ふと自分がなにを考えているのかわからなくなった。
少し、茫然とし。そして気付く。

そうか。いつの間にか自分は○○を好きになっていたのだと。愛していたのだと。
でも、吸血鬼としてのプライドが告白することを許さなかった。平凡な人間が相手だから。
いや、自覚できていなかったからか?
とにかく思いを伝えることはなかった。
ああ、そうか。今ならなんとなく解る。
主として自分のことを好いてくれた○○。主として色々と頼める関係。
満足してしまったのだ。まだ、その先があるのに。
焦る必要はないと思い違いをしてしまった。ただの人間に紅魔館の人間が異性として好意を持つことはないと。
誰かの物になることはないと。自分の感情を棚に上げて。


「○○……○○!」


こんなことならもっと早くに自分の気持ちを認め、告白すればよかった。
手に入ると、手に入れていたと思っていた物が手元から消える失望感。
こんなことなら、さっき聞かれた際に職場内恋愛禁止といって引き離してしまえば良かった。
そうすれば咲夜の物ではなくなる。フリーだ。

それでは駄目だ。
今のレミリアはもう○○の恋人同士にならなければ気が済まなかった。
だが、どうする?
そもそも。自分と同じ、異性に対する感情を咲夜が持っていたとしたら主の自分が別れろと言っても聞かないかもしれない。

ならいっそ咲夜を始末するか。
いや、咲夜を始末しようと単純に引き離そうと。
その後、○○が自分のものになってくれる気がしない。

どうする?
どうすればいい?
○○と愛し合えるのならなら何でもする。
もう吸血鬼のプライドなどという矮小なものにはこだわらない。
例え、泥水をすするような目にあったとしても、レミリアは○○という男性を物にしたかった。

「そうだ……」

ふとアイデアが思いつく。
プライドを捨てるなら。どんなに汚い手を使おうが。
それで良いのなら。なら。
捨てよう。吸血鬼としてのプライドを。


228 : ○○ :2015/09/08(火) 01:44:51 9hDBPwVI
十六夜咲夜は○○に告白した。
いつの間にか好きになっていた。人を愛するのに理由はいらない。
○○は自分も咲夜のことが気になっていたと気持ちに答えてくれた。
ふたりは恋人同士になった。
幸せだった。仕える主のレミリアも大事だが、それとは別の、男性との愛し愛される関係。
ただただ幸せだった。なのに。

「あら、聞こえなかったのレミリア」
「も、申し訳ありません、お嬢様。もう一度、もう一度おっしゃってください……」
「じゃあ、もう一度言うわよ咲夜。私と○○は結婚するわ」
「そんなハズは……だって○○と私は……」

焦る咲夜。
レミリアはそんな咲夜にゆっくりと言葉をなげかける。
その横には○○が寄り添っている。

「だって私達は愛し合っているのだもの。なにもおかしいことはないわ。そうでしょう?○○」
「そうだね、レミリア。愛しているよ」

主のはずのレミリアを呼び捨てにし愛の言葉を囁く○○。
それを聞いたレミリアは満足そうだ。まるでこの状況を見る前の咲夜のように。

違和感。
レミリアへの態度の急変のほかに咲夜は○○に違和感を感じた。
そして、気付く。

「そう……いうことですか。お嬢様……」
「なんのことかしら?」


○○は、レミリアに血を吸われ吸血鬼になっていた。
吸血鬼に血を吸われた人間はその眷属の吸血鬼になる。
純粋な吸血鬼とは違い、主の奴隷の様な存在に。意識も自我も一応あるが、その全ては主の吸血鬼に思いのまま。
奴隷たる眷属にされた○○。だが、レミリアは眷属である○○に命じたのだ。自分を愛せと。
普通、奴隷にそんなことをいう者はいない。
他の吸血鬼も労働力や戦力確保の為にこの力を使う。
だが、レミリアは咲夜から○○を奪うために使った。


「私を愛し、私と結婚するのは○○の意志よ。それにね、咲夜。○○は……あなたのことなんてなんとも思っていないわ」

今の、レミリアの眷属の○○はそうなのだろう。
主にそう命令されればそれが今の彼の意志なのだ。一生。
例え、今ここで咲夜がレミリアを殺せたとしても。
主を殺した敵としか○○からは認識されないだろう。
どうやら、血を吸われる前の咲夜への感情は命令によって捨てられたようだ。


「次は、パチェに報告しようかしら。咲夜?悪いのだけれど、私が呼んでいたと伝えに行ってくれる?あとは掃除に戻っていいわ」
「かしこまりました」

咲夜はレミリアの指示通りにパチュリーを呼びに行く咲夜。
現状、○○を取り戻す手立てはない。
悔しいが、今は、○○が盗られたこと以外、今まで通りに過ごすしかなかった。
だから主の指示に従う。
レミリアのほうも咲夜を追い出す気も殺す気もないようだ。
○○を眷属にした今、そのようなことをする必要もない。
それに優秀なメイドとして咲夜が必要なのだ。


「○○、大好きよ。もっと早く行動するべきだった」
「俺も愛しているよ、レミリア」

咲夜が去った後のレミリアと○○。
やはり恋人なので○○はレミリアに敬語は使わない。
レミリアはそんな今の○○に満足し、その○○に抱きつく。
パチュリーがやってくるまでの少しの時間も甘えていたといわんばかりに、顔を彼の胸にのうずめる。
一方○○は、かつて最愛の人であった咲夜にしたのと同じように彼女をやさしく抱きしめ、恋人の甘えに応えるのだった。





「お嬢様がそうくるのでしたら……」

図書館に向かいながら咲夜は呟いた。

紅魔館から去ることも考えたが。
逃げるわけにはいかない。諦めるわけにはいかない。
まだ、咲夜も○○も生きている。
ならば可能性はある。
吸血鬼の眷属にされ奪われた○○を取り戻す。
例え、それこそ悪魔に魂を売ってでも、どんな手を使ってでも。
主と慕っていたレミリアがどうなろうとも構わない。
人間としての尊厳を捨てることになってもいい。
最愛の○○を必ず取り戻す。
たとえ目の前で、自分への愛情を主によって捨てられたかつての恋人が、その主を愛する光景を毎日見ることになっても。
○○のいるこの紅魔館で。知識の集約した図書館のあるこの紅魔館で。
いつか必ず取り戻す方法を力を得る。

咲夜はこの時そう決意した。



<了>


229 : ○○ :2015/09/09(水) 01:29:59 8EfvqJ6M
ゆっくりの(略
あ、ゆっくりの話し方は今のままでいきます。


ただ今開店から三十分。俺は今、色々困ってる
ゆっくりが、手伝いをしてくれるのはありがたい
ただ、その手伝いが問題なのだ
皿をばら撒き、運ぶ相手を間違い
挙句の果てにはつまみ食いときた
「やっぱり、ゆっくりには荷が重いか?」
「そ、そうか。プフッ・・・や、やっぱ無理だったか?」
そう言いながら○○は、腹を押さえて笑いをこらえている
ちくしょう、すごい腹立つ!
だが、その行動がむしろ可愛いらしい
お客さんは、温かい目で見守りったり応援していたりと
意外と人気があるらしい

そんなこんなでもう日が半分沈み、閉店の時間になった
「ああ〜。やっぱりここの甘味は特に美味いな!」
柄にも無く○○が元気な声で言った
甘味食った後の○○の元気な態度は正直怖い
あ、そうだ。大事なこと忘れてた
「お〜い?そろそろ帰んないと、霊夢さんに何言われても知らないぞ?」
「ああ、そうだった!じゃあお勘定ここに置いとくからな?じゃあ!」
そういって、走って帰っていく・・・
「今から○○を返さないと、後で霊夢さんが・・いや考えないでおこう」
前○○と夜まで飲んでたら、いきなり霊夢さんが
『ワタシノ○○ヲ、ダレガトッタノ? 
イマスグデテコイ!!』
と、殺気むき出しだったからなぁ・・・あ、何か汗出てきた
「さてっと・・明日も早いし、仕込みやって寝るかぁ」
「ゆ?私も手伝う!」
「え!・・・まあ、いいけど」
あ、明日はちゃんと働いてくれる・・・よな?


ぐだぐだですいません。 もう1,2スレで終わります(多分)


230 : ○○ :2015/09/09(水) 01:43:20 AL/uI0sc
>もう1,2スレで終わります
>もう1,2スレで終わります
>もう1,2スレで終わります


231 : ○○ :2015/09/09(水) 04:40:37 Md7ge2ZY
>もう1,2スレで終わります
いくらなんでもゆっくりし過ぎだろw


232 : ○○ :2015/09/09(水) 06:22:04 9wyWWrgU
>>226
書籍にも原作のゲームにもいないキャラはダメだろ
オリ主人公×原作キャラ以外の時点で色々アウトなのに
一度荒れた原因のネタをわざわざ投下してる時点で悪質
前スレの流れを全く知らずに投下したって可能性もあるけど

>>229
U-1や東方原作から外れたネタやパロディネタは度々荒れる原因になってるから気をつけて
(例 他所の漫画やゲームの設定やストーリーを東方キャラに置き換えただけの奴とか)


233 : ○○ :2015/09/09(水) 06:59:32 bwlGXJa.
盛り上がってまいりました


234 : ○○ :2015/09/09(水) 12:08:24 RMOv86PY
じゃけん個人のページに投稿しましょうね〜


235 : ○○ :2015/09/09(水) 13:31:07 rX1N6CTU
盛り上がるのは、作中の修羅場だけで十分

長編さんの場合は、修羅場の方が多いけど


236 : ○○ :2015/09/09(水) 19:49:16 nIUommH.
大分たってしまったけど感想

>>188
永遠亭裏カタログ
これいいね。
えーりんがこんな世話や面倒を負うってことは既にッパートナーを獲ているな?
とか読んでて考えてた。ほら、自分満ち足りてるとお裾分けしたくなるしね。
ラインナップを見て、恥ずかしそうに頬を手で支えるえーりんを見て、またカタログを見た○○……
つまり、もっとしたいの? と、聞かれてやーんと頭フルフルするえーりん、とか想像してもっk……ほっこした


237 : ○○ :2015/09/09(水) 20:38:29 nIUommH.
連投すまぬ

>>190
の感想
猫の雌は種族的にヤンデレだというのがよくわかるお話だった。
なんかスゴくこう、色気がある文体でいい……
ここで橙という幼子なのがまた幻想的に感じたよ。
狐もいいけど猫又もいいね!


238 : ○○ :2015/09/10(木) 02:08:31 NesEi0s6
・・・すいません、色々考えて投稿するべきでした。
ゆっくりの話は、これで最後にします

・・・あれから二週間、正直ゆっくりの成長には驚かされた
皿を割る・つまみ食いをする・客を間違えるなんてことが激減した
その上、あっという間に看板娘のような存在になった
でもそれと同時に、変な悪寒と視線を感じるようになった
「でも、何でだ?何か変なことしたかな・・・?」
ゆっくりか?でも、今ゆっくりは外で客寄せしてるし・・・
そう考えていると店に守矢神社の巫女 早苗さんがいた
「ああ、早苗さんか。今日は何にする?」
「こんにちは!××さん、いつものお団子ください!」
「了解、いつものやつだな?」
早苗さんの言ういつものというのは、
自家製のたれを使った自慢のみたらしだ
「まったく、また太っても知らないぞ?ったく」
そんな少し嫌がらせめいた事を言ってみる
「む!女の子にそんな発言してたら嫌われますよ!しかもまたって何ですか!」
「うるさいな。団子を半分にするぞ」
「ええっ!」
そんないつもの、何気ないやりとりを俺はしていた
外からの鋭い視線にも気付かずに・・・


「・・・あ、もうこんな時間!そろそろ帰らないと」
「ん?そうか。・・・また団子持ち帰るか?」
そういうと、早苗さんは少し申し訳なさそうにする
「いいんですか?じゃあ三本お願いします!」
「はいはい、これをどうぞ」
そんなことをいいながら、俺は後ろから団子を四本取り出した
「えっ!私が頼んだのは三本」
「いいから!いつも来てくれるお礼だよ」
その言葉を聞いたとたん、早苗さんがすごい笑顔になる
「あ、ありがとうございます!では!」
そう言い残し、さっさと帰って行った
(さて、そろそろ店閉めるかな)
そう思い、店の前の看板を[開店中]から[閉店中]にした
その時、ゆっくりに声をかける
「ゆっくり、もう終わったぞ」
「・・・・・わかった」
?おかしい。いつもなら『ゆ!わかったよ!』とか元気に言って来るのに
一応聞いてみようか・・
「どうしたんだ、ゆっくり?」
「・・・何でもないよ」
少し、悲しそうな顔をして奥に行ってしまった
「・・勘違いか?」
そんな風に思いながら、俺はのんきに片付けや仕込みをしていた


「あ〜眠い、仕込みに時間をかけすぎたな・・・!」
俺が眠たい目を擦りながら寝室に行くと
「ゆ、待ってたよ?」
目が少し濁ったゆっくりがいた
何やってんだ?待ってたって何?
「それはどういうこと・・」
その時、俺はゆっくりに突き飛ばされ・・いや、押し倒された
畳とはいえ、背中が痛い
「ねえ、あの緑の女誰?」
も、もしかして・・・
「・・・嫉妬?」
ゆっくりは無視して続ける
「お願い捨てないで
私を一人にしないで
もう一人はいや!いやなの!」
途中から涙目になりながら、ゆっくりが言ってきた
・・・正直可愛い。っといけない、何かに目覚めかけた
「・・・大丈夫だ、誰と何処にいようがお前を見捨てない。約束する」
「ほ、本当?」
「ああ、本当だ」
すると、ゆっくりの顔がいつもの笑顔になった
「えへへ、約束だよ?」
(・・・これは状況が○○と似てきたような気がする)
そう思いながらも、俺は不思議と悪い気はしなかった


どうしてこうなった。
何スレも駄文&誰得書いてすいません


239 : ○○ :2015/09/10(木) 05:58:43 6crpHAtA
まだ投稿してんのかこいつ
スレチだから二度と来るなってハッキリ言わなきゃ駄目か?


240 : ○○ :2015/09/10(木) 06:54:16 7meG2xlo
悪魔で、俺はだけど、ゆっくり好きだから……すき……かも
ゆっくりが泣いてると胸が苦しくなる。
でも河岸違いだったかもね。

そんなことより駄文とかゆーなって
気分転換に次はうどんげのヤンデレンゲでも書いたらスッキリするんじゃないかな


241 : ○○ :2015/09/10(木) 07:02:20 F/T4eJ8c
打ち切りしなかっただけマシなような、まあ次は気をつけてねとしか言えん


242 : ○○ :2015/09/10(木) 07:25:25 D.Fs/OK6
そんなことよりヤンデレゆうかりんマダー?


243 : ○○ :2015/09/10(木) 15:59:40 7npXWtpw
そりゃおまえさん、言い出しっぺが書くんだよ


244 : ◯◯ :2015/09/12(土) 10:12:51 I.moRx/E
永琳の助手
諏訪子の神官
神子の部下
藤原家の世話係
西行家の世話係
スカーレット家の執事
稗田家の世話係
霧雨店の店員

こんな感じで転生してる◯◯


245 : ○○ :2015/09/12(土) 14:11:23 uo0p8u/6
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「××ちゃんが、軽自動車に突っ込まれた」
それを電話で聞いて、俺は放心状態になった。
××ちゃんとは、今日初めてのデートをする予定だったのに。
俺は、ダッシュで病院まで走った。
「先生!××ちゃんは、どういう状況なんですか!」
「…非常に難しい状態です。特に脳からの出血が…」
俺は二度目の放心状態になり、気づいたら医者の胸ぐらを掴んで叫んでいた。
「厳しい状態ってなんですか!はっきりしてください!あなた医者でしょう?お願いですから……××ちゃんを、助けてくださいよ」
最後は床にひざまずき、泣き崩れていた。
「「……」」
二人が黙っていると、看護師の声が聞こえてきた。
「先生!××さんの意識が戻りました!…○○さんですよね?…××さんが話したいそうです」
え、意識が戻ったんだろ?
話したいって、なんだ?
助かったんじや、ないのか?
混乱したまま、集中治療室に連れていかれる。
「…こちらです」
 
目の前には、体中に包帯を巻き、多くの管を通された××の姿があった。
 
俺は思わず、顔を押さえた。
しかし、頑張って××の元へ行く。
「あ…さん…」
××が喋ろうとしている。
「もういい…喋らないでくれ…お願いだから…」
「ぁ…ぅ」
「え?何?」
「……ぃ……今まで……ぁりがとぅ……」
それが引き金になったように、××はガクンとうなだれた。
「ねえ…嘘だろう…」
しかし、××の顔は冷たくなっていく。
「うああああああああああーーーーーー!!!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「…さん、○○さん、大丈夫ですか?」
俺は一気に現実に引き戻される。
「ああ、有難う御座いますさとりさん…少し外の世界のことを…」
目の前にいる少女は、俺が幻想入りして初めて会った人…いや、妖怪か。
この前聞いてみたが、確か
 
「なんの能力も持っていない」
 
っていってたな…
「そう…何か悩み事があったら言って下さいね…」
「……はい」
さとりさまは、今では俺の保護者のようなもの。
本当に助かっている。
 
---○○がさとりに向ける思いは、感謝だった---
 
……○○には、私の能力は教えていない。
一目惚れした相手に避けられるのが怖かったのだ。
……でも、やはり行動にしなければ。
さっきの○○の心を読んで思った。
○○が、××とかいう奴のことを忘れられるように……
 
○○は、ぜーんぶ私のもの。
 
---さとりが○○に向ける思いは、独占だった---
 
つづくかもしれないし、つづかないかもしれない


246 : ○○ :2015/09/12(土) 14:30:52 ewA3lqTY
では、ヤンデレイセンの話を。
鈴仙書くの初めてだけど・・・


「・・・やばい、迷った!」
俺は今、迷いの竹林にいる
しかも、道もまったく分からない。つまり迷子だ
まいったな・・・ここは妖怪も出るってのに

俺の名は○○。何の力も無い人間だ
仕事は、里の外への運搬や雑務をしてる
まあ、いわゆる何でも屋だ・・・相手を選ばなさすぎて人に疎まれてるが

そんな俺がなぜ迷いの竹林にいるかと言うと
半ば嫌がらせとして、薬の材料と書かれた等身大の袋2つを渡された
『ムカつくが、仕事だ。しかたない』
そう自分に言い聞かせながらここまで運んできた
・・・のだが、途中で迷子になった
力の無い奴は、[迷いの竹林で迷子=死]と考えた方がいい
これからどうしようかと思ったとき、後ろから物音が聞こえた
獣か低級妖怪が出たかと思い振り向くと、聞いたことのある女性の声が聞こえた
「あれ、こんな所で何してるんですか?○○さん」
よく見ると、永遠亭の兎の・・・
「え〜と?冷麺だっけ?」
「鈴仙です!鈴仙・優曇華院・イナバです!」
「冗談だ、冗談。そう怒るなって」
お前の名前長いんだよ
「まったくもう・・・それより、なんでここにいるんですか?」
「いつものやつだ。後、ついでに筍取ろうかと・・・!」
そう話すと、鈴仙がだんだん怒り出してきた
「またですか!まったくあの人達は本当に何度言っても・・・
○○さんは悔しくないんですか!」
「いやそれは・・・」
もう慣れたしな・・・悲しいけど
「はぁ・・・もういいです。それより永遠亭に行きたいのなら、案内しますよ?」
「ほんとか?助かった!ありがとう!」
死因[迷子]とか洒落にならないしな
「い、いいからいきますよ!」
そういって少し早足で進んでいった
置いて行くなんてしないよな!
・・・しないよね?


とりあえず飯食ってくる。


247 : ○○ :2015/09/12(土) 22:25:48 oocYer5k
>>212>>213の続き

白蓮が出てきたので龍神像前を去った(逃げた)○○だが、
今は仕事を見つけ、姉に金を返さなければならない。
それも一週間以内に。
いつもの様に約束を無視してもいいのだが、さすがに3回目はまずいと思ったのでその選択肢は無い。
すでに良さそうな仕事を見つけ、現場に向かっている最中である。
永遠亭とかいう所らしい。
何でも新薬を試したいという話だ。
たった3日で給金は高い(そして健康の保証はしない)という話だ。
迷いの竹林を迷わずに着き、ちびのウサギと話をする。
「という訳でその治験とやらを受けにきたんだが」
「あんたが働く? きっと明日は大雪ウサ」
妖怪も年寄りほど、言葉に遠慮が無くなっていくものらしい。
隣を担架が駆け抜けていく。担架の上を見ると、
ブレザー姿のウサギが痙攣しながら運ばれている。
「俺生きて出られるかねぇ……」
「あんたは無駄に頑丈だから大丈夫ウサ」

治験内容は眠り薬との話であるが、その粉薬は虹色だった。
どう見てもヤバいお薬である。
「依存性とかないよなコレ」
目の前の女医に聞く。
「夢を見るだけだから大丈夫よ。多分」
手渡されたヤバ気な薬を水に溶かす。
特に色の変化は無い。コップを傾けて一気に飲み込む。
「味はどうかしら? 匂いは?」
「……どっちも無いな」
何やら書き込んでいるが○○には関係の無い事だ。
(何にも起きないn)
突然、目の前が真っ暗になる。
そして夢を見た。
洗っても、埋めても消えない、自分の過去を。

続く


248 : ○○ :2015/09/12(土) 22:27:26 oocYer5k

コレはどういう事だ!!
鬼子だ…鬼子が生まれた……
殺せ、妖の子はいつか人に仇なす
この子は■して■い!
子はすぐ死んだという事にしろ

「お前は何故生きる?」

心臓を突いたはずだ!
吊るせ、明日、法師様を呼ぼう

「生きているから」

ご■■ね、あん■事■■て……
あの人達は■してあげて……
■の事は許さ■いでいいから……
いく■でも恨■で■■から……

「こんなに」

妖怪め、切り殺してやる!
半妖風情が、貴様など同胞などでは無い

「辛く」

うわぁ!ば、化け物だ!!
人に上手く化けたが、私の目はごまかせんぞ

「苦しいのに」

お、俺を……だ、騙したな……!
よくも……よくも……

それでも生きてやるっ!! 誰が拒もうと、誰が嫌おうと、俺だけは俺を愛してやる!!

来週には続く


もっと暗くしたいが、自分じゃこの程度が限界か。


249 : ○○ :2015/09/13(日) 22:55:34 wq1KlKFs
鈴仙(略


「・・・よく持って来られたわね」
永遠亭の薬師 永林さんに呆れたような顔で言われた
「仕事だから仕方ないな」
「でも薬草の量、頼んだ分より多いわよ?
まあ、蓄えが増えるのはありがたいのだけど」
「ま、まじですか」
道理で異様に重いと思った!
そこまで俺が憎いか?里の人達よ・・・
「ああそれと、私からの依頼よ」
「ん?何だ?」
今なら、大体の無理難題は引き受けられそうだ
できるとは限らないが
「薬の整理を手伝って欲しいの」
「まあそれくらいはいいが・・・」
流石にやばい薬は勘弁だぞ?
「ふふ。なら今からお願いね?」
「はいはい、やりますよ」
少し疲れ気味に言いながら、永遠亭の中に入る・・・


「はあ、はあ。こんなに有るなんて聞いて無いぞ・・・?」
永林に頼まれてから数時間。あと四分の一という所までできた
ったく、ここの全ての資材があるって位あるじゃないか
「どうですか?終わりましたか・・・
って、凄く綺麗になってる!?」
「おう、鈴仙か・・・休憩か?あと少しだから待ってろ」
「いや十分ですよ!これくらいでいいです」
「いや、でも」
完全にやらないと、何でも屋としてのプライドが・・・
「それに!今帰らないと夜中に帰らないといけませんよ?」
「え?嘘だろ!」
「本当ですよ。さあ、どうします?」
鈴仙が、少しニヤ付いて行った
畜生、背に腹は変えられん
「じゃあ、帰るよ」
「はい!師匠には、私から言っておきます」
そのあと、ぼそりと『勝った!』という言葉を聞き逃さなかった
「調子に乗るなよ、うどんが」
そういって、鈴仙にでこピンする
「イタッ!と、とにかく行ってきます!」
そういって慌てて走っていった
「まったく、騒がしい奴だ」
まあ、それがあいつのいい所なのかもしれないが
そんなことを考えながら、里に帰った・・・


夜食食ってくる。後、次はかなり胸糞かもしれない


250 : ○○ :2015/09/14(月) 02:11:13 9Z3Oe6LE
れいせ(略


「はぁ〜今日は疲れた。さっさと帰って寝よう
・・・っと、大事なこと忘れてた」
そうつぶやき進んでいくと、小さな商店が見える
「よう!景気は良いか?」
「ぼちぼちだよ、残念だが」
中からでてきたこいつは××。里で数少ない俺の味方だ
「米俵を、1俵か2俵くれ」
「はいはい、1俵ね」
「・・・××のケチ」
「ケチで結構。というか、二つも持ったらろくに動けない事分かってる?」
「俺は基本運び屋なんだがな・・・」
その方が後々楽なんだが、贅沢は言えないか
「はいはいそうですね。はい、米1表」
そういい、米俵を下にどさりと置く
「ありがとう!じゃあお代を」
「お代は良いよ」
「えっ」
・・・俺の耳は腐敗してるのか?
今、お代は良いって言ったような・・・
「な、なんで?」
「なんでって、いつもひいきして貰ってるし
今の状態じゃ辛そうだからね、返したいなら何時でもどうぞ。
あ、[僕が死んでから]とかは無しだよ?」
その時ぶわっと、俺の目から涙が出てきた
「あ、あびがどう!おかげヴぇ:;・@”!$%&’%:!」
「と、途中から何言ってるのか分かんない・・・
わっ!服で涙拭かないで!」
「うぇっく、ひっく。ありがとうなぁ・・・じゃ」
俺は出る前に、泣きじゃくったのが急に恥ずかしくなり、逃げるように走った

「はぁ、まったく・・・毎回あの急変には驚かされるよ
・・・また、来てくれるかな」


あぁ!恥ずかしい!大の男が泣きじゃくって!
恥ずかしい!今度行った時自分だけ気まずくなるよ絶対!
そんなことを考えてると回りからぼそぼそと声が聞こえる
『見ろよあいつ』『またあいつかよ』
『ちっ、見てるだけで気分が悪い』
『糞が、出てきゃいいのに。あんな寄生虫』
そんな言葉が聞こえ、心に突き刺さる
・・・そんな事言われても困るんだが
すると人ごみの中から子供が数人来る
「こんにちは!○○おにーちゃん!」
「おう!元気だな、お前ら!」
「うん!」
「○○にーちゃんは?」
「いつもと同じ、元気満点だ!」
そういって、かっこつけたポーズをしてみる
「あはは、変なの!」
「ええっ!」
結構自身あったんだがな・・・
こいつらは、寺子屋から依頼が来たとき懐かれた
ときどき、家にも遊びに来る
「それでね、今日はね」
「何やってるの!」
そう話そうとすると、子供達の親が来てみんな連れて行こうとする
「あっ、やめてよお母さん!」
そんなわが子の言葉も聞かずに行ってしまった
そこまでされると悲しいな
「おい、○○」
悲しんでいるとき。そう後ろから声をかけられ振り向こうとすると、急に引っ張られそのまま強引に、建物の隙間に引き込まれた


「○○、今すぐ里から出て行けよ」
俺はその言葉を聞くと同時、よく状況を確認する
ここは、建物の隙間の狭い空間で
そこで5人に囲まれ、壁に押し付けられてる
おまけにこいつら、里の問題児集団、いわゆる不良
人の来る気配無し
・・・あれ、詰んでね?
そんな状況整理をしていると、顔を殴られた
「おい!聞いてんのか?」
「き、聞いてるよ。でも悪い、今ここを引っ越す分けにも行かないんだよ」
そういうと、今度は腹を蹴られた
ボコォという衝撃が体に響き、俺は膝を着く
持っていた米俵が落ちたが、それどころではない
「お前の意思とかどうでも良いんだよ、とにかく出て行け」
震える体を動かし相手の方を見る
今喋っている奴の後ろで他の奴らは俺の事を嘲笑っている
そのとき、後ろの一人が提案した
「いっそのこと、こいつを再起不能にすれば良いんじゃね」
「それいいな!」
「そうしようぜ!」
「「賛成!」」
どうやら、その提案は全員一致で賛成らしい
まったく冗談じゃない・・・!
不意に脇腹を蹴られる
そして、間髪いれずに頭を木刀ほどの棒で打たれる
「!!」
余りの痛みに、声すら上げられなかった
やがて行為が段々激しくなっていき、意識も薄れてきた
(あ・・あ・・・せめ・・・て・・め・・し・・くい・・たかっ・・・たな・・・)


とりあえずここまで。差別とか考えたらこうなった


251 : ○○ :2015/09/14(月) 06:26:04 UsGX5pD6
東京の続きが思いつかないので短編を

何かを出せば最後までもがくように求めるのが外の世界の常識であった
その常識に浸っていながら今更それが悪いと言うつもりはない。けれども何度も求められればうんざりするのも当然な筈だ

そんな外とは違い、迷い込んだ先の世界は酷く平和であった
何を出しても必要最低限しか求められない
悪く言い換えれば皆自分のことで精一杯なのだがうんざりする程外に浸った自分としては欠点などないように思える

そんな良さを後押ししたのも彼女のお陰だ
彼女は素晴らしい。おそらく外界の女性の美や他のことでは到底敵わないほどに
彼女と自分は種族こそ違えど思いは共感できていた
彼女が興味を持つものには自分も興味を持ち、持たぬものにはとことん持たなかった
やがて自分と彼女はその一生を添い遂げることを決意した

添い遂げる中、世の情勢は変わり生きにくくなっていった
それでも自分と彼女は周りが呆れるほど、不安に思うほどに愛し合った
その頃に自分は人間を捨て彼女と同じ種族になっていた
幸せだった。元の世界のことなどとうに忘れ、眼前の幸せの道を彼女と二人で歩いていた

それでも、世の情勢は巡るように変わり続けた
その度に彼女は不安になり私を求め続けた
「行かないで」「消えないで」の言葉は未だに耳に残っているものの一つだ
外と同じだな、と思ったがこの頃は自分も彼女を求めていた
いわゆる共依存なのだろうか。とにかく精神がある意味衰退していたに等しかった
それでも自分は幸せだった

とうとうこの世界でも外と同じ様に戦争が勃発した
自分と彼女は必死に逃げた
ある時は南、ある時は北へと
しかし必死の逃避行も虚しく、ある時流れ玉が自分に当たってしまった

痛みはあったが、外傷というよりかは精神面での痛みが大きかった
彼女が泣いたのだ。尋常じゃないほどに
それは初めてであった
彼女は持てる力を持って自分を治癒してくれた
しかしその行為も虚しく、自分は死を迎い入れた
最期に見えたのは啜り泣く彼女の姿と、彼女の姿をした何かであった


252 : ○○ :2015/09/14(月) 06:26:37 UsGX5pD6
死後自分は旅をしていた
先の見えぬ道をただひたすら歩いていたが、何処も見覚えがあった

彼女と共に歩んだ道であったからだ

ここを通るたび自分は無意識のうちに彼女を探していた
やはり自分は彼女に依存していた
そして見つけ出した

見つけ出した彼女は変わらずの笑顔であった
変わらない笑顔を見せる彼女に触れる。瞬間

それは幻影かの様に崩れ落ち、粉となって自分の前から消えた

自分は愕然とする
長い時間かけて、何度も何度も声を出して、
呼び求めた彼女はいずれも偽物でしかないからだ
涙は出ない。とうの昔に枯れ果てたからだ
血は出ない。とうの昔に絞り尽くしたからだ

だが声は出る。何度も何度も、何度も出しているのに一向に枯れる勢いがないからだ
自分の声を振り絞り、今までよりも大きい声で彼女の名を呼ぶ

「フラーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!!!」


「○○?○○なの!?○○ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!」



「また、だわ」
紅魔館の図書館は地下室の上にある為、地下の振動はよく伝わる
そして、その振動の正体はわかっている為、レミリアは魔術書を持ち地下室に向かおうとする
それをパチュリーが止めた
「レミィ、これ以上は駄目よ。いくら貴女でも身体の限界を過ぎてるのは分かってるでしょう?」
レミリアの身体はボロバロであった
ここ約500年間、時間を問わず暴れ出す二人、フランドールと○○の暴走をレミリアは不眠不休で止めていたのだ
「お願いだからこれ以上は止めて。貴女まで消えてしまったら今度こそ二人は止められなくなるのよ、だから此処は抑えて、私に任せて」
「止めてパチェ、私をこれ以上迷わせないで」
パチュリーの抵抗虚しく、レミリアはずかずかと図書館から地下室に向かう
「これは罰なのよ。二人が亡霊となって暴れ出す様になってしまったのは私のせいなの。あの時…400年前の大戦争に巻き込まれる様なところに私が住んでいたからあの二人まで巻き込まれてしまった」
「……」
「本来ならあそこで死ぬのは私一人で十分だった。なのにあの二人が死んでしまった。……この責任は私が一生を捧げても払いきれない。400年どころか800年も10000年捧げてもまだ足りないのよ。それほど幸せの代償は大きいのよ。」
喋っている内にレミリアは図書館の入り口に立つ
ドアに手を掛け、開ける
「……ごめんなさいパチェ。貴女の心配を無駄にして。でも私に出来ることはこれぐらいしかないの」
やがて閉まるドアと共にレミリアの姿は見えなくなる

「…最早形式美ね」
館全体に結界を張りながらパチュリーは呟く
この約500年間、あの二人はほぼ毎日暴れ続けた
理由は実に簡単だ。どちらも求めているのだ
フランが○○を、○○がフランを
死後もその愛は途絶えず、寧ろ生前よりもずっと大きくなった
「本当に愛は厄介ねぇ……だからあの時少し離しておけばよかったのに……」
心の不安に負けて放置していた自分を恨み、今日もまたパチュリーは結界を張るのであった

ー自分が信じたものほど、自分が嫌うものは潜んでいるのだろう
〈了〉

文書がだいぶおかしいですし、全然病んでませんが徹夜明けなので勘弁してください


253 : ○○ :2015/09/14(月) 18:58:35 UsGX5pD6
>>252の誤字の訂正

ボロバロ→ボロボロ

ややこしくしてすみません


254 : ○○ :2015/09/14(月) 22:34:08 VS8pkMaE
>>245の続き
××なんて女より、私の方が良いに決まっている。
私は、心を読み、あなたの望みをなんでも叶えてあげられる。
 
「○○さん、美味しいですか?」
「はい、とっても美味しいですよ」
……少し塩分を控えめにしようかしら。
 
「○○さん、湯加減は如何ですか?」
「はいー。ちょうどいいですー」
……もう少し温度を上げようかしら。
 
「…………」
「なんですか?さとりさん」
「いえ、なんでもないわ」
……何で○○は感謝の気持ちしか向けてくれないのかしら。
こんなにあなたに尽くしているのに。
あなたが望むのなら、何でもしてあげるのに。
だから、安心して××のことを忘れてよ。
 
 
……へえ、面倒臭い男が最近いるの。
じゃあ消しましょ。
……へえ、付きまとう女がいるの。
じゃあ消しましょ。
 
……なんで暗い顔してるの?
……え?周りの人が死んでいくから疫病神扱いされてる?
……じゃあ、周りの人をみんな消しましょ。
 
こんなに尽くしているんだから、早く、感謝以外の感情も頂戴よ。
ねえ。
ねえ。
頂戴よ。


255 : ○○ :2015/09/15(火) 00:34:38 4lDJasrQ
>>254
乙です
さとりは愛を求めるヤンデレがよく似合うね


256 : ○○ :2015/09/15(火) 23:07:35 01igcwoQ
有難う御座います。
一応続きは考えてあるので、暇があれば出したいと思います。


257 : ○○ :2015/09/17(木) 08:32:03 AAKJmRYQ
東方キャラは愛に飢えている法則だな。

こいしとか、さとりは心が読める故に孤独感が凄いんだろな。


258 : ○○ :2015/09/17(木) 12:24:31 se08EAWg
wikiが死んだようだ


259 : ○○ :2015/09/17(木) 13:33:01 btT7Dqjw
wikiは少し前からトップページがおかしくなってたが、またなんかあったのか?


260 : ○○ :2015/09/17(木) 21:53:28 95uQzK3I
通りすがりだけどとりあえず復元してみた
これで合ってる?


261 : ○○ :2015/09/17(木) 22:28:40 Lkk5wAZ2
復元感謝です


262 : ○○ :2015/09/18(金) 00:37:32 dQXHBH3g
上メニューの編集履歴(バックアップ)から遡って復元できるよ


263 : ○○ :2015/09/18(金) 20:38:11 R4EkHCsQ
わーい。wiki復活を祝って。
>>254の続き。
 
○○は、一人で部屋に籠もり、考え事をしていた。
「……最近、変な事が起こるなぁ」
思っただけで要望が通ったり、身の回りの人が死んだり。
あまりにも偶然とは思えない事が重なっている。
「……俺のダチも、死んじまったし」
人が死に始めてから、人里に行っていない。いや、行けなくなっている。
周りから殺人鬼やら、悪霊やらいわれている。今では誰も口を聞いてくれない。
「……こうなったのは」
○○は無意識に口に出していた。
「……さとりさんと会ってからか……って!関係ある訳ねえだろ!何考えてんだ俺…!」
無理やり自分を納得させようとする。
しかし、○○は否定しきれなかった。
「……はぁ」
○○は、自分が嫌になった。あんなにも感謝してるさとりさんが、そんなことする訳が無い。きっと偶然だ。
「……よし。洗濯でもするか」
そう言って、○○は立ち上がった。
 
 
「どうしようどうしよう……」
さとりは、○○の部屋の前にいて、偶然話を、心を聞いてしまった。
「もし○○が私の能力を知ったら……」
きっと、いや、絶対。
○○は私から離れていってしまう。
「うわああぁぁぁん……」
さとりは手で顔を覆い、泣いた。
まだifの話だというのに、本当のことのように泣いた。
やっと手にした愛。それが失われようとしている。そう考えていた。
 
涙は、しばらく枯れることはなかった。
 
失踪しなければ続く。


264 : ○○ :2015/09/18(金) 23:09:39 F16tY5dg
殺ると決めたら直ぐに殺るさとり様いい……


265 : ○○ :2015/09/19(土) 12:40:27 yrYIHZfU
>やっと手にした愛
>やっと手にした愛
>やっと手にした愛

まだ手に入れてねーだろーが( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン


266 : ○○ :2015/09/19(土) 12:50:53 pNc5eYGk
>>265
ワロタ


267 : ○○ :2015/09/19(土) 16:10:17 UXu29Wpc
初めて手にした異性へ向ける愛情と判断していただければ幸いです。
言葉足らずでしたね。申し訳ございません。
 
あと書いた僕も吹きました。


268 : ○○ :2015/09/19(土) 16:35:41 OSmfXYrA
こいしがさとりにパーンしたんだろうなと、勝手に思ってしまった
また、こいしちゃんなら躊躇なくやりそうで

ここまで書いて思ったが、古明地姉妹に好かれるのって、精神やられそうだな
スカーレット姉妹の場合は、肉体的な感じがする


269 : ○○ :2015/09/19(土) 21:59:32 ij6.Vdfw
>>247>>248の続き

「目覚めはどう?」
「……最低だ」
目を覚ました○○は吐き捨てるように答えた。
清潔そうなシーツの上から降り、そのまま部屋を出ていく。
「お疲れ様、お金は受付で受けとってちょうだい」

久しぶりの纏まった金もさっき見た悪夢を掻き消してくれなかった。
どうにも過去を拭いきれない。未だに頭にこびりついている。
(もう関係ない事だ、白蓮も慧音も関係ねぇ)
慧音を姉では無く昔の呼び方で呼んでいる事に気づいていない辺り、
過去を思い出す事は○○にとってよほど嫌な事なのだろう。
冷静になりきれていない。
(金は返して……それからどうするか)
いつも通りに戻るだけだろう。つまり、自堕落な生活に戻る。

私は時々昔の事を思い出す時がある。
○○という半妖に対し、自分があそこまで関わりを持った時の事だ。
まだ封印される前の話になる。
あの頃、私は妖術で死と老いを遠ざけて、自分の妖術を維持するため、
自分の欲のために妖怪を助けていた。
「酷く凶悪で手に負えない妖怪がいる」
そんな話を聞いたのは何時だったか。
あちこちで戦が起き、僧すらも血生臭い事に精を出していた。
そんな世だからか、人は不安に駆られ、ただの盗賊を妖怪だと間違えるような事も多くあった。
その話もそれだと思っていた。
「あの山に入ったお侍も戻ってこねぇし、尼様の法力でどうにかできねぇですか?」
そういった少女はその化け物に父親を殺されたらしい。
父親は化け物退治に赴き、そして戻って来なかったそうだ。
「ええ、仮に妖怪なら二度と悪さ出来ないようにしましょう」
私はその妖怪がいるという暗い山に向かった。

当分続く


270 : ○○ :2015/09/21(月) 05:17:32 yGSRntrc
3レスほどお借りします。


慣れた事だ。

俺は退治屋。
頼まれれば何だって殺して来たし、
今回もそれは変わらない。

対象は妖怪で、ここしばらくは異能の者からの攻撃ばかり受けて来ている。
だからまず、協力者に弾幕での攻撃を仕掛けてもらった。

協力者にはわざと負けて逃げてもらい、狙うはその直後に出来る隙だ。
気配を消す訓練はし直した。
短刀も巫女の力を付与されてる。

奴は人外に向けての、異能の戦い前提の道具ばかりだ。
挑みかかった者も、同じく異能の者。故に道具の力の前に敗れたとの事。

ならば、物理はどうだ?
一か八かだが、そこで俺にお鉢が回って来た。

神経を研ぎ澄ませろ。
後ろから首に腕を絡めて、一気に急所を刺す……!


………今だ!


「がはっ…………!?」


決まった!
個人的にも、こいつのやり口は気に喰わなかったんだ……このままくたばれ、鬼人正邪……!


「ぐ……い、痛いじゃないか……やるな人間……。」
「今際の際までその態度か?腹の底まで天邪鬼だな。」
「ふふ……良い、良いぞ、お前の嫌悪と殺意をひしひしと感じる……。
抱きしめられながら…感じる殺意とは………極上なものなのだな……惚れて…しまいそう…だ……。」


いかれてやがる。

上気した奴の頬に寒気を覚えた俺は、すぐに心臓から短刀を抜き出した。

胸から滝の様に流れる血と、大量に吐き出された血。
巫女の力で傷は塞がらず、奴が死ぬ事は間違いなかった。

もう一つ、今度は長刀を取り出す。
これで終わりだ。


「何か言い残す事は?」
「ふふ……なあ…私を殺す事で、お前は気が晴れるか?」
「生憎だが、個人的にもお前の事は嫌いでね。心底スカッとする。」
「そうか……ふふ……。
…………あはははははははは!!!!」


その声は、正気を打ち砕くような笑いだった。

たまらず抜刀し、それはそのまま奴の首を撥ねる。
切断された首は、まるで意思を持つかの様に俺の元へと飛び。


そして、唇を重ねてきた。


“また、会うだろうな”


下卑た笑みを浮かべながら、奴の口は、そう声にならない言葉を紡いで俺の足元に転がり落ちた。


……終わった。

任務を終えた事への安堵はない。
あったのは、ただ奴に奪われた唇への不快感だけだった。

転がる頭部は尚も下卑た笑みを浮かべ、見開かれた目もまた、目尻を垂れたままだった。

……気持ち悪い。
しかし、亡骸を八雲紫に渡さねばならない。

頭を風呂敷に包み、身体は背負って雨の中を歩く。

背中に当たる胸の感触、なめらかな肌、まだ残る体温。
否応無く女である事を意識させるそれらも、それが死体、それも奴のものである以上、俺にとっては不快なものでしかなかった。


271 : ○○ :2015/09/21(月) 05:18:39 yGSRntrc
続き


死体を八雲へと引き渡し、ようやく安堵を得たのはその直後だった。
褒賞の話など後で良い、とにかく風呂に入りたかった。

その日、俺はいつもよりずっと長風呂をした。
しかし染み付いた嫌悪感と感触は、ふとした瞬間に蘇り。
その度に立つ鳥肌に、肌を剥がしたくなるような、かぶれにも似た不愉快さを感じていた。

多くの退治をこなしてきたが、こんな事は初めてだった。




それからしばらくは、いつもの日常が続いた。

その後褒賞だけ受け取り、英雄としての名誉は辞退した。
英雄として崇められれば、その度殺した者の名も出る。

俺の名と鬼人正邪の名が、同時に人々の口から聞こえるのは不愉快でしかなかった。
故に、そんな名誉は不要だった。

頼まれれば殺す。
そこに何も不快感は無いし、後悔も無い。
それはその後舞い込む仕事に対しても、何も変わらなかった。

ただ、時折思い出す。

奴を殺した時の、例えようの無い不快感を。
神経を逆撫でる声色を。
下卑た笑みを。


首を斬られる時の、儚げな微笑みを。


アレはそう……命乞いではなく、恋をした女のような、寂しさをこらえているような……。

………いや、何を考えている?
殺した奴らの顔なんて、半月もすれば俺はまともに思い出せない。
何故あいつだけ妙に思い出す?

……後悔?
違う!不快感が抜けないだけだ。

そうだ……新しい依頼があった。
いつもより、激しく斬ってしまおうか。
斬って斬って斬りまくれば、やがて死体の記憶の山で、あいつの姿なんて追いやられる。


ああ、痒いな。
ぞわぞわと立つ鳥肌が。








“もうすぐだ……待っていろ………”


272 : ○○ :2015/09/21(月) 05:23:42 yGSRntrc
続き


結論から言えば、血を重ねれば重ねるほど、あいつの影は濃くなって行った。

頭の中が真っ赤になりそうな視界の中でも、真っ赤に染まった立体として、正邪の顔が浮かぶ。

あの時の、儚げな微笑みが。

何故俺は斬った?
助けを求めるような、孤独に震えるような微笑みを前に、何故俺は刀を振るった?

しかしそう考える程、同時に吐き気を催す程の嫌悪感にも襲われる。

悔恨と不快感。
気付けば正邪に関する事を、四六時中考えては鬱屈していた。


食欲が無い。眠れない。
あいつの感触が肌を巡っては、皮ごと剥がしたくなる程の不快感が巡る。
四六時中体調が優れない。
仕事も暫し休業し、俺は床に伏せるようになった。

心臓を刺す為に抱き寄せた感触が、ひどく生々しく蘇る。
乾きにも似た憧憬が、吐き気を催す程の嫌悪が、同時に心臓を締め付けていた。

………死ぬのかもしれないな、このまま。


そして数日が過ぎた。

繰り返される幻影に衰弱した俺の体は、気付けば随分と痩せ衰えていた。
今も幾度となく、正邪の顔がちらつく。
その度に軋む体の痛みですら、何処か遠くに感じる程慣れてしまった。

ほら、今もまた……。


「待たせたな、人間。」


幻影では、なかった。
何故だ!?何故生きて……いや、違う……。

「ふふ……私は確かに死んだよ……罪人の魂として、幽閉される所だった。
ほら、脚がないだろう?簡単な事だ、脱獄してきたのさ。」

あの下卑た笑みを、さらに恍惚に染めながら。正邪は俺の上へと重なってきた。

感触は無い。
しかし、確かに抱き締められる感覚があった。

肉体をすり抜け、俺の魂そのものに触れる形で。
そして息をさせぬような、深い口付けを交わしてきた。

「殺される時に、初めてお前の姿を見たんだよ……一目惚れだった…。
でもあの時、私はもう助からなかったからな。だからひっくり返したのさ。

“私を殺したと言う達成感”をな。

随分と後悔して、そして余計に嫌ってくれていたみたいじゃないか……そんなに痩せるまで。
嬉しいよ…私の事ばかり考えてくれて……。」


ずるずると、意識が引きずり出されるのを感じる。
ひどく不快で、吐き気すら感じる嫌悪。

そして、植え付けられた後悔からくる安堵が俺を襲った。

やめろ………やめろ!!


「ふふふ……良い…良いぞ…ぞくぞくする!
達成感以外は、何も弄ってないんだよ……お前の腹の底からの嫌悪は、実に私を焦がれさせる!

私の生涯も野望も、お前がめちゃくちゃにしたんだ!
なのにこんなに恋焦がれるなんてなぁ………なぁ、責任取ってくれるよな!?」
「やめろ………お前なんか大嫌いだ!消えろ!」
「あはははははは!!!私は好きだぞ?
お前は取り殺されて死ぬんだ……永遠に、お前の魂は私のものなんだよ……。

もっと憎め!もっと悔やめ!
私の事以外何も見るな!何も考えるな!

……私だけで、お前を埋め尽くしてやるよ。
さあ……イッショニイコウ?」
「ああ……あああああああああ!!!!!」



数日後。
異臭に気付いた近所の者が訪ねた折、死後数日を経た彼の遺体が発見された。
布団に横たわってこそいたが、もがくように腕は硬直し、その顔は苦悶と恐怖を浮かべていたと言う。

彼岸の船頭によれば、それと思しき魂を渡した記憶は無いと言う。

そして地獄の牢から脱獄した、とある凶悪な妖怪の魂も。

今もまだ、見つかっていないとの事だ。


273 : ○○ :2015/09/21(月) 22:54:43 IfAgW8Ys
これが一目惚れか(錯乱)


274 : ○○ :2015/09/21(月) 23:20:16 hqBprZzo
正邪のヤンデレは滅多に見ないから満足したよ
いい作品が増えてきたしそろそろwikiにまとめた方がいいかな


275 : ○○ :2015/09/22(火) 00:59:06 opOESBbM
忘れられぬ様魂に傷を付けておく感じで結構好きなシチュ。
人は一生のうちに魂がすり減ったり傷がつくらしいがついた傷は生まれ変わるまで消えないらしい0(:3 _ )〜


276 : ○○ :2015/09/22(火) 01:10:06 opOESBbM
東方の同人曲に「貴方と私」ってのがあるんだけどそこそこヤンデレ感出てる。
ttps://youtu.be/xS7hI4t1aQw


277 : ○○ :2015/09/22(火) 08:37:08 N3D1GnhU
ロマンチック早苗ラブって曲もヤンデレ臭するぞ(IOSYS)


278 : ○○ :2015/09/22(火) 22:45:46 twdOaRds
鈴仙の話の続き(完全に忘れられてるが)


「・・・はぁ、師匠は本当に意地悪だ」
○○さんが帰った後に『夕食の材料買ってきて』だなんて
し、しかも○○さんと距離を縮めたらなんて・・・
む、無理!絶対無理!恥ずかしい!そんなことしたら・・・?
その時、人混みが見えた
何かの宣伝をしてるのかな?
そう思って行くと、周りの人が少し騒いでいる
「痣だらけで酷い顔だ」「何か気持ち悪い・・・」「けっ、めんどくさい事を・・」
怪我人かな?しかたない。お使い中だけど仕事を
「お、おい!しっかりしろ○○!」
・・・え?○、○ですって?嘘
私はその言葉を聞き、不安になって走り出す
人混みからでると、慧音さんと、商店で見た女性そして
傷や痣だらけで倒れている○○さんだった
な、なんでこんなことに
「う、嘘・・・どうして」
ふいにそんな言葉が漏れる
「お、お前は確か永遠亭の・・・」
さっきの言葉で慧音さんは私に気付き、こちらを向き頭を下げている
「頼む!○○を助けてくれ!」
「僕からも頼む・・・いや、お願いします」
隣の女性まで、私に頭を下げてきた
なんで?何でこの人達はこんなに○○さんを・・・いや、それより
「・・・わかりました、急いで永遠亭で治療します」
そう告げて、○○さんを背負って走る
『余計な事をしやがって』
『慧音さん達も見殺しにすればいいものを・・・』
『里の殻潰しが死ねば生活が少しは楽になるのに』
後ろの罵倒に怒り狂いそうになるのを耐えながら・・・

・・・ん?ここは、どこだ?
俺が目を覚ますと、見慣れない天井が見えた
「どこだここ、俺は一体・・・っ」
身体を動かそうとすると、鋭い痛みが全身を襲う
・・・冷静に考えてるが、これ意外と辛い。
その時入り口?が開き、一瞬で抱きつかれた
「よ、よかっだ。○○ざんじんじゃったら:@%#>+」
よく見たら、鈴仙か・・・途中何言ってんだ?というか
「痛い痛い!涙が傷に沁みる!」
そういうと、鈴仙はすぐ離れてくれた
あぁ・・・一瞬ぼんやりだが小町が見えた

「どうだ?落ち着いたか?」
起きてから十分程、鈴仙をなだめていた
何故起きてすぐに、子守(妖怪だけど)しないといけない
「だ、大丈夫、です」
鈴仙の言葉は歯切れが悪く、顔を赤らめている
「・・・恥ずかしいのか?」
「ち、違います」
あれ?外れたか。じゃあ・・・何でだ?
「だって○○さん、三日も寝てたから・・・
もし、もうこのまま目覚めなかったらって」
「へぇ・・・って、三日!?」
やばい、三日分の仕事サボっちまった!
元々0に近い信用が0どころかマイナスに・・・
「ははは、終わった・・・俺の何でも屋(主に運搬)人生が・・・」
「だ、大丈夫です!依頼者さんに言って置きました」
マジで?よかった〜・・・けど
「またこうならない様に対策を考えないと」
今度は、確実に潰しに来るだろうな
いっそ、常に短刀を携帯するか
「ああ、それも大丈夫です」
「え、何でだ?」
まさかずっと護衛してくれるとか?
「だって・・・もうそんなことする奴はいませんから」


あ、この後どうしよう・・・
とりあえず遅れた分は書いた


279 : ○○ :2015/09/22(火) 23:39:43 dL8H7JYQ
>>278
待ってたよ、やはり鈴仙にはヤンデレが合うな(偏見)


280 : ○○ :2015/09/23(水) 06:33:17 d9MwapvI
ライブ感だな
いいぞぉ
展開なんて書いてから決めるそれでいいんだよ(ロック)


281 : ○○ :2015/09/23(水) 10:02:25 D/YgVpPg
くそぅ……さとり様の話Happy endとBad endどっちにしよう……
とりあえず短いけどストーリーを進めるか……
 
「さとりさん、最近元気が無いようですが、大丈夫ですか?」
「え、ええ……大丈夫よ」
○○の心を、××じゃなくて私が独占している。
数日前の私なら、すごく喜んでいただろう。
しかし今は、○○の気持ちが純粋であればあるほど、胸が痛む。
いつか、○○が私の能力に気づいたら、○○のこの思いはひっくり返るだろう。
恐怖するだろう。
軽蔑するだろう。
……私から、離れていくだろう。
それは、決して夢物語ではない。
勘のいい○○なら、いつか必ず気づくだろう。
「…………!」
私は、思わずしゃがみ込む。
「大丈夫ですか!?さとりさん!?」
止めて、そんなに心配しないで。
優しくされればされるほど、あなたを失いたくなくなってしまう。
ああ、どうせなら、いっそ……
「……○○さん」
私はゆらりと顔をあげる。
「っ!は、はい……」
「……私のこと、全て…教えてあげます」
いっそ、今嫌われよう。
 
さあ!HappyとBadの分岐だ!どうしよう!


282 : ○○ :2015/09/23(水) 11:50:23 Voc/dfmk
好きなようにしたらいいんじゃないないかね?


283 : ○○ :2015/09/23(水) 13:07:54 tyLBnadY
両方やったらいいんじゃないかな


284 : ○○ :2015/09/23(水) 14:24:22 XeQCQwLQ
間を取ってこいしちゃんが横取りする展開で゚+.(*ノェノ)゚+


285 : ○○ :2015/09/23(水) 21:57:10 pfcjdJdU
じゃあ、とりあえず分岐を思いつくだけ書こう(自棄)
だが、もう少し進めないと分岐できなかった。

・・・今、何て言った?もう居ない?
それってまさか
「おい!一体何をした!」
「何って、簡単ですよ」
鈴仙は一呼吸おいて、笑顔を交えて言った
「ただ、目を見て話し合っただけですよ」
「嘘をつくな!それだけで収まるわけが・・・!」
いや、こいつならそれで解決できる
少し、いやかなり怖いが鈴仙に訊く
「どうして・・・いなくなった」
「単純です、目を見てた人達の視覚を狂わせて
お互いが化物に見えるようにしたんです
とても滑稽でしたよ?仲間同士で殺しあってたあの醜い姿は
仲間を殺した後に能力解除をしたら『あ・・ああ・・』って絶望した顔は
でも、仕方ないですよね?それ以上の事を○○さんにしたんですから
ずっと生き地獄のような状態にするよりましじゃないですか?」
「だからって・・・何も殺すことは」
「殺す理由があるんですよ」
鈴仙は、似合わない程の妖艶さと狂気を含んだ笑みで答える
「だって好きな人に危害を加えられたんですよ?それは怒り狂いますよ」
「え・・・」
鈴仙が、俺を好いている?
「でも、○○さんも悪いんですよ?
ちゃんとアピールしてるのに毎回、茶化した態度でいて
それなのに、××さんや慧音さんとは積極的に関わってる
なんでですか?私の方が愛しているのに、○○さんの事知ってるのに
私、あなたの為なら何でもできますよ?
殺せと言われたら、誰だろうとどんな手を使っても殺します
して欲しいことがあるなら、どんな難題もして見せます
だから、私を愛してください、その眼で私だけを見て下さい
その耳で私の声だけを聴いて下さい、私だけを感じてください」
鈴仙のその姿を見て俺は・・・


とりあえず分岐の一行前まで来た
次は逃走ルートを書く


286 : ○○ :2015/09/25(金) 02:08:32 2xGj9X2E
書き手の人に聞きたいんですが「ヤンデレ」を書くにあたって気をつけてる事ってありますか?
自分で何か話を書こうとすると東方キャラやヤンデレをダシにオリジナルの話作ってる感覚に陥ってしまうんですよね


287 : ○○ :2015/09/25(金) 02:30:48 YxNRNCAA
自分は基本、東方の世界観を壊しすぎなければ大丈夫だと思う
まあ個人的な意見だから、他はどうか知らないけど


288 : ○○ :2015/09/25(金) 11:27:10 auYkNJJ.
やっぱり愛だろ、愛
一応ルーミアから紫まで書いてきたけど嫁キャラでなくても書こうとするとスゴく愛情わくよ
だからヒロインだけは幸せにするよ 。なるべく。


289 : ○○ :2015/09/25(金) 15:33:13 pFzQP126
感情を言葉にするとき、出来るだけオブラートに包んで、包み切れなかった分をいっきに。
感情を抑えている表現と、あふれ出す感情の表現。

当事者同士ではオブラートな会話、行為にみえるけど。
第三者視点からはダイレクトな表現を。


290 : ○○ :2015/09/25(金) 23:55:38 pZLZddJY
狂気だけじゃなく、切なさもちゃんとヒロインが持てるように。

○○の設定なり人格は、ヒロインにとって混ぜたら危険な方で対になるように。


291 : ○○ :2015/09/26(土) 01:06:04 ffk4IbX6
ヒロインの病み方をワンパターンにしないように気をつけてる。


292 : ○○ :2015/09/26(土) 07:04:54 Qy7jMYMo
病むまでの過程も大事にしてますね


293 : ○○ :2015/09/26(土) 10:37:08 qh77nA/M
○○は薄味で。なるべく嫌われないように。
それでもヒロインが好きそうなタイプで。
あとこれは絶対になんだが、ヒロインのアマアマな甘えかたを想定しておく。
これを設定しておくと、病んだときに○○へどういうアクションとるか決めやすいよ。


294 : ○○ :2015/09/27(日) 13:21:54 ZaOSRkrs
多くの意見ありがとうございます
可愛いヤンデレを書けるよう精進します


295 : ○○ :2015/09/27(日) 16:32:39 qtlj8k5w
>>281の続き
 
私は、全てを語った。能力のこと、○○への独占欲、××への嫉妬心……
否、全てではない。怖かったのか、周りの人を殺したことは言わなかった。
 
「…………」
途中で自分でも何を言っているか分からなくなっていた。
しかし、とりあえず今の気持ちを言った。
「……御免なさい」
それは、色々な意味を込めた謝罪。
やはり口に出すと、とてもつらい。
涙が止まらない。
そんな中、○○は言った。
「……なにがですか?」
「えっ……」
なにがって?決まってるでしょう?あなたを、騙し続けてたんだから……
「逆に言ってくれて、有り難う御座います。成る程、だから色々思い通りになったんですね〜」
うんうんと頷く○○。
私は、予想してた答えと180度反対で、呆然としていた。
「……なんでかって顔してますね。嫌われるとでも思いました?
 ……僕はさとりさんに感謝してるんですよ?」
……そうだ、○○は私が好きになった人だ。人を傷つけることを言うはずがない。
「…………っ」
改めて、○○のことが好きだと確信する。
「……それに」
「?」
「僕もさとりさんのこと好きですから」
「えっ……」
思考が止まった。
「そんな……そんなはずは無いわ……あなたは……そんなこと一度も思わなかった……」
「うーん、そうですね。じゃあちょっとだけ訂正します」
そう言うと、○○はゆっくりと言った。
「“今”好きになりました」
「…………!」
心を読む。その言葉に、偽りは無かった。
○○は、続ける。
「つまり、私のことをそこまで思ってくれたんですよね?恩人にそこまで思われて、嬉しくないはずないですよ。人に言われて、初めて気づく愛もあるんですから」
「でも、私は……」
まだ、あなたに人を殺したことをいっていない。
「ああもう、あなたが言っていた独占的な愛はどこいったんですか?もっと私を求めて下さい」
 
……嘘も方便。知らぬが仏。
今は、これでいい。
いつか、私の心の準備が出来た時に話そう。
きっと、彼は許してくれる。
「そうね……お言葉に甘えるわ」
今は、この幸せの中に。
 
 
Happyなのか……な?ひとまず終わりです。暇があれば失恋や、こいしちゃんがとっちゃうエンドもやるかも。(オイ
にしても文才が欲しい……
誰か続き書いてくれないかな……スイマセンチョウシニノリマシタ


296 : ○○ :2015/09/27(日) 18:33:12 N3vaRpWI
何を言ってるんだ?
むしろ最高だよ!


297 : ○○ :2015/09/27(日) 22:13:00 WWfjbXms
藍しゃまのヤンデレ書きたいけど話が思い付かないんだ
好きなシナリオとか書いてくれると助かる


298 : ○○ :2015/09/27(日) 22:47:43 oh7JbAG2
いつのまにか○○が紫か橙と恋人同士になり、諦めることができないでヤンじゃう とか?


299 : ○○ :2015/09/27(日) 22:53:56 4oD1XAA.
ケモが怖い○○なんてどうかな。
ほら、犬苦手とか怖くてダメって人いるから……
もしくはアレルギーがあるとか


300 : ○○ :2015/09/27(日) 23:07:14 kYSeod/c
ベタだけど怪我をした○○を見かけ、藍は人間に化けて○○の治療をする。暫くの間共に暮らすけれど○○は怪我が治り人里に帰る。
でも藍は○○に惚れてしまい、また人間に化けて人里まで会いにいく。

みたいな?なんかもう似たようなのあったっけ?


301 : ○○ :2015/09/27(日) 23:26:09 lxXo0yIk
ほんとうに○○のことが大好きでしょうがなくて、○○にも同じように愛してもらいたくて四六時中べったり。
だけど○○はうんざりして距離を置いて(嘘の別れ話とかも交えて)しまう。
あまりのショックに藍が病む。


302 : ○○ :2015/09/28(月) 20:10:11 G5iNo23g
個人的にだけど、ネタ被りは気にしたら敗けだと思うよ。
多くの人が絶賛した阿求のひとですら、細部ではネタ被りしてるし、きにすんな!
って、そろそろ俺も書かないとなぁ……


303 : ○○ :2015/09/28(月) 23:20:37 TTUBba4Q
>>302
成る程、気にしたらキリがないですね。じゃ考えた設定で書いてみる事にします


304 : ○○ :2015/09/29(火) 02:19:44 vymMkwx6
里とか寺とか屋敷とかに住んでない娘達ってお風呂入ってるんだろうか


305 : ○○ :2015/09/29(火) 21:03:31 LRMNA9.Y
①間欠泉の異変
②川で水浴び
③三途の川で水浴び
④妹紅が焼き鳥屋の副業で風呂屋を開業


306 : ○○ :2015/09/30(水) 12:06:19 ISLXoJps
入ってないよ
悪臭爆弾だ

ンンッ・・・ マ゜ッ! ア゛ッ!
エ゛エ゛ッ!! ゥオエェェェエエエ!!! ア゜エ゛エエエエエエエ!!


307 : ○○ :2015/09/30(水) 23:36:55 QWCMNs32
色々とやらかしてしまってはいるけど、
文でいろいろ書きたいなーと思っている今日この頃である。
書くとしたら時間があまりないから続きはどうしても長くなるだろうけど…


308 : ○○ :2015/10/04(日) 04:44:49 DYBxeIXM
ノブレス・オブリージュに囚われて(79)
ttp://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=39700&n=69

書いてる時が一番楽しい
順調にかけたらもっと楽しい
コメントがあると飛び上がります

>>307
長引いても良いんです。短くても良いんです。
完結させていくうちに、能力は上がって行きます


309 : ○○ :2015/10/04(日) 22:13:15 YwBe621U
ギスギス命蓮寺
つづき

「聖、もし良かったらですが、今日の説法は私もご一緒しましょうか?」

そう○○が切り出すと、聖の瞳孔がまるで猫如くすぼまった。
無言でキィ……っと○○へと首を巡らす。
それから数瞬の間、一同に会した面々は箸を動かすことも出来ず、ただ膳を前に朝日を浴びる他なかった。
ここ最近、聖白蓮の意識はときに曖昧であった。
誰も居ない場所で「誰か」と会話していたり、逆に皆の前でも誰も見ていなかったり。
これを、寺の面々は心配しながらも、一種近寄りがたい雰囲気を怖れていた。

「はい、喜んで。宜しくお願いしますね」

聖白蓮は微笑んだ。
ここまでの間に彼女の中で如何なる修正が行われたのか、知るものは居ない。
聖の妄想のなかに生きる○○と、現実の○○との差違を重ね擦り合わせ、同一のものへと変える。
自覚的に行っていた筈の幻の○○と自身の生活。それが白蓮の認識を侵していったのはいつだったか……
微睡むようななかで過ごす○○との世界は、常に優しく、甲斐甲斐しく寄り添い、聖白蓮を忘我へと誘った。
今回もまた、妄想の○○は白蓮に気遣い、明るく笑みを浮かべると現実の○○に重なり面影を一つとした。
かち、と箸を進めお新香を摘まむと、白蓮は艶やかな唇へと含んだ。

「ふふ美味しいですね」

そう呟いた。
それを合図にしたかのように、葛切りのように凝固した空気はほどけた。
○○と寅丸の関係を知る一輪が一瞬、なんと声をかけたものか悩んだ。

「頑張って下さいね」

結局そう声を掛けたのは他でもない、寅丸星である。
それが誰へと向けた言葉であったのか、知るものは彼女しかいない。しかし星は笑顔であり、頑張ってきますと応えたのは○○のみであった。


310 : ○○ :2015/10/06(火) 17:57:56 vaJxzxTI
○○の前では、高度に演じきってるのが
彼にとっちゃ最大の不幸かもな


311 : ○○ :2015/10/08(木) 20:34:01 YLZsnhrs
ギスギス命蓮寺
つづき

聖白蓮が何故このような曖昧な精神状態に至ったのか、○○には知る由も無い。
だが、それでも嘗て愛した女が異常な状態に陥っているのは知っていた。
何か悩みでもあるのだろう、そう思い全くの善意で同行を申し出たのは誰の目にも明らかだった。
しかし、それを分かっていても不満に思う者がいた。

「……まあ、いいんだけどね。何か約束とかしてたわけじゃないしさ……」

村紗水蜜は、朝食後の膳を清める○○の背中へと寄り掛かりながら唇を尖らせた。
慣れたものなのか、村紗を背中に受けながらも○○の手は淀みない。
まあそう拗ねるなよとあやす○○に、別に全然拗ねてないけど……と、村紗は分かりやすく拗ねて見せた。
勿論わざとである。
ーー日々着々と膨らむ村紗の想い。
自分を知って欲しい。自分の心の在り方を、自分よりも知っていて欲しい。
体を知って欲しい。今、預けた背中から伝わる熱を自分がどんな風に感じているのか知って欲しい。
育まれる自分移り変わりを、すぐ近くで見ていて欲しい。
手をとり、身を寄せて欲しい。
最早はっきりと、村紗水蜜は自分が恋をしていることを自覚していた。
寅丸星と○○の関係を知る彼女は○○を奪おうという気こそ起こさなかったものの、彼女なりのささやかな独占欲はきちんと持ち合わせている。
聖の居ない時で、且つ寅丸の邪魔にならない時間……
そのいっときを村紗はとても大事にしていた。
鼓動を打つことのない胸の奥に生まれ、全身を巡る暖かなモノ……
それを○○の体温で焙って貰う快感は、何にも変えがたい(彼女自身おかしなことだとは思うが)ーー生きている実感そのものだった。

それを、○○自身に御預けされたのだ。

(私がどれだけ辛いのか、○○は絶対分かってない! ふまん!不満だ!)

「おりゃー! この○○野郎ーっ」
「グワー!?」

不意討ちに、村紗は全力で抱き付いた。


312 : ○○ :2015/10/09(金) 14:17:53 JJszuCIE
均衡が崩れたか。全員が気持ちを隠さなくなったら、恐ろしい化学反応が待ってそう

それからこういう話に限らずだけど、命蓮寺が舞台の話では雲仙って何やってるんだろ


313 : ○○ :2015/10/11(日) 01:48:32 VF4DJ60w
かなり遅くなったがうどんげの続き(逃走ルート)


ただ恐怖を感じていた鈴仙という妖怪に
少し話をしていただけなのに、体が震え、嫌な汗が出る
「どうしたんですか!すごい汗ですよ!」
そう言って伸ばしてきた手を強く弾き、隣のベットに突き飛ばす
「きゃっ!」
そしてそのまま、鈴仙の入ってきた戸から出ていく・・・

どうして?なんで○○さんは私を突き飛ばしたの?
私から逃げるの?なんでなんでなんでなんで・・・

畜生、身体が痛い・・・全身が裂けそうだ
そんな事を思いながら俺は竹林を走っていた
逃走した理由はただ一つ、怖かったからだ
俺は幻想郷の女性に溺愛・・いや、狂愛された奴の末路を知っている
ある奴は死ぬまで、又は永遠に監禁され
ある奴は身体を失ったり、殺害されていたりもする
実際、それで何人も友人を失った
俺はそんな風にはなりたくない
ああ、早く里に帰りたい
早く帰ってあいつに、××に会いたい
そう思っている内に里に着いた
すると、その入り口に誰かが居る
よく見てみると、それは××だった
「××?何でこんな所に?」
そう言うと、俺に気付いたのか、××がこっちにくる
「あ、○○。お帰り」
そういって、俺に抱きついてきた
「え、××?おま、お前何を」
お、おい?今そんな事してる場合じゃ・・・?
その時、俺は××に違和感を感じた
暗くて余り見えないが、服装が違うような
それに声も少し違・・・!まさか
「ふふ、やっと抱きしめてくれましたね?○○さん」
病室からここまで、本当に一回も鈴仙の目を見なかったか?
やばい、そう思ったときにはもう遅くて
「私の目を見て話してくれましたね」
一体何を・・・まさか
「私分かったんです、貴方に愛される方法を」
やめろ・・・
「私が愛されないなら貴方が愛してる人になれば良い」
それだけはやめてくれ!
「さあ、○○さん・・・こっちを見てください」
そして、鈴仙に赤い目を魅せられて、俺は意識を失った


314 : ○○ :2015/10/11(日) 01:50:29 VF4DJ60w
鈴仙の話(逃走ルート)

  
最近鈴仙の様子がおかしい
この間、悪戯しても怒らなかったし
不意に何処かに行ってるし・・・
変に思った私は、鈴仙の後を尾行した
そうしたら里の近くの目立たない所に建つ、小屋の中に入っていった
気になった私は、その家を覗いてみた
「一体何が・・・?」
そこではうちにきていた○○と鈴仙が一緒に生活していた
しかし、どこかおかしい
鈴仙が人里の、それも男物を着ていた事、そして
「××は本当に優しいな」「ふふ、僕はそんないい奴じゃないさ」
××と呼ばれ、自分を[僕]と言った事
これを永遠亭に伝えようと思い戻ろうとしたとき
鈴仙が、こっちに殺意と怒りが混ざった様な視線を向けていた
「あ、ああ・・・」
私は余りの怖さに、逃げられなかった
いや、逃げたら殺される。そんな考えが一瞬で浮かび動く事すら出来ない
そんな状態でいたら、鈴仙が入り口を開き言った
「ねえ、てゐ。この事を話したら
アンタデモ殺スワヨ?」
その言葉を聞くと同時に頷き、永遠亭に走る
その時、あの小屋に居る○○を思い出し、少し心が痛んだ

まったくてゐは・・・油断も隙もないわね
この二人きりの空間を邪魔するなんて
「どうしたんだ?××?」
後ろから○○さんに尋ねられる
私は少し低めの声で言った
「何でもないよ?気にしないでくれ」
「そうか・・・ならいいんだ」
○○さんはそういって、笑顔で家に戻った
ああ、幸せだ!愛する人と二人きりなんて!
・・・でもなんでだろう、何で○○さんは心から笑ってくれないの?
なんで・・・嬉しいはずなのに、私は泣いてるんだろう・・・

その頃、商店の中で××は呟いた
「・・・はぁ。○○まだ直らないのかな・・・」
その言葉を聞いた老人が、茶化すように言ってくる。
「そうじゃのう、そして××ちゃんと結婚してくれたら、村も安泰なんじゃがの」
「お、おじいちゃん!?そ、そんなことは」
××が赤くなって言った。
老人は、更に続ける。
「ほっほっほ。二人はお似合いじゃし、技量もいいからのう
ま、村の馬鹿な若造どもはそれに嫉妬して自ら首を絞めとるんじゃが
あ、そうじゃ、○○が帰ってきたら積極的になったらどうじゃ?」
そう言い終わると、老人は帰っていった。
「まったく、あのおじいちゃんは本当に・・・
それにしても、遅いなぁ、○○は・・
・・・少しだけ、積極的になろうかな?」
この時、××は知らない。
○○が狂気の目を見て、自分の幻影を愛していることを
その事を知らないまま、希望を膨らませていた
後に、絶望することも知らずに・・・


END1 愛に狂う兎


これでいいのかな?書き忘れた文を書いたらこうなった
需要が有るなら次の分岐を書く
(逃走ルートの別エンドか他のルート)


315 : ○○ :2015/10/11(日) 13:04:03 C5SOZ1Bk
新作はまだやってないけど、どんげはこう、なんかほっとけない感じがして好き
なんか生意気いっても全然ムカつかない。
どんげSSもっと増えるといいな!


316 : ○○ :2015/10/11(日) 21:05:42 NMC5HqZs
まとめておきました。
誤字脱字などがあったらごめんなさい。


317 : ○○ :2015/10/11(日) 22:13:26 e4KNrLyU
まとめお疲れ様です


318 : ○○ :2015/10/12(月) 20:33:35 a1edhBeg
いやほぅ!俺のがまとめに乗ってる!
まとめてくれた人お疲れさまでした!


319 : ○○ :2015/10/12(月) 21:21:03 Z4/FI9Os
慧音のページはまた消されたの?


320 : ○○ :2015/10/12(月) 22:20:42 jBfrGDZ6
ギスギス命蓮寺
つづき

「ぐむむむーっ 聖にスケベなことしたら許さんからなーっ」
「グワー! するわけないだ…グワー!」

きゅっ、と抱き付くなどという乙女な仕草とはほど遠く、コアラめいて両足まで使い○○を締め付ける村紗水蜜。
いたいけに見えて、この亡霊の腕力は超重量の錨を楽々と「ばら蒔く」剛力である。
ただひとたる○○にはなすすべなどなかった。

そのころ。
聖白蓮はここ数年でみたこともないほど浮かれていた。
僧侶である彼女には着飾るという習慣はない。
しかし、何度も身支度を終えては脱ぎ、「あれやこれや」を確認してはまた再び一から装いを整える……そういった微笑ましい不毛さに患わされていた。
まさに初々しい乙女然たる姿。
さながら恋人との逢瀬へと臨む生娘のような……
あるいは、白蓮の熟した肢体をかんがみれば、新婚の夫との久々の逢い引きを前にした新妻のような。
溌剌とした興奮が満々と内から沸き上がっているのだった。

(なにをしているのかしら私)

という疑問が浮かばない訳ではない。
しかし、理性的にあろうとしてもどうしようもなく心が乱れてしまう。
白蓮にとって、理解を越える衝動であった。
ーーいいや、正確には違う。
この衝動を無意識のうちに愛しく思い、大事にしたかったのだ。
押さえつけ、水をさし、その興奮の火を消して、無くしてしまうのを心底で恐怖していた。
その、意味さえ知らず。
何故なら

(おかしいわ、私……○○と里に説法に行くだけ、それだけですのに……何故こうも)

頬を両手で挟むと、いつの間にか弓めいてつり上がっていた唇が掌に触れた。
いやいやをするように二三度首をふり俯いて瞑目する。
聖白蓮の視界を、見慣れた闇が包む。

(これはいつものこと。…………ぁ…ぅ…ぃ、ぃぃぇ……、ぃぃぇ、…………「いつものこと」なのです……何も特別なことなど、ない、のです)

聖白蓮にとり、○○は常に共にあり、公私共に支えてくれる博愛の男(ひと)。
であるならば、こうして説法へと伴するのは日常茶飯事であり、当然のことであった。
現に、彼女は先週も「二人で出掛けている」。

(なのに、何故、私はこうも…………)

と、白蓮は自問自答を投げ掛け……るのを辞めた。
余りに危険だった。
その理由、その先。
視界の端をかすめるこの、何か。
さながら何かの尾……そう、例えば猫の尻尾。
この、目の前をうろちょろとちらつく、目障りな猫の尻尾の先にはきっと不快なものがある。
いいや、不快と認識することすら危険。
それを寸でのところで白蓮は、曖昧の中にくるみ認識の外へと放り投げ、追い出した。

(そうです)
(そうです……)
(いつものことでも、嬉しいのはかわりないですよね)

震えていた細い肩を抱き、白蓮はゆっくりと俯いていた顔を少しだけあげた。
肩を抱いたことで、豊かな乳房が持ち上がり柔らかに歪む。
聖白蓮の、あげた顔はほんの一寸で、彼女の豊かな髪に隠れその僧にあるまじき美貌の全てを伺うことは出来ない。
しかし、艶やかに濡れた唇はつり上がり、そこから漏れた吐息が熱く熱をもって前髪を濡らした。
白蓮は笑っている。

(そう、楽しいひとときですのもの。うれしくて、そう、嬉しくて、つい、笑ってしまいますわ、ね……)

聖白蓮はわらっている。
しかし前髪の奥、その瞳は恨めしげにねめあげて、何かを見ていた。
そこには居ない、なにものかを。


321 : ○○ :2015/10/12(月) 23:12:58 R2VPDJhY
まとめ見てきた
・・・何か改善点が一部一部あって少し恥ずかしい


322 : ○○ :2015/10/13(火) 20:05:34 GHalbW3Q
ギスギス命蓮寺
つづき

境内、門前を浄めるのは僧侶ならずとも朝の大事な仕事である。
……とはいえ、大まかな日課としての掃除は朝食の前に済ますのが習わしであり、現在そこに立つ彼女……幽谷響子が箒を持っていることにさして意味はなかった。
ただ、門前の掃除は彼女に与えられた大事な御勤めであり、それを誇らしく思っている響子にとって、箒はある種のトレードマークとして機能していた。

「ぎゃーてー(↓)ぎゃーてー(↓)はーらーそわかー(↑)♪」

生きるための哲学を凝縮した有り難いお経も、その意味も知らず口ずさめばもはやそれは鼻唄である。
とはいえ、寺の受付も兼ねる響子のお経ソングは名調子で、わざわざ聞きに来る年寄りもいるというのだから満更無駄でもない。
響子の年寄り受けは鳥獣戯楽のそれとは別個に、かなり高い。

「なんだかね、最近癒されるのよね、アレ」

響子の後方、ギリギリ声の届かない程度の距離にある井戸で、一輪は彼女にしては珍しくシニカルな笑みを浮かべた。

「まあ、雲山はまえから結構気に入ってたみたいだけどね」

あたしも年相応に老けたのかな、とぼやく彼女はどうみても年頃の少女でしかない。
肌艶も若々しく、妙齢の御婦人が聞いたならば一笑にふされるか、さもなくば手が出るだろう。
しかし、彼女とて悩みと無縁という訳ではない。
であるなら、時には皮肉や愚痴のひとつも溢したくなるのだろう。

「いいですよねぇ、響子ちゃん。秘密ですけど、毘沙門天さまもちょっとおきにかけてるんですよ」

……まあ、そういったものが効かない相手だと知っててぼやいた訳なのだが。
その悩みのたねは至極あっけらかんとして相槌を打ってきた。
寅丸星である。
一輪はなんだか馬鹿らしくなってしまった。
寅丸と○○の関係、そしてかつての○○の想い人である白蓮。
想い人、とはいえなんら実を結ぶことな終焉を終えたわけだが、その二人が連れ立って出掛けるという。
○○を信じていない訳ではないないが、盲信している訳でもない一輪はある意味非常に女らしく「気を揉んで」いたのだ。
言葉を選ばなければ、○○が浮気してくるのでは、と。
ただの人間である○○に、聖が遅れをとるとは万が一にも思わない。思わないがしかし。
それは聖白蓮が正常な状態にあれば、の話だ。
ここ最近の心ここにあらずといった白蓮が、負い目もあるかもしれない○○の熱意に押し切られ、その、なんだ、あれよあれよというまに……

「大丈夫ですよ」
「えー……」

唐突に太鼓判を捺した星に、ほんとにぃ?という意味と、あたしの言いたい事ちゃんと分かってる? という二つの意味で一輪は片目をすがめた。
寅丸星が基本優秀でありながら、肝心の時ちょっと「やらかしてしまう」こともあるのを知る一輪である。その心配は無理もない。

「大丈夫ですって。信じてますから」

しかし、一輪は失念している事がある。

「一応聞くけど、どっちを?」

寅丸星は既に乙女ではない。
彼女のなかに確固たる信頼と親愛の証が「実を以て」根付いていることを。

「もちろん」
「……」

「両方です」

一輪は深く重く、溜め息ついた。
そりゃ、あたしだってそうだけどさぁ、と。
あーもー、いいや。と。
結局のところ、自分がいくらどうこう騒いだところで、どうにもならないなるようにしかならない、と。
聖と○○と星にまつわるあれこれに悩むのを、徒労にしかならないと諦めた。
もとより、最近の聖のことはともかく、星と○○の間のことは自分の口出すことではないのだし……と

最近、星は思う。
きっと、自身が強く在る為……
あるいは教義に殉じる為に、自分は聖白蓮から○○を託されたのだ。と。
ならば、それが今更どうこうなる筈などあるわけはないと。
寅丸星はそう結論付け、疑い無く信じているのだった。


323 : ○○ :2015/10/14(水) 11:39:55 TTwrMR7Q
なまじ、情熱と言うものを星にせよ聖にせよが持ってるから、なおのこと厄介

やばいよなと思いつつ、下手にさわれば火傷はまぬがれない
だから一輪のように、迂闊に近寄れない・・・その間にも二人の温度は、自然発火してしまうぐらいになるのかな


324 : ○○ :2015/10/14(水) 14:54:45 49dBeZlE
誰かサグメのヤンデレ書いてくれ
自分で書きたいけど能力の扱いがまったく浮かばんしどんなものかすら把握できてないんだ


325 : ○○ :2015/10/15(木) 21:26:04 .uM/4HPU
ノブレス・オブリージュに囚われて(80)
ttp://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=39700&n=70
天邪鬼もそうだが、サグメも強力ながら扱いずらい能力。そんな印象
あと正直に言うと、コメントが欲しい。


326 : ○○ :2015/10/15(木) 21:44:58 TEgNTXKg
前に妹紅のss書いてる途中で韓国出張行った人は生きてるんだろうか


327 : ○○ :2015/10/15(木) 22:47:13 tEkHt5rk
>>326
ハーイ


328 : ○○ :2015/10/15(木) 23:53:52 8ytgN6Eo
>>325
更新お疲れ様です。
言葉の使い回しがお上手ですね。魅入ってしまいます。
個人的にノブレスの永琳は好きなので次回が楽しみです。


329 : ○○ :2015/10/16(金) 09:02:25 4x5mGINw
>>325
毎度乙なのですよ
人物の各々の心情がいい感じに読み取れる会話好きです
頑張れえーりん


330 : ○○ :2015/10/16(金) 17:44:48 13ntKMCE
>>327
続きマダー?


331 : ○○ :2015/10/16(金) 19:02:44 7fGMlI/o
>>330
元々、続きが入ってた端末(nexus7)は水没しちゃったし、何スレ目か忘れたけど自分の環境だと何故か過去ログ読めないし……

その内、最初から書いてみようと思うよ。


332 : ○○ :2015/10/17(土) 00:55:55 5pFFytwg
過去ログ見れてる人居るのかな


333 : ○○ :2015/10/17(土) 06:41:15 K895RAbc
板自体が飛んだり、データが壊れてるからもう見れないだったっけ?


334 : ○○ :2015/10/17(土) 08:10:28 B1t0QA6M
ってことは例えばのアリス編って半分しかwikiに保管されてないけどずっともう見れないんだな


335 : ○○ :2015/10/17(土) 17:35:44 udlMKWpU
>>331
15から21までのログあるから見つけたら張ったほうが良い?
てか、私もうろ覚えだから導入の部分だけでも覚えてたら教えてほしい


336 : ○○ :2015/10/17(土) 17:44:09 Q7lof4ZI
>>335
大まかに言えば、恋人でないけど半同棲状態で命を助けられた恩でお節介しているとか、そんな感じだったかな?

導入までしか投下してなかったと思う。


337 : ○○ :2015/10/17(土) 20:15:55 MzI.90hI
もうレティーがくるまで秒読みやね。夜寒いわ
秋は秋姉妹、冬はレティーに愛されたい


338 : ○○ :2015/10/17(土) 20:18:00 6R7JyV1Y
>>336
ありがと、探してくる


339 : ○○ :2015/10/18(日) 14:08:05 fvYb4jR.
サグメさん書くのムズイ

○○には、大きな悩みがあった。
「くそ!!俺から離れろ!」
ある一匹の妖怪によく追いかけられ、その度に死なない程度の弾幕を浴びせてくる。
なにがしたいのか分からない。一言も喋らず、しつこく追いかけるだけ。
「なんで俺ばっかり……!」
妖怪のことを強く睨む。

ピク

またか。なんなんだこの妖怪は。俺が嫌悪感を表すといつもニヤリと笑う。
まるで、嫌われるのを望んでいるかのように……
「はあっはぁ……ん?」
消えた。飽きたのか知らないが、助かった。
「……帰るか」

まだきれている息のまま家に戻り、戸を開ける。

……そこには、あの妖怪がいた。
「お前、どこから……っ!」
妖怪の下を見る。そこには、無残に殺された両親がいた。
「お前……このおぉ!」
妖怪に殴りかかろうとしたら、妖怪はもう後ろにいた。
そして、またニヤリと笑った。
「……お前は、なにがしたいんだよ……」
妖怪はその問いに答えず、去っていった。


さあ、もっと嫌って。もっともっと嫌って。
その感情がはちきれそうになった時。
……私はこの事実を口に出す。

また、ニヤリと笑った。

駄文失礼しました〜


340 : ○○ :2015/10/18(日) 21:11:26 NeExLLz2
前にサグメさんは難しいと聞いてずっと考えてて一応思いついたのは
愛されたいのに口に出来ないから○○に喋れないなりに軽くアピールしていくけど
逆に益々不気味な人ってイメージ付けられちゃって距離が開いていって
それに応じてどんどんアピールが過激になって病んでいく...
とかどう?って書こうと思ったら丁度サグメさんのやつ来てた、凄くいい...


341 : ○○ :2015/10/18(日) 22:09:55 fvYb4jR.
は!サグメさんって妖怪じゃない!orz
○○はサグメさんを妖怪だと思ってるっていう設定にしなきゃ!


342 : ○○ :2015/10/19(月) 22:36:02 //lflyVk
ありがとう...ありがとう......
サグメヤンデレありがとう.........


343 : ○○ :2015/10/20(火) 19:28:21 TG9fcJ5g
暴走しそうなキャラって、誰だろうな?
それこそ、霊夢から「○○、お前が悪い」って言われそうなぐらい、一途にこっちに突っ込んできそうな


344 : ○○ :2015/10/24(土) 05:01:31 Ck0yz8fY
では霊夢さんで

夕陽に染まる空を見上げながらうとうとしていると背後から音がした
微かに聞こえる声で誰だか分かったので振り返らず、聞かなかったことにし、再び空を見上げる

「○○……?」
無視が通じたのか、名前を呼びながら彼女はー博麗霊夢は自分に近づいてきた
「なんで黙っているの……?私の声が聞こえないの……?」
いつもの通り、自分の前にしか出さない弱々しく、またたどたどしい声だ
どうやら心が疲れたのだろう
「ねぇ…答えてよぉ……ねぇ……」
このままだとそろそろ彼女はいつものように泣き出すのだろう
だがそれでも振り返らない
「○○……」
振り返らない
「ねぇ……○○…」
手を回され抱きつかれてもだ
「ねぇ……ねぇ……」
決して振り返らない
「聞こえてるんでしょう……?ねぇってばぁ……」
背中越しに冷たく、温かいものが伝わった。彼女は今涙目のようだ
「○○ぅ……○○ぅ……」
今度は顔を埋めて泣き出した。手は先ほどよりも硬く、がっちりと締められている。その見かけからは想像できないほど強い力にも思える。精神が弱っていても物理的な力は弱らない、流石博麗の巫女とでも言うべきことか
「わたしがわるかったからぁ……わたしがぁぁぁぁぁぁああああ」
ダムの決壊のごとく、彼女の涙が溢れ出した

……駄目だ、ここで振り返ってはいけない
「ごめんなさぁいい……ごめんなさいぃ……」
駄目だ、駄目だ、振り返ってはいけない、抱きしめ返してもいけない、許してはいけない、キスなんて論外だ
「ねぇ……返事してよぉ……返事してってばぁ……」
ああああああああああああ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ!!!
惑わされるな!ここで振り返ってしまっては霊夢を余計駄目にしてしまう!抑えろ!もう少しだから!


