この街の夜に集った幾百の憎しみ - 1468246892

1：以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします：2016/07/11(月) 23:21:32 ID:aYyBE.E6: 1.狂言回し

2.Twitterユーザー

3.メンヘラ

4.受験生

5.穴を掘る男

6.アル中

7.徘徊老人

8.論者

9.傍観者

10.非番
2：以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします：2016/07/11(月) 23:22:14 ID:aYyBE.E6: 1.狂言回し

ええ、分かっておりますとも。これは小説ではございません。
つまり私のような狂言回しも本来ならば必要ないのであります。

そもそも狂言回しと申しますのは、ややこしく絡み合った物語の筋道というものを、
誇張気味に明示するために存在している、
まあ言ってしまえばストーリーの露出狂のようなものでございまして、
そのあからさまな態度は決して褒められるものじゃあございません。

しかし私がおらねば筋道が前へ進まないのも事実でございますからには、
私は今日も今日とてどこぞの物語どもに召喚されるという次第。

つまるところ、私は所詮書き手の共犯でしかないのであります。
嗚呼、されど人類皆友達以前に共犯のようなもの。
そう考えれば幾許かこの心持ちも楽になるという具合で。
　
さて、先にも述べましたとおり、ここに筋道などはございません。
ならば何故私がこの文字の上に呼び込まれたか。

やや矛盾めいた言い回しにはなってしまいましたが、
要するに『筋道など無いという筋道を説明するため』でございます。

ええ、知っております。あなた方はどうせ、ここに筋道を求めてやって来られたのでしょう。
意味もへったくれもない記号の集積に顔文字などと定義を与え、勝手に昂揚するのでございましょう。
ならば私が説明すべき事柄など殆ど無いようなものです。

ええ、『ここには顔文字もストーリーも存在しません』。
ええ、分かったならとっととお帰りなさい。
いずれ、連中は最早こんな文章すら読むのに飽いて早々に立ち去っているかも知れませんが。
貴方が求めるものはここには何一つございません。
　
併し乍ら一言もの申すとしますならば、この世に生まれ落ちた分際で、
求めるところに求むるものが在るなどとは、如何にも都合のいい話ではございませんか。

ええ、そうでしょう。私たちは常々餓えているのでございます。
金に餓え、女に餓え、職に餓え、食に餓え、
そうして何らかの恨み辛みを抱えながら何とかかんとか生き存えているのでございます。

そして今ここに立つ貴方と私は筋道に餓えている。
ペシミスティックに人生を捉えるならば、何もおかしくはありません。むしろ常道ですらありましょう。
それで貴方だけが充たされたいと願うならば、今夜にでも金で女を買えばよいでしょう。

そう、誰もが我欲に餓えているのです。
そうした餓えは募り募って憎しみとなり、いずれ隣人を刺す凶刃になるやもしれません。
　
私の役目を果たしましょう。ここに書き落とされるのは、そうした憎しみのアラカルトです。
憎しみに筋道などございません。それはどこからともなく突如湧きだし、
頭の中を甚大な衝動で支配してしまうものでございます。

それが人というものであり、その人が集まる場所を街と呼びます。
街とは即ち、憎しみの坩堝に他ならないのです。
　
誰も充たされてはおりません。私も、あなたも、誰も彼もが餓えきっているのです。
ただそれだけなのです。もう一度申します。そこに筋道などございません。
ここに連なるのは憎悪のストリーミングでしかないのです……。
3：以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします：2016/07/11(月) 23:47:44 ID:5tYQtMDI: ゴメン1でワロタ
4：以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします：2016/07/12(火) 01:31:45 ID:0GfMynNE: 期待
5：以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします：2016/07/12(火) 17:29:08 ID:0XJAeQDk: 仕事見つけたら？
6：以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします：2016/07/12(火) 23:26:45 ID:saNk1bdg: 2.Twitterユーザー

いつの間にか爪弾きモンだよ。マジでやってらんね。
つーか俺のムカつくこと呟いてんじゃねえよ。
お前らみたいな顔も知らねえようなヤツに気分を害される者の気にもなってみろ。
　
ハア、しかしツイッター始めて何年にもなるけどさ、いつまで経っても堂々巡りなんだよな。

