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風街ろまん劇場のようです
1
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 02:09:46 ID:Tu7Vv9VQ0
からんからん。
喫茶店のベルが鳴る。
/ ,' 3「いらっしゃーい」
しゃがれた、間の抜けたような声。
店内は薄暗く、静かに音楽が流れている。
おだやかな昼下がりだ。
(-_-)「ブラックコーヒーとスティックシュガー」
入ってきたのは貧乏学生。果たして学生だったっけ。
ともかく机に本を広げ、窓の外に目をやっている。
彼もこの店の常連だ。くたびれたシャツに、よどんだ瞳。
その姿は、夢を持つもの特有のけだるさを帯びていた。
2
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 02:10:17 ID:Tu7Vv9VQ0
/ ,' 3「はいよ、ごゆっくり」
(-_-)「どうも」
とはいえ、はたから見ればただのさえない童貞といったところだろう。
事実、彼は童貞であった。そしてそれを誇りに思っていた。
(-_-)「ふう」
一息入れ、コーヒーを一口飲む。にがい。スティックシュガーはポケットへ。
果たして何もしていないのに、何を一息入れてんだ、と一人苦笑している。
いったいなにがおかしいのだろう。
やらねばならぬことがあるというのに彼は眼を閉じ、かすかに流れる音楽に耳を傾けるのだった。
3
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 02:11:02 ID:Tu7Vv9VQ0
夕暮れ時。
冷えきったコーヒーをぐい、と飲み込むと彼は店を出る。
350円。なに、さっきの暇に350円の価値が付いたと思えばよいのだ。
そんな戯言ばかり考えているから、彼はダメ人間であった。
/ ,' 3「どうもー」
数時間前、数日前と変わらぬ声に見送られ店を出る。
4
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 02:11:45 ID:Tu7Vv9VQ0
(-_-)「はあ」
ここは東京。さびれた東京。なぜなら彼がいるからだ。また、下町であった。
建物は静けさを保っており、人影はまばら。
のんびりと、孤独が待つ部屋へ帰っていこうとしたが。
( ゚∀゚)「よお!」
(-_-)「・・・・・・」
ツイてない。やりちんバンドマンと出くわしてしまった。笑ってやがる。
5
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 02:12:19 ID:Tu7Vv9VQ0
( ゚∀゚)「暇なら一杯やってこうよ」
(-_-)「暇だがお前の知ってる暇ではない」
( ゚∀゚)「へえ暇なんだな」
(-_-)「まあね。金はないけど」
そんなやり取りののち、彼らは酒場へ。
要は二人とも、ちゃんと寂しがり屋であった。
6
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 02:13:26 ID:Tu7Vv9VQ0
(*゚ー゚)「いらっしゃーい」
地下。蛙のネオンサインが目印のそこは、まだガラガラだった。
部屋には丸い木のテーブルが並んでおり、奥にはピアノがある。
(*゚ー゚)「あら、今日は早いわね」
カウンターにいる彼女はここのマスターだ。
( ゚∀゚)「ちょうどこいつに会ったもんで」
(-_-)「どうも」
(*゚ー゚)「あら久しぶり。調子はどう?」
(-_-)「死にかけまで戻りました」
(*゚ー゚)「それは良かったわね」
(*-_-)「最高です」
既に彼の耳は真っ赤だった。彼は女性を見ると恥ずかしくなってしまうのだ。
さらに言うと、下半身もビンビンになってしまう。彼は無駄に巨根だったため、はたから見ても一目でわかってしまうのだった。
7
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 02:14:07 ID:Tu7Vv9VQ0
( ゚∀゚)「相変わらず、こいつのこれ凄いよなー」
(-_-)「自分ではどうしようもないことだ」
(*゚ー゚)「ふふ、下品ねえ」
( ゚∀゚)「とりあえず、ビールふたつね」
(*゚ー゚)「はいはいー」
そして彼らは丸テーブルの方へ。彼女と話していても良いのだが、一人で飲んでる友達を見つけていた。
( ゚∀゚)「よお!」
(-_-)「どうも」
( ・∀・)「・・・・・・ちょっと珍しい組み合わせだね」
彼は杯を止め、微笑して答える。
8
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 02:15:16 ID:Tu7Vv9VQ0
( ゚∀゚)「そうかな?」
( ・∀・)「良く知らないけど」
( ゚∀゚)「そうか。失礼するぜ」
(-_-)「よいしょ」
( ・∀・)「まったく、人が優雅に飲んでるときに・・・」
(-_-)「悪いね」
( ゚∀゚)「こんな安酒場で優雅もクソもあるめえ」
9
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 02:15:38 ID:Tu7Vv9VQ0
(*゚ー゚)「安酒場で悪かったわね」
(:゚∀゚)「お! いやいや褒めてるんですよ!」
(*゚ー゚)「本当かしら?」
( ・∀・)「いやほんと、我々貧乏学生にはありがたいです」
(*゚ー゚)「ちゃんと学生やってんのはあんただけでしょうが・・・・・・あれヒッキー君どうだっけ?」
(-_-)「いちおう籍はあるはず・・・・・・」
(*゚ー゚)「なるほど。ならちゃんと行かなきゃだめよー」
彼女はジョッキを三つ置いて、カウンターの方へ戻っていく。
10
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 02:16:21 ID:Tu7Vv9VQ0
( ゚∀゚)「へー、ヒッキーまだ辞めてなかったんだ」
(-_-)「なんかね。退職金も出ないし」
( ゚∀゚)「でも、行く気ねえんだろ?」
( ・∀・)「とりあえず乾杯しようぜ」
( ゚∀゚)「おっとそうだな、何に乾杯と行こうか」
( ・∀・)「なんだそりゃ」
(-_-)「じゃあ、我々の不運を祝って」
( ゚∀゚)「なるほど。では、我々の不運を呪って、乾杯!」
(-_-)(;・∀・)「乾杯!!」
ガチャン!!!