……ーもう少しで、霊夢は自分が死んだって理解するから、もう少しだ……



「やっぱり、今日も変わらずかぁ……」
神社の空高く、周囲に張られた結界にギリギリ付かない程度のところで魔理沙は霊夢の様子を伺っていた
……○○がこの世を去ってからの数日で、霊夢はすっかり壊れてしまった
もはや重症で手の施しようがないほどに精神は衰弱し、かつての親友であった魔理沙を含め、霊夢の目には誰も映らなくなり心を完全に閉ざしてしまった
終いには○○が死んだことを否定し始め○○の死体をまるで生きているかのように接し始めたのだ
「……スキマの言うことを私ももう少し真面目に伝えてやりゃよかったのかな」
神社の反対、里や山のある方向に魔理沙は顔を向ける
まだ痛々しい傷跡がいくつも残っていた。所々で黒い煙はあがっており、地面は細かく割れ、半分近く抉れた山は未だに緑が戻らない
全て、暴走した霊夢の仕業であるものの数々であった
「本当の幸せほどすぐになくなるもの、か……。神はきっと幸せを知らなかったんだな」
ぼそりと呟くと魔理沙は箒に跨り森を目指して神社から離れていった

眼下の神社では、霊夢は安静にあったらしく男の膝でスヤスヤと寝息を立てていた

それを動かぬ男は眉ひとつ動かさず、しかしあたたく見守り

目に見えぬ男は優しく彼女の頭を撫でるのであった

…ゴメンナサイ、微妙です


345 : ○○ :2015/10/26(月) 21:19:05 WQKgLHBY
暴走しそうだったら、咲夜とかうどんげみたいな過去とか自分の立場上な事が関係するタイプ。

華扇とか映姫とかしっかりした性格のタイプに別れると思う。

スレチかも知れんが、同じ妖怪とか神様にしちゃう話しがあるし、好きだけど自分は心中もヤンデレらしくて良いと思うんよ


346 : ○○ :2015/10/28(水) 02:01:43 nqpe1tW6
初投稿です。ちょっと前に考えた藍のヤンデレです。少し長くなると思いますが完結目指します。


今頃、あの人は何をしているだろうか――
ちゃんとご飯食べているのだろうか、心配だ――


あの人、○○とは私が人里に向かう途中で出会った男だ。最初に見つけたとき彼は道端で倒れていて脚から血が出ていた。放っておくわけにもいかない。しかしこの姿のままではまずい。とりあえず人の姿に化けて、彼に近づいた。
「おい、大丈夫か!?しっかりしろ!」
どうやら脚の出血はたいしたことはなさそうだが――
「.......ん.....あ......ここは.....?」
「よかった、意識が戻ったようだな」
「.....あんたは?って痛てぇ!!!!」
「もしかしたら足が折れているのかもしれないな。自己紹介は後だ。今、治療に使えそうなものはないんでな。お前の家は何処だ?」
「...あ...ああ、里の呉服屋の近くだ。....ってうわわ何すんだ!?」
「おぶってそこまで運んでやるんだ。そんな脚ではあるけまい?」
「う...動けねえけどよ、女におぶってもらうなんて......」
む、歩ける状態ではないのにわがままな奴だ
「じゃずっと此処にいるか?」
このままではなかなか決めなさそうなので少し強く言った。
「......家まで...お願いします...。」

「私は藍だ。人里から離れた場所に住んでる。」
いや、住んでる場所まで言わなくてもよかったかな。後でめんどくさいことになるかもしれないし。まあいい。こいつの看病したらとっとと帰ろう。人と長く関わるのは面倒だ。
「俺は○○だ。」
○○か、いい名だ。
「○○よ、お前なんであんな道端に倒れていたんだ?」
「え?...そっ..それは、まあ秋になったし?山の紅葉はすごいんだろうなぁと思いまして...」
「山に入ったのか」
「うっ...でも実際素晴らしかったぞ!いやあ藍さんも観に行ってみるといい!」
「話をずらすな。観に行くだけでそんな怪我するまい。何があった?」
「よ...妖怪に会って......。」
「攻撃されたのか...。」
「弾幕の衝撃で坂を転がり落ちちまってさ....。んで気が付いたら藍さんが。」
そりゃ妖怪の山なんだから妖怪はいるでしょうに...。最近の人間は妖怪の危険性が分かっていないのか?妖怪からしたらいい餌だな。

「言いたいことは色々あるが、まずは怪我の治療が先決だ。もうすぐ里に着く。」
「すまん...。ありがとう。必ず礼はする。」
「礼など気にするな。お前は治療に専念しろ。」
「ああ、そうする。........優しいな藍さんは。」
「人は皆、助け合って生きてるだろう?私だけがということはないさ。」
「いや、優しいよ藍さんは。」
「......そうか....」
なんだ?急に...。誰だって目の前で倒れてたら声ぐらいはかける。怪我をしていたら尚更だ。放ってはおけない。人喰い妖怪は別だが。.....っと、もうすぐ呉服屋だ。
「ああ藍さん。そこだ。そこの家が俺の家だ。」
ここが――?
なんだか随分ボロボロだな。


347 : ○○ :2015/10/28(水) 02:06:01 nqpe1tW6
「ほら、脚だして。」
「こうか?.....いっ!!痛てぇ!!!!」
「反応が大げさだ。少しは我慢しろ。」
「ぐっ....!!お...終わったか?」
「あと少しだ......。ほら終わったぞ。どうやら折れてはいないようだ。さすがに私も詳しくはわからないからあの八意の医者に診てもらうのが一番かな。」
「ん。わかった。ありがとう藍さん。ほんと助かったよ。」
「どういたしまして。さて、○○はまだ昼飯を食べていないだろう?何を食べたい?」
「いやいや、飯まで作ってもらっちゃ悪いぜ。怪我の手当てだけで十分だ。これ以上世話にはなれん。」
「そんなこといって、その状態で作れるのか?作れないだろう?遠慮するな。」

こんなのでまた怪我したなんて言われたら気分が悪い。飯炊きぐらい頼ってほしい

「...わかった、お願いするよ。」
「最初からそうしろ。で、何にする?」
「藍さんが作れるものでいい。俺、普段料理なんてしねえからな。なんでもいいんだ。」
「○○、食事はちゃんと偏りなく摂らないといけないぞ。」
「......慧音先生みたいなこと言うんだな、藍さん。」
「大事なことだ」
「まあ、任せるよ。」
「任された。」

早く良くなるよう沢山食べてもらわないとな。毎日、紫様のお食事を作っているんだ。
腕に縒りを掛けた料理を作ろう。楽しみにしていろ、○○――


348 : ○○ :2015/10/28(水) 05:18:57 SOv3fQd.
ノブレス・オブリージュに囚われて(81)
ttp://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=39700&n=71
ここ最近で一番、書いてて楽しかった

>>328>>329
有難うございます。見てくれている人がいるのは分かっていても、反応が無いと心細くて

>>347
藍様は、絶対過保護だと思う
読んでて過保護っぷりが感じられる


349 : ○○ :2015/10/28(水) 17:47:42 nqpe1tW6
>>348
お疲れ様です。
ノブレスの永琳、最高です。
もっともっと壊れていってほしいですね。


350 : ○○ :2015/10/28(水) 17:50:43 nqpe1tW6
あと感想有り難うございます!
上手く病みを表現できていけるか分かりませんが、頑張ります!


351 : ○○ :2015/10/30(金) 18:19:59 tJw8T2WY
ここって女○○の百合はいかんのか?


352 : ○○ :2015/10/31(土) 00:17:23 HI58AMp.
いいんじゃないのか?
実際に女○○の話もいくつかあるし


353 : ○○ :2015/11/01(日) 00:53:12 J2DppZo6
>>352
まじか
まとめに載ってる?載ってたら是非どの話か教えてほしい


354 : ○○ :2015/11/01(日) 02:47:14 OQEQ96Wc
数は結構少ないけど霊夢のロダとか小ネタの8スレ目とかにあったと思うが・・・


355 : ○○ :2015/11/01(日) 13:34:55 J2DppZo6
ありがとう
小ネタは知ってたが霊夢のはしらなんだ
中々理想的な百合で満足


356 : ○○ :2015/11/06(金) 12:35:24 jqW9lWXw
永琳って、いくらでも何かしらの細工ができる立場だよな
例えば、風邪薬に依存性のある薬物をいれて。定期的に来ざるをえなくしたり


357 : ○○ :2015/11/07(土) 19:40:16 yWKg1Rlk
>>356いいなそれ、「この風邪薬飲まないと調子悪いわ、また永琳さんのとこ行ってもらってこよ」
ってどんどん依存症になりながら通う○○を、別の娘が心配するって感じでいろいろ絡められそう


358 : ○○ :2015/11/07(土) 21:35:50 K.8XtiCg
>>348
ノブレスの永琳がなんかこうあれだな
おかーさん過ぎて辛い
しかもちょっとダメなおかーさんで辛い
激しく抱いてナデナデしてやりたい
頑張ってるの知ってるぞ見ていたからな!ってやりたい


359 : ○○ :2015/11/08(日) 01:36:26 .zgM14Vg
>>348
毎度乙
この退廃的?な感じたまらん


360 : ○○ :2015/11/08(日) 08:35:47 tgiDPfMc
すまん、もいちど読んだらちょっとというか……スゴくダメなおかーさんだった。
具体的にいうと息子を○○ちゃんってちゃんつけで呼びそうな感じ
でも、いいんだ。俺んちにこい永琳!


361 : ○○ :2015/11/10(火) 20:41:43 TctrwwA.
もし、ノブレス○○が。永琳に欲情したら



あ、考えただけで怖くなった


362 : ○○ :2015/11/13(金) 22:32:33 1cNAdHUc
>>347
続きです。書いてるといろんなの思いついて大変。長くなりそうです。


「ほら、できたぞ。冷めないうちに食べてくれ。」
○○の家には物が少なく、大した量は作れなかった。
それでも味には自信がある。

「あー、ありがてぇ。美味そうな匂いだ。いただきます。」
「......どうだ?口に合うか?」
「...うめぇ。うまいよ藍さん!驚いた、作る人が変わるとこんなに飯も変わるもんなのか。」
「そうか、そうか。よかった。」
自信はあったが、まずいと言われたらどうしようかと。気に入ってくれてよかった...。

「いやあ、うまい、うまい!この魚の焼き加減もなかなk...ごっふ!ごほっ!!ごほっ!!!」
「どうした!?や、やっぱりまずかったか!?い、いやそれよりも○○!大丈夫か!?しっかりしてくれ!!」
「うっ!み...みず......。]
「水だな!!わかった!すぐに持ってくる!」
急いで、急いで持って行かなきゃ!

「ほら水だ!持ってきたぞ!」
「ん!んー........ぷはぁ!!ありがとう!...はは、あまりに美味いんでつい慌てて....。」
「えっ?ま、まさか咽ただけなの?」
「うん、咽ただけです」
「なんだ...........。まったく、今度は落ち着いて食べなさい。」
「へへ、分かったよ。でも藍さんがあんなに慌てるなんてな。」
「だ、誰だって慌てるさ!!ほんと焦ったのだからな!」
「すまん、すまん。でもなんか水渡してくれた時の顔が藍さんらしくなくてさ。」
私らしくない?○○は私にどんな印象を受けているんだ?

「...なんだそれは。どういう意味だ...?」
「ちょっと可愛かったかなーって話。」
「ばっ!ばか!からかうんじゃない!!こっちはお前が心配だったのに!」
「ははは、今後は気を付けるから。」
「はぁ、お前のこの先が心配だよ...。」
この調子ではまた何かやらかしそうだ...。なんだか不安だ......。


363 : ○○ :2015/11/13(金) 22:36:27 1cNAdHUc
それからというもの、私はほぼ毎日○○の家に通った。
朝、彼が起きる前に朝食の支度をする。彼は何でも美味いと言ってくれるが、特に味噌汁を気に入ってくれたようだった。少し薄めの赤みそ。出汁は煮干しで。具は豆腐と油揚げ。それに少々ネギを添える。シンプルだが一番美味いと彼は言う。

朝食後、さっと洗い物を済ます。
食器を洗うぐらいなら俺でもできると手伝おうとしていたが怪我人は怪我人らしくしていなさいと一喝した。

○○は度々、手伝うと申し出ていたが、私は足の怪我を早く治すことだけを考えろと断った。
「はぁ〜......。藍さん。あんたにゃ世話になりっぱなしだ。早いとこ治して礼がしてえよ。」
「気にするな。私が勝手にやっていることだ。それより一度は八意の医者に診てもらった方がいいだろう。洗濯物を干し終えたら行くぞ。」
「そうだな。早く治したいし、行ってみるか。でもあそこって迷いの竹林があんだろ?大丈夫なのか?」
「あの竹林には案内人がいる、心配ない。」
「そうかい。ま、なんとかなるか。」
私に医学の知識があればわざわざ行かなくても診てやれるのだが.......。仕方がない。行くからにはあの医者にはしっかり診てもらわねば......。


364 : ○○ :2015/11/15(日) 13:17:57 KJ4De1gw
藍さまから既に、粘っこい物をかんじとれてしまう
永琳に何かしら言われるのかな
それが藍さまに火をつけちゃうのか


365 : ○○ :2015/11/16(月) 02:48:21 /SOMBQoQ
例えばレティー・ホワイトロックを嫁に迎えたら

「あなたぁーご飯できたわよぉ」

弾む声でレティーは夫、○○を呼んだ。
その手には、ミトン越しに結構な大きさの鍋が抱えられている。
ぐつぐつと沸く鍋の音色、冬にはこれ以上無いご馳走の先触れ。
今夜のように吹雪く日には尚更である。

「今日はねぇ、ふふっ、ほぉらおでんにしたのよぉ」

これ以上無いほど嬉しげに、レティーは蓋を開けるとわっと上がる湯気の中幸せを疑わない澄んだ笑顔を○○に向けた。
竹輪、昆布、つみれなど、鍋の中には十分に味の染みたご馳走が、金色の出汁の中我こそはと急くように躍り、芳醇な甘しょっぱい香りで食欲をそそる。
なかには、幻想郷では高級品あたる海産物もちらほらと見えるが、特に気取った風に見えないのは○○が外来人だからであろうか。
いや、一種おでんそのものの気さくさ、もっと言えば人徳のようなものがあるのかもしれない。
○○は甲斐甲斐しく取り皿の準備をする愛妻を眺めながら、幸福感と若干の申し訳無さを噛み締める。
こと食事の支度に関しては○○の介入は一切認められていない。
盛り付け、箸や布巾の用意、今のような鍋の運搬にいたるまで、全てレティーが執り行う。
メニューの決定権すらない。が、○○はそれをは不満に思った事はない。
寒さの増すこの季節、いつだって妻の料理は心を読んだかのように的確に○○の望むものがテーブルに並ぶ。
それらは勿論、彼女の愛情がたっふりと込められたものばかりで、不満等あろうはずもなかった。

「これは旨そうだ。さぁ、おいで。一緒に食べよう」

そういって○○は炬燵の掛け布団をめくり、レティーの場所を作る。
すると「あら、やさしい」そういってまなじりをさげ、愛妻はすとんと、○○に寄り添うようにして席に収まった。
外は日に日に寒気が強くなり、今日も吹雪くように雪風が家々や道をなめていく。
しかし、この家は妻の愛とその献身で冷えること無く、いや、それすらも楽しんで冬を過ごしていた。

「ふふー、しーあーわーせぇ―……」

レティーは目を細めて頬を預けた。
少し間延びした声に、彼女の無防備さが表れているような気がして、○○はそれがたまらなく嬉しく、誇らしいとさえ思う。
箸を持った手を一旦おいて、愛妻の肩を抱くと○○はその初雪のような髪に親愛の情をひとつだけ落とした。
「ん……」と、髪越しに感じる温もりにもどかしくも確かなものを得て、レティーは満足げに瞳を閉じた。
数秒の間、茶の間には少しずつ弱まる鍋の鳴く音と、対照的に強まる外の寒風が鳴らす笛めいた音だけが響いた。


366 : ○○ :2015/11/16(月) 03:02:53 /SOMBQoQ
「さ、食べましょう」

そう言ってかレティーが預けた肩を離した……その瞬間である。
ドンドンドン、と木戸を叩く音が闖入してきたのは。
二人の視線が木戸へと向く。
○○はうろんげに。
レティーは……早朝、水溜まりに張った氷のような目でそれを見ていた。

「どうしたね!」

と、木戸越しに聞こえる切羽詰まった声に、○○は問うと炬燵から出てそこへと向かった。
レティーと○○、その距離が僅かに離れていく。
離れる、といってもそれは家の中のこと。ほんの数メートルもないことだ。
だが、その間を数寸刻みでレティーの瞳から温度を奪っていった。
無関心から嫌悪、それを通り越し敵意へと変わるのにたったそれだけの距離で彼女には十分だった。

夫と郷のものが話す声が聞こえる。
どうやらこの雪で遭難した者が出たらしい。
その探索へ手を貸して欲しい……そんなようなことを言っている。
レティーはそれを単なる情報として受信した。
外の寒風は既に猛吹雪と化しており、その足はさらに強まっていく。
かの春雪異変でもここまでの吹雪はそう無かったほどに、急激に威力を増していた。

「ここから外へなど、決して出てはいけません」

まるで言外にそう主張しているかのように。

レティーは思う。

遭難? それがいかほどのこと?
私の、私とこの人の数ヵ月しかない夫婦の時を奪ってまでソレを探すのに何の価値が?
無い。あるわけがない!
ただでさえ、他の妖怪より更に短い間しか愛し合えない私たちにそれを更に削れというの?
ひどい! あんまりよ!

「もう、きっと助からないわ。やめましょう無駄なことは」

レティーはそう言いたい衝動を必死で堪えていた。
愛する夫のため、ただそれだけの為に。

「レティー…」

茶の間に慌ただしく戻ってきた夫の姿は既にがっちりと厚着していた。
言わずとも、探索に向かうことは見れば分かった。
いや、見ずとも行くことが分かっていたからこそこうも心が荒んだのだ。

「分かったわ」

そう言ったレティーの声は硬い。
彼女自身、自らの声に慚愧の念を感じた。装うのが間に合わなかったのだ。
「レティー……」と、彼女の気性を知る○○は慰めようとしたのだろう。声をかけようとしたところで

「私もいくわぁ……」

と、レティーに遮られていた。
その声は既に常のそれに戻り、瞳も温度を取り戻したかに見える。
だが、それでも有無を言わせぬ力強さを持っていた。
雪の夜の探索に雪女が味方する……これ以上無い援軍に、否応はない。

「頼む」

○○は短くそう言った。
と、その時に見た愛妻の瞳に一瞬で凍りついた。
燃えていた。
レティー・ホワイトロックの瞳は彼女らしからぬ色に燃えていた。
それは情熱、やる気などという生温いものではなかった。
まるで黒煙を吹き、赤黒い情炎を糧として駆動する淫猥な機械のように。

「帰ってきたら、続きをしましょうねぇ」

レティーはそう言った。
雪女の助力があるとはいえ、今は夜である。
帰りの時間などいつになるか見当も付かない。体力もどれほど消耗するか。
それを知らぬレティーではない。
が、絶対に「続き」というのをやりおおせるまでは寝かさない、という硬い意思を○○は感じた。
一体、彼女の中でどのような予定であったのか、○○は知るよしもない。
しかし、体力尽きるまで彼女の愛を受け止め続けなければならないのは明白だった。
○○はまだ玄関を出ていないというのに、ひどく体が重くなるのを感じていた。


愛妻レティー・ホワイトロックに愛され過ぎて朝になっても寝れない(予定)





367 : ○○ :2015/11/16(月) 20:42:37 IF3amoRQ
真冬限定だが
○○の周り全てを、人間には立ち入ることの出来ない場所に変えれるだろうな。レティだったら
でも、チルノも似たようなこと出来そう


368 : ○○ :2015/11/17(火) 21:00:36 wS6aZCC2
レティって長音符ついてたっけ?
まあともあれ面白かったぜ


369 : ○○ :2015/11/17(火) 22:19:42 D4oQJxa.
>>368
いやぁ、レティーだろ?………………あ、そんなバカな……
俺何年もずーっと間違えて覚えてたよ……

ともあれ、感想ありがとう。
その一言でほんとに嬉しい。
うれしいので新キャラ以外ならリクエストきくべ。
俺程度の文でよければだけども


370 : ○○ :2015/11/18(水) 01:31:13 sKCrUBa6
華扇お願いしたいなぁ


371 : ○○ :2015/11/18(水) 07:30:36 daTyub8Y
>>370
了解だ


372 : ○○ :2015/11/21(土) 04:57:25 Ko.QGLDI
幻想郷入りしたに情愛を焦がすヤンデレも好きだけど、の住んでた所に迷い込んでと生活してる内に…

みたいなヤンデレも良いと思います。


373 : ○○ :2015/11/22(日) 01:33:20 Vaw6rwXU
ノブレス・オブリージュに囚われて(82)

ttp://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=39700&n=72

○○の幻想入りならぬ、嫁側の現代入りか
確かに、マミゾウさんの例もあるし。菫子のように行き来出来る存在もいるし
あり得る話


374 : ○○ :2015/11/22(日) 13:30:17 0P.EF9is
現代入りならヤンデレになる感じも作りやすいかも…

知らない世界で一人ぼっちで常識が通用しないなかで信頼できる相手にヤンデレになる

ありだと思います。


375 : ○○ :2015/11/27(金) 11:34:11 MFytIc1A
現代入りしてヤバそうなのは、射命丸だろうなぁ
天狗が天狗やれるのは、幻想郷だからって部分が大きいだろうから


376 : ○○ :2015/11/27(金) 21:11:10 eKAndu3I
幻想郷と違って旦那に対する誘惑が多いから神経使いそう。
夫婦で食事中、テレビにアイドルとか女優が映っただけで律儀にチャンネルを変える東方キャラ必死すぎて可愛い。
ネットの閲覧履歴をチェックして、旦那がうっかりエロ広告をブラウジングした形跡があったら問い詰めそう。


377 : ○○ :2015/11/28(土) 05:33:38 9oXLVUEE
映姫や華扇が現代入りしたらにより長い説教しそう。

恋敵を積極的に消しにいくスタイルな子も増えそうだな。


378 : ○○ :2015/12/02(水) 14:47:59 SWHEC2WU
ほのぼのと言うか
窓から○○のパソコン放り投げそうだよな
それで○○も、歩いてる人に当たったら危ないじゃないか!と、なんかピントずれたこと言ってくれたら、なおよし


379 : ○○ :2015/12/02(水) 21:10:54 fzVeDkfo
>>378

「○○!なんですかこの履歴は!」
「あぁ映姫。それはサイトをクリックした時に飛んじゃって……」
「そんな言い訳はいいです!私という者がいながら……」
「こんなものぉぉ!」
「あ、ちょっとまてよ!」
「まちませぇぇん!」

ガシャ-ン

「あ、ああ……」
「ふん!そんなに中の画像とかが大事ですか!」
「……映姫」
「な、なんですか!?」
「危ないだろ」
「……え?」
「もし歩いている人に当たったらどうするんだ!ノーパソでも固いんだぞ!」
「え?え?」
「そうでなくとも破片を踏んだら!ああもう片付けてくる!」
「お、怒らないんですかぁ?パソコンのこと」
「は?なんでだよ。映姫を心配させた俺が悪いだろ」
「そ、そうですか……あ、私も行きます」
「駄目だ!怪我したらどうする!?」
「あ……有難う御座います(……優しい///)」

こうですか?いや、絶対違うな


380 : ○○ :2015/12/04(金) 01:02:46 PoraZgTQ
ノブレス・オブリージュに囚われて(83)
ttp://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=39700&n=73
今年も一か月を切ったか……
新作は、純狐が気に入った


381 : ◆PfIbGMfJ7o :2015/12/07(月) 00:39:59 SeuTKH8.
結界の内で育った僕は、12の春に外へ出た。きっかけは覚えていない。ただ、初めて過ごした夜は、寂しくて肌寒かった。警察に保護されてからは施設に7年、それから今のこの暮らしに繋がる。

ルーミア。かつての幼なじみは昨日まで記憶の底に沈んでいた。が、今この瞬間に彼女は目の前にいる。昔と変わらぬ姿で。
「○○…?」
仕事からアパートへ戻り、電気をつけた時だった。懐かしい彼女に僕は驚いた。
「やっと会えたね。○○」
クスリとした笑みは少し歪んでいた。
「○○はもう大人なんだね。」
少しずつ近づいてくる。つい僕は後ずさりしたが、ドアにぶつかった。
「また、逃げるんだ。」
目の前に来たときに部屋の明かりは突然消え、暗闇に包まれた。僕はそこで意識を失った。


382 : ◆PfIbGMfJ7o :2015/12/07(月) 00:59:28 SeuTKH8.
>>381
翌朝、新聞配達のバイクで目が覚めた。何か美味しそうな匂いがすると思えばルーミアが食事を作ってくれていた。
「○○、おはよう。」
にこりと笑う彼女。変わらない味噌汁の味。
「久しぶりだね、○○にご飯食べてもらうの。」
ただ頷く。僕は彼女に昨夜の事は何も聞かない。それが昔からのルールだったから。
「これからは毎日作ってあげるね。」
うれしそうに彼女は笑う。
「いってらっしゃい。」
僕が仕事に行く時には弁当を渡してくれた。おいしかった。


383 : ◆PfIbGMfJ7o :2015/12/07(月) 10:32:21 SeuTKH8.
>>382
いずれこうなる事は感じていた。


384 : ◆PfIbGMfJ7o :2015/12/07(月) 10:42:55 SeuTKH8.
>>383
仕事が終わり夜になる頃、彼女は目覚める。 今日はやけに寒い。帰らないでおこうか。そう考えていたら、背後でルーミアの声がした。
「帰ろう。○○」
風が吹いて、雪が降ってきた。もう僕にはどうしようもなかった。


385 : ○○ :2015/12/07(月) 22:57:54 OcAHF2K.
>>364
ご感想有り難うございます。ヤンデレは一度火が付いたら消えないと思います。
そろそろ締めに入ろうと思うのでよかったらもう暫くお付き合い下さいませ。

>>365
レティも中々愛が重そうですねぇ。春が恋しいなんて言ったらどうなっちゃうんでしょうか。

>>379
閻魔の立場ではない映姫様。いいですねぇ、いろいろ考えちゃいます。

>>380
更新お疲れ様です。ノブレスは私の楽しみの一つになってます。応援してます。

>>381
ただならぬルーミアとの関係...。気になります!


386 : ○○ :2015/12/07(月) 23:02:55 OcAHF2K.
>>363
続きです。長ったらしくて申し訳ございません。

「なぁ、藍さん。別にまた背負ってもらわなくても多少は歩けるぜ?」
「そうかもしれないが、無理はするな。なに直ぐに着く。そうだろう?藤原妹紅」
「まぁね。あそこは遠いようで近いんだ。昔はもっと奥にあったんだが、人里の連中が来るようになってからは距離が縮んだよ。とはいえ、普通の人間が入ったら間違いなく出れなくなるがな。」

この竹林はいかな大妖怪も迷わせる力がある。その力に月の頭脳と云われている八意永琳が目を付けた。月の民から蓬莱山輝夜を守るため、そこに永遠亭を建てた。
その蓬莱山輝夜と因縁深い、藤原妹紅が迷いの竹林から永遠亭まで案内してくれる。

本当ならこんな奴の手を借りずさっさと八意のもとへ行って、○○の怪我の具合を診てもらいたいのだが...。
私でもたどり着くのが困難なうえ、○○に私が妖獣だということを知ってほしくない。

いくら助けるためだとはいえ、妖怪が人に化けて近づいたのだ。やはり、いい気はしないだろう。こいつに....、この人に嫌われるのは紫様に嫌われるのと同じくらいつらい......。
なぜつらい?......それはこれほどまでに世話してやってるからだろう。
いや、しかし何か違う...。紫様は主人であって私はその式神である。式神はなにをおいても主が絶対。それに私は式になったあの日から、紫様を敬忠してきた。
なのに...。

「藍さん?どうしたんだい?具合でも悪いのか?」
「...えっ?あっ、い、いや大丈夫だ!何でもない!」

○○に突然話しかけられ、はっとした。

「ん〜?なんだ?あんたも病人かい?少し顔色悪いぞ。」
「私なら、大丈夫、平気だ。心配いらないよ。」
「無理はしない方がいいと思うけど...。ま、あとちょっとだ。頑張んな。」
「ああ。...○○は大丈夫か?足、痛まないか?」
「平気、平気。藍さんもあんま無理すんなよ?」
「少し、ぼうっとしていただけだ。気にするな。」

そうだ、思慮分別するのは後だ。今は○○が優先。

「あ、見えてきた。あそこが永遠亭。あとは自分たちで行って。私の案内はここまで。帰りはあそこの兎にでも頼んでくれ。」
「助かった、藤原妹紅。では、また。」
「ご案内、有り難う御座いました。藤原さん。」
「いいって。じゃあね、おだいじに。」

さて、早いとこ、怪我の具合を診てもらおう。何でもないといいな、○○


387 : ○○ :2015/12/07(月) 23:07:49 OcAHF2K.
>>386
続き


「へぇ、結構、人いるんだな。」

永遠亭の中に入り、○○を椅子に座らせた。どうやら暫し待たないといけない様だ。....仕方がない。

「そうだな。すまないな、○○。もう暫く我慢してくれ。」
「別に藍さんが謝るようなことじゃないでしょ。気長に待つよ。」
「そうか。○○がそう言うなら...。」
「でも待ってる間暇だな。よかったらさ、藍さんの話とか聞かせてよ。」
「私の?いったい何を話せというのだ。」
「ほら、俺のことは色々と話しただろ?でも、俺、藍さんのことよく知らないんだよな。あ、いや、別に話したくないならいいんだ。ただ藍さんって人里には住んでいないっぽいから気になって...。」

そういえば、○○のことは本人から聞いた。○○は幼いころ、両親を亡くしているらしく、父母共々、外来人で親戚はいない。それをみかねた里の一人が○○を引き取り、育てていった。しかしその者も昨年の年頭に亡くなったらしい。
その話を聞き、憐れだと思った。
きっと、こいつは今でも寂しい思いをしてるに違いない。
ならば、今だけは、私がその空いた心を埋めてあげよう...。そう決めたんだ。

「...まぁ、話したくないことぐらい誰にだってあるよな。無神経だったよ。ごめん。」

また、あれこれ考えてしまった。
「...あ、そ、そんなことはないが......。うん、いずれ話すよ。」

正直、あまり話したくない。嘘をついて私のことを伝えてもそれは本当の私じゃない。だが、本当の私を伝えても、そのせいで○○が私を避けるようになるかもしれない。嫌われるかもしれない。そんなのは嫌なんだ......。

「そっか。ああでも、だいぶ人減ったんじゃないか?...っお?」
「○○さん、お待たせしました。中へどうぞ。」

八意永琳の弟子、鈴仙・優曇華院・イナバ。
ようやく、診察か。

「ではいくぞ。○○。」


388 : ○○ :2015/12/07(月) 23:19:19 OcAHF2K.
>>387
続き


「で、今日はどうされました?」

永遠亭の主治医。八意永琳。

「2週間前くらいに脚を怪我しまして。まだ少し痛むので診てもらいに。」
「成る程。...ちょっと診せてね。此処が痛いの?」
「ええ、...いてっ。」

○○が顔を歪ませた。

「おい!優しくできないのか!!痛がってるぞ!!」

「大丈夫よ、大したことはないわ。随分としっかり処置されてる。この分だと後、もう2週間すれば治るわね。湿布でも出しておきましょう。」

そうか...。よかった......。

「藍さんのおかげだ。ほんと、有り難う。」
「いやいや、油断はするな。まだ治ったわけではないのだぞ?」
お前の行動はいつも肝を冷やす。私がいなければどうなることやら...。

「...藍?...あなた、あのスキマ妖怪の...。」

「!!...違う!!!私は人間だ!!」
思わず、カッとなり叫んでしまった。

「......。そう。...○○さん、少し外でお待ちいただけますか?鈴仙、彼をお願い。」
「あっ、は、はい。わかりました、師匠...。」
「え、あの、藍さん?いったい...。」
八意の弟子は、○○を連れ外に出ていってしまった。

「...さて。どういうつもりなのかしら?人に化け、人である彼を手当てとは...。」
「お前には関係ない。」
「私は医者よ?彼を診察したからには関係なくないわ。」

「...妖怪とて、人が倒れていたら助ける奴もいる。それだけだ。」
「あら意外。あのスキマ妖怪の式神が人を助けるなんて...。」

ふん、なんとでもいえ。

「私を謗る為に留めたのか?なら戻る。」
「待ちなさい。私が言いたいのはね、あなた、人と近づきすぎよ。」

なに...?私が...?

「どういう......。」
「あの子...、○○の怪我を診てわかった。異常なくらい完璧に手当てが施されていた。それも毎日、ね。あなたは妖怪。でも彼は人間なの。人と妖怪には越えられない境界が存在する。それは決まり事。どれだけあなたがあの子に尽くそうと、彼があなたと歩むことはないわ。」
「私が...、○○と......?」
「自覚してなかったの?断言...はできないけど、あなた、○○のこと好きなんでしょう?」
「す、き...?」

そう、なのか。私は...私は、○○が、好き、だ

なんだ、気づかぬうちに、私は○○に思いを寄せていたのか――
ただ、気に掛かる人間だなとしか考えていなかった。そう思っていた。
私が仕えるのは紫様だけ――

紫様の式神として一生を過ごしていく、それが全てだった。
だから、彼を、○○を救護したのは私自身、よくわからなかった。

○○には、放っておけない、心配だからだと口では言っていたが、本当のところ思い悩んでいた。いくら人が道端で倒れていてそれを助けたとしても、治るまで看病をするのは人が良すぎる。怪我人は助けるのは当然、とはいえ家まで通うのはいささか度が過ぎる。
だが、深く考えるのはやめていた。ほんのきまぐれで世話をしてやっているのだ――

怪我が治ったらまたいつもの生活に戻る。だから気にするのはよそう...。そう思い、頭の片隅に追いやった。
けれど、今なら分かる...。最初は良心からきたものだったのかもしれない。

しかし、日を重ねるうちにだんだんと心が惹かれていったんだ。この人の危なっかしいところも、私に向けた笑顔も、全部、全部、好き。いや、もう、これは"愛している"――
この愛は一体なんだろう? こんな気持ち、初めてで...。

いや、何でもいい、どんなものでも愛は、愛だ。
ふふ、ならば仕様がない――

○○はこれからも私が、力になろう。私達、二人の間に境界など存在しない。
ああ、○○...。一時も離れずに居よう。


389 : ○○ :2015/12/09(水) 20:54:37 y9cQttv.
>>388
修正
すみません、永琳の鈴仙に対する呼び名を間違えました。正しくは「ウドンゲ」でした。


「で、今日はどうされました?」

永遠亭の主治医。八意永琳。

「2週間前くらいに脚を怪我しまして。まだ少し痛むので診てもらいに。」
「成る程。...ちょっと診せてね。此処が痛いの?」
「ええ、...いてっ。」

○○が顔を歪ませた。

「おい!優しくできないのか!!痛がってるぞ!!」

「大丈夫よ、大したことはないわ。随分としっかり処置されてる。この分だと後、もう2週間すれば治るわね。湿布でも出しておきましょう。」

そうか...。よかった......。

「藍さんのおかげだ。ほんと、有り難う。」
「いやいや、油断はするな。まだ治ったわけではないのだぞ?」
お前の行動はいつも肝を冷やす。私がいなければどうなることやら...。

「...藍?...あなた、あのスキマ妖怪の...。」

「!!...違う!!!私は人間だ!!」
思わず、カッとなり叫んでしまった。

「......。そう。...○○さん、少し外でお待ちいただけますか?ウドンゲ、彼をお願い。」
「あっ、は、はい。わかりました、師匠...。」
「え、あの、藍さん?いったい...。」
八意の弟子は、○○を連れ外に出ていってしまった。

「...さて。どういうつもりなのかしら?人に化け、人である彼を手当てとは...。」
「お前には関係ない。」
「私は医者よ?彼を診察したからには関係なくないわ。」

「...妖怪とて、人が倒れていたら助ける奴もいる。それだけだ。」
「あら意外。あのスキマ妖怪の式神が人を助けるなんて...。」

ふん、なんとでもいえ。

「私を謗る為に留めたのか?なら戻る。」
「待ちなさい。私が言いたいのはね、あなた、人と近づきすぎよ。」

なに...?私が...?

「どういう......。」
「あの子...、○○の怪我を診てわかった。異常なくらい完璧に手当てが施されていた。それも毎日、ね。あなたは妖怪。でも彼は人間なの。人と妖怪には越えられない境界が存在する。それは決まり事。どれだけあなたがあの子に尽くそうと、彼があなたと歩むことはないわ。」
「私が...、○○と......?」
「自覚してなかったの?断言...はできないけど、あなた、○○のこと好きなんでしょう?」
「す、き...?」

そう、なのか。私は...私は、○○が、好き、だ

なんだ、気づかぬうちに、私は○○に思いを寄せていたのか――
ただ、気に掛かる人間だなとしか考えていなかった。そう思っていた。
私が仕えるのは紫様だけ――

紫様の式神として一生を過ごしていく、それが全てだった。
だから、彼を、○○を救護したのは私自身、よくわからなかった。

○○には、放っておけない、心配だからだと口では言っていたが、本当のところ思い悩んでいた。いくら人が道端で倒れていてそれを助けたとしても、治るまで看病をするのは人が良すぎる。怪我人は助けるのは当然、とはいえ家まで通うのはいささか度が過ぎる。
だが、深く考えるのはやめていた。ほんのきまぐれで世話をしてやっているのだ――

怪我が治ったらまたいつもの生活に戻る。だから気にするのはよそう...。そう思い、頭の片隅に追いやった。
けれど、今なら分かる...。最初は良心からきたものだったのかもしれない。

しかし、日を重ねるうちにだんだんと心が惹かれていったんだ。この人の危なっかしいところも、私に向けた笑顔も、全部、全部、好き。いや、もう、これは"愛している"――
この愛は一体なんだろう? こんな気持ち、初めてで...。

いや、何でもいい、どんなものでも愛は、愛だ。
ふふ、ならば仕様がない――

○○はこれからも私が、力になろう。私達、二人の間に境界など存在しない。
ああ、○○...。一時も離れずに居よう。


390 : ○○ :2015/12/10(木) 00:27:39 z/yJriak
ついに籃が...


391 : ○○ :2015/12/11(金) 02:56:40 OBD2uNTI
ノブレス・オブリージュに囚われて(84)
ttp://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=39700&n=74
寒い
でもレティさんが元気なのだろうなと思うと……ちょっと嬉しくなる

藍にとっても、分かっちゃいるんだ
でも分かってる事を指摘される。それが一番腹が立つし、意固地にもなりやすいんだよな


392 : ○○ :2015/12/12(土) 22:39:57 HMwX4Rk6
元気なのは良いことだけど張り切りすぎだよレティさん…

レティさんに抗議してくるレベルだわ


393 : ○○ :2015/12/13(日) 04:49:48 QiYZUGEQ
>>392
抗議しようと簑と笠を着て外へ出ようとする○○、だがレティの狙いはそこであった。

○○は突然立ち上がり簑と笠を着た。村人は○○突然の行動に驚き呆けていたが、外に出た○○を呼び止めようと玄関から外を見たときには、既に目にはとらえることは出来なかった。
○○が外に出て数秒後、吹雪は止んだ。だが表に出れば○○が見える時間あろうが、まるで幻のように「ふっ」と消えてしまった。
村人は○○を探しに動こうとしたとき、ふと耳をすませば囲炉裏の炭の音と、女性の幸せそうな声が響いていたという。
その日から今日ほどの吹雪はなくなったが、村人には一つだけ疑問があった。○○はなぜ急に外に出たのだろうかと。
また村人は一つの結論を出した。今度何かおかしいことが起きたとき、同じことをすれば異変は解決するのだろうと。


wikiに載せるときは読みやすいように添削しといてね。


394 : ○○ :2015/12/14(月) 20:41:09 ELk1ampg
なんだ君俺の上司かなんかか


395 : ○○ :2015/12/15(火) 00:50:22 gdTBi5dI
>>394
すみません。
読みにくいのであれば改変してもらった方が良いと思い最後に足してしまいました。

まとめなくて下さいお願いします。


396 : ○○ :2015/12/15(火) 19:15:53 BklmS2fQ
いやこっちこそ言い方キツかったです。ごめん。
今回はwikiには自分が添削しておくから、これにて落着として頂きたい。
wiki見てもらうと分かるけど、殆ど添削とか誤字修整とかされないのが普通なので気を付けたほうがいいかもですね。
誤字から生まれるものもたまにあるし、勢いも大事だから難しいですね。


397 : ○○ :2015/12/15(火) 20:27:32 5e05X0mo
>>391
更新お疲れ様です。はたて夫妻のラブは誰にも邪魔出来ませんね。二人とも苦労を共に分かち合ってきたからなんでしょうか。いや、それだけじゃないですね。
そしてご感想有難うございます。今回の投稿で完結ですが、書いてみて文を書く難しさがよく分かりました。特に藍はもっと重い愛が表現できただろうと思い、悔しいです。

>>393
レティさんは恋したら熱気じゃなくて冷気が凄くなるんですかね。暖をとっても意味ないくらいに。彼女が幸せならそれでもいいか。

>>389
続きです。今日で完結致します。長らくお乗せ頂き有難うございました。次作は短くまとめられるよう精進します。


「ねぇ、ちゃんと話聞いてる?」

おっと、また思い耽てしまったな。

「ああ、ちゃんと聞いてるさ。...そう...だな......。確かに私は〇〇に惚れ込んでいる......。だが私とて、人と妖怪の境を理解していない程、淺くは生きてないよ。ただな、あいつはそそっかしいから、私が傍に居てやらないと何を仕出かすか分からないんだ。後2週間。そしたら、あいつの元から離れよう。」

こうでも言わないと、こいつは私を帰さん。医者として〇〇の身の上が気になるのだろう。
だが、そうはさせない。なんとしてでも〇〇と生涯を共にするのだ。どんな手を使っても...。

「.........。わかったわ。勝手にしなさい。忠告はしたわよ。」

「ではこれで失礼する。...診察代はこれくらいでいいか?」

「ええ。.........妙な事考えないでね。」


「藍さん!!もう、いったいどうしたってんだい?」

〇〇が摺り足で私に近づいてくる。もう、わざわざいいのに。だけど嬉しいなぁ。可愛いやつめ。

「何でもないよ。......それより無理はするな、ほら、乗って。帰ろう?」

猫背になり、背中に乗るよう促す。

「そうか?あ、でもお金を......。」

「何だ、案ずるな。もう支払ったよ。」

こんな事を言うとまた、私に悪いと言って意地でも自分で支払おうとするので

「金の事は後ででいい。今は、帰ろう。」

そう〇〇にぴしゃりと言った。そんな義理堅いところにも惚れ込んだのだが。

「わかったよ。じゃあ藍さん頼む。」

〇〇が私の背に乗る。背中越しに伝わる〇〇の体温。とても心地良い。
できる事なら、正面から抱き締め、〇〇の匂い、温もりを感じとりたい––

でもそれは後々できる事だ。

「では鈴仙。帰りの道案内を頼みたいのだが......。」

「はい。お師匠様から〇〇さんの事、頼まれましたので道案内ぐらいしますよ。」

正直、〇〇と二人きりで居たい......。
だが我慢だ。あと少しなんだ...。

「ではよろしく頼む。」

「鈴仙さん、お願いします。」

「任せてくださいな。」


398 : ○○ :2015/12/15(火) 20:30:56 5e05X0mo
>>397
続きです

ようやく、生意気な薬師から解放された。気が付けばもう、午の刻を過ぎていた。

ではとっとと帰って、〇〇の昼食でも作るとしよう。彼は何でも美味しいと言ってくれるので、何を料理しようか悩む。

「なぁ〇〇。昼は何を食べたい?」

「そうか、もうそんな時間か。う〜ん……。悪いんだけどさ、中華料理とかってやつ作れる?前に里に来た外来人が話してたんだよ。聞いた時から食ってみたくってさぁ。藍さん、色々知ってるし。出来たらだけど……。」

中華料理……。成る程、確か以前、紫様が急に食べたくなったと言って私に無理矢理作らせた事があったな。ま、当然、その様な物、私が知らない筈がなく、完璧に作り上げたが。

「出来るぞ。中華料理なんて私にかかればお茶の子さいさいだ。」

「おー。流石、藍さん。朝飯前ならぬ昼飯前ってか!」

よし、その時以上に美味しく作ろう。そして作ったら、そ、その、〇〇と……。あ….あーん……とかしちゃったり……。ふ…ふふ。うふふふ……。あー!もう!待ち遠しいなぁ………。


(………。う〜ん。中華って何だろう。想像がつかないわ……。)

ふと横を見たら、この兎が腕を組んで耳を垂らし、何か思考している様子だった。
その姿を見て何となく察した。わからないのか、と言って、知識を自慢してやろうかと思ったが、こんな奴に口授しても意味ないな思い、話すのを止めた。


そうこうしているうちに竹林を抜けていた。もう、兎の案内は要らないな。
礼の言葉を言い、鈴仙を永遠亭に帰したその時−−−−

「見つけたわよ、藍。いったい、何してるの?」

紫…様……?何故、此方に……。


399 : ○○ :2015/12/15(火) 20:37:57 5e05X0mo
>>398
完結です。何だか書いていて藍の事、もっと好きになったのでいつかはリベンジしたいです。

「うわっ!お、驚いた。変な空間から出てきた…。妖怪か?」

「あら、スキマから失礼。私はこの幻想郷の管理者、八雲紫ですわ。でもそんな事はどうでもいいの。藍。貴女、仕事すっぽかして何してるの?おまけにそんな姿になって、人間にでもなったつもり?」

……っ‼
い…いまの……。〇〇に…...き…聞かれた?

「八雲…紫……。ってあの!?へぇ、初めて見たなぁ。…ん?今、人間の姿って言った…?」

「ちっ...ちがっ.........。」

違うと叫びたいのに声が出ない。どうにか、言い訳をしたいのに頭が真っ白になって言葉が出てこない。恐い。本当は人では無いと知られたく無い。
胸がつかえ、ほろほろと涙が出る。

「そう…そういう事ね。貴女、最近やけに機嫌良かったからいい事でもあったのかと思っていたけれど…。人間に見初めてたのね。でもね、藍。それは叶わない事よ。分かっているでしょう?なら戻ってきなさい。貴女の居場所は其処じゃないわよ。」

また、言われてしまった…。あの薬師に続き、紫様にまで…。

「ちょっ、ちょっと待てよ!話についていけねえよ!藍さんが人間じゃ無い?それに戻れって…。」

「ええそうよ、藍は私の式神。八雲の名を与えた妖獣。理解した?」

もう...嫌だ.........。ようやく〇〇への想いを確認できたのに…。共に生きようと心に誓ったのに………。このままでは………。つらくて、つらくて、いっそ明かしてしまおうか…。

「………。藍さん。本当なのか?答えてくれ。」

「………………。ああ、本当だよ。」

言ってしまった…。〇〇の顔を見れない……。舌を噛んで死んでしまえば、嫌われずに済むかな……。

「そっか。有難う、本当の事言ってくれて。」

…………?
あれ?今、彼は何て?

「貴方、ちゃんと聞いてた?藍は、妖怪なのよ?貴方の事を騙していたのよ?普通は怒ったりしない?」

「無い腹を立ててどうすんのさ。俺は騙されたなんて思っちゃいないね。藍さんは俺の恩人で善人だ。そんな人を妬めって?冗談。藍さんがどんな姿だろうと構いやしねえよ。」

〇〇−−−−。
いいのか?いいんだな?そんな事、言われたらもう、歯止めは効かんぞ!

「〇〇—!!大好きだ!!愛してるぞー!!」

元の姿に戻り、彼に抱き着く。ああ、この匂い、温もり、堪らない!!絶対に離さないぞ!!

「えっ!!まじで!!そうだったの!?見初めたっていうのはそういう…。.…じ、じゃあ俺も好きだー!!」

「!! 本当か!?今の言葉、忘れないぞ!確かに聞いたからな!」

「はぁ…。藍と恋仲になると大変だっていうのに……。精々短い間、愛し合いなさい。命果てるその時まで……。」

いえ、大丈夫ですよ、紫様。
もう、決めましたから。〇〇が死ぬ時は私も死ぬ時です。
そしてまた、愛し合うのです。ずっと、ずーっとね……。


400 : ○○ :2015/12/16(水) 06:55:19 id8QEuTE
完結おめでとう!
藍ほんといいですよね超いとおしい
しかし、藍と付き合うので大変なことってなんでしょうね
寝れないのかも


401 : ○○ :2015/12/16(水) 21:35:50 nn1aBCQs
>>400
ご感想有難うございます!初投稿で反省点も多いですがお楽しみいただけたなら幸いです!
多分、夜は寝かしてくれないのでしょうねぇ。でもそれで身体壊したりしたら嫌だから一緒に昼寝しちゃったり。恋人になったら今まで以上に尽くすと思います。藍は。


402 : ○○ :2015/12/16(水) 22:45:33 OdPcsO2M
まとめました。
たぶん抜けはないはずです。


403 : ○○ :2015/12/17(木) 13:09:16 52ax3UgQ
>>402
感謝


404 : ○○ :2015/12/17(木) 23:02:24 DaJXPjUI
>>402
まとめていただき、ありがとうございます!凄く嬉しいです!


405 : ○○ :2015/12/19(土) 16:27:08 0Ur0FWQ6
ここが新しい板かな?
その内またシリアスなのも投下したいが久しぶりだしちょっと変わった趣向のものを書きたいと思ったらまた日常系になってしまった。
このスレの住人には慣れているヤンデレの愛情表現だが周りの普通の人々からしたらかなりの恐怖だろうなと思って出来た話。



【文々。新聞 ○月×日】【幻想となる外来人 第一回 名家を支える花婿】
 
                          文責 射命丸 文

【早朝 H邸前】
H氏の朝は早い。
白露の季節とはいえ朝まだきの暗がりである。今回の取材対象H氏が既に身支度を整え出迎えてくれた事に記者は驚きを隠せなかった。
――お早うございます。今日は一日よろしくお願いします。
『こちらこそよろしく頼む』
――いつもこんな早くに? 
『いいや今日は偶々だ。取材されるなら少し格好付けたくなってな。ああ、これは書かないでくれ』
 元は外来人とはいえ今や人里の中核の一人であり妖怪勢力との緊密な繋がりもあるという。当初抱いた印象とは裏腹に意外な茶目っ気のある笑顔だった。
外来人たちは幻想郷では非常に珍しい存在である。幻想郷のあちこちに散っている彼らはどんな生活をして異郷に根を下ろしているのだろうか。
これは数奇な運命を辿り幻想郷に身を寄せた外来人たちの日常を追い、彼らの目を通して幻想郷とそこに住む我々の姿を知るための取材だ。他者の目に映った自分の姿にしか見えないものもあるに違いない。
記念すべき第一回は人里のH家から。そこにはH家の婿となり同家を支えるH氏の姿があった。
 H家は古くからこの幻想郷に栄える学術を生業とする異能者の一族である。その権力は社会全体に根のように張り巡らされている。それらの上に静かに座すのは一族の幼き当主にして祖霊の知恵の象徴【検閲】。
H氏はその九代目の【検閲】A女史の夫となった男である。 
当然取材交渉は難航したが今回は記者がH夫妻の友人であった事もあり様々な厳しい条件下で取材が実現したのである。
 挨拶が済むとすぐにH氏が屋敷の中へ招き入れてくれた。
『朝飯はすませたのか文。俺は今からだが』
【H邸 客間】
――いやすみませんね。私まで御馳走になってしまって。お世話になります。
 通されたのは広くはないが趣のある座敷であった。
『いや客に出すような食事をわざわざ用意した訳ではないから手間でもない』
 確かに食膳に並んだのは正式な客人をもてなすというより単純に朝早く訪れた友人に振る舞うというようなの温かみのある食事である。
 熱々の一汁三菜に雑穀の入った炊き立てのご飯。塩味の効いた香の物が幾つか。恐らくはこのH家の奉公人たちも同じ朝食を食べているのであろう。
どれも素朴な味わいでこのところ不摂生が続く記者には豪勢な食事より余程心に染み渡った。喜んで掻き込み一息吐いたところでふと思い直した。
成程奉公人と同じような食事を出す事で気負わず家人同然の気心の知れた仲であるという暗黙の了解を見事に作り出している。これでは知らず知らずに取材に手心が加わるやもしれない。
やたらと下にも置かない扱いで歓待されるより遥かに効果のある接待と言えるだろう。
 涼しい顔で食事をとるH氏の深慮は見事という他は無い。もしもこれが常に清く正しくと己を律する本紙記者でなければまんまと引っ掛かっていたであろう。
『文。卵は……お前は食わんな。納豆は食うか』
――あ、どうも頂きます。
 納豆の小鉢を受け取る際ふと見るとH氏の食膳に並んでいる朝食は記者に出されたものとメニューが違う。
 別に使用人の食事と比べて贅を尽くしているとかいう事は無い。男性だから量は多いがどちらも似たように素朴な家庭料理で普通の朝食である。少し不思議に思って聞いてみた。
――好物なのですか? 
『何がだ? 』
――その料理がお好きだから別に用意しているのかと思って。
『ああ、これは……俺の食事だけは毎回妻が作っているのだ』
――わざわざ別に、毎食ですか? 
『そうだな。忙しいだろうに。もう少し休んで欲しいのだが』
――ははぁ。愛情の籠った手料理が頑張りの秘訣というわけですか。
『そう言われるとどうもこそばゆいが。わざわざ俺の好みに合わせてくれているし確かにありがたいと思っているな』
 H氏が全く環境の違う幻想郷での生活に深く馴染むまでには周囲からの手厚い助けがあったのかもしれない。H氏の表情は変わらなかったがその声には言葉以上の感謝が滲んでいるような気がした。
 程なくH氏が急須を持って立ち上がった。
『ちょっと茶葉を替えて来る』


406 : ○○ :2015/12/19(土) 16:30:18 0Ur0FWQ6
H氏が出て行ってしまうと座敷内は急にガランとしたように感じられた。昨日から空模様は思わしくない。今日も雨こそ降らなかったが日の差さない暗い朝である。
 その薄暗さが手伝ってか先程まで風情と趣が感じられていたはずの屋敷の中が急に古めかしく陰鬱に見えた。屋敷内には何人もの奉公人がいるのだろうにとても静かだ。余りに不自然なほど静まり返っているせいか耳鳴りまでしてきて不気味に思った。
 古いが隅々まで清められた品の良い座敷である。ここだけではなくこのH家は全て手入れが行き届いているのだろう。ただこの屋敷は静かになるとどことなく空気が重い。
 不意に視線を感じた。誰かに見られている、ような気がする。背後が気にかかった。
振り返るとそこには奥に続く襖がある。その先は光が差しにくいのか更に暗い。その襖は僅かに開いていて隙間から暗い空間が見えている。その隙間に何か、いや誰かが――。
『文』
――はっ、はい? 
 声を掛けられて振り向くとH氏が立っていた。急須を手に戻ったらしい。
『焙じ茶にしたが良かったか。おいどうした顔色が良くないな』
 もう一度背後の襖を確かめたがそこには何の気配もない。
――いえ、なんでもありません。
H氏が戻った途端立ち込めていた重く暗い雰囲気は消えていた。
 結局もう一服した後で本格的に取材を始める事になった。
【H邸 玄関】
 仕事に向かう準備をするH氏の傍らに控えた老人が手短に告げた。
午前の間に酒造組合と自警団との協議がそれぞれ一件、それから面会の希望が三件控えている、との事である。
『酒造組合の方は契約締結だけだ。判子を押すだけだな』
――どういうお仕事ですか?
『外来人と一緒に新しい酒を造った杜氏が古い蔵元から暖簾分けした。で新しく造り酒屋を立ち上げたが小さな造り酒屋は大抵、蔵の表をそのまま杉玉を吊るして店舗にした細かい商売だから問屋を介さない。
その分、卸値は有利な訳だが資本が小さいと原料米の確保が難しい。他店との競り合いの際に良質な原料を確保できないのでは困るから古巣の蔵元を頼る事になった。蔵元は原料の融通を約束する代わりに新しく出来た酒を優先的に卸す事を条件に提示した。
その量やら値やらの交渉が長引き仲立ちを頼まれていたのだが先頃ようやく両者が合意したので今日は役場で面倒くさい手続きを踏ませて契約に立ち会って連中に握手させねばならん』
――自警団との話は? 何か事件ですか? 
『物騒な事は何も無いぞ。外来の産物が増えたので郷倉を増設する。その設営の手続きだ。こちらももうほとんど終わっているがな。ついてはそれを管理する自警団の施錠管理者と防火管理者、見回り及び保全のための人員配置が必要だ。それもすぐに済む。面会は? 』
 記者の質問に答えると続けざまに老人に先を促した。面会の一件目は河童の技術者N氏。新しい機械の起動実験への立ち合いを希望しているという。
『その場所は却下だ。爆発の可能性がある』
 H氏は即座に実験の場所を市街地から遠く離れた場所に移させるよう指示した。
『Nは非常に優秀な技術者なのだが周りが見えなくなる癖があるから失敗した時の被害も考慮せんとな。立ち合いには行かせてもらうが少し遅れるかもしれん』
 続いては驚くべき名前が挙がった。妖怪の賢者【検閲】氏の式として名高い【検閲】氏である。
『大結界管理の件だな。【検閲】』
――【検閲】氏とは良く話すのですか。
『実務的な事は大体【検閲】と話す事になる。【検閲】は必要がなければ出て来ない。普段の諸々の仕事は【検閲】に一任している。話が早く誠実な上にほとんど完璧な仕事振りだから助かっている』
最後に人里の寺子屋で教師をしているK教諭。寺子屋の備品の件で相談があるという。
『ああ、またチルノが何か壊したな。修繕で済めばいいが』
 淀みなく次々と本日の予定が決められていく。まだ仕事の確認をしている段階でしかないのだろうがその決定力がこれからの業務を円滑に進めるためにも活かされているだろう事は既に予感された。
しかしK教諭の名前が挙がった途端初めてH氏は考え込むような素振りを見せた。


407 : ○○ :2015/12/19(土) 16:32:35 0Ur0FWQ6
『今回の相談が何にせよ寺子屋の備品をいくつか新調しなければならない時期が近い。それにK先生から新しい教材の要望もあった。その予算を決める必要がある。
その他に寺子屋の運営と現状に関して幾つか話し合っておきたい。先生に会う前に確認事項をまとめておかなければならん』
 K教諭からの相談には多くの時間を割いているという。
――ずいぶん熱心なのですね。
『俺は生来怠け者だ。熱心などというものじゃない。K先生は無償で教職をなさっている。人の子供も妖怪の子供も。教師としてだけではなく人里は他にも多くの事で先生の助力を得ている。
人も妖怪も彼女への有形の謝礼を十分とは考えてはいない。もっとも受け取ってもらえないのだが。真の熱意ある教育者とは彼女のような人を指すのだろう』
――K先生と親しいのですね?
『まぁそれなりに良く話すが』
――美人ですよねK先生。
『そうだな』
――それでついつい肩入れしてしまう事もあるのでは?
『おい何が言いたい』
 H氏が少し睨むような目付きになった。
――いやぁ。ただちょっと気になったもので。
 しかし真相究明のためここで引く訳にはいかない。
『いいか。何もないんだ。勘違いするな』
――あややや。随分慌てているようですが。
 事実、彼の様子は何でもないにしては少し行き過ぎているようにも思えた。しかし。
『落ち着け、やめろ』
 そこで初めて記者は彼の視線がこちらを見ていない事に気が付いた。彼の目は記者の後ろを通り過ぎた先。具体的には廊下の奥の暗がりに。
嫌な汗が瞬時に滲んだ。背中に無数の黒い針のような気配が向けられている事に気が付いてぞっとした。
彼は私に言っているのではない。
――ひ。
『もうお立ちですか? 今朝は随分お早いのですね』
 廊下の暗がりから少女が歩み出た。影の中から滲み出るように気配無く唐突に現れたように思えて記者は息を呑んだ。
『ごめんなさい。お見送りが遅れてしまって。少し体調が悪くて』
『いや、構わん……無理するな』
 以前からの友人であるにも関わらずH氏と言葉を交わすその瞬間までその少女がH氏の妻であるA女史と気付く事が出来なかった。何だか幽霊に背後に立たれたような気がしていたのである。
『文さんもごめんなさい。ご挨拶が遅れましたね。朝早くからご苦労様です』
――あ、いえ。どうも。お邪魔しています。
 前述の通り記者はH夫妻の以前からの友人である。今もA女史はごく自然に記者に挨拶してくれた。少し顔色が悪いように見えたがもちろん不審な態度など何一つ無い。
A女史は白磁のような肌をしているから気のせいかもしれない。ただ。
『それでは行ってらっしゃいませ』
 A女史の目だけは最後まで笑う事はなかった。
【人里 役場】
<中略>
予定されていた業務をこなし終えたH氏は事務作業を始めた。
――今なさっているのは? 
『ああ、お前にも関わりがある事だ。妖怪の山……天魔殿に向けて手紙を返す。その返報に書くための内容を調べて資料をまとめる書類仕事だ。互いにいい加減な事は書けないからな』
人里と妖怪の山も全くの没交渉ではない。互いの組織の上部になる程緊密な連絡を取り合っている。という事らしい。
――私もあまりその辺の事知らないんですが。
『互いに基本的な不干渉は保つが話しておきたい事はある。双方に益のある事だからな』
――見せて貰っても宜しいでしょうか? 
『目の色が変わったな。別に秘密ではないから構わんがお前が期待するような陰謀めいた物ではないぞ』
笑いながらH氏が差し出してくれた人里と妖怪の山との往復書簡記録。真実を求める正義の新聞記者の性でつい本来の取材を差し置いて食い入るように見てしまった。
穀物価格の変動について。
獣や下級妖怪の個体数と動向について。
守矢神社参詣道の整備について。
幻想郷の山々の細かな様子について。
特産物と嗜好品の売買について。
遭難者の救助と山の保全について。
妖怪の山の【検閲】について。


408 : ○○ :2015/12/19(土) 16:35:42 0Ur0FWQ6
スクープを期待したが残念ながらそこに並んでいたのは地味な事柄ばかりで記者にとっては拍子抜けであった。これは記者の知り合いの引きこもり天狗が好きそうな題材である。
『つまらんと言ったろう』
――はぁ。いやまぁしかし意外ですね。わざわざこんなやり取りを。
『互いに角を立てたいわけではない。それに天狗は里の事を、里人は山の事を良く知らない。損でない事を教えあっているだけだ』
――言っている事は分かりますが。何と言うか……私が言うのも何なのですが嫌ではないのですか?
『どういう意味だ? 』
――私が言うのも何なのですが、天狗が少しばかり高慢に見られているかなという自覚はありますし。
『天狗を然程高慢だと思った事は無い。あくまで俺たち外来人の目から見た時の話だが天狗は自分の種族に誇りを持っているだけの事で別に付きあい辛いわけではない』
――しかし妖怪と人間は喰う者と退治するものですよ。怖いとか嫌いとか思わないものですか。貴方たち外来人のそういう意識はどこから来るものなのですか? 
『ああ。またその手の話か』
 倦んだような言葉とは裏腹にH氏は今日一番暖かく笑った。記者が詳しい説明を求めるより早くH氏は続けた。
『幻想郷の人妖はみな同じ事を聞くな。もちろん俺たちも喰われるのは御免だが』
『ここは不思議な所だな文。絶えず親しんでいるにも関わらず慎ましい畏れと敬いが根付き互いの領分を圧する事が無いのに常に備えている。
人は里の外の妖怪を討とうとせず妖怪は自分の縄張りに入った人間しか食おうとせず。領分を守っている限り傷つけあう事が無い』
『外来人は幻想郷の生活に慣れるために色々な面で四苦八苦するものだ。大抵の者は幻想郷に来て最初から満足に出来る事などほとんど無い。
が一つだけ、どんな人妖にも優れる有利が一つある。俺たちはここではない違う世界を良く知っているという事だ。即ちこの幻想郷がどれほど得難い物で満ちているのか、それが骨身に染みて分かっている。
お前たちが妖怪との付き合いが嫌ではないのかと聞く度、俺たちはどうやら幻想郷とは本当の楽園らしいと思い知らされる』
――もう少し詳しくお願いします。それはどういう意味なのですか? 
『俺たちからしてみれば幻想郷にある対立意識は爽やかで……何と言うか、可愛いものなのだ』
 記者は一層分からなくなった。首を傾げる記者にH氏は続けた。
『分からんか。なればこそ楽園だ』
 H氏はそれ以上語らず仕事に戻った。確かに我々にとって近代の外界には知らない事が多い。記者にはH氏の言葉の意味する所は朧にしか分からなかった。
しかしその視点こそ本企画で記者が知りたかった何かの本質である気がする。何かを掴みかける確かな予感に今後の取材にも力が入った。
<中略>
やがて昼食時になった。
『愛妻弁当ですか? 』
――まぁ、そう呼んで差支えないが。
『おやおや桜でんぶでご飯にはぁとですか』
――おい、ちょっと手帳を置け。
権力からの不当な弾圧に屈するわけにはいかない。記者は一時その場を離れ更なる取材の為にH氏不在のH亭へと飛んだ。

 H家本来の学問や探求を除いた政や金繰りなどの所謂俗事を担当するH氏が不在の屋敷を訪れたのには記者なりの思惑があった。
 実務的な仕事の多くを取り仕切る当主代行がいない時にこそH家の奉公人や関係者から彼に対する率直な感情を取材を出来るかもしれない。
 本日の取材の許可を得るに伴いH家からは屋敷の奥や資料の保管場所などの重要な区画を除いた範囲に限り出入りする了承も得る事が出来た。
しかし屋敷内で仕事に従事している奉公人たちへの取材は思わしい結果にならなかった。
皆、判で押したような笑顔を浮かべ『旦那様には大変感謝しております』と繰り返すばかりである。誰に聞いても取材に対して徹底した情報統制を敷いているようですらあった。
 しかも矢張りH氏がいないこの屋敷は静まり返り重苦しい気配が充満している。そこを歩く奉公人たちは笑みを浮かべながらそれとなく記者を監視しているように思える。
せっかく戻って来たのだが早くもH氏の所へ帰りたくなってきた。
何だか居心地が悪いまま屋敷内を歩いていると、ある部屋の前で見知った背中を見つけた。
A女史である。背を向けていてまだこちらに気付いてはいない。奇妙な事にA女史は何かに顔を埋めて深く呼吸していた。
A女史が持っているのはH氏が今朝着ていた部屋着である。
『ああっ……あなた、あなた、私の旦那様……うふっ。うふふ。うふふふふふ! くんかくんかすーはー。くんかくんか。ふが……はっ……くしゅんっ! …………お洗濯しないと……』


409 : ○○ :2015/12/19(土) 16:38:23 0Ur0FWQ6
不気味な笑いを漏らしながら部屋着に顔を埋めていたA女史であったがくしゃみをして我に返ったらしい。
いやむしろこれはこのままの方が、と呟いているA女史に気付かれないように距離を取る。正直な話、普段の怜悧なA女史とのギャップに嫌な鳥肌が立った。見てはいけないものを見てしまった。こんな深い闇を取材するつもりで来た訳ではない。
今は取り込み中のようだし記者も別に忍び込んでいる訳ではない。許可も取ってあることだ。今の内に他の取材をさせてもらおう。もっとまともで、今回の企画に相応しい取材を。
忍び足でその場を去ろうとしたが焦っていた為に取材用のペンをポケットに仕舞おうとして落としてしまった。
カツン、と床が鳴った。記者は身を竦ませて固まった。
『文さん』
 ――ぎゃああっ! 何も見ていません! 
 肩に手を置かれて振り返るとA女史が幽鬼の如き気配を発していた。もう片方の手には先程のH氏の部屋着が握られている。
――わ、私は今来た所でして、はい。もう全く何も。
 しどろもどろに言い訳をする記者をA女史は制した。
『多分文さんは勘違いをしています。違うのです。私は変態ではないのです。確かにこれは主人の着物です。
ですが主人が脱いだ後、それを洗濯して乾かし皺を伸ばして畳むまでの間は私の物です。それが妻の責任であり権利というものです。嗅ごうが顔を埋めようが私の勝手なのです』
――あ、あははは、いやぁそうですよね。かくいう私も普段からそう思っていたんですよ。そう! 夫の生活をきちんと把握してこそ内助の功ですよね。
 口八丁には自信がある。自分で自分が何を言っているのか良く分からなくてもそれらしい発言が出来るというのは新聞記者にとって有用な才であると自負している。
 幸いA女史は記者の発言に頷いてくれた。
『分かっていただけて幸いです。流石に文さんの洞察力は素晴らしいですね。その通り、主人の生活の助けとなるために必要な行為なのです。ああする事で普段の身だしなみや体調など分かる事は多いですから』
 A女史は普段の怜悧な印象を取り戻していた。
このように淡々と事物を説くA女史の説得力は大変なものである。落ち着いてみれば先程の行為は本当に家事の一環のようなものであり何らおかしい事ではなかったのかもしれないという気さえしてくる。
何よりこうして目の中に明哲の光輝を宿しているA女史はどこからどう見ても常識人で正に貴顕の神童や賢者と呼ばれるに相応しいではないか。
そしてこれは彼女の夫であるH氏に対する取材である。一番近しい存在であるA女史に取材を試みないでどうするのだ。
記者は勇気を振り絞ってA女史に取材を申し込む事を決意した。記者の内心をよそにA女史は続けた。
『別に変態的な欲求からあのような行為に及んだ訳ではないのですよ。確かに役得だとは思っていますが。それもただ、ああしていると非常に幸福な気持ちになってとても落ち着くし満たされるし興奮する、というだけの事なのです』
 早くも記者の決心は揺らぎ始めた。
<中略>
 洗濯を終えるとA女史は彼女の仕事のために机に向かった。その部屋は本来の彼女の書斎ではなく蔵から出したばかりの古文書などを研究するための場所らしい。そのせいか少々埃っぽい。
――何のお仕事ですか? 
『古い文献の整理です。ところで……』
――はい? 
『主人の仕事場にまで付いて行ったのですよね? それは必要だったのですか? 』
――は、はい……まぁ一応。
『大変なお仕事ですね』
A女史はいつも通りの淡々とした口調だった。別に叱られている訳でもないのだが記者は針の筵の心境であった。この仕事をしていれば誤解を受け怒鳴られたりする事には慣れている。しかし責めるでもないA女史の言葉の底には筆舌に尽くせぬ圧力を感じる。
『それで、どうでした……? 』
 A女史の雰囲気が変わったような気がする。どこか落ち着きがなくなり何度も髪をかき上げている。
――どう……とは? 
『主人は何か、私の事などについて話していましたか? 』
――あやや、いえ、そういう質問はしなかったので。
『そうですか、お疲れではなかったですか? 昨晩は少し眠りが浅いようでしたので』
――そうなんですか? 
『はい。お眠りになってからしばらくお顔を覗き込んでいたのですが、その際寝息が熟睡している時のそれではなかったので』
――えっ。あの。何故そんな事を? 
『別に変なことなんてしていませんよ。少し吐息と吐息を交換していただけです』
――…………へ、へぇ。
<中略>
 古い文献に向かい合った時のA女史は明鏡止水の境地にあるようで余り話をするのは憚られた。
少し手持無沙汰になり見回してみると山のように積まれた文献の傍にまだ新しい分厚い本が開かれたままで置かれている。不思議に思ってA女史に聞いてみた。


410 : ○○ :2015/12/19(土) 16:41:50 0Ur0FWQ6
『ああ、それは私の個人的な蒐集物の目録です。ちょっと書きかけだったもので』
 開かれた頁をちらりと盗み見るとそれは集めた品物に番号を振って列挙し記述した形式らしい。それにしても膨大な量の目録である。厚みは百科事典程もある。
――それはH家としてそれらの品々に学術的……であるとか霊的な観点からの価値を見出している、という事ですよね?
H家は古くから学者の一族として妖怪を初めとする怪異の研究も行ってきた。それに関わる様々な物品や宝物を現在でも無数に所蔵、保管し研究を続けているという。
いくら文字通りの専門家の本家とはいえ、これほど膨大な蒐集品が単なるコレクションである筈はないと思った。
『いえ。ふふ。お恥ずかしいのですがH家もそこまで仕事熱心ではありませんよ。これは本当に単なる私の趣味の一つなのです。
笑われるかも知れませんが超常の存在や歴史上の物事を記録するような仕事を続けていると、単なる趣味の蒐集物にも目録を作る癖がついてしまって』  
『そんな物を作らなくても私は【検閲】ので全て覚えているのですけれど。H家の性と言うものでしょうか。どうしても分類して整理しないと気が済まない事がありまして。ふふ、おかしいですよね』
単なるコレクションにも染み付いた学者としての癖が出るという事なのだろうか。
【検閲】として畏敬の念を集めるA女史の個人的な趣味による蒐集物とはどんなものなのか。記者の期待は否応無しに高まった。
――しかしこれ程多くなると保存するのも大変でしょう? 
『ええ。屋敷のあちこちに分散して保存してあります。それぞれ保存に適した場所があったりしますから。特別な保存法を必要としない物ならこの机の中にも幾つか仕舞ってあるのです。
仕事の合間にそういう蒐集物を鑑賞して疲れを癒したりしますね。誰でも似たような事をすると思いますが』
――……どんな物か見せて貰ってもよろしいですか?
『見るだけなら構いませんよ』
A女史は机の引き出しの鍵を開けてくれた。中には幾つか金属製や紙製の箱が並んでいる。A女史はその内の一つを取り出して蓋を開いた。
箱の中は完璧に整頓されていたが記者にはそこに並んでいるものが何か分からなかった。何かが入った瓶や何かが書かれた紙や何かの部品のような物や。その他にも多くの良く分からない物品が犇めいている。
――これは一体……? 
『触らないでっ! 』
――ひゃいっ! 
 びっくりして伸ばしていた手を引っ込めると同時に変な声を出してしまった。
『失礼しました。大切な蒐集品ですので触る時は手袋をお願いします』
――いえ、こちらこそ失礼しました。あのう。それでこれは一体? 
『何と言うか自分で自分の蒐集物を説明するというのは面映ゆいですね。目録を見れば分かると思います』
――はぁ、それでは拝読します。
分厚い目録を手元に引き寄せ適当に捲りながら目に留まったいくつかの項に目を走らせてみた。

【[標本番号 三○八 標本 洋焼菓子の包み紙
  標本種別 丙
  採取場所 台所
  保存方法 防虫処置を施した後、金属製容器に保存。
  標本概要 旦那様が里の洋菓子店にて購入の後お土産として持ち帰ってくださった焼き菓子の包み紙。以前に同店舗の前を通りかかった際に美味しそうと発言した事を覚えていて下さったという証明となる物品。日々の些細な言動を心に留め置いて下さるという幸せを記念して丙種保存とする】

【標本番号 九十三 標本 剃刀
  標本種別 丙
  採集場所 湯殿
  保存方法 防錆処置の後、油紙で刃部を保護。除湿した容器内に保管。
  標本概要 旦那様の使用済み理容剃刀。顔剃りを始めとした理容に必要なため脱衣所に備えていたもの。旦那様のお背中を流しする際偶に理容をお任せいただける事があった。現在も十分使用に耐える。いつか必要になる事があれば今度は旦那様が私に使って下さるとの事。もしその日が来たならば旦那様と同じ剃刀を使っていただくべく丙種として保存】


411 : ○○ :2015/12/19(土) 16:42:54 0Ur0FWQ6
【標本番号 五九一 標本 履物 
  標本種別 乙
  採集場所 裏口
  保存方法 一般的な靴磨きを施した後、暗所に保存。
  標本概要 旦那様が人里の洋靴店にて購入した半長靴。やや耐久性に難があった模様。幻想郷を歩き回ってすぐ履き潰してしまったとの事。実質的な着用期間は短いものの着用時には運動を伴う事が多かった事が推察される。事実、芳香は濃厚芳醇である。正確にはこの濃密な芳香こそが標本の本質である。乙種保存とする。
  追記 標本回収の際、旦那様はこの標本を廃棄する寸前であった。懸命な説得と交渉により廃棄は未然に防がれたが今一度、標本の回収方針を見直す必要がある事は疑いない。特に旦那様ご自身による標本の廃棄及び損壊をより高確率で防止するため更に迅速、確実な回収方針要綱策定が急がれる】
 
【標本番号 ○七 標本 H家の雨傘
 標本種別 甲
  採集場所 玄関
 保存方法 水気を取り去り清掃後に防虫処置。暗所にて保存。
 標本概要 婚前、旦那様と正式に交際を始めた際、自宅まで送って頂いた際に使用した雨傘。図らずも相合傘になっていたという運命的符号は特筆すべきものを感じる。高度な史的価値を認め甲種保存とする】

【標本番号 一二○六 標本 涙液
  標本種別 甲
  採集場所 寝室
  保存方法 消毒済みの硝子瓶に密閉保存。小規模保護術式施術後、緩衝材にて包装。氷室に保存。
 標本概要 就寝中の旦那様の目尻から採取。眠りながら落涙されていた。魘されているなどの変調は確認出来なかったため刺激しないように抱きしめていた際、採集の必要性に思い至った。旦那様の涙を見るのは初めてではないが非常に珍しい。また多くの場合そのような事態は標本の採集どころではない。緊急性が低い状態かつ旦那様ご自身に採集を拒まれないという稀有な状況に巡り合う事ができ採取が可能となった。また採取時は舌で舐め取りたいという強烈な欲求との闘いであった事を付記する必要を認める。状況の再現不可能性、標本の希少性、標本の物的価値の高さから甲種保存とする。
追記 採取後は抱擁を継続、小声で子守歌をお聞かせしているとじきに落ち着かれた。眠ったまま赤子のように鼻を鳴らしてお顔を擦り寄せる旦那様を間近で観察できた。(詳細な観察内容に関しては 標本番号一二○六――別紙一を参照)翌朝お尋ねしたところ昨晩の出来事に関しては記憶が無いとの事。しかし、懐かしい夢を見ていたような気がする、と説明なされた】

【標本番号 九五九 標本 【検閲】
  標本種別 乙
  採集場所 寝室
  保存方法 消毒済み硝子瓶に密閉保存。小規模保護術式施術後、緩衝材にて包装。氷室に保存。
  標本概要 旦那様に特殊な【検閲】を使用して意識を【検閲】させ【検閲】を行った際に旦那様の【検閲】を採取。多少強引な標本採取となってしまった事は否めない。お叱りを頂いた(その際の会話記録は 標本番号九五九――別紙一――口述筆記記録を参照)。次回の同種標本の採集交渉は難航することが予想される。ただし標本は非常に満足のいく保存状態である。より安定した保存のため保存場所は専用の氷室内とする】

【標本番号 二四四八 標本 【検閲】
  標本種別 甲
  採集場所 【検閲】
  保存方法 【検閲】
  標本概要 【検閲】


412 : ○○ :2015/12/19(土) 16:46:06 0Ur0FWQ6
 ――ぅ…………わ……ぁ……。
 記者は烏天狗としてそれなりに長く生きているのだが腰が抜けそうになるという体験は多いものではない。
『この部屋にあるのは主に丙種の蒐集物です』
――へ、丙種? 
『はい。私たちのみにその由来や起源を限定しないものの特に保存の必要を認めるものが主に丙種に含まれます。普通の夫婦なら所謂思い出の品、記念品と言うものでしょうか』
――……甲種と乙種もあるのですか? 
『あるにはありますが……期待されると申し訳ないのですが。甲、乙、丙という分類は便宜上付けているだけで必ずしも品質や価値の高さで分けている訳ではないのですよ。
本来上下など付けられないという物も多いですから』
『乙種は私たちにその由来と起源を限定し日常生活の中で採取可能である標本の内、特に良質な採集及び保存が可能であった物が主です。
乙種はとある理由により大部分が失われてしまいました。現在再拡充を図っている所です』
『甲種は私たちにとって特に思い出深く記念碑的価値を認められるに値する物品をはじめ互いへの気持ちの表出が著しく認められるもの、多くは再度の採集が不可能である物品が含まれます』
――これは、このコレクションの事はHさんはどういう風に思われているのですか? こんな……。
正直に告白するとこの時、気味の悪い、という言葉が喉まで出かかった。これも一種の愛情表現なのだろうが率直に言うと余りの重さに血の気が引いた。
先程まで話していたH氏がこれに関わっているという事など想像出来なかった。記者としてはA女史が内密でこれらのH氏に関わる物品を集めているという答えを期待したのだ。
『……以前、大喧嘩になりました……』
当時の記憶が蘇ったのかA女史の怜悧な瞳が微かに潤んだような気がする。
『前はもっと些細な物でも蒐集していましたからこの何倍もの蒐集物があったのですよ。旦那様のお言いつけで必要最低限の物だけを残すようにする事になって。少し酷だと思いませんか』
――あ、ああ、乙種が減ったってそういう……。
『でも、その時、旦那様と何度も話し合いを重ねてある程度の蒐集を許していただいたのです。蒐集物を廃棄されたのは残念でしたがそれで私たちは更に分かり合えたんです。今ではちゃんと全ての蒐集物に旦那様の許可を頂いているのですよ』
 知っていた。H氏もこれを知っている。そして否定的な態度を示しつつもこの蒐集を容認しているのだ。身震いと同時にH氏の親し気な態度までが不気味なものに思えてきた。
 それにしても異常な趣味だ。軽い気持ちで深淵を覗いてしまった。これ以上この話を続けていたくはない、と記者が真剣に思い始めた頃、ようやくA女史は立ち上がった。
そろそろ夕食の支度に取り掛かるという。束の間ではあるがほっとした。
<中略>
H氏の話によればA女史は本来の仕事とは別にH氏と自分のための家事を毎日こなしていることになる。
割烹着を身に着けて台所に立ったA女史は筆を包丁に持ち替えても鮮やかな手捌きであった。先程まで古文書と向き合っていた時よりさらに真剣なように見える。すぐに素朴な家庭料理の美味しそうな匂いがし始める。
H氏への余りに重い愛情表現を除けば完璧なお嫁さんぶりであるといえるだろう。
しかし時折奇妙な行動が垣間見えた。
ほぼ料理が出来上がるとA女史は小瓶を取り出した。その中身の透明な液体を汁物を煮ている鍋の中に注いだ。
――今いれたのは何ですか? 
『……ただの愛です』
――あやや、いや、そういう事ではなく。
『愛です』
――あっはい。
さらには焼き魚の身を綺麗に取り分け一本一本小骨を除いていく。
――あの、何故そんな事を? 
『ああ、これは。うふふ。主人は焼き魚を綺麗に食べるのが苦手なのです。いえ、私から見ればの話ですよ? でも、いい年をして子供みたいですよね』
――それをいつも頼まれているのですか? 
『いえ。別に頼まれてはいませんが。せっかくのお料理ですから』
――そ、そうですか。
<中略>
『あとは主人を待つだけです』
記者はその言葉に違和感を覚えた。
A女史は記者に質問の時間を与えず言葉通りに玄関へ向かうとそこに端座した。朝夕は特に冷え込む季節である。その冷気など感じていないかのような背筋の伸びた美しい姿勢であった。ようやく記者は待つという言葉の意味を理解した。
――いつもこんな事を? 
『いつも出来る訳ではありませんよ。ただ今日は時間も丁度良いですし疲れてお帰りになるのですからせめてお出迎えぐらいちゃんとして差し上げたくて』


413 : ○○ :2015/12/19(土) 16:49:29 0Ur0FWQ6
――しかしすぐに帰って来るかどうかは分からないのでは? 
『いえ、そろそろお帰りになる時間です。特段遅くなるという知らせもありませんでしたから。ご飯が冷めてしまう前にお帰りになるはずです』
 A女史は全ての仕事を済ませると言葉通り本当に待っているのである。それにどうしてそんなに自信をもってH氏の帰宅時間を予想出来るのか。記者の背筋が冷えたのは冷気のせいばかりではない。
 やがて門前に人の気配が灯った。
――ようやくお帰りですね。
 H氏が帰ってくるのだ。途端にA女史がしきりに髪型を何度か手櫛で整え始めた。
『文さん』 
――何でしょう? 
『ど、どうですか……? 』
――はい? 
『つまり、身嗜みとかおかしくないですか。それに着物はもう少し明るい色だった方が……? 』
――あやや、今更言っても……。
『いえ、もちろん普段から気を使っている積りですよ。ですから最終確認として……』
 記者の返答の前に玄関を開く音がしてH氏が帰宅した。
『お帰りなさいませっ』
 途端にA女史は笑顔を輝かせて三つ指を付いた。
<中略>
 書斎に持ち帰った仕事を手早く仕上げてしまうとH氏は大きく伸びをした。
――この後はどうするんですか? 
『特に予定は無いな。普通に飯を食って風呂に入って寝るさ』
――お忙しかったですね。
『いや外界の基準で考えればやりがいは別にして忙しいというわけではないのだ。それにいつもこうではない。毎日出勤するわけでもないしな』
――それにしても大変な仕事ばかりでしたよ。噂通りの仕事振りでしたね。
『そう言ってくれるのは嬉しいが特別俺が大した事をしているわけではないのだ。俺が与えられた仕事をこなせるのはH家の奉公人たちが手厚く補佐してくれているおかげだ。
もちろんこの家の当主代行などという事が出来るのも全て周りが俺を教え導いてくれているからだ。俺がこの地位にいるのはAの夫だからでH家の婿だからに他ならない。
それに俺がHとなる前から付き合いのあった人妖たちもいつも俺を助けてくれる。俺はほとんど周囲が助けてくれねばまともに仕事など出来はしない』
――もちろんそれもあるのでしょうが。私はそれだけとは思いません。
 H氏が帰った途端、屋敷の中の重苦しい雰囲気は跡形もなく消え去った。あの雰囲気の変化は決して記者の気のせいではなかったのだ。
 日中の仕事も見事だったがH氏が帰宅した時、A女史は勿論の事H家の奉公人たちもほっとしたような顔をしていたのが印象的であった。H家が代々その家の要として守り神のように奉ってきた【検閲】その九代目であるA女史。実務能力だけではなく何よりもA女史の為にH氏そのものの存在が必要不可欠であるのだ。
そしてそれはH家全体の共通認識でもある。
 我々の幻想郷は人と妖怪どちらが欠けても成立し得ない。幻想郷には人里が必要だ。人里にはH家が必要だ。H家にはA女史が必要だ。そしてそのA女史にはH氏が必要なのだ。
 即ち外来人として幻想郷を訪れたH氏は最早この幻想郷に無くてはならない存在となったと言えるに違いない。彼のように、幻想の一部となった外来人は他にもいるに違いない。
――それでは本日はありがとうございました。
『こちらこそ。なかなか新鮮で楽しかった』
本連載では引き続き幻想郷の外来人たちの姿を追っていく。まだ見ぬ幻想の一欠けらを求めて。
――。

「このままで掲載は許可できません。書き直して下さい」
 珍しく。本当に珍しく取材対象から記事掲載の許可を得に来た射命丸文だったが阿求の言葉を聞いてがっくりと項垂れた。
山々が余りに紅の驕奢を恣にしたので秋神の姉妹が息切れを起こしたのだという。射命丸文の取材を受けたのは秋分の前後だったと思うのだがそれがこうして形になる頃には既に山は布団のような霜を被り眠っていた。
「勘弁してくださいよう。まだ妖怪の山の上からの検閲も控えているんですから」
「匿名性が薄過ぎます。これでは私たちの事だと分かってしまうでしょう。後半の記事も何ですか。これでは私が変態みたいではないですか」
「あややや……しかし後半は紛れもない事実で……脚色無しの……」


414 : ○○ :2015/12/19(土) 16:51:50 0Ur0FWQ6
「もしもこのまま通そうとしたら稗田家及び人里から妖怪の山に対して正式な抗議をさせていただきます」
「そんなぁ、それじゃあ私の新聞が原因で外交問題に……上から怒られるどころでは……とほほ……」
 文には計算高い所があるからその過剰に哀れっぽい声にも演技が含まれているのだろうが気落ちしているのは本当であろう。
「幻想郷の管理者としても稗田家について何でも書かせる訳にはいきませんわ。他にも幻想郷の基幹システムに関わる記述に数カ所看過出来ない部分があるわね。まだまだ検閲が甘いですわ」
 まさか八雲紫まで出て来るとは思っていなかったのだろう。文の原稿に次々と【検閲】部分が増えていく。
「ああもう。まいっちゃったな。やっぱりダメかな、こういう企画」
 文は疲労を滲ませた声で黒髪を搔き上げると溜息を吐いて肩を落とした。
些細でも面白おかしく日常の新鮮な事件を多く扱う事を旨としているという文々。新聞は主筆、射命丸文の不断の努力にも関わらず甚だ信憑性に欠けるという評判である。いや文の不断の努力故に信憑性に欠けるのか。
そもそも幻想郷の人妖の間では天狗の新聞という媒体自体の信用が薄いのだ。面白おかしい記事の題材とされて怒る者もいるがその不名誉は極めて限定的、一時的なものであまり気にする者もいない。読者は人妖問わず朝読んだ記事をあまり信じておらず付け加えて昼には忘れているからだ。
故にそんなに気にしなくても大丈夫だとは思うのだが流石に稗田家の内情や個人情報、そして幻想郷の根本に抵触しかねない記事には阿求も紫も非常に厳しい。
文も事前に注意を受けていたために反論出来ず項垂れている。
記者と読者の間にある温度差は天狗たちも文も無論知ってはいる。しかしその冷たい現実は彼ら彼女らの報道への熱意を微塵も失わせない。
文の新聞作りへの情熱はそれら天狗の中でも一際強いように思われる。文々。新聞は天狗の内輪ですらも人気が無いらしい。
文の新聞は基本的に取材対象への配慮が薄い。一見、取材を強引に行うほど多量の情報を得られるように思われるが、この手法には欠点もある。取材対象が不信感を募らせれば情報提供に非協力的となるという点だ。
関係者しか知り得ない核心的情報を欠いた報道は当然内容が薄くなる。
射命丸はその欠けた情報を出鱈目で補っている、とよく他の天狗に揶揄される。本人も記事で重要なのは文字数ぐらいだと嘯いたとも伝え聞く。
しかし批判を気にしていない事と受け止めない事は別である。文は新聞作りの方針を変える気は無くとも、より良い新聞を作るための研究にもまた余念が無い。文も自身の得意とするパパラッチ的取材方法は深い情報を得難いという点は自認している。
好敵手である姫海棠はたてからの記事の内容の薄さを指摘する声にやり方を変えないまでも思う所はあったのだろう。
一面でいつも通り新鮮な事件記事を掲載しつつ目立たない三面で何とか記事内容の充実を図ろうと考え抜いた末に思い付いたのが今回の企画であるという。
案の定その結果は芳しいものとはならなかった。記事の速報性を第一とする文に社会性を題材にするような腰の落ち着いた連載は向いていないのだ。
文章も途中からゴシップ的になったりどこを主題としているのか分からなかったりでちぐはぐである。何かを論ずる事が目的なのかとにかく体験を伝えようとした実録なのか自分でも見失ったのだろう。思いつくままに筆の勢いに任せて書いてしまうという文の瑞々しい感性がこの記事では完全に裏目に出ている。
その上この検閲である。
慣れない事はするものではないと人は笑うだろうか。しかし文の記事はその真価を発揮すれば突風のような勢いで要点のみを伝達し衝撃と共に人を引き付け気付けば爽やかな読後感が残っているという秀逸な文章である事もある。毎回こうな訳ではない。
何より批判にさらされても顧みられる事を求めず己の信条を貫き常に改善を怠らず筆禍に怯まぬ姿勢は素直に大したものだと思う。大したものだと思うからこの落ち込みようは哀れである。
「稗田さん。助けてくださいよう」
「だから俺は止めただろうが」
ちなみに記事の冒頭では俺は文の取材を知っておりそれを快諾していたかの如く書かれていたがその部分は捏造である。助けてはやりたいが俺としてもこのままでは許可できない部分が多い。
「まぁ元々、外来人の幻想郷での生活が主題なのだから個人が重要なわけではないだろう。もっとどこの誰か分からないようにした方が実際良い記事になるのではないか。それに後半の阿求の趣味についても無いほうがしっかりと内容が纏まるはずだ」
 せめてもの慰めだったがそれで紫や阿求が検閲の手を緩めるわけではない。


415 : ○○ :2015/12/19(土) 16:53:58 0Ur0FWQ6
「以前から思っていたのですがあなたは少し文さんに甘くないですか」
「ああ、そうですわね私もそう思いますわ。何か理由があるのかしら」
 阿求が俺を睨んだ。紫がそれに便乗する。このスキマ妖怪は明らかに面白がっている。
 乗せられているようだが確かに思う所が無いわけではない。
「そうだな。お前らの懸念ももっともだ。まず稗田さんだからH氏は安直だぞ。稗田家もH家なのだから表記が被っているではないか。あといくら何でも持ち上げ過ぎだ。照れるからちょっと直してくれ」
「もう……稗田さんまで止してくださいよ……」
文は大きな溜息を吐いた。

 結局作業は夕方まで続いた。紫はスキマを開いてさっさと帰ってしまったが文はこの寒さの中を飛んで帰らねばならない。
「大丈夫か。泊まっていっても構わんぞ」
「お気遣いありがとうございます。でも平気ですよ。私は烏天狗ですから。この後も仕事がありますしね。それに正直に言って長居するのは少しばかり気が引けます」
 文はやけに背後を気にしている。
「阿求さんが貴方にちょっと危ないぐらいぞっこんだという事は知ってましたがこれ程とは思いませんでした。流石に懲りましたよ…………」
 取材時を思い出したのか文の顔は夕暮れ時にも関わらずなお少し青かった。実はあれで阿求にしてはかなり控えめだったのだ、とは言い辛い。
「まぁおっかない思いもしましたが貴方については興味深かったですよ。きっと良い記事になると思います。それではこれからも文々。新聞と清く正しい射命丸文をよろしくお願いします」
 気を取り直したように別れを告げると文は木枯らしを纏って飛び上がった。

阿求と二人きりになると自然と文とその記事の話題が上った。
「でも、おかしいですよね、文さんも。あの取材の仕方はちょっと評判も良くないのですよ」
俺が文の報道への情熱を褒めていると阿求は固い表情で呟いた。阿求が本当に俺のためを思って人付き合いに口を出す時はこんな回りくどい言い方はしないのだ。
「阿求。別に文に怒っているわけではないのだろう」
「あ……いえ、あの……私は、だって……あなたがご迷惑なのではないかと……」
 歯切れが悪い。恐らく言いたい事は他にある。
「阿求」
 窘めるように名前を呼ぶと阿求は視線を彷徨わせて黙る。こういう時は言いたい事を全て聞く事にしている。俺は阿求が答えるまでじっと待った。
「……だって文さんたらあなたの事を何でも知っているような書き方をするんですもの。それっておかしい事ではないですか……? 」
 長い時間をおいてようやく阿求は語り出す。
「おかしいですよ。だってあんな、たった一日であなたの事を知った様な事を書くなんて。わ、私のほうがあなたの事を知っています。なのに文さんを褒めるのもおかしいですよ」
 そして一度話す気になってくれれば阿求の想いは止まらない。
「あ、あの、例えばこれを見て下さい、ほらっ私の蒐集品もどんどん増えているんですよ。ほら、あなた自身が知らないあなたの事だってちゃんと記録していますし何より私が知っていますし記憶しています」
 確かにあの蒐集品もまた数が増えてきた。阿求の整理整頓は行き届いているから雑然とする事は決してないが。俺の私物が阿求にとってどれほど大切な宝物なのか大喧嘩して説得されてからは黙認している。事実阿求の不安の解消には役立っているのだ。
「あなたの事は私が一番良く知っているんです。言葉に出来る事も出来ない事も何でもです。私はあなたの事をどんな事でも全部完全に記憶しているんです。あなたのお風呂上りの匂いだって、くすぐったがる場所だって、血液の味だって、もっともっと大切な事だって、魂の性質だって全部です。お望みならこんな目録より遥かに精密な記録だって簡単に作れます。あ、文さんは。あなたの事なんて何も分かってないんです、わ、私のほうがずっとずっとあなたを知っています」
 慣れている俺は聞き取れるが実際には小声でしかもどんどん早口になる。他の者が聞いてもぶつぶつと何かを呟いているようにしか聞こえないだろう。その異様な呟きと暗い影をまとった姿が人形のように小さく可憐な外見や磨き抜かれた所作と歪な不協となり怨霊を見たかのような恐怖を周囲に抱かせる。


416 : ○○ :2015/12/19(土) 16:56:13 0Ur0FWQ6
そしてその美しい双眸に不安や嫉妬が光輝となって宿る時、その視線は射貫かれた者に悪霊の呪詛を受けているかのような深い恐れを抱かせる。
あの時の文のように。
「こんな記事であなたの事なんて分かりません。だから私のほうが文さんよりあなたを理解しているし絶対あなたのお気持ちだって分かるんです!私は好きっ! あなたが好きで愛しているんですっ! あの女は違いますっ! わ、分かります!? 分かりますよね! だから、だからつまり……」
 迷子になった子供のような顔で阿求は一度言葉に詰まった。そして何度もつっかえながらようやく声を絞り出した。言いたい事を全て言い切ってしまってから最後に残るのが阿求の不安の根源である。
「お願い……もう文さんと親しくしないで……」
 自分で自分が無茶苦茶な事を言っていると分かっている時の阿求はひどく叱られるのを知っている子供のように怯えた顔で立ち尽くす。両手の指をしきりに絡めている。落ち着いて分別を取り戻せば後で取り消す事を俺はちゃんと知っている。
 普段はあらゆる物事と相手に理路整然と氷のような態度で正しく理を説ける阿求が今にもクズグズに崩れそうな理屈で必死に俺を論破しようとしている。
 俺にはその様が哀れでまた愛おしかった。
「阿求、まずお前が誰より俺を知っている事はもちろん分かっているしその通りだ。お前が如何に俺を知る事に情熱を傾けてくれているか俺はちゃんと知っているよ。それでも不安か? 」
「だ、だ、だだって、文さんはびっ、美人です……」
涙目になっているくせに必死でぶっきらぼうに見えるように俯いて憮然とした表情を作ろうと頑張っている。不機嫌を装って何とか、私怒っているんですからね、と伝えようとしているのだ。
「そ、それに、それに。文さんがあなたの事興味深かった、って。文さんがどんどんあなたに興味を持っていったらどうするのですか」
「あれは取材対象としての話だ。それに俺はお前の方が美人だと思うが」
「馬鹿ぁ! 馬鹿じゃないんですか! 真面目に聞いて下さい! 」
 小さな手が何度も俺の胸を叩いた。気持ちに嘘はないが確かにちょっと茶化したから文句も言えまい。
「わ、私はっ。あなたの心まで手に入れているかどうかがいつもいつも怖いのですっ。だってあなたは私の持ち物を集めてくれたりしないし。愛しているなら舐めたり食べたりせめて手に取って匂いぐらい嗅ぎたいって思うものではないんですか」
 阿求にとってはあの趣味は己の不安を鎮めるためでもあり愛情と執着が形を成した物でもあるというわけだ。どれほど俺を知っているのかを形にして確認している。
「ふぅん、つまりお前は俺がお前の何かを集めたりすれば少しは不安ではなくなるわけか。しかしお前と一緒に住んでいて、触れようと思えばいつでもお前自身に触れられるのにか? 」
「そんなの……。そんなの大好物のお料理を食べるからって匂いは嗅がないって言っているようなものです……私には分かりません……」
 大抵拗ねると阿求は子供っぽいが何だか例えまで子供っぽくなっている気がする。
「このままでは分かりません……あなたの事が分からないのでは困りますから」
ぎゅうっと力強く抱き着いたまま阿求が言った。
「新しい標本が必要です……」
 
後日、文々。新聞はさらに妖怪の山からも度重なる検閲を受けた後発行された。記事は匿名性を高めた状態で問題の部分も削られていた。
しかしそれで却って外来人への取材という内容が纏まって良い記事になったと思う。事実それなりの好評となりあの連載は続いているようだ。今も文は俺とは別の外来人へ取材に行っているという。
それは良いのだが最近何だかやたらと俺の手の届く所に阿求の使用済みや着用済みの生活用品が置かれている事が増えた。そういう時は決まって背後から熱の籠った視線を感じるのだ。
手に取って匂いぐらい嗅ぐべきであろうか。


417 : ○○ :2015/12/19(土) 16:57:19 0Ur0FWQ6



って書くの忘れてた。


418 : ○○ :2015/12/19(土) 22:39:23 uLUccEMQ
阿求の人、正直かなり楽しみに待ってました。相変わらず貴方のかく阿求は重た可愛い笑


419 : ○○ :2015/12/20(日) 00:14:35 rYZNi5eY
相変わらず凄まじいな


420 : ○○ :2015/12/20(日) 17:42:50 sAwJmD2M
ウオオ初めて見た

これはスゴイわ ホントに素人なのか?