まず、メンヘラが出るだろ？　これが大体女なんだよ。んで腐女子。
あ、この場合の腐女子はホモが好きとかそういう意味じゃなくて性根が腐ってるって意味な。

んで、あいつらはゴキブリみたいなもんだから次々と仲間を呼ぶのな。
ババアのメンヘラとかスマホと人権取り上げろよマジで。

んでさ、そこに腐女子に理解を示す男が現れるの。
で、そいつらの会話がタイムラインに流されるわけじゃん？　
それを見る度に俺の米神あたりがピクピクするんだけどよ。

で、そういうヤツらに限って話がなげえしまとまりもねえからいつまでも終わんないの。
大体、この短文投稿サイトで会話しようなんてのは大概コミュ障で国語力が皆無だから、
傍から見てても会話の意味が全然わかんねえのな。

でもまあ、当人同士はもう精神的にファック済みだから通じるんだよ。
あいつらの垂れ流す文章なんてコンドームからまろび出る精子と大して変わんねえよマジで。
　
もうこの時点でツイッターはオワコン。クソの塊。んで、大量のリツイート。バイラルメディアと一緒。
有益な情報無し。あるのは不愉快にさせられる自分語りだけ。
マジでツイッターの創業者張り倒したいな。
　
メンヘラは入れ替わりが激しい。鮮魚かよってレベル。
まあ、大抵男関係。実物とファックしちゃいかんでしょ（笑）。
んで、別に顔も知らねえのにそいつの情緒不安定が明らかに確実にこっちに知らされる。

鍵かけたりかけなかったりアカウント消したり復活したり
アイコンを無味無臭にしたり黒歴史クリーナーつかったり。

そういうのやり始めた女は遠くないうちに消えていくね。
図太いのは卵産んでそのアカウントにしがみつくけどさ。
あ、そん時ついでに、『理解力のある男』も一緒に消えたりするけどね。何故なんだろうね（笑）(笑)。

でも、不思議なもんで、一人メンヘラが消えていくと、
ほぼおんなじタイミングで別のメンヘラが幅を利かせ始めるんだよな。

そういうのが数ヶ月とか数年単位で繰り返されるの。それがツイッター。マジで害悪。
マジで誰が得してんだよこのクソＳＮＳ。あ、ファックしてるヤツらか（笑）（笑）（笑）（笑）。
　
畜生が、今夜も何一つ生産性の無いツイートばっかだ。反吐が出るね。
もう、なんかイチャイチャごっこやりてえんだったらツイッターじゃなくてラインとかスカイプでやれよ。
てめえの劣情が見え見えなんだよ。チンポとマンコが透けてんだよ。

てめえらだって裏でコソコソやってたほうがいいだろ？　思う存分ゲスい（笑）会話できるし。
ファックしたいならその方が絶対いいのになんでそうしない？　
脳味噌じゃなくてでっけえ亀頭が詰まってんすか？
　
は？　何？　なんで文句しか言わねえのにツイッターにしがみついてるのかって？
　
……は？　うるせえな。ぶっ殺すぞ。
7：以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします：2016/07/12(火) 23:30:28 ID:wKESCFfs: ツイッターでやれ
8：以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします：2016/07/13(水) 00:22:08 ID:mPqw7Yj6: 知りたい公式アカウントやニュース情報関連だけフォローしとけばいいと思うの
情報端末と一人言呟くだけに使える
9：以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします：2016/07/13(水) 00:55:04 ID:8TdK0dZ.: 本当にTwitterユーザーになりきってるなこれすげえわ
10：以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします：2016/07/14(木) 00:52:39 ID:5ZDoWozY: 3.メンヘラ

はいはい、どうせウチの頭の辞書は大森靖子とか相対性理論で出来てるけど、だから何？　
心理学用語と病名もたくさん知ってますけど？　

どうせ世の中のヤツらってその程度のことも知らないじゃん。
会話出来ないって言いたいのはこっちの方だし。

お前らがなんにも知らないことを恥ずべきであって、
知ってるウチらを罵倒するのって、普通におかしいよね。
つーか、今時こんな女珍しくもないし。

特別扱いされないと嫌だけど別にお前にはしてもらいたくないから。
　
あのさあ、というかブスでメンヘラでも普通に男寄ってくるから。
お前らヒキニートは知らねーだろうけど、メンヘラ好きの男なんてごまんといるわけ。

つーかそもそも、女の外見なんて化粧でどうにでもなるし。
ウチの友達のデブスだって、フツーにデブ専の彼氏いるしな。

今時アムカがキモいとかふるくせーんだよ。
それぐらい受け入れてくれる器の大きい男いっぱい知ってるし。

てか、お前が好きになってる、自撮り上げてるレイヤーの顔ちゃんと見たことあんの？　
あいつら、ウチと同類だから。まあどうせフォトショで加工された顔と身体しか知らないんだろうけど。
リスカとかアムカの痕って何年も残るからね。
　
そうだよ？　ウチはウチがブスだって知ってる。
だからネットには絶対自撮り上げないし、プリクラ撮る時だっていつも同じ顔の角度と手の位置。