こうして夜は更けていく・・・・・・。
11
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 02:18:16 ID:Tu7Vv9VQ0
(#゚∀゚)「それでよお、おれがよお、こう言うのよ。『君をサナギに戻してあげるよ』ってね。
そしたら彼女はおいおい泣いて『私は虫じゃない!』なんて泣き喚くのよ!
男がよお、女の涙によお、敵う訳がねえんだよ!」
深夜。酒場は賑わい、彼らは酔っていた。
( ;∀;)「うおーうおー」
(#゚∀゚)「だからよお、おれは彼女をそっと抱き寄せて、耳元で囁くのよ。『大丈夫、哺乳類だから』
そしたら彼女は泣き止むんだけどよ、今度は思いっきりビンタしてきやがった! あのクソアマ!」
(#・∀・)「ナニ、そんなの許せるか!!」
(#゚∀゚)「だけどおれは許したさ。『それで君の気が済むならいいよ』
って左の頬を差し出したのさ。そしたらあいつ、どうしたと思う?」
(#゚∀゚)「今度は思いっきり、グーで殴ってきやがった! こんな話あってたまるかってんだ!!」
( ;∀;)「うおーうおー」
(-_-)「・・・・・・」
奥では誰かがピアノを弾いている。聞いたことがあるような、ないような曲。
ヒッキーは酔うと、無口になって勃起に集中する癖があった。
酒場の人間は皆酔っ払い、踊り、歌い、泣き、笑い、眠っている。
彼は生粋のへそまがり、あまのじゃくだったので、きっとそういう酒癖になったのだろう。
12
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 02:18:47 ID:Tu7Vv9VQ0
(-_-)「・・・・・・ん?」
不意に、ずっと続いていたピアノの演奏が止んだ。
ピアノの旋律に合わせて股間に力を入れていたところだったのだ。
(-_-)「どうしたのかな」
さっきまでうるさかった二人も寝てしまっている。
喧騒は続いていたが、彼はひとりぼっちになってしまった。
(-_-)「・・・・・・帰るか」
友達を置いていくのは気が引けたが、運ぶほどの腕力もないし、彼もまた酔っていた。
しぃさんあたりがなんとかしてくれるだろう。
一応二人に毛布だけかけてから、彼は部屋を出て行った。
午前二時半。外は寒く、暗くはあった。
13
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 02:23:40 ID:Tu7Vv9VQ0
続きます。
どうもありがとうございます。
14
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 18:01:24 ID:V62XU.4c0
なんかまたカオスなのが始まったな……期待
15
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 21:29:41 ID:IVOyjSfU0
ちょっと意味わかんなさすぎていいな
16
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 22:27:50 ID:Tu7Vv9VQ0
朝。それとも昼だろうか。
(-_-)「頭いてえ」
二日酔い。自然の摂理といえる。
(-_-)「ああ・・・・・・」
昨日のことを振り返りつつ、自分の部屋で目覚めたことにがっかりする。
起きたら南極とかだったら面白かったのにな。
そんなこと思う彼は、まだぼーっとしている。
17
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 22:28:31 ID:Tu7Vv9VQ0
(-_-)「よし!」
気合いを入れて、掛け声を一つ。
彼は今日一日、どこまでも無駄に過ごすことを決めたのだ。
身支度を整え、久しぶりの大学へ。
(-_-)「アホな大学生ほど目障りなものはないな」
彼はダメでバカでアホであった。したがって、自分の中ではセーフのつもりなのだろう。
(-_-)「あーしんど」
大学に着くが、もう気力を使い果たしてしまった。
だがUターンするのもどうかと思い、とりあえず講義を聞きに行く。
18
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 22:28:53 ID:Tu7Vv9VQ0
(-_-)「ふう」
端っこの方の席へ。どうせどこに座っても落ち着きはしないのだ。
やっぱりここは俺の居場所じゃない。彼はそのことを深く再認識した。
女の子の声が聞こえる。なので彼はその声を聴くことに集中しようと、目を閉じる。
19
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 22:29:17 ID:Tu7Vv9VQ0
(-_-)「ふう」
端っこの方の席へ。どうせどこに座っても落ち着きはしないのだ。
やっぱりここは俺の居場所じゃない。彼はそのことを深く再認識した。
女の子の声が聞こえる。なので彼はその声を聴くことに集中しようと、目を閉じる。
20
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 22:30:11 ID:Tu7Vv9VQ0
(-_-)「あー、しっかり一日無駄にした!」
夕方。帰り道。彼は仕方なく、達成感を感じることにした。悲しいのだから仕方ない。
こんな日は、映画館にでも寄りたかったが、昨日だいぶ散財してしまった。