あとSSの中身がすごいおもしろい なんかちゃんと生きてる感じ

どこがどうすごいのかは分からないけど


421 : ○○ :2015/12/20(日) 21:40:31 jyFgcwAI
なるほどなーと思った。
異常性が本人にとって正常な状態なら、そうじゃない他人は逆に異常にみえる、ということかーなるほど。
襖の奥からじーっとみてる奥様はなんか小動物めいて可愛いと思ってしまうのはこのスレの住人だからなのかな……いや、可愛いよね。
自分の匂いとかくんかくんかしないかなーって見守る奥様は普通に可愛い


422 : ○○ :2015/12/22(火) 02:53:15 S67gc5DY
いやあ 相変わらず面白いなあ
文も彼氏ができれば阿求の気持ちを理解できるかな


423 : ○○ :2015/12/24(木) 12:00:06 MEOg1Vwo
レティさんは、クリスマスは張り切るだろうな
彼女は、元気なのが冬だけだから。クリスマスと正月とバレンタインだけだからな。楽しめるのが


424 : ○○ :2015/12/24(木) 20:48:12 EBv2eOKM
リグルは冬の間眠ってそうだから、クリスマスと正月は会えないと考えれば
レティさんはまだいい季節に活発になるよなあ。


425 : ○○ :2015/12/27(日) 01:37:01 .XrwDVHE
久々に来てみたら過去ログ見れんようになっとるね。どゆことー?


426 : ○○ :2015/12/27(日) 01:44:51 IGEFwcl6
ノブレス・オブリージュに囚われて(85)
ttp://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=39700&n=75

やっぱり阿求の人は読ませる文章だ
異常性を判断するのは、あくまでも他人や第三者なんだよな
一番厄介なのは、当人がその異常性を恒常的な物、必要不可欠なものと認識しだしたときだけど
稗田夫妻はまさしくその状態
指摘して、矯正しようとしたら。阿求は怒るすら通り越して正気すら失いそうだけど、温厚な旦那の方ですら怒り出すだろうな


427 : ○○ :2015/12/27(日) 13:47:50 D2sn46mc
阿求の人さんお久しぶりです。相変わらず見事な文章でした。

もしこの書き込みを読んでいたらひとつお願いがあるのですが、
以前投稿された阿求と旦那さんが夫婦喧嘩するお話が、まとめられる前に過去スレが閲覧不可になってしまい読むことができなくなっています。
特に素晴らしい作品ゆえもう一度読みたいので、可能であれば気が向いたときにでもスレやロダに再投稿していただけないでしょうか。

ご検討宜しくお願いします。


428 : ○○ :2015/12/27(日) 21:49:35 Vbx8juPI
>>427
わざわざご丁寧にありがとうございます。

しかし残念だけど俺は書く時に毎回文章をちゃんと保存してるわけではなくてそのSSも見当たらないんだ。
良く探せばあるのかもしれないけどちょっと望み薄だ。

随分前の話なのに覚えていてくれてありがとう。気にしていただいたのに申し訳ない。


429 : ○○ :2015/12/27(日) 21:57:03 pwixU3.Y
家のpc内部にTxtで貼り付けてるはずなのですが
どうしましょう、貼りましょうか?


430 : ○○ :2015/12/27(日) 22:43:10 D2sn46mc
>>426で書き込んだものですが、もし作品を保存している方がいたら是非とも張ってほしいですね。
ただその場合、阿求の人さんの作品を第三者が再投稿するという形になってしまうので、作者さんの了承が必要かと思います。

なので繰り返しのお願いで恐縮ですが、阿求の人さんがこの書き込みを読んでいたら、
他者による作品の再投稿を許可してもらえるかどうか、お返事いただければ幸いです。

その上で許可がいただければ、>>429さんなど作品を保存している方には是非とも張っていただきたいです。


431 : ○○ :2015/12/27(日) 23:15:01 gVmN7NyU
その話はwikiで見ることできませんでしたっけ


432 : ○○ :2015/12/28(月) 00:51:05 m.QGrdKA
>>429>>430
俺のSSなんかのために重ねてのお気遣いありがとうございます。
むしろ文章を投稿する雑事を押し付けるようで心苦しいのですがご面倒でなければお願いします。


433 : ○○ :2015/12/28(月) 14:22:17 WJloJXOo
では、帰宅したら貼り付けます


434 : ○○ :2015/12/28(月) 23:57:44 UDU09ew6
つまり一発書きってことかあれを


435 : 阿求の人(再録) :2015/12/30(水) 01:18:09 b/MlFwXo
>>432
ご本人が首を縦に振られたので、貼り付けます

端午もとうに過ぎたというのにどうした訳か今年の春嵐は一向に衰える気配が無い。未だ春一番の勢いそのままに吹き荒ぶ強風が轟々と板戸を揺らしている。
空色は一日中、薄ぼんやりと曇って肌寒い憂鬱な春である。水に温もりが宿り始めてもこの風の中、好んで歩き回る者はいまい。幻想郷の場合では好んで飛び回る者も少なくなった。
さすがに高僧、聖白蓮は然様な俗世の煩いで自らの職務を怠る事はしなかった。
――本日正午。貴宅にて命蓮寺の畳替えに関する諸々を御相談に伺いたい。
との伝言に違わず定刻通りに現れた尼僧は特徴的な色彩の長髪が風に吹かれ
て少々縺れている他、常と変らぬ御伽噺のような身形であった。
「この度は御尽力頂き何と御礼を申し上げたら良いか」
 柔らかな笑みと共に畳に手を付こうとする高僧にはこちらの方が恐縮して思わず制止していた。
「いや、俺は大したことは」
晩冬。命蓮寺の本堂にて作務を終え一息吐いていた舟幽霊を鵺がからかって喧嘩になり、それを止めようとした毘沙門天の弟子が転んで手から落ちた宝塔が暴発し畳一面を焼き払ったそうだ。
俺も話を聞いた時は何が起こったのか要領を得なかったがそれらの原因など些事である。
不味い事には命蓮寺では年の瀬に本堂の畳替えを終えたばかりで、真新しい畳が一瞬で灰燼に帰した故に新たにそれらを購う費用を捻出する必要に迫られたのだ。
これにはさしもの温厚な高僧も諍いを起こした弟子たちをきつく戒め、財宝を集める異能による事の解決を禁じ、隣人との和の重きを知るべく浄財によって修繕を行うべしと命じたのである。
こうしてしばらく寒空の里にて托鉢に立つ命蓮寺の面々が見られた。
程無くして徳の高い僧侶があれではあんまり哀れだ、この畳替えの勧進を役場の方で幾許か融通出来ないかと里の彼方此方から声が届いた。
どこでどう噂が広まったものか役場に寄付を持ち寄って預けていく命蓮寺の檀家衆も現れ始め直に後を絶たなくなった。
聖白蓮の人徳の為せる業か役場内からも賛同の声が多く上がった事もあり、偶々俺が浮いていた役場の予算に集まった寄付を併せて命連寺へと送り届けた。
以上が事の成り行きである。
事程左様に俺の助力などまさしく微力であったのだが白蓮は深く感謝してくれた。この件が落着するまでの間、何度も何度も関係者各位や役場を巡り礼を言って廻っている。俺もこうして礼を言われるのは初めてではない。
「とんでもありません。稗田さんや里の皆様が示して下さった御仁愛は忘れませんよ。今度は寺の者たちと改めて御礼に伺わせていただきます」
 恐らくこの尼僧はそれこそ托鉢の鉢に小銭を投げ入れた者も含めて全ての恩人の家をこれから廻る積りであろう。
「それに私たちのような妖怪ばかりの寺に人里が救いの手を差し伸べて下さるのは奥様のお蔭でもあると思うのです」
 何故そこで阿求の名が出るのか。
「奥様、阿求さんが書かれた書物で人々は妖怪をぐっと身近に感じる事でしょう。それが人と妖怪が平等に暮らす世の中の助けとなってくれているのです。そうですそうに違いありません。奥様にも御礼を」
 自分で自分の表情が少し引き攣ったのが分かった。白蓮の事だからこれは社交辞令ではない。それ故に非常に都合が悪い。
「いや、それには及ばない。妻は今仕事が立て込んでいるようで」
「まぁ、それではまた後日改めて御礼に。そうです来月の――」
「実を言うと近頃は体調があまり優れないようでな。失礼ながら気を使うばかりだから来客は断っているのだ」
 自分の言葉で力を得て更に力を増す。聖白蓮は穏やかな心の中にそういう熱意を内包した御仁である。断る時ははっきりと口にした方が良い。
白蓮はしきりに弟子を伴っての再訪を望んでいたがいずれも丁重にお断りしておいた。
何度も何度も頭を下げて礼を言う尼僧を労ってやりたくなって菓子を持たせ玄関から送り出した。
この強風の中これから何件の家を廻るのだろう。一つの家にこれ程時間をかけて夜までに寺に帰れるのだろうか。遠ざかっていく背中を見送りながら少々心配になる。
だがあの人徳故に集った浄財により広大な命蓮寺本堂の畳替えは無事成ったという。


436 : 阿求の人(再録) :2015/12/30(水) 01:18:54 b/MlFwXo
花曇りの影に浸された陰鬱な屋敷の廊下を阿求が丁寧に雑巾がけをしている。先程白蓮を応対した客間から玄関までを一心不乱に。
古く磨きこまれた稗田家の長廊下は鏡面のように曇りなく顔が映る程だ。そこに冷たい阿求の瞳が映りこんでいた。
俺が近寄っても顔を上げる素振りさえなく薄闇の中、鈍く光る眼でひたすら床板を磨き続けている。
真白い割烹着を身に着け三角巾できつめに頭髪を纏め上げた阿求の横顔には幼いながらにきりりとした目が更に引き締められて凛々しさと可愛らしさが同居している。
その目が血走ってさえいなければ意味も無く頭を撫でてやりたいところだ。
 どんな僅かな汚れも見逃すまいとする張り詰めた表情からは、執念の様なものまで感じられる。
「阿求。そこは女中がついこの間――」
「汚れています」
「そうか? 塵一つ無いように――」
「汚れて、いますから」
 これだから聖白蓮の再訪を断ったのである。
 あの美しい尼僧が訪れる日、必ず阿求は凄まじく機嫌が悪い。
 きゅっきゅっ、と新雪を踏むような音だけが暗い廊下を満たした。阿求の蝋人形のような血色の指先は機械のように正確に床を磨き上げていく。
自らの指先の仕事の出来を俯いたままじっと見つめている阿求の顔は何かを憎んでいるような或いは痛みに耐えているような表情である。
阿求が深い嫉妬や不安と闘っている時、大抵こんな顔になっている。
 じっと床を見詰めたままで不意に阿求が言った。
「白蓮さんは」
 新雪を踏む音は言葉の間も絶え間ない。
「お綺麗、ですよね」
「一体何を――」
「お優しいですし、溌剌として……明るくて」
「……阿求」
「お話も弾んだようで」
「阿求」
「あなたが好きな胸だって……」
「阿求っ」
 強く名を呼ぶとぴくりと阿求の背が震えて、ようやく床を磨く手が止まった。
「……はい? 」
 薄暗い廊下の影の中で阿求は幽かに微笑んで顔を上げた。全てを正確に記憶し忘れないという異能を持つ阿求は思い詰めていても、聞こえているし見えている。
俺に対して抗議の意図がある事は明白であった。
「その辺にしておけ。体が冷えるぞ」
「はい、もうすぐ終わりますから」
白々しく微笑んで阿求はそれきり口を利かなかった。
夕食の時も。風呂の中でも。眠る時も。必要な事以外は。
無言は不和。即ち夫婦喧嘩の温床と成り得る。
流石に俺にも今までの夫婦生活の経験がある。ああ、これは喧嘩になるなという覚悟はしていた。阿求の方も同様の覚悟が出来ているであろう。

 一般の常識に照らせば風呂まで一緒に入っておいて何が夫婦喧嘩か理解し難い事であろう。
更に理解し難いだろう事に、俺と阿求の夫婦喧嘩は寝床の中で互いを固く抱き締め合ってから開始される事が最も多い。
阿求が眠る際、俺の首筋に抱き着いて眠るのは毎夜の常だが、その晩は特に四肢の全てを蛇のようにきつく俺の体に絡めた。
闇の中でも互いの吐息の熱を感じる距離では阿求の目付きが怒りで鋭くなっているのが分かる。


437 : 阿求の人(再録) :2015/12/30(水) 01:20:55 b/MlFwXo
申し訳ありません、一部分でコピペミスを犯してしまいましたので
もう一度初めから貼りなおします


438 : 阿求の人(再録) :2015/12/30(水) 01:21:26 b/MlFwXo
端午もとうに過ぎたというのにどうした訳か今年の春嵐は一向に衰える気配が無い。未だ春一番の勢いそのままに吹き荒ぶ強風が轟々と板戸を揺らしている。
空色は一日中、薄ぼんやりと曇って肌寒い憂鬱な春である。水に温もりが宿り始めてもこの風の中、好んで歩き回る者はいまい。幻想郷の場合では好んで飛び回る者も少なくなった。
さすがに高僧、聖白蓮は然様な俗世の煩いで自らの職務を怠る事はしなかった。
――本日正午。貴宅にて命蓮寺の畳替えに関する諸々を御相談に伺いたい。
との伝言に違わず定刻通りに現れた尼僧は特徴的な色彩の長髪が風に吹かれ
て少々縺れている他、常と変らぬ御伽噺のような身形であった。
「この度は御尽力頂き何と御礼を申し上げたら良いか」
 柔らかな笑みと共に畳に手を付こうとする高僧にはこちらの方が恐縮して思わず制止していた。
「いや、俺は大したことは」
晩冬。命蓮寺の本堂にて作務を終え一息吐いていた舟幽霊を鵺がからかって喧嘩になり、それを止めようとした毘沙門天の弟子が転んで手から落ちた宝塔が暴発し畳一面を焼き払ったそうだ。
俺も話を聞いた時は何が起こったのか要領を得なかったがそれらの原因など些事である。
不味い事には命蓮寺では年の瀬に本堂の畳替えを終えたばかりで、真新しい畳が一瞬で灰燼に帰した故に新たにそれらを購う費用を捻出する必要に迫られたのだ。
これにはさしもの温厚な高僧も諍いを起こした弟子たちをきつく戒め、財宝を集める異能による事の解決を禁じ、隣人との和の重きを知るべく浄財によって修繕を行うべしと命じたのである。
こうしてしばらく寒空の里にて托鉢に立つ命蓮寺の面々が見られた。
程無くして徳の高い僧侶があれではあんまり哀れだ、この畳替えの勧進を役場の方で幾許か融通出来ないかと里の彼方此方から声が届いた。
どこでどう噂が広まったものか役場に寄付を持ち寄って預けていく命蓮寺の檀家衆も現れ始め直に後を絶たなくなった。
聖白蓮の人徳の為せる業か役場内からも賛同の声が多く上がった事もあり、偶々俺が浮いていた役場の予算に集まった寄付を併せて命連寺へと送り届けた。
以上が事の成り行きである。
事程左様に俺の助力などまさしく微力であったのだが白蓮は深く感謝してくれた。この件が落着するまでの間、何度も何度も関係者各位や役場を巡り礼を言って廻っている。俺もこうして礼を言われるのは初めてではない。
「とんでもありません。稗田さんや里の皆様が示して下さった御仁愛は忘れませんよ。今度は寺の者たちと改めて御礼に伺わせていただきます」
 恐らくこの尼僧はそれこそ托鉢の鉢に小銭を投げ入れた者も含めて全ての恩人の家をこれから廻る積りであろう。
「それに私たちのような妖怪ばかりの寺に人里が救いの手を差し伸べて下さるのは奥様のお蔭でもあると思うのです」
 何故そこで阿求の名が出るのか。
「奥様、阿求さんが書かれた書物で人々は妖怪をぐっと身近に感じる事でしょう。それが人と妖怪が平等に暮らす世の中の助けとなってくれているのです。そうですそうに違いありません。奥様にも御礼を」
 自分で自分の表情が少し引き攣ったのが分かった。白蓮の事だからこれは社交辞令ではない。それ故に非常に都合が悪い。
「いや、それには及ばない。妻は今仕事が立て込んでいるようで」
「まぁ、それではまた後日改めて御礼に。そうです来月の――」
「実を言うと近頃は体調があまり優れないようでな。失礼ながら気を使うばかりだから来客は断っているのだ」
 自分の言葉で力を得て更に力を増す。聖白蓮は穏やかな心の中にそういう熱意を内包した御仁である。断る時ははっきりと口にした方が良い。
白蓮はしきりに弟子を伴っての再訪を望んでいたがいずれも丁重にお断りしておいた。
何度も何度も頭を下げて礼を言う尼僧を労ってやりたくなって菓子を持たせ玄関から送り出した。
この強風の中これから何件の家を廻るのだろう。一つの家にこれ程時間をかけて夜までに寺に帰れるのだろうか。遠ざかっていく背中を見送りながら少々心配になる。
だがあの人徳故に集った浄財により広大な命蓮寺本堂の畳替えは無事成ったという。


439 : 阿求の人(再録) :2015/12/30(水) 01:22:22 b/MlFwXo
聖白蓮と少しばかり立ち話をしてから玄関を潜ると異様な物を見た。
花曇りの影に浸された陰鬱な屋敷の廊下を阿求が丁寧に雑巾がけをしている。先程白蓮を応対した客間から玄関までを一心不乱に。
古く磨きこまれた稗田家の長廊下は鏡面のように曇りなく顔が映る程だ。そこに冷たい阿求の瞳が映りこんでいた。
俺が近寄っても顔を上げる素振りさえなく薄闇の中、鈍く光る眼でひたすら床板を磨き続けている。
真白い割烹着を身に着け三角巾できつめに頭髪を纏め上げた阿求の横顔には幼いながらにきりりとした目が更に引き締められて凛々しさと可愛らしさが同居している。
その目が血走ってさえいなければ意味も無く頭を撫でてやりたいところだ。
 どんな僅かな汚れも見逃すまいとする張り詰めた表情からは、執念の様なものまで感じられる。
「阿求。そこは女中がついこの間――」
「汚れています」
「そうか? 塵一つ無いように――」
「汚れて、いますから」
 これだから聖白蓮の再訪を断ったのである。
 あの美しい尼僧が訪れる日、必ず阿求は凄まじく機嫌が悪い。
 きゅっきゅっ、と新雪を踏むような音だけが暗い廊下を満たした。阿求の蝋人形のような血色の指先は機械のように正確に床を磨き上げていく。
自らの指先の仕事の出来を俯いたままじっと見つめている阿求の顔は何かを憎んでいるような或いは痛みに耐えているような表情である。
阿求が深い嫉妬や不安と闘っている時、大抵こんな顔になっている。
 じっと床を見詰めたままで不意に阿求が言った。
「白蓮さんは」
 新雪を踏む音は言葉の間も絶え間ない。
「お綺麗、ですよね」
「一体何を――」
「お優しいですし、溌剌として……明るくて」
「……阿求」
「お話も弾んだようで」
「阿求」
「あなたが好きな胸だって……」
「阿求っ」
 強く名を呼ぶとぴくりと阿求の背が震えて、ようやく床を磨く手が止まった。
「……はい? 」
 薄暗い廊下の影の中で阿求は幽かに微笑んで顔を上げた。全てを正確に記憶し忘れないという異能を持つ阿求は思い詰めていても、聞こえているし見えている。
俺に対して抗議の意図がある事は明白であった。
「その辺にしておけ。体が冷えるぞ」
「はい、もうすぐ終わりますから」
白々しく微笑んで阿求はそれきり口を利かなかった。
夕食の時も。風呂の中でも。眠る時も。必要な事以外は。
無言は不和。即ち夫婦喧嘩の温床と成り得る。
流石に俺にも今までの夫婦生活の経験がある。ああ、これは喧嘩になるなという覚悟はしていた。阿求の方も同様の覚悟が出来ているであろう。

 一般の常識に照らせば風呂まで一緒に入っておいて何が夫婦喧嘩か理解し難い事であろう。
更に理解し難いだろう事に、俺と阿求の夫婦喧嘩は寝床の中で互いを固く抱き締め合ってから開始される事が最も多い。
阿求が眠る際、俺の首筋に抱き着いて眠るのは毎夜の常だが、その晩は特に四肢の全てを蛇のようにきつく俺の体に絡めた。
闇の中でも互いの吐息の熱を感じる距離では阿求の目付きが怒りで鋭くなっているのが分かる。


440 : 阿求の人(再録) :2015/12/30(水) 01:23:04 b/MlFwXo
こうして閨の闇に二人きりとなってようやく阿求はその心情を吐露し始める。
「――ですからおかしいじゃないですか。あちら様は御礼をしにいらしたのでしょう。それを菓子折りまでお渡ししては他意を疑われて当然でしょう」
 阿求は俺の頬を両手で挟み込んで鼻と鼻を擦り付けるようにして詰問した。
「どこがおかしいのだ。互いが互いに礼を重んじただけだろう。いやそれ以前に来客に土産を持たせて何が悪い」
 少し阿求が窮屈そうだ。腕枕の位置を変えてやった方が良い。
「そんな事をしてもあちら様が余計に気を使うばかりでは? それに今、一般の礼法についてお話ししている訳ではありません。
あなたが女の人、特に美しい方にばかりお優しい事についておかしいと言っているのです。別にあなたが普通の態度であればこんなお話なんてしていません。何ですか白蓮さんが来る度にデレデレして」
 今度は俺の肩が布団から出ているのを阿求が見つけた。小さな手が俺の肩に布団を掛け直す。
「はっ。俺がいつデレデレなどしたのだ。えぇ、言ってみろ阿求。どうせいつものように監視していたのだろう。お前が白蓮を苦手にしているだけではないのか」
 そろそろ泣くかと思って阿求の頬を掌で撫でて濡れていないか確かめた。今の所、涙は流れていない。代わりに阿求がスリスリと頬擦りを返してきた。
「別に苦手などではありません。せっかくのお菓子をわざわざお土産にあげてしまうような事をデレデレしていると言うのです。あれでなければ私も何も言いません」
 阿求が布団の端をくいくいと引っ張る。これは一緒に頭まで布団を被ろうという合図である。
「だからあの菓子の何が問題なのか聞いているのだ」
 頭まで布団を被ると僅かな光も遮られた漆黒となった。愛おしい者の熱と匂いの充満した狭く柔らかな闇に閉じ込められた弾みで互いの唇が触れた。ついでにどちらからともなく口づけた。
更に阿求がぐいぐいと体を寄せて来て俺の腕を引っ張った。これはもっときつく抱き締めろという合図である。
「忘れたんですか? あのお菓子は今度のお休みに二人で食べようって約束して私が御用意しておいたんじゃないですか」
尻の辺りから抱え込むようにして抱き止めると、感じるのは阿求の柔らかな体と互いの息遣いのみとなった。
「忘れていた訳では無い。茶菓子など別に何でも代わりになる。どうでもいいことだろう」
 俺の胸の辺りに顔を埋めていた阿求がもぞもぞと俺の体を虫が這うように上ってきた。
「どうでもいい? どうでもいいですって。どうしていつもそんな言い方しか出来ないのですか? ……もう知りません。怒りました。明日はお着替え畳んであげませんから」
 売り言葉に買い言葉で興奮しているらしい。そのまま俺の頭を抱えるように抱き締めた阿求の鼓動は大きく聞こえた。
「おい、ふざけろ。脱ぎ散らかしておけと言うのか。……面白い。それなら俺も明日は一緒に風呂に入ってやらん」
「それとこれとは関係ないでしょう? そんなのただの嫌がらせではないですか? あなたのそういう所は本当に子供っぽいですよ。
では明日は一緒にお茶の時間は無しという事でいいのですね。ちょうどご用意したお茶菓子も誰かさんのお蔭で無くなりましたし。寂しくなっても知りませんから」
「ふん。こちらの台詞だ。お前こそ明日俺に甘えたくなっても知らんからな」
阿求は無言で一層強くぎゅうと俺の頭を抱き締めて返答した。

翌朝。
「阿求。俺の新しい足袋はどこだったか」
「……知りません」
身支度を整える際に聞くと阿求は生気の無い声でそれだけ返事をした。まだ機嫌は直っていないようだ。何か言いたげにちらりとこちらを見た阿求と目が合った。
その表情にも生気が無く、なんだか顔色も悪いように見えたがすぐに俯いてしまった。
仕方なしに一人で顔を洗いに行く。冷水で頭を冷やしながら煩悶した。こう長引くと仲直りの切っ掛けが掴めないものだ。
廊下を戻ると阿求の姿はなく真新しい足袋が置かれていた。


441 : 阿求の人(再録) :2015/12/30(水) 01:24:22 b/MlFwXo
その日は稗田家内の雑事を片付ける為に自分の書斎で一日を過ごした。村政や金繰りや奉公人たちの陳情に目を通していてもどうにも気が散って仕方がない。
何より一人で飲む茶の味気無さには辟易した。
阿求も今こんな気持ちだろうか。阿求も自室で仕事をしている筈である。この書斎を出て少し歩いて阿求に会いすまなかったと伝えればこんな思いはせずに済むのだ。
ああ、下らない意地を張った。さっさと謝りに行こう。とようやく決意が出来たと同時に俺の書斎の襖が開いた。
「……どうした阿求」
そこに立っていた阿求は何も答えないままトボトボと書斎へ入り襖を閉めた。俯いていると今朝よりも一層、顔色が悪いように思える。
「阿求」
名を呼ぶと阿求は下を向いたまま、しかし迷い無い足取りで近寄って来ると無言で座っていた俺の膝の上に身を投げ出した。
「仕事はもういいのか」
 阿求は俺の腹の辺りに顔を埋めたままぎゅっと抱きついて動かない。
「……もう書けません」
 固い声で阿求は言った。
「疲れたのか」
「もう、駄目。書きたくありません。手に付かないんです何も。ですから、もう書けません」
 拗ねた幼い子供の声は俺の体に口を押し付け喋るのでくぐもって聞こえた。
その細い首筋を撫でてやりながら出来る限り優しい声を出した。
「阿求。喧嘩の事なら俺が悪かった。丁度今から謝りに行こうと思っていたところだ。機嫌を直してくれるか? 」
「……いえ。いいえ、悪かったのは私です。それにもう、そんな事はいいんです。どちらにせよ私は、もう……。
楽しそうに話すあなたと他の女の声が耳にへばり付いて……だから、二人きりの世界へ行けばこんな思いしなくてすむのにって、そんな事ばかり考えて、仕事をしていても気付くと紙がぐしゃぐしゃで。とにかく……とにかく……」
 阿求の背はぶるぶると震えていた。
「あなたっ! もう書けません! 一緒に逃げましょう! 」
 突然顔を上げた阿求が切羽詰った表情で叫んだ。
 かと思うとすぐ膝に顔をぐりぐりと埋める。
「もういやあー。いやですぅ。疲れましたぁー。ギュッてしてぇー」
普段の阿求とは別人のようだがこれは〆切間近などに稀に起こる阿求の発作である。
阿求ほど筆働きに慣れた者でも調子の悪い時はある。
阿求は大々的に出版される有名書籍以外にも大小の執筆を依頼されており先祖の書物の改訂及び編纂作業も相まって一日中筆が手放せない程に忙しくなる事もある。   
そういう極端に煮詰まった仕事などの懊悩が限界に達した際に起こる発作がこれだ。遠慮せず弱音を吐き恥も外聞も無くひたすら俺に甘え続ける。
今回は俺との喧嘩による心労が引き金になったものであろう。関係修復が遅れた為にここまで追い詰めてしまったのだ。
このわがままな子供への退行が阿求なりのストレス解消方なのである。早ければ一刻ほどでいつもの澄ました阿求に戻る。だからこの変貌に余り心配はしていない。
またこの退行が阿求の不安定な精神を保つ事に大きな助けとなっている。俺も結婚前のような事態に陥るのはなるべく御免蒙りたい。阿求がこのような状態になったらなるべく甘やかすことにしている。
阿求も阿求でこういう箍が外れた時に思い切り甘える事を楽しみにしている節がある。
「遠くへ。どこか遠くの誰もいない山奥に行ってずっと二人きりで暮らしましょう。ねっ。いいでしょう。あなたぁ」
「そうかそうか。辛かったな阿求。とりあえず紅茶をおあがり」
 伴侶なのだからこういう時の扱いは慣れたものだ。その上俺にも過失がある。つい過剰に甘くなってしまうのも致し方ない。


442 : 阿求の人(再録) :2015/12/30(水) 01:25:16 b/MlFwXo
膝に顔を埋めたまま動かない阿求の背をぽんぽんと叩きながら語りかけてやる。
「真面目に聞いてくださいぃ。私は真剣にお話しているのですよ。あなたさえお許し下されば私は誰にも見つからない住処の一つや二つ簡単に算段を付けられるのですよ。実はすごいんですから私」
 大袈裟ではないだろう。この見事なお子様ぶりからは想像も出来ないが殊に、頭脳に関して言えば阿求は妖怪の賢者たちにも比肩し得る。
策謀と交渉によってあらゆる邪魔が入らない愛の巣を本当に作りかねない。
「えへへ……。そこで小さいけれど住み良い家を建てて朝も昼も夜も二人っきりで誰に気兼ねする事もなく一日中睦みあっていましょう」
 夢のような日々を想ってようやく阿求の頬が緩んだ。そうして俺の膝に頭を預けたまま阿求はうっとりとした現実逃避を続ける。
「俺はこの屋敷での生活も気に入っているが」
「うぅ。どうしてあなたまでそんなに意地悪を仰るんですかぁ。私と二人きりではご不満ですか? 」
 阿求の小さな頭が再びぎゅうっと俺の膝に押し付けられた。
「絶対に素敵な暮らしになるのに……。どうして分ってくれないんですか。ふん、もう良いですよ。いつかあなたを無理矢理に連れ去ってしまいますから」
「分かった分かった。ほら頭を撫でていてやるからこのまま少しだけお休み」
「そんなので誤魔化されませ……あ、ふぅ。あなたぁ……。手も握って下さい」
 要求に従い手を握りつつ頭を撫でてやる。さらさらと阿求の髪が指の隙間を通り抜けた。ふとその指先に妙に熱が篭っている事に気が付いた。
握り返した小さな手もぐったりと力が無く重く熱い。
「む。妙に体が熱いな。熱があるぞ阿求」
「ふぇ? 」

「ただの風邪ですよ。心配しないで下さい」
「うむ……。しかしな」
「平気ですってば」
 すわ大病か、と早とちりした女中や使用人たちが大慌てで用意した床の中で阿求は澄まし顔で軽く微笑んだ。
恐らくは季節の変わり目の偶々冷え込んだ日に暗い廊下で一日中拭き掃除などした所へ気苦労が重なったせいであろう。さすがに俺も責任を感じる。
「阿求様、旦那様。永遠亭に遣いを出す支度は整って御座いますが」
 年嵩の女中が廊下から声を掛けた。俺が女中を呼んだ途端、阿求の退行は止まった。いつもの事だが人目がある時は別人のような変貌ぶりである。
「ああ。結構ですよ。せめて明朝までは様子を見ます。それで酷くなるようならその時改めて八意先生に往診をお願いしましょう」
 奉公人の厚意を気遣って病床の中で微笑すら浮かべている阿求には先程までの子供じみた様子など微塵も無い。発熱に気付いてから時間が経ち徐々に熱も上がりつつある。
それなりに辛いだろうに阿求は落ち着いたものである。むしろ、やれ医者を呼べ、常備薬を持て、湯を沸かすのだ、と騒ぐ俺や使用人たちを宥めて諭していた。
「この家の人たちも、あなたも少し私にたいして過保護というものです。お陰で寝ているのが申し訳なくなってしまいます」
 ただの風邪に御阿礼の子の儚さを想い沈んでいた俺に阿求は柔らかな声音の軽口を利いた。その気遣い一つ一つが先程まで俺の膝の上で甘えていた少女と同一人物とは思われない。
更に悪くなった顔色に涼やかな苦笑を浮かべ寝乱れ一つ無い行儀良さで静かに身を横たえている。その年齢に似合わぬどこか超然とした微笑こそ稗田家当主、稗田阿求のものであろう。
「畏まりました。それでは旦那様。しばらくお願い致します」
 女中は心配そうに阿求を一瞥して襖を閉めた。
 廊下を遠退いていく女中の足音が聞こえなくなった途端である。
 寝床の中から病身とは思えぬ勢いで阿求が思い切り飛び付いてきた。
「うぅわあああん。辛いです苦しいですしんどいです。なでなでしてくださいあなたぁ」
やれやれ少なからず感心していたのだが。予定外の発熱により中断はしてもストレス発散は続くようだ。
しかし幼児退行を起こしている時に寝込んでいるとは面倒なものだ。風邪の時はただでさえ弱気になるものだというのに。
「うう。喉が痛いです。鼻も詰まって苦しいですし節々も痛いですし寒気もしてきました。いよいよ駄目です」
 苦笑したが矢張り余計な心労を掛けた俺の落ち度でもある。今日は一日相手をしてやろうと決意した。


443 : 阿求の人(再録) :2015/12/30(水) 01:26:12 b/MlFwXo
「ああ、あなた。あなたと結婚して幸せな一生でした。お先に私たちのお墓でお待ちしておりますから。四季様にあなたの事はお話ししてありますから心配しないでまっすぐ私に会いに来てくださいね。
あなたに抱き締められて逝けるなんてこんな末期は望外でした。でもその幸せともお別れなのですね。ああっ……死後も一緒ですから少し離れ離れになるだけと分かっていても身が裂かれる思いです。
庭をご覧下さい、あなた。あの木の最後の葉が枯れ落ちた時、私も死ぬのです」
「そういう台詞は冬に言うものだ。気が長い話だな」
「どうしてそんなに冷たいのですか。もっと甘やかして下さいよぅ。もう絶望です。あなたが冷たくするから希望が絶たれました。これでは助かる者も助かりません。
生きる望みも無いですし、死んであなたの枕元に化けて出ます。そうして一生あなたに憑り付いて……あっ。それはそれで良い気もしてきました」
幻想郷では洒落にならない脅しである。
「それは残念だな。今日は一日傍に居て食事を食べさせてやったり体を拭いてやったりしてやろうと思っていたのだが」
「………………もう少し生きてみようと思います」

「しかし弱りましたね。紫様から急ぎ整理するように頼まれていた文献整理が残っているのですが」
「そんな事は気にするな。紫には俺から話しておく。今はゆっくり休め」
 甘え疲れたのか随分言動は大人びてきた。それでもまだ俺の膝枕の上、目は潤んだまま寝床の中で自分の指を甘噛みしている。
「慧音先生に授業で使う書の見本も頼まれているのです」
「上白沢先生には俺から使いを出して遅れると伝えておく」
「博霊神社宛てに祝詞の清書が」
「あの巫女はどうせ祭事の直前まで確認せんだろう」
「お夕食の仕込みもまだです」
「こんな時ぐらい奉公人に頼め」
「……でも、私はいつもこんなですから、出来るだけ夫婦らしい事がしたいんです」
「それなら今日は俺が用意する」
「まぁ。あなたがですか? うふふ。それではお願いしましょうか」
「それより、お前の場合はただの風邪でも油断がならぬ。矢張り一応、八意先生に往診を頼んだ方が良いか」
「もう。今さっき過保護だと言ったでしょう。少し横になっていれば平気ですから」
「ならば他に何かして欲しい事は無いか、阿求」
「うーん。そうですねぇ」
 微笑して阿求は目を閉じ考える振りをした。その額に汗で髪が張り付いている。明朗に振舞っているが決して見掛けほど楽ではないのだ。
この落ち着いた振る舞い様にはこちらの方が力を貰う。偶に少し甘えるぐらい何であろうか。
「まぁゆっくり考えておけ」
そう言って俺は阿求の頭をそっと枕に戻し立ち上がった。この上余計な心労まで掛ける事は出来ぬ。普段の仕事に加え今日は家内の雑事も全て俺が始末する必要がある。
「あなた」
 寝室を出ようとすると寝たきりの阿求に声を掛けられた。
「どうした」
 俺は思わず体ごと阿求に向き直った。その声が、先程までの明るさが嘘のように空ろにか細く聞こえたからだ。まるで寒さに凍える者のように力無く響いたからだ。
「いえ、あの。どちらへ行かれるのかな、と思いまして……」
 俺が大袈裟に振り返ったので阿求は少々気まずそうに目を逸らし、声は尻すぼみに小さくなった。
「粥でも作ろうかと思ったのだが」
「……今は食欲がありません……それより、その……今日はずっと傍に居て下さるのですよね? ……お、お添い寝して下さいませんか? 」
 妙な所で遠慮しなくてもいいのだ。
阿求の隣に横になるとその小さな体が俺の方に擦り寄ってきた。
「ん、ふふ……あなた。頭なでなでとお背中とんとんもして下さい」
 頭と背中から伝わる熱は更に上がりつつある。少し長話が過ぎたようだ。
熱に火照ってはいたが幸せそうな顔でじきに阿求は眠りについた。なんだか本当に阿求が年相応に幼くなったように感じる。
幼子の寝息というのは聞いているとこちらも眠くなってくるものだ。
いつしか俺の目蓋も落ちた。


444 : 阿求の人(再録) :2015/12/30(水) 01:27:18 b/MlFwXo
どれ程時間が経ったろうか。茜色の光が障子紙を透かしている。
廊下から俺を呼ぶ女中の声で目が覚めた。
「旦那様。命蓮寺の御住職様がお会いしたいとの事で御座います」
ぼんやりした頭で記憶を手繰り寄せる。
ああ、例の件の続きだろうか、と推量した。
「すぐに行く。お待たせしておいてくれ」
女中が廊下を足早に戻っていく気配がした。
何だか体が重いが来客ならば起きて身形を整えなければならない。身を起こそうとすると、成程道理で重い訳だ。
阿求が何やら切羽詰った様子で必死に俺にしがみ付いていた。
「……行かないで下さい」
「阿求。少し話をするだけだ。すぐに戻る」
「いや、嫌です……行かないで。私より白蓮さんの方が良いのですか」
 その瞳は熱のせいで虚ろであった。高熱に浮かされて正常な情緒を欠いているのだ。
「それでは今日は話せないと言いに行く。それだけ伝えに行かせてくれ」
 そう言えば俺も何だか体が怠い。阿求の風邪がうつったかもしれぬ。
 女中にお引き取り願うよう伝言を頼もうかと思ったが既に気配は遠ざかっている。
 色々考えて体を起こそうとした、その時。
「死にますよ、私」
 ぞくり、とした。
 その声に昼間のような甘えはない。多分本気だ。
 思わず見詰めた阿求の顔は、何かを憎んでいるようでもあり痛みに耐えているようでもあり。
 何よりもまず阿求を安心させてやりたくなった。どうせ女中を呼ぶなら大声を出さざるを得ないし面倒だと思った事も有る。
とにかく気付けば大きく息を吸い込んでいた。
――聖白蓮殿。度々の御足労、誠に痛み入る。しかしながら今、我が最愛の妻を愛でるに手が離せぬ。寝乱れた姿を晒すのも心苦しい。
後日俺から伺おうから本日はお引き取り願う。ご容赦あれ。
 稗田家の屋敷は広い。玄関まで聞こえたか分からなかったが、後で使用人に聞いた所によれば、急に顔を赤くしてそそくさとお帰りになったという。
その用向きは、見事な鯉が手に入ったが庫裡ではなるべく生臭物を避ける事もあり何より阿求の体調が優れぬと聞き是非精を付けて頂きたいと持参したとの事であった。
 叫んでしまった後で猛烈に後悔した。どうやら矢張り俺にも風邪がうつっているらしい。ぼうっとした頭で馬鹿な事をやったものだ。
 頭を抱えている俺をくいくいと布団の端を軽く引っ張る阿求が現実に引き戻した。
 見ると阿求は風邪とは違う熱で蕩け切った顔であった。
 阿求の潤んだ瞳に何かを言う前に暖かな闇が俺を包み込んだ。
喧嘩も仲直りも、阿求にとって俺と二人きりの世界は狭ければ狭い程良いらしい。
「おい待て阿求。何故脱ごうとする。暑いのか」
「はい……。はい。とっても熱いのです。堪らないんです……あなたぁ」
 夢現の判断が今一つ付いていない阿求の熱が更に上がっては堪らない。
もぞもぞと動きながら俺を呼ぶ阿求を安静にさせるべく抱き締めてもう一度目を閉じた。


445 : 阿求の人(再録) :2015/12/30(水) 01:29:16 b/MlFwXo
以上になります
途中のコピペミスによる1からのやりなおしは、申し訳ありませんでした
最後になりましたが再録に対して首を縦に振ってうなずいてくださった阿求の方には
この場を借りてお礼を申し上げます


446 : ○○ :2015/12/30(水) 01:56:08 4oZF4MnA
>>432
>>445
再投稿をお願いしたものですが、快く了承してくださった作者さん、
そして再投稿していただいた方に、私からも改めてお礼を申し上げます

ありがとうございました。


447 : ○○ :2015/12/30(水) 17:06:31 u.St.Y5Y
ぎゅっとしてぇー
いいよね。


448 : ○○ :2015/12/30(水) 20:01:52 SMJ58oK2
>>445>>446
作者です。こちらこそありがとう。まとめてくれている人にもこの場を借りてお礼を。
それでは良いお年を。


449 : sage :2015/12/31(木) 03:32:10 PT2tP83.
ヤンデレを目立たたそうとすると東方の世界観を踏み台というか壊してしまったりするのにすごい
ちゃんとヤンデレでヤンデレがオマケになったりしてないのに 幻想卿の生活にヤンデレ嫁がいる日記みたい
それにむっちゃ萌える ワキ役までカワイイもん


450 : ○○ :2016/01/02(土) 01:06:32 1sttq3Lo
駄文ですがよろしければ読んで頂ければ幸いです。ある程度、上下関係のあるキャラを想定して書いてます。


僕は、幻想郷からこの世界に帰ってきた。

幻想郷、そこは人妖入り乱れる奇々怪々な土地であったけど、意外と交流が盛んで、種族を超えた交流なんて普通って感じだった。

そんな事もあってか僕にできた彼女は人じゃなかった。けど、とてもよくしてくれたし、僕の精神的な支えにになってくれた。時々、僕に対して行う異常なまでの愛情表現には困った物だった。
 作ってくれる食事に、自分の一部を入れたり、勝手に人の布団に入り込んで来るのはいい方。四六時中視界のどっかにいる事なんてザラ、挙げ句の果てに自分のやることほっぽりだして、僕のとこに押しかけて来た時なんか、身内の方が連れ戻しにきて、結構な大喧嘩をやった最後に聞いてるこっちが顔真っ赤になるようなセリフをばらまいてんだから、流石にあん時は身内の方に泣いて謝ったような。まぁ僕もそれだけ大事にされてたって事かな。

 ある日僕は、外にいる家族のために彼女に別れを告げた。
 その時は身内の方とやり合った以上に、荒れた。
 最初は、彼女は冷静に説得してたけど、途中から暴力的に訴えだし、最後は泣きつくように請うて来た時は少し心が揺らいだ。
 でも最後まで一貫して意志を曲げない僕を見て彼女は、強烈な一撃をお見舞いして、泣いて出て行った。その時の傷はこうして思い出にふけってっていると今でも疼いて来る。
 
 思い出にふけっているとこんな時間になってしまった。
 早く寝よう。

 コンコン

 ん?母さん?僕はもう寝るから何かあるんだったら明日にしてくれ。

 ガチャ
 
 母さん、 明日にしてくれって言ったじゃないか聞こえなかったのか?

そう言うおうと、壁に向けていた頭を扉の方に向けた。

 そこには到底信じられない物が映っていた。

 彼女がいたのだ。僕の家族の首を持って。

 僕は、頭が真っ白になった。どうして彼女がいるんだ。どうしてこの世界に来れたのか、どうして彼女が僕の家を知っていたのか。

そして どうして 僕の家族の

首を持っているんだ?

僕が、唖然としていると彼女は嬉しそうに喋り出した。

幻想郷からこの世界に抜け出して来た事、僕の家を調べる為に骨を折った事、そして自分への愛を。

僕は、そんな事より彼女の持っている物について聞こうとした。すると、聞くより前に話してくれた。

「だって、○○さんと私の仲を引き裂くような輩、いなくなってしまえばいいんですよ。○○さんだって本当はうっとしいと思ってたんでしょう?きっと、優しい人思いの○○さんの事だから、扶養の義務とか感じて家族を優先してたんですよね?でもそんな事もう考えなくていいんです。何も考えなくていいんです。何でも私○○さんにしてあげますから。○○さんは私の事だけ考えてればいいんです。」

僕は怒りにまかせて、言い終わる前に彼女に向かって殴り掛かった。しかし、軽く去なされ、抱きかかえられる形になってしまった。抵抗するが所詮は人間、無力な物である。

「あはっ。○○さんそんなに私の事好きなんですか!良かった私も○○さんの事好きですよ。さぁ一緒に幻想郷に帰りましょう」

僕は彼女の締めを食らい、薄れゆく意識の中で、もっと早くこうなる事が予測できていたんじゃないかと後悔の涙を流すしかできなかった。


451 : ○○ :2016/01/03(日) 00:21:22 C9h5BWkw
今年のSS一番ノリだね おめでとう
ひょっとして以前も投稿した人かな?
こういうキャラを特定しないSSをたまに見るね
しかし上下関係のあるキャラってどういう意味?


452 : ○○ :2016/01/03(日) 00:28:45 kzgdEYPY
暫く見ないうちに阿求の人が帰ってきていた...
やっぱり文章力が高くて読みやすく、すっと作品に引き込まれますね。その才能が妬ましい...。
>>450さんの作品は追い求めるタイプのヤンデレですね。彼と私だけが幸せならいいって感じの。特に力がある者なら尚更そう考えるんでしょうかね。何にしろゾクゾクします。


453 : ○○ :2016/01/03(日) 07:55:53 GhRtRJvo
>>451
単純に会社でいう平社員や副部長みたいなそういうモノじゃないかな


454 : ○○ :2016/01/03(日) 18:25:58 r3VpPi3Y
>>451 読んで頂いてありがとうございます。書くのは全然初めてです。

上下関係とういうのは、ある程度グループになっている人たちの事です。

例に上げますと、紅魔館勢とか、幽々子と妖夢、四季映姫と小町、永琳 と輝夜といった感じの関係をもっているキャラですね。

あまりキャラを特定しないssはキャラの数だけ美味しい感じがして私は好きです。

でもキャラ個々の良さがでないので、東方らしいキーワードは出してるもののなんか東方らしさが出てない気がします・・・・


455 : ○○ :2016/01/04(月) 07:41:29 8RLI2Z32
>でもキャラ個々の良さがでないので、東方らしいキーワードは出してるもののなんか東方らしさが出てない気がします・・・・

あーこれは分かる気がする
つか思ったんだけどキャラらしさだけじゃなくてヤンデレらしさもどうやったら出せるのかも分からなくね?

なんかヤンデレっぽく書こうとすればするほどありがちな表現ばっかりになってくるけどそうしないとヤンデレっぽくならないんだよね....

なんか上手い人は文章だけじゃなくてヤンデレの表現が新しいというか本物っぽいし似てるのを見た事ある表現を使っててもなんか新しいんだよね


456 : ○○ :2016/01/04(月) 20:50:17 MF056WNM
思うに、阿求の人しかり、長編さんしかりキャラ愛が深いからじゃないかな。
俺の好きなこのキャラがこんなにヤンじゃってまーたまんねー!っていうパトスが迸った挙げ句にSSという形を得てあーなるからスゴくなるんだろうな
だからあんま技術とか気にしないでいいと思う。愛よ。
>>450さんのは俺は自然と美鈴で脳内変換してた。
なんというか、言葉使いも正しく性格も良い子が愛に狂うのは最高だ
こうして勝手に楽しませて貰えてるから、有り難い。
でも、東方成分濃くしたいならやっぱりキャラを定めた方がいいかもね
ともあれ、お年玉ありがとう!


457 : ○○ :2016/01/05(火) 17:56:24 /713lgwo
過去ログ見返してたらpokoweb.com?は
閉鎖しちゃったのかね?


458 : ○○ :2016/01/06(水) 23:33:05 .HQtdNW.
>>457 そうですね気になります。

後、新しいのできたんですけど、投下していいですかね?


459 : ○○ :2016/01/07(木) 03:05:39 E5nttw9Q
おー。どんどんいこう。


460 : ○○ :2016/01/07(木) 19:19:13 Xp3E9w.c
>>456
美鈴って勤務的には多少問題あるけど内面性で問題あるわけじゃないしね


461 : ○○ :2016/01/07(木) 23:40:35 pZABUYVQ
パンパン
「今年こそは、なんかいいことありますよーに!」
初詣を終えた私は、向きを変え神社から家路に着こうとしたときだった。
「あら、○○じゃないの」
霊夢さんが声を掛けて着た。いつにもまして、縁起が良い気がする雰囲気だ。
「あ、霊夢さんあけましておめでとうございます。」
「おめでとう○○お参りに来てありがとうね、良かったら福袋なんてどうかしら?」
「福袋ですか・・・、私はどうもそういった博打のような類の物は嫌いでして・・・」
「あらっ、そんな事ないわよ。なんたって○○専用の福袋なのよ。」
「私専用?」
どういう事だろう、外の世界にも適当な名前を福袋に書いておいて、たまたま自分の名前と合ったら好奇心で買ってみようかなといった品と似たような感じだろうか?
「細かい事はいいでしょ。で、どうするの買うの?買わないの?」
う〜ん怪しいけど、まぁ霊夢さんのだしいっちょ買ってみようかな
「じゃぁ貰お「ちょっと、待ってください○○さん!」
え?
「○○さんそんな奴の福袋を買ってはいけません!どうせ前の年に残った低級な御札でも詰めているんですよ。でも守矢の福袋は違いますよ!大きさも、込めてる思いも。だから、○○さん私の福袋を買ってください。」
突然、早苗さんがちょっと大きめの福袋を持って飛んで来た。
「おいおい、そこまで霊夢さんの事、そこまで悪くいわなくてもいい・・・」
そういや、去年夏にたまたま神社を通りかかった時に、私を引き止めて境内を掃除させて熱いお茶出してきましたね・・やられっぱなしっていうのも何ですし
「早苗さん、福袋くだ「待ちなさい○○」
「聖さんと皆さん方じゃないですかいったいどうされたので?」
「今あなた、凄いどうでもいい理由でそこの方から福袋を買おうとしませんでしたか?」
ギク!鋭いなぁこの人
「それではいけませんよ○○いつもあなたはそう、この前も食器を洗わずにー・・・ゴホン新年初めての買い物をその様な、雑然と済ませてはいけません。ですので私達の思いの詰まった徳の高い福袋を買うべきなのですよ。」
そう言うと彼女は、前の二人以上に大きい福袋を持って差し出して着た。
「あれ?聖さん髪どうされたんですか、そんなに短く切って?」
「いずれわかりますよいずれ・・・」
私としては、大きさで福袋を選ぶ用な事はしたくない。けれども状況が状況だ、誰の物を買うかでこれからの私に対する彼女たちの対応がきまってきる訳で・・・できれば全て買った方が良いかもしれない。しかし今の私には、一つしか買うことができない。
「ねぇ○○誰のを買うのよ。」
「絶対私のですよね☆○○さん!」
「○○さんをせかさないで頂戴今真剣に考えているんですから。」
「何よあんた、偉そーに!あんたたち、私の後に割り込んで来た癖に生意気よ!」
「なんですか、やろうってんですか?」
「そっちがその気なら!」
「「「○○さんちょっと待ってて(くださいね)直ぐ片付けるから!!!」」」

どうやら私に選ぶ権利は元からないようだ。


462 : ○○ :2016/01/07(木) 23:44:26 pZABUYVQ
以下袋別

霊夢の福袋の場合

ふーっ、なんやかんやあったけど、せっかくの福袋だし開けてみようかな。でもこの福袋、このサイズの割にちょっと重たいな・・・

んーと中身は、御札と何かのメモ・・え?これだけ?

おっかしーな、まぁいいやっとなになに、

まず御札の裏に水を塗ります。
そして左手首に貼り付けます
あなた"が"、幸せに近づきます。

えっ?どゆこと?
すると、御札がグイグイとどこかに私の腕を引っ張るのだ

御札を剥がそうにも、まるで刺青のようになっていて剥がすも何もできない。

私は、御札に導かれるままに外へ外へとうとう博霊神社まで誘われてしまった。

霊夢さん、これどういう事ですか?
「○○ったら、ちょっと目を離すと危ないんだから。昨日だって、釜戸で火傷しそうになってたでしょ、それにあなたの周りにはあなたを取って喰おうとする女・・じゃない、妖怪共がうようよいるのよ?だから守ってあげる。幸せでしょ?私に守って貰えて。」
いや、そんなの悪いですよ・・・あ、後これ外してくださいよ
「それもう外れないわよ。それに私から半径20メートル以上離れられないようになってるから。」
ええ!?そんな・・・
「新年これからも、いやずっとずっと一緒にいようね○○」


463 : ○○ :2016/01/07(木) 23:45:20 pZABUYVQ
早苗の福袋の場合
プルル ッピ
「もしもし、○○さん!」
「もしかして早苗さん?」
「そうです早苗です」
「福袋に携帯が入ってたから、もしかしてって思ってかけてみたんですけど・・怪我大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ!あんな奴らに負けませんよ!」
「ならよかった。本当ビックリしましたよ。後それと、袋に入ってたセーター。ちゃんとピッタリでしたよ。」
「それは良かったです。合わなかったらどうしようって思ってて。」
「でも早苗さん、どうして私のサイズわかったですか?ウェストしか言った記憶がないんですけど?」
「それは・・・・奇跡の力です!」
「えぇ〜・・・」

そんな感じで私達は、携帯で話す事となりました。本当は、会って話がしたいんですけど、巫女としての仕事があってそんなのに時間が取れないから・・・でもちゃんと○○さんの見守りはやってますよ?だってあの人おっちょこちょいなんですから。だって、目の前にある物ないないってずっと探してるんですから。私がメールで伝えなかったらあの人、里中探し回っていますよきっと。
 あ、今日も早速○○がやらかしてますねぇ助けにいかないと・・・待っててくださいね○○さぁん

いってて・・・全く、足を側溝に踏み外すなんて災難だ。
あれ?、早苗さんなんでここに?

たまたま? そうですか。助かります


464 : ○○ :2016/01/07(木) 23:46:03 pZABUYVQ
聖さん達の福袋の場合

中身は・・・これ似顔絵?うっわ、似てねー・・・訳でもないなこれ、特徴捉えてるしちゃんと描けてるわ。大好きって描いてあるけどこれ、多分父さんも似顔絵描いてあげたとき一緒の気持ちだったんだろうな・・・なんか照れるな
次は、傘やね。所々ボロいけどちゃんと修理されてるし逆に味わいが出てていいな。ん?大事にしてねって書いてある。
後は、柄杓?なにこれ?
他は、僧服?なんで入ってるんだろう?それと、この襟巻き妙な色してるな紫と金・・・手触りもいいし・・・まさか!?
私はそう思うと、福袋を持って命連寺に急いで駆け込んだ。

「聖さん、まさか髪を切ったのって!?」
「そうです。あなたにこれをお渡しする為です。」
「なんでそんなことを?」
「これは私たちのあなたに対する気持ちでもあるんですよ。」
「「「そうだよ○○ちゃんと受け取って欲しいな」」」
そういうと、聖の周りには命連寺の面々がいた。
みんな自分に対して、濁った目で舐めるように見ているのがわかった。さながら柵のなかで虎ににらまれている状況だ。

「私は穴の空いてない柄杓に私を満たしてというよりも意味を込めて」
「私は傘にいつでも○○さんのそばに居られるようにって」
「私は、絵でストレートに伝えてみたよ♩」

「そんな急に言われても・・・」
「バカだなぁ君は本当、みんな前々からアプローチをかけていたんだよ?なのにそれに気がつかずにいたんだから本当&この僕人参が。後それと、おいそれと帰れると思うなよ?この寺に来た時点で君は、虎に食い殺されて死んだ事になっているんだ。だから里に戻ったらどうなるかバカな君でも分かるだろ?」
「ですから○○さん。あなたは今日からその僧服を着て命連寺に入って貰います。宜しいですね?」

なんて事だ・・・この幻想郷では外来人に人権は無いらしい。あるのは、一度目を付けられたら最後誰かの僧侶となり魂まで貪られるかしかだいのか・・・

「さぁ○○さん。お祝いに皆さんとお雑煮を食べましょう?なんたって私達の特製ですからね」


465 : ○○ :2016/01/08(金) 03:22:23 M38puAYg
超久しぶりに来たけど過去のスレのログとか残って無いんかねえ
もしあって貼ってくださる方が居るのなら超有難いです


466 : ○○ :2016/01/09(土) 02:00:40 nH3avBEk
>>461
ぐっと良くなったと思う
福袋やらその中身で話を進めるから三者三様の続きが気になる

例えばこのSSではこのキャラなら福袋に何を入れてるだろうって興味がポイントだと思う

いいSSはこのヤンだキャラは何をしてくるだろうって興味を持たせるのがすごい上手いと勝手に思うんだ
文章の上手い下手も大事だけどこれもヤンデレSSの醍醐味だと思うんだよね
ちょっと具体的な例が思い付かないからそれは他の人に任せるけどさ

過去ログは確かに見たいね 消えちゃったのは残念


467 : ○○ :2016/01/09(土) 05:39:30 eNJl.AtA
>>一度目を付けられたら最後誰かの僧侶となり
幻想郷が僧侶であふれちまうー!?
しかしこうしてみると、まだまだ早苗さんは常識に囚われてるな
でも、あんまり病むと現人神から現人鬼になりそうだしこれくらいでいいのかも


468 : ○○ :2016/01/09(土) 08:01:22 ne.tctWs
>>466 読んで頂きありがとうございます。

>>467 幻想郷が僧侶であふれちまうー!?

あ、間違えてました。僧侶ではなく、伴侶です。wikiに載せる際訂正して頂けると幸いです。


469 : ○○ :2016/01/10(日) 01:40:17 02.Zfn7M
>>465
ウェブアカで過去スレ読めるよ
さすがに全部は無理だろうけど
20スレ目は読めた


470 : ○○ :2016/01/12(火) 12:41:32 h5HDIVWc
蓮メリって、束縛激しそう
また心地よい束縛を提供しそうだから困る


471 : ○○ :2016/01/13(水) 04:07:16 tfAhJZ.6
>>469
どうやったら出来るんですか?ちょっとやり方が分かりません。すみませんね


472 : ○○ :2016/01/13(水) 18:41:13 ./pyL4Yw
>>471
ウェブアーカイブのwayback
machineで自分のみたいwebページのURLを入力すれば見れるはず


473 : ○○ :2016/01/16(土) 03:45:33 Umz5.IU2
検索する無限のアーカイブ 記憶という海へとDive


474 : ○○ :2016/01/16(土) 09:34:12 Xtbzty4w
>>472
ありがとう20スレは見ることが出来たよ。しかしまだ使い始めたばかりでよく分かんないけど他のスレは見れないっぽい?


475 : ○○ :2016/01/17(日) 19:24:05 cLFy0M9M
ごめん、逆に20スレだけアドレス教えて欲しい
お願いします


476 : ○○ :2016/01/18(月) 07:16:21 Z5zwLYCQ
レティさんが本格的に動き始めたな


477 : ○○ :2016/01/18(月) 07:20:19 m4XQ8Gwg
レティさんやめてください。
物理的に埋もれました。死ぬかと思ったよ……もこたん助けて


478 : ○○ :2016/01/18(月) 14:25:16 zOPDd7IU
幻想郷ならさ、秋姉妹や九十九姉妹にプリズムリバー三姉妹
とにかく○○一人では複数の女の子を連れていても、幻想郷なら周りがすぐに察してくれるけど

蓮メリだと、外の世界だから。嫉妬やらなんやらで○○のストレスがマッハで
胃とかえぐいことになりそう


479 : ○○ :2016/01/18(月) 22:26:51 ELwLn7JQ
僕は人参だから虎に食べられちゃう!

朴念仁ですよね…?


480 : ○○ :2016/01/20(水) 01:51:31 XJTgv71s
レティさんは今年そうそうに張り切りすぎだろ…
自宅がある地域に雪積もったのなんて何年かぶりだよ。
おかげで仕事からの帰り道が凍ってすべる、すべる。
クソ寒いから、もこたん で暖とりたいわ


481 : ○○ :2016/01/20(水) 10:33:09 ruDve49Q
暖をとるならやはりここは……
美鈴だな。
口移しで気的なものを送ってもらったり、豊満な胸で包まれて暖まりたい。


482 : ○○ :2016/01/22(金) 07:04:45 tP7McZWk
ノブレス・オブリージュに囚われて(86)
ttp://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=39700&n=76
今更あけましておめでとうございます
レティさんに追いかけられて、身動きが取れませんでした


483 : ○○ :2016/01/22(金) 21:58:31 ZocA20mQ
なんか皆の書き込みを見ていると、レテイと妹紅でのヤンデレの妄想が、時折脳内を駆け巡ぐるようになってきた…


484 : ○○ :2016/01/23(土) 14:11:54 U7b2f0wU
>>483
よし、書こうぜ


485 : ○○ :2016/01/24(日) 03:59:21 bdvzQaP.
某ヤンデレCDに殺した邪魔な女が幽霊になって蘇ってもまた始末すれば良いみたいなセリフがあるんだけど。
霊夢がその台詞を言っているのを想像したら、違和感0だった。
例の始末とか普通にできる世界観だしね


486 : ○○ :2016/01/27(水) 19:18:22 GSqx7FAk
レティさん、秋姉妹・・・
あと天候や作物関係で怒らせたらヤバいのって誰だろう
個人的にはリグルはかなりヤバい部類だと考えてる
イナゴ使われたら、冗談抜きで何も残らない


487 : ○○ :2016/01/28(木) 05:57:41 jlpbJ8f2
リグルって実は凄く優しいよ
虫の報せサービスで人間との共存考えたり、蝗害とかヤバイことしないからね


488 : ○○ :2016/01/28(木) 17:25:40 XWj8ga4o
これは以前書いたお風呂霊夢と同じ霊夢ですが、あんまり気にしないでも大丈夫だと思います。
既に霊夢は「夜這い」ならぬ「お風呂這い」して○○をゲットしている、という状況。


「……ん」
と、霊夢が両腕を掲げるとその華奢なししおきを飾る水滴が数滴、つうとなだらかに滑り落ちた。
風呂上がりの彼女の頬は上気し、普段努めて冷静を装っていたその顔はある種の幼さ、あどけなさを取り戻している。
……いや、違うな。
と、しかし○○はその感想を否定した。
努めてそうだったのではない。
知らなかったのだ。幼さを。甘えを。
無邪気ではあっても、あどけなさはなく、純粋ではあってもいたいけではなかった。
脆いということすら知らない儚さ。そんな子だと知ってからこっち、自分は努めて甘やかした。
甘やかす、とはいってもそれは彼女の年齢を鑑みれば控え目にすぎる程で、ただ、彼女を認め、褒めてあげるだけ。
掌でその頭をなでくり、一言添える。ただそれだけだ。
全くたいしたものではない。
しかし、それが彼女を狂わせてしまった。
あの晩、常の彼女が持つことのなかった「執着」を、その小さな体に満々と湛えて目の前に足った霊夢を○○は拒めなかった。
暗に、お前のせいでこうなった、という責任感も僅かにあった。だが、危険な程に純粋に自分を求める霊夢を守りたいという父性にもにた思いもまた、あったのだ。
その後にしたことは、父性とは最も遠い原始的なものであったが。

ともあれ、霊夢は○○を手にした。
○○は霊夢に捕まった。
それ以来、○○は霊夢の愛情を、恋慕を、執着を全て請け負ってきた。
手にしたタオルで霊夢の体を拭いていくと、彼女は薄く微笑んでそれを味わう。
風呂、という○○を手にした場所は彼女にとって特別らしく、絶対に一人では入らない。
お互いの体を清めることも含め、なにか余人の入る余地のない神聖(プライベート)なものとして認識しているのは明らかだった。
最早若々しいとは言えぬ年齢の、衰え始めた○○の体。その肌を清めるのは例え○○本人ですら霊夢は許さない。
「ダメよ」と、がっしと○○の手を掴んだ様子は断固として譲らない意思で結晶と化しており、是非を問うことすら憚られるほどに頑としていた。
普段、霊夢は○○といるときは今までを取り戻す勢いで甘えんぼうで、素直すぎるくらい素直で聞き分けも良い。
しかし、危うい程に気を許しすぎていると、○○は恐れてもいた。


489 : ○○ :2016/01/28(木) 19:02:14 JLa/7PEE
霊夢の執着。
それを甘く見ていた……そんな積もりはまったくなかったが、結果としてそうとしか言えない事件がかつてあった。
それは冬の冷え込みも極まり、吹雪で荒れる夜の事だった。
外来人の一人が遭難した、というのだ。
名を聞けば、それは○○とほぼ同時期にこの異郷へと迷い混んだ、同期……というのもおかしな話だが苦楽を一時共にした男だった。
苦楽を、といっても辛いことの方が圧倒的に多かったが……ともあれ、親友といって差し支えない男だった。
○○はざんばと湯船から飛び出すと、霊夢を残し大急ぎ身支度を整えると、濡れ髪も構わず外へと走り出た。
外は横殴りの雪が僅かに落ち着き、いくばか視界も開けていた。
好機。しかし、それがそう長く続かない短い天祐であるのは明らかだった。
猶予はない。
外来人同士のネットワークは小さいが結束は固い。
郷の人間は特段悪人でも、排他的でもないが、慣れ故の諦めも鮮やかであることもある。
元より、外来人とはそもそも妖怪の…………であるから、余計にそうなのかもしれない。

声を枯らしての決死の捜索は、その範囲を迷いの竹林へと拡げるため藤原妹紅へと助力を乞う時点で終着した。
藤原妹紅宅には、ぐったりと気を失った遭難者と、それを裸で温める彼女の姿があったのだった。
それを見た○○は、深い安堵をつき、膝から門戸の土間に崩れ落ちた。
力なく抱かれるままにしている男だが、安らかな寝息を雪に音を吸われるなかでも確認できる。
まずもって助かったと見て間違いないだろう。
しかし、有り難いのはこの藤原妹紅。
幻想郷の女子はあらぶった性格をしたものも少なくないが、こと異性に関しては非常に一途で身持ちも固い。
そんな気質の年頃の少女が、誰とも知れぬ男をこうして身をもって助けるとは余程のものでも出来ることではない。
○○は深く頭を下げ、なんども礼を述べた。
それを妹紅は優しい声で「もう大丈夫」と、○○の方を見ずに胸の中の男へと繰り返し繰り返し伝え、囁いていた。
生死をさ迷った恐ろしさから悪夢を見ているのだろう。男は唸ったがそれすら包むようにより深く妹紅は胸に抱き締めると、小さな炎の翼をはためかせた。
神々しい姿であった。
結局、○○は親友を妹紅に任せることにした。
それが一番いいことのように思えたのだ。
妹紅は、ついぞ○○を見ることはなかったが。

帰路についた○○の胸は友が死なずにすんだ安堵と、妹紅の献身への感動が満たしていた。
雪の夜の探索という重労働に、思考も平坦になり、考えることを半ば放棄していた。
端的に言えば疲れていたのだ。くたくたに。
だからか、神社へとついてその名を呼ぶまですっかり忘れていたのだ。
霊夢のことを。


490 : ○○ :2016/01/28(木) 20:31:36 okP1jEuo
名を呼ぶ……というよりは絶叫だった。

「霊夢ッ!!」

と、悲しみとも、驚きとも、絶望とも、それら全てを混ぜ合わせた怒りとも言えるものが混然となり、声は裏返り、○○の声帯は探索でのそれも合わせてか酷いものに成り果てていた。
何故こんな
どうして自分は
霊夢は何れ程

「………○……○」

神社の境内。
その真ん中で、一糸纏わず雪にまみれた、もはや生き物とは思えぬ物体と化した霊夢が出した声はあまりにもか細く、死をまざまざと予感させる音色だった。
半狂乱の最中、死そのものを連想させる雪を払い、はっとなった○○はさらに慌てて霊夢を抱き母屋へとかけ上がった。
先程の妹紅を思いだし、○○は裸になると冷えきった霊夢を抱き締めた。
毎晩の親しんだ柔肌と同じものとは思えぬほど、それは肌というより皮であった。
冷えきった、なにかの皮であった。

「……いて、たく、て…………○○に、私を、清めて、貰いたかったの……すこし、でも早く」

どうしてこんな!と泣きながら霊夢の体を抱き締め、肩や背を擦る○○に霊夢は途切れ途切れにそう答えた。
どうしてと叫びながらも、○○は問いたかった訳ではない。
ただ、爆ぜて粉になりそうな心が吐き出した吠え声てなしかなかった。
だが、霊夢は思ったのだろう。
○○が聞いてるなら答えなきゃ……と。
それが○○にも分かった。
○○は叫んだ。
叫んで、力は霊夢の体を。
心は霊夢の靈を。
全身全霊が霊夢を求めて慟哭した。

「……やっ……たぁ……」

その叫びに掻き消され、霊夢の力ない声は届かなかった。
ただ、声がしたことだけは分かったらしく、○○はその生きている証しに更に熱く猛った。


「ふふっどうしたんですか?」

と、霊夢の。現在の霊夢の声が○○を回想の中から引き上げた。
水滴を全て拭き終えた霊夢はしっとりとした肌を○○に押し付けて、鳩尾におでこを捩じ込むように押し付けていた。
その肌の温もりは内側より脈打つ熱を全身に走らせ、若い生の力に満ちていた。
「いや、その」と、○○は煮え切らない返事をしたが、それはどうでもいいらしく、霊夢は貴方も抱いてとばかりに○○の腕をとり自らの腰へと導いた。
左手で肩を、右手で腰を掴み、体を密着させると「んんぅ…っんんーんっ」と、満足げに霊夢は鳴き声をあげた。

「らいすきぃ…だいすきぃっ」

うわ言のようにそう繰り返し囁くと、霊夢背伸びをして唇以外に接吻を降らせる。
まるで、靈そのものへと刻むように、それは○○の体と心へ呪いめいて剥がれないものとなって残った。

「ねぇ、○○さん。私のこと、私の、ん、こと、ちゅ、はぁ……髪、触って下さい…」

まだ乾ききらない黒髪は手触りよく絶妙の弾力で○○の指を楽しませ、絡み付いた。

「あぁ…言って下さい……あの時のように、心から、体全部で、私を!」

あの時、とはあの夜のこと、霊夢を喪うと怖れたあの時に他ならない。
あの直後、八雲紫が「借りを返しに」来なければ……いや、それは無いのか。ずっと観ているのだろうから。
と、考えたところで霊夢はいよいよ唇を吸ってきた。
もぐもぐと唇で唇を食むようにして、息継ぎの合間に「ダメ」「私を」「満(み)て下さい」と余所見を咎めてくる。
勿論、こうなる経緯がどうあれ、最早霊夢と離ればなれになることなど出来ないのは○○も同じ。
保護者を気取っていたが、○○自身霊夢のいない暮らしなど考えられない。
自らが何らかの事態で……それこそ事故などで死に別れてしまったとき、この子がどうなるか心配していたが、はっと○○は答えに行き着いた。
死ぬのだろうな。
と。
そうなってほしくない、もしできるなら、先に旅立つことがあったら新しい幸せを探して欲しいと思っていた。
本当にそう思っていたのだ。偽善ではなく。心から。
しかし、かわった。
いや、わかったのか。
己が死ぬとき、また霊夢にも共に死んで欲しい。
ともに黄泉津平坂を歩んで欲しい。と。

「うれしい! うれしいです!」

何も言っていないのに、霊夢は何かを感じたらしく酷く感激して○○を押し倒した。

「私たち、ずっと一緒です。ずっと! ずっと!!」

○○は霊夢を求めるところを素直に露にして行動に移すと、嬉し泣きする霊夢を深く甘く鳴かせることを始めた。
勿論、霊夢はそうなることが分かっていたのだから、進んで○○を手繰り寄せた。

霊夢もまた、○○の居ない生も死も興味がないのだから。
○○の思うよりずっと。




491 : ○○ :2016/02/01(月) 13:54:04 jlxOOZpg
感覚が麻痺してるのか、多少の独占欲以外は甘めの話と思った


492 : ○○ :2016/02/01(月) 19:25:26 E7XmDCjs
感想ありがとう
受けのヤンデレは弱すぎていつ死んでもおかしくないけど、それが○○を愛した結果なら全然構わない……
そんな感じだと思ってます。
自分を人質にとっているので、ある意味攻めのヤンデレよりたちが悪いかもしれません


493 : ○○ :2016/02/01(月) 22:42:25 drzQtCFg
>>490 全身が痺れる様な作品でした!
前回の奴と同様とても自分好みでした。
霊夢の「さん」付けが好きです


494 : ○○ :2016/02/02(火) 16:10:49 Pj9ESTGE
妖夢もそうだけど、メロメロになると霊夢はスゴく可愛いな、と書いてて思う。
お気にいってもらえたようでなにより
さて、明日は節分……勇儀のヤンデレあるといいなぁ


495 : ○○ :2016/02/03(水) 20:16:18 HPpulG9E
節分じゃん、豆まきはともかく豆ぐらいは食べる人多いよね。あとイワシも

でも、その程度でも鬼は傷付くだろうね。そこで豆もイワシも食べなかったら・・・落ちるかもね。幻想郷の鬼っ子達は


496 : ○○ :2016/02/03(水) 21:19:30 qvNmTjqc
阿求のひとの話で節分で弱ってた二人いたじゃん?
これはキタなと思ったよ。
これ、酒屋のオヤジにデレる流れだろ。
弱った女に酒と男だからね。これはいくよ
しかも、悪いことに二人で行ったからね!

無いなら自分で作ろうと思ったけど連投になるし控えるね


497 : ○○ :2016/02/05(金) 10:25:25 983.hG56
他にもあの二人が可愛いとおもってる人がいたか
あとチルノとフランも可愛い過ぎてふるえた


498 : ○○ :2016/02/05(金) 11:52:40 K58c4.GA
いいよね、旦那登り
でも俺、あの雪ダルマにフランの羽素材使われそうでビクビクしてる


499 : ○○ :2016/02/05(金) 14:27:53 YSlHSsbA
あのフランがヤンデレ化したら、かなり怖いと思う
具体的に何をやらかすかはすぐには思い浮かばないが・・・生きた心地はしないだろうな
気がふれているけど、性根は優しいとか言う矛盾した評価も得点としては高い


500 : ○○ :2016/02/05(金) 19:53:24 SVdt2ZgQ
チルノの子供特有の喋りかたがいい 実際子供ってあんな喋りだよね
たぶんあれってあえて脇役まで可愛く書くことでストーカーしてた阿求が危機感や嫉妬するのがあながち的外れな心配じゃないってことだと思うんだよね


501 : ○○ :2016/02/06(土) 01:18:47 HdQIbuMc
はじめまして、何か書けたので出してみます


「おーんおんおんおん」
朝帰って来たら何かうぜぇのがいた。
こっちは自警団の夜勤明けで気が立っているのだが、泣いている童女を放置していくのも気分が悪い。
いや、童女とは限らない。
幻想郷の童女は見た目だけロリで実年齢三桁越えなんてこともある。
そして、そこまで来て思い出した。
幻想郷縁起で見た……たしか伊吹萃香とかいう鬼だ。
威厳もへったくれもないが、粗雑な対応をすればどんな返し方をされるか分かったものではない。
仕方ないので家に上げておくとするか。

「いやぁ、こんな日に鬼を内に入れるなんて変わった人間だねぇ?」
「外来人からすれば鬼よりDQNとかの方が怖いよ」
連中が幻想郷に現れないことを願おう。
「どきゅん……新手の妖怪かな?」
鬼だの何だの言いながら結構大人しいものだ。
大酒飲みだと聞くが酒は自前でどうにかするし、ツマミに作った下手くそな野菜炒めも美味い美味いとべた褒めである。
そもそも豆をぶつけられた程度で泣いてるのだから恐怖など湧きやしない。
「このお礼はきっと返すよ」
そろそろ夜勤の仮眠から24時間経つというところで鬼は帰っていった。
駄目、死ぬ、寝る、絶対、朝まで……

「おいーっす、○○!」
「どこの芸人だ、お前は」
あれから萃香とは時々飲むような仲になっている。
どうやら神社の宴会で騒ぎ過ぎたということで乗り込んでくるのだが、独り身なので飲みに付き合う相手がいるのは悪くないものだ。
「いやぁ、静かに飲むのも悪くはないね」
それを神社でやれてたなら追い出されなかっただろうに。
俺は既にいい歳であり、相手も見た目が童女なので飲み友達というよりは娘がいる様な気分だ。
俺もいい加減身を固めるか、と思ったのだがコミュ障故に固まる未来が想像つかない。
恐らくこのまま独り身でしんみりと朽ちていくのだろう……そう思っていた。

人生の転機とは意外な所に転がっているものだ。
そろそろロートルの部類に入りそうな俺に見合いの話が来たのだ。
どうやら相手方も自分と似たようなタチであるために嫁ぎ先が無かったらしい。
決して美人という訳ではないが悪く言えば根暗、良く言えば淑やかな性格で好感が持てた。
「そんな顔して、どうしたんだい?」
「ああ、これからはお前さんと飲む機会も少なくなるからな」

泣かれた、怒鳴られた、暴れられた。
何が癪に障ったのか、萃香の荒れ具合は酷かった。
いや、鬼の怪力で家を壊さないのだから抑えているのだろう。
子供のころに分かっていたものが大人になって分からなくなるというのはよくある話だが、この爆発の理由は全く想像がつかない。
結局、この日は寒空の戸板をぶち破って宴の席は幕を閉じた。
せんべい布団を重ねただけで耐えられるか不安である。

昨夜に泣いた小鬼が今夜は笑う。
流石に昨日はやり過ぎたと反省していたようで、上物の酒を持参したとのことだ。
生憎の味音痴だが鬼の言う上物なら俺でも分かるような味だろう。
まずは一口と杯を傾けるが、確かに上物である。
まるで清水のように喉を軽やかに通り抜けるのだが、後には爽やかな香りが残っている。
本当に美味い酒がこういうものかは分からないが、俺にとっては逸品の酒だ。
いつもなら自制がかかるのだが、この酒に対しては全く利きそうにない。
二杯、三杯、四杯、五杯、ろっぱ……ない?