スマホのアルバム漁ったらウチの顔コピペみたいでマジ笑える。こんなのなんで残してんだろ。
みんなそう思ってんだろうけど、みんな残してるからウチも残してる。それだけ。

で、たまにみんなでいるときに見返したりして、カワイーとか言ってるけど、
アイツらどれだけマジなんだろ。ま、ウチも言うけど。
　
ヤバいぐらい壊滅的な顔面じゃない限り、しつこくラインしてたら向こうから寄ってくる。
そういう男なんてしょーもないって言われるかもだけど、別にウチも高望みしてない。
つーかウチなんかが高望みするわけないじゃん。

二年前から付き合ってる、今の彼氏は普通に働いてて、ウチと結婚すんのも考えてくれてる。
それで何か文句ある？　文句言ってるヤツらは自分の恋人が超自慢できるんでしょうねーすごいねー。
　
でもネットでは普通にかまってもらう。それとこれとは話が別。
別に彼氏だって一日中かまってくれるわけじゃないし。

ネットでは名前も顔も出してないけど普通に女アピしたら寄ってくる男いるし。
ソシャゲとかやってたら、普通にネットで知り合い出来なくない？　今時普通でしょマジで。
　
ブスなメンヘラだし女だから時々鬱みたいになるよ。
普通に彼氏にも当たるし、喧嘩売るし。まあ彼氏も最近は本気で相手してくれてない感じ。
ま、ウチなんかにマジになったら疲れるだろうしね。

別にいいや。普段は優しいし、今んとこ、浮気もしてないみたいだし。
　
だからさ、もうすぐ生理だから情緒不安定なだけ。
別にかまってくれてもいいけど、ウチはそんなに軽くねーから。
てかお前の性欲見え見え過ぎて引く。ウチはそういう人はマジで無理。
　
だいたい、ネットの知り合いとは三人しかヤッてないし。
11：以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします：2016/07/14(木) 01:07:02 ID:PNdkNBqA: いちいちオチが面白い
12：以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします：2016/07/14(木) 06:12:04 ID:jeex/T/Y: オチにワロタ
13：以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします：2016/07/15(金) 02:03:45 ID:ZQLHilU6: 4.受験生

時計の針が刻々と進んでいく。それと共に僕の心臓も激しく脈打つ。
もうすぐ深夜だ。日が切り替わる。明日になる。
頭の中のカレンダーが次々と切り裂かれて、本試験の日がサイケデリックに明滅する。
　
予備校から送られてきた判定用紙を何度も何度も見返す。Ｄ判定。
幾ら見直してもＤはＢにもＡにもならない。身の丈に合わない大学を選んだつもりはない。
ネットじゃ普通に馬鹿にされるレベルだ。なのにどうしてだ。

携帯の電源も切って、今日もこんな夜中まで机と向き合ってるのに、なんでだ。
誰のせいにもできない。自分の頭が悪いだけなんだ。
でも僕はその事実を、どうしても受け入れることが出来ない。
　
こんな僕でも中学生までは優等生だった。
テストなんて何もしなくても八十点以上は当たり前だったし、
だから勉強らしい勉強をする必要もなかった。

正直、あの頃は勉強できないヤツのことが理解出来なかった。
僕は、僕自身の頭が良くて当然だと信じきっていた。
　
その信頼が崩壊し始めたのは一体いつだっただろう。
気がつくと、僕は普通に二十点だの三十点だのの答案しか書けなくなっていた。

慌てて教科書を読んでも何も頭に入ってこない。
青チャートに書いてあるのは日本語であるはずなのに、その意味が理解出来ない。
それまで勉強をしてこなかったツケが一気に回ってきて、僕を徹底的に打ちのめした。
　
学校の、どうでもいい小テストですら怖くなった。
気がつけば空欄の方が多い答案用紙と向き合うのも嫌だった。だから僕は勉強した。

いや、それは果たして勉強だったんだろうか。その結果が、この判定用紙じゃないか。
どうやって努力すればいい。どうやって学べばいい。今更そんなことを、誰に訊けばいいって言うんだ。
　
英語の単語すら頭の中に入ってこない。
テスト前に網膜に焼き付くぐらい単語帳を見詰めていたはずなのに、
試験が始まると同時に全部吹っ飛んでいく。