そもそも見たい映画などなかった。彼はただ、映画館に寄りたかっただけなのだ。
なので、彼は映画館に寄ることにした。
長い影。
21
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 22:30:55 ID:Tu7Vv9VQ0
『シネマ金本』
まるで張りぼてみたいな、この映画館が彼は好きだった。
映画館の前で目を閉じる。精神を集中させること10秒。
彼は目を開き、帰路に着く。映画館に入るには、チケットを買わなければならなかったから。
すなわち、彼はただただ自分を貶めて、楽しんでいたのだ。なんて馬鹿な奴なんだろうと。
笑ったところで、みじめになるだけだった。
22
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 22:31:49 ID:Tu7Vv9VQ0
(-_-)「あー疲れた」
東中野の下宿。家賃2万。築47年木造。彼の棲家だ。
まっくらな部屋に明かりを灯す。かえって闇がはっきり見えた。
(-_-)「なにやってんだろうな、おれ」
湿った布団に仰向けになる。孤独がのしかかってくる。
(-_-)「はあ」
明後日に向けて、なにかしようか。
そんなことも思うが、こんなクズがいまさらやったところでな。
本当はクズだなんて思ってないくせに、クズだと認めて彼はふて寝をするのだった。
明日の自分にも、しっかりと絶望しながら・・・・・・
23
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 22:32:28 ID:Tu7Vv9VQ0
―――――――――――――――――――――――
しぃの酒場。けろけろ酒場。
ちょうど、昨日の彼が帰る前。
从 ゚∀从「今日もありがとよ!」
\ワーワー パチパチ/
まばゆい銀髪の人物。整った顔立ち。胸を見なければ性別を判断するのはなかなか難しいだろう。
彼女はこの店で、ピアノを弾いていた。
最初は客としてだったが、いまは店側の人間として。
彼女目当ての客も来るほどだったので、しぃが話を持ちかけたのだが。
24
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 22:33:21 ID:Tu7Vv9VQ0
(*゚ー゚)「お疲れさま、今日もありがとう」
从 ゚∀从「こちらこそ。いい気晴らしになって助かるぜ」
(*゚ー゚)「勉強も大変だろうに、休みたくなったらいつでも言ってね」
从 ゚∀从「はは・・・・・・辞めねえよ」
(*゚ー゚)「私としては本当に嬉しいし、お客さんも喜んでくれるからありがたいんだけど」
从 ゚∀从「ならいいじゃねえか」
(*゚ー゚)「うーん、そうねえ・・・・・・」
すなわち、だいぶ店に入り浸りになってしまったのだ。
客は入るし、渡す金も気持ち程度なので、その点は問題ない。
25
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 22:34:47 ID:Tu7Vv9VQ0
从 ゚∀从「まあオレのことなら気にすんな! そんなことより、あっちに潰れてるのがいるぜ」
(*゚ぺ)「あー・・・・・・またあいつらは」
从 ゚∀从「常連か?」
(*゚ー゚)「まあね。あと一人いたんだけど、帰っちゃったかしら」
从 ゚∀从「薄情な奴だな」
(*゚ー゚)「ふふふ。みんな面白い人だから、今度紹介するわね」
从 ゚∀从「楽しみにしてる・・・・・・明日試験だから今日は帰るわ」
(*゚ー゚)「え、ちょっと、ならこんな遅くまでだめじゃない」
大丈夫ー、と右手をひらひら振りながら、彼女は店を出て行った。
はぁ、気を付けてねー、としぃ。
26
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 22:35:26 ID:Tu7Vv9VQ0
(*゚ー゚)「さて、そろそろ店じまい」
今日あったことを振り返りながら、しぃは片づけを始める。
二人はこのまま寝かせておこう。
27
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 22:36:01 ID:Tu7Vv9VQ0
从 ゚∀从「あーあ、やってられねえぜ!」
ハインリッヒ。帰り道。明日に思いを馳せると、さっきまでのいい気分も消えていってしまう。
从 ゚∀从「別に嫌でもねえけどよ、こっちの身にもなれってんだ、クソ」
ぼやきながら、駅前でタクシーを捕まえる。
終電はとっくに無くなっていた。
从 ゚∀从「新宿、VIPマンションまで」
/ ,' 3「あいよー」
ドライバーの目に、自分どう映っているだろうか。
なんだかおかしな気分になってくる。
家に着いたら、寝ようか、起きられようか。
そんなことを考えながら、夜の街を流されていく・・・・・・
28
:
名無しさん
:2018/10/17(水) 22:37:16 ID:Tu7Vv9VQ0
今日の投下は以上です。
ありがとうございます。
途中連投失礼しました。
29
:
名無しさん
:2018/10/18(木) 17:49:42 ID:VMrzZrY20
乙
なんかよくわからんが続きが気になるな
30
:
名無しさん
:2018/10/18(木) 17:54:30 ID:2wjdZyTo0
めちゃくちゃ個人的にヒッキー好き
31
:
名無しさん
:2018/10/18(木) 17:58:25 ID:ibpnPUoA0
乙!