「悪いね、流石に品切れだよ」
やれやれ、といった顔で首を振る萃香。
待ってくれ、そいつは困る、俺はもっと飲みたいのだ。
そう、せがむと萃香は仕方ないといった顔をする。
「ついておいでよ、とっておきの場所で飲むからさ」
流石、持つべきものは友人だ。
俺は萃香に手を引かれて宴の場所へと向かった。


人里で神隠しが起きた。
神隠しという字面は正確ではないのだが、とにかく事件が起きたのだ。
だが、それで騒ぐ者はいなかった。
人里に近い鴉天狗すら新聞のネタにしなかった。
知っていたのだ、この事件の主犯が誰であるかを。
変に飛び火したら、どんな大火事になるか分かったものではないからだ。


502 : ○○ :2016/02/06(土) 12:47:18 LTM4oI86
面白い短編でした。


503 : ○○ :2016/02/06(土) 12:52:38 CqKETrx2
萃香の鳴き声はやっぱりおーおんおんおんだな
個人的には暴れてるところを詳しくみたかった。
泣きながら暴れる彼女がどんなことを言っていたのかとか、想像するとたまらんね。
妖怪って人拐いは基本スキルみたいなイメージだけど、ヤンデレは
彼女らの恋愛観では普通のことなのかもね


504 : ○○ :2016/02/06(土) 23:01:55 uupcu9I.
最近追えてないので実は違うかもしれませんが、華扇ちゃんがなんと鬼だった!という設定でお願いします。

例えば華扇ちゃんが鬼だったら

「もう! 貴方、苦手な妖怪とかいないんですか?」

そう言って華扇は頬を膨らませた。
ちなみに、何か食べているからではない。
怒ってるのだ。
そして呆れてもいる。
何故、彼女がこうも声をあらげたのかというと、それは○○の素行にあった。
○○。彼は他の外来人と同様、さほど妖怪を恐れない。
だので、誘われるとほいほいと妖怪だろうと祟り神だろうと付いていってしまう。
妖怪はここ幻想郷でも人を食う天敵である。普通なら恐れ、忌諱するものだがしかし幻想郷の特性がそれを阻害していた。

「いやー、だってさ、妖怪ったって女の子にしか見えないじゃん。ていうか、「女妖怪」って感じの人すら居ないよね」

「ぐっ、それは、そう……かもしれませんがっ」

幻想郷の妖怪はあまりにあどけなかった。
見た目でアピールする危険度がほぼ皆無、あら可愛い、といった塩梅の子供たちと稀に保護者のお姉さんズ。
それが外来人の持つ率直な感想だった。
勿論、何かの機会に妖怪としての側面に直面し、怖れるようになる者もいる。
しかし、我が身に塁の及ばぬ恐怖は所詮情報の域を出ない。
より率直にいえば娯楽ですらある。
また、そうした楽観を許す土壌が整い過ぎていたのもある。
幻想郷縁起は妖怪への恐怖を、共存の為の建前と書いてしまった。
妖怪との共存を説く尼寺は彼女らが手を取り合えると示してしまった。
人間に棄てられながら、なお人間を愛している妖怪傘
……等々あるが、なにより、彼女らを退治するヒーローたる筈のもの達が妖怪と良好な交遊関係を隠さない。
これで心底の恐怖をもてというのは無理であった。
下級の言葉を解さない妖怪もいるにはいるが、それらはまた「別物」として扱われる。
幻想郷のシステムは、率直で、荒い言葉や不適切な発言なども飛び交うが弛かった。
少なくとも、外の世界の世知辛さから見れば楽園足り得るほどに。


505 : ○○ :2016/02/06(土) 23:35:40 uupcu9I.
「いや、でも華扇ちゃんいうことも分かるよ?」

と、一転して○○は華扇におもねった。
そ…っと華扇の包帯を巻いてない方の指に、○○のの指が僅かに触れる。
反射的に身を固くする華扇に、しかし○○はより一歩近付いて、つかまえるように確かにその手をとった。
恭しく捧げ持つように胸の前にゆっくりと持ってくると、本の少しだけ指に力を入れた。
掌の熱が華扇のひんやりとした指に伝わる。華扇はその熱の伝導がそれ以外のものも運んできたように感じて僅かに微笑んだ。
応えるよう、少しだけ力をいれて握り返すと、待ち合わせたようにお互いの指が絡み合う。
華扇の胸に、締め付けられるような、僅かな痛ようが訪れるが、彼女はそれを愛しく思った。
かけがえのないものと。

「恋人同士だからさ、あんまり他の女の子と遊ぶなっていうのは分かるよ。うん、それなら分かる」

「…………まったく、貴方ときたら……」

華扇は蟠りが溶けゆくのを自覚した。
いや、実際○○の身を案じているの事実なのだ。
何かの拍子に一線を越えて……イヤらしい意味ではなく……一線を越えてしまえばその命を危機にさらすのは確かなのだ。
だから、心配しているのは確かなのだし、嘘ではない。
しかし、やはり女として、嫉妬を含んでいないかというと、無いとは言えない。
誰よりも大切な○○と触れ合えるのは自分だけ……そう信じていても、彼の近くに自分以外が居るのは面白くないのだった。

「こんなんで誤魔化されないんですからね? 私は貴方をですね……本当に危なっかしいんですから」

そう、小さくごねるのがささやかな抵抗。
しかし、その口許は知らずに緩んでいた。緩やかなカーブを描いて。

「はいはい。気を付けてるよ。それに俺だって近付かない妖怪の一人や二人はいるし」


506 : ○○ :2016/02/07(日) 00:49:32 0smeWrNY
「鬼だけは嫌だな」

○○は優しい温度のまま、嫌悪を告げた。
華扇は反応出来なかった。「えっ?」とすら声をあけることも出来ず、なにか思考の芯のようなものが先細り消えていくのを感じることしか出来なかった。



確かに、この幻想郷に棲む妖怪のなかでも最も危険な種族といえよう。
単純な強さ、分かりやすい攻撃力というか意味ではこれ程危険な妖怪は居ない。
反面、義理堅く、よく言えば実直、悪く言えば…………鬼、そのものである。
そう、強大なもの、残酷なもの、恐れるもの、憎い相手、それらすべて鬼、と呼ぶのだ。
鬼とは忌まわしいモノ、そのものに他ならない。
避けるべき相手なのはいうに及ばず、いわんや大事な相手を。
絶対に近付けてはならない。

「あ……ぁの、○…○? それは……えと……」

と、華扇は酷く弱々しく声を発した。
声を発したがしかし、なんと話しかければいいのか、それが全く分からなかった。
ただ反射的に、立て続けに○○から否定的な言葉を聞きたくない一心で打った一手。
辛くても華扇はやめて、とすら言えない。「仙人である華仙」にはそれをいとう理由がない筈だから。

「つってもさ、そんな死ぬほど怖いって訳でもないんだけどね……」

と、そういって苦笑いした○○の声は華扇にはどのように聞こえただろうか。
頭の両脇にしつらえたシニヨンの奥で、かりっ……となにか疼くものがあった。
まるで存在を主張するように。
赦しを得たかのように。
身動ぎすら封じられていたものが、もういいかい? と問うように。
華扇の手が、自然と髪へと伸びる。
ーー今。今ではないだろうか。
全てを明かすのは。
自分の真の姿、素性……それらを○○に明かすのは今ではないか?
自分は、実は鬼なのだと。
仙人であるのも嘘じゃない。騙していた訳じゃない。
でも、まだ……そう、「まだ」言ってなかった。
だってその必要なんて無かったし、貴方も聞かなかった。
でも、貴方には、貴方だけには……全てを知ってほしい。
他ならぬ貴方だから。
大事な、大切な、愛した人だから……だから
今、いうね?
華扇はひゅ、と息を吸って……

「ただ、嫌いなんだよね」

その吸った息に絞め殺されそうになった。
喉の奥で何倍にも体積を増した空気が華扇の喉を破裂させようとしているかのようだった。
空気が邪魔で、息ができなかった。
そしてそれ続けて、華扇の中で前向きに希望と勇気に満ちた意志が横一文字に断たれ、ガラガラとあちこちにぶつかりながら崩れ落ちていく。
ーーまぁだだよ
と、かくれんぼのソレが告げられる。
もういってもいいかい?と思って聞いても、ダメだと拒まれる。
許しがなければソレは動けないのだ。
この状態の華扇にひとつだけ、救いがあるとしたら「どうして?」と何でもないフリをして続きを促さなくてもいいということだけだった。
なにしろ○○が勝手に喋っているのだから、その必要はなかった。


507 : ○○ :2016/02/07(日) 04:35:26 tyTwGly.
ノブレス・オブリージュに囚われて(87)
ttp://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=39700&n=77

何だかんだで幻想郷ってディストピアなんだよなと、鈴奈庵や茨華仙を読んでいたら感じた
話の内容が暗めの同人誌読んだ後は、キャラが可愛いを前面に押し出した物を読みたくなる


508 : ○○ :2016/02/07(日) 15:11:30 0hwU/bmg
寝落ちしてしまいました。
つづきは夜に書きます。

茨で華扇ちゃんは河童に酷いことしたよね
ごめんなさい、しないといけないよね
それはともかく、河童は盟友だって、俺まだ信じてるよにとり!


509 : ○○ :2016/02/08(月) 14:49:19 f9SBytFs
永琳の作った薬は、ヤンデレ化してなきゃ安心して飲めるけど
娘々の作った薬はヤンデレ化してなくても避けたい
ヤンデレ化してたらもっと


510 : ○○ :2016/02/10(水) 19:47:48 nOXTHQk.
華扇ちゃんマダー?
そう言えば河童が人間を盟友と思ってるの?
それとも、にとりだけがそう言ってるの?


511 : ○○ :2016/02/11(木) 01:04:55 blp47jNk
にとりだけが人間を盟友と思ってるかもしれない。それはそれでヤンデレに繋がりそうでゾクゾクしてきた


512 : ○○ :2016/02/14(日) 18:47:21 pmL71XmA
誰かいますか?

この言葉って、ヤンデレと親和性高そう


513 : ○○ :2016/02/14(日) 20:35:58 nheUVd/w
一方通行の好意って友愛だろうが家族愛だろうが病むきっかけになるかもね
ヤンデレに繋がる言葉と言えば献身なんかも近いかも。


514 : ○○ :2016/02/15(月) 00:08:30 nFzWxP4k
ちょっと試しに書き込ませて頂きます。
案を頂きました、480氏には感謝を。


515 : 514 :2016/02/15(月) 00:09:31 nFzWxP4k
「昔むかしあるところに、」
そういう語り出しで始まったその人の話は、
焼き鳥屋で串を数本胃袋に放り込み、
ほろ酔い気分になっていた私にとって、
妙に印象に残り、さながら記憶の底にゆらりゆらりと浮かんでは
沈むような、心にひっかかる昔話であった。

昔むかしあるところに、一人の若い男がいたそうで、
時折妖怪の山の一つ手前の山に入っていたらしい。
何でそんな危ないところにいたのかって?
守矢の巫女以外は入ったら最後、生きては出て来れないと
里の皆が噂している妖怪の山ではないとはいえ、
やっぱり普通の人にとっては、危なっかしいような、
恐ろしいような、触れたくないような、まあそんな場所であった。


516 : 514 :2016/02/15(月) 00:10:13 nFzWxP4k
しかし人が入らないだけあって、山菜やら果物やら、果ては阿求の
お大尽さんでしか食べられないような、松茸でさえ大層あるらしく、
その男もちょくちょく入り込んでは、何かしらを採っていた。
勿論命は惜しいから、度胸と腕っ節がそこそこある、他の若い男と
つるんではいたらしいが。

ある日に男二人で山に入ると、その日は急に天気が悪くなり、
あろうことか雪まで降ってきて、
いくら冬が近くなってきたとはいえ、雪が降るなんぞ夢にさえ思わない
時期だから、二人は仰天して近くの洞穴に雨宿りをしたけれど、
ますます雪が強くなって、終いには吹雪になってきたので、二人は
ああ…しまった、雪女に捕まってしまった。と正に肝が冷える思いだった。


517 : 514 :2016/02/15(月) 00:11:22 nFzWxP4k
男のつれは、こんな所にいるとお仕舞いだ!俺は雪女なんかに殺されてたまるか!
と言って、男が止めるのも聞かずに飛び出してしまって、
こんな時に飛び出すなんて、正気の沙汰ではなかったんだけれども、
まあそういう男も、何かいい考えがある訳でも無かったもんだから、
結局はそのまま洞穴にいるしかなかったが、そうしているうちに
どんどん寒気が背中に登ってきた。

ああ寒いなぁ。まずいなぁ。と思っているうちに、どんどん寒さは増してきて、
遂には全身こちこちに凍えてきて、歯なんかはガタガタに震えてきてしまった。
すると洞穴の入り口に、真っ白い服を着た女がいつのまにかいるもんだから、
ああ俺も遂には雪女に捕まったかと、こんなに欲を欠くんじゃなかったと、
男が深く後悔していると、その女がつとこう言った。


518 : 514 :2016/02/15(月) 00:12:11 nFzWxP4k
助けて欲しいですか。ってね。勿論男は生きたいもんだから、
お願いします。なんでもしますから助けて下さい。
ってこれまでにないぐらい必死に頼んだ。そうすると女は
貴方は殺すには惜しいので、助けてあげましょう。
ここで私に会ったことを、誰にも言わないこと。そして
この玉をいつも持っていること。と二つの条件を突きつける。
男は助かりたいもんだから、絶対に守りますと頭を下げるや否や、女はふっと消え、
雪はすっかり止んでいたんで、男は直ぐに山を飛んで下りたと。

次の日に、洞穴を飛び出した連れが、山の麓の大きな木のてっぺんで、
百舌の贄のように氷で串刺しにされていたもんだから、
男は雪女に会ったことは、絶対に漏らすもんかと堅く心に決めたという訳。


519 : 514 :2016/02/15(月) 00:13:19 nFzWxP4k
ひとまず以上になります。
また暫くしたら、投稿させていただきます。


520 : ○○ :2016/02/15(月) 09:17:15 Avm.wTJo
ん? 今なんでもするっていったよね(ヤンデレ)
雪女が持たせた玉ってなんだろうな。
俺勝手にバスケットボールくらいの大きさで考えてるけど


521 : 514 :2016/02/15(月) 13:24:23 MHKrQjYo
>>520
バスケットボールよりも、かなり小さなものになります。

2回目を投稿させて頂きます。


522 : 514 :2016/02/15(月) 13:27:30 MHKrQjYo
その後男は、山に入ることはパタリと止めたけれど、今まで稼いできた当てが無くなったものだから、
今度は色んな所に配達に行くようになった。男が雪女から貰った玉を首に掛けていると、
何故だか雪に足を取られずに、スイスイと雪の上を歩いていけ、
どんな吹雪の日でも、男が歩く道は雪が殆ど降らなくなったから-
部外者からすれば地味と思うかもしれないが、これは中々有用で。
白黒の魔法使いや妖怪といった、人間を辞めたような連中でなければ、
普通の人はえっちらおっちら歩くしかなく、雪の日なんかもう山を越えるだけで
大変なものなので、男は玉を持つようになってからは、
これ幸いと他の人が行けないような時に、色を付けて荷物を運んでいた。


523 : 514 :2016/02/15(月) 13:28:26 MHKrQjYo
しかし他の人が出来ないことをするもんだから、あの男は持っている玉には
何かあると噂を呼んで、がらの悪い連中に夜道で襲われたことがあった。
玉を奪われて、やっかみを込めて散々袋だたきに遭って、ほうほうの体で男は逃げ帰る。
そして次の日遅くに様子を見に来た、村の世話役に呼ばれて起きると、男の枕元に
ちゃんと玉があったんで、思わず顔を蹙めてしまった。そして後日世話役から、自分を
闇討ちしたであろう奴らが、全員一遍に凍死していたと聞くと、もはや心臓を捕まれたような
気分になってしまった。


524 : 514 :2016/02/15(月) 13:29:36 MHKrQjYo
そんなことがあってから、男は玉が薄気味悪くなり、然りとて捨てることなど思いもよらず、
愚痴を人に話すこともできないことから、時折酒を痛飲することがあった。
その日も酒を味も感じずに流しこんでいると、ふとこう声を掛けられた。
-あんた、なんか悩んでいるんじゃないかい-
そう言われて睨み返すと女は、男の首に掛けていた玉をとり、
雪女、と一言いうもんだから、男は思わず目を丸くしてしまったとさ。
-あたしゃ、炭を焼いているんだけれど、実はその関係でちょっと呪い(まじない)を使えるんでねぇ、
どうだい、このぐらいの呪い(のろい)だったら、解いてやろうかい?-

そして女が耳元で、助けて欲しいかと尋ねると、それまで固く閉ざされていた男の口から
あぁと声が漏れてしまう。女の体温に溶かされたように。


525 : 514 :2016/02/15(月) 13:30:14 MHKrQjYo
その後は何だか酒か熱に浮かされて世界がぐるぐる回ってしまい、次の日朝起きる男はすっぽり布団を被っていた。
普段ならばそのまま、本日休業御免と看板でも出したいしたいところだけれど、生憎
その日は数日前に、村の者から頼まれていた寺小屋に寄る用事があったため、気怠い面持ちのままで
のそりのそりと布団から這い出して、しかしふと、玉が見当たらないことに気がついたんだ。
いつもならば必ず-奪われた次の日にすら-枕元にあったはずの玉だが、今日に限って影も形も見えなくなっていることに。


526 : 514 :2016/02/15(月) 13:31:33 MHKrQjYo
男は一遍に目が覚めてしまって、狭い家をひっくり返すように捜してみるが、
やはり何処にも見当たらない。
ああ、これは大変だ!と思って、やはりあちこち捜してみるんだけれど、どうにもこうにもとんと見当たらない。
本当は行きたくないんだけれども、寺小屋の約束をすっぽかす訳にはいかないもんだから、
青くなりながら男は寺小屋に行き、そこの先生から博霊の神社への配達を仰せつかる。
玉が無いので普段なら半日で終わる仕事が、丸一日かかる仕事となってしまうが、
そのことをバラすことも出来ずに、ただ分かったとだけ短く答えて、男は神社に向かって歩き出した。


527 : 514 :2016/02/15(月) 13:32:25 MHKrQjYo
男は普段よりも急いで、神社がある山の麓まで行くんだけれど、ここで天の助けか
昨日の女にひょっこり出くわすこととなった。男は女に詰め寄って、玉はどこにやったと詰問するが、
女はまあまあと薄ら笑って、山を登っていく。中々の健脚に、男は息を切らしながら女の横に並んで
山道を進んでいくが、女は答えようとはしない。
このままだと一体どうなるのかと、男が腹立たしくなってきた時に、
不意に辺りの木々が燃えだして、あっという間に煙が周囲を取り囲み、
正に五里霧中となってしまう。しかし隣の女は平然としているばかりか、いきなりつと立ち止まってしまう。
男は女に早く逃げるぞと声を掛けるが、女は薄ら笑いをしたままで、
いやいやこれで、いい案配さ、なんて言うもんだから、こいつは気でも触れたかかと思い、
女の腕を掴んで駆け出そうとするが、どっこい女は根っこでも生えたように動かない。
そして女の方からもう一本の腕を掴んできたかと思うと、がっしりと抱きしめられて、
男はまるで、火に炙られたかのような熱を感じた。女から火が出ているのではないのだが、
しかしそう思ってしまうような、雪女の時の氷のような冷たさとは反対の、熱い体温を感じた。


528 : 514 :2016/02/15(月) 13:34:44 MHKrQjYo
以上になります。暫くしましたら、最後の3回目を投稿させて頂きます。


529 : ○○ :2016/02/15(月) 18:06:50 WUjzrF.2
そういやもこたんフェニックスもこうばっかり目につくけど術師なんだよな
御札も霊夢の次くらいに使うし、獣魔術も使う。
いいよねトウチャオ


530 : 514 :2016/02/15(月) 20:07:47 NhM6/nsU
>>529
ご感想ありがとうございます。
最後の3回目を投稿させて頂きます。


531 : 514 :2016/02/15(月) 20:13:17 NhM6/nsU
女は暫く男を抱きしめた後、そのまま空を飛んで神社の横に降り立った。
神社には紅白の巫女がいて、呆然とする男からの配達をもぎ取った後、女から炭を受け取った。
女が、上手くいったのでおまけを付けておいたと言うと、巫女は男に一瞥をくれて、はいどうもご贔屓に。と言い、
しかしえらく早いわねと、呟くのであった。
そうこうしているうちに帰ることとなり、道すがら女は男を抱えて飛びながら、
途中の山の中で雪女の呪いを解いたことを男に説明した。先程の山は霊力が高く、
そこの木を使えば、妖怪を容易く祓えるという。男は本当に呪いが解けたかよく分からなかったが、
あれだけの術を使い、今も空を飛んでいる、この女が言っていることなので、取り敢えず信じることとした。


532 : 514 :2016/02/15(月) 20:13:59 NhM6/nsU
そして男が女と別れ、家に帰り扉を開けると、男の手足はたちまち凍ったよう動かなくなり、
怒りの形相を浮かべた雪女が、男を引きずり込んだ。
雪女は男を畳の上に倒して馬乗りになると、目を真ん丸に見開き男の肩を鷲掴みにして、どうして、どうして、あんな人間の妖術師風情に、と
色々喚いていたものの、数分たった頃には段々と落ち着いてきたのか、ぐずぐずと涙を垂らすだけになってきた。男はどうかこのまま立ち去ってくれと
心の中で強く念じていると、雪女は赤くなった目で男の顔をじっと見つめだす。すわここが正念場かと、男は負けじと見返すと、雪女はふと漏らした。
貴方を殺すのが惜しくて今まで生かしていたものの、他の女に取られるのなら、いっそ浚ってしまいましょう。
そう言って男の首をぎゅっと握ったものだから、男は自分の出した、ぐぇ、という声と共に気を失ってしまった。


533 : 514 :2016/02/15(月) 20:14:38 NhM6/nsU
男が目を覚ますと辺りは薄暗い洞窟の中であった。洞窟の壁に背を預けてよくよく目を凝らせば、
何処とはなしに見覚えのある洞窟だったから、恐らくは前に迷い込んだ洞窟だったと見当を付けるも、
体は殆ど動かない。腕も足も氷付けにされたように固まっており、指の先の色はは暗くて見えないものの、
じりじりと焼けるような痛みを脳味噌に伝えていたから、多分酷い凍傷になっているんだろうと思われた。


534 : 514 :2016/02/15(月) 20:15:28 NhM6/nsU
男が目を覚まして暫くすると雪女がやってきて、男にしだれかかりながら、ようやくこれで邪魔が入らないとか、
二人っきりで生活が出来るとか、機嫌がすこぶる良さそうに話した。しかし男は心の中が、後悔やら怒りやら恐怖やら
で一杯になっていたもんだから、ええだの、ああだの傍目には、気の乗らないような生返事しか返さない。
雪女はそれで不機嫌になるかと思いきや、更に上機嫌になり、歯を見せんばかりの笑顔になって、
見せたいものがあると言って、妖力で明かりを明かりを壁際に灯した。
男が目を細めながらそちらを向くと、氷付けの女の恨めしそうな顔が転がっており、心が麻痺していた男は、
ははぁ、氷付けになったもんだから、血の臭いがしなかったんだなぁと、見当違いのことを考えてしまっていた。


535 : 514 :2016/02/15(月) 20:15:58 NhM6/nsU
雪女はこれで男の望みが絶たれたと思ったようで、少々術が使えるからと言って、何やら妖怪に勝った気になっていた
生意気な女を殺してやったと、獲物を狙う蛇のような声色で言いながら、そうだ折角なので見せつけてやりましょうと、
明かりを一層強めて、男に自分の顔を近づけた。
男が雪女の顔から目を背けると、否応でも女の首が目に入った。男の目には氷づけにされた女の顔が一層歪んだように見え、
顔を其方に向けてしまうが、雪女は冷たい手で男の顔を真っ正面に固定する。そして男の顔に強く自分の唇を押しつけると、
雪女の唇から、濃い血の臭いが漏れてきた。


536 : 514 :2016/02/15(月) 20:16:58 NhM6/nsU
雪女がぐらりと揺れ崩れ落ちると、後ろには死んだはずの女が、手を真っ赤にしながら立っていた。男が驚いて
女に何故生きていると尋ねるも、女は以前のようにニヤリと笑い、まあねと言って答えない。背中の服がが真っ赤に染まり、
動かなくなった雪女を、よっこらせと退かし、女は男の体を一通り診ていった。そして男にこのまま手足を腐らせて死ぬか、竹林の
薬師の所に担ぎ込んで、駄目になった四肢を切って貰うかと尋ねるが、男も自分の手足が惜しくて決めかねる。
すると女はもう一つの選択として、死ななくていいし、手足も切らなくていいものが有ると悪魔の囁きを差し出すと、
男は一にも二にもなく、その申し出に飛びついた。


537 : 514 :2016/02/15(月) 20:18:12 NhM6/nsU
そうして男と女は幸せに暮らしましたとさ。とその人が話したのを聞いて、
いやに詳しい話だと問いかけるも、よく出来ているだろうと、にべもなく返される。
いつの間にか、亭主と女将以外の人がいなくなり、看板となっていた焼き鳥屋を出て、
私は自分の家に帰ることとした。
山に着く前に恐らくは、懐に仕舞いこんだ謹製の守り札から、家に帰って来ることを聞きつけて、
焦れた妻が飛んで迎えに来るだろうと思いつつ。


538 : 514 :2016/02/15(月) 20:22:13 NhM6/nsU
以上になります。ご覧頂きありがとうございました。


539 : ○○ :2016/02/15(月) 21:28:38 0OJpEm0U

良い話しだったわ


540 : ○○ :2016/02/16(火) 01:22:14 tXvr547Y
藍の話から全然レベルアップしてませんが今度は妖夢のお話を投稿させて頂きます。
今回は短めです。


「〇〇さん、こんにちは」

刃を擦る音の中に少女の澄んだ声が混じる。こんなボロ屋にわざわざ来るのはあいつしかいない。

「何だ、また来たのか。これで何度目だ。」

銀色の髪にちょいと長めのボブカット。黒いリボンを付けて、腰に二振りの剣。
そして何より目が行くのはふわふわと浮いてる人魂。
彼女の名は、魂魄妖夢。

「はい。〇〇さんのお蔭で楼観剣は元通り。いえそれ以上に良くなりました。」

訳あってこいつの刀を鍛冶屋の俺が直したのだ。妖夢が言うようにかなり良く仕上がったと思う。だが終わったにも関わらず、毎日うちに来るのだ。

「だったらもういいだろ。来んな。只でさえ客なんか来ねえのに半人半霊が出入りしてるなんて知れたらどんな風評をくらうか………。」
「え……あ…あのそこまで迷惑でした…?」

妖夢は途端に顔を歪ませ、今にも泣き出しそうな様子だ。

「…おい。そんな顔すんな。ちょっと言い過ぎた。」
「じゃあまた来てもいいですよね?」

前言撤回。やっぱ来んな。

「何でそうなる…。話を戻すが、刀はもう直ったんだろう?何故未だ此処に来る。こんなボロの鍛冶屋に。」
「理由も無く来ちゃだめですか?」

理由も無く来てたのか……。


541 : ○○ :2016/02/16(火) 01:24:54 tXvr547Y
>>540
続きです。で、一旦終わりです。


「だから俺が困るんだ!!」
「人間のお客は来ないんでしょう?でしたら私がたった一人のお客ですよ。」

こいつ…。太々しいな……。呆れて物も言えん。だがこいつしか客が居ないのも事実。

「はぁ………。じゃあなんか買ってけ。」
「ではこの脇差を一振り。」

おいおい。正気か!それ、かなり高値で吹っ掛けてある刀だぞ?お前程の達人なら大したもんじゃない事ぐらい分かるだろ!

「本気で買うのか!?」

「はい。買いますよ?…あ、そうだ忘れてました。お菓子持ってきたんですよ。一緒に食べましょ?」
「そうかい…。はぁ、調子狂うなぁ……。」

ほんと、見た目通りふわふわした奴だ。何考えてんのかよく分からん。

「ねぇ〇〇さん。」
「ん?何だ?」

「ここ最近は人里の周辺も妖怪があまり出ないそうですよ。偶には外に出て私と一緒にお散歩でもしませんか?」


542 : ○○ :2016/02/16(火) 20:33:06 7e.PbXLA
4レス程投稿させて頂きます。


543 : 是非曲直庁書記官1/4 :2016/02/16(火) 20:33:50 7e.PbXLA
「あなた、今晩の食事はどうしますか。」
そう言って書記官に尋ねたのは、是非曲直庁で裁判官をつとめる四季映姫である。
役所の中でも比較的静かな三階の第325番控室-余談であるが、夫であり部下である書記官と同じ個室である-
にて書類作成をしながら、彼女は夫に話しかけていた。

書記官の仕事は、裁判官の補佐である。しかし四季には小町という部下がついており、
それにも関わらず四季は、書記官の方が部屋にいて頼みやすいなどと理由を付け、専ら仕事を彼にさせていた。
もともと四季が上司としての権限を使い、彼を専属の部下として同じ部屋に配置させたのだから、
結局のところ書記官を手元に置いておきたかっただけである。しかも部屋から一歩も出ないで済むような、
報告書のような書類ばかりやらせ、他の部署との打ち合わせといった、他人と関わるような仕事には、
ほぼ必ず自分も同席するのであるから、公平を旨とする彼女においては、珍しいことであるといえよう。


544 : 是非曲直庁書記官2/4 :2016/02/16(火) 20:34:50 7e.PbXLA
夕食として庁内の出前を部屋まで運ばせて食べた後、彼女は仕事を切り上げ夫と共に帰宅することとした。
二人は曲直庁の職員に支給される住宅街の家ではなく、人気が無い一際辺鄙な(古き良き田舎の幻想郷でも!)場所に家を構えている。
この場所にする時に夫は、不便ではないかと難色を示していたものの、彼女は持ち前の頑固さと理屈屋を発揮して、
無理に押し切った覚えがあった。たしか、自然が豊かであるとか、業が少なくとてもいい場であるとか、はては信じてもいない風水まで持ち出して
説き伏せたように記憶している。そんな不便な所であるので、通勤には四季が飛んでいく必要がある。
本来は手でも握っていればよいものの、それではもしもの時に危ないなどど言って、しっかりとコアラのように抱きしめて
-随分大きな子供であるが-飛ぶようにしている。流石にお姫様だっこをすることは断られたが、今の飛び方でも
周囲に十分に見せつけているため、取り敢えずは良しとしている。勿論四季に、もしものことなんで出来るような人物は
いない訳であり、抱きしめるよりも結界なんぞを張った方が、風を防ぐことが出来てよっぽど良いことは、周囲の皆が知っている。
知らぬは旦那ばかりなり、を地でゆく状況に、面倒臭がり屋と見せかけて、案外面倒見が良い部下などは、
書記官に忠告しようとするのであるが、数回真顔で睨みつけてやると、諦めてサボタージュにてレジスタンスを行うようになった。
四季としては、ますます書記官を拘束することができ、好都合であるのであえて放置している次第である。


545 : 是非曲直庁書記官3/4 :2016/02/16(火) 20:36:02 7e.PbXLA
 休日には夫婦は大抵家に居る。買い物は最近流行りとなった、天狗の飛脚便を使うことで、日曜品は賄うことができる。
歩いて行くことは、日帰りでは到底出来ぬ距離であることから、出かけるときは四季だけか、夫婦二人で
出かけることとなる。夫はたまには一人で息抜きがしたいようであるが、足が無いのではどうすることも出来ず、
二人で人里に行くこととなる。
 一度は飛脚便の天狗に頼んで、こっそり外出していたことがあったが、
鏡で夫がいないことに気づいた四季が、押っ取り刀で追いつき周囲の目も憚らずに詰問すると、
二度は無くなったようである。なにせこちらは閻魔大王であるので、たとえ相手が本当は
四季へのプレゼントを買いに出かけたとしても、
 「本当は厭らしい店に行くのではないか。」「私が居ながらにして、何ということなのか。」
とでっち上げ、挙げ句に道にいる客引きに押しつけられた、下世話な紙切れを証拠として突きつければ、
道行く人は此方に理があると勝手に思い込むのであった。


546 : 是非曲直庁書記官4/4 :2016/02/16(火) 20:37:59 7e.PbXLA
 二人の寝室にはベットが二つある。勿論夫妻一人に一つづつあるものであるが、就寝の際には専ら
四季は夫の床に潜り込んでいる。しかも彼を強く抱きしめて眠るものであるから、口さがない死神が見れば、
四季の方のベットは全くの無駄じゃないかと、批評の一つでもするであろう。
 しかし此方の方にも使い方があって、彼女が不機嫌になったとき、夫が他の女と親しくしていたり、
あまつさえは贈り物でも貰った日には、顔を背けて其方で眠ることで、強く怒っていることをアッピールするのであった。
 ところが夫がいざ、それを気にも止めずに、何日も過ごすに至った日にあっては、
補給を絶たれた兵隊のように、幽鬼じみた蒼白な顔をして夫の掛け布団の下で、
あなたは酷いだの、私を愛して欲しいだの、御免なさいだのと、普段の仕事の顔からは想像も出来ないような、
感情の高ぶった声で夫を求めるのであった。-存外これはこれで、案配が取れているのかも知れない。


547 : ○○ :2016/02/16(火) 20:40:08 7e.PbXLA
以上になります。電波が降りて来たら、また書きたいなと思いました。


548 : ○○ :2016/02/16(火) 22:27:46 3gEvNeF.
小町はただのねぼすけじゃないと思ってるから、この役回りは良いな


映姫様は、○○以外のことには今まで通りの仕事ぶりなんだろうな
あとこの映姫様は、もう○○をヒモにして養った方が良いんでないか?

でもそしたら一緒に仕事出来ない=視界に収めれない時間が増えるか。悩ましい


549 : 化け狸 :2016/02/16(火) 22:54:33 7e.PbXLA
電波が降りてきたので、もう一話投稿させて頂きます。

「金が払えないのなら、ある賭けをしようじゃないか」
暗闇の中でにやにやと笑う妖怪の女がそう言った。
「壺の中に二つ石を入れ、黒い石を取れば、此方の勝ち。白い石を取れば、其方の勝ち。」
色々と借金が重なった男にとっては、それしか無いように思えた。

 人間の男は考える。あいつはいやに自分を欲しがっており、恐らく絶対に自分を物にしようとするだろう。
ならばあの話のように、必ず壺の中に二つとも黒い石を入れるだろうと。
女にとっての誤算は二つあった。男が外来人であったこと。そしてとある話を聞いたこと。


550 : 化け狸2/3 :2016/02/16(火) 22:55:59 7e.PbXLA
 妖怪の女は考える。あいつをとうとう手に入れることができそうだと。ならば二つとも黒い石を入れてしまえば、
男は必ず黒い石を取ると。認めないのならば、力で無理を通せば良いと。
男にとっての誤算は二つあった。女が妖怪であったこと。そして女には妖力があったこと。

 妖怪は目の前の男に壺を突きつけて、さあ選べと突きつける。
すると男は石を掴むと、暗闇の中に石を落っことす。
「ありゃ、石を落っことしてしまったよ。まあ、壺に入っている石みたら、どっちか分かるんじゃないかい?」
そして女は残った石に力を通して突きつける。
「おや、白い石だねぇ。」


551 : 化け狸3/3 :2016/02/16(火) 22:58:52 7e.PbXLA
 佐渡の二つ岩は考える。あの妖怪はきっと騙くらかしをするだろうと。ならば人間の男に化けて、
自分が見破ってしまえば良いと。
マミゾウにとっての誤算は二つあった。人間の男を助ける代わりに、
伴侶になる約束まで取り付けることが出来たこと。
そして目の前の妖怪が、自分を見破れないほど弱いとは思っていなかったこと。


以上になります。
作品へのご感想ありがとうございました。


552 : ○○ :2016/02/17(水) 00:37:55 fVyZY08E



553 : ○○ :2016/02/17(水) 02:55:46 v9OERTcg
たんたんとした芸風であじがあるね
映姫ちゃんの独り寝のシーンいいわぁ
そこもっと詳しくって思うけど妄想が膨らむね
勿論そこからの不安になってわやくちゃになってるのも良い

狸の方はごめん、よくわからなかった
その場にいたのはマミゾウと女妖怪でいい?


554 : ○○ :2016/02/17(水) 22:33:59 3gcL1.WY
>>553
その二人になります。当初2/3の部分まで書いた際に、マミゾウがただの
極悪人になっていたので、3/3の部分を付け足して、
あらすじごと変更しました。
そのせいで分かりにくくなってしまいました。


555 : 忍耐 :2016/02/17(水) 22:35:33 3gcL1.WY
投稿させて頂きます。

妻は夫を立てるという。
外界では廃れたその風習が、幻想郷においては根付いていた。

彼女を妻にしたとき、周りは彼を羨んだ。
彼女は妻として夫を立て、常に夫に従った。

彼が苦境に立たされたとき、彼女は夫を支えた。
彼女の助けが有って、彼は乗り越える事が出来た。

彼が自分を見捨てた周りの人間に当たり散らしても、
彼女は夫の側に居続けた。夫が妻をどのように扱おうとも、
彼女は夫に従っていた。

やがて夫が自暴自棄になろうとも、彼女は夫の元を離れなかった。
そして夫がそんな妻に恐怖しても、彼女は夫の元を離れなかった。

遂に夫が妻から逃げだそうとしても、彼女は夫に常に付き添っていた。
たとえ夫が自殺をしようとも、彼女は冥界より魂を連れ戻すだろう。

死が二人を分かつとも、彼女は夫を立て続けるだろう。

以上になります。


556 : ○○ :2016/02/18(木) 07:17:49 SRGw5gJc
幼夢……じゃなくて妖夢かな
個人的には名前ありキャラでよみたい
死が二人を別つまで……とはいうけど、幻想郷の面々なら普通に死んでも逃がさないだろうな
関係ないけど師が二人を別つまで……だと永琳がよっちゃんと○○の間に入って持っていっちゃうシチュみたいで萌える


557 : 曲直庁書記官その二 :2016/02/18(木) 21:59:02 kica8jt6
投下させて頂きます。

 彼は裁判官四季映姫の部下である。
そのため四季が裁判をする際には、一緒に法廷に臨むこととなる。
ここでの裁判は全てが総括される、唯一にして最後の最高裁判所であり、
外界の都合三回も-あるいはそれ以上-繰り返される裁判とは異なり、
一回の裁判で全てが決まってしまうため、中々魂だけになっても、
活きがいい者が多い。
 それは生き汚さの表れでも有るかも知れないが、結果
矢鱈と暴れる者がいる。地獄行きと宣告されて、単に暴言を吐いたり、
暴れたりするだけならば、地獄の獄卒達も給料分は堪忍をしてくれるだろうが、
時には脱走したり、あまつさえは周りの者に害を加えんと、乾坤一擲の大勝負に
出る者もいる。


558 : 2/3 :2016/02/18(木) 21:59:54 kica8jt6
 そうなった場合の対処は大体二通りある。
一つは単純に死神やらが取り押さえる場合、
もう一つは、裁判官がその場で即決の断罪を行う場合。
 死神が取り押さえた場合は、大抵何も無かった事と同じようになる。
多少はねじ伏せられるだろうが、刑が重くなる訳では無い。御役所仕事の名の下に、
他の罪人と同じように、粛々と地獄に連行されるのみである。
 しかしもう一つの即決断罪の場合は、訳が異なる。
外界では三権分立として、司法と行政-つまり罪人を裁く裁判官と、
罪人を捕まえる警察や検察は分かれているのだが、あいにく幻想郷の裁判官は
人手不足の所為か、現行犯に限るが、罪人を拘束して、裁判にかけて、
処罰することが出来る。勿論どんな石頭よりも固い、規則とやらに決められた
範囲内で処分になるが。


559 : 3/3 :2016/02/18(木) 22:00:39 kica8jt6
 ところがそんな規則でも、馬鹿と鋏は使いようとでも言わんばかりの、利用の
仕方がある。
「法廷を侮辱した者は、法廷侮辱罪に処す。」
「法廷侮辱罪は、懲役、灼熱地獄、又は消滅の刑に処す。」
「裁判官は、法廷侮辱罪を現に犯した者に対して、その刑罰又は同等の刑罰を
その場で与えることができる。」
 これら三つの神器が揃えば、先程書記官に襲いかかった、累刑九犯、殺人、強盗、お手の物な
霊魂は、四季の殺傷能力が付与された弾幕によって、塵も残さずに消え失せる事となる。

 付け加えるならば、法廷侮辱罪に関しては、裁判官の裁量が大幅に認められているため
-なにせ、大岡越前と同じ立場なのだから-
部下思い(!)な四季は、一寸でも彼が危ないと思えば、容赦なく弾幕を叩き付けるのであった。

以上になります。


560 : ○○ :2016/02/18(木) 22:29:13 YkFT.Dkk
四季様は、その時の気分でどうとでも出来ちゃうから怖いよな


561 : ○○ :2016/02/18(木) 22:55:16 MEZzNfPs
もうバレンタイン過ぎてますが、思いついてしまったので。

「よぉ、霊夢。焚き火してるのか?」
「そ。なにか用?○○」
○○は霊夢の近くに行き、一緒に火に当たる。
たまにパチパチと、焚き火が音を立てる。
「おー、あったかい……いや、それ程重要な用でもないんだがな」
「なによ、早く言いなさいよ」
霊夢は若干顔をしかめて、問い返した。
「お前、女にもモテるんだな」
「……は?」
「いや、お前が人里で何か貰ってたのを見たんだ。時期的にあれはチョコだろ?」
一瞬、霊夢の顔がこわばった。
しかし、すぐに元の顔に戻り、いつもの調子になった。
「そうよ。なに?それを聞きにきたの?」
「いや、なんとなく。それほど重要じゃないって言ったろ?」
「まったく……そんなこと言ってる暇あったら神社の掃除でもしてよ」
「悪い悪い、分かった、掃除する……あ、霊夢」
「なによ?」

「その焚き火、なんか甘い匂いしないか?」

「……気のせいよ」
「うーん、そうか……ま、いいか」
○○は、顎に手を当ててほうきを取りに行った。



「ごめんね、○○………」
乾いた外の空気に、霊夢の言葉が響く。
パチン、と大きく火が音を立てた。
その拍子に、燃えカスが浮かび上がった。
カラフルな部分が残っているその燃えカスには、


…………「○○さんへ」と、書かれていた。


562 : ○○ :2016/02/19(金) 06:33:23 CUv.M3Do
その手が有ったか!
と、思ってしまいました。
面白い短編でした。


563 : ○○ :2016/02/19(金) 14:23:37 rxQezdB.
まあ、映姫はああみえて「冤罪?あるよ。疑われるような素行のやつが悪いしなにか?」てなこと言っちゃうからな。
こういうのもあるかもね。

霊夢がまだ罪悪感あるあたり、まだまだヤンデレ坂を上り始めたばかりみたいだな
しかし、ヤンデレ妻たちの旦那自慢みたいな話ってありそうでないんだな。


564 : ○○ :2016/02/19(金) 14:29:45 0ywOjcC.
一応、映姫様の名誉の為に
あの人は浄破璃の鏡を持ってるから。さとり様の次に騙すのが難しい方のはず


565 : ○○ :2016/02/19(金) 23:35:46 BY5q5mJ6
投稿させて頂きます。アイデアを頂きましてありがとうございました。


 河童は元来工作好きである。手先が器用な上に、新しい物好きな性格が重なり、
色々な発明品を作り出していた。特ににとりは外来人と知己になっており、
外の世界の発明品を聞くことで、自分でそれらを再現していた。
 外界の発展は幻想郷を大きく上回っており
-だからこそ妖怪の賢者は、全てを受け入れる場所として
ここを作ったのだが-
外界では当たり前となった機械であっても、明治時代のレベルにも達していないような
幻想郷では、まだ誰も作っていないことが多々あった。
 しかも河童もれっきとした妖怪であり、ご多分に漏れず妖力やら、能力やらが使えたのだから、
原理さえ知っていれば、短時間で試作品程度ならば作り上げる事が出来た。そのため
にとりは彼を知識をあてにしていたし、好意すら持っていた。


566 : ○○ :2016/02/19(金) 23:36:45 BY5q5mJ6
 しかし持ち前の内気さが災いとなり、彼には伝わっていないことから、
未だに友人としての付き合いであった。最も、河童の家に招かれて夜遅くまで滞在し、
帰り道に山の麓まで送って貰うことは、彼ら-あるいは彼女ら-の感覚からすれば、
「こいつは私の物だ。」と口外に言っているに等しいのであるが。

 そのような日々を過ごしている内に、彼に恋人が出来た。
それを彼の家に仕込んだ盗聴器から聞いた時には、にとりは思わずスパナで、
周囲の機械を砕いてしまっていた。まあ、盗聴機の受信機は壊さなかっただけ、
紙一重の部分で冷静さが残っていたのかもしれないが、それだけ執着が
強すぎたのかもしれない。いっその事盗聴器も粉々に砕いてしまえば、
彼への思いも諦めがついたかと思えば、大変口惜しいことであろう。


567 : ○○ :2016/02/19(金) 23:38:42 BY5q5mJ6
 其れからのにとりの日常の中に、盗聴やら盗撮が一層組み込まれることとなったのは、自然の成り行きであった。
以前は日常の刺激として聞いていただけだったが、徐々に費やす時間が増え、
遂には阿片にはまった人が、其れ無しでは動く事すらままならなくなるように、
暇さえあれば、イヤホンを付けて画面を見つめるようになった。-ジャンキーが一丁出来上がり、である-


以上になります。


568 : 砲艦外交 :2016/02/20(土) 16:41:44 bXNyBUgE
投稿させて頂きます。 


永遠亭の一室で掘り炬燵に座りながら、輝夜はふと○○に尋ねた。
「そういえば、最近外界では、ハーレム小説とやらが流行っていると
聞くけれど、あなたからすれば、どうなのそれ?」
 ○○はうんと唸ってから答える。
「あまり好きではないし、むしろどちらかといえば、ハーレムを壊して、
痛い目を見せる筋の方がが好きだった。」

「どうやって?」
「中々思い出せないけれど、てゐならどうする?」

「私なら、何人かの間を裂いて対立させるかなぁ。今まで見てきた感じから、誰か一人が強ければ反発されて、
二人が強ければそこで対立になって、それ以上の勢力がいれば、混乱になっていたから。鈴仙は?」

「幻覚でも見せれば、勝手に争うんじゃない。師匠はどうですか?」


569 : 砲艦外交 :2016/02/20(土) 16:42:20 bXNyBUgE
「あら、面白いわねぇ…。そうね、嫉妬を強める薬を混ぜるのなんか、楽しそうじゃないかしら。
女が駄目なら、男の方が周りが全員敵に見えるように、疑心暗鬼になるようにすればいいし。ねぇ。」
永琳にしだれかかられた男は、苦し紛れに輝夜に目線で助けを求める。

「もう永琳たら、○○が困っているでしょう。そうね私なら、男を永遠に閉じ込めればいいわね。」
そう言って反対の男の腕を取る。すると残りの二人も詰め寄って来て、○○には広い部屋が、
急に狭く感じた。
 そして四人は目配せをして一致する。
「「暫くは、停戦継続」」と。



以上になります。


570 : ○○ :2016/02/20(土) 21:45:22 acvuvzIM
永琳にしなだれかかられてえなぁ
なんかこの中では永琳が一番「弱そう」なんだよなぁ。なんとなくだけど。
永琳を大丈夫だよって抱き締めたい。勿論永琳はそんなの信じないで何かずっと愛される方法を考え続けるんだけど、分からなくて……というよりその考えた策そのものも満足出来なくて、わたし、わた、わたし!私はっ!!ってなるのがいいな。

しかしすげえな。こんなドバーっと書けるとは羨ましい。


571 : ○○ :2016/02/21(日) 14:43:17 UhKXsuT.
投稿させて頂きます。

探偵助手さとり
 大都市より電車で10分、ホームに降りる時間も含めると、実質中心地より7分強、
不動産屋ならば、「大都市まで徒歩圏内!!」とチラシに大仰に書くであろう、
商業ビルのワンフロアに、その興信所は所在していた。
 そこに居るのは、所長と助手の2名のみ。興信所においても小規模なその事務所は
専ら、チラシを見て時折来る客と、インターネットを見て極希に来る客という、
-要はあまり繁盛していないのであるが-二種類の客種によって成り立っていた。

 探偵といえば、普通の人々が想像するのは、シャーロック・ホームズであったり、
エルキュール・ポワロであったりと、押しも押されぬ名探偵であるのだが、そういう
安楽椅子に座って居るだけで事件が勝手に飛び込んできたり、ややもすれば旅先で
必ず殺人事件に巻き込まれる、死神とも揶揄されるような人種であろう。
 しかしこの2人は、人数こそ探偵と助手でぴったりであるが、第一性別が若干1名
(人間ではないのだが)異なっている。しかも扱う事件は浮気調査や家出人調査といった、
警察の管轄外の事件ばかりであり、とてもではないが名探偵にはなりそうもなかった。


572 : ○○ :2016/02/21(日) 14:44:58 UhKXsuT.
 そんなある日に訪れたのは、一人の客であった。見るからに不安げな女性である。
身につけている服は割かし上等のように思えたので、すわ夫の浮気調査かと所長は身構え、
先手必勝とばかりに、奥様浮気調査ですねと声を掛けようとするが、背後からすっと冷たい空気が漂い、
「所長お客様です。行方不明者の調査ですよね。」
と助手のソプラノの声が響く。一瞬図星を突かれて言葉に詰まった女性に、畳みかけるように声が続く。
「当社に来るお客様は大抵、浮気か行方不明の調査でして、お客様の様子からしますと、
恐らくお子さんの調査ではないかと、所長が申しておりまして。」
そして無言の肯定を示し、此方を見つめる女性に対して所長は、
「ようこそ古明知探偵事務所へ。」
と冷や汗を掻きながらも、勿体ぶって席へと案内するのであった。


573 : ○○ :2016/02/21(日) 14:45:41 UhKXsuT.

 女性の話を小一時間ばかり聞いた後、見つかったら直ぐに連絡を入れることを
念押しして、依頼者は帰っていった。相手をしていた助手からすれば、開始5秒で
分かるようなことを、わざわざ長時間相手することは、非効率極まりないことであったが、
愛の巣(!)たる二人の探偵事務所の為には、仕方がないとして相手をすることとしている。
そして苦痛を埋め合わせるようかの勢いで、彼女は調査として、所長の腕を組み出かけるのであった。

 元来調査とは、足で稼ぐものである。今回のように学生の娘が行方知れずならば、近辺の
警察署へ行方不明者の調査に行ったり、友人の家に聞き込みをするのが通例であろうが、
彼女の場合適当に、繁華街をうろつくのみである。二人揃って仲良く歩いていれば、
道行く人にはデートとは見えても、まさか探偵とは思いもよらないであろう。
 しかし人ではない彼女にとってはこれが一番であり、歩いて10分で彼女は隣の所長に小声で囁く。
「所長、あの人が犯人です。」


574 : ○○ :2016/02/21(日) 14:46:35 UhKXsuT.

 推理編をすっ飛ばしていきなり解決編となった、いつもながらの調査に、彼は同じく小声で聞き返す。
「犯人ってことは、誘拐?」
「いいえ、死体遺棄です。もっと近くに寄れば、殺人かどうかも断定出来ますが。」
まあ、場所は分かりましたが。と付け足し、エヘンと子供のように誇らしげな、褒めて欲しそうなその姿に、
彼は犯人を撮影するよりも、警察に通報するよりも先に、彼女を褒めておく。
「すごいよさとり、流石だね。」
これは彼がバカ(ップル)であることだけではなく、彼女の機嫌の為にも大変重要なことである。
もし仮にもここで、
「何処に死体があるの?」
なんてパンピーちっくに尋ねた日には、
彼女は彼を物陰に連れ込んで、熱い思いを込めてキスでもするであろう。
他の女(の死体)の方が私よりも大事なのか。とか、私がもう要らないのか、とか諸々の嫉妬を込めて。


575 : ○○ :2016/02/21(日) 14:48:32 UhKXsuT.
 普通の女性ならば言葉にしなければ、直接には伝わらないのであるが、彼女はさとりであり、
他人の精神を操ることすら簡単である。そして気持ちを直接脳内に伝えることは、朝飯前のことである。
酷い時には、そんなに他の女が良いなら、見せて上げましょうと、犯人の記憶に残っている、
死体の映像を臨場感を増幅して叩きつけ、
「ほら、これでも!これでも他の女が良いの!グチャグチャに腐っているけどね!」
と所長にトラウマを植え付けるに至った時には、彼は失神して二、三日はベットから起き上がれなくなった。
一方彼女は彼を看病して、彼は私が居ないと駄目なんだ、と文屋も顔負けの脅迫とマッチポンプを行って、
自己満足に浸るのであるから、大人しい人程何とやら…ということであろう。


576 : ○○ :2016/02/21(日) 14:49:44 UhKXsuT.
 一先ず彼女の機嫌を取った後には、ご満悦になり益々やる気に彼女の能力をフル活用し、
犯人の尾行と死体の確認を行った。どちらも只の民間人には難しいことであるが、心が読める彼女ならば容易である。
自宅に行きたいのならば、無意識の思考回路を読んで先回りをすれば良いし、死体の場所が知りたいのならば、
トラウマを読み取り、そこをスコップで掘り起こせば良い。
 後は警察に身元不明の遺体を見つけたと通報し、犯人の顔そっくりに描いた似顔の男が、
ここを彷徨いていたと付け足せば、犯人はいずれ逮捕となる。そして、数日おいて依頼者に残念ですがと報告すれば、
当座のお金以上の報酬と、次の依頼者に繋がる評判を得ることができ、まずまずの成果となるのであった。


577 : ○○ :2016/02/21(日) 14:51:29 UhKXsuT.
以上になります。
時折ご感想を頂きまして、ありがとうございます。大変励みになります。


578 : ○○ :2016/02/21(日) 15:09:46 UhKXsuT.
>>577訂正
×時折 ○いつも
失礼しました。


579 : ○○ :2016/02/21(日) 15:29:14 a2jDGu76
はしゃいでるさとり様は、可愛いなぁ。落ち着いた感じの表現が多いから新鮮味がある


580 : ○○ :2016/02/21(日) 17:06:30 5L4HJB7g
久しぶりだけど話思いついたから投稿します(長くなるかも?)

(…やっぱり賑やかなのも良いが、静かに飲むのも最高だ)
宴の中、鳥居に背を預け一人で酒を飲みながら思った
そもそも、宴で騒がないといけないという事は無いからな
宴の風景を楽しみながらもう一口飲むと、いきなり頭を叩かれ声をかけられた
「なんだ○○、またここで一人酒やってんのか?」
突然の事に驚き、口に入っていた酒を全て吹いてしまった
その時、目の端に長い金髪と白黒の服が見えた
って痛!鼻に入った!
「わっ!汚っ!」
「ぶほっ、なっ、なんだ。なんがよぅがまりざ」
だめだ上手く喋れねぇ
そんな時、魔理沙は変わった様子もなく言った
「いやな、一人酒じゃつまんないだろ?だから一緒に飲もうぜ」
「別にいいだろ、宴だからって一人酒くらい
大体、普段お前だけじゃなく元気な妖怪やら妖精とかも色々来るから大変なんだよ
頼むから、頼むから一人静かな時間をくれよ本当に!」
「お前…そういう時はうるさくなるよな」
「ほっとけ」
魔理沙と話(愚痴?)をしていると、霊夢がやって来た
「酒を飲むのもいいけど、さっさと酒や料理を持ってきなさい」
「何で俺が持って来ないといけないんだ」
「あら、居候なのに家主に逆らうの?」
「…分かった、持って来てやるよ」
そう言って、駆け足で神社の中に向かう
台所に料理の皿と、酒瓶数本が見えた
・・・宿借りる奴と住む家を間違えたな、本当に
「まあ、住ませてくれるだけ良いか」
そんな事を呟いて、料理を持って行った


581 : ○○ :2016/02/21(日) 18:31:16 5L4HJB7g
俺が元の場所に戻った時、自身の目を疑った
俺の癒しである鳥居に、二人の他に宴の参加者の大半が居たからだ
なんだこれ、どうしてこうなった?何で俺の憩いの場に?
そんな時、一同がこっちに気付き、呼んでくる奴が居た
「あ!おーい○○!こっちで遊ぼうよ!」
「○○!早くおいでよ〜!」
俺を呼んだのは、妖精のチルノと吸血鬼であるフランだった
分かったと返した後、俺は料理や酒を置き、霊夢と魔理沙に聞いた
「なあ、なんだこの状況は」
「魔理沙が呼んできた」
「わ、私は悪くないぜ!霊夢だって賛成しただろ!?」
「なるほど、大体分かった」
大方魔理沙が、一人呼んだら色々くっついて来たんだろう
「「ねぇ○○ってば!遊ぼうよ〜」」
そういって、さっき呼んでいた二人が寄ってくる
「はいはい分かった!遊ぶよ!ただし、弾幕は勘弁してくれ」
二人は分かったと言って、俺を引っ張って行く
その時一瞬、後ろに鋭い殺気の様な物を感じた
気のせいだろうか?


結局、宴が終わるまで!他の奴に遊ぼうとか飲もうと付き合わされ休めなかった
おまけに片付けまでさせられるし…疲れた
「○○、そっちの机の皿持ってきて」
…まあいい。とりあえず片付けるか


582 : ○○ :2016/02/21(日) 20:39:12 5L4HJB7g
ごめん寝てた


よっこいしょっと、皿はこれで全部だな
後はこいつらを洗うだけだ
「○○、居るか?」
「なんだ?」
これから皿を洗おうという時に、魔理沙に呼ばれた
まだ居たのか?というか少し休ませて欲しいんだが…
「・・・っ」
なんて考えてると、いきなり魔理沙が走ってきて、思い切り抱き着かれた
・・・え?抱き着かれた?
「なあ、おい魔理沙」
抱き着いてきた魔理沙の肩を持ち、離そうとするが離れない
仕方ないので顔を覗いてみると健康そうだが、泣きそうになっている
「一体どうしたんだ、調子悪いのか」
「そんなんじゃな、だって、○○が」
俺が?俺がどうしたって?
「っ!もういい!」
そう吐き捨てて、箒で飛んでった
一体何だったんだ?
「なにやってんの○○?」
少し考えている内に霊夢が来た
「・・・いいや、何でもない」
「そう…ならいいんだけど。後、明日食材買ってきて頂戴」
「はいはい了解」
そう受け答えをすると、霊夢は少し目を細めて部屋に戻って行った


これでいいのかな?霊夢と魔理沙の修羅場にするつもりなんだけど


583 : ○○ :2016/02/21(日) 23:19:37 UhKXsuT.
やっぱりこの二人の修羅場は、王道でワクワクします。
是非続きができましたら、お願いします。


584 : ○○ :2016/02/22(月) 20:40:25 R/FrdBcw
投稿させて頂きます。

探偵助手さとり第2話


 先日の事件以降、探偵事務所は暫くの間暇であり、
二人もこの休暇を満喫していた。
 しかしそんな平日の長閑な昼下がりに、助手が
ふと立ち上がり、探偵が座る椅子と入り口の間に立つと、
数秒後に男が荒々しくドアを開けて入ってきた。
人相は悪く、服装も派手で有る。なにか荒んだ雰囲気を
醸し出すこの男は、一見普通の依頼を持ってきた。
「おい、あんたらにうちの連れを捜して貰いたいんや。」


585 : ○○ :2016/02/22(月) 20:40:57 R/FrdBcw
 探偵事務所に必要なものは、やはり信用である。誰かを見つけて貰いたいならば、
料金が払えることも必須だが、それは必要条件であって、それだけで十分とは
いかないものである。、単にそれだけならば、何もこんな地味な興信所に頼まなくとも、
他の大手ならば大都市だけあって、携帯で捜せば直ぐに見つかるものである。
 しかしそれにも関わらず、此方に依頼をするのならば、
この男には、何か隠されていると思われた。

 「つまり、家出した奥さんを捜して欲しいと。」
男の怒りが混じった話を整理すると、この一行に集約された。
「そうや、警察がいつまでたってもあかんから、他の探偵にも頼んだんやけど、
何奴も此奴も雁首揃えて、見つかりませんでしたとぬかしよるんやで!」
男は興奮しやすい質なのか、自分の言葉で興奮していた。探偵は剣幕に押されて
引き気味に答える。
「此方としても、やってみないことには、どうとにも…。」
すると男は凄むように難癖をつける。
「おい、こっちは客やぞ、なにグチャグチャ言うとんねん!お前らなめとんのか!」
男が探偵に掴みかからんと立ち上がると、それまで黙っていた助手が声を出す。
「お客様、他の探偵事務所が何故駄目だったのか、お教えしましょう。」


586 : ○○ :2016/02/22(月) 20:41:41 R/FrdBcw
「おい、何女が口突っ込んでんねん。お前も注意せんかい!」
男は乱入にも怯まず突っ返すと、助手は顔色を変えずに続ける。
「お客様が家庭内暴力、いわゆるDVの加害者である場合には、探偵としても、
DVで逃げた奥様の居場所をお伝えすることは出来ません。他の探偵事務所も、
調査の結果、そう判断したのでしょう。」
 すると男は図星を突かれたように一瞬顔をしかめたため、探偵にもその男が
都合の悪いことを伏せ、依頼をしようとしたと分かった。
しかし男も流石は屑だけあって、今度は助手にいちゃもんをつける。
「お前聞いてたら、何やねん。人の事を犯罪者呼ばわりしよって、なんや
この会社は人様を、犯罪者呼ばわりするんかいな!」
普通に調査した場合ならば、絶対に自分のことを調べる時間は無かったと、
ならば適当に吹かしているだけだと、男は確信を持って声を張り上げる。

 これを切っ掛けにして、無理にでも居場所を突き止めさせてやろう思い、男は
探偵に掴みかかろうと手を伸ばす。すると今まで一メートルは離れていたはずの
助手が、男の手を掴んでいた。仰天した男が助手の顔を見ると、助手は低い声で
こう告げる。
「お帰り下さい。」
 たった一言であったが、男の数多くの罵詈雑言よりも、遙かに凄みがあったように
探偵には感じられた。ふっと顔面が蒼白になった男は、捨て台詞すら残さずに、
そのままあっさりと、帰って行った。


587 : ○○ :2016/02/22(月) 20:42:37 R/FrdBcw
 その後助手が入り口に、「只今外出中」の札を掛け、ついでに鍵も掛けると、
取り敢えず探偵は助手を抱きしめて、ありがとう助かったよと告げる。
すると満面の笑顔になった助手が、得意げに言った。
「もう、○○さんは私が居ないと駄目なんですから。さっきも私が居ないと、大変だったでしょう?」
男は相槌を打ちながら、事務椅子にさとりを抱きかかえながら座ると、
(ここで来客用ソファーに座ってはいけない。「あんな不愉快な男の座ったものなんて、
消してしまいましょう。」なんて言い出す可能性が150パーセントである。
因みに100パーセントの確率でソファーを壊そうと試み、更に50パーセントの確率で、
壊れたソファーを弾幕で塵に変えようとする。)さとりは探偵にのし掛り、更に言葉を機関銃のように続ける。

「あんな女を殴るような屑なんか、とっとと死んじゃえば良いんだわ。しかも○○さんを殴ろうとしていたし、
脅していうこと聞かせりゃーとか思っちゃって、ほんとあいつ要らないよね。」
「イエス」か「はい」しか返答の自由がないこの一方的な問いかけに、男が誤魔化すために
さとりが無事で良かったと言いながら抱きしめると、
彼女はますますヒートアップしてこう続ける。
「うれしい、こんなに思ってくれてるなんて、私も○○さんのこと、愛してるから。」
恥ずかそうに言いながら、自分にの体に顔を擦りつける彼女を見て探偵は、
そういえば此奴は、俺しかいないとこんな感じだなと思いながら、頭を撫でる。
うふふと声を漏らすさとりが、ぽつりと付け加えるように言った。
「あ、そういえばあいつ、吸血鬼の餌にしとくように言っといたから。」
探偵は、吸血鬼って何だよとか、誰に言ったんだよとか思ったが、そのままさとりは
彼の口を塞いでしまう。いつの間にか服から出ていた第三の目はまるで、
教えないと言っているようであった。


以上になります。


588 : ○○ :2016/02/22(月) 22:28:15 R/FrdBcw
続けて投稿させて頂きます。

探偵助手さとり第3話


 古明地探偵事務所には、偶に浮気調査が舞い込んでくる。
極々普通の依頼ならば、助手のさとりが調査を行っているので、
大抵は探偵は、所長として置物になっているか、男性が調査結果を
話さないと納得しない、頑固者の相手をすることになっている。
 本日の依頼主は若目の男性。やつれて体に合わなくなったスーツの下に、
皺が寄ったカッターシャツを着ていることから、調査の為に自由に動かせるお金が無く、
比較的安い料金を設定しているこの事務所に、一縷の望みを掛けて来たと思われた。
 いつもは迷推理を探偵が披露する前に、客を案内して無情にも発言の機会を潰してしまう助手が、
口を全く開かないのを横目で観察しながら、蕩々と適当な自説を開陳する。すると
男が泣きながら縋り付いてくるのを見て、ようやく今回助手が動かなかった訳を理解する。
-即ち、妻の浮気によって、女性不信になっていたのであった-


589 : ○○ :2016/02/22(月) 22:28:55 R/FrdBcw
 探偵は綺麗な女性なら兎も角、なんで男に縋りつかれにゃならんと、うんざりしつつ、
男をソファー(三代目)に座らせるが、傍らの助手の唇が、わずかに痙攣したように動いた
のを見て、自分の失敗を自覚する。焦った探偵は依頼者の話をそっちのけにしながら、
思いついた可能性の中で最も可能性の高かった、
「勿論僕はさとりしか、愛していないよ。」
とアニメか小説の主人公しか、似合わないであろう台詞を心で唱えると、助手の唇が
にんまりとつり上がるのを横目で見ながら、正解を選んだと胸をなで下ろす。しかし直後に助手の唇から、
チロリと赤い舌の先が見え、探偵は大正解を選んでしまったと理解してしまった。
-今夜はお楽しみですね-というやつである。
 取り敢えず、依頼者の話を八割方聞いていなかった探偵は、上機嫌になった助手に
委細全てを任せておくのであった。


590 : ○○ :2016/02/22(月) 22:29:39 R/FrdBcw
 さて依頼の中身は、浮気調査の確認である。本来ならば、最低一週間は掛けて調査する依頼で
あるが、依頼者が憔悴していた事もあり、助手は最短で今日の夜に、途中経過を報告すると告げていた。
 とっととこの依頼を片づけて、探偵に愛の言葉を囁いて貰おうと考えていたかどうかは、
無論彼女のみぞ知ることである。
 依頼者との話が終わった時には、昼前になっていた。午後は会社に行くと言っていた依頼者と別れ、
探偵と助手は対象の家に行き、自宅にいた妻の浮気が本当である事を確認する。
さっさと依頼を片付けたい彼女は、対象の深層心理に働きかけて、対象を浮気相手との逢瀬に誘導する。
苦い顔をした探偵に、
「遅かれ早かれしていたんだから、良いでしょう。」
とは、人間としての慎みや遠慮といった物をを所持していない、妖怪の弁であった。
 一方探偵の方は依頼者に対して、今夜現場を押さえることを勧めていた。いくら何でも早すぎるだろう
と訝しがる依頼者を相手に、偶然望遠鏡で奥さんのメールを撮影できましたと、何とも苦しい言い訳で押し通し、
どうにかこうにか夜の予定を空けて貰らうことができたのであった。


591 : ○○ :2016/02/22(月) 22:30:36 R/FrdBcw
 夜になるといよいよ決戦の舞台である。半信半疑の依頼者を、宿泊施設の駐車場で対象者の車を見せて
納得させ、今二人はどうしているだのと、小芝居を打ちながら半時間ほど待たせると、二人と一緒に居る
依頼者も、俄然闘志が漲ってくる。丁度依頼者の気持ちが最高潮になる時分を見計らい、ロミオとジュリエットを
出入り口まで誘導すれば、後はポラロイドカメラのフラッシュを焚いて、開戦のゴングを鳴らすだけである。
 最初は威勢の良かった二人であるが、探偵事務所に御同行を願って、出来たてホヤホヤの証拠を突きつける頃には、
男は意気消沈してしまう。中々抵抗していた女の方も、業を煮やしたさとりが少々トラウマを弄くって、子供の頃に
感じた妖しへの恐怖を与えれば、二人仲良く撃沈となるのであった。

 今回の三人が帰った後で、男は片付けをする振りに勤しむ。なにせ背後から、上機嫌になっていたさとりが
鼻歌を歌いながら、近づいてくるのである。
「ねぇ、○○さんたらホント可愛いんだから、もう、愛しているだなんて。もう!もう!ほんと今日は頑張ったんだから、ね?」
と、背後と脳内のステレオ再生で声が聞こえてくるの聞き、男はさとりの方を向いて迎えいれた。
この愛に染まっていく自分も、異常に成りつつあるのかも知れないと、麻痺した理性で考えながら。

ちなみに蛇足ながら、それは正解である。しかし今晩彼女の愛によって、そう思った記憶ごと塗りつぶされるのであるが。


以上になります。


592 : ○○ :2016/02/23(火) 13:21:06 5VI6z/fU
○○からしたら、さとり様なんて狙われた時点で詰みだろ
やっぱり心を読めるってのは、反則だ

あと、やっぱりソファは破壊したのか


593 : ○○ :2016/02/23(火) 20:09:38 NB1dQxp.
三代目…1人につきソファー1つか!
出費が凄いだろうな・・・・


594 : ○○ :2016/02/24(水) 04:21:50 baXBVbWE
探偵さん面白いな なんというか短くても内容がある
探偵業自体はさとりの能力で瞬殺なのにそっからさとりのご機嫌を取るのが本業みたいなものという流れも萌える
それにちゃんとバックストーリーも描かれてて実質現代入り独自路線SSというのもいい こういう持ち味のあるのが増えてほしい
日常系でもシリアスでもストーリーがちゃんと絡むとヤンデレSSが可愛いだけじゃなくて面白くなる

他のクオリティが高いSSにもそういう法則みたいなのがあると思う


595 : ○○ :2016/02/24(水) 23:16:02 ZTpMdqpQ
それはなんか分かる気がする


596 : ○○ :2016/02/26(金) 17:47:58 fGlpqHEE
投稿させて頂きます。

探偵助手さとり第4話


 名探偵の掟として、探偵が犯人を追い詰めると、犯人は
蕩々と自白を行う事となっている。彼らは決して言い逃れをしないし、
動機を正直に告白して自分の罪を認める。
 しかし大抵の場合、探偵が
「犯人は貴方です!」
と言った所で、その人物を捕まえることが出来るかは甚だ怪しい。
適当に嘘をついたり、周囲を言いくるめて罪を逃れたり、探偵が指を指している
時に逃げたりしても良い訳である。


597 : ○○ :2016/02/26(金) 17:48:33 fGlpqHEE
 「らしくない」探偵の彼としては珍しく、彼は吹雪の中でロッジに閉じ込められていた。
しかし別に殺人事件が起きる訳では無く、只単に彼の友人に頼まれて、
シミュレーションゲームのオフ会に、最近始めた初心者として参加しただけである。
他の皆は知り合いであるので、これでは窃盗すら起きそうにない。但し、ストーカーは
何処かに居るのであるが。
 今回の依頼は、友人に付きまとうネットストーカーを、どうにかして欲しいという物であった。
友人達は、普段インターネットを通じてゲームを行っているのであるが、その中に一人
友人にセクハラ発言を繰り返す、ネットストーカーがいた。周囲に諫められても反省せず、
あまつさえは、パスワードを入力する必要があるチャットにまで入り込むに至っては、
誰かがストーカに情報を流しているのか、誰かがストーカーであるかという、
嬉しくない二者択一であった。 

 友人には件のストーカーから、今回のオフ会に参加させまいと嫌がらせのメールが来ていたため、
最低でも使い捨ての盾にはなるであろうと、急遽探偵を参加させていた。生憎探偵にはその種のシミュレーション
の経験は無いものの、反則級に強い(実際の所は反則であるが)助手が付いていることで、
他の経験者に良い案配で食らいつくことが出来ており、期待の新人として注目を浴びていた。
そして深夜他の参加者が寝静まり、友人が探偵の部屋に作戦会議と称して出向いて行くと、
探偵の部屋には助手が既にスタンバイをしていたので、此方の心を読んだかのような準備に
驚きを持つ。そこで探偵から、他の人が現在ストーカーを特定中であり、丁度最終日に結果が分かるので、
そこで犯人に仕掛けるようと言われると、すっかり感心するのであった。


598 : ○○ :2016/02/26(金) 17:49:43 fGlpqHEE
 さて最終日になり、吹雪が止んで他の参加者が続々と帰る中、犯人とオフ会の主催者をロッジに残し、
探偵が名推理を披露することとなった。
 容疑者は女性であり、友人はまさかこの人とはと、予想外の様子であった。貴方がストーカーですね
と探偵が糾弾するも、敵も然る者で自分が犯人である訳がないと、頑として認めようとはしない。
警察ならぬ探偵には、通信会社より履歴を請求することは出来ないので、証拠の代わりに
隠し球の助手を投入する。即ち、鳴かぬなら、泣かせてしまえ ホトトギス と。

 助手は手元の白紙を見ながら、蕩々と喋る。
「XX時XX分貴方の持っている、もう一つのタブレット端末より、ストーカーの文章が投稿されております。」
「その端末は直後に、貴方が管理しているSNSに接続し、貴方の私生活に係る文書を投稿しています。」
「これが、貴方がストーカーである証拠です。」
そして助手は、なおも違うだの、乗っ取られただのと言って往生際が悪い犯人に近づき、耳元で告げる。
「貴方が作った、人には見せられない小説を朗読してあげましょうか? 
それとも、ネットで注文したXXXとかいう、変態同人誌を公開しましょうか?」
顔面が青白くなり、落ち着きが無くなった容疑者の横で助手が、依頼者はストーカー行為を止めるならば、今回の件を
公にしないつもりであると言えば、容疑者はか細い声で謝罪し、一件落着となるのであった。
 容疑者が退出した後に、主催者が彼女を退会させる事を依頼者に告げ、出来れば依頼者はこのまま
活動を続けて欲しいと、急に下心に露わに友人にすり寄って来た為、探偵は事前のカンペに従い、主催者に
釘を刺しておく事とした。
「そういえば、容疑者の人の通信記録を閲覧した時に、貴方があの人と交際していることを知りまして。」
固まった主催者に対して、其れでは宜しくと述べ、三人は帰路に着いた。


599 : ○○ :2016/02/26(金) 17:51:10 fGlpqHEE
 依頼の件がすっかり終わると、依頼者は探偵に感謝の言葉を述べると共に、御礼に食事でもどうかと誘うのであった。
しかしそうは問屋の代わりに助手が卸さず、
「この人はお忙しいので。」
と、-これ以上近づくんじゃねーよ、この野郎!-と威嚇をすると、
敵意を改めて感じ取った友人は、-お生憎様、野郎じゃないので!-とばかりに、
「あら、この人の予定を決めるなんて、助手の癖に彼女気取り?」
と真っ向の勝負を挑んでくる。-こんな若いだけの女になんか、負ける訳ないじゃない-と、
勝ちを確信した女が探偵の腕を取ろうとすると、助手が女の腕を掴んで爆弾を投下しに掛かる。

「先にXXさんとの不倫関係を、精算されてからの方が宜しいかと。奥様は気づいておられましたし。」
実際には奥方は、彼女の正体には全く掴めていなかったのであるから、
さとりの言ったことは真っ赤な嘘であるのだが、なおも絨毯爆撃は続いていく。
「探偵に依頼されていたので、次は弁護士に依頼をするかと。損害賠償、頑張って払って下さいね。
あっそういえば、過去の彼氏に貢いだ借金がまだ残っていましたね、100万円程。」
と追い打ちを掛けると、女はたまらず逃げ出していった。

 逃げ出した女を嘲りを込めて見送ったさとりは、早速帰ってXXさんの奥様に渡す報告書を作りましょうと、
マッチポンプに余念がなかった。友人の女から回収し損ねた分を、奥方からの依頼で取り戻す勢いである。
最も、
「折角ですし、指輪でも作っておきましょうか?」
と探偵に尋ねる辺り、彼女は気にしていたのであろう。
 しかしさとりのの愛が、見せつけようという段階に至ったことは、探偵にとって不幸なことである。
それはやがて、洗脳へと行きかねない、恋の病であるのだから。


以上になります。ご感想を頂きましてありがとうございます。


600 : ○○ :2016/02/27(土) 01:16:18 LCtZ4ILE
投稿させて頂きます。

永琳女史の診察カルテ


 永琳は竹林の永遠亭の薬師であるが、人里の医者よりも遙かに
高度な技術を持っており、病人を診察することもある。もっとも、
迷いの竹林によって永遠亭は隠されている為、人里の半獣が紹介し
焼き鳥屋が連れて来るような場合に、限られているのであるが。
 そんな彼女のカルテには、様々な症例が記載されているが、
中には幻想郷のみに存在する、紛らわしい症例もあるのであった。

 ケース1 幻覚及び幻聴に類似した症状を訴える場合


601 : ○○ :2016/02/27(土) 01:16:55 LCtZ4ILE
 本日来院した患者は、人里の医者では治らなかったと、慧音からの
紹介状を持参してきた。其れによると、患者は最近何やら違和感を感じるようになり、
次第に何やら変な音が、耳元で四六時中聞こえるようになったとの事であった。
その内に音が、頭に入り込む様な不快感を感じるようになり、人里の医者に掛かったが
全く改善しなかったと記されていた。
 まず永琳は専門的な検査の前に、因幡達に河童製の機械を使い、患者の体を診察するように
指示を出した。次に優曇華により狂気の瞳による、精神スペクトラム検査を実施し、
最後に永琳自らが問診を行う事とした。

 無事検査が終了し、永琳の手元に検査結果が届くと予想通りの結果が並んでおり、
永琳はこれならば三分で診断が終わると早速男の問診を始めるのであった。
 因みに結果は次の二点である。①身体的な異常は見当たらず。②スペクトラム
検査において、猜疑心及び恐怖感を発生させるも、患者の脈拍数、呼吸数において変化無し。
心理的な変化も発生せず。


602 : ○○ :2016/02/27(土) 01:17:32 LCtZ4ILE
 「検査の結果、貴方の体については、異常は見られませんでした。」
白衣を着た永琳の言葉に、男はほっとした表情を見せるも、しかし何やら声は聞こえるんですと
訴える。男の訴えを聞きながら永琳は、次の言葉に男に気づかれないように力を込める。
「ただし、若干神経が疲れているようですので、お薬をお出しします。週に一回
此方の医院の因幡がお宅に伺いますので、注射を受けて下さい。
早ければ、一ヶ月か二ヶ月で良くなるでしょう。」
そう言って側に居る因幡に男を任せると、さっさと診察を終了してしまう。
首を傾げるようにしている男を追い出すと、永琳はてゐに追加の指示を出す。
「さっきの患者、統合失調症だから、毎週ケラックス450-1を注射しておいて。
家に行っても見当たらなかったら、村長に掛け合っても捜すように言っといて。」


 先ほどの男が訴えた声や違和感は、精神に不調をきたしたことによる幻聴や幻覚が原因であったが、
同じ日に訪れたもう一人の男は、少々訳が異なっていた。
 次の男は村の相談役からの紹介であった。今回の男は経過を記した物が無かったので、
最初に永琳自らが問診を行い、その結果てゐによる身体検査と、優曇華によるスペクトラム検査を実施し、
最後にまた確定診断を行う事とした。
 今度の患者も最初の男とよく似た症状を訴えていたが、検査結果は明らかに異なる物であり、
最初の問診の際に感じた違和感の正体が、はっきりと示されていた。
 結果は次の通りである。①身体的な異常は見当たらず。②スペクトラム検査における、恐怖心の
発生において、患者の精神状態の強い悪化を確認。 ③身体検査技師の意見として、Mammmaliaによる
痕跡と見られる因子を確認。
 今回の患者は前の患者と異なり、三分でとはいかないようであった。


603 : ○○ :2016/02/27(土) 01:18:24 LCtZ4ILE
 天才と呼ばれる永琳にしては珍しく、たっぷり十分は熟考した後、男の確定診断を実施した。
「いつ頃から声が聞こえますか?」
 「先週の水曜から、一週間近くになります。」
「声はいつも同じ声ですか?」
 「はい、いつも同じ女性の声です。」
「同じ事を言っています?」
 「ええ、段々声は強くなっていますが、いつも同じ事を言っています。」
この時点で男が統合失調症である可能性が極めて低くなり、別の可能性が高くなる。
次にてゐの所見にある、背中に付いていた因子を触診し、種類の特定を試みる。
「ここ、痛みますか?」
 「うーん、そう言われてみれば、すこし変な感じですね。」
男に残る因子の痕跡は薄く、質も悪い為、痕跡を残した種類の特定は出来なかった。


 そうして永琳は診断を下す。
「貴方、何か妖怪に近づいた?」
男は驚いて狼狽えるように答える。
「いえいえそんな、全く身に覚えがないです。」
断固として言った男に、永琳は残酷な結論を聞かせていく。
「貴方、匿ってくれる人とか、頼りになりそうな人とかいる?」
「いいえ、特には。一体僕は何の病気なのですか?」
男にとっては要領を得ない質問をする永琳に、直球で質問をぶつけると正面から返球が帰ってきた。
「あなた、質の悪い動物妖怪に狙われているから、このままだと酷い目に遭うわよ。多分三日か四日以内。」
「そんな…。何とかならないんですか?!」
「頼る人が居ないんならどうにもならないわね。誰か有名処に勤めている人は知ってないの?」
「ええと、そういえは、紅魔館で門番をしている人が、
しきりに一緒に館に勤めないかって誘ってくれたことが…。」


604 : ○○ :2016/02/27(土) 01:19:27 LCtZ4ILE
-ちゃっかり妖怪に接しているじゃないか-と男の言葉を聞いた永琳は思ったが、
直ぐに紅魔館ならば戦力が整っており、紅美鈴が男に目印を付けたにしては、痕跡が薄すぎると判断し、
この足で紅魔館に向かうように男に指示をした。男は家に財産を残してきたと渋っていたが、
ならば黙って、浚われるか食われるかしててしまえという趣旨のことを、丁寧かつ冷静に説得すると、
男は素直に同意した。
 三日後の文々新聞に、紅魔館に侵入しようとしたた妖怪が、全身を砕かれ消滅した記事を見て、
以前診察した男を思い出す。妖怪である事をを隠してまで、男に近づきたかった恋を成就させて
あげたのだから、きっと歳暮でも届くだろうと思いつつ。


以上になります。


605 : ○○ :2016/02/27(土) 21:11:15 h71umOJY
投稿させて頂きます。


金は愛より重いのか



 金は命より重い-半獣が教える寺小屋の授業では、決して教えぬその言葉が、
巷では時代の寵児のように、持て囃されていると男は感じていた。
外の世界の友人を金のトラブルで無くし、幻想郷に迷い込んだ男にとっては、
この世界でもまた金が物を言う世界のように思われた。

 権力者に取り入る為には賄賂を送り、やれ病気に掛かったといっては、医者に
大枚を払い、挙げ句金が通用しない妖怪さえも、巫女の札を買い占めてタコ殴りに
した日には、人が金を使うのではなく金が生きて良い人を選び取っている、何か
おぞましいもののように見えた。


606 : ○○ :2016/02/27(土) 21:11:49 h71umOJY
 男には外来人の友人がおり、幾人かは人里離れた場所での開墾を行っていた。
重労働であり妖怪に襲われる危険はあるが、食い繋ぐ分は得られるからである。
その日男は友人と畑を耕していたが、野良妖怪に襲われ危うく大怪我を負う所であった。
 逃げ遅れた友人の一人なんかは、二度と走れないようになってしまっていたから、
彼なんかは幸運であったと、考えるべきなのであろう。

 しかし男も、友人を生贄に捧げて助かったような心持ちがしたのであり、
他の無事だった奴らと幾ばくかの金子を贈ることとした。当然男には手持ちなんぞ
無いのであり、足りない分は人里に居る金貸し屋から調達することとした。
借りた金はやや大きいが、利息はまま安かった事もあり、男は節約をして借金を
返済していく積もりであった。


607 : ○○ :2016/02/27(土) 21:12:22 h71umOJY
 しかしながら不運は重なるものであり、時折の大雨で山の麓の土砂が崩れ、
彼の開墾していた畑にも流れ込んでしまった。畑自体は石や土を取り除けば
使えるようになるが、育てていた作物はほぼ全て駄目になっており、途端に
男の家計は苦しくなってしまったのである。
 半年はしないと金が入らなくなった男は、人里に出稼ぎをすることとした。
かなり切り詰めた生活となっていたが、畑にもう一度作物が実れば、多少は
ましになるであろうと、増えた借金を必死に返していた。

 三ヶ月ばかり男は出稼ぎと農業を行い、このままいけば金を返す目途が立ちそうだと
考えていた頃、積み重なった疲労の所為か男は現場で大怪我を負ってしまった。
永遠亭の薬師に言わせれば不幸中の幸いとして、足の骨が折れただけであり、一ヶ月
もすれば尾を引くことも無く、綺麗に治るであろうということであったが、男の
家計簿の中身については、綺麗に真っ赤になってしまっていた。
 
 彼が折れた足でどうにか家まで帰り着くと、男の家の薄い立て戸に、大きな穴が開いていた。
すわ妖怪の襲撃かと、道中に身を守れるように薬師に貰った札を抱え、家の中に入るが妖怪の姿は
見られない。妖怪は食べ物を漁って帰っていったようであり、鉢合わせしなかった事に
男は胸を撫で下ろすが、しかし男の家の周りは人気が無いこともあり、
味を占めた妖怪がまた襲ってくれば、術なんぞ全く使えない男には、
為す術もないように思えたのであった。


608 : ○○ :2016/02/27(土) 21:13:03 h71umOJY
 食べ物が無くなっていたが、然りとて買いに行く気力が残っていなかった男は、
取り敢えず寝ようと布団を敷くが、そこに金貸し屋がやって来た。 怪我を負った男に
見舞いの言葉を掛けると共に、差し入れを置いていったため、外界の厳めしい借金取り
の印象があった男には、何やら薄気味が悪い位の姿勢であった。

 翌日になると、今度は代わりに貸し金屋の小間物使いの女がやって来て、男の家に米を
置いていくと共に、いい人がいて、あんたの借金を肩代わりしても良いと言っていると
話を持ちかけてきた。よくよく話を聞いてみると、男の教養を見込んだという、某金満家の
一人娘の婿養子として入ってはどうかと、体の良い身売りであったため、男はまたしても、
金で人を操っている様に感じ大層気分を悪くしたものの、借金が有る身としては、
大人しく話を聞いているしかないのであった。

 男が気分を害した様子を見て、金を貸している側である女はいやに取り繕う様な、
寧ろ媚びるような姿であったが、男が頑として話に乗らない事が分かると、また来るとして
帰っていった。男は二度と来るなと言いたかったが、買い物に行くこともままならない
身とあっては、女が置いていった食料で食いつなぐしかなく、腹立たしい気分が残っていた。


609 : ○○ :2016/02/27(土) 21:14:09 h71umOJY
 その後も農業を何とか続けていた男の元には、何度も小間使いが来ることとなった。
その度毎に見合いの話を進めて来るので、男は初めは鬱陶しく思っていたが、その内慣れて
きた事もあり、小間使いに餌付けされたようになっていた。

 そんな中遂に小間使いから、男の借金を払うか、それとも婿になるかを
突きつけられる事となった。当然借金が払えない男にとっては、逃亡するか
売られるかの選択しかない。その時には既に小間使いと深い仲になっていた男は、
彼女に立つ瀬が無いと感じてるのであるが、小間使いに-ここで貴方に逃げられると
私は首を括らなければなりません-と言われると、非情に成りきれないのであった。


 婿入りの日になると、いつもの小間使いと共に大勢の人がやって来る。男が籠に
入れられ金持ちの家に着くと、小間使いはそそくさと奥に引っ込んでしまい、周りが
身知らぬ顔ばかりになった男は、急に居心地が悪くなった気がして、ここまで彼女に
頼っていたかと思った。
 -旦那様どうぞ-と慣れた小間使いの声が聞こえると、男はそそくさと襖を開けて
娘と会う為に部屋に入る。しかし部屋には着飾った娘しかおらず、男は娘の顔を見るよりも
先に、目で小間使いを追ってしまう。其れを見た娘は普通ならば、何という奴だと
腹をたてるであろうが、彼女は笑みを浮かべていつもの声音でこう告げた。
「そんなに思ってくれていたなんて、嬉しいねぇ、旦那様。」


610 : ○○ :2016/02/27(土) 21:17:50 h71umOJY
 娘が小間使いに変装していた事に気づいた男は、娘に何故そんなことをしたのか
と尋ねると、涼しい顔で、-金が愛より重いなんて、認められないって閨で
言って居たじゃないか。-と混ぜ返す。
 しかし彼女は、小間使いに変装していたことは明かしても、男が自分を拒み続けた時には、
借金の形にして無理にでもと思っていたことや、そもそも長年生きた化け狸でもないと、
布団の中で肌を重ねても分からない程、別人になる事など叶わないという事は、
マミゾウは明かす積もりは微塵もないのであった。



以上になります。休日はついつい妄想が溢れてしまい、
この衝動を解放しようと、投稿したくなってしまいます。


611 : ○○ :2016/02/28(日) 13:34:16 cwVrImwY
こう色々と想像のやりがいがある節回しだな
でも、一個聞きたい。美鈴が正体隠して接近したのは分かるんだが、たちの悪い妖怪が近付いたのは美鈴の計算内?それとも想像してなかった?