脈拍ばかりが高まる中で僕は何度も自問した。もしかしたら僕は、記憶障害なんだろうか？　
人より記憶力が悪いのだろうか？　僕は、人より劣っているのだろうか？
　
何も受け入れられなかった。結果は歴然と目の前に出ているというのに。
いつの間にかすっかり出来上がってしまったプライドが、僕を貶めるのを許さなかった。

だから僕は表面上の点数を上げるために姑息な真似を……カンニングでも何でもやった。
それで、多少は点数が上がった。それで満足するんだから、僕の自尊心なんて所詮まがい物だ。
　
でも、本試験はそういうわけにはいかない。だから勉強するしかない。
だから、いつまでも机にかじりついて、こうやって赤本や問題集にかじりついて……。

それでも分からないんだ。何度も周回している問題集で同じミスを繰り返すんだ。
やっぱり僕は、どこか障害があるのかもしれない。

いや、そんなことない。やれば出来る筈なんだ。そう信じさせろよ。
馬鹿みたいにコーヒー飲んで、どれだけ時間を費やしてるんだ。

それでも結果が出ない。不合格、暗い未来しか見えない。
毎夜毎夜僕は涙ぐんで自分を呪うことしか出来ない。
14：以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします：2016/07/15(金) 03:58:02 ID:OVt44KwY: オチが気になる
15：以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします：2016/07/15(金) 07:49:18 ID:bYOGFAwI: 面白いけどこれってブーン系って言っていいのか
16：以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします：2016/07/15(金) 10:06:49 ID:HuZc4We6: ブーン系ではないしそもそも物語ですらない
けど面白いからどんどん続けて欲しい
17：以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします：2016/07/17(日) 20:23:31 ID:K3wYcpik: 5.穴を掘る男

前後の記憶が無い。
気がつくと俺は、何処かの藪の中で只管にシャベルを振るっていた。

肉体労働なんて生まれたときから性に合わない。
篦棒な湿気のせいで全身が汗まみれだ。
まるで、脳味噌を雑巾よろしく乱雑に絞られているかのように。
　
穴を掘るに至った経緯はわからないが、穴を掘り続けなければならない動機なら明らかだ。
機械的なペースでシャベルを土に突き立てる俺の隣に、十歳前後の少女が横たわっている。
俺の見る限り、彼女は既に冷え切っている。この暑さならば十日と保たずに腐敗していくだろう。
　
つまりそういうことだ。俺は、何の因果か、この少女を土の中へ遺棄しようとしているのだ。
　
暗くて不明瞭だが、少女の衣服は整っているように思える。
少なくとも外見上、乱暴されたような痕跡はない。

しかし、今の俺にとってそのような推測は楽観主義者のそれに過ぎないのだ。
はて、俺にはペドフィリアじみた性癖があっただろうか。
見知らぬ少女を拐かし、結果として死に至らしめるほど、俺は劣情を催していただろうか。

今の俺には分からない。だからといってわざわざ少女の身体を検めようという気にもならない。
正直なところ、隣で静かに死んでくれているだけで反吐が出そうだ。
今の俺に出来ることは、一刻も早く穴を深く、広くして即席の棺桶を作る以外に何も無い。
　
単純な作業を繰り返し、肉体の疲労と反比例するように精神の緊張が高まってくると、
一丁前の正義感、社会的常識とやらが鎌首をもたげてくる。

つまり、俺が仮にこの少女に暴行しておらず、殺してすらいないとしよう。
それにしたって、この国では遺体を葬り去るだけで十分に罪となる。

今更善人ぶったところで仕方がないが、少なくとも記憶がぶっ飛ぶ前までは、
俺だってごくごく平均的な一市民でしかなかった。せいぜい信号無視ぐらいしかしでかしていない。
いや、コンビニのビニール傘ぐらいはくすねたことがあるかもしれないな。

いずれにせよ、些細なことでしかない。

だが死体遺棄となると話は別だ。それは、小市民的な物差しで測れば十分すぎるほどの重罪である。
下手したら、全国ニュースで俺の顔が晒されるやもしれぬ。
ましてや被害者があどけない少女となれば、メディアの熱量もぶち上がるだろう。

つまり、俺が一市民としてすべきことは、今すぐにでも穴を掘るのを止めて、
警察に通報するという一手しか有り得ない。

無論、記憶が無いなんて台詞は、控え目に見ても言い訳として最悪の部類だ。
だが、俺自身にとっては厳然たる事実なのだから仕方がない。
　
そう思いつつ更にシャベルを突き立てたところ、硬いものと衝突して火花を散らすような音が響いた。
突端からの衝撃が全身を突き抜け、脳味噌をも強く揺るがせる。