32
:
名無しさん
:2018/10/20(土) 00:19:18 ID:N3JoYwqg0
(-_-)「ああ、・・・・・・だがまだ死ねない」
夕暮れ。
大事な大事な日のはずだった。
だが、朝になるとなんだかどうでもよくなってしまった。
彼は感情を制御できず、逃げてしまった。よくあることなのだ。
ツケは、黒星ふたつ。そして自己すべての否定。
すなわち、将棋を負けたのだ。
33
:
名無しさん
:2018/10/20(土) 00:19:47 ID:N3JoYwqg0
(-_-)「あー・・・・・・・」
膝の力が抜ける。歩きたくない。帰りたいのに、動きたくない。このまま死んでしまいたい。
ぐちゃちゃにされ、泥のような体を引きずる。引きずる。
34
:
名無しさん
:2018/10/20(土) 00:20:15 ID:N3JoYwqg0
小森ヒッキー。関東奨励会二段。21才。
すなわち彼は、将棋の棋士を目指していた。
物心つく前に将棋を覚え、物心がついた頃には将棋なんて、と思うようになった。
だが物心がつくのが彼の場合遅すぎた。気づけば、もう引き返せないところまで、将棋にのめりこんでいた。
なんとなくやって、なんとなく勝って、なんとなく棋士を目指した。
中途半端な才能があったのが良くなかった。
35
:
名無しさん
:2018/10/20(土) 00:20:51 ID:N3JoYwqg0
(-_-)「ああ・・・・・・・・・」
駅のホームでうずくまる。
適当に指しても、負けるとどうしようもない絶望が襲ってくる。
また、自己嫌悪。情けなさ。黒と紫が入り乱れるような感情。
彼がだらしない生き方をしつつも自分を保っていたのは、「将棋で勝てばいい」ただそれだけだった。
月に二回の例会日。その日がすべて。他の日は好きに使っていいのだ。
そこで勝ちまくれば棋士になり、生活ができる。自分自身を肯定できる。
事実、彼はあと一歩のところまで来ているように見えた。
勝てばいい。たったの五文字。
だが、道が開けているように見えるのが曲者なのだ。
36
:
名無しさん
:2018/10/20(土) 00:21:49 ID:N3JoYwqg0
事実、道は平等だ。皆平等に、いばらの道なのだ。
それに気づかず立ち止まるものと、ボロボロになりながら立ち向かうもの。
特別な才能のあるものは別だ。
しかし、ある程度の才能の者、凡人では、いばらの道を突き進まなければ勝てない。
(-_-)「・・・・・・・・」
彼にはまだ、自分を見る勇気が無かった。天才でないことはわかっているのに。
37
:
名無しさん
:2018/10/20(土) 00:22:32 ID:N3JoYwqg0
夜。9時すぎ。
(*゚ー゚)「いらっしゃーい」
(-_-)「・・・・・・」
(*゚ー゚)「あら、ヒッキー君ひとり? 珍しい」
(-_-)「・・・・・・将棋負けて、ひどい」
(*゚ー゚)「あー、まあそんな日もあるよ。飲んできな」
(-_-)「・・・・・・はい」
(*゚ー゚)「とりあえず、ウイスキーでいい?」
(-_-)「はい」
(*゚ー゚)「ちょっと待っててね」
・・・・・・彼はまた、自分の中の約束を破った。酒に逃げるなんて。ダメ人間の典型だ。
だがもういまさら、いけるとこまでいってやる。俺はダメなんだ。
ヤケになってると、自分でもわかってるのがまた嫌だ。だってダメなんだ。
そんなことを思いながら、酒場を見回す。
38
:
名無しさん
:2018/10/20(土) 00:23:19 ID:N3JoYwqg0
(*゚ー゚)「お待たせ、はいどうぞ」
(-_-)「・・・ありがとうございます」
(*゚ー゚)「それでさ、実は今日落ち込んでる奴がもう一人いるのよ」
(-_-)「・・・・・・はあ」
(*゚ー゚)「普段お世話になってる奴なんだけど。ほらあそこ。さびしそうに飲んでるでしょ」
(-_-)「・・・・・・」
そうして彼女はにっこり微笑む。二人の間を、静かに火花が散っているようだ。
39
:
名無しさん
:2018/10/20(土) 00:23:46 ID:N3JoYwqg0
(-_-)「・・・・・・今日は一人で飲みたいんです」
ヒッキーが口を開く。
(*゚ー゚)「じゃあなんでこの店に来たの?」
間、髪を入れずに答えるしぃ。
(*-_-)「・・・・・・」
(*゚ー゚)「飲み代半額にしてあげるからさ」
(-_-)「そんなの別にいいですよ」
結局、グラスを手にテーブルへ向かうヒッキー。
内心まあ、さびしくて、さびしい人でありたくて、でも話したかったから。
初対面でも酒があるし。しぃさんの紹介なら大丈夫だろうと。
40
:
名無しさん
:2018/10/20(土) 00:24:21 ID:N3JoYwqg0
从#゚∀从「ああ、誰だ、失せろ!」
思っていた。
41
:
名無しさん
:2018/10/20(土) 00:25:12 ID:N3JoYwqg0
それまでしょげたように、一人で飲んでた彼女は、彼を見るなり態度を豹変させた。おそろしくドスの利いた声。
(#-_-)「それはこっちのセリフだ!」
だが、彼も負けてはいなかった!