612 : ○○ :2016/02/28(日) 15:12:09 gR.a5Ahc
これは……つまり、マミゾウお前……
小間使いと深い仲になる→エロいこともしてる→途中から小間使いとマミゾウが入れ替わる→タヌキなのでバレない→いくえ不明(小間使い)
ということかー
もしかして、マミゾウって自分の容姿にあんまり自信ないのかな。
だとすると、……ういやつよのぉ


613 : ○○ :2016/02/28(日) 15:12:40 gR.a5Ahc
これは……つまり、マミゾウお前……
小間使いと深い仲になる→エロいこともしてる→途中から小間使いとマミゾウが入れ替わる→タヌキなのでバレない→いくえ不明(小間使い)
ということかー
もしかして、マミゾウって自分の容姿にあんまり自信ないのかな。
だとすると、……ういやつよのぉ


614 : ○○ :2016/02/28(日) 15:20:29 7rS9LxUA
大事な事なので


615 : ○○ :2016/03/04(金) 14:55:35 wTuZa6l.
レティさんは、帰ってしまったのかな。もちろん○○を連れて、春夏秋眠の旅に


616 : ○○ :2016/03/05(土) 00:00:22 wDdUdeSw
レティさんなら北海道に来てるよ


617 : ○○ :2016/03/05(土) 00:33:07 RoAyCkRE
>>611
美鈴は想像しておりませんでした。
計算内の場合はまた別の具合になります。

次より投稿させて頂きます。


618 : ○○ :2016/03/05(土) 00:34:01 RoAyCkRE
永琳女史の診察カルテ第2話
意識が消失し、ショック状態が疑われる場合


 とある冬間の小春日の昼間、永琳の診断も一段落付いた頃。
日差しが丁度、うたた寝を誘うように差し込んできており、
彼女は椅子に座り目を閉じていた。何も無い平和な昼間。
比較的忙しい毎日の中、彼女が少し眠っていたとしても、
何も問題はないであろう。
 死にそうな急患でも来ない限りは。


 永琳のうたた寝を破ったのは、優曇華がたてた乱暴にドアを
開ける音であった。優曇華は乱暴に開けたドアを閉めずに、
永琳に向かって軍隊の伝令が叫ぶように伝える。
「師匠、妹紅が突っ込んできます!白色の照明弾幕を打ち出して
いますので、急患のようです!既にてゐが中庭で待機しています!」
乱暴に眠りから覚まされた永琳は、それでも穏やかな声で話す。
「今向かうから、後から貴方も付いてきて。後、姫にも待機して貰うように
内線で伝えておいて。」
 ここに来る殆どの患者は里の重鎮より紹介を受け、妹紅の案内によって
連れてこられる。時折白黒の魔法使いなんかは、上空から降りてくる時が
あるのだが、その時はいつも、戦場に急降下爆撃が降り注ぐ様に、とても有り難くない
何かを持ってくるのであった。今回の弾幕は緊急を意味していることから、直ぐに
診察を行うべき患者が到着する事を示していた。


619 : ○○ :2016/03/05(土) 00:34:50 RoAyCkRE
 診療所にて永琳は優曇華と共に診断を行う。患者はショック状態であり、意識が
無く昏睡していた。普段なら行う因幡の身体検査は後回しにして、
男の状態を観察する。男の状態は次の通りであった。
①男の体より、強い妖力を発している。②男は妖怪では無く、里に居る人間であると
妹紅が証言。③妖力は鼠の妖怪のものと推定される。
 永琳の直感では、男の体に妖力が入った事により、ショック状態を引き起こして
いる物と思われた。しかし身体的な原因を排除するため、妹紅への問診といくつかの
検査を行う事とした。
「いつ倒れたの?」
 「一時間前。殴られたとか、ぶつけたとかはない。」
「何か食べたとか分かる?」
 「人里の茶屋で食事して、暫くしたら気分が悪いと言ってぶっ倒れたらしい。」
外傷及び、毒物の可能性を低く見積もる。特にアルコールと食中毒は除外できるだろう。
「気分が悪いのはいつからか分かる?」
 「今朝から気分が悪かったらしい。」 
「体を丸めたりは?」
 「全く無し。意識を急に無くしてそれっきり。」
けいれんや筋肉の硬直も引き起こされていない。

 次に血液を採取し、優曇華に分析をさせつつ、にとり特性のスキャンにかけ
血液の流れを調査する。手元の画面には、患者の毛細血管に至るまで、循環器系
の状態がリアルタイムで表されるが、all cleanの文字が表示されている。


620 : ○○ :2016/03/05(土) 00:35:46 RoAyCkRE
 さてここまで来ると、鼠の妖力が原因だと本格的に考えたくなる。
この場合、重要なのは「誰が」「何の為に」という二点。
妖力が強い事と有名な事は比例するし、妖力の種類は感覚的に分かる。
そして強い力を持つ者は限定されているため、今回の場合のように、強い妖力が
残されている場合には、簡単に個人の特定が可能となる。
 次に妖力が内部より発生していれば内因的であり、この場合何かをしたいが
為に存在していることが多い。一方外因的に残されている場合は、呪いの
ような特殊な物を除けば、何かをした痕跡として残されている場合が多くなる。
 つまり、内的ならば原因として作用するし、外的ならば結果として存在する。
今回は強い鼠の力が、内部に強く残っていることから、命蓮寺の賢将が何かをしたくて、
妖力を残したものと考えられる。しかし単に取って食べる目印にしては強すぎるし、
毒にしては遅効性すぎる。大体殺したいならば、妖力なんて不安定な真似をせずとも、
殺鼠剤(!)でも食物に混ぜれば良いし、極端に言えば丸かじりすれば良い。配下も使えば
骨も残らずというやつである。
 とするとあまり例が無いが、妖力を摂取させたか、本人が気づかず摂取してしまったか
という事となる。外界の探偵が緋色の研究でもしない限りは、人間にとって毒であるものを
無理に体内に入れさせる確率は低いため、本人が気づかず摂取した方に軍配を上げる
べきであろう。かの妖怪の性格を合わせた結果、考えられるのは何通りか-
しかし次に起こりうる結果は一つである。


 「てゐは、文屋に彼の交際相手の情報を提供してもらって。優曇華は妹紅を会議室に案内しておいて。
命蓮寺の連中が、そのうち来るでしょうから。」
 数刻後妹紅が遅い昼飯だけでなく、お八つまで食べて待ちくたびれた頃に、
命蓮寺の寅と子のコンビがやって来た。腹心の優曇華が二人を部屋に案内し、永琳は最後に入室する。
ここから始まるのは、世にも醜い物語。


621 : ○○ :2016/03/05(土) 00:36:18 RoAyCkRE
 「いやあ、彼が倒れたと聞いて、慌てて駆けつけて来たんだよ。」
まずはナズーリンが口火を切りつつ、観測気球を打ち上げる。
「何せ恋人としては、心配で堪らなくってねぇ。ここで治療を受けたと聞いて
安心したよ。」
 永琳は、妖力が注がれた理由として、言葉の裏に示された好意による行為が、原因であると判断した。
そして本題に切り込む前に周囲を確認しておく。妹紅は唇の端を釣り上げており、面白がっている
ようである。一方の寅丸は真面目腐った顔を崩そうとはしない。つまる所、男の方は大丈夫である。
ならば、最初に確かめるのは女の方。
「彼を命蓮寺で修行させるの?」
「ええ、まあ、そうなるだろうねぇ。」
相変わらずの間合いをずらした口調である。しかし言っている内容には、真剣で切りつけるような剣呑さがある。
妹紅の方も確認する。
「里の方は?」
「まあ、慧音なら本人が良いと言えば文句は言わないんじゃない?」

 ここが永琳にとっての山場である。即ち人間としての男を生かすのか、殺すのか。
もしここで彼を引き渡せば、恐らく彼は妖怪になるのであろう。
もしここで彼を引き渡さなければ、恐れるは命蓮寺との全面対決が生じる事となる。
男が所属していた里は、今は中立を宣言している。


622 : ○○ :2016/03/05(土) 00:41:05 RoAyCkRE
 そして永琳は決断を下し、柔らかな笑顔で告げる。
「そう、なら目が覚めたら話し合うと良いわ。」
天狗の調査報告が二人は恋人としていた以上、深入りした彼を切り捨てる方が得策。
血も涙も無い悪魔的な決断であるが、彼女は宗教画の聖女のような笑みを浮かべていた。
マキャベリがいつか幻想郷入りすれば絶賛するであろう、姿を示しながら。
永琳の言葉を受けて、ナズーリンはホッとしたように声を出す。
「いやぁ、有り難い。そうさせて頂くよ。彼の治療費は此方が負担しよう。」

 永琳は永遠亭にてNo.2である。No.1である輝夜があまり
出てこない以上、永琳が事実上色々決めることも多い。時には黒い事案も。
今回のような表沙汰には出来ない裏には、永遠亭側は輝夜の忠臣が対応する。
そして里側も、守護者の親友である妹紅が「勝手に」話を付ける。そして命蓮寺も、
毘沙門天の使いが同行することを黙認することで、寺の意思を伝えている。
彼女らの裏取引はカルテには残らない。


623 : ○○ :2016/03/05(土) 00:44:04 RoAyCkRE
以上になります。


624 : ○○ :2016/03/05(土) 04:33:39 D6NaFBSs
第三者視点から見たヤンデレすごく良い
それにしても永琳は苦労人やでぇ


625 : ○○ :2016/03/05(土) 06:56:35 zxMKB2.g
仮に盗撮や盗聴があっても、決定的な事は何も言ってない
こう言う黒々とした取引の風景大好き


626 : ○○ :2016/03/05(土) 16:12:07 XB8c.57Y
投稿させて頂きます。

永琳女史の診察カルテ3


院外処方について

 永琳は永遠亭で診察をしているが、本職は薬師でありその薬の
効き目は、幻想郷一と噂される程である。因幡が毎日籠に薬を入れて
人里へ行商をするため、診療所へ来る人間は少ないが、その日は
珍しいお客が来ていた。
 「師匠、女性が来ています。」
普段なら受付の因幡が声を掛けるが、この時は優曇華が女性を案内していた。
人里に居る彼氏が具合が悪いので、是非薬が欲しいという。永琳は優曇華に内線を
掛けさせた後、女性の話を聞くこととした。


627 : ○○ :2016/03/05(土) 16:12:40 XB8c.57Y
「彼の名前は?」
 「○○さん。20代の男の人で写真はこれ。」
「どこが悪いの?」
 「二三日前から、咳とクシャミと鼻水が出て。」
「熱は?」
 「三十七度五分」
「他の症状は?」
 「特に無いわ。」
ここまでの診察で永琳は診察を打ち切る。
「多分只の風邪でしょう。」
 「あら、薬でも頂けるかしら?」
「貴方の方が良く効くでしょう?」
 「此方の薬が良く効くって、妹紅に紹介して貰ったから。」
そして永琳はカルテを閉じる。
「三日後に来て貰えたら、薬を渡すかどうかお伝えします。」
 楽しみにしています-と言って彼女は帰ってゆき、永琳は優曇華に指示を出す。
「文屋に複写した写真を渡して、彼がどんな人か調べておいて。」


628 : ○○ :2016/03/05(土) 16:13:59 XB8c.57Y
 そして三日後、また女性がやって来る。
 「お薬は頂けるのかしら?ついでに最近害虫が鬱陶しいから、農薬も欲しい所なんだけれど。」
「お生憎様、ビタミン剤だけよ。」
あら、どうも頂くわ-重い袋を受付に渡して彼女は帰って行く。
上機嫌に愛用の日傘をクルクルと回しながら。

 永琳は情報を取り寄せた烏天狗を、内々に呼び寄せ結果を伝える。
永遠亭は風見優香の要請に応えて、人里と同じく支持をする。但し積極的に援助はしないと。
恐らく明日の文々新聞の一面には、「花畑の妖怪、血みどろの三角関係?!」とでも載るであろう。
方々から静観を取り付けた優香が、害虫を駆除している写真が掲載されるかは確約できないが。



以上になります。
ご感想を頂けまして大変励みになります。


629 : ○○ :2016/03/06(日) 16:08:54 c9VNMHJE
何だろう、こういう冷静に狂ってるのが一番怖い
凶行を起こすにも下準備が必要だって、ちゃんと分かってる


630 : ○○ :2016/03/06(日) 23:12:09 4DSdiHJI
>>628
×優香 ○幽香

次より投稿させて頂きます。


631 : ○○ :2016/03/06(日) 23:17:47 4DSdiHJI
 満月の夜に吸血鬼は力が増すと言われるが、
別段他の日に、調子が悪い訳では無い。夜は
妖しの時間であるが故、彼女らは夜の女王として
君臨するのである。他の妖怪にとっては迷惑であり、
勿論他の人間にとっては脅威である。

 彼女がその人間を見つけたのは、普段行かない勝手口の所であった。
偶々メイド長を捜していた時に、霧雨商店からの荷物を司厨員に渡していた
彼に彼女は引き込まれた。普段の彼女の口癖を使うならば、
正に運命なのであろう。
 弾幕はパワーであると白黒の魔女は言う。弾幕は力の象徴あることを合わせれば、
即ち力は権力に直結する。強大な妖怪はまま欲望に貪欲であると言われるが、
寧ろ幻想郷では妖怪が好き勝手に、横車を押すどころかスペルカードで粉砕
する現状を表しているのであろう。彼女もご多分に漏れず、彼を物にしようと
考えるのであった。


632 : ○○ :2016/03/06(日) 23:18:31 4DSdiHJI
 彼女はまず、腹心のメイド長に命じて彼の身元を探る前に、
メイド組織の二番手である副メイド長に、彼の身元を尋ねた。
時には主君に忠実でありすぎる咲夜に迂闊に尋ねれば、もし
彼が誰かの恋人であった時に、一を聞いて十を知る彼女は自分の思いを悟り、
事を勝手に進めてしまう事があり得たし、万が一彼が咲夜の恋人であった
時には、咲夜が断腸の思いで彼を諦めることが心配であったためである。
 そういう風に部下を思いやる主君であると自分に言い聞かせているが、
実際心の奥底では、咲夜が自分に銀色のナイフを突き立てる恐怖が、
ゆらゆらと浮かんでいたことは、彼女自身が一番良く知っている事であった。

 副メイド長に確認した結果、晴れて彼に誰も恋人が居ないと知ると、
彼女は信じてもいない神に感謝して、彼を手に入れよう
と震い立った。最も、紅魔館の中に恋人がいない事を確認しただけであり、
その他の場所に居ようとも、排除する積もりであったのは、現人神が
かつて言ったという、幻想郷では常識に囚われてはいけない、という
リバイアサン万歳の精神に基づく物であろう。
 気分が良くなった彼女は大声で咲夜を呼びつけ、彼の身元を調査させた。
そして彼が人里に居る普通の人間で、特に後ろ盾も無い事を知ると、早速メイドに
命じて彼を誘拐する。魔女の秘薬を使ったり、彼女が自分から出向いて交際を
求める等という、穏健な手法を使う素振りは一切見せない姿は、
運命を操る彼女が運命に囚われている形を、はっきりと示しているのであった。


633 : ○○ :2016/03/06(日) 23:19:07 4DSdiHJI
誘拐した彼を、自分の部屋に備え付けた特注の檻に入れ、彼女は暫く
飽きずに彼を眺めていた。丁度子供が自分の宝物を一心にに眺めているように、
彼女もじっと彼を眺めていた。子供のように自分だけの世界に浸り、
誰にも渡すまいと独占欲を滾らせながら。
 数刻程して彼が目を覚ますと、彼女は笑顔で彼を浚った事を告げる。
最初彼は混乱していた物の、状況が飲み込めると彼はここから出すように
告げてきた。勿論彼女が男の申し出を撥ね付けると、やがて交渉から抗議に
変わり、最後には檻を揺らさんばかりに暴れるが、朝になって眠くなった彼女は、
一睨みして黙らせた後に、さっさとベットに入ってしまった。

 夕方になり彼女が目を覚ますと、メイドが檻と男を掃除したのか、執事服に
なった男が横たわっていた。昨日とはうってかわった彼は、彼女に対して
粘り強く解放するように交渉するが、彼女は全く取り合わない。それどころか
彼に対して結婚式は和洋どちらが良いだの、新婚旅行は外界に行きたいだの、
見当外れの話ばかりしており、彼はすっかり参ってしまった。

 三日目になり監禁生活に衰弱した彼が、泣き落としとして彼女に自分には
恋人が居て、心配しているから返してくれと告げると、
彼女は初めて驚いたような表情を見せた。男が怒っても頼んでも暖簾に腕押し
であった彼女が、反応らしい反応を返したため、男はこの手があったと思い
熱弁を振るうのであるが、暫く中空を見つめていた彼女が、突然気味の悪い
笑顔を浮かべておもむろに檻を開けるのを見て、男の期待は非常に高まった。
 鬼も目にも涙(相手は吸血鬼であるが)という諺を男が噛み締めていると、
彼女はその細腕からは想像できないような怪力で男を押さえつけ、
首筋に唇を近づけ鈍い痛みがすると、非情にも男は気を失ってしまった。


634 : ○○ :2016/03/06(日) 23:20:09 4DSdiHJI
 彼女は男から適量の血を吸い取ると、早速メイドを呼んで計画を練らせるの
であった。一件落ち着いているように見られるが、血のような紅い槍を片手で回し、
頻りに唇を舐めて、人里に飛ばした分身の蝙蝠からの情報を受け取っている姿は、
運命を捻子曲げてでも達成しようという、強い意思が見られた。

 四日目の早朝に男は、聞き慣れた声で起こされた。彼が痛む首筋を押さえて起き上がると、
そこには監禁相手に、恋人だと語った女性の姿があった。女性は彼に対して、
彼が行方不明だと聞いて、方々を捜してたどり着いたこと、自分も彼の事を実は好いている
ことを告げ、この屋敷から脱出しようと檻を一瞬で開けてしまう。彼が一晩
揺らしてもビクともしなかった戸を、忽ち開けてしまった彼女に目を白黒させるも、
こんな好機は二度と無いと、彼女の手を取り檻を抜け出すのであった。

 屋敷を知り尽くしているような彼女の案内に、男は順調に進んでいくが、
段々奥に進んで行く。不安げな顔をする男に、彼女は秘密の抜け道が有ると言って
励ましながら、階段を駆け抜ける。そして重厚な扉の前で、-ここを抜ければ秘密の抜け道
があるが、少々厄介な妖怪がおり、五体満足とは行かないかも知れない-と彼女は男に告げ、
私がどんなになっても、愛して欲しいと告げる。普段憧れていただけの存在が、
自分の為に命すら掛けるという言葉に男は一も二も無く頷き、彼女に口づけた後、
-二人何時までも一緒だよ-と柄にもない台詞を述べる。微笑んだ彼女の手を取り、
部屋に入ると、そこにはステンドグラスと大きな十字架が掛けられていた。


635 : ○○ :2016/03/06(日) 23:22:13 4DSdiHJI
 出口の魔方陣が有るはずが、結婚式の会場に辿りつき、男は狼狽えて周囲を見る。
隣の彼女を見ると、いつの間にか自分を閉じ込めた彼女になっており、男は反射的に
手を振り払おうとするが、手はしっかりと握られて離れない。そのまま祭壇の前まで
連れてこられると、紫色の髪の女性が祭壇に立ち、二人の結婚を認める事を厳かに
告げる。彼女が、-どんなに成っても愛してくれると言ったよね-と言いながら
微笑んだ姿を見て、漸く彼は「彼女」が殺されたことを理解したのであった。

 吸血鬼は人間なんかには及びもつかないような力を発揮する。例えば真夜中でも、真昼のように
活動したり、例えば血を吸った人間に化けたり、例えば日傘があれば、夜が明けて
真昼になっても活動出来たり。

以上になります。


636 : ○○ :2016/03/07(月) 06:21:28 MujaR4Ig
結婚式のことを心底楽しみにしてるレミーが可愛いな
お羽根パタパタさせて瞳孔ハート型なんだろうな……


637 : ○○ :2016/03/08(火) 11:02:41 qdA08wg6
皆さんのヤンデレちゃんに憧れて自分も書いてみました
初投稿ですがよかった読んでくださいな


逆に考えるんだ
「ヤンデレられちゃってもいいさ」と
考えるんだ

でかいお屋敷に閉じ込められていた俺に、現在の状況と外の世界で読んだ漫画の台詞を合わせたそんな言葉がふと浮かぶ。
逆転の発想というか、もはやそんな事くらいしか思いつかないくらい俺には為す術が無かった。
しかし考えてみよう。
屋敷に閉じ込められるのは確かにちょっと…いや、まあまあ…けっこう嫌ではあるけれど、それ以外だとどうだろうか。
俺をここに軟禁している阿求ちゃんは少し幼いがかなり可愛くもう少しすれば間違いなく美人になるだろうし、その偏愛は裏返せば極限的に一途だとも言える。
ずっと反抗的な俺に対しても献身的でいるし、頭は良い、料理も上手い、人里での地位が高い、その他諸々。
よく考えたら、なんで俺なんかを好いてくれているのか分からないくらいハイスペックな大和撫子だ。
難があるとすれば、俺が阿求ちゃん以外の女性と関わる事を死ぬほど嫌がる事と(それが原因で女性の使用人が揖斐られていると知って心底心が痛んだ)、俺が身につけた衣服や使った日用品をコソコソと集めてる事と(匂いを嗅ぐならまだしも舐められるのは正直怖い)、使用人に事あるごとに阿求ちゃんは良い女アピールをさせてくる事と(アピールポイントが尽きてきたのか最近は使用人も困ったようにしている)…その他諸々。
いや、まあ、これは妥協でき…できたらいいなあ。
…ごほん。うん、それを除けば、可愛い彼女が出来て、日雇いの命を削る仕事をしなくてよくなって、逆玉の輿だったりして。
もともと外の世界に帰りたいと思わない俺にはかなり良い条件かもしれない。
あとは、阿求ちゃんが何を思っているのかを聞かないといけないな。
と、そこまで考えた時に部屋の外から声が掛かった。

「○○さん。私です。入ってもいいでしょうか?」

「ああ、阿求ちゃんか。いいぞ、入ってくれ」

ここ数ヶ月散々聞いた声だから間違えようがない。
失礼しますという声と共に襖が開かれると、やはりそこには俺を悩ませる少女がいて、俺の前まで来ると綺麗な所作でちょこんと正座をした。
しかし、阿求ちゃんは何かを言うわけでもなくただニコニコしながら俺を眺めるだけである。
いつものことだ。
あまり話し掛けると俺が鬱陶しがる事を学んで、しかし俺としばらく会ってないと調子が出ないとかでたまに来ては楽しそうに俺を眺めていく。
普段なら居心地の悪い空間だが今日に限ってはむしろ都合が良かった。

「なあ、阿求ちゃんよ」

「ひゃ、ひゃい!?」

俺から話し掛けられるとは思っていなかったのか、阿求ちゃんは心底驚いたようにこちらを見た。

「例えばなんだけど、俺が阿求ちゃんの想いに応えて恋人になろうと言ったらどうなるんだ?」

「え…え!?そ、そうなったらですね!すぐにでも祝言を挙げてですね?私達は夫婦になって、その…それは仲の良い夫婦になるのですよ!あ、子供は二人が良いです!」

阿求ちゃんは俺の例え話に清々しい程の慌てっぷりで過程をすっ飛ばした未来を語る。
その必死さが少し微笑ましくもあるが多分阿求ちゃんは本気であり、実際俺が下手なことを言うとすぐにでもそうなる気がする。
子供のいる未来を想像しているあたり、他所の重い愛を持つ女達よりもずっと平和な家庭を思い描いているのが救いだろう。
しかし、俺が聞きたいのはそういう話ではないのである。

「あー、まあ、例えばそうなったとしてだな、俺の待遇はどうなるんだ?家の外には出られるのか?仕事はどうなる?」

そこまで言うと俺が聞かんとしている事を理解したのか、若干残念そうにしながら落ち着きを取り戻したように語り始める。

「えー…こほん。ええと、そうですね、○○さんが私の事を愛してくださるのでしたら外出されるのもやぶさかではありませんよ。もちろん、本音を言えばずーっと私の傍に居て欲しいですが夫婦とは信頼が大事ですからね。あ、如何わしいお店や美人な看板娘なんていうのが居るお店は嫌です。駄目とは言えませんがすっごく嫌です。あと、お仕事の方ですが、私の事を撫で撫でして私のやる気維持を…いえ、いえ。冗談ですよ。そうですね、言ってくだされば御用意はしますが…私はお勧めしませんよ。定期的に○○さんに会えないと私の精神が持ちません…あ、でも、お仕事から帰って来られた○○さんを労るというのも悪くない…」


638 : ○○ :2016/03/08(火) 11:06:42 qdA08wg6
最後の方はまたもや妄想の世界に入っていたが、つまりは俺の待遇は改善されるらしい。
そうとわかると、なんだか急にどっと疲れた。
俺は今まで何と戦っていたのだろう。
元より阿求ちゃんの事は嫌いじゃなかったし、この子とならなんだかんだやっていけそうな気はする。
だとすると、最後に聞くことは決まってるとして、あとは何か聞いておくことはあっただろうかと思案し、ふと一つの事が思いつく。

「そういえば、阿求ちゃんって俺なんかのどこをそんなに気に入ったわけ?」

すると、阿求ちゃんは険しい表情を作る。

「…まず、自分の事を『 なんか』だなんて言わないで下さい!…すみません、私ったら…ええと、そうですね、始めに○○さんに興味を引かれたのは、貴方程気安い人がいなかった、というものがあります。私はこんな生まれですから、対等に話してくれる方は稀なんですよ。異性だと、貴方が初めてかもしれません。あとは、そうですね、話していてとても楽しいと思いました。私の詰まらない話を楽しそうに聞いて下さるのがとても嬉しいと思いました。私を叱咤して下さった事をとても有難く感じました。他にも語り切れない程たくさんの事がありますが、私は、○○さんと一緒にいる時が、一番落ち着けて、同時に最も気分が高揚するんです。恋というものを本当の意味で知ることが出来たんです。だから…私は他の誰でもない、貴方の事が大好きなんです」

告白された。
いや、よく考えると質問からして告白しろと言っているようなものだったのだが、それでも嘘偽りのない少女の気持ちに顔が赤くなるのを感じる。
なんというか、素直に嬉しかった。
愛おしささえ感じた。
だからこそ引っかかる…最初から聞こうと思っていた最後の質問だ。


639 : ○○ :2016/03/08(火) 11:09:12 qdA08wg6
「嬉しいよ、ありがとう…けど、じゃあ、どうして俺をここに閉じ込めたんだ?」

俺の言葉に阿求ちゃんの表情が曇る。

「…それは、本当に申し訳なく思っています。ですが、私にはこうする他なかったんです!貴方はその気安さから外来人であるにも関わらず里の人達からも好かれていて、綺麗な女性とも仲良く話したりして…でも、私はそんな方達より綺麗じゃないし、子供だし、話せる事だってただ知識をひけらかすだけだし…他の人に取られてしまうんじゃないかって、怖かったんです…」

「そうだったのか」

先程とは打って変わって阿求ちゃんは涙を浮かべて心情を吐露する。
聞いてしまえばどうという事はない。
自分への自信のなさと独占欲、焦りなんかが重なった事による行動らしかった。
強い愛情を持つ女が男を手元に置きたがる理由なんて、少し考えたらわかりそうなものだったが、軟禁というものを人道から外れた行為だとただ否定して拒絶しかしなかった事が悔やまれる。
もう少し阿求ちゃんの事を見てやれば良かった。
まあ、今となっては全てがわかったのだからこれからやり直せば良いのだと前向きに考えることにする。
ならばもう心は決まっているのだし早く安心させてやろう。

「仕方ないな。今後はそういうのは無しにしてくれよ?」

「…え?」

涙が溢れ頬を濡らした阿求ちゃんが顔を上げる。
目は真っ赤に充血していたし、鼻水も垂れていて可愛い顔が台無しだ。

「ええと、つまりだな。阿求ちゃん程の熱烈な愛とは言えないかもしれないけど、今日話を聞いて、少し考えてみて、阿求ちゃんと一緒に居たいと思ったんだ。だからもし、それでも良かったら末永くよろしく頼む」

真っ直ぐ阿求ちゃんの目を見てそう言い切る。
拒否されないだろうとわかっていても一生を左右する告白の緊張感は凄いもので、口は渇き心臓の動きは過去最高かもしれない程だ。
そんな俺のいまいち締まらない告白を受けた阿求ちゃんはしばらく呆然としていたが、言葉の意味を理解してきたのか、涙は溢れ口を手で覆い小刻みに震えだした。
しかし、当然といえば当然なのだが、俺の阿求ちゃんからすれば突然の心変わりを信じることが出来ないのか、怯えのようなものも含んだ瞳でこちらを見てくる。
なので、安心させるように腕を広げ微笑み、出来るだけ優しい声色でこう言ってやる。

「おいで、阿求」

すると、堪えきれなくなったように阿求が飛びついてきた。

「ごめんなさい!○○さんごめんなさい!好きになってしまって!こんな事になってしまって!酷い事いっぱいしてしまって!けど、好きです!大好きです!」

後は嗚咽が混じりもはや言葉になっていなかった。

しばらくして、ふと、部屋の外から複数の気配を感じそちらを見てみると、襖の隙間から使用人達が嬉しそうにこちらを覗いていた。
そういえば、阿求はけっこう声を荒らげていたなと他人事のように思う。
そう考えると後で使用人に色々と説明したり、今後の事を阿求と話し合わないといけないのである。
前者はともかく、後者はけっこうきっちりと決めないと後々揉める事になりそうだと予感する。
まあ、しかし、その時の事はその時考えれば良いかと、俺は思考を放棄して俺の腕の中にいる愛しい少女をより強く抱きしめ頭を撫でるのである。


以上です
文章書くのって難しいですね
けどどうしても書いてみたかったので変な所も多いかもしれないですが許して下さい


640 : ○○ :2016/03/08(火) 15:13:16 8i64AaKA
この話の流れで一番喜んだのは、女中さんだろうな
下手したら比喩じゃなく、首が飛びかねない


641 : ○○ :2016/03/08(火) 23:41:09 RXn/EE.s
阿求が可愛いかった…
そして舘の人達おめでとう…!


642 : ○○ :2016/03/09(水) 01:01:08 lAJvqijI
阿求ほんと可愛い
初投稿みたいだけど面白かったし遠慮せずまた書いてほしい


643 : ○○ :2016/03/09(水) 21:15:26 RpsKrLwU
>>639
この阿求は監禁がよく似合います。阿求の抑えきれない感情と、
それによって動かされる動きがとてもいいです。

次より投下させて頂きます。


644 : ○○ :2016/03/09(水) 21:16:13 RpsKrLwU
探偵助手さとり5


 彼が彼女と行動してから、暫く経つが、彼女が人でない存在であっても、
彼はその他の超常現象、所謂幽霊とかお化けといった存在を
目撃することが殆ど無い。妖怪同士、何か引き合う物がないかと
彼女にいつか尋ねたことがあったが、彼女は全く無いと断言していた。
では今彼に依頼されているものは、一体何であろうか?
 依頼者の話を聞いていた彼は、助手の彼女に心の中で問いかける。
もし、これが幽霊とかそっちの方面だったら、濃いめの珈琲を
お替りとして持ってきてくれないかと。

 探偵に何とか信じて貰おうと、必死の素振りで訴えかける
依頼者を落ち着かせるために二杯目の珈琲を勧め、自分もカップを傾けると、
探偵は色の付いた白湯を味わうこととなった。彼は彼女の太鼓判を受けて
依頼を引き受ける事としたが、しかし、その場合でもそれ
なりに、-いや、かえって問題が有る-と彼が認識するのは、
依頼を引き受けて前金を受け取った後の事であった。


645 : ○○ :2016/03/09(水) 21:16:54 RpsKrLwU
 今回の依頼は、心霊現象を祓って欲しいという物であった。
本来ならばそれは僧侶や神主の出番であり、探偵の出る幕は
精々が、一緒に心霊スポットに行った友人Aとか、肝試しの途中で幽霊に
捕まった友人Bとか、そういった類いの出番であり、断じて
浮気調査用の興信所はお呼びではないのであるが、残念ながら
古明地探偵事務所は千客万来には九千九百飛んで九程足りず、
今回の依頼を引き受けることとした。

 出発前に彼は探偵の七つ道具の一つ、薄型カメラをポケットに
滑り込ませ、はて今回は何が必要かと考える。幽霊に塩は効くので
あろうか?それとも最近インターネットで話題の、ファブリーズの
方が良いのであろうか?左手に塩、右手にスプレーボトルと、何とも
奇妙な格好で固まりながら、彼は数分考えるのであるが、
やがて助手の着替え終わった姿を見て、両方を置いて出かけるのであった。

 ちなみに、探偵が右かを選ぶと、幽霊が彼女よりも脅威であり、
彼女を信頼してしていないというように考え不機嫌になるし、
左を選ぶと、幽霊は関わっていないと言った彼女を信頼していない
という事で、へそを曲げるので注意が必要である。要は自分が居れば
十分であると、言外に主張しているのであるが。


646 : ○○ :2016/03/09(水) 21:17:49 RpsKrLwU
 肝試しに行った翌日から、何やら部屋の周りでうめき声が聞こえたり、
人魂が窓の外を漂ったり、風呂場に何やら女の長い黒髪が落ちていたりと、
心霊現象が積もり重なり、依頼人の精神に酷く堪えたようである。
 探偵は依頼者の部屋を見回りながら、シャーロックホームズの弟子のように
ルーペで彼方此方を観察したり、埃を摘まんで手のひらで分解をしていた。
素人が見れば、幽霊の気配がないかを探るが如く、懸命に働いているようで
あったが、実際の所は探偵は其れらしく振る舞っているのみであり、
肝心要の調査は助手だのみであった。
 彼が心の中で、さとりに何か見つかったかと尋ねると、
彼女は風呂場に落ちていた、髪を持って来て探偵に献上する。
「所長の仰っていた通りに、女の髪は鋏で切った跡がありました。」
との彼女の言葉に、探偵はさも自分が推理していたように、
「そうか。」
と短く答えるのであった。長く喋るとボロがでると理解しているのは、
彼の数少ない進歩かもしれない。

 現場での調査を終え探偵は、当日肝試しに同行した友人達に話を聞くこととした。
彼の友人達に肝試しの話を聞いた後、さとりはわざわざ友人達から、依頼者の
元彼女の連絡先を聞いていた。その行動に勘が働いた彼は、友人達と
別れた後で、早速さとりに話しかけた。
 「ええ、次に行く元カノが犯人です。」
あっさりと犯人を突き止めた彼女に、幽霊の仕業だと半分程度は信じていた
彼は驚きを示す。-信じていなかったの?-と言わんばかりの目が向けられた
ため、足下で踏みつけてしまった地雷を不発にすべく、彼は彼女の腰に
腕を回して抱き寄せることとした。


647 : ○○ :2016/03/09(水) 21:18:32 RpsKrLwU
 鋭い眼差しから一転して、緩んだ顔をした彼女と共に、探偵は元交際相手との
待ち合わせ場所の喫茶店に赴く。二人が喫茶店に入った瞬間に、彼女の顔が仕事用の
キリリとした顔つきに変わり、探偵は彼女のやる気が十分であることを確認した。
-これならば彼女が全て片づけるだろう-と考える辺り、彼も中々の根性であるが、
隣の女にすれば、あばたもえくぼなのであろう。

 さとりは目の前の女性に、依頼者の周囲で心霊現象が起きたことを
話し、依頼者が貴方を振ったことが原因でないかと問いかける。
相手の女性は、幽霊なんぞに興味は無いと撥ね除けるが、続くさとりの
言葉で目を見張った。
「依頼者との間にお子さんがいらしましたよね?名前は××。」
数秒考えて、元カノは動揺を見せぬよう短く答える。
「それが何か?」
「お子さんのことを依頼者が謝罪されれば、心霊現象が止む気がしまして。」
バレるはずが無い、生まれてこなかった子の名前を暴かれて、彼女は何処かで
名前が漏れなかったかを必死に思い出そうとするが、一向に思い出せない。
なにせ共犯者の依頼者の友人達にすら、名前までは言っていないのだから。
 頭隠して尻隠さずの諺の通り、顔の強張りは押さえつけられても、組む足を
頻りに変える彼女に、さとりは言葉を続けていく。
「これ以上心霊現象が続くならば、此方としても警察に被害届を出そうかと。
内々で相談しましたら、最近物騒なのでパトロールを増やして頂けると。」
素人集団ではプロの目をかいくぐることなぞ、まず不可能。そう考えた元交際者
は、さとりの提案を受け入れることとした。

 喫茶店のテーブルにて涙を貯める彼女に対して、帰り際さとりは言葉を掛ける。
「そういえば彼、他にも謝られるようですよ。」
彼との思い出が蘇っていた女性にナイフを付き刺し、さとりはそのままドアを
開けて出て行く。ゴミはゴミ箱へ、死者は墓場へ、さとりの優しさのように
探偵には感じられた。


648 : ○○ :2016/03/09(水) 21:19:16 RpsKrLwU
 所で、ミシェル・フーコーは哲学者であるが、彼は監獄のシステムについて
言及している。即ち看守が、薄暗い監視棟の中から鉄格子の中の囚人を監視すると、
囚人側からは看守が檻を見ているかどうか判断できず、常に看守に見られていると
思うようになると。パノプティコンと呼ばれるこの仕組みは今も随所に生きている。
監獄は元より、学校、会社、そしてさとりの他称婚約者である、どこかの探偵にも。



以上になります。


649 : ○○ :2016/03/10(木) 23:50:35 6Q9qOAj2
評判が良すぎて、いわゆる普通の探偵社からも泣きつかれそう
今回の心霊騒ぎみたいに


650 : ○○ :2016/03/14(月) 15:32:15 14vuzbEg
マミゾウ「付き合ってくれた日数掛けるいくらかを、減額してやる」

これ言ったあと、表情は超笑顔だけど。腹の底ではやっちまった感からもんどりうってそう


651 : ○○ :2016/03/14(月) 19:54:29 rV1B1Hzw
>>650
打てる手のなかで下から二番目くらいの悪手だもんなそれ
でも、そこから軽蔑しきった目で見てくる○○に
「ち、ちが、違うんじゃ! まて、待って、待ってくれ○○! わ、わしは、そのほんとは……」
ってアワアワなるババアいいよね。
勿論目のハイライトは死んでる。
普通ならここから逆転してマミゾウ大勝利 希望の未来へレディーゴーだけどヤンデレスレなので、○○は去ってしまう。
○○もほんとはマミゾウを憎からず思ってたけど失望しちゃったんだ。
そっからは弱々しくなったマミゾウが朝と言わず夜と言わず付きまとうようになるんだ。
最初は強気で突っぱねてた○○もあんまりにも付きまとうマミゾウにちょっと僅かに怖くなってきて、つい壁ドンしていい加減にしてくれ!ってどなっちゃうんだけど、これが不味かった。
マミゾウは本当に○○が好きだったんだよね。
冷たくされても、無視されても、近くに居たかったんだ。
だから、○○からのリアクションは底が抜けるほど嬉しくて

ふひ

って笑っちゃうくらい嬉しかったんだ。
今にも割れそうな瞳で笑うんだ。

「あ、あひひ、ひひ、ひ、○○がワシに、こんな近くに、○○が……うれ、しい、よぉ」

て、泣き笑いするんだ。
そっからは○○があひっ!?だよ。
もうグイグイくる。
まるで地獄の亡者のように不気味にすがり付いてくる。
こうなると肩を掴んで引き剥がそうとしても「○○がワシを抱いてくれた!」と逆に喜ばれる始末
ヤバイ級のピンチなんだけど時既に時間切れ。
遂には愛される悦びに震えるマミゾウに拉致されてどっかにつれてかれるんだろうなぁ
可愛いな、マミゾウ。


652 : ○○ :2016/03/14(月) 22:49:56 4BogLJrg
直接的な病み描写はないけど1つ投下



手の中の時計を見て、焦燥感がより大きいものになる。
唯でさえ今回の取材まで漕ぎ着けるのに、渋る彼女に何度も頼み込んだのだ。
遅刻などすれば即刻拒否されてしまうだろう。
それだけはどうしても避けたい。
いよいよ間に合わなくなるという時間になったのを確認したので、私は考えるのを止め、負担を考えず妖力を全身に漲らせて全力で目的地まで翔ぶ事にした。



「記者が取材相手を待たせるとは随分とまあ…」

結局、時間に間に合いはしたが先に待ち合わせ場所で待機していた同僚に嫌味を言われる事になった。
久しぶりの全力飛行で体のあちこちが悲鳴を上げる中何度も謝罪をしていると、同僚…犬走椛の恋人である今回の取材相手、○○さんが私と彼女の間に割って入った。

「まあまあ椛、時間には間に合っているんだからそんなに怒るなって」

「…○○さんがそういうなら」

○○さんの言葉により、椛は渋々と引き下がる。
とりあえず今回の取材が取り消されることは無くなったとわかり安堵する。
その後謝罪もそこそこに手帳とペンを手にして取材を始める事になったが、○○さんは実に丁寧に受け答えをしてくれ、スムーズに取材を進めることができた。
そして、馴れ初めや仲を深める過程といった定番の事は聞き出せたので、タイミングを伺って最も知りたい部分に踏み入る。

「ずばり、椛の愛を受け入れる決定打になったことはなんでしょうか!?」

自分で言うのもどうかと思うが、幻想郷において妖怪などの力を持つ女性はかなり強い愛情を持っている。
特に、妖怪の女と人間の男という組み合わせはその価値観の違いからトラブルが発生しやすい。
椛も○○さんに対して異様と言える執着を見せており、けっこう危ない事もやってしまったりと、私は絶対に上手くいかないと思っていた。
ところが、この椛と○○さんのカップルは何の問題もなくゴールインしたのだ。
今回粘りに粘って取材に漕ぎ着けたのも、その秘訣を知りたかった為である。
そんな私の問いに、○○さんはイイ笑顔でこう答えた。

「そりゃあ、乳だな」

場が凍った。


653 : ○○ :2016/03/14(月) 22:52:53 4BogLJrg
乳、乳房、胸、おっぱい。
確かに、男性というものは女性の胸が好きであるが。
そして、椛もまた胸の大きい娘であるが。
ちらりと椛の方を見ると、彼女は顔を真っ赤にして両腕で胸を庇っていた。
その表情は驚愕といったもので、つまり椛も今の今まで知らなかったのだろう。合掌。

「えーと、乳、ですか?」

「そうだ。椛の乳は俺の理想そのものだったんだよ。大きさ、形、感度、俺はこの乳に会えた奇跡に神を見た」

とんだ奇跡もあったものである。
しかし、○○さんはふざけている様子もないので本気なのだろう。
実際、男を縛るには肉欲に働きかけるのは効果的だと言えるので、これというセックスシンボルがあるのは強みかもしれない。

「じゃあ、椛と同じ乳を持つ女性に迫られたらどうします?」

「いや、そりゃあ椛の乳は完璧だが、俺は椛のふわふわの耳と尻尾も好きだし、ぱっちりとした目も好きだし、朝がちょっと弱くてふにゃふにゃしてるのも好きだし、椛の全てを好きなわけで、乳だけ完璧な女性がいても、知らない人だとなあ」

「あっはい」

例え話をしたら惚気られていた。
ポルなんとか状態である、なんか腹立つ。
しかしまあ、乳の話で混乱はしたがなんとなく考えは纏まってきた。
もう少し詰める事ができれば記事にもなるだろう。

「○○さんって、少し前にしばらく椛の家に監禁されてたと思うんですが、嫌じゃなかったんですか?」

先程述べた椛の取った危ない行動、である。
これを強行するとだいたい拗れる。
私が上手くいかないと思った所以だ。

「嫌だったな」

「それで、なんで恋人でいられるんですか?」

「まあ、その時色々話し合ったし」

「その時に約束事とか作ったり?」

「ああ、したした」

予想通り。
つまりは、そういう事である。
結局の所、ガチガチに相手を縛りつけようとするから反発が起こるのだ。
しっかりお互いを知って、考えを共有し落とし所を作れば最悪の事態にはそうそうならない。
さらに○○さんでいう乳など、男の好みを踏襲しておけば安泰といったところか。
まあ、それを実践できるかどうかはその男女の気質次第なわけで、最終的には運にはなるだろうが。

手帳に今までの要点を纏めていき、最後の一文字を書き終えると目の前でいちゃついていたカップルに向き直る。

「○○さん、椛、今日はありがとうございました」

「俺の話なんかでも役に立ったかな?」

乳魔、もとい○○さんがこちらに気付きそう言いながら近づいてきた。
椛も頬を膨らませて後ろを着いてきている。

「ええ、多少男女間の問題を減らす事ができそうな記事が書けそうです」

「それは良かった。また何かあったら取材してくれてもいいからな」

「はい、また機会があればよろしくお願いします」

○○さんの後ろの椛の目が危険な角度まで吊り上がったのでそれはないだろうな、と思いながら建前上そう答えておく。
まあ、今回の取材で得られる事が多かったのは事実なので、後日お礼の品でも贈る事にしよう。
そうして、挨拶も程々に私はまだ痛む体に鞭を打って私は空に飛び立った。
記事は、明日くるであろう筋肉痛がおさまったら書くとしよう。


ちなみに、その後創った新聞は過去最高の人気で、愛に焦がれた女とそんな女に見初めされた男の両方から多くの感謝の手紙が送られてきた。
また、こういった特集でも組もうかしら。



終わり
ちょっとアホっぽい話を書きたかった、反省はしている。


654 : ○○ :2016/03/15(火) 01:17:06 HpjL/fvs
ようやく戻ってこれたけど、ここを半離れて書いてなかったせいで、ちょっと居心地悪い…。
以前書いて途中で止まったやつの続きを書こうとしても、文体が違って違和感しかなくて…。
…頑張るべき?


655 : ○○ :2016/03/15(火) 07:57:27 o5oJLbR6
おかえり。
気にしすぎよ。がんばって


656 : ○○ :2016/03/15(火) 12:26:31 tYlVM48s
>>652
乳魔で笑った
この○○は人生謳歌してるな

>>654
好きにしていいんよ
大切なのは書きたいか書きたくないかだけよ


657 : ○○ :2016/03/15(火) 22:39:25 OwP7zyIA
>>651
ところで、打てる手で最悪ってなにかしらん?
付き合わないと、借金を強制的に取り立てると脅すとか?


658 : ○○ :2016/03/16(水) 00:14:25 gMnIVZeE
うーん、言い方しだいだけど、「いくら出せば自分のものになってくれる?」系かな
前のは自分を売ってたけど、これは○○を金でかう。
借金があるからこんがらがって同じに見えるかもだけど、全然印象が違うんじゃないかな


659 : ○○ :2016/03/17(木) 22:59:39 7YrYdFvg
なるほど。なんか醤油ラーメンが好きな人が、
「自分豚骨ラーメンが好きなんですよ。」と別の人に
言われたような感覚がした。そうきましたかみたいな。

 中々文章を書いていると、作品を自分好みに作るから、
自分にとって傑作でも、反応が薄かったり、逆にそんなに
自分が良いと思わなくても、反ってそっちの方が反応が
良かったりすることがあって、??となることがあるけれど、
やはり個々人の味付けみたいな差があるなぁと


660 : ○○ :2016/03/18(金) 23:24:48 yDVmmA8I
>>658
651のネタを短編を作っても大丈夫でしょうか?


661 : ○○ :2016/03/19(土) 04:09:27 BA0X.4I.
ノブレス・オブリージュに囚われて(88)
ttp://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=39700&n=78

少なくとも凍える事はなくなった
もうとっくに、リリーが春を告げに来たんだな


662 : ○○ :2016/03/19(土) 06:18:07 xNhqVo7Q
>>660
いいとおもいます。どうぞ遠慮なく
楽しみにしてます


663 : ○○ :2016/03/20(日) 02:23:57 P6BIzQgY
>>661
やはり息子さんには愛だけではなくて、他のものも要る様な気がする
のですが、それが永遠亭に居るのに無いという皮肉。読む時にドキドキ
して読んでます。

次より投稿させて頂きます。


664 : ○○ :2016/03/20(日) 02:25:11 P6BIzQgY
「付き合った日数の分だけ、お主の借金を減らしてやろうかい?」
茶屋の中でマミゾウは唐突に○○に告げる。
何気ない会話の中でふと言われたこの言葉は、借金を抱える彼にとって
みれば、とても有り難く受け取られる筈であると、彼女は軽く考えていた。
 会話の中の軽い冗談、遣り取り、彼女からしてみればいわば、
そういった類いのものである筈であるのだが、彼からすれば酷い
裏切り、不意打ち、そういった類いのものであった。

 其れまでの雰囲気は何処へやら、険しい顔をして無言に
なってしまった彼を見て、彼女も漸く自らの失敗を悟るが、
喋り出した勢いは止まらない。寧ろ毒も食わば皿までと言わ
んばかりに、言葉は踊り出す。
「一日あたり一円として、どうじゃ一ヶ月もあれば、大分減ろう?」
 彼女にしてみれば、彼を其れ程買っているとでも伝えたかったであろうが、
生憎彼には届かない。薄い硝子の器に入った亀裂を塞ごうと手で必死に
割れ目を押さえるも、水は忽ち減ってゆき、遂には押さえつけられた
硝子が砕け散る。-失望した-と彼は彼女に告げ、そのまま挨拶もせずに
その場から去っていった。


665 : ○○ :2016/03/20(日) 02:26:06 P6BIzQgY
 これでも彼は、彼女を憎からず思っていたのである。赤白の巫女の
ような強欲さが美徳である、金を貸すという非情になる輩が
幅を効かせる商売をしながらも、他の人妖とは異なり彼女は理知的で
ありつつ、情がある。彼女の丸い眼鏡から見える目は、
彼にはさながら翡翠や瑠璃といった、綺麗な宝石の持つ人を引きつける
魅力をを放つように、彼は密かに感じていた。
 しかし彼は今の彼女は嫌いであった。国宝と呼ばれるような壺にも
罅が入ると価値が落ちるように、彼女の目にチラリと見えた冷たさは彼をがっかり
させたし、何よりも我慢が出来なかったのは、僅かに浮かぶ厭らしさ
であった。悪人が良いことをすると非常に目立つというが、こと
彼女に至っては、真逆に作用したと言えるであろう。

 一方の彼女も、面構えは堂々たる親分風を吹かせていたものの、
内心酷く狼狽していた-化け狸の癖をして。彼に恩を売り、あわよくば
距離を近づけようとした策が裏目に出たばかりか、彼との仲を
決定的に違えるに至っては、とても平静ではいられなかった。
 普段の温厚な人柄からは全く想像がつかないような、不快感を露わに
して去って行く彼に向け、彼女は縺れる舌で呼びかけるが、彼には
全く届かない。彼の背中は拒絶を雄弁に語っており、離れて行く
後ろ姿を止めることができずに、彼女はもはや項垂れることしかできなかった。


666 : ○○ :2016/03/20(日) 02:26:40 P6BIzQgY
 数日が過ぎ彼が仕事に行こうと扉を開けると、五尺も離れていない所に
マミゾウが立っているのが目に入ってきた。先日の彼女の言葉を思い出した
彼は、そのまま無言で彼女の横をすり抜けて行くが、彼女は色々話しかけてくる。
やれ済まなかったやら、本当はそんな積もりでなかった等という声を聞くと、
彼はかえって腹が立ち、一層足を速めるのであった。
 無視をしていれば、その内立ち去るだろうと思っていた○○であったが、
存外マミゾウは彼に付いてきた。昼が過ぎ、夕方になり、遂には日が暮れて、
家の扉を鼻先で思い切り閉めた後も、暫くは呼びかける声が聞こえていたのだから、
相当であるといえよう。その日は腹の虫が治まらず、○○は酒を流し込んで
眠りについた。
 翌朝、○○が頭痛に苛立ちながら家の戸を開けた時には、五寸しか扉と離れて
いない所で彼を一晩中待っていたマミゾウを見ることとなり、その瞬間彼の頭痛
は一層酷くなった。彼はその日も彼女を無視したが、昨日までの怒りの中に、
幾ばくは恐ろしさも混じりつつあり、仕事をしている最中に幾度も気がそぞろに
なったが、兎も角彼は彼女と目も合わさずに、家に帰ることができた。
しかし家に居ても彼女が呼びかける声が聞こえてきており、それも昨晩
よりも遅くまで聞こえるような気がして、彼は布団を頭から被って、眠りについた。


667 : ○○ :2016/03/20(日) 02:27:17 P6BIzQgY
 翌日とうとう彼女が、扉にしがみつくように立っているのを見たときには、
彼の心臓は大きく飛び跳ねて悲鳴を上げた。そのまま駆け足で家から逃げ
出すものの、彼女はやはりついてくる。一昨日は弁解、昨日は謝罪、そして
今日は懇願になった彼女の声を、後ろの方から絶え間なく聞きながら、
諦めるどころか一層悪化している状況で、彼女から逃れようと彼は夢中で
走っていた。
 彼がふと気がつくと、いつの間にか先日彼女と仲違いをした茶屋に着いていた。
荒れた息を軒先で整えて一息付くと、急に彼の腹の虫が騒ぎ始める。走っている
ときには気づく余裕すら無かったが、そういえば朝から走りっぱなしで、何も食べて
いなかった事を思い出した彼は、蕎麦をすすり食事を満喫するのであった。
 いやに代金が安い事にはついぞ気づかないままに。


 久々にマミゾウから逃れて食事を満喫し、晴れ晴れとした気分で彼が店を出ると、
茶屋の影から誰かが声を掛けてきた。普段ならば気にも留めない声であったが、
気分が良くなっていた彼は、不用心にそちらに近づいていき、
  振り切ったはずのマミゾウに出くわすこととなる。
「やはりきてくれたんだねぇ、お前さんは。」
などと妙に嬉しげに話し始めた彼女を見ると、彼は無性に腹が立ってきて、
壁にマミゾウを押しつけて詰問した。もう二度と関わるな等と強い言葉で
彼女に告げるのだが、彼に話しかけられた事に舞い上がっている彼女には、
全く通じない。終いには感極まって、彼の服に手を掛けて顔を寄せるマミゾウにに
気味が悪くなった彼は彼女を突き飛ばし、重くなった胃を抱えて遁走した。
-三十六計逃げるに如かず-と将棋では言われるものの、大駒落ちどころか
歩三枚しか自分の持ち駒が無いのであれば、あまりにもあんまりで早晩
行き詰まるのであるのだが。


668 : ○○ :2016/03/20(日) 02:28:58 P6BIzQgY

 あまりにも速く走ったせいで、彼は途中胃袋を空にする羽目になったが、
それだけあってどうにか家に帰り着くことができた。しかし彼が家に着く
頃合いを見計らったかのように、またもやマミゾウの声が闖入していた。
 完全に恐ろしくなった彼は、扉を開けて直ぐそこにいたマミゾウの肩を掴み、
大声を上げて前後に揺さぶるのであるが、彼女の頭はぐらりぐらりと揺れ動くも、
彼に触れられて顔に益々笑みを浮かべる姿を見るに至って、彼はある決心をした。
最早殺すしか無いと。


 ○○はマミゾウを家に放り込み、扉を閉める事も忘れてのし掛る。
怒りの形相を浮かべて力を込める彼に、マミゾウは目を見開きつつも彼の
腕を掴むのでは無く、彼の肩の後ろに手を廻して自分の側に抱き寄せてくる。
嬉しい嬉しいとか細い声を漏らしながら、彼女の息を顔で感じること暫く、
彼にとっては長いようで、彼女にとっては短い時間が経った後、動かなく
なった彼女を見て彼は、遂にやったかと思い彼女から体を起こし、
その後手を離そうとするが、指が固まって動かせない。
 そこまで強く力を込めていたことに思わず苦笑いを零し、彼は手の力を抜こう
とするが途端に彼女の胸元に引き戻された。
 安心した所から一転、死んだ筈の相手が生きていて驚く彼に、マミゾウは耳元で囁く。
「お前さんそんな位で、妖怪が死ぬと思ってたのかい?
人間の問屋が卸そうとも、妖怪の借金取りがそうは卸さないよ。」

 男の行方は以後知れず。



以上になります。
651さんのネタを使用させて頂きました。
ありがとうございました。


669 : ○○ :2016/03/20(日) 14:02:21 kJQ.Ea2I
マミゾウって、脆い姿が似合うよな
金貸しの後ろめたさは分かってそうだから、余計に脆いのかも


670 : ○○ :2016/03/20(日) 15:22:06 RSlr9W2.
おお、いいねぇ
その場のノリでの書き込みが形になるとは嬉しいです。
何気に○○の方が殺そうとしてくるのはここでは始めてみた。


671 : ○○ :2016/03/21(月) 00:37:49 DXOs86kw
 誰もが一度は考えたことのあろうネタですが、
投稿させて頂きます。


紅魔赤軍

 綺麗な薔薇には棘がある。良く言われる言葉であるが、
それは紅魔館のメイド長にも当てはまるのかもしれない。

 十六夜咲夜は人里にほぼ毎日行くのであるが、その中身は仕事
半分、私用半分といった案配である。食料の買い出しついでに
恋人の様子を見に行くのであるから、人里に向かう時なんかは
普段来ているメイド服よりも綺麗な服を着て、わざわざ髪も
梳いてから、いそいそと出かけていた。里の人はそんな彼女を
見慣れており、咲夜の美貌も相まって恋人の里人には、興味と
羨望と少々のやっかみも入った視線を送っているのであった。


672 : ○○ :2016/03/21(月) 00:38:22 DXOs86kw
 しかしそんな平和な日常の裏には、色々と思惑が動いている。
彼女は毎日人里まで飛んできて、入り口からは歩いて男の家と
店舗を兼ねた建物に行く。毎日通う程好いているのなら、飛んで
いったりいっその事時間を止めて男の家を訪ねた方が、余程
時間の節約になり、男と一緒に居る時間が増えるものなのだが、
彼女は必ず買い物をして歩いて行く。鬱陶しい雨の日でさえも
歩いて行くのであるから、事情を知らない人からすれば、少し
奇異に思えるだろう。まあ、人から尋ねられた時には、彼女は
里に馴染みたくってとか、知らない人が見たときに驚かない
ようにとかの、口当たりの良い言葉で誤魔化すのであるから、
結局は里の人間は彼女の用事には気づかないままである。


673 : ○○ :2016/03/21(月) 00:41:00 DXOs86kw
 彼女は男の家に着くと大体は、紅魔館から運ばせたソファに
男と共に座り、男にしだれ掛かっている事が多い。紅魔館で
まめに働く彼女からはとても想像できない姿だが、普段の疲れ
を男に癒やして貰っているのであろう。これで交わされる言葉が、
チョコレートの様に甘い言葉であれば良いのだが、生憎チョコは
チョコでもカカオが九割九部入っている、食べると顔を蹙めるような
苦いチョコレートの方がお呼びである。
物の値段や人里の動きといった話題はまだどこの家庭でも話される
事であろうが、有力者の動静や幻想郷にいる他の勢力が、人里で
どうしているかを話すに至っては、もはや家庭を飛び出して職場で
話す会話であろう。それも裏方のお仕事での。


674 : ○○ :2016/03/21(月) 00:41:33 DXOs86kw
 彼女は今でこそ毎日男の所に通い、情報を得るように
なったが、始めからそうであった訳ではない。時折彼の店で買い物を
する内に、彼のことが好きになったのであるが、所詮自分は
妖怪に仕える以上まともな感性の人間では、親しくしたいと思った
所で避けられてしまう事は目に見えていた。そのことを考えると憂鬱
になっていた彼女に、主の吸血鬼が囁く。
主の親友の魔女の秘薬を使い、彼女に好意を抱かせた上で、
衝動を強くし関係を作らせる。恋人になった後は、彼の部屋の家具を
紅魔館から持ってきた物に代えていき、店に伝手を使って取り寄せた品
を卸して彼に彼女を刻み込んでいった。
決め手は運命を操って経営を傾かせた上で、火の車になった帳簿に融通
すれば、彼女無しでは店を維持することが出来なくなり、仕上げに
紅魔館に連れて行って数日「ゆっくりと」過ごせば、心も彼女に
依存することとなった。


675 : ○○ :2016/03/21(月) 00:42:24 DXOs86kw
 紅魔館メイド長である十六夜咲夜には、二つの役職がある。
一つはレミリア・スカーレットの側近、そしてもう一つは
紅魔館妖精部隊の指揮官である。彼女は普段は表の顔しか覗かせないが、
いざ有事となれば、妖精部隊を束ねて指揮を執ることとなる。
それもスペルカードなんて優しい解決法では無く、もっと血生臭い
解決法を使う時にだけ活動するので、弾幕はパワーだと述べる
火力優越主義者の魔法使いなんかは、きっと知らないのであろう。

 そして、紅魔館はその名の通り、赤色をモチーフにしているため、
妖精部隊を知っている人は、時折赤軍なんて侮蔑を込めて呼んで
いたりする。勿論カリスマ的指導者による独裁にはつきものの、
内外に張り巡らされた強力なスパイ網も再現されている。
 共産主義は未だに現代日本でも生き残っているため、当分の間は
幻想郷に入ってくることはないのであろうが、入ってきたときには
きっと面白い見世物に成るであろう。紅い鬼が笑う最高の舞台になるのだから。


676 : ○○ :2016/03/21(月) 00:44:59 DXOs86kw
以上になります。
CIVをやっていると、ついこのネタが感じられました。
ご感想いつもありがとうございます。


677 : ○○ :2016/03/21(月) 21:25:04 p5IKL63E
気に入られた時点で、詰んでるのかもしれないねレミリアの能力は、反則だと思う
霊夢や魔理沙がより反則だから分かりにくいだけで


678 : ○○ :2016/03/21(月) 22:20:22 uwqXTUeQ
ご感想ありがとうございました。
もう一作投稿させて頂きます。

ないた めいりん


 紅魔赤軍は初めからあったものではない。
メイド部隊は紅魔館設立当初からあったものの、それが今のような
軍隊めいた形になるためには犠牲が必要であった。それもかなりの
犠牲が。少なくとも一人の女性は壊れたし、一人の男性は壊されて
しまった。やはり歴史は血で作られるのであろうか?


679 : ○○ :2016/03/21(月) 22:22:03 uwqXTUeQ
 紅魔館の門番に恋人ができた。そう聞いたときにメイド長や館の主は
喜んだ。紅魔館のメンバーの一員として、美鈴の幸せを願っていたし
彼女が良縁に恵まれれば、なお良い事である。
 彼氏は人里に住んでいる里人であり、その内美鈴に会いにちょくちょく
紅魔館に訪れるようになった。

 彼がきてしばらくすると、彼はすっかり馴染んでおり屋敷の
主立った住人には大体顔を覚えられていた。メイド長は元より、主人や
図書館の魔女、更には地下室に居るもう一人の吸血鬼まで訪れており、
いくら最近落ち着いているとはいえ、自制を知らない吸血鬼に一撫で
されれば、只の人間の細首なんぞはお手玉のようにちぎれて吹っ飛んで
いくのであるから、美鈴は彼の護衛として必ず彼にくっついていたし、
フランドールがじゃれついてこようとをしたことを、身を持って止めた
ことは一度や二度では無い。


680 : ○○ :2016/03/21(月) 22:25:06 uwqXTUeQ
そんなにも屋敷の住人に会おうとする彼に、彼女は何故かと一度
尋ねたことがあったが、そのとき彼はいずれは美鈴と結婚して、彼女と
一緒に紅魔館で働きたいと思っているから、今のうちに慣れておきたかった
と答えたものだから、美鈴はとても嬉しかったし、心中では密かに、
もし彼が紅魔館に勤められなかったら紅魔館の門番を辞めて、いっそ
人里で彼と一緒に花屋でも営もうかと考えてさえいた。

 彼が紅魔館を訪れるようになってから数ヶ月後、美鈴はレミリア
から呼び出され、人里にとある妖怪が潜伏し、人里を乗っ取ろうと
していると告げられた。妖怪は密かに里人を自分と同じ種類の妖怪に
して勢力を増やして村の有力者を襲い、従わない者は皆殺しにするつ
もりだという。
 彼女はそんな計画があったことも初耳であったしその上彼のことが
心配になり、先手を打って件の妖怪一派を殲滅する作戦に、自分も参加
させて貰うように願い出たものの、レミリアは頑なに美鈴の参加を認め
なかった。
 予定されているのは奇襲による殲滅作戦であり、何も知らない彼がこの
争いに巻き込まれることを恐れ、美鈴は自分を参加させるように温厚な彼女
にしては珍しく百年に一度のしつこさで食い下がったが、レミリアは冷淡に
撥ね除けていた。
 絶対に引き下がれない美玲が遂に、紅魔館を抜け出してでも彼の所に行くと、
ディーラーに最終通告のチップを積み重ねると、レミリアも遂に美玲に訳を
告げた。

 即ち、彼は妖怪一派の仲間であり、紅魔館の戦力を探りに
来ていたスパイであると。


681 : ○○ :2016/03/21(月) 22:26:50 uwqXTUeQ
 これを聞いた美玲は暫くの間、全身に耳鳴りのような衝撃が走り、
自分の腕や足が自分の制御から離れたように感じた。救いを求めて
レミリアの方を見るが、彼は人間であるが、絶対に生かす訳には
いかないと彼女は告げて、美玲に追い打ちを容赦なく掛けるのであった。

 頭が上手く回らなくなっていた美玲であったが、何とか彼の相手は
自分にして欲しいとだけ伝えると、冷たい薄笑いを浮かべながらあっさりと
認めたレミリアから、期待していると背中を押された。
 励ましであり督戦でもある言葉を受け、彼女は時間まで部屋のベットで
只蹲るしかなかった。

 「裏切り者に死を。」外界ではマフィア映画などで聞く台詞であるが、
実際に聞くとその残酷さは身に凍みて、心をズタズタに引き裂くような
感覚に襲われる。
 しかも自分で彼を殺すことになるのは、何かの間違いであって欲しいと、
ひっきりなしに脳に悪魔が囁きかける。いっそこのまま作戦に参加しないで
おこうかと思ったり、彼を浚って何処かに行ってしまおうかとも思いつくが、
彼女の理性がその決断を許さない。
 相反する感情の中、ひたすらに胸を押さえて獣のような唸り声を
漏らした後、美玲はノロノロと集合場所へ向かっていった。


682 : ○○ :2016/03/21(月) 22:28:58 uwqXTUeQ
 慧音が稗田家一帯に結界を張って重鎮を保護し、妖精メイド部隊が村全域に
展開して妖怪を発見して、其れをレミリアやパチュリーが撃破していく
作戦計画の中、美玲に気を利かせたのか、彼女は彼を担当するのみであった。
 村のそこかしこで火の手が上がり、村人の悲鳴が先ほどまで響いていた中、
美玲は彼と対峙していた。

 中々男を殺せずにいた美玲は、村中に紅い霧が立ちこめしかも段々と霧が
濃くなってきたことを感じ、男の体に手を当てる。それでも涙が零れて踏ん
切りが付かない彼を見て、彼は美玲に話しかけた。
美玲が好きだったのではなく、都合が良い女だったと。

 そしてめいりんはないて かれを××しました


 美鈴は鍵の掛かる机の中に、一つ綺麗な箱を入れている。そしてその箱の
中には、筆が一本入っている。軸は白く、毛は黒く。普通の筆とは
あべこべの筆は、今も大切に仕舞われている。 



ヤンデレ成分が薄いですが、以上になります。


683 : ○○ :2016/03/22(火) 01:50:18 HtENJumU
ヤダヤダー!
美鈴が幸せにならない幻想郷ヤダー!
おのれゆるさぬぞ
一ヶ月待ってて下さい。
本当に寝れないくらい愛してくる美鈴をたべさそてあげますよ


684 : ○○ :2016/03/22(火) 14:42:31 mnv/wXrE
久々にスレに来たら、天才が何人も…ずっと書けなかったし
絶対忘れられてるだろうけど、主人公達の修羅場の続きを


・・・全く、霊夢は鬼か?こんな大量に買い物させるなんて
昨日の宴で色々誘われた時(何度も)小町に呼ばれた気がした
…まあ宴の後、様子がおかしかったから俺もつい了解してしまったが
「…しかし重い。食いきれなさそうな程買う必要があるのか?」
どうせいちいち買い出しに行くのが面倒とかだろう
霊夢への不平不満を呟いていると少し前に団子屋が見えた
…今日も買って帰ろうか(霊夢の分も含めて)
そんな事を考えながら、店に入り注文した
「おばちゃん、団子五つな?そのうち二つは持ち帰りで」
「はいはい。いつもありがとうね」
おばちゃんはそう受け答え、店の奥に行くと、団子の乗った皿を持ってくる
その皿が自分の隣に置かれると、すぐ一本目に手を伸ばす
「いただきます」
半ば適当に言うと、団子を一気に頬張った
んん、やっぱり美味い!…でも、こう食べるとすぐに無くなるんだよな
口に含んだ団子を茶と一緒に飲み込み、二本目に手を伸ばす
・・・ってあれ?残りが無いぞ!下に落ちたのか!?
慌てて下を見たが、団子は無い
どこに行ったかを考えていると後ろから声をかけられた
「そんなに慌てなくても、貴方の探し物ならここにあるわよ?」
誰だと思い振り向くと、大妖怪である紫がスキマから顔を出していた
「こんにちわ○○、元気そうで良かったわ」


取りあえず投稿。需要あるなら続ける(正直自分も忘れてた)


685 : ○○ :2016/03/22(火) 16:57:51 TGBJd6qs
約100レスぶりに来たなぁwww続き期待してますよー


686 : ○○ :2016/03/23(水) 00:12:51 PoYO0lnA
用事が重なって気付いたら…という状況
とりあえず話進めとく

「元気そうで良かったわ?じゃないだろ、今すぐ俺の団子返せ」
「はいはい、貴方は相変わらずね…これでいいかしら?」
紫は適当に返事をして、皿に団子を戻す
っておい、一つしか無いぞ…?
「ああ、二つあったから一つ頂いてるわよ」
「人の盗んな!自分で払え!」
紫は溜息を吐き、少し呆れながら言った
「全く…団子一つで怒鳴らないで欲しいわ」
「最近姿見せなかったくせに、我が儘言いたい放題か」
「あら、人も妖怪も大抵我が儘なものだと思うけど?」
「…それはそうなんだが」
俺は、自分から折れるように呟いた
紫との会話で、こういう風に続くと大抵面倒になる
「それより、前にあったのは…二ヶ月位前かしら?
今まで誰と何していたとか、色々教えて頂戴?」
少しあざとく感じる様な上目遣いで言った
いい加減、本気で怒るぞスキマ女
俺はそんな言葉を心に押し留め、今までの出来事を話した


眠い、明日の昼か夕方に再開する


687 : ○○ :2016/03/23(水) 21:20:24 PoYO0lnA
修羅場の(略

「ふぁああ…昨日騒ぎすぎたかしら?凄く眠いわ」
誰もいない神社で思わず呟いてしまった
○○のがうつったかしら?
というか、遅いわね○○…付いて行けばよかったわ
私は少し後悔しながら、緑茶を飲んだ
そして飲み終わると同時に、魔理沙がやって来た
「よっ、霊夢!遊びに来てやったぜ」
「いらっしゃい。何もないけどどうぞ」
「じゃあ、お邪魔するぜ」
ほとんどお決まりの挨拶を交わして、隣に魔理沙が座った
「あれ?今日は菓子は食ってないんだな」
「昨日の昼ので最後よ。今買ってきて貰ってるわ」
買い出しさせたら必ず団子二つを買って帰るのよね
おかげで団子が癖になっちゃった…お腹周り大丈夫かしら
取ったらいつもみたいに、『俺の団子だぞ』とか色々騒ぐだろうけど
「あ、だから○○がいないのか」
「ええ、帰ってきたら料理を手伝って貰うつもりよ」
「…厳しいな、霊夢」
「居候が家主の手伝いをするのは当然よ」
それに二人で作った料理を一緒に食べられるし…ふふ
「○○が可哀想だぜ・・・倒れたりしてないよな?」
「あら、やけに○○の心配をするのね?」
いつもなら、『ほどほどにしとけよ?』位なのに
私に聞かれた魔理沙は照れながら答えた
「そりゃ…当たり前だぜ」
そして私は、その事を聞いたのを後悔した
「私は…○○の彼女だからな!心配するのは当然だ!」
開き直ったように魔理沙が大声で言った
その時持っていた湯のみが、ピキリと音をたてた


688 : ○○ :2016/03/24(木) 01:24:47 SydyLQjg
「・・・・・・・・・・え?」
今、何、言ったの?
魔理沙が、○、○の、彼女?
どういう・・・どういうこと?
私は、動揺を抑えながら質問した
「いつ、どっちから告白したの?」
「いや、それが一昨日の夜の事なんだが」
「一昨日・・の・・夜?」
「ああ!」
魔理沙はそういって笑顔で庭へ飛び出し、空を指した
「綺麗な星の下で、不器用に、愛してるって言ってくれたんだ!」
それは無い
だって私は一昨日の夜、○○と…一緒に寝ていたから
「そして私達は、甘いキスをしたんだ」
魔理沙がそこまで言ったとき、私は気付いた
魔理沙の目に、光が無い
「そしてそのまま…っと、これ以上は秘密だぜ?」
ああそっか
魔理沙は嫉妬で、妄想と現実が混ざっちゃたのね
じゃないと、私の前で、○○の恋人になったとか言わないわ
そう理解した途端、抑え切れない笑いがこみ上げて来る
「?どうしたんだ霊夢」
「いや?ふふっ。そんな夢を見るなんて可哀想ね?魔理沙って」
「夢?何言ってるんだ?」
どうやら魔理沙には、意味が分からないらしい
私は笑いながら、皮肉を込めて魔理沙に事実を教える

「○○と愛し合っているのは私よ、妄想家の可哀想な魔女さん」


…書こうと思った物からずれてきた…別に良いか


689 : ○○ :2016/03/24(木) 21:57:56 fAV3kNtY
リアルがきつくて書く時間がねぇ…

華扇がもしも鬼だったら
(前回までのあらすじ
華扇ちゃんの彼氏は鬼だけは大キライ
ちょっとー! 私鬼なんですけどぉー?↑……え、マジで?)

気がつけば、華扇は自らの仙人空間へと帰っていた。
あれから、どう取り繕って○○のもとから離れたのか、それすら思い出せずにいた。
……いや、正確には違う。思い出せないのではなく、そこへ割くリソースが全く無いのだ。
ほんの数刻前のことを回想する余力もないほど、華扇の精神は疲弊していた。

(嫌、嫌嫌嫌……っ そんな嘘よ、嘘よっ お願い、構わないから嘘だと言って! 嘘ついても怒らないから、怒りませんからっ嫌いやぁ……)

両手で頭をハサミ潰すかのような勢いで締め付ける華扇。
鬼の剛力で締め上げるのだ、痛みが無いわけはない。しかし、その激痛がささやかな支えとなって発狂しそうな華扇の心を繋ぎ止めていた。
耳から、目から、まさに七孔噴血するように、自身を内から構築していたものがグズグスと液状化して流れ出す。
そんな破滅的な感覚に華扇は苛まれていた。

華扇を構築するもの。

それは即ち○○な他ならない。
○○との思い出、○○との今、○○との未来。
それらが穢れ、腐り落ちて永遠に喪われてしまう。
永い時を生きてきた華扇が、これほどまでに執着し、求め、そして受け入れられたことなど今までなかった。
生まれた理由、妖怪として発生した原因……
それらを「○○と逢う為」と見出だしていた。
そして○○と逢う、話す度、その想いは確信へと育ち、温もりを感じる度に無限に沸き上がる熱いものに打ち震えた。
それが「幸せ」と呼ばれる生の到達点だと、華扇は実感していた。
輝く世界、なにものにも負けない自信、いや、むしろ負けすらも楽しめる余裕。
明日も生が続いてくことの希望。ともに○○と歩いていく道が先も見えないほど長く永く待っている……

それが全てなくなる。

いや、なかったことになる。
間違いだったと。
何か運命を司る最上位のものが、手違いだったと。
だから取り上げることにした、と。
否応なく、取り上げようとしている。
そして、それを執行するのは他の誰でもない、○○自身。

「さよなら」

そう告げて、背中を向けるだけで、それは滞りなく済まされる。

「嫌!嫌です嫌です!! そんな、そんなの嫌です!うぎ、うぎぎあアアアアァッ!!」

その絶叫は老婆めいて枯れ果てた、肉を割くような絶望の遠吠えだった。


690 : ○○ :2016/03/25(金) 02:08:20 waxUm7a.
>>688 努力家の魔理沙と天才肌の霊夢。二人の違いが狂気に
栄えているように感じます。

>>689 仙人としての理性と、本能的な欲求。この両者が争うと…
やはり本能に分がありそうな。

次より投稿させて頂きます。


691 : ○○ :2016/03/25(金) 02:09:22 waxUm7a.
探偵助手さとり6


彼女は如何にして彼を手に入れるのか?

 人間には思考があり、万人は自分の自由意志を
其れによって持つ事が出来る。一見、自分の
意思は自分がそう思っているから成り立つ
-つまり自分の好き嫌いで成り立つ-ように
思われるが、実際には例外が存在する。大まかに
分けると二種類、本能に寄る物と、教育に寄る物。

 本能に寄る物は簡単である。食欲等の欲求は最たる
ものであるし、人間や動物の赤ちゃんを見て可愛いと
思うこともまた、その種類のものである。ここで
暴力や殺人に対する嫌忌感は、これに入ると思われるが、
此方は教育によって植え付けられたものであると言えよう。
 人には親切にしましょう、真面目に働きましょう、と
いったこれら教育によって習得するものは、単純化すると、
ルールに従うという言葉に収斂する。これら規則は法律で
あったり、道徳であったりという形をとって、人間の
思考の中にインプットされている。


692 : ○○ :2016/03/25(金) 02:09:59 waxUm7a.
 別にこのルール自体が悪い訳ではない。人を殺すことは
悪いことだという規範が無いと、どこぞの世紀末世界(ポスト
アポカリプス)が到来するであろうし、現に妖怪なんぞは
人間を殺すことが悪いことではないと思っているが故に、
緑色の巫女に退治(そして時には処刑)されているのであるから。
 ところで人間の中にルールは如何にして埋め込まれるのか?
これは刷り込みに近いと言えよう。生活の中にルールが当たり前に
存在し、是を守ることが生活する上で必須であるため、
人はこのルールを自明とするのである。

 昔ミシェル・フーコーはこの流れを監獄を用いて説明した。
薄暗い監視塔から明るい囚人の檻を監視すると、囚人の方からは
監視者を見ることができず、彼は常に見張られていると思う様に成る。
このパノプティコンのシステムは現在も刑務所に監視カメラとして
取り入れられているが、今回は囚人の心理に注目したい。彼は
監視者の目線を常に意識していると、そのうちに常に見張られていると
思う様に成る。そして自分の思考の中に監視者をダウンロードし、
自分で自分の行動を監視して、監視者の希望に添うように行動する
様に成る。


693 : ○○ :2016/03/25(金) 02:10:33 waxUm7a.
 フーコーはこの一連の流れが、学校や工場のような一般の
世界にまで浸透しているとし、この見えない強制力をバイオパワー
と呼んだ。学校では規則を自分から守ることが良いとされ、
守らない子供は規則を守るように指導されている。工場では
マニュアルに従う事が求められ、従わない者は解雇されることで
ルールを自発的に守るように脅迫されるのである。
 もっとも、このルール自体は社会を維持したり、能率を上げたり
するためにはある程度は必要であるのだから、結局は程度問題に
なるが、やり過ぎるとどこぞの吸血鬼のカリスマ統治を超えて、
ジョージ・オーエンも真っ青の1985が到来するのである。

 今まで長々と話して来たのは論文を書く為ではなく、彼とさとりの
関係を紐解くためである。さとりは彼の心を覗くことが出来る為に、
彼は常にさとりの意に沿うような行動を執っているし、最近は
さとりの意思に沿うことを、無意識レベルでやっている。本人
がおかしいと思う事も無く、いつの間にか彼はバイオパワーに
浸食され、自分の意思をゆがめられているのであるが、彼は
其れには気づいていない。

 まあ一番の問題は、自分が縛られていることに心の奥底
では、本当は気づいているが、敢えて自らをその環境に
置いていることであるのだが。-心の深淵は暗く深い。


694 : ○○ :2016/03/25(金) 02:12:14 waxUm7a.
以上になります。
休みの前の日の夜は、つい夜更かしをしてしまう。


695 : ○○ :2016/03/25(金) 06:25:46 H3itKOfw
バイオパワーすげえな
なんか5人組で使い手がいたり、洗濯用洗剤みたいなネーミングだが


696 : ○○ :2016/03/25(金) 20:13:40 9yFUfcuA
流石!探偵さんいい仕事するね
さて、これからこの修羅場をどうしようか…

「・・・・・・はぁ?」
霊夢の言葉を聞いて、冗談が過ぎると思った
「分からないの?魔理沙が○○と恋人っていうのは夢なのよ
だって私は、毎晩あいつと一緒に寝てるのよ?
あんたの所に行く暇なんて無いわ」
霊夢がそう言った一瞬、私は自分の耳を疑った
「霊夢、ふざけるのもその位にしろよ?」
「ふざけてなんていないわ?」
霊夢の発言が終わってしばらくは、辺りは静かになった
「「ふ、ふふっ、あはははは!」」
それが何だかおかしくて、私と霊夢は笑っていた
その時、強い風で私の帽子が吹き飛び、地に落ちた
   
その瞬間、私達の手は眩しい位に輝いた


697 : ○○ :2016/03/26(土) 02:36:07 huPzCKpk
修羅場の…面倒になってきた


「…というのが今日までの出来事だ」
日が真上からずれた頃、やっと話が終わった
といっても、ただ日常の手伝いとかを話しただけなんだが
思い出を話すほど、ここでの色んな事が少し懐かしく感じる
「…はぁ、やっぱり馬鹿ね」
「なんだよ。どこかおかしかったか?」
紫が憐みの視線を送りながら溜息を吐いた
おい、そんな目でこっち見んな。地味に刺さるんだぞ?その視線
「鈍さや思わせ振りもここまでくると、一つの才能ね。
全く、霊夢と魔理沙が可哀想になるわ…」
「意味が分からん」
「…一応聞くけど、本当に何も解ってないの?」
冗談でしょというような顔をして、紫が問い詰めて来る
「そんな事言われてもな…駄目だ分からん。で、答えは?」
紫は何かを考えついたらしく
「私がその答えをいうわけにはいかないわ
その代わり、貴方に二つヒントをあげる」
そんな事を言いやがった
「ヒント?」
クイズ形式か?直接言えよ、面倒くさい
「ええ、貴方でもわかりやすいよう二つだけね?
まずは一つ目。初恋を知った女は、大抵一途で嫉妬深いという事
そして二つ目。ここの女性は縁や愛に、心が飢えているという事」
「・・・・・・・・」
言いたい事は大体分かる。だが、根本的な事が分からん
「おい、もう一つ」
そこまで言った所で、博麗神社の方から大きな爆発音が響いた

眠いからお昼くらいに投稿します…長くなってすいません


698 : ○○ :2016/03/27(日) 16:53:14 E.lS2w0o
長くてもそんなに悪くはない
長編さんなんて、何年も書き続けてる

純狐「私の息子にならないか?」
この方が言うと、多分冗談では言っていない。本気の言葉
ヘカーティアも、恐らく煽る方


699 : ○○ :2016/03/28(月) 23:41:32 lbSVy0WA
おう!?暫く来ない間に良作がいっぱいですねー。続きが思い浮かばなくて書くの止めてたけどまた書こうかな。


700 : ○○ :2016/03/29(火) 04:29:41 W0G8i9Eg
永琳もの書いてみました
まだ途中までで独自設定ありですが良かったら読んでください


八意先生は本当に良い人だ。
この幻想郷に迷い込み化け物に襲われていた俺を瞬く間に助けだしてくれた八意先生。
見ず知らずの俺のために主を説得して永遠亭に住まわせてくれた八意先生。
化け物に襲われた時の怪我を寝る間を惜しんで治療してくれた八意先生。
蓬莱人だと打ち明けてくれたのに化け物だと恐れた俺にも変わらず接してくれた八意先生。
恐怖のあまり思わず手を出した俺を何ともないと許してくれた八意先生。
外の世界に帰りたいと喚く俺に呆れずずっと宥めてくれた八意先生。
脱走して迷った竹林から俺を捜し出してくれた八意。
性欲に負けて襲いかかった俺になすがままにされても笑いかけてくれた八意先生。
過ちから出来てしまった子供を降ろさせようと迫った俺に子供に罪はないと教え説いてくれた八意先生。
そして、今日俺と八意先生との子供が生まれた。
俺はこの子と八意先生…いや、えいりんをまもっていこうとけっしんした。
ほうらいびとになってしまったがそれはささいなことだ。
おれはえいりんのことをあいしているのだから。


701 : ○○ :2016/03/29(火) 04:30:20 W0G8i9Eg
私の運命が大きく変わったのは、恋というものを知ったのは珍しく昼前に患者が途切れた日だった。
これまた珍しく、たまには体を動かすのも良いだろうと思い立った私は、鈴仙に一言残して竹林を散策する事にした。
いくら歩いても変わり映えのしない風景ではあったが、永遠を生きる私にとって気晴らしとしては及第点だ。
それからしばらく歩き回り、そろそろ戻ろうかと思った所で背後から人の悲鳴が上がる。
迷い込んだ人間が妖怪にでも襲われているのだろうと軽く考えるが、歩いてきた道に人は居なかったはずであり、少し不審に思った私は引き返すことにした。
声は思ったより近くから上がっていたようですぐに視認する事ができ、やはりと言うか人間が低級の妖怪に襲われているようであった。
放っておいても構わないだろうが、せっかくの気晴らしで人死にを見るのも詰まらない。
ごっこ遊びの時よりも力を込めると、人間に止めを刺そうとしている妖怪に向けて弾幕を飛ばす。
読み通りの動きで弾幕は妖怪の頭を吹き飛ばし、周りに肉片を飛び散らせた。
周りに他の妖怪の気配が無い事を確認すると倒れている人間の元に足を進める。
遠くからはよく見えなかったが、近づくと人間が成人したかどうかという歳の男だとわかった。
男は何が起こったか分からないというように呆然としていたが、私が近づくと先程負ったであろう足の怪我を庇いながら身構える。
その反応は想定内のものだったので、軽く挨拶をすると敵意が無い事と一通りの現状を男に伝える事にする。
身なりの感じと居なかった所に突然現れた事から、男は外の世界から流れ着いた人間だろう。
話している時の反応からそれは確定的であり、同時にどうしたものかと少し悩む。
幻想郷に迷い込んだ人間は博麗の巫女の元に連れて行けば外の世界に帰してもらえるらしいが、今から博麗神社に行くのは時間が掛かりすぎる。
ならば、姫の返答によるが連れて帰って後日藤原の娘に案内させるのが良いだろうか。
と、そこまで考えた所で視界いっぱいに男の顔が映り込み思わず身を引く。
「な、何よ?」
「いえ、助けていただいたお礼を言おうとしたのですが何か考え事をされていたようなので…」
器用に片足立ちをしながら申し訳なさそうに男が言う。
考え事をしていたからといって目一杯近づくのはどうなのだと思うが、どうしたわけか心が波立つのを感じる。
男の思いも寄らない行動からか、男の瞳から感じられた人里の人間にはない純粋な感謝の念からか。
自分の意に反し頭に血が上り顔が赤くなるのがわかる。
「な、なんでもないわ。それより自分が置かれている状況はわかったわね?」
冷静を保とうとするが舌が上手く回らない。
口が乾き、早口になる。
私は一体どうしたのだろうか。
「あ、はい。ええと、とりあえず人里に行けば良いんでしたよね?けど、さっきのような化物にまた襲われたりしませんかね?」
男は私の説明で全てを理解したようで、速やかに自分のいた世界に帰ろうとする。
当然の事、なのに私は血の気が引く気がした。
「あ…ち、竹林には妖怪が跋扈しているわ。それに貴方は怪我をしているみたいだし、私の家に来なさい。せっかくだから治療くらいはしてあげる」
「は、はい。お願いします」
気がつけば男を必死に自分の手元に置こうとしている自分がいた。
先程とは別の感情から顔が赤くなる。
男も私の勢いに圧されて目を白黒させながら承諾をする。
男が了承した事に安堵し、同時に何をしているのかと恥ずかしくなった。
とりあえず話が固まったので男を永遠亭に案内する事にするが、私は道中心の中で何度も自分に問いかけていた。
本当に私はどうしてしまったのか、と。


702 : ○○ :2016/03/29(火) 04:31:58 W0G8i9Eg
永遠亭に戻ると鈴仙が出迎えに来たが、私の後ろの男を見ると飛び上がった。
それに釣られて後ろを振り返ると、男の足の怪我が妖怪の妖力により酷いものになりつつあった。
気が動転していた私は、男が妖怪に襲われた事を忘れて妖気に対する応急処置を怠っていたのである。
急いで霊力を患部に流し込み妖気を打ち消すと、鈴仙に使う薬の指示を出し男を担いで診察室に運ぶ。
「そんなに痛むならどうして何も言わなかったの!」
運ぶ道すがら脂汗を流し痛みに耐える男に本気の叱咤をする。
処置を忘れたのは私の失敗だが、痛みが強くなるならそれを伝えてくれてもいいだろう。
しかし、男は痛みを堪えながらも申し訳なさそうに答えた。
「すみません。ですが、あの場だと治療も出来ないだろうからあまり騒いでも貴女に迷惑を掛けるだけだと思って…」
その言葉にまたも私の心臓が跳ね上がる。
男の言葉に嘘はない。
ただ私の迷惑になるから妖気に蝕まれる激痛に耐えたと言うのだ。
不謹慎かもしれないが嬉しい、と思ってしまった。
だがこの気持ちは嬉しさだけではなく、困惑してしまう。
この気持ちはなんなのだ、この男はなんなのだと。
しかし今はそんな事をゆっくり考えている時間は無い。
浮ついた気持ちを振り払うように思い切り息を吐くと、頭を治療へと切り替える。
診察室に着くと男をベッドに横たえ、その数秒後に鈴仙が多量の薬品を持って来たので治療を始める事が出来た。
状況が状況なので強い薬と霊力を投与することにはなったが、これなら一月くらいの入院で済むだろう。
鈴仙が後片付けに入り、私も一息つくとベッドで眠る男の顔を覗き込む。
薬の効果で眠る男はもう痛みとは程遠い表情で気持ち良さそうに眠っていた。
それが少し可笑しくて、愛おしいと思い
「…ああ、そうか」
そこでようやく私は気づいた。
私はこの男に恋をしているのだと。
出会って一日もしない男に、何千年と生きてきた私が初恋をしたのだ。
何とも面白い話だろうか。
しかし、私の心は笑えない程に、この名前も知らない男の事で埋め尽くされている。
そして私はその時からある事を完遂させるために頭を回転させていた。
「まずすべきことは姫様の説得かしらね?」
そう呟く私は、今までに浮かべたことのない満面の笑みを浮かべていた。


703 : ○○ :2016/03/29(火) 04:33:48 W0G8i9Eg
食事を乗せた盆を片手に、私は鼻唄混じりに廊下を進んでいた。
今日の診察は終わり、姫様達の食事も作り終えた今からは、私の一日で最も好きな時間が始まるからである。
誰にも邪魔されない、○○との時間。
○○の部屋が近づくに連れて心が高鳴る。
ここに来る前に何度も鏡の前で確認したのに服や髪、最近になって始めた薄い化粧が気になる。
まるで少女のようだと苦笑してしまうが、この初めての感覚はとても楽しく嬉しかった。
結局、○○の入院を姫様は二つ返事で受け入れて下さり、○○は屋敷でも姫様の私室の次に大きい部屋に移された。
○○は自分の待遇に困惑していたが、私の失態だからと言うと素直に受け入れてくれた。
その時に向けられた笑顔が未だに忘れられない。
○○の世話もなるべく私がするように言っているので、この笑顔が向けられるのも私だけである。
そう思うと口元が緩むが、○○の部屋の前に着いたので気を引き締める。
私は○○の事がこの上ない程に好きであるが、○○はまだそうではないだろう。
だから私は大人の女性として接して○○を悩殺してしてしまおうと思っているのだ。
実際、○○が入院してから半月が経ったが○○は段々と私に惹かれているように思う。
今日はどんな方法で○○の気を惹こうかと思案しながら中に居る○○に声を掛ける。
「○○、夕食持ってきたけど入っても良い?」
「あ、八意先生ですか?どうぞ、入って下さい」
襖を開くと○○は布団の中で私の渡した本を読んでいる所だった。
私が部屋に入ると、本を閉じこちらに笑顔を向ける。
「ありがとうございます。八意先生もお疲れなのに」
「気にしなくても良いわ。それよりも、その本はどうかしら?退屈じゃない?」
「とても面白いですよ。本当に何から何までありがとうございます」
「そ、それは良かったわ」
私の選んだ本を気に入ってもらえた。
それだけで心を乱される。
それはとても嬉しい事だが、やられっぱなしでは悔しいので粥の入った器とスプーンを持つと、適量を掬い息を吹きかけて冷まし上体を起こした○○の前に差し出す。
「あーん」
「あの、八意先生?俺は足の怪我なんで一人でも…」
「でも怪我人よね。はい、あーん」
「…あーん」
○○は何か言いたげにするが、最後には顔を真っ赤にしてスプーンに口をつける。
それがとても可愛くて悶えそうになるけれど、なんとか堪える。
○○は結局全て私手ずから食べさせられて、食事が終わる頃にはぐったりとしていたが、嫌がったりしない事がまた嬉しい。


704 : ○○ :2016/03/29(火) 04:34:58 W0G8i9Eg
そして、食事が終われば風呂に入る事が出来ない○○の体を私が拭くのだが、そちらは○○は全く恥ずかしがらず私だけがドギマギさせられる。
男性は下着の内以外なら異性に見られても何も思わないのだろうか。
そんな事を考えているうちに、いつの間にか全身を拭き終えてしまっていた。
それは同時に今日の悩殺計画の終わりを意味するので少し残念に思うが、それはまあ後日頑張れば良いだけなのでよしとしよう。
そして、食事が終わり体も清潔にすれば後は眠るだけであるが、私は○○の部屋からは出ない。
「八意先生、結局初日から夜に痛みはないですし夜通し居てもらわくても…」
「だめよ。この部屋は私や鈴仙達の部屋から遠いもの。もしもの事があったらどうするの」
「ですが、八意先生もゆっくり休まないと体を壊してしまいます」
「私の事は気にしなくてもいいわ。これでも休める時に休んでいるのよ?」
○○からの私を心配する言葉に嬉しさと申し訳なさが込み上げてくるが、○○から離れたくないと思う気持ちから嘘をついてしまう。
まず、私が細心の注意を払って診ているので、夜に悪化するようなもしもは万が一にもあり得ない。
それはどうでもいいのだが、もう一つ、私は今日…どころかここ最近少しも休んでいない。
しかし、私は蓬莱人ではあるが体は人間なわけで、不眠不休で動き続ける事は出来ない。
だから、私は死んでも蘇る事が出来る蓬莱人の特性を利用して、治療を少々と眠る○○を心ゆくまで眺めてから明け方頃に薬で自殺をする事にした。
死から蘇ると疲労さえも全て取り除かれた全快の状態になるので、空いた時間を全て○○の為に注ぎ込む事ができる。
蓬莱人になって長いが、この体に感謝したのは○○に出会えた事とこれの二つだけである。
とまあ、そんなわけで、今日もまた○○をずっと見ていられる至福の時間が始まる。
もちろん、○○が起きる時間に合わせて体温を下げる薬を飲み寝ているフリをするのも忘れない。
そうすれば、○○が冷えた私に今まで自分が使っていた布団をかけてくれるのだから。
と、自分の世界に入っているうちに寝息が聞こえてきて、現実に引き戻される。
安心し切った○○の寝顔にずっと引き締めていた頬の筋肉が緩む。
ああ、私はなんて幸せな女なのだろうか。


705 : ○○ :2016/03/29(火) 04:38:09 W0G8i9Eg
あれからまた少し経ち、もうすぐ○○の怪我が治ろうかという頃、私は悩んでいた。
そろそろ私の気持ちや体の事を伝えても良いだろうか、と。
恐らく○○は私の事を好いてくれているだろうが、蓬莱人という要素は○○には衝撃的なはずだ。
それとなく永遠の命というものについて触れてきたが、○○の反応は興味があるようにも嫌がっているようにも見え、私ですら真意が掴めていない。
しかし、これ以上時間を掛けると○○の意識が外に向いてしまう。
永遠亭に引き止める術はあるが、○○の、私の愛する人の意思を曲げるような真似だけはしたくない。
一人の女として○○には私への愛でここに留まる事を選んでほしい。
そこまで考えると私は悩む事を止め腹を括る。
それならば私には選択肢などありはしないのだから。
「○○、ちょっといいかしら」
「…改まってどうしました?」
その日の夜、眠る為に横になった○○に切り出す。
私の緊張が伝わったのか、起き上がった○○は真剣な表情をしていた。
その顔を見ると、口から出かかっていた言葉が出なくなる。
口の中はカラカラだし、心臓はうるさい位に鳴っているし、手だって震えている。
今までの人生でここまで緊張した事は初めてかもしれない。
しかし、ここで言わなければ何も始まらないと思い、意を決して私は口を開く。
「○、○○。あのね、その、私…実は、貴方が思っているような人間じゃないの」
「えっと、それは、猫を被っているとかそういう話、ですか?」
「いいえ、そうじゃないわ。貴方に良く見てもらえるように努力はしたけどそういう事ではなくて、私は蓬莱人なの」
「蓬莱人?」
「言ってしまえば不老不死者ね」
そこで○○は初めて訝しむような目を私に向けてきた。
それはそうだ。
いきなり不老不死だなんて言い出す人間は不審極まりないだろう。
だから私は○○に証拠を見せるために懐から小さな錠剤を取り出す。
いつも自殺に使っている、使用者を安楽死へと導く薬である。
「見ていてね、○○」
それだけ言うと○○の言葉を待たずに錠剤を飲み込む。
苦しみはない。
ただ、心臓の働きを弱め止めるだけだ。
徐々に体の力が抜け、目が霞んでくる。
○○が倒れそうになる私の体を慌てて支えてくれたのが嬉しかった。
大丈夫、目を開けたら後は私の想いを伝えるだけ、それで私と○○は結ばれる。
そこまで考えた所で、私の意識は深い所へと落ちていった。


706 : ○○ :2016/03/29(火) 04:43:00 W0G8i9Eg
どれほどの時間が経っただろうか。
どこかにあった意識が戻ってきて、体の感覚を認識出来るようになった。
待ち望んでいた時に私は心を高鳴らせて目を開ける。
初めに私の目に映ったのはやはり○○の姿だった。
それが嬉しくて、私は起き上がりざま○○に抱きつこうとし、そして避けられた。
一瞬、何が起こったか分からずに頭が真っ白になるが、避けられた意味が理解したくなくとも勝手に思い浮かんでしまう。
反射的に○○の顔を見ると、人里の人間達と同じ、化物を見る目で私の事を見ていた。
信じたくなかったが、夢だと思いたかったが、次の○○の言葉は私を絶望に追いやった。
「ば、化け物…」
間違えようがない○○の声、その絞り出すような言葉が私の心に突き刺さる。
あまりのショックに突如吐き気に襲われ、我慢出来ずに、しかし死から蘇り胃が空の私は胃液を吐き出した。
吐き気はそれでも一向に治まらなかったが、それよりも○○の考えを正さなければと気力で堪える。
「ま、待って、○○!違うの!確かに私は老いも死にもしないけど、私は貴方と変わらない人間よ!」
「うるさい!老いも死にもしない人間が、化け物じゃなくてなんなんだ!」
必死に言葉を掛ける私に、○○は半狂乱で叫び返してきた。
再び投げつけられた化け物という言葉に心を抉られるが、今はとにかく○○を落ち着けなければ話が出来ない。
力の入らない体を引きずるように這わせて○○の元に行こうとするが、そうすると○○はいよいよ怯えきった目で私から飛び退き叫び出した。
「く、来るな化け物!だ、誰か!誰か助けてくれえ!!!」
その救援から数拍の間があった後、部屋の外からバタバタと足音が聞こえてきた。
足音は複数ありその中に姫様がいると思うと背筋が凍る。
何とか○○を押さえようとするが、それはあまりにも遅すぎた。
「○○さん!大丈夫ですか!?」
襖を蹴破って寝巻き姿の鈴仙が突入してきた。
そして、その後ろには面白そうにこちらを覗くてゐと、表情の読めない姫様の姿があった。
部屋の中に私と○○しかいない事を理解すると、鈴仙は困惑したように私を見てくる。
それに対しててゐは相変わらずその場で野次馬のように突っ立っており、姫様は溜め息をつくと鈴仙を退かせて部屋に入ってきた。
姫様は私に目もくれずに○○の元に行き、そのまま怯える○○を抱き締めた。
その行為に頭に血が上るのを感じたが、ここで下手に動く事がどれだけ私の立場を悪くするかを考えると体に力が入らない。
少しして姫様が○○から離れると、何を言われたのか○○は少し落ち着きを取り戻していたように見えた。
姫様は私達の方に向き直ると早口で指示を出し始める。
「鈴仙、新しい部屋を用意してあげて。それと悪いんだけど今夜は彼に着いていてあげてちょうだい。てゐはこの部屋の掃除。はいはいそんなに嫌そうな顔をしないの…それで、永琳。貴女は私と共に来なさい」
姫様の言葉に鈴仙は即座に、てゐは面倒くさそうに動きだす。
私も姫様の言葉に力なく立ち上がり、部屋を後にする姫様の後ろに続く。
部屋を出る時にちらりと見た○○は、やはり私を怯えた目で見ており、私は今後を思うと出来ないと分かっていても死んでしまいたくなった。

とりあえず以上です
続きは来週にでも投下できたらと思います
それと質問なんですが分けて投下する方は後から投下した分を修正したくなることはないのでしょうか?