その瞬間に天啓を得た。そうだ、何も俺が公に罪人となる必要はない。
こんなものは場当たり的な不運に過ぎないのだから。わざわざ事を荒立てる筋合いなどないのだ。

人の一人が死んだことなど、些細な事でしかない。
何者かが俺の人生を弄くりやがった。ただそれだけのことなのだ。
　
やっと出来上がった深淵のような穴に、少女を蹴り落とす。
そもそも、こんな女さえいなければ、俺はわざわざ穴を掘らずに済んだのだ。

乾いた唾を吐きかけて、土を戻してゆく。
18：以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします：2016/07/22(金) 01:24:08 ID:Fkq8NRL6: 6.アル中

とかく世間様というやつは他人の人生に首を突っ込みたがる。
曰く心配だから、貴方のために言ってあげているんだから、とかなんとか。

どいつもこいつも理論武装だけは一人前だが、
実際のところそんなにご立派な人生を送ってるヤツなんて殆どいねえんだ。

資本主義はメクラ同士の殺し合いだ。現代の井戸端は陰口の吹き溜まりだ。
俺は何も間違っちゃいない。
　
分かっている。プライベートブランドの、
アルコール度数以外何も信用できないような焼酎を飲み続けてたらいずれはくたばる。

ましてやこのペースだ。拾い集めた銭をぶっ込んでロクにメシも食わず、
脳味噌の皺をアルコールで埋めるような毎日を続けているんだ。分かっている。
このままじゃ肝臓から死んでいく。白痴にもなるだろう。吐血の頻度が増えてきたのもいい証拠だ。

いずれ俺には何も見えなくなり、聞こえなくなる。
しかし思い出してみろ。そもそも金と時間の大半をアルコールに注ぎ込み始めたのは何故だったか。
それは、この現実、社会、世の中というヤツが嫌で嫌で仕方がなかったからじゃねえか。

随分と時間はかかったが、いよいよ本望を果たせそうだ。
　
駅のベンチに腰かけ、ペットボトルの酎ハイを片手にひたすら目の前の線路を見詰めていた。
あれはいつだったか。今日みたいにクソ暑い夏の一日だった。

嗚呼、じゃあもう少なくとも一年は経っているんだな。
それでもまだ俺は、現実という土地を離れられないでいる。

そうだ、ジッと見詰めていたんだ。次第に銅鑼を打つように痛み出す頭を片手で抱えて、
それでも浴びるように酎ハイを顔面に流し込んで。ワンワンと頭を駆け巡る罵詈雑言。
陽炎のように揺らめく空気の向こう。俺は冷え切った目で自分と自分の周りをしっかりと捉えていた。

歯ぎしりを繰り返して、さながらキレた子犬のような無様さで、俺は泣いた。

首を吊る。飛び降りる。オーバードーズ。
結局何も出来なかった俺は、人身事故の生け贄にもなれず、延々と涙を流した。

そんな俺を責め立てるように、弩級の頭痛が頭蓋骨ごと締めつける。
すいません、すいません、と心の中で謝り続けた。惨めなぐらい寂しくなって、携帯を取りだした。
　
嘗ての俺を許してくれた女は、今やとっくに俺のことなど忘れているだろう。
別の男と幸せにやっているかもしれない。

何も間違っちゃいない。
少なくとも俺は他人を依存させられるほどの度量も、他人に依存するほどの器量も無かった。

しかしちょっと考えてくれ。昭和じみた説教を振る舞うつもりもないが、
人という字がそうであるように、人間ってのは何かに依存しないと生きてはいけないんだ。

誰も独りじゃない。独りになった瞬間に、そいつは簡単にくたばっちまうんだ。
俺たちは誰も、一匹狼のように強くはなれない。
　
相手は恋人か、金か、名誉か、神様か。俺はアルコールを選んだ。
そいつはまさに、俺にとってピッタリの相棒だった。

酩酊した頭でグルングルンと持論を振り回し、ゲロの海で沈むように眠り込む生活は、
俺がこの世に抱いていた抽象的な概念をそのまま具現化したようなものだった。
つまり、俺はこの現実における、最高の人生を選んだということだ。
　
だからもう、何も言ってくれるな。俺の物語は、俺と酒だけでとっくに完結してるんだ。
19：以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします：2016/07/26(火) 18:49:09 ID:MyCMKBn.: 乙
続き待ってる
20：以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします：2016/08/18(木) 02:37:51 ID:FN1KCQMU: ブーン系ではないんだろうけど普通に面白い
待ってるわ