从#゚∀从「!?」
(#-_-)「しぃさんに頼まれました。相席失礼します!」
从;゚∀从「な、お前何言ってんだ!」
(#-_-)「・・・・・・」
从 ゚∀从「・・・・・・」
(-_-)「・・・・・・なにやってんだろな、おれ」
そう、彼はノッてすぐ後悔するタイプだった。まだ酔ってはいなかった。
42
:
名無しさん
:2018/10/20(土) 00:25:54 ID:N3JoYwqg0
(-_-)「すみません、もうどっかいきますよ。邪魔しましたね」
从;゚∀从「あ、いや、いい! いやよくないけど! 一緒に一人で飲もう!」
(-_-)「・・・・・・そんな、気を遣ってもらわなくていいですよ」
从;゚∀从「待て待て、さっきしぃさんがどうとか言ってたよな!」
(-_-)「ああ、なんか頼まれたんですよ。でももういいや。いきなり怒鳴られて」
从 ゚∀从「悪かったよ。オレだって色々あるんだよ」
(-_-)「・・・・・・そうだよね」
从 ゚∀从「ホレ座れ。しぃさんに頼まれたんだろ?」
(-_-)「・・・・・・」
彼は外していた尻を装着し、彼女の向かいに腰かける。
43
:
名無しさん
:2018/10/20(土) 00:27:14 ID:N3JoYwqg0
从 ゚∀从「正直、一人で飲むのにも飽きてたしな。腹は立つけど」
从 ゚∀从「オレは高岡ハインリッヒだ。ハインでいい」
(-_-)「小森ヒッキー」
从 ゚∀从「へえ。名前が名字に負けてるな」
(-_-)「どこがだよ」
从 ゚∀从「えー・・・ニュアンス的に? それでさ、」
(-_-)「とりあえず飲ませて下さい」
ああ、とハインは言って、グラスを合わせる。
カチン。
44
:
名無しさん
:2018/10/20(土) 00:28:30 ID:N3JoYwqg0
グビグビ。一気にグラスの半分ほどを空ける。
(-_-)「あ゛あ゛ー・・・・・・染みるわー」
从 ゚∀从「いい飲みっぷりだな」
(-_-)「やってられねえからな」
从 ゚∀从「おういいね。店はよく来んの?」
(-_-)「ときどきかな。普段は友達と」
从 ゚∀从「ふーん。今日は?」
(-_-)「死にたくなったから来た」
从 ゚∀从「なるほどな」
彼女も酒をあおる。そういえば、もうだいぶ顔が赤い。
45
:
名無しさん
:2018/10/20(土) 00:30:01 ID:N3JoYwqg0
从 ゚∀从「それでオレなあ――――――」
(-_-)「おう」
从 -∀从「――――――zzz」
(-_-)「・・・・・・」
从 ゚∀从「zzz――――――はっ」
(-_-)「今寝てたよ」
从 ゚∀从「・・・まだこの時間なのに」
(-_-)「うん」
从 ゚∀从「朝から飲んでたからかなあ」
(-_-)「な、そりゃ潰れるわ、無利しないで」
从 ゚∀从「うん・・・・・触ったら殺すからな」
(-_-)「へ?」
次の瞬間、彼の視線が初めてハインの胸元へ行った。
膨張する股間。赤くなる耳。
あまりに見事な銀髪に目を取られ、豊かな胸に目が行っていなかったのだ。
46
:
名無しさん
:2018/10/20(土) 00:31:36 ID:N3JoYwqg0
(*-_-)「あ、ああ、あああああああああああ」
从;゚∀从「ど、どうしたいきなり!」
彼はおもわず、席を外した。
もう溢れそうだ。飛び出しそうだ。
ダッシュでトイレへ。
(-_-)「ふう・・・・・・」
鎮火した。驚いた。まさかおにゃのこだったとは。
ズボンから滴るそれを拭きながら、そういや今日おれ、将棋負けたんだな、と思うヒッキーであった。
夜。10時半。
47
:
名無しさん
:2018/10/20(土) 00:32:07 ID:N3JoYwqg0
今日の投下は以上です。
ありがとうございます。
48
:
名無しさん
:2018/10/20(土) 00:46:15 ID:HBUYnl2w0
乙
>彼は外していた尻を装着し、彼女の向かいに腰かける。
ここ好き
49
:
名無しさん
:2018/10/20(土) 01:11:39 ID:5ylSAAME0
ほう…
これは良いものだ
50
:
名無しさん
:2018/10/20(土) 07:09:30 ID:ukH.WgjI0
乙
ちょっとずつ話が見えてくるの好き
51
:
名無しさん
:2018/10/21(日) 23:40:41 ID:r4unxA9w0
从 ゚∀从「にしても、なんだったんだあいつは・・・・・・」
昼。喫茶風街。窓際の席。
(*゚ー゚)「よくわかんない子よねえ」
ハインリッヒとしぃ。ハインはあの後店で潰れて、今さっき起きたところだ。
髪はさらにボサボサ、濃くない化粧すら落ちたハイン。
それに比べて、しぃはこじゃれた格好。緑のセーターに、ひかえめなズボン。