707 : ○○ :2016/03/29(火) 22:18:06 f1sRXH4M
ある程度ですが、まとめました。


708 : ○○ :2016/03/29(火) 22:30:43 vF10EpjA
>>707
作業ありがとうございます

>>706
投稿したあとに粗を見つけてしまうなんて、私もしょっちゅうです
でも気にしてたら一個も投稿できないから、あんまり考えすぎない方がいいです


709 : ○○ :2016/03/29(火) 22:44:24 p6kndk7c
>>707
お疲れ様です!ありがとう!

あとで直したくなるのは創作するひとなら誰でもそつじゃないですかね
でも、プロでなし、仕方無いねという許容の心を持つのが宜しいかと。
書いてるときはノリノリでスラッすらでてくるのを書記してても、あとで読み直すと説明不足だったり、なんでここでその例えだした?とか
あとは文末の〆が被ってしまうとかね。あるよね


710 : ○○ :2016/03/30(水) 01:10:14 KXqKuXhc
>>700
疲労回復に躊躇いなく自殺選ぶ永琳しゅごい
始めの○○視点?的にまだ折り返しにさえ来てないボリューム楽しみにしてるぜ

あと質問についてだけどある程度は仕方ないんじゃないかな
投下してしまったものはどうしようもないしそれがどうしても気になるなら分けて投下はやめて全部書いて納得いくものを仕上げるしかないよ

>>707
お疲れ様です!激しく感謝!


711 : ○○ :2016/03/30(水) 22:40:02 5jChXVYg
>>700
やはり男の最後の状態を考えると、
これからどう永琳が動いてくるのか楽しみです。

>>707
ありがとうございます!
自分のSSが掲載されていると、思わずにやけて
しまいます。二度美味しいねるねるねるねのような。


712 : ○○ :2016/03/30(水) 22:41:02 5jChXVYg
投下させて頂きます。

探偵助手さとり7


 彼は古明地探偵事務所の所長であるが、実際の捜査は助手の
さとり頼みである。彼がすることといえば、精々が税金の支払い
であったり、役所の手続きであったりするだけであり、後は依頼
者への応対を偶にする程度である。ここまで探偵らしくないと
もはや、所長を首にしてアルバイトでも雇った方が、探偵事務所
の利益に成るような気がするが、ことはそう単純ではない。
 -座っているだけで価値がある-そういう類いの役割を雑居ビルの
一室で彼は行っていた。


 彼が探偵事務所の所長になる前は、彼はどちらかといえば、探偵の
お世話になる方であった。勿論有り難く無い方でお世話になっており、
探偵やその依頼主の会社からは逃げ回っていた。つまり、友人の借金の
連帯保証人になり、夜逃げ状態であったのである。よく聞く話であり、
年上の人物からそういった類いの話を聞いた際には、連帯保証人には
なってはいけないと、教訓も付け加えられるのであるが、生憎彼にそういった
ことを教えた人物は、根保証については教えることを忘れたようである。


713 : ○○ :2016/03/30(水) 22:42:18 5jChXVYg
 最近の法改正では無効になったのであるが、一昔前は限度額を設定しない
借金の連帯保証人を作ることができたので、友情を金で精算した友人が
逃亡した暁には彼に大きな借金が残っており、やむなく彼も夜逃げをする
羽目になってしまっていた。普段ならば頼ることのできる家族や親族が
居なかったことは、借金取りの取り立ての被害が及ばなかったことを
思えば、一家崩壊するよりかはまだましなのかも知れない。どちらも不幸
であることには変わりがないのであるが。
 アパートに住んで短期の派遣をやっていた後に、ネットカフェ難民となり
コンビニのアルバイトで食いつなぐこととなり、其処にも追い込みが掛けられた
後には治安の悪いドヤ街にて、彼は日雇いの労働者をやっていたが、
諦めの悪い債権業者はしつこく彼の居場所を探っていた。ここまで来ると
もはや漫画やドラマに出演する、闇金業者の仕事であろう。


 さて現代日本において法律上は、奴隷制度は撤廃されているのである
が、人間を無理に働かせる場所が無くなった訳ではない。どこか
人里離れた山奥にある労働場所で、金属バットで武装
した監視役が見張れば、非効率ではあるものの奴隷的労働をさせることが
できるのである。監督と労働者の信頼関係がゼロ処かマイナスに突入して
いるため、どこぞの地下帝国のような単純労働しかさせることができない
のであるが。


714 : ○○ :2016/03/30(水) 22:44:27 5jChXVYg
 そういった場所は悪評が立つものであり、希望して行く人間なんぞいるはず
も無い。ならばどうするのかという問いに対する答えの一つが、彼が
現在受けているように、複数で襲って車に詰め込むこと-要は誘拐である。

 本来ならば工場に連れて行かれる肉牛のように、哀れ連行されてしまう
筈であった彼であるが、まさに連れ込む瞬間を目撃した者がいた。普通の
人間ならば百十番を掛けるか、逃げるかするのであるが、生憎その者は
凍りついたように微動だにしない。一方の襲撃者の方も中断するのではなく、
賽は投げられたとばかりに、小柄な女性であった目撃者を襲って連れ去ろうと
するが、抱きかかえて連れていこうとした人物は皆、地面と熱い
接吻を交わすこととなった。 そうして表にいた人物が全員倒れる頃には、
車内で彼を押さえつけていた数名が仲間の異変に気づき、救助に
向かうが彼らも残らず転倒して、栄えある先任者の仲間入りを無事果たしていった。

動ける人物が軒並み居なくなったところで、彼女は車より細腕で彼を
引きずり出し、肩を貸してその場より離れていった。一方襲撃者の方も気絶した仲間を
回収して何とか逃げ出し、猛スピードで逃げている最中に、「偶然にも」近くの橋の
欄干を突き破って、一人残らず川の藻屑となるのであった。


715 : ○○ :2016/03/30(水) 22:45:13 5jChXVYg
 意識が朦朧としている状態で、彼女に肩を借りながら何とか自分の家まで
たどり着いた彼は、扉を開けると途端に気を失ってしまった。そのまま昼前に
なると彼は全身の痛みと共に起き上がるが、途端に良いにおいが鼻を突く。
ワンルームしかない部屋の中を見回すと、彼女が料理を作っており、食欲が
沸いた彼は、そのままなし崩しに食事を取ることとした。
 彼は彼女に助けて貰ったお礼を告げ、彼女に部屋の中からかき集めた
僅かなへそくりを渡したが、彼女は受け取ろうとはしない。それどころか
彼の今までの事情を知ってか、ある提案をしてきた。普通の人ならば怪しくて
受け入れることは無いのであるが、失うものが無い彼はその提案を受け入れた。
 只より高い物はなく、悪魔との契約には細心の注意が必要である。童話では
登場人物は悪魔や魔神の契約の隙を突いたり、罠に嵌めて大きな対価を得るが、
その悪魔とて彼女の能力は持っていなかったであろう。無意識すら把握する
心を読む妖怪の前では、どんな策略とて無意味となり、本気の彼女を遮るには
物理的な力しか方法はない。


716 : ○○ :2016/03/30(水) 22:47:23 5jChXVYg
 ところで自分に残された物は何も無いと彼は思っている。それはある意味で
正しいのであるが、ある意味で間違っている。彼が持っている物は借金だけで
あるが、彼は今社会でどうにか生活している。-生きているだけで素晴らしい
-というふわふわのメレンゲでできた言葉は、ホームドラマの中ではとても
良い言葉であるのだが、先ほどさとりが彼に言った殺し文句の中では、不穏な
響きを含ませる。特に今彼に見せているように、目と口元が笑っているが、服の
中に隠しているもう一つの目が彼を見つめて離さない時には。
-笑顔は攻撃本能の発露でもある-という言葉が浮かんでくるのであるが
今回は少し異なる。さとりは本当に彼を手に入れて嬉しかったのだから。


 だからついつい嬉しくて、提案を受け入れて貰って手を握った時に
嬉しくて、

彼に催眠を掛けてしまいましたとさ。絶対に自分から離れないように。



訂正したくなるので、先に全部書こうとすると、投下が遅くなる
という問題。


717 : ○○ :2016/04/02(土) 02:24:37 tv5Dusm2
それ分かる…じゃなくて、遅れました
修羅場の続きを

「なっ、何だ?神社の方から聞こえたが」
「…」
俺や里の人間が慌てる中、紫は冷静に何か考えている
って、呑気に状況整理してる場合じゃない!
「おばちゃん!代金ここ置いとくぞ!」
乱暴に小銭を置き、置いていた荷物を持つ
ああ畜生!重たい!
「待ちなさい○○」
「なんだよ!こんな時に雑談する気は無いぞ!」
返事を返して進もうとすると、額を扇子で叩かれた
「痛っ」
「馬鹿ね、送ってあげる。そんな荷物抱えてたら日が暮れるわよ?」
俺が意見を言う前に、紫の前辺りに大きなスキマが開いた
確かにソレなら早いんだが・・・
「…それに入ると、異常なまでに気持ち悪くなるんだが?第一俺は」
「うだうだ言わずに入りなさい」
何かの宣告のように紫が言い放つと同時に、スキマに突き飛ばされた
「ちょ、おま、ふざけんなあああぁぁ!」
そんな俺の悲しい叫びだけが、スキマの中に響いていた

駄目だ、現実が忙しくて書き溜められても書き込めない…


718 : ○○ :2016/04/03(日) 09:32:10 Ehiu0E9Y
いよいよ二人と男のクライマックスに。

投稿させて頂きます。


迷いを断ち切りて


「おう嬢ちゃん、わるいな。これ以上近づいたら、この兄ちゃん
殺さなあかんで。」
人里で立て続けに火付け、物取り、人殺し-言うなれば凶悪犯罪のオン
パレードをここ数日の間に上演した犯人であったが、里の半獣を中心とした自警団に
よって追い詰められ、最後にはナイフを超えて短刀と呼ぶ方が適切な位の
凶器とそれに匹敵する狂気を携え、人質を取って追っ手を牽制していた。
 犯人を刺激しないように離れた所に包囲網を敷き、慧音が自ら最前線に
立って犯人を説得していたが、捕まれば最後と覚悟を決めている犯人は
絶対に人質を離そうとしないし、無論投降もしない。若し人質に刃を突き立てよう
とすれば、慧音もひと思いに弾幕で犯人の頭をぶち抜くのであろうが、
見たところ只の人間である筈の犯人が、何かの能力を使って事件を起こしている
かもしれないと考えると、中々強行作戦は採りずらい。
 妖怪よりも脆弱な人間ならば、此方よりも早く注意が散漫になる
ことと、永遠亭に使いに出した人間が催眠ガスを持ってくること、更には
奥の手として紅魔館から時を止めるメイドを派遣して貰うことを頼み
とし、現状維持をしながら説得を続けるしかなかった。


719 : ○○ :2016/04/03(日) 09:32:59 Ehiu0E9Y
 慧音の中に焦燥が出てきた頃、人質の彼女である魂魄妖夢が現場に
押っ取り刀で駆けつけて冒頭の台詞となる。慧音は自分の側に居た
自警団の隊長に、目線で何故彼女を、周りの封鎖線で止めなかったのかと
強目に尋ねるが隊長は手を振り、物理的に無理でしたと返答する。
おまけに指三本を出してバッテンを付け加えた所を見ると、幾人かは
行動不能であるようだ。慧音は死人が出ていないことを祈りつつ、再び
交渉を続けた。

 半刻から一刻程過ぎ、交渉に手詰まりの様相が見えだした頃、包囲側
に動きが見えた。妖夢がやおら抜刀し、犯人に近づきだしたのである。
犯人もまさか自警団ではなく、単に周りにいただけの人間が自分を
襲おうとするとは思っておらず、数秒出遅れたが妖夢の歩みが遅かった
こともあり、妖夢に声を掛ける。
「おい、嬢ちゃん止まらんかい。」
男が声を荒げるが、妖夢の歩みは止まらない。一歩一歩確実に近づいて行く。
「止まれや。」
男が短刀に力を込め、見せつけるように人質の首筋に持っていくが、
妖夢の歩みは続く。慧音も止まるように求めるが、妖夢は聞いている
様子が無く足運び一つぶれる兆しがない。
「ほんまに殺すで。」
あと一息で間合いに入るという距離で、男が最後通牒を出すとそこで
漸く彼女の歩みが止まった。妖夢は目線を男に向けるが、意外にも
彼女の顔色は平静である。自分に近づいてきた女が冷静そうであった
ことに、犯人は自分が有利になったように錯覚し、彼女に言葉を投げ
掛ける。


720 : ○○ :2016/04/03(日) 09:34:28 Ehiu0E9Y
「ほんまに殺すと思ってへんから、舐めた真似しくさってから、ホンマ。」
犯人は短刀を僅かに動かして人質の皮を切り、僅かに首から血が流れ出す。
ここで妖夢は刀を抜いてから、初めて声を出す。
「ああそう。」
 相変わらずの冷めた声に、犯人が更に人質に切りつけようかと腕に
力を込めようとするが、自分の腕は動くものの手の感覚が無く、空を
切るばかり。犯人が自分の手首が焼けるように熱くなり、赤いものが
吹き出す様子がスローモーションのように目に映った直後、立って居られ
なくなり足が折れて膝から崩れ落ちる。そしてそのときになって漸く、
自分の手と首が切られたことを理解した。


 目にも留まらぬ早業で犯人を殺した妖夢は、犯人の死体を蹴飛ばし
恋人を抱き寄せる。恋人を抱えながら慧音の方に歩いていく顔は
一転し、酷く歪んで大粒の涙が零れていた。


以上になります。短編の方が、やはり気兼ねなく書ける。


721 : ○○ :2016/04/03(日) 16:30:36 B8bPhuq.
喧嘩売る相手を間違えすぎだよ、強盗さん
この場合、交渉人はマジで犯人のためを思ってるんだろうな


722 : ○○ :2016/04/03(日) 19:54:54 d4GRR7b.
物語は書けないけどオチだけは思いついている身としてはこのレベル見ていると箇条書きな流れでも書きにくいな


723 : ○○ :2016/04/03(日) 21:39:51 7IG8RJ2M
>>722
箇条書きのネタやシナリオでも、他の人の意見は参考になりますし、
筆が進めばそのネタで、短編位はいけるかもしれませんので是非。


724 : ○○ :2016/04/03(日) 22:19:41 d4GRR7b.
うん、ありがちなヤツだと思うけどこんな内容なの

1:危篤寸前の父に「死ぬ前にお前(○○)の嫁が見たかった」とつげられる
2:○○にそういう相手はいないのだが父に少しでも心置きなく逝かすため「付き合っている相手ならいる」と嘘つく
3:偽彼女役を探しているときに妹紅(○○としては誰でもよかった)を見つけ、役を頼み承諾される
4:うまく演技が進み順調になるが、推測ながらいよいよ父の最期の日の夜を迎える直前になる
5:この時妹紅は一人自宅にいたが「○○の父が亡くなったら偽彼女役の終了=○○の彼女ではなくなる」と気づく
6:そんなの嫌だと長い間泣き続けていたが、ふとあることを思いつく
7:「○○の父が亡くならなければこれからも○○彼女としていられる」と○○の父を不老不死にしようと○○の父の家に駆け出す

…最終的に成功したかその前に亡くなったかの結果は書かずに駆け出したところで終わりぐらいで考えていた
最近のニュースかなにかで偽彼女役の特集見ていたら思いついたけど、○○本人ではなく願望のため○○以外を巻き込むというのもヤンデレの一種かなと
しかしやっぱりオチが読めそうなのでイマイチな気がする


725 : ○○ :2016/04/03(日) 22:37:44 .ZHhQjxk
いやいいんじゃないかそれ
いいんだよ先なんて読めても
だってさ、SS読んでて一番わくわくするときってさ、「これ絶対�����靴覆辰舛磴Δ茵璽筌丱ぅ筌丱ぁ廚辰討△訥�度予想つくときだから
問題があるとすれぱ、書ききる体力とやだもーなんか違うーってなっても終わらせる開き直りだと思う
これ、ちょっとした中編になりそうだし。
と、途中で止まってる俺がいうのもなんだけどやっちゃえやっちゃえ!


726 : ○○ :2016/04/03(日) 22:50:57 7IG8RJ2M
投稿させて頂きます。

探偵助手さとり7の2


 彼を手に入れてからの彼女の行動は素早かった。
翌日には彼を伴って闇金融の支店に乗り込み、強面の
店長と交渉するのであるが、彼からすると奇想天外な
ものであった。何せ人様から法律違反をしてまで金を
毟り取るような人物が、目の前の弁護士でも何でもない
女性の言うことに全て同意し、借金の棒引きに応じた
ためである。長い間彼らに追っかけられていた彼から
すれば、一体何であるかと思うことであったし、しかも
一番不可解だったのは、店長が出血大サービスを行って
いるのにも関わらず、周りにいる店員の誰もが気にしていない
様子であった。
 まるで日常風景の一部となってしまっている
ように、周りの店員は彼やさとりを気に掛けていない。
珈琲を三個持ってきたその足で電話を掛け、債務者に
恫喝まがいの取り立てをするその姿は、彼には全く理解できない
ものであった。

 狐に摘ままれたような会談が終わり、自由の身になった
彼が家に帰る道すがら、この女性-さとりがひょっとすると
何か大物、例えば彼らの上役にあたる人の家族であるとか
という考えに至った。
 尚、こう考えるしか彼にはなかったのであるが、しかし
昨日の夜に彼女が襲撃者を何人もバッタバッタとなぎ
倒したこと、しかも柔道や合気道といった技すらも使わずに
鎧袖一触といった振る舞いを見せたことには、全く当てはまらず
大外れの推理であるのであるが、彼の迷推理ぶりは遺憾なく発揮
されていると思って納得してもらう他ない。或いはこう言いかえる
こともできる。人は自分の見たいものを見て、自分の信じたいものを
信じるのであると。


727 : ○○ :2016/04/03(日) 22:53:26 7IG8RJ2M
 彼がその考えに至り、彼女に話しかけることは規定事項で
あったが、彼女が彼が話しかける際に先手を打って、暫く待って
欲しいと口止めしてきたことは想定外であった。何せ彼女
に一言も発していないのに、彼女はまるで自分の心が読めるように
話してきたのだから。しかし彼女の提案に乗り、都会の端の
路地裏に入って彼女の話を聞く事とした。本音を言えばこんな
薄暗い場所よりも、綺麗な女性とお洒落に喫茶店でアップルティー
とでも洒落こんでしまいたかったのであるが。

 何故か赤くなった彼女と路地裏に入った頃には、彼の頭脳は
次なる迷推理を開陳しており、彼女が例の借金取りの誰かの
愛人ではないかと考えていた。店長か誰かと組んで美人局に
来るのではないかと、見当外れの推理が暴走していると、とたんに
彼女の笑顔が曇り、そんな訳ないじゃないと呟いた。
 ぽつりと、しかし彼の耳にしっかりと届いた言葉が彼の水面を揺らし、
動揺した彼は言葉にもならない単語を発するが、足は地面に
縫い付けられたように動かない。そのまま暫く腕だけをばたばた
と、弥次郎兵衛がバランスを取るかのように動かすが、その間に
彼女が彼に近づき、顎に左手を添えて背中に右手を押し当て、
思いっきりトラウマを流し込んだ。


728 : ○○ :2016/04/03(日) 22:54:19 7IG8RJ2M
 自分の愛が疑われた事に酷く憤慨したさとりは、彼に思いっきり
トラウマを流し込み、耐えきれなくなった彼が××するのを、
掴んだ顎を器用に操って捌いていた。只の人間が一瞬触れただけで
脳がブレーカーが落ち、シャットダウンして昏倒してしまう
ような物を、脳が悲鳴を上げても構わず流し込み、回路が遮断された
神経回路をこじ開けていたのであるから、借金取りに負けず劣らず
中々に非道である。
 一応彼女の人権(妖怪権?)のために弁解すれば、彼女も最初は
穏やかに自分の正体を彼に伝える積もりであったのである。しかし
彼がさとりが自分を疑ったことが読めると、酷く狼狽し次に激高した。
自分が大事に思っていない人にどう思われても、彼女にとってどうでも
良いのであるが-道を歩く蟻が自分を気にしているかどうか、一々
考えて歩く人間は最近著作が無縁塚に落ちてきた、F博士ぐらいであろう。
自分にとって重要な人が自分を疑うことは、酷く傷つくのであるから。
 勿論そんなことをすれば、彼は自力では一歩も歩けなくなる
から、彼に昨日と同じように肩を貸し、タクシーに乗って
帰るのであるが、昨日と違うのは先程彼に、自分が
妖怪であると刻み込んだことであり、それ故一層密着していることである。
 タクシーの中で彼の手を繋いで介抱しながら、虚ろになった彼に
自分の正体をインストールしていたのであるから、彼には抵抗のしよう
もない。そして家に帰った後に、一晩かけて催眠やら何やらを追加
すれば、彼女にとっての理想の原型が完成である。


729 : ○○ :2016/04/03(日) 22:59:49 7IG8RJ2M
以上になります。

>>724とても面白そうな内容です。
男の方は誰でも良かったという温度と、
狂気に駆られる妹紅の方の食い違いが良いです。
こう、なんとしてでも…というような。


730 : ○○ :2016/04/04(月) 12:46:14 bP0m3pos
自分がヤンデレなのではなくとある東方キャラと○○の恋路の進展のために、
とある東方キャラを無意識ながらヤンデレ化に傾けさせる第三者(の言葉)とかって書くのは難しいだろうね

単純に「○○を別の相手に取られてもいいの?」から「こういう手はどうかな?」とかで進めるのは見かけなくはないけど


731 : ○○ :2016/04/04(月) 13:25:33 fuCCZafo
書き方よりどんなネタが書きたいかが重要(個人論)
自分は度々深夜テンションのせいで理想から回れ右してます…

スキマに突き落とされて約三分。おれはただ落ちていた
ていうか、やっぱりこのスキマの『目』が慣れない
それに、落ちる時の風の感覚が、だんだん楽しくなってきた
「ここの戦闘狂の感覚が移ったのか?…やめよう、悲しくなる」
一人で頭を抱えていると、下の方に明るい光が見えた
・・・・・あれ、このまま落ちたらやばくないか?
俺が思考した時、地面から飛び出る形で投げだされた
山を描くように石畳に激突したため、全身に痛みが奔る
「んぐっ!?」
それが痛くて、口から変な声が出てしまった
「ふぅ・・・博麗神社に到着よ?」
紫が横から、電車を降りるようにスキマから出てきた
「…自分だけ無害か?おい。」
「結界があったのよ。入れただけマシだと思って頂戴」
「はいはい、了解」
そう言われて見渡すと、シャボンの様な壁が、神社を包んでいた
周りを見渡していると、横から短刀を手渡された
「…何のつもりだ?」
「一応のためよ。まあ、どう使うかは貴方次第ね
・・・で、さっき言ったヒントの意味。完全に解った?」
いきなり紫が先程の話を問いただして来た
「いや、半分までだ。根本的な所はまだ解らない」
「これだけ時間があっても理解できないの?」
紫が呆れたように深い溜息を吐いた
「うるさい、言いたい事があるなら速く言え」
「自分で理解してくれないと意味が無いのだけど・・・
まぁ良いわ。では、貴方に一つ聞かせて貰うけどいいかしら」
今まで見た事の無い真剣な表情だった

「もしかして貴方、まだ〈男女三人の友情は成立する〉なんて考えてるの?」

ちょっと、最後の方との繋ぎの部分考えてくる


732 : ○○ :2016/04/04(月) 16:39:38 2SiWz0Hs
例えばさ、営利目的での誘拐に○○が巻き込まれたとして
誰の○○をさらうのが一番ヤバイかな?


733 : ○○ :2016/04/05(火) 03:53:10 9HnzKMjE
病んでるかって言われると微妙かもしれない小話


日課である境内の掃除が終盤に差し掛かると、いつものように鳥居の方が気になり始め、私はちらちらと期待を込めた視線を向けてしまう。
箒で地面を掃く手は止まり、心臓も鼓動を早め、顔が上気するのが自分でも分かる。
そうして何度目になるか分からない鳥居への視線を向けた時、私のこの症状の原因である人が石段を登ってくるのが見えた。
それだけで痛い程に心臓が跳ね、緊張で足が震える。
彼がここに来るのは初めての事ではなく、何十回と繰り返されている事にも関わらず、この瞬間だけは緊張と喜びが振り切れそうになってしまう。
掃除という日課が終わる時、太陽が登りきる頃、私の最も好きで大嫌いなもう一つの日課は始まるのだ。
「よっす、東風谷。今日も来たぜ」
「こんにちは、○○君。そろそろ来る頃だと思ってましたよ」
石段を登りきった彼は私に気がつくと、手を振りそう言いながらこちらに歩いてくる。
それに対して私も手を振り返して挨拶をする。
良かった、今日も声は上擦らなかったし笑顔も自然に出来ているはずだ。
○○君と話すときはいつもそんな事を気にしている。
嬉しくて、恥ずかしくて、嫌われたりしないかと、自分の一挙手一投足に気を配り過ぎてしまう。
まあ、それだけ○○君を好きでいるのだと実感出来るので嫌ではないけれど。
「それで、今日はどんなことがあったの?」
そう言ってから、しまったと思った。
しかしそう思った時には遅く、○○君の顔が嬉しそうなものへと変わるのが見えてしまう。
「ああ、聞いてくれ東風谷。今日はついに名前を呼ぶことが出来たんだ!」
「…そうですか」
彼が嬉しそうにそう言う姿を見て、なんとか笑ってそう返しはしたが、それまで浮かれていたことが嘘のように私の気持ちは沈んでしまっていた。
いや、違う。
そもそも浮かれていた事が間違いなのだ。
彼が人間でありながらこの妖怪の山にある守矢神社に通っているのは、私の気持ちを高めるためではないのだから。
○○君は外の世界からの知り合いである私に、自分の好きな女の子との事を相談するために通っているのだから。
私は○○君が好きだけど、○○君は他に好きな女の子がいる。
なんて面白い話なんだろう、私はただの道化に過ぎないのだ。
先程話を促して、しまったと思ったがそれさえも無意味である。
私が気をそらさせようが、それが目的でここに来た以上○○君はいずれ目的を果たしてしまうのだから。


734 : ○○ :2016/04/05(火) 03:55:35 9HnzKMjE
「霊夢って呼んだらさ、驚いた顔して『名前で呼ばないんじゃなかったの?』って言ったんだよ。これって俺が今まで名字で呼んでた事を覚えててくれたってことだよな!?」
「そうですね、今までの積み重ねは無駄じゃなかったんですよ」
○○君が嬉しそうに好きな女の子…霊夢さんの事を話す度に私の心は締め付けられる。
でも、その一方で大好きな○○君に笑顔を向けてもらえる事がたまらなく嬉しくもある。
私は外の世界にいた頃から○○君の事が好きだった。
だけどその時の私はただのクラスメイトで、○○君と話した回数なんて片手で数えきれるものだったように思う。
それに比べれば今は2人きりで向かい合って話し合う仲にはなれているのだ。
それが、私以外の女の子の話だとしても、外の世界でのただのクラスメイトだった時から考えれば、ずっと仲良くなれている。
なんて、自分の心を誤魔化そうとすればする程自分が惨めになる。
○○君には霊夢さんしか見えていない。
○○君にとって霊夢さんは霊夢さんでなければいけないけれど、私は私でなくてもきっと構わない。
恐らく元クラスメイトの女子だったら、いや、話せそうな女性だったら誰でもいいのである。
事実、この間人里の女の子にも相談しているのを見てしまった。
私に向けられるものと同じ笑顔で話す○○君を見て、きゅっと心が締め付けられた。
でも、その嫉妬心さえも無意味で、私もその女の子もただの相談役なのだ。
悔しい、辛い、腹が立つ、羨ましい。
色々な感情が私の頭をぐるぐると駆け巡る。
「おい、聞いてるか?」
「ひゃっ!?」
突然肩を掴まれて意識を戻される。
目の前には○○君の顔があって、その手は私の剥き出しの肩を掴んでいて、それだけで先程の暗い感情は霧散して、恥ずかしくて、嬉しくなってしまう。
どうしようもないけれど、そんな単純な自分が悲しい。
「顔赤いけど大丈夫か?もしかして無理させちゃってたか?」
「いえ、すみません、ちょっと考え事をしていただけで…すみません、聞いていませんでした」
冷静になると、○○君との会話を蔑ろにしていた事実に申し訳なさが込み上げてきて泣きそうになってしまう。
そんな私を見て○○君がガシガシと頭を掻く。 「いや、俺こそ悪い。毎日押しかけてつまんねえ相談ばっかりしてさ」
「そ、それは違います!私は○○君とお話できて楽しいですよ!」
○○君の言葉には私に迷惑を掛けているというような申し訳なさがあり、そのニュアンスから毎日来てもらえなくなるかもしれないと、思わず○○君の手を握り大声を出してしまう。
「…きゃっ!?ご、ごめんなさい!」
一瞬の後自分の取った行動にはっとして飛び退く。
やってしまった、嫌われたかもしれない、と恐る恐る○○君を窺うと、そこには驚く光景があった。


735 : ○○ :2016/04/05(火) 03:56:52 9HnzKMjE
「あ…」
○○君が顔を真っ赤にして驚いたようにこちらを見ていたのである。
私の見たことのない表情。
驚きと、照れと、緊張が混じったようなそれは、決してただの相談役に見せるようなものではなかった。
私はそれに見入ってしまって、気づかないうちに○○君に近づいてしまい����しかし距離は縮まらなかった。
「あ…わ、悪い東風谷。そ、その、今日は帰るわ、ま、また明日!」
○○君は近づく私から後ずさって離れると、そのまま逃げるように石段を降りていってしまった。
私は何も言う事が出来ずにその後ろ姿を見送るしかなかった。
暫く何も考える事が出来ずにいたが、ある考えが頭を過ぎり、どきりとする。
○○君は、あの一瞬私を女として認識したのではないかと。
逃げるように去っていったのも、霊夢さんへの罪悪感からだと考えると納得できる。
だとすれば����
「く、くふ、くふふふふ…」
笑みが溢れる。
私は勘違いをしていた。
○○君には好きな人がいるから、私には魅力が無いから駄目なのだと諦め霊夢さんを怨んでいた。
しかし、そんなものは私の思い違いによる幻想だったのだ。
○○君と霊夢さんはまだ付き合ってなんかいない。
○○君は霊夢さんの事を好きみたいだけど、だからといって私が○○君を好きになる事も、○○君が私の事を好きになってくれるように努力する事も何も悪い事じゃない。
事実、○○君は私に女を見たのだ。
どうしてこんな簡単な事に気が付かなかったのだろう。
この幻想郷では常識に囚われてはいけないと学んだではないか。
「ふ、ふふ。待ってくださいね○○君。すぐに霊夢さんなんかの事なんか考えられなくしてあげますから」
私の頭には、○○君に振り向いてもらうための案が無数に浮かび、自然と口角が上がる。
霊夢さんにも、他の女にも、誰にも邪魔はさせない。
「くふふ、くふふふ…」
こうして、この日から私の日課はただ楽しみで、大好きなものへと変わった。


原作だと早苗さんはっちゃけてるけど俺は丁寧系早苗さんが好きです


736 : ○○ :2016/04/05(火) 04:08:39 9HnzKMjE
>>726
さとりんほんと可愛い
このさとりんに心も体も支配してほしい

>>732
ヤバイが何を指すかはわからないけど諏訪子はどう足掻いてもヤバそう


737 : ○○ :2016/04/05(火) 16:33:44 VR9n0RA.
誰と繋がってる○○だろうと
その犯人さん、命の保証は出来ないよね

稗田に喧嘩売ったら、村八分所か村十分になるね


738 : ○○ :2016/04/05(火) 16:51:05 qvgtwrXg
死ぬぐらいならすぐ楽になれるからまだ良いよね
死ぬ以上の苦しみを長きに渡って与えられるような能力者がゴロゴロいるわけで


739 : ○○ :2016/04/05(火) 18:07:01 hbIKT1Og
リグルなら夏場に耳元に蚊を延々と飛ばさせるとかそういうこともできるしね


740 : ○○ :2016/04/05(火) 21:45:42 oEiVu7eA
737さんのアイデアを使用させて頂きました。
投下させて頂きます。

村十分


 稗田の当主は女性であり、未だ十代のうら若き少女であるが彼女には
れっきとした恋人が居る。幻想郷の記録を綴るという仕事であるが故、紫
や映姫といった大物と付き合いがあり、そのため稗田家が持つ権力も
非常に大きいものである。里の守護者や村長といった者も一目も二目も
置かねばならない、そういった彼女の派手な表とは異なり、裏である
プライベート人間関係は地味なものであり、恋人に至っては極々普通の
人物であった。
 十人十色、蓼食う虫も好き好きといった言葉はあろうが、
大きな役割を持つ彼女にとっては、些か不釣り合いといった人物である
ことは衆目一致していた。もっとも本人達、特に阿求の方が彼をとても好いて
いる様は村中皆が知っている位のものであったから、とやかく口を挟む
者は居なかった。今までは。


741 : ○○ :2016/04/05(火) 21:47:31 oEiVu7eA
 恋人が浚われたと聞いた阿求は、元々白い肌から血の気がさっと引き、ドラ
キュラのように青白くなっていたものだから、側に居た女中なんかは
彼女が卒倒してしまうではないかと心配したし、事実彼女は寸での所で
意識を保っていた。しかし少女といえども流石は当主と言うべきか、ふらついた
所を支えられた後は、座椅子に凭れかけながらも周囲の者に指示を矢継ぎ早に
飛ばしていた。
 慧音と村の衆に頼んで彼を虱潰しに捜すことは元より、
烏天狗の一隊を空に放つや、命蓮寺に使いを出すやと形振り構わぬ状態
であり、遂には隙間妖怪を冬眠からたたき起こそうとした時に、彼が
屋敷に運び込まれてきた。但し酷いものであったが。


742 : ○○ :2016/04/05(火) 21:49:46 oEiVu7eA
 不死鳥に運ばれる半死半生という、些か冗談がかった状態であったが、
この張り詰めた空気の中では、誰も冗談なんぞ飛ばす余裕が無かった。
当主の前で言う者が自殺志願者を通り越して、巻き添え上等の他殺志願者
であることは論を待たないが、阿求が居ない場所でも軽口を叩く者は
居らず、皆は彼と彼女の心配ばかりしていた。案外人徳とはこういう場面で
計られるものでかもしれないが、やがて二人への心配が犯人への怨嗟になり、
やがて下手人への復讐を望む声がそこかしこに満ちることは、狭い村の
中で増幅された心の闇であろう。 
 後は坂道を転がるように事態は進んでいく。妹紅が見た容疑者の姿と顔が
阿求と慧音に伝えられると、直ぐに村の重鎮達は犯人の名前を知る事となり、
一晩経つ内には村の皆が罪人の在処を口々に噂することとなった。
 そして翌朝には数件の家が焼けており、焦げた跡地に残された骸は無縁塚
に放り込まれるのである。げに恐ろしきは人の世か。 


以上になります。小ネタがあるとやはり話が作りやすいです。


743 : ○○ :2016/04/06(水) 01:25:14 rBp9syNs
>>733
病みの一片は見られたし全然ありだと思う
ふとしたきっかけでタガが外れる早苗いい

>>740
阿求の場合怖いのは阿求だけじゃないってのが恐ろしくていいよね


744 : ○○ :2016/04/06(水) 06:51:58 0srMS3ew
>>733
いいねー
なんかこう、風が吹いてるよね。早苗さんから生臭い風が


745 : ○○ :2016/04/06(水) 09:16:54 KrmKrto6
>>733
これ霊夢も○○のこと気になってたりするのかなーって思うと夢が広がる
>>740
ネタ投下から短時間で話作れるの尊敬するわ


746 : ○○ :2016/04/06(水) 12:43:53 x9PWRZzI
>>733
実行するだけがヤンデレはないし、キッカケという点を読者が知るのもヤンデレと思いますよ


747 : ○○ :2016/04/06(水) 18:26:55 oq3/eJF6
オマケのような書き込み


久々に人里に降りてみた。人里はあいもかわらず人が多く、暇つぶしには良い所だ。
店を巡っていると外来人の居住区付近で占い店を見つけた。

「占い、かあ」

天界はもちろん、幻想郷全体にも占い師はそれほど多くない。
一番手っ取り早い一般的な占いが、妖怪の山の中にある神社のおみくじといったレベルだ。
せっかく人里に来たのだ、占い一回分の値段も高くないみたいだし一回占ってもらおう。
店に入ると、穏やかな雰囲気の男がいた。彼が占い師なのだろう。

「いっらしゃいませ、今日はどのコースをご希望ですか?」

店の扉の張り紙にもあったように、ここの店は占う内容を指定する必要があるらしい。

「そうね、ここはやっぱり恋愛運で…」

恋愛というのはいつの時代だって女性を引き付けるものだ。
今でこそ「不良天人」とか「天のじゃじゃ馬」なんて陰で言われてるけどそのうち私だって
目の前に颯爽と現れてくれた格好いい男と結ばれて…

「うーん、お客さんの恋愛は暫く我慢が必要みたいですね…」
「ええ?なんですって!?」
「良い出会いがもたらされるとも、今の関係が良化するとも出てないんです」
「嘘よ嘘よ!このインチキ占い師!」

とんだ占い師だ。この私の魅力を目の当たりにしながらそんな事を言うなんて。
ひょっとしたら当てずっぽうを言っているのかも知れない。
いや、そもそも占い師ですらないのかも…

「お客さん、これはあくまでも今の占いの結果ですよ」
「どういうこと?」
「これからの運命はあなたの行動次第でいくらでも変えられるということです。
お客様は器量も良いですから、外に出て交流を深めれば出会いもきっと生まれますよ」
「本当?嘘じゃないわよね、いいこと言うじゃない!」

彼の一言で一気に上機嫌になった私は、その足で博麗神社に走っていった。

「…ということがあったの!これで私の運気も上がるってことね!」
「へー、そうなの」
「なに?興味なさそうね。せっかく私が良い思いしたっていうのに!」
「それって、あんたが上手いこと丸め込まれただけじゃない。占い師なんてのは誰にもそう言うもんよ」
「うっ…」

考えてみれば霊夢の言うとおりだ。やっぱりあいつはインチキ占い師なのかもしれない。

「でもその占い師って○○の店でしょ?あそこ、評判はいいから当たるかも知れないわね」
「え、そうなの?」
「最近こっちに来てないあんたは知らないかも知れないけど、人里ではちょっと前から話題なのよ」

霊夢にお守りを買わされて天界に戻りながら思った。今日はついていたのかも。
でも私の前に現れる男ってどんな人なのかな?


(続く)


748 : ○○ :2016/04/06(水) 22:50:11 baAW48R.
天子ちゃんのヤンデレは少ないから楽しみ


749 : ○○ :2016/04/06(水) 23:12:00 j8pBjoZk
>>733丁寧語の早苗さん良いですね。丁寧
にしながらも中身は恐ろしいと。

>>747これからどう展開するのか楽しみです。

次より投稿させて頂きます。


750 : ○○ :2016/04/06(水) 23:12:30 j8pBjoZk
不死の病


 私は今、幸福の絶頂にいる。
彼が私を好きになってくれた訳ではないが、
私は彼の恋人として振る舞っている。年老いた
父親に色々言われることを避けたいがため、
という消極的なものであるのは残念だが、
彼と一緒に居られることで自然に嬉しくなってしまう。
 もし彼とずっと一緒に居られることが出来るなら
どんなに素晴らしいかと思ってしまうのは、仕方がない
ことであろう。


751 : ○○ :2016/04/06(水) 23:13:03 j8pBjoZk
彼は村にいる若者である。何でもない人であるが、私が炭を
売っている最中に彼を見かけて以来、何故か頭から離れず
村を歩く最中に、ついつい彼がいないか道すがら目で捜して
しまっていた。
 これが恋だと気づいたのは何時であろうか。慧音と夏目ウナギ
屋で夜遅くまで飲み明かした日であろうか?それとも、偶に
彼を見つけた時に茶屋で話した時出有ろうか?あるいは一目
見た時からかもしれない。蓬莱人として長く生きてきたが、
まるで御伽草子のように単純に恋したことは、私にとっては
初めての事であり、それ故に無味乾燥な中で生きてきた中に、
甘く脳髄をとろけさせるような、水飴よりも濃いものが入って
きたときには、衝撃を受けた。
 このような感情を輝夜が弄んでいたことに、少しどす黒い
感情が胸の中に湧き上がったが、彼と話をする度ごとにその
蟠りが気にならなくなるような、余裕が出来るような、そんな
気分になっていた。


752 : ○○ :2016/04/06(水) 23:13:36 j8pBjoZk
 こんなにも彼に対する感情が膨れあがっていたのであるが、
私は彼に気持ちを伝えることが無かった。恋が甘ければ甘い
程、これを失うことが恐ろしく、頭の脳裏にそんな気持ちが
忍び寄った時には、甘い感情は吹き飛び心は千々に乱れ、この世の
終わりのように手先が凍え、視界が灰色となる。失神をした
人ならば分かるかも知れないが、視界に光は入っている筈で
あるのに目の前から色が消えていき、こうなったら最後、
私は胸を押さえて只嵐が収まることを待つことしかできない。
 失恋を考えただけでさえ、このような絶望が襲ってくるので
あるから、彼に告白するなどという恐ろしいことは私には絶対に
することができなかった。私にできるのは彼と話をして、徐々に
距離を縮めることだけであった。勿論彼にもっと近づきたいと
いう感情は私の中から溢れていたが、私は自分の心にしっかりと
蓋をして、ジリジリと焦燥に駆られながらも唯々怖がっていた。
 本当ならば乾坤一擲と大勝負にでるべきなのかも知れない。
しかし不死鳥と呼ばれる力を身につけても、或いは自分の体は
死んでも元に戻るようになってから、私は逆に失敗に臆病に
なった。失敗することが無くなり、失敗を恐れるようになる。
再生の炎もこの病には効果が無い。


753 : ○○ :2016/04/06(水) 23:14:23 j8pBjoZk
 そんな煮え切らない日々を送っていた私であったが、ある日
幸運が舞い込んできた。彼が私にしか頼めないことだと言って、
自分の恋人の振りをしてくれないかと、頼んできたことだ。

 彼に近づく女の噂は、理性では聞かない方が良いと耳に蓋を
していても、本能が求めているのか彼に恋をして以降、引っ切り無しに
耳にするようになっていた。彼に近づく邪魔な女を引きずり下ろせと
心の奥底から声が聞こえ、時折り夜中に彼が他の女に取られる悪夢を
見て目が覚めることが増えてきた中で、まさか彼の方から私に
そんなことを言ってくるとは思ってもおらず、思わず冷淡に彼の
申し出を受け止めてしまったのかもしれない。

 しかし、私は幸運を掴んだ。彼の父親は以前から彼に、恋人を見つけるように
言っていたらしいが、その父親が病気となり具合が悪くなってしまった
ことから、彼も父親を安心させようと、取り敢えず恋人の振りを
してくれる人を見繕うとしたのであった。彼を何とも思っていない
人物ならば、大いに怒るか弱みに付け込んで大金でもせしめるのであろうが、
私は何の条件も付けなかった。生憎彼は、私が何の見返りも求めなかった
意味を感じることはなかったのであるが、私はそれでも満足であった。
彼と仮初めででも恋人になったということは、私にとって何物にも代え難い
ものであった。


754 : ○○ :2016/04/06(水) 23:15:16 j8pBjoZk

 彼と私との交際は、彼の言葉通り外面上のものであった。彼の
元に時折通うが、彼は私に触れようともしない。私としてはこのような
上っ面の関係を越え、もっと深い関係になりたいと思っていたのであるが、
彼は自分が言い出したことには妙に頑固であり、一線を踏み越えよう
とはしなかった。

 何か切っ掛けでもあればこの仲が進展することもあろうが、
私は自分からこの関係を壊すことがやはり恐ろしく、彼に仕掛けることが
できなかった。それでも彼に近づく女を排除することができ、私は満足して
いた。いや、正直に言うと問題から目を背け蓋をしていただけである。
 幸運の女神には前髪があるのであるが、後ろ髪はない。ただ待っている
だけの者は、彼女を捕まえることはできないのである。

 彼の父親の病気が悪くなったと聞いた時には、普通の恋人ならば悲しんだり
彼に同情したりするものであろうが、私が最初に感じたものは恐怖であった。
私は卑しくも彼の父親が死ぬことで、彼が私との関係を終わらせることが
何よりも怖かった。彼との関係に身を甘んじていただけで、満足し彼に
近づくことを怠ったばかりに、今彼を失うことに酷く怯えている。彼が
居ないこの日常に耐えることは今の私には到底できず、千年前に感じた絶望を
また感じることになると思うと、私は平静を保つ事が出来ず頭を掻き毟っていた。
ばらばらと髪が落ち畳に零れた様子を見て、私は漸く少しだけ落ち着いた。
そうするとどん底に落ちた所為か、不思議と彼との関係が終わっても仕方が無いと
思えるようになり、彼の父親の見舞いに行く見舞い品を選ぼう。そう思った。


755 : ○○ :2016/04/06(水) 23:21:28 j8pBjoZk
 しかしその時ふと自分が千年前に手に入れた、贈り物のことが浮かんだ。
それはまだ自分が持っており、彼の父親に使えば死ぬことがないであろう。
父親が永遠に死なないのであれば、彼もまた私を永遠に必要とするであろう。
そうすれば、私は永遠に彼とこの関係を続ける事が出来る。そう考えると
私は居ても立っても居られず駆け出した。
きっと明日は素晴らしい日になるであろう。


724さんの構想を利用させて頂きましたが、投稿した後で
原案と異なる部分が多々あったことに気づきました。
失礼しました。


756 : ○○ :2016/04/07(木) 13:11:07 RYcsxwrM
>>747の続き


占い師○○というのは数か月前にやってきた外来人だ。
酒の席にて外の世界で趣味と実益を兼ねて占いをやっていたことを打ち明けたところ、開業を勧められ幻想郷での副業として店を開いたのだ。
幻想郷における彼の本業は運送であったが、業務のついでにささやかながら占い店を宣伝したところこれが功を奏す。
彼の占い店は人里ばかりではなく配送先で出会った一部妖怪にも知れ渡り、ちょっとした話題となったのであった。
そんな彼の占い師としての実力は、先日の小槌騒動の発生を予知したことで皆の知るところとなったのである。


「うーん、今は利益の追求より店の存続が大事です。しばらく売り上げが上がらないかも知れません」
「あなたの今の彼女…紅魔館の門番さんでしたっけ?あの人と一緒の人生はそう甘くないでしょう」
「近いうちに特ダネが舞い込んでくるはずです」

今日も占い店はそれなりの繁盛だった。
今では妖怪のお客も一定数獲得している。ただ、彼女たちを占うとどうも不穏な結果が多いのは気がかりだが…。
○○はふと、三日ほど前に来店した高飛車な少女の事を思い出した。
なにかと感情の起伏の激しい彼女の勢いに押され、彼女の名前を聞きそびれてしまったのである。
彼の占いには、一人一人の占いの結果の記録と保存が欠かせない。名前が分からないのはそれを残すには大いに不都合なのであった。
今日やってきた幻想郷の新聞屋に一応名前を教えてもらったが、一応本人の口からも聞きたいと思っていた。
それにしても、「見慣れない格好した高飛車な少女」だけで名前が出てくるなんて彼女はわりと幻想郷では高名な人物なのだろうか?

「また来てやったわよ!いるの?」

彼女は実に都合のいい時に来てくれた。


757 : ○○ :2016/04/07(木) 13:50:16 RYcsxwrM
○○とか言う占い師に占いを頼んでから数日が経った。
彼の言うとおりに天界から地獄まで出歩いてみたけれど、最近は平和すぎて珍しいことや出会いが何一つない。
自分の行動次第で運命は変えられる、と彼は言っていたけれど最初に彼が言った通り暫くは運が向かないのかも。
私の足は自然に○○の店に向かっていた。

「いらっしゃいませ。そういえばまだお名前をお伺いしていませんでしたね」
「名前?」
「ええ。占いの都合上、名前を教えていただきたいのですが…」
「比那名居天子、よ」
「ありがとうございます、天子さん」

いきなり名前で呼んでくるなんて、案外積極的な人だ。前も私のことを「器量がよい」なんて言うしこれはひょっとすると…?

「今日の占いの内容はお決まりですか?」
「今日は、運命を変えるために行動の指針を教えてもらいたいの!」

運命を変えるために行動する、と言ってもやみくもに動いたって意味はないはず。
ここは占い師の話を聞くのが一番手っ取り早いはずだ。

「やはり、天子さんの場合他人との繋がりを作った方がいいです」
「そうなの?」
「今の天子さんの異性との交友関係はそれほど広くないみたいですから」
「確かに…。でもどうやって?」
「どこか人のいる所、人里のお店とか神社とかに行くことですね。それも定期的に長い間です」
「ふーん、それなら簡単そうね」
「後、言いにくいのですが品行を改めて穏やかさを目立たせたほうが…」
「どういうこと!私は天人なのよ!」
「そうは言っても、あまり態度が荒々しいと男性は尻込みしますし…」
「それなら、私は勇猛な男を探すだけよ!臆病な男なんて情けないわ」
「…天子さんにはそれがいいのかも知れませんね…」

結局私はあまりいいアイデアを手に入れられなかった。劇的な打開策はないようだ。
それに今から品行を改めてるとか言っても方法が分からない。他の天人のように上品になるなんて私には難しいんだ。
私は今日のところは天界に戻ることにした。


758 : ○○ :2016/04/07(木) 16:09:01 RYcsxwrM
あの天人の名前をきちんと聞き出すことができた。あの天人はいいお客になるかもしれない。
○○は喜んでいた。
幻想郷の人口は多くないため、○○はお客が離れないように努力を続けていた。
副業とはいえ、外の世界への帰還費用を何とか集めたい○○にとっては占いは貴重な収入源である。
しかも運送と違って占いは危険性もほぼ皆無である。
○○は帰還の日が徐々に近づいているのが嬉しかった。

「あんた、天子の事占ったんだってね」

ある日博麗神社に届け物をした時、珍しく巫女に声をかけられた。
巫女曰く、天子が最近よく姿を現すようになったせいで茶菓子の消費量が増したとのことだ。

「あいつ、他に行く場所無いのかしらね…。あんたもどこか適当な場所の名前出して、そこに行くように言ってよ」

巫女はぼやいていた。
天子も天子なりに外出を増やしているのだろうが、博麗神社には彼女の求める出会いはなさそうだ。
せいぜい帰還直前の外来人や運送業の男がたまに現れるだけだろう。
最初の占いから暫く経ったが、「しばらく我慢が必要」というのは大当たりだったようである。

「ねえ、私にも占いやってくれない?恋愛運でいいわ」

巫女から思いがけない申し出があった。
報酬は今さっき届けた煎餅一枚と緑茶一杯であったが、顧客獲得も兼ねてサービスすることにしよう。

「ふーん、近いうちにいい出会いがあるのね」
「はい。いつも通りに暮らしていれば幸運が舞い込んでくるようです」
「これを天子の奴に言ってやったらどんな顔するかしらね。楽しみだわ!」

巫女は嬉しさに少々の意地悪さが混ざった笑顔を浮かべていた。


759 : ○○ :2016/04/08(金) 09:28:44 gXy3ooXY
○○の言うとおり、私はあちこちをうろつきまわるのを習慣にしてみた。
人里の茶屋や香霖堂、神社に寺まで巡ってみた。
しかし二か月もこの人里巡りを続けたのに、良い出会いなんてものは全くなかった。ひとかけらもなかった。
茶屋に入っても店員以外と会話する機会はろくに無かったし、寺や神社ではほとんど男に遭遇しなかった。
でも、寺にいた鼠と寅はどこであんないい男を捕まえたんだろう?実に羨ましい。
今日は久々に○○の店に寄ってまた何か聞こうと思っていたのに、あいにく今日は休みであった。今日は運送業の日なのだろう。
人里も一通り回ってしまったし、今日は博麗神社にでも寄って帰ろう。あの神社はいつも暇そうだからいつ行っても問題ない。

博麗神社の鳥居をくぐってみると霊夢の声が聞こえた。魔理沙でも来ているのだろうか、随分楽しそうである。

「あれ…」

しかし、境内の中に入って見た霊夢の話相手はなんと○○だった。今日の配達先は博麗神社だったのか。
○○は霊夢を前にして随分楽しそうだ。鼻の下も伸びている気がする。
私に会った時はあんな顔してなかったはずだ。
なんで?あいつ霊夢に気があるの?


760 : ○○ :2016/04/08(金) 15:05:15 gXy3ooXY
霊夢のこの笑顔は中々魅力的だ、と煎餅を頂きながら○○は思った。
実際のところ、人里における霊夢の評判はそれほど芳しいものではない。
神社にしょっちゅう妖怪が集まっている、帰還費用をぼったくる、無愛想である、というのが主な理由であるがこの笑顔は素晴らしい。
実際に話をしてみてもそれほど悪い心を持つわけでも無さそうだし、きっと人里の人間は何か勘違いをしているのだろう。
そう言えば、同じく運送に従事している外来人の仲間が「幻想郷には美人が多い」とよく言っている。
妖怪の山の巫女やよく新聞を投げ込んでくる新聞屋などは中々の美人だともっぱらの評判だ。
霊夢や天子も幻想郷の美人の一人に違いない。まあ、性格はともかくとして…。

「ああ、そうそう。天子を占う時にはちょっと気をつけた方がいいわよ」

霊夢はふと思い出したように言った。

「どういうことですか?」
「あいつは思い込みが激しいし、思いつきはすぐ実行しないと気が済まないの」
「確かにそんな節はありますね…」
「占い外したりした暁には店を潰されかねないわよー」

彼女の声の調子は明るいが、内容はあまり楽天的ではなかった。

「まあ、たかが占いってことぐらいあいつでも分かってそうなもんだけどね」

それならば大いに喜ばしいのだが、先ほどの発言から察すると少々不安である。

「あら、噂をすればご本人の登場ね」


761 : ○○ :2016/04/09(土) 02:54:11 tu7mrdF6
ttp://i.imgur.com/BdHMSrP.jpg
文章力も無く画力も無いけど参加したい俺の最終手段デフォルメ絵
モデルは勝手に使わせてもらっちゃったけど>>733の人の早苗
不快だったらすぐ消すから言ってね


762 : ○○ :2016/04/09(土) 09:49:48 Fi1dAVDY
>>761
ようこそ!歓迎するよ!
卑下することはないんだぜ。堂々と貼ればいいと思うよ
ていうか、別に下手じゃないぜ


763 : ○○ :2016/04/09(土) 18:15:10 iaN0WPf6
>>761
GJ!


764 : ○○ :2016/04/09(土) 20:08:17 U5/6HUec
>>761
可愛い
目にハート入ってるのが良い!


765 : ○○ :2016/04/09(土) 20:46:27 tu7mrdF6
おお、色んな反応ありがとう
絵の練習にちょこちょこ貼っていこうと思うからよろしくね
というか最近のスマホのアプリって凄いよね、レイヤーとかあってこんな絵も簡単に描けちゃう


766 : ○○ :2016/04/10(日) 00:07:49 E.ghCSqg
>>761
SSを読むことも良いですが、絵を見るのも良いものです
>>747
いよいよの二人の鞘当てに期待が高まります

次より投稿させて頂きます。


767 : ○○ :2016/04/10(日) 00:09:36 E.ghCSqg
 彼女と彼の関係は独特である。歪で偏っているが
バランスは取れている。これを割れ鍋に綴じ蓋と嘲笑
することは容易いかも知れないが、人はお互いに
自分に無いものを求めるとするならば、彼らはベスト
パートナーであろう。


768 : ○○ :2016/04/10(日) 00:10:15 E.ghCSqg
 四季映姫の仕事において、夫である書記官の仕事は
彼女の補佐である。書類の原案を作っていたり、或い
は彼女に代わって調べ物をしていたりとしており、
細々とした事を行っている。
 一方映姫の方は決裁やら判決文の作成やらといった、
彼女にしかできないことを行っていることが多い。これ
では彼を四季の専属にする意味がないのではないかと、
小町は映姫に申し立てていたが、上司の権限として黙殺
しついでに厄介払いを兼ねて、小町を死神兼 三途の川の渡し
として転任させておいた。彼岸で罪人の数を数える念願の
仕事に就けて、小町もさぞ喜んでいるだろうとは上司の弁である。


769 : ○○ :2016/04/10(日) 00:10:50 E.ghCSqg
 仕事において映姫が重要な仕事をしており、書記官がいわばどうでも
良い仕事をしている状態で、ならば私的な所ではどうなのかというと
こちらも彼は映姫に頼っている。移動時は文字道理、おんぶに
だっこであるし、家にいても彼女は職場と同じように、色々な
ことを要領良くやっている。公でも私でも彼が彼女を必要として
いるように見えるが、一歩「中」に踏み込むと様相は一変する。
 映姫は一度家事が終わると、普段の固い仮面は何処へやら、
飼い主にしっぽを振る犬か猫のように夫の元に擦り寄る。
普段は罪人に死刑を宣告するその口は、夫の愛を求める
だけに使われるようになり、普段の映姫に存在する核とか
芯といった物は影も形も見当たらない。


770 : ○○ :2016/04/10(日) 00:11:44 E.ghCSqg
 自分の外面を法律や道徳といった、謂わば他人の規範で
縛るならば、其処には自分の意思は存在していない。借物
のルールに従って生きることは、世間様に上っ面を良く
見せるだけならば、生きやすいし賞賛されもするであろうが、
実のところは自分の意思が無くて、海月のようにフニャフニャ
と世間の大海に漂うのみである。そしてその種の人物は、外の
ルールに縛られない場所、つまり家庭ならばどうするのか。
 大体は二つの方法を取ることが多い。一つは外の
世界のルールを私的な場所に持ち込むこと。もう一つは
他の何かに依存して生きていくこと。因みに彼女の場合は
両方である。


771 : ○○ :2016/04/10(日) 00:13:42 E.ghCSqg
 家庭でも夫に尽くそうとすることは、「良い家庭」の実践で
あるし、彼に捨てられないようにする依存でもある。彼の仕事を
意図的に制限しているのも、夫が自分の行動範囲から逃げない
ようにするためであり、移動手段を彼女のみに限定することは、
事実上の軟禁として成立している。
 この四季映姫の狂気的な行動自体も悪いのであるが、更に悪いこと
がもう一つある。こんなに立派な外面を持つ彼女は、心の奥底
では彼の喪失を恐れている。そして、恐れより発した行動は
一時の安心を得ることができたとしても、より大きな恐れを
誘発するのである。丁度、依存症となった者が更に麻薬を
欲するように。


以上になります。
曲直庁書記官3と題名を付けることを、忘れていたことに後から気づく


772 : ○○ :2016/04/10(日) 20:45:58 msfqldzI
>>750
ちょっと3日ほど離れていたらまあ…自分の案と離れちゃってかまいませんよ
しかし会話形式でなく心情と経過のやりとりでのみ進むためかえらく怖いですね、もっちゃん


773 : ○○ :2016/04/10(日) 23:13:08 0VoVElmY
>>767
映姫様みたいな力を持ってる女性の依存って良いよね
○○との会話内容とか聞きたい


ttp://i.imgur.com/qhuACyw.jpg
文のヤンデレっていうと安直かもしれないけどまずこれが思い浮かぶ…よね?
自分の部屋いっぱいに○○の写真貼ってご満悦みたいな


774 : ○○ :2016/04/11(月) 00:12:08 Xbpyzal2
〉〉773
やばい、可愛い。


775 : ○○ :2016/04/11(月) 00:30:09 zNbsk4MM
>>773
あえて暗い雰囲気を入れないから尚更狂気的でいい


776 : ○○ :2016/04/11(月) 05:15:52 37d4V6yc
>>773
これはこの後写真だけじゃ満足できなくなりますね間違いない


777 : ○○ :2016/04/11(月) 06:11:09 DqczsH2c
>>773
あらやだかわいい可愛い


778 : ○○ :2016/04/11(月) 09:36:11 fGYx8hJo
>>760の続き

神社にやってきた私を見つけた霊夢は妙に機嫌がよさそうだ。そんなに○○との会話がたのしかったのだろうか。

「私も○○に占ってもらったの。あんたと違って私は恋愛運に恵まれてるみたいよ」
「なんだ、そうなの…」
「あら、いつになく穏やかであんたらしくないわね」

霊夢がご機嫌だったのは占いの結果によるものだと分かり、拍子抜けしてしまった。
神社にある荷車を見るに、○○も物資の運送のために神社に来たのだろう。
早とちりをしてしまったみたいでなんだか恥ずかしくなった。

「天子さん、人里によく来てるみたいですけど何かあったんですか?」

自分の占いが当たっているかが心配なのであろう○○が尋ねてきた。
残念ながら何も起こっていない。最初の占い通りである。
せっかくだから、今日は他の運勢でも見てもらうことにしよう。金銭運あたりはどうなのだろうか。

「金銭運はおおむね良好みたいです。衝動買いしない限りは問題ないかと」

ありきたりな結果だけど私は安心した。衝動買いなんてしたことがない。

「ついでに恋愛運も見たんですけど、天子さんはもうすでに良い人に出会ってるみたいですよ」

どういうことなのだろう?○○の言ったように、ここしばらくの人里探索で運命が変わったのだろうか?
しかし、それらしい男には出会わなかったはずだ。現に会話を交わすような関係の男は○○しかいない。
私が見落としているのか、それともここから急展開が待っているのか。
私には分からない。
もっと詳しく話してもらいたいが、○○にも詳細までは分からないようである。
実にじれったいものだ。


779 : ○○ :2016/04/11(月) 13:28:13 fGYx8hJo
天子に占いの結果を教えると、首をかしげながら帰っていった。
察するに彼女には全くもって「良い人」の心あたりがないのだろう。
正直なところ自分もこの占いが何を指しているのか今一分かっていない。占いの結果を見たときは見間違いかと思ったくらいだ。
こういうときの占いは大体外れてしまう。一週間もすればそれに気づいた天子が怒鳴り込んでくるだろう。
その時には店を吹っ飛ばされないように上手いこと天子をなだめられるといいのだが。

「結局天子にも運が向いてくるってことね、なんかつまらないわ。まさかあんた嘘言ったりとかしてないわよね」

○○は霊夢のぼやきを聞いてから家に帰った。
彼は占いの客に対して嘘をついたことは一度もない。せいぜいオブラートに包んだ表現をするくらいだ。
今日からは暫くのあいだ運送の仕事が立て込んでいる。占いの教本を見返す余裕がないのは残念だが、本業と帰還が優先だ。
○○は仕事に備えるべく早めに床に就くことにした。


780 : ○○ :2016/04/11(月) 17:33:18 lWy6aYDA
ヤンデレに挟まれてるけど、わざと気付かないふりするってのは。マジで気付かないより悪手かもしれない


781 : ○○ :2016/04/11(月) 22:14:57 LihA4A8.
だれかゲスな○○の話、いただけないでしょうかね・・・
時事ネタで


782 : ○○ :2016/04/11(月) 22:29:15 TK0aAN6o
>>778
時限爆弾のタイマーが着実に刻まれていくような印象を受けました。

投稿させて頂きます。

紅魔赤軍3

 紅魔館において執事として働く○○であったが、
ここ最近彼にモテ期が訪れていた。彼を好きだという
メイドの女性が彼に猛烈にアプローチして来たので
ある。今も彼は廊下で、彼女に迫られている。
「○○さんに教えて頂いたおかげで助かりました。
本当○○さんはいい人ですね。」
「いや、其程では無いですよ。」
彼が謙遜するも、彼女はグイグイと迫ってくる。
「そんなこと無いですよ!他の人も噂しているん
ですよ。○○さんが皆に親切だって。」
周りの意見を付け加えて、自分の意見を補強している
辺り、彼女は中々強かであろう。
「いや、そう言われると何だか恥ずかしくって…。」
あくまでも低姿勢な彼に彼女は攻め口を変える。

 「○○さんはクッキーとか好きですか?」
突然の申し出に彼は思わず本音を零す。
「まあ、偶に食べる程度かな。里で買うのは機会が
あまりなくって。」
そうして開いた突破口に攻め手は突撃する。
「あら、そうなんですか?でしたら今度作るので
是非食べて下さい。」


783 : ○○ :2016/04/11(月) 22:29:52 TK0aAN6o
ここに来て、彼はしまったと思うが今更自分がアレルギー
等と、嘘をついて躱すこともできない。
「楽しみにしていて下さいね。」
そうコロコロと鈴が鳴るような、甘い声と綺麗な笑顔で
彼女に言われると、彼はその申し出を断り切れなかった。

 ところで、彼と彼女が楽しく話しているのは廊下であり、
密談には少々不向きであったりする。彼は廊下には誰も居ないと
思っているが、実はそうではない。例えば廊下の端から
紅魔館の当主が、彼と彼女を射殺さんばかりにじっと
見つめていることもあるのだから。


 数日後、彼と彼女はまたも廊下で話し合っていた。
クッキーに舌と胃袋を捕まれた彼は、以前より彼女との
距離を縮めていた。
「いやぁ、あのクッキー美味しかったよ。今まで食べた
クッキーとは全然違っていたよ。」
「本当ですか!嬉しいです。」
ちゃっかりと彼の腕を掴んで、更に彼に接近した彼女
は本陣に切り込んでいく。
「里の霧雨商店で買ったバターを使ったんですよ。そういえば
今度近くに新しい喫茶店が出来まして、買い物に行く時に
一緒にどうですか?」
彼が思わず頷きそうになった時に、怒りが籠もった低い声が
割って入る。
「咲夜。」


784 : ○○ :2016/04/11(月) 22:31:56 TK0aAN6o
 次の瞬間彼は、レミリアの後ろに立っていた。
歯ぎしりをしながら赤い槍を持つレミリアは、紅魔館で
雇っていた下働きのメイドに宣告する。
「彼に取り入って、何しようとしているのかしら。」
背後にメイド長の咲夜を控えさせ、彼に近づいた
メイドの女に判決を下す。勿論判決は死刑のみである。
 咲夜が彼の目を覆ったことを横目で見たレミリアは、
眼前にいる被告人に槍を突き刺す。廊下には濃厚な血の
臭いが漂う中、レミリアは硬直した彼の手を引き、自室に
連れていった。彼の背後に咲夜をつけているのは、せめて
彼が悲惨な状況を見ないようにする為か、それとも
彼が逃げないようにする為か…

 部屋に着いたレミリアは咲夜を下げて、二人っきりで
彼を詰問する。
「いい、あの女は貴方に近づいて、紅魔館に侵入
しようとしたスパイなのよ。」
「そんなことはない筈…。」
恋人がいる時に、更にもう一人からアピールされる
という、初めてのモテ期に浮かれた弱目もあってか、
彼が弱々しく反論するが、レミリアは口調を強めて断定する。
「いいえ、そんなことあるわ。私が運命を見なかったら
貴方はあの女にホイホイついていったでしょうし。」
首元に牙を突き立てて、彼の血を吸いながら、彼女は
尚も彼を追い詰める。


785 : ○○ :2016/04/11(月) 22:32:28 TK0aAN6o
「貴方の価値を分かるのは私だけなんだから、あの女な
んかが分かる訳がないじゃない。」
貧血になり朦朧とした頭で彼はレミリアを離そうと
するが、いくら押そうが小柄な彼女を少しも動かせない。
「違う。」
「いいえ、貴方は私だけの物なのは違わない。」
意識が遠くなってきた彼に、レミリアは執拗に声を刷り込んでいく。
「貴方を愛しているのは私だけ。貴方を分かるのは私だけ。
他の誰にも渡さない。」
レミリアの歪んだ愛を受け彼の意識は暗転する。


786 : ○○ :2016/04/11(月) 22:52:17 TK0aAN6o
>>781
ねぇ、どうしてですか?
「済まない、でも何もないんだよ。」

「そんな、貴方を信じていたのに、どうして?」
「本当に君に疑われるようなことをして済まない。
でも、彼女は只の友人だよ。」

貴方が出歩く姿が烏新聞に撮られてしまって、
それで私初めて知って…。
「いや、彼女とは何も無かったんだよ。本当だよ。」

へぇ、恋文を遣り取りしていてですか?
何でしたっけ、「偶々隣の部屋に泊まっただけにしよう」でしたっけ?
「どうしてそれを!」

私、烏天狗の方に伝手がありまして。
「いや、ほんの出来心で。すまない!」

そうですか。実は彼女、妖怪に食い殺されているのを
今朝村の人が見つけまして…


787 : ○○ :2016/04/12(火) 01:09:59 TjnOCIdk
>>786様ありがとうございました。
私アイデアさえおりてくれば、皆様がたのように頑張りたいと思っております。


788 : ○○ :2016/04/12(火) 01:27:50 /4tdrQmI
>>782
この猜疑心の強さは、間違いなく独裁者のそれ


789 : ○○ :2016/04/12(火) 05:42:30 kVLz2dTI
>>782
レミリアと独占欲は相性抜群だと思わされる話だった
>>786
女性は恋人が浮気すると浮気相手に怒りを感じるって何かで見たことあるけどそれの最上級がこれなんだろうね
この後の2人が気になるところ



ttp://i.imgur.com/b777EnC.jpg
阿求の渡すラブレターは多分辞書くらいの分厚さがあると思う
顔を真っ赤にして目には涙も溜めて渡してきたラブブックの中には○○への愛と○○の今までの言動やら私生活やら交友関係(特に女性)全てに対する阿求の想いが綴られているはず


790 : ○○ :2016/04/12(火) 10:38:19 FbcxSDK2
>>779の続き

博麗神社で○○に会ってから三日後、私は○○の占いの意味の意味がやっと分かった。
一たび分かってしまえばその意味は実に単純なものだ。

私の前に現れたという運命の人は他でもない○○だ。絶対にそうだ。間違いない。
彼と最初に会ったとき、彼は私の容姿を褒めてくれた。いつ会っても穏やかに接してくれた。
私に気をかけてくれているんだ。気があるんだ。
神社で偶然出会ったのも、私たちが結ばれる運命にあることの暗示なんだ。そうとしか思えない偶然だ。
霊夢に対しても鼻の下が伸びていたのは気になるけど、私と話していた時も同じだったから許してあげよう。男というのは浮気性なのだ。
一緒に天界で暮らせばもう浮気心なんて生じないだろうし。
それにしても○○は恥ずかしがり屋なのだろう。自分の気持ちを億尾にも出してくれなかった。
好意を持った女を堂々と迎えに行くのが男としてあるべき姿なのに、これでは私が迎えに行かなくてはならない。
私が幻想郷の中でも指折りの実力者だと言っても、できれば○○の方から来て欲しかった。でも、天界に連れて行けば少しはたくましくなるだろう。

考えている暇はない。早く○○の所へ行かないと。
○○の事を考えるだけで頭が熱くなる。天人の私をここまで追い詰めるなんて運命とは凄いものだ。


791 : ○○ :2016/04/12(火) 19:43:39 mZTiLjdg
天子って、物凄い自分勝手だけど
だからこそ、誰かに対しても善意だけで突っ走りそう


792 : ○○ :2016/04/13(水) 06:18:08 ESLKN4Fc
>>789
絵も可愛いしただ恋文渡してるだけなのに厚さが辞書並みってだけでこうも恐ろしげになるとは…
ていうかあんた絶対デフォルメじゃなくても上手いだろ!


793 : ○○ :2016/04/13(水) 08:58:42 SX.1UdUc
>>790の続き

立て込んでいた運送の仕事がようやく片付き、酷使した体がどこも悲鳴をあげている。明日はずっと家で寝ていたいくらいだ。
でも占いの教本を見返す余裕はあるだろう。この前の占いは見間違いだった気がしてならないのだ。
占いが外れた原因は見間違いだと言ったところで、天子が許してくれるとも思わないが…。

結局占いに間違いはなかった。なにがなんだかさっぱりだが、このことはもう忘れてしまおう。たまには占いを外したっていいじゃないか。
占いの店は暫く放ってしまったから、また宣伝して客足を取り戻さなければならないだろう。
○○は久々に深く眠った。

翌日○○が目を覚ましたのは午前11時。家の中で不審な物音を聞いて飛び起きた。

「随分起きるのが遅いのね。でも大丈夫、私はそういう人嫌いじゃないから」
「ほら、ぼーっとしてないで早く天界に行かないと。ずっと待ってたんだから」
「あんたの考えてることなんてお見通しよ。嬉しすぎても声って出ないものよね」

まくしたてる天子が何をいっているのか○○には全く分からなかった。占いの結果について怒っているわけではなさそうだが何か変だ。

「ああ、じれったい!こういう時ぐらいあんたに先導してもらいたいのに…」


○○は静かに突然失踪した。彼は自分自身の運命を知ることができなかったからだ。
彼の行方を追うものはいない。外来人の運送屋兼占い師の価値なんてその程度、ということである。


「運命って不思議よね、思ってもみないところで変わっちゃうんだから」
「今幸せなのも○○のおかげだし、ずっと一緒よ」




794 : ○○ :2016/04/13(水) 16:00:51 eB0nRgn.
久しぶりにロダに投稿しようとしたら使えないんだけど、どうしたらいいのかな…


795 : ○○ :2016/04/13(水) 17:47:06 eB0nRgn.
とりあえず斧にうぷってきた
ttp://www1.axfc.net/u/3650990.txt

レミリア?変化球モノ
昔のボツになった奴を発掘して加筆修正しました


796 : ○○ :2016/04/14(木) 22:33:37 XopuWOkE
>>793
彼女にとっては感動のフィナーレですね。

>>795
さらさらと水のように悲劇が流れていく感覚がしました。
覆水盆に返らずと。

投稿させて頂きます。


797 : ○○ :2016/04/14(木) 22:34:17 XopuWOkE
マッチポンプ

 俺は最近ツイている。可愛い恋人がいるんだが、
他にも美人な恋人が居たりする。以前の自分なら二股と
言って馬鹿にしていたんだろうが、いざ体験すると
浮気相手との密会のスリルが癖になる。恋人には
悪いなと思うが、やはりこの快感には叶わない。
 このことは彼女には、絶対に秘密にしないと…。

 儂は最近ツイている。素敵な恋人がいるんだが、
他人に化けて恋人に会っている。以前の自分なら
恋人を騙すなんぞ悪趣味だと言って馬鹿にして
いたが、いざ体験すると普段とは違う恋人が見れて
癖になる。恋人には悪いなと思うが、やはりこの優越感
と背徳感には叶わない。
 このことは彼には絶対に秘密にしないと…。


798 : ○○ :2016/04/14(木) 23:05:58 XopuWOkE
続けてもう一つ

機械式千里眼

 ねぇ○○、最近ちょっとやせ気味じゃないかい?
色々立て込んでいるのは分かるんだけれど、体あって
のことだからねぇ。金子が足りないからと言って、
米をお粥にしてるんじゃあ、とてもじゃないけど
持たないよ。今度家に来なよ。河童特製の河童巻き
をご馳走してあげるから。

 え、好物はここに来てから誰にもいったことが
無いって?しかも幻想郷では胡瓜巻きとしか言わない
って?実は河童は胡瓜が好きな人が分かるんだよ。
同類意識ってやつかな?なんて、嘘ウソ。冗談だよ。
全く○○は直ぐに信じ込んでしまうんだから。この
間も永遠亭の竹林で、罠に引っかかっていたじゃないか。
全くあのウサギは下等な生き物だね。


799 : ○○ :2016/04/14(木) 23:06:53 XopuWOkE
 しかし○○は色んな事を知っているね。先に言っていた
コンピューターなんかは、大発明になりそうだよ。
お陰で色々と記録が捗ってね。何の記録か知りたいって?
駄目だよ!特に君には絶対に!
 御免、御免。つい熱くなってしまってね。私のの特別な
秘密が記録されているもんだから。そうムキになると反って
怪しいって言われても、こればっかりはね…。ほ、ほら見せるには
用意とかも要るし!

 今日は予定が無いから、時間が掛かっても良いって?君は誰かに会ったり
しないのかい?ああ、そう。今日明日は予定が無いし、誰も
君の家に来ないと。誰か君がここに来る事を知っているの?
へぇ…誰も知らないって…
そうか、それなら私の家に来なよ。泊まり込みで取っておき
の事をしてあげるから…。そう、もう帰りたく無くなる程なんだよ。
ホントに、本当だよ…。

以上になります。
いつもご感想を頂きまして、ありがとうございます。


800 : ○○ :2016/04/15(金) 01:45:17 XpND3tFY
>>789
可愛いのう
そんで辞書くらいあるラブレターとかこの設定で誰か話を作ってほしいくらい良い発想

>>793

天子が幸せになれてよかった

>>797
一応病んでるのかな?
このシチュエーションすごい好き


801 : ○○ :2016/04/16(土) 00:43:02 8SbBdUDM
>>795
面白かったです。
変化球の意味はそういうことか…


802 : ○○ :2016/04/16(土) 22:18:39 LIk5oDKE
マミゾウって、不安と疑問を抱えながら○○を追い込みそう
その結果、○○は自分のものになるのだけれど


803 : ○○ :2016/04/17(日) 14:54:19 Rg.ipX92
>>683
一か月経っていませんが、フライングで書いてみました。

夜も眠れず


 紅魔館に命からがら逃げ込んで、彼女に匿ってもらい早数カ月。
以前から自分に声を掛けてくれていた彼女が、妖怪であることは
そこで初めて知ったのだが、妖怪に狙われていた自分にとっては
それが却って好都合となったことは、運命の皮肉であろうか。
 門番として働く彼女にとっては、自分を付け狙っていた低級の
妖怪なんぞは歯牙にもかけることはなく、イタチの妖怪を正に一撃で
粉砕する場面を見た時には、自分にとって彼女は命の恩人に思えた。

 しかし困ったことがある。妖怪に狙われた時よりも一層、彼女が
自分のことを気に掛けてくるのである。敢えて語弊を恐れずに言う
ならば、自分に執着しているとでも言えよう。
 件の妖怪は既に死んでいるのだから、自分はもう狙われることは
ないのであるが、彼女は自分が目の届かない場所にいることが片時も
ないように、自分をいつも見張っている。いつも「御守り」として
持ち歩くように言われている星型のバッチは、発信器として働いて
いると薄々感ずいているし、それをポケットにいつも入れているの
だから、少しは自由にさせて欲しいと感じる。


804 : ○○ :2016/04/17(日) 14:54:50 Rg.ipX92
 妖怪から逃げてきた先でまた、妖怪に捕まっているのだから、
三文喜劇として文々新聞の小説欄で掲載すれば、さぞ人気を博する
のであろうが、当事者としては中々受け入れがたい物がある。
 そう感じ始めると何故だか急に、外にふらりと出たい感情が
湧き出し、月が出ているのをこれ幸いと、散歩に出ることとした。
普段は持ち歩いているバッチをベットの枕元に置き、懐中電灯も
持たずに上着を引っ掛けてこっそりと屋敷の裏門より外に出る。
 最近は一人で外に出る機会が無かったため、わくわくする
ような、少々後ろめたいような気分で空を見上げると、頭上には
大きな月が輝いており、自分には仄かに赤みが掛っているように
感じられた。

 月が赤く、不吉に感じられたが、慣れないことをしているだけだと
自分に言い聞かせ、夜の湖の岸辺を歩く。かつては昼間によく歩いた
道であるが夜はそれとは異なり、しんと静まり返っている。日中は
暖かくなってきた春先であるが、夜はひんやりとしており風が体に
吹きつけて冷たく感じた。静寂に満ちた小道を歩きつつ久々の解放感
に浸っていると、不意に自分の周りの空気がねっとりとしたように
感じた。


805 : ○○ :2016/04/17(日) 14:55:25 Rg.ipX92
 男は一瞬、気温が上がったかと考えたが、風は相変わらず冷たく
自分の頬を撫でており、触覚は彼に今の温度を正しく伝えている。
ならば今、感じているこれは何なのか?男が暫し考えた末に、忘れ
かけていた事を思い出した。昔妖怪に狙われた時に感じた、第六感
が発するこの独特な、魂が侵されるような感覚を。
 いくら彼が紅魔館で働くといっても、所詮彼は唯の人間。迂闊に
夜の世界に入り込んだことは、気が抜けていたと評されても仕方が
ないことであろう。男は前から来る妖気に背を向けて、一目散に
駆け出すが、獣のような速さで近づいてきた妖気に、直ぐに捕まって
しまう。遂に食い殺されてしまうのかと身を固くした男に、背後から
抱きしめた影はこう言った。
「ああ、よかった○○さんが無事で。」

 「もう、本当に心配したんですから。」
 男を抱き寄せた美鈴はこう言った後、ひとっ飛びで男を紅魔館に連れ
帰ったのであるが、ここで話が終われば、目出度し目出度しとなったであろう。
しかし現実は御伽草子のように、登場人物の望んだように奇麗には終わら
ずに、ドロドロとしたどす黒いものが溢れ出す。

 美鈴に部屋まで連れて帰ってもらった彼であるが、肝心の妖気は
止むことが無く、むしろ強まるばかりである。数カ月前にどこぞの
野良妖怪が彼を狙ったときのように、美鈴から妖気が溢れ出す。
 彼女は笑顔のままで彼に抱きついて、そのまま寝台に押し倒し、
彼の体を蛇のように締め付ける。
「勝手に外に出るような○○さんは、動けなくしないといけないですね。」
そう聞き分けの無い子供に言い聞かせるように、彼女は彼に告げると
器用に自分の足で彼の足を挟み込み、えいと気を込めて骨を折ってしまった。


806 : ○○ :2016/04/17(日) 14:56:25 Rg.ipX92
「気を込めていますので、じっとしていれば痛くないですけれど、一度
動けば激痛が走るので、動かないで下さいね。」
彼女は普段の優しい顔のまま彼にそう告げるのであるが、折られた彼の
方としては堪ったものではない。
「すまん、悪かったから、止めてくれ。」
彼が必死に彼女に謝り体を捩って逃げ出そうとするが、足を動かした
瞬間に激痛が走り、身をくねらせる。涙目になりつつも逃げ出そうと
する彼を抑え込み、彼女は更に残酷なことを告げる。
「そんなに暴れるのなら仕方ないですね。肋骨も折りますから。」
そして左手を彼の背中に入れて抱きしめて、右手を胸に当てて押すと
哀れ彼の胸も右足と同じ運命を辿ることとなった。

少しでも胴体を動かすと激痛に見舞われ、腕と片足しか動かせ
なくなった彼を見て、美鈴は好物を見つけた子供のように、にんまりと
笑みを深くする。
「男性の人は危険に晒された時の方が、返って興奮するんですね。
大丈夫です。私が動いてあげますから。」
そして彼の頭に腕を回し、口づけた彼女は耳元で囁く。
「妖怪って、何日も眠らなくて良いんですよ。だからもう逃げる
ことが出来ない様に、夜も眠れないくらい愛してあげますね。」

以上になります。


807 : ○○ :2016/04/17(日) 19:45:15 94YfRRTE
この流れに乗って投下します


俺はある時を境に時を止められるようになった。

なぜかは分からない、仕事に遅れてしまいそうな時に感極まって「時よ止まってくれぇぇ!!」と叫んだらピタリと周りの景色が止まった。その後、無事に仕事場へ着くと何事もなかったかのように時が進み出した。

それ以来だったろうか。叫べば時を止められるようになったのは。


808 : ○○ :2016/04/17(日) 19:46:59 94YfRRTE
俺はその能力を生かして人助けや妖怪退治に活用した。

そんな事もあって今では俺も人里の有名人。無敵と称されちょっと天狗になっていた。そして俺は里人の娘付き合う事となった。

その何日か後、娘さんと一緒に雰の湖まで遊びに行っていたときに妖怪に襲われた。俺は、時を止めて危機を脱しようと叫んだ。しかし、時は止まらず娘さんは喰い殺されてしまった。

必死に叫ぶが相変わらず時は止まらない俺はもう・・・

俺は死ななかった。目の前にはメイドが立っていた。

そのメイドは俺に話しかけて来た。曰わく俺の事が好きだと。そして自分の行って来た自分に対する奇行についても語ってきた。

そして最後にこう付け加えた

「いつから時を止めれるようになったと錯覚してた?」


以上です


809 : ○○ :2016/04/17(日) 21:03:48 NbCVKJK.
>>808
こういう腹黒さは好物です。


810 : ○○ :2016/04/18(月) 17:27:39 nl7L4HeU
>>792
ttp://i.imgur.com/PXw2GWU.jpg
デフォルメじゃないとこんな感じ
けど悲しいことに自分の絵柄ってのがなくて毎回等身とかバランスとかバラバラになるんだよね

>>803
とりあえず美鈴「は」幸せになれたな
頑張れ○○

>>807
咲夜さんは娘さんが喰い殺されるのを嬉しそうに眺めてたんだろうか


811 : ○○ :2016/04/18(月) 17:31:40 nl7L4HeU
あ、ちなみにマミゾウさんが持ってるのはお金で下の方を描いてないのはあえてだからつまりそういう事ですはい


812 : ○○ :2016/04/18(月) 17:58:25 iILN92Xo
おもしろいかはともかく、○○に危害を与えたからそのモブ相手を殺害するだけの話でもヤンデレになるかな
なんか単なる仕返し話になるだけでヤンデレか? と言われるとちょっと悩む


813 : ○○ :2016/04/18(月) 18:26:28 zbam6GWk
十分なると思うぞ
要するに、私達の幸せを邪魔するやつは存在すら許されないってことなんだから
下手人や徒党の壊滅していく様子を、嬉々として報告しそう


814 : ○○ :2016/04/18(月) 18:44:58 iILN92Xo
「私のことが好きなのだから私のために役立って死ねて幸せでしょう」みたいな要素考えてみようかな<○○に危害を与えたモブ

まあ文章として書けないからできてもこんな流れですとかそういうのでしかできないけど


815 : ○○ :2016/04/18(月) 19:28:23 HPogJLc2
>>810
マミゾウさんエロいし俺はこっちの絵柄も好きだぞ
ちなみにリクエストってあり?


816 : ○○ :2016/04/18(月) 21:35:26 qnxiHRBQ
>>810
GJ!
>>812
こんな感じでしょうか?

不夜城レッド

「咲夜! さくや! さぐやあぁぁ!」
普段ならば吸血鬼は眠りに就く朝の紅魔館に、当主の大声が響く。
カリスマを投げ捨てて腹心のメイド長を呼ぶレミリアには、普段の
一見尊大にも見える余裕が消え失せており、全身に大怪我を負い
血塗れになった恋人に縋り付きながら泣き叫んでいた。
 取り乱すばかりで傷口一つ押さえることが出来なくなっていた
レミリアを尻目に、目の前の○○に一瞬にして包帯が巻かれ
もう一回瞬きをすると呻いていた彼が、穏やかに寝息を立てて
いるのは、彼女の忠実な部下である咲夜と、親友であるパチュリー
の仕業であった。レミリアの大声も、二人に全力を出させたことを
考えるとあながち全くの無駄であった訳では無いのかもしれない。


817 : ○○ :2016/04/18(月) 21:36:01 qnxiHRBQ
 しかしながら、いくらレミリアの周囲が彼の役に立ったとはいえ、
誇り高きウラド公の末裔を自称する吸血鬼は何も出来なかった訳で
あり、このことはいたく彼女の心を傷付けたことは想像に難くない。
 ここで傷付いたのが、恋人が苦しんでいるのに何も出来なかった
という事柄-つまり彼女の自尊心が損なわれたのならば、彼女が次に
行うことは比較的穏健になったであろうし、加害者への復讐を考えた
のならば、もう一、二段階強硬になったであろう。
 実際の所、彼女にまず最初に浮かび上がったのは、恋人が死亡する
ことへの恐怖であり、これが彼女を恐慌に突き落としていた。その次は
犯人への怒りであるが、これに厄介な物が混じる。即ち、恋人が何も
出来なかった自分を見捨てるのではないかという恐怖。彼女の周囲や
恋人自身が聞いたならば、一蹴してしまうものであったが、パニック
に陥っていた彼女には、恋人が自分を捨てる姿がありありと脳裏に思い
浮かんできたため、最悪の現実として感じられていた。


818 : ○○ :2016/04/18(月) 21:36:33 qnxiHRBQ
 ここで咲夜やパチュリーに相談でもすれば、あっさりと解決するので
あろうが、レミリアはしなかった。いや、出来なかったという方が
正しい表現であろう。なにせレミリアの妄想の中では、恋人が出て行く
際に、咲夜かパチュリーと一緒に腕を組んでいる姿が思い描かれていた
ためである。レミリアも紅魔館の他の住人に、恋人を奪われることが
無いことは頭では理解していた。しかし動揺した心には最悪の想像が
広がっており、レミリアは猜疑心を押さえることが精一杯であった。
勿論こんな状況では、相談なんぞ出来る筈もない。

 恋人に見捨てられる恐れは、苦しむ自分への被害者意識となり、
こんな状態を作り出した犯人への報復を決心させる。しかもそれが
紅魔館の住人に自分の威厳を見せつけ、恋人に自分が如何に頑張った
かを知らしめようという欲望まで混ざったのであるから、もはやグチャ
グチャである。そして、煮え立った頭と引っ切り無しに自分を責める幻想
を無理矢理に押さえ込んで、レミリアは命令を下す。ヒステリックとも
言えるような甲高い声で発せられた計画が、犯人の捕縛では無く殲滅
になっていたのは、彼女の精神を理解する者からすれば当然であるが、
部外者からすれば彼女の逆鱗に触れたとしか思えないものであった。


819 : ○○ :2016/04/18(月) 21:40:29 qnxiHRBQ
 レミリアは当主自ら前線に立ち、妖精メイド部隊を引き連れる。
犯人がいる一帯に火を放ち、彼方此方で怒号と戦闘音を響かせ、辺りに
いた無関係の妖怪も纏めて問答無用と引きちぎっていく。
 人里の村人は事前に咲夜が逃がしていたため無事であったが、そこに
あった家屋や畑は全て灰燼に帰す。焦土作戦もかくやといわんばかりの
惨状に、いくらなんでもあんまりだと抗議にきた村の人間は、物理的に
喋れなくなるというおまけまでついたこの惨劇は、辺り一帯に腰より高い
建物が何も無くなって漸く終結した。
 その結果紅魔館は不夜城と異名が付いたし、騒乱が終わり恋人が自分を
見捨てないと分かったレミリアは大層ご満悦となり、自分のスペルカードに
名前まで付ける程のお気に入りようであった。終わり良ければ全て良し
と思っている彼女は正に鬼、悪魔の類いなのであろう。

以上になります。813さんの言う感じでストレートに書こうとするが、
何故か不純物が混ざる…。ヤンデレに無理に理由付けをするからか。
単純にヤンデレの理由が無しでストレートに書いた方が、読んでいて
すっきりするかも知れない。


820 : ○○ :2016/04/19(火) 00:58:23 6ph4naNA
>>815
ヤンデレを一枚絵にするとなると自分の頭じゃ場面が限られるからシチュエーションを示してもらえたら嬉しいよ
けど画力的に無理なシーンや構図もあるだろうしそもそもそういうのって>>1に書かれてるような馴れ合いに含まれない?


821 : ○○ :2016/04/19(火) 01:42:15 6XSiZQEE
レミリアクラス、つまりは勢力の長クラスに好かれたら
○○はもう自分一人の体じゃなくなるんだよな

嫌々でも自覚してりゃまだマシ。厄介なのは、何にも分かってない状態の時


822 : ○○ :2016/04/19(火) 23:53:18 g3YXOEnM
○○に仇なすもの、つまりは私に仇なすもの
レミリアとか、藍様とか、幽々子様、いろいろな方々・・・ここら辺はそう考えそうだよね


823 : ○○ :2016/04/20(水) 01:20:44 H3KKC5rs
>>820
まあ度が過ぎるのはダメだろうけど案をもらうくらいならいいんじゃない?


824 : ○○ :2016/04/20(水) 20:52:54 fHdLpzrg
過保護もヤンデレの味わいだけど、いきすぎると残虐描写メインになってしまうから諸刃の剣だと思う
初心者にはおすすめできない
俺のおすすめは「冷たくされてもつきまとうヤンデレ」これ
冷たくされてもってのはもう○○に恋人いるとかでその気ない○○に一途な子
これも行きすぎるとただの下げになるけど最後にはうまく行くことで良い話にもなる
やっぱりヒロインは結ばれてなんぼだと思う


825 : ○○ :2016/04/22(金) 04:16:20 Af1kzybQ
ノブレス・オブリージュに囚われて(89)
ttp://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=39700&n=79

営利誘拐の被害者に○○がなってしまって……
の話はいくらでも苛烈に出来るから、想像していて黒々とした楽しさがある


826 : ○○ :2016/04/22(金) 18:34:38 zvrV73ew
「付き合うにしても俺とじゃ釣り合わない」など言葉の受け取り違いからくるヤンデレ化もいいのかもね


827 : ○○ :2016/04/23(土) 14:06:58 13IpQj4k
はあ… まーた逃げ出したんですか… ○○さん…
○○さん?私言いましたよね?地底の皆も旧地獄の皆も私のペット達もこいしも
特に 私自身も○○さんに感謝してるんですよ?地霊殿がここまで活気づくのは久々なんです。
なのに貴方の心はここにいるのを望んでいない …いや…私といるのを望んでいない
なぜです?私は精一杯あなたに奉仕してきましたが……  なぜ私を嫌うの?
私が妖怪だから?私が心を読んでしまうから?それとも理由さえもなくただ嫌っているのですか?
答えてくださいよ ○○さん?




…心を読むのではなく貴方の声で聞きたいんです。言ってくださいよ…


828 : ○○ :2016/04/23(土) 15:23:31 IDwQXJvg
>>827
分かっているのに、敢えて問い詰めるのは良いですね。執着が垣間見える
ようで。


投下させて頂きます。

アルカナゲーム

 ふと気が付くと暗い闇の中にいた。目の前には
僅かな明かり、紫色のドレスを着た女性が一人
自分の目の前に座って居る。女性がハラリと扇子
を広げると机にカードが現れ、漸く僕は自分が
椅子に座っていることを自覚するのであった。

「○○さん、ゲームをしましょうか。」
暗い所為か女性の顔はぼんやりとしているが、綺麗な
声が耳に染みこんでくる。
「何のゲームです?」
「タロット占いはご存じですか?」
ある程度は知っています。と答えながらカードを良く
見ようと体を前に倒そうとするが、体は全く動かない。
それどころか、腕すら動かせないことが分かった後で、
自分が今口を動かして、喋ることすらしていなかった
ことに気づく。


829 : ○○ :2016/04/23(土) 15:24:12 IDwQXJvg
 慌てる自分をよそに、目の前の彼女は微笑みながら、
指をスッと動かす。
「落ち着いて下さい。」
そう彼女に言われた途端、何だか僕は熱が冷めたように
平静に戻ったのであった。
「今から貴方には、カードを一枚選んで頂きます。
それぞれのカードにはタロットの大アルカナと、女性
の名前が書かれていますから、直感で選んで下さい。」
「直感で?」
「ええ、占いですから。」
知らない女性を選ぶという選択を、唐突にするように
言われ思わず聞きかえすが、こともなげに返される。

そう身も蓋もなく言われてしまってはそうするより
仕方なく、いざカードを選ぼうとすると、まるでゲーム
でカーソルを合わせたように、二枚のカードが目の前に
飛び出してくる。赤い髪の女性が書かれているカードは
見た瞬間に、死神だと分かり、もう一方の閻魔の帽子を
被ったカードは、何故か何のカードかよく分からない。
しかし緑髪の彼女が、閻魔大王であることは頭が勝手に理解して
いたので、正義か審判のカードであろうと当たりを付ける。


830 : ○○ :2016/04/23(土) 15:28:23 IDwQXJvg
 暫くその二枚を見ていると、女性の下には星のマークが
勲章のように何個も付いており、気になって尋ねる。
「この星のマークは何ですか?」
「これは彼女達のレベルです。」
「レベル?」
「そう、レベルです。」
禅問答のような埒が開かない回答を聞き、これ以上目の前の
彼女から情報を得ることを諦める。数分程、あるいは十数秒
だったかも知れない時間が経ち、僕は二枚のカードから彼女を
選んだ。タロットカードには二十一枚の大アルカナカードが
あり、目の前の机には残りのカードが伏せられていたのだが、
不思議と他のカードをめくる気にはなれなかった。

 僕が選んだカードを見て、彼女が尋ねる。
「どうしてそのカードを選んだのですか?」
「うーん、これから行動を共にする女性だったら、自分の好みの
人が良いからかな。姉御肌で頼れそうだし。」
-まあ、下の星のマークがもう一人の人より少ないから、何だか
弱いみたいで気に掛かるけれど-と言ってから自分がいつの
間にか、赤髪の女性の人柄や「この後自分が、彼女と一緒に行動
すること」を知っていることに驚く。目の前の女性は口元で微かに
笑った後、-其れでは-と告げると、急に僕の意識がこの空間から
消えていく。視界が曲がっていく中で、為す術も無く翻弄される
僕の耳に彼女の声が聞こえる。
「あのレベルは色々な強さを表しております。スペルカードの強さで
あったり、貴方に対する独占欲であったり。強い人を選べば、それ
だけ苦労が酷くなると。良かったですね、もう一人の方を選ばなくて。」

以上になります。

元ネタになる夢を見る→テンションが上がり創作→見直すとあれ、自分
疲れてんのかな?→まあいっか(今ココ)


831 : ○○ :2016/04/24(日) 16:17:54 bqJ.bl/k
>>823
そうだね
いつかお願いすると思うからその時はよろしく

ttp://i.imgur.com/9u9ZOvA.jpg
フランちゃんの気がふれてる設定と能力はヤンデレとよく合うなって思った結果


832 : ○○ :2016/04/27(水) 01:23:32 X7c6jYoE
>>830
赤髪で姐御肌っていうと雷鼓さんかな?
もう一人の方も気になる
>>831
怖かわいい
フランの危うさ好き


833 : ○○ :2016/04/28(木) 00:43:51 cV9cZEEg
>>832 赤髪は小町で、もう一人は映姫様では?


834 : ○○ :2016/04/28(木) 01:25:47 YwKpbTho
>>833
死神と閻魔の帽子って書いてあるしそうだろう
>>832はきっと疲れてたんだ


835 : ○○ :2016/05/01(日) 01:53:56 48vUPpYc
投稿します。

 「ねぇ○○さん、どうして私を避けるんですか?」
緑髪の彼女はいつものように僕に問いかける。-いや、そもそも
あんたとは親しくないだろう-という言葉を胸の奥に押さえ込み
つつ、僕は精一杯の笑顔を作って彼女に返答する。
「いやぁ、そんなことは無いですよ東風谷さん。」
「ほら、今も他人行儀に喋っているじゃないですか。私のことは
早苗でいいって言ったじゃないですか。」
-うるせぇ、お前には興味が無いんだよ-と言いたいことを堪えて
彼女に返事をするが、しっかりと隠したはずの不機嫌さが隠し切れて
いなかったのか、東風谷は僕を問い詰める。こんなことだけには
鋭い癖に、僕が東風谷を嫌ってさえいることは全く考えようとせず、
しつこく付きまとってくる彼女に、僕はすっかり嫌気が差していた。


836 : ○○ :2016/05/01(日) 01:56:05 48vUPpYc
 「そんな、風祝の東風谷さんを呼び捨てになんて出来ませんよ。」
取り敢えずいつものように突っぱねておくが、今日はいやにしつこかった。
「いつもいつも、そんなこと言って。はぐらかさないで下さい。
もしかして私のこと嫌いなんですか?!」
髪と同じように脳味噌にまで青黴が生えている割には、正解に辿りついた
ようである。-そうだよ、この野郎-と答える代わりに、里の人間を
生贄にしておく。
「いえ、そんなこと他の人に聞かれたら、どうなる事やら。」
「そんなことないですよ。私がさせません。」
「お気持ちは嬉しいですが、人の噂を止めることは出来ませんし。」
サービスで肩を竦めることも付け足しておくと、彼女はあっさりと
信じ込んだようである。多少今日は頭が冴えているみたいだが、やはり
先祖の蛙と同じ下等生物かと思い直し、とっととズラかろうとするが、
後ろからした声に立ち止まる。
「大丈夫ですよ。○○さんに何かする人は、私が奇跡の力で
潰しますから。」


837 : ○○ :2016/05/01(日) 01:57:24 48vUPpYc
 物騒な宣言を耳に入れてしまい、頭の中で一瞬思案する。聞こえなかった
ことにして逃げてしまう方が良いと、理性と本能の両方が珍しく一致して
結論を下していたが、ためらった隙に後ろから肩を掴まれて物理的に逃亡を防がれる。
-いや、それ奇跡じゃなくて、唯の暴力じゃないの-とか、-お前が
一番何かしそうなんだよ-という真っ当な考えが浮かんできたが、
彼女に背後から抱きしめられ、女性らしい柔らかさに気を取られ思考が霧散した。
「大丈夫です○○さん。私、愛していますから。」
何が大丈夫なのか、自分に危害が降りかからないという意味で、大丈夫
と言っているのなら、絶対に大丈夫でないと断言できるのであるが、
恋愛でのぼせ上がっている彼女はきっと、私たちの恋は前途多難
でも大丈夫ですという意味で使っているのであろうし、其方の意味ならば
きっと達成してしまうのであろう。そもそも、恋人(予定)の意思すらも
無視するような人物が、赤の他人に配慮するなどあり得るはずも無く。
 こうして僕は致命的な一歩を踏み出してしまうのであった。

以上です。


838 : ○○ :2016/05/01(日) 04:33:52 sHdois5c
>>837
おつ、〇〇がどうしてそこまで早苗を嫌ってたが気になるね


839 : ○○ :2016/05/01(日) 20:56:24 48vUPpYc
短編を一つ投下します。

 「○○さん、最近暗くなるのが早いから、夕餉までには
帰ってきて下さいね。」
守矢の神社の縄張りである妖怪の山とはいえ、流石に夜の帳が
降りると、色々な妖怪が跋扈する魑魅魍魎の世界となる。現人神の彼女
とは異なり、唯の人間である自分にとっては危険なモノも彷徨いている。
しかし感情的には分かっていても、そうそう何度も言われると窮屈な
気持ちが湧き上がり反発したくなる。

「分かっているよ、そんなに言わなくても。」
「そうですか、ならいいんですけれど…。この所遅いものですから。」
彼女はあくまでも心配していたものの、僕は被害妄想にも似た、束縛の
ような絡みつく愛情を彼女から感じ、思わず反発してしまう。
「一々五月蠅い。」
そう言って僕は彼女に目も合わせずに、神社よりさっさと出て行く。
後ろの玄関では、彼女が傷ついた顔をしていることがありありと思い
浮かび、僕はその想像を振り払うように足を速め山道を下った。


840 : ○○ :2016/05/01(日) 20:56:54 48vUPpYc
 人里で簡単な用事を済ませた後、茶屋で一息付く。直ぐに済む用事に
かこつけて人里で半日潰そうと考えたのは、早苗と四六時中顔を合わせて
いると息が詰まると感じたためである。庄屋の倅がつくような草臥れた
溜息をつき、分厚い湯飲みを揺すりながら茶を冷ます。猫舌でもないのに
そんな事をするのは、手持ち無沙汰だからであるし、ひとえに家に帰りたく
ないからである。
 彼女のことは愛していない訳ではない。彼女の神社が権力を持っているから
なんていう打算的な勘定ではなく、-其れが無いと言うと真っ赤な嘘になって
しまうのだが-最初の内は上手くいっていた様に思える。しかし徐々に慣れが
生じて来たのか、彼女のことを疎ましく思うことが出てきた。美人は三日で
見飽きると世間は言うが、あばたもえくぼだった物が、あばたは痘痕となり
自分に彼女のいやな面を見せつけてくる。自分も彼女に同じような思いをさせて
いるのであろうから、きっと自分も我慢をするべきなのだろうが、しかし
厭なものは嫌であるし、窮屈な物は窮屈である。特に最近は自分が彼女に
刺々しくなってきたためか、彼女は益々僕を束縛しようとしてきたように感じ、
僕は益々彼女から逃げようとする。つまり悪循環という訳である。


841 : ○○ :2016/05/01(日) 20:57:25 48vUPpYc
 そうした事をつらつらと考えていると、不意にふわりと香りが鼻に届き、
手元より団子が一つ減っていた。さらさらとした金髪の髪を風に遊ばせて
霧雨魔理沙は僕の椅子に座り話しかける。
「どうしたんだ○○。いつに無く暗いじゃん。」
「まあ、色々あって。」
まさか魔理沙に恋人の悩み事を話す訳にもいかず、曖昧に誤魔化す。これが
上白沢であるならば、また違ったのかも知れないが、自由奔放を絵に描いた
ような彼女に相談することは、町内スピーカーに向かって王様の耳は驢馬の
耳と叫ぶようなものである。
僕の気のない返事を聞いた魔理沙は、僕を暫く見つめてふうんと息を吐いた後、
ぼそりと呟く。
「東風谷早苗。」
 まさか当てられるとは思わずに、びくりと背中を震わせた僕を見て、正解を
確信した魔理沙は更に追撃をかける。
「最近いやに束縛してくるとか。」
「お前には関係ないだろ。」

 失敗した。これでは大当たりですと抽選会で鐘を鳴らすようなものである。
これは更に突っ込んでくるかと身構えると、予想に反して彼女は僕に香水を
差し出す。
「団子のお礼に取っとけよ。私特製の魔女の秘薬だぜ。」
「効果が分からない物を使う程、追い詰められてはいないよ。」
「藁にも縋りたいという顔をしていた癖に?正直になる薬だぜ。」
-じゃあなと言ってそのまま魔理沙は飛び去って行き、後に残った僕の手には
硝子の小瓶が残される。貰った物を人前で堂々と捨てるのには抵抗があり、
僕は香水を持って帰るのであった。


842 : ○○ :2016/05/01(日) 20:58:00 48vUPpYc
 ブラブラしながら帰り道を歩いていると、僕の意思に足が従ったのか、途中で
すっかり日は暮れてしまっていた。また早苗が小言を言うであろうことにうんざり
しつつ、僕は気が進まないながらも階段を上ろうとする。すると飛行機から爆弾が
降ってくるように、空から早苗が急降下して僕を捕まえる。
「○○さん、心配したんですよ。今まで何処に行っていたんですか!」
「唯、人里に行っていただけだよ。」
鷲に捕まれた小鳥のように、背後よりしっかり抱き寄せられながら空を飛ぶ。
慣れるまでは肝を冷やしていたが、今では会話が出来る程である。
「嘘です!うそです!そんなことないです!」
早苗は興奮しながら僕の胸元をまさぐり、神社の玄関に着地すると同時に魔理沙より
貰った香水を抜き取る。
「やっぱり、これ魔理沙さんから貰ったんですよね!」
「押しつけられただけだよ。」
あくまでも事実を述べるのだが、それは彼女にとっての真実にならない。
烏天狗に僕を尾行させるような人物には、どんな関係無い事であっても全ては疑惑の
種となる-パラノイアは存外優秀である。


843 : ○○ :2016/05/01(日) 20:58:33 48vUPpYc
 僕は彼女の誤解を解くために、硝子瓶を地面に落とし、ついでに足で割っておく。
中身が媚薬であったなら、彼女が興奮するかもしれないなとは、割った後で気づいたが。
アルコールかエーテルを溶媒にしていたのか、忽ち香水は蒸発して辺りに濃密な甘い
花の香りが漂うが、僕に縋り付いて泣いている彼女に変化は見られない。馬鹿に付ける
薬は飲んでしまった阿呆の話を思いだしながら、暫く早苗の好きなように服をハンカチ
代わりにさせておくと、不意に彼女が呟く。
「この香り、イランイランじゃないですか!」
「なんだいそれ?」
「エッチな気持ちになる香りですよ!この浮気者!」
-私は捨てられるんだ-と更に号泣しだした彼女を眺めていると、急にこれまでの怒りが
湧き上がり、早苗にぶつけたくなる。

「烏天狗に毎回尾行させているやつに言われたくないよ!」
彼女も負けじと言い返す。
「○○さんがだらしないからですよ!いつも女の人に鼻を伸ばして。今日なんかはプレゼントまで
貰って、私がいつも心配しているのに!」


844 : ○○ :2016/05/01(日) 21:00:00 48vUPpYc
「おいおい、お前のは心配してる振りをして、俺を縛り付けているだけだろう!」
普段思っていたことを早苗に言うと、彼女は涙を追加し鼻声で喚く。
「○○さんは私から逃げるじゃないですか!私はこんなにも好きなのに!」
「だからそれがうざいんだって!」
「馬鹿、馬鹿、ばか。」
ついには単語を繰り返すだけになってしまった早苗は、僕に懇願する。
「お願い、好きでいて。愛してるって言って。」
ひときしり泣き叫び、涙に濡れて仮面が剥がれた早苗を見ると、不思議と
素直に言葉に出来た。
「愛してるよ。そんな早苗でも。」
フーフーと最早唸り声を出すのみになった彼女は、僕のよれよれになった
服に鼻水を擦り付けてじっと僕を抱きしめている。
何時しか空には月が出ており、僕らを明るく照らしていた。

以上になります。


845 : ○○ :2016/05/01(日) 21:46:00 3aQPEZj2
ずっと思ってたんだけどここの人達って何をモチベにしてるの?
読み物とか最近だと絵も投下されてるけどそんなにコメントやら感想やらついてなかったりするし、話投下されてるのにガン無視して他の雑談してたりするよね


846 : ○○ :2016/05/02(月) 00:46:33 puwbVMW6
まあ、な。
ここも長いことやってるからなぁー
感想もそういっぱい貰えるわけじゃないけど、あえてモチベというなら気楽さかなぁ
いつ投稿してもいい。好きなときに書けばいいし、書かなくちゃ(使命感)みたいのがあんまないとこかも
読み手の為に書くんでなくて、書きたいから書くでいいとこが俺は気に入ってるよ
あとは他所でもあるけど○○と東方が出来るとこかな。


847 : ○○ :2016/05/02(月) 00:51:34 puwbVMW6
メンドクサイ早苗さんはありそうでなかなかこのタイプはないきがする。
でも、目当ての言葉を貰うのに変に思い詰めて行動起こすんでなく、好きっていえおらーうわーん!ってダイレクトに来る辺りあしらいやすいのかもね


848 : ○○ :2016/05/02(月) 19:08:56 kf3tq4DA
ここでしか投稿したことないけれど、ヤンデレで検索したら流れ着いて、なんかいやに書きたくなったことがあって、勧められて書いてみた感じかな。

自分が好きな文章しか書かないから、反応は無くてもぼちぼちやっているけれど、
その話は受けなかったんだなぁとは思って、次変えてみたりはする。時々迷走するかも。


849 : ○○ :2016/05/03(火) 21:18:01 aBEXMCjI
>>839
乙です
この設定のままの続編を是非とも読んでみたい


850 : ○○ :2016/05/03(火) 22:54:12 tUP2bj3E
投下します。

脚本に魅せられて

 小鈴に外来人の彼氏がいたという話は聞いており、本人からも時折
話を聞いていたが、それが何時しか彼氏とのすれ違いを伺わせること
が多くなり、ついに最近は彼氏が外に帰るの帰らせたくないのという
見事なまでに拗れた話となり、破局までもはや秒読みとなっていた。
 彼氏と喧嘩が多くなり、泣きながら私に彼への愛を訴える彼女を、
慧音と二人でよく慰めていたが、外界に帰りたいと主張する彼の意思は
固そうに見え、歴代の記憶を有する私にからしても、これを覆すには
もはや通常の手段では困難に思われた。

 そんなことを聞いていた中で突然小鈴より、「彼が自分に気持ちを
伝えたいと言って、準備のため暫く離れたい」と恋人が言ってきたと
聞いた時は、このまま恋人が脱走するのでは無いかと私には思われた。
 横で聞いていた慧音も同意見であったようで、今まで強硬に幻想郷
への定住を突っぱねていた人物が、急に骨を埋めることなんて有り得ない
と小鈴に忠告していたが、当の本人は彼が自分と一緒になるものだと
信じ切っており、挙げ句には苦言を呈した慧音が自分と恋人を引き裂こうと
していると見当違いのことを言い出したので、やむを得ず慧音には退場願い、
稗田の屋敷の私室にて二人っきりで話し合うこととした。


851 : ○○ :2016/05/03(火) 22:55:02 tUP2bj3E
 屋敷にて使用人に近づかないように言い含め、私と小鈴は差し向かいで
座ったのだが、小鈴の目は真っ直ぐ私を見据えており、中々固い意志を
見せているように感じられた。そのため私は彼女を翻意させるために
資料を見せてみる。その資料は烏天狗を使った裏のルートから入手しており、
慧音の前では見せるのに少々後ろ暗い所があった物である。しかし背に
腹は代えられない。私は小鈴の恋人がここ数日何をしているかを彼女に
突きつけた。

「ねえ小鈴、○○は無縁塚で入手した外来の鉄砲の訓練をしているわ。
しかも妖怪ですら粉々に砕けそうな代物よ。彼はきっと貴方を傷付けて
でも外界に帰るつもりだわ。」

流石に親友相手では、赤の他人を評することとは違い、お前は騙されている
だの、「らいふる銃」とやらで貴方に大穴を開くだろうとは言えないものの、
河童の技術屋の私見まで付いていれば、大抵の人は彼が大人しく定住する
訳ないと気づくものである。しかし我が親友は頑なであった。

「いいえ、それは違うわ。阿求、彼を信じて上げて。」

「そんな事言ったって、彼が本来なら必要ない武器を持っているのは事実
でしょう。貴方を騙して博麗神社に逃げ込む気よ。」


852 : ○○ :2016/05/03(火) 22:56:12 tUP2bj3E
 -それとも外界の珍事件のように、貴方と彼とで人里の貸し金屋か霧雨商店でも
襲う気かしら?-と嫌みの一つでも付け足すが彼女はへこたれない。

「そんな…。彼はそんなつもりじゃないわ。私は彼の彼女なんだから、
彼の事を絶対に信じないと…。」

「事実を認めないのは、唯の阿呆よ。ねえ、本当は彼が嘘を付いていることは
気づいているんでしょう?何だったら、永遠亭から薬を融通して貰ってもいいわよ。
私色々貸しがあるし、理性を崩壊させる毒薬なんか一つや二つ、いやダース単位で
貰えるから。それにそれが嫌なら、慧音に頼んで歴史を歪曲したっていいんだから。
閻魔だって私が何とかするし。」

「いいの、もう決めたことだし。」

 自分が彼に撃たれて殺されても良いと、いや寧ろそうなっても自分は御伽草子
に描かれる悲劇のヒロインのようになると、言わんばかりの態度を取る彼女を見て
私は彼女が恐ろしく思えた。彼女は彼を信じることに盲目になりすぎているし、
むしろ演劇の脚本に操られるように悲劇へと突き進んでいく。私や慧音がいくら
言ったとしても、彼女の意思を変えることは出来ず、ただ終結に引き寄せられる
ような彼女を見るのはとてもつらく、悔しい思いであった。


続きはまた後日になります


853 : ○○ :2016/05/05(木) 22:43:24 .M.t7r7U
>>850->>852の続きになります。

小鈴が帰った後、私は紅魔館に足を運んでいた。小鈴に三日後に彼と会う約束
を取り消させることはできなかったものの、小鈴と彼の面会時に私を含む他の人間
を立ち会わせることは約束させた。二人だけにしておけば彼の銃が火を噴くのは
目に見えていたので、実力行使に備えて協力者を集める事としたためである。

 紅魔館では予想に反して、人里に足繁く通っているメイド長では無く、当主
自らが面会に応じた。私が外来人が暴れるかもしれないことを話し、メイド長の
能力をもっていざと言う時に備えたいと頼むと、レミリアは即座に断ってきた。
「噂の外来人は新型の銃を持っているらしいじゃない。私の大事な咲夜をそんな
ところに送れないわ。」
 レミリアの背後でピクリと動いたメイド長を見たところ、力不足と思われている
ことに不満を持っているようである。私はレミリアのプライドを突っつき、譲歩
を引き出そうとする。

「あら、恐れ知らずの紅魔館にしては、いやに慎重ですね。」

レミリアは此方に犬歯を見せて笑って言った。

「いや、私が出よう。夜の女王の力を人間にお見せしようじゃあないか。」

藪を突いて蛇を出す。そんな言葉が当てはまるような状況であるが、元より使える
ものは何でも使う積もりである。予想よりも遙かに多くなった出費であるが、親友の
ためとあっては惜しくもない。金で安全を買ったと考え、計画の詳細を詰める事とした。


854 : ○○ :2016/05/05(木) 22:43:58 .M.t7r7U
 其れから日が経ち、小鈴と彼の面会の日となった。私は使用人の他に慧音とレミリアを
引き連れ、面会場所に向かった。○○は背中に大きな銃を掛けており、いざとなれば
弾丸の嵐を撒き散らせる構えである。二人以外は離れておき、いつでも駆けつけられる
体制を取っておく。そして男の方が告げる。

「悪いが外の世界に帰らせて貰う。邪魔するなら殺す。」

初手から殺意を漲らせて来た相手に周囲は息を飲むが、女の方は男に堂々と返答する。

「嫌です。幻想郷に残って下さい。」

そして一歩近づくが、男は彼女の足下に発砲する。

「来るな。」

「嫌。」

男は歯を噛み締め目を見開きながら、引き金を引く。弾丸は女の体を貫き、赤い血が
体を地面に縫い付ける。男は虫の息の彼女に背を向け、神社の方に向かおうとするが、
か細い、しかし耳にしっかりと届く声が聞こえる。

「駄目、行かないで。」

血だらけの手を動かしながら、土と紅に塗れズリズリと地面を這っていく。私と慧音達は
息を飲んで彼女を見守っていた。しかし男は無情にも再び銃を構え、彼女に連射する。
忌々しい記憶をフルオートで消し飛ばさんかのように


855 : ○○ :2016/05/05(木) 22:44:33 .M.t7r7U
 フルオートで銃弾を受け、通常の人間ならば全身が砕けるような鉄の嵐であったが、
やおら女が立ち上がり、男の方に向かって走り出す。暫く小銃を構えていた彼であったが、
弾が切れたため銃を捨て、腰に差していたピストルを抜こうとするが、彼女の方が
早く彼に辿りつき、彼を抱き寄せる。

「お願い、帰らないで。」

文字通り血を吐きながらなされた願いは、男にとっては恐怖であった。

「お前は人間だと思っていたのに、この妖怪め!俺を帰せ!」

男は恐怖に震えながらも拳銃を女の頭に押しつけ連射する。慧音が息を飲んだことから、
あの銃には退魔の仕掛けでも施されていたらしい。乱射を防ぐ為か赤い霧が辺りに立ちこめ
男は方向も分からずに逃げだそうとする。すると無傷の小鈴が物陰より飛び出し、男に飛びついた。

 小鈴は男に馬乗りになり懇願する。

「もう逃げられないんだから、お願い…。」

そして騙されたと知った男は最後の手段を取る。

「お前が退かないのなら、二人ともこれで死ぬ。」

手榴弾のピンをいつでも抜けるように指を掛けた男に、小鈴は泣きながら笑いかける。

「死ぬ時は一緒。」


856 : ○○ :2016/05/05(木) 22:45:58 .M.t7r7U
 親友を失った私は暫く失意にあった。目の前で酷い光景を目の当たりにしたのであるから、
当然と言えば当然であるのだが。周囲はそんな私に優しく接してくれたため、私は徐々に
立ち直ってきた。そんな中○○の友人であった××は、自分も辛いだろうに私を良く気遣って
くれており、私は彼のお陰で立ち直ることができた。しかし彼が外界への帰還を希望して
いると聞いた私は、お祝いとして彼を屋敷に呼ぶこととした。
 
「××さん、いかがですか?」

「最悪だよ。縄を緩めてくれたら、最高なんだけれど。」

「駄目ですよ。今日は「すたんがん」が無いんですから。」

「まさかお前もあの女と同じだったとは、屑め。」

「私は小鈴とは違いますよ。小鈴は死んでも良いと思っていましたけど、
私は生きたいですから。生きて××さんと一緒に居たいですよ。」

「其れで監禁したと。」

「いいえ、××さんが正直になるようにです。ほら、永遠亭特製のお薬ですよ。
嫌がったら注射器の針が折れますから、動かないで下さいね。そろそろさっき混ぜた
睡眠薬が効いてきたでしょうから、私にもたれかかって楽にして下さいね。」


以上になります。


857 : ○○ :2016/05/06(金) 00:34:00 OePSt4EA
幻想郷で、私と一緒に居てくれれば良いのなら
帰れない、そして故郷を忘れられなくて、一時でも忘れたくて酒に頼る

それでも世話を焼いちゃう方々は多そうだよな


858 : ○○ :2016/05/06(金) 04:19:18 TD4OeWuE
外から迷い込んだ者を引き留めるために、色々画策する話はあるけど、
逆に外に迷い込んだ幻想郷勢を帰らせるために、どうするか悩む話を考えたが…
連れて行かれるビジョン見えないので頓挫した。orz


859 : ○○ :2016/05/06(金) 05:05:27 3yelfcp.
ノブレス・オブリージュに囚われて(90)
ttp://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=39700&n=80

>>856
読んでいて両名の行動が、実にそれっぽいと感じた
小鈴は、言い方は悪いですが、阿求の友達以外の部分は通常の里人と同じ責任の重さ
しかし阿求は、稗田のしかも阿礼乙女。やらねばならぬことが山積しています。
だから小鈴は無理心中、阿求は監禁なのでしょうね

>>858
菫子「あなたと一緒に幻想郷に行かなきゃ、いやなのー!意味が無いのー!」
みたいな感じで、付きまといそう

考えたら、神社の巫女さんやってる早苗さん以上に。菫子はヤバい子扱いされそう


860 : ○○ :2016/05/06(金) 06:43:30 db6UR80g
845
もう見てないだろうがここは他人の行動に反応することが推奨されていないんだ
反応する奴が多いと荒らしの温床になるからな
どれほど人が去ろうが荒らしが湧かなきゃそれでいいんだよ


861 : ○○ :2016/05/06(金) 22:22:38 rqXUHYr6
ぶっちゃけると書き手としては喉から手が出るほど感想欲しいが、しかしながら平穏も大事だね。

>>856
まさかほんとに撃つとは……というか、死ぬとは思わなんだ!
ラストをみて思ったんだが、この調子ならあっちこっちに彼氏連れの少女がいるな。もれなくヤンデレで
となると、ヤンデレは○○を替えのきかない唯一ぬにの存在と思ってるから……
愛と腰を叩き付けてくる→子供ができる→愛で締め付けてくる(意味深)→子供ができる→
助産婦と安産の神様が過労死するな! 具体的には永琳とてい(何故か変換できない)


862 : ○○ :2016/05/07(土) 00:28:45 oJBNl/HQ
丸腰の人間の恋人を撃つとかよっぽどだよね
それほど追い詰められていたのかと同情してしまう


863 : ○○ :2016/05/07(土) 22:13:41 2o6nmsGc
>>859
ここまで深みに嵌まっても、まだ愛がある二人が凄い。


864 : ○○ :2016/05/08(日) 22:13:43 4LQjwLUg
>>859
その人が駄目になれば成る程強くなる愛。
正に母性の現れですね

>>858
一定以上に仲良くなれば、レミリアみたいに強引なことが似合うキャラ
ならば、良かれと思って連れていくみたいな

次より投稿させて頂きます。


865 : ○○ :2016/05/08(日) 22:14:15 4LQjwLUg
永琳女史の診察カルテ4

感応精神病(フォリア・ドゥ)について

 永琳が妖怪の山から連絡を受けたのは昼過ぎであった。患者を二人寄越したい
と書かれた文章は味も素っ気も無さ過ぎる-第一患者がは何の病気かも読み取れ
ない。使いにきた白狼天狗より話を聞き出して、漸く「妄想を示した患者二人が
此方に来る」とだけ分かった。しかしこれだけでは何が妄想なのかもそもそも
分からない。使いの者も手紙を届けてこいとだけ命令されており、患者については
噂しか知っていないことから、患者が来てから対応を考える事とした。

 その日の夜分になり、永遠亭に天狗三人がこっそりと現れた。正確には天狗二人と
白狼天狗一人であるが。はたてが受付にいた因幡に対して経緯の説明と手続きをしている
最中に、文と椛は引っ切り無しに言い争っていた。どちらも「泥棒猫」やら「彼を取ろう
なんて」なんて言っていたのだから、受付からの報告を聞いた永琳は溜息をついてしまった。

 まずは文の方を診察する。もう一人の方も放っておくと勝手に色々想像しそうなので
取り敢えずの処置としててゐに診察させておく。河童特製のスキャンにかけておいたので、
三十分ぐらいは持つであろう。

「彼について聞いて良いかしら?受付で色々やり合っていたらしいけれど。」

「ええ、実は私には彼が居るんですけれど、あの白狼天狗ったら私の彼に横恋慕
しまして、終いには「彼は私を選んだんだから、大人しく立ち去れ!」なんて言うん
ですよ。笑っちゃいますよね?隣には彼なんて居ないのに。彼は私の恋人なんです
から、全く何を考えているんでしょうね?」

此方に媚びるような姿勢で話してくるが、そのくせ蛇のようなしつこさを感じる。
一先ず今回の騒ぎの原因となった彼について質問しておく。


866 : ○○ :2016/05/08(日) 22:14:54 4LQjwLUg
「今、彼は何処に?」

「騒ぎになってしまったので、私の家に匿っているんですよ。」

-あの女には秘密ですからね-と頼んで来る彼女に返事をし、診察を終了した。


 続いては椛の方を診察する。此方も先程の文と同じように彼について聞いてみる。

「彼とはどういう関係なのかしら?」

「先生があの女に何て言われたか想像が付きますけれど、あの女は私の彼に付きまとう
ストーカーなんです。私の彼をつけ回して恋人きどりなんですから、笑っちゃいますよ!
あんまりにもしつこいもんですから、一度彼の前でこれ以上つけ回すなと言ったことが
有るんですけれど、その時あの女私の後ろに彼が居るのに、隣に話しかけて去って行った
んですよ。隣には誰も居ないのに!全くあの女は自分が恋人だなんて言ったんでしょうけれど、
全くの妄想ですよ。」

普段の真面目な印象とは異なり、一気に話掛けてくる。普段の抑圧を解放した素の姿なのかも
しれないと感じつつ、文と同じように彼について質問しておく。

「彼は何処にいますか?」

「実は哨戒小屋に匿っているんですよ。あの女がいつ付け狙うかも分かりませんから。」

彼女についても一通り話が聞けたため、椛も輝夜に案内を任せて、はたてを診察室に
招く。


867 : ○○ :2016/05/08(日) 22:15:39 4LQjwLUg
 心配そうな顔をしたはたては入室すると早速診断を聞いてくる。

「二人はどうなりますか?」

「そうですね。二人とも妄想を発症しているようでしたので、入院治療が必要かと。」

「そうですか。」

「しかし二人を一緒に連れてきたのはまずかったですね。二人は感応精神病を発症して
おりました。二人がお互いの精神病に影響を受けてしまう状態でしたので、治療の際には
隔離が必須となります。二人が接触すると妄想が進行する恐れがありますね。おや、
何かホッとしたような顔をされていますよ。」

-ここでのことは全て秘密にしますよ-と彼女に囁くように付け加えると、彼女はつらつら
と私に胸の内を打ち明ける。

「彼女達が私の彼の彼を狙っていたので、心が安まらなかったんです。もうこれで彼が
怯えなくて済むと考えるとホッとしてしまって…。天狗の上の方も、有名な御二人が男を
巡って争ったなんて大事にしたくない様子が見え見えで、私が二人と仲が良かったので
最近顔を合わせる度に争っていた二人の仲裁にいつも入って、今日もどうにか二人を
連れて来れたので…。」

優曇華ならば素直に信じこんでしまう彼女の告白であるが、話している最中に口元が僅かに
歪み、足が不自然に組み替えられることを見て、少し考える。

「その彼は今どこに?」


868 : ○○ :2016/05/08(日) 22:19:35 4LQjwLUg
「私の家の現像室です。あそこなら窓が無いので。」

「彼の写真はあります?結局今まで彼を見たことがなかったもので。」

「あら、そうですか?こちらです。」

二人とも自分しか写って居ない写真を見せてきますものね-と、文と椛の病状を正確に言い当てた
彼女と、彼女が差し出した数枚の彼の写真を見て、彼女の言っていることが正しいと理解するが、
彼女が異常なことも同時に理解する。窓の無い現像室に二人が優に収まる一枚板で作られたベット
を搬入するには、扉を作る前に家具を搬入する必要がある。つまりこの部屋は先にそういう目的で
作られたか、最近改装されている。そしてやや不健康そうな彼の手首や首筋に写るものは、見え
ずらいが圧迫痕である。
 そしてそもそも顔を合わせる度に二人がの狂気が悪化しているのが分かるならば、二人を隔離
ことを考えるべきである。恐らくであるが、はたては二人の間で仲裁をしつつ、二人の病状を悪化
させたのではないのだろうか?二人の友人という立場を利用して、お互いの狂気を増幅させつつ…
 永琳ははたてに写真を返しつつ、文が入院した穴埋めのパイプ作りを考え、はたてにサービス
をしておく。

「お疲れの彼に効く色々な薬がありますので、御入り用の際は是非ご相談を。」

「ええ、その時は是非。」

はたてが笑顔で握手を強く交わした事を見ると、裏のラインナップは伝わったようである。
そして静かに夜は更けていく。狂気を闇で隠しながら。


以上になります。

皆さんより感想を頂きまして思うのは、やはり皆さんここの隆盛を願う
気持ちについてはお互い心中通じるものはあるのだなあと。


869 : ○○ :2016/05/08(日) 23:03:34 u7jmpNng


やはり監禁はグッと来るものがあって良いね
でも元写真部としては、現像室監禁は液体の臭いが結構きつそうだと思ってしまった


870 : ○○ :2016/05/09(月) 20:35:22 qpDMvyJg
えーりんはたよりになるなぁー(棒)
外来人に救いはないんですか!?医者がぐるとか超怖い
でも、そろそろ甘ぁいねっとりのヤンデレが怖いな


871 : ○○ :2016/05/09(月) 21:14:49 R2tUvca6
ねっとりと、あま く…?

魔女の契約

 魔法の森には魔女がいる。そう聞いた少年は満月の夜に魔法の
森に出かけていった。里の酔っ払いが少年に喋った話では、魔女は
満月の真夜中に森の外れにある小川の畔に生える、月光草を摘みに
来るという。その話を聞いた少年は居ても立っても居られずに、家
の在庫として埃を被っていたランタンを失敬し、夜の森へと里を
抜け出すのであった。
 夜は妖しの時間である。昼の間ならば人里は勿論のこと、余程人里離れた
妖怪の山のような場所でもなければ、妖怪は堂々と彷徨いたりしない。
しかし夕暮れになると、村の外れに人食い妖怪が出没するようになり、
夜になると人里ですら危ういものとなる。そのため村人は夜には余程
のことがない限り家から出ようとしないし、どうしても外出する用事
がある時には、神社で魔除けの札を買うか霧雨商店から魔除けの香を
買っておき、それを頼みとして夜の道を歩くのであった。

 それを考えるとこの少年は無謀を通り越して玉砕、自殺行為といった
ものであろう。夜の闇に紛れてポツリとカンテラに照らされる少年は
低級の妖怪からすれば、さながら海に浮かぶホタルイカであり-つまり
簡単に見つける事が出来て、美味しく頂かれるということ-この少年が
そういった輩に見つからずに目的地までたどり着けたことは、単純に
運が良かっただけの話であるが、それは果たして彼にとって良かったのか
を考えると疑問が残るものである。即ち、人生万事塞翁が馬。


872 : ○○ :2016/05/09(月) 21:15:42 R2tUvca6
 少年が小川にたどり着いたのは真夜中の少し前、雲が僅かに浮かぶ
空の中で、月がもう少しで南に辿り着くころであった。小川は穏やかに
流れており水辺には月明かりに照らされて黄色の花が咲いている。
妖怪がいる森を緊張しながら抜けてきた彼にとって、普段見ることが
ない幻想的な風景は心安まるものであり、思わず月光草に見とれてしまって
いた。そして目の前の風景に心を奪われていた彼は、後ろから近づく
影に気づかない。


 少年に話しかけたのはアリス・マーガトロイドであり、彼にとっては
目的の人物であったのであるが、彼は驚いて彼女に話しかけるどころで
は無く、ただ呆然としているだけであった。そんな中アリスはランスを
持たせた人形を操ったのだから、彼は自分が魔女に殺されることを想像し
て失神してしまった。
 アリスは彼を憑けていた妖怪を手元の人形で始末した後、暫く考え込む。
薬の調合に使う月光草を取りに来たものの、そこには見慣れない少年が一人。
放って帰ってしまっても誰も見咎めないのであるが、彼をそのままにして
置くと、確実に先程の妖怪と同じような奴が寄ってきて、彼を食い殺し
てしまうことは確実であった。そのことに少々罪悪感を感じた彼女は、
少年を自分の家まで連れて帰ることとした。少年を見捨てられなかった
彼女は人が良かったのかも知れない。しかしこの場合、彼女が善人である
ことには繋がらない。魔女は人成らず、即ち人でなし。


873 : ○○ :2016/05/09(月) 21:16:31 R2tUvca6
 彼がアリスの家で目覚めた時には、彼女は家で紅茶を煎れている最中
であった。少年が魔女に力を貸して欲しいと頼むと、彼女は微笑んで
言った。

「君に手を貸したとしても、私に何の価値も無いでしょう?それでも魔女
に何か欲しいのなら、対価を何か差し出さないとね。」

少年には何も無い-そもそも有るのならば、わざわざ危険を冒してまでこんな
里から離れた魔法の森まで来ることは無いのだから。そしてそんな少年が
対価として差し出せるのは、自分自身のみ。

「僕の魂を差し出します。」

「へぇ、本気なの?魔女にそのことを言うなんて。それじゃあ契約成立ね。」

少年がもう少し慎重であったら、契約書の細かい文字までしっかりと見たので
あろうが、しかしその文字が異国の神聖文字で書かれていたり、薄暗い室内で
手元の照明が其処だけ上手い具合に影を落としていたりするのであろうから、
結局は意味が無いのであろう。斯くして少年は魔女に異能を求めた。対価には
少年の魂を、利息は複利を。


一先ず前半、また続きが出来たら投稿します。


874 : ○○ :2016/05/09(月) 22:35:06 R2tUvca6
 後半になります。

 少年はアリスより力を得たのであるが、彼は其れを人里での商売に利用した。
一人でに動く人形、若返る薬、魔物を退ける退魔の結界、こういった物は誰もが
欲しがる物であり、魔女の力を使って魔法の商品を作り出す彼の店は、人里にて
忽ち人気となり、並ぶ者がいない程の繁盛を見せた。
 何も無かった少年は立派な青年に変わったのであるが、元となった魔女との契約は
時折心の奥底より湧き上がり、思い出さずにいられない。しかしこれほどまでに彼は
行動力があったので、魔女の契約より抜け出す策を考えていた。彼は考える。
魔女との契約は自分の魂を賭けていた。しかし魂そのものを返すとは誓っていない、
ならば他の物で代えることができるのではないかと。

 青年は過去に一度だけ行くことが出来た魔女の家に行く。あの後で何回かアリスの
家に行こうとしたのだが、魔法でも掛かったかのように、彼女の家に行くことができ
なかった。まるで魔女がまだ来る時ではないと彼を拒んでいたかのように。
 あっさりと彼女の家に辿り着いた彼は、依然と変わらない扉のベルを鳴らす。
軽やかにベルの音が鳴ると、彼女は昔と変わらない姿で扉を開けた。

「貴方に借りたものを返す時が来ました。」

「あら、そうなの。じゃあ中に入って。」


875 : ○○ :2016/05/09(月) 22:35:37 R2tUvca6
自分が彼の魂を握っているためか、自信たっぷりに彼を招き入れる彼女。彼は自分が
作った最高傑作を懐に入れ、彼女の家に入った。

「それで、借りを返すということだけれど、どうやって返すのかしら?貴方は魂を対価に
したはずよ。」

「僕の魂を対価にしましたが、僕は魂を支払うとは言っていない。代わりに魂に匹敵する
物をお渡しします。」

-何かしら、面白いわね-と余裕の表情を崩さない彼女に、僕の自信作を突きつける。
賢者の石、魔法を志す全ての者にとって憧れを対価にすることで、僕の魂を魔女より
取り戻す。そう決意して魔女に石を渡した。暫くアリスは手で石を触り、魔力を流したり
していたが、青年の眼前の彼女の顔は余裕の表情を崩さない。彼女が一向に驚く様子を
示さない所か、にやにやとした笑みを浮かべる姿を見て、青年の内心は反対に落ち
着かなくなっていた。やがて焦れた青年はアリスに挑むように話す。

「どうですか、本物の賢者の石でしょう?」

「ええ、本物ね。」

なら、と言いかけた青年の声を遮るように、彼女は告げる。

「私の力を使って。」

「貴方の力を使おうとも、それは僕が作り上げたものだ。」


876 : ○○ :2016/05/09(月) 22:36:09 R2tUvca6
「ええ、そうね。私も昔其れを作ったことがあるわ。」

-魔界にいた時だから、いつだったかしら-と昔を思い出すようにしている彼女を
見て、青年は自分の見込み違いに気づく。

「まさか賢者の石はそんな簡単に作れる物なのか…。」

「普通の人間には無理でしょうね。其れこそ魔女の力を借りでもしないと。師匠の技を使った
だけでは、師匠は超えられないという事。」

「ならば、僕の魂を回収すれば良い。魂だけをね。あの強欲な商人ですら出来なかったけれどね。」

「あら、本当にして良いの? 魔女にとって魂を抜くことは何でもない事。まあ、契約には複利計算
と書いておいたから、今は膨大な利子が付いているわよ。何せ今の貴方が持っている物は全て貴方の
魔道で作り上げた物だから、回収し甲斐があるわね。」

両手で頭を抱え、唸り込んでしまった青年に魔女が近づき優しく告げる。甘い言葉で更に彼を籠絡する
ために。

「まあ貴方が私の物になれば、全てチャラになるけれど。結婚でもする?」

「年を取らない貴方が魔女なのは、直ぐにバレるさ。」

破れかぶれになった青年の言葉も直ぐに返される。

「あら、魔女にとって姿を変える事なんて容易い事。決まりね。」

青年にとって幸か不幸か、人生万事塞翁が馬。


877 : ○○ :2016/05/09(月) 22:39:30 R2tUvca6
以上になります。
別の意味で甘いアリスになりました。

SSを書きながらテレビを見ていると、修羅場がやっていて、
ついそっちを題材にして書きたくなる


878 : ○○ :2016/05/10(火) 22:30:00 clxaNfCs
投稿します。

蛇と蛙と指輪

「ねえ、○○さん。指輪どうしたんですか?」

迂闊にも不味い姿を早苗に見られてしまった。里で生魚を扱った
際に婚約指輪を外したのだが、そのまま外したことを忘れて
しまっていた。指輪は懐に入れているのだが、今から着けたと
しても、彼女の疑念は晴れないだろう。

「いや、里で外したっきりでね。着けるのを忘れていたよ。」

-そうですか-と言ったっきりじっと此方を見つめてくる早苗。
普段ならば、「この浮気者!」とでも言ってこちらを詰ってくる
のであろうが、こうも大人しいと却って調子が狂う。しかし彼女の
内心は荒れ狂っているようで、頻りに私の左手を自分の両手でさする。
手を忙しなく動かしながら暫く内心で怒りや疑念を沈めていたが、
区切りが付いたのか私の手をぎゅっと握りしめ問いかける。

「ねえ、○○さん。蛇と蛙どちらが良いですか?」

まるで夕飯のおかずを尋ねるような気安さで私に問いかけるが、
早苗の髪飾りの白蛇が生きているかのように動いている所を見ると、
かなり怒りを溜め込んでいるようである。私は考えて-


879 : ○○ :2016/05/10(火) 22:30:32 clxaNfCs
一、蛇を選んだ場合

 早苗はどこからともなく、弾幕を打ち出す時に使う幣(ぬき)を取り出す。
 
「おい、待ってくれ。どこから取り出したんだよそれ。というか、弾幕でも撃つ積りか?
こんな室内でどうする気だ。」

彼女が怒りのあまり弾幕を打ち込むことを避けようと、私は必死に説得をする。
一方彼女は冷静に怒りつつ、私に告げる。

「いいえ、弾幕は撃ちませんよ、弾幕は。」

「じゃあ一体何をするつもりなんだ?」

「○○さん。奇跡を見せますね。」

-ちょっと魚を捌きますね-とでもいうような口調で、早苗は奇跡を起こす。
彼女にとってはそれは当たり前の事であろう。彼女が持つ幣が私の指輪に
触れると、一瞬光が差した後指に激痛が走る。痛みに悶える私に彼女が再度
腕を振るうと今度は忽ち痛みが消えるが、指輪は尚も私の指に食い込んでいく。
完全に周りの皮膚と同じ大きさになってしまった指輪を見て、早苗は嬉しそうに
私に言った。

「これで指輪は外せませんよ。でも、一日経ったら奇跡の効果が無くなって
しまってもう一度あの痛みが走りますから、毎晩私の所に来て下さいね。」


880 : ○○ :2016/05/10(火) 22:33:05 clxaNfCs
二、蛙を選んだ場合

 早苗は私の手を自分の口元に持っていき、やおら私の指を舐める。滑らかな
舌が指輪を外した指に触れ、脳髄に痺れるような刺激を伝えていく。たっぷりと
一分は指を舐めた後、早苗は僕の指を手ぬぐいで拭き指輪を嵌める。

「これでお仕舞いです。もう指輪を外したら駄目ですよ。三十分も外していれば
指が腫れて痒くて痒くて…。それはもう、霜焼けの何倍もすごくなるんですから。」

寝る時はどうするんだよと、呆れて早苗に問いかけると嬉しそうに返事を返す。

「私の唾とかを取り込むと暫く大丈夫ですから…。毎晩…。」

そう言って浮かれる早苗を見ながら、外界ではこのような姿を恍惚のポーズと表すのかと
私は思わず思考を放棄してしまった。


以上になります。
書きたい作品はあるが、費やせる時間があまり無い。


881 : ○○ :2016/05/11(水) 07:01:11 pRbSmw72
なんで毎朝じゃなくて「毎晩」なんですかねぇ(にやにや)
短いけど俺この早苗さんがここ最近で一番好きです
この蛙のときの浮かれてる早苗さんきっとスゴく可愛いよね


882 : ○○ :2016/05/11(水) 08:55:01 l5U/suwk
やっばり単純なうふふあははなヤンデレよりある程度理性を保ったヤンデレの方が良いですね…
書くと途中から一気に様子がおかしくなる


883 : ○○ :2016/05/11(水) 23:15:30 OCGLnf5A
感想を頂きまして、ありがとうございます。
有り難いです。

投稿します。

金色の魔女

 僕が彼女に出会ったのはしばらく前のことである。僕が何かに困って
町外れの空き地でぼんやりと夕方の空を眺めていると、目が開けられ
無い位の風が吹いて、次の瞬間には金髪の彼女が隣に座っている。
彼女は僕の悩みを聞いてくれて、最後には「魔法」を掛けてくれる。
 僕には彼女が掛ける魔法は何も見えないのだけれども、次の日には
困った事はいつも無くなっている。いつも僕一人の時だけしか彼女
には会えなくて、他の人と居る時には彼女を見たことは一度も無いの
がから、彼女は本当は存在していないのではないかと思ってしまう
ことがある。
 しかし彼女が隣に座っている時には、いつもハーブの香水の良い
香りが漂っており、それは風が吹いて彼女が去った後も残っていた
から、僕は里の霧雨商店で売っていたその香水を、誰に渡すのでは無く
とも買ってしまう程であった。
 彼女が僕の話を聞いて魔法を掛けてくれた後で、必ず言う言葉がある。
「借り、一つだぜ。」と彼女はいつも言うのだが、僕はいつ返せば
良いのかを尋ねると、彼女は笑ってはぐらかす。そういうものだから、
僕は彼女が照れ隠しに言っているのだと思っていた。


884 : ○○ :2016/05/11(水) 23:16:05 OCGLnf5A
 そんな僕が里の女性と付き合うこととなったが、困ったことが生じた。
彼女が夜道を歩いていると、何か妖怪の様なものに尾けられたらしい。
らしいというのは、彼女も暗くて良く見えなかったからなのだが、
二度、三度と起こるようになって、彼女もすっかり参ってしまっていた。
僕も彼女を夜道で送るのだが、その時には決まって誰も怪しい奴が現れず、
徒労に終わるのであった。彼女が無事な事を喜べば良いのであるが、
やはり釈然としない気持ちを抱え、いつもの様に空き地で彼女を待っていると
こんな時に限って中々来ない。珍しいなと思いつつ帰ろうとすると、
夕空に流れ星が落ちたかと思うと、ぐんぐんこちらに近づいてきて、最後には
箒にまたがった彼女が空から落ちるように、僕の隣に着地した。

 普段はこうやっていたのかと、僕は一瞬見とれたのだが、やがて彼女が
本物の魔女だと理解すると、今までの彼女の魔法が本当に効果のあるもの
だったことに気づいてしまった。小さい時におとぎ話で聞いた、残忍な
魔女の話を思い出し、そんな魔女に貸しを作ってしまった事に忸怩たる
思いを抱くが、ふと邪な考えが頭を過ぎる。この魔女は僕の困ったことを
いつも唯で解決してくれたのだから、今の悩みも解決して貰えるのではないかと。


885 : ○○ :2016/05/11(水) 23:16:58 OCGLnf5A
 僕はいつもの様に隣に座る彼女に、今の悩みを相談したのだが、今回は
彼女は魔法を掛けようとはしなかった。僕がどうして今回は魔法を掛けてくれない
かと尋ねると、「その悩みは解決しないぜ。」と初めて僕の願いを断った。
そして驚く僕にこう告げる。

 人間には五臓六腑あるというが、今までお前の悩みを締めて十一個解決して、
一つ一個と計算すれば、借りは今纏めて返してもらうぜ。つまりお前を・・・


以上になります。


886 : ○○ :2016/05/11(水) 23:20:02 OCGLnf5A
>>882
急変するヤンデレも、味があるように思います。
落差を楽しむような、絶叫マシンのような


887 : ○○ :2016/05/12(木) 03:30:51 lDw6pmsg
ずーっと見てたんだろうな、魔理沙はこの子の事を
当然、年単位で
そう考えると魔理沙の方を応援したくなる


888 : ○○ :2016/05/12(木) 21:21:04 0WKyGOsQ
ギスギス命蓮寺
◆前回までのあらすじ◆
○○をフッた白蓮は後悔と自律の歯車的嵐の小宇宙でいい案配に壊れてきていたが、その身を案じた○○が一緒に里についていくことになって……

里につくまで、白蓮は何度も○○を観ていた。
最初の切っ掛けは○○の袖が腕に腕に触れた時である。
彼女は「いつものように」里に着くまで○○ととりとめのない話をしようと考えていた。
それは里に隣接するといってもいいほど近い命蓮寺からすれば非常に短い時間ではあるものの、それ故に白蓮はその時間を大切にしてきた。
寺をでてから最初の曲がり角からいつも始まるその時間を、白蓮は飴玉をしゃぶりきるようにじっくりと味わい、胸に刻んできた。
寺内で、白蓮が○○に……率直に言えば幻影の○○に話し掛けることはない。
厳密にはあるが、それは彼女が「二人きり」だと認識している時に限り、またこのようになった白蓮は人の気配に非常に鋭敏であった。
結果、白蓮は○○を見つめ続けてきた。○○だけを。
他の面々と共同生活をおくる○○を、彼だけ見るのは不可能である。
しかし、彼女にはそれが出来た。
もはや、妄想が産み出した○○と、実在する○○との境界はあいまいであり、彼女はその二人でもあり一人でもある○○を無意識に上手く使い分けていた。
いや、無意識にというよりは自然とそうできるように成長していた。
その彼女が、そろそろ○○が話し掛けてくる頃合いと見込んで胸を高鳴らせていた時に、彼の袖が触れた。
腕をやさしく叩いたそれに、白蓮は反射的に夢から引き戻されてしまった。

「?」
「……っ、……え、あ、いえ、…………」

はっとして○○を見る白蓮を、○○は「何か?」と視線で伺うが、それに彼女は精神を激しく掻き乱されてしまった。

○○がいる。
私の隣に。
……いえ、そうです、今日は一緒にいるのでした。
…………今日は?
あ、いえ、いえ、ちが……ちがくは……いつも
居る。
居ます、ね?
あれ……え、と……

白蓮は「考える事を封印する」ことを自覚的に行うことに手こずった。
それは、次の疑問、何故を産んでしまう。
何故そうするのか、そうしたいのか。
それを産まず、産まれても気にせず、自然と忘れてしまわなけらばならない。
しかし、手こずっていた。
何時もなら、さしたる苦もなく至れる場所に辿り着くことがまるで出来なかった。
その理由に、白蓮気付けない。
ーー○○が、近くで自分を観ている。
この、致命的に非日常的な要素が、毒のように白蓮の思考を侵し、彼女の日常を犯していた。
○○が、近くに……
本当に……?
居る?

白蓮は幾度も○○の姿を確認した。
里に着くまで幾度も。
その間、彼女が○○と話すことは珍しくなかった。


889 : ○○ :2016/05/12(木) 22:23:05 nU9JVr8.
白蓮が挙動不審に陥っていた頃、寺では二人、いまだ見送りのままその場を離れずにいた。
村沙水蜜と寅丸星である。

「いっちゃったね」
「……? ええ」

不満げに門に寄りかかる村沙を、星はそうですね、と頷いた。
そしてそのまま寺での雑事を済ませるべく、踵を返した。
しかし、それが何故だが村沙は面白くなかった。
星のその「なんということもない」という余裕が憎らしかった。

「嫌じゃないの?」

村沙はうつむきながらも、星を見ている。
それはある意味、すがるようなものだった。
村沙は自分が○○を好きなことに、もはや疑うことはない。
○○が好き。
私は、○○が好き。
私は……いや、「私達は○○が好き」
であれば、同じ気持ちではないのか?
○○が違う女と二人で出掛けることに、不安は、不満はないの?
そう思って、同士だと信じて、村沙は星にすがったのだ。

「いえ、特には」
「……ッ!」

それを星は振り払った。
いや、彼女にはその気は全く無かった。
本心から特に危機感も、嫉妬もなにも抱いてはいなかったのだ。
それは二人を信じているから。
○○を愛しているから。

○○に愛されているのを、自覚しているから。

だから、なんでもなかったのだ。
しかしそれは……それはあまりにも村沙に残酷だった。
すがる、という行為は即ち願いである。
願いとは信仰であり、助けを求める儚きものの声そのもの。
村沙は、おもいしった。
そう、そうだった……
この、この女は、○○と愛し合っているんだった。と。
彼女を星、と呼ぶことを村沙の○○を愛している部分と同じところが拒否した。

そうだよね?
星は○○の全部持ってるもんね?
例えば、そう、海は船を叱ったりしない。
水が減るとか、魚がへるとか言わない。
何故? だって全てを持ってるから。
そんな事、いちいち気にもとめない。
……気にもとめないうえで、気が向けは何時でもそれを引っくり返せる。
別に怒りからでもなく、楽しいからでもなく、気紛れで、いつでもそうできる。

海、さらには自然の猛威に激情はない。
それを、その一部であった村沙はよく知っていた。
さらには、そうした大きなものが無感動だということも。
奪われることの悲しさも、寂しさも知らない。
逆にいえば、その楽しさも知らない。

「星!!」

と、村沙は叫んだ。
その声には、わずかばかりの旬順があった。
今からいうことを、そう、今更言うこのことを、星が知っているのは分かっている。
そして、自分が圧倒的に不利な……ある意味死に体である地点にいることも分かっている。
しかし、今、言うべきだと村沙は思った。
そうしなければいけないと。

「私、○○が好き!」

こちらを向いてすらいない相手に、ケンカの相手は自分だと、せめても認めさせなければ、戦うことすら出来ない。
今まで二人は上手くやっていた。
星は村沙と○○の時間をとやかく言う事など無かったし、村沙も気兼ねなく○○との時間を楽しんできた。
しかし、違ったのだ。
二人とも○○と親愛と恋慕を募らせて過ごしながらも、二人は違ったのだ。
私は、オコボレを与ってきたのだと。
星は、私にホドコシテきたのだと。
それは詰まり、分け合う関係ではない。
一方的な、甕も柄杓も相手に握られて、ただ自分は伏して皿を捧げ持ち、待つだけ。
それを変える。
そんな惨めな関係を変える。

私に、獲る気があると分からせてやる。
私に、盗られるかもしれないと、脅えさせてやる。

「○○を、ですか?」

と、星は訝しげに問うとゆっくりと振り向いた。

「知ってますよ?」

そして、朗らかにわらったのだった。


890 : ○○ :2016/05/12(木) 22:36:51 nU9JVr8.
お久しぶりです。
やっとギスギスしてきました。
なんとかお膳立てが済みましたので、あとは病むだけです。


891 : ○○ :2016/05/12(木) 23:14:55 lDw6pmsg
最後の星ちゃんがめちゃくちゃ怖い
読者は余裕があふれでてるだけだってのは分かるけど
余裕が無い方から、当事者から見たらそうは見えない


892 : ○○ :2016/05/13(金) 23:03:43 oOyQRBQ2
>>541
だいぶ前の妖夢のお話です。三ヶ月も掛けてやっと続きが書けました。


俺と妖夢は人里から離れた場所まで来ていた。
どうせ客は来ないと思って外に出たのはいいが、いかんせん女と二人きりというのは少々気まずい。
何を話そうか悶々と悩む俺に比べ、妖夢はじっとこちらを見てくる。鍛冶屋を出てからこんな感じだ。

「おい、さっきから何なんだ?俺の顔に何か付いてるのか?」

一度止まり、妖夢の方を向く。

「あ!すみません。なんでも無いんです。ただちょっと鍛冶屋にいる時と雰囲気が違うなぁと思っただけでして。ええ。」

妖夢は少し巻き舌で話した。まるで何か隠すように。

「雰囲気が違う?」

それはどんな風にだろう。そんな事言われた事も無い。

「はい。普段はいかにも職人さんっていう感じでかっこいいのですが、外では力仕事は任せろ!って感じでまた別の格好良さがあります!」

俺は目を丸くした。こいつ今何て言った?

「は?俺がかっこいい?」

聞き間違いだな。周りから死人みたいな奴だ、なんて言われている人間がかっこいいなんて有り得ない。
確かに筋肉はあるほうだと思うが...。

「ええ。〇〇さんは素敵な人です!」

先程まで能面のような顔をして此方を見てきた妖夢とは打って変わり、子供が憧れの正義の味方を語るような表情になった。

「そ、そうか。素直に褒め言葉として受け取っておくが、それ以上は言うな。ちょいとむず痒いぞ。」

面向かって話されると余計に面映い。

「そうですか?私、〇〇さんの良いところいっぱい言えますよ?」

まだまだ話し足りません、といった顔になる。
待て待て。これ以上あると言うのか。勘弁してくれ。褒めても何も出ないぞ?
一体、今日の妖夢はどうしたんだ?ぐいぐい来るな。真っ直ぐに。
普段から何を考えてるんだか分からない奴だが、今日はいつにも増して読めない。

「もういいもういい。俺の話はもういい。外に出て自分の魅力を話されたって困る。そんな事より何処まで散歩するんだ?あまり危険区域には行かないぞ。」

なんやかんやでそれなりに遠くまで来ていた。あまりに人里から離れすぎると妖怪が襲ってくるかもしれない。
妖夢は大丈夫だろうが、俺は戦う術など持ち合わせていない。弾幕一つでイチコロだ。

「心配は要りませんよ。この辺は安全です。妖怪なんて一切居ません。いるわけがありません。」

なんだって?妖怪がいるわけがない?

「それはどう…。」
「目的地まで私が〇〇さんを運んで行っても良かったのですがそれではでー...。いえお散歩という感じでは無かったので少しの間は徒歩で来ました。」

聞こうと思ったら途切らされてしまった。…まあいいか。

「んん...。それで目的地ってのは?」

妖夢に運んでもらうと言ったな。どうにも嫌な予感がする。

「冥界です。」


893 : ○○ :2016/05/13(金) 23:12:30 oOyQRBQ2
>>892
続きです。また暫く此方に投稿させて頂きます。


.........。は?......冥界?

「お、お、お前...俺を殺すのか!?」

冗談じゃないぞ!!今の生活はそれなりに満足しているんだ!!馬鹿も休み休みに....!。

「ああああ!!違います!!違います!!〇〇さんを死なせる訳じゃありませんよ!!」

ではどうするんだ!冥界とは死んだ者が行く世界。つまり俺に死ねって言っているんじゃないか!

「じゃどうやって行くんだ!っていうか何で行くんだ!」

出会ったときからそうだ!ほんと何考えているんだ!!

「ですから、私が〇〇さんを運んで行きます。行く理由は私が其処に住んでいるからです。」

住んでる?冥界に?......。そういや此奴は半人半霊だった。前から何処に住んでるか疑問だったが冥界だったとは...。

「はぁ...。そうかい。理由になってないがわかったよ。生きたままでも行けるなら行ってみたい気はする。」

山の巫女さんが常識に囚われてはいけないと言っていた意味を今理解した。
生まれも育ちも幻想郷だが、今ようやく認識したな。
西も東も分からない外来人とは違って自分は分かっているつもりだったが...。

「流石、〇〇さんです。切り替えが早い。そういう所、好きですよ。」

馬鹿。なんでそーゆのさらっと言えるんだ。俺はお前の事なんて何とも思っちゃいねーぞ。

「はいはい。わかったわかった。ほら連れてってくれ。」

女の子に運んでもらうなどと男としてどうかとは思うが、今更断っても此奴はきっと無理矢理連れて行こうとするだろうから妖夢に任せよう。

「............。本当なのにな.........。」

何か妖夢がぼそりと呟く。

「? 何か言ったか?」

先程と違い、妖夢は少し萎れた表情になる。

「......いえ。それでは行きましょうか!」

俺の背中を妖夢が抱き着いてふっと空に浮く。空に浮くという行為に少々興奮する。
不思議と恐怖はない。此奴のお陰だろうか。地上とは暫しの間、お別れし、ゆっくりと空に上がる。
当初は唯の散歩だったのにいつ間にやらあの世行きだ。

「もっと高度上げますけど、暴れないで下さいね。.........う〜ん、もっと胸を当てれば良いのかな......。」

「え?なんだって?」

「いえいえなんでもないでーすよ。ふふっ...。」


894 : ○○ :2016/05/14(土) 07:59:36 oqiuz2XY
妖夢部活の後輩めいて可愛いな
こういう、人が書いたのでいいなーって思うと自分もそのキャラ書きたくなるよね


895 : ○○ :2016/05/15(日) 22:54:53 WMrVuZcw
皆の投稿ラッシュに乗ろうとして、乗れなかった。

ttp://www1.axfc.net/u/3665428.txt

魔理沙のヤンデレ。魔理沙の母親を勝手に死んだことにして
いるので注意。

この位の長さだと、掲示板に投稿するには長いような、
しかし皆の反応が見れるのは、掲示板に投稿した方が良いような
小まめに投稿すれば良いのだが、つい纏めてしまいたくなる。


896 : ○○ :2016/05/15(日) 23:07:00 WMrVuZcw
>>888
皆が壊れてきてる中で、寅の狂信っぷりが凄い
○○の行動に全て信頼を置いているのは、正に信者と言えるような

>>892
甘い清涼剤のような作品が、ここからどうなるか。
一気にくるか、ジワジワと周りを攻めてくるか。


897 : ○○ :2016/05/16(月) 09:40:56 1XCiKr.Y
>>895
この魔理沙からはなにか紅魔館のときの彼女を思い出させますね。口調とか。
女が浮気されたときのメソッドにのっとり○○にいくぶんの怒りとかを静かに全部女にぶつけるまりちゃんコエーよ
この○○には魔理沙は過ぎた嫁だけど、せめて忌の際に幸せだったと言える夫婦になるのを願うしかない。


898 : ○○ :2016/05/18(水) 12:20:24 6f7siuZc
妖夢や、魔理沙に霊夢、咲夜さんもか
いわゆる自機組って、年上年下の両属性持ってるよな


899 : ○○ :2016/05/20(金) 18:37:05 /EasoZxs
正邪ってさ、すごく奥ゆかしい子のはず
だって、天の邪鬼でしょ?自分の厄介さと面倒くささは理解してるはずだから
好きな子ほど悪辣に振る舞うんだよ!


900 : ○○ :2016/05/20(金) 18:52:52 TDJ/dHbc
でも、そういうアタシに近寄るな系の女子、みなさんお好きでしょう?


901 : ○○ :2016/05/20(金) 20:15:00 WM9sL/NU
自分から離れて欲しい振りをしながら、実は近づいて欲しい
屈折した感情がとても良いです。

次より投下します。
>>895の続編になります。

 婚約を済ませた魔理沙に、霊夢が会いに来た。半分は巫女らしく
お祝いであり、もう半分は悪友らしくからかいである。片側の額に
包帯を巻いた魔理沙に霊夢は問いかける。

「ねえ、引退するの?」
「まあな。年貢の納め時ってやつだぜ。」

「それは男が言う台詞でしょう?」
「固いこと言うなよ。早苗なら、「幻想郷では、常識に囚われて
はいけないんです」なんて言うだろうよ。」

「あら、私は常識的な方の巫女ってこと?」
「いや、金にがめつい方の巫女って里では呼ばれているぜ。」

「あらあら、親友に向かって酷いこと。」
「親友だから言えることだぜ。」

「まあ良かったわ、元気そうで。あんな事があったから、落ち込んでいる
のかと思っていたから。以前の魔理沙なら一発殴られたら、一発スペルをぶち
込んでいたけれど大人になったのね。」

やや早口気味で喋りながら霊夢は言葉を繋いだ。ここからが本番だと
言わんばかりに。

「ところで、紅魔館と組んで妖怪狩りなんて計画していないわよね。」

疑問ではなく、断定。巫女の感は魔理沙の計画をしっかりと捉える。

「何の事だか知らないぜ…と言いたいところだけれど、」
「白状しなさい。」

異変を解決する者として、有無を言わさずに魔理沙を問い詰めると、
冗談の仮面が剥がれ落ちる。


902 : ○○ :2016/05/20(金) 20:16:34 WM9sL/NU

「なあ、霊夢。」
「何。」

「私、悔しいんだ。」
「でしょうね。」

「悲しいんだ。」
「そうね。」

「苦しいんだ。」
「…。」

言葉を吐き出す内に、魔理沙の頬に涙が流れ出す。

「あいつらにあんなことされて…。畜生、畜生!」
「当然ね。」

「殺してやりたいんだよ。」
「あんな事されたら、私だってそう思うわよ!」

全ての者から中立である筈の博霊の巫女であっても、魔理沙の悲痛な声には心が
動かされてしまう。表向きの勝ち気な仮面を破り捨て、魔理沙は霊夢に縋り付く。

「なあ、霊夢、頼む。親友だろ!」
「ええ、そうよ。」

「だったら…、」
「親友でも、異変を起こせば容赦しないわ。」

「霊夢!」

希望が叶うかと思った所から一転、魔理沙は絶望の表情を浮かべる。

「駄目なんだよ。○○はあんなことしたけれど、きっと酔わされて無理矢理
されたんだよ。そのまま脅されていたんだよ。私にバラすぞって。だから、
私が復讐してやらないと○○だって安心できないんだよ。やられっぱなしだった
ら駄目なんだよ。それじゃあ、私は」

-唯の弄ばれただけの間抜けじゃあないか-
魔理沙がそう思っていることは霊夢には痛い程分かっていた。同時に、その言葉を
口にすることすら出来ない程に、彼女が追い詰められていることも。
 魔理沙は今復讐だけを頼りに生きている。それを絶つことは彼女の精神を完全に
破壊する。しかし博麗の巫女としては、誰かに肩入れすることは出来ない。その
矛盾の中に霊夢はいたが、自分に縋っていた魔理沙が遂に意味のある言葉を発する
ことも出来なくなり、狂気の世界に入り込んだのを見て魔理沙の肩を抱く。
 誰にも聞こえない、悟り妖怪にすら聞こえない小さな声で、しかし目の前にいる
魔理沙には聞こえるように、最早視界に自分を映していない彼女だけには届くように
幼児のように抱きしめて耳元に囁く。

「魔理沙、博麗の巫女が動くのは異変があった時だけ。人が数人消えただけなら、
それは異変じゃないわ。誰にもあなたの邪魔はさせないから。誰にも…。」

そのまま霊夢は魔理沙の涙を拭い、顔を拭いて寝かしつけた。霧雨家を後にした霊夢が
向かうのは 紅魔館。


903 : ○○ :2016/05/20(金) 20:17:34 WM9sL/NU
 起き上がった魔理沙は辺りを見回す。自分に厚手の掛け布団が掛けられていたのは、
霊夢かばあやの仕事であろう。人として何かが欠落した様な気がした-言葉にはできない
が、何か大きなモノが無くなったのであるが、其れでも自分はまだ動けると感じた。
 パチュリーに頼んでいた紅魔異変計画を練り直し、自分の復讐を達成する。それだけが
自分の価値を、○○の自分への愛を確かなものにすると信じて、魔理沙は紅魔館へ向かって
いった。箒に跨がって。

 魔理沙が紅魔館に行くと、パチュリーと共にレミリアが魔理沙を迎え入れた。
テーブルに座り咲夜に入れさせた、特別な時に振る舞う血入りの紅茶を飲みながら、やや興奮
したような大袈裟な身振りで、レミリアは魔理沙に告げた。

「いやはや残念だわ。霊夢が殴り込んできたお陰で、貴方との計画を練り直さなくては
ならないから。紅魔館が人里に食い込んでも良し、失敗して霊夢に退治された貴方を吸血鬼
にしたら、フランが喜びそうでそれも良しだったんだけれどねぇ。」

隣に座るパチュリーがレミリアに反論する。

「計画を練ったのは、レミィじゃなくて私。」
「あら、私たちだって親友じゃない。」

「それとこれとは別。」

まあ良いわ-と話題を切り替えたレミリアは隣に控える咲夜に、魔理沙に紅茶とケーキを出す
かのような口取りで、命令する。

「咲夜、後で一寸里に行ってあいつらを殺してきなさい。絶対に見つからないように。」
「分かりました。お嬢様。」

至極簡単に命令された常識では考えられない命令を、いともあっさりと受託する。咲夜に
とっては、命令を受け入れるかは問題ではなく、命令を遂行できるかも問題ではなく、
いつ実行するかが、変わるだけの話である。咲夜に「掃除」を命じたレミリアは、
いとも軽く言葉を続ける。

「全く、紅魔館がやらなかったら、どうせ地底の連中がしゃしゃり出てくるだけでしょうし、
久々のご馳走を楽しむことで満足としましょうか。それで何時するの。明日?それとも明後日?」

座る二人に対し、明後日にすると返事をして魔理沙は紅魔館を後にした。親友の優しさが、
魔理沙の心に熱く染み渡っていた。


904 : ○○ :2016/05/20(金) 20:18:07 WM9sL/NU
 魔理沙が紅魔館を訪れてから二日後、普段は静かな博麗神社に怒鳴り声が響き渡っていた。

「だから、私の両親がいなくなったんだって!」
「俺の弟もだ!同じ日にだぞ!どう見ても、異変じゃねえか!」

博麗の巫女に掴み掛からんとする勢いで、かつて魔理沙に掴み掛かった女と、彼女を唆して
霧雨家に自分の女を潜り込ませようとした男は、霊夢に必死に訴えていた。女が○○との子
と言った子の本当の父親は、永遠亭の検査によって既にこの男であると判明していた。唾を
飛ばして霊夢に詰め寄る二人を何物にも囚われない巫女は、欠けた茶碗を捨てるかのように
あしらう。

「それで?」
「おい、異変なんだから、さっさと解決しろよ!こんな時の為の巫女なんだろ?!」

「勘違いしているようだけれど、これ異変じゃないから。」
「は?何言ってんだよ!」

「単に人が居なくなっただけなんでしょう? どっかの妖怪に食われたんじゃないの?」
「そんな急に人が食われて堪るか!」

「そもそも人里の保護は、慧音か村の自警団の仕事でしょう。」
「あいつら、俺たちが訴えても、碌々仕事しようとしないんだよ!普段ならガキ一人が
夕方帰っていないだけで大慌てする白沢が、捜索一つしようとしないんだよ!あいつら
グルなんだよ!」

「どこと?」
「霧雨だよ!私があそこの若旦那と付き合っていたのに、クソガキが割り込んで来やがって、
それを逆恨みしてんだよ!」

「へぇ、恨まれる心辺りがあるんじゃない。」
「いや、だからって、浚うとか犯罪じゃないか!ひょっとしたら、殺されているかも
しれないんだぞ!」

「妖怪の仕業じゃないんなら、博麗の仕事じゃないわ。勝手にすれば。」
「この野郎、巫女の癖に、こっちが下手に出やがったら付け上がりやがって!」


905 : ○○ :2016/05/20(金) 20:19:02 WM9sL/NU
男は激怒し霊夢に掴み掛かろうとするが、霊力を込めた彼女の片腕一本で、首根っこを
掴まれて壁に叩き付けられてしまう。退魔針を男の目に近づけた霊夢は男を締め上げて
言い放つ。

「そんなに訴えたければ、白黒付けに地獄の閻魔に会わせてやるから、今すぐ行ってきなさいよ。」

 ほうほうの体で神社から逃げ出した二人は、山の麓で自分達の身が危なくなっていることに
焦りを覚えて話し込む。

「おい、博麗神社まで取り合わないとか、一体どうなっているんだ。村の自警団には霧雨が手を
回したんだろうけれど、稗田や半獣まで俺たちの敵になってやがるぞ。」
「そんなこと言ったって、どうしようもないじゃないか。こうなったら、薬をくれた山の天狗
ん所に行くしかないでしょう。」

「早く行くよ。って、あんた何処行ったんだい?」

さっきまで隣で話していた男が、今は居なくなっている。さては自分達の周りの人間を次々と
浚ってきた奴らがついに自分達に手を掛けたかと女は思い、こうしては居られないと、一目参
に妖怪の山に走り出す。背後に男を誘拐した追手がいるとは知らずに。

 妖怪の山に辿り着き、いつものように辺りを哨戒している見回りに、天狗への取り次ぎを頼もうと
する。普段ならば、なじみとなった自分の顔を見るだけで、目当ての天狗に連絡をつけてくれるので
あるが、今日の天狗は新入りなのか自分を侵入者として扱ってきた。やむを得ず相手に貰った小物を
見せて、案内を請おうとするが、口を布で塞がれて意識を刈り取られてしまった。



続きは暫く後になります。


906 : ○○ :2016/05/20(金) 20:41:12 WM9sL/NU
続き


 女が目を覚ますとそこは豪華な食堂であった。赤色のモチーフの人間には少々目にきつくあったが、
数々の調度品や自分が縛りつけられているテーブルは、里では見たこともないような物ばかりである。
自分が俎板の上の鯉となっていることに不安を覚え、女は大声で助けを求める。
 すると少女が一人現れて女に話しかけてきた。

「こんばんわ。ご機嫌いかが。」
「あんた、ここは一体どこなんだ?」

「紅魔館と言えば分かるかしら。」

悪魔が住む館として有名な名前を聞いて、女は身を竦ませる。そういえば、目の前の少女も少々薄暗くて
分かりにくかったが、背中に羽があるようである。

「お願いします、助けて下さい!」

自分の命運が危うくなっている事を自覚した女は、必死に目の前の吸血鬼に請い願う。弱者には強いが
強者には媚びる。悪辣な罠を○○に仕掛ける辺り世渡りは上手なのであろうが、生憎人外には効果が無い
ようである。

「ねえ、吸血鬼にとっての一番の美食って何か知ってる?」
「人間の生き血でしょうか。」

何でもいいから、逃がしてくれよ-と思いながら、レミリアの質問に答える。

「当たらずとも、遠からずってトコかしら。」

レミリアは態と爪と牙を伸ばし、女の所に近づいていく。

「吸血鬼にとっての一番は、人間の××の躍り食い。恐怖をソテーにして生きたまま××つくのは、
本当に最高よ。じゃあ、頂きます。」


907 : ○○ :2016/05/20(金) 20:42:14 WM9sL/NU
 妖怪の山は騒然としていた。大天狗には及ばないながらも、天狗の社会の中で大きな力を持っていた
中天狗が、今は縄で転がされている。今まで生きてきた中で一番の恥辱に、中天狗は顔を怒りで震わせ
目の前の文に叫ぶ。

「畜生め!人間と吸血鬼の手下になりやがって!」
「あやあや、酷い言いぐさですね。私は唯、人間の里に勝手に介入した犯罪者を、皆さんと力を合わせて
捕まえただけですよ。」

「うるさい!目を掛けてやったのに裏切りやがって!」
「裏切る?何のことでしょうか?下の天狗にあれだけ酷いことをしておいて、自分が部下に慕われて
いるなんて、とんだお笑い草ですね。酷い話もあったものです。知ってましたか?あなた皆に嫌われて
いるから、今誰も助けてくれないんですよ。」

「大天狗がこんなこと許さないよ!」
「人の威を借るいや、今は天狗の威を借るですか、そういうことはみっともないですよ。正義と公平を
愛する大天狗様が、貴方のような屑を許す訳ないでしょう?」

絶体絶命となり何も言えなくなった、中天狗に文が宣告する。

「里の悪人に永遠亭の薬を横流しし、協定に背き霧雨家や○○を罠に掛けようとした罪、誠に
許すことが出来ず。今此処にて即決の断罪を行い、もって落着とするものである!
さあ、魔理沙さんどうぞ。」

「ああ…。マスタースパーク!」

普段のスペルカードとは異なり、殺すための魔法が黒幕の天狗を貫く。尊厳を掛けた自分の戦いが、
今終わったように魔理沙は感じていた。


908 : ○○ :2016/05/20(金) 20:44:33 WM9sL/NU
以上になります。

何日かに分けて書くと、前回書いた文を修正したくなってくる症状


909 : ○○ :2016/05/20(金) 20:48:14 TDJ/dHbc
初心にかえって、愛されすぎて寝れないとはどんな状況だろうか
ヤンデレたちに当て嵌めて考えてみる。

ルーミアは愛してても、大好きでも食べようとしそう。
むしろ、好きだから食べようとしそう。
彼女が寝るより先に寝たら……で、寝れない。

チルノは、家に帰らない。
んで、○○をすきあらば妖精にしようとしてくる。

美鈴はぼーちゅーじゅちゅつとかなんかそんなエロ方面の気を使って○○→美鈴→○○→美鈴という永久機関めいた気の流れで寝かせて紅

パッチュリーは喘息で死にそうな位ゼヒゼヒしてるのに、這いつくばって○○の所にいこうとする。
○○は一晩中看病するはめに。パッチュリーはドロッとした満足げな笑顔で寝ないでずーーーーっと○○みてる

咲夜さんは空間弄ってすーっごく広い空間に監禁しそう。
走る→目の前に両手を広げた咲く夜さん。後ろに走る紅茶セットをもった咲く夜さん。倒れる→仰向けになってる咲くぽの上から落下する
みたく、なにやっても咲夜に行きつく。

レミリア
なんか昂って寝れない。
血が欲しい。……血が、女の血が。
目の前にはレミー。吸血鬼同士の吸血行為は即ち求婚行為。
はー、はー、はー、ぜっ、絶対にお前なんかの、はー、はー、はー、
……舐めるくらいならいいのかな……いいや、ダメだ
という、誘い受け。


910 : ○○ :2016/05/20(金) 21:34:29 WM9sL/NU
>>909
レミリアのシュチュエーションが特にすごく良いです
悪魔のように誘惑する感じがとてもらしい

正邪の話題が出たので一つ投下

天邪鬼の呪い

「なあ、○○、あんまり私みたいな妖怪に近づくんじゃないよ。」
どうして?と尋ねた僕に正邪は言った。

「妖怪は人を恐れさせる。妖怪の存在意義が成り立たなければ、
その妖怪は生きていけない。所詮、妖怪は人間を食い物にして
いるだけさ。」
焼き鳥屋にて日本酒を傾けながら、隣に座る僕にそう言った
彼女は、なんだかとても苦しそうに見えた。


 また、やってしまった。家で私は頭を抱えてしまった。○○を意識
すればするほど、自分の舌は○○を拒絶するような言葉を吐いてしまう。
いくらしないようにしても、そうなってしまう。天邪鬼の性とも言える
そのことは、私自身を深く傷付けていた。しかし妖怪である私には他の
生き方は出来ない。○○の好意を食いつぶしているだけのように感じ、
私はそんな自分を嫌っていた。


911 : ○○ :2016/05/20(金) 21:36:27 WM9sL/NU
 

 僕の周りの里人が、急に僕を嫌ってきた。狭い村社会の中では、到底
村八分となっては生きていけない。困り果てていた僕に、正邪は唯一
まともに接してくれた。周りの人間が僕を嫌う中で、彼女は口では
僕を遠ざけようとするも、僕に接してくれる唯一の者であった。そんな
彼女に僕は依存してしまっていた。


 私は考えていた。○○を得るにはどうすれば良いかと。どうあがいても
私は○○を拒絶する言葉を言ってしまう。私から彼との距離を縮めることは
出来ない。しかし私に悪魔のような考えが降りてきた。私と○○の距離が
縮まらないのなら、○○と他の人の距離を広げればいい。コロンブスの
卵のような閃きが私に降りてきて、私はその誘惑に負けてしまった。
 もはや彼の周りの人間は全て、彼を嫌っている。彼の今まで築いて
いたものを壊してしまうのは、心苦しいものがあったが、心を鬼にして
私は彼への好意を反転させていった。他の人間が全て彼から離れた今、
私だけが彼の側に居られる。彼が頼れる人は私しか居なくなった今、
私だけが彼と共にいる。


以上になります。


912 : ○○ :2016/05/20(金) 21:38:22 TDJ/dHbc
ギスギス命蓮寺

前回までのあらすじ
白蓮、自分の幸せな状況をうまく飲み込めずキョドる

○○は人里について感嘆の声をもらした。
人通りの多い、外の言葉でいうならメインストリートとでも言えばいいのか、兎も角大通りをざっと見回しただけでもある種の人々が目についた。
蛍の女妖怪と寄り添い、歩きづらそうにしてる男、男の三歩後ろをしずしずと付き従う一角の鬼、路地裏に男を引っ張り混もうとしてる里の守護者……等々だ。
つまり、人間と妖怪とのカップルがなん組も、そこかしこに溢れているのだ。

「これは……」

と、息を飲んだ○○だが、しかし我が身を省みて肩をすくめた。
そう。自分もそのなかの一人なのだと、○○は思い至った。
寅丸星のことを○○は心底愛していた。
いついかなるときでも、瞼を閉じるまでもなく彼女の姿を思い浮かべることができる。
貞淑で、しかし極まれに貪欲に自分を求め、呼ぶ星の声。
「幸せ……」と、自分の胸の上で呟く星の温もり。
おかえりなさい、と出迎える星のはにかむ笑顔。
どれも眩いばかりに煌めく宝物である。
この自分の満ち足りた気持ちを、里のそこかしこで共有できそうな者達がいる……

「幻想郷にきて良かった……」

本心から○○はそう口にしていた。
人と妖怪……時には神の、この楽園を目の当たりにした○○は、兼ねてからこの光景目指していたであろう白蓮に、尊敬の念を新たにした。

「はい……?」

しかし、チラ見からガン見にフェイズを移行した白蓮は、なんとなく返事を返した。
○○が、自分の隣にいて、しかも自分だけに、笑顔で、話しかけている。
それだけで白蓮はいっぱいであった。

そうこうしている間に、一人の男が竜巻と共に現れた天狗に抱きつかれたかと思うと、次の瞬間には流れ星のように尾を引いて飛び上がり消えていった。
○○は、きっと迎えにでも来たのだろうと、あたりをつけ「お熱いことだなぁ」と、そうした時期を過ぎた先達としての余裕を持って、それを眺めた。
そして、それは一面的な見方ではあるが、正しく合っている。
連れ去られる男の顔は、○○からはよく見えなかった。


913 : ○○ :2016/05/22(日) 21:03:42 IKJfa82o
>>912
なんという世紀末風味な幻想郷
ちょっと投下します

「どうして宇佐見は寝ていても成績が良いんだ?」
「うーん、実は透視能力でテストの問題を先にみているんだ。」

「どうせ、いつものハンドパワーとか言って誤魔化してるけど
実際種のあるマジックなんだろ?」
「ひど-い。折角○○にテストの内容を教えてあげてるのにー。」

「はいはい、助かってますよ。」
「えー本当?」

「分かった、分かった、今度部活に付き合ってやるから。」
「一応、○○も副部長なんだよ。」

「二人しか居ないのに?」
「当然。次は隙間女の探索でもしようかしら。」

「はいはい、じゃあまた明日。」
「ああ、○○、明日は電車を一本早めにした方が良いよ。」

「サンキュー。」
「またね。」

そして僕は宇佐見の言ったとおりに、電車を早く一本したのだけれど、
その日に限って、いつも乗るはずの電車が故障して、クラスの大半は
遅刻をしていた。僕が密かに憧れているあの人も遅刻していたので、
一緒に遅刻できたら良かったのにと、むしろ惜しい気持ちが
生じてしまった程である。


電波が降りてきたら続く


914 : ○○ :2016/05/23(月) 23:06:09 t0PWycZQ
まとめました。 ただ謝罪することが1つ
795-レミリア変化球モノはダウンロードできなくてまとめる事ができませんでした。
ちゃんとメモ帳にコピーしていなかったこちらの不手際です。作者様申し訳ございません。

それと完全に人任せになるのですが、誰か紺珠伝と菫子の枠を
左メニューに追加してくれませんか?パスワードが必要みたいなのですが
ぼくは知らないのです。 おねがいします。


915 : ○○ :2016/05/25(水) 08:34:17 0gysl.YE
ありがとうございます

レミリアの変化球モノは、txtに貼りつけてるが・・・どうしましょう


916 : ○○ :2016/05/25(水) 12:18:55 xWkDLT2k
>>910
「なあ、○○、あんまり私みたいな妖怪に近づくんじゃないよ。」
これをうちのスーパーコンピュウターに翻訳させたところ
「ねえ、○○、もっと私だけのそばに来てよ……」
という、素晴らしい結果を叩き出した。
いいね!ときめいちゃう


917 : ○○ :2016/05/25(水) 16:31:13 j4f99qj6
>>914
まとめありがとうございます!
お疲れ様です。

以前作者の人に許可を貰って再掲載していた例がありますので、
レミリア変化球の作者の方が見られていましたら、是非返信して頂くか、再度掲載して頂くか、して頂けると幸いなのではないでしょうか?