52
:
名無しさん
:2018/10/21(日) 23:41:09 ID:r4unxA9w0
(*゚ー゚)「でも彼、悪い人じゃないし、悪い人じゃない人だけじゃない人よ」
从 ゚∀从「ふーん」
(*゚ー゚)「で、昨日はどんな話をしたの?」
从 ゚∀从「別に・・・・・・酔ってたしよく憶えてねえや」
(*゚ー゚)「そう」
从 ゚∀从「うん」
外の世界から工事の音。
53
:
名無しさん
:2018/10/21(日) 23:42:06 ID:r4unxA9w0
(*゚ー゚)「まーだ東京は頑張ってるのね」
从 ゚∀从「頑張りすぎだよな」
(*゚ー゚)「岡山とか佐賀とか、きっとそのあたりの尻拭いをしてるのよ」
从 ゚∀从「へえ・・・・・・今日のしぃさんなんか変だよ」
(*゚ー゚)「そうかしら」
从 ゚∀从「わかんねえけど。・・・昨日の小森? だけどさ、連絡先とかって知ってる?」
(*゚ー゚)「ヒッキー君? いや、知らないわ」
从 ゚∀从「そっか。変な奴だし、また話せたらなと思ったんだけどさ」
54
:
名無しさん
:2018/10/21(日) 23:43:18 ID:r4unxA9w0
(*゚ー゚)「そうねえ」
(*゚ー゚)「普段あんまりお店にも来ないのよ、彼」
从 ゚∀从「そうか」
(*゚ー゚)「でもご希望とあれば、今度来た時に聞いといてあげる」
从 ゚∀从「うん。よろしく」
一瞬、拍子抜けしたような顔のしぃ。すぐにいつもの微笑みへ。
(*゚ー゚)「ま、そもそもケータイ持ってるのかも知らないんだけどね」
从 ゚∀从「なんだい」
(*゚ー゚)「ふふ。そういえば、昨日来てた杉浦さんがさあ・・・・・・」
穏やかな昼はしばらく続く。
55
:
名無しさん
:2018/10/21(日) 23:44:38 ID:r4unxA9w0
( ゚∀゚)「へえ、今度俺も会えるかな」
夜。月を乗せたアパート。
(-_-)「多分会えるんじゃない? しぃさんの知り合いみたいだし」
電話。二人をつなぐ。
( ゚∀゚)「へー。知り合いってだけなら俺らもだけどな」
(-_-)「ああそっか。なんかお世話になってる、みたいなこと言ってて」
( ゚∀゚)「ふむふむ」
(-_-)「だから俺らとは違うんだ」
( ゚∀゚)「ハハ。そりゃあいいね」
彼らはこうして、なんとなく電話ができる仲だった。
さびしくなったとき、何かあったとき。心配になったとき。
少し考えて、あいつだったらまあいいか、と。
56
:
名無しさん
:2018/10/21(日) 23:45:22 ID:r4unxA9w0
( ゚∀゚)「で、こないだの例会はどうだった?」
(-_-)「連敗」
( ゚∀゚)「ああ・・・・・・俺なんかとつるんでるから」
(-_-)「そうなんだよな」
( ゚∀゚)「ホント、将棋の先生になるんだろ? ダーメだって、こんな奴と」
(-_-)「まあ、それはお互い様ということで」
( ゚∀゚)「そうか、じゃあお前がダメ人間の間は」
(-_-)「俺は一生ダメだぜ」
( ゚∀゚)「んなこと言うな。棋士になったらそうは言わねえだろ?」
(-_-)「・・・・・・まあな」
57
:
名無しさん
:2018/10/21(日) 23:46:09 ID:r4unxA9w0
( ゚∀゚)「ふふふ。俺は一生ダメでいいからな」
(-_-)「そう」
( ゚∀゚)「うむ」
(-_-)「・・・・・・ダメ人間じゃ将棋勝てないのに、将棋に勝ったところでしょうもないと思っちゃうんだよな」
( ゚∀゚)「また出たよ。将棋大好きなくせに」
(-_-)「んなこたあねえ」
( ゚∀゚)「はいはい。さっさと俺を失望させてくれよ」
(-_-)「どういうことだ」
( ゚∀゚)「だから、素直に真人間になって、太陽を浴びて『将棋がんばるぞ!』って」
(-_-)「そうは死んでもならん」
受話器の向こうから何やら音が聞こえる。
58
:
名無しさん
:2018/10/21(日) 23:46:43 ID:r4unxA9w0
( ゚∀゚)「あ、悪い、そろそろ切るわ」
(-_-)「おう。達者でな」
( ゚∀゚)「うむ!」
がちゃ。
お別れも唐突だ。あいつは人気者だからな。
(-_-)「あー・・・・・・」
電気を消し、部屋を暗くする。
そして、ここにある空間。僕だけの場所。
真っ黒な川に、記憶などを浮かべて。
今日の会話、その他。
漂う。クラゲ。
59
:
名無しさん
:2018/10/21(日) 23:48:40 ID:r4unxA9w0
続きます。
いつもコメントありがとうございます。うれCです。
60
:
名無しさん
:2018/10/22(月) 00:34:32 ID:kylp5bbI0
おつかれ!