918 : ○○ :2016/05/29(日) 19:39:52 evbvDFTc
蓮メリの間に挟まれた○○は、何を思うか

個人的な考えでは、両方からまるごと愛されそう


919 : ○○ :2016/05/29(日) 20:32:57 SHCjUXds
>>918
一人ではできないコトも、二人なら…

次より投稿いたします。901の続きになります。


920 : ○○ :2016/05/29(日) 20:33:27 SHCjUXds
 魔理沙が闇で動いた件から数日、騒がせていた件のかたがつき、
霧雨家には久々の穏やかさが漂っていた。しかし古来言われるように
平穏の中に災いの種は存在する。そして此処にも種は芽吹き、疑惑
の花を咲かせようとしていた。

 ○○は久々にゆっくりと過ごしていた。つい先日まで自分達を
悩ませていた男と女が、何故かすっかり煙のように消え失せてしまって
いたからだ。二人(特に女の方)はしつこく自分に付きまとい、
甚だしくは永遠亭の医者によって、○○の子でないと判った後も
○○の家に押しかけていたものだから、閉口した○○は霧雨家に
非難をしていたのであるが、そこにまで何度も押しかけて、その度
事に使用人に丁重に追い出されていた筈の二人であるが、ここしばらくは
ととんと姿を見せなくなった。
 自分のお腹には○○との子が居るのだと、地獄の亡者のように縋り
付いてくる女の姿を見ていた○○としては、余りにも呆気ない様に感じた
し、妙な事に魔理沙に至っては二人のことを全く気にも留めていない。
女を悪者にしようと自身に手を出させる為に挑発した時のような、内側に
秘めた怒りも見せない。


921 : ○○ :2016/05/29(日) 20:34:01 SHCjUXds
 全く「二人の存在が消えてしまった」かのような魔理沙を見て、○○の
心中に疑念が生じる。しかも前に両者の仲介に入った、稗田阿求に二人の
行方を尋ねてもはぐらかされ、村の自警団に聞いてみても、霧雨のお嬢様
に聞いてくれと-つまりは魔理沙が口止めしている訳である状態を見て、
疑惑の芽は○○の心の中で大きくなっていった。
 しかし馬鹿正直に聞いてみた所で、妙にぎらついた目をして-うふふ、
私は、知らないんだぜ-と言うばかりであったので、事、ここに至っては
自分で調べるしかないと、○○は行動を起こすのであった。

「魔理沙、ちょっと出かけてくる。」
「ああ、何処に行くんだ?」

「里。」
「私も一緒に行っていい?」

 最近○○が出かける時には矢鱈に付いてこようとしている魔理沙であるが、
今日は付いてこられると○○にとって少々都合が悪い。他人からすれば、
怪しいことこの上ないが、とってつけたように同行を断る。

「いや、今日は一人で行きたいんだ。用事があるから。」
「ああ、そう…。それじゃあ馬車を一台空けとくから。」

「分かったよ。」

 何とか魔理沙に誤魔化して家を出た○○は、里で手土産を買った後に
一路竹林を目指す。即ち敵は永遠亭にあり。


922 : ○○ :2016/05/29(日) 20:35:17 SHCjUXds
 永遠亭に着いた○○は、先日の礼として鈴仙に手土産を渡して挨拶をする。
すると珍しく患者が居なくて暇であったのか、永琳がわざわざ応対に来た。
目的の人物自ら出てきたことに、○○は内心でガッツポーズをする。永遠亭で
情報収集をするならば、彼女以上に色々知っている人物はいないであろう。

「先日はどうもご協力頂きまして、大変ありがとうございました。」
「いえいえ、こちらも出来る範囲でご協力しただけですので。」

「いや、本当に驚きましたよ。まさか外界のDNA鑑定まで此処で目にするとは。
しかも大分進んでいましたし。」
「月の技術を応用致しまして、其方では確かIPS細胞と仰っていたようですが、
それの発展型になりますね。」

「素晴らしい技術ですね。しかしあの女は納得しなかったのでは?」
「大分説明には時間がかかりましたね。」

「そうですか、こちらにもあの後大分執拗に来ていたものですから、そちらに
ご迷惑をお掛けしていないかと。」
「いえいえ、ご心配には及びませんよ。」

「それは良かったです。こちらもここ何日かは急に静かになっておりまして。
呆気に取られる位でして。」

 ○○が来訪した理由が、魔理沙の寄越した速達通りの内容であったことの
確認が取れた永琳は、○○に餌を投げる。

「急に消えてしまって、怪しまれていると。」
「ええ、まあ、そういう感じです。」


923 : ○○ :2016/05/29(日) 20:36:03 SHCjUXds
「お二人が一度此方に来られた時に、少々きつい資料お見せしましたので、
それで大人しくなったのかもしれませんね。」
「それは一体?」

「地下室でお見せしますので、鈴仙に付いていって下さい。鈴仙、○○さんを
地下「特別室」にご案内して。」

鈴仙に地下で、○○を気絶させるように指示した永琳は、アンプルを調合する。
麻酔薬を配分したものを点滴すれば、魔理沙が来る時間に合わせて昏睡させる
ことが出来るであろう。


 目がさめた○○はベットの側に居た永琳に問いかける。

「此処は?」
「入院用ベットですよ。○○さん。」

「例の資料は?」
「あら、気絶したいのに、もう一度見たい何てもの好きですね。」

「気絶?」
「ええ、地下室で見て、大声を上げて大暴れして、バタリと。」

「そんな、全然覚えていないんですよ。」
「覚えていないのなら、却って好都合でしょう。脳が耐えきれなくなって、
無意識の内に締め出したのでしょうから。覚えていた方が精神に悪いことだから、
忘れたんですよ。」


924 : ○○ :2016/05/29(日) 20:37:56 SHCjUXds
「もう一度見ないと、何なのか。」
「魔理沙さんに怒られますから、止めて下さい。それに、ご心配だから言って
おきますが、あの二人の件はもう大丈夫ですよ。」

「そうですか…。すみません。」
「いえいえ、お気にせずに。」

「ありがとうございます。しかしこの病室は綺麗ですね。あんな綺麗な
硝子細工まで置いてあるなんて。」
「いやはや、勘がいいですね。実は家の姫様の能力のお陰でして。詳しくは
ちょっとアレなのですが、壊れ物が此処に置いてあるのも、○○さんの
お体にお怪我が無いのも、そういう訳です。」

「そうなんですか。」

 迎えに来た魔理沙に連れられて、帰って行く○○を見送り、永琳は溜息を
吐く。悪い選択を重ねるのであるが、勘が良いのか紙一重で最悪をすり抜けて、
あっさり幸運を掴んでいく。DNA鑑定の結果は○○の子ではなかったし、今日で
あってもごたごたが収まっておらず、素人が歩くのには危険過ぎる天狗の方ではなく、
報告書に名前があっただけの永遠亭に探りに来た幸運に感心する。しかし
一番の幸運は吸血鬼の餌になったあの女ではなく、魔理沙を選んだことで
あるのだが。
 もっとも、本人は気づくことはないのであろうが。

以上になります。

>>914
まとめて頂ましてありがとうございます。
大変励みになります。


925 : ○○ :2016/05/30(月) 21:08:13 wgBX2E0U
ギスギス命蓮寺

「しょぼん……」

「げ、元気を出して下さい聖っ」

人里の……茶屋である。
人と人外との愛が里でも溢れていることに感激した○○のテンションは高かった。
何故かといえば、自分もその一人であり、同士が増えるのは純粋に嬉しいというのもあるのだが、やはり聖白蓮の布教が実を結んだ――これが大きかった。
幻想郷は古くから特有の空気があり、人間とそれ以外は敵対するもの、と定められていた。
それは仮初め、いやもっと正直にいえば茶番ですらあったが、しかしそれ故に危ういバランスで成り立っており、だからこそそれを動かすのは容易ならざる力と時間を要する……そう思っていた。
「今が最高のとき」と思っている者に「もっと良くなるから今のはやめよう」といって素直にうなずくのは子供であってもいないだろう。
大概は余計な真似をするな!と叩き出されるのが関の山。下手を打てば存在の除外にも繋がる(閉じた社会で除外されることは全速力で死へと駆け寄るのと同義)
幸いにも、幻想郷ののんびりした風土は聖の説法や講話会を娯楽としてとらえ、妖怪ですら話し半分に怪談を聴きに来るほどであった。
つまり、誰も本気にしてなかったということなのだが、それでも聖白蓮は諦めず、彼女自身幻想郷の気風も一部取り入れながら、人とそれ妖怪の融和を説き続けた。
そるが、思いの外……いや、望外に早く実を結んだのだ。
まさか自分が生きているうちにそれが叶うとは○○は思っていなかった。
寅丸星と指を絡める間柄である○○だが、それは寝食を共にしているという特殊な環境故のこと。
それが当たり前のように浸透するのは長い時間が必要だと、そう考えていた。
故にこそ、それに取り組む聖を尊敬し、敬愛し、かつては多分に煩悩も含むが……恋していた。
恋慕こそ寅丸星へとその対象を代えたが、しかし親愛は失ってなどいない。
人里での人妖の姿は、その尊敬の念を新たにしたし、聖を見る目に感動の涙すら浮かんだ……
の、だが……

人里での対応は冷たかった。


926 : ○○ :2016/05/30(月) 21:53:00 wgBX2E0U
つづき

厠へいくふりをして茶屋のばあさまに聞いたところによると、聖白蓮はここのところ奇行が目立つのだという。
曰く、誰もいない所に微笑む、どこを見ているのか分からない目が不気味、壁に団子のタレを擦り付け自分でニコニコしながら拭く……など。
控えめにいってちょっと近付き難いというか、率直にいってキグルイ一歩手前のようなありさまだという。

「な、なんだってそんなことを?」

○○はショックを受けた。
この幻想郷、変人は好かれても、狂人は外でのそれと扱いは変わらない。

「さぁあてねぇ、前はあんなんじゃなかったし、あたしもほら、そろそろだかさ、説法聞くのもまんざらじゃなかったんだがねぇ……」
「おかあさん……」
「まあ、勝手に孫みたく思ってたんだよねぇ…」
「……」
「おまいさん、あのこの"好い人"かい? だったらさ、なんとかしてやっておくれよ」
「"良い人"?……まあ、うん、分かりました。なんとかしましょう」
「大変とは思うけどねぇ、一緒にいてやっておくれ」

と、意外なところで人の情けに触れ、○○は目頭が熱くなりながら「安心するな、心配しろ」と胸を叩いた。
彼一流のかいぎゃくである。

「……?」

茶屋のおばあはキョトンとしていたが。

「あー、けふん!」

さて。
幸か不幸かこの○○、落ち込んだひとを励まし、慰めるのは得意である。
しこたま練習というか、経験してきたのだ。
その手腕はある意味、プロといって良い。その対象鑑みれば神官や普賢とも。
兎に角、○○はその腕を奮うことにした。

「しょぼん……(チラッ)」

寅丸星で鍛えた腕で、白蓮を慰めることにした。
幸い、寅丸の酷いときの凹み具合に比べれば幾らかマシな状況に思える。
ならばやれる。と、あたりをつけ○○は腕捲りして聖の隣に腰をおろしたのだった。

明日以降につづく。


927 : ○○ :2016/06/02(木) 20:48:54 N6r92I1s
なまじっか、どいつもこいつも妖力やら法力やら持ってるから
自分で自分をおかしくするのも、常人より簡単なんだろうな


928 : ○○ :2016/06/02(木) 20:59:37 wgj17wAo
普通のヤンデレですらあーだからな。
それが東方になると、基本性能が高機動広範囲射撃型幻想残酷無惨ヤンデレ少女になっちゃうからね
プラスなんらかのユニークアビリティがつくという……
こりゃまいっちゃうよね


929 : ○○ :2016/06/02(木) 23:22:01 vv984OqM
だがちょっと待って欲しい。
自制心が強い筈の人物が、独占欲に絡めとられて壊れる様も、中々良いのではないだろうか。

という訳で、誰をターゲットにしてみようか・・・
あ、霊夢さん、貴方は結構ですよ。強欲と評判ですk


930 : ○○ :2016/06/03(金) 04:12:00 6T4J12Ro
ノブレス・オブリージュに囚われて(91)
ttp://www.mai-net.net/bbs/sst/sst.php?act=dump&cate=all&all=39700&n=81

>>924
実は霧雨家って、まだ魔理紗の事は娘だと思ってそう
立場上、厳しくしなきゃならないだけで
しかも稗田家の阿礼乙女のように、幻想郷に関わるお役目もないから、多少行儀が悪くてもよさそうだから……

こうやって考えると、人里に居を置いてる人(?)は。
本人が望む望まないは別として、組織化された親衛隊みたいなのがありそう


931 : ○○ :2016/06/03(金) 20:55:58 WPbIxVko
放蕩娘の魔理沙ですら、何かをやらかしても人里が協力するんだ
阿求に至っては、もっとすごいだろうな
殺りたいことを言っただけで、全部終わりそう


932 : ○○ :2016/06/04(土) 20:31:45 I9AHgHRU
>>930
いつもおつです
いやーしかし長く続く作品って憧れるなー
スレや年を跨ぎながら大長編書けるってほんとすごい


933 : ○○ :2016/06/05(日) 23:56:25 jNGaYSSs
>>925
この○○のスタイル マッチを持って火遊びをするような感覚がしました
見ていてハラハラするような

>>930
勢力が入り乱れてカオスになるなかで、天狗はやはり天狗なのか
はたて夫妻は特別なのか

次より投下します


934 : ○○ :2016/06/05(日) 23:57:04 jNGaYSSs
探偵助手さとり8

 巷に溢れる名探偵とは、街を恐怖に陥れる連続殺人事件を
颯爽と解決したり、外部と接触が断たれた絶海の孤島において、
難解な密室殺人事件を鮮やかに解決するのが相場である。古明地
探偵事務所は生憎、生活に密着した(どこぞのスーパーマーケット
のような謡い文句であるが、文句は平和なこの町に言って欲しい)
探偵事務所であるので、事件の大半は浮気調査や行方不明人を捜して
欲しいといった、所謂普通の依頼である。
 しかし探偵に名探偵のような難事件の経験が無い訳ではない。例えば、
今のように、クローズドサークルで殺人事件に巻き込まれるという
ような。

 今回の依頼人は今までの依頼人とは異なり、中々の名士であった。
有り体に言えばお金持ちでありそうであったため、二人しか居ない探偵
事務所で名誉ある所長を勤める○○は、久々の好条件な依頼に胸を膨ら
ませっぱなしであった。あんまりにも顔に締まりがないものだから、
助手の古明地さとりに苦すぎる珈琲を入れられて、思わず顔を蹙めて
しまう位であった。


935 : ○○ :2016/06/05(日) 23:57:34 jNGaYSSs
 いつもながら余り役に立たない所長を横目に、助手のさとりは依頼人
から依頼の詳細を聞き出していた。今回の依頼は投資家であった依頼人
の生前贈与についての親族会議において、依頼人の補佐として働くこと
であった。
 本来こういった事柄においては、弁護士に依頼することが多いので
あるが、依頼人としては事前に、法律に則って遺産を分けることを決めて
いたため、あまり法律上は揉める筋合いは無かったためである。しかし
法律上は正しい行為であっても、道徳上は正しくない行為もあったりする。
たとえば多くの財産を持ちながらも、親族に嫌がらせをしたいがために、
法定遺留分丁度しか財産を渡さないといったような。
 つまり今回の依頼には弁護士は既に不要となっていた。居ても依頼人の
害になることはないのであるが、法律的にも社会的にも悪いコトを依頼人
に仕掛けてくる輩にとっては、どれだけ抵抗できるか心許ないものであった。
依頼人に対して悪意を持って接してくるであろう、親族とやり合うことに
今更ながら気づいて、内心後悔している所長を放っておき、さとりは依頼人
から、手付金の前払いを受け取り成功報酬の条件を詰めていた。他人の心が
読める妖怪にとってみれば、口に出す程度の悪意など、物の数にも入らない
のであろう。


 そうして依頼人の別荘にて親族会議が開かれたのであるが、事前に
依頼人が予想していたとおりに、中々に紛糾した会議となっていた。
自分の遺産が本来の半分しか貰えないと分かった親族は、口を極めて
依頼人を罵っていたし、依頼人の意思を変えることが出来ないと分かっていた
親族は、今度は遺産の分配を巡って親族間同士で条件闘争を繰り広げていた。


936 : ○○ :2016/06/05(日) 23:58:10 jNGaYSSs
 動産がいいの、あそこの不動産は過大評価されているだの、宝石に鑑定書
が付いているのかと大騒ぎを行い、最後の方にはお前ばっかりずるいと
いった非難や、借金に絡め取られた薄汚い野郎といった中傷が飛び交い、
お互いに中身の入ったコップが宙を舞う段階に至って、依頼人は決着を
明日に延期することを決めた。
 依頼人と探偵に投げられた物だけは巧みに撃ち落としていたさとり
であったが、延期を依頼人が決めた時には、大幅に譲歩してでも決着を
するように勧めていた。しかし依頼人は親族に一泡吹かせることに躍起に
なっており、頑なに譲歩しようとしなかった。依頼人を口で説得することを
諦めたさとりは、依頼人に夜間に親族と会わないことやその他細々としたことを
言い含め自分の部屋ではなく、わざわざ探偵の居る部屋に引っ込むのであった。
わざと食後の珈琲を断わって、内鍵を掛けておく。
 足下が覚束なくなり、会議後に飲んだ上等なワインに酔ったようだと話す探偵を
介抱し、さとりはベットで泥酔する探偵を抱きしめていた。心の声が一つ叫び声を
上げて消えてゆくのを聞きながら、明日自分達に降ってくるであろう悪意に目を
向けて。



 次の朝、自分で指定した時刻に表れない依頼人を皆で見に行くと、予想どおり依頼人
はそこにいた。但し妹のこいしがよく地霊殿のエントランスに飾っているように、死体
になっていたのであるが。
 当然ながら大騒ぎとなった別荘であったが、探偵がいざ外部と連絡を取ろうとしても、
電話線は不通となっており、携帯電話やインターネットも圏外となっていた。昨日の
段階ではやや電波が悪いながらも繋がっていたのであるから、恐らくは電話線を切った
者の仕業であろう。


937 : ○○ :2016/06/05(日) 23:58:41 jNGaYSSs
 しかしここで最初の問題がある。そもそも依頼人が死んでいても、わかりやすい外傷
や凶器がある訳ではないので、まずはこの事件が殺人であることを示さなくてはならない。
そのためにまず、探偵は部屋の調査をすると宣言し、親族の一人を立ち会い人として、
被害者の検死を行うこととした。勿論、何も分かっていない素人がするのであり、医者や
鑑識といった専門家が見ると何をやりたいのか訳が分からないと評されるお粗末なもの
であるのだが、幸い立会人も素人である。探偵は適当に室内を親族から借りたビデオカメラ
で撮り、詳細は後から助手に教えて貰うことに決めていた。何せ、犯人から教えて貰える
のであるから、的中率は間違い無しである。しかし助手は探偵を手伝う片手間に、昨晩に
依頼人に仕掛けておいてもらった隠しカメラを、立会人が見ていない隙にこっそり回収
していたのだから、中々の手際であると言えた。

 さて調査が終わった後は推理の時間である。探偵は助手から聞きだそうとするが、普段
ならば探偵に褒めて貰いたく得意げに話す助手は、全く犯人を話そうとしない。助手から
この後親族一同を集めるように指示されていた探偵は、自分が犯人を知らないままぶっつけ
本番で推理を披露することとなるのではないかと、慌てて色々な推理を助手にぶつけて反応
を見るが、話すこと全てが否定されていく。

「ねぇ、さとり、犯人は誰なんだい?」
「それは、後で話しますよ○○さん。」

「そうは言っても、もう既に親戚連中には、犯人を突き止めました、って言っちゃったしさあ。」
「○○さんには私が指示を出しますから、その通りに喋ればいいんですよ。」

「うーん、そうだ、依頼人の後妻さんが怪しそうだな。依頼人のお金目当ての結婚じゃないかって、
先妻の息子さんから突っ込まれていたし。」
「彼女の力では、依頼者さんを押さえつけることは出来ませんよ。」


938 : ○○ :2016/06/05(日) 23:59:15 jNGaYSSs
「ロープで縛ったとか?」
「縛った跡はありませんよ。」

「それなら、依頼人の弟はどうかな? 力がありそうだ。」
「依頼人さんも警戒しますから、夜中には会えないでしょうね。」

「カメラには何が写っていたんだい?」
「大丈夫ですよ、○○さんは私に全て任せていればいいんですから。」

探偵はあれやこれやと気を揉んでいたが、全て助手によって突っぱねられていく。一方さとりの
方も探偵をあしらいながら、親族の心の声を探っていく。相手の心を一方的に読んでいくさとりは
戦場の霧を神の視点から取り除き自分の策を練っていくのであるが、今回は少々分が悪い。
最悪の状態に備えた応援を呼んでから、彼女は解決編に臨むこととした。


 親族一同を集めた探偵が、助手を隣に立たせて事件の犯人を公表する。さとりの思念を
脳に響かせ、探偵はこれが殺人事件であることから説明していった。

「今回の依頼人の死亡は、事件であります。」
「え?親父、年だったからなんか病気じゃないの?」

疑問を呈する声にはっきりと断言する。

「いえ、彼の持病を悪化させる薬を飲ませ、呼吸困難にした上で、拘束して窒息死させました。」
「殺人なの?!」

甲高い声が響く中、探偵の推理劇は続く。

「それで犯人は、後妻の××さんです…。え?」
「おいおい、冗談だろう?」


939 : ○○ :2016/06/06(月) 00:00:00 n4pyoZV2
大袈裟に肩を竦める姿は、どこか演技のような固さがあった。

「指紋が検出されました。」
「おい、叔父さんどうなんだよ!立会いしてたんじゃなかったの?」
「いや、その…。」

「それに、××さん、お怪我をされていますよね。依頼人の爪に肉片が挟まっておりました。
DNA鑑定をすれば証拠になりますよ。」
「ちょっと冗談じゃないわよ!いい加減なこと言わないで!」

叫ぶように探偵に食って掛かる容疑者に、さとりが進み出て残りの親族に話しかける。

「被相続人に重大な危害を及ぼした相続人は、遺産の相続から除外されますよ。」

一瞬顔を見合わせた親族に、更に駄目押しをする。

「慰謝料の請求も出来るかもしれませんね。」

このまま決まり掛けた勝負であるが、土俵際でうっちゃりが投げられる。

「おい、あなた達!一緒にやった癖に何言ってんのさ!アタシだけ逮捕されたら、皆引きずり込んでやるよ!」

別荘に備え付けていた猟銃を壁から外し、探偵とさとりに狙いを付ける。辺りは緊迫した空気に包まれるが、
そんな中で急に欠伸をするのは探偵その人。何故か急に眠気が探偵を襲い、立っていられなくなってしまう。
床に寝転がるように崩れた探偵を見て、親族がニヤリと笑う。

「いやー、危なかったわー。××さんバラすとかないでしょ。」
「アタシを生贄にしようとするからでしょ。っていうか、さっさと準備してよ。DNAとか火ぃつけるしかないじゃん。」
「はいはい、仰せのままに。」

「で、どうする? 直筆で一筆書いてくれたら、このまま無事に返して上げても良いんだけれど。」
「白紙の委任状はお断りします。」


940 : ○○ :2016/06/06(月) 00:00:40 n4pyoZV2
「じゃあこのボイスレコーダーに向かって、皆関わっていませんとだけ言ってくれるだけでもいいよ。」
「その銃を構えている人が何言っても信用できませんよ。」

「ほら、銃を下ろしてやったから、早くしろよ。あんたらも金で雇われただけなんだろ。」
「その割には灯油を撒き終わったようですね。」

「あっそ、じゃあ死ねよ。ばいばーい。」

館に火を付けて扉から出て行く親族。そこに残されたのは探偵と助手の二人となり、薬のために
意識が混濁し、声が出せなくなった探偵の心をさとりが読む。

「地下室なら火が回らない、ですか。残念ですが地下室は念入りに油が撒かれていますから、
手の平を犠牲にして死にそうになって扉を開けた瞬間に、死んでしまいますよ。」
「扉から出ればあいつらが待ち構えていて銃で撃たれますので。ああ、トラウマを使って相手を昏倒させても、
ちょっと後々面倒ですね。向こうは四人、こっちは二人。証拠のカメラもこの熱で、動くかどうかは分かり
ませんから、裁判で戦うには厳しそうですね。」

「出口が全て塞がれていると。まあ人間ならばそうでしょうね。」
「だけど○○さん、私は妖怪ですよ。」
「私だけが今、○○さんを助けることが出来るんですよ。」
「そう、○○さんが助かるためには、私に助けてと言わなければいけない。」

火が壁を覆う中、顔を照らされたさとりは自分の言葉に興奮したように、○○を追い詰めていく。

「ねえ、どんな気持ちですか。何も出来ずに相手に縋るしかない今。」
「貴方の全ては私のもの、私が今、貴方を支配している。」
「ねえ、叫んで下さいよ、縋って下さいよ、私を求めて下さいよ。」


941 : ○○ :2016/06/06(月) 00:01:18 n4pyoZV2
「別に私はこのままでも良いんですよ。地底の地獄はこんな火の粉よりも熱いんですから。」
「ついでに○○さんも生かして上げますよ。私の周りは熱を寄せ付けませんから。」
「でも、○○さんの足までは結界が届かないんで、上から柱が落ちてきたら、きっと痛いでしょうね。
こんな風に!」

「業と嫌われることは止せだなんて、○○さんは本当に馬鹿ですね。」
「妖怪は本能で生きているんですよ、私だって。○○さんが欲しい、それが全てです。」
「そう、何も出来なくて、私が全てして、そんな貴方の全てを私が染めて、自分の物にして!」
「ああ、ホントに良いですよ。○○さん。貴方の心全てが私で満たされていく。」

「それじゃあ行きましょうか、ああ、煙を吸ってしまってはいけませんから、私の口で塞いでおいて
あげますね。」
「良いですよ、舌を浅ましく求めるその姿。まあ、煙で喉を焼かれても、別に問題ないですけれど。
言葉は要りませんから、貴方との間なら。」

二人が弾幕で崩された穴より出ると、屋敷は炎を上げて燃えさかっていた。近くより大勢の人が
館の方に近寄ってくることを目を閉じながら感じた○○は、きっとさとりが呼んだ警察が来たのだろうと
想像した。証拠を消そうとして却って多くの証拠を残した彼らは、直にかたが付くであろう。


942 : ○○ :2016/06/06(月) 00:02:23 n4pyoZV2
以上になります。
その内、IFを投下したい。


943 : ○○ :2016/06/06(月) 00:27:37 n4pyoZV2
 探偵助手さとり8 if


 炎が迫る中、さとりは探偵に問いかけるが、○○は自分の
矜持を捨てようとはしない。

「ねえ○○さん。どうしても私が嫌ですか。」
「こんな状態になっても、魂は売らないと。」
「そう、○○さんがそんなに嫌がるなら、思い知らせてあげましょう。」

「こいし、こっちに来て足持って。」
「はーい。」

さとりの姿しか見えないが、探偵の足が持ち上がる。さとりが探偵の
上半身をもっているため、まるで担架に乗せられているようである。

「ドア開けて。」
「りょうかーい。」

銃を構えた親族が待ち構えるドアを開られ、堂々と自分とさとりが通って行く。
いつ鉛の散弾が自分に叩き込まれるかと、力が殆ど入らないながらも身を固く
していた探偵であったが、自分達が横をすり抜けても、親戚はそっぽを向いた
ままである。まるで自分達が見えていないような状況に、○○の頭は疑問で溢れる
が、そのまま空を飛んでいく。


944 : ○○ :2016/06/06(月) 00:28:13 n4pyoZV2
「ねえ、お姉ちゃん、あいつらやっていい?」
「貴方がすると跡が残るから、今回は駄目よ。お空に任せなさい。」
「はーい。」

透明人間と物騒な会話をしながらも、探偵達が飛んでいくと、二匹の
妖怪が待ち構えていた。

「あ、さとりさまだ。」
「さとりさま、その人ですか?」
「そう、この人を今から連れて行くわ。地霊殿へ。」

嗜虐に満ちた笑みを浮かべながら、さとりは探偵に語りかける。

「今から妖怪しかいない所に○○さんを連れて行きます。勿論○○さんが
そこら辺を歩いていれば、一時間もしないうちに取って食われることは
保証しましょう。でも大丈夫ですよ、私の家にいれば、○○さんをペット
として飼ってあげますから。」
「そう、ペットですよ、ペット。私の物です。」
「地霊殿で私に全てを委ねて生きて行くしかないんですよ。楽しいですね。
直に○○さんも、外の世界を忘れますよ。」
「ふふ、大好きですよ、○○さん。」

以上です。


945 : ○○ :2016/06/06(月) 11:33:07 TCEntPEw
まぁそもそも
ここまで好かれて、地底に即行で連れていかれなかったのが却っておかしかった

さとりからすれば、風変わりな新婚旅行兼○○の心を叩き折る旅
と言うことなのかな


946 : ○○ :2016/06/06(月) 21:48:13 QEb.NX2Q
投下します。

探偵助手さとり9

 陸の孤島での殺人事件に巻き込まれた後、探偵は警察署にて
事情聴取を受けていた。といっても別に探偵自身が又も事件に
巻き込まれた訳ではなく、単純に先般の事件の経緯を確認する
ための参考人として呼ばれただけである。既に犯人は逮捕されて
おり、助手が持っていたカメラも無事記録が残っていたため、
犯人達の立証は既に終わっており、お役所仕事とでも言うべき
型通りの調書であった。
 担当の刑事も探偵の調書に時間を掛ける積りはなく、単純に
事件の経緯と、犯人達の行動についての説明をするものであった。

「そこで○○さんが容疑者らに対して、依頼者が殺害された可能性
と、容疑者丙の頬の傷を指摘したところ、丙は自分の犯罪を
暴露されたと思い込んだ上激高し、他三名と共謀の上、屋敷に
放火するに至ったと。○○さんは助手と共に偶然崩れた壁より
脱出し、一件落着無事でありました。っと、此方で宜しいですか?」
「はい、その内容で結構です。」


947 : ○○ :2016/06/06(月) 21:48:45 QEb.NX2Q
既に複数の供述が得られている中であったので、既に刑事の
方もストーリーを決めており、特段事実と異なる点も無かった
ため、あっさりと調書も終わることとなった。事実に隠された
真実とやらは山ほどあったのであるが、別段それを指摘する
こともあるまい。例えば助手は犯行を目撃(?)しておりました
が、犯行を止めると問題が面倒になりそうであったので、
あっさり被害者を見捨てました。だの、依頼人との契約では
親族に遺産を法定分以上渡さないことが成功条件でしたので、
あの後顧問弁護士から、きっちり成功報酬をせしめましたよ。
といった類いの話である。
 そうして探偵は僅か三十分で署を後にするのであるが、
警察の方は相変わらず忙しそうである。担当刑事は最後に
面倒くさいと引っ切り無しに呟いていた位であるのだから。


 事務所に帰った探偵を待ち構えていたのは、助手と新たな
依頼人であった。若い男性で身なりはしっかりとしている。
探偵が懲りずに男性に、浮気調査ですかと声を掛けようとすると、
心得たもので助手の方が機先を制して声を掛ける。

「所長、婚約者の身上調査のお客様です。」


948 : ○○ :2016/06/06(月) 21:49:18 QEb.NX2Q
さとりの顔に大間違いと書いてあるのを見た探偵は、そそくさと
立派な三代目ソファーに腰掛け、威厳を持って話を聞くのであった。
勿論上辺だけであったのだが。

 依頼人から婚約者の調査を受けた探偵と助手は、依頼者から
提供を受けた情報を元に婚約者の地元に向かった。本来こういった
調査の場合は、対象者の周囲の人物に接近して情報を集めること
が必要になるのであるが、助手からすれば全くの不要である。
 対象者の周囲に居るだけで情報が勝手に入ってくるし、周囲
の人物に時間を掛けて友人になって入り込むことも無しに、
対象者の人柄を聞き出すことが出来る。アリバイの為に対象者
から遠い関係で、口が堅い人物に探偵として接触すれば、外見上
も探偵の仕事を果たしたこととなる。そうして仕事は簡単に解決
するのである。仕事の方は。


 依頼人に結果を伝えた後で、探偵は脱力してソファーに沈み込む。
根は其程、真面目とは言いがたい-ようは怠け者であるのであるが-
性格であるため、依頼者に所長として結果を伝えるという、一番
探偵らしい仕事をした後は、演技もあって疲れが沸いてくる。


949 : ○○ :2016/06/06(月) 21:49:56 QEb.NX2Q
「あー、疲れた。」
「はい、貴方どうぞ。」
「ああ、ありがとう。」

気疲れした体に、砂糖とミルクが多めに入った珈琲を流し込む。
カップに口を付けながら、隣でペアのマグカップを傾けるさとりに
問いかける。

「なあ、さとり。」
「何ですか。貴方。」

重大な質問を。

「どうして口を開かずに今、俺は喋っているんだ?」

以上になります。


950 : ○○ :2016/06/07(火) 23:21:06 JWXFxr6.
探偵さんお久しぶりです!
お待ちしておりましたー!!


951 : ○○ :2016/06/08(水) 22:14:10 ERiONopQ
ご感想ありがとうございます。
投下します。

 探偵助手さとり9の2

 自分の体に変化が起きたことを悟った探偵は、さとりを問い詰める。
しかし、さとりは平然としており、その姿からは一片の後悔や後ろめ
たさといった感情は感じられない。

「なあ、さとり、どうして俺は人の考えていることが聞こえるように
なったんだ?」
「あら、貴方、それは貴方が人から妖怪側に一歩近づいたからですよ。」

「一体どういうことだ。」
「私の妖怪の力に当てられたのでしょうね。」

「冗談じゃない!そんなに簡単になってたまるか。」
「私にあれだけ頼っておいて、いいとこ取りをしようなんて。私は都合の
良い女だったのですね。」


952 : ○○ :2016/06/08(水) 22:14:44 ERiONopQ
探偵が語気を強めて詰問するが、さとりの方は一向に余裕を崩さない。
よよよ、と探偵に泣き崩れるような素振りを見せるが、むしろ嬉しそうな
顔を浮かべ、探偵の脳内にも、さとりの声がリフレインする。

「巫山戯て言うのは止めてくれ!脳に笑い声が響いてくる!」
「そうですか、でも貴方。あなたは私の物ですよ。」

躁じみたの声は止まったものの、今度は人を物扱いする助手に、
探偵の反発は強まった。

「彼氏の意見を無視することが、恋人のやることか?!」
「まあ、なんてことを。」

恋人と言った瞬間にさとりの笑みが消える。どうやら予想外の地雷を
踏んだようである。

「貴方、私は妻ですよ。」
「おいおい、何時結婚したんだよ?俺は婚姻届なんて書いた記憶がないぞ。」

「この間火事に巻き込まれた後に、貴方の無意識に直接聞きましたら、大賛成
でしたよ。」
「いや、それ違うから。昏睡しているだけだから。っていうか、何だよ勝手に
しただだけじゃないか。」

「いいえ、違います。それに夫の間違いを正すのは、妻の役目です。」


953 : ○○ :2016/06/08(水) 22:15:15 ERiONopQ
さとりは探偵の服を掴み、探偵の顔に自分の顔をぐいと近づける。

「否定の次は、私への怒りですか。その考えが更正するまで、いや、
そもそもそんな考えが起きないようにしないといけませんね。」



 さとりは探偵の深層心理に入り込み、探偵の精神に痛みを与える。
モルモットに電気ショックを与えるがごとく、探偵にさとりへの反発が
湧き上がる度に激痛を与えていく。
 -余談であるが、内臓に傷を付けずに全身の骨を砕くようなこの手法は、
さとりのお気に入りである。
 トラウマを利用して、強烈な刺激を与えて一度に洗脳する方法は、効果が
高いが記憶まで悪影響を与えることがあり、人格にも変容が起きるためである。
 この方法ならば記憶は保たれるが、思考回路を変更するため、あまり
悪影響は起きにくい。さとりを許容することを、自分で自然に選んで
しまう、正に強制的な矯正である。

 さとりは探偵の心を弄くりながら、そっと呟く。

「人間が妖怪や神になった事例は昔話に山ほど在りますが、妖怪が
人間になった話は、とんと聞きませんね。これで貴方はもう戻れません。」


954 : ○○ :2016/06/08(水) 22:22:56 ERiONopQ
以上になります。

探偵助手シリーズは間隔が空きましたが、他の物は時々投下している
現状。ひょっとして文体だけでは、誰が書いているのか分かりにくい
ものでしょうか。


955 : ○○ :2016/06/09(木) 23:37:59 JGbuaLp6
>>954
言葉足らずなので追記
自分の書いた作品にはコメントを書かないので、短期間で連続して投下したときなんかは、コメントが少ない状態で次の作品を投下しております。

すると一見、ここの板は感想を書かないことが、普通(?)な空気を作ってしまう一助になってしまったかと。

もし、文体で誰が書いているか大体解るのなら、先の事は杞憂なのですが・・・。


956 : ○○ :2016/06/09(木) 23:39:23 RBGPBb/g
んやー、だいたい分かるよ。
あとはまあ、文体よりも作風とかでも結構わかるし
探偵のひとは、こう、甘さ控えめだよな。
ビターというよりシニカルというか、厭世的なとこある


957 : ○○ :2016/06/10(金) 08:15:39 cqZPK4jc
ここはSS板じゃないからね。感想少なくても仕方ないと思って俺は書いてるよ
なんというか、SS板ぽいヤンデレ板っぽい何かだと思う
心配といえば、俺書くとなんか流がビタッと停まっちゃった気がして申し訳ない気持ちになることもあるなぁ


958 : ○○ :2016/06/11(土) 17:31:48 LYRY6LTk
皆様ご返答ありがとうございます。また適宜投下していきたいと思います。


959 : ○○ :2016/06/11(土) 19:17:28 8ldexxO.
さてそろそろスレの寿命ですね。
次スレどうしましょ

>>958
流石、精力的ですね
そのスタミナと筆の速さ羨ましい
もっと書き手増えるといいですね


960 : ○○ :2016/06/11(土) 22:15:41 UwTJ0RU.
いつもご感想ありがとうございます。
投下します。

探偵助手さとりif2

睡眠薬に溶かされた虚ろなまどろみの中で、瞼の裏側に光が差し込む。
相変わらず寄せては引く波のような睡魔が探偵の脳を襲う最中、薄い布
を挟むようにくぐもった声が耳より彼の脳に入ってきた。

「はい、五名様御到着。御代はこれね。」
「この三つですか。あと霊夢さん、彼はまだ折れていませんよ。」

「はあ、強情なこと。これで四日目なんだけれどね。」
「霊夢さんが昔の状態に戻ると思って耐えているようですね。もう
数日そのままにするか、食事を絶てば落ちるでしょう。」

「まあ時間はあるからゆっくりするわ。」
「お優しいのですね。」

「はいはい。そっちも宜しくね。」
「ええ、近日中に。」


961 : ○○ :2016/06/11(土) 22:26:24 UwTJ0RU.
 さとりともう一人の女性が話しているようであるが、普段なら理解できる
話も、唯々川が流れていくようにシナプスの隙間を通り抜けていく。かつて
大都会の端に事務所を構えていた時に嗅いでいた排気ガスと工場の煙が混
じった空気が、一変して澄んだものに変わったことを感じながら、探偵の意識
はもう一度水に溺れるかのように沈んでいった。


 探偵が再び目を覚ました時は、豪華なベットの上であった。トロッコのようなもの
に長時間乗せられていたせいか体の筋が強ばるように感じたが、ベットのマットは
探偵の体を深く沈ませていた。薬の影響かぼんやりしたままの頭を奮い、探偵は
部屋を出て辺りを歩くこととした。
 探偵は豪華な屋敷を歩くが、一向に出口が見当たらない。どれだけ広い屋敷なのか
と呆れながらも調度品が飾られた壁を見上げた時に、探偵はふと気づいた-どこにも
窓が無い-自分がいる廊下に窓が無いことを確かめた探偵は、廊下を走り角を曲がる。
そこの廊下にも部屋に繋がるであろう扉はあるものの、何処にも窓は無い。今が夜
なので鎧戸を雨戸のように閉めているのではないかと、硝子の窓が無くとも金属の
無骨なレリーフは無いかと天井から床まで見渡すが、布のカーテン一つ見当たらない。
廊下に煌々とランタンが揺らめいており、赤い絨毯に自分の影が長く落ちる。急に不
安が迫ってきた探偵は、猛然と廊下を駆け抜けた。
 数分程走ると普段の運動不足が祟ったのか、探偵は息を切らしていた。汗が自分が
来ている着物に染み渡る。自分の額に次々と浮かんできた汗を拭った探偵は、自分が
着た覚えの無い着物、それも自分の所長時代の給料では小遣いを年単位で我慢しないと
買えないであろう服を見て、顔を蹙めながら目の前の扉を開けた。自分が如何にしよう
とも、この着物のようにさとりに操られるのであろう。釈迦の手のひらで得意になって
いた孫悟空のように全てを見通されて。


962 : ○○ :2016/06/11(土) 22:26:55 UwTJ0RU.
 探偵が一際豪華な装飾が施された扉を開くと、玉座のように一段高い場所にさとりが
座っている。引き寄せられるように探偵が進んで行くと、後ろで扉が独りでに閉まる。
最早戻れないルビコン川を越えてしまった探偵は、唯前に進むしかなかった。
 探偵がさとりの前に出ると、さとりが探偵に声を掛ける。

「ようこそ○○さん。ここが地霊殿です。」
「ここは何県だ?」

「○○さん、ここは日本ではないのですよ。」
「馬鹿馬鹿しい、そんなに簡単に国外に脱出できて堪るものか。そんなに簡単に海外旅行へ
行けるものなら、俺が真っ先に借金取りから逃げる為に使っている。」

「まだ勘違いしていますね。ここは地球ではありません。」
「遂に一足飛びに宇宙旅行ときたか。それなら窓が無いのも理解できるな。」

「ここは○○さんがいた世界、外界と私達は呼んでいますが、そことは別の世界です。
外の世界で忘れ去られたものが入り込む世界。ここは幻想郷です。」
「入り込めるのならば、出ることも出来そうだな。お前のように。」

「ええ、出来ますよ。貴方が思っている方法で。」
「それじゃあ、行くとしようか。」

「良いですよ。○○さん。」

 売り言葉に買い言葉で啖呵を切った台詞であったが、あっさりとさとりに受け入れられて
しまう。今までの生活の中でさとりが自分に執着している姿を見ていた探偵からすれば、早々
信じられるものではないが、出した言葉を引っ込めるのは沽券にかかる。


963 : ○○ :2016/06/11(土) 22:27:30 UwTJ0RU.
「今から撤回しても遅いんだからな。」
「どうぞ良いですよ。」

「この扉を開いたら、何か部下が襲ってくるとか無しだからな。」
「そんなことはしませんよ。○○さん一人で扉を開けて下さい。」

「そう言って、扉を開けた瞬間に襲う腹積りなんだろう。」
「本当は怖いんですよね。聞こえますよ。助けてって。」

「馬鹿にするな。」

 さとりの挑発する言葉に腹を立てた探偵は、さとりに背を向けて扉に手を掛ける。幼児の
ように馬鹿にされた怒りも手伝って、探偵は乱暴に扉を開けようとする。
 しかし扉は開かない。いくらノブを押さえつけても扉はウンともスンともせず、さては
押し戸ではなく、引き戸だったかとノブをこねくり回すが全く開かない。遂には入る時には
前に押した筈の扉を横に引っ張ろうとするが、当然扉は開かない。

「○○さんどうしたのですか。その扉は引いて下さいね。」
「おい、どういうことだ。さっき開いた筈の扉が開かないんじゃないか。」

「さっきは私が手助けしましたから。ほら、開いたでしょう。」

 さとりがこともなげに開いた扉を睨付け、ふんと鼻息を鳴らして探偵は進む。さとりが後
から付いていくが、敢えて無視をして歩いて行く。

「○○さん、その角を左ですよ。」


964 : ○○ :2016/06/11(土) 22:29:25 UwTJ0RU.
「その扉は食堂ですよ。次の扉ですよ。」

「この扉も開きませんね。はいどうぞ。」

 すべてさとりに手助けをして貰いながら、探偵は進んで行く。そして一際大きな扉に出ると、
後にいるさとりに目もくれずに、玄関の扉を開けようとする。

「○○さん。」
「たとえ日が暮れようとも、お前の力は借りない。」

「お空が扉を開けますから、退いた方が良いですよ。」

 探偵が飛び退くように扉から距離を取ると、あれだけ苦労した扉がこともなげに開く。外の
世界を去り際に聞いた声で、少女がさとりに話しかける。

「あ、さとりさまだ。お出かけですか?」
「ええ、ちょっと○○さんと散歩してきますね。」

○○に腕を絡めるさとりであったが、○○はそちらに気が回っていなかった。
屋敷の外には、太陽すらなく、ただひたすらに薄暗い世界が広がっていたの
であったのだから。


965 : ○○ :2016/06/11(土) 22:33:26 UwTJ0RU.
以上になります。

>>959
決めることはスレットのタイトル名でしょうか?


966 : ○○ :2016/06/12(日) 03:05:29 2uFemg7M
ちょっとここを離れていたけどまとめwikiが更新されていたので。

更新されてたの読んだけど、最近だと永琳女史の診察カルテのはたての良かった。
ライバルを潰しあわせているのにゾクゾク来た。
文・椛も病んでいて可愛かった。


967 : ○○ :2016/06/12(日) 19:16:45 c7OdF/EA
 ご感想ありがとうございます。大変やる気の補充(?)
になります。投下します。

精一杯の愛情

 僕の隣にはクラスメイトの宇佐見がいる。彼女と言えば
聞こえはいいのであるが、生憎そういった関係でもない。
むしろ気の置けない友人といった、恋愛を越えた感覚を
僕は彼女に持っていた。
 僕は彼女と親しいため、時折彼女に頼み事をするので
あるが、彼女は僕の頼み事を大抵断らない。彼女が出来る
ことならば、大抵のことは二つ返事ならぬ一つ返事で引き
受けるため、時折心配になるくらいであるが、一方の彼女は
僕にあまり頼み事をしない。
 僕は自分の後ろめたさもあってか、彼女に何か埋め合わせ
するものは無いかと尋ねるのであるが、彼女は大抵無欲で
あるようで、あまり僕に高価な物は要求せずに、僕を彼女の
買い物に付き合わせる程度である。その時にも彼女は大抵
付き合わせて悪いねと僕に奢るので、かえって僕の方が申し訳
なくなる位であった。


968 : ○○ :2016/06/12(日) 19:17:16 c7OdF/EA
 そんなある日、僕が弁当と財布と携帯を、要は学生に必要な
物一式を寝坊しかけて忘れた日には、彼女から昼食代を借りようと
したのであったが、彼女は僕に自分の弁当を渡そうとしたし、
それを断わり昼食代を借りようとすると、自分の財布から
茶色の札をこともなげに僕に渡してきた。僕の財布の中には
普段入っていることがない金額を、一回の食事代として渡された
のであるから、僕は突っ返そうとしたのであるが、彼女は頑として
受け取ろうとしなかったし、僕が翌日崩れた札で耳を揃えて返した
時には、別に返さなくても良かったのにとさえ、豪語していた。
 僕はあんまりにも学生の分を越えている、彼女の金銭感覚に
驚くばかりであったが、彼女の名字が此処らで有名な財閥と同じ
であったため、恐らく財閥の遠い親戚ではないかと、その事に
ついては深く考えなかった。後になって分かるのであるが、彼女
の実家がグループに役員を多数送り込んでおり、本人は中心の会社
の社長の娘であると知っていれば、僕の彼女への扱いも変わったの
かも知れない。勿論全ては遅すぎた事であるのだが。

 僕が彼女のぶっ飛んだ感覚を知ってから後、クラスの友人が
彼女が僕に恋愛感情を抱いているのではないかと囃すことがあった。


969 : ○○ :2016/06/12(日) 19:18:19 c7OdF/EA
その時初めて僕は知ったのであるが、彼女が頼み事を聞くのは
専ら僕だけであると評判のようであった。他のクラスメイトが彼女
に何か頼み事をしても大抵すげなく断っており、実家の力を嵩に着た
気取り屋とその手下も言われているようであった。しかし幸いにも
そう言っている連中は極一部の、彼女に取り入って彼女から金を
引き出そうとしたさもしい奴らであったため、程なく喫煙やら飲酒
やら万引きといった小悪党らしい悪事がバレてしまい、一網打尽に
停学やら退学となっていた。どうやって学校にバレたのかは謎で
あったのだが、友人達の間では専ら誰かがインターネットに投稿
したのではないかというのが有力な説であった。

 それから暫くして新学期が始まった時に、退屈していた僕の中で
ふといたずら心が芽生えてしまった。彼女が僕にぞっこんらしいと
先日に友人から聞いていた僕は、彼女の愛情を確かめてみようと
思ってしまった。彼女でもない、唯の友人をそんなことに巻き込む
ことは彼女の好意を切り裂くようなことであるのだが、四月馬鹿に
毒されていた僕はその時は気にも止めなかった。例え彼女が怒った
としても、エイプリルフールを錦の旗にしてしまえばいいのと簡単
に考えていたのであった。何故だか彼女は僕に怒ってみせたことが
一度も無く、僕は彼女にとびっきりの嘘を仕掛けるのであった。


 彼女に電話を掛けて夜分に呼び出す。普段ならば外出するには
億劫になる時刻であるが、メールの文面に「今すぐ金が必要だ。
菫子助けてくれ。」とでも書けば彼女はすっ飛んでくるであろう。
普段は使わない気障な言葉を使う位には、僕は自分の悪い冗談に
酔いしれていた。


970 : ○○ :2016/06/12(日) 19:18:52 c7OdF/EA
 彼女との待ち合わせ場所に指定した公園は、一面闇に包まれており
街灯に照らされた錆び付いたブランコが、人気のない公園で密かに
息づいていた。僕はブランコに座りながら彼女の到着を待つと、
思ったよりも随分早く彼女が走って駆けよってきた。ドラマで見る
ような大きなアタッシュケースを抱えていたのだから、思わず僕は
にやけてしまったのだが、彼女はそれを自分への笑顔と受け取ったよう
であった。僕はホッとした表情を浮かべて駆け寄った彼女に声を掛ける。

「宇佐見、ありがとう。」
「いいの、別に。大丈夫なの?誰かに脅されているの?」

真剣な彼女に僕は笑ってしまう。
「いや、実はエイプリルフールだったから、ゴメンゴメン。」
「本当?潰してやったあいつらに殴られたりしなかったの?」

あくまでも僕が脅されていると心配する菫子に、僕は尚も
ネタばらしをする。
「本当だよ。いや、宇佐見ならすっ飛んでくるんじゃないかと思って
いたら、本当にこんな時間で来てくれて、家にいたんじゃなかったの?」
「本当なの?」
「だから、さっきから言っているんじゃないか。唯のエイプリルフール
だったって。」
「良かった・・・。」

菫子が泣き出してしまい、ばつが悪くなった僕は宥めるために、話題を
変えようとする。
「それにしても、大きいケースだね。何が入っているの?」


971 : ○○ :2016/06/12(日) 19:19:26 c7OdF/EA
涙をしゃくり上げて彼女が答える。
「うん、お金・・・。自分の部屋にあったの全部・・・。」
「どれ位?」

僕は気軽に彼女に尋ねる。まるでお金が多ければ多いほど、自分への
愛が深いように。
「この時間では一千万しか集まらなくて・・・。」
「え?」

「御免なさい!本当はもっと集めなければいけなかったんだけれど、
時間が無くて!でも、小切手はあるよ!ほら、一億円!」
「ほ、本物?」
「本物だよ!真っ新な新札だけれど、新聞紙じゃないから!」

どん引きした僕に気づかず、安心した彼女は僕の一着千円の服に顔を擦り
つける。普段の余裕のある彼女とは違う姿に、思わず僕は心の声をはき
出していた。
「うわー、一千万とか、頭おかしいんじゃね?」
「どういうこと・・・?」
「一千万とか、馬鹿みたいってこと!学生の癖にそんな大金を持つから、
あんなこと言われるんだよ。」
「違うの! 私のお金なの! 実家は関係ないよ!」

必死で僕に嫌われまいとする彼女を見ても、僕の口は止まらずに傷付けていく。
「実家が関係ないとか、無理でしょ。そんな大金。それとも売りでもやってたの?」
「やってないよ! 私、○○以外とはそんなことしたくない!」
「て、いうか菫子重いよ。」
「ごめんなさい!ごめんなさい!」


972 : ○○ :2016/06/12(日) 19:19:58 c7OdF/EA
僕が悪いにも関わらず、彼女は僕に謝り続ける。そんな彼女を見ていると、僕が
いかに悪人かと思い知らされるようで、僕はその場を立ち去ろうとした。
「バイバイ。暫くお前の顔見たくないから。」
「駄目・・・。」
「離せよ。」
「絶対駄目。」

服を掴む彼女を引きはがそうとするが、細腕の癖して火事場のの馬鹿力とでも言うべき
なのか、全く僕より離れない。彼女の指を剥がそうと悪戦苦闘している内に、鈴虫の
音が辺りより大きく聞こえてきた。
 不審に思い周囲を見渡すと、公園のブランコや滑り台は消え失せていた。電灯が消えた
かと思ったが、自分の周囲には大きな木が生い茂っている。そして何よりも自分と
菫子を、満月と満天の星空が照らしていた事に、僕は大いに混乱する。
「え、ここどこ?なんで三日月が満月になってんの?」
「ここは幻想郷。私の力で来たの。」

 ここが幻想郷で自分の超能力で来たと話す彼女を信じる事が出来ず、僕は彼女に
駄々を捏ねるように叫ぶ。
「そんなことない!」
「私、○○には嘘は付かないよ。○○が好きだった隣のクラスの子が付き合っている
人とか、教えてあげたでしょ。あれ、私の透視でメールを盗み見たの。」


973 : ○○ :2016/06/12(日) 19:22:41 c7OdF/EA
更に彼女の独白は続く。
「お金だってそう。透視とか、読心術とか色々使えば結構簡単に儲けることができるんだよ。」

「ねえ、○○が無事で良かった。でも○○が離れてしまうのは駄目。絶対に駄目。
私の他の全てを犠牲にしても、○○の事愛してる。」


以上になります。気づけばこのスレットも一年間。あっという間でしたが、
いよいよラストが近くなってきました。


974 : ○○ :2016/06/12(日) 21:47:39 .xjkwLcw
>>973
こういうシンプルなのゾクゾクしていいよね


975 : ○○ :2016/06/15(水) 21:58:45 MqvE/b4g
いいの来たな。
個人的には駄目っていいながら服つかんで離さないとこいいな。
なんというか、イイー表情してるのが目に浮かぶ。
目は当然かっと見開いてるだろうし、視線も切らない。
こう、ね、いい顔してそう。


976 : ○○ :2016/06/17(金) 00:27:20 VzTaLX/Y
初投稿です。お目汚し申し訳ない。
衝動的に書いたんで、書き溜めとかないです…。
あれは、いつの話だったか。
俺が小さいころに、麓にある街にすんでた時さ。親に頼まれて、豆腐を二丁、買いに商店街に行ったんだよ。今ほどじゃないだろうけど、すごい賑わいでさ。はした金しか持ってないのに、盗られないように手に銭をぎゅっと握りしめて、注意深く周りを見回しながらあるいてたんだよな。でも、馬鹿な子供だったんだな。そのときに、森からやってきた魔女の人形劇を見つけちまって、オルゴールっていうのかな、木の箱からでる音楽にあわせて、きれいな服着た人形がひらひら宙を舞って、見事なもんだったよ。俺、夢中になって最後まで見ちまった。そんな事やってたら、日も暮れちゃって。豆腐うりきれてたんよ。うちの家厳しかったし、こりゃ怒られちまうと思って、店の前で泣いちまってさ。店の人も困っててな。
そしたら、さっきの魔女さんがな、大丈夫?て聞いてきたんだ。こどもだったし、様子聞かれても上手く説明は出来なかったから、ぐずりながらあうあう言って地団太踏んでたんだ。でも、魔女の姉ちゃんは俺にちょっと微笑みかけて、店の人にいきさつ聞いて、あららって。
ごめんね、お豆腐買えないの、あたしのせいだったかもね。
そんなこといって、よしよしいって、ひょいって俺を持ち上げたんだ。その手つきとか、力の入れ方とかあやし方とかが、かあちゃんそっくりでさ。俺泣き止んじまったんだ。
おかあさんとこ、行こっか。
泣き止んでも、ぐずってる俺の手を引いて、時々俺に道を聞きながら家まで着いたんだ。かあちゃんびっくりしてたよ。だって、森の魔女が何だって鍛冶屋の自分の家に来てるんだって。しかも、手につないでいるのが、途中で、棒のついた飴買ってもらって、手に垂れてるのも気にせずにぺろぺろ舐めてる俺がいてさ。ねえちゃん、悪くねえのに、かあちゃんに事情話して頭下げてさ。いつも俺の頭にたんこぶ作ってるかあちゃんも、魔女相手にはあたふたしちゃって。それなのに俺は、乾いた涙の後をこすりながら、なぜか他人事のように、その奇妙な光景を眺めてた。そっからかな、アリスとの出会いは。
今んとこ全然病んでないな……。また書きます。


977 : ○○ :2016/06/17(金) 02:04:27 VzTaLX/Y
続き
あの一件以来、町にアリスが来たって聞いたら、おれはすぐに飛んで行ったな。たぶんあの頃は、兄弟とかいなかったから、年上のお姉ちゃん。て感じに思ってたんだと思う。アリスはいつも昼過ぎに町にやってきて、裁縫屋によって、それから劇を開くんだ。俺はいつも一番前に陣取って、三角に座って劇を見てたんだ。いつみても、宙に舞う人形はよく作られていて、まるで本物の人間みたいだった。みんな、可愛い女の子で毎回違う洋服を着てるんだ。アリスから聞いたら、全部自前で作ってるんだって。でも、気のせいか時々、その中で一人、シャンハイって名前なんだけど、悲しい顔で俺を見てる気がしたんだ。もう一度見れば、また少し微笑んで、目をつぶってるいつもの顔になってるんだけど、その顔をみると、何か自分の中で弾むものがあったんだよ。
アリスは劇が終わると、俺の家でかあちゃんとお茶をすることになっていた。彼女が家から持ってきた紅茶と、以前の礼ということでかあちゃんが、とうちゃんに作らしたティーセットでお茶会を開いていた。表の工場からは、鉄を打つ音と、何かが火花を立てる音が聞こえれば、じゅわわと水の泡立つ音が。ほかの人からは、うるさいと思われるかもしれないが、聞きなれてる人間にとってはそれが聞こえると安心するんだけど、アリスも、実家は鍛冶屋らしいので、この音は聞きなれてるらしく、
落ち着きます。
といって、紅茶を飲んでいた。かあちゃんも、お上品そうにお茶をすすってはいたけど、四角い砂糖を何個もぼちゃぼちゃ入れてたら台無しだよな。俺は、紅茶はちょっと渋くて好きじゃなかったから、あんまり飲まなかったけど。
今日は森で採れた木苺のタルトを作ってみたの。
アリスは家に来るとき、いつも果物を使ったお菓子を持ってくる。これが、何よりの俺の楽しみだったな。それに、かあちゃんが作ってくれる甘味なんて、おはぎかねりきり、ぐらいだったしな。なによりも、果物は危険な森とか山でしか採れない高級品だったから、めったに食べれなかったごちそうだからな。いつもは早食いの俺もこればっかりは大事にちまちまと食べたな。そんな俺を見ながらアリスは、肘をつきながらニコニコしてたよ。
アリスが帰るときは、俺が町の門まで送ることになっていた。女が帰るときはおくってやれ。とうちゃん鼻の下伸ばしてアリスのこと見てたからな。
これ、あげるね。
アリスの手には、赤い色をした飴が透明の包装にくるまれて、あった。夕焼けに照らされていて、景色は赤く染まっていたけど、それでいても綺麗な赤だったよ。ほんとに。
今日のケーキ作るとき余っちゃたから。もう一個作ってみたの。木苺好きよね?                 ―おかあさんには内緒ね。
そのまま、アリスは手を振りながら帰って行った。けど、彼女の後ろで、シャンハイが俺の方に一瞬顔を向けたんだ。そのとき見せた顔は、夕日を背にしていたから、顔に影がかかってたけど、昼間の見た時と同じ表情だった気がした。でも、やっぱりその次の瞬間には元の表情に戻っていた。


978 : ○○ :2016/06/17(金) 03:39:17 VzTaLX/Y
続き
その夜だな。こんなカラダになったきっかけは。でもアレはしかたねえよ。
何?ちゃんと説明しろ?わかってるよ。お前も自分に何が起こるのかは、知りたいもんな。
 
俺は、アリスが帰ったあと、晩飯食って、風呂入って、そのまま布団に入ったんだよ。で寝るフリした。親が寝るまでよ。それから、こっそり腕だけで布団からはいずり出て、便所にいったんだよ。うー、しょんべん。しょんべん。てぼそぼそ言いながらな。興奮したよ。厳しい親に隠れて、ちょっと悪いことをする気分だったからな。あの頃の俺はかわいいやつだったよ。でも便所の引き戸をあの時ほど恨んだことはなかったな。立て付けの悪さか、動かすときの音がひどいんだ。開けるときと閉めるときで、ぎぃぎぃと、冷や汗が止まらなかったよ。

で、ついに至福の時の到来だ。包装を開いて、飴を手に取ってみる。窓から射す月明りだけが光源だったから、夕方に見たほどには鮮明には見えなかったけど、やっぱり綺麗な赤だった。今思い返してみると、心なしか夕方に見た時よりも、赤に深みが増していた気がする。それが、俺の記憶違いなのか、暗い便所の中で見たからかは、わからないけどな。
手に取った感じは、ただの飴だった。が、まだ温かい季節だったのと、いつ親が起きないかと手に汗握る状態だったから、次第、飴が溶けてきちまった。その飴は、一度溶け始めると、どろどろ随分と早く溶けていった。まるで、早く食べろといってるみたいに。俺は慌てて、それに応えるように、舌で掬うようにように、飴を口に含んだんだ。

次の瞬間には、飴は氷のようにあっという間に溶けたんだ。強烈な甘さと木苺の香りを残してな。溶けた飴は俺の体に、ゆっくりと粘っこくのどを通り、食道を通っていきながらも、その存在感を俺に感じ取らせた。何故かそのとき、アリスが俺の中にいる。と思ったんだ。それを感じ取ったときに、何かが痺れるよう俺の体を上から下へとながれていった。そんで、俺に未知の体験が襲ってきた。下腹部に強い違和感を覚えたんだ。まあぶっちゃけ、勃起したんだよ。まあでも、俺は両手で数えられる歳だったから恐怖しかねえわな。湧き上がる興奮と、未知の体験から来る恐怖、二つの強烈な感情でパニックになっちまったんだよ。どうしたらいいかわかんなくてさ、親にバレちゃいけないって理性だけが、俺に声を出させずに済んだんだ。手を口に、押し当てて、必死すぎて鼻もふさいでることに気づかなかったよ。もう片方の手は、誤作動の起きてる股間にな。混乱しちまってるから、自分が息出来ないことがわからなくて、次第に視界がボヤケテきたんだ。でも、まだアリスは自分の体の中いる感じでな。

かわいいわね。――― 。

そう、アリスの声が聞こえた瞬間。下腹部が弾けたような気がしたが、そのまま俺は気を失っちまったからよくわかなかった。薄れていく景色の中で、覚えているのはきつい木苺の香りと、シャンハイが俺に向けたあの顔がふとおもいだせれたことだ。

見難くて申し訳ない。


979 : ○○ :2016/06/17(金) 04:30:08 VzTaLX/Y
続き
朝、起きてみるとちゃんと布団の中にいた。どこも、汚れているところはなかったし、便所に行ってもそれらしきあとはなかった。夢か、そう思って息をつき、顔を洗いに行こうと思って、離れにある井戸にいったんだ。そしたら、桶が井戸からでててさ。また、とうちゃん入れ忘れたな。って思ってたら。離れはちょうど、家の真後ろに当たるでな。そこからは、便所の窓が見えるんだ。で、窓の下あたりが何故か濡れて色が変わっててな。先っぽが折れた針が落ちてたんだ。

アリスのだ。

直感的にそう思った。


980 : ○○ :2016/06/17(金) 06:45:36 VzTaLX/Y
続き
それから、俺の周りには常に木苺の香りが漂うようになっていった。そして、あの飴も常に、俺の手元にあった。アリスが直接渡してくれる日もあれば、夜に便所に行こうとしたら、家の庭に包みがポンと置かれていて開けてみたらどさっと。それを、口に含めるたびに、俺の体の中でアリスを感じ、猛りを覚えた。そして、ひとしきり熱が収まるとあの上海の顔を思い出す。それが己の体ではなく、心に小さいひっかき傷をつけていくのが快感になりつつあった。
人形劇をしているときや、かあちゃんと話しているときのアリスは、まるで本当の姉を連想させるような優しい目で俺を見ていたが、二人きりになれば口調も、目つきも、そしてにおいも。変わるようになっていった。

いったとおり、飴、全部ちゃんとたべたの

あの夜から、季節が一つ進み、白い吐息が漏れ出るころになっていた。それまでには、俺はいくつもの飴を口に含み。アリスを感じていた。アリスに視られるだけで、すでに俺の体は熱を帯びるようになっていった。それとも、彼女は魔女だからそういう術を使ってるのかもしれない。また、彼女に少しほほを触れられるだけで、夜の痺れが思い出され、思わずつま先立ちになってしまう。そして、もう一つ、アリスの傍には、いつもシャンハイが飛んでいる。彼女が時折見せる、あの哀れみと侮蔑を含んだ表情。あれを見るたびに、飴を舐めた時とまた何か違う痛みを伴う幸福を得た。幼い俺は、この異常性に気づかずに肉と心との双方の快楽を愛し、ますます彼女たちにのめりこんでいった。
でもこの薄氷の道を歩いていくには、俺は純粋で幼すぎたのだ。


981 : ○○ :2016/06/18(土) 16:54:09 hOL0dU5I
続き 
その時は、二つ山の先に住む雪の魔女が目を覚ましたらしく、雪とあられが混ざった寒く、風の強い、ひどい夜だった。
がたがた、ぎぃぎぃと。家も寒くて、体をゆすっていたのか、あちこちから壁や床の軋む音や扉のゆれる音がなっていた。とうちゃんらも、うるさかったのか、寒かったのか、眠れないらしく居間で行燈をつけて酒を飲んでた。おれも一緒にいたかったけど、とうちゃんが飲んでた酒は強かったから、飲ましてもらえなかったし、早く寝ろって言われたもんだから、居間に布団を持ってきて眠ることにしたんんだ。ねろって言われてもこんな夜だし、アリスは一人で大丈夫なんかとか気になってたから目だけは閉じてたけど、起きてたんだ。そしたら、二人の会話の話が聞こえてきたんだ。

おまえ、こういう話しってるか? ―何を? 
赤い飴をくれる女の話さ。

あんな話きかなけりゃ、もう少しましなことになってたかもな。それからは、俺はアリスのことを避けた。劇にも行かなかったし、お茶会にも行かなくなったんだ。かあちゃんは不思議がってたし、とうちゃんも照れてんのか?て言われたけど、それでもアリスに会うことが出来なかった。そして、一個だけ残っていた飴も手をつけずにいた。
そういうのが、一か月かそれくらい続いたころか。俺は、少し体に違和感を覚え始めていた。ちょっと、何もしないでいると気を失って、夢を見るようになった。最初は森の中に。おどおど歩いていくと、道が一本あって、奥に続いてるんだ。その森には、色んな果物がなってるんだ。青い実や黄色い実、でも一番目を引いたのは赤い木苺だった。でもな、道を進んでいくと実は段々熟れていって黒くなっていくんだ。熟れ切った実は道に落ちていって、絨毯みたいに道を染め上げていくんだ。落ちた実は腐って酷い匂いを放ってるんだ。だが、その匂いはなぜか、嫌いではなかった。ぞうりが、実の汁を吸って濡れるのは嫌だったが。黒く腐った道はいつまでも続いていくように思われたが、突然世界が晴れた。広く開けた花畑の中に、家が一軒ポツンと立っていた。
そこで、いつも夢は覚める。覚めた後でも、あのすえた匂いが漂っている気がした。夢を見た後は、あの赤い飴が食べたくて仕方がなくなってくる。だが、理性が強かったのか、それを舐める勇気がなかったのかはわからないが、結局我慢した。
そういう悶々とした時間を送っていると、また、かあちゃんに豆腐のつかいを頼まれた。商店街を歩いてたんだけど、すこし、倦怠感と欲求不満で注意が足りてなかったんだろうな。人とぶつかりかけたんだ。ごめんなさい。って言おうとして見上げたら、外套を着たアリスが立っていた。


982 : ○○ :2016/06/18(土) 20:27:39 vpcB7FdU
>>976
ようこそ!是非気の赴くままに書いていって下さい。
アリスはやはり魔女ですので、ねっとりとした感情がよく似合います。
魔理沙は剛胆なイメージですが、アリスは策を練って罠を張って待ち
構えるようなイメージです。
 次より投下します。


983 : ○○ :2016/06/18(土) 20:29:22 vpcB7FdU
 永琳女史の診察カルテ5

 永琳の診察室は通常、昼間に患者の診察を行っている。夜になると
里の外には低級な妖怪が人間を喰ってやろうと彷徨いており、余程の
ことが無い限りは、安全な昼間に永遠亭に来るのであった。
 しかし夜の診察室にも電球が灯っている。普段は昼間に診察した
患者のカルテの整理や新薬の開発をしているのであるが、時折そんな
彼女の部屋に訪れる人影がある。態々人目を忍ぶように永遠亭の裏口
から入ってくるその人影は、大抵訳ありである。例えば地味な馬車に
信用できる使用人を連れて訪れた、稗田家の令嬢のように。

 優曇華の案内で診察室に入った阿求は永琳に尋ねる。
「八意先生、一寸欲しい薬品がありまして。」
-どのような薬品ですか?-

「ええ、先生の前ですのではっきりと申し上げますが、人間を依存させる
薬品を頂けませんか。」
-依存させる、ですか…。-


984 : ○○ :2016/06/18(土) 20:29:53 vpcB7FdU
「人里の犯罪者の取り調べの為にも、自白剤も必要でして。」
-うーん、そういった薬品類は本来ならば、魔女が作るのが最適なのですが。
どうにかやってみましょうか。-

「お願いします。」
-それでは依存の方ですが、誰かを依存させる為には、いくつか手段がありますが、
今回は二種類の薬品を使用しましょう。脳内の神経に作用して常に不安感を感じ
させる薬品と、其の薬品を一時的に阻害する舌下薬を処方します。-

「さしずめセロトニン枯渇薬とでもいった所ですか。」
-ええ、ですので使用し過ぎると鬱病を発症する恐れがありますので、ご注意下さい。-

「自白剤の方は如何ですか?」
-心の中で思っていることを言わせる薬品は有りませんので、此方も別の薬品を
使用します。アルコールの様に脳の大脳を麻痺させて、普段は抑制して言わない
ことをベラベラと話すようになりますよ。-

「それは自白剤と同じでは?」
-言いたくないことを言わせることは出来ませんよ。ただ、言いたくないことが
有ることは言ってくれますが。あと、脳内のみに作用しますので、他の部位には
特段作用しませんので。-

「成る程。それでは此方を頂きます。」
-十四回分になります。-


985 : ○○ :2016/06/18(土) 20:30:57 vpcB7FdU
 阿求は一応犯罪者の自白用としているが、その用途ならば幻想郷ではあまり
意味が無い。上白沢や四季といった存在がいれば、本人が覚えていないことも
微細に教えてくれるであろうし、どれ程取り繕うと地霊殿の主がいれば全て
丸裸となってしまう。妖怪に手を借りたくないのであれば、昔ながらの陰惨な
強制が使われるだけであるので、結局は唯一つの目的に使われる。
 傷を付けずに本音を聞き出して、自分以外の人物を好いていたのならば、
その好意を自分に向けさせること-そのために業と舌に含んで使用する薬品
と、頭脳のみを麻痺させる薬を処方したのだから。

以上になります。


986 : ○○ :2016/06/18(土) 22:26:07 vpcB7FdU
投下します。
 冥婚

 僕が魂魄妖夢の彼氏であった。あったというのは過去系の
話であり、何故かといえば、彼女とは死別してしまったため
である。僕が彼女と付き合っていたのは半年ほど前の話であり、
元はと言えば里に買い物に来ていた彼女と知り合い、付き合う
ことになったのは数年前の話であることであるので、彼女との
付き合いは結局の所、かなり長い間のものであったのであろう。

 彼女が死んだと聞いたのは、暑い夏が終わりようやく秋の日々
がやって来るであろう時のことであった。僕が里の店で働いて
いるときに、彼女が死んだとの知らせを受けた後、僕の記憶は
すっかりと無くなっていた。恐らく彼女の葬儀に出たのであろう
し、彼女の親族に会ったのであろうが、如何せんその時の自分は
余りにも衝撃を受けており当時の記憶は全く何も無い。
 辛うじて覚えていたのは、葬儀の時に彼女の雇主として僕に
挨拶をした女性の姿であり、黒色の喪服が彼女の白い肌に映え
頭が麻痺してしまっていた僕は不覚にも彼女が美しいとさえ
思ってしまっていた。

 しかし葬儀が終わった後に自分の部屋でうら寂しく過ごして
いると、かつての彼女の姿が目の前にちらつきどうしようも
なくなってきた。


987 : ○○ :2016/06/18(土) 22:26:47 vpcB7FdU
 そこで里の世話役であった上白沢に、彼女の実家を教えて
貰おうとしたのであるが、上白沢が言うには彼女は冥界の出身で
あるらしく、空も飛べず結界も越えられない自分としては、全く
もって線香すらあげることが出来ないと聞き、僕は彼女を思い
出すことすら出来ないのかと思うと、唯々色褪せた幻想郷で
惰性に任せて生きて行くしかなかった。

 そうして季節は過ぎ、実りの秋が来た後には厳しい冬となり、
寒さが漸く緩み始めた頃に、僕は再びあの女性に出会った。
西行寺幽々子に。
 彼女は葬儀の時とは異なり薄桃色の着物を着ていた。やはり
白い肌が彼女の首筋を栄えてさせており、僕が彼女にこの世の
ものではないような美しさを感じた程であった。彼女は半年前と
変わらない透き通るような声で挨拶を交わした後に、僕に頼み
ごとをする。
「○○さん。本日はお願いがありまして此方に伺いました。」
「お願いといいますと。」

何のことか見当が付かない僕に、彼女は深く切り込んでくる。
「実は私の従者、妖夢と結婚をして頂きたくて。」
「何を言っているんですか?彼女は死にましたよ!」

目の前の彼女が妖夢の死を弄ぶような気がした僕は、彼女に
大声で反駁する。
「ええ、死んでおります。ですので死者との結婚、つまり冥婚
となります。」
「めい、こん…? 何ですかそれ。」


988 : ○○ :2016/06/18(土) 22:27:25 vpcB7FdU
何のことか要領が掴めない僕に、彼女は丁寧に説明していく。
-曰く、生者と死者の結婚であること。
-曰く、彼女の供養のためのものであること。
-曰く、式を西行寺家の白玉楼にて執り行いたいこと。
 僕の心は揺れていた。彼女を愛していたのは事実であるが、
かといって死後も彼女と添い遂げるというのは、何か違う気がする。
生者と死者の間には、渡れぬ川があった世界の人間としては、
何か言葉には出来ないが、えもいわれぬような、敢えて言うならば
妖夢を冒涜するような心持ちがしたため、僕はこの話を断ろうとした。
「わざわざお越し頂きましたが、このお話はお断りさせて頂きます。」
「いえ、○○さんのことを好いていた妖夢のためにも、是非に。」

 僕が彼女に断る事を告げると、彼女は尚も食い下がってきた。どこかの
遠い所からわざわざ来たのであろうから、少々のことで引き下がる訳には
いかないのであろうが、此方としては引き受ける気がないため、お断り
するより他にない。
「申し訳ございませんが、死者との結婚は引き受けられません。」
「何故ですか、妖夢はあなたの所為で死んだのですよ!」

痛い所を付いてくる。確かに妖夢は僕の所為で死んだ。僕に執着していた
-外界の言葉を使えばストーカーという奴であろう-里の女性に話を付ける
為に一人で勝手に会い、そこでその女性に刺し殺された。僕としては
穏便に包囲網を敷こうとしていた最中のことであり、里の重鎮の協力
も得られそうな状態であったため、どうしてそんな突っ走ってしまった
のかと忸怩たる思いであったが、兎に角僕の所為で死んだことは事実である。
「どうか、妖夢の為に、是非に…。西行寺家に良く仕えてくれた子で
したので…。」


989 : ○○ :2016/06/18(土) 22:28:03 vpcB7FdU
すっかり押されて言葉が出なくなってしまった僕に、尚も彼女は押してくる。
「西行寺家としても、精一杯○○さんにご支援させて頂きます。」
-それに、私自身も-
そう言って僕に詰め寄る彼女から、急に桜の花びらの香りが僕の鼻に届く。
着物から見える彼女の白い肌と、桃色の唇から目が離せなくなった僕は、
思わず彼女を押し倒していた。

 式の当日になり、幽々子に連れられて西行寺家に到着した僕は、控えの
間で一時間以上も待たされていた。既に僕の着付けは終わっているのである
のだから、他の準備はそう無いのであろうがいやに時間が掛かっている。
そして会場に向かった僕の目に、二度と目にする筈のない人の姿が写る。
白無垢を着た妖夢は静かに僕の前に進み出た後、小声で僕だけに聞こえるように
小声で話す。
「○○さん、これで一生一緒ですよ。いえ、○○さんが死んでも私達は一緒ですよ。」


990 : ○○ :2016/06/18(土) 22:29:38 vpcB7FdU
以上になります。


991 : ○○ :2016/06/18(土) 22:52:28 I49ocqdw
はじめまして
皆さんが面白い話を書かれているので自分は小ネタでも投下してみます

永遠亭における私の1日
6:00 起床
7:00 朝食
9:00 読書
12:00 昼食
13:00 散歩
15:00 間食
19:00 夕食
20:00 入浴
24:00 就寝
※永琳と一緒に過ごさない時間は5時間
※外の世界や里への懐古、永遠亭に属さない女性を匂わせる発言をすると上記の5時間は無くなる


992 : ○○ :2016/06/18(土) 23:23:45 AwhlCQg.
次スレタイトル案
私がいるじゃない
ここにいれば良い
貴方の家よ
私の隣よ


993 : ○○ :2016/06/19(日) 19:51:16 lNS5Qhuk
次スレタイトル案
ずっと一緒よ
お別れなんてありえない
私がいてあなたがいる
心も体もわたしのもの
私をみてればあなたは幸せ


994 : ○○ :2016/06/19(日) 19:54:17 VlOcRiDA
…よう○○ 最愛の彼女とやらに振られた気分はどうだ?まあ良くはないだろうな
残念だったなあ あんなに金貢いであと一歩 ってところで私に邪魔されてなあ?
そんなにキレんなよ 悪戯好きの天邪鬼のすることと思ってさ、許してくれよ な?
私が幻想郷を支配した暁には旦那にしてやるからさ。
…私とお前の力量差は知ってるな?
…うんうん それでいいんだよ、聞き分けがいいお前は好きだ。












次同じようなことしたら……  分かってるよな?


995 : ○○ :2016/06/20(月) 20:20:26 eTwIYdHk
次スレを立ててみました。
タイトル案を入れようとすると長すぎるようで、
タイトルを入れられずすみませんでした。

ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/22651/1466421469/


996 : ○○ :2016/06/20(月) 21:09:17 eTwIYdHk
>>991
睡眠時間が6時間あるということは、眠っている間も一緒ということか…
永琳恐ろしい子!

>>994
天邪鬼の残酷さと共に、妖怪の本能的な独占欲というか、肉食獣が
獲物をじっと狙うようなジリジリとした楽しみに浸れますね。正に
これが愉悦なのかもしれません


997 : ○○ :2016/06/20(月) 21:11:36 /mIj3qPo
981の続き 長い(白目)

アリスは、しばらくは俺のことを見つめていただけだった。彼女のほほは、寒さで赤ばんでいた。んで、目元には薄い隈が浮かんでてな、目頭の方はヒビのようなしわになってた。いつも着けていた髪留めも、その時は着けてなくてな、ちょっと伸びた前髪が目に少し被ってた。黒くて、膝下まであった重たそうな外套も相まって、その様は寝る前にかあちゃんに聞かされた話に出てくる本当の魔女みたいだった。そんで少し目を狭めたかと思えば、横に手に持っていたバスケットを置いて、しゃがむと俺の頭を撫でたんだ。鼻と鼻がぶつかり合うぐらいに迫ってくんと匂いを嗅いで、俺の目をじぃと見つめてな、五感で俺の存在を確認みたいだった。そして手がだんだんと頭からほほへ、そして唇へとながれていった。ゆっくりな。唇にたどり着いたら、軽くつまんだり、ひっぱたりともてあそばれていたのにも関わらずに、俺は茫然として、なすがままにされた。突然のことで理解が追い付いてなかったんだろうな。ぼーとしている俺に彼女は愛おしそうに眺めていたが、もう一つの手でポケットから一つ赤い飴を取り出してな、あーっと口を開けて、細長い指で飴をぽいっと放り込んだ。ころころと、口の中で飴を転がして見せて、目を閉じて顔を寄せてきた。瞬間、我に返った俺は彼女を突き飛ばして、転びそうな体勢で逃げ出した。走りながら、振り返るとシャンハイに手を貸してもらいながらも、口角が上がりきっていないにやけたような顔をこちらに向けていたんだ。

つかいを果たさずに、ぜぇぜぇと息を切らせて家に帰ってきた俺は、かあちゃんに何があったのかと聞かれたけど、ただ、何でもない。と伝えただけだった。かあちゃんも納得がいかないようだったけど、あんまり無理に聞こうとはしなかった。


998 : ○○ :2016/06/20(月) 22:23:06 eTwIYdHk
埋めネタ代わりに

死神のカード

 「なあ、○○。あたい心配なんだよ。○○がどっかに
行ってしまわないかって。」

 いつも僕を引っ張る彼女であったが、時折ふとした時に
僕にポツリと本音を漏らすことがるのであるが、
そう言う彼女の目は真剣であった。僕は彼女に心配
無いと言うのであるが、彼女はいつでも不安そうな顔を
して僕を見つめてくる。そんな時に僕はいつでも彼女を
抱きしめながら宥めるのである。そうすると次第に落ち着いて
くるのか、また何時もの快活な彼女が戻ってきていた。

 ある時、全くの不注意で、そう全くの偶然と不運の
重なりによって僕は死んでしまっていた。いた、と言う
のは過去系であり、今回は過去完了形であるのであるが、
中学校の英語の時間に習ったように、完了形というから
には僕の死は確定である。しかし完了形のもう一つの
文意として、だからどうなったというのがある。
 そして今回の僕は彼女に囚われている。死んだのであるの
だから、どうなったも何も無いはずであるのだが、彼女は
死神であった。

「なあ、○○。これであんたがどっかに行ってしまうことが
無くなったねぇ。」

彼女は本心から喜んでいた。


999 : ○○ :2016/06/20(月) 22:23:43 eTwIYdHk
正義のカード

 「ええ、○○、貴方は少し、いえ、とても罪深いのです。」

そう言って閉じた部屋の中で、四季映姫は僕に告げる。一体
僕が何をしたというのであろうか?しかし彼女には全ての
ことがルールに反しているように見えたようだ。

「貴方は生まれながらに罪深いのです。ですから私が貴方を
正しい方向へ導かねばなりません。」

一体僕が何をしたというのであろうか?生まれながらに罪を
背負うのはどう考えても可笑しいのではないのか、そう言って
僕は彼女に問いかける。

「○○、私が神なのです。私がルールなのです。私が
貴方の存在を決めるのです。即ち、白と言えば白、黒ならば黒と
いうように。」

お前は狂っている、そう僕は言ったのであるが、彼女は全く
動揺一つ見せない。羊を導く羊飼いのように彼女は僕を導こう
というのであろうか。

「私が狂っている、貴方がそう言ったとして、私がそうではないと
言えば、そうではないのですよ。」

僕の正気はお前が保証できるようだが、じゃあ一体お前の正気は
誰が保証できるんだい?そう問答を吹っ掛ける僕に、彼女は答える。


1000 : ○○ :2016/06/20(月) 22:24:30 eTwIYdHk
「私の正しさは私が示します。そして貴方は其れを受け入れる。
今はまだ貴方にそうしていませんが、貴方は私に従うようになります。
私は神なのですよ?」

力ずくでないと人一人納得させれない神なんぞ、しょぼい神様だと
悪態を吐いた僕に、彼女は残念そうに言う。

「神を試すものではない、というのは異国の言葉でありますが、
まさにその言葉を贈りましょう。○○、何故神は悪魔よりも
人を殺すのか知っていますか?」

思考回路が全て彼女に塗りつぶされながら、彼女の居る空間への
一体感を感じる。

「人は神の創作物であるからです。神が創りし物は、神がどう
しようが勝手ですよ。」


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