61
:
名無しさん
:2018/10/22(月) 17:48:33 ID:6JHNKrXw0
これドクオならいつもの展開かなーと思うけど、そうじゃなくてヒッキーなんだよな…気になる。
62
:
名無しさん
:2018/10/22(月) 20:29:03 ID:5Xlo/lbU0
おつー
地味に楽しみで毎日覗いちゃう
63
:
名無しさん
:2018/10/22(月) 23:23:30 ID:LYMH9w3M0
从 ゚∀从「ん?」
大都会。平日の昼下がり。向こうのビル群は沈黙し、やわらかな路地。光。
車も人も少ない、大通りから少し離れたところ。
ハインリッヒが足を止める。
『2階 駄菓子のブウ』
建物に付属しているその看板は、真新しかった。楽しげな色。
こじんまりとしたビル。
从 ゚∀从「へえ、いまどき珍しいのにな」
小考の末、彼女はその建物へ入っていく。
64
:
名無しさん
:2018/10/22(月) 23:24:04 ID:LYMH9w3M0
从 ゚∀从「ふう」
薄暗い階段を抜け、2階。ドアを開ける。
ガチャ。
从 ゚∀从「・・・・・・おお」
そこは、なんというか、非常に駄菓子屋だった。
茶色くこじんまりとした空間に、所狭しと菓子がある。
( ^ω^)「いらっしゃーい」
部屋の奥、窓際の畳には、若い男がいた。なんだかしっかり、猫まで抱いてる。
从 ゚∀从「こんちわ。いい趣味してんね」
彼女はいきなり話しかける。
( ^ω^)「そりゃ、どうもだお」
のーんびりと、答える男。
65
:
名無しさん
:2018/10/22(月) 23:25:14 ID:LYMH9w3M0
从 ゚∀从「あのさ、最初正直、ちょっと怪しいとこかなとも思っていて」
( ^ω^)「え、なんでだお」
从 ゚∀从「いや、いまどき普通駄菓子屋なんて」
( ^ω^)「うーん、そういうものかおねえ」
从 ゚∀从「あ、気を悪くさせたならごめんよ。オレはこういうの大好きだぜ」
( ^ω^)「僕も大好きですお?」
どこか、きょとんとしていて憎めない顔だ。
ハインリッヒは部屋を回る。
66
:
名無しさん
:2018/10/22(月) 23:26:02 ID:LYMH9w3M0
从 ゚∀从「よし、会計だ!」
吟味すること20分。
ハインリッヒは決断した。自らに、200円までという制約を課していたのだ。
( ^ω^)「はいはーい」
窓に向かって畳に寝そべっていた彼も、体を起こす。
( ^ω^)「お、お目が高いおね」
从 ゚∀从「フフフ」
( ^ω^)「ひい、ふう、みい、いいやスマホで・・・・・・210円になります」
从 ゚∀从「!?」
ハインリッヒ、愕然。
67
:
名無しさん
:2018/10/22(月) 23:26:39 ID:LYMH9w3M0
( ^ω^)「どうかしましたかお?」
从 ゚∀从「いや、いいんだ・・・・・・。210円ね、はい」
( ^ω^)「ん、ちょうどね」
ペラペラのビニール袋に菓子を入れていく。
( ^ω^)「またお越しくださいおー」
从 ゚∀从「そうだ、これ、一応」
( ^ω^)「お?なんだお?」
彼女が渡したのは、しぃの店の名刺。
68
:
名無しさん
:2018/10/22(月) 23:27:09 ID:LYMH9w3M0
从 ゚∀从「あんた、あんま酒って雰囲気じゃないけど。まあ機会があったら」
( ^ω^)「おっおっおっ。どうもありがとうございますお」
从 ゚∀从「うん。また来るよ」
( ^ω^)「どうもー」
店を出る。階段を下る。外に出る。
そして振り返り、建物を見る。
从 ゚∀从「・・・・・・」
あの部屋があんな所だなんて。いまもあの人はいて。
なんだかおかしくなってくる。
69
:
名無しさん
:2018/10/22(月) 23:28:02 ID:LYMH9w3M0
从 ゚∀从「はあ」
だが、講義を抜けだしたことはちゃんと後悔しているのであった。
从 ゚∀从「参ったなあ・・・・・・」
そして、彼女は医者を目指していた。いい大学へも行っていた。
从 ゚∀从「どうしたもんかね」
コンクリートに、からっぽの建物。誰かの鉢植え。
東京の真ん中。ぼんやりとした昼下がり。
70
:
名無しさん
:2018/10/22(月) 23:29:17 ID:LYMH9w3M0
今回は以上です。
どうもありがとうございます。
71
:
名無しさん
:2018/10/22(月) 23:36:34 ID:kylp5bbI0
乙!
最近寝る前にこれを読むのが日課
72
:
名無しさん
:2018/10/23(火) 03:04:36 ID:k5lGZR820
おつ
おもしろい
73
:
名無しさん
:2018/10/25(木) 23:12:23 ID:Up0DXUn.0
(-_-)「・・・・・・」
パチ
(-_-)「・・・・・・」
(-_-)「うーん」
昼ごろ。彼のワンルーム。独房。
カーテンを閉め切り、将棋盤とにらめっこ。
74
:
名無しさん
:2018/10/25(木) 23:13:00 ID:Up0DXUn.0
(-_-)「・・・・・・」
(-_-)「はあ」
(-_-)「・・・・・・飯にするか」
彼は散歩がしたかった。
ぶらり。部屋を出る。
75
:
名無しさん
:2018/10/25(木) 23:14:58 ID:Up0DXUn.0
(-_-)「・・・・・・」
(-_-)「静かだな」
昼だし、外も静かだった。
ぼたぼたと自分を落としながら、軽く、軽く。
ふらふら。牛丼屋に入る。
76
:
名無しさん
:2018/10/25(木) 23:15:23 ID:Up0DXUn.0
( ^^ω)「いらっしゃいませー!」
(-_-)「・・・・・・」
カウンター席の端っこへ。
メニューを広げ、小考。
(-_-)「すみません」
( ^^ω)「はいー」
(-_-)「まぐろ丼の、並みで」
( ^^ω)「かしこまりましたー」
せめて、少しのぜいたくを。
夕、腹減るだろうなあ。
77
:
名無しさん
:2018/10/25(木) 23:15:51 ID:Up0DXUn.0
( ^^ω)「お待たせしました、まぐろ丼の並みです」
(-_-)「どうも」
( ^^ω)「ごゆっくりどうぞー」
(-_-)「・・・・・・」
水のような茶を一口。
(-_-)「いただきます」
たれをかけ、まぐろだった魚と米を口へ運ぶ。
いとおいし。ああ美味しいな。
ゆっくり味わう。
78
:
名無しさん
:2018/10/25(木) 23:17:42 ID:Up0DXUn.0
(-_-)「ごちそうさまでした」
会計を済ませ、店を出る。
風がいる。車が通っていく。
(-_-)「・・・・・・」
家に帰るか。それとも、さびしそうに見つめてくる、あの道に入るか。
(-_-)「・・・・・・」
ふらふらふら。
79
:
名無しさん
:2018/10/25(木) 23:18:52 ID:Up0DXUn.0
そこはなんだか涼しい小道。はじめての景色。
壁があって、家がある。日陰もいっぱい。緑色。
(-_-)「・・・・・・」
でも、すぐ大通りに戻ってしまいそうだな。
悲しくなって、ゆっくり歩いたりして。
(-_-)「お」
猫と出会う。
振り向くように、こっちを見てくる。
黒猫。
80
:
名無しさん
:2018/10/25(木) 23:19:58 ID:Up0DXUn.0
(-_-)「・・・・・・」
なんとなく、彼はしゃがむ。
猫はそのまま、動くような、動かないような。
(-_-)「・・・・・・」
猫は一日、こうして生きているんだな。
言葉を持たず、ただ一生。
81
:
名無しさん
:2018/10/25(木) 23:21:12 ID:Up0DXUn.0
(-_-)「君、いいなあ」
彼は少し、猫に嫉妬をする。
猫は気にせず、ひだまりに丸くなっている。
(-_-)「ふむ」
立ち上がり、おそるおそる、背中をなでてみた。
思いのほか、固い。でもふわふわだ。
82
:
名無しさん
:2018/10/25(木) 23:22:02 ID:Up0DXUn.0
撫でること二分ほど。
(-_-)「・・・・・・帰るか」
これからは、ツナ缶でも持ち歩こうかな。
でもそうしたとたん、会えなくなるとしたもんだ。
そんなことを思いつつ、足を進める。
(-_-)「・・・・・・」
振り返っても、猫はそのまま丸いまま。
大通りへ出る。
83
:
名無しさん
:2018/10/25(木) 23:22:46 ID:Up0DXUn.0
(-_-)「ただいま」
反響すらしない。電気をつける。
まだ、昼の三時を回ったころだ。
なのにひとりぼっちだ。
(-_-)「・・・・・・」
出しっぱなしの駒を見る。
(-_-)「・・・・・・はあ」
ごろん。
仰向けになり、天井を見る。
べつに、天井を見ているわけではない。
目を閉じる。
84
:
名無しさん
:2018/10/25(木) 23:23:33 ID:Up0DXUn.0
続きます。
どうもありがとうございます。
85
:
名無しさん
:2018/10/25(木) 23:26:51 ID:gw1rkCH.0
乙!
86
:
名無しさん
:2018/10/26(金) 03:55:23 ID:s/ibmwiI0
乙
ヒッキーの行く末は如何に
87
:
名無しさん
:2018/11/08(木) 23:00:36 ID:EQ/WDeuc0
いや続けよ!
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